衆議院

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第30号 平成19年6月20日(水曜日)

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平成十九年六月二十日(水曜日)

    午後二時十六分開議

 出席委員

   委員長 河本 三郎君

   理事 木村  勉君 理事 戸井田とおる君

   理事 西村 康稔君 理事 平井たくや君

   理事 松浪 健太君 理事 泉  健太君

   理事 松原  仁君 理事 田端 正広君

      赤澤 亮正君    遠藤 武彦君

      遠藤 宣彦君    岡下 信子君

      嘉数 知賢君    木原 誠二君

      谷本 龍哉君    寺田  稔君

      土井  亨君    中森ふくよ君

      林田  彪君    福岡 資麿君

      村上誠一郎君    市村浩一郎君

      小川 淳也君    北神 圭朗君

      佐々木隆博君    細野 豪志君

      馬淵 澄夫君    渡辺  周君

      石井 啓一君    吉井 英勝君

    …………………………………

   国務大臣         大田 弘子君

   内閣府副大臣       大村 秀章君

   内閣府大臣政務官     岡下 信子君

   内閣府大臣政務官     谷本 龍哉君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房総括審議官)           土肥原 洋君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           板谷 憲次君

   参考人

   (総合研究開発機構理事長)            伊藤 元重君

   内閣委員会専門員     堤  貞雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月二十日

 辞任         補欠選任

  後藤田正純君     福岡 資麿君

  小川 淳也君     北神 圭朗君

同日

 辞任         補欠選任

  福岡 資麿君     後藤田正純君

  北神 圭朗君     小川 淳也君

同日

 理事後藤田正純君同日委員辞任につき、その補欠として松浪健太君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

六月十八日

 憲法改悪反対に関する請願(笠井亮君紹介)(第二一八九号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第二二四五号)

 韓国・朝鮮人元BC級戦犯者と遺族に対する立法措置に関する請願(大島敦君紹介)(第二二四六号)

 同(岩屋毅君紹介)(第二三四〇号)

 同(佐藤剛男君紹介)(第二三四一号)

 ともに生きる社会のための公共サービス憲章の制定を求めることに関する請願(安住淳君紹介)(第二二四七号)

 同(大島敦君紹介)(第二二四八号)

 同(川端達夫君紹介)(第二二四九号)

 同(渡辺周君紹介)(第二二五〇号)

 同(玄葉光一郎君紹介)(第二三四二号)

 同(津村啓介君紹介)(第二三四三号)

 同(古川元久君紹介)(第二三四四号)

 同(古本伸一郎君紹介)(第二三四五号)

 平和憲法の改悪反対に関する請願(笠井亮君紹介)(第二二五一号)

 同(玄葉光一郎君紹介)(第二三四六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 総合研究開発機構法を廃止する法律案(内閣提出第六一号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――

河本委員長 これより会議を開きます。

 この際、理事の補欠選任についてお諮りいたします。

 委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任を行いたいと存じますが、先例によりまして、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 それでは、理事に松浪健太君を指名いたします。

     ――――◇―――――

河本委員長 次に、内閣提出、参議院送付、総合研究開発機構法を廃止する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、参考人として総合研究開発機構理事長伊藤元重君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣府大臣官房総括審議官土肥原洋君及び文部科学省大臣官房審議官板谷憲次君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

河本委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。木原誠二君。

木原(誠)委員 自由民主党の木原誠二でございます。

 本日は、総合研究開発機構を廃止する法律案ということで、大田大臣、また伊藤理事長、そして大村副大臣にお越しをいただいております。どうぞよろしくお願いをいたします。

 早速この法案についてお伺いしたいと思っていたんですけれども、通告はしておりませんけれども、ちょっとこの法律案の審議に入る前に、昨日、いわゆる骨太の方針というものが出された、こういうことであります。閣議決定をされたということであります。きょうの新聞報道等を見ておりますとさまざまな評価がある、こういうことであります。

 私自身は、最賃の引き上げであるとかあるいは地域ごとの産業再生機構といったようなものの設立等々、さまざまなものを盛り込んでいただいて、前向きないい骨太の方針ではないか、安倍政権最初の方針としてはいいものではないかな、こんなふうに考えるわけですけれども、担当の大臣としてどういう、評価というのはこれはいいと言わざるを得ないというふうに思いますけれども、少し感想なりをいただければ、このように思います。

大田国務大臣 今回の基本方針二〇〇七は、安倍内閣になって初めての基本方針でございます。安倍内閣がこれからどういう課題をどういう方向で取り組んでいくかというのを示すのが大きい課題でした。

 大きい課題としましては、まず、人口が減る中でいかに成長を実現していくかということ、二番目に、官主導で来た戦後レジームを脱却するために行政システム、財政システムをどう見直していくかということ、それから三つ目に、国民の安全、安心ということをどう実現していくのか、この三つの課題についてしっかりと設定をして、その改革の方向性を示せたというふうに考えております。

木原(誠)委員 ありがとうございました。三つの課題を示して、それについての対応策、方向性というものを出していただいた、こういうことであろうかというふうに思います。

 その二番目に、今まさに大臣からもお話をいただいたように、もう官主導ではないんだ、そういう意味では、小さくて効率的な、あるいは筋肉質の政府を実現していくんだ、こういうことであろうかというふうに思います。今回の法律案もまさしくその中にやはり位置づけられていくべきものであろう、このように考えております。

 もう長い経緯のある話でございます。十三年の末に特殊法人等整理合理化計画の中で財団法人化を目指してやっていくんです、そしてまた十七年の末にまさに今回の具体案が決まってきた、こういうことであります。そしてまた、行革推進法の中でのいわば資産の縮減、半減といったものの中にも位置づけられていくのであろう、このように思うわけですけれども、今回のNIRA、総合研究開発機構の廃止法案というものが、とりわけこの行革推進法の中に規定をされている政府の資産の縮減という目標の中でどのように位置づけられていくのか、まず総論でお伺いをいたしたいと思います。

大田国務大臣 国の資産、債務につきましては、行政改革推進法五十九条で、平成二十七年度以降の各年度末の国の資産の対GDP比が、平成十七年度末の対GDP比の半分にできる限り近づくようにしていくということが書かれております。また、基本方針二〇〇六の中でも、国有財産については、民営化法人に対する出資等の売却に努め、今後十年間の売却収入の目安として約十二兆円を見込むということも書かれております。

 今回の法案では、貸付金の償還期間を八年、三年以内の据え置きを含む八年以内に償還をするということになっておりますので、具体的には、遅くとも平成二十七年度末までには政府からの貸付金を全額返済させるということになっております。したがいまして、今回の措置は、行革推進法等で定める政府の資産・債務改革の趣旨に沿ったものであるというふうに考えております。

木原(誠)委員 ありがとうございました。

 平成十七年度末と二十七年度末を比べて、できる限り政府の、あるいは国の資産を縮減していく、半減していくという中に位置づけられる一つの法律案だ、こういうことでございます。ぜひ今回の法律案をしっかり成立させて進めていかなければいけないな、こう思うわけです。

 出資金を返済させる、無償貸し付け、三年据え置きの八年ということが一つの法案の骨子であろうかと思います。その中で、出資金をなくすという観点からしますと、財団法人化ということではなくて廃止ということもあったであろうし、あるいはまた、民営化するという中で、株式会社化という選択肢もあったんであろうか、このように思うわけです。

 単純に廃止ということではなくて、財団法人としてNIRAを引き続き存続させていくというその趣旨、いろいろな、これまでも長い歴史の中で多くの機能を担ってきたわけでありますから、その機能を引き継ぎながら存続させていく、こういうことであろうかというふうに思いますけれども、今回存続させるということの趣旨をお聞かせいただければと思います。

大田国務大臣 NIRAにつきましては、平成十三年の特殊法人等整理合理化計画において見直しが取り上げられて以来、NIRAの内部でも改革について検討してまいりました。平成十七年十二月の行政改革の重要方針で、NIRAの組織形態を認可法人から財団法人にするということが決定されております。これは、シンクタンクをめぐる状況が変わってきたことを踏まえて、設立の原点に返って、NIRAがどうあればいいのかということを踏まえての結論だろうというふうに思います。

 具体的に申し上げますと、NIRAの業務の一つとして、本来の研究業務以外に、民間のシンクタンクを育成するという仕事がございます。これについては、もう既に民間のシンクタンクがかなり登場してきておりますので、こちらはおおむね達成されているんだろう。残りの、研究、本来の業務に特化していくということが必要であるというふうに考えられます。

 そのときに、当然廃止するということも考えられるんだと思うんですが、政策形成プロセスの最近の動きを見ますと、官僚主導から政治主導に移ってくる、あるいは中央集権から地方分権に移ってくる、一方で政策課題は複雑になってきているということで、何が問題かを国民にもわかる形で研究し分析する、その重要性が増してきているように思います。そういう観点で、NIRAはこれまでも多くの研究実績を持ち、ノウハウ、ネットワークを持っておりますので、これを廃止するのではなくて、政策研究の貴重な場として生かしていくことが考えられるのではないか、その方がいいのではないかということで、財団法人にするという選択肢を選んだ次第です。

 御指摘のように、株式会社にするという選択肢も恐らくあるんだろうと思いますが、政策研究をやるときに、やはり、より自主性、独立性を確保した形というのが望ましいんだろうと思います。そのときに、株式会社、営利法人より、財団法人の非営利の方がより自主性を持ち、独立した形で研究できるのではないかということで、今回、財団法人を選択いたしました。

木原(誠)委員 明快な答弁、ありがとうございました。

 今まさに大臣から御指摘いただいたように、民間のシンクタンクを育成していく、この機能についてはもう大分果たしたということであろうかと思います。現にこの研究の実績を見ていますと、委託研究というのはだんだん少なくなってきて、まさに自主研究部門がどんどんふえてきている、こういうことでありますから、そちらは今回は、捨て去るというのは変な言い方ですけれども、いわば意義は終わったと。他方で、まさにおっしゃったように官僚主導から政治主導という中にあって、政策形成過程にもっと強力に関与していくんだ、こういう意義を持っている、こういうことであろうかというふうに思います。

 私自身、実は財務省におりましたときに、アジア債券市場構想というのにずっとかかわってまいりまして、二〇〇六年の夏ぐらいだったというふうに思いますけれども、NIRAから、現にアジア債券市場構想について政策提言をいただいたというような経験もございます。そういう意味では、ぜひ、引き続き、財団法人として、独立性を持ちながら、あと中立性も担保されながら、アメリカにあるブルッキングス、あるいは私自身もお世話になりましたけれども、イギリスの英国国際問題研究所、チャタムハウス、こんなような機能を担っていただけると大変ありがたいな、こんなふうに思うわけであります。

 そういう中にあって、一つやはり心配なことは、これはもう参議院の方の質疑でも、るる、いろいろ御指摘があったように思いますけれども、今回、国の出資金は八年間の無償貸し付けにかわって最終的には償還をされる、地方、民間も含めて、これは基本的に出資金は引き上げられる、こういうことが前提ではないか、このように思いますけれども、そういう政策形成過程に関与するという非常に高い使命を持つNIRAが、この財務基盤で本当に大丈夫かなということを若干危惧いたします。

 個人あるいは民間企業からの寄附金、個別、非常に細かい寄附金を集めるということも既に始まっている、このように伺っておりますけれども、今後の財務面での見通しというものについて少し御説明いただきたい、このように思います。

土肥原政府参考人 総合研究開発機構の財務面ということでございますけれども、財団法人化に際しまして、政府からの出資金につきましては無利子貸付金に振りかえられる一方で、政府以外の出資金につきましては、財団法人化される前に出資者に払い戻されるか、財団法人に対する無利子貸付金になる予定でございます。

 したがって、財団法人化後でございますけれども、財団法人の正味財産といたしまして残される寄附金及び利益剰余金が約百十億円ぐらいでございますが、それから無利子貸付金の合計分、これを原資といたしまして、その運用益により事業が実施される、こういう予定でございます。このため、財団法人の初年度の運用原資及び収入規模につきましては、政府以外の出資者が財団法人に対する無利子貸し付けにどの程度応じていただけるか、こういう次第であるため、現段階では確たることは申し上げられないということでございます。

 その後でございますけれども、貸付金の償還に伴いまして運用原資及びその運用益も減少してきまして、最終的には財団法人の正味財産及びその運用益のみになるということでございます。

 こういった時点での機構の収入規模につきましては、その時点、将来の運用環境、金利等でございますね、こういったものに左右されるわけでございますが、仮に現時点の金利等を前提に、多少機械的ではございますが試算いたしますと、返済の完了いたしました平成二十八年度、これで約四・七億円程度の収入規模になると見込まれるものでございまして、この収入の範囲内で研究開発事業を行うということになります。

 現在、NIRA、総合研究開発機構改革を加速させているところでございますが、こうした改革の成果が社会のいろいろな適正な評価を得て、寄附金とか会費制の導入など民間からの新たな資金の獲得につながる、そういうことも期待しているところでございます。

木原(誠)委員 ありがとうございました。

 もう少し財務面のことについてお伺いをしたいと思います。

 今のお話ですと、基本的には、たまっているたまり金とその運用益、新規の寄附金、こういうことであろうと思いますけれども、個人、団体からの寄附金というものは現状どの程度あって、今後どの程度見込めるのか、あるいはどういう見込みを立てているのかということ、何らかの試算があるのかないのかわかりませんが、見通しがあれば御教示いただければと思います。

土肥原政府参考人 現状でございますけれども、寄附金といたしまして五十八億円前後、それから剰余金といたしまして五十五億円前後ございます。これに対しまして、今後、まだ会費制等がきちんと発足しているというわけではございませんが、現在、NIRAの情報発信等に努めまして、PRに努めまして、会員を鋭意募っていってというふうに考えておるところでございます。

木原(誠)委員 先ほど、まさに民間のシンクタンクを生み育てていくという役割をある程度果たしてきた、こういうことでございました。その結果として、現に足元を見ていますと、委託研究というのが大分減ってきている。

 きのう私はレクをいただいて、ああ、なるほどなと思いましたけれども、これまでの千件以上の研究の中で、受託研究というのは実は二件だというふうにおっしゃったというふうに思います、二件しかないと。私自身は、むしろNIRAはいろいろなところから受託をしていろいろな研究をされているのかな、こう思ったわけですけれども、ああ、なるほどな、これは自主研究をされてきている、そういう組織なんだな、こう思いました。

 逆に言いますと、今の財務の話とちょっと関連づけをさせていただくと、委託研究でない、自主研究でやっていくということになると、今まではそれなりの潤沢な資金を持ってやってきた、こういうことであります。今後、出資金を返済する中で、これまでの寄附金のたまりと運用益で基本的に賄っていくということになっていくと、基本的な自主研究を中心にやっていくという体制が、私は、独立のこういうシンクタンクとして、とりわけ政策形成過程に関与していくということであるとすると、自主研究を引き続きやっていただくというのは大変重要なことだと思いますけれども、この方針が引き続き堅持できるのかどうか、そのあたりの見通しを理事長からお伺いできればと思います。

伊藤参考人 財団法人化は、やはり収入源の多様化ということが大事だというふうに考えておりますので、受託研究とかそれから会員制の導入等をやるように現在検討しております。そうした取り組みが、単に資金的に余裕を持たせるということ以上に、この問題を一緒に考えていく、あるいは継続的に協力関係があるというような形のものを、外にネットワークをつくっていくというのが非常に大事だというふうに思っておりますので、これは早急にいろいろ検討して着手していきたいというふうに考えております。

 それから、NIRAが設立された際に民間からいろいろ御支援をいただいたわけですけれども、財団法人化後もそういう努力を私は必要だというふうに考えておりまして、そのために、まず第一に、少なくとも理事長として私がやるべきことの最初のことは、やはり資金的に支援してもいいと思っていただけるような成果をきちっと出していくということがまず最も重要であるというふうに考えております。

木原(誠)委員 今まさにネットワークということをおっしゃったと思います。そういう意味でいうと、恐らく今後、NIRAが一級のシンクタンクとして、とりわけ、これまでの歴史を踏まえながら政策形成過程に関与していくということになっていくと、NIRAが中心になりながら、いろいろな民間のシンクタンクとネットワークをしっかり築き上げていく、こんなようなことが一つの姿としてあり得るのかな、こういうふうに思うわけであります。

 ちょっと議論が前に戻るかもしれませんけれども、理事長はそもそも財団法人化するということの積極的なメリットをどんなふうにとらえられているか、少しお伺いできればと思います。

伊藤参考人 そもそも私のような大学の研究者がここに非常勤で理事長で来たということ自身が、ある意味で、財団法人化の将来の姿を先取りしたものだと思うんですね。

 これはまた御質問があればいろいろ詳しくお答えしたいと思いますけれども、結局、こういうシンクタンクがこれからやっていかなきゃいけないいろいろなテーマに関して、どこに知見を求めるべきなのか、どういう形で議論をしていくべきだろうかというと、恐らく組織の中だけではなくて、例えば、学界ですとかあるいはジャーナリストですとか、それから、もちろん皆様のような政策に実際かかわっている方々とか、こういう形のネットワークをやはりしっかりつくっていく。

 ちょっと比較するのが適当かどうかわかりませんけれども、私が大学におりましていつも思うのは、大学で一番重要なのは場なんですね。そこに場所があって、いろいろな人が出入りしていろいろなことが生まれてくる、そういうものが、大学のような学問とは少し違った形で政策問題について考えることが必要で、それは必ずしも、いわゆる民営化して財団法人だけでしかできないというわけではございませんけれども、財団法人化した、民営化であればより柔軟にいろいろなことができるという面があるというふうには理解しております。

木原(誠)委員 理事長のおっしゃるとおりだと思います。まさに民営化、財団法人化することによって自由度が増してくる。とりわけこれまでは、そういう言い方をしたら大変失礼かもしれませんけれども、やはり認可法人ということであると、役所からの方もかなり入ってきて、それは非常にいい人材供給源であったとは思いますけれども、今後、必ずしもそうではない、そういうことになると人材もさまざまなソースから求めてこなければいけない、こういうことであろうかというふうに思います。

 そういう中で、私自身は、やはり総合研究開発機構というものが財団法人になった後も、人材をしっかり得ていくということが大変重要で、人材を得る、そしてまた供給する、そういう結節点、中心点になっていくということが、日本には三百近くあるいは三百以上シンクタンクがある、こう言われているわけですから、そういう中にあって中心的役割を担っていただきたい、こう思うんです。

 そういう人材を、まさにNIRAに来ればキャリアアップができて、そして次のステップが踏める、あるいはNIRAに来るとまた別の知見を持って次のシンクタンクへと移動していくことができる、そういう人材の結節点としての役割を担っていただきたいと思いますけれども、その点についての御所見をいただければと思います。

伊藤参考人 委員がおっしゃるとおりでございまして、例えば、少し具体的なイメージを、これは日本のシンクタンクの例でございませんけれども、参考になると思いますので、二つほど私のよく存じ上げているケースを申します。

 一つは、アメリカのボストンにナショナル・ビューロー・オブ・エコノミック・リサーチ、NBERというのがございまして、ここは、極端に言うと、ほとんど中には事務スタッフ程度しかいないんですね、もちろん、それはちょっと言い過ぎかもしれませんけれども。ただ、近くにハーバード、それからMIT等々の有力な学校があって、そういうところから、いわば、例えば財政問題であれば財政の専門家でありますとか、あるいは貿易問題であれば貿易の専門家を呼んできて、それでネットワークをつくってプロジェクトを始める。ある一年とか二年の間に成果を出して、その時々の重要な問題について問題発信をする。

 これは恐らく二つの効果があって、一つは、成果そのものが非常に大切であるというだけじゃなくて、ともすると、例えば大学の研究者の場合であると学問分野にどうしても入りがちなんですけれども、そういう人たちのいわば能力を政策問題とか現実の問題に引っ張り込むという意義があったと思うんです。日本は、残念ながら、まだそういう機能を果たすところが比較的少ないということがあるので、もしNIRAがそういう役割を果たせればいいなと。

 それからもう一つ、私が非常に関心を持っている研究所は、例えば、民主党系でいうとブルッキングス研究所、それから共和党系でいうとアメリカン・エンタープライズというんだと思いますけれども、ここは、例えば我々の仲間なんかの若い研究者あるいは政府の関係の方が、そういう本務から離れて二年とかそこにいて何かテーマを持ってやる。そこである意味でいうと力を蓄えていただいて、その後の、いわば次の政治あるいは行政、研究の中でそれを生かしていただくという形で、大きなネットワークをつくる一つの結節点になる。

 日本の場合にも、やはり日々の仕事の中でじっくり問題を考えることがなかなか難しくなっているこのごろですから、もしNIRAみたいなところで二年しっかり研究していただいて、もちろん成果は出していただかなきゃいけないと思うんですけれども、そういう形で人材の結節点になるようなことになれれば大変すばらしいというふうに思っております。

木原(誠)委員 ありがとうございました。

 ナショナル・ビューロー・オブ・リサーチもそうだと思いますし、ブルッキングスもそうだと思いますけれども、日本もそろそろそういうシンクタンクを必要としているんだろう、こう思いますから、理事長の御指導で大きな飛躍したNIRAというものをぜひつくり上げていただきたいな、こう思います。

 その中で、今後の具体的な研究テーマ、行政改革の重要方針の中でも、中長期的に重要な研究、公的な研究に特化をしていくといったようなことが書かれていたように思います。今、どんなテーマ、具体的にもしイメージがあれば、少し御教示いただきたい、このように思います。

伊藤参考人 特に具体的なテーマについて何をやるのかというのは、まさに今、国会でNIRA法廃止法案を審議していただいていますので、余り今の段階でコミットしたことはなかなか申し上げられないというか、これから考えていくことなんですけれども、ただ、ずっとNIRAの改革の中で議論してきたことで三つの柱があるんだろうなというふうには理解しております。

 一つは、いわゆる国政にかかわるような問題ですね。NIRAはこれまでもそういうことをやってきたわけですけれども、いろいろな国政にかかわるような問題についてぜひ議論していきたい。

 それから二つ目は、これもNIRAのこれまでの経緯と非常にかかわるわけですけれども、地方の問題をしっかり議論していきたい。これは、単にNIRAがやるというだけではなくて、御案内のように、各地域というのはそれぞれいろいろな問題意識を抱え、あるいは問題を抱えているわけですけれども、例えばAという地域で抱えている問題というのはまたBという地域でも同じように抱えている。そうすると、当事者が問題を共有して、例えばごみの問題でもあるいは福祉の問題でもいいんですけれども、それをお互いに情報交換できるというような、まさに先ほど結節点と申しましたけれども、そういう地域の問題をNIRAが少しコーディネートしながらできないだろうか。

 それから三つ目の柱として、これもNIRAがこれまでやってきたことで、しっかり継承していきたいと思うのは、いわゆる海外との問題の関係。これまでも政府との関係で、日中韓の経済連携の可能性について五年以上議論してきたわけですし、私がNIRAの理事長に就任して非常に印象に残ったのは、中国や韓国やあるいは東南アジアに行きますとNIRAというのはしっかり意識されていて、彼らも我々との意見交換、非常に頼りにしているようなところがあるので、ここはしっかり今までのアセットを引き継いでやりたい。

 そういう意味で、国政の問題と、それから地域の問題、それからいわゆる海外、特に恐らくアジアのウエートが大きくなると思いますけれども、その三つを中心に、その時々で重要な問題を考えていきたいというふうに考えております。

木原(誠)委員 ありがとうございました。

 今三点目のところで、とりわけ海外の問題というお話がございました。私も、カンボジア、ベトナム等に技術協力、とりわけ金融の技術協力等々をする場合に、NIRAというのは知名度が非常に高いなということを現実に肌で感じておりますので、ぜひこの部分を引き続き伸ばしていただきたいな、こんなふうに思います。

 これは実は通告していなくて大変恐縮ですが、実は伊藤先生はアジア・ゲートウェイの座長だったというふうに今ちょうど思い出しまして、ちょっとこの点、もしよろしければお伺いをしたいな、こう思います。

 アジア・ゲートウェイというのは僕は非常にいいテーマだというふうに思いますし、いい提言をまとめていただいたな、こんなふうに思っております。ただ、その中で一点だけ、御所見をいただきたいなと思う点がございます。このアジア・ゲートウェイ構想の中で、羽田を中心に、国際空港ということについては非常に力点を置いて御議論をいただいたな、こう思うわけですけれども、一方で港湾、とりわけスーパー中枢港湾等々について思ったほど議論が実は深まっていないんじゃないかなという印象を受けました。

 他方で、私自身は、例えば上海の沖に洋山港というのがあって、これはとてつもない規模ですし、韓国の釜山も今とんでもない規模になってきて、育ってきている。そういう中にあって、アジア・ゲートウェイ、そのゲートを標榜するのであれば、もちろん空港も重要だというふうに思いますが、こういう港湾施設ということも深掘りをしていただくということが大切なのではないか、こういうふうに思うんですけれども、この点、いかがでしょうか。

伊藤参考人 委員のおっしゃるとおりだと思います。

 ただ、これは我々の委員会の中で安倍総理がおっしゃったことなんですけれども、実はぜひまた皆様にアジア・ゲートウェイ戦略会議のレポートを読んでいただきたいと思うんですけれども、いろいろな面で、私、大事なことを言っていると思うんですね。ただ、比較的スムーズに進んだ分野というのは余りマスコミ等も取り上げてくれないものですから、余り一生懸命議論したように受け取られないんですけれども、実はかなり大事に議論しております。空港の問題は、もちろんいろいろな考え方がございますから、当然いろいろな調整等でなかなか困難な部分もありまして、どうしてもショーアップされた面があります。港湾につきましては、かなり重要な重点項目、十の重点項目の一つとして取り上げているわけですから、非常に重要だというふうに理解しております。

 実は私、同時に、財務省の関税局の中の部会長をやっていまして、ここでは実はアジア・ゲートウェイ構想と連携して、港湾のいろいろな仕組み、特に御案内のようにテロ等の難しい問題に対する対応と、それからスムーズにいろいろなものを通関させるというその二つの、ある意味でコンフリクトのあるものをどういうふうに調整していくかということで、かなり今事務方はしっかり議論してくれていると思いますので、これはこれからさらにいろいろな仕組みがよくなると思います。

 ただ、ここはちょっと私、専門ではございませんけれども、いわゆる投資がかかわる大きな設備の話になってきますと、本来それは我々も議論すべきだろうと思いますけれども、それはむしろ皆さんの、議員の方々にさらにしっかり議論していただいて、上海や釜山に負けないような港をつくる方向でぜひ頑張っていただきたいと思います。

木原(誠)委員 ありがとうございました。通告していない質問で大変失礼をいたしましたけれども、御答弁いただきましてありがとうございました。

 これで最後にしたいと思いますけれども、この内閣委員会はずっと公務員制度改革というのを議論してきました。天下り、これをやはり根絶しなきゃいけない、これは与野党共通の思いであろう、このように思います。今、NIRAについては、伊藤理事長にお越しいただいて、これからまさに改革も進めていただくということであろうかというように思いますけれども、大臣に最後、今後も民間からしっかり理事長は出していただく、これは財団法人ですから大臣が今後のことについてなかなかお答えにくいかもしれませんけれども、その点について御決意なりがあればお伺いをして、終わりにしたいというように思います。

大田国務大臣 NIRAの理事長はこれまで、中央省庁のOB、これは次官の経験者ですけれども、就任しておりました。それが十八年二月に伊藤先生に理事長になっていただいて、この一年の間に本当に目覚ましい成果を上げてくださっています。

 今後は、もちろん財団になったNIRAがお決めになることではありますが、ゆめゆめ天下りさせるために財団法人として残したと言われることがないように、そこはしっかりとお約束いたします。

木原(誠)委員 ありがとうございました。

 終わります。

河本委員長 次に、市村浩一郎君。

市村委員 民主党の市村でございます。

 きょうは、NIRA法ということで、私にとってもすごく感慨深い思いで質問させていただくわけであります。なぜかというと、まず一つには、伊藤先生、二十年前に松下政経塾時代に先生の御指導を受けて、二十年後にここで先生とこうして議論ができるということのありがたさを今かみしめながら過ごさせていただきます。

 伊藤先生、私は政経塾時代に講義を受けまして、本当にこんなすばらしい学者がいらっしゃるんだなというように思った学者の一人でありまして、その後の御活躍も大変目覚ましいものがあるということで、本当に尊敬申し上げている先生でございます。その先生が今度NIRAの理事長に、非常勤ということでありますけれども、ついていただけるということは、NIRAのみならず、日本のシンクタンク界の大きな発展に多大なる貢献をしていただけるものと大変ありがたく思っている次第でございます。

 それで、大臣の方にまず一点確認させていただきたいと思います。

 NIRAは今度財団法人となるわけですが、現状維持という考え方はなかったんでしょうか。そういう議論はなかったんでしょうか。そのことをまず大臣にお聞きしたいと思います。

大田国務大臣 NIRAにつきましては、平成十七年に閣議決定されました行政改革の重要方針で財団法人になるというふうに決められました。

 この背景としましては、時代が大きく変わり、昭和四十八年にできてきたときから民間のシンクタンクをめぐる状況が非常に変わってきております。当時は民間のシンクタンクを助成して育成していくということが重要な仕事であり、それはNIRAの仕事の一つの柱でしたけれども、今三百余りのシンクタンクがございますので、その点については必要性がもうなくなってきている、したがって研究本来に特化させる形で事業を絞っていくということが重要であろうというふうに判断されました。

 研究に特化していくときに、なるべく自主性、独立性を保った形で研究ができる方が望ましい。認可法人ですと、事業計画、予算、あるいは役員の選任というところで国の事前関与がございます。これが財団法人になりますと、そこは自主的に決めることができますので、より時代に応じた政策研究をやっていくためにも、自主性、独立性を確保するという観点から、財団法人という形態を選択いたしました。

市村委員 今の大臣の、自主性、独立性、まさに大切な観点であります。また、一連の流れ、思いでいくと、NIRAは今まで官のシンクタンクだった、今度は官のシンクタンクから民のシンクタンクに変わるんだ、こういう認識でよろしゅうございますでしょうか、大臣。

大田国務大臣 はい、そのとおりです。

市村委員 そこで、私は、こうした民のシンクタンクが育つ土壌が、では今、日本にあるのかどうか。ここが実は私がずっとNPOという観点から議論してきていることでありまして、先ほど伊藤理事長からも、ブルッキングス研究所やアメリカン・エンタープライズの例を出していただきましたけれども、アメリカの法人格のステータスでいうと、あれは実はノンプロフィットオーガニゼーション、NPOであります。今アメリカの社会では、それが発展する、発達するような制度的基盤もちゃんとあるということでありますが、実は日本はその制度的基盤が大変弱い。

 この委員会でも渡辺大臣とも議論させていただいておりますが、まさに官製土壌であって民製土壌じゃないわけですね。つまり、では官製土壌の上にシンクタンクを育てようとしたときにどうなのかということなんですね。それが反省されて、今回、やはりもっと土壌を変えていこうということを私は渡辺大臣と議論して、そうだという意見の一致を見ているわけでありまして、まさにこの官製土壌を民製土壌に変えていく、我々国民のためになるような土に変えていく、その基盤の上にやはりシンクタンクというものが発展していかなくちゃいけない、こう思っているわけでありますが、これは大臣と伊藤理事長お二人に、この私の考え方について御意見をいただきたいと思います。

大田国務大臣 日本にも各役所が自分のところに持っている研究所、あるいは独立行政法人という形の研究所がございますけれども、それぞれにその存在意義はあるんですが、特定の分野の制約を受けているということがございます。

 一方、民間の方を見ますと、今先生御指摘のように、その時々の政策課題に正面から取り組んで、しっかりと分析をして、本格的な政策研究を行い、政策の代替案を示すところまで至るようなシンクタンクがあるかというと、本当に少ないということがございます。また、ネットワークの場になるようなシンクタンクも少ないということがございます。

 そこで、やはりNIRAには、今回は財団法人という、認可法人より自主性、独立性を確保できる形にした上で、これまで官の研究所、認可法人として政府に近いところの研究所として培ってきたノウハウ、ネットワークを最大限に生かしてほしい。幸いなことに、伊藤先生という大変すぐれた理事長を得ることができましたので、伊藤先生のリーダーシップのもとで、欧米に匹敵するようなシンクタンクになってほしいと私どもも期待しております。

伊藤参考人 財団法人になりましても、NIRAはやはり政策研究が中心でございますから、そういう意味では、やる対象にいささかも変化はないわけですけれども、ただ、幾つか恐らく重要な点がありまして、一つは、何に向かってこういう政策研究をするのか。

 もちろん、一つは、皆様のような政治家の方、あるいは行政との距離を保ちながらその時々の問題を考えていくということがあるわけですけれども、同時に、やはり国民に広く全体にその問題意識を投げかけていく、あるいはその思考プロセスを共有していくということが非常に重要だと思います。透明性というふうに言ってもいいのかもしれませんけれども。そういう形で、我々としてはできるだけこういう政策研究の土壌を広げていく一つの担い手になればいいのかな。

 ちょっと誤解を招く言い方をするかもしれませんけれども、ちょっと比喩で申しますと、例えば大学の中で政策研究をするときにどういうことが問題になるかというと、例えば十年前に非常に深刻であった不良債権の問題、これは我々にとっていろいろな教訓を与えてくれたわけですけれども、これを今一生懸命研究して将来のいろいろなことに役立てる、これはどちらかというとやはり大学の世界で向いている話だと思うんです。しかし、日本がこれからどういう問題が特に深刻なのか、これは人によってもちろん意見は違うと思いますけれども、例えば少子高齢化みたいなテーマというのはまさにこれから日本が問われるわけで、こういう問題をもちろん大学でやらないというわけではございませんけれども、そういういわば時代性の非常に強いもの、あるいは重要性がその時代時代で重要なものというのをしっかり考え発信していくということをやるのは、やはりこういう独立のシンクタンクの重要な役割なのかなというふうに思っております。

市村委員 大変重い志の部分を、お二人の大臣また理事長からお聞かせいただいてありがとうございます。

 繰り返しになりますけれども、私がここでまた少し議論をしたいのは、そういった思いを持ってこれから進んでいくシンクタンクが乗っている基盤というのが、やはり薄いんじゃないかと私は思っているんです。ブルッキングスは、アメリカン・エンタープライズは、CSISは何に乗っかっているのかということなんですね。今の官製土壌に乗っかっては、なかなかうまくいかないということになると思います。やはり、きちっとした民のそうした、非営利とおっしゃっていただきましたが、非営利法人を支えるそうした民の基盤をしっかりとつくっていく、民の土壌をつくっていく、まずこれがないと、実はこのシンクタンクだけじゃないんです、ほかの非営利法人の活動もなかなかこれはうまくいかないんですね。ここのところが実は今まで余り議論がされてこなかったわけですね、国会で。私はその思いで、国会へ送っていただいて三、四年近くになりますけれども、このことをずっと申し上げてきているわけでありまして、つまり、この部分についてどうお考えかということを実はお聞きしたかったわけです。

 つまり、今のままの土壌では、ひょっとしたらNIRAは伊藤理事長のもとにお金も集まって、人も集まって、NIRAはうまくいくかもしれないけれども、ではほかのシンクタンクはどうなのか。三百あると言いましたけれども、やはり多くの場合は株式会社とかだと思います。ではなくて、さっき大臣もおっしゃったように、ポリシーオルタナティブですよ、代替政策をしっかり考えていけるシンクタンクが、非営利・独立型のシンクタンクが今後生まれてこないといけないわけです。

 まさに、きょう大臣が冒頭で、官主導じゃなくて民だということをおっしゃったわけですね。だから、そのために、もちろんシンクタンクに働いてもらわなくちゃいけないわけです。NIRAが今度は官のシンクタンクから民のシンクタンクになってくれるわけですから、これまでのノウハウとかを持って、人材のネットワークを持って。では、今度はもちろんNIRAも、官のためじゃなくて民のために尽くしてもらう、国民のために尽くしてもらう。そうすると、必然的に我々立法府とのつき合いを深めてもらわなくちゃいけないわけですね、官じゃなくて。

 しかし、そのためには、NIRAはうまくいっても、ほかがうまくいかなかったらいかぬわけでありまして、NIRAだけで独立して、NIRAだけ一個あればいいという話ではないわけでありまして、やはりNIRAに対抗するような、またブルッキングスに対抗してアメリカン・エンタープライズがあるように、NIRAに対抗した何かがなくちゃいけない。そういった意味での、非営利の中の、NPOの中での競争もなきゃならない。こういう基盤づくりをしていかないと、なかなか私は本格的なシンクタンクというものを期待するには至らない、こう思っておるわけでありまして、この件についてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。もう一度お願いします。

大田国務大臣 これまで政府の中にあるシンクタンクは政府の制約の中にあった。そして、民のシンクタンクというのは受託者に合わせて研究成果を出したり、あるいは経営者の制約があったりしたわけですね。先生が御指摘のように、民でありながらパブリックの精神のもとでまさに公共政策を議論するシンクタンクというのは本当に少なかったんだろうと思います。そういうものになる存在としては、私は、NIRAというのは最も近いところにいる最適の存在だろうと思います。

 これまで認可法人でしたけれども、伊藤先生という民間の学者が理事長になって、実際に評価を得てきているわけで、これから恐らくすぐれた成果を上げてくださるというふうに思っています。

 ほかにも必要ではないかというお話でしたが、実は今民主党も自民党も、政党でもシンクタンクを持っていて、新しいシンクタンクが生まれてくる転換点にもあるような気がします。

 そういう中で、財団法人になったNIRAが一つのモデルになって、しかもネットワークの場になって、そこで本当の意味の公共政策のいい研究ができれば、全体を牽引する力になるのではないかと期待しております。

伊藤参考人 私のとりあえずの職務は、民営化したNIRAをしっかりしたシンクタンクに育て上げる、そこで成果を上げるということでございますから、それの中で、日本の、いわゆる本当の民に即したいろいろなものを育て上げるなんという大それたことは申し上げられませんけれども、ただ、先ほど前の委員の御質問にお答えしたところでもありますように、結局、NIRAの活動が成功する一つの大きなポイントというのは、政策論議の場をどういうふうにつくり上げることができるか。

 この場というのは二つございまして、一つは、そこにどれだけの人がかかわることができるか。ですから、NIRAの活動を通じて外部の、例えば政治家の方あるいは行政の方あるいは研究者の方、とりわけ今度は地方でいろいろなことを考えている方がそこで一緒に考えることによって、そこに人材ネットワークが広がってくれば、結果的にほかの民の組織の中でそういう方々がさらに活躍されるということがあればすばらしいなと思っております。

 それからもう一つは、そういう成果を出していく場を見せていくことによって、委員もおっしゃっていることだと思うんですけれども、日本の中で、いわゆる政府の中だとか、あるいはそういうところとは別に、本当の民の立場でいろいろな政策問題について考えることの重要性みたいなものが雰囲気として日本の中に広がっていく、何かそういう実験例みたいなものをもしNIRAの中でお見せすることができれば、それもひょっとしたらそういう民の広がりに少しは貢献できるかなと。

 ただ、冒頭申しましたように、私の職責はとにかくNIRAをしっかりやるということですから、結果的にそれが民の広がりにつながればというふうに思っております。

市村委員 伊藤先生はNIRAの理事長ということでありますから、もちろんNIRAをしっかりと育てていく、そのためには大田大臣がさっきからおっしゃっているように最高の人材だ、私もこう思うわけでありまして、いわゆる民のシンクタンクになったNIRAの今後の活躍を大変期待するところなんです。

 ただ、先ほどから申し上げているように、頑張るというのももちろん大切なあり方でもありますが、やはり基盤づくりというのがないと、そこが日本の場合すごく欠けているところであると思うし、その辺は大田大臣も伊藤理事長も多分御理解いただいている。ただ、今のお立場でなかなかおっしゃりづらいのかなという気もなきにしもあらずでありますが、そういった意味では大田大臣の方がよりおっしゃりやすいかと思いますが、基盤がないとやはり難しいんですね。

 だから、せっかくNIRAがこうやって民の方に行くということになったときに、NIRAが財団法人になるときに、例えば今後の資金集めをどうするのかということ一つとっても、これは大変大きな問題に直面するわけです。

 財団法人というのは、これは意地悪な質問になりますからあえて言いませんけれども、先ほどから認可法人から財団法人になるんだとおっしゃっていますが、財団法人は今現在許可法人でありまして、実は、ある意味では許可の方が認可よりももっと縛りがあってしかるべき。だから、本当は、何か制度的にはえらい矛盾しているんですね。

 ただ、これもいろいろ議論があって、今後財団法人も、民法三十四条を削除して、許可からいわゆる準則主義的に登記で足りることとするという政府の方針が、法律も通っていますから、こういう流れの中での財団法人ととらえさせていただいておりますので、それはそういう認識でいたいと思います。だから、本当は認可から許可というのはおかしいんですけれども、将来性も見たところの話だと、登記の準則主義的な財団法人という意味だと思います。

 では、今後財団法人になって、政府の税制の方の流れはまだ見えていないんですね。今の段階では、一般財団と言われているものに対してどういう税制上の優遇措置を与えていくかというのはこれからの議論であります。

 そこで、まずは、財団法人になるだろうNIRAは、まず一般財団になるわけですね、今の段階で。私はそこを変えたいと思ってやっているんですが、今の段階では一般財団ということになるわけです。では、そこから公益法人となるに当たってどういう税制優遇が与えられるのかというのは、これがやはりしっかりしていないと、百十億円が残るということですが、百十億円が残っていても、それを今運用しても、多分大変細々とした運用益しか出てこないというのが現状であります。今、年間十億でやっているNIRAがこれで何億で回るのか知りませんが、結局、基金を食いつぶしていくような存在にもしなってしまった場合、これは本当に先細りということになってくるわけですね。

 そうじゃなくて、これだけの、今までの伝統あるNIRAがもっと発展してほしい。そのためにはやはり人を得なくちゃいけない。もちろんです。やはりお金も得なくちゃならないということなんですが、税制の姿が見えていないとはいえ、やはり手当てをしておかないと、なかなかこれも、お金も集まらないということだと思いますが、大臣、それについては方向性というのはどうなっていますか。

大田国務大臣 今NIRAは特定公益増進法人ということでその措置を受けておりますけれども、財団法人化後もこの税の優遇が引き続き受けられるように税務当局と協議を行っていきたいと考えております。

市村委員 ぜひともそうでなければならない、今のいわゆる特増並みのステータスがないとなかなかお金も集まらないだろう、こういうふうに思うわけであります。

 もう一遍ちょっと話が戻りますが、NIRAはNIRAでもちろん頑張ってもらわなくちゃいけないんですが、どうしても、その代替政策を考えるシンクタンクもやはり一つではいかぬと思うんですね。さっきあえて、伊藤理事長の方から、ブルッキングス研究所は民主党系だ、アメリカン・エンタープライズは共和党系だ、こうおっしゃったんですけれども、さっき政党のシンクタンクの例も挙げていただきましたが、今の段階で本当にシンクタンクだと言える代物かというと、両政党のシンクタンクともそれは言えないと残念ながら僕は思います。もちろん方向性として努力をしているということは多としなくちゃならないんですが、やはりなかなか難しい。

 なぜかというと、さっきから申し上げているように、ここに土壌がやはりないんですね。それにまた市場がない。結局我々政治家が求めていないわけですね。求めなくてもいいというのかもしれませんけれども。本来ならば、そういったところのシンクタンクが、党でもいいし、党の所属議員でもいいし、今度こういう法律をつくりましょうかとか、今こういう問題が起こっているからこれを手当てするためにはこういう制度づくりをしなくちゃいけないとか、そういう活発な議論が行われていないといかぬわけですが、ないわけですね。ないから、そういうポリシーオルタナティブにニーズがないんです。だから、結局どうなるかというと、官のつくった法律にイエスかノーかという方向になっている。立法府でありながら、新しい法律が出てこない、ほとんど出てこないわけですね。

 本来ならば、立法府が法律をつくって、ここで議論して、ここで通して、官僚の皆さんがそれを着実に実行していただく、こうなっていなくちゃならないのが、そうなっていない。仕組みはそうなっています、もちろん三権分立で。ところが、実態上はそうなっていない。ここについてしっかりと変えていくような制度づくりをしなくちゃいけない。かつ、そのときに極めて重要なのがシンクタンクというわけですね。

 やはり官と政治家の結びつきが切れる。今あるわけです。深いわけです。やはりこれを切らなくちゃいけないですね、ここは。切っていくときに、一遍切ってしまうと、ではだれがその知恵袋になってくれるのか、頭脳になってくれるのか。もちろん本人が頑張らないかぬ部分もありますけれども、やはり一人では限界がある。いろいろな方の知恵をかりないかぬ。そのときに、その都度その都度個別に集めるのも大変なんですね。やはりどこかにそういった、日ごろから研究活動を続けて常に知識を鍛えているというか、知能を鍛えているような人たちがいて、そことの結びつきを深めていくということがあるべきだと思います。

 伊藤先生には政経塾時代に問屋さんの重要性を私は教えていただいたと思っていますが、まさにシンクタンクというのは知の問屋さんだと僕は思っているんですね。だから、そういったものがしっかりとやっていかないかぬ。確立されて、しかもそこで競争が起こっていく、そのための基盤づくり、こういうことです。

 だから、そういうふうに本格的に民だ、官から民だ、民営化だとおっしゃるのであれば、それぐらいの覚悟を持って今度は政府も、官を切るぞ、官僚との関係を切るぞ、もう官からもらわない。政府に行った方は政府に行った方、国会議員や政府に行った方はそれで頑張る。しかし、立法府に残っている人は、与党だろうと野党だろうと、政府とやはり対峙しなくちゃいけないですね。ある程度対峙して、立法府は立法府の思いをしっかりとぶつけていかないかぬわけですね。

 その意味では、立法府に残っている人間はしっかりと官僚との関係を断って、自分たちは断つ、そのためには、それをサポートする仕組み、そのためのシンクタンク、こういう考えにならなくちゃいけないと私は思うんですが、これも、お二人から、この考えについて御意見を賜りたいと思います。

大田国務大臣 おっしゃるように、そこは、シンクタンクもまた覚悟を持って政策研究をし、発表していくことが大事だというふうに思っています。その際の基盤が必要であるということもそのとおりだと思います。

 ただ、例えば税で申し上げますと、一律にシンクタンクに税制上の優遇措置を講ずるというのも、これはまた問題があるんだろう。今、新公益法人制度の中で寄附金の優遇措置の見直しが行われていると承知しておりますが、シンクタンクもまたその対象の中に含まれ得るのかなというふうに考えております。

 重要なことは、基盤というときに、何らかの補助金であったり一律的な優遇ということだけではなくて、先生がおっしゃる政策のマーケットができて、質の高い研究に対してはきちんと対価が払われる形で、研究の意見交換といいますか、マーケットの中での議論が行われていくことが必要なんだろうと思います。そのときに不可欠なのは、これも先生がおっしゃったように、人材がやはりそこにネットワークとしてプールされていることです。したがいまして、大学、シンクタンク、議会、政府関係者、こういうものがネットワークされていて、そこにマーケットが出てくるような状態を目指していかなくてはいけない。

 これは、伊藤先生もそういう場をNIRAを通してつくりたいということもおっしゃっていますので、少々時間はかかるのかもしれませんが、その方向に向かって進んでいくのではないかと期待しております。

    〔委員長退席、戸井田委員長代理着席〕

伊藤参考人 今おっしゃった話の中のいわゆる政策について、いろいろなものを投げていく、あるいはそれを受けていろいろなことをやれるという、ある種、鶏と卵みたいなところがありまして、しっかり受けられるところがあれば、そういうところに向かっていろいろなニーズが発信されるし、逆に、そういうことを求める力があって初めて、そういう研究というのが広がってくると思いますので、日本では今後そういうことが非常に重要だろうというふうに思っています。

 委員は、立法と行政の関係でお話しになったわけですけれども、それ以外に、例えば地域の住民ですとか、あるいはもっと広く、国民一般の人たちの政策に対するいわばニーズも多いわけですから、いろいろなところからやはり政策の問題について掘り下げるニーズがあって、それを受けるものが必要であろうと思います。

 NIRAも、そういう中で一役を担う方向に行きたいというふうに思っておりまして、いみじくも問屋の例を出されたんですけれども、こういう問題についてどういうふうに考えたらいいかとか、こういう問題についてだれを頼って議論をやったらいいかということを投げられたときに、NIRAの中には恐らくそれにすぐ答えるだけの人材はないにしても、常に、例えばこの人とこの人を集めて研究会を開けばいろいろな成果が出てくるんじゃないだろうかというような、そういう人材の結節点みたいなものというのは、日本の今のシンクタンクの中に欠けている部分なんだと思いますので、そういうものをNIRAも重要な機能の一つとして持っていければいいなというふうに思っております。

市村委員 今、大田大臣の方のお話の中に、一律にシンクタンクに税制優遇措置を与えていいものかという御発言があったと思います。私はそれはもっと与えていいと思っているんです。ただ、やはりフェアに。だから、あのシンクタンクにはあってもこっちのシンクタンクにないではなくて、フェアに全部与える。そこの部分で競争するんではなくて、差をつけるんではなくて、後は、まさにそのシンクタンクがどういうサービスを提供するかいかんなんですね。

 結局、いいサービスを提供したところには人も金も集まってくる、こういう仕組みをつくらなくちゃいけない、こう思っているわけですね。だから、幾つも幾つも出てきていいんです。それが全部うまくいくとは、もちろんうまくいきません、そんな簡単には。ただ、そうやって競争が起こることによって、やはり、あそこに負けちゃいけない、こういうことで一生懸命頑張るわけですね。そして、いいね、いい政策をつくってくるねという話になると、お金も人もそこに寄りたい、やはりNIRAに行きたいなと。

 さっきも議論がありましたけれども、NIRAに行ったらその後のキャリアが、キャリアアップにつながっていく、NIRAにいらっしゃったんですか、では、ぜひとも今度はうちに来てください、こういう形になっていくんだと思います。

 ただ、そのためにも、やはりNIRA一つだけでは僕はなかなか難しいと思うんですね。だから、いろいろなところが幅広く、自分はシンクタンクがやりたいといったときに、手を挙げて、そしてまず設立する、後は競争によって淘汰されていく。

 僕は、この仕組みの方があり得べき姿だと思っているんですね。あなたの方には税制優遇措置を与えますよ、こっちはちょっと与えませんよというと、では何でそこを切り分けるのかというと、非常に難しいんです、あなたはだめ、こっちはいいというようになると。結局、それよりも、まさにマーケットが決めればいいんですね。あとは努力次第ですよね。マーケットが決めればいいと私は思っていますが、大臣、どうでしょうか。私のこの意見について、またお考えを聞かせていただければと思います。

大田国務大臣 マーケットの中ですぐれたシンクタンクが伸びていく、ここは大賛成ですけれども、入り口のところで一律に優遇措置を与えるのがいいかどうかは、もうしばらく落ちついて考えてみたいと思います。

市村委員 また、伊藤理事長からアメリカの例も出されたんですが、まさにそれは一律なんですよ。別に、ブルッキングスにはよくてアメリカン・エンタープライズはだめと言っているわけではないわけです。政権交代が起こって、民主党が勝ったから、ブルッキングスだけ税制優遇を与えてアメリカン・エンタープライズはだめだとか、共和党が勝ったから、アメリカン・エンタープライズには税制優遇を与えるけれどもブルッキングスはだめよ、これはないわけです。こういうことはないわけですね。

 だから、やはりどうしても、これはいい、あれはだめとなると、結局そういうところが出てくるんですね。そういうところが出てきます。あいつは憎たらしい、あいつの政策のおかげでおれたちは負けたとか、こうなると、これは全然だめな話であって、やはりフェアに、中立に、独立ということをさっきおっしゃいましたけれども、まさに独立でなくちゃならないんです、そういうものから。そういう圧力、勢力から独立でなくちゃいけない。そうすると、制度はフェアに、みんな同じ土壌、同じ基盤に乗っかって闘う。あとは、その基盤の上で一生懸命いいサービスを提供するかどうか。

 ここじゃないと、やはり僕は、シンクタンクも発展しない、NIRA一個ではなかなか難しい、こう思うわけですね。いかがでしょうか。考えていただけるという話だったので、もう一度、一言だけお願いします。

大田国務大臣 全体がフェアで。恣意的な判断でこちらは優遇する、こちらは優遇しないというのは、これは税制上あってはいけないことですけれども、やはり懸念されますのは、シンクタンクという名前を使って税制上の優遇を得ようとするところをどう排除するのか。

 つまり、本来のシンクタンクではないのに優遇措置を得ようとする存在というのをうまく排除できるかどうかといったような問題が一方であろうかと思いますので、引き続き検討したいと思います。

市村委員 そこで、しつこいようですけれども、結局、これはシンクタンクだけれども、こっちはシンクタンクじゃないものが入ってきそうだというのが、実はこれがなかなか難しいんです。何をもってシンクタンクなのかということですね。

 そうなると、やはりどうしても恣意性がそこに入ってくるんですね。入ってくるんですよ、恣意性が。これはいい、これはだめ、そのときの基準が、ひょっとして、どこかの神様がいて、客観的に、これはすばらしいからと言えればいいんですけれども、なかなか人間の中はそういうものじゃなくて、絶対恣意性が入ってくるんですね。

 そうすると、いろいろな理由がついて、これは、表立ってだめとは言いませんよ、ちゃんともっともらしい理屈をつくるわけです。でも、その心は実は、あいつが気に食わないからおれはやめだ、私は絶対やらない、こういうことだって入ってくるわけです。そんなことをあからさまに言う人はいませんけれども、一応、表向きは、もっともらしい理屈、理由をつけてやる。

 だから、きょうずっと申し上げているように、やはり基盤が必要だというのは、そこのことを申し上げているわけですね、そういうことも含めて。シンクタンクだけじゃありません、NPO一般、シンクタンクは今後NPOですから、だから、やはり非営利・独立型のシンクタンクが必要なわけです。

 もちろん、政府系のシンクタンクはあってもいいんですよ。しかし、NIRAは、最初にお聞きしたように、現状維持じゃない、つまり政府系シンクタンクをやめるんだと。私は、あってもいいと思っているんですよ。政府系シンクタンクも幾つかなくちゃならない、あってもいいと思いますが、あえてNIRAは、政府系シンクタンクから財団法人になる、官から民に行くんだということを決断されたわけですから。

 そういう思いなら、民の中で闘うということの中で、そのときにまずNIRAがやってほしいのは、NIRAも含めて、自分たちがよって立つ基盤は大丈夫なのか、これで大丈夫なのか、実はこれは重要な話なんですね、ここの部分。自分たちがよって立つ基盤は本当にちゃんとあるのかということを本当は研究していただきたいぐらいの思いであります。

 それがないと、恐らく、NIRAだけは、伊藤先生がいらっしゃる間は人もお金も集まって、何となく、いいねNIRAとなるかもしれませんが、将来的にどうなのか。伊藤先生がもし理事長を離れたときに、もういいやという感じになっちゃったらこれはだめなわけでありまして、やはりその基盤づくりがどうしても、どうしても必要なんです。

 大田大臣には、これはぜひとも御理解いただきたい。ぜひとも、そういう基盤づくりのために、せっかくNIRAを民に持っていくんですから、その基盤づくりのことをもっと政府部内でも御議論いただきたいと思うわけでありますが、いかがでございますか。

大田国務大臣 大変貴重な議論、ありがとうございます。

 今先生がおっしゃったような問題点があるからこそ、つまり、恣意的ではいけない、フェアでなくてはいけない、一方で、私が申し上げたように、そのときに何らかの、不正とまでは言いませんけれども、やはり税が正しく使われないというようなことがあってもいけない、だからこそ新公益法人制度の議論がしっかりとなされているんだと思います。私もその観点から検討してまいりたいと思います。

    〔戸井田委員長代理退席、委員長着席〕

市村委員 まさに今大臣が税制のことをおっしゃっていただきましたが、やはり税制の部分でしっかりと手当てしていかないと難しいんです。

 そのときに、日本とアメリカの違いを一つだけ申し上げますと、日本は、いわゆる特増並みのステータスを持ったNPOは千に満ちません。これは伊藤理事長もまた大田大臣も御存じだと思いますが、アメリカは百万団体を超えているんですね。百万を超えれば、それはとてつもなく悪いやつもいるわけです。でも、それでもいいんだと。つまり、いいものがたくさん出てくる。

 つまり、全部が全部選べないんですね。これはいいから税制優遇措置というのは、それは日本がやってきたことなんです。それがうまくいったんですかということを私は申し上げたいんですね。うまくいっていないんです、これは。結局、恣意的に官に近いところにそういうものが与えられてきたということで、それが天下り先になっていくということで今議論もされていますけれども。

 だから、この話はもう無理なんです。やはりこれはフェアな制度にして、みんなが同じ基盤に乗れるんだ、その基盤の中で闘っていくんだ、ある意味ではみんなが税制優遇措置を得られる、寄附優遇も得られるんだと。

 僕は、日本だって数十万団体ぐらい出てもいいと思います。その中で、もちろん悪いやつもいると思います。これを悪用する人もいると思います。しかし、だから何だというふうに私は思うんですね。営利企業だって悪用されているじゃないですか。政府だって悪用されているじゃないですか。何で非営利法人だけ、NPOだけこんな厳しい縛りをかけられなくちゃいけないのか、これが不思議なんですね。

 悪い人は出てくるんです。悪用する人は出てくるんです。だからだめだと言っちゃだめなんです。そうじゃなくて、やはり民の公のセクターをしっかりと日本に根づかせていくという制度づくり、実はその先頭に立っていただかなくちゃいけないのが、本当は、NPOである、非営利・独立型であるシンクタンクなんです。ここがない。ポリシーオルタナティブが出てこない。だれもそれを求めない。だから今こうなっているんですよ。国会で議論が全然深まらない。それで、何かわけのわからぬ強行採決や、きょうもありましたけれども、何かいろいろ戦術が出てくるわけですね。

 はっきり言って、議論じゃないですよ、これは。でも、今ないから、結局そういうところに落ちついちゃうんですね。立法府も、結局そういうところで何かどたばたしなければ動かないという話になってしまっているんですね。本来そうじゃないんですよ。立法府はもっと真剣な議論をしなくちゃいけないところなんです、ここは。しかし、それが現実的な基盤がないんですよ。だからいかぬということで。

 僕は、安倍内閣というのは、まさに小泉内閣からの民営化というものを引き継がれていると思いますよ。僕はこれは賛成です。ただ、いつも申し上げているように、民営化の方向性が、小泉民営化イコール株式会社化だったからだめなんです。民営化は二つあるんです。株式会社とNPOなんです。このNPOの基盤がないから、全部イコール株式会社になって、どんどん失敗していっているんですね。コムスンもそうじゃないですか。介護事業、あれは本当はNPOがいいですよ。結局ああなるんですよ。僕はずっとそれを指摘してきましたよ。でも、この国ではなかなかこれが受け入れられない。

 だから、この覚悟なんですよ。これをちゃんと変えるという覚悟がない限り、幾らシンクタンクをつくったって、この基盤が変わらない限りは、結局、その基盤の中でうごめく、ちょっと格好いい、ちょっといいシンクタンクが生まれてくる。

 伊藤先生だから、何とかその辺はきちっとバリアをつくっていただいて、ちゃんと民の思いでやっていただけると僕は思いますが、しかし、せいぜいNIRAだけで終わってしまうのではないかと思います。これではやはりちゃんとした日本の基盤にならない、立法府も育たない、官も育たないということになってくるわけですね。

 だから、僕は、これは覚悟を持ってほしいんです。根本的な基盤づくりから考えていくという覚悟を持たなければいけない。せっかくNIRAが政府系から民間に変わるのであれば、それぐらいの覚悟を持ってやっていただきたいと思っているわけでございますが、また大臣と伊藤理事長から一言ずついただければと思います。

大田国務大臣 最近、NPO型の非常にすぐれたシンクタンクが少しずつ出てきております。これがしっかり広がっていくということが、日本の政策の厚みをもたらす上で重要だと考えています。

 そのときに、では、そういうシンクタンクの税のあり方がどうあればいいのか。きょうは先生から大変貴重な御指摘をいただきました。この御指摘を踏まえて、私も検討してまいりたいと思います。

伊藤参考人 今の先生の発言、大変同感するところがいっぱいありまして、私としては、とりあえずNIRAという場で、いわゆる民の組織が公的な部門について何かいろいろうまくやれる、そういう実例をつくっていきたいというふうに思っています。それ以上の大したことができるかどうかわかりませんけれども。

 ただ、それとは別に、今おっしゃった、いわゆる官と民のうちの民の部分が公と私のうちの公的な部分についてどういうふうにかかわりがあり得るのかということ自身が非常に重要な政策課題ですから、民営化が実現した暁には、そういう問題意識をまたぜひお持ち込みいただければ、我々の方でも、そういうことを考える例えば研究会を立てることも、その時点でまた考えさせていただいてもいいかな。今の時点では、私も個人的にそこの点は非常に重要な問題であるというふうには問題を共感しておりますので、ぜひまたいろいろ議論させていただければというふうに思います。

市村委員 ぜひとも僕はこのことをやっていただきたいと思います。

 私自身は、そういった民の公のセクターの基盤づくりの法律、非営利法人法を今つくっているんですね。また、あと同時にシンクタンク法案というものも議員立法でつくりたいと思って、実は今つくっています。やはり基盤づくりと、ではその基盤ができたときに何ができるの、非営利法人法をつくったら何ができるのというときに、私は、頭の中に常にあるのがシンクタンクであり、一つは、助成財団であるコミュニティー財団法を考えています。具体的に見せなくちゃいけませんから、では何ができるんですか、非営利法人法、NPO法をつくったら、ほんまもんのNPO法ですよ、それをつくって何ができるのというときに、僕は常に、シンクタンクとコミュニティー財団を含む助成財団の大切さというものをずっと思っているものですから、これをやろうとしています。

 だから、ぜひとも、こういうものが本当に立法府でしっかり議論されて制度になっていくような後押しを、そういうポリシーオルタナティブを考えていただくシンクタンクを真っ先に本当は手がけていただきたい。伊藤理事長からお話しいただきましたので、ぜひともそういう研究会とかを立ち上げるときは私もメンバーにしていただいて、やはり政治家との結びつきをこれから深めていただかないといけませんので、ぜひともそういったディスカッションの輪に入れていただきたいと思うわけであります。

 あともう少しありますので、もう少し質問させていただきたいと思います。

 覚悟の部分でもうちょっとお聞きしたいのは、今後は政府系のシンクタンクから民間のシンクタンクになるということは、やはり政府につらいことも言っていかなければならないと私は思うわけですが、その部分については当然だと覚悟をお持ちかどうか、大臣からお願いします。

大田国務大臣 財団法人になりますと、これはもう民間法人ですので、個々の事業を法令で縛るということもありませんし、財団法人にする本当の趣旨というのは、やはり自主的な立場で代替的な政策提言もできるようなシンクタンクになってもらうということですので、政府の見解に反するような、政府の見解と異なるような提言が出てくるということも当然のことだろうと思います。

市村委員 あと、やはり研究員のあり方が重要だと思います。

 アメリカのシンクタンクだけじゃなくてNPOを見ますと、特にシンクタンク系のNPOだと、大体昼間、オフィスには人がいないです。夜中、キーボードをたたいているというのが普通であって、実はアメリカというのは、割と何かみんなアフターファイブは楽しんでいるんだろうというようなイメージがありますけれども、そうでもないんですね。結構、働いている人は働いているんです。夜中もオフィスの中でぱっぱぱっぱたたいていて、朝までたたいているとか、昼まで研究、いろいろなところに出かけていって、まさに現地、現場に行っていろいろな情報を仕入れてきているというような姿が見受けられるのですが、やはり日本のシンクタンクというのは、何かオフィスにいなくちゃいけないような雰囲気もなきにしもあらずなんですね、これまでの雰囲気を見ていると。

 どうでしょうか、その辺の研究員のあり方というのは、やはりオフィスにいて何か読んでおけという話なのか、それとも、やはりどんどん出ていって、成果を見せろ、成果を見せないと、もうさよならよという形にされるのか、それとも、オフィスに九時―五時ちゃんといれば、彼は頑張っているからそれでいいというふうな考え方なのか。これはちょっと理事長の方からお聞かせいただきたいと思います。

伊藤参考人 実際に、NIRAのような組織をこれから運営していくとなると、多分、二つのタイプの仕事に大きく分けられると思うんですね。

 一つは、やはり外部といろいろな連携をやるわけですから、いわゆるロジを設定するとか、いろいろなことを運営する。これは恐らく、やはりある程度、ある決まった時間にいなきゃいけない、そういう人材が一方で必要なことは間違いなくて、しかし、そういう人材の中にも、シンクタンクですから、単に普通の事務的な時間調整をやるだけじゃなくて、やはり多少、中身に入った能力が求められる部分はあると思いますから、いわゆる研究員という名前がついていても、時間に縛られる人はいると思います。

 ただ、他方で、あるプロジェクトを持っていろいろなことをやる、自分自身も研究にかかわってくるということであると、まさに委員がおっしゃっているように、プロセスよりは結果で評価されるということですから、結果をしっかり出す限りにおいては、例えば仕事の時間をフレックスにするとか、そういうことは十分考えられると思いますので、そこら辺はうまく組織の中を使い分けてやれればというふうに考えております。

市村委員 時間がなくなりましたので、これで終わらせていただきます。

 本当にありがとうございました。

河本委員長 次に、佐々木隆博君。

佐々木(隆)委員 民主党の佐々木隆博でございます。

 きょうは、総合研究開発機構と言うと舌をかみそうですので、NIRA法についてお伺いをさせていただきます。三人目なものですから少しダブりますけれども、そこは御勘弁をいただきたいというふうに思います。

 認可法人NIRAの評価と財団法人NIRAの役割ということについて、まず最初にお伺いをしたいというふうに思います。

大田国務大臣 まず、認可法人としてのこれまでのNIRAですけれども、設立以来、内外の研究者ですとか研究機関の協力を得まして、千二十四件の研究開発プロジェクトを実施し、約千四百点の出版物を刊行し、シンポジウムやフォーラムなどを開催し、内外の研究機関、研究者とのネットワーク形成というのを行ってまいりました。こういう研究実績の中には、専門性が非常に高くて重要な政策課題の解明に貢献したというものが少なくありません。

 一つ二つ例を申し上げますと、平成十六年四月に、人口減少と総合国力という研究報告書を出しました。これは少子化問題というのを国家的な危機というふうにとらえまして、少子化抑制戦略、それから人口減少適応戦略という二つの基本戦略を提言しております。これがその翌年、平成十七年四月に経済財政諮問会議が日本二十一世紀ビジョンというのを取りまとめましたけれども、このときにも随分参考にされました。

 もう一つ例を挙げますと、平成十七年四月に、「広域地方政府システムの提言 国・地域の再生に向けて」という提言を出しておりますが、これは地方制度調査会が道州制のあり方を検討する際に参考にされております。そういうわけで、幾つか非常に重要な政策に、ある方向性を与える提言をしてきていると思います。

 ただ、これまで、認可法人ということもありまして、PRが不十分であったということはやはり反省しなくてはいけないと思います。これからは、財団法人になって、より自主的に時代に応じた研究テーマを設定し、独立した研究を行う。そして、それを国民にしっかりとPRしていくということがますますなされるというふうに期待しております。

佐々木(隆)委員 私も地方で議員をやっていた経験がありまして、地方で長期計画なんかをつくるときにも、時々NIRAの提言などというものを非常に参考にさせていただきながらやってきた経験がありまして、そういった意味では、設立から三十三年ぐらいたっているんでしょうか、私は、NIRAのこれまでの活動について評価はしているつもりです。これから先はまだ評価ができるわけではありませんけれども。

 それで、特殊法人改革の最後の課題といいますか、ある種のシンボルでもあったというふうに思うんですけれども、あり方に関する懇談会なんかの報告を読んでいると、時々こういう言葉が出てくるんです。「中立的な立場から公共政策の分析・評価に基づく代替的政策案の研究を担う国際的視野を持つ公的なシンクタンクの果たす役割が極めて重要」であると。

 中立、公共、代替的、公的、どの言葉も間違ってはいないと思うんですが、余りいいことをたくさん並べたがゆえに、先ほどNIRAの特色が今まで出なかったというのは、ある種、私はそこに原因があるのではないかというふうに思うんです。中立から公共から代替から、今使われているような言葉を全部並べて、確かに重要な役割を担ってきたというふうには思うんですけれども、逆に特色を非常に薄くしてしまったのではないかなと思うんですね。

 まず、そのことについてのお考えを伺いたいというふうに思います。

伊藤参考人 中立的とか公的とか代替的というのは、いろいろな見方があると思うんですけれども、やはりNIRAが財団法人になった場合には、自主的な立場から、何が政策上の課題なのか、克服するべき問題は何なのかということを広く国民に情報提供することがすごく大事だと思っているんです。

 ちょっと私の大学の教師としての経験を申し上げさせていただきますと、学生に答えを出すよりも、問題を出すことの方が難しいし、大事だと思うんですね。何が問題なのか、どこに問題があるのかということを提起して示すということがすごく大事で、答えは恐らく、その方々の主義主張だとかいろいろなことによって、立場によって当然違うものがあってしかるべきだと思います。

 そういう意味で、NIRAとしては、政策で何が問題なのか、課題とする問題は何なのか、あるいは、その背景にあるいろいろな事実を見たときにどういう制約があるのかということをできるだけ、中立的という中には恐らく科学的という意味も含まれると思いますけれども、そういうことができればなと。その上で、分析して政策提案をするときには、できるだけいろいろな代替案を出したいというふうに考えております。

 私が理事長になりましてから、例えば、政策レビューというのをほぼ月に一遍ぐらいのペースで出しておりまして、あそこで非常に意識しているのは、例えば農業の問題一つとりましても、いろいろな立場の方がいらっしゃるわけですよ。ですから、なるべく異なった立場の方を両方出していただいて、それからさらに言えば、若い研究者の方に、そういう立場を超えたもうちょっと一般的なデータの整理をしていただいて、その上で、読んでいただく方あるいは見ていただく方にいろいろ判断していただく。

 やはりそういうことをやるのがシンクタンクの一つの大きな役割なのかな。それが恐らく、中立的とかあるいは代替的ということの一つだと思うんです。

佐々木(隆)委員 そこで大臣、ちょっと今、同じ関連でお伺いしたいんですが、それは今度の新しい組織形態になったときにはどうなるんでしょうか。今のその中立的とかいうシンボル的に言われていた分野というのは、組織形態が変わることによって変わるものなのか、変わらないものなのか、あるいは、どこかの部分が強くなったり、弱くなったりするものなのかということについて、お伺いしたいと思います。

大田国務大臣 基本的にどういうスタンスで研究を行うかという点は変わりませんけれども、これまで認可法人のもとでは、事業計画ですとか予算、あるいは役員の選定といったものに国の事前関与がございました。これが財団法人になりますと、事前の関与はなくなりますので、より自主性を発揮して研究テーマを設定し、独立して研究を行うということが可能になるというふうに考えております。

佐々木(隆)委員 そこで、幾つかお伺いしたいんですけれども、今言っていただいた、例えば、国の関与が薄まるのは間違いなく薄まるんだと思うんですが、今まで関与されていてそれほど不自由というふうに、いや、私は改革そのものを否定しているわけじゃないんですけれども、不自由だったのかどうなのかというのがどうも僕にはちょっとぴんとこないんですね。NIRAの今までの研究成果を見ていると、そんなに何か制約を受けて研究していたというふうにも思えないですし、それなりの成果も上げてきているというふうに思っているんですが、今大臣のおっしゃったような制約が現実に今まであって、非常に不自由だったのかどうなのかということについては、いかがでしょうか。

大田国務大臣 確かに御指摘のように、それほど不自由だったということではないと思います。

 ただ、今回の改革では、設立の原点に返って、今NIRAに何が求められているのかということを考え直してみました。そのときに、NIRAが一つの大きい仕事にしてきていた、民間のシンクタンクを育成していく、この仕事については、もうおおむねその目的を達成しているということで、これは外しております、どんどん縮小させてきております。

 本来の研究業務のあり方というものを考えましたときに、これまでそれほど大きい制約があったとは思いませんけれども、これからのあり方として、さらに自主性を高め、それから、欠点だというふうに先ほど申し上げたこれまでPR不足であったというような点も、これからより独立した中で改善されていくのではないか。つまり、今後研究に特化していくときにどういう形態が一番望ましいかというときに、認可法人より財団法人の方が、中で研究テーマの設定あるいはその出し方というものがより独立したものになっていくのではないかという期待を持っております。

佐々木(隆)委員 今大臣がお答えをいただきましたように、民間のシンクタンクが育ってきたというのは確かにそうだと思うし、表現をかりれば、研究能力を競う時代に入った、その分だけ育ってきたということもおっしゃっておられるわけでありますが、私がなぜそのことを何度かお伺いしたかというと、十年かそれよりも少し前ぐらいになりますが、かつて公共事業は発注することに意味があるという時代が何年か続きましたよね。いわゆる手段が目的化してしまったわけですね。公共事業というのは、発注することが目的ではないわけで、そのことによって地域を活性化することが目的なわけですが、発注することが目的になってしまった。

 今回の一連のこの改革を見ていたときに、改革することが目的化してしまって、本来NIRAというのはどうあるべきかという論議から入っていって、そういう手段としての改革ではなくて、大きなくくりの中で、法人の改革という大きな流れの中で、そこが目的になってしまったというような嫌いがありはしないかというのが、どうも気になるんですね。一連の改革、改革と言われている中で。

 これは既にできているものでありますから、それほど粗っぽい中身だというふうには思っていませんが、中には非常に粗っぽい中身で改革が出てきているものがあったりして、そういった意味での、手段が目的化しているというようなことに、せっかくここで改革をしようというときにそういうふうになってしまっては、本来の皆さん方が意図しているものと非常に違ってきてしまうのではないかというところがあるんです。

 組織の自主性とか本来的な研究に特化するとかというお話をいただいたんですが、それは今度の財団でなければできないのかどうなのかということにどの程度論議がきちっとされてきたのか。もう一度お伺いをしたいというふうに思います。

大田国務大臣 最初は、平成十三年の特殊法人等整理合理化計画で議論が始まっております。その時点から何年もの間、NIRAがどうあればいいのかというのは、NIRAの内部でも検討しておりますし、私どもの中でも議論してまいりました。平成十七年の行政改革の重要方針で認可法人から財団法人にするということになったわけですけれども、既に平成十三年からいろいろな議論をしながら、NIRAが今どうあればいいのかというのは、これは非常にいい見直しの機会であり、したがって、初めに組織改革ありきではなく、その議論の過程でNIRAのあるべき姿というのが議論されてきたというふうに思います。

 今回、財団法人にするに当たっても、当然廃止するという選択肢もあったんだろうと思いますけれども、やはり政策形成の議論がここへ来て深まっていると申しますか、官僚主導から政治主導になり、それから国の中央集権から地方分権になり、そしてNPOを含めいろいろなところが政策提言を始めている、国民もよりわかりやすい政策の議論を望んでいるというような大きい変化があって、そういう中では、これまでのNIRAがつくってきたノウハウ、ネットワークというものがやはり重要ではないか。したがって、廃止するのではなくて、財団法人という形でこれまでのネットワーク、ノウハウを生かしていくことがいいのではないかという結論に達した次第です。

 したがいまして、NIRAに関しては、組織ありきではなく、NIRAの原点に戻って、どういう機能を残し、これからどういう機能をさらに強化していくかという観点で議論がなされたと考えています。

佐々木(隆)委員 NIRAの組織が私も不要だとは思っていませんし、必要だというふうに思っています。ただ、論議のプロセスがどうだったのかということについてお伺いをさせていただいたわけであります。

 今、政治主導の時代に入ったというお話があったんですが、そこで先ほどの言葉がちょっと気になるのが、公共性というのは、民間企業であれ何であれ、すべてのものが公共性を持っていると僕は思うんですね、この世の中に存在するものすべてが。残ったのが中立性と公的なんですが、公的シンクタンクとしての役割がといって、公的ではなくなるわけですよね、今度。では、公的なシンクタンクとしての必要性というのはなくなったのかということが一つ。

 もう一つは、政治主導になったと。私は、ちょっと極端な表現かもしれませんが、政治主導になったシンクタンクが中立ではあり得ないのではないかというふうに思うんです。政治というのは中立じゃないはずなんですよね。行政は中立です。しかし、政治は中立ではないので、そこにこの中立的という言葉が出てくるのがどうもちょっと。

 民間になった、そして政治主導になった、そこのバックデータみたいなものもつくらなきゃいけない、あるいは、中からの提言の中には政治家とももっと論議をしていかなければならないというふうに書いてある。多様性を求めるというならわかるんですが、中立的というふうに言われると、中立をどういうふうに担保しようとしているのか、多様性の間違いなのではないかというふうに私は思ったんですが、これはいかがでしょうか。それぞれからお伺いいたします。

伊藤参考人 中立性と言われていることには、かなり僕は広い意味があると思うんですね。世の中には、いわゆる中立的とは考えにくいシンクタンクはいっぱいあると思うんですよ。例えば、特定の金融機関の関連のシンクタンク、これは当然の理由でその企業とのかかわりを非常に深く求めざるを得ない。あるいは、受託研究に非常に依存度が高いシンクタンク、これは悪いとは思いませんけれども、やはり研究を出してきたところとの関係というのは当然いろいろな影響を受けるだろうと思います。

 やはりNIRAの追求できるかもしれない中立というのは、もちろん受託研究をやらないわけじゃありませんけれども、それに過度に財務的に依存する必要はないということ。それから、例えば特定の企業、営利団体に乗っかっているのではない。そこはやはり政策研究を考える上で非常に重要な点であろうと思います。

 その上で、さらにそこから突っ込んで、公的な研究をしたときに、では結果で中立がどこまで担保できるかということについては、まさに先生がおっしゃっている部分は非常に大事な点で、もし、ある政策問題について最後の提言の本当のところまでいくとすると、それは当然いろいろな政治的な主張だとか考え方が出てきますから、それを出すべきじゃないとは思いませんけれども、ひょっとしたらそこまで踏み込まなくてもシンクタンクとしていろいろできることがあるんじゃないだろうか。それが、先ほど申しましたように、いろいろな問題を整理して、状況をしっかりやって、例えば政策のオプションをできるだけ幅広く提示する、その中でどれを選ぶかということは、これは多分政治が選ぶ問題なのかもしれません。

 それからもう一つは、逆に、もう結論が出ているときに、こういう方向で政策をやるべきであるといったときに、では具体的にどういう課題があって、例えばどういう方法があるかという、いわゆるインプリメンテーションみたいなことをしっかりやる。シンクタンクというのは、ある意味で見ると、確かに一方では世の中に対するオピニオンリーダー的なところがあるかもしれませんけれども、それはそれとして、もっとより重要な部分というのは、やはりそういう政策を考える上での縁の下の力持ちというんですか、あるいはもうちょっと言えばインフラ提供というか、そういうことが重要なのかなと。

 NIRAの中で、私、今改革の中で皆さんと議論していて申し上げているのは、これからNIRAがやるときの一つの大きなキーワードは、フローからストックへということがあるのかなと。つまり、その時々の政策問題、課題に取り組むというだけじゃなくて、例えば地方で成功しているケースをいっぱい集めるような、要するにストックでいろいろなものを蓄積していって、それがいろいろなところで使ってもらえるような基盤になれればいいのかなというふうに考えております。

 中立性をどこまでやるかというのが大変な問題であるということはよくわかっておりますけれども、できるだけそこら辺をうまく、きちっと整理しながら考えていきたいと思います。

大田国務大臣 中立性とは何かというのは、大変難しい、おこがましい言い方ですが本当に鋭い御指摘だというふうに思います。

 研究ということをとりますと、研究者の良心としての中立性というのはあるんだと思いますが、シンクタンクで、先ほどNIRAに関して私が中立性あるいは独立性と申し上げているのは、自主的であるということで、そこは、企業であれ政府であれ、どこかのひもつきではないということがありますし、委託者の意向を反映しておのずと結論が決まったような形で委託研究の成果を出すというようなことはないという意味で自主的であり独立性を持っているという意味で、シンクタンクの中立性というのは必要なのではないかと考えております。

佐々木(隆)委員 これはちょっと理屈っぽくなりますのでこれ以上やりませんけれども、私は、別に中立でなくてもいいんだと思うんですよ。

 代替的な案が多様にあって、その中から、こういう案もこういう案もあるけれども今はこっちだといったら、これは中立でなくなるんですけれども、それでいいんだと思うんですね。成熟した民主主義ともし言うのであれば、あるいは、シンクタンクもたくさん出てきて、NIRAが引っ張ってきた役割は一応そこは果たしてきたんだ、成熟した社会だという認識に立つのであれば、私は、あえて中立ということに余りこだわる必要はない。かえって、このことによってNIRAの存在価値を薄めてしまっているのではないかというふうに思ったものですから。何回か中立という言葉が出てくるものですから、多様性というのならわかるし、代替案を出すというのはそれはそれで十分にわかるんですけれども。

 これは行政用語だと思うんですよ。役人は中立でなきゃいけない。日本は役人天国なものですから、どうしても、どこにでも中立という言葉を使いたがるんですけれども、政治主導とせっかく大臣がおっしゃったんですから、せっかく民間になるわけですから、余りそういうことにこだわる必要はないのではないかな。時間がなくなりますので答弁は別に求めませんが。

 もう一つは、このシンクタンクがこれから果たすべき役割、資質として、三つ挙げられておりました。先ほど来理事長から答弁いただいておる中にも出てくるんですが、一つは専門性、もう一つは財務と人事の独立性、もう一つは情報発信力というふうに言われているんですが、職員が今三十三人、ほとんどが出向と派遣、そして貸付期間は八年間で返済という中で、この三つの資質というものをどう確保していくのか。どうもちょっとイメージがわきづらいんですけれども、その辺についてお伺いをさせていただきたいと思います。

伊藤参考人 御指摘の中の財務と人事の独立性ということでございますけれども、これまでのような認可法人であれば、例えば予算、事業計画、あるいは役員の選任等に当たって主務大臣の認可を受けることになっております。ですから、そういう意味でかなり縛られているわけですけれども、財団法人になりますと、こうした政府による事前の関与は廃止されるわけですから、そういう意味では随分変わるのかなと。

 それから、専門性とか情報発信の向上ということについては、認可法人にもそれなりの強みはあると思いますし、財団法人にもそれなりの強みがあると思いますけれども、今回、財団法人化するという、ある意味でいうと組織にとって大きな事件というか変化であるわけですから、それを一つのいわばきっかけとして、いろいろこれまでやってきたことをもう一回全部見直して、やれる部分というのはあるだろうと思います。

 例えば専門性というのは、裏を返せば、やることの選択と集中ということもあるわけですから、組織が小さければ、それなりに、むしろどこかに集中させながら成果を出していくということもございます。それから、これは文部科学関係の委員会ではございませんけれども、私のように大学で研究していると、もっとずっと乏しい予算の中でいろいろなことをやってきたものですから、いろいろできることはあるなというのが個人的な印象でございます。

 そういう意味では、もちろん、予算や人材は多ければ多いほど実際に運営する側から見ればありがたいことですけれども、これからの財団法人化するNIRAの中でもやれることはいろいろあるのではないだろうかというふうに思っております。

大田国務大臣 伊藤先生は御自分のゼミでも本を何冊か出しておられますので、伊藤先生のリーダーシップのもとで、すぐれた研究がこれからもなされると思います。

 やはり陣容は小さくても、そこがネットワークをしっかりつくっていく。例えば、先生は北海道でいらっしゃいますが、北海道にも二十一世紀研究所ですとか未来研究所ですか、幾つか研究所があって、そういうところと連携をとるということで、例えば北海道の経済についての研究もできるんだろうと思います。そういうところと連携することで、北海道がこれまで経験してきた地域活性化の事例ですぐれたものがあったら、なぜそこがすぐれていて、失敗した事例は、なぜそこは失敗したのかというようなケースもたまっていくだろうと思います。

 やり方によってと言うと月並みな言い方になるんですけれども、ネットワークをつくり、そして場も提供するということで、スタンスをしっかりとさせたいい研究ができるのではないかなと期待しております。

佐々木(隆)委員 その話はまた後ほど、もう少しお伺いをしたいというふうに思います。

 話が少し違ってくるのかもしれないんですけれども、今の日本の行政というところは、いわゆるプラン・ドゥー・シーという言葉がありますが、企画、そして発注というか事業実施といいますか、それと監督、この三つの機能を全部行政が持っているんですね。私はよく言うんですが、自分で企画して、自分で発注して、自分で監督して、これで悪いことをやるなという方が無理だと僕は言っているんですが、そんな三つの大きな権限のうちの三つとも行政が持っているというのは、世界に余り例がないのではないかと思うんですね。企画の部分がどこか外へ行っているか、あるいは発注の組織が外側にあるか、チェックする機関が、第三者機関といいますか半官半民みたいなところにゆだねているとか、例えば、学校に星印をつけるというアメリカのような場合なんかもそうですけれども。

 その中で、このNIRAのようなシンクタンクが果たしてきている役割というのは、これから先を考えたときにやはり非常に大きいと思うんですが、先ほど市村議員も言っていたように、今大きなところが一つしかないとすれば、これはなかなか競争原理が働かないのかもしれませんが、この行政システムそのものをやはり直していかなければならないというふうに思うんです。

 成熟した社会の中でという前提で、民間も育ってきた、能力を競うというところに入っていった、そういう時代背景の中でNIRAを財団にする必然性というのは一体何だったのかなというのが、ちょっとよく、まだぴんときていないんですが、大臣からお答えいただきたいと思います。

大田国務大臣 御指摘のPDCAのサイクルが、考え方として日本の役所にもだんだん浸透してきたように思います。

 その中で、特にチェックという部分で、これは本当に専門的な事前評価、事後評価というものが必要であるし、さらにはPの部分、企画を立てるところでも、専門的なシンクタンクの提言を参考にするということはもっともっとあっていいんだろうと思います。

 ただ、チェックのところで、今それができるようなシンクタンクがどれぐらいあるかといいますと、非常に少ないのが実情で、まずは、しっかり分析して本格的に研究、提言しているところが少ないということもありますし、やはり政策の評価というのは、そのプロセスをよくわかって、政策形成というプロセスまで含めての評価でなきゃいけないんだろうと思います。政策というでき上がったものだけではなく、プロセスも含めて評価するということが必要なんだろうというふうに思います。

 そういう意味でいいますと、NIRAがこれまでつくってきた、認可法人として政府の中に非常に近いところにあって培ってきたノウハウというのは、政策形成プロセスまで含めての研究実績というものがあるわけですから、ここで財団になって、さらに自由に、今度は政府からちょっと独立した形で、政府から独立した民間としてテーマ設定を行って、より独立した立場で評価を提言する、評価を発表するということは、非常に重要なことなのではないかなと考えています。

佐々木(隆)委員 これは質問になるかどうかわかりませんが、理事長にぜひお伺いしたいと思います。

 たしか、NIRAでも評価基準みたいなものを少しつくり始めたのかつくったのか、したはずですよね。やはり評価基準というもの、先ほど、これからのNIRAの役割として、国民にもう少しPRできるものにしていきたいというお話がありましたが、要するに、公開された評価基準というものがなければいけないんだと思うんです。

 今、評価基準というのは一応行政の中にありますけれども、行政の極めて、僕らが見てもちょっと難しいというような評価基準ではなくて、国民のだれが見てもわかるような評価基準、しかも公開されるようなもの。ヨーロッパの、フランスかどこかの例だったと思うんですが、赤と黄色と青の三つのどれかをつける、だめであれば赤、そういう三段階の基準をつけるというようなところもあって、これは国民に公開されているらしいんです。やはり評価基準というものもつくらなければいけない。

 今大臣からもお話があったんですが、そのときに、大分変わってきているとは思うんですが、今の評価の仕方がアウトプット方式であって、アウトカム方式じゃないんですよね、今まで。目に見える、先生の先ほどの言葉でいえばフローされた部分は評価されるんですけれども、目的とか趣旨とかというものについて今の事業がどうだったんだという評価が成熟しているとは、まだちょっと思えないんですが、たしかそういうことも手がけられてきた理事長として、お考えをいただければというふうに思います。

伊藤参考人 私、昨年二月からNIRAの理事長になりまして、正直、この新しい組織改革の中でいろいろなことをどうやってやろうかと考えてきたものですから、過去のNIRAの評価基準との違いとかそういうのをきちっとわかっているわけじゃございませんけれども、今でもNIRAは、個別の成果については内部あるいは外部の評価を受けておりまして、その基本的な姿勢はこのまま今後も続けていくべきだと思うんですね。

 ただ、財団法人移行になりましたときに、もう一回その時点で、どういう形で評価をしたらいいか、それは、例えば今まさに委員がおっしゃったようなことも含めて、考えていかなきゃいけないと思っておりまして、二つの違った評価の仕組み、チェックの仕組みがあると思うんです。

 一つは、個別のプロジェクトについてどういうふうにそれを評価するか、途中成果とか結果とかということ。もう一つは、NIRAの組織そのもののあり方みたいなものについてきちっと中立的なところから御意見をいただく。そういう意味で、組織形態を考えるときに、どういう名前になるかわかりませんけれども、ある種の諮問委員会あるいは評価委員会みたいなものが多分必要だろうというふうには思っておりますけれども、そこら辺をどういうふうにつくったらいいかということは、これからもう少し検討していきたいというふうに思っています。

佐々木(隆)委員 時間がなくなってきましたので、先ほど大臣からお答えいただいた地域というところについて、残りの時間、少し議論をさせていただきたいというふうに思います。

 まず最初に、これまで地域研究交流事業という事業で取り組んできたわけであります。海外等を含めて三つの役割というようなお話がさっきありましたけれども、その中の一つである地域研究交流事業。今日までNIRAの果たしてきた役割というのは私は非常に評価しているんですけれども、これについてまずお伺いをしたいというふうに思います。

大田国務大臣 この地域交流事業で、これまでも、例えば地方自治体と共同研究をしたり、あるいは、都市自治体が共通の手法を利用した行政評価を行って情報交換や議論をする場として都市行政評価ネットワーク会議を運営している。それから十九年度からは、広くケーススタディーの収集、蓄積というのを行ってきております。

 この中で、地方を全体として、つまり成功経験を情報交換しながら全体をよくしていく、全体の活力につなげていくという意味では、大変重要な仕事だというふうに思っております。

 最近、地方にも幾つかシンクタンクができておりまして、北海道にも先ほど申し上げた二つ、有名な、知られたシンクタンクがございますが、どのシンクタンクもうまくいっているというわけでもありませんで、やはり厳しい状態のところもあります。

 そこで、NIRAがネットワークの結節点になって地方のシンクタンクを集めて、共通の基準を持ちながら、例えば地方活性化のケースを評価していったり成功事例を集めていくということは、今後ますます重要になると思います。伊藤理事長も、地域の研究というのは非常に重要だということで重点課題に挙げられておりますので、今後さらに充実していくというふうに考えています。

佐々木(隆)委員 今大臣から御答弁いただいたんですが、本格的な分権時代というものを迎えていくときに、北海道にもシンクタンク協議会が十社ほど、十社というのか十団体というのか、ありますが、それ以外にも、協議会以外のところでも頑張っている人たちも結構いるんですけれども、今まではどちらかというと都道府県単位が多かったと思うんですね、ほかの地域のことは余り詳しくわかりませんけれども。これからはやはり市町村単位になってくると思うんです。

 そのときに、基礎自治体の市町村が直接NIRAと結びついて、あるいはNIRAの助言をいただいたり、そのネットワークの中にどう参加をさせていただくか。先ほどの理事長の言葉をかりれば、場とか人材とかいったところがNIRAと結びついていくということが私はこれから非常に重要なのではないかなというふうに思うんですが、その点について理事長のお考えがあれば、お伺いをしたいと思います。

伊藤参考人 都市、市町村が非常に重要であるという御指摘はそのとおりだと思います。

 実はNIRAも、都市行政評価ネットワーク会議というものをもう始めて、運営をしておりまして、これは、まず第一には、共通の手法を用いてそれぞれの市町村がいろいろ行政評価をすることができる、お互いにデータを比べることができるというだけじゃなくて、そういうことを核として定期的に市町村の方に集まっていただいて、いろいろな問題を議論するというところまで今来ております。

 具体的には、十九年六月現在で七十二市町村が既にここに参加していただきまして、私も何度かこの会合に出席させていただいたんですが、皆さん大変積極的に参加されています。

 それで、この先これをどういうふうに広げていくかということは、当然我々これから考えなきゃいけないことだと思うんですけれども、せっかくこういう場がありますから、今まさに委員がおっしゃったように、さらにいろいろな情報交換だとか、あるいは問題をみんなで考えるというようなことがその上にできればいいと思います。

 これは都市ではなくて都道府県なんですけれども、十八年度には、自治体の方々に参加していただいて、外国人観光客の行動特性と地域における国際観光戦略というプロジェクトをやりまして、これは、実際にそれぞれの都道府県の担当者の方が一番その地域での観光の問題についていろいろな経験もありますし、悩みを持っていらっしゃるわけで、当然、地域の特性によって違いがあるものですから、そういう方々が一緒になってきて、専門家と一緒に考えることによって、私が申し上げるのもおかしいんですけれども、なかなかいい、各自治体担当者の方に使ってもらえるようなマニュアルができたんじゃないかと。

 こういう手法は当然市町村でも考え得るわけで、そういう形で、地域の方からまたいろいろなお知恵をいただきながら議論していきたいと思います。

 それから、ケースは、もう既に少し始めていまして、例えば北海道については、まだこれは実験的なんですけれども、ニセコのケースについてつくっていただいているわけですけれども、こういうものを書ける方というのは、地域でよく物事を知っている方がやはり基本だろうと思うんです。

 ですから、九州、北海道、いろいろな地域がありますけれども、それぞれのところでそういうことをやっている人に書いてもらって、成果としては、それが蓄積されて、いろいろな成功事例、失敗事例というケースになるだけじゃなくて、そういうものを書いてもらう段階で、もちろん、今まで我々がおつき合いがあったシンクタンクの方々にも声をかけますけれども、それ以外にも、こういうことにかかわりのある地域の研究者とかあるいは行政官とか、いろいろな方に参加していただくような仕組みがこれからできていけばというふうに思っております。

佐々木(隆)委員 先生の方で都市行政評価ネットワーク会議ですか、私も見せていただいて、七十二、ここで七十一ですが、多分一つふえたんだろうと思いますが、非常にいい取り組みをされているというふうに思います。

 ただ、七十二にふえたとはいえ、まだ七十二なわけであります。ここの名前を見ますと、北海道のことしかわかりませんけれども、名前が、だれが頑張っているのかというのが思い浮かぶような都市はそれぞれ入っているわけですが、そうでないところの方がむしろ大変なわけでありますので、ぜひ広めていっていただきたいというふうに思います。

 よくこういう言葉があるんですが、専門家によってつくられた役に立たない法律という言葉があるんですが、余り専門的な人たちばかりが集まって法律をつくると、結果、専門的過ぎて一般の人たちに使い勝手が悪い。そういう意味でいうと、ケースをたくさん集めていただいて、いろいろな事例を集めていただくというのは非常にいいことだというふうに私は思っております。

 ぜひそこは進めていただきたいという思いを込めて大臣に、その辺の、これからの地方での取り組み、地方づくりでの取り組みというようなことについてお伺いをしたいと思います。

大田国務大臣 これまで、地方同士のネットワークというと、とかく役所を通してのネットワークになってきていたんだと思います。ただ、地域づくりということを考えますと、民間で非常に熱意を持って頑張っておられる方がいて、成功した事例というのは大抵、民間の人が引っ張っていっているケースのように思います。そういうものを全国で横断的に見てみるということが大事なんじゃないか。個々の事例で成功したものをそれぞれ見るのではなくて、横断的に見たときに、何かその成功に至る要因があるのかもしれない、失敗に至る要因があるのかもしれない。

 私も、大学で政策研究をしておりまして、ケースを蓄積するということが大変重要であると思っています。一方、日本にはそういうケースの蓄積が非常に少ないというふうに思っております。特に、地方は千八百の自治体があるわけですから、そこでいろいろ取り組んできたものがケースの蓄積として、例えばNIRAという場に集積すれば、これは本当にいい、貴重な財産になると思っております。私も大変期待しております。

佐々木(隆)委員 時間が参りましたので終わりますけれども、先ほど理事長からもお話がありましたフローからストックというところでいえば、これなんかはまさにその中に入るのではないかというふうに思いますので、そういった意味でのお取り組みをぜひ期待申し上げたいというふうに思います。

 ネットワークのコアとして、あるいはトピックなテーマに対応するということを私は評価はいたします。ただ、気になるのは、先ほども申し上げましたが、手段が目的化しているのではないか。今やってきた論議は、組織形態と本当は余り直接的に関係のない論議。どうあるべきかという論議と、組織形態を変えたからこのことが解決をするという問題とは、ちょっと違うのではないか。そういう意味で、手段が目的化するというようなことのないようにぜひお取り組みをいただきたいということを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

河本委員長 吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 今回のこの法案というのは、認可法人総合研究開発機構のNIRAを廃止して、総合研究開発機構を認可法人から財団法人に移そうという内容のものですが、実はNIRA法を審議した一九七三年の法案審議のときには、日本共産党は、会長とか理事長など役員構成の面では、財界、大企業の方とか高級官僚の天下りに偏っているという問題を挙げまして、国民のために役立つものとして運営されていない、こういう点を批判して反対した法案でした。

 NIRA法の第一条の「目的」には、民主的な運営のもとに、自主的な立場で総合的な研究開発を進めて、成果を公開し、もって国民の福祉の増進に資する、そういう趣旨のことが第一条「目的」で挙げられているわけですが、実際には、時の政府の施策をフォローする内容であって、公共性に欠けているとか、あるいは公共性については疑問符のつくものとかがやはり見られました。

 例えば、NIRA型のベンチマーキングモデルという名前で発表した政策提言は、民間企業における経営理念、手法を可能な限り行政現場に導入することを通じて、行政部門の効率化、活性化を図る理論モデルとして知られておりますけれども、しかし、このNPM、ニュー・パブリック・マネジメントと呼ばれる手法は、公共サービスの民間開放、今で言いますと市場化テストなどにつながってくるもので、そこには、なるほど、競争してうまくいくという発想もあれば、同時に、規制緩和利権とか改革利権と言われるようなマイナスの面がいろいろな分野で今出てきて、さまざまな問題を引き起こしたりとか、こういうことも現実には生まれているものでもあります。

 また、広域地方政府システムという名で道州制の導入の提言を行っている問題なども、これは国の認可法人として、そういうものであれば設置しておく必要はないという考えですから、今回の法案には、廃止するというものですから、私たちは賛成をするものです。

 そこで、大臣に最初に伺っておきたいと思うんですが、このNIRAの財団法人化というのは、行政改革の一環として、先ほど来お話ありました二〇〇一年の特殊法人等整理合理化計画でその方向が大体定められたものだと思うんですが、独立行政法人としないで財団法人にするわけですね。その理由というのはどこにあるのかということと、それから、かつては少なかったわけですが、現在、シンクタンクは多数存在するわけですね。そうすると、この機構法を廃止するのであれば、NIRAそのものを廃止してもいいわけで、そこを廃止はしないわけですから、その理由は何なのかということを最初に伺いたいと思います。

大田国務大臣 今回の改革は、NIRAを認可法人から財団法人にするというものです。別の選択肢として、独立行政法人という選択肢も恐らくあったのだろうと思いますけれども、財団法人というのも民間の法人ですので、より独立性が高いということで、財団法人にした。

 一方、廃止するという選択肢も恐らくあったのだろうというふうに思います。そのときに、やはりNIRAがこれまでに培ってきたネットワーク、研究ノウハウというものがございます。最近の政策形成の変化を見ますと、政策研究というものが本当の意味で必要になってきているということもあるんだろうと思います。先ほども出ておりましたが、例えば地域における研究ですとか、あるいは国際的に連携を持っての研究というようなことが出てきているんだろうと思います。そのときに、このNIRAがこれまで認可法人として培ってきたノウハウ、ネットワークというものは、これからの政策研究に、捨てるには惜しいといいますか、生かす余地が十分にあるのではないかということで、財団法人という形態を選択したということです。

吉井委員 研究というのはどんな時代にも、自然科学であれ、社会科学であれ、人文科学であれ、これはずっともともと必要なものですから、私自身は研究は大事なことだともちろん思っているんです。

 それで、政府参考人に伺っておきますが、特殊法人や認可法人が財団法人になった事例にはほかにどういうものがあるのか、それから、財団法人化することで何か問題が起きたことはあるのか、あるいはどんな問題が起こっているのかということを伺っておきたいと思います。

土肥原政府参考人 特殊法人や認可法人が財団法人化された例ということでございますけれども、過去にそういった法人の組織形態が変わった例といたしましては、民間都市開発推進機構、日本下水道事業団、それから貿易研修センターというような例がございます。

吉井委員 貿易研修センターをおっしゃったけれども、今おっしゃった例とか、製品安全協会とか郵便貯金振興会とか、さまざまなものがあるわけですが、そこではその後、どういう問題等が見られますか。

土肥原政府参考人 今申しました例とNIRAの例と、必ずしも事業形態等が一致してございませんので、そういった例で具体的にどういった課題があったのかというのは、ちょっと承知いたしておりません。

吉井委員 私は、本当は、廃止法なら廃止法を出すについて、そういうことをきちんとやはり見ておくことが必要だと思うんですよ。だから、私言いましたように、NIRAを廃止するのか、財団法人でやっていくのがいいのか、あるいは場合によっては独立行政法人みたいなものを考えるのがいいのかとか、やはりこれまでのいろいろな団体があるわけですから、特殊法人、認可法人があって財団法人にした例もあるわけですから、やはり一つ一つきちんとよく研究して、そして法目的に照らすとNIRAにかなったどういう形態がいいのかとか、それを考えるのが私は立法というものを進めるときには必要だったと思うんです。それは非常に不十分だなということを、今改めて感じました。

 次に、引き続いて政府参考人に伺っておきますが、NIRAの資本のうち出資金は、国、地方公共団体、民間企業とありますが、それぞれの中で、特に地方公共団体の五十億八千五百万ということですが、出資している地方の額が均等なのか、あるいはそれぞれ幾らなのか。今度の法案でいきますと、請求があれば地方公共団体に払い戻されるということになりますね。地方公共団体から払い戻し請求がある見通しなのかどうか、もしあるとすれば大体どれぐらいを見込んでいるのかということ、その見通しなどを伺っておきたいと思うんです。

土肥原政府参考人 機構に対する地方公共団体からの出資金でございますけれども、これは平成十七年度末現在で、今先生おっしゃったように、合計五十億九千万円ほどございます。

 その内訳を見ますと、機構が設立された昭和四十八年当時の、四十七都道府県と九政令指定都市がございましたけれども、そこからはそれぞれ八千九百万円、均等に出資していただいております。その後、五つの政令指定都市が指定されたわけでございますが、その後、個別に出資のお願いをいたしまして、その五つの政令指定都市につきましては一千万円から三千万円、そういった出資をお願いしているというところでございます。

吉井委員 払い戻しの方の話はどうですか。

土肥原政府参考人 失礼しました。

 払い戻しの方でございますが、私ども、地方公共団体等の出資者に対しましてヒアリング等を行っております。そういったところの状況から見ますと、地方もなかなか今財政的に厳しいということでございまして、かなりの払い戻しの要望が来るんじゃないかというふうな予想をしているところでございます。

吉井委員 何とも頼りない話なんですけれども。

 各自治体ときちっとお話をしておられたら、この自治体はこれぐらい今財政が大変で、法目的はわかるんだけれども、NIRAの目的はわかるんだけれども払い戻しを求めたいというところもあるでしょうし、あるいは逆に、払い戻しの気持ちはわかるが払い戻しを言わないで、基本財産としてちゃんとやってほしいというふうに言ってはるのか、そこはどうなっているんですか。

土肥原政府参考人 私ども、出資者、特に地方の出資者に対しましては、何度か説明会も開催いたしましたし、率直に意見交換も行ってきたところでございます。私どもから出向いてというようなことでやっております。

 その際の感触でございますが、先ほど申しましたように、財政状況が厳しいということもありまして、返してもらえるのであれば返してほしい、そういうような意見がかなり多かったというのが正直なところでございます。

 ただ、別の形と申しましょうか、例えば会費制というような形の導入等も考えたりいたしまして、地方との関係は大事にしていきたいというふうに考えているところでございます。

吉井委員 大分そういう要望とかがあるというのはわかったんですが、四十七でしょう。あと追加された政令市がありますが、そうすると、具体的に半分なら半分とか、大体どれぐらいのところから払い戻しを求められていて、それは金額にすればどれぐらいで、しかし基本財産にかかわってきますから、そこについてもこういうふうに頼んでいるんだという話があると思うんです。これはこれからの財政問題にかかわってきますから、そこはもう少し詳しく伺っておきたいと思います。

土肥原政府参考人 私どもも、地方に出向いたりいたしまして、率直な意見を聞いているところでございます。例えば、NIRAにつきまして、どういう研究をしていただきたいというようなことも含めて、いろいろな御要望を伺っているところでございます。

 そういったところで、地方公共団体も、非常に厳しい財政状況ということは前提ではございますけれども、いろいろお考えになって判断されるんじゃないかというふうに思っているところでございます。

吉井委員 どうもさっぱり要領を得ないんです。

 NIRAがシンクタンクとして、私がさっき言いましたように、公共性を欠いていると言えるか、あるいは疑問符がつくと言えるか、それは人によって評価はあるかもしれませんが、政府の施策をフォローする形になったり、あるいは財界なり大企業寄りの政策提言を発表するのには、やはり一つは、今の出資金とか寄附金の資金構成の面からも、どうしても遠慮がちになってしまうといいますか、金の面で押さえられているという面があるんじゃないかと思うんです。

 民間大企業や事業団体からの寄附金が昨年末で約五百八十億円ということですが、その内訳を上位五つの企業、団体について挙げると、それぞれ大体どういうふうになってきますか。

土肥原政府参考人 民間からの寄附の額でございますが、合計額で、平成十七年度末現在で五十八億程度ということでございます。

 寄附金額の上位五団体ということでございましたので、順に挙げますと、電気事業連合会、九億五千万円でございます。二番目が東京銀行協会、八億三千万円。あと三番以下、日本自動車工業会、日本鉄鋼連盟、日本電機工業会、こういうふうになってございます。

吉井委員 五十八億でしたね。

 私は、例えば環境政策だとか、再生可能エネルギーか原発かというふうなこととか、政策研究を進める上で、出資構成といいますか、お金の面で握られているというのは、そこからどれだけ独立して本当に遠慮なく研究できるかということと、同時に、国の目的にかなうものになるかということは、金の面からもきっちり考えなきゃいけないというふうに思うわけです。

 そこで理事長に伺いますが、二〇〇二年にNIRAの諮問機関として、我が国におけるシンクタンクのあり方に関する懇談会、あり方懇が設置され、翌年、「公共政策の研究を担うシンクタンクとしてのNIRAのあり方」という報告書が出されておりますが、そこでは、「NIRAはこれまでに七百点以上の研究報告書や定期刊行物等を通じて研究成果を情報発信し、政策研究者や政策担当者に少なからず活用されてきた。しかし、一方で研究成果をマスコミがとり上げ、議員に読まれ、海外で話題になった例は少なかったと言わざるを得ない。」という指摘もありました。「対象を一般市民にまで広げて考えると、NIRAの知名度は決して高いとは言えない。」と書かれておるわけですね。

 そこで、国の認可法人として、これでは、存在意義が問われていたという言い方はきついかもしれないけれども、私はそう言えなくもないと思うんです。このように、国民への情報発信力が弱いとか、知名度が低かった、それはどういうところに理由があるか。理事長をやってこられてのお考えというものを伺っておきたいと思うんです。

伊藤参考人 私は、昨年の二月に理事長に就任する前は、外のいわゆる研究者としてNIRAを見ていたわけですけれども、これは私の当時の外部の研究者としての非常に個人的な印象ですけれども、大変すばらしいサポート活動をしていただいて、私の研究なんかでも随分、国際交流研究ということで助けていただいたんですけれども、一言で言うと、非常に地味な役回りを演じていたのかなと。恐らく、それがNIRAのそもそもの当初の目的なのかもしれません。

 私が理事長に就任しまして、今委員が御紹介された報告書なんかも読んで、いろいろ考えてきて、やはりNIRAのこれからのことを考えるときに幾つか大きなポイントがあるのかなと。

 一つは、これまでは、NIRAは研究会を設けて研究を行っていたわけですけれども、非常に時間をかけてじっくり、よく言えばじっくり研究するわけですけれども、結果的には非常に時間がかかって、相当時間が後になってから長い報告書が出てきた。それを、しっかり認知していただいて政策議論を高めるためには、できるだけ、途中経過も含めて、順次わかりやすい形で、短い形で出していくということが非常に重要なのかなというふうに思っています。

 それから、これは先ほど何人かの委員の方との間でもお話しさせていただいたんですけれども、これからNIRAがどちらに向かって情報を発信していくかということを考えたときに、先ほど一連の委員の方のお話にもありましたように、やはりできるだけいろいろな形で政策に対して議論が高まるということが必要であるとすると、これまでやってきたことを否定するわけではございませんので、もちろん立法あるいは行政の方々といろいろな議論をする場も必要だと思うのですけれども、同時に、いわゆる一般の国民というんですか、それはテーマによっては地域の市民であったり、あるいはその問題に非常に関心がある研究者、ジャーナリストあるいは行政官等々含めて、そういう非常に広いところに発信できるような形のものをつくっていかなきゃいけない。一応、私が理事長に就任してから、政策レビュー等々いろいろなものを少し始めたのも、そういうような意図があったということでございます。

吉井委員 私は、地味が悪いとは余り思っていないんですよ。近ごろは、自然科学の分野でも、すぐ金になりそうな目先のプロジェクトに飛びついてしまって、地味で基礎的なものが非常に軽視される傾向にありますから、そのこと自体は私は研究という分野では大事だと思っておりますから、問題は、地味であっても、長期的にこう生きてくるんだとか、どう知られるようになるかという、そこが非常に大事なところじゃないかなと思っています。

 次に、人事の面から、最初に少し政府参考人に伺います。

 同じ報告書で、「国、地方公共団体及び民間から出向・派遣等された役職員が研究及び組織運営の中核を担ってきた。」「こうした関係がNIRAの主体性と自己責任の原則を弱め、官庁的な事務手続が研究活動の機動性を損なう面がなかったとは言えない。」と指摘していますね。

 国、地方公共団体、民間企業から出向、派遣された役員の数を年度別に見てみて、あらかじめいただいた資料を見ますと、一九九八年が、定員四十名の中で国から出ている人が十八名。地方公共団体、民間企業の派遣職員は定員外となっていますから、定員内で見れば四五%。それから、翌年は四七%とか、大体ずっと四〇%台です。それが二〇〇三年ごろから、三八%とか、三〇%台に変わってはきているんですが、財団法人化によって出向や派遣のあり方というのはどういうふうに変わっていくのか。これまでの全体の傾向と、これからどうなるのかということについて、参考人の方に伺っておきます。

土肥原政府参考人 NIRAの職員等の構成でございますけれども、財団法人化に当たりましては、かなり規模的にも小さくなる、定員的にも小さくなるということでございまして、そういった中で必要な人材を確保していくということになろうかと思います。

吉井委員 大臣に伺っておきたいんですけれども、NIRA法の第一条で、先ほど来言ってきたようなことですが、要するに、これまでは国民の福祉の増進に資するということ、公共性ということをうたっているわけですね。

 そうすると、国の人が出向して研究に当たるのも、福祉なり環境なり、国の政策目的にもかなったもので、研究すること自体は意味がありますから、一定の比率いても、それはそれで意味はあると思うんです。しかし、だんだん比率は減らしていく。比率を減らして、国と全くかかわりのないものであれば、それはそれでまた意味はあると思うんですが、国が関与もし、そして研究員としての出向職員の比率も下げるとなると、これは、もともと、設立当初のNIRAというものの目的に照らして、一体これからどういう方向を目指していくのかな。

 出向や職員のあり方の問題がどう変わるかということとともに、研究の方向をどういうふうにしていこうかなということにかかわると思うんですが、この点についての大臣のお考えというものを聞いておきたいと思うんです。

大田国務大臣 財団法人になりますと、NIRA自体は民間法人になりますので、個々の事業について法律で規定するということはなくなります。ただ、その大きい方向につきましては、財団法人になるときに定款を寄附行為に変更する、それを私ども国が審査して認可するということになります。

 したがいまして、その大きい方向である寄附行為については、行政改革の重要方針をもとに閣議決定された内容が反映されているかどうか審査できるということになります。その寄附行為に基づいて中期の事業計画ですとか単年度の事業計画というのが立てられるという意味で、つまり、大きいところでは、国が閣議決定に沿ったものになるかどうかをチェックし、その中での個々の事業についてはNIRAが独立性、自主性を発揮していくということになります。

吉井委員 次に、現在のNIRAの理事長は伊藤先生ですが、昨年の一月末まで理事長というのは、これは最初の一九七四年三月からは三十二年間ずっと官僚の方の独占ポスト、特に、七九年から昨年一月三十一日までは二十七年間ずっと事務次官ポストということで来ております。それから、その中で、理事長だけじゃなくて理事、監事を含んだ役員の一覧というのを見ると、四十七人中二十六人が天下り官僚で占められていた。割合五五%ですが、NIRAは退職国家公務員の天下りを確保する機関だったとも言える、そういう内容であったと思うんです。財団法人化に際して、この天下りの実態を改善すべきだと思うんです。

 他の理事の方を見ても、例えば、一九七四年から理事になられた方は自治省自治大学校長、次の方は自治大臣官房総務課長とか、地方振興局長、自治大臣官房審議官とか、それから自治大臣官房付、消防庁次長というふうに、自治省、総務省の指定ポストに理事の一つはあるとか、それからまた別なポストは、通産省官房審議官兼生活産業局長付の方で、その次は通産省の外郭にある特許庁、またその次は通産省基礎産業局アルコール事業部長とか、特許庁、通産省の通商産業検査所長とか、ずっと通産省の方が理事のポストを一つ押さえるとか、そういう状態がずっと続いてきました。

 今度、これをどう改革するかということで、国家公務員法改革案では官民人材交流センターを使ってということなんですが、それは省庁の権限や財政的な力を背景にして送り込む押しつけの方はなくなるけれども、これは官房長官のもとの官民人材交流センター一本で、そこを通せば退職した翌日からでもということになりますから、逆に天下りはますますふえていくということもあり得るわけです。

 その点についてはどう考えておられるか、また、どういうふうにしていこうという考え方か、伺っておきたいと思います。

大田国務大臣 御指摘のように、NIRAの理事長はこれまで中央省庁のOBがなっておりました。それが平成十八年二月に伊藤先生が理事長になられて、非常に目覚ましい成果を上げてくださっています。

 その一方で、財団法人化に際しまして、研究以外の事業はなるべく廃止縮小するということで、まずは中央省庁出身の役職員数の全体を減らしてまいりました。その中で、中央省庁の出身の役員は、平成十七年度からの二年間で二名減少いたしまして、現在二名、理事が一名、非常勤の監事一名となっております。この間、職員のうち中央省庁からの出向者は、四名減少いたしまして、現在七名となっております。

 財団法人になりますと、その役員を含め、人事はすべてNIRAが決めるということになります。当然のことではありますが、天下り先を確保するためにNIRAを財団法人として残したと言われることが決してないように、そこはしっかりとやってまいります。

 それから、研究体制につきましては、テーマごとに原則公募で有益な人材を幅広く集めるということになっております。したがいまして、現在役所にいる職員が、公募を受けて、その研究に最もすぐれた人材であるということで採用される、そして役所から結果的に出向するということはあるかと思いますけれども、役所が人事の一環として役人を現職出向させるということは、これからはなくなります。

吉井委員 これからなくなりますというお話が、実はそうはならない、天下りも天上がりも自由にするのが今度の法律だということがこの間審議したばかりの法律なんです。ですから、これはみずから求めた形をとれば幾らでも行けるわけですし、今おっしゃったような話では、天上がり、天下りの問題はとても解決できるものじゃない。

 きょうは違う法律をやっていますから、これ以上はおいておきますけれども、そのことを指摘して、時間が参りましたので、質問を終わります。

河本委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

河本委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、参議院送付、総合研究開発機構法を廃止する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

河本委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

河本委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時四十八分散会


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