衆議院

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第3号 平成19年10月26日(金曜日)

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平成十九年十月二十六日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 中野  清君

   理事 江崎洋一郎君 理事 岡下 信子君

   理事 櫻田 義孝君 理事 萩生田光一君

   理事 村田 吉隆君 理事 大畠 章宏君

   理事 平岡 秀夫君 理事 田端 正広君

      赤池 誠章君    赤澤 亮正君

      遠藤 武彦君    遠藤 宣彦君

      近江屋信広君    大塚  拓君

      加藤 勝信君    木原 誠二君

      河本 三郎君   戸井田とおる君

      土井  亨君    中森ふくよ君

      永岡 桂子君    長島 忠美君

      西村 明宏君    藤井 勇治君

      御法川信英君    山本  拓君

      泉  健太君    市村浩一郎君

      吉良 州司君    楠田 大蔵君

      佐々木隆博君    西村智奈美君

      石井 啓一君    吉井 英勝君

    …………………………………

   国務大臣

   (地方分権改革担当)   増田 寛也君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     町村 信孝君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (食品安全担当)     泉  信也君

   国務大臣

   (規制改革担当)

   (国民生活担当)

   (科学技術政策担当)   岸田 文雄君

   国務大臣         渡辺 喜美君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)   大田 弘子君

   国務大臣

   (少子化対策担当)

   (男女共同参画担当)   上川 陽子君

   内閣府大臣政務官     加藤 勝信君

   内閣府大臣政務官    戸井田とおる君

   内閣府大臣政務官     西村 明宏君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 西川 正郎君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官

   兼大臣官房遺棄化学兵器処理担当室長)     西  正典君

   政府参考人

   (内閣府計量分析室長)  齋藤  潤君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   丸山 剛司君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   柴田 雅人君

   政府参考人

   (内閣府男女共同参画局長)            板東久美子君

   政府参考人

   (内閣府公益認定等委員会事務局長

   兼大臣官房新公益法人行政準備室長)      戸塚  誠君

   政府参考人

   (内閣府地方分権改革推進委員会事務局次長)    松田 敏明君

   政府参考人

   (警察庁長官官房長)   米村 敏朗君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  片桐  裕君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    米田  壯君

   政府参考人

   (警察庁交通局長)    末井 誠史君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    池田 克彦君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 高橋 正樹君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    倉吉  敬君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 伊原 純一君

   内閣委員会専門員     杉山 博之君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月二十六日

 辞任         補欠選任

  大塚  拓君     赤池 誠章君

  河本 三郎君     永岡 桂子君

  高市 早苗君     山本  拓君

  中森ふくよ君     近江屋信広君

同日

 辞任         補欠選任

  赤池 誠章君     大塚  拓君

  近江屋信広君     中森ふくよ君

  永岡 桂子君     御法川信英君

  山本  拓君     高市 早苗君

同日

 辞任         補欠選任

  大塚  拓君     長島 忠美君

  御法川信英君     河本 三郎君

同日

 辞任         補欠選任

  長島 忠美君     大塚  拓君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 内閣の重要政策に関する件

 栄典及び公式制度に関する件

 男女共同参画社会の形成の促進に関する件

 国民生活の安定及び向上に関する件

 警察に関する件


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     ――――◇―――――

中野委員長 これより会議を開きます。

 内閣の重要政策に関する件、栄典及び公式制度に関する件、男女共同参画社会の形成の促進に関する件、国民生活の安定及び向上に関する件及び警察に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房審議官西川正郎君、大臣官房審議官兼遺棄化学兵器処理担当室長西正典君、計量分析室長齋藤潤君、政策統括官丸山剛司君、柴田雅人君、男女共同参画局長板東久美子君、公益認定等委員会事務局長兼大臣官房新公益法人行政準備室長戸塚誠君、地方分権改革推進委員会事務局次長松田敏明君、警察庁長官官房長米村敏朗君、生活安全局長片桐裕君、刑事局長米田壯君、交通局長末井誠史君、警備局長池田克彦君、総務省大臣官房審議官高橋正樹君、法務省民事局長倉吉敬君、外務省大臣官房参事官伊原純一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

中野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。赤澤亮正君。

赤澤委員 おはようございます。自由民主党の赤澤亮正でございます。本日は質問の機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。

 私は、現代の若者というのは、一昔前の若者と比べて明らかに、学校、就職、そして家庭、子育ての、三つのいずれの分野においても見通しのきかない、いわば若者視界ゼロ社会とでも呼ぶべき困難な状況に置かれているというふうに考えております。

 きょうは話題を絞っていきますけれども、基本的にやはり普通科教育中心、職業教育や職業適性といったものを判断できる、そういう機能を教育がなかなか発揮していない中で、働く準備のできていない若者が大量に卒業して、加えて就職の場では、企業は失われた十年を経て即戦力を求める、能力がなければ大量に雇っておいて次々首にするといいますか、リストラをするといったような状況、そんなことから多数ニートやフリーターが生まれているといったことは否定できない事実だろうと思います。さらに、家庭、子育てにおいても、決していい社会的経済状況に若者が置かれているとは言えないように思います。

 いずれの分野においてもしっかりとした対策を講じて、若者の暮らしに将来の見通しを取り戻すことが必要であるというふうに考えます。若者対策を充実することは、我が国全体の活力をアップさせるとともに、都市と地方の格差の是正にも大いに貢献するものだというふうに信じるところでございます。

 本日は、その中で、家庭、子育て、少子化対策といったことについて上川大臣に質問させていただきますので、よろしくお願いをいたします。

 現在、少子化社会対策会議のもとに設置をされた子どもと家族を応援する日本重点戦略検討会議において、本年末の最終取りまとめを目指して、重点戦略の全体像の議論が進められているというふうに承知をしております。少子化対策については、過去、平成六年のエンゼルプラン、平成十一年の新エンゼルプラン、平成十六年の子ども・子育て応援プラン、さらには平成十八年の新しい少子化対策、次々と打ち出されておりますけれども、今回の子どもと家族を応援する日本重点戦略の新しさ、新味、あるいはこれまでの対策と比べた場合の特色について教えていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

上川国務大臣 一九九〇年に、合計特殊出生率が一・五七ということで、一・五七ショックが全国を大変な驚きとともに走ったわけでございます。

 ただいま委員御指摘のように、それ以降、エンゼルプラン、新エンゼルプラン、少子化社会対策大綱、子ども・子育て応援プラン、また新しい少子化対策についてということで、随時、計画やプランが発表されながら、それに基づいて全力で施策の推進をしてきたところでございます。

 こうしたさまざまなプランに基づきまして、総合的な少子化対策に取り組んだところでございますが、ややもすれば、こうしたプランや対策は、あらゆる、やれるべきことをできるだけ盛り込んでということで、やや網羅的に示してきたのではないかというふうに思っております。

 今回、御指摘の重点戦略ということでございますが、それは、昨年の末に将来推計人口の大変厳しい見通しが出されまして、そのことを踏まえまして、特に結婚と出産に対する国民の希望と実態の乖離、この乖離はどういう要因によってギャップがあるのかということに焦点を当てまして、そして国民の皆さんが希望どおりに結婚をし、また子供を安心して産んで育てることができるようにするには何が必要であるのかということに焦点を当てて、そして効果的な対策の再構築とその実施を図ることをねらいとしたものでございます。

 ことしの六月に中間報告が取りまとめられまして、その中で、少子化の急速な進行の背景にあるのは、働き続けることと結婚して子供を持つこととの二者択一を迫られている状況があるということ、また長時間労働や多様な働き方を選択できないなど、働き方をめぐるさまざまな課題が存在しているということが明らかにされ、そしてそれを踏まえて、重点戦略の方向性として大きく三つの視点が打ち出されているところでございます。

 一つは、ワーク・ライフ・バランスの実現のための働き方の改革を最重点の課題としていくこと、二番目としては、多様な働き方に対応できるように子育て支援策を再構築していくということ、そして第三に、少子化対策の財源については、実効ある制度の再構築とあわせ、制度の持続可能な運営に必要な財源の効果的な投入を検討することとしているところでございます。

 現在、これら三つの方向性を中心に具体的な施策の検討、検証を進めておりまして、年末までに重点戦略の全体像を取りまとめていきたいというふうに思っております。

赤澤委員 今の御説明で、今我が国においては子育て世代が、特に女性が、働き続けるか、子育てを選択するかという二者択一を迫られている状況だという認識のもとに、今回の子どもと家族を応援する日本重点戦略の中間報告においては、ワーク・ライフ・バランスを初めとする三本柱がポイントであるという御説明でございました。

 そこで、ワーク・ライフ・バランスについてお尋ねをいたします。

 現時点において、一般的に日本の企業や国民の多くは、ワーク・ライフ・バランス実現のための取り組みは、いわば金がかかるけれども企業の生産性、業績を悪化させるというふうに考えているように思います。ところが、欧米の先進的な取り組みを行っている諸国においては、ワーク・ライフ・バランス実現のために熱心に取り組んだ企業ほど生産性や業績は向上するというのがむしろ常識となっており、客観的な統計によってもそのことが裏づけられているというふうに承知をしております。

 そこでお尋ねいたしますが、我が国においてワーク・ライフ・バランスの実現を目指す上でのかぎというのは、その取り組みが企業の生産性、業績を向上させるんだということを客観的な指標によって広く企業、国民に周知することであるというふうに考えますが、この点についての御認識、さらには、どのように取り組むお考えかを教えていただきたいと思います。

柴田政府参考人 お答え申し上げます。

 ワーク・ライフ・バランスの推進と生産性の向上という御質問でございました。

 今の時点で、ワーク・ライフ・バランスを進めることと、それから生産性の向上がどう結びつくかというところは、なかなかまだ定量的な評価は難しい面もあると思いますけれども、まず、生産性の向上自体につきましては、ことしの基本方針二〇〇七でも、イノベーションなどの観点から成長力強化策を講じるということで、労働生産性の伸び率を五年で五割増しにするというような目標が立てられております。

 それから、今なかなか難しい面もあると申し上げましたけれども、個別の企業で見てみますと、ワーク・ライフ・バランスを一生懸命やっているところでは、例えば製品の不良品流出率が大幅に低下しているとか、そういうデータはございます。そういう意味で、仕事の質の向上に寄与したというような事例があるということは、私どもも承知しております。

 このワーク・ライフ・バランスを進めることは、一人一人の労働者がやりがいや充実感を感じながら生き生きと働くことができる、そういうふうになれば、要するに質のいい労働力の確保ということにもつながりますし、それから労働者の活力にもつながるということで、仕事の質が向上して企業の生産性の向上にもつながるということについては、今現在行われておりますこのワーク・ライフ・バランスの指針の策定作業部会でも議論されているところでございます。そういうところでは、今先生おっしゃったように、生産性の向上につながって将来の投資につながるんだということを強調すべきだというような議論も行われております。それから、目標をどうするかということについても議論は行われているところでございます。

 先生御指摘の視点も踏まえまして、今後の憲章とか行動指針の取りまとめ、そういうところでもまたいろいろ議論していただくようにしていきたいというふうに思っております。

赤澤委員 期待したほどすっきりした答えではなかったわけでありますけれども、やはり、営利企業は当然のことながら利益追求ということで、ワーク・ライフ・バランスに取り組めば利益につながると思ったときに、最も効果的に、しかも最大限取り組むということだと思います。その点は非常に重要だと思いますので、引き続き、指摘の趣旨を踏まえて、ぜひ前向きによろしくお願いをしたいと思います。

 ワーク・ライフ・バランスの取り組みの先進国と言える英国におきましては、政府の財政的な支援を受けて、かなりの手間暇をかけて、さまざまな指標について、詳細な従業員のインタビューも行いながら、ワーク・ライフ・バランスに関する取り組みをできる限り客観的に評価をして企業のランキングを行うというふうに承知をしております。そのランキングを掲載した雑誌は有料でも飛ぶように売れると言われておりまして、日本においても、ワーク・ライフ・バランスに取り組む優良企業の顕彰制度を導入することが有効であるというふうに考えますけれども、いかがでしょうか。

柴田政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、イギリスの制度は、先生、今お話ございましたので、もう重複して紹介は申し上げませんけれども、一言で言いますと、従業員の声を重視した審査を行っているというところが非常に特徴になると思います。

 それで、我が国におきましても、既に次世代育成支援対策推進法という法律がございまして、ここで、行動計画をつくって一定の具体的成果を上げた企業に対しましては、認定マークとして、おくるみからきているんですけれども、くるみんというものを、そういう次世代認定マーク制度を実施しております。それを商品などに使用することを認めている。そういうことによりまして、企業の子育て支援の取り組みに対するインセンティブとなることを期待しております。

 ワーク・ライフ・バランス、結局は、まず企業で取り組んでいただきますが、そういう企業の子育て支援を社会全体が応援していくということが大切であると考えておりますので、先生おっしゃったようなことも含めまして、今後、諸外国の制度も参考にしながら、この進め方ということについて考えていきたいというふうに思っております。

赤澤委員 くるみん企業の認定というのも、大変私はすばらしいことだと思います。ただ、一歩進んで、イギリスの場合、我が国で言う就職したい企業ランキングに当たるようなものが恐らくこのワーク・ライフ・バランスについてのランキングになっているんじゃないかというふうに思います。まだ、前途、かなり長い道であるというふうに思いますので、引き続き、ぜひ前向きの取り組みをお願いしたいと思います。

 企業や国民の意識改革、さらには優良企業の顕彰制度は、今すぐにでも着実に取り組んでいくべきだというふうに考えますけれども、諸外国においてはもう少し強力なインセンティブを行う企業があることも御紹介をしたいと思います、場合によっては義務づけもあると。

 具体的に申し上げれば、例えば育児休業の取得は、社員の時間管理能力、これを飛躍的にアップさせるから社員の能力が向上するはずだという考えに基づいて、育児休業を取得した者の給与をアップするという企業は諸外国においては結構ある。さらには、育児休業期間中、周囲の同僚たちの給与にも上乗せをするという例もあるように承知をしております。

 そういった企業への税制上の支援でありますとか、あるいは、かなりこれは強力なあれでありますけれども、社員が取得しなかった有給休暇の失効分には企業が給料として支払うことを義務づけるとか、やり方は、もう選択肢は多数あるように思います。

 ワーク・ライフ・バランスの実現のために、効果は当然認められると思いますけれども、この辺の選択肢、手法については、どのようにお考えになりますでしょうか。

柴田政府参考人 まず、現在の状況を申し上げますと、例えば、育児休業取得者などに対して企業が独自で給付を行っている事業主に上乗せの助成をするとか、あるいは育児休業取得者の代替要員を確保する、あるいは現職に復帰させたときの事業主に対する助成、こういうような支援策は既に始めているところでございます。

 これからワーク・ライフ・バランスを進めていくという上では、先生おっしゃるように、いろいろな手法が必要になってくると思います。もちろん法律の枠組みの中でやっていくということもあるでしょうし、それから、いろいろな財政措置で誘導していく、財政や税制の措置で誘導していくというようなこともあると思います。いろいろな外国の例も参考にしながら、もちろん、我が国の制度をどう変えていくかというのがまず基本でございますけれども、積極的に取り組むような企業に対しての支援ということは考えていきたいと思います。

 これは、今現実に作業部会での議論でもそういう議論というのがかなり中心的に行われているところでありますので、今後、私どもも、どういうふうにやったら具体的に進むのかということをよく頭に置いて検討していきたいというふうに思っております。

赤澤委員 ありがとうございました。

 私が理解している以上に進んでいる部分もあったようでございまして、その点は積極的に評価をいたします。ぜひ前向きに、あらゆる手段を駆使してこの重要な問題に取り組んでいっていただきたいというふうに思います。

 現時点においては、圧倒的に女性の割合が高い育児休業取得でございます。育児休業終了後に安心してもとの職場あるいは過去勤めていた業種に復帰できるようにサポートすることも、ワーク・ライフ・バランスの実現のためには大変重要であるというふうに考えるところでございます。

 復帰の大きな障害の一つは、育児休業中に専門的な知識、技能が古くなる、あるいは衰えることで、復帰後十分力を発揮できない、そういった心配であると思います。例えば私の地元でも、看護婦さんの不足というのは非常に問題になっておりますけれども、看護婦さんの場合、新しい薬の名前とか、そういったことについて知識が欠けてしまうと、怖くて、患者さんの安心、安全を考えたときに戻れないようなこともよくあるようでございます。

 こういった心配にきちっと対応するという意味で、例えばテレワークの活用などによって育児休業期間中に自宅において最新の専門的な知識に触れ、知識を更新し、技能を衰えないようにサポートするような取り組みを行う企業に支援を行うといったことも有効であるというふうに考えますけれども、その点については、お考えはいかがでしょうか。

上川国務大臣 女性が出産をした後に復職を希望しているという方は大変多いというふうに思っております。そうした面で、今御指摘のように、復職の障害になるものを取り除くということについては、大変大事な視点だというふうに思っております。

 そこで、そうした状況を踏まえますと、母親が出産、子育てをしながら継続して働き続けることができるような施策とともに、子育てが一段落した女性が再就職することができるような支援ということで、短時間勤務制度の促進とか御指摘のテレワークの推進というような形で、柔軟な働き方を選ぶことができるような環境整備ということは大変大事なことであると思います。そして、そういう制度を率先してつくっていただく企業側に対してのインセンティブについても、御指摘のような課題も、それぞれほかの国々でも行われているということですので、そうした面で参考にしながら取り組んでいくことが大事ではないかというふうに思っております。

 現在、マザーズハローワークの拡充ということで、女性の再チャレンジ支援プランということで進めておりますが、さらにそうした取り組みにつきましては拍車をかけていきたいというふうに思っております。

赤澤委員 ありがとうございました。

 ワーク・ライフ・バランスについてのお尋ねはこの程度にとどめまして、少子化対策の基本的な考え方について少しお話をさせていただきたいと思います。

 出発点は、我が国の若い子育て世代が理想とする、あるいは予定する子供の数については、過去何十年来、大幅に変化はしていないということであります。常に二人を超えている。三十年前、四十年前も国民は二人子供を持ちたいと思っていた、今もそれは変わっていないということであります。国民は一貫して二人以上の子供を持ちたいと希望しているにもかかわらず、我が国の合計特殊出生率がほぼ一貫して急速に下がり続けてきた、これは重く受けとめる必要があると思います。逆に言えば、その点にこそ出生率回復の希望が見えるとも言えると思います。

 現在の少子化対策は、以上の認識に立っており、換言すれば、年金制度の持続性を高めるなど国策上の観点から産めよふやせよという発想で進めているのでは決してないということであります。現在の日本において、さまざまな社会的、経済的障害のために国民が希望どおり出産、子育てができない、こういう状況を打破することによって国民の希望がかなった場合の合計特殊出生率、政府の試算によればおおよそ一・七五ということのようですが、これを実現するというのが基本的な考え方であるというふうに理解をしております。

 そこで、このような基本的考え方に立って施策を講じることにより、我が国と同様、一たび合計特殊出生率が低下したにもかかわらず、その後は我が国と大きく異なって見事に出生率を回復した、それに成功したフランスなどの諸外国から、少子化対策の決め手となった施策についてどのような教訓が学べるのかについてお尋ねをいたします。

上川国務大臣 日本と同じように一たび出生率が下がったにもかかわらず、さまざまな施策を積み重ねることによって出生率を回復した国として、御指摘のようなフランスなどヨーロッパの国々が日本にとっての教訓ということで、学ぶべきことは大変多いというふうに思っております。

 近年の諸外国の家族政策を見てみますと、九〇年以降、家族手当などの経済支援中心の施策から、育児休業や保育サービスの充実などの仕事と子育ての両立支援を目指したサービス支援ということで、そうした政策の転換が共通して見られるところでございます。

 少子化対策の成功例、フランスやスウェーデンでは、働き方につきましても、長時間労働が非常に少ないということ、また、多様な働き方の選択が可能であるということから、こうした多様な働き方に合わせた形で、さまざまな柔軟なサービスをそれぞれの家族に応じて選択することができるように整備しているということでございます。

 また、家族政策関連の支出ということでございますけれども、我が国のマクロ的な指数として、GDP比が〇・七五%ということでございます。アメリカは〇・七ということでありますが、欧州の国々では、おおむねGDP比の二から三%の財政投入をしている。これはいずれも事業主の拠出も含む数字でございますけれども、そうしたところに特徴があるのではないか。

 こういうことも踏まえながら、我が国の少子化対策の、逆に言うと特徴というものを見てみますと、まだまだ質、量両面のサービスの基盤整備が不足しているのではないかということでございますし、また働き方の改革に向けた取り組みについては、先ほどの企業の中の御指摘もございましたけれども、弱いということでございます。

 また、施策間の整合性や連携の欠如、政策の一元性、サービスの一貫性の欠如ということで、例えば産休、育休明けの年度途中の保育所入所ということについては、どのお母さんもお父さんも大変困っていらっしゃるということでございます。

 また、税制や年金、医療等の他の社会保障制度をも視野に入れた対策ということについての取り組みも弱いということでございます。

 手厚い家族政策を支える国民負担についての国民の皆さんからの応援、合意ということについても、これからさらに充実しなければいけないということでございまして、こうした課題に対して、ワーク・ライフ・バランスの憲章あるいは行動指針を中心に、これまで取り組んできたさまざまな施策の再構築と、また実現に向けて取り組んでいくことが大事ではないかということでございまして、これは子どもと家族を応援する日本重点戦略の中に総合的に取りまとめをしていきたいというふうに思っております。

赤澤委員 ありがとうございます。

 おっしゃった点、私なりの受けとめを若干申し上げますと、まず、GDP比でフランスなどは非常に多くの予算を投入している、資源を集中的に投入しているということ、それから、家族手当といった経済支援から保育サービスの充実にかなり予算の配分をシフトしたということ、あるいは、多様な働き方に対する柔軟なサービスを行っている、意識の点でも大分違うんじゃないか、こういったようなことだったと思います。

 フランスにおいて、今申し上げましたとおり、家族手当、すなわち、若い子育て世代への経済的支援から保育サービスの充実といった政策転換を行ったことは非常に有効であった、これは指摘としては非常に説得力がありますが、私は、ここで注意しなければならない点があると思います。というのは、経済的支援と保育サービスの充実、両方が決定的に重要であって、要は、そのバランスだということでございます。

 我が国の場合、都市と地方では少子化の理由が大きく異なっているように私には思えます。都市の場合、比較的若い子育て世代は経済力はあるけれども、夜間保育や病児保育など保育サービスの決定的な量的、質的な不足といったことが、働きながら出産に踏み切るということをちゅうちょさせる。一方、地方においては、保育サービスとかは、割と近いところに親が住んでいたり何とかできるんだけれども、若い子育て世代の経済力が圧倒的に少ないといったような問題があります。

 きめ細かく対策を違えていく、都市と地方でも違うし、その地域地域でも違うかもしれません、その辺の視点が欠かせないと思いますが、お考えを伺いたいと思います。

上川国務大臣 ただいま御指摘をいただきました、まず一点目につきましては、やはり経済的な支援についても十分ではないし、また同時に、制度面で、働き方を中心としたワーク・ライフ・バランスということについても、そのバランスの上で取り組まなければいけないという日本の置かれている状況ということについては、御指摘のとおりだというふうに思っておりますので、そうした方向に向けての重点戦略の策定をしていきたいと思います。

 そして、二番目の点でございますが、都市と地方との子育てのニーズに差があるということでありまして、これはいろいろな取り組みの違い等のデータを見ましても、大変大きな違いがあるというふうに私も理解をしております。

 実は、十一月の十八日に、今度新しく家族の日ということで、富山の方に行きますが、富山では待機児童はゼロ人でございますが、逆に東京の方では待機児童が大変多いというようなことからも明らかなとおり、そうした地方間の格差というか支援の間の違いというものについては、十分に丁寧に声を聞きながら施策の方への反映に努めてまいりたいというふうに思っております。

赤澤委員 大臣は次の予定があられるかと思いますが、最後にもう一つだけコメントをさせていただきたい点がありまして、これは、我が国においてはどうも高齢者関係に予算を使い過ぎているかなと。

 というのは、これは額的にという意味ではなくて割合の問題であります。諸外国、フランス、スウェーデン、イギリスなど、出生率が反転をしたり少子化の問題をある程度克服している国は、高齢関係と家族関係の予算の割合がほぼ三対一から二対一の間という現状でありますが、我が国は、高齢者の数が多いんだから多くそこに予算をかけようといったような考え方で、高齢関係と家族関係の予算の割合が何と十対一ということです。割合という意味でいうと、高齢関係に予算をかけ過ぎている。その結果、若者が非常に苦しい状態、少子化も進む、翻れば高齢者対策の予算も捻出しづらくなる、こういう矛盾でありますので、ぜひその点に力を入れていく。そういった中で、財源を手当てしていくには、私は、相続税など資産課税の見直しとか新たな財源を手当てして、しっかりと対策に集中投入していくということが必要だろうと思っております。

 もしお時間であればもうこれで結構でございますが、その点、コメントがあれば。では、指摘にとどめさせていただきます。ぜひ、この少子化対策、新たな財源を見つけて集中的に投入する、フランスの教訓なども生かしながら積極的に取り組んでいただきたいと思います。どうもありがとうございました。

 それでは、もう一つ伺わせていただきたいのは、増田大臣にきょうお出かけをいただきまして、本当にありがとうございます。

 新聞報道で、これは一つ、八月三十一日の日経新聞であります。この中で若干気になったことがあるので一問だけお尋ねをいたしますけれども、大臣のインタビューのお答えが、格差是正のためには、どうも公共事業には余り効果がなかったので頼らない、ほかのやり方でやりたいんだという御趣旨の発言があったように記憶している。これは新聞だけですので、私がどこまで正しく理解しているかという問題はあります。ただ、若干私は違和感を覚えたところがあって、地元の事情も御説明し、もし大臣からコメントがあればいただきたいというふうに思います。

 鳥取県の場合、私の地元の米子市、これは、鳥取市、県庁所在地から百キロしか離れていないのに、高規格道路の整備がおくれて二時間半かかるといった状態であります。地元に企業誘致に成功した企業に聞いても、道路整備がおくれていることによる物流コストが高いという問題は大いに深刻で、場合によっては私の地元に来ない場合もあり得たという話もよく聞くところであります。

 いろいろな意味で、首長さんの努力で、自立して地方は競争するんだ、企業誘致競争の時代なんだ、こういう話もあるんですけれども、道路整備のおくれといったようなものは、これは競争条件の大変なハンディになっているというふうに感じます。現に、高速道路の整備率と有効求人倍率との間には、明確な相関関係が認められるように思います。要は、道路が整備できれば企業が誘致できて、雇用もふえて、自治体の税収もふえる、行政サービスもよくなる、さらにまた人が来てくれる、企業も来てくれる、こういったような好循環に行くか、全く逆な悪循環に陥るかといったような感じであります。

 いろいろな意味で、競争から逃げる気もありませんし、いろいろなハンディを負ったまま、地元の首長さんたち、地方の首長さんたちは大いに努力をしておられる。少しずつ成果は上がっていると思いますが、各地方において真に必要な道路、県内の主要都市を結ぶ高規格道路や県内外の主要都市を結ぶ高規格道路、これはしっかりと国の責任で整備をしていただきたい、これこそがまさに格差是正そのものじゃないかと私は感じるところであります。

 この辺、高規格道路の整備など最低限の競争条件についてはそろえてほしいという地方の切実な声にはどうお答えになりますでしょうか。よろしくお願いいたします。

増田国務大臣 今先生お話がございましたとおり、鳥取は高速、高規格道路の整備が大変おくれている地域でございますし、企業誘致などでも、企業側もそうした基盤整備について大変強い関心をお持ちになっている、そのあたりが決め手になる場合が大変多いわけでございます。

 社会資本整備、公共事業について、当然、その意味合いというのは大変大きいものがございますし、私が新聞のインタビューで申し上げましたことは、前後いろいろあるんですけれども、やはり知事時代の経験から踏まえましても、ずっと、平成四年ぐらいからですが、景気対策も含めて大変大きな量の事業を実施したことが財政を非常に疲弊させた。したがって、これからまたもう一度、それだけの量を繰り返しやるだけの実質的な財政的な体力が今はないということも事実でございますので、その点は十分に踏まえる必要があるという趣旨でお話をいたしました。

 私も、今先生の方からお話がございましたとおり、地域再生、地方再生の中で、こうした公共事業や社会資本整備の意味合いというのは大変重要な部分があると思っておりますので、今お話ございましたとおり、真に必要なもの、こうしたものにはきちんと対応した上で地域再生を図っていく必要がある、このように考えております。

赤澤委員 安心いたしました。ぜひ地方再生に力を入れていただきたいと思います。

 これで終わります。どうもありがとうございました。

中野委員長 次に、大塚拓君。

大塚(拓)委員 自由民主党の大塚拓でございます。

 本日は、国民生活という観点から、経済財政を中心に、後ほど増田大臣にも御質問をさせていただきたいと思っております。

 最近、与党・政府あるいは新聞紙上の議論を見ていましても、税収を幾らふやすか、こういう議論が大変かまびすしくなってきているのかな。前提として、二〇一一年のプライマリーバランス達成ということは揺らぎがない。十四・三兆円の歳出削減も、これはきっちり達成をしていくという条件の中であっても、やはり社会保障の伸びというものがどうしても吸収し切れないところがあるんではないか、こういう議論だというふうに認識しておるわけでございますけれども、ちょっと最近聞こえなくなってきて残念に思っておりますのが、経済成長に関する議論でございます。

 経済成長率をどういうふうに置くかという前提によって、当然、所要増税額というものが変わってくるということでございますから、この経済成長という観点はぜひ忘れずに、これは、ただ黙って見ていればいいというものではなくて、努力をしなければ成長率は伸びていかないという側面があると思いますので、しっかりそういう観点を忘れずにやっていただきたいなと思っておるところでございます。

 成長率といいますと、これまで主に潜在成長率というところが論点になってきたんだろうと思います。資本ストック、労働力人口、それから技術進歩と、なかなか短期に成果の上がりにくい課題も多い中で、二〇一一年にプライマリーバランスを達成しなければいけないということだと思うんですが、潜在成長率という中でも、確かにサービスセクターの生産性の向上とか、まだ論点が残っているところもあると思うんです、議論を詰める必要があるところもあると思うんですが、きょうはもうちょっと目先の話で、消費というところに着目して議論をさせていただきたい。

 景気というと、まず設備投資ということが出てくるわけでございますけれども、設備投資というものは、このところ若干弱含んでいる側面もあるものの、おおむね順調に推移をしてきている。ただ、気にしておりますのが、その設備が、なかなか消費の方に火がついていかない、回っていかない。

 図をお配りしておるわけでございますけれども、この資料の一ページ目、一番左上の図でございます。これは月例経済報告、内閣府の十月の報告のコピーでございますが、消費総合指数、昨年からずっと横ばいが続いてきている。そういう中で、このまま消費が本格回復しないで、そのまま景気回復が終わってしまうということになるというのが一番懸念をしているところでございます。

 そこで、まず最初に、最近、消費税を増税しなければいけない、こういう議論がまた再び出てきているわけでございます。与党の議員の中で、未来永劫消費税を上げなくて済む、こういうふうに思っている議員は恐らく一人もいないんではないのかな、こういうふうに思うわけでございますけれども、恐らく問題は、どのタイミングでどれだけ上げるのか、そういう問題なんだろうと思うんですね。潜在的な経済のポテンシャルを最大限に引き出して、所要増税額というものを最小限に抑えていく、そういうタイミングはどこなのかな、こういうことを見出していかなければいけない、そういう議論なんだろうと思っております。上げるのか上げないのか、決してこういう議論ではないはずであると思っております。

 そこで、大臣にちょっとお伺いしたいのが、消費がずっと横ばい続きである、こういう消費が弱い中で消費税を不用心に上げてしまうと消費に水を差すんではないか、こういうことなんでございますね。消費税の増税というものが消費に与える影響というものをどういうふうに見ていらっしゃるかというのをちょっとお伺いしたいと思います。

大田国務大臣 先生御指摘のように、消費が昨年の夏からやや落ちておりまして、ことしに入って少し持ち直したんですけれども、まだどうも天候要因に左右される弱さを持っておりまして、六月、七月、落ちました。八月、持ち直しましたけれども、六月、七月を取り戻すまでには持ち直してはおりません。その背景に、なかなか雇用者所得が伸びないというようなことがありまして、強さを欠いているという状況がございます。

 お尋ねの消費税増税との関係でございますが、消費税を引き上げたときの経済に与える影響というのは、先生も御指摘のように、そのときの経済状況によって変わってまいりますので、なかなか一概には申し上げられません。

 内閣府のモデルの中では、消費税を上げることで手取りの所得が減る、実質可処分所得が減ることで影響を与えるという構造になっております。ただ、先生の御質問は、恐らく足元でどういう影響があるんだろうかと。

 足元で見ますと、消費税増税の前の駆け込み需要があり、その後の反動減があるということがこれまでの経験では出てきておりますので、そこは、きめ細かく足元の動向を見ながら判断していく必要があると考えております。

大塚(拓)委員 ありがとうございます。

 懸念しているのは、せっかくいい循環で来ている経済のサイクルがぱたっと途切れてしまうんではないのかなということであるわけでございます。

 今、御答弁の中で、雇用者所得がなかなか伸びない、こういうことがございました。なぜ雇用者所得が伸びないのかな。

 これも配付している資料にちょっと載っておるわけでございますが、一ページ目の下段の真ん中、実質雇用者所得でございますね。これも昨年、そのまた前からずっと横ばっているという感じなんだろうなと思っておるわけでございますけれども、一方で、こういう資料を見てみますと、失業率というのは若干微増してきたけれども、八月でも三・八%、そこそこタイトであると言えるんだろうと思います。また、経団連の調査、これは大企業に偏っているという説もあるかもしれませんが、初任給などは上昇をしっかり続けてきている。パート労働者の賃金なんかも実は伸びているんだろうと思うんですね。

 したがって、雇用者所得が上昇してもいいような要素というのがいろいろ出てきている。ただ、その中で、全部足し上げて総合的に見ると伸びていない。この要因がどこにあるんだろうかということをちょっとお伺いしてみたいんですが、私は、昨年あたりから始まっていると言われている団塊の世代の大量退職、これが、全体で見たときの雇用者所得が伸びていないという要因になっているんではないのかな、一つの要素になっているんではないのかというふうに考えております。

 すなわち、やはり年功序列型の賃金体系をとっている企業が日本の中で非常に多いわけですので、高齢者、年齢の高い従業員ほど高給取りであるという一般的な構造がある。その中でボリュームゾーンの団塊の世代が高給取りになって、それが退職していく。そのあいた分を若年労働者が埋めていったとしても、平均の一人当たりの賃金で見ると、恐らく下がっていく、こういうことがあるんではないのかなというふうに考えておるわけです。

 この人口動態要因というものを、大臣、どのように見ておられるか、お聞かせください。

大田国務大臣 御指摘のように、昨年の夏から賃金が伸び悩んでおります。これが消費伸び悩みの背景にもなっておりまして、私どもも、なぜ賃金が伸びないのかというのは幾つかの角度から分析を試みております。

 先生御指摘のように、労働需給は割と逼迫しておりまして、人手不足感も一部には出てきておりますし、初任給も上がってきている。しかし、賃金にはね返りません。その背景として、御指摘のように、団塊世代の退職、団塊世代が二〇〇七年で六十歳になり始めておりますので、リタイアが始まっております。この影響はあるだろうと考えております。

 実際、分析しましても、その影響が出てきております。賃金が高い状態の団塊世代がリタイアして、若い従業員に置きかわることで、平均賃金が下がっていく。団塊世代がそのまま継続雇用をされたり、別のところに再就職というケースはあるんですけれども、決して少なくはないんですが、やはり賃金は下がっておりますので、その影響は確かにあると、分析しても出ております。

 ただ、これですべてを説明できるわけではありませんで、もちろん、全体として非正規雇用がふえているといった要因もございます。労働需給が逼迫しておりますので、これが次第に賃金にはね返ってくるという、このルートは切れていないと見ておりますけれども、今後の賃金動向は十分に注意して見てまいりたいと考えております。

大塚(拓)委員 確かに、団塊要因だけで全部説明することはできないんだろうと思うわけですけれども、非正規雇用についても、非正規雇用の従業員の賃金自体は恐らく伸びてきているところがあるんだと思うんですね。それから、労働市場全体でのパイも膨らんできている。それから、正規と非正規、どっちの方が伸びるペースが速いかというのはあるかもしれませんけれども、非正規雇用が正規に順次移り変わっていくというような動きも一部では見られるんだろうと思いますので、そのあたり、しっかり関係性を分析してやっていっていただければなと思っておるわけでございます。

 次に、団塊の世代が大量に退職をしていく、そうすると、労働市場から出た人というのがどんどんどんどんこれからふえていくわけですけれども、その退職者というのがどういう消費行動をとっていくのかな、こういう議論をちょっとさせていただきたいと思っております。

 退職者は、基本的にこれまで、お給料をもらって、その中で生活を組み立てるという行動パターンだったのが、仕事をやめると、これまでの貯蓄、それから一時金でもらった退職金、プラス毎年受け取っていく年金、こういうものの中で生活を組み立てていくということに消費行動が変わるんだろうというふうに思いますが、特に最近、やはり年金とか介護とか、老後の生活に対する不安が高い。制度に対する信頼感が低下しているというのもあると思いますけれども、こういうところへの不安が非常に高くなってきている中で、とらの子の貯蓄、退職金というものをできるだけ取り崩さないで、ぎりぎりまで、老後資金、幾らかかるかわかりませんからとっておこう、こういうふうに考えるんだろうと思うんですね。

 同時に、とらの子の貯蓄ですけれども、金利が非常に低い、低金利がずっと続いております。そうすると、昔であれば、退職金の利回りだけでもある程度、レジャーとかそういうところに回す余裕もあったのかもしれませんが、今退職金をベースに、使ってしまうとそのまま元本が減っていってしまう、こういうことになっているんだと思うんです。そうすると、自然、人間、毎年のフローですね、年金、この中で何とか生活費は抑えていって、とらの子の預金は、不安も将来ある中、ずっとできるだけとっていこう、こういう消費行動になっているんではないのかな。これが消費を抑制している要因としてあるんではないか。

 そしてまた、退職者がどんどんふえていくということを考えますと、この要素が経済全体に占める比率というのはどんどん高くなっていくんじゃないのかな、こんなふうに思っておるんですね。

 そこで大臣にお伺いしたいのは、低金利、金利が低いということによって、消費者が消費を抑制する、こういうところについてどのように見ておられるかというところをちょっとお伺いしたいと思います。

大田国務大臣 今先生御指摘の、将来不安ですとか金利が低くて貯蓄がなかなかふえていかない、そういうこれからの見通しが消費にどういう影響を与えるかというのは、経済データの限界で、経済データではなかなかとらえ切れない点はございます。

 団塊の世代も、これまでのところは、旅行ですとか交通、通信などで消費の伸びを支えてはおりますが、今リタイアが始まったところですので、今後の動きは十分に注意して見ていかなくてはいけないと思っております。

 特に、金利ということでいいますと、高齢者は主に貯蓄を取り崩して生活する要因が大きいですので、金利が低いということの影響は、当然消費に影響を与えてくるだろうというふうに見ております。その点は、これからも十分見ていかなくてはいけないと思っています。

大塚(拓)委員 ありがとうございます。

 恐らく、低金利というのは消費にはマイナスに働いているんだろうと思うわけです。大臣も、なかなか定量的には出てこないところもあるのかもしれませんけれども、そういう御見解であると。

 そうすると、この低金利というのは、経済全体にどういう影響を与えているのかな。今、消費という面で見るとマイナスだとお話しになったわけですけれども、一般的に、金利が低いということは企業経営にはプラスだろう、こういうふうに見られることが多いだろうと思っております。当然といえば当然で、お金を借りて経営をしている会社が多い中で、支払い金利がそれだけ安い、金利負担が少ない、そういう経路を通じて、企業経営にはプラスに低金利が働いているんだろうと思われるわけです。しかしながら、では金利が低いということが企業経営にとってマイナスに働く要素はないんだろうかということをちょっと考えてみたいと思っておるわけです。

 すなわち、金利が低いということは、相対的に諸外国に比べて金利が低いわけですから、円が安くなる、円安に働く、こういう作用があると思うんですね。金利が低いことによって円安になる。円安になると、原材料等を調達している製造業等は、調達コスト、海外から原料が入ってくる、材料が入ってくる、資材が入ってくる、そのコストが、円安によって、円ベースで見ると高くなってくる。そういう資材調達コストが上昇してくる。こういうコスト面からの圧迫が当然派生的に出てくるんだと思うんですね。

 全体として見たときに、そういうプラスの要素とマイナスの要素、どっちが大きいと見るかということなんですけれども、少しブレークダウンして見てみますと、恐らく、輸出企業にとっては、一時ほど円安が企業収益のアップにつながるという状況ではなくなってきていると言われておりますけれども、さはさりながら、円安であれば、輸出促進という意味でプラスになってくるのかなと思うんですね。

 ただ、そこに納入している下請業者、直接輸出をしているわけではない例えば中小の下請業者、こういう下請業者というのは、最終価格がなかなか上がらないという、これはグローバルにそういう構造になっていると思いますので、なかなか最終の価格が上がらない中で、下請業者は当然、納入価格にも転嫁がなかなかできない。その中で、原材料コストだけがどんどん下から上がってくる。

 こういう形で、中小の下請といったようなところを中心にしわ寄せが行っているんではないのかな、低金利が円安という経路を通じて中小企業の経営にマイナスに働いているんではないのかなというふうに思っておるわけですけれども、そのあたりをどのように見ているか、経済全体としてもどうかというところをちょっとお伺いしたいと思います。

大田国務大臣 一般的に、先生も御指摘になりましたように、円安のメリットとしましては、輸出関連企業にとっては売り上げや収益を増加させるというメリットがございますが、一方で、内需関連企業にとりましては、コストを増加させて、それが収益を圧迫させるという効果を持ちます。

 今回の景気回復局面で見ましても、企業の業況判断を見ますと、輸出関連企業では、中小企業も含めて比較的好調である、高い水準で業況判断が推移しております。この背景には、御指摘の為替が円安方向で推移したということがあると考えております。

 一方で、それ以外の業種では、業況判断が比較的低い水準にございます。この背景は、やはり先生御指摘のように、円安のもとで原材料価格をなかなか販売価格に転嫁できないということがあると考えております。特に、最近の原油高、それから素材価格の上昇、これを最終価格に転嫁できないということが、最近、中小企業の収益圧迫要因として徐々に顕在化してきております。

 為替レートの影響は、業種ですとか企業規模によっても異なりますので、なかなか全体を一言では言えませんけれども、為替レートの動向等、それが業種別、企業規模別にどういう影響を与えるかはつぶさに見ていきたいと考えています。

大塚(拓)委員 ありがとうございます。

 今、原油、素材の上昇ということがあったわけですけれども、これは日銀のマターになると思いますから御質問はしないわけですけれども、日銀がずっと金融緩和を続けてきている。この影響によって、なかなか実証するのは難しいわけですけれども、市場関係者等々の間でまことしやかに言われているのは、やはり日銀の緩和した金融というものが原因になって、マーケットにさまざまな影響が出ているわけですね。エマージング市場の株価が物すごい勢いで上がってきているとか、サブプライムの問題の背景にもそういうのがあると言われておりますけれども、間違いなく、原油市場にもこういう背景というものが何らかの形で影響を与えているというふうに思えるわけであります。

 特に、最近、サブプライムで株価が下がったりしているときに逆に原油が上がっているというところは、恐らく、行き場がなくなった少し余剰な資金が原油のマーケットの方に新しい収益を求めて流れているという傾向もあるんだと思うんですね。

 そうすると、なかなか、低金利、一般的には企業経営のためには金利は低い方がいいんだという議論があるんですけれども、いろいろな経路、円安であるとか、素材、原料、燃料の値上がりであるとか、そういうところを通じてやはり企業経営にマイナスに働いてくるところもある。長い目で見たときに、資源配分のゆがみというのが本当に経済全体にとってプラスになるのかマイナスになるのか、ここのところは慎重に見ていかなければいけないんだろうなと。

 いずれにしましても、経済全体、非常にダイナミックに動いているわけでございます。金利もそうでございますけれども、消費税一つ上げるという話にしても、消費税を上げることが消費を抑制的にするかもしれない、そのことによって、もしかすると最終的に必要な税収増、額というのはふえてしまうということもあるのかもしれない。あるいは、財政再建、当然しなければいけないわけですけれども、そのタイミングを踏み間違えると、ちょっと成長率が陰ってしまう、こういうことにもなるのかもしれない。非常にダイナミックに見ていかなければ、国民生活へめぐりめぐって影響が出るということになると思いますので、そこら辺、非常に慎重にやっていただきたいなと思っておるわけでございます。

 最後に、何かその点についてコメントがあれば。

大田国務大臣 ありがとうございます。

 日本経済、長く続いたデフレを今ようやく脱却していく重要な過程にあります。これが後戻りしないように、息の長い景気回復を続けていかなくてはいけないと考えています。それが、地域に波及する、企業から家計に波及するという、このおくれている部分を回復させていくことに何より重要だと思いますので、細心の注意を持って経済運営をしていきたいと考えます。

大塚(拓)委員 ありがとうございました。細心の注意を持って経済財政運営に取り組んでいただきたいと思っております。

 ここで、増田大臣の方に質問を移りたいと思います。

 きょうは地方再生担当大臣という形でいらっしゃるわけでございますけれども、地方再生ということを考えたときに、やはり自治体、地方公共団体の自助自立の精神というものをしっかり引き出すような形で政策を進めていかなきゃいけないのかな、制度づくりを進めていかなければいけないのかな、こういうふうに思っておるわけでございます。これは基本的に地方分権ということの精神であるとも思うわけですけれども、自治体自身、いろいろな努力をする。財政規律をしっかりするという努力をする、あるいは歳入をどんどんふやしていかなければいけない、こういう努力をする。

 そういう努力、あるいは創意工夫、こういうものを引き出すような制度づくりをしていくということが肝要なのではないかなと思うわけですけれども、その点について、岩手県知事も務めておられた経験なども踏まえてお伺いできればと思います。

増田国務大臣 今、自助自立のお話がございましたが、やはり地方分権の要諦というのは、それぞれの自治体が、今お話ございましたとおり、知恵や創意工夫というものをみずからの力として引き出して、そして、みずからの地域をきちんと地域経営していく、こういうことではないかというふうに思っております。

 私も長らく知事を務めておりましたけれども、そうした中で、やはり県民の皆さん方からいろいろ話を聞くと、確かに、行革にもっと取り組んでほしい、もっともっと自助努力を働かせてほしいというような県民の多くの声をお聞きしましたし、それから活性化についても、やはり同じように、いろいろな自治体としての努力を求められたことも事実でございます。

 ですから、これから地方再生ということを考えていくと、やはりまずそこを基本に据えていく。しかし、それではなかなか、今の財政力格差の中で非常に厳しい自治体は数多くございますが、そうしたところに補完的に、市町村に対しては県が、あるいは県に対しては国がどういう役割を果たしていけるのか、このあたりの国と地方の役割分担をしっかり踏まえながら地域をよくしていくということが必要ではないか、このように考えております。

大塚(拓)委員 ありがとうございます。

 なぜ基本的な精神を確認させていただいたかというと、気にしておりますのは、最近、地方税源の再配分の議論というのが出てきております。その中で、特に法人二税、法人事業税、法人住民税の人口による配分などの議論が結構出てきているやに聞いておるわけでございます。

 しかしながら、こういう再配分を進めていく中で、自治体の中にも、これまで努力をしてきた自治体とそうじゃない自治体というのがやはりあるわけですね。こういうこれまでの行財政改革とか歳入涵養努力といったものを見ないで、単純に、ここの自治体はちょっと余裕があるから余裕がない自治体に回そう、こういう発想で再配分を進めていくと、長い目で見ると非常に、これは努力をしてもしなくても同じなんだな、そういうモラルハザードが起きてきてしまうと思うんですね。一回モラルハザードが起きてくると、そこにどんなに税収の再配分をしていったとしても、砂漠に水をまくようなもので、地方が自立していくことになかなかつながっていかなくなってしまうということになるのを非常に懸念しておるわけでございます。

 そこで、きょう、二枚目の資料を配付させていただいたわけですが、これは都道府県の職員数の推移、平成九年度の職員数と平成十八年度の職員数、職員定数でしょうか、これの増減というものを比較して、ちょっとランキングしてみたものなんです。そうすると、行財政改革の努力、これほどにばらつきがあるかということが見えてくるわけでございます。

 一位が和歌山、一三・四%職員を減らしている。二位は東京都、これは最近、税収が余剰なのでそこから地方に回せばいいじゃないかと言われている地域でございますけれども、これは一二%。身を切る努力を大変してきている。

 それで、上位を見ますと、必ずしも余裕のある自治体だけではないんですね。一般的には結構苦しいのではないか、財政事情が苦しいと言われているところでもしっかり努力をしているところもある反面、下の方を見ますと、これはあえて名前は挙げませんけれども、苦しいから格差是正のために再配分が必要だと言いながらなかなか努力をちゃんとしていない、こういう自治体もあるんだということがわかるわけでございます。

 これは、職員数というのは一つの参考になる指標かなと思って取り上げたわけでございますので、これがすべてだとは思いません。思いませんけれども、やはりこういう視点というものを税源の再配分の論議の中で取り入れていく。努力した自治体は報われる、そうじゃない自治体はもっと努力を求められる、こういう観点を入れていく必要があるんじゃないかなと思うわけですけれども、これは総務省の方からお願いできればと思います。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 地方団体間の財政力格差につきましては、地方税の税源そのものが地方間、地域間に偏在しておりますので、地方税の税収の偏りを税制だけで是正するのは限界がございまして、産業の振興など地方全体の活性化を図り、その上で税の果たす役割を考えていくことが重要であろうかと考えております。

 お話にもございましたとおり、地方団体は、職員の削減努力あるいは企業誘致などの税源涵養努力、そしてまた税収確保のための努力を重ねてきておるところでございますが、一方で、近年、地方法人二税の税収が急速に回復していることなどを背景といたしまして、地域間の税収の差が広がっており、財政力の差が拡大する傾向であることもまた事実でございまして、偏在の是正に取り組むことが必要であると考えております。具体的にどのような方法で偏在の是正を進めていくかについては、さまざまな考え方がございますが、今後、議論を進めていく必要がございます。

 総務省といたしましては、地方消費税の充実とあわせまして、法人課税の国、地方の配分のあり方を見直すなど、税体系全体の中で偏在を是正することを基本として検討してまいりたいと考えているところでございます。地方税の基本原則は受益と負担の関係でございまして、これを分断することとなるような方策につきましては、一方で地方団体の税源涵養意欲を損なうといったようなことにもつながりますので、そういうことも考えながら、地方団体の理解を得ながら進めてまいりたいというふうに思っております。

大塚(拓)委員 ぜひ増田大臣も、この議論の中で、税の理論、プラス、税が持っているインセンティブの効果というのもあると思いますので、そういうところもしっかり含めて考えていただければなと考えております。

 時間でございますので、終わります。ありがとうございました。

中野委員長 次に、大畠章宏君。

大畠委員 民主党の大畠章宏でございます。

 過日、各大臣の基本的な考え方を伺いましたので、そういうものを踏まえて質疑をさせていただきます。

 本来でありますと、この内閣委員会は七人の大臣が所管していますので、普通の委員会は一人の大臣に対して大体一日七時間ぐらいかけるので、したがって、七日間ぐらいやったらどうか、こういう話もしたんですが、しかし、九月十日から始まりました国会も、途中で総理大臣が辞任をされるということで、約一カ月間おくれて今の時期になってしまいました。あと二週間で国会も閉会ということで日程が詰まっていますから、村田筆頭ともいろいろ話をしながら、まあここのところはおおよそ七時間ぐらいの質疑でよしとしようじゃないか、こういうことで、本当は各大臣に七時間ぐらいずつそれぞれの所管についてしっかりと質疑をしたいところでありますが、そういう状況から、残念ながら、きょう一日となったわけであります。

 そこで、まず、きのう、こういうお話を質問しますよというのは一応事前に通告いたしましたが、その通告だけでも非常に単調な質疑になってしまいますから、その前に、これは事前にお話ししなくてもお答えできるものであります。

 きょうは、地域に大変関係する大臣がおられます。増田大臣も地域の知事として活躍をされましたし、そういう意味で、この六年間、小泉改革というものがございまして、地域経済あるいは国民生活に大変大きな影響を与えました。この原点というのが、アメリカを席巻しています市場原理主義をすべての分野に波及させようという思想があったと思うんですね。しかし、この思想が、結局、地域経済や国民生活に大きな不安を与えて、さきの参議院選挙でも自民党が大敗をするということになりました。そこで福田内閣が誕生をして、福田さんは自立と共生という旗を掲げられました。

 そこで、各大臣にお伺いしたいんですが、小泉さんが提唱した市場原理主義、いわゆる小泉改革というものについて、皆さんはどういう御認識であったのか、まず最初に、各大臣からそういう御認識を伺いたいと思います。

泉国務大臣 これまでの小泉改革について、先生の御指摘のように、市場原理主義だというお話がございました。一方では、景気が回復し、雇用の拡大も、地域によって格差はございますけれども、一応進んでおる。こうした中で、我が国のこれからの人口減少とか高齢化、こういうことを考えてまいりますと、非常に大きな構造的な問題があるという認識を私自身もいたしております。

 しかし、これから先、福田総理が掲げられましたような自立と共生というのは、みんなが、厳しい中でも互いに手をとり合って、日本全体の安定と発展に尽くしていこうという考え方でございまして、このことは大変重要な指摘だと思っております。よく言われますように、日陰の部分があることも事実でありますので、そういうところには細かい配慮をしながら、より安定した生活を国民に受けていただけるように努力をしてまいりたい、そのことが重要なことだと思っております。

岸田国務大臣 小泉政権における市場原理という物差し、我が国が自由主義経済をとっている以上、市場原理というこの物差しも大変重要であると私も認識をしております。

 ただ、日本の国はさまざまな政策課題があります。社会保障、教育、その他さまざまな政策課題、すべて一つの物差しを当てるということには多少無理があったのかな、そんなことは感じております。また、地域におきましても、いろいろな地域があり、いろいろな課題があります。それもすべて一つの物差しで考え方を整理しようとしたところ、少し無理もあったのかな、そんなふうに思っております。

 やはり物差しの使い分け、丁寧さ、こういったものは求められているのかなと思っております。自立と共生、福田内閣におけるしっかりとした物差し、そして物差しの丁寧な使い分け、こういったことは心がけていかなければいけない、そのように感じております。

大田国務大臣 九〇年前後から、日本経済を取り巻く環境が非常に大きく変わったんだろうと思っております。IT化が急速に進み、アジアが急成長する、国内では高齢化が本格化していく。その中で、どうやって日本経済の持てる力を発揮できるようにするかというのは大きい問題で、小泉改革というのはその第一歩だったんだろうというふうに思います。

 公共事業に過度に依存して経済を立て直すという経済運営をやめたり、あるいは行政改革などでなるべく官から民へ行く、国から地方へという、私は、市場原理主義ということではなくて、市場を使える、よく使えるものは使っていこうという意味の改革だったんだろうというふうに思っております。

 それは、ある程度うまくいって、ようやく九〇年代の長い低迷を乗り越えて、グローバル化やIT化や人口減少に対応できる経済の仕組みができてきたように思います。まだ道半ばです。

 しかし一方で、経済の新陳代謝というのは当然ひずみを伴います。それが厳しい地方の経済であったり、あるいは非正規雇用の増加であったりしたんだろうと思います。ここに対して政策的にしっかりと手を打っていくということは今の喫緊の課題だと思います。福田内閣では、そういう意味で、地域経済の立て直しですとか、あるいは非正規雇用の方を職業訓練するとか、そういう点は早急に取り組むべき課題であると考えております。

増田国務大臣 小泉構造改革でありますが、これには、我が国が人口減少時代に本格的に突入した、そしてそれに伴いまして年齢構成が高齢化に急速にシフトしていっているという大きな社会構造の変化、それからまた、もう一つはグローバリズム、こうしたことがありまして、そういったことから生ずるさまざまな課題に対応していかなければならない、こういう背景があったんだろうと思います。現実に、そうした改革を進めていく中で、いろいろ御指摘いただいておりますが、例えば地域間の格差等さまざまな格差が生じてきた。そのことからも目を背けることはできない。そうした問題を直視して、丁寧に解決を図っていくことが必要であろうというふうに思います。

 今後の、特に地方政策を立案するに当たって、私は、地域の視点というのが大変大事だろうと思うんですが、その言わんとする意味は、地方の格差と言われている背景にも、その地方というものがいろいろ多様化している。全部ということではなくとも、地方でも、中核都市、あるいは農山漁村、さらにはいわゆる限界集落と言われているような過疎地域、そういうところで丁寧に処方せんをつくっていかなければ、生じてきたこうしたいわゆる格差の問題に対応できないんではないか、このように考えているところであります。

 私は、大きな構造改革の方向性ということによって生じてきた問題に、いかにきめ細かく地域の目線、視点を持って答えを出していくか、このことに、いわゆる自立と共生というのも一つの理念であると思いますが、丁寧に答えを出していきたい、このように考えております。

大畠委員 それぞれの大臣から率直な御意見をいただいたと思います。個性もまじっていた感じがしますね。それぞれの政治家としての個性のまじった答弁をいただきました。

 言ってみますと、増田大臣は地域の自治体の実態をよく御存じでしょうから、大田大臣にはもうちょっと、マクロな論議も大事だけれども、農業でたった百円もうけるのも大変な苦労をしているんです。百円以上の値段をつけると売れないというんですよ。ナスでも何でも、ビニールの袋に入れて九十二円とか九十五円とかでないと売れない。農家の方が百円稼ぐというのは大変なんです。

 ですから、マクロでがんがん押して、何とかうまくいってきたんじゃないかというけれども、地域では非常に、倒れて、自殺をし、そして今、何か子供さんも自殺がふえてきているみたいですね。そういう大まかに方向性さえぎゅっとやればいいだろうというんじゃなくて、地域の実態をよく見ていただかなきゃならない。たまたま隣に座っておりますから、増田大臣ともよく話をして、実態はどうなのと聞いて、やってもらいたいと私は思います。

 それでは、御連絡した予定の質問に入りますが、まず泉国家公安委員長に、食品安全の担当もされておられますから、お伺いします。

 泉大臣の所信の資料を見せていただきました。凶悪犯罪が多くなってきたのでしっかりと頑張って世界一安全な国をつくりたいとか、いろいろ、外国人犯罪の問題もありますし、北海道のサミットの話もありました。交通事故防止対策もございました。「警察職員の規律を徹底し、警察改革の一層の推進を図ってまいります。」という文言も入っております。食品安全も入りましたし、原子力、さまざまな分野で大変だと思うんですが、一番大事なのは、末端のといいますか、地域で頑張っている警察官なんです。

 中央の警察庁がどんな形でいくか、これも大事かもしらぬけれども、末端の警察官がどんな思いで町を巡視してやっているかということをよく国家公安委員長は把握してもらわなきゃならぬ。ここに村田前国家公安委員長も、ちょっと今席を外していますが、やはりそこら辺が全体的にこれまで不足していたんじゃないかと私は思うんですね。

 だから、国家公安委員会をやりますよ、それで状況が集まってきて、それについて議論をして、公開をされています。ただし、どうも末端の警察官の思いは全く、各県に公安委員会があるからそっちの方だというけれども、そうでもないんですよね。どこかでひずんできたんです。後藤田さんが警察刷新会議というのをつくってリポートを出した、しかし、どうもそのリポートのうちの都合のいいところだけやってお茶を濁そうという感じがして、抜本的な警察の改革というのはまだできていないんじゃないかと私は思うんです。

 そこで、何点かお伺いしたいと思うんですが、これは小さな話といえば小さな話かもしれませんけれども、ほころびというのは小さなところから出てくるんですよ、大きな問題は。

 例えば、新聞紙上を最近にぎわせました、安く納入させ倍額販売とかいう、警察庁所管法人の標章用シールというのが問題になりました。この中身を見ると、一九九一年の自動車保管場所標章シール製造が始まったときから、独立法人国立印刷局と凸版印刷の二法人に独占されているということが判明した。印刷局が十六府県、凸版印刷が三十一都道府県から受注、これは日本管理技術協会が作成した一覧表に基づいて、当初は随意契約で発注し、納入は一枚三円四十八銭で、販売は六円九十七銭、差益は四千万円。一枚八十円だが、市民には五百円で交付している。

 これは小さな、国家公安委員長からすれば何を聞くんだという話かもしれぬけれども、こういうところからきちっと締めていかなきゃならないんです。私は、こういうことが新聞紙上に躍るような体制では困ると思うんです。このことについて、泉大臣は、公安委員会では多分こういう話は報告はないでしょう。しかし、一事が万事というんです。何でこんな警察関連のところから新聞ざたになるような話が出てくるんだ。

 これは国家公安委員会で報告がございましたか、こういう話は。

泉国務大臣 私、この職を拝命いたしまして、どうやって二十九万警察官職員が社会的な使命を認識して、平和な、そして安全な市民生活を守るか、このことを常に考えてまいった次第でございます。国家公安委員会が毎週木曜日に開催されるわけでありますが、その席でも各委員からは常にそうした発言が繰り返されておりますし、委員の先生方もほぼ毎日警察庁においでをいただいて、状況把握に努めていただいておると承知をいたしております。

 今、たまたま一つの例として保管場所標章の件についてお話がございました。こうしたことが新聞ざたになるということは、まことにこれは残念なことであり、厳に慎んでいかなければならないと思っております。

 国家公安委員会としては、今、事実関係の調査や対応において誤りがないようにということで、事件が報じられまして約八日間ほどたっておると思いますが、そうした観点を担当の方に伝えておるわけでございまして、これから事実関係の報告を受けながら、国民の信頼を損なうことがないようにしっかりと督励をしてまいりたいと思っております。

大畠委員 今、政治家もしっかりしろというので、一円以上の出費についてはきちっとしようというので国会でも論議されています。これは、警察官であれ、我々政治家であれ、総理大臣であれ、だれであれ、きちっとしなきゃならないんですよ、日本人として。私はそう思うんです。

 ましてや、人を逮捕する権限がある警察の機構の中で、今、元警視総監ら六人が、日本交通管理技術協会、全国にこういうふうにして発注しろよという一覧表をつくって配っているところに天下っているんですよ。それから、凸版印刷にも結果的には天下っていますね。何となくそこにアリの巣ができているんじゃないか。やはり、そういう機構は一新というか刷新してもらわないと。

 後藤田先生がおっしゃった、後藤田先生はもう警察内部は知り抜いていて、国家公安委員長もされましたよね、たしか。だからあれだけのものを出したんだけれども、どうも精神がまだ引き継がれていない感じがしますね。あの発端は、雪見酒問題でしたよね。国民の生命財産を守る警察官が中央の警察庁の幹部を接待するのを優先したということですよ。こんなことは許されないことなんです。

 私も何回かその話はさせていただきましたが、泉国家公安委員長、公安委員長になられたんですから、権限があるんですから、それを十二分に発揮して、自分の国家公安委員長時代にこういう問題を一掃するということをぜひ宣言してください。

泉国務大臣 警察改革の発端となりました、今先生のお言葉でありますと雪見酒、こうした士気の緩みと申しますか、こういう実態は、本当に許せない、まさに国民の警察に対する信頼を損なう最たるものであると私もきっちりと受けとめさせていただいております。

 御指摘の案件等々につきましても、国民に疑惑が招かれることのないように、しっかりと今後とも努めさせていただきます。

大畠委員 ぜひそういう姿勢でやっていただきたいと思うんですね。

 それから、もう一つ警察問題で、私もここ四、五年かかわってきた問題について指摘をさせていただきます。

 その前に、これは二、三日前の新聞ですか、食品偽装に関する社説がありまして、そこにこんな言葉が入っているんです。赤福の問題でもそうだけれども、偽装の手口が違うが、「消費者にはわからないはず」とたかをくくった姿勢は同じだと。食品問題なんですが、しかし、警察内部にも同じような発想の人がいるんですよ。捜査上の機密だからこれはだれにも知らせなくて済むんだ、そういうことで捜査費を、にせの領収書を書いて、内部で保留して、それを使ったという経緯がありまして、ここが発端だったんですね。それで、これでは警察官が自殺しているんです。これは国家公安委員長、後で周りから聞いたかもしれないけれども、北海道から始まったんです、これは。

 二〇〇三年、北海道警察旭川中央署の捜査報償費、これは協力者に対する謝礼金ですよね。支払い書類と裏帳簿が、マスコミに内部通告があって明らかになった。釧路本部長の原田さんが実名記者会見を行い、その実態について告発が行われました。同じく、五月にテレビ愛媛がにせの領収書が使われていましたという報道を行い、さらには関連するにせのゴム印まで発見されたんですね、署の中で。そこで特別監査が始まりますが、書類は黒く墨塗られていて、聞き取りでも上長が同席するなど、疑惑隠し、監査妨害と批判が市民から起こりました。

 二〇〇五年一月二十日に、愛媛県警の仙波巡査部長が実名で記者会見を行って、告発をいたしました。その四日後に仙波さんは地域課通信指令室へ配置転換の内示を受け、二十七日には発令された。私もそこへ行ってきましたよ。ほかの人は忙しくしているんだけれども、一人だけぽつんと何の仕事も与えられない。そうしたら、いや、忙しくしていましたというので、警察庁の人が後で一日の仕事ぶりを持ってきますと私にきのう言いましたけれども、私が見る限り、そして仙波さんから聞いた限りは、何の仕事も与えられません。毎日お城、松山城を見るか壁を見ているかだ。何もないんだ。こんなひどいことはないじゃないかという話をして、結局、裁判に訴えたんですね。

 そして、この裁判、ことしの九月十一日、松山地裁は、配置転換は報復として行われたものと推定され、違法である、県警本部長の関与も否定できない、県に対して百万円の賠償命令を下す、こういうことになったわけでありますが、どうやらこの問題についてはおかしいということで、国家公安委員会にこういう報告はございましたか。

泉国務大臣 最初に取り上げられました北海道警察等の不正経理の問題については、大変これまた国民の信頼を損なうことが大であったということで、今日まで必要な対応をさせていただいておりますし、まことに遺憾なことであったとおわびを申し上げなければならないと思っております。

 愛媛県警の問題につきましても、私が赴任いたしまして以来、警察として私の方にいろいろな説明がございました。配置がえ等に伴う精神的な苦痛による損害賠償が認められたというふうに聞いておりまして、愛媛県警にとっては大変厳しい内容であった、こう受けとめております。

 最後にお尋ねになりました、判決の内容について国家公安委員会に話が来ておるか、こういうことでございますが、判決直後の九月十三日の国家公安委員会において警察庁から報告を受けたところでございます。

大畠委員 公安委員長、これはもう公安委員長のときに、泉大臣のときに解決してくださいよ。私も、北海道へ行ってみたり、長崎へ行ったり、愛媛へ行ったり、また静岡、いろいろなところへ行ってきました。私は二十年前県会議員をやっていたんですが、そのときの県警の知り合いの人がいて、もう退職していますけれども、あるというんです。実際にやっているというんです。ただ、では、来て言ってくださいよと言ったら、もう勘弁してくれと。

 だから、これは国家公安委員長、「過ちて改めざる、是を過ちと謂う」。警察が一つうそをつくと、結局、二重三重のうそをつくことになるんですよ。だから、一回やはり正直に、問題だった、やっていたということを言えば、日本の警察はまさに心身ともに健全になるわけですよ。ところが、自分で何となく胸の中にもやもやしたものがあれば、訓示するときにおかしくなるんじゃないですか。

 私は、泉大臣のときに、大畠議員からも指摘があった、もうみんな正直に言ってくれ、そして、この際こういうのは一掃しようと。この裁判についても、百万円になったんですから。そういう裏からいろいろ言わないで、泉大臣が考えているんだから、私と話をしているんだから。

 だから、泉大臣として、この際、僕の大臣期間中にこんなのは一掃させてくれ、もう二度と大畠議員からこんな指摘を言われるのは嫌だということで、これはもう裁判を受けて認めて、全警察に対して、これまでの過ちがあれば全部是正せよ、そして、今後一切やらない仕組みをつくれ、大臣、そう発言してくれませんか。決意を。

泉国務大臣 不正経理が判明した警察においての対応は、関係者の処分でありますとか損害額の返還、再発防止策、こういうことをもう既にやらせていただいておるわけでありまして、警察本部長に対する処分、減給などの処分等につきましても、この事案の影響の大きさを踏まえて対処してまいったわけです。

 今先生御指摘をいただきましたように、会計経理の適正化あるいはそれに絡む問題等につきましては、こういう事態が再発しないように、国家公安委員会としましても、会計経理に限って見ましても適正化を含めた警察改革を一層推進すると、既に警察庁に指示をいたしておりまして、この姿勢をより強めていくということは、この場で、先生の前でお約束をさせていただきたいと思います。

大畠委員 私もこの問題を随分やってきたけれども、見せてくれないんですよ、これは捜査上の機密ですからといって。私も前にも一時間質問させてもらったけれども。黒のマジックで丁寧に全ページ黒く塗ったキングファイルを二冊見せてもらいました。何にもわからない。

 だれに見せるんだといったら、国家公安委員長か委員に見せるんですよ。一回、生のものを見てくださいよ。そして、それぞれのところを全部調べろ、住所と名前が実在するのか、そして、そこへ行って、本当に協力したために三千円なりもらいましたということですかと全部調べろと。これは国家公安委員長しかできないんです。私、国会議員じゃだめなんだよ、見せてくれないんだから。これは、国家公安委員長、後藤田さんはもう亡くなられましたよ、どんな思いでこの問題について刷新会議で報告を出したか。多分つらいですよ。後藤田先生ほど警察について精通し、そして正義感を持った人はいなかったかもしれない。これはどうもまだ引きずっているんです、全国的に。

 だから、これは国家公安委員長しか見られないんだから、国家公安委員しか見られないんだから、私たちが見せてくれと言ったって、黒塗りの、自衛隊のあれと同じですよ、内部機密を出せといったって黒塗りだ。そうしたら、さっき私申し上げたけれども、赤福と同じになっちゃうんじゃないですか。消費者にはわからないはずだ、国民にはわからないはずだ、国会議員にはわからないはずだ、そんなことで警察の内部が薄汚れていたら、日本の警察が泣きますよ。若い人が警察官を目指して、新たにことしも入ってくるんですから。だから、私はこういうものをこの内閣委員会で取り上げたくないんだけれども、ここでやるしかないんですよ、警察の担当者と話したってらちが明かないんだから。

 あとは国家公安委員長だけだと思うんですが、この問題に対してどういうふうに考えておられるのか、再度御答弁いただきたい。

泉国務大臣 再三申し上げておりますように、国民の信頼を失った警察行政というのはあり得ない、このことを私は強く思っておりまして、先生御指摘のような事柄は、各都道府県の公安委員会に対しても、きちっと整理をして対処をするようにこれからも強く要請してまいります。また、国家公安委員会としまして、検査院や監査委員の監査に当たっては、警察の職務を遂行する上において特段の支障がない限りはすべて内容を提示するべきである、このように考えておりますので、先生の御意向を踏まえて、そうした不正経理等がないように、あってはならないと思います、さらにこれからもやってまいります。

 既に前任、前々任の大臣もこのことについては大変御苦労をいただいたわけでありますが、さらに一層厳しく取り組んでまいることをお約束申し上げます。

大畠委員 後でまた同僚議員からこの話が出るという話でありますから、ぜひ大臣におかれては、今お話があったように、まずは裁判で、もうこれで決着をつけようというような決断をしてもらいたいなと思いますし、仕組みが悪いんですよ、仕組みが。だから、仕組みそのものを変えるように努力してもらいたいと思います。

 食品安全についても質問しようと思ったんですが、ちょっと時間がなくなりましたから、これについては、今申しましたように、安全担当大臣としても十分やっていただきたいという要請だけしておきます。

 それから、地方再生について増田大臣にお伺いします。

 泉大臣、もしもお忙しいようでありましたら、席を外していただいて結構でございます。

 増田大臣の所信も伺いました。地方の元気が日本の元気、いいですね。地方と都市がともに支え合う共生の考え方に基づき、豊かで持続的に発展する地域社会の実現が求められていますと。

 地方が主役の国づくりというけれども、今まで小泉さんはこんなことを言っていませんよ、だから、福田総理になってからなったのかなと思うんですが、地方が主役の国づくり、まさに総務大臣としての所信だと思うんですが、今までは地方がないがしろにされていたんです。国主導の、国の中枢の大きな声とか大きな組織、そういう大きなものを中心として、地方は切り捨てられていたんです。体でいえば、中央だけで血液を回すのがもう精いっぱいだからといって、地方の、末端の毛細血管は徐々に死んでいったんですね。これが今の実態ですよ。だから、地方が主役の国づくりというものを目指すということですから、増田さんも十分そこら辺は御存じだということでありますから、それに期待をしながら、何点か質問をさせていただきます。

 まず、全国都道府県議会議長会、これは、増田大臣も知事のときに県議会でいろいろお話があったでしょう。その中でいつも出てくるのは、国と地方の最終支出と租税収入の比率において生じている乖離を縮小し、国と地方の税源配分をまずは五対五として地方財源の充実を図ること。ここら辺も大田大臣とよく話をしてもらわないと話がつかないかもしれませんが。

 さらに、きょうの新聞を見ると、全国の都道府県の税収の黒字と赤字が出ましたね、三位一体改革。小泉さんは、三位一体改革でやるんだ、これこそ日本の国を再生すると言ったんだけれども、地方の方は、何かおかしいなと思ったけれども、結果的に整理してみると、半分ぐらいがとんとんか黒字、東京と神奈川は大黒字ですね。あとは、増田大臣のところも百三十億ぐらいの赤字でしたね。鹿児島とかあっちの方がひどかったんですかね、きょうはちょっと新聞を持ってきませんでしたが。

 これは、平均値でよければいいという話じゃないんですよ、大田大臣。みんな生きているんですよ、どこも。末端だって、手足だって生きているんです。心臓とかここら辺が生きればいいだろう、あと、農村部なんかは死んでもいい、ふるさとの方はどうでもいいというわけにはいかないんだ。だから、全国の都道府県のうち、大田大臣は先ほどおおよそうまくいっていますという話を自民党さんの質問にされておられましたが、結局、これはおかしいですよ。

 増田大臣、どうですか、三位一体改革というものは、地域の首長として、また総務大臣としてどういうふうにとらえていますか。

増田国務大臣 この三位一体改革でありますけれども、一つは税源移譲、それから補助金の廃止、そして三つ目が地方交付税の改革、こういうことであったんですが、やはり、自治体の首長としてこの三位一体改革についていろいろ期待感もありましたが、結果として、特に交付税の削減が大変きいてきた、こういう率直な思いを持っております。

 税源移譲して地方が自由に使える一般財源をふやす、この考え方はやはり今後の分権の考え方に沿うものだと思いますし、額も三兆円ということで余り大きな額ではありませんでしたが、そういった税源移譲が初めて行われたということについては、これは分権に向けての第一歩、こういう評価をしておりましたが、やはり補助金削減は地域によって非常に財政運営を困難にした。

 大都市は、税源移譲の結果、税収が上がりましたから、補助金削減を上回るだけの黒字になりました。今委員からお話ございましたようなことでしたけれども、多くの自治体でそこについてのやはりアンバランスが生じたということと、それから交付税の削減ということがその後に非常に大きな影響、財政運営を困難にしたという影響があった、ここは率直に私もそのように思っているところであります。

大畠委員 結局、小泉改革というのは、郵便局を民営化する、それだけで解散して、それも、衆議院で通ったにもかかわらず衆議院を解散して、強引にやったわけですよ。もしも郵便局を民営化するというんだったら、この地方の問題だって、四兆円、三兆円をちょろっとだけやるんじゃなくて、もともと二十兆円あったんですから、それを大胆に何でやらなかったのか。

 これはどうも、国のことを考えて、国の中央でも金配りができるという権限を残しながら、結局、地方を切り捨てる一つの三位一体改革ではなかったかと私は思うんです。自民党の議員の皆さんだって、地域の方へ行って聞くのは大体そんな声だと思う。国破れて山河ありというけれども、今は、山河破れて国だけあるような感じがするんです。これはちょっと極端ですが。

 ぜひ増田大臣には、地方の自治体のトップをやっていたんですから、大胆にやっていいんですよ。余り周りとの整合性とか何か考えると、またすぐ、きょうも大臣が入ってこられるとき、おつきの人がぞろっと六、七人いましたけれども、その人たちの話だけ聞いていたんじゃやはりだめになっちゃうからね。せっかく知事の現職の人が非議員でありながら大臣になられたわけですから、ぜひそれを生かしてもらいたいと思う。

 そこで、地域の方からこんなメモというか声が来たんです。これは、大臣の所管の地域再生という意味からも、郵便局というのは非常に大事なんです。十月一日から郵便局が民営化されました。それで何が変わったか。たくさんのことが変わりましたよ。

 地域の郵便局長からの話なんだけれども、地元で物が買えなくなったというんですよ。これは大臣、御存じですかね。その話によると、今までは、文房具とかトイレットペーパーとか紙とか、いろいろなものを地域の、隣の文房具屋さんとか商店で買ってつき合いがあった。ところが、今はコンピューターシステムがあって、カウネットというところとビズネットというこの二社の中から選んで買いなさいと。それも、発注から決済まで全部システム。操作に時間がかかるだけで、問題は、単価が高いというわけですよ。近所のお店で買うよりも単価が高い。市中で買うこともできるけれども立てかえ払いになってしまうので、必然的にシステムを利用することになる、現金を使わないから。そうすると、隣の文房具屋なんかは非常に利用しにくくなる。

 この二社は公社時代からの業者らしい。なぜこれが民営化なんですかという質問があるんですが、これは地域の課題ですから、増田大臣、こういう問題はどういうふうに思いますか。

増田国務大臣 今お話ございました郵政民営化でありますけれども、今の外部からの調達の問題、これは、公社時代に、今お話ございましたとおり、いわゆる購入方式を変更して、それで、まさに今先生からお話ございました二社を、入札にかけまして落札者が今の二社だったようでありますが、そこで調達をする、こういう形に切りかえたということを聞きました。

 その理由でありますけれども、それまでは郵便局ごとに個別にやっていたというものを一括調達するということによりまして、調達コストを削減したり、それから調達事務を減らしたり、また、環境負荷の低減に資する物品といったようなものを調達しやすくしたりというような、さまざまな理由によってそうした方式に切りかえた、こういうふうに聞いたところであります。

 これは確かに、今委員お話ございましたとおり、大量に購入したものが、一般的には公社の方の調べでも従来に比べてコスト削減につながっているということの結果が出ているんですが、近所のお店でいろいろ、特に目玉でスーパーなどが出したりするものとの値段が、場合によってはそちらの方が安いといったような状況も実際にはあるかと思います。

 そこで、今言いましたような二社を使うということが原則にはなっているようでありますが、郵便局でも、これは小規模局以外というところでありますが、そこでは、価格を比較して安価な方法で購入するという道もつけたり、あるいは、小規模局は原則としては今お話にありましたカタログによって二社のものを購入するということになっているわけでありますが、例外として、やはり価格が大幅に低い場合には近所のお店から調達する、そういうケースも実際にはある、こんなことを聞いたところであります。

 これは、民営化による変化というよりは、実際にはそれよりも以前の、二年以上前ですか、公社時代から、やはりコスト削減ということでそうした方式に切りかえたということであります。

 民営化によって、さまざまな面で経営の自由度というのが増したわけでありますので、今後、私としては、こうした契約事務についても、透明性を高めるということと、それから、国民や地域社会から支えられないと、こうした民営化会社もやっていけないわけでありますので、国民経済全体のことを勘案しながらやはり合理的な方策をとっていただきたい、このように考えております。

大畠委員 だんだん増田大臣も地元のことを忘れてきたね、正直言うと。それはなぜかというと、例えばチェーン店なんかがそうなんだけれども、チェーン店で買い物をして、そのお金がどこに行くかというと、全部東京の本社に集まるんですよ。地元のお店で買えば地元のお店の収入になって、そこの子供さんが学校へ行ったり、あるいはおばあちゃんが豆腐を買ったりで、地域でお金が回るわけですよ。ところが、こういうネットで買う話になってくると、全部お金は中央に集まるんです。東京都に落ちるんですよ。地域でお金が回らない。

 だから、大田大臣、これはよく考えてもらいたいんだけれども、今、何でも大きいところがいいからといってどんどんネットワークが広がってきて、地域の小さなお店がつぶれ始めています。何で地域経済がうまくいかないかというと、地域でお金が回らないからですよ。鉛筆、豆腐、果物、何でもチェーン店で買えば、全部チェーン店の売り上げとして中央の本店の方に入っちゃうわけですね。地域の方で買えば、そのお店にお金がおりて、そのお金の利益が若夫婦とか子供さんなんかに使われて地域でお金が回るんだけれども、地域でお金が回らなければ、地域経済はどんどん沈んでいくんですよ。

 私は、この郵政民営化の問題でも、総務大臣、見直しすべきだと思いますよ。十月一日から民営化になりましたが、そのいいところと悪いところがあるでしょう。これはどうなんだというのを検証する。みんなあきらめちゃっているようだけれども、検証することが必要だ。

 だから民主党は、その間、株の売却は凍結して、どうすべきかということを検討すべきだろうと。株の売却をやっちゃうと二度と取り返しがつかないからというので提出することを決めましたけれども、総務大臣、私は、この十月一日から始まったけれども、全国から情報をとって、何がどうなっているんだということを検証すべきだと思うんですが、どうですか。

増田国務大臣 今の民営化の見直しのお話なんですけれども、実はこれは民営化委員会というものがございまして、もちろん我々もいろいろ民営化についての問題を考えたいと思いますが、この民営化委員会というものは昨年の四月から発足していますが、そこが有識者の立場から、第三者的な視点で郵政民営化の問題について、いろいろな民営化による結果について検証するということになっています。

 これは三年以内ということになっていますが、もう既に民営化委員会が発足してから一年半近くたっていますので、これから一年半以内にはこの民営化によるさまざまな問題をもう一度見直しする、検証する、こういうことになっています。そこの検討結果を我々はいただきながら、この問題、民営化ということによるさまざまな影響などについても考えたいと考えております。

大畠委員 ぜひ知事時代の、豆腐屋さんとか八百屋さんとか、一生懸命今も働いているんですよ、中小企業のおやじさんたち、それを忘れないでほしい。ともすると、こっちに来ると、何かここの世界がすべてみたいに勘違いしちゃうときがありますから、ぜひ大臣には、地元の、ふるさとでまじめに汗を流して働いている人のことを忘れないでもらいたいと思います。

 増田大臣、結構でございますから、どうぞ。

 それから、岸田大臣、中国が二十四日に衛星を打ち上げました。これは日本でも、いろいろと月の裏側から「かぐや」というのが写真を送ってきていますが、アメリカの宇宙計画、中国の宇宙計画、あるいはヨーロッパの宇宙計画に比べて、何となく日本の方は見えなくなってきている感じがするんですね。

 大臣の所信も随分見せていただきましたが、事務方に言ったんだけれども、余りにもたくさん、ちょっと盛り込み過ぎじゃないかと言ったんです。イノベーション、それからIT、知財、国民生活、高齢社会、障害者対策、交通対策、たくさんのこれらについても大臣に大いに頑張ってもらいたいと思うんですが、宇宙開発の問題について、やはり国民に夢を与えるようなビジョンを打ち上げてもらいたいと思うんですが、そういうお考えはありますか。

岸田国務大臣 我が国の宇宙開発につきましては、基本的には、平成十六年九月に策定されました基本計画「我が国における宇宙開発利用の基本戦略」、こうした基本戦略をもとにさまざまな研究等が進められているわけですが、その中で、今御指摘がありました中国に先駆けて、我が国におきましても九月十四日、月探査衛星「かぐや」の打ち上げを行いました。

 一連の国際的な月探査の動きの中で先駆け的な動きだったと自負しているところでありますし、また来年は、国際宇宙ステーション計画の中の日本の実験棟、「きぼう」という名称ですが、こうした「きぼう」の計画も実行されるということで、先日私も二人の宇宙飛行士にお会いさせていただきまして、こうした動きも、国際協力あるいは宇宙研究開発におきまして大変大きな、歴史的な意義がある計画だと自負しております。

 ただ、こうした動きを多くの国民の皆さんに、宇宙開発、宇宙研究開発がどんな意味があるのか、この辺を実感としてわかっていただくということ、これが大変重要だというふうに思っています。

 今までも、例えば宇宙における貴重な水の再利用ということで、水の循環再利用システム、これは国民の生活の中に実用化されるという成果につながっていますし、また、宇宙ロケットの耐熱のシステムが住宅におきます断熱性能の高い塗料の開発につながるというような実用的な成果につながっているということがあるんですが、これからも、例えば準天頂衛星と言われるような測位衛星、これを打ち上げることによって新しいシステムをつくる。今のGPSシステムを補完するとか、災害の監視をするとか、あるいはさまざまな見守りの新しいシステムをつくるとか、こうしたことが考えられるわけでありますし、そして、月の探査の後にも、金星とか水星、こうした探査計画が我が国の中にもあるわけです。

 このように、国民生活に直結したものから、宇宙というフロンティアを開拓していく、こうした夢を切り開く研究、こういったものが我が国におきましても今予定をされているわけでありますので、やはりこの辺の情報発信をしっかりやることによって、多くの国民の皆さんにも、我が国においても、アメリカや中国に負けずに宇宙開発、大きなビジョンを持っているんだということを御理解いただく、こうした努力をしていきたい、そのように思っています。

大畠委員 岸田大臣には、たくさんの仕事があると思うんですが、これだけは大臣のときにやるというものをぜひ貫いてもらいたい。それで、今、情報発信と言われたんですが、「かぐや」から写真が送られてきて、私の部屋にも届きました。すばらしい写真です。あれを何かネットで、今の現状を、「かぐや」が写真をこっちに送ってきたら、それを解析してネットで流してやったらどうですかね。今「かぐや」が月の横の方に行って地球を写しています、それを、情報を流してやったらどうですかね。私はそれは驚くと思いますよ、子供たちも。ぜひ御検討いただきたいと思います。

 では、休んでいただいても結構でございます。

 あと、お二人の大臣に伺います。

 大田大臣、「シッコ」という映画をごらんになりましたか。ぜひこれは見てもらいたい。アメリカの医療制度がどうなっちゃったのか。市場原理主義の結果として、貧しいといいますか、お金が支払われない患者が病院から追い出されて、タクシーに預けられて、町の真ん中でおろされちゃうんですよ。ふらふらしている人を社会福祉の人が保護した。

 それから、九・一一、あのニューヨーク同時テロで消防士が肺の疾患を受けました。一生懸命頑張って、ほこりを吸い込んじゃった肺なんだけれども、これが保険適用外というので、これも医療対象から押し出された。それで結局、イギリスはどうか、フランスはどうかというのをずっとやるんですが、一体この市場原理主義経済とは何なんだ、経済さえよければいいのかという話なんですよ。やはり人間というものをもっと大事にしようという映画なんですが、ぜひこれは大田大臣に見てもらいたいと考えております。

 大田大臣の発言の中でも、諮問会議の中で、一一%から一七%消費税が必要とか、いろいろな新聞報道がございますけれども、大田大臣は優秀な方だと聞いておりますから、いろいろなことがわかっているんだと思うんですが、私は、もっと現場を見てもらいたい。現実に生きている人が経済政策の結果としてどういうところに追い詰められるのか。

 介護問題もそうですよね。お金をできるだけ削れと。だから、リハビリも六カ月でよくならない人はもうやらないんですということで、もとの女優さんなんかも追い出されて、リハビリできないといってテレビにも出ていましたけれども、これは何かどこかおかしいですよ。

 だから、経済財政諮問会議が議論することはいいですよ、議論したとしても、それが現実問題にいったときに、どんな社会事情があるのかということを十分考えてやっていただきたい。これは大田大臣に要請だけで恐縮でございますが、いろいろ今まで論議してきましたから、それをぜひ御理解いただいて、活躍していただきたい。

 渡辺大臣においでいただきました。あと三分間しかないんですが、渡辺大臣、大臣とはこの間も財務金融委員会で議論させてもらったんですが、きょうは別な問題ですから。「渡り禁止」の問題、天下りについてです。

 渡辺大臣が鳴り物入りでつくったという官民人材交流センターというものについて、もう既に、このわたり禁止というのは削除だよというような新聞報道も出ていますし、私も、いろいろ人事問題を見ていると、やはり「渡りあっせん」をしているみたいですね。

 大田大臣、よろしければどうぞちょっとお休みください。

 この新聞報道というのは単なる新聞報道で、「「渡り禁止」削除 官僚抵抗で骨抜き」こういう内容ですが、こういうものを大臣は目にしているのか目にしていないかわかりませんが、基本的な御存念を伺いたい。

渡辺国務大臣 国家公務員法の一部を改正する法律の第十八条の五に「内閣総理大臣は、職員の離職に際しての離職後の就職の援助を行う。」という規定がございます。これに基づいて今詳細設計をやっているわけでございまして、これは二回目、三回目のわたりあっせんを容認するなどという条文では全くないんですね。ですから、わたりあっせんを、現行制度でもこれは違法だという議論がセンターの詳細設計の懇談会でも出されているぐらいでございまして、それを容認する設計をするなどということはあり得ません。

大畠委員 非常にきっぷのいいお話でございますが、この問題はもともと、高級官僚用ハローワークだ、何で国民と官僚と分けるんだという批判があって、我が党でもいろいろ議論した結果、反対しましたが、渡辺大臣におかれましては、そういうふうにおっしゃるのであれば、ぜひそれがきちっとなるようにしてもらいたい。しかし、何で国民のためのハローワークと官僚用のハローワークが必要なのか、ここら辺は私たちはずっと疑問のままでありますから、骨抜きにならないように、ぜひ心してやっていただきたいということを要請して、質問を終わります。

中野委員長 次に、吉良州司君。

吉良委員 民主党の吉良州司でございます。

 七大臣からの大臣所信を伺ったのでありますけれども、きょうはその中でも、大田大臣、渡辺大臣、そして増田大臣に、その大臣所信に対する質問をさせていただきたいというふうに思っております。

 まず最初に、大田大臣に対して質問させていただきます。

 先ほど、同僚先輩議員の大畠先生の方から、小泉改革についてどう思うんだということを質問されました。大田大臣の方からのコメントは拝聴いたしました。私は、これから大田大臣に質問させていただく前提として、私は大臣でもありませんが、私自身、問われてもいないんですけれども、どう評価しているかということをちょっと申し述べておきたいと思っています。

 私は、小泉改革、竹中改革、すべてよかったとは思っていないんですが、幾つかの点において私としては評価をしておるところがございます。一つは、あれだけ与党内からもたたかれてもたたかれても、財政出動なしで民間の力によって景気を回復させる、これにこだわって、もちろん都市部と地域との差等々ありますけれども、マクロで見たときに民間主導の景気回復がなされているという点であります。

 それともう一点は、これは私の持論なんですけれども、ある意味で小泉改革というのは、戦後復興から高度成長の中で、最初はみんな頑張っていたんだけれども、同じ企業の中、また社会の中でも、おれぐらいちょっと怠けてもほかの人が頑張っているから大丈夫だろう、こういう頑張らなくても報われる人がいたという社会に対して警笛を鳴らして、頑張らなければ報われないんだということをやったんだろうと思っているんです。

 ただ、私どもが問題としているのは、では頑張ったら報われるのかということと、その間に起こる格差をどうするんだという問題意識は持っていますけれども。今言ったような、頑張らない人は報われない、いわば、申しわけないですが私は自民党政権の途中からは官僚主導の社会主義政権だと思っておりますが、その社会経済を、先ほどおっしゃられたように、市場原理の中でもいいところを利用していくんだというメッセージを送って、また実行した部分については評価をしておるものであります。

 そういうことをちょっと前提に、うがった見方をされないために私自身の考え方をまず申し上げましたが、大田大臣の所信の中で、「日本経済は、二〇〇二年初め以降、息の長い景気回復を続けています。今後も、物価の安定基調を確実なものとし、民間主導の成長を持続させるよう努めてまいります。」もう一点、「本格的な人口減少社会の到来など種々の難題に直面しております。これを乗り切るため、改革と安定した経済成長のための取り組みを車の両輪として、ともに進めてまいります。」こういう所信がございました。

 この点について、私、二、三お尋ねしたいんですが、まず、結論から申し上げますと、物価を下落させながら経済成長するということが可能なのか。私は、経済学的には全くのど素人でありまして、まるで幼稚園、小学校の質問かもしれませんけれども、後ほど述べますけれども、そういう問題意識を持って大田大臣に質問したいと思います。

 まず、デフレ。前政権はとにかくデフレとの戦いであったと言ってもいいと思うんですが、デフレの要因とデフレの功罪、メリット、デメリットというものをいま一度大田大臣の口からコメント賜りたいと思っております。

大田国務大臣 大変難しい御質問をいただきました。デフレの要因は、実体経済の面、金融の面、あると存じますが、実体経済の面でいいますと、やはり需要と供給の間にギャップがあって、何らかで需要が足りない、あるいは何らかで供給が過剰であるということであろうと思います。

 実体経済でいいますと、バブルが崩壊しまして、企業はバブルのときに、バブルのときの過剰な需要に合わせた設備を持ち、雇用を持ち、借金をしていた。それがバブル崩壊後に、一挙に過剰雇用、過剰債務、過剰設備になってあらわれてきたというところが原因だろうと思います。それを一生懸命今リストラしておりまして、デフレを、私どもは持続的に物価が下落する状態をいいますが、これは一応とまっております。持続的に下落する状態はとまっておりますが、これがもう二度とデフレに後戻りしないかというと、どうもそのとまった状態で横ばい、ずっと横ばっておりまして、また本当に後戻りしないかどうか、確実には言えない状態になっております。

 つまり、デフレ脱却が視野には入っておりますけれども、どうも足踏みをしている状態があります。これを本当の意味で安定した物価上昇に持っていくために、もちろんインフレはいけません、しかしデフレもいけませんので、安定した物価上昇に持っていくために、日銀とも連携をとって経済運営をやっていく必要があると考えております。

 デフレの悪い点ですけれども、やはり、企業からしますと、物価を上げられませんので、資材を調達するという意味では低く調達できますが、販売価格に転嫁できませんので、収益が圧迫される。そうしますと、はね返って賃金も上がらない、雇用機会がふえないという点が一つあります。

 それから、企業の場合は、やはり借り入れをしながら資金調達をして事業をやりますので、どうしても債務負担が大きくなる。家計にとりましても、債務をするところにとってはその負担が実質的に重くなってしまうというデメリットがございます。

吉良委員 詳細な説明、ありがとうございます。

 私がなぜそういう質問をさせてもらったかといいますと、経済成長の恩恵をこうむる人たちというのは一体どういう人たちなんだろう。これまでの日本の社会といいますか、基本的には人口構成がピラミッド形で進んできておりましたので、今盛んに言われている少子高齢化というものを迎えた経済政策というのを実地に移したことがない。

 先ほど大塚議員の議論でもありましたけれども、今格差があると言われていても、企業業績が上がり、いずれそれが所得に、家計に回ってくる、こういう話でありますけれども、これからふえていく高齢者、いかに企業業績が上がったとしても、高齢者の所得というのは、先ほどの議論に出ましたように、やはり年金と、それから現役時代にためたなけなしの貯蓄、また退職金、こういうことでございまして、この方々には必ずしも経済成長で得られるメリットが行き届きづらい。しかも、その人たちの数がどんどんふえていくということであります。

 当たり前のことでありますが、そういう所得が伸びない人たちにとってみれば、より豊かさを感じられるというのは、当然物価が下がることであります。教科書的ではありますが、今おっしゃったデフレスパイラルに陥るようなことというのは、企業の売り上げ、利益が伸びない、もちろん債務が相対的に負担が大きくなる、こういう問題があるので、いわゆる経済成長のメリットが直接あらわれるところには当然経済成長ということがありますけれども、では、それを直接的に得られない方々に対しては、物価の、もちろん横ばいは最低限、当たり前なんですけれども下がった方が豊かさを感じられる。特に、経済成長からいけば、現役世代はどんどんその恩恵にあずかって、高齢者の人たちは横ばいということは、相対的に貧しさを感じてしまう、こういう問題意識があるわけなんです。

 そういう中で、先ほど言いました、本当に全くど素人だから聞けることだと思うんですけれども、物価を下落させながら経済成長というものが可能なのか、そのことについてお伺いをしたいと思います。

大田国務大臣 確かに、物価の上昇は高齢者世帯には直接きいてまいりますし、それは消費を抑制する要因にもなると思いますが、全体的にいいますと、物価が下落しながらの、つまり安定した物価がない中で、デフレの中での持続的な経済成長というのは、やはりないんだろうと思います。

吉良委員 もちろん、高齢者と一言で言っても、それこそ戦後を生き抜いてこられて苦労された今の高齢者の方々と、思春期、若い時分にはミニスカートをはき、そしてビートルズを聞いて育ったこれからの高齢者とは、高齢者というイメージそのものも違いますし、よく言われるように、高齢者イコール弱者ではないと思っておるんですが、その弱者ではないけれども少なくとも所得が伸びない高齢者に対して、大田大臣が考えておられる施策。所信の中でも、社会保障改革の具体化ということで、税と社会保障の一体的設計による持続可能で安心できる仕組み構築のために、国民の受益と負担の水準についてわかりやすい複数の選択肢を示すということを所信でおっしゃられております。

 私は、この中でも特に複数の選択肢ということで、そういう世代世代による配慮を意図したものではないかというふうに勝手にとらえさせていただいているんですけれども、所信で述べられました、今私が申し上げた部分について、特に高齢者世帯を意識した施策というのはあるのかどうなのか。また、それに限らず、今、世代によって、生きてきた時代、また、これから生きていく時代が全然違うと思うんですが、そういう世代によって選択肢を提示するということをお考えなのか、その辺のところをお聞かせいただけますでしょうか。

大田国務大臣 今、選択肢は、給付と負担の大きい選択肢を前回の諮問会議で一回お示しいたしました。これは、一回目でしたので、日本がこれから人口減少、高齢化を乗り越えてどうやって質の高い社会保障を維持していくのかという観点から、乱暴ではありますが、二つの極端な選択肢を出しまして、給付を今のまま維持したら負担はどこまで上がっていくのか、逆に、負担を上げないとしたら給付はどこまで削減しなくてはいけないのかという、やや極端なケースをお示しいたしました。ここで提示しましたのは、先生がおっしゃった世代ごとのというよりは、世代と世代の間の公平をどうやったら維持できるだろうかという観点から提示したものです。

 これがスタート地点ですので、まさに社会保障というのは国民の選択ですので、これから幾つかの選択肢を提示していかなくてはいけないと考えております。高齢世代の中でも、非常にここは格差の大きい世代でもありますので、所得の高い高齢者と低い高齢者がどうやって公平を保っていけばいいのかというようなことも考えていかなくてはいけないと思っております。

 それから、選択肢ということではありませんが、これまで社会保障の中でも議論してまいりましたのは、負担をふやすとか給付を削減する前に、もう少しコストを抑えられる面もあるのではないか。例えばカルテ、レセプトのオンライン化ですとか、そういうことで少しでもコストを下げることで、なるべく負担をふやさず、給付を直接的に減らさずできるのではないかといったようなことを考えてまいりました。

 これからも、世代ごとの特性、世代ごとのニーズ、それから世代の中での格差、こういうことにはきめ細かく考えていきたいと思っております。

吉良委員 私が多少抽象的ながら今みたいな質問をさせてもらっているゆえんは、与党自民党はこれまで供給者の論理ということで政治を進めてきて、我々民主党は生活者の立場に立った政治ということを前面に掲げておるわけです。

 そして、その供給者の論理に立った現政府の志向といいますかを見ますと、あたかも経済成長が目的であるかのごとく受け取られてしまうんですね。経済成長が目的なのかというと、そうじゃなくて、青臭い話になりますが、本当は国民一人一人の幸せが目的なのであって、成長というのはその一つの手段でしかない、こういう問題意識を持っておるわけなんです。

 それで、成長することが必ずしも一人一人の幸せ、また今言ったいろいろな世代にとって幸せなのかという観点で話をしたいと思っていますが、といいますのは、やはり先ほどの大塚議員とのやりとりに関係するんですが、経済学の大先生を前に恐縮ながら、GDPというのは、個人消費があって、設備投資があって、政府支出があって、純輸出、日本の場合はこの輪で成り立っているわけですね。このうち、個人消費が伸びなくても、設備投資がふえて政府支出がふえて純輸出がふえれば、GDPはふえていくわけですね、成長はする。

 だけれども、一人一人が、心の安らかさ、幸せというのを除いて、経済活動での幸せということで言わせてもらえば、何か買いたくてしようがなかったものが買えたという、個人が消費をしたときに初めて幸せというのを感じられるわけでありますけれども、経済成長自体が自己目的化してしまうと、さっきの話じゃないですけれども、輸出企業が相対的に設備投資を多くする、設備投資によって設備投資部分が伸びる、当然輸出も伸びて輸出部分がふえる、税収が上がってその部分は政府支出もふえる環境が整えられるということで、どうも手っ取り早くGDPが伸びるというところに政策の集中が行われているように思えてなりません。

 私どもは、さっき言いました生活者の論理、その後ろには消費者の立場、納税者の立場というのを考えながら、やはり一人一人が幸せになっていくための経済成長というのは何なのだろうということを考えています。

 端的に言えば、どうやって個人消費がふえていくかということになるんですが、先ほどの議論でもございましたけれども、もちろん、今都市部の景気がいずれ地方に行くでしょう、今大企業の景気が中小企業にも及ぶでしょう、また企業の所得が個人にも及んでくるでしょう、こういうふうなことを言われておるんですが、グローバル化の中で、ある意味で賃金というものが、中国だのインドだの、東南アジアの人たちと比べる中にあって、なかなかそう回ってこない環境にある。

 そういう中において、マクロ経済的に個人消費を伸ばしていく、そのための、所得をふやしていくという策について大田大臣がどのようにお考えか、お聞かせいただけますか。

大田国務大臣 大変重要な御指摘をいただきました。

 私も、GDPというものが、安定した消費が牽引する経済成長でなくてはいけないというふうに思っております。今、日本のGDPに消費が占める比率は五七%ですけれども、これがもう少しふえて、しっかりと消費につながるような成長でなくてはいけないと考えております。そのためには、消費をふやすためには、もちろん雇用が安定しなくてはいけない、よりよいサービスが生まれてこなくてはいけない、高齢者にとっても社会保障が安定していなくてはいけない、それから将来不安がないようにしなくてはいけない。いずれも難しい課題ですが、そういうことが言えるんだろうと思います。

 御質問の、足元のことについて申し上げますと、今回の景気回復は、やはり公共事業に余り依存しない、先生が最初におっしゃったように公共事業に依存しない回復でしたので、それだけに地域間でばらつきがあります。それから、企業のリストラの過程でしたので、企業から家計への波及がおくれております。

 そこで、まず第一には、この景気回復を持続させること、長く続けることはまずベースとして必要だと思っております。それから二番目に、そういう回復のメカニズムだけにゆだねるのではなくて、やはりそこには政策的に手を打つ必要がありまして、地域につきましては、増田大臣とも連携をとりまして、地域経済の立て直しという大きいプログラムを今策定中です。それぞれの地域の実情に合ったプランをつくっていきたいと考えております。

 それとあわせて、最低賃金を引き上げること、そして職業訓練をすることで、フリーターですとか今非正規雇用におられる方が職業能力を高めることで賃金を上げられるようにする機会を提供するということが必要だと考えております。もちろん、そのベースとして企業の側も、中小企業は特に、生産性を上げていけるような下請取引の適正化ですとか、生産性向上をやっていくことが必要だと考えています。

吉良委員 ありがとうございます。

 今おっしゃっていただいたような具体的な施策になれば、恐らくは経済産業部門等で各論になってくるんだと思います。

 いずれにしても、先ほど申し上げましたように、経済成長自体を目的にするのではなくて、本当に国民一人一人の、青い話ですが、幸せというものを……(発言する者あり)はい、大事な政策をぜひお願いしたいと思っております。各論部分は、違う委員会でまた質問をさせてもらいたいと思っています。

 次に、大田大臣の大臣所信の中で、「対日投資の飛躍的拡大に向けて取り組んでまいります。」こういう話がございました。この対日投資の必要性というのは、聞こうと思ったんですが、もう恐らくわかり切ったことといいますか、今後、高齢化社会になっていく中で、成長に必要な国内の資金が相対的に減少していくだろうという中で、やはり活力を維持するための対日投資が必要だ、こういうふうに思っております。

 これに関連して、細かな中身を聞くつもりはないんですが、その促進策の一つとして、さきの通常国会で三角合併ということが実際に解禁され、つい最近もシティが日興コーディアルさんを買収するというような事例が出てきておりますが、なぜ前通常国会というようなタイミングで三角合併をする必要があったのか、その辺の議論の背景等をお聞きしたいと思っています。三角合併自体が担当じゃないと思いますので、マクロ経済的に必要だと思われた背景について、大田大臣の口からお聞きできればと思っています。

大田国務大臣 先生も今御指摘くださいましたように、やはり高齢化が進む、そしてグローバル競争の中で、外資を脅威としてとらえるのではなくて、むしろ、その新しい技術、サービスを国内に持ち込み、国内に雇用機会をつくっていくということは重要なんだろうと思います。

 今、人口が高齢化する大きい転換点、しかも日本の家計貯蓄率も低下してきておりますので、ここで機動的に海外の企業が日本を魅力的な投資先と見て入ってきて、日本の経済を活性化していくということは重要なんだろうというふうに思います。そういうタイミングの中で、三角合併の議論がなされ、三角合併が認められるようになった。ただし、もちろん、単にペーパーカンパニーで入ってきたりということにはしっかりと歯どめがかかったというふうに思っております。

 したがいまして、人口が減るまさに転換点、そしてアジアも成長し、グローバル化が急速に進んでいく中で、そして日本の家計貯蓄率も減る中で、日本をより魅力ある投資先にしていくというぎりぎりのタイミングでこの議論がなされたというふうに私は見ております。

吉良委員 私も、当初、三角合併と聞いたときには、今回のシティじゃないですけれども、米欧の会社ですとか投資ファンドあたりが主役になるんだろうと思っておりました。私も、今大臣おっしゃられたように、単なる脅威論といいますか、ハゲタカ論というものにくみする気はないんです。

 ちょっとお手元に出させていただきました資料、五枚物かと思いますけれども、ごらんいただきたいんですが、最初は、二〇〇七年十月二十四日現在の「世界の企業時価総額トップ二十五」という資料であります。ちなみに、この資料の作成者は中国に非常に詳しい私の友人でありまして、近々こういう資料を使って本を著すということで事前に資料をもらったので、これは私のオリジナルじゃありませんで、その方の了解を得て資料をいただきました。

 これをごらんになっていただけると、ちょっと愕然とするんですが、実は、世界の企業時価総額トップ二十五にトヨタが辛うじて二十五番目に登場しますけれども、二十五の中に、二番がペトロチャイナ、これは中国の石油会社さん、四番がチャイナモバイル、中国工商銀行、そして中国石油化、中国人寿保険、中国建設銀行等々、中国企業が八も入っているわけであります。

 三角合併の議論、また、先ほど大臣がおっしゃられた対日投資の必要性はわかるんですが、ここを解禁することによって、こういう中国系の企業が買収者たり得るということの政府内での認識がどの程度あったのかということと、それに関する議論はどういう議論がなされていたのか、お聞きできればと思います。

大田国務大臣 その当時、日本の政府の中で、特におっしゃった中国企業についてどのような認識があり、どのような議論がありましたのか、恐縮ながら、ちょっと私は存じておりません。

 大変興味深い資料を御提示いただきましたが、一点だけつけ加えますと、この三角合併は、外資だけではなくて、日本企業がまた機動的な再編をするためにも、日本企業の競争力強化のためにも必要だったのだろうというふうに考えております。

吉良委員 私は、きょうこの五枚の資料を出した中で、専門家の方々にとっては釈迦に説法となるわけでありますけれども、一般の国民も、日本というのはまだやはり世界第二位の経済大国というイメージが非常に強くて、恐らく、世界企業トップトゥエンティーファイブといえば、トヨタさんなり三菱UFJさん等々が五、六社入っているようなイメージを持たれているのではないかと思うんですけれども、残念ながら、失われた十年、十五年ということでしょうか、日本の企業は横ばいであってもほかが伸びて、相対的には落ちているという状況が続いていると思うんです。

 二番目をごらんいただきたいのでありますけれども、これは発行済み株式時価総額の東京証券取引所と上海証券取引所の実績と予想でありますが、二〇〇八年八月の北京オリンピックの際には、上海証券取引所の総額が東京を抜いてしまう。これは恐らく世界の金融関係者の中では衝撃的な事象だろうと思います。

 そして、三枚目を見ていただければ、今度これは、名目でありますがGDPの日中逆転というものも上海万博のころには起こる可能性が非常に大きいということをあらわした資料であります。

 そして、四枚目は、先ほど見せたトップトゥエンティーファイブの中にある、中国の上場している三大銀行の時価総額が、三行合わせて約八十八兆円。一方、日本のメガバンク三行は二十五兆円。三・五倍もの巨額の時価総額を誇っている。今回の三角合併によって、理論上というか実際問題として、中国の巨大銀行が、買う気になれば日本のメガバンクを買収できるということであります。

 こういうことについて、再度お伺いしますけれども、先ほどのどういう議論であったかということはおきまして、大田大臣自身が、こういうことで日本の会社が中国の企業に買収されるおそれがあるということについては、どう認識といいますか、お考えになりますでしょうか。

大田国務大臣 三角合併、あるいは対日直接投資にしましても、それは企業間の判断でありまして、どこかの国はいい、どこの国は望ましくないということではないと考えております。したがいまして、中国であっても、あるいはアメリカであれヨーロッパであれ、それは企業の判断であり、対日直接投資一般論でいいますと、やはり外資は脅威ではなく、国内に新しい活力を持ってくる存在でもあると考えております。ただ、それが単なるペーパーカンパニーであったりというようなことは歯どめをかけていかなくてはいけない。

 それから、先ほど先生が御提示されましたグラフでいきますと、やはり証券取引所の機能、こういったものも立て直しを迫られていると痛感しております。今、諮問会議でもグローバル化専門調査会というのをつくっておりまして、金融資本市場の改革を議論しております。この中で、やはり日本が魅力的な投資先になり、なおかつ、アンフェアなことの行われない公正で透明な市場になるよう議論していかなくてはならないと考えております。

吉良委員 九七年のアジア危機じゃないですけれども、米系の投資ファンド等によって、安く買って高く売って、売り抜いていくというような買収も問題がありますけれども、私がなぜ中国の会社による買収を恐れているかと申し上げますと、中国というのはある意味で、中国共産党があって、ホールディングカンパニーが中国共産党で、その子会社として国家があり、人民解放軍がある、こういうような構図だと思っているんです。この三大銀行にしても、それから資料の最後につけておりましたCOSCOという海運会社もそうなんですけれども、中国は経済の安全保障という観点から、銀行だとかエネルギー関連だとか通信、海運等の国家戦略の実動部隊と言ってもいいような会社は、いまだに六九%、七割の株を国家が保有しているわけであります。しかも、中国の場合はすべてに党の意思が優先するということがございますので、そういう中国の会社に日本企業が買収される。

 しかも、先ほど言った銀行だのエネルギーだの通信だの海運というような業種というのは、日本の経済安全保障という観点からも極めて大事な業種でありますけれども、そういう会社が中国からの会社に買われてしまう。そのときには、経済合理性というものではなくて、かなり政治的な意図を持って買われる可能性がある、こういうふうに思っております。

 もう回答は結構でありますが、投資は必要と先ほど大臣がおっしゃられたことは一〇〇%わかるわけでありますけれども、日本の経済安全保障というものを考えたときに、やはり日本のそういう企業を守っていく、または、そういう中国の経済合理性を超えたところの進出計画等についての対抗策を、政府の中でぜひ議論をし、講じていただきたい、こういうことをちょっと指摘させていただきます。

 それで、続いては渡辺大臣に対してなんでありますが、今申し上げましたように、中国は、私が申し上げるまでもなく、世界じゅうの資源エネルギーを爆食していると言っても過言ではないと思っております。

 私が特に気にしておることは、先進国、OECD加盟国の間では、例えば資源開発にしても、OECDガイドラインというのがあって、当然、金利条件だとか、それから融資の期間であるとか、もろもろの足かせといいますかがあるわけですね。それを、先進国の間では、ルールを守りながら、抜け駆けすることのないようにということで決められておるわけですが、今の世界状況を見ると、先ほどの世界のトップランキング二十五じゃないですけれども、中国の資源エネルギー系もそうでありますし、ロシアのガスプロムもそうでありますけれども、いわば国家そのものと言っていいような企業が世界じゅうの資源エネルギーを買いあさっている。そのために必要な援助というのは惜しまない。

 スーダンのダルフールに人民解放軍の工兵隊を送ってPKO活動に加担する傍ら、スーダンのオイルを初めとした資源をきっちり押さえていこうとしている。こういう国家と一体になった戦略、これに対して、果たして資源エネルギーがなければ生きていけない日本が抗し得るのか。

 同じく、まだいまだにエクソンがナンバーワンでありましたけれども、アメリカ、ヨーロッパあたりは、まだかつての石油メジャーと言われたような会社があるように、巨大な資本を誇って、国が必ずしも出ていかなくても、きちっとその辺の開発も供給もできるところがありますが、残念ながら日本の場合は、そういう巨大資本を持った民間企業もございませんし、エネルギー資源関係の企業もございません。

 そういう中で、JBIC、これはもう私ずっと言い続けておりました、もちろん決まったことではありますけれども。私も前、商社におりましたので、実際に、援助というものと、採算が合う、かつての日本輸出入銀行の国際金融と借款というのは、一体にして相手の国、企業に提示した方が、もちろん相手が興味を持つ、インタレストを示すということは非常に多いわけであります。

 そういう中で、今申し上げた中国だのロシアが、国そのものが資源を爆食する中で、日本としてどう対応していくのか。これは渡辺大臣の所管ではないと思いますけれども、そういう中で、JBIC、かつてのOECFとJ―EXIMの国際金融業務の一体性をどう図っていこうとしておるのか。また実際、今でもまだ一体の方がいいのではないかという議論があると思うんですけれども、その辺についての渡辺大臣の所感を賜りたいと思います。

渡辺国務大臣 委員御指摘のように、日本はOECD加盟国でございますから、当然、ODAのやり方もOECDガイドラインに沿ったやり方をしなければいけないんだと思います。

 さきの政府系金融機関の改革の議論は、行革推進法に基づいて行われたわけであります。開発援助の世界は、無償、技協、円借、こういったものを一体としてまとめた方がよりよい援助ができるではないかという発想のもとに、新JICAがつくられるものと理解をしております。

 一方、委員御指摘のように、資源の世界は、相当熾烈な争奪戦が世界じゅうで行われていることは私もよく存じているつもりでございます。日本には、JBICの資源ローンだけではなくて、例えば、貿易保険が資源のプロジェクトに相当活躍をしております。

 例えばカザフスタンのウラン鉱山開発プロジェクト、これは貿易保険、それからJBICともにかかわっています。マダガスカル、ニッケル鉱山開発、これも両者ともかかわっています。それから、サウジアラビア、ラービグ石油化学プラントプロジェクト、これも両者がかかわっているんですね。そのほかに、石天機構というのがございます。JOGMECと称しているもの。これは、昔の石油公団とそのほかのものが合体をしてできたわけですね。

 私は、こういったものの連携が非常にまだ足りないのではないかという気がいたしております。まさしく、国家戦略として資源の問題を考えるのであれば、こうした連携戦略をより一層高めていくことが大事ではなかろうかと思います。行革大臣ののりを越えた発言かもしれませんが、そういう感想を持っております。

吉良委員 確かに、担当としてはある意味での制限があるんでしょうから、今の答弁になろうかと思います。

 これはいつも私言っているんですけれども、こっちは援助だ、こっちは採算も成り立つビジネスだと、皆さん現場の経験がない方はこうおっしゃるんですけれども、今おっしゃった無償だ技協だというのは、ある意味では慈善事業的な援助。ところが、借款と国際金融がかかわる、これは結構一体なんですね。

 今後、日本が原子力発電所等々の輸出といいますか援助をしていくときも、周辺部分は環境整備も含めた借款でやるけれども、その原子炉といいますか、発電所本体は日本の旧輸銀の金融でやるとか、どちらかといえば、私の問題意識は資源エネルギーの安定確保という経済安全保障の観点でありますから、その観点からいけば、さっき言った、今新しくつくったJICAではなくて、借款と国際金融業務の方を一体化すべきだと。これは、もう分かれてしまった以上はしようがありませんけれども、実務の中で一体的に運用し得るようにぜひ内部で検討いただきたい、このように思っております。

 ちょっと時間がなくなって、両大臣、済みません、もう結構でございます。ありがとうございます。

 増田大臣にお聞きします。

 今回の大臣所信でも、先ほど大畠先生からもございましたが、地方が主役、地域主権ということを私自身もずっと訴えてきておりまして、これはもう方針としては大賛成なんですけれども、先ほども議論がありましたが、ではどうやって自立できる、具体的に進めていくかということになると、極めて難題が多いと思っております。

 まず増田大臣にお聞きしたいのは、よく言われる、都市部と地方で差が出てきた原因は何だとお考えになっておるでしょうか。

増田国務大臣 今先生から御質問がございました都市部と地方の差でございますが、これは、地域の産業格差、その背景にございますのは、やはり地域の地理的な条件もあろうかと思います。それから地域産業の動向、また、労働力、少子高齢化などの進展といったようなものもあると思うんですね。地方では、現実の働き口といいますと、どうしてもやはり都市部の方に人口が吸い寄せられてしまう、こういうことがございます。そうしたことなどがさまざま絡み合っている。

 ただ一方で、地域の財政力の格差も大変大きくて、これは自治体の関係でございますけれども、税収が回復してくる中で、今の税制度の仕組みの中では、法人二税などはどうしても都市部に集まってくるということがございます。そこで、行政の方でさまざまな産業政策が十分に行き渡らないということが地方部でもございます。

 こんなことがございまして、今お問い合わせがございましたような地域間の格差が広がる、こういうことにつながってきたものではないかと考えております。

吉良委員 ありがとうございます。

 私も今大臣が指摘された点も納得いくんですが、同時に、私の問題意識というのは、明治国家誕生以来、早く追いつけ追い越せの殖産興業。富国強兵は新しい時代はなくなりましたけれども、もともと、中央に国家の経営資源を集中させて、そこで国全体を富ませて、それを地方に配分するという国の形をつくってきたんだというふうに思っているんです。

 そういう意味では、私は、東京を中心とした都市部、特に東京と地方はもともと差があったんだと思っているんです。でも、その差を政策で埋めてきた。それが交付税であり、補助金であり、公共事業であり、そして工場立地等の工場分散だと思っております。

 そういう意味で、これだけ借金がふえた中で、今言った四つの中で、交付金も減らさざるを得ない、補助金もしかり、公共事業もしかり、工場立地については、グローバル化の影響があって、工場があるからといって前ほどその地域が潤わないというような体質になってきている。

 そういう意味で、これからの地方が抱える難題というのは、財政的な中央からの支援というのはもう望めないという中で、やはり、さっきのお話じゃないですけれども、地方が暮らしやすい、地方に暮らす人たちが幸せを感じるというのをつくっていかなければならない。そのためには、依存から自立、もうこれ以外ないと思っているんです。

 私も大分という地方の議員でありますので、大分へよかれと、できればお金を持って帰りたいと思いますけれども、同時に、長い目で見れば、親が子供を厳しくしつけるように、やはり自立せよ、自立せよ、自立せよということを叫び続けていく、少々苦しくても叫び続けていくことが必要じゃないかというふうに思っておるところであります。

 その意味で、今の地方再生議論の中で足りない点が私は時間軸の観点だろうというふうに思っているんです。

 何が言いたいかといいますと、今のままの制度を続ければ、ずっと依存というものが続いてしまう。ですから、例えば三十年後とか四十年後とかには、もう中央からの財源配分は基本的にはなくなりますと。さっき法人二税のお話がありましたけれども。ただし、最初のうち、今現在は税源、権限を移譲して、この三十年間、四十年間のうちに自立するプランを作成せよ、それを具体化せよ、こういうような考え方が必要になろうかと思っているんですが、この辺についての、私の依存から自立へということについての大臣の見解を賜りたいと思います。

増田国務大臣 今の、時間をよく考えながら今後の対策を考える、これは大変重要な御指摘だと思います。今すぐに全国多くの地域が変わっていく、そういうのはなかなか難しいわけでありますが、しかし、今後に向けて、いわゆる不交付団体をふやして、それぞれが財政を自前のところで獲得しつつ、自立に向けて自助努力をベースにして成り立っていく、こういう世界をこれからの将来の目標として、私ども、しっかり据えておかなければならないだろう。

 当面、ことし、来年、再来年に向けてのさまざまな交付税の問題等について、私どもは解決策を提示したいと思っておりますが、行く先の目標として、本当にかなり長期の目標になりますが、財政を中央からの移転に頼らないような、そういうしっかりとした国づくり、こうしたことに向けて努力していきたいと考えております。

吉良委員 それについて、道州制等についてもお話ししたかったんですが、もう時間がなくなりましたので、最後に、もう言いっ放しになるかもしれませんけれども、地方再生大臣というより、多少総務大臣という立場になるかもしれませんので言いっ放しになるんですが、私は、地域が自立していく上で非常に大事なことは地域経営という感覚だと思うんです。もう増田知事はまさにそれを実践されておったと思うんですけれども、その地域経営をしていくときに大事なことは、今後、地域の経営者を選んでいくという選挙制度だというふうに思っているんです。

 今から言うことは、地方議員の定数を大幅に削減しなければならないということなんですが、もちろん、それに先立っては我々国会議員の定数を削減しなければいけませんけれども、その上で、例えば私どもの大分市は、四十六万人の人口で四十六人、市議会議員がおります。けれども、私は、地方経営の時代は、民間企業が昔三十人も四十人もいた役員を、七、八人の取締役と、あとは執行役員としているように、本当に経営者として忌憚のない議論をするために、そういう経営者を選ぶという地方議員選挙にしなければいけないというふうに思っているんです。

 かといって、今地方任せにしておいたら、やはり今回の合併も、まずはインセンティブを前にぶら下げなければ合併が進まなかったように、なかなか任せていてもうまくいかない。私は地域主権主義者でありますから、本来なら地域の自主性をとことん重んじたいのでありますけれども、最初の一押しは、今言った地域経営の時代の一押しについては、ある程度国が推し進めなければいけないというふうに思っております。

 ちょっと地方再生大臣と総務大臣の微妙な境目かもしれませんけれども、一言だけコメントをお聞きして、終わりたいと思います。

増田国務大臣 今、私にとりましても非常に共感するような御提案も含めて御意見があったと思います。

 やはり、それぞれの議会の、それから直接の首長公選制の中で住民が地域経営者を選ぶ、こういう視点が大変大事だろうと思いますので、今後、さまざまな我々の行政の中にもそういった考え方というのをよく踏まえながら行っていきたい、こんなふうに思いまして、今の御提言をお聞きしていたところでございます。

吉良委員 前向きの御答弁、ありがとうございます。

 以上をもって質問を終わります。ありがとうございました。

中野委員長 次に、平岡秀夫君。

平岡委員 民主党の平岡秀夫でございます。

 午前中は増田大臣だけになろうかと思います。どうぞ皆さん、もうお引き取りいただければと思います。

 まず、今の国と地方との関係、それから将来目指すべき国と地方の関係、増田大臣、この所信で、先ほど同僚議員からも指摘がありましたように、地方が主役の国づくりを目指し、いいと思いますね。それから、国と地方の役割分担や国の関与のあり方の見直しを行うんだ、こういうことを言っておられます。私も、今まさに見直しを行わなければいけないという時期に来ているとは思うんですけれども、現状起こっていることと、今国が、あるいは増田大臣が言われていることとが本当に整合しているのか。私は、かなり乖離しているような気がするんですよね。

 先に今ちょっとお聞きしますけれども、私の地元に、山口県ですけれども、岩国市というところがあって、そこで市役所の新庁舎を建てているわけです。その建設補助金、三十五億円なんですけれども、これをめぐって今、地元が大変困難をきわめているという状況が生じているんですけれども、この話は大臣、私が質問をするという前に御存じでしたか。どうでしょう。

増田国務大臣 率直に申し上げますと、そのお話は私は知りませんでした。けさほど、こういう問題があるということをレクを受けたところでございます。

平岡委員 けさほどというのじゃ、ちょっと私も、大分早い、きのうの朝、質問を出して、しっかりと増田大臣のもとで、この問題点についてよく精査をした上で答弁してもらおうと思っていたので、大変残念な発言ではありました。

 かいつまんで言うと、岩国市が今、市役所を建てようとしていて、その市役所自身は地震で大分傷んでいるわけですね。これ以上地震が起こると壊れてしまうかもしれないという状況の中で、実は、平成八年に、沖縄の普天間にあります空中給油機KC130十二機を岩国が受け入れるという決断をしたときに、国から、いろいろな民生安定のための施設については補助しましょうということが決まりまして、平成十七年二月に、当時の防衛施設庁から岩国市長に対して、補助をしましょうということで、具体的な金額はそのときは提示されなかったんですけれども、その考え方を提示されたところによれば、合計四十九億円の補助金が出されるということで、実際、おととしは約三億円、昨年度は約十一億円の補助がなされております。

 しかしながら、今年度、最終年度でありますけれども、大体今三十五億円ぐらいが見込まれていたわけでありますけれども、これについては補助金は出さないということを国が決めたわけです。

 なぜ決めたかというと、国の言い分を聞きますと、米軍再編の中で、厚木から空母艦載機五十九機を岩国市は受け入れてくれ、それを受け入れてくれるのなら出しましょうということなんですけれども、その前の約束であった部分、つまり、KC130十二機を受け入れることについては、米軍再編の中で位置づけが変わってしまった。岩国にはKC130十二機は来るけれども、運用あるいは訓練については一部グアムとか鹿屋でやるから、もう状況が変わったので、これからは米軍再編の中で考えたいんだと。それで、さっき言ったように、厚木からの空母艦載機を受け入れない限りは出せないということを言ってきちゃったわけですね。

 大臣、こういうことを岩国市は言われて、岩国市は困りませんか。どうですか。

増田国務大臣 今のこの岩国の、米軍再編の関連でございますけれども、私は、まず一つ申し上げておきたいのは、国と地方のいわゆる役割分担ということをまず考えることが必要かというふうに思います。これについて私も、この補助金自体、防衛省が、当時の防衛庁ですね、防衛省が所管をしている補助金だということがございまして、国の役割、国防に大きく関与することについては、これまでも、国と地方の役割分担の中で、まず基本的には国の役割というものに属していた分野でもございます。

 ですから、今具体的に先生の方からこの防衛省の補助金の給付についてお問い合わせがございましたけれども、あるいはその見解を求められたんですが、基本的には、国の、防衛省の国防という観点からの考え方があるんだろうと思うんです。

 私としては、いずれにしても、やはり国と地方の役割分担を見直して、特に、多くの行政について地方の主体的な意思や考え方が反映できるような、そういう分権型の仕組みというのを構築していく、これは私の大変重要な役割でもあります。これからも目指していく方向であろう、このように考えているところであります。

平岡委員 私の質問に答えてくださいよ。三十五億円の補助金が、ほぼ約束されていたのが出さないと言われて、岩国市は困ると思いますか、それを聞いているんですよ。それに答えてください、まず最初に。

増田国務大臣 この問題については、これは防衛省の所管の補助金であって、そして、岩国市と防衛省の間でいろいろ議論があって、これまでも詳細について随分やりとりがあるようでございます。岩国市は岩国市のいろいろな御主張があるというふうに聞いておりますけれども、それについて、所管が防衛省の問題でございますので、岩国市がどのように考えているかというのは、なかなかやはり私の立場としては申し上げづらい、こういうことでございます。

平岡委員 本当に増田大臣は地方のことを考えているんですか。自分が知事のときにこんなことをされたら、知事として怒りませんか。私は、そんなことがわからない、もう地方のことは忘れてしまって、東京で何かいい格好をして、地方の暮らしも忘れてしまったような、そういう大臣として仕事をしてほしくないというふうに先ほど大畠委員が言いましたけれども、私もまさにそのとおり増田大臣にお話ししなければいけない、そう思いますよ。

 こういう国のやり方が、果たして本当に皆さんが目指している国と地方の関係のあり方ですか。国が地方に関与するあり方ですか。もう一遍答弁してください。

増田国務大臣 今申し上げましたことについて、私は、決して地方の立場を軽視して申し上げているわけでもありませんし、やはりそれぞれの事情というのは常にあると思います。私も、地方が主役の国づくり、このことについてはもう大変、これから目指す方向だというふうに思っております。

 申し上げておきたいのは、今委員の方でお話がございました点が、国と地方の役割分担の中で、どういう役割分担の中で出てきている問題なのかということを踏まえた上で考えていかなければならないということと、それから、今の補助金の交付それ自体が、やはり防衛省が持っている補助金ということでございますので、私は地方再生の役割を担っている担当大臣ではございますが、その中で、個々の補助金の交付をする、しない、その間にどういうやりとりがあったかということについては、やはりお答えをするのは適当ではない、このようなことで今申し上げたところでございます。

平岡委員 今、増田大臣は、役割分担を考えた上で検討しなければならない問題だというふうに言われました。もう一遍、けさ聞かれたというふうに言われましたので、しっかりとこの問題の経緯を聞いてみてください。これはむしろ総務大臣としてなのかもしれませんけれども、こんな国と地方のあり方で、地方に対してむちを振るうような、国が力を持っているからといって約束したことも一方的に破棄するような、そんなやり方で国と地方の考え方、関係を考えてもらったら、これは地方はやれませんよ。

 これから、昨日、この地方防衛局長が岩国市長に対して、やはり空母艦載機を受け入れない限りは市役所の庁舎建てかえの補助金は出せないということを通告してきたそうでありますけれども、もしこれが事実だとしたら、これは本当に、日本の安全保障政策にも大きな影響を及ぼすぐらい地域が揺れ動くと私は思いますよ。

 そういう問題は増田大臣が考えるべき話じゃなくて、防衛省、防衛大臣が考えるべき話かもしれませんけれども、私があえてきょうここで問題提起させていただいたのは、地方と国のあり方として、そんなやり方で地方に国の言っていることを押しつけるということでいいのか。私は、このことを増田大臣としてしっかりと検討していただいて、改めて見解を伺いたいというふうに思います。

 時間が参りましたので、午前中はこれで終わります。増田大臣にはほかにもたくさん聞きたいことがあったんですけれども、午後はたくさんほかにありますから、午後は結構です。

中野委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時五分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

中野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。平岡秀夫君。

平岡委員 午前中に引き続きまして、今度は拉致問題についてちょっとお伺いしたいと思います。

 昨日の参議院の外務委員会で、高村外相が、拉致被害者数人が日本に帰るということで解決というわけにはいかないが、進展にはなり得るかもしれないというふうに答弁されたと聞いております。一部の新聞報道では、政府は既に、拉致問題を含むいろいろな問題だろうと思いますけれども、北朝鮮との関係の問題について基本的な考え方を非公式に北朝鮮側に伝えているというふうにも報道されています。

 これはちょっと質問通告はしてありませんけれども、拉致問題対策本部の責任者の一人である官房長官、北朝鮮にどんなことを伝えているのか、この点をお知らせいただきたいと思います。

町村国務大臣 北朝鮮問題への対応というのは、日本はかねてより、拉致、核、ミサイル、こうした諸懸案を包括的に解決し、同時に、不幸な過去を清算して日朝国交正常化を早期に実現する、これが公式に申し上げております基本方針でございます。

 具体にどういうせりふを先方に言うか、また先方が言ったかということにつきましては、これはまだ今まさに交渉が行われている最中でございますから、その細部について具体に申し上げることはちょっと差し控えさせていただきたいと思います。

 高村大臣が言われたという、何名か帰ってきて云々という話は、私もまだちょっと詳しくは聞いていないのでありますけれども、何をもって進展があったかという問いは今まで何度もいろいろなところで出されているわけでございますけれども、これは北朝鮮側が具体的にどういう行動をとるかということによって判断をすべきでありますし、何人帰ってきたからいいとか悪いとか、これで進展であるとかないとかいうことではなくて、やはり全体の状況の中で、北朝鮮側が個別具体的にしっかりとした対応をするかどうかというところで判断をすべきで、何人ならばこれは進展で、何人ならば進展でないとかいうことを私どもは言うつもりはございません。

 とにかく、生存しておられる方々はすべて全員帰国をさせるということが当然のことでありますし、真相究明もしっかりするということも当然のことである、かように考えているところでございます。

平岡委員 まさに外交交渉中であるということでありますから、私もこれ以上は入りませんけれども、実は私、拉致問題について言うと、国民とかあるいは一般の国会議員にとってみては、余りにも情報が少な過ぎるというのが率直な印象なんですよね。情報が少ない中でいいかげんな判断をするわけにもいきませんから、我々としては、ぜひいろいろな情報をしっかりと提供してほしいということを考えているわけでありますけれども、政府の基本的なスタンスをまず最初に聞きたいと思うんですね。

 実は、今回の福田総理の所信表明演説と官房長官の発言とを比較してみますと、ちょっと違うんですよね。

 福田総理はこう言っていますね。「拉致問題は重大な人権問題です。すべての拉致被害者の一刻も早い帰国を実現し、不幸な過去を清算して日朝国交正常化を図るべく、最大限の努力を行います。」こういうことなんです。片や、官房長官は、「拉致問題は、我が国の国家主権及び国民の生命と安全にかかわる重大な問題であり、その解決なくして北朝鮮との国交正常化はありません。」と。以下のところは同じことをまた言っていますけれども。

 福田総理は「拉致問題は重大な人権問題」というふうに表現し、官房長官が「我が国の国家主権及び国民の生命と安全にかかわる重大な問題」というふうに表現された違いというのは一体何ですか。閣内不統一ですか。どうでしょうか。

町村国務大臣 総理の所信表明と、それぞれの大臣の所信といいましょうか所信的なごあいさつをした、その文言が一言一句違うとすべてこれは閣内不一致と言われてしまう、こうなりますと、総理大臣の言っていることと一言一句違うことはもう閣僚は言ってはいけないということになるわけで、そういうことを意味しているわけではございません。私が国家主権及び国民の生命と安全に関する重大な問題であると発言いたしましたのは、すなわち、これが重大な人権問題であるという認識を持って私なりの表現を使ったわけでございまして、認識の違いはないというふうに御理解をいただければと思います。

 いずれにしても、先ほど申し上げましたような、拉致被害者の一刻も早い帰国を実現し、不幸な過去を清算して日朝国交正常化を図る、この基本方針において何ら変わるところはございませんし、基本認識において変わるところもございません。

平岡委員 言葉で言えば何でも言えるので、言葉半分に聞いておきますけれども、私は、福田総理が拉致問題について重大な人権問題というふうに表現されたのは、ある意味では一つの大きな、転換なのか判断なのか決断なのかわかりませんけれども、大きな意味のある表現ぶりだというふうに思っております。

 それはそれとして、国家公安委員長も、拉致問題についても所信で表現されていますね。「北朝鮮による拉致容疑事案の全容解明」、あとちょっと省略しまして、全容解明に全力を尽くしてまいりますと。

 私は、この全容解明、確かに重要なことだというふうに思いますけれども、先ほど言いましたように、拉致問題容疑事案の全容解明というのは、一体具体的に何をやっているのか、これから何をしようとしているのかというのがよく見えないのですよね。

 あと、後ほど触れますけれども、警察権力を使って何か別件捜査的なことをいろいろやっているというようなところで不当な動きがあるとは私は思いますけれども、ここで公安委員長が拉致容疑事案の全容解明に全力を尽くしてまいりますと言っていることは、これからどういうことをしようとしているのですか、まず答弁していただきたいと思います。

泉国務大臣 拉致の問題は、まさに全国民注視の問題であるという認識を持っております。

 ただ、この事案は、被害者がどこにいらっしゃるかわからない、あるいは証拠もほとんどない、また目撃者も事案が発生した時点ではいらっしゃらない。そういう中で、全容解明に向けた努力を重ねた結果、御承知のように、十三件十九名という拉致容疑事案と判断をする成果が今上がったわけでありますが、同時に、拉致に関与した北朝鮮工作員やよど号ハイジャックの犯人など八件十一名について、逮捕状の発付を得て、国際手配をしておるところでございます。

 大変難しい解明の道のりでございますけれども、今後とも、拉致実行犯のさらなる特定に努める。十三件十九名の拉致被害者の方以外にも北朝鮮によって拉致された被害者が存在する可能性、実は、これは届け出だけを見ましても九百件の届け出がなされておるわけでありまして、拉致された被害者の存在する可能性があるという認識を私どもは持っておりまして、警察の力を挙げて、捜査、調査を推進することが我々警察にとって重要な課題だ、こういう認識を申し上げた次第でございます。

平岡委員 いろいろ用意した質問もあるんですけれども、時間の関係でちょっと省略させていただいて、私は、今、この拉致問題について言うと、日本国政府が言っていることと北朝鮮の当局が言っていることとの間に、入り口論でかなり何か、そもそもかみ合っていないというところがあるような気がするんですよね。

 その第一が、例の横田めぐみさんの遺骨のDNA鑑定の話だと思うんですけれども、素人的に考えれば、両者に争いがあるのならば第三者にちゃんと鑑定してもらえばいいじゃないか。それをすることが、結局、どっちの結論が出るかは別としても、共通の基盤に立って、これから政府がやろうとしている拉致問題の解決の糸口になるといいますか、入り口になってくるのではないかというふうな気がするんですけれども、どうですか。

 私がさっき言いましたように、横田めぐみさんの遺骨のDNA鑑定について、第三国に調査をしてもらって、その結論に基づいてこれから物事を進めていくというようなことはできるんでしょうか、どうでしょう。

町村国務大臣 いわゆる横田めぐみさんの遺骨と言われているにせ遺骨を渡した事件というのが、平成十六年の十二月になります。ちょうど私はそのとき外務大臣をやっておりました。警察に鑑定をお願いし、そして、実際にこれがDNA鑑定をやった結果、にせものであるという結論が出たわけでございます。

 日本のそういう意味での鑑定の技術水準というものは世界に冠たるものであるということは、関係者は皆知っているところでございまして、そのとき私どもは、第三者という御意見が国会からも出されたわけでございますけれども、問題は、そういうことも大切なことでありますけれども、何よりも、こうした北朝鮮側の不誠実な対応ということでは、問題解決の第一歩にはならないではないかということで、しっかりと具体的な行動をとるようにということを言い続けてきたところでございます。

 そういう意味で、私どもは、みずからの鑑定結果に自信を持っておりますし、第三者といっても、ではだれが本当に客観的な第三者たり得るのかというようなこともまた出てまいりますし、何といっても彼らが、それでは第三者鑑定に応ずるということがあり得るかというと、いろいろな状況から、そういうことは彼らは絶対に応じてこないということでありますから、日本が仮に第三者鑑定ということを言えば、日本はそれだけ自信がないんだろうということを多分言うであろうことは目に見えているわけでありまして、そういう意味からも、私どもは、その必要はないとその当時判断をしたものでございます。

平岡委員 官房長官、警察に鑑定してもらったらこうだというふうに言いましたけれども、あのときも、帝京大学と科学研と両方行ってやってもらって、帝京大学だけがそうだったということですよね。その後も、何か余りよくわからないことが、何か人がどこかの、当局の方に就職されてしまったとか、いろいろなことがあって、どうも当局がやっていること自体も何か事実を隠そうとしているんじゃないかというような疑惑もありますし、今言われた不誠実な対応というのが一体何なのかというのもよくわかりませんでした。それから、彼らが応じないというのはあくまでも見込みの話であって、それは余り突然に言えば彼らもそういう反応をするかもしれませんけれども、それなりの外交努力をすれば妥協する点はあるのではないか、私はそんな気がしますね。

 そういう意味では、政府がやろうとしていないというところに私は政府の姿勢の不誠実さを逆に感じるわけであります。

 それはそれとして、この北朝鮮の問題について言えば、実は、きょうは国家公安委員長にも来ていただきましたけれども、ことしの一月に、漆間警察庁長官が記者会見の場でこんなことを言っていますね。北朝鮮に日本と交渉する気にさせるのが警察庁の仕事、そのためには北朝鮮の資金源について事件化し、実態を明らかにするのが有効だ。さらに、北朝鮮が困る事件の摘発が拉致問題を解決に近づける、そのような捜査に全力を挙げる、こういうことを言っておられるんですね。

 私は、そもそも警察というものが、例えば外交交渉を有利にするために何か捜査をするとか、あるいは国家に批判的な態度をとっている政治家、議員に対しては徹底的に身辺を調べ上げるような警察活動をするとか、そういうようなことは、私は警察権の濫用になるんじゃないかというような気がするんです。

 このような漆間長官の発言に対して、国家公安委員長としてはどのようにお考えになりますか。

町村国務大臣 一つ一つの言葉を取り上げて言うつもりもございませんが、政府の対応がこのめぐみさんの遺骨について不誠実であると今委員述べられたのは、その言葉はぜひ撤回をしていただきたい。

 私どもは、最大限誠実にこの問題に取り組んでいるのでありまして、拉致被害者の皆さん方と私どもは真剣に意見を交わし、また、皆さん方のお気持ちを考えて最大限の努力をしているところであって、そうした努力を全部ひっくるめて不誠実であるという言い方はまことに納得できませんので、そのまま委員にお返しをいたします。

泉国務大臣 当時の長官の発言についてのお尋ねでございますが、警察は、朝鮮総連や関連団体の動向については、公共の安全、秩序を維持するという責務を果たす観点から、当然のことながら重大な関心を払っておるわけでありまして、違法行為があれば法と証拠に基づいて厳正に対処するというのが基本的な考え方であります。

 今後とも、何人に対しても、こうした違法行為があれば法と証拠に基づいて厳正に対処する、これが国家公安委員会としての警察庁を指導してまいる根幹でございまして、何か警察権を濫用してという言葉はお使いになりませんでしたけれども、警察がそうした法と証拠に基づかない活動をすることについては、厳にこれまでも注意をしてまいりましたし、これからも、御指摘について、そのようなことが起きないように努めてまいるつもりでございます。

平岡委員 国家公安委員長、私の質問に答えてくださいよ。さっきの漆間長官の発言に対しては、国家公安委員長としてはそれは問題なしとするんですか。そういうことで警察の活動というのが遂行されていっていいんですか。そのことを私は聞いているんです。

 公安委員長が言われたように、違法行為があれば法と証拠に基づいて厳正に対処していく、それは私もそのとおりだと思いますし、決して警察全体がそうなっていないということを言っているわけではないんです。事この問題については、漆間長官があえてこんなことを言われているから、私は逆に、警察に対する信頼感が失われてしまうことになるんじゃないか。そういう意味で、この発言に対して国家公安委員長としてどう考えられるのかということを聞いているんです。

泉国務大臣 基本的なことを申し上げた次第でございますが、警察庁長官という立場において、この拉致問題に対しての解決に向けた強い決意を述べられたものだと私は考えておりまして、先ほど申し上げましたように、法と証拠ということがなければそうしたことも許されないことでございます。長官の強い決意を表現したものと理解をいたしております。

平岡委員 警察庁長官の強い決意、何の決意ですか。何の決意を述べられたんですか。北朝鮮にもっと交渉する気にさせるというのが警察庁の仕事だと、それが決意であり、それは警察庁に与えられた権限に基づく決意なんですか。北朝鮮と警察庁が交渉するんですか。どうですか。

泉国務大臣 これは、警察として、こうした事案に立ち向かうというのは当然の……(平岡委員「こうした事案というのは、どういう事案ですか」と呼ぶ)拉致事案に対して解決を図るということは当然の責務だと思っておりまして、先ほど申し上げましたように、言葉の一つ一つについて、発言をしたことは正確に私承知をいたしておりませんけれども、いわゆる長官としてこの問題解決に先頭に立って取り組むという意思を表明したものだと理解をいたしております。

平岡委員 拉致事件について警察が真剣に取り組む、それは当然のことだと私も思いますよ。ただ、その拉致事件の問題について、今、外交交渉をしている、その外交交渉をする気にさせるために警察庁が自分の権限を使っていろいろなことをやっていくんだという、そのこと自体が、警察の本来のあるべき姿じゃないと私は思いますね。それをしたら、本当に警察があらゆることについて、国家意思に基づかない、国家意思に沿わない人たちに対するいろいろな権限を行使していくという問題につながっていくということなんで、私は、国家公安委員会としては厳重にこの問題については考えていただきたいということをお願いしたいと思います。

 そこで、ちょっと視点を変えまして、実は、報道は余り多くはされていませんけれども、八月の七日から十四日にかけて、北朝鮮では集中豪雨があって、かなりの被害が出たというふうに聞いておりますけれども、この件について外務当局は、どのような被害が生じているかということについて把握しておられますでしょうか。

伊原政府参考人 北朝鮮のことしの夏の大雨、それからその後の台風による被害状況につきましては、まず、国連の人道支援調整部というところが今月の二十二日付、これは最新の報告書でございますけれども、北朝鮮当局や国連機関の情報をもとに作成しております。

 この報告書によれば、先生今お尋ねの八月七日から十四日の大雨、この大雨は平壌を含む広範な地域で洪水をもたらしておりますけれども、これによって百万人近くが被災した、十七万人が住居を失った、四百五十四人以上が死亡し、百五十六人が行方不明となった。また建物については、四万軒以上が全壊し、二十万軒以上が半壊もしくは水没した。さらに、数千の公共施設が全壊もしくは半壊した。農地については、北朝鮮の全農地の一〇%以上が浸水した、こういう報告を出しております。

 さらに、同じ報告書の中で、九月の十七日から二十日にかけて北朝鮮を襲った台風によっても被害が出て、これは北朝鮮の赤十字社によりますと、千六百四十九名が家を失い、十万九千ヘクタールの農地が被害を受けたと推定しているということでございます。

平岡委員 そういう被害が発生しているということで、ちょっと私も冒頭、福田総理の言葉を紹介しましたけれども、拉致問題は人権問題である、こういうことで、私もそうだと思いますけれども、逆に言うと、人権問題というのは、例えば人権侵害とか人権無視とかという問題は、あっちで人権侵害しているからこっちで人権侵害していいとか、あっちで人権無視しているからこっちで人権無視をしていいという話じゃないと思うんですよね。

 そういう意味では、北朝鮮でこれだけ多くの被害が発生していることに対して、人権という観点から人道的な支援をしていくということがあってしかるべきだというふうに私は思うんですね。

 一部、きょう報道された新聞の中にも、政府が念頭に置いているいろいろな考え方の中には、北朝鮮への人道支援ということについては考えていくんだというようなことも書いてあるようでありますけれども、現在、いわゆる経済制裁というものの中で、先ほど言いましたような被害に対しては、人道支援という視点からも、日本の民間の人たちがやろうとしてもできないというような状況に置かれている部分について、例えばそういう部分についてはいわゆる経済制裁を緩和していくというようなお考えはありませんでしょうか。

町村国務大臣 今、外務省の方からお話をしたとおり、相当の被害が出ているということは認識をしております。

 一切の人道支援をやっていないわけではございませんで、例えば日本赤十字社は、ことしの八月に三千万円の送金を決定しておりまして、こういう形で民間の方が人道支援をやることについて、私ども政府がストップしているわけではございません。

 経済制裁につきましては、これはいろいろな形での制裁があるのは委員御承知のとおりでございますが、例えば国連の経済制裁、安保理決議に基づいてやっておりますのは、ミサイル及び核兵器の不拡散のための輸出管理であるとか輸出禁止とか、あるいは奢侈品の輸出禁止であるとか、これに関するお金の移動の禁止というものが、まだこれは続いているわけですから、これを緩めるわけにはいかないわけでございます。

 また、こうしたことに加えまして、我が国独自の措置として、万景峰号の入港禁止でありますとか北朝鮮籍船の入港禁止でありますとか、あるいは北朝鮮からのすべての品目の輸入禁止というものをやっているわけです。これは、基本的に拉致問題に何ら進展がないものですから、去る十月九日にこうした対策を六カ月間継続するという閣議決定を行っているわけでございます。

平岡委員 ちょっと大臣、私の質問に答えてください。そういう大きな被害が生じた人たちに対する人道支援をすることについて、いわゆる経済制裁の一部を緩和するというお考えはありませんかということを聞いているので、その部分だけ答えてください、もう一度。

町村国務大臣 そういう観点で今、経済制裁を緩和するという考えはございません。

平岡委員 大変残念な答弁だと思います。

 福田総理が拉致問題については人権問題ということを表現されたと同じように、今回の大洪水による被害というものは、いわば人道的支援を必要とする人権問題だというふうに思います。そういう問題については、先ほど言ったように、何か、こっちでこうだからこっちでこうだという話じゃなくて、やはりトータルな人間関係、世界的ないろいろな国々との関係の中でしっかりと対応していくべきだということを私は申し上げたいと思います。

 ちょっと時間がないので、次の質問に移らせていただきたいと思います。

 国立追悼施設の問題でありますけれども、この問題を議論するに当たっては、当然のことながら、意識しなければならないのは靖国神社の存在だろうというふうに思いますけれども、まず官房長官に、靖国神社が創建された趣旨について官房長官はどういう御認識を持っておられますでしょうか。

町村国務大臣 私もそう詳しいわけじゃございませんが、資料を見たところによれば、明治二年に明治天皇のおぼしめしによって、戊辰戦争で倒れた方々を祭るために創建をされた、後に、嘉永六年以降の国内の戦乱に殉じた方々、また外国との戦争、象徴的には日露戦争、日清戦争、また第二次大戦ということもあろうと思いますが、日本の国を守るために倒れた方々をあわせ祭ることになった神社であるというふうに承知をしております。

平岡委員 今大臣がお答えになったように、基本的には靖国神社というのは、軍人軍属の方々に対して、これを祭るというような仕組みになっているわけでありますね。

 そこで、平成十四年の十二月二十四日に、これは福田総理が官房長官時代につくられた懇談会の報告書というのが出ております。そこでもいろいろなことが報告書の中に盛り込まれておりますけれども、私は、国として、戦死者のみならず、すべての戦没者を追悼するような施設というのを、やはり今この時代に生きている我々の責任でつくることが必要ではないか、望まれるのではないかというふうに思っておるんですけれども、大臣はどのようにお考えでしょうか。

町村国務大臣 委員のこうした御質問もありますので、私も改めてあの報告書を読んでみました。大変幅広い観点から貴重な御提言をいただいたというふうに受けとめております。これについて今後どうするのかということは、残された問題として現実にございます。

 これは福田総理の本会議における答弁、十月三日、衆議院本会議でございますけれども、「この施設は、戦争で命を落とされた、民間人も含めたすべての方を追悼するものであり」「多くの国民の皆様に理解され、敬意を表されるものであることが重要でございます。そしてまた、国民世論の動向等も見きわめてまいりたいと思います。」こういう総理の発言をしておられます。

 私も今、そういう意味で、国民世論の動向というものを見きわめなければならない段階にあるのではないか、このように受けとめております。

平岡委員 大臣も御存じだと思いますけれども、沖縄の糸満市には、平和の礎という祈念碑といいますか施設があるわけですね。これは戦死者だけじゃなくて、すべての犠牲になった方々、沖縄戦で亡くなったすべての方々を対象とするものであるということでございます。

 私は、大きな戦争で大きな被害が世界のいろいろなところで起こり、当然のことながら日本の国内でも起こった、この事実をしっかりと我々としては認識し、そして将来の平和を祈念していく、願っていくというその気持ちを、日本国民が、まだ戦前、戦中に生きていた人たちがいるこの時代にしっかりとやっていくことが必要だというふうに思っています。私は福田総理が官房長官時代にも言ったんですけれども、ただ単に世論の動向を見守るだけじゃなくて、国として積極的にこのことを進めていく、このことをぜひお願い申し上げておきたいというふうに思います。

 時間がありませんので、次の質問に入りたいと思います。

 経済財政政策の関連でございますけれども、大田大臣が所信でいろいろと述べられている中で、特に財政健全化の問題についてちょっと触れていきたいというふうに思います。

 ここで、これは骨太の方針等にも示されている言葉をある程度はしょりながら使った言葉だと思いますけれども、「まずは二〇一一年度には国と地方を合わせた基礎的財政収支の黒字化を確実に達成するなど、」というふうに書いておられるんですね。目的が二〇一一年のプライマリーバランスの黒字化ということに焦点を当てているようでありますけれども、この「など、」の中にどんなことが入っているのか。

 つまり、この「など、」の中には、まだまだ政府の中でも異論があるというような状況でありますから、異論があるような状態の中で明確に表現できないから「など、」と言っておられるのではないかというふうに邪推もするんですけれども、この「など、」には何が含まれているというふうに大田大臣は所信で述べられているんでしょうか。

大田国務大臣 財政の健全化のために二〇一一年度にプライマリー収支を均衡するというのは、第一関門であると考えます。そのときに、国、地方を合わせた基礎的財政収支を黒字化する、これがまず第一関門です。残された「など、」の中に入っておりますのは、大きく二つございます。

 一つは、国、地方を合わせた基礎的財政収支が黒字化されましても、国、地方、それぞれをとりますと、プライマリーバランスの状況が異なります。国は赤字が残り、地方は辛うじて黒字になるということがございますので、国、地方、それぞれの目標を立てていくということが一つの課題でございます。

 それから、二〇一一年度にプライマリーバランスが均衡いたしましても、金利と成長率の関係によりましては、債務残高の対GDP比はどんどんふえ続ける状態が続きます。したがいまして、今度は二〇一一年を過ぎた後は、債務残高の対GDP比を少しずつ引き下げていくということが必要になってまいります。その目標についてもいずれ議論していかなくてはならないという、この二つの意味で「など、」というのを使っております。

平岡委員 結局、二番目に言われた目標というのは、まだ確定していないから、これから議論するべき問題だから書いてないということですよね。そうすると、本当は「など、」というのを目的に書いてはいけないんですね、多分。二番目のものははしょらないといけなかったんだというふうに思います。

 それはそれとして、その後に、「歳出歳入一体改革をさらに進めます。」ということと「歳出改革を徹底して実施した上で、」と書いてあるんですね。これはどっちなんだろう。歳出歳入一体改革をするのか、それとも歳出改革、つまり徹底した歳出削減をしていくというのが先なのか、これがよくわからないんですね。

 これもまた多分、政府部内でも、あるいは与党を含めて、いろいろ議論があるところですからこんな表現になっているのかもしれませんけれども、一体、この歳出歳入一体改革をさらに進めるということと歳出改革を徹底して実施した上でということ、これはどういう関係に立っているんですか。

大田国務大臣 歳出歳入一体改革は、歳出と歳入をパッケージでとらえております。歳出削減と税収増をパッケージでとらえたというところが特徴です。したがいまして、歳出削減の量が多ければ税収増の余地は小さくてもいい。歳出削減を少ししかできなければ税収増を大きくしなくてはいけない。この税収増の中には、経済成長による税収増もありますし、制度上の増税ということもございます。これは、時間的にまずどちらが先ということではございません。

 歳出改革については、骨太二〇〇六に書かれました、五年間で十一・四兆円から十四・三兆円の削減を行う、これはこれでしっかりと進めていきます。あわせて、二〇一一年度にプライマリーバランスを均衡するために、それで不足する歳入については改革を進めていくということです。

 私どもは、今の改革が歳出歳入一体改革の経路に乗っているかどうかを半年ごとにチェックしながら進めております。

平岡委員 今の説明でいくと、一体改革とはやはり呼べないんじゃないですかね。一体改革というのは、やはり歳出と歳入面、両方、ぱっと決めてやるんですけれども、今は「歳出改革を徹底的に実施した上で、」というふうに言っているので、つまり、徹底した歳出削減をやった上で、その上で考えていきましょうというふうになっているようにこれは読めるんですね。そういう意味で、ちょっと私は今の説明には必ずしも納得はいかないわけであります。

 その中で、歳入改革と言われている部分についていえば、「消費税を含む税体系の抜本的な改革を実現させるべく」というふうに言っております。これはよく使われているフレーズなので、私もどういう意味なのかというのはある程度わかるつもりなんですけれども、この文章を見ていても、何を目指す改革なのかというのがよくわからない。

 つまり、歳出歳入一体改革、先ほど説明されたように、歳出削減してもなお足りない部分があれば歳入でやるんです、そのときには消費税を含む税体系の抜本的な改革なんだというふうに言われてしまうと、ただ単に、歳入を確保するためだけの、増税をするためだけの改革、改革というべきなのかどうかわかりませんけれども、それを言っているにしかすぎないのではないかというふうに思うんですね。一体これは何を目指した改革なんでしょうか。

大田国務大臣 歳出改革で賄い切れない少子化ですとか社会保障の財源は歳入増で行うという、これは先生御指摘のとおり言っていることですが、ここで「税体系の抜本的な改革」とございます。税体系というのは、単に増税するのかどうかという税の量の問題ではありませんで、税の体系ですので、一言で言いますと、二十一世紀にふさわしい税制をつくっていくということがもう一つの大きい課題としてございます。

 所得税、消費税、法人税について、次の三つの観点から税制を考えていかなくてはいけない。一つは納税者の立場に立った税、二番目に経済社会の変化に対応する税、それから三番目に省庁の縦割りを超えて受益と負担の両面から税のあり方を考える、この三つの観点から、税制のあり方について、既に政府税制調査会で議論が始まっておりますし、経済財政諮問会議でも議論を行っていくこととしております。

平岡委員 では、私の質問を逆から言いますと、徹底した歳出改革をやります、その結果、歳入については特に新たに増収策、増税策をとる必要はないという事態というふうに見込まれます、こうなったときは、この税改革というのは一体どうなるんですか。やるんですか、やらないんですか。

大田国務大臣 先ほど少し申し上げましたように、歳出改革と歳入改革は時間的な概念ではありません。どちらが先ということではありません。

 歳出改革は、骨太二〇〇六に書かれた十一・四から十四・三兆円の削減を毎年度の予算でしっかりとやっていく。しかし、それに加えて、社会保障がどうあるべきか、あるいは骨太二〇〇六では具体的に書かれておりませんでした少子化対策はどうするのか、こういった課題がございます。したがいまして、歳入改革は歳入改革として、並行して議論をしていかなくてはなりません。

平岡委員 ちょっと次の社会保障改革について触れてみたいと思うんです。

 よく国民負担率という言葉が使われておりまして、骨太の方針の中にも出てくるわけでありますけれども、国民負担から給付を控除した残りの部分での負担率という意味で、純公的負担率というような概念が使われている。これを取り出してみると、日本とスウェーデンはよく比較されますけれども、国民負担率はスウェーデンの方がずっと高いけれども、純公的負担率で見ると、これは日本の方がむしろ高いといいますか、スウェーデンの方が低いということが出てくるというふうになっているわけですね。

 そうしますと、この純公的負担率というような考え方でこれからの社会保障改革を考えていくということも必要ではないかというふうにも思うんですけれども、その点についてはどのようにお考えでしょうか。

大田国務大臣 社会保障給付というのは、国民から国民への移転であり、あるいは、若いときに保険料を払い老後に年金を受け取るという意味で移転ですので、それを除いてネットの負担で考えるというのは、一つの考え方だというふうに思います。

 思いますが、仮に人口構成が一定ならば、私が若いときにした負担を私は老後に年金として受け取るという形になるわけですが、今の日本のように人口が逆ピラミッドになっている場合は、社会保障の給付を厚くいたしますと、どうしても後世代にはより多くの負担がかかってくるということが言えます。

 したがいまして、社会保障制度の持続性という意味からいいますと、やはり、国民負担率、あるいはそのときの国債発行を含めた潜在的国民負担率という指標は重要だというふうに考えます。

平岡委員 ちょっと時間がないのでこれ以上議論しませんけれども、大臣はこの発言の中でも、「国民の受益と負担の水準についてわかりやすい複数の選択肢を示し、」こう書いてあって、私はこれから何か国民に示していただくのかなと思ったら、事務方に聞くと、十月十七日の経済財政諮問会議で示しましたというような説明をされる。経済財政諮問会議で示したことをもってして国民に示したということでは多分なくて、もっとこれから議論されたものとしてお示しされるだろうというふうに思うわけでありますけれども、そのときに、ただ単に国民負担率ということだけじゃなくて、私が先ほどから言っている、純公的負担率というような面から見たときにどうなるのかというようなことを国際比較をしながらちょっとお示しをしていただきたい、このことをお願い申し上げたいと思います。

 時間が参りましたので、以上、お願いだけ申し上げまして、私の質問を終わります。

中野委員長 次に、泉健太君。

泉委員 民主党の泉健太でございます。

 本日は大臣所信に対する質疑ということでありますけれども、私は、特に、内閣府及び内閣官房の巨大な事業、プロジェクトでございます、中国における遺棄化学兵器の処理事業、このことについて質問をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、最近の動きといたしましては、安倍総理、そしてまた、その安倍総理のときに温家宝首相が日本に来られた、そして移動処理施設の実施が決まったということで、その点については前向きな進展があったというように認識をしていたんですが、大変残念なことに、この巨大な事業において、遺棄化学兵器処理機構から委託を受けたPCI・日揮、このPMCという共同企業体、そこからさらにさまざまな業者に対して再委託が行われていく過程の中で、東京の地検特捜部が家宅捜索をするという事態に発展をしてまいりました。このPMC関連の社長も務めたことのある荒木氏を初め、複数の会社、そして元幹部宅を家宅捜索するということに発展をいたしております。現在のところ、特別背任の容疑でということになっております。

 まず、資料の一をごらんいただきたいと思います。新聞の記事で恐縮なんですが、構図が主に載っております。

 これは平成十六年です。〇四年度、国から発注が七十六億円。十六年度ですね。その七十六億円の発注が処理機構にあり、そこからPCIなど共同企業体に約三億円、そして、そこから再委託でPPM、これはパシフィックプログラムマネージメントという会社、現在はちょっと社名が変わっておりますが、そこに二億七千万、そして、そこからさらに都内の建設設計会社など四社に一億六千万で発注されている。その中で九千万円が不正流用されているのではないかというようなことで捜索を受けているということでございます。

 まず、担当室にお伺いをしたいわけですけれども、この現在捜索を受けている事案について、今私が説明をしたようなことで間違いはございませんでしょうか。

西政府参考人 お答え申し上げます。

 今、この新聞に出ておりますように、国が遺棄化学兵器処理機構に発注をいたします。それで遺棄化学兵器処理機構は、その下にありますPCIなどの共同企業体、これがPMCという名前でございますが、そこに対しては、一括再発注するということは制度において認められておるところでございます。

 それで、その後のところ、再委託がさらにPPMに対して行われているというふうになっておるのでございますが、これは新聞でかように報じられてはおるのでございますけれども、私ども、事実関係としてこのような再委託があったのかどうか、それを確認するには至っておりません。

 ただいま申し上げましたのは、もし万が一PMCが事業の再委託を行う場合には、これは、PMCと機構との関係の契約により、機構に対しその旨報告をせねばいかぬというふうになっておりますが、現時点で私どもそのような報告があったとは承知しておらない。かような次第から、報道が事実かどうか、私どもいささか判じ得ないところが残っているということでございます。

泉委員 まず、この担当というのがちょっと確かにややこしいんですね。今、答弁に立たれた室長というのは内閣官房の担当室の室長でもあり、また、内閣府の担当室の室長でもあり、中のメンバーはほとんど一緒だと。ほぼというか、全部一緒なんでしょうかね。

 その意味で、ちょっとそれこそ官房長官と大臣に確認をしたいんですが、この事業についてはだれが政府の責任者であるのかということをもう一度確認をしたいんですが、これは官房長官、どうなるんでしょうか。大臣。

岸田国務大臣 まず、この処理担当室は内閣府の中にあります。ですから、内閣府の中でその監督をする責任は、内閣府担当大臣であります私にあると認識しております。

泉委員 内閣官房の中にある担当室に対して責任を持つのは官房長官ということになるんでしょうか、官房長官。

中野委員長 西官房審議官、できれば簡単にやってください。

西政府参考人 申しわけございません、一点だけ事実関係を補足させていただきます。

 これは組織として内閣府の中に置かれている室でございますが、あわせて、その事業の立ち上がり経緯がございまして、私ども、内閣官房と内閣府、両方の身分を分属しております。それゆえに、機構図などを見ますと、内閣官房の方にも遺棄化学兵器のセクションというのがあらわれてくるのでございますが、今、岸田大臣よりお答えさせていただきましたとおり、私どもの組織としては、基本的には内閣府の中で作業をする、ただ、身分的には内閣官房もあわせて持っておる、このような形になっております。御承知おきいただければと思います。

泉委員 官房長官、これ、たしか内閣官房からこの事業に対しては基本的には予算が出ていないというふうに私説明を受けているんですが、どうして内閣官房の中に、中にというか、現在も担当室というあり方で残っているんでしょうか。

西政府参考人 たびたびのお答えで恐縮でございます。事実関係ですので御容赦くださいませ。

 本件は、まず一番最初の時点には、中国における遺棄化学兵器の調査研究というところが立ち上がりでございまして、これはまず外務省においてその作業を開始いたしました。外務省の方で、その調査研究を行う中でいよいよ発掘、回収、処理というものが必要になってくるということが議論されまして、当時、内閣官房に外政審議室というものがございまして、その場で議論がされたような次第でございます。その際、どこにそのような機構を設けるかということに関してはいろいろ議論があったようでございますが、その結果といたしまして、省庁改編以前の段階で、現機構では内閣府、こちらに所属させるのがしかるべしということで最終的に議論の帰結を見ております。

 ですので、内閣府の長たる大臣はこれは内閣官房長官でいらっしゃいますので、そのこともありまして身分を分属しておりますが、組織としては内閣府の中、そして、その職務の直接の担当大臣としてはただいま岸田国務大臣がお務めになっている、このような形でございます。

泉委員 もう中に入っていきますが、それを踏まえて岸田大臣、今回のこの荒木事件、通称ですが、これについての会見のお話も出ておりましたけれども、現在の御見解をお聞かせください。

岸田国務大臣 御指摘の事案につきましては、最初にマスコミ、新聞等で大きく報じられましたのは十月十六日からだったと記憶しておりますが、こうした新聞、報道等で報じられているような不正が行われていたとしたならば、これは大変遺憾なことだと認識をしております。

 まずは、この事実関係の把握に努めなければいけないということで事務方に指示を出しているところですが、現在、事務方の方でも担当室が中心になりまして、株式会社遺棄化学兵器処理機構の担当者に対しましてヒアリングを行うですとか、あるいは処理担当室に存在いたします支出状況の報告、業務月報ですとか出張計画書ですとか、あるいは請求書ですとか領収書ですとか、こうした証拠書類につきまして再確認を行っているところであります。

 捜査の推移もしっかり見守りながら、まずはこの事実の把握に努めなければならないと考えているところですが、こうした事実の実態いかんによりましては、やはり断固たる対応をとらなければいけない、こうした執行体制の見直しも含む対応を考える必要も出てくるのではないか、こんなことを今認識しております。

泉委員 この事業、これまでも再三、さまざまな議員から質問があり、また新聞紙上をにぎわしてきた事業でもございます。

 総額幾らかかるのかがわからない、これが国民もまた多くの報道関係者も大変心配をしているところでございまして、そしてまたさらに言えば、事業が相当程度進捗がおくれている。そういう中で、現在はまだ本格的な予算の投入というものが行われていないわけですけれども、現在まだ準備段階、ここからさらにさまざまな施設をつくり運用していく中で、膨大な資金、税金が投入されるということが指摘をされているわけです。

 そういう意味で大変重要な事業でありますけれども、その中で、そもそもは政府から発注した事業、それが、そのグループの中で、もしかすると不正流用されていたかもしれないということで、これは大変な問題であるというふうに思っております。

 担当室にもう一度確認しますが、これまでこの遺棄化学兵器処理事業に費やした費用の執行額、総額を、十八年度までで幾らになるか教えてください。

西政府参考人 お答え申し上げます。

 本事業が始まりましたのが平成十一年度からでございます。平成十一年度より平成十八年度まで、これまでの執行総額約四百七十一億円、こういうふうになってまいっております。

泉委員 その四百七十一億円というのは、すべて担当室から出たというか、内閣府から出された費用ということで考えてよろしいですか。

西政府参考人 お答え申し上げます。

 予算は、内閣府の方に必要な予算が計上されます。その予算の執行に関しましては、内閣府本府の会計課はもちろんかかわってまいりますが、私ども遺棄化学兵器処理担当室の方でその執行を行っておる、このような形になっております。

泉委員 担当室にさらにお伺いをするわけですが、この事件が発覚をして以降、関係機関にどのような連絡また情報収集を行ったのかを御説明ください。

西政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど岸田大臣より既に御披露あったとおりでございますが、今般の事案に関しましては、私ども、契約上、直接の関係がございます株式会社遺棄化学兵器処理機構の役員に対しまして、今回の事案について事実関係の聴取を行っております。また、当室には、これまで同機構に対します支出状況に関する各種報告がございます。業務月報ですとか出張報告書、また、業務において執行しました請求書、領収書、そういった証拠書類も我が方で控えておるところでございますので、そういったような各種物証の確認を行っておるところでございます。

 以上でございます。

泉委員 現在、この資料一に書いてあるような構図でいきますと、もしこれが事実であれば、契約書、これは国と遺棄化学兵器処理機構の中の契約書においてですけれども、どの部分に違反する行為ということになるんでしょうか。

西政府参考人 お答え申し上げます。

 私ども国側は、遺棄化学兵器処理機構と契約を結んでおります。遺棄化学兵器処理機構がPMCに対して業務を委託する、これに関しては基本的に契約で認めておるのでございますが、仮にPMC以外の会社に対して再委託を行った場合には、国に対して報告をする、これが機構側の義務でございます。

 また、株式会社処理機構がPMCと同種契約を行っております。ですので、仮に、PMCがみずから処理することのできない業務があり、これを第三者に委託した場合には、機構に対し報告する義務がPMCにございます。

 さらに、予算執行の観点から申し上げれば、PMCが部外の第三者に対し業務の発注を行った場合には、この書類が機構を通じて私どもの方に上がってまいりまして、その内容を精査し、その業務の発注内容が妥当なものであるかを精査した後に、所要の額を算定しこれを支出する、かような構造になっております。

 よって、今、いささか詳しく申し上げましたが、国と機構の間で再委託に関する契約があること、さらに、機構とPMCとの間で再委託に関する契約があること、その両方の点から、もし万が一、新聞に報じられるように、PMCに、機構に対する報告なく再委託の処理がなされておるとすれば、その点、契約違反が存在し得るもの、このように思っております。

泉委員 先ほど、PCIなどの共同企業体からPPMという会社に再委託、約二億七千万がなされたと。これについて担当室は、PPMへの再委託については報告を受けていないというふうなことをおっしゃられました。

 であれば、その部分においてだけをとっても、これはもう既に契約に違反をする行為であるというふうに言えるのではないでしょうか。大臣、いかがですか。

岸田国務大臣 その点は、そのとおりだと思っております。

泉委員 そうしますと、これは処分の問題であります。

 今回かかわっておりますPCI、これは外務省、町村官房長官も御存じだと思いますが、コスタリカの事案を初めさまざまな不正経理の問題がありまして、十八カ月の指名停止の処分も受けているという会社でございます。このことは、担当室は当然認識をされていたわけですね。

 そういう中で、もうこの処分が下っている、そして今、たしか処分が明けたばかりの会社でありますけれども、今後、そういう部分では明確に契約書に違反する行為があるということが確認をとれているわけですから、次は処分、これがどういう処分になるのか、あるいはその処分の時期はいつごろを考えられているのか、これを大臣、お答えください。

岸田国務大臣 まず、今委員から御指摘があったのが事実であったならば、要は再々委託が行われていたのであるならば、我々は契約上、この再々委託の報告を受けてもいませんし承認もしていないわけですから、契約違反になるというふうに思っています。

 我々は、この捜査が報じられたのを受けて、まず我々の対策室の中にあるさまざまな書類を再点検しまして、そして書類上、再々委託の事実はないという書類を今、確認しています。ですから、書類上の契約とそして実態が一致しているのかどうか、これをまず今確認をしなければならない、そのように思っています。書類上においてはそれは確認ができていない、これから捜査が進んでいき、全体が把握される中で、これが一致するものか一致していないものかが確認される、そのように認識しております。

 そして、そうした契約違反がもし出てきたならば、それが確認されたならば、その内容に応じて対応しなければいけないということでありますので、現時点では、その契約の中身と、報じられている実態の食い違いがある、こういった事実は認識しておりますが、その確認の最中でありますので、具体的にどう対応するかは、確認された後、慎重に対応しなければいけない、そのように認識しております。

泉委員 この確認の方法は簡単でございまして、PCIからPPMに行った委託契約、あるいはPPMから都内の建築設計会社など四社に行った委託契約、この契約書は、もしこの記事が事実であれば、それぞれの会社には存在をしているはずですね。これを提出しなさいと明確に命令をして、命令というかそれぞれの会社に言っていただければ、資料は出てきますよね。そこで、ないと言えばまたさらにそれは問題ですが、それを要求していただいて、そして入手次第、この委員会に提出をしていただくことを要求したいと思います。

中野委員長 今の委員の要望については、理事会で協議して処理したいと思います。

泉委員 それで、今、PPMという存在を知らない、知らない中で新聞報道では委託がされていて、そこで資金の流れがある、その中にまさに不正流用が隠されているということで、大変問題だというふうに思って、一刻も早い解明をお願いしたいと思うわけです。

 これに関連をして、中国側からは既に声明が出されておりますね、外交部から。この事業の進捗におくれがあってはならない、大変遺憾であるというような趣旨の声明が出されていると思いますが、今回の事件によって事業のおくれが生じるということが現在もう既にわかっているのかどうか、そしてまた、事業がおくれる場合というのはどの程度のものなのか、この辺のことを大臣、お聞かせください。

岸田国務大臣 今回の事案が報じられることによってこの事業のおくれが生じたということは我々認識をしておりませんし、今後も、中国との関係において、こういった事件が報じられることによって事業におくれが生じるということはあってはならないと思っておりますので、この事業を予定どおり進めるべく全力で努力をしていかなければいけない、そのように考えております。

泉委員 これは実は、平成十一年からこの事業が始まって、この新聞記事で言うところの国、そして三段目、真ん中にあるPCIなどの共同企業体、そもそもは、このPCIなどの共同企業体に対して当初は直接の委託を行っていたわけですね。直接の委託を行っていたものが、平成十六年四月に株式会社遺棄化学兵器処理機構というものを設立して、そしてわざわざそこから、今まで委託業務を行ってきたPCIと日揮の共同企業体にさらにコンサルティング業務が委託をされる。これは非常にわかりにくいですね。機構をつくり、間にかませ、結局はまた同じように機構からコンサルティング業務を発注する、これは非常に理解しにくい構図であります。

 これはそもそも、どうしてこのような機構の設立に至ったのか、大臣、御説明をお願いします。

岸田国務大臣 今、泉委員御指摘のように、まず、平成十三年二月に、この新聞記事にありますPCIの企業共同体、これはPMCと呼んでおりますが、PCIと日揮の共同企業体でありますが、このPMC、共同企業体と公募型のプロポーザル方式にて内閣府は調達を行いまして、平成十五年度まで施設設計等の技術コンサルティング業務、これを委託していたわけです。

 そして、十六年からどうして変わったかという御質問ですが、十六年以降、処理事業の中身が本格化いたしました。従来のコンサルティング業務だけではなくして、それに加えまして発掘回収施設等の建設、あるいは各種装置の製造にかかわる調達、あるいは現地の施設の運転管理等に関する業務、こうした調達ですとか運転管理業務が十六年から加わるようになったわけであります。

 十五年まで、この共同体に対しましてはコンサルティング業務を委託していました。十六年からは、コンサルティング業務だけにとどまらずに、調達ですとか管理運用業務が必要になってきたということでありますので、これを両方委託できるような存在が必要になってきたということで、コンサルティング業務、調達、運営管理、こういったものをトータルでできる管理会社が必要になってきたということで平成十六年から、十六年三月に株式会社遺棄化学兵器処理機構を設立して、この機構にトータルの管理をお願いするという体制になったわけであります。

 そして、その管理会社の業務のうち、コンサルティング部分は従前からPMC、新聞でいきますとPCIの企業共同体、このコンサルティング部分はさまざまな知見や技術の蓄積がありますので、その知見の蓄積のあるPMCにお願いし、それ以外の部分は、他のさまざまな企業に委託をするというような委託を機構の方から行ったという体制に切りかわったということでございます。

泉委員 やはり非常にわかりにくいですね。なぜ機構が必要なのか。

 では、PMCは、施設設計業務あるいはコンサル業務を主に行うところであった。建設関係の調達業務がさらに加わるから機構をつくりました。別につくらなくたって、PMCがその業務を加えてやったらいいんじゃないですか。だって、機構の中にはほとんどPMCが丸のまま入っている状態で、コンサル業務、頭脳部分はそれまでと同様に行っているわけですね。それに調達業務がくっついた。それをもって、わざわざPMCと別な機構をつくらなければならない、その理由がわからないということなんです。

 余り下世話な話なのでちょっと言いたくはありませんが、資料六をごらんください。これは、処理機構ができた当初の経費の一部、個人名が入っておりますのでその部分は消してございますけれども、ちょうどまだ設立当時、役職員が少ないときの資料でございます。

 これを見ていただくと、機構の給与報酬人件費、十二月給料というところを見ていただくと、数字がいっぱい書いてあります。一番高いので、一月分役員報酬百九十一万、さらに、四十一万九千円というのがプラスされている。さらには、百万円の月給をもらう方が六人ぐらいずらっと並んでいる、こういう状況ですね。

 では、機構というのは何をしていたのか。一般の国民にも全くわかりませんし、大臣、ホームページを見たことがございますでしょうか。機構のホームページというのは、特殊な会社だからという理由で、あるいは内閣府だけが契約をしている、委託を受けている会社だから、表に出す情報は何もないんですという理由で会社概要が書いてございません。調達に関する情報だけがそのホームページには載っていて、会社が何をしているのか、何人職員がいるのか、どういう方々がおられるのか、全くわからないというような会社でございます。

 そこが、こういった形で、一般の国民からすれば多額のお給料をずっといただき続けている。もちろん、専門的なお仕事かもしれません。知見を集めて、最高のスタッフを集めていただいているのかもしれません。だけれども、それも、やはり情報公開を、透明性を高めていただいて初めて我々は理解できることでございまして、残念ながら、今の段階では大変不透明だと言わざるを得ません。

 ですから、私は委員会に要求をしたいんですが、ここの機構の、会社の組織図、これは平成十六年の設立当時のものと現在のもの、これをぜひ委員会に提出していただきたい。そして人数。そして、この機構に対する出向者、他の会社、団体、こういったところからの出向者の一覧。そしてまた、この機構の中における、例えば特定の資格を有した方がおられるかどうか、それも一覧。これをぜひ提出いただきたいというふうに委員長にお願いしたいと思います。

中野委員長 ただいまの委員の要求につきましては、理事会で協議いたします。

泉委員 さらに言えば、この処理機構というのは、資本金はすべてPCIG、PCIという名前が再三出ていますが、そのグループ会社でございます、その統括持ち株会社でございますPCIGが、資本金三億円全額を出資して設立をされております。PCIGについても非常にその中身が理解できないということでございまして、ぜひ、その株主の一覧も提出をお願いしたいというふうに思います。

中野委員長 その件につきましても、理事会にて協議いたします。

泉委員 そういったことで、非常にわかりにくい中で機構が設立をされて、実際には、続いて資料二、三、四と、平成十六年から十七年、十八年、これは遺棄化学兵器処理機構への委託費執行状況というものが書いてございます。

 まず資料の二を見ていただきますと、先ほどの新聞でも説明がありましたが、国から約七十六億円、処理機構に対して資金が流れております。これは資料の中ほど、契約額・精算額というところの、平成十七年三月三十一日精算、七十五億五千四百二十四万九千円、これが先ほどの約七十六億という数字でございます。そこからさらに、再委託として明らかになっているものがずらっと並んでいるわけですね。今回はさらに、表の一番上の、遺棄化学兵器処理事業総合コンサルティング業務、PMC(PCI・日揮共同企業体)、三十四億一千四百七十一万九千円、ここに再委託をされているわけですが、ここからさらに、その事業がPPM、そして都内の設計会社などに渡ったということになっております。

 改めて、資料の一で、この事業の一部は約三億円で機構からPCIなどの共同企業体に委託されたというふうに新聞報道ではなされておりますが、担当室長、このコンサルティング業務の中の三億円の事業とは何という事業なんでしょうか。

西政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生、この三億円という事業が具体的にというお尋ねでございますが、先ほど来申し上げておりますように、私ども、こうした再委託があるのかどうか、まずその事実が把握できないでおります。

 もう一つ、細かいことでございますが御説明させていただきますと、コンサルティング会社というところは、必要なコンサルタントを集めてチームを組みます。そのチームを組んだ場合、何日、かつ、どれくらいのクオリティーの人間が働いたか、それによって支払い額が決まってまいります。さらに、それに通常、一般管理費というものがついて、それぞれが支給されます。

 ですので、今問題になっておりますこのPMCには、PCIグループからの人の派遣と日揮の側からの人の派遣、これによってこのPMCというコンサルティングの機構が動いておるわけでございますけれども、そのPMCにPCIグループから来ている会社の中に一部PPM出身の者がいるというようなことが一方でございます。ですので、PCIからPPMにお金が流れるということは、そうした点で、コンサルティング業務を行うことに対する正当な報酬として流れる、こういうことは十分あり得るところでございます。

 ですので、先ほど来申し上げておりますように、平成十六年当時におきましてPMCが再委託を行った事案、これにつきましては、正規に上がってまいりますものをすべて私ども書面で確認しておるわけでございますが、そうした再委託の契約なく何らかの業務が再委託されておったのか、あるいは、ただいま申し上げましたような形での正当な形での資金の動きがあったのか、それについての事実関係は私ども現時点で把握できない、これが事実関係でございます。

 以上でございます。

泉委員 この平成十六年でいうと、私、ちょっと足し上げて引き算をしてみたんですが、二の表でいきますと、右側にずらっと書かれている随意契約、一般競争入札、ここに再委託額というのが書かれていますね。

 それで、一番最初に国から機構に支払われた七十五億からこの足し上げたものを引くと、ちょっと手書きで恐縮なんですが、三十九億八千三十三万六千円。そして、これは同様に、十七年度は四十三億二千六百三十四万八千円。十八年度は五十一億六百五十万六千円。この遺棄化学兵器処理事業総合管理業務の中だけでいいましても、再委託分はこうして表に見えているんですが、それ以外のこの三十億円から五十億円、これはどのような使い道に主に流れているんでしょうか、それを教えてください。

 再委託以外のこの機構の中の三十九億円とは何なのか。再委託以外の四十三億円、五十一億円というのは何なのか。これを担当室長、お答えください。(発言する者あり)

西政府参考人 大変失礼いたしました。

 恐れ入ります、にわかなお尋ねでございます。

 ちょっと私ども、今先生御指摘のこの数字、私どももう一度きちんと計算をして、改めて御報告をさせていただければと思います。申しわけございません、誤ってはいけませんので再度確認させてください。

泉委員 では、少なくとも、再委託されている金額がずらっと並んでおります。だけれども、一番大もとに来ている契約額・精算額の七十五億五千四百二十四万九千円、この数字はあるわけですね。その差額というのは、主に何に使われているんですか。正確な数字じゃなくても結構ですが、これは何に使われているお金なんですか。

西政府参考人 今先生がお尋ねになっていらっしゃいます件、私どもの方で、株式会社遺棄化学兵器処理機構の方にまずお金を支払います。それが今申し上げました、一番大きいところでそのPMC、そういったところに再委託でお金が流れます。他方、この機構自体に一般管理費というものが出てまいります。

 今、にわかなお尋ねですので、改めて額を確認した上でもう一度申し上げさせていただくことになろうかと思いますが、今お尋ねの件は、この機構自体の一般管理費の方のお金ではないかと思われます。恐縮でございます。

泉委員 いや、担当室長の認識が本当にそうだとは私は信じがたいですね。担当室長、本当ですか。

西政府参考人 失礼いたしました。一項目落としておりまして、対中要請経費というものが入ってまいります。そちらの方の額が、今先生御心配の額に当たってくるところになろうかと思っております。大変失礼いたしました。

泉委員 資料の七をごらんください。総合管理業務支出済額内訳表でございます。丸をつけている二つがありますね。ちょっと赤ペンで丸をつけましたので。ここに、直接費、6再委託費、これが三十四億三百七十二万九千三円ございます。これも、ちょっと細かい数字でいうと先ほどの二の表の再委託額と多少違いますので、税込み、税抜きの関係なのか、非常にややこしいわけですが、ただ、大きくは再委託費として三十四億円なんですね。先ほど室長がおっしゃった一般管理費は、一億七千九百万でございます。

 そして、その下、中国側協力経費というのがございまして、三十二億五千三百七十五万五千五百六十九円。単年度で三十二億円、中国側協力経費というのがございます。いわゆる対中経費と言われるものですが、大臣、もしわかればぜひお答えいただきたいんですが、やはりかなりの額が対中経費という形になっておりますが、対中経費の、この事業が始まってからの各年度の額、そして総額を教えてください。

西政府参考人 恐れ入ります。事実関係ですので、私の方からお答えさせていただきます。

 対中要請事業といいますのは、本事業執行に当たりまして、これは中国の法規に従いという約束になっております。その関係で、日本国政府側で事業を行うことが必ずしも合理的でないようなもの、これに関しては、中国の窓口であります外交部弁公室を通じて必要な役務その他を調達するような形になっており、その支払いというものが年々行われております。

 その点に関しましては、先生のお手元の資料、五ページ目にありますように、私ども、平成十二年度から支払いを開始いたしまして、これまで、十八年度までの間、百七十七億円余りを支出させていただいておる、この数字で間違いございません。

泉委員 そうです。資料五、対中経費執行額一覧、これが載っております。十一年から十八年まで百七十七億二千万円、大変な多額でございます。

 ただ、ここは私も、また一般の国民も誤解があってはいけないというふうに思っておりますので改めて確認なんですが、そもそも、この対中要請事業経費というものの定義、これを教えてください。というのは、対中要請事業経費とは、中国側にすべて払っているという経費なのか、中国側で行う事業についての費用なのか、ですから日本の側でも使用しているという費用であるのか、その定義がよくわかりません。これを改めて教えてください。

西政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど先生に申し上げましたとおり、中国国内における本事業につきましては、これは条約に従いまして、我が国が必要な資金を負担する、このようになっております。さりながら、日本側が直接実施することが困難あるいは非効率な事業につきましては、これを中国政府に対しましてその事業の実施を依頼いたします。中国政府からの請求に基づきまして、日本側が中国政府に所要の経費等の支払いを行います。これを指して、対中要請事業経費、かように申しておる次第でございます。

 この経費の支払いに当たりましては、まず、事業実施前に中国政府から提出されました見積書などにつきまして、日本側で積算の考え方や、あるいは専門家の意見を交えての検討を行いまして、積算根拠、内容の確認、あるいは中国側の規定の調査、入手、さらにそれに基づいた質疑を行いまして、その真偽を精査してまいります。

 また、対中要請事業の実施中、またその事後におきましては、政府より政府の職員、私ども担当室の人間でございますが、これが現場に赴きまして、その事業内容を確認する、このようなことを行っております。

 このようにいたしまして、中国側から提示されました請求に対しては、事業ごとにその内容の妥当性、具体性を十分に精査しており、この事業を進めておる、このように私ども行っております。

泉委員 改めてお伺いをいたします。

 今の御説明ですと、中国国内の事業で実施は中国側にゆだねざるを得ないもの、こういったものを対中要請事業経費。では、これを、一括で払っているのか個別に払っているのかはよくわかりませんが、どこにお支払いになられているんですか。窓口は一つ、それともそれぞれ事業を行う者に個別にお支払いをされているんでしょうか。

西政府参考人 お答え申し上げます。

 支払いは、私ども、これは中国側外交部に弁公室、本事業のためのプロジェクトチームがございます。そちらの弁公室の方に対し一括支払いをする、このような形で処理をしております。

 中国国内のそれぞれの経費の配分に関しましては、弁公室がそれぞれ必要な機関に支払いをする、このような形で行っておる次第でございます。

泉委員 改めて確認をいたします。

 二〇〇五年七月五日、参議院外交防衛委員会で、自民党の山谷えり子氏がこの件について質問をいたしております。中国側の作業員には平均で日当数十ドルを払っているが、本人に払われているのは百三十円、中国側はきちんと説明していない、こういうような質問がなされております。

 そのとき、当時の外務大臣であります町村大臣は、向こうからどんと請求があって、それを全部支払うようなことをやっているわけではないというふうに答えられておりますが、これは今も変わりませんか。

岸田国務大臣 この対中要請事業経費の支払いにつきましては、事業前の段階で中国政府より提出された見積書等につきまして、日本側で積算の考え方等を専門家の意見を交えて検討する。そして、積算根拠、内容の確認のため、中国側の規定の調査、入手及び質問等のやりとりを行っている。こうした中国側の数字につきまして、専門家を交えての確認を行っているところでありますし、また、この事業が始まってから、それから事後におきましては、日本側より政府職員が現地に赴き、事業内容の確認を行っているところであります。

 そして、これはどの事業も同じでありましょうが、この事業も他の事業と同じく、年二回、会計検査院の検査を受けているわけであります。今まで、その検査の中でも一度も指摘を受けたことはないという事実が残っております。

泉委員 これは中国側も、いわれない批判を受けるのは心外だというふうに思います。今まさに、日中で協議をしながらその支払い額を決めている、そういうことであれば、これは〇五年当時ですが、一方で、日当数十ドルをもらっているが本人に払われているのは百三十円だなんていう誤解は起きるわけがないですね。その起きるわけがないことを検証するためには、やはりこの資料を出していただく必要があるというふうに私は思いますし、これはもうお互いに適正な価格を定めてやっていられるわけですから、何も怪しい資料ではない、また情報を公開できないものでもないというふうに私は思っております。

 別にその交渉の過程の中身をすべて教えてくれということではございません。決まったその経費のそれぞれの単価を教えてほしいという話でございまして、委員長、これも私は、それぞれの人件費、中国側、対中経費におけるそれぞれの費用の中身について一つ一つお示しをいただきたいということを要求したいと思います。

中野委員長 ただいまの委員のお申し出につきましては、理事会で協議をさせていただきます。

泉委員 この対中経費、百七十七億でございます。今こうして日本の国内が大変財政難だという中で、いつも批判をされますが、最大総額一兆円だとか五千億円だとか、本当にいろいろなことが言われているわけですね。これは与党の議員さんからもたくさんの声が上がっております。

 そういう中で、国内財政が厳しい折、やはり国民の血税が使われている、最近は毎年三十億円から四十億円、対中経費が使われているということをもってしても、この透明性を高めずして国民にどう説明するのか。私は、これは国民の声だというふうに思っております。ぜひとも、この対中要請事業経費はしっかりと明らかにしていただきたいというふうに思います。

 もう時間が余りありませんけれども、今後のことをちょっと触れたいと思います。

 今回、ことしの四月二十七日に、日本国内閣府とパシフィックコンサルタンツグループ会社、PCIGが確認書というのを交わしております。そもそも機構というのは、このPCIGと日本国内閣府が合意をしてつくったのが機構なわけですね。基本契約書があり、また協定書ですとかがあるわけですが、この新しく四月二十七日につくった確認書においては、これまでは、基本的には事業はずっと継続して一括して行っていくということだったわけですが、適正なリスク評価がされるなどということで、よって、この基本契約書等を廃止することを相互に確認したということでございます。

 これは大きな動きだというふうに思います。実は、かつて随意契約をしてきたときの政府側の理由というのは、この会社じゃなければ、この事業体でなければ代替不可能、知見から技術から、すべてにおいてここ以外にあり得ないということをずっと言い続けて随意契約を行い、多額の費用を出してきたわけですね。にもかかわらず今回は、この確認書において基本契約書を廃止する、これは大変大きなことでございます。

 どうしてこんなことに至ったわけですか。

岸田国務大臣 まず、本事業につきましては、長期間にわたって埋蔵されていた大量の化学兵器を処理しなければいけないという特殊性があります。また、こうした世界でも類を見ないような事業を進めるに当たって、事業を進めながら知見や技術を蓄積していく、そして、この蓄積した知見や技術をもってさらに事業を進めていく、こうした手法をとらなければいけないという特殊性もありました。加えて、実際その化学兵器が爆発をした場合にどれだけの威力があるか、どれだけの被害が生じるのか、なかなかリスクの予見が難しい点もありました。

 こうした特殊性の中で、平成十六年、株式会社の機構を設立してこの事業を進めていくことになったわけでありますが、あれからことし十九年まで、だから三年間の月日がたち、事業が進められてきたわけであります。

 当初は、今申し上げました特殊性、そして大きなリスクを担わなければいけないということで、この基本契約の中で、通常よりは国の方がリスクを多く負うというような内容の基本契約書を結んできたわけであります。しかし、それから三年たち、さまざまな知見や技術が蓄積された今日、そうした蓄積が整ってきたわけですので、今までどおり国が通常ベースより多くリスクを担っていくという基本契約のありようを見直すべきではないかという議論になるわけであります。

 ですから、三年間たち、知見、技術も蓄積されてきた、通常よりは国が多く担っていたリスクを通常の一般保険論理のベースに戻すべきではないか、通常の契約のあり方に戻すべきではないか、そういった考え方から、本年四月に確認書を取り交わして、その基本契約書等を破棄する、そして一般保険論理の世界に戻すという作業を行った、これがこの確認書のありようだと認識しています。

泉委員 もう質問を終えますけれども、官房長官、これはもしかすると化学兵器禁止条約、今五年延長になりましたけれども、既に計画は大分おくれているという中で、守れない、この期間の中でこの事業を終結できない可能性が大変高くなっております。政府としてこのことについて現在どのようにお考えになられているのか。

 そしてまた、官房長官には、これまで歴代の官房長官も御認識を述べられていますのでお伺いをしたいんですが、そもそも、この化学兵器禁止条約や日中覚書に基づいてこの事業がスタートしているわけですが、日本政府が、あるいはどこかでこの遺棄化学兵器については遺棄をしたものではないという資料が出てくれば、それは日本の政府の処理の責任ではないんだということの答弁が以前ございましたけれども、これは現在も変わらないということでよろしいでしょうか。

町村国務大臣 まず、この事業に関連して地検の捜査が入ったというのはまことに遺憾なことであり、できるだけ早く正常化してもらいたいし、必要な捜査を厳正にやってもらいたい、こう思っております。

 化学兵器禁止条約上の義務の誠実な履行、これは国家として約束したわけですから、しっかりとやっていかなければいけないのは当然のことであります。確かに、おくれぎみ、これは日本側の事情ばかりじゃなくて、先方の事情というのも実は結構あるんですね。ですから、一方的におくれていることの責めが日本側にあるというふうには私は必ずしも認識をしておりませんが、まあ、そんなことを言ってもしようがありません。日中共同でこれは作業をしていかなきゃならない。そういうことはことしの四月の日中首脳会談でも確認をされたところであるわけであります。

 そして、この事業について透明性が必要だという委員の御指摘、まことにごもっともであると私も思いますし、特に、対中要請事業経費について、今のような御疑問があることは納税者の立場からして当然の疑問であろうかと思いますので、その辺にしっかりとした対応ができるように、中国政府との間でもこの点は透明性を高めるようにやっていかなければいけないだろうと思います。

 そして、どちらの責めに負うかわからない事業、確かにあるのかもしれません。そういう場合に、でも、すべてこれは日本だろうということにもそれはならないんだろうと思いますし、そこは先方政府とよく話し合いをして、しっかりする。

 いずれにしても、中国国民に被害が出てしまってはこれは元も子もないわけでしょうから、そこのところはお互いに理解をした上で、この化学兵器、埋蔵されているものについてしっかりとした処理をできるだけ早くやっていく必要があるんだろう、かように思っております。

泉委員 終わります。

中野委員長 次に、西村智奈美君。

西村(智)委員 民主党の西村智奈美でございます。初めて内閣委員会に参りました。どうぞよろしくお願いいたします。

 きょうは七大臣の所信表明演説に対する質問ということでありますけれども、とりわけ、三人の方からお越しいただきまして質問をしてまいりたいというふうに考えております。

 民主党の中でもさまざまな調査会がございまして、子ども・男女共同参画調査会というのがございます。私はそこの事務局を担当しておりますので、まずは、少子化ないし子供政策、そして男女共同参画について、上川担当大臣の所信より何点か伺っていきたいと思います。

 冒頭、大臣、御就任おめでとうございます。これまでの取り組みが大臣職でさらに引き継がれていくというふうに本当に期待をしておりますけれども、私、この問題に入りますときにいつも気になることがあります。それは何かと申しますと、後ほど質問もしていきたいと思いますが、少子化対策という言葉についてであります。

 どうもこれは、人口をふやさなければならない、ふやしたいという大人の側からの発想であって、もちろん、人口減少が我が国の社会経済に大きな影響を及ぼすことはこれは明白でありますし、それは何とか影響が緩和されていかなければならないというふうにも思うわけでありますけれども、ただ、この少子化対策という言葉が世間に広まれば広まるだけ、子供の視点というものが、あるいは子供が中心であるという考え方がやはり弱まっていくのではないかな、そういう懸念を持っております。

 今回、大臣の担当も、少子化対策、男女共同参画というふうについておるわけでありますけれども、大臣にはそうした、何といいますか、政府の側というよりは、これから育とうとする子供たちの視点に立っての政策展開をぜひお願いしたいと、冒頭強く申し上げておきたいと思います。

 まず、所信表明演説の中で、子供たちのことについて言及している中で、最大限の成果が上げられるように取り組んでいく、こんなお言葉がありました。多少前後の文脈は省いてしまいますので、これだけ聞くと一体何だろうと思われるかもしれませんけれども、先ほど申し上げたように、私の基本的な問題意識というのは、少子化対策というのは一体何だろうかということにあるわけなんですけれども、大臣がここでおっしゃっているその最大限の成果というのは、一体何をとらえて最大限の成果とされているのか。つまり、人口減少に本当の意味で歯どめがかかったということをもって成果と言うのか。あるいは、その前段の部分にはこのように書いてあります。後段の方にも書いてありますが、安心して結婚し、子供を生み育てることができる社会の実現という意味での最大限の成果であるのか、一体どういった意味での成果を指しておられるのか、そこを伺いたいと思います。

上川国務大臣 今回、福田政権におきまして、少子化、男女共同参画の担当及び青少年と食育ということで、四つの所掌を預かっているところでございますが、私にとりましては、この四つの分野いずれも、子供の心と体の健やかな成長を応援するということを中心に据えたテーマであるというふうに思っておりまして、そういう意味では、委員が御指摘になられました子供の視点ということを特に意識しながら、大切に取り組んでいきたいというふうに思っております。

 そういう意味で、今、福田政権では、希望と安心の国づくりということでございますが、お年を召した方でも安心して地域の中で暮らしていくことができる、そして若い世代の人たちも、夢と希望を持って、そしてお子さんを欲しいという方についてはその希望が実現することができるように、また、産みたいけれどもなかなかためらっていらっしゃる方についても、そのためらいの原因をしっかりと解明しながら、それに向かって、国民の皆様一人一人のそうした希望が実現することができるような社会ということに、全力で取り組んでまいりたいと思います。

西村(智)委員 少子化問題への対応ということで、今ほど大臣の方からも答弁いただいたところなんですけれども、一般的に少子化問題への対応と申しますと、大きく幾つかのカテゴリーに分かれる、まあ三つのカテゴリーに分かれるのではないかと私は考えております。

 一つは、少子化そのものに歯どめをかける、少子化を是正するための政策のカテゴリー。もう一つが、少子化の弊害を緩和する政策、人口減少があったときにその弊害を緩和するための政策。もう一つが、人口減少社会であっても社会経済制度が維持できるようにするための政策、持続可能なそういった政策への転換。この三つのカテゴリーだと思うんですけれども、大臣が担当されておる少子化対策ですね、少子化対策といった場合には、一体この三つのカテゴリーの中のどれを指すものだというふうに理解したらよろしいのでしょうか。

 ここは、この分野での問題を議論する上で大事な点だと思いますので、多少観念的な話になって恐縮なんですけれども、確認をさせていただきたいと思います。

 あわせて、少子化対策と申しますと、冒頭申し上げましたけれども、どうもやはり大人中心の論理になりがちである嫌いがありますので、この言葉そのものが、担当大臣の括弧書きとして、言葉として適当なのかどうか。私はここは多少考え直すべきではないかなと野党の立場から思っておるんですけれども、大臣のこの点についての意見がありましたら、ぜひお聞かせいただきたいと思います。

上川国務大臣 ただいま委員からの三つの切り口ということで御指摘がございまして、私も、そういう切り口で少子の問題について考えていくということについては、大変いい御示唆をいただいたことというふうに思っております。

 それで、まず、少子化そのものの歯どめをかけるかどうかということについて、今、出生率が一・二六ということ、昨年は一・三二ということで少し上がりましたけれども、なかなかその歯どめがかからない、これは問題であるというようなこと、そして、社会を維持していくために必要な人口等についても予測がございまして、それにふさわしいように持っていく必要があるのではないか、こういう議論があるというふうに思います。

 ただ、社会を構成している私たち一人一人の国民に、自分の希望する生き方ということについてそれぞれ自分の価値観に基づいた選択があるわけでございますので、その総合的な家族としての国というものが、出生率が上がったり下がったりということについてマクロ的な視点でその歯どめをかけるべきだというようなことを国の方針として出していくことについては、私は、そういう考え方ではないというふうに思っております。

 しかし、いろいろな形でかなりドラスチックに日本の社会は動いてきておりまして、そういう意味では、少子高齢化の進展も、徐々に進んでいけばそれなりのチューニングをしながら社会が持続できる、持続可能な社会を展開できるというふうに思いますが、しかし、かなりスピードが速いということで、そこの弊害について十分に是正していくような形で、時間をかけて社会全体をバランスのとれた形に持っていくということについては、これは少し、十分に考えていかなければいけないというふうに思います。

 短期的なところで問題があったり、そして中長期的な視点で考えたりということが、この少子の対策ということについても必要ではないかというふうに思っております。

 ですから、三つの視点ということでございますけれども、それを、どのところを選択するとか、どういう考え方ということだけではなくて、それぞれの社会の今の現状と、それから、これからのお一人お一人の意識とかあるいは働き方への考え方とか、いろんなことをよく考えながら、その弊害について、一部に負担がいくというようなことにならないように、十分に調整ができるような形で社会が少しずつ進んでいくということが大事だと私は思っておりますので、そういう視点で、短期、中期、長期というような問題についても、より十分に考えてまいりたいというふうに思っております。

西村(智)委員 非常に言葉を選ばれて丁寧に答弁をいただいたんですけれども、少子化対策と申しますと、やはりどこかしら、産みたい人たちの自由な選択の結果として、子供を持ちたい人が持つということよりは、何か政府の財政のために自分たちは子供を持てと言われているのではないかと、少しうがった見方かもしれませんけれども、そのように感じられることもありますので、ここのところは大臣の丁寧な説明をぜひこれからもしていっていただきたいというふうに思っております。

 そこで、所信のさらに前の方に進ませていただきますと、子どもと家族を応援する日本重点戦略という項目が出てまいります。本年末を目途にこの重点戦略を打ち立てるということのようでありますけれども、実は、これ、きのう説明も聞いたんですけれども、この重点戦略検討会議ですか、一体、何をどう検討して、何を打ち出そうとしているのかなということが、正直に申し上げて、よくわかりませんでした。

 少子化社会対策会議を廃止して、有識者の皆さんも外部から入っていただいて、それでこの検討会議を設置しているということなんですけれども、メンバーを見て、非常にそうそうたる有識者の方々だなと思うのと同時に、検討されている課題などを見ますと、今までと余りかわりばえがしないんではないか、率直に言って、こういうふうに思いました。

 今後、この検討会議、どういうスケジュールで、どういったことをテーマとして検討していくのでしょうか。また、この検討会議の成果として、結果として、何を生み出して、どう少子化問題に取り組んでいこうということになっているのか。ぜひ大臣から説明をいただきたいんです。

上川国務大臣 ただいま御指摘をいただきました子どもと家族を応援する日本重点戦略の策定ということでございますけれども、これは六月に中間的な方向が出まして、それに基づいて検討をしていただいているところでございます。

 先ほどの質問の中で私も触れさせていただきましたけれども、少子化の原因ということで、やはり結婚や出産、あるいは出産も、お子さんを一人なのか二人なのか三人なのかというようなことの、そうした御希望が大変あるにもかかわらず、今の日本の社会の中では、それを実現していくことに対してさまざまな壁があり、またためらいもあるような状況も、最近でも例の産科の問題もございましたし、あるということでございます。

 ここの重点戦略の検討の基本的な考え方としては、やはり、結婚や出産に対して国民の皆さんが本当に希望しているところと現実の間にギャップがある、どういう理由でそのギャップが生まれているのか、できればそのギャップをしっかりと解決して、その希望がかなえられるような社会ということが大切ではないか、そういう考え方にのっとって今取り組みをしていただいているところでございます。

 働き方の部分も含めて、未婚とか晩婚の部分、また、子供さんを持ちたいけれどもなかなか持てないというような形の中に、その背景として、働き続けることと結婚して子供を持つことの二者択一を迫られている状況がまだあるということ、あるいは、男性も含めまして、大変長時間の労働があるということ、また、多様な、さまざまな働き方に対しての選択がなかなかできにくいというようなこと等、働き方をめぐるさまざまな課題というものが存在している。

 こういうことの部分を踏まえて、その結婚、出産に対する国民の希望を実現するには何が必要であるかということに焦点を当てて、特にその中でも、ワーク・ライフ・バランスの実現のための働き方の改革、多様な働き方に対応できるような、子供を育てるための支援の政策の再構築ということの具体的なあり方について検討していくことが必要であるというふうに考えております。

 効果的な対策の再構築ということでございますけれども、これまで実施してきたさまざまな施策の点検、評価ということがとても大事になってくると思いますし、また同時に、子供の視点、また親の視点に立った点検、評価の手法の開発ということについても専門家の皆さんの中で御議論いただいているということでございますので、こうしたことも踏まえて、最終的には十一月、そして年内ということで骨太の方針には書かれておりますが、日程的にそうしたことを目標に取り組みを進めているところでございます。

西村(智)委員 大変長かったんですけれども、何となくまだやはり全体像がぼんやりとしてわかりません。

 大変失礼ながら、きのうレクに来ていただいたときの説明と今の大臣の説明は多少異なるところもあるわけです。説明に来てくださった方は、何か制度や仕組みがあるんだけれども、周知をできない人のところにどうやって周知をするかということを検討していたり、あるいは、行政の縦割りのところではざまに落ちている部分をどうするかというようなことも検討しているんだと。今の御説明とは必ずしも一致しないことがありました。

 ちょっと具体的に、これは局長で結構なんですけれども伺いたいんですが、おととい、二十四日の新聞報道で、重点戦略検討会議で支援施策を充実させたら二・四兆円がさらに必要になるというような新聞報道がありました。

 実は、この重点戦略検討会議というのは、先ほど大田大臣がちょっと骨太の方針のところでおっしゃっていたんですけれども、六月に中間報告が取りまとめられてから、一たん経済財政諮問会議に報告をされたことになっておるんですね。骨太の二〇〇七に反映されるということなんですけれども、先ほど大田大臣は、骨太に少子化対策というのは入っていない、たしかこうおっしゃったと思うんです。そこはお伺いするところではないんですけれども。

 十九年末を目途に重点戦略の全体像を提示というふうに書いてあるんですけれども、二・四兆円が新たに必要になるという数字が十月の末のこの時点でぽんと出てきて、本当にこれは来年の予算編成に間に合うのかな。一体この検討会議の成果というのはどう生かされるんだろうか、こういう懸念といいますか、疑問を持ったところなんです。

 そもそも、この重点戦略検討会議、いろいろな政策を検討していただくのは非常によろしいと思います。有識者の皆さんから知恵をかりて、より効果的な、かつ人々の心に寄り添った政策をつくり出していくということは非常に有意義だと思うんですけれども、実際に、ばくっとした話をいつまでも続けていても、これは正直申し上げてどうにもならない。政府である限り、あるいは、私たちは立法府におりますので立法府である限り、幾つかある政策の中から選択する、そういう決断というか勇気というか、それはやはり必要なんだと思うんですね。

 ところが、重点戦略検討会議のこの進め方を見ていますと、本当に両手いっぱいテーマを抱えて進んでいっているという感じで、これでだあっといつまでも進んでいっても、どれを選択するのか、どれをつかみ取るのか。広げた両手ではつかみ取れませんから、一体これはどうするんだろうかというふうに思うんです。

 私たち民主党の政策は、しっかりと、市民の皆さんの声、世論調査、そしてまた各国との比較やいわゆる生活の実態の調査などから、必要な政策を絞り込んでやっていく。そのためには、内閣府の中に上川大臣がおられるんですけれども、やはり縦割りの弊害というのが余りにも大きいと言わざるを得ない。働き方の見直しの問題にしたって、厚生労働省ですと言われる。幼稚園の問題はこちらです、保育所、保育園の問題はこちらです。ようやく、幼保一元、認定こども園というのができて、幼保連携室というのができて、ここは中央省庁的にはうまくいっているらしいんですけれども、現場ではまだまだです。

 こういったことをいつまでも続けていっても、なかなかこれは物にならないということで、ここはやはりひとつ、はっきりと絞って政策を選択する、そういうリーダーシップをぜひ大臣にはとっていただきたいと思うんですけれども、この点について御意見を伺います。

    〔委員長退席、岡下委員長代理着席〕

上川国務大臣 子どもと家族を応援する日本重点戦略検討会議の中にもたくさんの分科会を設けて、これまで手がけてきたさまざまな施策についての評価をしっかりとしながら、そして、これからワーク・ライフ・バランスということで新しい視点に立って働き方の改革を進めながら、これまでの制度の選択の部分も含めて、両輪となって進めていくことが大事だというふうに私は思っております。

 大変、少子化対策というと、という話でありますが、子供を取り巻く環境も含めて、子育てについて社会全体がどうかかわっていくのかとか、あるいは、親であるお父さん、お母さんが、働く現場の中で、子供と過ごす時間もつくりながらどのように前向きに頑張っていただけるのか、いろいろな視点でこの問題を見詰め直して、そしてさらにこれからの施策に反映していくべく、大変短い時間ではございますが、骨太の方針の中で年内にということでございますので、そういう意味で、私自身も頑張ってまいりたいというふうに思っております。

 そして、大きな方向性と同時に、具体的な施策の成果ということについても、先ほど認定こども園の話がございましたが、育児休業制度の取得の問題とか、あるいは、企業内保育園が最近ちょっとふえているところでありますが、公立あるいは私立の保育園とのバランス、あるいは幼稚園とのかかわりというふうなことについて、地域の中でこうしたサービスを連携をとって進めていくことができるような視点ということも、あわせて検討をしていきたいというふうに思っております。

 そういう意味では、下からのというか、現場からの声の部分をしっかりと吸い上げていく努力、そして、この間取り組んできたことをマクロ的またミクロ的な視点で分析をしっかりしていただきながら、個別施策についても評価を重ねながら、短期間ではございますが、私としては、目的に向かってできるだけ前進できるように頑張ってまいりたいと思っております。

西村(智)委員 頑張ってください。

 続いて、男女共同参画の方に移っていきたいと思います。

 所信表明の中で、「二〇二〇年までに指導的地位に占める女性割合が三〇%程度となることを目指し、」これはいわゆる二〇二〇年三〇%、非常にわかりやすい数値目標なのであります。最近、いわゆるジェンダー指標と申しますか、そこに日本が加えてこなかった指導的地位の範囲が少し広がって、大変詳細なデータも、どうなったかというのをいただいたところだったんですけれども、ここを見まして、かなり大変だなということを実感いたしております。

 そこで、ここはまず所信にある大臣のお言葉の方から伺っていきたいと思うんですけれども、「第二次男女共同参画基本計画に基づき、国民各界各層との対話と協働を図りつつ、諸施策を推進してまいります。」このように大臣は述べられました。私は、ここがまさに大事なところなんだと思うんです。「国民各界各層との対話と協働」、今までは、何といいますか、旗振れど、笛吹けど、何とかというところが多少ありまして……(発言する者あり)わかっておるんですが、余り言いたくないものですから。

 というところがあったんですが、やはり対話と協働、そしてその理解を持っていただくといいますか、これが本当に国際社会の中でこれから日本が生き残っていく、生きて頑張っていくというためには、やはりこの男女共同参画、ともに一人一人の力を合わせて能力が発揮できる社会をつくるということが、これはもう国際的な潮流でありますし、日本もそれが喫緊の課題であると言われて久しいわけなんですけれども、ここは非常に大事だと思うんです。

 そこで、お伺いをいたしたいのがその対話と協働でありますけれども、これもきちんとターゲットを絞ってやっていくべきだと私は考えております。大臣は、どこをターゲットにしてこの対話と協働を行っていかれるおつもりでしょうか。

上川国務大臣 二〇二〇年までに指導的地位を占める女性の割合が三〇%ということでございますが、それに向けて、「国民各界各層との対話と協働」ということで私自身所信を述べさせていただき、自分自身にプレッシャーをかけて頑張っていきたいというふうに思ったところでございます。

 先週、二〇二〇年までに指導的地位に女性が占める割合が少なくとも三〇%程度となるように期待されている各分野の現状の女性比率というところでグラフにしてみましたところ、例えば、国の審議会等の委員につきましては三一・三%ということで、この目標についてはクリアしているということでございますし、国際機関等の日本人の職員の専門職以上というところについては五二・五でありますとか、薬剤師の皆さんについては六七・二というような形の、分野によってはそういう面はございますが、しかし、全体としてみれば大変まだまだというところについては、委員の御指摘のとおりでございます。

 私は、先ほど申し上げました四つの分野ということでございまして、いずれの分野についても、政府の関係するところはもちろんのこと、地方公共団体、そして経済、そして働く側の労働界、あるいは地域の中で頑張っていらっしゃるNPOの皆さん、そうしたいろいろな分野の皆さんとでき得る限りの対話と協働を図りながら、諸施策の推進をしていくということを心がけていこうと思っておりまして、そういう意味では、どれに絞ってということについては、今できるだけたくさんのという形で活動をしているところでございますので、そういう中で絞っていくことについても十分に検討してまいりたいというふうに思っております。

 とりわけ、地域社会の中で頑張っていただいていらっしゃる皆さん、行政及び地域社会のさまざまなところで頑張っていらっしゃる皆さんということで、できるだけ地域に行って皆さんとの対話を進めていくということが大変大事ではないかというふうに思っておりますので、そういう意味で、予見を持たずに、今のところは幅広く対応してまいりたいというふうに思っております。

 今、内閣府に入りまして二カ月になりますが、まず隗よりということもございまして、内閣府の中での男女共同参画の指導的立場の三〇%等については、よく議論をしながら、そのところの採用の問題とかそういうことも含めて取り組み、また、そうしたことの中での問題点等もよく把握をしながら、地方自治体の中での取り組みあるいは企業の中での取り組み等についても十分に現場の声をいただきながら取り組んでまいる所存でございます。

西村(智)委員 今、恐らく、この平成十九年九月、内閣府男女共同参画局でおつくりになった「女性の政策・方針決定参画状況調べ」というものがあるんですけれども、これをごらんにならずに大臣の答弁を聞かれた方々は、ああ、全体的にやはりそういうことになっているんだから、全体的に取り組むということでいいのかなというふうに多分聞かれると思うんですけれども、実際に個別に細かくとった数字を見ますと、全体的に満遍なくということは、もう言っているわけにはいかないのではないか。つまり、ゼロというところがあるわけですよ、かなり。審議会などのところは女性の比率三一・三%ということになっておりますけれども、団体役員、それも例えば企業ですとか農林水産関係、あるいは各団体等の会、そういったようなところ、これはもう見ればすぐわかるわけでありますので、こういったところを、まず大臣からは、ぜひ足で稼いでいただきたいと強く要望しておきます。

 時間がだんだん過ぎてまいりまして、ちょっと迫ってまいりましたので、先に進みたいと思いますけれども、ここからは少し官房長官にもお伺いをしたい点でございます。

 人身取引、いわゆる人身売買、ヒューマントラフィッキングです。この防止及び被害者の保護に関する法律案を民主党は提出いたしておりまして、継続法案となっております。

 ちょっとここは警察の方に伺いたいんですけれども、この実態。刑法が、おととしでしたでしょうか改正になりまして、人身売買が刑罰、刑法の中に入ったということなんですけれども、現状、これは国内ではどのようになっているか、お伺いいたします。

    〔岡下委員長代理退席、委員長着席〕

片桐政府参考人 お答え申し上げます。

 警察としましては、人身取引事犯につきましては、御指摘の刑法の人身売買罪のほかに、出入国管理法等さまざまな法令を適用して、その取り締まりを図っているところでございます。

 検挙状況を過去五年間で申し上げますと、平成十四年が四十四件、二十八人、十五年が五十一件、四十一人、十六年が七十九件、五十八人、十七年、この年の七月から御指摘のように刑法の人身売買罪が施行されておりますけれども、この年が八十一件、八十三人、平成十八年が七十二件で七十八人となっておりまして、また、人身売買罪を適用した事件は、平成十七年で二事件、十人、平成十八年で四事件、二十三人となっております。

西村(智)委員 これは、もう国際社会の中では日本は大変恥ずかしい状況に置かれておりまして、世界最大の加害国であるというふうに言われております。この背景には、そういったいわゆる人身売買にかかわった人たちへの刑罰が非常に軽かったこと、刑法の中に今回入ったんですけれども、これはやはり私はきちんともう一回見直す必要もあると思いますが、もう一つは、被害者に対する人権の保護という視点が薄かったこと、これがやはり大きな問題だったんだろうと思うんです。

 何人かのケースに私も遭遇いたしましたけれども、例えば国外から買われて日本でオーバーステイなどをしていた女性が、結局、それはオーバーステイだと言われて逮捕されてしまうわけですね。逮捕されて、十分に取り調べをされないまま、出入国管理法違反ということですぐに国外追放されてしまうということだったんです。

 ここはもう一つ、日本が人権先進国である、そういう認識をきちんと持ち、そこに立脚するならば、これはやはり大事な、重大な人権問題だというふうにとらえていただいて、被害者の保護、人身、人権を守る、そういうことをきちんと立法する必要があるのではないか、このように考えておりますけれども、官房長官、いかがお考えでしょうか。

町村国務大臣 人身取引が重大な人権侵害であり、また国際的な組織犯罪であるケースも多いということで、政府を挙げて対策に取り組むということにしているわけであります。

 平成十六年に関係省庁の連絡会議を設置いたしまして、平成十六年十二月には、人身取引の防止、撲滅と被害者の保護を含む総合的、包括的な対策としての人身取引対策行動計画というものを策定しているわけでございます。また、人身取引議定書は平成十七年六月に国会承認を得ております。この議定書の承認にあわせて、先ほど答弁にあったような刑法の改正等々の法律の見直しも行われているところでありまして、そういう意味で、しっかりとした体制づくりができ上がりつつあるんだろう、こう思っております。

 では、十分なのかどうなのかということに関しては、日本は何か第二分類ということで、この分類が本当に正しいのかどうか、よく私にもわかりませんが、決して芳しい状態ではないということになっているのは残念なことでございますから、より一層強化しなければいけないと思います。

 被害者の保護について言うならば、公的シェルターの、これは保護者数は大分年々ふえてきているようでありますが、その活用でありますとか、入管による在留特別許可件数をふやしていくでありますとか、民間NGOへの一時保護委託、あるいは国際移住機関、IOMを通じた被害者の帰国支援といったようなことをやりつつあるところであろう、こう思います。

 したがいまして、法律という場合にどこの部分を法律化するのかなということがちょっと必ずしもよくわかりませんけれども、いずれにしても、政府としては引き続き強力にこの対策を推進していく必要があると考えております。

西村(智)委員 DV防止法がこの前改正されまして、これは参議院の方の委員会からの提案ということで通ったんですが、やはり被害者の保護という視点がどうしてもこの分野には必要であると思うんです。それが日本が第二分類になっている、つまり日本は今現在国際社会からそのように見られているということを、しっかりとここは認識をする必要があるのではないか、そのように考えますし、民主党といたしましても、この点についての立法は引き続き主張してまいりたいと考えております。

 時間が大変限られてまいりましたが、もう一点、上川大臣の方に伺いたいんです。

 ことしの一月でしたでしょうか、家族の法制に関する世論調査というのがまとまって、これは内閣府の大臣官房政府広報室で行っていただいたものでございます。町村さん、御存じでしたでしょうか、こういうものが行われております。

 ここの中で、「家族の役割」「女性の婚姻適齢」「名字(姓)」「裁判上の離婚原因」「嫡出でない子」というふうにいろいろな項目に分かれてアンケートがとられているんですけれども、ここで、特に「名字(姓)」についての分析結果であります。これを大臣はどのようにごらんになりましたでしょうか。

 現在の民法では、結婚、婚姻をした場合に、夫または妻のいずれかの姓を名乗るということになっております。つまり、夫ないしは妻が姓を変更しなければなりません。そのことについて多くの方々が不都合を訴えられている。仕事上で不都合が生じる、あるいは自分、自己が喪失したのではないか、そうした喪失感にもさいなまれる、仕事上で非常な不便がある、いろいろな意見があるわけなんですけれども、大臣、この結果をどういうふうにごらんになりましたでしょうか。

上川国務大臣 平成十八年の十二月調査ということで、家族の法制に関する世論調査ということでございますけれども、この中で選択的な夫婦別氏制度ということで、特に、賛成の割合が三六・六%、平成十三年の五月の調査では四二・一%ですので、少し下がっている状況、また、反対の割合が三五・〇%で、平成十三年五月の調査は二九・九%ですから、そこのところについては少しまた上がっているということで、この賛否については拮抗しているというような状況にあると思います。

 また、家族の名字が違うことで家族の一体感には影響がないと思うというような設問もございまして、これについては、影響がないと思うという回答は五六・〇%。これは平成十三年の五月の調査は五二%ですので、四ポイントほど上昇しているということ。そして逆に、家族の一体感が弱まると答えた者の割合ということで三九・八%。これは十三年の調査では四一・六%ということでございますので、少し動いている状況でございます。

 もう一つ、夫婦の名字が違うことで子供にとって好ましくない影響があると思うと答えた者の割合ということでございますが、これは六六・二%ということでございますし、子供に影響はないと思うと答えた人の割合は三〇・三。いずれも、六六から六六・二、微増ということでありますし、子供に影響はないと思うという御回答も二六・八から少し上回っているという状況でございます。

 婚姻制度と家族のあり方と大変密接に関連している選択的な夫婦の別氏制度の問題ということで、今、世論調査の中でも意見がさまざまであるというふうに思っておりまして、この世論調査にはまさに拮抗している状況が明らかではないかというふうに思っております。

 中には、先ほど委員が御指摘のとおり、結婚した後、社会生活の中で不都合を生じるというような声もございますし、また同時に、今は長男長女の時代ということで、一人っ子が女性であるというようなことで、実は私のところにも、なかなかお婿さんという形にはならないので、お墓を守るにはどうしたらいいのか、あるいは会社を相続させたいんだけれどもなかなかというような声も寄せられているところでございます。

 こういう私たちの大変基本的な、国民の皆さんにとっても基本的な婚姻制度また家族のあり方にかかわることでございますので、十七年の十二月に閣議決定した第二次男女共同参画基本計画においては、国民の意識動向をしっかりと踏まえながらよく議論をして、その上での取り組みというような形で方向性を出しているところでございますので、この点について、私自身、この結果ですぐにというような流れではなく、まだ社会の中はかなり意見が分かれているというような認識を持っているところでございます。

西村(智)委員 ちょっと残念な答弁でした。

 選択的夫婦別姓の導入について、ほかにも、例えば配偶者の親との関係に影響があるかどうか、あるいは家族の一体感が弱まるのではないかどうか、それから子供にどんな影響があるのかということについては、これはむしろ選択的に夫婦別姓であってよろしい、こういう傾向は先ほどの大臣の答弁から分析できると思うんですね。極めて短期的な分析でありますけれども。

 また、選択的夫婦別姓のところで、前回の調査、平成十三年から見て六ポイント動いているというような御説明でしたけれども、その前から見ますと、長期的に、実は調査項目はぴったりとは一致しないんですけれども、昭和五十一年からの世論調査結果が載っておりまして、その長期的なトレンドから見ると、これは確実に上がっている。選択的夫婦別姓がよろしい、それを導入していいと答えている方が確実に上がってきているんだろうと思うんですね。

 ですので、そういった短期的なことだけでこの結果を分析するのはいかがなものかというふうにも思いますし、先ほど大臣の御答弁いただいた文言は、恐らくこれは法務省から出されているコメントとほとんど同じなんだろうと思います。法務省の方もそのようなコメントをしておった記憶があります、今すぐにやるという状況ではないと。

 ところが、ではいつになったら今になるのか。もう多くの人たちが、先ほど大臣もおっしゃいました、例えば一人っ子同士で結婚できない、事実婚で、いつか選択的夫婦別姓が導入されたら結婚して子供を持とうと思っている人たちがもう何年も待っているわけです。(発言する者あり)待っております。そういった方々も大変多くいらっしゃいますし、あるいは仕事上の不都合、そして自分が自分の名前として仕事をしていたのが、あしたから名前が変わってしまって、一体自分のアイデンティティーはどうなってしまったんだろうというような訴えが実に多くの方々から寄せられている。

 これは、すべての人に別姓にしろと言っているのではありません。選ぶことができるようにしましょうということなんです。もう社会的な事情が変わっているわけでありますので、結婚したくてもできない人たちができるようにするためにも、そしてまた子供を持ちたいと思う人たちが持てるようにするためにも、ここは一日も早く選択的夫婦別姓の導入を行っていくべきではないかというふうに考えております。

 大臣のお考えがあったら伺いますが、いかがでしょうか。伺って終わります。

上川国務大臣 婚姻の制度また家族のあり方ということで、大変基本的な話でございますので、今の世論調査の結果、大変短いトレンドで比較しているのはいかがなものかというお話がございました。流れとしてはそうした方向に少しずつ変化しているということも十分に認識をしておりますので、大変難しい問題ではございますが、この動向をよく見定めながらまたいろいろ議論を深めていきたいというふうに思っております。

西村(智)委員 時間ですので終わります。

 済みません、お二人には座っていていただいたのに。また次回、よろしくお願いいたします。

中野委員長 次に、市村浩一郎君。

市村委員 民主党の市村でございます。質問させていただきます。

 きょうは多岐にわたって質問しますので、議論というよりも確認ということを中心にやってまいりますので、よろしくお願いいたします。

 まず、官房長官、先日、私はこのような体験をいたしました。羽田空港に向かって首都高に乗ろうとしますと、入口が閉まっている、閉鎖されているということで、実はその経験はもう二度目でございますので、直観的に、これは多分要人が通るんだろうと。要人が通るときは大体二十分ぐらいするとあくということでしたので。

 実は、一回目のときは焦って、これはいかぬ、飛行機におくれるということで地上を通っていった。たまたまベテランの運転手さんだったので、地上を通っても何とか、高速道路を通らなくても間に合った。そのときはもうぎりぎりでした。しかし、よくよく聞いてみると、要人が通る場合は二十分ぐらい待てばあくということで、結局あくのを待っていれば同じぐらいの時間だったわけですね。そういう経験があったものですから、待てよ、これは恐らく要人だろう、こう思ったわけです。

 一回目のときはどこかの国王だったと思います。このときも、よくよく聞くとそれがお台場に向かわれる途中だったということで、それでもとめるのかなというのがあったんです。ただ、我が国の要人、天皇陛下とか皇族の方々、もしくは総理大臣等、国賓の方々が他国に行った場合にもそのような待遇を受けているということもあれば、これは外交儀礼ということで、一人の国民として甘んじて受け入れねばいかぬかな、こういう思いもあっておったわけですね。

 ただ、そのときは、そういえばきょうは総理大臣が外遊される日だなということで、直観的に総理大臣かと思っていたんですが、結果としてはやはりそうだったんです。安倍総理大臣です。これも仕方ないかなと思っていたんですが、ふと、そろそろ通るだろうと思われる時間に見ていると、ちょうど目の前、石油を積んだ例の車がありますよね、あれが目の前にぽっと見えたんですね、タンクローリー車。あれ、ということは向こう側の車線はあけているんだな、こういう思いで、しかも、その石油を積んだ、満載しているのか空か知りませんけれども、それが目の前を通った瞬間に総理大臣の車が通っていく、その一団が通っていったわけですね。

 この国の警備というのは一体どのような基準で行われているのか、どのような基準で警備をされ、どのような基準で首都高をとめる、首都高をとめるということはすなわち国民の利便性をその分損なうわけですから、そこまでしてでもとめるということでありますが、まず警察庁、どういう基準で高速道路をとめるのか、簡単に教えてください。お願いします。

末井政府参考人 通常、総理大臣等が車両で移動される場合には、一般車両とともに走行をされておりまして、特別の交通規制は実施しておりません。他方、その時々の警備情勢や道路状況などを総合的に判断いたしまして、総理等の車両が一般車両とともに走行する場合に不測の事態を招き、交通の危険を生ずるおそれがあると判断される場合には、入路における短時間の通行禁止の交通規制を実施し、交通の安全と円滑を確保することとしております。

 なお、一般交通に与える影響を考慮いたしまして、交通規制は必要最小限のものとなるよう努め、交通情報板、ラジオなどによる広報を実施しているところでございます。

市村委員 要するに、総理大臣がふだん移動するときは高速道路はとめていないんです。私は、それはありがたいというか、国民にそんなに迷惑をかけてはいけないという思いだと思いますが、では、なぜあのときもそういうふうな配慮にならなかったかというと、今警察の方がおっしゃったように、要するに外遊の日だから特別な配慮をされたということだと思うんです。

 しかし、官房長官、実は私がここで申し上げたいのは、恐らく総理大臣の方から、いや、こういうことで、私が外遊するだけでそういうふうにとめる必要はない、そういうことを官房長官を通じて警察の方に伝えてほしい、あえて総理大臣がこうお話をすれば、警察の方も、それは総理大臣御本人がそうおっしゃるなら、もちろん総理大臣の車一台で行けということじゃないですよ。当然後ろと前と横ぐらいはパトカーが囲んでいくはずだと思いますから、その前にまたいろいろな黒塗りの車が何台も連なっていくはずでしょうから、それでもいいと。ふだんそうしているんですから、外遊のときだけ別に限る必要はないと。しかも、羽田空港に向かうときはほとんど込みませんから、私の経験上も。ほとんど込みません。だから、そんなに時間も変わりません、閉めようがあけようが。変わっても七、八分だと思います。ぶっ飛ばせば十分ぐらい変わるかもしれませんけれども。

 だから、そういうときに、やはりこれから福田内閣におかれましては、余り国民に迷惑をかけるのもあれだから、外遊のときとかも余り配慮しなくていいぞぐらいのことを官房長官の方からおっしゃっていただくぐらいのことはならないのかと思いますが、いかがでございましょうか。

町村国務大臣 その都度その都度で最も適切に対応しているものと思います。

市村委員 さっき申し上げたように、もし徹底するんだったら反対側車線もとめないと、警備上、何のために警備しているのかということになると思います。特に、目の前で、石油が空だったのかいっぱいだったのかわかりませんけれども、目の前に通っているわけですから、もし総理大臣をねらおうと思ったらば、あれを爆発させればいいわけですね、そこで。そういうことも含めて、中途半端だと私は思います。その辺でまたぜひともお考えいただきたいと思います。

 実はこの問題、今から話をする問題とちょっとかかわってくるんです。というのも、前総理である安倍さん、九月十二日に突然御退任されることとなりました。実は私、その一週間ぐらい前に記者さんが来られて、いや、市村さん、どうも安倍総理はおかしい、言動がおかしいです、こういうふうなことをおっしゃっていただいた記者の方がいらっしゃったんです。官邸付の方だと思います。ということは、周りはもうおかしいと思えるような雰囲気があったはずなんですね、一週間も前から。しかも、安倍総理大臣には医務官もついていらっしゃった。また、周りには官房副長官を初めいろいろな方がついていらっしゃったわけですね。それで、結果として、御本人が突然やめると言ってみんなでてんやわんやになってしまったということなんですが、私は、これは国家統治機構上極めて憂慮すべき、危機管理上もこれは極めて問題があることだと思う。

 すなわち、一国の総理大臣も、周りにあれだけ人がいながら気づかないというか、気づいてもそれをどうにもできないというか、これはある意味で、それは、前の官房長官、町村官房長官はあのときの官房長官じゃないわけですから、答えるべきことじゃないと思いますが、しかし、大きな観点から見ると、一国の総理を守れないということであると、一体、そういうセンスの内閣であったら、それは国民を守ろうという気にはならないはずなんですね、これ。だから、私は極めて憂慮すべき事態だとあのとき思ったんです。

 官房長官、いかがでしょうか。御感想をお聞かせください。

町村国務大臣 平成十二年でしたか十一年でしたか、小渕総理がやはり公邸の中でおぐあいが悪くなられたということで、急いでそのまま病院に行けばよろしかったのかもしれないが、どうも翌日病院に行かれたということで重大な事態を招いてしまったということを契機にしまして、官邸の総理の健康管理のあり方というものを平成十二年六月に実はまとめたわけでございます。そこで、常時お医者様にいていただこうということで、交代交代ですが、常にお医者様が一人と看護の方がお一人、二十四時間体制でいる。そして、国内、海外の出張のときにも随行をしていくということが決められました。それ以外にも、あと個人的なかかりつけのお医者さんというんでしょうか、そういう方が御一緒に海外の場合は行かれるケースもあるようでございます。

 確かに、これは国家の危機管理として大変重要なことだろうと思います。他方、総理とはいえプライバシーにかかわるというような面もありまして、その兼ね合いといいましょうか、なかなか難しいことがあるんだろうなと思います。

 安倍総理の場合はどうであったのかということは、私もちょっと正確にはよくわかりませんが、当然周りの方々は非常に気を使っておられたんだろうと思います。与謝野官房長官も、当時その職にあって大変御留意をされたんではないかなと思うんですが、最後は御自分の判断ということもきっとあったのではないかというふうに推測をされるわけであります。

 いずれにしても、健康な状態で総理大臣が執務をするということは大変重要なことだと思っておりますので、私もおそばにいる者として、最大限の注意と関心を払っていかなければいけないとみずからに言い聞かせているところでございます。

市村委員 この国の今の体制というか、あり方というのは、確かに、何か起こったらそれに対処するということでは、そういった意味ではそれなりにきちっとやっているんだと思いますが、先ほどのいわゆる高速道路の要人の通行のあり方にしましても、何となく、何となくというか中途半端だと私は思う。徹底していないという思いなんですね。やはり、そこに裏打ちされた哲学というか考え方というか、これが筋が通っていないんじゃないかなと思うんですね。

 今、町村官房長官は総理大臣にもプライバシーがあるとおっしゃいましたが、もちろんそれはあるでしょうが、しかし、総理大臣の立場というのは、私はやはりそういうものをもっと超えたものだと思っていますし、どなたが総理大臣であろうと、たとえどんな憎い人が総理大臣をやっていようが、総理大臣にある方を徹底的に国家として守るというのは、これはもう当たり前の話でありまして、どうもこれは雰囲気がおかしいと思ったら、本人がどう言おうが、やはりちょっと一遍入院してほしいとか、ちょっと病院に行ってほしいとか検査を受けてほしいとかということで、その間、それこそちょっと検査入院しますとか何かしらの、またその他の理屈をつけて、無理やりにでもこれはやらなくちゃいけない。

 それは、総理大臣御本人というよりも、いわゆるこれは内閣だと思うんですね。内閣が全体として動いているわけですから、その顔をあんな形で突然失うということでは、これは本当に、その当時みんなで、こんなのあり得ないぞ、もしこんなやめ方をする総理大臣が登場する小説があったら、みんなばかにするだろうな、こんな人いないよと。まさに事実は小説より奇なりでありまして、もう本当に小説でも書かれないようなやめ方をされることになってしまった。それは、もう本当に、安倍前総理大臣の問題というよりも国の統治機能の問題、危機管理の問題としっかりとらえるべきことだというふうに私は思っております。

 ですから、ぜひとも今のこの福田内閣におかれましては、福田総理大臣の御健康等々、雰囲気はもう周りの皆さんよく見ていただいて、二度とああいうことがないようにお願いをしたい。そうしないと、対外的に大変に、極めておかしな国だというふうに言われます。

 それから、官房長官はもう行かれなくちゃいけないので、最後に一点だけ官房長官にお聞きしたいんですが、今まで私はこの内閣委員会を通じて、公益法人を含むNPOの改革についてずっといろいろ議論させていただき、提言をさせていただいております。それで、そもそもこの公益法人改革というのは、最初内閣官房でやっておったんです。今、内閣府に公益認定等委員会という形で移っていまして、それこそ、さっき泉委員の議論でも、内閣官房なのか内閣府なのかというのをやっていらっしゃいましたけれども、もともとは内閣官房だったんです。

 そのときに議論されていた方向性は、この場でも私は申し上げましたが、極めていいものだったんです。一般的な非営利法人制度をつくりましょう、準則主義的で、いわゆる登記で法人格を取って、法人格取得と税制優遇の話は分けて考えましょうということで、極めて私が提言をしているのに近い話で、内閣官房のころはあった、最初のころはあったんです。

 ところが、いつの間にか、だんだんだんだん、一般的がとれちゃいまして、一般的非営利法人制度が非営利法人制度に変わったと思ったら、非営利法人制度という言葉も消えて、一般財団、一般社団というふうになっていく過程があったんですね。

 この話というのは、今我が党でもNPO、公益法人を含んだNPOの話については精力的にいろいろ議論させていただいておりますが、やはり民の公のセクターをつくるという大変大切な議論だと私は思っています。

 ですから、ぜひとも官房長官に、これまでの経緯は余り御存じないと思いますが、なぜ最初の志がかくも曲がっていくのか、もう一度改めて町村官房長官の方からちょっと御説明いただきたいと存じます。

町村国務大臣 この公益法人制度改革は、平成十四年三月の閣議決定において動き出したわけでございます。そして、次第次第に、特定非営利活動法人、いわゆるNPO法人をどう位置づけるかということについて見直しが行われる中で、私も自民党の中で実は税制の関係をやっておるものですから、随分その過程でNPOの皆さん方ともお話をし、お話を聞いたこともございます。

 実は、NPOの中にもいろいろな御意見があるということもよくわかりました。そして、多くの方は、やはり認証という簡単な仕組みで法人の設立ができるということは大変に便利だし、また、定着してきているということも一つありました。それから、もう一方で、NPO法人の関係者からも、新しい公益法人制度と同じ制度に組み込むということに大変強い反対があったというのも事実でございます。

 そんなようなことから、一般的な制度とは別に、学校法人であるとかあるいは福祉法人であるとかいう特別のジャンルと同じところにNPO法人も置いておこうではないかというのが現在の分類の姿になってきている、このように理解をしておりますので、ある種、ちょっと便宜主義的な扱いになったのかなという気も率直に言っていたします。しかし、これだけ、もう三万二千を超えるNPO法人があるという現状と、また、その中で、有力な皆さん方の御意見もそういう方向でかなり強く上げられたという現実を踏まえると、今のようなおさめ方にするのも、いわば現実的な解決、対処方針なのかな、このように私は受けとめているところであります。

市村委員 またぜひともこのことを議論させてください。

 きょう、いささか便宜的かなというふうにおっしゃっていただいた言葉は、私は、大変素直に、前向きにありがたい言葉だなと。やはり何かおかしいぞとちょっと思う気持ちでも持っていただけているというのはうれしい話なんです。この辺については、ぜひともまた改めて時間をとって。今から岸田大臣とこの辺をもうちょっと深く、深くというか別の観点から議論させていただきますので、官房長官、もしよろしければ、もうきょうはこれでよろしゅうございます。

 それでは、せっかくですから、流れもありますので岸田大臣と、この続きについてのお話をさせていただきたいんです。

 今、公益認定等委員会ができました。ここで今後、いわゆる公益法人、民法法人、これが、民法三十四条が廃止されて、主務官庁の許可主義からいわゆる登記における法人設立ということにこれから変わっていくわけです。一般社団、一般財団というふうに区分がされていきます。税制はこれからです。その中で、今後、公益認定等委員会で、これまでの公益法人を一個一個洗い出していこう、洗い直していこう、こういうことをされるということであります。

 きょう渡辺前大臣もそこに座っていらっしゃいますが、議論させていただいたことがありまして、これは私の経験、私もちょっとNPOを支援するNPOの基金に三年間勤めていたことがありますので、いかに小さなNPO一つといえども、その組織の実態をきちっと把握して、そしてそこに適切なアドバイスをしながらお金を有効に使っていただくということは、たった一つの団体をやろうにも大変なんです、これははっきり言って。

 それを、もうここまで、ある種天下り先の権化と化したような公益法人一個一個をやっていくというのは、私は、恐らく公益認定等委員会の役割じゃないと思っているんです。公益認定等委員会の役割というのは、もっと大所高所から、公益とは何ぞやということをしっかり議論していく場所だと私は思っています。

 そして、渡辺大臣、うなずいていただいているのでうれしいんですが、やはり渡辺大臣がやろうとしているところで、その切り口から天下りをばさっとやっていただいて、天下り先の権化と化しておるような公益法人はばさばさと、これはある種、特命捜査官みたいなものをつくって、公益法人Gメンみたいなものをつくって、こっちはこっちでばさばさとやっていく。それで、公益認定等委員会は、そういう荒仕事ではなくて、まさに公益とは何だ、一体現代における日本で公益とは何ぞやというところを格調高く御議論いただいて、訴えていただき、そしてその観点から、公益活動を行うNPOに対して、よし、税制優遇を与えていこうとか、こういう議論をしていただくべきところだと私は思います。

 だから私は、今の流れからすると、公益認定等委員会で、例えば今、国と地方を合わせて二万六千、二万八千ぐらい公益法人があるわけです。これを一個一個つぶしていくのは、はっきり言って無理です。では、私の提案は何かといいますと、新規参入をやりやすくして、つまり競争によって淘汰していく。つまり、いいサービスを提供するところには、お金も集まれば人も集まってくるんです。競争によって淘汰していく方がいい。

 一個一個今の公益法人をシラミつぶし、僕は、まさに渡辺大臣は御苦労されていると思います、公益法人どころか、今はもっと手前で御苦労されているはずですから。もっと伏魔殿みたいなところへ行って、いや、私たちは民間ですからというところへ行って、今、官僚機構ですらできないでなかなか苦しくていらっしゃるのに、伏魔殿のようなところへ行って、さあといったって、はっきり言ってこれは無理です、私の経験からも。二万八千なんて、とてもとてもこれを正していくことは無理です。やはり一番いいのは、新規参入を促して、NPOの世界にも競争を起こして、そして、そこで淘汰していくことが私は一番望ましいと考えております。

 岸田大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 まず、市村委員におかれましては、この非営利法人制度につきまして、これまでもさまざまな問題提起をされ、また熱心に取り組んでこられたということを伺っております。こうした御努力に心から敬意を表し申し上げながら、お答えをさせていただきたいと思います。

 まず、公益法人制度全体の流れにつきましては、先ほど官房長官から答弁があったとおりでございます。平成十四年三月の閣議決定に基づいて、抜本的かつ体系的な見直しを行う、こうした閣議決定が基本にあるわけですが、そういった中にあって、現状、例えば特定非営利法人活動については認証という簡易な仕組みで法人の設立を可能とし、ボランティア活動等を支える制度として社会に定着しているところであります。

 こうしたボランティア活動を盛んにするための基盤として、引き続き見守り、そしてはぐくむ、こうした態度を大切にしたいということになったわけですし、そして、それ以外にも、例えば社会福祉法人あるいは学校法人、こうした特別法によって設立されている法人につきましても、少し取り扱いを、一律ではなくして考えていかなければいけない、こういったことが議論をされて今日に至っている、こういった流れでございます。

 しかし、認定委員会においての公益認定の作業等は大変な作業であるということ、これは御指摘のとおりだというふうに思っています。国所管公益法人だけで現在約六千八百以上だというふうに聞いております。五年間でこの移行作業を行うということでありますので、一年間で約千四百弱、一週間で約三十法人弱処理していかなければならないということでありまして、これが大変厳しい環境の中にある、移行措置への対応は相当な業務量になるということ、これは御指摘のとおりだというふうに思っています。

 しかし、今、認定委員会におきましては、このガイドラインの策定ですとか事務体制の整備、ITの活用、さらにはそうした体制を支えるさまざまな機能強化ですとか予算ですとか、いろいろな工夫を検討しているところであります。ぜひ、しっかりとした環境を整備することによって、迅速な審査、円滑な審査が進むように努力しなければいけないと考えているというのが現状の認識でございます。

 ぜひ、民による公益の増進を果たしていくための環境整備、効果が上げられるように、今の状況の中で最大限努力していきたいと考えておりますのが私の立場でございます。

市村委員 これについても、またぜひとも議論させてください。

 僕は、岸田大臣は、きょうのところはやはりまだ官僚の皆さんの説明の中でお考えだなと思いますが、しかし、議論していただけたら、いかに今おっしゃったことが、そうか、現実というのは難しいんだなということは多分御理解いただけると思います。ただ、議論は、きょうはもう時間がないので、またぜひとも改めてさせていただきたいと存じます。

 それで、この関連ではないんですけれども、ちょうどお隣に渡辺大臣がお座りいただいていますので。

 いかがでしょうか、大臣、前の公務員制度改革の議論のときも、私は率直に言って、公平に見て、別に私が民主党だからじゃないんですけれども、民主党の法案の方がいいかなと思っていました。しかし、民主党の方からも本当にやるんですかといろいろ疑問を呈しました中で、渡辺大臣は、絶対やるんだ、こういう力強いお言葉があったので、では、ぜひとも頑張っていただきたいなという気持ちはあったし、今でもあるんです。

 しかし、ちょっと昨今の報道を見ていますと、何か後退したような印象を受けざるを得ないし、前回の大臣表明のときは岩盤を打ち破るという力強い言葉があったんですが、この前の大臣表明は何かちょぼちょぼというような感じのもので、えらいトーンダウンされたんじゃないかということで、率直に、その辺はちょっと残念な気持ちでおります。

 ただ、実はこの公益法人のことも絡むんです。結局、ここが受け皿になって、おかしなことになっているんですね。前から申し上げているように、民法三十四条というのが今度廃止されることが決まっていますが、これが根拠法となって、官僚の世界は何でもできる、自分たちの都合のいい公益法人をどんどんつくって、そこに天下りをしていく装置というかそういう仕組みをつくっていっちゃったんですね。民法三十四条のおかげでできちゃったんです、あれが根拠法でしたから。それを削除したことは、僕は政府としては大変御英断だと思っていることは再三申し上げているとおりです。

 しかしながら、ちゃんとやらないと、今の岸田大臣がおっしゃっていただいたようなことでやっていくと、結局できないんですよ。できないで中途半端で終わります、さっきの危機管理の問題と同じように。できないことをやろうとしたって、できないんです、無理なんです。週に三十個も無理なんです。本当に無理です。あの仕事をやっていただければわかります、私は三年やっていましたので。

 だから、できないことをやるよりは、できること、何ができるのか、どうしたらもっとよくなるのかということを考えていただいた方がいいわけでありまして、そこで、また改めて渡辺大臣の御決意をお伺いしたいと思います。

渡辺国務大臣 私がトーンダウンしているとかいうことは決してございませんで、法律案が通る前と通った後の違いではなかろうかと思うのでございます。

 つまり、今現在、我々は、法律案を通していただいて、その法律に基づいてセンターの制度設計にかかっております。基本的なコンセプトは、まさに天下りという一種の統制価格の再就職をやめる。本人も断れる、受け皿も断れる、であるがゆえに市場価格で再就職をしていく。つまり、公務員としての知識、経験、能力、実績、こういったことを活用する知見活用型の再就職をあっせんするのがまさに官民人材交流センターであるということなんです。

 ですから、これは天下りとは根本的に違う話でございまして、まさにこういうことが普通に行われるように、そしてこのセンターが、今やっている統制型のあっせんのトンネル機関にされないように、今鋭意制度設計をしているところでございます。

市村委員 これもまたぜひとも議論させてください。

 それで、きょうは増田大臣がお見えですが、今度、増田大臣の担当で、総務大臣としてじゃなくて内閣府関係の担当大臣の事業として、実は今、前国会で、もちろん目的は限定されていますが、私企業から私企業への寄附に対して税制優遇を与えるという、これは、渡辺大臣が苦心の作だと言って、大分議論させていただいたこともあったんですが、私からすると、とんでもない、世界にどこにもない税制をこの国は入れているんです。もっと言えば、いわゆる企業の一般寄附金枠というのがありますから、これも本当はないんですけれども。とにかく、私企業から私企業への寄附という概念すら本当はあるかどうかわからないときに、私企業から私企業への寄附に対して税制優遇を与えるということで、これは私は言語道断じゃないかというふうに申し上げておるところであります。

 ただ、今回、個人から私企業に寄附をした分まで、目的限定ですけれども、税制優遇を与えよう、こういう話なわけです。実はさっきの議論、NPOの議論もそうなんですが、NPOですら、そういう団体というのはこの国に千もないんですよ、そんな団体は千もないんです。もちろん、NPOの場合は目的限定じゃありません。ただ、そのNPOが本来持っている目的は限定されています。最初に趣意書みたいなものをつくりますから。こういう団体、ミッションを持っていますということでありますから。

 ただ、やはりあり得ないことで、ああと思って、まあしかし、苦心の作だと。それなら、それを逆に逆手にとって、ではNPOのものも認めた方がいいという主張を私はしておりますけれども。あり得ないものをまたさらに強固にしていくようなものを本当にやっていいのかどうかというのは非常に私は疑問に感じますが、増田大臣の御見解をお聞かせいただければと思います。

増田国務大臣 今、寄附税制について、特に来年度に向けての改正の要望の御質問をいただきました。

 寄附者について、法人に加え個人を含めるように今要望を行っておりますが、これの取り扱いですけれども、現状について言えば、現在、慎重にこの内容について検討しているということであります。

 いろいろ論点があると思いますが、法人と法人の間の寄附について公共団体が十分に関与するような制度、このあたりがいろいろ御苦心をされた跡だろうというふうに私は思っておりますけれども、さらにこれに個人を加えるとなれば、またそれはそれでいろいろ理屈も必要になってくるだろうということがございます。

 そういったこともありまして、まだそうした要望については議論が始まったところですけれども、私として、今現在、その取り扱いについてはいろいろな観点から慎重に検討しているという状況でございます。

市村委員 すべからく、きょうの話、最初からの話は、私は、やはりどうも筋が通っていないというのがあると思うんです、この国は。一体どういう国なのか、どういう筋でこの国は動いているのかというのが見えないんですね。NPOのことも本当にそのことの一つなんですけれども。だから、やはり私は、その筋をどこに置くかということをしっかり考えていかなきゃいかぬというふうにこの議論を通じても思うわけでございます。

 あと、実は後で警察の方に行くんですが、もう一点だけちょっと増田大臣にお聞きしたいのは、今度、駐車違反の駐車監視員というのができまして、今どんどん全国でそういうことで駐車監視員がふえていって、ある種、良好な町づくりに非常に有効な手段であったというふうに評価できないことはないです。

 ただ、そのときの違反金。反則金の方、つまり、私が駐車しましたと名乗り出た方は反則金なんですが、名乗り出ないとこれは違反金なんですね。それは都道府県に行くんですが、ではその額は幾らなんですかと聞いたら、実は統計がないというんですね。

 総務大臣としてではないんですけれども、僕は、総務省でやはりこれは統計をしっかりつくるべきだ、こう思うんですが、前知事というお立場からも、一言お答えいただければと思います。

増田国務大臣 実は、総務省で行っている地方財政状況調査というものがございます。公共団体に入ってくる税制につきましてはここで調べているんですが、都道府県の放置違反金収入額については、都道府県の歳入の中の雑入の、このまたさらに内数という形になっているんですね。ですから、放置違反金そのものの収入額は現在総務省が把握をしていない、これが今の実態でございます。

市村委員 この国に国家統計局というのがあったかどうか、ちょっと今あれですけれども、やはり統計というのは極めて大切だと思います。政策を評価するには、やはり統計がしっかりとないと評価できないのですね、事後チェックも。これが本当に有効だったのかどうか、あと、財政面でもこれがどれだけ寄与したのかとか、それが一体何に使われたのかとか。それがそういうことだと、非常にチェックしづらいというか、これも極めて筋が通っていない国のあり方だ、こう思います。やはり国家統計局のようなものを本当はしっかりつくって、こういうことはきちっと統計をとっていくということが求められていると思います。

 ここまでで、もう泉大臣以外の大臣はこれから大丈夫ですので、もしお時間があれでしたらどうぞ。これからは泉大臣と集中的にやらせていただきますので。

 それでは、残りの時間、駆け足で警察関係の方に参ります。

 まずは、今の駐車違反のことからいきますけれども、前にもこの委員会で、要するに、駐車監視員を雇う会社の中に駐車場会社、駐車場を経営している会社があるということで御指摘申し上げました。これはゆゆしき問題である、つまり、利害が相反するものがやっているというのはおかしいと。すなわち、これはその地域の取り締まりを強化すればするほど駐車場がもうかるという仕組みですから、こういうことは問題だと。そもそも株式会社というものについても問題があると言っているのに、そういうことはおかしいということは指摘しておりましたが、その後、どうなりましたでしょうか。

末井政府参考人 法制定時にその御議論を提起されたというふうに記憶をしております。

 現在でございますが、放置車両の確認と標章の取りつけに関する事務、これの受託法人につきましては、いずれも、道路交通法上の欠格事由に該当せず、都道府県公安委員会の登録を受けた上で、都道府県警察において、地方自治法等関係法令に基づいて、手続でございますが、公平性、透明性及び競争性の確保に留意しつつ、競争入札により選定されたものと承知しております。

 受託法人による確認事務につきまして、法律上公正に行われなければならないこととされているとともに、委託する警察署長があらかじめ策定、公表いたしましたガイドラインや、事前に警察署長の承認を受けた巡回計画に沿いまして、つまり歩合制ではなくて、巡回をするという巡回計画に沿いまして、法令の規定など、あるいは警察署長の指示に従って行動することとされているなど、いろいろな制度がございます。

 こういった仕組みのもとで、受託法人に対して厳正な指導監督を行うことによりまして、公正な確認事務の遂行が確保されているものと私どもは認識をしております。

市村委員 それはそれで、もうそれはわかっているんです。それは当然そうでしょう。

 だから、私が申し上げているのは、その上で、利害が相反することを一つの組織がやっているということですよ。結局、駐車場をもうけさせようと思ったら、周りの取り締まりを厳しくすれば駐車場はもうかるようになっているわけですから、常識で考えて。そういうのはだめじゃないですかと申し上げているんですが、だめだと思われないということで、それを一言でお答えください。それでもいいということですね。

末井政府参考人 そのような形でもうけているという認識を持っておりませんで、そういうことがないように、私どもは、法律上公正にやってくれという形をきちんと施行し、そしてガイドラインに従ってやりなさい、それを警察署長がきちんと監督するという仕掛けでやっております、こういうことでございますので、ちょっとすれ違いになりますが、以上でございます。

市村委員 李下に冠を正さずということだと思います。

 次に、その取り締まりのあり方なんですが、本当にちょっと、たまたま生理現象でトイレに行きたいということで、五分以内で帰ってきてみたら、もう取りつけられたということがありました。私も、この委員会で前に、これは法律ができる前の議論で申し上げておきました。過度な取り締まりにならないよう気をつけてくださいということを申し上げておったんですが、どうもそういう事例があるようでございます。

 これについて国家公安委員長の方から、余り過度になって、もちろん危険なところにとめていって長時間帰ってこないのはだめですけれども、ちょっと生理現象で行ったことに関して、五分以内に帰ってきているのに、さあさあというのはちょっとおかしい。普通に大体、写真を撮って処理していたら五分ぐらいたっちゃうんですね。そういうことで、よほどぱっと行ってぱっと帰ってきているとしか考えられません。

 これについて、どういうお考えでいらっしゃいますでしょうか。

泉国務大臣 駐車違反については、いつから違反の状態になっておるかというようなことがなかなかわからないところもありますけれども、今先生御指摘のように、間近に運転手さんがいらっしゃるかどうかとか、あるいは移動するように指導する、あるいは確認標章を取りつける前に運転手が戻ってきた場合、そういう現場の状況に応じて、先生が御指摘のように、たまたま生理現象で少しの間車を離れたというような事態であれば、そのことをもって取り締まるということには多くの国民の御納得をいただけないと思います。

 しかし、駐車違反はやはり厳に取り締まっていくという一方の大切な役目もございますので、そこは現場で適切な判断をしていくようにしてまいりたいと思います。

市村委員 もうちょっとやりたいことはたくさんあるんですが、きょう、本当は内閣委員会と直接関係ないんですが法務省さんからも来ていただいていますが、まず一点、戸籍の電子化に伴ういわゆる亡き子のデータがなくなってしまうという件です。これについては、希望者のみでいいですから、それを入れていただけるということがやはり私は必要だと思いますが、これも一言、御見解をください。

倉吉政府参考人 ただいまの問題でございます。

 紙の戸籍からコンピューターに移行するときに、実は亡くなったお子様であるとか、それから、これだけではございませんで、過去に認知をしたことがあるとか、離婚をしたことがあるとか、養子縁組を離縁した、このような事実は過去の事実でございまして、戸籍の謄抄本をとって証明するときは現在の事項だけを証明すれば通常は足りるということで、そういうものは移記をしないという取り扱いをいたしております。これは、移記に要する、電子化するための費用を節約するということももちろんございますし、その電子化の手続を迅速にするという趣旨でございます。

 それで、もう既に委員御承知のとおりでございますが、これは紙の戸籍を全部なくしてしまうということではありませんで、紙の戸籍は残します、百年間保存いたします。したがいまして、亡くなったお子さんがいるんだということを第三者に対して証明したいというときは、ぜひオリジナルの、紙の戸籍の方の謄抄本をとっていただきたいというのが我々のお願いでございまして、委員御指摘のとおり、希望のある方は何とか融通をきかせてやれよ、このお気持ちも、実は委員からいただきましたそういう立場にある方の要望書を私読ませていただきまして、その心情はよく理解できるのでありますけれども、戸籍というのはやはり国全体の、国民の身分関係を公証する帳簿でございますので、やはりある程度統一的に扱うということも必要でございます。

 そのことと、紙の戸籍が残っているということの兼ね合いから、ぜひ紙の戸籍の方を利用していただくということでお願いをしたいというのが今の現状でございます。

市村委員 またこれも議論させてください。今の御見解はわかりました。

 また、無戸籍児、いわゆる三百日規定の関係で無戸籍児がいるということ。一部戸籍がとれるようになったということが前国会のことでございましたけれども、いまだに無戸籍児の方がいるということについても、ぜひとも、これはもう答弁は求めません、きちっとまた、やはり終わっていませんので、引き続きやっていただきたいと思います。

 あと二分ありますので。

 現場の警察官の皆さんは、本当に私も頭が下がるくらいにやっていらっしゃいます。ただ、今どうなっているかというと、生活相談がふえている部分があるんですね。言うことを聞かないから、自分の子供をしかってくれないかとか、そんなことまで警察にかかってくるような時代になってしまった。でも、そういうのも一個一個丁寧にやっていらっしゃる姿が見えました。

 特にその中でも、例えば認知症の方が徘回をする、いなくなったということで、かなりの件数がふえてきているということであるようでございます。

 これから高齢化が進むと、認知症の発生率というのは七十五歳を過ぎると飛躍的に確率が伸びていきますから、これから認知症の方はふえていくんですね。そうすると徘回事例もふえてくる。そのすべてが警察に来ると、それこそ警察は対応が大変だと思います。

 だから、例えば包括支援センターといって、ここで議論して、前の漆間長官からも、警察が担うべき役割があればそれは警察が担うことも必要だろうという答弁もありました。だから、警察だけでなくて、例えば民生委員さんとか、地域にはいろいろなそういう福祉関係に携わっていらっしゃる方、社会保障関係に携わっていらっしゃる方がいらっしゃると思いますので、そこともやはり連携をしっかりと、前も議論しましたけれども、深めていくということも提言しておりましたが、その後どうなっておりますでしょうか。お願いします。

片桐政府参考人 お答え申し上げます。

 国民の安全、安心を守るという立場に我々はいるわけでございますけれども、このためには、我々自身がやらなければいけないことと他の機関にやっていただくべきことと、両方あると思います。そのために、我々は、その両者が有機的につながって最大限の力を発揮できるように連携を深めていくということが大事だろうと思っています。

 今の御指摘の高齢者の徘回事案でございますけれども、これは我々日常活動を通じて把握する場合がございますから、そういった場合には必要に応じて一時保護することはございます。ただ、基本的には、これは関係機関、団体においてやはりやっていただくということが必要でございますので、関係機関、団体に引き継いでいくということにいたしております。

 そのために、ネットワークを各県、大分組んでおりまして、今お話がありましたような市町村の役場とか福祉事務所、保健所、救急医療機関とか介護支援センター、民生委員等々とネットワークを組んでおりまして、そういうところに適切に連絡をして引き継いでいくという形をとらせていただいているということでございます。

市村委員 今おっしゃったことが全国でしっかりと機能しているということをまた御確認いただきたいと思います。

 では最後に、駐車違反の取り締まりですね。最後に御指摘申し上げますが、やはり行政罰に徹底した方がいいと思います。一方では、名乗り出ると罰金を払った上にマイナス二点なんです。名乗り出ないと一万五千円で済むんですね。一万五千円というか、大型の場合は違うらしいですが。要するに、名乗り出ると点数は引かれるということで、名乗り出ない方がこれからだんだんふえてくると思います。すなわち、金で片づく社会だということなんですね。

 これも、そもそも今そういう状況になってきているのに、まさに警察までがそういう金で片づく社会というのを助長しちゃいけないと私は思いますので、やはり行政罰なら行政罰、そもそもこれは行政罰にするんだ、行政罰の考え方を取り入れるんだ、良好な町づくりに資するんだということで始めた事業でありますから、原点に戻っていただいて、金で片づくような社会、そういう意識を警察が助長するようなことだけはしないようにお願いして、私の質問を終わります。

 どうもありがとうございました。

中野委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。

 私、最初に国家公安委員長の方にかかわる質問をしたいと思います。

 まず、政府参考人に一、二伺っておきますけれども、二〇〇三年四月に行われた鹿児島県議会議員選挙において当選した新人候補とその関係者が選挙違反ということで逮捕され、しかし、ことし二月二十三日、鹿児島地裁が公選法違反で起訴された十二人の被告全員を無罪判決、これは確定しましたけれども、その判決の中で、警察にうその自白をさせられた冤罪事件であったということが明らかになってきておりますが、実は、その判決の後の三月十五日、参議院の法務委員会で我が党の仁比聡平議員が、誤った見込み捜査に基づく重大な違法捜査ではないか、こういう事態が実際にあったのかなかったのか検証したのかと。やはり問題がいろいろあったら検証することが大事だと思うんですけれども、警察の捜査方法について質問をしました。

 刑事局長の答弁は、白を黒と言うとか黒を白と言う事実、取り調べの中で逆のことを言わせなければならない捜査官がこの世の中に存在すること自体大変不思議に思う、指摘のような取り調べがあったとは理解をしていないというものでした。

 今もそういう認識でいるのかどうか、最初に伺っておきます。

米田政府参考人 御指摘の判決でございますけれども、この判決の中で、供述の信用性の吟味が十分でない、あるいは買収の原資の解明が不十分でありまして客観的証拠等による供述の裏づけが十分でない、あるいは長期間、長時間にわたる追及的、強圧的な取り調べ、取り調べ官による不適切な言動の存在が強くうかがわれて、自白の信用性に疑問が残る、このような指摘をされたところでございます。

 警察といたしましては、この判決で指摘された事項、これは重く受けとめまして、再発防止策、これは、緻密かつ適正な捜査を緊急通達によって一線に徹底させる、あるいは犯罪捜査規範を改正して、制度面からも任意性が担保できる、あるいは任意捜査の段階からの捜査管理を強めるといったような措置をとっているところでございます。

吉井委員 直後の参議院では、とにかく指摘のような取り調べがあったとは理解していないと言っていたわけですから、それは変わってきたかと思うんですが、これはなかなか大変な事件だったと思うんです。いわゆるキリシタン弾圧に近いとまで言われたわけですよね、この捜査のやり方は。

 床に三枚の紙を置いて、そこにこう書かれていたんですね。おまえをこんな人間に育てた覚えはない、早く正直なじいちゃんになってなどと親族からのメッセージに見立てた文字を記して、警察官は嫌がるこの人の両足首をつかんでその紙を踏ませるという、踏み絵といいますか踏み字ですね。別の人には、認めないなら家族も逮捕するぞと迫って自白を迫る。

 これは人権じゅうりんですが、志布志の捜査を正しかったということは、今はもうそういう考えは持っていないということですね。改めて確認しておきます。

米田政府参考人 最初にこの事件捜査に入りましたのは、もとより具体的な嫌疑があって、そしてその捜査活動に入ったわけでございますけれども、この捜査の内容につきましては多々適切でない点があったと考えております。

吉井委員 それで、警察が自白と事件をでっち上げたということで、これは当時マスコミで大きく取り上げられた問題ですが、処分を受けたのは結局この踏み字にかかわった捜査員だけなんですね。一連の捜査の原因をきちっと調べて、当時の県警本部長を初め幹部はきちんと責任をとるとともに、これは私は、被告らに直接謝罪するということをやはりやるのが筋だと思うんですね。

 公安委員長、どうですか。赤福でもミートホープでも社長はきちんとやはり国民にも謝るわけですよ。何といっても、人権侵害を受けた人に直接謝るというのは私は世間の常識だと思うんです。公安委員長に伺っておきます。

泉国務大臣 この鹿児島の件につきましては、先ほど局長から申し上げましたように、大変重く受けとめなければならない事案だと思っております。

 県警本部長は、三月十九日でございますが、記者会見において、本件違反事件につきましては、県警察としては犯罪の嫌疑ありと考え、捜査を行い、送致したものですが、その結果、ここからが問題でありますが、全員の方が無罪となった本件判決を組織として重く受けとめております、被疑者、被告人であった皆さん、その御家族には、御負担をおかけしましたことにつきまして申しわけなく思っております、本部長として改めておわび申し上げます、こういうことを本部長は記者会見で申し上げた上で、また県議会で、公の場でも、無罪となった方々や県民の皆様に対して、組織としておわびを申し上げたいと謝罪しておる。このことで、この件に対する、組織として行ってきた事柄に対しての意思を明確に表明させていただいた、このように思っておるところでございます。

吉井委員 私は、記者会見とか議会で謝罪するというのも、それは世間様への謝罪だと思うんです。実際に人権侵害を受けた方に対してどれぐらい誠実な対応をするかということは非常に大事なことであって、実は、鹿児島の話だけじゃなくて、この機会に伺っておきたいんですが、志布志の事件なんかは、要するに、警察が筋書きを描いて自白を迫るという強引なやり方でやったわけですが、これは、県警捜査二課の警部と当時の志布志署長に率いられて行われたということですが、彼らが得意としたのはたたき割りと呼ばれる手法なんですね。たたき割りの解説をやっておりますと時間をとりますから、きょうはおいておきますけれども。

 要するに、そういうやり方をしたものだから、被告人にはアリバイもあったし、穴だらけの聴取だった。また、検察の方も物証なしの捜査をうのみにしてしまうということで、次々と問題が広がったわけですが、この点では富山の冤罪事件、これもやはりずさん捜査で、無関係の人が犯罪者に仕立てられて人生を狂わされたわけですね。

 この事件で、富山で起きたわけですが、富山地裁高岡支部での再審公判は、当時の自白は信用できず、有罪を立証する証拠はないとして無罪を言い渡したわけです。もちろん、別に真犯人がおったり、そういうやはり自白偏重の取り調べ方ということに問題があるということになったわけですが、富山県警も、改めて心からおわび申し上げます、再発防止に努めているところであり、徹底を図りたいと。鹿児島も富山も、県警本部長の談話というのは大体似たような談話が記者会見なりあるいは議会なりで語られたりするんですが、やはり大事なことは、富山であれば、なぜ柳原さんがうその自白に追い込まれるようなことになったのかという具体的な事実の解明ですね、これは私は非常に大事なことだと思うんです。

 もう一つは、誠実な態度というならば、冤罪で実刑に服した富山の柳原さんに直接謝罪するとか、やはりこういうことが必要だと思うんです。

 最初、政府参考人に伺っておきますが、この冤罪の被害者の方には直接お会いしてきちんと謝罪はしたんでしょうね。

米田政府参考人 この富山の事件につきましては、二年九カ月の長期にわたって身柄が拘束され、刑期もすべて終えられて、その後に真犯人がわかったということでございまして、この事実を重く受けとめまして、本部長を初め県警幹部がこの男性に対しまして謝罪の意を伝えたところでございます。

吉井委員 私は、そういう被害者に対して、そういうきちんとした対応をするということは当然のことだと思っているんですが、問題は、もう一つの方の、なぜ自白による冤罪が出るのかということの、この解明ですね。ここのところはやはり国家公安委員長の方でしっかりやってもらう必要があると思うんです。これは密室と自白偏重の捜査が土台にあって、それで冤罪事件を引き起こしてきたわけですから、そういうことを繰り返さない制度的な保障ですね、事実の検証と、もう一つは制度的保障をどうつくるかというところが大事だと思うんです。

 日弁連などからは取り調べの可視化が強く求められておりますが、いずれにしても、十月十一日の記者会見で警察庁の吉村長官の方は、富山の冤罪事件を受けて、問題は捜査の指揮に当たる者がどういう指揮をとったかという趣旨のことを述べられて、要するに、指揮官の個人的資質の話になっているんですね。もちろん私は指揮官の個人的資質は当然だと思うんですよ。別にそれは間違っているわけじゃないんですけれども、しかし、問題は、結論先にありきで、密室で自白をでっち上げ、罪のない人を犯人に仕立て上げる、こういう捜査のあり方が問われているわけですから、しかも、可視化することに一番抵抗しているのが警察庁初め捜査側だと広く言われているところです。

 そこで、泉公安委員長に伺っておきたいのは、具体的事実を明らかにして、二度とこういうことを起こさないように、県警に、全容を明らかにするように、きちんと指導するべきだと思うんです。もう一つは、密室の中で自白を強要するような違法な捜査方法をなくして、可視化を速やかに実現していく、やはりそういうことに国家公安委員会として取り組んでいく必要があると思うんです。

 大臣に伺います。

泉国務大臣 鹿児島の問題、富山の問題、これは本当に、私からも、国民の皆様方、当然取り調べを受けられました皆様方におわびを申し上げねばならない。捜査のそもそものスタート時点で何か見誤りがあったのではないか。自白だけに基づく捜査の限界みたいなものを、当然担当は十二分に承知をして進めるべきことだと思っております。

 したがって、この二件については、よく警察としてもきちんと対応をして、そのことの問題点は、全国の警察にしかるべく事例を提供して、反省の材料にしていくべきだと思っております。

 それから、可視化の問題は、しばしば、今こうした問題を踏まえて議論をいただいておるわけですが、既に私ども、この問題が被疑者と捜査官の信頼関係にもとるところがある、信頼関係の上に事実を把握していくということにどういう影響があるか、あるいは組織暴力団の関係で、すべてが明らかになる中で、いわゆる組織の一員が上司のことについてきちんと自白をしてくれるか、あるいはまた個人のプライバシーにかかわるような事柄も皆さんの前に公にすることができるか、こういうことを我々は大変気にしておるわけでございます。

 したがって、慎重な検討をさせていただきたい、こういうことを今日まで申し上げてまいりましたけれども、これから少し、こうした二つの事例も踏まえまして、対応を検討する必要があるかな。それが即可視化ということにつながるかどうかは別でございますけれども、二度とこうした問題が起きないように検討をいたしたいと思います。

吉井委員 全部記録をとっておいて公開する話じゃないんですね。後で、そういう人権侵害に及ぶ取り調べ等があった場合に、記録を見て検証する、そういうことですから。何か全部最初からガラス張りでやるからというふうなことで考えたら、これは一歩も進みません。どうして人権を守っていくのか、この観点で臨んでもらいたいというふうに思います。

 次に、先ほど泉議員からもお話がありました遺棄化学兵器処理事業の問題ですね、これについて私も幾つか伺いたいと思います。

 さきの大戦で、旧日本軍は化学兵器、毒ガス兵器を大陸に遺棄してきましたし、推定で三十から四十万発埋め立て廃棄処分になったと言われていますし、まだ四万発余りしか発掘は進んでいないんですね。それで、中国侵略を行い、七三一部隊のように、毒ガス、細菌兵器を開発して中国人、朝鮮人を初めとするアジア各国の方たちに生体実験を繰り返したりとか、毒ガスなどを使用した日本が国の責任で処理していくというのは、これは当然のことだと思うんです。

 それで、実際には戦争が終わったときに、どこに埋め立てたとか、もともとそんなのは全部焼却処分してしまったりしたのが多いものですから、それから七三一関係なんかですと、取引でアメリカ側に渡して必ずしも残っていないとか、いろいろなことがずっとありました。それだけに、遺棄化学兵器の処理事業というのは、これは非常に大事な課題なんだけれども時間がかかっているというのは、わからぬこともない面もあるんですよ。

 しかし、今も被害者が新たに次々出ておりますから、これは、被害者の方たちが中国から来られて、超党派で私たちも被害者の方とお会いしたり、どうして今の直面している健康障害の回復事業をやるかとか、あるいは、犠牲になった方の償いをどうしていくかとか、これは本当に国会としてやっていかなきゃいけない課題だと思うんです。

 遺棄化学兵器処理事業というのは、九九年度から二〇〇六年度までの決算額合計で見ると約四百七十一億三千万円、今年度予算を入れると六百八十二億九千万円という大規模な事業ですが、来年度の概算要求額三百九十六億を入れると、大体累計で一千億円を超えるぐらいの見通しになっていますね。戦後補償や処理事業として必要な事業は私はこれは当然やっていくべきものと思いますが、問題は、その事業に地検の捜査が入っているような不正が生じているということ、こういうことは絶対あってはならないというふうに思うわけです。

 そこで、まず岸田大臣に伺っておきますが、被害者の健康回復事業とか生活保障に尽力をするとともに、中国で被害者が多数苦しんでいる一方で、受注業者が不正経理によって事業費、すなわち国の予算を食い物にしているというふうな問題ですね、この被害補償と、利権に走る悪徳業者の一掃という問題については、これはきちんと政府として取り組む必要がある課題だと思うんです。

 大臣に伺います。

岸田国務大臣 まず、我が国は、化学兵器禁止条約に基づきまして中国の遺棄化学兵器を廃棄する義務を負っているわけでありますし、また、本事業は、中国との間で必要かつ重要な事業であるというふうに認識しております。

 この事業において御指摘のような不正が今報じられているわけでありますが、報じられているような不正がもし事実だとしたならば、これはもう大変遺憾なことだというふうに認識をしておりまして、まずは実態把握に努めなければいけないということで、今努力をしているところでございます。そして、実態把握をした上で、必要であるならば、今のこの事業の体制自体を見直すところも含めて、しっかりとした対応をしていかなければいけない、このように感じているところでございます。

 今は実態把握の段階ですが、その上で、この事業の重要性にもかんがみながら、執行体制も見直すことも視野に入れながら推移を見守っていく、これが現状の対応でございます。

吉井委員 一九九九年から始まったわけですね。それで、二〇〇三年までは毎年国が契約を結んでいた。先ほども出ていましたPCI、これが二〇〇四年度からは消えているんです、直接の契約相手として。これは、ODA事業を請け負っていたPCIがJICAから指名停止を受けた。それだけじゃなしに、外務省からも、それからJBICからも指名停止を受けた。だから、そもそも二〇〇三年度まで契約していたこのPCIと二〇〇四年度以降も契約すること自体ができない。指名停止なんですから、国として指定している業者ですから。

 そこで、二〇〇四年度以降の契約を見てみると、資料もお手元に配っていただいていますが、株式会社遺棄化学兵器処理機構という会社、これはPCIが指名停止になったので新たにつくられたといいますか、要するに同じグループ会社であり、言ってみれば、PCIが親であれば、できたこっちが子供で、これが国から遺棄化学兵器処理の仕事を随意契約で受けておいて、今度は丸投げでいわば親に当たるPCIに発注をする。もちろんこれはPCIと日揮の共同企業体という形はとっておりますが、これはどう考えてもおかしいんですね。

 そこで私、伺っておきたいのは、まず、二〇〇三年まではPCIだったんだが二〇〇四年度からPCIが消えたのは、やはり指名停止ということになったから、PCIとは契約していることができないからこういうことになったんだと思うんですが、こちらは政府参考人の方から事情を伺っておきます。

岸田国務大臣 済みません、ちょっと事実を整理させていただきますが、平成十五年まで内閣府として契約していたのは、PCI本体ではなくして、PCIと日揮との共同事業体でありました。そして、平成十六年から御指摘の株式会社との契約になったわけですが、まず、このPCI本体は、外務省の事案で指名停止を受けたということで、内閣府におきましても同様にPCIに対しては指名停止を行っています。そして、平成十六年まではこのPCIとの直接契約ではなくして、PCIの共同事業体PMCと、そして十六年から株式会社機構との契約ということになったわけです。

 なぜそうなったかという御質問につきましては、要は、平成十五年まではこの事業の中身が調査、コンサルタント事業が中心でありましたが、十六年から、事業自体が進展しまして、事業がコンサルタント、調査のみならず、さまざまな調達ですとかあるいは運用管理、この事業に広がったということで、このコンサルタント会社だけでは事業を進めることができない、やはり管理会社が必要になってくるということで株式会社機構との契約になったということでありますので、PCIが指名停止を受けたこととこの契約の対象が変わったことは、直接は関係ないと考えております。

吉井委員 PCIと日揮のジョイントベンチャーで、PCIが入っているから契約できなくなったんですよ、二〇〇四年以降は。幾ら何でもPCIと日揮のジョイントベンチャーと直接国が契約することはできないから、これは、コンサルだけじゃなくていろいろな業務をこなす能力をみんな持っている会社ですから、だから新しい会社をつくって、できたばかりの会社との随意契約なんですよ。

 では、どこで仕事をやってもらっているかといったら、相変わらずPCI、日揮のジョイントベンチャーにやってもらっているのですから、だから、今のお話というのは全く筋が通らないということを言わなきゃならぬと思うんです。

 それで、この遺棄化学兵器処理機構株式会社がPCIの関係のジョイントベンチャーに再委託しようと思ったら、そのときには業務委託契約書の第十二条が効いてくるでしょう。この業務委託契約書というのは、再委託の禁止をうたっています。再委託をするからには、これは、下請業者承認願というのが出てきて、国が承認しなきゃだめですね。

 つまり、PCIについては、これは指名停止だ、だめだよと言っているから、わざわざ会社の名前まで書きかえているのに、同じグループでもつくっているのに、そこから承認願が出てきたら、PCIのジョイントベンチャーなのに国がその下請業者として認めるというのは、これはどう考えてもおかしいんじゃないですか。

岸田国務大臣 ですから、PCI自体に対しては、外務省も最大限の措置をとり、内閣府におきましてもしかるべき措置をとっているという中で、遺棄事業を担当している事業体は今吉井委員もお話しになられたような形になっているわけですから、主体自体は一応別主体になっているわけです。

 その中で、今、契約の条項に基づいて、再委託が行われる際には承諾が必要だという条項があります。それに基づいてこの手続が行われているということでありまして、今報道等で指摘をされているのは、その認められている再委託以外に再委託等が行われて、そして不正が行われているのではないか、こういった指摘だと認識しております。

吉井委員 PCIと日揮のジョイントベンチャーが二〇〇三年までずっと受けてきたわけですね、仕事を。しかし、PCIが、これは二〇〇三年に問題があって、二〇〇四年の九月十五日から十一月十四日、さらに引き続いて、二〇〇四年の十二月二十一日から翌年二〇〇五年六月二十日、二〇〇五年六月二十一日から二〇〇六年三月二十日と、ずっとこれは指名停止なんですよ。

 だから、この会社と幾らジョイントベンチャーだといっても、幾ら何でも国が指名停止をやっている業者とジョイントを組んだものを指名するわけに、あるいは随意契約するなんてできないんですよ。だから、この会社は新しいのをつくったんですよ、同じグループの中で。

 グループをつくって、再委託をどこへやったかといったら、国がこれは指名停止ですよと言っているところへ、幾らジョイントベンチャーだから、ほかもくっついているからいいんだというわけにいかないんですよ、そこへ再委託をしているんですよ。それを下請業者として、当然、随意契約を結んだところからどこかへ回そうとしたら、下請業者承認願というのは出てくるんでしょう、国に。

 指名停止をしている業者なのに、わかっていて、ほかが、日揮かどこかがくっついておるからといってこれを承認したんでしょう。それはおかしいんじゃないのと言っているんですよ。

岸田国務大臣 ちょっと時系列的に整理しますと、まず、御指摘の株式会社の機構と内閣府が契約をしましたのは平成十六年四月であります。そして、御指摘の、PCIが不正を指摘されて、JICAにおける措置として指名停止を受けたのは平成十六年九月であります。

 ですから、契約の方が先に来ているわけでありまして、その後、PCIに対する指名停止、JICAにおきましては、平成十六年九月、そして十六年十二月に指名停止が行われている。

 内閣府は、さらにその後、平成十七年一月、そして十七年八月に指名停止を行っているということでありますので、契約の方が先行しているということ、これをちょっと御指摘させていただきたいと思います。

吉井委員 このPCIというのは、何しろ既に十六カ国のODA事業で不正経理が発覚、水増し請求をしたりとかむちゃくちゃやっておったということで、もともと悪徳ということでわかっておったから、幾ら何でもこれとまともな形では契約できないということでやり直したんでしょう。

 それを、いや、二〇〇四年の四月だったから、それ以降は問題ないというお話だけれども、平成十九年度遺棄化学兵器処理事業に関する業務委託契約書というのを私いただいておりますけれども、つまり、平成十九年度、今年度、どう書いているか。その第十二条、「一括再委託等の禁止等」という条項ですが、「乙は、業務の全部を一括して、又は業務委託仕様書において指定した部分を第三者に委任し、又は請け負わせてはならない。」基本的に再委託の禁止原則をうたっていますね。

 十二条の二項では、「乙は、業務の一部を第三者に委任し、又は請け負わせようとするときは、あらかじめ、甲の承諾を得なければならない。」これはいわゆる下請業者承認願ですよ。

 「ただし、」今年度の契約ですよ、「ただし、遺棄化学兵器処理事業総合コンサルティング業務PCI・日揮共同企業体への再委託を除く。」これはどういうことですか。これは、ほかの業者は承認願を出してこなきゃいけない。問題の業者については本来そこではねなきゃいけないんですよ。

 しかし、これは、国が一方の契約の当事者になっている契約書の中で、十二条の二項で、下請業者承認願は、このPCIと日揮のジョイントベンチャーについては出さなくてもよろしいということをやっているじゃないですか。ずっとこの業者と、この業者というのは、今も言ったように、二〇〇四年、五年、六年と指名停止を受けているんでしょう。これはJICAからだけじゃないんですね、外務省もJBICもそうですよ。そういう業者とわかっていながら、PCI・日揮との再委託についてだけは再委託の禁止原則を外すということになっているんですね。これはどう考えてもおかしいんじゃないですか。

岸田国務大臣 まず、最初の指摘につきましては、株式会社遺棄化学兵器処理機構の設立の経緯として、要は、PCIが指名停止を受けたからこうしたものをつくったのではないかという最初の御指摘があったものですから、時系列的に、この設立と指名停止の順番が逆だということをまず申し上げたということであります。

 そして、今の再委託の条項について、おかしいのではないかということがございました。これは、逆に、この株式会社遺棄化学兵器処理機構の設立の経緯、設立の理由をまさに先ほど御説明したところでありますが、この事業自体が、長期間に埋蔵されていた大量の化学兵器を処理しなければいけない。さらには、これはそうした事業ですから、今まで世界でも類がないわけでありますので、事業を進めながら知見や技術を習得して、その習得した知見や技術をもってさらに事業を進めるというような特殊性を持っている。さらには、化学兵器の破壊力がどの程度なのか、まだ確実なものを把握できていない、こういったリスクを抱えている。こういった特殊性にかんがみて、PMCを初めとする会社の知見や技術、こうしたものに依存をしなければいけないという実態があったわけであります。

 そういった中で、平成十六年、管理会社をつくる。引き続きまして、調査、コンサルタント部分については従来どおりPMC、知見や技術を習得している、蓄積しているPMCを活用する。それがその条項にあらわれているということでありまして、それ以外の運用管理、調達業務は、そのグループ会社ではない他の企業に再委託が行われているというのが契約の実態であります。

吉井委員 問題は、もともとJICAからの指名停止も、きのう問題を起こしたから、すぐ翌日指名停止じゃないんですよ。ずっと前から水増し請求とか不正等の事案があちこちから出ていて、だから、この業者、PCIのままじゃまずいぞということでこういうふうになってきているんですから、だから、あなたのお話というのは、全くそれは成り立たないんですよ。

 それで、そんなことを言い出したら、では技術能力はあるかといったら、私は、日揮はあると思うんですよ。例えば日本の再処理工場の、ああいうプラントの設計から管理から建設に至るまで全部やり抜く力を持っていますよ。しかし、PCIというのは、ただのコンサルタントの会社でしょう。PCIGというグループ会社で、コンサルタントをやっているような会社で、今のような説明で何かあたかもちゃんとしているかのように説明されるというのは、これはもうとんでもない話だと思いますよ。

 それで、私は、この表を見ても、いかに契約というのはひどいものかなと思いましたのは、例えば、アトックスという会社に再委託したのがありますね。まず、遺棄化学兵器処理機構、二番、三番、四番、五番、それから七番、八番と出てきますけれども、これは、まず随意契約で受けた金額で、そのまま再委託でアトックスへ行っている。二番もそうですし、四番もそうかな、それから七番もそうですか。これだったら、何も遺棄化学兵器と随意契約しなくても、最初から国がアトックスと契約をすればいいわけで、そういうふうなおかしい話がいっぱいある。

 その上に、先ほど泉さんからもお話がありましたように、まず、これはどうですか、この表の最後の数字を確認しておきたいと思うんですけれども、委託金額は、この二〇〇四年、五年、六年の三カ年間だけで、遺棄化学兵器処理機構の合計が二百三十億五千四百万余り。再委託金額は九十六億一千三百万余り。だから、委託金額と再委託との直接の差だけで百三十四億四千万ですよ。そこに、中国側への支払い経費百九億一千万円を引いても二十五億三千万円。再委託して、要するに丸投げして出すだけでですね。

 これはどう考えても、こういう契約というのは余りにもおかし過ぎるんじゃないですか。

岸田国務大臣 まず、ちょっと一言申し上げたいのは、先ほど御説明申し上げたのは、事業自体がちゃんとしているということを申し上げたくて申し上げたのではなくして、我々としても監督責任があるわけですので、こうしたしっかりとした理屈に基づいてこうした書類を見ている、これをちょっと改めて御説明したわけであります。

 事実、こうした不正が報じられているわけであります。こうした実態が今のままでいいとは我々も決して思っていないわけでして、まずは、この実態をしっかりと把握した上で対応しなければいけないというふうに思っていますし、そして何よりも、先ほど申しました特性があったにしても、かつてはこうした事業の形をとらざるを得ない理由はあったにしても、やはり特定の民間企業に依存する体制になっていた、このことが今回こうした不信を招く一つの理由だったというふうには認識をしております。

 ですから、これをしっかりと見直さなければいけない、これは我々もしっかり認識しております。具体的にはこの実態を把握してからでないと申し上げるわけにいきませんが、把握した上で、こうした問題意識を持って体制を改めていかなければいけない、そのように感じておりますので、先ほどの説明の趣旨はそういうことでありますので、ぜひ御理解いただきたいというふうに思っています。

 契約の中身につきましては、ちょっと細かい数字につきましては事務方の方からお話をさせていただければと思います。よろしくお願いします。

西政府参考人 お答え申し上げます。

 まず最初に、機構からアトックスへの再委託の経費について先生御質問がございました。

 アトックスという会社、これは陸上自衛隊の化学職種、弾薬職種のOBが入っておる会社でございまして、具体的に、中国における化学弾の回収にはこういった特殊な経験、実績を持った人間の活用が不可欠でございます。そういった観点からこの会社を採用しております。

 また、現にこの会社が行っておりますことは、俗に私ども小規模事業と申すものでございまして、中国各地で、経済発展の中で折々不発弾、化学弾が摘発されてまいります。そうしたところで日本の化学弾が出てきた場合には、これを直ちに発掘、回収し、安全に保管する義務があることから、この会社を使ってそういった小規模回収事業を行っておる次第でございます。

 でございますので、今先生御指摘のような形で、アトックスに対しての丸投げではないかという御指摘ございましたけれども、これにおきましては、まず、平成十六年四月に技術コンサルティング関係を機構との間に結びまして、さらに平成十七年一月には、ハルバ嶺における運営関係、これについての契約も行っております。(吉井委員「細かい話はもういいよ。そんなのは、後で資料をもらったらしまいやからね」と呼ぶ)恐縮でございます。

 そういう形で、私ども、しかるべく会社を調達して業務を進めさせていただいておりますので、その経費関係に関して、改めてまた先生に御説明させていただければと思っております。

吉井委員 この表ではっきりしているように、遺棄化学兵器処理機構ですか、ここで随意契約で受けて、そのままアトックスに丸投げ、これはだれが考えてもそんな契約はおかしいじゃないか。一から十までそういう形になっているというのが一つですよ。

 それから、PCIというこの会社がODA絡みで随分問題をこれまでから起こしてきて、それで、不正だ、水増しだということで、もうとうとう、幾ら何でも次の年からこの会社と契約できないじゃないかというときに別会社をつくって、別な会社ができたら、その会社と随意契約して、そこの再委託でちゃっかりこれが入っているじゃないか、だれが考えてもおかしいじゃないか、こんな契約は許されていいのかということを言っているんですよ。

 委員長も大体聞いてもらってわかってもらったと思うんですけれども、本当におかしい。それで、それも普通は契約書がちゃんとありますよね。この業務委託契約書の十二条で、再委託は禁止、どうしてもというときは承認願を出すんですよ。その承認願が出てきたときに、この会社が何で承認されたのか。もともと指名停止になっているような会社が、ジョイントを組んだら指名停止を外れるというのは、そんなばかなことはないですよ。再委託もおかしいんですよ。

 しかも、さらにこれが今年度の契約からは、再委託の禁止条項の別に潜り込ませて、この会社だけは承認願を出さなくてもよろしいと特約条項までつけている。これは、PCIだけでできる話じゃないんです。これは国が契約しているんですから、一方の側の当事者がかかわらない限り、こんなおかしなことは絶対できないんです。

 さっき、アトックスについては自衛隊の天下りのお話がありましたけれども、この関係について、随分関係している人が、やはり国の天下りだ何だと関係していることがあるわけですから、私は、まず、このことを徹底して解明をする。これは泉議員からも出されましたし、私も出しているわけですから、これは委員長、この委員会として徹底的に解明をする。マスコミに出て、ただ疑惑を持たれておしまい、そんな話じゃないと思うんですね。委員会の責任できちっと解明するように取り組んでいただきたい。委員長にお願いいたします。

中野委員長 それにつきましては、理事会でよく協議させていただきます。

吉井委員 それで、次に町村官房長官に。

 今の話だけじゃなしに、これまでからの契約の問題、私は、内閣府の例えば電通との随意契約の問題とかをこれまでから取り上げてまいりました。余りにも随意契約というのは多過ぎるんですね。

 昨年取り上げました防衛省の各企業との随意契約というのは随分多かったんです。この間、私が去年出した資料を何かフジテレビが使って放映していただいていましたけれども、天下りも多ければ、契約額が多いだけじゃなしに、その中には随意契約も随分ある。

 そして、今回の遺棄化学兵器処理機構の随意契約の問題ですね。契約そのものもおかしいけれども、契約のあり方として、国の契約は相当な金額のものが、専門的技術だとかなんとか適当な言葉が上に必ずつきますけれども、そういう随意契約で進められていく。

 しかも、では入札予定価格はどうでしたかということを聞いたら、政府参考人は、ずっと持ってこないんですよ。ありませんという場合があるんですね。今回もそうなんですよ。予定価格もなく、相手の言い値でやるような随意契約、こんなものおかしいじゃないか。これはだれが考えてもおかしいんですね。

 しかも、これは国民の税にかかわる問題ですから、官房長官として、私がきょう取り上げましたような問題に見られる国の随意契約のあり方について、契約のあり方についてはきちんとしていくということをはっきり示してもらいたいと思います。

町村国務大臣 吉井委員、御指摘をいただいた随意契約の話であります。

 これは、一般論でいうならば、予算を最も適正に、かつ、できるだけ低いコストで使っていくというのは当然のことでありまして、今、無駄の排除、歳出見直しということを歳出歳入一体改革などでもやっているわけであります。したがいまして、万が一にも不適切な関係があるというようなことであれば、それはもちろん見直していく、これは当然のことであろうと思います。

 ただ、随契が全部だめかというと、今回の遺棄化学兵器処理機構のケースについては、これはよく担当大臣に精査してもらいたいと思いますけれども、やはりほかの人ではできない技術的な理由等々があるならば、それは随契ということもあろうかと思います。きょうも午前中、テロ特委員会で、防衛庁の関係に確かに随意契約が多いと。これは、現実にソールエージェント契約を結んでおり、かつ兵器という特殊な性格からして、なかなか他のものでは供給できない等々の理由があるのかもしれない。

 そういう場合は別としても、いずれにしても、できるだけ安いコストで代替できるものがあるならばその方がいいというのはもう当然のことでありまして、今回のこのケース、遺棄化学兵器の件につきましても、岸田大臣のリーダーシップでしっかりと事業を進めていただきたいし、また、見直すべきは思い切って見直していくという姿勢で臨んでいただきたいと思っております。

吉井委員 多分、これが本日の最後の質問になると思いますが、大臣が来られる前に私、要するにこの遺棄化学兵器の問題について、歴史的な問題に少し触れておきましたけれども、いずれにしても、現在も遺棄化学兵器の処理工場の中で健康被害が発生しています。

 これは、多分大臣もお会いになられたんだと思いますが、超党派的に、各党それぞれにも被害者の方とお会いしています。国会でも超党派的に被害者の救済とか健康回復事業とか補償とかいろいろ取り組んでいかなきゃいけない、そういうことになってきていると思いますが、そのことに力を尽くすとともに、あわせて、この問題で、PCIなどパシフィックコンサルタンツグループのような、こういうところとの異常な関係というものはきちんと見直していく。

 これは、日本の戦後処理の中でも、歴史的にもきちんとしなきゃいけないことと、同時に、今進めていくときに、そこに変な、異常なことが潜り込んじゃならない。言ってみれば、戦後処理利権とでもいいますか、そんなふうなことになったら、とんでもないことになるんですよ、これは国際的にも信頼を失いますから。

 私は、この両方を、遺棄化学兵器の処理を通じて、健康回復事業とか、日本が歴史的に積み残してきたものをきちんとやっていくということと、それから、今出ている問題をきちんとやるということを最後に官房長官に伺って、質問を終わるようにしたいと思います。

町村国務大臣 中国との間で遺棄化学兵器の問題について、これをきちんと処理していくというのは、日中間でも既に、先般も例えば安倍首相、温家宝首相との間でも確認をされたテーマでもございます。長らく時間がかかってきてはおりますけれども、しっかりとした処理をしなければ、まさに住民の健康被害等も大変懸念をされるわけでございまして、これからも粛々と取り組んでいかなければいけないし、また、その中で、いやしくも疑惑を招くようなことがあるということであれば、それは大変問題であろうかと思います。

 先ほど申し上げましたように、岸田大臣のリーダーシップで適切にこの問題が前進できるように、リーダーシップを発揮していただくように、私からもしっかりと本問題について取り組むように促してまいりたいと思っております。

吉井委員 本日の質問は終わります。

中野委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時六分散会


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