衆議院

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第12号 平成20年4月25日(金曜日)

会議録本文へ
平成二十年四月二十五日(金曜日)

    午前九時二分開議

 出席委員

   委員長 中野  清君

   理事 江崎洋一郎君 理事 岡下 信子君

   理事 櫻田 義孝君 理事 高市 早苗君

   理事 村田 吉隆君 理事 泉  健太君

   理事 大畠 章宏君 理事 田端 正広君

      赤澤 亮正君    遠藤 武彦君

      遠藤 宣彦君    大塚  拓君

      加藤 勝信君    木原 誠二君

      河本 三郎君    篠田 陽介君

      平  将明君   戸井田とおる君

      土井  亨君    中森ふくよ君

      西村 明宏君    藤井 勇治君

      吉良 州司君    楠田 大蔵君

      佐々木隆博君    寺田  学君

      西村智奈美君    森本 哲生君

      石井 啓一君    吉井 英勝君

    …………………………………

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 泉  信也君

   内閣府大臣政務官     加藤 勝信君

   内閣府大臣政務官    戸井田とおる君

   内閣府大臣政務官     西村 明宏君

   政府参考人

   (警察庁長官官房長)   米村 敏朗君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  片桐  裕君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    米田  壯君

   政府参考人

   (警察庁刑事局組織犯罪対策部長)         宮本 和夫君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    池田 克彦君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 三浦  守君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 本田 悦朗君

   政府参考人

   (国税庁調査査察部長)  杉江  潤君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           中村 秀一君

   内閣委員会専門員     杉山 博之君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十五日

 辞任         補欠選任

  萩生田光一君     篠田 陽介君

  市村浩一郎君     森本 哲生君

  馬淵 澄夫君     寺田  学君

同日

 辞任         補欠選任

  篠田 陽介君     平  将明君

  寺田  学君     馬淵 澄夫君

  森本 哲生君     市村浩一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  平  将明君     萩生田光一君

同日

 理事萩生田光一君同日委員辞任につき、その補欠として高市早苗君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四六号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――

中野委員長 これより会議を開きます。

 この際、理事の補欠選任についてお諮りいたします。

 委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任を行いたいと存じますが、先例によりまして、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 それでは、理事に高市早苗君を指名いたします。

     ――――◇―――――

中野委員長 次に、内閣提出、参議院送付、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房長米村敏朗君、生活安全局長片桐裕君、刑事局長米田壯君、組織犯罪対策部長宮本和夫君、警備局長池田克彦君、法務省大臣官房審議官三浦守君、外務省大臣官房審議官本田悦朗君、国税庁調査査察部長杉江潤君、厚生労働省社会・援護局長中村秀一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

中野委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。木原誠二君。

木原(誠)委員 おはようございます。自民党の木原誠二でございます。

 暴対法について、三十分というお時間をいただいております。順次質問させていただきたい、このように思います。

 その前に一点だけ、せっかくの機会でございますので、暴対法と関係ないことをお伺いしたいと思っております。

 昨日、聖火が日本に届いたということでございます。あすはオリンピックの聖火が長野をめぐっていく、こういうことでありますけれども、御案内のとおり各地で、各地でというよりも各国で大変な混乱が生じておることは周知の事実でございます。いろいろな人権の問題がある、そのこと自体は我々この委員会で議論することではないのかな、このように思います。ただ、私自身は、人権先進国としてやはり毅然たる態度が必要だな、こう思っております。

 そのことはそのこととして、いろいろ各国の映像を見ておりますと、青い服を着た伴走者が、確実にいわゆる警察力を行使して、妨害者を排除するという光景が世界じゅうに流れているわけであります。もう既に町村官房長官の方から御発言もあったところでありますけれども、法治国家として、やはり聖火の警備そのものは日本の警察がしっかり担う、これが私は基本であろうというふうに思います。

 今回、あすからの警備に当たって、青いいわゆる警護隊と言われる人たちの取り扱いはどうなっていくのか、日本の警察当局としてどういう警備体制をしいていくのかということについて、官房長官の発言もございますけれども、警察当局から、確認の意味も込めて御説明いただきたい、このように思います。

池田政府参考人 御指摘の、青い装束の警護隊といいますのは、聖火ランナーの伴走者を指すものと考えますけれども、彼らの任務が法執行を伴うというものであれば、これを受け入れることは一切認めない、その点については明確に私の方から申し上げまして、中国側からも、法執行は行わないという確約を得ているところでございます。

 他方、御指摘の人たちが聖火の点火を行うなど、いわゆる聖火の保全をするということであれば、その受け入れいかんにつきましては主催者側で検討されるべき問題だろうというふうに思っております。

 ちなみに、JOC、日本オリンピック委員会では、聖火の保全に当たる者につきましては、開催地の組織委員会から派遣する者を受け入れるべきであるという見解を示しておられます。

 いずれにいたしましても、我が国におきます警備につきましては、我が国の警察の責任で行われるというものでありまして、今回の聖火リレーの警備につきましても、日本の警察が責任を持ってこれに当たるというふうに考えております。

木原(誠)委員 ありがとうございました。

 しっかりと先方にも伝えていただいている、こういうことであります。ただ、日本の警備が甘かったがゆえに、結果としてその人たちがいわゆる法的実力行使に出るということがないように、ぜひあすの聖火リレー、警備に万全を尽くしていただきたい、そのことをお願いしておきたいというふうに思います。

 それでは、暴対法について順次質問させていただきたい、このように思っております。

 まず、法改正の内容を議論する前提として、これまでの暴力団対策の効果というものについて総論的にお伺いをしたいというふうに思います。

 暴対法が施行されて昨年で十五年ということでございます。その間、何度か改正を経て強化がされてきているわけでありますけれども、そういう絶え間ない努力にもかかわらず、暴力団の活動は、むしろアングラ化する、潜在化する。あるいは資金獲得活動も、むしろ表社会といいますか、証券市場を活用したり行政に介入をしたりと、さまざまな意味で表の社会にも進出をしてきている。

 とりわけ、構成員そのものは減っておりますけれども、準構成員を含めますと、依然として九万弱、八万五千以上の人たちが暴力団組織に存在をする、こういうことでありまして、まだまだ道半ばというふうに思います。中には、この暴対法が所期の効果を上げていないのではないかという厳しい御意見もあるというふうに聞いておりますけれども、警察当局として暴対法十五年の歴史をどのように総括されるかということについてお伺いをいたします。

泉国務大臣 平成四年に施行されました暴力団対策法は、いわゆる暴力団を反社会的集団と位置づけて、不当な行為に対して規制を加えようという考え方で、この法律の成立を見たところでございます。

 この法律の施行以降、暴力団排除の機運が国民の中にも高まってきた、あるいは暴力団による不当な行為の防止という事柄も取り組むことができるようになった。さらに、暴力団による資金源獲得活動の困難化、従来に比べますと厳しい状態になってきた。さらに、対立抗争事件、これの抑止力が働いた等々から、一定の効果があったというふうに認識をいたしております。

 御指摘のございました、暴力団が具体的にどういう状況になっておるかということでございますが、構成員の総数は、平成十九年末で約四万九百人、前年と比べますと六百人の減少、これはわずかといえばわずかでございますが、減少しておる。ただ、平成三年末に比べますと、法執行前に比べますと約二万三千人が減少しておるということで、こうした減少傾向がある。

 あるいは、対立抗争につきましても、平成十六年、前回の改正前の五年間をトータルしますと二十六件あったものが、改正後五年間では十二件に減っておる。それなりの効果が出ておるというふうに認識をいたしております。

 しかし一方では、委員御指摘のように、アングラ化しておる、あるいは一般の経済活動に進出しておる、そしてその中で資金獲得をする傾向が見られておることも事実でございます。

 こうした反省の上に、あるいは現状分析の上に立って、今回の法律改正をお願いした次第でございます。

木原(誠)委員 委員長、ありがとうございました。

 一定の効果が上がっている、こういう御説明でございました。暴力団員そのものは減っているということでありますけれども、やはり今、暴力団組織そのものがみずからの活動をかなりアウトソーシングする中で、準構成員的なところに広がっている、こういうことであろうと思います。そういう意味でいいますと、全体的にはまだまだ道半ばというのが正直な感想であります。

 今の委員長の御説明の中にもありました、やはり人を縛り、そして資金源を断つということが、この暴力団対策の要諦というか、かなめであろう、こう思います。そういう意味でも、今回の改正がそれぞれ、構成員の面、そして資金源に深く入り込んでいくという意味での改正になっているというふうに思います。

 順次、個別の項目についてお伺いをしてまいりたいと思います。

 今、御答弁の中に、対立抗争が減ってきているという御答弁がございました。数字をとるとそういうことであるというふうに昨日も御説明を受けたわけでありますけれども、他方で、昨年も、東西の巨大な組織が対峙をするという対立抗争は数件あったというふうに認識をしておりますし、とりわけ、佐賀県であったと思いますけれども、対立抗争に巻き込まれて、病院で一般人の方が組員と誤認をされて射殺されるという、本当に痛ましい事件もあったというふうに思います。

 今回の改正で、そういう対立抗争ということについて、これを鎮静化させるという目的を持って、実行犯に対する報償金の支払い、あるいは出所祝いというものの支払いを禁止するという項目が入っているわけでございます。私は、それは非常にいい改正だなと評価をしたい、こう思います。思いますが、その前提として、やはりこれは実効性がないといけないんだろうというふうに思います。

 正直申し上げまして、組の中でどのような態様で、そしてどの程度の金額が実際にヒットマンと言われる実行組員に支払われるのかどうかという情報を得るというのは、非常に難しいことだろうと思っております。したがって、かなりの内部情報を得る情報体制がないと、せっかくの改正が無に帰す、このように思っているわけでありますけれども、今回の改正を実効あるものにするために、どういう情報収集活動なり情報収集体制の強化というものに取り組んでいかれるのか、お伺いをいたしたいと思います。

宮本政府参考人 警察では、指定暴力団が、対立抗争事件に関連して服役したその構成員が出所した際に、今回の規制の対象と考えておりますような多額の功労金を出したり、また縄張りを与えたり、高い地位を与えたり、こういった事例を把握しているところであります。こういった事例は、実は彼ら自身、今回の法改正の目的どおり、賞揚を行うためということでございますので、彼ら内部の社会においては大々的に行っているところでありまして、私どもとしては、そういった実態を十分把握することができると思っております。

 また、暴力団に対しましては、実態を不透明化させると申しますか、組織自体を隠ぺいするような動きというのは確かにございますけれども、私どもといたしましては、平素からあらゆる方法を講じながら情報収集に努めておるところでございまして、今回の規定も適正に適用できるものと考えております。

木原(誠)委員 ありがとうございました。

 御答弁としてはそういうことかなと思います。ぜひ、情報収集活動、そして、実効あるものになるように、体制の整備をしっかり進めていただきたいと思います。

 この改正について一点、私、もう少し踏み込んでもいいのかなと思いますのは、今回の改正が、そういう対立抗争があった、その後実行犯が確定をする、出頭してくるのか、あるいは警察組織によって拘束をされるのかわかりませんけれども、いずれにしても実行犯が確定をし、そして刑が確定した後に、ようやく暴力団組織に対して賞揚行為の禁止命令が出せる、こういう仕立てになっているわけでありますけれども、私は、なぜ刑が確定した段階までむしろ逆に出せないのかということをぜひお伺いしたいというふうに思います。

 もちろん、実行犯が確定できていないわけですから、実行犯の側に受け取ることについての禁止命令を出すのは難しいと思いますが、対立抗争が現にあって、どの暴力団組織が対立抗争をやっているのかというのはわかる中で、その暴力団組織に対して、対立抗争があった段階で賞揚行為の禁止命令を出すということがあってもいいのではないか、こう思うんですが、そういう仕立てになっていないのはなぜかということについて御答弁をいただければと思います。

宮本政府参考人 対立抗争などで、組のメンツのかかったようなと申しましょうか、こういったような事案でいわゆるヒットマンとして犯罪行為を行う。そうすると、一般的には、組としてそれに対する賞揚を行うということは当然のこととして考えられるわけでございます。しかしながら、命令という形で禁止命令をかけますので、やはりそこには具体的に、そういう賞揚行為を行うおそれというものの認定が必要になってくるであろうということで、まず第一次的には、被疑者ないしはその実行行為の具体的な状況がわからずともということではなしに、やはり、暴力団側にある程度そういうおそれがあるということが、おそれの認定がまずできなければ行政処分としてはかけることは困難であろう。

 次に、裁判が確定する前、ある程度私どもの方で犯人を確定し、事実関係が確定した場合でございますけれども、こういった場合で裁判の確定以前の段階ではどうだということもあろうかと思いますけれども、こういった場合に賞揚行為として金品等が供与されるということになりますと、これは、当然のことながら、犯罪行為により得た金品、報酬として得たものという形になります。したがいまして、これは当然、没収、追徴の対象ともなり得るわけでございますし、また、刑の情状の判断においても、この点は考慮される。いわゆる刑事制裁の面で、その内容として判断すべき事柄ということではないかということで、刑が処せられた後に、こういう行為が行われたとき、そのおそれがあるとき、これに禁止命令を発出することが妥当である、このように考えた次第でございます。

木原(誠)委員 ありがとうございました。

 どの段階でその賞揚行為を行うおそれがあるかというのは、必ずしも私は今の答弁で十分納得ができるわけではありませんが、今回の改正そのものは反対するところではありませんので、ただ、今後もし機会があれば、もう少し前広にそういう禁止命令が出せないのかということについてぜひ御検討いただきたい、このように思っております。

 今、人の面について少しお伺いをしたわけですけれども、今回の改正でもう一つ、資金源を断つという意味で重要な改正が入っているというふうに認識をしております。つまり、威力利用資金獲得活動というものでしょうか、今まで対立抗争によって一般人が受けた被害ではなくて、それ以外のものについても、使用者、いわゆる組幹部の損害賠償責任を追及できる、このような規定が入っている、このように承知をしております。

 これも、私は非常に重要な改正だろうというふうに思いますけれども、これまでも、民法七百十五条であろうと思いますけれども、使用者責任を追及する裁判というのは各地で起きているわけであります。今回の改正によって、被害を受けた一般人からすると、どの面で立証責任が緩和をされ、そしてまた引き続き何を立証しなければいけないのか、この違いについて簡潔に御説明をいただきたいと思います。

宮本政府参考人 現行法のもとにおきまして、民法の使用者責任、七百十五条の規定を利用して、いわゆる末端組員が行った不法行為について組長なり代表者なりへの訴訟ということが行われておりますけれども、この場合におきましては、被害者側で、その行為が暴力団のいわゆる事業として行われたという事業性の問題でありますとか、使用者性の問題、それから事業執行性の問題、こういった点を主張、立証することが求められております。

 被害者側におきまして、その不法行為を行いました暴力団員が所属する暴力団内部の組織の形態でありますとか意思決定過程、それから、代表者でありますとか傘下の組長、こういった者がどのようにして内部統制をしているか、また、上納金の徴収システムはどのような形になっておるか、先ほど申し上げた事業性等々につきましては、こういった点をかなり具体的に解明、立証していかなければなりません。これは、警察による支援があっても、被害者にとってかなり大きな負担となっているのが実情でございます。

 一方、今回の改正が実現をいたしますと、被害者側といたしましては、その不法行為が指定暴力団員によって行われた、それから、その不法行為が威力利用資金獲得行為を行うについて行われた、そして、その損害がその不法行為によって生じたもの、この点を立証すればよいということでございますので、被害者の立証負担というのは相当に軽減されるものというふうに考えております。

木原(誠)委員 ありがとうございました。

 ここでも一点、もう少し踏み込んでもいいのかなと思うことがございます。きのう、ちょっとレクをいただいたときに余り明確に通告をしなかったので、もしお答えいただければと思いますが。

 今回のこの三十一条の二には、適用除外が二つ入っておったというふうに存じます。つまり、実際の実行犯というか末端の組員がやった行為によって組の幹部が利益を得ていないときには、この条文は適用除外になる、こういうことであろうと思います。

 ただ、私は、被害を受けた一般市民の方から見ると、組幹部がその行為によって利益を得ているかどうかというのは、実は余り関係ないところではないかというふうに思います。つまり、組の看板を掲げていわゆる威力利用というものを行う、そのことによって一般市民が被害をこうむる、そのことだけが重要なのであって、その先、組幹部が本当に利益を受けているか受けていないかということは、それは余り重要なことではないんじゃないかというふうに思うんですが、わざわざこの適用除外を設けたことの趣旨を御答弁いただければというふうに思います。

宮本政府参考人 今回、末端の組員が行いました不法行為について、直接それに関与していない代表者の責任を問う、こういう規定を置くことのできる根拠といたしましては、やはり、そういった末端の資金獲得活動の結果、代表者としてそれなりの利益を得ている、これが一般である、こういう前提に立っております。

 したがいまして、そういうことから利益を受ける可能性の全くない場合にまでその責任を負わせることは難しかろうということでありますけれども、ただ、この規定の仕方は、例えば一つの組、指定暴力団であれば、制度として、その暴力団がいわゆる上納金システムのようなものを一切持っていない、こういう場合を想定しておりまして、現実問題として、そういう指定暴力団というのは現在私ども把握しておりません。

 したがいまして、代表者の側で、そういうシステムがない、末端の組員の活動から利益を一切得ていないということを立証しなければならないということでございますので、ある意味では、法制度的に、そういうことがない場合にまで代表者の責任を追及することはちょっと困難であろうということでこういう規定を置いておりますが、現実的には、この点の立証を代表者側がするというのは極めて困難であろうと考えております。

木原(誠)委員 ありがとうございました。

 この適用除外は、確認的に置かれた規定である、基本的には、現実にはほとんど適用がないだろうという御答弁だったというふうに思います。そういうことで理解をいたしたいというふうに思います。

 あともう一点、結局、この規定が本当に効果を持つかどうかというのは、一般市民が泣き寝入りをしないかどうかということにかかっているんだろうと思います。今までの対立抗争の中での損害賠償請求ということになりますと、対立抗争そのものは明らかに世間にわかりますから、警察組織もまた、そこで被害が生じている、生じていないというのが把握できるわけですけれども、今回の、より広がったこの使用者責任ということに関して言いますと、なかなか表に出てこない、こういうことであろうと思います。ましてや、組幹部の責任を問うということになりますと、一般人にとっては相当なプレッシャーであろう、こう思いますけれども、泣き寝入りをしないように警察としてどのような支援なり対策をとっていくのか、御説明をお願いいたします。

泉国務大臣 これは、今委員御指摘のように、被害者の方々が泣き寝入りをしないように、御自分の被害の状況をきちっと明らかにするように、そこに警察がどういうお力添えができるか、万全を期して取り組まなきゃならないという思いを持っております。

 そこで、具体的には、暴力追放運動推進センターというものを持っておりますし、弁護士会などとの緊密な連携を図っていく。被害者に対しましては、加害者が指定暴力団員であることの情報提供をする、あるいは、新設された規定の活用などによって被害回復のための手法をお教えする、さらに、先ほど申し上げました推進センターによる訴訟費用の貸付制度の教示、それから弁護士の民事介入暴力対策委員会等の紹介など、いわゆる訴訟に対しての全面的な積極的なバックアップをさせていただくことが必要だと思っておるわけであります。

 これらの事柄を通じて、嫌がらせや報復といった、一般の民間人の方がしり込みをすることのないように万全を尽くしてまいりたいと思っておるところでございます。

木原(誠)委員 委員長、ありがとうございました。

 ぜひ、一般市民の側に立って万全の支援をとっていただきたい、そして有効な法案改正になるように実効あるものにしていただきたい、このようにお願いをいたします。

 少し法案の改正からは離れたいと思いますけれども、やはり暴力団を最終的に根絶していくという中にあっては、人をどう絞り込んでいくか、これは重要なことでありますけれども、やはり一番のかなめは、資金源をしっかり断っていく、こういうことであろうというふうに思います。

 そういう意味で、既に、例えば組犯法の中で没収規定が十分と充実をしてきておりますし、またマネロン対策も、FIUが警察庁に移管をされるという中でかなり強化をされてきているわけでありますけれども、もう一点、この分野でぜひ我々が認識をしておかなければいけないのは、やはり税務当局の力というのも非常にあるのではないかというふうに私は思っております。アル・カポネが摘発されたのもやはり税務当局が中心であったというふうに思いますけれども、今、警察当局が違法な収益を認識したときに、あるいは暴力団の活動を把握したときに、恐らく税務当局に課税通報されているんじゃないかというふうに思います。

 税務当局にお伺いをしたいと思いますけれども、どの程度この課税通報が警察当局からなされ、そしてそれをいかにして活用し、そして同時に、どんな戦略なり基本的なポリシーを持っていわゆる違法活動に対する徴税に当たっているのかということについて御答弁をお願いいたします。

杉江政府参考人 お答えいたします。

 国税当局は、納税者の適正公平な課税を実現するという観点から、暴力団等につきましても、さまざまな機会を通じて、課税上有効な資料情報の収集に努めており、課税上問題があると認められる場合には、実地調査を行うなどにより適正公平な課税の実現に努めているところでございます。

 しかしながら、暴力団等の違法行為による収益につきましては、その正確な把握が困難な面もあり、また調査に対する協力度が極めて低いという問題があるため、従来から、警察当局との協力関係を緊密にして、暴力団等の課税に関する情報の提供を受け、これを活用することなどにより、暴力団等に対する課税の適正化に努めてきたところでございます。

 今後とも、警察当局と緊密に連携を図りながら、適正公平な課税の実現に努めてまいりたいと考えておるところでございます。

 それから、御質問ございました、警察当局から提供される課税に関する情報の件数でございますが、年間約四百件から五百件となっているところでございます。

木原(誠)委員 ありがとうございました。

 御答弁としてはそういうことであろうというふうに思います。なかなか徴税の中身についてまで細かくは御答弁いただけないというのは理解いたします。しかし、私は、いかなる組織であってもやはり経済的欲求というのが中心であろう、こういうふうに思います。その中で、税務行政、徴税が果たすべき役割というのは非常に大きい、このように認識しておりますので、今後ともぜひ警察当局と緊密に連携をとって対応していただきたい、このことをお願いしておきたいと思います。

 時間が迫っておりますので、最後の質問にしたいと思います。

 ここまで何点かお伺いをしてまいりました。冒頭、委員長の方から、暴力団の組織の性格について言及があったわけでございます。法律の条文の中にも、集団的にまたは常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれのある団体、こういうふうに定義をされているわけであります。

 しかし、私がこの暴対法にやや限界があるなと思いますことは、暴力的行為、不法行為を行うことを助長するおそれが常習的にある、そういう団体を、適法なものとして認めているとまでは申しませんけれども、しかし違法なものとして却下もしていない。したがって、そういう団体の存在をある程度認識した上で、基本的には中止命令を出して、そしてそれに対して処罰をかけていく、そういう構成になっているわけであります。したがって、中止命令が出るまでの間、その団体の活動というものはある程度許容されているというのが今の法律の建前ではないか、こう思っております。

 いろいろ強化をしていただいておりますけれども、もう一歩踏み込んで、諸外国にありますように、こういう暴力組織そのもの、その存在そのものを否定するというようなものとして指定をすることが必要だという意見も多々あると承知をしておりますけれども、この点についてお伺いをして、質問を終わりにしたいというふうに思います。

宮本政府参考人 御指摘のとおりで、この暴力団対策法は、指定暴力団員のいわゆる反社会的活動、その個々の行為をとらえて規制を行う、これが必要かつ合理的であろうという考え方に立っておるものでございまして、その効果的な規制のあり方については、今後も、彼らの動向の変化にもより、また効果的な規制を考えていかなければならないと思います。

 また、団体そのものを非合法化する制度ということにつきましては、これは一方で、憲法の保障する結社の自由との関係でございますとか、我が国の刑罰法規全体系との整合性なり、またさらには、規制した場合の規制の実効性といった問題、こういった観点から十分な検討をしていかなければならない、慎重な検討が必要であろうというふうに考えております。

木原(誠)委員 ぜひしっかり検討していただきたい、このように思います。

 以上で終わりにします。ありがとうございました。

中野委員長 次に、楠田大蔵君。

楠田委員 民主党の楠田大蔵です。

 本日議題となりました暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の一部を改正する法律案について、民主党のトップとしてまず質疑をさせていただきます。

 この問題は、我が郷土福岡にとりましても非常に関心の高い問題であります。大臣も福岡出身でございますが、まず、福岡には、全国二十二の指定暴力団のうち実に五つが存在をしております。あわせて、自民党の派閥の長も三人おられて、また、泉大臣、そして取り締まり側のもう一人、鳩山法務大臣も福岡ということで、非常に福岡というのは、少し今異質なところでもあるのかな、そうした観点も持っております。別にそのような因果関係にあえて触れるわけではありませんが。

 また、私の学生時代の原体験といいますか、私も久留米に通っておりまして、大臣も明善高校であられると聞いておりますが、久留米大附設という学校だったのですが、いわゆる中高一貫の男子校で進学校と言われておりましたが、そのせいで、いわゆるたかり、恐喝のターゲットにうちの学校はされておりまして、私自身は幸運にもその被害に遭わずに済んだのですが、まさしく久留米の中でそうしたことがなぜ行われるのか。子供のときにうわさで聞いていたのが、やはりそういう我々中学生なり高校生から奪ったお金を、その取った側の学生も、上の先輩やいわゆるチンピラ、暴力団へと上納していっているという話も子供のときに聞いて、要は、弱い者から搾取するシステムというのが地域によってはあるんだな、こうしたシステム自体を何とかせないかぬなと子供のときから思っていたわけでもあります。

 そして、そうした中で我が地元でも、以前にも増して脅威がすぐそばにあるという今状況でありまして、抗争がまさしく激しくなってきているわけであります。

 特に道仁会と九州誠道会の抗争というのは激しいものでありまして、先日、もう半年以上になりますが、市街地、福岡市の人が大変多い住宅地の中で、夕方でしたけれども、夏祭りが開催されているようなそばで、組長自体が射殺をされるということが起こったわけであります。また、佐賀の方では、これも非常に痛ましい事件でありましたが、病院で全くの人違いで一般の罪のない三十代の若い方が誤って射殺をされるという事件も起こったわけであります。

 そうした中で、報道が地元では特に続いておりますが、先日、この被害者の遺族宅に組関係者が訪れて、三百万円を持ってきたということでしたが、それと同時に、これは誠道会側であったと思いますが、手紙の中に抗争終結の意思を示して、そして、組長をかえる、会長をかえることで抗争を終結させたい、そうしたことが報道上ではされてもおります。

 実際、この抗争がいつまで続いていくのか、終えんに向かっているのか、この点を、まず地元の思いとしてもお聞かせをいただきたいと思います。

宮本政府参考人 道仁会と九州誠道会の対立抗争でございます。もともと道仁会内部の対立に端を発したものでございまして、関連すると見られる事件、平成十八年からこれまで二十四件発生をし、死傷者数十四名、死者七名、負傷者七名、これだけの事案になっております。警察としては、取り締まりなり警戒活動を徹底して、また、道仁会から分裂した九州誠道会、これを新たに指定暴力団として指定するなど、対策を講じてきているところでございます。

 そこで、先般、九州誠道会が対立抗争の終結を宣言した、こういう報道があったことは承知をしているところでございますけれども、これにつきましては、私ども認識しているところでは、道仁会との対立がこれで解消したと認められる状況にはないものというふうに考えております。対立状況はまだまだ継続しておる状況でございます。なかなか先行き不透明といった状況もございますが、引き続き、両団体に対する情報収集を徹底すると同時に、さらに徹底した取り締まりを続けてまいりたいと考えております。

楠田委員 片一方の組長が薬物容疑で逮捕されるというようなことも最近起こっておりますが、先行き不透明ということでありまして、大変不安な思いを新たにしております。特に、佐賀のこの犯人なんかは、私の地元で警察ともみ合う際に銃撃、発砲をして、その末に捕まったということで、本当にごくそばでこうしたことが起こっているという不安の声も改めてお伝えをしたいと思います。

 そうした中で、いわゆる暴力団組織というものに対してどのように取り締まっていくか。これは、かつて暴対法が平成四年に施行される前は、一般の刑法等で取り締まりをするしかなかったのであろうと想像しておりますけれども、そうしたかつての対策から一歩踏み出して暴対法というものができたということは言えると思います。

 その後も数次にわたって改正がされてきたわけでありますが、こうした経緯と効果、意義というもの、これまでのそうした取り締まりの流れというものをまずお聞かせいただけますでしょうか。

泉国務大臣 平成三年に制定されました暴力団対策法は、暴力団そのものを反社会的な集団という位置づけをいたしまして、団員による不当な行為に対して規制の網をかけるという考え方でございました。その後の改正によりまして、暴力団への加入を強要する行為に対する規制、指定暴力団員との特別な関係を有する者による準暴力的要求行為に対する規制、対立抗争等に関する代表者等の損害賠償責任についての規定の整備、こうしたことが行われてきたわけでございます。

 暴力団対策法の制定、改正によりまして、暴力排除の機運が国民の間に高まった、あるいは暴力団員による不当な行為の防止が皆さんの心の中に通じてきた、そういうことを通じて、暴力団による資金獲得活動が従来に比べますと相当困難化してきておる。さらに、その一つの数字的なものでお示ししますと、暴力団の構成員の数が減少しておる、あるいは対立抗争事件の抑止ということなどの一定の効果があったというように考えております。

 今回の法改正を通じて、さらに暴力団の弱体化あるいは壊滅を目指して、この法律の効果的な運用を図ってまいりたいと考えておるところでございます。

楠田委員 反社会的集団と認定をして取り締まり、網をかけていくという話もございましたし、弱体化、壊滅を目指していくという意思も改めて述べていただきましたが、先ほどの質問でもありましたように、中止命令を出して、その後取り締まるという形でもありますし、あくまで行政的な取り締まりの延長でもあるということでありますので、命令を出される前は大丈夫であるとか、逆に、相手側に準備する、そうした予測を与えているという指摘もあるところであります。そうした観点も含めまして、これから質問を進めてまいりたいと思います。

 そうした中で、今回新たに改正を、それぞれ大きく言えば五点ほど大きな論点があると思いますが、改正をなす背景と意義と効果というものも、まず簡潔にお答えいただけますでしょうか。

泉国務大臣 先ほど委員から御発言がございましたように、暴力団による銃器使用事件、これは、長崎市長の事件もございましたし、佐賀の事件もございました。こういう状況が後を絶っていないということは大変残念なことでございます。

 また一方で、暴力団の資金獲得活動に関連して、国民の一般の方々の命や財産が深刻な被害を受けておるという状態もあるわけでございます。この暴力団の資金獲得活動というのは多様化しておるし、また巧妙化してきておるわけでありまして、暴力団の各種事業活動への進出を阻もうとする行政機関等に対して、暴力団員が不当な干渉をする、要求をする、こうした実態も起きております。

 今回の改正は、こうした状況を踏まえまして、暴力団の代表者等の損害賠償責任の拡大強化、それから対立抗争に関する賞揚等の規制、さらに行政対象暴力の規制等を行おうとするものでございます。この改正によりまして、対立抗争等による暴力行為の抑止、暴力団の資金源の封圧及び被害回復の促進が図られるものと考えておるところでございます。

楠田委員 確かに大臣言われましたように、最近またとみに、反対運動の先頭に立つ方が逆にねらわれてしまう、そういう被害が出てまいりましたり、抗争事件で、いわゆるヒットマンといいますか、鉄砲玉のような形で事件が行われるということも結局のところ今なお続いているわけでありますから、時宜を得た今回の改正だとは思っておりますが、その一つ一つについて、これから改めて問うていきたいと思います。

 まず最初に、九条関係でありますけれども、暴力的要求行為として規制する行為を新たに追加された。特に今回は、行政に対する不当な要求に対しての規制を強める、新たに加えるということになったわけであります。こうした意義と効果に加えまして、今、例えば北海道でも生活保護不正受給等もまた起こったところでありますが、公共工事について、例えば暴力団排除要綱等の整備というのは、自治体としてこれまでも進めてこられた、九割近くに整備率が上っているということでありますけれども、逆に言えば、一割はその整備さえ進んでいないということも言えるわけであります。

 今回の法改正を契機に、行政庁というものが例外なくこうした悪に対して一致団結して毅然と立ち向かうこと、こういうものを担保する方策自体も非常に重要ではないかと思いますが、そうした意義と効果と、そして担保する具体的な方策についてお答えいただけますでしょうか。

宮本政府参考人 近年、暴力団の資金獲得活動は多様化、巧妙化をしてきておりまして、一般の経済取引を装って資金を獲得する、こういった傾向が見られるところでございます。そういった中で、許認可等を行います行政庁に対して、自己または自己の関係者に有利となるような権限の行使を要求する、こういった傾向が顕著になってきております。

 また、国や地方公共団体が行う公共工事の入札参加資格の審査において、暴力団関係企業の排除といったことが行われておりますので、そこで、指定暴力団員が、国や地方公共団体に対して、暴力団関係企業を公共工事の相手方とするといったことや、また、ライバル他社を入札から反対に排除する、こういったようなことを要求する、こういった実態がございます。

 このように、近年、行政庁等に対しまして暴力団の威力を示して不当な要求を行う行為類型が見受けられるようになってきたことから、新たにこれらを暴力的要求行為として規制することとしたものでございます。

 行政庁側としての毅然とした対応ということでございますが、こうした暴力的要求行為、行政対象暴力を新たな項目で加えるということも、今申し上げましたような背景としては、行政からの暴力排除が一方で進んでおるから、またそこに暴力団が不当な要求行為をする実態が出てきているという面もあるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、行政対象暴力の根絶のため、国、地方公共団体の行政機関が暴力に屈しないという姿勢をより鮮明にして、組織全体で対策を講じていくことが何よりも重要であろうと思っておりますし、そのために、警察と他の行政機関との連携といったことがまず極めて重要であるというふうに考えております。

 そこで、警察におきましては、国の行政機関につきましては、犯罪対策閣僚会議のもとに設置をされました暴力団取り締まり等総合対策ワーキングチームでありますとか、行政対象暴力に対する関係省庁等連絡会議、こういったもの、また、地方公共団体の行政機関につきましては、それぞれ各種の暴排協議会といったものが設置されております。こういったものを活用しながら、それぞれ緊密な連携を保っているところでございまして、行政対象暴力への対策を推進するために、国や地方公共団体の行政機関と警察とが緊密な連携を図って、こうしたものに対し毅然とした対応をとってまいるように努めてまいりたいと考えております。

楠田委員 まず、冒頭にありました、自治体等の対策が進んでいるために余計暴力団が強く行政対象に臨んでいる、その観点はちょっと私自身理解できないところもありましたが、いずれにしましても、先ほど大臣の話もありました長崎での伊藤一長前市長、私も何回かお会いしたこともありましたけれども、大変立派な方でありましたが、それからちょうど一年たちますけれども、あの犯人はまさに、こうした行政対象暴力を求めながらも、この市長なり市役所が毅然と対応しているからこそああいう犯行に及んだということで、まさしく、まじめに取り組んでいる方こそがこうした被害に遭ってしまうことがないように、二度と起こらないように、そうした観点からも取り組んでいただきたいと思います。

 次に、三十条の五の関係でありますけれども、対立抗争などに係る暴力行為の賞揚や慰労を規制に加えたわけであります。

 これに関しましては、冒頭に申しましたように、まさしく私の地元でも、典型的とも言えると思いますが、若い組員によって親分殺しが行われた。最近では、逆に出頭をすることが、親分の責任まで問われるようになったということで、むしろしにくくなってきたという話もありますけれども、それにいたしましても、将来的なこうした賞揚、慰労があるからこそ実際に組織の命に従うということはあったんだろうと思っていますから、これも非常に時宜を得た今回の改正であろうと思っております。

 そうした中で、改めて背景、意義と効果に加えまして、賞揚、慰労の目的で「金品等の供与をするおそれがあると認めるときは、」という構成といいますか条文になっておりますけれども、賞揚などの「おそれ」とはどのように認定するのか、これについてもあわせてお聞かせください。

宮本政府参考人 対立抗争などに関連をいたしまして、いわゆるヒットマン、鉄砲玉といった犯罪を犯した人間、そしてその服役した構成員が出所した際に多額の功労金を渡したり、高い地位に昇進させたり、こういった慣行が暴力団の間に存在をしております。こうした行為が将来の暴力行為を助長する結果となっているということで、これを規制し、暴力行為を阻止、抑止していこうというものでございます。

 こういった賞揚等のおそれということについてでございますが、これは、対立抗争等でこうした暴力行為を敢行いたしました指定暴力団員でありますとか関係者、こういった者が警察での取り調べや公判などにおいて、出所後の賞揚、慰労が行われる可能性がある旨、こういった犯罪捜査の供述などからも認定することは可能でございます。

 また一方、そうしたことをしたその指定暴力団が、過去に賞揚等を目的とする金品等の供与を行っているということ、そういう事実そのものも、そのおそれの認定の一つにすることができると考えております。

 こうした要素を総合的に考慮して、判断することになるというふうに考えております。

楠田委員 かつて組自体でそういう金品の供与等が行われていたことも含めてということで、そういう事例も含めておそれを認定するということがわかりました。

 そして、この金品等の供与を受ける者でありますけれども、ちょっとこれは通告外でもありますが、この者自体に、その犯人以外の、実行犯以外の親族等も含まれるのか。また供与する側としては、これまたどのような者が想定されるのか。組関係者だけを想定して実際に中止命令を出したとしても、第三者を経由するなどすれば脱法というのは容易じゃないかということも考えられると思いますが、この点はいかがでしょうか。

宮本政府参考人 この金品等の供与は、例えば家族などに対してなされた場合でございますが、これは、賞揚等としてなされるおそれがある場合に対象となりますので、事実認定の問題ということになると思いますけれども、一般的に、非常に個人的な人間関係で、例えば家族が生活に困っているので生活の面倒を見るといったようなことにまで規制の対象としているものではありませんから、反面、極めて些額の金品、そういったものを超えて、明らかに賞揚行為と認められるような形で、また額で行われれば、これは事実認定でございますが、賞揚の対象として今回の規制の対象となり得るというふうに考えております。

 また、だれが金品等の供与をするおそれがあるのかということでございます。これも事案に応じて異なるものと考えられますけれども、一般的には、その暴力行為を敢行して刑に処せられた指定暴力団員の直属の組長でありますとか、指定暴力団の代表者等を含む、行った人間の系列上位の組織の幹部、こういった者が想定をされるところであります。命令自身は、想定される複数の者に対して発出するということが考えられるという前提でございます。

 この場合におきまして、第三者を介してといったような場合、そういった抗弁をさせないように、第三者を介して供与してはならないというふうに命ずることもできますし、また、純粋に第三者を手足として使ったということであれば、その当人に対する命令としてそれも規制の対象になる、こういうことであろうと思っております。

楠田委員 なるほどというところもありましたが、まず、供与を受ける者の方ですが、極めて多額であればということ、この額がどれほどのものかは私も現場のお話でよくわかりませんが、やはり特に裁判中なり刑期服役中等に、その妻なり愛人なり家族、子供なり、そうした面倒を見てもらうということも、重要な一つの、賞揚、慰労とまではいかないかもしれませんが、そうした動機の一つになるのは間違いないことでもありましょう。また、第三者を手足として使っているかどうか等、この認定というのも非常に難しくなると思いますので、今回の運用自体も非常に問われていると思いますから、ぜひそうした観点にも注意して取り組んでいただきたいと思います。

 また、賞揚自体も、人に関係なく隠密裏に行えば把握自体難しくなる、また組関係じゃない別の人間に依頼をするということも考えられるとも思いますが、そうしたことに対する対策はどのようにお考えでしょうか。

宮本政府参考人 確かに、隠密裏に行われるとか警察の目から逃れてこのような行為をするということは当然考えられるところでございますけれども、しかしながら一方で、こうした行為そのものが賞揚、慰労ということでございまして、ある意味で組組織の、組織統制の手段ともなっておりまして、その意味では、彼らの社会内部では、こうしたことが行われたということが知られないとする側に意味がないということもございます。そういうことでありますと、全く隠密裏にということは通常ちょっと、なかなか考えられないところでございます。

 彼らの世界である程度知られるような形であれば、警察といたしましては、平素からこういった暴力団の情報収集に努めておりますので、そういった情報が得られれば、これは命令に違反してそういうことが行われたということになれば、違反行為でありますので、罰則行為でありますので、捜査という形でその辺の事実関係を明らかにしていく、こういうことになると考えております。

楠田委員 組の論理というのは私自身もわからないところがありますので、まさしくそうした新たな志願者が出るために堂々と行うものであるとすれば、確かに隠密裏に行うということはないのでしょうが、いずれにしろ、その情報把握というのは非常に重要になってくると思いますので、そうした観点を強めてやっていただきたいと思います。

 また、刑の執行の期間、終期から五年という期間の限定に正当性があるか、この期間の正当性についてもお答えいただけますでしょうか。

宮本政府参考人 命令の期間についてでございます。これを限定しておりますのは、命令の効力を、具体的な事案に応じて、賞揚、慰労行為が行われるおそれがあると認められるその合理的な期間内に限定をするという趣旨でございます。

 賞揚等を目的とする金品等の供与、これは、従来の例を見ますと、刑に処せられた者が刑務所から出所した直後に行われるおそれが最も高いわけでございますけれども、服役中でありますとか、反対に出所後しばらくしてから行われる、こういったことも想定をされます。そこで、裁判が確定してから出所後五年を経過するまでの範囲内で命令の効力を継続させることができる、こういう規定になっております。出所後五年を経過した以後、金品の供与が行われた、この場合には、賞揚の効果は極めて薄いものになると考えられますし、出所後五年以内を対象とすれば、出所直後、その金でいわゆる享楽的な生活を期待する、こういった暴力行為を抑止するといった効果、これがその五年以内であれば期待できるというふうに考えております。

楠田委員 政治の側でも、事後買収の取り締まりも厳しくなってきておりますが、これに関しても、今後のこうした彼らの動きというものを見ながら、この期間というものもぜひ検討をこれからも加えるということを御留意いただきたいと思います。

 次に、三十条の二、三、四の関係でありますが、損害賠償請求などの妨害の規制を新たに加えた、これも非常に重要なことだと思っております。やはり、そうした仕返し等が怖くて実際に行動に移せないという方はかなり多いのではないかと思っています。

 そうした中で、今回新たに加えた背景、意義というものに加えまして、ただ今回、規制対象を不法行為による損害賠償請求と組事務所の明け渡しなどに限った意義というものも、あわせてお答えをいただきたいと思います。

宮本政府参考人 まず、損害賠償請求等の妨害の規制の趣旨といった点でございますが、指定暴力団員の構成員に対する請求につきましては、将来報復などのおそれがあるために被害者が泣き寝入りをするケースというものも十分考えられるところでございます。また、指定暴力団員に対する損害賠償請求や指定暴力団の事務所の使用差しとめといったこと、これは指定暴力団の存立基盤に影響を与えるものでありまして、指定暴力団が組織を挙げてこれを妨害するといったおそれも高いということでございますし、また、これまでもさまざまな形で妨害が行われた例がございます。

 そこで、今回こういった妨害行為を規制しようというものでありますけれども、この二つ、損害賠償請求と組事務所明け渡しなどに限った意義、その趣旨ということでございますが、損害賠償等の請求について申し上げますと、これは指定暴力団に経済的なダメージを与えて組織の存続にも影響を与えることになるだけでなく、指定暴力団にとって、暴力団の威力そのものを否定されかねない行為であるということであります。また、事務所の使用差しとめの請求、これにつきましても、指定暴力団に活動の拠点を失わせるに至る深刻な影響をもたらす行為である、こういったことから、指定暴力団員により妨害が行われるおそれがこういう類型において特に高く、また現に妨害をされている実態がある、こうした類型を今回、請求妨害の規制対象といたしたいということで、法案として提出した次第でございます。

楠田委員 要は、今までの事件が起きたものについて特に限って、今回新たに試行的に取り組まれたという思いが感じられたところでありますけれども、やはりそのほかの、民事訴訟手続に関する暴力団員の報復というものも常々あるところでもありますので、そうした検討もぜひこれから後、考慮をしていただきたいということを要望しておきたいと思います。

 三十一条の二の関係に進ませていただきますが、代表者等の損害賠償責任の拡大強化の背景、意義をまずお聞きしたいと思います。

 かつて、国会の答弁で、組長、親分の統制のもとの行為と認定するのは難しいという答弁もたしか平成十六年に、少し前にあったところでありますが、その整合性も含めて、この点をまずお答えいただきたいと思います。

宮本政府参考人 指定暴力団員による威力利用資金獲得行為に関連をいたしまして、国民の生命、身体、財産に深刻な被害が発生をしている、しかしながら、末端の暴力団員は損害賠償のための資力に乏しいというのが一般である。そこで、今回の改正で、指定暴力団員が威力利用資金獲得行為を行うについて他人の生命、身体または財産を侵害したときは、一定の場合を除きますけれども、当該指定暴力団の代表者等が損害賠償責任を負う、こういう規定をすることとしたところでございます。

 こうしたことは、平成十六年の暴力団対策法の改正の当時から、こういった代表者等の損害賠償責任の拡大強化については御指摘をいただいていたところでございます。その当時からの検討課題であったわけでございますけれども、その後、指定暴力団員の威力利用資金獲得行為によって得られた利益が組織に取り込まれていた事件を検挙するなどして、そうした威力利用資金獲得行為と代表者等の関係がより明らかとなってきたということがございますし、また、暴力団対策の方向といたしまして、暴力団の組長なり責任者、代表者、こういった者の責任追及をより厳しく行っていくべきである、こういった観点から、今回の改正案を提出させていただいたところであります。

楠田委員 やはりどうしても、例えば先ほど冒頭に申した、地元の新たに分裂した暴力団組織の指定がこの二月にまでずれ込んだ、そういうふうに、起こってからじゃないとなかなか踏み込んでいけていないということが今までの質問の中で非常に感じられるところでもありますので、そうした未然に防ぐという観点をぜひ持っていただきたいと思っております。

 時間の関係もありますので、この定義についてはちょっと飛ばしまして、ただ、この規定が適用されたとしても、被害者が報復を恐れたり手間がかかったりするために訴訟提起に踏み込めないのではないかという心配もあるわけであります。やはりこれもつきまとうわけでありますが、この対策についてはどのように考えておられますか。

宮本政府参考人 御指摘のとおり、被害者の方々が暴力団に対し訴訟を起こすということは大変な勇気の要ることであろうかというふうに思っております。

 一方で、そうしたさまざまな困難を押して、暴力団組長に対する損害賠償訴訟を一般の民法の規定に基づいて提起していらっしゃる方々もおられるところでございまして、一つには、こういうような方々に対しまして、今後この規定が非常に大きな支援の項目となるというふうには思いますけれども、一方で、嫌がらせや報復を恐れる、これに対して、当然のことながら警察といたしましては、これらの方に危険が及ぶことを未然に防止しなければならないし、これらの方の不安感を除去し、また安全を確保するために、保護対策に万全を期していかなければならないというふうに考えております。

 また特に、今回の改正において、先ほど答弁したとおり、代表者等を含めまして指定暴力団員に対して損害賠償請求をし、またはしようとしている方、あるいはその御家族に対し、関係の指定暴力団員がつきまとい等の請求妨害を行うことを規制することとしておるわけでございます。こういったものを効果的に運用してまいる必要がある。こういったことで、こうした方々の保護にさらに万全を期すことができるものというふうに考えております。

楠田委員 規定自体が支援というお答えもありましたけれども、私は、やはりこの規定が生かされるためのそうした保護対策こそが重要だと思っておりまして、次の三十二条関係にも当てはまるところがあります。暴力排除活動の促進、導入を新たに加えたということであります。我が地元でも、そのような抗争が激しくなるという状況でもありまして、暴力団排除の集会等が以前にも増して頻繁に行われているという状況だと思います。

 そうした中で、この二項の中で、国及び地方公共団体に事業者等の安全確保配慮義務というのが加わっておりますが、率先して活動する方々への安全確保というのは何より大切でありますので、こうした新たな義務が加わったこの改正で実際どういう履行が想定され、安全確保が進むのか、これについてもお答えいただけますでしょうか。

宮本政府参考人 安全配慮義務についてでございますが、警察といたしましては、当然のことながら、従来からも行っているところでございますけれども、暴力団等による危害をこうむるおそれのある方、こういった方々の保護対策として、保護対象者ということで指定をいたしまして、危害行為の未然防止の措置を図っているところであり、これをさらに推進することといたしております。

 さらに、いわゆる地方公共団体などの行政当局におきましても、それぞれの業務に応じて、例えば、被害者等に係る住民基本台帳の一部の写しの閲覧、こういった申し出があったような場合、申し出者の本人確認とか利用目的の審査等を厳格に行っていただくとか、こういった暴力団からの安全、安心を守るため、それを害するような行為について厳しく業務を行っていただく、こういったことを想定いたしております。

楠田委員 時間も参りましたので、そろそろ終わらせていただきますが、北九州の方でも、たしか歓楽街のトップで反対運動をしている方がねらわれた事件も近年ありましたし、記憶に新しいこととしては、昨年十月の鹿児島での、追放の取り組みをしている団体の代表がまさしくごみを出すという一瞬のすきに襲われるということもあったわけでありますので、今までも行ってきたということでありますが、実際こういう被害も起こっておりますから、そうした観点をより強く留意していただきたいと思います。

 最後に大臣にお聞きしようと思いましたが、時間が参りましたので、思いとしまして、やはり経済犯罪等に進出をするという動きも強まっておりますし、また今回、民事上の頂上責任は新たに加わったところでありますが、やはり刑法においても、教唆や共犯としてそうした組幹部等の責任を問うというような頂上的責任も考えていかなければならない。そうした中では、今の暴対法の取りつけといいますか、たてつけでは足りない部分もありますので、そうした抜本的改正も含めて、ぜひこれからも議論を進めてまいりたいと思います。

 以上で終わらせていただきます。

中野委員長 次に、西村智奈美君。

西村(智)委員 民主党の西村智奈美でございます。

 今回は三年ぶりの法改正ということで、毎年、警察庁の方でも暴力団の動向については詳細な報告書を出しておられます。私もそれを読んで勉強させていただきましたけれども、特に近年は、非常に組織的な、いわゆる狭義の暴力団というものと、それから知能活動をする特殊的なグループというふうに、だんだん分裂される傾向にあるというふうに伺っております。経済活動、資金獲得活動などは、いわゆる本体とは別の組織が資金獲得活動を行うようになってきているという中で、言ってみれば、暴力団の構成員とされている方の人数と準構成員の人数が逆転をしているというふうに伺っております。

 こういう中で今回の改正ということになったわけで、この数年間、日本国内であったいろいろな事件、こういったものを見てみますと、行政対象暴力が増加していたりというようなことはあるわけなんですけれども、そういった全体の状況を見た中で、今回の法改正の目的、これを端的に伺いたいと思います。

泉国務大臣 暴力団の銃器使用事件等については依然として後を絶っていない、さらにまた、資金獲得活動に関連して国民の命あるいは財産に深刻な被害が出ておる、こういう状況は私どもも十分承知をいたしております。

 また一方で、資金獲得活動が非常に多様化しておる、あるいは潜在化しておる、巧妙化しておる、こういう中で、各種活動、事業への進出を阻もうとする行政機関等に対して暴力団が不当な要求をしておる、こういう実態も今日的な課題だと思っております。

 今回の改正は、こうした情勢にかんがみまして、暴力団の代表者等の損害賠償責任の拡大強化、あるいは対立抗争に関する賞揚等の規制、行政対象暴力の規制、こうしたことをより一層強めていく、これを新たに厳しく取り締まっていこうという考え方でございます。

 この改正によって、対立抗争等における暴力行為の抑止、暴力団の資金源の封圧及び被害回復の促進、こういうことが図られるものと考えておるところでございます。

西村(智)委員 対立抗争などについては、平成十六年度改正において、いわゆる代表者に対する損害賠償請求ができるようになったということなんですけれども、伺いましたところ、これによって実際に損害賠償請求が行われた件数はゼロだということでございました。

 そういったことから考えると、今回損害賠償責任の拡大強化が、言ってみれば威力を用いた資金獲得活動にまで拡大されるということになるんですけれども、一体これで本当に効果が出るのだろうか。私は、平成十六年改正がいまだに件数ゼロだということから、大変懸念をしております。

 この点については警察庁の方はどうお考えですか。

宮本政府参考人 前回の改正の規定につきましては、対立抗争によって凶器を利用して行ったような事案を想定いたしております。

 そこで、現実問題としては、対立抗争そのものの数は非常に抑止をされておりますし、またその数だけではなくして、長引くことがなく、早目早目に彼ら自身の方で収束を図る、こういう傾向が顕著になってきております。

 実はこの規定は、典型的には、そういう対立抗争によって一般人の方が巻き添えに遭う、こういったような状況を主たる念頭に置いた規定でございまして、そもそもそういう状況、発生する状況というのが極めて限定された状況になってきている、そういう効果がこの規定によって起きてきているというふうに考えております。

 一方、今回、威力利用の資金獲得活動一般まで広げた、法律の基本的な考え方としましては似通ってはおりますが、対象となりますのが、いわゆる恐喝行為でありますとか一般のみかじめ要求行為でありますとか、一般の方々が被害を受ける、もちろん財産犯のみならず、それについて行われた殺傷行為なども含みますけれども、そういう非常に幅広い類型を対象にしておりますので、大変大きな効果があるものというふうに考えております。

西村(智)委員 伺っていて、ちょっとわからないところがあるんです。

 一つは、対立抗争が平成十六年改正で抑止をされて、件数自体も減っているし、早目に収束するようになったということなんですけれども、実際にこの数年間で対立抗争、けん銃を使った殺人事件というものは確実に発生をしておりますし、私は、抑止ができているというのはどのくらいのものなのか、これは目に見える形ではなかなか今あらわしていただけないのではないかというふうに考えています。

 先ほど楠田委員の質問にもあったんですけれども、実際に資金獲得活動が代表者の、言ってみれば指令とか命令で行われているということを立証することは難しいんだという議論もかつてはあったんだということですね。本当にこれで使用者の責任といったものが、この資金獲得活動にまで損害賠償請求の対象が拡大されたということで効果があらわれるのかどうか。これについてはまた非常に難しい。

 つまり、実際に対立抗争といったものは現に存在をしているわけですし、今回の法改正によって、もしかしたらこういった活動がさらにアングラ化していったり、あるいは、これは警察庁の報告書にも記載をされておりますけれども、資金獲得活動が組織的にできなくなったような団体などは、直接的な暴力に転換をするところも出てきているということです、恐喝だとか強盗だとか。そういったところにまできちんと目配りをした上での法改正なのか、この辺については、私は甚だ疑問に思っております。

 質問を続けますけれども、第三十一条の二でございます。先ほど免責規定ということについても質問がありましたけれども、指定暴力団の組織的な資金獲得活動を抑制して資金力を低下させる、そういう観点からすれば、これは、言ってみれば存在しても構わない、また、代表者の立証、責任をきちんと追及する上ではあった方がいい項目だ、免責規定だということなんですけれども、市民がこうむる被害を低減させるということには、これではつながっていかないのではないかというふうに考えております。

 この免責事項の一と二について伺いますが、指定暴力団の代表者などが直接間接に利益を得ることがなく、また、過失がないからといって、これは責任を免れるものだというふうに言えるのかどうか、この点について警察庁の考えを伺います。

宮本政府参考人 この規定につきましては、そもそも末端の組員の行った不法行為をそれに対して関与していない組の代表者に責任を負わせる、そういう規定を置くということでございますけれども、それはやはり代表者の方がそもそも組員の資金獲得活動に関して威力を行うことを容認しているという実態があるとか、当然のことながら、そういった不法行為を行う予見可能性がある等々の理由から代表者に責任を負わせるということでございますので、そういった理由が成立しない場合にはやはり負わせるのは無理であろうという前提に立ちます。

 したがいまして、組長の、代表者の方でそういうことを立証した場合には責任を負わないということで免責規定を設けたわけでございますけれども、現実問題といたしましては、この三十一条の二で規定しています一号、二号の場合、私ども日常の暴力団対策に取り組んでおりまして、いずれも実態としてほとんどあり得ないケースでありまして、これを立証するということは、事実上、極めて困難というふうに考えております。

西村(智)委員 もう一つ伺います。

 改正前法、旧法の第十五条の三で、民法の適用について記載をされております。これが新法においては第三十一条の三に転記されている格好になっているんですけれども、まず、旧法の第十五条の三、つまり、これは民法七百十五条で言うところの使用者責任を含むものだというふうに承知をいたしますけれども、これによって暴力団代表者への損害賠償請求はどのくらいなされてきたのか、この件数を伺います。

 また、第三十一条の三において、今回もまた損害賠償請求についても含めて民法の適用は記載されておりますけれども、この趣旨について伺います。

宮本政府参考人 暴力団の不法行為につきまして、当該暴力団の代表者またはその傘下組織の組長、これの損害賠償責任を追及する訴訟でございますが、警察庁で把握している限りにおきましては、これまで二十件が提起をされております。その中で、使用者責任を認容したものが七件、共同不法行為責任を認容したものが三件、和解が成立したものが七件、係争中のものが三件となっております。また、これらのうち、指定暴力団の代表者等、これを追及する訴訟は八件提起されておりまして、使用者責任を認容したものが一件、共同不法行為責任を認容したものが二件、和解が成立したものが三件、係争中のものが二件となっております。

 また、三十一条の三の規定でございます。三十一条及び三十一条の二の損害賠償責任の規定が適用されない場合、すなわち、対立抗争等の場合及び指定暴力団の威力を利用して行う資金獲得行為以外の行為により損害が発生した場合でございますが、こういった場合の代表者等の損害賠償責任については民法の規定によるということなどを明らかにしたものでございます。

西村(智)委員 私も今回いろいろ資料を読んでおりまして、結局、実際に今暴力団の組織というのは非常に複雑になっておりまして、傘下の組織も極めて多様で、いろいろな活動をしているところがある。そういうことからいろいろ考えてみまして、損害賠償請求の対象者というのを指定暴力団の代表者に限るのではなくて、ほかの支配的な地位にある者、傘下の組織ですとか実質的に経営に関与している関係企業などの代表者あるいは幹部、こういった者も第三十一条の対象にすべきだというふうに考えますけれども、この点については警察庁はどのようにお考えですか。

宮本政府参考人 今回の改正では、指定暴力団の代表者等、これが配下指定暴力団員による資金獲得のための威力利用を容認している、こうした威力利用に伴う他人の権利利益の侵害について予見可能性なり回避可能性を有するということ、威力利用資金獲得行為によって得られる利益を享受する立場にあること、これを根拠として、その権利利益の侵害により生じた損害について代表者等に損害賠償責任を負わせることといたしたものであります。

 代表者等の今申し上げたような立場、これに着目して責任を負わせることとしたということでございまして、こうしたような条件を満たさない団体の代表者について同様の規定を設けることについては慎重な検討を要するものでございますし、また、指定暴力団は代表者等の統制のもとに階層的に構成をされております。指定暴力団において最も上位に位置する代表者等、これが最も賠償資力を有すると考えられることから、代表者等が損害賠償責任を負うこととしたものでございます。

西村(智)委員 今のは、いわゆるほかの、傘下の組織それから実質的に経営に参加している関係企業などの代表者を対象とすることについては警察庁も検討したことがある、そういうことですか。

宮本政府参考人 まず、傘下の組長につきましては、当然、対象とすべきかどうかというのは検討の材料となりますけれども、指定暴力団の性格からして、これは代表者等に損害賠償を負わすことで十分であると申しますか、それが適当であるというふうに考えたものでございます。

 それから、それ以外の同様の団体につきましては、当然のことながら、何か不法行為を行った場合に、要するに反社会的勢力と申しますか、周辺にある組織と申しますか、こういったものの末端の者が行った行為につき、トップの者につき責任を負わすことができるかどうかということは、一つの対策としてはあり得るわけでございますけれども、暴対法、暴力団対策法そのものは指定暴力団員に規制の網をかけるという枠組みの法律でございますので、これは別途の考え方が必要であるかというふうに思っております。

    〔委員長退席、高市委員長代理着席〕

西村(智)委員 そうしますと、今回の法改正では、言ってみれば、ふえ続けている準構成員というのは対象にならないということでございます。

 これでありますと、本来の暴対法のそもそもの立法の精神である市民の安全を守る、安心を守るということからは少し足りない、少しといいますか、かなり足りないところがあるというふうに考えますけれども、これで本当に暴力団の弱体化ですとか、構成員や、まあ準構成員は対象にならないということでありますので、しかし、やはりこれは数を減らしていかなくちゃならないという社会的な要請はあるわけです。構成員や準構成員の減少につながるものと考えているのか、これでどの程度の減少につなげていきたいというふうにお考えなのか、そこを伺いたいと思います。

泉国務大臣 警察としては、これまでも三つの対応をとって、暴力団の弱体化あるいは壊滅を究極の目的としてやってまいりました。一つは暴力団犯罪の取り締まりの徹底、二番目が暴力団対策法の効果的な運用、そして三番目に暴力排除活動の推進を柱としてやってきたところでございます。

 今委員御指摘のような事柄、いわゆる数が減るのか、本当に暴力団の壊滅に向かって今回の法改正が進んでおるのか、こういうお尋ねだと思いますが、今回の改正は、行政に対する暴力行為の規制、あるいは不当要求、こういうことを通じての資金獲得活動を防止するというねらいが一つありますと同時に、これはるる部長が説明いたしましたが、暴力団の代表者等の賠償責任の拡大強化を図る、このことによって暴力団組織の中枢に打撃を与えるという考え方でありまして、私どもは、今回の改正を通じて、資金獲得のための組織の維持の意味を減殺する、そういうことができると思っておるわけです。

 暴力団員の数がどうなるかということは、これからこれを確実に運用する中で数字としてあらわせる部分もありましょうし、しかし一方では、なかなか数字ではあらわせない複雑な暴力団の動きをしてくるわけでありますので、実質的な暴力団の活動が減殺される取り組みをしていき、結果としてそういうことが数字としてあらわれてくるということを私は期待しておるところでございます。(発言する者あり)

西村(智)委員 今、隣で泉委員が一生懸命発言をしておりましたけれども、本当にそのとおりなんですね。今までに何回もこれは改正をされているわけです。ところが、構成員、準構成員の足し合わせた数は、ここのところずっと高どまっておりますね。構成員は少し減っているけれども、準構成員というものがふえてきている。

 しかも、これは警察庁の報告書自身で記載をされておりますけれども、だんだんそういった資金獲得活動なりその他の活動が大変見えにくくなってきていて、市民にとっては一般の経済活動と見分けがつきにくくなっているというふうに書かれているわけですよ。そこのところを全体的に目配りしていないと、これはいつまでたってもモグラの穴をたたくような話ではないかというふうに思いますので、今回の改正は改正として、いわゆる縦のラインですね、伝統的な暴力団組織のあり方に着目をしての改正だということで、それはそれで理解をするんですけれども、全体的な対策をきちんと見据えた中での今後の方針策定をぜひしていただきたい。ここは強く要望をいたします。

 ちょっと時間が迫っていますので、もう一つ伺いたいことがありますので、先に進みます。

 四月の二十二日に、スイスの銀行に置いておいた五菱会の犯罪被害財産が日本に戻される、そういう交換公文がスイスと日本との両政府の間で取り交わされたと聞いております。これは、犯罪被害財産被害回復給付金支給法ですか、これによる犯罪被害の、外国にあった財産回復が行われる初めてのケースだということなんですけれども、これについて、今後の見通しを簡単に法務省の方に伺います。

三浦政府参考人 御指摘の、スイス政府から資産の譲与を受けた後の手続でございますが、これにつきましては、検察当局におきまして、犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律に基づきまして支給手続を行うことになると考えております。

 具体的には、検察官におきまして支給手続を開始する決定を行いまして、これを公告いたします。その上で、一定の支給申請期間内に被害者の方々から支給の申請を受け付けまして、検察官におきまして支給の当否あるいは額の裁定等の手続を行うものでございます。そして、その裁定に従って、譲与された資産を具体的に被害者の方々に分配する、支給するということになるものでございます。

 検察当局におきましては、できるだけ早く、かつ多くの被害者の方々に支給ができるよう努めるものというふうに承知しております。

西村(智)委員 ありがとうございます。

 今度は警察庁の方に伺いたいと思いますが、五菱会のその事件発生後に、それがきっかけともなって犯罪被害財産被害回復給付金支給法の見直しが行われて、それが平成十八年の六月だったかというふうに承知しておりますけれども、平成十八年の六月に法改正がなされて、それから本格的な外交交渉ということになったのでしょうか。交換公文の締結まで二年という長い時間がかかっているわけであります。

 被害者の早期救済、被害者対策という点からすれば、仮に、両国間で、例えばこういったときにどういうふうに犯罪被害を回復するのかというアセットシェアリングの条約が存在すれば、もっと短時間でこの被害回復が可能になったのではないかというふうに考えるのですが、警察庁はどういうふうにお考えでしょうか。

宮本政府参考人 一般に、犯罪被害財産の被害者への回復につきましては、犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律、これに基づきまして検察官がその支給に係る事務を担当しておるということでありますし、他方におきまして、外国において没収された犯罪被害財産の返還につきましては、我が国と没収した国との外交上の交渉によるところとなります。

 警察といたしましても、当然、犯罪被害財産の回復といったことは重要な業務というふうに考えております。これに資するように、海外に移転された犯罪収益の解明といったことを積極的に図ってまいりたい、その上で関係機関に対して必要な協力を行ってまいりたいというふうに考えておりますが、国際的な枠組みにつきましては、今申し上げたとおりで、警察庁としてはお答えする立場にはないというふうに考えております。

西村(智)委員 そうですか。もうちょっと踏み込んで答えていただけると思っていたんですけれども。つまり、二年間の期間でこの被害者の方々がどういう経過をたどっているか、私の乏しい想像力で考えますと、これはやはり一日も早くというのが望まれるところだと思うんですね。

 そういったところからいたしますと、今後、同様の事件が発生することも起こり得ます。国内でマネーロンダリングが行われているときにもきちんと捜査していただかなければならない、これは当然のことでありますけれども、国外でこういったマネロンが行われているのではないか。現在わかっている事件では、ないということなんですけれども、しかし、この先も出てこないとは限らないわけであります。

 そこで、外務省の方にお伺いをしたいのですが、今回の財産回復ができることは非常に喜ばしいことだと思いますし、御努力にも感謝をいたします。ですけれども、非常に時間がかかったということは、被害者の早期救済という点からは、やはり課題が残ったのではないかというふうに言わざるを得ません。

 今後、アセットシェアリングに関する条約の締結ないしマネーロンダリングを国際的に監視する体制、こういったものが、国内での捜査体制を強化していただくのは当然のこととして、それとあわせて、被害者の早期救済という点から必要ではないかというふうに考えますが、今回の五菱会のケースを踏まえて、外務省の見解を伺います。

本田政府参考人 お答え申し上げます。

 山口組系暴力団五菱会の幹部でございます梶山進がスイスの金融機関に送金して隠匿した犯罪収益等をスイス・チューリヒ州が没収した件につきましては、我が国政府として、当該資産の譲与を受けて被害者に支給すべく、二〇〇五年六月にスイス連邦政府と協議を開始して以来、本年四月二十二日の交換公文への署名まで、委員御指摘のとおり、三年近くの時間を要しました。

 このように一定の時間を要した主な理由でございますけれども、第一に、スイスの国内法上、我が国に資産を譲与するには我が国が相互主義を保障する必要がございますが、二〇〇六年六月に国内法の手当てがなされるまで、我が国には相互主義の保障を可能とする国内法が存在いたしませんでした。第二点目といたしまして、二〇〇六年六月からは、スイス連邦政府に加えまして、実際没収したのはチューリヒ州でございますけれども、チューリヒ州も協議に参加したため、スイス内の調整に一定の時間を要したことが挙げられます。

 委員御指摘の犯罪被害財産に係るアセットシェアリングに関する国際約束あるいはマネーロンダリングの国際的な監視体制につきましては、議員の御指摘も踏まえまして、このような問題にどのように対処していくかにつきまして、関係省庁とも相談しつつ検討していきたいと考えます。

 実際、アセットシェアリングにつきましては、国連腐敗防止条約などの多数国間条約あるいは日米刑事共助条約などの二国間条約に関連規定がございます。我が国としては、これらの条約の規定を踏まえまして、個々の事例における解決を通じて、アセットシェアリングに関する国際的なルールづくりの形成に寄与していきたいと考えております。

 また、マネーロンダリングにつきましては、国際社会が協調して行動することが極めて重要でございます。我が国といたしましては、監視の強化を含む国際的なマネーロンダリングの対策に貢献すべく、マネーロンダリング対策のための国際機関であるFATFに加盟いたしまして、マネーロンダリング対策の基準を定めたいわゆるFATF勧告の作成に積極的に寄与するとともに、その報告を踏まえて、国際協力の一層の強化に努力していきたいと考えております。

西村(智)委員 時間ですので、終わります。ありがとうございました。

高市委員長代理 次に、佐々木隆博君。

佐々木(隆)委員 民主党の佐々木でございます。

 暴対法一部改正について質問させていただきます。

 暴力団というのは極めて特殊な組織であって、本来あってはならない組織なわけでありますが、そういう意味でいえば、根絶されなければならない、しかし、現存するのもまた事実であります。今回そのために強化をされたということについては評価をさせていただきますが、しかし、より実効あるものにしていくために、何点か質問させていただきます。

 最初に、暴力的な要求行為の中に、今回、行政対象を追加したわけであります。追加したというのか、追加しなければならなかったというようなことなのかもしれませんが、その理由について、まずお伺いをいたします。

宮本政府参考人 近年、暴力団の資金獲得活動はますます多様化、巧妙化をしてきているという実態にございますし、一般の経済取引を装って資金を獲得する傾向が見られるわけでありますが、そういった中で、許認可等を行う行政庁に対して、自己または自己の関係者に有利となるような権限の行使を要求する傾向が顕著となってきております。また、国や地方公共団体が行う公共工事の入札参加資格の審査におきましては、暴力団関係企業の排除といったことが行われております。こうしたことから、指定暴力団員が、国や地方公共団体に対して、暴力団関係企業を公共工事の契約の相手方とすることであるとか、ライバル他社を入札から排除すること、こういったことを要求している、こういった実態がございます。

 こうしたように、近年、行政庁に対しまして暴力団の威力を示して不当な要求を行う行為類型が見受けられるようになってきたことから、新たにこれらを暴力的要求行為として規制することといたしたものでございます。

佐々木(隆)委員 近年ふえてきたという解釈だということでしょうかね、今の話だと。まあ、いいです、顕著になってきたという言い方がちょっと微妙だったんですけれども。

 そこで、そういうことに対応するということも含めてでありますけれども、地方公共団体では、いわゆるコンプライアンス条例、法令遵守の条例というものをこのごろ策定しておりまして、先ほどもお話出ましたけれども、平成十八年度で千八百四団体、全体の九五・六%に及んでいるというふうに言われているわけでありますが、一方で、北海道の滝川市で介護タクシー代の不正受給というのがありました。これは二億円近いわけであります。あと栃木県の鹿沼市でも、ごみ処理だとかスーパーの解体工事などに暴力団がかかわっていたのではないかというふうに報道されているわけであります。

 行政対象としては、このほかにも、今の生活保護というものの不正受給でありますとか、あるいは公共事業に、先ほど部長から話のあったような入り方といいますか、かかわり方を持っている、あるいは公営住宅に不当入居といいますか、そういったことをする、公共施設の利用などにも暴力団がかかわっているなどというようなことが、先ほど来言われているように、多岐にわたり複雑で巧妙という言葉を何度もこの今の論議の中で聞かされておりますけれども、まさにそういう状況にあると思うんですが、これらの実質的な排除活動というものを、どのように実効性を持たせていくのかという点についてお伺いをいたします。

    〔高市委員長代理退席、村田委員長代理着席〕

宮本政府参考人 御指摘の、生活保護でございますとか公共工事、公営住宅、公共施設、こういったものにつきましては、行政の健全性でありますとか公正性を確保する点からも、また一方で暴力団等の資金源を封圧するといった観点からも、暴力団の排除を徹底する、これが極めて重要であるというふうに認識をしているところであります。

 警察といたしましては、生活保護、公共工事等から暴力団を排除するために、関係行政機関と協議をいたしまして、それぞれ通報の手続を定めるなど所要の制度を整備しているところでございます。また、情報提供を含めたお互いの連携強化といったことにも努めているところでございます。

 また、行政機関に対して暴力団等からいろいろな不当要求がなされる、こういった排除の仕組みが整えば、反対に今度はそれを、入居させろとか生活保護を要求するとかいった形で不当要求がなされることが考えられるわけでございます。行政機関において組織的に適切な対応が図られるよう、地方公共団体に、コンプライアンス条例、それから要綱、こういったものの制定を働きかけております。

 先ほど御指摘ございました数字でございますが、十九年末には九九・一%の自治体で整備をされております。さらに、行政機関が不安を抱くことなく暴力団に対して毅然とした対応ができるように、警察として、弁護士会でありますとか暴力追放運動推進センター、こういったところと連携をいたしまして、きめ細かな相談対応に努めるとともに、また、当然のことながら、私どもとしても取り締まりを強化するなどしておるところでございます。

佐々木(隆)委員 そこで、きょう、厚生労働省に来ていただいていると思うんですが、この滝川の場合には、これはまさに暴力団関係者というふうに言われているわけでありまして、聞きますと、夫婦二人で年数がまたがっていたりということで、いきなり二億円が出てきたわけではないみたいなので、その辺が少しおくれたのかもしれないんですけれども、そういうことで、生活保護費が暴力団の資金源などということは、これは許されない話であります。

 岸和田の場合の、この通院交通費というのは、これは暴力団ではありませんけれども、厚生労働省として、この種の対策というのを今までどういうふうに取り組んでこられたのか。また、もし取り組んできたのだとすれば、今回なぜ防げなかったのか。今回のことを踏まえて、ではこれからどういうふうに強化をしていくのか。こういったことについてお伺いをさせていただきます。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど来お話に出ております、暴力団員に対して生活保護を適用する、こういうことは、生活保護制度への国民の信頼を揺るがすだけではなく、結果的に、先ほどもお話が出ていますように、公費である保護費が暴力団の資金源となり、暴力団の維持、持続に利用されることというので、極めて問題であると思っております。

 かねてから、具体的には昭和五十六年から、生活保護における暴力団への対応については適正を図るということでやってきたわけですが、特に近年、警察庁の御協力をいただきまして、平成十八年三月に各自治体、各都道府県警察本部あてに連携して通知を出して、暴力団対応を厳格化したところでございます。

 具体的には、これまで少しあいまいであったわけですけれども、暴力団員と判明した場合には、暴力団から離脱しない限り生活保護の申請を却下し、あるいは生活保護を受けておられる場合には生活保護を廃止する、こういう方針を明確にいたしました。もちろん、生活保護を直ちに廃止して本当に困ってしまうという急迫の場合は除きますけれども、要は、現在我々の方針としては、暴力団員には生活保護は適用しない、この基本方針を十八年三月に決めているところでございます。

 それから、福祉事務所において、暴力団員と疑われる者に対する対応をする際には組織的な対応を行うこと、それから、福祉事務所ではわからない、暴力団員かどうか不明な場合があるわけでございますから、暴力団員の該当性につき警察から情報提供を受ける必要があるときには文書等により協力を依頼する、こういうことでやってまいったわけでございます。

 今回の滝川のケースは二つの問題がございまして、暴力団員に対する対応の面の不十分さ、それから実は、通院移送費という、通院する場合に生活保護費から移送に要する費用をお出しする、その基準が、必要最小限度という基準だけで、自治体の方の判断する際に少し不透明性があった、その点を突かれてしまったということがございますので、これからどういう対応をするのか、今回なぜ防げなかったという二点でございますが、厚生労働省といたしましては、この四月一日から通院移送費の基準については明確化いたしまして、基本的には、例えば滝川市の場合は、まず通院は滝川市内の医療機関を原則にするとか、そういうことをきちんといたしました。それを超える場合には厳格な審査をする、あるいは、医師の判断を求める場合にも、複数の医師の判断を求めるなどのことをいたしております。

 今回、滝川市の事例についてうまくいかなかったのはどうしてかという点、移送費の基準の問題など、そういう判断的な部分が不明確であったという部分を除きますと、やはり当該事例、夫婦であったわけですが、夫の方が元暴力団員であったわけですけれども、現役暴力団員を対象とした現在の調査だけでは十分行き届かなかったという点がありますので、この点につきましても、警察庁とよく御相談し、今後、福祉事務所と警察署等の連携を強化して、行政対象暴力という観点から再発防止に努めてまいりたいと思っております。

    〔村田委員長代理退席、委員長着席〕

佐々木(隆)委員 暴力団に生活保護費というか、生活保護費と暴力団、何か矛盾する話であります。ただ、先ほどもちょっと触れましたけれども、岸和田市のような場合も、飛行機代も出ていたりしているわけで、これは暴力団員ではありませんが、やはり基準というものをもう少し明確にすることを徹底していただきたいということと、あわせて、やはり連携がないと、福祉事務所ですべてを判断するといっても、暴力団のデータを持っているわけではないでしょうから、そういったことの連携というものもさらに求めておきたいというふうに思います。

 次の質問に入らせていただきます。

 先ほど来言われているわけでありますが、資金源を断つということが一番求められることではないかというふうに思います。

 これも先ほど来言われているように、巧妙、複雑、多岐でありまして、私も余り詳しいわけではありませんが、金融業、産廃処理業者、それから建設業、派遣労働、図書の売りつけ、わいせつDVDなどなど、いわゆるフロント企業というふうに言われているんだそうでありますが、そういうフロント企業から、今度は直接暴力団ではない、広域暴力団ではない下請、あるいは、もうちょっと言えば、暴力団とはかかわりのない資金融通などをやって連携をするというような、さらにはまた、先ほどお話もありました国際犯罪というようなところまで、本当に極めて多岐にわたっているのと、巧妙ということは、言いかえれば不透明化もしているということになるんだというふうに思うんですが、先ほど来懸念がありますように、今回の対策でこれがどこまで本当に実効性を上げていくことができるのかということを、繰り返しになりますが、お伺いをしたい。

 さらにまた、政府に犯罪対策閣僚会議というのを設置しているというふうに聞いているんですが、その中身といいますか、その実効をどう担保しているのかというようなことについても、あわせてお伺いをいたします。

泉国務大臣 暴力団の壊滅を図りますために、今、委員御指摘ございましたように、資金源を断つということが非常に大きな意味があるというふうに考えておるわけであります。

 その中で、従来は覚せい剤でありますとか恐喝でありますとか、あるいは賭博というような、いわゆる暴力団が行っておりました資金源の行為が、これまた委員御指摘いただきましたように、金融でありますとか、本当に幅広い分野で、社会の弱いところに、先ほど来御指摘のあった生活保護でありますとか、そういう分野にまで触手を伸ばしておる。いわゆる伝統的な資金活動に加えて、建設業でありますとか、その他事業の進出を活発化させて、その活動を多様化させることによって、形式的には暴力団法の適用を逃れる、組織の隠ぺいを図る、こういう非常に巧妙なやり方で資金獲得を行っておるということを認識しております。

 そこで、暴力団の弱体化ということ、あるいは壊滅を究極の目的としまして、暴力団犯罪の取り締まりの徹底、二番目に暴力団対策法の効果的な運用、三番目に暴力排除活動の推進を柱とします総合的な対策を展開してきておるところでございます。

 そうした中で、暴力団の、活動という言葉を使うのはいかがかと思いますが、暴力団がいろいろなところに触手を伸ばしておるということで、政府を挙げて暴力団対策等に取り組む必要があるということで、犯罪対策閣僚会議というのが十五年の九月に設けられたわけでございます。

 その下に、例示的に申し上げますと、銃器対策あるいは薬物乱用対策、国際組織犯罪・テロ対策、その他、人身取引とか子供を守るためというような、いろいろな分野にわたる事柄を、一つ一つ関係省が力を合わせて取り組んでいくという仕組みが立ち上げられております。

 そのほかに、この対策閣僚会議のもとで、十八年の七月に暴力団取締り等総合対策に関するワーキングチームというものが設定をされたわけであります。ここで各省間にまたがるいろいろな問題を情報交換していく中で、公共事業や企業活動から暴力団を排除するための効果的な施策を推進していくという取り組みをやっておるわけでありまして、一つには、例えば公共事業からの暴力団の排除、そしてまた企業活動からの暴力団の排除、こうした事柄に今このワーキングチームを中心に取り組んでいるところでございます。

佐々木(隆)委員 ありがとうございました。

 今、いろいろな取り組みをされているということについて大臣からお答えをいただいたんですが、行政、それから一般人、子供、まさに不透明化して、我々の日常生活のすぐそこまで、広域暴力団の、その先の部分でしょうけれども、忍び寄っているということがありますので、ぜひしっかりと取り組んでいただきたいということと、先ほども西村委員からも話がありましたけれども、必ずしも広域暴力団に限らないわけで、先ほどの滝川の事例なんかは元暴力団あるいは暴力団関係者。結果、そこはまたつながっていくわけですね、広域暴力団に。そういうところにもやはり、今回のは広域暴力団に定めた法律ですけれども、これからの全体の取り組みとして、ぜひその辺にもしっかりと対応できるように特に求めておきたいというふうに思います。

 次に、先ほど大臣からも少し触れられましたけれども、暴力追放運動推進センター、暴追センターと言われるものについてお伺いをいたします。

 排除活動というものを進める上で、警察力はもちろんでありますけれども、警察力だけではなくて、やはり民間との連携協力というのは極めて大事だというふうに私は思っております。その中心を担っていただいているのが、この暴追センターだというふうに思っております。

 今回、これを質問するに当たっていろいろ調べてみましたら、この暴追センターに来る相談件数が、前後しますけれども年間約四万件ぐらいあって、一人当たりにしますと一年間に百二十五件ぐらい扱っていることになるんだそうであります。しかも、近年、複雑化、多様化している中で、暴追センターの役割というのは非常に大きくなってきているというふうに私は思うんです。

 ところが、これは暴追センターが出した「現状と課題」というものでありますけれども、それを見ますと、事業の中核である相談事業に関する相談室の環境については、三つの暴追センターで相談室がなく、相談室があるとする暴追センターでも、十の暴追センターでは事務所と間仕切りしただけの相談室で、秘匿性に欠けるというようなところがあると。

 あるいはまた、これは新聞でありますが、長崎では、五人いた職員を三人に減らしている。あるいは京都では、十三カ所あった相談窓口を市内に一本化した。それから鹿児島県では、賛助金と補助金、賛助金は一般から集めるんですが、補助金がどんどん減少している。それから静岡県では、利回りの高いところを何とか今探す苦労をしている。福岡にも事例があるんですが、そういったように、実際には暴追センターの運営というのが極めて厳しい状況になってきているわけであります。

 暴力団対策の中でも極めて重要な役割を果たすと思うこの暴追センターについて、行政的な支援というものをやはりしっかり考えていかなきゃならないんではないかというふうに私は思うんですが、そのお考えがあるか、お伺いをいたします。

宮本政府参考人 暴力追放運動推進センターについてでございます。

 このセンター、暴力団員による不当な行為の防止及びこれによる被害の救済に寄与することを目的といたしまして、暴力団員による不当な行為に関する相談でありますとか、少年に対する暴力団の影響の排除、暴力団からの離脱支援、責任者講習、これらを実施するとともに、暴力排除に関する広報等を行っているところでありまして、暴力排除活動を推進していく上で極めて重要な存在であるというふうに考えております。

 特に、暴力追放運動推進センターにつきまして、御指摘のように、近年の社会経済情勢の中で、その事業活動等、一層の強化が求められているところでございます。

 警察といたしましては、重要な役割を担う暴力追放運動推進センターと情報交換、その他の連絡、連携、こういったことを密にいたしまして、ともに暴力排除活動を進めることといたしておりまして、その活動の意義について周知を図り、広く社会の理解と協力が得られるよう努めますとともに、その業務が一層的確かつ効率的に行われるよう、相談や指導を行っているところでございます。

 特に、体制等の点でございますけれども、都道府県警察において、センターと緊密な連絡を図って、運営体制でありますとか財政基盤、事業活動その他の各分野について、見直しなり充実なりを図る行動計画を、センターの方に策定してもらいまして、行動計画に基づく取り組みの推進、これに格段の配意を払うことといたしておるところでございます。

佐々木(隆)委員 前置きの方はよかったんですが、最後のところがどうも何か、結局見直すのかというような感じで締めくくられてしまったんですが。

 先ほど申し上げたように、どんどんこれは縮小しているわけです。片方でニーズはふえている、片方で窓口を縮小するというのでは、せっかく暴力追放だ、排除だと言っても、もちろん行政の支援だけではなくて民間の賛助ということも必要で、そういう意味でのPRは必要なんでしょうけれども、どうも今の最後の部分で少し頼りない感じを受けたんですが、次の質問とあわせて、もし大臣からお答えいただければというふうに思います。

 先ほどもお話ありましたが、平成十六年に、いわゆる暴力団対策部門と、薬物、銃器を担っていた生活安全部と、外国人犯罪を扱っていた、ここは幾つかの部門にまたがっていたようでありますが、これを一元化して組織犯罪対策本部というふうにして取り組んできたというふうに承知をしております。

 平成十九年度の警察の白書でありますが、これでも暴追センターということを取り上げて、暴追センター、弁護士との緊密な連携、行政対象暴力等の情報交換ということを言っているわけでありまして、先ほど申し上げました滝川の事例なんかも、早目に暴追センターに、それは北海道庁を通じていくべきだったのかどうか、よくわかりませんが、暴追センターのところにちゃんと連絡が早目に行っていれば、そうすれば、あそこまで被害を拡大させなくても済んだんではないか。どうもそこまで行っていなかったようなんですね。

 そんなことも含めて、緊密な連携、情報交換ということを白書でもうたっているわけでありまして、滝川の例だけではなくて、事前にそういうことが周知されて相談を受けていれば、防げたものもたくさんあるのではないかというふうに思うわけでありまして、これからそうした警察の取り組みの情報、まず警察側の提供をしなきゃいけないし、市民からの情報が収集できるというような、そういう体制というものはしっかりつくっていくことが第一歩ではないかというふうに私は思いますので、最後に大臣の決意をお伺い申し上げたいと思います。

泉国務大臣 御指摘のように、暴力排除活動を推進していきますためには、民間の方々からの情報も大変重要でございますし、また警察側からも、暴力団の活動状況でありますとか犯罪の手口などに関する情報を提供していくことが大変重要だと思っております。

 これからも暴力団の情報を民間の方々から提供していただけるような、そうした体制を構築していく、その一つが、御指摘の、先ほど来ございましたセンターの役割の一つでもあるかもしれません。

 私どもは、こうした対策を進めていくということと、さらに、情報を提供していただいた民間の方に、いろいろなおどかしでありますとか暴力団から威圧を加えられないように、そうした対策をきちっととっていく必要があると思っております。

 センターの重要性については私も高く評価をして、何とかしなければならない。委員御指摘ございましたように、基金の金利が下がって、なかなか活動費が出てこないというような実態は、押しなべて、こういう財団関係の公益法人にはあるわけでございますけれども、何をしてさしあげられるか。運営費等に対して直接のお力添えができるということにはなりませんけれども、いろいろな、今日までもやっていただいております都道府県の公安委員会からの業務を積極的にこの暴追センターに委託をすることがもっとできないか、少し考えさせていただきたいと思います。

佐々木(隆)委員 時間が来ましたので終わりますが、銭のないときには知恵を出せと言いますので、ぜひ大臣の御奮闘、お願いを申し上げます。

 終わります。

中野委員長 次に、大畠章宏君。

大畠委員 民主党の大畠章宏でございます。

 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の一部を改正する法律案について質問をさせていただきます。

 既に同僚議員から、いろいろと多方面からのこの法律案に関する質疑がございました。それぞれ大事なポイントをついておったと思います。

 私たち民主党としても、この法律案は、今日の社会状況の中で必要な法律の改正だと思いますので、賛成するということを決めておりますが、改めてこの法律案をめぐる問題点等について質疑をさせていただきます。

 最初に、既にいろいろ論議がございましたけれども、私も、新聞あるいは報道等でいろいろこの暴力団と称する組織犯罪等については見聞きをしているわけでありますが、正直なところ、経済活動が世界に行き渡っているわけでありまして、特にアジアを中心とする経済活動は大変活発化しております。当然、非合法の組織犯罪等も国際的な広がりを見せているわけであります。

 私は、この暴力団という名前でありますけれども、昔の暴力団的なところもまだ残っているかもしれませんが、どんどん形を変えて、いわゆるウイルスでいえば新生ウイルスといいますか、状況に応じてどんどん形を変えて新型ウイルスが発生すると同様に、私たちが考えているような暴力団とは違う形のものが、いわゆる業態が非常にふえているんじゃないかという懸念を持っております。ですから、この今回の暴対法という改正がこの新型ウイルスに効くのかどうか。従来の暴力団の業態には確かに効くのかもしれませんが、新しい、新型のウイルス的な組織犯罪がふえているとすれば、さらにこの対策を強化しなければならないと思うわけであります。

 この本法案における暴力団の定義、あるいは、るる同僚議員からもお話ございましたけれども、組織犯罪の広がり、そして、表は真っ当な会社の状況を呈しながら、実態は裏で非合法をやっている、こういう状況が広がりつつあるわけですが、この本法律案の対象となる暴力団の定義や、あるいは非合法活動の全体的な実態についてはどのような状況にあるのか、お伺いしたいと思います。

宮本政府参考人 お答えいたします。

 暴力団の定義につきましては、この暴力団対策法の第二条第一項第二号におきまして、その団体の構成員が集団的にまたは常習的に暴力的不法行為を行うことを助長するおそれがある団体と規定をいたしておるところでございます。

 また、暴力団及び暴力団等の最近の活動の実態ということでございますが、特に暴力団は、その時々の社会経済情勢の変化に対応いたしまして、多額の資金を獲得できる、そういったポイントを巧みに探り当てながら資金獲得活動を行っている実態がうかがえるところでございます。

 例えば、バブル経済崩壊当時、金融・不良債権関連事犯ということで、こうした金融、不良債権に絡んでの事犯、資金獲得活動が目立ったわけでございます。平成十二年以降、その検挙件数は減少傾向にあるところでございますけれども、最近では、今度はいわゆるバブルの時期によく見られたような不動産取引に絡む犯罪でありますとか、また一方で、多額の資金を短期間で獲得することができる証券取引につきまして、証券取引の知識を悪用した経済不正事案を敢行するグループと連携をいたしまして、業績の悪化した企業を利用した仮装増資でありますとか相場操縦といった経済不正事案を敢行している状況が見られるところであります。

大畠委員 私も、この法律案の質疑に当たっていろいろ事前にお話を聞いたんですが、金融庁も大変大きな任務を担うと思うんですね。金融のマネーロンダリングとかインターネットを使った資金集めとか、これを全部警察の方でやれといったって、なかなかそういう専門の方を養成するのも大変だとは思うんですが、そこら辺は連携しなければならないと思うんです。

 先ほど佐々木委員からも指摘がありましたし、西村委員からもそれぞれ質問がありましたが、結局この資金の流れをどうやって断ったらいいんだと。もう長い間暴力団対策というのをやっているんですが、なかなかこれは減らないんですね。この統計資料を見ても、微増したり微減したりしていますが、この統計に載っているものだけでも大変な水準をずっと維持しているようでございまして、なぜこういうことが減っていかないのか。やはり資金が流れ込んでいるんだと思うんですね。

 そこで、この暴力団に流れ込む資金というのは、日本国内だけではなく、私は、国際的にもそういう資金の流れというのがかなりうごめいているんだと思うんです。ですから、警察庁も大変かもしれませんが、日本国内の犯罪はもとより、国際的な、暴力団というのはマフィアですかね、アジアのマフィアとの連携ですとか、そういうつながりができ始めていますから、アジア全体でのマフィアや暴力団に対する資金の流れ、あるいは暴力団を中心とする、いかにも私は暴力団ですというような感じの人はだんだん少なくなって、一見ジェントルマン風だけれども実はかなりあこぎなことをやっている、そういう周辺の関連産業というのはふえ始めているんじゃないかと思うんですね。

 ですから、この暴対法という法律、できてから随分たっているわけでありますが、そういう社会の変化に対応したものにしなければ、先ほど委員から御指摘ありましたけれども、どんなに法律を変えたって実効性がなければ意味がないわけでありまして、そういう意味で、資金の流れ、あるいは暴力団の関連産業の状況をどういうふうに把握し、また、振り込め詐欺なんかも最近改めてふえ始めているという話もございます。年金だとか保険金詐欺とか、助けてやると言って実は振り込ませるとか、相手も、必死というのはおかしいんですが、かなり頭を使って、知恵を使って悪いことをやろうとしてやっておりますので、ここら辺、警察庁としても、こういう全体的な流れをどうつかまえてとどめを刺そうとしているのか、この辺についてお伺いしたいと思います。

宮本政府参考人 まず、暴力団の主な資金源ということで、いわゆるみかじめ料の要求でありますとか、のみ行為、賭博、覚せい剤の密売、こういった伝統的な資金獲得犯罪、これらにつきましては、平成十九年における暴力団構成員等の総検挙人員のうち、約三割がこういった伝統的な資金源と言われるもので検挙されております。依然としてこうした伝統的なものも暴力団の有力な資金源となっております。

 しかし一方、近年におきましては、そういった伝統的資金源は、検挙人員そのもの、減少傾向にあります。その一方で、建設、不動産、金融、産廃関係、証券取引、不動産取引、いろいろなこういった表社会での事業活動への進出を活発化させて、資金獲得活動を多様化させておるという実態がございます。特にそういった場合に、暴力団の構成員のみならず、その周辺にありまして、いわゆる暴力団関連企業でありますとか、また、暴力団と密接な関係を持ちつつも、いわゆる政治活動を標榜したり社会運動を標榜したりするような団体としての活動をいたしておる。私ども、暴対法そのものは指定暴力団、これを規制の対象といたしておりますけれども、取り締まりの対象といたしまして、こういったもろもろのもの全体を反社会的勢力ということで取り締まりの視野の中に入れて対象といたしております。

 さらに、先ほど御案内ありました国際的な広がりとか、こういったこともございまして、現在、警察庁におきましては、こういった暴力団、反社会的勢力を担当する部門、それから国際組織犯罪を担当する部門、銃器や薬物の密輸、密売などの取り締まりを担当する部門、こういったものを組織犯罪対策部ということで、お互いの情報交換をしながら総合的に取り組んでいるところでございます。

 そうした中で、振り込め詐欺につきましてお尋ねがございましたけれども、振り込め詐欺につきましては、認知件数、被害総額、依然として高水準で推移をしているところでございまして、いわゆる詐欺といいますか、恐喝に当たるものもございますけれども、そういったものも含めて取り締まりと被害拡大の防止に努めているところでございます。

 昨年は、振り込め詐欺で四百五十四人を検挙、このうち暴力団等が占めますのは十九人、四・二%、検挙人員の中に占める割合としてそう多いというものではございません。しかしながら、警察といたしましては、この振り込め詐欺、それから振り込め詐欺に関連するような犯罪、これが暴力団の有力な資金源の一部となっている、こういうふうに考えられることもございまして、引き続き、暴力団と振り込め詐欺グループとの連携を視野に入れて取り締まりを徹底してまいる所存でございます。

大畠委員 いずれにしても、時代とともにその業態というのは大きく変わっていると考えております。警察官も現場で一生懸命頑張っているんですが、相手がどんどん変わるものですから、警察官の方も変わらなきゃならない。そういう意味では、警察庁の方でしっかりと対応すると同時に、国家公安委員会というのも、私もいろいろずっとその問題を取り上げてきましたけれども、何か組織が古くなってしまったんじゃないかな、十分に国家公安委員会というものが機能しているのかどうか、私もかなり疑問に思うこともあるんです。今、警察機構改革というのを私ども内部でも検討しているところでありますが。

 国家公安委員長として、今回のこの法改正というので本当に、先ほどから実効あるのかという話もありましたが、国家公安委員長も、なって半年以上、もっとたちましたかね、大分検討されてきたと思うんですが、国家公安委員長から見て、今回の暴対法というのは、それなりに実効あるものと考えられるのか、それとも、まだまだ不十分だなと考えるのか。これは警察庁と国家公安委員長は違うんですからね、監督するところですから。それなりに率直な御意見をいただきたいと思います。

泉国務大臣 先ほど来委員の御指摘のように、新型ウイルスにどう警察側も対応していくか、こういうことは常に考えていかなきゃならないことだと思っております。そういう中で、今回は特にこの資金源を断つ、そこに着目をして、従来からやってまいりました三つの暴力団対策に加えて、資金源を断つためにどうするか、さらに、暴力団の活動を抑える、その賞揚を規制する、そうした観点から今回の法律案を出させていただいたわけでございます。

 過去の改正も踏まえまして効果があったのか、再三先ほどからお話がございました。私は、改正を通じて効果があった、だからこそ暴力団員の数が、逆に言うとああいう状況でおさまっておるのではないか。これをもっと厳しくやっていこうというのが今回の法改正であります。

 なかなか仮定を置いて比較ができませんけれども、今お隣におられます泉議員が、何度も、交通安全みたいに目標を立てて減らすことをやれというのを委員会で御主張していただいております。そういうことができるならば、私もそうさせていただきたいと思いますが、なかなか暴力団対策というのは、そういう目標を設定して減らすということが、新型ウイルスみたいなものもありまして、一度に達成することはできない。しかし、こういう事柄を積み重ねて対処させていただきたいと思っておるわけであります。

 国家公安委員会としては、この暴力団問題に限らず、大変厳しい議論を週一回二時間余り、あるいは三時間に及ぶような時間をかけてやらせていただいております。そういう議論の中で、今回の暴力団法の改正についても、先ほど申し上げました法改正の目的に沿って、実効ある努力をこれからやっていくということが大切だという検討をいただいたところでございます。

 この暴力団対策とは少し違いますが、取り調べの適正化等につきましても、国家公安委員会で十二分に議論をいただいて警察庁に指導をしておるわけでございまして、これからも国家公安委員会としては一層の努力をしていかなければならないと思っております。

大畠委員 泉委員からいろいろ目標値を示せというふうに言われて、なかなか示せないでいるというのですが、国家公安委員会は、やはり警察庁と違うんですから、目標とちゃんと言った方がいいですよ。例えば、これは平成三年のころは九万一千人だったのが平成七年に七万九千三百人になったんですが、だんだんまたふえてきて、今八万四千二百人という構成員ですよね。正規構成員が減ってきたんだけれども、準構成員というのがふえ始めている。だから、公安委員長、はっきり言った方がいいんですよ、はっきりと。

 社長というのは、やはりこうしようという方針を出すのが社長みたいなものですから、警察庁長官を呼んでもなかなかここに出てこないですから、だから、公安委員会としてこういうことにしよう、例えば平成七年度の七万九千を目標にしようじゃないかとか、そういうことをはっきり言うのが私は必要なんじゃないかと思います。

 いずれにしても、今公安委員長がおっしゃいましたけれども、この法律案が実行されるように、ぜひ指導力を強化していただきたいと思うところであります。

 そこで、残りの時間が少なくなってまいりましたが、ちょっとこの関連する、暴力団とは関係しないわけでありますが、警察の行動について、私の茨城県の方で、JRの荒川沖駅において殺傷事件が発生しました。この事件に対応する対処の仕方として、警察の対応に対して、県民からも、ちょっと対応は問題だったんじゃないかというような指摘、あるいは、二十三日に報告書がまとまったということでありますが、それに対する記者会見等では、被害者への陳謝の言葉がなかった、今回の捜査において処分するようなミスはなかったという声があるけれども、これはおかしいじゃないかという、警察対応に対する疑問の声も報道されております。

 あの状況の中で、結果論で言うわけではありませんが、やはり第一に、犯人逮捕も大事でありますけれども、市民の生命財産を守るというのが私たち、行政あるいは警察の使命でありますから、そういう意味では、やはりミスがあるものはミスとして、あるいはこの方針を決定したことはやはり問題だったというのであれば問題だったと、はっきり私は言うべきだと思うんです。

 本当は警察庁長官に来ていただきたかったわけでありますが、警察庁長官はきょうはお出にならないということでありますから、米田刑事局長がお答えになるんでしょうか。警察庁としての今回の事案に対する見解を改めてお伺いしたいと思います。

米田政府参考人 この事件は、三月十九日に第一の事件が発生をいたしまして、約七十人の体制で、茨城県警は捜査本部を設置して捜査を進めておったところであります。その過程で、二次被害が発生する可能性があるということで、体制を大幅に増強いたしまして、三月二十三日、この第二事件、荒川沖駅の事件が起こったときには約百七十名の体制で、駅あるいは列車の中、列車警乗というものですね、それから、もちろん自宅とか、この被疑者が立ち寄る可能性があるインターネットカフェ等々、それから、第一事件の被害者の葬儀がまさにその当日行われる、そこにあらわれるかもしれないというようなことも考えて、かなり広範に捜査員を配置していたという報告を受けております。

 そういう中で第二事件が発生をいたしまして、確かに結果論という面もあろうかと思いますけれども、結果として駅にあらわれた被疑者を見逃してしまった、そして次々と被害があった。

 これは、茨城県警本部長が記者会見で述べておりますように、県民の治安に対する信頼を失墜させるものであるということで、反省すべき点があったと認識しているということを表明しておりますけれども、まさにそのとおりであろうかと思います。

 そして、今委員がおっしゃいましたように、それは検挙ではなくて、そもそも犯罪に遭わないようにするということが第一ではないか、まさにそのとおりでございまして、そもそも、もちろん、犯人を検挙すればその危害の危険性は去るわけでありますけれども、それはあくまで手段でございまして、私どもが目指しますのはやはり市民生活の安全と平穏の確保、それを第一義として、事件が発生した後の被害拡大防止等にも努めてまいらなければならないというように考えております。

 警察庁といたしましては、そういう観点から、この事件が起こりまして、直ちに通達も発出し、都道府県警察を指導しておりますけれども、そういう凶悪な事件が発生した際には、二次被害の防止、市民生活の安全確保ということを最重点に活動を強力に行っていくべきである、そのように今後とも指導してまいりたいと考えております。

大畠委員 今るる御説明いただきましたが、警察庁としては、今回の事案で亡くなられた方やあるいは殺傷を受けた方に対して陳謝するという言葉を含めた形での見解と受けとめていいのかどうか。要するに、この間の記者会見では陳謝の言葉はなかった、さらに、今回の捜査方針について処分するようなミスはなかったというので、それでは何なんだと。現実問題、人が殺されているわけですよね。

 いろいろな言葉を駆使したとしても、やはり率直に、市民の生命財産を守る警察として問題があった、亡くなられた方には陳謝する、そして内部的にしっかりと、その方針は一体どういうことで決まったのか、その過程に問題があれば内部的にもきちっとしたいと思う、そのくらいの言葉がなければ、何のための警察かという話になりますよ。暴対法の改正もいいけれども、市民の生命財産を守るという警察の一番の基本の問題が抜けているんですよ、これは。そこに私は緩みがあるんじゃないかと思うんです。

 明確な話がなければ、とてもここで質疑したって意味がないわけですから、あるいは、警察庁長官にやはり年に一回ぐらいは出てきてもらわなければならないという感じがするんですが、再度、局長の答弁を求めます。

米田政府参考人 警察庁としてといいますと、これはちょっと違うかと思います。

 茨城県警としては、これは言葉の受け取り方の問題でございますでしょうが、ともかく反省をあらわしている、そして、県民の治安に対する信頼を失墜させるものであるという見解も述べております。

 それから、被害者に対しましては、これは、この検証結果を発表する前にそれぞれのところにお伺いをいたしまして、そして、県警としてこういう事態になったことは反省をしておりますということで、そして、この検証結果を御説明したということでございます。

大畠委員 警察庁と県警というのは別組織、別組織といってこんなときは分けますが、指導監督する責任があるわけですよ、警察庁は。その県警の不手際があれば、当然、警察庁として、あれは別会社ですから私どもは関知しませんなんという話じゃだめですよ。

 公安委員長、公安委員会でこの問題は安易な形で取り扱ってもらっては困るんです。こういうときこそ公安委員会がやはりきちっとした方針を出さなきゃだめなんですよ。公安委員長として、今やりとりを聞いていて、どういうふうに感じられるのか。これは大事な話ですから、公安委員長のお話をいただきたいと思います。

泉国務大臣 先ほど来の陳謝するというような事柄につきましては、局長が答弁をいたしましたように、茨城県警本部の考えることだと私も思っております。

 この問題につきましては、県警から先日来、五点でしたか、取り組んだ状況、そして反省点の報告がありまして、国家公安委員会にも報告がなされました。それは承知をいたしております。

 この問題をこれからは、一つの茨城県の問題にとどめることなく、こういう事態の再来を防ぐために、既に、昨日でありますが、捜査一課長、三課長会議が行われましたので、そのことを通じて、全国にこの問題を重く受けとめるような指示がなされております。

 私どもは、委員がおっしゃるように、陳謝をするということよりも、やはりこれを、事件を反省して、一層、県民、国民の命を守っていくということに全力を挙げたいと思っておるところでございます。

大畠委員 時間が来ましたからやめますけれども、公安委員長、国家公安委員長は全国の公安委員会のトップなんですよ。警察庁のトップじゃないんだよ。大臣は全国の公安委員会のトップなんだよ、茨城県も含めて。そういう、何か警察庁の上に乗っているような組織のトップのような話じゃ困るんです。後はないんだから、これは。

 もうちょっと、警察庁に軸足を置くんじゃなくて、国民の立場に置くのが、我々代議士の一つの職務として国家公安委員長になっているんじゃないですか。今の話はまるっきり警察庁と同じような姿勢ですよ。

 改めてこの問題も、ぜひ公安委員長には国民の立場に立ってもらいたい、警察庁の立場じゃなくて。無難に国家公安委員長をこなすんじゃなくて、国民の立場としてのメッセージを公安委員会の中から出していただくように要望して、時間が来ましたので、質問を終わります。

中野委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。

 最初に、政府参考人に伺っておきますけれども、法案に関連していろいろな資料もいただいておりますけれども、資金獲得活動による検挙状況の表というのを見ていますと、要するに、覚せい剤、恐喝、賭博、のみ行為といったいわゆる警察分類による伝統的資金獲得活動の検挙数は、この十年間、九七年から十年間で一万四千四百五人から九千四百十二人と減っているわけですね。割合では、検挙率は四五%から三三%に減っております。しかし、覚せい剤、恐喝、賭博、のみ行為以外のいわゆる非伝統的資金獲得活動で検挙された人数というのは、これは一万七千七百四人から一万九千五人へふえていて、割合でいいますと、五五%から六七%にふえているわけですね。

 ですから、今暴力団の資金獲得活動は、いわゆる伝統的資金獲得活動から非伝統的資金獲得活動に主流が移っている、それで対策を考えていかなきゃならないということで臨んでいるわけですね。確認しておきます。

宮本政府参考人 全体で、いわゆる伝統的資金獲得活動の検挙人員につきましても三割の人員を占めている、これは相当な人員だというふうに考えておりますし、引き続き重要だと考えておりますが、それ以外のものについての範囲が広がってきておるということは御指摘のとおりでございまして、取り締まりに重点を置いております。

吉井委員 それで、伝統的でない資金獲得活動による暴力団員検挙人数の主な検挙の内訳というのも、資料をいただきましたから見てみると、内訳では、貸金業規制法違反、出資法違反、廃棄物処理法違反、建設業法違反、詐欺、窃盗、強盗から、さらに風俗営業法違反、売防法違反などがあります。特にこの十年間で検挙者数の増加が著しいのは、風俗営業法違反の三・七倍、貸金業法違反の二・一倍、建設業法違反の一・七倍というところだと思うんですが、風俗営業法違反で約四倍も暴力団の検挙数がふえているというのは、風俗営業が暴力団の資金源として大きな位置を占めているということを示していると思うわけです。

 何度も法律改正してきたわけですね。だから、取り締まりを厳しくしてきているはずなんですよ。取り締まりを厳しくすれば、普通だったら、暴力団がつけ入るすきはなくなって検挙数は減るはずなんですが、このようにふえ続けるのはなぜかという問題ですね。警察側も、暴力団活動を見て見ぬふりとか事実上野放しということではないと私は思っているんですが、なぜこういうことになっているのか、伺います。

宮本政府参考人 いろいろな要因が考えられると思いますけれども、やはり風俗営業、特に歓楽街などに多いわけでございますが、こういったところは暴力団の有力な資金源となっておる、暴力団が関係者に違法な風俗営業などを行わせたり、また資金源としてみかじめ料を徴収したり、こういった実態が見受けられるわけでございます。

 そういったことから、風俗営業法違反の取り締まりについても、暴力団対策として大変重要な位置づけであるというふうに考えて、取り締まりを強化しているところでございます。

吉井委員 なぜかというのは、いまいちよくわからないんですね、今の話じゃ。

 私は、やみ金関係の方は、かつて財金でやみ金規制法をやったときに貸金業法関係は取り上げたこともありますから、あとの二つの大きな、風営法関係とそれから建設業法関係でふえておりますから、そこに絞ってきょうは質問したいと思うんですが、いずれも、やはり関係する行政機関と警察とがよく緊密に連携をとって取り組んでいくということが大事な分野だと思うんです。

 風営法関係でいいますと、これまでも取り上げてまいりましたけれども、兵庫県警、大阪府警にかかわるところで、ビジネスホテルを装った偽装ビジネスホテル、実態ラブホテルという問題ですね。警察と関係する行政機関と連携して、あらゆる方法を駆使して悪徳業者の取り締まりをやらぬものですから、小学校の真ん前に三カ所も偽装ラブホテルができてしまう。暴力団を含む業者が風営法とか旅館業法のすき間を縫って、そしてビジネスホテルを偽装して実態ラブホテルというのをやっていく、こういうやり方が許されてくると、結局、暴力団が風営法関係を資金源とするおそれがまた出てくるわけです。さらに、そこでのネット売春の問題なんかも出てきますから、幾ら何でも小学校の真ん前にこういうものを放置しておいていいわけはありません。

 この間、実は私は、兵庫県の方から、地元の方からお話を聞いたので、リゾートホテルというのを建てるというんですね。しかし、現場を見て、昔、大臣などもかかわられたと思うんですけれども、リゾート法、三点セットがありますね、スキー場とテニスコートとリゾートホテルないしマンション。海の方へ行けばマリンスポーツがあり、テニスコートがあり、そしてリゾートホテル、マンション。ここに私は行ってあきれたんですが、これは住宅街と工場街の接したところの空き地なんですね。幾ら神戸といっても海ははるかに遠いところですから、マリンスポーツなんかは関係ないんですね。リゾートホテル建設だなどと言って、要するにラブホテルをつくろうとしているんですね。だから、これは東灘区の魚崎にありますが、まだまだ手ぬるいと思うんです。

 大阪では、この前取り上げましたように、小学校の真ん前にこういうものが三軒もできているんですが、大阪府警と大阪府なり市の関係機関と協力してやはり本来やっていかなきゃいけないはずなのに、十分じゃないんじゃないか。あらゆる知恵を使い、法律や関係行政機関との協力で、風俗営業関係についても、暴力団対策のためにもこういう異常なあり方というものについてはやはり徹底して取り組むということが必要ではないかと思うんです。

 その点について、大阪の方はこの間取り上げましたから、その後、警察庁として一体どうやっておられるかを伺っておきたいと思います。

片桐政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の小学校に隣接しておりますホテルにつきましては、大阪府警察におきまして、三月の営業開始時点で、関係機関から、風営適正化法上のラブホテルの要件に該当するような設備は設けられていないという報告を受けております。この点につきましては、四月二日の当委員会において御答弁申し上げたところでございます。

 その後でございますが、大阪府警におきましては、引き続き、関係機関から、旅館業法に基づく立ち入りと指導の状況につきまして情報提供を受けているところでございます。しかしながら、まだこれまでのところ、ラブホテルの要件に該当するとの連絡は受けていないというふうに聞いております。

 今後とも、関係機関との連携をさらに図りながらその実態把握に努めて、違法行為があれば適切に対応したいと考えております。

吉井委員 小学校の真ん前に建っているものは、こういう要件とこういう要件とこういう要件に合わないとということを言っていると、幾らでも次々とでき上がってしまうんですよ。

 大阪の橋下知事さんは、子供が笑う大阪にと言っておられた方なんですよ。小学校の前にこんなものが建ったのでは、子供がラブホテルに困る大阪というものになってしまうんじゃないかと思うわけです。増田大臣は、あらゆる手を尽くして締め出していくということを四月二日のこの委員会で答弁をされました。

 私はやはり、大阪府警本部、その他の県警本部もそうなんですけれども、知事や市長、そしてそこの関係部局ともっと協力して、あらゆる権限を生かして、何ぼ何でも小学校の真ん前に三軒もラブホテルができるような事態は一掃する、こういうことに取り組んでいくべきだと思いますが、国家公安委員長にも以前この問題でお答えいただいておりますが、公安委員長の方にお考えを改めて伺いたいと思います。

泉国務大臣 きょうは、風営法違反という事柄の増加が暴力団の資金源になっているのではないかという視点からのお尋ねがございました。そのことを思いますと、いわゆる子供たちの学校教育ということと同時に大変重要な問題点の指摘だと思います。

 いわゆる類似ラブホテルについては、法律的に風営適正化法に合っているかどうかということで指導、警告をやっておるわけでございますし、また一方では、建築基準法とか旅館業法とかそういう事柄で都道府県が措置命令を出しておる、こういう事柄でございますが、前回でしたか、私がお答えを申し上げましたのは、法のすき間を縫ってこういう悪行を働くということは本当にあってはならないと今も思っております。

 警察庁では今全国の状況を調べておるというふうに承知をいたしておりますので、そういうことを踏まえて、もう一度、関係省庁も含め、また自治体も含めて対応を考えてみたいと思います。

吉井委員 この間、増田総務大臣は、全国百二十ある条例、そういう条例も各自治体にも紹介しながら、国の法律、地方の条例、それに担当する行政機関と警察とが連携して締め出していくというお話がありましたので、大臣にもそういう立場で連携してやっていただきたいと思います。

 建設業関係で見ておきますと、大阪府の堺市で、大阪府が百五十億円の補助金を投入して、シャープの新工場の建設が今始まっておりますが、この建設工事の元請企業というのは清水建設ですが、この建設工事に大阪市内の暴力団系の企業、大和重機が下請として参入しました。大阪府は、昨年の十二月上旬に、シャープの建設工事に暴力団系企業が下請に入っているとの情報を受けて、シャープに通報したわけですね。

 シャープの誘致のために百五十億円補助金を税金から支出している大阪府として、私はこの措置は当然のことだと思うんですが、しかし、もっと早く清水建設は大和重機との間の下請契約を解除することができなかったのかどうか、これは政府参考人の方に伺っておきます。

宮本政府参考人 大阪府警察からの報告によりますと、大阪府警察としては、平成十八年の八月の時点で大阪府に対しまして、大阪市内の建設業者、下請に入っていた業者が暴力団と社会的に非難される関係がある、こういうことで通報をいたしたものでございます。その後、大阪府が補助金を交付して建設中の工事にこの建設業者が下請として参入している、これがその後に判明をしたということで、大阪府において、施主である企業にその経緯など情報提供をしたということで、その結果、当該建設業者が下請から外れたということで承知しています。

吉井委員 ですから、一年半前に大阪府警は建設の動きをつかんで、大阪府の関係課に伝えていたわけですよね。大阪府警は、府暴力団等排除措置要綱に基づいて、大和重機という企業が暴力団員と社会的に非難される関係を有していると認められる業者だという情報を得て、今おっしゃったように二〇〇六年八月十八日ですか、大阪府に通報しているわけですね。

 そのことを今おっしゃったわけですが、この暴力団というのは山口組系暴力団組長を含めての話ですね。

宮本政府参考人 今申し上げたその関係のある暴力団とは、山口組であったと報告を受けております。

吉井委員 ですから、一年半ほど前にその通報を受けて、その直後に、もちろん大阪府は、清水建設を含むゼネコン二十三社に対して、この暴力団系企業、大和重機を下請に使えば指名停止にしますという内容の注意喚起をしているんでしょう。大阪府警が大阪府に、この下請企業が暴力団と親交ある企業として非難される存在、要するに暴力団系の企業であるという通報をしてから、建設工事の元請である清水建設が大和重機を下請から排除するまでには一年以上たっているんですね。

 シャープの工場というのは、先ほどのお話にもありましたように、大阪府から補助金を受けている。つまり、府から補助金が出ている企業の造成建設工事ですから、いわば公共工事に準ずるぐらいのものですよ。警察と大阪府が、反社会的存在である暴力団系企業がそういう工事に参入して利益を得ていたということを野放しにするつもりはなかったともちろん私は思いますけれども、しかし、野放しにしておったじゃないかと言われても仕方がないのではないかというふうに思うんです。

 やはりそういう点では、建設業法関係でも、地方自治体その他、国の機関もそうですけれども、警察と関係行政機関との連携が必ずしも十分ではないんじゃないか。そこをもっと連携をきちんととって、さっきの偽装ビジネスホテルの問題にしても、今回のシャープの工場建設に当たっての清水建設が暴力団系企業を使っておった問題にしても、やはりそういうことができて当たり前じゃないかと思うんですよ。

 そういう点では、暴力団対策というのは法律をつくることで終わるんじゃなくて、始まりなんですね。問題は、執行しなければ意味がないわけですから、風営法にしろ、貸金業法にしろ、建設業法にしろ、この十年間でどんとふえているという非伝統的資金活動、そういうものを本当に封じ込めていく上では、もっと関係行政機関とも連携をとりながら、しかし、警察自身が、いや、それは関係機関の問題ですよというふうに何か責任が軽くなる話じゃありませんからね、責任は非常に重いわけなんです、法律上。同時に、しかし、それをもっと緊密な連携をとって本格的に資金源の活動を断つということでやっていかなかったら、また新たな法律改正を何度も繰り返ししていかなきゃいけないことになると思うんです。これは大臣に伺っておきたいと思います。

泉国務大臣 関係省庁あるいは自治体を含めたそれぞれ、そしてまた国民の皆さん方との連携を密にして取り組んでいくということは御指摘のとおりだと思っております。

 これまで取り組んでまいりました暴力団対策に加えまして、今回の改正法の的確かつ厳正な運用を通じて、暴力団の弱体化、壊滅に向けまして一層努めてまいります。

吉井委員 あと一分ぐらいになってきましたから、もうまとめて終わりたいと思います。

 暴力団の対策、あるいは暴力団を中心とする銃器対策、いろいろな法案をこれまでつくってきましたが、資金源を徹底的にたたいて組織の中枢まで打撃を与える、それを目指して頑張るんだということを、いつも法案の説明のときに聞かせていただいてきたんです。しかし、なかなかそうなっていないわけですから、伝統的でない資金獲得活動も徹底して断ち切っていく、そのために、今大臣から決意をお聞かせいただいたわけですが、具体的にどういう対策をとってこれを進めていくのか、その法を執行する上での取り組みを強化していかれるように、時間がもう参りましたので終わりますが、次の機会に改めて伺いたいと思いますので、そこをきちんとやっていただきたい。

 これで私の質問を終わります。

中野委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

中野委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、参議院送付、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

中野委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

中野委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十分散会


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