第18号 平成20年5月22日(木曜日)
平成二十年五月二十二日(木曜日)午前九時開議
出席委員
委員長 中野 清君
理事 江崎洋一郎君 理事 岡下 信子君
理事 櫻田 義孝君 理事 高市 早苗君
理事 村田 吉隆君 理事 泉 健太君
理事 大畠 章宏君 理事 田端 正広君
赤池 誠章君 赤澤 亮正君
遠藤 宣彦君 大塚 拓君
加藤 勝信君 木原 誠二君
木原 稔君 河本 三郎君
杉田 元司君 戸井田とおる君
土井 亨君 中森ふくよ君
西村 明宏君 萩生田光一君
藤井 勇治君 市村浩一郎君
吉良 州司君 楠田 大蔵君
佐々木隆博君 西村智奈美君
馬淵 澄夫君 石井 啓一君
塩川 鉄也君 吉井 英勝君
…………………………………
国務大臣 大田 弘子君
内閣府副大臣 木村 勉君
内閣府大臣政務官 加藤 勝信君
内閣府大臣政務官 戸井田とおる君
内閣府大臣政務官 西村 明宏君
政府参考人
(内閣府大臣官房審議官) 山崎 史郎君
政府参考人
(内閣府政策統括官) 藤岡 文七君
政府参考人
(総務省大臣官房審議官) 榮畑 潤君
参考人
(作家・エコノミスト) 堺屋 太一君
参考人
(構想日本代表) 加藤 秀樹君
参考人
(拓殖大学名誉教授) 田中 一昭君
参考人
(弁護士) 加藤 健次君
参考人
(神戸市長) 矢田 立郎君
参考人
(中小企業再生支援全国本部統括プロジェクトマネージャー) 藤原 敬三君
参考人
(弁護士) 瀬戸 英雄君
参考人
(宮崎大学教育文化学部教授) 入谷 貴夫君
内閣委員会専門員 杉山 博之君
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委員の異動
五月二十二日
辞任 補欠選任
土井 亨君 杉田 元司君
萩生田光一君 赤池 誠章君
吉井 英勝君 塩川 鉄也君
同日
辞任 補欠選任
赤池 誠章君 木原 稔君
杉田 元司君 土井 亨君
塩川 鉄也君 吉井 英勝君
同日
辞任 補欠選任
木原 稔君 萩生田光一君
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
国家公務員制度改革基本法案(内閣提出第七五号)
株式会社地域力再生機構法案(内閣提出第一四号)
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○中野委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、国家公務員制度改革基本法案を議題といたします。
本日は、本案審査のため、参考人として、作家・エコノミスト堺屋太一君、構想日本代表加藤秀樹君、拓殖大学名誉教授田中一昭君、弁護士加藤健次君、以上四名の方々から御意見を承ることにいたしております。
この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
本日は、御多用中のところ本委員会に御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。本案について、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
次に、議事の順序について申し上げます。
堺屋参考人、加藤秀樹参考人、田中参考人、加藤健次参考人の順に、お一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。
なお、参考人各位に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。
それでは、堺屋参考人にお願いいたします。
○堺屋参考人 私は、この公務員制度の全般に関する改革の懇談会の原案作成の小委員長を務めてまいりました。委員長は岡村正日本商工会議所会頭でございますが、私はそのもとで原案作成の小委員長を務めてまいりました。そういったことから、この法案がどのような問題意識でつくられ、今どのような構成で描かれているか、どのような構図で描かれているか、そういったことを大まかに申し上げたいと思っております。
まず、現在の日本は大変でございます。今、日本は大変な状況にあります。経済は、ことしの一月に大田経済財政担当大臣が、もはや日本経済は一流でないと言われました。かつては、日本経済は、一人当たり国民所得で、九三年にはルクセンブルクという人口四十五万人の国を除いて第一位、実質第一位でありました。バブルがはじけて少し後退しましたけれども、私が企画庁長官をやめました二〇〇〇年には三位まで回復しております。それが今は十八位、先進国三十カ国の中で真ん中よりも下というようなところまで下がってきております。
航空、海運、金融、情報などでも日本の国際的地位は大幅に低下いたしました。また、医療や教育などでも混迷の色を深めているのは御承知のとおりであります。
特に昨年は、官僚の失敗がたくさん出てまいりました。例えば建築基準法の改正に基づく建築許可の遅延でありますとか、あるいは年金の記録の喪失の問題でありますとか、金融取引法をめぐる過剰説明の問題で投資信託が大幅に減少したとか、そういったことが次々とございました。こうしたことが、世の中では官製不況というような言葉まで出ているほどであります。
そんなことが重なりまして、朝日新聞が三月に行いました世論調査では、十二の職種のうちで最も信用できないというのが多かったのは、何と官僚でございます。商人や政治家でございますと、さまざまな政治的駆け引きとか商業的思惑とかがあって信用できないことがあるとしてもさほど驚きませんけれども、官僚が国民の七〇%に信頼できないと言われている国は、まことに残念なところであります。
日本の地位が低下してきたという理由の一つは、官僚機構が、つまり公務員制度が時代におくれているということであります。日本の官僚機構は、規格大量生産型の近代工業社会を確立するためにつくられました。ところが、今や多様な知恵の時代になり、この重要な知恵を生み出す知価社会には適切でなくなってきています。今にしてこの改革を行わなければ、日本は発展途上国に逆戻りしてしまうのではないかと危機感を募らせております。
では、どういう点で日本の官僚機構がそれほど悪くなったのかということを考えてみます。
私は組織論を研究いたしまして、「組織の盛衰」という本を書きました。これは大変読者も多かったし、学界でも取り上げられました。その中で、私が研究いたしましたところでは、立派な組織、規模も大きければ存続基盤もきちんとしている、そういう立派な組織が死に至るという重大な病は三つしかありません。
その第一は、機能組織の共同体化であります。ある機能のためにつくられた組織、そういうゲゼルシャフトが仲間のためのゲマインシャフトになる、そういう共同体化という現象が極めて危険であります。
第二番目には、ある時代の経営環境に余りにも深く適合している、そのために、経営環境が変わったら立ち行かなくなるというのが第二であります。
そして第三は、成功体験への埋没であります。一つのやり方で成功すると、そればかり繰り返すので、次々と失敗が続くということであります。
日本の官僚機構は、今やこの三つの死に至る病に三つともかかっていると思います。中でも危険なのは、大問題なのは、機能組織の共同体化であります。官僚組織は、行政の目的、国の定めた行政を実行し、国民のために働くべきものでありますが、その官僚組織が自分たち、官僚たちの利益を追求する共同体になってしまう、これが一番恐ろしいところであります。
現在の日本の官僚組織というのは、権限別もしくは所管別に縦割りにできています。縦割りにできたために、情報は主として供給者、それぞれの官庁が所管します供給者側から入ってまいります。そのため、戦後日本には独特の終身雇用、年功人事という雇用慣習がありました。この雇用慣習と相まちまして、官僚機構は仲間共同体、官僚の仲間の共同体になりました。加えて、入省のときに試験の種類によって身分を決める、いわゆるキャリア制度というのがありまして、1種公務員試験で合格すると将来が約束されたキャリアになる、つまり、人事制度が長期予測が可能な形になっております。そのために、仲間の評判、官僚仲間の評判によって出世が決まるというのが慣例でございます。大臣の評価あるいは国民の目、そういうものとは関係なしに、官僚仲間の評判で、だれそれが局長になる、だれそれが次官になるというような仕掛けが決まっています。これでは、国家国民のためよりも、各府省別に組織された官僚共同体のために尽くす気になるのは当然でございましょう。これが日本官僚組織の最大の欠点です。
その結果、日本の官僚は倫理の退廃に陥りました。倫理には腐敗と退廃があります。腐敗というのは、悪いと知りながら私利私欲のためにすること、いわば汚職とか権限の過剰利用とかいうのは倫理の腐敗であります。倫理の退廃というのは、何がいいかわからなくなること、何が悪いことかわからなくなることをいいます。日本の官僚共同体は、まさにこの官僚倫理の退廃、その組織がつくられた本来の目的よりも、自分たちの仲間の共同体の利益を優先する状態になりました。また、官僚共同体のために尽くした人が仲間内で好評を得て、いつの間にか、あれが次官候補だ、これが局長候補だと言われる仕掛けになってしまいました。ここに大変な問題が存在します。
こういう機能組織の共同体化というのはほかでもよく起こることなんですけれども、民間企業や多数ある同種の団体、大学のような場合でございますと、そういうふうになりますと、その組織が衰退いたしまして、社会に対する影響力を失います。ところが、官僚組織の場合には、失敗をすれば問題が起こって、問題が起こったから予算と人員をつけてくれ、こんな権限をくれ、こういう規制をしようと、どんどん強くなる。つまり、悪貨が良貨を駆逐するような仕掛けになります。
したがって、これは政治が十分に監視していただかねばならない部分であります。今にして官僚組織の大改革を行わなかったら、日本全体が死に至る病に取りつかれると思います。
以上のような問題点を持ちまして、今回改革の要点として答申いたしました、お願いいたしましたのは、次の点であります。
第一は、政治主導を確立することであります。国民の目線で官僚を主導しなきゃいけないというものであります。官僚を国家国民のために働かすためには、官僚の外の目線で主導する必要があります。軍隊がシビリアンコントロールと言われるのも、軍隊に任せておくと軍人共同体になる危険があるからでありまして、同じことが今の日本の官僚機構に言えるのではないかと思います。
特に、国会に対しましては、議院内閣制の本義に立ち戻り、内閣が責任を持って対応すべきであります。官僚は、内閣を補佐し、正確な情報と多様な選択肢を内閣、大臣に提供する。国会は、内閣に資料や説明を求め、もし内閣から出てくる情報に秘匿や操作があれば、それは内閣の責任として追及することができます。公共事業の問題が今盛んに言われておりますが、無駄な道路をつくったことはもちろんありません。ただ、予測を誤ったというのはたくさんありますが、こういう場合でも、予測を誤ったのは大臣の責任である、時の大臣の責任であるということを明確にしないから、うやむやになっています。
これを実現するためには、次のことが必要です。まず、幹部公務員に対する大臣と内閣の人事権を確立することです。仲間の評判で人事をするのではありません。そこを変えなければいけません。二番目に、国会に対する内閣と大臣の説明責任を果たすために、それを補助する職員、政務専門職が必要になってきます。また、大臣の人事権を確立するためには、人事に関する情報を蓄積して各大臣に提供する組織、人事庁を置く必要があります。
次に、官僚共同体を防止するため、国民のための官僚をつくるにはどうすればいいか。いわゆる日の丸官僚をつくる、各省別に忠義を尽くす官僚ではなくして、国家国民のための官僚をつくることであります。官僚共同体のためではなくして、国家国民に奉仕する官僚を育てるためには、まず、官僚機構の共同体化を防止しなきゃいけません。これが極めて重要なことです。各府省別の閉鎖的雇用慣行を破り、府省間及び民間との人事交流を盛んにすることであります。
私は、経済企画庁長官のときに、官僚組織以外から、学界や民間企業から管理職を六人採用いたしました。これはいい刺激になり、その人たちも、その後も日銀の副総裁や早稲田大学の学部長として活躍されました。わずかな期間で、後が続かなかったんですけれども、これは非常に効果があったと思います。
官僚の中に、府省間の人事を交流し、民間からも人事を交流することによって、競争制度を取り入れることが必要です。また、キャリア制度を改革し、入省時の試験で身分化することを廃止いたしまして、一般職や技術職から総合職へかわるとか、あるいは中途採用を盛んにするとかが必要だと思います。
ただし、やはり、将来官僚として広く働きたい人のために、ある程度可能性のある試験の種類を残すべきだと思っています。一番最後に書いてある図をごらんください。これは私たちの理想とするところですが、従来、現在の官僚制度では、第二図のように、キャリアで入った人だけが真ん中ですとんと上へ行く、先がとがっているのは次官が一人ということであります。それを、今回の改正では、下の図のように、まず、総合職に入った人、専門職に入った人、一般職に入った人がいますが、それぞれに途中入省、途中からの採用、それから斜線の入っている部分は一般職や専門職から来た人ですが、そういう人をどんどん取り入れて、一方、総合職で入った人もどんどんと減らしていく。
私の理想といたしましては、本省課長になるときには、最初から総合職で入った人が半分ぐらい、半分は途中から一般職や技術職、あるいは民間から中途採用された人が入る、そういう仕掛けになるのが理想だと思っていますが、特に数を最初から限定するとアファーマティブアクションになりますので、そこは期待だけでございますけれども、そういう心持ちでやりたいということです。
最後に重要なのは、国際競争力のある人材を育てるということであります。幸い、最近は、優秀な大学を優秀な成績で出た人たちが、外資系の金融機関であるとかコンサルタントであるとか、生涯終身雇用を前提としないところへ行くようになりました。だから、公務員の世界も、そこで能力をつけて、さらに発展する可能性のあるような養育プログラムをきちんといたしますと、優秀な人が来て、またやめていく、そして中途から入ってくる人ができる、そういう入れかえがどんどん行われる。そういたしますと、中の競争が激しくなりますから、官僚共同体ではなくして、活気のある役所、競争の中で非常にみんなが自分の能力を最大限に発揮する、そういった官庁ができるのではないかと思っております。
最後に、公務員改革こそはあらゆる改革の始まりであります。明治維新はなぜできたかというと、まず武士の身分を廃止したからできたので、幕府をそのままにして廃藩置県も新貨令もできるはずがありません。何しろ、この公務員改革こそ出発の大維新でございまして、ぜひここで、皆様方の御審議で改革法案を通していただきたいと思います。
これに関しましては、まさに小異を残して大同につく、基本法の段階でございますので、各省のそれぞれに御意見はもちろんあるでしょうけれども、そこは小異を捨てて大同につくという精神で、何とかこれは今国会で通していただきたい。もしここで数年この法案、改革がおくれるとしたら、日本は取り返しのつかない発展途上国に逆戻りしてしまうんじゃないかと心から心配しております。
どうもありがとうございました。(拍手)
○中野委員長 ありがとうございました。
次に、加藤秀樹参考人にお願いいたします。
○加藤(秀)参考人 構想日本の加藤秀樹でございます。
私は、余り時間がないものですから、きょうは、細かいことよりも、公務員制度改革に関して一番これが大事ではないかなと思うことに絞ってお話をしたいと思います。
マスコミ等でよく取り上げられますけれども、天下り批判あるいは不祥事、こんなものをなくすというのは当たり前のことです。しかし、私は、公務員あるいは公務員制度に関して一番何が大事かといいますと、もう言わずもがなの話ですけれども、いかにして一流の人材を集めて、そこで彼らをきちんと働かせるか、このことに尽きると思います。
日本にまだエリート官僚という言葉はありますが、私は、日本ではエリート官僚は今や絶滅種になったと思います。のみならず、ほかの国に比べて、誇れる一流の人材すら極めて少なくなってしまったんではないかと思います。
この背景としては、いろいろな問題があると思います。日本の自動車、電気製品、いろいろな工業製品、これは大変世界に誇れる質、日本人はそれを誇りに思っています。あるいは、例えばトヨタが車の生産台数で世界一になった、ああよかったと多くの日本人がそう思っているわけですけれども、しかし、事政治、行政の世界あるいは公務員の問題になると、何だか、お互い関係者が内輪もめばかりして、お互いのけなし合いばかりしている。その中で一番ひどいのはマスコミですけれども、マスコミというのは、ほとんど何もわかっていないコメンテーターなどが端っこばかりつついて、それがまた政治なり行政の世界の劣化をもたらしているようにしか私は思えません。私は、多くの国民もそう考えていると思います。
そういう意味で、今回の基本法案の趣旨に私は大賛成でありますし、先ほど堺屋参考人もおっしゃったとおり、ぜひこれを成立させて、戦後手つかずであった公務員制度改革の第一歩にしていただきたいなと思います。
それに当たっては、私は、野党民主党の対案の中で、これは補完的に採用できる、両方うまく使うとよりいい案になるなと思う点が幾つかあります。
一つは、天下り規制です。政府案ではちょっとこれは実効性が伴うのかなという点があります。二番目に、労働基本法の点についても、これも政府案についてはもう一歩踏み込んでほしいなということもあります。それから第三点として、設置法、各省設置法というのがありますが、これは公務員制度改革とあわせて、要らないんではないか、この点については後ほど触れたいと思います。
今言ったような幾つかの点がありますが、私は、それ以前に大前提として一番大事なこと、それは、政治家あるいは政党と官僚あるいは官庁との関係だと思います。
今回のこの基本法案の要綱の中にも「国家公務員制度改革の基本方針」という項目があります。そこで「議院内閣制の下での国家公務員の役割」という見出しが最初に出てきます。この「議院内閣制の下での国家公務員の役割」、議院内閣制がきちんと機能するかどうかということと公務員制度がうまく回るかどうかということ、これは表裏一体です。
そこで、これは私が申し上げるまでもなく、国会議員の皆さんはまさにそのプロなわけですから、今さらとは思いますけれども、少しおさらいをかねて整理をしたいと思います。
資料を用意いたしました。
一番最初に政と官のあり方の見直しという表があります。右と左、似たような絵ですが、矢印が下から上と上から下と、違います。私は、この右の図が本来の形ではないのかなと。総選挙に公約あるいはマニフェストを掲げて政党が戦います。この絵に即して言いますと、例えば、五個の政策を我が党は実現すると、それで選挙で勝ったとします。勝った方は、それを実現するため内閣をつくるわけです。内閣の中でその担当責任者が大臣であるわけです。それで、大臣が一人で仕事ができるわけではないですから、例えば日本ですと、大臣が霞が関を見渡して、ああ、あそこに五つの役所がある、それぞれ、ではA大臣はA省を使おうということで使っていく、これが各省の公務員だというわけです。
ここで、仮に要らない省、五つでいいのに六つある、六番目は要らないとなれば、それは直ちに廃止すればいいわけですし、あるいは統廃合をすればいい。足らなければつくればいい。
これは後ほど設置法のところでお話ししようと思いますけれども、例えば今、政府で福田総理の音頭で消費者庁をつくろうという話がありますけれども、役所を一つつくろうと思ったら大変なことになるわけです。各省庁が今持っている権限をやらないとか、いや何だとかいうことで大変なことになるわけですけれども、例えば欧米の主な国では、こんなことは普通は起こらない。それは、上からおりてきて、五個の仕事をするために五人大臣が行って、そのために五つ要るんだ、あるいは六つ要るんだと言えば、それですっと決まる話であります。
それに対して、では日本はどうなっているかというと、下から物事が進んでくる。今申し上げましたように、まずA省、B省、C省というふうに五つの役所があるわけですね。それがそれぞれ設置法の中に所掌事務、かつては、さらに権限規定というのもありました。そこで山ほど、百項目あるいはそれを超えるような所掌事務があって、それでその所掌事務すべてを合わせると日本国で行われていることすべてがすっぽりカバーされるという仕組みになっているわけです。
ですから、日本全体を、ここでいえば五つの省で分けている。五つの省に属する公務員が分け切っているという仕組みになるわけです。その上に選挙で勝った党の国会議員が大臣となっておりてくるという仕組みです。その結果、大臣就任当初の所信演説では、図らずもこのたびというようなあいさつになるわけでして、それで早速各省が用意したメモが読まれることが多いわけです。その瞬間から大臣は各省の利益代弁者として活動することになる。
セクショナリズムというのは、会社であれどこであってもほとんど不可避的にあるわけです。それが官庁にあっても不思議ではない。まあ日本の場合にはそれがあり過ぎる、きつ過ぎるわけですけれども、私は、官庁の側のセクショナリズム、縦割りが強過ぎると同時に、それを打破できない政治家、内閣、大臣の側の責任も極めて大きいと思います。
本来であれば、役所が、大臣、ぜひここは譲らないでくださいと言ったとしても、大臣が、冗談じゃないということで役人を殴り飛ばさないといけないわけですし、あるいは内閣の中で大臣同士、A省、B省の中で譲らないことがあっても、A大臣、B大臣の間できちんと議論して決着をつけるということが本来の形だと思います。
その部分が、なかなか言うはやすく行うは難しいにしても、やはり余りにも日本にはなさ過ぎる。と同時に、それをやるかやらないかが政治家の能力であると同時に、政治家が権力を握れるかどうかのかぎでもあると私は思います。それを役人にゆだねているがゆえに、役人が権力を最後まで握っているということだと思います。
同じことなんですが、もう一枚めくっていただけますでしょうか。弱い内閣、強い内閣と書いてあります。
議院内閣制のいわばお手本の国として、よくイギリスが引き合いに出ます。私は、イギリスがパーフェクトだとは思いませんが、それでも日本に比べるとはるかに強い内閣、どちらかというと右の絵に当たるものだと思います。先ほどと同じことですが、与党議員の中の党幹部、有力議員の中から閣僚が選ばれて内閣を構成します。それでその内閣が官僚を使って仕事をしていくわけです。それに対して日本の場合は、残念ながら左の絵ではないかと思います。
左と右は何が違うか。二つあります。一つは、内閣の四角の大きさです。この大きさが強弱をあらわしているつもりです。もう一つ違いますのは、与党議員と官僚が斜めの線で接して、そこに太い矢印をかいてあることです。こんな絵でかいてみたわけです。
日本の場合には、党実力者、党幹部というと、ほとんどの日本人が余り大臣の顔を思い浮かべないんですね。大臣以外の人が党幹部とか党実力者と呼ばれることが多いわけです。この人たちが外にいる。ここでまず、与党の中で二重権力構造が生じているわけです。
もう一つは、先ほど言いましたように、官僚がいわばしんどい部分をやるわけですね。与野党に対する根回し、それから関係団体等利害関係者に対する説明。説明とか根回しというのは、まさに交渉、折衝のプロセスそのものです。ここに実は政治の真髄があるんだと私は思います。
真髄という意味は、そこに交渉能力がある人が裁量権を持っているわけです。政府案はこうだけれども、ここは関係団体がいろいろ反対しているから、ではちょっと妥協してこういうふうにするか、そのさじかげんを官僚が持っているから官僚に権力が残っているわけです。これはとてもしんどい役回りです。私も役人を二十年余りやっていましたけれども、大変しんどい。
しかし、しんどいことと権力を持つことは、当たり前ですけれども、セットです。こうやって内閣の中に集中されるべき権力が党と官僚に分かれて、それぞれで二重権力になっている。したがって、官僚と党の幹部と言われる人たちが、いわば内閣そっちのけで場外乱闘で決着することが多い。これが、ここで言う与党議員と官僚の斜めの線、そこにある矢印の意味です。
ですから、今回、与野党案ともに、議員と官僚の接触に対する何らかの制約、制限という案が出てきたのは大変に喜ばしいことだと思います。これも申し上げるまでもないですけれども、イギリスではこれが慣例によって制約されております。
以上、今さらとは思いましたけれども、私が今申し上げましたのが、議院内閣制の本来のあり方、政党と、内閣を間にして官僚との関係性ではないかと思っております。
ですから、今回、公務員制度を考えるに当たって、先ほど堺屋参考人もおっしゃったとおり、主役はあくまでも政治家。ただ、その場合の政治主導というのは、政党主導でもあるいは議員主導、国会主導でもなくて、内閣、閣僚という意味での主導、これが政治主導の本来の意味だと私は思っております。これが実現できなければ、要するに、使う側が、会社の役員の側がきちっとしないと、やはり社員の方はなかなか何していいかわからない。ですから、私は、本来の役人が、きちんといい人間が集まって働くために、ぜひこの部分をこの際にきちんとしていただきたいな、そのためにぜひこの法案を成立させていただきたいなと考えております。
あと、余り時間がありませんが、数分いただきまして、もう一つ、設置法の話を少ししたいと思います。
設置法というのは、これは各省設置法、各省の仕事の中身を八十項目、九十項目、百項目と詳細に書いているものであります。私は、この設置法というのは基本的に要らないと思っております。この前の橋本行革、十年余り前の橋本行革までは、設置法の中に所掌事務と権限規定と二つありました。これは自慢のようになりますが、構想日本の発案でこの権限規定がとれたわけです。
なぜ、この権限規定、所掌事務ということにそんなにこだわるかといいますと、もう一ページあけていただけますでしょうか、四ページの絵です。
かつて、二〇〇一年まではどうなっていたかというと、所掌事務、権限というのが各省設置法に書かれていた。本来、行政というのは、各行政作用法に基づいて、法律の中に書いてあることのみに基づいて行政行為が行われるはずです。ところが、ちょっとあっちこっちに飛びますけれども、もう一枚めくっていただきますと、先ほど少し申し上げましたように、各省の設置法を全部足し合わせると、日本の中で日本人が行っていることはどこかの役所の仕事の範囲に必ずおさまってしまうような書き方になっているわけです。
かつて、科学技術庁という役所がありました。そこに、最近宇宙基本法ができましたけれども、宇宙の促進についてという項目がありました。その権限規定はこうなっていたわけです。宇宙の利用を促進すること。括弧書きがありまして、ちょっと正確に覚えていませんが、ただし他の行政官庁に属するものを除くといった意味のことが括弧書きであったわけです。ということは、科技庁を初めすべての省庁で宇宙を切り分けているということなんですね。
これは、もとをたどれば、明治の初めに、天皇が日本全体の面倒を見るんだ、ただ、一人では面倒を見切れないからそれを十個の役所に切り分けよう、十個の役所ですっぽり日本が入る、その発想をそのまま引き継いでいるというわけです。それを文言であらわしたのがこの設置法であり、所掌事務であり、権限であった。
例えば、権限と所掌事務の関係でいいますと、少し古い話になりますが、旧大蔵省でいいますと、予算に関しては、予算及び決算に関することという記述と、予算及び決算を作成すること。普通の人が聞いてもこの違いはわかりません。関することというのが所掌事務です。作成することというのは権限であります。ですから、権限と所掌事務がダブルでほとんど同じように、設置法の第二条、第三条、あるいは第三条、第四条にダブルで書かれていたわけです。
ということは、何を意味するかというと、二〇〇一年までは、各省の権限を全部合わせると日本人をすべて仕切れるという仕組みになっていたわけです。ですから、権限があたかも、具体的な法律の中だけではなくて、各設置法の中にまで存在するといったような規定になっていた。だからこそ、法律に書いていないことでも、行政指導という名前のもとに広範に官庁が指導をしてきた、いわばちょっかいを出してきたということです。
それが、権限が二〇〇一年を境にしてなくなりました。しかし、所掌事務というのは本来は役割分担だけなんです、権限とは何にも書いていない。しかし、それでも、まだ所掌事務があるがゆえに、あたかも権限があるかのように日本全体が切り分けられているということは余り変わっておりません。それが四ページ、五ページの真ん中の絵であります。
ですから、この際、公務員制度改革とあわせて、私は、設置法というものをもうなくすべきである、あるいは、どうしても書きたいのであれば、それは法律以下のレベルに落とすべきではないかと思います。
ちなみに、この国家公務員制度改革基本法案関係資料の十三ページに、第三章、国家公務員制度改革推進本部の項目があります。そこで、十四条に早速所掌事務があります。これは、推進本部をつくる、推進本部の所掌事務は次のとおりだと、「次に掲げる事務をつかさどる。」として二つ項目があります。一つは、「国家公務員制度改革の推進に関する企画及び立案並びに総合調整に関すること。」となっています。二つ目が、「国家公務員制度改革に関する施策の実施の推進に関すること。」こんな所掌事務は実は要らないんです。この法律があれば、推進本部はこの法律だけに基づいて仕事をすればいいというのが本来の形で、大部分の国でもそう行われています。
ところが、この企画立案並びに総合調整に関することというような一行、あるいは二項目、二行を入れると、法律以外にも、いや、こんなことも、こんなことも、こんなこともということで、延々と役所の仕事が広がっていくわけです。
ですから、私は、この機会にぜひ設置法も廃止、あるいは法律以下のレベルに落とすということも実現していただきたいなと思います。
これで私の話を終わりたいと思います。(拍手)
○中野委員長 ありがとうございました。
次に、田中参考人にお願いいたします。
○田中参考人 田中一昭でございます。
本日は、国家公務員制度改革基本法案に対する意見を述べる機会を与えていただきまして、光栄に存じております。
私は、長年にわたり、総務省の前身の総務庁及びその前身の行政管理庁で、主として行政の評価とか行政組織や定員の管理、そして行政改革の仕事に従事してまいりました。また、今般の一連の改革に際しましては、官房長官主宰の官民人材交流センターの制度設計に関する懇談会の座長を仰せつかり、さらに、総理主宰の公務員制度の総合的な改革に関する懇談会の委員を務めさせていただきました。本日は、このような経験に基づき発言させていただきたいと存じます。
まず、今回の基本法案が提出されるまでの経緯を簡単に振り返ってみたいと存じます。
御承知のとおり、公務員制度改革は、昭和三十七年に始まった第一次臨時行政調査会を初めとし、昭和五十六年に始まる土光臨調、第二次の臨時行政調査会でございますが、それとか、平成九年の行政改革会議の最終報告、平成十三年の公務員制度改革大綱等々、過去四十年以上にわたり、さまざまな角度から検討され、提言がなされてきました。しかしながら、いろいろ経緯はございましたけれども、さしたる進展は見られませんでした。
このような状況に変化がもたらされたきっかけになりましたのは、昨年四月二十四日の閣議決定であります。「公務員制度改革について」というこの閣議決定は、公務員制度改革の全体像を描きながら、まずは実現可能なものから取りかかろうということで、能力・実績主義に基づく人事管理と再就職規制の導入を内容とする国家公務員法等の改正法を国会に提出し、引き続き、公務員制度の総合的な改革を推進するための基本方針を盛り込んだ法案を立案、提出することを定めております。
閣議決定に際しましては、政府・与党内でも大変な議論がございましたが、総理の強いリーダーシップにより閣議決定にこぎつけたと伺っております。
このような流れの中で、昨年の通常国会で、国家公務員法等の一部を改正する法律が成立し、職員の任用、給与その他の人事管理については、採用試験の種類や年次にとらわれず、人事評価に基づき適切に行うという原則が明らかにされ、また、公務員の再就職については、国民の目から見て予算や権限を背景とした押しつけ的なものと受けとめられかねない府省によるあっせんを禁止し、内閣府に設置する中立的な官民人材交流センターに一元化することが定められました。
私は、改正法が成立した後、先ほど申し上げましたとおり、官民人材交流センターの制度設計に関する懇談会の座長を務めさせていただきました。
懇談会においては、センターの公正性、効率性を確保すると同時に、機能するセンターを設計すること、この双方が求められておりまして、したがって闊達な議論が行われました。それだけに取りまとめに労を要しましたが、昨年十二月、報告書を取りまとめることができました。
現在は、これに基づき、今年中にセンターを立ち上げるべく具体的な制度設計が進められておると聞いております。
前置きが少々長くなりましたが、この基本法案は、このような去年からの改革の動きの延長線上にあるということを確認させていただきました。
さて、基本法案についての私の所感を申し上げます。
私は、冒頭に申し上げましたように、総理のもとで開催された公務員制度の総合的な改革に関する懇談会、以下制度懇と呼ばせていただきますが、この制度懇にも委員として参加させていただきましたが、法案の内容は制度懇の議論や報告書の趣旨を踏まえたものとなっておると考えます。その基本については、先ほど小委員長を務められた堺屋参考人がかなり体系的に御説明になりました。
私のこの法案についての所感を申し上げると言いましたが、幾つかのポイントを申し上げます。
まず、内閣人事庁による一元管理につきましては、私は行政の実務を経験した中で、行政の縦割りの弊害の根源は公務員制度にあると痛感しておりました。長年にわたり、内閣による一括採用、一括管理の必要性を主張してきたわけでありますが、人事権の所在が不明確になるとか、優秀な人材が採用できなくなるという、私から言えば的外れな議論でいつも実現されませんでした。この法案により、ようやく人事の一元管理の道筋がつくことになり、縦割り行政の弊害は克服されることになるのではないかと期待しております。
特に、一括採用につきましては、ある特定の省に行きたいという希望があるから公務員試験を受けるのであって、一括採用ではどこの省に配属されるかわからないから、優秀な公務員志望者が減り、いい人が採用できなくなるのではないかという意見がよく聞かれます。しかしながら、採用主体である内閣人事庁が希望者と各府省の意向を踏まえて配属先を調整して決めていくわけでありますから、そのような御批判は当たりません。
また、一括管理については、数多くいる幹部職員を一括管理することなど可能なのかという御意見もございます。しかしながら、各省の人事当局と内閣人事庁が密接に連絡をとりながら進めれば、課長級以上であれば一括管理は可能と考えます。
私は、制度懇における議論で、一括管理につきまして、本籍は内閣、現住所は各省というようなイメージですと申し上げてきました。各省に配属されれば、当然その大臣の指示下に入るわけであります。ただ、本籍が内閣でございますから、いろいろ一定の期間で大臣同士が相談して、続けるか、またほかの職を経験させるか決めればいいことだと思います。
この点、基本法におきましては、「幹部職員は、内閣人事庁及び各府省に所属するものとすること。」「課長その他の管理職員は、内閣人事庁に併任するものとすること。」とされており、私の申し上げてきたイメージに近いものとなっておるのではないかと理解しております。
本法案の立案の際には、幹部職員の所属について法案にどう書き込むかということについて総理が大変苦心されたと伺いましたし、また、国会の審議においては、「内閣人事庁及び各府省に所属」という書き方ではあいまいなのではないかという御指摘もなされていると伺っております。しかし、この法案は基本法でありますから、幹部職員が内閣への忠誠心を持つようにするという改革の基本的な方向性について担保されておれば十分で、詳細な設計について現時点でとやかく言う必要はないのではないかと考えます。今後、制度懇の報告書の趣旨を損なうことなく、制度の具体化を進めていただければよいのではないかなと考えております。
次に、幹部育成の仕組みについて見直すこととしていることも重要な点だと思います。
巷間、キャリアシステムと呼ばれている実態がございます。無論、そのような名の制度が存在するわけではありませんが、私は、1種試験という採用時の一回の選抜のみで、能力、実績にかかわらず一斉に課長職等まで昇進することが多い実情を指している言葉だと理解しております。
私が勤務しておりました総務庁では、私は秘書課長で、人事課長のことを秘書課長とも言っておりましたが、総務庁では1種であっても2種の人より昇進がおくれているというようなケースが幾つも存在しておりましたけれども、これは一般的ではないでしょう。本来、幹部の任用は、本人の希望と人事評価に基づいて適切に行われなければなりません。その点、基本法案が、幹部候補育成課程の対象者であることまたは課程対象者であったことによって管理職員への任用が保証されるものとしてはならない、そういうことを明確に定めておることは評価に値すると考えております。我々の報告書が実現された表現であると理解しております。
幹部の育成については、幹部候補を当初から決めてかかることはけしからぬという御意見もあろうかと存じます。実際、制度懇においても、そのような議論はございました。しかし、外国を見ましても、主な国では、どの国においても幹部職員候補の早期選抜を行っております。このことの意味を考えなければいけないと存じます。ノーブレスオブリージュという言葉がございますが、私は、組織を背負って立とうという気概を持っておる人を採用することは、組織にとってとても大切なことだと考えております。無論、その上で、一たん幹部候補となったからそのままずっと幹部候補ということではなく、人事評価によって選抜や絞り込みを行ったり、また公募を積極的に行ったりすることで、官民問わず有能な人を登用するという柔軟な組織としていくわけであります。
もちろん、この仕組みが機能するためには、平成二十一年度から新たに導入される人事評価制度が的確に運用されることが前提となります。既に準備が進められていると思いますけれども、政府においては、ぜひともしっかりした評価制度を確立していただきたいと思います。
第三点目。国会の御議論では、基本法案において、天下りについてもっと踏み込んだ措置を書き込む必要があるとの御意見が出されていると伺っております。
天下りの問題につきましては、冒頭申し上げたように、既に昨年成立した法律において、各省によるあっせんを禁止し、公正中立な官民人材交流センターに一元化することを定めております。このことにより、公務員の再就職に関する国民の不信を解消し、さらには縦割り行政の弊害の是正をするということにつながると考えております。
もっとも、天下りに関しては、そもそも公務員に対する退職勧奨、いわゆる肩たたき、これこそが天下りの大きな要因となっており、これをやめるべきではないかという民主党の強い御意見もございます。私も、希望する職員については定年まで勤務できる仕組みや再雇用というようなこと、あるいは役職定年制の導入など、考慮すべき課題であると考えております。ただし、これは一朝一夕でできる話ではございません。センターをきちんと機能させることと同時並行で、このような検討も進めていけばよいのではないかと考えております。
最後に、基本法の大きな目的として、内閣総理大臣初め各大臣がリーダーシップを振るえる政治主導の確立があることについては異論のないところだと存じます。それは、既に堺屋参考人、加藤秀樹参考人が述べられたことであります。
これについては、公務員サイドだけからの改革ではうまくいきません。例えば、副大臣や大臣政務官、今、多い省では大臣以下五人、政から入っておられます。実は、副大臣とか大臣政務官というのは、各大臣の申し出によって内閣が任免すると国家行政組織法とか内閣府設置法にちゃんと書いてあるわけでありますが、実際はそんなことは行われたことはなくて、派閥のバランスなどという論理で任命が行われております。この大臣以下の五人あるいは三人が力を合わせられますと、かなりのリーダーシップが振るえるのではないかと私はひそかに考えております。
なお、今、加藤秀樹参考人が言われたように、イギリスのようにもう少し入れるべきではないかと。これは私も、必ずしも反対というよりか、賛成であります。公務員制度改革とあわせ、このような政治サイドからの改革にもぜひ取り組んでいただきたいと思っております。
時間の関係で取り上げなかった論点もございますが、要すれば、質疑の中で御質問に対して申し上げることにしたいと存じます。
さて、冒頭に申し上げましたとおり、昨年の国家公務員法等の改正によりまして、今まで遅々として進まなかった公務員制度改革がようやく動き出し始めました。公務員制度改革の方向性につきましては、与野党、御異論はないものと思います。ぜひとも基本法案を今国会で成立させ、これに基づき、早急に制度の具体化の措置を講じていくことが公務員制度改革のさらなる進展に不可欠であると考えております。
ありがとうございました。(拍手)
○中野委員長 ありがとうございました。
次に、加藤健次参考人にお願いいたします。
○加藤(健)参考人 おはようございます。弁護士の加藤と申します。
私は、これまで二十年間、弁護士として活動してまいりました。主に労働事件が多くて、最近では、公務員労働者の代理人あるいは弁護人として事件を担当する機会がふえてまいりました。一時、公務員については、いわゆるストライキ権をめぐって裁判が大きな注目を浴びた時期がありましたけれども、ここのところずっとなかったんですが、最近公務員関係の労働事件がふえています。
なぜかというと、きょう議論されているのはまさに国家公務員制度の改革法案なんですけれども、この十年ぐらい、いわゆる省庁再編、民営化あるいは独立行政法人化など、実際に公務員の職場の組織が大変動しているんですね。ところが、実際にその変動の方が先に行ってしまって、そこで働いている公務員の、例えば雇用をどうするのか、労働条件をどう決めていくのかという基本的なルールを確認しないままに組織変動の方が先に行っているものですから、後で事件が起こるということがふえています。
したがいまして、そういう意味でいうと、実際に進んでいる事態の中で、法的に解決を求められている課題がふえているということを痛感しています。
ぜひきょうはそういう事実を指摘したいと思いますので、この法的な解決を求められている点について議員の皆さん方の理解をいただいて、それをぜひこの議論の中に入れていただきたいということで意見を述べたいというふうに思います。
私はそういう立場ですので、今までの三名の方とはやや違った立場からの意見陳述になると思います。
法案全体を一読して感じたのは、これは一般にも言われていることですけれども、公務員制度といいましても、実際には、一般職だけで三十六万と言われている公務員の方が働いています。これを支えている一人一人の国家公務員というのは、実際には労働者であり市民であるわけでして、この労働者、市民としての基本的な権利をどうするか、労働条件をどうするかというルールをどう決めていくかということが、全体として残念ながら欠落しているというふうに感じました。
実は、国家公務員の権利については、戦後一貫して、一九四八年の国家公務員法によって決められた体制、これは占領下での占領軍の指令による改正ですけれども、大きく言うと争議権それから協約締結権の否定、それから市民的自由の制限、これは人事院規則一四―七に象徴される政治的行為の禁止ですけれども、こういう規定がずっと憲法違反だという指摘をされ続けていて、大きな裁判もあって、そうはいっても改革の機会がなかなかなかったんですけれども、ここで全体の公務員制度を大きく改革するということであれば、戦後ずっと課題になってきたこの国家公務員の基本権の制限をやはり撤廃する方向での議論がもっとクリアになされるべきだというふうに私は考えます。
しかも、この間、ILO等からも再三、公務員制度改革の議論に関連して、労働基本権の保障については具体的な提言もなされているわけですから、ぜひ、公務員労働者の基本的な権利、これをどう保障するかという議論をこの改革議論の前提というか出発点として据えていただきたいというのが私の基本的な立場でございます。
きょうは、具体的にどういうことが起こっていて、どういうことが問題になっているかという理解をぜひ深めていただくために、私自身が弁護士としてかかわった事件に即して問題提起をさせていただきたいと思います。三つの事件について申し上げます。
一つは、今、私、二件の国家公務員法違反の刑事事件を担当しております。これはどういう事件かというと、一つは社会保険庁の職員の方、それからもう一つは厚生労働省の職員の方の事件ですが、要するに、休日に仕事と関係なく政党の機関紙を配布した、これが国家公務員法、人事院規則一四―七に違反するということで、逮捕をされて起訴されている。社会保険庁職員の事件は、残念ながら、一審では、罰金十万円、執行猶予二年という非常に中途半端な有罪判決が出ました。
御存じのとおり、この公務員の政治的行為の禁止については、一九七四年に猿払事件という最高裁の判決があって、これで合憲判決が出たんですが、憲法学者はだれも支持する人がいない、社会的にも批判を浴びて、ずっと発動されてこなかったんですが、このところビラまきで逮捕、起訴という事件が相次ぐ中で、再びこの規定が使われました。
実際、今、裁判所で私たちは弁護人として弁護をやっているわけですけれども、一般に公務員の政治的行為の禁止というふうに言いますと、大体多くの方は、公務員が自分の地位や職権を利用して、例えば政党支持を強要したとか、あるいは自分の支持する議員への投票を持ちかけたとか、こういう行為をしたんじゃないかというふうに思われる方が多いんですが、実際に起訴されて事件になっているのは、さっき言ったように、純然たる一市民としての行為ですね。全く公務員の仕事や身分とは関係のない行為。ですから、今の公務員制度というのは、公務員が仕事と関係なく、自分の主義主張に基づいて政治活動をやっただけで刑罰が科せられるという非常に恐ろしい制度になっているんだということをぜひ御理解いただきたいと思うのです。
これは、言論の自由、政治活動の自由を保障した憲法二十一条に反するという議論はもちろんですが、今や先進国の中で、公務員だからといって勤務時間外まで特定の政治行為をしちゃいかぬ、しかも、それを刑罰で規制をして、警察がまず出張ってくる、こんな国はもうありません。アメリカでも一九九三年に国公法の母法と言われたハッチ法という法律が大改正されまして、勤務時間外の政治活動は原則自由というふうになっております。
したがって、この点については、まともに議論すれば、恐らく、公務員だからといって二十四時間何にも政治的な行為をしちゃいかぬ、しかも、うっかり何かやればすぐ警察に捕まる、こういう制度は一日も早くなくしていただきたい、この議論をぜひお願いしたいというのが第一点でございます。
それから、二つ目に申し上げたい事件は、人事院勧告をめぐる問題です。
二〇〇二年の人事院勧告で初めて国家公務員の基本給を切り下げるという勧告が出ました。賃金の減額ですね。これに対して、給与法でそのとおり改正をされまして、年末の一時金で、さかのぼって四月分からの差額が精算されちゃったわけですが、これに対して、さすがに一時金で法律成立前の分までさかのぼって減額するのは違法だということで、多くの公務員の方が原告となって国家賠償請求訴訟を提起しました。残念ながら、訴訟では請求が棄却されて終わったわけです。
この事件を通じて、今まで人事院勧告というのは、国家公務員の労働基本権を制約する代償措置というふうにずっと評価をされ、それがあるから合憲だという判断をされてきたんですけれども、いざ基本給自体が切り下げられる、そういう問題が出たときに、では、公務員労働者は何ができるのか。実際に、もちろん協約締結権はありませんから団体交渉できない、それから争議もできない。民間であれば、当然、賃金の減額については合意によるのが原則だという確立された判例法理がございます。ことしの三月から施行された労働契約法でも、労働条件の変更は合意によらなければだめだ、こういう原則が定められています。
したがって、常識的に考えれば、国家公務員だからといって、今まで決められた労働条件を不利益に変更するのであれば、結論としてそれが是認されるかどうかは別としても、何らかの対抗措置あるいは救済手段がなければおかしいのに、結局、人事院が基本給を切り下げるという勧告を出し、それが給与法で決められてしまうと、何の対抗手段もない、救済手段がないということが明らかになったのがこの事件です。
この事件を通じて、やはり、人事院勧告というのが代償措置としてあると言われてきたけれども、その限界というのが明らかになりました。
もともと、考えてみると、憲法二十八条は、「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。」と決めております。この勤労者の中には官民を問わずあらゆる労働者が含まれるというのは、これは争いのない解釈であります。
それから、この問題については、ILOからも再三、日本政府に対しては勧告がなされておりますが、とりわけ二〇〇二年十一月以降は、今現に議論されている公務員制度改革との関連で、具体的に争議権、団体交渉権、協約締結権を保障することを明示的に求められている、三回にわたって求められています。
残念ながら、今回の法案では協約締結権だけが触れられておりまして、しかも、その検討の中身が、認めた場合の費用と便益、こういうことを考慮してとなっておるんですが、やはり権利にかかわることは損得で決めるべきものじゃないと思います。公務員の仕事というのは公共性がありますし、いろいろな配慮をしなきゃいけないことはもちろんです。あるいは、協約締結権にしても、予算との関係をどうするか、いろいろな問題がありますが、やはりそれは、基本権を保障する、回復するという方向を大きく打ち出した上で具体的にどういう制度にするかというのを議論すべきだと思いますので、ぜひ、この議論の中で、公務員の労働基本権は回復するという方向を明確にした上で、後で各論を論じていただくのが適切ではないかというふうに思います。
それから、三つ目に申し上げたい事件は、国立病院の独立行政法人化に伴う事件です。
二〇〇四年の四月に、国立病院が全体として特定型の独立行政法人に移行いたしました。このときに新しく就業規則をつくったわけですが、今までの正職員の賃金が減額されました、多い人で一割近く。ところが、独立行政法人化するまでは国家公務員法が適用されますので、団体交渉ができないんですね。交渉権がないもとで、いきなり、新しい法人がつくった就業規則で今までの賃金がダウンされるということが実際に起こりました。
それからもう一点は、国立病院は、定員法で定められた職員数ではなかなか仕事が回らないということで、賃金職員と言われる、フルタイムで働いているけれども日々雇用、いわゆる非正規の職員が大量におりました。この方々は、何にも病院自体変わっていないのに、患者さんもそのままですし、医療機器等もそのままなのに、独立行政法人になった手前で任用期間が満了したというただそれだけの理由で雇用継続を拒否されました。長い人は三十年ぐらい働いている人もいたんですね。
こういうことが現実に厚生労働省の管轄下の国立病院で起こったために、今私たちは、賃金の切り下げ等の労働条件の不利益変更と非正規の職員の方の雇いどめの問題を中心に裁判をやっております。
この点でも、本来、いわゆる合意によらない労働条件の引き下げ、あるいは、雇用期間が決まっているから、幾ら反復継続して正職員と同じように働いていても、期間が満了したから何にも理由なく切れるんだ、解雇できるんだ、こういうことについてむしろ率先的に規制する立場の厚生労働省の管轄下でこういうことが起こったということについて、私は非常に大きな問題意識を持っております。
実際に雇用を打ち切られた賃金職員の方は、新しく採用された方もいるんですが、フルタイムじゃなくて短時間で、しかも、一時間当たりの賃金単価が大幅に減らされた条件であれば採用すると。だから、実際に年収が半分ぐらいに落ちた人がかなりいらっしゃいます。要するに、組織変動の中で、政府というか行政の側自身がいわゆる官製のワーキングプアをつくってしまっている、こういう事件が具体的に起こっているわけですね。
ですから、ぜひこういう点について、どう法律的に対処をしていくのか、規制をしていくのかということも御議論いただきたいというふうに思います。
こういう事実を踏まえた上で、幾つかちょっと申し上げたいことがあるんですが、一つは、私が今言っている、公務員労働者の権利や労働条件の問題というのは、別に公務員の既得権を擁護するとか、そういうこととは違います。労働者ですから、基本的な権利が保障され、労働条件決定のルールがちゃんと決められるのは当たり前なんですが、それ以上に、公務員制度についてこういう議論をするということは、やはり全体の労働者の問題にもつながるというふうに考えています。
一つは、やはり公務員がどういう立場で仕事をするかということなんですね。これは当然、国民の権利を守るという立場で仕事をしないといろいろな問題が起きてきます。しかし、実際に業務をやる、職務をやる労働者自身が、基本的な労働者や市民としての権利を保障されていないのに、ほかの人の権利をちゃんと保障しろと言われても、これはなかなかわからないというのが本来の筋なんですね。
ですから、そういう仕事に当たっているからこそ、その業務に携わる公務員の基本的な権利はきちっと保障すべきだというのが私の考えでございます。
それから二番目は、さっきも申しましたように、公務員制度の改革の中で、公務員労働者の権利をどう確保しルールをつくっていくかということは、今社会的に問題になっている労働者全体の問題、大きく言うと、長時間労働をどう克服していくか、あるいは非正規の、いわゆるワーキングプアと言われる状況をどう克服していくかということにもつながっているということです。
今回の法案では、仕事と生活の調和を図ることのできる環境という指摘がありました。これは大いに結構なことですけれども、実際には、公的な統計資料によっても、国家公務員の職場では長時間残業が蔓延しています。
例えば、平成十八年度の白書によりますと、政府が決めた目安時間の三百六十時間を超えた職員は全体で一九・五%、これは二割ぐらいいます。しかも、他律的業務が多い本府省では四二・三%。この他律的業務というのは、議員の皆さんはおわかりでしょうが、これは国会の答弁の準備だとか質問の準備だとかで時間を割かれるという意味で、半分近い人が目安時間を上回る残業をしている。現実に、労働組合が行った調査ではもっと長い残業時間の統計も出ているぐらい、非常に長時間労働を強いられております。しかも、そのかなりの部分がサービス残業になっているというふうに思います。
したがって、今回の制度改革において、公務員の職場から率先して長時間労働やサービス残業をなくしていく、このことをやはり明確にすべきだというふうに思います。
それからもう一つ。先ほど言いました、公務員の職場でなぜこれだけ非正規の問題が出ているかというと、本来、公務員の仕事というのは、恒常的な仕事は正職員がやらなきゃいけないという仕組みになっているんですね、法律の建前は。ところが、実際には、人員が追いつかないために、そういう身分の保障のない非正規の労働者が今三割ぐらいになっているというふうに言われています。この人たちの権利をどうするのか。
今はちょうどそういう法律のはざまの中で、任用者にもう任用しないと言われればそれに抵抗できないような、こういう法律的な問題点が明らかになっている。実態として、恒常的な仕事をするところに非正規を入れること自体が問題なんですね。さらに、そういう仕事をさせておきながら、いざというときは、任期があるから満了で切り捨てる、こういうことはやはりやってはいけないというふうに政府が率先してやらないと、民間はもっと大変なことになるという意味で、ぜひこの点も御議論いただきたいと思います。
最後に私が申し上げたいのは、今回の法案では、官民の交流とか、あるいは能力及び実績に応じた処遇ということが強調されています。ただ、私もいろいろな公務員の方とつき合っていてわかるんですが、これは公務員ということではないんですが、やはり公務にかかわる仕事というのは、単純に民間企業と同じ原理では回らないということです。
今回の法案の中で、例えば第九条で、人事評価のことが書かれてあります。人事評価のトップは、イとして、「国民の立場に立ち職務を遂行する態度その他の職業倫理を評価の基準として定める」とあるんですが、これは常識的に考えると、人事評価の基準ではなくて、あらゆる職員が持たなきゃいけない基本的な視点ですよね。
あるいは第十条を見ますと今度は、第一号で、「職員の超過勤務の状況を管理者の人事評価に反映させる」、こういう記載がございます。もちろん、残業が多いのは管理者のせいだという側面はないとは申しませんけれども、これも人事評価の問題ではなくて、やはり人員の補充という基本的な問題に尽きるだろう。
そういう意味で、私が申し上げたいのは、別にこの辺のあら探しをするということではなくて、結局、公務員の中に人事評価とか査定を入れようとしても、やはりなかなか難しいんですね。こういうことを言わざるを得ない。「国民の立場に立ち職務を遂行する態度」とは、だれがどうやって判断するんですかと言いたくなります。もちろん、明らかに態度の悪い人についてどういう指導をするかというのは別です。
ですから、やはり私は、競争だとかそういうことではなくて、むしろ公務員が現実に担当している仕事の公共性、これをどう再確認して自覚をしていくか、そのことが可能になるゆとりのある条件をどう整備していくかということが今求められているのではないかということを申し上げたいと思います。
最後に、議論の進め方について一言だけ述べさせてください。
そういう立場で私はしゃべらせていただきましたけれども、実際の公務員の職場の実態がどうなっているか、一人一人の公務員がどういう意見を持っているか、あるいは、行政を利用している、企業だけではなくて一人一人の国民がどういうリクエストを持っているかということを十分酌み上げていただいて、そういう場をどんどんつくっていただいた上で、この公務員制度改革の議論は進めていただきたいということを最後に希望として申し上げたいというふうに思います。
どうもありがとうございました。(拍手)
○中野委員長 ありがとうございました。
以上で各参考人からの御意見の開陳は終わりました。
―――――――――――――
○中野委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大塚拓君。
○大塚(拓)委員 自由民主党の大塚拓でございます。本日は、参考人の皆様、お忙しい中おいでいただきまして、大変ありがとうございます。
公務員制度改革基本法案に関して、皆様にいろいろお伺いをさせていただきたいわけですけれども、今の状況を一言で言うと、基本的に、政府に対して国民のガバナンスがきいていないということなんだろうというふうに思っております。
堺屋参考人の方から三つ、死に至る病ということで、組織が共同体化している、経営環境に過剰適合している、成功体験に埋没している、こういうお話があったわけですが、この結果、日本の政府組織というものがなかなか成果を出せないことになっているということは、最近、いろいろな問題もマスコミをにぎわせておりますし、議論の余地がないところなのかなというふうに思うわけです。成果が出ていないにもかかわらず組織というものの改革が進んでいない。
本来であれば、内閣が成果を出せなければ、民主主義、議院内閣制でございますから、選挙によって有権者がこれを取りかえるということによってしっかり改革が進むことが期待されているわけですけれども、それができていない。そこに、今回の法案が処方せんとして出てきたんだというふうに理解をしておるわけです。
この処方せんがどういう内容か、私なりにざっくり整理しますと、三つの部分があるのかなと思っています。一つが、政治と官僚というか、政治と役所の関係ですね。政治主導、官僚主導という部分。もう一つが、内閣と各省の関係。最後に、おのおのの公務員の質の問題。この三つのところが大体処方せんとして必要だということで、この法案に盛り込まれているというふうに思っておるわけです。
堺屋参考人の共同体化している問題ということですけれども、その共同体というのが、今、政府組織全体というよりは各省が一つ一つの共同体になってしまっている。各省割拠主義というふうに言われているわけですけれども、そういうところが問題なんだと思うんですね。これは、どっちかというと、よく世の中で、役人が信用できないとか優秀じゃない、なくなっているんだ、こういう話になるんですけれども、システムの設計の問題なんだと思うんです。恐らく、お四方中三名の参考人の方はほぼそれで賛成いただけるんだと思うんです。
加藤秀樹参考人もおっしゃっていたように、その結果として、システム設計が間違っていることによって部分最適を各省に所属している人たちがついつい追求してしまう。その結果、国全体としての全体最適というものが満たされない、こういう状況なんだと思うんですね。一般企業に置きかえて言うと、全社レベルで物を考えるような社員に育ってほしいわけですね、役人に。経営マインドというのを持ってほしい。ところが、個別の、自分の目先の仕事というものに特化してしまっている。その結果、社会保険庁なんかもまさに部分最適を追求した結果だと思いますし、国土交通省が公益法人をつくりまくってしまった、これもそういうことなんだろうというふうに思うわけでございます。
そこを、これも三参考人の方が共通しているのは、この改革というのはもう絶対進めなきゃいけないんだと。少しずつ、自公与党と民主党の間では若干差異はあるけれども、これは小異を乗り越えてでも大同につかなければいけない、こういうお考えだったというふうに聞かせていただいたわけですが、私も全くそう思っておりまして、政府の提出された法案、このままでなければ絶対いけない、こういうふうには思っておらないわけでございます。
何とか民主党さんの方とも知恵を出し合いながらこの国会で成立をさせていきたい、そういうことでございますので、民主党案と自公与党案、政府案の違いのある部分についてちょっと中心的にお伺いをしたいな、こういうふうに思っているわけでございます。
まず一点目に、政官接触の制限という部分があると思います。これは、自民党の党内で議論しているときも、さんざん議論が紛糾したところでありまして、政治家の方に情報が入ってこなくなるのではないかということで、大変に懸念をする方たちも多かったわけでございます。
一方で、今、堺屋参考人、田中参考人からも御説明がありましたように、政治主導を確立していくというためには内閣、大臣というものがしっかりグリップをきかすことができなければいけない、そういうために政官接触というものが一定のルールのもとで行われるようにしなければいけないんだというお話がございました。私もそう思っておるんですが、ここが民主党さんは若干違うところがあるんだと思うわけですね。
民主党案というものをちょっと読んでみたわけですけれども、政官接触の制限には反対のスタンスであるのかなというふうに認識しているわけですが、その上で、記録をしっかり残して、情報公開をしっかりしていくことによってガバナンスを担保しよう、こういう案だろうというふうに思うわけでございます。
そこでちょっと思いますのが、少し視点が政府案と民主案でずれているところがあるのかな。政府案の方は、どっちかというと、政治主導を確立するために内閣、大臣のグリップをどうやってきかせるのか、こういう視点である一方、民主党さんの案の重点は、どっちかというと、例えば政治家から政府に働きかけをする、役人に働きかけをする、政府を私物化するとか、そういう方向の処方せんとして情報公開というのが適しているのかなというふうに個人的には思っているわけですけれども、いずれにしろ、個人的に思うのは、両立しないことはないなと思うわけでございます。
政官接触の制限については多少アレルギー的反応もあるのかなと思っていまして、今までと状況が変わりますので不安なんですね、政治家は皆。私も若干不安になるところがあるわけですけれども、本当に法改正とかについてちゃんと説明を受けられるのかなとか、情報は入ってくるのかな、若干不安にはなるわけですけれども、そこはルールを明確にして運用していく中で、ある程度乗り越えられるところがあると思うんです。本当に情報が入ってこなくなったらみんな大騒ぎしますから、そのままということにはならないだろう。
一方で、情報公開もちゃんと、もっとしっかりしていった方がいいなと思うわけで、これは、両面作戦というか二つ正面同時に目指していってもいいのかなと思うわけですが、そこについて、堺屋参考人、加藤秀樹参考人、田中一昭参考人に御意見を伺えればというふうに思います。
○堺屋参考人 仰せのとおり、官と政の関係、この間の情報の問題は大変重要なことだと思います。ただ、現在の官僚の議員先生方に出している情報は、必ずしもすべてが内閣あるいは大臣の了解を得ているとは思えない場合がございます。中には、内閣の方針はさておき、大臣の御意向はそれとして我が省の方針はなどというような言葉が出てまいりまして、どれが政府の意向かわからないというようなことがあります。
現在の憲法では議院内閣制でございまして、やはり議会が主導するというのが前提でございます。そして、議会が選んだ内閣と大臣が責任を持つ、これが大事なところだと思いますので、何がどのように伝わっているか、これは内閣、大臣がはっきりと掌握をして、そしてまた、野党の先生方も大臣に要求をして、そして大臣が、公務員に行けと言ったとか、あるいは公務員と一緒に行ったとか、政務専門職が行ったとき、これが情報操作がされていたり間違いがあったり、あるいは本当のことを全部言わなかったときには大臣が責任をとる。そうすると、野党の先生方も安心して、政治を追及する、大臣を追及することができますから、いいかげんなものが来なくていいと思うんですね。
もちろん、政治だけではなしに、一般国民に発表する役所の資料というのは膨大な数が出ておりますから、その両方を相まっていただくと決して情報不足になるようなことはありませんし、むしろ、大臣に要求する、内閣に要求することによって、正確な情報、責任ある情報が確実に来るのではないかと思っております。
○加藤(秀)参考人 まず一番大事なのは、やはり原則だと思います。すべてそうですけれども、原則について申し上げますと、先ほどの繰り返しになりますけれども、やはり原則は、内閣及びそれを構成する大臣とそのスタッフである官僚が、常に密接に情報交換、相談、協議しながらやるということで、したがって、閣僚以外の与党の議員は、基本的には、大臣、広い意味での大臣職ですから政務官も含めて、ここ経由で情報が提供されるというのが私は原則論だと思います。
この原則論をなるべく守っていかないと、やはり大臣職が軽くなる、閣僚、ひいては内閣の権力のグリップ度合いが下がるわけですね。ですから、これは、大臣になっていない議員からすると、いや、おれたちにもダイレクトに情報が欲しいよというのは非常によくわかります、わかりますけれども、それは結局、長い目では、党全体としての能力低下に結果的にはつながっていくと思います。したがって、この原則はやはり大事だと思います。
その上で、では、現実的にはどうするかということなんですけれども、なかなかすぐに英国のように、官僚と閣僚以外の一般国会議員、ちなみにイギリスでは、閣僚以外の一般国会議員はプライベート・メンバー・オブ・パーラメントと呼ばれているわけですね、国会議員はメンバー・オブ・パーラメント、MPですけれども、その前にプライベートというのがついている、これは非常に大事なところなんですね。パブリックにも段階があって、やはり本当に国民のために政策を実行するだけのパワーを持っているのは閣僚なんだという位置づけです。ですから、それ以外のプライベートMPは、いずれ閣僚になることによってその立場になるべきだという整理だと思います。これがやはり原則。ただ、現実論としては、これはそれぞれ政府案、民主党案、いろいろお考えがあっての上だと思いますけれども、当面、何らかの制限をかけてということにするのが現実的なのかなと思います。
繰り返しになりますけれども、原則のところで言うと、私は、公務員と国会議員との間の情報のやりとりがかなり制限されたとしても、閣僚経由の情報が十分担保されていれば、そんなにそこで困ることはないと思います。
例えがいいかどうかわかりませんけれども、マスコミについては、各省の中に記者クラブというのがあるわけですね。この記者クラブ制というのは非常に問題が多いとされています。これも、記者クラブというものを持つことによって、マスコミが情報源を確保しているという面と、逆に、そこに依存している、官僚サイドの情報コントロール、必ず物事には両面があるんだと思います。
したがって、この一般国会議員という、変な言い方ですけれども、閣僚ではない国会議員が官僚、官庁を情報源とするときには、どうしてもそこにコントロールされているという面もあるわけですね。これは先ほど堺屋先生がおっしゃったとおりなんですけれども。したがって、それは国会議員の側に、それを上回るだけの知力というのが求められる。そういう意味では、先ほどの原則はやはり大事だと思います。
それから、もう一つつけ加えますと、与党と野党、これはせめぎ合いですから、与党からすると、野党はなるべく弱い方がいい、そう思っているに違いないわけですし、野党もしかりです。しかし、国益ということからすると、やはり与野党ともに大いに力を発揮してほしいわけです。したがって、では、野党側に対する情報なりの提供がどうなのかというところは、どうしても不平等になってくるわけですね。
イギリスの例ばかり引き合いに出して恐縮ですけれども、英国の場合にはシャドーキャビネットというのがあって、このシャドーキャビネットメンバーは本来のキャビネットメンバーと同じように公務員と接触することができるわけですね。ですから、これはまさにキャビネットメンバー扱い、政権がかわったらこの人たちもちゃんと力を持っておいてもらわないと困るという、それが国益のあらわれ方なんだと私は思います。
そういう意味で、日本では似たような仕組みはありますけれども、私は、残念ながらこれは全く実体をなしていないと思います。いや、個々の方、ネクストキャビネットとかなんとかの個人個人の能力ではなくて、仕組みとしてですけれども。
したがって、これをサポートしようと思えば、例えば、国会スタッフを充実させる。それで、国会スタッフと各官庁、霞が関スタッフの間の人事交流も含めて、そちらの充実をして、国会スタッフは与党以外のサポートを中心にしていくというような仕組みもやはり考えるべきではないかなと思います。
○田中参考人 大塚委員が主張されたこと、私は基本的に賛成です。というのは、対立する話ではない、自民党と民主党の御意見が対立するものではない、吸収できるというふうに思います。基本的な考え方は、今お二方がおっしゃったとおりであります。
私は、行革という仕事を、国鉄改革から始まって規制改革を長年やりました。政治家から直接いろいろ、圧力ぐらいならいいんですけれども、怒声とか、やめてしまえとかいう話まであることは事実でございます。そういう非常にきつい話から、単に、どうなっているの、教えてくださいと、では部下をやって説明させますということまで、接触には濃淡いろいろございます。
そこで、当然、きつい話のときは、メモをつくって、おっしゃったことについて私は電話で確認します、電話でかかってきますから。こうおっしゃるんですね、私の意見はこうですが、大臣に上げますということで、局長に上げ、大臣に上げて、こういうことですよ、私はこう対応した方がいいと思いますけれどもいかがですか、そう対応していいですかというふうにして通常、霞が関は対応するものであります。
しかしながら、渡辺大臣が国会でもいろいろ答弁しておられますし、今も加藤秀樹参考人がお話しになりましたが、個人としての立場から、これは堺屋参考人もおっしゃいましたけれども、いろいろ組織を背負ってか、個人が偉くなろうと思ってかは存じませんけれども、個人が対応する場合も現実にございます。
したがって、接触は、議員の方から、あるいは個人の役人の立場から、いろいろ両方からあるわけでありますが、基本的なルールをつくっておくことは非常に重要であります。そのルールは、もうお二方がおっしゃったことに私も賛成であります。
その根っこにある大事なことといいますのは、先ほども私御説明しましたけれども、大臣、副大臣、大臣政務官、この考え方が一体でないと困るんですよ、そもそも。大臣は右へ行っている、大臣は左で動いて、途中でやめちゃったというような政務次官もかつてはおられましたけれども、こういうことでは役人に対するリーダーシップというのは振るえない。どっちを向いて議論していいかわかりませんから困るわけですね。ましていわんや、大臣の方が少数派閥であったり、政務次官の方が強烈なそれであったりしたときには、どっちがどうか、役人としては非常に困ることが現実にあるわけであります。
したがって、ルールをつくるという意味はもうこの法律でも言ってありますし、渡辺大臣も再三にわたって説明しておられますけれども、政務の専門官、どれほどの人数かというのはその時々によって違うかもわかりませんし、省によっても違うかもわかりません。そういうふうにチームをつくる、一人一人独立して行動するんですけれども、局長クラスがリーダーシップを振るう。
もう一つは、大臣の、あるいは、場合によれば副大臣の了解を得ながら行動する。いろいろ言われているから、あるいは説明のためにこうしますよと。それは仕組み方で、ペーパーを出しておけば、軽いことなら済むわけでありますから、やりようで幾らでもできると思います。
要は、大臣以下の政治家、これが何人であろうと、やはり考え方が一体でないとリーダーシップは振るえないということがあります。そのやり方はイギリスの例に倣ってもいいですし、いろいろ日本流に考えていってもいいかと思います。事柄のレベルによって、大臣に上げるべき問題と、局長までで済む問題と、自分のそれにおさめておく問題と。ただ、メモはつくっておく。
それから、大事なことは、相手方の先生に、こうやって、おっしゃることはこうですね、大臣に上げますよ、この確認をとっておかないと。ただ透明性だけ言っておっても、いざ問題になったときに、おれはそんなことは言っていない、こういう話になりますから、ここは確認しておくことが必要であります。
両党の議論は、調整可能ではないかと考えております。
○大塚(拓)委員 ありがとうございました。
堺屋参考人は、大臣の経験を踏まえて重みのある御意見だったと思いますし、田中参考人は、今お話がありましたように、政官接触の制限というのは、内閣の一体性、各省大臣以下の一体性を確保するためのものなんだというお話でございました。
一方、加藤参考人からも、政官接触が一定の制限をされても、閣僚からしっかり情報が入ってくれば大丈夫なのではないかと。そのために、補佐スタッフ、名前が自公、民で少し違うかもしれませんけれども、補佐スタッフがしっかり拡充されるという方向になっておりますし、そんなに心配するに当たらないことなのかな、むしろ、必要な改革として、政官接触について一定のルールを設けていくということはやっていくべきなのかな、情報公開もあわせてしっかりやっていけばいいのかな、こんなふうに思った次第でございます。
次に、再就職あっせんについても若干トーンが違うのかなと。
これは、堺屋参考人、田中参考人は、昨年の官民人材交流センターでもう手当て済みのことなのであるというお立場だと思います。一方で、先ほども加藤秀樹参考人は、三つ民主党の方がいいかなという中に、一つ再就職あっせんのことを挙げておられました。
加藤秀樹参考人にお伺いしたいんですけれども、昨年の官民人材交流センターの設置法においては、まだ十分にその効果が制度として担保されていない、成果を検証するのはこれからだと思うんですけれども、という御認識なのかどうかについて、ちょっと簡潔にお伺いしたいと思います。
○加藤(秀)参考人 今のお話のとおりです。これは、なかなかあの仕組みでは、結論から言いますと、実効性がないんじゃないかなと思うんですね。
それから、もう少しそれ以前の話になりますけれども、やはり公務員も、今や本当に高齢化社会で、七十後半、八十まで多くの人が生きる時代ですし、今のように、霞が関で働いている公務員の多くが五十ちょっとぐらいでやめていくと、後、何をするのか。
これは、私は、何をするのかというところが大事ということではないんですけれども、やはりそこから先のことを含めた、まず制度設計のところをあわせて考えていかないと、どうしても必死になるわけですよね、各省の方もそうですし、それから各公務員もそうですけれども。
ですから、必死になってくると、先ほどの話に戻るわけですけれども、なかなかあのセンター構想では実質的に担保できない。逆に、あの制度ができたからもう天下りの問題は終わったんだというふうになるのが私は一番怖いなと思うわけですね。
したがって、ここのところはよほど制度をきちんとつくらないと。そうはいっても、やはりなかなか日本の官僚というのはその辺は抜け目がないというのか、賢いというのか、したたかですから、それはもう私が言うまでもないわけですけれども、そう簡単じゃないと思いますね。ですから、心配だなと思うわけです。
○大塚(拓)委員 心配が残っているというお話なんですけれども、私は、今回の国家公務員制度改革基本法案が通りますと、このプログラムにのっとってやっていくと、各公務員が、よく大臣とかがおっしゃったように、ゼッケンが今まで各省についているわけですね、これが外れていくんだと思うんです。
移行期間はある程度あると思うんです。最初の五年とか、昔の制度で採用された方がその後ずっと残りますから、移行期間はあると思うんですけれども、今回の法案が通って、しっかり国家公務員が日の丸官僚になる、我が社と言ったときは、それは国土交通省のことじゃなくて日本株式会社のことを指しているんだというような官僚になっていったときに、各省にくっついている許認可をもとにした天下りのあっせんというようなことはそもそもできなくなると思いますし、今回の改革と去年の交流センター法ですか、セットになって初めて効果が出てくるんじゃないかというふうに思うわけですけれども、その点について、堺屋参考人、田中参考人に御意見をお伺いできればと思います。
○堺屋参考人 天下りの問題の根底にあるのは、公務員が普通の状態で再就職できないぐらい能力がない、これが問題なんですね。本当を言えば、引く手あまただったら、こんないろいろなことをしなくていいわけです。したがって、この法案の中で、次の問題として、公務員の育成の問題についていろいろと細かくしております。
世の中全体がこれから流動性が高くなると思うんですね。特に、幹部候補生を志して来られるような方々を見ますと、今、若い人たちが、終身雇用といいますか、長くとどまる、最後まで、六十歳までとどまることを前提としないでコンサルタント会社とか金融会社に行かれる方が非常にふえてまいりました。
公務員の中に流動性をつくって共同体化を防ぐとしたら、新しい血が入ってくる、そうすると、やはり出ていく人もいないと困るんですね。これは別に定年になるとかそういう問題じゃなしに、常に一方から入ってきたら一方から引き抜かれて、歓迎されて民間なり学界なり言論界に入る人がいる。そういうような公務員の能力全体を国際競争力のあるものにしていく、こういうことと、そして、そうはなれない人もおりますから、これは定年までお勤めいただかなきゃいけないのでありますけれども、やはり喜んで就職できるような公務員をつくっていただきたいと思います。
私どもも、公務員を大学の先生とかいろいろなところにあっせんといいますか、話をすると、それは単なる、もう学界なんかは情報だけですけれども、結構喜ばれ、そして、そこから非常に伸びていった人もたくさんおります。そういう能力ある公務員をつくる。
まず、官僚共同体への忠誠ばかりの公務員だからだめなのでありまして、本当に能力のある公務員をつくって、これが日本の労働市場にいい能力を提供する、それと両方相まっていけば、やはり何年か後には、この方法は効果を上げていくんじゃないかと思っております。
○田中参考人 加藤秀樹参考人から、これはうまく回らないだろうと。回るようにするために汗を流したつもりでありますが、なかなか私も心配しております。
それは、スタートして三年間は、各省のあっせんも続けてやります。ただ、監視委員会ができますから、権限と予算をバックにして押しつけと見られることはしてはいけないよ、こういうことになっておりますので、監視の目が強くなります。
そういうことが決まった以上、今五十以上の人は無理かもわかりませんが、若い人たちは、堺屋参考人がおっしゃったように、自分のマーケットバリューを高めていく努力をしていく。それで官民の壁を低くして、癒着でない交流、トータルとして日本国が非常に展開していく、活力を持っていくというふうに、官だけではなくて、民も役所というのは本当はこうなんだということがわかった方がいいと思いますから。
物事というものは、国鉄改革でもそうだったんですけれども、絶対にうまくいかない、こう言われていましたよ。しかし、絶対にうまくいくと言ってうまくいかなかったものもあるし、うまくいかないと言われてうまくいくものもあるんです。一回ぽっきりで何でも決めつけるのではなくて、やはり、数年の経過規定を持ちながら、トライアル・アンド・エラーズでやっていかざるを得ないのではないか、いろいろ御批判は御批判として受けながら、私は、センターも成功させていかなければいけないというふうに思います。
○大塚(拓)委員 ありがとうございました。
私もこれは、去年とことしの法律、ワンセットでどういう効果を出していくか、しっかり時間をかけて、国会の方でもしっかりウオッチをしていって、必要であればアジャストメントしていく、調整をしていく、修正していく、そういうことで臨んでいくべきなのかなというふうに思っております。
ちょっと時間になりましたので、本当は労働基本権について加藤健次参考人にもお伺いしようと思っていましたけれども、申しわけございません。
それから、触れるだけ触れさせていただきますが、確かに国会のチェック機能、情報、今まで官僚依存だったということもあると思いますし、国会のそういう情報力、分析力をしっかり高めていかなければいけないと私も思っております。
行政監視・評価院の国会内設置という御提案があるわけですけれども、その方法も含めて、もしかすると、政策秘書というのを拡充していく必要があるのかもしれない、国会図書館というのも拡充していく必要があるのかもしれない、これも今後この改革を進めていく中でまた議論をさせていただければな、そういうふうに思っております。
時間ですので終わります。どうもありがとうございました。
○中野委員長 次に、市村浩一郎君。
○市村委員 民主党の市村でございます。
本日は、参考人の皆様には、御多用の中こうしてお時間をとっていただきましたことを、この場をかりて改めて御礼を申し上げます。
それでは、質疑に入らせていただきたいと存じます。
まず、加藤秀樹参考人の方にお伺いしたいんですが、思い起こしてみますと、十五年ほど前、私は、細川内閣の党の方の政策担当におりましたけれども、当時、細川内閣ができて、新しい、政権交代だということでいろいろ改革しようとしたとき、省庁の方が来られるわけです。いろいろおっしゃるから、私は、例えば、これはどういう権限であなた方はこうやっているんですかと言うと、まさに加藤参考人が指摘された、省庁設置法を持ってくるんですね、そのときに。ここにこう書いてあります、我々がこれを所掌しているんです、権限を持っておりますということを言っていたことを、十五年前のことを思い出します。
当時、日本新党の中でも、やはりここを変えなくちゃいけないということを私も申し上げておったんですが、私の説明が悪かったのか、これが大きな声にならなかったということで、細川さんも八カ月でやめられたということで、なかなかこれができなかった。その後、加藤さんが構想日本でこのことを大きく取り上げていただいていたということを聞いていまして、大変うれしく思ったことも思い出しますが、私もこれは大変大切だと思います。
改めて、この省庁設置法の改正もしくは削除といいますか、やめるということにつきまして、加藤参考人の思いをもう少し強く述べていただきたいと思います。
○加藤(秀)参考人 先ほどもう大分強く言ったつもりなんですけれども、これは公務員制度とやはりセットだと思うんですね。
公務員が仕事をする箱を官庁と呼んでいるわけですし、これは繰り返しになりますけれども、公務員が仕事をする根拠になるのが各法律なわけですね。
ですから、当たり前の話なわけですけれども、それがその法律よりも膨らんで、ついいろいろなことをしてしまう、これは一面ではある種の義務感だと思うんですけれども、過剰な義務感というのはやはり有害になることも多いわけですね。ここが官主導と言われていることのもとになっている。それで、さらにずっとさかのぼれば、明治以来の天皇制、そのもとにおける官制というものがあるというのは、これは専門の政治学者が指摘しているとおりだと思います。
先ほども少し例に挙げましたけれども、今、私は一つだけ、農水省の設置法というものを持ってきたんですが、この第四条が所掌事務です。それで、第四条の四号、「所掌事務に係る一般消費者の利益の保護に関すること。」というのがあります。
今、福田総理が音頭をとって進めていこうという消費者行政の一元化についても、では、農水行政に関してこの四条の第四号をどうするか、やるのか持っておくのか、こういうやりとりが必ず出てくるわけですね。したがって、これがなければ、消費者庁をどうするか、それを置いて、先ほどの省庁の統廃合も含めて、極めて手軽になるわけですね。ですから、よりはるかに機動的になるんだと私は思います。
それで、これは特殊な例ではないわけですね。世界の趨勢ですし、橋本行革のときに省の数がほぼ半分になったわけですけれども、そのときに外国人と話をする機会がありました。役所の数を半分にするのに本当に四年も五年も合計するとかかっている、物すごいエネルギーを使っているということをお話ししたところ、やはりびっくりするわけですね、何でと。役所の数なら内閣が決めればいいじゃないかということですけれども、もちろん、その背景にはいろいろな要因がある、設置法だけというわけではないですけれども、やはりこの設置法というものを盾にとるという部分が大きいのは間違いないと思います。
ですから、役人の行動だけが公務員制度改革ではないわけですから、その基本にある設置法を含めて、官庁というもののあり方を、この際、ぜひ正していただきたいなと考えております。
○市村委員 ありがとうございます。
まさに盾にとってやっていた姿を見ておりますので、ここだと私も思っております。もちろん、これだけじゃありませんが、私も、この省庁設置法についてもっと大きな議論を起こさないかぬという思いですので、本当に感謝を申し上げます。ありがとうございます。
それから、堺屋参考人にお聞きしたいんですが、まさに、堺屋参考人の問題意識は、私も若輩ながら本当に共有させていただくところでございます。
ただ、私も今まで国会におりまして、いろいろ官僚の方とも話をしていて、特に、先ほどの省庁設置法のことをお話ししたときの細川政権時代の経験が一番大きいんですが、官僚の方というのはやったふり、負けたふりをしながら実は変えさせない、したたかであり抜け目ないというお言葉もありましたが、私はそういう感想を持っておりまして、大変いい制度を仕組んだとしても、結局、どこかで変えられてしまう。
今回のものも改革基本法でありまして、では、基本法の詳細はこれからということになってきますと、この詳細のところでまたいろいろな仕組みをつくられて変わらないということになってしまっては元も子もないということでありますが、大先輩から、今度はそんなことはさせない、やったふりはさせないというようなことにつきまして強い御決意をいただきたいと思うわけでありますが、よろしくお願いします。
○堺屋参考人 まさにおっしゃるとおりでございまして、いろいろと改革をしたつもりが全然変わらない。今の橋本行革もそうでございまして、本来なら、権原のところを削除して、ようかんを切りかえるんじゃなしに、ようかんが小豆になるんだ、間の練り物はなくなる、だから、どこでも所掌だと言えるんじゃなしに、決められた法律のところだけにするんだという意気込みでやっておったんですけれども、結果としては、ようかんはそのままになったというようなことがあります。
ただ、その前提になっているのは公務員共同体なんですね。公務員共同体の利益を図るから、公務員は盛んにそれに抵抗するわけです。したがって、この一番のもとを破壊する。この公務員共同体をなくして、公務員の評価が、共同体に忠誠を尽くした評価ではなくして、国民の目線で、国会の目線で評価されるようになると発想が全く変わると思うんです。
これはまさに明治維新と同じでございまして、日本は今や明治維新的改革をしなきゃいけない。内容からいいますと、明治維新というのは、開国、それから武士の身分を廃止したこと、それから廃藩置県、地方制度を廃止した、それから新貨令という、経済、財政、これは今も大変なものです、それから教育と軍制、これを改革した。この五つなんですね、内容は。けれども、コアになるのは、まず武士の身分を廃止しないと、廃藩置県も新貨令も教育改革もできるはずがないんです。
今、日本の改革からいいますと、公務員を各省に所属した縦割りの集団から横の集団、まさに横に移動する集団にして、そして、公務員の本来の姿で、国民の目線で、国会の目線で評価するようになると、全部の発想が変わると思うんですね。だから、この改革こそ、非常に、日本がよくなるかどうかの一番根本だと思うんです。ぜひとも小異を残して大同について改革してもらいたいと思っている次第でございます。
○市村委員 ありがとうございます。
このことにつきましては、田中参考人からも、詳細は現時点では言わなくてもよいというような話もありましたけれども、では詳細はだれが考えるのかにつきまして田中参考人の方から一言。例えば幹部職員の任用のことにつきまして、詳細は現時点では言わなくてもいいだろうという御発言があったと思います。ではこれから詳細はだれが考えていくのかということにつきまして、私は大切だと思っていますので、そのことと、あと、田中参考人と加藤秀樹参考人に、田中参考人から、優秀な人材を集めなくちゃいけない、加藤秀樹参考人の方からは、一流の人材をどう集め、どう働かせるかということがありました。その優秀な人材という定義と一流の人材についての定義を教えていただきたいと存じます。
まず、田中参考人の方からお願いします。
○田中参考人 詳細は後でいいと申し上げたのは、堺屋参考人が先ほど、小異を捨てて大同につけということと同じことだと思います。
では、だれがつくるかということです。
私は、臨調のときの事務局の主任調査員という課長クラスをやっていましたけれども、以来、外人部隊をたくさん使いました。しかし、人事権がないから全然働かないかというと、そんなことはないんです。ちゃんと一生懸命働いてくれますよ。結局、素案はちゃんと公務員がつくるんです。優秀な公務員はたくさんおります。ただ、彼らは、自分がやったことが生きる、本当にできるというと非常に自信も持つし、うれしいんですよ。
そのことを大事にしない、それを破っているのは何かというと、やはり、自分よりポストの上の公務員か、あるいは政治家ですよね。特に、与党の中でうまくいかないと話にならない。それぞれの政治家のいろいろお立場はあるでしょうけれども、やはり、このことがどういう意味を持つかということでリーダーシップを振るっていただければ、私は、案は当然官僚がつくるんですけれども、生かすか殺すかというのは、結局、政治家だと思っております。(市村委員「優秀な人材についての定義を。どういう方が優秀なのかということについて」と呼ぶ)優秀なというのは、それなりの常識を持ち、それから気概、気概を持たないと、幾ら知識があっても生きないんですよ。
ですから、そのために総合職については、民主党の方では、それはやはり今の1種と同じで固定することになるのではないかということをおっしゃいます。しかし、堺屋参考人は先ほど絵で御説明になりましたが、ある程度、総合職として一般常識もあり、リーダーシップもあり、外国人とも対等にできるという能力はだれもが持っているわけではありませんから、そういうのを選抜し、それを鍛えていく。
そういう中で落ちこぼれもおるでしょうし、だめなのは排除していかなければなりませんけれども、また優秀な人は残しながら、あるいは外からも入れますから、あるいは一般職、専門職からも入れますから、そこにおのずから競争も出てくるでしょう。でも、全部が全部総合職はだめだというわけではなくて、こういう人たちの試験の仕方、選び方、そこも考えていかなければいけないと思います。
そういうふうにしてリーダーシップを持ち、広い見識を持つ人たち、そういうのは優秀だと私は思っておりますけれども。
○加藤(秀)参考人 なかなか、これは定義はしにくいと思いますけれども、やや感覚的なことを申し上げますと、まず、やはり歴史観を持ち、国家観を持ち、文明観を持ちという、いわゆるリベラルアーツ的な、基礎的な教養というのが非常に大事だと思います。その上で、なおかつ専門性を持っているということだと思います。しかも、これは、専門性というのは入省時に一〇〇%であるということはあり得ないわけですから、仕事をしていく上でそれがどんどんと向上するような仕組みとセットだと思います。
そういう意味では、ちょっとつけ足しになりますけれども、現在の仕組みというのは、そういう専門性あるいは基礎的な教養よりは、政治家に対する根回し上手、いわゆるロビーイング能力が高い人が役所ではプロモートされやすいという仕組みになっている。ここはとても残念なことですし、それは、先ほどのまた繰り返しになりますけれども、公務員が実は、政治家が本来やるべき部分に入ってしまっている、それは逆から見ますと、政治家が本来やるべきことをやっていないということになるわけですけれども、そのことの結果でもあります。したがって、改めて、政治家と官僚との明確な役割分担というのが必要になってくると思います。
もう一つだけつけ加えますと、ややもすると、私は、こんなに十年も二十年も役人バッシングを国じゅうでやっている国というのは見たことがないんですね。特にマスコミは、それをやっていればみんな見ている人の気が済むというのと、自分は正義の味方みたいな面をできる、そういう顔をしてやっておりますけれども、何か気が済むとかそんなことで、結局私はそのことが公務員のますますの劣化を招いていると思います。公務員になろうという人たちの意欲もそいでいる。中に、既になっている人の意欲もそいでいる。これは全体として見ればとても国益に反することだと思いますから、ぜひ、今回の基本法の制定がきっかけになって、ここは違う方に回っていくようにしていただきたいと考えております。
○市村委員 本当にありがとうございます。
さっき堺屋参考人から、いわゆる十二職種中、官僚が最も信用できない職種になっているとありましたけれども、恐らく、ここに政治家が選択肢に入っていたら、一番は政治家ではないかというふうに、反省をしなきゃならないと思っておるところであります。本当に、加藤秀樹参考人がおっしゃるように、これは不幸な時代だというふうに思っています。早くこれは決着をつけなきゃいかぬ、やはり新しい時代に向けて土台づくりをしっかりしなくちゃいけない、そういう思いであります。
今度は弁護士の加藤参考人にお伺いしたいんですが、まさに私は、労働基本権の確立は大切だ、こう思います。今回議論がなされていないということですが、なぜ議論がなされていないか、加藤参考人がお考えになることをおっしゃってください。
○加藤(健)参考人 私から答えづらいんですけれども、一つは、戦後すぐ労働基本権の制限がされて、それで一時、大闘争があって裁判があってということがあって、余りにないのが当たり前の時代が続き過ぎたというのが一つあります。ヨーロッパなんかでは、むしろ、あることを前提にどう調整するかということになっているわけです。
ですから、もともと戦後、本来なら憲法に基づいて労働基本権が保障された上で制度設計がされるところが、いろいろな歴史的経過で、それがないままここまで来てしまった。だから、ないことが当たり前になっているというのが大変議論がしづらい原因なのかなというのを私は率直に言って思います。
それからもう一つは、これは議論になっていないからあれなんですけれども、労働基本権を保障するということが、例えばストライキ権を与えると直ちにあしたからストライキに入るとか、あるいは労働協約締結権を与えるとすごく野方図な要求が出てくるとか、何かそういうちょっと極端な思考もあるのかなと。
民間の労働者だって、例えば病院であれば、労働関係調整法で、事前の通告ですとかあるいは保安要員の配置とか、いろいろな仕事の性質に応じていろいろな配慮をしながら、しかし権利は行使する、そういう仕組みができているわけですから、先ほど申し上げましたように、やはり、付与するかしないかという決断ですよね。
余りに今までないのが当たり前の時代で来ましたから、そこはやはり踏ん切りが必要だろう。その上で、具体的に生じるいろいろな問題点やいろいろな方が思っている不安については、具体的に手だてを考えていけばいいであろう。
国際化というのであれば、今の国際水準、それからILOの水準からいけば、国家公務員だから労働基本権は制限される、あるいは行使できなくてもやむを得ないというのはもう通用しないということがはっきりしていますから、ここは、どこかの段階で原則としてはっきりしていただきたいというふうに考えています。
○市村委員 ありがとうございます。
堺屋参考人が御指摘されたように、今、本当に大変な時代だと思います。
私は多くの公務員の方とも、私も今特別国家公務員でありますので、国家公務員としての自覚を持ちながらいろいろ議論をさせていただいておりますが、今、弁護士の加藤参考人がおっしゃったように、労働基本権を与えたからといって、すぐそれをやみくもに使うということにはならないと私は思っています。今おっしゃったように、なれていないということもあって、何かそうじゃないのか、使うんじゃないのかとかいうおそれがあるというようなことで、恐らく議論が今なされていないのかもしれません。
ただ、前提として、今、時代の大きな変革期に当たっているということ、ここをやはり公務員だろうとだれだろうと認識していかなくちゃならない。それこそ、日本が今の経済的優位性を失ったときに起こってくるいろいろな問題を考えるときに、本当に権利どころじゃない話になってきてしまっては元も子もない話でありまして、やはり今大切なのは、この国家公務員制度改革基本法の前提にあるべきなのは、未来に向けてこの国の形をどうしていくか、これがあるだろうというふうに私は思います。
その意味でこの議論をやっておりますが、あとちょっと時間がありますので。
先ほど、民主党が政官接触の禁止について否定的じゃないかという話があったと思いますが、そうではなくて、民主党は、接触については全部文書を残していってほしい、それを保存してほしい、保存したらそれを情報公開してほしいと。つまり、どういう会話が闘わされたのか、あったのか、これをちゃんと全部記録にとっていくべきだ、しかも、保存して、それを情報公開すべきだと。そうすれば、いわゆる私たちが今懸念している、裏で何か根回しされて、いつの間にか、大臣がせっかくこう言っていたのに全然違うところで話が決まっているかのような今の現状はこれでかなり是正されるだろう、こういう意見でございますが、これにつきまして、加藤参考人の方にまた御意見を賜りたいと思います。
○加藤(秀)参考人 これも先ほどの繰り返しになります。
先ほどイギリスのケースを申し上げました。これが原則、スタートだと私は思います。ただ、それを具体化していくに当たって、私自身、自信はありません。そもそもの接触をかなり狭くする、接触する人を少なくする、あるいは接触したときにはきちんと記録を残す、いろいろなやり方があると思います。これは、ある程度やりながら考えるしかないのかな、そこは柔軟に考えていけばいいのかなと思っております。
ただ、先ほどの田中参考人のお話に関連してなんですけれども、大臣が一方で言っているが、片っ方で違うことを言うということについては、これは、大臣が言っていることが絶対だ、それが最終的な決断、判断なんだというところがぐらつくということがおかしいと私は思っています。ですから、そこが先ほどの原理原則のところで、やはり、トップは大臣なんだ、そこを原則として譲ってほしくないというのは、そういう意味であります。そのためには、公務員と他の一般国会議員とのやりとりが本当に何か野方図に行われていると、そこがやはり崩れてくる。
さらに、これも繰り返しになりますけれども、大臣に権限を集中して、すべてはそこから出ていくというふうにすることが、最終的には、党が強靱さを保つ上で非常に大事だと私は思います。
現在、与野党ともに、党がどこまで強いのか、多分与党の議員の方々もいろいろ御苦労されているんだと思います。これは、やはり政権の弱さ、強さと党の弱さ、強さというのは一体だと思います。ですから、内閣よりも内閣の外にいるおれたちがもっとアピールしたいというのは十分あるわけですけれども、しかし、あくまでも内閣が与党をリードして、内閣の強さが、与党、もちろん野党も同じですけれども、全体の強さにつながるという、この原則はやはり忘れるべきではないと考えております。
○市村委員 ありがとうございます。
本当に、私も、今でもやれることがあると思っているんです。今でも、総理大臣なり大臣なりが覚悟を決めれば、さまざまなことができるんだろうと思います。ただ、それがなかなかそうなっていないということもあって、その一方で、堺屋参考人がまとめていただいたように、本当に、国家的危機に陥っているということの中で、私は、そういった意味では政権交代が重要だと思っているところなんですが、それでも、しっかりと仕組みとしてつくっておくべきだということで今この議論があるだろう、こういう認識をしております。
それで、先ほどから、もう一つの論点として天下りということがあります。
もちろん、天下りがなぜ起こるかというと、早期退職勧奨がまずあって、結局どんどんやめざるを得ないから、堺屋参考人がおっしゃるように、本当であれば、有能であれば別にだれかがあっせんしなくたって皆さん引き抜かれるわけですね、ぜひとも来てくださいと。ところが、そうならないで、どこかに行かなくちゃいけない、行かせなくちゃいけないというときに、実は大変有効だったのが、使えたのが公益法人制度だったんですね。民法三十四条があって、官僚が幾らでも組織をつくれる法律だったものですから、ここでどんどんどんどんつくって、結局天下り先にしていって、年間、フローで十二、三兆円がそこに行くような仕組みになっちゃったんです。膨れ上がりました。
しかし、公務員制度改革で、民法三十四条がいよいよ削除されるということになっておりますから、一定の方向性は出ている、こう思いますが、実際は、この公務員制度改革というのは、公益法人制度改革も行方が実は混沌としておりまして、しっかりと見据えていかないとまた同じような状況になりかねないと私は思っておりまして、これが実は懸念しているところなんです。つまり、目的、方向性は天下りをなくそうとしてやっていたのに、いつの間にかまだ残っているということがあってはならないと思います。
最後にお聞きしたいんですが、公益法人制度をなしてきた民法三十四条が削除されたことはいいんですが、今後の措置として、しっかりとこのことを見ながら、絶対天下り先に二度とさせないような仕組みにしなくちゃいけないと私は思っています。
このことにつきまして、堺屋参考人、田中参考人から、官民人材交流センターの民には恐らく公益法人も入っていると思いますので、一言ずつお言葉をいただければ幸いでございます。
○堺屋参考人 仰せのとおり、どういう制度をつくっても運用で変わっていくという問題がございます。
今の天下りの問題ですけれども、ここで一番問題なのは、各公務員が自分の官僚共同体にだけ忠誠で、それ以外の能力は極めて薄い、したがって、自分の所属した官僚共同体を利用して次に行こう、ここが問題なんですね。もし自分が所属した官僚共同体に関係なしに行ってくれるのなら、それはどこへ天下りされても、どこへ再就職されてもいい。そのかわりに市場価格で、前は高い地位におられても、今度はこの値段、この価格、この仕事ということになります。明治時代なんかは陸軍大将が中学校の校長になっている例なんかはたくさんあるわけですね。
そういうような、本当に自分の能力に応じた、そのためには、まず官僚共同体を破壊して、そこに忠誠心を持っているというのはよくない、全国民に忠誠心を持つ。一番大事なのは、今、優秀な役人というのは、倫理観が正しい、官僚共同体に尽くすのがいいのじゃなしに国民に尽くすという倫理観があると。そうすると、今度勤めたところで前の役所、前の役所と言っていないで働いてくれる人ができるから、いいんだろうと思うんです。
だから、公務員制度それから公務員の教育方法、そういったもの全体がこの天下りの問題にも重大に関係してくる。もし、そうでなくて、今の組織、官僚のままでしたら、どんなにしてもやはり抜け道を通っていくんじゃないかという感じがいたします。
○田中参考人 非常に重要なポイントでございます。公益法人の問題に限ってちょっとお話しさせていただきたいと思います。
公益法人も本来は、官僚でなくて、役所じゃなくて、公の自主的な団体が公の仕事をするということで、そもそもは悪くないんですよ。それが公務員の手にかかると、役所の手にかかると今お話しのようなことになってしまう。ですから、それをどうチェックしていくかということであります。私どものセンター懇のペーパーを見ていただくと、そこら辺の対策を書いております。
そもそも、ピラミッド形の組織はいけないんだと。いろいろな仕事の種類によって、ピラミッドがいい場合もあればフラットなのがいい場合もあります。でも、マックス・ウェーバーが言ったように、非常にピラミッドの組織というのは効率的なんですね。ですから、どうしても組織というものは、いろいろな命令者がおったら困りますから、研究ならいいですよ、普通の組織はピラミッドにならざるを得ないし、またそれはそれで前提にしなければいけない。
その上に立って、定年をどう延ばし、再雇用をどうしというようなことを考えて、しかも、長く置けば置くほど、これは税金を使っているわけですから、そのことも考えないといけないわけです。だからといって、定年が六十になっているのに五十六、七で、今五十七歳ぐらいがやめている年齢ですけれども、はい、さようならというわけにはいかないわけです。だから、一方では税金を使う、一方では本人の人権があるということでありますから、逐次経過措置を見ながら進めていかざるを得ない、そういうものだと思います。
したがって、人材交流センターをせっかくつくり上げたわけですから、どういうふうにしたらうまくいくのか、今委員おっしゃるような問題を解決していくのかということを歩きながら考えていただきたい、そういうふうに思います。希望です。
○市村委員 どうもありがとうございました。
○中野委員長 次に、田端正広君。
○田端委員 公明党の田端でございます。四人の先生方、きょうは大変どうもありがとうございます。
先ほど先生方からいろいろとお話を伺いまして、基本的には公務員改革に対する大変大事な御指摘、そしてまた、これはぜひ大きく大所高所の立場から進めるべきだ、こういうお話をいただきました。
それで、まず堺屋先生にお尋ね申し上げますが、先ほどの先生のお話を伺っておりまして、本当に公務員改革こそ日本の改革の出発点だ、再出発点だ、こういう核心をついたお話をいただきまして、まさにそのとおりだと本当に共鳴、共感するところであります。
その中で、今回の改革案の中で内閣人事庁の問題、これが一つの大きな特徴といいますか、柱だと私は思っておりますが、人事権について一元化していく、ここで一括管理する、こういうことであります。そして先生、先ほど、日の丸官僚、こうおっしゃいました。つまり、縦割りからそういった大きな、より国家的視点に立った国家公務員、こういうことをおっしゃっているんだと思います。そこで、中立公正ということが何よりも大きな倫理的な柱だ、こう思います。つまり、国民のための官僚、国家のために内閣人事庁が設置されて、ここで一元化することによって、先ほどおっしゃられていた信頼できない官僚から信頼される官僚に、ここは大きくこれで変えていくてこにしなければならない、こう思っているわけであります。
憲法の十五条では、すべての公務員は全体の奉仕者である、こうあります。国家公務員法の今回の基本法でも第一条のところで「国民全体の奉仕者である国家公務員」、こういうことも重ねて言われています。つまり、公務員としての誇りを持って、そして高い使命を持って国家国民に尽くしていくというこの一点、ここがやはり何といっても、もう一度きちっと公務員にも、そして国民にも、政治家にも、また内閣にあっても、そこのところはしっかりとその一点を確認し合って、そしてやっていこうというのが今回の改革の一番の趣旨かな、こういう思いがいたしますが、堺屋先生のお話をお伺いしたいと思います。
○堺屋参考人 全く仰せのとおりでございますが、そういう正しい倫理観、正しい行動をしてもらうのは、単に倫理的な修身の説教をしたって変わるものではございません。やはり人間でございますから、こうやった方が国のためにもなるけれども君のためにもなる、自分のためにもなるというのが必要なんですね。
今、現実でいいますと、国家公務員は、各省、その中の評判で人事が決まります。ある省の、その中の先輩後輩、現役、OBも含めて、あいつはなかなかよくやっておるなということで決まるんです。したがって、その評価というのはどうしてもその省の官僚たちのグループ、官僚集団の利益に偏っていく、これが一番の問題です。
それを支えているのは、一つは、官僚が終身雇用で、ずっと同じ、閉鎖的になっている、外からも入ってこないし外へも出ない、閉鎖的な雇用慣行になってずっといくから、このグループのことがすべてになる。しかも、その中にキャリア制度というのがありまして、将来を予約されている身分的な存在がある。これがずっと順番でいくものですから、その中で、あの人たちがこれから十年後牛耳るだろう、二十年後にはどうだろうという長期予測、人事予測ができる。そして、その人たちの中でまた次官になるのは仲間の評判のいい人だ、こういう仕掛けなんですね。
かつて、これと全く同じ形の組織で強固なものに、日本の旧陸海軍がありました。私は子供心に覚えておりますけれども、日本が敗戦に近づいたときに、悪人でもあほうでもない立派な人格者の軍人が、本気で一億玉砕と言っていたんですね。どう考えても、国に奉職する公務員である軍人が全国民を死なすというほど悪いことはないんです。それにもかかわらず、本気で一億玉砕がいいことだと言っていました。
それはなぜかというと、彼らの発想の中に、軍に対する忠誠心が国に対する忠誠心より先行していたんですね。だから、軍が滅びるくらいなら全国民が死んだ方がまだいいんだというところまで行っちゃったわけです。
今、さまざまな新しい規制ができています。今までなかった、例えば成田空港に帰ってきたら黄色い紙に書かすとか、国民にいろいろな負担、手間と不便と費用をかけるようなことがよく起こっています。それは、各省から見るとそれが便利でいいことなんでしょうが、全体から見ると、単に負担をふやしている、単にではないにしても、負担をふやして、そっちの方が問題だ。そんなことが、その省の中の共同体の倫理観からいうと通っちゃうんですね。
それは省としての責任逃れにはなるかもしれない、あるいはこういう権限がふえるかもしれない、予算がふえるかもしれない、でも、全体の国民から見たらこれは損失だということを判断できるような、そういう立場に、そして大臣たるものは、内閣の立場からそれを指導して、間違ったときにはそれは違うんだということを言える、そのためにはやはり人事権がないといけません。
そうすると、大臣が人事をするためには、人事を補佐する、そういうデータとかアドバイスとか、いろいろなものを持っている一元管理が必要です。そうでないと、各省にやらせますと、各省の共同体でデータをつくっちゃうと、公正なデータができません。したがって、ここはどうしても人事庁というものをつくって、幹部公務員については一元的に大臣にリストが出せる、こういう人事の補佐がないといけない。どこの会社を見ても、人事部というのはあるんですね。そこが共通に、次の重役はこんな人ですよとやっているんですけれども、やはり役所も、公務員の世界もそういう一元管理でやっていく。
そして、どんどんと仕事が大きくふえる役所があります。例えば福祉の問題がどんどんふえる。また一方では、だんだんと仕事が減る役所があります。ところが、今のキャリア制度は、二十年、三十年前、一九七〇年代に採用した人が今は局長クラスになっているわけですから、そのときと仕事が変わっていても、人事交流ができないから、あるところは量、質ともに少ない、あるところは余っている、これも交流できないんですね。
だから、やはり一元的に人事庁がこれを調整し、大臣にデータを上げる、もちろん、内部から上がってくるデータもありますけれども。そういうような人事庁の管理、これは人事局と、名前はどうでもいいんですが、そういうような機能は絶対に必要だと思っています。
○田端委員 ありがとうございます。
そういう意味で、つまり、今、一級のといいますか一流の人材が公務員に来てもらうためにも、この改革というのはぜひ必要だ、こういうことにもつながっていくんだと思います。
加藤秀樹参考人にお伺いいたしますが、公務員改革というのは、人材という意味でも大変大事な視点だというお話でございました。それで、政と官の関係、特に政治主導あるいは内閣主導といいますか、この必要性ということも大変大事な視点であり、そして、その中で、議院内閣制ということから考えますと、私は、つまり政権交代ということを視野に入れて、政権交代があっても、役人、官僚の中に公平中立というものがなければ、これは本来的な政治主導、内閣主導にはならないんじゃないか。だから、政権交代に左右されない仕組みといいますか、制度といいますか、ここがもう一工夫必要かなという感じがします。そこのところをどう担保していくか。
一つは、人事院の採用試験の実施とか企画立案とか、これは人事院できちっとやっていただいていますから、ここは、そういう意味では一つの大きな担保にはなっているんだと思いますけれども、今後、政権交代という視野で、大きな政治の流れが変わるときに、この点についての官僚の中立公正な、そしてまた一級の人材を集めていく、そういう意味での視点というのはどういうふうなことが考えられるんでしょうか。
○加藤(秀)参考人 ここは、基本的には、例えばアメリカが典型なんでしょうけれども、そのときの政権とともに、公務員、特に幹部公務員が大幅にがらっとかわってしまうという仕組みが一方にあります。これは、政治任用を中心にした仕組みと言えると思います。
一方で、今、日本はそうだと思いますけれども、やはり公務員というのは専門のプロとして、ずっとそこに、別途政治任用という部分がある程度あるとしても、基本的には実績に基づいて採用し評価するという仕組み、両方あります。これは、例えばヨーロッパなんかを見ても、両スタイルあるんだと思います。
ここで大事なことは、日本がどういう仕組みをとるかということをまず明確にしないといけないんだと思います。これが原理原則の部分だと思います。
私は、これまた原理原則に戻ると、基本的には、政治任用が主体ということではなくて、もちろんそこで一級でないといけないわけですけれども、プロとしての公務員を採用して、それが政権交代のいかんを問わずコアの部分として存在するという仕組みの方が、日本の今までの政治風土あるいは歴史というものを見て、適当であると考えています。
では、今のままでいいかというと、今の仕組みというのは余りにもかたいわけですから、その上で、政治任用の部分をどういうことで入れていくか、あるいは、実績主義にしてかちんかちんにならないように、どういう弾力的な仕組みにするか。
これは、今回の政府案にもいろいろありますけれども、採用のところを間口を広げるというやり方もあるでしょうし、それから、まだどこの案にも出ていないんでしょうけれども、これも欧米のかなりの国でとっている仕組みとしては、上級公務員制度というのがあります。これは、政府案で言う総合職的な公務員の中で、さらにもうワンランク、上級公務員というものをつくって、そこを特別に内閣の官房で一元的に評価と人事コントロールを行っていくという仕組みであります。この話は今回の基本法の中には入っておりませんから、ここでこれ以上お話しすることはいたしませんけれども、将来の課題としては、そういうことも視野に置くべきではないかと思います。
また、政治任用について一つだけ申し上げておきますと、私は、基本的に、今の日本がとっている仕組み、あるいは英国がとっているような公務員の仕組み、したがって、政治任用ではない部分をコアに置くということでやっていく上で、政治任用について、ある程度それもやっていくとすれば、やはり政治任用についてのルールが今欠けているんではないのかなと考えております。
いわゆる公務員の幹部クラス、それから、最近は閣僚についても一般人から任用するケースがふえておりますけれども、これも、政治任用が多いところほど、例えばアメリカのように政治任用を多用しているところほど、その任用しようとしている人が、今までどういうことをやってきたのか、あるいは、閣僚あるいは公務員をやめた後いつまでどういう義務を負っているのかというルールが非常に厳しくつくられております。日本ではここの部分が極めて甘いわけですから、これも今回あわせていろいろ御議論いただいて、ルールをつくっていただきたいと考えております。
○田端委員 大変にありがとうございます。これはまだまだ今後とも議論が必要かと思います。
田中参考人は、官民人材交流センターの懇談会の座長という形でおまとめいただいて、いよいよことしの十月からセンターも稼働する、こういうことになります。もちろん、三年間の経過措置といいますか、そういう形にはなるんですが。
私は、早期退職勧奨ということは、何としても克服しなければならない大変な問題で、今ようやくこの年齢も五十五・八歳にまでなっていますが、しかし、六十年という定年制からいきますとまだまだ足らないというふうに思います。人間というのは、やはりそろそろ肩がたたかれるというふうなことを予測しますと、本人は、じゃ、どうしようか、どこかないかなとかいろいろな動きをするものですから、これは悪循環になっていくわけでありまして、そういった意味では、おまとめいただきました昨年の公務員の改革改正案、つまり、能力・実績主義そしてまた再就職に対する規制ということでは、これは大きな一つのステップになると思います。思いますが、しかしここは、やはり天下りと定年制とのセットで議論しないとどうしても成り立たない問題だ、かねがねそういうことを感じているわけであります。
今後、この法律でもいろいろ書いてあります。書いてありますが、しかし、四年かかって一・何歳かなんか延びただけですから、これはもう大変なことだなと。まずここをどう担保するかが、やはり公務員の方の使命感とかそういったことにもつながっていくんだ、こういう思いをしております。
田中先生の御所見をお伺いしたいと思います。
○田中参考人 非常に難しい問題といいますか、私どもが議論したのもまさにそういう点でございます。
いろいろな制度を、例えば定年を六十にするとか再雇用はどうするとか、あるいは、いろいろそのほかにも議論はあるんです。でも、私たちがこの制度を仕組む前提は、去年七月に公務員法が改正されましたね。今の法律のもとで、あるいは閣議決定されているもとで設計しないと、将来、あれをこうしてくれ、これをこう、それを前提にセンターを仕組むわけにいかない。センターはことしの十月からスタートすることが決まっておるわけでありますから、法律でそうなっておるわけですから、これから制度の根幹を変えるような話を前提にセンターを仕組むわけにはまいりません。
しかしながら一方で、スタッフ制を導入するとか徐々に、確かに、おくれています、定年を延ばしなさいという決定があってから、本当は三年ぐらい延ばしなさいという話があってから、なかなか遅々として進んでいません。それを、この法律をきっかけにどんどん進めてもらいたいと思います。
一方、肩たたきではなくて延長しますから、そういう人たちをどういうふうに使いこなしていくかということも、というのは、総定員法がありますから、滞留されると新しい人が採用されない、新陳代謝できないことになりますね。そんなもの無視しろというわけにはまいらない。ですから、行政改革を一方で進めながら、どうやって定年を延ばしていくか。そのためには、仮に延びていく中でも、その人の能力を十分に発揮してもらうという前提、仕組みがないといけないと思います。そういうことを開発しつつ進めていく。
本当を言うと、何年かたって、定年制も延長され、再雇用の制度もでき、ということになりますと、センターが要らなくなることが一番いいことなんです。そういう議論も私たちの懇談会の中でございました。そのためには、一般社会の労働市場と同じように、労働市場がかなり流動化しないとだめなんですね。ですから、単に公務員の就職の問題にとどまらない問題であるというふうに考えております。
○田端委員 ありがとうございました。
次に、与野党では考え方に一番大きな隔たりがあろうかと思いますけれども、労働基本権の問題であります。
加藤健次参考人は、積極的、前向きな御意見をちょうだいしたところでありますが、今回のこの法律の中では、協約締結権を付与することについて、範囲を拡大することについては検討、こうなっています。
それで、加藤健次先生はわかっておりますので、堺屋先生と加藤秀樹先生に個別にお伺いしたいと思います。
この問題は、公務員制度改革懇談会で、専門調査会の報告を尊重するということで、そしてその中には、費用の増大とか国民生活への影響とか、長期にわたる準備が必要であるとか、あるいはコストに十分留意して慎重に決断すべきだとか、こういったことが書かれています。そういうものを受けて、今回の法案に反映されるようなことになったんだと思いますが、堺屋先生はその懇談会のメンバーでもあったわけでありまして、この辺のところについての先生の御所見をお伺いしたいと思います。
○堺屋参考人 もちろん、懇談会でもいろいろと議論がございました。そして、その専門委員会の議論を取り寄せまして、その内容を検討いたしましたところ、かなり詳細に研究しておられる。これは、そのままといいますか、肯定できるものではないか。かなり複雑な書きようになっておりまして、具体的に、この表現をそれぞれの職種の人、あるいはそれぞれの場合に当てはめたらどうなるかというのはまだまだ検討の余地があるかもしれませんが、やはり、専門調査会がよくやっていただいておりますので、それを引き継ぐ形で書いております。
基本的には、人事庁をつくることによりまして使用者側の代表もできますから、少し、どちらかといえば前進する方向に行けるのではないかと思いますけれども、確かに留意事項がたくさんございます。今御審議いただいておりますのは基本法でございますので、それぞれの具体法ができるときまでには考えていかなければならない問題だ、そう思っております。
○加藤(秀)参考人 調査会で別途検討中ということですが、私は、これは調査会の報告なんでしょうか、この中で書いてあることをちょっと読んだんですが、頭がぐちゃぐちゃになるような、何を書いているんだろうなと思うような、いわゆるお役所の文章の中でもこれ以上長くならないような文章なんですね。ですから、私自身専門ではないものですから、こういうところできちっと議論しないといけないにしても、せっかく基本法ができるわけですから、もうちょっと明確にちゃんとやるよということを書いてもいいのではないのかなと考えております。
○田端委員 ありがとうございます。
おっしゃるように、確かに表現が非常に複雑といいますか、理解が非常に難しい文章になっていることは事実かと思います。例えば、おっしゃるように、そういった意味でのあるべき道筋のようなものももう少し触れてもよかったのかなと私も思っているわけであります。
次に、正直言いまして、公務員という言葉に対する国民、市民の反応といいますか反発といいますか、これは大変なものがあります。それは我々政治家もそうでありますが、国家公務員だけではなく地方公務員、数の上では圧倒的に地方公務員が多いわけでありまして、また、市民から見ると地方公務員の方がもっと身近に存在しているわけですから、堺屋先生なんかもあれですが、大阪も地方公務員の裏金づくりとかいろいろなことがありまして、連日新聞ざたになるようなことで、本当にそれらが複合的に作用して、公務員に対する国民の怒り、反発、大変な感じになってきている。それだけに、先ほど先生おっしゃったように、公務員改革の必要性ということにつながっていくんだと思います。
その中で、この法律とは直接関係ないんですけれども、地方公務員の場合に、今回内閣人事庁、あるいは人事院というのが国の場合ありますが、首長がそういったものに絡む事件というのはいっぱいあるわけですね。例えば、利害とか情実とかそんな関係で公務員を採用する場合に、首長が決断する、そういうことでいろいろな事件になっていることがございます。
そういう意味では、私は、国家公務員法の改革、それに引き続いて地方公務員の改革というのはもう当然しなければならないと思いますし、また、こういう中立公正な地方の公務員のあり方ということに対しての議論ももっと起こさなければ、これはもう一体的な流れだ、こういう思いをしております。こういう中立公正というものが、国であろうと地方であろうと、原理原則の一番の柱だ。
その意味で、地方にあって今後地方の不正事件とかそういういろいろな事件を防いでいくための改革のあり方ということについて、田中先生のお話をお伺いしたいと思います。
○田中参考人 おっしゃることに基本的に賛成です。ただ、今の制度のもとでも正していける、改正していけることがたくさんあるんだろうと思います。今お話に例で挙げられたようなことはどんどん問題にして正していけばいい。そのためには地方の議会がきちんと機能しなければいけない。
具体的に市町村の名前を挙げませんが、北海道の某町なんて非常に議会が活性化していまして、いつも賛成だ反対だというだけではなくて、町長と同じように一生懸命考えるんですよ。予算はこれしかない、ではと、常時、市民に議会を公開するんですね。参加してもらって物事を決めていく。だから、おかしいことも起こりようがない。
ということは、基本的に公務員制度をどうのこうのするという問題もありますけれども、今正せることもたくさんある。特に地方の場合は市町村民の目が近いですから、そういうことから活性化していかなければいけない。これは持論を申し上げて恐縮ですが、そういうふうに思っております。
○田端委員 大変にありがとうございました。
以上で終わります。
○中野委員長 次に、塩川鉄也君。
○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。
国家公務員制度改革基本法案の質疑に当たりまして、皆様からそれぞれ貴重な御意見をいただき、本当にありがとうございます。早速ですけれども、堺屋参考人と加藤秀樹参考人にお伺いさせていただきます。
政官接触の制限の問題ですけれども、堺屋参考人は、官僚が国会議員を説得して回る、内閣や大臣の方針と異なることも珍しくないと。そんな中で、具体の例として、高速道路や郵政事業の民営化に関してその点が著しかったということのお話をされているのを承知しております。ですから、官僚が政治家に内閣の方針にそぐわない働きかけをする、それは問題だ。同時に、これに応じる政治家の側があるわけで、政治家の側の問題でもあるわけですけれども、そういう点で、与党政治家と官僚の癒着こそ問題ではないのか、その点についてのお考えをお聞かせいただければと思います。
それと関連しまして、加藤秀樹参考人に、資料の方でも弱い内閣の例として与党議員と官僚との関係が示されております。同様に、与党議員と官僚の癒着という点が問われているのではないかと思うわけですが、その点についての御見解、御所見をいただきたいと思っております。
○堺屋参考人 確かに、与党議員の中に、官僚と癒着という言葉が正しいかどうかはちょっとわかりませんけれども、親しくして、官僚の意見に影響を受けやすい人がいることは事実のようであります。官僚と接触していることで特別の情報を得られる、あるいは自分の意見を官僚に吹き込むことができる、そういうような利点もあると思うんですね。やはりこれは、与党議員であっても、大臣が官僚と議員との接触についてはコントロールして、どんな話をしたのか完全に大臣が握ってなきゃいけない。それで、大臣の意向と違うもので与党議員を説得して切り崩そうという官僚がいたら、これは命令違反だと思いますね。
だから、そういう意味でも、これは与野党に関係なく、大臣が何を説明してこい、こういうことを説明してくる、それでもし間違いがあったら議員から大臣を追及する、こういう仕掛けになりますと、大臣も隠し立てもできないし、うそも言えない。責任がはっきりした方がいいと思うんです。そうでないと、いつ、どの役人がどの議員さんと接触をして何を言ったのか全然わからない状態でございますと、内閣、大臣として政治があいまいになります。もし大臣と違う意見を持っている公務員がいたらそれは配置がえをするとか、そういう意見の違うところには置かないような人事もやる必要があると思いますね。
御指摘のように、与党議員との接触にかなり問題のあることは事実だと思います。
○加藤(秀)参考人 今、堺屋さんがおっしゃったことでもう尽きていると思いますけれども、これは癒着というよりは、内閣あるいは大臣を軸にして、大臣が仮に社長あるいは役員であれば、公務員はそれに仕えるスタッフですから、これは一体でないといけない。一方で、大臣以外の政党の議員と内閣を構成する閣僚も、これは政党という単位で一体であって、その一体の軸のところに大臣あるいはそれのまとまりとしての内閣があるというのが、くどく何回も申し上げますけれども、議院内閣制の原理原則ということなんだと思います。その軸をバイパスして、国会議員全体と公務員の行き来が野方図に行われている、むしろそちらの方が中心になっているというのが今の日本の現状で、それを何とかしないといけないということなんだと思います。
ですから、バイパスすることによって大臣あるいは内閣の力も弱くなる、それから、大臣以外の、内閣の外の議員に対するいわゆる根回し的なことにエネルギーなり時間の本当に過半を割くような状況によって、公務員自身も本来の仕事ができなくなって、官庁というものの力が弱くなっていくというような、全体としての政治、行政の劣化を招いていることの、これが最大の要因だと思います。したがって、やはり原理原則に戻って、そこをきちんとすることが大事だと思います。
ただ、先ほども申し上げましたけれども、具体的にどうするかということについては、全面禁止から、政府案あるいはそれに対する対案の中でいろいろな知恵が出てきているわけですから、私は、まずはいろいろな試行錯誤からやっていくべきではないのかな、ただし、なるべく原理原則に近いところでスタートをしていただきたいなと考えております。
○塩川委員 癒着と言われるような構図をなくすということと同時に、やはり何としても透明化を図るということが何より一番の力だと思っております。そういう点では、与党、野党を問わず、透明化を図るという具体的な手だてが求められていると思いますし、野党側にしてみれば、官僚機構の問題点を明らかにする、是正させるという点におきましても、具体的な情報提供を求めるということについては、これはこれとして、制限されるようなものであってはならないというのが私どもの考えであります。
次に、堺屋参考人に、キャリア制度の見直しの点について一点伺いたいわけです。
身分固定的なキャリア制度をなくすという際、特に採用の問題でお聞きしたいんですが、1種、2種を改めて総合職、一般職ということになるわけですけれども、一つは、総合職は何人ぐらいの採用ということをそもそもイメージされておられるのか。今の1種の、全体で五、六百人ぐらいでしょうか、そういう規模に対して、多いのか、少ないのか、あるいは現状なのか。
それとの関係で、総合職の人が実際幹部になっていくのは半分程度なんだということも制度懇の中での御議論にあったそうですけれども、その点についての堺屋参考人のお考えと、今回の法案がそれとの関係でどのようなものになっているのかについてお聞かせいただけますか。
○堺屋参考人 具体的な人数につきましては、明確な計算はしておりません。これから、官僚といいますか公務員の労働需要がどのぐらいのものになるのか、公務がどれぐらいのものになるのかということも問題でありますが、現在の1種よりはやや少な目であろうと思います。そして、途中採用で、大学院から来る人、それから一度どこかへ勤めて来る人、そういうような人々がどんどん入ってくる、そして一方では、また違った職場へ行く人がいる、そういう流動性の中で煮え立つような競争と実績の社会ができるべきだ、こう考えております。
したがって、これから基本法から具体法になるときに、どれぐらいの人数を採用すべきか。これは一括採用でございますが、そのときに、自分がどういうところへ行きたいという希望も出してもらいます。そして、その希望は大体数年から十年後にはいつでも出しかえられる。大学を卒業したときにはAという経済官庁がいいと思ったけれども、やってみたらBという福祉官庁の方が自分に向いていたと思うかもしれませんし、公務を実験されて、実際に働いてごらんになって、自分の適性を探せるチャンスもつくりたいと思っています。また、公務員になってみたけれども、自分は総合職より一般職に向いていると思う方も出てくるでしょう。
人生がいろいろと変わる中で、最初に、大学を卒業した瞬間に人生を固定してしまうというのは、一見安全なようですが、大変残酷な制度なんですね。この制度の中で埋没していった、利点を発揮できなかった個性は何万人もおります。そういう枠をはめたために、かえって不幸になった人もたくさんいます。それはまた、官庁の側でも不適任の人を抱えるということになりますから、常にこれは、身分ではなしに、そのときそのときに流動するんだという形で、途中採用も入れながら、また、一般職や技術職の方からかわられる方、その逆等を入れながら考えていくべきだと。
人数につきましては、そのニーズを、どれぐらいになるか、これから研究する必要があると思います。
○塩川委員 人材の流動性の中で、外からも必要な人材をということだと思います。そういう点では、有為の、有能な人を民間から迎えるということも今後ふえていくんだろうと考えますけれども、その場合の官民交流におきまして、当然のことながら、一定のルール、節度、モラルが求められている、その点の整備が求められるんだと思います。
その点で、今回、官民人材交流の推進ということで、官民人事交流法についての見直しのことも掲げられております。
そこで、重ねて堺屋参考人に伺います。
私も委員会で取り上げているんですけれども、個人が民から官に来る、官からまた別なところに行く、こういうのは起こり得るでしょう。現にあると思います。それとは別に、特定の企業から特定の官の所属に来て、そのところからまた特定の企業に戻るということが現にあるわけで、官民人事交流法というのはもとの職場に戻ることを前提にしている制度であるわけですけれども、その点についての制限の緩和という方向になりますと、特定の官と特定の企業の癒着、官民癒着という批判というのがやはり免れないのではないかと思うんですが、その点についてのお考えをお聞かせください。
○堺屋参考人 確かに、そういう官民癒着、あるいは特定の企業と特定の官庁との間に人事交流が定期化したときに問題が起こるという御指摘はございますが、実際問題として、今までそういう形のことが問題になったことは余りございません。
例えば、私どもが閣僚をしておりましたときに金融監督庁というのをつくりました。これは、そういう金融検査の経験者が役所の中に少なかったものですから、公認会計士や金融機関から相当大勢の人に入っていただきました。けれども、それによって特定の企業と癒着したという例はございません。
また、私が閣僚のときに、管理職以上、局長から課長まで六人ほど、学界の人とか企業の人とか来ていただいたんですが、そこで問題が起こったこともありません。
つまり、官民交流が公になっている方が問題が起こらないんです。むしろ、そういうきちんと交流しているのは問題は起こらない。
それから、今回は、二年で帰るんじゃなしに本当に公務員になってしまってもらう、そして、それからは生涯公務員として働いてくれることを前提とした途中入省。二年で帰るという、天上がりと言われる制度じゃなしに、途中で入ったら、それは局長にも次官にもなろうという人たち、そういうような途中入省をふやしていこうということです。
これは、日本全体の労務の流動性、労働人口の流動性と対応した形で、時代時代に応じた能力者を取り入れようということですから、それが官民癒着に直ちにつながるとは思いません。
ただ、その可能性はないとは言えませんから、その点はやはり監視する必要はあると思います。だけれども、原則としてもう公務員になってしまうんですから、そういうことは極めて起こりにくいことだと思っております。
○塩川委員 ありがとうございます。
次に、労働基本権、労働者の労働の実態の問題について、田中参考人と加藤健次参考人にお伺いをしたいと思っております。先ほど、労働基本権の回復、協約締結権の付与について堺屋参考人と加藤秀樹参考人に問いがございましたので、田中参考人と加藤健次参考人に。
もともと、専門調査会では協約締結権の付与と言い、制度懇では尊重するとなり、しかし今、法案にはその点が検討とだけなっている。この点についてのお考えを、田中参考人と加藤健次参考人にお聞かせいただければと思います。
○田中参考人 懇談会での考え方は堺屋参考人がお話しになりましたので触れませんが、確かにこの十二条を見ますと、非常に難しいですね。さっと読んだときはわからなくて、二回か三回読んでやっと、ああ、そういうことかとわかりました。これは我々の懇談会のそれと同じであるのか後退しているのか、その議論をしても仕方がないんですが、この内閣委員会では、どうも後退しているんじゃないかというふうな御意見だったと私は伺っております。確かにそういうことかもわかりません。
私は、基本的に今の公務員、例えば行(二)の人も事務次官も指定職の人も同じ規定の仕方でやっているというのは、やはり問題があるのではないかと。基本権、特に協約権ぐらいまでは与えられる人たちというのは随分あるでしょうし、場合によると、もうきれいに分けて、三権与えてもいい職種もあるかもわからない。
ただ、そういう議論を全部含めてここで検討しますと、要するに、国民が理解できるように説明してくださることが不可欠ですよとこの法律はなっておるので、そこから議論して悪いことはないわけでありますから、その前提を、労働基本権、できることから付与していくということを前提にしながら検討していくことは、それはそれで結構ではないかと私は思っております。
○加藤(健)参考人 実はこの議論は、私の知るところだともう十年ぐらい、ずっと同じトーンで推移をしています。本来ならば、二十一世紀に入るところの省庁再編あたりで決着がついていなきゃいけない問題だったと私は承知しているんです、その後ILOからも勧告が来ておりますので。
それで、基本的立場としては、先ほども申しましたように、これは保障すべきだという判断がなければ国民を説得しようにも説得する知恵もわかない、やはり基本的な権利にかかわる問題です。
それからもう一つ、歴史的に言いますと、今、国家公務員に労働基本権が制限されているというこの法制自体が、実は国民的な議論でそうなっているわけじゃないんですね。新しい憲法のもとでは、当然、公務員も労働基本権が保障されるという前提でスタートしたはずだったんですが、これは占領軍の指示で今の体制ができていますから、はっきり言って、国民的に議論して今の体制ができているわけではない。ですから、これを原則にまず戻すという方針を明確にして、その上でいろいろな、さっき私が申しました具体的な議論をし、国民の理解を得る。
それから、もう一つ申し上げたいのは、今は民間も含めて争議権等の労働基本権の行使がなかなかしづらい状況になっています。ですから、民間の状況を前提に公務員の権利を考えると、順序が間違いじゃないかと僕は思います。やはり本来保障すべきものは保障する。これは民間労働者も公務員労働者も一緒であるということを大原則として提起していかないと、この条文のまま通ると、恐らくまた十年後に同じような議論をしている可能性が高いと思いますし、せっかくの機会ですから、ここは議会ですので、まず議会の方でこの段階で保障するという方向だけは何とか明確にしていただいて、具体的な議論、具体的にどう制度設計するか、手当てをするかは各論、これぐらいまではぜひお願いしたいというふうに思っています。
以上です。
○塩川委員 ありがとうございます。
続いて、やはり田中参考人と加藤健次参考人に職員の労働実態の問題でお聞かせいただきたいんですが、長時間労働、サービス残業の問題がございます。
制度懇での議事録を拝見していますと、田中参考人からこの問題でお話があったと承知しております。民間企業であれば労働基準監督署から指導が入って何億とか何十億というバックペイが命ぜられるのに、そういう不払い労働の問題が中央官庁では全く放置されている、こういう御発言があったというふうに承知をしておるんです。
田中参考人が承知をしておられる公務の長時間労働、そういう中で不払い労働があるということであれば極めて重大ですけれども、そういう違法行為ということについての御認識をお聞かせいただきたいと思います。
加藤健次参考人からも、冒頭の陳述の中で長時間労働、サービス残業が蔓延をしているというお話でございましたから、具体の例などございましたら御紹介をいただければと思っております。
○田中参考人 手元に議事録を持っておりませんので、私がどう発言したか、たくさん発言していますので定かでございませんが、公務員の長時間労働につきましては二つほど申し上げておきたいと思います。
私も、もう現職を離れてから十年以上になりますので、最近はどうかということをよく若い人と議論するんですが、長時間労働については余り変わっていないどころかひどくなっているという問題、それは国会との関係が一つあり、各省との法律案なりあるいは政省令の協議で非常に時間をとっている。覚書の問題は、いっとき、十年前ぐらいに住専の問題で覚書が問題になりましたが、最近は大分減っていると聞いておりますけれども、私は確認しておりません。
それからもう一つ、労働時間の問題と、ぜひとも言っておかなければいけないのは、定員が非常に制約されておる。これは行政改革で数値的に削減されていくわけでありますから、先ほども御議論ございましたが、その中でパートタイマーとか、いわゆる仕事は実際に公務員と同じことをしながら正規の公務員ではないという人たちがふえているやに聞いております。昔は局長の秘書などでも全部正規の公務員だったんですが、今は大体そういうことではないと。しかし、非常に秘密を守るポストですよね。いや、それは非常勤であっても秘密を守らなければいけないんですけれども。
もう一回、そういう公務員そのものの種類あるいは仕事の内容とその類型とを切り分けて、どう政治をしていくのかということも重要なことではないかと思います。このことは、今御質問の長時間労働に関係がある話として、申し上げておきました。
○加藤(健)参考人 これも平成十八年度の白書から引用しますと、最近やはり国家公務員の病気休職が非常にふえているということで、十八年度で全体の二・〇四%、六千百五名で、うち、いわゆる精神、行動の障害、メンタルヘルス系の病気による病休が三千八百四十九人、全体の六三%という数字が出ています。つまり、長時間労働で非常に、しかも、働いても働いても、働いていないと外ではたたかれるということもあって、なかなか精神的にきつくなっている。
先ほど言いましたように、いわゆる三〇%が正職員じゃないという状況は、その裏返しなんですね。本来職員が賄うべきところが足りないからみんな長時間働く、それでも足りないからやむを得ず本来の仕事を正職員じゃない人がやる、この悪循環になっているというふうに考えます。
この間の公務員制度の議論というのは、基本的に公務員の数を減らすというのが基調だったと思うんですけれども、統計的に見ると、日本の公務員というのは世界的に見て決して多くないんですよね。やはり必要なところには必要な人を配置するという議論もこの際必要じゃないか。そうじゃないと、今言ったように、建前としてはこれでやっているはずなんだけれども、実際には少人数で回している、足りないから本来の形じゃない人を雇う、これをどこかで断ち切らなきゃいけないというふうに思います。
そういう中で、例えば、もっと大きなことを考えろとか、天下国家のことを考えろとか、あるいは目の前にいる利用者の国民の立場を深く考えろとか言われても、なかなか余裕がないというのが実際じゃないかという意味で、なぜかこの間の公務員制度の議論を聞いておりますと、何か減らすことばかり考えていて、やはり必要なところはちゃんとふやすという議論もしていただかないと、恐らく、先ほどから参考人の先生方がおっしゃっているような、例えば誇りを持って仕事をするということが実際にはなかなか難しいし、それから、利用者の方から見ても、なかなか親切じゃないとか、つっけんどんだとか、そういう話が出てくるということですので、ぜひ、必要な人員は幾らぐらいなのか、それを議論の中身にしていただきたいということ。
そのためにも、やはりそういうことは、現場の労働者が、我々の仕事をするにはこれぐらいの人員が必要だ、そういう交渉ができて、それが最終的に実現するかどうかは別として、労働者がそういう権利を持って当局と交渉ができるという体制をこの機会に確保する。それが一番、言ってみれば現場から上がった実情を反映した数になると思います。それをどう最終的にやるかどうかは別ですけれども。
そういう意味でも、団体交渉権それから協約締結権の問題というのは、そういうことを積み上げていく上でも非常に重要な意味を持っているというふうに私は考えています。
以上です。
○塩川委員 関連して加藤健次参考人に伺いますが、非常勤職員の問題であります。
田中参考人のお話にもありましたように、定員という制約があって、一方でのサービス残業と他方での非常勤職員の拡大という格好が、現状、大きく公務の現場に広がっているんだろうと思います。
私も何度か、総務委員会などでもこの問題を取り上げたり、さきのこの法案での本会議質問の中でも非常勤職員問題を取り上げて、これは福田総理の御答弁でも、こういう問題について人事院は調査を行っている、これに関連して各省庁が協力をして何ができるのか検討していく、こういう御答弁でした。
そういう点での官製ワーキングプアと言われるような現状について、先ほど、そういう非常勤の職員のあり方の問題、賃金職員のお話もございました。こういう官製ワーキングプアと言われるような非常勤職員の問題についての現状、その点についての問題解決の方向などについてのお考えがありましたら、お聞かせください。
○加藤(健)参考人 今御指摘のあった問題は、やはり基本的には定員をどう定めるかというところに帰着する問題ですが、ただ、現実にそういう方がもう相当数、十数万いらっしゃるわけです。
一つは、この間、自治体も含めて、そういう方が任期が切れたという理由でほうり出される、実質的に解雇されるという事件があります。裁判所でも、大分今までとは違って、そういう雇いどめの仕方は違法であるというのが、去年、中野区の民営化に伴う保育士の雇いどめ事件で出て、結局、現職復帰されたようです。それから、国家公務員についても、何年か前に、国立情報学研究所というところで十数年繰り返し更新して働いてきた女性の職員について、初めて、雇いどめは無効である、つまり、雇用の継続を認めるという判決が出ました。残念ながらこれは高裁で覆りまして、今、最高裁で争っています。
したがって、今現実にいる国家公務員の中の非正規の方については、少なくとも民間並みの法理、正職員と同様に繰り返し働いてきた人についてはきちっと雇用保障をしていく方向で、これはやはり法整備が必要だと思います。裁判所もかなり最近は踏み込みましたけれども、最後は立法論だということを言うことが多いので、この機会に、現実に存在する人たちへの規制というのは別途考える必要があるだろう。
雇用保障がないことと、それから職場が長時間労働などのいろいろなストレスもあって、実際に労働組合の話を聞くと、そういう非正規の方へのいわゆるセクハラだとかパワハラ的な嫌がらせ事件もかなり起こっておるんですね。そうやって全体的に職場が荒廃するとか士気が低下するという問題が起こっていますので、基本的には私は定員の問題だと思いますけれども、現に存在しているそういう十数万の、地方公務員を入れるともっと大きな数になると思いますが、現実にどう権利を守るか、雇用を保障するか、あるいはそういう嫌がらせとかを防止するかという策は、これは別途何らかの形でこの機会に検討をしていただきたいというふうに思います。
○塩川委員 終わります。ありがとうございました。
○中野委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
この際、一言ごあいさつを申し上げます。
参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)
午後二時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
午後零時二十五分休憩
――――◇―――――
午後二時五分開議
○中野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
内閣提出、株式会社地域力再生機構法案を議題といたします。
本日は、本案審査のため、参考人として、神戸市長矢田立郎君、中小企業再生支援全国本部統括プロジェクトマネージャー藤原敬三君、弁護士瀬戸英雄君、宮崎大学教育文化学部教授入谷貴夫君、以上四名の方々から御意見を承ることにいたしております。
この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
本日は、御多用中のところ本委員会に御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。本案について、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
次に、議事の順序について申し上げます。
矢田参考人、藤原参考人、瀬戸参考人、入谷参考人の順に、お一人十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。
なお、参考人各位に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。
それでは、矢田参考人にお願いいたします。
○矢田参考人 神戸市長の矢田でございます。
地方自治体から見ました地域力再生機構に対する期待として、意見を述べさせていただきたいと思います。
まず、神戸市の外郭団体活用の経緯、またその効果についてでございますが、神戸市におきましては、第三セクター等のうち、人的、資金的及び業務内容において強い関連性を有する団体で、おおむね二五%以上を出資、出捐している団体を外郭団体と位置づけておりますが、多様化する行政需要への迅速、柔軟な対応、また民間の資金、人材、ノウハウによる効率的な市民サービスの提供などを目的としまして、最小の経費で最大の福祉を確保するという神戸市独自の都市経営の手法として、昭和三十年代から外郭団体を積極的に活用してまいりました。
そのため、ピーク時の平成七年度、これは震災の年次でございますが、六十四の外郭団体が存在をしておりました。その中には、財団法人こうべ市民福祉振興協会のように民間の福祉事業者と連携して先駆的な福祉サービスを提供する団体、また財団法人神戸市産業振興財団のように、民間の人材、資金を活用して、主に地元中小企業やベンチャー企業の振興を目的として設立されているものや、株式会社神戸ニュータウン開発センターのように、神戸市が公共ディベロッパーとして地域開発を先導してきた過程で、地域住民の生活利便施設を整備するために設置した会社などがございます。
もちろん、中には、特別の法律に基づいて特定の事業を実施するために設置する必要があるもの、例えば神戸市道路公社あるいは財団法人神戸港埠頭公社等でございますが、また、特別の法律に基づくというものでなくとも、地方自治体の出資している会社や団体であれば出資や助成を受けられる場合があるなど、地方自治体にとってのそういったさまざまなメリットを活用するために設置した団体もございます。
次に、神戸市の外郭団体の現状は、先ほど申し上げましたとおり、平成七年度のピーク時には六十四団体ございましたが、阪神・淡路大震災での壊滅的な被害に加えて、長引く景気の低迷や民間企業との競争などにより、厳しい経営環境に置かれてございます。
さらに、これまで公共的団体しか受託できなかった公の施設の管理運営を株式会社にも開放する指定管理者制度の導入や、新たなサービス供給の担い手でございますNPOの活動の活発化などによりまして外郭団体の見直しを進め、現在四十六団体にまで削減を行うとともに、各団体について経営改善に取り組んできております。
外郭団体が経営改善に取り組むに当たりまして、団体の運営に関して外部からの客観的な評価とともに、専門的なアドバイスをいただくために、公認会計士、学識経験者、経営コンサルタントの三名の専門家から成る神戸市外郭団体経営評価委員制度を平成十四年度に創設してございます。平成十七年度までにすべての団体についてヒアリングを行い、経営改善のための具体的な助言、提案をいただくとともに、十八年度以降は、それらの実行状況を検証するとともに、個別の課題等に対しても助言、提案をいただいているところでございます。
次に、外郭団体経営における地方自治体の直面する諸問題について説明をさせていただきます。
一つは、指定管理者の制度でございますが、外郭団体の意義を改めて見詰め直す要因として、指定管理者制度がございます。平成十五年九月に施行されました地方自治法の改正によりまして、公の施設に指定管理者制度が導入されておりますが、改正前には、地方自治体の出資している団体等にしか管理運営を委託できなかったわけでございますが、指定管理者制度の導入によって、一般の株式会社にもその門戸が開かれることになりました。そのこと自体は神戸市においても費用削減や市民サービスの向上に効果が上がっているところでございますが、公の施設の管理を担ってきた外郭団体の経営に与える影響は大きいと言わざるを得ません。
次に、地方財政健全化法が平成二十一年四月から施行されますが、その中で、将来負担比率を外郭団体等への損失補償額を含めて算出することとなってございます。将来負担比率が一定以上に達すると、財政健全化計画を策定する必要がございます。自治体の財政指標にも外郭団体の経営状況が反映されることとなり、外郭団体の経営改善が一層大きな課題となっております。
次に、公益法人制度改革に関してでございますが、本年十二月より公益法人制度改革三法が施行されます。その中で、今後、社団、財団法人は、一般社団、財団法人と公益社団、財団法人に分類されることとなります。その公益性の程度によって税制上の扱いが変わり、団体の経営に少なからず影響を与えることが予想されます。特に、財団法人につきましては、法律施行後五年間の移行期間はあるものの、二期連続して純資産が三百万円を下回れば解散することとなっており、先ほど申し上げました指定管理の問題等も含めて、外郭団体の存続に当たっては一層厳しい条件となってございます。
元来、外郭団体の存立意義として、公でもなく民間でもない中間領域のサービス供給の担い手としての役割がございます。しかし、特に阪神・淡路大震災以後立ち上がってきたNPOの活動が平成十年の特定非営利活動法人法の制定を契機としてさらに活発化し、外郭団体の役割が変わりつつございます。神戸市におきましても、NPO法人アスリートタウンクラブが平成十年に発足し、体育施設の管理運営やイベントの開催などにおける大きな担い手となってございます。
次に、外郭団体の再編における課題についてでございますが、先ほど述べましたとおり、外郭団体の整理統合は地方自治体にとっては不可避となっておりますが、実際には、そこで働いている方々の処遇の問題を避けて通るわけにはまいりません。特に昨今のような厳しい経済状況では、受け入れ先となる団体また企業も簡単には見つからないのが地域の現実でございます。また、債権者との調整におきまして専門的なノウハウがないため、事業再生計画を立てる場合のネックとなっている場合がございます。
このような地方自治体における外郭団体を取り巻く環境を概観いたしますと、今回の株式会社地域力再生機構法案に対する地方自治体の期待は大きいと言えます。
地域経済の状況は地域によって厳しいところがございます。その中で、今回の法案に盛り込まれる幾つかの取り組みは、地域の中小企業のみならず、地方自治体の外郭団体の事業再生に大きな役割を果たすことによって地域経済の活性化に資するものと期待してございます。
例えば、専門家の派遣については、全国レベルのすぐれた専門家を派遣していただけるのであれば、そういった専門家によるアドバイスを受けて経営改善に取り組むことにはメリットが大きいと言えます。
具体的には、対象の団体の再生が可能かどうか、広く全国的な目でマーケット開発やノウハウの収集を行うことを前提に判断すれば、再生が可能となるような事例も出てくることが予想されます。また、統廃合の必要のある団体の資産査定に際して、会計士等専門家の派遣を受けられるとすれば、有効であると考えてございます。
次に、関連する法人との調整に関し、政府系も含む金融機関の繰り上げ償還や債権放棄を伴う場合などに、地域力再生機構の調整能力に期待する部分は大きいと言えます。さらに、適化法の特例につきましては、事業再生計画に基づく再生を試みる際に、国の補助金を受けて取得した財産の処分手続の簡素化も有効であると考えてございます。
いずれにいたしましても、外郭団体の経営は、社会情勢の急激な変化や民間企業との競争などにより、より厳しい環境に置かれてございます。さらに、特に地方財政健全化法の将来負担比率の適用や公益法人制度改革などにより、外郭団体の改革は待ったなしの状況にございます。早急な対応が必要であると考えております。
こういった中で、まずは自治体及び外郭団体自身が経営努力を進めるとともに、外郭団体の自律性を高めていきたいと考えておりますし、さらに、情報公開、情報提供の充実、またコンプライアンスの徹底などによる透明性、信頼性の向上に努めているところでもございます。
ただ、このような地方自治体や外郭団体自身の努力をもってしても、今後の地方経済の見通しやそれを取り巻く外部環境を勘案いたしますと、場合によりましては第三セクターの事業再生が必要とされるものも考えられるケースもあろうということでございます。その際には、今回の地域力再生機構が大きな役割を果たすものと期待をいたしております。
早急な設立をお願いいたしまして、以上で私の意見陳述を終わらせていただきます。
ありがとうございました。(拍手)
○中野委員長 ありがとうございました。
次に、藤原参考人にお願いいたします。
○藤原参考人 中小企業再生支援全国本部統括プロジェクトマネージャーの藤原でございます。
私は、地域力再生機構研究会の委員としてその最終報告書の取りまとめまで参加させていただきました。本日は、その際と同様、あくまで藤原個人としてお話しさせていただくことをまずもってお断り申し上げます。
さて、中小企業再生支援協議会は、地域の中小企業の再生を支援するため、平成十五年に都道府県ごとに設置されたものです。この全国の四十七協議会をサポートすることを目的として、中小企業再生支援全国本部が昨年六月にスタートしてはや十カ月になりました。この間、全国を回りすべての協議会との面談を重ね、各地の中小企業再生の実情をヒアリングするとともに、地方個別企業の再生事案にも数多く接してまいりました。本日は、このような活動を通して感じる全国各地の中小企業の窮状と協議会としての取り組み、そしてそのような努力にもかかわらずなかなか解決できない諸問題等について御報告をさせていただきたいと思います。
まずは、全国本部の活動状況について御説明させていただきます。
全国本部は、全国四十七協議会をサポートすることを目的として設立されたわけですが、その背景としては、産活法の改正を受け、八年間の延長をいただいた協議会事業の新たなるステージを踏み出すに当たり、関係各方面からの過去四年間にわたる協議会事業運営に関しての御批判、それから御要望におこたえすべく設立された機関でございます。そして、このようにバージョンアップする協議会事業について、この四月に、その事業実施内容を定めた中小企業再生支援協議会事業実施基本要領が公表されたところであります。
実施要領では、まず、「中小企業者からの申し出に対して、相談を拒むことなく、幅広く誠実に対応する」と明記しております。また、債権放棄等を伴う抜本的な再生に関しては、より一層の高品質化を目指す一方、小規模事業者へのきめ細やかな事業面の改革を中心に支援する機能に関しても明確に位置づけております。これらにより、健康診断から外科手術までという中小企業のための地域総合病院としての協議会事業が目指すべき姿が形づくられたものと理解しております。そして、全国四十七の地域総合病院において医師不足が生じないように、また全国どこでも一定水準の治療が受けられるよう、協議会内部の医師のみならず外部の医師、すなわち士業等専門家における再生人材の育成にも努めるべく、全国本部としては既に具体的な取り組みを開始しているところであります。
さて、地方中小企業の窮状に関してですが、これにつきましては、まず業種という切り口から御説明いたします。
最も厳しい業種といえば、何といっても建設土木業が一番に挙げられるでしょう。この業種につきましては、正直申し上げて既に企業単位や地域単位で再生を考えられる状況にはなく、日本全体として考えなければならない事態であることは明らかであります。簡単に言えば、公共土木工事全体のパイはピーク時の半分近くにまで落ち込んでおり、今後も引き続き厳しい状況が続くかと思われますが、このパイの中で事業を営む事業所数はほとんど減少しておらず、また従業者数に関してもほぼ同じ状況かと思われます。
協議会では、建築土木業の再生事例は相当数ございますが、残念ながら、本格的に再生し、現在及び今後も順調に事業継続できるであろうと思われる企業は極めて限られているというのが現実であります。
しかし、協議会としては、このような厳しい業界の企業からの相談をすべて門前払いするのではなく、地域経済や雇用の確保を優先して、協議会として今できる最大限の支援をすべきであると考え、事業の実態と厳しい現実を明らかにした上で、金融機関の判断のもと、リスケジュールという支援措置を講じているというのが現実であります。
願わくば、一日も早くこの業界のプレーヤーの縮小と他業界への雇用シフトという一体の構図が実現してほしいものであります。
続きまして、ホテル、温泉旅館業についてですが、こちらにつきましても非常に厳しい現実がございます。協議会全体としても数多く取り組んでいるわけでありますが、立派に再生し元気にしておられるところの大半は、スポンサーが見つかったケースであります。
無論、このすべてについて旧来の経営者一族が排除されているわけではなく、おかみとして残っていることも多々ございます。この業種の場合、多額の設備のリニューアル資金が必要となることもあり、単なる金融機関の債権放棄のみによる再生は不可能であることから、資金力のあるスポンサーが必要となるわけであります。残念ながら、金融機関としては多額の債権放棄を実施した上でさらなるニューマネーを融資するのは厳しいという事情から、自力再生は難しく、結果としてMアンドA型の再生が主流になるものと思われます。
次に、交通機関関係でありますが、近時急激に目立ってきた業種であろうかと思います。このようになってきた背景の分析は別にして、協議会としてどのように対処しているのかといえば、一部は金融機関による大幅な債権放棄と事業改善により抜本的な再生が実現している例もございますが、残りは地方自治体からの補助金等に大きく期待する形の対症療法的な再生支援にとどまっている状況かと思います。
少し違う切り口から見てみますと、第三セクター案件も協議会では十社前後対応してきておりますが、この中で、地方自治体として血を流す等、大きく踏み込んだ抜本的再生を実現できた例もございますが、これも交通機関と同様、対症療法的な再生にとどまっているものが多数という印象であります。
以上、協議会は、中小企業を対象にしているとはいえ、実に広範な業種における多くの企業の再生に取り組んでいるのであります。企業再生を人間の病気に例えればよく御理解いただけるかと思いますが、人間ドックに行けば多くの人が何らかの指摘事項が見つかるのと同じく、中小企業においても何らかの治療が必要な企業が大半なのであります。
事実、中小企業再生支援協議会は、平成十九年十二月末までの数年間の間に、相談件数が一万三千四百七十九件、再生計画策定支援完了件数が千六百五十件と、着実に成果を上げてきております。しかしながら、これを事業所数との比較で考えますと、個人事業主まで含めると全国で五百万を超えるとも言われます。そのうち一%が早期に手術した方がよい企業であると仮定しても、まさに五万とあるのです。
現実には、さきの中小企業白書の中で、過去三年間において、とても経営の継続が困難であると感じたことのある企業が二四%に上り、少し困難だと感じたことのある企業まで含めると七三%に上るというアンケート結果から見れば、状況ははるかに厳しく、恐らくは何十万という単位なのでありましょう。
これらへの対応のため、私といたしましても、各県の協議会のさらなる発奮を期待するとともに、全国本部として最大限のサポートを行っていく所存であります。
協議会は、あくまで地域の総合病院であり、治療に訪れる企業に一つ一つ対応してきておりますが、本来、治療を必要とする企業すべてに対応できているはずもございません。そして、三セクや交通機関等に関しては、地方自治体や地方議会との協議もさることながら多大な時間とエネルギーを要するため、各地協議会としても苦慮しているところであります。これらの患者の治療は、一時期に集中して専門病院にて治療してもらう方が患者にとってもよりすぐれた治療が受けられるのではないかとも考えます。しかし、どのような専門病院をつくっても、肝心の患者が治療に行くという雰囲気が醸成され、あわせ、患者を後押しする仕組みをつくることが不可欠であります。
地域力再生機構に求められる最大の役目は、このような機運を一気に高め、そして具体的かつ象徴的な再生事例を仕上げ、見本を示す、すなわち、さきの産業再生機構と同じく、大きな風穴をあける先導役としての役目を期待されているのではないでしょうか。
最後に、地域総合病院として着実に地域に定着してきた協議会と、緊急対策の専門病院としての地域力再生機構の効果的な補完関係の構築が実現できれば、地域経済の活性化にも大いに展望が開けるものと確信しております。協議会としては、地域力再生機構がスタートした暁には、いち早くそのような補完関係の構築に努めたいと考えております。
ありがとうございました。(拍手)
○中野委員長 ありがとうございました。
次に、瀬戸参考人にお願いいたします。
○瀬戸参考人 本日は、衆議院の先生方の前で意見陳述をさせていただきます機会をいただきまして、光栄でございます。
まず最初に、私の簡単な自己紹介をさせていただきます。この弁護士は何でこんな場所に来ているのかとお思いの先生方も多かろうと思いますので。
私は、企業の再建、事業の再生、これに随分長いことかかわっております。会社更生事件の管財人としては、大手の流通のマイカル、サティやビブレを経営している会社でございますが、そことか、ホテルでは第一ホテル等の管財人等を務めております。
また、平成九年から我が国の倒産法制の全面的な改正、見直し作業が行われましたが、民事再生法、それから会社更生法、破産法、それらの立法過程にも法制審議会の幹事として参画させていただいております。
本日のテーマに直接関係するものとしては、経済産業省の指導を受けながら、事業再生に携わる各種実務家が組織しました事業再生実務家協会という団体がございますが、そこの中に公企業体再生委員会というものを設置しております。そこの委員長を務めております。この委員会は、今回の地域力再生機構と深く関連するものでありまして、第三セクター、それから地方公社、学校法人、医療法人、地域交通等の問題について早くから取り組んでまいりました。地域経済の将来のためにはこれらのあり方について抜本的な見直しが必要であり、またその再生への早期着手が必要であると、つとに訴えてきたものであります。
また、地域力再生機構の研究会、内閣府が設置されました昨年の研究会にも参加させていただいています。
これから申し上げるのは、その委員会を離れて、私の個人としての意見を述べさせていただきます。時間の関係もございますので、今なぜ三セクの再生が必要なのか、そこにおいて地域力再生機構がどういう役割を果たすべきかということを簡単にお話しさせていただきたいと思います。
平成十九年の総務省の調査によりますと、三セクの三分の一、三三・三%が赤字の経営である、そのうち、債務超過に陥っているものは五・七%であると報告されております。しかし、民間企業並みの減損会計を適用されると、その数値はこれを大幅に上回るもので、かなり破綻状況に陥っている第三セクターというのは多かろうと想定されるところであります。
第三セクターの問題解決の本質というのは、自治体財政の健全化をどのように促進するかの問題に直結するわけであります。しかしながら、これがなかなか思うように進みません。その解決のための最大の障害となっているのは、第三セクターの経営が破綻したとしても、そのトリガーを引く者が不在だということであります。
第三セクターの役員には自治体あるいは地元の有力者が就任している例が少なくありませんし、第三セクターに出資して補助金を支出している自治体については、各種さまざまな地域利権の絡んだ緊張関係の中で、なかなか問題解決に取り組むエネルギーが出てこない。損失を顕在化させると、首長さんや議員さんにとっても選挙に余り好ましい結果も招かないものでありますし、お役人さんにとっては、組織としての責任をとらされる場合もありますし、将来の天下り先を失うことにもなりかねないわけであります。
一方、第三セクターに貸し付けをしている金融機関からの監視が行き届くかというと、これも、金融機関が融資の際に自治体から損失補償を取りつけておくと債権保全として万全だというふうにみなされますので、第三セクターそれ自体の事業に関する金融機関からの個別の審査、評価は事実上放棄されております。また、外部監査人の監査など、チェックする機能も十分に働いているとは言いがたいものであります。
企業の究極のガバナンスというのは、これは組織のトップの首をどうとるのか、引導をどう渡すのかという仕組みでございますが、第三セクターではこれが民間レベルほど有効には機能していない。このことが迅速な事業再生に最も必要とされる糸口をふさいでいると言えるものであろうかと思います。
それでは、第三セクター解決のためにどのようなことを考えなきゃならぬのかということを若干申し上げたいと思います。
公が関与している事業の再生は、一般企業の事業再生と別の難しい側面を持っております。第三セクターが地域の文化の向上、それから住民の健康で文化的な生活をサポートする役割を果たしていることを否定するものではございません。したがいまして、単純な経済合理性や市場性だけで事業のあり方の方向づけをすることも、これもまた間違いであろうかと思います。また、第三セクターが一方で民業を圧迫していないかどうかということについても考慮しておく必要もあろうかなと思います。
このような第三セクターのさきに申し述べたガバナンスの問題等々も含めますと、早急に次のような対策を立てる必要があろうかと思っています。
まず一つは、早期に着手せざるを得ない状況をつくることであります。
第三セクターの重要な経営判断、これは実際は自治体の方が行っております。まずは自治体に、第三セクターを早期に解決しないとその小さなほころびが本体の財政危機につながることを認識させることが不可欠であろうと思います。先ほど神戸市長の方から御紹介のありました財政健全化法によるストック指標の開示義務、これは、その方向に向けた一つの契機をなすものであろうと評価すべきものであると思います。これに加えて、地域力再生機構のような公的な債権改善機関を用意して、早期着手による成功モデル、これを各地方に提示することが必要であろうと思っております。
二番目には、財務と経営の実態を速やかに正確に把握する必要があるということであります。
事業改善のためには、地域の利害に中立な専門家チームによる実地検査、デューデリジェンスによる抜本的な財務内容の解明が不可欠であります。その実態把握を効率的に行うためには、自治体及び取引銀行が持っている情報の開示が不可欠であります。これらの組織の全面的な協力なくしては再生計画も立案できませんし、再生の手続も円滑に進まないと思われます。これらは民間のファンドにできるものではありません。公的な権限が背景にあって初めてできるものであろうかと思っております。
再生のためには、専門的なノウハウを導入して、人材の適材適所への配置など新しい枠組みの中で取り組む必要があろうかと思っております。三セクの事業の採算性と公益性のバランスを評価できる事業再生の専門家を地域力再生機構の中に置いて、それを活用し、最小コストで効率よく事業価値を高める手法を確立することが肝要であろうかと思っております。
再生の手法としては、法的な手続、民事再生法、会社更生法等々もありますが、これらはいずれも一般の取引業者等も手続の中に取り込まざるを得ないものであります。今回の地域力再生機構は私的整理の一つの手法と位置づけることができるかと思いますが、これは、金融機関との債権調整によって事業劣化を招かないように、少なくとも最小限度にとどめた上で再生できる手法であると評価できます。
第三セクターの業務改善と経営の効率化には、バランスのとれた、しかもミクロ的な利権にとらわれない公的な調整が必要とされる場面が少なくありません。そういう中で、地域力再生機構に期待するところは大きなものであります。
もちろん、拙速な処理によって一時的に地域財政、地域機関に必要以上の過大な負担と打撃を与えて機能麻痺を招いたりすることになっては、かえって地域の活力をそぐ結果になります。元も子もありませんので、このあたりの緩急の間と断固たる政治的な決断が必要とされる場面であろうかと思っております。自治体の将来負担を考えますと、地域力再生機構による再生のみならず、非効率な三セク等についてはそれを廃止するというような判断もまた必要になろうかと思っております。
いずれにしましても、地域力再生機構は、私どもはこの夏ごろから活動、活躍をしてもらえるものと大いに期待しておりました。現場の必要性を考えると、その成立の時期がおくれればおくれるほどに自治体財政にも深刻な問題を引き起こすことにもなりかねないと思っております。速やかな御審議と法案の成立をお願い申し上げたいと思います。
以上でございます。ありがとうございました。(拍手)
○中野委員長 ありがとうございました。
次に、入谷参考人にお願いいたします。
○入谷参考人 こんにちは。ただいま御紹介いただきました宮崎大学の入谷と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
私は、大学で財政学、地方財政論及び地域経済論などの分野を教えているわけです。本日は、その専門の立場から、今回の法案の論点について幾つか申し上げたいと思っております。
お手元に資料を配付させていただいておりますので、それをごらんになっていただきたいと思います。
まず初めに、今日、第三セクター改革が注目されているということで、この理由について三点にまとめました。
一つは、先ほど来出ておりますけれども、将来負担比率を含む財政健全化法が成立したことであります。これによって、第三セクターへの損失補償については、銀行の貸倒引当金と同様の観点から、その一定割合を自治体の将来負担として健全化判断比率に算入されることになりました。したがいまして、このことから第三セクター改革が喫緊の政策課題となっております。
二つ目は、総務省が、これまでの第三セクターに関する指針を補完するために、新たに第三セクター改革ガイドラインを策定することを計画しております。第三セクターが資金調達をする際の損失補償が原則禁止となり、また、地域力再生機構と関連しまして、経営が著しく悪化した第三セクターについては、二〇〇八年度までに外部専門家を含む経営検討委員会(仮称)を設置して、二〇〇九年度までに存廃も含めた改革プラン(仮称)を策定することになっております。
三つ目は、この地域力再生機構法案が提出されまして、その業務の一つとして、経営が悪化した第三セクターの再生に取り組むことが提案されました。このことによって、自治体は、上記の改革プランを策定する上で必要なDDを実施する際に、経営検討委員会のメンバーに同機構の専門家の参加を要請することができるとされております。
このように、第三セクター改革というものが今日喫緊の政策課題になっているということであります。このことについて、今回の地域力再生機構法案がどのような意義、意味を持つのかということについて、以下述べさせていただきたいと思います。
第一は、第三セクターのガバナンスについてであります。
二枚目に図をつけましたけれども、これは、地方公社総覧をもとにして、二五%以上出資の第三セクターについて、一九八一年から一九九九年までの約二十年間の事業分野別の設立の伸び率を見たものであります。これを見ますと、観光・レジャー関係が五倍と最もふえておりまして、続いて福祉・保健医療・衛生関係が三・七倍、教育・文化関係が三・六倍と続いております。
観光分野における商法法人の設立は、この時期の特徴であります民間活力の導入政策と密接に関連しております。事業の実施主体を第三セクターとする法律的な枠組みとして民活関連法が制定され、商法法人形態を目指すセクターが急増することになりました。
福祉や教育分野における財団法人の設立は、この時期の行政改革と密接に関連しております。第二臨調が増税なき財政再建を掲げ、行政改革を推進し、歳出削減と民営化、民間活力の導入を強力に進めました。行革の流れは自治体にも波及し、地方行革が推進され、事務事業の見直しとともに財団法人などの設立が進められました。
これらの第三セクターのうち、経営破綻に伴う自治体負担が出るなど最も問題視されているのは、民活関連法の第三セクターであります。これらにつきましては、事業に公共性あるいは公益性が認められなければ、行政は原則として撤退することが必要であると私は考えておりますが、現実には、破綻処理に当たって補助金、出資、貸し付け、損失補償など、出資責任あるいは債権者平等の原則を超えて自治体が必要以上に負担を負わされる事例が非常に多く出ております。
少し飛ばしまして、このような第三セクターの改革を抜本的に行うためには、私は以下三つのガバナンスが必要であるというふうに考えております。
一つは、会社自体のコーポレートガバナンスであります。二つ目は、情報公開の徹底により、住民と議会による監視であります。三つ目は、行政における第三セクターへの関与をルール化した条例の制定ということであります。このように、会社、住民・議会、それと行政の三位一体的なガバナンスを確立することによってこそ第三セクター改革が抜本的に進められるというふうに考えております。
このような第三セクターのガバナンスの確立という視点から見ますと、地域力再生機構には幾つかの論点があるように思います。
第一は、第三セクターは、観光分野のようないわゆる選択的なサービスにかかわるものもあれば、福祉や教育分野など基礎的なサービスにかかわるものもあり、同じく赤字を出していても、公共性あるいは公益性の面で意味合いが異なってきます。この点で、地域力再生機構はこうした第三セクターの類型に対応し得るシステムとなっているのかどうか、吟味する必要があろうかと思います。
二つ目は、出資責任や債権者平等の原則からすると、民活関連法の第三セクターについては、融資などによる国の関与、責任も大きいと考えております。法案第六十五条で政府系金融機関の債権放棄への協力規定が設けられておりますが、この規定が地域力再生機構だけの規定であるとすれば、そのほかの第三セクターとの間に不平等な面が出てきます。また、自治体の債務調整の方針についてはまだ決まっていないわけでありますが、今後の問題として整合性が確保されるのかどうかということも問題になろうと思います。
三つ目は、法案第二十五条十項では、支援決定というものは、原則二年に対して第三セクターの場合は二年半としております。特例的に二年半、半年延ばしているわけです。第三セクターは会社法人ではありますけれども、公的な関与があるため、支援決定に際しては、住民や議会に対する情報公開を踏まえた議会の承認が不可欠であります。さらに、場合によっては公的な資金支援の問題もあり得るわけですが、住民や議会によるガバナンスを保障するだけの時間的な余裕が保障されるのかどうか、このあたりも論点となろうかと思います。
大きな二つ目は、地域力再生機構の収支の問題についてであります。
再生機構の研究会の最終報告では、再生機構は「経済合理性を尊重しつつ、短期・集中的に案件に取り組むとともに、徹底した採算管理の下、損失が発生しないよう業務を運営する」として、採算重視の姿勢を示しておられます。
産業再生機構の場合は、大型の案件があったために損失を出すことはなかったわけでありますが、地域力再生機構の場合は、中規模企業や第三セクターなどを対象としており、その上、人材派遣あるいは助言などの新たな業務を追加しているわけで、機構自体の経費が増加する可能性が非常に高いという問題があろうと思います。
この点について、研究会の中でもかなり激しい議論がやられた模様であります。赤字を出さないためには、早期エグジットが可能な再生見通しのあるものしか支援決定しないという原則が座長から示されました。
しかし、この原則に対しては、委員の中から、現実に地方で案件に挙がってきそうな企業あるいは三セクというものを見ていますと、緊急度の高いものほどワンタッチ、ノータッチなどというのはちょっと夢物語ではないのか、あるいは、本当に助けなければならないところを除外してしまうおそれがあるのではないか、また、地域のニーズに合わない部分が生じるかもしれないなどの意見が出されました。
すなわち、地域力再生機構は、一方で、損失を回避するために支援決定を厳格に行えば、地域のニーズに合わなくなる可能性があり、他方では、地域のニーズに合わせれば、安易な支援決定による損失の発生と結果としての国民負担を招きかねないという、二律背反の関係があるように見受けられます。
この点に関連して、産業再生機構の財務面での対応を研究した深沢氏によれば、債権放棄とDES双方を実施した案件の割合が支援案件数の四三・五%、DESのみを行った案件が一三%となっており、債権放棄もDESも実施しない案件は一件もないということであります。
地域力再生機構はこの産業再生機構の地方版ということで、その機能などはそのまま引き継ぐという形で議論されておりますので、再生機構が厳格にバランスシートの改善を実施すれば、支援申し込みの段階において案件がふえない可能性もあります。どのように収支を確保していくのかということが課題になろうかと思っております。
最後に、第三点目であります。面的再生についてであります。
面的再生は、産業再生機構では制度的に不可能であったテーマであり、地域力再生機構独自のテーマとなっているわけです。
面的再生については、第六十七条で、国とか自治体などの連携の規定が設けられております。すなわち、地域力再生機構、国、自治体の相互の連携機能と、地域再生計画あるいは中心市街地活性化基本計画、都市再生整備計画など、これらの計画を優先的に認定するということで面的再生を図っていこうと提案されております。
研究会でも、面的再生は容易ではない、一体何ができるのか、できないのかについて自治体と意見交換をしてその方針を出していく、そのような意見が出され、面的再生というのは極めて困難な課題であるとの認識が示され、現段階では基本的な方向性が示されている状況にはないと考えます。
この点に関連しまして、従来の地域再生モデルの延長線上で地域の再生投資を行うという意味では狭過ぎるのではないかと思います。面的再生の中身についてもっと広義の意味で考える必要があるのではないかと考えます。
すなわち、グローバリゼーション時代の都市戦略、環境再生を軸とする都市再生、環境・交通・産業の政策統合など、新しい地域政策モデルを射程に入れた地域再生レベルでの面的再生こそが求められていると考えております。
こうした広義の意味での面的再生を視野に入れない場合、一過性の投資効果に終わり、地域経済全体が浮揚する可能性は低いと思われます。
以上、幾つかの論点を申し述べましたけれども、これらのことについて審議していただきたいと思っております。
以上であります。(拍手)
○中野委員長 ありがとうございました。
以上で各参考人からの御意見の開陳は終わりました。
―――――――――――――
○中野委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。赤澤亮正君。
○赤澤委員 自由民主党の赤澤亮正でございます。
本日は、矢田参考人、藤原参考人、瀬戸参考人、そして入谷参考人、お忙しい中、大変貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございます。非常に勉強になりました。
それで、お伺いするだけではまことに申しわけなく思いますので、この地域力再生機構法案について私が大体期待するようなことを簡単に最初に申し上げさせていただきまして、その背景に基づいて若干御質問をさせていただきたいというふうに思います。
私は実は、必ずしも前身とは呼べないと思うんですが産業再生機構、これを非常に評価したところがあります。ある意味、我が国でこんなプロフェッショナルなことができるのかと。そこで有効性が確認された事業再生手法というのがございます。これを最大限有効に活用していくことで、地域経済に非常に大きな影響を及ぼす事業で、かつ再生の必要性が高い、そういう事業について、関係者の了解のもとで最小限の公的負担で、しかも持続可能な再生を図っていくということかなと思っています。
私なりに法案の言葉、目的などを言いかえればそういうことでございまして、そういったことで地域経済を再建する、あるいは信用秩序の基盤強化を図るという法案なのかなという思いでございます。
そういった中で、再生の必要性が高いとはどういうことか、あるいは持続可能な再生を図っていくということはどういうことか、順次、質問の中で明らかにしていきたいと思いますけれども、私はそういった考え方を持っているということでございます。この地域力再生機構もぜひとも必要であって、非常に大切にしていきたいし、早期成立を図りたい、こういう思いでございます。
それで、まず最初の質問に関する非常に参考になるお話をいただいたのは、藤原参考人と瀬戸参考人だったと思うんですが、瀬戸参考人にまず最初、お伺いをしたいと思います。
関連をするのは、実は藤原参考人が最初、最近、交通に関する事案がふえてきた、こういう話であります。そこは実は非常に大事なポイントで、事業の再生の必要性が高いものを典型的にあらわしているかなという感じがしているんです。
それは何かというと、これは瀬戸参考人がおっしゃったことにも関係をいたしますが、交通のような、要するに日銭が入ってくる商売ですね。一方、建設業なんかと比べれば、これはもう、例えば中小の建設業なんかは完成したときしかお金がもらえない、キャッシュショートを非常に起こしやすい状態にあるわけですけれども、交通関係といえば、バスなんかであれば日々お客さんが乗ればちゃりんちゃりんと、小銭でありますけれども日銭が入ってくる、キャッシュショートがなかなか起きないといったような類型であります。あるいは地方公共団体についていえば、これは先ほど瀬戸参考人がおっしゃったように、なかなかいろいろなしがらみなどがありまして、破綻をさせようというインセンティブが働かない。
こういった、一言で言うと、いろいろな事情でなかなか破綻しづらい事業の類型について、要は、ほっておいた場合には、事業の質は改善されないまま負債だけがどんどん膨らんでいくというパターンに陥りやすいということです。
今後負債が結構出てきそうだから、ここで事業を畳んじゃおうということのないまま、キャッシュショートを起こさずに毎日何とか回していける、こんな中で、気づいたときには、いざ本当に本格的に倒れるときには大損害、こういう類型があるんじゃないかというふうに思います。
この地域力再生機構がしっかりと取り組んでいかなきゃいけないものの中には、瀬戸参考人にこれはお伺いしたいんですけれども、莫大な債務がどんどん積もっていって、なかなか破綻のインセンティブがないまま最後に本当に大きな被害を生じちゃう、こういう類型をきちっと解消していくことというのが一つのポイントになるのかなというふうに思っておりますけれども、その辺、瀬戸参考人のお考えを伺いたいと思います。
○瀬戸参考人 赤澤先生の御指摘のとおりだと思っております。
典型的には交通の問題をお話しされておりました。先ほど私、三セクの話だけしかしませんでしたが、三セク以外に、その地域に根差した地域の交通があるわけであります。これらは、地域住民の生活の基盤、生活のインフラをなすものでありますので、単純に、不採算だからすぐに廃止を、こうなるものではございません。
それから、仮に多額の負債を抱えていたとしても、その負債がどのあたりから発生したものなのか。本業を幾らやってもだめなのか、それとも本業以外のところで負債が生じたものなのか、そのあたりの見きわめをしながら、特に本業以外のところでの負債でしたら、銀行との調整等がかなり働く場面も多かろうと思います。そのことによって、まさに日銭、キャッシュを生むというような順回転に持っていくということは大事なことだろうと思います。
これは、地域力再生機構のみならず、ほかの再建手法もすべて導入しながら、これらの生活基盤をなす企業等については取り上げていくべきだろうと考えております。
以上でございます。
○赤澤委員 確かに、なかなか破綻しづらくて最終的に大きな負債を抱えて倒れる前に、決断を促すというか、ぽんと背中を押すようなことが必要な事業類型というのはあるんじゃないかというふうに私は思っています。
瀬戸参考人、ありがとうございました。
それで、次に伺いたいのは、この地域力再生機構が支援決定していくに当たって、支援対象の決定の公平性とかあるいは透明性といったことについての議論がかなり活発になされております。非常に大切な論点でありますけれども、この点は、非常におもしろい例え話をしてくださいました藤原参考人にお話を伺いたいと思います。
私は、全く同感で、私の言いたいことが実はその例えで非常にうまく説明できるかなと思いました。それは、企業について健康診断から外科手術までといったことを例えられました。私は、今回の地域力再生機構については、やはり産業再生機構で使ったような事業再生の手法をきちっとするべきだと。
それは何かといえば、支援対象については、最低基準だけは絶対つくっておく、この基準を満たさないような企業はどんなに頑張っても持続可能な再生は無理だというようなはっきりとした基準はつくっておく。これは大事だろうと思いますけれども、あとは、いわゆるプロフェッショナルジャッジメントといいますか、専門的な判断をきちっと専門家にしてもらうということが必要だ。
そのときには、藤原参考人の例えでいえば、まさに患者さんを診たときに、これはもう悪性腫瘍ではあるけれども、リスクをとって外科手術をすれば今後天寿を全うできるというような判断になるのか、あるいは、おなかを開くまでやってみたけれども、もう手の施しようがないということで、これについては手術はしないという判断もある、むしろ体力を弱めるだけだと。
そういった判断については、むしろこれは医師の専門性、あるいは、今回でいえば事業再生の専門家が、ある意味、今までの知見、そして全人格を総合して判断をしていくというものであって、決して、何か客観的な基準を政治が法律の中に盛り込んだり、政省令で定めたり、告示でつくったりということで縛って、機械的にこの基準に従えば全部これがうまくいくんですよなんということは絶対にあり得ない、そういう分野なんだと思います。
そういう意味で、私はこの医者の例えが大変気に入ったわけでありまして、再生に当たって、事業再生の手法としては、公平、透明性といった基準はもちろん大事だけれども、それはやはり専門的な判断を害さない範囲の最低限の基準だけを定めて、あとは事業再生をきちっと専門家の手でやってもらう。
そのときに、再生委員会の人選ですね。本当に政治的な圧力には無縁で、なおかつ一流のプロ、そういう方に集まってもらうことでこの機能は動く、産業再生機構の教訓であるとも思いますけれども、その点についてのお考えを伺いたいと思います。
○藤原参考人 医者というか、病気に例えさせていただいたんですけれども、本当にこの地域力再生機構の中で一番重要なのは、委員会というか、その辺をどういうきちんとした信頼できる先生方にやっていただくのか。ここは、もうまさにお医者さんでいう先生だと思います。ただ、重要なのは、やはり神様というのは本当にいないのではないかなというふうに思います。そういう中で、その委員会の中で、やはりいろいろな方面から御判断をいただいて進める、これしかないというのが結論でございます。
私もたくさんの中小企業の再生をお手伝いしておりますけれども、やはり、一〇〇%自信を持って、これでよかった、間違いないと思えるものというのは本当にあるんだろうか。多少なりとも迷いながらも仕上がっていくものだと思っております。そういう意味で、この地域力再生機構の委員会のメンバーの御人選というのに期待したいというふうに思っております。
○赤澤委員 ありがとうございました。
持続可能な事業であるかどうかをしっかりと判断する。今回の地域力再生機構について言えば、地方公共団体も含め、金融機関、そして国からも出資をしてという考え方でつくっておりますので、これについては、逆に、きちっとした支援対象の選定をせずに、何にでも公平にやらなきゃいけないからというような観点に引きずられて、お金なりをつぎ込んだ結果やはり破綻というようなことは、厳に回避していかなきゃいけない。そういう意味で、専門家の判断を非常に大事にしていきたいというふうに思うところでございます。
それから三番目に、これは矢田参考人にお伺いをしたいと思います。
それは、やはり地域力再生機構ならではの手法あるいは立場といったものがあって、その点について、三セクをしっかりと立て直していこうという市長のお立場であれば、大いに重視されているのではないかなと思います。
幾つか挙げていけば、雇用の確保の観点でやるということで、債権放棄については金融機関のみでありますとか、債権放棄は債務の額あるいは債権の額に従ってプロラタ方式でいくとか、あるいは出資、人材派遣といったこともやる。さらには、置かれる場所が地域のしがらみのない中央である。
このあたり、まさに矢田参考人が御指摘になった、受け入れ先がなかなか見つからないとか、あるいはこの機構の調整能力に期待するというあたりは、まさに全国的な視野を持った地域力再生機構が、受け入れ先を探す、あるいは地域のしがらみからは無縁な判断でしっかりと調整能力を発揮する、こういった点の期待にこたえられるかなと思うところであります。
さらにまた、債務処理の困難についても、雇用確保をきちっとしながら金融機関の債権放棄といったことで取り組むといったところでありますけれども、この考え方は、地域力再生機構ならではのものである。そこに対する期待が本当に大きいんだろうということについて、お考えをいただければありがたく思います。
○矢田参考人 赤澤委員のただいまの御質問でございますが、まず、おっしゃいましたように、専門性が非常に重視されるということは重要な観点であろうというふうに思ってございます。
全国を見渡したときに、まさにそういった人材が各地にいらっしゃるかどうかという点があろうと思っておりますが、そういう点では、そういう点の専門家の皆さんに御相談することがなかなか困難な場合も多く見受けられるということも考えておかなきゃいけませんし、また、その場合の手法等につきましても、今お話ございましたが、まさにこの手法等について、実際にその任に携わっておるメンバーにきちっとそういう情報が伝えられて、そしてまた考え方が、その中で明確に判断できるような状態でもってわかるようにできるということも必要なことであろうというふうに私は思っております。
また、地方議会の場合には、御案内のように、これは必ず議会に対する説明ということもございます。現在、私どもの方では、こういったことはもう全部、コンプライアンスの関係もございますので、外部のそういう専門家の皆さんにお入りいただいてやってきてございますけれども、そういった際に、やはりその任に立っていただく方に対する信用度といいますか、そういう信頼度というものも重要なことであろうというふうに考えてございます。
ですから、こういう点に関しましては、まさに中央でのこういう機構ができた上で、その専門家の方々が、そういった地方にいらっしゃる人材の皆さんともいろいろと打ち合わせもしていただき、そしてまた議会の方にも御意見を述べていただけるような機会がございましたら、これにまさるものはないのではないかと思います。
ただ、そういった事態に対応する際には、その事業主体そのものが実際に自分たちのものとして懸命に自主努力をして、そして、それに対してきちっとしたことが将来見渡せるように努力をするということが前提であって、その上に立って、そのような状況をお考えいただけるということになれば、私はそれにこしたことはないのではないかというふうに考えてございます。
ですから、そのほかにも、雇用の問題とか税制の問題とかいうふうなお話もちょうだいしたわけでございますが、そういう点も含めまして、やはり今回のこの地域力再生機構の果たすメリット、役割というものは大変大きなものがあるのではないかというふうに私は感じてございます。
以上でございます。
○赤澤委員 ありがとうございます。
私は、いろいろな人から話を聞くと、地域の人間だけで事業再生を相談していると、どうしてもしがらみとかがあって頑張り切れない、こういうこともよく聞きますので、この機構がしっかりと、中央にあるという立場、立ち位置に基づいて機能を発揮してくれるんじゃないかという点に大いに期待をしているところであります。
そして、入谷参考人にちょっとお伺いしたかったんですが、私の能力のなさで、大変立派な大部な資料を用意していただいたものですから、なかなか活字を追うのに、そっちの方に気が行ってしまいまして、固有の質問という感じでなくて恐縮なんでありますけれども、私は、ほうっておけばどんどん債務が膨らんでしまう、しかも事業の価値も向上しないまま、そういう状態が続く事業類型というのは確かにあって、それについては間違いなくこの地域力再生機構というのは有効な手だて、選択肢を用意するというふうに感じるのであります。逆に言うと、この法案が成立しない場合、私はむしろ現状はいろいろ悪化していくという点でデメリットを感じるのでありますけれども、その辺についてはどういうふうにお考えになっておりますでしょうか。
○入谷参考人 ただいまの御質問に対してですけれども、確かに、地域には多くの赤字あるいは債務超過に陥った三セクがあるということは私も承知しております。そして、私は、これについて基本的に、どのようにしたらば地域が自律的に解決ができていくのかということを絶えず考えてきました。
今回、地域力再生機構法案が提出されておりますけれども、この法案、機構自体は五年間の時限であります。私は、むしろ、地域の寿命は長いですから、その長い寿命を考えたときの本格的なガバナンスのあり方はどうなのか、そのガバナンスから見て今回の機構の貢献というものはどのようなことが考えられるのか、そういう視点で今回意見を述べさせていただきました。
そして、法的整理、私的整理という問題もあるわけですけれども、私は、多くの債務を負った三セクについては、公共性、公益性の観点から、粛々と法的整理に進むべきである、今、現制度があるそういうものを活用しつつも、地域の寿命に合う、本格的な地域の三位一体のガバナンスというものを模索していくことが本質的には大切ではないか、そういうふうに思っております。
以上であります。
○赤澤委員 ありがとうございます。非常に的確にお話しをいただきまして、私も大いにうなずけるところがございます。
これは時限でありますので、一方の考え方として、私は当然のことながら、成功モデルをつくって短期間に、これ以上債務が拡大しないうちに片づけてしまうということで地域力再生機構に大変期待をしておりますが、本格的ガバナンスを確立したい、法的整理をやっていくべきだという考えにも一理あると思います。
ただ、そういった点は、関係者の了解のもとに事業再生を図っていくと私申し上げたんですけれども、そういった中で、過去の損失を出したことの責任も含めて、関係者がきちっと責任の明確化といったことにも取り組んでいただき、経営努力もしていくという中でうまく対応していけないかなと私自身は期待をしているところであります。
最後になりますけれども、私は、やはり今回の法律が一番機能する部分の一つというのは三セクだなと思います。財政健全化法で背中を押すとともに、地域力再生機構ならではの手法でしっかりとサポートして、三セクを立て直していく。また、いろいろな意味で民間企業にもできる限りこの成功モデルに乗って利用していただくということが必要だろうと思います。
そういう意味で、最後にもう一度、神戸市長矢田参考人に、この制度について、待ったなしであって、これがないと本当に困るんだということを、全国の市町村長代表としてよろしくお願いいたします。
○矢田参考人 赤澤委員の御質問にお答えを申し上げたいと思います。
まず、財政健全化法が施行されるという状況の中で、これは数々の指標が加えられたものでございまして、その中で特に将来負担比率というものは、外郭団体等を含む損失補償の分野等に関しまして、これが全部適用の対象になるということでございますので、そういった観点からいたしますと、全国のセクターを抱えておる団体共通のやはり問題として認識をし、それに対しての対応としてこの法案が成立をしていただけることを私どもは期待しておるというところでございます。
以上でございます。
○赤澤委員 参考人の皆様、ありがとうございました。
終わります。
○中野委員長 次に、泉健太君。
○泉委員 民主党の泉健太でございます。
私たち民主党も、地域力の再生ということには大変関心を持っておりまして、これは、我々が訴えております「国民の生活が第一。」という中でも、特に地域と都市の格差、これをやはり縮めていかなくてはならないという中で、今地域が負っている負の遺産、これを何とかしてなくしていかなくてはならない、こういう考え方を持っているものです。
ただ、この地域力再生機構法案については、実は大変悩ましい状況というか、我々考えを持っておりまして、確かにその力が発揮されることには大いに期待をしている反面、やはりこれまで数多くの第三セクターが生まれてきた経緯、そしてまたその運営のあり方、手法、そしてその結果、今に至って数多く、先ほども話がありましたが、こうして三分の一の三セクが赤字を抱えるというような状況をつくってしまった。そして、恐らく、矢田市長のように首長を担当されている方の直接の責任ではない状況の中で、今現在、数多くの負債が残っているということであると思います。こういったことについての責任というものをどう住民に示していくのかということも、やはり考えなくてはならないのではないか。
再生機構そのものは大変前向きな法案ではあるんですが、やはり、前を向くに当たって後ろを振り向く必要というもの、そしてまた、住民に対して我々は何かしらの説明責任をとっていかなくてはならないのではないか、そういう思いがありまして、この法案については、より勉強しながら最終的な結果を出していきたいというふうに考えているところでございます。
そういった中で、大変すばらしい御指摘、また御説明を四参考人の皆様からはちょうだいいたしました。私も、同僚の赤澤委員と同様に、大変わかりやすい説明であったというふうに思っております。
そういう中で、まずは、やはり各参考人の皆様が御指摘をいただいておりました人材の点であります。
藤原先生、そして瀬戸先生の方からもそれぞれお話がありましたが、例えばこれまでの中小企業再生支援全国協議会、そういった活動を続けられる中で、人材の不足というものを痛感なされていると。そして、これはあらゆる再生にかかわる方々、どの方々においても、全体的に人材不足ということが言える。弁護士、公認会計士、税理士、中小企業診断士、そして金融機関も含めて、再生支援人材不足というようなことがあるんではないかということを御指摘になられております。
さらに、この再生機構ができ、そして先ほどまさに五万とというお話がありましたけれども、それぞれが経営検討委員会の中で専門家を呼ぶことができると。実際に人の手当ては本当に大丈夫なんだろうか、質の高い専門家の確保、養成というものを、では果たしてどのように行っていくべきなのかということについて、矢田市長以外の三名の方からお伺いをしたいというふうに思います。
○藤原参考人 再生専門の人材育成ということなんですけれども、さきの産業再生機構が大きな役割を果たしたというのは、一番はそこにあるのではないかな。そこで雰囲気を醸成するというか、一気に再生というムードをつくり上げてきた、その中から再生人材というのが大きく広がってきたのではないかなというふうに思っております。
おかげさまで、協議会でもかなり専門家というのも育ってきております。さらに今、専門家の中でも、特に再生をさらに勉強してほしい、勉強を一緒にしましょうという形での研修活動を日々積み重ねております。そういう中で、本当に多くの人材が育ってきている。ただ、これで十分かといえば、まだまだだと思います。日々、OJTというわけではないんですが、いろいろな案件を一緒に経験を積み重ねることによって、さらに多くの人材が育成されていくものというふうに期待しております。今でも多くの立派な先生方もおられるというふうに確信はしております。
○瀬戸参考人 私が冒頭に自己紹介の中で申し上げました事業再生実務家協会というところは、まさに、この人材、事業再生人材の育成をずっと図ってきた団体であります。産業再生機構の中にもここからのメンバーがかなり入っております。それ以外にも、より多くの人たちがいるわけであります。
問題は、地方の場合には、それらの人材をどこまで有効に生かせるのか、それから費用の問題等々で、地域の負担力との兼ね合いでどこまで配分ができるのかというところが一番の問題であろうと思います。そういう意味で、民間のファンド等にいる事業再生にかかわる方々ではなく、今回の地域力再生機構のような公的な機関で、一つの地域、一つの企業、一つの三セク等々でコストを考えるのではなく、全体として再生業務を行う中で費用バランスをとっていくということが大事なことではないのか。今回の地域力再生機構の目的の一つは、地方に比較的層の薄い人材を配分するところにまさにあるんだろうと思っております。
それともう一つは、先ほど来から御指摘のように、地方の場合には、やはりしがらみのない人たちを人的に配分するというところもまた今回の地域力再生機構が果たし得る機能の一つである、こう考えております。
○入谷参考人 御質問の中身については、私は実務家ではありませんので、お答えできる範囲が限られるかと思うんですけれども、全国には、中山間地あるいは地方都市において三セクとして立派に成功している例もあるわけですね。そこではなぜ成功しているのか、そういう問題を考える必要があろうかと思います。
そして、地方では、そういう事業再生にかかわるファンドですね、民間ファンドが成立し得る基盤が弱いというふうに言われていることも私は承知しているんですが、その意味でいいますと、やはり私は、中小企業再生支援協議会が全国にあり、また全国組織もあるということで、この協議会の人脈、人材、経営人材を有効に活用する、そういう手だてがあろうかというふうに考えております。
○泉委員 ありがとうございます。
先ほど矢田市長の御説明の中で、神戸市の方では経営評価委員制度、これがまさに専門家の皆様にお集まりをいただいてということでございました。この経営評価委員制度、現在そういった外部の方に評価をいただいているという中で、さらに地域力再生機構ができてくると、その位置づけ、役割分担みたいなものはどのように変わっていくのか。もちろん、神戸市が地域力再生機構の何か支援を受けるというような第三セクターあるいは中規模企業があればということになるのかもしれませんけれども、現在も既に専門家を外部から入れて行っているこの制度と機構との今後の役割分担、これについて教えていただけたらと思います。
○矢田参考人 それでは、泉委員の御質問にお答えをさせていただきたいと思います。
まず、この外部の経営評価委員を制度として設けましたのは、私どもは、やはり大震災に遭遇をいたしまして、市の財政全体そのものを外郭団体も含めてどのように点検をしていくかということに迫られたわけでございまして、そういった中から、まず、市の内部の事業について徹底的に見直しをし、そして人員削減を図り、また起債の残高を減らしていく、そういった役割をする一方で、外郭団体についてのやはり存立意義というものを、公益性あるいは公共性に対してどのように貢献しておるのかということも含めて点検をしていこうとしたわけでございます。
その際に、やはり内部だけでそれを見ておったのではだめではないかということで、これは実は三年ほどかけたわけでありますけれども、外部の公認会計士でございますとか、あるいは学識経験者、そしてまたその他の方にお入りをいただきまして、これを構成いたしました。
考えてみますと、御承知でございましょうが、現在、監査委員制度がございますけれども、この監査委員制度も、包括外部監査ということで、これも特定の会計士あるいは弁護士といった方にお願いをしまして、包括外部監査を三年間やっていただいて、三年でまた交代をするという状況になってございますけれども、こういうような方々にかかわっていただくということは、実は私は感じておるんですが、非常にやはり目が変わってまいります。目が変わるということは非常に大事なことでございまして、我々が気づかないような点も、そしてまた、その以前に任につかれた方の目とまた少し違った観点でもって指摘をしていただけるというようなこともございました。
ですから、こういう地域力再生機構という中央の非常に高い専門性を持たれた機構が全国に対してそういうふうに目配りをしていただいて、そして状況に対して的確な御指示をいただけるということになれば、私は別に神戸市の今の経営評価委員の制度と重複するとは思っておりませんで、むしろそういう中から新たなまなざしをちょうだいできるのではないかなというふうに実は感じてございます。
ですから、やはりこれから徹底して、外部の分析、そして議会のチェック、さらに内部での統廃合に向けてのあり方というようなものを点検していくということもあわせて私は考えていく必要があるのではないか、このように考えてございます。
以上でございます。
○泉委員 もう一つ、矢田市長の方には、まさに自治体のトップとして、私、冒頭に申しました、過去の三セクが行ってきた事業、そしてまた残してきた負債、そして経営に対する責任というものについては、大変やはり現場の方々では難しい、そういう中で、外部の方を呼び、再生の方はそれでやっていこうということであるわけですが、入谷参考人からも、やはり住民の関与、住民の監視ということが大変大事であるということの御指摘をちょうだいいたしましたが、なかなか住民と議会の監視機能というのがやはり余り強いとは言えないのではないかというふうに思うところもございます。
それでも、最近は議会も随分活発にこういった監視を行うようになってきたというふうに思いますけれども、過去、こういった三セクの運営に携わってきた方々の責任というもののあり方、何か責任をとっていただけるような手法、方法があるのかということについて、現場からお話をいただければと思います。
○矢田参考人 泉委員のただいまの点に対しまして、二点ほどに分けて申し上げたいと思います。
まず、三セクの事業の責任という点で、ダイレクトに事業主体そのものとの関係ということについて、もしそこに問題が存在しておった場合でございますけれども、これは当然でございますけれども、やはり経営責任というものが問われていくということにはなっていくと思いますし、また、それに対して、例えば株式会社等の場合におきましては、株式に対する取り扱いに関しましては減資というふうなことも出てまいる場合もありましょうし、あるいは債権放棄というふうな事例も出てこようと思っております。ですから、そういうふうな点に関しまして、やはりこれに対する対応というのは、当該団体及び議会というふうな両面の対応があろうと私は思っております。
住民の関与という点のお話もちょうだいいたしました。私自身が神戸市でやっておるスタイルでございますけれども、いろいろな市民の意見をちょうだいしたいということでワークショップを頻繁に開いてきた経緯もございますし、さらに、私自身が町へ出まして出前トークというふうなこともやってございます。そういう中でいろいろな対話もするというふうなこともございますが、別途、私は就任して七年になるわけでございますが、就任以来、政策提言会議というのを、実は、各分野から選んでいただきまして百名ほどの方に集まっていただいて、政策を形成していく際の御意見をいただく。もちろん、その中に外郭団体の問題等についても意見をちょうだいしておるわけでございまして、そういう中で、やはり市民の御意見としてどのようにこれに対応するかということもやってきておるということでございます。
それから、一つ事例を申し上げておきたいと思いますが、既に神戸市の場合には、サッカーチームでヴィッセル神戸というのがございます。こちらの再生に関しまして、私どもの方が約半分の株を持っておったわけでございますけれども、それに対しまして民事再生にゆだねまして、そして今クリムゾンフットボールクラブという形で再生をしていただいておる。もちろん、その際に議会に対しまして債権放棄の議案を提出いたしまして議決をいただいた、そういうふうな事例もございますので、そういった一つ一つの事象に対しまして的確に住民に情報を公開しながらやっていくということが大切であろうというふうに思っております。
○泉委員 続きまして、瀬戸参考人また藤原参考人にもお伺いをしたいんですけれども、やはり今回、モデルを示す、機構によって成功モデルをつくっていくことが人材の育成にももちろんつながるし、そして地域の元気にもなっていくということでありますけれども、一方で、我々がやはりなかなかまだ見えてこないのが、どの範囲までを救済、再生していくのだろうかというところであります。
政府からも説明をいただくと、経営悪化している三セク、中規模企業を救済することにより地域経済を立て直すという目的が掲げられていて、全国あまねくというような雰囲気である一方、やはりそれは、見込みのない三セクは支援対象としない、期間も限られている、そしてまた国費の投入の額も限られているという中で、どうしても選別をせざるを得ないということでございます。成功モデルができたとしても、それは大きな三セクにおいての話かもしれません。
そうすると、中小の三セクについては今後どのような再生が図られていくのかということがまだ示されていないのではないのかなというふうにも思うわけです。その点を、この研究会の委員をされておられましたお二方にお伺いをしたいというふうに思います。
○藤原参考人 まず、やはり重要なのは、三セクといえども、できれば私的再生の中で再生させていく、法的再生ではないということが一つキーになるのかなと。一般の商取引債権者の方々にも御迷惑をかけない、負担をかけない、これがやはり地域への悪影響を避けていくという意味では非常に大きいことなのかなというふうに思います。そういう意味で、第三セクターの規模というだけではないというふうには考えます。
そして、再生のモデル、どういうモデルを期待するのかということでいえば、個社ごとにもちろん事業も違いますので一概には言えないと思いますが、一つ重要なのは、やはり行政それから議会というところとの交渉といいますか、そこは私的再生を行っていく上で非常にエネルギー、時間もかかるところでございます。こういうことについての一つのモデル、パターンというものができていけば非常に理想なのかなというふうに期待するところであります。
以上でございます。
○瀬戸参考人 地域力再生機構に、私は余り過大過ぎる期待はかけるべきではないだろうし、おのずとそこで果たす役割には限度がある。再生である以上は、まずは事業が立て直しができる可能性があるものでなければならない、これは当然のことであります。
一般の民間の会社でも、これはもうだめなものはだめと早期に清算する方が、周辺にいる取引業者、それから社員にとってもいい場合もあるわけでございます。そのあたりの仕切りは、これは一般の事業の再生と同じようにやっていくべきでありましょうし、このまま存続させても補助金等の公的な負担がふえるばかりのもの、これは速やかに清算をすることもまた必要であろうかなと思います。そのようなものは、本来は地域力再生機構の範疇の外にあるものだろうと思います。
そういう中で、地域のしがらみ等を外せば、それから、これまでのつたない経営を専門家に任せるならば再建できるもの、そういうものをまずはピックアップをして、確実に早期に再建をしていく、それが地域力再生機構がまず果たすべき役割であろうと思います。
それによって、民間のファンド、それから自治体等々の三セクの今後のありようについての認識も少しずつ変化も生まれるでしょうし、そのことが全体として地域の財政基盤もまた整備することになると思います。地域力再生機構ができたらすべてそこの中に詰め込むというようなことはやるべきではないと私は思っております。
以上でございます。
○泉委員 では、終わります。
どうもありがとうございました。
○中野委員長 次に、石井啓一君。
○石井(啓)委員 公明党の石井啓一でございます。参考人の先生方、大変御苦労さまでございます。
まず最初に、藤原参考人、瀬戸参考人、お二人にお伺いをしたいと思いますけれども、この地域力再生機構設立の必要性ということでございます。
既存の企業再生の枠組みとしては、中小企業再生支援協議会がございますし、あるいは地域の金融機関がみずから再生支援をしているケース、あるいは民間ファンドによる再生のケースというものがある。それに加えてこの機構を設立する必要性がどこにあるのかということで、先日、大田大臣との質疑のやりとりの中で私確認をいたしましたが、大臣の方からは、従来の枠組みでは、一つは、債権者が複雑に絡んでその調整が困難なものというのがなかなかできていなかった。二つ目には、債権放棄を伴うハードな事業再生についてはなかなかできていなかった。こういった二つのケースを主に念頭に置いて取り組みたいんだ、こういう御答弁でございました。
両参考人におかれては、これまで企業再生の実務が豊富でいらっしゃいますので、そういった立場から、この機構の必要性についてどういうふうにお考えになっているのか、お伺いをいたしたいと思います。
○藤原参考人 まず、お話しいただきました中小企業再生支援協議会というもののところで債権放棄等、複雑なものがなかなか難しいということについてですけれども、確かに程度問題はございますけれども、債権放棄案件というのも、やはりかなりの数をやっていることは事実でございます。比率としては全案件の二割強ということになりますけれども、数とすれば、やはり三百社以上の債権放棄案件をしております。
ただ、重要なのは、難しい、複雑なというのは人それぞれ程度はありますけれども、やはりそこにはすごい時間とエネルギーがかかるということだと思います。協議会でそういう案件を数やれば、本来もっと支援してあげなきゃいけない地元のいろいろな企業の支援に手が回っていない危険性もあるというのは、非常に危惧するところであります。
そういう意味で、地域力再生機構には、特に交渉等で時間のかかる、地方自治体さんとか、そういうところの交渉に時間のかかる複雑な案件については専門的にやっていただければありがたいなというところを期待する次第でございます。
○瀬戸参考人 既存の事業再生の手法に屋上屋を重ねるものじゃないか、こういう御指摘、御質問の趣旨かと思いますが、今回の地域力再生機構は、既存のものと重なり合うものでは全くないと私は思っております。
私的な整理の手続としては、銀行協会等が中心になって行っている私的整理ガイドラインの手続がございますが、これは大手の上場企業等を相手とするものでございますし、それから中小企業再生支援協議会、これは本当の中小企業を基本的にはベースとする手続でございます。
一方、今回の地域力再生機構に私が期待するところは、先ほども御説明させていただきましたが、既存のしがらみにとらわれない中立的な立場で行うもの、それから、公的な金融機関等々にも協力の義務を課すことができるもの。まずデューデリを行う場合であっても、自治体それから金融機関等に対して協力の義務を課せられるもの、こういうものは私的なファンドではとてもできるものではございません。そこまで洗い出しをしないと、三セクが根深く持っている問題のえぐり出しというのは私はできないだろうと思います。そのためにこの地域力再生機構を最も私は期待しているところでございますし、大いに力を発揮していただけるものだと期待しているところでもあります。
以上でございます。
○石井(啓)委員 では、続きまして矢田参考人それから入谷参考人、お二方にお伺いしたいと思うんです。
三セクを再生する際に自治体の責任というのはどういうふうに考えたらいいのか、自治体の責任のとり方ということでございます。
当然のことながら、三セクはそれを主導した自治体があるわけでございますけれども、この機構を活用した再生をする際に、その設立をした、主導した自治体の責任についてどこまで求めるのか。出資責任というのがございますので、減資等が行われることは当然考えるわけでございますけれども、それに加えて、例えば財政支援を求める、あるいは、三セクをつくったそもそもの政治責任はどうなんだということもあるわけですね。
ただ、経済面あるいは法的な面からいえば、この機構を利用した再生というのは私的整理の一種ですから、債権放棄を求められる関係金融機関の了解が得られればそれで済むということではあると思うんですけれども、一方で、自治体としてのそういう公的な責任はどうなのかという点もございます。
この点についてどのようにお考えなのかをお伺いいたしたいと存じます。
○矢田参考人 石井委員の御質問にお答えを申し上げます。
まず、財政支援というような観点で、公共性、公益性というようなもの、あるいは地域の経済の活性というふうな点に関しましても、さまざまな局面でもってこれらの意義を持つ場合、それに対して支援をしているケースがございます。
先ほど申し上げましたように、震災以前は六十四の外郭団体が存立をしてございましたが、現在四十六になっておるというのは、やはりそれ以後の中で、時代の変化に伴って存立意義が果たしてどうなのか、それに対してどういうふうに考えていくべきかということを、先ほど来申し上げておりますように、外部の意見もちょうだいしながら、これに対して対応をしてまいりました。
そしてまた、場合によりましては、まさに出捐をしておりますもの、あるいは出資をしておりますものに対して、債権放棄というふうなものも含めて議会との協議を行い、その中でこれに対して対応をしてきてございますけれども、やはりこういった事例がないようにするべきことが重要でございまして、そのためには、小さな視点から点検を常に行って、そしてそれに対して対応するということが重要であるというふうに考えてございます。そういったことで、現在もその事業のあり方について点検を進めておるところでございます。
そういう中で、例えば政治的な面ではどうなのかというお尋ねでございますけれども、先ほど来申し上げておりますように、公益性あるいは公共性という観点からこれを判断いたします場合に、やはりその存立意義そのものが変わっていなければ、それに対して何らかの対応、支援をせざるを得ないという面もなきにしもあらずでございますけれども、そういった場合でも、統廃合をしましたり、あるいはそれに対して今後どういうふうに見直しをしていくかということを、常時点検を実はやっておるところでございまして、これに対しての最終的な責任ということになりますと、やはり経営主体である団体の問題に帰するところになります。
また、例えば株式会社の場合でございますと、株の問題に対しての取り組みということに対しましては、放棄というふうな問題が起こりましたときに、議会を含めてこれに対しての処理を迫られるというところでございますので、全国的にこの取り組みをより的確にやっていく際に、やはりこの機構を早くつくっていただくことが重要である、私はこのように考えてございます。
以上でございます。
○入谷参考人 御質問に対してですけれども、私が御提出しました資料の二ページをごらんいただきたいと思うんです。
グラフの入ったところであります。それの真ん中あたり、下半分あたりのところですけれども、大阪のワールドトレードセンタービルディング、WTCの特定調停の事例を挙げさせていただきました。この特定調停の内容は、金融機関における債権放棄と返済条件の緩和、そして大阪市では、債務の株式化と劣後債化、損失補償、あと、出資もあったり貸し付けもあります。
非常にアンバランスな責任のとり方がされておるというふうに思います。出資責任あるいは債権者平等の原則ということはうたわれているわけですけれども、実態的には自治体側に極めて多くの負担を負わせる形、負わされる形の調停がなされているという実態があるというふうに思います。これは私の住んでいます地元でも、観光施設の会社更生法の申請の場合にも、その以前にもありました。補助金を導入してサミット誘致を成功させるということもありました。
このように、全体として見ると、経営が悪化した三セクについては自治体が過剰負担をする形での処理のされ方が今支配的であろうかというふうに思います。
この点につきまして、三セクというのは、マーケットリスクとか安全性リスクとか、そういうリスク分担を契約によって行っていなかったので、無責任体制があり、失敗したのは当然である。したがって、PFIのように、リスク分担をやって契約に基づいて事業を進めることによれば経営というのは失敗しないんだというふうに言われていたわけですけれども、やはりPFIも、例えば福岡市のPFIも、PFI初としての破綻がありましたし、あるいは仙台市では、PFIの屋内プールの天井落下により三十五名の人身事故がありました。あるいは高知県高知市では、病院PFIがありましたけれども、ここも資金ショートを起こすなど、マーケットリスクを十分カバーできないようなPFIが全国に間々見られる。
したがいまして、リスク分担をすれば、責任を契約によってやれば経営破綻のようなものは起こらないと言われていたけれども、本当にそうなのだろうかということで現実を考えるにつけ、私は、先ほど申しましたような三つのガバナンスということで、責任のとり方といいますか、責任をとらなくて済むような、そういうガバナンスのあり方を考えていくことが寿命の長い地域においては必要ではないかというふうに考えております。
以上であります。
○石井(啓)委員 それでは続いて、三セクの関係で、矢田参考人それから瀬戸参考人にお伺いしたいと思います。
自治体が損失補償をしている金融債権の扱いということでございます。三セクでは、金融機関から借り入れをする際に自治体が損失補償をしているケースが少なくないというふうに承知をしておりますけれども、再生する際に、金融債権の債権放棄というのはどういうふうに考えたらいいのかということなんです。
実務上は、機構に再生案件を持っていくという際には、自治体が金融機関を説得して、債権放棄に応じてもらえるという合意ができた場合に持っていくということに恐らくなるんだろうとは思いますけれども、ただ、金融機関側からすれば、それは自治体が損失補償をしたから安心して貸したんじゃないかということで、損失補償をされている金融債権がどんどん債権放棄されるということになると、これはちょっとモラルハザードにつながるのではないかなということもあります。
そこで、そこら辺はどういうふうに考えたらいいのかということが課題になる。それはいろいろなケースで、一律には扱えないかもしれませんけれども、この点についてどういうふうにお考えなのか、お伺いをいたしたいと存じます。
○矢田参考人 石井委員の御質問にお答えを申し上げますが、まず、対象となる三セクの状況というものがやはりベースになっておるというふうに考えるのが普通ではないかと思います。
当然でございますけれども、損失補償というものは予算の一部でございますから、当然に議会の議決を経なければこれは成立をいたしません。そういった場合に、やはり当該団体の経営状況なり、あるいはそれ以後の見通し等について十分な議論をし、そしてその中で判断をしていく。そういった手続があって初めてそういった状況が生まれてきておる。
それが、そういう今の地域力再生機構のお世話になって、これに対して対応をしなければだめだという事態が仮に起こるというふうなことになっていく場合でございますけれども、団体によりまして、引当金を積んでおるというところももちろんあるわけでございまして、そういったところの財政処理というものに関しましては、これは各団体でそれぞれ差があろうというふうに私は思っておりますので、一律に申し上げることはできないかもわかりませんけれども、しかし、そういった処理手法を駆使しながらやっていくということも当然あるわけでございまして、これからもやはりこういう第三セクターそのものの持っておる内容について常時点検をすることがむしろ重要である、このように私は考えております。
○瀬戸参考人 銀行が融資する際に自治体の損失補償がついている場合に、銀行がそれをむやみに債権放棄することはできない、それは当然のことであります。銀行としても株主に対する責任がございますので、回収可能なものを放棄するということができないのはこれは当然でございましょう。
しかしながら、損失補償というのは保証とは違いまして、まず損失を確定して、その不足している部分について補てんをするという仕組みでございます。したがいまして、まずは、第三セクターから最大限の回収を図ってもらう。そのためのルールをきちっとつくっておく。そこで不足する部分について、確定したものについて自治体の方で負担をする。負担をする場合でも、その場合の負担の方法等については金融機関と協議をする、そういうルールづくりが必要だろうと思っております。
地域力再生機構が損失補償の問題に対してどういう取り組みをするのかわかりませんが、このあたりの問題については今後大いに検討しなければならぬところでもあります。
損失補償については、川崎のターミナルの問題で、横浜地裁が実質保証であって憲法違反であるというような判決もございましたが、最高裁では、荒尾市の第三セクターに関係するところで、基本的には損失補償は有効であるという立場をとっているようでありますので、それを前提として、実務上、これから損失補償について最も現実的な対応はどういうものなのかということを検討していく必要があろうと思います。
以上でございます。
○石井(啓)委員 以上で終わります。
ありがとうございました。
○中野委員長 次に、吉井英勝君。
○吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。
四人の参考人の皆さんには、大変お忙しいところ、きょうはどうもありがとうございます。
私、三セク問題をきょうは中心にお聞きしたいと思いますから、入谷参考人、そして後ほど矢田参考人の方にお伺いしたいというふうに思います。
最初に、入谷参考人にお伺いしたいんですけれども、地域力再生機構をつくって、再生見通しの立ちそうな三セクを選んで取り組むとするならば、今直面している全国の破綻した三セク問題の解決としては余り期待ができないということになってくるかと思うんです。
だから、まず、なぜ三セクは破綻したのか、かなり多くのものが破綻していますから。それは、三セクの仕組み上の問題がどこにあるのかとか、出資と責任分担をどうするのかとか、それから、借り手責任と貸し手責任というものがありますね、その明確化をどうするのかとか、やはり一つ一つ丁寧に実証的研究とか分析を深めないと、これからの方向というものはなかなか出てこないんじゃないかと思うんですが、この三セク破綻についてのお考えについて伺いたいというふうに思います。
○入谷参考人 ただいまの御質問に対してですけれども、私も、三セクがなぜ破綻したのかということについては関心を持って調べてきております。
また、今日、最近では私の学会に所属する研究者の中でも、ソフトな予算問題ということで、そういう無責任体制が生み出すような出資の比率だとか損失補償の問題があるというような研究も出てきておりますが、私は、さかのぼれば、一九八〇年代のJAPIC、日本プロジェクト産業協議会、このあたりの考え方が原点にあるのではないかと考えております。
特に、第三セクターがこの時期に多く設立された背景には、採算性は乏しいけれども官のバックアップがあれば何とか参入できる分野があるということで、それ行けという感じで一斉に入っていくわけですが、その際に、幾ら補助金を出し、地方債で建設資金を調達し、また低利の貸し付けをしても、三セク自体には、利子負担が減り、営業外の支出が減るだけであります。あるいは建設資金それ自体が減るだけでありまして、官のバックアップがあっても、売上高自体は決して保証されないんですね。この問題を解決しないまま、それ行けということで一斉に飛び込んでしまったというのが事の始まりであったかと思います。
したがいまして、三セクについては、経営性の問題、経済合理性の問題を非常にシビアに計画を立てる必要がある、そういうことが必要だというふうに考えておりまして、破綻の原因は、さまざまなソフトの予算制約ということも言われておりますけれども、私は、基本的にはそういう無計画性ということに尽きるというふうに考えております。
○吉井委員 次に、入谷参考人の方に、ちょうど宮崎にいらっしゃいますから、きょういただいた資料でも二十年間で指数で五〇〇まで行っている観光分野のフェニックスリゾートの破綻の問題というのは、一体どこにあったのか。住民の直接の税負担とか、あるいは間接負担というのがいろいろ地方の場合はあるわけですけれども、それがどうなったのかということと、それから、処理の過程で、結局、資産は帳簿価格のどれぐらいで処分されていったのかということについてお聞かせいただければと思うんです。
○入谷参考人 残念ながら、詳しいデータを持ってきておりませんので、記憶でお話しするしかないと思っておるんですけれども、フェニックスリゾートの場合は、経営破綻が明白な時点において、公的資金六十億円を投入するということが議会で議決されて、そのとおり投入されました。この六十億円の公的資金、補助金については、公益性の視点から違法であるという住民訴訟が当時起こりまして、その結果、最終的には和解ということになりまして、住民側の実質的な勝訴という形で決着しているという実情であります。
この問題につきましても、結局、もともと三千三百億円の公共、民間の投資でつくったものが、最終的には十分の一以下の百億円でリップルウッドという外資系のファンドに売り渡された、そういうことになりました。
そして、その後、例えば下関市の日韓高速船の訴訟などもありましたけれども、経営破綻した三セクに補助金を投入することの違法性という問題が争われてきておりまして、このような経営破綻した三セクに対する補助金の投入だとか、あるいは、先ほどもお話がありましたけれども、川崎市のコンテナターミナルの損失補償が財政支援を禁じた法律に反する、違法だという判決が出ております。
このように、全国で実は直接民主主義といいますか、地方自治の中でも、直接的な民主主義の制度を活用した住民訴訟などを通じて、三セクに対する自治体の関与のルールが少しずつ積み重なってきているという面があるわけですね。私は、こういうところは非常に大切な問題であるというふうに考えていまして、今後の三セクに対する自治体の関与のあり方をルール化する条例にぜひ盛り込んでいって、全国でそのような条例が自主的につくられていくことが望ましいなと思っております。
例えば、岩手県の財政課が各種の財政情報に関する開示状況を県内市町村のすべてにわたって調査して、インターネットで公表しております。公表しなければならない公表義務のあるものから三段階に分けて、そういう結果を公表しておりますけれども、その中で、任意に開示することを求められているものについては五割以下であるという結果が出て、財政課長さんは、もっと積極的に三セクなどの経営情報あるいは財務情報を開示するように、そういうコメントを付して公表されているんです。
今後、全国でそのような情報開示が進んで、住民による監視あるいは議会による監視というもの、その面でのガバナンスが進むということが大切になろうかと思っております。
○吉井委員 次に、入谷参考人は昔大阪にもおられて大阪もお詳しいので、きょうの例でもWTCの例もあったのかなと思いますけれども、ちょうど六〇年代、七〇年代のころですと高度成長の時期ですから、例えば大阪府の企業局でも、巨大団地開発で千里ニュータウン、泉北ニュータウン開発ではかなり大きな黒字を生み出していますね。
あれは一つの府の局という形でやっていましたけれども、そういう時代から変わって、経済情勢も変わってきた中で、自治体が貸しビル業とか不動産に手を出したWTCとかATCとかMDCという大阪の三つの三セクの破綻というのはどこに問題があったのかなということで、先ほど御質問もあり、お答えもいただいておりました。
WTCなんかもそうですけれども、特定調停に入っても、結局それもうまくいかずに、今だったら清算、破綻処理をするのか、あるいは逆に、自治体が貸しビル業でやっていくとしたら、どんな貸しビル業なら再生の見通しが出るのかとか、自治体が貸しビル業をやることに一体意味があるのかとか、そういうところについて、入谷参考人の方からお考えというものをお聞きしたいと思います。
○入谷参考人 ただいまの御質問に対してお答えしたいと思います。
私も、学生時代、大阪に住んでおりましたので、最近は、昨年暮れの大阪市長選挙でもWTCの二次破綻問題にどう対応するのかというのが争点になったということを知りまして、ああ、そうかと思って見ていたわけです。
私はまだ現地に行っていないんですけれども、一度調査をしたいなと思っているんですが、インターネットで知る限りでは、WTCの建物の七割、八割が大阪市の部局が入っているわけですね。要するに、第二市庁舎化しているということです。大規模インテリジェントビルということで進めたビル建設だったわけですけれども、実態は、今日ではそのように第二庁舎化して、市役所が責任をとって入って高い家賃を払わないともたないというような状況になっていて、これはだれが見ても、どう見てもおかしなことだと思っております。
そして、では、なぜWTCが破綻したのかということについて私なりに考えていることを述べさせていただきますと、やはりこれは先ほど触れました面的再生とかかわっていると思っております。
特に、大阪湾臨海部の再開発と京浜臨海部の再開発というのは大きく異なっている。京浜の方、横浜とか川崎とかの臨海部再開発については、グローバリゼーションあるいは科学技術の発展に応じて、高度成長型の再開発はやめて、新しい研究開発型の臨海部開発に明らかにシフトしているわけですね。それに対して大阪の場合は、従来型の高度成長型の臨海部開発にしがみついているわけです。
したがいまして、今回、例えばWTCが面的再生ということでさまざまな地域再生計画などをセットに再生を実施した場合においても、日の目を見ることはないだろう。そもそも、大阪臨海部の再開発をこのグローバリゼーションの時代においてどのように再構成するのかという広義の面的再生がない限り、これは不可能ではないかというふうに思っております。そのようなことも、WTCを見るにつけ、考えざるを得ない、思わざるを得ないということであります。
以上です。
○吉井委員 それから、入谷参考人、先ほどお話しいただいた三ページ目にかかわるんですが、三セクに地域力再生機構が関与するとして、もともと持っている二律背反のこの機構の性格からして解決の道筋というものは出てくるんだろうか、三セクに地域力再生機構が関与して、そういう二律背反の性格を乗り越えて解決するという道筋というものは出てくるんだろうか、そういうことについても伺っておきたいと思います。
○入谷参考人 御質問にお答えしたいと思います。
この問題については、私も地域力再生機構の準備室というのがあるというのは知っているんですけれども、そこでその後どのような調査がなされて、どのような準備がされているかということについて知りませんものですから、余り確かなことを言えないんですけれども、新聞報道で見る限り、例えば、地域力再生機構が借り入れをする場合の政府保証が一兆六千億だという話であります。これは、産業再生機構の場合ですと数十兆ですから、十分の一しか政府保証をつけないということですね。このことを考えると、恐らく中規模企業あるいは三セクの案件というのは非常に小規模なものだということが考えられます。
他方では、日経のビジネスオンラインというようなインターネットのニュースでは、再生機構が今準備を進めている五十の三セクリストということがありました。このようなものが実際どのように議論されているのかというのを私は知らないんですけれども、まさにそのようなことをこの準備室がかなりやはり詰めて仕込みをやっておられると思いますので、そのようなデータをぜひ開示していただいて御議論されていくことが大切ではないかと思っております。
そして、地域力再生機構については、恐らくやはり小ぶりの案件であって、二律背反という問題がスタート時点からつきまとうと一応いろいろな情報を集める限り予測されるというふうに思っております。
○吉井委員 入谷参考人への最後の質問として、先ほどもありました面的再生。これは、実は商店街活性化の問題も研究会報告などで出ておりますけれども、百貨店の再生となりますといわば立体的な施設、商業施設、商店街となりますと面的商業施設ということになってまいりますが、それを合わせる発想というものが再生機構のテーマにあるわけですが、この面的再生に対して自治体が関与するとすると自治体はどうあるべきか、また、地域力再生機構はその場合に機能するのかどうかということについて、お考えを伺っておきたいと思います。
○入谷参考人 お答えしたいと思います。
これは国とか地方公共団体が機構と連携をするという連携機能の問題になると思うんですけれども、これにつきましては、私は、例えば地域再生計画を優先認定するというような話がありますけれども、では機構側から自治体側にどのように働きかけるのかという、こっちのベクトルの話がないと思うんですね。優先認定をして自治体が再生機構に協力するというのはあるんですけれども、では面的再生に関して機構側からサジェスチョンをするなり方針を出すなり、そのようなベクトルの話がないので、私は、そこはどうなのかなと、少々不満でもあるけれども不安なところであります。
以上であります。
○吉井委員 もうあと残り時間も少なくなってきましたので最後の質問になるかと思いますが、矢田参考人に伺いたいんです。
地域の中堅企業などの再生に取り組むという意味での地域力再生機構の役割と、それから自治体中心の三セクの再生に取り組む再生機構というのは、同じように再生させるという仕事に取り組むにしても、本来、別に考えて、中小企業の方でしたら、もともと経済産業省の世界でいろいろな考え方というのはこれまでからもあったわけですし、三セク問題ですと、いろいろな三セクがあるわけですけれども、しかし、本当に丁寧に一つ一つやはり実証的に研究して、そしてそれを最終的につぶさなきゃいけないものはつぶさなきゃいけないということになると思うんですけれども、本当にこの部分は再生できるのかどうかとか、そういうところをやはりきちんと検証しながら再生をさせることを考える。
となると、ちょっと異質なものをくっつけた地域力再生機構というのは、どうも余りしっくりいくようなものに感じられないんですが、矢田参考人の方はこの点についてどのように見ていらっしゃるか、伺いたいと思います。
○矢田参考人 吉井委員のただいまの御質問でございますけれども、先ほど冒頭の意見陳述でも述べさせていただきましたが、私どもはニュータウンをたくさん実は造成させていただきまして、その中で、ニュータウンの地域利便施設として必ず必要な、そういうものがございますので、これにつきましては実は株式会社でもって、株式会社神戸ニュータウン開発センターという形で運営をさせていただいております。
これは、あくまでも地域の活性、そしてやはり地域経済にも関与ができるようにというふうな観点で取り組んでございますが、いわば先ほどおっしゃいましたテナント業でございまして、実際の経営はすべて民間企業が入っていらっしゃる。そういう中で非常に収益を累積してきた体質のものでございますので、今のところはこういった課題に直面はしてございません。
ただ、全国的に見ますと、先ほどの例をおっしゃっておられたような案件にならないように、目を配っておくことは当然であろうと思っておりますし、また、企画する段階で、そういうことについて十分にやはり、どうなるべきか、あるいはどういうふうになるんだろうかという予測を考えておく必要はあろうというふうには思ってございます。
そういった点を考えまして、そういった点を含めて自治体全体でもって三セクの対応というふうに考えましたときには、やはり私は、冒頭申し上げさせていただきましたけれども、財政健全化法の将来負担比率というものは、これは一部事務組合、広域連合、そしてこの三セクというものにわたってまいります。ですから、まさに地方自治体全体の、公営企業も含むものも含めてでございますので、相当大きな規模のものになっておろうかと思います。それに対しての尺度が導入されるわけでございます。
そういった際に、やはり自治体そのものの存立意義というものが当然問われるわけでございましょうし、また、その中における住民の皆さんの声も反映をしながら、そして議会ともそういう点を詰めて議論をしてやっていくということになっていこうかと思いますけれども、やはり原点は、そこのところをどのように情報公開し、また透明性を高めながらやっていくかという点が私は問われておるという認識でございます。
しかし、そういう点で今回のこの機構法が成立をすることによってメリットが生まれるというふうにも考えてございますので、そういった点で、ぜひこの早期制定について、私の方からはむしろお願いを申し上げたい、こういう気持ちでございます。
以上でございます。
○吉井委員 時間が参りましたので、終わります。
参考人の皆さん、どうもありがとうございました。
○中野委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
この際、一言ごあいさつを申し上げます。
参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)
参考人の皆様は退席いただいて結構でございます。
―――――――――――――
○中野委員長 引き続き議事を進めます。
この際、お諮りいたします。
本案審査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房審議官山崎史郎君、政策統括官藤岡文七君、総務省大臣官房審議官榮畑潤君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○中野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○中野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。赤澤亮正君。
〔委員長退席、櫻田委員長代理着席〕
○赤澤委員 ありがとうございます。地域力再生機構法案の質疑になりますと自民党から漏れなく私が出てくるということで、毎度登場しまして、大臣にも木村副大臣にも加藤政務官にも大変申しわけなく思いますけれども、よろしくおつき合いをいただきたいと思います。自由民主党の赤澤亮正でございます。
先ほど参考人質疑が終わりました。印象に残った点をちょっと申し上げていきます。
矢田神戸市長は、三セクを多く持っておられる立場で、この地域力再生機構ならではの再生手法というものに大いに期待をすると。
神戸株式会社と言われる非常にすぐれた経営的手法で市政の運営をされている、そういう大市長でありますから、決して恨みがましくはおっしゃいませんけれども、平成十五年九月の指定管理者制度の導入で、公の施設をどうも株式会社がどんどん効率よくやるようになって、それまで頑張ってやっていた三セクとか外郭団体が、競争力が劣れば、ある意味でどんどん仕事がなくなっていってつらいですよというようなこともおっしゃっていたのが大変印象に残りました。
それに加えて、地方公共団体の財政健全化に関する法律で今後いろいろと赤字の実態などが明らかになって背中も押される、ぜひ少しでも早くこの地域力再生機構をつくり上げて、きちっとした三セクの再生手法というのを確立してほしい。指定管理者制度などを入れた国にも少しは責任をとってよとはおっしゃいませんけれども、そんなニュアンスも若干感じたところでございます。
それから、中小企業再生支援全国本部統括プロジェクトマネージャーの藤原参考人からは、いわば彼が専門家であります地域に置かれている中小企業の再生支援協議会というものは、地域の総合病院なんだということであります。しかしながら、ある意味公的な背景を持たないと、彼がおっしゃっていた、建設土木、ホテル、温泉旅館などの再生はなれているんだけれども、最近交通の事案が非常にふえてきた、これについてはまだまだノウハウ不足みたいなこともおっしゃって、とにかく、三セクあるいは交通については、ぜひ地域力再生機構のもとで、専門病院の集中治療のような形で成功モデルをつくってほしいと。この支援協議会、地域のものとは補完関係でうまくやっていきたいんだ、その補完関係を早く築きたくて、機構の誕生を待ってうずうずしているというように私には感じられました。
それから三番目に、弁護士の瀬戸先生でありますけれども、地方で三セクということになると、どうも破綻の引き金を引く人がなかなかいない。これはしがらみとかいろいろなことがありますけれども、関係者であります行政も、あるいは首長さんも、あるいは三セクのトップが地方の有力者だったり、とにかく破綻させて余り得する人がいない。なおかつ、金融機関の債務保証などがついていれば、これはもうどこまででも負債が膨らんでしまう。こんなことではやはりよくないので、この地域力再生機構には期待するところ大ではなかろうか、こういう話でございました。
最後に、宮崎大学教育文化学部教授の入谷先生がおっしゃっていたのは、彼は地域力再生機構について若干批判的な部分があって、その大きな部分というのは、三セクの問題というのは、非常に数も多いし本質的な問題をはらむので、時限でやっていくようなことに本当になじむのだろうか、本格的なガバナンスを確立して、その中で粛々と法的整理をやっていく形でこの非常に数が多い難題に挑んでいくのが本来の姿ではなかろうか、こういう御指摘でございました。
いずれにしても、この地域力再生機構について、問題点を指摘しながらも、非常に特色のある取り組みである、特に最初の三人の参考人の先生方は、これを渇望している、ぜひやるべきである、こういうことだったということを私は認識いたしました。以上を踏まえて、質疑をさせていただきたいということであります。
私は、再生の必要性についても参考人の先生方に聞かせていただいて、若干認識が深まったところがあります。私が前回申し上げましたとおり、産業再生機構が事業再生のパターンをつくり上げたんだ、そのやり方は有効性が高いと考える、そしてそのやり方でぜひ再生の必要性のある事業を取り上げてほしいんだと。
先日の野党の先生方の質疑では、民間企業と第三セクターが同じ支援スキームの対象となることは疑問だというような御指摘があったんですが、私は、むしろ逆じゃないかなと思っています。再生しなきゃいけない必要性の高い事業というのは、民間だろうが三セクだろうが、あると思うんですね。
民間企業の中でも、実はきょう藤原参考人が指摘された、交通という新しい類型が割と破綻に瀕することがふえているけれども、何でだろう。私は、答えは、日銭商売、キャッシュフローがきちっとしていてお金がどんどん入ってくる、キャッシュショートが起きづらいというようなものは、やはりなかなか倒れずに、下手をすると債務が拡大しっ放しになっちゃう。あるいは三セクについては、先ほど債務保証とかいろいろな指摘がございました。赤字が拡大しながら、しかも事業の質は全然改善しないのになかなか倒産しない、こういう類型が民間企業であろうと三セクだろうと共通してあるわけでありまして、こういうものについてきちっと再生をしていくという必要性は高いというふうに思います。
その場合に、産業再生機構というのは非常に有力なやり方ではないか。特に三セクについては、財政健全化に関する法律というのが動き始めますので、背中をそれに押されてこの機構に力をかりるというのが非常に自然な流れではないかなというふうに思います。
そこで、大臣にお尋ねをしたいんです。
民間企業と第三セクターの違いを強調するよりは、再生の必要がある事業というのは三セクにも民営企業にもある。いろいろな意味で、日銭商売あるいは固定費型の商売、とにかくなかなか破綻しないというタイプ、三セクも同様だと思います。共通点がむしろ多くて、同じ支援策を用いるのがいい、合理性があると考えますけれども、その辺のお考えはいかがでしょうか。
○大田国務大臣 先生の御指摘は極めて的確なものであると思います。
先般御質問いただきましたときに、私は、中核、中規模企業と第三セクターについて、財務や事業を再構築するという観点から共通性があるし、再生手法も共通しているということを申し上げました。きょう先生御指摘のように、事業の実態という面から見ても、民間の中規模企業と第三セクターというのは少なからず共通の性格を持つんだろうと思います。
三セクというのは多様ですので、三セクの中には、もう一度自治体が引き取って政府としてやっていくものもあるんだろうと思います。それから一方には、完全に民間事業体になって、つまり民営化をして、経営者を入れかえることで再生させていくというものもあるんだと思います。そこを担当するのが地域力再生機構です。そういう意味において、この中核企業と第三セクターというものは、事業の性格からいっても共通点を持つものが少なからずございます。
したがいまして、地域経済を立て直し、そこで地域の雇用を生んでいくという趣旨から見まして、この二つのものを別々の再生策として用意するのではなくて、同じスキームのもとで再生させていくということが妥当であると私は考えております。
○赤澤委員 ありがとうございます。私も全く同感でございます。
次に、持続可能な再生についての可能性の判断といったことが再生委員会で行われます。その場で支援対象の決定がされていくわけでありますけれども、藤原参考人がきょう非常におもしろい例えをされて、支援協議会や地域力再生機構をお医者さんに例えられたんですね。支援協議会は地域の総合病院、そして再生機構は専門病院、集中治療を行うという言い方でした。
私は、そこに含まれているメッセージというのは、健康診断から外科手術まで非常に専門的な判断をやるということがやはり事業再生には必要なんだと。当然のことでありまして、特に機構になれば、関係機関からの出資がございます。国も金融機関も地方公共団体も出すわけでして、どうやっても再生できないものを絶対取り込んではいけない。
しかし、その辺の見きわめは専門家の判断でないとできないわけです。一流の事業再生のプロが判断して初めてといったことがあるので、この点については、野党の先生方の過去の質疑、支援対象企業の選定に当たって地域力再生委員会に任せるのは公平の点でもちょっと疑問があるし、なかなか透明でない、基準も不十分というような話があったように思うんですが、客観的な基準として最低限の基準を定め、あとは専門家の判断にゆだねる、政治的な圧力を受けない一流のプロフェッショナルを集めれば、この仕組みが一番機能すると私は考えます。
産業再生機構でも実績の上がった方式であることは異論がないところだと思うんですが、この点についての大臣のお考えを伺いたいと思います。
○大田国務大臣 支援決定を公正中立に行うというのは、機構で最も重要な点になります。その一方で、経済というのは生き物ですから、そこの中の企業を再生する際に画一的、網羅的に事細かく支援基準を全国一律に決めてやっていくということになりますと、なかなか適用できない事態ができたり、不適切な側面もございます。
したがいまして、最低限の基準は国の側でしっかりと決める。委員御指摘のように、外部の圧力を排して、断固として適切な判断を下す専門家というものがその基準に従って判断を行っていくということが必要であると考えております。
その専門家集団として地域力再生委員会を置いて、ここが支援決定を行っていくということになります。
○赤澤委員 ありがとうございます。
そして、まさにこの機構をしっかりと機能させるには、出資金や人材が本当に集まるのかという点が大きなポイントでございます。この点について、本当に野党の先生方の御心配も私もわかるところがあって、この辺、出資金や人材の確保を含め、機構をしっかりと創設して地域の活性化を推進するという意気込みを加藤政務官にお伺いしたいと思います。
○加藤大臣政務官 産業再生機構もまさにそうでありましたけれども、この地域力再生機構におきましてその役割をしっかり果たしていくためには、優秀な人材、そして安定した財務基盤がもとより不可欠なことは御指摘のとおりであります。
今は法案が成立していないという段階でありますから、今接触をさせていただいている地方公共団体あるいは金融機関等からまだ具体的なお話をいただける状況には到底ないわけでありますけれども、この法案を成立していただいた段階で、人材の確保、また出資の話、急ピッチで進めさせていただきたいと思います。
先ほど委員がおまとめになりました、きょうも参考人から、地域力再生機構に対する期待、そして早期成立を求める声もあったわけでございますので、私どももそういう方向で成立に精いっぱい努力をさせていただきまして、そして地域力あるいは地域の活性化に全力で取り組ませていただきたいと思っております。
○赤澤委員 ぜひ頑張っていただきたいと思います。
私は産業再生機構を非常に評価しておりまして、そこにおられました弁護士の高木新二郎先生初め、本当にいい人材がいることがもうわかっているわけでありますから、そういった先生方を軸にしっかりつくり上げていただきたいという思いでございます。
一方で、きょう参考人の中で、入谷参考人がおっしゃったガバナンスという面も非常に大事でありまして、関係者の了解を得て円満に解決を図っていくためには責任の明確化という問題もどうしても避けられないと思うんです。
この点についての大臣のお考え、特に、三セクについてきちっと再生していくに当たっての責任の考え方、いかがでしょうか。
○大田国務大臣 地域力再生機構では債権者に債権の放棄を求めますので、そういう痛みを求める以上、経営者の責任を追及していくというのは当然のことであるというふうに思います。特に第三セクターでは、経営者は当然退陣していただきますし、それから、自治体が株を持って出資している場合は株主権の消却を行います。そういう形で責任をとっていただく。
それから、機構の仕組みとは別次元の問題になりますけれども、そもそも三セクがどうしてそういう事態に至ったのかということについては、関係者の責任について地方公共団体あるいは地方議会という場で責任の追及がある、議論がなされるというのは当然あり得ると考えております。
第三セクターの問題を先送りせずに、正面からとらえて改革を進めていく、その大きい流れの中に、解決の重要な選択肢として地域力再生機構があると考えております。
○赤澤委員 地域力再生機構の実務は、金融機関のみに債権放棄を求める、雇用の場を確保する、プロラタ原則によりメーン行が心配することなくビジネスライクに処理をしていける、あるいは人材派遣や出資などの機能も有する、さらには、中央に置かれてしがらみがない、ほかの機関にはないような重要な特徴がたくさんあるわけであります。
本日の参考人のお話を聞いて、地域力再生機構の必要性について、私はさらに自信を深めました。先日の野党の先生方の質疑では、現在の地域経済の状況に対して、厳しい状況にもかかわらず、この機構の設立にむしろ消極的な姿勢と見られる質疑も多かったわけでありますけれども、私は、地域活性化のために地域力再生機構がしっかりと活動することがぜひとも必要と考えます。
最後に、機構を創設し、地域経済を立て直していこうという大臣の御決意を伺って、終わりたいと思います。
○大田国務大臣 地域経済を立て直して地域で雇用機会をつくっていくというのは、スピード感を持って取り組まなくてはならない大変重要な課題です。これなくして日本経済の活性化もないと考えております。
地域で雇用を生み出し得る事業体というものを再生させていく、これが機構の役割です。その機構の運営に当たっては、先生が御指摘くださいました地域力再生機構が持っている重要な特徴、これは産業再生機構の実績が残してくれた財産でもあります。この事業のスキームを生かして、地域経済立て直しに全力を尽くしてまいりたいと思います。
今後とも御支援をどうぞよろしくお願いいたします。
○赤澤委員 ありがとうございます。終わります。
○櫻田委員長代理 以上をもちまして赤澤亮正君の質疑を終局いたします。
次に、吉良州司君。
○吉良委員 民主党の吉良州司でございます。
まず冒頭、私は以前この内閣委員会でも申し上げましたけれども、大臣が本国会の冒頭の経済演説の中で、我が国の経済ももはや一流ではないということを思い切って発言されて、一人当たりGDPが十八位に落ちてしまった、その危機感に対して警告を発し、もう一度国力を増進しようということを思い切って発言されたことを大変高く評価しております。
日本の国力を再び増していく、復活させる、そのために最も大事なことは、やはり地域経済の復活だというふうに私は思っております。そういう意味において、本法案の最高次元に掲げております地域力の再生、地域経済の復活再生、このこと自体には、私を含め民主党も全く異存はございません。
ただし、この機構という形のスキームで果たしてその目的が達成できるんだろうかという意味で、個人的にも党内的にもいろいろな議論がございます。そういう意味で、私どもは、私自身も今言った高次の目的については大賛同するものであるけれども、このスキーム自体に対していろいろな問題点を指摘して、本当に地域経済の復活、そして日本国力の増進ということについて議論を深めてまいりたいというふうに思っております。
まず、その意味で大臣にお伺いいたしますけれども、分権型社会、地域主権社会を推進していくことについて賛成かどうか、その辺についての御見解をお伺いしたいと思います。
○大田国務大臣 地域経済が長期的にしっかりと伸びていくためには、ここで分権型の社会を築くことが何より重要だと考えております。
○吉良委員 ありがとうございます。もう私も全く同感なんでありますけれども。
その際に、私自身が、実は私も大分という地方出身議員でありますけれども、高度成長が終わった後、地域が特に伸びない、または衰退してきている最大の原因は何なんだろうかと考えてみたときに、それは、一言で言えば、やはり依存をしてしまうということだというふうに思っているんですね。
この法案の背景にある、今いろいろな議論がされてきましたけれども、三セクもそうですが、地域を活性化させるという名目でいろいろな形で政府が、例えばリゾート法、民活を利用した地域の活性化ということで、ほら貝をがんがん吹きながら、やれやれやれ、こう言ってきたんですけれども、それは、政府が何らかのお手盛りをするという形、何かあれば補助金をもらいに行く、何かあれば政府に頼むということで、地域経済、地域の活性化と言いながら、その手法は、常に国に頼る仕組みをつくってきた。そして、地域もそれに諾々と依存してきてしまった。私は、これが最大の問題なんだろうというふうに思っているんです。
そういう意味で、やはり地域経済の再生、そのキーワードは、依存から自立へというふうに思っているんです。その点については同感していただけますでしょうか。
〔櫻田委員長代理退席、委員長着席〕
○大田国務大臣 御指摘のような問題が過去にあったのも事実だと思います。やはり、みずから自立し、みずから魅力をつくり、強みをつくり伸びていくということが何より大事だと考えております。
○吉良委員 ありがとうございます。この点についても一致するわけでございます。
では、この法案は、今までの質疑、やりとりを聞いていても、地域だけでは利害調整ができないとか、地域ではその責任追及もやりづらいとか、なぜその地域の力、住民の力、そういうものを信じなくて、やはり中央がこういう機構をつくり、スキームをつくり、手助けしなければできないと。これは最終的には地域の自立であるにもかかわらず、なぜここで中央がわざわざ出ていって、今言った、再び依存する形で自立のための第一歩を踏み出さなきゃいけないのか。そこにはある意味での矛盾があると思いますけれども、その点についてはいかがでしょうか。
○大田国務大臣 私は、事業再生というのは本来、民間がやるべきものだと思っております。したがいまして、産業再生機構ができるというときも、国がやっていいんだろうかというふうに思いました。
しかし、不良債権処理をスピード感を持ってやるときに、本当にほぐれない糸になったところをプッシュして、前に押していく仕掛け、前に押していくことによって国民の経営資源として生き返るものがあり、それが七万人の雇用を生んだ。そういうケースがあるんだということは、産業再生機構も示したというふうに思っております。
地域力再生機構につきましても、これも産業再生機構の地方版として考えたわけではありませんで、そもそも、地域経済立て直しに今何が一番必要なんだろうかということで、いろいろお話を伺ったりいたしました。そこで出てきたのが、事業再生を担う人材、経営を立て直す人材、あるいは商店街などを、プランをつくって立て直していく人材であるという答えが多くの方から返ってきました。とすれば、全国規模で、都市から地方へ、あるいは大企業から中小企業へ人材を還流する仕組みができないだろうか、これが発想の発端です。
そのときに、経営人材を送るときに、債権者の中でこんがらがって非常に複雑になった債権の関係を調整し、あるいはそこに自治体が出資していたり、政府系金融機関が出資している、それを解きほぐす機能を公的な機関が担って、全国規模で人材を派遣することで一挙にこのおもしを取り除いていくことによって、地方にとっては貴重な雇用機会というものがもう一度復活するんじゃないかということで、この機構を考えました。
したがって、先生がおっしゃるように、過剰な介入になってはいけないわけで、再生できるのかどうかということは厳しく判断していく、そして経営者には責任を負っていただく、金融機関にも債権放棄を求めるという規律づけは不可欠であると考えております。
○吉良委員 私も、今の答弁の中で、例えば人材の確保、人材の還流、こういう観点は非常に大事だというふうにも思っております。
ただ、一つ気になるのは、この後ちょっと掘り下げたいとも思っているんですが、大臣は、今言った人材の還流、確保という点を最大限考慮してこのスキームに至ったという答弁でございました。再生機構というのは必ずしもそれの二匹目のドジョウではないんだという趣旨のこともおっしゃっておりました。
ただ、実際は、ほとんど産業再生機構とスキーム的には同じ形になっているんですね。最後七万人の雇用と、産業再生機構のことについておっしゃいました。もろもろ、成功モデルと位置づけてもいい要素もあるんでしょう、私はそれだけではないとも思っているんですが。
ただ、産業再生機構が設立され、実際に機能した時期と今とでは、既にもう五年強のタイムラグがある。あの当時は、ある意味で国全体が、やはり金融秩序の回復、メガバンクといえどもいつつぶれるかわからない、そういう不安定な社会。特に、金融秩序を回復する、これがある意味で国家の至上命題であった時代だというふうに思っているんですね。だからこそ、債権放棄だとかいうような、本来なら放棄する側にとって極めて厳しいことも、ある意味では受諾できた。
本来、経営者が債権放棄しますなんというときに、株主に向かってどう説明すればいいのかというときに、やはり今言った社会全体、国全体の要請がありましたから、ある意味では株主の了解も得やすかったというような時代だったというふうに私は思っているんです。
そういう意味で、この産業再生機構のスキームをある意味ではそのまま焼き直してきているということについては、実は私自身は大きな疑問を抱いております。
これまでの議論でなかったこと、きょうの参考人の方からガバナンスということでの御指摘、意見陳述がありましたので、それにちょっと関連するんですが、大臣、本法案の目的は何ですか。ごく手短にお答えいただけますか。
○大田国務大臣 地域経済の立て直しであり、雇用の創出です。
○吉良委員 地域経済の立て直しですね。
では、再度開きます。
機構を株式会社としていますけれども、機構の収益、または第三セクターの救済、または仕分けをして、本当に大事だ、残さなきゃいけないものは再生する、幾つかありますけれども、地域経済の活性化なのか、株式会社地域力再生機構の収益なのか、そして、ある意味では三セクの仕分けと救済なのか。
○大田国務大臣 地域経済を立て直すに当たって、地域の中で重要な経営資源である、雇用を生み出し得る事業体は、中規模企業、中核企業の場合もあれば、第三セクターの場合もあります。その事業を再生するのが地域力再生機構です。したがって、大命題といいますか、大目的は地域経済の立て直しということになります。
しかしそれは、必ず事業再生できるものを厳密に資産査定してやってまいりますので、そこは収支というものを合わせていかなくてはいけない。したがって、株式会社という形態もとっております。
第三セクターにつきましては、第三セクターも事業体として見たときに、地域の中で雇用を生み出し得る経営資源という見方ができます。これについては、同じスキームの中で立て直していくということになります。
したがって、この大目的を達成するために、地域力再生機構が収支をしっかりと合わせながら運営していく。その中で、地域の中核企業を立て直し、第三セクターも立て直していく。このメーンの流れは、地域経済の立て直しということになります。
○吉良委員 大臣の考えておられることはよくわかりました。
ただ、私なんか駆け出しのぺいぺいの政治家でこんなことを言うのはちょっとおこがましいのでありますが、公認会計士は会計のプロであったり、弁護士は法律のプロであったりするときに、政治家とは一体何のプロなんだろうと考えましたときに、ある意味では、価値判断とそれに基づく優先順位というものを明確にするプロなんだというふうに思っています。何百、何千と要求が来ても、限られた人材、予算の中でこれとこれとこれしか取り上げられない、その厳しい判断をしなければいけないのが政治家だというふうに私は思っておるんですね。その意味で、あえてお聞きしたんです。
というのは、目的は何だというと、例えば、これをやりながら、これもできればやって、これもやって、これもやってと、こうなるんですよ。AもBもCもDもと、必ずなるんです。
けれども、民間が行動を起こすときというのは、物すごく単純です。やはり収支です。収益が上がるかどうかです。もちろん、付随的に、地域経済に役立つだとか、これが社会的にだとか、教育にとか、いろいろあります。けれども、そこには圧倒的な差があって、収支なんです。この民間の意思決定原理と公的なものというのは大きく違います。
そういう中で、今回のこのスキームに対して私自身が疑問を持っていることの一つは、極めて公的な目的を持ちながら、形としては、株式会社という収益を目的とする形態をとっている。にもかかわらず、ではその意思決定というのはどうなっているのか。まず、預金保険機構というものが国の代弁者だ。そこに地域銀行からの出資も受けて、全体としては三分の二の意思決定も、国が実質的に意思決定する仕組みになっている。その国が意思決定するところに民間の資本を入れさせている。おまけに、国ではない自治体にまた三分の一の出資をある意味では出させようとしている。
もう一度お聞きしますけれども、この機構は株式会社をとっていながら、収益が目的じゃないんですね。
○大田国務大臣 収益を出して、例えば機構に働いている人の給料を上げたりとか、出資者がまたたくさんもうかろうというような目的はございません。しかし、収支はしっかりと合わせていかなくてはなりません。
お尋ねは、恐らく、なぜ株式会社という形態をとっているのかということだと思います。
これは五年間の時限をとって事業再生を行います。事業再生という業務の性格上、民間企業経営と同じような緊張感を持ってやっていかなくてはいけません。これが一つの理由です。
それから、事業再生という性格上、税ということではなく、収支をしっかりと合わせて、つまり、再生できるものだけを再生していくということをそこで担保していく。収支をとれるもので収支を合わせるということが非常に大事ですので、出資者から出資を受けるという形の株式会社にしてございます。
ただし、その一方で、先生が御指摘のように公的な機能も残っております。これは会社法の特例として、幾つか法的に条項を定めております。
一つは、安定的な株主を確保して債権者の調整に当たり公的な機能を担保していくということで、預金保険機構が議決権の過半を有する株主であり続けるというような規定がございます。
それから意思決定も、単なる株主としての意思決定ではなく、地域経済にとって重要であり、なおかつ再生できるかどうかというものを中立的な機関が判定しなくてはならないということで、地域力再生委員会が判定するというような意思決定の仕組みを中に組み込んでおります。
それから、役員の選任の場合の決議に主務大臣の認可が必要ですし、国の監督、業務改善命令といった公的性格も一方で有しております。
そういう意味では、両方を有しながら、しかし組織形態としては、民間企業経営と同じ緊張感を持って収支を合わせていくということがまさにこの形態の趣旨です。
○吉良委員 今の大臣の答弁を聞きましても、先日の我々同僚議員三方が質問したときのお答えも、これは大臣、先ほど言いましたように、勇気を持っていろいろ発言されたとか、一方では大臣の言動を高く評価しているんですが、やはり極めて学問的なような気がするんですね、これもあれもと。
確かに、理屈上ではそうなるように聞こえるんですけれども、現実問題、さっき私が申し上げた、民間が出資する際の出資基準等々に、このスキームが果たして本当に合っているんだろうか。
まず、今回、地域金融機関、自治体、この二つはある意味でこの機構を通して損失を出す可能性が非常に高い機関なんですね。目的の一つでもある、これ以上続けさせてはいけないというところを整理する、または再生する、これはいいんですが、その債権放棄をする、または損失補償、またはそれ以上の負担を強いられるであろう自治体が出資をする。これは本来ならば、民間で買収するときによく言われる、コンフリクト・オブ・インタレストなんですね。それをあえて、民間に出資しろ、また自治体に出資しろと。これは、私に言わせれば、出資とは名ばかり、実際は国による圧力なんですね。
もし、国がやるからついてこいと言わなくて、国がどうこうするのではなくて、こういう趣旨の機構を立ち上げますと、ぽんと新聞か何かで公募したときに、自治体、金融機関は果たして応募してくるんだろうか。私はそうは思えないんです。
自治体にしろ地方金融機関にしろ、これにもし出資をするとすれば、それはある意味で、出資しないと将来的ににらまれるだとか、もちろん、この機構によって、場合によっては自分たちの悩みの種であった問題が解決できるかもしれない。いずれにしても国がついてこいと言うから出さざるを得ないのであって、やはり一種の奉加帳出資になるんだろうと私は思っているんです。
もしそうじゃないところで出資するというところがあったら、それは株主に説明できないですよ。民間企業が、これに十億出資します、二十億出資します、目的はといったときに、地域経済の立て直しのためだと言ったら、それは株主から絶対ノーを突きつけられるに決まっているんです。
だから、出資という形をとったとしても、民間のバランスシート、PLをつけるときには、ある意味では、広告費だったり交際費、国とか、自分たちより力のあるところに対する交際費ですよ、実際は。形は出資だけれども中身はと見たら、交際費だったり広告費なんですよ。
それでも株式会社という形をとるんですか。お聞きしたいと思います。
○大田国務大臣 奉加帳ということは全くございませんで、都道府県、それから金融機関、これは全銀協、地銀協、第二地銀協という協会ですけれども、まさに要請をしておりまして、それぞれのお申し出で出資をいただくことになっています。それぞれの自治体、それぞれの金融機関が判断するということになっておりまして、決して押しつけではありませんし、後々仕返しがどうのこうのというようなものでも全くございません。
金融庁が行いましたアンケートでも、これは地銀、第二地銀へのアンケートですが、八割の金融機関が関心を持っている。そして、今どういう機能に関心を持っているか。ちょっと手元に数字がありませんが、かなりの、もうほとんど九割ぐらいの金融機関が、例えば自治体が出資していたり融資していたりして債権者の調整が入り組んでいるところの処理ができない、そういう部分に関心を持っています。
つまり、地域力再生機構が債権放棄を要請する、そのときに債権放棄に応じるかどうかは銀行の判断ですけれども、要請された額で債権放棄を行うのがいいか、それとも、それに応じない自由ももちろんございます。応じずに、そのままいって、どんどん事業が停滞したままいく。最後、法的整理に至る。法的整理に至りますと、取引債権は全部弁済の対象になりますから、事実上、倒産の枠組みになってしまう。このどちらの弁済率が高いのかを金融機関は判断する。今そのスキームができたということです。
それから、自治体の側でも、財政健全化法の中で三セクの改革は迫られております。それを今ここで、責任も明らかにする形で、再生できるものを地域のために再生していくのかどうかの判断を迫られる。逆に言うと、その選択肢ができたということになります。
○吉良委員 私、先ほど大臣に失礼なことを申し上げたんですが、理屈上、例えば経済学的にそうかもしれないけれども、実態はそうでもないというのが現実のこの世の中で、今おっしゃった中で、例えば、出資をしました、けれども債権放棄に応じない応じる、それは自由ですと。もしこの自由が本当に地域の、地銀なり第二地銀であってもあるならば、こんな垂れ流しの三セクなんかできないんですよ。例えば県が出資するとか、自分が属している市が出資するとなったときに、おい頼むよ、協力してくれ。ノーとか言う自由がないんですよ。地域の問題というのは実はそこに一番の大きな問題があって、経済原理原則、市場原理が通じないんですよ。
ちょっと時間がないので細かく言えませんけれども、先ほど参考人の方々からもいろいろ意見が出た中で、例えばあることは、まず自治体は、二〇%出資していても八〇%ぐらい口を出すんですよ。そのかわり、それを諾々と受け入れるほかの八〇%の株主は、何かあったときは自治体にぽんと丸投げすればいいやという安易な中で決定しているわけです。そういうもたれ合いの構図があって、こんな垂れ流しの三セクが実はできてしまっているんですよ。
だから、地方の最大の問題は、経済原理、市場原理が働かない。何%出したからどれだけの発言権がある、どれだけの拒否権がある、これが全く機能しないところに地方でのこういう三セクを含めた問題がある。
ですから、きょうはガバナンスのことをいろいろ話をさせてもらったんですけれども、私自身もそうですけれども、党内的に一つ一番大きな議論がされているのは、今言った、純粋にこの機構が目的とする、またその裏づけにある市場原理、経済原理が働かずに、結局はその地域のボス、政治的な意図、恣意がどうしてもまかり通ってしまう。
結局は、この機構を通して、本来、純粋に経済原理、デューデリの結果、これはやはり救っちゃいけない、申しわけないけれども将来負担を考えたときに今畳む方が住民のためなんだ、国のためだと思っても、そこに政治的な恣意が働いて、何とか生き残らせてくれと。それをやはり受け入れざるを得ないような環境が地方にはある、こういうふうに思っているわけなんですね。
ちょっとその点について、いかがでしょう。
○大田国務大臣 政治的な圧力によって業務運営がゆがめられるというのは最も避けねばならないことです。そのためのコンプライアンス機能を整えるというのは非常に重要な点だと考えております。
産業再生機構においても、コンプライアンス委員会というものを設けて、例えば政治家から何か話があったらそのメモは全部残すとか、それを産業再生委員会に報告するというような仕組みを整えておりました。地域力再生機構においても、そのコンプライアンスの組織をつくり、同様の対応をして厳しくチェックしていく。これは当然のことだと思います。
事業再生を行うに当たって、最も守られねばならないのがコンプライアンスであると考えております。
○吉良委員 時間が本当に迫ってきましたので、ちょっと一点、本当は今のことに対して言いたいんですけれども、ちょっと時間の関係で抑えさせていただいて。
先ほど私も、リゾート法だとか民活に伴う国の施策について言わせてもらいましたけれども、この法案のまたもう一つの側面として私が恐れていること、そして声を大にして指摘しなければいけないことは、先ほど言ったリゾート法というか観光等は、さっきありましたけれども、八一年から九九年まで観光・レジャーが五倍にふえている。これは明らかにリゾート法の影響でありますが、リゾート法ならリゾート法に基づいて、当時の自治省なり国がどんどんどんどん、やれやれやれやれ、こう言って、ほら貝をぶおっと吹きまくって、行けと山の上からわあっと突撃しておりていって、ところが、引けというほら貝も吹かないままいつの間にか終わっていて、突撃したやつ、おまえたち何をやっているんだと。こういう、実は……(発言する者あり)ええ、まさに置いてきぼりで、後ろを振り向いたとき、だれも援助もない。もう苦しくてしようがないときに、いざようやくだれか出てきた、今回のこれがあると思わせる仕組みなんです。
何が言いたいかというと、本来責任を負って罪がある人たちが一切責任もとらず、逆に、この機構を通して、我々は救いの天使ですよみたいなことになるわけですよね。先ほど泉同僚議員からも指摘があったんですけれども、もちろん未来志向を常にやらなければいけないんですけれども、我々として、こういう事態に至らせた責任者はだれなんだと。地域にもいます。実は政府にも、国にもいるわけです。政治家もしかり、役所もしかり。その辺のところのやはり責任所在を、これでうやむやにすることなく明確にしていかなければいけない、このように思っていますが、時間がないので、短くお願いします。
○大田国務大臣 第三セクターはさまざまな問題を抱えておりますので、これは、財政健全化法などに基づいて、自治体も考えなくてはいけない、国も各府省連携をとって進めなくてはいけないと考えております。そして、その三セクの中には、もう破綻処理しなくてはいけないものもあると思います。あるいは自治体が引き取るものもあると思います。
ここで民営化をしたら地域のために再生できるというものを扱うのが地域力再生機構です。したがって、この大きい三セク改革の解決策の選択肢の一つです。このとき当然、繰り返しになりますが、責任というものは追及されるということになります。
○吉良委員 時間が来ましたので、短く二点。
一つは、先ほど大臣がおっしゃっていた専門家の還流ということ。基本的には大賛成なんですけれども、今回は産業再生機構と違って、先ほども言いましたように、経営指導もやっていくというような要素があるわけですね。助言等を専門家が行っていくというようなこともあるんです。もちろん専門家というのは、私も敬意を払い、大事なことなんですけれども、地域という物すごくどろどろした世界の中で経営助言をしていくというときには、ある意味で中央からぽんと行けばいいというものではないんです。やはり地域の専門家を育てながらでなければいけない。
というのは、BツーCという言葉を御存じですか。これはIT用語のビジネス・ツー・コンシューマーじゃないんですよ。実は、バック・ツー・コンサルタントというのがあって、傾きつつある、コンサルタントがいろいろ経営指導をやっていて、それでもどうしようもないので、コンサルタントに社長をお願いして経営再建してもらったらつぶれちゃった、そういうことがあって結局コンサルタントに戻ったという、バック・ツー・コンサルタント、BツーCというちょっと笑えないジョークがあるんです。
一方で専門家というのは非常に大事なんですけれども、今言った、どろどろした地域の実情がわからなければ、なかなかうまくいかない。そういう意味で、還流する際に、やはり地域の専門家を育てていくという観点が非常に大事であるということを申し上げたい。
もう一つ、先ほど地域主権、分権にとって、依存から自立へということを言いました。その際に、やはりこれから分権社会をつくっていく、地域主権型社会をつくっていくときに大事なのは、今はよちよち歩きかもしれないけれども、やはり地域の力を信じる、地域に住んでいる人を信じる。ここの人たちでは解決できないだろうということで、では国がというこの考え方は捨てないと、よちよち歩きでも、地域を信じる、地域にいる人たちを信じていかなければ地域の再生はあり得ないということを申し上げて、私の質問を終わります。
ありがとうございました。
○中野委員長 次に、吉井英勝君。
○吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。
最初に、三セクの方から政府参考人にまず伺っておきたいと思います。
大阪のWTCのことをこの間伺ったんですけれども、WTC、ATC、MDCの三つのいわば貸しビル業的な三セク、不動産屋さん的三セク、これは、合計すると大阪市は幾ら出資してきたのか。それから、これまでの貸付金は幾らあるのか。金融機関の貸付金と貸付金残高はどうなっているのか。そして債権放棄額というのは幾らあるのか。また、さらにわかれば、最初一遍、破綻処理をやっているわけですから、あのときの銀行からの借り入れに対する損失補償、幾ら役所の方が持つことになっているのか。
きのう通告しておきましたけれども、これを伺っておきます。
○榮畑政府参考人 WTC等三法人に対しましての出資した額ですけれども、三法人合わせまして、平成十九年三月までで出資した額は五百七十四億円、それから、貸し付けた額が平成十九年三月末で三百三十三億円というふうに承知しております。
それからまた、これら三法人に対しまして、関係金融機関が平成十九年三月末までに債権放棄した額が九百二十六億円、それから、三月末時点での金融機関の貸付額は九百九十九億円というふうに承知しております。
それからまた、大阪市が損失補償した額が、三法人合わせて九百四十七億円というふうに承知しております。
以上でございます。
○吉井委員 ですから、随分、市の方が損失補償ということで、銀行の方がとりあえず貸した金で返ってこないで債権放棄している分があるんですけれども、実は、元利償還を今までやっている分もあるんですよ。これからの計画の中では返ってくる分もあるんですね。二千数百億ぐらいありましたね。
それで、債権放棄してもなお、おつりが二百億余りあるんですけれども、金融機関にとってはおいしい話なんですが、何でそんなにおいしくなるのかなと見てみれば、もともと不動産業なんだけれども、ほとんどがらがらの空きビルでしょう。がらがらの空きビルだから、仕方がないから、もともと大阪市が入っていたところから港湾局だ何だというのがみんな抜け出して、そこへテナントとして入ってテナント率を高くする。
しかも、市場価格に比べると、大阪市がテナントとして入っている家賃は、WTCだったら一・六八倍でしょう。ATCは二・七一倍。物すごく高目の家賃を払うことによって何とかつじつまを合わすということを今やってきているわけです。つまり、家賃という形で市場価格よりはるかに高いものを出すことによって、財政支援を行うなどしているわけですね。
こういったものを、まだ法律ができていないものですから、どこと決まっているわけじゃありませんが、この間も日経のレポートの紹介をしましたけれども、五十社リストにWTCなんかも入っているわけですね。それは決まっているわけじゃないと一生懸命言うてはったし、それはそうでしょう、建前としては入っていないんですよ。しかし、言われているものの中にあるんです。
仮にこういうふうなものを地域力再生機構で処理するといっても、やはり三セク関係者の責任を明確にして、そしてこの総括、検証もなしに、自治体の金融機関に対する損失補償分を、金融機関に本当にその分を債権放棄させるのかどうか、それができるのか。あるいは、自治体の金融機関に対する損失補償分は切り離すことができるのかどうかとかきちんとしなかったら、損失補償が残ったままですと、結局それは最後は税金で補てんすることになります。
ですから、結局、それは銀行救済と市民の税金負担への道を広げるだけということになってしまうのではないかというふうに思われるんですが、ここは大臣に伺っておきます。
○大田国務大臣 今の時点で個別の案件については一切申し上げられませんが、一般的に申し上げると、WTCであったりほかの事業体であったり、そこが事業再生計画をつくる。その事業再生計画で再建できるかどうかを厳密に査定する。そして、そこに貸しているメーン行なり非メーン行がその要請に乗るかどうかを判断するということになります。それが地域力再生機構の役割です。
先生がおっしゃいました、では、そこに至ったその三セクの責任はどうするのか。これは自治体の中で、あるいは地方議会の中で、追及されることは当然あり得ると考えております。
○吉井委員 前回御紹介しましたフェニックスリゾートなどにしても、シーガイアの破綻処理では住民側の税金負担。再生処理に入った民間会社は、資産を帳簿価格の十分の一ぐらいで入手して大きな利益を上げる。だから、再生処理のあり方についても、やはりよく研究しなきゃいけないと思うんですね。
そこで、大臣に伺っておきたいのは、三セク処理というのは、やはり一つ一つ丁寧に検証して、借り手責任があります、貸し手責任もありますよ、そうしたすべてのことをきちんと検証して、そして、破綻した三セクはいっぱいあるわけですよ。再生しそうな、ある程度見込まれるものだけ再生機構でやろうというんだったら、それは一つの手法ではあったとしても、今、全国の自治体が直面している三セク、これも多くは民活法だとかリゾート法だとかFAZ法だとか、いっぱい国の方が法律をつくっておいしい誘導策もやって、食べてみたら余りおいしくなかった、最後は税金で負担ということになっているわけですから、やはりきちんとしたことを、自治体にかかわることですから、本来だったら総務省なら総務省を中心に、今度の財政健全化法のこともありますけれども、三セクを一つ一つきちっと検証して、どうするのか。
これは法的処理なのか、それとも総務省を中心にして違った形での再生させる仕組みというものを考えているのかとか、本来的にやはりそれをやらないと、何か見込みのありそうなところだけちょびっとつまんできてどうするこうするでは、根本的な解決にはまずならないと私は思うんですが、大臣のお考えを伺いたいと思います。
○大田国務大臣 地域力再生機構は、三セクの改革そのものを目的としたものではありません。これで三セク全体の改革ができるというふうには考えておりません。
三セクに関しては、これは非常に多様ですから、今、恐らく自治体がそれぞれの三セクについて調査をしている。総務省のつくりましたガイドラインに基づいて調査をして、債務超過のものについては経営検討委員会をつくり、平成二十一年度までに改革プランをつくっていく。その過程の中で一つ一つの三セクを精査して、どうやっていくのかということが議論がなされるだろうと思います。
その多様な三セクの中で、そのままつぶしてしまうしかないものもあるだろうと思います。あるいは、自治体の仕事として残すものもあるだろうと思います。民営化することによって事業再生できると判断されたものは、事業再生計画をつくって地域力再生機構に持ち込まれる。地域力再生機構は、それが本当に出口で雇用を生み出すものか、再生できるものかを判断して、支援を決定するということになります。
したがいまして、地域力再生機構は、あくまで地域経済という観点から、地域の経営資源の一つとして三セクという事業体を見て、それが民営化して再生できるかどうかを反映する。したがいまして、経済政策を担当する内閣府が、私のもとで研究会をつくり、この機構の制度設計を進めてまいりました。
○吉井委員 やはり自治体、三セクを含めて、地域経済、地域のあり方そのものを大きなスケールで考えていかなきゃいけないと思いますから、何か今回のような機構で解決できるような、そういう話ではもともとないというふうに思います。
次に、面的再生について伺っておきますが、六十七条に面的再生を掲げています。面的再生とは何を考えているのか。それで、対象のケースの一番目に、周辺地域等の環境整備が必要とされるケースというのが挙げられておりますが、どういう事例を想定しているのか。これを最初に伺います。
○大田国務大臣 面的再生というのは、地域経済活性化には非常に大事なスキームでありながら、やはりなかなか難しいやり方であると思います。
地域力再生機構が想定をしております面的再生というのは、一定エリア、例えば百貨店を含む商店街、こういったものを一体として再生していく、あるいは温泉街のようなものを一体として再生していくという、まさに一定エリアを対象とする面的再生、この場合は、地域力再生機構にとっては再生対象になります。
もう一方で、例えば百貨店を再生するときに、その百貨店単体だけではなかなか再生できない、周囲の商店街まで一体となって再生することで百貨店も伸びていけるかもしれない、伸びていく、その計画が立てられる場合、これは再生手法としての面的再生になります。
こういう二つの観点から面的再生をとらえております。
○吉井委員 今、百貨店再生の例で、百貨店再生とともにという、ちょっと表現が違っていたけれども、要するに書いてある文章では、百貨店再生とともに周辺商店街の活性化に取り組む、こういうことですね。
昨年十一月二十七日の地域力再生機構研究会の最終報告素案の方では、それはどういう表現をしていたのか。これは政府参考人でも結構なんですが、伺っておきます。
○山崎政府参考人 お答えいたします。
今手元に持ってございませんが、たしか百貨店を中心にという形で、商店街についても再生を行う、そういう表現だったのではないかと思います。素案段階でございますので、途中の段階でさまざまな意見がございますので、その中の一つの表現であったと思っております。
○吉井委員 素案の方では、百貨店再生のために周辺商店街活性化に取り組む必要があると。つまり、周辺商店街を含めて面的再生じゃなくて、要するに、もともとは百貨店の再生のために、こういう発想であったわけだと思うんですけれども、これは間違いありませんね。
○大田国務大臣 面的再生を取り上げるときに、再生の対象として面をとらえる。これは、百貨店とともに周辺商店街まで一緒に対象にして再生させていく。
今先生が御指摘の、百貨店のためにというときは、これは再生手法としての面的再生になります。百貨店を再生するときに、百貨店を単体として再生しても、これはなかなかその地域が活性化するものではありません。百貨店の周辺の商店街まで整備されて初めて百貨店というものは再生される、この場合は再生手法としての面的再生ということになります。
○吉井委員 結局、最終的には、百貨店再生とともにと書き改められたわけです。しかし本音は、やはり最初の表現である、百貨店再生のために周辺商店街の活性化が必要と。つまり、百貨店再生とともに周辺商店街の活性化ということではなくて、周辺商店街の活性化はつけ足しで、百貨店再生のために周辺商店街の活性化をつけ足した、これが、当時の研究会の議事録を見ておっても、やはり百貨店再生のためにでは、表現ぶりは若干違ったかもしれませんけれども、余りに露骨過ぎると。やはりこれは、百貨店再生のためにじゃなくて、百貨店再生とともに周辺商店街の活性化、こういうことで公的資金の導入とかやっていくことに道筋を開くべきだ、議論の中ではここに本音というものがよく出ていたと思うんです。
時間が来たということですから終わりますけれども、私は、こういうやり方では地域の協力を得て本当の意味での面的な活性化というものにはつながっていかないということを申し上げまして、あとはまた次の機会に質問したいと思います。
終わります。
○中野委員長 次回は、明二十三日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後五時二十五分散会