衆議院

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第22号 平成20年6月11日(水曜日)

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平成二十年六月十一日(水曜日)

    午前九時二分開議

 出席委員

   委員長 中野  清君

   理事 江崎洋一郎君 理事 岡下 信子君

   理事 櫻田 義孝君 理事 高市 早苗君

   理事 村田 吉隆君 理事 泉  健太君

   理事 大畠 章宏君 理事 田端 正広君

      赤澤 亮正君    新井 悦二君

      遠藤 宣彦君    大塚  拓君

      加藤 勝信君    鍵田忠兵衛君

      木原 誠二君    河本 三郎君

      戸井田とおる君    中森ふくよ君

      西村 明宏君    萩生田光一君

      藤井 勇治君    市村浩一郎君

      吉良 州司君    楠田 大蔵君

      佐々木隆博君    西村智奈美君

      馬淵 澄夫君    石井 啓一君

      吉井 英勝君

    …………………………………

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 泉  信也君

   国務大臣

   (科学技術政策担当)   岸田 文雄君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)   大田 弘子君

   農林水産副大臣      今村 雅弘君

   内閣府大臣政務官     加藤 勝信君

   内閣府大臣政務官    戸井田とおる君

   内閣府大臣政務官     西村 明宏君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   丸山 剛司君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  片桐  裕君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    米田  壯君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長)            上田 隆之君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            高原 一郎君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           武藤  浩君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 白石 順一君

   政府参考人

   (環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長)   由田 秀人君

   内閣委員会専門員     杉山 博之君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月五日

 辞任         補欠選任

  遠藤 武彦君     石田 真敏君

  木原 誠二君     宮澤 洋一君

  中森ふくよ君     増原 義剛君

  楠田 大蔵君     松本 剛明君

  石井 啓一君     上田  勇君

同日

 辞任         補欠選任

  石田 真敏君     遠藤 武彦君

  増原 義剛君     中森ふくよ君

  宮澤 洋一君     木原 誠二君

  松本 剛明君     楠田 大蔵君

  上田  勇君     石井 啓一君

同月十一日

 辞任         補欠選任

  土井  亨君     鍵田忠兵衛君

同日

 辞任         補欠選任

  鍵田忠兵衛君     新井 悦二君

同日

 辞任         補欠選任

  新井 悦二君     土井  亨君

    ―――――――――――――

六月六日

 憲法改悪反対に関する請願(阿部知子君紹介)(第三八一四号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第三八一五号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第三九八六号)

 同(石井郁子君紹介)(第三九八七号)

 同(笠井亮君紹介)(第三九八八号)

 同(穀田恵二君紹介)(第三九八九号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第三九九〇号)

 同(志位和夫君紹介)(第三九九一号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第三九九二号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第三九九三号)

 同(吉井英勝君紹介)(第三九九四号)

 同(保坂展人君紹介)(第四一六二号)

 韓国・朝鮮人元BC級戦犯者と遺族に対する立法措置に関する請願(阿部知子君紹介)(第三八一六号)

 同(大島敦君紹介)(第三九九五号)

 同(佐藤剛男君紹介)(第三九九六号)

 同(仙谷由人君紹介)(第三九九七号)

 同(楠田大蔵君紹介)(第四一六三号)

 同(土肥隆一君紹介)(第四一六四号)

 アイヌ民族の先住権確立に関する請願(今津寛君外二名紹介)(第四一六一号)

 戦時性的強制被害者問題解決促進法の制定を求めることに関する請願(小宮山洋子君紹介)(第四一六五号)

同月九日

 憲法改悪反対に関する請願(笠井亮君紹介)(第四二七六号)

 同(笠井亮君紹介)(第四四〇八号)

 韓国・朝鮮人元BC級戦犯者と遺族に対する立法措置に関する請願(長妻昭君紹介)(第四二七七号)

 同(鳩山由紀夫君紹介)(第四二七八号)

 同(平岡秀夫君紹介)(第四二七九号)

 公務・公共サービス拡充、公務職場の働くルールの確立に関する請願(安住淳君紹介)(第四二八〇号)

 同(金田誠一君紹介)(第四二八一号)

 同(亀井静香君紹介)(第四二八二号)

 同(菊田真紀子君紹介)(第四二八三号)

 同(近藤洋介君紹介)(第四二八四号)

 同(武正公一君紹介)(第四二八五号)

 同(平岡秀夫君紹介)(第四二八六号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第四四〇九号)

 同(石井郁子君紹介)(第四四一〇号)

 同(笠井亮君紹介)(第四四一一号)

 同(楠田大蔵君紹介)(第四四一二号)

 同(穀田恵二君紹介)(第四四一三号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第四四一四号)

 同(志位和夫君紹介)(第四四一五号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第四四一六号)

 同(高井美穂君紹介)(第四四一七号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第四四一八号)

 同(保坂展人君紹介)(第四四一九号)

 同(細野豪志君紹介)(第四四二〇号)

 同(村井宗明君紹介)(第四四二一号)

 同(吉井英勝君紹介)(第四四二二号)

同月十日

 税金の無駄遣いや天下りに反対することに関する請願(笠井亮君紹介)(第四四八九号)

 憲法改悪反対に関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第四四九〇号)

 同(保坂展人君紹介)(第四六二二号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第四七四〇号)

 憲法の改悪反対、九条を守ることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第四四九一号)

 同(石井郁子君紹介)(第四四九二号)

 同(笠井亮君紹介)(第四四九三号)

 同(穀田恵二君紹介)(第四四九四号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第四四九五号)

 同(志位和夫君紹介)(第四四九六号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第四四九七号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第四四九八号)

 同(吉井英勝君紹介)(第四四九九号)

 同(笠井亮君紹介)(第四七四一号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第四七四二号)

 公務・公共サービス拡充、公務職場の働くルールの確立に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第四五〇〇号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第四五〇一号)

 同(辻元清美君紹介)(第四五〇二号)

 同(吉井英勝君紹介)(第四五〇三号)

 同(渡部恒三君紹介)(第四五〇四号)

 同(奥村展三君紹介)(第四六二三号)

 同(川内博史君紹介)(第四六二四号)

 同(照屋寛徳君紹介)(第四六二五号)

 同(津村啓介君紹介)(第四七四三号)

 同(寺田稔君紹介)(第四七四四号)

 平和憲法の改悪反対に関する請願(保坂展人君紹介)(第四六二六号)

 同(菅野哲雄君紹介)(第四七四八号)

 憲法改悪に反対し、第九条を守り、生かすことに関する請願(菅野哲雄君紹介)(第四七四五号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第四七四六号)

 同(重野安正君紹介)(第四七四七号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 内閣の重要政策に関する件

 栄典及び公式制度に関する件

 男女共同参画社会の形成の促進に関する件

 国民生活の安定及び向上に関する件

 警察に関する件


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     ――――◇―――――

中野委員長 これより会議を開きます。

 内閣の重要政策に関する件、栄典及び公式制度に関する件、男女共同参画社会の形成の促進に関する件、国民生活の安定及び向上に関する件及び警察に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として内閣府政策統括官丸山剛司君、警察庁生活安全局長片桐裕君、刑事局長米田壯君、資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長上田隆之君、中小企業庁事業環境部長高原一郎君、国土交通省大臣官房審議官武藤浩君、環境省大臣官房審議官白石順一君、大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長由田秀人君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

中野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。木原誠二君。

木原(誠)委員 おはようございます。自民党の木原誠二でございます。

 きょうは、大田大臣に三十分いろいろ御質問させていただきたい、こう思っております。足元の経済状況、そしてまた中長期的な経済運営について、幅広くお伺いできればと思っておりますし、とりわけ、私は、日本になかなか経済の司令塔がないという状況が続いてきて、ようやく経済財政諮問会議ができ上がって、まさに大臣がその先頭に立って経済運営をしていただく、そういう意味では、期待を込めてまたきょうは御質問させていただきたい、こう思っております。

 早速ですけれども、足元の経済状況について少し御認識をお伺いしておきたいというふうに思っております。

 一昨日、九日だったと思いますけれども、景気動向指数が発表されたということでございまして、その中に、三月の「一進一退」から、この言葉を使いますと、「局面が変化している可能性もある」ということの判断があったように感じております。来週は月例も出てくるわけでありまして、なかなか今のタイミングで難しいかもしれませんけれども、この「可能性もある」ということの意味を含めて、足元の景気状況を御説明いただければと思います。

大田国務大臣 足元の経済ですが、回復が今、横ばいになってきております。生産、消費、設備投資という重要な項目が横ばい状態になっておりまして、これが今後どうなるかというのが今非常に注意を要するところです。

 アメリカ経済減速の影響を受けまして、輸出の伸びもやや鈍化してきているという状態です。原油価格上昇の影響を受けまして、企業収益が圧迫されてきております。きょう八時五十分に発表いたしました一―三月のGDP速報の、これは改定値ですけれども、実質GDPが年率四・〇%という非常に高い数値を示してはおりますけれども、一月から三月にかけて、やはりアメリカ経済の減速がかなり大きくなってきておりまして、足元で私ども、やはり踊り場に入っていると見ております。

 問題は、今後の動向です。

 国内につきましては、改正建築基準法でかなり落ちました住宅投資が今盛り上げて、影響が収束しつつあります。これは国内経済にとりましてはプラスです。

 最大のリスク要因として、アメリカ経済の減速がどれくらいの期間、どれぐらいの深さで続くかということです。今のところ、日本からアメリカに向けての輸出が落ちてきている。さらに、アジアからアメリカへの輸出も伸びが鈍化している。それを受けて日本からアジアへの輸出の伸びが鈍化しているということで、直接のアメリカへのルート、アジア経由のルート、両方通して輸出の伸びが落ちてきておりますので、輸出の伸びが落ちますと、これがまた生産に波及してくるということで、大きいリスク要因として、アメリカ経済、それから原油高、資源高の影響、この二つで今下振れリスクは高まっていると判断しております。

木原(誠)委員 ありがとうございました。

 八時五十分の速報値は年率四・〇%だと。それはそれとして、一方でいろいろな指標はまだら模様だ。今の御判断でいうと、横ばいが続いている、こういうことであります。

 もう一回だけ確認をしたいと思いますけれども、この景気動向指数が発表されたときに、「局面が変化している可能性」という言葉をわざわざ入れられた、最後の答弁のところで下振れリスクが高まっているという御発言もありましたけれども、この一文の意味を簡潔にもう少し教えていただければと。

大田国務大臣 景気動向指数は、その前と比べて振れが大きい数字が出ておりますので、過去の経験からいって、この振れの大きさは景気の風向きが転換点にある可能性があるということです。

 ただ、景気動向指数というのは十一の指標で判断します。このうちの五つが生産。景気の動きを一番早く感知するような指標を選んでおります。月例経済報告は、もっと広く、家計消費、設備投資、全体で判断いたしますので、そこはおのずと判断は変わってまいります。ただ、いずれにしても下振れリスクが強まっているということに変わりはございません。

木原(誠)委員 ありがとうございました。

 確かに、月例はさまざまな指標を総合的に判断して、こういうことであろうと思いますから、他方で、先行指数として特に生産面をよく把握できる動向指数ですね、これが少し弱まっているということは注視しておく必要があるな、こういうふうに思います。とりわけ、ほかの指標を少し見ると、倒産件数、件数自体は横ばいだろうと思いますけれども、負債総額がふえてきておりますし、法人企業統計を見ても、生産も収益もずっと傾向的に下がってきている、こういうことだろうと思います。

 私が非常に心配しますことは、きょうここにお集まりの委員の方ほとんどがそういう感想を、実感を持っていらっしゃると思いますけれども、地元に帰りますと、去年、住宅、建築、この分野が非常に落ち込んだ、このことはもうよく知られていることでありますけれども、今起こっていることは、流通、運輸、そしてまたガソリン高で今度は外食といったようなところも非常に落ち込んできていて、私の地元でもそうですけれども、マンションはほとんど売れない、どんどん値下がりをする、こういうような状況であります。

 とりわけ中小企業、零細企業も含めて中小零細企業のところは、今大臣がおっしゃった下振れリスクがあるというような状況ではなくて、もう底割れをしていると正直申し上げていいんだろうというふうに私は思っております。もう少し実感は厳しいのではないかな、こう思いますけれども、中小企業について、中小企業の景況感について何か御感想があれば。

大田国務大臣 中小企業は、原油高、資源高の影響を受けて収益が顕著に圧迫されてきております。これが今、設備投資にも影響を及ぼしつつあります。特に従業員が三十人未満の企業において、雇用者の数が減っておりますし、ここで賃金も落ちているという状況があります。恐らく地域を支えているのは、この三十人未満の企業がかなりあると思いますので、ここが、その資源高、仕入れ価格の上昇ですね、これをなかなか転嫁できずに苦しんでいるという状況だというふうに、私も非常に懸念しながら見ております。

木原(誠)委員 ありがとうございました。

 従業員三十人未満、中小零細の中の最も脆弱な部分だろうというふうに思いますけれども、大変厳しいということを御認識いただいたわけであります。

 そのことを踏まえて、では、一体この人たちに政府は何をこれからしていこうとしているのか。私は、足元の短期的な経済政策というものは何らか、多分、大臣の中におありであろうというふうに思いますけれども、どういう経済政策、経済運営をされようとしているか、御見解をいただければと思います。

大田国務大臣 経済動向に対応する経済政策ですね、大きいセオリーは二つあるんだろうと思います。

 日本の現状を考えますと、やはり成長力と並んで財政健全化というのも大事な課題で、安易な財政出動はしないということを一つの原則として置いておくべきだと思います。もう一つの原則として、さはさりながら、外的に大きいショックがあった場合には大胆かつ柔軟に対応する、これは政府の役割として当然のことだ。この二つの大きい原則があるだろうと思っております。

 今、これまで政府でやってきておりますこととしては、必要なことには迅速に手を打つ、その一方で成長力強化の政策をとるということで、必要なことに迅速に対応するという意味では、昨年十二月の末の原油高対策、それから二月に中小企業の資金繰り支援策、それから四月四日に成長力強化策の中で、特に中小企業や地域活性化のために、すぐできるものはやるということでやりました。昨日の諮問会議で、成長力強化、これは中期的、短期的、両方を含みますけれども、それを取りまとめました。

 今後とも、迅速に対応すべきは早期に対応していくということで、注意深く企業と家計の動向を見てまいりたいと思っております。

木原(誠)委員 ありがとうございました。

 今、三点お触れになったと思います。去年の原油高対策、それから二月の資金繰り対策、そして、四月ですか、成長力強化の方の短期的にできること、三月に総理の指示を得てやられたことだろうと思います。

 正直に申し上げまして、どれもこれも、もちろん、年度末を越えるための金融支援、それから資金繰り対策、これらは即効性があったというふうに思いますけれども、それ以外のものというのは、どちらかというとやはり中長期的な視点で政策が組まれているな、こういうふうに私は思っております。

 また、もう一つ申し上げれば、三月に総理の指示があって、またあるいは年末の原油高の対策があって、ここから今の足元の現状を見ると、やはり状況は、外的要因はさらに数段悪化していると言わざるを得ないと思います。

 そういうことを考えると、私は、やはりもう少し積極的に臨機応変な、財政政策も含めて構わないというふうに思います。短期的な経済政策を内閣府として、経済財政諮問会議として打ち出すべきではないか、こんなふうに思っております。

 財政政策ということで、冒頭、大臣が財政健全化の話もありますよということがございました。ただ他方で、日本はまだインフレよりもデフレがどちらかというと深刻な国でありますし、需要が不足している国であることは間違いありませんから、私は、まだ財政政策が効果的に働く余地は十分あるだろう。もちろん、かつてのような、どでかい景気対策である必要はないと思いますけれども、財政政策ということを臨機応変に考えることもあっていいのではないかというふうに思います。

 ちょっと基本的な認識としてお伺いしたいと思いますが、大臣は、財政政策ということについて、それは意味がない、要するに短期的なものは効果がないというお立場なのか、効果はあるんだけれども財政が非常に厳しいからなかなか打ちづらいということなのか、効果はあるんだけれどもまだ時期尚早だというお立場なのか、このいずれか三点でないかもしれませんけれども、お立場を伺えればと思います。

大田国務大臣 財政政策がいずれも効果がない、そういうことは思いません。やるとすれば、これは効果があるものを最も効果的にやらなくてはいけない、つまり処方せんをよくよく描いてやらなくてはいけないと考えております。

 今の景気状況とあわせて申し上げますと、今、海外から荒波が押し寄せている状況です。国内的には企業がそれほど体質が弱いということはないんですけれども、海外の荒波に揺さぶられております。特に原油高、これはなかなか日本一国でコントロールできない状況がございます。穀物高もそうです。したがいまして、総理も食料サミットに出ていく、あるいは甘利大臣もエネルギー大臣会合でリーダーシップをとって、何とか世界的にどう対応策をとっていくかということを政策を講じているということです。

 今後のことにつきましては、やはり原油高、外で起こっているとはいえ、さはさりながら国内にも既に大きい影響が出てきておりますので、そこは企業と家計の状況をつぶさに点検して、状況を見ながら必要なときに必要な政策を効果的に講じていくことだと考えております。

木原(誠)委員 ありがとうございました。

 逆に言うと、まさに原油高、穀物高、そしてアメリカ経済、世界経済、いわば外的要因によって、とりわけ中小企業はみずからの手が届かないところがあるわけですね。そういう意味でいうと、そこにこそ政府の出番があるのではないかなと私は正直思います。

 これまで、ややもすると、政府は何もしないのがいい、あるいは何もしてくれるなというような経済政策がずっと続いてきたと思いますけれども、私は、今国民が最も望んでいることは、一体政府は何をしてくれるんだということを強く、とりわけ足元、中小企業、零細企業は望んでいる、このように思いますので、ぜひ今の御答弁のとおり、注視をしていただいて臨機応変に対応していただきたいな、こう思います。

 一言だけ敷衍をいたしますと、埋蔵金の議論がずっとございます。私自身は、埋蔵金はあるかないかというと、そんなに大きなものはないだろうと正直思います。それによって恒常的な財源が出てくるわけではありませんから。ただ、他方で、これまでの埋蔵金の使われ方、財投の積立金あるいは外為特会の剰余金の使われ方を見ますと、いずれも国債残高を減らすために使っているわけですね。これはこれでいいことだと思います、将来の世代の負担を減らすという意味では。

 しかし同時に、やはり今の世代、今の現実に生きている皆さんが、限りあるお金で一体どういう経済対策を打ってくれるのかなということも非常に重要なことであると思いますので、そういうことも含めて、経済財政諮問会議でもぜひ積極的に対応していただければ、このように思っております。

 そこで、少し足元の景気状況を離れて、中長期的な経済運営ということについて何点かお伺いをしたい、このように思います。

 けさの新聞を読んでおりますと、成長戦略というものがきのう議論をされた、こういうことでありますけれども、そのきのうの成長戦略も含めて、今後、日本の中長期経済を考えた場合に、何が重要で、重要でないことはないと思いますけれども、どこを伸ばし、そしてまたどこを強化しといったようなことについて大臣の御所見をと思います。

大田国務大臣 九〇年以降、世界経済の構造は本当に大きく変わりました。劇的にグローバル化が進んだと言っていいと思います。国内においては、既に人口減少が現実のものになってきております。こういう国内、国外の状況を考えましたときに、やはり日本にとって大事なのは、弱みを克服すること、強みを強化すること、そしてグローバル化に対応することだというふうに思っております。

 まず、弱みを克服するということで見ますと、日本の弱みが大きく二つございます。一つは、サービス産業の生産性が低いということです。サービス産業が今GDPの七割を占めております。もう一つは、人材が十分に生かされていない。人口が減る国でありながら、百八十万人のフリーターが存在いたします。

 ということから考えまして、まずは生産性を上げていく。これは業種別のプログラムをつくって今取り組むことにしております。それから、人材を生かすために、新雇用戦略ということで職業訓練の充実、あるいは女性が子育てしながら働けるように新待機児童ゼロ作戦というのをスタートしております。

 それから、強みを生かすというところでは、何といっても日本の強みは技術力です。特に環境技術、省エネ技術というのは世界に誇るものがございますので、環境の技術力を生かして、これからの地球環境問題でイニシアチブをとっていくというのが一つの強みの大きい発揮だと思っております。

 あと、グローバル化への対応としては、EPAを加速する、あるいは国内への投資を呼び込んでいく。それからもう一つ、金融資本市場ですとか空港といった海外との窓口になる分野、ここの国際競争力を強化していくということが必要かと思っております。

 以上を踏まえまして、全員参加できる経済、世界に開かれた経済、それから技術力を発揮する経済という三本柱で成長戦略を昨日取りまとめたところです。

木原(誠)委員 ありがとうございました。

 まさに、十数年前は日本の経済は世界で一四、五%の規模を持っていたのが、今はもう一〇%を割っている状況ですし、一人当たりGDPでももう二十位近くまで落ちてしまっている、こういう状況ですから、今大臣がおっしゃった三つの柱、全員参加、グローバル、そして新技術ということであろうと思いますけれども、ぜひしっかり取り組んでいただきたい、こう思うんです。

 かつて前川レポートがあって、内需を拡大していきましょうと。今度の成長戦略というのは、いわば平成版の前川レポートであるでしょうし、新しい時代に即した新たな前川レポートに匹敵するようなものになっていかなければいけないのだと思いますが、かつて内と外が明確に区分された時代と違って、今はまさに内外無差別、こういうことであろうというふうに思います。

 そういう中で、今、三本の柱を組み立てていただいているんだろうと思うんですが、私は、さらに一歩進んで、今の基本はむしろ外外じゃないかなと正直思います。外で生産をし、外に売り、そしてその収益を国内に還流させる。そういう意味では、国際租税改革なんというのも非常に重要なことであろう、こう思います。

 今回、私も新聞報道でしかまだ詳細には見ておりませんけれども、成長戦略そのものを見ておりますと、国内に海外の投資を呼び込む、あるいは空港、港湾を含めて整備をする、日本を外に開くということには非常に強いメッセージが出ていると思うんですが、私は、本当はもう一つ強いメッセージを出していただかなければいけないことがあって、それは、外に出ていくということがもう少し強いメッセージとしてなければいけないのではないかというふうに思っております。

 経済とは関係ありませんけれども、例えば日本の学生さんを見ても、世界じゅうの、とりわけアメリカ、イギリス、こういった国の大学を見ていると、日本の学生さんは非常に少なくなっていて、中国や韓国の学生さんがどんどんふえている。しかも日本の学生さんは、大学院というわけではなくて、どちらかというといわゆる大学の世界、あるいは語学学校の世界にとどまっている。

 私は、もう少し日本が外へどんどん出ていくというメッセージを政府として出していただいて、そして、それを積極的に支援していただく必要があるな、こう思います。変な例ですけれども、公文式が世界で非常に今はやっているというふうに聞いております。世界じゅう、今ほとんどの国、ほとんどと言ったら大げさですけれども、かなり多くの国でこの公文式が、公文式という名前で受け入れられるようになっているというようにも聞いております。

 したがって、今大切なことは、ソニーとかあるいはトヨタとか、こういう大企業だけじゃなくて、日本の中小、あるいは零細というのはなかなか難しいと思いますけれども、中小企業で本当に技術力のあるところは外へ、とりわけアジアへ出ていく、それを日本がサポートする、そんなことをもう少しこの経済成長戦略の中にも、あるいは骨太の中にも積極的に取り入れていただきたい、こう思います。

 もっと具体的に言うと、例えばメード・イン・ジャパン五百選みたいなものを政府が全国から公募して、そしてその輸出を、中小企業には販路の開拓というのは非常に難しいと思いますので、ファンドでもつくって輸出振興をぜひしていただきたい、こう思いますけれども、外へ出ていく日本ということについて御見解を賜りたいと思います。

大田国務大臣 非常に重要な御指摘をいただきました。

 外へ出ていくというとき、まず、先生が言われた人材が外に出ていく、出ていって切磋琢磨して、また国内に帰ってきてビジネスをやるというのは大変重要なことだと思います。成長戦略の中では、国内に留学生三十万人受け入れることとあわせて、日本から海外への留学生を支援するということも含まれております。それから、中小企業が外に技術力を持って外でビジネスをする、こういうことの支援も、地域に連携拠点をつくりますので、そこで中小企業への支援も行っていく。

 あるいは、今回総理が牽引されている言葉として、つながり力というのがございます。それは、大企業、大都市、製造業というような、あるいは現役世代というだけの経済ではなくて、中小企業も地方も全体でつながりを持つことで相乗効果を発揮する。その中に、まさに先生が言われた中小企業、地元の中小企業を、大企業が一緒になってネットワークをつくることで、その中小企業のつくったものを例えば商社が海外で販路を開拓して売っていくというようなモデルを、もう既に幾つか出てきておりますけれども、そういうモデルを広げていくということを考えたいと考えております。

木原(誠)委員 ありがとうございました。

 もう既にいろいろな動きがあると思います。そして、それをまた大田大臣のところでもいろいろモデル化し、広げていっていただいている、こう思いますけれども、私はやはり、そこにちゃんと資金がつくことが重要だというふうに思っております。

 先ほど、財政出動もあってもいいのじゃないかと申し上げたのは、かつてのようなそういう需要喚起型だけじゃなくて、そういったところに財政をしっかり手当てしていくというのは非常に重要なことで、きのうだったと思いますけれども、甘利大臣が、イノベーションを生み出す新たな仕組みということで、イノベーション創造機構というものを提案されて御説明されたというふうに思います。つまり、技術産業ファンドだとか研究開発ファンドだとか、こういったところに国の資金、公的資金、そして国内外から民間の資金も入れていこうと。

 私は、これは実は結構画期的なことだと思っています。あの財務省が、産投から、産投会計を使って幾ら出すのか知りませんが、全体で二千億と言っているわけですから、資金を呼び水として使おうじゃないか、そういうふうにかじを切ったということは私は非常に重要なことだと思っていまして、同じことを、今申し上げたような輸出促進、中小企業の販路開拓、こういったところにもぜひファンドの形で活用していただきたい、こう思います。

 答弁はなかなか難しいと思いますので、これは御要望させていただきたい、ぜひ御検討いただきたいというふうに思います。

 あともう一点、この成長戦略の中で、年金の運用について。これも、新聞だけを読むとやや後退をしたというような論調になっているわけであります。このことの是非についてはきょうは特段議論する必要はないと思いますけれども、私は、今日本経済に非常に重要なことは、環境制約がある、人口の制約もある、いろいろな制約がある中で、やはりストックをしっかり活用していくことだろうというふうに思います。

 フローの勝負になると、実質で二%の成長を目指す、他方で中国は恐らく一〇%近く伸びてくるわけでありますから、フローだけで勝負するというのはなかなか難しいと思います。やはり、日本の強みであるこのストックを確実に、そして有効活用していく。二百年住宅構想なんというのもその一つのいい例だというふうに思いますけれども、そういう視点をぜひ盛り込んでいただきたいなというふうに思っております。

 今回の成長戦略を見ておりますと、年金資金の運用のところ、もう少し強く出てもよかったのかなというふうにも思いますし、あるいはもう少し視点を変えて、高齢者の皆さんが持っている資産、金融資産で平均ですけれども二千万を超えていると思いますし、全資産で見ても六千万近いものを皆さんお持ちであるわけであります。そういう高齢者の持つ資産、ストック、これをもう少し若い世代に活用できないか。例えばお孫さんの教育費用に使うとか、医療も、ストック、資産から自己負担とか保険料を支払うような仕組みをつくるとか、こういうのは恐らく文科省だとか厚労省からはなかなか出てこないのだろうと思います。

 こういうところにこそ経済財政諮問会議の役割がある、新しい発想の役割があるというふうに私は思いますけれども、ストックの活用ということについて御見解をいただきたいと思います。

大田国務大臣 高齢化社会というのは、別の面から見ますとストック社会ということでもありますので、そのストックを大事にして、有効活用して生かしていくというのも大変重要な視点だと考えております。

 そういう意味で、公的年金基金につきましても、これは世界の中でも本当に巨額の基金ですので、ここをしっかりガバナンスをきかせて国民の立場に立つようにしていく、その点につきましては、提言もなされましたし、今後検討されていくと思っております。

 それから、高齢者のストックにつきましても、まずはそのストックを積み立てるところでも、それがうまく日本の成長につながるように、四〇一kを例えば拡充するといったようなことも盛り込んでおります。

 今後とも、昨日取りまとめられた成長戦略をベースにして、ストックをさらに生かしていく具体策というのを詰めていきたいと考えております。

木原(誠)委員 ありがとうございました。

 公的年金の話、提言をされて、これから具体的に検討されていくということであろうと思いますので、これは国民の資産でありますから、ぜひ効率的に運用されるという点を追求していただきたいというふうに思います。

 同時にまた、外為資金の問題もあろうかというふうに思います。こちらの方もやはりもう少し効率的な運用が可能なんじゃないかな。少なくとも、ソブリン・ウエルス・ファンドだというふうには申し上げません。そういうのとはまた違うと思いますけれども、しかし、やはり公的資金が効率的に運用されていくということが非常に大切だと思いますので、この点、ぜひ経済財政諮問会議で十分御議論いただければというふうに思います。

 少し時間が早いんですけれども終わりにしたいと思いますが、重ねて、中小企業は本当に今厳しい状況であろうというふうに思います。余り先例にとらわれることなく、財政出動も含めて、私は、必要なときには臨機応変にやっていただく、それが政府のあるべき姿だと思いますし、とりわけ経済のコントロールタワーである経済財政諮問会議の役割であると思いますので、このことを申し上げまして、一分ほど残っておりますけれども質問を終わりにさせていただきます。

 ありがとうございました。

中野委員長 次に、大畠章宏君。

大畠委員 おはようございます。民主党の大畠章宏でございます。

 この内閣委員会、ずっと続けてまいりましたが、大田大臣とは論議をする機会が少なかったようにも思いますので、きょうは大田大臣を中心としながら質問をさせていただきます。

 その前に、さまざまな時代の変化がございますが、きょうは冒頭に、大変残念ながら、六月八日日曜日に発生した秋葉原の殺人事件というもの、最初にこの件について質問をさせていただきます。

 大変残忍な事件、そしてまた、七名の方が殺害をされ、十名の方が負傷をされました。亡くなられた皆さんに対しては心から御冥福をお祈り申し上げますと同時に、負傷されました十名の方につきましては一日も早い御回復をお祈りするところでございます。

 実は、私は茨城県の選出でございますが、ことし三月に、荒川沖駅におきましても同様な無差別殺人事件というのが起こりました。

 この問題でありますけれども、ここ二、三日の新聞等を見ておりますと、ここにたまたま社説をまとめた資料がございますが、各紙の社説の見出しだけを申し上げますと、「「誰でもいい」の不気味」、これが東京新聞ですね。そして日経新聞は「無差別殺傷は防げないのか」、読売が「安全が足元で揺らいでいる」、朝日新聞が「凶行のなぜを知らねば」、そして産経新聞は「治安に強固な街づくりを」、毎日が「事件続発の原因究明を急げ」、こういうものでございますが、総じて言えますのは、日本の国の安全神話というものが根底から崩され、さらにアメリカの新聞では、まるで戦場のようだったというような見出しで報道されたというのは大臣も御存じのとおりでございます。

 私が、特にこの事件で、どう受けとめていいかわからない言葉が、携帯ネットに随分書き込みがあったということでございますけれども、人生に疲れたという供述をしているわけですが、三日の午前中には、みんなにばかにされているから車でひけばいいとか、事件を予告するようなメールの書き込みがありますが、特に、勝ち組はみんな死ねばいいという、不満をむき出しにしていたというような話もございます。さらには、海外報道では、日本における格差がこの事件の背景にあるのではないかという指摘もございます。

 こういう指摘があるわけでございますけれども、まず最初に、泉国家公安委員長に、この事件を受けて、どのように国家公安委員長として受けとめておられるのかお伺いしたいと思います。

泉国務大臣 本件は、大変痛ましい事件であり、私としてもこれからの治安の維持に反省をしなければならない点があると考えておるところであります。

 改めまして、亡くなられました皆様方の御冥福を祈り、また、御遺族の方々に衷心からお悔やみを申し上げたいと思います。そしてさらに、負傷されました方々の御快癒をお祈り申し上げるところでございます。

 この件は、委員御指摘をいただきましたように、また、引用されました各社説を見ましても、なかなか一口ではこの問題の解明ができない、それだけに私は難しい事件だと思っております。

 警視庁では、万世橋警察署に今捜査本部を設置いたしておりまして、捜査を進めておるところでございまして、今は状況を、背景も含めまして、明らかにすることには至りませんが、一応、被疑者の経歴、あるいは本件犯行に至る動機、インターネット利用による犯行予告の内容、あるいは凶器の入手の経路、こうしたことを中心に今捜査を進めておりまして、この内容の解明に努力をして、一日も早く、次の類似の事案が起きないように、体制を整えて、全国が一致して安全、安心の日本の再生に尽くすことが一番重要なことだと私は感じておるところでございます。

大畠委員 この問題について質問をさせていただきたいということで、きのう事前の、どういうことを質問されるんですかという質疑応答をしましたが、そのときに、最終的には、この事案は大変大事な話でありますが、局長が基本的に対応しますというような話でした。そうすると、大臣は同席しなくていいですかという話が夕方来ましたが、私は、いや、大臣にはぜひ同席してもらいたい、というのは、警察機構の中では、国会議員でただ一人、その内部といいますか、公安委員長として入るわけですから。国家公安委員長としてぜひ、社会の中で巻き起こされた大変残念な事件でもありますし、そして、こういうことが繰り広げられないように、警察庁あるいは警察として、あるいは大臣として、福田内閣の中でどういうメッセージを出すか、委員会での質疑を、答弁があるかどうかじゃなくて、委員会の質疑をぜひお聞きいただきたいと思って、大臣にも御臨席をいただいたところであります。

 そこで、大臣から今御認識が示されましたけれども、実は、私たち国会議員の使命というのは国民の生命と財産を守ることなんですね。無差別殺人の犯人というのはみんな憎いですよ。何てことをやってくれたんだと、同じ気持ちなんだ。そういう人間が日本の国の中で生まれてしまった。それも、三月の無差別殺人事件、今回もそう。日本の国というのは一体どうなってしまったんだということが、多分、海外から見ると、そういう日本に対する認識が大きく変貌し始めているんじゃないかと思うのです。

 私たち国会議員が、何ができるのか。そんな犯人が誕生し、あるいはその犯人が凶器を入手できないようにしようというだけでいいのか。もちろん国家公安委員長も責任がありますし、私たち国会議員もあるのですね。そういう日本人がこの日本の社会から生まれないようにするためにはどうしたらいいかということを徹底して考えていかないと、私たち国会議員の職務というのは果たせないんじゃないかと私は思うのです。単に凶器を何とか日本じゅうからなくしてしまえばいいとか、そういう話だけではないのですね。

 私は、ここら辺、国家公安委員長として、せっかく福田内閣の一員として、閣僚として入っているのですから、ぜひ閣議等でメッセージを出していただきたい。そして、これだけ悲しい事件が起こったのですから、国家公安委員長として国民に対してもメッセージを出してもらいたい。私はそういうことを強く大臣には要望しておきたいと思います。

 そこで、今大臣からおおよその今後の方針等についてのお話がございましたが、今度は警察当局として、この事件を受けて、無差別殺人事件というものが、一言で言いますと、続発し始めたと言ってもいいと思うのですね。こういう無差別事件の続発について、どのような心構えで対処しようとしているのか、基本的な御認識を伺いたいと思います。これは、まず警察庁の担当官の方から伺うと同時に、国家公安委員長からもお伺いしたいと思います。

片桐政府参考人 お答え申し上げます。

 無差別大量殺人事件についてのお尋ねでございますけれども、それぞれの事件については、被疑者も、また事件の背景等々、みんな異なりますので、一律な対策ということはなかなか難しいかと存じます。

 今回の事件につきましては、現在、全容の解明に努めているところでございますので、その解明を待ちながら対策を講じたいと思っておりますが、当面、警察庁としては次のような対策を講じているところでございます。

 一つは、繁華街等におけるところの街頭活動の強化についてでございまして、これは六月九日付で通達を発出いたしております。こういった事犯は模倣される可能性もないとは言えず、したがって、再発の防止に努める必要がございますので、地域警察官によるパトロールの強化とか、駐留警戒を強化するとともに、不審者、不審車両に対する職務質問を徹底し、刃物携帯事案の取り締まりに努めるように各都道府県警察に対して指示をいたしたところでございます。

 二つ目には、今回の被疑者は事前に携帯電話のサイトに犯行の予告の書き込みをしておりますが、警察が残念ながらこれを事前に把握できなかったということがございますので、これも六月九日付でございますが、電気通信事業者等四団体に対しまして、これは総務省とも連携をいたしましたけれども、インターネット上の犯行予告情報を認知した場合の通報を依頼し、その早期把握に努めることとしたところでございます。

 とりあえず、当面、以上のような対策を講じておりますけれども、今後また事件の全容の解明を待って、講ずべき対策について検討してまいりたいと考えております。

泉国務大臣 いわゆる通り魔事件というものについて、この平成十年以来の状況を見ますと、平成十年が十件ございますが、後、それ以降、七件、八件といった数値がございます。十七年が六件、十八年が四件、そして十九年が八件ということでございます。

 ことしに入りましてからは、残念ながら、一昨々日の事件を入れまして五件ということでございます。御承知の品川区であった事件、あるいは福井市内のショッピングセンターであった事件、それから委員お地元の荒川沖であった事件、そして岡山駅での事件ということで、五件でございます。

 いずれも背景がそれぞれ違うように思っておりまして、例えば、御家庭の中の問題か、必ずしもそれだけではない。あるいは若い人たちの生きる道に将来が見えないという事柄も一つ考えられますけれども、こうした社会全体の取り組みをしなければならない時期に来ておるのではないか。家庭のきずなでありますとか地域の力でありますとか、そういう事柄をもう一回見直すということも必要でありましょうし、もっとさかのぼれば、教育の問題にまで入ってくるのではないか。

 ですから、先ほど委員から御指摘のありましたように、福田内閣としても、私に対して、世界一安全な国日本の復活ということを指示をいただいておりますので、内閣としても全面的な取り組みが必要だと今考えておるところでございます。

大畠委員 突然ですが、大田大臣にも一言お伺いしたいと思うのは、勝ち組なんかはみんな死んでしまえばいいという言葉をメールで書き込んでいたというのですが、大臣はどう感じられますか。

大田国務大臣 私も、何と申し上げればいいのか、大変沈痛な気持ちで、あの事件のことは報道などで見ております。将来への閉塞感といいましょうか、なかなか若い人が先への展望を持ちにくいという状況が背景にあるのかもしれないと思っております。

 日本の場合は、就職するときに正社員でないと、なかなかその後正社員になることができない。しかも、技能を磨く機会すら与えられない。そのまま、三十歳になってもまだフリーターという人たちも少なからずいるわけで、何とかその閉塞感を取り除いていくことをしなくてはいけない。政府としても、職業訓練の充実などはやっておりますけれども、若い人が先への展望を持てる社会に向けて、さらにいろいろな角度で考えていきたいと思います。

大畠委員 後ほど、経済問題のときにもお伺いしたいと思うのですが、小泉政権下において、経済財政諮問会議が先頭を切って競争社会というものを日本に導入したことは私は間違いないと思うのです。そして、社会の中でゆとりがなくなった。みんな、ぎりぎりぎりぎり、余裕を削って余裕を削って、命まで削って競争に勝たなければ日本で生きていけないんだという感じの社会に仕立て上げようという流れが強まったんじゃないかと私は思うのですよ。

 そういう意味では、経済財政諮問会議の中でも、今回の事案なんかも、単なる経済指標とか経済動向とか、そういう大まかなといいますか、きれいな話だけじゃなくて、この日本の国の底辺でのうごめいている問題もぜひ一度取り上げてもらいたい。日本の国というのは、人間が生きているのですから、単なるコンピューターではじき出した数字とか何かで生きているわけじゃないのですから、私は、日本はそこら辺がどうも配慮が欠けてきているのではないかと。

 これは大田大臣に言うのも過酷かもしれませんが、そこまで我々政治家というのは責任を負いながら国をリードしていかなきゃならない責務を負っているのですね。ぜひそこら辺は大田大臣にも御検討いただきたいということをお願いしておきます。

 二番目の質問でございますが、泉大臣、警察官にもいろいろな人がいるのです。もちろん政治家にもいるし、教員にもいるのです。日本国民にもいろいろな人がいます。でも、のぞきなんかやるような警察官は困るのですよ。ありましたよね、警察官が何か女子トイレに行って、警察手帳を見せて、今不審な男の人がついてきたと思ったからチェックに来ました、後から、いや実はちょっとつけましたと。情けないんだよ、これは。

 やはり警察官は警察官として、制服を着たらぴしっとしてもらいたい。教員は教員で、教えるということに専念してもらいたい。我々政治家は政治家として、国家国民の生命財産を守るために全力を挙げる。みんなが自分たちの職務に専念するような社会になれば、いい社会になるんですよ。ところが、何となくずるっとして、緊張感がいつの間にかなくなっちゃったんですね。

 国家公安委員長、私はぜひ、この今回の無差別殺人事件を経て、全部の、警察官だけじゃなくて全国民にも、国家公安委員長として警鐘といいますか、一人一人がお互いに自分の職責を全うしよう、そして、いい社会になるように、一人一人の国民の皆さん、地域にも目をみはって安全な社会をつくりましょう、ひとつそういうことも呼びかけていただきたいと思うところであります。

 きのう、安永健太さんの死亡事件を考える会の皆さんが私の事務所においでになりました。これは真相解明を求めておりますということですが、どういう事件か、この委員会の皆さんは御存じないかもしれませんので、佐賀市で自転車に乗っていた知的障害者の二十五歳の男性ですが、警察官に取り押さえられた際に意識を失い急死するという事件があった。

 この安永さん、体が大変大きくてスポーツマンであったということで、複数の警察官が取り押さえたということですが、御遺族の方から、もっと真相解明をしてもらいたい、警察の方の過剰な取り押さえというのがあったんじゃないかと。しかし、現在のところ、そういうことではなく適切な対応だったということで、双方で意見が食い違って今日に至っているんですが、私のところにも、ぜひ国会議員の皆さんが現地に入って、証人の方もいますから話を聞いてみてください、こういう話を受けているところであります。

 この件について、現在、警察庁としてどのような形でこの事件を受けとめているのか、それから、このような事件を再び起こさないためには警察庁としてどういうことを考えておられるのか、これは担当官の方からお伺いしたいと思います。

片桐政府参考人 まず初めに、お亡くなりになられました安永健太さんの御冥福を心からお祈り申し上げますとともに、御遺族に対して心からお悔やみを申し上げる次第でございます。

 本件につきましては、これまで、佐賀県警察におきましてその事実関係等の調査を行い、あわせて佐賀地検において捜査を行ってきたところでございますが、その結果、警察官が暴行したという事実は確認されなかった、また保護の取り扱いについても法律上許容された限度を超えたとは認められなかったという報告を受けております。しかしながら、結果として安永健太さんが亡くなられたことにつきましては、まことに残念であるというふうに思っております。

 保護は、警察に課せられた重要な責務でありまして、したがって、保護に当たっては、個人の基本的人権を侵害しないように細心の注意を払って、業務が適正に行われるよう今後とも指導してまいりたいと考えております。

大畠委員 この事件を目撃していた女子学生等の話、あるいは顔面などに複数の打撲等々があった、御両親の方では、かなりの暴行がなされたんじゃないかということで、全く今のお話には同意できないということで、真相を究明するということで行動をされているわけであります。

 警察の方でも、我々は死に至るについては責任がないんだという一方的な冷たい警察じゃなくて、凶悪犯罪があるからなかなか警察も大変かもしれませんが、市民に対しては温かい警察であってほしいと思うんですよ。そして、信頼される警察であってほしい。こういうことで信頼を損なうと、やはり警察に対する市民の協力というのは得られなくなると思いますよ。ですから、単なる自分たちの組織を守るというような立場で対応するんじゃなくて、十分に市民の方々の意見を聞いて、過ちがあれば改める、それを認めることも私は大事なことじゃないかと思うんです。

 知らぬ存ぜぬ、一切私たちはかかわりないというその姿勢も、事実であれば理解できますが、どうもこれだけいろいろお話を聞きますと、そうじゃないんじゃないかということですから、さらに一層、国家公安委員長におかれましても、こういう事案、幾つかあるのかもしれません。国家公安委員長として、市民との間でトラブルになっている問題等については、せっかく国会議員として公安委員会の中に入っておられるんですから、これは一人しかいないんですよ。ぜひ、市民の意見や、あるいは市民から信頼される警察になるように、過ちは改める。過ちを改めないのが過ちだというんだよ。

 どうもそこら辺、どうなのか、さらに真相を解明することに努力をしていただきたいと思いますが、国家公安委員長としての御所見を伺います。

泉国務大臣 二十八万警察官一人一人に高い使命感を持って勤務をしてもらいたい、そして、委員御指摘のように、国民に信頼されなければ警察行政は実行できないということも、我々は警察官一人一人に伝えておるところでございます。

 御指摘の佐賀の事件は昨年の九月の話で、私も、当時からこの問題はずっと状況を見詰めてまいりました。女子学生のお話も伺いました。

 しかし、とにかく、車道の真ん中で、バイクに追突されるとか、あるいは自転車による蛇行運転をされるとかというようなことを見て、そこを制止せざるを得なかったということでございまして、制止をしたときに、大きな体の方でしたもので、両手をばたつかせるというようなことがあって、警察官が数人で押さえざるを得なかった、手錠を後ろ手にかけざるを得なかったという報告を受けております。ですから、その時点で行き過ぎがあったとは、先ほど局長が申し上げましたとおりに、ないというふうに私も思って、判断をいたしておりました。

 その後、佐賀地方検察庁において、三月の二十八日に、嫌疑なしということで不起訴処分とされております。警察官の行為と死亡との因果関係は認められない、二番目に警察官の行為は法律上許容される範疇を逸脱していない、三番目に警察官による暴行の事実もないという判断をいただいておりまして、私どもとしては、基本的にこの件に関しては行き過ぎがあったとは思っておりません。

 しかし、御指摘のように、誤りは正していくことは当然でありますので、これからも厳重に、警察官一人一人に、捜査に当たって、あるいは事件の解明に当たって、間違いのないように、全力を尽くすように指導してまいりたいと思います。

大畠委員 大臣、この件については警察の過剰なものはなかったという話なんですが、では、何で死んじゃったんですか。人が一人死んでいるんですよ。何もなくて死ぬわけないじゃないですか。だれかが無理やり押さえつけたり何かしなければ死なないんじゃないですか。この件については過剰がなかったと何で言えるんですか。そんなことは余り軽々に、大臣として言うべきじゃないと私は思いますよ。何の確証で、この件については死に至るには警察の責任はなかったと言えるんですか。そこら辺からして、大臣、もう警察庁に取り込まれちゃっているんですよ。

 私も何回か警察問題をやってきましたが、きょうは村田筆頭はいなくなっちゃったんですけれども、村田大臣も前に国家公安委員長をされていました。とにかく、中に入っちゃうと、周りの人がそういうことばかり言うものだから頭がそういうふうになっちゃうんだけれども、国民の立場に立って、大臣、やってくださいよ。そうじゃなければ、人一人が死ぬわけないじゃないですか。

 十時になったら大臣を出してくれというので、これで退場いただいて結構でございますが、ひとつ大臣、そう断言されずに、これはやはり疑わしきは残っていますよ。だから、答弁書にはそう書いてあるかもしれぬけれども、しかし、私たちは政治家なんですから、ぜひそこら辺は再度御検討いただきますようにお願いして、ちょうど約束の十時ですから御退出いただいて、次の何かがあるというので、それで結構でございます。

泉国務大臣 委員の御指摘は肝に銘じてまいります。決して取り込まれておるわけではございません。

 今お答えを申し上げましたのは、答弁書にあったものではなくて、当時の調査結果を私は見ながら御報告をさせていただきました。その中で、遺体を解剖し鑑定した結果、死因は心臓性急死だという判断をしておられるという事実もあえて申し上げさせていただきます。

 最初に御指摘の件は重々、心にとどめてやってまいります。

 では、失礼します。

大畠委員 そういうことで、泉大臣は退席されますので、あとは大田大臣に質問をさせていただきます。大田大臣と、今村農水副大臣もおいでですから、皆さんを中心に質問を続けさせていただきます。

 さて、日本経済の基本方針にということで、骨太方針〇八というものが打ち出され始めておりますが、大田大臣に、漠然と中核は何かと聞いても、答弁が何を言ったらいいかわからなくなると思いますので、幾つかの新聞情報でございますが、骨太二〇〇八というものの中核の中に、福田総理が八日の経済財政諮問会議で、道路特定財源の二〇〇九年度からの一般財源化を柱としたみずからの新提案について骨太方針二〇〇八に盛り込みたいと述べたという記事が出ておりました。

 こういう道路特定財源の一般財源化というものを、この骨太方針の二〇〇八には加えられたと受けとめてよろしいんでしょうか。

大田国務大臣 その報道はいささか正確性を欠いておりまして、道路特定財源の一般財源化を含む公共投資については次回の諮問会議で議論いたしますけれども、既に総理が記者会見の中で骨太方針にしっかり盛り込むということは言及されておりますので、骨太方針の中に盛り込まれます。具体的には、国民の立場に立った行政、財政システムという中に、道路特定財源の一般財源化という項目を立てることにしております。

大畠委員 それからもう一つ、これも新聞記者の方が一生懸命取材されたんでしょう、六月三日の大田経済財政担当大臣の記者会見での発言が波紋を呼んだと。社会保障費の伸びを二〇〇七年度から五年間で一兆一千億円、毎年二千二百億円ずつ抑制するとした政治方針について、大田大臣は、二千二百とはどこにも書いていないと語った。この発言を踏まえて、どうやら二千二百億円の削減はできなくてもよいというのではないかという見方が広まって、財務省幹部は、そういうことはないという否定をしているような発言をされていました。

 最近の世相を見ていますと、確かに財政再建というのは大事なんですね。大事なんだけれども、一昔前にあったんですけれども、患者のぐあいを見ないで処方せんを書いたり、患者のぐあいを見ないで注射したり、患者の状況を見ないで湯たんぽを入れたり、冷やしたりすると、患者はますます衰退をする、こういうことがよくあるんです。どうも最近は、財政再建というのは大事なんです、大事なんだけれども、日本全体がどういう状況にあるのかということをよくよく見た上で、触診したり、脈をとったり、目を見てみたり、患者の状況を見て処方せんを書かないと、患者がおかしくなっちゃうんですね。

 だから、そこら辺、大田大臣、私はどうも大田大臣は、理想的な人をつくろうと、まずメタボだめよ、八十五センチ以上のおなか回りはだめですよ、だからこれだけにしなさいと言うんだけれども、確かにおなか回りをそうするためにやると、何か元気がなくなって、ふらふらになって、途中で倒れるかもしれない。急激なそういうのは体によくないというんだけれども、それを今やろうとしているのが大田大臣じゃないかなと思うんです。しかし、一方でこういう発言をされているということは、患者の状況をよく見始めたのかなという思いもするんですが、これはどっちが正しいんでしょうか。

大田国務大臣 まず、事実関係を申し上げておきますと、そこで発言しておりますように、五年間で一・一兆円というのは書かれておりますけれども、それを機械的に毎年やるということは書かれていない、これは事実でございます。ただ、それを、一・一兆目指して毎年しっかりやっていくということはやっていかなきゃいけない。

 御質問にお答えいたしますと、私は、先生が御指摘の両方必要なんだと思っております。やはり、では今の社会保障制度に効率化できるところはないのかというと、私はまだあると思っております。詳しくは申し上げませんが、あると思っております。今の制度の中で効率化できるものはやっていく、そのてことして基本方針二〇〇六で決められた歳出改革の枠組みというのはあるんだと思います。

 しかし、その一方で、例えば医療の本来の機能を損なってまで財政が健全化すればいいということは思いません。思いませんので、新たに今起こっている課題、例えば医師が不足している、救急医療をどうするかといったような問題、これについては、これはまたこれでしっかり対応していかなくてはいけないと考えております。

 したがいまして、昨日の諮問会議でこの社会保障の議論をいたしました。その中で、今の制度で効率化できる部分はしっかりとやっていこうということで、民間議員から幾らぐらい効率化できるかという具体的な数字も展開されました。それを受けて、二千二百億円という数字もしっかりと、効率化することは可能であるという数字が示されました。

 その一方で、新しく出てきた課題、救急医療であったり医師不足、これについてはしっかりと、これはこれで対応していく。そのときは、無駄ゼロであったり、政策の棚卸しであったり、ほかの歳出削減であったりという、そこから財源を持ってきてしっかりと対応しましょうと。社会保障は中長期の問題でもありますので、それでも足りないものについては負担とセットで議論しましょうという方向が明確に示されました。

大畠委員 大田大臣、私は茨城出身で、水戸に水戸黄門というのがいるんですね。何で水戸黄門が人気を博しているかというと、地域をよく歩いてくれているんですよ。お代官さんから話を聞くだけでは、お代官さんというのは、結構昔は事実と違うことを上に上げていたかもしれないですね。

 だから、大田大臣のお話は、ちゃんとこの二千二百億円できるんですよというんだけれども、その報告をする人は実に上手なんですよ、数字合わせとか、ごろ合わせとか、つじつま合わせとか。実際問題、じゃ、今の医療問題なんかどうなっているかというと、医者がいなくて困る。

 これも、先週の土曜日に私は聞いたんです。娘が栃木県に嫁いでいたんだけれども、今度実家に来て赤ちゃんを産みたいと言う、ところが、産婦人科がいないというので受け入れるところがない、だから実家に帰れないんだというんです。そんなことはないでしょうと。私の知り合いが、たまたま産婦人科医師が同級生でやっていますから、そこに話をして、何とか、やはりお嫁さんが赤ちゃんを産むときは不安なんだよね、初産なんかは。だからやはり実家で産みたいと言うんだけれども、その環境がどうもなくなってきているんだから。

 どんなに大田大臣が全体的にはそういう報告を受けていますと言ったって、地域社会がそうはなっていない。だから、水戸黄門と同じで、女水戸黄門になって地域を歩いてもらいたい。漁村ではどんな生活をしているのか、農家ではどんなものか、あるいは集落、十五戸とか二十戸の農村地帯なんだけれども、どんな生活をしているのか。

 大田大臣が責任者の一人でもある経済財政諮問会議の中で打ち出されている方針で、一体地域がどんな形で影響を受けているのかというのは、ぜひ女性の水戸黄門として歩いてもらいたい。でなければ、どんなに関係者からうまくいくんですという報告を受けたって、これは二〇三高地と同じで、司令部ではそれ行け、二千人投入しろ、三千人投入しろ。現場ではばたばた死んでいるわけですよ。それを知らないでまた投入している。そういうことになっては困りますので、大田大臣、六月十五日に国会は終わるそうですから、そうしたら、ひとつ地域を歩いて、経済財政諮問会議で影響がどうかということをぜひあちこちで聞いていただきたいということをお願いしておきます。

 それから、後期高齢者医療制度の導入、定率減税の廃止、国民負担増ということで、地域の方では経済状態が非常によくないわけでございます。先ほども委員からお話がありましたが、内需拡大というのが非常に大事なんです。これこそ今やはり取り組まなければならないんですが、内需拡大のベースは、国民の気持ちなんです。未来に希望が持てないとか、あるいは一週間後に自分はリストラされるかもしれないといったら、希望なんか持てないんですね。いろいろな事件も発生する。私は、内需拡大を行うためには、そこに集中して、未来に対する安心感を与える、未来に対して夢を持てる、そんな社会にしなければという感じがするわけであります。

 三位一体改革はもう返上したいという自治体の首長さんが随分います。道路特定財源の暫定税率廃止については継続だ継続だと自治体の首長さんは言うんだよね。では何で三位一体改革のときはそれだけ激しく反対運動をやらなかったんだと言ったら、あれはだまされたんだ、こんなはずじゃなかったという話が随分来ています。

 福田総理は自立と共生という看板を掲げられましたけれども、小泉総理の競争原理主義政策とは全く相入れない発想、思想ですね。ここのところは、今回の骨太方針の中で、この自立と共生という看板はどういう形で織り込むのか、大田大臣にお伺いしたいと思います。

大田国務大臣 まず、誤解のないように一言補足させていただきます。

 産婦人科の問題、小児科の問題、そういう医師不足には国民のニーズが高いわけですから、ここはしっかりと対応するということも、きのうの経済財政諮問会議では決められております。舛添大臣から、希望と安心のビジョン、これはまだ完成ではありませんが、途中段階の報告があって、議論の中でも、それはしっかりとやるべきだという議論になっております。今の制度で効率化できる部分は効率化いたしますけれども、新たに発生している医療のニーズ、ここにはやはりしっかりと対応していくということは議論されておりますので、御安心いただきたいと思います。

 それから、先生から地方に行くべきだという御指摘、この間もいただいて、その直後に私も鹿児島に行ってまいりました。諮問会議でもなるべく地方に行くようにしております。今後とも参りたいと思っております。

 御質問の、小泉内閣のときの政策と、今の福田内閣の自立と共生ということでございます。

 私、小泉内閣の大きいポイントというのは二つあったと思っております。一つは、公共事業で全国を支えていく、政府が需要をつくるという政策を転換するということ、それから、不良債権処理をやって、本当の意味でバブル崩壊後の負の遺産から脱却したということ、この二つが大きい柱であったと思っております。この二つは、いずれも難しい課題で、なかなかそのときに起こっているひずみに対応する余裕がなかったというのもあると思います。

 したがいまして、今は、世界経済が大きく変わり、日本経済が変わる中で起こってきている、つまり新陳代謝に伴うひずみ、ここにはしっかり対応しなくてはいけないと考えておりまして、それは今回の骨太にも、全員参加の経済ということで盛り込まれております。

 具体的には、若い人には職業訓練のジョブカード制度をやる、そして子育て中のお母さんが働けるように新待機児童ゼロ作戦をやる、そして定年後の高齢者の方が働けるように雇用を生み出していく、それから中小企業に対して生産性向上の支援をしていく、あるいは地方再生といったような全員参加の経済というスキームを明確に打ち出しております。

大畠委員 地域にも行っていただいているということですから、よく患者の実情を知った上で、ひとつ処方せんを書いていただきたいと思います。

 そこで、今村農水副大臣にも来ていただいております。少し質問の順番を変えますが、現在の原油高の対策というものが迫られているわけですが、お手元に参考資料をお配りさせていただきました。これは内航燃料油の価格の推移でございますが、このくらい高騰しておりまして、燃料を使っているところ、船、運輸、そして漁船、農業と大変な影響を受けているわけですが、漁業に対する緊急対策の制度が使いづらいと。

 私の手元には、平成二十年度期限つきで百四億円の水産業燃料の高騰緊急対策というものが打ち出されたわけでありますけれども、非常に使いづらいんだ、もっと使いやすくならないのかと。申請しようとすると、いろいろ、あれも書け、これも書け、あなたは適用外というので、対象者が非常に少なくなっているんじゃないかという意見が来ております。このままでは日本の漁業は滅びることでしょうという、非常に将来に不安を抱いた漁業者の方からのファクスもいただきました。

 それから、農業も大変飼料が高騰しちゃって、もう酪農家あるいは肥育牛関係でも大変な苦労をしてやっています。私も先日、酪農家と肥育業のところに行ってきましたが、飼料が上がっちゃって大変だ、アメリカから入ってくる値段が非常に上がっちゃっている、非常に仕事がやりにくくなってきたということですが、農業、漁業に対する緊急対策としてどういうことを考えておられるのか、今村副大臣にお伺いします。

今村副大臣 ただいま委員が御指摘のとおり、油の高騰によりまして、そしてまた飼料の高騰によりまして、漁家、農家、今大変な御苦労をされているわけでございます。

 まず、前段の燃油高騰対策でございますが、これは対策基金として百二億円設置しまして、そして、この仕組みというのは基金ということでございますから、これを漁業者、漁業協同組合、そして全国の漁業組合連合会あるいは大日本水産会、そういった形で、できるだけ皆さん方が使いやすいように、現場の実態に合ったやり方でどうぞということでしております。

 それで実は、今、手続という話もございましたが、きょうここに持ってまいりましたが、これはもう検査院からしかられるんじゃないかと思うくらいに、わずかにこれだけです。書くのは一枚目、二枚目、ここはありません、これは届け出ですから、三枚ですね。(大畠委員「全部で、裏表がありますから、五枚」と呼ぶ)そうです、ですから全部で裏表で五ページなんです、そのうち書くのが実質的に三枚ということで、できるだけ簡単にして、とにかくこれは緊急事態だから、むしろ拙速をとうとぶということでやっております。

 ただ、そういうお声がありましたら、またもう一度再点検して、そこはできるだけ速やかに対応できるようにやっていきたいというふうに思っております。

 それから、飼料の関係もよろしいですか。

 畜産の関係も、今申されましたように、大変飼料が上がっているわけでございます。これにつきましては、まず、従来の対策ももちろんあるわけでございますが、仕組みもあるわけでございますが、それに加えて本年二月には、配合飼料価格の高騰したこの状況に対応するということで、新たに都府県酪農に対する交付金の交付、これは九十二億ですね。それから肉用牛肥育経営が非常に厳しい、そういう中での新たな仕組みにつきましても四十億ほど新たに創出して、これに対応するようにしております。

 それからあと、そのほかにも、いわゆる牛乳、これは非常に店頭価格が安いんです。ですから、ここをもう少しやはり消費者の皆さん方にも御理解いただいて、これを上げてもらえないかというお願いもしてまいりました。そういったことで、非常に厳しい状況でございますので、消費者の皆さん方の御理解も得ながらやっていかなきゃいけない。

 そしてさらには、まだそれでも間に合わないという声も今ございますので、それにつきまして、この配合飼料価格安定制度の基本的な機能は維持しつつ、また酪農とか畜産とか、あるいは豚、鳥、それぞれ畜種によっても経営状態がちょっと違いますので、配合飼料だけを操作するといいますか、対応するということでは、個別具体的な畜種ごとの救済策にちょっと足りない面がございますので、畜種ごとの対応をしっかりやっていこうということで、今その緊急追加対策を検討しているところでございます。できるだけ早くやっていきたいというふうに思っております。

大畠委員 今御答弁ありましたが、さらに、今のお話の中で、実はマグロだってそうだし、牛乳だってそうだけれども、スーパーマーケットで売り出す値段が決まっちゃっているんだね。原価がどれほどかかろうとも、もうそこで抑えられちゃっているんです。一パック百円で売るというのを決めて購入するから、燃料費が上がろうが上がらなかろうが、とにかくこれで買うんだと。買い手市場になっちゃっているわけですよ。

 だから、ここにありますが、もう一斉休漁をしようと。これはマグロですね、八月に数日間、十二漁業団体がマグロ関係でやめるという話ですが、副大臣、そこら辺のメカニズムをちょっと調べてみてください。それだけはちょっとお願いしておきたいと思う。何か御一言ありますか。

今村副大臣 ただいまの御指摘にもありましたように、実はこれにつきましては、公正取引委員会の方にも少し事情をお話ししまして、現場でそういった不当な安売りに対する、公正な販売の仕方に圧力がかかっていないかどうか、そういったことも含めて、やはり適正なコストを負担していただいて、日本の食料の供給が滞らないように、ぜひ広い目で見てほしい、取り組んでほしいということもお願いもしてございます。

大畠委員 副大臣、ありがとうございました。結構でございます。どうぞ。

 時間があと五分になってまいりましたので、あと二問だけ質問させていただきます。

 同じく原油高を中心とする緊急経済対策ですが、きょうは中小企業庁に来ていただいています。高原事業環境部長、一体、中小企業庁としてはこの現状について何の対策をとろうとしているのか。私のところにも、地域の方では、アンケートをやったところ、製造業はそこそこですが、小売業、建設業、サービス業、全産業平均で、四―六月期の一五%の減という結果が出ています。中小企業関係は非常に厳しくなっている。

 それからもう一つ、私のところに、離島航路の船を運航している方々から、このままではもう船の運航が難しくなったと。離島問題ですね。離島で船が来なくなったりすると、もう行き来ができなくなるんです。

 これは、言ってみますと、航路というのは道路と同じですね。道路特定財源で地下鉄をつくったりマッサージチェアも買えるんだから、こういう航路対策にも道路特定財源を使えるんじゃないかと私は思うんです。六千億も余っているというんだから。

 ところが……(発言する者あり)それは、やった方がいいですよね。私は、これはぜひ、離島の方々にとっては大変大事な足の手段ですから、ここら辺も継続するように対策を講ずるべきだ。そういう声も出ておりますから。

 この燃料高対策についてどう考えておられるのか、あるいは離島の航路の支援策はどうするか。特に、有村産業が就航している航路は台湾との有効な交易手段となっているが、航路が存続不能となった場合、国際交易の観点からも大きな不利益となる、ぜひ検討してほしいという話ですとか、離島航路補助制度改善検討委員会というのがあるそうですが、ぜひその中で緊急の対策として明確な方針を打ち出してほしいという要請が来ておりますが、この二件についてお伺いしたいと思います。

高原政府参考人 お答えを申し上げます。

 今委員の御指摘にもございましたけれども、やはり昨今、原油、原材料価格の高騰などを背景にいたしまして、中小企業の業況というのは非常に厳しいものがあるというふうに考えております。そのため、中小企業庁といたしましても、政府の中で、下請の適正な取引の推進でございますとか、あるいは資金繰りの対策に鋭意取り組んでいるところでございます。

 下請取引の適正化でございますけれども、これは、まず一つには書面調査というのを中小企業庁でしておりまして、十九年度でございますと十三万社に対しまして調査をいたしておりましたけれども、やはりこの取り締まりを強化していくということで、二十年度には約十七万社にこれをふやして、その作業に既にもう取りかかっているところでございます。

 それから、元請、下請間の望ましい取引関係の構築ということで、既に十業種につきましてガイドラインをつくっておりますけれども、これをさらに普及をしていく。特にガイドラインのない業種につきましても、いろいろなベストプラクティスを広く広報していくということにさせていただいております。

 それから、四月一日から、これは都道府県の御協力をいただきまして、下請の駆け込み寺を各県に整備させていただきました。いろいろ下請の方の悩みなどをよく伺って、そして適正な取引の推進に努めたいというふうに考えております。

 さらに、中小企業の資金繰りの対策でございますけれども、これはセーフティーネット貸し付けでございますとかあるいはセーフティーネット保証でございますとか、そういったものにつきまして業種の緊急追加などをするなど、機動的な対応を行ってきております。こうした対応の結果、政府系の金融機関でございますとかあるいは信用保証協会、融資ですとか保証でございますとか、原油、原材料対策の関係でございますと、二千億円近くの融資なり保証の実績がございます。

 いずれにいたしましても、今後ともこうした取り組みを通じまして、下請取引の適正化だとかあるいは資金繰りの円滑化に万全を期してまいりたいというふうに考えております。

 以上でございます。

武藤政府参考人 ただいま離島航路の維持存続についての支援策についてお尋ねがございました。

 離島航路は、海に囲まれた離島の住民にとって非常に重要な生活の足であるというふうに認識をしております。離島については、人口減少ですとかあるいは住民の高齢化、そういったことで輸送人員が減っていることに加えて、今御指摘の原油の高騰価格ということで非常に厳しい状態にあるというふうに考えております。

 このため、離島航路のうち一定の要件を満たす航路については、その維持を行うために生じる欠損について、補助金を交付して維持を図っているというところでございます。十九年度については、百二十二航路というものを補助対象航路にして総額五十五億七千万円。これは当初予算三十八億ございまして、これに原油の高騰対策ということで補正予算を十七億五千万円いただきまして、その補助で欠損を補てんして維持を図っているというところでございます。

 それから、有村産業の台湾航路についてのお尋ねもございました。

 これにつきましては、外航航路でございますので、その維持存続は、需要とか収支採算性をもって考えて、事業者の経営判断で行うものだというふうに考えておりますけれども、今後、その路線の維持について、沖縄県ですとか関係の方々が検討されていく場合には具体的な対応策が取りまとめられると思いますので、国交省としても真摯に対応してまいりたいというふうに思っております。

 それから最後に、委員御指摘のように、離島航路補助制度は非常に難しい問題を抱えておりますので、現在、見直しをしようということでいろいろ検討を重ねております。単なる欠損補助だけではなくて、増収対策ですとかあるいは経営に対するサポート、そういう航路自体の活性化に対しても積極的な支援をするとか、そういったことについて今検討を重ねておりまして、二十一年度の予算要求案から反映をしていきたいというふうに考えております。

大畠委員 時間が来ましたのでこれで終わりますが、大田大臣とはまた引き続きいろいろとお話をさせていただきたいと思います。

 終わります。

中野委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。

 岸田大臣は、原発・エネルギー問題、原発の方、それから科学技術、公共料金等消費者問題を担当してもらっていますから、それできょうは岸田大臣に来ていただきました。

 中心的なテーマとして、洞爺湖サミットが近いですから、この間は私は、多分大きな議題になるだろうと思われます原油高、穀物高、投機マネー規制をどうするのか、こういうことをやりましたが、きょうは、環境問題、エネルギー問題を中心に伺いたいというふうに思います。

 そこで最初に、太陽光発電について政府参考人の方に伺いますが、ことし二月に東京のビッグサイトで太陽電池展というのが開かれて、私も見に行きました。各社の技術、どういうものがあるかとか見てきたんですが、そこで、仮に、現在の各企業の平均的水準といいますか、それで一千平方キロメートルの土地に太陽光発電システムを使った場合、大体どれぐらいの発電ができるものかというのを私も試算してみたんですが、メーカーの方にも念のために大体その試算が間違うていないかどうか確認をしたんですが、エネ庁の方にも聞いておきたいと思うんです。

 一千平方キロといっても、メンテナンススペースが約二〇%必要ですから、それでいきますと、発電電力量としては約一千億キロワット時になろうかと思うんですが、確認をしておきます。

上田政府参考人 御指摘のように、我が国におきまして一千平方キロメートルの土地等に太陽電池を敷き詰める場合でございますが、太陽電池の発電効率を一〇%という幾つかの仮定を置きながら試算すると、その発電電力量は約一千五十億キロワット時程度となるわけでございます。

吉井委員 約一千五十億キロワット時ですから、わかりやすく、一千平方キロとして一千億キロワット時ということでいきますと、その一千平方キロメートルで太陽光発電を設置する場合の設置費用、これは各社いろいろあるでしょうが、平均的な価格で幾らぐらいになるものかということを次に伺いたいと思うんです。

上田政府参考人 お答え申し上げます。

 同様に、我が国におきまして今の一千平方キロメートルの土地等々に太陽電池を敷き詰める場合のコストでございますが、現在の平均的な住宅用の太陽光発電のシステム価格は、大体一キロワット当たり約六十八万円ということでございますので、これらを前提として計算いたしますと、その設置コストは約六十八兆円という程度に上るわけでございます。

吉井委員 これは実はメーカーの人にも試算をしてもらったんです。今、住宅用のお話がありました。住宅で見ると、これは十二兆六千億円ぐらいで大体できるんですね。今おっしゃったのは、多分、平地の上につくった場合だと思うんです。実際には、平地を駐車場にした駐車場の屋根とかいろいろなものを太陽光発電所として考えていくならば、メーカーの試算では大体十二兆六千億円。あなたのおっしゃったのは、平地で考えれば多分間違いじゃないと思うんです。ということで見ておく必要があると思うんです。

 実は、NEDOが二〇〇四年に発表したロードマップによると、多結晶シリコンモジュール変換効率でいきますと、二〇一〇年で一六%にする。今一二%を超えて一三%ぐらいに入っていると思うんですが、二〇二〇年で一九%、二〇三〇年で二二%という変換効率を考えていますから、これでいきますと、一千平方キロメートルが、二〇一〇年の一六%でいったら千二百十億キロワット時ぐらいになってくる。二〇二〇年の一九%の変換効率であれば千四百億キロワット時になってくる。

 これは、原発が現在、年間発電電力量が約三千億キロワット時ですから、今の水準で一千億キロワット時だったら三三%ぐらいですが、四七%までになってくる。それから、二〇三〇年の二二%の変換効率を達成できれば、今の原発の大体五七、八%分ぐらいの発電電力量が生まれてくる。だから、太陽光発電というのは、現在もどんどん技術開発が進んでおりますけれども、非常に大きな可能性を持ったものだということをまず見ることが大事だと思うんです。

 それで、現在、百万キロワット級の原発とすると、発電電力量で、概略、昨日エネ庁から伺ったら、百億キロワット時と見ていらっしゃるようですが、実効利用率、稼働率というのは大体今七〇%ぐらいになっていますから、それでいくと、実効率としてはそうなんですが、百万キロワット級原発一基建設で建設費は大体幾らぐらいかかるのか。これを次に伺いたいと思います。

上田政府参考人 お答え申し上げます。

 百万キロワット級の原子力発電所一基の建設コストは、約二千八百億円程度と見積もっております。

吉井委員 それで、原発の年間発電電力量約一千億キロワット時、これは実効効率を七〇%と見ればまた別なんですが、昨日大体聞かせていただいたところで、さっきの太陽光発電で一千平方キロメートルで発電電力量約一千億キロワット時というので計算して、それをつくるのにどれぐらいかかるかといいますと、一基二千八百億円ですから、年間一千億キロワット時つくろうとすれば、実効発電電力量七十億キロワット時で計算すれば、約四兆円ということになってきます。

 これだけを比較すれば、太陽光発電施設は、さっき申し上げました住宅その他建物につけた場合の十二兆六千億円、約三倍ぐらいかかるということになりますが、一方、太陽光発電の場合は燃料費がただなんですね。

 原発の場合は、一千億キロワット時を発電しようと思ったときに、今、ウランのスポット価格で一キロワット時四・五円というので計算しますと、一千億キロワット時をつくるのに年間四千五百億円必要になってくる。この数字は資源エネルギー庁で昨日確認しておいたんですが、つまり、百万キロワット級原発十基で一千億キロワット時ということになって、これは、一年間運転したら燃料費は四千五百億円かかる。十年運転すれば四兆五千億円、二十年運転で九兆円。今、原発でも二十年を超えるものがたくさんふえてきているんですけれども、三十年運転だったら十三兆五千億円という燃料価格が原発の場合にかかるんですね。

 このほかに、かつて有名になりました六ケ所の再処理コスト十九兆円の話とか、高レベル放射性廃棄物のコストは数兆円以上かかりますから、これらの燃料費、再処理コスト、廃棄物最終処分地コストで相当莫大なものがかかるということは、今挙げた数字から大体わかってこようかと思うんですが、最初、政府参考人の方に、その数字についても確認しておきたいと思います。

上田政府参考人 済みません、ちょっと今の御指摘の数字そのものかどうかわかりません、原発一基の発電所の建設コスト約二千八百億円、さっき申し上げたとおりでございます。これらの発電所一基分の一年間の燃料費というのは約三百億円程度でございますので、年間にすると一基分で三千億円、それが十基分であれば三兆円になる、そういったような数字になると考えております。

吉井委員 だから、オーダー的に余り変わらないということが今でも出ているわけで、試算の上で、現在三千億キロワット時を発電しているのは、今五十五基でしたかね、その原発でやっているんですが、フル稼働じゃなくて、実際には、昨年の場合は柏崎刈羽とか志賀原発のように全部とまったりとかあるわけですけれども、それはそういうのも含まれてはまいりますけれども、実際に定期点検その他を除いて稼働率で計算したら、実効稼働率は今七〇%ぐらいなんですね。それでいきますと、年間の燃料費が大体四千五百億ぐらいになってくるということが、いただいた資料から計算すれば出てきます。

 原発のコストは非常に莫大なものなんですが、動燃等が、まあ動燃が中心になって、今名前が変わっておりますけれども、高速増殖炉の研究開発に幾ら使ってきたか。これはプルトニウム研究、ナトリウム研究、そして高速増殖炉そのものの研究、試作等で既に五兆円を超えるものを使ってきているんですね。非常にたくさんのものを、これはまだ日の目を見ない高速増殖炉にだけ使っているんですが、実はこれを太陽光発電の研究開発に投じておれば、NEDOの掲げたエネルギー変換効率の目標値というのは非常に早い時期にもっといいものになっているんですね。

 私は、そういうことを今真剣に考えなきゃ、地球温暖化対策ということではうまくいかない。逆に、御承知のように東京電力の柏崎などでは、一年間原発がとまって、物すごい二酸化炭素を排出して、それから、石炭火力に依存ということでさまざまな問題を起こしておりますから、原発を推進すれば環境問題が解決するというふうな簡単なものじゃないということはそこに出ていると思うんです。

 太陽光発電の燃料費はゼロですし、放射能汚染の危険もありません。高レベル放射性廃棄物処分コストも要らないものです。初期投資コストは、現在だったらまだ百万キロワット級原発より高いということになっております。しかし、太陽光発電は、開発普及が進めばコストが劇的に下がるということと、燃料費や、最終処分場建設や維持管理コストを含めて考えたときに、太陽光発電の方がはるかに安くなって、原発の方がはるかに高いものについてくるというふうに思いますが、これも政府参考人に確認しておきたいと思います。

上田政府参考人 原子力と太陽光のコストの比較でございますけれども、確かに、太陽光の場合は、太陽でございますから燃料代はかからないわけでございまして、ただ、設備のコストが非常に高いわけでございまして、現状ではキロワットアワー当たりの発電コストというのは約四十五円ぐらいと考えております。

 これに対しまして、原子力発電その他さまざまな発電があるわけでございますが、これらの設備コスト、それから燃料コストも合わせますと、私ちょっと今手元に具体的なデータは持っていないんですが、最近ちょっと原油価格が高いという問題はあるんですが、通常は平均して大体五円から十円の間ぐらいである。燃料費と設備費を合わせてでございますが、それぐらいまだ太陽光の価格というのは現状では高いと思います。

 もちろん、御案内のように、私ども、その発電効率をおっしゃったようなレベルに高めていきたい、これによりまして、将来、我々二〇三〇年以降と思っていますが、太陽光の発電コストをキロワットアワー当たり七円程度を将来目指していきたいと考えておりまして、そういった時点になりますと、太陽光についても競争力が相当程度出てくるかと思いますが、現時点では、今申し上げたような数字でございます。

吉井委員 ですから、初期投資コストと燃料費全部合わせてこれは計算しないと、きちんとしたものになってこないということを言わなきゃいけないと思います。

 もともと私が挙げました変換効率などは、私が勝手に言っているんじゃなくて、NEDOはエネ庁と全くイコールでないにしても、要するにNEDOが掲げた数字、あるいはエネ庁の方の長期需給見通しで掲げている数字の中でもそれを使っているわけですから、そういうものを考えなきゃいけないし、ウラン価格というのは、原油がどんどん高騰すれば、またそちらへ投機マネーが流れていくとスポット価格もさらに上がってくる。さらに厄介なのが、何といっても放射性廃棄物の問題です。

 そこで私、大体一千平方キロメートルというのはどれぐらいのものかというのをわかりやすくするために調べてみたんですよ。そうしたら、日本は、戦後六十三年たっていますが、まだ外国基地がある国ですね。これ自体異常なんですが、その問題を別にして考えたとして、一千平方キロメートルに相当するのは、類似施設を見てみると全国の米軍基地の総面積が一千十平方キロメートルです。本土の米軍基地面積は七百七十三平方キロメートルで、沖縄の米軍基地面積は二百三十七平方キロメートルです。

 ですから、一千平方キロメートルの太陽光発電電力量が一千億キロワット時ですから、さっき言った日本の原発の総発電電力量の約三三%が生み出されるんですが、米軍基地をすべてなくして、下はテニスコートでも駐車場でも事業所ビルでもいいんですが、それを屋根の部分ですべて太陽光発電所に変えたとすると、原発の三三%分がつくり出されるという計算になってくるんです。

 嘉手納や普天間など、今沖縄で米軍基地が大問題ですが、この二百三十七平方キロメートルで太陽光発電所に変えると、嘉手納、普天間などを取っ払って変えたら、約二百三十七億キロワット時が生まれます。沖縄電力の現在の発電電力量が七十四億キロワット時ですから、沖縄電力がつくっている電力の約三倍が、米軍基地を撤去したときに発電所に変えれば、太陽光発電で生み出される、そういうことになってきます。

 これは私が勝手に言っておったらいけませんから、数字の上だけ資源エネルギー庁に確認しておきます。

上田政府参考人 ちょっと米軍基地がどの程度であるかというのを承知しておりませんので、お話しの点が果たして正確かどうか正直よくわかりません。

 ただ、幾つか言えることは、太陽光発電というのはやはりなかなか簡単じゃない部分がございまして、今例えば……(吉井委員「それはわかった上で議論しているから、ちゃんと蓄電池のこともみんなわかっているから、だから、その数字が、さっき言った私の数字が間違っているかどうかだけ確認してください」と呼ぶ)

 済みません、ちょっとそこのところはよくわかりません、一定の面積があればそれだけの発電ができるというのは事実だろうと思います。

吉井委員 これは、私がこの数字をまた勝手に言っているんじゃないんです。これは防衛省の方でちゃんと数字がありますから、直接ごらんになったらいいんです。

 一千平方キロメートルだったら一千億キロワット時の電力が年間発電電力量で生み出されるということであれば、それは、一つ一つきちきちっと積み上げて計算していけばそういうふうになるわけです。

 そこで、岸田大臣に伺っておきたいんですが、日本記者クラブでの六月九日の福田総理のスピーチでは、太陽光発電の導入量を二〇二〇年までに現状の十倍、二〇三〇年には四十倍に引き上げることを目標にして掲げたいと発言しておられましたが、これは政府方針としてそういう立場で臨むんですね。確認します。

岸田国務大臣 福田総理は、御指摘の六月九日に公表されました福田ビジョン、「「低炭素社会・日本」をめざして」というビジョンにおきまして、低炭素社会へ転換していく上で、革新技術の開発と既存先進技術の普及の重要性を表明されております。

 また、それに先立ちまして本年一月、ダボス会議におきましても、特別講演におきまして、環境エネルギー分野に今後五年間で三百億ドル程度の資金を投入すると表明をしております。

 こうした総理の指示を受けて、総合科学技術会議においても環境エネルギー技術革新計画を取りまとめたところでありますし、太陽光発電につきましても、短中期的な目標あるいは中長期的な目標を掲げて進めていく、こうした方針のもと、努力をしているところであります。(吉井委員「二〇二〇年で十倍、三〇年で四十倍に引き上げるという演説はこのとおりですね」と呼ぶ)

 これは、総理のこの方針を踏まえて、総合科学技術会議、そして政府におきましても努力をしていく所存であります。

吉井委員 これは現在の設備容量で百四十万キロワット、つまり発電電力量に直すと十四億キロワット時ですが、二〇二〇年で十倍ですから百四十億キロワット時にしよう、二〇三〇年には四十倍ですから五百六十億キロワット時にしようということですが、私は、米軍基地も、戦争が終わって六十年以上たっていますからお帰りいただいて、太陽光発電に変えればもっと大きなものが出てくるわけで、かなり志が小さいということを言っておかなきゃいけないと思うんです。

 総理演説では、「大胆な導入支援策や新たな料金システムについても検討」としておりますが、岸田大臣、高速増殖炉「もんじゅ」関連で動燃が使った五兆円から比べても研究開発資金が余りにも現在少な過ぎて、今の研究開発費だったら、動燃が使ってきた並みにいくには四、五十年使うことに相当します。

 太陽光発電に設置補助金を復活するとか、ヨーロッパでやっているような固定価格買い取り制度を入れるとか、研究開発に力を入れながら、一方では、本当に普及が進めばコストも下がる、さらに普及が進むという関係ですから、やはり当面、設置補助金の復活か、ヨーロッパ並みの固定価格買い取り制度を入れるか。どういう手法をもって、福田さんの言っておられる、十倍にしよう、四十倍にしようというものをやっていこうとしているのか。これは公共料金にもかかわる話ですから。ただ、それは公共料金じゃなくて補助金だったら要らないんですけれどもね。

 仮に、固定価格買い取り制にしても、総括原価方式の中で、実は電力会社は買った分をそのまま売るわけですから、電力会社としては原発のように投資的経費は全く要らないものですから、そうすると、公共料金に大きく転嫁することなくやっていけるわけで、ドイツはそれをやっているわけですね。これについてのお考えを伺っておきたいと思います。

岸田国務大臣 まず、基本的に、政府としましては、先ほど触れさせていただきました環境エネルギー技術革新計画において、太陽光発電は、短中期的には、電力貯蔵技術と組み合わせて温室効果ガス削減効果を高める、中長期的には、発電効率をさらに高める薄膜型や新しい原理に基づく第三世代太陽電池の開発を進めるという計画を取りまとめて、今努力をしているところであります。まず、発電効率を飛躍的に高めるというような内容を中心とする技術革新に努めているところであります。

 そして、コスト削減、供給安定のために技術開発を進めると同時に、一家庭当たりのコストにつきましても負担をしているドイツの例を参考にしながら、大胆な導入支援策、新たな料金システムについても検討しなければならない。これは福田総理の、先ほど触れていただきましたビジョンの中で言及されている内容であります。

 こうした支援策あるいは料金システム、そしてさらには技術革新、こういったものを組み合わせて目標に向けて努力をする、これが政府の方針だと考えています。

吉井委員 既にヨーロッパで始まっている国内排出量取引制度をことし秋から始めるというお話もありましたが、そのことを確認しておきたい。

 それから、投機マネーによるゲーム的なやり方で地球温暖化対策を妨害させちゃならない、やはり実需と結びついた排出量取引という仕組みを築き上げていく、これが大事なところだろうと思うんですが、この点について伺っておきたいと思います。

    〔委員長退席、岡下委員長代理着席〕

岸田国務大臣 そうした制度につきましても、秋に向けて導入の努力をしているというふうに認識をしております。

吉井委員 先ほど、全基地を撤去したらどれぐらいできるかとか、沖縄の基地をなくしたら、嘉手納や普天間がなくなれば沖縄電力の三倍というお話をしましたけれども、ドイツでは、太陽光など再生可能エネルギーに取り組み、力を入れることで、日本を抜いただけじゃなくて、二〇〇二年から六年の四年間で、この分野の雇用が二倍、二十三万人に増加しました。

 ですから、それは沖縄にとってももちろんそうなんですけれども、日本的にも新しい産業分野、雇用につながることであり、環境や平和、安全にとっても大事な問題ですから、私は、太陽光発電の問題については、基地をなくしてかわりに発電所に変えれば物すごいことが日本の新しい産業、雇用でも生まれてくるんだ、このことを重ねて強調いたしまして、ちょっと環境省に悪いんだけれども、あと五分あればダイオキシンに触れておきたかったんですが、時間が参りましたので、これで終わります。

岡下委員長代理 次に、吉良州司君。

吉良委員 民主党の吉良州司でございます。

 きょうは、泉国家公安委員長とそれから大田大臣に質問をさせていただきたいと思っております。

 まず最初に、今回起こりました痛ましい秋葉原での通り魔無差別殺人事件についてでございます。

 冒頭、亡くなられました七名の方、そして負傷されました十名の方に、心から御冥福そしてお見舞いを申し上げたいというふうに思っております。本当に二度とこういう痛ましい事件が起こらないように、それこそ全国民一丸となって対応していかなければいけない、このように思っております。

 そこで、まず、泉国家公安委員長にお伺いいたしますが、これまで、こういう事件、この事件に限らず事件が起こったとき、現場において警官がとるべき初動、そして検挙に至るまでのもろもろの過程の中で、警察庁なり各県警なり、指針があるのかどうなのか。特に、その際の武器の使用について、今申し上げました初動から検挙に至るまでの過程での武器の使用を含む指針があるのかどうなのか、その辺についてお伺いしたいと思います。

泉国務大臣 けさほど来、大畠委員からも今回の事件について厳しいお尋ねがございました。本当に、お亡くなりになりました方々に御冥福を祈りますし、十名の負傷された方々に、御回復が一日も早いことを祈る次第でございます。

 お尋ねの何らかの指針みたいなものがあるかということでございますが、基本的には、一つ一つの事柄、例示なされましたけん銃の扱い方とか、どういうふうに使うかというような事柄については、きちんと警察庁が定めたものがございます。全体について、包括的なものについては、警察庁が特に出しておるということではございません。そのあたりにつきましては、各都道府県警察において、必要に応じまして執務資料等の中で明快な規定を置いておるという理解をしておるわけでございます。

 なお、具体的な内容としては、一般論にやや近いわけですが、緊急配備を発令するということがまず最初でございます。できるだけ早く警察官やパトカーが現場に向かうということでございまして、警察官が現場に到着することによって、負傷者を救護する。それから、被疑者の早期制圧、検挙。そしてまた、被疑者が所持する凶器の種類に応じた対応を念頭に置いて、けん銃であればけん銃への対応、刀剣類であれば刀剣類への対応という、持っておる凶器に対応した措置をする。さらに、交通規制、目撃者等からの事情聴取をする。こういうことを一般的にルールとして我々は持っておるわけであります。

 今回のことについて、今日まで我々が承知しておる限りでは、お亡くなりになりました方には大変申しわけないんですが、早期の対応ができたのではないかというふうに思っております。しかし、これから検討する中で、教訓になるものがあればそれは取り上げて、今後の我々の警備のあり方に十二分に生かしていく。そのことが、負傷されました方、お亡くなりになりました方に対する我々の務めだと思っております。

 念のためにちょっとだけ時間を申し上げさせていただきますと、十二時三十三分に最初の一一〇番をいただきました。その後一分置きぐらいに二つ一一〇番をいただいておりまして、十二時三十五分に緊急配備をかけております。そして十二時三十六分、第一報をいただいて約三分後には、万世橋署の方から、被疑者を確保した、五名が刺されているという連絡をもらっておるわけであります。警察官が三名で被疑者を確保し、五名が刺されているという連絡をとっておるということでございまして、一応この時点までの措置は、先ほど申し上げましたように、現場対応に抜かりはなかったというふうに思っておるところでございます。

吉良委員 私が最初に今質問させていただいた趣旨は、私が中学校三年のときだったと思いますけれども、浅間山荘事件が起こりました。あのとき、それこそ中三ながら、あらゆる新聞、あらゆる週刊誌、ありとあらゆるものを私自身読んだ記憶があるんです。その後の情報収集を含めて、当時、警察として非常に厳しい状況に置かれていたと思うのは、故後藤田正晴長官だったと思いますけれども、ある意味では警察側がどれだけ被害を受けたとしても、もちろん、そのときは人質がいらっしゃいましたから、人質の人命というか解放が第一、それと犯人も必ず生かして逮捕しろ、こういう厳命であったというふうに理解をしております。

 当時の社会情勢を考えますと、そういう指示、指令も仕方なかったのかなと。あの中で警察官の方が殉職されましたので、本当に私自身も気の毒というか残念でならないのでありますけれども、そのころの社会情勢から随分と変わってきて、特に昨今の無差別の殺人というものが、これは残念なことですけれども、多数発生するようになって、国民の意識も随分と変わってきているんだというふうに思っているんです。

 軽々に申し上げることではないですけれども、やはり公の安全のために、場合によっては多少の自由が制限されてもしようがない。または、警官が、その現場において、まさに現行犯でやっているときに、被害の拡大を防ぐためにあらゆる手段を、あらゆる手段というと、もちろん武器使用については極めて限定的でなければならないというのはよくわかるんですけれども、このように無差別で、だれでもいいからということの被害の拡大を防いでいくためには、さっき言いました浅間山荘事件のときと随分変わって、被害拡大を防ぐための実力行使も十分あり得る、それを国民が理解する環境になってきているんだというふうに思っておるんです。

 そういう意味で、今回の事件を含めて、そしてまた、先ほど大畠先生の方からもございましたけれども、茨城を含め多発しているこういう事件について、とにかく被害の拡大を防ぐという観点から、警察として、随分古い話ですけれども、後藤田さんがあの決断をされたときと違って、いろいろな意味で、初動から検挙に至るまでの警察の対応について違う考え方があってもいいのではないか、こう思っておるわけです。その点について、そういう検討が開始されているのか、またそういう指針を設けるようなことを考えておられるのか、お伺いしたいと思います。

泉国務大臣 確かに社会的な背景が変わってきておりまして、浅間山荘事件の時代と今日とでは、私ども警察官に対する国民の思いも変わってきておると思います。

 ただ、今、これまで守ってきたルールを変更するということは実は議論をしていないと私は思っておりますが、国家公安委員会の議論の場で、先日けん銃をある少年に向けたことについての議論がございました。それはそれできちんと処理をさせていただきましたけれども、やはり今委員御指摘のように、被害の拡大を防止する、そういう観点から、けん銃の使い方を従来のような、一回使うと必ず、正当であったか、法律にかなっているのかというようなことを聞かれるということ自体が第一線の警察官を逡巡させるということも事実だと思いますので、そういうままでいいのかどうかという議論が実は国家公安委員会でございました。これは突き詰めた議論までは至っておりませんけれども、我々としても、被害の拡大防止という観点からは、必要な見直しをさせていただかなきゃならないかと存じます。

 まだ俎上に上っておるような段階ではございませんが、これから委員の御指摘も踏まえて判断をさせていただきたいと思います。

    〔岡下委員長代理退席、委員長着席〕

吉良委員 今回、私、報道で聞いたり見たりしている限りではございますけれども、あれだけ本当に罪のない人を殺傷しておきながら、警官が銃を向けた途端に武器を落として一種の降伏をしているということを思いますと、これは本当に許せないんですけれども、それでも、警官がその気になれば、その拡大を防ぐために実力行使もあり得るということを示すことによって少しでも被害の拡大が防げるのかなという思いを持っております。ただしそれが、それこそ流れ弾に当たってさらに罪のない人に危害を加えるようなことはこれまたあってはいけないので、慎重にも慎重を期さなければいけないんですけれども。

 ただ、繰り返しになりますが、被害の拡大を防ぐために、国民のいろいろな意味での理解が浸透しているという中での検討をお願いしたいと思っております。

 そして、第二点目は、今回、犯人が事前に、日記風といいますか、犯行を予告するような書き込みをしていたということでございます。

 今回の事件が、この書き込みを事前にキャッチしていたとして防げたのかどうか、その辺についてはわかりませんけれども、私、最近のもろもろの事件を見て一つ危惧しておりますのが、これはマスコミにも問題があると思うんですが、マスコミが事細かな手口まで報道することによって類似の事案が頻発する傾向にあるということであります。

 そういう意味で、こういう書き込み、特に一部報道されておりますように、書き込むことによって自分が世間に対して一種の公約をした、それを実行しなきゃいけない、みずからある種の使命感を書き込むことによって植えつけて、それを実行しなければならないんだというふうにみずから持っていくということがあったようにも思っております。

 そういう意味で、こういう書き込みを発見するということ、そして発見した際の対応についてどういうことを今検討されておるのか、その辺について、出会い系サイトの際の議論でも出てまいりましたけれども、そういう事前のキャッチとそれに対する対応についてお伺いしたいと思います。

泉国務大臣 この問題は、もう委員御承知のとおりでございますが、我々は、インターネット上で殺人等の犯行予告が行われた場合にはとにかく早く対応するということは警察の使命だと思っておりまして、情報をどうやって早期に把握することができるか、これが不可欠なことだと思っております。

 そのために、警察において実施しておりますサイバーパトロールというものを通じて把握をしておるのが一つでありますが、そのほかに、いわゆるインターネット上に、それはそうなんですが、インターネット上には膨大な情報が飛び交っておりますことから、警察だけではすべて把握することは到底困難であるということでございます。

 今回の例を見ましても、一般の方々に大変御協力をいただいた、一一〇番をかけていただいた。そういう多くの皆さん方の支援があってまた警察も活動がしやすくなるということを考えますと、これからも一一〇番通報をお願いして、早期発見に努める、そしてそれを都道府県の警察に通報する、あるいはインターネット・ホットラインセンターに通報していただく、そういうことを通じて犯行を事前に予防するということをやっていきたいと思っております。

 この事件の後、警察からは、プロバイダー等にこの種の情報が通報されるということがあることから、生活安全局長から電気通信事業者四団体にお願いの文書を出させていただきましたし、きのうですか、総務省からも同種の文書を出していただいて、御協力方をお願いしておるわけでございまして、とりあえず打てる手は打っていく、そしてまた、我々としてできることがあれば取り組んでまいりたいと思っておるところでございます。

吉良委員 この問題は本当に、具体的方法論になると非常に難しい問題だと思っておりますけれども、今大臣にお答えいただいたように対処していただきたいし、これは私ども国会においても、今後どういう形で事前のそういう一種の犯行予告的なものに対してそれをキャッチして未然に防ぐか。

 資料の方をきょう用意させてもらって、もともと警察の方から出てきている資料でございますけれども、今現在、一種の犯行予告的な書き込みは有害情報という位置づけで、違法にまで至っていないというふうに了解をしております。今後それを違法と位置づけて、このような書き込みがあった場合には警察が捜査を開始できるような体制を整えることも必要かなというふうに私は思っています。

 もちろん、先ほど具体的方法論で難しいと言いましたのは、オオカミ少年といいますか、いたずらが相当ふえてくると思っていますし、それを何千件とやっていたら、これまたマンパワーの問題、それからまた、プライバシーといいますか個人情報保護の問題でいろいろな法的措置、問題があるとは思っているんですけれども、先ほど申し上げましたように、やはりこういう無差別殺人の未然防止に対する国民の理解というのは深まっておりますので、今後国会でもその未然防止について突っ込んだ議論をしていく必要を感じております。

 それと、もう既に閣内でも検討が進み始めたと聞いておりますけれども、刃物というのは日常、包丁として家事等に使うわけでありますけれども、刃物の携帯について、今後警察としてどのような対応を考えておられるのか。日常と犯罪、これは本当にすみ分けが難しいというふうに思っておりますけれども、いわゆる刀剣の所持について、刀剣といいますか、日常の、今回のサバイバルナイフ、それから包丁等の所持についてどういうふうに今考えておられるのか、お聞きしたいと思います。

泉国務大臣 現在の銃刀法で所持が原則禁止されておるのは刃渡り十五センチ以上ということでございまして、あと、サバイバルナイフを初めとする刃物につきましては刃渡り六センチを超えるものは理由がなくて携帯が禁止されておる、こういうことでございます。先日改正をお願いしました銃刀法の改正で、この部分について、改正前は一年以下、三十万ということでございましたけれども、重たくしていただきまして、二年以下の懲役そして三十万というふうに変えさせていただいたところでございます。

 今回の事件からこのことについてどう対処していくかということは、これから少し検討させていただきたいと思っております。いわゆる包丁類を見ましてもどうするのかとか、今回のようないわゆる凶器になるものについてはどうするかというふうに、少し具体的な議論をさせていただいた上で、必要があれば法改正も検討させていただかなきゃならないと思っておりますが、もうしばらく時間をかしていただいて対応を考えたいと思っておるところでございます。

吉良委員 私自身も、個人的な見解ではありますけれども、法改正によってより強い規制にしていく必要があるのではないかというふうに感じております。

 いずれにしても、今、何が国民の最大の関心事かというと、恐らくは治安の回復だというふうに思っておりますので、泉大臣の方でイニシアチブをとって、治安回復、社会の安寧について陣頭指揮をとっていただきたいなというふうに思っております。

 ということで、泉大臣の方はこれで。ありがとうございました。

 続いて、大田大臣にお伺いをいたします。

 私、この内閣委員会の冒頭というよりも今国会の冒頭で、対日投資、対内投資について伺わせていただきました。今回、いろいろと話題になりました電源開発、JパワーとTCIのもろもろの確執についてお伺いしたいというふうに思っております。

 まず、大田大臣、なかなか思い切った発言はしづらいかとは思うんですが、今回のTCIに対する政府による二〇%までの株取得中止命令、これについて、特にその中にございます理由というのは、ちょっと後で資料は持っていますから必要であれば言いますけれども、極めて抽象的な表現でもって中止勧告そして中止命令を出しております。このことについて、対内投資、対日投資の旗振り役である大田大臣がどのように感じていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。

大田国務大臣 Jパワーの問題ですけれども、これは対日投資ではありますが、やはり外資規制という中の一つ、外為法の中で議論されたことです。つまり、開かれた国づくりをして対日直接投資を日本に積極的に呼んでいくということは重要なことではありますけれども、一方で安全保障、これはやはり国として守らなくてはなりませんし、先生も御案内のように、アメリカでもエクソン・フロリオ条項ですとか、開かれた国と、一方で安全保障、国として守るべきもの、これをどう両立させていくのかというのは、どの国でも苦労しながらやっていることだというふうに思っております。

 今回のJパワーも、Jパワーの中に原子力発電を抱えておりますし、プルサーマル計画というものも進めている、そういう中で、安全保障、公の秩序という観点から、やはりここは外為法の枠内で中止命令を出したという判断を経済産業省と財務省が行ったというふうに見ております。

吉良委員 安全保障という観点が一番大きいと思いますけれども、それは十分わかりますし、おっしゃるとおり、世界各国がほとんど例外なくそういう規定を設けているわけです。

 その前にちょっと、私、断っておきますけれども、この私の質問は、どっちに軍配を上げようというようなことではありません。ただ、私自身も、今後の少子化等を考えて、また高齢化等を考えていったときに、対内投資が必要だというふうに思っておる観点から、これを促進していくために、今回のこの問題が国内的に与える影響、また外資と言われる外国投資家に与える影響という観点からちょっと議論をさせていただきたいと思っているんです。

 大田大臣も御承知かと思いますが、イギリスには大きな電力会社が現在六つほどございます。そして、六つある中で、実は三社がいわゆるイギリスからとってみれば外資であります。ドイツ二社、フランス一社。さっき言いました、どこでもやっているんだけれども、一方で、イギリスでは電力会社、日本でいうとそれこそ基幹、関西電力だ、中部電力だ、九州電力だ、そういうところなんですね、それが外資である。

 今回、日本は、今九・九%のTCIの株を二〇%まで上げる、これが国家の安全保障等々から照らして疑念を払拭できない、それに対する反論の説得力がなかった、こういうことで中止させているわけですね。イギリスが、ウィンブルドン現象ではないですけれども、電力会社自体を外資が保有しているということにかんがみて、そのイギリスに本拠を置くTCIが日本の九・九%から二〇%の株の買い増しを阻止された、このことについてはどうお考えでしょうか。

大田国務大臣 個別の事例についてどう判断するかというのは、やはりそのときの政府としてしっかり説明責任を果たしながら判断していくということで、Jパワーの問題は、外為審議会の見解を受けて経産大臣と財務大臣が判断したということでございます。

 一般的な問題として、先生の御指摘の問題提起について申し上げますと、やはり説明をしっかりする、それから予見可能性を高めるというようなのは重要なことでございます。まず、私のところでも対日直接投資のあり方について専門家を集めて議論いたしました。その中で、外資規制については予見可能性を高めながら安全保障と両立させていく道をもう一度きちんと考えるべきだという御意見が出ております。

 これから年内に外資規制の包括的なあり方を政府全体で検討することとしております。その中で、対日投資全体については、国内、国外無差別というのが原則だと思います。しかし、安全保障の理由ですとかでこの原則の外に置くケース、これが外資規制ですけれども、そういう場合は当然あるわけですから、それはどういう場合であるのか。それから、今度は、外資規制を置く場合であっても、外資規制以外の代替措置ではいけないのか、例えば株式の大口保有規制あるいは行為規制では対応できないのかといったところまで含めて、外資規制の包括的なあり方というものは、これから集中的に検討して、年内に方向性を出したいと考えております。

吉良委員 私、先ほど言いましたように、どちらに軍配を上げるということでもないんですけれども、この問題の一番大きな問題は、会社はだれのものかという根本問題が実は日本と外国では全く違うということに起因しているんだと思うんです。昔よく貿易摩擦のときに非関税障壁ということが言われましたけれども、会社はだれのものかということの根本的な考え方の違いが残ったままであれば、残念ながら、いかに大田大臣が対日直接投資の旗を振っても、外資が今回のことをきっかけとして逡巡してしまう可能性があるのではないかということを私自身は懸念しておるわけなんです。

 もうちょっと言いますならば、釈迦に説法になりますけれども、会社はだれのものかという問いに対する日本の一般的な考え方は、よく言われるように、株主のものであり、けれども同時に社員のものであり、そして同時に顧客のものである、このステークホルダーすべて大事なんだという考え方ですね。私自身、これは非常に大事な考え方だとは思っているんです。ただし、一歩外に出た場合には、会社はだれのものかといったら、明らかに株主のものなんですね。

 今回の中止勧告に至るまでのTCIとJパワーのやりとりがあるのは御承知のとおりでございます。この中で、今回の、六月何日でしたか、株主総会前にTCIが議案の提示をしております。一部ちょっと申し上げさせてもらいますと、提案の一つが株式の持ち合い、そして株式投資に対する制限ということを挙げております。そして二としては、最低三名の社外取締役の導入。それから四番目は、ちょっとこれは細かいんですが、幾ら幾らと言いませんけれども、配当案ですね。要は、配当が少な過ぎる、配当額を上げろということであります。提案五が自己株式の取得。こういうことなんですけれども、時間があれば本当はここ自体に突っ込んでいきたいんですが、一言で言うと、TCIというのは物を言う株主なんですね。自分が筆頭株主であることもあり、株主の代表として、株主利益の最大化ということを次から次に提案しているわけです。

 その際に、例えば株式持ち合いだとか、それからJパワーというのは基本的には電気事業を営んでいるわけですけれども、今、時価総額にして六百八十億ほどある株、それの半分が実は金融機関の株を持っている。こういうようなことで、TCIからしてみれば、昔ながらの日本の経営、長期に見て、長期に少しずつではあるけれども安定して株の配当ができる、そして経営の安定化が図れるということは理解していなくはないんでしょうけれども、やはり株主に対する早期の還元ということをTCIとしては主張しているわけですね。先ほど申し上げました提案のすべてに株主利益の最大化ということを主張しておるわけなんです。これに対して、Jパワーの方は、旧来の日本的経営を前面に出してそれを拒絶している、こういう構図なんですね。

 見ようによっては、Jパワーとしては、これまで株主というのは、持ち合いも含めて、ある意味では株主総会はしゃんしゃんで終わって、経営者が提案することをただ諾々と承認してきた。これに対して、真っ正面から経営者側の提案に対して反論してくるグループがいる、これが煙たいということで、ここにこれ以上発言権を持たせたくない、こういう部分も見え隠れすると思っているんです。

 繰り返しますが、私はどちらと価値判断をしようと思っていないんですけれども、この点、もう一度言いますけれども、物言う株主に対する一種の懸念、そして会社はだれのものかということの日本と外国の違い、これを抱えながら今後どうやって対日投資を促進していくのか、その点についての大田大臣の考えをお伺いしたいと思います。

大田国務大臣 TCIが株主の比率を高めようとした企業が一般的な企業であれば、先生がおっしゃる株主利益の最大化あるいは物言う株主ということで、そこはまだ認められていったんだと思うんですけれども、Jパワーというものが国の安全保障にかかわる部分を持っているということで、今回は、株主利益の最大化の上位概念として、国として守るべき安全保障という案件で国として判断をしているということだというふうに認識しております。

 その点が、JパワーとTCIについてはそうですけれども、先生がもっと大きい御質問として提起されている、株主の利益を守っていく、会社はだれのものかということと対日直接投資の関係で申し上げますと、それが端的にあらわれているのは敵対的買収の問題なんだと思います。買収防衛策をどうしていくのかという問題です。

 これにつきましては、やはり、日本はいろいろなルールを整備してまいりましたけれども、まだ十分ではないところがありまして、防衛策が過剰に使われたりという点があるのは事実だと思います。特に、株主が、買収提案をされたときに、株主の立場でそれはどうなのかということをしっかり判断するようなチャンスと場が十分に与えられていないケースがございます。あるいは、現経営陣とは異なる第三者の立場、例えば特別委員会のようなところにその買収提案の是非を聞いて株主が判断の参考にするというような体制ができていない企業というものもございます。

 こちらの方は、先生御指摘のように、株主の利益を守るという立場で買収ルールのあり方というのは見直していかなくてはならない、これは今、政府でもその方向で、経済産業省、金融庁、法務省が集まってルールの検討をしております。

 敵対的買収は市場の問題でもありますので、経済財政諮問会議でこの問題を議論しましたときには、東京証券取引所の斉藤社長にもおいでいただいて、議論に加わっていただきました。東証でも、株主の立場を守るという観点で敵対的買収防衛策のあり方について検討を始めるということを聞いております。

吉良委員 時間が限られているので、次の機会がいつか、本当に一時間でも二時間でも時間をいただいて議論させていただきたいと思っているんです。

 今、敵対的買収に対する防衛策というお話がございました。これは重要なこと、必要なことだというふうに思っております。ただ、先ほど言いましたように、会社はだれのものかというところで認識が全く違っていれば、何の敵なのか。日本の場合は、えてして経営者。経営者は、これはある意味で日本のいいところでもあるんですけれども、基本的には長年社員を務めた人たちが、そこで実績を上げた人たちが最後は役員という形でボード入りをする、その人たちで構成している。したがって、本来ならば株主がおり、社員、また日本の場合はその延長である経営者がおり、そして顧客がいる中で、何に対する敵対なのかというと、経営者に対する敵対なんですね。経営者はあくまでも株主が選任しているのであって、そのときに、外国から見た場合に、株主と経営者がいつもいつも一体なのかという疑問もあるということですね。

 この辺について、ちょっと残念ながらないんですけれども、やはり、繰り返しになりますけれども、会社はだれのものかという認識の違いを埋める何らかの手だてを講じないと、このJパワーの中止勧告、中止命令の影響は相当大きいというふうに私は思っております。

 あともう一点は、では、九・九%、今でも筆頭株主、二〇%に上げた場合に、確かに、国の安全保障ということが一番大きな理由として出てきております。または、公の秩序の維持を妨げるおそれがあるという理由であります。確かに、大間原発があり、それから南北にわたる送電線がございます。これが、ある外資が二〇%に上がることによって、その原発と送電線の保有、維持管理にどういう悪影響を及ぼすという判断をしたんでしょうか。

大田国務大臣 そこはまさに経済産業大臣の判断でございますので、ちょっと私からはコメントは控えたいというふうに思いますけれども、二〇%になることで、株主としての発言権がふえていく、あるいは原発を進めていく原資が損なわれていくといったような判断をされてのことだというふうに見ております。

吉良委員 残念ながら時間が来てしまいました。

 私の質問を聞いていると、何となく、TCIを一生懸命サポートしているように見受けられますが、必ずしもそうではなくて、冒頭言いましたように、対日直接投資を呼び込まなきゃいけない、そのためには透明性を確保して、日本政府自体が外為法の運用に当たってはきちんと説明責任を果たさなければいけない。そういう中で、会社はだれのものかという認識の違いを踏まえた上できちっと説明責任を果たしていくということが対日投資呼び込みに必要なことだということを申し上げたいと思います。

 これで終わりますが、もし何かコメントがございますれば。なければこれで終わって結構でございますが。

大田国務大臣 透明性を高めていくという観点から、外資規制の包括的なあり方をこれから集中的に見直して、年内に方向性を出していきたいと考えております。

 それから、先生が先ほど来おっしゃっているように、やはり日本の中に外資アレルギーのようなものがあるのは事実でございます。ハゲタカという言葉があるように、それから、買収というのは実は買われてしまうというような根強い意識があるのも事実でございます。しかし、外国から新しい発想を受け入れ、すぐれた技術を受け入れていく、そして日本にある企業の価値を高めていくということは、株主の立場にとっても消費者の立場にとっても重要なことだと考えておりますので、その観点から、これからもルールのあり方、制度のあり方を、阻害要因になっているものを取り除いていくように研究を進めていきたいと考えます。

吉良委員 終わります。ありがとうございました。

中野委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十九分散会


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