第3号 平成21年3月13日(金曜日)
平成二十一年三月十三日(金曜日)午前九時二分開議
出席委員
委員長 渡辺 具能君
理事 岡下 信子君 理事 加藤 勝信君
理事 渡海紀三朗君 理事 西村 明宏君
理事 平井たくや君 理事 泉 健太君
理事 大畠 章宏君 理事 田端 正広君
あかま二郎君 赤澤 亮正君
宇野 治君 大塚 拓君
岡本 芳郎君 木原 誠二君
北川 知克君 佐藤 錬君
坂井 学君 篠田 陽介君
中森ふくよ君 長島 忠美君
並木 正芳君 松浪 健太君
山本ともひろ君 石関 貴史君
市村浩一郎君 楠田 大蔵君
佐々木隆博君 西村智奈美君
平岡 秀夫君 笠 浩史君
池坊 保子君 高木美智代君
吉井 英勝君 重野 安正君
…………………………………
国務大臣
(内閣官房長官) 河村 建夫君
国務大臣
(国家公安委員会委員長) 佐藤 勉君
国務大臣
(規制改革担当) 甘利 明君
国務大臣
(科学技術政策担当)
(食品安全担当) 野田 聖子君
国務大臣
(少子化対策担当)
(男女共同参画担当) 小渕 優子君
内閣府副大臣 宮澤 洋一君
内閣府大臣政務官 宇野 治君
内閣府大臣政務官 岡本 芳郎君
内閣府大臣政務官 並木 正芳君
政府参考人
(内閣官房内閣審議官) 丸山 剛司君
政府参考人
(人事院事務総局給与局長) 吉田 耕三君
政府参考人
(内閣府大臣官房審議官) 梅溪 健児君
政府参考人
(内閣府大臣官房審議官) 西川 正郎君
政府参考人
(内閣府大臣官房審議官) 湯元 健治君
政府参考人
(内閣府規制改革推進室長) 私市 光生君
政府参考人
(内閣府政策統括官) 松田 敏明君
政府参考人
(内閣府公益認定等委員会事務局長) 原 正之君
政府参考人
(警察庁生活安全局長) 巽 高英君
政府参考人
(警察庁刑事局長) 米田 壯君
政府参考人
(警察庁警備局長) 池田 克彦君
政府参考人
(総務省大臣官房審議官) 望月 達史君
政府参考人
(総務省人事・恩給局長) 村木 裕隆君
政府参考人
(法務省大臣官房審議官) 團藤 丈士君
政府参考人
(財務省大臣官房審議官) 古谷 一之君
政府参考人
(財務省主計局次長) 木下 康司君
政府参考人
(国税庁長官官房審議官) 西村 善嗣君
政府参考人
(防衛省防衛政策局次長) 松本隆太郎君
参考人
(独立行政法人宇宙航空研究開発機構副理事長) 林 幸秀君
内閣委員会専門員 島貫 孝敏君
―――――――――――――
委員の異動
三月十三日
辞任 補欠選任
木原 誠二君 山本ともひろ君
河本 三郎君 北川 知克君
馬渡 龍治君 坂井 学君
吉良 州司君 石関 貴史君
同日
辞任 補欠選任
北川 知克君 河本 三郎君
坂井 学君 馬渡 龍治君
山本ともひろ君 木原 誠二君
石関 貴史君 吉良 州司君
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
参考人出頭要求に関する件
内閣の重要政策に関する件
栄典及び公式制度に関する件
男女共同参画社会の形成の促進に関する件
国民生活の安定及び向上に関する件
警察に関する件
――――◇―――――
○渡辺委員長 これより会議を開きます。
内閣の重要政策に関する件、栄典及び公式制度に関する件、男女共同参画社会の形成の促進に関する件、国民生活の安定及び向上に関する件及び警察に関する件について調査を進めます。
この際、お諮りいたします。
各件調査のため、本日、参考人として独立行政法人宇宙航空研究開発機構副理事長林幸秀君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣官房内閣審議官丸山剛司君、人事院事務総局給与局長吉田耕三君、内閣府大臣官房審議官梅溪健児君、西川正郎君、湯元健治君、規制改革推進室長私市光生君、政策統括官松田敏明君、公益認定等委員会事務局長原正之君、警察庁生活安全局長巽高英君、刑事局長米田壯君、警備局長池田克彦君、総務省大臣官房審議官望月達史君、人事・恩給局長村木裕隆君、法務省大臣官房審議官團藤丈士君、財務省大臣官房審議官古谷一之君、主計局次長木下康司君、国税庁長官官房審議官西村善嗣君、防衛省防衛政策局次長松本隆太郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○渡辺委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○渡辺委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。重野安正君。
○重野委員 社会民主党の重野安正です。
内閣委員会初登場でありまして、きょうは各大臣それぞれに質問をしようということで欲張っておりますが、時間が限られておりますので、もしかして途中で終わるということがあるかもしれませんので、あらかじめ御理解いただきたいと思います。
きょうは、御配慮いただいて、最初に質問に立たせていただきました。委員各位に心から感謝申し上げたいと思います。
それでは早速入りますが、まず、官房長官にお伺いいたします。
官房長官は、国民の努力が報われる社会の創設と述べられました。まずお聞きしたいのは、努力が報われていない現実があるという認識を持っておられての発言なのかどうかということが一つです。具体的にどういった点で努力が報われていないのかをまず聞きたい。
それからもう一つは、新たな格差や不安を払拭しというふうにも述べられました。新たな格差や不安がなぜ生まれているのか、そういう点について原因がどこにあるのかという二つの点について、大臣の所感をお聞きしたい。
○河村国務大臣 お答え申し上げます。
いわゆる努力が報われない社会という認識を持っているかどうかということでございますが、日本において、例えば大学進学については、希望は強く持っているけれども、親の収入が低いといったことで大学進学を断念する人たちが今なお現在においてもある、現状が起きている、あるいは、働く意欲はある、資格も持っている、しかしなかなか職場はないというような問題が起きつつある、その中で、正規労働者として働きたいんだけれども、なかなかそこに行けなくて、当面、非正規労働者として従事しているというような問題も出ております。現社会においてもそういうことが現実に存在をしているという認識もございます。
そういう状況で、これに対応するために、いわゆる努力が報われる社会をつくっていく、あるいは競争に取り残された人が再挑戦できる、そういうことが非常に重要な課題ではないか、このように考えます。
そういう点で、政府の政策の重点というのは生活者の支援と言っているのもそこでございまして、それに対応できる社会の安全網を信頼に足る安定したものにしなきゃいかぬ、こう考えておりまして、この点は、内閣においても、関係閣僚とも十分協議をして連携をとって、責任ある行政をやっていかなきゃいかぬ、こう思っております。
この格差が、どうしてそういうことに、ではそういうことの原因は何であるか、こういうことでございますが、いわば格差現象とでも申しますか、そういうものがなぜ生まれたかということでしょう。
これは、こういうものを統計的にとかあるいは幾何学的にきちっととらえるというのはなかなか難しい課題だと私も思います。
ただ、今振り返ってみますと、これまでの、いわゆる七〇年代の高度成長、それからその後の安定成長あるいは低成長と言われますが、そこへ入っていく、九〇年代に入ってくると失われた十年と言われるような時代があって、そしてデフレ状況も続いた、この大きな経済環境のうねりがあった。こういう中で、その間に、ある意味では努力もされたでしょうが資産等も蓄えてきた、そういう人たちもいる。しかし、そういう人とそうでない人の資産的な格差というのもそこに生まれたのではないか。
それから、経済のパイが伸びない、あるいは縮小する、そういう中で、さっき申し上げたような正規社員とか非正規雇用とか、こういう所得格差的なものも出てきた。あるいは、サービス産業等が発展した町がある、かというと、農業や建設業に多く依存してきた地域、こういう地域間の格差というのも生まれておる。さらに一方では、非常にグローバル化して、金融至上主義が行き過ぎて、ホリエモン現象とかいう指摘もありましたが、こういうようなことで、所得格差、こういうものが複雑に絡み合ってきておるのではないか、このように思っております。
だからといって、これまでやってきた小泉内閣以来の改革そのものが全くすべての格差をもたらした原因だと短絡的にとることはいかがなものか、こう思いますが、しかし、こういう現象に対して、これをどのように修正し、ひずみを直していくかということが今問われておるのだ、このように考えております。
○重野委員 今、一番終わりの段が、実は我々と見解を異にする部分です。
我々は、この間の小泉構造改革というものが結果的に、今大臣が触れられましたそういう状況を醸し出してきたという認識を持っていますので、今後そこら辺をどう修正していくのかという点についてしっかり議論をしていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
次に、佐藤大臣に聞きます。
裁判員制度の問題ですが、大臣は、この裁判員制度について、取り調べの一部録音録画の試行に取り組む、こういうふうに述べられました。
今、多くの国民は、裁判員制度についてさまざまな意見が出されております。国民の認識の中でこれがすっかり定着をしている、そういう状況にはないということだけは確かです。多くの国民が、裁判員に仮になったときにどうなるんだろうという点で大変な不安を持っている、こういう状況にあります。
そこで、大臣が、取り調べの一部録音録画の試行に取り組むと。一部という言葉が私はやはりひっかかるわけですね。国民は、公正な判断をするためには録音録画というものをよすがとする、そういう部分もあるわけですね。したがって、私は、大臣の言う一部の録音録画の開示、これについては不十分。取り調べはすべて録音録画して、そして、選ばれた裁判員の皆さん方が正常な判断ができる、そういうふうな点をしっかり考えなきゃならぬと思うんですが、その点について。
○佐藤国務大臣 お答えを申し上げたいと思います。
警察におきましては、裁判員裁判における自白の任意性の効果的、効率的な立証方策を検討するために、昨年の九月から、警視庁を初めとする五都府県警察において試行を実施しております。これまでの試行状況を見ますと、裁判員裁判における自白の任意性の効果的そして効率的な立証手段になり得るものと考えております。
他方、取り調べの全過程を録音録画することを義務づけるなどとなると、事件の真相解明に重要な役割を担っている取り調べの機能が大きく阻害をされ、事実の真相解明を困難にし、犯罪の検挙活動に支障を来すことから、適当でないというふうに考えております。
第一には、取り調べにおきまして、時間をかけて地道に被疑者とコミュニケーションを重ねるとか人間関係を構築することによりまして、少しずつ被疑者から真実の供述を引き出していくということが重要であるというふうに考えておりますが、録音録画によって取り調べの状況を第三者に知られることを被疑者が意識するようになれば、そうした人間関係を構築すること等々が困難になったり、いろいろその過程において、現場でのやりとり等々が非常にナーバスなところもございまして、先生のおっしゃる趣旨はよく理解はできるわけでありますけれども、現場でのやりとり等々にも支障を来すということから、冒頭申し上げましたようなこと等々になっているということでございますので、御理解をいただきたいというふうに思います。
○重野委員 先ほど私も述べたんですが、この裁判員制度というのは、何ゆえに裁判員制度という制度を構築していったのかという経過がありますね。
もちろん、国民がアトランダムに裁判員に選ばれるわけですね。その選ばれた裁判員が本当に裁判員たる判断ができる材料を最大限提供するというのが私は大きな意味があるんだ、そういう視点に立って、この問題というのはいろいろな角度からしっかり議論していく必要があると思いますので、その点については十分御理解をいただきたいと思います。
次に、鳩山大臣が所信の中で低炭素社会に向けた取り組みについて触れられました。
そこで、低炭素社会ということを語るときに、CO2を排出する側の立場と、そしてそれが混在した空気を吸うという国民の立場とか、いろいろな立場があるわけです。そこら辺がどう折り合って一つの形が出ていくのかという点について、私は、これは関係各省庁が今もってそれは議論はされているんだろうと思うんですが、やはり、あるべき姿というものを先に出して、それに向かって関係省庁がどうコミットしていくのか、そこら辺はしっかり、縦割りということだけではなしに、それぞれの立場立場で議論を闘わせる場というのが当然求められてくるんだ、このように思います。
ですから、今でも、CO2の排出量の問題、どこら辺にこの基準を設定してみるのかという点についても、それぞれの省庁の発言を見ていますと、違うんですね。これで果たして一つの形ができていくのかな、こういう懸念を持つのは私一人ではないと思うんですが、その点についてどうやっていくのか、この点についてお聞かせいただきたいと思います。
○河村国務大臣 今重野先生御指摘をいただきました点は、非常に大事なことだと私も考えます。これからこうした低炭素社会をつくっていくという非常に大きなテーマでもございます。これはやはり政府としても、内閣一致した形で取り上げていく、当然だと思っております。特に、この時代を生きる我々、また次の世代に対しても責任ある行動が必要になってきております。これにつきましては、総理もこの点について思いをいたしておりまして、政府一丸となってこの低炭素社会の実現に取り組んでいくということでございます。
特にこの問題につきましては、昨年、福田内閣のときにおきましても、低炭素社会づくりの行動計画というのが閣議決定をされております。その中で特に目につきますのは、よく言われます太陽光発電の導入、これも、二〇三〇年には約四十倍の五千三百万キロワットまで持っていくということ、あるいは電気自動車、これを、二〇二〇年までには新車販売のうち二台に一台の割合で導入するんだとか、また、特に最近では、排出量取引の試行的実施も行う、こういうことが決められておりまして、その方向で動いております。
そのほかいろいろな政策はあるわけでございますが、まずこれを一致結束してやっていくということが大事でございます。
環境省が直接担当いたしますが、そうすると、これをやると経済界に圧がかかるというような一般的な話がございます。しかし、今や経済界も、低炭素社会をつくっていくことが技術開発につながり新しい雇用を生むんだ、こういう方向でかじを切っております。また、世界、アメリカ政権もかわりまして、政策も大きく変わってきた。国際協調の面もございます。そういう視点で、まさにおっしゃるように、ばらばらということじゃなくて、一つの方向を向いてやることに向けて最大努力しなきゃいかぬ、このように考えております。
○重野委員 かつて我が国は、この問題については、いわゆる太陽光発電とか、トップを走っていた実績があったんですね。ところが、途中でそれをやめて、ドイツだとかに抜かれていくという経過があるんですね。そこら辺の経過は、なぜそうなったのかということについては私はよく承知していないのでありますが、そこら辺もやはりしっかり反省というか総括をして、本当に揺るぎない政策、制度を確立する、そのために頑張ってもらいたい、これを特に申しておきたいと思います。
次に、きょうは与謝野大臣は出席できておりませんので、かわりの方が来ていると思うんですが、大臣は、消費税を含む税制抜本改革を経済好転後に速やかに実行すると述べました。先日の参議院の予算委員会では、景気回復後という極めて厳しい条件がついている、そう簡単に国民にお願いできる条件が整うとも思っていない、このように答弁されております。
そこで、今後の景気をどのように判断されているのかということが一つ。私は消費税増税自体には反対ですけれども、二〇一一年度での消費税引き上げは事実上困難であるとの認識を持っておられる、そのように受けとめていいのかどうか。まずその点についてお伺いいたします。
○宮澤副大臣 与謝野大臣がG20出席のため、きょうからロンドンに向けて出発されていますので、かわりに答弁をさせていただきます。
まず、景気の見通しでございますけれども、大変厳しい状況が昨年の秋以降続いていると認識しております。
日本の得意な自動車産業、また電機、電子、工作機械といったところを中心に輸出が落ち込む、生産が大幅に減少する、一方で、昨年秋まである程度堅実だった消費も暮れ以降悪くなっているということで、大変厳しい状況であると認識しております。
ただ一方、明るい兆しがないわけでもないわけでございまして、二月の終わりに鉱工業生産指数の発表、一月はマイナス一〇%という発表をいたしましたけれども、そのときに、二カ月後ですから三月の見通しというのが実はプラスに転じておりまして、これは昨年の七月以来でございます。一方、中国で粗鋼生産がかなり回復して海運市況等々よくなるとか、また、アメリカの経済自体も、アメリカのエコノミストの見通しですと、平均でいっても、ことしの後半にはプラスに転じる、下位十社であっても、ことしの十月―十二月期にはプラスに転じる、こんな状況もございます。
一方で、例えばヨーロッパ、東ヨーロッパ等々はまだまだ経済の状況がさらに深刻化するおそれがあるということで、大変厳しい状況にあるというふうに認識をしております。
それで、続いて、消費税の関係でございますけれども、今の国会で御審議をお願いしております税法改正の附則の百四条で、経済状況を好転させることを前提として、遅滞なく、かつ段階的に消費税を含む税制改正、抜本改革を行うため、二〇一一年度までに法制上の措置を講ずるとしている一方で、実施時期につきましては少し幅を持たせておりまして、その時々の景気回復過程の状況や国際経済の動向などを見きわめる、こうしております。
そういうことを受けて、先日、与謝野大臣が、先ほど御指摘ありましたように、景気回復後という条件がついておりますので、そう簡単に国民にお願いできる条件が整うとも私は思っておりません、こういう御発言をされたと考えております。
○重野委員 次に、甘利大臣にお伺いいたします。
公務員制度改革に係る工程表という話がありますが、この問題はまた後日しっかり議論する場を持ちたいと思うんですが、大臣所信の中で規制改革について触れられております。総合的な見地から規制改革の推進に取り組むと述べられました。そこで、本日は、ここで言う総合的な見地というのは一体どういうことを意味するのか、あるいはどういうことを想定して申しておるのか、そこら辺をちょっと説明していただきたいと思います。
○甘利国務大臣 よく引き合いに出される例ですけれども、携帯電話をNTTが独占していたら、今ほど料金は安くならなかったし、いろいろなサービスは生まれなかったし、そして関連する雇用は生まれなかったと言われるわけであります。
規制緩和というのは、いわば魔法のツールで、財政出動をしなくても経済が元気になる、世の中が元気になる、ただし副作用には気をつけなきゃならないわけであります。国民の安全、安心が損なわれることがあっては効果も相殺をされてしまう。ですから、まずシミュレーションをして、マイナスを最初から除去する、それからマイナスが出てきたら直ちに対処するということが大事であります。
総合的と私が申し上げていますのは、私は、規制緩和担当大臣ではなくて規制改革担当大臣でありますから、マイナスの面については規制を強化するということも当然あるわけであります。ですから、この規制改革というのは、いわばいいとこ取りをしようということでありまして、お金を使わずに世の中が元気になる、そのための副作用は先回りして除去し、あるいは発生したら直ちに対処する、そういう意味で総合的にこの問題に取り組んでいくということであります。
○重野委員 一律的に規制緩和というふうなことではないんだという大臣の考えを聞きました。
問題はそこですね。この間、規制緩和をして、今この国にあらわれている状況を見るに、やはりそこのところはしっかり見定めてやらないと、副作用の大きいこともそうでないものももうごちゃまぜにして規制改革、規制緩和というふうな一くくりで語られるということが一番問題であって、そこのところはしっかり検証、見定めをしていく必要がある、その点を強調しておきたいと思います。
次に、野田大臣にお伺いいたします。
大臣は、宇宙開発について、平和主義の理念にのっとり、としておる。大臣の言う平和主義とはどのようなものを想定しておられるか。
○野田国務大臣 我が国の宇宙開発利用につきましては、昨年成立、施行されている宇宙基本法に基づき進められています。そこで、同法の第二条におきまして、宇宙開発利用を進める際には、「日本国憲法の平和主義の理念にのっとり、行われる」旨規定されているところでございます。あわせて、同法に係る国会審議がございました折、提案議員からは、日本国憲法の平和主義の理念にのっとり、専守防衛の範囲内で行うという答弁がございました。
私としましては、宇宙基本法を踏まえ、日本国憲法の平和主義の理念にのっとり、専守防衛の範囲内で宇宙開発利用を進めてまいりたいと思います。
○重野委員 この宇宙基本法を制定する過程において、我が党は、余りにも慌ただしくというか、しかも短時間にこういう新たな体系、今まで我が国にはそういうふうなものはなかったのでありますが、そういうものをつくっていくというには余りにも拙速過ぎるという立場で反対してまいりました。
我々が一番懸念するのは、今大臣も触れましたけれども、いわゆる平和利用という、その平和利用というのはどこまでが平和利用なのか、その境が、この法律が動き始めて、あるいはこれに基づいて、新たな仕組み、あるいは、私は産業だって生まれてくるんじゃないかというような気がするんですね。そのときに、そういう皆さんは一体この法律に何を期待しているのか、それぞれの立場でこの法律に対する受けとめが違うんですね。
ですから、今大臣も触れましたけれども、この二条と、それから三条は、これはやはり内容的には相反する部分もあるわけですね。だから、そうでないという立場の人もいるし、そうだという立場の人もいる。ここはやはりしっかり耳を傾けて、そして議論をして、そしてお互いがその先に同じところに行き着くということにしていかないと、私は、この法律をめぐって激しい対立論争が生まれると思います。論を尽くさなきゃならぬ。そのときに、私は、大臣の立場は、大いに議論を尽くしてもらいたい、その上で、この法律の運用について誤りなきようにしていくという点をしっかり受けとめて、認識してやっていただきたいとお願いしておきます。
最後に、小渕大臣、少子化対策について伺います。
先日、厚労省が、二十一世紀成年者縦断調査、こういうものを発表されております。そこで、正規と非正規で、結婚率だとか出産女性の割合というのが大きく違っているんですね。大臣は、この調査結果をどのように受けとめておられるかというのが一つ。
それから、ゼロから考える少子化対策プロジェクトがありますが、その中で、今後、このプロジェクトでどういう方向を目指して議論をしていこうとするのか、その基本的立場というのを出していただきたい。
○小渕国務大臣 今委員から、先日公表されました調査についてもお話がありました。
経済的な理由で結婚できない、子供を持てないという若者が大変ふえております。
これまで少子化対策というと、どちらかというと、妊娠、出産した後の経済的支援ですとか、あるいは保育所の整備ですとか、そうしたところに重点が置かれてきたわけでありますけれども、やはり今の状況を踏まえますと、その前の段階、例えば、未婚や晩婚化が大変進んでいること、また、その理由に、若者の雇用不安や経済的基盤の不安定さ、そうしたものがあるということをしっかり踏まえて、そうしたところにまでしっかり議論をしながら、少子化に歯どめをかけていく、総合的に考えていかなくてはならないと考えています。
ゼロから考える少子化対策プロジェクトチームの今後の方向性ということでありますけれども、今三回終わったところであるんですけれども、第一回目のテーマが恋愛と結婚でありまして、その次の第二回目のテーマが若者の雇用と自立支援ということで話をいたしました。
これまでの少子化の枠組みからさらに広げた形で今後も議論を進めていきたいと考えていますが、特に若者の雇用についてでありますけれども、想像以上にやはり経済的基盤が大変不安定であるということ、しかし、まだ、国民的なコンセンサスとして、若者のそうした自立支援というものが必要であるということが共通の問題意識としてでき上がっていないこと、そうしたことなどが問題点として挙げられました。若者の支援については包括的な支援策が必要であると考えています。
今後とも、プロジェクトチームにおいても議論を深めていきたいと思いますが、少子化問題を考えるときに、そうした総合的な立場に立って検討したいと考えています。
○重野委員 我が国の少子化傾向というのは、私は本当に深刻だと思います。労働市場という面から見ても極めて深刻な状況を招来するとも言われている。概して晩婚化傾向であるとか、そしてもう子供は産まないとか、そういうようなことがごくごく当たり前のように語られているということに私は危機感を持つんです。
ですから、今大臣が述べられましたことというのは、今のこの国にとっては最も大事な問題だ、最も大事な。この国が二十一世紀、本当にどう生きていくかという大げさな話ではないんですね。もう他国の労働力に頼らなければならぬ、そういう状況がそう遠くない時期に来るという見通しすらあるわけですね。
したがって、政府の、幾つか大きな目標、課題があると思うんですが、これはやはり、この少子化問題というのは、私は本当に、最も大きなテーマにしなきゃならぬ。そして、政府も我々在野も、政治もこの問題に真剣に取り組んでいかないと本当に危ういという認識を持っておりますので、そこはひとつ大臣もしっかり取り組んでいただきたいと思います。
以上で終わります。
○渡辺委員長 次に、篠田陽介君。
○篠田委員 篠田陽介でございます。
今国会から内閣委員会に配属をされました。その中で御質問の時間をいただきましたことを心から感謝を申し上げます。
私は、きょう、まず公務員制度、そのそもそもについての質問、そして公務員の給料の算定、人事院勧告と呼ばれるもの、この基準となっております民間給与調査の件、そしてさらには国家公務員共済組合、KKRと呼ばれる組織について質問をさせていただきます。
私は、今、地元選挙区は名古屋でありますが、大変不況の中、厳しい状況であります。そんな中、当然税収が落ち込んでいくということが予想されますので、それに合わせて歳出カットもしなきゃならぬ状況だと思っています。今、麻生内閣、景気対策だ、雇用対策だということはよく理解できます。しかしながら、景気対策、雇用対策だけではなくて、それと同時に、どこをどれだけカットするのか、どこまで行財政改革に取り組むのか、この両立ができて初めて私は評価がされるんだと思います。お金を使うことであれば、だれでもたやすくできると私は思っています。削るのは難しいと思います。しかしながら、そこに踏み込んで初めて評価がされるんだと思います。
そういった中で、そもそも、今、公務員制度改革、昨年、国家公務員制度改革基本法ができました。それに基づいて、今国会から工程表をつくるなど、あるいは内閣人事・行政管理局の新設、そして、人事院の、給与ランク別の定数を定める級別定数などをこちらの内閣人事・行政管理局に移行する、さらには財務省の総人件費の基本方針、この決定権もあわせ持つ組織にしていきたいということで、今調整が行われるというふうに承知をしておりますが、その中で、私は、今の公務員制度についていろいろと調べていく中で、やはりちょっとわからないことが出てきたものですから、幾つかその中で質問をさせていただきます。
そもそも、我が国日本には、国、地方合わせて、公務員と言われる方々がいらっしゃいますが、実際何人いるのか、そして総人件費が幾らなのか。このことを正確に把握をしていかないと、これからの公務員制度改革が結局骨抜きになるんじゃないかというふうに考えております。その中で、まず、我が国には公務員が何人いるのか、そして総人件費は幾らなのかということを御質問させていただきます。
○村木政府参考人 お答えいたします。
まず、常勤の国家公務員の職員数でございますが、これは、平成二十一年度末予算定員によりますと約六十四万七千人でございます。それから、常勤の地方公務員の職員数は、平成二十年四月一日のデータでございますが、約二百八十九万九千人でございます。
○木下政府参考人 お答えいたします。
平成二十一年度予算における常勤の国家公務員の人件費は五兆三千百九十五億円、それから、同じく平成二十一年度予算における非常勤の国家公務員の人件費は八百七十七億円となっております。
○望月政府参考人 平成十九年度におきます地方公共団体の普通会計の決算におきます人件費の総額は二十五兆二千五百六十三億円となっております。
○篠田委員 ありがとうございます。
それで、それらの正確な把握をして、その上で総人件費の基本方針といいますか、削減に踏み込んでいかなきゃいけないなと思っています。
その中で、各役所のいわゆる決算書とかを見ていて、やはりわからないのがありまして、さまざまな中央官庁にも非常勤の職員がいらっしゃると思うんですが、この非常勤の職員の給与というのがこの総人件費に含まれていないんじゃないかというふうに見ています。例えば、国会でも、国会職員に対しては人件費ということで計上されますが、そういった一時的な雇用、いわゆる非正規公務員といいますか職員、雇った方については、いわゆる庁費という中で計上されるという中で、その正確な把握ができないという一面があります。
そこでお尋ねしますが、現在、中央省庁で働く非正規職員というのは大体何名ぐらいいて、人件費はどのぐらいになっているのか、それが総人件費に含まれているのかどうなのかということをお尋ねします。
○村木政府参考人 国家公務員の非常勤職員数についてお答えいたします。
一般職国家公務員非現業の非常勤職員数は、平成二十年七月一日現在の数字でございますが、約十四万三千人でございます。
非常勤職員と申しますのは、中身として、いわゆる事務補助職員と言われるような方もいらっしゃいますが、いわゆる審議会の委員とか、あるいは保護司とか、多種多様な職種をすべて含んだ人数でございます。
以上でございます。
○木下政府参考人 非常勤の国家公務員の人件費につきましては、平成二十一年度予算におきましては八百七十七億円となっておりますが、それ以外に、いわゆる単純労務に従事する職員に係る経費につきましては物件費の中に入っております。その計数についてはちょっと現在持ち合わせておりません。
○篠田委員 こういったものをきちんと私は表にする必要があると思います。ですから、お願いしたいのは、ぜひまた、そういったことが集計できましたらお届けをいただきたいというふうに思っています。
そして、独立行政法人、特殊法人というのがあります。
きょう資料をいろいろお配りしておりますが、現在、省庁再編以降の国の行政組織等の職員数の動向ということで、移行がありますが、その中で、公務員という定義づけをきちんとして次に進んでいかないと、いろいろと抜け道が出てくるなというふうにも私は考えています。この平成二十一年三月現在の職員数の動向という資料でありますが、この中で、いわゆる独立行政法人、特殊法人という職員は公務員ということで規定してよろしいのかどうなのか、お尋ねします。
○村木政府参考人 まず、独立行政法人についてでございますが、独立行政法人には、特定独立行政法人というのとそれ以外と、大きく分けて二つ類型がございまして、それで、特定独立行政法人と申しますのは、独立行政法人通則法第五十一条の規定によりまして、役員及び職員は国家公務員であるとされております。この特定独立行政法人にはどんなものがあるかと申しますと、例えば国立公文書館、造幣局、国立印刷局等々、現在八法人がございます。
それから、特定独立行政法人以外のいわゆる非特定独立行政法人と言われているもの、それから特殊法人、ここの職員は公務員ではございません。
御参考までに申し上げますと、非特定独立行政法人には、国民生活センター、情報通信研究機構等、現在九十二法人ございます。
それから、特殊法人には、株式会社日本政策金融公庫、東日本電信電話株式会社、いわゆるNTT東日本等、三十一法人ございます。
○篠田委員 ありがとうございます。
今御説明ありましたいわゆる特殊法人だとか非特定の独立行政法人で働く方は公務員じゃないということであります。
ですから、公務員というのはそもそもどういった人たちを公務員というのか、私は、この定義づけが今は必要なんじゃないかというふうに思っています。
公務員というのを、どういう定義づけがあるのか、根拠法は何なのかということを調べましたら、よくわからなかったです。憲法十五条に「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。 すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。 公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。」ということでありますが、そもそも、公務員とはどういう人たちのことをいうのかということについて、私は、今、再定義が求められているというふうに感じています。
そこで、きょう、甘利行革担当大臣にお越しをいただきまして、公務員制度改革に当たり、まず、そもそも公務員というのはどこまでなのかというきちんとした定義づけが私は今は必要ではないかと思いますが、いろいろとあるかと思いますが、その中で、大臣が今どのようにお考えなのかという大臣のお考えをお聞きします。
○甘利国務大臣 憲法十五条の「すべて公務員は、」というのは、例えば我々も入るわけです。公務に携わる者です。公務員をどう定義するかということは、私の所管というよりも総務大臣の所管なのでありましょうか。
ただ、公務員制度改革基本法で言っている公務員というのは行政の運営を担う国家公務員でありますから、行政の運営を担わない国家公務員、ですから、立法を担うとか、あるいは法務を担うという公務員は外れている。行政運営を担っている公務員ということを基本法上は対象にしているということであります。
○篠田委員 ありがとうございます。
これから公務員制度改革を私はスピーディーに展開してもらいたいというふうに思っています。その中で、やはり公務員の定義をきちんとするのと同時に、できるだけ抜け道をつくらせないような制度改正にしなきゃいけないなというふうに感じています。
それで、ほかの質問に移らせていただきますが、人事院勧告というのがあります。人事院の勧告制度が要するに国家公務員の給料の算定基準となっているということでありまして、きょう、二ページ目と三ページ目にそれらの資料をお配りさせていただきましたが、公務員の給料を決めるに当たり、人事院の民間給与調査というのがあります。他方、さまざまな資料を見ましたら、国税庁でも民間給与実態統計調査というものも行っています。これらの数字を照らし合わせて、幾つか疑問がありますので質問をさせていただきたいと思っております。
人事院が公務員の給料を勧告するに当たり調べるのは当然二つありまして、民間企業の今の給与の実態がどのぐらいになっているのかということと、現在の公務員の給料がどの程度にあるのか。それらを照らし合わせて、それらを是正して勧告する、それに基づいて法律で給料を決めていくという仕組みであることは御案内のとおりでありますが、その中で、私は、果たして人事院の民間給与調査というのがどのようなフィルタリングをしてどうしているのかなということにちょっと疑問を持っておりまして、その辺で質問をさせていただきたいのであります。
人事院の民間給与調査があります。きょう資料でお配りをしておりますが、平成九年から平成十九年までのその額について書いてあります。ちなみに、平成十九年は三十八万三千五百四十一円。これは、民間給与の四月の分を調査して、大体五万件ぐらいの事業所の給与を調査してこれに決めたということでありますが、月給が三十八万三千五百四十一円。ですから、期末手当、勤勉手当四・五カ月分を足しますと大体六百三十三万円という額になってまいります。他方、国税庁が行っております民間給与の実態統計調査という中では、このグラフにありますが、四百三十七万円ということで、その比率において約四五%、人事院による調査の方が高くなっているという実態があります。
そもそもこの人事院の民間給与調査の目的と、平成九年度から平成十九年度、十一年間で約六%水準が上がっていますが、六%上がった理由を教えてください。
○吉田政府参考人 お答えいたします。
まず、人事院が民間給与実態調査を行っている目的でございますが、先生今御指摘のとおり、人事院では、民間準拠によりまして公務員給与を改定するという作業を行っておりますが、人事院が行っております職種別民間給与実態調査は、この勧告を行うに当たりまして、公務に類似する職務に従事する民間従業員の給与の実態を明らかにするための資料を得るということを目的として毎年行っております。
今御指摘ございました、平成九年から十九年の間で民間給与調査の結果がふえているのではないかという点でございますが、実は、今先生御指摘をいただきました、十九年の三十八万四千八百九十三円、この数字は、官民比較を行うために、役職や年齢を国家公務員の等級とか年齢の人員構成に合わせて再計算した数値でございます。
したがいまして、いわば、これは、そのときの公務員給与を、等級や年齢を対応させた民間の給与で払うと幾らになるかという数字でございまして、いわゆる純然たる民間の平均賃金というものとは異なっております。したがって、この数値の意味するものは、どちらかといいますと、国家公務員の給与の構成とか学歴、年齢の変化によって増減するということになっておりまして、むしろ公務員給与の動きをあらわすものとなっております。
御指摘の、六%の増になった理由でございますが、平成九年から十九年までの間に、国立大学の法人化あるいは地方出先機関の廃止等によりまして、行(一)の職員が全体で約五万九千人減少しておりますが、この間、本府省の職員はほぼ横ばいとなっておりまして、上位級の職員が多い本府省の職員が全体に占める比率が、一三・八%から一九・五%というふうに上昇をしております。また、この間、在職期間の長期化が図られたということがありまして、職員の平均年齢も、三十九・一歳から四十・七歳と一・六歳増加しております。こういった事情から、より職務の級、あるいは年齢の高い者が多くなってきたために上昇したというふうに考えております。
なお、近年における公務員の給与水準自体は、勧告率で見た場合、平成十四年に二%を超えるマイナスをしておりますので、全体としては下がっているという状況でございます。
○篠田委員 ありがとうございました。
いわゆるラスパイレス方式というのを採用してやっているそうでありますが、またそれはそれとして、まず国税庁にお尋ねします。せっかくきょうお越しいただいたものですから。
国税庁のこのグラフにあります民間給与実態調査、これは何の目的でやっているのか。そして、これによりますと、平成九年から十九年の十一年間で七%民間の実態給与が減っていますよということですが、なった背景を御質問します。
○西村政府参考人 お答え申し上げます。
国税庁がやっております民間給与実態統計調査でございますが、毎年の民間給与の実態を明らかにし、あわせて租税収入の見積もり、租税負担の検討等、租税に関する制度及び税務行政の運営の基本資料とすることを目的といたしまして、昭和二十四年分より行っているものでございます。
続きまして、先生からの御指摘の二点目でございますが、民間給与実態統計調査によりますれば、一年を通じまして勤務をいたしました給与所得者の平均給与額でございますが、平成十九年分では四百三十七万二千円でございます。平成九年分につきましては四百六十七万三千円となっておりまして、比較いたしまして、約六・四%減少になっておるところでございます。
しかしながら、国税庁におきましては、統計値の変化につきましての原因分析というのは行っておりませんので、御質問の点につきましてはお答えできないことを御理解いただきたいと思います。
○篠田委員 ありがとうございます。
私が何が言いたいかといいますと、そもそも公務員の給料というのは、やはり民間の平均を上回っちゃいけないと私は考えているんです。やはり、外貨を獲得する、そしていわゆる生産活動を続けるというのは民間でやりますから、その中で税収が入り、公務員がいるということであります。その観点からいうと、やはり、民間の平均給与を公務員が余りにも上回り過ぎているんじゃないかなという実態を私今感じています。
その中で、人事院の民間給与調査についてちょっと物を申したいんですが、いわゆるフィルタリングをしているわけでありまして、例えば従業員五十人以上の事業所に限るという条件、これは、総務省の統計でいうと、大体六二%をカットしています。三八%の統計しかとっていない。その中で、いわゆる非正規職員のデータはとっていないということで、非正規職員は今全体の労働者の三二%ですから、これをカットしている。そして、いわゆるブルーカラーと呼ばれる人たちの給与実態をカットしているということで、これも、実際六〇%カットしているということであります。
ということで言えば、全体の勤労者のうちの、一掛け〇・四掛け〇・六掛け〇・四とやっていったら、大体一〇%の人たちの給与の実態を調査して、これが民間の平均の給与だなということで勧告をしている。全体の一〇%でありますから、いわゆる大企業だとかその中でのホワイトカラーということでありますから、労働者の中でもいわゆるエリート階層だと思います。公務員の方々はエリートですから、それはそれでいいんですけれども、偏差値でいうと、一〇%というと大体六三、偏差値六三以上の人たちの平均をとって、これが民間の給与の平均ですよ、だから我々もこの給与ですよと言っていること、私はこのことにちょっと違和感を感じています。
また、例えば課長クラスの給与、ですから、中央官庁の課長と民間企業の課長の給与の比較をするんですが、いわゆる等級別に比較をするんですが、例えば課長の給与に関しても、部下が十人いないと課長とみなさないとか、そういった条件があるわけです。例えば従業員三百人の中での課長というのは大体一五%だと言われています。六人に一人が課長なんです。ですから、十人以上部下を持つ課長というのは一部の大企業に限られる。そういった条件をつけてフィルタリングをかけて、実際高くしているんじゃないかというふうに感じているんです。
これから公務員制度改革が始まり、こういった総人件費の見直しも始まっていきますが、その中でぜひ、この人事院の民間給与調査というのが、そもそも公務員が公務員の給料を調査し是正をするという制度自体が私はいかがなものかなというふうに感じています。私は、この際、民間給与調査というのは民間に委託をすべきだというふうに感じています。公務員が公務員の給料を調べてそれを是正するということになれば、どうしても自分たちに都合のいいような給与改定にならざるを得ないんじゃないかというふうに感じています。
この点も踏まえて、これから公務員制度改革の工程表をつくるという中で、甘利大臣にお尋ねをしますが、大臣は所信の中で、一般職給与法の改正で新たな任用、給与制度がスタートというふうに述べていらっしゃいますが、内閣人事・行政管理局の新設によって何がどう変わるのかということをお尋ねします。
○甘利国務大臣 現状で労働基本権制約がされている、その代償措置として人勧制度がある、これは憲法上の解釈でもそう言われているわけでありまして、そこで、人事院が民間準拠という形で民間の給与調査をして、それを交渉権のない公務員にかわって勧告をする、この制度自体は基本的に尊重されるものだと思います。
ただ、御指摘の中で、より正確な調査をするために、調査機関、民間がより正確で迅速な調査ができるのではないかという御指摘は前からあります。よく承知をいたしております。より正確で迅速な調査を民間に委託して、より正確に反映するというのは議論の余地があろうかというふうには思っております。まず前段がそのことであります。
それから、一般職給与法等の改正で新たな任用、給与制度がスタートするとどういうふうに変わるんだということでございます。
国家公務員制度改革の工程表におきましては、定年まで勤務できるという環境整備のために、任用、給与全般の見直しを行いまして、二十二年に必要な法制上の措置をとりまして、平成二十三年、再来年から新たな人事制度を実施するというふうにしておるわけであります。
この新たな人事制度におきましては、人事の停滞を防ぎ、適材適所の人事を弾力的に進めるという一方で、総人件費の抑制を図りつつ高齢者の能力を生かしていくという課題、これは両立させる必要があるわけでありまして、具体的な内容というのは今後の検討によりますけれども、幹部管理職の任用、給与を弾力化するとともに、専門スタッフ職の拡充であるとか、役職定年による新陳代謝を確保する、それから、高齢職員の能力を活用し得る勤務形態であるとか組織形態を実現するとともに、高齢職員の給与水準であるとか給与体系を見直す、こういう視点が重要であるというふうに考えております。
○篠田委員 ありがとうございました。
今、大変厳しい景気の中、やはりどこをどれだけ削るかという議論も、私は景気対策と同時に必要だと思いますので、そういった意味で、我々国会議員も同様だと思っています。私は、速やかに議員歳費を一定額カットすべきだということの主張を続けておりますが、これは決してポピュリズムではありません。今の時代に合わせて、当たり前のことを当たり前にやるという政治にしていきたいというふうに思っていますので、ぜひ甘利大臣の御活躍を御期待申し上げます。
そこで、最後に、個別案件になりますが、KKR、国家公務員共済組合連合会、ここが所有している土地の問題についてちょっとお尋ねをしたいと思うんです。
私の地元の名古屋に東海グラウンドというグラウンドがありまして、ここはKKRの土地でありまして、野球愛好家を初めスポーツ愛好家の方々がグラウンドを利用したいということで、特殊法人の整理合理化計画のときに、そういった陳情活動が実って市民グラウンドとして活用されているということであります。
他方、その中で、市民からお話を聞くに当たり、いろいろな問題点も聞いておりまして、そこを運営しているのが一部の特定中間法人だ、その理事長が給与を相当額もらっているだとか、あるいは余りに閉鎖的だとかいうことで、私ちょっと先日行ってまいりまして、見てまいりました。
いわゆるKKRの東海病院に隣接している土地でありまして、なかなか、外から、どこから入っていいのかわからなかったので、病院の敷地内を車で走っていったら、ようやく駐車場にたどり着いてグラウンドがあったということで、見ていましたら、用務員さんか係員の人からか、済みませんがどちら様ですかというふうな質問もされた、篠田陽介と申します、ちょっと見させていただいていますということであったんです。
その中で、きょうお配りをしている資料なんですが、「東海病院グランド 利用案内」というのが、これは、私、そこでデジカメで撮ってプリントしたのでちょっと汚くて恐縮なんですが、この利用案内に書いておりますが、「この施設は、国家公務員共済組合連合会様のご好意により、旧東海グラウンド跡地の利用が将来決定するまでの間、暫定的に使うことを認められたスポーツ施設です。 名古屋市の管理する公園等とは違い、市民一人一人が助け合いながら維持・管理していかなければなりません。施設を利用する以上、破損・磨耗等は避けられませんので皆様に実費としてご負担を願っています。ご理解頂きますよう、よろしくお願いします。」ということで書いてあります。
そのほかに資料をつけておりますが、この法人の決算報告書を添付しておりまして、その中で、理事あるいは幹事の方々がどれだけ給与をもらっているかということであります。こちらは個人情報になりますのできょうは名前を伏せさせていただきましたが、七ページにあります資料が、これらの管理運営に当たる方々に払われている給料でありまして、一番上にあります月額二十五万、年間三百万、これが、ここの中間法人の代表理事が実際にもらっている給料であります。ほかの理事さんも毎月一万円もらっている、十二万もらっている。役員さんで三百七十万。その他管理人さんがいまして、A、B、Cと書いてありますが、その給料が二百四十万ということであります。
私は、この声をいろいろ聞いたときに、そもそもKKRの土地をそういったことで一部の人たちが運営をする、そのことは確かに、まあいいのかもしれませんけれども、その中で大きな利益を得ているという実態は、これは看過できる話じゃないんじゃないかなというふうに感じております。
そこで、財務省にお尋ねをしたいんですが、このKKR、国家公務員共済組合連合会、これは、いわゆる国家公務員の年金だとか、ホテルだとか病院だとか、あるいは結婚紹介なんか、いろいろなことをやっているそうでありますが、このKKRの財産、この土地は果たして国有地なのか民有地なのかという、そもそもその質問。
そして、こういった、この東海グラウンドみたいに、KKRの財産を民間に管理委託しているケースはほかにあるのかということ。
そして、実費負担ということを利用者に求めていながら特定の人たちが給与を得ているということ、私は、こういうことであれば、逆にその利用料を下げて実際にその人たちが余り給与をもらわないようにする、その方が平等だし、使い方として適切だと思うんですが、こういった特定の人物が給料を得ているということについて適正と考えているかどうなのか。
その三点を財務省にお尋ねします。
○木下政府参考人 お答えいたします。
第一点目の、国家公務員共済組合連合会が所有している土地について、今御指摘のあった土地については同連合会が所有する土地でありまして、国有地ではないということでございます。(篠田委員「国有地ではない」と呼ぶ)国有地ではございません。その東海グラウンドについては国家公務員共済組合連合会が所有する土地でございます。
それから二点目の、ほかに、国家公務員共済組合連合会の財産を民間に管理委託しているケースはあるのかという御質問については、今回の東海グラウンド以外で民間法人に管理委託を行っているものはないと聞いております。
それから三点目の点でございますけれども、経緯についてはまさに先生が御指摘になったような経緯で、この土地については、地元の利用者から引き続きグラウンドとして利用できるようにと強い要望を受けて、国家公務員共済組合連合会の事業として継続していくことが困難なことから、地元の利用者を社員とする中間法人との間で管理委託契約を結んで、公共用または医療事業用に供する必要が生ずる等までの間、その中間法人の管理のもと利用者が利用されている、こういうことでございます。
そして、私どもが国共済連合会から聞いたところでは、例えば利用料については、その中間法人が利用者の御理解を得た上で御負担していただいていると聞いておりますし、また、当該中間法人の役員に対する報酬についても、同中間法人の社員総会において承認された報酬が支払われると聞いております。
ただ、その報酬等の水準につきましては、一般論として、地元利用者の方々の間で納得を得られるものとなっていることが望ましいと考えておりますが、具体的にはその職務内容とか勤務実態とかそういうことにもよりますので、財務省としてその点を直接に把握する立場にないので、国としてその点について云々することはできないということは御理解いただきたいと思います。
ただ、いずれにせよ、現在、利用者の方々の納得が得られるようなあり方について、国家公務員共済組合連合会が中間法人と相談をしていると聞いておりますので、私どもとしてはそれを見守りたいと考えておるところでございます。
○篠田委員 時間となりましたので質問を終わらせていただきますが、この問題は財務省でありますので、また引き続き財務委員会の方で質問させていただきたいと思います。
これで質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
○渡辺委員長 次に、大畠章宏君。
○大畠委員 民主党の大畠章宏でございます。
きょうは、甘利大臣、野田大臣、佐藤大臣に対する、いわゆる大臣所信に対する質問をさせていただきます。
最初に甘利大臣にお伺いしたいわけでありますが、実は、今週の月曜日、私は地元の工業団地を訪れまして、じかに、経営している社長さん方のお話を伺ってまいりました。去年の十一月のころにはまた別なところに行きましていろいろお話を伺いましたが、自動車関係の部品会社なんですが、注文が半分になったので帰休を出しましたという話を去年の十一月段階でも聞いていました。大変厳しい状況なんです、でも社員を解雇しないで何とかつないでいきたい、こういうふうなお話があったわけでありました。
今週の月曜日の日に別な工業団地に行ってお話を聞いたわけでありますが、月曜日の日、工場内はがらんとしていまして、全く機械が動いておりません。どうしたのかなと思って社長さんのお話を聞いたら、仕事が半分になってしまったので操業は火、水、木の三日間だけ、金、土、日、月は休業しています、こういうお話で、ああ、月曜日は工場を動かしていないんだ、こういうことでその状況については理解しておるところでありますが、かなり深刻な状況に至っております。
また、あるもう一つの会社の方は、これまで月千六百万ぐらいの売上高を出しておりましたけれども、注文が減って、今、実質月七百万になってしまった、これからどういう形をとっていったらいいのかよくわからない。金融関係にお話をして、一千万ぐらい、ことしいっぱいの運転資金を借りたいと思うんですがと言っても、ほとんどのところは断られる。さらには、信用保証協会の了解が得られれば貸してあげますよということなんですが、信用保証協会の方に行くと、担保を出せということを言われて、担保がなければ貸せませんと。
私も今、民主党の金融担当をしておりますけれども、信用保証協会が担保を求めるということ自体が何かよくわからないんですね。民間の金融機関だったらわかるんですが、担保がないところには信用保証協会も保証しないというんじゃ、何のための保証協会かよくわからないと思うんです。
そして、いろいろお話を伺いますと、見通しが立たないというんですね。私の受けたところでは、七割仕事が減ったところでは、今後どうしたらいいかよくわからない、でも、ずっと代々つないできた中小企業だから何とか残していきたいというようなお話でありますが、先行きの見通しが立たないものだから、どんな手を打っていいのかわからない、これが実際の社長さんたちのお話だと思うんです。
これは元経済産業大臣をされていた甘利大臣にぜひお願いしたいんですが、政府としても、今、不況だ、不況だ、あるいは雇用対策も非常に大事で、やっていただかなければなりませんが、これからどうなるのか。けさのニュースを聞いていましたら、アメリカの方では、消費が非常に落ち込むだろうと思っていたけれども、落ち込んでいるのは落ち込んでいるんですが、それほど、悪い予測をしたよりもよかったというような話が出てきているんですね。
ですから、特に今は自動車産業と電機産業が大変な状況なんですが、特に自動車産業については、先行きの見通し、これを早く、経済産業省を動かして、今ここまで落ち込んでいるけれども、在庫調整もかなり進んできて、これからこうなるだろうと。不確かなことは言えないとしても、ある程度のところは、五月段階、六月段階ではここまで持ち上がるんじゃないかとか、各自動車会社にも話をして、少し先行きの見通しというものを、これは外れたからといって政府の責任とかいうんじゃなくて、全国各地の自動車に関する部品会社、部品工場の経営者に対しても、五月、六月、七月、八月、こういうふうになるんじゃないかという一つの指標でも出してあげないと、金融会社だって、どうなるかわからないところに融資はなかなかできないと思うんです。
したがって、ぜひ閣議等で、機会があれば、政府としても、特に自動車、電機関係の先行きの見通しについて明らかにすべきではないかと私は思いますので、これは冒頭に要請をしておきたいと思います。
それから、与謝野大臣ともきょうはお話をいろいろしたいと思いましたが、大臣の御都合で出ておられませんけれども、金融問題についても、これまで、政府系金融機関を統合して株式会社にする、こういうことをやっているわけですね、流れとしては。道路公団の民営化、あるいは郵政事業の民営化。民営化、株式会社にすれば世の中よくなるという流れをずっと続けてきたわけですが、どうも違うんじゃないかというような動きがかなり顕著になってきていると思いますし、アメリカの金融破綻を発端として、ここまで日本の経済が、先行きが全く見通しがつかない。政界も一寸先はやみと言われていますが、地域の経済もやみの中に今ほうり出されているのが実態なんですね。
そこで、甘利大臣の大臣所信を伺いますと、規制改革の悪い面を抑え込みながらよい面を伸ばすことで、活力ある経済、社会づくりに貢献してまいります、こう書いてあるわけです。甘利大臣として、この規制改革、一言で言いますと小泉改革の悪い面、随分出てきていると思うんですが、一体、どういうところを悪い面ととらえ、どういうところをいい面ととらえて、この真っ暗やみの中に今国民がほうり出されているわけですが、そこを脱しようとしているのか、大臣としての所信、お考えを伺いたいと思います。
○甘利国務大臣 規制緩和は、その規制があるために新しい業が生まれてこないというおもしを取っ払うことができるわけであります。ただし、規制緩和をして、結果として過当競争があおられるだけであって、そこの従業員の生活水準が下がるだけであったというようなことがあってはいけないわけでありますから、私の考え方としては、その規制を緩和する、あるいはなくすことによって新しい業が生まれてくる、新しい雇用が生まれてくる、そこのところはどんどん進めていくべきだと思います。ただし、単に競争が激化して、関係者の生活環境が悪くなっただけというようなことにならないような、そういうチェックが必要だと思います。
でありますから、今国会に、国交省のタクシーの規制緩和の弊害除去に対する対処策であるとか、あるいは派遣法に対する対応策が出ていますのは、行き過ぎているところ、懸念が出てきているところについて見直そうということだというふうに思っています。
私が大臣に就任して、まず規制緩和でやろうという指示を出しましたのは、ライフサイエンスの分野なんです。
例えば、初期の食道がんというのは、最新の治療法というのは、ファイバースコープを入れて患部を削り取るわけです。そして、健康な細胞を培養して、フィルムみたいな状態にして上から張りつけちゃう。自分の細胞ですからすぐ同化しまして、あっという間に退院ができる。患者負担も少ないし、医療費も少ないし、細胞培養という事業分野も伸びてくるわけです。
ところが、現状ではこれは極めてリスキーです。薬事法とか医療法で、一気通貫で医者がそれをやればいいんですが、エンジニアと組んだ場合に、薬事法違反に問われる危険性があります。これは規制改革をして、お互い、プロ同士が組めるような仕組みにするということは日本全体にとってもいいわけでありますから、いい点をどんどん伸ばしていって、弊害があるとしたら、それをなるべく先回りして除去をしていくという姿勢が大事だというふうに思っております。
○大畠委員 いい面も、確かにそういうところはあると思うんですね。
しかし、全体的に、市場原理主義に基づいて、何でも民営化すればいいんだという発想、自由化すればいいんだ、規制は緩和して、ほとんどルールを外して、荒野の中にみんなを入れれば自然と活力が生まれるんだというんですが、甘利大臣がおっしゃった医療の面でいいところもあったかもしれませんが、金融の面ですとか、それから社会保障関係も随分削られまして、ぜひ甘利大臣には、甘利大臣もかつてサラリーマンの経験もあると聞いておりますので、そういう地域の視点でこの小泉改革の問題点はばさっとやる、こういうことが必要じゃないかと私は思います。
金融問題についても、政策金融改革について、政策金融機関の再編が行われたところであり云々という大臣の所信があります。与謝野大臣も、あれはちょっと間違えていたかもしれないなというつぶやきを最近されておられますけれども、現下の状況になってくると、民間の金融機関に、とにかく貸し出せと言っても、彼らもリスクを負わなければなりませんので、やはり政府系金融機関というのはしっかりとしておくことが私は必要なんだと思うんです。
いずれにしても、先ほどの企業なんかは、月三百二十万円返していたんですが、とにかく七割、八割注文が減ったために、今、利子等程度で月三十二万円、十分の一に落としてもらっているんです。それでも先が見えないんですよね。
ですから、産業面、仕事をふやすという見通しを持たせることと同時に、政府系金融機関がもう一度力を発揮する場面だと思いますが、甘利大臣に、ここら辺、どういう形で、中小企業の資金繰り等国民のニーズに新体制で積極的に対応してまいりますという御発言をされたのか、お伺いしたいと思います。
○甘利国務大臣 与謝野大臣が、政策金融機関の一元化といいますか一本化について疑念を呈した。その後、改革の方向性自体は正しい、若干軌道修正をされています。
私があえて申し上げるとするなら、民間金融機関が資金を一番出しづらいときに時期として基本設計をすればベストだったという思いはあります。ただ、この改革が間違いだったとは思っておりません。
改革をしたときに、いわゆる民業ができるところは民業に任せよう、できないところは官業にする。ある境界線で、ここからこっちが官業、ここからこっちが民業、必ずいつでもそういう関係で民は民の役割を果たしてくれるんだと思っていましたら、この境界線から民が下がっていっちゃった。政府系がこっちまで行けませんから、すき間ができちゃうわけですね。こういうすき間ができる事態にどうするかという危機管理対応ができているかという点なんです。
これは、所管大臣が危機を認定する、財務大臣が認定すればいいんですけれども、そうして指定金融機関がすき間ができないように対処をする。いわゆる政策目的に沿った金融というのは政府系がやり、一般貸し付けは民間がやる、こういうルールですが、一般貸し付けの部分、民間が下がっちゃったところをどう埋めていくか。いわゆる昔の国金には、一般貸し付けの部分も機能がまだあるんです。要は、昔でいう中小公庫がそこの部分は民間に渡しているはずなんです。ところが、民間が下がっちゃったらそこの間をどうするのか。
これは、財務大臣が危機認定をして直ちに、商工中金はもう既にそういう事態の際の金融機関に常時指定されていますから、それから政投銀、これが自動的にそれに対応するという仕組みはできております。ただ、この仕組みが最悪の事態のときの設計でないことは事実ですから、平時の設計ですから、平時に危機を認定したときの設計ですから、完璧にこれがカバーできるかということはしっかり検証していかなきゃならないというふうに思っております。
○大畠委員 ひとつ、百年に一度と言われていますから、もう平時じゃないし、緊急事態は通り越して真っ暗やみになっていますから、ぜひ甘利大臣には、今御答弁がありましたけれども、金融面でもあるいは産業面でも、内閣の中で小泉改革の問題点というのを率直に洗い直して転換しようじゃないかという旗頭の一人になっていただきたいということを申し上げさせていただきたいと思います。
大臣、ありがとうございました。結構でございます。
さて、次に、野田大臣にお伺いしたいと思います。
この経済問題の一番の象徴的なもの、影響が出てくるのは、自殺なんですね。警察庁が、本当は毎月出しておかなきゃならないんでしょうけれども、一月の自殺者数を発表しました。二千六百四十五人、一日に大体八十人から九十人、これを計算すると、一時間に四人から五人、十五分に一人ずつ自殺しているんですよ。こんな国はないんですね。
これはいつから始まったかというと、一九九八年、金融危機から始まったということが言われています。いわゆる金融問題で一万人ぐらい自殺者がふえているんですよね。これはまさに、当時の長銀等々、山一も破綻した年でありますけれども、金融と自殺というのは非常に大きな関係を持っていまして、これは何とかしなきゃいかぬと思いますが、いずれにしても、大臣の所信の中に、自殺者対策に取り組むというお話がございました。
それからもう一つ、時間がなくなってきましたのであわせてお伺いしたいと思うんですが、原子力発電及び核燃料サイクルの取り組みを着実に推進してまいります、こういう決意を述べておられますが、私の認識では、同時に、高レベル廃棄物をどうするかということが最大の課題になっておりまして、やはり、民間企業に任せるのではなく、政府主導でこの種のものは取り組まないと解決しないんじゃないかと思っておりまして、この二つをあわせて伺います。
○野田国務大臣 まず、自殺対策につきまして、委員御指摘のように、平成十年から十年連続、毎年三万人以上の方が自殺をされている。これは欧米先進国でも大変高い数値になっているわけで、これは本当に、国の問題として、すべての国民が自殺予防の主役になれるような国づくりをしていかなきゃならないと思っています。
政府においては、平成十八年に自殺対策基本法をつくりまして、そして、それに基づいて平成十九年に大綱が閣議決定をしているところで、今現在は、今おっしゃった金融、これは社会的要因ということになるわけですが、といった総合的な自殺対策に取り組んでいます。
具体的には、失業、倒産、多重債務問題等の自殺の社会的要因に関する相談体制の強化、例えば、ハローワークなんというのは自殺対策ではないんですけれども、やはり雇用がなくなると自殺に導かれる危険がありますから、そういう場所でも、そういうことにならないようなガイダンスができるようにとか、そういう取り組み。
また、自殺の原因の一つになっている、医療分野においてはうつ病、これについても、堂々と診療を受けていただいて、そして、世間でうつ病であることを恥じることなく、周りの人もちゃんと理解した上で治療にいそしめるような、そういう医療体制の充実とか、さらには、自分は自殺しないからではなく、やはり国民一人一人が、隣にいる人、または家族、または友達のそういうことに気づけるような、そういう行動ができるような啓発活動。
さらには、自殺未遂者、御生存されている方のアフターケアとか、さらには、自殺をされた御家族、遺族が連鎖のような形で自殺されないような、そういうアフターケア、こういうことについても実施をしているところです。
またさらに、十月には大綱を改正しました。先ほど申し上げたうつ病以外の病気の方々、アルコール依存症とか、薬物依存とか、また統合失調症、こういう方たちも含めた医療体制をしっかりやっていこうということとか、インターネット上で自殺幇助とも思えるような書き込みがあるわけですね、こういうことをすると自殺ができますみたいな。こういうことについてもちゃんと対策をとっていこう。さらには、やはり何といっても地域でしっかりと自殺予防をしていただかなきゃならないということで、自殺対策を担当してくれる部局をつくってほしいというような要請もしてきたところであります。
いずれにしましても、まだまだ緒についたばかりだと思いますので、大勢の皆さんのお知恵をかりて、今、最前線で頑張っておられるボランティアの方々がしっかりとやっていただける体制づくりに励んでいきたいと思っています。
さらに、次の質問、原子力。大畠委員はまさに原子力発電の専門家でいらっしゃいますので、おっしゃっていることはごもっともであります。
原子力発電所の運転に伴って生じた使用済みの燃料の再処理に生じるいわゆる高レベル放射性廃棄物の処理そして処分というのは、日本の原子力政策を推進していく上でも全く最重要課題の一つです。このため、平成十二年に、特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律というのができました。これに基づきまして、官民の明確な責任分担のもとで高レベル放射性廃棄物の最終処分事業が進められています。
具体的には、技術的な能力とか運営管理能力という観点から法律に基づいて認可法人ができているわけですが、原子力発電環境整備機構、NUMO、これが実施主体となっておりますけれども、今おっしゃったように、大変これは重要な、最重要な国の仕事でありますから、事業の長期安定性や安全性また信頼性の確保の観点から、国が責任を持って事業の監督と厳格な安全規制を行うということで取り組んでいるところでございます。
引き続き、御指導お願いします。
○大畠委員 自殺者対策について、なぜ自殺するのか、いろいろなものがあると思いますが、失望ですよね、未来に対する失望。政治が、私たちも含めて反省しなければならないと思いますが、国民に対する、未来への希望とかそういうものをもっと明確に打ち出せるような政治にしなければと私は思っています。
野田大臣、小泉さんの郵政、野田大臣が前回の選挙で主張されたことは正しいんですよ。私はそう思いますよ。今いろいろな形でありますけれども、地域の郵便局が本当に消え始めていますからね。地域の郵便局がなくなっちゃったので、年金をおろしに行くのにタクシーで銀行まで行かなきゃならない、こういう状況に国民を追い込むというのも、年配者、お年寄りにとっては何という社会なのかなと。後期高齢者医療制度も、七十五歳過ぎたら月六千円以上医者にかかってはだめだとか、健康診断も地域で、町内会、やろうというときに外されているとか、何かやはり間違えている。
だから、白洲次郎さんを見習って、プリンシプル、いわゆる一つの理念というものを持って突き進むようなことが必要なんじゃないかと私は思うんです。大臣は大臣で、政治家として今おられますけれども、やはり原点はふるさとにある、そういうことで、何と言っていいかわかりませんが、とにかくひとつ、自殺者を減らすとか、あるいは職務に頑張っていただいて、国民のために役に立つような仕事を大いにされることを期待したいと思います。
どうぞ、御退席いただいて結構でございます。
さて、最後の質問に入りますが、佐藤大臣に、先日、私、国際郵便を扱っているところを視察してまいりました。海外から一日に一万個郵便が送られてきて、例えばピーナツバターの瓶の中に、一番真ん中のところに麻薬が仕掛けられている。それも、少量ずつたくさん送られてくるんですね、どれかがパスすればいいと。だから、抜き取り検査なんかではなかなか難しいので、百五十人ぐらいの職員の方でやっていますが、本当に大変です。
麻薬あるいは銃器、これが日本の中にも随分なだれ込んできています。国際化の時代ですから、大量に海から来るとか何かというだけじゃなくて、あらゆる手段を通して来ていまして、組織的犯罪もふえておりますし、これを何とかしなければならないというものもございます。それから、地域における犯罪というものも非常にふえていまして、国民は非常に生活上不安を強く覚えています。
こういう問題に対して、警察当局としてきちっとやってほしい、警察体制の強化をもっとしてほしい。財政難はわかりますが、国民から税金をいただいているのは、安心して暮らせる社会を提供するというのが税金をいただくかわりの政治の責務だと思うんですが、その責務がだんだん果たせなくなってきているんですね。
麻薬あるいは銃、そして地域社会における生活の安全というものを確立するために警察のさらなる体制強化というものが求められておりますが、大臣所信に述べられている背景をお伺いしたいと思います。
○佐藤国務大臣 お答えを申し上げたいと思います。
今先生が御指摘のとおり、密輸の摘発につきましては、覚せい剤を乾燥シイタケの乾燥剤に偽装したり、覚せい剤水溶液をシャンプーの容器に隠匿するなど、大変巧妙化をしてきております。警察では、不正薬物やけん銃等の密輸阻止に向けまして、税関、海上保安庁及び民間団体等の国内関係者と緊密な連携を図っているほか、海外の捜査機関とも情報交換を行うなどして密輸取り締まりに当たっているものと伺っております。今後とも、巧妙化する薬物、銃器の密輸密売事犯の取り締まりを強化するよう警察を指導してまいりたいというふうに思っております。
また、御指摘にございましたように、国民生活の安全確保というのは政府にとって重要な課題であるというふうに思います。警察といたしましては、平成十年度から二十年度までの間に、交番機能の強化やパトロール活動の強化等のための地域部門の警察官を約六千八百人増強してきました。二十一年度の予算におきましても、子供と女性を性犯罪の被害から守るための体制強化等のために、全国で九百五十九人の地方警察官の増員を盛り込んでいるところでございます。
他方、国民生活の安全を確保するためには、ひとり警察だけが取り組むだけではなくて、民間の活力を利用することも重要であるというふうに考えております。このため、警察では、地域住民に対する犯罪情報等の提供、そして地域安全安心ステーション推進事業による防犯ボランティア団体へのパトロール用品支援など、地域社会の防犯、犯罪抑止活動の促進にも努めてきたところでございます。
さらに、警察官OBを交番相談員として活用を推進するなど、OBの活用にも努めてきたとともに、再任用制度につきましては、ベテランの技能、経験等の有効活用を図ることができることから、その積極的な活用に取り組んでいるところでもございます。
今後とも、治安情勢等の変化に応じて警察職員の効率的な配置、運用に努めるとともに、さまざまな取り組みを行いまして、国民生活の安全確保が図られるように警察一体となって頑張ってまいりたいと思います。よろしくお願いいたします。
○大畠委員 以上で質問を終わります。
○渡辺委員長 答弁漏れがありました。
○佐藤国務大臣 失礼いたしました。済みません。十二年というのを十年と言いまして、申しわけありません。十年を十二年というふうに訂正させていただきます。
○渡辺委員長 訂正させてください。
次に、泉健太君。
○泉委員 民主党の泉健太でございます。
きょうは、幅広い内閣委員会でありますけれども、特に小渕大臣に対しまして、少子化対策について、大臣所信への質問をさせていただきたいと思います。
まず、小渕少子化担当大臣におかれましては、第二子の御妊娠ということで、おめでとうございます。いろいろな意味で、少子化が今大変注目を集めているところでありまして、我々としても、民主党としてもこの政策には一番に取り組んでいきたいという気持ちを持っておるわけですが、まず、大変恐縮なんですが、ちょうど九月に御出産の御予定だというふうなことをお伺いしておりますが、いわゆる産休をおとりになるおつもりがあるかどうか、お答えいただけますか。
○小渕国務大臣 お答えをいたします。
産前産後のお休みのことを指しておられるのかと思いますが、産後は、さすがに少しはいただかないと子供を産めないものですから、いただかなくてはならないと思っておりますけれども、産前に対してどのくらいお休みをいただくかというと、現段階では正直まだ考えてはおらない状況でありますし、政治状況もありますので、なかなかお答えするのが難しい状況であります。
しかし、官房長官初め多くの方々からの御理解もいただいていますし、やはり今、少子化担当大臣として、いろいろな方に産前産後のお休みはしっかりとってくださいということも申し上げていますので、そうしたこともすべて総合的に考えながら検討したいと思っております。
○泉委員 もちろんこれは個々人の体調にもよるものがあるとは思いますが、我が国は、産前であれば六週、四十二日前から休暇をとれるわけですし、産後も基本的には八週、五十六日間とれます。女性からの申し出があれば、産後については六週で仕事に復帰をすることも、医師の承諾を得てできるということになっております。
確かに、理想を言えば、仕事というものは継続的に見てもらう中で評価をしていただくものであるでしょうし、そういう中で、当然女性においては妊娠、出産というものがあることを前提に正当な評価を受けなくてはいけないというふうに私は思っております。ある意味、大臣は立派に職務を果たしてこられて、恐らくこれからも間違いなく国政で御活躍をされるというふうに私は思っておりますので、そういった意味で、堂々と、とるべきものはできる限りとっていただければというふうに思います。とはいえ、政治状況もちょうど大変難しい時期でありますので、そこはぜひ前向きにまたお考えをいただければということをお願いしたいと思います。
もちろん、民主党としても、さまざまな国会議員あるいは大臣が出産を経験されるということは、今後の日本ではそう珍しくないことになっていかなくてはいけないとも思っておりますので、そういうところもしっかりと、我々民主党の側からも、政治家、政治という仕事をしている方々のいわゆる産休ということについても前向きに考えていきたいということをまず申しておきたいと思います。
ところで、そういった意味で、現職大臣としては初めての御出産、日本ではそういったことでありますが、これも、そもそも我が国に若い国会議員がこれまで余りおられなかったということが大きいのだと思います。大臣が就任されて特徴的なのは、ゼロから考える少子化対策PTというものをつくられる中で、当事者目線からということをおっしゃられた。私は、それは非常に大事だというふうに思っております。
その意味で、実は象徴的なことを一つ申し上げれば、これまで政府は一貫して少子化対策というネーミングでこの施策をすべて行ってきているというふうに私は思うわけです。少子化社会対策基本法というものが平成十五年にできまして、これは議員立法ですけれども、その後、翌十六年には少子化社会対策大綱、そしてまたその年の十二月には子ども・子育て応援プランというものができております。
改めてこの少子化社会対策基本法というものをちょっと読んでみますと、一部ですけれども、「我が国における急速な少子化の進展は、平均寿命の伸長による高齢者の増加とあいまって、我が国の人口構造にひずみを生じさせ、二十一世紀の国民生活に、深刻かつ多大な影響をもたらす。我らは、紛れもなく、有史以来の未曾有の事態に直面している。」ということで、「社会の根幹を揺るがしかねない事態」「我らに残された時間は、極めて少ない。」というようなことがもろもろ書いてあるわけですね、これは少子化社会対策基本法の前文でありますけれども。
しかし、私もある意味当事者の世代として、今小さい子供が三人おりますけれども、ここで言っている「我ら」というのは果たしてだれのことを指すのだろう、言ってみれば、この前文は、正直言いますと、私たち世代に本当に響いてくる文章なんだろうかというふうに感じるわけです。ともすれば上の世代からの目線で、また日本社会、政府からの目線であって、子供を産もうとする立場、あるいは結婚しようという立場の方々からの目線だとは正直ちょっと思えないわけですね。
それはやはり、国の危機だから少子化対策を行うべきだということが前面に立っているからだというふうに思うんです。人口構造を変えるから、国民生活に影響をもたらすから、こういう切り口から実は少子化社会対策基本法というものができてきているんだと。やはりそれが大綱においても反映をされてここまで来ているわけですね。
あらゆる政府の施策には、少子化対策あるいは少子化社会対策ということで位置づけられております。この少子化対策、その意味では、小渕大臣が今回ゼロからのプロジェクトチームを始められるときも、まさに少子化対策ということの名前が入っておりまして、ゼロから始めるのであれば、それこそ子育て支援だとか、あるいは産み育て支援だとか、あるいは、先ほど別な方の質疑でおっしゃられましたけれども、若者全体に対する支援ということの中で結婚や出産が位置づけられるべきもの、あるいは世代間格差を是正していくということでなくてはいけないんじゃないかなというふうに思うわけですが、この少子化対策という言葉について、私はぜひ見直していただきたい。
まさにゼロから考えるプロジェクトチームの中で、そもそもこれは次の大綱策定に向けた動きですね。ということで、やはり次の大綱では少子化対策という言葉そのものを再考していただきたいというふうに私は思いますが、いかがお考えでしょうか。
○小渕国務大臣 少子化対策と称することについての御指摘かと思います。
先ほど委員からの御指摘もありましたように、これは平成十五年に議員立法により制定された少子化社会対策基本法に基づき少子化対策という言葉を使っておるところでありますけれども、委員の問題意識も、私自身、十分によくわかるところであります。
私たちの世代、産み育てるまさに現役世代の目線というよりは、日本社会や政府の上から目線ではないかというようなお話がありました。確かに、国の危機だから、あるいは社会保障が維持できるのかとかいうような経済的側面、そうしたところから、どちらかというと少子化は議論されることが多く、もちろんそうした観点も十分に考えていかなければならないことかもしれませんけれども、私は、少子化対策というのは、そうした視点以上に、今この国において、子供を持ちたい、二人産みたい、そういう希望がかなえられない国であるということを大きく問題だととらえ、それを何とかしていくということが今の少子化対策における大事なことなのではないかというふうに思っております。
ですから、昔のように、少子化対策といっても、決して産めよふやせよということではなく、皆さんの希望が実現するような世の中をつくるための少子化対策であらねばならないという問題意識でおります。
委員の御指摘の、少子化対策という言葉ではなくて、子育て支援や産み育て支援という言葉を使ったらどうだろうかということでありましたけれども、まさに妊娠、出産以降の支援をしっかりしていくという面では、どちらかというとこの言葉の方がマッチするのではないかということを私自身も思うわけであります。しかし、今の少子化対策は、妊娠、出産以降の支援だけでなく、結婚ですとか、その前の若者の自立支援ですとか、随分と幅が広くなってきた少子化対策になってまいりましたので、現在ではなかなかすべてにおいてマッチする言葉というものが見つからず、少子化対策ということで進めさせていただいている次第であります。
○泉委員 お考えは一緒で、ただし、恐らく、今まで使ってきた言葉が少子化対策だからということでしかないんじゃないかなと私は思っておりまして、やはり言葉というのは、特に抽象的なというか、少子化対策という大きなものを包括するような言葉というものは、余りそれにこだわっていても仕方がないのかもしれませんが、しかし、大もとに来る言葉というのは非常に大事であります。
私も先ほど指摘をしたように、子育て支援、産み育て支援というもの、また、それよりも以前の段階の若者支援、あるいは世代間格差の是正ということをもっと真剣に打ち出さないと、大もとが少子化対策ということで位置づけられている以上、先ほども申しましたが、少子化社会対策基本法の中で「我らに残された時間は、極めて少ない。」というふうに書いてあるわけですが、これは恐らく、大臣もそうですが、私たち世代にとっては、余り関係のないことというか、何をそんなに世の中、私たちに向けて焦りのメッセージを送ってきているんだと。それよりも、私たちが当たり前に結婚や出産や恋愛ができるような社会にしてこなかったのはあなたたちでしょうということ、余り世代間対立を言ってはいけませんけれども、本音は私はそこだと思うんですね。まさにそれは、小渕大臣が今後のプロジェクトチームの中で当事者目線ということをおっしゃったところは、私は本音はそこにあるんだというふうに思っております。
といいますのも、今回、経団連の方もいわゆる少子化対策への提言というのをされました。少子化対策を国の最重要課題と位置づけられるということで、今回、子ども・子育て応援プランがまたことし改定時期を迎えるので、それに合わせて経団連はこういった提言を発表したということなんですが、経団連の方も、実は、明確に少子化対策というところで銘打ってやってきているわけですね。その考え方というのは、ともかく労働力が必要だから、ある意味、女性の皆さんには、労働力が必要だから社会に出ていただかなくてはならない、そのために保育所をふやすべきだ、こういう論理展開になっている。
私は、これは実は経団連の方に直接申しましたが、いかがなものかと思っているんです。視点はそうじゃないですよ。そんなことで幾ら我々をたきつけたって、若い世代は応じませんよ。その静かなる抵抗が、非正規であったり、フリーターであったり、引きこもりであったり、いろいろなことに実はあらわれているんじゃないですかと。静かなる抵抗ですから、別に明確に若い世代は声を上げたりしないかもしれませんが、実際、今こういう状況に若い世代が追い込まれているところもありますし、結果的には消極的選択をせざるを得ない状況に来ているというふうに思います。
大臣は、さまざまな経済団体の幹部や関係専門家の皆さんともたくさんお話をされることが多いと思いますので、ぜひ、この少子化対策という言葉そのものの使い方を、今後も引き続きやっていっていいんだろうか。それは、これまで長く使ってきた経緯がありますから、なかなかこれを変えるというのは大変だということは予想はされるわけですが、やはりそうではなくて、抜本的に価値観を変える、当事者目線に変えるという意味で、恐らく、本当に二十代、三十代は、少子化対策だから子供を産もうなんという人はいないですよね。ですから、そういった意味で、少子化対策という言葉を私はまず改めていただきたいというふうに思います。これをぜひ今後御検討ください。
そして、続いてでございます。小渕ビジョンというものが出されております。一から五までありまして、「「家庭」も「仕事」もあきらめない。」「妊娠・出産・育児の不安を払拭したい。」等々ございますけれども、その中に「児童手当など子育てへの経済的支援の充実を目指す」ということがございます。
今回、二次補正とかでも子育て支援の特別手当のようなものが出されたりということでありますけれども、今、現状の児童手当については月額五千円あるいは一万円という形でございます。例えば所得制限への考え方等々を含めて、小渕大臣は、理想とする児童手当、子供手当の水準というものをどのように考えられていますでしょうか。
○小渕国務大臣 児童手当だけに限らないことでありますけれども、私自身は、今、この国が子供にかける予算というものは大変少ないと思っておりまして、もっともっと、将来への投資として、子供たち、また若い人たちに投資をしていかなければならない、予算を使っていかなければならないのではないかと考えています。しかし、やはり決められた、限られた財源でありますので、ある程度の枠組みの中で話をしていかなければならない。しかし、そうしている限り、なかなか新しい案も出てこなければ、前にも進んでいかないのではないかと考えています。
そうした中で考えたのがこの小渕ビジョンでありまして、これまでの政策や財源の枠組みにとらわれることなく、少子化の流れを反転させるために何をしなければならないかということで、思い切った少子化対策ということでこのビジョンを出させていただきました。
児童手当の理想的な水準というお話でありますけれども、これまでも政府は順次児童手当の拡充をしてきたところでありますけれども、こちらにつきましても、諸外国に比べますと、支給額の面でも、対象年齢、所得制限、そうした面でも見劣りがするというのが現状であります。
どのくらいの水準が理想かということでありますが、理想を言わせていただくのであれば、やはり多ければ多いほど受給者としてはうれしいことではありますし、担当大臣の私としても、できるだけ多く支給したいという気持ちがあります。ただ、余りにも非現実的なことを言っていてもいけませんし、また、児童手当だけを拡充することで少子化に歯どめがかかるものでもなく、また、少子化に対してはさまざまなニーズがありますので、そうしたものには総合的に、またバランスよくこたえていかなければならないのではないかと思っております。
こうした小渕ビジョンにつきまして、各項目を今プロジェクトチームにて議論しているところでありますので、目指すべき児童手当の水準についても検討していきたいと考えております。
○泉委員 今回、先ほど申しました経団連の政策提言の中でも、これは小学校卒業まで子供一人当たり一律二万円の支給を求めるということが書かれております。
私たち民主党は、中学校卒業まで月額二万六千円ということを今訴えておりまして、これは、子供を育てるに当たって、もちろん年齢によって多少の差はあるんですが、十八歳ぐらいまでの平均で考えたときの月平均の子供に対する支出というものが約二万六千円だというところから、民主党はこの月額二万六千円という政策提案を今させていただいているわけですけれども、今ほど小渕大臣がおっしゃった現実ということをあわせて、この民主党案についてはいかがお考えでございますか。
○小渕国務大臣 民主党案の二万六千円の子ども手当についてということでありますけれども、少子化を考える上で、経済支援はやはり物すごく大切なことであると思いますし、より拡充をさせていかなければならないと思っております。ですから、この月額二万六千円につきましては、大変インパクトも大きいですし、個人的には大変充実した制度であるというふうに思っております。しかし、この具体的な、例えば財源をどう確保するですとか、民主党の子ども手当以外の部分の全体像を正直十分に理解をしておりません。
子ども手当は単純計算で五・六兆円かかると言われております。全体の民主党がかけようとしている子供に対しての予算というものがどのくらいのレベルなのか。例えば、十兆円規模でおやりになるということであれば、その半分をこの子ども手当にお使いになるということであるかと思うんですけれども、やはり子ども手当以外にも、保育の充実ですとか、ほかにもいろいろなニーズがある中で、五・六兆円という大変な額を子ども手当だけにするということに関しては、私自身はもう少しバランスよくしたらよろしいのではないかと思いますし、実際、今の二十一年度の少子化対策の予算は国だけで一・六兆円で、この五・六兆というのは三倍以上にも上るわけであります。
そうしたことを考えたときに、全体を考えたときに、正直申しまして、この二万六千円については、責任を持って評価をさせていただくことはちょっと難しいかと思います。やはり総合的な少子化対策というものが何よりも必要だと考えております。
○泉委員 個人的には御評価をいただきながら、しかし、現実的にはというようなお話がございましたけれども、まさに大臣がおっしゃるように、今日本の少子化対策に係る予算が、規模そのものが大変小さいわけでして、これを大がかりに変えなくてはいけないということが以前から言われているわけですね。しかし、なかなか進んでこなかったわけですし、これは単純に言うと、子育て支援、ばらまき政策みたいな話ではなくて、私は一つの経済政策でもあると思っております。
これだけ富の偏在が特に世代間で顕著な状況の中で、やはり再配分機能を高めていかなくてはいけないということ、あるいは富の移転、こういったものを考えていかなくてはいけないと思っておりまして、その意味で、ある部分、若い世代に自由に使えるお金がなければ、可処分所得がなければやはり消費も伸びないというふうに思っておりまして、経済政策という面からしても私は非常にこれはやっていただきたい、いや、やっていただきたいじゃなくて私たちがやるべきだと思っておりますので、ぜひ政府の方も、もっとこの子供手当については積極的な案を出していただくということを私はお考えいただきたいというふうに思います。
ほかにも問題がございますので、次に参りますが、今、高齢出産ということが随分と問題になっております。それにあわせて不妊治療のことも脚光を浴びておりまして、プロジェクトチームでも、たしかつい先日、その勉強会が行われたということでありますが、いわゆる高齢出産がリスクが高いということについては、既に産科婦人科学会の方が、一九九二年ぐらいですか、一応学会の中で定義づけをされまして、高年初産婦というものを三十五歳以上と位置づけて、これは医学用語の中でですけれども、要注意妊婦であると。さまざまな異常ですとか障害のケースがどうしても高まってしまうということが位置づけをされております。
こういったことから考えると、基本的には出産をする時期というものは当然個々人の選択によるものなんですが、しかし、母体の安全という面からして、私は、出産適齢期ということも今後少子化施策の中で何か考えていかなくてはいけないのかなというふうに思うわけですが、現在のところ、政府ではどのような議論を行っていますでしょうか。
○小渕国務大臣 なかなか難しい御質問でありまして、出産適齢期といいましても、やはりそれは個人の体質や体力の違いもありますし、それぞれの事情や人生設計などがさまざまであることから、一概に、出産適齢期に出産してくださいということを政府として言うことができないというのが現状であります。
しかし、加齢に伴い妊孕性が著しく低下をすること、また、御指摘のように大変リスクが高まっていくということは事実でありますし、少子化の要因の一つとして晩婚化というものがありますので、このあたりについてはやはり重く受けとめていかなければならないと思っております。
先ほど御紹介いただきましたPTの中で不妊治療を取り扱った際に、私自身大変大きな問題だと思いましたのは、やはり女性は三十五歳を過ぎてから妊孕率が大変低くなってきます。そのことについて、知らなかったという女性が大変多いです。二十代後半から三十代に結婚された方々でも、自分は幾つになっても妊娠できるという思いの中でキャリアアップをまず最優先してきた、実際に自分が三十五歳を過ぎて、妊娠がなかなかできないんだということに改めて気がついた、そうした情報をどこからも聞くことができなかったし、そういう認識を持ったときにはもう既に遅かったというような声もある中で、加齢と妊孕性などに関する情報をしっかり集めて、また、積極的に提供や発信をしていく、そうしたことを前向きに考えていかなければならないと思っております。
○泉委員 実は、参議院の少子高齢社会への対応のあり方についての調査会というものがございまして、ここで三年間にわたって調査研究が行われて提言が出ているんですね。その提言の中でも、「妊娠・出産には適齢期があることの医学的事実を社会に広く伝えていくことは、女性の健康や生まれてくる子どもの福祉のためにも是非とも必要なことである。」というようなことが書かれておりまして、こういった、「妊娠・出産適齢期についての健康教育を早い時期から推進するとともに、」という最終報告も出ております。
ぜひとも、政府としてもこういった取り組みをしていただきたいし、私は、今ほど大臣がおっしゃったキャリア、このキャリアが、これまでは、経済的価値観を優先された、あるいは労働力としての価値観を優先されたキャリア形成が当たり前のように、それが前提になってしまっているんじゃないのかなというふうに思っておりまして、やはりそれそのものもぜひとも見直しをしていけるような踏み込んだ議論を行っていただきたいということもお願いをしたいと思います。
そして、続いての問題なんですが、いわゆる一人親家庭等への自立支援でございます。これも小渕ビジョンの中に入っておりますが、私がここで一つ取り上げたいのは、きょう資料でお配りをしておりますが、これは我が党の参議院議員の島田智哉子さんが民主党として調査をされたものなんですが、父子家庭に対する手当等が今、母子家庭に比べると大分格差がある。
しかし、時間がないので簡単に申しますと、父子家庭であっても、低所得、非常に困難な生活環境に置かれている方があるのは当然のことでございます。今まで政府は、平均年収ということで父子家庭と母子家庭を分けて考えてこられました。平均年収、単純に言えば、母子家庭の方では約二百万台、父子家庭では四百万台。しかし、これはあくまで平均のマジックでありまして、私たち政治家はその平均のマジックにとらわれてはいけない、個々個別の状況を見ていかなくてはいけないと考えれば、これは当然、低所得の父子家庭に対しても、例えば児童扶養手当の支給ができるように児童扶養手当法の改正をしていかなきゃいけない。
小渕大臣のもとにもメールをしましたという方から私にもメールが来ております。東京在住の方ですが、昨年、妻は第二子を出産直後に容体が急変し帰らぬ人となりました、幸い生まれた子供は元気に育っており、四月から保育園の入園が決まりました、共働きだった我が家は互いの実家は遠く、祖父母は高齢であるため、これからは夫である私が働きながら保育園児の二人を育てていきます、世帯収入は以前の四割程度に減少しましたということで、この方もまた、児童扶養手当について何とかしてくれないかと。母子家庭はもらえるけれども父子家庭は一律もらえないというものは何とかならないのかということを切実に訴えられております。
小渕大臣、この件について、もちろんこれは厚生労働大臣ということになるんでしょうが、ぜひ私は小渕大臣の側から厚生労働大臣に対しても強く要請をしていただきたいと思うんです。
きょうお配りしている資料、囲みで資料三という横書きの紙がありますが、この真ん中ほどに、「母子・父子世帯の年間就労収入の構成割合」というものがあって、父子家庭、サンプルは少ないですが、二百万以下の父子家庭は一五%、三百万以下を見ると三五%ぐらいになる。そして、四百万未満は五四・七%という数字が出てございます。
小渕大臣、そういった意味で、ぜひ私は厚生労働大臣に要請をしていただきたいと思いますが、いかがですか。
○小渕国務大臣 今御質問をいただいた件につきましては、私も委員と問題意識を同じくしております。
これまで、父子家庭の平均年収が母子家庭の二倍となっていることを理由に、一律に父子家庭を除外しているということでありますけれども、父子家庭の中には、今お話がありましたように、低収入の中でぎりぎりの生活をされている方々もおられますし、また、女性に比べると家事や育児になれない中で大変な思いで子供を育てている方々も大勢おられるのではないかというふうに思います。
今いただいた資料でも、自治体によってはこうしたことをやっているというお話もありましたし、また、最近では、父親の子育てを支援するNGO法人が、低所得の父子家庭を支援するための基金を設置するなどという動きも出てきておるわけであります。こうした動向を踏まえつつ、児童扶養手当の父子家庭への一律適用除外について、私自身、見直す必要があるのではないかと考えておりますので、厚生労働大臣にもそのように訴えてまいりたいと考えております。
○泉委員 ありがとうございます。
きょうはたくさん前向きなお答えをいただきました。これからの御活躍と無事の御出産をお祈り申し上げますとともに、政権がかわっても少子化対策はさらに充実するということを最後に申し上げて、私の質問とさせていただきます。
ありがとうございました。
○渡辺委員長 次に、市村浩一郎君。
○市村委員 民主党、市村でございます。三十分いただきまして、また本日も、NPO、そして公益法人制度についての議論を深めてまいりたいと存じます。
本当に久しぶりの質問の機会でございますけれども、国政についていろいろあるにせよ、私は、こうして委員会を、もっと例えば小委員会を活用するとか、どんどん開いていただいて、もっと議論が立法府で深まるようにしなければならないと思っています。ぜひとも、そういう国会の仕組みにしていかなくちゃいけないと私は思います。
さて、まず大臣、大臣がいいのか、あれなんですが、昨今いろいろ話題になっております日本漢字能力検定協会というのがありますけれども、これは財団法人です。新制度においては、こういう団体というのはどこにカテゴライズされるんでしょうか。
○原政府参考人 漢字検定協会の関係でございますが、現在のところ、旧の民法法人、ですから今の段階では特例民法法人という形になっておりまして、仮に、その団体がどういう形でこれから申請を出してくるか、出してこないか。五年間の間に新しい公益法人の申請を出してくるか、それとも一般法人ということで、その場合には公益目的支出計画の認可という手続が必要でございますので、そういう形で出してくるか、それとも解散を選ぶか、それは法人の判断ということになろうかと思います。
○市村委員 私がお尋ねしたいのは、今あえて一般法人か公益法人かとおっしゃいましたが、今回の制度は、一般社団、財団法人制度及び公益社団、財団法人制度なんですが、日本漢字能力検定協会、今財団法人なんです。では、今度の新しい制度では、一般とか公益問わず、社団なんでしょうか財団なんでしょうか、どっちでしょうか。
○原政府参考人 通常の場合には、現在の法人形態によって出てくるのではなかろうかと思います。
ちょっと私、今手元に資料がないんですが、仮にここが財団であるとするならば財団という形で、どちらか出てくるんじゃなかろうかと思います。
○市村委員 ならば、問いますが、財団とは何ですか、社団とは何ですか。
○團藤政府参考人 お答え申し上げます。
社団、財団の定義だろうと思いますが、講学上、社団につきましては、一般的に、人の集合体でございまして、団体としての組織を有し、その団体自体が社会上単一体としての存在を有するものというふうにされております。
また、財団でございますが、これにつきましては、一定の目的のもとに結合されております財産の集合をいうというふうに講学上されておるところでございます。
○市村委員 そもそも旧制度でも財団、社団というのは何なのかということがいろいろ疑問があったわけですけれども、今の話で、恐らく財団は財産に対する集合体。でも、たまたま今日本漢字能力検定協会だけ挙げていますけれども、そのほか、例えば事業型のNPO、こういう、今挙がったような名前のところも含めて、そもそも事業型のNPOは一体どこにカテゴライズされるのか、これは社団なのか財団なのか、非常にあいまいなところもあるんですね。
では、今の話だと、日本漢字能力検定協会は別に社団でもいいんでしょうか。今たまたま財団だから財団になるんじゃないかとおっしゃいましたけれども、社団でもいいんでしょうか。
○團藤政府参考人 社団と財団につきまして、組織変更というものは認められてございませんので、要件を満たせばどちらかということになろうかと思っております。
○市村委員 諸外国で、日本みたいに法人が社団と財団にしか分けられない国というのはほかにありますか。
○團藤政府参考人 諸外国の社団と財団の区分についてのお尋ねだろうと理解いたしますが、そもそも、一口に社団あるいは財団と申しましても、諸外国の制度を考察いたします際には、法制度によりまして、民事上の法人格を付与される団体という意味での社団、財団という区分と、それから、税法上の恩典が認められる団体という意味での社団、財団という区分があり得るということに留意をする必要があろうかというふうに考えてございます。
私ども法務省は、民事基本法制を所管する立場でございますので、以下、民事上の法人格の付与という観点からの区分という意味での社団、財団の区分について、諸外国の状況も含めて御説明申し上げたいと思います。
法人法制の歴史をひもといてみますと、人類の社会生活は、いかなる時代……(市村委員「済みません、短くしてください。ただ、あるのかないのかを聞いているだけです、日本以外あるのかないのか」と呼ぶ)ございます。
○渡辺委員長 簡潔に願います。
○團藤政府参考人 日本は大陸法制に依拠してございますので、大陸法の国はそういう区分をとってございます。
○市村委員 もう一度。具体的にどこの国か教えてください。
○團藤政府参考人 現在、すべて詳細な資料を手元に持っているわけではございませんが、ドイツ民法、フランス法などでは社団、財団の区分を設けているというふうに承知してございます。
○市村委員 いや、私が聞きたいのは、社団と財団の区分を持っているということじゃなくて、法人が社団と財団にしか分けられないという国はあるんですかと聞いているんですよ。区分を持っているか持っていないかは、もちろん区分はありますよ。当然、アメリカだってあります、アソシエーションとファウンデーションとかの違いは。
だから、それを言っているんじゃないんです。そもそも法人を社団か財団かに分けてしまっている国はありますかと聞いているんです。そこだけで議論をしている国はありますかと聞いているんです。
○團藤政府参考人 我が国で法人格が付与されておりますものに、大きく社団法人、財団法人があるわけでございますが、これは、社団だから法人格が与えられている、財団だから与えられているというわけではございません。一定の手続要件を満たしたものに法人格を付与しているわけでございまして、諸外国においても同様だろうと考えてございます。
○市村委員 私の質問に答えていただいていません。
私はきのうも大分若手の皆さんと議論をさせていただいたんですが、そもそも、私の理解では、別に諸外国の例を挙げるまでもなく、素直に考えた場合、法人というのは営利法人と非営利法人にまず分かれる。これが素直なんですね。つまり、営利かNPOかに分かれて、NPOの中で公益性を持つものと持たないもの、持たないものは例えば共益と呼んでもいいと思いますけれども、そう分けていくのが素直なんです。そうなんです、素直なんです。
今回、日本はそうしていない。だから、そういうふうに、普通だったらそう分けているはずなんですけれども、ほかに日本以外に、こういう体系を持たずに、例えば、民法の議論も後でしたいんですけれども、民法三十三条二項には非営利は位置づけられていませんが、こういう国はほかにありますかということをお聞きしているんです。こういう法人体系を持っている国はほかにありますかと聞いているんです。
社団、財団の分け方はどこでもありますよ、それは当然。そういうことを聞いているのではなくて、そもそも法人が営利、非営利に分かれていない、そういう体系化されていない国はほかにありますかと聞いているんです。
○團藤政府参考人 お答え申し上げます。
手元に諸外国のすべての資料があるわけではございませんので、若干不正確なところは御容赦いただきたいと存じますが、委員御指摘の営利、非営利というのは、多分、講学上の分類概念だろうというふうに考えてございます。
組織的に財団がどういう組織であるのか、どういう組織についてどういう手続で法人格を付与するのかという観点からいきますと、先ほど申し上げましたように、私どもの民法は大陸法由来でございますので、大陸法の国々では同様の制度となっているのではないかと推測いたしております。
○市村委員 では、もう一遍。社団は英語で何と説明していますか。海外に説明するとき、社団というのは何というふうに訳していますか。
○團藤政府参考人 社団という言葉についての公定訳というのは現在まだ確定してございませんが、一般的には、社団という部分については、アソシエーションという英語が使われることが多いのではないかなというふうに理解してございます。
○市村委員 アソシエーションといったときに、恐らく、普通に素直に頭の中に浮かぶ存在というのは親睦団体ですよね。メンバーシップで会費を払って、そしていろいろな親睦を深めていくということが多分普通に想起されるんじゃないかと思います。
今回の新しい新公益法人制度では、公益社団法人というカテゴリーがあるんです。社団というのは公益法人であることは私はわかります。社団も公益法人になり得るというのはわかりますが、今回の公益社団法人というのは、それはすべて、すべからく特定非営利活動法人になり得るんですね。すなわち、具体的に言いますと、その社団に対して寄附をした場合に、その寄附は控除できるんです。ですよね。社団形式が公益と名乗ることができた場合、寄附控除ができるんですね。
こういう制度を持っている国はほかにありますか。つまり、アソシエーションに対して、親睦団体に対して寄附をしたらそれは寄附控除できる、そういう制度を持っている国はほかにはありますか。
○古谷政府参考人 お答えをいたします。
まず、我が国の方でございますけれども、社団、財団が何かということにつきまして税務当局の方からお答えする立場にはございませんが、現行の我が国の税制上は、その団体に関します民法等の各種の法令の体系を前提といたしまして、特定の法人に対する寄附について優遇措置を講ずるということになっております。
その際に、非営利、営利というお話がございましたけれども、公益性の高い事業が行われることということが条件になっておりまして、新しい公益法人制度のもとにおきましては、そういう意味では、公益社団法人、公益財団法人の区別なく、公益認定を受けられた団体に対しては寄附優遇をするという仕組みになってございます。
外国でございますけれども、それぞれの国の法人制度自体が異なっておりますので、日本とどこが同じかというのをなかなか比定するのは難しゅうございますけれども、同じように公益性のある団体について寄附優遇をしているというのは、どこの国でも考え方は同じではないかというふうに認識しております。
○市村委員 これは難しいんですよね。例えば、親睦団体でも事業をやっているという団体がありますよね。社会のためにみんなが集まって、何か社会に貢献しようという団体。今でいえば日本青年会議所さんとかもそうじゃないかなという気はしていますが。今、日本青年会議所さんは社団ですよね。
では、今度の新公益法人制度では、例えばこういう団体は、結局、公益社団法人という形でカテゴリーの中でくくられるということでよろしいんでしょうか、こういうのは。
○原政府参考人 社団というのは、いわゆる人の集まりということでございますが、大きく二つあろうかと思います。いわゆる業界団体、互助会団体等の共益的な団体。それともう一つは、人の集まりであるんですけれども、その専門的な知見を活用して、その集団以外の不特定多数の者の利益の増進を目指すもの、これがあろうかと思います。
個々具体のケースにおきましては、委員御案内のとおり、有識者から成ります公益認定等委員会の方で公益性の判断を行うということになっておりまして、具体的な法人がどうなるかということについては、ちょっとお答えは差し控えさせていただきたいというふうに思います。
○市村委員 また、つまり社団にも二つあるという形になってきましたが。
例えば、今回の新法人制度で聞きますと、社団、財団にこだわらず、内部留保を余り認めない、どうもこういう基準があるようなんですね。でも、例えば事業型の、事業を行っていくような団体である場合は、ある程度の資産規模を持っていないと永続性がなかなか難しいですよね。法人としてなったとしても、ある程度の内部留保を持っていかないと、永続性を、つまり活動を維持して発展させていくということにはやはりある程度の内部留保を持たないかぬ。でも、一方で、そういう団体は内部留保はなるべく持つなという話になっているんですよね。内部留保は持つなと。まず、そこについてちょっと説明いただけますか。
つまり、内部留保を持たないと、ある程度の資産規模を持っていかないと組織を維持発展できないんですよ。けれどもそれはやるなという話を、私は今、一般的にそういう話になっていると聞いていますけれども、いかがですか。そうじゃないんですか。
○原政府参考人 現在の法律の中では、年間の活動費、事業費見合いの分まで遊休財産という形で持つことが認められております。逆に、それを超えた場合には認められない、遊休財産規制に反するということになります。
ただ、遊休財産になるのは、本当に何の目的もない財産ということでございまして、一定の事業目的に充てるということが予定されている財産、これは遊休財産の中から外されるということになります。
○市村委員 ということは、活動目的がしっかりしていれば、もう幾らでも資産はふやすことができるということでいいんですね。常にある程度、これは将来、十年後、二十年後もこの組織は続いていかなくちゃいけないんだから、その折に備えてきちっと資産を蓄え、力を蓄えていく、これはすべからくいいんですね。公益社団、公益財団を問わず、これはいいんですね。
○原政府参考人 その蓄えられた財産の使途がきちっと定められているかどうか、これが一つのポイントになろうかと思います。
ただ、個々具体の判断につきましては、これはまさしく認定基準の一つになっているものですから、公益認定等委員会の方で判断をしていくということになろうかと思います。
○市村委員 いろいろちょっとぐだぐだ言ってしまいましたが、何が問題かというと、一番最初にきょう議論したように、結局、社団形式か財団形式しかないというふうにカテゴライズしていることが問題なんですよ。
例えば、アメリカの寄附優遇がある団体のことは、大体、五〇一(c)(3)、そこには約百万団体登録をされています。そのうちに、そのカテゴライズの中に、実は社団形式はないんですよ。あるのは公共慈善団体、民間財団、多少その他。百万のうちの八十五万四百五十五団体が公共慈善団体、十万四千二百七十六団体が民間財団。これは二〇〇六年の資料だと思いますが、そういう状況なんですね。
すなわち、財団というのも、さっき一番最初に、漢検協会というんですか、これは財団といいますけれども、これは私、財団とは思わないんですね。こういうのは多分、言えば公共慈善団体だと思うんですよ。
財団というのはやはり、例えばアメリカでは、カーネギー財団とか、こういうのはプライベート財団ですよね。あと、リーバイ・ストラウス財団、これは企業財団。ヒューレット・パッカード財団とかいうのも、企業財団ありますけれども。それからコミュニティー財団。こういうのが大体財団ですよね。お金を、どんどん資産をふやしていって、それを、NPOを支援していこうとか、いろいろな社会貢献事業を支援していこう、これがやはり素直に財団なんですよ。ファウンデーションとしては素直なんですよ。
ところが、日本の場合は、漢検協会までが財団だったんですね。だから、これも問題だったから、新しい新法人制度ではそれも変えなくちゃいけなかったんですよ。でも、かつて財団と社団しか分けていなかったから、今回も財団と社団にしか分けていないんですよね。
でも、こういう事業型財団、例えば日本青年会議所さんの例を挙げましたけれども、多分、JCさんというのは単なる親睦団体ではなくて、社会貢献をしようという団体でいいと思いますけれども。でも、今の制度でも、例えば同窓会というのがありますよね。これは親睦団体ですよね。これも社団になっている場合があるんですけれども、本当にこれが公益社団になって、こういうものに寄附優遇を認めていいのかという話もこれはあるんですよね。だから、そういうことも結局詰めていないと私は思います。
だから、私は、さっきおっしゃっていただいたけれども、やはり法人体系というのは、まず、法人があったら、その法人は大きく営利か非営利に分かれる。そして非営利、つまりこれが本当のNPOなんですよ、このNPOの中には、公益性を求めるNPOと、共益性を求めるというか、共益のNPOがあるという話。
そうなってくると、その中で、そのカテゴライズの中でいろいろ税法上、アメリカはそうです、税法上カテゴライズしているわけですよ。税法上、こういう団体にはこれだけの税優遇を与えましょうと。中には、特に公益性の高いものには、五〇一(c)(3)ということで区切って、そこの団体になった場合は寄附も税控除できる。寄附をした場合、個人においては、日本でいえば所得控除、企業・団体においては損金算入できるようにということになるわけですね。
今回はそこが未分化で、結局、社団も財団も、要するに法人には注目しない、活動に注目するんだということで、多分、日本の場合は税優遇を与えるんだというふうに聞いております。
だから、それを聞けば、例の地域再生法のときもこの内閣委員会でも議論させていただきましたけれども、結局、日本は、NPOに対してすら寄附優遇が与えられていないのに、一般企業に対して、目的が正しいからといって、一般企業に対して寄附をした分を、そもそも一般企業に寄附をするということ自体が概念としてあるのか僕はわかりませんが、つまり、一般企業に対して寄附してもそれを税控除するという、私からすればとんでもない制度を実は入れているんですね。多分それをやったケースはほとんどないと思いますけれども、なるほどなと。
しかし、こんなことを、こんな未整理のまま話を進めていったら、本当に頭がぐちゃぐちゃになりますよ、一体何なのかと。だから、もうちょっときちっと整理をすべきことだと私は思いますし、やはり今の新公益法人制度というのは、私は、まだまだ法人体系においては大変不十分であると思います。
ただ、私がこの内閣委員会でも、これは八合目まで来たと評価しているのは税制なんですよ。すなわち、ある意味で言えば、公益社団法人にまでイコール特増にするというのは、これは思い切った話ですから、ここまで財務省も踏み切るのかというところでは、八合目まで来たというふうに私は評価をしているところなんです。
ただ、やはりそうはいっても、さっきの地域再生法にかかわって、いわゆる営利企業に寄附したのまで税優遇を与えるなんという制度まで行き着いてしまうような今の制度は問題があると私はやはり思わざるを得ないわけです。だから、これからはやはりもうちょっと整理した方がいいと思います。
済みません、公益認定等委員会にお聞きしたいんですが、今、ところで、新しい新公益法人制度になって、どこか一個でも認定されたところはありますか。
○原政府参考人 現在のところ、認定されたものはございません。ただ、先週金曜日、六日だったかと思いますが、五つの法人につきまして、これは認定と認可、両方でございますが、委員会の方に諮問がかかっております。
○市村委員 まだ認定はない、諮問がまずかかっただけで、認定はないということですね。
僕は、やはり公益財団法人についてもしっかりカテゴライズして、例えば、では日本漢字能力検定協会がもし申請していて、新しい財団にしてくれと申請していて、これを認めてしまうと、つまり、こういう事業型のまで財団だと、過去のいわゆる不備までをこの後新しい新制度に引き継いで、またそこで前例をつくっちゃうと、また、いや、これも財団なんだから私たちも財団でいいでしょうとまずなりますよね。今度は公益社団法人が特増ですから、すごいことですね。これも一つ前例をつくっちゃうと、またこれも、前例をつくったからそうだと。
やはりここは、まだ認定が、本当は認定がおりないのはおかしいですよ。だって、前、この内閣委員会で議論したように、五年間の猶予措置があるとはいえ、一週間に二十以上の団体を認定していかないと間に合わないんですよ。今の、既存の公益法人ですら、また新しく特例民法法人を変えていくだけでも、五年間で、一週間に二十ずつやっていかなくちゃいけないけれども、いまだに、三カ月たってもゼロでしょう。こんなスピードじゃとてもだめなんですけれども、しかし、幸いなことに一個もまだ認定していないというんなら、一遍、この財団、社団ということもしっかりと議論していただいた上で、本当はこういうのを公益委員会というところはやるべきなんです、こういう議論を。
過去の財団、社団が、旧民法にかかわる財団、社団が何か、いいか悪いかなんということをやるんじゃなくて、過去の清算をするんじゃなくて、本当は、公益とは何ぞや、社団とは何ぞや、財団とは何ぞやという、ここをきちっと議論していただいて、そしてきちっと概念を整理していただいた上で、ではこういうものにはこういう税優遇を与えましょう、こういう議論を本当はするところが、公益認定等委員会といいますけれども、僕は、これを公益委員会ということで三条委員会にして、独立機関にして、しっかりと議論をし、新しい、官製土壌を民製土壌に改めて、そして民の公のセクターであるNPOセクターをしっかりとつくっていくんだということになるべきだと私は思います。
大臣、今の議論を聞いていただいて、大臣の御感想をちょっとお聞かせいただけませんでしょうか。
○野田国務大臣 前回同様、市村委員は非営利法人制度に対して大変造詣深く、きょうも大変興味深く聞かせていただきました。
ただ、現在、百十年ぶりの抜本的な大改正をし、十二月から施行が始まったばかりでございまして、ぜひとも、私、担当大臣としては、この制度が、皆さんの御協力をいただいて円滑に適正な運営ができるよう頑張っていきたいと思っています。
また、それぞれ国によって、法人のあり方、今議論がありましたけれども、やはり歴史も違う、風土も違う、税のあり方や法律のあり方も違うということもあり、一概に日本の制度が諸外国に比べてこうだという言い方はちょっと困難ではないかなと思っています。
ただ、いずれにしましても、まだ四十八法人ぐらいですか、提出されて、法人がどうあるべきかということで、内部で今いろいろ一生懸命検討されていると思っています。また、委員会においても、公益性ということを踏まえて、財団、社団の別なく、公益の増進についてしっかりと取り組んでいきたいと思っていますので、今後ともよろしくお願いします。
○市村委員 大臣、まさに百十年ぶりの大改革だからこそ、根本的、抜本的改革をしなくちゃいけないということなんですね。
だから、このままいくとまた混乱を来します、間違いなく。これが何で社団で、これが財団で、何でこれが公益社団で、これが公益財団でと。何でこんなところに寄附優遇まで与えてしまうのということになりかねませんから、だからこそ、今ここで、一個もまだ認定していないなら、これ幸いと、認定する前にしっかり議論をすべきだということなんです。
最後にしますが、これはこの間も野田大臣とも議論させていただきましたけれども、実は郵政民営化の議論も、本当はここがちゃんとしっかりしていれば、株式会社じゃなかったんですよ。こうしたNPOセクターなんです、郵政なんて。僕の考え方。アメリカだったら年間二百兆円ですよ、NPOセクターのフローの流れたお金は二百兆円です。そのうちの百何十兆は医療ですけれどもね。つまり医療機関もアメリカではNPOなんですよ。
だから、こういうことも踏まえて、やはりしっかりと、私は、制度をもう一回しっかりと根幹から見直した上での、百十年ぶりだというのであれば、スタートにしなくちゃいけない、こういう思いで、きょうまた時間をいただきました。また来週水曜日も時間をいただく予定でありますので、よろしくお願いいたします。
終わります。どうもありがとうございました。
○渡辺委員長 次に、吉井英勝君。
○吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。
私は、以前は、急速真空排気とかスペースチャンバーにかかわる問題、そういう宇宙分野にもかかわる仕事もしておりましたし、久しく関心を持っておりますので、きょうは宇宙に関して質問したいというふうに思います。
前回もお話ししましたように、日本の宇宙物理学とか宇宙科学というのは随分大きな国際貢献をしてきているというふうに私は思っております。
そういう中で、昨年五月に、一九六九年の宇宙の平和利用に関する国会決議を実質的になきものにして宇宙分野への軍拡を進めていく、そういう内容を持った宇宙基本法がつくられました。この施行後、早速、昨年十一月二十七日には宇宙基本計画の基本的方向性というのが示され、ことし四月下旬には宇宙基本計画の案が出されるスケジュールになっておりますが、内閣官房の方では宇宙開発戦略専門調査会が置かれて、これまで五回の会合が開かれてきております。
一方、宇宙基本法を推進してきた防衛省の側の動きですが、独自に宇宙開発利用推進委員会を設置して、宇宙の軍事利用を具体的に進めています。ことし一月十五日には、宇宙開発利用に関する基本方針というのを、私もいただきましたが、定めております。
内閣官房の宇宙開発戦略専門調査会での配付資料とか、それから宇宙基本計画の基本的方向性、防衛省の宇宙開発利用推進委員会での配付資料や宇宙開発利用に関する基本方針を大体読ませていただくと、宇宙の軍事利用が前面に押し出されてきているという、ここに宇宙基本法のねらいなりあるいは正体というべきものがはっきりと透けて見えてきます。
宇宙を軍事利用できるようになったもとでは、例えば、これまでと違って、秒速八キロメートル、相対速度ゼロで、国際宇宙ステーションを支える三菱電機のランデブードッキング技術というのも、以前だったら、そういう宇宙ステーションなんかの、文字どおりランデブーのドッキング技術ということで見ることができるわけですが、しかし、JAXAのHTVの宣伝資料に出てくるこういうものも、他国の衛星に日本の衛星を接近、衝突させて破壊する技術を日本が獲得するのではないかという懸念さえ生まれてきます。それは、キラー衛星ということなども検討されていたことを見てもわかると思うんです。
そこで、最初に河村官房長官に伺いたいんですが、官房長官は、昨年十一月十二日の当委員会で、宇宙基本法は平和利用決議を否定するものではない、憲法の平和主義の理念にのっとるということを述べられました。私が指摘した軍事利用のための宇宙開発の懸念されるいろいろな問題については、杞憂に属する部分になっていくと答弁されたわけですが、しかし、現実は、防衛省の基本方針を見ておりますと、宇宙開発利用の推進に関する施策について八項目を挙げています。自衛隊独自の高解像度の偵察衛星、電波情報収集衛星、早期警戒衛星、軍事通信衛星などの導入や開発を検討するということが明示されております。
自衛隊がこのような人工衛星を保有して宇宙の分野にまで進んでいくことを、これは杞憂であるということでこれからも見ていくのか、言い続けていかれるのか、これを最初に伺いたいと思うんです。
○河村国務大臣 宇宙開発利用が、お示しのように昨年の五月に施行されて、これによって、宇宙基本法の第三条では、宇宙の開発利用が国際社会の平和及び安全の確保並びに我が国の安全保障に資するよう行われる、このようになっておるわけでございまして、私も国会審議において、御指摘のように、専守防衛の範囲内で防衛目的での宇宙開発利用は可能であると答弁をしたところでございます。
政府といたしましても、この方針は当然の基本理念でありまして、宇宙基本法の趣旨を踏まえながら、日本国憲法の平和主義の理念にのっとって宇宙開発利用を推進していく、この姿勢でありますから、今おっしゃった、これがどんどん軍拡に広がっていくという御懸念、これはしかし、あくまでも自衛隊は、御案内のように防衛省は、日本の安全保障、防衛の視点からいろいろな角度で情報を収集し研究をしていく、その視点の中であるわけでありまして、あくまでもそれも、防衛省のやっていることは専守防衛の視点の中に入っている、こういうことでありますから、今御指摘のような、これが軍拡に広がっていって、日本がその仕組みの中に入っていくということは、日本の憲法上からいっても杞憂に属するものではないか、私はこのようにお答えをしているわけであります。
○吉井委員 これまでの国会決議の範囲で、日本の宇宙科学はどんどん進んでいったわけです。ですから、別に新たな法律をつくらなくてもこれはできたわけですが、なぜこれをつくったのかという背景には、平和利用決議と一般化理論が邪魔だということで、これをなきものにするということが、議論されていく過程で基本法の一番のねらいでした。
ですから、国民の皆さんに今防衛省の方でお考えの基本方針などの内容が知られていったら、宇宙基本法というのは、宇宙の物理学など宇宙科学の発展のためがねらいではなくて、憲法と国会決議を無視して、防衛省の宇宙の軍事利用が最大のねらいであったということがわかってくると思うんです。
検討された過程ではキラー衛星の話もありましたが、早期警戒衛星とか赤外線追跡衛星を持つ計画は宇宙軍拡でないと言えるのかどうか、改めて伺っておきます。
○河村国務大臣 弾道ミサイルが発射された直後にこれを探知する、いわゆる早期警戒機能といいますか、これは、日本が保有しておりますFPS5レーダー等、こうしたセンサー情報を補完する役割を果たすことから、BMDシステムのさらなる信頼性の向上の観点から有意義である、このように考えております。
日本のBMDシステムは、弾道ミサイル攻撃に対して我が国国民の生命財産を守るための、純粋に防御的でほかに代替手段のない唯一の手段であるわけでありまして、これはやはり日本の安全を確保する上でも不可欠である、このように考えます。そういう点から考えたときに、まさに専守防衛の視点からしても、このBMDシステム導入が軍拡路線になっていくという指摘は当たらないものだ、このように考えます。
○吉井委員 資料を配付させていただいておりますが、先に、これの二枚目の方にありますが、自衛隊がなぜ宇宙を必要としているのか。
河村官房長官も参加された石破研究会の石破ビジョン、これまでもこの委員会でも取り上げてまいりましたが、石破元防衛大臣の名前で出されたわが国の防衛宇宙ビジョンで示されているように、イラクやインド洋での自衛隊の海外派兵活動において、民生レベルでの民間商用衛星では、イラクやインド洋と日本本土とを結んで動画など大容量高速通信ができず、回線の秘匿もできなかった、だから自衛隊専用通信衛星の保有が不可欠である。それは国会決議の一般化理論の範囲ではできないから、だから宇宙基本法をつくることになったということになってくるんじゃありませんか。
○河村国務大臣 石破先生のもとで勉強会が行われ、いろいろな形での議論がありました。これは、日本の安全保障上いろいろな角度から勉強したことは事実でございます。しかし、それをもって通信衛星をいわゆる軍事的という視点で我々とらえたわけではございません。
PKO法案等も含めて自衛隊の国際貢献が高まってきて、イラクではあの処理に当たって大変な評価を受けたわけでありますが、その活動を行う情報をするにしても、よその国のといいますか、アメリカを初めとした、そういうもので全部情報をもらわなきゃいかぬ。これは高い通信料を払って利用している。それで果たして日本のやっている役割というものを、我々のサイドで情報をちゃんととる必要もあるではないか、こういう議論があったわけであります。
そういう意味でも通信衛星というのが、一般化の範囲ではとれない高度な情報も必要になってきますので、さらに高度の通信衛星というものが必要だという議論、こういうのを踏まえて我々が検討したことは事実であります。
ともかく、こうした高度の衛星というのはカバーは非常に広いし、また災害耐性もある、いわゆる耐災害性というんですか、災害にも強い、それから多数のものが通信できる、こういう通信インフラにない利点がございますので、そういう衛星の利用が必要である。
また、特にイラクにおいても、これは連携をとる上においてそれが必要だったということでありますし、自衛隊の方も、これについては、全国の方面総監部が固定地点間の通信を必要とする、あるいは艦艇とか車両等の移動体との通信も必要とする、それから今申し上げたような国際平和協力活動の通信が必要である、こういう視点から、通信衛星を利用する必要性を大いに感じて利用している、こういう状況下にあるわけであります。
○吉井委員 今のお話では、イラクだとかアフガンだとかインド洋、要するに地球的規模で自衛隊が展開するということでない場合には、一般化理論の中で、これまでの国会決議の枠の中で通常の商用衛星でできる話であって、やはりそこを踏み越えたことに行くために宇宙基本法を必要としたということの別な表現での御説明だというふうに伺いました。
先ほどもいろいろな情報収集等についての衛星のお話ありましたけれども、防衛省の出している基本方針で挙げられているのは、高感度赤外線センサー機能を持つ衛星の開発を挙げていますね。つまり、これは、ミサイルが発射されたときに発射時点から探知する、そういう性能を持ったもの、そういう衛星の開発や、それから高い解像度の偵察衛星、電波情報収集衛星、早期警戒衛星、軍事通信衛星のこういう目的などを挙げているわけですが、これらは、昨年宇宙基本法を提案されたときのお話とは随分違う話になっていますね。
これは資料の一の方に出ておりますものを見ておるとよくわかるんですが、アメリカへ飛んでいくものとなりますと、射程距離が五千、六千キロ、あるいはそれ以上ということになります。つまり、それぐらい行くとアラスカ規模になりますが、要するに、それぐらいのものになると、弾道ミサイル発射段階で検出して宇宙追尾監視するには早期警戒衛星と宇宙追尾監視衛星が必要だ、これは石破研究会で明記されているわけです。
つまり、これらの衛星はミサイル防衛の一環であって、アメリカの先制攻撃戦略のシステムを守るためのものであって、先ほどお話ありました日本の専守防衛という立場からすると、要するに、近くのものは、早く探知したところで、五分、十分で来るようなものは間に合わない。何十分とかかかる、アメリカへ行くような大陸間弾道弾には非常に有効な機能を持つかもしれないけれども、専守防衛とおっしゃった話からすると、ほとんど意味を持たないものではありませんか。
○河村国務大臣 先ほども一度申し上げたのでありますが、日本の弾道ミサイル防衛というのは必要なことであります。攻撃に対して日本の国の国民の生命財産を守る、純粋に防衛的な見地から、特にほかにこれにかわるような手段がないということからしても、弾道ミサイル防衛の研究をする、これは専守防衛の理念と外れたものではないというふうに思うわけでございます。
防衛省があらゆる角度からいろいろな研究をすることは必要だと私は思うし、最終的にそういうものを具体的にどう導入していくかどうかということは、これはまさに日本の国の憲法の平和主義、そういうものが最後は働いていって判断をしていかなきゃいけない、こういうことに当たっていくわけであります。もちろん、宇宙開発利用という大きな視点、宇宙開発利用はその視点だけで今議論をされておりますけれども、日本の最新の技術を生かした研究開発と同時に産業振興という面も、両面持っておるわけでありまして、あらゆる面から宇宙の平和利用を考えていく、こういう視点に立った法律であることは間違いないわけであります。
○吉井委員 それは別に、かつての国会の平和利用決議の範囲でやってきた宇宙科学への国際貢献の中でも、十分民生機器につながるものの開発にもつながっていて、産業分野にも大きな貢献をしているわけですから、一番突出しているのが軍事の分野なんですね。
防衛省によれば、C4ISR、つまり軍事力の強化を実現することが必要で、そのために宇宙利用をすることが有効な手段だということが挙げられております。宇宙基本法が成立しなければ、先ほど指摘したような防衛省による軍事衛星は開発することはできなかったわけでありますし、これまでは宇宙の平和利用決議があって自衛隊が独自の軍事用の衛星を開発することができなかったので、結局、平和利用決議というのは、防衛省から見れば軍事衛星を開発する上で平和利用決議が邪魔だ、建前上も検討もできない、これは邪魔な存在だ。
この縛りがなくなって自衛隊による軍事衛星が検討されることが可能になったというのが基本法以降のことですから、この点では、宇宙基本法のねらいというものが、結局、平和利用決議を骨抜きにするもの、非侵略であれば何でもよろしい、こういう立場に進むためにねらいがあったということがこういうところに明らかになっているというふうに私は思います。
さっき早く探知した方がいいとおっしゃった話にしても、人工衛星が周回している中でたまたまどこかの国の上にあれば高感度赤外線センサー衛星で探知できるかもしれないけれども、ほとんど一般的には役に立たないわけです。つまり、どこかの国からアメリカへ飛んでいく弾道ミサイルを早期に見つけて追跡する、その点では役に立つかもしれないけれども、専守防衛というお話をされてもこれはほとんど意味をなさないものだということを見ておかなきゃいけないと思うんです。
二〇〇九年度予算案、資料にもつけておきましたけれども、予算の中でも、宇宙関係では防衛予算が突出をしております。今までは、二〇〇八年度までは宇宙基本法十四条の関係じゃなかったものですから、あくまでも商用衛星の活用その他の範囲内でしたけれども、新たにこれだけは、百五十七億三千万ですか、金額的にもこの予算が突出しているというのが実態だと思うんですが、これは事実の、数字上の話ですから政府参考人に確認しておきます。
○松本政府参考人 防衛省の宇宙関係予算についてのお尋ねがございました。
平成二十一年度予算では、歳出ベース、ここに書いてありますように、全体で五百八十億円というような形になってございます。
○吉井委員 これは、宇宙基本法ができた後、予算に占める宇宙関係の予算というのを民生利用と軍事利用に分けて数字であらわしますと、約六五%と三五%ということになりますが、最後のページに、国際比較というのは簡単には論じられるものではありませんが、一応、国際的に発表されている資料からすると、今まで日本は平和利用一〇〇%だったものが三五%は軍事利用に変わってくるということを読み取ることもできます。
長官にあわせて伺っておきたいんですが、大容量を確保するための自衛隊の専用軍事衛星は自衛隊の地球規模での展開、海外派兵を念頭に置いたもの、早期警戒衛星はミサイル防衛の構成要素、民生レベルを超えた高性能の分解能を持つ情報収集衛星というのは本格的な軍事偵察衛星、電波情報収集衛星とは、他国の電波を傍受する、いわゆるスパイ衛星。これらは専守防衛とは関係がない、そして、これまでの日本の、宇宙物理の発展に国際貢献してきた宇宙科学の世界とは随分違うものに踏み込んでいっているのがこれらの衛星計画ではないかと私は思いますが、官房長官、どうですか。
○河村国務大臣 私どもが、この宇宙基本法を制定しよう、先ほど私、施行を昨年五月と申しましたが、成立が昨年の五月でございましたので、この点は訂正させていただきます。
そのときに考えたのは、やはり、これまでの宇宙開発というものがJAXAを中心としながら技術的には相当高度なものがある、これを国民の福祉に供するような視点、それから、世界の趨勢を見ても、これが安全保障にどのように利用されているか、非常に広い範囲で物を考えていったわけであります。
もちろん、平和利用目的に限るという決議がある、このことそのものが悪いというのではないんですが、そのことが過大にといいますか非常に狭く判断されて、宇宙の平和利用を安全保障面から考えることについては何かタブー視されているような状況があった。これで本当にいいのであろうか、専守防衛の国といえども、これだけ高度な情報化時代に、宇宙の情報というのは非常に必要だし、そういう視点から物を考えなきゃいかぬということでこの法律ができていったわけであります。
吉井先生の御懸念ということは御懸念として私は理解できないわけではありませんが、そのために、やはり日本国憲法の平和主義ということをもっと厳しくきちっと入れる。これも、御案内のように、最終的には、与党だけじゃなくて野党の民主党も入っていただいて、協議をして決めていったというところがそれであるわけであります。高分析度のを持つことが果たして専守防衛かと言われますが、日本のような、このような憲法を持って平和国家としてここまで来た、それがゆえにやはりあらゆる情報を持つということは非常に大事であるというのは、党内の議論としてもあり得たし、私もそういうことはあり得ると。
昔から飛耳長目と言われておりますが、やはり耳を長くして、あらゆる情報を持って日本の安全保障を確立していく、こういう視点に立って宇宙の平和利用を考えていく、こういう考え方でありますから、御懸念は御懸念として我々は十分受けとめなきゃいけませんが、こういうものが杞憂であるべきだ、このように私は考えておるわけであります。
○吉井委員 一般化理論についての評価は触れませんが、一般化理論の中で、日本の高度に発達した宇宙科学の技術については、これは活用が政府見解としては認められていたものでありますから、それを踏み外さない範囲であれば何ら別にこの法律は必要なかったということは、今の御答弁を伺っておっても明らかだと思います。
ここで野田大臣に伺っておきますが、今、JAXAの見直しということがよく言われたりもしますが、JAXAの目的を定めた第四条に手を加えて「平和の目的に限り、」というこの文言を削除、変更することは、幾ら何でもこれは当然ないだろうと思いますが、この点は大臣に伺っておきます。
○野田国務大臣 ただいま、宇宙開発戦略本部、総理大臣が本部長ですけれども、宇宙基本法附則第三条に基づいて、JAXAその他の宇宙開発利用に関する機関について、その目的、機能、業務の範囲、組織形態のあり方、当該機関を所管する行政機関等についての検討を進めているところであります。独立行政法人宇宙航空研究開発機構法第四条の改正につきましては、その検討を踏まえて判断していくことになるものと理解しています。
いずれにしましても、宇宙基本法では、日本国憲法の平和主義の理念にのっとり我が国の宇宙開発利用に関する施策を進めることとされておりまして、これはJAXAについても当てはまるものと考えています。
○吉井委員 宇宙開発利用の推進に当たって、留意事項として、防衛省は、他機関との交流の促進、政府系の研究機関との適切な協力関係の構築の推進という言葉を挙げています。国内他機関とは、宇宙航空研究開発機構、JAXAや大学などということは、これは以前にも質問の中でそういう答弁がありました。
そこで、きょうはJAXAの副理事長に伺っておきたいんですが、本当はJAXAの理事長に伺いたかったんですが、NASAで打ち上げでいらっしゃらないということなので、伺います。
JAXAの理事長は、宇宙基本法が成立する前から、基本法によって宇宙の軍事利用が可能となることについて、宇宙でできることの範囲を少し広げるということだ、世界常識に合わせるのでいいのではないかという発言をしておられました。これは、個人的な見解として言いわけをされていたんですが、基本法が成立してもいないのにJAXAの理事長がそういうことを公然と口にするというのは、当時の政府見解からも逸脱するとんでもない重大な発言だというふうに私は考えておりました。
宇宙基本法が成立して、防衛省が公然と軍事利用のための宇宙開発に乗り出すという時期になってきたわけですが、防衛省の側からJAXAに、こういう研究をしてもらいたいとか、JAXA法に今定められている四条の目的から考えても問題になるようなもの、防衛省が求めてきた軍事目的の研究開発にJAXAが協力するのか、これを拒否するのかということがこれから問われてくることもあると思うんですが、これは副理事長に伺っておきます。
○林参考人 お答えいたします。
法解釈につきましては政府が御判断されるということと承知しておりますが、仮に具体的な御提案がありますれば、その時点で、個々の事案に応じ、政府と御相談しつつ、JAXAとして適切に対処してまいりたいと考えております。
以上でございます。
○吉井委員 そうすると、先ほど私が例示しておりましたようなキラー衛星であるとか、あるいは高感度赤外線衛星であるとか、そうした衛星の研究開発にJAXAも加わるようにという話が出てきたときに、JAXAの副理事長としては、JAXAとしてはそれに参加するのか拒否するのか、どういう立場をとられますか。
○林参考人 繰り返しになりますけれども、具体的な御提案がありました段階で、個々の事案に応じまして、政府と御相談をしつつ、JAXAとして適切に対処してまいりたいということでございます。
○吉井委員 全然適切に対処できない機関だな、本当にとんでもない話だと思うんです。JAXAというのは、JAXA法四条でちゃんと平和目的ということが決められているわけですから、キラー衛星その他に将来的に拡大されていくときには、これは当然拒否するのが当たり前であって、そのことについてあいまいなことしか言えないようなJAXAというのは、私は大問題だと思うんです。
官房長官にあわせて伺っておきますが、今度の専門委員会の委員の構成についても私は問題があるんじゃないかと思うんです。宇宙科学研究所で元所長の西田委員とか京大の松本総長のように、宇宙について専門的知見がある方、そういう方もいらっしゃるけれども、しかし、キヤノンの御手洗会長とかトヨタの社長などは、普通で考えれば宇宙開発や利用についての専門的知見のある方でもないので、いろいろ素人のアイデアを生かすことは大事だと思うんです。しかし、それならば、宇宙産業や利害関係を持たない人文社会科学分野の普通の市民から選んで少しもおかしくないわけです。
この宇宙基本法そのものが経団連や航空宇宙工業会の要求に基づくものであったという経過、経団連や航空宇宙工業会が、平和利用決議の無力化による宇宙の軍事利用の実現、宇宙産業の基盤維持と国際競争力強化、宇宙開発の規制緩和などを積極的に要求してきたという経過は、これはいろいろな文書で私たちも見ておりますが、経団連会長など財界の代表、つまり利害関係者が入って宇宙基本計画に反映させるというのは、これはやはりおかしいわけで、受注の拡大、市場の拡大、政府による調達保証等々の要求をする側が政府の政策決定に入ってくるということは、露骨な政官業癒着ではないか。
私は、この点では、国の業界への利益誘導を図っていると見られても仕方がないようなことになりますから、ここはきちんと委員の構成について正していくべきだと思いますが、最後に官房長官に伺います。
○河村国務大臣 この宇宙開発戦略本部の専門調査会というのは、御案内のように、宇宙開発戦略本部は宇宙開発利用に関する総合的な計画を推進していく、そのための知見をいただくという視点ですから、非常に幅広い方々から選んでおると思います。大学教授がおられる、それからマスコミの方もおられます。それから、この法律をつくったときの趣旨が、まず技術的な、日本の宇宙技術、科学技術を振興するという視点と同時に、産業振興という視点もあります。それから、安全保障の面もある。そういう総合的な御意見をいただいてという有識者の方が加わっておるわけであります。
今、何か一つの見方だけで視点をお持ちになると、そういう御指摘もあるかなと思って聞いておりましたが、これは、宇宙基本計画をこれからつくっていく上で総合的な御意見が欲しいという視点で選ばれているものでありますから、一面からごらんになるんじゃなくて、総合的に宇宙基本法の趣旨にのっとって選んである、このように私は理解をしておるし、立派な方々を選んでいただいた、こう思っております。
○吉井委員 政官業癒着ということがいろいろな分野で問題になっているときです。宇宙の分野、もともと国際貢献してきた宇宙科学はそういうことにならないように、やはり私は、政官業癒着と見られるような、見られて仕方がない、そういう構成にならないように正していくべきだ、このことを申し上げて、時間が参りましたので、質問を終わります。
○渡辺委員長 次回は、来る十八日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後零時十二分散会