衆議院

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第6号 平成21年4月1日(水曜日)

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平成二十一年四月一日(水曜日)

    午前九時三十二分開議

 出席委員

   委員長 渡辺 具能君

   理事 加藤 勝信君 理事 渡海紀三朗君

   理事 西村 明宏君 理事 平井たくや君

   理事 平田 耕一君 理事 泉  健太君

   理事 大畠 章宏君 理事 田端 正広君

      あかま二郎君    赤澤 亮正君

      宇野  治君    浮島 敏男君

      遠藤 武彦君    遠藤 宣彦君

      大塚  拓君    岡本 芳郎君

      木原 誠二君    河本 三郎君

      佐藤  錬君    篠田 陽介君

      徳田  毅君    中森ふくよ君

      中山 成彬君    長島 忠美君

      並木 正芳君    馬渡 龍治君

      松浪 健太君    村田 吉隆君

      市村浩一郎君    吉良 州司君

      楠田 大蔵君    佐々木隆博君

      田名部匡代君    津村 啓介君

      西村智奈美君    山田 正彦君

      笠  浩史君    池坊 保子君

      高木美智代君    古屋 範子君

      吉井 英勝君    重野 安正君

    …………………………………

   国務大臣         鳩山 邦夫君

   内閣府副大臣       谷本 龍哉君

   内閣府副大臣       宮澤 洋一君

   内閣府大臣政務官     宇野  治君

   内閣府大臣政務官     岡本 芳郎君

   内閣府大臣政務官     並木 正芳君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  江澤 岸生君

   政府参考人

   (内閣官房地域活性化統合事務局長代理)

   (内閣府構造改革特区担当室長)          上西 康文君

   政府参考人

   (内閣府規制改革推進室長)            私市 光生君

   政府参考人

   (内閣府公共サービス改革推進室長)        佐久間 隆君

   政府参考人

   (総務省自治行政局長)  久元 喜造君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    尾崎 道明君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   香川 俊介君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           前川 喜平君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房文教施設企画部技術参事官)  岡  誠一君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局生涯学習総括官)    惣脇  宏君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           中尾 昭弘君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局次長)           大槻 勝啓君

   政府参考人

   (林野庁森林整備部長)  沼田 正俊君

   政府参考人

   (経済産業省製造産業局次長)           立岡 恒良君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長)            羽藤 秀雄君

   政府参考人

   (中小企業庁経営支援部長)            数井  寛君

   内閣委員会専門員     島貫 孝敏君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十七日

 辞任         補欠選任

  岡下 信子君     平田 耕一君

四月一日

 辞任         補欠選任

  あかま二郎君     浮島 敏男君

  佐々木隆博君     田名部匡代君

  平岡 秀夫君     津村 啓介君

  池坊 保子君     古屋 範子君

同日

 辞任         補欠選任

  浮島 敏男君     あかま二郎君

  田名部匡代君     佐々木隆博君

  津村 啓介君     平岡 秀夫君

  古屋 範子君     池坊 保子君

同日

 理事岡下信子君三月二十七日委員辞任につき、その補欠として平田耕一君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

三月三十一日

 憲法第九条第二項のみを改正し、自衛権及び自衛隊の存在を明記することに関する請願(西村真悟君紹介)(第一一五三号)

 パチンコ店における出玉の換金行為を取り締まり、完全に違法化することに関する請願(西村真悟君紹介)(第一一五四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 構造改革特別区域法及び競争の導入による公共サービスの改革に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四二号)


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     ――――◇―――――

渡辺委員長 これより会議を開きます。

 理事の補欠選任についてお諮りいたします。

 委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任を行いたいと存じますが、先例によりまして、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

渡辺委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 それでは、理事に平田耕一君を指名いたします。

     ――――◇―――――

渡辺委員長 次に、内閣提出、構造改革特別区域法及び競争の導入による公共サービスの改革に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官江澤岸生君、内閣官房地域活性化統合事務局長代理・内閣府構造改革特区担当室長上西康文君、内閣府規制改革推進室長私市光生君、公共サービス改革推進室長佐久間隆君、総務省自治行政局長久元喜造君、法務省矯正局長尾崎道明君、財務省主計局次長香川俊介君、文部科学省大臣官房審議官前川喜平君、大臣官房文教施設企画部技術参事官岡誠一君、生涯学習政策局生涯学習総括官惣脇宏君、厚生労働省大臣官房審議官中尾昭弘君、職業安定局次長大槻勝啓君、林野庁森林整備部長沼田正俊君、経済産業省製造産業局次長立岡恒良君、資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長羽藤秀雄君、中小企業庁経営支援部長数井寛君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

渡辺委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

渡辺委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。赤澤亮正君。

赤澤委員 おはようございます。

 構造改革特別区域法及び競争の導入による公共サービスの改革に関する法律の一部を改正する法律案の審議に当たりまして、質問の時間をいただき、まことにありがとうございます。

 私は、この法案について賛成をする、支持をするものでございますけれども、制度改正に当たっては、幾つか明らかにしておきたい点などございます。さらには、構造改革特区法あるいはいわゆる市場化テスト法の全体的なこれまでの成果や評価についても幾つか御質問をさせていただきたい点がありますので、順次進めさせていただきたいと思います。

 それでは、冒頭、現行の特区制度の評価について少々質問させていただきたいと思います。

 私は、特区法の本質というのは小さく産んで大きく育てるといったことだと思っておりますけれども、これまでのその成果について、まずお伺いをしたいと思います。

鳩山国務大臣 特区制度は七年目か八年目になっているんでしょうか、過去約七年ということだろうと思いますが、規制改革それから地域活性化、これをあわせた意味での突破口、そういう意義があるんだろう、それなりに成果を上げてきたと評価はいたしております。

 一番有名などぶろく特区でございますけれども、これは全国で九十一の特区が実現をしておりまして、平成十九年十一月に公表した地方公共団体に対する調査で、どぶろく特区を活用している地域では年間観光客数が二十七万人増加した、そういう報告を受けております。したがって、これは全国展開していないわけで、全国展開したら観光客もまた全部四方に散ってしまいますから、そういう観点から全国展開をしていないわけですが、大きな成果がある。

 それから、農地リース特区という形で、香川県小豆島のオリーブ特区、島根県海士町の隠岐牛を活用した特区など、特区制度が全国の幅広い地域の活性化に成果を上げているというふうに考えております。この制度、農地リース特区等は既に全国展開されておりまして、全国的な規制緩和につながった、こう考えております。

 要は、私が総務大臣としてやっている仕事、こちらは特命担当大臣でございますが、総務大臣として帯びている任務は、地域が、地域の個性あるいはみずからの発案、創意工夫によって元気になるということ、例えば、首長さんたちで言うならば、それぞれの首長さんたちが真の地域の経営者になれるということ、そういう観点から考えますと、特区制度というのは非常に大きな意味を発揮していると思っております。

赤澤委員 今大臣から、本当に全国で有名などぶろく特区、これはもう観光振興に大変な力があったというお話をいただきました。そしてまた、地方にとって、今大分疲弊していると言われておりますけれども、元気がなくなっている農林水産業、特に農業あるいは畜産業についても相当前向きな展開が図られて、全国展開も進んでいるということで、大変力強く、心強く感じるものでございます。

 全体像をちょっと明らかにしていただきたいと思うので、これまでの提案件数とか、あるいは特区が認められた数、あるいは全国展開がそのうちでされたもの、そういったものについてお話をいただきたい。もし細かく言っていただけるなら、一番最近の十四次はどうなったかということもちょっとお話をいただけるとありがたいと思います。

 では、これは説明員の方、お願いします。

上西政府参考人 事務方よりお答えを申し上げます。

 特区、ただいま大臣からもお話ございましたように、累次全国から提案を受け付けておりまして、累計で四千件以上の提案を全国からちょうだいしております。その中で、私どもがそれぞれの規制を所管する省庁と交渉いたしまして、折衝いたしまして、その結果、項目数としては全体で六百四十一の項目の規制改革というものに結びつけております。そのうち特区という形でなりましたものが二百十五、それから、最初から全国で規制改革に結びついたものが四百二十六ございます。これらの規制改革の項目に基づきまして、全国で千以上、累計で千七十七の特区を認定しております。そして、二百十五の特例措置のうち百二十八が、既に、先ほどの農地リースのように全国展開をされておるところでございます。

 直近は、ことしの二月に第十四次の募集についての政府の対応方針を定めたところでございます。この直近の十四次の提案におきましては、特区の形に結びついたものはございませんでしたが、七件のものにつきまして、これを全国での規制改革という形で決着をしたところでございまして、今後とも着実にこうした取り組みを進めてまいりたいと存じます。

赤澤委員 それでは、今のを前提にいたしまして、これも説明員の方で結構ですけれども、一つ伺いたかったのは、提案の実現数が大分減少してきて、内容も小粒化していないか。十四次の結果を踏まえると、特に、特区認定につながったものは十四次はゼロということでありますが、その指摘についてはどのように受けとめて、どのように打開するか。あるいは何か考えておられる対応等があれば、簡単に御紹介をいただきたいと思います。

上西政府参考人 お答えを申し上げます。

 御指摘がございましたように、提案の募集の回数を重ねますに従いまして、やや、特区という形あるいは全国という形での規制改革で実現する項目が減少しているということは否めないところでございます。

 先ほど申し上げましたように、直近の十四次の提案の募集におきましては、全国で措置するものが七件でございました。ただ、このほかに、提案の募集に際しまして、御相談を受けていろいろ折衝いたしましたところ、現行規定のままでこの御提案には対応ができるということがわかったというようなものがございまして、これは数として意外とございます。二十九件ございます。さらに、規制を所管する省庁において、今後何らかの形で提案の内容を実現していくという方向で検討をいただくものが三件というような結果になっております。

 この特区制度、そうした提案を通じました地域の発意を規制改革の突破口としていくということに意義があるんだろうと思います。その面では、こういった全国の措置ということに直ちにつながっていったということで、目標につながっておりますし、また、そういった、従来規定で対応可能ということが明らかになったということも、これはこれで意義のあることではないかと考えておるところでありまして、そういった点で、この特区の提案制度というものもお役に立っておるのではないかと思います。

 ただ、そうした、実現する件数の減少というようなこともございます。私どもといたしましては、地方公共団体や民間事業者の方々を対象といたしまして、説明会等を通じましてこの制度を周知徹底し、それから、いろいろ提案の内容について事前に御相談がありましたときには丁寧に対応してまいりたいと思います。

 これに加えまして、例えば低炭素社会づくりなど、新しい募集テーマの重点化などの取り組みを進めていくことによって、よりよい提案が寄せられるように、掘り起こしというのでしょうか、そういったものも努めてまいりたいと存じます。

赤澤委員 今、いきなり全国展開につながったものというのが十四次で七件、さらには現行規定でできるものが二十九件、これから何らかの対応を考えるというのが三件ということです。

 私は、きょう特に指摘をしておきたかったのは、構造改革特区というと、まず小さく産んで、特区をつくって、その後全国展開という、一応当初想定をしたメーンストリームですね、これにばかり注目が集まって、そこのところで評価を論じるような感じがちょっとあるように思うんですが、累積を見ると、規制改革につながった六百四十一のうち四百二十六はいきなり全国展開、さらには現行規制でできるものも発掘されている。

 何が申し上げたいかというと、小さく産んで大きく育てるという発想でつくった制度でありますけれども、実は、小さく産もうとして着手をした、要するに、ハードルが下がってやってみようということで取りかかったら、いきなり現行規制でやれることがわかったり、あるいはいきなり全国展開できたりと、小さく産もうとしたら最初から大きく産めたという例が非常に多いということで、その点、私はこの制度の大変なメリットかなと。逆に、区域を限って具体例で検討してみると、案外、難しいと思ったものができるじゃないかとか、あるいは手を挙げる側も、むしろ特区であればいけるんじゃないかと。

 そういった意味では、この制度、私自身は、提案数が減ってきたりいろいろしていますけれども、いまだに、この制度が存在していることで、あきらめずにチャレンジするという人を、かねや太鼓で探すというような効果が大いに期待できるし、一方、省庁の側も、話を聞いてみて具体的な例で検討してみたら、これは全国展開いけるんじゃないかといったような前向きな対応がかなり出てきているというふうに思いますので、本当に意義深いと思います。

 そういう意味で、一つ御紹介をしておきたい例があって、これは実は私がかかわったので、自分の体験として非常にこれはよかったなと思うものです。

 それは何かというと、在宅ホスピスカーというものの関係で、四月一日から、まさにきょうから、お医者様が在宅ホスピスの患者さんのところに行くためにサイレンを自分の車につけることができる。これは別に白色の緊急車両っぽいものでなくてもいいんですけれども、そういう改正がなされました。それも実は、私は特区法の産んだ大きな産物かなと思っております。

 簡単にちょっと経緯をお話しすると、栃木県に、在宅ホスピスをやっておりますとちの木診療所というのがございます。そこの所長の渡辺邦彦先生という方が今のお話の主人公でありますけれども、彼は、日本で緩和ケアというものをしっかり浸透させたい、そして在宅ホスピスがこれからの主流だということを長らく主張して、その二つについて本当に真剣に取り組んでおられます。

 緩和ケアについて言えば、末期がんの患者さん、激痛に耐えるわけですけれども、彼に言わせると、日本ではまだまだモルヒネの使用量が少な過ぎる、先進国、多くの外国と比べると圧倒的に少ない、何分の一ということで、きちっとモルヒネを使用すれば、中毒といったようなことにもならずに痛みはきちっとコントロールできて、最後まで人間らしい生活を送れる。モルヒネについては、どうも鎮痛作用というのが限界がないようでありまして、どんな痛みであっても、量をきちっと工夫すれば抑えることができるということです。

 加えて、ホスピスについても、病院ではなくて自分の自宅をついの住みかにしたい。余命半年とか三カ月とか言われた方がホスピスの、終末期のターミナルケアの対象になる患者さんでありますから、家族と一緒に自分の住みなれた家で住みたい、そのことを実現したい、このことにとちの木診療所の渡辺先生はかけておられるわけです。

 そのときに、彼は本当にスーパーマンみたいなところがあって、年間の緊急出動回数が四百回です。モルヒネについて言えば、きちっとした量を処方すれば、症状が変わらない限りは痛みは抑えられているわけですけれども、彼の表現で言えば、がんの部位がぱかっと割れたようなときは激痛が走って、さらに痛みの次元が上がる、モルヒネの処方量をふさなきゃいけない、飲む回数も場合によってはふやさなきゃいけない、そんなようなことで、緊急に駆けつけてそこの処方をやるわけです。

 その際に、彼がずっと問題意識として持っていたのは、彼は、栃木県の中で十三市五郡すべてに、在宅ホスピスの患者のところに行った経験があるわけですけれども、あるときは東北自動車道を百キロ走って県の端にまで行く、そのときに何回か、年に四百回ぐらい出動する中の十回もいかないぐらいかもしれないけれども、お盆とかのラッシュにかかってしまって、激痛が起きた、先生来てくれと言われてから、百キロなら通常一時間ぐらいで着くんでしょうけれども、渋滞に巻き込まれて三時間も四時間もかかってしまう。彼は本当にこのことが心にひっかかっていて、何とか患者さんのところに早く行けないだろうかと。そのときに相談を受けたわけでございます。

 当初、私も途方に暮れまして、厚生労働省とかあるいは道路運送車両法を持っている国土交通省とか、いろんなところに聞いたわけでありますけれども、関係部局は結局、厚生労働省の医政局、あるいは警察庁の交通局もそうであります、道路交通法を所管しておられます。そして、自動車交通局の技術安全部、これは実は、緊急車両は白とか、車両の色を扱ったりしております。そういった関係のところに相談をしまくって、最後どうなったかというと、これを構造改革特区でやってみようじゃないか、栃木県ということでやってみよう、そういうことで、内閣官房の地域活性化統合事務局、構造改革特区の事務局が呼ばれ、検討しておりました。

 その検討を開始したのが昨年の二月で、それから多くの、今の関係する役所の皆さんに集まっていただいて、四回ぐらい会議を行って、次第に話が煮詰まってきました。

 最初のうちは、いや、こんなことをやったらお医者さんがみんなサイレンをつけて走り回れるようになるからだめだというような話で、どうやって絞れるかがわからないからだめだ、こんな議論でした。では、みとった患者さんの数を実績として出してもらって絞りをかけたらどうだとか、年間の緊急出動回数が把握できないかとか、いろいろなことをやりました。最終的に、一定の基準でこれはいけるんじゃないかということで、栃木県にも最後は加わっていただいて、特区申請を六月に行い、八月には何とか対応できるだろうということになったわけであります。

 ところが、その後、さらにいろいろな検討をしていただいているうちに、これについてはいきなり全国でいけるぞということまで省庁の皆さんが踏み込んでくださって、結局は、緊急に患者さんの要請があれば、二十四時間三百六十五日出動できる態勢を整えておられるそういう医療機関であればいいだろうということで、そういったところの方は、当然緊急車両ですから運転について一定の講習は受けていただきますけれども、だけれども、サイレンを鳴らして患者さんのもとに駆けつけられる。

 今までは、緊急車両というと、患者さんを医療機関に送る救急車と、あとは輸血用の血液を運ぶ車だけが医療関係の緊急車両に認められていましたけれども、三番目の例として、これからの時代の流れであるホスピスも在宅でやる、そこにお医者様自身が行く。しかも、民家ですから、家のそばに来たら、サイレンを消して普通の車のように入りたい、救急車両が来た感じをわかってほしくないという要望が強いようでありまして、ここは普通の車でもいいということに結論が落ちつきました。

 これを本当に具体的にお話ししたのは、やはり特区制度があるからこそ何かみんなでチャレンジする気になる、これでやってみようやと。いきなり全国展開ということだと、省庁の側も身構えてしまって、だめです、だめです、絞れません、お医者さんが全員サイレンをつけて走るようなことはいけませんみたいな話から始まるわけでありますけれども、最終的には、省庁の関係者の皆様も、栃木に限って検討し、具体的にいろいろ検討してみたらいけるぞと。私は、本当にこれはいい例だったというふうに思っております。

 そういう意味で、四月一日から、とちの木診療所の渡辺邦彦先生は、大渋滞になれば、サイレンをつけて、場合によっては路側帯を走るような形で、激痛に耐えかねている患者さんのもとに通えるようになったということで、これは非常にいい例だったかなと思いました。

 以上のことも含めまして、私は、やはり特区制度に、数字にあらわれてくる以上の大いなる価値がある、小さく産もうとしたら最初から大きく産める、そして多くの方のチャレンジ、この制度でやってみようということ、さらには省庁の側も、具体的な検討を特別の区域で始めてみたら、これは一気に全国でできそうだということをかなり前向きにとらえる雰囲気も出てきている、そういう意味で大変効果が大きいと自分では感じているところです。

 その辺も含めて、大臣から、これはちょっと通告をしていないんですが、感想も含めて、何かもしいただければ大変ありがたく思います。

鳩山国務大臣 ただいまの赤澤先生のお話は非常に感動しましたし、そういういきさつを全部御説明いただいて、なるほど、特区制度というのがこういう形で使われる、そして、その特区という制度があればこそ一気に全国展開ということもあるという、格好の、最高の例をお聞かせいただいたと感謝をいたしております。

 私も、数年前でございますけれども、それはホスピスとかそういうことではないと思いますが、あるお医者さんが、自分の患者が容体がよくないということで駆けつけようとしたところ、スピード違反で捕まって、警察から、いわゆる普通の形で点数を切られていった。自分が幾ら言っても、そんなの、急患というか、患者さんの家に行こうとしていたのかゴルフの帰りかわからないじゃないか、こう警察に突っぱねられたという話を聞いて、なるほど、こういう問題があるんだなというふうに思ったわけです。

 別に、今、先生が例に出された、終末期医療を専門にやっておられる方とは例は違うかもしれないけれども、でも、そんな陳情というか苦情を受けたことがあるだけに、今の赤澤先生のお話は非常によくすんなりと耳に入りまして、こういういい例をこれからいっぱいつくることが大事なんだろうな、こういうふうに思いました。

赤澤委員 ありがとうございます。

 今大臣がおっしゃった例も、私は、いろいろな条件を考えながら少しずつこれは広げていけるものだろうと思います。

 大事なのは、やはり、お医者様が私用で万が一使うような例が見られれば、これは制度自体をやめろという話にすぐなるので、そういうことのないように、お医者様にもその辺はモラルをきちっと守っていただきたい、制度自体もうまく仕組んでいけばいい展開があるかなと思います。

 それでは、個別の法律の中身について、あと二つ三つお尋ねしたいと思います。

 一つは、社会教育に関する権限移譲です。

 今回、社会教育施設の管理及び整備に関する事務を首長さんができるといった形にしようとしております。

 二点あわせて伺いたかったのは、教育の政治的中立性などを確保する必要性がより高いと思われる学校施設の管理及び整備に関する事務、これはもう既に規制緩和がなされております。教育委員会でなくて首長さんができるということになっております。その特例措置が講じられて後、実はまだ実例が出てきていないというふうに承知をしております。学校施設で実例が出てきていないのは理由は何なんだ、今後の見通しがあるのかという点。あわせて、では、学校施設で例が出てきていないのに、今回社会教育施設を新たに追加して、これについてはきちっと例が出てくるというふうに、ニーズについて把握をしておられるのか、その二点をあわせてお尋ねしたいと思います。よろしくお願いします。

岡政府参考人 先生御指摘の学校施設に関する特区でございますけれども、平成十八年の特区法改正におきまして、学校施設の管理、整備に関する事務の担当を教育委員会から地方公共団体の長へ移譲することを可能としたものでございます。

 この特区制度を活用するかどうかということは、地域の実情に応じて地方公共団体が判断をするというところでございまして、先生御指摘のように、これまでの活用実績はございません。

 今回、社会教育施設に係る首長への同様の権限移譲が可能となれば、学校施設や社会教育施設と公の施設との一体的な利用でありますとか、耐震化等の総合的な整備の検討が促進されるものと考えております。

 このような趣旨を踏まえまして、地方公共団体に対し、内閣官房を通じまして、特区制度の周知を図るとともに、地方公共団体からの相談等があれば対応してまいりたいと考えているところでございます。

赤澤委員 学校施設についてまだ例がないということでありましたけれども、耐震化といったようなことで、今後一体的整備の必要性が出てくるという御説明でありました。

 これは、私、確かに、今本当に耐震化を求める声がどんどん高まっている中では正しい方向かなと思いますので、今の御説明を受けて、この制度がきちっと改正された後、社会教育施設について一体的整備の対象となってくる例が出てくるということを大いに期待させていただきたいというふうに思います。

 それから、続きまして、公共サービス改革法関係、いわゆる市場化テスト法の手法を使っていわゆるPFI刑務所を全国展開していくということについてお伺いをいたします。

 これは、一般競争入札といったような手だてでなくて、市場化テスト法の手法を使う、これは官民競争入札ということかと思いますけれども、あるいは民間競争入札なのか、その辺も含めて、この市場化テスト法の手法を使うことのメリットについて御説明をいただきたいと思います。

佐久間政府参考人 刑事施設の運営業務を市場化テストでもって民間委託するということでございます。当面、民間競争入札ということが考えられるわけでございますけれども、現在、刑事施設の被収容者が非常にふえて過剰収容になっているということでありますとか、また、再犯防止の観点から、受刑者の教育でありますとか職業訓練などに民間の創意工夫を取り入れるといったようなことが要請をされております。

 こういったことの観点からいたしますと、民間事業者の創意工夫を生かすことで、刑事施設の運営業務についての質の維持向上、経費の削減等を図ることができますし、また、民間委託の拡大を図ることで刑務官の負担を軽減し、刑務官によります被収容者の処遇の質をも向上させることができる、このように期待をいたしております。

 また、一般競争入札との対比で、市場化テストのメリットということでいきますと、この仕組みは、確保すべきサービスの質でありますとか落札者の評価基準等を定めるに当たりまして、第三者の目が入っております。また、対象業務の実施状況についての情報の開示でありますとか、かかわっておられる職員さんに対して秘密保持義務あるいはみなし公務員規定の適用がある等々の仕組みがいろいろと設けられておりまして、競争の透明性、中立性、公正性の確保を期することができると期待いたしております。

赤澤委員 今のお話を伺いまして、本当に刑務官の数が足りないということで、受刑者の方たちが過剰収容になっているという状態を打開するためにということですから、市場化テスト法の中でも、手法としては民間競争入札の方を使ってやっていくということでお話がありました。しっかりとその効果を発揮していただけるとありがたく思います。

 ちょっと余談でありますけれども、PFI刑務所については、過去の整備の実態からいうと、山口県がまず最初で次は島根県と来ましたので、山陰の仲間としては次は鳥取県が来るかなと実は期待しておったんですが、飛ばされまして、ほかのところのどこかに行っちゃったのでありますが。

 いろいろと地元の関係者などから聞くと、やはりこれは、刑務所が来ていただくこと自体も、相当な数の方が新たにそこに住まれる、いろいろな物品を買っていただけるということで、地域の活性化の効果ということも期待している自治体が多いようでありますから、そういう意味でも、全国展開によって過剰収容の状態がしっかりと打開をされる、そして、希望された地域においては、住民の皆様もきちっと理解をされたもとで地域活性化の効果も出るということを大いに期待していきたいと思います。

 あわせて、重要な論点としては、やはり、PFI刑務所がしっかりと刑事施設としての収容あるいは更生といった機能を期待されたとおり発揮をするといったことの確保でありますとか、あるいは、コスト削減意識の余り、民間の、委託を受けた方が例えば食事の質を落とすなどによって、人権侵害が起きないかとか、さらには、地域住民の理解と安心といったことがきちっと確保されていくのかといったような点、継続的にモニターをしっかりしていくべき問題だろうと思っております。その辺も抜かりなくしっかりと対応していただいて、今回の市場化テスト法の手法による新たな改革ということの成果を上げていっていただきたい、PFI刑務所においてそういう成果を上げていただきたいというふうに思います。

 最後になりますけれども、もう一度構造改革特区法に戻らせていただくと、規制改革の推進という現行の法目的のもとでは、そろそろ出尽くしたという議論は出てきております。私は、一方で、先ほど申し上げたように、構造改革特区法は、規制改革において新たなチャレンジを喚起する、あるいは省庁においても前向きな意識を醸成する、非常に意味があると思いますので、それ自体、出尽くしたかといいながら価値はなくならないと思っておりますけれども、一つの考え方として、法目的に、今の規制改革の推進にあわせて地方分権の推進というものを盛り込んで、国または都道府県の権限移譲を含む地方分権実現のための制度改正の検討を、特定の区域で具体的かつ詳細なものにする一助とできないかといったことも考え方としては成り立つのかなと思います。

 そういった点も含めて、鳩山大臣から最後に、構造改革特区法が今後果たすべき役割や、それに対する期待などについてお考えを聞かせていただけると大変ありがたく思います。

鳩山国務大臣 地方分権というのは、あるいは地方分権改革というのは極めて重要な課題でございまして、地方の再生あるいは元気回復にとってこれ以上大切なことはない、こう思っておりまして、特区制度も、地域の創意工夫を最大限尊重する地域の自主的な取り組みという点で私は評価をしているわけでございます。

 現在、地方分権改革推進委員会、どちらかというと、国の出先機関の廃止、合併等が話題になりますけれども、約一万件の、国のいわゆる関与、義務づけ、枠づけを検討して、六千ぐらいはもう外してもいいのではないか、四千ぐらいは残すべきだということがあらあら第二次勧告に入っておるわけでございます。そういう意味で、国の関与を減らして地方分権を推進して地方を元気にするというのは、これからのあるべき姿だと思っております。

 ただ、問題は、国の関与とか国がする義務づけとか枠づけというものをこれからどう地方に分け与えていくか。例えば、法律を条令に移すという場合にかなりしっかりとした観点というものは我々国会議員は持っていなくちゃいけないんじゃないか。

 例として申し上げるならば、例えば保育所なんかの関与はもう要らないじゃないかというふうな意見があるけれども、私は、保育所みたいなものは人の命に直結する可能性がある、要するに、何平米、何平米ということですから、これが狭くて、条例でやっていたら事故が起きたということが万が一にもあってはならぬということで、地方分権ということは、我々国会の役割はより重要になるんだろうなと。国の権限として外してもいい、国の関与で外してもいいというのは、相当しっかりとした考え方を我々が持っていないとできないことだ、こうも思っております。

赤澤委員 ありがとうございました。大臣のお考えを伺いました。

 きょうこの法案が成立することを期待申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

渡辺委員長 次に、佐々木隆博君。

佐々木(隆)委員 民主党の佐々木でございます。

 きょうの審議であります構造改革特区と公共サービス改革の両方について、それぞれ何点か質問をさせていただきたいと思います。

 最初に、構造改革特区についてお伺いをさせていただきたいというふうに思います。

 先ほどもお話がありましたが、〇二年に施行されておりますから、七年目、六年を経過したということになるんだというふうに思いますが、十四次にわたって四千八百件ということは先ほどもお話がございました。累計でも一千七十七件になっているということでありますが、〇七年に特区制度の見直しが行われました。それから二年経過しているわけでありますが、特区の実績や評価などについて、七年目を迎えている、あるいは見直しから二年を経過しているというこの段階において、特区全体についてもう一度論議をする必要があるのではないかという思いで何点か質問をさせていただきたいというふうに思います。

 最初に、課題の経過とそれから未活用規制の特例、この二つについてお伺いします。

 〇七年の特区制度見直しの論議において、先ほどもお話ありましたが、実現数の減少、内容の小粒化などという課題が提起をされました。さらにまた、権限移譲などの地域の自主性向上に結びついているのかというようなことも課題として挙げられておりますが、二年前のこの見直しからこれらの課題がどの程度解消されたのか。あわせて、未活用規制の特例でありますが、規制の特例措置として特区において活用可能となったメニューのうち、未活用特例の件数とこれに対する対応について、事務方で結構ですが、お答えいただきたいと思います。

上西政府参考人 お答えを申し上げます。

 今御指摘ございましたように、二年前にこの特区法の改正のときに、いろいろ御議論があったところでございます。その後も提案の募集を続けておりますけれども、提案が特区として実現をする件数自体は減少しておる、これは事実としてそのとおりでございまして、平成十九年度を見てみますと、三件ということにとどまっておるところでございます。

 ただ、件数だけではなく、その内容ということを考えたときに、あるいは提案を通じてそれが全国への展開につながっているということを考えましたときには、先ほど赤澤委員からも御指摘をちょうだいしたところでございますけれども、例えばそうした終末期の医療の問題でありますとか、あるいはこの間、特区として実現した中にも、救急隊の編成を弾力化するという、いわゆるトリアージの特区と我々申しておりますけれども、そうした救急医療の課題に対応していく特区というようなものも、数少ない中ではございますが、実現をしておるところでございます。

 地域の活性化ということ、これはもちろん新たな産業や企業が起こってくるということもございますけれども、住民のニーズに応じたさまざまなサービスが適切に提供されていくということも、地域の活性化ということを考えていく上では重要ではないかというふうに考えるところでございます。

 それから、特区制度の見直しが十九年にございましたときに、私どもだけではなく、外部の有識者の力もおかりをしようということで、この見直しの際に評価・調査委員会という外部の有識者による委員会を設置いたしまして、この場におきまして、実現をしなかった提案のうち、経済的あるいは社会的に意義があるものについては、その提案者の思いを実現する方向での方策というものについて、この第三者の委員会においても審議をいただくというような対応をしているところでもございます。

 もう一つお尋ねの点でございまして、せっかく特例措置を設けたのに使われていないものがある、これも事実としてそうしたものがございます。数として調べてもらいましたところ、二十一の措置について、まだ使われている実績がないということでございます。

 この使われていない理由、それぞれ個々にさまざまでございます。実際に特区として実施をしようとされたときに、関係者の方々の調整に手間取ったり、あるいはその時間がかかったりしておる、あるいはさらに、現行の特区制度、特区の特例措置があるけれども、必ずしも、いろいろな条件がついていて、そのままでは使い勝手がちょっと悪いというような場合もあるようでございます。

 そうした場合に、私ども、その点をさらに改善するという意味で、拡充をするための提案を出していただくというような仕組みになっておりまして、こういった拡充提案の御要望があれば、今の特区制度をさらに改善をしていくとか、さらに、先ほど申し上げましたような使われていないものについては、これが活用されるように、御相談があった際にはできるだけ丁寧に御相談に応じていきたいと存じております。

佐々木(隆)委員 条件がついているのでというのであれば、特区はその条件を外すのが特区ですから、一層取り組んでいただきたいと思うんです。

 今のお話にありました、第三者を入れた評価・調査委員会というんですか、見直しの後の基本方針の中でそのことが提言をされていて、その目的は透明性の原則をもっと高めるというところにあるんだというふうに思うんですが、第三者というのは、今室長がおっしゃられたこの調査委員会のことでいいんですよね。そのことの確認と、提言をされた透明性という点についてどのようなことが確保されたのか、その点についてあわせてお伺いをいたします。できるだけ簡略にお願いをいたします。

上西政府参考人 透明性ということについてのお尋ねでございます。

 一つには、私ども、提案を受けた後の各規制所管省庁との折衝の途中経過というもの、これはすべて私どものホームページの上で公開をしておる、そういった透明性の確保になっておるところでございます。

 それから、お話ございました評価・調査委員会につきましても、第三者の視点からの規制の特例措置の効果等の検証をいただいているわけでございまして、その審議の内容につきましても逐一ホームページ上で公開をしているところでございます。

 それから、先ほど申し上げましたように、評価・調査委員会には、未実現の提案につきましての調査審議につきましても、第三者の視点から提案者の思いの実現に取り組んでいただいているところでございます。

 特区推進に当たりまして、この透明性の原則は、このような形で尊重をしていきたいと存じております。

佐々木(隆)委員 推進会議の提言について何点かお伺いをしたいんですが、これは大臣にお答えをいただいた方がいいかというふうに思うんですが、先ほども論議がございました地方分権推進ということについてであります。

 〇六年の推進会議の「改善にむけて」という提言の中で、地方からの提言のうち、権限移譲を求めるものについてはほとんど実施されていないというふうに、そのときに提言されているんですね。〇六年から少しタイムラグがありますから、どうなったかということもありますが、その推進会議の提言の中には、この構造改革特区の法の目的の中に地方分権の推進というものを盛り込み、権限移譲も含めた広範な改革が実現できるようにすべきである、こういうふうに提言されているわけです。それは、この特区が規制を改革するということが法律の目的であるがゆえに、こうした視点が法律の目的の中に入っていないんですね。

 こうした推進会議の提言とか、それから地方からのそういう意見もあるというふうに聞いておるんですが、法の目的の中に、現状は要するに規制の改革を推進するということしか書かれていないということがもしネックになっているんだとすれば、法の目的に地方分権というもの、権限移譲というものについてやはり明記する必要があるのではないかというふうに思うんですが、大臣のお考えを伺います。

鳩山国務大臣 法律に明記する必要があるかどうかは直ちに今お答えはできませんが、佐々木先生がおっしゃっていることは全く正しいと正直思います。

 私は、例えばですが、また話を戻して申しわけありません。地方分権改革推進委員会が二次勧告を出した、そうすると、新聞等は、国の出先機関の形がどうなるかということに焦点を絞られてしばしば記事が書かれる。しかし、実は、国の出先機関がどうなるかというのは二次的な問題であって、権限の移譲がすべてというか、本質なんです。どこまで国の権限を都道府県に移せるか、もちろん都道府県から市町村へということもあると思います。

 その結果、例えば直轄事業が減るとしますね。そうやって権限移譲が大幅に進むことが地方分権であり、そうなったときには国の出先機関もおのずとスリム化するから、どことどこをくっつけようかという議論になるわけであって、私は、地方分権の本質というものは、国と地方の役割分担の形を変えていく、中身を変えていくことであって、権限移譲のない地方分権というのはほとんど意味がないというふうに考えておりますので、先生のおっしゃる趣旨は全く正しいと理解をします。

佐々木(隆)委員 続けてちょっと事務方にお伺いしたいんですが、今大臣がおっしゃられたことは、私も全く同じ考え方です。私、例の出先の問題は、ここの論議ではありませんけれども、出先の問題は行革の問題であって、分権の問題なのかというところに実は疑問を持っているものであります。権限のときにも財源の話が先に出てきてしまって、権限がどうしてもかすれてしまうというところも、大臣とやや考えを同じくするものであります。

 事務方の方にもお伺いします。

 今大臣からそういうお答えをいただきましたが、これは実質的に幾つか実施されたのかどうなのかということですね、権限移譲について提言されたんですが。

 それともう一つは、この推進会議でもう一つ、もう一つというか、ほかにもいっぱいありますが、重要なことが提案されていると思うんです。各省庁にまたがるようなもの、いわゆるプロジェクト的な提案ですね、こういうものについて、いわゆる細分化といいますか、専門用語では短冊というらしいんですけれども、省庁ごとに送付されてしまって、結局、横断的なプロジェクトがなかなか実施されていない。

 これも例の評価・調査委員会が提言をしているわけですが、この点について、〇七年に基本方針が変更されました。そのときの提案の中で、プロジェクト提案型の提案というものを進めるべきだというふうに認められたといいますか、提言をされた。そこで、内閣官房が関係省庁を一堂に集めて協議するという方向性が示されたんだと思うんですけれども、そのプロジェクト提案型が実現した例があるのかどうなのか。また、その検討に当たって、過去、この基本方針に基づいて関係省庁の協議が行われたことがあるのかどうなのか。

 このことと、先ほどの権限移譲の件と、三点あわせてお伺いします。

上西政府参考人 お答えを申し上げます。

 特区の制度の中で、地方への分権ということで役に立った事例として、例えばということでございますけれども、教育課程を弾力的に編成するということを認めた特区がございまして、これは多くの地方公共団体に御利用いただきまして、例えば早期に外国語の教育をするとかあるいは小中一貫であるとか、そういった形で、さまざまな新しい形での教育課程、カリキュラムというものを自治体で取り組んでいただきまして、これは非常に効果があったということで、全国に今展開されているところでございます。

 ほかの事例といたしましては、例えば屋外の広告物条例に違反したのぼり旗等を地方公共団体が簡易に除去できる特区、これも地方公共団体の自主性を高めたものでありますけれども、このように、地方公共団体がみずから責任を持って主体的に進める場合に、権限を従来よりも拡大するような形での特区というものも実現をしておるところでございます。

 今回、お願いを申し上げております社会教育施設の管理、整備に関する権限移譲も、ある意味、地方のそうした自主性を高めるものではないかと考えておるところでございます。

 それから、もう一つ御指摘がございましたプロジェクト型の提案ということでございます。

 これは、御指摘をいただきましたように、特区の推進会議という、首長さん方が集まられまして、さまざま提言をされておるわけでございまして、私どもも、こうしたプロジェクト型の提案というものにつきまして、基本方針の中に位置づけて、複数の規制措置を組み合わせて講じるということが必要である、それがプロジェクトを一つ進めていく上で必要であるというような場合に、関係省庁を一堂に集めて協議を実施するなどによって、そのプロジェクト全体を実現するということを目指しておるところでございます。

 ただ、実例としては余りございません。御紹介できるものといたしましては、一昨年の六月に十一次の提案というものを募集したわけですけれども、その際、その当時議論をしておりました、いわゆるアジア・ゲートウェイ構想に関する提案がさまざまございまして、それをプロジェクト型の提案として受け付けまして、これは関係するたくさんの省庁が一堂に会して協議をいたしまして、この中で、例えば全国での規制緩和ということにつながったというようなこともございます。

 今後、こういったような大きなプロジェクト型の提案がありました場合には、そういった形も活用しながら、それを実現する方向で検討を進めてまいりたいと存じます。

佐々木(隆)委員 協議は行われたようでありますが、先ほど、小粒化とかあるいは実現件数が減っているとかというような論議をさせていただいたんですが、むしろ、これからはそういう分野もかなりふえてくるのではないかというふうに思いますので、これは内閣が持っているという意味もそこにあるんだというふうに思いますから、ぜひそういった意味での取り組みをお願いしたいことと、六年経過をするという中で、先ほど大臣もおっしゃっておられましたけれども、地域の個性とか地域の発案による自主性とか、そういったことが図られるということがこれの目的でありますので、ぜひそういったことのお取り組みを指摘させていただきたいというふうに思います。

 次のテーマに移らせていただきますが、公共サービス改革法についてお伺いをいたします。

 これは〇六年に施行されて、〇八年に基本方針が決定をされております。官民競争入札ということになるわけでありますが、入札の対象となった公共サービスの内容に応じて官民競争入札の実施要項というものが作成をされて、公表して、入札参加者を募集するということになっているわけであります。その実施要項というのは、いわば募集情報の説明書であると同時に、対象サービスのあり方を示すという、まさにそういったものではないかというふうに思います。

 そこで、まず、コストの削減とサービスの確保という点についてお伺いをしたいんですが、どうしてもコスト削減の方に力点が置かれ過ぎて、本来公共サービスがやるべきサービスというものが損なわれる心配がないのか。そっちが後回しに、何かランクとしては低くなってしまうのではないのかという心配がどうしても起きてしまうわけでありますが、その点について、この取り組みを担当されている部署としてのお考えをまずお伺いしたいと思います。

宮澤副大臣 本来、与謝野大臣の担当でございますけれども、ロンドンに金融サミットに行かれているものですから、かわってお答えをさせていただきます。

 今委員御指摘のとおり、コスト削減というのがある意味では非常にわかりやすい、サービスの質というのはなかなかわかりにくいといったところで、ついついコスト削減というものが議論をされやすくなっておりますけれども、もともとお役所仕事というのは、頭はかたいしサービスは悪い、こういうイメージに対して、少し民間の創意工夫を適切に活用しようということで始まったものでございまして、今、評価をいろいろ始めております。まだ最終的に評価が終わった事業はございませんけれども、コスト削減プラスそのサービスの質といったものもきっちり評価をして今後に役立てていきたい、こういうふうに考えております。

佐々木(隆)委員 その評価でありますが、評価についてお伺いをしたいというふうに思います。

 まず、公共サービス、市場化テストをやる場合の入り口と、それから入札のあり方と出口と、いろいろな分野にいろいろな課題があるんだというふうに思うんですが、まずその入り口の部分でお伺いをしたいというふうに思います。

 競争公共サービスを実施するときの課題というのは、対象公共サービスの選定に当たって、とりわけ官民の競争の場合、官の方が圧倒的に情報を持っているわけですね。官民競争の場合、そんな中で競争をするということになるわけです。結果として、官の方が将来これは民間にやってもらってもいいんだと思うような事業だけが選定されてしまうのではないかという危惧がどうしても起きてくるわけですが、そうしたことを避けなければいけないということになるんだと思うんです。

 そういった意味からいうと、やはり官の方が自分たちで事業を選定するということをできるだけ少なくして、民間からの提案をどうやってたくさん受け入れるかというところが一つ大切なポイントなのではないかというふうに思うし、さらに、事業をできるだけ絞り込まないで、自由に民間からの提案を受け入れるというようなことを実施して、問題は、要するに恣意性を排除する、官の側の恣意性があるのではないかということの危惧を排除するというのが私は最大のポイントではないかというふうに思うんですが、その点についてどんな取り組みをされているのか伺います。

佐久間政府参考人 事業選定についてお尋ねでございますが、この選定に当たりましては、可能な限り幅広い分野から国民の視点に立ってこれを行うということが重要でありまして、こうした観点から、内閣府におきましては、民間事業者や国民一般から意見を募集するとともに、いろいろ判断をするのに必要な情報というのがありますから、こういうものの情報が欲しい、そういった情報公表の要請も受け付けております。

 また、必要に応じて、民間事業者から、いろいろ事情、背景といったようなものを含めてヒアリングを行うなど、幅広い意見を取り入れるように努めているところでございます。

 また、具体の事業の選定に当たりましては、第三者機関であります官民競争入札等監理委員会、こちらにおきます審議を経て閣議決定をされるということになっておりまして、透明性、中立性、公正性の確保をこれによって図っているところでございます。

佐々木(隆)委員 そこで、少し具体にお伺いしたいんですけれども、いわゆる落札決定をするときに、大ざっぱに言うと企画点と価格点という二つを評価するということになっているんです。例えば、かなりいいアイデアを出したとして、企画点は非常に高いんですけれども、先ほどの副大臣のお答えではありませんが、結局、目に見えやすい価格点の方で落札されてしまうのではないのかというようなことの危惧があるわけです。

 そういった意味では、いわゆる質の向上と言われているものですが、この民間事業者のアイデア、いい企画が出されたけれども例えばそれが落札されなかったときに、そのアイデアを出すために片方に相当経費がかかっているわけですね。そのアイデアの経費というものが全くそこでは反映されないということになってしまうわけで、こういったことについて何か考えられているのかということが一つ。

 それから、二つ目については、要するに企画点と価格点というものについての担保措置みたいなものが何かあるのかということ。

 それから、この基準は推進室がつくるわけですが、発注になると、結果、もとの省庁のところへ戻ってしまうということになるのではないのか。これは発注はどこがやっているのかという、この三点について。

佐久間政府参考人 落札者決定に当たっての評価の方法と、それから実施の主体の問題等についてでございます。

 まず評価方法でございますけれども、個別の事業ごとに募集をする段階での実施要項、これに定めることになってございます。この内容を定めるに当たりましては、官民競争入札等監理委員会の審議を経るということになってございます。ですから、この評価方法というのは第三者の目を経ているということになります。

 監理委員会におきます具体の審議でございますけれども、民間事業者の創意工夫を最大限に引き出すという観点から、評価項目の構成でありますとか得点の配分につきまして、事業の内容に応じてきめ細かく審議を行っております。

 また、企画の評価と価格、これをどういう割合でもって評価するかということにつきましても、これはすぐれた企画を評価する必要性というのが一方であり、今度、他方で、価格競争というのはちゃんとやってもらわなきゃいけない、この両方の重要性というものを勘案しつつ個別事業ごとに定めるということでやっております。

 ちなみに、これまでに企画の評価と価格のウエートですけれども、これを単純に足して評価する加算方式というのを採用した事業でこのウエートが計算できるわけですけれども、これが十三事業ありまして、このうちの八事業について企画の方が二、価格の方が一、残りがほぼ一対一というようなことになっております。

 また、実際に発注する段階でございますけれども、発注手続自体は個別の府省がやっていただくということになります。それで、その際に、その評価をみずからやるのではなくて、評価委員会というのをつくって、構成していただいて、その構成の仕方といったようなことについては実施要項の中にも盛り込ませていただいている、こういうような形でやっております。

佐々木(隆)委員 続けてお伺いしたいんですが、今の、発注は府省がやるということなんですが、評価委員会をつくると言いました。これは、公サービス法に基づく監理委員会とは別に各府省ごとにつくるという意味で、であれば、その府省の評価委員会と公サ法が持っている監理委員会というのはどの程度綿密に打ち合わせや連絡というものをされているのか、あるいは相互チェックをかけているのか、その点についてはどうでしょうか。

佐久間政府参考人 この評価のやり方につきましては、官民競争入札と民間競争入札の二つでかなりやり方が違っております。

 民間競争入札の場合は、官側のチェックというのを特にする必要はございませんので、民同士の比較ということになりますので、これは基本的には、評価の大枠を決めて、具体の評価は、個別に構成される、府省が構成される評価委員会の方でやっていただく。これについては、結果については報告を受けますが、その当否については監理委員会の方から何か言うということはございません。

 これに対しまして、官民競争入札の場合ですと、官側も評価を受ける側になるということもございますので、この評価が適切に行われたかどうかということについて、具体にどういう手順でどういう評価が行われたかということについて監理委員会の方で検討させていただいて、そのやり方に問題がないかどうかというチェックはさせていただいております。

佐々木(隆)委員 そこが一番実は気になるところだと思うんですね。

 事業の成果、いわゆる出口のところでありますが、きょう資料が回っていると思うんですが、これは佐藤徹さんという方が監理委員会に提出した資料の一部でありますけれども、要するに供給者側から見た質、それから受益者側から見た質というのは多少違っている。供給者側の一、二というのはいわゆる価格点にやや匹敵する量的なものだと思うし、受益者から見た六、七というのもやや価格的なものだと思うんですね。真ん中の二つがいわゆる企画にかかわるものなんですが、供給者と受益者で多少ニュアンスが違っていると思うんです。

 これだけいろいろな要素がやはり考えられるということと、一番下には顧客満足度というのがありますけれども、要するに、顧客満足度まで入れて、こういういろいろな評価手法というものが、事業が示されたときにまず公表されなきゃいけないと私は思うんですね。それは事業によって一つ一つ違うと思うんですね。それによって、最後に落札した人が、この基準のどこにどのぐらい当てはまったのかということもやはり公表されるべきだと思うんです。

 要するに、入り口と出口がちゃんと公表されるということが私は必要だというふうに思うんですが、いわゆるアウトカム、アウトプットという言い方がされますが、アウトカムの部分もアウトプットの部分も全部あわせて評価をこれはするということになっておりますから、そういった意味でいうと、こうしたものも参考にしていただいて、具体的にどのように今やられているのか、あるいはこれからやろうとしているのかということについてお伺いをしたいと思います。

宮澤副大臣 今、この表を拝見いたしまして、まさにそのとおりだし、一方で、この理想を追求するのも結構大変だなと。

 例えば、コスト、価格と企画という点でも、コストというのは極めて、価格というのははっきり数字で出てくる。一方で、企画というのはなかなか数字で出てこない。ついついこれが恣意的に流れると、いろいろな問題が生じやすい。ついつい行政側からすると恣意的に流れにくい、自己保身に走ってしまうというようなところもいろいろある中で、その透明性を高めながら、企画またアウトカム、アウトの評価といったものをしっかりやる制度をやはり幾つか経験しながらやっていくのかなという気がいたしました。

佐々木(隆)委員 今までの論議を聞いていただいて、大臣に最後にお伺いしたいと思うんです。

 私は、今の公共事業も同じ部分が一部あると思うんですが、それは、要するに、入り口のところでは入札の資格とかいって、きちっと、結構厳しいものがあるんですね。競争入札の場合は、そういうことがなるべく確保されるようにということでやられている。ところが、最後に事業が完了したときに、それは合格点をもらっていなければその事業は完了しませんから、事業完了したときに全員合格はするわけですね。

 ところが、例えば九十五点で合格した人と七十点で合格した人が、では、それがちゃんと次のときに評価されるのかというと、この国の公共事業の中にはその評価制度というのは実はないんですね。それは、質を高めていくということになれば、こういう基準をまずはっきりさせて、それに合っているか合っていないかということの基準を明確に、しかも、透明性を高めてやるということも必要なんですが、同時に、その結果が次の年にちゃんと反映されているのかということも、本当は質を高めていくという中では重要なことだと思うんです。

 だから、結局、次の年になると、BランクはBランクで一斉に用意ドンでスタートしちゃうというようなことになってしまうわけで、そうしたこともやはりこれから考えていかなければいけないのではないかというふうに思います。

 それと、先ほど来話している、施行後間もない制度でありますから、これからというところもたくさんあると思うんですが、恣意性の排除とか、あるいは評価手法についても今検討中のところもたくさんあるようですが、こんなものの確立はやはりしっかりしていかなければならないと思うんですけれども、今後どう取り組んでいかれるか、決意を含めてお願いいたします。

宮澤副大臣 鳩山大臣の担当と与謝野大臣の担当のようでございますので、私の方から答弁をさせていただきます。

 今まさに、一定の条件をクリアするかしないか、大変よく、大幅にクリアしたところとぎりぎりでクリアしたところ、どうなんだ、こういう話で、当然基準は決めますけれども、できればもっともっとレベルを上げてほしいというのは当然あるわけでございまして、今の制度でも、インセンティブといったことで、契約の中に、最低水準は決めるものの、最低水準を超えてどこまでやれば、インセンティブでプラスアルファの支払いをするといったような制度も入っております。こういうものをきっちり、これも残念ながら、十六事業ぐらい今までインセンティブが入っているようでございますけれども、まだ終わったものが一件で、これは達成できなかったようでございますが、それ以外、今後どうなるか見ていきたいと思っております。(佐々木(隆)委員「どんなインセンティブ」と呼ぶ)

 要するに、落札金額が決まるわけですけれども、例えば、一定のサービスといいますか、業務をしますよという一定を超えて、例えば収納率が何%とかいう話があったとすれば、それが何%上がれば少しプラスアルファお支払いできる、こういうような制度を入れて、十六件ほど契約をしているようでございます。

 こういうものを利用しながら、また、おっしゃるように、その結果を次の入札のときにどう評価するかということも、大変、同種のものであれば当然参考になるわけでございますので、どういうことが使えるのか、また検討していきたいと思っております。

佐々木(隆)委員 終わらせていただきますが、構造改革も、市場化テストといいますか、入札競争も、基本的にはやはり進めなければならないものだというふうには思うんですが、そのときに、やはりどれだけ透明性とか公開性というものが確保されるかということが一番大切なことだというふうに思いますので、そういったことに留意をしていただきながら進めていただきますように申し上げて、終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、大畠章宏君。

大畠委員 民主党の大畠章宏でございます。

 きょうは、構造改革特区法の改正案について質問をさせていただきます。

 質問をする前に、この特区法ですが、小泉内閣によってこの特区法というのが制定されたのは、皆様方御存じのとおりであります。小泉改革というのは余りいいことをやっていないと私は思うんですが、郵政の民営化ですとか、あるいは後期高齢者医療制度とか、余り私は評価していませんが、その中でも構造特区については非常におもしろい発想でやったなと思っております。

 それで、きょうは改革の特区法の改正について御質問をするわけですが、鳩山大臣がこの担当だというので、どういう内容かなと見てみたら、教育委員会の管轄を自治体の首長に、教育の施設の管理を移すとか、あるいは、一言で言いますと刑務所を民営化するとか、かんぽの宿を相手にしてがっぷり四つでやっている横綱としては、いささか何か規模が小さ過ぎるんじゃないかという感じを持ちました。

 いずれも私どもでいろいろ論議をしました結果、この法律案の改正については賛成しようということに決めましたが、やはり、鳩山大臣が担当大臣であれば、もっとあっと驚くような、余り驚いて混乱するのは困りますが、ああそうか、そういうところまで特区をやるのかというような内容を盛り込んでいただければよりよかったなという感じを持ちました。

 それで、この特区の質問に立つに当たって、地域の方を歩いておりまして、特区について何か御意見はありませんか、どんなことを希望されていますかとずっと歩いたんですが、大畠さん、特区どころじゃないよ、仕事を何とか探してきてくれ、こういうお話が多いわけでありまして、この法案の質問に入る前に、非常に私自身、この特区に関していろいろと御意見をいただいた中で、これは緊急にやらなきゃならないなというものがございましたので、それを二つほど関係の省庁から御回答いただきたいということで質問をさせていただきます。

 まず一つは、ちょっとお手元に、資料、一枚紙の新聞記事をお渡しいたしました。これはきのうの朝日新聞の夕刊なんですが、これが背景かといってやっとわかったんですけれども、その記事の左側の上から二番目のところにグラフがかいてございます。「雇用調整助成金を申請した事業所数と対象者数」というのがかいてございますが、ことしの一月、二月が急増をしておりまして、おおよそ二百万人に近づこうというような感じでございます。事業所数も三万カ所ということです。

 それで、実は、地域を歩いておりましたら、自動車関係の仕事が、半減のところはいいんですが、どうですかと言ったら、ゼロになりました、こういう事業主もございました。週休四日制、金土日月四日休んで、火水木だけ動かしているとか、これからどんなことを考えて社長としてやっていったらいいのか全くわからないとか、そんなお話もございました。

 そこで、最初に、自動車の関係の減産というのが続いておりまして、これが地方の中小企業も大変な状況に至っているわけですが、経済産業省と中小企業庁に、これからの見通しも含めて、現状についてちょっと御報告をいただきたいと思います。

    〔委員長退席、西村(明)委員長代理着席〕

立岡政府参考人 まず、私の方から、自動車の今の現状と今後の見通しについてお答えを申し上げます。

 今委員が御指摘になられましたように、今の経済状況悪化の中で、特に自動車につきましては、昨年の秋以降、輸出それから国内販売が急速に減少いたしておりまして、直近、足元二月の生産で見ますと、対前年同月比五六%の減少という大幅なものになってございます。ただ、他方、国内外の販売の減少はおおむね二割から三割の減少でございますので、これをあわせ考えますと、現在の五割を超える大幅な減産といいますのは、ある意味では在庫調整を急速な勢いで行っているということだと評価できると思います。

 それで、今後の生産の見通しなんでございますが、これは、内外の販売動向がどうなるかということで不確定要素が多くて困難なわけでございますけれども、私どもは、各社の生産計画を総合的に聞いている感じからいたしますと、今の在庫調整がおおむね四―六月期には適正な水準に戻っていって、それ以降は、ある種、販売の実勢に応じた生産に戻っていくということになるのではないかと期待してございます。

 しかしながら、需要に見合った生産と申しましても、今足元の販売が二割、三割減ってございますので、一―三月期に比べれば四―六はふえますけれども、ただ、昨年に比べますと、やはりそれぐらいの減少ということになるという意味ではまだ厳しい状態が続くというふうに認識してございます。

 いずれにいたしましても、今後の生産あるいは販売の動向については、私どもとしては今後とも注視をしてまいりたいというふうに考えてございます。

数井政府参考人 中小企業関係について申し上げます。

 景気が冷え込んでいる中、自動車関係の下請事業者については、受注の大幅な減少など、大変厳しい状況に直面していると私ども認識しております。

 こうした状況を踏まえまして、中小企業に最も重要な資金繰り支援のために、二度の補正予算と本年度予算で約一兆円の額を確保いたしまして、三十兆円規模の資金繰り対策の実施に今努めているところでございます。現状、信用保証協会の緊急保証と政府系金融機関のセーフティーネット貸し付け等を合わせました利用実績が約十兆八千億円、五十三万件に達しておりまして、今後とも、中小企業の資金繰りの支援には万全を期してまいりたいと考えております。

 また、下請事業者につきましては、景気後退のしわ寄せを受けることがございますので、親事業者の不当な行為を防止するため、下請代金法の厳格な運用を進めるとともに、親事業者と下請事業者の間の望ましい取引関係を構築するため、自動車産業等の業種ごとに策定いたしました下請適正取引等の推進のためのガイドラインの普及に取り組んでまいります。

 また、中小ものづくり高度化法に基づきまして、平成十八年六月から先月まで、七百四十九件の中小企業の研究開発ものづくりプロジェクトの認定をいたしまして、この支援を講じております。

 さらに、ものづくり人材の育成のため、年間約三千人のスキルアップを図ります人材の研修を今後全国で展開していきたいと考えてございます。

 これらの総合的な対策によりまして、引き続き、ものづくり中小企業の対策に万全を期してまいりたいと考えております。

大畠委員 ひとつ経済産業省の方でも、なかなか先行きの見通しをすることは難しいということはよく承知しておりますが、だれも先行きの見通しを出さないわけなんだよね。だから、中小企業の経営者も、どうやってこれから一年間経営していったらいいのかさっぱりわからない。それから、金融機関もそういう先行きの見通しがないところになかなか出せないということで、非常に困っていますから、今のお話を伺いますと、おおよそ五月ぐらいには販売実績に見合う分の生産に戻すというような受けとめ方をしましたが、そして、それ以降は、日本と世界の経済の動きによるんでしょうけれども、そういうものに推移して生産も水準を戻していくということで受けとめてよろしいかどうか、ちょっと確認したいと思います。

    〔西村(明)委員長代理退席、委員長着席〕

立岡政府参考人 繰り返しになりますけれども、国内の販売、特に外需の方はなかなか想定が難しいんでございますけれども、ただ、今急速な勢いで在庫が減ってございますので、四―六月期にはそれがおおむね終わりますので、そういった意味で、販売実勢に沿った生産活動に戻っていくというふうに思っております。

大畠委員 ひとつ、きちっと経済産業省が率先してそういうメッセージを出して、ものづくりの、特に部品関係の社長頑張れと。どんなに自動車会社が自動車をつくろうとしたって、部品をつくる工場がなくなってしまったんじゃつくれないわけですから、そこら辺もぜひ頑張っていただきたいということを要請しておきます。

 それでは、経済産業省関係、中小企業庁関係は結構ですから、どうぞお引き取りください。

 そこで、だんだんわかったんですが、週四日休業とか、あるいは五日休業のところまで出てきているんですが、結果的には、休業補償といいますか雇用調整金を申請しなきゃならないというので行くわけですが、ハローワークは仕事を求める人と雇用調整金の書類を提出する中小企業の経営者で大変あふれておりまして、このお手元の新聞のグラフを見ても、雇用調整金の対象者がこれで見ると百八十万人ぐらい、事業所関係が三万カ所ぐらいですかね。

 ですから、去年の十一月まではほとんどゼロに近いんですから、急激にこういう休業補償を求める事業者が押しかけているわけでして、私も日立のハローワークへ行きましたが、担当者が二人いたんです。一人は過労で入院を余儀なくされた。一人だけしか残っていないんです。その人も、土日もつぶして一生懸命やっていますが、とてもじゃないけれども、こういう急激な申請者数に対応できる状況にないんですね。この問題をどうするのか。要するに、申請者も困っているし、対応している職員も困っちゃっているんですね。

 だから、ここのところは、社会保険労務士とかそういう資格を持っている人がいますから、例えば確定申告のときには、税理士の方の判こをもらえば、これはほぼ申告したと同等に扱われるわけですから、何もハローワークで全部処理しなくたっていいわけなんですね。ここら辺、私は緊急対応が今必要だと思いますが、この件について厚生労働省の見解を伺いたいと思います。

大槻政府参考人 お答え申し上げます。

 雇用情勢が急速に悪化する中で、御指摘の雇用調整助成金でございますけれども、現在、労働局及びハローワークへの相談件数、あるいは申請件数等々が急激に増加しているところでございます。

 こうした中で、私どもといたしましては、まず支給事務を円滑に行う、これは非常に重要でございます。このためにも、支給申請手続を簡素化していくということを、順次いろいろなことを実施いたしておるところでございまして、これをもって、できるだけ事業主の負担を軽減する、また、審査事務の効率化を図るということに努めているところでございます。

 また、体制的にも、部門を超えまして応援体制を確立していく、また、事務補助体制として賃金職員等を配置するなどによりまして、労働局そしてハローワークの体制整備を図ってきたところでございます。

 また、これに加えまして、助成金支給申請アドバイザーという、非常勤の職員でございますけれども、これを全国の労働局にも配置いたしまして、助成金の利用を希望する事業主に対する相談援助、あるいはまた助成金申請窓口での申請受け付け等に当たっていただくこととしているところでございます。このアドバイザーにつきましては、社会保険労務士の資格を有する人、あるいは企業で人事労務等を担当してきた人々等を登用することとしているところでございます。

 この雇用調整助成金につきましては、二十一年度予算の要求を行った時点に比べまして、利用が著しく急増しているところでございます。今後とも、業務処理状況を注視しながら、必要な体制の拡充につきまして検討をしてまいりたい、かように考えているところでございます。

大畠委員 大まかな話なんですが、私が事務方から聞いたら、来年度、四月一日から六十人ふやしますと。ハローワークは五百五十カ所あるというんですよ。五百五十カ所あるのに六十人ぽっちじゃだめじゃないか、千人ぐらいふやせと。一カ所に二人ぐらいやったって千百人ですよ。それで、サポーターを二人ぐらいやって二千二百人ぐらい。大したお金じゃないんですよ。

 正直言って、ハローワークの担当者は倒れますよ、今のままでは。私も見てきた。そうしたら、女性の方が一人で百社分ぐらいの資料を抱えてやっている。大臣、一社当たり百人も対象だったりすれば、こんな資料になっちゃう。分厚いキングサイズ二冊ぐらい。こんなのを中小企業の方もつくるのは大変だけれども、見る方だって大変なんです。それを一人でやっているんです。二人いたんだけれども、一人は過労でダウンして入院しちゃったんだから。それが実態なんです。

 だから、今言った、中央ではわからないけれども、出先機関ではもう戦場ですよ。申請する人も困っているし、申請を受け付ける人がサボっているわけじゃなくて、目いっぱいやったって、人がいないんですから。こんなところに二千二百人ぐらい、三カ月ぐらいつけたらどうですか。今のような認識ではだめなんですよ。

 再度、もうちょっと具体的に、地域の実態に合わせて、社会保険労務士みたいな資格を持った人千人、サポーター千人、合わせて四人ぐらい各ハローワークに配置しないと、とてもじゃないけれども、わかるでしょう、このグラフ。これは洪水ですよ。山に雨が降って急激に水量が増して、洪水状態ですよ。

 これは、もう一回現状を調査して適正な人員配置を行うというような答弁でもしてもらわないと、今の話では、総論だけではとても納得できませんね。再度、考え方を改めて答弁席に立ってください。

大槻政府参考人 御指摘のように、ハローワーク、労働局の窓口、非常に支給申請者が殺到しているという状況でございます。

 したがいまして、先ほど申し上げましたように、ハローワーク、労働局を挙げての体制に取り組んでいるところでございますし、また、社会保険労務士会やあるいは労働保険事務組合といった外部の団体等にもいろいろお願いいたしまして、事前の相談対応等々に当たっていただく。また、いろいろな形、例えば、ハローワークに来ていただくということだけではなくて、商工会議所等々、商工団体とも連携をしながら、説明会等を別途開催し前さばきをする等々、さまざまな工夫もしておるところでございます。

 御指摘のように、とはいっても人的体制が何より重要でございますので、私どもとしても、先ほど申し上げましたが、今の業務処理状況をにらみながら必要な体制の整備、先ほどアドバイザーのお話を申し上げましたけれども、このアドバイザーの問題、あるいはそれを補佐する体制等々、しっかりと支給申請事務等々に対応できますように充実をしていくということで対応したいということで、今検討しているところでございます。

大畠委員 その担当の女性の人の話を聞きましたが、小学生の子供さんがいるんです。土曜も日曜も仕事、夜も遅くまで仕事。それで、小学生の子供さんから、お母さん、どうして最近私の相手をしてくれないんですかと、お母さんが子供さんからクレームをつけられたというような状態なんです。

 でも、一生懸命やっていますよ。でも結局、上流側の厚生労働省の御認識が今のお話ではいま一つないので、大臣からも、ぜひここら辺はしっかりやるように、閣議のときでも話していただければと思うんですが。

鳩山国務大臣 尊敬する大畠先生に御答弁申し上げますけれども、私は、六十四日間だけ労働大臣というのをやったことがございます。羽田内閣でした。あのころ、雇用調整助成金という話を説明を受けても、そんなもの必要なのかと。つまり、景気がよかった、全くわからなかった。でも、そういう準備をしておくんだねと、雇調金という話だけは勉強しておいた。

 しかし、これは要するに緊急事態なんですね。ほとんどゼロに近かったものが百八十万人とか、こういう緊急事態にどうやって対処するかということは極めて大事でございますので、機会があれば厚労大臣に申し上げたいと思います。

 それから、私がこういうことを言うのは変かもしれませんが、総務省では失業率の調査をいたしております。この間、四・四%という発表をいたしたわけでございますが、非常に気になりますのは、完全失業者というのは定義がございまして、案外、定義で狭い概念になっております。したがいまして、今、物すごく短い短時間労働の方、あるいは休業して雇調金という方もおられるでしょうが、休業者の数が急増しているわけです。ですから、今の状態というのは、何か、大雨が降って川の水位がすごく上がったような状態、統計局的にはそう見れるんだろうと。

 そう思いますと、やはり緊急事態がもう既に起きていると思いますが、これは、ハローワークの件、雇用調整助成金の件は緊急対応をしなくちゃならぬことと思いますので、舛添大臣にお伝えをいたします。

大畠委員 ありがとうございました。

 本当に緊急事態になっていると思いますし、地域の方では、帰休というのは、結局お金がもらえない状態があるんですね。ですから、それは、保険を積んでいた分、国が担保しますというんですから、それを受け付けるところが小さいので、みんな押しかけてもなかなか通らないというのは、年金の問題と同じように、いわゆる保険金を掛けておいても国は対応が遅いじゃないかということにもなりかねないんです。

 一部の方は、いつこの雇用調整金をいただけるんでしょうかと言ったら、半年ぐらい先ですかね、あるいは一年後ですかねなんという担当者からの話を聞いて、びっくりしちゃって、その間どうしたらいいんだろうというような声も上がっておりますので、ぜひ、厚生労働省並びに元厚生労働大臣にもお願いしたいと思うところでございます。

 さて、この問題はこの問題としてぜひお願いしますが、次に、構造特区の話に移りたいと思って、いろいろと地域を歩きました。

 一つ、私は、これは構造特区に入るんじゃないかと思っておったんですが、渡辺委員長も花粉症だという話を先ほど理事会の席で聞きましたが、とにかく花粉症の人がたくさんいるんです。歩いている人の四人に一人ぐらいはマスクをしていまして、これは風邪とか何かじゃなくて、その背景、原因はわかっているわけですから、これをまず、地域を特定して集中的に対策をとって、花粉症をなくす地域というのは特区になるんじゃないかというお話をしたら、余りそういうものは特区にならないんですという話を受けてしまいましたけれども。

 私は、限界集落あるいは地域の集落のところへ行って、山の仕事がなくなってしまった、だから若い人が里を去ってしまったと言うんですが、その山を見ると、三十年以上たったような杉の木、これがもっさり花粉を全身につけているんです。地元の人の話を聞いたら、若い木はそんなに花粉はつかないと言うんですね。三十年以上、四十年、五十年になると、まさに花粉の木みたいな感じになっちゃって、山の地主の方のうちにも入ってくる。自分の山から飛んでくるので、余り文句も言えないんだけれどもという話なんです。

 これは花粉対策としても、新聞で見ると、与党の方が、百万本伐採する、平成二十一年度の補正予算の中に入れたいという話をされているようでありますが、ここのところは私は、国民のためにも、地域を特定するかどうかは別としても、根本的に里の再生のためにやるべきだ。

 今、杉の木一本、四、五十年たっても千円でしか売れないらしいんですね。千円だとすると、切り出すのに千円かかってチャラになってしまうということで、地元の人は、三千円から四千円で買ってもらえたら新しい木を植えることができる、そうすれば花粉を全身につけたような杉の木もなくなるんだ、こういうふうなお話もいただきました。

 国民全体にそういうものがあって、みんな花粉症になると気力がなえてしまうんですね。だから、特区の特性は何かというと、特区を創設して国民生活の向上及び国民経済の発展に寄与するというんだけれども、この以前の問題として、こういうものに大動員をかけて対策すべきだと思いますが、農林省と財務省、見解を聞かせていただけますか。

沼田政府参考人 お答え申し上げます。

 私ども林野庁といたしましては、花粉の発生源対策といたしまして、広葉樹林化の推進でありますとか、花粉の発生の少ない杉、少花粉杉と呼んでおりますが、少花粉杉等の花粉症対策品種の開発などに取り組んでいるところでございます。

 特に、平成二十年度から、昨年度からでございますけれども、首都圏及び京阪神圏におきまして新たに設置されました花粉発生源対策推進協議会、こういった場を通じまして、関係する都府県でありますとか、あるいは森林・林業関係者と連携を図りながら、一つには、首都圏等への花粉の飛散に強く影響を与えると推定される杉の区域を確定いたしまして、そういった地域におきまして広葉樹等へ植えかえをしていくということ、そして二つ目には、少花粉杉等の苗木の供給を大幅に増大させるための体制整備、こういったものに取り組んでいるところでございます。

 私どもといたしましても、関係省庁でありますとか地方公共団体との連携を図りながら、花粉の多い杉の植えかえなどの花粉発生源対策の一層の推進、こういうものに努めていきたいというふうに考えているところでございます。

香川政府参考人 杉花粉発生源対策でございますが、平成二十年度から花粉の少ない森づくり交付金によりまして、少花粉杉や広葉樹林等への転換を行う森林所有者に対する協力金の支給を行っております。

 また、二十一年度予算におきましても、少花粉杉など花粉症対策苗木の供給を大幅に増大させるための杉花粉発生源対策関連の予算を措置しているところでございます。

 与党のそういう百万本というようなお話もございますが、これらの事業の効果等を検証しながら、農林水産省ともよく相談をしながら検討してまいりたいというように思っております。

大畠委員 この構造特区の提案も余りぱっとしないものしか出てこないのも、みんな花粉症にかかっているんじゃないですかね。各省庁の役人の人も、随分マスクの人が多いですよ。春先とか秋口はみんなちょっと意識が集中しないから、この程度の法案になってしまったんじゃないかという感じもしますので、ぜひ農水省も財務省も、これは大臣、与党の方から何か百万本構想と、これは四十億なんですね、大体四千円で買えば。一千万本構想で四百億ぐらいですよ。今回の自動車の千円構想で五千億でしょう、投入しているのは。それよりも、四千億投入すれば、一千万本杉を切り出して、花粉対策にもなるし、雇用の創出にもなるし、里がよみがえる可能性が出てくるんですよ。

 だから、この際、私は、ぜひこういう問題についてもしっかりと取り組んでいただきたいということを強く要請しておきたいと思います。

 そこで、特区法に入ります。やっと特区法に入りますが、特区の中で、先ほど申し上げましたように、何か規模、構想は鳩山大臣らしくない小規模なもののように感じますが、いずれにしても、社会教育施設の管理、整備に関する業務を教育委員会から自治体の長ができるようにする、また、刑事施設の被収容者に対する健康診断などの入札とか、施設の、民営でもできるようにする、こういうことについては基本的に賛成ですけれども、ただ、幾つか懸念が寄せられておりまして、そのことについて質問させていただきます。

 まず一つは、施設において緊急事態が発生した場合の地域住民対策、これはPFIによる刑務所においての話でありますけれども、地域住民対策はどうするのか。それから、被収容者に対する人権保障というものはできるのか。それから、市場化テストの導入により管理の質が低下するのではないか。特に、弁護士会からは次のような声が寄せられております。公権力の行使にかかわる業務の一部である処遇現場の巡視、巡回ですね、信書の検査補助の業務等は外部委託の対象とすべきではないんじゃないか、こういう指摘もございますが、あわせて法務省、内閣府の方から、それぞれ現在の見解を明らかにしていただきたいと思います。

尾崎政府参考人 まず、緊急事態への対応についてお答え申し上げますけれども、PFI刑務所につきましては、運営開始後二年近くが経過しておりますけれども、受刑者の逃走あるいは暴行、自殺等の保安事故や個人情報の漏えいなど、施設の運営に支障を生じるような事案は発生していない、おおむね適切に業務が運営されているというふうに認識しております。

 委員御指摘の逃走等の非常事態が発生した場合につきましては、近隣の警察署も含め、関係機関や地域住民に情報が迅速かつ確実に伝達されるように、平素から緊急時における連絡体制の整備を図っております。

 そのほか、逃走等の重大な保安事故の発生時には、近隣の刑事施設からの応援体制に加え、迅速な事態収拾を図るため、警察署等との緊密な連携に努めているところでございます。

 次に、公権力の行使に関しまして、これを民間委託することに支障はないのかというお尋ねでございますけれども、刑事施設の運営に関する業務を官民競争入札等の対象とすることにより民間委託することにつきましては、被収容者等の身体、財産を直接侵害する実力行使、あるいは被収容者等に対し義務を課したり、あるいはその権利を制限する処分等を伴う事務につきましては、刑事施設の長または刑務官が行うこととしまして、処分等に当たる業務の準備行為、下調べ等でございますが、あるいはその執行として行われる事実行為につきまして民間委託することとしております。

 また、公共サービス改革法では、委託する業務の詳細な内容及び確保されるべき質について実施要項に定めまして、委託業務の実施に関しましては、報告徴収、立入検査、必要な措置の指示などの監督規定などが設けられております。これによりまして、国が直接実施する場合と同様に、業務の適正かつ確実な実施を確保できるものと考えております。

 また、そのほか、モニタリングシステムなどが設けられておりまして、こういったことを活用することによりまして、適正な運営が図られるものと承知しております。

大畠委員 いずれにしても、今の答弁では何かよくわからなかったんですが、処遇現場の巡回とか信書の検査補助の業務、こういうことについての疑義も寄せられておりますから、こういうものについては十分配慮した形で実行できるように要請をしておきます。

 それから、あと二つほど、特区に本当は加えてもいいのではないかということがございますので、これを提案しながら、担当省庁から御見解をお伺いします。

 例えば、こういうものは鳩山大臣にふさわしいんじゃないかと私は思うんですが、水素エネルギー特区。これは何かというと、私の友人がフランスの方で原子力庁に勤めているんですが、二〇五〇年には、パリの町を走る自動車は全部水素自動車にするんだと。日本は今、電気自動車の話がかなり動き始めていますけれども。水素エネルギーというものに着目をして、風力発電は、風があるときは発電するし、風がないときはとまってしまうので、非常に不安定なふらふらしたものなんですね。しかし、風力発電の電力で水素をつくって、それを貯蔵しておいて、それを利用して水素自動車というものをある町で走らせる、こういう構想もございます。

 これは地球温暖化対策にも寄与しますし、不安定な電力というものにも安定化に寄与しますので、例えば、北海道の室蘭市が水素のエネルギーを利用した特区を申請してもいいというような話も伺っております。ですから、どこか日本の一カ所にエネルギーの特区をつくって、水素自動車ですとか、風力発電のエネルギーを使って水素をつくり貯蔵しておくとか、私はおもしろい構想だと思うんですね。こういうことも加えてはどうか。

 あるいは、農業関係ですけれども、鳩山大臣から先ほどどぶろく特区という話がありましたが、実は、どぶろく特区をやっているのが私の選挙区にも三軒あるんです。

 ただ、どぶろく特区を申請したら、お客さん用とあなたの家族が使うもの、おふろを二つつくってください、それから、トイレも二つつくってください、お客様用のトイレとあなたの家族が使うトイレは別にしなさい、あるいは、洗面のところも、家族用の洗面所とお客様用の洗面所は別にしなければなりませんというので、農家の家屋をそのまま使うことはできないということがわかりまして、離れの方に何かプレハブみたいなうちをつくって、結局、そうやってお金をかけないといけない、こういうことになってしまったんです。

 私は、集落に行くと、非常に大きな、庄屋様のおうちみたいな立派なうちがありまして、お年寄り二人暮らしのところが多いんですけれども、本当は、そういうところを東京の人なんかは求めているんだと思うんですよ。そういうふうに無理やり、ふろ二つとか何かじゃなくて、五右衛門ぶろに入ってみたいという人もいるでしょう。だから、そのままで農家がお客さんを泊めてもいいという話になれば、これは農家の所得が上がるわけなんですよ。百円玉一個稼ぐのが農家は大変なんです。ですから、一泊二食つきで例えば五千円とか何かで、地域の自然を満喫できますよ、こういうところが本当なんだと思うんですが、どうもそこら辺がいろいろな制約があって実際はうまくいっていないというような話も聞いております。

 したがって、ぜひ農家の所得を上げるためにもそういう規制を排除して、自然のままで、親戚だって泊まっているんですから、親戚の人だって都会の人だって大体同じに扱ってもいいんじゃないかと私は思うんです。

 ここら辺、厚生労働省が管轄だと聞いておりますから、厚生労働省と、どぶろく特区に強い関心をお持ちの鳩山大臣からちょっと御見解をお伺いしたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

中尾政府参考人 お答えいたします。

 旅館業法につきましてですが、旅館業法は、宿泊施設の公衆衛生を確保する観点から旅館の構造設備等を規制するものでございまして、農家が体験宿泊を行う場合でも、公衆衛生上必要な構造設備は備える必要があると考えております。

 しかしながら、既に公衆衛生上必要な構造設備が備わっている場合において、必ずしも構造設備を新設することまでを求めるものではないと考えております。

 旅館業法による営業の許可等は、自治事務といたしまして都道府県知事が行っておりまして、また、条例等で定める基準もございますけれども、いずれにしましても、このような旅館業法の趣旨に沿った適切な運用が必要だと考えております。

鳩山国務大臣 どぶろく特区自体は、宿泊させなければ別にそういう問題は起きないんだろうとは思っておりますが、先生のおっしゃる事柄は、私のモットーであります自然との共生にも非常につながることですから、いい御意見を承ったと思っております。

 それよりも、一番感銘を受けたのは、結局これからは、炭素社会から水素社会へどうやって移すか。これは人類を、絶滅とは言いませんが、このままいけば人類の絶滅はあり得るわけですから、人類を救う唯一の道は水素社会だ。そのために役に立つ特区というのがあればすばらしい。

 よく燃料電池というのも、私も勉強してもなかなかわからないんですが、燃料電池と言うとわからないのであれば、水素発電機のことを燃料電池というわけですから。とにかく、水素社会へ移行するための先鞭を切るようなそういう特区があったらすごいな、こう思います。

大畠委員 終わります。経済産業省も準備していたと思いますが、時間が来ましたので、今の鳩山大臣の御答弁で結構でございます。

 ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、楠田大蔵君。

楠田委員 楠田大蔵でございます。

 ちょっと声がかれておりまして、大変お聞き苦しい点はあるかもしれませんが、本日議題となりました、構造改革特別区域法及び競争の導入による公共サービスの改革に関する法律の一部を改正する法律案について質疑をさせていただきます。

 ちょっと順番を変えまして、特区の件については結構今までも質問が出ておったようですから、今回の刑事施設業務の民間委託の件に最初から入らせていただきたいと思います。

 一応、話の中では五番目であったところでありますが、今回新たに全国展開される刑事施設業務の民間委託の話であります。

 刑事施設業務というものは、一連の刑事司法手続を構成するもので、国家刑罰権の実現という主権の行使に直接かかわる業務でありますので、経費削減や効率化などを第一義とする市場化に最もなじまない業務の一つという思いも個人的にはあるわけでありますが、そもそも、今回新たに全国展開をされることの正当性をどのように考えておられるか、大臣、お願いいたします。

鳩山国務大臣 今の大臣としてよりも、一年前に法務大臣をやっておりました経験からお話をしましても、刑務官の方々というのは国家権力を行使しているわけで、たしか、いわゆる危険業務ということで叙勲をお受けになる方々でもあろう、こう思っております。

 私は、美祢と喜連川と視察をしました。そうしたPFIによる刑務所は、多分ですが、比較的軽い罪の方々が多く入所していたと思うわけでございます。それと府中の刑務所とを全く同列に見ることはできないのではないかというのが私の率直な感想でございまして、これはいわゆる市場化テストというか、全国展開をするということでありますから、市場化というか、民間に委託する内容等については、それぞれの刑務所の特性に応じて慎重に判断をしてやってもらいたいな、こういう思いがございます。

楠田委員 大臣の方から、法務大臣をやられておられましたので、それもありましてお聞きをしておりますが、刑務所の特性に応じてという話も、この質問の機会に新たに一つのポイントとしてお示しいただきましたので、これは重要な観点になると思っておりますので、そうした観点から、ぜひこれからお取り組みいただきたいと思っております。

 加えて、今回、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律の一部改正という形ではなくて、公サ法を改正して市場化テストを導入するという形にしておりますが、この意義というものはどういう点にあるでしょうか。これも大臣に。

宮澤副大臣 委員お尋ねのとおり、恐らく、これは法務省の方が判断されたことだろうと思いますけれども、特区制度を活用してやってきた、なかなか成果が上がったという中で、これを一般化する場合に、委員おっしゃったように、刑事収容施設法絡みで改正をするのか、いわゆる市場化テスト、公共サービス改革法でやるのか、この二つの選択肢があるわけでございます。

 公共サービス改革法ということでやりましたのは、手続の透明性、中立性、公正性の確保がきっちりできている、既に法的にできている、また、第三者機関が事業選定、入札時期等に関与する仕組みが設けられている、民間事業者の秘密保持義務、みなし公務員規定、事業者に対する監督規定も定められているといったような、法律的な基礎的な条件が整っているということが一番大きかったのだろうと思っております。

楠田委員 今御答弁ありましたように、守秘義務であるとかみなし公務員規定等、また監督規定等が、今回、公サ法の中では特区法に加えてさらに厳しくなっていくということだろうと思っていますが、そうした規定で業務を適切に、確実に実施をさせていくことが可能であるかどうか、この点について、この後質問を重ねてまいりたいと思っております。

 具体的に、まず、どのように業者を選定するのか、また、その際、決められた業務について、先ほどの宮澤副大臣がお答えいただいたようなたてつけの中で、適正な実施を担保することが本当にできるのか、あわせてお聞きをしたいと思います。

佐久間政府参考人 公共サービス改革法に基づきます市場化テストの民間事業者の選定の手続、あるいは実際に事業が実施になった場合の適正な実施の確保ということのたてつけがどういうふうになっているかということでございます。

 まず、事業者を選定する入札の手続でございますけれども、これは事業の効率的実施とサービスの質の維持向上を図る、こういう観点から、質と価格の両面を評価する総合評価一般競争入札という形をとっております。

 この入札に際しましては、民間事業者が達成すべきサービスの質でありますとか価格だけじゃなくて、これは企画書を出してもらうわけですけれども、その企画書の中身の評価、この評価項目、そして、それぞれにどういう配点をするか、価格と質の評価といったものを実施要項の中に具体に定めております。そして、この実施要項を定めるに当たりましては、官民競争入札等監理委員会の審議を経て、第三者の目を経た上で決定し、これを募集に移していただく、こういう段取りになっております。

 また、実施段階についての落札事業者によります業務の適切な実施の確保という点につきましては、法律上、事業者には守秘義務、秘密保持義務並びにみなし公務員規定が適用されることになっております。また、実施段階で必要に応じて事業者から報告を徴収する、あるいは、それに基づきまして事業者に対して改善の指示をするといったようなこと、条件が満たされないというようなことになりますと契約の解除といったようなことができる、こういったような規定が設けられておりまして、これらを通じまして、適切な実施の確保が図られているところでございます。

楠田委員 評価についてはそういうことだろうと思いますが、実施を担保していくことについてでありますが、先ほど、報告の徴求であるとか停止命令であるとか契約解除、最終的には民間の受託者に対する契約解除も可能であるということであります。

 大臣も法務大臣をお務めであった経験からも、やはり、こうした民間との契約関係、最終的には契約を打ち切ることができるということは、もちろん民間業者にとっても経営をする上では大変厳しいことかもしれませんが、社会的な制裁といいますか、やはり国家公務員としての身分保障やモラルを持ってやっている刑務官、最悪の場合は懲戒免職等の厳罰規定がある、こうした国家公務員の場合と比べて、実際に適正な実施を最終的に担保することができるのかというのは、私は問題があるのではないかと思っておりますが、この点について、大臣、何かお考えはありますか。

鳩山国務大臣 やはり公権力の行使につながること、あるいは国家権力の行使の一部を市場化テストという形で民間の事業者にやってもらうということであるならば、とにかくそれは業者の選定から入札から、あるいは事業を開始してからもそうですが、徹底的に厳しくやっていただかなければならないなというのが私の思いでございます。

 正直言って、刑事施設の件がここで出てきているわけで、これはやはり国家権力の行使としても相当重い事柄だというふうに思っておりますから、これから、法務省矯正局になるのかと思いますが、役所の方がその覚悟と決意でやってもらいませんと、私は、万が一という間違いが許されない分野だと思っておりますので、基本的には楠田大蔵先生のお考えと特に違いはないと思っております。

 また、事業者の選定で、これは官民あるいは民間入札かと思いますけれども、これをきちんとやっていただかなければいけないわけで、私は、入札という言葉に、最近時々入札恐怖症かと思うことがあるんですね。つまり、入札といったって本当に入札なのかなと。いろいろな言葉があって、数学的な定義がはっきりしていない。一般競争入札とか競争入札とか、企画提案とか企画競争とか、その混合物とか、もうわけのわからぬ言いわけばかりさんざん聞かされてきたものですから。

 とにかく、今先生がおっしゃるように、非常に重大な事柄を競争入札にかけるわけですから、この入札だけは絶対にきちんと、清く正しく、透明性と公正性を持ってやっていただきたいと願う気持ちでございます。

楠田委員 大臣の得意な分野に引き込んでしまいましたが、選挙区も隣でありますので、名前を覚えていただいて、委員長もお隣でございますので、福岡の水は大分合われたようでございますが。

 そうした、大変大臣として強く関心を持って、関心といいますか、注意をしながら挑んでいただけるということでありますが、もう少し具体的に、そうした上で質問を重ねてまいりたいと思います。

 先ほど大畠委員からも少しありましたけれども、そうした国家権力として大変重い、最大級に重いうちの一つだと考えておりますが、その中の公権力の行使にも当たる施設の警備や収容監視を委託可能としておりますが、単なる給食等の事業だけではなくて、こうした公権力の行使にまで委託を可能とした判断理由を改めてお聞かせいただけますでしょうか。

尾崎政府参考人 委員御指摘の、施設の警備あるいは収容監視の民間委託につきましてですが、これにつきましても、全面的に民間委託の対象としているというわけではございませんで、被収容者等の身体、財産を直接侵害する、そういった実力行使、あるいは被収容者等に対しまして義務を課したりあるいは権利を制限したり、例えば信書の発信を不許可にする、こういったことでございますが、そういった処分等を伴う事務につきましては、刑事施設の長または刑務官が行うこととしております。

 それに付随する、処分等に当たる業務の準備行為、例えば、信書の内容を事前に検査して、その内容を刑務官等に不許可等の事由があるのであれば報告する、そういった事務、あるいは執行として行われる事実行為につきましては民間委託することとしたものでございます。

 こういったふうに限定を付しておりますし、先ほど来お話にありますように、国の監督手段が多数設けられておりますので、そういったことにより適切に運用されるものというふうに考えております。

楠田委員 処分の準備行為、執行の事実行為という話がありました。区別をはっきりさせているという答弁でありましたが、私は、区別自体は非常に相対化、あいまい化の部分があるのではないかと懸念をしております。

 先ほどのケースで具体的にお聞きをしてまいりますが、受託者による警備や収容監視中に暴動や脱走など保安事故が起こったときにはどのような対応をとられるかという点が一点あります。平成十九年に徳島刑務所で暴動が起こったということもありましたので、この点を一つお聞きしたいのと、また、被収容者の自殺など取り返しのつかない問題が起きたときの民間職員及び受託者の責任のとり方というものはどのようになるか、この点をお聞かせください。

尾崎政府参考人 まず第一に、実力行使が必要なような場面が生じた場合どうするかということでございますけれども、こういった場合には、民間の職員は直ちに国の職員に連絡する、それによりまして、国の職員が実力行使等を伴う直接の対応を行うということになります。この点では、まさに官民が協働して事に当たるということでございます。

 また、次に、民間事業者の職員が業務を実施するに当たりまして違法に損害を与えたというような場合どうするかということでございますけれども、この場合、国家賠償法に言う公権力の行使に当たる公務員と申しますのは、公務員法上の公務員に限定されず、広く公権力の行使を委託された民間事業者を含むというのが最高裁の判例でございます。これによりまして、国がその被害者に対して賠償の責めを負うことになりまして、国は、民間事業者に対しましては、被害者に支払った損害賠償額につきまして、債務不履行による損害賠償の請求ができるというふうに考えられます。

楠田委員 先ほどの話の中で、直ちに国の職員に連絡をしてともに当たるということでありましたが、実際上、そうした危険性に急にさらされたときに、本当に連絡をしている余裕があるのかどうか、こうした点は非常に心配になるところであります。しかも、委託者と受託者の権利義務関係といいますか、本当に刑務官等が民間の受託者に対して、その場で協力しながら危機に対応する、そうした関係に立つのかどうか、この点もはっきりしないところでありますが、この点はいかがでしょうか。命令関係等々、協力してと先ほど言われましたけれども、そうした関係に立つことができるんでしょうか。

尾崎政府参考人 現在でも、刑務官相互で非常事態につきましては連絡をとりまして共同して当たっているということでございますけれども、そういった緊急事態の対応方法をあらかじめ定めておきまして、民間事業者の職員がそういった場面に遭遇した場合には直ちに連絡をとるということをするということでございます。先ほど申しましたように、実力行使はあくまでも刑務官が行うということでございます。そういった面では、まさに指揮命令というよりは官民の協働ということになろうかと思います。

 ちなみに、現在のPFI刑務所におきましては、民間事業者の職員に対しまして、そういった場合の対応を含めまして、種々の研修あるいは訓練を行っているところでございまして、今後ともこのような研修、訓練を継続してまいりたいというふうに考えております。

楠田委員 大変細かい話にもなっていきますが、大変重要なことだと思いますから。

 先ほど権利義務関係という話をされましたけれども、もう一度お聞きしておきたいと思いますが、例えば、集団で暴動等になったときに、民間の受託業者、民間の職員が実際にそれをとめに入る、逮捕というわけにはいかないでしょうが、何らか戦うといいますか、そういうことも出てくるはずでありますので、そうしたときにも民間の職員は実際に実力の行使ができないのか、それとも、その点においては刑務官の指示に従って実行することができるのか、この点、再度確認しておきたいと思います。

尾崎政府参考人 その場合、緊急やむを得ずそういった実力を行使する必要があるというような場合には、刑法上の緊急避難あるいは正当防衛、こういった規定によりまして、その要件のもとで実力を用いることは許されるというふうに考えられると思います。

楠田委員 緊急避難、正当防衛、少し前に大学で習いましたけれども、例えば実際に職員に対して襲いかかってきた等のときはまさに正当防衛に当たるのかもしれませんが、例えば、そこから脱走をしようとしているとか、何かしら火をつけようとしているとか、自殺をされようとしたとき等、こうしたことに対しても、細かい話でありますが、体に触れる等そうした対応ができるのかどうか。一応、せっかくの機会なので、確認しておきたいと思います。

尾崎政府参考人 現在、非常事態が起きた場合には、通常、非常発報をいたしまして、その現場の職員だけではなくて、周りの職員も駆けつけて対応するというような方法をとっております。これも、官民協働体制になりましても、そういった方法をとるというふうに考えられます。

 ちなみに、そういった、まさに火をつけようとしている場合どうなのかといったお話がございましたが、仮定的な事例についてお答えするのは避けたいと思いますけれども、一般論として申し上げれば、そういった場合に私人として現行犯逮捕する、そういったことも可能かというふうに思っております。

楠田委員 せっかくですから、大臣、この議論で何か感じるところがあれば。

鳩山国務大臣 答弁にはなりませんけれども、私は、楠田大蔵先生が非常にすぐれた、緻密な質問をしておられるなというふうに思います。

 私は、喜連川は行きましたが、オープニングセレモニーですから収容者はいなかったわけです。美祢に伺ったときに、アウトソーシングしている部分、つまり民間委託をしている部分で、例えば、民間のお医者さんが健康診断をするとか、あるいは職業訓練ということで、例えば何かの組み立ての専門家がやってきて教えるとか、そういう接触はあるんでしょう。要するに、民間委託したその民間会社の社員と被収容者が触れる機会というのは、どの程度制限しているのか、非常に厳しく制限しておりますから、例外的な場合を除いて触れることはないと思いますというような話だったわけですね。

 これを全国展開するということになると、いよいよその辺が、今の楠田大蔵先生の質問にきちんと答えられるような、緻密な議論をして、十分な準備をしておかなければならないだろう。特に、私が役所の者に聞いたのは、矯正教育というのが入っておるがこれはどういうことかと。つまり、法務省矯正局ですよね、矯正というのが一番大事な仕事なわけですね。その矯正教育ということが、今度の全国展開するアウトソーシング、考えの中に入っているので、どういうことかと。こういうことも質問をしたりしているわけです。

 ぜひ、緻密な議論を先生にしていただいておりますから、法務省の方も、緻密な議論をして緻密な準備をしてもらいたい、こういうふうに願います。

楠田委員 当然、担当大臣でありますので、その緻密な議論に加わっていただきたい、責任を持っていただきたいと思うわけでありますが、矯正については、この後もう一回聞いていこうと思っております。

 つまりは、少々細かい点まで聞かせていただきましたのは、やはり委託者と受託者、契約をとった側との権利義務関係、これについては非常に難しい観点が出てくるだろう。

 また、最終的な責任のとり方ですね、国家賠償法の話がありました。判例で、民間事業者についても、みなし公務員の規定もありますので国賠の対象になるだろう、国の方が民間業者に損害賠償請求することもできるだろうということは、これまた学生時代に習った記憶があります。

 しかし、そうした中で、最終的に、社会的制裁、大臣の最終的な責任、政府の責任等々、こうしたことに関しての責任関係を整理するということは非常に重要だと思っておりますので、この点は、ぜひ緻密な議論を今後も続けていただきたいと思っております。

 次に、民間事業者の職員の質の向上の部分でありますが、この点はどのようにお考えでありましょうか。やはり、刑務官は国家試験を受けて、さまざまな教育、研修等も受けておりますけれども、この点はどうでしょうか。

尾崎政府参考人 委員御指摘のとおり、民間事業者の職員につきましても、十分な資質や能力を持っている方になっていただくということは、非常に重要でございます。このため、本法律案におきましては、民間事業者の役員、従業員などにつきましては、必要な知識及び能力を持っていることを求めるとともに、一定の刑罰を受けたことがある人や暴力団員に該当する人につきましては、欠格事由として定めております。

 また、先ほども申し上げましたけれども、現在のPFI刑務所におきましても、民間事業者の職員につきまして、研修あるいは訓練に力を入れておりまして、こういったことを通じて、業務の適正かつ確実な運営が図られるというふうに考えております。

楠田委員 十分な資質という言葉がありました。これは、結局は、何をもって十分な資質というのかは非常に不透明であると感じております。加えて、人権教育等々、弱者への配慮等々、これはやはり、公務員だからこそ果たせる点だと思っております。また、受託者の方で、委託期間の定め等があって、身分が不安定になってしまう。また、経費削減という公サ法の目的からしても、待遇が悪くなっていく可能性があるだろう。

 そうした中で、かつて刑務官自体でも事件がありましたが、被収容者との不適切な関係、携帯電話を貸したり飲食物等便宜供与して見返りを要求したりという可能性が、民間の方であればさらに強まるのではないかという認識がありますが、これはどうでしょうか。

尾崎政府参考人 民間事業者が参入するにつきましても、その従業員につきましてはみなし公務員規定が設けられておりますし、守秘義務も定められておりまして、その違反に対する罰則規定も設けられております。これらによりまして、公務員と特段異なるところはなく、不適正な処遇が行われないような措置というものは十分に可能であるというふうに考えております。

楠田委員 ですから、みなし公務員の規定はわかったんですけれども、実際の待遇面ですね。これが本当に、みなし公務員規定だから、普通の、普通のといいますか、刑務官とその身分保障等で完全に一致するかというと、しないわけでありまして、この点については非常に心配をしておりますが、時間も限られておりますので次に移らせていただきます。

 先ほど大臣からもありました被収容者の処遇の質の向上ですね。つまり、矯正教育や職業訓練の質の向上というものも今回委託対象になっております。これは、具体的に質の向上といってもどのようなものなのか。また、質の向上の上の最大の目標は、改善更生、再犯防止などの目的であります。これは国民の要望であり、公共サービスのまさに中身、最たるもの、目的であると思いますが、これをどのように受託者に義務づけ、いかに評価をしていくか。また、目的が達成されない場合、責任の所在がこれもどこにかかってくるのか、この点についてもお聞かせいただきたいと思います。

尾崎政府参考人 質の向上についてお尋ねでございますけれども、この民間委託によって期待いたしますのは、民間事業者の創意工夫あるいはさまざまなネットワークを利用していただいて、特に改善指導につきまして委員御指摘でございますけれども、そういった点を含めまして、いろいろな新しい試みがされるということだろうと思います。

 例えば、美祢の社会復帰促進センターでは、パソコン技能を習得する訓練を全受刑者に実施するほか、プログラムシステム設計科、医療事務科、ホームヘルパー科など、労働需要が見込まれる職種につきまして質の高い職業訓練が実施されております。

 こういった民間事業者の努力につきましては、先ほど申し上げたようなさまざまな監督、評価制度、こういったものによりまして評価していくということになろうかと思います。

楠田委員 パソコン等々の話もありました。これは職業訓練でよく出てくる話でありますが、矯正教育、職業訓練もありますが、矯正教育の部分です。不謹慎な話ですが、余り刑務所が居心地がいい、楽しいということばかりではむしろ再犯につながる可能性も、最近はそういう話もよく聞くところでありますし、また、やはり私の思いとしましては、先ほど矯正局自体の責任の話もありましたが、犯罪を犯した、刑罰を受けている、そうした方に対する矯正教育等、職業訓練等は国家の最も重要な役割の一つではないかと私は思っているわけであります。そして、その目的が当然、これによって新たな犯罪を防ぐ、改善更生をさせるという大変重要な国民の要望があるわけであります。

 この点において、先ほど申されたような答えなり民間のネットワーク等々は、むしろ私は重要ではなくて、改善更生、再犯防止ということをどのように目的、結果を評価していくか、そしてこの目的が達成されない場合、単にこの民間業者を、契約をやめるだけで本当に済むのかどうか、こうした点においては、非常に私は懸念を持っております。

 やはり、この目的を達成するということは、政府、大臣の責任が非常に強いと思っておりますが、こうした議論を聞きまして、もう時間も来ましたので、大臣、最後にお聞かせいただいてよろしいでしょうか。

鳩山国務大臣 何よりも大事なことは、刑務所等刑事施設が何のためにあるかという目的なんだろうと思います。今楠田大蔵先生がちらっとおっしゃいましたことは、実は私も法務大臣時代にひっかかっておったわけでございます。

 というのは、美祢に参りますと、美祢社会復帰促進センターと書いてある。それはいいのです。しかし、やはり刑務所という文字もきちんと大きく掲げるべきだ。つまり、刑務所には、社会復帰を促進するというのは最終目標ですけれども、やはり刑罰というのは懲らしめという要素はあるわけです。その懲らしめによって再犯が起きなくなる、再犯率が減る。

 ですから、そのところを考えますと、今回の市場化テスト、全国的に広げるということでありますが、究極の目標である、再犯を減らす、これに向かってどこまで取り組めるかということが最大の課題なんだろうな、こう考えております。

楠田委員 その課題認識はまさに共有するところであります。

 やはり、今までの国家で行っていた、法務省で行っていた中で、この再犯防止の結果評価というのが恐らくなされていなかったのであろう、非常に評価が難しいということだったのでありましょうが、特に、これから民間に委託していく場合でありますので、その点においてもしっかりとこれからの、まず評価、評価といいますか、入札をする上での実施項目の一つとしても、この点においては大きな目標として定めをしていただきたいし、そして、これにおいてかつての再犯の事例とも比べて、実際に効果が上がっているかどうかを注意深くぜひ見ていただきたい。

 そうしたことを強く要望いたしまして、質問を終わらせていただきます。

渡辺委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時二分開議

渡辺委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。西村智奈美君。

西村(智)委員 民主党の西村智奈美です。

 特区法の改正案について質問をさせていただきたいと思います。

 今回の特区法と市場化テスト法の改正案で、私は、主に社会教育機関の施設の整備と管理の権限移譲の点について質問したいと思いますけれども、まず、事実関係の確認から先にさせていただきたいと思います。

 社会教育機関の施設の管理と整備の権限の移譲ということの提案については、早いところですと第九次の提案から上がっていたというふうに聞いております。第九次といいますと平成十八年になりますけれども、これまでの、特区の提案から認定といいますか法改正に至るまでは、大体今までは数カ月というペースで行われていたというふうに聞いていますけれども、今回これが、平成十八年に初めて提案があったところから平成二十年の決定まで時間がかかったという、その理由についてまずは伺いたいと思います。

惣脇政府参考人 お答えを申します。

 社会教育に関する特区要望につきましては、御指摘のとおり七件ほど出てきているわけでございます。このうちには、社会教育に関する事務全体を首長に移譲するという特区要望が含まれているわけでございます。そういうことがございましたので、中央教育審議会におきまして検討をすることといたしたわけでございます。

 中央教育審議会では十九年の六月から審議を開始いたしておりまして、昨年、平成二十年の二月に「新しい時代を切り拓く生涯学習の振興方策について」という包括的な答申が出されたわけでございます。その中で、社会教育に関する事務につきましては教育委員会が所管することが適当であるという答申になっておりますが、その中でも、社会教育機関の施設の管理及び整備に関しましては、学校施設と同様に特区における対応を検討する必要がある、こういう旨の提言がなされたわけでございます。

 この答申を踏まえまして、昨年の十月に、第十三次の特区提案に対する政府の対応方針が決まりましたので、今回の法改正を行うこととした、こういうことでございます。

西村(智)委員 社会教育の事務についての提案も含まれていたので中教審の審議を行っていただいた、その答申を待っていたということの答弁でしたけれども、これは私は、中教審の答申を実は待つまでもないものであったのではないかというふうに考えるんです。つまり、社会教育の政治的中立性の要請は、これはもう言うまでもなく認められているところでありますし、社会教育関連法の審議の中でもそのことは恐らく議論があったんだと思います。ですので、中教審の答申を待つまでもなかったのではないかと思いますが、文科省がそこまで慎重になられたというのでありますから、それはそれで経過として認めましょう。

 認めた上で、それでは、その政治的中立性ということについて伺いたいんですけれども、今回の特区法であります。第二十九条の条文で、これは学校教育施設の管理それから整備の権限と条文的には同じですけれども、このように記載をされています。「教育活動の適切な実施に支障を及ぼすおそれがないと認めて内閣総理大臣の認定を申請し、その認定を受けたとき」、こういうふうに書かれているわけでありますけれども、ちょっと条文の意味の確認をしたいと思います。

 この「教育活動の適切な実施に支障を及ぼすおそれがない」というのは、これはどういう意味でしょうか。

惣脇政府参考人 お答え申し上げます。

 社会教育につきましては、これは、学校または家庭において行われる教育を除いて、広く社会において行われる教育を指すということでございますが、このような社会教育につきまして、近年、人々の学習需要が高まっており、その内容が多様化、高度化しているということとともに、個人の要望や社会の要請にこたえるということがございます。このような幅広い要請に公平中立に対応していくことが必要ということであるというふうに考えているところでございます。

西村(智)委員 ちょっと聞きたかったことと違うんですけれども。

 つまり、ここの社会教育機関における「教育活動の適切な実施に支障を及ぼすおそれがない」というのは、これは政治的中立性を含むというふうに解釈してよろしいんでしょうか。また、そのおそれがあるかどうかというのを判断する主体はだれになるんですか。

惣脇政府参考人 具体的には、「教育活動の適切な実施に支障を及ぼすおそれがない」ということにつきましては、地方公共団体の実情に照らして認定をするということになると考えております。

西村(智)委員 それはどなたが判断するんですか。この条文では「内閣総理大臣の認定を申請し、その認定を受けたとき」、このように書かれているわけですけれども、地方自治体が支障がないと判断して、それで申請して、国が最終的な判断をする、こういうことですか。

 そうしますと、最終的な責任はどこが負うことになるのでしょうか。判断の責任。

惣脇政府参考人 まず、当該地方公共団体において、社会教育施設における「教育活動の適切な実施に支障を及ぼすおそれがない」という判断をしていただいて、申請していただくわけでございますが、その申請を受けて特区として認定するかどうかにつきましては、内閣総理大臣が判断をするということになります。

西村(智)委員 最終的な判断権限者はだれかということの答弁がありませんでした。

 自治体が支障がないと判断して申請をする、最終的に国が判断する。これは、では最終的には国が判断するということになる、そういう確認をさせていただいてよろしいんでしょうか。

惣脇政府参考人 そういう条件で特区を認定するということでございますので、そういうことでございます。

西村(智)委員 その第二十九条の二に、「地方公共団体の長は、」その「規則で定めるところにより、あらかじめ、当該地方公共団体の教育委員会の意見を聴かなければならない。」と記載されております。

 これはよく言われることですけれども、「聴かなければならない。」と書いてあって、結局意見を聞きっ放しになるのではないか、こういう懸念があるんですけれども、これについてはどうお答えになりますか。

惣脇政府参考人 社会教育機関の施設の建物の管理及び整備につきましても、その機関における教育活動と密接な関連を有するものがございますので、そのものにつきましてはあらかじめ教育委員会の意見を聞くということで、その旨の調整が図られるようにするということでございます。

西村(智)委員 いや、だから、「意見を聴かなければならない。」ということで、そういう旨の調整が行われることになっておりますと、どこにどう書いてあるんですか。聞きっ放しになってもいいということですか。

惣脇政府参考人 意見を聴取するということである以上、それに対応した調整をしていただきたいということでございます。法律上、確かに、同意を得るということまでは要件にはなってございません。

西村(智)委員 この程度の書き方でいいのかなと思います。

 それでは、こんなところで足踏みしているわけにもいきませんので先に進めますが、率直に伺います。この特区法の改正によって、社会教育に限って申し上げたいんですけれども、社会教育にどういうよい効果、どういうよい影響を期待できるのでしょうか。

惣脇政府参考人 今回の特区の対象は、施設、建物の管理、整備ということでございますので、建物の整備につきまして、地域における総合的な視野を持った地方公共団体の長の明確な責任のもとに、公共施設全体の整備方針や計画を策定し、従来よりも総合的かつ計画的に社会教育機関の施設と公共施設の整備を進めることが可能になるというふうに考えております。

 具体的な例を申し上げますと、例えば、耐震化事業でありますとかバリアフリー化などにつきまして、地方公共団体として計画的に整備するのに資するのではないか、こういうふうに考えているところでございます。

西村(智)委員 建物の運営、建物の管理については、それは多少メリットはあるかもしれませんね。

 ですけれども、私が今伺ったのは、社会教育の前進、社会教育の進展にとってどういう効果が期待できるのかということを聞いたわけです。きのうもレクで申し上げましたけれども、社会教育というのは、何も建物がするんじゃなくて人がするわけですよね。その社会教育に携わる人々がより社会教育を前進させることができるような、そういう環境になるとすれば、それは社会教育にとって大変効果があるというふうに判断できるんですけれども、今の御答弁ですと、建物の維持管理のみですということだというふうに受けとめたいと思います。

 続けて、質問は、この提案は、実は既に多くの地方自治体が、地方自治法百八十条の七という規定を使って、補助執行ないし事務委任という形で実行している自治体があります。特区法によって、そのまま管理権限を移すことを今回は提案しているわけですけれども、言ってみれば、実質的に、地方自治法百八十条の七で、補助執行や委任事務、これが可能ですよね。実際にどのくらいの自治体がこの地方自治法百八十条の七を使っていますか。

惣脇政府参考人 社会教育に関する事務の一部を首長部局で執行している教育委員会の数でございますが、まず事務委任の方につきましては、都道府県・指定都市が三、指定都市を除く市町村が二十でございます。

 それから、補助執行によってこういう事務を行っている自治体でございますが、都道府県・指定都市にありましては六、指定都市を除く市町村にありましては三十八でございます。

西村(智)委員 何かきのう聞いた数字と違うんですけれども、そうすると、今の答弁だと大体七十くらいの自治体でということになりますか、そうですね。そのくらいの自治体で、実際に、現行においても、地方自治法の百八十条の七によって社会教育機関の施設の管理や整備を行っているところがある。

 実際に、内閣府の方から文科省に対して問い合わせがあったときに、文科省の方から二度にわたってそのことを回答していますね。地方自治法百八十条の七で、補助執行ないしは事務委任が可能ですというふうに答えておられるんです。現行法の中でも可能であるわけなんですけれども、特区法でこれをわざわざカバーすることの意義というのは、どういうふうに説明していただけるのでしょうか。特区法のそもそもの趣旨は、法律でカバーできないところ、それを特例的に何とかしようということが趣旨だったと承知しておりますけれども、その理由について伺いたいと思います。

惣脇政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、地方自治法に定める補助執行ないし事務委任によりまして、教育委員会の事務の一部につきまして首長の部局で執行することができるわけでございますけれども、これはあくまでも首長部局の職員等に対して委任ないし補助執行ということでございまして、権限自体が教育委員会から首長に移るわけではないわけでございます。

 今回の特区法の改正によりますれば、権限自体が首長に移るということから、より一層、総合的かつ計画的な整備などにつきまして迅速な事務処理が可能になる、こういうふうに考えているところでございます。

西村(智)委員 迅速な事務処理が可能になるということではありますけれども、もう既に地方自治体で、それこそ苦労して、条例などをつくってやっているところはあるわけですよね。そういったところに、特区法でおっかぶせて持ってくるというのは、私は、特区法の趣旨からしてもおかしいんじゃないかな、ちょっと合わないところはあるのではないかなというふうに考えているんです。

 これは、どなたにお答えをいただけばいいのかわかりませんけれども、今回の特区法で、社会教育機関の管理それから整備の権限を首長部局に移すことが可能になるということでありますけれども、これによって、実際に手を挙げてくる自治体というのはどのくらいあると見込んでおられるのでしょうか。

惣脇政府参考人 先ほど御答弁申し上げましたように、社会教育全体も含めた特区提案につきましては七件ほど上がってきたわけでございますが、このうち二件につきましては、施設につきましてその権限の移譲の提案であったということでございますので、幾つか申請が上がってくるものと考えております。

西村(智)委員 まあ幾つかは上がってくるでしょう。それは実際に提案を出しているところが二つあるわけですから。

 ただ、二つのところの自治体も、もしかしたら地方自治法の百八十条の七でできるということを、もしかしたらですよ、これはわかりませんけれども、御存じないかもしれませんよね。本当に的確な情報が伝わっていれば、提案はもしかしたら上がってこなかったかもしれないとも思います。

 また、公民館の施設が全国で今約一万七千ですか、そのうちどのくらいの数のものが上がってくるかわかりませんけれども、学校施設の管理及び整備に関する事務、これが同じく特区法によって首長部局にも移管できますというふうになってからもう既に二年近くはたっているのでしょうか、この間どのくらいの活用があったのか伺いますし、それを踏まえて、あわせて、もう一度、この社会教育施設の管理監督に関する権限移譲がどのくらい上がってくると想定しているのか、その見込みを伺いたいと思います。

惣脇政府参考人 学校施設に関する特区につきましては現時点ではまだ実例がないわけでございますが、この点につきましては、特区制度を活用するかどうかは、地域の実情に応じて地方公共団体が判断するというものでございます。

 しかしながら、今回、社会教育についてもあわせて権限移譲が可能になりますれば、学校施設と社会教育施設もあわせて、さらにそのほかの公の施設との一体的な利用でありますとか、先ほど申し上げました耐震化などの総合的な整備の検討が促進されるものというふうに考えているところでございます。

 ちなみに、社会教育施設につきましては、首長部局との複合化につきましては、例えば公民館であれば約一七%、図書館の場合は約三二%が複合施設になってございますので、このような場合に、耐震化やバリアフリー化のための整備の観点からの活用ということも考えられるのではないか、このように考えております。

西村(智)委員 学校教育施設の今のところの活用は実績はない、複合施設となっているところがあるのでそこから上がってくるのを期待している、このような非常に漠とした見通しでこの特区法の改正を図っていくという段階なわけです。

 これは恐らく大臣に伺うことになるのではないかと思いますけれども、そもそもこの特区法の制定当時の趣旨は、特区を導入することによって、地域の特性に応じた規制の特例措置の適用を受けて、その事業を実施またはそれを促進することによって、経済社会の構造改革を推進するとともに当該地域の活性化を図り、国民生活の向上及び国民経済の発展に寄与するというのがこの特区法の制定当時の、本来の趣旨であったと思います。

 そこで伺うんですけれども、今回、社会教育機関の施設の管理、整備の権限を首長部局に移すことが可能になるということによって、地域経済の活性化にどうしてつながるのか。そのつながることの根拠を教えていただきたいと思います。

鳩山国務大臣 特区法の第一条、「経済社会の構造改革を推進するとともに地域の活性化を図り、もって国民生活の向上及び国民経済の発展に寄与すること」となっておりまして、法律の目的でございますので、かなり大きく出ているところがあるだろう。これは書き方の問題で、そういう傾向があるんだろうと思っております。

 構造改革特区制度というのは、もう何度も御答弁申し上げておりますように、地域発の創意工夫、これを何とか生かしていこう、そして、その結果地域が活性化する、地域が活性化するということは経済的にもプラスだ、こういう判断をいたしております。

 今回の特例措置のメリットとしては、より全体的な視野で公共施設の整備が検討できる、あるいは日常的な管理責任や維持管理経費を区分する煩雑さがなくなる、施設の設計、計画の権限と、予算編成、執行の権限とが一致して、耐震改修など計画的に推進できる、こういうことになっておりまして、社会教育施設と首長所管の公の施設との一体的な整備、管理が促進されるということだろうと思っております。

 また、千代田区から出ております希望というのは、多分、千代田区役所と図書館と一体のビルでつくりたい、こういうことなんだろう。

 こう思うわけでございまして、基本的には、地域の活性化ということが経済の伸展、発展につながるというふうに解釈をするところでございます。

 ただ、率直に申し上げて、先ほど大畠先生からも、何だ、随分けちくさい内容だなというふうに御指摘があったけれども、私は、もちろん、総務大臣になり内閣府特命担当大臣になって、何だ、こんなことまだやっていなかったのかというのが率直な印象です。もうとっくにできていて当たり前だったのではないかなというふうに、政府の一員としては反省しなければならない。

 それから、ちょっと気になりますのは社会教育施設という言い方で、例えば図書館、博物館等も公民館もとらえているんだと思いますが、少なくとも、文部科学省になる、文部省時点において、社会教育局を廃止して生涯学習局にしたはずだ。社会教育と生涯学習というのは同じか違うかといえば、ダブっていて、若干お互いはみ出す部分もあるかもしれないけれども、社会教育局が生涯学習局になった意味は大きいんです。

 社会教育というのはいかにも教えてやるという印象、生涯学習は自発的に学びますという、その概念、主体の変換というのは非常に大きいと思って、図書館とか公民館とか、あるいは博物館というのは、特別な先生が来て地域の住民を集めて教え込む機関ではない、むしろ住民が自発的に学習する場だと思いますので、そろそろ社会教育施設という言葉が古臭くなっているのではないかな、むしろこれも全面的に生涯学習と書きかえるぐらいのことがあってもいいのではないか、そう思います。

西村(智)委員 私は、生涯学習と社会教育というのはまだやはり違うと思うんですね。まだというか、ますます違ってくると思うんです。

 社会教育というのは、住民が自発的に、それこそ自主的な学習活動を地域で、あらゆる場所で行うという趣旨であって、生涯学習というのは、言ってみれば趣味的なものとかそういったものを、カルチャーセンターと言ってはなんですが、そういう場として学ぶということで、これは、先ほど文科の政府参考人が述べられたんですけれども、中教審の答申の中でもそれは実は明確に分けてあるんですね、生涯学習と社会教育は違いますと。

 社会教育というのは、これは大変釈迦に説法になりますけれども、教育基本法ができて、言ってみればその社会版ということで社会教育関連法、社会教育法などができてきて、要するに、自発的な、自立した学び、それを確保するということが戦後の法律制定の趣旨でありますので、私は、そこはやはり分けて考えていただきたいと思うんです。

 その上で、しかし誠実に御答弁いただいたことには感謝をいたしますし、また、この手の問題、特区法でこれを今までやってこなかったのか、大変ちっちゃい話だなという大臣の御見解については私も……(発言する者あり)大畠さんですか。私も同意をいたすんです。

 それで、改めて、この特区法について、ちょっと、やはり私は考え直す時期ではないかなというふうに思うんです。

 特区法と今まで掲げてきて、第十何次までか提案が参りました。前回締め切られた第十四次の提案実現はゼロ件だったということを聞いておりますし、目的が地域経済の活性化ということであったのに、先ほど大臣は大変苦しい答弁をされておられましたけれども、要するに、社会教育機関の施設管理を首長部局に移管して、ひいては地域経済が活性化すると、余りそういうふうに考える方はいらっしゃらないと思うんですね。ですので、ここはやはり、特区法のあり方そのもの、特区法の目的そのものをこれからも維持していくのかどうかということを政治判断するべきときに入ってきているのではないかと思うんです。

 大臣はこの点いかがお考えでしょうか。

鳩山国務大臣 生涯学習と社会教育については大変いいことを教えていただいて、私も文部大臣をやったのが十六年ぐらい前なもので大分古びてきておりますので、そういった意味では、新しい知識を教えていただいて大変ありがとうございます。

 当然、特区法も、最初は提案も多いし希望も多いし、それは、種切れと言ってはいけませんけれども、やはり思いつく事柄もだんだん減ってきているというのは事実だろうと思うわけでございます。

 ただ、先ほど大畠先生から御提案があった、いわば水素特区、それは炭素社会から水素社会へという、地球環境問題解決の最大のキーワードだと思いますけれども、そういう、それこそ人類を救うことができるような先進的な特区というのもまだあり得るかもしれないし、そういった意味では、特区制度の役割というのはまだまだあると思っております。それが地方自治で、地方分権で、地方の創意工夫だからさまざまなものがあるのは事実でございますが、今後の特区制度のあり方というものを中期的に考えるとするならば、これは、それこそ与野党の壁を超えて話し合ってよりよい制度に変えていくということもあってもいいというふうに思います。

西村(智)委員 地域はやはりそれぞれの抜本的な経済対策などはもちろん打っていきたいんだと思います。打っていきたいけれども、権限も財源も限られているということで、私は、特区法の提案が最近どうも小粒になっていることを見ても、やはり自治体が創意工夫をしにくい状況がずっと続いていることが原因ではないかなと思っていまして、ここはむしろ、大臣は分権の特命担当でもいらっしゃいますので、分権改革をもっと強力に推し進める方が、そして、税財源、権限も含めて地域に渡すということの方がより地域経済の活性化にはつながっていくのではないかと考えております。ぜひ、ここはまた改めて議論の場があれば大変ありがたいと存じます。

 さて、そこで最後になりますが、もう一回文科省の方に伺いたいと思います。

 私は、随分この間、社会教育の促進については意欲を持っている議員の一人だと思っているんですよ。ところが、今回の議論の経過を見ても、何だかとても押されているような気がしてならない。しかも、社会教育関連三法が改正されて、附帯決議もいろいろつきました。附帯決議の中で、例えば社会教育にかかわる人材確保ということについてもたしか盛り込まれていたはずであります。

 しかし、この間、社会教育の主事が物すごく減っていますね。たしか二割とか三割とかいう減少幅だったはずです。先ほども申し上げたとおり、本当に例えば社会教育なりで地域の発展に寄与するとか、また、ひいては地域経済の発展につながるようなものにしていくためには、私は、文科省がやるべきことは、建物の耐震化もそれは大事です、建物の管理の煩雑さをなくすということも、それは何の異議もありませんけれども、しかし、人的な確保をしていかなければこれはどうにもならないのではないかというふうに考えておりまして、この減少傾向にある社会教育主事の配置改善も含めて、今後どういうふうに社会教育の推進に当たっていこうとしておられるのか、その考えを伺いたいと思います。

惣脇政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、近年、特に町村でございますけれども、社会教育主事の配置数が減少しているわけでございます。

 この原因といたしましては、派遣社会教育主事の経費が交付税化されたということでありますとか、地方公共団体の財政状況が逼迫していることでありますとか、また、市町村の行政体制の整備を背景として促進された市町村合併等の影響があるのではないかというふうに聞いているところでございます。

 この点につきまして、昨年六月の社会教育法の改正におきましては、社会教育主事の職務といたしまして、新たに「学校が社会教育関係団体、地域住民その他の関係者の協力を得て教育活動を行う場合には、その求めに応じて、必要な助言を行うことができる。」と、学校支援地域本部における社会教育主事の役割というようなことも含めまして、学社連携と言われておりますけれども、高まっております学社連携の重要性にかんがみまして、社会教育主事の果たす役割は大きくなっているというふうに考えているところでございます。

 文部科学省といたしましては、学校、家庭、地域相互の連携協力のために、社会教育主事の果たす役割を周知することや、社会教育主事の派遣事業の着実な実施などを促すことによりまして、社会教育主事の配置を促進してまいりたいと考えているところでございます。

西村(智)委員 ありがとうございました。終わります。

渡辺委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。

 私は、最初に、政府参考人の方に、刑務所特区に係る市場化テストの問題について伺っておきたいと思います。

 刑務所業務に市場化テストを導入することについてなんですが、これは今回、構造改革特区による民間委託をやめて、市場化テストにより全国的に民間委託ができるようにしよう、特区から全国展開ということにしているわけです。民間委託可能な分野というのは、現在PFI手法によって民間運営されている四カ所の刑務所の業務分野と同じですが、地域限定の特区をやめて、今度は入札によって業務を担う者を決めるという市場化テストの導入ですね。これによると、結局民間刑務所の全国展開ということになってくるわけですね。

 本法案が成立したとすると、どの刑務所で市場化テストを導入するのか、そして、将来的には全刑務所を民間刑務所にしようという考え方なのか、ここのところを最初に伺います。

尾崎政府参考人 どのような刑務所に民間委託を広げていくのかというお尋ねでございますけれども、まずは、犯罪的傾向が進んでいない者を収容している、そういった刑事施設につきまして公共サービス改革法に基づく民間委託を進めて、その結果を検証しつつ、その他の施設への拡大を検討していくということになろうかと思います。

 当面、東京矯正管区内の幾つかの施設につきましてそういった民間委託をすることを検討しております。

吉井委員 引き続いて政府参考人に伺っておきますけれども、入札の形態です。これは、法務省と民間による官民競争入札なのか、それとも、最初から法務省を排除して民間だけの入札なのか、どういうやり方ですか。

佐久間政府参考人 入札形態でございますけれども、官民か民間かということでお尋ねでございます。

 公共サービス改革法によりまして、公共サービス改革の手続として、官民競争入札、または民間競争入札の二つを用意しているわけでありますけれども、官民競争入札は、公共サービスを実施する者を決定するための手続を国の行政機関等と民間事業者等との間で行う、この場合は法務省と民間事業者ということになりますが、一方、民間競争入札の方は、同手続を民間事業者の間で行う、こういうものでございます。

 市場化テストの対象業務の選定に当たりましては、個々の業務ごとに、当該業務を取り巻く状況や官側の意向などを踏まえまして、官民競争入札または民間競争入札のいずれの手続によって実施するか、これを、公共サービス改革基本方針、閣議決定されるものですが、こちらにおいて定めております。

 現在、この刑事施設の運営業務を対象とするに当たっては、平成二十一年度中に、刑事施設の一部を対象に、民間……(吉井委員「結局、今度は官民競争入札でいくんですかということを聞いているんです」と呼ぶ)最初のものとしては民間競争入札を考えております。

吉井委員 官民競争かと聞いているんだから、民間なら民間でいいんです。

 民間に行わせる対象として刑務所での健康診断が挙がっているんですが、刑務所の医師は、ことし一月一日時点で、定員が二百二十六名のところ現員百八十九名、つまり三十七名欠員なんですが、本来なら、この欠員を解消することが先決なんですね。

 そういうことをやらないで、今回、政府の説明によれば、受刑者に対する処分、権利制限、直接実力行使といった、受刑者の人権に直接かかわる分野は市場化テストの対象とせず、これまでどおり刑務官が行うことにしているというわけですね。市場化テストの対象とする業務は何なのですかというと、公権力の行使にかかわる分野の、施設の警備、収容監視、職業訓練、信書の検査補助、矯正教育、健康診断、公権力の行使によらない分野の、食事の提供、総務系の事務、洗濯、清掃というのを挙げていて、要するに、行政の業務を市場化テストという入札で民間に丸投げをする。それを全国展開するために、公権力の行使という話も、それをその度合いの強弱によって線引きしようというわけです。

 民間に丸投げする範囲を線引きしようとしても、そもそも、刑務所における収容者への公権力の行使という点では本来線引きなどというものはできないものではないかというふうに思うんですが、この点はどうなんですか。

尾崎政府参考人 公権力の行使に当たる行為でありましても、実力行使そのものと、動静を監視する業務、それから、例えば信書の発信であれば、それを不許可にするような、そういう不利益処分そのものをする事務と、そういう不利益処分に該当するような事由があるかどうかをあらかじめ検討してこれを刑務官を通じて施設の長に報告する、そういった事務とは区別できるものというふうに考えております。

 そういった区別の上に立ちまして、官民が協働して事に当たるということでございます。

吉井委員 もともと、この特区というのは地域限定だったんですね。公権力を行使する被収容者の拘禁は国の責任という原則を後退させるという問題があります。市場化テストの対象とするために無理やり線引きをして、こっちは公権力の行使にかかわる、こっちは余りかかわらないと、非常にグレーな部分を残しながら無理やり線引きをする、そして丸投げで全国展開するということは、国の責任というものを今以上に後退させるということになるのではありませんか。

 この点は、ちょっと大臣、どうですか。

鳩山国務大臣 市場化テストということであれば、本来与謝野馨担当大臣だそうでございます。

 ただ、私も、今回のこの審議に加わっておることと、前に法務大臣を一年間やったばかりであるということから申し上げますと、先ほど楠田大蔵委員からの質問があったんですが、非常に緻密な質問をされました。ありとあらゆるケースを想定しておかなければいけないだろう。

 つまり、今、吉井委員は、公権力の行使などというものが、民間に任せていい部分で線引きできるのかというお話がありました。ですから、それは非常に緻密に議論をしておかないと、私も法務大臣をやっておりましたときに、幾つか、いろいろな事件がありました、例えば名古屋での事件とか、徳島での事件とか。決して事件が少ないところではありません、刑務所というところは。そういうときに、民間人が巻き込まれるとか、あるいは、民間人がタッチしたがために余計混乱をしたというようなことがあってはいけないはずでございます。

 例えばですが、職業訓練で民間の方が教えているときに仮に暴動のようなものが起きたときにどうなるかというのは重要な問題だと思うし、あるいは、最近余りないのかもしれませんが、逃亡しようとしているのを見つけたのがたまたま民間の方であって刑務官でなかった場合どうするかとか、相当緻密にやっていただきたいということを私は法務省に要請をしたい。

 それから、私も、美祢刑務所と喜連川と行きました。ただ、喜連川はオープニングセレモニーでしたから被収容者はいなかった。ただみんなで乾杯して飯食って帰ってきただけですから、施設を見ただけでございます。美祢の刑務所、社会復帰促進センターという名前でしたが、行ったときにいろいろな話し合いをしたわけですが、どうやら、PFIでつくった四つの刑務所は皆、刑事法的用語は私は使えませんけれども、比較的軽い罪で入っている方が多い。それに対して、府中の刑務所等は、累犯も累犯、しかも凶悪犯罪という人たちがいっぱいいますから、これは同じに扱うことはできないだろう。したがって、それぞれの刑務所において、どの部分をアウトソーシングしてもいいかどうかというのは相当綿密にやってもらわなければいけない、そう思います。

 本来公権力の行使というのの線引きはかなり難しいという先生のお考えは私も賛成です。難しいからこそ綿密にやってもらいたいと思います。

吉井委員 これは公権力の行使にかかわる問題ですから、簡単に特区ということで民営化し、さらに全国展開、そういう方向に行くのは考え直す必要があるというふうに思います。

 実は、二〇〇五年の構造改革特区の改正の内容の一つは、特区によって刑務所を民間委託できるようにするということとともに、そのときには、地域雇用の増大、地域の活性化ということが期待されて理由に挙げられておりました。

 大臣も行かれたというお話ですが、山口の美祢、ここはPFIで、セコム、清水建設や新日鉄などを中心とした事業体ですし、この法案の質疑で、このときに、実際には地元企業に受注というのがすき間産業的といいますか、すき間的なものじゃないかということを質問したんですが、そのときの政府参考人、矯正局長の答弁では、できるだけ地元の活性化につながるような運用の仕方をしてまいることになるということでした。

 それで、資料を配らせていただいておりますが、実際にどうなったかというのを見てみると、現在PFI手法で民間企業によって運営されている四カ所の刑務所について、事業者と、単年度当たりの契約金額を出してもらったものですが、整理すると、美祢のセンターでは、セコムグループのところですが、実際には、地元は一八・二%なんですね、契約は。島根は一四・一%、喜連川は一六・六%、播磨は一七・六%。このように、契約の大部分は大企業が持っていって非常にうまみのある仕事にはなるんですが、地元には、はっきり言っておこぼれ程度しか回ってこないという、これは当初言っていた地元の活性化ということには当たらないのではないかと思いますが、大臣に伺っておきます。

鳩山国務大臣 刑務所でございますから、それなりの能力が要求をされるということであろうと思いますが、やはりできる限り地域経済にプラスの影響があった方がいいわけでありまして、少々割合が少ないなという感想は持ちます。

吉井委員 続いて、この資料に載せておきましたけれども、市場化テストというのは、いわば官製ワーキングプアの問題につながっていくんじゃないか。本来法務省の責において行うべき業務を入札によってやるわけですね。応札企業はできるだけ安い札を入れなきゃうまくいかないわけです。経費の多くを占める人件費のカットということになってきますから、パート、アルバイト、派遣など、非正規雇用の労働者で対応ということになってきます。

 これで見ていくと、資料にありますように、美祢で非正規の比率が三九・九%、島根で四三・七%、喜連川で三五・八%、播磨では五一・一%と、大体半分ないし半分近くが非正規雇用、これが実態ですが、雇用の増大というなら正規雇用をふやさなければだめだと思いますし、実態は、民間刑務所で地域雇用の増大どころか、いつ雇いどめになるかわからない不安定雇用の導入ということになっているのではないか。

 まず参考人に伺っておきますが、この非正規の比率の状況というのはこの数字のとおりで間違いないと思いますが、確認しておきます。

尾崎政府参考人 各PFI刑務所におけるいわゆる正規、非正規の内訳でございますけれども、美祢社会復帰促進センターでは、業務に従事する民間職員の総従業員数二百七十八……(吉井委員「私が挙げたので間違いないですね。もともといただいた数字だから」と呼ぶ)

 はい。私も逐一見ているわけではございませんが、ほぼ間違いないというふうに思っております。

吉井委員 個別の業務を担当する企業は、人材派遣を本業とする会社も入っているんですね、大林ファシリティーズ。三井物産や大林組といったら別な会社のように思いますが、人材派遣分野を持った会社としてその業務をやっているんですね。

 法務省は、民間企業の経営のノウハウにかかわるからといって、この表に挙げた非正規雇用の実情を企業別に明らかにしなかったんですが、結局明らかになってまいりましたけれども、この非正規の実態というのは、これは労働者派遣ではないんですか。

尾崎政府参考人 私どもの把握しております限りでは、労働者派遣事業に基づく派遣社員もおりますけれども、そのほとんどはパート、アルバイトだというふうに認識しております。

吉井委員 私、そこで大臣に伺っておきたいんですけれども、法案によって、特区以外でも刑務所の民間参入を全国展開する、市場化テストを導入して。入札に応じてくるのは結局、この四つの例に見られるように、セコムと、大林組、ALSOKですね綜合警備保障グループなど、現在既に入っている企業と同じになるのではないかというふうに思うんです。

 この刑務所の民間委託と市場化テストという、丸投げの形の民間開放を推進したのは、実は規制改革・民間開放推進会議でした。議長は宮内義彦オリックス会長、議長代理は飯田さんですね、セコムの最高顧問。規制改革・民間開放推進会議の官業民営化等ワーキンググループでは、法務省に対して刑務所への市場化テストを執拗に迫ってきましたね。民間企業への刑務所業務参入、市場化テスト導入を迫ったセコムが、全国展開で刑務所業務の受注を拡大する、このやり方というのは、大臣も取り上げてこられた、郵政民営化を推進したオリックスがかんぽの宿を廉価で一括取得したのと同じ構図でもあります。

 私はこの間、実は、ほかの委員会になりますが、三月十三日に経産委員会で取り上げたんですが、経済財政諮問会議の御手洗議員が主張したのは、物品調達の効率化ということで、その効率化を進めるワーキンググループは、幾つかワーキンググループをつくったんですが、その物品調達のところには、民間委員で一つ入っていたのはキヤノンなんですね。システムを設計して、それに応じたシステム機器を入れて消耗品を入れるとなると、だれが一番おいしい思いをするかということになってくるわけですし、やはり余りのできレースというか、規制緩和利権というべきものの余りにも露骨なやり方がちょっと出過ぎているんじゃないかと思うんですが、大臣に伺います。

鳩山国務大臣 李下に冠を正さず、瓜田にくつを入れずということは、これは常にすべての人間が心得ておかなければいけないことだというふうに思っております。

 まさに、かんぽの宿の場合はめちゃめちゃなやり方をしまして、最初から譲り渡すところがオリックス不動産と決めておいて、あとすべてを、周りの状況を固めていったというふうに見えます。

 十七箱の段ボールの基本的な調査については明後日あたりに発表をいたしたいと思っておりますが、十七箱の段ボールの、私はもちろん国会におりますから自分ではできない、調査をすべて進めた責任者である郵政行政部長の吉良さんが、結論は一つで言うと何だと言ったら、これは随意契約ですと。何か企画提案競争だとか、最初は一般競争入札とか、いろいろなことを言ったけれども、これはせんじ詰めて言えば、いわゆるできレース、随意契約としか表現のしようがありません。そのことの内容を少し細かく明後日あたり発表したいと思っておりますが。

 ただ、問題は、もうああいうめちゃめちゃなやり方は、これはもう絶対許されるものではありません。

 セコムが確かに仕事をとっているんですね、これは四つのPFIの刑務所で。だから、要するに入札なんですよ。この間の入札を非常に厳しく厳密にやっておって、透明性、公正性がきちんとしておればこれはいいんだろう、そういうふうに思っておりまして、だからこそ、これを全国展開すれば余計公正性あるいは透明性が要求されてくるわけで、ああ、あそこでまた李下で冠を正したな、どこかで瓜田にくつを入れたなということが起きないように、これはもう法務省というか、こうしたことに関連するすべての官庁が気をつけていかなければならないと思います。

吉井委員 この委員会でも、一般競争入札の形をとった事実上の随契という問題をこれまでから随分取り上げてまいりましたので、きょうはそっちの方はあっちへ置いておきますけれども、規制改革・民間開放推進会議の二〇〇四年十月二十日に開かれた官業民営化等ワーキンググループでは、刑務所に市場化テストを導入することを求めた推進会議の委員から法務省に対して行われた発言ですが、八代委員は、「労働者派遣法で警備関係が例外になっているのですが、逆に言うと「市場化テスト」ではそれを抜くことも我々は考えているわけで、既存の法律に縛られる必要はないので、」「派遣法でそれがだめだとしても、これに関して言えば例外にする」「もともとは派遣法から警備業を外すというのはナンセンスなのであって、それをこの際つぶしてしまおう」、こういう、脱法行為をいわば唆すような発言を行っているんですね。

 市場化テストという手法を使えば、本来なら違法な、警備業に労働者派遣ができるようにしてしまうということになるのかということが今問われていると思うんですが、これは政府参考人に伺っておきます。

尾崎政府参考人 委員御指摘の警備あるいは被収容者の監視等の業務、こういうことに関係する御指摘だと思いますけれども、法案に列挙された業務につきまして、この法律に基づきまして民間委託する。その民間委託に当たっては、国が、そういう収容あるいは改善指導といったものに責任を持つということを前提にしつつ、管理監督をきちんと行う、モニタリングを行うということでございます。

吉井委員 私、法務省はちょっとしっかりしないかぬと思うのは、民間委員の方から、そもそも労働者派遣法の中で警備の仕事が除外されているのがけしからぬ、そういうことをやると今だったら違法になるのでやれるようにしろという主張が行われたときには、これは法務省として、毅然として、それは違うんだということをはっきり言わなきゃいけないのに、唯々諾々としてそれを聞き取っておっただけで、特区をつくり、市場化テストで全国展開を図る。私は、本当に、こんなことをやっておったらもうめちゃくちゃになってしまうんじゃないかというふうに思うわけです。

 次に、特区法案の地方教育行政法の特例措置について伺っておきますが、社会教育施設の一つである府立図書館を市場化テストの対象としようとする、そういう自治体なども出てきております。

 図書館というのは、これは司書、専門職の方がいて、レファレンス業務を中心として非常に大事な分野です。また、図書館の運営についての権限というのは、これは本来設置者は教育委員会ですから、教育委員会の権限だと思うんですが、まずは権限の方を先に確認しておきます。

前川政府参考人 図書館は社会教育施設でございまして、地方教育行政の組織及び運営に関する法律、いわゆる地教行法上教育機関となっているわけでございますが、教育機関の設置、管理、廃止に関すること、これは、地教行法によりまして、教育委員会の職務権限に属するとされているところでございます。

吉井委員 ことし二月に、日本図書館協会は、「図書館を「市場化テスト」の対象事業とすることについて」という題名で、図書館を入札によって民間業者にゆだねてしまうことについて、九項目の問題を挙げて懸念を表明していますね。

 図書館を初め博物館とか美術館など社会教育施設というのは、やはりそれぞれに重要な意味があるんですね。これは、過去の歴史から将来の日本のありようにまでつながっていく問題ですから、その社会教育施設を市場化テストの対象にして、民間企業に丸ごと投げ渡してしまうという、これは発想が余りにも乱暴というか、そういう発想をすること自体が少しおかしいんじゃないかと思うんです。

 最後に大臣に伺っておきたいんですが、こういう社会教育施設というのは私は市場化テストになじまないと思うんですが、なじまないものはやはり行うべきではない。社会教育施設の一つである府立図書館とか県立図書館とか、そうしたものを市場化テストの対象にすることを発表するところもありますが、やはりこれは改めさせていくということをやるべきじゃないかと思うんですが、これは大臣に伺っておきます。

宮澤副大臣 与謝野大臣の方の仕事だと思いますので、私の方からお答えさせていただきます。

 今の市場化テストという意味が、国の市場化テストといった意味ではなくて、地方公共団体が勝手に民間に入札にかけるということはどうか、こういう話だったんだろうと思います。

 恐らくそれは指定管理者制度か何かを使おうとしてやっているのかなという気がいたしますので、本来、国の市場化テストとは若干違った意味合いだと思います。

 いずれにしても、国の方は、民間にこのようなものをゆだねて市場化テストをするよなんということは一切考えておりません。

吉井委員 国は当然として、しかし地方においても、社会教育施設というのは本来どうあるべきか、ここが一番今問われなきゃいけないときで、それを簡単に市場化テストにするようなことはやっちゃならないということをきちんと伝えなきゃいけないと思います。このことを申し述べまして、質問を終わります。

渡辺委員長 次に、重野安正君。

重野委員 社会民主党の重野安正です。

 二十分という限られた時間でありますので、答弁の方もひとつ要領よく、よろしくお願いいたします。

 まず、刑事施設へのPFI導入について。この中で信書の検査補助という項目がありますが、具体的にはどのようなことを民間が行うのかという点についてまずお伺いします。

尾崎政府参考人 民間に委託するものは信書の検査の補助でございます。補助と申しますのは、刑事施設では、被収容者が信書の発受を行うに当たって、その許否、許可、不許可の処分を行うわけでありますけれども、不利益処分である不許可処分、これは刑事施設の長がその権限を行使するということでございます。

 ただ、その前提として、その内容を見る必要がありますので、それを民間事業者に委託して、内容を見て不許可相当の事由があれば、その報告を受けて刑事施設の長の権限と責任において不利益処分を行う、こういうことでございます。

重野委員 刑事施設における業務の委託の在り方に関する研究会があるんですが、そこの報告によりますと、国民に対するアンケート調査でも、「公務員の立場にある刑務官が実施すべき業務」として、「手紙や面会の許可」が挙げられております。しかも、権力性が最も強いものの仲間に含まれている、このアンケート調査の結果。手紙とか面会の許可というのは最も権力性が強いんだというふうにアンケート調査の結果はなっている。これが率直に言って国民の感情だと思うんですが、であるとすれば、今回のこの中身とは食い違っているんではないか、方向性において。その点はどのように考えておられますか。

尾崎政府参考人 先ほども申し上げましたけれども、民間事業者の従業者が、例えば実力行使をする、あるいは信書、手紙について発信を不許可にする、そういった不利益処分をみずから行うということになりますと、これは妥当ではないというふうに考えております。この点は委員御指摘のとおりでございますが、ただ、先ほど申し上げたように、信書の検査の補助、その内容の下調べをするといった事務は、これは民間事業者に委託しても差し支えないものというふうに考えております。

 また、その点に関しましては、信書の内容等、プライバシーにかかわるものでございますので、そういったプライバシーの保護にも留意しつつ、国の管理監督のもとにそういった事業を委託するということでございます。

重野委員 この調査の結果は、権力性が弱い、それから権力性が強い、こういう方向で図表があるんですけれども、例えば「健康診断の実施」であるとかあるいは「職業訓練の実施」であるとか、こういうものについては権力性が非常に弱いんだと。ところが、今言う手紙の問題、これは、その表によると、権力性が一番強いところの方に、左側に記載されているんですね。権力性が強いということは、私は、刑務所における、今言う、刑務官とそうでない一般の人という比較において、より刑務官がその衝に当たらなければならない部分ではないのかと考えるのが当たり前だと思うんですね。

 そういう考え方でいきますと、今回のこのやり方というのはやはりちょっと外れているんじゃないか。「刑事施設における業務の委託の在り方について」という、研究会が出しておりますこの資料を読むと私はそのように受け取るんですが、再度答弁してください。

尾崎政府参考人 委員御指摘のとおり、権力性が非常に強いものとしては、不利益を強制する不利益処分、あるいは実力行使ということがあるわけでございます。

 ただ、具体的に民間事業者がやる仕事を申し上げれば、信書の検査の補助につきましては、例えば、信書の外形の検査として、受取人が当該施設に収容されているのかどうか、あるいは、信書の発受については通数の制限というのがございますけれども、そういう通数の制限を上回っているものであるかどうか、あるいは、暗号の使用その他によりまして、理解できない内容があるかどうか、こういったことを第一義的に見ていただいて、その上で、もしそれを不許可にするというような事由に該当する、そういう可能性があれば、それは刑務官に報告し、刑務官からは当然上司に報告があるわけでございますが、そのような報告によって刑務所側の判断が下されるということでございます。

重野委員 そうすると、こういう制度ができる以前はどういうふうだったんですか。刑務官の方々がその仕事をやっていたんじゃないですか。

尾崎政府参考人 刑務官がみずから見るということをやっていたわけでございます。

重野委員 それで何か不都合があったんですか。

尾崎政府参考人 刑務所全体の人的体制が、先ほど来お話ございますけれども、過剰収容を迎えまして、なかなか追いついていないという状況にございます。そういう人的体制整備の一環として、そういう、民間委託が可能なものにつきましては民間に委託し業務の適正を図っていくことはもちろんのことでございますけれども、官民が協働して、よりよい人的体制のもとでよりよい処遇を行うということでございます。

重野委員 今の説明は、ああ、そうですかということにはなりませんね。これは今後ともいろいろな立場で議論を進めていきたいと思います。

 次に進みます。

 構造改革特区法、今回で削除をする部分の条文があるんですが、その中で、第十一条一項七号で、「信書の発受の許否の処分をするために必要な検査の補助」というのがあります。公共サービス改革法で、第三十三条の三の十二でも「検査の補助」というふうになっています。一方、その次の十三では、刑事収容施設法の第百三十二条一項、二項、「発受を禁止した信書等の取扱い」について、「保管及び複製の作成に係る業務」となっている。

 尋ねたいのは、この「発受を禁止した信書等の取扱い」、つまり、公共サービス改革法三十三条の三の十三に対応していたのは、特区法ではどの部分に当たりますか。

佐久間政府参考人 お尋ねの新しい公共サービス改革法の第三十三条の三第一項第十三号の関係でございますが、これの一つ前にあります十二号とともに、現行の特区法の第十一条第一項第七号に、先ほど先生御引用されましたが、そちらに該当するものでございます。

 今般、公共サービス改革法におきまして、業務の根拠となる刑事収容施設法の条項を引用して対象業務を規定するという形で丁寧に書いておるわけでございます。それによって見え方がちょっと変わっているということがありますけれども、この刑事収容施設法第百三十二条第一項と第二項さらに第百三十三条に定められておりますこれらの業務が官民競争入札等の対象となる業務であるということを、条項を引いて明示的に書いたということでもって、表現が変わっているということでございます。

重野委員 次に、セコムについて先ほど質問がありましたけれども、若干重複する部分があるかもしれませんが、ちょっと確認を再度させていただきたい。

 刑務所のPFI手法の活用の出発点、これは総合規制改革会議での議論だったと思います。ここから事は始まったと思います。特に〇二年七月の中間とりまとめの中で、刑務所、少年刑務所が、他の事例とともに例示されております。

 まず、確認いたしますが、その際のメンバーで、議長代理はどなたがやっておられたんでしょうか。

私市政府参考人 お答えいたします。

 規制改革会議の前身でございます総合規制改革会議が平成十四年七月二十三日に中間とりまとめを行いましたが、このときの議長代理は、セコム株式会社取締役最高顧問の飯田亮氏でございます。

重野委員 次に、特区法の改正で刑務所のPFI手法が可能となった後の第一号は美祢社会復帰促進センターですが、これを落札した企業グループはセコムグループですね。確認いたします。

尾崎政府参考人 入札参加のあった三グループから、株式会社セコムを代表企業とする美祢セコムグループを落札者として決定しております。

重野委員 私は今、総務委員会にも所属をしております。総務委員会で、郵政民営化について、オリックスグループのかんぽの宿一括売却が大きな議論となりました。そのことは大臣も言うまでもなく知っていると思うのでありますが、特区法の際に、セコムの最高顧問が議長代理をした会議で刑務所の民間参入が示され、その後、実際に落札したのがセコム。これは偶然というか、かんぽの宿の問題で、オリックスグループの一括売却が決まるわけですけれども、同じ構図ではないのか。当時、委員会で、このオリックスの方がそういう方向を決める会議の中にいたではないかということが実は大きな議論になったんですね。そのこととこの今回のケースというのは非常に似ている、こういうふうに私は感じるのでありますが、どのようにお考えになりますか。

宮澤副大臣 先ほど吉井議員の質問に大臣が答えられておりましたけれども、何よりも大事なことは、入札が公正であったかどうかということだろうと思っております。入札自体、法務省がやっておりますので、よもや不公正なことはなかったのではないかと私は推察をしております。

重野委員 不公正はなかったと言うんですが、これからなおそこを話していきますと、やはりおかしいなとなるんですね。

 次に、行政減量・効率化有識者会議第二回会合、第四回会合でも議論が行われております。第二回の議事概要では、刑務所に関しての直接の記載はありませんけれども、公権力の行使は公務員が行わざるを得ないものがあるが、定型的なものは民間に任せられるはずという部分があるんです。また、第四回の会議では、法務省からのヒアリングを受けて、各委員からの意見として、刑務所丸ごと民間化云々という話も出ているようであります。

 ところが、この会議の報告書、これはずっとそういう意見を羅列しておって、だれがどんな発言をしたのか、これは郵政の問題も取り上げましたが、郵政の議論のときには、その会議でどなたがどんな発言をしましたというのは全部書いていますね。ところが、きょう私が手にしておりますその中は、そういう字句の羅列で、だれがどういう発言をしたということは知る由もない。これはまた新たに調べなきゃ、これを見るだけじゃわからないという形です。

 それで、お願いしたいんですが、この委員会にその議事録を出していただきたい、そのことを委員長、お願いいたします。

江澤政府参考人 事実関係を御説明させていただきます。

 行政減量・効率化有識者会議の第一回の会議におきまして、委員の闊達な議論を確保するという観点から、総人件費改革に関する議事については、個々の発言者名を伏せた上で議事要録を作成し、委員各位の確認の上で公表するというように委員間で合意されたところでございます。

 また、議事要録は、会議のやりとりの詳細がわかるような形で作成し、公表しているところでございます。

重野委員 今私が質問している内容は、問題は、だれがそういう発言をし、その発言を通して、その方はどういうスタンスでこの会議に参加していたかということを知るわけですね。今答弁者の話によると、見る方の、それを議論する方の立場ではなくて、発言者の立場に立ってその議事録をつくったという、この基本的な姿勢というのは問題があると思いますよ。ここは議論の場ですから、その議論が具体的に、現実に即した議論をするという点においては、今の考え方というのは僕は問題がある。

 だから、その議事録というのは本当にないんですか。だれがどういう発言をしたという議事録はないんですか。

江澤政府参考人 お答え申し上げます。

 繰り返しになって恐縮でございますけれども、まず第一回の会議で、先ほど申し上げたように、闊達な議論を確保するために個々の発言者名を伏せるということでなされたわけでございます。

 そして、では、だれが発言したかというような記録については、ございますけれども、第一回の会合でそのような合意がなされておりますので、その点をぜひ御理解いただきたいと思います。

重野委員 それはおかしいんじゃないですか。同じ国会の、委員会は違いますけれども、具体的にだれだれがそういう発言をした、そういう議事録が現にある委員会もあるんですね。そういうふうに、委員の方が言ったから、したがって、その委員の意を受けて氏名の入ったものは出せないという、それはちょっと一方的な議論と私は思いますよ。これはやはり十分検討していただきたい。

 時間もありません。最後に、これについても大臣のお考えを伺いたいんですが、かつて、臨調行革を進められた方がおられました。名前は申し上げませんが、当時本当に目刺しを食いながら、あの方であります。私は、あの方のその後のいろいろな書き物を読んだんですけれども、私は、このごろの政府のその種の会議に出てくる皆さん方というのは、その方に比ぶれば非常に浅いなというか、重みを感じませんね。この方は本当に、我々は臨調行革というものに対するスタンスは違いますけれども、しかし、やはりそういう衝に当たる方のさまというのを比較したときに、私は、郵政改革で名前が出てきたオリックスの方にしても、今回のセコムの方にしても、自分が所掌している中で出てくる仕事を受注する、やる、もろに。私は、やはりこんなことがまかり通るというのは問題があると思うんですね。それは国民が期待することではないと思うんです。

 こういうスタンスで政府のこの種の会議に参加をするということについて、大臣、いかがお考えですか。

鳩山国務大臣 宮澤副大臣がお答えいたしましたように、入札が完璧に透明性があり、公正性が確保されておればいいわけではありますけれども、ただ、やはり李下に冠という言葉はどうしても私の頭から去ることはできない。

 そもそも、私に対する批判というのは、日本経済新聞と竹中さんが中心となってやっておられますけれども、民間が決めたことに横やりを挟むのがけしからぬというのが一つ。それから、官僚とか族議員は悪であって、財界人は善であるという前提で書かれたものが非常に多いわけですね。

 私は、そういう発想を一元的にされるというのは非常に迷惑であって、逆に、財界人に頼り過ぎている部分がありはしないか。何かというと、物をつくって財界人をメンバーに入れる。財界人だってそれは神様ではありませんから、やはり自分の将来の商売というのか取引とかいうのが頭をよぎることはあるかもしれない。そういうふうな意味で考えれば、本当に、有識者を集めていろいろな会をやるというのは結構だけれども、このところ、財界人を使うことが多過ぎて、その財界人がいいようにやったという事柄があるのではないでしょうか。

 今、クイックバーバー問題というのも出てくるんじゃないでしょうか。あれは、美容院とか理髪店というものを、文明を破壊するものですよ。そして、とにかく髪なんか洗わなくていい、髪を切って五百円だか千円だ、そういうふうにしたら余りにわびしい社会になってしまう。しかも、そこでまたねらっている人がいるかもしれないといううわさがある。

 私は、そういう意味で、こういう問題が多くあり過ぎることは大変残念だと思うし、かんぽの宿の問題などというのは、あさって発表しますけれども、結局これは随意契約であった。結論から言えば、随意契約としか言いようがない、何の競争性もありませんと吉良郵政行政部長が私に断言をした。こういうことがあるわけで、これは非常に壮大な、仕組まれたというか、綿密に準備されたドラマができたんだと思うんですね。

 その最高の一番の例は、オリックス不動産に決めましたという会議をやって、それから五日後か六日後ぐらいに、何にもないとまずいというので、後から審査票をつくっているんです。後から審査票を自分たちでつくるのが面倒くさいから、メリルリンチにつくっておいてくれというやり方をしているということが判明しているわけですよ。

 そういうものがあるから、疑わしいことが起きて困るんですが、さすが法務省を信じて、四つのPFIの入札については、厳密に、公正性、透明性を持ってやってくれたと信じておりますし、これからますます厳しくやってもらいたいと思います。

重野委員 終わります。

渡辺委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

渡辺委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。吉井英勝君。

吉井委員 私は、日本共産党を代表して、構造改革特別区域法及び競争の導入による公共サービスの改革法の一部改正案に対し、反対の討論を行います。

 反対の第一の理由は、社会教育施設の管理と整備の権限を地方自治体の首長にゆだねることは、条件整備の軽視や、条件整備を口実にした教育内容への介入につながりかねないからであります。

 教育行政は地方自治体の首長などから不当な政治的支配を受けることを避けるため、社会教育行政も教育委員会にゆだねているものであり、教育方針と社会教育施設の管理、整備は一体のものとして行うべきです。

 反対の第二の理由は、地域限定の特区をやめ、市場化テストの導入によって刑事収容施設の民間委託を全国展開することが、公権力行使を民間業者が全国の刑務所で行うことを可能にするものだからであります。受刑者への公権力行使を伴う刑務所業務は、国が直接行うことが原則です。

 市場化テストによる民間開放は、公務員労働者にとっても参入企業で働く民間労働者にとっても、労働条件の悪化を招くことになることを指摘して、反対討論を終わります。

 以上です。

渡辺委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

渡辺委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、構造改革特別区域法及び競争の導入による公共サービスの改革に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

渡辺委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

渡辺委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

渡辺委員長 次回は、来る三日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時三十五分散会


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