第11号 平成21年5月22日(金曜日)
平成二十一年五月二十二日(金曜日)午前九時開議
出席委員
委員長 渡辺 具能君
理事 加藤 勝信君 理事 渡海紀三朗君
理事 西村 明宏君 理事 平井たくや君
理事 平田 耕一君 理事 泉 健太君
理事 大畠 章宏君 理事 田端 正広君
あかま二郎君 宇野 治君
遠藤 宣彦君 大高 松男君
大塚 拓君 岡本 芳郎君
木原 誠二君 河本 三郎君
佐藤 錬君 篠田 陽介君
徳田 毅君 中山 成彬君
長島 忠美君 並木 正芳君
馬渡 龍治君 松浪 健太君
盛山 正仁君 市村浩一郎君
吉良 州司君 楠田 大蔵君
佐々木隆博君 西村智奈美君
平岡 秀夫君 笠 浩史君
池坊 保子君 高木美智代君
吉井 英勝君 重野 安正君
…………………………………
国務大臣
(経済財政政策担当) 与謝野 馨君
国務大臣
(内閣官房長官) 河村 建夫君
国務大臣
(国家公安委員会委員長) 佐藤 勉君
国務大臣 小渕 優子君
内閣官房副長官 浅野 勝人君
内閣府副大臣 増原 義剛君
内閣府大臣政務官 宇野 治君
内閣府大臣政務官 岡本 芳郎君
内閣府大臣政務官 並木 正芳君
政府参考人
(内閣官房内閣審議官) 丸山 剛司君
政府参考人
(内閣府大臣官房審議官) 梅溪 健児君
政府参考人
(内閣府大臣官房審議官) 湯元 健治君
政府参考人
(内閣府政策統括官) 藤田 明博君
政府参考人
(内閣府政策統括官) 松田 敏明君
政府参考人
(内閣府公益認定等委員会事務局長) 原 正之君
政府参考人
(警察庁長官官房長) 片桐 裕君
政府参考人
(警察庁刑事局組織犯罪対策部長) 宮本 和夫君
政府参考人
(警察庁交通局長) 東川 一君
政府参考人
(警察庁警備局長) 池田 克彦君
政府参考人
(文部科学省大臣官房総括審議官) 合田 隆史君
政府参考人
(文部科学省大臣官房審議官) 徳久 治彦君
政府参考人
(文部科学省大臣官房審議官) 尾崎 春樹君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房審議官) 中尾 昭弘君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房審議官) 北村 彰君
政府参考人
(国土交通省自動車交通局技術安全部長) 内藤 政彦君
政府参考人
(防衛省防衛政策局次長) 松本隆太郎君
参考人
(公益認定等委員会委員長) 池田 守男君
内閣委員会専門員 島貫 孝敏君
―――――――――――――
委員の異動
五月八日
委員中森ふくよ君が退職された。
同月十八日
補欠選任
大高 松男君
同月二十二日
辞任 補欠選任
赤澤 亮正君 盛山 正仁君
同日
辞任 補欠選任
盛山 正仁君 赤澤 亮正君
―――――――――――――
五月二十一日
公文書等の管理に関する法律案(内閣提出第四一号)
四月二十四日
憲法第九条第二項のみを改正し、自衛権及び自衛隊の存在を明記することに関する請願(吉田泉君紹介)(第二〇七五号)
同(西村真悟君紹介)(第二〇九〇号)
パチンコ店における出玉の換金行為を取り締まり、完全に違法化することに関する請願(吉田泉君紹介)(第二〇七六号)
同(西村真悟君紹介)(第二〇九一号)
憲法改悪反対に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二〇九八号)
同(石井郁子君紹介)(第二〇九九号)
同(笠井亮君紹介)(第二一〇〇号)
同(穀田恵二君紹介)(第二一〇一号)
同(佐々木憲昭君紹介)(第二一〇二号)
同(志位和夫君紹介)(第二一〇三号)
同(塩川鉄也君紹介)(第二一〇四号)
同(高橋千鶴子君紹介)(第二一〇五号)
同(吉井英勝君紹介)(第二一〇六号)
五月七日
憲法九条を守ることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二一九〇号)
憲法改悪反対に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第二二八五号)
同月二十日
憲法第九条第二項のみを改正し、自衛権及び自衛隊の存在を明記することに関する請願(吉田泉君紹介)(第二三九九号)
パチンコ店における出玉の換金行為を取り締まり、完全に違法化することに関する請願(吉田泉君紹介)(第二四〇〇号)
は本委員会に付託された。
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
参考人出頭要求に関する件
公文書等の管理に関する法律案(内閣提出第四一号)
内閣の重要政策に関する件
栄典及び公式制度に関する件
男女共同参画社会の形成の促進に関する件
国民生活の安定及び向上に関する件
警察に関する件
国家公務員の再就職状況に関する予備的調査についての報告
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○渡辺委員長 これより会議を開きます。
この際、浅野内閣官房副長官から発言を求められておりますので、これを許します。浅野内閣官房副長官。
○浅野内閣官房副長官 このたび内閣官房副長官になりました浅野勝人でございます。
渡辺委員長初め諸先生方の御指導、御鞭撻を賜りながら、松本副長官とともに河村官房長官を補佐してまいりたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。(拍手)
――――◇―――――
○渡辺委員長 次に、内閣の重要政策に関する件、栄典及び公式制度に関する件、男女共同参画社会の形成の促進に関する件、国民生活の安定及び向上に関する件及び警察に関する件について調査を進めます。
この際、お諮りいたします。
各件調査のため、本日、参考人として公益認定等委員会委員長池田守男君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣官房内閣審議官丸山剛司君、内閣府大臣官房審議官梅溪健児君、湯元健治君、政策統括官藤田明博君、松田敏明君、公益認定等委員会事務局長原正之君、警察庁長官官房長片桐裕君、刑事局組織犯罪対策部長宮本和夫君、交通局長東川一君、警備局長池田克彦君、文部科学省大臣官房総括審議官合田隆史君、大臣官房審議官徳久治彦君、尾崎春樹君、厚生労働省大臣官房審議官中尾昭弘君、北村彰君、国土交通省自動車交通局技術安全部長内藤政彦君、防衛省防衛政策局次長松本隆太郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○渡辺委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○渡辺委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。市村浩一郎君。
○市村委員 おはようございます。民主党、市村でございます。
本日は、四十分という長い時間をいただきまして、いろいろ議論させていただきたいと思います。
本日は、公益認定等委員会の池田委員長にもお越しいただきまして、本当にありがとうございます。いろいろ御予定もあったというふうに存じておりますが、その日程を変えていただきまして、こうして国会にお出ましいただきましたことを、まずもって心からの御礼を申し上げます。
また、浅野副官房長官におかれましては、初めてのところなんですが、後ほどまた質問させていただきたいと思います。よろしくお願い申し上げます。
私は、この内閣委員会も通じ、NPOについて、そして公益法人についてさまざまな議論をさせていただいております。
その中で、特に、昨年の十二月一日より新公益法人制度がスタートしました。この法人制度は、行政改革特別委員会で議論をされ、そして新しい制度ができたわけでございます。その行政改革特別委員会の中でも私は申し上げておりましたけれども、今日的な意味での公益とは何ぞやということをしっかりと踏まえた上で新制度はスタートしてほしい、そして、旧弊、前の公益法人制度をなぜ変えなければならなかったのか、このことをしっかり踏まえて新制度はスタートすべきことだということで話を申し上げておりました。
そして、新しい制度ができ上がり、きょうお越しいただいておりますように、池田相談役が委員長を務めていただいております公益認定等委員会に公益の判断をゆだねよう、こういう制度ができ上がったわけであります。これまで主務官庁の判断に任されていたものを、公益認定等委員会にその判断をゆだねていこう。より国民の立場に立って、私たちの立場に立って公益というものを考えていただいて、そして新しい新制度が実りのあるものになるように、そうした思いでつくられたと思いますし、そういう期待を私もさせていただいておるわけであります。
ところが、後ほど具体的な議論を申し上げますが、その信頼、期待が裏切られた、私の中ではそうです。そういった事態が私は発生しているように思います。
まだ制度が始まったばかりですので、特にきょうしっかりと議論させていただいて、ぜひとも、本来あるべき道にこの公益認定等委員会は乗ってほしい、なっていただきたい、私はそういう思いで議論させていただきますので、よろしくお願いを申し上げます。
まず、池田委員長にお尋ねしたいんですが、今日における公益の意義というもの、今日における公益とは何だというように、これは一言で言えないと思います、ですから漠然としたお答えでも構いません。池田委員長が思われる公益の意味、特に今日におけるです、それをお聞かせいただけたらと思います。
○池田参考人 公益認定等委員会の委員長をさせていただいております池田でございます。きょうはこういう席をちょうだいしまして、逆に恐縮いたしております。
市村先生から公益についてのお話がございましたが、私も、この委員長を引き受けさせていただく段階におきまして、日本の社会の中で公益といったものがどんどん喪失していっているという、企業人の一人といたしまして大変危機感を持っておりました。そういう状況の中で御指名をいただき、こういうお役割を担わせていただいております。
と申しますのも、公益といいますものよりも、日本の社会全体の中に、特に私がおります経済界の中で、余りにも私というものが強くなり過ぎまして、公といったものがどんどん意識の中から喪失していっているのではないか。それが経済界のみならず教育の現場におきましても、私も教育のお手伝いをさせていただいておりますが、教育の現場におきましても、確かに個というものの尊厳を強めていく必要があるのは当然でございますけれども、パブリック、公といったものが教育の現場からも喪失していっている。そういうことで、社会全体の中で、個とともに、何としても公といったものを取り戻す必要があるのではないか、そういう思いを持っておりました。
ですから、こういう公益法人の見直しという、百年に一度という大変大きなチャンスを与えられたわけでございますので、御推挙いただいてその役割を担わせていただき、その役割を全うさせていただきたい、そういう思いで今日いるわけでございます。
以上でございます。
○市村委員 本当にありがとうございます。
私は、あえて今日におけるということをつけ加えましたのは、公益の概念というのは時代によって変わるものだというふうに思っています。一定したものではないと私は思っています。時代時代によって変わっていくものだと。
例えば、五十年前に、もし有機農薬の研究とか実践をするような団体がNPOだといって、では、それが公益だと言えたかどうかですね。五十年前は当たり前だったんです、有機でやっていたのが。その後に化学肥料とかが登場して今日を迎えている。それはもちろん、化学肥料の登場によって生産増等に役立ったのかもしれません。しかし、今、それが食品の安全とかいうことで問われてきまして、むしろ有機農薬、有機農法を研究したりそして実践したりすることは公益ではないかと今日的には言えるわけです。
このように、時代時代によって公益の概念というのは変わっていくんだと思っています。
その一つの例として、天下りというのも、これはやはり、今日における公益を認定する場合に当然頭に入れておかなくちゃならないことだと私は思っているんですね。
なぜ、さきの旧公益法人の制度改革が行政改革特別委員会で語られたのか。もともと公益法人というのは民法三十四条にのっとってつくられていたわけです。民法は、もう釈迦に説法でありますが、まさに民法典というのは民の法律であります。それがなぜ、その組織がなぜ、民法にのっとった公益法人という組織がなぜ行革で語られなくちゃいけないのか。そこに日本の大きな問題があったわけであります。だから、それを改めていこうというのが公益法人改革であって、その結果できたのが新公益法人制度ではなかったか、私はそのように認識をしております。
そのときに、なぜ官の組織になったのか、なぜ行革なのか。すなわち、それは、公益法人が官の組織になっていたということが、これは私、何度も議論させていただいていますが、そういう認識になっているんですね。だからそれを改めていかにゃいかぬということだと思います。
そういう意味では、今日において、天下りを受け入れているか受け入れていないかというのは、公益性を持っているか持っていないかの判断基準の中に、まあそれだけではないんですけれども、当然議論されなくちゃならないことだと私は思っていますが、公益認定等委員会では、そういうことは判断基準として公益認定をされているのかどうか、また委員長からお答えいただきたいと思います。
○池田参考人 ただいまの御質問につきましてお答えさせていただきますが、公益認定等委員会で認定基準に従いまして個別審査をさせていただいておりますが、仰せのごとく、行革という大きな柱がございまして、その中でいろいろのことが国会で審議されているということは私どもも承知いたしておりますし、そういったことを私ども委員一人一人が十分に意識させていただきながら審議に臨ませていただいているのが現状でございます。
しかしながら、公益認定等委員会における一つの基準といたしております認定基準にはそういったことが書かれておりませんので、それは個々の委員が意識をさせていただきながら、今日の社会全体の、あるいは政治の動きということも私どもは十分に意を体して対応させていただくのが本筋ではないかというふうに思ってはおりますが、やはり認定基準に従って厳正に審査をさせていただくというのがあくまでも本旨でございますので、その点は逸脱することがないように戒めながら対応させていただいているというのが現状でございます。
以上でございます。
○市村委員 今、池田委員長の方から認定基準ということがありました。
きょうは原事務局長もいらっしゃっていただいていると思いますが、この認定基準、これは法律に厳密に書かれているものなのか、それとも、法律には漠として、その後認定等委員会の中でそのことを、いわゆる政令、政省令にゆだねたのか、どちらでしょうか。
○原政府参考人 お答えいたします。
今回の公益法人制度改革の一つとして、今まで主務官庁制をとっており、いわば裁量的な形で新しい公益法人の設立の許可がされてきた、それを改めるということでございまして、法令にきちんとした基準を設けて、その法令の基準に従ってやっていく、こういうふうになったものでございます。
という意味で、法律にきちんと明確な基準が書いてございますし、一部政令にゆだねているところもございますが、基本は法律の方で明確に書いてあるというふうに理解をしております。
○市村委員 天下りがある、その天下りについても政府の見解と私ども民主党の見解は違うわけです。政府は、押しつけ的なあっせんということでありますが、我々の、民主党の天下りの基準といいますか天下りの定義は、もといたところと深い関係にあるところに行く、もしくは、深くなくても疑わしく思われるところに行くことは天下りだろう、こういうことで、実は政府と見解は違うのであります。
しかしながら、行革で議論されたという意味は、やはりそうした天下りを、つまり官僚が公益法人を私物化しているのではないか。先ほど池田委員長の方から、公が足りない、こういうふうな話がありましたが、私は、今、民法三十四条をうまく悪用されて、公益法人が私物化されていたのではないかと。もちろんそういう公益法人ばかりではありません。しかし、そういう法人がかなりあったのではないか、かなりあるのではないか、こういう疑い、つまり公益法人すら私物化するというとんでもないことがあったのではないかということがあったからこそ私は新公益法人制度が生まれたという認識なんです。だから変えなければならなかったという認識なんです。
であれば、まあ、法律に天下りと書かなくてもいいんですが、例えば政令にゆだねている部分があるとすれば、そこで少なくともそういうものについてはきちっと見ていこう、認定基準までいかないにしても、そういうところもやはりしっかりとチェックしなくちゃいけない、私はそう思っております。
では、原事務局長、そういう議論はなかったんでしょうか。これだけ、いわゆる国家公務員制度改革の中でも天下りの議論がされているわけです。ここまでやっているのに、この新制度においてそういう天下りというものを全く考慮せずに公益認定が行われる、こういうことで、僕はよくないと思いますが、こういう議論はあったんでしょうか。
○原政府参考人 新しい公益法人制度におきましては、主務官庁によります設立許可あるいは指導監督の権限を廃止するということで、公益法人の認定、監督に対する旧主務官庁の関与が排除されているところであります。これによりまして、公益法人の設立、監督に関する許認可権限の及ぶ対象法人への再就職、こういう形は、今もうなくなって、あるいは新しい制度ではなくなるわけであります。
ただ、一方で、御懸念のようなお話もございますので、各府省と公益法人の関係につきましては、随意契約を徹底的に見直すとか、あるいは公益法人に対する無駄な支出の根絶を図るとか、公務員の再就職の官民人材交流センターへの一元化などを行ってきたところでございまして、そうしたことを通じまして、公益法人に対する支出をチェックし無駄を排除する仕組み、あるいは公務員の退職管理に対する新たな仕組みも整備されてきておるところでございまして、これらによりまして、各府省と新しい制度の公益法人との間の、公務員出身者を押しつける恣意的な関係はなくなるものと考えておるところでございます。
○市村委員 後でまた具体的な議論をしますので、ちょっと今の話は……。
池田委員長、公益認定等委員会の役割というのは大変重い。
私は、特にNPOがしっかりとしていくことが日本を元気にする唯一の手段ではないかと思っているぐらいです。NPOというのは、私の中では民間で公を担う組織だという定義でありますが、だからこそこのNPOの中に公益法人も入ってくるわけです。こうした組織がやはりもっとたくさん生まれて、多様な組織がたくさん生まれて、そしていろいろな財・サービスを提供していく。例えば介護サービス、医療サービスとか、これは株式会社が担うものじゃないんです。では、官が担うものでもないんです、政府が担うものでもない。私の中ではNPOが担うものだと思っています。
実はアメリカは、医療機関はほとんどNPOです、大学もほとんどがNPOです。大学とか医療機関もNPOというカテゴリーの中に位置づけられているわけでありまして、何も私は全部アメリカのまねをしろと言っているつもりはありません、いい部分だけとればいいというところでありますが、いずれにしましても、日本もこれから、そうした公のものであるけれども、しかし行政がやると、政府がやると、役所がやると非効率的に陥るものについては、やはりNPOが担っていくべきだと私は思っています。
特に、前もよく言っていますが、ここでも申し上げておりますが、小泉改革は民営化でした。私も民営化の方向性に反対するものではありません。全く同じ思いです。しかし、民イコール株式会社となったところが問題だったということなんですね。民には株式会社だけじゃなくてNPOもあるんだ、民営化の中でここが重要なポイントだと僕は思うんです。
ところが、この国ではNPOがしっかりしていないです。官製土壌なんです、官に都合のいいものは育つような土なんですね。だから、私は、その官製土壌を民製土壌に変えていかなくちゃいけない、そのためにはNPOに関する制度をしっかりと打ち立てていかなくちゃいけない、そういう思いなんです。
その意味で、今度の公益法人改革というのは大変に重要な意味を持っていたと私は思っていました。その中で、特に公益認定等委員会の役割は極めて重い、このように思っていました。だから、その公益認定等委員会がどのような組織を新しい公益法人に選んでくるのか、これはとてもみんなが注目しているところであるわけであります。
政府が今公益認定等委員会に与えた役割というのは極めて限定的なものだということがある意味でここで明らかになっているわけです。でも、委員長は、恐らく、そういう思いでお引き受けになられたのではないような気が僕はするんですね。
委員長は新渡戸稲造先生のビー・ジャスト・アンド・フィア・ノットという言葉を大切にされているということはお聞かせいただいております。
しかも、私は以前から実は、池田委員長に一度お目にかかって親しく御指導いただきたいと思っていた方なんです。ところが、なかなか時間的な、私の方も余裕なく、大変失礼をしておりまして、こういうところでこうした議論になってしまったわけですが、そうしたすばらしいお志を持たれた委員長であればこそ、今の仕組みでいいのかということについていろいろな思いを持っていらっしゃると私は思います。だから、これはなかなか今の立場で言えないのかもしれませんが、恐れないで、やはり委員長が思う公益認定等委員会の役割についてぜひともお話を賜れればと僕は思います。よろしくお願いいたします。
○池田参考人 ただいま市村先生から大変エールを送っていただいたというふうに私は理解をいたしておりまして、大変心強く思う次第でございます。
おっしゃるように、日本の社会全体の中で、官とそれから民という間における非営利法人と申しますか、そういった存在が、諸外国に比べますと非常に小さい存在であったのが今日ではないかというふうに思います。特に、NPOのお話が出ましたけれども、まだNPO活動が誕生しましてから十年少々でございますけれども、いまだにまだ日本におけるNPOの件数は三万件ぐらいというふうに聞いておりますが、私も調査させていただきますと、アメリカにおいては百五十万件ほどのNPO法人がある、そういうことを比較させていただきましても、経済活動で破綻したといいながらも、アメリカは、やはり非営利法人の活動が中心になりまして力を保っているのではないか。
そういうことを考えますと、日本の社会におきましても、非営利法人、財団、社団はもちろんのこと、特にNPO、あるいは新しい形の法人と申しますか、非営利法人と言っていいのかもわかりませんが、ソーシャルビジネスとかソーシャルエンタープライズ、そういう新しい形の法人形態が日本の中で誕生し、定着し、そして官と民の間にありましてそういう非営利法人がどんどん活躍していただくことによりまして、日本社会全体が厚みのある、深みのある、あるいは温かみのある社会が構成されるのではないか。
そういった意味で、役割は、大きい側面と非常に限定された側面がございますけれども、私どもは、公益認定等委員会という立場に立ちまして、与えられた役割を十分に果たさせていただき、それを触媒としていただきましてNPOとかあるいはソーシャルビジネスとかソーシャルエンタープライズ等の法人がどんどん輩出しまして、こういう厳しい世情の中にありましても、そういう法人が社会の核になると同時に、ある意味では、最近雇用難になっております、そういう雇用の受け皿にもなっていくことができないであろうか。
また、教育の現場におきましてもそういう教育を積極的に行わせていただいて、何も営利目的で生涯を送るのではなくて、そういう志を持った若者が輩出しまして、非営利法人の活動を終生の目的、目標としましてチャレンジしていただける、そういう若者が一人でも多く育っていくことを願って、いろいろな側面から努力をさせていただいております。
以上でございます。
○市村委員 ありがとうございます。
まさに、今池田委員長がここでお話しいただいたようなことが今から求められている社会像だというふうに私は思っているんです。
実は、今池田委員長は、NPOはまだ十年だとおっしゃいましたが、私は全然そう思っていません。というのも、例えばもう江戸時代から、日本の江戸時代というのは極めてNPO社会だったと私は思います。教育も手習い、寺子屋、医療も町医者、これは今で言う、今日で言えばNPOです。そういうものが実は日本の社会を支えていたわけであります。明治以降に、殖産興業、富国強兵という中で官僚組織がある種肥大化していったという仕組みの中でこういうものが忘れられていってしまった、どこかに置かれてしまったということでありまして、私は、今日的な意味でいうと、もう一回そういう社会になると思います。
だから、その意味でも、この公益法人改革、そしてNPOの改革、つまり、NPOというのは非営利法人のことですから、非営利組織のことですから、まさにNPOというのが大きな枠組みの中にあって、その中に公益団体や共益団体があるという概念でなくちゃならない、こう思っております。その意味で、公益法人改革も、これは、NPOの一つの形態である、特に中核をなす組織の改革だったというふうに私は認識をしております。それで、今委員長がおっしゃっていただいた、今日的な意味で大変意義があるわけであります。だからこそ公益認定等委員会の役割は重いんです、重いんです。
これから、残りの時間ですが、大変残念な議論をしなくてはならないと私は思っています。これまでは大変高尚な議論でしたけれども、これからとても残念な議論をしなくちゃいけないと思っています。
委員長、公益社団法人というカテゴリーが今回ありますが、私は、公益社団というのは実は概念矛盾しているということをこの内閣委員会の場でも議論させていただいております。すなわち、社団というのはアソシエーションです。アソシエーションというのは共益のことをいいます。共益団体です。
アメリカでも、日本で言うところの今回の公益法人、つまり寄附優遇が与えられている団体のカテゴリーには社団は入っていません。財団もしくは公益慈善団体とかもしくはその他ということになっていますけれども、社団というのは別のカテゴリーなんですね、そして寄附優遇はない、ないんです。
ですから、公益社団というのは、社団というのは共益だと思っていますから、公益共益と言っているようなものであって、公益と共益を一緒にしたような、何かぬえ的存在になってしまっているのがこの公益社団法人というカテゴリーだということも議論させていただきました。だから、ぜひとも公益認定等委員会で御議論いただいて、公益社団じゃなくて、公益事業法人とか公益慈善法人とか、そういうような名前に名称を変更すべきだということをまず申し上げておったんですね。
まず、委員長、この点についてどう思われますでしょうか。
○池田参考人 今先生から御指摘がございました公益財団、公益社団につきましては、これはもう御承知のような形で百年の歴史があるわけでございまして、それを新しい、衣がえという形で、私ども、今、一つの認定基準に従いまして個別審査をさせていただいております。
その審査におきましても、委員会が発足する上にありまして、委員の中で一つのコンセンサスを得させていただいたわけでございます。それは、あくまでも、それぞれの法人の創意工夫あるいは自主性を尊重する姿勢を委員会でも貫いていきたいということでございます。それぞれの歴史がございますので、そういうものを尊重させていただきながら、将来多様な活動をしていただくためにどうあるべきか、そういうふうな観点から審査をさせていただければありがたいという、幾つかの申し合わせがございますけれども、その中の一つになっているわけでございます。
そういうようなことで、社団法人そのものも、生い立ちもございますし、それだけの大きい役割もこれまで果たしてこられたわけでございます。その実績の上に立ちまして新しい法律をつくっていただいております。ですから、私どもは、そういう新しい法律にのっとりまして、認定基準に従い審査をさせていただいている。
経済人の一人といたしましても、やはり、公益活動を行わせていただく上におきまして、財団、社団だとかいろいろな方法がございますけれども、あくまでも、多様な取り組みをさせていただいて多様なものをつくり上げていくということが経済界あるいは企業にとりましても大変ありがたいことでございますので、そういった観点から見ますと、社団という取り組みも存在価値があるのかな、そういう思いでございます。
以上でございます。
○市村委員 もちろん、社団が意味がないと言っているわけじゃなくて、公益社団というのがないということでございます。
それで、その公益社団法人、この委員会の場でもこれはないというふうな思いを持って議論させていただいて、ただ、一応仕組みとして今あるわけですから、できるだけ慎重にしてほしいということは伝えておったんですが、それが委員長に伝わっているかどうか、私はよくわかりませんが、慎重にあってほしいと思っていた公益社団法人の第一号認定になった団体があります。それが、かつての社団法人、現在の公益社団法人の全国老人福祉施設協議会、こういうことでございます。
官房副長官、今回の公益法人というのは、かつての特増というもの、特定公益増進法人というものがあるんですが、私たちがそこに寄附すると寄附控除できるという大変すばらしい制度なんですね。
ただ、アメリカにおいては、寄附優遇を持った団体は、選挙活動禁止ですし、ロビー活動は禁止なんです。つまり政治的な活動はしちゃいけないというのが約束なんです。つまり、それだけ課すから、例えば情報公開もすべて情報公開ですし、政治的活動も制限される、だからこそ寄附優遇を認めましょうと。寄附優遇を悪用して、お金持ちがロビー活動に、おお、これは税金がまかるからどんどん金を入れろ、そしてロビー活動させろ、政治的意図を持ってどんどんやらせろとなっちゃいけないということで制度があるわけでありまして、これは別に、制度をつくろうがつくるまいが、公益法人、特に寄附優遇措置を持った公益法人では当たり前、常識だと私は思っています。
きょう官房副長官にもお越しいただいたのは、この老施協という団体のようでありますが、実はこの会長さんは現職の政務官でおられます、おられるんです。私がお聞きしたいのは、大臣等規範というものがありますね。これは、まず規範に照らしていいかどうかということと、先ほどから申し上げているように、特にこういう公益法人のトップでいいのかどうか、この二点について、副長官からのお答えをいただきたいと思います。
○浅野内閣官房副長官 大臣政務官が公益法人の会長を兼職することについては、御指摘のとおり、大臣等規範によりまして、在任中、副会長などに職務を代行させ、総会、理事会への出席など団体の運営や活動に関与しない場合は、従来から、問題はないという扱いをしております。
今先生御指摘の法人は、確かに総務大臣政務官が会長となっておりますが、大臣政務官本人から、副会長に職務を代行させる申し立てが総務大臣に提出されておりまして、問題はないものと認識をしております。
ただし、こういうふうに問題の指摘があった場合は、やはり本人が説明責任を果たすのが必要と存じております。
○市村委員 運営に関与しないということが大切だということでありますね。
そこで、私本当に、笑っちゃいけないんですけれども、この老施協の機関誌、老施協が毎月発行されている冊子があるんですが、これは、十一月号から見ていただきますと、必ずその政務官のお顔が入っているわけですね。必ず入っているわけです、必ず。表紙にですよ。中身にもあります。
これは関与していないというふうに副官房長官は思われますでしょうか。
○浅野内閣官房副長官 総務大臣に対して、私は現在当該公益社団法人の会長の職にあるけれども、総務大臣政務官在任中は、その職務を下記の者に代行させ、総会、理事会に出席するなど同団体の運営、活動には関与しないということを申し立てますということを、だれに代行させるかという氏名も入れて申し立て書を出しております。
総務大臣が、この申し立て書に基づいて実態調査をした上でこれを受理していると存じますので、私どもは、直接運営などには関与していないと思っておりますが、御指摘でございますので、やはり本人の説明責任が必要かと存じております。
○市村委員 実は、池田委員長、私が一番腹が立っているのは、このこともそうですけれども、新制度ができるまではそういう表紙じゃないんです。新制度ができるまではちゃんとした表紙なんですね、ちゃんとした。ところが、新制度を待ったかのように、こうあるんです、表紙に現職政治家が登場してくるんですね。
新制度は何が違うか。旧公益法人制度と新公益法人制度の大きな違いは、寄附優遇があるかないかなんですよ。寄附優遇があるという組織は、先ほどから申し上げているように、選挙活動とロビー活動は禁止ですよ。ロビーどころか、現職政務官がこれをやるということは、これはもう言語道断なんです。私の公益法人の基準からするとあり得ないことなんです、これは。しかも、新制度を待ったかのように表紙に登場されているんですね。もうなめられているとしか言いようがない。新制度を何だと思っているんだと。私はそのようにしかとれないんです。特に私はこの新制度に対しては非常に期待を持っていたし、裏切られたんです。冗談じゃないという感じです、これは一体。こんなのが許されるんだったらもう何でもありですよ。結局、変えた意味がないじゃないですか。新制度をつくった意味がないんですよ、これじゃ。
委員長、これはどう思われますか。委員長の本当に率直なお考えを、官僚が書いた作文を読まないで、委員長の率直なお答えをいただきたい。委員長のお志、まさに公が忘れられているんじゃないかと。私もこの社会を変えたいと思っているんです。だから期待していたのに、こんなことが第一号認定なんです、公益社団の。あり得ないと思っていたカテゴリーの第一号認定がこれなんですよ。つまり、第一号というのはひな形なんです、モデルなんです。それがこれなのかというのは、私はとても信じられないんです。
委員長からお答えいただけますか。
○池田参考人 ただいま、第一号ということを大変強調していただいたわけでございますけれども、私ども、審査の段階におきましては、受け付けたものを中心に、均等に審査させていただいている、事務審査から始まりまして、最後には委員会審査になるわけでございますけれども。そういう流れの中で、途中段階におきまして、書類の不整備だとかいろいろございますので、順序が逆転することもございます。結果的に、この法人が社団法人としましては最初になった、これはあくまでも結果でございますので、私どもの中で、御指摘いただくようなそういう意図は全くなかった。
それと、私は、あくまでも法人の志と善意といったものを信じまして、そして認定基準に合致したものについては積極的に認可を与えさせていただきたい、そういうことでございますので、その後、やはり指導監督というものも私ども委員会の大きな役割でございますので、そういった流れの中で、その志が十分に発揮されているかどうかということも今後の課題として取り組ませていただきたいというふうに思っております。
今後は、御指摘の点、十分に意を反映させていただきながら、公益活動が盛んになることを私どもも、先生も念じておられるということはもうひしひしとわかりますので、思いは同じだろうというふうに思っております。努力をさせていただきたいというふうに思っております。ありがとうございます。
○市村委員 本当に、池田委員長、ありがとうございます。私は、精いっぱいの御答弁をいただいたというふうに受けとめさせていただいております。
ただ、何度も繰り返して申しわけありませんが、これは本当に重要な制度、重要な変化なんです、変革なんです。本当に、今委員長もおっしゃっていた、公をどう再構築していくかという大切な任務を今担っておられるのがこの公益認定等委員会であり、そのトップに立っておられるのが池田委員長だというふうに思っております。
きょうは、残念ながら、まだ深まるような議論ではなかったと思います。ただ、最後に委員長がこれから重々この委員会の議論も含めて、受けとめながらやっていただけるというお話がありましたので、それはもうしかと強く受けとめました。
ただ、やはり制度は、私は、この制度はまだ十分ではないと思っています、全体的制度が。これにつきましてもさまざま議論もさせていただいておりますし、させていただきますので、そのとき、折々、また池田委員長、いろいろ御意見も賜りたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
きょうは、官房副長官もありがとうございました。ぜひとも官房副長官におかれましても、これは内閣官房が中心になって新公益法人制度をつくったんです。最初はこれ、非営利法人制度だったんですが、いつの間にか一般社団、一般財団という形に変わってしまいました。しかし、私は、ぜひとも包括的な非営利法人制度、すなわちNPO制度をつくり上げるべきだと思っております。最後に一言だけ、その思いに対してお言葉をいただきまして終わりたいと思いますが、よろしくお願いいたします。
○浅野内閣官房副長官 公益法人等の見直しをきちんとやろうというこのいわゆる認定法、それをきちんとやるから、その結果として認められたものは税制上の優遇もして活動しやすくしていこうという趣旨でありますから、その背景にあるものは極めて厳格できちんとした執行でないと、それは目的を達したことにならない、その指摘がきょう先生からあったと重く受けとめさせていただきます。
○市村委員 ありがとうございました。終わります。
○渡辺委員長 次に、泉健太君。
○泉委員 民主党の泉健太でございます。
きょうは、五点ほどの問題について取り上げさせていただきたいと思いますが、まず、公安委員長にお越しをいただいておりますので、警察関係のところからお伺いをさせていただきたいというふうに思います。
まず、新型インフルエンザ対策でございます。
今、政府の行動計画は、主に強毒性の鳥インフルエンザ、こういったものを前提にして計画が組まれている中で、一つの対策として、万全を期してということで、今さまざまな各都道府県での対策が行われている。そういうものの一部には、多少過剰反応ではないかというふうに言われ始めているものもありますし、徐々にこの弱毒性のインフルエンザウイルスということに対しては、これまでの行動計画を修正しながら新たに対策が組まれていくものだというふうに考えております。
きのう、私も地元京都に夜戻りましたら、ちょうどその夜、戻る新幹線の中の字幕の表示に、京都でも十歳の男児が、初の感染があったということの報道がございまして、埼玉でもきのうは一件確認されたということで、徐々に広がりつつある。人の交流が大変激しい我が国ですので、なかなかこの感染の拡大を防ぐというのは難しいものかもしれませんが、今それぞれ国民もまた努力をしているところではないかというふうに思います。
そういう中で、私、当初、それこそ一番最初に感染が発見をされたとき、あるいは世界で広がっていったときに、やはり水際で頑張っている現場の職員さんがおられるということに思いをはせるわけです。対策を打つに当たって、計画をする側ではなくて、その計画に基づいて動く多数の職員の皆さんというのは、本当に目に見えぬ危険と隣り合わせ、不安と隣り合わせで、また、それを見守る御家族の皆さんも同様なのかなというふうに思います。
そういう意味で、警察官とか、あるいは厚生労働省の分野になりますが検疫官ですとか、こういう方々に対しては、引き続きしっかりと国民全体が敬意を払ってその作業に協力をしていくということが大変大事かなと思います。医療関係者に対しても、国民全体が、決してわがままを言って混乱を招くことがないような、節度を持った協力が必要ではないかなというふうに思いますが、現在、都道府県警、それぞれ個別に動きがあると思うんですが、警察官等の展開がどのようになっているか、公安委員長、お願いいたします。
○池田政府参考人 警察官の展開についてお尋ねでございますが、新型インフルエンザの発生に伴いまして、警察におきましては、関係機関と連携を図りつつ、成田国際空港を初めとする関係施設の警戒活動を行ってきたところでございます。また、国内で新型インフルエンザの患者が発生したことに伴いまして、その必要性を見きわめながら、医療機関等における警戒活動を実施しているところでございます。
例えば兵庫県警察では、本部で主にデスク業務を担当している者を中心に大体五十名が、安全安心パトロール隊を結成して街頭活動に従事しております。また、医療機関、学校等における警戒活動を行うために、本部の執行隊を中心に百三十名で県民安全支援隊を編成し、住民の不安解消に努めているところでございます。もちろん、各警察署の職員は当然その業務に従事しているということでございます。
今後も、政府の基本的対処方針を踏まえまして、事態の推移に応じた必要な警戒活動あるいは交通対策などを行って対応に万全を期してまいりたいというふうに考えております。
○泉委員 たしかニュース報道では、例えば空港とかで検疫官ですか、そこに体制を充実させるということで、防衛省の方から医官なんかも協力に当たっているというような報道を見たことがありますけれども、きょう、厚生労働省の方にもお越しをいただいておりますけれども、現在、空港や港湾での検疫体制、検疫官の展開というのはどのような状態になっていますでしょうか。
○中尾政府参考人 お答えいたします。
新型インフルエンザに対する水際対策といたしまして、四月二十八日以降、メキシコ等の蔓延国から我が国に到着するすべての直行便を対象に検疫を実施するとともに、第三国経由を含むすべての乗員、乗客より健康状態質問票を徴収しております。その上で、蔓延国における滞在歴を有する入国者に対しましては、保険証を通じて健康監視を行っているところでございます。
御指摘のとおり、現場の検疫官がこの体制でございますと不足をいたしますので、これに対応するため、成田空港等の検疫所におきましては、厚生労働省の職員を派遣する、また、国立病院機構、社会保険病院の関係機関、さらに防衛省等の関係省庁に対しまして、医師、看護師等の応援を要請するなど検疫体制を強化したところでございます。
具体的な例で申しますと、ゴールデンウイーク中で帰国者が最も多かった五月六日には、全国で五万六千人の方が帰国をされております。その日におきましては、成田空港検疫所、定員八十七名の検疫官がいるわけでございますけれども、二百名程度の応援人員を得て検疫を実施したというような実態でございます。
今般、新型インフルエンザの国内発生を受けまして、対策の重点を水際対策から国内対策へ移行する観点から、国内外の発生動向等の科学的な知見や専門家の意見を踏まえまして、検疫体制を段階的に見直すこととしたところでございます。
○泉委員 実は、それに伴ってなんですが、今回は弱毒性ということで、少しそういった意味での不安は落ちつきつつはあります、落ちついた対応が今図られているところでありますけれども、当初などは、どれぐらい広がるのか、どれぐらいの怖さなのか、どれぐらいの感染力なのかといろいろ言われました。
そういう中で、もちろん、今おっしゃられたように、ゴールデンウイーク中の大変忙しい時期に、不足もして、応援も得ながら活動したということでありますけれども、警察を例にとれば、超過勤務、こういったこともこれまでも恐らくあったでしょうし、今後も場合によっては想定されていくんだと思います。
そういうときに、超勤手当、名目はというか、公には満額支給が大前提ということになっておるんですが、各都道府県の県費の制限もあり、さまざまな制約の中で、実際には満額支給にはほど遠い状態で現場の警察官の方々が頑張られている。これは実はこのインフルエンザ対策が起こる前からの問題ではあるわけなんですが、改めて警察庁に、この超勤手当が今どういう状況なのかというものをわかれば、そしてまた実態を把握されたことがあるのかどうか、お伺いしたいと思います。
○片桐政府参考人 お答え申し上げます。
超過勤務手当についてのお尋ねでございますが、委員もよく御承知のとおり、これは、時間外の勤務を命ぜられた場合において、その命令に従って勤務した時間に対して、これは都道府県の場合でございますけれども、条例に従って支給をするというのが前提でございまして、これが基本でございます。したがって、このように支給がされているものというふうに思っております。
今回のような事態が生じた場合に、勤務多忙になった場合に予算よりも上回って支給する必要があるということも考えられますけれども、そういった場合においては、各都道府県において追加の措置を行うとかいった形で措置をしているというふうに認識しております。
○泉委員 もう一回聞きますが、実態の何か調査のようなものというのは、そういう意味ではしたことは、うなずいていただければ結構です。ないわけですね。実態は今おっしゃったようなことだということですね。わかりました。
ちょっと時間の関係で、公安委員長が五十五分でどうしても次の委員会に出なければなりませんので、少し質問の順番を変えてお願いをしたいと思うんです。
要は、こういう超勤手当ですとか、あるいは防衛省、よく我々が知っている例でいうと、イラク派遣とかでは、賞じゅつ金ですとかあるいは首相からの特別ほう賞金、これはもちろん、大きな事故に遭遇した場合とか、任務中に命を落とすようなことがあった場合ということでいろいろなメニューが想定はされているわけですね。もちろん、そういった事態がないことが一番望ましいわけですが。
そういうさまざまなものがある中で、現在、国内でさまざまな危険な業務に携わった方々が、必ずしも各省庁で同じような制度になっていないのではないかなということを私はちょっと懸念をしております。
それはちょっと後で事務方の方に質問をさせていただきますけれども、公安委員長、現場で頑張られている多くの職員さんがおられますので、そういった方々に対して何かしら取り組みがないのかということと、そして、ぜひ現場で頑張っている方々への激励の言葉もいただきたいと思いますが、お願いいたします。
○佐藤国務大臣 先生にいろいろな面で警察行政を御理解いただいて、大変ありがたいというふうにまず申し上げたいと思います。
私も、警察庁に行かせていただいてもう半年以上携わらせていただいて、いろいろな意味で交流をさせていただく機会がありまして、局長たちとお話をさせていただいたときに、こんな話を聞かせていただきました。
かつて、明治時代に、佐賀県のある村で疫病がはやったときに、その村の駐在さんであった増田巡査という方がいらっしゃったようであります。その身の危険も顧みず、日夜、村民の救済に尽力をいたしまして、結局、みずからがその疫病に罹患をし、命を失ったという話を伺いました。その後、村人によって、増田巡査を神とあがめ、その神社は今もあると伺っております。
私は、この精神こそ警察精神であるというふうに思いますし、もとよりこんなことで殉職を出すことは許されることではないというふうに思いますが、私ども管理者の仕事でありますが、同時に、一線で国民の生命、身体、財産の保護に任ずる警察官の皆さんにはこの精神を忘れないでほしいと願っておりまして、もとより大変緊張にさらされた困難な任務でありますが、人のために尽くす仕事が最も美しい仕事であるということを改めて一線の皆さんに申し上げたいというふうに思います。
ありがとうございます。
○泉委員 公安委員長、これで結構でございます。どうもありがとうございます。
きょうは厚生労働省の方にもお越しをいただいておりますが、先ほど話をしましたように、例えば自衛隊であれば、仮にですが、任務中に命を落とした場合には賞じゅつ金が、警察官ですとか自衛隊員にはあるわけです。そして、国家公務員災害補償法というものに基づいて出される補償金があり、さらに、特別ほう賞金、これは首相から、防衛省のイラク派遣のときですけれども、特別ほう賞金というのもある。そしてまた、一日ごとの特別手当、これも用意をされていたわけですね、当時は。
それに対してというと申しわけないんですが、厚生労働省さん、例えば、現場でこういったウイルス患者に接する医官、医療関係者の方々に対しては、今どんな制度が用意されているんでしょうか。
○中尾政府参考人 今回の新型インフルエンザに関する検疫の業務を担当している検疫官でございますけれども、一般職の職員給与法の規定に基づきまして、超過勤務手当のほか、特殊勤務手当を支給することができるということとなっております。それから、よそから応援に来ている方につきましては、謝金をお出しするというふうな取り扱いにすることとしております。
○泉委員 賞じゅつ金とかというのはないわけですね。
○中尾政府参考人 検疫に従事した日につきましてはそれに対応する特殊勤務手当という形のものはございますけれども、御指摘のような手当はございません。
○泉委員 ここはぜひ政府の中で、もちろんこういう事態を招かないようにということが大前提ですけれども、これまでは、海外で危険な地域に出かけるのだからということでありましたけれども、テロもいつどこで起こるかわからないという時代の中で、次第に情勢が変わってきている中で、やはり国内でも危険な業務に携わる方々というのは出てくる。そういうときに、警察官、自衛官というのはそういう制度がちゃんとありますが、一般の職員と言われる方々、今でいうと医療関係者という方々などは、そういった意味で多少その制度が違ってきていますので、ぜひそこは一度御検討をいただければというふうに思います。
次に、小渕大臣にお越しをいただいております。質問をさせていただきたいと思います。
まず、時がたつのは早いもので、前回、父子家庭への支援、この質疑をしたのが三月十三日でありました。約二カ月たちまして、国会の会期も短くなってきておりますが、あの当時、「児童扶養手当の父子家庭への一律適用除外について、私自身、見直す必要があるのではないかと考えておりますので、厚生労働大臣にもそのように訴えてまいりたいと考えております。」という大変ありがたい御答弁をいただきました。
もちろん、私たちも、立法府として、立法者としての責任として法案を作成しまして、これをいつ提出しようかというところまで今来ているわけですけれども、その後、厚生労働大臣には御要望をいただけましたでしょうか。
○小渕国務大臣 お答えをいたします。
先日、泉委員から御質問をいただきまして、その答弁の後に速やかに厚生労働大臣にお伝えをいただきました。その後、厚生労働省の事務方から、この児童扶養手当の現状につきまして説明を受けました。父子家庭に支給しないことの理由として十分に納得できるものではないと感じたため、さまざまな課題があるということは十分に承知をしていますけれども、やはり父子家庭にも収入の低い世帯があるという現実をしっかり受けとめて、児童扶養手当の父子家庭への支給について、現在の社会経済状況の変化も踏まえて検討していってほしいということを改めて伝えたところであります。
○泉委員 直接は厚生労働大臣ということになっていくわけですが、とはいえ、こういった子育て支援全般、あるいは男女共同参画、そういったものにも携わる、省庁またがった推進体制をつくってきている小渕大臣からの厚生労働省の担当に対するそういった申し入れというか要望があったことは、職員がしっかりと重く受けとめる必要があるというふうに私は思います。
やはり、これはそんなに時が待ってくれる問題ではないというふうに思います。子供の成長もありますし、経済情勢も先行きが不透明な中で、中には本当に、先ほど大臣がおっしゃったように、収入の大変低い男性、お父さんがおられて、そして日々生活が破綻をしかけているという状況の方もおられるということでありますので、ぜひ督促をしていただきたいというふうに思います。期限をある程度区切って取り組まなければ……(発言する者あり)
○渡辺委員長 静かに。静かに願います。
○泉委員 これは、いつまでも検討しますということで逃げられてしまう問題だというふうに思いますので、本当に、党ですとかそういったものを超えて、国会全体で提言ができるような土台もつくっていきたいと思いますけれども、ぜひ政府の方としても、改めて小渕大臣、これは要請をさらに強めていただきたいというふうに思います。
続いて、青少年問題に関する特別委員会、衆議院の方には設置をされておりますけれども、この委員会だけの議論ということではなくて、内閣委員会の中でも、例えば警察とかかわっての少年非行の問題ですとか、いろいろとかかわる部分もありますので、きょうは、青少年総合対策推進法案について少し質問させていただきたいというふうに思います。
私が感じますのは、前回の大綱、青少年育成施策大綱というのがございました。平成十五年十二月、前回大綱がつくられました。そして、その大綱からおおむね五年をめどに見直しを行うということになっておりまして、新大綱の話が出てきているわけです。そういう中で、新大綱を策定するということも含めたこの推進法案が出てきているわけですが、どうも、いろいろな資料を読んでいますと、正直なかなか、旧大綱の何がいけなかったのか、あるいはよかったのか、その評価、フォローアップの部分がいまいちよく伝わってこないんですね。
例えば、旧の大綱でいいますと、三つの基本理念、「現在の生活の充実と将来への成長の両面を支援」、「大人社会の見直しと青少年の適応の両方が必要」等々、三つの基本理念というのがある。その基本理念から、今回は、青少年の立場を第一に考えること、社会的な自立を目指して、青少年の健やかな成長を支援すること、青少年一人一人の状況にふさわしい支援を切れ目なく実施することの三点を基本理念としとなったわけですね。
前回の三つの基本理念から、ある意味表現が変わって新しい基本理念に至るその経緯というか、なぜ基本理念まで、そこまで変える必要があるのかが正直わからないわけなんですが、大臣のわかる範囲で結構でございますけれども、どうしてなのかということがわかれば。
○松田政府参考人 今、泉先生からお話ございました青少年育成施策大綱、これは平成十五年に第一回目をつくりまして、昨年十二月にこれを改定いたしております。
改定をする前の、今お話があった前の重点課題、「社会的自立の支援」ほかの四つの重点課題、それから年齢期ごとの基本的方向といったようなことを十五年に定めまして、それを改めまして、昨年末に大綱をまとめたところでございます。
今回のこの法案、これは、改めて法律といたしまして「基本理念」というものをきちっと定めて、まず青少年育成の目標を明らかにする、第一号。第二号で、青少年育成にかかわる主体を明らかにする。それから、特に留意すべき事項ということで、三号から五号におきまして、青少年の発達段階に応じた良好な社会環境の整備とか、教育、福祉の関連分野における知見の総合とか、それから自立した社会生活を営む上での困難を有する青少年、そういった、前回の大綱を見直した昨年十二月の大綱を踏まえまして、今回、新たに法律的な観点から整理をし直したところでございます。
○泉委員 いや、大綱同士を比べたときに、前回の三つの基本理念というものが達成をされたのか、それとも、達成されぬまま、やはり今までの基本理念ではとらえ方が違っていたので今回変えたという話なのか、そこがよくわからないんですね。前回のこの基本理念は達成された、あるいは四つの年齢期に分けたことは、おおむね目標は達成、目標というか視点は正しくて、そして、それぞれ行われた政策も円滑に進んで、当初から予定をしていた目的が達成されてこの大綱に至っているのか、残念ながら達成されたと言えないという結論に至って今回の大綱に至っているのか、これはどちらなんですか。
○松田政府参考人 前回の最初の大綱自身、この三つの理念自身が間違ったということではなく、また、そういう形で施策は進んできております。
ただ、今まさにこの時点での、現在の時点において、改めましてこの青少年育成の難しさ、それから、ニート等の発生がますますこの数年来深刻化している、その他の虐待なりいわゆる情報化の問題もある、多々あるという中で改めて理念を整理し直したというものが今回の法律の案でございまして、評価は当然やっておりますけれども、その中で、では五年前の理念の書き方どおりにしなければならないかということではなくて、そういった精神をそのまま受け継ぎながら、よりいいものに仕立てて、法律上書き込んでおるところでございます。
○泉委員 小渕大臣、この青少年総合対策推進法案、ポンチ絵なんかで見させていただいたときに、今回の新しい理念では、青少年の立場を第一に考えることというのが載っていますね。大臣もちょっと想像していただきたいんですが、青少年の立場を第一に考えること、何となく文言として響きはいいんですが、青少年の立場を第一に考えること、青少年の立場を大人として第一に考えることと、青少年の立場になって法案を見詰める、大綱を見詰めること、ちょっと違う気がしませんか。違いますね。
どうやら、この今回の推進法案の中身を見ていても、やはり私は、正直、上から目線がぬぐえないなという気がしてならないんです。
ニート、フリーター、問題だ、問題だ。しかし、当事者の子供たちや、その友人たちや、同世代の人たちは、本当にニートやフリーターが問題だ、異常だ、そういう意識を持っているんでしょうかということも含めて、逆に言えば、私が言いたいのは、ニートやフリーター、こういう問題や、あるいはいじめも、いろいろな問題、子供の問題とされるものの原因として大人社会があるんじゃないですかと。そういう視点が余り見えてこないわけですよ。
正しい大人たちが子供たちを正しく導きます、それは子供たちの立場に立って考えますということなんですが、本当に子供たちの気持ちが、心が、子供たちからの意見も募集されたとはなっていますけれども、そういう問題ではなくて、やはり大人から子供たちを見たときに、それが異常か正常かで政策の立案がなされている、そのこと自体が私は間違いじゃないかなというふうに思うんですね。やはりそろそろ考え直していただいた方がいいんじゃないかな。
ですので、私は実は、旧大綱に入っていた大人社会の見直しという言葉は非常に重たい言葉だと思っているんです。
これまでの流れを見ていますと、かつては戦後の混乱期の少年非行の緊急対策という性質からこの青少年問題がスタートをして、もちろん校内暴力だとか戦後の混乱期が収束するまでの間の青少年のさまざまな問題というのがあった。当時は、それこそお父さんが戦争で死んで、お母さんもいなくて、子供たちが一人で生活せざるを得ない環境があって、そういうところで、生活のためにいろいろなことをやってしまったということが少年非行としてカウントされるものですから、そういったことで対策が打たれてきたけれども、やはり時代が変わってきて、前回の大綱では、例えば青少年の権利というものが世界的に認められてきた、あるいは自立だとか自己決定を支援していこうという流れになってきたわけですね。
しかし、今の若者たちからしてみると、いきなり自立と言われても逆に困る。社会がその自立を本当に支援してくれているのか、もっと言えば、支援してくれる前に、大人社会というのは本当にそれだけいい社会なのか、大人社会というのは本当にでは責任を果たしてくれているのか、青少年対策よりも、もしかしたら必要なのは大人対策、成人対策をもっとちゃんとやってくれというのが子供たちの声じゃないのかなというぐらいに私は思うんです。
そういう視点は正直余りないというか、大人の責任、大人の反省、個としての対等な意識、もちろん、家族の中の序列というか、ある程度の上下関係、あるいは教育現場における上下関係、それは当然あるでしょうけれども、大人だってかつては子供だったという視点から物事を見るだとか、そういうことが正直私は足りないんだと思います。
そういった意味で、この新しい大綱ですとか推進法案についてはこれからもっともっと深掘りをして議論していきたいと思いますが、きょうは二点だけちょっとお伺いをしたいわけです。
一つは、今回の推進法の中では、ニート、引きこもりだけを特出しをしたわけですね。しかし、例えばいじめの問題もある、虐待の問題もある、そして、例えば女性でいうと特に多いのが摂食障害、いろいろ問題がある、若年うつなんという話もある中で、ニート、フリーターだけをわざわざ法律で定義づけて特出しをする、逆にほかの問題を抱えた困難な子供たちへの支援が表に出てこないというのは、私はちょっと違和感を感じるわけですが、そこについてはいかがお考えですか。
○小渕国務大臣 たくさんの御指摘をいただきまして、ごもっともだなと思って聞かせていただきました。
やはり、青少年をめぐる状況というものは大きく変化をしていますし、大変複雑化をしてきております。そんな中で、私は、これまでいろいろな対策がとられてきたとはいえ、例えば高齢者であるとか乳幼児であるとか、そうしたところに比べて青少年というものがこれまで十分に注目をされてこなかったのではないかという思いでおります。
そんな中、御指摘のニート、引きこもりだけを特別に支援するという法律になっているのではないかということでありますけれども、特にニート、引きこもりというものが昨今いろいろな問題を持っている中で、こうした方々、修学も就業もしていない青少年というものは、自立を果たす上で大変困難に陥り、やはり何かの支援策を皆が求めているのではないか。そんな中にもかかわらず、今の法律におきまして直接に対象となっているものがない。そんな中、今回の法律におきまして、ニートや引きこもりの状態にある青少年に対する支援を改めて取り上げまして、自立に向けての支援を行うための仕組みを規定したところであります。
今回、特別ここに注目があるということでありますけれども、もちろんそれ以外にも困難を抱えている青少年というものは多数いますし、その問題というものは大変複雑化しております。そうしたことも総合的にしっかりと支援してまいりたいと考えております。
○泉委員 青少年問題が複雑だとか今まで注目されてこなかった、これも全部実は大人の視点なんですね。複雑にしているのは実は大人じゃないですか。一生懸命こうやって大綱だとか難しい文書をつくって、審議会をつくってやっているのは全部大人であって、子供たちにとって本当にそんなに難しい問題なんですかという私はメッセージが、どうも子供の内なる声が響いてきているような気がしてなりません。しかし、これは大人社会ですから、仕方がないことかもしれませんが。
要は、さっき言いましたように、働いていても、例えば若くてもうつを抱えている人たちだとかもいますし、ですから、仕事をしていない、修学をしていないということだけをわざわざ切り出すということではなくて、法案の中でも自立が困難なという表現がたしかあったと思いますけれども、そういう子供たちに全体的に私は焦点を当てていっていいのじゃないのかな。今回はたしか十五歳以上の青少年が対象になっているということもありますので、そういった切り方も含めてこれは考えていく必要があるんじゃないのかなというふうに思います。
そして、例えば旧大綱でいいますと、青少年を乳幼児期から青年期まで分けているわけですが、乳幼児期、本当に青少年対策なのかなということも実はちょっと不思議なところがありまして、もっと言えば、乳幼児期なんというのは、親そのものが青少年対策の中に入っていくんじゃないかということですね。ですから、働いているから青少年の枠から外れるかというと、私はやはりそうではないと思うんですね。今や政府の方では、ポスト青年期まで入れれば三十歳を超えるわけですから、当然親であっても青年であり、青少年であるという現象が起こってきているわけです。
そうすると、前回の旧大綱から出されたメニューで、乳幼児期の支援で、例えばこんにちは赤ちゃん事業だとかという話がありますが、これは子供の支援なのか、実はそうじゃなくて親に対するというか、青少年としての親に対する支援じゃないのか、そういうこともやはり思うわけですね。
ですので、その辺が、単純に子供というふうに、上からある年齢で切って、あと下は全部子供だという話ではなくて、もう少し実態をしっかりと踏まえて、今回はこの法案についてのしっかりとした審議をしていきたいというふうに思いますので、小渕大臣もぜひ我々側の立場に立って頑張っていただきたいというふうに思います。
小渕大臣はこれで結構でございます。
最後に、先日、内閣委員会で視察に行ってまいりました。つくばのロケット関係、そして科学警察研究所に行ってまいりました。大変参考になることがたくさんございましたけれども、科学警察研究所の方で、車の中にイベントデータレコーダーというものが入っているということが紹介をされました。私たちもフロントガラスに取りつけてあるドライブレコーダーは知っていたんですが、イベントデータレコーダー、車の中に入っているものについて余り今まで知らなかったわけですが、国交省さん、あと数分です、まとめて質問をします。
このイベントデータレコーダーというものが今国内の車両でどれぐらい導入されているのか、そしてどのようなデータが記録をされているのかについてお答えください。
○内藤政府参考人 お答えいたします。
まず、国内のEDRの導入率でございますが、EDRが搭載されている旨自動車の取扱説明書に記載されている車両を確認いたしましたところ、平成二十年十二月末時点で三十一車種に導入されております。乗用車の車種数は全体で百九十と聞いておりますので、車種別の導入率、約一六%となっております。
また、取得しておりますデータでございますが、私ども国土交通省では、平成二十年三月に、EDRの技術基準、ガイドラインを策定しておりますが、その中で記録すべきデータを定めており、具体的には、エアバッグの作動状況、事故時の車両の加速度、速度、それから、運転者のシートベルト装着の有無、ブレーキ作動の有無、アクセルの開閉状態などを記録することとしております。
以上でございます。
○泉委員 これは何のために導入をされて、今現在どのように活用されているのか。それと、さらに言えば、今後何のために活用していこうと考えられていますか。
○内藤政府参考人 まず、活用目的でございますが、自動車メーカー、取扱説明書に書いてございますけれども、この中では、EDRに記録されたデータを車両の研究開発を目的に取得、活用することがある旨、記載をされております。現在、関係者間でこのEDRデータの精度、信頼性などについて検討を行っておりまして、将来的には事故調査に活用してまいりたいと考えております。
また、人、道、車の観点から事故原因を総合的に分析しています財団法人交通事故総合分析センターというところがございまして、つくば地区におきまして詳細な事故調査を行っておりますが、この際に、事故車両にEDRが搭載されている場合には、使用者の同意を得ましてこのデータを取得し、事故調査の精度向上策の検討に活用しているというふうに聞いております。
○泉委員 これは、データ利用の際はユーザーの承諾をとっているということですが、車両への搭載を含めて、ユーザー側にとって、今のところ余り必要な情報ではないというか、ユーザー側に利益があるものではない。そしてまた、メーカー側が研究開発に使うということも、どこまでの範囲許されているのか、これもちょっとはっきりわからないわけですね。
もっと言えば、例えば、うがった見方をすれば、メーカー側が損保会社に対して、民民の中で、こういった情報を渡すようになっていって、いつの間にか事故の保険の率が決まってくるとか、こういったことになっては、私はユーザーの利益に反する可能性もあると思うんですね。そういった意味で、承諾の問題も含めてお伺いをしようと思ったんですが、時間が来ましたので、また次回お伺いをさせていただきたいと思います。
終わらせていただきます。ありがとうございました。
○渡辺委員長 次に、吉井英勝君。
○吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。
私はきょうは、せっかくせんだってJAXAに行ってまいりましたので、私も宇宙の問題についてやりたいと思います。
宇宙太陽光発電の構想、これは、一九六八年、ピーター・グレーザーが提案して、実はアメリカのNASAでは一九七八年に概念設計まで行っておったんですけれども、膨大なコスト負担から、事業化しないということで終わっておるんですね。
この問題について、宇宙開発戦略本部の計画は今どういう扱いとなっているのかを、最初に参考人に伺います。
○丸山政府参考人 今お尋ねの宇宙太陽光発電でございますが、私ども、宇宙基本法に基づいて、現在、宇宙基本計画の取りまとめの最終段階に入っているところでございます。この中でさまざまな検討をしてまいりましたが、まず、宇宙太陽光発電というのは、宇宙空間において太陽エネルギーを集めて、そしてそのエネルギーを地上に伝送していく、新しい宇宙の利用というシステムという観点で検討をしてございます。
もう先生御案内のように、宇宙太陽光発電というのは、地上と違いまして、昼夜、天候に左右されない、安定的に発電が可能だ、大幅な効率向上が見込まれるわけですけれども、他方、例えば百万キロワット規模の発電所をつくろうとすると、二キロメートル四方の巨大な構造物を宇宙につくらなければいけない可能性があるのではないかということで、実現に向けては多くの技術的な課題があるというのも事実でございます。
そういうことで、現在は、経済産業省、文部科学省、JAXA等を中心に、二十一年度の予算では約四億円の経費を使って基礎的な研究を進めているところでございますが、さらに、関係機関が連携をし、総合的な視点からシステム全体の検討をする、あるいは地上においてエネルギーの伝送の技術の実証をする、そしてそういう結果を踏まえて十分な検討を行いながら、三年後をめどに小型衛星等を活用した軌道上実証を行うということがいいのではないか、こういう案で、今取りまとめに向けて、今月の十八日までパブリックコメントにかけておりました宇宙基本計画案の中ではそのように扱っております。
○吉井委員 三年後ということになりますと、二〇一二年をめどにということですね。それは数キロワット程度の衛星で、二〇三〇年ごろには、原発級の大体百万キロワットの送電を行うということも一つ、計画に入れてやっているんですか。これはもう簡潔でいいですから、一言お願いします。
○丸山政府参考人 宇宙基本計画は、十年を見通した五年の計画ということを念頭に考えておりますので、今御指摘のあったような二〇三〇年という問題についてはまだ具体的に検討してございません。
○吉井委員 それで、宇宙からマイクロウエーブを地上のレクテナと呼ばれるアンテナへ輸送するにしても、あるいはレーザー光を使って太陽電池で受けるシステムにしても、非常に指向性の高いマイクロ波エネルギー伝送技術、つまり電力を電磁波を使って輸送する、この研究開発というのが必要になってくるというふうに思うわけです。
一九六六年の、国連で採択された宇宙条約の起草にかかわったアメリカの国務省元海外サービスオフィサーのクレイグ・アイゼンドラスさんと、それからノーベル平和賞候補に選ばれたことのあるアメリカの女性小児科医のヘレン・カルディコットさんが著した「宇宙開発戦争―<ミサイル防衛>と<宇宙ビジネス>の最前線」というのがありますが、この中で、この高いエネルギー密度を持ったマイクロ波の技術は、キラー衛星として敵の衛星を破壊するものとなる技術である、そういうことも紹介されております。
ですから、本来、宇宙からマイクロウエーブで送る技術というのは、平和利用なんですね、平和利用技術として考えていかなきゃいけないものですが、ただ、これが軍事技術に転用されると、宇宙からの攻撃に使われるという危険な面が生まれてくるわけです。だから、本来的に平和な研究開発が軍事技術に転用されないようにするということを考えなきゃいけないと思うんですが、この点についての懸念、これはどういうふうに考えているのかということを伺っておきます。
○丸山政府参考人 私ども、あくまでも、宇宙太陽光発電というのはエネルギーを宇宙から地上に伝送する技術というふうに考えております。今先生詳細に御指摘のあった点については私ども細かくは承知しておりませんが、今後の技術の課題の中で、宇宙から地上に安全にエネルギーを送る技術、これがないといろいろな人間の経済活動にも影響が出ますので、そういったものについて、障害がない伝送技術はどうあるべきか、そういうことについて検討していくということで、あくまでも平和的利用ということで考えております。
○吉井委員 考え方が平和的利用であるというのは、これは当然だと思うんですよ。
ただ、ここで防衛省に一言伺っておきたいんですが、本来GPSが軍事的に開発されたのは別として、GPSを使って、自動車を運転するときにもあるいは携帯電話その他でも活用できる技術なんですが、現在、アフガンやイラクなどの戦争で、ミサイル誘導の七割はGPSを利用しているというふうに言われておりますが、このGPSの軍事利用の現状をどのように把握しているか、これを伺っておきます。
○松本政府参考人 お答え申し上げます。
今御質問がありました、各国の、GPSによります、誘導されるミサイルの保有状況等でございますけれども、これについては不明な点も多くて、防衛省として網羅的にお答えすることは困難でございますけれども、ジェーン年鑑等によりますと、米国、ロシア、中国等の国がGPSによる、誘導されるミサイルを保有しているというふうに承知しております。
それから、今、使用された実例で幾つか、御指摘があったわけでございますけれども、私どもが承知する限り、一九九五年九月に、米軍がボスニアにおきましてGPS誘導方式のトマホークを初めて実戦に使用して、その後も、例えば二〇〇三年の米国のイラクに対する武力行使等、こういったものにおいてトマホークミサイルが使われたというふうに承知しております。
○吉井委員 それで、平和利用と軍事への転用というのは非常に微妙な問題を持っているんですね。
それだけに、私、官房長官に伺っておきたいんですけれども、宇宙基本計画の案文が今出されておりますが、宇宙開発戦略専門調査会やワーキンググループの議論というのは非公開なんですね。議事録は議事概要だけで、だれが発言したかもわからないんですよ。
実は、宇宙太陽光発電分野の専門家の一人である松本紘先生が入っておられますけれども、先生などは、別に、SPSの発言をしても、それが議事録で公開されても全然困る方じゃないんですよ、もともと学問的に専門的にやってこられた方ですから。
それなのに、率直な意見交換を行うために非公開として、発言者の氏名、発言内容をすべて公開しない、こういう態度をとって、結局密室議論の状態にしているわけですね。むしろ、さきに挙げたマイクロウエーブを使うSPSの技術が平和目的であって軍事利用に転用されないようにするには、実は、議事録の公開、こういうことは最も大事なところだと思うんですね。
これは官房長官に伺っておきたいと思います。
○河村国務大臣 御指摘の点でございますが、御案内のように、宇宙開発戦略本部のもとに置かれております宇宙開発戦略専門調査会、それから同調査会のワーキンググループ、ここでは確かに、外交、安全保障を含めた総合的な宇宙開発利用に関する戦略等の検討が進められております。また、宇宙開発戦略調査会においては、いわゆる宇宙の専門家だけではなくて、幅広い分野の有識者に構成員として加わっていただいております。これらの方々が忌憚のない意見交換をしていただくということが一番大事なことであります。
そういうこともあって、その専門調査会等の議事録については、検討の内容、あるいは忌憚のない意見交換の実施という観点から、今の段階において、特に、発言者が特定できるようなものを公開する、こういうことは考えておりません。
しかし、宇宙開発利用に関する施策、これは予算的にも多額の費用を要する、こういうこともございますから、当然透明性を確保する、このことも大事な視点だと思います。調査会が終わりますと、事務局のブリーフィングの実施等、議事概要の公表等の取り組みはやっておるところでございます。
また、宇宙基本計画の案はパブリックコメントにも付すわけでありまして、幅広く国民の意見を持って最終的な取りまとめにしたい、こう考えております。
今後とも、今吉井先生が御指摘のようなこともございますので、こういう取り組みを通じながら、政策の検討過程の透明性の向上には努めてまいりたい、このように考えております。
○吉井委員 国民の税金を使って議論をするものとか役所でまとめたものとか、およそ公文書になるものは国民共有財産でしょう。これは、この後公文書の管理に関する法律でまた議論するにしても、肝心のこういう問題が全く、議事概要というお話はあったけれども、そもそもだれが何をしゃべったかもわからない。これは平和利用だったら何にも隠すことないんですよ。むしろ、逆にオープンにすることによって、国際的にも、日本の宇宙開発研究というのはオープンにやられているんだと、非常に高い信頼を得て、そして国際貢献ができるわけですね。
もう一遍伺っておきますけれども、今までそういうふうに、公開しなかった内容はわかっているんですよ、おっしゃったとおりなんです。しかし、これからは公開を原則とする、このことだけはやはりはっきり踏み切る必要があると思うんですね。官房長官、伺います。
○河村国務大臣 これは、委員の方々をお願いする段階においても、できるだけ忌憚のない意見を率直に語っていただくということで、おっしゃるように、中には自分の発言は大丈夫ですよと言われる方もある。しかし、自分の発言は、だれが言ったということについては避けたい、こうおっしゃる方もございますので、今御指摘いただいたことも踏まえ、どのような形で透明性を担保するか、そういうことは今後の課題としても考えてみたい、このように思います。
○吉井委員 自分のしゃべったことを人に知られたら困るような、そんな自信のない人はそもそも専門調査会のメンバーにすることがおかしいんですよ。自分の発言というのは自信を持ってしゃべってもらわなきゃ。どこで公開されても構わないんだ、やはりそういう人に差しかえるべきだというふうに私は思います、もしそういう方がいらっしゃったら。
ことし一月から、内閣官房の宇宙開発戦略本部事務局に技術参与として、NEC東芝スペースの社長だった中田勝敏さんと三菱電機取締役だった廣田陽吉さんを非常勤の国家公務員に採用していますね。これは宇宙基本法の附帯決議の具体化なんでしょうけれども、政府提出資料によると、二人とも、受け入れ企業が本務だと書いてありますね。つまり、三菱電機とNEC東芝スペースでの仕事が本務なんですよ。人工衛星など日本の宇宙開発のビッグツーですよね。ビッグワンとビッグツーの、この直前まで役員だった方が日本の宇宙開発の司令塔に入ってくる。
これでは、宇宙開発戦略本部というのは宇宙開発メーカーの霞が関支店ではないかと言われても仕方がないと思うんですよ。メーカーの経営陣を、非常勤といえ国家公務員として任用するのは、これは私は、あからさまな利益誘導といいますか、官民癒着というか、これはだんだん日本も、アメリカ型の軍産複合体への道ではないかというふうに思われます。
私は、こういうあり方というものは、これはやはり是正しなきゃいかぬと思うんですが、官房長官のお考えを伺います。
○河村国務大臣 宇宙基本法の中にも規定をされております中には、宇宙産業の振興を図る、こういう視点がございます。これまでの視点を、さらに新たな視点をしっかり持ったということで、これは我が国の宇宙開発利用の発展に不可欠なものである、こういう認識に立っております。
そういう意味で、その方面で専門的にやっておられる民間企業の方にも加わっていただいて、そして非常勤の技術参与として採用して、やる、これは御指摘のとおりであります。私どもとしては、また計画をつくる段階において、これまで蓄積した経験、知見、こういうものをもとにした助言がやはり必要であるということであります。
宇宙開発戦略本部の意思決定の過程には関与していないわけであります、助言をいただいているということでありますから、特にそれをもって問題があるというふうに考えておりません。
ただ、曲がりなりにも非常勤の国家公務員という形でございますから、当然職務上の情報を漏らしてはならない、こういうことは入ってくるわけでございます。
これによって、私どもが、いわゆる官と民との癒着が生まれるとかそういう次元の問題ではなくて、我々としては、本格的な宇宙産業の振興を図る上で非常に重要な知見が必要であるということで、技術参与という形でお願いをしておる、こういう状況でございます。御指摘のような癒着等々、もちろんそういうことはなきように十分注意しなきゃいけないことは当然でありますが、それ以上に、宇宙産業発展のために必要な方の知見をいただく、こういう視点、純粋にそういう思いでやっているということでございます。
○吉井委員 別に宇宙基本法がない時代からも、日本は、H2ロケットを開発し、打ち上げたりとか、やってきたわけですよ。ですから、では、なぜ今、宇宙基本法のもとで宇宙開発戦略本部がつくられて、その事務局に入っているのかということですね。
もともとこれらの企業というのは、同時に、防衛装備工業会とか、早期警戒衛星だとかキラー衛星だとかミサイルだとか、そういうものの研究開発もやっている企業なんですね。その企業が戦略本部の事務局に入るということの持っている意味は、やはりアメリカ型の軍産複合体への道につながっていく非常に危ない問題を持っていることは明らかだと思うんです。しかも、この技術参与の方は非常勤ということで、本務は会社での仕事なんですよ。これはだれが考えたっておかしいと私は思うんです。
それで、官房長官、私はさっき宇宙開発戦略本部の専門調査会のことをお話ししましたけれども、例えば松本紘先生らのマイクロウエーブを使った宇宙太陽光発電技術を進めていくということ、これは、平和利用の面でも、そして、エネルギーの伝送技術だけにとどまらないで、それを民生用に利用していくことになれば、日本の産業にとっても非常に大きなプラスになると思っているんですよ。
しかし、それを進めていくには、もともと、日本の宇宙開発利用は平和目的に限るという国会決議があったわけですね。その国会決議をなきものにするために宇宙基本法をつくったわけですが、やはりこの松本先生らの平和利用の宇宙研究開発を進めるためには、国会決議に立ってこそ、マイクロウエーブがキラー衛星などに使われるという軍事利用の心配もない、そして、研究に機密保護という制約もかからない、国際的にも信頼される宇宙研究開発利用の道が開かれてくると思うんです。
こういう点では、宇宙基本法を改定して安全保障条項を削除する、純粋に日本の宇宙研究開発は平和利用目的に限る、こういうふうに変えるべきだと思いますが、官房長官の考えを伺います。
○河村国務大臣 宇宙基本法においては、「日本国憲法の平和主義の理念にのっとり」と、特に専守防衛の範囲内において安全保障分野における「宇宙開発利用を推進するため、必要な施策を講ずる」、こうなっておるわけでございます。
したがって、専守防衛を旨とする我が国、この基本原則がございますから、当然、情報収集機能を強化していく、こういう視点も必要になってくる、飛耳長目といいますか、逆に情報をしっかりとらなきゃいかぬという問題もございます。また、いかなる国家の領域にも属さず、地上の地形等の条件の制約も受けない宇宙空間の利用は重要である、こう考えておるわけでございまして、そういう視点からも、宇宙基本法における安全保障に係る条項を削除するということは、法の精神からしても、そういう考え方に立っておりますので、条項を削除することは考えておりません。
○吉井委員 日本の憲法の話をされましたけれども、もともと宇宙基本法がなくても、日本は国際的に、宇宙物理の世界でも、また宇宙技術の民生利用の点でも非常に大きな国際貢献をしてきました。ですから、この安保条項を除いて何の支障もないし、逆に国際的な信頼をかち得て進めることができる、このことを申し上げまして、私の質問を終わります。
○渡辺委員長 次に、重野安正君。
○重野委員 社会民主党の重野安正です。
まず、与謝野大臣にお尋ねいたします。
大臣は、一昨日の記者会見におきまして、現在の景気の状況について、最悪の時期を脱したとの安堵感があると述べておられます。
まず、何をもって最悪期を脱したと言えるのか、その点についてお尋ねいたします。
○与謝野国務大臣 まず、二十日に公表された一―三月期のGDPの統計では、輸出が引き続き大幅に減少する中で、国内民間需要も大幅な減少となっております。これは、景気の急速な悪化が続いており、厳しい状況にあったことを示しております。この一―三月を年率にしますと一五%以上のマイナス成長であって、これは、輸出が落ち込んだと同時に、輸出関連の設備投資、一部の個人消費が落ち込んだということを示しております。
しかしながら、その後も厳しい状況は続いておりますけれども、先行きに関する指標、輸出、生産などの一部の経済指標には、下げどまりあるいは若干の改善を示すかに見えるものが出てまいりました。こうした動きが広がっていくことを期待しておりますけれども、一方、まだまだ生産活動が極めて低い水準にございますから、雇用情勢の悪化が続くことも懸念されておりまして、加えて、世界経済の下振れ懸念などのリスクにも留意する必要があると認識をしております。
景気の先行きに対しては、悲観もせず、楽観もせず、きちんと対応してまいりたいと考えております。
○重野委員 注目すべき点は、確かに輸出や鉱工業指数というのは下げどまりの傾向、しかし、雇用については、過去に経験のないスピードで悪化しているという認識を持ちます。
総務省の調査によりますと、昨年十月の完全失業率、三・八%であったんですが、わずか半年で一ポイント悪化しました。三月には四・八%となっています。前回の景気後退局面、二〇〇二年六月に五・五%の失業率を記録したのでありますが、その一ポイント悪化するに要した時間は三年半かかっているんですね。今回のような急激な失業率の上昇というのは過去に経験がないのではないか、このように思います。
そこで、急激な雇用情勢の悪化についての大臣の認識と、そして今後の見通しについてお聞かせください。
○与謝野国務大臣 先生御指摘のように、失業率も今は四・八%、三月の数字ですし、また有効求人倍率も落ちておりまして、三月で〇・五二倍、両方ともの数字が悪くなっております。
実は、今回の補正予算を出すきっかけとなりましたのは、何といっても昨年の十―十二月の日本の経済の状況、これは年率にするとマイナス一二・一になる、こういうことがわかって、急いで経済対策をやろうということになったわけでございます。
この中には、雇用対策も幾つもの項目にもわたって予算措置がなされておりますが、まず、失業という形で会社から外に出されてしまうような人をなるべく防ごうということで、雇用調整助成金を使って雇用を会社内部にとどめていただくということをいたしましたし、また、残念ながら職を失った方には、再訓練の機会をつくって雇用機会を生かせるような、そういう予算も非常にたくさんつくりました。したがいまして、雇用調整助成金は六千十二億、緊急人材育成・就職支援事業七千億、緊急雇用創出事業三千億、合わせまして、雇用だけでも一兆六千億の予算を用意したわけでございます。
これは、失業というのは世の中で起きます悲劇の中で最も大きな悲劇の一つであると思っておりまして、働く方々は妻を養い子を養いという立場の方が非常に多いわけですから、やはり失業の数、これをなるべく低く抑えるということで、過去最悪の失業率というのは二〇〇二年の五・五%でございますから、絶対ここまでは行かせないという決意を持ってこれから経済財政を運営してまいりたい、そのように考えております。
○重野委員 やはり、今日の雇用情勢を導き出した遠因は、私は、明らかに小泉内閣以降の規制緩和、労働法制の規制を緩和していったという流れの中で必然的にこういう状況に到達したと言って間違いないと思うんですね。
今大臣もいろいろな策を講じておると言いましたけれども、雇用のあり方、雇用の形態そのものにメスが入る、そういう方策は全然出されていない。その場その場で若干緩和していく、瞬間的に、熱冷ましみたいなものですね。それではこの国のこういう流れというのは私はとまらないだろう。経営者が簡単に従業員に手をつけるという、かつてこの国では考えられなかったんですね。そのものを本当にこの十年間でぶち壊した。そこのところから出発してこの問題を考えていかないと、私は、毎年毎年そういう対策を講じていかなきゃならぬ、こういうことの繰り返しになっていくんじゃないかと思うんですね。
そのうちに、私は、労働者の質も低下していくと思いますね。やはり労働者がそこで安心して働けるという環境の中において磨かれるんですね。日本の労働者というのは勤勉な労働者なんだというふうに言われる。その言葉に象徴されるような本当に日本人の持つ能力をどんどんそいでいっている、そういう、労働法制というものを私は本気で考えないといけないと思うんです。我々も労働者派遣法の問題についても今いろいろな対案を考えて議論しておるんですが、その点がやはり僕は根本的な問題だろうと思うんですね。
この急激な雇用の悪化というのは、これは、ここに来るのにこれだけの時間がかかっている、今起こっている状況というのはあっという間にここまで来た、これが象徴的なんですね。これをどうするかということは本当に私は最も大事なテーマだと思うんですが、再度、それについて。
○与謝野国務大臣 今、官邸で、安心社会実現会議という会議が開かれております。ここではいろいろな問題が議論されておりますが、先生が今お述べになりましたような議論も当然ございまして、日本の社会が持っていた最大の社会保障政策は何か、これは終身雇用だったんじゃないだろうか、こういう議論でございます。
そこで、終身雇用の制度が崩れた弊害というのは幾つもあるということも指摘をされておりますし、間もなくこの会議が報告書を出しますが、この報告書の基本的なトーンは、やはり、働く方々あるいは若い方々、すべてを通じて一定の安心感というものを持たないと社会全体としても活力が出てこない。ですから、安心あっての活力、また一方では活力あっての安心、こういう両面から、麻生総理のもとで、格差是正の問題を含めてきちんとした提言をいたしたい、そのように思っております。
この十年間、日本は、バブルも崩壊いたしましたし、グローバライゼーションという名のもとにいろいろな規制緩和がなされ、結局はその間、例えばこの十年間、労働分配率は上がらなかった、また、どちらかといえば会社の内部留保がふえた、それから所得税の持っている所得再分配機能も落ちてきた。我々、そういう問題はそれぞれ自覚をしておりますので、こういう問題はやはり是正をしていかなければならないと思っております。
○重野委員 今、大臣の答弁、その方向というものについては私もそうだろうと思うんですが、問題はそれを実行することであります。単に文字で終わるのでなくて、本気でやはり実行していくというその決意をぜひ持って取り組んでいただきたいと思うんです。
関連をしまして、私は、やはり、この国の経済が非常に偏ったというか外需依存型の経済に落ちてしまった、ここをどうするかということが最大のテーマだろうと思うんですが、そのことは必ず雇用の問題に連動してくる問題なんですね。外需に依存するということは、この国の労働力、パワーをそいでいったんですよ、結果として。それが先ほど来言っている数字に出ているわけで、やはりそういうふうな、内需をもっともっと拡大していく、力をいま一度取り返していくという大きな枠の中で取り組んでいかなければいけない、ぜひその点はやっていただきたいと思うんですが、決意を聞きたいと思います。
○与謝野国務大臣 安心社会実現会議と同じテーマを実は経済財政諮問会議でもやっておりまして、ただの提言に終わらせないように、実行を伴うものにいたしたいと思っております。
それから、外需依存というのは、日本だけではなく、やはり、例えばヨーロッパですとドイツとか、あるいは東南アジアの諸国とか、外需に依存して繁栄してきた国があります。日本の経済も外需なしには成り立たないと私は思っておりますけれども、それでも今の依存度では長期的にはいけない、やはり徐々には内需の部分を経済の中で大きくしていくというのは、我々に課せられた、これはもう党派を超えた大きな課題である、私はそのように思っております。
○重野委員 では、次に、消費税増税を明記した中期プログラム、この扱いは今後どうなるんでしょうか。
○与謝野国務大臣 中期プログラムは、税法の附則という形で法律になっております。この改定をどうするのか、方向性の見直しを考えているのかどうか、そういう御質問でございますけれども、中期プログラムにつきましては、持続可能な社会保障構築とその安定財源確保という目的のもとで、必要な見直しをすることになると考えております。
その具体的な内容については、例えば、中長期的に講ずべき社会保障の機能強化と対策で講じた社会保障関連措置との関係などの論点もございますけれども、いずれにいたしましても、先ほど申し上げました安心社会実現会議や経済財政諮問会議においても御議論をいただいておりますところであり、引き続き検討を進めてまいりたいと思いますけれども、この中期プログラムに述べているように、仮に将来消費税を国会でお認めいただけるということになっても、その財源の使い方は、やはり年金、医療、介護、少子化、この思想は変わっておりません。
○重野委員 今、最後に消費税という言葉が出ましたけれども、これは我々としては、はい、そうですかと言われるものではありませんので、その点ははっきりしておきたいと思うんです。
大臣、以上でいいですから、どうぞ御退席ください。
次に、文科省関係を聞いておきたいと思うんですが、総合科学技術会議、これに関して、これは文教委員会でも質疑が行われていると思うんですが、世界最先端研究支援強化プログラムというのがありますが、内閣府に設置されております総合科学技術会議、これを拡充した有識者会議で研究者と研究課題を設定し、研究成果を評価するというふうになっています。
そこで、具体的な研究課題はどういったものを想定しているのか。あるいは、もう一つは、実用化にすぐには適さない、そういう研究があると思うんですが、そういう研究というのはどんどん落とされていくんじゃないかという懸念を私は持ちますが、その点については一体どうなるのか。この二点聞きます。
○藤田政府参考人 先生お話のございました世界最先端研究支援強化プログラムにおきましては、研究者重視の、これまでと異なる新しい研究システムのもとで、基礎研究から出口を見据えた研究開発まで、幅広い、先端的な科学技術分野の中から、三年ないし五年で世界をリードする研究成果を上げ得る課題を選定するというふうなことといたしております。
具体的な研究課題につきましては、今後、学界、産業界等から意見をいろいろ聴取する、それから公募によって広く課題を募る、そういったことをした上で、総合科学技術会議のもとで外部有識者も交えて設ける会議の場で検討、決定をされていくということになっております。現時点でこの技術を採用するんだとか採択するんだとかというふうなことを申し上げられる段階ではないということを御理解いただければと思います。
しかしながら、例えばということでございますけれども、これまで総合科学技術会議が中心になってまとめてまいりました、他の、他国の追随を許さない世界トップレベルの技術でございます革新的技術戦略、この中には例えば再生医療技術のような技術など含まれております。それからまた、低炭素社会実現に不可欠な環境エネルギー技術革新計画、この中には太陽光発電だとか燃料電池なども含まれているわけでございますが、そういった、これまで総合科学技術会議が重要だというふうに選定をしたさまざまな技術を踏まえまして、そういった分野、課題等が候補としてまずは想定されるのではないかというふうに思っているところでございます。
それから……
○渡辺委員長 簡便に願います。
○藤田政府参考人 はい。
委員御指摘の、特に基礎研究でございますけれども、今申し上げましたような出口志向の研究はもちろん重要ではございますけれども、それ以外に、科学技術の限界突破を目指すような基礎研究につきましても、国民に夢と希望を与えるとともに、人材の育成という観点、それからまたさまざまな分野への波及効果も期待されるというふうなことから、このプログラムにおいて、これらも課題の候補として十分含まれ得るのではないかというふうに私ども思っておるところでございます。
○重野委員 以上で終わります。
○渡辺委員長 次に、田端正広君。
○田端委員 公明党の田端でございます。
官房長官には、大変お忙しいところ、ありがとうございます。
私は、きょうは新型インフルエンザ対策について集中してお伺いしたいと思いますが、私は大阪でありまして、関西はそういう意味では今大変な混乱状況といいますか、そういう事態になっている、そういう思いも込めまして質問させていただきたいと思います。
それで、考えてみましたら、五月の連休の始まるころに、渡航する人たちの間で心配があるということがありました。メキシコ、アメリカ等で患者が発生したということで、そういう中で海外にたくさんの方が行かれたわけであります。そして、ちょうど五月の連休が終わって帰ってくるその中に、八日でしたか九日でしたか、大阪の高校生四人がノースウエスト機二五便で帰ってきた、その中に感染した人がいたということで、一気に大きな話題になったわけであります。
そして、その後、一週間といいますか、五月の十五日、十六日あたりで神戸で感染した高校生が出た、そして大阪でも出たということで、関西で一気にこういう高校生、若い人たちの間での感染が判明しました。
しかし、なお問題だったのは、この関西で出た人たちの感染経路がはっきりしていないままで広がったということ、これが大変大きなことになりまして、学校の臨時休校というふうなことがずっと兵庫、大阪で行われる、こういう事態になりました。
そして、それから一週間足らずですが、二十一、二十二日、今度は首都圏に患者が出たということで、東京、神奈川、埼玉等、そういった事態に今なってきたわけであります。考えてみたら、ここ半月ほどの間なんですね。それがこういう形で大変大きな事態になっている。
これはまず、実態がどうなっているのか、ちょっと確認させていただきたい。けさのニュースだと、日本で二百九十四名とかというふうな数字が出ていましたが、何県何県で何人何人、トータル何ぼ。そして、例えば大阪、兵庫では小中高、今休校になっていると思いますが、そういった措置はほかにもあるのかどうか。その辺の実態をまず、これは厚労省になるんでしょうか、文科省とあわせて御報告いただきたいと思います。
○中尾政府参考人 お答えいたします。
我が国におきましては、本日、朝九時の時点の集計では、空港での検疫で感染が確認された方が五名、それから国内発生をした方が二百八十九名、合わせまして二百九十四名の方がインフルエンザの患者という形で確認をされております。
内訳を申しますと、兵庫県五十二名、神戸市八十九名、尼崎市十名、姫路市一名、大阪府九十九名、大阪市十六名、高槻市十六名、それから滋賀の大津市が一名、八王子市一名、川崎市一名、東京の大田区一名、京都市一名、埼玉県一名というようなことでございます。
それから、現在の対応状況でございますけれども、大阪府それから神戸市の全域におきましては、中学、高校をまず一週間、休校措置をとるということと、それから、兵庫、大阪の実際に患者が濃厚に動きがあった地域というあたりにつきましては、小学校も含めて休校措置をとっておるというような対応状況になっております。それから、滋賀県につきましても休校措置がとられております。
現在の状況は以上でございます。
○田端委員 今も二百九十四名ということでございました。これは、わずかまだ半月なんですね。半月でこういう事態になっているわけでありまして、では来週、この一週間でどうなるかということも全く予測はつきませんが、しかし、この勢いというものはやはりとまらないかなという感じがいたすわけであります。
それで、例えば大阪や神戸はどうなっているかというと、神戸の三宮の地下街「さんちか」は、非常にふだんはにぎわっているところが本当に人通りが少ない。大阪の道頓堀、食い倒れと言われていながら、食い倒れどころか人が少ない。外食産業といいますか飲食店が大変な状況になっている。こういうふうに、町全体の活気まで失ってしまっている状況があるわけであります。
正直言って、大阪や神戸にいて、マスクをかけていない人の方が少ないんじゃないかというぐらいのことで、特に神戸の場合はマスクをかけている人ばかりという、ちょっと光景からしたら非常に異様なぐらいの、今、これが国民生活の中に大変大きな、ショッキングな事態に私はなっているんじゃないか。これがもし長期化した場合には、経済的影響とかいろいろな社会生活に対する影響とか、これは大変なことになります。
そういった意味で、官房長官、大変御努力いただいて、胸を痛めていただいていると思いますが、今後どうするかということでございます。
それで、けさ、政府の方で新型インフルエンザの対策本部会議が行われたということを聞いておりますが、一週間たって、大阪、神戸の状況を見ていろいろなことを御判断されたようでありまして、今回のウイルスの特徴を踏まえて、国民生活や経済への影響を最小限に抑えていこうということ、一点がそういうことですね。
もう一点が、基礎疾患といいますか、つまり糖尿病とかぜんそくとかそういった、もし罹患した場合、重篤化するかもしれないという患者さん、そういう方と少し分けてといいますか、そういう患者さんに対しての一層きちっと守っていくという目標と、そして一般外来、そちらとの対策のセパレーツを少し考える、そういう趣旨のことをお決めになったようであります。
そういう意味では、最初、一週間前に出された対処方針と、きょう出されたのは少し変更されたのではないか。そして、実態といいますか実情といいますか、それに合うように柔軟な方針を出されたように伺っておりますが、長官、余りにも慎重になり過ぎて国民生活が大変なことになるという、そこのところとのバランス、物すごい難しいと思いますが、その辺のところについて、きょうお決めになったところの基本的なお考えを確認させていただきたいと思います。
○河村国務大臣 今回の新型インフルエンザの問題は、国家の危機管理上の重要な事態である、このような認識に立ってスタートをいたしたところでございます。
今後、これからのあり方も含めてでございますが、国内に感染が拡大していく事態もまだ想定をしていかなきゃいかぬ、こういう事態もございます。地域における感染の状況に応じた国内対策をやっていくということ、その必要性は、今回のこの一週間余りの発生状況を見、特に大阪、神戸、このいろいろな経験、こういうものを通して、これからのあり方をこうすべきであろうということで、きょう対策本部は四回目の会合をやりまして、基本的対処方針を改定したわけでございます。
今、田端先生御指摘の点がすべてでございますけれども、特に今回の対処方針では、この新型インフルエンザが、感染力は確かに高い、しかし、多くの方が軽症のまま回復している。いわゆる抗インフルエンザウイルス薬、タミフルとかリレンザ、これが有効であるということで、季節性の、いわゆる一般に言っているインフルエンザと類似する点が非常に多いということであります。一方では、海外からは、基礎疾患、糖尿病やぜんそく、こういう慢性疾患を持っている人については重症化した例が、また死亡者の例も報告をされております。
こうした特徴がございますので、田端先生今御指摘ありましたように、国民生活や経済への影響を最小限に抑えることも勘案しながら、学校等の臨時休業の要請など感染防止策、あるいは医療の確保等、これは地域の実情に応じた柔軟な対応をとっていく必要があるというふうに、きょう方向づけをしたところでございます。
これまでのいわゆる行動方針、出した最初の行動方針というものが、まさに鳥インフルエンザ、強毒といいますか、死亡率の非常に高いものを前提としたものをまず先につくり上げておりました。それが行き過ぎると、大阪、神戸においても混乱がある、あるいは都市機能にも問題が起きるというような状況が報告をされましたので、そういうものを受けて、きょう、新しい、改定をした対処方針を今申し上げたような形で出したわけでございます。
今後とも、国民の皆さんに対しては正しい情報を迅速に提供しながら、もちろん冷静な対応もお願いをしながら、新型インフルエンザの対策、これに万全を期していきたい、このように考えておるところでございます。
○田端委員 ありがとうございます。
国民の健康を守るということについては万全の体制をしいていただきたいと思いますし、そして、今回のこれは、長期的な危機管理体制、長期的になるという腹を決めて、そしてお取り組みいただきたいな、私はこう思うわけであります。
ちなみに、例えば、五月の十六、十七で大阪で高校生が感染したということが確認された、そしてどういうことになったかといいますと、十八日に発熱相談電話に相談した件数が、十八日一日だけで七千五十四件なんですね。これは大阪府庁から始まって市町村の保健所等でやっていますが、二十一カ所で受け付けているんですけれども、七千件なんですね、一日で。というぐらい、国民といいますか、府民は大変なショックと、そしてどうしたらいいんだろうという思いと、また、ちょっと体調が悪いのは、これはそうじゃないかとか、いろいろなことがあったんだろうと思いますが、そういう意味ではもう大混乱です。
府の職員なんかは、二十人が泊まり込んで、二十四時間、夜中も対応したということでありまして、私は、井戸兵庫県知事、大阪の橋下知事以下、今、皆さん本当に必死になって取り組まれているという意味では、本当に心から感謝したい、こう思っているわけであります。
それで、例えば相談窓口をそういう形で充実してやって二十四時間頑張っていただく、こういったことに対して、そしてまた、発熱外来と、それから今後、一般の診療所で受け付けていただくことのすみ分けといいますか、そして自宅で療養していただく、この新型インフルエンザに対しても、血圧とか糖尿病とかぜんそくとか、そういう方とは分けてしていく、こういう体制づくりをもう少しきちっとしないと、こういうふうに一カ所にばっと相談が行って、わっとこういうふうなパニック状況になるのではないかということを心配するわけであります。
ぜひこの辺のところをもう一度政府としてもしっかりとお取り組みいただいて、国民に変な不安感をあおるようなことにならないように、そして冷静に国民にも取り組んでいただけるような、そういう体制が必要かと思いますので、再度、官房長官にその辺のところを確認させていただきたいと思います。
○河村国務大臣 確かに御指摘のとおりでございまして、発熱外来だけではもう対応し切れない、指定病院だけでは無理だ、こういうお話もございました。そこで、一般病院についても、重篤な患者を出さないという大前提もございますから、まさにぜんそくを持っているとか糖尿病を持っておられる方等に感染しないような措置を十分とっていただきながら一般病院も対応できるようにするとか、こういうことの規制も緩和をしながら、現場に応じた対応をお願いしておるわけでございます。
できるだけ感染が広がらないように、そして同時に重篤な患者を出さないように、この二点に立って、あとは国民の利便性、このバランスをとりながら対応していく、これが大事だと考えておりますので、地方自治体との連携をしっかりとりながら、現場でのそうした機敏な、また柔軟な対応をお願いしておるような状況でございます。
○田端委員 それで、治療薬といいますかワクチンですけれども、今官房長官からお話がございましたように、非常にワクチンも有効ということでございますが、タミフルとかリレンザですね、タミフルは三千四百万人分を備蓄しているということであり、リレンザについては三百二十七万人分を備蓄しているというふうに伺っておりますが、これで十分なのかどうかは我々わかりませんけれども、ぜひ十分な備えをしていただいて、よろしくお願いしたいということと同時に、新型に対するワクチンの新たな開発製造、これを急ぐ必要もある、こう思います。
そういった意味で、政府としてこれからどういうふうにお取り組みになるのか、また、足らなければ海外から調達もしなければならないだろうし、逆に、近隣の国に対して日本としてまた応援する、そういうことも将来起こってくるかもわかりませんが、このワクチンに対する対応を今どういうふうにお考えになっているのか、政府の方でお示し願いたいと思います。
○中尾政府参考人 ワクチンの取り扱いについてお答えをいたします。
政府といたしましては、新型インフルエンザの重篤性やWHOの提言等も勘案いたしまして、季節性インフルエンザワクチンの製造を中断して新型インフルエンザワクチンの製造に切りかえることの適否の判断を行うなど、必要な対策を実施していきたいと考えております。仮に季節性インフルエンザワクチンと新型インフルエンザワクチンの両方を製造するとした場合にどのような形で進めるかについて、現在、シミュレーションを行っているところでございます。
いずれにいたしましても、今後の事態も注視しながら、必要な対策について万全を期してまいりたいと考えております。
○田端委員 それで、この事態に備えてといいますか、今後の対応として、経済対策をどういうふうに打つか、あるいは、今起こっている混乱に対して財政的措置ができないか、こういったことも大変大事な問題であろうと思います。
例えば、修学旅行ですね。子供にとって青春時代の一大イベントであり、最大の思い出になるべき行事なんですね。これが今、中止、中止が相次いでおりまして、例えば大阪でも中学校八校とか百七十六校が延期になったり、兵庫でも百五十六校が延期になったり、まあこれはやむを得ない措置かと思いますし、逆に言うと、今、関東、例えば東京の人が関西への修学旅行、これが中止になっていたり、いろいろなことが起こっています。
それで、旅行会社とかあるいは運輸関係者等々事業者、いろいろなところにこれが影響している。それから、学校が臨時休校になったために給食業者とかそういう関係のところが大変なことになっているとか、いろいろな社会現象、経済混乱が起こっています。
これらに対してどう対応するか。特にキャンセルした場合には、修学旅行の場合に、学校側といいますか父兄の側にも負担がかかる、そしてホテルとかそういう事業者の方にも負担がかかる。こういうことではどう財政措置等が可能なのか。
それで、例えば今回の補正の中に地域活性化・経済危機対策臨時交付金というのがございます。それを使ってもいいんだみたいなお話もありますけれども、これは何のためにやったかというと、景気の、地域の経済の活性化のためにつけたのであって、こんなインフルエンザ対策のためにやったわけではないわけでありますが、仮にこれで一時対応するとしても、インフルエンザによるそういう混乱に対してきちっとした措置をするということが大事かと思います。
例えば、民間には直接できなければ金融面で何か配慮してあげるとか、こういったこともあろうかと思いますが、修学旅行一つを取り上げてでもいろいろなことが考えられますけれども、この点については文科省の方ではどういうふうにお考えになっているんでしょうか。
○徳久政府参考人 お答え申し上げます。
修学旅行の中止または延期に伴いまして発生いたしましたキャンセル料についてでございますけれども、基本的には契約に基づいて取り扱われるべきものであると承知しておりまして、その場合、今委員御指摘のように、学校とか保護者の負担となるケースも想定されるところでございます。
しかしながら、今回の新型インフルエンザの発生による修学旅行の中止など特殊な事情の場合には、各自治体において負担を学校や保護者に帰すべきでないと判断して、自治体がキャンセル料を負担することもあり得ると考えているところでございます。
その場合、キャンセル料を負担した自治体に対する当面の対応策といたしましては、現在、今委員御指摘のように、平成二十一年度補正予算案に計上されております地域活性化・経済危機対策臨時交付金を活用して、新型インフルエンザ対策に関する事業の一項目として修学旅行の中止に伴うキャンセル料を盛り込むことが考えられるところでございます。
こうした方法が考えられますことにつきまして、文部科学省といたしましても、各教育委員会の教育長が集まる会議等を利用して広く周知してまいりたいと考えております。
また、今の臨時交付金の活用による支援以外につきましては、引き続き地方自治体の状況を見つつ、さらなる対応が必要な場合には関係省庁と相談してまいりたいと考えてございます。
○田端委員 もう少し詳しく申し上げますが、例えば保育園とか幼稚園、これが休園になって一番困っているのはお母さんです。特に働きに出ているお母さんにすれば、保育園があるから働きに行けるわけでありますが、それがなくなってということになって今大変な混乱に陥っているようであります。だから、お互いに仲間同士で、月曜日は私が面倒を見ます、火曜日は私がやります、そういう、お互いに話し合って民間で、当番制でというふうなこともやっているようでありまして、そういうことも起こっている。
それから、例えば介護施設で、介護施設が要するに休業ということになった場合に、そこにかかっている関係者の要介護のお年寄りの方は大変なことになり、その家族がまたそういった意味で大変なことになっている。
こういうことで、そういうこともぜひあわせてお考えいただいて、こういった事態に対してもぜひ温かい配慮ということをお考えいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○北村政府参考人 お答え申し上げます。
保育施設は小さな乳幼児を集団で保育しているところでございます。地域での感染の拡大を防止することは非常に重要でございまして、新型インフルエンザが発生した場合には、感染の拡大を防止するために、保育園につきましては臨時休業の要請等が定められているところでございます。
厚生労働省といたしましては、臨時休業を行った場合に、企業に対しまして、事業主において育児休暇あるいは短時間勤務、在宅勤務を認めるなどの配慮を行っていただきますよう、日本経団連などの全国規模の事業者団体に要請したところでございますし、また都道府県等自治体に対しましても、この要請文の趣旨を送付いたしまして、地域における事業者団体への要請について既に依頼しているところでございます。
今後とも、自治体、企業を初め、関係の方々の御理解、御協力をいただきながら、社会全体として国民の生命と健康を守るという観点から、感染拡大の防止に向け、適切な対応に努めてまいりたいというふうに考えております。
○田端委員 細部に至るまで気配りをしていただいて、対応をぜひよろしくお願いしたいと思います。
それで、官房長官、これは今後どうなるかということは我々ではわかりませんが、行動計画とかガイドラインとか、きょうの対処方針で少し変更されたということでありますから、今後そういった意味で現実的な対応に、余り過度になるということもどうかと思いますし、しかし、といって慎重さを欠くわけにもいきません。そこは非常に難しいことかと思いますけれども、体制を運用面で少し柔軟にやっていくということが必要ではないかという思いがしております。
そういった意味で、今後のお取り組みの基本的なお考えを最終的に伺い、そしてさらに、この問題は国民の皆さんの協力がなければ対応できないわけですから、ぜひ政府からの情報発信を冷静に、しかし、即国民の皆さんにわかるような形で示していただくということが一番大事かと思いますので、その辺のことも含めて、今後の冷静な、しかしこれ以上被害をできるだけふやさないという思いを長官の決意としていただきたい、こう思います。
○河村国務大臣 現在のところの発生状況が、先ほど来ありましたように、全体で二百九十四名。まだ数都道府県程度にとどまっておりますが、拡大の懸念もまだ捨て切るわけにいきません。そういう意味での国内対策は強化していく。基本的な国家危機管理上の観点をまず持たなきゃいかぬということが一点。
それから、ただし、今回のこの新型インフルエンザの病症例からいうと、季節性インフルエンザに非常に近い面がある。ただ、感染性は非常に高い。一方、基礎疾患のある方には重症化する傾向もある。こういうことも踏まえながら、強毒性の鳥インフルエンザ対策としてのこれまでの新型インフルエンザ対策行動計画は、そのまま適用するのではなくて、地域の実情に応じた柔軟な対応を図って、国民生活や経済への影響にも十分配慮する、この必要性もある。
しかし、さはさりながら、地域のいろいろな状況もございますから、本日の新しい、改定をした基本的対処方針に基づいて、またあわせて厚労大臣が発します運用指針を踏まえて、冷静に、警戒を怠ることなく対応をやっていただく。そのことは、政府としては、政府には司令塔がございますが、やはり地域、自治体との連携をしっかり持って、国民の安心、安全といいますか、それの確保に努める、こういう考え方でやってまいりたい、そういうふうに考えておるところでございます。
○田端委員 本当に国民の命と健康そのものにかかわる問題でありますので、全力を尽くして、政府を挙げて今後ともお取り組みいただくよう、そしてまた、過度なそういう混乱に陥らないようにぜひ御配慮をお願いして、質問を終わりたいと思います。
ありがとうございました。
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○渡辺委員長 次に、内閣提出、公文書等の管理に関する法律案を議題といたします。
趣旨の説明を聴取いたします。小渕国務大臣。
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公文書等の管理に関する法律案
〔本号末尾に掲載〕
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○小渕国務大臣 公文書等の管理に関する法律案につきまして、その提案理由及び概要を御説明申し上げます。
国民の貴重な知的資源である公文書を適切に管理し、後世に伝えていくことは、国の重要な責務であります。
しかしながら、昨今、行政機関において不適切な文書管理事案が発生するなど、公文書管理の状況は、国民の国に対する信頼を失わせるものがあります。
国の重要な責務を果たし、不適切事案の再発を防止するためには、文書管理法制を確立することにより国民の期待にこたえ得る公文書管理システムを構築する必要があります。このため、この法律案を提出した次第です。
この法律案の概要は、統一的な、行政文書のライフサイクルを通じた管理ルールや歴史公文書等の保存及び利用のルールを規定するとともに、その適切な運用を図るため、公文書管理委員会の設置、内閣総理大臣による改善勧告などについて定めるものです。
何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
○渡辺委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
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○渡辺委員長 この際、御報告いたします。
昨年十一月十九日、調査局長に命じました国家公務員の再就職状況に関する予備的調査につきまして、昨二十一日、報告書が提出されましたので、御報告いたします。
なお、報告書につきましては、同日、私から議長に対し、その写しを提出いたしました。
次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午前十一時四十分散会