衆議院

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第15号 平成21年6月24日(水曜日)

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平成二十一年六月二十四日(水曜日)

    午前十時一分開議

 出席委員

   委員長 渡辺 具能君

   理事 加藤 勝信君 理事 渡海紀三朗君

   理事 西村 明宏君 理事 平井たくや君

   理事 平田 耕一君 理事 泉  健太君

   理事 大畠 章宏君 理事 田端 正広君

      あかま二郎君    安次富 修君

      猪口 邦子君    宇野  治君

      大高 松男君    大塚  拓君

      河本 三郎君    佐藤  錬君

      鈴木 馨祐君    土井 真樹君

      長島 忠美君    並木 正芳君

      橋本  岳君    平口  洋君

      松浪 健太君    村田 吉隆君

      矢野 隆司君    石川 知裕君

      市村浩一郎君    逢坂 誠二君

      北神 圭朗君    楠田 大蔵君

      佐々木隆博君    園田 康博君

      田名部匡代君    西村智奈美君

      平岡 秀夫君    山田 正彦君

      笠  浩史君    池坊 保子君

      高木美智代君    吉井 英勝君

      重野 安正君

    …………………………………

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 佐藤  勉君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     河村 建夫君

   国務大臣

   (科学技術政策担当)   野田 聖子君

   国務大臣

   (男女共同参画担当)   小渕 優子君

   内閣府副大臣       宮澤 洋一君

   内閣府大臣政務官     宇野  治君

   内閣府大臣政務官     並木 正芳君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 西川 正郎君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   藤田 明博君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   松田 敏明君

   政府参考人

   (内閣府男女共同参画局長)            板東久美子君

   政府参考人

   (宮内庁書陵部長)    本田 清隆君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  巽  高英君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    米田  壯君

   政府参考人

   (警察庁交通局長)    東川  一君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 新井 英男君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 團藤 丈士君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 甲斐 行夫君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           徳久 治彦君

   政府参考人

   (文化庁文化財部長)   高杉 重夫君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           岸田 修一君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           伊岐 典子君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    木倉 敬之君

   政府参考人

   (農林水産省総合食料局食糧部長)         奥原 正明君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           広瀬  輝君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           稲葉 一雄君

   内閣委員会専門員     島貫 孝敏君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月二十三日

 辞任         補欠選任

  山田 正彦君     枝野 幸男君

同日

 辞任         補欠選任

  枝野 幸男君     山田 正彦君

同月二十四日

 辞任         補欠選任

  赤澤 亮正君     矢野 隆司君

  上川 陽子君     猪口 邦子君

  木原 誠二君     鈴木 馨祐君

  篠田 陽介君     橋本  岳君

  馬渡 龍治君     安次富 修君

  市村浩一郎君     逢坂 誠二君

  吉良 州司君     石川 知裕君

  笠  浩史君     北神 圭朗君

同日

 辞任         補欠選任

  安次富 修君     馬渡 龍治君

  猪口 邦子君     徳田  毅君

  鈴木 馨祐君     土井 真樹君

  橋本  岳君     篠田 陽介君

  矢野 隆司君     赤澤 亮正君

  石川 知裕君     吉良 州司君

  逢坂 誠二君     園田 康博君

  北神 圭朗君     田名部匡代君

同日

 辞任         補欠選任

  土井 真樹君     平口  洋君

  園田 康博君     市村浩一郎君

  田名部匡代君     笠  浩史君

同日

 辞任         補欠選任

  平口  洋君     木原 誠二君

    ―――――――――――――

六月十五日

 憲法九条を守ることに関する請願(塩川鉄也君紹介)(第三二四五号)

 憲法の改悪反対、九条を守ることに関する請願(塩川鉄也君紹介)(第三二四六号)

 レッド・パージ犠牲者の名誉回復と国家賠償に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第三三三五号)

 同(石井郁子君紹介)(第三三三六号)

 同(笠井亮君紹介)(第三三三七号)

 同(穀田恵二君紹介)(第三三三八号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第三三三九号)

 同(志位和夫君紹介)(第三三四〇号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第三三四一号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第三三四二号)

 同(吉井英勝君紹介)(第三三四三号)

同月二十二日

 憲法第九条第二項のみを改正し、自衛権及び自衛隊の存在を明記することに関する請願(西村真悟君紹介)(第三四二九号)

 パチンコ店における出玉の換金行為を取り締まり、完全に違法化することに関する請願(西村真悟君紹介)(第三四三〇号)

 憲法九条を変えないことに関する請願(笠井亮君紹介)(第三五一〇号)

 憲法九条を守り、世界の平和に生かすことに関する請願(志位和夫君紹介)(第三五一一号)

 日本国憲法第九条を守ることに関する請願(笠井亮君紹介)(第三五一二号)

 同(辻元清美君紹介)(第三五六〇号)

 平和憲法の改悪反対に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第三五一三号)

 同(石井郁子君紹介)(第三五一四号)

 同(笠井亮君紹介)(第三五一五号)

 同(穀田恵二君紹介)(第三五一六号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第三五一七号)

 同(志位和夫君紹介)(第三五一八号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第三五一九号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第三五二〇号)

 同(吉井英勝君紹介)(第三五二一号)

 憲法九条改定に反対し、現行憲法第九条を守り、平和のために生かすことに関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第三五五七号)

 憲法九条を守ることに関する請願(志位和夫君紹介)(第三五五八号)

 憲法の改悪反対、九条を守ることに関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第三五五九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 内閣の重要政策に関する件

 栄典及び公式制度に関する件

 男女共同参画社会の形成の促進に関する件

 国民生活の安定及び向上に関する件

 警察に関する件


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     ――――◇―――――

渡辺委員長 これより会議を開きます。

 内閣の重要政策に関する件、栄典及び公式制度に関する件、男女共同参画社会の形成の促進に関する件、国民生活の安定及び向上に関する件及び警察に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房審議官西川正郎君、政策統括官藤田明博君、松田敏明君、男女共同参画局長板東久美子君、宮内庁書陵部長本田清隆君、警察庁生活安全局長巽高英君、刑事局長米田壯君、交通局長東川一君、総務省大臣官房審議官新井英男君、法務省大臣官房審議官團藤丈士君、甲斐行夫君、文部科学省大臣官房審議官徳久治彦君、文化庁文化財部長高杉重夫君、厚生労働省大臣官房審議官岸田修一君、伊岐典子君、社会・援護局障害保健福祉部長木倉敬之君、農林水産省総合食料局食糧部長奥原正明君、国土交通省大臣官房審議官広瀬輝君、稲葉一雄君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

渡辺委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

渡辺委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松浪健太君。

松浪(健太)委員 おはようございます。

 自由民主党の松浪健太でございます。民主党の健太ではございません。

 本日は久しぶりに一般質疑に立たせていただくわけでありますけれども、よく政府に対する逆風とかいうことが言われるわけでありますけれども、我々、地元におりますと、逆風というよりこれはもう爆風だなというふうなすさまじい圧力を、反発を国民の皆さんからいただいているというのが今の我々の現状ではないかな。政府もそのところは率直に謙虚に受けとめていただかなければいけないと思うわけであります。

 我が国の財政、非常に厳しいものがあります。そして、その厳しい状況の中で、我々は、未来の、我々の子供たち、孫たちのために借金を残してはいけないというのは当然でありますけれども、国民の皆さんの納得をいただいていくというのが私はこれから必要だろうと思います。

 先般、内閣府の方でも、骨太を策定するに当たりまして将来の消費税の試算というようなものも出されましたけれども、これについては、我が自由民主党の中でも、この時期にこうした、一二%というような試算を出すことが本当に国民のマインドのために必要だったのかどうかというようなことも取りざたされたわけであります。あるベテランの先生は、内閣府から説明が来ても資料も受け取らずに返したよというような、ベテランの、大蔵省に近い某先生がおっしゃっておりましたけれども、これを言うとまたあれですので。

 そうした中で、本日は副大臣に、消費税増税というものをこうやって将来展望を示されたわけでありますけれども、それに対する国民理解というものについては、副大臣、どのようにお考えでしょうか。

宮澤副大臣 消費税につきましては、基本的には財務省がどう考えるかというのは政府の中での話だろうと思いますが、今回税制改正の附則で、経済状況を好転させることを前提として、遅滞なく、かつ段階的に、消費税を含む税制改革、抜本改革を行うため、二〇一一年度までに必要な法制上の措置を講ずる、こういう形、法制上の措置を二〇一一年度までに講ずる、しかし上げるタイミングというのは、経済状況等々、まさにおっしゃったように国民的理解といった問題もあると思いますので、そこで考えていかなければいけないというようなことを決めさせていただいております。

 消費税につきましてはいろいろな議論がございます。今一二%といったお話がございましたが、残念ながら少し違った形で報道されておりますけれども、極めて機械的な計算をさせていただいて、いろいろなケースを算定させていただいておりますが、決してプラス七%ありきということで議論を進めているわけでは全くないということはまず御理解いただかなければいけないと思っております。

 そういう中で、では消費税を全く上げないで今後中期的にいけるかといいますと、やはり社会保障の今のレベルを続けている限り、消費税を上げないという選択肢をとった場合には、恐らくどちらかのこと、GDP比の債務残高が発散するということによって国債自体が消化できない、売れないというような事態が起こるのか、もしくは、社会保障というもののレベルをどういうふうに下げていくかという議論をしていかなければいけないということだろうと思います。

 一方で、消費税の国民的理解というのは、おっしゃるように大変難しい話でございます。今のような経済状況のときは特にそうでございますし、また、経済状況が好転しても、なかなか増税の議論というのは、世の中、嫌な話ですから、しにくい。そういう中でどういう形で国民的に御理解をいただくかということは、消費税そのものにつきましても、やはり、例えばいわゆる逆累進といったところ、低所得者にきつくなるといったところについてどのような手当てをするかという議論も当然していかなければいけませんし、そのような、かなり時間をかけた議論といったものが必要になるだろうというふうに考えております。

松浪(健太)委員 今副大臣がおっしゃったこと、まさに非の打ちどころのないものであろうと思います。

 しかしながら、経済状況が好転してからとか、こうした前置きというのはなかなか国民の皆さんに伝わりにくいものがあります。また、財政を均衡させるために平成何年まで、何年まで、何年までというシミュレーションも、極めて明確なものでありますけれども、これを国民の皆さんに心情的に御理解いただくというのは非常に難しいなというふうに私は地元を回っていて思うわけでございます。

 そうした中で、やはり、麻生内閣、ちょっと真正直なのじゃないかな。民主党さんはなかなか財源を示されないということでありますから、その財源について真っ正面から示していくという姿勢は、私はある意味では当然評価されると思いますけれども、それがなかなか今国民の皆さんの胸に届いていないんだろうなと思います。

 例えば、さまざま民主党さんがおっしゃるのは、年間二十兆円浮くんだというふうにおっしゃるわけですけれども、二十兆円以上の根拠がなかなか見当たらないというのも、それは言えていることであろうと思います。

 そうした中で、政府も、そういう、身を切る、コストカットをどうするんだ、無駄を省くんだということをわかりやすく示すことが必要であろうと思いますけれども、今、政府のコストカット、無駄を省くということについてのお考えについて、いただきたいなというふうに思います。

宮澤副大臣 私自身、昨年のちょうど六月からだったでしょうか、自民党の方で無駄撲滅プロジェクトチームというのを言い出した本人であり、取りまとめをずっとやってまいりました。また、内閣に入ってからも、内閣のその委員会の担当の副大臣をさせていただいておりまして、無駄というのが結構あるなと。

 無駄撲滅とつけたのはメタボにひっかけたわけですけれども、これまで、補助金等々わかりやすい無駄というのはかなり切ってまいりましたけれども、道路特定財源の話でわかったことは、わかりにくい無駄といいますか、脂身がはっきりしていない、赤身だと思った肉が、サシが入っていて、その脂を搾り出さなきゃいけない、こういう状況がよくわかりまして、メタボにひっかけてムダボチームということにしたわけですが、そういう努力は常にやっていかなければいけない。

 正直言って、終わりはないと思うんです。今ぴかぴかの政策も、三年、五年たったときには実は無駄になるかもしれない。そういう、常に行政改革であり、無駄の撲滅というのは終わりなき闘いというものを徹底的にやっていく。これはもう本当に我々政治家の使命だというふうに考えております。

松浪(健太)委員 ムダボの話はおっしゃるとおりなわけでありますけれども、これではやはり国民の皆さんに伝わりにくい。そしてまた、無駄を、サシから脂を出していると、やはり脂は全部取り切るわけにはいきませんから、いろいろな脂が出てくるわけで、搾り切ったと思っても、きゅっと、マッサージチェアとかそういうわかりやすい無駄が出てくる。これは最後の最後までというのは難しいかと思います。

 そこで、二十兆円ということを言われるのであれば、やはり我々も何兆円と、政府の方も明確な目標というものを示さないと、なかなか、目標がなくて、無駄をなくすんだ、無駄をなくすんだと、やはりダイエットをするにも何キロになろうと思わないと、やせるんだ、やせるんだ、やせるんだではなかなかダイエットというのは成功しないのではないかなというふうに思います。

 私も、かつて大臣の部下としてお隣の政務官室で仕事をさせていただいたときに、特に私は道州制の方に力を入れさせていただきました。道州制というのは非常にわかりやすい議論であります。そしてまた、今政府の目標とかが見えにくくなっている、また二大政党制の中で、野党の皆さんとの、特に民主党の皆さんとの違いというものがわかりにくくなっている中で、これはたまたま二十三日の、私の地元での産経新聞の記事なんですけれども、橋下知事、道州制で溝、民主を絶賛から酷評へという大きな記事が出たわけですね。これは、前から私も指摘をさせていただいているんですけれども、我々が示す国の形が違うわけであります。

 先日から橋下知事は、国の直轄負担金の件で自民党に対してはちょっと厳しい姿勢をお示しになっていたわけでありますけれども、事この地方分権のあり方については、我々は三層制を目指す。そして、民主党さんの将来像は二層制である、国と、そして三百の基礎自治体に、まさに我々の小選挙区に分けるという考え方でありまして、我々は地方に対してこれから地方分権で、地方独自で意思を示すというためには、三百の小さな自治体であれば国の方針にはやはり従わざるを得ないと思うんですね。

 また、我々が今取り組んでおります地方支分部局の問題、この地方支分部局を、二層制にする間にどういうふうに位置づけるのか。国から直で基礎自治体というのは、私はどう考えても、橋下知事のおっしゃるようにナンセンスな話だと思います。それであれば、やはり道州レベルの大きさに都道府県を再編して、財源、権限とともに人間、今二十二万人も地方支分部局に国家公務員がいるわけでありますから、大部分のその国家公務員のノウハウを都道府県、道州とくっつけていくというのがどう考えても理の通った話であります。

 真の地方分権には、我が国、世界二番目のGDP大国でありますから、道州にしても、すべてがヨーロッパの国々並みのGDPを誇るわけでありまして、そうした方が非常に効率的であろう、そしてまた地方を中心とした多様な政策を打てるようになるだろうというのが、これは私の確信であります。

 そうした中で、先ほど、消費税は機械的な計算とおっしゃいました。これも、ある意味機械的な計算でありますけれども、日本経団連の資料であります。昨年ですけれども、日本経団連では、道州制導入に伴って、広域化に伴う規模の経済性によって生じる人件費の削減額というのが約一兆四千億円、そしてまた域内で公共事業等の効率化によって四兆三千億円、計五兆八千億円の年間経費の削減が行われるという試算を出しているわけであります。

 これはあながち私は架空の数字とも、公共事業の効率化の部分については理想値がありますけれども、人件費等については効率化ということはかなりの部分達成できるのであろう。事実、我々は、平成の大合併によって、三千三百の市を、今千七百八十ですか、再編することによって年間一・八兆円を捻出したわけでありますから、この一・八兆円を捻出した我々が五兆円を捻出できないわけがなかろうというふうに思うわけであります。

 これはやはり、五兆円を削減いたしますから、国民の皆様、我々これだけの理想を達成するのに、これだけの目標を達成するのに消費税が何%足りません、このように政府は明確に出せば、ああ、政府は身を削って、それで足りない部分を我々にお願いしているんだと。これでこそまさに消費税に対する議論というのはわかりやすく進むのではないかというふうに私は思うわけでありますけれども、大臣の御感想をお願いいたします。

宮澤副大臣 先日まで松浪委員とは副大臣また政務官という立場で、道州制また地方分権の担当をさせていただいておりまして、そのときに、道州制は自分の政治家としてのライフワークであるという大変情熱に触れて、本当に尊敬をしていたところでございます。

 道州制につきましては、もう御承知のとおり、そういう方向で進むということで動き出しておりますけれども、正直言ってなかなかいろいろハードルが高いという中で、今おっしゃったような、行政的な無駄を省く等々ということでコスト的にも相当効率化が図れるということは確かだろうと思っております。

 ただ、今回の経団連のその試算につきまして、私も詳細を知っているわけではありませんけれども、例えば一次産業に対する配分をかなり減らす、逆に言えば、農業というこれから大事になる部分をどう考えるかといったようなところが少しいろいろ問題がある等々といった、幾つかの問題はあるんだろうと思います。また、都道府県をすぱっとやめて、それを道州と市町村に権限を分けるというまでまたどれだけ時間がかかるかということになると、なかなか難しい。

 ただ、おっしゃるように、道州制による、ある意味ではメリットでありまた財政的なプラスといったものを少し我々としても考えていかなければいけない。計算、なかなか難しいとは思いますが、機械的計算にしてもやってみる価値はあるなというふうに今承っておりました。

松浪(健太)委員 どれぐらいの時間がかかるかという話でありますけれども、我が国は廃藩置県を明治四年にやった国家でありますから、やはりここは果断にやらなければもはや我々の政府はなかなか国民の皆さんの御理解をこれから得ることは難しいんだろうなというふうに思います。

 副大臣、どうもありがとうございました。あれでしたら、もう結構です。

 それでは、前回、私、オートバイ等をめぐりましてさまざまな、新原付制度といいますか、運送車両法とそれから道交法の矛盾点について等を指摘させていただきました。特に、原付の二段階右折や三十キロ規制の、現状に合わない点、それからまた車検制度と高速道路の走行の全く整合性がとれていない点、また海外との、規制の、本当に貿易障壁になりかねない今の現状というものを、今後のビジョンを持って我々はもう一度、各法律、そして制度を見直すべきであるというような話をさせていただきました。

 その続きと言ってはなんなんですが、やはりある種のこれは規制緩和になるわけでありまして、この規制を緩和すると、やはりユーザーもふえる、それで死亡者がふえるということがあってはならないと私は思います。ですから、もしそのような制度を導入してくるのであれば、その前提として安全性の向上というのはまさに車の両輪であろうと私は思います。

 そこで、こうした議論を始める前に、まず警察庁に、オートバイに関する死亡事故の推移、そしてまた死亡事故の原因の内訳というようなものを伺いたいと思います。

東川政府参考人 二輪乗車中の死者数については、昭和四十五年が二千九百四十一人、それから平成二十年が九百九十人ということで、四十五年、この年が交通死亡事故が多い年でございましたけれども、それに比べると三分の一に減少しているということになります。これは、全体の交通事故死者数も三分の一に減少しているという事実がございます。

 それから、多分、先ほど損傷部位のことをおっしゃられたんだと思いますが、二輪車両乗車中の死者数というのは、平成二十年は九百九十人でございますが、損傷部位別の死者の比率は、頭、頭部、これが四百四十七人で全体の四五・二%、それから胸部が二百七十六人で二七・九%ということになっております。

 それから、どんな事故、類型別ということでありますけれども、すべての二輪車死亡事故の事故類型別というのは出ておりませんが、手元にある資料としては、二輪車が第一当事者となった事故というのがございます。それについて、平成二十年は六百六十八件この死亡事故が発生しておりますけれども、そのうち、事故類型別に、車両単独が二百六十件、それから車両相互が三百三十六件ということになっております。

 以上でございます。

松浪(健太)委員 ありがとうございました。

 事故については、やはり頭部が一番多く、その次に胸部だということでありますけれども、また、一番大きな頭部というもの、私先日説明を受けたんですけれども、頭部で、ヘルメットが、かぶっていないというのは論外なんですけれども、離脱をしてしまうということが往々にしてあるわけであります。

 この離脱というのは、私もオートバイに乗っていますと、普通、フルフェースでしっかり締めると離脱ということはまず考えられない。首がちょん切れても多分大丈夫じゃないかというぐらいしっかりくっつくわけでありまして、このあたりにまだ死亡事故を減らす余地はあるのではなかろうかというふうに私は思います。よく町で見かけます、若い子がおわんを首にひっかけてかぶっているような状況というのは、これは警察庁の方でも取り締まりをできるということでありますので、ひっかけていればかぶっていないというようなことがしっかりと言われるわけであります。

 しかしながら、今、あごひもといった点については、取り締まりについて、これで捕まえられるとやはりそれもちょっと行き過ぎかなというようなこともあるかもしれませんけれども、実はこれはルールとしては取り締まれるんだよというぐらいのことを浸透させていくということは私は大事なのではないかなというふうに思いますけれども、こうしたヘルメットの着用方法についての取り締まり、警察庁の姿勢というものを伺いたいと思います。

東川政府参考人 ヘルメットの着用義務については法律上明記されてございます。かぶるべきヘルメットの基準につきましても、道路交通法の施行規則で決められております。

 当然のことながら、正しい着用方法で装着していただく、かぶっていただくというのが前提となっている制度でありますので、あごひもを締めていないような者につきましても、それぞれ態様に応じまして取り締まりあるいは指導を現場で実施しているというふうに承知しております。

松浪(健太)委員 ヘルメット離脱ということについては今後より詳細な分析をお願いさせていただきたいと思います。

 また、先ほど局長からお話ありました、二番目の死亡原因であります胸の問題であります。

 レース場で事故が起こる場合、レースの死亡事故というのは胸で亡くなるということはないがために、いわゆる一般の店で売られておりますライディングギアはレース用を模してつくられておりますので、胸の部分のプロテクターはないわけであります。

 しかしながら、実際、胸で亡くなる方は二番目に多いわけでありまして、阿部典史さんという、日本の本当に有名なライダーの方が公道で亡くなるという痛ましい事故がありました。あれも、阿部選手は、事故が起きたときは歩いて救急車に乗った、しかしながら、その後に死亡してしまった。それぐらい、やはり胸に対する衝撃というのは、プロでも公道では避けられないというようなことがあろうかと思います。

 警察の白バイの皆さんは、最近はチェストのプロテクター、または講習などでも必ずつけるようにしているということを伺っているわけでありますけれども、これについてどういうことなのか、ちょっと伺いたいと思います。

東川政府参考人 白バイ隊員のプロテクターにつきましては、平成八年ごろから整備されているというふうに承知しておりますが、現在、ほとんどの白バイの乗務員はプロテクターをしております。

 それによって、いろいろな事故が大きくならない、交通事故になった場合の事故が軽減されているというふうなことがありますので、我々としても、引き続き、都道府県警察に対しては、それを着用するように指導していきたいというふうに考えております。

松浪(健太)委員 チェストプロテクターというものについての国民の、ユーザーの理解を深めるために、白バイでどうして平成八年ごろからプロテクターをつけるようになったのかという経緯、また、それをつけてからの効果というものは一体どのようなものがあるでしょうか。

東川政府参考人 その以前の白バイの殉職・受傷事故、これを分析していますと、胸腹部に致命的な傷害を負った者が多いというふうな分析でございました。それで、これらの部位を保護するためにプロテクターが効果があるのではないかということで、先ほど申し上げた平成八年ごろから整備して、現在はほとんどの者が着用しているという状況です。

 例えば、具体的な事例で申し上げますと、最近の事例でありますと、転倒後に白バイとともに道路を滑走して右足の骨折で約二カ月の傷害を負いましたけれども、胸腹部には損傷がなくて命が助かった、それから、車両と衝突して頭部に重篤な傷害を負いましたけれども、胸腹部には致命傷を負うことなく死亡には至らなかったという事例がございまして、ある意味ではそういう効果があるのではないかというふうに思っております。

松浪(健太)委員 それは、数値的なものは何かないんでしょうか。

東川政府参考人 数値的なものとしてはちょっととっておりませんので、今申し上げましたように、具体的事例に即して、この事例についてはその効果があったのではないかというようなとり方をしておりますので、なかったらどうなったとかそういう比較だろうと思いますけれども、それはございません。

松浪(健太)委員 例えば殉職者の数なんかが、そういった面で、胸部がやはりその前には多かったとか、それから、胸部については殉職者が出ていないとか、そういったことも結果として把握はしていらっしゃらないんでしょうか。

東川政府参考人 手元にある資料では従前のものと現在どうなっているかという比較はしておりませんが、後ろを翻って比較はできると思いますので、またよく検討していきたいというふうに思います。

松浪(健太)委員 ありがとうございました。

 それでは次に、国交省に伺います。

 先般からETCの対応で、大変、オートバイの方も五万台、車の方は百十五万台でありましたけれども、行われているわけでありますけれども、車と違いまして、オートバイ用のETCをつくっている会社は一社しかないということで、三月に頼んだものも七月とかそれぐらいになるというような現状があるわけであります。

 そうした中で、地域差で、こちらは三月に頼んだのに結局もうETCをつけられない、補助が受けられないという例と、それから、四月に頼んでいるけれどもこっちは余裕で間に合ったというような地域差が出ているわけでありますけれども、こうした現状についての、国交省、対応は何かございますでしょうか。

広瀬政府参考人 二輪車ETCに関しましての御質問でございます。

 二輪車のETC車載器助成につきましては三月から開始いたしました。現在、全国四十七都道府県におきまして約千六百店舗で実施しているところでございます。

 地域差が生じているのではないかという御指摘でございます。

 今回の助成につきまして、地域別に見た場合でございますが、まず、地域別の二輪車登録台数に占める助成件数の割合、これは各地域ともおおむね一から一・五%程度となっております。また、これを、いわゆる助成の前の二輪車のETCのセットアップ件数と比較いたしますと、今回の助成では、地方部におけるシェアが高まっているという状況になっております。

 ただ、御指摘のように、いずれにいたしましても、在庫不足で非常に御迷惑をおかけしているといったことは、これは事実は事実としてしっかりと受けとめてまいりたいというふうに考えております。

 ETC車載器の供給量によりまして地域間で助成利用者に極端な差が生じることがないよう、これまでも車載器メーカーに働きかけてまいりましたけれども、引き続き適切かつ柔軟な対応をお願いしてまいりたい、このように考えております。

松浪(健太)委員 ありがとうございました。

 時期によって余りに不公平感が出ないようにお願いをしたいというふうに思います。

 また、オートバイについては、保険の問題でありまして、若いライダーに対して非常に高い保険料がかかってしまう。三十万でバイクを買って、一年間の任意保険が、十八歳だったら十八万円かかったというような例もあるらしいんですけれども、非常に保険が高いから無保険が多くなるというような悪循環というものも見られるわけでありまして、保険について、やはり安全性との整合性もこれからもうちょっときめ細やかにやっていただきたい。

 つまり、保険においては、その相手の人間の損害によって保険がおりるわけであります。裁判所の決定の関係で、ノーヘルであってもフルフェースであっても、その結果に対してお金が支払われるということになっているわけでありますけれども、やはり、今後、こうした安全性がしっかりと担保されているという場合を何とかインセンティブをつけて優遇していただけるような措置があった方が私はいいのではないか。

 また、道交法においては、ヘルメットというものは乗車用ヘルメットという定義がなされているわけでありますけれども、経産省の規格ではPSC規格とかJIS規格とかいう規格があるわけでありまして、こうした規格はたしか消費生活用製品安全法か何かいう法律があるんですけれども、この法律と、それから道交法の乗車用ヘルメット、ここの整合性というものが必ずしも担保されていないわけでありまして、今後、こうしたものに対しての検討を、きょうは答弁は結構でありますので、検討をお願い申し上げまして、私の質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、楠田大蔵君。

楠田委員 おはようございます。民主党の楠田大蔵でございます。

 本日は、内閣委員会の一般質問におきまして、消費者行政について、また、時間が許せば科学技術関係の分野において質問をさせていただきたいと思います。

 まず、事故米穀についてでありますが、平成二十年九月に三笠フーズという会社が政府から工業用に用途を限定して買い受けた事故米穀を食用として不正に転売していたという事実が明らかになってから、はや九カ月がたったところであります。実は、その工場が、これは大阪の会社でありましたけれども、この九州工場が私の選挙区にあったという事情もありまして、この間も注目して見てきたところであります。

 まず、そもそもの話としまして、事故米穀の不正規流通についての原因や背景、またこの間の対処方法、そして最近の状況などをどのように分析されているか、大臣からまずお聞きしたいと思います。

野田国務大臣 事故米穀不正規流通問題につきましては、まず現場の窓口機関から本省等への報告を徹底すること、そして司令塔機能の所在を明確にした上で関係府省庁の情報を一元的に集約することの重要性を認識したところでございます。

 この問題につきましては、内閣府に、増原内閣府副大臣をヘッドとして、関係府省庁の担当官をメンバーとする対応検討チームを設置しました。九月二十二日に緊急対応策を取りまとめて、流通経路の全容解明、事故米穀等の回収、処分、迅速かつ一元的な情報提供等、消費者目線で政府一体となって取り組みを進めてまいりました。

 さらに、その後の対応としては、内閣府に設けた事故米穀の不正規流通問題に関する有識者会議における議論を踏まえながら、農林水産省などにおいて、米の流通、取引に関する検査体制の強化、法令違反の事業者に対する厳正な措置、不正取引を行う事業者に対する罰則強化の措置などに取り組んできたということで承知しております。

楠田委員 概要の話をしていただきました。

 先ほど述べられた有識者会議の中の結論に基づいて、特に農水省部内の罰といいますか、そういう措置もとられたとお聞きをしておりますが、この中で、先ほど少し触れられましたけれども、三笠フーズを初め合計四社ありました不正規流通業者に対してはどのように責任を迫り、また具体的にどのような対応をとらせたのかをもう少し詳しく教えていただきたいと思います。

奥原政府参考人 お答えいたします。

 国から事故米穀を買い受け、これを不正に転売した事業者であります三笠フーズ、株式会社浅井、太田産業、それから島田化学工業、以上の四社に対しましては、本年の二月の二十六日に契約書の違約金条項に基づきまして違約金の請求を行っております。違約金の納付期限、三月十七日でございましたけれども、この四社のうち島田化学工業、これは三月十七日付で全額の納付をいたしましたが、その他の三社につきましては納付がございませんでした。

 未納付の三社につきましては、三笠フーズとそれから浅井、これは既に破産手続に入っておりますので、破産手続の中で回収を進めてまいりたいと考えております。それから、もう一社、太田産業につきましては、違約金につきまして、現在、国の債権の管理等に関する法律に基づく督促を行っているところでございまして、引き続き回収に努めてまいりたいと考えております。

楠田委員 先ほど、責任をどのように迫ったというのはありましたけれども、どのような対応をとらせたのかという部分において、これは、いろいろ事前にお聞きしていますと、農水ではなくて、厚生労働省また内閣府の部分と聞いておりますが、これ以外に、回収、処分の問題等についてどのようにとらせたのか、ちょっとお答えいただけますか。

奥原政府参考人 あの事故米問題が発生をいたしましてから、政府の関係部局一体となりまして、いろいろほかの省庁に御協力をいただいて、流通ルートの解明、これに努めてまいりました。その過程で、都道府県の保健衛生部局等からは、事故米、販売したものについての回収命令とか、そういうものが出されておりまして、回収できるものは回収をし、それについて順次焼却等の処分をするといったことが進んでいるというふうに承知をしております。

楠田委員 その中で、回収、廃棄処分を求めた、保健所からそういう請求が出たということでありましたが、実際、不正規流通業者によっての事故米穀はどれぐらい流通して、そしてその処理がどれぐらい今の時点で進んだのか、逆に言えば、今なお全国でどれぐらいこの事故米の在庫がまだあるのかという点をお聞かせいただけますか。

奥原政府参考人 先ほどの不正事業者四社に対します事故米穀の売却数量、これは全体で五千二百六十三トンでございます。

 このうち、三社であります浅井、それから太田、島田、これにつきましては、現時点では、事故米穀の在庫はもうほとんど残っていないものというふうに承知をしております。

 これに対しまして、三笠フーズにつきましては、その当時まだ出荷しておりませんでした三笠としての在庫量、それとその後の回収分、これがございますけれども、これの一部につきましては既に焼却が行われておりますけれども、まだ現時点で焼却されていないものが四百七十五トン残っているというふうに承知をしております。

楠田委員 私は、全国的に在庫というのがまだ残っているのかもしれないという心配をしておりましたが、どうも三笠フーズ一社だけ、しかも四百七十五トンほどが今なお残っているということでありました。

 そういうことでありますので、三笠フーズに特化して話を進めてまいりたいと思います。

 ここまでこのように指摘をさせていただいておりましたのも、先ほど申しましたように、我が地元の九州工場、旧九州工場に、今なお多くの事故米穀を含む、倒産をした三笠フーズの在庫が残されているとお聞きをしております。かつては、大変保管状況も悪い、外に常温で保存されていた部分も多く残されていた、それについては鳥やネズミが食べに来て大変不衛生になっている、そうした心配も、地元の中で、いろいろ陳情としていただいてきたわけであります。

 実は、その常温で保存されていた部分、たしか五百トンぐらいでしたでしょうか、この部分は、破産をしておりますので、その破産財団の方の負担で、たしか一千万ぐらいかけて措置をされたというふうにお聞きをしておりますが、今なお低温倉庫の部分はまだ残っている、そうした話を聞いております。

 時間がたてばたつほどさらに劣化が進んでいく、衛生面でも問題があるのではとの地元の心配も今なお続いておりますが、この四百七十五トン分、また、これに加えてMA米等の在庫もあると聞いておりますが、こういう在庫の処分の今後の見通しというものはどのようになっていくのか、また処分を行う主体、最終的な責任の所在がどこにあるのかという点をお聞かせいただけますでしょうか。

奥原政府参考人 三笠フーズにつきましては、大阪地裁により、昨年の十一月の二十六日に破産手続開始の決定がなされておりまして、現在も破産手続が継続中であるというふうに承知をしております。

 三笠フーズの保有している米穀、これは、この事故米のほかに、国から購入をした普通の輸入米もございますし、それから民間から購入した国産米もございます。こういった三笠フーズの保有している米穀の取り扱いも、この破産手続の中で決定をされるということになりますが、農林水産省といたしましては、食品衛生上問題のある米穀が市場に流通しないようにすること、それから、その米を廃棄処分するような場合には、その処分が地元の負担とならないようにすること、これが極めて重要であるというふうに考えております。

 こうした考え方に立ちまして、三笠フーズの破産管財人との協議を進めているところでございまして、適切に対処していきたいというふうに考えております。

楠田委員 そうした方針を今示していただきました。

 ただ、地元の負担にならないようにされるということは当然のことであると考えておりますが、そもそも、工業用の需要と供給量のギャップというものがあったわけであります。そういうものを知り得る立場にありながら大量に払い下げていった農水省側の責任もあると考えておりますし、この点については、去る農水委員会の中でも、何度となく大臣もその責任を認めておられた、そういう答弁があったというふうに確認をしております。

 当然、地元の負担にならないようにということでありますが、しゃくし定規に業者負担、こういう問題を起こした業者に問題があるのは当然でありますが、第一義的に責任を負わなければいけないのは当然でありますが、先ほど申しましたように、むしろ、工業用に使い切れない部分を払い下げてきた、そうした責任と、何よりも、こうした悪事を許してしまった社会的状況などもあると思っております。

 そうした中で、今、業者負担、しかも、業者が破産した場合は破産財団にそうした負担を求めていくということでありますが、その破産財団の財務内容等々もあるでしょうし、また、最終的にはこの破産財団が管理処分を放棄するという方法もあるやに聞いております。場合によって、そうしたことが起これば、結果的に地元負担になってしまうのではないか、県や自治体など地元住民に、何ら罪もない、しかも、正直言って、私も含めまして、ここに三笠フーズの工場があることも福岡の人はほとんど知らなかったと思いますが、そうした形で負担を押しつけることになるのではないかという心配もしておりますが、この点、もう少しお答えいただけますか。

奥原政府参考人 この処理につきましては、基本的には破産者の財産で賄うというのが基本だとは思っております。ですが、この破産財団の最終的な財産がどの程度になるかといったことも明確でございません。

 そのために、当方でも、破産管財人との協議を密にしておりまして、御指摘のとおり、この事故米を販売した経緯、それから農林省の責任、そういったものは当然ございます、そういったこともすべて考慮した上で、先ほど申し上げましたように、食品衛生上問題のある米穀が市場に流通しないようにすること、それから、この米を廃棄処分する場合には、その処分が地元の負担とならないようにすること、このことを基本にしながら適切に対応していきたいと考えております。

楠田委員 最後、くどいようですが、そうした場合に、先ほど申しましたように常温で保管されている部分については財団の負担で既に処理をされた、そして残る部分のことに移っているわけでありますが、場合によっては、そうしたさまざまな責任の上で、この残りの部分の焼却ですね、特に事故米の部分、これを国が最終的に負担するということ、それで、何よりも、やはり負の遺産、象徴としてこの旧工場も残されておりますから、できるだけ早く在庫も取り除かれて、早く別の用途のために使われるべきという地元感情もあると思いますが、この点についてもう一度お答えいただけますか。

奥原政府参考人 破産財団の状況もよく見させていただきながら、そこについては破産管財人の方とよく御相談をし、今御指摘の点も念頭に置いた上で適切に対応していきたいと考えております。

楠田委員 やはり、そうしたさまざまな当事者同士の話し合いもあると思いますので、そこら辺の答えになるのかなと感じておりますが、大臣、今までこうした議論を聞いておられて、そうした農水省の責任等々もあると思いますし、地元の感情もあると思いますが、この点において、特に国の最終的な、これは同じように、例えば産業廃棄物においても、これもうちの地元でもありましたけれども、業者が分別をせずに勝手に埋めていた、しかし、その業者自体はもう既に手を上げて、最終的に処理をどうするべきかということは今なお決まっていないということもよくある事例だと思いますけれども、この事故米穀も一種の産廃扱いになっていると聞いておりますが、こうした場合の最終的な責任のとり方ということについて、まず大臣、どのように考えられますか。

野田国務大臣 今農水省からの答弁がありましたとおりで、確かに最終的に国が責任をという話になるかもしれませんが、国というよりも、やはりそこで支払われる費用というのは国民の税金を使わざるを得なくなるわけで、それが果たして国民全体に理解をしてもらえるかどうかというのは極めて難しい問題だと思っています。

 むしろ、今後、何か基金のようなものをつくって、保険というんですか、大体、消費者行政の中でも、そういう悪質、悪徳な業者というのは、そもそもきちっと経営が成り立たないからそういうことに手を染めたりするわけで、そういうことを未然に防ぐためには、今後、やはり消費者保護の観点から、そういう基金なり保険というのが民間の中にできて、いざというときには、そういうふうに被害に使えるような形になれば理想的かなというふうに私は考えているところです。

楠田委員 わかりました。

 先ほど申しましたように、いずれにしましても、そうした地域での感情、また、こうした事件も九カ月たっておりますが最終的な解決にはまだ至っていないということも認識をいただいて、ぜひスピードアップに努めていただきたいと思っております。

 そうしたことを総論としまして、今回の問題の対応においても、この有識者会議等々、また対応検討チームによる緊急取りまとめなども今回の件で新たに確認をいたしましたが、内閣府、また農水省、厚生労働省などにまたがって、答弁一つとりましても、やはり各省で対応が任されているということが明らかになったと感じておりますし、また、その対応も後手に回ったという感じを否めないと思っています。

 長く消費者庁設置の議論もされてきたと思いますが、こうした設置が決まって、消費者行政の観点から、今後同じ轍を踏まないための方策として、大臣に最後お聞かせいただきたいと思います。

野田国務大臣 そもそも、この事故米穀については投書があったそうです。しかしながら、その投書が生かされていない。そういう事故米穀が食用に流されているよという投書があったにもかかわらず、農林省内で隠ぺいされたかどうされたかわかりませんけれども、そういうことで事件が拡大したということもございました。そういうさまざまな反省を踏まえて、皆様、全党のお力をいただいて、今度、消費者庁がこの秋にも発足することになるわけです。

 せっかくの機会ですので、消費者庁ができたことによるとどういうふうな運びがあるかということについて少し申し上げるならば、消費者安全法というのが今度できたわけですけれども、それに伴って、地方のさまざまな、消費生活センターとか、いろいろ相談情報を集約するとともに、今ある公益通報制度、申し出制度による通報、申し出を集約することによって、消費者庁が問題の早期発見をさせていただくことになります。

 そして、その集約された情報を迅速に公表するとともに、消費者行政の司令塔として政府全体の調整を行い、迅速な実態把握と対応の方針を主体的に決定させていただきます。

 そして、みずから所管する法律に基づき対応することは当然でありますけれども、他の省庁が所管する法律により対応する必要があると判断する場合には、この消費者安全法に基づき、当該省庁に立入調査の要請とか行政処分等の措置要求をさせていただくことになります。

 既存の法律によって対応ができないいわゆるすき間事案、この場合には、消費者庁がみずから事業者に対して必要な立入調査を行うとともに、重大事故については、行政処分等、みずから実施させていただく。

 またさらに、再発防止策の策定に関しては、例えば食の安全の分野では、食品安全基本法に基づいてリスク管理体制の見直しなどを主導的に行わせていただく。

 こういうことで、このような事件を起こさないように取り組んでいく決意でございます。

楠田委員 その答えの中で、例えば先ほど出た回収や処分の問題等も、各省庁にその徹底を図らせるなどができると改めて感じましたし、また、投書が最初にあったということでありましたが、我田引水にもなりますが、消えた年金等も、最初はやはり投書から始まって、その中でさまざまな調査が進んでここまで明らかになってきたということでありますから、やはり、そうした一つの情報をしっかりととらまえていく、追及に役立てていく、そうした体制を今後とっていただきたいということを改めて申し上げておきたいと思います。

 それでは、もう少し時間がありますので、科学技術の人材育成についても野田大臣に引き続きお聞きをしてまいりたいと思います。

 先般も一度申し上げたかもしれませんが、今、民主党、我が党の中で、先端科学研究会という勉強会を、私自身も事務局として務めさせていただいていまして、科学技術の重要性を知るとともに、異口同音に、やはり日本の科学技術政策の不十分さというものを研究家、研究者の方、トップリーダーの方は指摘をされています。

 実は、私の同級生が二十代で理化学研究所の教授職について結構活躍をしているんですけれども、そういう仲間も、たまたま彼は問題意識があって人材として若く花開いたようでありますが、やはり自分自身の問題意識によるところが多かったということを感じているようです。

 そういう中で、いかに人材を育てていくかということが重要と考えておるわけでありますが、日本の科学技術の人材育成についての現状と課題をどのように分析されているかをまず大臣にお聞きしたいと思います。

野田国務大臣 私も、昨年八月に科学技術政策の担当大臣をいただきまして、日本の科学技術のすばらしさというか、少資源国家にあってここまで日本が先進国として頑張ってこれたものの底力は、過去にもこの科学技術力であったし、現在もそうであるし、今後もそうでなければならない、そう実感をして、使命感も感じているところです。

 先生御指摘のように、科学技術というのはぽっとわいてくるものではなく、そこに携わる人によって科学技術が強化されてきているわけでございまして、今後も新しい時代に的確に対応できる多様多彩な人材の育成というのは極めて重要な課題であると私自身強く日々認識しているところであります。

 内閣府におきましては、科学技術基本計画を踏まえて、関係省庁と連携しつつ、関連する施策を推進し、一定の成果は挙げておりますが、例えば、ポスドク等博士課程修了者のキャリアパスの問題とか、博士課程進学への経済的負担の重さとか、さらにはテニュアトラック制導入への取り組みのおくれなど、具体の問題が実は見受けられることもあるわけであります。

 今後とも、さまざまな省庁と連携しましてこれらの課題の解決に努めて、我が国の国力の源泉である科学技術の発展を支える人材の育成強化を図り、科学技術創造立国の実現に努めてまいりたいと考えています。

楠田委員 事前のやりとりもありましたので、これからの質問も含めてお答えをいただいた部分もありますが、特に経済的サポートシステムの中で、先日、その勉強会でも専門の方にお聞きをしたわけでありますが、何よりも日本のそうした大学、大学院、博士課程に進んでいく上での問題として、やはり経済的なサポートが非常に足らないと。これはもちろん、日本のさまざまな、文化的といいますか社会的要因が当然あると思っておりますが、その中でも、学んでいる学生に対する経済的サポートが非常に手薄いというふうに聞いております。

 そういう中で、例えば、博士課程に進んでいっても借金をしながら勉強をしていく、博士課程まで進んだとしても、その後就職をしたら、むしろ学卒で就職している人の方が給料が高いとか、そうした問題も非常にあるというのが現状だと感じております。

 その中で、一つ御提案をさせていただきたいと思いますが、TAサポート、ティーチングアシスタントシップというもの、またリサーチアシスタントシップ、RAサポートと言うようでありますが、こうした、まず博士課程の大学院生が入学一年目に受ける経済的サポート、二年目以降も継続して受ける学生もあると聞いておりますが、授業料免除、またこうした資金を得ながらまず最初の修業に努めることができる。また、先ほどのRAサポートでありますが、理系の博士課程の大学院生が入学二年目以降に受ける経済的サポートということで、指導教員から研究報酬として受け取るかわりに、研究の責任を負ってやっていくということであります。授業料も一般的に指導教員が研究報酬の一部として支払っていくということでありますけれども、これは一人につき二百万から三百万ほどの資金を得られるということであります。

 もちろん、資金の出どころ等の問題もありますが、こうした具体的な問題として、TAサポート、またRAサポートという部分について検討が進められているのか、これから進めていくのか、その点について少し確認をさせていただきたいと思います。

藤田政府参考人 お答えを申し上げます。

 我が国の科学技術を支える人材を育成する観点から、優秀な人材が経済的負担を過度に懸念することなく進学できるようにすることは非常に重要であるというふうに認識しております。この点につきましては、科学技術基本計画におきましても、リサーチアシスタント、ティーチングアシスタントなどによる博士課程在学者への経済的支援の拡充を定めているところでございます。

 具体的な実績を申し上げますと、十八年度の実績では、ティーチングアシスタントとして約一万六千三百名、これは博士課程在学者数に占める割合としては二一・六%でございます。また、リサーチアシスタントとしては一万百六十五名、これは博士課程在学者数に占める割合としては一三・五%というふうなことで、これらの方々がTA、RAという形で支援を受けているところでございます。

 このほか、大学院生への経済的支援といたしましては、独立行政法人の日本学術振興会で特別研究員事業というのを実施しておりますし、また、日本学生支援機構における奨学金や、そのほか、各大学が独自に設けている制度などもございます。

 今後とも、関係省庁ともよく連携をとりながら、これらの制度の充実を図ってまいりたいというふうに考えております。

楠田委員 ありがとうございます。

 先ほど申しましたように、そうした施策も徐々に進んでいるというふうにお聞きをしておりますが、今なお、やはり人数としてはまだまだ少ないものでありましょうし、また、博士課程進学者のキャリアパス等も、他国と比べますと、発表能力であるとか研究立案能力、問題解決能力等々、大学院の国際化などもまだ非常に立ちおくれていると聞いております。

 また、先ほどの答えでテニュア制度という話もされましたけれども、終身在職権というものを得る、ただし、その在職権を得るためには大変厳しい評価、適正な評価がなされる、そうしたことも、大変な切磋琢磨をしながら鍛えられているというシステムがあるというふうにお聞きをしました。

 こうした観点から、これからも、我が国、特に科学技術の分野については、内閣府の中で今、一元化して取り組んでいこうという部署もできているわけでありますから、この点について最後、もう一度、大臣からそうした御決意をお聞きしたいと思います。

野田国務大臣 まさに今先生おっしゃったとおりでございまして、こういう人材を育てていくのは、そもそもちっちゃなころから、今理科離れが進んでいると言われている中、ややもすると、小学校で理科を教える先生が、そもそも理数が苦手で文系になった先生がその苦手な理科や算数を教えるというようなこともあるんじゃないかということが今言われていて、そういうところにも、理数系、理数の好きな先生が理科や数学、算数を教えてあげるというような、当たり前のことなんですけれども、そういうこともなかなかできていない中、抜本的な取り組みをすることで、さっきおっしゃったように、学卒よりも、努力されて勉強された博士課程の方の方が経済的に苦しいというのは、努力したことが報われない、悲しい社会だと思っていますので、そういうところもしっかり見詰め直して、とにかく、人を育てていくということに専念していきたいと思っています。頑張ってまいりたいと思います。

楠田委員 そうした部分において、まだまだ足りない部分、また、表面的にまねだけしても非常に立ち行かない部分もあると思いますから、そうしたいい部分をしっかりと取り入れていただきたいということを申し上げまして、時間が参りましたので終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、西村智奈美君。

西村(智)委員 民主党の西村智奈美です。

 一般質疑で時間をいただきました。

 先日の参議院の共生社会調査会において、ドメスティック・バイオレンスの件について審議があったと伺っております。もともとの発端、そのきっかけとなったのは、総務省でやられたいわゆる政策評価の報告書を受けてのことだというふうに承知をしているんですけれども、私も見せていただきました、総務省行政評価局が行ったこの政策評価。非常に具体的なポイント、現場の実態に即した勧告ポイントが含まれておりまして、非常に評価できる政策評価だったというふうに考えております。

 非常にいい内容が含まれているこの勧告を今後どのようにフォローアップしていかれるのか、そのことをまず冒頭、総務省に伺いたいと思います。

新井政府参考人 お答え申し上げます。

 政策評価についてお褒めの言葉をいただきまして、ありがとうございます。

 本政策評価の結果に基づく勧告につきましては、行政機関が行う政策の評価に関する法律第十七条第二項の規定に基づきまして、関係府省が勧告に基づいてとった措置について、まずは半年後、すなわち本年十一月二十六日までに報告を求め、報告内容につきましては公表することといたしております。また、関係府省が本勧告に基づいてとったその後の措置につきましては、おおむね勧告から一年半後に報告を再度求めまして、公表することといたしております。

 総務省といたしましては、このような措置を講ずることにより、勧告事項が関係施策に適切に反映されるよう、しっかりフォローしてまいる所存でございます。

西村(智)委員 平成十三年にDV防止法ができてから初めての政策評価ということでありましたので、このくらいの内容はやはり勧告していただかないと、約十年間の取り組みの総括というのはできなかったというふうに思います。

 さてそこで、先ほど私は評価すると申し上げたんですけれども、やはり、これは実感も含め申し上げるんですけれども、例えば保護命令制度、これはDV防止法の中でも極めて重要な要素だと思いますが、この保護命令制度に係る警察の取り組みについての評価、報告がありませんでした。

 これはいろいろなところで言われておりますけれども、警察におけるDVの相談件数というのは毎年伸びてきていますけれども、実際の対応においては、やはり地域による差があるのではないかというふうに言われております。実際にそういう差が本当にあるのかないのか。また、そのことによって、警察対応の後に、危険に脅かされる当事者が本当にいなくなっているのかどうかということの検証がやはり必要ではないかというふうに私は考えるんですけれども、警察の対応について、今回の政策評価の中で検証を行わなかった理由、また、今後、これについてはやはりやっていくべきではないか、検証していくべきではないかと私は考えるんですけれども、この点はいかがですか。

新井政府参考人 お答えいたします。

 今回の政策評価におきましては、警察の取り組みにつきましても評価の対象とし、警察庁本庁と二十七都道府県警察本部を抽出し、調査したところでございます。

 また、政策評価の一環といたしまして、警察の相談者に対する対応につきましての被害者アンケートも実施しております。その結果といたしまして、どこに相談をしたかという問いに対しましては、五六%の方が警察と回答しておりまして、各種相談機関のうちで最も高い割合を占めているところでございます。また、警察に相談した対応の際には、二三%の方が満足、二一%の方が大体満足としておりますが、他方で、二四%の方が不満、一二%の方が少し不満との調査結果になっているところでございます。しかしながら、警察が受け付けた相談件数が増加している等の状況は見られましたが、改善を要する具体的な事例等については把握できなかったことから、勧告するには至っておりません。

 なお、御指摘の、警察対応後は危険に脅かされる当事者がいなくなっているかどうか等の検証ということがございましたが、これにつきましては、被害者の相談後の状況を個別に追跡することが必要となりますが、個人の状況を、長期間にわたり、プライバシーの保護に配慮してフォローしていくという難しい点もあることから、今回の政策評価では調査をしておりません。

 必要に応じ、今後、勉強してまいりたいと思っております。

西村(智)委員 ぜひ検討をお願いいたします。

 さらに申し上げますけれども、今回の政策評価書のその後の調査によりましても、市区町村で配偶者暴力相談支援センターの設置が大変おくれているということが明らかになっております。

 DV防止法では、市区町村に配偶者暴力相談支援センターの設置について、努力義務ということになっておりますけれども、全国でわずか十二団体、十二市区町村にとどまっている。都道府県で先駆的な県などは、都道府県がたくさんのセンターを県内に設置しているというところはあるんですけれども、これも政策評価の中からこのように言われておりました。市町村が受け付けた被害者からの相談件数が未把握など、政策効果を測定するための基礎的指標の把握が不十分である、こういうふうに政策評価の中でも指摘をされておりまして、市町村によってDV防止に対しての取り組みに大きな地域間格差があることは明らかだと思います。

 この点について、市町村の役割をさらに重視するという観点から、市町村の基本計画策定について、これを努力義務ではなくて義務とすることが必要ではないかというふうに考えております。市町村自身に責任を持ってもらうということが必要なのではないかと考えますけれども、この点について、内閣府の見解はいかがでしょうか。

板東政府参考人 ただいま議員の方から御指摘がございましたように、住民に身近な基礎自治体でございます市町村の役割というのは、配偶者暴力の防止、それから被害者の保護、支援ということに対しても極めて重要であるということで、十九年の法改正におきましては、議員立法でございますけれども、この市町村の役割の強化というのが図られたということで、ただいま御指摘がございましたように、基本計画の策定、それから配偶者暴力相談支援センターの設置につきましての努力義務というのが規定をされたところでございます。

 ただいまの状況でございますけれども、御指摘のように、まだセンターの設置、それから計画の策定というのが十分ではない状況でございますけれども、これは法改正のときにも御議論になっておりますけれども、市町村の規模とか行政執行体制、取り組みの程度、それから今御指摘のございました都道府県における取り組みのあり方、そういった地域の実情はさまざまであるというところもございまして、一律に義務を課すということについては難しいということで、努力義務になったというふうに承知をしているところでございます。

 ただいまお話がございました基本計画につきましては、現在、まだ十九市町村だけの策定ということでございますけれども、これにつきましては、内閣府においてもさまざまな御相談を受けているという状況でございまして、ことしになってからも十五の市区町村で策定をしたという状況がございまして、今検討されているところ、作業を進めているところは相当数あるものというふうに把握しているところでございます。

 この計画策定が進みますように、我々といたしましてもさまざまな情報提供をしていきたいということで、先進事例や策定状況につきましても調査をしたり、ホームページや、それからDVに関する全国会議におきましても、これは市町村の関係者も参加していただいておりますけれども、情報提供をするなど、積極的な支援を進めているところでございまして、これを引き続き行ってまいりたいと思っております。

 また、計画の策定につきまして支援をするということで、昨年度から、特別交付税の算定の中にも計画策定に必要な費用につきまして盛り込ませていただいたところでございます。

 そういうさまざまな支援の手段を通じまして、市町村の計画策定を支援していきたいというふうに思っております。

西村(智)委員 努力をしていただいていることはわかりました。わかりましたけれども、今お話を伺っていても、非常に遅々とした取り組みだなと。これは市町村の努力にゆだねなければならないわけですけれども、それにしても余りにスピードが遅いのではないかという感じは否めないと思いますので、ぜひ今後とも、内閣府としては、積極的な基本計画の策定を促していただきたい。

 また、これはおっしゃっていただいたように議員立法の法律でありますので、不断の見直しを、これは参議院の調査会が中心になって行ってきたことではありますけれども、今後も、議員の側で、立法府の側で、しっかりと一つの課題として取り組んでいかなければならないことだと考えております。

 さて、そこで、ここからは、議員立法である法律ですので、立法府の側から改善をしなければならない法律であるということは重々承知の上で、とはいいながら、近年大変大きな問題となっておりますいわゆるデートDV、配偶者間ではなく、また同居をしている親密な関係というものでもない、しかし、例えば中学生や高校生や大学生など若い人たちを中心に、親密な関係にあって交際をしている相手からドメスティック・バイオレンスを受けている事例がふえているということについて質問をしたいと思います。

 この実態は、実はもう政府の方は既に把握をしておられます。内閣府がことしの三月に、男女間における暴力に関する調査報告書というのをまとめられまして、ここにおいて、既に多くの方が知っておられるとおりでありますけれども、いわゆるデートDVを受けたことのある人の割合が約一四%、若い世代の中で一四%もおられる。身体的暴行、心理的攻撃、また性的強要、無理やり性行為を強いるというような、いずれかの被害を受けたことがあった人が、女性では一三・六%、男性で四・三%ということであります。

 この実態を、もう何年も前からパンフレットなどにはこの報告も含まれて、周知をされておりましたけれども、このデートDVに対して、政府としてはどういう対応をとってこられたのか、また、これからどういう対応をとっていこうとされるのか。やはり、こうしたことはあってはならないこと、なくしていかなければならないことだと思いますので、政府としての取り組みは何らかされてきたし、これからもされていくのだろうというふうに思いますけれども、対応について伺います。

    〔委員長退席、西村(明)委員長代理着席〕

小渕国務大臣 ただいま委員が御指摘をされましたいわゆるデートDVにつきましては、やはり、DVというものがおつき合いの段階に広がっている、若年化していることについて大変重く受けとめておるところであります。

 二十年度の調査につきましては、今委員の方から御指摘いただきましたとおりでありまして、交際相手からの暴力を受けた人は、女性で一三・六%、男性で四・三%ということでありまして、この数字を見ても、大変深刻な被害があることがわかっております。

 しかし、なかなか難しいところは、普通のDVと比べまして、この実態というものが表面化されていないということ、また、おつき合いの段階でありますので、愛情表現として受け入れてしまうようなメンタリティーになりやすいこと、また、周囲からも、嫌なら別れればよいのではないかと思われがちで、悩みを相談しにくい雰囲気にあることなど、さまざまな問題が挙げられているわけであります。

 しかし、恋人間とはいえ、こうした暴力というものは決して許されることではありません。内閣府といたしましては、平成十九年度のシンポジウムにおきまして、これまでDVを取り上げていたシンポジウムの中でこうしたデートDVを取り上げて、世の中の関心を高めるための取り組みを行ったところであります。また、有識者による検討会を開催いたしまして、若年層に対する予防啓発教材の作成に努めているところであります。

 しかし、何よりも大切だと思いますのは、そうした実態をしっかり調査し、把握していくことであるかと思います。実態の調査とともに、そうした啓発活動をあわせてやってまいりたいと考えております。

西村(智)委員 おつき合いの段階なので実態把握が難しいというのは、確かにおっしゃるとおりだと思うんですね。だからこそ、そこに問題の難しさがあると思うんですけれども。

 後でまた質問したいと思いますが、やはり、若い人たちの間では、暴力を振るうことは愛情のあらわれだという見方もあるわけですし、また、嫌なら別れればよいというのも、実際には、相手が謝ったら、それでもう暴力を振るったことも許してもいいのではないかと考える若い人も実は少なくありません。若年層特有のといいますか、そういった心理的なこともいろいろ背景にあって、実態把握は非常に難しいことなんですけれども、だからこそ、逆に申し上げますと、若いときから、年齢の余り高くならないときから、きちんとした性教育、人権教育なども年齢に合わせてきちんと行って、性暴力を防止するためのいわゆる予防教育というものがやはりどうしても必要なんだろうなというふうに考えるんです。

 実態についてということでちょっと伺いますけれども、警察では、こういった恋人や親密な関係にある人からの暴力、DVに対してどのように対処をしておられるのか、その実態を伺いたいと思います。

佐藤国務大臣 配偶者暴力防止法における配偶者に、婚姻の届けをしていない、いわゆる事実婚は含まれますが、恋人や交際相手は含まれないため、これらの人たちからの暴力に同法を適用することはできないということになっておりまして、確かに、先生おっしゃられるように、隘路というところになっているのではないかと思います。

 しかしながら、恋人などからの暴力については、警察では、刑罰法令に抵触する事案については被害者の意思を踏まえて検挙その他の措置を講じ、そこまでに至らない事案についても被害者に対する防犯指導、加害者への指導、警告など、事案に応じた適切な措置を講じているところでございます。

 恋人などからの暴力について、ストーカー規制法を適用して対応した事例もございますが、統計をとってございませんので、同法に基づく警告、検挙件数は不明でございます。

 ちなみに、平成二十年度中に警察が取り扱ったストーカーの事案でございますけれども、一万四千六百五十七件のうち、交際相手やかつて交際していた者からのつきまとい等に関する事案は七千三百二十件、全体の四九・九%となっております。

西村(智)委員 ストーカー規制法で対応いただいているケースもあるというお話でしたけれども、ストーカー規制法は、基本的にはつきまといなどへの対応しかできなくて、暴力には対処するようになっていない、要するに、恋人間の暴力には対処するようになっておりません。法律の穴の部分だと思いますけれども。

 法律はこういう状況であるということがある上で、質問なんですけれども、やはり、とはいえ、生命に危険が及ぶような、そういった重篤なケースもデートDVにはあると思われます。そういったケースに対して、DV防止法で言うところの保護命令の適用や、一時保護、これを適用できないものかというふうに考えるんですけれども、この点について、法務省と厚労省はいかがでしょうか。

團藤政府参考人 保護命令の関係についてお答え申し上げます。

 配偶者暴力防止法第十条所定の保護命令でございますが、これは、配偶者からの身体に対する暴力または生命に対する脅迫によりまして被害者がその生命または身体に重大な危害を受けるおそれが大きいときに、被害者の申し立てによりまして、加害者である配偶者に対し、接近禁止命令、退去命令、電話等禁止命令、子または親族への接近禁止命令を発令する制度でございます。

 ここで対象となります配偶者でございますが、これにつきましては、婚姻の届け出をいたしました配偶者のほか、事実上婚姻関係と同様の関係にある者を含むと同法でされております。ただ、この事実上の婚姻関係に至っていない、先ほど御指摘の恋人らなどにつきましては、この配偶者に含まれないということになりますので、この配偶者暴力防止法上の保護命令の発令対象ということにはならないのではないかと考えておるところでございます。

伊岐政府参考人 一時保護の部分につきましての御説明を申し上げたいと思います。

 都道府県には婦人相談所という施設がございますが、こちらにおきましては、これまでも、配偶者からの暴力被害者のみならず、生活を営む上で困難な問題を有しておられ、かつその問題を解決すべき機関がほかにないために、現に保護、援助を必要とする状態にあると認められた方、こういう方についても、相談のほか、一時保護の対象としてきたところでございます。

 御指摘のような事例につきましても、都道府県への通知において、恋人からの暴力被害女性といった例示をして都道府県の方にも通知をしつつ、保護、援助の対象とするよう、またそれに積極的に取り組むよう、都道府県の方に促しているところでございます。

西村(智)委員 厚労省の方に一点確認なんですけれども、配偶者暴力相談支援センターにデートDVの被害者が相談に行った場合、このときは一時保護の対象になるんでしょうか。どういう道筋でこの一時保護が可能になるのか。例えば、センターから婦人相談所の方にそれが伝達されるとかいうことになるのかどうか、また、そういったこともあわせて周知をされているのか、そこを伺います。

伊岐政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げました婦人相談所そのものも配偶者暴力相談支援センターの機能を担っているわけでございます。したがいまして、もちろん配偶者暴力相談支援センターとして御相談を受けるというケースもあろうかと思いますし、また、同じセンターとして機能を担っておられるほかの機関においても、横の連携のもとに、婦人相談所の方に御連絡をちょうだいして、そちらで一時保護をするという可能性はあるかと存じます。

西村(智)委員 可能性はあるかと思いますという答弁でした。非常にレアケースだというふうに受けとめました。

 という答弁を伺いますと、なおのこと、このデートDVの被害者が、どこに相談に行くか、そしてまたどういう形で保護を受けるか、あるいは暴力から逃れ、そして加害者側にもきちんとそういったことが伝わるという支援体制を整えることができるかという点については、少し不安、少しといいますかかなり不安があるんですけれども、そうしますと、やはり法律の条文の方に、文言の方に戻ってこざるを得ません。

 DV防止法は、先ほど法務省の方からもお話があったように、配偶者のみが対象となっております。ここにはいわゆる恋人などは含まれない。これを私は、やはり配偶者等などとしてデートDVにも対応できるように法改正すべきではないかというふうに考えております。

 何度も申し上げますけれども、これは議員立法の法律だということはよくわかっておりますけれども、この点について内閣府の見解を伺っておきたいと思います。

板東政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど議員立法というお話がございましたけれども、法改正の際の御議論におきましても、配偶者以外と申しますか、恋人、交際相手からの暴力の問題についても御議論があったところでございます。保護命令違反については刑罰がつくということもあるわけでございまして、恋人あるいは交際相手という定義づけというのは非常に難しいのではないかという御議論もあったというふうに承知をしております。その結果、配偶者には事実婚を含めるということにはなっているわけでございますけれども、それに至らない単なる恋人あるいは同棲関係、交際相手といったものは対象としないというふうになったと承知をしているところでございます。

 先ほどからいろいろな御説明があったところでございますけれども、内閣府の方におきましても、女性に対する暴力に関する専門調査会、これは男女共同参画会議のもとにございますが、そこにおいて、配偶者以外の、今お話がございました交際相手からの暴力の問題についてもいろいろな意味の対応が重要だという御指摘はいただいておりますけれども、これは継続しての検討の対象ということになっているところでございます。

 若年者に対する予防啓発の必要性につきましては先ほど大臣からお答え申し上げたところでございますけれども、そういった交際相手からの暴力の問題については、若年者に対する予防啓発についての取り組みを今充実強化させていただいており、こういったところについても防止を図っていきたいというふうに努めているところでございます。

西村(智)委員 今後の課題だというふうに受けとめます。

 先ほど、小渕大臣から、DVの若年化というのは非常に懸念されるところである、いろいろやられているという答弁の中に、教材を作成しておられるというお話がありました。検討会が設置をされて、そこにおいて予防教育教材について検討がされているというふうに伺いましたけれども、この予防啓発教材は、大体何部ぐらい刷って、どういうところに配付をして、どういうふうに活用をされる予定になっているのか、確認をしたいと思います。

板東政府参考人 ただいま御質問の予防啓発教材についてでございますけれども、今、有識者による検討会において検討中でございますけれども、主に全国の高等学校とか大学、あるいは男女共同参画センター、女性センターなどで、若年者を対象とした、暴力を伴わない人間関係の構築とか、あるいは男女の平等なパートナーシップについて意識啓発教育を行う際に使用していただきたいというふうに考えて、作成の準備を進めているところでございます。

 具体的に何部作成するかにつきましてはまだ決まっているところではございませんが、今後、検討会の皆様の御意見もお聞かせいただきながら検討していきたいというふうに思っておりますけれども、何部配付するかという、印刷物だけではなく、ホームページなどを通じてネットでも配信をし、利用していただけるようにしていきたいというふうに考えておりますし、できるだけ多くの若者の方々に利用していただけるような、あるいは学校その他の現場で利用していただけるような形にしていきたいというふうに思っております。

西村(智)委員 内閣府には、この資料、予防啓発教材をつくったら、ぜひ活用していただけるようにしたいというのではなくて、内閣府みずからが、活用をしてもらえるように、そこのところは、本当に乗り込んでいってもこの教材を生かしてしっかりと予防教育をやるべきだという、その先頭に立っていただきたいと私は思うんです。

 実は、内閣府でもデートDVについて調査をやられたということなんですけれども、石川県で、ある民間団体がデートDVについて、現役の高校生や大学生に対して、これは実は内閣府の調査よりも調査対象が広くて、約二千百三十人から回答を得たという調査結果があるんですけれども、ここにおいて、何らかの形でのデートDVの被害に遭った経験がある人は約三割だという結果が明らかになりました。

 この調査結果について、昨日、私は石川県会議員の広岡立美さんからいただいたんですけれども、ここにおいて特に強調されているのは、やはり、このデートDVが、おっしゃったように非常に若年化しているということであります。デートDVを受けたことのある人のかなりの割合の人が、既に中学生のときからこのデートDVを受けていると。現役の高校生や大学生に対するアンケートですので、実際に受けている人は、高校で受けたとか大学のときに受けたとか、こういうふうに答えている人がいるんですけれども、全体の中でも二割は中学生のときにそういった被害に遭っている。

 ということからすると、率直に申し上げて、中学生のときから予防啓発教育をやっていかなければ、先ほど小渕大臣がおっしゃった愛情の裏返しではないかとかそういった考え方、それは認識の問題なんですけれども、そういった認識が、年齢を経て、だんだんそれが本当の重大なDVに発展していく。既に中学や高校や大学の方でもDVは重大だというケースはあると思いますけれども、さらにそれが、そういった認識が固定化して大きくなっていくことによる被害というのは、これはやはりどこかで食いとめなければならないんだと思うんです。

 ですので、この教材についてはぜひたくさん刷って、予防教育を義務化するというくらいの決意でもってやっていただきたい。そのことが将来を担う我が国の若い人たちを守っていくということにもなると思いますので、この義務化するということについて、内閣府と文科省の考えを伺いたいと思います。

 また、あわせて、若い人たちの性暴力に対する意識調査、これは内閣府でもやってはいただいておりますけれども、もっと実態に目を向ける必要があるのではないかと私は思います。実態に目を向けて、そこに必要な対策を打っていく、そのベースとなる意識調査をやはりここは大々的にやっていただきたいと思いますが、その点はいかがでしょうか。

板東政府参考人 今御質問がございました予防教育の点につきましては、関係省庁、文部科学省と連携をしながら、積極的に推進をしていきたいというふうに思っております。

 それから、性暴力の実態に関してもう少し調査をすべきでないかという御指摘がございました。ことしやりました男女間における暴力に関する調査の中でも、先ほどから御紹介いただきましたように一部実施したところではございますけれども、本年度はさらに若年層を対象にした暴力の被害実態、それからそれに対する支援の状況ということに関します突っ込んだ調査をしたいというふうに考えておりますので、御指摘の性暴力の被害についてはさらに実態を明らかにしていきたいというふうに思っているところでございます。

 以上でございます。

徳久政府参考人 配偶者暴力防止法に基づく政府の基本方針におきましては、配偶者からの暴力の防止に資するよう、若年層への教育啓発として、学校、家庭、地域において、人権尊重の意識を高める教育や男女平等の理念に基づく教育を促進することとされております。

 このような観点から、学校教育におきましては、児童生徒の発達段階に応じまして、社会科、公民科、家庭科、道徳、特別活動等において、男女の平等や男女相互の理解と協力の重要性について指導しているほか、人権教育を通じまして、他者の痛みや感情を受容できるための想像力や感受性、自分の考えや気持ちを相手に適切に伝える能力等の育成を図ることといたしております。

 具体的には、中学校公民では人権の尊重、人間の平等の単元の中で、また高等学校家庭科では今日の家族をめぐる諸問題という中でDV問題について具体的に教科書で取り上げられているところでございます。このたび小中高等学校の学習指導要領を改訂いたしましたけれども、引き続き、これらの問題についても同じ観点で取り扱うことといたしているところでございます。

 今後とも、すべての児童生徒に対して、DVや性暴力の加害者にも被害者にもならないための予防教育が行われるよう取り組んでまいりたいと考えております。

    〔西村(明)委員長代理退席、委員長着席〕

西村(智)委員 ぜひよろしくお願いいたします。内閣府は余り遠慮しないで、もっとその教材を生かしてもらって、まさにおっしゃった言葉どおりです、加害者にも被害者にもならないための教育をぜひすべての若い人たちに対して行われるように、努力を引き続きお願いいたします。

 最後の質問になるかと思いますが、これは先日私たち超党派の議員でお話を伺った中身ですので、一点、質問をしたいと思っております。

 裁判員制度がスタートをいたしました。裁判員の選任手続や裁判そのものの中で、性犯罪の被害者のプライバシー保護や二次被害について多くの危惧の声が上がっております。実際に超党派の議員で性犯罪の被害に遭った人からお話を伺ったんですけれども、その方は、十年以上前の事件ですけれども、いまだにフラッシュバックがあって、自分で人前で話すと決意をしてやってこられたんですけれども、やはり途中で、涙で声が出なかったということがありました。

 こういった性犯罪について、アメリカの例が非常に参考になるのではないかと思うんですけれども、性暴力対策チームというのがアメリカではつくられる。それは法律で決まっていて、大体州ごとに置かれることになっているんだそうですが、警察官や医療職の方、カウンセラー、弁護士など、こういった専門的なチームをつくりまして、被害者にさらなる精神的負担をかけないように配慮しながら捜査や支援を進めているということだそうであります。非常にいいなと思いますのは、実はカウンセリング料や医療費なども州政府が肩がわりをしていて、被害者に経済的な負担は生じないということなんだそうです。

 我が国の現状からすれば、そこまで一足飛びでは無理だとしても、例えば、地域にある女性センターが裁判員制度への対応などとして当事者の二次被害防止のためのサポート体制を組む、こういう仕組みができないかというふうに考えております。プライバシー保護についても、支援マップをつくって、場合によっては告訴する場合の弁護士費用を支援するということも、これはアメリカの性暴力対策チームを参考にしてのアイデアでありますけれども、こういったことをぜひ検討していただきたいと思いますが、内閣府はこの点についていかがでしょうか。

板東政府参考人 今お話がございました性犯罪被害者のプライバシー保護の問題とか、あるいは二次被害の防止の問題というのは非常に重要なことであるというふうに考えているところでございます。

 裁判員制度に係るものに限らないわけでございますけれども、性犯罪被害者の二次被害の防止を図っていくためには、今お話がございました諸外国での対応なども参考にしながら、関係機関の連携のあり方などについて、今後、男女共同参画会議の専門調査会などでもさらに議論をしていきたいというふうに思っているところでございます。

 ただ、今御指摘の地域の女性センターでございますけれども、やはり裁判員制度などについての、非常に重大犯罪と申しますか、そういったところに関する支援について責任ある立場になっていくというのはなかなか実際上は困難な点もございますけれども、これについては、性暴力の被害に対応するあり方の問題、あるいは性暴力被害の防止のあり方の問題、こういったこと全般につきまして、さらに今申し上げました専門調査会などの検討も踏まえまして、積極的な取り組みを関係省庁と連携していきたいというふうに思っております。

西村(智)委員 時間ですが、裁判員制度が始まって、プライバシー保護と二次被害の防止については、これは待ったなしで対策が必要なことだと思います。女性センターのアイデアについては、そこまではできないのではないかという答弁でしたけれども、これは早急にやらなければならない話、実際に裁判員制度はスタートしておりますので、早急にやっていただかなければならない話ですので、ぜひ代替策を検討していただくように強くお願いをして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、重野安正君。

重野委員 社会民主党の重野安正です。

 まず、足利事件についてお伺いいたしますが、東京高裁が足利事件について再審の決定を行いました。

 そこで、まず大臣にお尋ねしたいのは、一昨日の閣議で、栃木県警本部長が謝罪の意を適切に伝えており、国家公安委員長が面接の上、謝罪することは考えていないとする答弁書が決定されたというふうに聞いております。私は、これはいかがなものかと思います。警察のずさんな捜査により無実の罪で十七年間も収監されていた方に対して、きちんと会って謝罪することは必要なことではないかと私は思うんですが、大臣はどのようにお考えですか。

佐藤国務大臣 お答えを申し上げたいと思います。

 本件につきましては、先日の記者会見でも、真犯人と思われない方が長期間にわたり刑に服されることとなったものであり、大変遺憾であり、申しわけないことであると考えておりますという謝罪をさせていただきました。また、今先生がおっしゃられましたように、本件捜査を行った栃木県警察において、同県警本部長が菅谷氏御本人に面会の上、直接謝罪の意をお伝えしたところでございまして、現時点においてでございますけれども、私の方から御本人に対し直接にお会いをして謝罪することは考えておらないというふうに思います。

 今後、しっかりと検討を行いまして、このような事案が二度と起こらないように警察を指導してまいりたいと考えております。

重野委員 閣議で決定された答弁書の中で、栃木県警本部長が謝罪の意を適切に伝えておりと。この適切に伝えておりという意味はどういう意味なんでしょうか。

佐藤国務大臣 菅家さんに対してしんからその当時のこと等々を踏まえておわびを申し上げたということでございまして、それが適切だったということだというふうに私は思っております。

重野委員 今後こういうふうなことが起こることも想定できるわけですね。こういうことが再々あってはこれはたまったものじゃないわけで、めったに起こってはならぬことでありますが、それが起こったということ、これはやはり、被害者はもちろんのこと、国民の警察に対する信頼というものが揺らぐのではないか。であるならば、事は重大であり、そのケースにおいて、大臣が警察組織のトップとしてきちっと当事者に面会をして、その旨を言うということが国民をして最も理解できる措置ではないか、このように私は思うんですが、改めてお願いします。

佐藤国務大臣 先生が今おっしゃられた趣旨はよく理解した上でお答えを申し上げるところでございますが、今のところということでございますので、今後どう展開をするかということも踏まえて検討してまいりたいというふうに思っております。

重野委員 それはひとつしっかり重く受けとめて、議論を深めて、そして、しかるべき結論を導き出していただきたい。

 次に、足利事件の弁護団は、冤罪防止のために、当時の捜査や鑑定、裁判の検証を求め、科警研技師や学者ら十一人の証人尋問を要求しましたが、これはことごとく実現しないということになりました。どういうことでこういうことになるのか、その基本的な姿勢について答弁を求めます。

甲斐政府参考人 御指摘のとおり、昨日六月二十三日に東京高裁はいわゆる足利事件につきまして再審開始決定を行ったものと承知しておりますが、お尋ねは、裁判手続中の証拠調べのあり方あるいは訴訟指揮のあり方ということにかかわることでございます。

 したがいまして、個別の事件における裁判所の判断にかかわる事柄でございますのでお答えは差し控えさせていただきたいと思いますが、一般論として申し上げれば、再審請求審というものは再審開始事由の有無を決するというための手続でございます。したがいまして、再審開始事由自体に争いがないという場合には早期に再審開始決定がなされるものというふうに考えております。

重野委員 今回の足利事件でも自白の強要が行われたと聞いております。足をける、髪の毛を引っ張るといった暴力や、大声を張り上げる取り調べが行われたという報道もありました。こうした取り調べが行われたというその新聞の報道は事実なのかどうか。また、この取り調べについての調査は行われたのかどうか。大臣に。

佐藤国務大臣 先生おっしゃられる、お尋ねのような主張がされている旨の報道は私も承知をしております。

 しかし、警察において、現時点におきまして、本件につき、取り調べの際、自白を得るために誘導、強制を加えた事実は把握していないというふうに報告を受けております。

 いずれにいたしましても、本件については、既に警察において検討チームを立ち上げたところでございまして、今後さまざまな観点から検討を行うよう指導してまいりたいというふうに思っております。

重野委員 菅家さんはそのように申しているわけですね。であるならば、そのことについてきちっと調査をする、それがやはり、無罪で十数年間も拘置をされて、そして今こういう局面に立ち至っている菅家さんに対する国家権力の正当な対処ではないかと私は思うんですね。

 だから、そういう意味では、この間の捜査あるいは尋問等々、どういうことがあったのかということをはっきり明らかにすべきである、やはり公安委員会としてもそういう立場で指導をするというのが当たり前じゃないかと思うんですが、どうですか。

佐藤国務大臣 もとより、そういうつもりで検討チームをつくらせていただきました。もちろん、長官官房審議官を長として、刑事企画課長、捜査第一課長、犯罪鑑識官等々を中心に警察庁でもチームをつくらせていただき、先ほど申し上げましたように、県警でもそのチームをつくらせていただいて検証をするという流れは間違いなくやってまいりたいと思いますし、しっかりと指導してまいりたいというふうに思っております。

重野委員 今そういうことでありまして、今から動いていくんだろうと思うんですが、今るる私が申し上げましたそういうことを踏まえて、しっかりやってもらいたい。

 次に、監督官制度について聞きます。

 昨年の九月から、取り調べ監督官制度が試験運用をされました。私は、結論から言いますと、これは全面可視化を避けるためのこそくな手段だと断じざるを得ない。裁判員制度が発足をし、取り調べに違法性がなく、自白の任意性に問題がないことを示す口実づくりとしか思えない。

 そこで、ことし三月までの試験運用で問題事例は何件報告されたか、それが一つ。それから、そのうち何件が自白の任意性に問題があると判断をされ、具体的にどのような措置や処分が行われたかが二つ目。三つ目、あわせて、四月から本格実施と聞いていますが、現状はどうなっているか。以上三点、お聞きします。

米田政府参考人 昨年九月から試験実施をし、本年四月から本格実施をしております取り調べの監督制度でございますけれども、この監督対象行為というのは、不適正な行為につながるおそれがあるということをチェックするという仕組みでございます。したがいまして、監督対象行為であるから直ちに処分とかいったことになることもありますし、ならないこともあるということでございます。

 そこで、昨年九月からの試験実施でございますが、この間に全国で二十四件の監督対象行為があったと報告を受けております。

 その一番多いのは事前の承認漏れというものでございまして、取り調べ時間が深夜あるいは長時間に及ぶ場合には事前に警察署長あるいは警察本部長の承認をとらなければならない、その承認漏れでございます。ただこれは、試験実施の最初のころにこの件数は集中しておりまして、なれてくるに従ってほとんどなくなっているということでございます。

 次に多いのが便宜供与あるいは利益供与でございまして、捜査員がポケットマネーで買った飲み物のペットボトルを取り調べ中に被疑者に提供する、あるいは自分のたばこを提供するといったような事例、これが九件ございました。

 そういったことで、二十四件監督対象行為があったと報告を受けておりますが、自白の任意性に影響を与えたというものはないというように承知をしておりまして、また処分対象になったものもございません。

 それから、本年四月から本格実施、これはまだ余り時間がたってございませんけれども、本格実施後、全国で十件の監督対象行為がありました。その多く、うち八件は便宜供与でございまして、お茶あるいはたばこの提供でございます。これはよく指導して絶無を期したいと考えております。

 以上でございます。

重野委員 その問題についてはまた最後に違った角度からお聞きいたします。

 今回の足利事件で、精度に問題があるにもかかわらず、DNA鑑定がひとり歩きして、結果的に無実の人が十七年間も刑務所に入れられたというとんでもないことが行われたわけです。これと同様のDNA鑑定が決め手となった飯塚事件というのがございます。昨年十月に東京高検の検察官が再鑑定を前提とした意見書を出したと聞いています。ところが、その二週間後に死刑が執行されました。冤罪の可能性があって、再審の準備も行われていたというふうに聞いておりますが、その中で死刑を執行した。なぜか。お伺いいたします。

甲斐政府参考人 まず、個別の死刑の執行の判断に関する事柄につきましてはお答えは差し控えさせていただきたいと思いますが、一般的に申し上げますと、死刑の執行に関しましては、まず裁判所の確定判決というものがございますので、そういった司法の判断というものを尊重しながら、個々の事案につき関係記録を十分に精査いたします。そして、刑の執行停止、再審、非常上告の事由でありますとかあるいは恩赦を相当とするような情状の有無等を慎重に検討いたします。そして、これらの事由がないと認めた場合に初めて死刑執行命令を発することとしているところでございます。

重野委員 私は全く素人なんですけれども、この事件、いろいろ調べてみますと、死刑を執行する、確かに、死刑判決を受けて、服役をし、いつ死刑が執行されるかという時間の問題は別個あるわけですけれども、その死刑判決に至った経過というものを洗っていく中で、私は素人なりに考えてみましても、例えばこの決め手となるDNA鑑定でありますけれども、科警研の鑑定とそれから県警から依頼をされた大学の教授のDNA鑑定が食い違っているんですね、これは。この食い違っているというゆえをもって福岡県警は久間さんの逮捕を見合わせたという時間帯があるわけです。一年間ずっとマークして追跡するんですが、この事件もDNA鑑定以外に明確な物証はないんですね。唯一DNA鑑定がその証拠になっている。そのDNA鑑定が割れているという事実、これは否定できない事実があるわけです。そういうふうな方、結果的にこの方は、一年間マークしている途中で傷害を起こして、傷害罪で逮捕されて、そこから結局自白に追い込んでいく、こういう構図なんですね。

 今申し上げましたように、今、現にそのやり直しがされている。時間帯はダブるんですね、この事件は。それがこういうような形で死刑が執行されたということについては、その判断に私はいささか問題ありと言わなければなりませんが、これについて、今後我々に対しどういうふうな説明をするつもりか。いわゆる鑑定人の鑑定が食い違っていたということを認めた上で死刑を執行したというこの経過は問題あり、私はこのように思うんですが、再度答弁を求めます。

甲斐政府参考人 先ほど申しましたけれども、死刑の執行におきましては、個々の事案について関係記録を非常に綿密に精査しているところでございます。個別の証拠関係について触れるいとまはございませんけれども、そういった慎重な検討の上で死刑執行命令を発するということにしているところでございます。

重野委員 仮に、その方がその事件に関係がある方であったとしても、その人の命あるいは人権というのはこれは尊重しなければならぬ、そこが出発点だと思うんです。それが、今私が指摘したように、専門家が鑑定をした、その鑑定結果が割れるという現実、冷厳たる事実がある。そのことを承知の上で、そして一方においては、もう一つの、私が冒頭に申し上げました菅家さんの問題についてのそういう状況が出てきていたんです、その段階においては既に。そういうことを、外的条件というものも踏まえた中で、何も急いで死刑を執行するという合理性はないんじゃないか、私はこのように思えて仕方がありません。

 この点については、ひとつ、今後とも大きな課題になってくる、当事者ももちろんいろいろな意味での法的手続等々をしていくんだろうと思うんですが、これはやはり、法務省としてもそのところはしっかり踏まえて対処するべきだということを申し上げて、私の質問を終わります。

渡辺委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時九分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時九分開議

渡辺委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。笠浩史君。

笠委員 民主党の笠でございます。

 きょうは野田大臣とちょっと、自殺の増加という、本当に今大変厳しい状況にあるわけですが、その点について幾つか議論をさせていただきたいと思います。

 先般、平成二十年の発表においても三万二千二百四十九人ということで、十一年連続で三万人を超えるという非常に異常な状況が続いている。特に、三十代など若い世代、それ以下の二十代、十代の方々の自殺もふえて深刻な状況なんですが、まず冒頭に、なぜこのように全く減らないのか、政府としても対策を講じておられると思いますけれども、このような深刻な状況が続いているのか、その点の認識をお伺いいたしたいと思います。

野田国務大臣 御指摘のとおり、日本の自殺者数は十一年連続で三万人を超えております。大変痛ましいことだと受けとめているところです。

 政府におきましては、御承知のように、自殺総合対策大綱及び自殺対策加速化プランを踏まえて、地方公共団体や民間団体とも連携して、失業とか倒産など社会的要因も踏まえた総合的な取り組みを実施しているところです。

 また、現下の厳しい経済情勢を踏まえまして、平成二十一年度の補正予算、これにおきましては、地域における対策強化を図るための地域自殺対策緊急強化基金に要する経費を百億円計上させていただき、対策の充実を図っています。

 また、今御指摘がございましたが、三十代の自殺、これがふえたということで、原因、動機につきましては、就職や仕事の失敗、事業不振の増加率というのが顕著でありました。このため、今申し上げた大綱や加速化プランも含めてですけれども、働き盛りの人たちに対して、失業や倒産など、そういう要因を踏まえて、ハローワークや精神保健福祉センターなどの関係相談機関が相互に連携させていただくなど、総合的に今取り組みを強化しているところです。

笠委員 今、月々で警察庁の統計の発表が行われるようになっておるわけですけれども、既にこの一月から四月においては一万千人を超えて、もう昨年を上回るペースになっていますね。恐らくこのままいくと、ひょっとしたら、過去最悪であった平成十五年、二〇〇三年の数を上回るのではないかというような危惧もあるわけです。

 特に、昨年の秋以来のこの経済危機の中で、もともとやはり三月の年度末、あの九八年の、いわゆる九八年ショックのときも、山一等々いろいろな破綻があって、当時と同じような今状況じゃないかと思うんですね。失業率も非常に悪化してきている。雇用の状況が悪い。

 基金の問題は後でちょっとお伺いいたしますけれども、こうした、補正の中でぽんと百億円の基金を積むということも確かに大事なんですが、やはり、昨年来一つの厳しい経済状況のもとで、教育でもそうですしいろいろな雇用の問題もそうですけれども、こういうことが起こり得るんだ、特に若い人たちが就職に失敗した、あるいは職が見つからない、そういう中での原因というものも恐らくかなり含まれているんじゃないかと思うんですけれども、やはりそこあたりで言うと、政府のスピード感というのが、せっかく本部ができて取り組んでいるにもかかわらず遅いんじゃないかと私は思うんですね。

 その点、率直に、大臣、どのようにお考えでしょうか。

野田国務大臣 そもそも自殺に対しての法律もできて今まだ日が浅く、大綱や加速化プランができたけれども、実際に動き始めて一年ちょっとぐらい。ですから、率直に申し上げれば、全国津々浦々までそういう加速化プランが徹底されているかというとそうではなく、今懸命に、まさに最前線である地方の皆さんに、そういう自殺対策のための窓口の強化とかをお願いしているところですが、残念ながらまだそこまで至っていないところがたくさんございましたので、今回は基金という形でそれを加速化させたい、そういうことも検討させていただいています。

笠委員 この自殺総合対策大綱パンフレットの中には、国の目標として、平成二十八年までに、基準年である平成十七年の自殺死亡率を二〇%以上減少させることを目標としておるということなんですけれども、これが今現在の国としての目標ということでよろしいんでしょうか。

野田国務大臣 先ほどの、大綱の話をいたしましたけれども、その中に今先生おっしゃったようなことを設定して、目標に掲げて取り組んでいるところです。

笠委員 厚生省にお伺いしたいんですけれども、厚生省は、かつて平成十二年に、健康日本21という中で、平成二十二年までに自殺者数を二万二千人以下とするという目標を掲げておりました。もう来年ですよね、平成二十二年というのは。とてもじゃないけれども、今、もっと悪くなる可能性はあっても、なかなかこれが好転すると私は思えません。

 これは、なぜこの目標を掲げながら全く達成できなかったのか、悪い状況が続いているのか、その総括をお伺いしたいと思います。

木倉政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のように、厚生労働省におきましては、二十一世紀に入る前に、二十一世紀の我が国の国民の健康増進を図っていこうということで、さまざまな分野におきます取り組み、それは目標値を定めての取り組みを進めるということにいたしたところでございます。

 その中で、心の健康ということで、自殺の目標値も含めて策定して、取り組みをしておる。その目標年次が、この設定当初、その他の分野もすべてそうなんですが、平成十二年、二〇〇〇年から当初の十年間をまず目標を定めて取り組もうということで進めておりました。

 このときに、自殺につきましては、平成十年、一九九八年に三万人を超えたわけでございますが、それまでの年には大体二万五千人程度、以下ぐらいでとどまっておったというような状況もございましたので、この十二年にスタートを切りますときに、従前の二万五千人程度に努力して戻そう、さらに、いろいろな治療体制、相談体制等を充実することによって従前の二万五千人よりも少ない二万二千人を目標値として十年間取り組んでいこうということを決めて取り組んできたところでございます。

 その中間年でございます二〇〇五年、五年たったところで、そのときの実績を踏まえて、私どもの厚生科学審議会の方であらゆる分野についての中間評価を受けたところでございますが、この段階でやはり三万人を超えた状況が続いておるというふうなことで、目覚ましい成果が出ていないという指摘を受けているわけでございます。

 その背景といたしまして、健康の問題はもちろん大きい問題でございますけれども、それ以外に、社会的、家庭の問題それから経済要因、社会要因、さまざまな要因に対しての取り組み、これをもっと総合的に連携をとって進めるべきではないかというような御指摘も受けております。

 これらを踏まえまして、来年という目標年次は極めて厳しいということ、これは事実として認識しなきゃいけないと思っておりますけれども、その第一期目の一〇年までの十年間の目標をまた顧みまして、その次のステップに向けて努力を続けてまいりたいというふうに考えておるところでございます。

笠委員 政府委員の方なのでちょっとお伺いしたいんですが、目標を定めるのはだれでもできるわけですね。しかし、やはり、この十年間で、例えば目標としていたところに一歩届かなかったとか、あるいは単年度で何かの状況があって物すごくふえるとか、そういうことであればいろいろな分析もできるんですけれども、ずっと悪い状況が続いているんですよね。ということは、逆に何もやっていないに等しいわけですよ。

 これは日本だけの問題じゃありません。同じように、例えば北欧諸国なんかは、やはり明確に目標を掲げて、かつては日本よりも自殺死亡率が高かった、しかし、今はそれがだんだん抑えられてきている、減少している。イギリスなんかもそうですよね。第二次まで含めて、しっかりと何年から何年という形で期間を切って、そして明確に年間何%まで下げるんだと。現に今七%にまでこの死亡率というものが下がってきているわけです。

 我が国の取り組みというのは、そういう北欧諸国や、あるいはイギリス、他の国々に比べて何が欠けていたか、そういうところからやはり見習う部分もあると思うんですよ。どのように認識されていますか。

木倉政府参考人 御指摘のように、北欧諸国、フィンランドのように大きく改善を見た国もございます。

 私ども、これらの例を見習わなきゃいけないと思っておりますが、日本におきまして、私ども厚生労働省としては、まずメンタル面の健康を保持していただきたいということで、心の健康づくりのことを、日ごろからなるべくそれを維持していくということ、それから、万が一そういう心の健康を害された場合でも早く受診していただいて、早くその治療を受けていただければ必ずこれを改善できるということ、それを促していくこと。

 それから、そのときに、先ほど申しましたように医療だけでは対応できない危険要因というのがございますので、そういうところにきちんとつなげていくネットワークを組んでおきませんと、職業の問題、家庭の問題につきましても、そういうことを有機的に相談を組めるような情報網がきちんとできていなかった、そういうところの強化を図るというようなことを自治体ともどもこの間も進めさせていただいているところでございます。

 まだどの部分が欠けているかということにつきましては、私ども、民間団体のお取り組みの状況も伺いながら、また、今、研究活動としても、実際の家族の方等の意見を心理学者の方等にも聞いて分析もしていただいております。これらを踏まえて、さらに改善を図っていきたいというふうに考えているところでございます。

笠委員 イギリスはちょっと別としましても、北欧各国というのは、人口からしても、日本でいえば一つの地域ですよね、レベルでいうと。

 この後もちょっとお伺いしたいんですけれども、ある意味では、もちろん国家レベルでしっかりとした枠組みと支援をしていく、あらゆる人たちを巻き込んでしっかりとした対策を立てていくということが何よりも大事だと思います、もちろん省庁の枠も超えて。そういうことで、今、内閣府の方にこうした本部ができて、担当の大臣も置かれているという状況になっているわけです。

 あと、一番大事なのは、やはり、それぞれの自治体を含めた地域レベルでの非常にきめの細かい支援というものを強化していく、あるいはそのための環境づくりをしていくことを国は最大やっていかないと、これはなかなか難しいと思うんです。

 いろいろな要因があります。医療だけじゃありません、本当にさまざま、これは雇用の問題もそうですし、あるいは家庭のあり方の問題、それぞれあるでしょう。

 そのときに、では今回そういうことで、初めてこれだけの大きなお金を、百億円ですか、三年間で基金を用意するということが決められたわけですけれども、私もちょっと県の方のお話、私神奈川なんですけれども、あるいは一部ほかの自治体の方、いろいろとヒアリングをしました。

 率直に、突然のように五月になって説明があってこういうことだと言われても、正直、市町村によって対応のばらつきが物すごくあるんですね。もう既に一生懸命取り組んでおられるところというのは歓迎している。しかし、やはりそうじゃないところもたくさんあるわけですよ。

 では何に使えばいいんだというようなことで、恐らく、議会でそれぞれ基金の条例をつくるところはあっても、なかなかこれは時間がかかりますよね。どういうことをでは現にやればいいのか。そういう問題点がある。

 もう一つは、これは三年ですよね。ただ、三年限りなのか、それとも中長期的にしっかりとそういった財政的な支援を、こういう補正ということじゃなくて、きちっと国としてやってもらえるかによって、これは長期的、継続的な問題なので、この一年、二年取り組んだからすぐ成果が出るというような甘いものじゃないと思います。そこのところの非常に不安の声があるんですけれども、大臣は、やはりこれは財政的な裏づけも含めて非常に長期的にしっかりとやっていくんだと、その点についてはどのようにお考えでしょうか。

野田国務大臣 先ほど北欧の話も出ましたけれども、北欧は中長期的な目標を立てて、目標をクリアされた。日本はようやくスタート地点なのかなと。これから中長期的な視野で一人でも多くの命を守っていくという中にあって、やはり肝心かなめは地方のそれぞれの取り組みなんですが、そもそも自殺を地方自治で取り組むという発想が正直なくて、市町村が今戸惑っておられるんですけれども、まずはやはり、この国では、自殺者を減らしていくんだ、命を守るんだということも大きな行政の仕事になりましたという、そういう意味で、ある意味起爆剤的な基金であろうかと思っています。

 この三年ぐらいかけて全国津々浦々に定着していただき、地方自治でしっかり対策をしていただくことになったときに、自殺対策に要する費用、お金というのがやはり恒常的に必要なんだということであれば、またそのときに政府の中で議論していただきたいと思うけれども、とにかく始めていかないことには、自殺対策をしない地方がまだまだ数多く残っている現状をやはり変えていかなきゃならないと思ってこういう基金という形にしたところです。

 あと、使い勝手につきましては、私自身も、自殺対策担当大臣になって、正直、それまで余りかかわったことがない政策でありますので、現場を拝見しなきゃわからないなと思っていたんですが、やはり、さまざまな最前線の、水際というんですか、取り組みがあって、電話一つにしても、自殺しちゃいけないよと言っちゃいけないそうなんですね。そんなことも大切な、そういうことをできる人材を養成するにもお金がかかりますし、また、そういうことをしてくれるNPO、民間団体がお金に苦労せずにそういうことができるような環境づくりというのも今回この基金を通じて実行することで、その大切さが国民にわかっていただければ、今後きちっとそういう対策費用というのは予算の中に盛り込まれてしかるべきだと思っております。

笠委員 あと、この手の補助金、これは一応十分の十になるわけですけれども、やはりいつも問題なのは、国として確固たる策がまだないわけですよ、今まさにスタート、であるならば、むしろ、余り一々国が口を出すのじゃなくて、こういう目的の中でしっかり使いなさいよということで、私は、もう地方にある程度ゆだねた方がいいと思うんです。

 今それぞれの都道府県の中において、どういう民間の団体にお手伝いをいただいているのか、あるいはどういうところに、例えば人の補充とかも含めて、人員も、今相談員の方だって減っています。やはりそれは、いろいろ言っても、財政的なものが厳しい中ではなかなか、ボランティアだけに頼っていくということで、できません。

 ただ、今回の基金、ちょっと伺っているところ、人員配置などにはなかなか予算というものが使いづらい。育成のためには使えるんですけれども。あるいは、既存の、今やっている事業については、一工夫、二工夫して新しい形にしないとこれはお金が使えないとか、さまざまあるわけですよ、問題点が。

 だから、なるべくその点は、地方の方から、それぞれの都道府県から上がってきたものを最大限尊重して、私は、これは使い勝手のもっといい形で、やっている取り組みもさまざま違いますから、本当に国の中でこういう形でやっていけば効果があるというものを確固たる自信を持ってあるのであれば別ですよ。いろいろな取り組みを、今モデルケースも含めて紹介したり。あるいは、都市と地方とでは全く状況が違いますし。ですから、そういう点だけはぜひ御留意いただいて、本当に対策につながっていくような形の基金というものを運営していただきたいと思いますけれども、一言。

野田国務大臣 おっしゃるとおりで、自殺対策も万全ではありません。今試行錯誤、手探りの中で、多くの民間団体のいろいろなノウハウを情報収集しながら、全く情報のないところに橋渡しをしていくということ。

 基本的にこの基金は都道府県ごとに造成しまして、そこの、それぞれの地域の特性に合った自殺対策の使い道というのに利用いただけるよう、基本的には自由な、メニューなしです、これをしなさいというような補助金ではありませんので、それぞれの創意工夫の中で使っていただければありがたいと思っています。

笠委員 この大綱の中でも、実態解明ということがまずは大事だと、さまざまな要因がありますので。ただ、これは非常に、政府としてはこの取り組みはおくれていたと思います。今ようやく動き出したというところなんですけれども、一点、ちょっとお伺いしたいんです。

 自殺未遂をされる方、その方がまた再び自殺をはかられるということが非常に多いんですけれども、その未遂をされた方がどれぐらいおられて、その方々が例えばうつ病などの精神疾患みたいなものを患っておられて病院に通っていたのか否か、そういったことの実態というのは政府としてはしっかりと把握あるいは調査をされているんでしょうか。

松田政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、自殺未遂者の把握という点でございます。

 警察庁の、いわゆる自殺を実際された方につきましての統計、これで、未遂歴があったかどうかということを集計しておるわけでございますけれども、これによりますと、平成十九年中の、三万三千人の亡くなられた方のうち未遂歴のある方の総計は五千六百六十人。なお、すべての年齢階級で未遂歴のある方の割合は女性が多くなっている。一つ、自殺された方と未遂者の関係ということではこういう統計が出ております。

 また、消防庁の統計におきまして、医療機関に搬送されました者の自損行為による救急自動車の出場件数及び搬送人数、こういう統計がございます。これによれば、十九年中の救急自動車の出場件数は七万一千八百六十六件、搬送人員五万二千八百七十一人ということでございます。呼んだけれども搬送するに至らなかったという方もおられまして、搬送された方は五万二千でございます。未遂者の方全員が本当に医療機関に搬送されるということでは必ずしもないということで、では総数はどうだったのかということはなかなか申し上げることが困難ということは御理解をいただきたいと思います。

 いずれにしましても、私どもの内閣府で、有識者で自殺総合対策の在り方検討会というのをやったんですけれども、この報告書には、未遂者は既遂者の少なくとも十倍であるというふうな有識者の見解が出ておりまして、そういったところを、私ども、自殺未遂者の方が本当に自殺のハイリスク者ということを踏まえまして、今後とも把握の充実にさらに努めてまいりたいと思っております。

 それから、今出ました、うつの関係はどうなんだということでございます。自殺ということにかかわらず、うつ全般については、うつ病など経験がある方の……(笠委員「いいです」と呼ぶ)よろしいですか。

笠委員 そうしたら、今うつのことをおっしゃっていたので、自殺をされた人の中でうつ病などで病院にかかられていたという方は大体どれぐらいですか、何%ぐらいですか。端的にお答えください。

松田政府参考人 うつ一般では二五%しか医療を受けておらず、精神科にも受診したことが……(笠委員「自殺された方の中で」と呼ぶ)はい。

 自殺だけでは、民間の小サンプルのデータでございますけれども、相談された方が自殺者の七割、そのうちの五八%が精神科にかかっておられるということで、亡くなられた方の四割強という方が精神科にかかっておられたというふうなデータがございます。

笠委員 恐らく今の数字というのは、民間の自殺実態解析プロジェクトチームによる自殺実態白書の数字だと思うんですよ。やはりこういうことをもっと政府で、民間の方任せじゃなくて、あるいは民間の方をもっと支援する形でもいいんだけれども、実態解明というのはそういうことをやらないと、どういうふうな経緯であるいは要因でということがわかりませんよね。これは、なるべく細かくいろいろなサンプルを、やはりケース・バイ・ケースでなかなかそれが難しい場合だってあります、もともとが、要因自体が区分できない方々もおられますから。ただ、そこあたりというのは、これはやはりやっていただきたいと思います。

 それで、私が一つ疑問なのは、今確かに、自殺を予防するというときの一つの合図というかシグナルとして、その前にどうしてもうつ状態とかいろいろな精神的な面で不安定な状況になるというケースが多い。もともとが経済的な理由であるとか家庭内だとかいろいろなあれがあって、そこから精神的にちょっと不安定になっていく、それが時にはうつ病ということで一番多いんでしょうけれども。

 そうすると、病院に、今おっしゃるように、民間の調査で五八%ですか、精神科医の方々にかかったにもかかわらず、多くの方が亡くなっているわけですよね。それはどうしてなんですか。本来であれば、そこでしっかり何とか思いとどまらせる。みんな生きたいと思うんですよ。だから、そこで救ってあげることができなかったのか、その点についてお伺いしたいと思います。

木倉政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘のように、今の自殺実態白書におきましても、精神科の受診はしているんだけれども、そこで結局自殺ということを食いとめられなかった方が多いという御指摘を受けているところでございます。

 自殺に至ってしまう方々の多くが精神的に追い詰められた状態になりまして、最後の段階では何らかの精神疾患を持つ、その中でも特にうつが多いということは指摘を受けているところでございます。うつ以外ももちろん、統合失調症であるとか、薬物、アルコール等の依存症等もあるわけでございますが、うつがやはり圧倒的に多いということは指摘を受けておるところでございます。

 うつの方々の受診の状況それ自体もまだまだ日本では少ない、最近は大分かかられるようになってきたんですが、少ない状況があって、もっと、ふだんのかかりつけ医さんでもうつの状態に対して適切な診断、治療、それから、やはり専門的な治療につなげていくことが必要ですので、精神科の専門医さんにつなげていくようなノウハウを持っていただくということの研修等も全国的にもやっております。

 それから、精神科救急等で、自殺を図ってしまった、体を傷つけてしまったんだけれどもということで救急で運び込まれてくる方に対して、一般の救急外来のところで、精神科の方々にきちんと診てもらわないとまた再び自殺を起こすおそれがあるぞということに気がついて、早くつなげていくこと、これがまだ十分にできていないので、これは昨年専門家の先生方にガイドラインをつくっていただきまして、これを研修に役立たせていただいておるところでございます。

 それからさらに、医学だけじゃなくて、社会的な、経済的な要因というところの相談の体制につなげていく、ここが欠けておるということはやはり御指摘のあるところだと思っております。そこに対して、地域でも協議会組織をつくっていただきまして、就労の関係の方々それからいろいろ社会的なカウンセリングをやっている方々とともに取り組んでいく体制を組んでいただいている、そういう取り組みも行っておるところでございます。

笠委員 ちょっと時間がなくなってきたので、あと一つ二つだけですけれども。

 今の問題で、一つ私が問題意識を持っているのは、今現に精神科の先生方、私もちょっとお会いしてお話を伺ったら、忙しいんですよ。今、精神科の病院というのはどんどんふえているし、心の病を患っている方が物すごくふえているので。そうすると、五分間診察じゃないけれども、一人一人と向き合う時間がないんです、やりたくても。あるいは、中には、申しわけないけれども、本当にそういうことで売り上げを上げておられるような方もおるやにも伺っています。これはごくごく一部だけれども。

 そうすると、結局薬に頼る。薬に頼ってしまうわけですよ。ことしになって、パキシルとかルボックスとか、いわゆるSSRI、これが自殺との因果関係があるんじゃないか、あるいは、人に対して大変攻撃的に、殺意を抱くとか、衝動的に傷害を起こしてしまうというような例が実際に、因果関係というのが今明らかになってきているんです。

 一つは、今、こうした抗うつ剤を含めた薬について、やはり副作用が少しでもあるのであれば、あるから、薬というのはもともと効果もあるけれども副作用もあります。ただ、それが一般の人たちはなかなかわからないですね。精神科の先生のところに行きました、そしてそこで薬をもらいました、安心するわけですよ。それで多くの方も確かに効果があって治られている方もいると思う。でも、薬の投与の間違いであったり、あるいは、本当はうつ病じゃないんだけれども、要するに躁うつなんだけれどもうつ病と診断されてと、非常にこれは難しい問題なんですね。

 データとしても、これは厚生労働省、薬だけによる治療の場合の再発率よりも、心理療法、いろいろなカウンセリングとか、そういう手間も時間もかけて一人一人と向き合っていきながら例えば薬も一部併用する場合の方が再発率が非常に低いというような、これは民間の調査では。そういうことは御存じですか。把握されていますか。

木倉政府参考人 手元に具体的なデータがあるわけではございませんけれども、御指摘のように、やはり精神科の診療におきましては、きちんとお話を聞いていただき、時間をかけてのカウンセリング等をやっていただくこと、これが効果があるということは我々も御指摘を受けているところでございます。

笠委員 その点はもう少し詳細に調査していただきたいと私は思うんです。

 それと、精神科の先生たちをやはりバックアップする体制。もうお医者さん一人では無理です。そこにカウンセリングあるいはいろいろな人たちを巻き込んで、何か総合的な体制をとっていくような、実際そういう取り組みをしておられる病院だってあるわけですね。だから、そういうところにもっと、いわゆる診療報酬的な話だけじゃなくて、やはり自殺される方を一人でも少なく、一人も自殺者を生まないぐらいの大きな目標を掲げながら、そこのところの絶対支援を私はやっていただきたいと思うし、短絡的に薬だけでというようなことじゃなくて、あらゆる、本当にきずなというか、人と人のつながりが私はすべてだと思っているので、そういう方向での対策というものもぜひお考えをいただきたいと思いますが、大臣に最後、その点をお答えいただきたいと思います。

野田国務大臣 大変すばらしい御意見だと思います。

 総合的に取り組まなきゃならないことで、メンタル、そういう病気に関することもそうですし、社会的要因も、ただただ自殺対策ではなく、ちゃんと雇用があることとか、ちゃんと企業が経営できることとか、そういうことも含めてやはり全体的にそういう対策に取り組んでいかなきゃならないと思っています。しっかり検討していきます。

笠委員 時間が参りましたので終わらせていただきますけれども、また改めて、機会があればこの問題、ちょっと幾つかまだ聞きたいこともあるので、またひとつよろしくお願いいたしたいと思います。

渡辺委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 私は、きょうは、ユネスコ世界遺産登録をしたところの文化財保護の問題、それから、これから遺産登録をしようというところの文化財保護の問題を中心にして、考え方というものを伺っていきたいというふうに思います。

 それで、一つは、例えば京都の場合ですと既に一九九四年に登録されたわけですが、登録文化財というのは大体京都の周辺部が中心で、中心部というのは緩衝地帯なんですね。説明書きなんかを見てみますと、しばしば発生した大火や兵火のため、相当部分は焼失してしまいましたが、郊外の山ろくには各時代にわたる代表的建造物や庭園が保存されていますというふうにしています。そして、その登録地域というのは、登録資産とその周辺の緩衝地域及び歴史的環境調整区域を加えた約二百七十八・四平方キロとしているわけです。

 実は、この緩衝地域に、京都の場合ですと歴史が古いですから、平安時代以降の千二百年ぐらいの短い時代感覚じゃなくて、縄文から、弥生から、邪馬台国があった時代と同じ時代の遺跡から、飛鳥、平城、平安の遺跡、さらにその後の鎌倉、室町の新しい時代の遺跡、遺構、遺物などが、大体、高野川と賀茂川と合流して鴨川がはんらんするたびに流されるものもありますが、そのことによって埋蔵文化財として蓄積されてきたものとか、それから、兵火に遭って一度焼けて野原になっておったけれどもまた再建されるとか、だから、層をなして文化財が出てくるところなんですね。そういう点では、この地域というのは非常に大事な地域だと思うんです。

 最近ちょうど、私、今大阪なんですけれども、大阪の中之島の方へ新しく地下鉄が開通したということもあって、京都の出町柳という終点から一本でビジネス街へ行けるということもあって、その緩衝地帯の中で、今までは民家だから文化財は地中に埋もれて残っておったところなんですけれども、そこが、大規模にマンション開発とか、あるいは大型学生下宿と称するワンルームマンションとか、こういうものによってかなり大規模な建設ラッシュに見舞われているわけですが、世界遺産登録の町で、不動産業者の方は、史跡の範囲確認調査を初め、数千年に及ぶ京都の歴史をひもとく遺跡、遺構の調査なんかはやらないで、歴史的遺産や景観を壊して開発に突っ走ってしまっている、こういう現状というものが今生まれてきております。

 そこで、文化庁に最初伺っておきますが、ユネスコ登録した京都の緩衝地帯のようなところで、遺跡や遺構がないことを調査して確認しなくても、大型開発というものはやって構わないという考え方かどうかを伺っておきます。

高杉政府参考人 マンションの建設等の土木工事を行う、そういう場合、その土地が既に遺跡があると判明している、いわゆる文化財保護法上の周知の埋蔵文化財包蔵地に当たる場合には、これは文化財保護法に基づきまして、所在の地方公共団体において埋蔵文化財保存のための試掘調査、そして確認調査を実施して、遺跡の有無を確認した上で工事を行うということになっております。

 また、周知の埋蔵文化財包蔵地以外の土地、ここにおきましても、土木工事を行う際には、これは事前の発掘というのは義務づけられてはおりませんけれども、遺跡が発掘された場合には、文化財保護法に基づきまして、直ちに都道府県教育委員会に届け出を行うこととされております。そして、関係の地方公共団体において確認をし、適切な保存措置を講ずることとなっておるわけでございます。

 したがいまして、土木工事などの実施に当たりましては、事前の発掘調査、これをやるかどうかにかかわらず、遺跡の保存が図られるシステムがとられているということでございます。

吉井委員 大臣には一番最後に伺いますけれども、要するに、文化財というのは調べてみないとわからないんですよ。しかし、京都みたいな数千年の歴史を持つ町の場合にはまだ実際に調査されていないところもたくさんあって、そもそも、ないことが確認されないと、一遍壊してしまったらしまいですから、そういうことが非常に大事だというふうに最初にまず申し上げておきたいと思うんです。

 次に、ユネスコ登録を新しくしようとしている百舌鳥・古市古墳群について聞きたいと思うんです。

 二〇〇二年に宮内庁書陵部長は、陵墓の中でも、歴史上または学術上価値が高いと評価し得るものは、文化財保護法に言う文化財に該当すると明言しておりますが、学術的な観点からでも古墳に立ち入ると違法行為とみなされるのか、何か立ち入ってはならないという法的根拠があるのかどうか、学術調査の場合です、伺っておきます。

本田政府参考人 お答えいたします。

 陵墓は、国有財産法上、皇室用財産として、皇室の用に供せられるものとして宮内庁が管理をしております。また、陵墓は、現に皇室において祭祀が継続して行われている、また、皇室と国民の追慕尊崇の対象となっている、そういうものでございますので、そういった点から、陵墓の静安と尊厳の保持、これが最も重要なことであるというふうに考えております。

 したがいまして、部外の方に、陵墓に立ち入る、あるいは発掘させるということについては慎むべきものであるというふうに考えております。

 ただ、学術研究上の要請、これにこたえるという意味でも、陵墓管理の本義に支障を及ぼさない限りということではございますけれども、一定の区域内への立ち入りでありますとか、あるいは陵墓におきまして保全工事を行いますので、そういった工事の際の調査の際の見学というようなことで、学術研究上の要請にもおこたえをしているというふうに考えております。

吉井委員 昔の一課長の通牒というのでやっているのであって、法律上は根拠はないですねという、この確認だけなんです。

本田政府参考人 宮内庁として、皇室用財産の管理をしている、いわばそういう管理者の立場としてただいまのような取り扱いをしているということでございます。(吉井委員「法的根拠はありませんね」と呼ぶ)法的というか、強いて言えば、国有財産法上の管理ということになろうと思います。

吉井委員 文化財保護法によって、これは非常に価値の高いものだ、文化財に該当するということがもともと書陵部長の答弁でありましたし、そして、これについては、学術的な観点から古墳に立ち入る行為の規制ということについては法的根拠はない、このことをレクチャーの段階でちゃんと聞いているんですが、今あなたがおっしゃった、よくわかっているんですよ、課長の通牒は。昔の通牒の話はわかっているんだけれども、課長の通牒よりも法律の方が上だから、だから法的根拠はありませんねということだけ確認しているんです。

本田政府参考人 繰り返しになるかもしれませんけれども、宮内庁として皇室用財産の管理をしているという立場から、その陵墓の静安または尊厳の保持という見地から現在のような取り扱いをしているということでございます。

 また、これも繰り返しになって申しわけございませんけれども、あわせて、学術研究、そういった面の重要性ということもよく認識しておりますので、そういった点につきまして、先ほど申し上げましたように、一定区域内の立ち入りでありますとか工事の際の見学というようなことも認めているというところであります。

 また、私どもで、そういった工事の際の調査その他の調査の結果、そういったものにつきましては、書陵部の紀要その他で国民の皆様にも公開しているというところでございます。

吉井委員 文化財保護法という法律があって、そして、その法律よりも一課長の通牒の方が上になるということはまずないんです、日本は法治国家ですから。ですから、法的根拠はありませんねということを確認したのはそういうことなんです。法律を無視するようなことをやっちゃならない。

 何でもかんでも全部掘ればいいとか、そんなことを言っているんじゃないですよ。

 それで、私はもう一つ確認しておきたいのは、立入調査は一部学術的には認めているというお話ですが、墳丘テラス一段までという制約がついております。この点について、宮内庁の、立ち入りの範囲を墳丘第一段テラスまでと制約をつける何か特別の理由があればお聞かせください。

本田政府参考人 ただいまの陵墓の立ち入りの関係につきまして、取り扱い方針というのがございまして、これに基づいて行っているわけでございます。

 陵墓の立ち入りということでございますので、まず第一に陵墓の管理ということで、陵墓等の静安と尊厳の保持を図るというその本義、これを踏まえた上で、さらに業務の遂行や安全に支障のない範囲ということで、そういったさまざまな観点からの配慮をいたしまして、現在、立ち入りの範囲としては、通常、職員が管理におきまして巡回路として使用しております、またそういう意味で安全が確認できております墳丘の最下段テラスの巡回路までの立ち入りを認めているということでございます。

吉井委員 学術調査をやる方は、世界じゅう、アフリカであれどこであれ、東南アジアであれ、調査に行くわけですから、だから安全という点では本人がちゃんと考えて皆やるわけですから、第一段テラスまでと制約をつける理由というのは今のお話だったらないということが言えるというふうに思います。

 次に、地震考古学の研究者によりますと、大山古墳や誉田御廟山古墳などでは、一九二六年の測量の地形図でも過去の巨大地震の痕跡が認められます。これについては国土地理院の調査したものがありますが、誉田御廟山古墳の真下を活断層が走っていますね。それから、田出井山古墳、大山古墳、ミサンザイ古墳のすぐそばを活断層が通っているということも明らかになっております。

 実際に地震等で崩れたりいろいろなことがありますが、精密な地形測量図を作成するとともに、こういう点では、大都市部にあるわけですから、都市防災のためにも、広くやはり学術分野には公開を行う、こういうことが大事なことだと思いますが、この点、ごく簡潔にお答えいただきたいと思います。

本田政府参考人 陵墓内の立ち入りの関係でございますけれども、学術研究上の必要性というようなことも踏まえましてこの取り扱い方針というものがございます。教員あるいは研究者の方、特に考古学などの歴史学とかそういった関係の教員、研究者の方、そういった方々にただいまのような立ち入りを認めているということでございますけれども、さらに、学術研究上必要であろうということであれば、必要な立ち入りということは考えるという余地はあると思います。

吉井委員 ことし二月の予算委員会の分科会で、文化庁は、箸墓古墳の被葬者はだれであるのかわからないというふうに答弁をしました。これは、ヤマトトトヒモモソヒメの墓ということもあれば、卑弥呼の墓という説も有力な一つであります。だれなのか確かめない間から安寧と静ひつを理由にして調査を拒否するということではなくて、それをやりますと科学的説明がつかなくなりますから。最近も、箸墓古墳の周辺の土器の放射性同位元素分析で、紀元二五〇年ごろ、すなわち邪馬台国の卑弥呼の墓の可能性があるということなどが議論されたりもしておりますが、こういう点ではやはり調査というものが大事なことだと思うんです。

 ユネスコ世界遺産登録しようとしている百舌鳥・古市古墳群の中の津堂城山古墳について次に伺いますが、築造時期は、出土した円筒埴輪から大体四世紀の末ごろと見られるんですね。河内の地に最初につくられた巨大前方後円墳という位置づけがされておりますが、これはヤマト王権の河内地域への進出を物語るものと考えられて、歴史上の画期をなす、そういう時期の古墳として重要な意味を持っていると思うんです。

 文化庁に伺っておきたいのは、重要な意味あるものではないかということと、津堂城山古墳の被葬者はだれなのかを明らかにしていただきたい。それから、誉田御廟山古墳の被葬者は発掘調査で既に明らかになっているのかどうかを伺いたいと思います。

高杉政府参考人 先生お尋ねの城山古墳、これにつきましては、私どもとしても、その価値を認め、史跡として指定をしております。

 そして、その城山古墳それからいわゆる応神天皇陵古墳、これの被葬者につきましては、学術的には確定をしていないものと承知をしておるわけでございます。

 一般的に、古墳の被葬者について発掘調査で判明するということは非常にまれな例でございますけれども、史跡であります城山古墳及び応神天皇陵古墳の外濠、外堤、これの発掘調査においても被葬者が判明する成果というのは得られていないものと思っております。

吉井委員 この津堂城山古墳というのは、一九一二年に、いわゆる盗掘を受けて、竪穴式石室におさめられていた巨大な長持形石棺が出土しました。その直後に京大の梅原先生らによって簡単な調査は行われておりますが、全容はまだよくわかっていません。石室や石棺があった部分は埋められて、現在は藤井寺陵墓参考地としてこの墳丘の頂上部のごく一部だけ宮内庁が管理して、立ち入りができなくなっています。

 文化庁に伺っておきたいのですが、考古学の世界では、津堂城山古墳の長持形石棺というのは極めて有名な実例として挙げられているものだと思いますが、どうですか。

高杉政府参考人 先生今御指摘ありました、この城山古墳から出土した長持形石棺、これは、明治四十五年に地元の人たちが記念碑に設置する石材を求めて発掘した際に発見したものと承知しております。

 この石棺、長さ三・五メートル、幅一・五メートル、高さ二・一メートルというものであり、石棺の中から銅器を初めとする多くの副葬品が出土したということを承知しております。

 このような大きな長持形石棺というのは、四世紀から五世紀にかけて近畿地方の巨大な前方後円墳を中心に発見されているものでありまして、私どもでも、これは史跡を構成する文化財の一つであると認識しております。

吉井委員 文化庁に引き続き伺っておきますが、津堂城山古墳の石室、石棺から、今おっしゃった巴形銅器とか銅鏡、鉄のよろいや鉄の武器、大量の朱など貴重な遺物が出土しておりますが、ちょうど朝鮮半島にも類例が見られて、当時の日本と大陸との交流を示す貴重な史料であるわけですが、古墳の被葬者がわからないまま、石室や石棺から出土した遺物を宮内庁が所蔵し続けて、歴史的資料としての研究活用に制限が今かかっています。所有権を文化庁に移して、やはりこれは国民だれもが活用できるようにするべきだと思うんですが、伺っておきます。

高杉政府参考人 これにつきましては、現在宮内庁の方で所有されているものでございまして、宮内庁の方でまたその調査等についてはいろいろ判断がなされるものと思っております。

吉井委員 津堂城山古墳の陵墓参考地以外の部分は文化庁が史跡指定しているんですね。だから、前方後円墳の円墳の上の方のごく一部だけ宮内庁が管理して、あとは全部史跡指定を文化庁がやっている。

 これは、よく見ますと、古墳の墳丘の周りには極めて広大な周庭帯と呼ばれる領域があります。大阪府と藤井寺市が調査したところでは、周庭帯というのは、内濠、内側の堀のすぐ外側にある内堤、それから内堤の外側に外濠、外にも堀があって、外濠の外側の外堤もあることが判明しています。つまり、埋まってしまっていて今は地面から見えない外濠、外堤を含めると全長は四百メートルを超えて、古墳全域を考えると、百舌鳥・古市古墳群の中でも屈指の大きさのものということになります。

 古墳というのは、墳丘だけでなくて、やはり築造時につくられた外側の周濠や周堤まで含めてその範囲と考えるべきものだと思うんですが、津堂城山古墳は一九五八年に国の史跡に指定されておりますが、これは内濠の部分だけが史跡の範囲なんですね。外濠の部分は史跡になっていないのでどんどん開発が進んでしまって、今、ユネスコ登録しようかというときに、開発の方がどんどんどんどんいってしまっている。だから、築造時の津堂城山古墳の本来の姿が破壊されるおそれがある、こういう事態にあります。

 やはり、外濠の範囲は、昔の航空写真、地形図を見ても、非常にくっきり明らかなんですが、一方でユネスコ登録だと言い、一方で開発に任せて破壊してしまう、これはやはりおかしいと思うんですね。私は、住民の皆さんに協力を求めて、既に住んでいる方がいらっしゃいますから、外濠部分も含めて史跡指定の網をかけてきちんと保護をする、そういうことが必要ではないかと思うんですが、文化庁に伺っておきます。

高杉政府参考人 城山古墳につきまして、その墳丘と内濠部分を史跡に指定しておるところでございます。

 現在、先生今御指摘になった、史跡に指定されていない内堤でありますとか外濠でありますとか外堤に想定される部分、これにつきましては、これまで、大阪府教育委員会とか藤井寺市教育委員会が開発行為に伴う事前の発掘調査を実施してきたところでございます。

 これらの箇所の、今御指摘の史跡指定につきましては、今後、これらの教育委員会が実施する調査において遺跡の内容や範囲が明らかにされ、その価値が十分明らかになった時点で私ども検討すべきものだと思っています。

吉井委員 次に、少し飛びますが、奈良の方の、平城宮大極殿の北側に市庭古墳と呼ばれる円墳があります。宮内庁は、これは平安時代の平城天皇陵という名前で陵墓にしております。円墳だと思われていたんですが、平城宮の発掘調査によって、全長二百五十メートルを超す前方後円墳で、二重の堀を持つ、五世紀に築かれた大規模な古墳だということが判明しました。

 宮内庁に伺っておきますが、平安時代の天皇である平城天皇が、平城宮造営前の五世紀に存在していたということになるわけですが、これはどういうふうに説明されるのかを伺っておきたいし、また、文化庁の方には、平城宮の造営によって平城天皇陵が破壊されていた、こういうことになると思うんですが、文化庁としてはこのことをどうお考えかを伺います。

本田政府参考人 市庭古墳、私ども、第五十一代平城天皇、楊梅陵として宮内庁で管理をしているところでございます。この陵の治定は江戸末期の文久年間に行われているわけでございますが、それに基づきまして、私どもは楊梅陵として現在管理をしているというところでございます。

 学術研究の成果というのがいろいろあろうかと思いますけれども、ちょっとそこまで私の方でコメントする余地はございませんので、申しわけございません。

高杉政府参考人 平城京の造営につきまして、そこの中でどのような工事が行われたのかということについてはつまびらかでない部分というのがございますが、続日本紀によれば、平城京の建築というのは七〇八年から始まったと考えられておりまして、広大な平城京におきましては、大極殿などさまざまな建造物の造営がなされたため、遷都をした七一〇年以降も造営は引き続き行われていたものと思っております。

吉井委員 だから、平安時代の平城天皇の墓だとしていたものが、実は古墳時代のものであったということが学術的には明らかになってきていて、しかも、その墓を平城宮をつくるために壊してしまった、これはもう歴史の事実なんですよ。

 ですから、私がさっきから言っておりますのは、静ひつ、安寧の話は少し置いておいて、やはり学術的にきちんとした研究をやらないとおかしいじゃないかということを言っているわけなんです。

 それで、文化庁に伺っておきますが、ウワナベ古墳が近くにありますが、周濠部分は陵墓参考地の対象から外れているんですね。墳丘、お山だけが宮内庁の管理。その周濠の地下部分に高速道路を通そうという計画がありますが、これは、ウワナベ古墳が皇室の祖先の墓ということならば、周濠と古墳というのは本来一体のものなんですよ。その周濠の部分を壊してしまうというのは、まあ、戦前の言葉で言えば、不敬罪に当たることですね。旧宮内省が黙認しているということに当たるぐらいの問題だというふうに思うんです。

 文化庁は、今回のトンネル掘削の前に発掘調査の必要はないと考えているのかどうかを伺います。

高杉政府参考人 先生御指摘のウワナベ古墳につきましては、京奈和自動車道の大和北道路の建設計画に当たりまして、国土交通省におきまして、各種の検討委員会を設置して有識者の意見を伺いつつ、文化財保護の観点も含め慎重に作業を進めていると聞いております。

 このウワナベ古墳は、周濠を含めて周知の埋蔵文化財包蔵地となっておりまして、現在の高速道路の計画では、当該古墳の周濠に隣接する国道二十四号線の地下四十メートルのところをトンネル構造で通過するということを聞いております。

 地下約四十メートルということが計画されているわけでございますけれども、遺構面より、これは大体地下一メートルぐらいでございますので、はるか下になるものと私ども考えておりますけれども、今後の工事の具体的なやり方に応じまして、必要があれば発掘調査を行うということになると考えています。

吉井委員 古墳というのは、本来、墳丘と周濠と一体のものであり、場合によっては、内堤の外にさらに周庭帯があって外堤がある。全部があって初めて古墳なんですよね。

 前方後円墳という一定の時期にあらわれたもので、今、百舌鳥・古市古墳群として世界遺産登録をしようかということを考えているわけでしょう。そういうときに、そもそも皇室管理の部分はお山だけだから周庭帯はどうでもいいみたいな発想とか、私は、そういうふうなことになったらもうとんでもない話じゃないかと思うんですよ。

 そこで、河村官房長官に伺っておきたいんですが、きょう、京都、大阪、奈良の、ユネスコ世界遺産登録をしているところでの文化財保護の問題、それから、これから世界遺産登録をしようとしているところでの文化財保護の問題、これは、ずるずるいっていると、開発の中で、貴重な、せっかく登録した町なんだけれども、緩衝地帯のところで先に破壊されてしまう。そんなことをやっていたら、私はもう世界の恥になると思うんですよ。

 ユネスコ遺産登録を目指すからには、やはりユネスコに働きかける政府として、現在ある文化財については、もちろん、文化財の中には、発掘調査をして範囲を確認し、残すものもあれば、記録保存にとどめるものとか、それはあるにしても、まず調べないことにはわからないわけですね。ですから、そういう点で文化財保護行政を、ユネスコ遺産登録したところもこれから目指すところも含めて、きちんと取り組んでいくということについては、どうも宮内庁や文化庁に任せておいたんじゃ頼りなくて仕方がないんですよ。ここは官房長官の方に、やはり文化財保護というものについてきちんとしたお考えというものをお聞きしておきたいというふうに思います。

河村国務大臣 ユネスコの世界遺産、既に登録されたものもふえてまいりましたし、またこれから目指す地域もございます。そうした日本にとっての大事な、貴重な、国民のまさに財産ともいうべき文化財を守り、また活用していく、これは非常に大事なことだというふうに基本的に考えております。

 そこで、一方では開発が行われる、こういう場合には、やはり貴重な文化財、遺産を守るという視点は大事にしなきゃいかぬと私も思います。これまでも必要に応じて試掘調査もやっておりますし、また、遺跡が発見された場合には確認調査をやって、これをどのように適切に保存するかという指摘もやってきたところでございます。

 平城京も千三百年のときを迎えまして、そこにはいろいろな問題があることも承知しておりますが、やはり国民全体の貴重な財産を守るという観点、この観点を持ちながら適切な対応をしなきゃいかぬ、私もそのように思っております。

吉井委員 私、最後に一言申し上げておきたいのは、まず発掘してみて、何もなければ開発ということは、これは当然あり得ると思うんですよ。見つかったら、それを記録保存にとどめるのか、あるいは全体として史跡指定して残すのかとか、調べないことにはわからないんですね。だから、まず調べてきちんとした対応をとるということだけもう一遍確認しておいて、質問を終わりたいと思います。大臣、どうぞ。

河村国務大臣 当然、調査をする、このことは必要だというふうに考えます。

吉井委員 質問を終わります。

渡辺委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時十一分散会


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