衆議院

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第9号 平成22年4月22日(木曜日)

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平成二十二年四月二十二日(木曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 田中けいしゅう君

   理事 井戸まさえ君 理事 大泉ひろこ君

   理事 小宮山洋子君 理事 松本 大輔君

   理事 村上 史好君 理事 井上 信治君

   理事 平井たくや君 理事 高木美智代君

      石毛えい子君    磯谷香代子君

      市村浩一郎君    打越あかし君

      小原  舞君    緒方林太郎君

      大島  敦君    岡島 一正君

      木村たけつか君    岸本 周平君

      工藤 仁美君    熊田 篤嗣君

      後藤 祐一君    笹木 竜三君

      菅川  洋君    橘  秀徳君

      中島 正純君    橋本 博明君

      橋本  勉君    古川 元久君

      三村 和也君    矢崎 公二君

      甘利  明君    小渕 優子君

      鴨下 一郎君    小泉進次郎君

      橘 慶一郎君    長島 忠美君

      大口 善徳君    塩川 鉄也君

      浅尾慶一郎君    柿澤 未途君

    …………………………………

   内閣府副大臣       大島  敦君

   内閣府副大臣       古川 元久君

   参考人

   (政策研究大学院大学教授)            飯尾  潤君

   参考人

   (東京新聞論説委員)   長谷川幸洋君

   参考人

   (拓殖大学名誉教授)   田中 一昭君

   参考人

   (専修大学大学院法務研究科(法科大学院)教授)  晴山 一穂君

   内閣委員会専門員     上妻 博明君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十二日

 辞任         補欠選任

  逢坂 誠二君     工藤 仁美君

  園田 康博君     矢崎 公二君

  田村 謙治君     熊田 篤嗣君

  津村 啓介君     橘  秀徳君

  寺田  学君     菅川  洋君

  橋本 博明君     橋本  勉君

  漆原 良夫君     大口 善徳君

  浅尾慶一郎君     柿澤 未途君

同日

 辞任         補欠選任

  工藤 仁美君     逢坂 誠二君

  熊田 篤嗣君     三村 和也君

  菅川  洋君     寺田  学君

  橘  秀徳君     木村たけつか君

  橋本  勉君     橋本 博明君

  矢崎 公二君     小原  舞君

  大口 善徳君     漆原 良夫君

  柿澤 未途君     浅尾慶一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  小原  舞君     園田 康博君

  木村たけつか君    津村 啓介君

  三村 和也君     田村 謙治君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 国家公務員法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三二号)

 国家公務員法等の一部を改正する法律案(塩崎恭久君外四名提出、衆法第九号)

 幹部国家公務員法案(塩崎恭久君外四名提出、衆法第一〇号)


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     ――――◇―――――

田中委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、国家公務員法等の一部を改正する法律案並びに塩崎恭久君外四名提出、国家公務員法等の一部を改正する法律案及び幹部国家公務員法案の各案を一括して議題といたします。

 本日は、各案審査のため、参考人として、政策研究大学院大学教授飯尾潤さん、東京新聞論説委員長谷川幸洋さん、拓殖大学名誉教授田中一昭さん、専修大学大学院法務研究科(法科大学院)教授晴山一穂さん、以上四名の方々から御意見を承ることにいたしております。

 この際、参考人の皆さんに一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席を賜り、まことにありがとうございました。各案について、それぞれのお立場から忌憚のない御意見を述べていただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 飯尾参考人、長谷川参考人、田中参考人、晴山参考人の順に、お一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、参考人各位に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、飯尾参考人にお願いいたします。

飯尾参考人 本日は、お招きいただきましてありがとうございます。政策研究大学院大学で政治学を研究しております飯尾と申します。その観点から、統治機構の観点から、全体的な公務員制度の姿について思うところを述べさせていただきます。

 なお、内閣府参与としてこの問題について相談に乗ってくれというふうに政府の方から頼まれておりますけれども、月に一度程度質問に答えている程度でございまして、政府の部内の検討過程については必ずしも詳しくありませんし、大臣、副大臣その他がどのようにお考えになっているかちょっと存じないところもあるものですから、私の意見を述べさせていただくということで、よろしくお願いいたします。

 さて、今回、政府から出されました法案、それから議員から出されました法案を見て感じますこと、かなり複雑なところもあるものですから、ざっとしか承知しておりませんけれども、大変印象的なことは、両者極めて類似しているということではないかというふうに思います。

 私の承知しているところでは、公務員制度改革基本法案以降、超党派で取り組んでこられたということでありますけれども、両法案は、骨格においてほぼ一致しておりまして、大体同じ項目、細部においてというか具体的なところについて幾つか違うところがあるというのが非常に特徴でございます。

 私の意見から申しますと、政権交代があり得る現在の中では、与野党いずれの立場にあっても、いずれ政府を運用する可能性があるという中では、やはりできるだけこういう問題は超党派で、与野党ともに合意をつくって進められるのは非常に大切なことだというふうに考えておりまして、その点で、法案の内容が似ているということは大変よろしいことではないかというふうに思います。

 その上で、幾つかの点についてお話をしたいと思います。

 今回の法案に限らずでございますけれども、公務員制度改革を今するということについては、私は、大きく分けて三つぐらいの大きな目的があるのではないかというふうに考えております。

 一つは、政官における関係を正すということでありまして、ややもすれば官僚が独走しがちであったかつての制度から、やはり大臣以下の統制に服するということが非常に重要になってきたというのはしばしば言われていることであります。

 ただ、逆に、そういう統制の側面を強めますと、官僚独自、政治家は口を出してはならない分野について、政官の分離といいますか、官僚が独自の専門性を発揮するということも重要になってくるということでありますし、あるいは、ややもすれば両者の関係がぎすぎすしがちな現在、協働と申しますか、両者が協力してよい結果を国政についてもたらすということも重要である。

 ですから、政治的応答性といいますか、政治的な要求と、官僚あるいは公務員の持つ専門性の両立というのは非常に重要なポイントだ、この両者のバランスが重要だというのが第一のポイントかというふうに思っております。

 それから、もう一つは、現在、財政も極めて苦しいということになりますと、公務の効率化といいますか、地方分権も含めて、仕事を見直して、国の公務員の仕事もやり方を変えるということも非常に重要なことで、従来からのやり方とは違うやり方をとるということも大切でしょうし、あるいは、先ほどの政治的応答性と専門性の両立というときに、幾らでも人件費を使ってよいというわけではないので、そういう制約の中で考えるというのが二点目のポイントかなと思っております。

 それから、三番目は、これまで、実は法律などに書いてはいないけれども暗黙の了解のうちに行われてきた不透明な慣行を是正するということが非常に重要ではないかということでございます。これは、国民からの批判が強い天下りの問題などもこの委員会でもいろいろ議論されたというふうに承知しておりますけれども、どうするのかということでございます。

 ただ、私自身の考え方からいいますと、天下りというのは、全く起こるべからざることが起こっていたというわけではなくて、かつての日本の公務員の世界では、天下りというのは必然的な制度の一部であったというふうに理解しております。ですから、これをやめるということになると、かわりの制度を何か考えないといけないということで、単純に、ある日突然、やめるからといって簡単にやめられるというものではないのではないかというふうな気がしております。

 本来ならば、経過措置を設けてこれを徐々に是正するというのが好ましいと思っておりますけれども、与野党の多くの政党がこれはよくないというふうに従来から主張しておられて、どんどんやめていかれる方向にあるというふうに承知しておりますけれども、そのための手だてというのはよほど工夫が必要ではないかというふうに私自身は感じておるところでございます。

 この点から考えますと、今回の両法案、政府提出法案、議員提出法案、両方見ますと、おもしろい現象があると思います。

 一つは、幹部人事の一元化と申しますか、幹部の人事について、これまでとは違うということを言っておられるということです。これまでの身分保障の考え方でいくと、ある一つのポストにつけばそのままそれは保障されるという考え方であったと思いますが、そうすると、高位の人たちの人事をやろうと思うと、今座っている皆さんにはやめていただかないといけないということが必然的に起こっていて、その代表として天下りなんかもあったというふうに私は考えております。

 ただ、今回、人材のプールといいますか、幹部の職員を一体として扱うというのが政府案ですし、あるいは、一体ではなくても幾つかの類型に分けるというのも同様の人材プール制かと思いますが、これは人事の柔軟化ということを図っているんだというふうに私自身は考えておりまして、これまでとは全く違う方法をとられようとしているというふうに考えます。

 ただ、そうなってきますと、幹部の職員ということは、やはり一般の職員とは少し違うと認識するということでありまして、本人の職務あるいは能力というのも、やはり相対的に評価されるということになるんだろうなというふうに考えます。

 そう考えますと、一番大切なことは、能力・実績主義と、内閣の必要といいますか、能力は同じであっても必要性が変わればポストを交代していただくということも起こってくるということだろうと思いますので、その中で、やはり能力・実績主義というものをきちんと担保するということが必要だろうと思います。

 そういう点でいうと、両法案とも、政府提出法案は、一般職ということでありますから、これは政治的に自由にできる職ではないということは明らかになっておりますものですから、能力は、客観的な基準で人事をしなければいけないことは明らかでありますし、あるいは議員提出の方の法案も、実質的に見ると、特別職としておられますけれども、一般職に準ずるとしておられるということは、やはりそのことについては配慮されたのだろうと思われます。

 このあたりは、法律でどのように書いても担保するのはなかなか難しいので、法律が成立した後、やはりこのところについては、実質的な人事慣行をきちんとするということが非常に重要でありますし、あるいは、能力・実績主義を確立するためには、人事評価制度というのをさらに高度化するということはぜひ必要であろうと思われます。

 そういう点でいうと、内閣総理大臣と任命権者との協議というふうに政府案にある中身について、これはどういう中身かということを今後きちんと詰めていくことが重要であろうというふうに思われますし、あるいは、それについて不服があるときに、現在、人事院に公平性審査などもありますから、そういうことを事後的に審査する仕組み、事前にきちんと適切な人事が行われる仕組みと、それから事後的にそれを、おかしいことが起こっているということを指摘されたら直すという仕組みを取り込むことが重要ではないかと思われます。

 それから、今回、内閣人事局を設置されるということでありまして、これは基本法案のとおりでありますが、私の印象から考えますと、今回の改革というのは非常に小さな改革になっておりまして、重要な論点は大体先送りされているというふうに考えます。

 これは、もちろん、労働基本権の問題をどうするかとか、あるいは幹部ではない管理職員、一般職員の人事をどうするのか、あるいは組織・定員、給与の関係をどうするのか、これはいずれも先送りされていると考えますが、私の理解では、幹部については先行的に改革をしてこれまでの大枠から外すというふうに政府案は考えているのではないかというふうに考えますものですから、内閣人事局は小さくなっているということでありましょうし、あるいは議員提出の法案は、それも含めて一緒にしたいということかもしれませんが、いずれ、一般の職員についてどうするのか、定員法をどうするのかということを考えるときに、また再びそのことは改革が必要になるということを私は認識しております。

 そういう点でいいますと、どちらにしても、これまで組織・定員などをきちんとしてきたということは、やはりきちんと組織的にも手当てをしなくてはいけないということで、政府案にそれが入っていないということもあるものですから、私の意見でいいますと、内閣官房に置かれる機関というのは、やはり司令塔的に小さくならざるを得ない側面がある。それを大きくしようと思うと、これは私見でありますけれども、内閣府か何かに少し、その問題を扱う、総合的に公務員の問題、あるいはこれは使用者機関と言ってもよろしいかと思いますけれども、人を雇う以上は使用者機関とするような立場のものを置くべきではないかと思います。

 これは、現在、今の法律の範囲内ではどうとも言える問題ではありませんので、今後、改革が進んでいく中で、ことしなのか来年なのかわかりませんが、お考えいただきたいと思っている点でございます。

 そういう点から考えますと、私の観点から考えますと、今回の提出されている法案というのは、非常に全体として、必要とされている法案の一部だということでありますので、これを先行的にやって、幹部のところから新しいものを導入して、それから公務員制度全体についてはさらに検討を進めるというのがよろしいのではないかというふうに考えております。

 以上でございます。(拍手)

田中委員長 ありがとうございました。

 次に、長谷川参考人にお願いいたします。

長谷川参考人 ありがとうございます。東京新聞の長谷川でございます。

 私は、ふだん新聞の社説を書く仕事をしておりまして、それから、安倍政権のときに、官民人材交流センターの制度設計に関する懇談会、ここにも委員として加わらせていただきました。しかし、そのときの懇談会の仕事、それから本日私が述べます意見は、新聞の立場とは一切異なる、関係がない、私個人の立場ということで発言させていただきたいということをあらかじめお断りさせていただきたいと思います。

 さて、それで本題ですが、公務員制度改革、これまでこの委員会あるいは国会でもたくさん議論されてきたと思いますが、私がジャーナリストあるいは普通の国民の立場として、なぜ必要なのかという点について改めてもう一度確認させていただきたいと思います。

 私、新聞で仕事をしておりまして、霞が関の官僚の皆さんとは長年仕事をさせていただいてきているわけですけれども、その中から感じましたことは、ついこの間も若い官僚が言っておりましたけれども、だんだん昇任して、係長、課長補佐、それで予算請求の取りまとめというようなことをやるようになってくると、その予算の中に先輩の仕事、天下りポスト、あるいは賃金というようなものを入れ込ませるような工夫ができないのかというようなことを言われる。つまり、新しい政策を考えるときには新しい天下りポストを考えるのができる役人の証拠だよというようなことを暗黙のうちに言われる。そこで、ええっ、そんなことだったのということで悩んでしまうと。

 そういう官僚の生の発言などを聞いてみますると、果たして今まで行われてきた政策というものが本当に国家国民のためにあったのかということについて、やはり私としては、非常に疑問を抱かざるを得ないということがありました。それを本来のあり方に戻す、あるいは国の形が変わってくることに沿って官僚の組織もまた柔軟に変えていくということが大事であるということは、ここにお集まりの皆さんはよく御理解をしておられると思っているところでございます。

 それにかてて加えて、もう一つ、とても大事な問題は、財政再建との絡みでございます。

 つまり、日本の財政は今とても危機的な状況になっていることは与野党ともに一致されている御認識だと思うんですが、これを進めるためには、普通の国民の感じから見ると、まず政府自身が身を切っていただきたいということがあるんだろうと思います。そして、こういう議論をしますと必ず、無駄は無駄として削減すればよい、ただ、今の財政赤字というのは無駄省きで間に合うような数字ではない、こういう議論も聞かれるわけです。私は、これは数字の問題ではない、政治に対する国民の信頼性の問題であるというふうに思っております。

 つまり、政府があるいは政権が正しく身を切る、そしてその一環として官僚制度の仕組みも改めていく、こういう姿勢を示すということが政治の信頼性を取り戻すことになるのでありまして、それがあって初めて財政再建の議論を虚心坦懐にすることができるというふうに思っております。

 そして、議員の皆さんの中には、財政再建のためには増税も必要なのではないか、こういうお考えをする方もいらっしゃるかと思いますが、私は、必ずしも、増税が絶対に不可欠であるというふうには思っておりません。思っておりませんけれども、増税という手段も議論のテーブルにのせていくことは、それはまた当然でありまして、そのことも含めて虚心坦懐に、国民が、ああなるほど、政府というのはこういう議論もしているんだなということを素直な気持ちで受けとめるためには、まず政府自身が身を切る、その一環として公務員制度改革あるいは行政改革ということが求められているのであろうというふうに思います。

 そして、そういう観点からこれまでの公務員制度改革の議論を眺めますと、安倍政権で天下り規制、能力・実績主義の導入がありまして、福田内閣では国家公務員制度改革基本法が成立をいたしました。その後、麻生内閣では内閣人事局の法案が、これは廃案になってしまいましたけれども、出されまして、その後、民主党は、脱官僚依存それから地域主権ということを二枚看板に掲げて、さらには国家公務員の総人件費の二割削減ということも掲げられて選挙をし、圧勝されて現在に至っているという流れでございます。

 それを見ますると、やはり、民主党が脱官僚依存そして地域主権という二枚看板を掲げて、それから人件費の二割削減ということを掲げて選挙をし、圧勝したということは、もう私が前段に述べたこと、すなわち、まず政府自身が身を切ることがとても大事で、本来の意味で政治主導に変えていくということが必要なんだよねということを多くの国民が支持したし、そのように考えたということであろうと思います。

 ですから、ぜひ、この人件費の二割削減、そして抜本的な公務員制度改革というのは、これから先、実現していってもらいたいというふうに、まず最初に思うわけでございます。

 それを申し上げた上で、今提出されている政府案、そして自民党、みんなの党からの共同提案を見ますると、大きな方向としては、内閣人事局の創設を含め、同じゴール点を持っているのかというふうにも思えます。

 しかし、基本法の中で、人事院や総務省あるいは財務省の持つ機能というものも移管して抜本的に改革していくというのが基本法の流れであった、それについては、また与野党も一致して、修正されて成立したんだというふうに理解しておりますけれども、残念ながら、今回の政府案には、その大事な機能、定員・機構、それから級別定数、さらに給与の問題、こういうものについて改革する機能というのが含まれておられない。

 これは、一年先あるいは三年先になるのかわかりません。先ほど飯尾先生もおっしゃられた労働基本権の問題とも絡むんでしょうが、わかりませんけれども、冒頭にも述べたような国民の大きな期待、あれほど総選挙で示された民意というものを踏まえるのであれば、ぜひここはしゃにむに頑張っていただきたい。つまり、給与の問題、それから定員の問題にも踏み込めるような、そういう法律案にしていただきたいなというふうに考えております。それが一点目。

 それから、もう一つ、幹部制度のことでございます。

 公務員制度改革を考えるときに、私は、肝になる考えというのは、やはり数を減らすということとも密接に絡むわけですが、実は、官民の交流の促進、官と民の間で人材が自由に行き来しやすいような、そういう環境をつくるということがとても大事だろうと思っております。

 私は、しばしば問われるときに、では、公務員の方が民間に出るときにどんな仕事があるの、そんな民間の収益を上げねばならないような会社でなかなか公務員は行き場所が少ないんじゃないのということを質問されます。そのときに私はよく言うんですが、いや、公務員の方であれば新聞の論説委員なんかはすぐできますよということを申し上げているんです。つまり、キャリア官僚になるぐらい優秀な方であれば、私の実感では、新聞の社説ぐらいはたやすく書ける、そして真に国家国民のために書くことは十分にできるというふうに思っております。

 例えばそういうようなことなんですが、もっと広く、例えば大学のようなパブリックセクター全体の中で公務員の皆さんが広く行き来をして、ぐるぐる回遊していくというようなことがあってもよろしいんだろうと思っております。そして、そういうような官民の人材交流の促進ということを実現していくためには、少なくとも、まず手始めとして、幹部の仕事というのが、柔軟に、民間からの登用を可能にするような、そうした制度にしていくことが大事であろうというふうに思っております。

 それで、今回の法案を見てみますると、どうも政府案の方がそういう幹部のいすをあけていくということがしにくくなっているのではないかという印象がございます。

 つまり、幹部公務員は、確かに部長級以上のところは自由に活用できるようにしていくというようなことで工夫されているようでございますけれども、それはやはり、公務員が公務員の世界、つまり、官が官の世界で、閉じられたままの中で幹部をこれまでよりは幾らか柔軟に活用していくというふうな発想になっているのではないか。

 私は、そうではなくて、官の世界をもっと広げていく、つまり、民が入っていけるようにする、あるいは官が民に出ていくようにする、こういう視点というのがとても大事なのではないかなというふうに思っております。

 それから、天下り規制については、私もかかわりました、官民人材交流センターというものをつくりまして、これが天下りバンクなのではないか、官僚に対してだけなぜハローワークではなくて官民人材交流センターという新しい制度を設けるのか、これはいわば、官だけを、官僚だけを甘く扱っているのではないか、こういう御批判を随分ちょうだいしたわけでございます。

 しかし、私自身の考えでは、これはいわば一時的な激変緩和措置としてやむを得ないものだったと。つまり、給与制度などについては、当時、全く手がつけられない、こういう状態の中では高給のキャリア官僚をそのまま民間に持っていくということがなかなか難しいというような、つまり、理想的な官民人材交流を実現するには難しいという事情もありまして、とりあえず、給与法の改正などが成った暁までの一時的な激変緩和措置というものとしてやむを得ないのではないかというふうな考えで、この官民人材交流センターの設立に私も実は賛成したわけでございます。

 けれども、この後、これから先の公務員制度改革の中で、給与も含め、あるいは定員も含め、抜本的な改革がなし得た後は、これは官僚といえども民間と同じ。つまり、民間では、ハローワークあるいは就職情報誌あるいはヘッドハンティングなどなど、あるいは友人のつてなどなど、自助努力の中で転職活動をしているわけでございますから、官僚もそれと異なってはいけない、官僚が特別扱いされなければならないという理由はないのだと私は思っております。なので、そういうときには、この官民人材交流センターというのは当然なくなる、こういう世界で理解しております。

 ということでありますので、全体としては、議員提出法案の方が基本法以来の考えに沿った形に近いのではないか。民主党の議論も、実は、給与法の改正も将来視野に入れておられるというように鳩山総理も答弁されているようでございます。

 ですから、目指す方向は同じなのかもしれないけれども、私としては、国民の期待が強いということを考えれば、ぜひここは前倒しででも、積極的な、抜本的な改革に踏み出していただきたいというふうに思います。

 以上でございます。どうもありがとうございました。(拍手)

田中委員長 どうもありがとうございました。

 次に、田中参考人にお願いいたします。

田中参考人 田中でございます。おはようございます。

 本日は、国家公務員法等の一部を改正する法律案の審議に当たりまして、参考人として意見を述べるチャンスを与えていただき、大変光栄に存じております。

 私は、霞が関を離れまして既に十数年たっておりますが、現職のときには、行政機構・定員管理、行政監察、そして行政改革、とりわけ官業の民営化や規制改革、行政手続法とか行政情報公開法の制定に携わってまいりました。また、今の総務省の前身であります総務庁で官房秘書課長として人事を担当させていただきました。

 退職後は、拓殖大学政経学部で行政管理論とか行政改革などを教え、研究する一方、政府の行革のいろいろなプロジェクトに参加いたしました。

 特に、安倍内閣のときから公務員制度改革に携わり、国家公務員制度改革基本法ができるまで、各省が勧奨退職あるいは就職あっせんをやめた際の対応策としての官民人材交流センターの設計、ただいま説明された長谷川さんと一緒になって審議いたしました。また、国家公務員制度改革基本法の骨組みをどうするかといった委員会に参加し、基本法ができてからは国家公務員制度改革推進本部顧問会議のメンバーとして審議に参加してまいりました。このたび審議されております政府、野党の法律案については、そういう意味で大変感慨深いものがございます。

 このたびの法律改正に関しまして、若干意見を申し述べさせていただきます。

 さて、戦後半世紀以上にわたり、事あるごとに改革の俎上に上りながら、一向に改革されてこなかったのがこの公務員制度改革でございます。

 まず、なぜ問題にされたのか。

 言うまでもございませんが、社会経済情勢が大きく変化していく中で、行政がその変化に対応せず、その原因が各省の縦割り行政にあると言われてまいりました。国益よりも省益を優先させているとしか思えない権限争いのため、緊急課題に対応できないこと、あるいは国際的潮流へのおくれなどがいつも指摘されてまいったわけであります。

 縦割り行政の弊害は、積極面でも消極面でも出ております。その例は挙げるまでもないでございましょう。そのため、行政改革が試みられる際には、内閣の総合調整機能の強化というのがいつもテーマとして挙げられたものでございます。

 問題の根っこに、採用から退職に至る公務員制度のあり方の問題、すなわち、能力と意欲のある公務員が国民の利益を実現するために働くという制度をいかに設計し、実現していくかという問題があったわけであります。

 また、目に余るのが天下り、わたりであります。さらに、これに深く関係するのですが、入札をめぐっての汚職であります。大きな国損を生じております。

 その意味で、安倍内閣が始めた公務員制度全体をとらえた総合的な公務員制度改革は、画期的なことでありました。福田内閣の際、与野党の修正協議を経て国家公務員制度改革基本法が成立したことは、私どもに明るい展望を与えてくれました。基本法は与野党の調整を経て成立したものであり、その上に立って本日審議される両法案がある、このように位置づけられるものと承知しております。

 さて、両法案について幾つか意見を申し上げたいと思います。大まかな問題を申し上げたい。

 問題の第一は、国民にとって最も困りますのは、両法案の前提ともなります公務員制度改革の全体像が提示されていないということでございます。

 政府は、退職勧奨はしないとか、再就職のあっせんは、各省はもとより官民人材交流センターによる再就職支援もやめるとか、その一方で、定年延長はする、国家公務員の総人件費は二割削減するなどと言っておられます。総定員法で非現業の国家公務員数の上限が決められておる中で、一体どうやって実現するというのでありましょうか。政府も野党も、総定員法を廃止せよとは言っておられません。

 私は、各省に就職のあっせんをせよとか、定年延長はけしからぬとか、総人件費が幾らふえてもいいと言っておるわけではございません。報道で言われていることが事実であれば、例えば新規採用は大幅に減らさざるを得ません。某省の官房長が新規採用を大幅に減らさざるを得ませんと大臣に大変だと駆け込み、それでその大臣は、これは大変だと閣僚懇談会か何かで話題にされたと報道されておりました。

 およそ、改革というのは、総合性がなければ破綻するのは当然でございます。国民の理解は得られません。新規採用をストップし、あるいは大幅に減らすことが、後々、組織にいかに重大な影響を及ぼすか、申し上げる必要はないと思います。しかも、総人件費を二割削減すると言われます。いかなる方策で実現するのか。スローガンでは済まない問題であります。

 一方、野党案も、制度改革の全体像が示されておらぬという点では、与党案よりもなおひどいと言えるかもわかりません。例えば、官民人材交流センターは、組織の改廃等により離職せざるを得ない職員に対してすら再就職支援はしないと言っておられます。自民、公明両党とも、与党であったときには官民人材交流センターの設置に賛成したはずであります。こういう政策では、円滑な人事や組織の活性化など望むべくもなく、人件費の膨張が懸念されます。これらの問題とともに、審議に付されている法律案自体、私の言う改革の全体像の中で位置づけられる必要があります。

 問題の第二、幹部職員を内閣が管理する、その適格性を各省ではなくて内閣が判断する、これはすばらしいことであります。問題は、どういうシステムでそれを実行するのか。これからというのでは心もとないし、制度について的確な判断ができないことになります。

 このことは、ほかの改革面にもありまして、例えば、抜てき人事は結構であります。どういう仕組みでやるのかがわかりません。

 政府案では、次官から部長までを同一の職制上の段階にあるものとみなし、運用するといいますが、どういうシステムでそれをやるのかが見えません。

 野党案では、抜てき人事の道を開くため、幹部は特別職とし、幹部から外す人事を可能にするといいますけれども、その仕組みとルールが示されなければ実行されません。特に、内閣による行政の遂行を最大限、効果的に行う上で必要と判断するときは政令で定めるところにより課長級までの特別降任が可能、こうおっしゃっておりますが、政府案との違いを打ち出すための規定としか私には思われませんで、中身や実効性が明確ではありません。この点は、改革のベースとすべき基本法においても、幹部職員の範囲内において幹部職員の任用、給与の弾力化のための措置を講ずる旨規定されておりまして、これは第五条第二項第五号でございますが、それとの整合性という意味からも問題であります。

 起こり得ることは、パフォーマンスを誇示するとか、積極的に政治にすり寄るとか、既にその兆候も出ておると私は見ておりますが、情実人事が横行するおそれが出てくることであります。現状においても、長年の勤務の中で、各人の企画力、事務遂行力、指導力がどの程度のものかということは明らかになっておるはずであります。

 私の経験からしますと、中には、間違ったとしか言えない人事も現にございました。今回の制度改革も、運用を含めて、きちんとした、機能するシステムが構築されませんと、結果において、今までと余り変わりばえのしない、単なる政治的パフォーマンスにすぎなかったと言われかねないものになってしまうおそれがございます。

 くどいようでありますが、いかに立派な改革案でございましても、それを具体化するシステムを用意しないと制度の趣旨を換骨奪胎してしまうのが霞が関官僚のおはこであることを想起していただかなければなりません。

 第三に、第一の問題に関連しますが、両法案に、実施を含めて、公務員制度改革全体のスケジュールといいますか、絵といいますか、その工程表を示してほしいということであります。基本法に大まかなことは書いてあります。法律事項、政省令事項、その他、制度改革全体についてどのような文脈の中で改革が進むのか、国民に提示していただきたいと存じます。国民に改革すべきことを系統的に、時系列的に示して初めて改革に対する理解と支持が得られるものであります。私が現実にキャップとしてタッチしました国鉄改革の場合には、全体像を示して進めたということが成功の原因であったと理解しております。

 以上、このたび提案された両法案について、必要最小限の問題点を申し上げましたが、私は、一昨年に成立した国家公務員制度改革基本法自体に致命的な問題があることを指摘しておきたいと思いますが、それが当然のことながらこのたびもパスされていることをお話ししておきたいと思います。こういうことを踏まえて改革を進めていただきたいという趣旨でございます。

 第一は、基本法の政府提出案に入っておりました、総合職の新規採用は内閣が行うということでありましたけれども、民主党の修正意見でというふうに伺っておりますけれども、従来どおり各省採用と修正されました。理由は、霞が関に優秀な人材が来なくなるからということであったそうであります。

 その理由というのは、複数の有力な省だけではなくて、何十年来、霞が関官僚が言い続けてきたことでございます。公務員制度改革を言い、天下り禁止の旗を振る民主党が霞が関の主張を支持したものと私は受けとめております。そのことは、国家公務員制度改革を余りお好きでなかったと思われる福田総理大臣でさえも了解され、提出された法案でありました。

 各省採用ですと、公務員になった途端、各省のゼッケンといいますか背番号がつくわけで、本来、内閣が採用し、日本国の公務員として、省益でなく国益を追求する日の丸公務員であるべきであります。管理職になって内閣が一括管理しましても、既にして各省のゼッケンがついている、イヤマークがついている。

 内閣採用制度になっても、優秀な公務員希望者が来ないわけがございません。ちょっと考えればわかることでございます。本人の希望する省と当該省が欲しいとする者が一致すれば、内閣が採用し、その省に配置すればいい。いわば、本籍は内閣、現住所は各省にすればいいわけであります。希望する省に配置され、その省の仕事になじめばそれでいいわけですし、数年たって、配置されている省の人事当局と内閣人事局が協議しまして、当人に他省庁を経験させるか、引き続き当該省の他部局へ異動させるか、いろいろあるでしょう。何の問題もございません。

 各省採用ですと、本人の思い違い、といいますのは、自分の予想していた役所じゃなかった、あるいは、仕事でもなかったということもあるでしょうし、役所としましても、彼は見込み違いだったということがあり得ます。

 私の経験からいいますと、現状では、下手をすると、そこでいわば飼い殺しになってしまうおそれがございます。本籍が内閣であれば、本人の能力、気質に合った省への配置がえが非常に容易であります。本籍内閣、現住所各省というのが日の丸官僚を育てる基本ではないかと考えております。

 この点では、やむを得ざるところではありますが、少なくとも、今回の法案、政府案、野党案、どちらであっても、成立し、修正して成立してもいいわけでございますけれども、幹部職員人事の内閣一元管理の規定が創設された暁には、内閣主導で、各府省横断的に、適材適所の人材を登用するシステムを構築すること等を通じて、日の丸官僚を育てる、省益を超えた国民本位の行政を実現するという趣旨、理念にのっとった運用にしていただきたいと願っております。

 問題の第二であります。総務省行政管理局の機構・定員管理の事務を内閣人事局に移管する問題であります。

 これも、基本法の政府提出案には入っていなかったのですが、与野党の修正協議によりまして、「幹部職員等に係る各府省ごとの定数の設定及び改定」が内閣人事局の事務として追加されました。これは、基本法の五条四項第一号でございます。

 この点、例えば財務省の予算管理が人件費、給与のみならず全府省のすべての予算に及ぶのと同様に、行政管理局の機構・定員管理というのは、人事に関係がないとは言えませんけれども、各府省の機構の管理、定員の管理はもとより、行政全体のあり方まで含みますので、各府省には、少なくとも、面倒な役所といいますか、うっとうしい役所ではあります。

 時代の変化、社会経済の変化に行政と国家公務員が機動的に対応し、その時々の政策課題に迅速に、果敢に取り組むことができるような体制を内閣のもとに構築するため、機構・定員管理の事務を内閣直轄にする、総務省から離して直轄にするということには大賛成であります。

 ただ、そのことと、機構・定員管理の事務を内閣人事局に移管することとは別問題であります。事務を移管するにしましても、内閣人事局の名称では従前の機構・定員管理の機能が矮小化されてしまいます。それを喜び、期待する省がないわけではありませんが、いずれにせよ、国家として大きな損失をこうむることになるおそれがあります。どうしても人事管理の事務と機構・定員管理の事務を一つの局にまとめるというのであれば、名称も、内閣人事局ではなくて、内閣行政管理・人事局ともいうべきものでありましょう。

 また、運用におきましても、人事と機構・定員管理の間に厳密なファイアウオールを設けないと、人事のために組織をつくるといった、改革に全く反したことが起こりかねません。

 最後になりますが、いろいろ申し上げました。しかし、物事は、中途半端では結局成功いたしません。法案審議に際して、私の申し上げた意見がいささかなりとも御参考になれば幸いであります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

田中委員長 ありがとうございました。

 次に、晴山参考人にお願いいたします。

晴山参考人 専修大学の晴山といいます。

 私は、行政法という法律の分野を担当しておりまして、その中でも公務員法に関心を持って、これまで国公法であるとか地公法であるとか戦後の公務員法の改正史とかいうことをやってまいりましたので、その観点から今回の政府の国公法等一部改正法案について見てみますと、戦後の公務員制度のあり方という観点から見て、幾つかの問題点が含まれているというふうに思っています。

 そういう観点から、以下三点にわたって、私の意見を述べさせていただきたいというふうに思います。

 第一点は、幹部職員人事の適格性審査についてです。

 法案では、内閣官房長官が、内閣総理大臣の委任を受けて、幹部職員や各任命権者の推薦した者及び公募に応募した者について、標準職務遂行能力の有無を判定するための審査、いわゆる適格性審査を行うことというふうにされております。

 この点にかかわって、私は、まず何よりも、幹部職員の適格性をどのような方法と基準で評価するのか、果たして評価の公正中立性が確保されるのかということに今基本的な問題があるのではないかというふうに思っています。

 現在の国公法では、任免にかかわって幾つかの原則が定められています。

 一つは、平等取り扱いの原則というものでありまして、これは、人種や信条、政治的意見または政治的所属関係によって人事が差別されてはならないとするものです。

 それから、二つ目は、成績主義の原則でありまして、これは、職員の任用は受験成績、人事評価その他の能力の実証に基づいて行われなければならないとするものです。

 それから、三つ目が、身分保障の原則であって、職員は、法律に定める事由によらなければ、その意に反して降任または免職されることはないというふうなものです。

 ここで重要なことは、先ほど飯尾先生も言われましたけれども、我が国の国公法では、事務次官を含む幹部職員は一般職に属しております。したがいまして、今述べた三つの原則は、一般の職員と全く同様に幹部職員に対しても適用されるということであります。もしこの原則を外すということになれば、その職を特別職ということにして、政治任用ということで位置づけることが必要になってきますが、幹部職員は、今言いましたように特別職ではなくて一般職に属するということで、あくまで、このことを踏まえて幹部職員の人事というものは考えていかなければならないというふうに思います。

 そういう観点から考えますと、幹部職員の人事は、今述べた諸原則、とりわけ任用の根本原則である成績主義の原則にのっとって、客観的な基準に基づいて、公正な人事評価を踏まえて行われなければならないということになります。

 この点について、現在の国公法を見ますと、職員の人事評価は標準職務遂行能力に基づいて行うということになっております。標準職務遂行能力というのが定められていまして、インターネットで引くと、非常に膨大な、何百ページにわたるものが出てくるんですが、それを見ますと、現在の事務次官、局長、部長というもののそれぞれの標準職務遂行能力というものが定められています。しかし、その内容を見ますと、非常に抽象的な内容になっておりまして、これによって人事評価の公正性、客観性が担保されるというふうに見ることは非常に困難だというふうに思われます。

 今の基準がこのような非常に抽象的な基準でしかありませんので、これまでは各任命権者がそれぞれ各省の幹部人事をやっていたわけですが、政治家である内閣官房長官が果たしてどこまで踏み込んでその評価を行うことができるのか、また、その評価に客観性、公正性がどれだけ担保できるのかということについては、私は大きな疑問を感じております。

 それから、第二点でありますけれども、幹部職員人事の弾力化の問題であります。

 法案では、事務次官、局長、部長の三つの職を同一の職制上の段階に属するものというふうにみなすとしています。

 現在、国公法に基づいて、標準的な官職を定める政令という政令が制定されておりまして、これは、各省の事務次官から始まって、局長、部長、課長、課長補佐というふうに各職制上の段階について定めた政令ということになっております。

 これによりますと、当然のことですけれども、事務次官、局長、部長、三つの職は明確に区別されております。そして、それに対応して、先ほど言いました標準職務遂行能力もそれぞれ別に定められているということになりますので、仮に、本法案を実施するということになれば、政令を改正して、三つの職をまとめて、同一の職制上の段階に属する官職ということで一本化をして、それに合わせて標準職務遂行能力も統一をするということが必要になってきます。

 そういうことになれば、今でさえ抽象的な標準職務遂行能力というものの内容が、これまで三つの職についてそれぞれ抽象的ではあっても別々に置かれていたものが、一本化されるということで、一層抽象的な内容となって、人事の客観的な基準としてもほとんど機能しなくなるのではないか、そういうおそれを感じております。

 それから、もう一つ、弾力化にかかわっては、現在、事務次官から局長、局長から部長への人事は公務員法上の不利益処分である降任に当たるということになっております。したがって、身分保障の原則や不服申し立て、行政訴訟による救済という不利益処分に伴う法的な救済の仕組みの対象になるというふうになっておりますけれども、この三つの職を同一の職制上の段階とみなすということになれば、事務次官から局長、局長から部長への人事というのは降任ではなくなるわけですね。言ってみれば、同格ですので転任ということになろうかと思いますけれども、そうなりますと、不利益処分ではなくなってくる。

 これは、ちょっと解釈で議論が分かれるところなんですが、同格であるということで不利益処分でないということになってきますと、身分保障の原則が及んでこない、公平審査、法的な救済の対象になってこないということになりますので、この点でも、幹部職員の身分保障、それから成績主義の原則というところから見て非常に問題ではないかというふうに思っています。

 それから、最後、第三点ですが、退職管理にかかわる改正という問題であります。

 今回の政府法案は、先ほどから出ていますように、平成十九年の国公法改正による再就職規制を前提とした上で、新たな組織として民間人材登用・再就職適正化センターと再就職等監視・適正化委員会を設置するという内容であります。

 この点について、私は、何よりも、平成十九年の改正自体に問題があったというふうに考えております。

 改正前の国公法では、天下りは原則として禁止である、人事院が例外的に承認した場合だけ営利企業への再就職が許されるという建前になっておりました。これは建前であって、特殊法人や独立行政法人は除外されているではないか、あるいは、退職後二年間に限られていて、二年を超えれば自由に天下りできるというふうな批判がありまして、それはまさにそうであって、しり抜け規定だということで問題を指摘されていたわけなんです。しかし、国公法の建前としては、少なくとも、原則天下り禁止だということをうたった上でいろいろな例外は認めていたというふうになっておりました。

 これは、戦後の国家公務員法の理念である官と民の癒着を防止するという観点から設けられた規定というふうに思って、非常に重要な意義を持つものであった、いろいろなしり抜け規定は、それ自体問題なので、そこを改善していくことこそが必要だというふうに私は思っていたわけですが、平成十九年の国公法改正は、その原則規定も含めて丸ごと廃止をしてしまった上で、省庁ごとのあっせんは禁止する、官民人材交流センターに一本化してやるという仕組みに変えたということで、これは、私は、官民の癒着を防止する、天下りを禁止するという観点からいえば、非常に問題の改正だったというふうに当時から思っておりました。

 今回の法案は、その点については全くそのままになっておりまして、この問題は依然として解消されていないということをあらかじめ指摘させていただきたいというふうに思います。それは、改正されてしまった後の問題なので、今さら言ってもという面があるかと思いますが。

 今回の政府法案の問題についてですが、法案では、再就職等監視・適正化委員会が公務の公正性の確保に支障が生じないというふうに判断して承認した場合には、再就職規制が適用除外されて、在職中の求職活動が認められるという仕組みになっております。

 したがいまして、公務の公正性についての判断を行うこの委員会が非常に重要な機能を果たすということになるわけですけれども、この委員会の中立性、独立性が果たして十分に確保されるのかということが重大な問題になってくるかと思います。

 法案では、確かに、この委員会は中立公正の立場で独立して職権を行使する第三者機関であるとされて、その任命には両議院の同意が必要だというふうにされているわけですけれども、人事院と比較してみた場合、果たしてどこまでその中立公正さ、独立、第三者性が担保され得るのか、この点について私は疑問に思っています。

 この点については、むしろ、私は、天下り規制の長い経験を持ち、戦後の行政機関の中でも最も中立性、第三者性が強い行政委員会として既に独自の地位を確立している人事院になぜその権限をゆだねないのかということに疑問を感じております。

 最後に、全体を通して、今言ったようなところから見ますと、成績主義であるとか、あるいは人事の公平の原則、身分保障といった、戦後の公務員制度の根幹にかかわる基本原則が、幹部職員に限ってではあれ、後退し、形骸化されることにつながってくるのではないかということを私は非常に危惧しております。

 幹部職員は、当然のことながら、行政の中軸にあって、政策決定にも重要な役割を担う非常に重要な公務員でありますので、そこに政治的な人事や恣意的人事というものがもし持ち込まれることになれば、国民の立場から見て、行政のあり方を大きくゆがめることにつながってくるのではないか、そういうことにつながる危険性を今回の法案は秘めているのではないかというふうに感じておりますので、ぜひこの点をいろいろ議論していただければというふうに願っております。

 以上で私の意見を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

田中委員長 ありがとうございました。

 以上で各参考人からの御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

田中委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。後藤祐一君。

後藤(祐)委員 民主党の後藤祐一でございます。

 本日は、四人の参考人の皆様、広いバックグラウンドから御知見を示していただきまして、本当にありがとうございます。

 公務員改革は、国民の民意に従って行わなければなりません。しかし、一方で、大衆迎合に堕すると国を誤ります。このバランスをどうとっていくかということが大事だということについては、田中参考人、先ほど本当に貴重な御意見を賜ったと思っております。

 また、そのときに、換骨奪胎を霞が関が行うというようなお話もありましたが、実はこの言葉、橋本元総理が行革大臣だったころに、公務員改革について、まさに、この換骨奪胎はけしからぬと言ってお怒りになられたというエピソードを伺っております。

 私も、中央省庁再編のころから、公務員改革、特区と、ずっと行革に後ろで携わらせていただいた経験も少しありますので、全体の流れの中で、ようやく、与野党が近づいて、同じ方向を向いて、国民のための行政、国民のための公務員制度、この方向に向かって歩んでいるということに非常に時代の変化を感じております。

 そのような中で、今回、二つの法案がかかっております。先ほど飯尾参考人から、それほど差はないんだというお話がありましたけれども、若干の差分についてどのようにお考えかということについてお伺いをしたいと思います。

 一つの大きな差は、人事行政機能についてであります。

 つまり、人事院、総務省、財務省といった人事行政機能をこの際一気に内閣人事局に寄せるべきではないかというのが野党から提案の法案であります。

 政府側からは、こういったものは、労働基本権を次の法律で付与するわけですから、付与した後の人事行政機関のあり方というのはまた根本的に変わるわけでありまして、であれば、何も労働基本権を与えるまでのほんの数年間、二、三年でしょうか、この二、三年だけこの機能を暫定的に内閣人事局に移して、さらにその後、労働基本権を与えた後、また次の体制に移るというのは大変な混乱をもたらすのではないかと。

 特に、労働基本権を付与するというのは大変な作業であります。しかも、このときに、労使交渉をどう行うかといったことについては、人事院を初めとして、人事行政機関、各方面の協力が必須であります。ただ、その協力をいただく中で、権限を引っぱがすというようなことを並行して行うというのは大変苦労があるのではないか。特に、自公政権のときの、公務員制度改革を進めていく上で、事務局内が非常に大変な状況にあったということも漏れ伺っております。

 私からの質問は、この人事行政機能を移すべきかどうかについて、まず田中参考人にお伺いしたいんです。

 田中参考人の論文をちょっと勉強させていただきました。「リサーチ・ビューロー 論究」という、二〇〇八年十二月にお書きになられたものの中で、以下のような部分があります。「論理的に考えると、労働基本権問題が片付いた後で内閣人事局を設計するのが筋だと考えるが、基本法自体、内閣人事局の法制を施行から一年以内とし労働基本権問題を含む法的措置は三年以内としているので、この意味を考えれば、幹部職員等に限って基本法のいう「新たな制度」を仕組み、一般職員を含む仕組みは労働基本権問題が片付いてから検討するのが、実現可能性を考えた改革ではないのか。」というような御指摘がありました。全くそのとおりだと思います。

 そういう意味で、今回の閣法は、まさに田中参考人のおっしゃるとおり、非管理職の部分の労働基本権を踏まえたあり方というのをとりあえず後に置いて、これはもちろん大事なんです。ただ、今は、どちらかというと、政治主導をどう実現するかという観点からの部分をまずはやろうという仕組みになっているわけであります。

 ぜひ、人事行政機能を拙速に二段階で移すという今の野党案の考え方と、閣法の、そこは今一たんおいておいて、労働基本権を移すときに一気に考えようではないかという考え方についての田中参考人の御見解をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

田中参考人 私のかつての論文を読んでいただいて、ありがとうございます。その考え方は変えておりません。委員のおっしゃるとおり、私はそう考えております。

 ただ、私がそこで申し上げたいのは、今の幹部の問題について、先ほども既に申し上げたように、具体的なシステム、適格性審査のシステムをきちんとしておかないと換骨奪胎されるということを申し上げておるので、ただ口の先で言っていると、どなたかもおっしゃったように、非常に恣意的な人事に陥る。

 幹部人事そのもののあり方を先行することはいいんですけれども、そのやりようを初めからしっかり考えておかないとだめだということを申し上げておるわけであります。

 よろしいでしょうか。

後藤(祐)委員 ありがとうございます。

 飯尾潤参考人、先ほどの論点について、どのようにお考えでしょうか。

飯尾参考人 今の点でございますけれども、私自身から考えますと、このように考えております。

 今回の法案で、先ほど来出ておりますように、幹部について、実は、一般の職員から切り分けていると考えまして、今回切り分けられる幹部については、やはり一般の職員とは、先ほどのさまざまな、能力・実績主義といっても、違った観点で配慮されるべきだというふうに考えております。

 また、幹部というのは、実は、一般の公務員全体からすると非常に一部の数でございますので、その部分について給与、組織・定員等を所管するとしても、非常に小さな部分になるのです。

 そういう点でいうと、大きく、組織を全部移さなくても、実は実質的にさまざまなことができるというふうに考えておりまして、関連の法案のさまざまな修正等を待って、そういうことが起こるにしても、私自身、現状からスタートするということから考えると、まず幹部人事を先に動かすことが大切で、そして、全体像が出ると全体像を整理すればよいという点からすると、政府案の方が恐らく現実的ではないかというふうに考えております。

 よろしいでしょうか。

後藤(祐)委員 どうもありがとうございます。

 それでは、次に、今田中参考人がおっしゃられた、幹部人事を行うに際して、よほど気をつけてやらないと非常に恣意的な情実人事が行われるのではないかという懸念について御質問をしたいと思います。

 この論点については、政府案は一般職、野党案は特別職になっているわけであります。

 野党案の中では、特別職の中でも、一定の配慮をすることで、そこを余り恣意的に行われないようにという配慮はされているということはわかるのでありますけれども、ぜひ専門的な御知見の立場から、幹部人事を内閣主導で行うということの意義はもちろんあるわけですが、恣意的な人事が行われないようにするために、どちらの法案の方がより機能するか、先ほど田中参考人がおっしゃったような、情実人事が行われないような体制が構築できるかということについて御質問したいと思います。

 まず、田中参考人からお願いします。

田中参考人 私は、その点について、まさに両者からの具体的な評価のシステム、幹部として登用するときに、どういう仕組みで、何か第三者委員会を設けてやること、しかもプロセスが国民に見えるような格好にする必要があると私は思いますが、これは多様なシステムがありますので、どちらの法案にいたしましても、政府案の場合でも、自民党、みんなの党の案にいたしましても、具体的なやり方を皆さんが国民に対してお示しにならないと、そもそも評価できないと思います。

 特別職ということになると、非常に自由度が高いし、政治的任用になると思いますけれども、それにしても、先ほど後藤委員がおっしゃったように、やや一般の特別職とはまた違うというふうなニュアンスでもあります。

 では、どこがどう違うのか、具体的にどう進めていくのか、繰り返しますけれども、そういうことを国民に問うていただきたいということを申し上げておるわけであります。

後藤(祐)委員 ありがとうございます。

 まさに、幹部人事をどのように決めていくかの具体的な仕組みが大変大事だと思います。

 私の私見では、この人はけしかるとか、けしからぬとか、そういうことをできるだけ排除して、むしろ、政治主導で幹部人事を行うべき部分は、これは実はこの国家公務員法が本会議でかかったときの質問でも申し上げたんですけれども、例えば幼保一元化を進めるといった場合に、いつまでたっても厚生労働省と文部科学省がけんかをしている、いっそのこと局長から課長、室長ぐらいまで全部チームで入れかえたらどうかと。ただ、そこに、だれがいいか、よくないかという話は、それはある程度距離を置いて考えると。

 つまり、政権として、ここは大事だから、縦割り行政の弊害があるとみなして、このポストだけは入れかえるべきだ、あるいは、ここは内閣主導でやるべきところだから、内閣に人を出してくれないか、例えば何とか省は内閣周辺に局長クラス三人は出してくださいねとか、そういったことについては私は政治主導があるべきだと思うんですね。

 ここについては政府に対しても答弁をしっかり求めたいと思っているところでございますけれども、飯尾潤参考人、今申し上げたような、どこのポストを交換するですとか、そういったところに関しては政治がある程度関与すべき部分だと思う一方で、個別の名前に関してはある一定の制約を持つべきだというふうに私は考えるんですけれども、飯尾参考人はどのようにお考えでしょうか。

飯尾参考人 先ほど来の問題でございます。

 その点、非常に重要でございまして、原則としては、後藤委員おっしゃるような方向性でございますが、ただ、これは人事でございます。先ほど来、情実人事は起こらないということは大体一致していることですが、それを、ではどのようにして保障するのかと。

 これは、人事ですから、国民の目の前でといっても、あの人を採用しようかどうしようかというようなことは国民の目の前で議論すべきではないことでありますし、それから、ポストによってさまざまな事情がございます。そういう点でいうと、一般の職員と違って、幹部については、実は適性といっても、そのときそのときによって適性が違ってくる。それを実は、政治家側が考えるものを、あるいは、逆に言うと、内閣人事局にはそれなりの判断をする仕組みを設けておいて、それとの話し合いの中でする。

 ですから、これまでの現行法制でいうと任命権者一人でするということを、内閣総理大臣と任免協議をするということは、複数になって、やや客観性の要素ができるということでありますので、私自身は、余りそういうことを、かたい規定を法律に書くとかそういうものではなくて、そういう精神を念頭に置きながら、一般職の特別の類型だという精神を置きながら、実践を積み重ねる中で好ましい形をつくっていくべきだというふうに考えております。

 そういう点でいうと、まず内閣人事局を発足させて、人事をきちんと行っていく、その中で蓄積するというのが非常に重要なことかなというふうに私は思っております。

後藤(祐)委員 ありがとうございます。

 それでは、時間があと少しなものでございますから、最後に、公務員制度改革を特に政治のフィールドで議論すると、どうしても、お金を削れ、天下りはけしからぬ、そっちの方の話ばかりになって、当の公務員からすると大変暗い話になっていくわけであります。ただ、国民にとってみると、確かに、税金の支払いは余りふえちゃいけない、ただ、一方で、行政サービスを享受するという立場から、公務員にしっかり機能してもらわないと困るというのもまた政治が責任を負わなきゃいけない部分であります。

 そう考えた場合に、我々民主党政権になって、政務三役が実質的に、本当に物が決められるようになりました。党に持っていくとひっくり返されたりとか、ちょっとここ数日あるみたいですけれども、例外的なものを除けば、政務三役でほとんどは決まります。

 私は、特に官僚と言われる、中枢におられる公務員の方は、高い給料が欲しくてやっているんじゃないと思うんですね。そういう方は民間に行っていると思うんです。むしろ、自分で考えた政策を実現したい、今の制度というのはこういうふうにおかしくなっているから、こういうふうに直さなきゃいけない、あるいは、いや、ここに本当は問題があって、指摘すると上司に怒られるかもしれないけれども、でもこういうところは変えなきゃいけない、そういった思いを持った公務員はいっぱいいると思うんです。

 それを実現するような仕組みというのをもっとつくっていく必要があって、公務員に対する明るい像を示すという意味においては、高齢スタッフ職をきっちりつくって、何とか食べていけるんだなという安心感をつくることももちろん大事でございますけれども、今申し上げたような、本当に実力のある公務員が、政務三役が物を決められるというこの政治主導をうまく使っていただいて、むしろ提案を持ってくるような仕組み。逆に言うと、我が政権側にもやや問題があって、政務三役側の方々がもう少しそういう公務員を生かすようなマネジメントをしなきゃいけないというふうに私は思っております。

 そういう意味では、本当は大臣補佐官をもっとふやすとか、昔、国家戦略スタッフ、政務スタッフといっていたものは、本来はゼロ種官僚をつくる、あの言葉をつくったのも、実は私はいろいろやっていたのでございますけれども、そういう気概で、1種というのに甘えるな、ゼロ種になれというつもりで議論がなされたと私は記憶しております。

 この公務員の気概というか、この国をよくするための気概をもう少し発揮してもらうためにどのようなことをしていったらいいか、ぜひ飯尾参考人の御意見を伺いたいと思います。

飯尾参考人 御指摘の点、大変重要なことだと思います。

 ただ、これまでの日本の官僚というのは、国を動かすことをもって気概としてきたという側面があったために、先ほどお話をしたように、政治家の統制が行き届かないという問題がある。それを政務三役ということで変えておられる最中だというふうに思いますけれども、逆に言うと、この気概の中身を変えていく。やはり、専門能力を持って、きちんと提案していく、複数の案を提案して大臣に選んでもらう、こういう能力を身につける。あるいは、大臣がうっかりしたら、きちんとそれについて専門能力をもとに客観的な指摘をする。そういう官僚像に変えていくということが非常に重要であります。

 ただ、このことは、言うことは簡単でありますけれども、実現することは大変難しい。しかし、これは具体的な人事の中で、実は言うべきことを言うけれども能力のある人は出世するという姿を見せていけば自然とそのことは理解されるということであって、何か法律で書くとかいうことでなくて、実践の中からつくっていくということでありますし、あるいは、政権が交代したときに、政権との関係はさまざまでありますけれども、能力のある人はきちんと使っていくということをやっていく中でこのことは理解されて、気概を生んでくる、官僚のやる気を引き出すことができるというふうに考えております。

 よろしいでしょうか。

後藤(祐)委員 ありがとうございます。

 それでは、時間が参りましたのでこれで終わりにしますけれども、本日、参考人からいただきました貴重な意見、これを実現しないとしようがないわけであります。政府側からも聞いていると思いますので、この法律が通った後、実際にこの制度を運用していくに当たって、換骨奪胎にならないように我々政治もしっかりと監視をしながら、意味のある、国民にとってすばらしい行政サービスを提供できるような公務員制度をつくるということをぜひ与野党協力の上で進めていきたいというふうに考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 本日はどうもありがとうございました。質問を終わります。

田中委員長 次に、井上信治君。

井上(信)委員 自由民主党の井上信治でございます。

 まずもちまして、きょうは、四人の参考人の皆様、お越しをいただきまして、また大変有意義な御意見を多々いただきましたことを心より御礼申し上げたいと思います。

 さて、冒頭、質疑に入る前に一言だけ申し上げたいことがございます。

 昨日、党首討論が行われました。その党首討論におきまして、我が党の谷垣総裁が公務員制度改革に冒頭触れられました。

 引用いたしますと、公務員制度改革、これについては、もともと民主党のマニフェストでは人件費二割削減、何一つ手がついておりません、それから天下り根絶、これも逆方向に進んでいる、福田内閣のときに与野党一緒になってつくりました国家公務員制度改革基本法も無視している、これはつまり、労組依存、労組言いなりの御党では絶対にできない、審議を尽くさないまま無理やり採決をするというようなことさえ言われている、まさかそんなばかなことはなさらないでしょうと、あらかじめ警告をしておきます、こういった谷垣総裁からの発言がございました。

 私も、全くそのとおりだと思っております。これは、我が党がそれだけこの公務員制度改革というものを重視しており、だからこそ、あえて党首討論で議題にも出させていただいた。残念ながら、鳩山総理からは公務員制度改革について何も言及がありませんでしたけれども、重く受けとめていただきたいということをこの場をおかりして申し上げておきたいと思います。

 それでは、質疑に入らせていただきたいと思っております。

 いろいろと本当に有意義な御意見をいただいたんですが、その中でも、閣法につきましていろいろと厳しい御意見があったというふうに受けとめました。

 飯尾参考人からは、内閣府の参与もお務めをいただいているということでありますけれども、しかしながら、閣法について、労働基本権や給与の問題など重要な論点は大体が先送りをしている、ですからこれは全体の一部にすぎない、そういった御意見をいただきました。あるいは、長谷川参考人からも、全体として衆法の方が基本法に則している、閣法もいろいろなことをもっと前倒しで基本法に則してやるべきである、そういった御意見がございました。田中参考人からも、公務員改革の全体像が示されていない、全体のスケジュール、工程表を示すべきだということであります。

 私も、本当に三人の参考人の皆様のおっしゃるとおりかなと、大変に疑義を感じているところであります。

 その中の論点について幾つかお聞きをしたいと思っておりますけれども、民主党さんが選挙でマニフェストで国民に約束をしたこと、やはりこれは着実に、忠実に守っていただかなければいけないということであります。

 その中で、人件費の二割削減という話があります。これは、もちろん、約束ですからちゃんとやっていただきたい。委員会の質疑の中でも、本当にこの二割削減はできるのか、それは我々国会議員として本当に切実な思いなんですね、国民の期待がかかっておりますから。この二割削減という約束が実現できないということになりますと、これは、今の政府・与党に対する信頼も本当に崩れてしまうということであります。

 しかし、他方で、定年まで働ける環境をつくるといったマニフェストもありまして、このマニフェストについては、やはりいろいろ考えたら早期退職勧奨をしていくべきだというような、軌道修正をするような発言も今見受けられておりますけれども、これも当然人件費の二割削減に大きくかかわるわけであります。

 定年まで働ける環境をつくりながら、そして公務員の人件費二割削減ということになりますと、本当に大変なことになると思いますけれども、これは本当にできるとお思いなのかどうか、長谷川参考人また田中参考人の方からお答えをお願いしたいと思います。

長谷川参考人 ありがとうございます。

 人件費は、何の費用でも一緒だと思いますけれども、要するにプライスと量、つまり給料と定員、これが、二つが相まって下がっていかない限りは総人件費は私は下がらないというふうに思います。であるがゆえに、人件費、給与のところ、給与法という改正が必要であり、かつ、定員・機構についても見直しが必要なんだと思います。そのためにこそ、先ほど来議論になっております、人事院、総務省、財務省の機能を内閣人事局に持っていくということがやはりかぎを握るのではないかなというふうに思います。

 先ほど、別の先生からのお話でも、労働基本権の問題がありました。労働基本権とセットであるべきだ、それはそうであるとしても、であれば労働基本権の問題もさっさとやればいいのではないかなというふうに私は思っております。私は、労組の方たちに基本権を与えるのは賛成であります。

 なので、国民の期待から考えれば、給与と定員にかかわる機能は移すべきではないかなというふうに思っております。

田中参考人 大変難しい問題でございます。

 井上委員の今の御質問は民主党にされればよろしいわけでございまして、私が二割削減しますと言っているわけではございませんので、私は、だから、どうやったらそれができるかということを先ほど申し上げたわけであります。

 ただ、人件費を減らす、二割になるかどうかは別にして、一つ、方法としては、今長谷川さんがおっしゃったとおりであります。

 一つは、公務員の定員をどうするかという政策がなくてはいけません。そのために、総務省は、昭和四十三年度以来、第何次になりますか、定員削減計画を実行しておるはずであります。ネット減で国家公務員を減らして、私が現職のときには五十三万人ぐらいおった非現業の国家公務員も、現在は三十万人ちょっとになっておるぐらいに、郵政が出たにしても、そんなに減らしておるわけであります。

 もう一つは、定年までずっと給与がアップする形になっておる給与体系というものを見直していく必要があるのではないか。五十歳を過ぎたらば、ここのところを再検討していく必要があると思います。人事院の給与勧告は民間にのっとって行われておるはずでありますから、現在の公務員の給与というのは。では、民間もそうなっておるという前提になっておるように思いますが、果たしてそうだろうかという気も、いつも公務員の方がいいではないかといううわさも聞きますので、五十歳を過ぎて能力がいささか落ちるようになれば、ややフラット化していく必要もあるのではないかと思いますが、これは公正中立な人事院が民間給与との比較でやる話でありますから、私の一つのサジェスチョンにすぎません。

 ただ、注意すべきは、よく、公務員を減らす、あるいは給与をどうこうするということを誤ると、公務員を減らして、別に、その例が、別途の、国が負担して法人をつくるとかどうとかいう話になりがちで、形だけの削減にならないようにしないと、実質、国家公務員関係と言った方がいいと思いますが、国家公務員の関係の財政負担を減らすことにならないことになりますので、よく気をつけてチェックされる必要があると思います。

 私にその知恵はありません。

井上(信)委員 田中参考人からは、民主党さんに聞いた方がいいということでありましたので、今後の質疑でもう一度民主党さんに聞きたいと思いますけれども、専門家の田中参考人でも知恵がありませんと言うほどのことでありますから、これは本当に難しいことです。しかし、国民に約束した以上何とか実現をしてもらいたいし、我々野党としても協力して、これはやるべきだと思っております。

 ちょっと、田中参考人の最後のお言葉で、政府の仕事を外に出して、そしてそれで人件費を減らしたような形にするのはいかがなものかといった御趣旨がありました。

 この二割削減でも、民主党の方からは、地方移管で二割削減をすると言っております。これも委員会の質疑の中でたびたび議論になっておりますけれども、地方に移管するということは、いわばその人件費を地方につけかえるということになってしまいます。これが本当の意味で公務員の人件費削減に当たるかどうかということ、このことについて、田中参考人からお答えをお願いします。

田中参考人 お答えします。

 実は、それを言葉に出すのをはばかったものですからああいう表現をしたわけでありまして、地方に負担させる、仮に国家公務員から地方公務員にするというようなことになりますと、国がいずれ裏の負担をしなければいけないということになると思いますが、それでは何の財政負担の軽減にもならないのではないかということを暗に申し上げたわけでありまして、一々具体的な問題をつかまえて申し上げるまでもないことであります。

 一般的にそういうことが従来行われてまいったことは事実であるということを申し上げておきたいと思います。自民党時代にやったことを民主党さんにまねしていただきたくない。でも、自民党が地方にあれしたわけではないですよ、他の事項で同じようなことがありましたので、申し上げておるわけであります。

井上(信)委員 ありがとうございました。

 それから、国民の期待、関心という意味、それから民主党さんのマニフェストという意味でも、この二割削減と並んで、やはり天下りの根絶、これが本当に国民の大きな怒りを生じておりますし、何としても根絶すべきだということ、これは恐らく見解の相違はないと思うんです。

 しかし、今の閣法によりますと本当に天下りが根絶できるかということに大変な疑義を感じております。これは、また新たにつくるセンターにおいて、分限免職の場合はいわばあっせんをしていくということであります。そして、天下りに関しても、罰則というものを、衆法と異なって設けるわけではないということ。

 それから、それ以上に大きな問題だと思いますのは、天下りの定義の問題。役所のOBであるとかあるいは政務三役によるあっせんは天下りとは言わないので、天下りの禁止のいわば対象外になっていくということであります。定義をこういうふうに置かれてしまうと、幾ら天下りの禁止措置を考えても、全部、ざる法になって、骨抜きになってしまうということでありますから、本当に大きな問題だと思っております。これはもう法案、改正以前の問題でありまして、そういう意味で、何とかして天下りを根絶したいというふうに思っております。

 長谷川参考人からは、やはり官が特別扱いされるというのはおかしいということで、センターもなくすべきだ、こういう御発言がありましたけれども、では、逆に言えば、この閣法が成立した場合に本当に天下りをなくすことができるのか、民主党がマニフェストで国民に約束した天下りの根絶、これが本当にできるかどうかについて、長谷川参考人から御意見をいただきたいと思います。

長谷川参考人 天下りをどうやって根絶するか。

 つまりそれは、冒頭でも申し上げましたように、私はやはり、官民の交流がしやすくなるような関係にならない限り、官が自分でポストを手当てしていく、天下りみたいな仕組みが残ってしまうというふうに思うわけです。

 官民が横異動しやすくするためにこそ実は能力・実績主義というものが必要でありまして、能力に見合った給料、あるいは実績に見合った給料と、立場、仕事の中身というものが民間並みになっていかないと、いつまでたっても官は行き場所が見つけにくい、したがって独法や公益法人その他に行かざるを得ない、したがって天下りになってしまう、こういうインセンティブの構造が働いてきてしまうんだろうと思います。であるから、そのためには、まずやはり能力・実績主義に見合った賃金の体系というものが必要なんだろうなというふうに思っておりまして、だからこそ、給与法の改正が私はかぎを握ってくるんだろうと思っております。

 そういうことから見ると、残念ながら、今回の閣法ではそこいら辺が、機能が含まれないということなので、このままいくと、結局は高齢の、資格の高いポストの方にはそれなりの給料を払うということになりかねない。そうすると、そういう給料に見合った民間に出ていくということは難しいという現実があるわけですから、やはり独法や公益法人などに何とか裏道を探して行かざるを得ない、そういうインセンティブの構造というのが残ってしまうんだろうと思います。

 以上でございます。

井上(信)委員 ありがとうございました。

 もう時間も迫っております。

 公務員制度、本当に国家の根幹をなす制度でありまして、この公務員制度をよりよいものに変えていくということが、いわば日本の国のこれからを担うと言っても過言ではないと思っております。

 公務員というのは国民全体の奉仕者であります。ですから、国民のために公務員の人たちが、本当に有能で志の高い公務員の人たちが高い士気を持って働ける、そういう環境をつくっていく。もちろん効率性に配慮をして、そして機動性あるいは政治応答性、こういったことに配慮をして、ちゃんとした制度をつくっていく。そして、もう一つ大切なのは、やはり、公務員制度、これは、政権交代とか政治の動きによってこの根幹が左右されてはならないということであります。

 そういう思いで、共産党さんは除きまして、与野党で修正協議もして公務員基本法、これをつくり上げたわけですから、やはりこの基本法の精神にのっとって、公務員制度改革というものをさらに前に推し進めていくということが大切なわけであります。

 委員会審議そしてこの参考人質疑におきましても、そういう意味で、閣法のいろいろな問題点というのが明らかになってまいりました。そして、我々も対案を示し、また、今修正協議も持ちかけております。残念ながら、全く民主党側からはその回答をいただいておりませんけれども、やはりここは与野党を超えて、いい制度をつくっていくために何とか我々が頑張っていかなければいかぬと思っております。

 あわせまして、この公務員制度改革、法案が成立するにせよ、やはり詳細な制度設計、政令などに落ちている部分もあります、それから、これから運用で、幹部公務員の任命などは特にそうだと思います、運用でどういうふうに、本当の意味で政治主導で、かつ公務員の中立性、客観性を担保したままいい公務員制度を運用していけるかどうかというのが、これがいわば勝負なわけです。

 あるいはまた、これからさらなる、基本法に基づいての改正も今後もあるわけですから、そういう意味で本当に十分に審議を尽くして、我々の意見も取り入れていただいた上で、これから引き続き審議を続け、また、公務員制度改革実現に向けてともに努力をさせていただきたい、そんなふうに思っております。

 本当に、参考人の皆様方、大変有意義な御意見そして回答を、ありがとうございました。終わります。

田中委員長 次に、大口善徳君。

大口委員 公明党の大口善徳でございます。

 きょうは、各参考人の先生の皆さん、大変中身のある御意見を賜りまして、ありがとうございます。

 私の方からは、まず、今回、幹部人事の弾力化についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 やはり、幹部人事というのは国民から理解されるものでなければならない。そういう点では、情実人事でありますとか、政治的な中立性、公正性、これがいかに国民の目から見て納得できるか、ここが大事ではないかな、こう思っております。

 その点、政府案におきましては、次官、局長そして部長級、これが一つのバスケットになるわけであります。そして、この名簿に登載されれば、これは相当裁量によって人事が決められていく、こういうことであるわけです。そこに恣意性が出てくるのではないかな、こういうふうに考えるわけでございます。そういう点で、このことについては、幹部人事が恣意的になるのではないか。

 あるいは、次官級から部長級に転任という形になりますね、政府の場合。そうしますと、七百万とか八百万給与が下がるわけであります。果たしてそういうことが実際にできるのかどうかもありますけれども、そういう場合には不利益処分に該当するのではないか。

 あるいは、適性審査基準、これは一つのバスケットでありますから、部長級になれる人であればここに載っかるわけですので、標準職務遂行能力、適格性審査の基準、こういうのも相当幅が広いものになるわけでありまして、そういう中で人事評価もどうしていくのか、いろいろ問題点があるわけでございます。

 国民生活センター、これは独法でありますが、公募をやって、結局は、その公募からは採用しないで、福島消費者相と政務三役で決めた、こういうようなこともあって、本当に今の内閣、郵政会社等も含めて、人事について非常にいろいろと問題があって、本当に情実人事とか、政治的中立性、公正性を確保できるのか、こういう疑念があるわけでございます。

 それで、自民党さん、みんなの党さんの案、野党案は、次官は廃止しますけれども、局長級とかあるいは部長級、こういうバスケットを置く、それぞれ用意して、それに基づいてやる。ただし、特別降任ということもあるということでございます。

 私ども公明党といたしましては、次官ですとか局長級でありますとか部長級、それぞれのバスケットの中でしっかり能力、実績を厳格に評価していくことがやはり、政治的中立性とか、情実人事を防ぐにはいいのではないかな。そして、それぞれのバスケットの中におけるものは転任でありますけれども、それから、バスケットから一段下がる場合は降任という扱いにして、これはしっかり厳格にチェックしていく、こういう考え方でございます。

 こういうことにつきまして、田中参考人、飯尾参考人から、お伺いをしたいと思います。

田中参考人 幹部を、次官から府省審議官クラス、これを一まとめにして、中での異動は転任にするというのが政府案でありますが、次官級だと通常二千三百万ぐらいの年俸ですね、審議官クラスだと千六百万ぐらいだと承知しておりますが、七百万ぐらいの差があります。その中だから、自由に動かしていく制度にすることは、それはそれで一つの考えだと思いますが、だから先ほど冒頭に意見で申し上げたのは、そのシステムをどういうふうに評価して、転任にしても、実際は次官から審議官に落とすわけですから、業務の内容が全く同じわけじゃないので、そうすること自体が私はいいことか悪いことかよくわかりません。わからないというよりもおかしいと思っています。

 おかしいと思っていますし、先ほど晴山参考人がおっしゃったように、従来のシステムを変えるわけですから、なぜそれを変えるのか。単に国民の関心を引くためにのみそういうことをおっしゃっているんじゃないかというふうに初めは受けとめました。

 しかし、それを本当にやるならば、その中で動かすというのは、どういう原理に基づいて、どういうシステムで、どういう考え方でやるかということ、その仕組みは国民に明らかにしておかれないと恣意的になりがちだし、何のための法、制度であるか。あるいは、公務員自体に対する意欲といいますか、やる気をなくしてしまうおそれも出てくるし、責任がどういうことになるのかということもあります。

 あるいは、これは二千三百万から千六百万まで下がるわけですから、給与が変わるわけですから、不利益になることは事実でありまして、一回訴訟でも起これば私は非常にはっきりしていいんじゃないかと思っておりますが、そうでもないと、示されておりませんので何とも言いようがない。

 私どもにとっては、そういうことを考えたことも私の時代にはなかったわけでございまして、どういう発想でそういうことをされるのか。

 一方、自民党とみんなの党の案では、特別職にして、政令に落としていろいろ具体的におやりになるそうでありますけれども、その場合でも、やはり処遇を落とすのであればそれなりのルールというものがないと組織に非常な混乱を及ぼしますし、政府というものを今後運営していく上で非常に大きな問題になるのではないかということを申し上げたわけであります。

 私は、幹部職の中をどういうふうにしてやるかということは理解不能なものですから、御質問申し上げたわけでございます。

 お答えになりませんで、申しわけございません。

飯尾参考人 前提について少し考えないといけないことがあるように思います。と申しますのは、こういう改革をするときには、現在実際にどのようなことが行われているかということと比べないと、法律の文言だけを比べるとなかなか難しいことがある。

 実は、現在は幹部の職の場合は勇退勧告のような形になっておりまして、例えば次官であれば、やめてくれと言われると定年前でもやめてしまうということは、これは給料ゼロになるということ。ですからこそ、あっせんをして天下りをしておったというのがかつての姿であったというふうに思います。

 ところが、今度あっせんをやめるということになると、では、人事をしようと思うと、ゼロになってしまうのかということになれば、たとえ給与が下がるにしても一定のところまでで保障されるというふうにもまた考えられるということだろうと思います。

 そういう点でいうと、幹部としての身分保障というのは二階建てになっていて、ある職として一定評価されるというだけではなくて、幹部としての地位を保持するということが一定の保障になるということでありましょうから、これは、今御紹介されたどちらの案で、バスケットを幾つにするかという議論は当然ありますけれども、逆に言うと、このバスケットを入れたということは、定年まで働けるようにするということのある意味では不可欠な、これを除いてしまいますと、一度次官になるともう定年までずっと居続けるのが当然になるということになると、これはやはりなかなか、政権の重点項目が変わってくる、あるいは政権交代が起こるというときに人事ができないということを意味します。

 そういう点では、これだけ見ると非常に残酷なように見えるけれども、それがなかったときに職を失う危険を考えると、一定の、バスケットにしたことによって職がより保障されるという側面もあるものですから、そこで、そのことはここで評価すると、バスケットを幾つにするかということはあるけれども、逆に言うと、バスケットがたくさんあれば人事はしにくくなりますから、幹部としての職の保障が難しくなる。バスケットが政府案みたいに一つになってしまえば、非常に残酷には見えるけれども、しかしできるだけいろいろなポストで抱えていくことができるという、まあ、トレードオフの関係があるように思っておりまして、どれぐらいで選ぶかというのは議論はあるかと思いますけれども、一つの考え方だというふうに私は思っております。

大口委員 それで、早期退職勧奨の問題でございますが、実はこれについては、民主党さんは、平成十九年の天下り根絶法案で明確に早期退職勧奨の禁止規定がありました。しかし、鳩山内閣におきましては、現在まで退職勧奨を続けておりますし、また、仙谷大臣も、再就職のあっせんをしない退職勧奨はあり得ると。再就職あっせんをしない退職勧奨が本当にあり得るのかと思うわけでありますが。それで、退職勧奨を禁止する、この方針は転換されたわけでございます。

 それで、飯尾参考人は、これは平成十九年十月の「時評」に、天下りを禁じて肩たたきが存続する矛盾と題して、能力的に問題がないのに組織の構造上の問題でいや応なく肩たたきをして、かつ天下りも禁止するというのはいかがなものでしょうか、こう論評されているわけでございます。

 やはり、天下りを禁止して、しかも肩たたきも存続させていくということは、これは飯尾参考人の指摘するように矛盾があるのではないかな、こういうふうに思いますが、この点、いかがでございましょうか。

飯尾参考人 そのことについては、早期退職勧奨というのはどういうものかということを考えることが非常に重要であって、現行法制下であると、先ほどのように幹部職にとどめるという制度的なプール制のようなものがないと、肩たたきがそのまま退職につながる、肩たたきをせざるを得ない圧力が強いので、大量に生じてしまう、そこでその世話をしないというのはおかしいということになりますけれども、逆に言うと、政府案にしても、あるいは議員提出法案にしても、プールをつくるとなってくると肩たたきをする必要性は非常に減ずるだろうというふうに思っておりまして、量的に違いが出てくるということになってきます。

 そうすると、肩たたきに応じるかどうかは本人のかなり自由な意思という側面になってくるというふうに考えますと、早期退職勧奨は一般的には非常に減ってくるだろうというふうに予想をしております。

 その中で、では本人の自由意思で応じてもらうということになると、それは何か退職金割り増しをもっと強化するとかなんとか、そういうことを考えざるを得ない。

 ただ、逆に言うと、この幹部職員の制度を変えることによってその矛盾はかなり緩和されるというふうに私自身は感じております。

大口委員 次に、今回、政府案は、民間人材登用・再就職適正化センター、これを設けたわけでございます。その中で、組織の改廃等による分限予定者への再就職支援はするということでございます。そしてまた、行為規制についての違反についてしっかり監視するということで、再就職等監視・適正化委員会を設置した、こういうことになっております。

 ところで、この分限免職の回避については、わざわざこういうセンターを設けなくても、その都度、アドホックに閣議決定等をして対応することもできるわけでございまして、こういうものをわざわざつくる必要があるのかと私は思うわけでございます。

 そういうことで、天下りの根絶ということにつきましては、いろいろと、政府案そしてまた自民、みんなの党案におきましても、みんなの党案の方は罰則を行為規制違反については置く、これは私どもも、公明党もそういう考えでございますけれども、ただ、こういうことによってすべての天下り、特に裏下り、こういうものを根絶できるのか。また、監察官の場合は、これは常勤が一名、非常勤が二十八名という予算規模でございまして、これでもって本当に天下り、わたり、裏下り、こういうものを根絶できるのか、これも私は疑問に思うわけでございます。

 そこで、もう一度、二点確認します。

 要するに、民間人材登用・再就職適正化センターというもの、これを常設で置く必要が私はないと思いますが、この点についていかがか。それから、天下り、裏下りの根絶につきまして、政府のスキーム、そしてまた、もちろん、自民党、みんなの党の罰則つきということだけで根絶できるのか。この二点につきまして、長谷川参考人、田中参考人そして飯尾参考人からお話をお伺いしたいと思います。

    〔委員長退席、小宮山(洋)委員長代理着席〕

長谷川参考人 私は、やはり、先ほど来申しているように、民間に官が出やすくしていく仕組みというのがないと根本の問題が解決しないんだろうと思うんです。それさえできればほかの、御指摘のセンターの話とかというのは、全部、いわば暫定の機関として考えてもいいんじゃないのかな。

 つまり、最終的なでき上がりの理想形からすれば、民間がいつでも官に入ってこれる、官は、自分がやめたくなった場合、あるいは組織の都合上そろそろ引いた方がいいかなということがあった場合、いつでも民間に行けるというような仕組みさえあれば、いろいろな問題というのはあとは事後規制でいいんじゃないのかな。だから、刑事罰も含めて私はそこで賛成なんですけれども、そういう意味では、今のセンターというのは暫定の機関として考えておけば、その限りにおいていいのではないかなというふうに思っております。

 だから、できるだけ早く出やすい仕組みを、ゴールに到達することを先に考えた方がいいということでございます。

田中参考人 組織を改廃するときに、そのときに生じた人たちをどうするか、これは一番最近で大きく問題になったのは国鉄、もう二十数年前になりますが、そのときに、政府は挙げて、臨時にそのお世話をしました。

 常時問題が起これば、いいんですよ。まだ国の機関から民間にとか地方にとかいうことが全くわからないときに、そういうときに、出先機関が廃止されるかどうかわからないのに、人だけはそこで確保しておく、そういう委員会を設けておくことが適切であるかどうかというのは私は非常に疑問に思っていまして、それは問題が生じそうなとき、生じてからでもいいと思います。生じる前からお世話をやかなければいけないことも起こると思いますから、そういう課題が現実の問題になったときに対応することでよろしいのではないかというふうに思っています。

 それからもう一つ、これは、長谷川参考人も再三おっしゃっていますけれども、私は、安倍内閣以来の公務員制度改革で、基本法に至るまで、非常によかったのは、いろいろな議論で合意が得られたのは、官民の人材を、リボルビングドアにいたしまして出入り可能にして、日本国として、労働流動性というんですか雇用流動性を高めて、人材をそれぞれの分野に役立つようにしていくという物の考え方が非常に俎上に上り議論もされましたけれども、結構なことだと思っております。

 公務員の場合、採用したときに、今までは1種という一度限りのレッテルのもと、終身までずっとずんどうで行くものですから、途中で肩たたきとかどうとかいうことが必要になってきたわけであります。それを、基本法のときの議論では、1種ということで入っても、途中で、課長、管理職になるまでには半分になるんだ、そういう発想で人事運用をすべきであるということで合意が得られたはずであります。そして、公募によって、官民が、あるいは省からほかの省へと、流動性を高めていくという考え方が非常に高まった、そういうことの中でこれからの公務員制度も考えていかなければいけないと思います。

 そこで、先ほどの二つ目のお話ですが、天下りの問題に関して、罰則を設けたり、あるいは違反した人たちを監察官がというのは、一体どういう情報で、あり得るのは垂れ込みだけですよね。そのために常時目を光らせている、その人も大変だろうなと私は思います。それぞれ各省から毎年どこへ就職しようと、就職の情報をすべて得てそれが適正であるかどうかをチェックする、これは一体どういう仕組みでどうやってやるのかなと私は非常に疑問に思っておりまして、その仕組みを知りたいなと関心はあります。その仕組み次第で、動くようになるのか意味のないものになるのかということになろうかと思っております。

 天下りという問題は、先ほども井上委員もおっしゃっていましたけれども、定義がどうもはっきりいたしません。私が現職のときから今でも思っておりますのは、天下りというのは、人事のために特定のポストの人、これは1種であろうと2種であろうと途中でやめていただく、そのためには、退職勧奨する以上は就職も世話しなければいけないという某大臣のお言葉は非常に私はある面でわかるわけで、もう失職するのに、給料もなくなるのに、やめてくれと言うわけにはいかない、だから、それが悪慣行として続いてきたわけであります。

 仮に官がそれをやらない、やっちゃいけないわけですから、どういう現象が起こるかというと、恐らく、OBがそれこそNPOでもつくって、団体でもつくって、おい、おまえ、そろそろやめたらいいじゃないかと言って、OBがそういう就職をお世話するようになるのではないか。現に、役所から一つもお世話になっていない、おれは先輩が呼んだから来たんだというような人もおります。

 だから、問題は継続的に行っているとか政府のお金が出ているとか、そういうことで判断していくよりないと思っております。

    〔小宮山(洋)委員長代理退席、委員長着席〕

飯尾参考人 この点につきましては、官民人材登用・再就職適正化センターについて、詳細について私がよく知っているわけではありません。

 質問は、これで天下りは根絶できるのか、常設する必要があるのかということですが、天下りの根絶というのは、先ほど来出ていますように定義次第であって、これを完璧に定義することはできない。

 そうすると、やはり天下りの弊害を除かないといけないわけでして、不透明なことが起こるということを避けるためには一定の監視が必要であろう。やはり事前規制だけでは十分ではなくて、転じていろいろな職につくということがありますから、そういうことを監視するためには常設の機関の方がよろしいのではないかということであります。

 それから、分限処分については、アメリカ流に考えれば分限処分もあるということで、現行法制度はそのようになっていますが、日本の労働慣行からすると慎重であるべきものであろう。

 ただ、わざわざこれをされたということは、やはり公務員人件費を減らすためには、場合によってはこれを発動されるおつもりかなというふうに推測しております。そうしたときに、やはり世話をしないというのはとんでもないことでありますから、世話をするためには一定のノウハウを蓄積する必要があって、アドホックに設けた機関では十分に世話ができないのではないかと思いますので、それは、そういうことを準備されるということは予定しておられるということかなというふうに理解しております。

大口委員 どうもありがとうございました。

 以上です。

田中委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。

 四人の参考人の皆さんには、貴重な御意見をいただき、ありがとうございます。

 最初に、四人の参考人の方全員にお尋ねをしたいんですが、今回の法改正の中で、自衛隊に係る再就職規制についての改正が行われます。これは、三年前の国公法の改正の際の、これまでの事前規制から行為規制に切りかえるということを、今回自衛隊に対しても適用するという中身でございます。

 そこで、私もこの委員会で議論しているんですけれども、自衛隊の場合には若年定年制と言われる、六十歳の前で退職されるから、そういう点で従来からも防衛省のもとにおいて再就職あっせんというのが認められてまいりました。原則禁止ではあっても、そういう特殊な事情でということであったわけですけれども、しかし、今回行為規制に切りかわることによって、いわばほかの役所では認められない役所による再就職あっせんが、防衛省においては若年定年制において認められるということになります。

 そういうときに、この間、防衛省・自衛隊にかかわって一連の不祥事が相次いでまいりました。調本事件以来この十数年間で幾つもの談合事件なども起こってまいりました。近年では防衛事務次官が関与するような事件もございましたし、つい最近でも空自のかかわる官製談合事件がある。そういう意味では、かつての業者の談合事件だけではなくて、自衛隊側がかかわる、防衛省側がかかわる事件というのがこの間指摘されているという点でも重要であります。

 こういう時期に事前規制から行為規制に変えていくというその妥当性が問われているんじゃないのか、その点についての四人の皆さんのお考えをお聞きしたいということが一点。

 あわせて、行為規制となったこの法改正でも、事後チェックをちゃんとやりますということが前提となっているわけですけれども、しかしながら、全体の制度設計は、再就職等監視・適正化委員会が独立した中立公正な第三者機関として働くと。これが本当に働くかどうかという妥当性も問われなければならないと思いますけれども、しかし、防衛省のこの再就職規制に係る監視機関は、答弁でも言われているように、防衛省の内部の組織であるという点で、この行為規制に係る監視機関としての機能が果たされるのか、こういう懸念を強く思っているわけですけれども、この点。

 以上二点について、皆さんから御意見を賜りたいと思っております。

飯尾参考人 やや勉強不足でございまして、今委員から御指摘があるまで、ぼやっと大体認識しておりましたけれども、この問題についてそれほど詳しくないことを前提にお答えいたします。

 自衛隊は、職務の特質上、若年定年制をしかざるを得ないということでありますけれども、そのときにあっせんをしなかったらどうだろうと考えますと、やはりあっせんをしない方が不公正、不透明なことが起こる確率は高いのではないか。自分はやめざるを得ない、世話もしてもらえない、こうなると、さまざまな不透明なことが起こる可能性はむしろ高まる。それを防ぐためには一定の世話をするということはやはり必要ではないかなというふうに思っております。

 ただ、その後、事後規制というのもやはり必要だというのは御指摘のとおりだというふうに思います。ただしかし、これは組織の置き方でどのように、数が多い人たちを全省庁一律に見るのか、それに特化したそれぞれの組織を置くのかということはやはり選択の問題で、具体的な組織の置き方よりも、その中の組み方を、どのようにして運営していくのかという問題ではないかなというふうに私は理解しております。

長谷川参考人 私も余り、勉強不足でありますけれども、しかし、自衛隊の問題が特殊だといった理由は、今御指摘の点にかてて加えて、やはり安全保障上の問題というのも考慮の中にあったのかなというふうに思います。つまり、野放しにしてしまって、日本の防衛機密のようなものが仮に漏れる、民間あるいは外国に漏れるというようなことがあったら困るということであって、だからこそちょっと扱いが特殊なんだという議論があったように記憶しております。

 その限りにおいては、やはりそれなりの事前チェックというものは必要かなというのが私のとりあえずの印象でございます。

 不十分で申しわけございません。

田中参考人 自衛官という特殊な存在、国家にとって非常に重要な職務を遂行しているわけでありますが、これが若年で退職せざるを得ないといのは客観的な事実としてあり得ると思います。国を守れない、自衛できない人たちに六十歳までいていただいても仕方がないわけでありますから、そのために一定の就職のあっせんをしていく。この公正な、透明なシステムをつくっていくということは非常に重要だと思います。

 そのことと、先ほど委員がおっしゃった、事務次官が汚職したとか、いろいろな談合をしたとか、その話とは全く別の話であって、それはどこの省でもあり得る話だと私は思いますが、あり得るんですよ、あると言っているんじゃなくて。そういう問題については厳格なチェックといいますか、これはもう、入札とか業界とのつき合いだとか、それは公務員倫理法もあるわけであり、一種の犯罪でもありますから、この際一緒にして議論すべき話ではないというふうに私は理解しております。

 つまり、国家を守るための自衛官についての問題と、それから事務官僚あるいは将官等についてのその問題とは分けて考える必要があるのではないかと思っております。

晴山参考人 先ほどから天下り規制についての議論がいろいろ出ておりますけれども、私は、天下りを規制するというのは何のためかといいますと、官民の癒着を防止するということに原点があると思っております。

 これは、平成十九年改正前の国公法の規定が、離職する前五年間在職していた国の機関と密接な関係のある営利企業の地位に離職後二年間ついてはならない、こういう規定になっていたわけです。この五年というのはおかしい、もっと長くすべきだ、それから、二年間で切るのはおかしい、二年待てば自由になる、その間特殊法人に天下って民間営利企業に行く、しり抜けだというふうな批判があったわけですが、それはそれで問題なんですけれども、やはり原点は、役所と営利企業が不当に癒着をして行政をゆがめることを防止することがまさに天下り禁止だ、そこに原点があるんだというふうに、その前の国公法の規定も踏まえて思っております。

 したがって、公務員をやめて民間に行くことすべてを天下りというふうに定義をしてしまうとそれはちょっと広過ぎて、では、そこも含めて禁止するのかというふうな話になってくるわけですが、例えば田中先生のように官庁にいて私立大学の先生になったとか、あるいは、今、国立も公務員ではありませんので、国立大学の教授になったら天下りか、そんな議論になるわけですが、それはそうではない。やはり、原点は、行政をゆがめるおそれのある官民癒着を防止するために天下りが規制されるんだというところに原点があるんだ。そこはやはり原則禁止で、厳格に、これは事前規制で禁止すべきだというふうに思っております。

 以前は、先ほど言いました五年間、二年間という中でも、省庁から申請があったものについては人事院が個別審査して、これは癒着のおそれはないだろうというのは承認をして、毎年百名とか数十名とかというふうなあれを出していたわけなんですが、そういう観点からすると、やはり、厳格に規制した上で、例外的にもしチェックするのであれば、私は、人事院の厳格な審査ということに戻すべきだというふうに思います。

 自衛隊についても原則そうだというふうに思いますので、自衛隊だけ特別職だからそこは外すというのはやはりおかしいというふうに思います。

 若年定年制という特殊な問題があるというのは、私は、これはもうちょっと勉強してみたいと思いますけれども、でも、そうであるならばやはり、そういう不当な癒着に結びつかないような形で早期に退職をして再就職というのはあり得るというふうに思いますが、その場合でも、塩川議員が言われたように、政府のセンター、監視委員会というところのチェックではなくて内部のチェックということになると、これは非常に不透明になりますので、それはやめて、最低限、今のセンター、監視委員会というところのチェックは厳格に受けるということが必要になってくるんだろうというふうに思います。

塩川委員 予算と権限を背景にした押しつけ的な天下りということに対しての国民的な批判があるわけで、二兆円に上る契約を行うのが毎年の防衛省でございますので、その際に、お金、仕事とセットで天下りを強要するような場面というのが問題になる、それはこの間の官製談合でも公正取引委員会から指摘をされた。こういうことについて、特殊な事情を踏まえながらも、どうあるべきなのかということにもう一歩踏み込んで対応を考えるべき点があるということについても、また改めてでも知見をいただければと思っております。

 二つ目にお尋ねしたいのが、幹部職の任用のあり方の問題でございます。

 この点について意見陳述をいただきました飯尾参考人、田中参考人、晴山参考人にお尋ねをいたします。

 それぞれ意見陳述でもお述べいただきましたように、一つ、幹部職員人事の適格性審査の場面と、あと、幹部職になってからの任用のあり方の問題と、いわば二段階で情実人事や党派的な人事が行われないようにするという点で、今回の閣法がどうなっているのか。

 私などは、この委員会の審議の中でも、適格性審査についても、では具体的にどうなのかといった場合に、標準職務遂行能力といっても抽象的ですねということもありますし、人事評価のあり方についても、能力評価は難しいと総務省も答弁されるぐらいですから、そういう中で、政治家の関与の排除、情実人事、党派的な人事が本当に起こらないのか、非常にそういう懸念を覚えるわけですけれども、その点について、閣法についての評価をお聞かせください。

飯尾参考人 この問題は、先ほどからお話をしていますように、人事でございますから、具体的にどうかというのは大変難しいことだと思っておりますけれども、私自身からすると、実は、戦後長らく続いた日本の仕組みと現在は少し変わりつつあるのではないか。

 つまり、幹部は実は、政治家である大臣、政務三役等と密接に関係しているところであって、ただ、逆に言うと、長期政権の続いている中においては、非常にその中に癒着は起こりやすい。これまでそれがなかったのかといえばどうだろうという疑問の念もないわけではありません。その点でいうと、政権交代が常態化するという時代が見えている中でいうと、この法は、長期的に見ると適正化の方向に動いているということをやはり大前提で考えないといけないというふうに考えます。その点でいうと、事態は改善するのではないかというふうに思っております。

 今回の、例えば閣法、内閣提出法案の方を見ますと、適格性審査という一段階が入っているわけでありまして、何となく年次で上がっていくというよりは、一段階そこできちんと評価をせざるを得ないことになっておりますものですから、そういう点でいうと、そこに一つ審査というやや客観的なものが入ってくるために、そこで、私の予想では、恐らくこれまでよりは幹部にはなりにくくなってくるということではあろうというふうに思うわけです。そこで一つ、国全体を見ているかどうかみたいなことがやはりチェックされるんだろうなというふうに考えております。

 それから、任用についても、では現行法制度が非常に手当てがあったのかというと、やはり、幹部の職員と末端の職員を全く同じ仕組みでやるという現行法制の方にむしろちょっと見落としがある可能性があって、逆に言うと、幹部だけ協議という手順を設けていることによって、それについての一定の手当てができるということ。

 ただし、この問題は、どちらになるかは、先ほど来何回も申し上げているとおり、実は実際の運用次第であって、これを法律で書き切ることはできないだろうと私は思っているものですから、そういう点でいうと、それについて幅広い監視が必要であって、また、実績を積み重ねる中で慣行が生まれてくるということを期待したいというふうに考えております。

田中参考人 適格性審査という制度を設けること自体、一つの進歩だと思っております。

 従来の各省の人事がいいかげんであったということは、私は、例外は私の経験からいいましても全くないということはないと思います。私が勤めた役所というのは、入ったときは行政管理庁でありましたから、各省の幹部と接触する機会が非常に多うございましたし、臨時行政調査会以来、土光臨調以来、民間の人たち、あるいは政府のトップの人たち、政治家と接触する機会が非常に多うございました。したがって、なぜこういう人が局長になられたのかなというふうな人が全くなかったということは、私は、正直申し上げてなかったとは言えないと経験上申し上げておきます。

 だから、今までのシステムは、年次で順番に上がっていくということでしたが、霞が関で、例外的に言うと、農林水産省は、年次によると、同年次で二人次官が出たりスキップされたり、かなり入ったときから能力が、毎年、仕事のしぶりでわかりますよ、それはわかるんです。ところが、わかるんだけれども、それでも間違いが、間違いといいますか、ないことはない。私も農水省へ行っておりましたから、後輩たちの声を聞くことがあります。

 ですから、人事というのは絶対これでいくということはあり得ないので、そのときそのときの省内の構成だとか、政治との、内閣との関係だとか、あるいは与党、野党との仕事のしぶりも非常に役所の中ではよくわかりますので、その人の能力というのは大抵わかるんです。ただ、問題は、なかなか年次というのが、省によっては確かに違いがありますけれども、立派な省に限って変えられない、順番どおりいくというところに問題があったように思います。

 それを、今度は内閣が適格性審査をやるというのは一つの大きな進歩だと思いますが、それも、飯尾参考人がおっしゃったように、一挙に、初めから数式のように決めてやるわけにはいかないので、やはり経験を積みながらやっていかなければいけませんが、最小限、どんなシステムで、プロセスで、どのように進めていくのかということを、仕組みはオープンにしつつ、毎年の人事があるわけでありまして、それで試行錯誤をしていって、経験を積み重ねていく。それで、そのシステム自体についてはオープンにしていく。どういう人が審査をするか、どういうプロセスで審査をするかということを公開していく。国会議員の先生方、もちろん国民の批判を得るような、そういう仕掛けが必要であると思っております。

    〔委員長退席、小宮山(洋)委員長代理着席〕

晴山参考人 先ほど私が言いましたように、やはり、適格性審査の客観的な基準とプロセス、これがより抽象的になる可能性が非常に強いということです。そこに、抽象化されればされるほど、これは人の評価の問題ですので、政治的な要素が入ったり、あるいは政治家との個人的なコネクションとかが入る余地が拡大をしてくるということを私は恐れています。

 その点では、これまでの人事のあり方がよかったとか、妥当な人事がすべてされてきたということは、もちろん私の立場で言えることではありませんけれども、従来以上にそこが広がってきて政との距離が近づきますので、そこにやはり政の関与、人事に対する関与というのが強まってくるというふうになるということで、事務次官も含めて、成績主義に基づく、国公法の体系のもとにあるということからすると、やはり前進ではなくて私は後退だというふうに、今のお二人とは違って思っております。

 ただ、幹部というのはやはり違うんだ、一般のあれとは違うんだ、先ほど飯尾先生しきりと言われているのは私は一面あるというふうに思っています。

 もしそうであれば、政治主導というところから民主党の今回の法案は出てきていると思いますけれども、本当にそれをきっちりやるということであれば、一定部分についてはやはり政治任用というのが筋であって、私は、日本の公務員制度の歴史からいえば政治任用をふやすことには消極的ではあるんですけれども、もしやるのであれば、一定、限定をして政治任用にしてすっきりとさせるべきではないか。

 そこで、一般の公務員とは切り離して、一般職についてはちゃんと現行の基本原則の枠内に置いて、恣意的な人事が起こらないようにするということをするべきであって、一般職に残したまま局長以上を切り離してというふうなことをすると、今の公務員法の体系が本当に上から崩れてくる。今回の法案が通って、幹部人事についてそういうことがもし許されるということになると、それは課長以下にもつながってくるおそれがあるというふうに私は思っています。

 そういう観点からすると、戦後の、国家公務員法という、憲法に基づいていろいろな原則のもとで比較的がっちりした体系でつくられてきたわけなんですが、それがやはり非常に脅かされてくることになるのではないかということを危惧しております。

塩川委員 時間が参りました。ありがとうございました。

小宮山(洋)委員長代理 次に、柿澤未途さん。

柿澤委員 みんなの党の柿澤未途でございます。

 四人の参考人の皆さん、本当に長時間お疲れさまでございます。私がラストバッターでございます。

 公務員改革基本法をつくった渡辺行革担当大臣が我が党の代表でございまして、この問題については大変思い入れの深いテーマでもございます。そういう立場に立って御質問を申し上げてまいりたいというふうに思うんです。

 まず、労働基本権の問題について、四人の皆様方のそれぞれの御意見をお伺いしたいというように思います。

 労働基本権の付与がこの公務員制度改革の極めて重要な論点になっているわけですけれども、一口で労働基本権と言っても、これが何を指しているかというのは、論者によってバリエーションが相当あるようにも思います。

 公務員の労働組合の皆さんは、働く者としての権利回復の問題としてこの労働基本権の問題をとらえている。一方で、私たちのような公務員改革を目指している立場からすると、労働基本権付与によって、逆に、公務員人件費の二割削減と言われるような、官のセクターを、民間並みの人事制度を導入してダウンサイジングしていく、そのための一つの前提としてこの労働基本権の問題をとらえているという部分がございます。そういう意味で、考え方も違えば、また具体的に付与する権利のあり方についても相当なバリエーションがある。

 こういう中で、四人の専門家の皆様方に、労働基本権付与の問題についてどのような御意見をお持ちかということをそれぞれお伺いしたいというふうに思います。

    〔小宮山(洋)委員長代理退席、委員長着席〕

飯尾参考人 ありがとうございます。

 この問題については実は私自身にも迷いがございますが、ただ、この労働基本権の問題は、これで決めるということではなくて、まず大前提として、日本の国家公務員制度はこれまで労使関係ということについて十分な考慮を払ってこなかったという側面がある。

 例えば、使用者機関は何かということは長年問題であったわけでございますので、まずそこをきちんとするということが大切なことではないか。つまり、労使関係をきちんと処理できるということの体制にする、その中でやはり、どのような形で労働基本権を付与するのか、あるいは回復するのかということは、実は適切な形で調整は可能であろうというふうに思っております。現在の姿は、諸外国等を見ても、やはりこのところについて手当てがないということが、非常に少ないということが問題だという認識を持っております。

長谷川参考人 私は、先ほど来申し上げてきたとおり、できるだけ官の世界も民の世界と同じようになるべきだというふうに思っております。それが原則でございますから、したがって、官の世界においても、働く人々が団体で交渉をし、協約を結ぶ、あるいは不満がある場合は争議をするという権利は認められるべきだ、それはできるだけ早く認めて構わないのではないかというふうに思っております。

 以上です。

田中参考人 長年私も問題にしてきたことであります。労働三権をどういう形で与えるのか。

 労働三権、団結権、それから交渉権と協約締結権、それから争議権、この三権。私は国鉄改革等で非常に疑問があったりして、この問題は随分議論したんですが、私が五十年前に習った労働法の非常に新進気鋭の学者は、争議権の伴わない三権というのはインチキである、こういう話があるんですよ。

 それは何かといえば、団体をつくるときはいろいろ問題もありますけれども、民間の場合は、団体をつくり、交渉し、協約を締結し、協約が調わない場合には争う、ストライキをやるということで、両方が頑張って、のるか反るかのところで話がまとまるわけです。政府の場合にそれがまとまりますか。徴税権をバックに、国はつぶれないんです。つぶれないものを相手に争議権を与えるべきであるかどうかという基本的な議論があるんだろうと思います。

 ただ、私は、団結権というのは、仮にどういう分野の公務員であっても与えるべきではないか、警察であっても消防であっても。それから交渉するのも、これはよろしいのではないか。

 ただ、交渉といっても、今までも、民間の場合でもそうですが、淫靡な、本当に暴力を伴うような交渉だとか締結だとかありますから、そこら辺をどういうふうにするのか。交渉なんだからという軽い言葉ではなかなか、通常の交渉ではない場合もあるわけですから、日本の争議の歴史を見れば、なかなか交渉そのものも非常に難しい。

 そういうことが国会で、労働三権の問題、基本のところからどんどん議論されていくべきだと私は思っています。個人的には非常に危険なと言われるぐらいの思想を持っていますけれども。国鉄の場合でも争議権はなかった。もうストライキばかりやっていた、そのときはストライキばかりやっていた、違法行為です。でも、争議権を与えたら、全然、一回も争議はないですよ。なぜであるかというような問題も含めて、労働三権について基本から国会で議論していただきたい。

 私は、この問題について素人であります、労働法の専門家でも何でもないわけですから。ただ、公務員として長年そういうのを横っちょで眺め、あるいは公的機関の労働基本権をどうするかという問題にはタッチしてまいりましたけれども、公務員全体については全く発言すべきではないと私は思っております。申しわけございません。

晴山参考人 私は、争議権を含めて労働三権を基本的に公務員にも保障すべきだということは、前からいろいろなところで言ってきていました。ただ、保障しても、民間と完全に同じようにはならないので、そのときに法律との関係をどうするかとか、それから調整機関をどうするかというふうなことを同時に検討しなければならないということで、いささか自分なりにもやったりしてきました。基本的には争議権含めて保障すべきだというふうに思っております。

 いろいろなお話を聞いてもそういう議論自体が非常に少数派で、学説の中では支持は多かったわけですけれども、いろいろな、政治の世界とかマスコミ等を含めて、争議権までというのは非常に少数派だったんですが、今の論調は、争議権を含めて民間と同じようにというふうなことが非常に一般的な論調になってきている。時代の流れだなというふうな感じを持っています。

 労使関係制度検討委員会の報告に基づいて、労働協約締結権まではということで今詰めが出て、今度はその法案が出てくるんだろうというふうに思いますが、最低限、協約締結権まではきっちり保障して、法律等との調整をこれから図っていくべきだというふうに思っております。

柿澤委員 田中先生は最終的にはコメントしないというお話でもございましたが、労働基本権の付与について、多かれ少なかれ、程度の差こそあれ、前向きな御意見だったというふうに思います。

 そういうことになると、労使の交渉で賃金水準等々が決まっていくということになるわけで、基本権の代償措置として存在をしている人事院勧告の制度というものを考え直さなければいけないということになるわけです。

 そういう意味で、労働基本権を付与した場合、人事院そのものをどう扱うべきというふうに考えておられるでしょうか。これまでの委員会の審議では、仙谷大臣は、人事院を廃止するというような可能性も言及をされているところですけれども、こうした点についてどのようにお考えになられるか、飯尾先生からお伺いしたいと思います。

飯尾参考人 この問題は、やはり労働基本権問題がどのように決着するかによって変わってくると思っておりますが、私自身は、現在人事院が果たしている役割は大幅に変化するだろうというふうに思っております。

 しかしながら、人事院の存在自体は、実は労働基本権の制約のみが存立根拠ではありません。例えば政治的中立のとりでであるというふうに、先ほど来何回か出てきましたが、そのような役割を持っている機関だというふうに考えておりますので、名称とか役割は変わるかもしれませんが、しかし、人事院の存在そのものを否定すべきではないのではないか。むしろ、先ほど来出ていますように、公務員人事について客観性が問われるという中でいうと、外部からそれをチェックする機関としての人事院の役割はあると思っております。

 ただ、ではこの勧告はどうなるのかということでございますが、勧告は同じ形ではもう存続し得ない、そうなってくると、その役割は大幅に変わってくる、他部局に移管ということもあるだろうというふうに思っております。

 ただ、パブリックなセクター、公務員の世界で労使交渉というのが白紙からスタートできるのかどうかということはちょっと私は疑問に思っておりまして、業績とかなんとかというのもはっきりしないということになってくると、まず業績は税収だということになってくるとこれはかなり大変なことになってきますので、そういう点からすると、何らかのベンチマークをどういうところに置いてくるのかということはその機能をどちらで担うのかということと関係する。

 機能の問題と組織形態の問題、やはり両方あるような気がしておりまして、それが人事院という形であるのか、違う機関であるのか、検討を要するというふうに考えております。

柿澤委員 長谷川参考人からもお願いします。

長谷川参考人 人事院の主な機能が労働基本権にかわる代償措置としてあるということで考えれば、労働基本権が認められた暁には人事院は要らなくなる、廃止すべきであるというふうに思っております。

 なお、一点付言したいんですけれども、それは、公務員の中立性にかかわる議論、今飯尾先生の御指摘になった点でありますけれども、私の理解は、憲法にあるとおり、国権の最高機関は皆さん方であって、公務員の中立性の議論というのは、実は、やはり国会議員の多数で成立する内閣のもとで仕事をする、それが官僚機構であるということではないかというふうに思っております。

 政策立案の部分と行政実務の執行ということに、いわば概念的に分けて考えれば、行政実務の執行においては、確かに、特定の団体、党派に利益、便宜を図るというようなことがあってはならないので、これは中立性が求められるというのは当然のことであります。

 政策の企画立案、ここが大事なところだと思うんですけれども、これについても、これは国会議員の皆さんが国権の代表機関であり、それに基づいて内閣が構成されている、こういう理解からすれば、官僚のいわゆる中立性というのは、あくまでバッジの皆さんのもとでの中立性ないし政策選択肢の提示というところにやはり機能があるんだろうと思っております。つまり、内閣の方針と離れて、官僚がふわふわとした宇宙に存在しているような中立性、そういった中立性というのは私はないというふうに思っております。

柿澤委員 この件、田中先生にもお伺いをしたいんですけれども、ちょっと時間がないので次に進ませていただきます。

 天下りの根絶についてなんですが、事前規制のことについて先ほど来触れられております。この事前規制を復活させるべきかどうかということについてはいろいろな議論があるわけでありますけれども、これについて田中参考人がどうお考えになられているかをぜひお伺いしたいと思います。

 また、人事院の改廃についての御意見もあわせてお答えをいただければと思います。

田中参考人 人事院の方から先に申し上げたいと思います。

 労働基本権のありようが変わりますと、当然のことながら変わっていくということでありますが、やはり私は、基本的には、争議権まで公務員に与えるということについては相当な議論が必要であると。というのは、会社の場合だと、その会社がつぶれるわけですよ。そこで妥協が成り立つわけですよ。ところが、国家はつぶれないんですよ。つぶれないものを相手に議論する、闘争するということはどういうことであるのか。いずれ、昔あったような労働争議を仲裁するための委員会でもつくればいいのか、そういう問題で済むのか。あるいは、そうでなければどういう対応があるのか。

 そのことによって人事院のありようも変わってきますし、代償措置で今あるわけですけれども、ありようで、全部が人事院の仕事でなくなるというわけではない。

 事前規制だけでいいのか、事前規制をどう思うかということについては、実は、事前規制というのは、正直な話余り役に立たなかったと言った方がいいと思います。二年待っておれば、特殊法人とか独立行政法人とか公益法人で待っていて、そこに行くわけでありますから、実効的なものではなかったのではないかという気がしております。

 したがって、きちんとしたチェックをするためには、事後規制が非常に重要である。つまり、公務員を途中でやめたりして再就職をしたときに、それが公正な、フェアなそれであるのかどうなのかということをチェックしていく機関が必要ではないかと思います。当該省に任せておくわけにはいかない。先ほど申し上げたようにOBが存在する場合もありますから。そういうふうに考えております。

柿澤委員 ありがとうございます。

 長谷川参考人にも同じ事前規制の問題をお伺いしたいと思います。

長谷川参考人 私も、原則的には事前規制というのは要らない。つまり、先ほど来申し上げているように、民間と官の世界がイコールフッティングするような世界になった暁には事前規制というのは極めて限定的に考えられるべきだ。先ほど申し上げたような、防衛機密にかかわる問題とか、あるいは警察、情報収集にかかわるような人の仕事の場合、こういった非常に特殊な場合を除けば事後規制でよろしいのではないかというふうに思います。

 以上です。

柿澤委員 ありがとうございます。

 最後のお尋ねをしたいと思います。

 あすから独法仕分けが始まるわけですけれども、独法の理事について、天下りをなくすために公募で実施をするというような話がありました。ところが、実態を見ると、天下りのかわりに現役出向がふえている、こういうケースが非常に多く見られるようであります。

 二〇〇三年には、現役で独立行政法人に出向するというのは九人しかいなかったようでありますけれども、去年の十月の報道で見ると、過去最多の百二人に上って、百人を突破しちゃった。しかも、この間の枝野大臣を初めとするさまざまな御発言を見ていると、独立行政法人に対する現役公務員の出向というのをこれからもふやしていく、こうした方針のようであります。

 勧奨退職がだんだん難しくなってきて、そして退職して天下りをするというのが非常に厳しくなってきている。しかし、幹部になった方をそのまま役所の中にとどめておいてもなかなか仕事の道が難しい、こういうことから、ここまである種役所の植民地みたいな形であった独立行政法人に現役出向させて、そして任期を終えて帰ってくるとそこでやめる、こういうことが行われてきたというふうに思っておりますけれども、こういうことがこれから続くとなると、退職金が一回減ります、その分は確かに効率化になりますけれども、ほとんど何にもならないんじゃないかということを思います。

 この点について、はっきり言えば、役所から行かなければいけないようなポストそのものを全廃すべきではないかというように考えますけれども、飯尾先生、あと長谷川先生の御意見をお伺いして終わりにしたいと思います。

飯尾参考人 この問題は大変難しい問題で、独立行政法人にもいろいろな種類があるように思っておりますが、私自身の理解でいきますと、日本は、やはり諸外国に比して人口当たりの公務員が非常に少ない国でございますから、幾らかパブリックな部分が正式の政府の外に出ているというのが実態であろうというふうに思います。

 ですから、委員が御指摘のようなことが実はあるだろうと思っておりますが、実は私は、積極的に現役出向をふやすべきではないかという意見を持っております。見かけ上の政府が日本は総定員法などで非常に小さくなっているので、もう少し実質的な議論をするためには、実質的な行政を担っているところであれば、やはり公務員のプールの中から出ていくということがあり得べきではないか。むしろ、そこを分けて、陰の形でいろいろとコントロールしていたのが問題ではないかというふうに私は思っております。

 ただし、独立行政法人等も、これまでいろいろなもの、種類の違うものが入っておりますものですから、それを分けた上で、そのようなことの明確なルールをつくっていくべきだというふうに考えております。

長谷川参考人 現役出向というのは、天下りというより、横滑りというか、官庁の人事そのものでありまして、それが、いわば天下りポストがなくなってきたために行われるようなことであれば、それは本末転倒であります。やはり原理原則に戻りますれば、そもそも政府がやるべき仕事は何なのか、政府がやってはいけない仕事は何なのか、この辺から考えていけばおのずと答えは明らかで、現役出向というのはやはり矛盾した形だなというふうに私は思っております。

 以上です。

柿澤委員 ありがとうございました。

田中委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつ申し上げます。

 参考人の皆さんにおかれましては、貴重な御意見を述べていただき、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。(拍手)

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十四分散会


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