衆議院

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第4号 平成24年3月16日(金曜日)

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平成二十四年三月十六日(金曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 荒井  聰君

   理事 岡島 一正君 理事 後藤 祐一君

   理事 田村 謙治君 理事 津村 啓介君

   理事 若泉 征三君 理事 鴨下 一郎君

   理事 平沢 勝栄君 理事 高木美智代君

      阿知波吉信君    青木  愛君

      石山 敬貴君    磯谷香代子君

      江端 貴子君    緒方林太郎君

      岡田 康裕君    金子 健一君

      川島智太郎君   菊池長右ェ門君

      坂口 岳洋君    園田 康博君

      高井 崇志君    高橋 英行君

      道休誠一郎君    長島 一由君

      橋本 博明君    福嶋健一郎君

      福島 伸享君    福田衣里子君

      向山 好一君    村上 史好君

      矢崎 公二君    山尾志桜里君

      湯原 俊二君    小泉進次郎君

      塩崎 恭久君    平  将明君

      竹本 直一君    徳田  毅君

      中川 秀直君    長島 忠美君

      丹羽 秀樹君    野田 聖子君

      遠山 清彦君    塩川 鉄也君

      浅尾慶一郎君

    …………………………………

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 松原  仁君

   国務大臣         中川 正春君

   内閣官房副長官      齋藤  勁君

   内閣府副大臣       後藤  斎君

   内閣府大臣政務官     園田 康博君

   外務大臣政務官      中野  譲君

   文部科学大臣政務官    城井  崇君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  占部浩一郎君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  岩瀬 充明君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    西村 泰彦君

   内閣委員会専門員     雨宮 由卓君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十六日

 辞任         補欠選任

  石田 勝之君     江端 貴子君

  園田 康博君     道休誠一郎君

  玉城デニー君     川島智太郎君

  畑  浩治君     山尾志桜里君

  村上 史好君     向山 好一君

  本村賢太郎君     高橋 英行君

  森山 浩行君     岡田 康裕君

  長島 忠美君     丹羽 秀樹君

同日

 辞任         補欠選任

  江端 貴子君     石田 勝之君

  岡田 康裕君     坂口 岳洋君

  川島智太郎君     玉城デニー君

  高橋 英行君     本村賢太郎君

  道休誠一郎君     園田 康博君

  向山 好一君     村上 史好君

  山尾志桜里君     阿知波吉信君

  丹羽 秀樹君     長島 忠美君

同日

 辞任         補欠選任

  阿知波吉信君     菊池長右ェ門君

  坂口 岳洋君     緒方林太郎君

同日

 辞任         補欠選任

  緒方林太郎君     森山 浩行君

  菊池長右ェ門君    畑  浩治君

    ―――――――――――――

三月十六日

 新型インフルエンザ等対策特別措置法案(内閣提出第五八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 不正アクセス行為の禁止等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第三七号)

 新型インフルエンザ等対策特別措置法案(内閣提出第五八号)


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     ――――◇―――――

荒井委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、不正アクセス行為の禁止等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官占部浩一郎君、警察庁生活安全局長岩瀬充明君、警察庁警備局長西村泰彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

荒井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

荒井委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。遠山清彦君。

遠山委員 公明党の遠山清彦でございます。

 まず冒頭に、本日議題となっております不正アクセス禁止法案につきましては、我が党として賛成の立場でございます。

 私が党内で委員長をさせていただいております公明党サイバー攻撃対処検討委員会におきましても、昨年いろいろな事案が発生したことを受けまして、野田総理宛ての提言を政府に申し入れさせていただきました。その中の一項目で、識別符号、あるいは通称ID、パスワードの不正入手に対する罰則強化を我が党としても求めておりまして、今回の政府案はその提言と方向性を同じくしておりまして、早期に法的措置を講じようとされたことを高く評価するものでございます。

 その上で、何点か確認の質問をさせていただきたいと思います。

 まず、最初の質問でございますが、警察庁の資料によりますと、不正アクセス行為の検挙数が、平成十七年より毎年百件を超える水準になっております。また、検挙の件数につきましても、平成十九年から千件を超える水準で推移しております。私が見ますところは、この数字が示唆しているのは、平成十七年ごろ、今から五、六年前ごろから、他人のIDやパスワードを盗むことによりまして利益を得ることができる、いわば闇ビジネスが日本で芽吹いて拡張してきた可能性があるということでございます。

 闇ビジネスということになりますと、オレオレ詐欺とかもそうでございますが、組織的犯罪集団の関与というものが疑われるところでございまして、仮説といえば仮説でありますけれども、仮にこの想定が事実とすれば、不正アクセス行為の増加と、その背景にある犯罪組織の活動というものがリンクしているのではないか。

 そうしますと、後でも話題になりますが、フィッシング行為などは、個人の、ネットオタクとは言いませんけれども、ネットに強い方々が悪用してやる詐欺行為というものとは、もし組織的な犯罪集団がかかわっているとすれば、別次元の対応を警察としてもしなければならないと思いますけれども、大臣の御見解をいただきたいと思います。

松原国務大臣 遠山委員におかれましては、サイバー攻撃対処に関する提言を野田総理にも提出なさっておられます。まさに今の時代における新しい犯罪をどう抑止するかということに対して深い御関心をお持ちということで、大変に敬意を表する次第でございます。

 その中で、今委員お尋ねの部分でありますが、平成二十三年に検挙された不正アクセス事件を分析する限りでは、個人による犯罪が約九割を占めているものの、フィッシングによる不正アクセス及び詐欺の共犯者九名により敢行された事例があるなど、犯罪捜査の結果、組織性のある不正アクセス事件もあるということを承知いたしております。また、平成二十一年に、インターネットオークション及びインターネットバンキングにかかわる不正アクセス、詐欺及び電子計算機使用詐欺等の事例で、暴力団が関与した例もあると承知をいたしております。

 警察としては、犯罪捜査の過程で把握される犯罪者の組織性に着目して、どのような契機で組織が生まれたのか、そして暴力団組織が関与しているのか、また、どのような対策が有効なのかを含め、組織犯罪対策の視点も持ちながら、サイバー犯罪対策に今後取り組んでまいりたいと思います。

遠山委員 すばらしい御答弁、ありがとうございます。ぜひその方向で、警察を挙げてしっかりやっていただきたいと思います。

 次にお伺いしたいのは、先ほどフィッシングの話題を取り上げましたけれども、他人のID、パスワードを不正に取得する行為を行うサイトが海外のサーバーに所在をしている場合、その所在国、海外ですね、これを正確に割り出す能力というものを日本の公安組織が持っているのかどうか、お伺いしたいと思います。

松原国務大臣 海外を、特にこのコンピューターの世界といいますかインターネットの世界は国境を越えてあるわけでして、そこが非常に大きな関心事であることはおっしゃるとおりであります。

 海外から行われるサイバー犯罪を捜査していくためには、海外の捜査機関との連携が極めて重要であります。警察庁においては、これまでも海外の捜査機関との連携強化に努めてきたところであります。その結果、例えば、タイ国家警察と共同捜査により、インターネット上にアダルトサイトを開設し、わいせつ画像を公然と陳列した被疑者を、京都府警が本年三月、検挙したところであります。

 改正法が施行された際には、海外に所在するフィッシングにかかわる取り締まりについても、海外の捜査機関と連携を強化した上でしっかりと捜査を推進するように警察庁を指導してまいりたい、このように思っております。

遠山委員 ありがとうございます。

 では、それに関連をした質問をさせていただき、外務省からも御答弁いただきたいと思います。

 独立行政法人情報処理推進機構、略称IPAという組織がありますが、そこが公表している分析では、平成二十年四月から平成二十三年六月までにこのIPAに届けられた標的型攻撃メールを分析したところ、それらの発信IPアドレスの国別内訳を公表しております。この標的型攻撃メールが発信された海外、日本も含めた分析によりますと、三五%は発信国不明、続いて、中国が三一%、韓国が一三%、日本が八%、台湾及び米国がそれぞれ五%、コロンビアが三%、こういう数字になっております。

 不明国の内訳はわからないわけでございますが、はっきりしていることは、日本のサイトに対して標的型攻撃メールを送っているのは、大半が海外のサイトからということだけははっきりわかるわけでございます。それで、先ほど松原大臣がお答えになりました、海外の警察との連携ということが大事になってくると思っております。

 ここで外務省にお伺いをしたいと思うんですが、サイバー犯罪を取り締まるための条約が二〇〇四年七月一日に発効しております。条約の名前が、サイバー犯罪に関する条約、別名ブダペスト条約となっておりますが、この条約の締約国は三十二カ国、署名国は現在十五カ国と認識をしておりますが、この締約国三十二、署名国十五の中に、先ほど私がIPAの資料をもとに具体的に名前を挙げた中国、韓国、台湾、米国、コロンビアは含まれているのかどうか、お答えいただきたいと思います。

中野大臣政務官 遠山委員におかれましては、日ごろから外交問題の諸課題につきましていろいろな御提言をいただいておりますこと、改めて感謝を申し上げます。

 お尋ねの件ですけれども、米国につきましては二〇〇六年に同条約を締結しておりますけれども、残る韓国、中国、コロンビア、そして台湾につきましては、締約はしておりません。

遠山委員 そうしますと、政務官、一問加えて、質問というより要望をお伝えしたいと思いますが、私が先ほど申し上げましたように、日本のサイトに攻撃をしかけてくるサイトが多い国が、まさに今私が申し上げた中国、韓国、台湾、米国、コロンビアなんですね。このうち、アメリカ合衆国のみがこのサイバー犯罪の条約に入っている、ほかは入っていないということでございます。

 この条約に入れば、つまり締約すれば、批准をすれば、国内法で、そういった不正アクセス行為を初めとする、ネットを悪用した攻撃をした被疑者を検挙することがようやくできることになりますし、相手方の国でそういう国内法を整備していただかないと、日本の警察も被疑者の移送等が要求できないということになりますので、ぜひ外務省として、中国、韓国、まあ台湾はいろいろ外交上やりにくい部分もあるのかもしれませんが、またコロンビア、こういった国々に、こういうサイバー犯罪に関する条約に早期に入る、入ると同時に国内法の整備ということも慫慂していくべきだ、このように思いますが、いかがでしょうか。

中野大臣政務官 委員御案内のとおり、我が国は、二〇〇四年の四月に、同条約の締結につきましては国内の承認をいただいています。昨年の六月には、その一つの担保法でありますサイバー刑法につきましても、現在施行を待っているところでございます。

 我が国といたしましては、現在、今審議をいただいています不正アクセス禁止法の改正法案、この状況も注視しながら、まず我が国としてしっかりと、できるだけ早期に締結をしていきたい。その上で、委員御指摘のとおり、締約国をさらに広げていくために、サイバー犯罪条約作成の主体となっております欧州評議会とともに協力して、さらに前に進めていきたいという考えでございます。

遠山委員 ありがとうございます。

 ちなみに、余談でございますが、中国につきましては、松原国家公安委員長も御承知だと思いますけれども、別に、中国政府がそういうことを容認しているとか推進しているということでは当然ございませんけれども、中国語という言語のサイトの中には、いわゆるサイバー攻撃の典型であるDDoS攻撃をどうやったらできるのかということを無料で教えるチャットルームがありまして、私の知り合いのサイバーセキュリティーの民間人が中国人に成り済ましてそのチャットルームに入ったところ、どうやったら日本にあるサイトを攻撃できるか詳細に教えてくれた、こういう事例を私は直接伺いました。

 それから、さらに驚いたのは、中国語で、素人でも簡単にサイト攻撃ができるアプリケーションをダウンロードするサイトがある。これも、私、そのページのコピーを持っております。

 さらに、もっと言うと、これも中国語で表記されておりましたが、例えば、このサイトに対してこのレベルの攻撃をしかけるならば百ドルでやりますよと。つまり、サイバー攻撃請負業者も存在しているということが事実でございます。

 私が党内の勉強会等で調べた限りでは、こういったサイトが多いのは中国語、ロシア語、それからスペイン語、こういった言語のサイトでそういったものが散見されるということでございます。警察の担当の方に聞いたら、私以上に知っていました。知ったからといって急に取り締まれるわけではないと思いますが、ぜひ政務官、外務省もこういった事実に目を配っていただいて、外交ルートも使って、そういった犯罪行為を行うサイトについては国境を越えて、ネットが国境を越えていますから、捜査の方も国境を越えてしっかりとやっていただきたいということを要望として申し上げたいと思います。

 続きまして、松原大臣にお伺いしたいんですが、今回の法案の第七条では、アクセス管理者の承諾を得てする場合を規制の対象外とするという規定がございます。そうすると、規制の対象になる場合とならない場合ということがあるわけでございまして、それを明確に区別するためには、この法文の中にある「アクセス管理者の承諾を得てする場合」というのは具体的にどういう場合なのかということを丁寧に説明する義務が政府にあると思いますが、わかりやすく説明をしていただきたいと思います。

松原国務大臣 御指摘の、アクセス管理者の承諾を得てする場合を法案第七条の規制の対象から除外した趣旨は、例えば、企業のシステム担当者やセキュリティー企業が、セキュリティー教育の一環として、啓発、訓練用のフィッシングサイトを設けるなど、フィッシングによる被害を予防する取り組みが行われることが想定されるところから、これらを規制の対象から除くことにしたということであります。

 啓発、訓練用のフィッシングサイトを設けるとは具体的にどういうことかということに今度はなりますが、サイト管理者等によって、セキュリティー教育の一環として、そういった啓発、訓練用のフィッシングサイトを設ける。具体的には、啓発、訓練用のフィッシングサイトを閲覧させ、もし識別符号を入力してしまった場合には、フィッシングの危険性を教える画面を表示して警告を与えるというふうなことであります。

遠山委員 よくわかりました。これで基準がはっきりしたと思います。

 時間の関係で最後の質問になろうかと思いますが、不正アクセス行為を発見、防止をするためには、いわばその証拠としてログの保存をさせて、それを定期的にチェックすることが不可欠だという専門家の指摘がございます。しかしながら、ログを全部保存するということはサーバーに負荷がかかりますので、そういったところから、ログの保存を義務づける法律というものはないというふうに認識をしております。

 これは、先ほど来私は海外のサイトの話もさせていただいておりますが、日本の中でもなかなかログを全部保存しろとは言えない。海外でも状況は全く似ているわけでございます。

 ログの保存が担保されないと不正アクセス行為の痕跡を把握することができないということになりまして、そうしますと、不正アクセスをするたびに痕跡を消していくということをやられますと、不正アクセスの行為自体が禁止をされましても検挙率が向上する保証がないということになりかねないわけでございますが、このログ保存とそれに関するルールのあり方について、政府当局としてどのように対応を考えておられるか、最後にお伺いをしたいと思います。

松原国務大臣 極めて重要な御指摘だと思っております。

 不正アクセス行為は典型的なサイバー犯罪であり、基本的にログ以外の痕跡がほとんど残らないことから、不正アクセス行為を発見、防止するためには、ログを解析することにより、アクセス元のコンピューターや契約者情報を特定する必要があります。そういう意味で、不正アクセス行為の防止や取り締まりのために、ログが保存されることは重要な課題であり、御指摘のとおりであります。

 他方、昨年成立し、本年六月二十三日までに施行されることとなっている改正刑事訴訟法においては、ログが残されていた場合、最大で六十日間ログ保存を要請できる旨の規定が置かれていることから、同法の積極的な運用に努めるよう警察庁を指導してまいりたいと思います。

 実際、このログということに関しては、これがないことによって追跡の障害となるものが存在しているということを認識した上で、積極的活用に努めていきたいと思っております。

遠山委員 ありがとうございます。

 最後に一言だけ申し上げておきたいと思います。

 二つありまして、一つは、冒頭に申し上げましたように、IDやパスワードを入手するという不正アクセスの件数がここ数年で激増とは言いませんが急増している背景には、間違いなく、ブラックマーケットというか、要するに、他人のIDとパスワードを売買の対象にしているマーケットが存在するからふえているというわけでございます。ですから、ID、パスワードを他人のものをとったらだめよという法律が今回の法律なんですが、それだけでは対応が終わるわけではなくて、そもそもそれが売買の対象になっている闇マーケットそのものを根絶していかなければならないということが大事だと思っております。

 それからもう一点は、やはり欧米諸国の対応策なんか見ますと、ハッカーも、ブラックハッカーとホワイトハッカーという言葉があるんですね。ブラックというのは今話題になっているような悪いことをするハッカーでございますが、ホワイトハッカーというのはハッキングの能力が高いだけで悪いことをしない。そうすると、アメリカ政府なんかはこのホワイトハッカーを見つけ出して、どんどん政府の中に雇って対応策をしているという側面がありまして、日本政府はまだそこまで至っていないというのが現状だと認識をしておりますので、ぜひまた大臣のリーダーシップでそういった対応をしていただきたいということを要望として申し上げまして、私の質疑を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

荒井委員長 次に、平沢勝栄君。

平沢委員 自由民主党の平沢勝栄でございます。

 今、遠山委員から質問がありましたので、できるだけダブらないように質問させていただきたいと思います。

 インターネットの利用が拡大して、国民生活、社会経済活動に不可欠な状況になってきているわけですけれども、それに並行した形で、いろいろなサイバー犯罪、インターネットに関連した犯罪がふえているわけです。

 今、遠山委員からもいろいろなサイバー犯罪について話がありましたけれども、今まで日本で検挙されたというか発覚したサイバー犯罪のうち、日本国内で行われたものと海外で行われたもの、この内訳というのはどうなるんでしょうか。

岩瀬政府参考人 お答えいたします。

 サイバー犯罪には、ネットワークを利用して行われたりコンピューターを対象として行われたり、さまざまな犯罪が該当するわけでございますが、このうち、アクセス元について統計的に把握している不正アクセス禁止法違反事件について申し上げますと、平成二十三年中に不正アクセス事件として認知いたしました八百八十九件のうち、日本国内のコンピューターからのアクセスが六百七十八件、全体の七六・三%でございます。また、海外のコンピューターからのアクセスが百十件、一二・四%でございます。アクセス元不明が百一件、一一・四%となっております。

平沢委員 関連してちょっとお聞きしたいんですけれども、当然、これは被害届等が、あるいは情報の連絡がなくて被害に遭っている企業だっていっぱいあると思うんですけれども、犯罪でいう暗数というのはどのくらいあると見ているんでしょうか、警察庁は。

岩瀬政府参考人 お答えいたします。

 サイバー犯罪のうち、不正アクセス行為は、不正アクセス行為に続いて行われる犯罪行為により実害が生じるまで気づきにくく、潜在化しやすいという特性を有しておりまして、相当数の暗数があるものと考えられるところでございます。

 実際の数につきましては、暗数でございますが、把握をしておりません。相当数の暗数があるものというふうに認識をしているところでございます。

平沢委員 相当数の被害が起こっているということなんですけれども、とりわけ、問題は海外から行われる犯罪なんです。

 明らかに海外から行われているということがわかった場合に、今、警察当局はどういう捜査をやっているんでしょうか。海外に対する捜査協力要請をやっているのか、そしてそれが実際に相手方の協力を得られているのかどうか、そしてそれが検挙に結びついているのかどうか、そういったことについて教えていただけますか。

岩瀬政府参考人 お答えいたします。

 被害の報告を受けまして、捜査をいたします。それで、発信元が海外であるというようなことで判明いたしますと、我が国から海外の捜査当局に対して捜査共助を要請するということでございます。

 外国の捜査機関の協力の状況はどうかというお尋ねでございますけれども、要請に係る事案の内容によってそれぞれ状況がいろいろとありますので、協力の状況について一概にはお答えすることも難しいところでありますが、平成二十三年中に行いました要請でございますけれども、国際捜査共助の要請を発した件数は、合計で百十四件となっております。主な要請先国は、米国、中国が多くなっておりまして、それぞれ二十四件、十九件というふうになっております。

 また、今申し上げました米国、中国について回答がなされているかどうかということでありますけれども、そのうち、米国については二十件、また中国については十件の回答がなされているということでございます。

 それから、検挙につながった例ということでございますが、昨年発生いたしました、わいせつ画像をインターネット上に公開したわいせつ図画公然陳列事件というのがあります。これはタイ国家警察に対して国際捜査共助を要請いたしまして、共同で捜査を行った結果、被疑者を検挙した、こういう事例がございます。

 また、検挙事例ではありませんけれども、各捜査担当官の連絡網であります二十四時間コンタクトポイントを通じた要請によりまして、コンピューターウイルスやフィッシングサイトを蔵置したサーバーの停止を求めて、それが実行されまして、サイバー犯罪の被害拡大の防止、こういう効果も出てきておるところでございます。

平沢委員 今、米国とか中国ということを言いましたけれども、例えば中国の場合、十九件、そのうち回答があったのは十件ということですか。残りの九件は中国から回答がない、これはなぜなんですか。中国側が協力しないんですか、それとも、いずれ回答は来るんでしょうか。

岩瀬政府参考人 この九件につきましては、今のところ回答が来ていないということでございまして、今後回答が来る場合も含まれておるかもしれませんが、現在のところ、この九件については回答が得られていないということでございます。

平沢委員 では、別な角度から質問させてください。

 サイバー犯罪について、中国は協力的なんですか、協力的でないんですか。

岩瀬政府参考人 お答えいたします。

 要請の事案の内容一件一件に応じてそれぞれ状況が異なりますことから、一概に協力的かどうかということはお答えすることが難しいところでございます。

平沢委員 では、まず大臣に聞きましょう。

 こういったサイバー犯罪についての国際捜査のあり方について、関係国との協力関係が大事になってくるわけですけれども、これについて大臣の所見をちょっと教えてください。

松原国務大臣 国際捜査共助による捜査の状況を改善するためには、これは非常に重要なことですから、さまざまな多国間協議の場で捜査機関相互の協力や各国国内の体制整備に関する議論が行われているところであり、警察庁としても、これらの多国間協議の場や二国間協議の場を通じて、サイバー犯罪捜査に関する国際協力の一層の強化について働きかけを行っております。

 今後とも、これらの取り組みを推進するとともに、海外からのサイバー犯罪についても必要な捜査を尽くし、各国と連携して犯人の検挙に全力を挙げるよう警察を指導してまいりたい、このように思っております。

平沢委員 今サイバー犯罪についていろいろお聞きしたんですけれども、もっと重要なのは、各国から日本に対してなされるサイバー攻撃ですよね、一種のテロみたいなものですけれども。

 去年、日本の政府機関、防衛省とかの政府機関、それから衆議院、参議院のいろいろな公務用のパソコンに対するサイバー攻撃も明らかになりましたし、三菱重工業とか防衛産業に対するサイバー攻撃も明らかになったわけでございますけれども、こうした重要なインフラだとか重要な施設に対するサイバー攻撃というのは、国家的な安全保障上大変に重要な問題で、アメリカでは、いわば第五の戦場と位置づけるくらい、しっかりとした取り組みをしているわけでございます。

 そこで、こうしたサイバー攻撃に対して日本の警察は、要するに、可能性として、一般の国民がやっている可能性もありますし、特定の企業が情報を入手するためにやっている可能性もありますし、テロ目的で日本国内を混乱させるためにやっている可能性もあると思いますけれども、これはもう大変に安全保障上重要だと思いますけれども、これに対する取り組みはどうなっているんでしょうか。

松原国務大臣 今、平沢委員が御指摘をした点は、極めて重要な問題だというふうに認識をいたしております。

 御案内のとおり、米国はサイバー空間を第五の戦場と位置づけているわけでありまして、我が国に対しては、昨年、警察庁や人事院のウエブサイトに対するサイバー攻撃事案が発生したほか、衆議院、参議院、防衛関連産業事業者が情報窃取等を企図されたと見られるサイバー攻撃を受けたことが明らかになるなど、サイバー攻撃の脅威が改めて顕在化したものと認識しております。

 御指摘のように、衆議院、参議院とか防衛関連というのは情報の一番肝の部分でありまして、そこに対してこうしたサイバー攻撃がまさに組織的に行われたということは、極めてゆゆしき一大事だと私は認識をいたしております。

 このようなサイバー攻撃は、我が国の治安、外交、安全保障に重大な影響を与えるとともに、国民生活や社会経済活動に大きな支障を生じさせる可能性がある重大な問題と認識しております。米国も、今申し上げたように、第五の戦場と認識しておりますが、我々もそれぐらいの認識を持って、サイバー攻撃に対応する最重要課題の一つとして取り組みを強化するべきだ、このように思っております。

平沢委員 去年行われた衆参に対するこういった攻撃、あるいは三菱重工業等に対する攻撃、こうした攻撃に対して、警察庁、どういう取り調べ、捜査を行っているんでしょうか。

西村政府参考人 警察におきましては、今御指摘のサイバー攻撃事案に対して、一つは捜査を実施しております。それからもう一点は、警察には技術の専門部隊でありますサイバーフォースなどがございますので、そうした技術力を活用いたしまして、サイバー攻撃の実態解明をやっております。

 さらに、外国治安情報機関等とも情報交換に努めまして、実態解明、捜査協力の推進に努めているところでございます。

平沢委員 聞いているのは、これは日本国内で行われたんですか、それとも外国から行われてきたものなんですか、どっちですか。

西村政府参考人 現在捜査中でございますので、詳細は答弁を差し控えさせていただきたいと思いますが、外国のサーバーに接続をされるような事例ですとか、外国から標的型メールが送られてきている事例も把握しております。

平沢委員 昨年の読売新聞ですけれども、「サイバー攻撃 中国の影」という大きな記事が載っています。

 アメリカの航空宇宙局、NASAの宇宙観測衛星の制御システム、これが二度にわたってサイバー攻撃を受けて乗っ取られた、安全保障上、このサイバー攻撃は極めて深刻だということがるる書いてありまして、そういった中で、アメリカの下院の情報特別委員会は、中国による米国での情報収集活動が行われている疑いがあるということで、中国あるいはロシアを名指しで非難しているということも書かれております。いずれにしましても、アメリカでは、サイバー攻撃に中国の影がちらついているということで、いら立ちがあるというようなことがいろいろと書かれているわけです。

 それから、オーストラリアでも、オーストラリアの首相や閣僚のパソコンがサイバー攻撃の被害に遭って、電子メール数千件が盗み見られていた。これについてオーストラリアの新聞は、中国の情報機関が関与した、こういったことが書いてあるわけでございます。

 そして、同じ記事の中に、中国軍は専門部隊を育成して、サイバー空間での戦闘能力を向上させているということで書いてありまして、この記事を読みますと、何か中国は、まあ一般人がやるサイバー攻撃もあるでしょう、国としてこういった攻撃を、意図的に、相手を攪乱させる、あるいはいろいろな重要な機密情報を盗み出すという目的でやっているんじゃないかということがるる書いてあって、それがアメリカの国会でも問題になっている、中国の名前を挙げて問題になっていると。

 この危機意識を日本の警察当局は持っているのかどうか、警備局長。

西村政府参考人 ただいま委員御指摘の報道を承知しておりますし、また、アメリカにおけます報告書も我々は承知しております。

 しかしながら、現在、日本における我々の捜査状況で同様の認識を持つには至っておりませんが、あらゆる可能性を視野に入れまして、今後とも捜査を継続してまいりたいと考えております。

平沢委員 そこで心配なのは、特定の国が日本に対して、いろいろな重要インフラ、あるいは重要な、例えば防衛省とかそういったところに対してこういった攻撃を国家がしかけてきたときに、日本はしっかり守ることができるのかどうか、そして捜査ができるのかどうか。これは捜査はできないですよ。相手方があるわけだし、相手方は国家でやっているわけだから、捜査というのはできなくなる。ということになると、日本としてはしっかり守らなきゃならないわけで、それが、果たして守ることが可能なのかどうか。この辺について、警備局長。

 そして、こういった問題についてアメリカは相当一生懸命力を入れているみたいなんですけれども、もし知っていれば、アメリカはどういう取り組みをしていて、そして、日本はかなりおくれているんじゃないかと思いますけれども、それについてどう考えておられるか。

西村政府参考人 まず、アメリカの状況について御説明申し上げますが、米国におきましては、政府機関や企業に対するサイバー攻撃が多発しておりまして、政府機関のネットワークや重要インフラの防衛等に政府関係機関が連携して取り組んでいると承知しております。

 具体的には、ホワイトハウスにサイバーセキュリティー調整官を設けまして、サイバーセキュリティー政策について関係省庁間の調整に当たらせているほか、国土安全保障省、国防総省、FBI等の関係機関がサイバー攻撃対策に取り組んでいると承知しております。

 米国のサイバー攻撃に係る人員、予算等の詳細は承知しておりませんけれども、例えば、国土安全保障省におきまして、米国連邦政府のネットワークや重要インフラのサイバー防護に当たっている部門の二〇一二年の関連予算は、四億五千九百万ドルと承知しております。

 翻りまして日本の状況でございますが、現在、日本におきましても、内閣官房の情報セキュリティセンター、いわゆるNISCを中心に、関係省庁におきまして、防護方策の強化について検討を進めているところでございます。

 また、警察独自の取り組みとしまして、サイバー攻撃の未然防止のために、全国の四千の先端技術を有する事業者等とサイバーインテリジェンス情報共有ネットワークを構築いたしまして、標的型メール攻撃等の情報窃取を企図したと見られるサイバー攻撃に関する情報の集約や、それに基づく注意喚起を行っておりますし、また、全国の都道府県警察と重要インフラ事業者等で構成されますサイバーテロ対策協議会におけるサイバーテロに関する情報共有を進めております。

 そうしたところで得られた情報を、先ほど申し上げました内閣の枠組みに提供いたしまして、日本全体としてのセキュリティー対策が向上するように警察としても努めてまいりたいと考えております。

平沢委員 そこで、これから日本は、このサイバー攻撃にさらされる危険性というのはもっともっと高まっていくと思うんですけれども、今回の法改正、これはどの程度効果があるものなんですか。それとも、今回の法改正では不十分なのか、さらに改正しなきゃならないのか。

 これは技術のイタチごっこですから、当然のことながら今回のでは不十分で、またいずれ改正しなきゃならないと思いますけれども、今回のこの法改正の効果というのはどの程度だと見ていますか。

西村政府参考人 先ほど来御紹介申し上げております衆議院、参議院に対するサイバー攻撃事案では、標的型メール攻撃がなされまして、コンピューターが不正プログラムに感染した結果、全議員のID、パスワードが窃取された可能性があると見られていると認識しております。

 現行でも、不正プログラムを添付したメールを送信する行為は、刑法の不正指令電磁的記録に関する罪に該当すると考えられますけれども、今回の法改正によりまして、他人のID、パスワードを不正に取得、保管する行為についても処罰されることとなったと認識しております。

 また、今回の法改正によりまして、不正アクセス防御対策を支援する団体に対する援助規定が新設されることから、警察としましても、情報セキュリティー関連事業者団体に対しまして、サイバー攻撃事案の手口等に関する情報を提供することによりまして、我が国社会全体の情報セキュリティーの向上を図ってまいる所存であります。

平沢委員 では、時間が来ましたから、最後に大臣に。

 大臣、これは非常に深刻なので、一歩前進でしょうけれども、まだまだこれで完全というわけにいかないわけです。こういったサイバー攻撃、これから大きな問題になっていくだろうと思いますけれども、これに対して大臣の取り組みの決意を教えてください。

松原国務大臣 本当に、委員御指摘のとおりの大きな問題であります。

 やはり、サイバー空間が第五の戦場になるというふうな指摘が米国ではしばしばなされているわけでありまして、それは個人が何かをするとかというレベルではなくて、米国の認識は、恐らく、戦場ということでありますからもっと組織立ったものになってくるわけでありまして、そうしたものに対するという点においては、日本も万全の備えをさらに進めるべく私も警察庁を指導してまいりたい、このように思っております。

平沢委員 時間が来たので、終わります。ありがとうございました。

荒井委員長 次に、丹羽秀樹君。

丹羽委員 おはようございます。自由民主党の丹羽秀樹でございます。

 今回の不正アクセス行為の禁止等に関する法律の一部を改正する法律案について、今回の法律案というのは、平成十二年に今回の不正アクセス禁止法が施行されて以降、それ以来、法律違反検挙数がおおむね、本当に増加傾向にあると思っております。

 今回の法改正の意義と、改正前と改正後のポイントがこう違うということを、大臣、ちょっと御明確にお答えいただきたいと思います。

松原国務大臣 まさに、サイバー犯罪が委員御指摘のように大変に増加してきたという中において、従来の法整備だけではなかなか不十分である、十分に対応するにはもっと改正しなければいけないということが基本的な認識にあると思います。

 最近のサイバー犯罪の情勢は、インターネットバンキングに対する不正送金事案、大手防衛産業関連企業や衆参両院に対するサイバー攻撃等、重大事件が発生するなど、サイバー犯罪の危険性が急速に増大していることから、その対策の根幹として、不正アクセス防止対策を強化することが喫緊の課題となっております。委員御指摘のとおりであります。

 不正アクセス行為は、他人のID、パスワードが第三者の手に渡ってしまえば、技術的にこれを防止することは極めて困難なものであり、そうした不正アクセス行為を防止するためには他人のID、パスワードの不正流通を防止するほかないと考えております。

 加えて、不正アクセス行為の対策に当たっては、取り締まりによる抑止力のみに頼るのではなく、コンピューターネットワークの参加者それぞれが、それぞれの立場で不正アクセス行為の防止を図るための取り組みを行う必要があると考えておりまして、現状においてはその取り組みが必ずしも十分ではない、十分行われているとは言いがたい状況にある。

 そこで、他人のID、パスワードの不正流通を防止し、不正アクセス行為禁止の実効性を確保するため、フィッシングを初め不正アクセス行為に至る各段階の行為を禁止、処罰するとともに、不正アクセス行為に係る法定刑を引き上げ、また、不正アクセス行為の防止を図るための取り組みを向上させるため、従来行っている国からの援助に加え、情報セキュリティー関連事業者団体に対する新たな援助規定も設けるものであります。

 より川上から抑止をしようということになろうと思います。

丹羽委員 ありがとうございます。

 大臣おっしゃるとおり、本当に年々手口が巧妙化していって、多分我々が考えている以上の速度で、先ほど平沢先生がおっしゃいましたが、イタチごっこになりかねないような、非常に犯罪の温床となるようなベースができつつあると思っています。

 今回のこの法律改正によって、ぜひ、大臣がおっしゃられたように、抑止の面で今回の法律をより一層活用していただいて頑張っていくためには、またちょっとこれは後で言いますけれども、やはり予算の面とかそういった面をもっと拡充していくことが、ソフト開発とか、最後の監視体制の人員強化というのは私は必要だと思っておりますので、その点もまた考えていただきたいと思っております。

 今回のサイバー犯罪について、検挙件数の増加だけではなくて、手口についても一層複雑、巧妙化してきていると思います。最近のサイバー犯罪の手口、事例について、例えばどういったものがあるか、これは、大臣、現場のことでございます、答弁は事務方でも結構でございますが、お答えいただきたいと思います。

岩瀬政府参考人 お答えいたします。

 サイバー犯罪の最近の特徴としまして、平成二十三年中の検挙の状況で見てみたいと思いますが、ネットワークを利用して行う犯罪、これが非常に多うございまして、検挙件数で見ますと五千三百八十八件と過去最高を記録しているところでございます。このネットワークの利用犯罪の中では、ネットワーク利用詐欺あるいは児童ポルノ事案、こういったものが大変多くなってきているということでございます。

 また、不正アクセス禁止法違反での検挙件数は二百四十八件となっております。この不正アクセス禁止法違反の中で見てみますと、フィッシング行為等により他人の識別符号を不正取得して不正アクセス行為を行う、こういう手口が非常に多くなっているということでございます。

丹羽委員 今お答えいただいたとおり、最近ではフィッシングという非常に巧妙な手口も出てきております。

 実は私の家では、電気、ガス、水道料金は全て、自動引き落としにせずに、コンビニや窓口へ行って必ず支払うようにしているんですけれども、だから、そういった銀行なんかの送付メールが来ても、こんなのは絶対来るわけないんだからなんと言って、アナログだから未然に防げるということもあるんですけれども、逆に、デジタルにしていたら、防げなかった、ひっかかっているような、最近、手口が非常に巧妙化いたしております。

 そういった最近のサイバー犯罪に対する国、公的機関の取り組みというのは今回の法律案の中にはきちんと書かれていますが、例えば民間はどのような取り組みをしているかという、ちょっと御見解をいただきたいと思います。

岩瀬政府参考人 お答えいたします。

 民間の方々の中でセキュリティー事業者の方でつくられた団体、こういうものがございます。この中では、さまざまな不正アクセス事案等についての情報を集約されることがあります。

 それから、あるいはアクセス管理の技術的な研究をされたり、あるいはそういう動向についての情報収集をしたりというようなことで、あるいは不正アクセス等のインシデント対応といいますか、そういうようなことについても対応しておられる団体がございます。

 このような団体が中心になって、それぞれの事業者の方のセキュリティーの向上、あるいはさらに、各企業等のアクセス管理者のアクセス制御能力の向上、こういったことに努力をされているものというふうに承知しております。

丹羽委員 ぜひ、これは私からの要望なんですけれども、こういったサイバー攻撃、まあサイバー攻撃には主に日本の公的機関に関する嫌がらせとかそういったものがメーンになってくるんですけれども、公的機関だけじゃなくて、犯罪抑制のためには民間ともしっかり連携して取り組みを進めていっていただきたいと思っております。

 近年、この不正アクセス行為の新たな手口として、先ほど御答弁をいただきましたフィッシング行為というのが挙げられております。このフィッシング行為が出始めた時期というのは、警察庁の方はつかんでいらっしゃいますか。

岩瀬政府参考人 お答えいたします。

 フィッシング行為といいますのは、もともとは外国で始まったような行為でありますけれども、我が国では、被害が発生したフィッシング行為というものは、平成十六年に確認をいたしております。

丹羽委員 このフィッシング行為が近年非常に急増いたしておりますが、この急増している背景というのはどのようにお考えでしょうか。

岩瀬政府参考人 お答えいたします。

 フィッシング行為につきまして、外国から始まったものでございますが、徐々にこれが我が国の方にも浸透しておりまして、我が国のインターネット利用率の高まりと相まって、このような手口がふえてきているものというふうに考えております。

丹羽委員 従来の不正アクセスと違い、今回、フィッシング行為の手口が法改正の中に入っておりますが、不正アクセスとフィッシング行為の違い、特徴というのは何でしょうか。

岩瀬政府参考人 お答えいたします。

 不正アクセスの流れを申しますと、まず、ID、パスワードをいろいろな形で入手する、それから取得して保管する、それを使うと不正アクセス行為となる。さらに、それによって詐欺等の被害が生じるような犯罪が行われるということでございます。

 フィッシングと申しますのは、ただいま申し上げましたID、パスワードを不正に入手するための準備行為の一つというふうに位置づけられると思います。

丹羽委員 今御答弁いただいたとおりだと思います。

 そこで、今回、フィッシング行為の罪を新設するという中で、他人のIDやパスワード、識別符号を入手するということ、これは、例えば意図せずに入手してしまった場合ということもケースとしてあると思うんです。

 この犯罪となる判断基準が非常に曖昧で難しい部分もあると思うんですけれども、その点、どのようにお考えでしょうか。御答弁をお願いします。

岩瀬政府参考人 ID、パスワードの不正取得という行為につきましては、不正アクセスの用に供する目的で入手をする、こういうことが構成要件に入っております。

 したがいまして、不正アクセスの目的がない場合、御指摘のように、たまたま入手した、あるいは誰かからたまたま送られてきた、こういうようなものについて、ID、パスワードを取得したことについては責任を問われないものというふうに考えております。

丹羽委員 判断基準が、たまたま入手しても、それが、例えば捜査によって、意図的に入手されたという、判断基準というのは非常に曖昧になってくる部分もあると思います。今後これで検挙する事例もふえていくと思いますけれども、しっかりと捜査のときは、その事例ももちろんあると思いますけれども、慣例どおりに従わずに、やはり常に常に新しい手口が発生しているということを考えて、ぜひひとつ厳しい捜査をやっていただきたいと思っております。

 こういった最近の巧妙な手口のサイバー犯罪が、これは本当に我々の考えている以上の早さで計画されている可能性も十分考えられていきます。これをどう未然に防いでいくのか、未然に対策を講じていくのかというのも、今回の、新しい手口のフィッシング行為に被害を受けて法改正に及んだという中身でもあると思うんです。

 冒頭で申し上げましたとおり、施行が平成十二年で、今回の法改正、十二年ごとでなるわけですけれども、もっと速い速度で法改正をどんどんどんどん、犯罪の件数またその巧妙化に合わせてやっていくべきだと僕は思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

松原国務大臣 常に新しい手口が次々と生まれていく。先ほど平沢委員の御指摘もありましたように、イタチごっこになるかもしれぬ。したがいまして今回こういった改正をするわけでありますが、委員の御意見は大変傾聴に値する、このように思っております。

丹羽委員 大臣、また大臣がもし次にかわられても、ライフワークとして、犯罪行為の不正アクセス、ぜひやっていただきたいというふうに思っております。

 サイバー犯罪の中でも、特に不正アクセス行為というのは、実際の被害額というのは、割合はどれぐらいあるんでしょうか。これは、局長、お願いいたします。

岩瀬政府参考人 お答えいたします。

 不正アクセス行為によります金銭的被害につきましては、もともと極めて潜在性の高い行為でございますので、その実態を把握することは困難でありますけれども、不正アクセス行為により検挙したものということで見てみますと、平成二十二年中は約一億八千万円、平成二十三年中は約二億三千万円の被害が発生しているということでございます。被害額の暗数は、先ほども申し上げましたような事情から、大変多いものというふうに考えております。

 なお、御参考までに申し添えますと、平成二十三年中のインターネットバンキングに対する不正アクセス事件、これによる被害額は約三億円に上っているということでございます。こちらは認知件数、認知したものについての被害額の総額ということでございます。

丹羽委員 例えば、今まで我が国で起きている詐欺行為全体の中で、このサイバー犯罪による詐欺行為の割合は、では、実際どれぐらいありますか。

岩瀬政府参考人 お答えいたします。

 平成二十三年中のサイバー犯罪の中の詐欺行為の検挙件数でございますけれども、一年間で八百九十九件ということでございます。ネットワーク利用犯罪の中で大変大きな比率を占めておるということでございます。

丹羽委員 次は、大臣と局長にそれぞれお答えいただきたいんですが、先ほどの局長の御答弁の中にありましたように、このサイバー犯罪による詐欺被害というのが、金銭被害額が、例えば一億も二億も一人であるというわけじゃなくて、犯罪の詐欺行為の中では比較的少額でもあったりする中で、また、だまされたことへの恥ずかしさから、名乗り出ない被害者が相当多いという実態も考えられると思います。この点についてどのように対応していくのか、大臣、局長、ちょっと御答弁をお願いいたします。

岩瀬政府参考人 お答えいたします。

 サイバー犯罪による被害についてでございます。詐欺に限らずでございますけれども、特に個人のみならず企業等につきましても、このサイバー被害について申告をするということが、会社にとって、あるいはこの事実が公になってしまうのではないかというようなこともありますし、それから、当然、警察に被害として申告をしますと捜査を始めることになりますので、いろいろな、記録を保存したりあるいは一旦機械をとめて保存したりという手間もかかる。こういうようなことで、一部には、アンケート等をとりますと、余り申告はしたくないんだというようなこともございます。

 また、個人の被害者の方について見ますと、やはり先生御指摘のように、余りうれしいことではないといいますか、恥ずかしいような思いもあるということで、被害が届けられないということもあるかと思います。

 したがいまして、警察といたしましては、民間の企業あるいは個人のユーザーの方も含めて、やはり被害実態というものをきちっとお知らせいたしまして、被害に気づいた場合にはぜひ通報していただきたいということを強くお願いしてまいりたいというふうに考えております。

松原国務大臣 先ほど平沢委員の御質問でも暗数という話がありまして、要するに、不正アクセス行為や不正アクセス行為に続いて行われる犯罪行為により、有害、実害が生じるまで気づきにくい。まず本人が気づいていないケースもある。潜在化しやすいという特性を持っているわけで、大変な暗数があるだろう。

 また、昨年中、法案検討のために民間企業にヒアリングを行った際、警察に通報しない理由として、被害届を出すとなると裏づけ証拠をそろえるのが負担になるというケース。通報した場合、被害があったことが公になって恥ずかしいというお話がありましたが、そういった御心配といった回答もあったわけであります。

 以上のことから、相当数の不正アクセス行為が行われており、それが潜在化していると見られることから、不正アクセス行為に対して社会全体で適切に対処するために、今後、被害者側からの通報を促進するための取り組みを進めていきたい。

 結局、ある者が被害を出さないということになると、本来、そこが被害を出せば警察側が動くなりして食いとめることができる問題が、どんどん野放しになって、さらに被害が蔓延するわけで、それは犯罪を犯す方からすると、非常に彼らにとってのメリットになってしまうということですから、ここは、とにかく、被害に遭ったと気がついたらばどんどん言っていただく。そして、被害に遭ったと気づかない人に、実際遭っているならば気づいていただくというふうなことで、さまざまな啓蒙も含めて、社会の多くの方々に、こういう問題が今発生していると。

 今回、こういう法案審議をしていることもその一つでありますが、それを広めていって、とにかく啓蒙し、そして、自分の問題だけではなくて、その人が黙っていることによってさらにもっと被害者がふえるのだから、やはりそれは届けてほしいということを徹底させるために、警察庁を督励してまいりたいと思います。

丹羽委員 御答弁ありがとうございます。局長のお話もわかりやすいと思いますし、大臣のお話も非常に前向きで、すばらしいと思っております。

 これは、相談窓口というのをつくる、もしくは設置はしてあるんですか、現状。お願いいたします。

岩瀬政府参考人 お答えいたします。

 サイバー犯罪の被害の相談窓口についてのお尋ねでございますが、被害の相談窓口については全国の都道府県警察に設置をしてございます。

 そしてまた、現在、こういうサイバー犯罪情勢にございますし、先ほどのお話にありましたように、被害申告をどんどんしていただく必要があるということで、この全国の都道府県警察における相談窓口の体制につきましても、専従化するとか、あるいは専門の電話を設ける、あるいはメールの相談窓口を設けるというようなことで、さらに体制を拡充していきたいというふうに考えております。

 また、相談を受けるに際して必要な基礎的な知識、あるいは捜査に移行するため、さらには被害を防止するために必要な手だてをとり得るようなことを記したマニュアルというようなものも作成いたしまして、全国の都道府県警察本部で質の高い相談受理業務をできるように努力をしているところでございます。

丹羽委員 警察庁の組織ですから、連携はすばらしく全国的にできていると思いますが、ぜひ、新しいサイバー犯罪等が起きたらすぐ、その事例とかも流していただいて、本当に各都道府県レベルでも対応できるような、そういった体制をより強化していっていただきたいと思います。

 今回は、今までにある不正アクセス行為のうち、先ほど平沢先生や遠山先生も質問されましたが、海外からの被害実態について、ちょっと御説明いただきたいと思います。

岩瀬政府参考人 お答えをいたします。

 統計というか、数字として今手元で持っているものはないのでございますけれども、例えば、先ほど御紹介をいたしましたネットバンキングの不正送金事件、これが昨年一年間で百八十八件起きております。これの被害届を受理いたしまして、関係都道府県警察で捜査をしているところでございます。まだ捜査中の部分もかなりありまして、具体的なところまで申し上げられる段階にないものもございますけれども、これらを捜査する中で、フィッシングの発信元が海外である場合、あるいは、ウイルスを送りつけて個人情報あるいはパスワード等をとって、それの送り先が海外であるような場合、こういうような例がかなり見られるところでございます。

丹羽委員 本当にネットの知識とかプログラミングの知識に詳しい人であれば、確実に国内から送信はしませんよ。海外を通して、向こうのプロバイダー、サーバーを通して、そして日本の顧客、情報を持っている顧客にメールを一斉に送って、それでフィッシング等をやった方が足はつきにくいですよ。それで、そこの海外のプロバイダーもしくはサーバーを二、三カ月後に解約しちゃって記録が残らないようにしちゃえば、半年後に捜査したらもうわからなくなっちゃうわけですから。

 そういったことをもっと我が日本の国としても、啓蒙活動も必要かもしれないんですけれども、どう対応していくかということをしっかりと考えて、今後のサイバー攻撃、不正アクセスにつなげていっていただきたいというふうに思っております。

 先ほどもちょっと答弁がありましたが、我が国において、防衛関連の企業や衆参へのサイバー攻撃が昨年は発生いたしました。これは、先ほど大臣が御答弁いただいたとおり、もう本当に国家の根幹を揺るがしかねない問題になってくると思っておりますし、また、今いろいろと勉強会がありますが、マイナンバー制度とか、これから電気料金とかそういったものを全てネット上で、もしくは供給事業なんかもネット上でできるようになってきますと、サイバー攻撃によって全てのインフララインを混乱させるという、アメリカの映画なんかでも結構あったと思うんですけれども、映画に出てくるというのは多分、表の部分だと私は思っています。もっとディープな部分が相当あるんだと思っています。

 こういった海外からの不正アクセス行為に対して国としてどのような対応をしていくのか、大臣、御答弁をお願いします。

松原国務大臣 攻撃をさせないということが一つのポイントだと思うんですよ。そのためには、海外からのそうしたものに対して、その事案をきちっと明快にして、その犯罪を追及するということをやはり繰り返し繰り返し日本の国が行っていくことが彼らにとっての抑止になると思うので、そのことをやっていきたいと思っております。

 海外のコンピューターから国内のコンピューターに対して不正アクセスが行われた場合は、これは当然、刑法の国内処罰規定によって対応するわけで、捜査が可能であります。国際捜査共助による各国捜査機関と綿密に連携した証拠収集などを行うなど、所定の捜査を進めていくことになります。

 具体的には、不正アクセスを受けたコンピューターの通信記録、ログを調査し、海外からの不正アクセスであることが判明した場合、発信元の所在する外国捜査機関に捜査共助を申請し、要請を受けた外国捜査機関は、発信元のログの調査、関係者への聴取等、被疑者特定のための捜査を行うことになっております。

 サイバー犯罪は容易に国境を越えて行われ、一国だけでは解決できない問題であることから、警察庁はこれまでも、国際刑事警察機構、刑事共助条約等の国際捜査共助の枠組みを活用して、国境を越えて行われるサイバー犯罪に対処してきたところであり、今後とも、海外からのサイバー犯罪について、必要な捜査を尽くし、犯人の検挙に全力を挙げるよう警察庁を指導していきたい。

 結局、具体的に、おっしゃった日本の衆議院、参議院に対するサイバー攻撃等も、どこまでそこをきちっと絞り込んで特定できるかというのは極めて重大であると思っております。平沢委員の先ほどの質問の中では、米国等においては一定の国の名前を挙げてという議論も行われているわけでありますが、我々も、そういったことも含め、こういった案件を一つ一つ解明することによって攻撃をさせない体制をつくる。もちろん防御は防御できちっとやる。こういったことで頑張っていきたいと思っております。

丹羽委員 大臣の御答弁、そのとおりだと思います。

 ただ、私、考えるんですけれども、大臣、防御だけだと壁のイメージなんですよね、海外からの攻撃に対して。壁だけだったら、どんどんどんどんつついてきますよ。有刺鉄線ぐらい壁に張って、攻撃してきたら、攻撃しちゃいけないですけれども、何か向こうにも損害があるぐらいの、そういう対策というのを考えていいと思うんですけれども、大臣、いかがですか。

松原国務大臣 極めて傾聴に値する御意見だと思っておりますが、そういったものの具体的なことがどういうことかというのは、また考えていかなければいけないと思っております。

丹羽委員 ありがとうございます。ぜひ御検討いただきたいと思っております。

 今回の法改正の中で、先ほど御答弁ありましたが、例えば不正アクセスに関して警察庁に寄せられる年間相談件数は約四千件で、二千件前後の検挙数。本当に、未然に防ぐとか対応の強化には今後の監視、捜査体制の強化をしていく以外ないというふうに私は思っております。予算、人員措置についても含めて、大臣、どのようにお考えですか。

松原国務大臣 委員おっしゃるとおりでありまして、予算、人員等についてというのは、一概に比較はできませんが、先ほどお話があったように、米国においては、その全容ではなくて一部でありますが、非常に大きな額が計上されているという議論もあるわけでありまして、そういったことも踏まえながら我々も考えを進めていかなければいけない、このように思っております。

丹羽委員 実際、コンピューターに詳しい人なんかに聞きますと、優秀なスパイを世界各国に十人置くよりも、優秀なプログラマーを二人雇った方が各国の情報が手に入るという話もいろいろとうわさされています。

 そういった面で、優秀なスパイ十人よりも優秀なプログラマーというふうに考えますと、やはり相当こっちでも優秀なプログラマーもしくは対応策を考えていかないと、どんどんやられたい放題になっていくと思います。

 そこで、国の予算は限られた予算でやらなければなりません。今回、新しいソフトを開発したりとか、また監視体制を強化するにしても限られた予算でやらなきゃいけないと思うんですが、こういったものを、例えば国と連携するところに外部委託してみるとか、もしくは外部のところと連携とか、そういったお考えはあるんでしょうか。

岩瀬政府参考人 お答えいたします。

 監視体制の外部委託についての御示唆でございます。

 警察庁では、インターネット上の違法情報あるいは有害情報、こういったものを各県の警察におきましてもサイバーパトロールというふうなことで情報収集をしているところでありますけれども、これを、民間団体でありますインターネット・ホットラインセンターという団体に委託をいたしまして、全国から違法、有害情報についての通報を受けていただいて、その中で一定のものについて警察庁の方に教えていただく、こういうような取り組みを現在しておるところでございます。

 こういうやり方については、今後とも幅広く検討していきたいというふうに考えております。

丹羽委員 不正アクセスによって知り得たいろいろな情報等を、まあ最初から犯罪行為でやろうという人も中にはいると思いますけれども、興味本位でやってしまって、あれ、これは意外とお金になるぞなんというふうに考えて悪い方向に走り出してしまって、その不正に得られた情報、クレジットカードの番号やそれから銀行口座等の個人情報、電子メールアドレスリスト、不正プログラムや開発のノウハウのものを換金するための、先ほど遠山先生の話の最後にちらっとありましたが、地下経済が拡大しているというふうに思っております。

 この地下経済の現状について、警察庁としてはどの程度把握しているのか、これは捜査の関係もあると思いますので、御答弁いただける範囲内で結構でございます。

岩瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 私どもの方で、今回、ID、パスワードの不正入手というものについての可罰化ということで、お願いをしているわけでございます。

 地下経済というところまで詳しく把握ができているところではございませんけれども、これまでに、現在の不正アクセス禁止法の助長罪という形で、他人のID、パスワードを不正に取得をして、それを使ってみずからもいろいろまた不正アクセスをして詐欺等もやっているんですけれども、これをまた販売して、また別の人の不正アクセス行為を幇助した、こういうような検挙例というのは幾つかございます。

 したがって、不正に取得したID、パスワードを売買するという意図を持つ者というのはそれなりにいるのではないかというふうに認識をしております。

丹羽委員 私、必ず、近い将来、不正アクセスで知り得た情報を売買するマーケットみたいなのがネット上でまた出てくるというふうに考えています。ぜひ、しっかりとしたそういった対応も考えておいていただきたいと思っています。お願いいたします。

 今回の法改正の中で罰則が、大臣、厳しくなりましたね。罰則が、今までの一年以下の懲役、五十万円以下の罰金というのから、三年以下の懲役、百万円以下の罰金というふうに引き上げたんですが、今これほどネット上の犯罪が横行している時代に、私は、まだこの罰則というのはちょっと軽いんじゃないかなと逆に思うんですけれども、その辺、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

松原国務大臣 この罰則を定めた理由ということでありますが、この量刑を定めるに当たっては、類似の犯罪や関連する犯罪について定められた法定刑をしんしゃくする。まあ相場観というのがあると思うんですが、不正アクセス禁止法の法目的の一つである、電気通信回線を通じて行われる電子計算機に係る犯罪の防止の観点から参照すべきと考えられる刑法のいわゆるウイルス作成等の罪が、現在、三年以下の懲役または五十万円以下の罰金とされております。また、同様に、法目的の一つである、電気通信に関する秩序の維持の観点から参照すべきと考えられる電気通信事業法における電気通信の秘密を侵害する罪が、二年以下の懲役または百万円の罰金となっております。

 こうしたことを踏まえ、改正後の不正アクセス罪の懲役及び罰金の重さは、類似の規定の懲役及び罰金、それぞれの上限と同じ重さとし、三年以下の懲役または百万円以下の罰金と法定刑を定めたものであります。

丹羽委員 罰則が変わったお話を大臣にいただきましたが、罰則に相場というのは、私は、これほど早い状況で犯罪が巧妙化しているんだから、その相場観というのは本当に合っているのかどうなのかということも考えていただかなきゃいけない、被害者の立場からして、やはり犯罪抑制の目的でいえば、もうちょっと罰則の面を強化していっても僕はいいんじゃないかなというふうにも考えております。

 やはりサイバー犯罪というのは非常に罪の意識というのが薄いんですよね。人を刺して、もしくは強盗して物をとるわけじゃないんですもの。勝手にコンピューターが相手のところから情報をとってきてくれて、それをまた売ったりすることができるわけですから。犯罪の意識が薄いという中で、特に誰でも利用できるインターネットが犯罪の入り口でもあるため、金銭的にもうかるサイバー犯罪であれば、私、今のこの不況下で誰も犯罪に手を染めやすいと思っております、本当に。ですから、本当に罰則の強化は、より、今後もうちょっと検討していただきたいというふうに考えておりますので、ぜひよろしくお願いいたします。

 もう時間もございませんので、ちょっと最後の質問に入らせていただきますが、最近、未成年の子供たちもこのサイバー犯罪に手を染めるような状況になってきました。これは非常に大きな問題だと思っております。未成年の少年少女たちがどうしてこういった犯罪に手を染めるということを、警察庁はどのように考えていらっしゃいますか。

松原国務大臣 これは大変に大事な御指摘だと思っております。特に、こういったインターネット社会に対して年少者の方の方がより技術もあるし、親しみもあるし、非常に当たり前のようにこれを使いこなす能力を持っている、こういうことであります。

 未成年者のサイバー犯罪をめぐる状況については、例えば、平成二十三年中の未成年者による不正アクセス禁止法違反の検挙人数は五十一人と、過去五年間で最も多くなっております。これは、暗数も入れると実はもっと大きい可能性が私は十分あるというふうに思いますが。

 未成年者により敢行されるサイバー犯罪が後を絶たない。また、未成年者が、出会い系サイトやコミュニティーサイトの利用に起因する犯罪に巻き込まれるなど、被害に遭う事案も依然として発生をしております。

 以上のように、未成年者はサイバー犯罪の被害者にも加害者にもなり得るものであることから、未成年者がサイバー犯罪に関与したり巻き込まれたりすることがないよう、教育機関や地方公共団体と連携し、未成年者に対して情報セキュリティーに関する講習を中心とした広報啓発活動を実施していく必要があろうか、このように思っております。

丹羽委員 時間となりました。もうこれで質問を終わりますが、済みません、局長、せっかく質問しておいて。また後日お答えいただければ幸いでございます。

 未成年者が犯罪に手を染めにくい環境をつくるというのが、道徳ではインターネットというのは出てこないと思うんですよね。サイバー犯罪というのは、道徳なんかだと。そうしますと、道徳上悪いという意識が子供たちにもないような、だからやっていいんだというふうな、おのずと知らず知らずのうちに犯罪に手を染める可能性もあると思いますので、ぜひ、これは啓蒙活動をしっかりやっていただきたいと思っております。

 以上で終わります。

荒井委員長 次に、浅尾慶一郎君。

浅尾委員 みんなの党の浅尾慶一郎です。

 きょうは不正アクセス防止法について幾つか伺わせていただきたいと思いますが、基本的な考え方について伺っていきたいと思います。

 この委員会でも他の委員も多く御指摘をされておりますけれども、インターネットは国境がないということで、海外との関係で、不正アクセス行為に対して、それを防止していくということについて、取り締まりの実効性を高めるというのが大変難しいんだろうなというふうに思っております。

 先ほど、松原国家公安委員長は、国際的な捜査の協力といったようなことをおっしゃっておりましたが、それに加えて、現段階で、海外で行われた行為の取り締まりの実効性を高めるためにどんなことが考えられるか、御答弁をいただきたいと思います。

松原国務大臣 まさに、浅尾委員がおっしゃるように、これは新しい犯罪の類型だと思うんですよね。非常にこれから拡大する可能性がある。そういった意味では、これに対して、特に国境を越えるという部分に関して、この御指摘は非常に重要だと思っております。

 海外から不正アクセス行為が行われた場合には、国際刑事警察機構、刑事共助条約、サイバー犯罪に関する二十四時間コンタクトポイント、先ほどちょっと御指摘がありましたが、等の国際捜査共助の枠組みを活用して、外国捜査機関と綿密に連携した情報や証拠の収集を行う必要があると考えております。

 このため、警察庁では、警察庁・FBIサイバー犯罪ワーキンググループ等の二国間のもの、G8ローマ・リヨン・グループや、今言った国際刑事警察機構等の多国間における協議の場を通じて、サイバー犯罪に対する国際協力関係の確立に積極的に取り組んでまいりたいと思っております。

浅尾委員 多分、我が国と同じ考え方で取り締まりに協力しようという国もある一方で、先ほど遠山委員からの指摘もありましたように、全く違う考え方で現行、推移しているというところがあろうかと思います。難しいのは、同じ考え方のところは協調してやればいいわけですが、考え方が違うというところに対してどういうような対応をとっていくかというのは多分難しいんだろうなというふうに思います。

 考え方が違う国に対して、まずは、これは基本的には外務省ということになるのかもしれませんが、その犯罪を取り締まる所管の国家公安委員長として、どうやってそういった国々に対して呼びかけを行っていく予定があるかということについて伺いたいと思います。

松原国務大臣 今御答弁申し上げたようなさまざまな仕組みを使いながら、率直に言えば、先ほどからの質疑で、一定の国に関してなかなかこれが十分できているかどうかという御質問もあったわけであります。

 こういうことを考えると、このことに関して共有の価値尺度や共有の問題意識を持っている国が連携をして、どうやってそうでない国に対してさまざまな対策をとるかということが一つの具体的な方針になると思うので、そういった部分も含めて、さまざまな共助を考えていきたいと私は思っております。

浅尾委員 今の点をもう少し掘り下げて伺っていきたいと思いますが、価値を共有できない国から行われる攻撃の中には多分二つぐらい類型があるんだろうと。一つは、純粋に経済的な利益を得るためにされるものと、もう一つは、先ほども指摘されておりましたけれども、いわゆる第五の戦場というような形で、準国家的あるいは国家的に行ってくるといったようなところがあろうかと思います。

 その後段の、経済的ではなくて国家的なものについて今後考えていくといったときには、まさに松原国家公安委員長は拉致問題も担当しておられますけれども、北朝鮮がそういったようなことをやっているかどうかということは今のところわかりませんけれども、逆に、そういったことに対して、いわゆる犯罪捜査とは別に、他の手段というのも考えた方がいいんではないかな。

 これは質問通告をしてなくて、きょうの質疑を聞いて思ったことでありますので、答えられる範囲で結構でありますけれども、私の問題意識としては、第五の戦場という形で我が国も定義をしてしまうと、いわゆる憲法との関係で、果たしてサイバー攻撃に対する対応が、反撃が武力の行使になるのかとかいったいろいろな問題も出てくると思いますので、むしろ、国家公安委員会を所管する松原大臣のところでこういった問題について論点整理をされていくということが必要なんではないか。

 論点整理をするというところの中で、我が国が憲法上有しているさまざまな制約というものもあります。これは制約のいい点もあると思いますけれども、その制約にとらわれた結果、目的とするサイバー攻撃に対する対処、言葉をかえて言えば反撃というのができなくなるとすると、その実効性が高まらなくなってしまう。だとすれば、国家公安委員会の方で、あるいは大臣のところで論点整理をされるのがいいんではないかなというふうに思いますが、その点について、これは通告してありませんけれども、御所見が伺えれば幸いに存じます。

松原国務大臣 いわゆる前段の経済的なものを目的とするものではないということのお話でありますが、委員は今拉致問題を提示したわけでありますが、拉致問題も、考え方によっては、例えば米国の政府高官は、それは国家テロであると明快に言っているわけでありまして、いろいろな議論があろうかと思っております。第五の戦場というのは、米国においてサイバー攻撃に対しての認識はそのように語っている。やはり、そういう発想を国際社会が持っているんだということは、その認識は共有をする必要があると私は思っております。

 そうした中で、これに対してどのように対応するかということは、これは国家公安委員会だけではなくて、内閣全体でまた議論するべき課題だと思っておりますし、私は、私の危機感や問題意識はまた発言をしていきたいと思っております。

浅尾委員 私の申し上げたいポイントは、米国あるいは国際社会がこれをテロだというふうに認識するというのは、その認識を共有しなければいけないだろうと思いますが、それに対処する主体をさまざま実効性のある対処ができるような形にしていかないといけないだろう、そういう意味では、政府の中で、国家公安委員会等々が主体性を持って取り組んだ方がいいところもあるのではないかということで、そういうことを申しました。もちろん、実効性とか、いろいろなことで政府全体でやるべき課題だということは、そういう認識をしております。

 一点、今拉致の点を発言されましたけれども、拉致とは直接関係ありませんが、例えば、海外からサイバー犯罪があった場合、これは当然、行為の着手地が海外でありますので、時効はずっと中断したまま存在しているという理解でいいんだと思いますが、そういう理解でよろしいでしょうか。

松原国務大臣 刑事訴訟法第二百五十五条において、犯人が国外にいる場合には、時効は、その国外にいる期間その進行を停止することとされておりますから、国外に所在する者が国内に所在する電子計算機に対して不正アクセス行為を行った場合に、その者が国外にいる間は時効は進行しないものであります。

浅尾委員 その観点で、そちらに答弁書があるかどうかわかりませんが、犯罪を行った者が一人という場合ではなくて、先ほど申し上げましたように組織的に行った場合に、その組織のトップも含めて、これは時効が中断しているという理解でいいかどうか伺いたいと思います。

松原国務大臣 共犯者が起訴されている間は時効は停止をするということでありますが、今おっしゃったのはもっと違う意味なのかと思っております。日本の国内法では、私が申し上げたような規定になっているということであります。

 以上です。

浅尾委員 先ほど北朝鮮の例も申し上げましたけれども、国が全体として行った場合は、当然、トップに対してもその責任が及ぶという理解をしておいた方がいろいろな面でいいのではないかというふうに思います。

 これについて、大臣として御答弁いただけることがあれば伺いたいと思います。

松原国務大臣 そういった国家的というレベルでいきますと、これも、私が国家公安委員長として御答弁するのではなくて、やはり国家全体で考えていかなければいけない問題だと思っております。

浅尾委員 もう一点、海外関係で申し上げたいと思いますが、先ほども出ておりましたけれども、IPAといったような民間の団体、これは非営利法人だと思いますけれども、そういったような団体に依存してさまざま現状は調査をしているというところがありますけれども、これをもっと活用しなければいけないということもあると思いますが、それを超えて、警察としても国際的な対応をしていくという必要性があろうかと思います。ぜひ、その取り組みを深める覚悟を伺いたいと思います。

松原国務大臣 国境を越えて行われるサイバー犯罪に的確に対処するために、外国における最新の技術動向の把握、外国治安機関との情報共有を推進し、我が国のみならず、各国の捜査能力や情報技術解析能力を向上させる必要があります。

 このため、警察庁では、アジア大洋州地域サイバー犯罪捜査技術会議の開催や、サイバー犯罪技術情報ネットワークシステムの活用等を通じ、各国治安機関等との情報技術解析に係る情報共有を初めとする国際連携を推進しております。

 委員おっしゃるように、とにかくその部分の連携を強くするということが、こういった犯罪に対する、それが経済的事案であろうと違う事案であろうと、最大の防御になるというふうに思っております。

浅尾委員 では、次の質問項目に移らせていただきたいと思いますが、今回の改正案の中には、アクセス制御機能の高度化を図る団体への支援というものが入っております。

 この支援の具体的な中身について、まず教えていただけますでしょうか。

松原国務大臣 今回、不正アクセス行為による被害を防止するためには、アクセス管理者が不正アクセス行為から防御するため必要な措置を講じることが重要であります。

 現在、警察庁が実施したアンケート調査では、七〇%、約七割の企業等が脆弱性の検証を実施しておらないであるとか、約四割の企業等が発見された脆弱性をもとにした対策を実施していないというのが現状であります。

 改正案第十条二項で、アクセス管理者による防御措置を支援することとしておりますが、その中心は、やはり情報提供を行うということになろうかと思っております。情報セキュリティー事業者が組織する団体に対する援助について規定したが、その規定は、不正アクセス行為の具体的手口に関する最新の情報提供を行うことを想定しているものであります。

 これにより、援助を受けた団体によるアクセス管理者に対する支援の取り組みが促進され、アクセス管理者が講ずる防御措置が向上することが期待されると思っております。

浅尾委員 その情報の提供の中には、あるいはもう既に民間の企業でやっているところもあるというふうに聞いておりますけれども、特定の、仕事と直接関係のないようなインターネットのサイトは会社のパソコンからは見られないようになっているというような企業も幾つかあるというふうに聞いておりますが、例えば具体的なこういうサイト、業務と直接関係ないようなサイトでフィッシングがあったりなんとかというようなことの情報は提供されるという理解でよろしいでしょうか。

松原国務大臣 今御指摘の部分がありますが、警察としては犯罪事例の具体的な分析等が中心になっておりまして、そうした中で今御指摘のことも取り扱っていきたい、このように思っております。

浅尾委員 きょうは齋藤官房副長官にもお越しいただいております。

 お越しいただいている理由は、警察が情報提供する、あるいは啓蒙活動する対象が、今の団体、そして市町村、都道府県ということでありまして、中央官庁そのものは警察の所管ではないというふうに伺っております。

 一方で、さまざま中央官庁に属する組織からも、不正のアクセスあるいはその他によって情報が漏えいしているといったことも過去に出ております。

 そういう中で、ところが、比較的、中央官庁から例えばパソコンで見るとなると、多分、見られるサイトの制限というのは今のところかかっていないのではないかというふうに思います。まず隗より始めよということであれば、中央官庁の方も、より強い防御体制、まあ防御体制を強くすればするほど、仮にもしサイトの閲覧制限みたいなものを入れると仕事がやりにくくなるといったような側面もあるかもしれませんが、しかし、本来業務と関係ないところであればそういったようなものも入れていったらいいのではないかなというふうに思います。

 そうしたことも含めて、官房副長官の御答弁をいただきたいと思います。

齋藤内閣官房副長官 お答えさせていただきます。

 近年、特にセキュリティーの向上ということで、民間ではしっかり構築されつつあるということで、中央省庁でもそういった対策をとっております。

 そして、各議員の方々には御案内かもわかりませんが、私も昨年官邸に入ったばかりなんですが、平成二十三年の四月二十一日に情報セキュリティ政策会議決定がございまして、政府機関の情報セキュリティ対策のための統一基準群というのをつくりました。ぜひ検証していただきまして、またいろいろ国会の方でもその内容についても御指摘いただければまずありがたいなというふうに思っております。

 いずれにしましても、今のもとで、全ての中央省庁に対しまして、この体制とか技術とか職員の教育など総合的な情報セキュリティー対策の向上に努めておりまして、今年度、新たには、内閣官房情報セキュリティセンターで、約六万人の政府職員を対象にしました標的型の不審メール攻撃、こういった訓練も実施をしております。

 引き続き、私自身もこの前、官民共同のキックオフのシンポジウム、情報セキュリティー月間に御挨拶に行かせていただいたような経緯もございますけれども、政府一丸となって情報セキュリティーの対策の向上に努めてまいりたいと思います。

浅尾委員 時間が大分迫ってまいりましたので、具体的なことでぜひその御見解を伺いたいと思います。

 先ほど申し上げましたように、民間の割と比較的情報対処が進んでいる会社では、本来の業務と関係ないようなサイトは閲覧制限があるといったようなものがあるそうであります。そういったことも政府としても検討したらいいのではないかというふうに思いますが、検討していただけるかどうか、その点について伺って、質問を終わりたいと思います。

齋藤内閣官房副長官 現在でも一定の閲覧制限がございますので、またこういった点についてというさらに具体的な御指摘をいただければ、検討させていただきたいと思います。

 ありがとうございます。

浅尾委員 終わります。

荒井委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 法案審議に関連をして、警視庁公安部情報流出問題について質問をいたします。

 一昨年、二〇一〇年十月に、警視庁公安部が作成した疑いのあります文書が大量にインターネット上に掲載されたことが判明をし、警察庁は同年十二月に、「国際テロ対策に係るデータのインターネット上への掲出事案に関する中間的見解等について」を公表しました。

 当時、岡崎国家公安委員長は、テロ情報の掲出問題につきましては、全容解明に向けて全力で警察を挙げて行っていくと記者会見で述べておりましたが、全容の解明が進んでおりません。あわせて、岡崎国家公安委員長は、個人情報が掲出された方の保護ですとか情報の保全に万全を期していきたいと思っておりますと述べておられます。

 そこで、警察庁に確認をいたしますが、この国際テロ対策に係るデータのインターネット上への掲出事案によって、どれだけの市民の情報また警察職員の個人情報がインターネット上に流出をしたのか、また、企業や大学、NPOなどの法人の名前がどれだけインターネット上にさらされたのかについて、お答えください。

西村政府参考人 お尋ねの、インターネット上に掲出されました警察関係者及びその家族として記載されているものについては、約二百八十人の名前など個人情報の掲出を確認しております。それを除きまして、約一千人の方の個人情報の掲出を確認しております。また、約六百三十の法人、団体の名前の掲出を確認しております。

塩川委員 市民の方一千名、警察職員の関係者の方二百八十、また、法人、団体などが六百三十ということですから、大変多くの数の個人情報などがテロとのかかわりでインターネット上にさらされました。

 この中間報告は国家公安委員会にも説明をされ、岡崎国家公安委員長は、委員会において、警察職員が取り扱った蓋然性が高い情報が含まれていたという以上、情報保全を徹底するということと関係者の安全確保を図ることが大切であるという意見が出された、このようなことも述べております。

 そこで、国家公安委員長であります大臣にお尋ねをいたします。

 これらの情報が、警察内部からか、あるいは警察の内部に入り込んだ外部の人間によってインターネットに流出させられたかは不明ではありますが、いずれにせよ、警察職員が取り扱った蓋然性が高い情報が流出をしたわけであります。その結果、詳細な個人情報も流出をして、たくさんの市民や関係者、企業や団体に不安、被害を与えております。国家公安委員長として、これら関係者の方に謝罪をすべきではないか、大臣のお答えをお願いします。

松原国務大臣 お答え申し上げます。

 警察職員が取り扱った蓋然性が高い情報が含まれているデータがインターネット上に掲出されたことにより、不安や迷惑を感じる方が現におられるという事態に立ち至ったことは、極めて遺憾であると認識をいたしております。

 これまでも、警察において、本事案で個人情報が掲出された方約千人、出国していたり居住地が不明な方を除く、連絡することが可能な方に対しては、諸事情を勘案し、個別に面会するなどして、必要な措置を確認するための取り組みを実施してきたところであります。

 今後とも、個人情報が掲出された方に対する支援等について、誠心誠意対応してまいりたい、このように思っております。

塩川委員 現実に、顔写真ですとか氏名ですとか電話番号など、個人を特定する詳細な情報が流れ出し、本籍地とか信仰とか前科の有無などのセンシティブな情報も流出したわけであります。多くの市民や警察職員、その家族が非常に大きな被害をこうむったことは明らかであります。

 こうした現実の被害に対して、私は、極めて遺憾ということではなくて、その経緯を考えても、警察の関与した情報流出ということは明らかであるわけですから、しっかりとした謝罪ということこそ求められていると思うわけであります。その点について、やはり被害に対してきちんとおわびをするということが必要だと思うんですが、改めて大臣、いかがですか。

松原国務大臣 個人情報が掲出をされたということに関して、大変に遺憾に思っておりますし、そうしたことは本当に怒りを込めて遺憾であるというふうに思っております。

 そうした中で、とにかく現在もこの真相究明をきちっとやるということを、まずこれも取り組んでいるところでありまして、また、個人情報が掲出された方々に対しての支援は、誠心誠意対応していきたいと思っております。

塩川委員 結果として不安や迷惑を感じる方が生まれたということについて遺憾と言っているわけで、そもそも、その被害をこうむった方々にきちんとおわびをするということこそ求められているわけであります。

 大臣、国家公安委員長もおっしゃっていたように、そういった方々にきちんと支援を行う、措置を行うという話がありました。個人情報が掲出された方の保護、その他の警察措置ということもこの中間報告で触れてあります。

 そういったときに、一人一人に具体的に対応するということになっているわけですけれども、警察庁に確認しますけれども、こういった市民の皆さんに対して、この情報流出について一人一人の方にきちんとおわびというのはされてあるんですか。

西村政府参考人 個人個人の個別の方への対応状況につきましては、相手の方の事情に応じまして、本事案の発生について遺憾の意を表明している場合も含めまして、ケース・バイ・ケースで対応しているところでございます。

 今後とも、相手の方の心情、状況に十分配意しつつ、遺憾の意を表明することを含めて、誠心誠意対応してまいりたいと考えております。

塩川委員 この問題でこういう被害者の方の相談を受けている弁護士の方から聞いたところ、その方が知る限り、数十人の被害者、誰一人として警察から直接、謝罪、おわびを受けた者はいないということを述べています。

 ケース・バイ・ケースじゃないんですよ。実際にそういった被害を訴えておられる方について、おわびという言葉すら、遺憾という言葉すら一つも聞いていない、こういうのが実態なんですが、こういったことについて確認していないんですか。

西村政府参考人 お名前の出た方によりまして、警察との接触を拒んでおられる方もございまして、いずれにしましても、それぞれの相手の方の事情に応じまして、最も適切と考える措置をとるように努めてきたところであります。

 先ほど申し上げましたように、これまで本事案の発生について警察として遺憾の意を表明していない方に対しましても、今後、相手方の状況を注意深く見守りながら、誠心誠意対応してまいりたいと考えております。

塩川委員 謝罪もなければおわびの言葉もないというのが実態なんですよ。

 こういった重大な被害の原因となっていながら、こういう警察の関与が疑われるような中で被害者の皆さんに謝罪もおわびもないということでは、言語道断な事態であります。こういう情報流出によって、多くの被害者の方々は精神的な苦痛も受けましたし、経済的な不利益も大きくこうむっているという事態にあるわけで、こういうことについての認識がないということこそ問われるわけです。

 国家公安委員長、こういった一人一人の被害者の方に対しておわびをするということこそ当然だと思うんですけれども、そういうことについてきちんと指導する、そういう考えはありませんか。

松原国務大臣 警察職員が取り扱った蓋然性が高い情報が含まれるデータがインターネット上に掲出されたことによって、委員御指摘のように、不安や迷惑を感じる方がたくさん現におられるという事態に立ち至ったことは、本当に私は、先ほど申し上げたように、怒りを込めて遺憾であるというふうな認識を持っております。

 そうした中で、警察においてはこれまで捜査及び調査を徹底してきましたが、現時点において、残念ながら、事実の究明には至っておりません。国民から信頼を回復するために、一日でも早く事実究明を図ることが必要であり、警察において総力を挙げて厳正に捜査及び調査を行うように、警察を管理、指導してまいりたいと思っております。

 国家公安委員会においても、この事案が発生したときに、こういったことを含め議論がなされておりますが、とにもかくにも国民からの信頼を回復するために、こういったことを推進してまいりたいと思っております。

塩川委員 そんな答弁では警察の信頼は回復されないということを述べておきます。

 その上で、こういったプライバシー情報の収集の方法にも重大な問題があると言わざるを得ません。

 流出した文書の中には「イスラムコミュニティー現勢」というものがあり、その中に、留学生という項目があります。

 文科省、城井大臣政務官、おいでいただいております。お答えいただきたいと思うんですが、大学については、留学生数千二百六十六人、把握数三百九十七人、把握率三一%という記述があります。専門・日本語学校では、留学生数五百十一人、把握数四百人、把握率七八%と高くなっています。国際交流会館・寮では、留学生数二百五十九人、把握数二百四十三人、把握率は九四%。留学生支援団体では、留学生数三百七十人、把握数三百十人、把握率八四%。合計で二千四百六人、把握数千三百五十人、把握率五六%とされております。

 警察は留学生をどのように把握しているのか、その方法をうかがわせる流出文書もあります。「北海道洞爺湖サミット警備における国際テロ対策の推進結果を踏まえた総括意見聴取表」という文書であります。

 そこには、「(東京農工大、電気通信大)の管理者から留学生名簿を入手、イスラム諸国人留学生百七十九名を把握。」とあります。つまり、大学の管理者から留学生名簿を提出させて、その名簿からイスラム諸国人留学生を把握しているのではないかと推察されます。また、この文書では、帝京大学に対する管理者対策により、サウジアラビア人留学生十六名が在籍していることが判明したとの記述があります。

 流出文書によれば、警視庁は、大学等の管理者から名簿等を提出させて、どの大学に誰という、イスラム諸国からの留学生を把握していたということがうかがわれるわけであります。

 その点について文科省にお尋ねしますが、大学を初めとする教育研究機関における留学生のプライバシーの重大な侵害がうかがわれる文書であると思いますが、こうした文書がインターネット上に流出していたことを文科省は把握しておりましたか。

城井大臣政務官 お答え申し上げます。

 インターネット上に流出した文書並びにそれが掲載された書籍について把握をいたしております。

塩川委員 重ねてお尋ねしますが、こうした文書がネット上に流出していたことについて、警視庁あるいは警察庁から情報提供というのはあったんでしょうか。

城井大臣政務官 お答え申し上げます。

 ございませんでした。

塩川委員 今、名前を挙げたような大学、例えば帝京大学には、当然、個人情報保護方針があります。流出文書には、帝京大学に対する管理者対策により、サウジアラビア人留学生十六名が在籍をしていたことが判明したとありますが、管理者対策という表現は、管理者から、大学の個人情報保護方針にのっとらないで個人情報の提供を警察が受けたことを示唆する表現であります。

 文科省に一般論としてお尋ねをいたしますが、大学がみずから決めた個人情報保護方針にのっとらないで警察を含む行政機関に個人情報を提供することは、これは重大な問題ではありませんか。

城井大臣政務官 お答え申し上げます。

 先ほど御指摘のあった三つの大学についても文書担当を通じて事実を確認しましたが、その事実はないというふうに聞いております。

 その上で、その対応でございますが、法令等に基づき、各大学の判断により適切に対応されるべきものというふうに考えております。

塩川委員 次に、国立大学法人についてお尋ねします。

 国立大学法人個人情報保護規程に従って、大学ごとに個人情報保護規程を定めています。警察に留学生名簿を提出したと流出文書に書かれている東京農工大学は、個人情報の目的外利用について、警察などの行政機関に提供する際も、「保有個人情報の提供を受ける者が、法令の定める事務又は業務の遂行に必要な限度で提供に係る個人情報を利用し、かつ、当該個人情報を利用することについて相当な理由のあるとき。」と規定をしております。

 重ねて文科省に一般論としてお尋ねをしますが、イスラム諸国から誰があなたの大学に留学しているか把握をしたい、そのために留学生名簿を出してくださいと言われてそういう名簿を提出するということは、こうした規定に反する行為となるんじゃありませんか。

城井大臣政務官 お答え申し上げます。

 今の御質問に関しましては、法令にしっかりと基づいて、各大学の判断によって適切に対応されるべきものと考えます。

塩川委員 適切に対応されないような事態がうかがわれる状況になっているということであります。

 ここに名前が出ている東京農工大、電気通信大学は、マレーシア政府が政府として派遣した留学生を受け入れてきた大学であります。帝京大学は、サウジアラビア政府が派遣した留学生を受け入れてきた大学であります。そのために、受け入れ支援として文科省が協力をしてきたところであります。そうした留学生の名簿を一律に警察に提出したということであれば極めて重大であるわけで、事実はないとの答弁ではありますけれども、こういったことについて、その他の大学についてどうかということも問われてくるわけであります。

 先ほど紹介をした文書でも、把握率が三一%という話がありました。ですから、つかんでいるところもあれば、つかんでいないところもあるということがうかがわれるような内容となっているわけであります。こういった事態について、留学生を受け入れている各教育研究機関が留学生のプライバシーとか個人情報を適法に取り扱っているかどうか、文科省としてもきちんと把握、調査を行うべきではありませんか。

城井大臣政務官 お答え申し上げます。

 他大学の状況ということでは文部科学省としては把握をしておらないわけでありますけれども、仮にそうしたものがあった場合でも、法令等に基づいて、各大学の判断によって適切に対応されるべきものというふうに考えております。

塩川委員 大学の自治も問われてくる大きな問題であります。大学が学生の名簿を警察に一律に提出などということは、およそ考えられない事態であります。しかも、日本での学問を志して留学をしてきた若者たちを一律に犯罪者扱いするかのような、こういう名簿を警察に手渡すようなことがあるということならば、二重にあってはならない事態であります。

 今回、この流出データで明らかになったことは、あなたの国からの留学生は我が国では犯罪予備軍として個人データを警察で管理していますという、誤ったメッセージを発することになります。

 国家公安委員長にお尋ねしますが、こういった警察による留学生名簿の収集などはあってはならないことであるわけで、こういった事態についてしっかりと調査を行い、もしそういう名簿がある場合は直ちに破棄する、こういうことについてきちんと対応を指示すべきではありませんか。

松原国務大臣 個別のデータについては、警察が作成し、または保管しているものであるか否かを明らかにすることは現在差し控えているところでありますが、一般論として申し上げれば、警察においては、その責務を遂行するため、法令に従い、必要な情報収集等の活動を行っているものと承知をいたしております。

 御質問等も含めてでありますが、今、この事案に関しては、真相解明のために努力をしているところであります。

塩川委員 一律に名簿を提出するということが法令上そもそも許されるのかということが問われているような事件であるわけで、もしこういったことがまかり通るようなことがあれば、警察みずから世界の国々、人々の反感を招くことになるし、また、日本としてこれらのイスラムの国々との友好関係も損なうことにしかならない。

 こういうことを指摘し、引き続きこの問題を取り上げることを申し上げて、質問を終わります。

荒井委員長 次に、高井崇志君。

高井(崇)委員 民主党の高井崇志でございます。

 きょうは、大変タイトな時間の中で質問の機会を与えていただきました。与野党の理事の皆さん、そして委員の皆様に、心から感謝を申し上げます。

 私は、民主党の情報通信ワーキングチームというところで事務局長を務めておりますので、きょうは、そういった観点から何点か質問と確認をさせていただきたいと思っております。

 まず、インターネットの普及というのは、今もう大変普及をしておるわけでございますけれども、数字でいえば、今、九千五百万人がインターネットを利用している。国民の約八割がもう使っているというデータがございます。しかし一方で、先ほどから質問があるように、サイバー犯罪、サイバー攻撃というものが去年ぐらいからかなり急増している状況でございます。

 そうした中で、我が党の情報通信ワーキングチームでも、今、情報セキュリティー対策をしっかりまとめて提言しようということで、鋭意作業を進めておるわけでございます。先般も、政府の関係五省庁、内閣官房の情報セキュリティー室、NISCと、警察庁、総務省、経済産業省、それから防衛省、五省庁に来ていただきまして、いろいろ実態をお聞きいたしました。

 正直申し上げて、感じたのは、五省庁それぞれ一生懸命取り組んでいるんですが、なかなか、うまく連携しているのかなというのを少し感じました。特に、内閣官房にNISCがあるわけでございますけれども、これだけ急増する犯罪に、NISCの今の機能あるいは人員とか、あるいは霞が関の役人だけで、果たしてこういった非常に専門的な知識を有する分野に対応可能なのかどうかということを少し疑問に感じております。

 きょうは内閣官房から来ていただいておりますので、情報セキュリティ政策会議というのがあります、また、その事務局をNISCが担っているわけでありますけれども、その機能が今のままで大丈夫なのか、機能を強化すべきではないか、関係省庁との連携や民間の活用も含めて、御見解をいただきたいと思います。

占部政府参考人 お答え申し上げます。

 サイバー攻撃への対応等、情報セキュリティー対策は、やはり現代のIT社会において、国家の安全保障、危機管理、それからまた国際競争力という観点でも非常に重要なものというふうに認識してございます。

 このため、政府におきましては、先ほど御案内ありましたけれども、二〇〇五年に情報セキュリティ政策会議をつくってございます。こちらは、内閣官房長官、科学技術政策担当内閣府特命担当大臣、国家公安委員会委員長、それから総務大臣、経済産業大臣、防衛大臣という構成員と、それからあと、民間の有識者が六名ということで構成員として入っておられます。

 それから、NISCも同時期に設置いたしまして、政府機関やその重要インフラの情報セキュリティー水準の向上ということに取り組んでいるところでございます。

 御指摘のNISC、私どものいるところでございますけれども、これは四省庁と緊密に連携してやってございます。例えて申し上げますと、まさに昨今のようなサイバー事案が起こってまいりましたので、そのために、官民連携強化のための分科会というのをつくりまして、そこで、この四省庁が、我々を含めては五省庁ということになりますけれども、緊密な連携をとりながら対策を取りまとめているというところでございます。

 それから、民間の知見ということでございますけれども、先ほど申し上げたように、情報セキュリティ政策会議の中に既に六名の構成員という方に参加いただいています。それから、NISCにも情報セキュリティ補佐官という方に来ていただく。そのほかにもいろいろな協力をしていただいているということで、民間の知見を入れながらセキュリティー対策をやっているというところでございます。

 今後とも、政府一丸となりまして、それから民間の活力も知見も使いながら、一生懸命セキュリティー対策に取り組んでいきたいというふうに考えているところでございます。

高井(崇)委員 わかりました。

 私は、特に、今、この霞が関のメンバーの中だけで、極めて専門性の高い分野でありますから、やはり大学の先生であるとかあるいは民間企業の最前線の方をもっともっと、今六人委員がいると言いましたけれども、そんなのでは足りないんじゃないかなというふうに思っていて、このあたりは、ぜひ、民主党の中でもまた民間活力を生かすというような観点から提言をまとめていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いをいたします。

 それでは、法案の中身に入ってまいりたいと思いますが、この法案は、フィッシングという行為を規制するということが大きなテーマであります。

 先ほどからフィッシング、フィッシングという言葉が出ていますが、正直、フィッシングというのは何だろうと思われる方も多いんじゃないかなと。恐らく国民の皆さんも、フィッシングといってもぴんとこない。簡単に言えば、インターネット上の振り込め詐欺みたいなものだ、わかりやすく簡単に言ってしまうと。こういうようなことなんでありますけれども、振り込め詐欺はかなり国民の皆さんに周知をされて、CMなどでもたくさん取り扱われていますが、このフィッシングというものの認知度はまだまだ低いというふうに思っています。

 そういった意味で、まず、このフィッシングというのが大変危険な、危ない、犯罪なんだということをもっと国民の皆さんに注意、啓発をする必要があると考えておりますけれども、いかがでしょうか。

松原国務大臣 高井委員がこうした問題に強い意識を持って取り組まれてこられたことに、敬意を表したいと思っております。

 警察庁では、これまでも、関係機関、団体とともに、フィッシング行為によるID、パスワードの不正取得に対する注意喚起を行ってきたところであります。従来はフィッシング行為自体は犯罪ではなかったこともあって、フィッシング行為についての国民の認知度が十分ではないと認識をいたしております。

 今回の法改正により、フィッシング行為そのものが禁止、処罰の対象となることから、今後、フィッシング行為を発見した場合の通報の呼びかけとあわせて、関係省庁やフィッシング対策協議会等関係機関、団体とも連携しながら、フィッシング行為の手口そのものの周知、技術的防御策の普及等、フィッシングによる被害を防止するための普及啓発活動について積極的に推進してまいりたいと思っております。

高井(崇)委員 今御答弁がありましたとおり、フィッシング行為というのは、やはり、この法案が通りましたら、もう許されざる犯罪であるということは紛れもない事実だと思います。しかし一方で、インターネットでさまざまな活動が行われていることをできるだけ規制しないということも重要な観点であると思っています。

 私はIT関係の業界の皆さんといろいろお話しする機会があるんですけれども、今回のこの法律でも、フィッシング行為の定義において少し疑義があるという声がありますので、ちょっとそこをきょうは確認させていただきたいと思います。

 それは、第七条の定義のところで、フィッシングの定義として、「何人も、アクセス制御機能を特定電子計算機に付加したアクセス管理者になりすまし、その他当該アクセス管理者であると誤認させて、次に掲げる行為をしてはならない。」と。難しい、ITの法律はどうも用語が難しいと同僚議員からも指摘を受けて、それも質問してくれと言われているんです、これは私ももっと何とかしなきゃいけないなというふうに思っておりますけれども。

 その中で、まあ用語の難しさもさることながら、「誤認させて、」という言葉があります。この「誤認させて、」という言葉が、実は、あるホームページと似たホームページをたまたまつくってしまったという方が、誤認させるという意図を持たないにもかかわらず、たまたまホームページが似てしまって、結果としてID、パスワードを利用者が入力してしまった、それだけでフィッシングになってしまうというようなおそれが生じる可能性がこの条文だと読めてしまうのではないか、そういう疑義がございます。

 そんな意図はないとは思うんですけれども、この場で大臣からぜひ確認をしていただきたいということでございます。

松原国務大臣 極めて問題意識を持たれているのは理解できますし、この部分では答弁を正確に読みたいと思っております。

 不正アクセス禁止法改正案第七条では、いわゆるフィッシング行為を禁止することとしているが、この規定は、利用権者を誤認させようとする意図を持って第一号または第二号に該当する行為を禁止するものであり、行為者に誤認させてやろうとする意図はないのに受け手が勝手に誤認してしまったような場合は、改正案第七条には該当せず、処罰対象となることはないということであります。

高井(崇)委員 正確な御答弁をいただき、ありがとうございます。これで、インターネット上でいろいろな活動をしている、特にホームページを開設するような人たちが、安心して開設できるということになるのではないかと思っています。

 ただ、今、法の解釈については御提示をいただきましたけれども、やはり実際に取り締まるときの運用においてそういったことがないように、ぜひ現場を大臣に陣頭指揮をとっていただいて、頑張っていただきたいと思います。

 繰り返しますけれども、インターネット上の活動というのはできるだけ自由であるべき、しかし、やはり必要な規制はしなきゃいけないし、犯罪は抑制していかなきゃいけないということでございます。

 今回の改正でも、こういった似たような、これはどうなんだろうかというような事例が今後も出てくることが予想されます。どういう行為が禁止されて、どういう行為が許されるのかということを、もう少し国民の皆さんにわかりやすく示すことが必要ではないかと考えていますけれども、御見解をお願いいたします。

岩瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 改正案第七条は、フィッシング行為、すなわち、実在する企業等が公開したウエブサイト、または実在する企業等が送信した電子メールであると利用者に誤認させてID、パスワードを入力させようとする行為を禁止するものでありまして、企業や一般人の方の通常のインターネット利用行為が当該規定に該当することはありません。

 改正法が成立した場合には、通常のインターネット利用行為が本規定に該当するのではないかとの懸念を払拭するため、本規定の対象範囲について、逐条解説の公開や警察庁ホームページの説明、フィッシング対策協議会等関係機関、団体への説明等を通じて国民の皆様に周知してまいりたいと考えております。

高井(崇)委員 ありがとうございます。

 きょうはこの後本会議もございますので、通告では海外での取り締まり対策についてもお伺いしましたけれども、各委員から同様の質問がたくさん出ておりますので、私からはその質問はきょうは省かせていただいて。

 本当にこの法律は、サイバーセキュリティー対策を進める上で非常に画期的な、大きな一歩を踏み出す法律であると思っています。

 ただ、繰り返しますけれども、インターネット上の活動というのは萎縮させることがないように配慮していただきたいということ、それから、情報セキュリティー対策はぜひ関係省庁で密接な連携をとっていただき、かつ民間の知見も十分生かしながら、非常に重要な分野だと思いますので、犯罪の撲滅と、それから安心できるインターネット環境の構築に向けてぜひ頑張っていただきたいということを申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

荒井委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

荒井委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、不正アクセス行為の禁止等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

荒井委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

荒井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

荒井委員長 次に、本日付託になりました内閣提出、新型インフルエンザ等対策特別措置法案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。中川国務大臣。

    ―――――――――――――

 新型インフルエンザ等対策特別措置法案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

中川国務大臣 ただいま議題となりました新型インフルエンザ等対策特別措置法案について、その提案理由及び内容の概要を御説明いたします。

 平成二十一年に発生しました新型インフルエンザH1N1は、病状の程度がそれほど重くならないものでありましたが、現在、東南アジア等で散発的に発生している高病原性鳥インフルエンザH5N1が変異して人から人に感染するようになった場合、多くの人命が失われるおそれがあり、社会全体の混乱も懸念されます。

 こうした状況の中で、病原性が高い新型インフルエンザや同様な危険性のある新感染症に対して、三年前の新型インフルエンザの教訓も踏まえつつ、必要な法制を整えておくことが喫緊の課題であります。

 本法律案は、政府行動計画等の策定、政府対策本部の設置等の措置、さらに新型インフルエンザ等緊急事態における特別な措置を定め、もって国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済に及ぼす影響が最小となるようにすることを目的とするものであります。

 以上が、この法律案の提案理由であります。

 次に、この法律案の内容について、その概要を御説明いたします。

 第一に、総則的事項として、国、地方公共団体、指定公共機関、事業者及び国民の責務を定めること、国民の自由と権利に制限が加えられるときであっても、その制限は必要最小限のものでなければならないことを定めております。また、政府及び地方公共団体は、新型インフルエンザ等の発生に備えて行動計画を作成すること等を定めております。

 第二に、新型インフルエンザ等の発生時における措置について、国及び都道府県は対策本部を設置すること、政府対策本部長は医療提供体制並びに国民生活及び国民経済の安定を確保するため特定接種を実施するよう指示できること、検疫に関しては停留施設の確保や、発生国からの航空機等の運航制限を要請できること、都道府県知事は医療関係者に対し医療等を行うよう要請及び指示できること等を定めております。

 第三に、政府対策本部長は、国民の生命及び健康に著しく重大な被害を与えるおそれのある等の要件に該当する新型インフルエンザ等が国内で発生したと認めるときは、新型インフルエンザ等緊急事態宣言を行うこと、市町村は市町村対策本部を設置すること等を定めております。

 第四に、新型インフルエンザ等緊急事態における蔓延の防止に関する措置について、都道府県知事は、住民に対し不要不急の外出の自粛を要請できることや、学校や興行場等の管理者等に施設の使用の制限等を要請及び指示できること、政府対策本部は、市町村の実施する住民に対する予防接種について、その実施指示を行うこと等を定めております。

 第五に、新型インフルエンザ等緊急事態における医療等の提供体制の確保に関する措置について、医療機関が不足する場合に、都道府県知事が臨時の医療施設を開設すること及びその場合の医療法等の特例や、土地等を一時的に使用することができること等を定めております。

 第六に、新型インフルエンザ等緊急事態における国民生活の安定に関する措置等について、電気事業者、ガス事業者等である指定公共機関等は、その事業の実施について必要な措置を講じなければならないこと、都道府県知事は、医薬品、食品等について売り渡しを要請及び収用できること、新型インフルエンザ等の患者等の権利利益の保全等のため、行政上の申請期限等を延長すること等を定めております。

 第七に、財政上の措置等について、国及び都道府県は、特別の処分が行われたときは損失を補償しなければならないこと、都道府県は、要請等に従って医療の提供を行う医療関係者がそのため死亡等したときは、損害を補償しなければならないこと、国は、地方公共団体の実施する措置に要する費用に対して、他の災害法制の例に倣って、標準税収入に応じて負担割合をかさ上げすること等を定めております。

 このほか、罰則に関する規定その他の所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、本法律案の提案理由及びその内容の概要でございます。

 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。

 以上です。

荒井委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時五十二分散会


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