衆議院

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第10号 平成24年7月20日(金曜日)

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平成二十四年七月二十日(金曜日)

    午前十時十一分開議

 出席委員

   委員長 荒井  聰君

   理事 後藤 祐一君 理事 田村 謙治君

   理事 津村 啓介君 理事 湯原 俊二君

   理事 鴨下 一郎君 理事 平沢 勝栄君

   理事 古賀 敬章君 理事 高木美智代君

      石田 勝之君    石山 敬貴君

      磯谷香代子君    園田 康博君

      高井 崇志君    玉置 公良君

      長島 一由君    橋本 博明君

      橋本  勉君    原口 一博君

      福田衣里子君    宮島 大典君

      村井 宗明君    本村賢太郎君

      森山 浩行君    矢崎 公二君

      山岡 達丸君    北村 茂男君

      小泉進次郎君    齋藤  健君

      塩崎 恭久君    柴山 昌彦君

      平  将明君    中川 秀直君

      長島 忠美君    野田 聖子君

      浜田 靖一君    相原 史乃君

      京野 公子君    瑞慶覧長敏君

      村上 史好君    遠山 清彦君

      塩川 鉄也君    浅尾慶一郎君

    …………………………………

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 松原  仁君

   内閣府副大臣       石田 勝之君

   内閣府大臣政務官     園田 康博君

   政府参考人

   (警察庁刑事局組織犯罪対策部長)         栗生 俊一君

   内閣委員会専門員     雨宮 由卓君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十五日

 辞任         補欠選任

  細川 律夫君     湯原 俊二君

  下村 博文君     徳田  毅君

  大口 善徳君     遠山 清彦君

七月四日

 辞任         補欠選任

  岡島 一正君     白石 洋一君

  金子 健一君     和嶋 未希君

  福嶋健一郎君     小原  舞君

同月六日

 辞任         補欠選任

  小原  舞君     阿久津幸彦君

  白石 洋一君     原口 一博君

  和嶋 未希君     村井 宗明君

  青木  愛君     古賀 敬章君

  玉城デニー君     瑞慶覧長敏君

  畑  浩治君     京野 公子君

同月二十日

 辞任         補欠選任

  阿久津幸彦君     宮島 大典君

  福島 伸享君     玉置 公良君

  小泉進次郎君     齋藤  健君

  塩崎 恭久君     柴山 昌彦君

  竹本 直一君     北村 茂男君

  野田 聖子君     浜田 靖一君

  京野 公子君     相原 史乃君

同日

 辞任         補欠選任

  玉置 公良君     山岡 達丸君

  宮島 大典君     阿久津幸彦君

  北村 茂男君     竹本 直一君

  齋藤  健君     小泉進次郎君

  柴山 昌彦君     塩崎 恭久君

  浜田 靖一君     野田 聖子君

  相原 史乃君     京野 公子君

同日

 辞任         補欠選任

  山岡 達丸君     福島 伸享君

同日

 古賀敬章君が理事に当選した。

同日

 理事福島伸享君同日理事辞任につき、その補欠として湯原俊二君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

七月十九日

 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四六号)(参議院送付)

六月十五日

 中部地方の国の出先機関と独立行政法人の体制・機能の充実に関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第二〇六〇号)

 同(望月義夫君紹介)(第二〇六一号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第二二三七号)

 九州地方の国の出先機関と独立行政法人の体制・機能の充実に関する請願(小里泰弘君紹介)(第二〇六二号)

 同(徳田毅君紹介)(第二一三五号)

 同(中島隆利君紹介)(第二一三六号)

 同(北村誠吾君紹介)(第二三六四号)

 四国地方の国の出先機関と独立行政法人の体制・機能の充実に関する請願(平井たくや君紹介)(第二〇六三号)

 同(小川淳也君紹介)(第二一三七号)

 同(村上誠一郎君紹介)(第二二三六号)

 同(大野功統君紹介)(第二三六五号)

 岡山県における国の出先機関と独立行政法人の体制・機能の充実に関する請願(穀田恵二君紹介)(第二一一二号)

 同(穀田恵二君紹介)(第二二三八号)

 近畿地方の国の出先機関と独立行政法人の体制・機能の充実に関する請願(穀田恵二君紹介)(第二一一三号)

 同(宮本岳志君紹介)(第二一一四号)

 同(吉井英勝君紹介)(第二一一五号)

 国の出先機関と独立行政法人の充実に関する請願(加藤学君紹介)(第二一一六号)

 同(柳田和己君紹介)(第二一一七号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二二三九号)

 国の出先機関の原則廃止を撤回し、行政組織体制の拡充を求めることに関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第二一一八号)

 島根県における国の出先機関と独立行政法人の体制・機能の充実に関する請願(穀田恵二君紹介)(第二一一九号)

 TPP参加の見直しに関する請願(亀井静香君紹介)(第二一二〇号)

 鳥取県における国の出先機関と独立行政法人の体制・機能の充実に関する請願(穀田恵二君紹介)(第二一二一号)

 広島県における国の出先機関と独立行政法人の体制・機能の充実に関する請願(穀田恵二君紹介)(第二一二二号)

 北海道の国の出先機関と独立行政法人の体制・機能の充実に関する請願(石川知裕君紹介)(第二一二三号)

 同(松木けんこう君紹介)(第二二四〇号)

 山口県における国の出先機関と独立行政法人の体制・機能の充実に関する請願(穀田恵二君紹介)(第二一二四号)

 レッド・パージ被害者の名誉回復と国家賠償に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二一二五号)

 同(笠井亮君紹介)(第二一二六号)

 同(穀田恵二君紹介)(第二一二七号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第二一二八号)

 同(志位和夫君紹介)(第二一二九号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二一三〇号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二一三一号)

 同(土肥隆一君紹介)(第二一三二号)

 同(宮本岳志君紹介)(第二一三三号)

 同(吉井英勝君紹介)(第二一三四号)

 暮らし・農業・地域を破壊するTPP参加反対に関する請願(笠井亮君紹介)(第二二三一号)

 同(志位和夫君紹介)(第二二三二号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第二三六一号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二三六二号)

 TPPへの参加中止を求めることに関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第二二三三号)

 同(宮本岳志君紹介)(第二二三四号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二三六三号)

 沖縄県内の国の出先機関と独立行政法人の体制・機能の充実に関する請願(照屋寛徳君紹介)(第二二三五号)

 TPP交渉に参加しないよう強く求めることに関する請願(志位和夫君紹介)(第二三六〇号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の辞任及び補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四六号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――

荒井委員長 これより会議を開きます。

 理事辞任についてお諮りいたします。

 理事福島伸享君から、理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

荒井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、理事の補欠選任についてお諮りいたします。

 ただいまの理事辞任及び委員の異動に伴い、現在理事が二名欠員となっております。その補欠選任につきましては、去る六日の議院運営委員会における理事の各会派割当基準の変更に基づいて選任することとし、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

荒井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 それでは、理事に

      湯原 俊二君 及び 古賀 敬章君

を指名いたします。

     ――――◇―――――

荒井委員長 内閣提出、参議院送付、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。松原国家公安委員会委員長。

    ―――――――――――――

 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

松原国務大臣 ただいま議題となりました暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 この法律案は、最近における暴力団をめぐる情勢に鑑み、対立抗争及び暴力的要求行為等に伴う市民生活に対する危険を防止するための措置について規定するとともに、国家公安委員会の認定を受けた都道府県暴力追放運動推進センターが指定暴力団等の事務所の付近住民等から委託を受けて当該事務所の使用等の差しとめの請求をするための制度を導入するほか、暴力的要求行為及び準暴力的要求行為の規制等を強化すること等をその内容としております。

 以下、項目ごとにその概要を御説明いたします。

 第一は、市民生活に対する危険を防止するための規定の整備についてであります。

 その一は、指定暴力団等の相互間に対立抗争が発生した場合において、人の生命等に重大な危害を加える方法による暴力行為が行われ、かつ、さらに同様の暴力行為が行われるおそれがある場合に、都道府県公安委員会がその指定暴力団等を特定抗争指定暴力団等として指定し、その所属する指定暴力団員が警戒区域内において暴力団の事務所を新たに設置すること等を罰則による処罰の対象とするものであります。

 その二は、指定暴力団等の指定暴力団員が暴力的要求行為等に関連して人の生命等に重大な危害を加える方法による暴力行為を行い、かつ、さらに反復して同様の暴力行為を行うおそれがある場合に、都道府県公安委員会がその指定暴力団等を特定危険指定暴力団等として指定し、その所属する指定暴力団員が警戒区域内において行う暴力的要求行為等を罰則による処罰の対象とするものであります。

 第二は、都道府県暴力追放運動推進センターによる事務所使用差しとめ請求制度の導入についてであります。

 これは、国家公安委員会の認定を受けた都道府県暴力追放運動推進センターが、指定暴力団等の事務所の付近住民等から委託を受けて、裁判上または裁判外において、自己の名をもって当該事務所の使用等の差しとめを請求することができることとするものであります。

 第三は、暴力的要求行為及び準暴力的要求行為の規制の強化等についてであります。

 その一は、指定暴力団員が金融商品取引業者等一定の事業者に対して行う不当な取引の要求等を暴力的要求行為として規制する行為に追加するとともに、国等が行う公共工事の契約または入札に関する暴力的要求行為の規制について、国等の契約または入札全般にその対象を拡大するものであります。

 その二は、指定暴力団員が準暴力的要求行為を助けることを禁止するとともに、準暴力的要求行為を行うことが禁止される者として、指定暴力団等の威力を示すことを常習とする者で指定暴力団員でなくなった日から五年を経過しない者等を追加するものであります。

 その三は、指定暴力団員が縄張り内で営業を営む者のために用心棒の役務を提供すること等を禁止し、都道府県公安委員会が当該行為の中止または防止のための命令をすることができることとするものであります。

 その四は、暴力的要求行為に対する中止命令違反等に係る罰則を強化するものであります。

 第四は、暴力団員による不当な行為の防止等に関する国等の責務及び民間活動の促進に関する規定の整備についてであります。

 これは、国及び地方公共団体は、指定暴力団員等を入札に参加させないようにするための措置を講ずるとともに、事業者は、その事業活動を通じて暴力団員に不当な利益を得させることがないよう努めなければならないこととするものであります。

 なお、この法律の施行日は、都道府県暴力追放運動推進センターによる事務所使用差しとめ請求制度の導入については公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日、それ以外の規定については公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日としております。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。

 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同賜らんことをお願い申し上げます。

荒井委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

荒井委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として警察庁刑事局組織犯罪対策部長栗生俊一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

荒井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

荒井委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。森山浩行君。

森山(浩)委員 おはようございます。民主党の森山浩行でございます。

 今回の暴対法の改正、市民の安全をしっかりと守っていくために速やかに成立をさせ、そして施行していただきたい、こんな思いでおります。

 私自身も、関西テレビというテレビ局で記者をしておりまして、当時、組長が暗殺をされるという事件のときに、流れ弾で歯医者さんがお亡くなりになる、このような現場にも立ち会ったことがあります。市民の安全をしっかりと守っていくために、また、最近では九州で非常に大きな抗争が起こっております。ロケットランチャーが見つかった、これは誰の持ち物かわからないというような話もありますけれども、こういうことも含めて、体感治安、また安心、安全、こういうことを守っていくための大事な法律であるというふうに感じております。

 幾つか確認をさせていただきたいんですけれども、今回の改正法が成立をした場合、不当な要求を受け入れさせるために事業者に暴力行為を行ういわゆる危険な指定暴力団が危険指定暴力団という指定になる。そして、法第九条に規定する暴力的要求行為、これが直罰化をされる、いわゆる中止命令ではなくて直接罰することができるようになるということでございます。

 規制が強化されるということでありますけれども、これは、今こういうことが起こっているから法律を改正しなければいけないということだと思うんですね。ということは、改正が成ったときに、今、あるいはちょっと前でもいいです、この法の施行前の暴力行為ということであっても危険指定にはなるというふうに考えてよろしいでしょうか。

栗生政府参考人 お答え申し上げます。

 特定危険指定暴力団の指定をするためには、その構成員が暴力的要求行為等に関連いたしまして凶器を使用した危険な暴力行為を行い、かつ、同一の指定暴力団に所属する構成員がさらに反復して同様の暴力行為を行うおそれがあると認められることが必要であります。

 ここで求められますのは、特定危険指定暴力団の指定の段階において、それ以前に、先ほど申し上げたような危険な暴力行為が行われたことでありまして、お尋ねの改正前の暴力行為も含まれるものであります。

森山(浩)委員 ありがとうございます。

 直接その行為を罰するという遡及法ではないということですから、しっかり指定をしていただく、危険が続くという形でお願いをしたいと思います。

 また、「凶器を使用して人の生命又は身体に重大な危害を加える方法による暴力行為」という記述があります。直接危害ということになると、昼間に店に入っていってバンバンと拳銃を撃つ、これは当然入るわけですけれども、夜中、店が閉まっているというようなときに店に向かって拳銃を撃った、この跡が残っている、こういう場合もこの危険行為に入るというふうに思ってよろしいんでしょうか。

栗生政府参考人 御指摘の「人の生命又は身体に重大な危害を加える方法」とは、その危害が発生する可能性が相当程度認められる危険な方法をいうものと考えておりまして、ここで問題としておりますのはあくまでも暴力行為の方法であります。例えば拳銃の発射というような形で現に危険性の高い方法が用いられている以上、危害行為が行われた時点における他の事情で生命身体への危害が結果的に発生しなかったとしても、その方法の危険性は認められると考えております。

 御指摘の、夜間の店舗に対して拳銃を発砲したといった事案につきましては、拳銃の発砲という方法自体が一般的に極めて危険なものでありまして、その店舗に従業員等がいる可能性もあることから、「人の生命又は身体に重大な危害を加える方法」の要件に該当し得ると考えられます。

 なお、この要件の認定は、暴力行為が行われた時点におけるその方法の危険性を客観的に判断するものであり、人に危害を加えることについての行為者の認識が必要となるものではございません。

森山(浩)委員 ありがとうございます。おどし方というのもいろいろありますので、いないからといって危険ではないということではない、ここを確認させていただきました。

 さらに、暴力的要求行為ということでありますけれども、今回また新たな類型が追加をされているわけですけれども、これも先ほどと同じ、今回の改正施行以前に行われたものであっても、その要求行為に関連して暴力行為が行われたということ、今後まだ続いていくということも含めて、前からの分をつなげていくという認識でよろしいでしょうか。

栗生政府参考人 お答え申し上げます。

 特定危険指定暴力団の指定は、暴力的要求行為等を直罰化することによって暴力的要求行為等に関連する暴力行為を抑止しようとするものでございます。

 このような特定危険指定暴力団としての指定につきましては、当該指定をしようとするその時点において法の定める要件を満たしていれば足りるものでありまして、今回の改正によって追加されますところの暴力的要求行為等についても、暴力行為を行うおそれに係る暴力的要求行為等に該当するものでございます。

森山(浩)委員 ありがとうございます。

 そして、もう一つ気になるのが、「更に反復して同様の暴力行為を行うおそれ」という記述があります。「更に反復して」、例えば、覚えとけよ、今度またやったるぞ、こういうようなことを直接言われれば当然ここに当たるわけですけれども、隣の家が燃やされている、隣の店が発砲されている、暴力をにおわせるような発言があろうがなかろうが、これは危険を感じると思うんですけれども、反復のおそれというのはどのような要件で考えておられますか。

栗生政府参考人 まず、お尋ねの「更に反復して同様の暴力行為を行うおそれ」につきましては、人の生命または身体に危害を加える方法による暴力行為が反復して行われるおそれが客観的に認められる必要があります。

 危害をほのめかして脅迫するというような場合は「おそれ」に明らかに該当すると考えられますが、一方で、この「おそれ」の認定はこのような場合に限られるものではなくて、例えば、指定暴力団の構成員が暴力的要求行為を拒絶した事業者に対して危険な暴力行為を行った場合に、その後で、その指定暴力団の他の構成員がその暴力団の縄張りにおいて暴力的要求行為をまた行ったり、または市民の損害賠償請求などを妨害する行為を行ったりしているようなときにも、同様に、その相手方を暴力行為をもって屈服させる組織の性向が認められ、「更に反復して同様の暴力行為を行うおそれ」を認定し得るものと考えております。

森山(浩)委員 ぜひ、ほのめかし、脅迫といった形式的なところにとらわれないようにお願いをしたいと思います。

 さて、平成四年にこの暴対法というのができたわけですけれども、施行から二十年たっております。この間、いただいた資料によりますと、九万人余りの暴力団員が七万人余りというところまで減ってきている、あるいは中止命令、これはやってはいけないよというのが三万九千百十一件に上っているということで、顕在化している暴力行為あるいは暴力団員数、こういうものは明らかに減ってきていて、これは効果があるというような形になるんだと思います。

 しかし、問題は、顕在化している暴力行為、あるいは暴力団員ですという看板を上げている人、こういう人が減ればいいというものではなくて、潜在化をする、いや、もうやめました、元組員になりました、あるいは、もともと組には入らずに、しかし組のために働いています、フロント企業と言われるようなものであるとか、こういう部分。潜在化を懸念する、むしろ暴対法ができて潜在化をして、たちが悪くなった、このようなちまたの声も聞かれます。

 このような部分に関しては、対処、そもそも見えないんだから対処のしようがないという言い方かもしれませんが、しかし、実際の暴力を抑えていくという意味では必要かと思いますけれども、これはどのようにお考えでしょうか。

栗生政府参考人 御指摘のように、近年、暴力団がその組織や活動の実態を隠蔽いたしましたり、構成員も所属する組織との関係を偽装するような状況も認められるところであります。

 警察といたしましては、このような暴力団の動向も踏まえまして、やはり実態の解明をまず強化いたしまして、そして取り締まりなどの暴力団の弱体化、壊滅に向けた取り組みを推進しているところでありますし、今後もそのように努めたいと思っております。

森山(浩)委員 実感としての潜在化という部分については十分把握ができていないということであります。

 さらに、外国人犯罪組織、こういうものが入り込んできて、昔は日本人のやくざのいわゆる縄張り、シマであったけれども、外国人たちがばっこして、むしろ手に負えなくなっているんじゃないか、このような声も聞かれます。このような実態についてはどのように。

栗生政府参考人 外国人犯罪組織につきましては、暴力団組織の縄張り自体を全て奪取するというような状況に至っているとの例は把握しておりませんが、繁華街におきましても資金獲得活動などを外国人犯罪組織が行っておりまして、警察としては、十分な注意を払って組織の実態解明を行うとともに、取り締まりの強化をあわせて進めてまいりたいと思っております。

森山(浩)委員 ありがとうございます。いわゆるきちっとした組織である暴力団というものを規制すればいいというものではないということでございます。

 さらに、今抗争が起こっています福岡県の知事からは、暴力団対策について要望がなされておりまして、暴力団のような犯罪組織に対しては、新たな捜査手法の導入も検討されるべきであるというふうに言われております。

 例えば潜入捜査であるとか、今は許されていない部分というのがあるかと思いますけれども、何とかこれを取り入れていかなきゃいけないんじゃないでしょうか。

松原国務大臣 ただいま御指摘がありました捜査手法の高度化については、平成二十二年二月に設けられました国家公安委員会委員長主宰の捜査手法、取調べの高度化を図るための研究会において、我が国の刑事司法制度全体のあり方を含む広範なテーマについて踏み込んだ議論が行われ、平成二十四年二月、最終報告においてその結果が取りまとめられたところであります。

 研究会において、DNA型データベースの拡充、通信傍受の拡大、仮装身分捜査、量刑減免制度、司法取引、刑事免責、証人を保護するための制度等、さまざまな捜査手法について議論がなされました。

 研究会で議論された捜査手法については、有効性、相当性を踏まえつつ、警察において取り組みが進められるものはその実現に向け検討を進める所存であります。他方、刑事訴訟法等の改正を要するなど、警察のみの取り組みで実現できないものも多いことから、法務省を初めとする関係省庁と連携しつつ、個々の捜査手法について検討を進める必要があると認識をいたしております。

 なお、捜査手法の高度化については、法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会においても検討されているところであります。

 警察として、これら新たな捜査のあり方についてしっかりとした議論をしてまいる所存であります。

森山(浩)委員 ありがとうございます。

 外国人の実態についても十分把握できない、また潜在化する暴力事件についても十分な把握ができないという中での、顕在的な部分はこの法律でしっかりと抑えていけると思いますが、さらに高度な捜査手法を含めて、今後の暴力団対策に向けた大臣の決意をお願いしたいと思います。

松原国務大臣 今御答弁したように、捜査手法の高度化は、私も九州・福岡にお伺いしたときに知事や市長からも強く要請をされましたし、また、その場の、不安におびえる地域の住民の皆さんもこういったことをおっしゃっていたので、これもぜひ取り組みたいと思います。

 改めて言うまでもなく、暴力団は、銃器を使用した対立抗争や事業者に対する襲撃事件を繰り返すなど、平穏な市民生活への脅威となっており、治安上の重要な課題と認識をしております。

 警察としては、暴力団の弱体化及び壊滅のため、一つは暴力団犯罪の取り締まりの徹底、もう一つは暴力団対策法の効果的な運用、そして関係者の安全に配慮した暴力団排除活動の推進を柱とする総合的な対策を実施してきたところであります。

 今後、これらの取り組みに加え、今回の改正法を成立させていただいた後には、その的確な運用を通じ、弱体化及び壊滅に向けて暴力団を着実に追い詰めていくよう警察を指導してまいりたいと思います。

森山(浩)委員 ありがとうございました。

 ぜひ速やかに成立をさせて、そして頑張っていただきたいと思います。よろしくお願いします。

荒井委員長 次に、平沢勝栄君。

平沢委員 自由民主党の平沢勝栄でございます。

 最初に、松原大臣にお聞きしたいと思うんですけれども、きのうの報道では、松原大臣が新潟の県会議員とお会いしたときにこういうことを言われたと。最近の北朝鮮の人事を見ていると、拉致問題で従来と違う対応を示す可能性が極めて高い、こういった趣旨のことを言われたということが出ていますけれども、まず、こういうことを言われたのどうか。それで、可能性が極めて高いというのは、何か具体的な情報に基づいて言われているのか、それとも期待感を込めて言われているのか、その辺、ちょっとお答えください。

松原国務大臣 自分が発言した今の発言、それはきのう私が発言したということでしょうか、話として。(平沢委員「おとといじゃないでしょうか。十八日です」と呼ぶ)

 どちらにしても、趣旨としては、やはり新しい体制の中で異なった打ち出しをしているのではないかという分析がありまして、そうした中で、その北朝鮮に対する呼びかけを含めてそういったことを私は言ったんだろうというふうに自分では思っております。

平沢委員 はい、わかりました。

 では次に、本論に入りまして、暴対法の一部改正案についてですけれども、外国では暴力団が存在しない国もあるわけで、そういう中で日本は依然として、数は減ったとはいえ、七万だ何だという数がいるというのは異常ですよ。

 そこで、警察庁にお聞きしたいと思いますけれども、海外で暴力団の存在しない国としてはどんな国がありますか。

栗生政府参考人 お尋ねの件ですが、一言ではなかなか実は申し上げにくいところがございます。

 組織犯罪はいろいろな国でございます。しかし、確固とした犯罪組織を対外的にみずから示して存在している国というものは、やはり日本の暴力団が最たるものではないかと思っております。もちろん、欧米にもマフィアなどという犯罪組織がございますけれども、組織を隠蔽化する、そもそも隠蔽化しているということがございますので、やはり日本は特有の状況にあるというふうに考えております。

平沢委員 私がイギリスにいたとき、イギリスの内務省の関係者は、日本が治安がいいと言うと、とても日本が治安がいいとは理解できない、その理由は三つあると言ったんですよ。

 その理由が三つあるというのは何かというと、一つは、日本の警察官は拳銃を持っていると。イギリスの警察官は持っていませんからね。まずそれが一つ。

 二番目には、成田空港、要するに、空港の手前で検問所があるんです。世界の空港、私もアイルランドのベルファストなんかに行きましたけれども、ベルファストでも空港の手前に検問所なんてないわけで、検問所がある。これが、日本が治安がいいというのはとても信用できないと。

 それから三番目に言っていたのが、この暴力団なんです。イギリスでも、もちろん小さな犯罪組織というのはいっぱいありますよ。だけれども、暴力団という、こんな何千人だ何万人だなんという、犯罪を犯す可能性が高い組織、グループが存在するなんということはないわけなんです。

 そこでお聞きしたいんですけれども、日本の暴力団、これはなぜ存在して、なぜこれを壊滅することがなかなか難しいんでしょうか。

栗生政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、存在しているのはなぜなのかという由来みたいなことを簡潔に申し上げますと、暴力団につきましては、もともと、賭博やいわゆるテキ屋の活動を事実上独占して営んできた博徒やテキ屋といった集団が、戦後の混乱期に暴力をもって闇市を支配しようとし、資金獲得活動を行ったのがその由来であるというふうに考えているところでございます。

 その後も、山口組などの一部の暴力団が、その威力を背景に各地に進出して、吸収などをしながら勢力を拡大して現在に至っているということでございます。

 それで、なぜなくならないのかという点でございます。

 まず、警察は従来から、取り締まりや暴力団排除活動などによりまして暴力団対策を確かに進めてきたわけでありますけれども、依然として暴力団が壊滅するという状況には至っていないという厳然たる事実がございまして、これを重く受けとめなければいけないと思っております。

 背景としましては、捜査体制や捜査手法、関係者からの協力の確保などのさまざまな面での困難もございまして、警察の取り締まりが十全の成果を上げているとは申し上げがたい点があろうかと思われます。

 一方で、国民や事業者の中には、暴力団をあえて利用する人がおられたり、また、暴力団に脅威を感じて、不本意ながらも資金の提供に応じてしまわれる方もいるという現実もございます。

 最近では若干暴力団の数も減ってきてはいるんですけれども、これは国民の期待に沿うものではまだないと思っておる次第でございます。

平沢委員 暴力団は、市民生活の平穏とか安全を脅かす存在なんですよね。その暴力団が町の真ん中に堂々と事務所を構えて活動している、これの方がおかしいじゃないですか。

 だから、お聞きしたいんですけれども、暴力団はなぜ非合法化できないんですか。要するに違法、存在自体を違法。今回の法律は、暴力団は存在してもいいですよ、しかし厳しく規制しますよ、こういうことでしょう。これを、平成三年の暴対法ができてからずっとやってきたわけでしょう。だから、暴力団の存在自体が違法だということはなぜできないのか、お答えください。

栗生政府参考人 暴力団の非合法化につきましては、将来的な課題であるとは認識しておりますが、やはり、団体の存在を直接規制することにつきましては、憲法との関連で慎重な検討がなお必要であるということ、また、現在の暴力団のように極めて大規模な団体を強制的に解散させるような制度の実効性をどう担保していくのかという現実的な点について、十分検討する必要があることなどの問題がございます。

 また、団体に対して解散を命じたり団体への加入を処罰したりするためには、その団体が犯罪の実行を目的としていることなどを要件とする必要があろうかと考えられますが、我が国では、そのような目的を立証するために必要な証拠を収集するための手段が必ずしも現時点では十分とは言えないという問題もあります。

 いずれにいたしましても、我が国における暴力団の実態に応じまして、より効果的な対策を講じていくことが重要と考えておりまして、今回は、現在の状況に照らして特に必要性の高い規制の拡充をお願いすることとしたところでございます。

平沢委員 憲法上問題があるということを今言われましたけれども、憲法学者の間で、例えば、暴力団の規制自体は憲法上は可能だという学者も大勢おられるんじゃないですか。

栗生政府参考人 お答えします。

 憲法学者の中には、非合法化はあり得る話であるという指摘をされている方ももちろんいらっしゃいます。

平沢委員 憲法学者の間で、要するに、暴力団の非合法化は憲法違反だという方はどのくらいいるんですか。

栗生政府参考人 お答えします。

 ちょっと私、網羅的に把握しているわけではございませんが、一律に非合法化は憲法上問題があるということを明確に暴力団の問題について論じていらっしゃる方は余りいらっしゃらなかったのではないかなというふうに認識しております。

平沢委員 ここはぜひ、今後、検討課題ということで言われましたので、検討してもらいたいと思うんです。

 では、外国の場合、先ほど暴力団と類似する組織としてマフィアだとか組織犯罪集団みたいなことを言われましたけれども、外国ではこういったものについて非合法化しているところもあるんじゃないですか。

栗生政府参考人 若干、外国の法体系と日本の法体系を一律に比較することは難しいのでありますが、あえて申し上げますと、外国の組織犯罪対策法制については、大きく分けて三つぐらいの類型があろうかと思っております。

 一つは英国の制度で、組織に対する規制といった概念を使用せずに共謀罪で対処するというものがございます。

 二つ目はドイツやフランスの制度でありまして、犯罪を目的としている組織一般への参加を処罰の対象とするものであります。結社を禁止するといいますか、むしろ、組織一般への参加を処罰するという形になっております。これに類似するものとして、イタリアの制度でありまして、マフィア型結社への参加を処罰の対象とするというものがございます。

 第三は米国の制度で、殺人、誘拐、賭博等の行為の反復を通じて個人または集団の活動に参加するなどの行為を加重処罰するものであります。

 あえて申し上げますと、いずれも刑事罰的な対処で団体に対して参加することなどを規制しているというふうに言えるかと思います。

平沢委員 なぜこれを聞いたかというと、暴対法が平成三年にできましたでしょう。今回、五回目の改正なんです。改正に改正に改正をずっと繰り返してきたわけなんです。そして、各都道府県それから一部の市町村では暴力団の排除条例もつくったでしょう。去年の十月で東京と沖縄が条例をつくったから、全国に暴力団排除の条例もできたわけですよ。

 ですから、条例はできる。この条例というのは、一般の国民に対して暴力団とのつき合い方について厳しい規制をかけるというものでしょう。今までは暴力団対警察だったものを、暴力団対一般社会という形で厳しい規制をかけていくわけでしょう。これが条例でしょう。

 そして、暴力団対策法、平成三年にできて四年施行。それから二十年たった。五回、改正が今回行われるわけですけれども、先ほど質問が出ましたけれども、もともとの目的は、これは暴力団を温存させるというのが目的じゃないでしょう。壊滅するのが目的でしょう。

 ところが、平成三年、四年のときに構成員と準構成を合わせて九万一千人ですか。今は七万数千人。確かに減ったとはいえ、まだ七万数千人もいる。しかも、この改正の間に、この資料を見させていただきますと、暴力団がトータルで、準構成員も合わせると、一時的にふえたり減ったりというようなことを繰り返している。この間の改正というのは、今までの改正というのは効果があったんですか、なかったんですか。

栗生政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、三年に暴力団対策法が成立し、四年から施行されまして、その後、五年、九年、十六年、二十年と四回にわたる改正を重ねております。

 それぞれの改正の効果につきましては、これは、法の運用以外の警察の捜査による取り締まり、それから暴力団排除、こういったものとあわせて全体で評価すべきものだとは思っております。したがって、それぞれの改正の効果について一概に申し上げることはなかなか難しいんですけれども、それぞれの改正によって設けられた規制は着実に地道に運用されてきているのではないか、してきていると言えるのではないかというふうに私ども自己評価はしております。

 その意味では、不当な行為の抑止という意味では一定の効果はあったと思われます。ただし、先生おっしゃるように、結局、壊滅していない、数が減ったとはいえ、依然として相当の規模があるという事実は厳然として認めざるを得ないというふうに思っております。

平沢委員 警察が一生懸命やっているのはわかりますけれども、何度も言いますけれども、暴対法が施行されて二十年たって、要するに、依然として、諸外国の関係者からすれば驚きとしか言いようがない七万数千人の暴力団員あるいは構成員がいる。そして、堂々と活動している。それで、その間に今回が五回目になる法改正が行われたわけなんです。

 そこでお聞きしたいのは、要するに、暴力団の存在を非合法化するのは憲法上どうのこうのといろいろな意見があるのであれば、改正を、今度五回目、またそのうちやるでしょう、六回目が出てくるんでしょう。改正を小出しにしないで、何でもっと思い切ってやらないんですか。小出しにやっているんじゃないか。何か今、福岡の方がいろいろ問題がある、だからまたやる、また何かあればまたやるという形で小出しじゃなくて、もっと抜本的にやったらいいんじゃないか。

 ちなみに、福岡県の知事、それから北九州の市長、福岡の市長の方々が出した要望書を見たら、何と書いてあるかというと、これは、暴力団は反社会的なテロ集団だ、だから抜本的な、今の、現行の法制度による対応では限界があり、従来の暴力団対策の枠組みを超えた新たな発想での対応が必要であると。抜本的な対策をとってほしいと言っているんです。これは抜本的な対策なんですか。

栗生政府参考人 今回の法改正の内容でありますが、かなり大幅な規制の強化をするものだとは私ども自負はしております。

 しかし、先生引用されましたように、現に福岡県の北九州市でありますとか、実際行政に携わっておられる知事、市長の方々から見られると、もっともっと抜本的なということはあるんだろうなというふうに思っておるところではございます。

 繰り返しになりますが、今回、特定危険指定暴力団、警戒区域を定めて、一定の行為を直罰にしたりする、特定抗争指定暴力団についても同種の規制をする、かなり踏み込んだ規制をお願いしているところであります。

 小出しとおっしゃいますが、やはり日本は、政府で法律を検討させていただく際に、一つ一つ地道に、情勢に応じて、立法事実みたいなものを考えて検討していくというような形をとっておりまして、御指摘は踏まえさせていただきまして、今後考えてまいりたいと思っております。

平沢委員 取り組みにもうちょっと力を入れてもいいんじゃないかなと思うのは、先ほど条例のことを言いました。今、全国の四十七の都道府県全部で暴力団の排除条例というのができたわけですよね。それで、市町村でも持っているところがいっぱいあるということなんですよね。

 この条例の内容を見ると、かなり共通点があるんですよ。県の事務事業からの暴力団排除の措置をとるとか、暴力団関連情報の提供、警察による保護措置等の支援実施等々、かなり共通事項があるんですよ。

 だったらば、四十七都道府県、各県で条例をつくるんじゃなくて、今、暴対法があるでしょう。それに、各県が条例で盛り込んだような内容は法律でやってもいいんじゃないですか。何で各県の条例に別途任せるんですか。条例のものはむしろ法律で、共通的なところがいっぱいあるわけだから、法律でやったらいいんじゃないですか。法律がないから条例をつくったわけでしょう、各県は。なぜ法律ではやらないのか、教えてください。

栗生政府参考人 お答えいたします。

 この暴力団排除条例は、やはり九州北部の佐賀県、福岡県といった、対立抗争が起こったり、かなり地元密着型の暴力団が活動している、支配しているという地域において、切実な地域の要請に応じてつくられてきたというのがまず契機であるかと思います。それが、徐々にそれを見習ったりする県も出てきた、また、その地域の固有な、オリジナリティーの規制をつくるというようなところも出てきたという、ちょっと自然発生、徐々に広がってきたというような形で、確かに共通なものはあるんですけれども、やはり条例でありますので、自治の世界の中で、地方自治という中で個々工夫をされたりしていたというのがございます。

 共通のものを法律化したらどうかということでございますが、御指摘のように、昨年十月まで徐々につくられてきましたので、やはりその運用をよく見定めてから、また、それは法律的にはどうするべきなのだろうかということについても考えてまいりたいと思います。

平沢委員 そこはぜひ検討してもらいたいと思うんです。

 今回の法律改正の発端となったのは福岡の問題なんですけれども、二十幾つかある指定暴力団の中で、福岡に五ある、そしてその五の中で、道仁会と九州誠道会が今ドンパチというか対立抗争をやっている。何で福岡はこんなに多いんですか。

栗生政府参考人 お答えいたします。

 福岡県では、明治の中期ごろから筑豊炭田の石炭を使用した製鉄所が操業を開始してまいりまして、北九州地区でありますとか筑豊地区の発展に伴い人口が増加する中で、利権獲得を図って多くのぐれん隊などがあらわれた。また、福岡地区や筑後地区においても、港湾事業、炭鉱事業等が栄え、同様に多くのぐれん隊等があらわれてきた。

 戦後になりまして、各ぐれん隊などが利権拡大を図って離合集散を繰り返して、先ほど申し上げた四つの地区にそれぞれ勢力を有する工藤会、太州会、福博会、道仁会の四つの暴力団組織が結成され、さらには十八年に九州誠道会が道仁会から分離した。また、広域暴力団の山口組も福岡に進出しているというような状況でございます。

平沢委員 暴力団は、不法行為をするに当たっては当然、資金源があるから活動できるわけで、それから、武器があるから結局一般市民も含めてみんな脅威を感じているわけなので、それについてちょっとお聞きしたいと思うんです。

 まず、資金源。それは犯罪行為はわかりますよ。覚醒剤だ何だといろいろやっているんでしょう。こういうのをいろいろ取り締まるというのはわかりますけれども、暴力団が企業経営なんかをやっているわけでしょう。こういうのはなぜ禁止できないんですか。

 暴力団の存在自体は規制できない、非合法化できない、それは今後の検討課題だというのはわかりましたけれども、暴力団の資金源になることが明らかであると思われるにもかかわらず、暴力団がやっている企業、これは何で認められるんですか。

栗生政府参考人 先ほど御質問をいただいたことに対するお答えと似てまいりますが、暴力団員の会社経営や暴力団事務所の開設自体を禁止することについては、やはり暴力団を非合法化することが前提となるのではないかと思料されるわけであります。

 非合法化が前提になるのではないかということになりますと、先ほど御答弁申し上げたような点をやはり考えていかなきゃならないということがあろうかと思っています。

平沢委員 では、大臣です。

 要するに、暴力団は、資金源とか武器とかでどんどん締め上げていかなきゃしようがないでしょう、非合法化できないなら。だったらば、暴力団が堂々と資金源を獲得するために、フロント企業か何か知らないけれども、企業経営している、こんなものを締め上げていったらいいんじゃないですか。暴力団の存在そのものが非合法化については今後の検討課題だと言うなら、それをなぜやらないのか。ちょっと大臣。

松原国務大臣 平沢委員の御指摘の問題でありますが、基本的には、暴力団員の会社経営や暴力団事務所の開設を禁止するということに関しては、今、栗生部長から申し上げましたように、非合法化の議論も含まれてくるわけでありますが、しかし、一方において、こういった会社経営や暴力団事務所の開設が結果的に平和な市民生活を含めさまざまな問題を生じる、彼らが非合法な手段で資金を獲得しようとしているというふうなことに関して、今回の改正暴対法はさまざまな規制を設けているというふうに私は承知をしているわけであります。

 あわせて、この際申し上げたいことは、同時に、私も福岡に行ったときに知事を含め市長からも言われたことは、先ほどから議論がありますように、捜査の手法の拡大もきちっとやりながら、暴力団が経営している会社やまた事務所等の活動の中で、さまざまな犯罪性のあるもの、非合法なものの端緒をつかむことも同時にできるようにしないといけない。

 そういった武器を持つことによって、非合法というのは将来的な議論だという答弁がありましたが、少なくとも現状において、今、平沢議員がおっしゃったようなことをより実現するための実効性は担保していきたいと思います。今回の法改正もその一つでありますし、できれば、そういった意味で、捜査手法の高度化も目指していきたいと思っているところであります。

平沢委員 捜査手法の高度化についてもお聞きしたいと思うんですが、その前に、警察庁、武器について。

 武器は、当然、拳銃とか手りゅう弾を福岡では使っているんだろうと思いますけれども、これはどこの国でつくられたものなんですか。

栗生政府参考人 お答えいたします。

 ちょっと今手元に網羅的なものはございませんけれども、例えば、つい先日、北九州でロケットランチャーが押収されたわけでありますが、ロケットランチャー様のものが見つかったんですが、これはロシア製であろうかと思います。それからあと、拳銃、この中には中国製などがあるというふうな状況であります。

平沢委員 要するに、暴力団は、自分たちが使用する武器を日本国内では入手できないんでしょう。外国から持ってくるわけでしょう。そうしたら、日本は島国なんだから、ロケットランチャーにしろ、手りゅう弾にしろ、拳銃にしろ、なぜ水際でもっとしっかり押さえることができないのか。これを押さえれば暴力団は武器はないんですよ、日本国内ではつくれないんですから。警察庁。

栗生政府参考人 今先生の御質問を伺いながら、そういえば、平沢大先輩が昔、警察におられたころに、すごい情報を得られて、水際で拳銃の大量押収を行われたというのを思い出しているところであります。後輩どもは、今の私どもは、ちょっとそういった情報にぶち当たらないというところもございますけれども、本当に至らないところもありまして、やはり情報収集に本当に力を入れていかなきゃいかぬと思っております。

 外国機関との協力もしっかりやっていきたいと思います。

平沢委員 今警察庁が言われたのは、フィリピンから三百丁余りの拳銃が着いたものを押収したことがあったんですけれども、コンテナに積まれて入ってきたことがあったんですけれども、そういった形で入ってきた拳銃だとか薬物だ、それ以外の武器だというのがみんな暴力団に流れているわけなんで、そこは、警察庁、税関当局も含めて、外国とも協力してしっかりやってもらいたいなと思います。

 最後に、先ほど来、捜査の高度化という話が出ていました。通信傍受一つとっても、世界で、暴力団相手に通信傍受ができない国、組織犯罪集団に対して通信傍受ができない国なんというのはないですよ。これは日本だけです。

 確かに、今いろいろ質問したけれども、警察はちょっと気の毒なんだ。要するに、諸外国に比べると極めて、法律はこうやってできるけれども、それを実際に使うときに当たってのいわばいろいろな手段、方法が限られているんですよ。

 ですから、先ほどちょっと大臣も言われましたけれども、それから前の方も言われましたけれども、通信傍受もそうだし、おとり捜査もそうだし、司法取引もそうだし、DNAのデータベース化もそうだし、もっともっと捜査手法の高度化というのは考えていった方がいいんじゃないですか。

 これは、法律を整備することも大事だけれども、法律以上に、結局、法律ができたって、そういう武器を与えられていないから現場では何も効果的に取り締まりができない。

 だから、先ほど警察庁からありましたように、二十年前に暴対法ができて、二十年たってもまだ当初予定していたほどの効果は上がっていないんです、間違いなく。それはなぜかというと、いろいろあるでしょうけれども、一つには何といっても武器が限られているというのが原因なんで、もう一度、通信傍受も含めて、大臣の決意を教えてください。

松原国務大臣 今、平沢委員の方から、具体的な捜査手法の高度化の中身についても既に言及がありました。繰り返すことはいたしませんが、そういったものを少なくとも他の諸外国と比べて同レベルのものにしない限り、こういった国際時代においてはなかなか、国際的な犯罪もふえてまいります、対応できないんだろうと思っておりまして、そのために、私たちはさまざま、また多くの皆様の御了解をいただくべく努力をしてまいりたいと思っております。

平沢委員 時間が来たので終わります。ありがとうございました。

荒井委員長 次に、古賀敬章君。

古賀(敬)委員 国民の生活が第一の古賀敬章でございます。

 内閣委員会で初質問でございますので、どうかよろしくお願いを申し上げます。

 まず最初に、北部九州の集中豪雨、亡くなられた皆様方に心からお悔やみと哀悼の意を表したい、そしてまた、被災者の方に心からのお見舞いを申し上げたいというふうに思っております。

 先日十八日、災害対策特別委員会の委員派遣で私も現地へ行ってまいりました。特に大分県は、同じ地域で、七月三日そして十四日と同規模の大変な集中豪雨がありまして、三日の復旧をしておるときにまた同じ地域住民の方が被害に遭われたということで、もう本当に心が折れておられました。

 政府においては、ぜひとも激甚災害指定を一日も早く決定いただきますことをまず強く要望して、質問に入りたいと思っております。

 まず、私は、先ほど来お話がたくさん出ております、地元が福岡県でございます。指定暴力団が県内に五つ、それに山口組も入り込んでおるというところでございまして、この暴力団同士による対立抗争、本当に目に余るものがございまして、極めて憂慮すべき状況にある、これは皆さん認めていただけるところだと思います。

 こうした暴力団同士の抗争事件や暴力団によると見られます凶悪犯罪の取り締まりの強化等によってそういった活動を抑止することが、住民の切実なる願いである。

 そこで、まず、九州におきまして、九州誠道会と道仁会の対立抗争や、事業者に対して行われています危険な暴力行為の現状をどう御認識されておりますか。大臣にお伺いしたいと思います。

松原国務大臣 まず、九州における対立抗争について申し上げますと、平成十八年に、福岡県久留米市に本拠を置く道仁会において、三代目組長の継承をめぐる争いから、福岡県大牟田市に本拠を置く九州誠道会が分裂をしました。その後、十九年八月に福岡県内において道仁会会長が射殺されるなど、両組織の対立が激化、また、同年十一月には、佐賀県内の病院において、入院中の男性が九州誠道会の関係者と誤って射殺される事案が発生しました。その後、一時的に抗争は顕在化しなくなっておりましたが、二十三年に入って再燃し、本年六月末までに四十二件の抗争事件が発生し、死者数は一般市民一名を含む十二名、負傷者も十三名に上がっております。

 警察においては、捜査の徹底を図ることはもとより、市民への危害を防止するため、両団体の本部事務所等に対する使用制限命令を発出するとともに、警戒活動を強化しております。

 次に、暴力団によると見られる事業者襲撃などの事案について申し上げますと、九州では、平成二十三年から本年六月末まで、二十七件発生しております。なお、全国でこの種事案の発生件数は三十三件であり、その八二%が九州で発生しております。これらの犯行には銃器や手りゅう弾などが用いられており、事業者はもとより地域社会に対する大きな脅威となっている、このように認識をいたしております。

古賀(敬)委員 こうした厳しい暴力団情勢を踏まえた今回の改正案の内容について、お伺いしたいと思います。

 今回の改正で、特定抗争指定暴力団並びに警戒区域というものを指定するということでございますけれども、では、どの団体を特定抗争指定暴力団として指定するのか、部長の方にお伺いをさせていただきます。

栗生政府参考人 お答えします。

 まず、本法案が成立した場合ということの前提になるわけでありますけれども、そのような場合には、施行後の時点における各地における暴力団情勢に応じ、改めて各都道府県公安委員会が判断する事項であります。

 あえて申し上げると、法案の策定に当たりまして想定した団体は、九州で対立抗争を継続している、御指摘の道仁会と九州誠道会でございます。

古賀(敬)委員 では、警戒区域はどのような区域を定めようとされておられますか。それをお伺いしたいと思います。

栗生政府参考人 警戒区域は、対立抗争の当事者となっている指定暴力団や、その下部組織の縄張り、事務所、構成員の居宅の所在地等をもとに、危険な抗争行為が発生するおそれのある地域を具体的に設定するものであります。

 区域の指定に当たりましては、ちょっと抽象的で恐縮ではございますが、例えばA市でありますとか、またB市及びC市D町のように、行政区画表示を用いるなどして適切に特定してまいりたいと思っております。

古賀(敬)委員 それは、当然、県境を越えても行われるということでよろしゅうございますか。

栗生政府参考人 そのとおりでございます。

古賀(敬)委員 今回の暴力団対策法、いわゆる対策法と暴力団排除条例の関係はどのように考えたらよろしいか、お知らせください。

栗生政府参考人 暴力団対策法は、暴力団員によるみかじめ料要求や対立抗争時における事務所使用など、暴力団員の不当な行為を規制することを内容とするものであります。

 次に、暴力団排除条例についてでありますが、各地方公共団体によってその内容は異なりますが、多くの都道府県では、事業者による暴力団への利益供与行為を禁止するなど、暴力団との関係の遮断を図る事業者の自主的な取り組みを後押しすることによって暴力団排除を推進しようとするものでありまして、暴力団対策法とは趣旨、目的を異にするというふうに承知しております。

古賀(敬)委員 御説明いただきましたように、暴力団排除条例は事業者等と暴力団との関係の遮断を促すものであるということでありますが、暴力団排除条例では、暴力団と取引をするだけで処罰される、いわば善意の第三者が暴力団と知らずに取引をしたようなときはどのようなことになるんでしょうか。

栗生政府参考人 事情を知らずに、ただ暴力団と取引しただけで処罰されるようなことはないと承知しております。

古賀(敬)委員 わかりました。ありがとうございます。

 今回、都道府県暴力追放運動推進センターというものが財団法人として各都道府県に設立をされておるわけでありますけれども、このセンターが住民にかわって暴力団事務所の使用差しとめ請求等の訴訟を起こすことができるという法の仕組みになっております。

 財団でございますから、県が恐らく基金等を拠出して設立されておりますけれども、この運営に当たっては寄附金や賛助金を活動資金としているとのことでございますが、訴訟を起こすということになりますと、大変金額も張るようになるわけでございまして、国として、警察庁として、この都道府県センターへの財政支援についてどのようにお考えか、お聞かせください。

松原国務大臣 都道府県センターへの暴力相談件数は、平成十九年中に一万八千五十一件であったものが、二十三年中は二万一千四百九十九件となっており、四年間で三千四百四十八件、一九%のプラスとなっております。このように都道府県センターの業務は急増している中で、財政状況は、委員御指摘のように厳しい状況にあるものと認識しております。

 都道府県センターは公益財団法人でありますから、地方自治体からの補助金や、企業を含めた地域社会から寄附金等の収入をもって事業に充てており、これらの財政基盤を充実させるために、地方自治体や企業を含む地域社会に都道府県センターの事業に対する御理解をいただくことが重要であると認識しております。

 都道府県センターを支援している都道府県警察はもちろん、警察庁においても、都道府県センターの事業の状況や、本改正により導入される事務所使用差しとめ請求制度の運用状況について積極的に広報を行うなどして、都道府県センターへの支援を充実させるための環境整備に努めるよう、私も督励してまいりたいと思います。

古賀(敬)委員 ありがとうございました。

 いずれにしましても、一日も早い本法律の施行が行われますことを要望して、質問を終わります。

 ありがとうございました。

荒井委員長 次に、遠山清彦君。

遠山委員 公明党の遠山清彦でございます。

 私も地元が九州でございまして、比例ブロックではございますが、福岡に事務所を置いておりまして、あと沖縄と、カバーしてやらせていただいております。

 私の前の古賀委員と同様、私は、先週から一週間かけて、大分の竹田、熊本、それから福岡の柳川、みやま、朝倉、また大分の日田と被災地を回ってまいりました。床上浸水と報道されておりますが、今回、特に熊本などは、阿蘇の火山灰が泥になって流れてきまして、私が訪問した家の一軒は、泥が一・五メートルの高さで、家の中が全部埋まっているということですので、床上浸水という表現が適切ではないような被害状況でございましたので、ぜひ、内閣の一員として、また松原大臣の御尽力もいただいて、早期の激甚災害の指定、必要な支援をしていただきたいということを御要望申し上げたいと思います。

 その上で、今回の暴対法の改正についてでございますけれども、きょうの委員会の質疑でもありましたように、市民に対する危害の防止、それから直罰を含む罰則の引き上げ、また不当な取引要求の規制範囲の拡大等々盛り込まれておりまして、現実に、大臣よく御承知のとおり、私の地元九州、特に福岡あるいは佐賀でございますが、一般国民が指定暴力団同士の抗争に巻き込まれて命を落としている事件が起こっているということなどに鑑みまして、我が党として賛成の立場でございます。

 その上で、何点か確認をさせていただきたいと思います。

 まず、大臣御本人にお伺いをします。今回の改正で、特定抗争指定暴力団の指定と、それから警戒区域を設定するという規定を整備されるということでございますが、その背景と目的につきまして大臣から御答弁をいただければと思います。

    〔委員長退席、後藤(祐)委員長代理着席〕

松原国務大臣 今、遠山委員からの御指摘がありました。

 まさに、最近の九州北部における対立抗争は、事務所にとどまらず、組員の自宅周辺、路上、住宅街といったさまざまな場所で暴力行為が敢行されており、平成十九年には病院で入院患者が誤って射殺される事件も発生しているなど、市民生活に対する重大な脅威となっております。

 私も、福岡に参りまして、本当にそういったぴりぴりした空気が地域にもあったし、また、子を持つ親の方とも懇親をする機会を得ましたが、子供さんがその後いろいろと精神的にも参っているという話も聞かせてもらったわけであります。

 特定抗争指定暴力団の指定は、このような最近の対立抗争の実態を踏まえ、抗争状態にある指定暴力団の組員に対する規制を強化し、対立抗争による一般市民への危害を未然に防止することにより、その平穏な生活を守ろうとするものであります。

 本規定は、対立抗争に伴う暴力行為の抑止に大いに役立つものと考えており、本改正案を武器に、一層強力な暴力団対策を進め、国民の皆様が安心して生活できるよう努力をしてまいりたい、このように思っております。

遠山委員 大臣、きょうはこの質問は通知をしておりませんし、いたしませんけれども、今お子さんの話をされましたので、私もちょっと危惧しているのは、今景気が悪くて不況という状況が長く続く中で、福岡の一部地域の学校等では、一般の企業に就職をしなくても暴力団に行けば稼げるよとか、生活ができるよというような話が生徒の間で公然と語られているというようなことを実は聞いたことがございます。

 これは教育現場での話でございますので、国家公安委員長として権限のない世界の話かもしれませんが、しかし、暴力団の構成員、準構成員、特に準構成員がふえているという現実に鑑みて、こういったところにも目配りをしながら対処していかないと、なかなか解決が見出せない根深い問題なのかなと思っております。これは指摘だけにとどめさせていただきたいと思います。

 今回の改正案第十五条その他におきまして、警戒区域における禁止行為が定められております。すなわち、暴力団事務所を新たに設置することや、あるいは、対立する指定暴力団員につきまとい、また、その居宅もしくは対立指定暴力団員が管理する事務所の付近をうろつくことなどが禁止をされているわけでございます。

 そして、これらの禁止行為に違反した場合は、強化された罰則の対象となります。具体的には、三年以下の懲役もしくは五百万円以下の罰金ということでございます。これは直罰規定でございまして、従来よりも実効性を担保しようという政府の強い姿勢がうかがえると評価をいたしているところでございます。

 ただ、この改正案が施行された後に起こり得る問題点、懸念が幾つか指摘されております。

 まず、先ほども出ましたけれども、警戒区域の広さをどう設定するのかという点について。

 これは当然、前線の警察部隊の対応能力ともかかわってまいると思います。余り広範囲に設定をしても実効性がなくなると思いますし、後でもちょっと聞きますけれども、狭いエリアに絞り込んでしまえばその外は規制対象外ということにもなるわけでございまして、非常に運用面で難しさがあると思いますけれども、警察庁として、この警戒区域の広さの設定についてはどういう基本的考え方なのか、お伺いをしたいと思います。

栗生政府参考人 お答えいたします。

 まず、基本的な考え方でありますけれども、警戒区域は、対立抗争の原因や背景、既に発生した抗争やこれに付随する各種の紛議、トラブル等の発生場所、抗争の当事者となっていると見られる指定暴力団やその下部組織の縄張り、事務所、構成員の居宅所在地といったような要素を勘案して判断させていただきたいと考えております。

 例えばということであえて具体的に申し上げますと、現在、九州で継続している道仁会と九州誠道会の対立抗争事件におきましては、平成十八年の道仁会の後継者争いから九州誠道会が分裂したことが原因であって、両組織全体が対立抗争の当事者となっておるという事実、それから、加えまして、福岡県、佐賀県など県内の複数の市町村において対立抗争に伴う暴力行為が現に行われているというようなこと、こういった実態から、対立抗争に伴う暴力行為を抑止し、市民生活の平穏を図るために、やはり、一市町村の範囲を越える、また県も越えるというような、ある程度広い範囲を警戒区域として設定することが想定されるわけであります。

 御指摘のように、実務的には、やはり実効性が上がらなければいけませんので、実効性が上がる範囲でなるべく広くというのが市民生活の平穏を守る一番の大事なところでないかと考えております。

遠山委員 わかりました。

 次に、つきまといやうろつきという禁止行為の解釈の幅の問題でございます。

 実際に警戒区域の現場で実効性を上げられるかどうかということでございますが、つきまといにつきましてはDVやストーカー規制の関連法で既に規制対象行為になっておりますけれども、暴対法の場合と違うのは、つきまとわれている暴力団員を警察が保護するわけではないというところが、ストーカーやDVの場合はつきまとわれている方を保護しますので、そこが違うということでございます。

 それから、うろつきも、家の周りをうろつくという行為は軽犯罪法で処罰の対象になり得るわけですが、実際には、大臣も御承知のとおり、うろつきと普通の散歩と何が違うのかというところは非常に難しいところでございまして、実際に軽犯罪法でこういう容疑で捕まる方というのはほとんどないだろうなというふうに思っております。

 そういう意味で、暴対法の中におけるつきまといとかうろつきというのはどういう内容を指すのか、その点についてもう少し踏み込んだ御説明をいただければと思います。事務方で結構です。

栗生政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、改正案における対立相手の特定抗争指定暴力団の構成員につきまとうこととは、対立相手の指定暴力団の構成員にしつこく追随することをいいまして、尾行することなどがこれに当たると考えられます。

 また、改正案における居宅等の付近をうろつくこととは、対立相手の指定暴力団と顔を合わせることとなるような居宅等の周辺区域にとどまることをいうと考えております。

 先ほどDVの関係を引用されましたけれども、これらの行為は、対立抗争における暴力行為を誘発する危険な行為という観点からつくられた規制でございまして、改正法の的確な運用を通じて、対立抗争に伴う市民に被害を及ぼすような暴力行為が抑止されるように努めてまいりたいと考えております。

遠山委員 次に、先ほど来申し上げておりますとおり、今、暴力団員、暴力団の構成員及び準構成員の数が約七万三百人ということでございますが、近年、顕著な傾向は、この暴力団の構成員、準構成員全体の中での構成割合が、準構成員が三万七千六百人、構成員が三万二千七百人ということで、準構成員の方が数が多いというのが最近の傾向だと指摘をされております。

 準構成員の定義については、昨年の十二月に改定をされた組織犯罪対策要綱で若干変更されて、現在では、暴力団または暴力団員の一定の統制下にある等の条件が示されているわけでございます。

 ただ、私、率直に、この暴対法は暴力団の構成員だけが対象でございますが、今、準構成員の方が人数が多いという事態を目の前にして、そうすると、今回、暴対法で改正しても、準構成員は対象にならないということでございますから、これは本当に問題の解決になっていくのか。また、警察の方も非常に難しい面があるかと思いますが、こういった準構成員の方が構成員よりも多いという現実を踏まえて、警察庁としてどのように対応されていくのか、御答弁いただきたいと思います。

栗生政府参考人 構成員と準構成員との数の関係、先生御指摘のとおりでありまして、私どもも問題意識を十分に持たせていただいております。

 まず、暴力団の周囲にある者の活動実態や暴力団の関係性が非常に多様化しているという事実があろうかと思います。御指摘のとおり、暴力団対策のために、暴力団対策法の適用もそうでございますが、暴力団対策のための各種施策を効果的に進めていくためには、暴力団の準構成員を含む周辺者の実態を的確に把握することが重要でありまして、あらゆる警察活動を通じて、情報の収集、実態把握に努めなければならないと考えております。

 また、構成員、準構成員を問わず、特に準構成員などについてでありますが、こういった周辺にある者を介した、またはその人たちによる暴力団の違法な資金獲得活動について徹底的な取り締まりをしていかなければならないと考えております。

遠山委員 この問題は、栗生さんよく御存じのとおり、非常に難しい面がございますが、国家公安委員長としても、準構成員がふえているというところに着目して、対応すべきところは対応していただきたいと要望申し上げたいと思います。

 時間がなくなってまいりましたので、簡潔に、大臣にあと二問伺いたいと思います。

 まず、一問目は、平成十八年からことしまでに、先ほど来出ております道仁会と九州誠道会の間で暴力行為を含む事件が四十二件起こっている。死者が十二名ということでございますが、そのうちの一名は、先ほど来指摘がありますとおり、平成十九年十一月に一般市民が暴力団関係者と誤認をされて射殺された方でございます。まことに痛ましい事件として九州では記憶に刻まれているわけでございますし、二度とこのような事件があってはならないということで今回の改正がなされていると思います。

 ただ、大臣、十分御承知のとおり、今回の改正でも、このような事件が警戒区域外で起こった場合には規制の対象外になってしまうという問題が一つございます。

 それから、言いづらいんですが、検挙率ということで申し上げますと、四十二件の事件のうち検挙された件数がまだ十二件にとどまっている、三十件は被疑者、容疑者が捕まっていないということからいたしますと、そういった面も市民に不安を与えているところでございます。

 国家公安委員長としての、この二つの問題も踏まえた御決意を伺いたいと思います。

    〔後藤(祐)委員長代理退席、委員長着席〕

松原国務大臣 ただいま委員御指摘の、とりわけ、四十二件のうち検挙はわずか十二件にとどまっている、これは、犯人検挙に向けての国民の強い期待を考えると、この結果は担当大臣として大変に重く受けとめなければいけないというふうに思っております。

 事件の発生が集中している福岡県警察においては、全国警察の支援、これは全国から今行っておりますから、捜査の徹底を図ることはもとより、市民への危害を防止するため、両団体の本部事務所等に対する使用制限命令を発出するとともに、機動隊等を集中的に投入するなどして警戒活動を強化しております。

 私自身、四月に福岡を訪問し、対立抗争事件が発生した福岡市において地域住民の方々と直接お話をしてまいりました。暴力団の脅威、住民の方々が事件に巻き込まれることなどの不安等をまさに実感したところであり、徹底した事件捜査を推進することはもちろん、事件の続発を抑止するように万全を期して頑張っていきたい、このように思っております。

 本法案を成立させていただいた際には、対立抗争の実際の発生場所等を踏まえて的確に警戒区域を定めるなどして、特定抗争指定暴力団制度を効果的に運用するとともに、検挙対策の徹底を図るなどして対立抗争を一日も早く終結させるよう、警察を督励してまいりたいと思います。

 以上です。

遠山委員 大臣、ぜひ頑張ってください。

 最後の質問で、大臣から再びお答えいただきたいと思います。

 先ほど平沢委員の方からも何度かございました。暴力団そのものにかかわる法規制のあり方をめぐっては、実にさまざまな御意見が国民の間にあると思っております。

 例えば、先ほど平沢委員も御主張になられましたように、暴力団そのものを非合法化すべしとの主張がございます。この主張の立場は、反社会的な結社をつくることは憲法上の保護を受けないという立場に立って、暴力団の結成そのものを禁止することは可能であるというものでございます。そういう意見が片方である。

 もう一方で、今回の改正も含めて、暴力団への規制強化に反対をする有識者やジャーナリストの声明もございます。ことし一月に発出をされました著名なジャーナリストや作家を含む方々の共同声明の中では、暴対法が今回のような、この方々の言葉で言うと、改悪をされるならば、表現の自由、報道の自由、通信の自由、結社の自由などの国民の基本的権利がさらに危機に立つことになるだろうという主張をしておりますし、暴対法は暴力団の規制から国民全てを規制する法律として運用されることになるだろうということで、戦前の治安維持法を想起したような主張もされているわけでございます。

 私ども公明党は今回、法改正に賛成をする立場でございますから、当然、今回の法改正がこのような形の国家統制を強めるような趣旨ではない、こういう理解に立っているわけでございますが、いずれにしても、いろいろな御意見が世論にあるということを踏まえまして、今回の改正の真意について大臣に改めて御答弁をいただいて、私の質疑を終わりたいと思います。

松原国務大臣 今回の暴対法改正案について、表現の自由を規制するものであり、また国民全てを規制することになるものであるといった意見があることは承知をいたしております。今回の改正案は、しかしながら、あくまでも暴力団員による不当な行為を防止するための規制を強化するものであり、表現の自由を規制するものでもなければ、一般市民を規制するものでもありません。

 他方、暴力団を非合法化するべきであるという意見があることも承知しておりますが、団体の存在を直接規制することについては、憲法との関連で慎重な検討が必要であること、現在の暴力団のような大規模な団体を強制的に解散させるような制度の実効性をどう担保するかも十分検討する必要があることなど、将来的な課題であると認識しております。

 また、団体に対して解散を命じたり団体への加入を処罰したりするためには、その団体が犯罪の実行を目的としていることなどを要件とする必要があると考えられますが、我が国では、そのような目的を立証するために必要な証拠の収集のための手段が必ずしも十分とは言えないという問題もあります。

 いずれにせよ、我が国における暴力団の実態に応じ、より効果的な対策を講じていくことが重要であり、今回は、現在の状況に照らして特に必要性の高い規制の拡充をお願いすることとしたものであります。

 以上であります。

遠山委員 終わります。

荒井委員長 次に、浅尾慶一郎君。

浅尾委員 みんなの党の浅尾慶一郎です。

 基本的にはこの法案については賛成でありますので、簡潔に、幾つか確認だけさせていただきたいことを伺ってまいりたいと思います。

 特に、きょうの今の質疑の中でもありました、暴力団のありようが変わってきているということを含めて、そもそも論で申し上げますと、先ほどお話がございましたが、構成員が三万二千人ぐらいですか、準構成員が三万数千人ということで、七万人という人数になるんだろうと思いますが、むしろ、この法律の中でも少し触れておられるのかもしれませんが、その外側で、知っていて暴力団を利用するという人、その人たちに対する対策というのが必要なのではないか。あるいは怖いから利用せざるを得ないというところもあるのかもしれませんが、そういったところをなくしていかない限り、暴力団というものはなくならないのではないかなという観点から伺ってまいりたいというふうに思います。

 この法の改正案十四条を読み上げますと、「公安委員会は、事業者」、これは多分全ての人が入るんでしょう、「(事業を行う者で、使用人その他の従業者(以下この項において「使用人等」という。)を使用するものをいう。)」ということですから、必ずしも法人に限らず、事業を行っている者は全て入るということだと思いますが、「に対し、不当要求(暴力団員によりその事業に関し行われる暴力的要求行為その他の不当な要求をいう。以下同じ。)による被害を防止するために必要な、責任者(当該事業に係る業務の実施を統括管理する者であって、不当要求による事業者及び使用人等の被害を防止するために必要な業務を行う者をいう。)の選任、不当要求に応対する使用人等の対応方法についての指導その他の措置が有効に行われるようにするため、資料の提供、助言その他必要な援助を行うものとする。」というふうに書いてあります。

 この法第十四条の具体的な中身について、まずお答えいただきたいと思います。

松原国務大臣 暴対法第十四条一項の規定に基づき、公安委員会が行う援助の具体的な中身ということの御質問であります。

 これは、実は暴対法施行規則十五条に詳しく規定されておりますが、不当要求による被害防止のために果たすべき事業者の役割についての教示、責任者として選任すべき者の選任方法や選任につき配慮すべき事項についての資料の提供や助言、責任者講習の実施についての教示、暴力団や暴力団員の活動や不当要求の実態についての教示、不当要求への対応の心構え、対応方法等についての資料の提供や助言、不当要求を受けた場合の警察等への連絡の方法、事業者や責任者が業種、地域ごとに連携して組織的活動を行うことについての指導助言等の種々の援助措置が各都道府県警察において実施されるということであります。

浅尾委員 この事業者というのは、今、定義の中で「事業を行う者」というふうになっておりますけれども、この事業者というのは、法人、いわゆる公益法人も含めて、あるいは独法等も含めて入るのかどうか、その点を確認させていただきたいと思います。

栗生政府参考人 お答えいたします。

 法人格を有している場合、それから自然人である場合も含めて、事業を行う方々全てが入っているということでございます。

浅尾委員 ということは、行政の外郭団体であるようなものも入るという理解でよろしいですか。

栗生政府参考人 そのとおりでございます。

浅尾委員 では、次の質問に移りますが、同じく改正案の第三十二条の二に、「事業者は、不当要求による被害を防止するために必要な第十四条第一項に規定する措置を講ずるよう努めるほか、その事業活動を通じて暴力団員に不当な利益を得させることがないよう努めなければならない。」ということであります。

 特に後段、第十四条第一項に規定する措置以外に、不当な利益を得させることがないように努めなければならないということで想定されております具体的な中身について、お答えいただきたいと思います。

松原国務大臣 暴力団員の不当要求による被害の実態を見ると、事業者の中には、暴力団の要求に応じることが本意ではなく、適切な対応方法がわからなかったり、それが従業員に十分に周知されていなかったりするなどにより、結果的に暴力団の介入を許す結果を招いている例があります。

 本規定は、事業活動を通じて暴力団員に不当な利益を得させることがないよう努めなければならない旨を明記することにより、暴力団の不当要求に対する事業者の取り組みを促すとともに、不当要求を拒絶する法的根拠を設けることでその対応を後押しし、暴力団の不当要求の抑止につなげようとするものであります。

 また、本規定の「不当な利益を得させる」とは、正当な理由のない利益を得させること、すなわち、相手方が暴力団員であることを理由として、通常の一般人を相手方とする場合に行わないような金品等の贈与を行うことをいい、具体的には、暴力団員による不当要求に安易に応じてみかじめ料を支払ったり、通常を上回る価格で物品等を購入したりすること、何らかの見返りを期待するなどして暴力団員に対して進んでみかじめ料を支払ったり、通常を上回る価格で物品等を購入したりすることがこれに当たると考えます。

 このように、本規定はあくまでも事業者の方々に自主的に取り組んでいただく努力義務を定めたものであり、何が暴力団員に不当な利益を得させる行為なのかについては、各事業者において社会通念に従って適切に判断されるものと考えております。

浅尾委員 各事業者において社会通念に従ってということでありますが、中には、今までずっとこの値段でこういうものを買っていた、ただ、ほかから買ったことがないから適当な値段がわからないというような場合もあり得るのかなというふうに思います。そういったことについての対応というのは、一つは、基本的に暴力団と取引をすることをやめましょうという啓蒙なのかなというふうに思いますし、もう一つは、一般の価格を知らしめるということだと思います。

 そういったことについて、もちろん事業者側が努力するのは、あるいは自己責任において判断するというのはよくわかりますが、警察において今申し上げたようなことは何か検討されておられるのかどうか、お伺いしたいと思います。

栗生政府参考人 お答えいたします。

 いい答えになるかどうか、迷うところでありますけれども、やはり暴力団対策法のこの規定は、あくまでも事業者の方々に自主的に取り組んでいただくということが主眼でございまして、私ども警察が具体的にこうあるべきだというふうに適用するという性格のものでもないのではないかなというふうには思っております。

 一方で、暴力団排除のための各事業者の団体でございますとか、暴力団排除のための協議会みたいなものがございますけれども、そういった方々と私ども都道府県警察で連絡をとったり意見交換をしたりする場がございますので、こういう場を利用して、事業者の方々の取り組みというものについて御相談を受けさせていただくというようなことを努力したいと思っております。

浅尾委員 なかなか難しいところもあるのかなというふうに思いますけれども、せっかく事業者に努力規定を入れられたということでありますので、その努力の中身は自分で考えてくださいということだと、それに対応できるだけの体力がある大企業は当然もう既に対応しているでしょうし、こういった規定がある中で、もし不当な利得を得ていたら、それこそ株主代表訴訟等々にさらされるでしょうけれども、そういった対応をできるだけの体力がないところがむしろ、何か暴力団の餌食になっているということの方が多いのではないかなというふうに思いますので、せっかく規定を入れられたのであれば、何らかこの努力規定をサポートするような方向での行政指導をしていただき、あるいは指針を示していただきたいと思いますが、大臣、その点についてどのように考えられるか、伺えればと思います。

松原国務大臣 委員御指摘の部分は極めて重要なところだろうと思っております。やはりそういった根拠が明快であるということも一方において必要なことかなとは思いますが、このような事業者が自発的に行う暴力団排除活動の促進を図るため、少なくとも、必要に応じて情報の提供等の支援を行うという中に、今御指摘の指針という名称までいけるかどうかは別にして、そういったものも内容的には含むことになろうか、このように認識をいたしております。

浅尾委員 確認すべきことが終わりましたので、時間前ですが終わります。

荒井委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 暴力団対策法の改正案について質問をいたします。

 今回の暴力団対策法の改正の大きな柱の一つは、暴力団の対立抗争によって市民に危害が及ぶことの防止と、暴力団からの不当要求を拒否した市民に対する危害の防止であります。暴力団の対立抗争では、市民を不安に陥れるだけでなく、市民が暴力団関係者と誤認されて射殺されるような重大な事件も発生をしております。

 そこでお尋ねしますけれども、九州の二つの暴力団の抗争事件の経緯と現状について御説明いただけますか。

栗生政府参考人 お答えいたします。

 対立抗争の契機でありますが、平成十八年に、福岡県久留米市に本拠を置く道仁会におきまして、三代目の組長の継承をめぐる争いから、福岡県大牟田市に本拠を置く九州誠道会が分裂いたしました。その後、翌年、十九年の八月には福岡県内において道仁会会長が射殺されるなど、両組織の対立が激化いたしました。また、同年十一月には、佐賀県内の病院において、先ほど大臣が申し上げた、入院中の男性が誤って射殺されるという事案も発生いたしました。

 その後、一時的に抗争が鎮静化いたしましたが、二十三年に入りまして抗争が再燃いたしまして、本年六月末までに四十二件の抗争事件が発生し、死者数は一般市民一名を含む十二名、負傷者も十三名に上っております。

塩川委員 この間、二十三年に入って以降、四十二件の抗争事件が発生をしているということでありますが、これら抗争事件の検挙状況はどうなっているのかについてお答えください。

栗生政府参考人 お答えいたします。

 十八年五月以降、本年六月末までに四十二件の抗争事件が発生しておりますが、検挙はこのうちの十二件でございます。

塩川委員 重大事件であるにもかかわらず、検挙は約三割にとどまっているものであります。

 次に、不当要求に伴う市民に対する危害についてお尋ねをいたします。

 やはり福岡県などで、建設会社の役員が狙われる事件が続いております。拳銃や手りゅう弾などが使われ、命が奪われている重大な事態であります。

 そこでお尋ねしますが、このような事業者に対する危険な暴力行為の現状がどうなっているのか、そういう中で九州における発生件数などがどうなっているのか、この点についてお答えをいただけますか。

栗生政府参考人 暴力団等によると見られる事業者襲撃などの事件は、平成十九年から本年六月末までの間に全国で百五件発生しております。警察庁が把握しているものでございますが、この百五件のうち七十件、約三分の二が九州で発生しておる次第であります。

塩川委員 こういう暴力行為の現状について、十九年以降で百五件、そのうち三分の二の七十件が九州ということですけれども、これら事業者に対する襲撃事件の検挙状況はどのようになっておりますか。

栗生政府参考人 お答えいたします。

 平成十九年から本年六月末までの間に発生した事業者襲撃事件の百五件のうち、検挙に至ったものは二十八件でございます。

 申しわけございませんが、九州における内数というのはちょっと今手元にございません。

塩川委員 直近の、二十三年以降における検挙の件数というのはどのぐらいになりますか。

栗生政府参考人 失礼いたしました。

 二十三年以降でありますが、九州におきまして二十七件発生しておりまして、検挙は二件でございます。

塩川委員 事前に聞いた数字とちょっと違うんですけれども、それでよろしいですか。ことしに入ってからの数字も含めてですけれども。今のは九州の数字ですか、全国の数字ですか。

栗生政府参考人 ちょっと説明が上手にできなかったかもしれません。

 九州の数字でございますが、二十三年に二十五件、うち二件検挙。平成二十四年の六月までに九州で二件発生、ゼロ件検挙。合計で二十七件。九州で、二十三年以降、二十四年の六月までで二十七件発生して、二件の検挙でございます。

塩川委員 わかりました。二十三年以降、直近で見ますと、二十七件、九州で発生をし、うち検挙が二件ということであります。

 まさに市民を襲うようなこういう暴力団関係者による事件が起こっている中で、検挙がほとんど行われていないという状況について、市民の中での不安の声というのも少なくないというふうに思います。

 そこで、大臣にお尋ねします。

 まず、検挙が少ないというその辺の評価を聞く前の話として一点お尋ねしたいんですが、こういった市民に対する暴力団の報復行為など重大な事態に対して、今回の暴対法の改正というのが市民を守るという点でどういう効力を発揮することになるのか、その点について、どのような効果を想定しているのかについてお尋ねをいたします。

松原国務大臣 今回の法改正は、対立抗争や事業者に対する襲撃事件が発生するなど緊迫した状況のもとで、今委員御指摘の、市民への危害が生ずるおそれがある暴力団員の行為を直罰の対象にするということによって規制の強化を図るものであり、暴力団の危険な活動の抑止に相当の効果を期待しております。

 もとより、暴力団の危険な活動を抑止するためには対立抗争や襲撃事件の捜査を徹底することが重要であり、そのための捜査手法の検討が行われているところでありますが、今後、こうした事件の捜査、保護対策といった各種施策と相まって取り組んでいきたいと思っております。

 今、検挙のことをおっしゃいましたが、これに関しては、やはりまだ検挙件数、国民の期待を考えると、これは本当に不十分であるという認識を持っておりまして、このことに関して、担当大臣としては重く受けとめているところであります。

塩川委員 不当要求を直罰することで不当要求自体を抑える、そういう抑止効果として、市民への危害を防止するということでありました。

 市民の生命が脅かされており、抗争の抑止や市民への危害未然防止を目的とする今回の法改正には賛成であります。こういう抑止効果を最大限働かせるべきであります。

 その一方で、市民の生命を脅かしている抗争事件や市民への傷害、殺人、暴力団員によるそれら犯罪行為に対する検挙が進んでおりません。今、大臣からお話がありましたように、検挙件数の現状については不十分であるという認識のお話もありました。これらは、暴力団対策法以前に、犯罪そのものでありますから、今回の暴対法での新しい規制の抑止効果や未然防止効果の運用だけではなくて、犯人の検挙自体にも全力を尽くしていただきたい。この点についての、大臣としての決意を伺わせていただきたい。

松原国務大臣 もう申し上げましたように、対立抗争や事業者襲撃などの事案の多くが未検挙であることは、犯人検挙に対する国民の期待を考えると、担当大臣として重く受けとめているところであります。

 特に、これらの犯行は銃器や手りゅう弾等が用いられるなど、地域社会に対する大きな脅威となっております。早期検挙とともに、警戒活動、保護対策等を徹底し、地域住民の不安感を解消する必要があります。

 現在、全国警察の支援のもと、福岡県警察を中心にこれらの事件の捜査を強力に推進し、被疑者の検挙に努めているところでありますが、捜査の高度化についてもしっかりと議論を進めるとともに、一日も早い事件の検挙、対立抗争の終結を実現させるよう、警察を督励してまいります。

塩川委員 徹底的な捜査を尽くして、犯人逮捕に全力を挙げていただきたい。

 次に、事業者の責務に関する規定についてお尋ねをいたします。

 今回の法改正で、新たに事業者の責務規定が設けられます。三十二条の二で、「事業者は、不当要求による被害を防止するために必要な第十四条第一項に規定する措置」、これは、不当要求防止責任者の選任や、不当要求に応対する使用人等の対応方法についての指導その他の措置、これらを「講ずるよう努めるほか、その事業活動を通じて暴力団員に不当な利益を得させることがないよう努めなければならない。」ということであります。

 そこで、「事業活動を通じて暴力団員に不当な利益を得させることがないよう努めなければならない。」とある「不当な利益」とは何なのか。この点について御説明いただけますか。

松原国務大臣 暴対法三十二条の二に、「暴力団員に不当な利益を得させることがないよう努めなければならない。」という、今委員御指摘の「不当な利益を得させる」とは、正当な理由のない利益を得させること、すなわち、相手方が暴力団員であることを理由として、通常の一般人を相手方とする場合には行わないような金品等の贈与を行うことをいい、具体的には、暴力団員による不当要求に安易に応じてみかじめ料を支払ったり、通常を上回る価格で物品等を購入したりすること、何らかの見返りを期待するなどして暴力団員に対して進んでみかじめ料を支払ったり、通常を上回る価格で物品等を購入したりすることがこれに当たると考えます。

 なお、本規定はあくまでも事業者の方々に自主的に取り組んでいただく努力義務を定めたものであり、何が暴力団員に不当な利益を得させる行為なのかについては、各事業者において社会通念に従って適切に判断されるべきものと考えております。

塩川委員 不当な利益、みかじめ料の話などがございました。同時に、事業者において社会通念に従って適切に判断されるものという場合についても、やはり事業者側にしてみると、なかなか判断に迷うようなところがあるわけであります。

 そういう点でも、いわば、これは正当な理由によるもの、これは不当な利益、正当な理由のない利益に当たるもの、そういう整理というのを事業者にとってみて見えるような形で行うということも必要なわけですから、不当な利益でないというのはどういうものか、その辺についての具体的な事例についてお話しいただけませんか。

松原国務大臣 具体的事例は栗生部長から御説明をさせますが、今委員御指摘の点は、事業者が自発的に行う暴力団排除活動の促進を図るために、必要に応じて警察側が情報の提供等を行って支援をする、その中に、そういったことに関する具体的な説明、解釈等があるというふうに思料しておりますが、ちょっと具体的なことは栗生さんの方がいいと思います。

栗生政府参考人 お答えいたします。

 本規定は、あくまでも事業者の方々が自主的に取り組んでいただくことを後押しするためにも資するということの努力義務でございます。

 そのバランスを考えてこの規定の運用を見守らなければいけないなと思っておりまして、一つは、余り、こうだこうだ、具体的にこうですということを官の側が示し過ぎてしまいますと、やはり普通に取引をされる方々に非常に面倒をかける、手間がかかるというふうなこともあろうかと思います。

 そういった意味で、社会通念というふうに大臣も申し上げましたけれども、事業者の方々で御判断いただく、そういったものをやはり尊重するべきではないかなというふうにも思っているところであります。

 最後に、やはり事業者の方々の団体もあられます。その方々の暴力団排除につきまして警察と協議する場面もございますので、そういった連絡の場などを生かしながら、その悩みも伺いながら、サポートしてまいりたいと思っております。

塩川委員 事業者団体などの実情も踏まえた対応ということでお願いするものです。

 最後に、暴力団の暴力行為は、この間、まさに市民の生命と生活が脅かされており、こうした事態から市民の生命や生活を守るための対策が不可欠です。その一方で、暴対法の枠組みは警察に次々と新たな権限を付与してきたことも事実であり、その権限が一般の市民に濫用されるようなことがあってはならない、厳格な運用も不可欠であるということを強く指摘して、質問を終わります。

荒井委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

荒井委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、参議院送付、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

荒井委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

荒井委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、津村啓介君外五名から、民主党・無所属クラブ、自由民主党・無所属の会、国民の生活が第一・きづな、公明党、日本共産党及びみんなの党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。平沢勝栄君。

平沢委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明いたします。

 その趣旨は案文に尽きておりますので、案文を朗読いたします。

    暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。

 一 指定暴力団等による対立抗争及び暴力的要求行為等によって住民の平穏な生活が危険にさらされることのないよう、本法を効果的に運用すること。なお、本法の規定に基づく職権を運用するに当たっては、恣意的にならないよう十分留意すること。

 二 警察において、規制による取締りの端緒となる市民等からの通報を適切に受け付け、処理することができる体制を整備すること。

 三 本法の施行に伴う規制の強化の実効性を確保する観点から、暴力団周辺者の利用による規制逃れが生じないよう、暴力団周辺者の実態を的確に把握すること。

 四 都道府県暴力追放運動推進センターが、暴力団事務所に係る使用差止請求関係業務を含めた各種事業を適切に行えるよう、人員及び人材の充実、財政状況の改善など環境整備のための方策を検討すること。

 五 暴力団との関係の遮断を図る企業及び市民等に対する危害行為が相次いでいることに鑑み、保護対象者の指定及び身辺警護等の保護対策を講ずるための体制整備を早期に実現すること。

 六 暴力団から離脱する意志を表明する者に対しては、その意志を確認した上で十分な援護措置を講ずること。また、暴力団から離脱した者についても社会から孤立することのないよう、都道府県暴力追放運動推進センター等と連携して、就労等の観点から十分な援護措置を講ずること。

 七 暴力団事務所の使用差止請求等に係る訴訟においては、証言を行う者が暴力団等から精神的な圧迫や危害を受けることがないよう、十分な配慮が望まれる。特に、証人尋問における遮へい等の措置が認められるよう、都道府県暴力追放運動推進センター等と連携して情報提供等の支援を行うこと。

 八 国及び地方公共団体の責務を果たすため、各府省の連携を一層強化するほか、暴力団排除条項の整備をはじめとした地方公共団体の取組に対する支援を行うこと。

以上でございます。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。

荒井委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

荒井委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。松原国家公安委員会委員長。

松原国務大臣 ただいま御決議いただきました事項につきましては、その御趣旨を十分に尊重してまいりたいと思います。

    ―――――――――――――

荒井委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

荒井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

荒井委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時七分散会


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