衆議院

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第15号 平成25年5月29日(水曜日)

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平成二十五年五月二十九日(水曜日)

    午前九時三分開議

 出席委員

   委員長 平井たくや君

   理事 木原 誠二君 理事 関  芳弘君

   理事 田中 良生君 理事 西川 公也君

   理事 平口  洋君 理事 若井 康彦君

   理事 松田  学君 理事 高木美智代君

      青山 周平君    安藤  裕君

      井林 辰憲君    石川 昭政君

      大岡 敏孝君    大塚  拓君

      鬼木  誠君    勝俣 孝明君

      川田  隆君    小松  裕君

      櫻田 義孝君    田所 嘉徳君

      田中 英之君    田畑 裕明君

      高木 宏壽君    豊田真由子君

      中山 展宏君    平沢 勝栄君

      福山  守君    藤井比早之君

      村井 英樹君    山際大志郎君

      山田 美樹君    吉川  赳君

      岡田 克也君    後藤 祐一君

      津村 啓介君    中根 康浩君

      岩永 裕貴君    杉田 水脈君

      中丸  啓君    山之内 毅君

      輿水 恵一君    浜地 雅一君

      大熊 利昭君    赤嶺 政賢君

      村上 史好君

    …………………………………

   国務大臣         森 まさこ君

   内閣府副大臣       伊達 忠一君

   内閣府大臣政務官     山際大志郎君

   内閣府大臣政務官     亀岡 偉民君

   最高裁判所事務総局総務局長            戸倉 三郎君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   山崎 史郎君

   政府参考人

   (総務省総合通信基盤局電気通信事業部長)     安藤 友裕君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 和田 雅樹君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 山崎 和之君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 新美  潤君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           関  靖直君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長) 小川  誠君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    岡田 太造君

   内閣委員会専門員     雨宮 由卓君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十九日

 辞任         補欠選任

  鬼木  誠君     藤井比早之君

  川田  隆君     井林 辰憲君

  新谷 正義君     石川 昭政君

  田中 英之君     安藤  裕君

  中谷 真一君     田畑 裕明君

  平沢 勝栄君     櫻田 義孝君

  福山  守君     村井 英樹君

  山際大志郎君     大塚  拓君

  荒井  聰君     中根 康浩君

  遠藤  敬君     岩永 裕貴君

同日

 辞任         補欠選任

  安藤  裕君     田中 英之君

  井林 辰憲君     川田  隆君

  石川 昭政君     新谷 正義君

  大塚  拓君     山際大志郎君

  櫻田 義孝君     平沢 勝栄君

  田畑 裕明君     中谷 真一君

  藤井比早之君     鬼木  誠君

  村井 英樹君     福山  守君

  中根 康浩君     荒井  聰君

  岩永 裕貴君     遠藤  敬君

    ―――――――――――――

五月二十九日

 道路交通法の一部を改正する法律案(内閣提出第四二号)(参議院送付)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律案(内閣提出第六九号)


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     ――――◇―――――

平井委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣府政策統括官山崎史郎君、総務省総合通信基盤局電気通信事業部長安藤友裕君、法務省大臣官房審議官和田雅樹君、外務省大臣官房参事官山崎和之君、外務省大臣官房参事官新美潤君、文部科学省大臣官房審議官関靖直君、厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長小川誠君、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長岡田太造君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

平井委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局戸倉総務局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

平井委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高木美智代君。

高木(美)委員 おはようございます。公明党の高木美智代でございます。

 本日、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律案につきまして質問をさせていただきます。

 憲法第十四条、「すべて国民は、法の下に平等であつて、」中略させていただきます、「差別されない。」に基づき、また、障害者基本法第四条、差別の禁止規定を具現化するために本法案は制定をするものでありまして、国連障害者権利条約の批准に向けて、今審議中の雇用促進法とあわせて、必要な法整備の最後の大きな山と言えます。権利条約の批准は障害者の方々の悲願であり、本法案の一日も早い成立が待ち望まれているところでございます。

 この国連障害者権利条約は、二十一世紀最初の国際人権法に基づく人権条約であり、二〇〇六年十二月十三日に第六十一回国連総会において採択されました。日本政府の署名は二〇〇七年九月二十八日、条約は二〇〇八年五月三日に発効しまして、批准国は今約百三十カ国に上っております。日本はまだ批准しておりません。

 そのおくれた理由は、二〇〇九年三月、麻生政権のときでしたが、批准の準備を進めていたところ、日本障害フォーラム、きょうも傍聴に多くの方がお越しいただいておりますが、国内法の整備を優先してほしい、批准を急ぐことより実態上の障害者政策の前進を求めるとの話がありまして、これを聞いた我が党は、権利条約を貫く、私たちを抜きにして私たちのことを決めないでとの当事者参加の原則を尊重し、批准を延期させました。

 以来、私も、党の障がい者福祉委員長として懸命に取り組んでまいりまして、自民、民主、公明を中心に、各党力を合わせて、二〇一〇年、障害者自立支援法改正、二〇一一年、障害者虐待防止法制定、障害者基本法の改正、また、二〇一二年、総合支援法制定、優先調達法制定など、五本の法律を成立させ、法整備を進めてきたところでございます。

 今、多くの障害者団体の方たちから、今国会で何としても成立させてもらいたいとの強い御要望をいただいております。多くの方たちが、権利条約の準備会合の段階からニューヨークの国連本部まで何度も足を運ばれ、よりよい条約内容になるよう、また、日本でもその条約の批准が一日も早いよう活動してこられました。この間の御努力を思うと、深くこうべを垂れ、敬意を表するほかございません。

 そこで、今国会では、提出自体が検討中であったというこの法案を、障害者の方々に後押しされる形で、まず自公PTを設置して協議を重ねまして、ほぼまとめた段階で、これまでともに汗をかいてきた民主党に協議に入っていただき、民主党の意見も反映した形で、やっと差別解消法として取りまとめることができたものでございます。四月二十六日、閣議決定、法案提出となりました。政府提出の法案となってはおりますが、中身は議員立法と申し上げさせていただきたいと思います。

 まとめる段階で、多くの当事者、関係者の方たちの意見を伺いました。そこで、当初、差別禁止法と私どもも申しておりましたが、解消法となりましたのも、障害者の社会参加を促し、共生社会を構築するという観点から、禁止法という名称では強過ぎるのではないか、むしろ、国民の皆様が障害者を遠ざけることなく理解啓発を進め、権利条約にあるとおりの、障害の有無によって分け隔てられることなく、人格と尊厳が尊重される社会をとの意見に基づいたものでございます。

 また、これは、JDFの方たちからはっきり言ってくださいと言われたもので、あえて申し上げさせていただきますが、この法案の制定を真っ先に国会で提案をさせていただいたのは、一九九一年、公明党の当時の党委員長でございました。そして、本年三月の参議院本会議で山口代表が早期提出と成立を強く訴えさせていただいたところでございます。この段階まで参りまして、何としても、今国会での成立を強く願うものでございます。

 以下、この後の、次の民主党の中根議員と分担をさせていただきまして、確認質問をさせていただきたいと思います。

 まず、外務省にお伺いいたしますが、本法案は障害者権利条約の締結に向けた国内法整備の一環として行われるものと承知しておりまして、意義は先ほど申し上げたとおりでございます。

 したがいまして、本法案成立の暁には、障害者権利条約を早急に批准すべきと考えますが、いつごろの批准をお考えなのか。きょうは傍聴者の方も多くいらっしゃいますので、役所の用語ではなく、わかりやすく明快にお答えをお願いしたいと思います。

新美政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員からも御指摘がありましたとおり、この障害者の権利に関する条約、現在、百二十九カ国、そして地域機関としてEUが締結をしております。

 政府といたしましても、この条約は障害者の人権及び基本的自由の完全な実現を促進そして確保する上で極めて重要な意義を有するものと考えております。日本は、現に、こうした観点から、今委員からも御指摘ございましたとおり、条約の作成過程に起草段階から積極的に参加してまいりました。

 政府といたしましては、この障害者権利条約の締結に先立ちまして、委員から御指摘あったとおりでございますが、障害者に対する施策の充実のために、国内制度の整備について努めてきたということでございます。そして、障害者基本法の改正、そして障害者総合支援法が既に成立しておりまして、まさに御指摘ございました障害者差別解消推進法案、そして障害者雇用促進法改正法案が今次通常国会に提出されているわけでございます。

 まさに、こういう国内法を充実そして整備していただく、国会はそれで御承認していただくということが今一番重要だと考えておりまして、そして、その上で、条約の実効的な運用の観点から、こういう法律の整備は非常に有意義でございますので、その進捗も踏まえた上で、政府としては、可能な限り早期に条約を締結したいと考えております。

高木(美)委員 今国会というのはとても間に合わないとは思いますので、次期国会、特に、九月末、国連におきましてさまざまな条約の批准等が行われると聞いております。できる限りそこに間に合うように手続をお願い申し上げるものでございます。

 さて、本法案第一条に、障害者基本法の理念にのっとりとあります。本法案と障害者基本法の関係性について明確な答弁をお願いしたいと思います。

 今、教育の分野におきましても、インクルーシブ教育を目指しまして、基本法にのっとり、施行令等の検討がされていると伺っておりますが、先ほど申し上げたように、基本法をこの差別解消法は具現化するという趣旨でよろしいかどうか、森大臣の答弁を求めます。

森国務大臣 障害者施策担当をさせていただいております森でございます。

 まず初めに、この法案を御審議いただくに当たり、当事者、関係者の皆様のこれまでの御労苦に深く敬意を表しますと同時に、取りまとめに御苦労いただいた議員の皆様、特に公明党、高木美智代委員の今までの御尽力に深い敬意をあらわしたいと思います。

 障害者基本法では、「全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものである」という理念のもと、基本原則の一つとして差別の禁止を挙げるとともに、医療、教育、雇用、公共交通など、障害者の自立及び社会参加の支援のための施策の基本となる事項を定めております。

 その上で、本法案は、障害者基本法第四条に規定された差別の禁止の基本原則を具体化し、同法に規定する施策の分野も含む広範な分野を対象にし、差別の禁止に関するより具体的な規定を示し、それが遵守されるような具体的な措置を定めるものであります。

高木(美)委員 ありがとうございました。

 本法案の定義について伺いたいと思います。

 まず、「障害を理由とする差別」という文言につきまして、定義そのものは規定されていないというのはどういう理由か、伺います。

 また、本法案につきまして、障害者について定義されていますが、障害者というその中に障害児も含まれるという理解でよろしいでしょうか。内閣府の答弁を求めます。

山崎(史)政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の定義でございますが、これにつきましては当初から大変議論があったところでございますが、個別の事案におきましては、特定の行為が差別に該当するか否かは、それぞれの事案に応じて個別具体的に判断されるものであることなどから、法律では一律に定めることとしてございません。

 そこで、具体的にどのような行為が差別に当たり得るかにつきましては、今後、この法案に基づきます対応要領や対応指針において示しますとともに、本法案の施行後、具体的な裁判例等、これを踏まえまして、さらに積み上げていくということになろうかと考えております。

 なお、本法案の障害者には、障害者基本法と同様、障害児も当然含まれます。

高木(美)委員 今後、将来的には、定義につきましても、私どもは、附則の中に三年の見直し規定を盛り込ませていただいておりますけれども、普及啓発、それから差別事例の蓄積を行った上で、諸外国の法令等も参考にしながら規定していくことも必要ではないかと考えております。その点も今後の検討課題としてまいりたいと思います。

 また、次の質問ですが、本法案はどのような効果を持つ法律なのか。いわゆる私法上の効力を有するのか。

 また、本法案は、事業者でない一般私人の行為や個人の思想、言論を対象とするものではないという、そうした理解でよろしいかどうか。答弁を求めます。

山崎(史)政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案におきましては、私法的効力に関します損害賠償請求権、契約の無効等の規定は置いてございません。したがいまして、私法上の効力に関しましては、民法等の一般規定に従いまして、個々の事案に応じて判断されるということになります。

 一方、その実効性を確保するために、主務大臣による報告徴収、助言、指導、勧告といった行政措置を講ずることができることとしております。

 また、本法案におきましては、事業者でない、いわゆる一般私人間の行為や個人の思想、言論については対象としておりません。一般私人に関しましては、第十五条に規定しております国や地方公共団体による啓発活動、これを通じて本法案の趣旨の周知を図っていく、こういうことになっている次第でございます。

高木(美)委員 また、本法案の中で、今の合理的配慮の提供ということですが、行政機関等のみが義務になっております。また、民間事業者は努力義務としております。合理的配慮の提供が義務づけられる範囲についての考え方をお伺いしたいと思います。

 また、その範囲の中に、国公立の学校、それから福祉施設等はこの行政機関等に含まれているという理解でよろしいかどうか。

 合理的配慮の提供につきましては、あくまでも、それぞれの個人が、バリアフリー等で社会的なインフラ整備が整った上で、しかし、こういう配慮を求めたいという、それについて一人一人の個別の支援をさせていただくというのがこの合理的配慮という形になっております。答弁を求めたいと思います。

山崎(史)政府参考人 お答え申し上げます。

 障害者と相手方の関係はさまざまでございまして、求められる配慮も多種多様でありますので、本法案におきましては、合理的配慮の提供に関しまして、一律に法的義務とするのではなく、国の行政機関や地方公共団体、独立行政法人等の政府の一部を構成すると見られる法人などの公的主体につきましては法的義務を課し、一方、民間事業者につきましては努力義務とした上で取り組みを推進するということとしております。

 なお、国の独立行政法人や地方公共団体などが設置、運営しております学校や福祉施設は、基本的にはこの法案における行政機関等に含まれるものでございます。

高木(美)委員 確認ですが、例えば公設民営等の場合はどのようになりますか。

山崎(史)政府参考人 行政機関等に関しましては定義が定まってございます。したがいまして、それぞれの設置主体に応じてこれは整理するという形になってございまして、基本的には、公設という形で、要は行政機関という形で整理されるものにつきましては対象になっていく、こういうことになるわけでございます。

高木(美)委員 そうしますと、今は公設でも、そのうち民間に委託をされるという場合は、その後どのような形になるのか。要するに、民間に譲渡される、また売却等もあるかと思います。その場合はどのようになるのか。

山崎(史)政府参考人 この法律の対象に関しましては、法律に基づきまして、ある程度明確な基準のもとで対象を考えている次第でございます。

 したがいまして、設置主体が行政機関等に入りますと、これは当然対象になってまいりますが、設置は公的なものであって運営については例えば委託するケースも、基本的にはこれはまさに公的なものが設置しているということで対象になります。

 ただ、それを外れまして、完全に民間にいわば移譲するという、もう主体も変わる形になりますと、基本的にはそれは対象外という形になろうかと考える次第でございます。

高木(美)委員 わかりました。

 そこは、民間事業者は努力義務、しかしながら、何か重大な事例があった場合には当然大臣が報告徴収等をすることができるという、このようなたてつけでよろしいんでしょうか。

山崎(史)政府参考人 お答え申し上げます。

 今回、確かに、行政機関といったそういう公的主体と民間事業者に関しまして、いわゆる合理的配慮に関しましては法律の取り扱いが異なる次第でございますが、実は、これに関しますまさに差別解消の一つの措置としましては、行政上の報告徴収、助言、指導、勧告といった規定がございますが、これに関しましては民間がまさに対象になってまいるわけでございます。

 したがいまして、努力義務という形ではございますが、当然、主務大臣においてそれを推進していくという点で、まさに実効性を確保していくというものでございます。

高木(美)委員 ありがとうございます。

 続きまして、合理的配慮に関する障害者からの意思の表明につきましては、御本人がみずから意思を表明することが困難な場合がございます。知的障害の方または重度の精神障害の方等々、配慮をする必要があるかと思います。

 その場合、その御家族等が本人を補佐して意思の表明をする場合も解釈上含み得ると考えますが、その点はいかがでしょうか。

 また、これは総合支援法それから基本法、両方の法律にも書かせていただいておりますが、意思の表明が円滑になされるためにも、意思決定の支援を進めることが必要かと思います。

 この意思決定支援というのは、なかなか委員の皆様御存じない方もいらっしゃるかもしれませんが、どんな重度の障害の方にも、例えばどういう洋服を着たいか、また何をしたいか、そしてまた、例えば飲み物を勧められた場合、飲みたいか飲みたくないか、さまざまな御自分の意思というのが必ずあります。その意思がなかなか表明できない、そしてまた、その場合は、意思決定の支援ということで、その意思を酌み取る、そのような支援の方向性というものが、今、ドイツまたイギリス等でもずっと研究がされております。

 我が国におきましても、重度の方たちに意思がないという、そのような認識をされている方が多くいらっしゃるのですが、そうではなくて、あらゆる方たちが御自分の意思の表明をし、そして、それに基づいたまさに権利そして尊厳が守られる、そのような社会をつくっていくことが必要であると考えておりまして、この意思決定支援ということをずっと一貫して盛り込ませていただいております。

 そこで、今回のこの合理的配慮に関する意思の表明につきましても、障害者総合支援法等に基づく取り組みの一層の充実が必要かと考えております。厚労省の答弁を求めます。

岡田政府参考人 障害者の方々の意思決定の支援の問題につきましては、先生から大変御指摘をいただきまして、我々も大変重要な課題だということで取り組んでいるところでございます。

 御承知のとおり、平成二十三年の障害者基本法の一部改正におきまして、国及び地方公共団体は、障害者やその家族などに対する相談業務、成年後見制度などのための施策の実施、また制度の利用の際に、障害者の意思決定の支援に配慮することが明記されたところでありまして、行政はもちろん、関係機関がこれを踏まえて対応していくことが重要だと考えているところでございます。

 障害福祉の分野におきましては、平成二十四年四月からの改正障害者自立支援法に基づきまして、相談支援事業者は利用者の意向を勘案してサービス等利用計画案を作成し、市町村はその計画案を勘案して支給決定を行うこととされているほか、成年後見制度の利用を支援する事業を市町村の地域生活支援事業の必須事業化としているところでございます。

 また、本年四月から施行されました障害者総合支援法におきましても、障害福祉サービス事業者などが障害者の意思決定の支援に配慮することや、相談支援事業者は障害者の立場に立って業務を効果的に行うよう努めなければならないこととしているところでございます。

 さらに、障害者総合支援法では、施行後三年を目途にいたしまして、障害者の意思決定支援のあり方についても検討し、所要の措置を講ずることとしているところでございます。

 今後とも、家族などの援助によるものも含めまして、障害者の意思の表明が円滑にされますよう、必要な施策を検討してまいりたいと考えているところでございます。

高木(美)委員 ぜひ進めていただきたいと思います。

 今前段で申し上げました意思の表明について、家族等が本人を補佐して意思の表明をするということが法文には書かれておりますが、家族等というのは具体的にどういう場合が考えられるか、内閣府の答弁を求めたいと思います。

山崎(史)政府参考人 お答え申し上げます。

 例えば支援者といったようなそういう方々も、当然、まさに意思表明の手助けになるわけでございますので、そういう方々についても含まれる、このように考えている次第でございます。

 いずれにいたしましても、障害者の方の意思というのをどういうふうに捉えるかが大変大事でございますので、当然、いろいろな面で柔軟に対応していく必要がある、このように考えている次第でございます。

高木(美)委員 次に、合理的配慮につきましては、権利条約の考え方の中にも、過度な負担を求めないという一つの大きなポイントが書かれておりますが、例えば中小零細企業など、どこまでしなければならないのかというお声もあります。

 この「実施に伴う負担が過重でないとき」の趣旨につきまして、説明を求めます。

山崎(史)政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の合理的配慮でございますが、これに関しましては、障害者権利条約の趣旨も踏まえまして、まさに「実施に伴う負担が過重でないとき」ということを法律上規定している次第でございます。

 具体的に、これをどういうふうに考えていくかということは、先ほど御紹介しましたが、対応指針等でまさに示していくことになりますが、その際には、これは私どもの方でも基本方針を示していくというのはありますが、やはり事業者におきましては、事業等の規模、さらに規模から見た負担の程度、こういった要素も当然必要だ、このように考えている次第でございまして、そういう中小零細企業等に関しましてもいろいろな面で配慮していく必要がある、このように考えている次第でございます。

 いずれにいたしましても、今後、これについての基本的な考え方をお示ししたい、このように考えている次第でございます。

高木(美)委員 今御答弁をいただきました。

 確かに中小零細企業、それからまた中小の交通機関等々さまざまあります。基本方針策定のときにその内容につきましても議論されることになると思いますが、いずれにいたしましても、負担が過重でないとき、やはり、ここの緩やかな線引きを今後どういうふうに考えていくのか、場面場面で多くの議論も必要かと思います。

 ぜひとも、先ほど申し上げた共生社会に向けて、それぞれがどういう努力ができるのか、そのような形で配慮をお願いしたいと思います。

 例えば物理的な配慮が、確かに経済的なバリアフリーの設備等費用のかかるものもあれば、また、人の気持ちとして、手をかす等のさまざまなこともあろうかと思います。そこのところを柔軟に勘案することを求めたいと思います。

 最後の質問になりますが、障害者差別解消支援地域協議会という形で今回は設置をするとされております。

 差別解消につきまして、例えば相談であるとか、それから紛争の解決であるとか、どういうスキームでつくり上げていくか、随分議論もさせていただきましたが、やはり、まず、今あるスキームにつきまして、それぞれにつなげていくというのが一番いいのではないか。

 そうなりますと、一番障害者の方たちが身近で相談できる、そしてまた、そうした紛争解決を依頼できるというのは、今虐待防止法の関係で設置されております、市町村におきましてはいわゆる虐待防止センター、そしてまた都道府県では権利擁護センターという、このような形ができ上がっております。

 ただ、そういうものもあれば、法務局がやっていらっしゃる人権擁護の相談等々、さまざまな窓口があります。また、労働につきましては労基署等々があるわけですが、そこを結んでいくためにどういうふうにつくり上げていくかということで、そこで、地域協議会につきまして私たちは提案をさせていただきました。

 本来、そこでは、それぞれの今あるスキームの中で解決できない場合、そこは、この地域協議会につなげて、一つ一つの事案について検討していくような丁寧な地域協議会の運営を求めたいと思いますし、その中には、当然のことながら、当事者の方たち、また相談事業に携わる方たちにも参加をしていただくべきと考えております。

 この趣旨、そしてまたその概要につきまして、大臣の答弁を求めます。

森国務大臣 障害を理由とする差別の解消を効果的に推進するためには、国レベルでの施策に加え、障害者にとって身近な地域において、それぞれの地域の特性を踏まえた主体的な取り組みが推進されることが必要です。

 そこで、本法案においては、御指摘のとおり、地域において障害者差別に関する相談や紛争の防止、解決を推進するためのネットワークを構築する観点から、国や地方公共団体の機関が地域協議会を組織することができることとしております。

 このような協議会が組織をされまして、今委員が御指摘の、丁寧な相談、そして既存の相談者が参加をしていくことにより、いわゆる制度の谷間やたらい回しが生じることなく、地域全体として障害を理由とする差別の解消に向けていくことが行われていくことが期待をされます。

高木(美)委員 そこで、大臣、お願いなんですが、当然、自治体にこうした地域協議会の設置を求める、本来であれば義務としたいところですが、それは地方自治の観点から、私どもはそこはできないということで、努めるという形にさせていただいております。

 そうしますと、地域協議会が今どの都道府県に、またどの政令指定都市に、そしてまた市町村にどのような形で設置されているのか、そうしたことを、これは将来的なところになりますけれども、ただ、三年間のガイドラインをつくる等の準備期間、そして、その中に市町村も当然準備をしていただかなければいけないわけでございまして、それがどういう進捗状況で各市町村が動いているのか。

 また、設置された、そしてまたここは準備中、このような、今度は地域における協議会の立ち上げ状況について、当然のことながら、フォローアップをしていただきながら、その状況も将来的にはしっかりと公表していただき、後押しをしていくということが必要かと思います。

 そのような地域協議会の設置の推進につきまして、大臣のお考えを伺いたいと思います。

森国務大臣 委員のおっしゃるとおり、義務になっておりませんが、このような地域協議会が全国的に設置をされることが大変望ましいわけでございますので、三年後の施行までの期間に向けても、しっかりと地域協議会が各地方自治体に設置をされますように推進をし、また、関係者の皆様にお示しをするなどして後押しをしてまいりたいと思います。

高木(美)委員 ありがとうございます。

 それでは、最後に、大臣の障害者の差別解消に対する意気込みをお伺いしたいと思います。

森国務大臣 多くの関係者の皆様の御努力によって本法案が提出されました。障害のある方も障害のない方もともに社会で生きていけることを目指して、この法案を早期に成立させ、そして、その中身をしっかりと施行してまいりたいというふうに思います。

高木(美)委員 それでは、これで質問を終わります。ありがとうございました。

平井委員長 次に、中根康浩君。

中根(康)委員 民主党の中根康浩でございます。

 四十五分間お時間をいただきましたので、障害者差別解消法案について議論を進めてまいりたいと思いますが、少し、若干の苦言を最初に申し上げておきたいと思います。

 先ほどから、大臣初め政府参考人の答弁が、声が小さいのか、マイクが入りづらいのか、聞き取りにくい、そういう指摘も我が党の議員からも出されておるところでございます。この法案、きょうは障害当事者の方々もたくさん傍聴にお越しになっておりますが、わかりやすさということも大事でありますし、わかりやすく明瞭に答弁をいただくということもまさに合理的配慮の第一歩であるということでございますので、明瞭、簡潔、わかりやすい御答弁を期待申し上げつつ、質問を始めさせていただきたいと思います。

 まず、質問に入る前に、本法案の質疑に当たってのこれまでの法案策定の経緯を振り返っておきたいと思います。

 民主党政権によりまして、内閣府に障がい者制度改革推進本部を設置するところとなり、障害者政策についての審議の場として障がい者制度改革推進会議を組織し、審議をスタートさせました。国連の障害者権利条約の批准に向けて、障害者差別禁止法を制定すべく、本推進会議での議論を進め、まず、障害者基本法の改正に取り組み、障害者総合支援法の制定を経て、本日、障害者差別解消法案の審議に至ったというところでございまして、これまでの山あり谷ありの議論の経緯に深い感慨を覚えるところでございます。

 民主党といたしましても、政策調査会に障がい者差別禁止PTを設置し、議論をしてまいりました。障害者政策委員会差別禁止部会も平成二十四年の九月に意見を取りまとめており、それも踏まえた法案ということになっているものと思います。

 こういった、これまでの各党あるいは私ども民主党、そしてまた政府につくられてきた障がい者制度推進会議、あるいはその中の差別禁止部会、こういった議論がこの法案にどのように反映をされているかを確認する観点から、そしてまた、今も申し上げましたけれども、この法律は、何といっても、全ての国民の皆様にわかりやすくなければならない、理解が深まり広がっていかなければ、この法律の本来目指すべきところが達成をされないということでありますので、そういった観点も含めて質問をしてまいりたいと思っております。

 先ほど高木議員から質問されたこととなるべく重ならないようにしてまいりたいと思いますが、大切なところは若干重なるところもあろうかと思いますが、ぜひ、お許し、御理解を賜りたいと思います。

 まず初めに、本法案と障害者権利条約との関係について、これは高木先生と重なるところではございますけれども、この法律の最も大切な肝となるところでございますので、私の立場からも質問させていただきたいと思います。

 本法案の成立によって、障害者権利条約の批准に向けた体制が整うのではないかとも考えております。外務省の見解を伺いたいと思いますが、批准に向けたスケジュールをお示しいただきたいと思います。

 これは一番大切なところだと思っておりますので、本来、外務省の政務三役に御答弁を賜りたいと思っておりましたが、政務三役が、ほかの委員会の御都合上も、あるいは御出張されておられる方もあるということで、きょうはやむを得ず政府参考人にお尋ねをするということになりましたけれども、ぜひ、外務省、責任を持って御答弁を賜りたい。よろしくお願い申し上げます。

    〔委員長退席、木原(誠)委員長代理着席〕

山崎(和)政府参考人 ただいまの先生の御質問にお答え申し上げます。

 政府といたしましては、障害者権利条約の締結に先立ち、障害者に対する施策の充実のために、国内制度の整備に努めているところでございます。

 その中で、障害者基本法の改正、それから障害者総合支援法は既に成立しており、現在、本法案及び障害者雇用促進法改正法案が今国会で審議をいただいているところでございます。これらの国内法の整備は、障害者権利条約の実効的な運用の観点から大変有意義なものであると考えております。

 現在進められている国内制度の整備状況の進捗も踏まえた上で、可能な限り早期に条約を締結することを目指したいと考えております。

中根(康)委員 障害者権利条約の批准については、今までの段階でも、既に、批准をしてもいい、あるいはすべきだというような議論もあったんですけれども、ここは、中身が伴わなくては、形だけではいけないということで、障害当事者あるいは団体の皆様方も、ある意味苦渋の決断をされて、一連の必要な法整備が整うまでは権利条約の批准を待つということにも今までなってきたわけであります。

 そして、一連の法整備、今回の差別解消法案が成立をすれば、期待をされていたものが一応そろうということになろうかと思いますので、これは、可能な限り速やかにという御答弁がありましたが、ぜひ、私どもといたしましては、今国会というわけにはまいらないかもしれませんので、秋に臨時国会が開かれた場合には、そこで間違いなく批准がされるということを期待いたしております。

 ぜひ、外務省の皆さん、お帰りになりましたら、大臣にもよろしくお伝えを賜りたいと思っております。ぜひ、この点はくれぐれもよろしくお願いを申し上げます。

 続きまして、本法案と障害者政策委員会差別禁止部会の意見等との関係について質問をさせていただきます。

 差別禁止部会では、障害当事者を含めた構成のもと、今まで計二十五回にわたって議論が行われてきたところでございます。その意見は十分に尊重されるべきであると考えます。

 また、本法案については、障害者団体から、例えば、本法案に前文を盛り込むべきだというようなさまざまな意見があったところでもございますし、名称も、禁止ではなく解消となったということでもございますが、これは、先ほど高木議員との議論の中で説明があったところでございます。そういったさまざま議論を踏まえての今日ということでございます。

 本法案は、差別禁止部会の意見や障害者団体の意見を十分尊重したものになっていると私ども考えていいかどうか、御答弁をお願い申し上げます。

山崎(史)政府参考人 お答え申し上げます。

 差別禁止部会の意見につきましては、障害当事者や学識経験者等が参加した、まさに議論の成果でございまして、これにつきましては、政府としても十分尊重する必要があると考えております。

 法案の作成過程におきましては、先ほどございました自公民三党における議論、これにおいてさまざまな議論をいただきましたが、その中におきましても、障害者差別禁止部会の意見、さらには各障害者団体を含めました関係団体からの御意見、これを踏まえながら検討がなされたという形でございます。

 この法案に関しましても、現段階において反映できるものを最大限盛り込み、作成したというふうに考えてございます。

 例えば、先ほどの前文の件でございますけれども、これに関する御指摘もございました。これに関しましては、今回の法案の第一条に目的規定がございますが、その目的規定の中にその趣旨も最大限盛り込むという形で規定しているものでございます。

中根(康)委員 次に、本法案の具体的な内容について質問をしてまいりたいと思います。

 きょうは、最高裁の事務局にも来ていただいておると思います。

 本法案に基づく具体的な措置の対象からは、国会や裁判所は除外をされております。これは三権分立の観点からということでございます。私自身は、国会議員、国会に身を置く者として、障害のある方への必要な配慮を行っていくということは当然のことであると思っております。

 国会といたしましても自律的に必要な措置を講じていくべきだと考えておりますが、裁判所として、本法案を踏まえ、差別の解消に向けてどのような姿勢で取り組んでいかれるのか、伺いたいと思います。

戸倉最高裁判所長官代理者 お答えをいたします。

 裁判所といたしましても、裁判所における障害を有する方々の裁判を受ける権利を実質的に保障する、そういった観点から、その障害の特性に応じた意思疎通あるいはアクセスを確保する適切な配慮が必要である、こういった認識をしておるところでございます。

 このような認識から、これまでも、裁判手続におきましては、事件を担当いたします各裁判体が、当事者となられたりしております障害をお持ちの方のそれぞれの内容あるいは程度に応じて、さまざまな配慮をしておるところでございます。

 例えば、聴覚障害を有する方が当事者等である場合には、手話通訳あるいは要約筆記によりまして手続を行うといったことをいたしております。また、法廷に磁気ループなども設置するなどの配慮もしております。

 他方、視覚障害を有する原告のケースでは、判決書などを点字訳いたしましてお渡しする、そういった配慮もしたところでございます。

 さらに、物的設備の面では、全ての庁でスロープを設置しておりますし、ほとんどの庁には点字ブロックが整備されております。また、ほとんどの法廷におきましては、車椅子用の傍聴スペースでございますが、通常は椅子が固定してございますが、これを外して車椅子のまま傍聴していただくというような配慮もしたところでございます。

 裁判所といたしましても、本法案成立後におきましても、障害者基本法あるいは本法案の精神を踏まえまして、障害の特性に応じたきめ細やかな配慮を確保するよう、引き続き取り組んでまいりたいというふうに考えております。

中根(康)委員 裁判所といたしましても必要な配慮に取り組んでいただくというお約束をいただきました。

 これは行政の方にかかわることではございますけれども、取り調べにおける可視化を含めた障害者に対する配慮ということも、これは当然大切なことでございますし、あるいはそういう配慮といいますか、裁判における必要な配慮にかかわる費用の負担を誰が受け持っていくかということについても、これはこれからの議論ということになろうかと思いますけれども、なるべく障害をお持ちの方々の御負担にならないような方向性での費用負担のあり方についても、最高裁といいますか、裁判所においてもぜひ御議論を深めていただきたいと思います。

 司法における配慮というのは、まさに人権の最後のとりでにかかわるところでございますので、大変強く期待をされておるところでございます。ぜひよろしくお願いをいたします。

 ここで最高裁の方にはお帰りをいただいてもいいということを申し上げたいんですが、ぜひ、少なくとも私の議論の間はこの雰囲気をお受けとめいただきたい、これからの裁判所事務に御寄与というか、参考にしていただきたいというふうに思いますので、もう少しおつき合いをいただいて、この議論を見守っていただければありがたいと思います。よろしくお願いいたします。

 続きまして、本法案では、障害者基本法に基本的施策として規定されている分野を含めて、全ての事業分野が対象となっているという理解でいいのか。

 また、「事業を行う者」の「事業」には、例えば対価を得ない無報酬の事業や社会福祉法人や特定非営利活動法人の行う非営利事業も含まれるのか。ここは高木先生の質問とも重なるところではあろうと思いますが、改めてお伺いをしたいと思います。

山崎(史)政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案では、教育、公共交通、医療、雇用、役務の提供、刑事手続等の行政機関による活動など、障害者基本法において障害者の自立及び社会参加の支援等のための基本的施策として規定されております分野も含めた広範な分野を対象としてございます。

 なお、雇用分野につきましては、本法案の対象分野には含まれますが、今国会に提出されております障害者の雇用の促進に関する法律の改正案において差別の禁止等の具体的措置が定められる予定であることから、本法案第三章に規定する差別の解消のための具体的措置については、障害者雇用促進法の定めるところによることという規定を置いてございます。

 また、法案における事業とは、営利か非営利かを問わず、反復継続して行われる同種の行為であり、御指摘の対価を得ない無報酬の事業や社会福祉法人や特定非営利活動法人の行う非営利事業も含まれます。

中根(康)委員 続きまして、差別の概念について伺ってまいりたいと思います。

 この法案では、障害者権利条約に言うところの「合理的配慮」という言葉そのものではなく、「必要かつ合理的な配慮」、これは七条の二項や八条の二項などに使われている言葉でございますが、こういう言葉が用いられているわけでございます。

 これは権利条約における合理的配慮の規定を踏まえたものとの理解でよいのか、また、必要かつ合理的な配慮として求められる具体的な内容はどのようなものであるかをお示しいただきたいと思います。

山崎(史)政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の「必要かつ合理的な配慮」という言葉でございますが、これは障害者基本法第四条二項において規定されているものでございます。この内容に関しましては、障害者権利条約における合理的配慮、この趣旨を踏まえたものとなっている次第でございます。

 具体的な典型的な例といたしましては、例えば、乗り物への乗車に当たっての職員等による手助けや、筆談、読み上げ等の障害の特性に応じたコミュニケーション手段による対応、段差の解消のための渡し板の提供等が考えられます。

 いずれにいたしましても、具体的にどのような行為が差別に当たり得るのかにつきましては、今後、本法案に基づきます対応要領や対応指針において示すこととしております。

中根(康)委員 この法案では、民間事業者に対する合理的配慮の提供については努力義務にとどめられておりますが、どのようにして実効性を確保するのか。

 また、民間事業者における合理的配慮の提供を義務化するかどうかについても、附則第七条に規定する、施行後三年の検討の対象項目となるとの理解でよいのか、伺いたいと思います。

森国務大臣 本法案においては、民間事業者における合理的配慮の提供については努力義務とした上で、主務大臣が定める指針により自発的な取り組みを促すこととしておりますが、その上で、主務大臣が特に必要があると認めるときは、報告の徴収、助言、指導、勧告といった措置を講ずることができることとしておりまして、これらの権限が適切に行使されることにより実効性が確保されるものと考えます。

 また、法案の附則第七条では、政府は、本法案の施行後三年を経過した場合において、民間事業者による合理的配慮のあり方も含めたこの法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に応じて所要の見直しを行う旨規定しているところでございます。

中根(康)委員 実効性の担保ということ、報告徴収などを通じてという御答弁をいただきました。ここは極めて大切なところでございますので、大臣として、言葉どおり、御答弁どおり、責任を持って法案成立後の成り行きといいますか、実情を見きわめていっていただきたいと心からお願いをするところでございます。

 この法案においては、施行後三年を経過した後の見直しということにはなっておりますが、まさに人権にかかわる極めて大切な事柄でございますので、三年経過したら、その日から見直しということではないというふうには思いますので、今までも、あるいは今も必要なんですけれども、法律が成立したら、その日からすぐに法律の施行状況を不断に検証する、そういう心構えというか、そういう作業を大臣として陣頭指揮をとっていただきたいと、ここは強くお願いを申し上げておくところでございます。

 この法案の第五条の「環境の整備」と第七条及び第八条に規定する「合理的な配慮」との関係について伺ってまいりたいと思います。

 この環境の整備と合理的な配慮との関係はどうなっているか。これまでもいわゆるバリアフリー法などの法令により環境の整備が行われてきたと考えておりますが、本条とこれら法令に基づく取り組みとの関係はどのようなものであるか、見解を伺いたいと思います。御答弁をお願いします。

山崎(史)政府参考人 お答え申し上げます。

 本法第五条は、バリアフリー法等に基づく公共交通施設や建築物等のハード面のバリアフリー化など、不特定の障害者を対象に行われるいわゆる事前的改善措置に関する規定でございます。こうした措置は合理的配慮の実施に向けた環境の整備として位置づけられるものでございまして、差別の解消に向けた取り組みとして計画的に推進されることが望ましいことから、国や民間事業者等においてその実施に努めることというふうにしてございます。

 既存の法令に基づきますこうした事前的改善措置につきましては、それぞれの法令の趣旨に照らし、義務づけ等の対象になっていることに加えまして、今回、差別の解消の推進の観点から、本法案第五条において、こういう形で環境の整備としても位置づけたものでございます。

 本法案及びそれぞれの法令に基づきまして、こうしたことが積極的に推進されることが望ましいと考えております。

中根(康)委員 ぜひ、この法律の成立が、これまでのバリアフリー法など既存の法律の後押し、推進力になるということも期待をしたいと思います。

 少し本論から外れますけれども、依然として、視覚障害者の方々などが駅から転落をして大切な命を失ってしまうという事例が相次いでおります。ホームドアなどの設置も私どもこれまでも求めてまいりましたが、そういうことも一つ内需の拡大といいますか、経済の発展ということ、雇用の促進ということにもつながるわけでありますし、障害をお持ちの方々が安全に安心して暮らせる環境整備ということについては、政府、内閣府だけではなく、国交省も厚労省も経産省も挙げて、全省庁挙げて取り組んでいただきたいと、改めてこの場でお願いをさせていただきたいと思います。

 教育の問題についてもいろいろと取り上げたいことはあるんですが、きょうは、一問、教育の問題についてお尋ねをしたいと思います。

 学校教育法施行令第五条が差別的であるとの意見も聞かれるところでございますが、この障害者差別解消法の議論をにらみながら、この学校教育法施行令改正に向けた取り組みの状況はどうなっているか、文科省にお尋ねをしたいと思います。

関政府参考人 学校教育法の施行令におきまして、義務教育諸学校における就学先の決定の手続、仕組みについて定めております。

 文部科学省といたしましては、改正障害者基本法に規定をされました、障害のある児童生徒が十分な教育を受けられるようにするため、可能な限り障害のない児童生徒とともに教育を受けられるよう配慮しつつ、必要な施策を講じるという理念は非常に重要であると認識をしておりまして、その実現に向け、しっかりと取り組んでいく必要があると考えております。

 昨年の七月二十三日に、このようなインクルーシブ教育システムの構築に向けまして、中央教育審議会の初等中等教育分科会の報告が公表されまして、その中におきまして、学校教育法施行令で定めております就学先の決定の仕組みにつきまして、従来の、就学基準に該当する障害のある子供は特別支援学校に原則就学するという就学先決定の仕組みを改め、障害の状態や本人、保護者の意見等を踏まえた総合的な観点から就学先を決定する仕組みの必要性などが提言をされているところでございます。

 今、これを踏まえまして、障害のある児童生徒の就学手続に関する学校教育法施行令の改正等の検討を行っているところでございまして、今詳細につきまして検討しているところでございますが、着実にその改正に向けて検討を行ってまいりたいと考えております。

中根(康)委員 大変貴重な御答弁を賜ったところでございますが、通告外ということになってしまいますが、そのスケジュール感を、もし可能であれば、文科省さん、改めてお尋ねしてもよろしいでしょうか。

関政府参考人 この改正の手続、内容につきまして、就学手続全般の見直しを内容とするものでございまして、この政令改正に向けた詳細な検討作業を今行っているところでございます。

 最終的な政令案の策定には相応の時間を要すると考えておりまして、今、具体的な日程等のスケジュールにつきまして申し上げることは困難でございますが、改正に向けまして着実に取り組んでまいりたいと考えております。

中根(康)委員 ぜひ、着実かつスピーディーに取り組んでいただきますように、よろしくお願いを申し上げます。

 続きまして、基本方針等についてお尋ねをしてまいりたいと思います。

 不当な差別的取り扱い、合理的配慮についての一定の基準や考え方、具体例、また、過重な負担でないときとはどのようなときかなどについては、第六条の基本方針、第八条、第九条の対応要領、第十一条の対応指針により明らかになっているとの理解でよいか、お尋ねをしたいと思います。

山崎(史)政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案におきます不当な差別的取り扱いに当たり得る行為の具体例や合理的配慮の好事例、合理的配慮に係る過重な負担として考慮される要素につきましては、各主務大臣が事業分野ごとに定める指針や各行政機関が定める対応要領において示すこととなります。

 また、これらの策定の基本的な考え方に関しましては、基本方針においてこの基本的考え方について記載するということを想定してございます。

    〔木原(誠)委員長代理退席、委員長着席〕

中根(康)委員 続きまして、相談、紛争解決、啓発等について尋ねてまいりたいと思います。

 本法案第十四条において、国及び地方公共団体は、紛争の防止または解決を図ることができるよう必要な体制の整備を図ることとされております。救済のための第三者機関の設置が必要であるとの声もあるところではございますが、具体的にはどういった体制の整備が必要と考えているか、伺いたいと思います。

森国務大臣 本法案においては、障害者からの相談に応じ、または紛争の防止や解決を図るための体制について、行政肥大化防止等の観点から、新たな機関は設置せず、既存の機関等の活用、充実を図ることとしておりまして、本条では、既存の機関が障害を理由とする差別の解消に関する事項について適切に対応できるような体制の整備について、行政の責務として規定をしております。

 具体的には、既存の機関において、相談や紛争解決に対応する職員の確保や窓口等の設置を含めた体制の見直しなどに努めることを想定しております。

中根(康)委員 民主党がこの法案を検討してきた段階においては、人権救済法の制定が一つ念頭にあったわけで、それが第三者機関の設置というような考え方にもつながっていたわけでありますが、そういった前提が、今は前提としてし得なくなっておりますので、既存の機関の活用、充実ということで、これはよしとしなければならないと思っておりますが、これには、やはり一定の予算の確保ということも当然必要になってまいります。

 森大臣、必要な予算をぜひともしっかりと確保していただきますように、予算の確保についての大臣の決意を、ちょっと申しわけありません、通告外ではございますけれども、一言で結構でございますので、お述べいただけないでしょうか。

森国務大臣 障害者の皆様が身近な場所に相談に行きやすくする体制を整備することは非常に重要でございますので、予算の確保に向けてしっかりと頑張ってまいりたいと思います。

中根(康)委員 大臣の御答弁に期待をしてまいりたいと思います。

 法案第十五条において、国及び地方公共団体が啓発活動を行うこととされております。障害者がグループホームとかケアホームとかなどで地域生活を送ることについて、地域住民の理解を得るための施策もここに含まれるのか。

 こうした施設等の立地をめぐる、いわゆるこういったものが、誤解、十分な理解がないまま、迷惑施設だというように位置づけられて反対運動が起こるというようなことについては、本法案との関係でどのような措置が講じられることになるのか、お示しをいただきたいと思います。

山崎(史)政府参考人 お答え申し上げます。

 障害者支援施設やグループホーム、ケアホームなどの立地をめぐる反対運動につきましては、障害者に対する理解が十分でないことによるところがあると考えられることから、本法第十五条に基づきまして、行政において住民に対する啓発を行うとともに、本法の趣旨を踏まえまして、障害者支援施設等の認可等に際して、住民の同意を求める等の、他の施設の認可にない特別な措置を行わないようにすることが適切と考えております。

中根(康)委員 次の質問も高木先生と少し重なるところではございますけれども、改めて確認をしてまいりたいと思います。

 本法案の第十七条に規定する障害者差別解消支援地域協議会でございますが、この設置を促進するため、先ほども大臣が、必要な予算の確保にはしっかりと努めていきたいと決意を御披瀝いただきましたけれども、財政措置を含めた地方への支援も必要だと考えておりますし、内閣府としてどのような支援を考えているか。

 また、地域協議会では、関係機関の連絡調整のみならず、協議会自身で個別相談を受けることや、個別の事案について紛争の解決を行うことは可能かどうか。

 さらに、構成員として加えることができるとされている学識経験者やその他必要と認める者に、例えば弁護士さん等も含まれるのか、伺いたいと思います。

山崎(史)政府参考人 お答え申し上げます。

 地域協議会につきましては、内閣府としましては、例えば地方におきます先進的な取り組みの事例を収集し提供することや、設置状況を把握し公表すること等の支援を積極的に行い、地域協議会ができるだけ多くの地域において組織されるよう後押しをしてまいりたいと思います。

 地域協議会の具体的な内容でございますが、地域協議会が個別相談を受けるということは可能と考えますが、みずからがこれについて個別に解決するという機能はございません。

 この解決に当たりましては、その相談を受けとめまして、例えば行政措置権限を有しております主務大臣たる行政機関等の機関にこれを橋渡しする、さらに連携していく、さらには調停やあっせん等の機能を有する既存の紛争解決機関へ結びつけていく、こういう形で問題の解決を後押ししていくということは重要であると考えてございます。

 また、協議会の構成員に誰を含めるかについては、各地域において障害者差別の解消にかかわる方がそれぞれ果たしている役割等、地域の実情を踏まえ、それぞれの地域協議会の関係機関において判断されることを想定しておりまして、その中には例えば弁護士さんも含まれ得るというふうに考えてございます。

中根(康)委員 この地域協議会の設置、そして、その設置よりも何よりも、設置された後どう機能させていくかということが、まさにこの法律の目的を達成するための肝になる最も重要なところの一つであると思っております。

 その意味でも、財政的な措置、支援、これも私ども民主党といたしましても全面的にバックアップをしてまいりたい。年末といいますか、この夏以降の予算編成過程において、ぜひ内閣としても全力で総務省などに働きかけをしていただきたい、そのように思っておりますので、ぜひよろしくお願いを申し上げます。

 続きまして、この法案と障害者基本計画あるいは地方の条例との関係等について質問をしてまいりたいと思います。

 障害を理由とする差別の解消は障害者施策の大きな柱の一つであると考えられることから、その施策は障害者基本法に基づく障害者基本計画に盛り込まれるべきと考えておりますが、いかがかということ。

 そしてまた、基本計画に盛り込まれた施策は障害者政策委員会の監視対象となるとの理解でよいのかどうか、お尋ねを申し上げます。

森国務大臣 本法案は障害者基本法第四条の規定を具体化するものでありますから、本法案に基づく障害を理由とする差別の解消のための施策は、障害者基本法に基づく障害者施策の一つとして障害者基本計画に盛り込むことになります。

 また、障害者政策委員会は、障害者基本法第三十二条第二項第三号の規定により、障害者基本計画の実施状況を監視することとされており、障害者基本計画に盛り込まれた差別の解消に向けた施策は障害者政策委員会による監視の対象となります。

中根(康)委員 明確な御答弁で、我が党議員からもよしとお声がかかっているわけでございます。ありがとうございます。

 地方公共団体によっては、既にこの法案よりもさらに進んだ障害者差別解消のための条例が制定されていたり、今後制定しようと動いていたりすることもあると思います。

 この法案が、そういった地方公共団体のいわゆる上乗せあるいは横出し、こういったものを盛り込んだ条例の妨げになるようなことはないか、お伺いをしたいと思います。

山崎(史)政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案は、地方公共団体の条例を拘束するものではなく、地方公共団体が地域の実情に即して、いわゆる上乗せ、横出し条例を含む障害を理由とする差別に関する条例を制定することは当然に可能でございます。

 本法案には条例を拘束するものではない旨の規定は特段置いてございませんが、今後、本法の施行までの期間において、地方公共団体にその旨を周知することとしたいと思います。

中根(康)委員 国に法律があるからそれでよしということではなく、それぞれの地域にはそれぞれの特性、事情がある、その地域の事情に合った条例がつくられていくということは私どもも望んでおるところでございます。法律に規定がないということもありますので、そういったことについての自治体に対する周知は、ぜひきめ細かく行っていただきたいとお願いを申し上げます。

 法案附則第一条において、施行日が平成二十八年の四月一日と規定されております。時間がかかり過ぎではないかというような声もありますが、どのようなスケジュール感か、お示しをいただきたいと思います。

山崎(史)政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案に基づく差別の解消に当たる取り組みが円滑に行われるためには、あらかじめ関係者の意見を十分踏まえた上で基本方針や指針等を適切に定めること、さらに、国民に対しまして、本法の趣旨や基本方針、指針等の内容を十分に周知を図っていくことが必要でございます。

 このため、基本方針等の作成及び国民への周知期間を確保するという観点から、約三年の準備期間を設け、平成二十八年四月一日を施行期日としたものでございます。

中根(康)委員 この法案の成立、そして施行を待ち望んでいる障害者やその関係者のためにも、できる限り速やかに準備を進めつつ、とはいっても拙速に陥ることなく、障害者や関係者の意見も丁寧に聞いていただいて、基本方針等を定め、その上で国民への周知も十分図っていただきたいと思います。この法案の成立が障害者差別の解消に向けた力強い一歩になるということを期待いたしておるところでございます。

 これまで、この障害者政策分野においては、さまざまな法律をつくってまいりました。それは、とりもなおさず、この国においてはまだまだ障害者の皆様方に対する十分な配慮がなされていなかったあかしであるとも思います。この法律の成立が本当にその第一歩となって、障害のある人もない人も、みんな暮らしやすい、共生社会の実現に向けて貴重な一歩になるということを期待いたしておりますし、念願をいたしているところでございます。

 実は、まだまだこの法律には盛り込んでいただきたい内容がたくさんありました。ありましたが、これも利害関係者がたくさんある法律でもございますので、私どもがそれを主張することによってこの法律の成立がおくれるということがあってはいけないとも考えております。

 そういった意味で、多くの皆様方が、こだわるところはこだわる、守るところは守る、譲るところはお互いに譲り合ってでき上がった法案でございますので、ぜひこの法律、一刻も早く、一日も早く成立をして、有機的に、また実効性あるものとして施行されていくということを心から念願、期待を申し上げつつ、質問を終わらせていただきます。大臣、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 以上です。

平井委員長 次に、杉田水脈君。

杉田委員 日本維新の会の杉田水脈です。

 本日は、障害を理由とする差別の解消の推進に向けたことにつきまして質問をさせていただきます。

 まず前半は、行政機関及び事業所における障害を理由とする差別の解消のための措置について、この法案の内容、その中でも特に、障害者の方々の雇用に関する問題について質問をさせていただきたいと思います。そして後半は、障害を理由とする差別の解消のための社会のあり方、単に会社での雇用問題だけではなくて、社会全体の課題について質問をさせていただきたいと思います。

 先ほど中根委員の質問をずっと聞いていたんですけれども、かなり内容が重なっているところがございますが、重なっているということは、そこの部分に皆さんが問題意識を持っているということだと思いますので、より深い答弁をいただけたらありがたいと思います。

 それでは、まず一点目なんですが、「社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮」を行うというふうに書いてあります。これも先ほどの中根委員の質問の中にもございましたが、この「必要かつ合理的な配慮」というものの具体的な内容をお答えいただきたいと思います。

山崎(史)政府参考人 お答え申し上げます。

 本法律案第七条、第八条に規定されております「必要かつ合理的な配慮」とは、これは障害者基本法第四条第二項を具体化するものでございます。障害者が日常生活や社会生活において受ける制限をもたらす社会的な障壁を取り除くため、個々の障害者に対して個別の状況に応じて講じられるべき措置というのが概念でございます。

 その上で、典型的な例としましては、例えば、乗り物への乗車に当たっての職員等による手助け、筆談、読み上げ等の障害者の特性に応じたコミュニケーション手段による対応、段差の解消のための渡し板の提供等が考えられます。

 具体的にどのような行為が差別に当たり得るかにつきましては、今後、本法案に基づきます対応要領や対応指針において示すことと考えてございます。

杉田委員 ありがとうございます。

 先ほど若干難しい言葉で説明をしていただいたんですが、私が思うに、例えば、障害者の方が働く行政機関や事業所において、その方々が働きやすい環境を整えるということがこの「必要かつ合理的な配慮」という意味ではないかというふうに思っておりますが、そういう理解でもよろしいですか。

山崎(史)政府参考人 お答え申し上げます。

 雇用の分野につきましては、基本的には、雇用に関します促進法に基づき、同じように障害の差別の解消に関する措置について、今現在、法律改正等の検討がされてございます。

 具体的には、雇用に関します、採用から始まりまして、今ございますように働きやすい環境づくりといった内容を含め、まさしく障害者の方にとって個別の状況に応じて講じられる措置というものが、この「必要かつ合理的な配慮」という形になろうかというふうに考えます。

杉田委員 私は、これまでも内閣委員会で質問させていただいていて、割と自分の行政の経験に基づいた質問をさせていただいておったんですけれども、障害者の方々の福祉に関しては全く自分の経験がないものですから、今回、この質問をするに当たりまして、実際に障害者の方々のヒアリングを行ってまいりました。

 その中で、先ほどの、例えば事業所で働く場合なんかは、やはり環境を整えていただくということが大事だということをまず真っ先におっしゃっていただきました。というのが、障害者の方を雇用するというのは、後で私も質問をさせていただきますけれども、法定雇用率の問題があります。雇用促進法に基づいて、例えば目の不自由な方だとか体が不自由な方だとかを雇用するというようなこともあるかと思いますが、大半の場合、障害を持っておられる方というのは、就職したときは健常者であった。しかし、例えば事故に遭ったり病気が進行したりして、目が見えなくなったり、耳が聞こえなくなったり、体に不自由が出たりという方が非常に多いんです。その方々というのは、結局は、会社による無理解でなかなかその職場にいられなくなって、最後は心の病を患うような形でその会社を去るというような事例が非常に多いということも聞きました。

 その中でも、一生懸命アクティブにしていらっしゃる方なんかは、例えば目の不自由な方、弱視の方なんかは、例えばこういうパソコン、これも実際に私が撮ってきた写真なんですけれども、すごく拡大されるようなパソコンがございます。それとか、全部音で表現をしてくれるパソコンとかもあります。こういうものの環境の整備が整えられれば、普通に健常者の皆さんと同じ仕事をすることが可能なんだそうです。

 が、今の現状では、会社にそのような知識がないため、実際に障害者になられた方が一生懸命会社に働きかけて、例えば、こういう器具があるんですよ、こういうパソコンとかが実際に売っているんですよ、また、それを会社が購入すれば国からこういった補助があるんですよということを会社に働きかけていって、やっと理解をしていただいて、それで環境が整う、そういう現状があるみたいです。

 そこの部分で、なかなかそこまで行き着かなくて、先ほども申し上げたように、結局は、会社、それから周りで働く人たちの無理解によって、なかなか働き続けることが難しいという事例がたくさんあると思います。まさしく今回、この法律が策定されることによってそのような状況が改善されていかなければならないと思っておりますが、その点についてはどのようにお考えでしょうか。

小川政府参考人 お答えを申し上げます。

 雇用の分野につきましては、厚生労働省の方で、障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案を現在国会に提出させていただきまして御審議いただいているところでございますけれども、その中で、先生が御指摘のようなことについて、事業主が、雇っている労働者に対して合理的な配慮をしなければならないということを義務づけております。

杉田委員 先ほどの写真を撮ってきたのは、大阪にあります日本ライトハウスというところに行って、実際にそこの施設も見学をさせていただきました。ここは目の不自由な方に特化をした施設なんですけれども、先ほど申し上げたように、そこの施設の中にはそういった方々が働きやすくなるようなさまざまなものが展示販売されておりました。

 この情報なんですが、実は、障害者の方々も、調べないとなかなかこういう情報を得られない。それから、もっと言うならば、障害者の方を雇用している会社側もこういう情報を全く持っていないんですね。

 ですから、先ほどは、それは厚生労働省の中の障害者の雇用の問題ですというふうに言われましたが、私は、今回、この法律ができた意味というのは、今までは、例えば、障害者の分野は厚生労働省ですよ、それがまた子供たちになると文部科学省ですよとなっていた部分が、内閣府でやることによって横串が刺される、そういう縦割りがなくなって、それぞれ関連するところがみんなで知恵を出し合って差別の解消をしていこうといった意味では、この法案は大変意義があると思っておりますので、そういった環境の整備。

 これも厚生労働省の方にお聞きしましたら、今まではどうしても、例えば車椅子の方がいらっしゃったら段差をなくそうとか、そういったハード面に使われてきた部分が多いそうなんですけれども、いわゆるソフト面、こういった方々に対して、例えば、職場に社会福祉士の方を置いて、障害者の方自身の相談にも乗れるし、雇用する側の事業者の方々の相談にも乗れる、また情報提供ができる、そういう環境を整備するというのを進めていく方法で考えていただく。そこまできっちりやっていただかないと、ここに幾らきれいな言葉で、差別を解消する、そして、それに対する必要かつ合理的な配慮と書かれていても、なかなか実態の部分では進んでいかないと思います。

 そういった取り組みを今後進めていただけるのかどうか、これは厚生労働省の方でも内閣府の方でも構いませんので、お答えいただけますでしょうか。

山崎(史)政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案におきましても、第五条でございますが、合理的配慮のための環境整備という規定がございます。ここにおきましては、御指摘のようなハード面のみならず、関係職員に対する研修その他の必要な環境整備、当然、これに関しましては情報のいろいろな発信も入ってございますが、これに努めていくという形になってございます。

 内閣府におきましても、雇用関係でいきますと厚生労働省が当然関係してまいりますが、その他の分野を含め、全般にわたってこういう環境整備の促進に取り組んでまいりたいと考えている次第でございます。

杉田委員 ありがとうございます。前向きにお答えいただきまして、本当にうれしく思います。

 それでは、次に行きたいと思います。

 差別を解消するための措置ということで、合理的配慮の不提供の禁止とか差別的取り扱いの禁止というところがございまして、合理的配慮の不提供の禁止のところに、国、地方公共団体等に関しては法的義務となっております。それから、民間事業者の方に対しては努力義務となっております。

 これも先ほどの中根委員の質問と若干重複するかもしれませんが、まずは、この法的義務、そして努力義務というのは、一体、具体的にはどういうことなのかということをお答えいただきたいと思います。

山崎(史)政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案におきましては、行政機関等と民間事業者に関しまして異なる規定が置かれてございます。行政機関に関しましては、これは第七条でございますが、障害を理由として不当な差別的取り扱いを行うことにより、障害者の権利を侵害してはならないという規定、さらに、「社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。」というふうに規定してございます。この「ならない。」という規定の意味が、まさしく法的義務という点でございます。

 一方、民間事業者に関しましては、「努めなければならない。」という規定でございまして、これを、努力義務という形で、法的義務とは異なるという形で整理しているところでございます。

杉田委員 確認でありますが、言葉で「努めなければならない。」と言うのか「しなければならない。」と言うのかというところの差だというふうにお答えいただいたのですが、この法的義務と努力義務の間には、例えば罰則規定を設けるとか、そういった差は全くないということでしょうか。

山崎(史)政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、行政機関におきましては、法的義務という形で課されてございます。そうしますと、例えば行政機関等が、仮にですけれども、職員がこの法律に違反する行為があった場合におきましては、行政機関等の内部におきます服務規律確保のための仕組みや行政相談等の仕組みに応じて解決が図られます。

 一方、この取り組みに関します実効性の確保という面では、民間事業者は努力義務でございますけれども、行政庁におきまして、主務大臣におきまして、報告徴収、さらに助言、指導、勧告が行えるという形で、いわば行政的な観点からの実効性の確保が図られるという点におきましては、これは変わりはないという点でございます。

杉田委員 ありがとうございます。

 実際に障害者の方々の声を聞くと、事業所のところ、民間事業者の方のところも、努力義務であればなかなか広がっていかない、そこに何らかの法的な実効力というのを添えてほしいというようなことがたくさん意見として寄せられました。

 民間企業は、利潤を追求して、それで成り立っているという部分がありますので、そこのバランスが本当に難しいところだと思うんですけれども、ただ、私も、先ほどの中根委員の質問にありましたように、今後、また三年後に見直しを行うという中では、民間事業者の方にも何らかの、そういった努力義務をもう一歩進めたような形、拡大させていくような形の方向性で検討をお願いしたいなというふうに思うんですけれども、そのあたりはどのようにお考えでしょうか。

山崎(史)政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほどお答えさせていただきましたが、民間の事業者に関しまして、努力義務ではございますが、法律に基づきまして、主務大臣の規定でございますけれども、主務大臣において、特に必要があると認めるときに関しましては、報告徴収、助言、指導、勧告を行える。要するに、一般的な単なる努力義務というよりは、むしろ行政庁においてもこれを推進する、そういう規定が置かれてございます。

 さらに、附則でございますが、法律の施行後三年を経過した場合におきまして、民間事業者に関します努力義務の規定を含め、この法律の施行状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に応じて必要な見直しを行うという規定が置かれてございます。

杉田委員 ありがとうございました。

 それらのことを踏まえまして、この法案の中では、具体的な対応として、政府全体の方針としての差別解消の推進に関する基本方針を策定するとしております。また、国、地方公共団体におきましても、当該分野において取り組みに関する要領を策定するとなっています。また、事業者についても、指針、ガイドラインを策定するという形になっておりますが、これらの基本方針、ガイドライン、また要領などを策定するときに、どのように当事者の方の声を反映されていかれるのか、そのあたりをお尋ねしたいと思います。

山崎(史)政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案におきましては、まず、基本方針に関しましては、第六条でございますが、「基本方針の案を作成しようとするときは、あらかじめ、障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるとともに、障害者政策委員会の意見を聴かなければならない。」という規定がございます。また、ガイドラインの策定に関しましても、「障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講じなければならない。」こういう規定がございます。

 これにつきまして、具体的にどのような形で措置があるかということでございますが、例えば、障害者を構成員に含む会議の開催でありますとか、障害者団体からのヒアリング等が考えられます。

 こうした具体的な内容に関しましては、基本方針において一定の考え方を示した上で、各行政機関等において判断していただくということになります。

杉田委員 ここで一言で障害という言葉になっておるんですけれども、私、障害といってもさまざまな種類があり、また、程度もさまざまだと思うんですね。ほとんど健常者の方と変わらないぐらいの程度の障害の方、軽度の障害の方もいらっしゃいますし、もしくは、生まれてから一生ベッドの上から動くことができないというような、そういう障害の方もいらっしゃると思います。

 当事者の人たちの意見をちゃんと入れてガイドラインをつくりますと、言うのは簡単なんですけれども、御自分で思いをきちっと伝えられる障害者の方もいらっしゃいますし、また、御自分では自分の思いを伝えられないという方もいらっしゃいます。また、その障害者の方を取り巻く周りの、例えば御家族の方とか、実際に介護をなさっている方とか、いろいろいらっしゃいますので、当事者といいましてもさまざまな方々がいらっしゃると思いますが、もう少し具体的に、どのようにこういった方々の声を入れてガイドラインなどを作成するのか、お答え願いたいと思います。

山崎(史)政府参考人 お答え申し上げます。

 ガイドラインの作成自体というのは、それぞれの主務大臣がこれを行ってまいりますが、その段階におきまして、例えばガイドラインに関しますのは法律の第八条でございますが、その中の規定におきましても、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて必要かつ合理的な配慮をしなければならないという規定がございます。

 したがいまして、御指摘のように、障害者の方々についてもさまざまな状況がございますので、それぞれの個性といいましょうか特性に応じた配慮という点から、幅広く障害者の方々についての御意見をお伺いするということが基本になろうかというふうに考えてございます。

 なお、内閣府におきましては、先ほどありましたように、障害者に関する御意見をお伺いしますが、その上で、プラスでございますが、障害当事者に参加していただいています障害者政策委員会の意見を聞くという形で、基本方針の策定に当たっては、幅広い形で意見を聴取し、それを反映していきたい、このように考えている次第でございます。

杉田委員 なかなかまだ具体的な形が見えてこないんですけれども、まだそれが決まっていないということで理解させていただきたいと思います。

 今後、そういったガイドライン策定の委員会とか、そういったものを設置される場合には、先ほど申し上げましたように、できるだけ多岐にわたった障害者の方々の御意見が反映されるよう、その障害者の方々の周りにいらっしゃる御家族の方だとか、またそれを補助していらっしゃる、介護されていらっしゃる方々の声も入れていただけるよう、要望をさせていただきたいと思います。

 それでは、次に参ります。

 これも実際に障害者の方から伺った声なんですが、今回の法案の中に事業主による措置に関する特例というのがございまして、行政機関等及び事業者が事業主としての立場で労働者に対して行う措置については、「障害者の雇用の促進等に関する法律の定めるところによる。」とあります。ここの部分を非常に危惧していらっしゃって、今回、この差別の解消の推進に関する法律ができても、雇用の部分については「障害者の雇用の促進等に関する法律の定めるところによる。」ということになっていれば、結局何も前進しないのではないかというような不安の声が聞かれました。

 このことについてお答えいただきたいと思います。

山崎(史)政府参考人 お答え申し上げます。

 雇用分野につきましては、労使の紛争解決の蓄積がございます都道府県労働局等を活用した紛争解決制度を構築することなど、雇用分野特有の内容を定める必要がございますので、今国会に別途、障害者の雇用の促進等に関する法律の改正法案を提出してございます。これに基づきまして、差別の解消に関する具体的な措置を規定するというふうに考えている次第でございます。

 したがいまして、その観点から、本法案に関しましては、第十三条におきまして、雇用分野における差別の解消に関する具体的措置については障害者雇用促進法に委ねる旨の規定を置いたものでございます。

杉田委員 それでは、その障害者の雇用の促進等に関する法律の内容について質問させていただきたいと思います。

 障害者の法定雇用率が平成二十五年四月一日から引き上げになりました。これによりまして、民間企業は二・〇%となりました。今の法定雇用率が引き上げられたんですが、実際にどれだけの企業がこの法定雇用率を達成されているのか、具体的にお答えいただけますでしょうか。

小川政府参考人 お答えを申し上げます。

 障害者の雇用の状況でございますけれども、年々雇用者は増加しておりまして、平成二十四年六月現在で九年連続で過去最高を更新しているという状況で、進展してはおりますけれども、法定雇用率の達成企業割合を見ると、昨年の六月、平成二十四年六月現在で四六・八%と、まだ半分に満たない状況でございます。

杉田委員 厚生労働省の方では、半分に満たない四六・八%というのは、これで十分だと思っていらっしゃいますか。それとも、もっともっとこれを進めていって一〇〇%に近づけないといけないというふうに思っていらっしゃいますでしょうか。

小川政府参考人 当然、今後とも、この障害者の雇用につきましては促進を図っていって、まさにおっしゃるように一〇〇%に近づくように努力していきたいというふうに考えております。

杉田委員 この法律が施行されてからかなりたつと思うんですが、今、やっと四六・八%というところまで来ていると思います。これがなかなか進んでいかない理由、課題、先ほど、これからもどんどん一〇〇%に近づけるようにというふうにおっしゃっていただきましたが、具体的にここが問題があってなかなか広がらないんだとか、そういった課題とかがございましたらお答え願いたいと思います。

小川政府参考人 お答えを申し上げます。

 いろいろと課題はございますけれども、特に中小企業においてなかなか進んでいかないというふうな問題もございます。

 具体的に何をやっているかということでございますけれども、現在、要するに法定雇用率達成のために、不足している障害者数が多い企業、継続的に障害者の採用を進めることが必要な企業に対しては、計画作成命令を出しまして、そういう企業に対して、計画的に雇用率を達成することを促進しています。特に、不足数が少ない企業については、マッチングに向けて具体的な取り組みを促す等、個々の企業の状況を踏まえて促進についての指導を行っています。

 また、雇い入れ計画につきましては、障害者雇用達成指導の実効性を向上させる観点から、今までは三年間の計画だったんですけれども、それを昨年の一月一日から二年間に見直したということでございまして、さまざまな方法を使って、障害者雇用の促進については、企業に対して指導とか助成などを行って促進をしていくということでございます。

杉田委員 ここでもう一つ、今ある法律について質問をさせていただきたいと思います。

 これは議員立法だったそうですが、身体障害者補助犬法というのがあります。きょうもそちらの傍聴席の方には介助犬を連れた方が座っていらっしゃいますけれども、この法律ができて、飲食店、商業施設、病院等の不特定かつ多数の方が利用する施設、これは全ての施設がそういった補助犬を連れた方が立ち入れるようにしなさいということがここに明確にうたわれておりますが、実際に、盲導犬を連れた目の不自由な方だとか補助犬を連れた体の不自由な方とかにお聞きをしますと、ちょっとレストランに入りたいな、食事がしたいな、喫茶店でコーヒーが飲みたいなと思っても、補助犬を連れていると入店を断られるケースがまだまだたくさんあるそうなんです。

 この法律ができて、全ての施設にそれが義務づけられているにもかかわらず、なかなかそれが進んでいない状況、このあたりは厚生労働省の方では把握していらっしゃいますでしょうか。

岡田政府参考人 御指摘のように、平成十四年に議員立法で成立いたしました身体障害者補助犬法では、国、地方自治体が管理する公共施設、公共交通機関、それから商業施設、飲食店、病院、ホテルなどの不特定多数の方が利用する民間施設、国、地方公共団体の事務所及び従業員五十人以上の民間企業では、身体障害者補助犬の受け入れが義務づけられているところでございます。また、従業員五十人未満の民間企業、民間住宅では、受け入れが努力義務ということにされているところでございます。

 先生御指摘のとおり、身体障害者補助犬使用者それから訓練事業者などの関係者からは、法律的に受け入れが義務づけられている施設におきましても必ずしも円滑に受け入れられていない事例があるというようなこともお聞きしています。そのたびに、補助犬に関する説明を行って受け入れへの理解を求めていると聞いておるところでございます。

 厚生労働省といたしましても、こうした補助犬法に対する正しい理解の普及を進めていくことが重要だというふうに考えておりまして、パンフレット、リーフレット、ステッカーの配布であるとかイベントの実施などを通じまして理解の普及に努めているところでございまして、引き続き、地方自治体を初め関係者とも連携を図りつつ、さらなる理解を深めていきたいというふうに考えているところでございます。

杉田委員 今、具体的に既存の二つの法律について紹介をさせていただきましたが、これらの法律が策定されてから、それが目標としているところになかなか達していないという現状があると思います。

 その中で、今回、この障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律が策定されれば、これらの関連する障害者の方々について、きょう例を挙げたのは二つですけれども、たくさん法律があります。その中では、目的を達成できていない、まだなかなかその水準まで達していない法律がたくさんあると思うんですが、今回、この差別解消の推進に関する法律がきちっと策定されたときには、これらの障害者の皆様を対象とした既存の法律がどのように相乗効果を上げて前進していくのか、そのあたりをどう考えていらっしゃるか、これは内閣府の方にお聞きしたいと思います。

山崎(史)政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のように、障害を理由とする差別の解消の推進は、まさしく各府省の所掌に横断的にまたがる施策でございます。

 したがいまして、本法案におきましても、差別解消の推進に関する施策を総合的かつ一体的に実施していくという観点が大変大事だと考えておりまして、そのための基本的な方向に関します基本方針を定めるということになってございます。

 こういった基本方針の策定、さらにそれに基づきます各施策の一体的な推進という形を進めまして、まさしく関係省庁とも連携して障害者差別解消の全体の推進を図っていくということで取り組んでまいりたいと考えている次第でございます。

杉田委員 そこの部分が、この法律に関して皆さんが一番期待しているところだと思うんです。ですので、全体的に相乗効果でさまざまな法律に命を吹き込む、きっちりと目標達成できる方向に進んでいく、そういった視点でこの法律を考えていっていただけたらと思います。

 それでは、後半の方に入っていきたいと思います。

 先ほどは雇用のことを中心に質問させていただきましたが、そもそも、障害を持っていらっしゃる方々を取り巻く状況の中で一番大切なのは、教育の分野ではないかと思います。

 障害児の方々に対する教育、いろいろな問題点があると思うんですけれども、きょうは私は、一点だけ質問させていただきたいと思います。

 今回、この法律案の中には、明確に、「発達障害を含む。」という言葉が書かれております。今、教育の現場では発達障害が非常に増加傾向にあるというふうに伺っておりますが、このあたり、今の学校における発達障害の子供たちの数とか状況についてお答え願いたいと思います。

関政府参考人 文部科学省が昨年実施をいたしました調査におきまして、知的発達におくれはないものの、発達障害の可能性のある、学習面または行動面において著しい困難を示すとされました児童生徒の割合が、平均をいたしますと、小中学校合わせて、通常の学級で六・五%と推計をされたところでございます。

 この調査におきましては、それらの児童生徒に対する支援の状況につきましてもあわせて調査をしておりますが、その中では、具体的に、個別の教育支援計画や指導計画を作成したり、特別支援教育支援員といった学習活動などのサポートをする支援員の対象としたり、あるいは授業時間、授業時間以外での個別の配慮などが行われるというふうに承知をしておりまして、文部科学省としても、これらの調査を踏まえて、さらなる支援の充実ということに努めてまいりたいと考えております。

杉田委員 きのうもこのあたりを詳しくお聞きしましたところ、先ほどありました六・五%という数値を出すに当たりましては、これは、学校の先生が自分たちの生徒を見られて、この児童は発達障害があるのではないかと、疑わしい子供たちの数を出してきて、六・五%と出しているそうなんです。

 また、ここが私は問題だと思っておるんですけれども、実際に発達障害であるかどうかということを診断する施設において、この子は本当に発達障害です、病名は何々ですと診断された子供の割合となってくると、またそれは違った数値になってくるということなんです。

 きのうも、この質問をするに当たりましてお聞きをしますと、そういった教育現場での発達障害ということにつきましては文部科学省さんが担当です。それから、先ほど私が申し上げた、この子は発達障害であるというふうな形できちっと診断をする機関というものについては厚生労働省が管轄をしているということなんですね。

 私も児童福祉の分野におりました。保育所とか学童保育とかを担当しておりましたが、本当に親御さんも悩んでいらっしゃる。それから、保育士さんとか学校の先生とか、子供たちをお預かりしたり教育したりする側の方々も非常に悩んでいらっしゃるのがこの発達障害なんですね。

 先ほど申し上げました、この子は本当に発達障害です、だからこういうふうな処置をとっていきましょうねというようなことを判断する機関が余りにも少な過ぎるらしくて、例えば、どこどこの大学の研究室ではやってくれるらしいよとか、公にこういう施設がやってくれるらしいよというのはありますけれども、これも地方でばらつきがありますし、それぞれ親御さんがそういう判断を求めようと思っても、なかなか連れていくところがない。

 それからまた、そういう子供を診断しようと思うと、一人ぽつんと置いておいても診断できませんから、集団で遊んでいる子供たちの状況を見ながらそれを判断していくわけです。いろいろな、幼稚園とかそういうところに専門家が回ってきてくださって、ああ、この子はそうですねというふうに判断していただくんですが、そういう専門家の数も足りないので、幾ら保育所とか学校とかが頼んでも、なかなか順番が回ってこないというようなことがあります。

 こういった点について、これはまた、先ほど申し上げたとおり厚生労働省になると思うんですけれども、そのあたりは今後どのようにしていこうか。ここの部分というのは、まさしく、差別の解消に対して、子供たちのことですから、一番出発点だと思うんですね。そのあたり、今後どのように取り組んでいかれるかということについてお尋ねしたいと思います。

岡田政府参考人 発達障害児の支援を行う上で、可能な限り早期に障害を発見して支援につなげるというのが非常に重要だと、先生の御指摘がありましたが、そういうふうに認識しているところでございます。

 そういう意味で、まず、早期に発見するという意味でございますが、現在では、発達障害児の特性が、集団での行動の中だけじゃなくて、例えば、目を合わせないであるとか、指した方向を向かないというようなことで、そういった発達の特性が大分明らかになったということもございまして、現在、市町村の実施しています一歳六カ月児健診であるとか三歳児健診で、そういった精神発達の状況であるとか言葉の発達の部分なども健診項目に加えまして、発達障害の発見の契機にしているところでございます。

 なかなか診断をつけられないんじゃないかということでございますが、診断をつける前に、やはり、障害をお持ちの方が必要な福祉サービス、療育サービスと呼んでいますが、そういった支援につなげることが重要であるというふうに考えておりまして、現行制度では、発達障害児が福祉サービスを利用する場合に、医師の診断を求めなくてもサービスが受けられるような形で運用させていただいているところでございます。

 そういうこともございまして、発達障害児の数を把握できるような形になっていないということでございまして、現在、障害児がどれだけいるかということをお示しする数字は手元にちょっと持っていないという状況でございます。

 なお、統計調査という観点では、発達障害と判断されて入院または通院している患者さん、これは患者調査という調査で毎年とっているわけですが、平成二十三年度におきましては約十一万二千人という報告がされているところでございます。

 それから、発達障害を診察できるようなお医者さんをもう少し育成したらどうか、数が少ないんじゃないかというような御指摘も受けているところでございまして、これにつきましては、発達障害の診断、相談、指導ができます医師の人材育成につきまして、独立行政法人国立精神・神経医療研究センターにおきまして医師に対する研修を行うなど、その育成に努めているところでございます。

杉田委員 まさしく先ほどの答弁にもございました早期発見というのが大切で、先ほどの雇用のことも全く同じなんですけれども、周りがきちっと理解をして環境を整えることで、その子供の成長が大きく左右されるというものがあります。そこの部分は、今、本当に把握ができない状態だというようなことも答弁の中にありましたが、しっかりと取り組んでいっていただきたいと思います。

 それでは、次は法務の分野なんですけれども、私がこのことについて問題意識を持ちましたのが、実は、「福祉の支援が必要な刑務所出所者の現状」、こういったペーパーがありまして、これを見てちょっと問題意識を持ちました。

 この中には、現在刑務所で生活をしている方々の中にある一定の割合で知的障害または知的障害が疑われる方がいらっしゃる、その方々にきちっとした支援をしていかなければ、これは私の言葉ではないです、このペーパーの中に、再犯リスクが大きいというふうな形で指摘をされているんです。

 これについて、出所者という方の、刑務所に入っていらっしゃって今度出所するとき、どういう形でケアをしていらっしゃるかということと、それからもう一つは、実際にそういった方々を、先ほどもありましたグループホームだとか、いろいろな形で地域で支援をするところがもうちょっとしっかりといろいろな形で出てくれば、再犯リスクというものも低くすることができるのではないかと思います。

 この二点、これは多分、一つは法務省で一つは厚生労働省になると思いますが、それぞれ御答弁いただきたいと思います。

和田政府参考人 お答え申し上げます。

 刑務施設におきましては、平成二十四年十二月末の時点で、受刑者中、知的障害及びその疑いのある者の割合が二・二%であると把握しているところでございます。

 そこで、そういった知的障害等で出所後自立が困難な者に対する取り組みでございますが、刑事施設におきましては、社会福祉士、精神保健福祉士を配置し、福祉的な支援が必要な受刑者に対して社会復帰に向けた相談や助言等を実施しているところでございます。

 特に、障害等を有し自立が困難な受刑者につきましては、刑事施設入所中から保護観察所や地域生活定着支援センターなどの関係機関と連携し、出所後速やかに福祉施設に入所させるなど、必要な福祉サービスを受けることができるように努めているところでございます。

岡田政府参考人 厚生労働省におきましては、障害をお持ちの方が地域において安心して生活できるようにするため、その住まいの場でありますグループホーム、ケアホームなどの整備を進めているところでございます。

 それから、在宅の障害者と常時の連絡体制を確保し、緊急の場合には必要な支援を行う、地域生活支援事業というのも、障害者総合支援法の事業として平成二十四年四月から新しく実施しているところでございます。

 さらに、成年後見制度の利用をしていただくということも非常に重要だというふうに考えておりまして、その利用を促進するための取り組みを行っているところでございます。

 先ほども御指摘がありました、罪を犯した障害者を対象といたしました支援につきましては、矯正施設退所者が退所後に直ちに福祉サービスにつながりますよう、障害手帳の発給や社会福祉施設への入所などの調整を行うために、地域生活定着支援センターというのを平成二十一年度から全国に設置しておりまして、二十三年度には全ての都道府県でセンターの設置が完了して、より効果的に全国調整力のある体制を整えたところでございます。

 さらに、去年改正になりました障害者総合支援法におきましては、地域生活を支えるという意味でグループホームとケアホームを統合するというような取り組みをしていまして、これは二十六年から施行することにしております。それに合わせまして、先ほどの地域移行支援ということで、従来は施設から地域に移ってもらうという方を対象にしていたわけですが、今回、この法律でさらにその対象を拡大するという中で、新たに矯正施設の退所者を加えることを現在検討しているところでございます。

 さらに、総合支援法の附帯決議におきましては、三年後の見直しなどにおきまして、障害者の高齢化、重度化だとか親亡き後も見据えつつ、ケアホームと統合した後のグループホーム、小規模入所施設などを含めました地域における居住支援のあり方につきまして検討すべきとされているところでございますので、今後もこの附帯決議を踏まえまして居住支援の充実を図っていきたいというふうに考えているところでございます。

杉田委員 まさしく先ほどの答弁にもございましたが、これも私が実際に障害児を持つ親御さんから聞いた話ですけれども、やはりこの子を残して死ねないというのがありまして、親亡きそういう障害を持った方々に対する、その方がいかに自立をしたりとか、また、周りの支援によって地域で暮らしていけるかということは、今の日本に非常に重い課題だと思います。今回の差別の解消の推進に関する法律ができることによって、これがまたもっと前進するような形で取り組んでいただければと思います。

 それでは、この部分の問題点、私の方から最後になりますが、質問をさせていただきたいと思います。

 私が今回この質問を組み立てるに当たりまして、先ほど申し上げました日本ライトハウスというところを視察してまいりました。そこでは、例えば点字に訳すとか、音声を入れてCDをつくるとか、さまざまな活動がなされていましたが、そこで働いていらっしゃる方のほとんどがボランティアなんです。

 私は、自分が携わっておりました児童福祉の分野、例えば保育とかにしたって、子供たちのお世話をする保育士さんとかというのは、きちっと職業として確立がされています。それから、高齢福祉の分野、これも、介護士さんとかそういうふうな方々が、高齢者の方々をお世話する職業としてきちっと確立をされておりますが、どうもこの障害福祉の分野においては、ボランティアの方が担っている割合がすごく多いということを、実際に、障害者の方からも、そういった施設の方からもお聞きしました。

 日本は、例えば児童福祉の分野においては、ほかの国々と比べても決して劣っている水準ではないと思うんですね。高齢福祉の分野についても、日本は他国に類を見ないスピードで高齢化社会に突入しておりますから、これもほかの国から見れば全然劣っていない水準だと思いますが、この障害の分野におきましては、非常に日本はおくれている。例えば、障害児をお持ちの方がアメリカに行かれたら、赴任期間が終わってもこの子のことを考えれば日本に戻りたくないとか、そういったことをよくお聞きします。

 そういったことも踏まえて、この障害福祉の分野というのを充実させていくには、やはりその方々を支援する、お世話をする方々も、一つの仕事としてそれで生活ができるというような形を確立していくことも必要なのではないかと考えますが、これについて御答弁願いたいと思います。

岡田政府参考人 障害福祉の分野は、例えば点訳であるとか、補助犬を育成するパピーウオーカーと言われるような形で、非常に多くのボランティアの方がかかわっておられるというふうに認識しておりますが、福祉サービスを提供される中核的なサービスに従事されている方につきましては、障害者総合支援法の中で、必要な費用を確保して必要な給付を行えるような形にしているところでございます。

 平成十八年に成立しました障害者自立支援法の施行以来、障害福祉の関係予算は毎年一〇%程度伸びているということでございまして、予算額が七年間で約二倍に達しているということでございます。

 個別の障害福祉サービスを提供いたしました事業者に対して支払われます報酬につきましては、そうした予算の増加も反映いたしまして、事業所の経営実態などを踏まえて、平成二十一年度にプラス五・一%、平成二十四年度に二%の改定を行ってきて、その充実に努めているところでございます。

 さらに、福祉、介護職員の処遇改善という観点から、平成二十一年度から障害者自立支援対策臨時特例交付金による基金事業といたしまして、賃金一・五万円相当の引き上げの経費を事業所などに交付いたしてきました。これにつきましては、平成二十四年度の障害の報酬改定におきまして新たに加算を設けまして、現行の報酬体系の中に取り込むなどの充実を図っているところでございます。

 今後とも、障害福祉に中核的に従事していただく方の処遇がしっかりできるような形で、予算の確保であるとか処遇の改善につながるかということを検証しつつ、必要な対策をとってまいりたいというふうに考えているところでございます。

杉田委員 ぜひ進めていただきたいと思います。

 今回、この質問を組み立てるに当たって、障害者の方々からいろいろお話を聞きましたが、一番心に残った言葉が、私たちは平等にしてほしいのではないんです、公平に扱ってほしいんですというふうにおっしゃいました。この平等と公平、一見、差別を解消するという言葉からはどちらの言葉も想像されると思いますが、平等と公平は違います。そのことをしっかり考えていただき、この障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律が、きっちり魂を持って、障害者の方々の自立、そして生活面において実質的にさらに向上していく、そういった法律になることを願っております。どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、質問を終わります。ありがとうございました。

平井委員長 次に、大熊利昭君。

大熊委員 みんなの党の大熊利昭でございます。本日もよろしくお願いいたします。

 私の方もこれまでの議論と重複するところがあろうかと思いますが、御容赦いただきたいと思います。

 まず、先ほど来もございます障害者の権利条約とこの法律の関係でございますが、条約で要請されている事項のうち、この法律で定められていない、あるいは不十分だというふうに国連等から指摘される可能性のある事項、ここを、もしあれば、どういうところがあるのか、お答えいただきたいと思います。

山崎(史)政府参考人 お答え申し上げます。

 これまで政府は、障害者権利条約の締結に向けた必要な国内法の整備としまして、障害者に係る制度の集中的な改革を行ってまいりました。障害者基本法の改正、障害者総合支援法の制定等に取り組んできたところでございまして、本法の制定により、障害者権利条約の締結に向けての国内法の準備として必要な措置を講じたことになるものと認識してございます。

大熊委員 条約に向けては不十分な点はないんだ、そういう認識をさせていただいたところでございます。

 次に、先ほどもありましたが、この法律の施行期日が三年先である理由、これは、周知等に時間がかかる、こういう御説明だったというふうに理解をいたしますが、それでは、その周知等に当たっての具体的なスケジュールなりあるいは工程表、こういったものをおつくりになっていらっしゃるかどうか、この点をお答えいただきたいと思います。

森国務大臣 本法案に基づく差別の解消に当たる取り組みが円滑に行われるためには、あらかじめ関係者の意見を十分に踏まえた上で基本方針や指針等を適切に定めるとともに、国民に対し、本法の趣旨や基本方針、指針等の内容を十分に周知しておくことが不可欠であります。このため、基本方針等の作成及び国民への周知期間を適切に確保するため、約三年の準備期間を設け、平成二十八年四月一日を施行日といたしました。

 現在のところ、国民に対する周知についての工程表などの作成は具体的には予定をしておりませんけれども、十分な期間を確保し、周知を図ってまいりたいと考えております。

大熊委員 例えば、仮に秋までに何件ぐらい意見を聞いて、それに基づいて基本的な方針を年末までにつくってとか、そういうようなスケジュール感というのは、工程表という具体的な、しっかりした、閣議決定をするようなものじゃなくても結構なんですが、大体のスケジュール感というのはどんな感じなんでしょうか、お答えいただければと思います。

山崎(史)政府参考人 お答え申し上げます。

 法律の施行に当たりまして、さまざまな準備が必要でございますが、特に私どもとしましては、基本方針、さらにそれに基づきます指針の作成、やはりこれをできるだけ早く進めたいと思っております。これを進めることによって国民に対する周知の期間というものが適切にとれるという形でございますので、現在まだ具体的な日程までは詰め切れてございませんが、まずはこの基本方針と指針の策定に全力を挙げて取り組んでいきたい、このように考えている次第でございます。

大熊委員 その指針の策定の日程が未定だということなんですが、策定の日程は、では、大体いつごろわかる、できる、その日程に基づいて指針そのものができていくんだろうと思いますが、日程の、今言われた未定だというのが解消するのは大体いつごろなんでしょうか。

山崎(史)政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、作業としましては、基本方針を策定する作業に入ります。これに関しましては、基本方針の案を作成する段階で、障害者その他の関係の方々の御意見を聞く、さらに障害者政策委員会の意見を聞く必要がございます。これを踏まえて策定を行っていくという形でございます。具体的に、いつの段階で意見を聞き、さらに策定できるかということまではまだ詰めてございませんが、いずれにいたしましても、できるだけ早くこれについて策定していく必要があると考えてございます。

 なお、さらに、その基本方針を踏まえた上で、今度は各主務大臣において指針を定める形になりまして、それもまた障害者等の御意見を聞いて定めるという形でございます。

 三年間という目安でございますが、基本方針、指針の策定に関しましては、できるだけ国民周知の期間をとりたいということで、これについてはなるべく早くやっていきたい、このように考えている次第でございます。

大熊委員 通常、スケジュールとか予定表というのは、最初にばっちり立てていても、大体そのとおりにならないわけでございます。今の御答弁を伺っていますと、最初から、ちょっとなかなか具体的にはスケジュールはわかりませんという御答弁なので、これではいわゆるロケットスタートにならないおそれがあるのではないかという懸念を持ちますので、ぜひその点はよろしくお願いを申し上げます。

 一点、もとに戻りますと、そうしますと、冒頭申し上げた権利条約の締結、これもおおよそ三年後、つまり、施行後という理解をしてよろしいのでしょうか。

新美政府参考人 お答え申し上げます。

 この条約につきましては、既にさきの何人かの委員からの御質問にもお答え申し上げておりますとおり、国内制度の整備状況の進捗を踏まえた上で可能な限り早期に締結をしたい、それを目指したいと考えております。

 そして、今の御質問の関連では、今御審議いただいております障害者差別解消推進法の施行日以前に条約が締結されること自体については、特段問題がないと考えております。

    〔委員長退席、関委員長代理着席〕

大熊委員 条約については三年を待たずに締結が可能という理解をさせていただきました。こちらの方もスピーディーにやられた方がよろしいのかなというふうに理解をさせていただきます。

 続きまして、条文に沿って具体的に幾つかお尋ねをさせていただきたいと思います。

 六条関係でございますが、基本方針に定める事項のうち、四番のその他というところがございますが、これは、例えばどのようなことがその他の事項ということになるのでしょうか。

山崎(史)政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘は、第六条の基本方針の関係でございましょうか。(大熊委員「はい」と呼ぶ)

 基本方針に関しましては、具体的内容について第二項に書いてございますが、まず、第一号、第二号、第三号の方で差別解消に関するそれぞれの基本的な方向でありますとか、ガイドラインに関する事項がございます。それ以外の第四としましては、例えば、環境整備等、まさに差別解消の推進に関する規定、さらに地域の協議会等、こういうまさに全般にわたる差別解消支援措置に関する規定、こういったものを一つの内容というふうに考えているところでございます。

大熊委員 同じ六条の四項のところなんですが、「内閣総理大臣は、基本方針の案を作成しようとするときは、あらかじめ、障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるとともに、障害者政策委員会の意見を聴かなければならない。」ということで、この意見を聞いた場合の反映の程度ですね、この辺は、ほぼ全て反映させるんだということなのか、半分程度なのか、あるいは、反映をさせるもの、させないものの判断基準なり、この辺についての考え方を教えていただければと思います。

山崎(史)政府参考人 お答え申し上げます。

 法律におきましては、「あらかじめ、障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずる」こと、そして「障害者政策委員会の意見を聴かなければならない。」と書いてございます。

 実際に、これは手続として、こういう形で、障害当事者の御意見を含め、意見を聞いていくということになります。その上で、基本方針の内容に関しましては、当然、その趣旨を十分踏まえながら内容を定めていくという形になるものでございます。こういう御意見をお伺いしながらまさしく基本方針を定めていく、そういう状況になっている次第でございます。

大熊委員 法律そのものには書き込みがたい、書くことが難しいんでしょうが、基本的な精神としては、この意見というのを尊重し、なるべく反映していくんだ、そういうような姿勢というふうに理解してよろしいでしょうか。一言お願いします。

山崎(史)政府参考人 お答え申し上げます。

 基本方針、さらにガイドラインの策定に当たりましては、まさに障害者その他の関係者の御意見等を踏まえ、それに関しまして反映していくという形のものを当然考えていく必要があるというふうに考えております。

大熊委員 その点、確認をさせていただきました。

 続きまして、七条あるいは八条の方の関係でございます。

 まず、七条で「不当な差別的取扱い」というふうな書きぶりでございますが、この部分で、「不当な」というのが入っている。つまり、「不当な」のない「差別的取扱い」ではなくて、「不当な差別的取扱い」、こういうふうに書いてある。この「不当な」が残っている理由について教えていただけますか。

山崎(史)政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の「不当な差別的取扱い」という用語でございますが、これは、さまざまな広い分野において多くの法律で用いられている概念でございます。この場合の「不当な」というのは、それぞれの法律において解釈が定まってございますが、当該取り扱いに正当な理由がある場合には、まさに禁止される不当な差別的取り扱いに該当しないという趣旨でございます。

 この正当な理由がある場合としましては、例えば、今回のケースで申し上げますと、障害者御本人や第三者の生命身体を保護する必要がある、こういったような正当な理由がある場合においては、不当な差別的取り扱いには当たらない、こういう形の解釈になる次第でございます。

大熊委員 そういう限定規定を置いているということで理解をさせていただいたところなんですが、確認も含めて、七条の括弧書きのところについては、行政機関等における障害を理由とする不当な差別の禁止ではなく、ここは「不当な」が消えているんですが、この辺についてはどのように理解をすればよろしいんでしょうか。

    〔関委員長代理退席、委員長着席〕

山崎(史)政府参考人 先生御指摘は、第七条の見出しの部分でありますか。(大熊委員「はい」と呼ぶ)

 これは、第七条には一項と二項がございます。そして、第一項が不当な差別的取り扱いの禁止規定でございます。第二項がいわゆる合理的配慮の不提供の禁止でございます。両方を含めまして、差別の禁止という形で、全体をくくってこういう見出しという形になっている次第でございます。

大熊委員 条文上の話なんですが、全体をくくるので、括弧書きのところは「不当な」を外している、そういうことだと理解をいたしました。

 続きまして、同じ七条の二項の、今おっしゃられた部分の関係でございますが、二項のところ、後ろから二行目ですね、「社会的障壁の除去の実施」、こういうふうに書いてございます。

 あるいは、五条にも「社会的障壁の除去の実施」、こういうのがあるわけなんですが、五条の方は比較的ハードウエア的な事柄、例えば「自ら設置する施設の構造の改善及び設備の整備、」こういったハード的なところが書いてあって、それで「障壁」、そういう対応になっているのかなというふうに想像するんですが、七条の二項のところに「社会的障壁の除去」と書いてある理由、つまり、ここを差別の解消の実施としなかった理由、これは何なのか、ちょっとお答えいただきたいと思います。

山崎(史)政府参考人 お答え申し上げます。

 これは、第七条二項というのは、先ほど申し上げましたように、差別の禁止という規定の、第一項が不当な差別的取り扱い、これは作為による差別と呼んでございますが、その部分、そして第二項が不作為による差別ということで、合理的な配慮を行うという趣旨でございます。

 その合理的な配慮を行うという趣旨の中では、社会的障壁の除去の実施ということがまさしく必要であるという趣旨から書いたものでございます。

 差別の解消という概念からいきますと、差別の解消は、まさに全体を包括している概念でございます。その面でいきますと、この第二項の規定は、まさに合理的配慮に関する規定を個別にここに定義している、こういうものでございます。

大熊委員 そのように書き分けているといいますか、ある程度の限定をかけている、そういう理解をさせていただきました。

 続きまして、同様の部分なんですが、障害者の性別、年齢及び障害の程度に応じてというような書きぶりになっておりますが、一方で、先ほどの権利条約の方では、障害のある女子と児童については六条と七条で特別の措置をとる、特出しをしているわけなんです。

 要は、条約では特出しをしている、この国内法ではそうなっていない、つまり、「障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、」というふうに書かれている。この関係はどうなんでしょうか。普通にそのまま読むと若干そごがあるように見受けられるんですが、この辺をどういうふうに考えればよろしいのか、お答えいただきたいと思います。

山崎(史)政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の第七条、及び第八条にも書いてございますが、障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて必要かつ合理的な配慮をしなければならぬという規定自体が、今先生が御指摘いただきました、障害者権利条約の第六条、第七条の趣旨を踏まえたものという形で整理している次第でございます。

大熊委員 例えば、ここのところに追加の条項をつくって、特に女子や子供についてはという、そういった規定を追加する、あるいは政府内の検討の中で追加していたけれどもおっこっちゃったとか、そういう経緯があるんでしょうか、ないんでしょうか。

山崎(史)政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の差別の解消に関しまして、御指摘のように、女性でありますとか子供に関しまして配慮が必要だという指摘がございます。

 基本的には、今回、法律でこういう規定で障害者の性別、年齢及び障害の状態という形で一般的な規定を置いてございますが、最終的には、これを踏まえながら、先ほど申し上げました基本方針の策定でありますとかガイドライン、ここにおいて個別に、例えば女性でありますとか子供に対する配慮等も当然考えていくという形で具体化していくということで整理させていただいているところでございます。

大熊委員 改めて、障害のある女子、障害のある児童について、ここの法律の中で特出しを書く必要はなかったのか。法律の以降でというようなお話なんですが、法律の中で書き込む必要は不要と判断して政府はこういう案を出してきたわけなんですが、不要だというふうに認識された理由、この辺のところを改めてお願いいたします。

山崎(史)政府参考人 お答え申し上げます。

 今申し上げましたように、趣旨におきましては、女性と子供等の配慮につきましては当然受けとめていくということで、法律を整理させていただいています。

 条文上の整理としましては、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じてというのは、今ありました障害者権利条約に基づきます障害者基本法という法律がございます。この基本法におきまして、こういう形の規定を置いてございます。まさにそれを受けた形で、今回、条文をこういう形で整理しているところでございます。

 したがいまして、趣旨におきましては、条約の趣旨を踏まえながら、基本方針等において適切に対応していくというふうに考えている次第でございます。

大熊委員 趣旨は入っているということで理解をさせていただきましたが、条文上はっきり書いた方がよろしいのかなというふうには意見を申し上げておきます。

 続きまして、先ほど来出てまいりました事業者への努力義務のところなんですが、「負担が過重でないとき」というような書きぶりになってございます。先ほどもございましたが、改めて、ここの部分について、過重でないときというのはどういうところなのか、御説明いただきたいと思います。

山崎(史)政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の、合理的配慮に関します「その実施に伴う負担が過重でないとき」という趣旨でございますが、これは、障害者が必要としている社会的障壁を除去するために生じる負担が、社会的障壁の除去を求められている者、これは事業者でございますが、それが受忍すべき程度を超えていないことをいいまして、その具体的内容に関しましては、事業等の規模や、その規模から見た負担の程度等、種々の要素を配慮して総合的に判断されるということになります。

 なお、その具体的な考え方に関しましては、先ほど来申し上げていますように、本法案におけますガイドライン等において定めていく、考え方を示していくというふうに考えている次第でございます。

大熊委員 私も議員になる前にいろいろな民間企業で働いていたわけなんですが、そもそもの発想として、こういった障害による差別を解消するための企業としてのいろいろな措置、これが単なるコストなんだ、負担なんだ、こういう発想を転換すべきだろうと。それは、精神条項として、そういうふうにした方がいいよ、そういうふうに民間企業に言うのではなくて、実際にそういうことをやることによって、例えば、企業のCSRの活動の一環として、企業のイメージが向上するような環境づくり、それによって、実際、その企業のサービス、製品を買おうじゃないかとか、そういう環境整備。

 例えば、私はこの分野の専門家ではございませんが、努力をした企業を、仮に、どういうふうにするのかあれですが、ポイント制にする。日本の上場企業、未上場も含めて、ポイントランキングをつくる。そういったものを大々的に公表する。そうしたら、一位になった企業というのは社長のインタビューでもやれば、その企業にとって物すごい宣伝効果があるわけですね。

 そうしたら、その会社のサービスや商品を買おうか、こういうふうに消費者は考える可能性があると思うので、こういうプラスの方の環境づくり、啓発活動の一種かもしれないですが、こういうことは法律上にも書いてないわけなんですが、逆にこういう発想も、いつも、コストなんだという、だから、過重か過重じゃないかという、瑣末なとは申しませんが、そういう議論に集中してきてしまうと思うので、そうではなくて、コストじゃなくて、それが一種の企業としてのプラスの活動の一環なんだ、そういうことを世の中に広めていく、啓発していく、そういう施策が必要なんじゃないかな、環境整備が必要なんじゃないかというふうに思うんですが、その点はいかがでしょうか。

山崎(史)政府参考人 御指摘のとおり、まさしく啓発活動が大変大事だというふうに考えてございます。

 その中では、国も地方公共団体もございますが、事業者におきましても、こういう障害を理由とする差別の解消に向けて積極的に取り組んでいただくということを支援していくということも非常に大事だと考えてございます。

 御指摘の点を踏まえまして、いかにすれば事業者におきましてもこういう取り組みがさらに広まっていくかを私どもとしても十分検討し、推進してまいりたい、このように考えている次第でございます。

大熊委員 ぜひ、企業に対して、コストという観点ばかりではなくて、そういった前向きの観点でいろいろ環境づくりを政府としてやっていただきたいということを強く期待をさせていただきます。

 関連しまして、十五条の啓発関係なんですが、例えば、本日現在、現に起きている事柄としまして、ネット上での書き込みですね。具体的には、障害者の方の入店を事実上拒否する、それに対して、おかしいんじゃないかというような種類のツイートをした方に対する嫌がらせ、誹謗中傷、こういったものが現に起きているわけなんです。

 こういったことを、今回審議していますこの法律によって何か措置をとれる、あるいは、この法律以外の法律も含めて措置をとれる、そういった可能性はどうなんでしょうか、あるんでしょうか、教えていただければと思います。

山崎(史)政府参考人 お答え申し上げます。

 個別の事案については、ちょっと詳細を私ども存じておりませんので、それについて正確なお答えはできませんが、この法律案の基本的考え方におきましては、いわゆる一般私人の行為とか個人の言論、思想に関しましては、この法律自体の規制対象となってございません。

 ただ、いろいろな面で啓発が当然必要だという点につきましては、啓発を行っていくということは非常に大事だというふうに考えている次第でございます。

大熊委員 事務方の皆さんとも事前に議論をさせていただいたところなんですが、これは個人じゃなくて、そういったサービスを提供しているプロバイダーに対して、そういう不適切なリツイート等、これは努力義務にも反しているのではないかということで、極端に言うと削除依頼ということですね。こういったことについて可能性はどうなのかということなんですけれども。

安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案とネット上の書き込みの関係につきましては、ただいま御説明のありましたところでございます。

 また、一般論として申し上げましても、他人を誹謗中傷する等、他人の権利を侵害する情報がインターネット上で流通している場合には、削除等によりその流通を防止することが基本となるところでありますけれども、その流通防止のあり方につきましては、表現の自由の保障との関係から、国といたしましては慎重に対応する必要があるところでございます。

 このため、いわゆるプロバイダー責任制限法においては、プロバイダーなどがそうした情報を削除し、または削除しなかった場合、いかなる条件を満たせば民事上の損害賠償責任について免責されるかを明らかにすることによりまして、プロバイダーなどにおいて、被害者救済と発信者の表現の自由の保障という重要な権利利益のバランスに配慮しながら、自律的に削除すべき情報を適切に削除するための制度的基盤を整えているところでございます。

 この法律に基づきまして、権利侵害を受けたという方がプロバイダー等に対して削除要請をすることはできる形にはなっております。

大熊委員 あくまでも努力義務として、こちらの内閣府さんの障害者の御担当の部局の方で音頭をとっていただいて、企業努力の一環でそういうことも、措置というのは難しいかもしれませんが、何らかの仕組みを検討していただけるというふうなことを期待させていただきます。

 あと二、三分でございます。

 先ほども出ました障害者差別解消支援地域協議会でございますが、例えばここと、もう一つ、十二条に基づく指導、勧告の関連なんですが、仮にこの協議会の事例をもとにして、十二条に基づいて、主務大臣が特に必要があると認めたときに指導、勧告を行うというケースのときに、秘密を開示するかどうかに当たって、どういう仕組み、当事者の意見が反映される仕組みになっているのか、これについて教えていただければと思います。

山崎(史)政府参考人 お答え申し上げます。

 先生の御指摘は、第十二条で、主務大臣が、特に必要な場合は、事業者に対しまして、報告徴収、助言、指導を行うことができる、この規定のまさに端緒として、地域協議会におけるいろいろな事例といいましょうか、情報がどう使われるかということでよろしゅうございましょうか。

 まず、いろいろなケースがございますが、この地域協議会というのは、基本的に、各地域におきます国と地方公共団体のまさに協議会でございます。国の中には、まさに主務大臣の窓口になります機関が入っているケースが考えられます。したがって、地域協議会の構成機関そのものとして、主務大臣という形でもう入っているケースが考えられます。

 したがって、その点でいきますと、まさに守秘義務の問題というのはその点では生じ得ないわけでございますが、それ以外のケースに関しましても、この十二条の規定を実際に適用するようなケースというのは、かなりのケースが、障害者個人の権利侵害の可能性が非常に高い、そういうケースに当たる面が強いと考えております。

 そうなりますと、十九条の規定でございますが、「正当な理由なく、協議会の事務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。」と書いてございます。この「正当な理由」という中には、そういう障害者御本人のまさに身体、生命、財産の保護のために必要な場合、それについて本人の同意を得ることが困難な場合等も含まれている可能性がございますので、まさしくその事案に応じてこの主務大臣の規定が実施されていく、こういう形で考えている次第でございます。

大熊委員 当事者の秘密保持の問題は重要なんですが、ぜひ、非常に限定された状況だと思いますが、実名を含めた不適切な事業者の情報、この公開をやると、先ほどの企業の努力義務、これが非常に生きてくると思いますので、その辺を十分に御検討いただければというふうに思いまして、終わりたいと思います。

 以上です。

平井委員長 次に、村上史好君。

村上(史)委員 生活の党の村上史好でございます。

 質問事項も、ダブる部分も相当数あると思います。ただ、やはり重要な案件でございますので、重複しますけれども、また新たな御答弁をいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたしたいと思います。

 まず、本法案でございますけれども、何よりも、障害者差別をなくして基本的人権を守る、それが最大の目的だと思います。あわせて、今回、障害者権利条約締結に向けての国内法の整備という位置づけもございます。

 そういう中で、大臣にお尋ねをしたいと思います。

 まず、障害者権利条約における差別の禁止に十分対応した法案となっているのかどうか、大臣の御認識を伺いたいと思います。あわせて、それだけではなくて、やはり今回の法案は、障害者差別撤廃への第一歩にすぎません。残された課題というものもたくさんあります。そして、その課題をいかに解決していくか、これも大変重要な問題だと思います。大臣の御見解、御認識をまずお伺いしたいと思います。

森国務大臣 お答えいたします。

 本法案は、障害者権利条約の締結に向けた必要な国内法の整備になっているというふうに理解をしております。

 これまで政府は、障害者権利条約の締結に向けた必要な国内法の整備を初めとする我が国の障害者に係る制度の集中的な改革として、障害者基本法の改正、障害者総合支援法の制定等に取り組んできたところでありますが、本法の制定により、横断的な課題については所要の措置を講じたことになるものと認識をしております。

 今後とも、障害者施策全体の推進の中で、社会的な情勢の変化等、必要に応じた検討を行うことが重要であると考えております。

村上(史)委員 それでは、中身の話に移りたいと思います。

 これも既に質疑がされた件ではございますけれども、本法案は、障害者基本法を具体化するというのが大きな目的であります。しかし、特に第四条の一項で、障害を理由とする差別等の権利侵害行為の禁止と規定をし、明確に差別の禁止をうたっております。その一方、本法案は、差別の解消という表現になっております。

 これも先ほど言っていただきましたけれども、その理由と、障害者基本法と本法案との関係について、よりわかりやすく御説明をいただきたいと思います。

森国務大臣 本法案は、障害者基本法第四条に規定された差別の禁止の基本原則を具体化し、差別の禁止に関するより具体的な規定を示し、それが遵守されるような具体的な措置等を定めるものであります。

 なお、本法案の名称につきましては、本法案が、差別を禁止するとともに、それを社会において実効的に推進するための基本方針や指針の策定等の措置、相談、紛争解決の体制整備等の国や地方公共団体における支援措置についても定めており、これらを通じて差別のない社会を目指すものとして、差別の解消という文言を用いております。

村上(史)委員 それでは次に、外務省にお尋ねをしたいと思います。

 実は、同じような国内法の整備の中で、ハーグ条約締結に向けて国内法が整備をされました。そのときの議論で、いわゆる条約の趣旨と国内法にずれがあるのではないかという議論がありました。本法案も、障害者権利条約締結に向けての国内法の整備として、差別の禁止を差別の解消という言葉に書きかえてしまったということにおいて、条約上問題はないのかどうか、その点についての見解をお尋ねしたいと思います。

新美政府参考人 お答え申し上げます。

 委員からも御指摘ございましたとおり、障害者の権利条約の方につきましては、第五条の二におきまして、締約国は障害に基づくあらゆる差別を禁止するものと規定しております。

 私どもといたしましては、この条約と法律の関係でございますけれども、平成二十三年に成立いたしました改正障害者基本法の四条の一項におきまして、「何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない。」ということが規定されましたので、そのことをもって条約の国内的な実施は確保されているというふうに理解をしております。

 その上で、今大臣からも説明がございましたとおり、今御審議いただいております差別解消推進法案というのは、その基本法の基本的な理念を具体化する、そして措置を定めるものだというふうに整理しております。

村上(史)委員 ありがとうございました。

 ぜひ、そごがないとは思いますけれども、せっかく国内法を整備したわけですから、条約締結に向けて進展することを願いたいと思います。

 それでは、一問だけ、法案からちょっと外れましてお尋ねをしたいと思います。それは、障害者の表記に関する検討の問題でございます。

 この障害者の表記の件については、平成二十一年十二月、鳩山内閣のときに、閣議決定により設置をされました障がい者制度改革推進本部において、「法令等における「障害」の表記の在り方に関する検討等を行う。」こととされ、同本部のもとに置かれた障がい者制度改革推進会議のもとで検討が進められるということになっておりました。

 その後、さまざまなヒアリングをされたと聞いておりますけれども、現内閣においても障害者の表記について検討をされているのか、その点についてお尋ねをさせていただきたいと思います。

山崎(史)政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の障害者の表記でございますが、御指摘のように、平成二十一年の障がい者制度改革推進本部におきまして、「「障害」の表記の在り方に関する検討等を行う。」となってございます。

 それを踏まえまして、障害当事者の方も参加した障がい者制度改革推進会議において検討されたわけでございますが、平成二十二年十二月の第二次取りまとめにおきまして、これに関しまして、見解の一致を見なかったため、現時点においては新たに特定の表記に決定することは困難であると判断せざるを得ない、そういう形の第二次意見が出されてございます。

 したがいまして、これに関しましてはさまざまな御意見があるということで、今、なかなか見解の一致を見ない状態でございます。

 そういった状況を踏まえながらも、政府として引き続き、どういう形があり得るか、検討を続けている、こういう状況でございます。

村上(史)委員 さまざまな意見があることは先刻承知の上でこういう会議が持たれているわけです。やはり、障害者の方々の思いというものも受けとめながらこの表記の問題についても結論を出すべきではないかな、そのことを指摘させていただきたいと思います。

 それでは、法案の質問をさせていただきたいと思います。

 これも先ほど質疑がございましたけれども、第二章に、差別の解消の推進に関する基本方針とあります。これは、先ほど、いつまでに、スケジュール感をという質問がございました。その答えを私も聞いておりますので、重ねて申し上げませんけれども、しかし、この第六条の中で、基本方針に掲げる事項を四項目挙げております。また、それを内閣総理大臣が作成して閣議決定するまでに、障害者の皆さんの意見をあらかじめ聞く、障害者政策委員会の意見を聞きながら取りまとめていくという条文も入っております。

 これだけの具体的なことがあるわけですから、スケジュールというのは立てるのが当たり前ではないでしょうか。その点についてお尋ねをしたいと思います。

山崎(史)政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど御質問いただきました点と同じでございますけれども、御指摘のように、基本方針、さらにガイドラインの策定は、非常に重要な要素になってまいります。それに関しましては、障害者等の御意見をお伺いしながら決めていくというプロセスに入りますが、できるだけ早くこの基本方針とガイドラインの策定を進めていきたいと考えてございます。

 まだ具体的な日時、スケジュール等まで固めてございませんが、いずれにいたしましても、これを早目につくりまして、国民、事業者、さまざまな方々に対する周知徹底に十分な時間を置いていきたい、このように考えている次第でございます。

村上(史)委員 この件に関しては後ほど大臣の見解を伺いたいと思いますけれども、その前に、事業者の合理的配慮の提供を努力義務とした理由、これもお尋ねしたかったんですけれども、これもお答えをもう既にいただいております。

 それで、具体的な事例として御見解を伺いたいのですけれども、例えば、幼稚園あるいはまた保育園、小中高、公立、私立がございます。公立については義務化されるということですけれども、私立学校の場合はいわゆる努力義務になってしまう。先ほど、主務大臣が指導、勧告をするので問題はないんだというような答弁がございました。それだったら、義務化すべきではないかなと私は思います。そういう点について御見解を伺いたいと思います。

森国務大臣 本法案における合理的配慮の提供については、国や地方公共団体などの公的な主体については、率先して差別の解消に取り組むことが要請されることから、法的義務を課している一方で、私立の保育園や学校を含めた事業者に対しては、障害者と相手方の関係はさまざまであり、求められる配慮も多種多様であることから、努力義務とした上で、主務大臣の定める対応指針により、自発的な取り組みを促すこととしております。

 いずれにせよ、公立、私立にかかわらず、どのような配慮が必要なのかということに変わりはないものと考えておりますので、基本方針の作成等に当たっては、このような観点も踏まえ、検討してまいりたいと思います。

村上(史)委員 私が危惧するのは、具体的にこの法律が施行されたときに、現場でいろいろな問題が生じる。公立に行っている、私立に行っている、子供にとって、教育の機会均等、あるいはまた教育環境に差が出てしまうというおそれがないのかなと。そういうおそれがあるので、指摘をさせていただきたいと思います。

 そして最後に、これも何度か出ておりますが、施行期日が三年を経過する、そして見直しもその三年後という内容になっておりますけれども、やはり、今までの議論をまつまでもなく、障害者差別を解消するという大きな目的のためには、こういう規定にとらわれず、少しでも早く施行をし、そしてさまざまな問題点についての見直しを図っていく、そのことが政府に強く求められると思います。その点に関して、大臣の御見解を、また決意をお伺いして、私の質問を終わります。

森国務大臣 本法案に基づく差別の解消に当たる取り組みが円滑に行われるためには、あらかじめ関係者の意見を十分に踏まえた上で、基本方針や指針等を適切に定めるとともに、国民に対し、本法の趣旨や基本方針、指針等の内容を十分に周知しておくことが不可欠であります。

 本法案の検討に当たり、パブリックコメントや全国六カ所で開催した地域フォーラムにおいても、本法の施行に当たっては十分な周知期間、準備期間を設けてほしいとの意見が寄せられております。

 このため、基本方針等の作成及び国民への周知期間を適切に確保するために、約三年の準備期間を設け、平成二十八年四月一日を施行日としたところでございます。

村上(史)委員 ありがとうございました。

 そういう御答弁はわかるんですけれども、この法律に心を入れていく、そのことがやはり必要だと思います。そのためにも、今答弁がありましたけれども、しかし、少しでも前倒しをしていくという強い思いを、どうぞ、この法律施行に向けて体現をしていただきたいなと心からお願いを申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

平井委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 障害者差別解消法案について質問をいたします。

 その中身に入る前に、手続について一言述べさせていただきたいと思います。

 本法案は、障害者権利条約の批准に向けた国内法の整備の一環であります。その障害者権利条約の基本的な精神は、私たち抜きに私たちのことを決めないでということであります。その精神にのっとるのであれば、今回の法案の審議に際して、まず障害当事者の方の意見を聴取するのが委員会として当然の態度だと考えます。

 今国会には、本法案と同じような障害者関連の法案として、障害者雇用促進法の改正案などが提出をされておりますが、現在、参議院厚生労働委員会でかかっております。木曜日には参考人質疑が予定をされていると聞いています。

 ところが、内閣委員会では、その障害当事者の意見を聴取する機会もないまま採決に至ろうとしていることは、極めて残念であります。

 二年前に障害者基本法が当内閣委員会で審議された際にも、やはり障害当事者の方の意見を聴取せずに審議を終結させました。

 このような委員会運営については改めるべきであるということを厳しく指摘しておきたいと思います。

 そこで、政府は、本法案の策定に向けて、内閣府の障害者政策委員会のもとに設置された差別禁止部会が、昨年九月に、障害を理由とする差別の禁止に関する法制についての差別禁止部会の意見をまとめております。ところが、その後の政権交代で安倍自公政権が発足して以降、障害者政策委員会は開催されておりません。

 この差別禁止部会の意見書は、政府内でどのように検討されて今回の法案になったんですか。

山崎(史)政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の障害者政策委員会は随時開催されることになっておりまして、これまで五回開催されてございます。直近は昨年十二月の十七日に開催されてございます。

 この障害者政策委員会のもとにおきます差別禁止部会において、障害者差別禁止に関する意見が取りまとめられております。今回の法案の作成におきましては、この部会報告の趣旨も現時点で反映できるものを盛り込んで作成したものでございます。

 なお、本法律の第六条において、基本方針を作成する際には、障害者政策委員会の意見を聞くことを規定してございまして、今後とも、障害者政策委員会の意見を踏まえながら対応してまいりたい、このように考えている次第でございます。

赤嶺委員 この法案には、つくる過程の中では、法案化する中では聞かなかったけれども、今後は聞いていくことであるかのような発言がありました。

 今回、各党で議論をされ、そして、一時は議員立法も検討され、しかし、最終的には政府の責任で提出をされた法案であります。

 政府の責任で提出するのであれば、大臣、法案要綱などの段階で、原案とすべく意見を求めた差別禁止部会や障害者政策委員会を開いて、意見を聴取すべきだったのではないかと考えますが、いかがですか。

森国務大臣 障害者政策委員会の差別禁止部会においては、平成二十四年九月十四日に御意見を取りまとめていただきまして、同月二十日に部会長から中川担当大臣に手渡していただきました。

 本法案は、政府として、差別禁止部会のこの取りまとめの御意見に示されました基本的な考え方について現段階で反映できるものを最大限盛り込み、作成をしたものでございます。

赤嶺委員 最大限取り込みたい思いがあればこそ、法案要綱の段階等で当事者の意見を聞くといったような努力は必要だったと思います。

 これは、二年前の障害者基本法のときも、法案要綱について、当時の推進会議の意見を聞く場が持たれなかったわけです。

 障害者の問題というのは、私たち抜きに私たちのことを決めないで、これが基本精神であります。この基本精神に対する政府の態度が問われているということを指摘しておきたいと思います。

 それで、法案に入っていきますが、まず最初に、差別の定義の問題です。

 障害者権利条約は、「障害を理由とするあらゆる区別、排除又は制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のあらゆる分野において、他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を認識し、享有し、又は行使することを害し、又は妨げる目的又は効果を有するもの」を差別と規定した上で、「障害を理由とする差別には、あらゆる形態の差別(合理的配慮の否定を含む。)を含む。」と規定をされております。

 その一方、今回の法案には、定義を規定した第二条に差別自体の定義がありません。

 そこで伺うのですが、この法案が解消を推進する差別は、障害者権利条約が規定する、障害を理由とする差別と同じものなのでしょうか。

山崎(史)政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案は、趣旨でございますけれども、障害者基本法第四条の差別の禁止に関する規定を具体化するというのが今回の法案の趣旨でございます。

 障害者基本法第四条でございますが、この差別に関する規定というのは、障害者権利条約の締結に先立ちまして、その関係で改正したものでございまして、基本的には障害者権利条約の趣旨に基づいて定めている、こういうものでございます。

赤嶺委員 定義の問題は重要でありますから、もうちょっと聞いていきたいと思うんです。

 内閣府の障害者政策委員会のもとに設置された差別禁止部会が、昨年九月に、障害を理由とする差別の禁止に関する法律についての差別禁止部会の意見をまとめております。

 差別禁止部会は、障害者権利条約及び諸外国の立法例を参考にして、この分野で禁止されているあらゆる形態の差別について検討を行い、差別の類型としては、直接差別、間接差別、関連差別、そして合理的配慮の不提供の四つを検討の俎上にのせた上で、最初の三つ、直接差別、間接差別、関連差別は包括的にまとめる方向で議論を行い、「不均等待遇と合理的配慮の不提供の二つの差別類型を含む形で差別を禁止する規定を設けるべきである。」このようにしております。

 意見書が禁止規定を設けるべきとした差別類型は、この法案が禁止する差別に含まれているんですか。

山崎(史)政府参考人 お答え申し上げます。

 差別禁止部会におきまして提起されましたのは四類型でございます。直接差別、間接差別、関連差別、合理的配慮の不提供でございますが、法案上に出ておりますのは、不当な差別的取り扱いと合理的配慮の不提供となります。

 まず、直接差別に関しましては、基本的に、不当な差別的取り扱いということに含まれてまいります。

 その上で、間接差別と関連差別でございますが、これに関しましては、具体的にどのような事例が該当するかということにつきまして、現時点で一律に判断することが難しいという面がございました。

 したがいまして、ここに関しましては、今後の具体的な裁判例の集積でありますとか相談事例、これを踏まえて、まさしく差別の内容について、これに対応していく、こういうことになる次第でございます。

赤嶺委員 部会の中では、間接差別、関連差別についても非常に真剣に深く掘り下げて議論をしているわけです。

 その中にありますけれども、多くの国民が障害者の差別はよくないと考えている事実があるにもかかわらず差別がなくならない、差別禁止部会の意見書は、この点を捉えて、「「差別はよくないことだ」という国民誰もが持つ考えを形あるものにして生かすためには、具体的に何が差別に当たるのか、個々人で判断することは困難であるので、その共通の物差しを明らかにし、これを社会のルールとして共有することが極めて重要となる。」このように言っているわけです。

 法律を制定する最大の眼目もここにあったと思います。この共通の物差しの土台こそ、差別の定義にほかなりません。意見書は、それを示すために、障害者権利条約及び諸外国の立法の検討を行い、障害者権利条約の訳語も検討して、不均等待遇と合理的配慮の不提供をあわせて、障害に基づく差別と呼ぶことにいたしました。

 差別を禁止する法律は、こうした到達の上に立って、障害を理由とした差別の定義を明確に示すことが求められていたのではないかと思いますが、いかがですか。

山崎(史)政府参考人 お答え申し上げます。

 これに関しましては、先ほど来お答え申し上げてございますが、差別の個別の事案に関しましては、まさしく、特定の行為がそれに当たるかどうかについては、それぞれ個別具体的に判断する必要がございます。

 それに関しまして、本法案におきましては、今後、対応要領でありますとか対応指針、いわゆるガイドラインにおきまして、具体的な、わかりやすい形でこれを示していくことに努めてまいりたいと思っていますし、裁判例などによってその内容も積み上がっていくもの、このように考えている次第でございます。

赤嶺委員 この点、対応要領やガイドラインで対処するというだけで本当にいいのか。やはり、差別の定義は、部会で本当に議論された、そういう中身をきちんと今後の法律に生かしていく、この法律はそういう課題を持った法律であるということを申し上げたいと思います。

 もう一問ありましたけれども、時間が来たようであります。

 けさの理事会の中で附帯決議が議論されたときに、三年を待たずにこの法案を見直すというお話がありまして、私は、その際に、見直すのであれば、法律の名称も三年待たずに見直しの検討に入れるべきだということを発言いたしまして、与党、野党の理事の皆さんからも同意をいただきました。

 ぜひ、この法案の問題点、三年を待たずに検討して、よりよいものにしていくために私たちも頑張っていくということを申し上げまして、質問を終わりたいと思います。

平井委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

平井委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

平井委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

平井委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、田中良生君外六名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、日本維新の会、公明党、みんなの党、日本共産党及び生活の党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。田中良生君。

田中(良)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明いたします。

 その趣旨は案文に尽きますので、案文を朗読いたします。

    障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。

 一 本法が、これまで我が国が取り組んできた国連障害者権利条約の締結に向けた国内法整備の一環として制定されることを踏まえ、同条約の早期締結に向け、早急に必要な手続を進めること。

 二 基本方針、対応要領及び対応指針は障害者基本法に定められた分野別の障害者施策の基本的事項を踏まえて作成すること。また、対応要領や対応指針が基本方針に即して作成されることに鑑み、基本方針をできる限り早期に作成するよう努めること。

 三 対応要領や対応指針においては、不当な差別的取扱いの具体的事例、合理的配慮の好事例や合理的配慮を行う上での視点等を示すこととし、基本方針においてこれらの基となる基本的な考え方等を示すこと。また、法施行後の障害者差別に関する具体的な相談事例や裁判例の集積等を踏まえ、不当な差別的取扱いや合理的配慮に関する対応要領や対応指針の内容の充実を図ること。

 四 合理的配慮に関する過重な負担の判断においては、事業者の事業規模、事業規模から見た負担の程度、事業者の財政状況、業務遂行に及ぼす影響等を総合的に考慮することとし、中小零細企業への影響に配慮すること。また、意思の表明について、障害者本人が自ら意思を表明することが困難な場合にはその家族等が本人を補佐して行うことも可能であることを周知すること。

 五 国及び地方公共団体において、グループホームやケアホーム等を含む、障害者関連施設の認可等に際して周辺住民の同意を求めないことを徹底するとともに、住民の理解を得るために積極的な啓発活動を行うこと。

 六 障害を理由とする差別に関する相談について「制度の谷間」や「たらい回し」が生じない体制を構築するため、障害者差別解消支援地域協議会の設置状況等を公表するなど、その設置を促進するための方策を講じるとともに、相談・紛争解決制度の活用・充実及び本法に規定される報告徴収等の権限の活用等を図ることにより、実効性の確保に努めること。

 七 附則第七条に規定する検討に資するため、障害を理由とする差別に関する具体的な相談事例や裁判例の集積等を図ること。また、同条の検討に際しては、民間事業者における合理的配慮の義務付けの在り方、実効性の確保の仕組み、救済の仕組み等について留意すること。本法の施行後、特に必要性が生じた場合には、施行後三年を待つことなく、本法の施行状況について検討を行い、できるだけ早期に見直しを検討すること。

 八 本法が、地方公共団体による、いわゆる上乗せ・横出し条例を含む障害を理由とする差別に関する条例の制定等を妨げ又は拘束するものではないことを周知すること。

以上でございます。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。

平井委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

平井委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。森国務大臣。

森国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、その御趣旨を十分に尊重してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

平井委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

平井委員長 次回は、来る三十一日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十六分散会


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