衆議院

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第4号 平成25年11月13日(水曜日)

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平成二十五年十一月十三日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 柴山 昌彦君

   理事 関  芳弘君 理事 平  将明君

   理事 橘 慶一郎君 理事 西川 公也君

   理事 平井たくや君 理事 近藤 洋介君

   理事 松田  学君 理事 高木美智代君

      青山 周平君    秋葉 賢也君

      石川 昭政君    大岡 敏孝君

      鬼木  誠君    勝俣 孝明君

      神山 佐市君    川田  隆君

      小松  裕君    新谷 正義君

      助田 重義君    田所 嘉徳君

      田中 英之君    高木 宏壽君

      武井 俊輔君    武部  新君

      豊田真由子君    中谷 真一君

      中山 展宏君    長島 忠美君

      比嘉奈津美君    福山  守君

      山田 美樹君    吉川  赳君

      大島  敦君    大西 健介君

      後藤 祐一君    津村 啓介君

      若井 康彦君    遠藤  敬君

      杉田 水脈君    中丸  啓君

      山之内 毅君    輿水 恵一君

      浜地 雅一君    大熊 利昭君

      佐々木憲昭君    村上 史好君

    …………………………………

   国務大臣

   (地域活性化担当)    新藤 義孝君

   国務大臣

   (経済再生担当)     甘利  明君

   国務大臣

   (規制改革担当)     稲田 朋美君

   内閣府大臣政務官     伊藤 忠彦君

   農林水産大臣政務官    横山 信一君

   政府参考人

   (内閣官房地域活性化統合事務局長)        川本正一郎君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 中村 昭裕君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 豊田 欣吾君

   政府参考人

   (警察庁交通局長)    倉田  潤君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 萩本  修君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 星野 次彦君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           藤原  誠君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           中岡  司君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           高島  泉君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           大西 康之君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局派遣・有期労働対策部長)  宮川  晃君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           岡田 憲和君

   政府参考人

   (中小企業庁次長)    横田 俊之君

   内閣委員会専門員     室井 純子君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十三日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     武部  新君

  鬼木  誠君     武井 俊輔君

  新谷 正義君     石川 昭政君

  豊田真由子君     神山 佐市君

  福山  守君     比嘉奈津美君

  大島  敦君     大西 健介君

  赤嶺 政賢君     佐々木憲昭君

同日

 辞任         補欠選任

  石川 昭政君     助田 重義君

  神山 佐市君     豊田真由子君

  武井 俊輔君     鬼木  誠君

  武部  新君     青山 周平君

  比嘉奈津美君     福山  守君

  大西 健介君     大島  敦君

  佐々木憲昭君     赤嶺 政賢君

同日

 辞任         補欠選任

  助田 重義君     新谷 正義君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国家戦略特別区域法案(内閣提出第一八号)


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     ――――◇―――――

柴山委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、国家戦略特別区域法案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房地域活性化統合事務局長川本正一郎君、内閣府大臣官房審議官中村昭裕君、内閣府大臣官房審議官豊田欣吾君、警察庁交通局長倉田潤君、法務省大臣官房審議官萩本修君、財務省大臣官房審議官星野次彦君、文部科学省大臣官房審議官藤原誠君、文部科学省大臣官房審議官中岡司君、厚生労働省大臣官房審議官高島泉君、厚生労働省大臣官房審議官大西康之君、厚生労働省職業安定局派遣・有期労働対策部長宮川晃君、農林水産省大臣官房審議官岡田憲和君、中小企業庁次長横田俊之君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

柴山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

柴山委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大岡敏孝君。

大岡委員 滋賀一区の、自民党、大岡敏孝でございます。

 きょうは、実は私の、滋賀県の田舎から、私の母、関西弁で言うとおかんでございますが、おかんと妹がそのうち傍聴に来る予定でございまして、真面目にやらせていただきたいと思っております。(拍手)ありがとうございます。

 今回、国家戦略特区制度という仕組み、枠組み、そして会議体をつくって、前に進める体制をつくるということで、あわせて、当面できることからやっていくということで、私は大きな一歩を踏み出すものと捉えております。

 ただし、問題は中身でございまして、同じ道具、同じ食材を使っても、料理人の腕によって、腕以上に情熱によって、でき上がる料理は絶品にもなり得るし、まずいものにもなり得る。

 そこで、今回は、この会議体ができた後の運営を見通して、特区の本来の目的でありますところの、日本全体でやるのは大変だ、ただし、特定の地域を選んで、いわばチャレンジの箱庭というようなものを設定して、そこに国と地方そして民間の政策資源を総投入して、大胆な規制緩和、そして成長戦略、これをモデルとしてやっていく、そして全国の先駆けとしていくという特区の本来の狙いにぴったり照準を合わせて、そして日本経済再生の三本目の矢を的のど真ん中に突き立てる、そういうつもりで質問をしてまいりたいと考えております。

 まず、これは聞かなければならないんですが、これまでの特区との違いについて新藤大臣にお伺いいたします。

 これまでとは次元の違う特区ということでございますが、どのあたりが次元が違うというふうに思っておられるのか、大臣の思いを語っていただきたいと思います。

新藤国務大臣 国家戦略特区は、まさにこの二十年の低迷と混乱から日本をもう一度再生させよう、そういう、私ども安倍内閣そして自公政権、この我々が今お預かりをしている政権の中で、経済を再生させるためのリーディングプロジェクトとして、また、新しい経済を開くための、そういう試金石として位置づけたい、このような思いがございます。

 次元が違うというのは、特別に目新しいことをやるというわけではありません。これまでの延長の中で、今回があるわけです。

 しかし、手法として変えているのは、まず、従来からの手挙げ方式ではなくて、御提案はいただきますけれども、それも踏まえた上で、国も一緒になって事業体に参加をする。ですから、国と地方と民間の事業者の皆さんが一緒になって、まさに国の力を総動員して、そして我々の新しい時代を開くような、そういう先導的なものができないかというのが一つであります。

 それからもう一つは、そのためには強力な推進体制が必要だということでございまして、特区の諮問会議というのをつくって、規制緩和等々、どんなものがあればこの事業が進むのか、そういう議論をした上で、そして、この地域を指定したならば、その特区ごとに推進本部をつくる。特区会議と呼んでおりますが、国と民間と地方自治体、地方が一緒になってこの事業を推進するための推進組織をつくって、そこに権限を集中させて、そしていろいろな仕事が進むようにしようではないか。こういうことで、これまでの取り組みに加えて、さらに強力でそしてスピーディーな、そういう事業体制がつくれるのではないか、このように期待をしているわけでございます。

大岡委員 ありがとうございました。特に力強く、そしてスピーディーに、今後の会議体の進め方、ぜひ進めていただきたいというふうに思います。

 次に、経済効果についてお尋ねをいたします。

 日本再興戦略によりますと、名目成長三%、そして実質成長二%を達成するという大目標を掲げて、そして、それぞれKPI、数値目標を設定して進捗管理をされています。

 当然、この特区も日本再興戦略の重要な一部分だというふうに考えておりますが、再興戦略全体から見てどのような位置づけになっているのか、この点について甘利大臣にお尋ねしたいと思います。

甘利国務大臣 日本を代表する政治家に将来なるであろう大岡先生の御質問にお答えをさせていただきます。

 日本再興戦略におきましては、各種政策を通じて、中長期、今後十年を見据えて、平均成長率が名目で三パー、実質で二パー以上というのを目指しているわけであります。

 その中で、戦略特区というのは、成長戦略が掲げる大きなテーマ、大きなテーマは何かといいますと、日本が抱えている社会的課題を戦略目標にしていくわけですね。例えば、少子高齢化社会というのは、手をこまねいていけば経済社会も活力が低下をしていく、しかし、そういう中にあっても、活力ある社会、エネルギッシュな社会というのをどうやって築いていくかということを逆手にとって戦略目標にしていくということです。

 そういうことを具体的に実行していくような拠点にしていく。例えば、ライフサイエンスというのが、少子高齢化社会の中では重要な地位を占めていくわけですよね。医療機器とか医薬品とか介護機器とか、そういう高齢化社会を支えていくようなものは日本から常に開発されて世界に打って出る、そういうような拠点になるとか、あるいは国際ビジネス拠点として世界の三本の指に入るとか、そういうイメージを描いて、それを具体的に実行していくというところになろうかと思います。

 KPI、キー・パフォーマンス・インディケーターというのは、達成度指標。目標を掲げても、具体的にどこまで進んでいるのかよくわからぬ。そうすると、例えば二〇二〇年までに対内投資を二倍にするんだとか、あるいは、世銀がランキングで競争力のある都市ランキング何位とかいろいろ発表しますけれども、そこで、今、日本一の魅力的な都市、国際都市と言われている東京でも、今は何位だけれども、これを四位だけれども三位以内にするとか、そういう具体的な目標の指標になるわけです。それを掲げて、日本経済全体を牽引していくような象徴的な場所にしていくということを考えております。

大岡委員 続きまして、先ほど甘利大臣からも御説明いただきましたこのKPI、これを今後特区でも導入できないかということについてお尋ねをします。

 先ほど大臣からも御説明がございましたが、分野ごとにKPIというものをつくって、数値目標でもって進捗管理をしていくという手法が、今、日本再興戦略ではとられているわけでございますが、今回、この特区でいろいろな分野、それぞれの分野ごとのテーマが設定されて、そして、それが会議体で決定をされて事業が進んでいきます。

 これと同時に、それが設定された時点から、このKPIをそれぞれの分野ごと、それぞれテーマごとにしっかりと設定して、そして進捗管理をしていくべきだと思いますが、この点につきまして大臣はどのようにお考えか、教えていただきたいと思います。

新藤国務大臣 ただいま甘利大臣からお話がありましたように、私たちの日本再興戦略において、達成すべき成果目標、これをKPI、このように呼んでおりますけれども、そういったものを定めております。そして、国家戦略特区はKPIの達成に対してどのような貢献をするか、こういったことが問われているわけでございます。

 まず、提案される事業体の皆様からもKPIを出してもらおう、このように思っています。例示として幾つかの項目を出しましたけれども、日本再興戦略の中にちりばめられているKPIの中で、では、このプロジェクトは一体どの分野にどの程度の貢献をすると考えられるかというふうなことは、まず自己評価をしていただこうというふうに考えているんです。

 それから、これからでき上がります、この法案が成立いたしますと、特区諮問会議それから特区会議というのができますけれども、その会議体においても、今度は事業を進捗する側でも評価をしていこう、KPIの達成度をチェックしていこう。それを定期的にチェックしながら、今議員がおっしゃるように、その進捗度合いを自分たちで意識しながら、そして何のために仕事をするかというようなことを常にチェックして前に進めていこう、このような仕組みを今回考えております。

大岡委員 ありがとうございました。ぜひ、目標管理をしっかりとしながら、PDCAを進めていっていただきたいというふうに思います。

 続きまして、個別の分野につきまして、二点取り上げて質問させていただきたいと思います。

 まず一つ目は、雇用政策でございます。

 今回、雇用につきましては、雇用条件の明確化、そして有期雇用の特例ということですが、説明によりますと、これはいずれ全国的な対応ということで、本来、立地性に着目をして進めているはずの特区とは若干趣旨が異なるように感じますが、この点についてどのように考えておられるのか、教えてください。

大西政府参考人 御指摘の点でございますけれども、御指摘いただきましたとおり、国家戦略特別区域法案におきましては、雇用分野におきまして、雇用条件の明確化の点と有期雇用の特例という点が盛り込まれておるところでございます。

 まず一点目の雇用条件の明確化でございますけれども、これは、十月に日本経済再生本部の方で国家戦略特区における規制改革事項等の基本方針というのが決められたわけでございますが、その中で、特区の中で新しく起業する企業とかあるいは特区にやってくるグローバル企業が、我が国の雇用ルールを的確に理解して予見可能性を高めるということで、紛争を生じることなく事業展開する、こういうことが容易になるような相談支援を行うということで決められたものでございます。

 また、同じくその基本方針の中では、仮称でございますけれども、雇用労働相談センターというものを特区の中に設置するというようなことが決められておりますので、こういったことから法案に規定されているというぐあいに考えておるところでございます。

 また、もう一つの有期雇用の特例でございますが、これにつきましても、同じく十月の日本経済再生本部決定の検討方針の中で、やはり新規起業直後の企業とかグローバル企業が優秀な人材を確保して、従業員が意欲と能力を発揮できる、こういった目的に沿って検討が行われてきた、そういう経緯がございますし、また、産業の競争力の強化でありますとか国際的な経済活動の拠点の形成の推進というこの法案の目的に沿っているものでございますので、同じくこの法案に盛り込まれている、そのように考えております。

大岡委員 私は、これは全国展開だけじゃなくて、実は特区でも十分可能性があるとこの雇用分野を見ているところでございまして、この雇用ルール、言いかえると解雇ルールが不透明なので結果として採用しにくいという、あるいは、継続雇用に至るまでには及ばないスキルのまだまだ不十分な労働者を、どのようにスキルを上げていくかというのはやはり大きな課題でございまして、私は、これを特区で解決する方法は十分あるというふうに思っているんですね。

 例えば、特定の地域、雇用吸収力があって、人材の教育力がある企業が十分あるという地域を指定して、スキルがまだまだ十分ではないと見られる方がいらっしゃれば、これを一旦解雇して、解雇直後から行政そして地域企業が徹底して支援をして、OJT等を使って再教育をしてスキルを上げて、そしてもう一度労働市場に戻して、そして継続雇用に至る人材にしていく。さらには、昇進や自分の夢をかなえる、そういう能力をつけていく。こういうモデルというのは、特定の地域を選べば、ちゃんとよくそこの場所を見れば、私は十分可能性のある分野だというふうに思っています。

 とりわけ、実は逆転的な言い方を申し上げますと、スキルが不十分だという方が、結果として解雇に至らず、企業の中で守られて、過剰に法で守られて、そして定年を迎えたけれども、結局自分は一体何だったんだということになれば本人も不幸ですし、当然企業も、給料を払ったけれども何の成果も出なかったとすれば不幸ですし、さらには、この人のかわりにひょっとしたら雇われていた人がいたかもしれないということを考えるとそれも不幸だということで、結果としては社会全体にとってマイナスになっているということがあります。

 私はやはり、スキルがまだまだ不十分で継続雇用に至らない、それを、一旦解雇という手続をとって、直ちに支援をして、地域の企業と行政とでしっかりと支援をして、そしてもう一回労働市場に戻す。これはまさに厚生労働省の腕の見せどころだというふうに考えておりますが、この特区、本当の意味での特区を使っての雇用政策の突破口を開くということができないか、この点についてどのように考えておられるか、教えていただきたいと思います。

大西政府参考人 大変重要で重い御指摘をいただきましたところでございます。

 先生のおっしゃるように、いわゆる、何といいますか、職業能力が求められる水準に達していない方々、そういう労働者の方々について、雇用の終了を促すといいますか、そういった上で職業訓練の支援を行っていくのか、あるいは、雇用を継続して、これも御指摘いただきましたように、会社の中でそういった職務を変更して、訓練を行いつつ、どこか別の部署で活躍していただく、そういうようないろいろなパターンがあるわけでございます。

 こうしたときに、多くの労働者がやはり賃金で生計を立てているということとか、あるいは、勤続中に会社の中で実践的な技能やノウハウを習得している、こういった実態もあるわけでございまして、なかなか、私どもでどちらかというよりは、個々の労働者、労使の間でいろいろお話をしていただく、そういった実情に応じた判断をしていただくというのが大切なことではないのかなとも考えておるところでございます。

 ただ、非常に重要な御指摘でございまして、私どもの方として幾つかやらせていただいていることは、一つ、六月に日本再興戦略という形で閣議決定された内容があるわけでございますが、その中では、まさに行き過ぎた雇用維持型から労働移動支援型への転換というようなことがうたわれておるわけでございまして、そうした中でスキルチェンジとかあるいはスキルアップというのを図りながら失業なき労働移動を実現していく、こういったことをひとつこれからやっていくというようなことがあるわけでございます。

 あとまた、失業して再就職を目指す方につきましては、国、都道府県、もちろん一生懸命やるわけでございますけれども、そうした中で、企業における実習とか、あと民間教育訓練機関も活用して、物づくりの分野でありますとか、あるいは介護の分野、あるいは情報通信の分野において訓練をしているわけでございます。そうした訓練内容につきましては、協議会などで、地域の実情、そういうニーズを把握しながら実施しているわけでございますので、こういったことを引き続き一生懸命やってまいりたいと考えております。

大岡委員 ありがとうございました。本当に期待しておりますので、チャレンジの箱庭ということですから、ぜひこれはしっかりとやっていただきたいというふうに思います。

 次に、農業政策についてお尋ねをいたします。

 私は、日本の農業はまだまだ伸びしろが多い、さらに言うと、成長のフロンティアだというふうに考えています。しかしながら、残念ながら、今回の特区の内容は、成長力を引き出すというところまで至っていない、まだまだ課題があるんじゃないか、これからしっかりと中身をきっちり詰め込んでいかなければならないんじゃないかというふうに考えています。

 私は、特区特有の立地の優位性を生かすという考えに基づけば、特定の地域を選んで、市町村だとか県ともしっかりと連携をして、例えば、この地域内の農地の集積、農業生産の効率化、マーケティング手法を入れる、さらには輸出に向けたノウハウをフル投入するということをやって、文字どおり、日本再興戦略に書かれているような、農業所得倍増計画ということなんですが、まずは特区の中だけでも倍増するということから、農業改革の先兵にできないかというふうに考えております。

 あるいは、特定の地域を選んで、全ての農地あるいは農家の方々を農業生産法人や組合に集約して、まさに農水省が狙っているようなビジネス経営体としての経営をしっかりとやり抜いて、そしてその効果を検証していくという特区も私は十分つくれるというふうに考えておりますが、まず、日本再興戦略の中で、農業、食品の輸出力の強化、農地利用の拡大ということが書かれていますが、この視点から、農業分野に関して、この日本再興戦略を担当されている甘利大臣、大臣の期待を教えていただきたいと思います。

甘利国務大臣 私は、昔、経産大臣をやっていましたときに、全国各地、四ブロックくらいだったと思いますけれども、地域の指導的立場の人、十数名と三時間ぐらい懇談をしたんですね。

 その中で、成功している農業法人の方が各ブロックにいらっしゃいまして、たしか三ブロックでいらっしゃいました。その人が私に言った言葉が非常に印象的だったんですけれども、我々は国の補助金なんか何も要りませんからとおっしゃるんですね。ああ、そうですか、自立してやっておられるんですねと言ったら、あえて一つだけ要望を出すとしたらと言われたんです。何を言われるかと思ったら、農業の所管は農水省から経産省にしてくださいと言われたんです。

 これは何かというと、産業政策として見てほしいと。社会保障政策でも地域政策でもなくて、産業政策として育ててほしいという要望だったんです。これが、示し合わせたわけでもないでしょうけれども、三カ所、別のところへ行ってやったわけですよ。同じことを三つの農業法人の方から言われました。

 日本の農業というのは、ポテンシャルというのはすごくあるんですよね。それを産業的視点から見なきゃならないので、そこで私は、経産大臣でしたけれども、農商工連携と打ち出したんです。当時、随分農水省から迷惑がられましたけれども。でも、次の政策は、一丁目一番地は農水省は農商工連携と言われ、それが民主党政権になって六次産業化に引き継がれていったわけであります。この視点は、与野党問わず、みんな思っている視点だったと思うんですね。

 そこで、農業法人の要件緩和とか、あるいは農地バンクとかですね、集約する仕組み。意欲と能力のある担い手に農地を集約して生産性を上げて、それから、今おっしゃったような、産業的視点から、マーケティングからICTからあらゆることを組み込んで、産業政策として打って出るということは大事だと思うんですね。

 オランダは農産品輸出世界第二位です。農地面積は、総面積でいえば日本より小さいはずです。その小さいオランダが世界第二位になっているというのは理由があって、産業政策として捉えて、あらゆる産業政策上のノウハウを投入してやった結果、世界第二位になっているんですね。

 日本もやってできないことはないと思います。それには、おっしゃるように規制緩和を、今、まだ何本かの柱ですけれども、国家戦略特区に農業特区が採用されるかどうか、これからの話ですけれども、仮にそうだとしたら、追加項目の規制改革項目もどんどん出てくるでしょうし、委員御指摘のような視点に立って取り組んでいけば、一次産業としての農業、それは地域の振興にもつながっていくわけでありますから、大いなる可能性があろうかと思っております。

大岡委員 甘利日本再興戦略担当の大臣から大変高い期待が出されたわけでございますが、これに対して特区を使って農水省としてどのように応えるのか、教えていただきたいと思います。

横山大臣政務官 お答えいたします。

 日本再興戦略におきましては、「農林水産業を成長産業とし、今後十年間で六次産業化を進める中で、農業・農村全体の所得を倍増させる戦略を策定し、実行に移す。」というふうにされたところでございます。

 この農業、農村の所得倍増目標につきましては、品目ごとの実情等も踏まえつつ、農地集積等による生産性の向上、流通の合理化、農産物の高付加価値化等により農業からの所得の増大を図るとともに、輸出倍増、観光業や医療、福祉産業等との連携等による六次産業の市場規模の増大を通じた農業所得の増大を図っていくことが重要と認識をしております。農業からの所得、そしてまた六次産業の市場規模の増大、この二点で農業所得の倍増をしていくということでございます。

 今回の国家戦略特区法案におきましては、農業分野では、農業委員会と市町村の事務分担、それから農業生産法人の要件緩和等の特例措置を盛り込んだところでございます。これらの特例措置は、農地の流動化の促進や六次産業化の増大に資するものであり、農業、農村の所得倍増目標の実現にも貢献するものと考えております。

 もとより、農業、農村の所得の向上につきましては、国家戦略特区における取り組みのみで実現するものではないというふうに考えておりまして、関係施策を総動員することによってその実現を目指してまいります。

 以上でございます。

大岡委員 それでは、最後に税について、新藤大臣、甘利大臣、それぞれから御意見を伺いたいと思います。

 まず、新藤大臣にお伺いしたいんですが、特区を担当されている大臣として、今回税が盛り込まれていないということをもって、あたかも後退しているかのような意見の方もいらっしゃいますが、私は、前後は問題ではなくて、要は中身だ、中身で何をやるか、これをトップダウン、さらには決断力で決められるかどうかがこの特区の勝負だと思っておりまして、特区を担当されている新藤大臣として、税の措置についてどういったことを今後求められるお考えか、まずこれは新藤大臣に伺いたいと思います。

 ちょっと時間の関係がありますので、一括して質問させていただきますと、一方で、日本再興戦略を進められる甘利大臣としましては、当然、この特区を含めて、今後、大企業のグローバル化も進む、さらには中小企業がグローバルな意識を持って成長していくということが求められるわけでございますが、この特区でもってどのような税制を実現すれば、この特区を起爆剤とする日本再興が、日本がさらに世界に打って出る体制ができると考えておられるか、この点について、それぞれの大臣から御所見を伺いたいと思います。

新藤国務大臣 国家戦略特区の税制措置というのは、日本再興戦略において、「大胆な規制・制度改革を行い、こうした制度設計に応じた税制措置を検討の上、必要な措置を講ずる。」このように決めているわけなんです。私どもとすれば、まずは規制改革の分野において今の時点で何ができるかということを省庁間の協議をして、今回のように盛り込ませていただきました。

 そして、税制については、これは我々が考えることでもありますし、事業者からの御提案もあるんです。ですから、どういったものをどこでやるかという中で、必要な税制というものも当然検討していくことになります。

 そして、何よりも税については税調のプロセスを踏まえた上で進めていこうということでございまして、これは今回入れなかったのではなくて、これはもうプロセスの、今のタイミングで法案を出させていただいて、税についても必要な検討を加えていく、このようにお考えいただきたいと思います。

甘利国務大臣 年末の税調に向けて、検討できることは検討したいと思っておりますが、具体的に動き出しますのは年明け以降で、その地域のニーズに合った要望が出てくると思います。それはそれで、次の機会に向けて調整をしていきたいと思っています。

柴山委員長 質疑時間が終了しております。

大岡委員 もうこれで終わります。

 皆様、丁寧な答弁ありがとうございました。

 私も特区というのは非常に高い期待をしております。まさに日本を再興する先兵として、突破口として、チャレンジの箱庭として、これがフルに活用されて、日本の経済がまさに世界に冠たる経済になるよう、私もこれから議会側からしっかりとチェックをし、意見を申し上げていきたいと思いますので、どうかよろしくお願いを申し上げます。

 以上でございます。

柴山委員長 次に、浜地雅一君。

浜地委員 おはようございます。公明党の浜地雅一でございます。

 通常国会に続きまして、この臨時国会でも内閣委員会に所属をさせていただきました。皆様、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 夏の間にも、国内の視察ということで沖縄の方に内閣委員会で行かせていただきまして、大変貴重な経験をさせていただきました。この場をかりまして、皆様に御礼を申し上げます。

 私は九州でございます。九州各地を回っておりまして、我が党も政権与党の一員に加わりまして、この一月から、安倍政権のアベノミクスに対して、東京や大企業はいいけれども、九州では、こういった田舎の方ではなかなか経済波及効果がないというような声がよくございます。

 こういった議論はたくさんあるわけでございますが、私、二週間前に長崎のある鉄鋼の加工会社に行かせていただきました。案内をしていただく前に、かなり経営状態が厳しい会社なので、少し、国会議員さん、厳しいことを言われるんじゃないですかと言われたんですね。そうしましたら、社長が出てこられまして、雰囲気が明るいものですから、社長、最近、景気はどうですかと言いましたら、ここ二カ月ぐらいすごく調子がいいんですということを言っていただきました。

 私は九州に、地元に戻って、こういった鉄鋼の加工業ですから、いわゆる今まであったような業界の方で、景気がよくなってきたという言葉を聞いたのは実は初めてでございまして、非常にうれしく思うとともに、やはり東京、そして、第一の矢で金融緩和をし、また、財政出動をする、第二の矢を打ったものがようやく地方に回ってきたなという実感を私は感じて、大変うれしく思いました。

 ですので、この会社は鉄鋼の加工業ですから、どうしても第二の矢の、いわゆる公共事業等での受注に波及してのこれは効果であろうと思っております。もうちまたで言われているとおり、その効果というのは当然限定的なものですから、第三の矢ということで成長戦略というのが非常に大事であるということになっておりますけれども、そういう意味では、私は、ある特定の、国家戦略特区のように一つターゲットを決めて、そこを起爆剤として牽引をしていって、それを地方に波及させていくということは、私の先ほどの経験から、やはり正しいことであるというふうに直観しております。ですので、この法案に対して非常に期待感を持つわけでございます。

 きょうは、資料として、資料一で国家戦略特別区域法の概要ということで一枚と、それともう一つは、これは東京都の税制に関するものを配らせていただきました。

 一枚目の資料は、これはもう各委員の皆様方にこの法案の概要の説明で配らせていただいているものでございますが、今回の国家戦略特区というのは、言ってみれば、国家、国が主導で、国が旗を振って、とにかくこの方向性に向かって一直線に進んでいくためのたくさんなシステムが設定されているなというのが第一の感想でございます。

 ここでありますとおり、一番上のところは、諮問会議につきましては、いわゆる関係大臣は最後の計画の同意のみということになりまして、十名のメンバーである程度の基本方針の政策を決めていく、その後、国家戦略特区の区域の指定もこちらの、内閣総理大臣の指定でございますけれども、諮問会議の意見を聞きながらやっていくということになっております。

 ただ、そうなりますと、いわゆる国家の規制緩和に必要なものとして、一定方向、まっすぐ行くのはいいんですが、やはりどうしても、反対側の利益、これは少し、どういった影響があるかというチェック機能が逆に働かなくなるおそれもあるのではないかと思っています。

 例えば、一つの例で言いますと、昨日、薬事法の改正案、いわゆるインターネットによる医薬品の販売についてさまざまな意見がございまして、きのうは閣議決定がされまして、結果的に、一部の劇薬、そして二十三品目のスイッチOTCの薬品については、三年間ほどはインターネット販売をしないということですが、その他はネット販売をできるということでございます。

 このとき、産業競争力会議の方が、やはりインターネットは全面解禁したらいいんじゃないかということで突き進んでいったわけでございますが、結果的に、やはり厚生労働省の審議会や検討会でしっかりと健康面や安全面をチェックしたからこそ、私は妥当な結論に落ちついたんじゃないかというふうに思っております。決してこれは改革が後退したんじゃなくて、以前に比べれば進んでおりますし、しかし、どうしても守らなきゃいけない人身の健康や安全面というところについては、やはり、厚労省の現場の意見といいますか、それが反映されて、妥当な結論に落ちついたものだと思っております。

 そうしますと、この後、国家戦略特区になりますと、やはり、先ほど申し上げたとおり、関係大臣の関与というのは、最後の、区域計画の作成における同意でございます。この同意も、いわゆる区域計画の基本方針に合っている場合には同意をするものとするというような条文がございますので、基本的には、戦略特区の最初の諮問会議で行われる方向性が非常に重要であり、また、ここでバランスをしっかりととれるメンバーでなければならないというふうに言えるんじゃないかと思っております。

 そこで、本会議場でも我が党の高木委員が新藤大臣に聞かせていただきました。特に、民間の有識者と言われる諮問会議の方々、この方々がやはりいわゆる現場の知恵を知っており、また、意見を言われるわけでございます。この方々の選定というのはやはり非常に大事であろうと思っております。

 新藤大臣は、本会議場で、高木委員の質問に対しまして、やはり利害関係を有する方はこのメンバーからは外すような、そういったものをこの基本方針に盛り込みたい旨のお話をされましたけれども、この民間議員の選定について、もう一度この場で確認をさせていただければと思っております。

新藤国務大臣 御指摘のように、国家戦略特区の諮問会議、これが極めて大きな役割を果たすということになります。そこで、基本方針を定め、それから、区域の指定、また区域の方針というものを決めていくわけであります。

 そこで、民間有識者の方々が、これは専門的知識と経験を有する方に入っていただく、これは必要不可欠であるということでありますね。その方々は、すぐれた識見を有する者の中から総理大臣が任命する、それは、それまでの経歴だとか活動内容を踏まえた上で内閣として選任をさせていただくということでございます。

 もとより、有識者の選定、それから諮問会議の運営に当たっては、これは公平性や中立性が確保されなくてはなりません。それは十二分に配慮をしていきたい、このように思いますが、最後の今の委員の御指摘でございますけれども、利害関係者を外すのではなくて、もし、この有識者の中で、その方が特別に利害が有する、利害があると思われる場合には、その審議の際に席を外していただくとか、そういうふうな工夫もすることを考えたい、このように申し上げたわけでありまして、そもそもが、その事業を進める上で、利害ではなくて、事業関係者が入っていただくことになりますので、そこはきちんと整理をしていきたい、このように思います。

浜地委員 新藤大臣、大変にありがとうございました。こちらは選定の方法ということでございますので、よく理解ができました。

 続きまして、国家戦略特区の前に、構造改革特区であるとかまた総合特区、こちらがございまして、こちらの運用状況がどうなっているのか。といいますのが、今回、国家戦略特区の区域指定されるところは三カ所から五カ所という新聞報道もございますので、それから漏れる地域については、やはり地方からの声を吸い上げるという機関として、特に地域活性化総合特区や国際戦略総合特区が必要だと思っています。

 今回、この国家戦略特区が、法案が提出されたわけでございますけれども、これまでの総合特区、以前のですね、これにおける国と地方の協議会がこれまで開かれて、ここで規制の緩和に向けた話し合いがされていたと思います。ですので、これまで国と地方の協議会に申請された件数と、また協議会で議論されたものの件数、そして実際に緩和された規制の数というのは、今どうなっているのかお聞かせいただきたいと思います。

伊藤大臣政務官 お答えを申し上げたいと存じます。

 総合特区におきます国と地方の協議につきましては、これまで、平成二十四年の春及び秋、そして平成二十五年の春の三度にわたりまして協議を実施させていただきました。このうち、平成二十四年の春及び秋の国と地方の協議につきましては、総合特区の第一次指定または第二次指定を受けた三十九の区域から合計三百九十四の提案がなされたところでございます。

 これらの提案につきまして、ことし、規制緩和の対応状況についてフォローアップの調査を行いましたところ、このうち五十件につきましては、提案者の取り組みを実現するため法令等の改正を実施または検討中であるほか、現行法令のもとで実現に向けて前向きに取り組むものが百八十二件となっている状況でございます。

 また、平成二十五年の春の国と地方の協議については、第三次指定までの総合特区のうち、十八区域から八十九件の提案がなされたところでございます。このうち、十七件につきましては、特区の取り組みを実現するための法令改正等の措置を行うことについて国と地方で合意に至った、その方向性について合意に至っているほかに、三十三件については、現行制度のもとで対応についておおむね合意がなされておるところでございます。

 なお、この協議の結果につきまして、国と地方で合意に至った提案のうち、法令等の改正が必要なものについては、各府省において改正に向けた検討、手続を随時進めてまいります。その上で、事業実施に向けた計画認定等を行った上で取り組みを進めていくことになっております。

 取り組みを実現する方向で条件等の詰めの協議を行うべきものについては、その後の進捗状況について定期的にフォローアップをして公表してまいる予定でございます。

 それから、平成二十五年の九月十三日に第四次指定地域を決めさせていただいておりますが、この第四次指定地域とともに、一次、二次、三次において、必要に応じて再協議をした方がいいとか、あるいは、もう一度自治体の中で再検討してきてくださいというようなものも含めて、再び国と地方の協議の場で検討を開始したいというふうに考えております。

 以上でございます。

浜地委員 大変詳しい数字を出していただきまして、ありがとうございます。

 先ほど申し上げましたが、今回、国家戦略特区から漏れる地域は、やはりこの制度を使っての規制緩和を求めていくことになろうかと思いますので、ただいまお聞かせいただきましたら、私、実際、採用件数がもっと少ないと思っていましたけれども、意外と言ったら失礼なんですが、結構進んでおりますので、またこの協議会の場を充実させていただいて、これがまた、そういった批判に対して、地方との格差をなくす、そういった手当てになると思っておりますので、ぜひよろしくお願いできればと思っております。

 次に、ちょっと東京都から要望も受けておりまして、少し質問させていただきます。

 東京都は、現在、国際戦略総合特区として、アジアヘッドクォーター特区というものを推進しております。今回、国家戦略特区、どこがなるかはまだ決まらないんでしょうが、当然、やはり東京というのは視野に入ってこなければこの意味がないとは思いますけれども、そうなりますと、東京としては、今回、国際戦略総合特区が既に指定はされているんですが、次の国家戦略特区を指定していただければ、既存のものをバージョンアップしていきたい、どんどんどんどんバージョンアップしていきたいという要望があるようでございます。

 その中で、先ほども税法のお話が出ました。税法というのは、これから、この年末に向けて税調等の調整もあるのはわかった上でお話をさせていただくんですけれども、現在東京都が行っておりますこのアジアヘッドクォーター特区における税制措置の資料が資料二にございます。資料二を見ていただきますと、現在東京都では、要件に合うものは、法人実効税率、普通のところは約三八%のところが、この東京都の特区で採用されたものに関しては約二六・九%の税率で運用されているということなんですね。

 しかし、これはかなり厳しい要件がついておりまして、一番下の四角の枠なんですけれども、このいわゆる税制の優遇を受けるには三つの要件がございます。

 まず一つ目、マル・バツと書いてあるんですが、統括事業のみ、バツのところは統括アンド営業業務等ということで、これはどういった意味かといいますと、いわゆる本社機能、ヘッドクオーターとしてのそういった業務だけを東京都で行っていて、別の事業、いわゆる営業箇所みたいなものを一緒に置いておると、これは要件に合わないということでございます。

 次の法人所在地の制限ということでございますが、これは、統括拠点はエリア内にある。ですから、ほかの事業は東京都で行っていないけれども、例えば東京を越えたところに営業所があるということになりますと、この特例は受けられないということでございます。

 そして三番目は、この規制緩和措置を活用していなければいけないという要件でございます。

 特にこの一から二なんですけれども、統括事業のみとなりますと、実際の営業部隊が東京で活動できないということになろうかと思います。

 当然、なぜこういった制限がついているかというと、例えば、統括事業だけ二、三人置いて、ほかは全くこの規制緩和とは関係ない事業を東京でやられて、税金を軽減されては困るという趣旨だと思います。また、二番目の法人の所在地の制限というのは、東京にはヘッドクオーターだけ置いているんだけれども、ほかの、例えば地方に行ってその事業をやられてお金を稼いできて、結局税金が安くなるといっては、これは全く特区の意味がないということで、この制限の意味はよく理解はできます。

 しかし、実際に始める上において、東京都で今回、国家戦略特区、今後もし指定された場合に、声かけを幾つかされたそうなんですね。その後、約二千社の会社に声かけをして、東京都内で百三十社の会社が、東京都にこういった計画があるのであればぜひ出店をしたい、進出をしたいという企業があったそうです。しかし、この三つの要件、法人の業務制限または法人の所在地の制限という法人税の減税に関する要件がありますと言いましたら、その百三十社のうちの二社しか今回は検討をしないという回答があったそうなんですよ。

 ですので、そういいますと、この税制の趣旨はわかるんですが、やはり、バージョンアップをするという点においては、こういった現場の声も聞きながら、次の税制のいわゆる法案に盛り込むところ、これをしっかりと現場を見て判断していただきたいという、これは要望でございます。

 新藤大臣、次の、税制の部分というのはこれから決めていかれるということなんですけれども、ぜひこの点の要望を聞いていただきたいと思いますが、今ちょっと私が説明申し上げた点に加えまして、どのように感じられるか、お答えいただければと思っています。

新藤国務大臣 結局、特例を設けても、それを実際に活用していない、もしくは活用実態がないということになりますと、これは絵に描いた餅になりますよね。ですから、ぜひそこは、税の問題についてはさらに検討していきたいと思います。法人実効税率をどのように取り扱って国際競争力を増強させていくかというのは我が国の課題でもありますから、そういった全体の議論と、そしてその中で、特区の中でどんなことができるのか、これは当然のテーマにしていかなければいけない、このように思っています。

浜地委員 ありがとうございます。

 済みません、財務省さんも来ていらっしゃいますので、今のことを、ちょっと要望としてお伝えしたつもりでございます。

 そうなりますと、やはり今回、一枚目の資料にありますとおり、特区ごとに設置される国家戦略特別区域会議において、関係地方公共団体の長が入るということは非常に大きいんだと思います。

 当初の法案では、聞くところによりますと、地方公共団体の長はメンバーでなくていいんじゃないかみたいな議論もあったというふうに漏れ聞いておりますけれども、やはり、現場でどういうことが今起きていて、どういったことが必要なのかという、一番現場に近いのはやはり地方公共団体の長であろうかと思っておりますので、ぜひ、現場の声をまたしっかり聞く、この特別区域会議において現場の長の意見を聞いていただきたい。また、地方公共団体の長がこのメンバーに入ったことは非常に意義が大きいと私の方では感じております。

 次に、附則の第三条でございます。

 附則の第三条にこのように書いてあります。「関係行政機関の長が発する訓令又は通達のうち」、間は飛ばしますが、いわゆる国際活動の拠点強化の必要性に鑑み、「この法律の規定に準じて、必要な措置を講ずるものとする。」という規定がございます。要は訓令または通達に関する措置でございますけれども、これは、いわゆる法律改正をするときには本則、本案を改正しなければならないんですが、この意味というのは、法律改正をしなくても、通達や訓令等によって規制緩和を進められるものは進められる、機動的に行っていくという意味なのかをお聞かせいただきたいと思います。

川本政府参考人 お答えを申し上げます。

 委員御指摘のとおり、国家戦略特区において講じられるべき規制緩和の措置、プロジェクトを推進するに当たって必要となる規制の特例措置でございますが、当然、法律に限られるものだけではなくて、政省令等によるものもございます。これらについては、法案の二十五条、二十六条で政省令関係については特例措置を講ずるという規定を置いております。

 これとあわせまして、訓令、通達等による規制の特例措置というのも当然必要になってまいりますので、御指摘のように、基本方針に定められた内容に即して必要な措置というのが通達や訓令においても講じられますよう、この附則において規定をしたというものでございます。

浜地委員 ありがとうございます。

 そうなりますと、例えば、これも結構東京で問題になっているんですけれども、外国人が日本で法人を設立するときに、外国語で申請を受け付けてくれないかという、そういった要望が多いようでございます。そうなりますと、現在、法人設立登記の際の申請書類は日本語でなければならないという法律の規定になっているのか、ここをまず確認したいと思います。

萩本政府参考人 法人の登記手続につきましては、申請書や添付書面を日本語で作成しなければならないとする法律上の規定はございません。もっとも、法人の登記は取引の安全と円滑に資することを目的とするものですので、登記事項につきましては、我が国において取引の相手方が確認できるように、見ればわかるようにするため、日本語で公示することが当然の前提とされております。登記をするに当たって審査の対象となる申請書や添付書面につきましても、適正、迅速な審査を行うため、日本語で作成されるか、日本語でその内容を理解できることが前提になると考えられております。

 したがいまして、申請書に記載すべき登記事項につきましては、それが転記されてそのまま公示されることになりますから、日本語で作成する必要があるということになります。

 ただ、添付書面につきましては、外国語で作成されていましても、翻訳文をつけて提出されたものを受け付けるという運用をしているところでございます。

浜地委員 今は一応、法律事項でなくて運用ということでございましたので、さっきの趣旨からいいますと、これは法律の改正ではなくて、いわゆる運用や通達のようなもので、通達以下の運用で行われているものでございます。

 ですので、ぜひ、例えば東京都が指定されたときに、やはりたくさんの外国企業が来ると思います。当然、全部の言葉を翻訳するのは大変かと思いますが、やはり英語というのは国際共通語でございますので、例えば英語で申請書類を持ってきたという場合にはそのまま受け付けていただくような、そういった機動的な運用も今後考えていただきたい、そのように思っております。

 加えて、入国審査の書類についてもさまざま省令で定められておりまして、当然、必要な趣旨というのはわかるんですが、これから東京が発展してきたときに、どういった業者が来るか、また、どういった方々が来るかということで、また変化をしていくと思いますので、ぜひ入国審査の書類審査等についても、機動的な、この附則三条に従った運営をしていただければと思っております。

 次に、特区内の区域内格差という問題についてお聞きをしたいと思います。

 当然、今私は、例えば東京であれば、東京が起爆剤となって全国に波及していく、この法案はすばらしいと申し上げましたが、そうなりますと、東京都内において、例えば容積率の緩和がたくさんされたところと、またはほかの事業が営めるところ、そして規制緩和があるところとないところで、これは区域内においてまた格差が生まれてくるんじゃないかという懸念も一方ではあるわけでございます。

 そういった、要は、地方と特区との違いというよりも、特区内において、規制の対象となった事業や規制の対象となった地域から漏れたところというのは、従業員所得についても、やはりかなり格差がついていくであろうと思っています。

 区域内の格差が生じることについてはどのようなお考えなのか、新藤大臣、お聞かせください。

新藤国務大臣 まず、国家戦略特区が万能で、しかも、この一つをもって日本経済を開花させるわけではないわけでありまして、もとより、地域活性化、それから産業振興策、あらゆる、今既存のものも含め、また新しい制度が考えられています。総合的な合わせわざの中で、それぞれの地域特性に合わせてやっていこうと。特に、国家戦略特区については、世界に打って出る、また世界を呼び込むような、そういう試金石となる国ぐるみでのプロジェクトをやってみよう、こういうことであります。

 その中で、特区内の格差というよりも、そこで経済が活性化していけば、当然のごとく、その周辺や関連産業に仕事がふえていくことになります。また、地域が活性化する。人が入ってきて、人が住んでくれて、活動してくれれば、その周辺においてもいろいろな意味での影響が出てくる。

 ですから、格差が出るのではなくて、むしろ、そういった意味で、成長が、活力が増進するというふうにしていかなくてはいけないと思いますし、私はそのように思っています。

 それから先ほどの、一つ、地方自治体が特区の会議に参加するようになっているというくだりでございますが、そもそも、最初から地方自治体を外すことは考えておりません。これは地域と関係事業者と国と一体となってやっていくものですから、当初からそのようなことで参画をいただくことになっておりました。

 合意形成のあり方について議論をいたしましたけれども、それは、最初から地域も交えての、これは、国ぐるみというのは、国、地域、民間含めて全て総動員をしようという意味でありますから、御理解いただきたいと思います。

浜地委員 ありがとうございました。

 先ほどの答弁をお聞きしまして、地域内格差というよりも、地域から発展をさせてそれを広げていくんだということでございます。

 タイムラグがあったときにどうなのかという視点でお聞かせいただきましたので、そのときに、またそういったことも頭に入れながら区域計画等を練っていただければと思っております。

 最後の質問にさせていただきます。

 これは私の地元からの要望でもございますけれども、これも規制緩和の一種になるのかなということで聞かせていただきたいと思います。

 運転試験場の土曜日、日曜日、祝日に、運転の試験、筆記試験も含め、実地試験も含めて、現在実施されていないという声が聞かされております。

 これは九州の実は佐賀県のことでございますけれども、自動車学校の方々が、ぜひ、土日祝日にも運転免許の試験をやってくれないかということで陳情に参りましたら、ある県警の方は、警察庁のサーバーの問題でこれができないんだというふうに各県の県警本部では答えられたんですが、実際に、土日祝日の運転免許の試験が行えないのは、いわゆる警察庁のサーバーの問題なのか、そこをちょっとお聞かせください。

柴山委員長 御答弁は簡潔にお願いします。

倉田政府参考人 お答えいたします。

 警察庁の運転者管理システムは、土曜日、祝日、年末年始は稼働しておりませんが、日曜日は稼働しております。

 運転免許試験の実施に当たりましては、運転者管理システムのデータを利用する必要がありませんので、同システムの稼働の有無にかかわらず、運転免許試験を実施することは可能であるものと認識をしております。

 いずれにいたしましても、運転免許試験を実施する日時につきましては、都道府県におけるニーズや試験の実施体制等を勘案しつつ、各都道府県公安委員会において判断すべきであると認識をしております。

柴山委員長 質疑時間が終了しました。

浜地委員 はい。では最後にします。

 ありがとうございます。ただいま、サーバーの問題ではなくて、各都道府県の運用、また体制の問題だということでございます。

 何でこれを聞いたかというと、私の地元の方が東京に陳情に来られて、東京だと、いや、各都道府県の問題だ、各都道府県に行きますと、いやいや、警察庁の問題だということで、何回も来られるものですから、どこにやはり問い合わせればいいのかということを、交通行政の、交通関係の一番の事務方のトップであります倉田局長にお聞きしたわけでございます。

 ですので、今後は、しっかりと県警の本部に対して体制が整うように陳情していけばいいということでございますので、その確認でございました。ありがとうございます。

 質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

柴山委員長 次に、近藤洋介君。

近藤(洋)委員 おはようございます。民主党の近藤洋介でございます。

 重要広範である国家戦略特区法案、きょうから委員会での質疑、こういうことでありますが、本会議で代表質問に立たせていただきました。与党の先生からも大変御声援をいただきまして、不規則発言は国会の花である、こういうふうに私も教わってまいりましたから、よく本会議では私も不規則発言をする方でございますから、それだけ御声援をいただくということはありがたいことだな、こう思いながら登壇させていただきました。

 ちょっと、きょうは、冒頭、その本会議の席で総理にきちっとお答えをいただけなかった点について、まず最初、お伺いをしたいかな、こう思っております。

 きょうは、担当の新藤大臣初め、経済の司令塔、内閣の司令塔でもあられる甘利経済再生担当大臣、そして規制改革全般をつかさどられている稲田国務大臣にもお越しをいただいておりますので、重要広範で、これからしっかり質疑をさせていただきますが、甘利大臣、稲田大臣にお越しいただくのはきょうが最初で最後ということでありますから、両大臣にまず最初にお伺いをしたい、こう思うわけであります。

 本会議で伺いましたが、産業競争力会議、これは安倍内閣で設置をされた肝いりの会議体でございました。この会議を所管しているのは茂木経産大臣でもあられますけれども、甘利大臣もかかわられているかと存じます。

 この産業競争力会議、日本のアベノミクスの一つの中核の会議である、こういうふうに認識しておりますし、その会議の中で規制改革が活発に議論をされてきました。その中で、その規制改革を熱心に説かれていた民間議員の一人である三木谷浩史楽天株式会社社長兼会長が、先般、政府の規制改革のあり方について大変強い批判をされて、辞意を表明されました。

 きょう、別に薬事法の中身云々について議論をするつもりはございません。ただ、やはり、三木谷さんは、大変規制改革に熱心であられて、中心的な役割を果たしたのは紛れもない事実であり、また、この国家戦略特区法ができた背景というのは、産業競争力会議のメンバーでもあられる竹中平蔵さんも含めて中心的な役割を果たし、そして、その中でワーキンググループができ、議論が進んできたという経緯は間違いないことであります。

 したがって、ある意味で規制改革の中心的役割を果たしてきた、また、この国家戦略特区法にも成立のスタートラインで一定の影響を持っていた方がおやめになるというのは、やはり内閣にとって、ただの民間議員がやめたのとはちょっと違うのではないか。また、この法案が審議されるに当たって、やはりこの点を伺っておかなければいけない、こう思うわけであります。

 まず、甘利大臣は、まさに名実ともにアベノミクスの司令塔の役割を果たされていると私はお見受けしておりますが、三木谷氏がおやめになった事態になってしまったことについて、どう受けとめていらっしゃるのか、率直にお伺いしたいと思います。

甘利国務大臣 まず答弁の前に、私は、近藤議員の御質問、きょうに限らず、非常にいい視点だといつも思っております。党内では恐らく、御党の中ではいろいろある中で信念を通される質問をいつもされると思っておりまして、ですから、本会議場でのやじに関しても、この質問者がどういう視点で発言をしているのか、しっかり見きわめた方がいいということを周りには言っているものであります。それは余計なことですけれども。

 三木谷さんを登用するときに、総理と御相談をしましたのは、当たり前のことを当たり前に言う人じゃない方がいい、時にとんがり過ぎていると思われても、いろいろな問題提起ではいいのではないかということで、リスクを承知で就任をしていただきました。でありますから、いろいろな話が今までも出ました。それは、受けとめることができるものは受けとめたいと思っております。

 今回の件は、実は、御案内のとおり、経緯としては、薬事法でそこまでは言及をしていないことを、省令で一類、二類の販売をネットでは禁じた。それを訴えられたら、司法の判断は、厚労省令でそこまでするのは法律が想定していない、法律の想定の範囲を超えて省令がそんなことを決めるのはけしからぬということで、それでは売っていいですねということで売られている。いわば、これは、そうすると、ある種ノンルールの中で売られているわけであります。

 そこで、再興戦略の中では、安全を確保するルールをしっかり確認して、その上でネットに開放するということがまとめられたわけです。

 そこで、では、安全を確保したルールを定めた上でということはどういうことかということで、医学、薬学の専門家六人の方に、専門的立場から、いわば政府としてどういうルールが適切かというふうに諮問したわけであります。今回はその答申が出てきました。内容はそういうことでございまして、ほとんどの九九・八パーぐらいなんですかね、ほとんどのものはいいですよ、ただし、スイッチ直後品については、どういう危険性があるのかのリスク評価が必要である、そのうち、大丈夫ということであるならば、それはみんなインターネットに開放するといういわば答申が出てきたわけです。

 これは、当初、座長の私的ガイドラインかという議論がありました。そこで、他の委員にも確認しましたら、書面で、自分たちも全く同等の考えですというのが出てきたわけです。

 そうすると、政府としては、やはり利便性と安全性というのは整合性をとらなきゃならないわけでありまして、官房長官と私が調整しましたけれども、私の調整役の立場としては、その最大公約数を図る。利便性を極力犠牲にしないけれども、安全性は無視しない。専門家がそういう判断は必要だということを言ってきたものですから、そこのぎりぎりの、極力利便性に影響を与えない中で、安全性を犠牲にしない範囲で、短くできるものは短くしてくれということで、ああいう形にさせていただいたということでございます。

近藤(洋)委員 なかなか大臣も御苦労されたんだ、こう思うわけでありますけれども、しかし、打ち出しが、あの薬事法については相当政権も前のめりで、まあ我が党にもいろいろ議論があるんです、本問題については。我が党についてもいろいろ議論がございましたけれども、政権はかなり前のめりで、最初、とんと打ち出した印象を持ちましたので、それに対してはやはりやや後退感が、数字でいうと九九%ですか、相当の品目が自由になった、こういうことでありますけれども、後退感を持ってしまった。

 三木谷氏も、国を相手に訴訟するというのも容易じゃないな、これは相当な御発言だな、こう思うわけでありまして、いずれにいたしましても、規制改革というものに対しての失速感はこのままだと否めないなと、私は規制改革すべきだという立場に立つものでありますから、そう思うわけであります。本当は稲田大臣にもお答えいただきたかったんですけれども、稲田さんにとってみると、大変な応援団を失ったのではないか、こう思うわけであります。

 そこで、ちょっとこの法案の方に話を移りたいんですが、甘利大臣、この国家戦略特区法案、鳴り物入りで登場したわけでありますけれども、具体的に、この法案が実行されて、さて、どれぐらいの経済効果というものがこの特区法案によって生み出されるというふうに今試算を見込まれていらっしゃいますでしょうか。

 というのも、先般私は、ある関西の財界人とお会いをしたときに、国際戦略特区法案の話を聞きまして、いや、近藤さん、意外にこれは悪くないですよと。出たら、投資が、少なくとも彼らの関西の国際戦略特区では、彼らのアンケートでは、投資が六百七、八十億円ぐらいこれによって生まれました、こういうお答えが返ってきました。ああ、そうですか、それはよかったです、別に民主党政権でつくったから云々じゃなくて、よかったです、こういうふうに申し上げたわけでありますが、一定の投資も生まれましたと、あの国際戦略特区法案によってですね。ですから、それはますます広がればいいな、こう思うわけであります。

 いずれにしろ、この国家戦略特区法案での経済効果というものはどういうふうなものを見込まれると、経済再生大臣、ないしは経済をつかさどる大臣としてお考えか、お答えいただけますでしょうか。

甘利国務大臣 日本再興戦略では、中長期のマクロの目標としては、目標というか目指すところとしては、名目三パー、実質二パー以上ということを十年の平均値で目指しています。

 具体的に、国家戦略特区が数字の上でどのくらいの効果があって、GDP押し上げ効果があるというのは、まだ具体的な設計がなされていません。これから、こんなイメージの地域をつくるということも、私一人が決めてしまうわけにはいきませんで、特区諮問会議でコンセプトから入って決めていくわけです。ですから、数字のはじく段階、このくらいになるのではないかというのはそれから先のことだというふうに思っております。

 ただ、言えることは、日本国経済を牽引するような役はやってほしい。今までの規制緩和特区というのは、どちらかといえば地域振興特区でありました。ここは、日本経済、オール・ジャパンを牽引していくようなものになってほしいし、そういうような素地があるところを指定するということになろうかと思います。白地だけあって、用意しましたから何でも国がやってくださいというところは対象になりません。こういう特区にしたいというイメージに合うようなある程度の素地があって、そこに規制緩和とか、いろいろ官民のコラボレートするような仕組みを入れていくと、一挙にそれが爆発していくというようなイメージを描いております。

近藤(洋)委員 日本を牽引するようなものをつくりたい、こういうお話でございました。

 新藤大臣にお伺いしたいんですけれども、本会議では、総理と新藤大臣は、この法案の目的、目標についてこう御答弁をされているんですね。総理は、国家戦略特区により、日本経済の風景を変える大胆な規制改革を実行することで、世界で一番ビジネスのしやすい環境を創出し、こうおっしゃっている。新藤大臣も、国家戦略特区につきましては、特例的な措置を組み合わせて講じ、成長の起爆剤とする、世界で一番ビジネスのしやすい環境を整える、これがこの目的でございますと。お二大臣とも、世界で一番ビジネスのしやすい国、こういう御答弁。これが恐らくこの法案の目的なんだろうな、こう思うわけです。

 そこで、委員長のお許しを得て資料を配付させていただいておりますが、これは世界銀行の「ビジネス環境の現状」というランキングであります。

 まず、新藤大臣、世界で一番ビジネスのしやすい国、こう政府で御答弁されていますけれども、そもそも、事務方にきのう聞いたんですが、では今、我が国、日本政府は世界で何番目にビジネスのしやすい国か、何番目なのかは認識しているのかと聞いたら、それはわかりません、こういう答えでございました。

 今自分たちが何番目かわからないのに、一番しやすい国にと答弁する方も一体何者かな、こう正直そのときは感じたわけでありますが、今現状が政府として公式に何番目に位置しているかというのは、はっきり言ってよくわからぬ、一番でないことは間違いない、こういうことでありましたけれども、そういう事務方のお答えでした。したがって、では、オーソライズされているのが多分この世界銀行のビジネスランキングなのかなと思って出させていただきました。

 これは、現在、前年度、二〇一三年が、御案内のとおり、ちょっと字が小さくて恐縮ですが、一位がシンガポール、二位が香港、そしてニュージーランド、アメリカ、デンマークという一位から五位まででありますが、日本は二十四位であります。ことしの十月の末に発表された、世銀は会計年度によるんでしょうけれども、二〇一四年のランキングでいきますと二十七位。三位ランキングダウン、こういうことであります。

 そこで、新藤大臣、世界で一番、こうおっしゃった以上は、この特区法案の実現により、少なくとも、例えば具体的に、何年後かには五位以内に入りたいとか、三位以内に入りたいとかいう一定の目標を持ってしかるべきだ、こう思うわけでありますが、現時点での目標はございますでしょうか、お答えください。

新藤国務大臣 近藤委員は、かつて経済産業委員会で御一緒して、ずっとやってきてもおりますから、御質問いただくことは本当にうれしく思います。ぜひ、日本の経済を再生しなくてはいけないというのは、これはもう全国民の願いでありますし、そういう中で、非常に経済産業政策に造詣のある方ですから、建設的な御議論をいただければありがたい、このように思います。

 まず、今日本が何位なのかという最初の、御質問ではありませんが、そのようなお話がございました。

 一体誰が決めるのか。世界で、一体あなたは何番目ですと決めるようなものはどこにもないんです。ですから、今日本が何番であるのかというのは、それは、それぞれの分野において、例えばICT分野であるとか、それからブロードバンドの接続状況がとか、いろいろな分野での指標があると思います。私たちの国は、世界で何番目かではなくて、最も進んだ状態をつくりたいという意味において、一番ビジネスのしやすい環境を整えるというのを目標にしようではないかということを掲げているわけでありまして、今が何番だからということではないのではないかなと私は思っています。

 それから、その中でもやはり日本再興戦略において、KPI、成果目標を定めようということにいたしました。そうなると、KPIはたくさんの指標があるわけであります。幾つか、例示で九項目ほど出しましたけれども、日本再興戦略の中にはKPIがたくさんちりばめられております。その中で、国家戦略特区として貢献できるのはこの分野であるというようなことを幾つか出しております。

 今お尋ねの世界銀行のビジネス環境ランキングにつきましては、私どもは、世界の先進国、OECD先進国の、現状は十五位であります。委員が示されたのは、これは全ての国を含めた上での順位が入っているわけでありますけれども、OECD加盟の先進国中の十五位、これを我々は二〇二〇年までにそこの三位以内に入ろうというKPIを掲げております。そこの目標に向かって、国家戦略特区が一定の貢献をしていかなくてはならない。国家戦略特区の中の仕事のみでこれが達成できるわけではございませんのはもとよりでございますけれども、そういうふうに御理解いただければありがたいと思います。

近藤(洋)委員 いずれにしても、しかし、目標がないとこれは意味がないわけでございまして、今御答弁ございましたように、二〇二〇年までにOECD加盟国で三位以内、これが一つの政府目標で、その起爆剤になる法律だ、こういう制度だ、こういう理解でよろしいわけでありますね。ありがとうございます。

 ぜひそれに向けて邁進していただきたい、こう思うわけでありますが、さて、それに果たしてこれが資するかというのをこれから審議していきたい、こう思うわけであります。

 そこで、規制改革担当大臣にお伺いしたいんですけれども、今大臣がおっしゃったように、この戦略特区だけで全てができるわけではない、こういう話でございました。押しなべて、やはり特区というもので実行したものを全国に波及させていくということが、これはまず肝要な、大事なんだろう、こう思うわけであります。

 お伺いしたいのは、特区で、構造改革特区、総合特区、国家戦略特区、それぞれで成功した規制緩和は、基本的には全国展開すべきだと考えますが、規制改革担当大臣、いかがでしょうか。

稲田国務大臣 今、近藤議員からお尋ねになった、特区内で成功したものを全国規模で展開すべきだというお話でございますが、国家戦略特区もそうですし、ほかの特区もそうですけれども、まずはその特区内で規制の特例を認めるものです。特に、国家戦略特区というのは規制改革の突破口になるという意味もあろうかと思います。

 ただ、全国展開を図るには課題があるものもあるのではないか。すなわち、全て全国展開すべきであるかどうかというのもやはり検討しなければならないと思っておりますが、全国展開を図ることが望ましいものについては、もちろん規制改革会議における議論も踏まえながら、速やかに望ましい規制改革ができるよう取り組んでいきたいというふうに思っております。

近藤(洋)委員 そうですね。ですから、特区は社会実験であり、それを、よいものはどんどん広げていく、こういうことなわけであります。ありがとうございます。

 そこで、新藤大臣、国家戦略特区、最先端というか、政府においては一番格の高い特区という位置づけなんだろう、こう思うわけですけれども、そこの運営というのはやはり大事だと思うんですね。その成果というのも大事だ、こう思うんです。

 運営と成果についてお伺いしたいんですが、例えば国家戦略諮問会議の運営ですけれども、議事録なりなんなりというのは、私は、原則公開、一定期間を経たら原則公開すべきだ、こう思うわけであります。日銀の審議委員会の、これは最も重要な経済政策を決める議事録も公開される現代、今でありますから、原則公開というのは必要だろう、こう思いますが、いかがかということと、あわせて、成果または進捗状況について、法案では、内閣総理大臣への報告、こうなっておりますけれども、国家戦略特区と銘打った以上は、やはり私は、これは国会にきちんとその進捗状況なり成果というのを報告すべきではないか、こう思うわけであります。

 総理大臣ではなくて、やはり、国家戦略特区であれば、総理大臣と同様に国会への報告というのもあってしかるべきではないか。これは法文にはないわけでありますが、その点について、大臣、いかがでしょうか。

新藤国務大臣 もとより、政府が行うことについては、議事録の公表というものは必要だ、このように思っています。公開性を高めていくこと、透明性を高めていくことは、これは政策運営の基本であると思います。

 この国家戦略特別区域諮問会議の運営に関しましても、これは必要な事項は政令でこれから定めることになりますけれども、この諮問会議の内容は、原則公開としたいと思います。

 それから、議事要旨の公表と一定期間経過後の議事録の公表、これも行いたいと思っておりますし、そのほかの同様の会議についても同じような取り組みはなされておりますから、それと同様のものは当然やっていくということになります。

 それから、進捗状況については、特区ごとに国家戦略特区会議、これは統合推進本部と我々は別名で呼んでいますけれども、この統合推進本部、区域会議が諮問会議に御報告をして、そしてそれを内閣総理大臣に報告する、こういうたてつけにさせていただいておりまして、それは従来の政府内のいろいろな会議についても同じような項目でありまして、私たちはそのことを今設定しておるということでございます。

近藤(洋)委員 大臣、前半の公開の御答弁は、ありがたい、よい答弁だ、こう思うんですが、やはり、後半の国会への報告、これは私は大事だと思うんです。国会への報告というのは、やはり進捗状況をきちんと報告するということは、これは法文にはございませんが、ぜひ御検討いただきたい、こう思うわけであります。

 あと、もう一つ、時間が迫ってまいりましたが、規制改革担当大臣に。

 新藤大臣も御苦労されて、事務方も御苦労されて、それなりのメニューができました。本会議では、ちょっとこれでは力弱いのではないかという御指摘をさせてもらいました。今も私はそう思っております。この中身については、また今後も議論させてもらいます。

 ただ、やはり、事務方が相当頑張っても、なかなか、本当に必要な規制改革というのは、今の法律のたてつけでは盛り込むのは難しいと思います。

 ぜひ、今後もメニューが広がる場合は、この特区法案を改正して新しいメニューを加える、こういうことだと思うんですけれども、私は、例えば、規制改革担当大臣なのか特区担当大臣なのか、どちらかにやはり調整権限を持たせるのか、内閣総理大臣に調整権限を持たせるのか。内閣総理大臣に持たせても、何でも内閣総理大臣に持たせても仕方がありませんから、内閣府設置法を改正するかどうかして、所掌事務にそこを入れるかどうかして、やはり調整権限というのを規制改革担当大臣か特区担当大臣に持たせないと、これはいつまでたってもにらみ合いが続く。これは民主党政権でも相当苦労しました。

 ですから、ここはさらなる法改正をしないと、この規制改革は、私は進まないのではないかと。それは、いつまでも甘利大臣が強烈にいるとも限りませんし、いつまでも菅官房長官がいるとも限らないわけで、やはりやってもらわないかぬのは担当大臣なわけでありまして、担当の所管大臣が強烈な、強力な力を持たないかぬわけだ、こう思うわけであります。

 そういう設置法も含めた調整権限を持つべきだと思いますが、御自身のことをあれですけれども、新藤大臣と、では稲田大臣も、せっかくなので。

新藤国務大臣 前政権で大分御苦労されたんじゃないか、このように思いますね。

 我々は、今回の国家戦略特区は、総理主導のもとで強力な推進体制をつくる、そして、それは迅速に、そして集中的に行っていこう、こういうことをいろいろ工夫させていただいているわけであります。

 その役を担うのは特区諮問会議です。特区諮問会議は、特区担当大臣、これから任命されますけれども、特区担当大臣とそれから民間有識者、そういった関係者によってこの諮問会議をつくります。そこの中で強力な調整を行って、そして、必要に応じて担当大臣にも意見は聞きますが、最終的にはこの諮問会議で合意を得たものを、それを各省で認めていただくように、そういうふうな形になっているというわけであります。

 現状においても、今、事務方でと、事務方の作業が大変だというのは事実です。でも、最終的には、今回の規制緩和の項目を設けるのにも、甘利大臣や関係大臣、私も含めて、これは大臣間の強烈な折衝を行いました。その結果として、政治決断も含めて、このような、今の十六項目でありますけれども、決めたわけでありまして、足りないとおっしゃるいろいろな方、そういう御意見もあると思いますけれども、しかし、既に、そういった意味で、まず法案をつくる意味においても、政治的なそういった決断も含めてやってきたということでございます。

近藤(洋)委員 新藤大臣、大変恐縮ですが、お言葉ですが、私が申し上げたいのは、諮問会議の中で規制担当大臣が外れている、これは理解しています。そうではなくて、メニューをそろえる段階で、メニューというのは、規制項目の、今回でいえば、例えば容積率をどうするとか、病床規制をどうするとか、幾つかのメニューがございますね、十数項目の。それをそろえるのは、諮問会議もあるでしょうけれども、さらに政府全体で決めなきゃいかぬわけでしょうから、その前の段階での調整も、やはり、僕は一定の権限がないと、大臣に一定の権限を付与すべきだ、こう思いますが、その辺は今後また同僚議員が質問するかと思います。

 時間が終了したので、甘利大臣、非常に残念であります。本当は聞きたい話が一点ありまして、公益資本主義の話を聞きたかったんです。これは言いっ放しで恐縮でございます。

 実は、この特区というのは、どっちかというと、規制緩和、どんどん競争させよう、こういう発想のものなんですけれども、私が実はこの場で伺いたかったのは、甘利大臣も御案内のとおり、原さんが主張している公益資本主義の考え方、ストックオプションに一定の制限をつけるべきではないか、短期の資本をぐるぐる回すような資本主義ではやはりいけないのではないか、こういう発想。私はこれは非常に大事な考え方ではないか、こう思うわけであります。

 この考え方に甘利大臣も非常に着目をされておるというふうに仄聞をしておりましたので、こういう発想のもとでの、特区との関係はともかくとしても、日本発の新しい考え方を、特区においても、または特区でなくても、生かしていただくということはないのかなと。それは、実は我々民主党政権でもやりたかったことなんですけれども、本当は、アベノミクスが本物になるには、こういう発想をされるということが、本当の長期のお金が回る成長の糧になるのではないか。残念ながら、まだ今の政権においてこういう発想の政策が具体論として見えてきていなかったものですから、ぜひ甘利大臣に御所見をお伺いしたかったんですけれども、もう時間……

柴山委員長 民主党の持ち時間の範囲内で答弁を許しますが、いかがいたしますか。

近藤(洋)委員 では、この点について、甘利大臣、簡潔に、ちょっと恐縮でございます、お答えをいただければと思います。

甘利国務大臣 総理は、常々、日本には日本独特の伝統的文化があって、それは世界標準にしてもいいものがあると。瑞穂の国の資本主義とおっしゃっています、これはどこかの金融機関の話じゃなくて。

 要は、短期資金の集まる市場はどこにもありますけれども、だんだん投資家の忍耐力がなくなってきて、長い間持ちこたえていない。最近では、午前中投資するから、午後配当くれみたいな話になってくると、そこにはイノベーションは起きないんじゃないか。

 そこで、もちろん短期資金はウエルカムです、デートレーダー、どうぞ結構でございます。その上で、中長期資金が集まるような、そういう市場にしていきたい。それには、投資する側の心構えもあるし、投資をされる側の心構えもある。そういう、本当の意味で世の中を変えていくような、いい意味で変えていくようなイノベーションが日本からどんどん起きていく。そのための、短期資金はもちろんですけれども、中長期の資金、息の長い、忍耐力のある資金が集まるような投資環境を整備したいということで、諮問会議のもとに、原さんを委員長代理として、いわば、中長期の資金にとって魅力的な市場をつくるための環境整備ということを議論して、答申をしたところであります。

近藤(洋)委員 また機会があれば続けたいと思います。

 お時間ですので、終わりたいと思います。

柴山委員長 次に、後藤祐一君。

後藤(祐)委員 後藤祐一でございます。

 まず、総論というか経済政策全般論から、その後、この法案の話に入っていきたいと思います。

 三本目の矢というのは、法律で言うと、この国家戦略特区法案と産業競争力強化法案、この二つだけだと今の時点では理解してよろしいでしょうか、甘利大臣。

    〔委員長退席、関委員長代理着席〕

甘利国務大臣 総理みずから、この国会を成長戦略実行国会と位置づけております。そこで、幾つか新たな法案を出しているわけであります。御指摘の産業競争力強化法、国家戦略特区法、農地バンク法案、それから、従来出されている法案でまだ成立をしていないものでいえば、電気事業法改正案とか再生医療法、それから薬事法等々を指しております。

後藤(祐)委員 全国版の規制緩和、規制改革というのは、この国会で、先ほどの電事法なんかはそういう面があると思うんですけれども、これは稲田大臣が担当だと思うんですが、いま一つスピードが遅いと思うんですね。

 これは、前の通常国会でも、全国版の規制改革はどうなっているんですかというお話をさせていただきましたけれども、なぜこの臨時国会でそういったものは出てこないんでしょうか。あるいは、次の通常国会で何か用意されているんでしょうか。

稲田国務大臣 なかなか全国版の規制改革が進んでいないという御指摘なんですけれども、ことしの一月に規制改革会議が設置をされて、六月には、計百四十二の規制改革項目を盛り込んだ規制改革実施計画を閣議決定いたしております。

 また、七月以降も、総理指示に基づいて、健康・医療、雇用、創業・IT等、農業及び貿易・投資等の五つのワーキンググループを設置して、医療や農業に係る規制改革を初めとして、幅広い分野について、精力的かつスピーディーに改革に取り組んでいるところでございます。また、審議の過程において、七月から五回にわたり規制改革会議の意見も発出をさせていただいているところでございます。

 今後とも、経済再生に資する思い切った規制改革に、迅速に、ひるまず取り組んでいきたいと思います。

 その上で、法案は提出しないんですかとおっしゃるんですけれども、例えば、私は、公務員制度改革法案、これも規制改革を進める上で重要な法案だと思っております。

後藤(祐)委員 新藤大臣はこの国家戦略特区法案で頑張っておられる。経産委員会もやっていますよね。先ほどの産業競争力強化法案を今頑張っておられる。甘利大臣はTPPを頑張っておられる。稲田大臣、ちょっと、仕事が足りないんじゃないですか。しっかりやってください。

 それで、先ほどの産業競争力強化法案は、本来、経産委員会でやる話なんですが、これは非常にいい話があって、いわゆる企業版特区、企業実証特例制度という話は非常におもしろい話だと思います。これは制度をつくるだけじゃなくて、実玉をちゃんと込めてほしいんですが、これで、我が党もいろいろ議論をしておりまして、多分もめると思うんですね。規制所管省と、その会社の事業を所管している省と、最後はもめると思うんです。そのもめにもめた後、最後は内閣官房なり内閣府で仕切っていくということになっていくと思うんですけれども、ぜひその仕組みを法定していただきたいんです。そうしないと、結局、権限がある人が調整すれば物は変わります。

 例えば、この国家戦略特区法案も、本部をつくったり、いろいろなものをつくって、権限があるから、最後は、前を向いておられる、今だったら新藤大臣が前を向いておられるので、規制を持っている各省、ちょっと我慢してくださいよというところで、最後は大臣調整まで含めて行えるんですが、企業実証特例制度も、ぜひ、最後の最後になったときに、内閣府に、内閣府設置法の所掌事務にきちっと書き込む形で、その調整権限を置くべきだと考えますが、いかがでしょうか。

甘利国務大臣 法的枠組みとしては、各省調整をやるのは内閣官房の長である内閣官房長官であります。そして、私自身も、日本再興戦略をつくる担当大臣として、この再生本部の、いわば総理のもとでの取りまとめ役をやっております。そういう権限のもとで、官房長官と、それから成長戦略にかかわる、再興戦略にかかわる問題については、私が担当させていただいております。

 委員御指摘の話は、法定化しさえすれば、たとえどういう人物が来ようとも、その法律のもとに仕切れるのではないかというお話だと思います。

 基本的には、その法律のもとにというのは、官房長官がやるということでありますが、私の経験上思うことは、調整担当大臣は、やはり他の省の大臣よりも人事配置で年次を高くするとか、権限があっても、大先輩が実行官庁に大臣としていて、新人の議員が、権限があるからといっても、なかなか調整というのは難しいと思うんですね。そういう法律上の構成もそうだし、それから、人事配置も事が動きやすいようにしていく必要があるなというのは、経験上感じます。

後藤(祐)委員 大変政治的に貴重な答弁をいただきましたが、行政改革、規制改革担当の内閣府の担当大臣は、当選回数の多い、各省、抵抗する大臣に対して、より回数の多い、力のある大臣を迎えないと機能しないという答弁をいただきましたが、そのような御理解でよろしいですか。稲田大臣の答弁を求めたいと思います。

稲田国務大臣 そういう側面もあろうかとは思いますけれども、ただ、やはり行政改革、規制改革、本当に、国家の発展にとって大変重要なことは、後藤委員とも私は共通認識を持っていると思いますので、もちろん、期は三期で若いかもわかりませんけれども、しっかりと取り組んでいるつもりでございます。

後藤(祐)委員 頑張ってください。

 ですが、やはり、重い人には重い人で、構造改革特区をやったときには、鴻池さんがばしっとやったのでうまくいったとか、いろいろやはりあるんですね。ただ、当選回数主義は私も大嫌いです。三回で大臣になられて、大変立派なことだと思いますし、私は当選二回ですが、特定秘密法案からNSCから情報公開法から何から全部やっています。当選回数なんか関係ありません。ぜひ頑張ってください。

 ですが、ちょっと公務員法の話は後にして、マクロの話、せっかくきょうは甘利大臣が来られているので、したいと思いますが、アベノミクスは、やはり給料が上がっていかないとなかなかデフレから脱却できませんよねというお話は再三されておられます。法人税を下げようと、特に来年の復興増税に係る部分を一年前倒しして法人税を下げていこうというお話がございますが、地元の中小企業の社長さんなんかに伺いますと、法人税を下げたからといって給料を上げますかというと、そんな上げないよという人が大半なんです。むしろ、その財源があるんだったら、社会保険料を下げた方が、会社の社長にとっては効果があるというんですね。

 つまり、社会保険料というのは、会社にとっては人件費と見ていて、固定費なんです。その社会保険料が下がった分を給料に回すというのは、与党でもうなずいてくれる方は多いと思いますけれども、これは会社を回っておられるということだと思います。それは、社会保険料で払う分を給料に変えただけですから、社長からすると、支払いが変わらないんだったらやり得る話だと思うんですね。

 ぜひ、その財源があるんだったら、社会保険料をむしろ安くして、それは税から保険に対して補填すればいい話なわけですから、ということをやっていけば、正社員と非正社員の差というのは実は社会保険料ですから、制度的に言うと、その差が縮まっていくと、多様な仕事の仕方というのも可能になると思います。

 例えば、午後四時まで働きたい主婦ですとか、あるいは週三日だけ働きたい方ですとか、そういった方が、正社員とほぼ同じような待遇で、本当の意味での同一労働、同一賃金を実現していくためにも、ぜひ社会保険料を下げていく方が賃金、雇用につながっていくのではないかと思うんですけれども、この点についての甘利大臣の御見解を伺いたいと思います。

    〔関委員長代理退席、委員長着席〕

甘利国務大臣 さっきの答弁でちょっと誤解があるといけないんですが、規制改革担当大臣が当選年次が高い方がいいと言っている意味ではなくて、内閣の中に、内閣官房、内閣府の中に一人、つまり、内閣府の中の大臣が実施官庁との間でもめた場合、ぴしんとバックアップができる人が誰か一人必要だと。だから、官房長官が、実力のある者がいれば、その他の内閣府の大臣をバックアップできるという意味で申し上げたので、全員、内閣府の大臣は当選年次を上げろという意味で言ったわけじゃないのでありまして、稲田大臣は一生懸命やっていただいておりまして、私はこの努力を非常に評価して、一生懸命、私のできるところはバックアップをしているという意味でございます。

 本題に入りますけれども、御指摘のようなお話は、有識者からもあることは事実です。ただ、社会保障国民会議で出された答申の中にもありますように、各種社会保険というのは、社会保険システム、いわば共助のシステムで基本設計をしていく、その上で、国がいろいろ介入をしていく公助システムは、公助が強く働くように、共助システムをしっかり完成させた上で、その方が公助の力が働くということの答申がなされているわけであります。

 法人税と社会保険料との関係も、いわば、まず第一義的には構成員で負担と需給のバランスを考えて設計をしていく、その上で、公助たる国の支援が働いていくという設計を基本とするというのが今の政府の方針であります。

 企業立地競争力で比較する場合に、よく、法人税の実効税率が、うちは実効税率がこのくらいですからと比較になります。社会保険料が安いですからという訴えというのは余りないものでありますから、御指摘のお話はよくわかるのでありますけれども、社会保障のシステムの基本的な理念とか、それから外国との比較における競争力を図る視点としての実効税率とか等々を考えて、こういう対応をしているというところであります。

後藤(祐)委員 通告している割には歯切れが悪いような気がしますが、ぜひ、これは長期的にも大事な話だと思いますので、御検討いただければなというふうに思います。

 先ほどの企業実証特例制度の話は、要するに、内閣府の所掌事務を変えないでやると、結局、内閣法十二条の内閣官房の事務という話になってくる、あるいは内閣府設置法上の一般的な規定になってくると、温度が高いときはいいですよ、今みたいに。国家戦略特区をみんなでやろうというときはいいですよ、新藤大臣がばしっと仕切っていただけるかもしれない。おみこしをみんな祭りのときはワッショイワッショイ担ぐんですよ。ところが、この企業実証特例制度というのは、これから永続的な制度としてやろうとしているわけですよね。祭りでないときのおみこしはどこにあるのか、みんな知らないわけですよ。

 それをきちっとメンテナンスをして、きちっとこの担当は私でございますという人をつくって、いざ、これをやってあげたらいいねという話になったら、権限を持って調整できるかどうかは、決定的に霞が関は違うんです。ぜひここは御検討いただきたいなと思います。

 それと、ちょっと長くなってしまったので、世代間負担の話もしたいんですが、ちょっと次に行きましょう。

 国家公務員制度改革の話をしたいと思いますが、先週、テレビ朝日の報道ステーションで、二〇〇九年当時の甘利先生が公務員制度改革の法案を担当大臣としてお出しになられたとき、谷人事院総裁と大きな論争を繰り広げておられましたけれども、そのときに、これは多分委員会の正式な場ではないと思うんですけれども、どこか国会の中だと思いますが、テレビで、公務員制度改革は人事院のお墨つきがなければできないとしたら、こんなもの永遠にできないと思います、信じられないですねという映像が全国放送で流れておりますが、もう流れているので事実なんですが、これは事実かどうか、甘利大臣に再度確認したいと思います。

甘利国務大臣 事実でございます。

後藤(祐)委員 また、同じ番組で、引き続いて、稲田大臣が、今回出している国家公務員制度改革法案について、ベストの法案に仕上がっていると思いますというふうに発言されておられます。

 でも、今回出している法案は、この後、国家戦略特区法案の後にやるんでしょうけれども、人事院の関与というのはちょっと残っちゃっているわけです。甘利先生が出したときの法案は、すぱんと人事院の権限を切っちゃっているわけです。私は甘利大臣のときの方がよくできている法案だと思いますし、国家戦略スタッフのところについての規定も、非常に充実した規定を盛り込んでおられました。

 甘利大臣、どっちがベストの法案ですか。

甘利国務大臣 政府は、時々の世の中の変化に従って、一番いいと思う法案を出していると。もちろん、それが国会内で、よりいい方向で修正されることは当然あるわけであります。

 私の時代のときには、とにかく政治主導をしっかりさせよう、人事に関して人事院にいろいろと相談をする、それが過ぎると、省庁を所管する大臣の主体性が損なわれるではないかという点を非常に危惧いたしました。そこで政治主導ということを強く打ち出したかったわけであります。

 その後、いろいろな批判がありました。政治主導が強過ぎると公平公正性が損なわれるのでないか等々の世の中の批判もあったんだと思います。それらを、その後の世の中の評価、変化を勘案して、そのときに一番いいであろうということで、今回、稲田大臣が御苦労されたんだというふうに思っております。

 ですから、政治主導性がどっちが強いかというところでいえば、こっちが強い、あっちが弱いというようなことは言えるかもしれませんけれども、今の時代にとってどっちがベストかということは、その時代時代によって変わっていくものであろうと思いますし、もし、原案が将来もっと直していくべきところがあったら、それは修正として出てくるのだろうというふうに思っています。

後藤(祐)委員 政治主導性の観点だけからいえば、甘利先生が出された法案の方がより政治主導性が強いと私は考えますが、甘利大臣、どう考えますか。

甘利国務大臣 政治の意思がより強く働くということはそうであろうと思います。ただ、その一方で、公正公平性ということで危惧があるかということになりますと、そちらよりも、どちらかというと政治主導性の方に少し寄っているかなというふうに思います。

後藤(祐)委員 公務員法の話は後ほど幾らでも時間があると思うので。ただ、きょうは甘利大臣が来られているということが非常に大事だと思いますので、御確認をさせていただきました。

 稲田大臣、公務員制度改革法案、出すのが遅いです。追い越されちゃったじゃないですか、国家戦略特区法案に。だから、この国会、成立はもう無理でしょう。何をしていたんですか、通常国会のとき。

 二月十四日の本委員会、甘利大臣がこう答えておられます。国家公務員改革基本法ですね、「基本法には期限が切ってあります。それからいえば、対応がおくれているというのは、まさに国会としての怠慢だと言われても仕方がないことだと思います。」期限が切ってあって、それまでに出さなかったんです。そして、「担当は稲田大臣でありますので、私の思いもしっかり伝えて、基本法の趣旨に沿って迅速な対応ができるように、背中を押していきたいというふうに思っております。」と甘利大臣が二月十四日、答弁しておられます。

 そして、三月十五日、当委員会で稲田大臣は、早くしてくださいという私の質問に対し、こう答えております。「私は、いつまでにということが重要ではないと思うんですね。もちろん早急には取り組んでまいりますけれども、これを六月とか七月とかいうことが重要ではなくて、やはりその中身だと思いますので、早急に取り組んでまいりたいと思います。」

 甘利大臣、背中を押したんですか。

甘利国務大臣 小さい背中でありましたけれども、しっかり押しました。

後藤(祐)委員 通常国会に出していれば、通常国会で少し審議をして継続審議か何かにしてあれば、国家戦略特区法案より先に、内閣委員会、あいていたんですよ、この臨時国会、最初のうち、何回か。できたんですよ、国家公務員制度改革法案。稲田大臣の責任は大きいと思いますよ。どう考えますか、稲田大臣。

稲田国務大臣 私は、この国家公務員制度改革、大変重要な法案だと思っております。また、明治以来の縦割り行政の弊害を排して、内閣人事局というものをつくる。そして、人事院から級別定数を持ってくるということは、昭和三十年以来、政府が法案を何度も出しても、ずっとできなかったことでございます。また、二十年の改革基本法に基づいて、国家公務員改革の法案が三度提出されて三度とも廃案になったという不幸な歴史もございます。

 そういう意味において、前回の通常国会において、今回は改革の集大成ということで検討を続けて、今回ベストのものを提出したということでございます。

後藤(祐)委員 この責任は後でまた問うていきたいと思いますが、国家戦略特区法案に移ります。

 まず一つ、条文上、やはり問題だという点を先にやりたいと思いますが、総合特区の法案、新藤大臣が前の通常国会でもその改正案をやっていただきましたが、そのときに、構造改革特区で認められた個別の規制改革の話は総合特区では自動的に使えることとするという、私からの、ここでの場で、修正してはどうかという御議論をさせていただいて、これは、皆さん、そうだという話になって、民主党、自民党、公明党、維新、みんなの党の共同提案で修正案を提出して、生活の党も含めて、これは実現しております。

 この国家戦略特区法案、当然、同じことになっているかと思ったら、なっていないんです。三十七条というのがあって、あたかも構造改革特区法でやれることになっている個別の話は、今回の国家戦略特区で自動的にできるように見せながら、実はそうではなくて、つなぎますよと言っているだけで、非常に簡単に言うと、別途、構造改革特区を取得してくださいということになっているんですね。

 総合特区のときは、総合特区でやった場合には、構造改革特区の認定も受けたものとみなすと。総合特区法第十四条の二第四項においては、規制の特例措置とみなして、構造改革特区法の規定を適用するとなっている。つまり、自動的に施行されるところまで書き込んであるんです。ところが、今回の法案ではそうなっていない。別途、構造改革特区の手続をやっていかなきゃいけない。やれば多分とれるんでしょう。意味ないじゃないですか、手続ばかりふえて。

 何で、総合特区のときの、きれいに書けた条文をそのまま盛り込まなかったんですか、新藤大臣。

新藤国務大臣 前国会において、総合特区法案の改正において、委員からいい御提案があって、これは各党の協議の上で、修正がなされました。その精神というのは尊重されてしかるべきだ、このように思います。

 今回の場合は、総合特区と構造改革特区、それは、地域からのニーズまた御提案に応じて、それを認定するか否かということで同じ線上にありますね。ですから、そもそも構造改革特区で認められるものというのは、そこで認めれば、全国どこでも、やりたい自治体が申請すれば認定できるようになるわけですから、ですから、総合特区においてそういった規制項目は構造改革特区でも認めていいよ、これはいいと思うんですよ。

 だけれども、今度の国家戦略特区というのは、地域のニーズに合って個別の一つ一つをということではなくて、国と地方と民間が一体となって、コンセプトをつくって、そこの中で経済の起爆剤となるようなものをやろうということでございますから、趣旨だとか目的がやや違っているところがあるわけです。したがって、規制緩和の項目において、例えば構造改革特区で認められるものというのはどぶろくとかですから、そういうものをやりたいというような、地域活性化の観点でやりたいところは、これは出せば、申請ができるわけで、認定されるわけでありますから、それはそれでいいではないかと。

 それから、今度の特区の法案で書かせていただいているのは、提案が二百近くございました、そして、何カ所になるか、これから決めるんですが、しかし、それにしても、細かく細切れに地域単位で決めていくようなものではありません。これは国ぐるみで総合的にやっていこうということなんですから。そうすると、せっかくいい御提案で、例えば構造改革特区で規制緩和項目として成り立つものについては、これはそういったものを見ていこうではないか、それから、準特区といいますか、そういったようなものも見られるようにしていこうではないか、こういうようなことも踏まえて、法案の中に入れさせてもらった、このように御理解いただきたいと思います。

後藤(祐)委員 新藤大臣らしからぬ、ごにょごにょした答弁ですが。

 この「特区のイメージ」、緑と青と赤のもの、よくありますよね。「革新的な農業等の産業の実践拠点の形成」と。これの例示として古民家だとか農家レストランだとか、こういうのをやれますよというのが国家戦略特区の例になっていますよね。農家レストランの横にどぶろくがあったら、何でいけないんですか。使ったらいいじゃないですか。それをわざわざ別々の手続をしなきゃいけないというのは、面倒くさいじゃないですか。

 やれば、どうせできるんだから。否定する理由、ないんですから。新藤大臣、うなずいておられますけれども、単純に手続を減らすだけなんです。ここで条文修正しておけば、もう一々そんなことを、各地方自治体がやることになると思いますけれども、やらなくて済むんですから。簡単にしましょうよ。

 恐らく、これが入っていないのは、各省協議で通らなかったということだと思うんですよ。あるいは、内閣法制局がいろいろ言ったのかもしれません。実際、総合特区のときも、立法府で、面倒くさい話だったら、さっと手続上できるんだったらやってあげようよということで、政治家と政治家の議論の中で新藤大臣にお認めいただいて、御了解いただいたんですから。これも同じことなんですよ。だって、総合特区より、より上位の、上位と言うかどうかはともかく、立派な特区だということで出してきていらっしゃるわけでしょう。だったら、構造改革特区の個別の話が入ったっていいじゃないですか。

 そういう意味では、三十七条二項の構造改革特区とのつなぎの条文、これは若干問題があって、国家戦略特別区域における産業の国際競争力の強化または国際的な経済活動の拠点の形成に資するものについては、その円滑かつ確実な実施に関し必要な助言その他の援助を行うように努めなければならないと書いてあって、要は、きらりと光るような個別規制改革玉は手伝ってあげましょうと書いてあるんです。

 だけれども、それほどきらりと光らない玉も含めて、いろいろな玉をあわせて国家戦略特区になっていくんじゃないんですか。国家戦略特区の中の光る玉と光らない玉、全部あわせて、国家戦略特区全体が光っていくということなんじゃないんですか。そこはぜひ、それをお考えになって、この条文修正は至急検討していただきたい。

 我々も、ほかの政党の皆さんも、これは前回やっている話ですから。衆議院法制局は今忙しいんですよ、私の担当のところの人、特定秘密とかいろいろなものがあって。ぜひ、政府の中で条文をつくって持ってきてください。お願いします。

 次に行きます。

柴山委員長 後藤委員、答弁はよろしいですか。

後藤(祐)委員 では、新藤大臣の見解を聞きたいと思います。

新藤国務大臣 手続を簡素化しようというのは、私も、同じだと思います。その意味において、総合特区と構造改革特区は、規制改革、規制緩和という論点においては同じ線上にあった。個別の地域の課題を解決するという意味において同じ整理ができるねということで、私も理解をしたわけであります。

 今回のものは、農家レストランを国家戦略特区内でやることが目的ではなくて、例えば農業というのをコンセプトにして、ではそこで思い切って農業の産業化を図ってみようじゃないか、ICTを入れたり、いろいろなことをやりましょうと。その中の一環として、使えるメニューとして、農家レストランの、今までよりも緩和ができますよというようなことを入れ込ませたわけなんですね。

 ですから、おのずと目的や趣旨が違っているわけなので、委員の意見は頭に入れておきますけれども、現状において、それは、もし、きらりと光ろうが光るまいが、いい提案であれば、それを受けとめるのが構造改革特区なんですよ。構造改革特区の制度をきちんと使っていけばいいわけです。

 私は地域活性化担当大臣であって、そういった特区を幾つも所管しています。僕、七つぐらいそういう事業を持っているんです、中心市街地活性化も何もね。これは、国家戦略特区をやるからそっちにみんな行っちゃうんじゃなくて、一つ一つの今までの既存事業も大切にする、それから連携も図っていく。その意味においてはきちんと対応していきたい、このように考えます。

後藤(祐)委員 今、総合特区で選ばれたところは、先ほど近藤議員の話にもありましたけれども、結構動いていて、これはいいじゃないのという話もあるんですよ。それで、また国家戦略特区という話が出てきた。総合特区で既に指定されている地域で、国家戦略特区もぜひやりたいと言っているところもたくさんある。仮に指定されたとしましょう。二つスキームが動いていって、もう面倒くさいったらありゃしない、こういう話になっていくわけです。さらに構造改革特区、もう勘弁してよと。できるだけシンプルにしようじゃないですか。ぜひそこは御検討ください。

 それで、今申し上げたような、国家戦略特区会議というのができますよね、各地域ごとに。一方で、総合特区は地域ごとに協議会というのがありますよね。重なって指定されるようなところが多分出てくると思うんですよ。東京は総合特区がありますから、国家戦略特区、東京を指定したら重なっちゃいますよね。重なると、国家戦略特別区域会議もあれば、総合特区の地域協議会もあれば、もう勘弁してよという話になるんです。

 ただ、これは総合特区かつ国家戦略特区というものを認める以上は、そうせざるを得ないんですが、できれば、総合特区のときのしつらえ、いわば地域協議会という形と同じ形にここの地域ごとのものをしておけば、名前だけ二つつけておいて、実際そこに参加してみれば同じというような形にすると、実質的には一つの場で物が動いていって、形としては二つ冠がついているという形にできると、自治体としてはすごくやりやすくなると思うんですよ。このしつらえを、同じような形にすることをお考えになりませんか。

新藤国務大臣 まず、国家戦略特区が、どういう地域、区域が指定されるかということになっていくわけなんですけれども、お尋ねのように、総合特区とかぶる場合もあると思います。しかし、完全にかぶるかどうかは、これはわかりません。

 それは、重なっているところもあれば、そうでないところもあると思いますね。ですので、総合特区の焼き直し版だというふうにお考えいただきたくないんです。総合特区は総合特区できちっとやっていこう、構造改革特区もやっていこう、そして国家戦略特区も新たにやっていこうと。これは、連携するけれども別建てでございます。

 したがって、かぶった部分については、特に、これから国家戦略特区については、特区ごとの会議をつくります。それは、関係の自治体の代表と民間事業者の代表と担当大臣で構成します。ですから、民間や、それから地方の自治体の代表が選ばれるときに、そこの地方自治体の意見を集約する場として今委員がおっしゃったような総合特区における国と地方の協議会、こういったものを活用するのは十分にあり得ると思いますし、また、そういう連携をしながら、それぞれの事業が有機的な結合をしていく必要があると思いますから、それは運用において十二分に工夫をしていきたい、このように考えます。

後藤(祐)委員 ここは、しつらえを変えちゃうと、それが面倒くさくなっちゃうんですよ。そこはうまく運用でやるようにしてほしいと思います。

 ちなみに、この国家戦略特区で認められた個別の規制改革メニューは、その後、一定期間後、全国展開することを考えておられるんでしょうか。

新藤国務大臣 これは、私どもも、まず試験的に、また象徴的なプロジェクトとしてやってみようと。そして、それが有効であるかどうかは、定期的に評価を行って、そしてその効果があると思うならば、それは全国展開を当然やっていこうじゃないかと。逆に、効果が上がらない、うまくいかないという場合もあると思います。ならば、なぜ失敗するのか、なぜうまくいかないのかを分析して次に続けていく。

 いずれにしても、一過性で終わらずに、これはまさに、ローリングといいますけれども、制度をつくり、そして地域を指定して、そこでの事例をチェックしながら新たなる展開を考えていく、そういうことでございます。

後藤(祐)委員 ぜひ、効果が上がったものは、恐らく各省が抵抗していたものの場合も大いにありますから、各省の抵抗の度合いの少ないものを展開するということではなくて、各省の抵抗の度合いは高いけれども効果が上がったものの全国展開をぜひしていただきたいと思いますが、もう一度、それについての御答弁をお願いします。

新藤国務大臣 我々は、もとよりそこを突破したいと思っているわけです。また、その突破が、大きな効果があり、かつ国民の福祉や安全性、利便性に対しても有効である、また安定している、こういうものを実証しなければならないと。

 規制があるのは、悪意でもって規制があるわけではなくて、必然性があって規制があるわけでありますから。それを、しかし、社会、時代の要請に応じて、このように展開していくんだというものを突破していかなくてはならない、それは私たちの役目だと思っています。

後藤(祐)委員 力強い御答弁をいただきました。頑張ってください。

 あと、この国家戦略特区で認められた個別の規制改革玉を、構造改革特区のメニューでも認めるべきではないかと思うんです。先ほど挙げた農業関係のものなんかは特にそうだと思うんですね。こういった古民家だとか、歴史的建造物だとか、農業委員会だとか、こういったものというのは、日本全国に点在してやりたい市町村なんかがあると思うんですよ。ただ、それを全部、国家戦略特区にすることはできませんから、こういった点在してやりたいような玉は、特に構造改革特区で認めてさしあげる必然性が高いと思うんですね。この農業分野は特にそうですが、古民家だとか、旅館業法なんかはそういう面が多いと思うんですね。

 ぜひ、そういったものを重点的にだと思いますが、今回認められた個別の規制改革を構造改革特区の方でも認めていくというふうにすべきだと考えますが、どうでしょうか。

新藤国務大臣 そういうことのためにも国家戦略特区は使えると思います。一つの事業でここを緩和してくれと言われても、それは全国的な展開はなかなか難しい。構造改革特区で認められないのは、そういう場合だと思いますね。

 しかし、今回の国家戦略特区において、総合的な事業をやる中で、この一環の、ここの農家の部分も、効果が出る、それがきちんとした評価、分析ができたならば、それは、心配が払拭されるならば、全国展開できるではないかと。まずその最初の実証をやってみる上においても、国家戦略特区というのは活用できるのではないか、このように期待しています。

後藤(祐)委員 ぜひ構造改革特区の方へも移しかえをよろしくお願いします。

 さて、この国家戦略特区を一体どういうところに指定していくのかということについて、一つ確認させていただきたいのは、この「国家戦略特区のイメージ」という、赤、青、緑のものがありますよね。全部やれとは言いません。ですが、例えば緑の方の、農業なんかを中心とした、こういったものを念頭に選ばれる地域というのは多分あると思うんですね。そういったところが、容積率でやれとは言いませんけれども、せめてここで、緑の矢が六個あるわけです、古民家から農業生産法人まで、これはセットでやっていただきたいんですね。

 もしそこがやらなかったら、空玉になっちゃうわけですよ。全部で三から五しかつくらないわけですから、農業を念頭に置いたところが一個しか例えばつくらなかったとすると、そこが、この六個のうち、うちはこれをやらないというと、空玉になっちゃいますから、指定するときに、少なくとも、農業なんかをイメージするときはこの六個とか、医療のイノベーションのところだったらこの青いものの六個だとか、こういったものは、全部、やる覚悟のあるところを確認した上で、そういったところに限って指定するという理解でよろしいでしょうか。

新藤国務大臣 その区域指定は、これから法案成立後に設置されます特区諮問会議において議論がなされるわけでありますけれども、当然、積極的に、あらゆる事業を取り込んで、そして総合的な相乗効果をもたらそうではないかという事業でなければ、国家として取り組みは、なかなか、するに値しないですよね。ですから、今委員の御指摘のようなことはやりたいと思います。

 ワーキングの中でも議論したんですけれども、これを全部使えというわけじゃないんですよ、メニューだから。今我々が提供できるメニューはこれです、しかし、今後、事業者から、また、いろいろな方から御提案があって、より効果が上がるものについては、これはどんどんと取り込んで、それを諮問会議の中で区域設定や方針設定をして、そして今度は、個別の統合推進本部の中でそれを実行できるような体制をつくろうじゃないか、こういう仕組みになっているんです。

 ですから、どこまで膨らませられるかはこれからが勝負だ、このように思っております。

後藤(祐)委員 少し前向きな答弁がありましたが、必ずしもそうでない感じでしたが、特に、農業委員会と市町村の事務分担は、たしか兵庫県の養父というところが出しているもので、あそこ以外に幾つかあるんでしょうけれども、要は、関係者を調整するのが大変なようなものはやらないで、おいしい話だけやっておくかというようなところは、ぜひ指定しないでいただきたい。厳しいものを、関係者を調整するのが大変そうなところを乗り越えてきたところを指定していただきたい。

 そういう意味でも、全部パッケージじゃなくて、少なくともこの色分けしたぐらいのところは、全部、やる覚悟のところを指定していただく、今、新藤大臣、うなずいておられますので、そういうルールで指定していただくということを御確認させていただきました。

 さて、この指定なんですが、先ほども審議が少しありましたけれども、市町村というイメージなんでしょうか、それとも、東京と神奈川県みたいな形の、連接する二つぐらいの、複数の都道府県というようなイメージなんでしょうか。そのイメージについてお答えいただきたいと思います。

新藤国務大臣 これは、これから諮問会議でそのことも議論するんですけれども、少なくとも、どこかに当て込むということは考えておりません、私自身は。場合によれば、行政体が丸ごとになるかもしれません。でも、国家戦略でそこで行うプロジェクトですから、市町村をまたぐ場合も、県をまたぐ場合もあると思います。

 しかし、それが、包括的にそこの自治体全部がというようなことではなくて、やはり地域を絞って必要なものを設定する。それが結果的に行政体が分かれるかもしれないし、中かもしれないし、それはこれからの検討だ、こういうふうにお考えいただければいいと思います。

後藤(祐)委員 そうすると、例えば東京と神奈川全体なんだけれども、その中で一生懸命こういうのをやっているところが点在していて、そういったところが包括的に指定されるという、そんなようなイメージでしょうか。

新藤国務大臣 個別の地名を挙げていただきたくないんですけれども、しかし、そういうこともあり得るかもしれませんね。いろいろな御提案をいただいていますから、それらも含めて柔軟にやっていきたい、このように思います。

後藤(祐)委員 甘利大臣と私は同じ神奈川県でございますので、済みません、特定の地名はともかく、一般論として受けとめさせていただきました。

 総合特区とこの国家戦略特区の比較において、残念なのは、税がまだついていないという話と、お金がついていないんですよ、特区推進調整費が。構造改革特区はお金のない特区、総合特区は、予算も税も利子補給もフルパッケージでつけた特区。

 この国家戦略特区は、税はこれから頑張るということですが、何億という金を推進調整費みたいな形で入れる制度は入っていません。少なくとも予算要求はなされていません。なぜですか。要は、お金という面ではやりようはいろいろあって、フルパッケージでそれはつけるべきだったんじゃないんですか。

新藤国務大臣 国家戦略特区は、先ほど甘利大臣からも御答弁いただきましたが、例えばこの分野においては世界の三大プロジェクトに入る、この日本の大きな実験が、それが世界の経済に打って出るものであり、世界から取り込もうとしているものであると。

 ですから、それにはまず企業が自由に、それからいろいろなものを総合して、連携させて効果を出されるようにしなきゃならないという意味において、規制緩和、規制改革がまず第一番に来るわけです。そして、その事業をやりやすいようにするための税制というのが出てまいります。あとは、金融については、立ち上げの、初動の必要な資金、これが手当てが必要だと思われるところには、それもつけましょうというところまでは用意しました。

 あとはお金を出すからやってくれじゃないんですね。自分たちもやるんですから、国も。なので、これは既存の制度を使いながらやっていけばいいし、また、そういうパワーのある仕事をしていかなければいけない、このように今は考えているわけです。

後藤(祐)委員 そうすると、総合特区の方がやはりパワフル特区ということになっちゃいますよね。何でつけなかったんでしょうかね。

 あと、スキームも、基本方針を策定して、区域ごとに会議体を設置して、特例措置の提案が後からもできて。ほとんど同じなんですよ、スキームも。若干、各地域ごとのものに大臣が入るだとか、親玉の会議のところに民間議員が入るだとか、その程度でしょう、違いは。

 違うところは結局、現ナマが入らない、そこだけなんですよ。だったら、一本化した方がいいんじゃないんですか、今からでも。

新藤国務大臣 私は全く違うと思っています。

 それは、冒頭申し上げましたけれども、構造改革特区も総合特区も、地域からの手挙げ方式で、その申請に対して国がそれを認めて、事業体は地域の皆さんがやっていただくわけですね。今度の仕事は、御提案はいただくけれども、国も一緒になってそこで事業をやろう、手挙げではなくて一緒にやろうと。根本的に違うんですよ。

 プロセスは、それは公募したり、アイデアを募集したり、そのプロセスが当然同じようなものになるのは当たり前です。しかし、最終的に、国が一緒になって、民間事業者や地域の皆さんと一つの事業をやっていくという意味において根本的に違う、このように思っています。

後藤(祐)委員 ちっとも根本的に違わなくて、この国家戦略特区の個別のアイデアは、実は八月十二日から九月十一日までの間に二百四十二団体から百九十七件の応募があって、それをワーキングで絞り込んで、各省協議を経てこのメニューができています。同じです、総合特区のときと。

 実際、これから指定するときに、さっき大臣がおっしゃっておられたように、ちゃんとやる気あるんだねという、やる気ある人、要は、さっきのだったら、六個ちゃんとやる人、手を挙げてということになるじゃないですか。同じじゃないですか。今からでも、総合特区をさらに強くする。名前なんかいいですよ、国家戦略特区という名前に総合特区を変えてもらっても構わないんですよ、一つにした方が……。自治体が迷惑なんですよ、複数同じようなものができると。お考えいただけませんか、そこは。

新藤国務大臣 違うんです。

 これから決まりますと、どういう事業内容になるかでわかると思います。それは、今、国の事業は何も入っていません。地域からの御提案は参考にさせていただいて、どんなコンセプトで、何をメーンテーマにして事業をやろうかというのを決めていきます。そこに国が、これに仕事が加わってくるんです。

 ですから、今、それはまだ決まっていないし、議論もしていません。これからやらなきゃいけないことなんですけれども、もともとが今までとは違うやり方で進めようとしておりますので、これは進め方を見ていただけばわかるというふうにしか申し上げようがありません。

後藤(祐)委員 時間が来たので終わりますが、三十七条の、構造改革特区の個別玉、これを自動的に認める条文修正については、ぜひ御検討いただきたい。そして、各党も、ぜひこれは御検討をいただきたいということを申し上げて、終わりにしたいと思います。

 ありがとうございました。

柴山委員長 次に、大西健介君。

大西(健)委員 民主党の大西健介でございます。

 私は、ふだん厚生労働委員会で主に活動させていただいておりますけれども、今回の特区法案の中には、医療とか雇用とか、厚生労働分野にかかわる重要な事項も多数含まれておりますので、きょうは、厚労委員会から出張して、この内閣委員会で質疑をさせていただきたいというふうに思っております。

 特に、今回、国家戦略特区では、雇用に関する規制改革事項というのが含まれております。この件に関しては、これまで、報道を通じて、解雇特区などという報道もありました。私ども、我が党の厚労部門においても早い段階からそういった情報を耳にして、懸念を表明して、政府に対しても、説明を求めたり問題点を指摘してまいりました。

 そこで、きょうは、私は主に雇用についてお聞きをしていきたいというふうに思うんですが、その前に、規制緩和の基本的な考え方について、ぜひ稲田大臣にお聞きをしたいというふうに思っております。

 皆さんのお手元に資料をお配りさせていただいております。新聞記事なんですけれども、「残暑お見舞い申し上げます 首相への提言」という竹中平蔵さんの記事です。これは印をつけておいたところをぜひごらんいただきたいんですけれども、ちょっと読ませていただきたいと思います。

  首相が小泉内閣の官房長官だったころにおもしろい話をしていた。たまたまタクシーに乗ったら、運転手から「(新規参入を促す)規制緩和でおれの給料は下がった。その代わり、台数が増えたから失業していた息子も運転手になった。結果的に家族全体の所得は上がった」と言われたそうだ。これが規制改革の本質だ。小泉純一郎元首相と表現の仕方こそ違うが、安倍首相は改革の本質を分かっている。

私は、これを見てちょっと驚きました。これが本当に規制緩和の本質だったらば、我々とは考え方が大きく違うなと。安倍政権の規制改革を担当している稲田大臣、こういう考え方に立って規制改革を進められるなら、我々はちょっと賛同できないと思うんですけれども、この考え方、安倍さんはよくその本質をわかっているんだと竹中さんはおっしゃっていますが、これをごらんになって、何か御感想をいただけますでしょうか。

稲田国務大臣 この竹中教授の記事についてのコメントは、今見たところですので、どういう文脈で言われたのか、差し控えたいと思いますが、私が考えている規制改革は、やはり、あるべき国家像、あるべき社会の姿に向けて、今それを阻害する要因である規制を改革していくことだと思っております。

大西(健)委員 ごまかさないで、これはぜひ。そんな難しい話を聞いているわけじゃないんですよ。

 これは、ごらんいただいたらわかるように、この運転手さんのケースというのは極めてレアケースですよね、家族全体の所得が上がったという。それはもう本当に限られたケースであって、何より、ここで示されているのは、運転手の職はふえたかもしれないけれども、一人一人の運転手さんの給料は下がったということですよ。それが規制緩和の本質だと言っているんだったら、私は、それは違うんじゃないかと。そこにあらわれているのは、できるだけ安く労働者を使おうという考え方なんじゃないかと。

 私は、稲田大臣というのは、保守派の論客と言われて、新自由主義路線とは一線を画しておられる、そういう政治家だと思いますけれども、こういう考え方で規制緩和を進めるんですか。もう一度御答弁お願いします。

稲田国務大臣 今の竹中教授の記事はさておいて、今議員が指摘をされた、安い労働力をできるだけ使っていこうというような規制改革であってはならず、国民の生活であったり国民の健康であったり、そういうものがよりよきものになるための阻害要因である規制を改革していくというのが規制改革の本質だと思っています。

大西(健)委員 ぜひそこはお忘れなきように進めていただきたいというふうに思うんです。

 そういう点において、次に、また同じく、竹中平蔵さんが十月一日の産業競争力会議にペーパーを提出された、そのことに関する記事も二枚目につけさせていただいておりますけれども、「竹中氏恨み節」というこの記事です。これも該当部分に線を引かせていただきましたけれども、ここで何と言っておられるか。きょう私が取り上げようと思っている雇用分野、「「雇用」分野は、残念ながら、全く前進がみられないと評価せざるを得ない」、また、「一部歪んだ報道により、しっかりとした改革が止められる可能性についても危惧している」と言っておられます。

 規制改革を担当する稲田大臣、今、竹中さんの考え方とは違うんじゃないかなというふうに私は受けとめさせていただきましたけれども、この竹中さんが言っておられること、今回の規制改革、雇用分野では全く前進がなかった、そして、それはゆがんだ報道のせいだ、この評価について、同じ考え方なのかそうでないのか、教えていただきたいと思います。

稲田国務大臣 今、本当にきょう初めてこれを見せていただいたので、どういう文脈でこの竹中さんの記事があるのかよくわかりませんけれども、雇用についても、やはり、働きやすい多様な働き方を認めていくという観点から規制改革に取り組んでおります。と同時に、一部のゆがんだ報道によりというのが何のことを指しているかも定かではありませんけれども、公の政策である以上、さまざまな批判があるのは当然だと思っております。

大西(健)委員 それでは、ちょっと角度を変えてお聞きをしていきたいというふうに思うんです。

 では、一方で、私もふだん厚生労働委員会におりますけれども、雇用を担当しておられる田村厚生労働大臣が、こういう雇用に関する規制改革についてどのように考えておられるか。記者会見等でも繰り返し、特区で雇用の規制改革をやるというやり方そのものに対して一定の懸念というのを表明されているんです。

 それを私の方で記者会見から拾って、次の資料の三ページ目ですけれども、まとめさせていただいているんですが、まず上の方、九月二十七日の記者会見です。

  問題はその特区という、何と言いますかね、限られた場所においてですね、労働者の保護という意味での労働関係法令というものをいじる場合に、当然のごとくですね、これは憲法に規定されております生存権的基本権でありますので、基本的人権の一部だというふうに我々は認識をしておりますので、それが特区の中では薄らぐと。特区の外と中とで違うということがですね、果たしてできるのかできないのかという根本論が一つあります。

とおっしゃっています。

 さらに、下の方ですけれども、十月十一日の記者会見、こちらの方では何と言っておられるかというと、

  特区とそうではないところで労働法制が違うと、法律がですよ、違うと。適用されるものが違うというのは、なかなか難しい問題が多いというふうな思い、認識はあります。特区とはそういうものだという御意見もありますが、ただ前も申し上げましたとおり、世界中探しても労働関係で特区で規制改革をやっておる事例というのは、あんまり私は、ちょっと役所でも調べさせておりますけれども、まだ見つけられていないという状況もございますので、なかなか特区でやるということ自体はハードルは高いのではないのかなという私自身の認識等があるのは事実です。

と述べられております。

 私は、田村大臣の言っておられることというのは、ある意味正論だというふうに思うんですけれども、まさに規制改革を担当されている大臣として、稲田大臣、特区で労働の規制緩和をやる、そういうのは世界でもほとんどないんだ、それはやはりいろいろな懸念があるんじゃないかというこの田村大臣の考え方に対して稲田大臣がどう思われるかについて、お聞きをしたいと思います。

稲田国務大臣 田村大臣が御指摘の、憲法上の生存権的な基本権にかかわる分野については、そのとおりだと思います。

 ただ、今回、国家戦略特区の中で雇用について書かれております、例えば相談窓口を設けるとかガイドラインを策定するというのは、そういうものには当たらないのではないかとも思っております。

大西(健)委員 私は、あえて、この国家戦略特区法案の具体的中身に入る前に稲田大臣に規制緩和についての基本的な考え方をお聞きしているのは、さっきの竹中さんのような考え方で本当にいいんですか、あるいは、今、田村大臣がおっしゃっておられるように、そもそも、雇用について特区の中と外で違うというのは、生存権的基本権である労働について、法のもとの平等にも反する部分があるんじゃないか、この部分をしっかり押さえてやっていただきたいというふうに思っておりますので、あえて申し上げております。

 その上で、田村大臣、私は本当にそういうところがよくわかっておられるというふうに思うんですけれども、その田村大臣は、今回、この法案では、関係大臣として、特区諮問会議からは、言葉は悪いですけれども、外されてしまうわけです。そして、先ほど私が新聞記事を二つ取り上げて申し上げましたけれども、竹中平蔵さんのような民間の有識者が具体的な制度設計を決めていく。

 しかも、先ほどの記事の中にも書いてありますけれども、竹中さんは、今、大手人材派遣会社のパソナの会長を務められている方なんです。だから、田村さんが外されて、パソナの会長が入って、そして、その竹中さんは、一貫して労働規制の緩和を唱えてきて、その新聞記事には、日本を弱肉強食の世の中に変えていくべきだと主張してきている、一貫してと。労働規制の大幅緩和をいまだ諦めていないんだというふうに記事には書いてあります。

 ですから、私は、この後、雇用に関して、例えば、雇用指針、ガイドラインの話だとか、雇用労働相談センターのことをお聞きしようと思っていますけれども、これはこれから具体的な制度設計が決まっていくんです。そのときに、ちゃんとわかっている田村大臣は外されて、パソナの会長の竹中さんみたいな方が入って具体的な制度設計が決まっていくというので、本当に大丈夫なのかなという不安を持っているんですけれども、この点について、この法案の担当である新藤大臣から御答弁をいただきたいと思います。

新藤国務大臣 まず、委員は先ほどから個別のお名前をずっと連呼されておりますけれども、そもそも、どなたが諮問会議のメンバーになるかは、全くもって決めておりません。法律ができてから、総理のもとで検討して指定していくものですから、そこはぜひ御理解をいただきたいというふうに思います。

 それから、今回の国家特区諮問会議は、首相のもとで強力な体制をしく。それは、集中して議論を行うとともに、迅速にやっていこう、こういうことで担当閣僚を最小限に絞りました。

 しかし、関係大臣を入れないわけではありません。突然のように、ある日会議があって、そこで皆さんが意見を持ち寄って、その場で国の運営に関することが決まるわけがございません。あらかじめいろいろな議論は行わせていただきますし、必要に応じて関係大臣にも入っていただきます。しかし、最終的な意思決定の場において、それは、担当大臣と総理のもとで、最小の集約された中で意思を決定していこう、こういう仕組みを整えたわけです。

 しかし、それは、最終的には閣議決定を行います。全大臣が参加する閣議でもって方針を決定するのでございまして、都合の悪い人を除くからということではないんです。きちんとした議論をした上で、しかし、機動的に、スピーディーに物事が進められるような、そういう工夫をしたというふうに御理解いただきたいと思います。

大西(健)委員 ただ、今までの、最終的な本部決定に至るところでも、ワーキングチーム等でも、我々が聞いているのは、厚労省はオブザーバーとしての出席も認めてもらえないような、そういう議論もあったというふうにお聞きしていますので、ぜひそういうことがないようにしていただきたいですし、民間委員は誰になるかわからないということでありますけれども、少なくとも、人材派遣会社の会長をやっておられる方、こういう利害関係のあるような人が入ると、私は議論の公正性は保てないのではないかというふうに思いますので、その点はこれからの運用の部分でもぜひ御配慮いただきたいというふうに思います。

 その上で、では、具体的に我々がこの雇用の部分で何に懸念を持っているかということをぜひお話をしていきたいと思うんですが、十月十八日に日本経済再生本部が決定した国家戦略特区における規制改革事項等の検討方針には、特区に雇用労働相談センター、これは仮称ですけれども、こういうものを設けるということになっています。

 しかし、今出されている法案の方を見ますと、法案にはそういう名称は出てこないんです。法案には何が書いてあるかというと、個別労働関係紛争の未然防止等のために事業主に対して行う援助というのが書いてあります。では、具体的にはそれは、事業主に対して行う援助をどのような組織でやっていくのか、このことについてお聞きをしたいと思うんです。

 このセンターがどういう形になるか。これは私、厚生労働委員会でも聞きました。そうしたら、田村大臣からは、どういう形になるかというと、そこまでまだ頭の整理がついておりませんという答弁がありました。

 この点、もし、何か箱物というか建物を新たに設けるとか、人員を新たに配置するとか、そういうことになると、それはまた新しくコストがかかるわけですから、場合によっては、私はこれは税金の無駄遣いになるんじゃないかというふうなことも思います。

 こういうことも含めて、この事業主に対する援助、具体的にはどのような組織を通じてやられるのかについてお答えをいただきたいと思います。

大西政府参考人 先生に今御指摘いただきましたとおり、法案に書かれております、三十六条一項の相談、援助でございますけれども、これにつきましては、十月十八日の基本方針に書かれております雇用労働相談センター、仮称でございますが、こういうものが行うということになっているわけでございます。

 業務の内容につきましても、国の事業といたしまして、こういった新規開業後の企業やグローバル企業等からの要請に応じまして、雇用管理や労働契約事項が雇用ガイドラインに沿っているかどうかなど、具体的事例に即した相談、助言サービスを実施するというものでございます。

 この雇用労働相談センター、仮称でございますけれども、これが具体的にどのようなものになるかということにつきましては、先ほど委員からの御紹介もありましたとおり、その詳細な内容については今後検討してまいりたい、そのように考えております。

大西(健)委員 結局はこれから決めるということなんですよ。ですから、私は、先ほど言っているように、そこに、厚労省とか関与できないところで決まっていくのに不安を覚えているわけです。さっき言ったように、わざわざ人をつけたり箱物をつくったりすれば、それは余計にお金がかかるわけです。今でも、新たな組織を設けなくても、既存の制度を活用すればいいじゃないかと。

 例えば、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律というのがあります。この法律に基づいて、都道府県の労働局長は、これまでも、労働関係に関する事項等について、情報の提供、相談その他の援助というのをやっているということなんですけれども、これと、これから新たにしようとする事業主への援助、何が違うんでしょうか。

大西政府参考人 今御紹介いただきました個別労働関係紛争解決促進法の関係の、そこの方にも情報の提供、相談、援助というのがあるわけでございまして、これは都道府県の労働局で行っておるわけでございます。

 簡潔に申し上げますと、こちらの方は、労働者、求職者、事業主を対象に、個別労働関係紛争の未然防止とか、あるいは自主的解決の促進のためということで、助言、指導とか、あるいは紛争調整委員会のあっせんとか、こういったようなことも実施するというような内容でございます。

 今度新しい法案に盛り込まれております方でございますけれども、これは国が行うものとして、法案で、「情報の提供、相談、助言その他の援助」というぐあいに書いたわけでございますが、これは基本方針にも示されているとおりでございますけれども、まず特区内の事業として行うものであるということ、あるいは新規開業直後の企業やグローバル企業、その他の事業主を対象としているということ、あとは個別労働関係紛争の未然防止とその予見可能性を向上させるということ、具体的な内容としては、雇用管理や労働契約事項が、雇用ガイドライン、法案では雇用指針となっておりますけれども、これに沿っているかどうかなど、具体的事例に即した相談、助言のサービス、こういうものを実施するということでございます。

 ですから、どこが違うかという御質問でございますけれども、対象範囲として、一つ労使を幅広く対象としているかということと、一定の事業主、ここでは新規開業直後の企業やグローバル企業と書かれていますが、そういった事業主に、「等」がありますのであれですけれども、力点を置いていくかということが違っているということと、また、現在のものにつきましては、紛争の解決やあっせんの委任とか、そういうこともやるわけでございますけれども、新しくできる方につきましては、情報提供、相談、助言というのが中心になっている、そういったような違いがあるわけでございます。

 私どもといたしましては、そういった、適切に役割分担して、今回の法案に基づく必要なサービスができますような体制のあり方を一生懸命検討してまいりたいと思います。

大西(健)委員 違いがわからないではないですけれども、今の御説明を聞いても、では都道府県の労働局長ができるんじゃないかというふうに思いますので、そこはちょっとまだ整理が不十分ではないかと私は思いますので、ぜひ整理をしていただきたいんですけれども。

 一つの違いとして、個別紛争解決の方は、労働者のサイドに立ってやる、あっせんとかまでやるということですけれども、今回は事業主に予見可能性を与えるために相談に乗るということだと思うんですけれども、そうだとしたら、私は、そこでやはり公平性とか中立性というのが重要になってくると思うんですね。なおかつ、雇用労働分野というのは極めて高い専門性が求められる領域でございます。

 したがって、新たに、今までの労働局と別に雇用労働相談センターというのを設置するとしたら、そこに専門性、公平性、中立性を求めなきゃいけないんですけれども、それをどうやって担保していかれようとしているのか。労働局は専門の職員がいます。そして、公平性、中立性もあると思います。しかし、新しい組織でそうしたものをどうやって担保していこうとされるのかについて、お答えをいただきたいと思います。

大西政府参考人 雇用労働相談センターでございますけれども、委員御指摘のとおり、グローバル企業等からいろいろ助言を求められるということで、高い専門性が必要であるということでございますけれども、やはりこういったサービスを行う上で、効率性とか、効果的にやっていくということは非常に重要であるというぐあいに考えているところでございます。

 それで、こちらの雇用労働相談センターにおきましては、雇用ガイドラインというか、法案では雇用指針と書いておりますけれども、こちらの方を活用してサービスを実施するわけでございます。

 こういったものにつきましては、今後、労使などの関係者の意見を踏まえて検討を進めてまいりたいと思っているところでございまして、グローバル企業などから求められる高い専門性を確保すると同時に、やはり公正中立なものとなるようにしてまいりたいというぐあいに考えておるところでございます。

大西(健)委員 結局は、今の時点で具体的な制度設計が決まっていないわけですから、担保のしようがないと私は思うんですが。

 ただ、具体的な制度をつくるに当たっては、今申し上げたような専門性とか中立性とか公平性、ぜひこれが保たれるようにしていただきたい、そのことをぜひここで確認をしておきたいというふうに思っております。

 もう一つ、先ほど、ちょっと答弁の中にも出ていましたけれども、対象とする事業主の範囲でありますけれども、これは法案の第三十六条一項には、助言や援助の対象となる事業主は、「国家戦略特別区域内において新たに事業所を設置して新たに労働者を雇い入れる外国会社その他の事業主」とされていますけれども、最後に、「その他の事業主」というふうに書いてあります。

 この文言を拡大解釈すれば、要請さえあれば、特区内の全ての事業主に対して援助を行うことも可能ではないかというふうな解釈も成り立つのではないかというふうに思います。そうなのか。それとも、この第一項には目的が書いてあって、「産業の国際競争力の強化又は国際的な経済活動の拠点の形成に資する事業の円滑な展開を図るため、」と書いてありますので、その目的にかなう事業主に限定するのか、あるいは、さっき言った外国会社とか新規に立ち上げた会社とかに限定されるのか、それとも、かなり幅広いものが対象になるのか、これをぜひお聞きしたいと思います。

 仮に、全ての事業主が対象になるんだったら、今言った目的との関係で、これは整合性がとれないんじゃないかと思いますし、逆に、目的にかなう事業主に限定して援助をやるんだということであれば、では、今言った産業の国際競争力の強化という目的にかなっているのか、かなっていないのかというのはどうやって判断するんだ、誰がどういう基準で判断するのか、そういう問題も出てくると思いますので、この事業主の範囲についてどういうお考えを持っておられるのか、お答えをいただきたいと思います。

大西政府参考人 法案に記載されております対象の事業主につきましては、先生今御指摘いただいたとおりでございます。私どもといたしましては、この法案にまさに書かれておりますとおり、新規開業直後の企業とかグローバル企業というものが想定されるというぐあいに考えておるわけでございます。

 今、御質問の中にありましたように、具体的にどのような事業主がこれに該当するのか、あるいは、その他ということで、どこの範囲までが対象となるのかについては、やはり、国家戦略特別区域における行政サービスのあり方というようなものの一環といたしまして、今後検討していきたいと思っております。

大西(健)委員 もう一つ、ちょっと具体的な話をお聞きします。

 では、競争力強化という目的にかなうことだと思いますけれども、特区内で、例えば整理解雇を予定している企業がある。そのときに、その整理解雇が適法であるか否かということの事前確認を求めてきた、そういった場合には、この相談センターというのは具体的にはどんな助言をすることになるんでしょうか。

大西政府参考人 この相談、助言サービスの内容でございますが、国といたしまして事業主に対する援助として行うものでございますので、一般的に申し上げますと、個々の企業の雇用管理とか労働契約事項が裁判例を分析、類型化した雇用指針に沿っているかどうかなどの相談、助言サービスを行っていくというぐあいに考えているところでございます。

 これも一般的なお話でございますが、例えばということで、整理解雇が解雇権濫用法理というのに照らして適法か否かについて、何らかの法的なお墨つきを与えるわけではないと考えております。

大西(健)委員 今の御答弁の最後の部分が重要だと思うんですね。これは法的なお墨つきを与えるものではない、あくまで助言なんだということをぜひ確認しておきたいというふうに思います。

 それから、先ほど来出ている雇用ガイドラインですけれども、これは判例を分析して分類をするものだということですけれども、これも、現時点では具体的なイメージがないわけですよね。

 先ほどちょっと答弁の中にお話がありましたけれども、これを作成するときにはぜひ厚生労働省にもよく意見を聞いて決めていただきたいと思いますし、労使双方の意見を聞いてしっかり決めていただきたいというふうに思います。

 また、これも私、厚労委員会で聞いて、では、このガイドラインというのは特区内だけで活用されるんですか、特区外でも活用されるんですかと言うと、これは判例を分類したり分析しただけなものですから、せっかくつくったので特区外でも使いますということなんですよ。これは田村大臣の答弁だったんですね。

 でも、そうなると、これから有期雇用の特例の話をしていこうと思うんですけれども、この有期雇用の特例というのは、もともと全国規模の規制改革事項なんです。そういう特区内だけに限らずに全国に適用する事項をこういう特区の法案に入れ込むことを安易に認めてしまうと、厚生労働委員会、厚生労働部門ではハードルが高いから、厚生労働にかかわる規制事項は全部特区法案でやっちゃえ、そうすれば、厚労部門をすっ飛ばしてできるじゃないか、あるいは、労使の協議の場である労政審みたいな、そういうのもすっ飛ばせるじゃないかということになっちゃったら、それは私は大変大きな問題だと思いますので、その点はぜひそういうことがないようにしていただきたいというふうに思います。

 それでは、有期契約労働の無期転換の仕組みについてお聞きしたいと思うんですけれども、まず、これは、法律が改正されたばかりで、昨年、労働契約法を改正して、四月から施行されているんです。その四月から施行された法律が、まだ半年しかたっていないのに、もう改正を検討しますというのは、施行後の効果というのを十分検証しないままやるというのは、これは果たしてどうなんだろうかというふうに思うんですけれども、この点はいかがでしょうか。

大西政府参考人 労働契約法の無期転換のルールにつきましては、先生今御指摘いただきましたように、本年四月に施行されたものでございます。

 それで、国家戦略特区に関しましてはいろいろな御議論があったわけでございまして、また、成長戦略の重要な柱ということで、有識者の方々とか、あるいは地方自治体からの御意見なども踏まえまして、雇用の分野におきましても、産業の国際競争力強化と、そういう支える労働者が意欲や能力を発揮できるというような観点から、どういうような対応が可能かというのを協議を重ねてきて、真摯に検討してきたところでございます。

 こうした検討の結果でございますけれども、御指摘の有期雇用の特例につきましては、地域を限定することなく、今後、全国規模の規制改革として労働政策審議会で議論して対応するというようなことになったわけでございます。

 お尋ねの、影響や効果の点も含めてでございますけれども、影響や効果につきましては一定の限界はあるものの、現時点での企業の対応状況に関する調査をいたしておるところでございますし、今後の労働政策審議会の議論の場におきまして、労働の現場に精通した労使の意見を十分踏まえつつ検討をしてまいりたい、このように考えております。

大西(健)委員 先ほども言いましたけれども、まだ半年しかたっていないんです。これから恐らく効果が出てくるんだというふうに思いますから、労政審で審議をされるに当たっても、効果の検証というのはぜひやっていただきたいというふうに思います。

 それでは、法案の附則第二条で、特定の要件を満たしている、例えば専門性の高い業務に従事しているとか、年収が高いとか、そういう人に限っては有期契約労働の無期転換の仕組みを見直すということを検討していこうということですけれども、もしそういう見直しを行った場合、少なくともそこに該当するような限られた特定の属性の労働者ではありますけれども、雇用の安定が後退をすること、これは間違いないことであります。

 では、そういう労働者の雇用の安定というのをどのように確保されるつもりなのかについてもお聞きをしたいと思います。

大西政府参考人 今御指摘のありました法案の条項におきまして、有期雇用について検討するという規定があるわけでございますけれども、そうした方々について無期転換申込権発生までの期間のあり方について検討するということでございますが、それにあわせまして、同じく法律の中に、労働契約が適切に行えるための必要な措置ということについても検討するような内容になっておるわけでございます。

 先ほども御説明させていただきましたとおり、この内容につきましては公労使三者構成の労働政策審議会で検討するということに法律でもなっておるわけでございますので、御指摘の、特例の対象となる労働者の労働契約が適切に行われて、雇用の安定に資するものになるためにはどのような措置が必要かということにつきましては、本当にしっかりと検討してまいりたいと思います。

大西(健)委員 それはぜひ労政審の場で検討していただきたいと思いますけれども、そもそも、これは最初に、先ほど稲田大臣にお聞きをした話に通じるところでありますけれども、無期転換の仕組みを規定している労働契約法というのは、基本的には全ての労働者に本来は適用されるべきルールですよね。それを、特定の特区内に限って、あるいは全国規模であっても特定の属性を持つ労働者に限って適用除外にしたり、異なるルールに修正するということは、本来は、私は、法のもとの平等とか労働基本権の観点から問題があるんじゃないかというふうに思っております。

 ただ、では、もしそういうことをやろうとする場合に、どうやってやるのか。仮に、では、民事強行規定である労働契約法の適用のあり方を変えるといった場合に、どういった法形式でやるのか。例えば、労働契約法を改正して、一部労働者について特例規定を設けるのか、それとも、労働契約法の特別法をつくるのか。最終的にこういうことをやるとしたら、どういった法形式でやることが考えられるのかについて、お考えがあれば教えてください。

大西政府参考人 今、委員の方から、法形式について御質問をいただきました。

 現在御審議いただいております法案の附則の第二条におきましては、期間の定めのある労働契約の締結時、当該労働契約の期間の満了時等において労働に関する法令の規定に違反する行為が生じないようにするための必要な措置その他の必要な事項についても一体的に検討するというようなことになっておるわけでございますけれども、御承知のとおり、労働契約法につきましては、労働契約の基本理念とか労働契約に関する共通の原則とか、判例法理に沿った労働契約の内容の決定、変更に関する民事的ルールを一体的に取りまとめた、そういった法律でございます。

 そういった法律と、今回の法案の附則に書かれてありますような、いろいろ必要な事項、必要な措置、そういったものの関係については十分に検討していく必要があるというぐあいに考えております。

 こういった内容につきましても、労働政策審議会の場でしっかり御議論いただいて、その法形式について定めてまいりたい、そのように考えております。

大西(健)委員 今、ずっとちょっと細かいことを聞いてきたんですけれども、お聞きになっていただくとわかるように、結局、細かいところは何にも決まっていないんですよ。その決まっていないことを今後具体的に制度設計していくときに、何回も申し上げますけれども、本当に関係大臣とかあるいは労使の双方の意見がちゃんと取り入れられるのかどうなのか、この部分について私は不安を持っているということを再度申し上げておきたいと思います。

 あわせて、この有期雇用の特例は全国規模の規制改革事項、そして先ほどのガイドラインも全国適用する、労働相談センターも組織のたてつけそのものがよくわからないということですから、そうなってくると、これは何か、正直申し上げて、私は、この内容だったらば、わざわざこの特区法案の中に雇用の項目を書き込む必要もないんじゃないか、そのまま落としてしまっても本当は影響がないんじゃないかというふうに思いますけれども、さすがに、先ほどの竹中さんじゃないですけれども、雇用岩盤規制とずっと言ってきた以上、何もなかったら、これは何もないのかということになってしまうので、それではそういう人たちのメンツも丸潰れでしょうから、そういうことにはならないんでしょうけれども、ただ、何度も申し上げていますけれども、これから具体的な制度設計については、ぜひしっかりと厚労省あるいは関係者の意見を聞いていただきたい。それから、こういう特区に入れれば何でも労政審とかを飛ばせるみたいな、そういう前例にならないようにしていただきたいというふうに思います。

 最後に一問だけ、医療についてお聞きをしておきたいというふうに思うんですけれども、先ほどの日本経済再生本部決定、国家戦略特区における規制改革事項等の検討方針の中には、医学部の新設について、「国家戦略特区の趣旨を踏まえ、関係省庁と連携の上、検討する。」ということになっています。

 この医学部の新設については、二年半以上前から仙台厚生病院さんが医学部新設を目指しておられる。これはいろいろなところに出ています。自民党の中にもそういう議連があるというふうに伺っていますけれども、そういう動きを受けて、去る十月四日、安倍首相は、復興支援として東北地方へ医学部新設を検討するように、下村文部科学大臣に指示をしたという報道も出ております。

 ただ、一方では、宮城県の医師会は、安倍首相のところに行って、これは医師不足に拍車がかかるのでやめてくれということで、十月の十五日に、医学部新設に反対する要望書を提出しておられます。

 今回の国家戦略特区は今までの特区と何が違うかということで、先ほど来、例えば新藤大臣からも、これは国が主導して決めるんだということをおっしゃっています。もちろん、この医学部新設というのは検討事項ですから、最終的にこの特区の仕組みでやるのかどうなのかもよくわかりませんけれども、最後は総理のリーダーシップが発揮できるような仕組みになっているんだというふうにおっしゃっているんですが、私はその点で非常に懸念していることがあるんです。

 それは、安倍首相の資金管理団体晋和会、ここに収支報告書のコピーがありますけれども、平成二十三年分の収支報告書の中を見ますと、この医学部新設を目指している仙台厚生病院の理事長目黒泰一郎さんから、平成二十三年六月二十四日に百万円の寄附をもらっているんですよ。

 これは、総理がリーダーシップでこれから決めていく、そして、手を挙げているところがあるんです。もし仙台厚生病院が医学部新設を認められる、その理事長が総理に百万円寄附している、こういうことがあると、この特区、国主導でやる特区が利益誘導に使われるんじゃないかと、これはあらぬ国民の疑惑を招くものと私は思いますけれども、新藤大臣、いかがでしょうか。

新藤国務大臣 今の政治資金の話については、これは法律上手続がきちんとなされているものというふうに思っております。その因果関係が何もない中で今のような御質問を言われても、答えようがないというように思います。

 もとより、私どもとすれば、今回の国家戦略特区は医療の分野においても新しい取り組みが必要だ、これは皆さんが御理解いただけるんではないかと思います。しかし、例えば医学部の新設については、これは文部科学省の告示でございますから、最終決定は文科省が行います。そして、厚生労働省や私どもとの連携した協議を行っていくわけでありますし、今度の国家戦略特区で、では、どこかの区域で医療についてのこういう計画をやりたい、こういうプロジェクトを進めたい、その中で御提案のようなものが入ってくれば、その必要性も、必然性も含めて議論をして、そして絞り込んでいくということだと思います。

 ただ、先ほどの労働法制のことについても大変いろいろ御心配いただいて非常によかったと思いますが、この国家戦略特区でやるんだということで議論の俎上にのったことが、結果的には岩盤と言われていた雇用の規制についても、これは特区でやろうといって議論した結果が、それならば、これをやるならば、では全国的にやろうじゃないかと。これはもう既に特区効果でもあると思いませんか。

 ですから、今度の医学部のことに関しても、こういうようなものが本当に必要であるかどうか、これはまず特区の中で議論して、それが、きちんとした国の制度として盛り込むべきかどうか、こういったものもやはり連携をしていく必要がある、いろいろな影響があるということだと思います。しかし、手続においては厳正にやってまいります。

柴山委員長 質疑時間が終了しております。

大西(健)委員 政治資金は適切に処理されているということですけれども、私は、総理が百万円をもらっていて、それで総理が文科大臣に指示したというのは、これはちょっと国民から見たらどうなんだろうというふうに思いますし、あわせて、先ほどの雇用の部分についても、田村大臣が外されて、もしパソナの会長を務めている竹中さんのような人が入るならば、それはやはり国民もおかしいんじゃないかと思いますので、そこはぜひ、そういうふうなことを思われないようにしっかりやっていただきたいということを申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

柴山委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

柴山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。松田学君。

松田委員 日本維新の会の松田学です。

 今臨時国会、内閣委員会、重要な法案が、国家戦略特区法案そして公務員制度改革法案。どう考えても、十一月五日の閣議決定、もう既に国会が始まってから二十日も経過してからの閣議決定ということで、この二つの法案を仕上げて参院に送って成立させるというのは、物理的に見ても、誰が考えてもかなり厳しいんじゃないかというふうに思わざるを得ないんです。

 私も役人出身ですから、調整が大変なのはよくわかるんですけれども、こういうことをやっていますと、やはり自民党は国会を軽視しているんじゃないかとか、そういうちまたの声もちらちらと聞こえてきたりしていますので、できるだけきちっと審議をさせていただきたいと思いますけれども、ただ、きちっと審議するにしても、この国家戦略特区法案は、多くの人が、この中身を見ると、中身がすかすかじゃないかという印象をかなり抱いているんじゃないかと思います。

 そういう意味で、アベノミクスの決定打として何が出てくるかと思ったら、一つは産業競争力強化法案、そして、もう一つの柱とされている国家戦略特区法案。アベノミクスってこんなものだったのかと失望をした方も結構多いんじゃないか。やはり既得権益とか官僚の決めた枠組みから出られないのが安倍政権なのかという印象をかえって与えかねないんじゃないかと私は心配をしております。

 この戦略特区法案の中身に入る前に、まず、これはやはりアベノミクスの三本の矢の成長戦略の柱と位置づけられている法案でありますので、少しその面から、マクロ経済の議論をしながら、この法案の位置づけをしっかり確認させていただければと思っております。

 アベノミクスの決め手というのはやはり三本目の成長戦略にこそあるわけですが、その中の重要法案と位置づけられている割には、国家戦略特区法案の内容は国家戦略の名に値するのか。単に、民間事業者から聞いた要望あるいは自治体から聞いた要望のうち今着手できる項目を並べて、しかも、その中身も、手続を簡素化したりとか、あるいは検討するといったものが非常に目立っています。どうも御用聞き法案のような感じがしていまして、本当に国家戦略法案なのかなと。

 成長戦略の中であるのであれば、少なくとも、日本経済の生産性をこうやって底上げしていくんだといったような、そういう筋書きというか道筋がきちっと、ここからはなかなか見えてこないんですが、この内閣委員会で、所管の甘利大臣からその道筋をちょっと最初に示していただければと思います。よろしくお願いいたします。

甘利国務大臣 成長戦略はまず何をするかというと、日本が直面している社会課題、このままいったら暗い未来になる社会課題を幾つも提示して、それが解決されたあらまほしき姿を将来像として描いて、そこに達するまでに今から何をやっていくべきかという絵図の書き方をしております。

 そして、国家戦略特区は、そうした課題を解決していく、ある種、事業革新が起きるようなモデル地域を選んでいって、そして使えるツールを先に用意しておくわけですね。

 特区でいいますと、今までは、一規制緩和イコール一特区というやり方。

 それから、総合特区は、とりあえず手を挙げて、それからメニューを詰めていく。

 そうやって、使えるメニューを、こういう規制緩和があればいろいろなツールになるのにというのを募集して、十六本ですね、これからも追加もあります、並べて、全部使おうと、その中のどれを使おうと結構ですということで、コンセプトを示したエリアにそのカードを全部渡すわけです。それにさらに追加も認めていく。それに、政府、官民が一体となって、日本経済を牽引していくような、この分野については世界に冠たる地域というのをつくっていくということでありまして、成長戦略の実行部隊として、代表的なものを幾つもつくっていくということにしていくわけであります。

松田委員 社会の課題解決を経済成長につなげていくというのは、私もかねてから主張してきたことで、大変それはよく理解いたします。

 ただ、アベノミクス、やはり日本経済が、失われた二十年の停滞と言われていますけれども、マクロ的な経済条件が、成長を起こすリスクテークもなかなか起きない。そういう、環境を整えるという意味で、三本の矢ということで、一つは異次元の金融緩和ということが行われたというふうに理解しています。

 特区に入る前に、この点についても少し認識を確認しておきたいんですけれども、アベノミクスと言われていまして、世の中が少し明るくなったと言われていますが、よくよく気がついてみると、それはまだ全体に及んでいない。どうも一部の人に裨益しているだけじゃないか。今のところ、そういった一部の人の雰囲気を明るくしたという意味では、まだ金融政策の効果が出ているにすぎなくて、ある人はクロダノミクスという言葉を使っているというふうに聞いたこともありますけれども、そういった意味で、本物のアベノミクスはまだ始まっていないんじゃないかと私は認識しています。

 今のところ、これはいろいろなところでも言っているんですが、アベノミクスはお金を積んだだけです。日本銀行に国債を買わせて、多額のお金を積ませて、あるいは政府の予算に公共事業予算を積んだんですが、大事なのは、民間部門に広くお金が回っていく、回っていくためには、新しい仕組みを、戦後行き詰まったいろいろな規制を本当の意味で改革して、既得権益にも切り込んで、新しい日本の仕組みをつくらないと、お金は回っていかない。そこで初めてお金もふえて、マネーサプライもふえていくという順序じゃないかと思っております。

 そこで、ちょっと金融政策について改めて確認しておきたいんですが、異常な超低金利状態が続いておりまして、お配りした資料にございますけれども、よくIS・LM分析といいますが、流動性のわなという言葉がありまして、いわゆるLM曲線が水平になってしまう、この状態ではマネーをふやしても金利は下がらないと言われていて、こういうときは、よく言われているのは、人々の期待物価上昇率、インフレ率が高まると実質金利が下がって、それで実体経済がよくなっていくということなんです。

 ただ、日本の場合、かなり超低金利が続いていますので、この状態で期待物価上昇率が高まると、むしろ名目長期金利の方が、なかなか、これ以上金利が下がるというよりは、そっちの方にはね返ってきてしまう。そうなってくると、日本銀行にバランスシートを拡大させて、国債を資産で買わせて、他方で、負債の部では、銀行からの日銀当座預金がふえていくというメカニズムのもとで、よく豚積みという言葉がありまして、当座預金が実際に取り崩されて民間のいわゆるリスクテーク、融資に回っていくというのがないと、市中のマネーはふえない。ここは別の話なんだという話もあるんですが。

 そうなっていくメカニズム、これをちょっと甘利大臣に一回確認しておきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

甘利国務大臣 金利がこれ以上下がりようのないところまで下がっている状態で金融緩和をしても、結局効果はない。日銀が幾ら金融緩和政策をとっても、それが本当の意味での市中に回っていかない。いわゆる豚積み、日銀当座に積み上がるだけで、市中に本当の意味で流れるわけではない。こういうことがよく言われてきました。私も、実はそうかなと思っていました。

 ただ、事実として、ベースマネーをふやしていって、確かに豚積みもふえていったんでしょう。しかし、マネーサプライ自身も上昇曲線にあるわけでありまして、豚積みでも効くんだなという感じ、まあ豚に失礼なのかなとも思っておりますけれども。

 これはいろいろなやり方をやっていますよね。他の金融資産を買い入れていることによって、ある種、資産価値が上がってくるという効果もあるんですかね、それで消費が伸びていったりしているところもある。そして、実際に、現実問題として統計をとってみると、ベースマネーをふやしていることでマネーサプライもふえているし、貸し出しもふえている。

 これは、大事なことは、金融緩和をすることを通じて、デフレマインドをまず払拭するわけですね。つまり、お金は、現金は持っておいた方が得で、使わない方が得というマインドを変えていくということが一つ。

 それから、やはり投資環境を整備していくということだと思うんですね。こういう方向の環境整備をしていきますよと。お金を持っていても、どこに使っていいかわからない、雰囲気は、使った方がいいらしい、持っていると金の価値が下がって、物の価値と金の価値を比べれば、金の価値が下がっていきそうだ、それはわかるけれども、では、どこへ投資していくんだ、先が見えないというところで、見えるような環境にしていく。

 それが両々相まって、金融緩和政策が実体の消費や投資に結びついていくというフェーズになっていくんだと思います。

松田委員 おっしゃることは一応わかります。

 先行きへの期待が改善してデフレマインドが払拭されていくという、ただ、そのデフレマインドが払拭されていくためにも、やはり実体経済が明るくならないと、幾ら日銀が二%と言ったところで、それだけで明るくなるものではないと思いますし、それから、今おっしゃったように、資産価値が上がって消費がふえるというのは、それは一部では起こり得ますが、いわゆる経済全体にそれが本当に広がる力があるのかどうかというのは別問題のような気もいたします。

 この点はちょっとさておきまして、アベノミクスでとりあえず効果があったと言われているのが円安ですね。ただ、この円安も、よくよく実効為替レートの推移を見てみますと、既に安倍政権誕生前の昨年夏ぐらいから円安が始まっていたという説もあります。

 円安になれば、自動的に円換算の企業収益は上がりますので、輸出企業なんかは、PERで逆算すれば、株価が自動的に上がるという現象がとりあえず起こって、それが資産効果になって、一部の資産保有者あるいは輸出関連企業を潤していった。これは本当に部分的な現象で、多くの方々の声を聞いていますと、やはり、むしろ円安で原材料価格が上昇して収益が圧迫されているとか、内需型の中小零細企業にとっては、賃上げと言われてもそれどころじゃないという意見の方がまだまだ圧倒的に多くて、一部のいわゆるエグゼクティブクラスの人を富ませているだけで、底辺の方々、アベノミクスは底辺の世の中を知らないお坊ちゃまミクスだという声も一部にあったりとか、そういうのが今の日本の多くの方の認識ではなかろうかと思います。

 ただ、この円安で効果が出たといっても、私は、昔、役人だったころ、ちょうどプラザ合意後の円高の局面のときにどういう説明をしていたかというと、円高は長い目で見れば日本経済にプラスであると。余りこの円安でよくなったと言っているよりは、むしろ私は、もっと考えるべきことは日本の本当の国際競争力の強化であり、ここでよく指摘されているのが、日本は海外依存の経済になったということじゃないかという気がしています。プラザ合意後の円高のときに、当時は前川レポートというのができて、内需主導型の経済構造に転換していくと言いながら、なかなかそれができなかったのが日本の実態じゃないかと思います。

 ある統計では、日本のいわゆる内需型の、特に中小企業、非製造業なんかは、就業者の一人当たり実質所得は、九〇年以降、一貫して低下を続けてきた、これも人口の大半を占めていると。それにかわって、グローバル部門はかなりの成長をしてきた。しかし、それは就業者の比率に占めるのはわずかなもので、いわゆる今世紀に入って景気がなだらかに回復していた時期がありますけれども、それも、この両者が綱引きでプラスに出ていたということで、その間に格差も拡大していて、そして、そのときに何が起こっていたかというと、かなり実質実効為替レートが円安だった、それと新興国経済が牽引していたということで、それが、リーマン・ショックを受けて、日本が先進国の中で最も実質GDPががくんと下がった国なんですね。

 これは、いかに、海外依存の構造のもとに、日本が本当の内需を育てることができていなかったか。小泉構造改革も、生産性の高い内需部門をつくるところまでは行っていなかったのかなという認識でいるんです。また、アベノミクスも、そういう意味で、とりあえず従来の海外依存型の経済構造の枠組みの中で、円安で一つ潤っているという、一時的に経済を潤しているにすぎないような気もいたします。

 片や、国際競争力の面でよく指摘されているのが、交易条件、いわゆる輸出価格と輸入価格の関係で、日本が高く製品を売れていないんじゃないかということも言われています。最近では、原材料もいろいろな意味で上がってきている。交易条件が悪化してきた日本経済、結局、海外への所得流出が起こって、よくデフレは貨幣的現象と言いますけれども、やはりこういう海外への所得流出というのが、相当程度デフレの原因であったんじゃないかというエコノミストの指摘もあります。

 交易条件の悪化がデフレの原因というのは、余り議論されていることが少ないと思いますけれども、この点について、甘利大臣の御認識を伺えればと思っています。

甘利国務大臣 デフレは、主たる原因は、主たる現象、貨幣現象、それ以外にもいろいろな要素があろうかと思います。

 ただ、委員御指摘の交易条件の悪化というのは、何が原因かというと、これは非常に大事な要素なんですけれども、やはり日本の産業競争力が落ちているということだと思います。輸入物価が上がっていくのを輸出物価に転嫁できていないということで、その分、国富が外へ流れているわけです。

 なぜ転嫁できていないかというと、それでは競争に勝てないから、企業収益やあるいは賃金を犠牲にしてつじつまを合わせているという点があるんだと思います。ですから、アベノミクスで非常に重要に捉えているのは、産業競争力を強化して、輸入物価の高騰をきちんと価格転嫁、物やサービスの価格に転嫁できて、なおかつ勝てるという状況をつくっていくことが大事だというふうに思っているわけであります。

 御指摘の円安、円高、これは、緩やかに為替が強くなって、それでも勝てる日本経済をつくっていくということが私は理想だと思っております。そこは委員と思いを同じゅうしているのではないかと思っております。

松田委員 交易条件のいわゆる悪化を食いとめていくためにも、やはり日本が内政的にいいものを生み出して、それをより高く売れるようになる。高く売れるまた一方でマーケットを拡大していくということが、特に日本の場合、これから人口減少で、マーケットが量的にも余り拡大が見込めないかもしれない。そういうときに、やはり、いかにほかの海外に日本の市場を獲得していくか。TPPというのは、そのための手段として、私は非常に重要な手段だと考えています。

 よく、TPPについては、日本の国を開く開国の側面ばかりが言われるんですが、日本は既に、私も役人時代、長年にわたって、経済摩擦というのは、アメリカやヨーロッパの要求にさらされてきて、そういう中で、日本の市場というのは、世界の中で最も高い開放度あるいは完成度の高い市場を持った国というのが日本だと私は思っています。むしろ、部分的には閉鎖的なのがあるとしても、全体として見れば、日本にとってのTPPの意味というのは、アジア太平洋諸国の市場を日本に対して開かせるというか、そちらの側面の方がはるかに日本にとって重要だろうと私は思っています。

 こうやって開かせていきますと、海外と日本国内とのサプライチェーンが円滑化していきますので、今まで、貿易転換効果とかいって、海外拠点に空洞化と言われていた現象が起こっていたものも、製造拠点も日本に確保できるようになる。その方がより高く売れるんじゃないか。また、海外でもうけて、そういった意味で国内で雇用を確保していくという経済戦略というのは、私も一つはそれがあると思うんです。

 その観点から見て、ちょうどTPPを担当されている甘利大臣にお聞きしたいんですが、アジア太平洋市場を日本に開いてもらうという戦略的観点から見て、その成果というか、現段階の成果あるいは見通しについてお聞かせいただければと思います。

甘利国務大臣 御指摘のように、人口が減少していくと、普通、経済の方程式でいえば、経済規模が小さくなっていきます。しかし、日本は、経済成長をしなければ、社会保障を支える、あるいは財政の赤字状況から脱却していく、これはどうしても経済成長が必須要件であります。そこで、成長著しい世界の成長センターたるアジアの成長を日本に取り込んでいくという視点は極めて大事であります。

 私がTPPに関して重要だと思っておりますのは、一つは、今、TPPは東アジア全域を巻き込んでおりません、一部の国です。しかし、これが、日本が入ることによって、アジア全体を巻き込んでいく結節点になっていくということが一つです。

 それからもう一点は、TPPというのは、従来の物品の市場アクセス以外の部分のルール、もちろんWTOでもルールはありますけれども、投資の包括的なルールというのはWTOにはないから、だから二国間で投資協定を結んでいるわけでありますし、あるいは、Eコマースのような新しい分野のルールはありません。物品市場アクセス以外の部分のルールメーキングの要素が非常に大きいわけであります。アジア全体の連携になったときに、そういう投資や電子商取引等々、新しい分野のルールをそこが基準になってつくられていく可能性があります。日本が入っていないと、危険性がありますということになってしまうんだと思います。

 でありますから、その二点で、もちろんそれ以外にも重要な点はありますけれども、TPPに参画していた方がいいと思うわけであります。

 今の取り組みは、年内妥結に向けて急激に動きが強くなったというふうに思っております。かつて新聞報道の中には、とても年内妥結は難しいというような記事がありましたけれども、私は以前から、年内妥結の可能性はありますから、あるとき急激に進む可能性がありますよと申しておりました。

 今、私の肌感覚では、年内妥結に向けて加速しているというふうに思っております。ということは、日本にとって、今、胸突き八丁のところに来ているということであります。

松田委員 余りこの問題を長く追及してもしようがないんですが、私は、少なくとも、市場を獲得するということと、もう一つは、日本が対外直接投資をして、そこできちっと稼ぎを上げて、それを日本に還流できる、所得収支の改善に資するような、そういうルールをきっちりと日本の国益のために整備できるような、そういうTPPの交渉が必要だと思っておりますので、ぜひ頑張っていただければと思います。

 最近、アベノミクスの成長戦略の中でよく出てきている議論が、賃金を引き上げる、賃金引き上げ要請というのがよく話題になっておりまして、いろいろな企業に賃金を引き上げていただくというような話も出ているようですが、この賃金引き上げを政府が言うというのは、アベノミクスそのものが、本当の意味での既得権益に踏み込む改革というよりは、どうも行き詰まっちゃってそっちの方に行っちゃったのかなという印象もないわけではないんです。

 日本経済全体で見て、近年の賃金が余り上昇しないという現象は、企業がお金をため込んで、流動性をため込んでいるから上げないということよりも、もっと別の原因、マクロ的には、賃金水準というのは別の原因で、いろいろな原因で決まってくるものなので、どうもちょっと、それが余り前面に出るのはどうかなという気がしないでもありません。

 よく言われているのは、生産性が上昇しても、先ほどちょっと私、交易条件の話をしましたが、交易条件が悪化していって、それが生産性の上昇を打ち消してしまって、労働分配率がすごく下がったわけではないのに、これは賃金上昇になかなか結びついていないんじゃないかとか、あるいは、資本収益率も日本の企業というのはまだまだそんなに高くなくて、そういった意味で、これから労働分配率を大きく引き上げていく余地があるわけでもないんじゃないか。

 マクロ的に見て、本当にこの賃金引き上げということを政府が音頭をとってやったところで、どの程度の効果があるのか、大変疑問なんですが、その点については、どの程度の賃金上昇余地があると考えてのそういう政策なのか、甘利大臣にお聞かせいただければと思います。

甘利国務大臣 賃金を引き上げる余地というのは、その企業がどれくらい収益率を持っているかということとかなりかかわってくると思うんです。日本の企業は、売り上げに対する利益率はかなり低いです。ですから、ここは企業自身が生産性をしっかり向上させて、しっかりとした利潤がとれる効率的経営になってもらうということは、もちろん一方であります。

 もう一方で、実は、日本とアメリカとEUの景気回復過程の曲線があります。それを重ねてみますと、二年目ぐらいまでは同じ上昇をしているんです、三年目からは日本だけが失速していきます。

 そこの原因は何かといいますと、賃金上昇カーブを日米欧で重ねてみますと、二年目まで上昇カーブが上がって、三年目から日本だけが賃金上昇カーブが外れていきます。つまり、賃金上昇が外れていくと同時に経済成長が落ちていくというグラフが一つあります。これは、経済の好循環と言っていますけれども、企業業績が雇用者の賃金とかあるいは下請代金に反映していく、そうすると、それが次なる成長力につながっていく、この好循環から外れている国は途中でとまっているという図なんですね。

 私どもといたしましては、企業業績が改善してくる、そうすると、次の企業業績が改善していくための環境整備が必要だ、それはやはり、消費者の消費力であるし、下請企業の企業収益の上昇であり、それが下請企業の賃金上昇にはね返ってくる、そういう好循環をつくっていきたいというふうに考えて、今取り組んでいるところであります。

松田委員 結局は、成長力が高まらないと賃金も高まらないというふうにも受け取れました。それはそのとおりだと思います。

 このお配りした資料の一番下にちょっと書いたんですが、よく言われている潜在成長率を極めてわかりやすく分解すると、労働人口増加率と労働者一人当たりの生産性上昇率の和である、これは当たり前のことなんですけれども。また、労働人口増加率というのは、日本としてできるのは、高齢者、女性を労働参加させれば、もう少し、今マイナスと言われていますけれども、これを少しでもアップさせていく努力が必要だ。一方で、労働者一人当たり生産性上昇率というのは、イノベーションとか資本蓄積、あるいは生産性の高い分野への労働の移動によって実現する、これも常識だと思います。

 政府は、先ほども、実質二%以上、そして名目で三%以上、そういう話が出ておりますが、例えば財政の中期計画とか、いろいろなものの前提となっている数字だと思うんですけれども、その中で、長期的な意味での労働生産性の上昇率あるいは労働力人口増加率はどの程度のものを想定しているのか、その根拠もあわせて内閣府の方にお伺いできればと思います。よろしくお願いします。

豊田政府参考人 本年六月に閣議決定いたしました経済財政運営と改革の基本方針、いわゆる骨太方針におきまして、「中長期的に、二%以上の労働生産性の向上を実現することを通じ、賃金の伸びが物価上昇率を上回るとともに、雇用機会が拡大し、広く国民が景気回復の恩恵を得ることのできる経済を確立する。」としているところでございます。

 この目標につきましては、本方針に同時に掲げられております「今後十年間の平均で、名目GDP成長率三%程度、実質GDP成長率二%程度の成長を実現する。」との目標と整合的なものであると考えております。

 また、委員御指摘の、本方針においては、今後の労働力人口増加率が掲げられているわけではございませんが、労働力人口につきましては、労働参加率、就業率や失業率と密接にかかわっているものと承知してございます。

松田委員 労働力人口増加率が、参加率が上がってどの程度になっていくのか、どの程度それに効果があるのか、これはかなり重要な点だと思いますけれども、それについて御答弁いただけますでしょうか。

甘利国務大臣 人口が減少していくということは、投入量が減っていくということです。ということは、労働市場に参加していなかった人が参加できるようにしていくということが一つあります。女性や高齢者が参加しやすいような環境をつくるということです。

 もう一点、実質GDPが二%とすると、総労働人口が人口減少で減るという部分を加味すると、生産性は二%を超える生産性にしていくという計算が成り立つかと思います。

松田委員 なかなか、現実的にそういうパスが描けるかどうかというのは難しい問題もあるので、これはまた、機会を改めて議論させていただきたいと思います。ちょっときょうは次に進みたいと思います。

 そこで、国家戦略特区なんですけれども、国家戦略を標榜する特区であるならば、当然含まれるべき内容が随分抜けているなという印象を持っている方が多いんじゃないかと思います。これから本法案の審議を通じて、日本維新の会のほかの議員からもいろいろな提案をさせていただきたいと思いますし、また、大阪府や大阪市もいろいろな要望を持っていますので、そういった議論もさせていただきたいと思っております。

 例えば、今ちょっと議論していた成長力の強化とか労働生産性の引き上げ、あるいは高齢者、女性の労働参加率を高める、そういった観点から考えた場合、国家戦略特区にはこういった措置こそ盛り込まれているべきではないかと思うんです。

 例えば、いわゆる能力開発の支援であるとか、あるいは正社員のインセンティブを強化する、あるいは女性や高齢者の労働参入を促進する方策といったことが実験的に盛り込まれてもいいんじゃないかという気もしますけれども、その点についていかがでしょうか。

新藤国務大臣 御指摘はごもっともだと思います。いろいろな、日本の経済成長率を高めるための方策、合わせわざで工夫していく必要があると思います。

 ですから、既にもう日本再興戦略の中に今御指摘の点は含まれており、いろいろな工夫をやっていこう、こういうことになっておりますから、国家戦略特区としても、連携できるところは連携していきたい。これから区域を定めて事業をやっていく中で、そういうようなことも含めればいいではないかと。

 私どもとすれば、まずは雇用の部分におきまして、予見可能性を高めるという意味においての相談センターを設けるだとか、雇用の新しい特例というようなものも設けたいということで、挑戦をしてきているわけでありますから、いろいろな検討は不断に進めていきたい、このように思います。

松田委員 ありがとうございます。

 それともう一つ、いわゆる金融面あるいはマネーといった観点がこの特区、余り見られないというかほとんどないんですけれども。農業の信用保証ぐらいではないかと思うんですが。日本の成長戦略全体を考えた場合、やはりこの問題というのは非常に重要ではなかろうかと思います。

 お手元の、配った資料の二枚目なんですが、これは日銀の資金循環統計に基づいて、よく言われていることですけれども、最新の数字では、家計の金融資産が千六百兆円近くなっている。そのほかにも、民間の非金融法人あるいは政府、いわゆる金融部門以外の主体が持っている金融資産を合わせると、二千九百五十一兆円になっているという、計算上、こうなっています。

 ところが、一番上に家計、これが金融部門に対する運用というのは、預金等が八百六十兆円と大半を占めていて、金融部門全体の中で見ると、国債など、よく一千兆円と言われていますが、そういうところにお金がかなり流れている。

 つまり、日本の資金の流れというのは、家計から銀行に預金されて、それが国債に流れる。しかも、その国債というのを、普通国債について見ると、その大半が赤字国債。将来の富を先食いして、本来、資金運用というのは生産的なところに資金を配分していく。ポートフォリオの質が、日本の場合、赤字国債にどんどん偏っていっているというのが、私は長い目で見た日本の一番大きな問題の一つだろうと思っています。

 そういった点を考えると、例えば年金資金なんかも、日本の場合、例えば年金基金の運用が国債に偏っているという話が随分、ほかの国に比べてみますと、例えばプライベート・エクイティー・ファンドなんかにも私的、公的年金が投入されている事例が多いという中で、そういった議論もあります。

 やはり貯蓄から投資へということがこの成長戦略の柱になると思いますが、最近、この面でも、政府が非課税の私的年金の創設を検討しているという記事があります。アメリカで言ういわゆる個人退職勘定、IRAを日本でも導入するということを検討しているという報道がありましたが、その点も含めて、まず、この点についての甘利大臣の御認識、金融面のリスクテーク促進について、御認識を聞かせていただければと思います。

甘利国務大臣 競争力会議におきましても、金融資本市場改革について、テーマとして取り上げているところであります。農業の本格的な改革案と含めて、今後取り組んでいくことになろうかというふうに思っております。

 それから、現在、金融庁それから財務省においても、金融業界等、各界の有識者を集めた金融・資本市場活性化有識者会合というのを開催しまして、金融資本市場活性化に係る幅広い論点について御議論いただいているというふうに承知をいたしております。年内に具体的な施策について取りまとめていただくということで、精力的な議論を期待したいというふうにも考えております。

松田委員 例えば、先ほども民主党の方から公益資本主義という言葉がありましたけれども、個人金融資産の大半を高齢者が持っているというのはよく言われていることですが、そういった高齢者が持っている資産を、地域でのいろいろな、それこそ課題解決といいますか、例えば病院とか福祉とかそういうところに引き出していくような、いろいろな提案も既にあると思います。

 例えば社会投資ファンドであるとか、あるいは、アメリカなんかでは社会資本整備についてのレベニューボンドというのがあったりとか、日本はそういう意味で、そっちの分野に対する投資の商品が極めて少ないという状況にあるので、むしろ私は、国家戦略特区をやるんだったら、そういうことを実験的にやってみるとか、そういうことをやってこそ、貯蓄から投資へというか、そういうことが意味がある特区になるんじゃないかなと思うんですが、そこまで行くのはなかなか難しいにしても、NPOとか非営利セクターに対しても寄附を促進するという提案も結構出ています。

 例えば寄附税制、今、所得の一部を寄附ということになっていますけれども、資産の寄附に拡張していく、あるいはNPO法人債、社会貢献債のようなものを発行していく、あるいはNPO法人が信用保証協会の制度保証を活用していくといったような、そういったことも実験的にやってみてはどうかという気がしておりますけれども、この点についてはいかがでしょうか。特区担当大臣、お願いします。

新藤国務大臣 委員は、大体において第一線で、しかも、政府というか行政の中枢にあって今御指摘いただいたようなことをずっとやってきたわけでありますから、必要性も御認識だと思いますし、課題も十分認識の上のことだと思います。

 私たちは、やはり新しい分野を開拓するというのは重要だと思うんですね。ですから、今の御指摘の点などは、もう既に甘利経済産業大臣時代に、私はちょうど副大臣を務めておりまして、我々が始めたのが、今の御指摘のソーシャルビジネス。これをきちんと産業として位置づけようではないか、また、それに対するいろいろな支援をしていこうというのを研究を始めたちょうどタイミングでございました。

 ですから、国家戦略特区一つで解決できるものではありません。いろいろなことを工夫しながらやっていくべきだと思います。

 私は、今、総務大臣となりまして、地域の金融機関の資金をもっと活用できないか、町づくりや公的な活動に活用できないか、そういった制度も、地域の元気づくり事業というのを総務省の中に創設いたしまして、始めております。いろいろ示唆に富んだ御指摘をいただいておりますから、合わせわざで、いろいろ工夫しながら、そして、必要に応じて国家戦略特区においても対応ができるものはやっていきたい、このように思います。

松田委員 ありがとうございます。

 国家戦略特区法案に盛り込まれたメニュー以外のものを排除しているわけではなくて、いろいろな合わせわざがある、これは当然のことだと思いますので、いろいろなことを創意工夫していただきますことを期待しております。

 それで、次に、国家戦略特区全体の考え方について確認しておきたいことがありまして、いわゆる規制改革の考え方なんです。

 政府介入かあるいは市場原理かという対立軸がよく言われているんですが、今、経済学の分野でも、行動経済学の分野で、第三の道として緩やかな介入主義ということが言われていまして、いろいろな選択肢を示して、個人が自分で自立的に選択した結果、社会を望ましい方向に誘導していくということですね。いろいろな規制のあり方も議論がされるようになっているかと思います。

 私は、そもそも、規制のあり方というのは、禁止の場合、原則禁止、例外自由、自由なのはネガティブリスト方式という、今の混合診療なんかそうだと思うんですけれども、そうでなくて、原則自由、例外禁止にして、ポジティブリストで禁止をするというのが、本来、自由な、いわゆるハスの花を開かせるためにはそういう考え方が大事だろう、我々維新の会は基本的にそういう立場なんです。

 ただ、ポジティブリストに転換していくべきだと思うんですが、今回の特区を見ていると、やはり、規制の岩盤に風穴をあけたというよりは、基本的に、原則禁止の世界の中で、例外的にここは自由にする、この事業については自由にするというか。

 ネガティブリストでやりますと、どうしても、自由な、規制の例外の適用を求めて民が官に依存していく。これは、ほかの今までのいろいろな特区制度がありましたけれども、自治体が優遇措置を求めて、かえって、政府に日参して依存するとか、いろいろなことが今までも見られたわけで、いわゆる規制のある中で、そこに例外をつくっていきますよというと、そこに群がる民が出てきて官依存ができて、また新しい利権ができてくるというようなことが、私がかねてから非常に心配していることなんです。

 今回の国家戦略特区というのは、まさに国家主導で、そういう例外を適用してあげまして、しかも、民間の事業者に対して一種のコンサルタントみたいなことをして、一つのプロジェクトを一緒に育てていくというのは、聞こえはいいんですけれども、結局、国家介入を強める、いわゆる国家介入強化法案ではないかという側面もなきにしもあらずではないかという気がしておりますが、規制のあり方として、規制改革担当大臣の稲田大臣、いかがでしょうか。

稲田国務大臣 今、議員の御指摘は、今回の国家戦略特区が国家の介入ではないのか、そういうお尋ねですけれども、私の規制改革会議は、民間議員の集まりで、そして、民間の立場から、阻害要因となっている規制を改革いたしております。

 今回、国家戦略特区をつくったことで、国家が介入をするということになるのかというと、私はそうではないと思っております。ではなくて、やはり規制改革の実験場のような、突破口のような役割を果たしていただくものだと思っております。

柴山委員長 松田君、持ち時間がわずかです。

松田委員 もう時間がなくなってきましたので、最後に、新藤大臣にお願いしたいんです。

 これから日本の全体の国土設計といいますか、国の姿を考えていく上で、自立的な広域経済圏を全国各地につくっていくという視点がすごく重要だと思っていまして、道州制もその先に展望されると思うんですけれども、今回の国家戦略特区というのは、どこの地域が指定されるのかわかりませんけれども、どうも、言われているのは、東京とか、本当に三大都市圏のようなところを指定しているような感じが聞こえてはくるんですけれども、むしろ、将来の、そういった中核市を育てていくというか、そっちに向けた設計というのがこの法案の中にどういうふうに入っているのか、ちょっとその点についての御見解をお聞かせいただければと思います。

新藤国務大臣 私は、総務大臣をお預かりしております。それから地域活性化担当大臣、さらには地方分権の改革推進担当大臣、こういったものも仰せつかっているわけであります。その中で、自分の与えられた枠の中でとても大切なことは、いかに地域の自立を図るか。

 都市と地方というと、よく東京とその他と言いますけれども、東京都や東京都下の区や市の行政は地方行政なんですね。ですから、国と地方というのは対立概念であってはならないし、そういう意味では、それぞれの地方がそれぞれのやりやすいやり方で自立できるような、それは一つには広域の経済圏というのもあるでしょう、それは県を超えたり市町村の枠を超えた、例えば地政学的にとか経済圏ごとのそういった広域の連携というのもあってもいいと私は思っています。ですから、いろいろなものを組み立てていかなければいけないんだろうと思うんですね。

 その中で、国家戦略特区というのは、まず、この国の経済の起爆剤となり得るような、また世界から投資を引き込めるような、そういう取り組みを国と地方と民間が一緒になってやってみようではないかと。そこで起きた経済の活性は必ず周辺に波及してきます。それから、特区において行われる事業にいろいろな人が参加できるような、そういう工夫をしたいと私は思っているんですね。

 そういう中で、今委員が御指摘のような、いかに、日本が少子高齢化を迎えて、しかも都市と地方のそういったそれぞれの問題を抱える中で、今後、私たちの国はどうすれば元気に、また安定した、希望のある社会をつくれるのか、こういう挑戦をしていきたい、このように思っているわけでございます。

松田委員 国家戦略特区を議論する上で非常に基本的な認識を確認させていただきました。

 ありがとうございました。

柴山委員長 次に、杉田水脈さん。

杉田委員 日本維新の会の杉田水脈です。

 通常国会に引き続き、今回も内閣委員会に所属することになりました。どうぞよろしくお願いいたします。

 午前中から、この国家戦略特区についてずっと質疑が続いております。その中で、先ほど新藤大臣もおっしゃっていらっしゃいました、構造改革特区など今まであった特区は地方からの提案型だった、今回のこの国家戦略特区は、国が主導でそれぞれの地域とかを指定して引っ張っていく、国と地方が一緒になってやっていく、そこが非常に特徴的なのだというふうにおっしゃっていらっしゃいました。

 私は、組織などを改革するときも、ボトムアップとトップダウンがかみ合ってうまく改革が前に進むという例がたくさんあると思っておりますので、今回はまた新たな手法ということで非常に注目をしていきたいというふうに考えております。

 また、そもそものところをお聞かせ願いたいなと思うんですけれども、今回のこの国家戦略特区の本来の目的は立地競争力の強化というのがあるというふうに説明を私も何回も受けておるんですけれども、国が主導権を持って、ではここの地域を特区に指定しようとかというふうな、最終的に決定をする場合に、そもそも、もともとある大都市、ちょっと例示を挙げるのは控えさせていただきたいと思うんですけれども、皆様が頭に思い浮かべるような大都市にもっと国際競争力をつけるべく、そういうふうなところを特区として指定していくのか。

 それとも、どちらかというと、過疎化が進んで、人口の流出も進んで、なかなかそこのところに若者もいないというような、そういった地域のところを指定して、どんどんそこのところに国際競争力をつけていくのか。

 そもそも、どちらの視点で取り組まれるのかということをお聞きしたいと思います。

新藤国務大臣 これは両方あり得るということですね。

 これから国家戦略特区の基本方針と区域を、この法律が成立させていただいた後、定めていくわけなんですけれども、大切なことは、一体何をテーマに国家戦略特区をつくろうかということになっていくと思います。

 これは諮問会議等で御議論いただくわけなんですけれども、例えばビジネスの、要するに新しいグローバル企業の集積地にしようと。ならば、それはそもそも企業が集積しているところでてこ入れする方が、効果が早く出ますよね。だけれども、では、新たに農業を産業化しよう、新しい取り組みをやってみようということになれば、それは大都会のど真ん中で農業の特化というのはできないです。それからエネルギーだとか、それから新たな研究開発、ライフイノベーションだとか、いろいろなテーマに対しての日本の国家戦略をそこでやってみようということになるとすれば、結果的にそれはいろいろな場所で行われることになって、果たして、では、今、日本が取り組むべき、しかも最初に、一遍に何十カ所もできませんから、まずは指定可能な区域として、どういうコンセプトのもとでどんな事業をやろうか、これを決めるための枠組みを今御審議いただいているわけでございますから、委員の最初の質問に戻れば、それはいろいろな可能性があるということでございます。

杉田委員 ありがとうございます。

 いろいろな可能性があるということで、さまざまな視点で、それによって選定される地域というのをこれから諮問会議でやっていかれるということだと思いますので、どうぞそのあたり、また、オープンな議論になることを期待していきたいと思います。

 きのう、私は、たまたま大学生とかと意見交換をする機会がございました。そのときに、あしたはちょっと内閣委員会で国家戦略特区について質問をするんだよというふうな話をしていたんです。では、大学生なりの皆さんが国家戦略特区と聞けば、どういうイメージを思い浮かべますかというふうに聞きますと、やはり、例えばシンガポールのような都市が日本の中にできる、香港みたいな都市が、日本のどこかの都市がああいうふうな国際都市に生まれ変わるみたいなイメージだというふうにお答えになられました。

 私自身も初めて国家戦略特区というのを耳にしたときは、まさしくそういうイメージで、私はシンガポールが好きでよく行くんですけれども、町が動いている躍動感があって、本当に国が観光で食べていくんだと腹をくくっている潔さみたいなものが感じられて、非常にいいなと思っているんです。そういった町が日本の中にも誕生するんだというようなイメージで、多分、これは大学生のみならず、日本国の人たちがこの国家戦略特区というものにイメージする、期待する部分というのはそこではないかなと思うんですね。

 そういう思いで、今回、例示いただいているこれを拝見させていただきますと、はっきり言って、ちょっと、これで本当にシンガポールみたいな都市が日本の中に誕生するのかなと。農家レストランが農用地区域内で設置できるとか、古民家の活用の制度を変えるとか。これをしたところで、本当にほかの都市と、それこそシンガポールができるとかじゃないですけれども、日本の都市がシンガポールや香港と肩を並べて競争できるようなレベルに本当になるのだろうかというふうに思われるところが多いかと思うんですね。

 はっきり言って、これを見ると、私もちょっとがっかりしました。そういうふうなイメージを持たれる国民の方も多いんじゃないかと思います。ここで、どうなんでしょうか、大臣の改革の意欲というのは、これで十分示されているとお考えでしょうか。

新藤国務大臣 まず、国家戦略特区、鳴り物入りで、安倍政権として、成長戦略の一丁目一番地だ、このような打ち上げを総理みずからがお話をいただいております。そして、委員の皆さんからも大きな期待をいただいていると思うんです。それがゆえに、御心配もいただいているということだと思うんです。私も、私だけではありません、ここにかかわる者は大きな責任を持っていると思っています。

 まずは、この国家戦略特区が、私の会議の中の言葉で言えば、日本の本気を示すものになる、このようにしたいと願っているんですね。ですから、それにはどのような事業をやったらいいのかということになるわけなんですけれども、これも今までとちょっと違うところは、予定調和で、これとこれとこれをやります、だから認めてください、地域からも、これをやらせてください、いいですよ、国が認めます。もう最初から枠を決めてやる。これは当たり前のことですけれども、そういう仕組みでずっと来ました。でも、この国家戦略特区はある意味のイノベーションなんです。新しいことをやろうとするならば、仕組みも変えようじゃないかと。

 ですから、今この法案にあるのは、総理を先頭にして強力な推進体制をつくり、そこでは総合的な調整とともにスピーディーに実行力を持つ、そういう形をつくらせてくださいと。

 今お手元にある我々が法案に示したものは、使っていただけるメニューとしてはこういうものがございますというもの、しかも、まだ特定の事業が決まっていない状態で、この規制緩和の項目はどこでも使っていただけますと。したがって、全部使ってくださいとか、この項目が入っていないから認めませんということではないんですね。

 ですから、これはまだまだ始まりでありまして、これから国家戦略特区を指定するに当たって、皆さんから御期待のいただけるようなものを、そして、それは結局のところ日本においての参加率を高めることになりますし、海外からも我々はぜひ来てもらいたい、このようにも思っておりますから、そういうものが投資の先としてその気になるようなものにしていかなければいけない、このように思っております。

 今の法案は、そういうことを実現できるための枠組みを御審議いただいている、こういうふうに御理解いただきたいと思います。

杉田委員 枠組みということで、これは本当に一例にすぎなくて、これにまたさらに審議の中ですごいものが載ってくるのかなというのを期待したいとは思うんですけれども、実は、いろいろと官僚の方なんかに教えていただくときに、ここに挙がっているメニューでもかなり苦労したんですと。

 例えば、先ほどからも例によく出ていますけれども、農家レストラン。これを農業地区の区域内でするということだけでも、この規制を取っ払うだけでもすごい苦労だったんですというふうにおっしゃられるんですね。これ一つ一つがそうなんだというふうにお聞きしております。それが、そもそも我々が一般の国民の皆さんの目線で見ると、どうしてこんなことを一つやるのがそんなに大変なことなんだろうというふうに感じられると思うんですね。

 先ほどから岩盤規制、岩盤規制、そういう言葉が出ているんですけれども、では、どうして岩盤規制になってしまっているのか。誰が抵抗するから規制改革ができないのか、規制緩和ができないのか、官僚の方々が抵抗するからなのか、もしくは族議員と呼ばれる人たちがいるからなのか、もしくは業界団体の人たちが反対するからなのか。一体何がきっかけで、普通に国民から考えれば、こんなのはとうの昔にできていた話じゃないのというようなことが、これ一つやるのがすごい苦労なんですと言われるぐらい、岩盤規制というものを突破するのが難しい。その原因になっているそもそもは一体どこにあるのかということ。

 それから、どういったものが岩盤規制と呼ばれているのか。成長を妨げる規制、改革の中で、これを規制していかなければいけないというようなことは、これとこれとこれは取っ払わないといけないよねとか、そういったようなことは政府内の皆さんで共有されているのかどうか、その二点をお伺いしたいと思います。

新藤国務大臣 そもそも、規制というのは誰かが悪意を持って設けているものではありませんね。善意によって、しかも行政の責任において、国民の福祉の向上や安全また安定、そういったものを維持するためにつくられたものだと思います。また、そのようにつくってきているわけですね。ですから、全てのものには理由があるわけです。

 しかし、それは、ナショナルミニマムといいますか、全ての国民に対してきちんと維持できるような、そういうものになっているわけですから、そうすると、ある一部の方は、いや、これがなくても私たちはやっていける、ここは緩和をしてほしい、こういうものがいつでも出てくる。だから、したがって、その声に基づいて直してきた。

 かつて、もう随分古い話になりますが、バス停一個動かすのに大騒ぎなんということを言っていた。随分それは古い話です。もう今、全くそんなことはなくなりました。だけれども、現実にそういうときもあったわけです。

 ですから、時代時代に合わせて直していけばいいわけなので、岩盤規制というのは悪いものではなくて、例えばそれは雇用だったり医療だったり教育だったり、本当の、最も国家として、行政としてベーシックな部分で、これはどなたにでも平等に、また最大の利益が得られるように、こういうことで設置されているものですから、それらを私たちは、こうすればこんな効果が出る、それから、こういうふうに成果が上がるので御心配には及ばないんじゃないんですか、そういうことを一つ一つ事業でもって証明していかなきゃならないと思うんですね。

 それが、全国一律の規制を一遍に緩和できるものはやればいいし、まだ効果のほどがわからないものは、まずやってみて、ですから、この国家戦略特区では、提案者がみずから自分たちでPDCAを出してください、自分たちで評価をしてください。また、客観的に諮問会議においても評価をいたします。

 いろいろな評価をしながら、効果をきちんとはかって、その上で必要なものは、これは関係者を、嫌だと言っているものを無理やりやることはできません、全てそれぞれ権限があるわけですから。その権限を持っている方々も納得できるような効果を出すために、まず先駆的な取り組みをやってみようということであるわけなので、あたかも岩盤規制が悪者であるかのように一方の方は言うが、それによって守られている人たちもいて、そういう全体の状況を見ながら、私たちは新しい社会のためには何が必要かということをやっていかなくちゃいけない、それが政治の役目だと思います。

杉田委員 規制のことについて、そもそも論というのを今説明いただいたんですが、私も長く公務員の世界におりましたから、できるだけ広くの人たちが平等にという中ではきちっと規制をかけていかなければいけない、それで始まったものというのがすごくたくさんあるというようなことも十分認識をしております。

 ただ、余りにも一回決まったことが長年そのままで放置をされていて、それが今の時代には合わなくなってしまっているという部分、制度疲労を起こしている部分、そういうところがたくさんある。それを変えていくということは、今よりももっとスピードを上げていかないといけないと思うんですね。

 私は、東京に来て、一つ非常に驚いたことがあるんですけれども、車に乗っていますと、一方通行が午前と午後で変わる道みたいなのがあるみたいなんですよ。私はそういうのがあるのを初めて知ったんですが、説明によりますと、昔の首相の方のおめかけさんがいたので、そこに行くためにその一方通行の道路を午前と午後とで反対にしていると聞いたんですけれども、では、別に、そのおめかけさんがいなくなって、その首相もいなくなったら、それはなくせばいいことじゃないかなと思うんですが、本当に日本人というのは、一度決めてしまったことをやめるというのが苦手な人種なんじゃないかなというふうに思っております。

 規制をこれからもっとスピードを上げて変えていただきたいということをお願いしまして、ちょっと規制のことは置いておきます。

 先ほどから、また農家レストランの例を出して申しわけないんですけれども、同じような質問もあったかもしれないんですけれども、先ほど新藤大臣の御答弁の中でも、ここに例示されているのはどこでも使えるものなんだ、どこでもやっていただけるものなんだというふうなお答えがございました。

 私は、はっきり言って、こういう農家レストランだとか古民家の活用だとかいったことは、日本全国どこでもやっていけるものだと思いますし、また、この課題を抱えているところは日本全国たくさんあると思いますし、これを例えば、何とか県だか何とか市だかわからないですけれども、ここを特区に指定します、だから、特区の中でだけは農家レストランはやっていいですとかというようにしなくて、規制を取っ払うのであれば、このぐらいであれば、一挙に全国展開してしまえるのではないかと思うんです。

 やはり特区でやって、モデルケースでやってみて、成功するかどうかを検証してからじゃないと全国に広げられない理由というのは何かありますか。

新藤国務大臣 それは、農地に対して、農家の皆さん、農業者の皆さんが、まあ、農家にとっては命ですから、土地というのは。そして、日本はそういった農業を基礎にして国家を形成しているわけですから、そういう中で、農地の活用の方法についてきちんとした議論があって、そしてそのルールが今成り立っているわけですね。

 ですから、それを、農家レストランでこのぐらいだからいいではないかという、このぐらいというのは一体何の基準なのか、どの程度の効果が上がるのか、その具体的なものを立証しないと、これが一応、今、全国で、農地というのは農業のためにあるんですから、農業以外のものに使う場合には農地を外さないとだめだ、そういうふうになっているわけなんだから、そこのところを変えるためには、やはり、まずはどこかでやってみて、また、この地域においてはその権限を移譲してもいいですね、そして安定的に運営できますよということを立証しなければいけないということだと思います。

 それから、蛇足でございますけれども、農地の問題は、国家戦略特区の中だけでやろうとしているわけじゃないんです。農水省も、農地についてどのように活用したらいいかということを考えています。

 それから、地方分権改革の推進本部の中でも、やはり農地をどのように活用していったらいいのかということ。例えば、都市計画法の中に農地というのはないんですよ。ですから、都市と農地というのは完全に分かれているわけです。でも、その地域の土地利用を考えるときに、農地も含めた地域の活性化というのがあり得るんだとするならば、それは都市計画に組み込まなくていいのかという議論も、今私たちの地方分権改革推進会議の中で、そういった研究もしようじゃないかというようなふうに出ているんです。

 いろいろな検討をしていく必要があると思っています。

 ですから、まず、この国家戦略特区においても、今そういうメニューを出したということであって、国家戦略特区内においては、今のそこに出ているメニューはどこでもお使いになれます。それは、具体的にどこで何がというのを決めなくても、このメニューは使えますというのは事務的な折衝で、個別具体の手前の時点で、このぐらいのことはいいのではないかというのを事務折衝で、また我々政治も入って決めた、メニュー化してある、こういうことでございます。

杉田委員 先ほど大臣の答弁の中にも、日本は農業が基盤でずっと発展した国であるということがございました。ですので、農業の分野の改革というのは本当に最も難しいのではないかというふうに私も感じております。

 きょう、午前中に自民党の大岡委員がおっしゃられた、特区の中で農業を改革するんだったら、農業の集約化をもっと進めるだとか、もっと大胆なことができるんじゃないかというような質問をされていらっしゃいまして、私も全く同じ思いだったんですね。

 そのときに、甘利大臣が、もう今いらっしゃらないですけれども、経済産業省の中に農業を入れていくべきだ、農業も産業の一つだということで位置づけてやっていくべきだというふうに答弁されたときに、私は、これはずっと地方の行政の中でも言い続けていることなんです。私の持論として、産業だというのであれば、産業として業をなすのであれば、別に農林水産省として一つ独立していなくても、経済産業省の中の農業部でもいいんじゃないかというのがあって、これも地方では実際に改革してやっているような県とかもあるみたいなんですけれども、そういう意識を大臣が持ってくださっているということに非常に期待したいなというふうに午前中の答弁を聞いていて思いました。

 もう一点だけ、農業の分野についてお聞かせ願いたいと思います。

 今回のこの特区を検討するに当たって、入り口のときには、株式会社の農地所有、そういったことも検討項目に入っていたと思うんですけれども、今回出てきているメニューの中には入っていません。どうして外れたのかという、そこの理由を御説明いただきたいと思います。

川本政府参考人 お答えを申し上げます。

 特区の規制緩和措置の検討につきましては、私ども、ワーキンググループを設置いたしまして、そこでいろいろ御議論をしていただいてまいりました。

 特区の具体化、具体的にどういうところでどういう特区をつくるのかという議論をする過程で、民間の有識者の方から、日本全国で考えられる規制緩和項目というのはどういう項目があるのかということについてヒアリングをいたしました。その際には、今委員御指摘がございましたように、株式会社による農地所有というものをもっと進めたらどうかという御提案もあったのは事実でございます。

 一方で、特区を具体化するということで、ことし八月十二日から九月十一日まで、これは、国家戦略特区をこれからつくるに当たってどういうアイデアがあるのか、どういう考え方があるのかというのを公共団体と民間から提案を募集いたしまして、多数の応募をいただきました。その中では、農業生産法人の要件緩和でありますとか農地の権利移転などに関しました農業委員会の役割の見直しといったような提案が、実は多数ございました。

 これを受けた格好で、今回の特区法の中でも、市町村長と農業委員会とが農地の権利移動の許可関係事務を市町村が分担するという格好で合意をした場合には市町村が許可関係事務を行う、あるいは、農業生産法人についての役員要件を緩和するといったような措置を講じたところでございます。

 基本的には、こういった措置によって農地の流動化を促進する、それから農業の六次産業化、先ほど出ておりました農家レストランの話も同じでございますが、それを推進することによって、全体を高付加価値化して生産性を上げていく、こういったキーワードで、私ども御提案を受けて措置をしたということでございます。

杉田委員 農地の流動化とか六次産業化とか、そういった大きな課題があるので、そちらを優先するということで株式会社の農地所有とかというのは今回はメニューの中に入ってこなかったということで、別に、特にこれに対してさらに強い抵抗があったから入ってこなかったというわけではないという認識でよろしいですか。

川本政府参考人 御指摘のとおり、提案のあった農業に関連するいろいろなプロジェクトの実現のために何が必要なのかということを検討していただいて、今申し上げましたような、高付加価値化をして生産性を上げていくというために必要な措置として、今回、特区として組んだものでございます。

 ただ、先ほどの、大臣からも御答弁申し上げましたように、農業についていいますと、農地集積バンクによる農業の構造改革を推進するといったことも今国会で御提案をするということにしておりまして、そういった施策全体で農業の生産性の向上というものを図っていくということになろうかと思います。

杉田委員 流動化とか集積化、それは本当に急がなければならないと思いますけれども、その次の段階で、多分、そういった株式会社が所有できるようになるとかといったところの検討に進んでいかれるのではないかと思いますので、そこのところはまたしっかりと、できればスピードアップをして検討を進めていただきたいと思います。

 先ほどの御答弁の中にもありました、いろいろな、地方公共団体なり、ほかのところから提案を受けたというようなことでお聞きをしております。きょう皆様のお手元の方に配付をさせていただいておりますが、これが、大阪府のホームページからもとって見ていただけるようになっています、九月の十一日に、大阪府と大阪市が先ほどおっしゃられた会議の中で提案をさせていただいた、その資料でございます。

 この中にさまざまなことが書いてあります。細かいことについてはまたの機会に質問をさせていただきたいと思っておるんですけれども、この中でやはり特徴的なのは、法人税の減税で最大ゼロに持っていってもらいたいといった提案があったかと思います。大阪市の方は、構造改革特区の方で、地方税をゼロにするという大胆な税制をその特区の中でもう既にやらせていただいておりますので、今度、そのさらに上を行くこの国家戦略特区の中では、やはり法人税をゼロにするぐらいの、そういった思い切った改革をしていかないといけないんじゃないかというのがあって提案をさせていただいていると思います。

 今回いただいております資料には、税制による支援について、この税制については、まだ今は経過途中で、議論していらっしゃる最中で、年末ぐらいまでには決定できますというようなことで説明を受けているんですけれども、その中で、この提案があった法人税ゼロにするというようなことについてはどのように検討されて、どのように議論していらっしゃるのか、お聞きしたいと思います。

川本政府参考人 お答えを申し上げます。

 今御指摘ございましたように、地方公共団体、民間からの提案で、税制に対する提案というのも大変多うございました。大阪府、大阪市が法人税最大ゼロという御提案をいただいておりますほか、法人税をゼロにしてくれという御提案は他の地方公共団体、民間からもございましたし、それに限らず、法人の実効税率の引き下げでありますとか、むしろ特区内での設備投資を促すための投資減税を拡充してほしいとか、さまざまな提案があったところでございます。

 特区の中において、これは午前中も大臣からも御答弁申し上げておりますけれども、当然、民間の設備投資、投資というものを促進していく、それによってプロジェクトを推進していく、これが大変重要だと思っておりまして、そのためには、今回御提案をしております大胆な規制緩和に加えて、税制上の措置というのが非常に大きなポイントになると私どもも認識をいたしております。

 特区ごとの制度設計にあわせて、当面必要となる税制措置というもの、どういったものができるかということについては、年末の税制大綱の取りまとめに向けまして、今検討を進めているところでございます。

 各御提案もしっかり受けとめて、検討を進めてまいりたいと考えております。

杉田委員 今の御答弁の中で、大阪府、大阪市だけではなくて、このような要望が多数あった、複数の自治体などからあったということを私はちょっと初めて今聞いたんですけれども、それだけやはり地方の要望として、この税制の部分、特に法人税とかをもうゼロにして、そこのところに企業を集積させたいという思いは大きいと思うんです。

 これは、今議論中ということなので難しいかもしれませんけれども、実現可能性というのはどうなんですかね。これは一番、皆さん、自治体の方々は聞きたいことだと思うんですけれども、もう描いた餅で、こんなのできるわけないわというようなレベルのものなのか、それとも、これだけたくさん地方の声が集まっているので、実現可能性は十分あるんじゃないかと考えていらっしゃるのか、どちらでしょうか。

川本政府参考人 お答えを申し上げます。

 特区でありますから、その特区をどういう地域にしていくのか。

 先ほど御指摘のありました大阪の場合には、ここにもございますように、健康・医療イノベーションというような格好で、そういうものを核にして民間投資を促進したいという御提案でございますけれども、それぞれの特区ごとにどういう企業あるいはどういう産業というのを育てていくのかということをやはり整理しなきゃいけませんし、その際にも、対象企業というのをどう考えるのか、対象をどうするのかというのの整理が多分必要になるんだと思っております。

 その辺も含めて、私ども、税制の中でどこまでのことができるのかというのは、今必死に模索をしているという段階でございます。

杉田委員 なかなか明確にはお答えできない点じゃないかなとは思いますが、その検討の中で、例えばこういう分野の企業が来るんだったら、ここまで下げればいいとか、こういう分野のところを集めたいと思えば、もっと大胆にゼロにしてしまおうとかというようなことが決まってくるんじゃないかというようなことは先ほどの答弁でよくわかりましたので、そのあたり、本当に聖域なきというかできるところまで、本当に限界まで挑戦をしていただきたいと思います。

 ちょっと話題をかえまして、ちょうどきのうも超党派のIRの法案を考える議連がございまして、私もそちらの方に参加をさせていただきました。このIR、特定複合観光施設区域の整備の推進についてということなんですけれども、いわゆるカジノを中心としてさまざまな観光施設をつくるというような、そういった法案を議論されています。

 このことについては、きのうもその議連の中では、しっかりと早いうちに提出をしていきたいというようなことだったんですが、実は、日本維新の会といたしましては、前回の通常国会の本当に終わりの方なんですけれども、この法案を提出させていただきました。

 まさしく、私、こういうIRみたいなものは、国家戦略特区の中で議論していく、そういう一つの大きな目玉になるんじゃないかなというふうに思うんですけれども、うちの維新の会としましては、このIR法案を提出させていただいている、そういったある程度のモデルとして、こういう形でIRをやっていけばどうですかということを提出させていただいております。

 国を挙げての最重要プロジェクトの一つとしてIRというのがあると思うんですが、この国家戦略特区のプロジェクトとIRというのはどのようにリンクしていくんでしょうか。

伊藤大臣政務官 お答えを申し上げたいと存じます。

 ただいま、規制改革事項につきましては、委員にも、またこの委員会でも、たくさん御答弁があったと思いますが、地方公共団体や民間事業者から応募のあった提案を受けて、有識者による国家戦略特区ワーキングチームにおきまして検討を行って、十月の十八日の日に、日本経済再生本部において検討方針を決定いたしました。この中にはIRは入っておりません。

 ただ、IRにつきましては、国際観光等の経済効果があるという一面、いろいろな課題があるということも皆さんが認識をされておられるところでございます。

 先ほど、先生はシンガポールがお好きだと言われましたけれども、シンガポールも、今の一大リゾートになっていく過程は、相当な議論をいたしまして今の状況になっているわけでございます。

 先生の維新の会の皆様方が今法案を提出されておることも、また当委員会で付託をされておることも承知をいたしておりますが、今委員がおっしゃったとおり、昨日の超党派による国際観光産業振興議員連盟においての議論がいよいよ、各党間持ち帰って、どのようにするかという段階に至っておりますので、私どもとしては、この議論を少し見守らせていただきたいなというふうに考えている次第でございます。よろしくお願いいたします。

杉田委員 先ほど大臣が、こういうメニューは日本全国どこでもできるので、ぜひ取り組んでほしいというふうにおっしゃられました。このIRこそ、どこでもできることではないと私は思っているんですよ。きちっと一つここの都市と決めれば、そこの中で必要な規制を取っ払って、それでやっていかなければならない。まさしく本当にこの国家戦略特区の真髄といいますか、そこのところにぶつけていって議論をして考えていくべき、そういう前に進めていくためには、特区という形をとらないとなかなか難しいと私は思うんですね。

 なので、ぜひ今後も、このIRと国家戦略特区、できればリンクさせていただいて、その中で、国家戦略特区の中でIRというのは実現可能性はどうなんだろうというようなことも視野に入れて議論を進めていっていただきたいと思います。これは私どもの党が出しているというだけではなくて、先ほども申し上げましたが、超党派でも非常に皆さん、推進派の方がたくさんいらっしゃる。きのうもすごい熱気を感じました。起爆剤として期待も大きいことだと思いますので、ぜひ進めていただきたいと思います。

 それでは、もう一点、公設民営の学校の設置についてというのがメニューの中に挙がっておりますので、これについて質問をさせていただきたいと思います。

 この説明の中には、国際バカロレアの普及拡大なんかを通じてグローバル人材の育成とかをするために公設で民営化していく学校があってもいいんじゃないかということで、公設民営学校の設置というのが多分特区の中に含まれていると思います。これこそ本当に、先ほど大臣がおっしゃった、まずはやってみて、そういう公立の学校が民間が運営してできるのかどうかというのをまずは特区の中でやってみて、うまくいけばそれを全国に広げていくというような形でやっていくべき問題かなというふうに私は感じております。

 これなんですけれども、どこまで国が主導権を持って進めていかれるのかというようなことをお聞きしたいんです。

 というのは、私として問題意識を持っているのが、どうしても、そういう民営化となりますと、さまざまな抵抗が予想されると思います。保育所なんかも、民営化とかをするときには非常に激しい反対運動とかが起きてきます。これは関東なんかでは比較的、そういう保育所だとか学童保育とかを民営化するときに、株式会社とかNPOとかも運営主体として入ってくるんですけれども、これが関西に行きますと、なぜか、民営化する、それを受け手側のところに、株式会社とかが除外されてしまうというところがあるんですよ。

 そういう自治体の事情とか、組合が強いとか弱いとか、関東にあるから関西にあるからとかではなくて、きっちりとこの目的を達成していくために、私は、やはり国に主導権をばちっととってもらって、そういう株式会社なんかを除外することがないようにというようなところまでしっかり国にやっていただきたいと思っているんですけれども、その点についてお聞かせ願えますでしょうか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 国家戦略特区において、新たな発想で取り組む、これを推進していくことは非常に重要なことと認識しております。文部科学省といたしましても、多様な教育を提供するという観点から、前向きに、積極的に対応していきたいと思っております。

 具体的には、今後、関係する地方公共団体と協議を進めてまいるわけでございますが、公立学校としての教育水準の維持向上や公共性の確保、これらに留意はしながら、従来の公立学校では対応し切れないような、民間のノウハウを活用した多様な教育活動が実施できるように、今御指摘がございました委託先の問題も含めて、具体的な仕組みについて今後検討していきたいと考えております。

杉田委員 この公設民営の学校を設置するとなったときに、やはり、株式会社とかNPOとかが、どこどこ市立とかどこどこ県立とかいった学校を運営するということになって初めて、ああ、すごい、国の改革は進んだな、前に行ったなというふうになってくると思うんですね。

 これが、そういうところが除外されて、学校法人しかだめですとか、そういう、一応民営化という中では民間の学校法人がやることも民営化になってしまうんですけれども、その程度で終わってしまうと、全然改革が中途半端だなという印象を持たざるを得ないと思うんですね。

 ですから、運営主体の問題というのは、私は非常に大きな問題だと思いますので、そのあたりをしっかりと進めていただいて、誰から見ても改革が進んだと思っていただけるような、そういった公立民営学校の設置という形で持っていっていただけたらなというふうに思います。

 それでは、最後の質問に行きたいと思います。

 この法案が今回もし成立をいたしました後に、どのようなスケジュールで進んでいくのかということなんですけれども、きのうもいろいろお聞かせ願いますと、速やかに進めますという答えが説明の中で返ってくるんですね。

 例えば、これが施行されて何月までには全国で、例えば三カ所やりますなら三カ所やります、五カ所やりますなら五カ所やりますという箇所数が決まって、半年以内には何々市でやりますとか何々県でやりますとかというようなことが決定してとか、そういう具体的なことがなかなか上がってこないんですね。

 これは、施行してから、まずは基本方針を決めます。それから区域方針を決めます。それで、特別区域会議というのを立ち上げて、区域計画を立てて、それから認定という形になっているんですね。これが示されているんですけれども、これだけの手続をするのにどのくらいの期間がかかるのか。

 速やかにという定義が、これが半年以内にできれば速やかなのか、いや、一年かかっても速やかなのか、いえ、我々は五年かかっても速やかだと思いますというのか、全然、具体的なスケジュールというのが、きのうとかも説明をお聞きしてもなかなか私の中でイメージができなかったんです。

 ですので、このあたり、どのような形でスケジュールを進めていくか、速やかにというのはどのくらいのことを想定されていらっしゃるのかということをお聞きしたいと思います。

新藤国務大臣 速やかにというのは、速やかになのでございまして、それは、可及的速やかにと言った方がいいと思います。

 ですから、法案が成立したならば、まずはその特区の諮問会議を立ち上げる、そこの中で方針を決めて、そして閣議決定をし、区域を決める。そこから、決まった区域に対して、その事業を、何をやるかということが決まりますね。それに対して、では、それを推進するための特区会議、これは統合推進本部と呼んでいます。統合というのは、国と地方と民間事業者、それらのそれぞれの事業主体が一つに統合されるからというふうに御理解いただきたいんですけれども、そこで事業の進捗管理が行われていくということになるんです。

 したがって、まずは、この国会会期中に成立をさせていただいた後に、年末から年始にかけてのそういった具体的作業が進むというふうに思います。そこで決められたものを順次実行していく。実行していく中で、必要なまた改正なり、新たな規制緩和の項目があるならば、そういったものは追加していかなければならないし、税制についても、今、とりあえず年末の与党税調プロセスの中で、織り込ませるものは織り込ます。

 しかし、先ほどから何度も言っていますけれども、これはこれだけの効果が上がります、だからやりましょうと。税制などは特にそうです。ただ単にゼロにして呼び込めばいいのではなくて、呼び込んだ結果、そこで産業活動が活性化する、また企業が集積される。結果的には、それによってそこの経済が膨らむ、当然のごとく税も入ってくる。ですから、そういうものの折り合いを含めて、この程度のものをやりましょうというようなことをプランを立てて、チェックしつつ進めていくということになるんですね。

 ですから、いつまでにと期限を切るのではありませんが、これは鳴り物入りでやるんですから、できる限り速やかにやるということでございます。

杉田委員 民間なんかだと、やはり期限を決めて、それから目標のゴールを決めて、それから逆算して落とし込んで今何をやるかというような形で事業というのは進めていくというふうに思っていて、私は、国会に来てから、なかなか具体的な答えがもらえないところなんだなというふうに印象として感じています。

 ただ、速やかにを、大臣の方から可及的速やかにとおっしゃっていただきましたので、その部分に大いに期待して、質問を終わりたいと思います。

 どうもありがとうございました。

柴山委員長 次に、山之内毅君。

山之内委員 日本維新の会の山之内毅です。

 午前中、私は他委員会にいたもので、質疑が多少重なりましたら、おわび申し上げます。

 今回、国家戦略特区、いわゆる国家戦略特別区法案、こちらでございます。

 私、衆議院議員として一年弱ではございますが、内閣委員会に通常国会から参加させていただいております。そんな中で、やはりアベノミクス、これは三本の矢がある。大胆な金融緩和、財政出動、そして成長戦略、規制改革。今回、この国家戦略特区というものはその中でどういった位置づけになるのか、どういった趣旨なのかを、改めて、まずは新藤大臣、お願いいたします。

    〔委員長退席、橘委員長代理着席〕

新藤国務大臣 日本の経済の低迷から脱却をして、そして日本の元気な経済をもう一度再生しようという中で、金融緩和、財政出動に続く成長戦略と三本の矢を放ってきたわけであります。

 その成長戦略の中で、まずは経済の刺激策として、起爆剤として、成長戦略を実行していく中の象徴的なプロジェクトとして、この国家戦略特区というものを位置づけております。そして、それは、日本の経済社会の風景を変える、大胆な規制そして制度改革を実行するための突破口にするんだと。

 それは、例えば居住環境を含めて、世界と戦える、世界の皆さんが日本に投資をしたいと思っていただけるような、そういう国際都市の形成をしようではないか、さらには、医療ですとかライフイノベーション、新しい分野の、そういったものへの国際的なイノベーションの拠点整備をしようではないか、そして、そこの研究成果を持って我々は世界に出ていくんだ、こういうようなさまざまな観点から、幾つかのコンセプトを定めて、それを実践するものとして地域を指定していくということであります。

 まずは、日本の経済再生の本気を示すというようなものに位置づけたい、このように考えております。

山之内委員 ありがとうございます。世界に打って出る、都市間競争に勝つための国家戦略特区ということだと思います。

 また、甘利大臣にお伺いいたします。

 アベノミクス、私も通常国会で大臣に質疑をさせていただきましたけれども、やはり成長戦略が肝だ、金融緩和をしても財政出動をしても、やはり成長戦略がなければ、これが肝だと。やはり一般の実需を喚起する、結局は、回ったお金が実需まで反映されて、それも可能な限り日本全国にだと思いますけれども、波及して初めてその効果があると思っております。

 その中で、甘利大臣、今回の国家戦略特区、こちら、成長戦略としての、改めて趣旨説明をお願いいたします。

甘利国務大臣 国家戦略特区担当大臣、新藤大臣からもお話がありました。

 国家戦略特区というのは、今までのいろいろな特区、これは主に地域からの要望で、地域振興がメーンの目的だと思いますが、国家戦略特区は、日本国経済全体を牽引していくような産業集積というのを図っていくわけであります。特区諮問会議でそれぞれコンセプトを定めまして、そのコンセプトに合うような集積をつくっていきたいというふうに考えております。

 ですから、全く白地の地に国あるいは自治体がお膳立てを全部するということではなくて、ある程度そういうコンセプトにかなうような素地があるかどうかをしっかり検証したいと思います。そこの素地が縦、横、斜めに連携がとれるような仕組みを国が率先して手伝ってつくっていくということだというふうに思います。

 そして、そのコンセプトのもとの地域というのは、世界じゅうでその種の集積の中で三本の指に入る、五本の指に入るというようなところに育てていって、日本国内もそうですし、国外へもそこから生まれる製品やサービスで打って出る、あるいは外の成長を取り込む、そんな拠点にしていきたいというふうに考えております。

山之内委員 ありがとうございます。

 やはり世界に打って出る、そういったところだと思います。

 改めまして、今度は稲田大臣、お願いいたします。

 通常国会でも、私も、規制改革、これは重要だ、大臣も一丁目一番地ということはおっしゃっていました。その中で、アベノミクスの三本目の矢、規制改革という点で、今回、国家戦略特区、どのように認識されていますでしょうか。

稲田国務大臣 規制改革は、日本の経済の発展を阻害するような規制であったり、社会情勢が変わって合理性を失った規制であったり、民間活力を阻害する規制を全国あまねく撤廃していくという改革であります。

 その中において、今回の国家戦略特区は、特定の区域を指定して、その地域に必要な改革をする、規制を改革するもので、全国的な規制改革にとっては、突破口であり、その実験場であるというふうに考えております。

 国家戦略特区において効果のあった規制改革については、規制改革会議の立場から検討をし、そして、望ましい改革については全国規模にも広げていきたいと思っております。

山之内委員 ありがとうございます。

 いずれにしろ、新藤大臣も言われていました、国際都市競争に勝つ、それから甘利大臣もおっしゃられていました、地域の活性化、そういった視点があると思います。

 私は、アベノミクスというものは、三本の矢、特に成長戦略、規制改革があって、私も賛成でございます。当初から言っておりました。ただ、このアベノミクスと今の現状を見ますと、やはり、いわゆる国民の声でもありますが、都市部はよくなって、地方中の地方は厳しいんじゃないか。これは経済の専門家の方も、やはり一般的に物価が上昇すると。

 東京は物価が上昇する。私は、地元は鹿児島ではございますが、特に離島もある、そういったところは、ガソリン代、そういった燃料費も上がる。ただ、一方で、これに給料が追いつくかどうかというところが重要な視点だと思います。

 都市部であれば、一部上場企業のボーナスが上がる、もしかしたらベースアップもあるかもしれない。一方、地方中の地方だと中小零細企業、こういったところはなかなかその恩恵が受けられていない。この現状で、物価に対して給料が追いつかない、こういったところがあると思います。この視点、この状況に対しての御認識は、新藤大臣、いかがでしょうか。

新藤国務大臣 私も委員と全く同じことを考えています。ですから、今回の三本目の矢である成長戦略、これが、成長の実感を全国津々浦々、地域やそれぞれの国民、その地域にお住まいの方々にどう伝えられるか、また実感してもらえるかというのが、この成長戦略の成功の鍵を握っていると思いますね。

 私は、そのときにはポイントが三つあると思っているんです。

 一つは、地域の活性化。全国一律に、大きなマクロ経済の政策で、沖縄から北海道までそれぞれ地域の課題が解決できるわけではございません。まずは大もとの経済が大きくならなければ勢いはつきませんから、全体的なマクロ経済、今、これはすばらしい成果を上げているんです。だとするならば、それぞれの地域で工夫をする。自分たちの町のやり方で自立できる方策を探さなければいけないし、それを私どもは支援したいと思っています。総務省というのはそういうものが役割でございます。

 それから、地域の活性化をするに当たっては、今までと同じ取り組みでやるならば同じ結果しか出ないわけです。だから、新しい仕組みを入れられないのか。私どもは、ICT、それから農業の産業化、それから、地域の金融機関と自治体の町づくりが一緒にできないか、既にもういろいろな具体的な制度をつくって、予算も立ててやらせていただいております。これはイノベーションなんです。地域におけるイノベーションをどのように、エネルギーも含めて、そういうものをどう確立していくか。

 そして三つ目は、それらは、日本のすばらしい技術をもって新しい変革をもたらすならば、国際展開できるでしょう。地域のやっていることはもしかすると国際展開できるところまでいくんだ、そういうものも含めて検討してみてはどうかと思っています。

 ですから、国家戦略特区が全てを解決するものではないんです。まずは起爆剤として、日本の本気を示す世界で指折りのプロジェクトをつくって、外国からの企業も引き込むし、我々は世界に対して打って出るんだ、それとあわせて、さまざまな工夫をして全体の底上げをしていく必要がある、こういうことだと思います。

山之内委員 ありがとうございます。

 こちら、国家戦略特別区法案の最初の一ページにもありますアベノミクス三本の矢、再生後の十年とあるんです。その中で、マクロ経済の姿ではございますが、中長期的に二%以上の労働生産性の向上、賃金の伸びが物価上昇を上回る、これは私は望ましい形だと思いますし、地方中の地方もそれが来ればいい。四月から消費増税が三%ある、さらに、二年後に二%が検討されるとは思うんですけれども、日銀の短観を見ても、やはり輸出企業等大企業は強い。もちろん、日本のマクロ経済を底上げするには、そこが頑張っていただかなければいけない。

 ただ、日本の国益を考える視点で、やはり都市部に集中させるのが日本の国益なのか、それとも、この日本、ただでさえ狭い島国でございますので、これを広く大きく、地政学的メリットも生かして使った方が日本の国益になるのかと考えたときに、私は、日本全国で広くその土地土地の有効活用をした方が日本の国益になると思っておりますが、この点について、甘利大臣、いかがお考えでしょうか。

    〔橘委員長代理退席、委員長着席〕

甘利国務大臣 国家戦略特区との絡みでいいますと、規制改革特区というのは幾つもバージョンがございます。国家戦略特区は、地域を三から五の間というふうに絞り込んでいます。ということは、オール・ジャパンを牽引するような、まだそのコンセプトはこれから決めるのでありますけれども、例えばライフサイエンスでいえば、この集積は、世界で、デンマークのメディコンバレー、それからどこどこ、そして日本のどこというような、そういうカウントされるような産業集積になっていってもらわなきゃならないわけですね。

 それをどうやって均てんしていくかということがあろうかと思います。幾つかの拠点で、ここは国際都市として三本、五本の指に入るとか、あるいは、農産品の輸出拠点としては、オランダのフードバレー、それからどこどこ、日本のどこどこというような、そういうコンセプトかどうかは別として、そういうコンセプトがあったとしたらカウントできるようなところにしていって、そこから全国に均てんしていくような政策がとれればと。

 もちろん、総合特区とか単品特区がありますから、そこも充実をして、それはもっと、全国津々浦々、特区が分布しているわけでありますから、そこの強化策もしていく。それぞれ主たる役割が若干違うと思うんですね。

 国家戦略特区は、世界に冠たる、こういう集積をつくるというようなところでありまして、それが日本経済全体を牽引していってほしいというふうに思っております。

山之内委員 ありがとうございます。

 やはり、今回の国家戦略特区というのは、ある意味、都市間競争に勝つために、都市部ももちろんですけれども、地方の方にそういった戦略を持たせる、こういった趣旨であると思っています。それこそが私はあるべき姿だと思うんです。

 そこで、今回の内容を見させていただきました。都市部以外でありますと、やはり、今回の項目では、地方中の地方は農業だと思うんですね。

 私は、この農業、果たしてこれだけで都市間競争に勝てる農業になるのかといったときは、やはり甚だ疑問があります。この点については、新藤大臣、いかがお考えでしょうか。

新藤国務大臣 これは、今具体的な区域が設定されない中でもできるという規制緩和の項目をメニュー化させてもらったわけでありまして、これはまずお使いいただけます。

 しかし、それ以外に、これは今、甘利大臣が申し上げましたように、世界で三本指に入る、フードバレーだとかそういうようなプロジェクトに匹敵するようなものにしていこうと思っているわけですから、では、そこで農業をどうすればそうなれるか。

 品質改良も必要だと思います、ICT化も必要だと思います、それから、いろいろな六次産業の仕組みというのも必要だと思います。もろもろを踏まえたそういうアイデアをこれから積んでいって、そしてそれを特区ごとの統合推進本部で強力に推進をして、また、大方針については、総理が議長となる特区諮問会議で速やかに決定してフィードバックする。この連続で事業化をやっていこうということでありますから、これから事業を、コンセプトごとに事業が決まっていく中でたくさんのアイデアが出てくると思いますし、それは国も出そうじゃないかと。地方からの御提案で、事業者からの御提案だけでなくて、それにあわせて国としても、そういう事業とあわせて国家事業もそこに入れて、効果をさらに上げるような、そういう工夫もしていこうじゃないかというようなことも考えたいと思います。

山之内委員 ありがとうございます。

 また、今回のは、国が積極的にコミットをして、地方自治体とそういったところで連携する、あると思います。

 今回見させていただきました、例えば、私の地元鹿児島は、農業に関しては手を挙げていないんですね。これはもちろん、いろいろな理由があるとは思いますけれども、大臣はいかがお考えでしょうか。こういった農産国が手を挙げていない現状について、どのように思いますでしょうか。

新藤国務大臣 至るところで、それぞれ農業をおやりになっております。

 むしろ、農業を上手にやっている地域は、自分たちのやり方をもっと伸ばしたいと思っているわけです。それを邪魔する必要もなければ、それはさらに御支援をしなければいけないというふうに思います。

 一方で、こうすれば新しい農業ができるじゃないかというお考えがある地域があるとするならば、それについてはやはりてこ入れが必要だろう、こういうようなふうに思います。

 ですから、どこの地域から上がってきているかというのは余り、どうお考えにというのはそこの地域の意思であって、意識がおくれているからとは私は思っておりません。

山之内委員 私、今回、農業の分野を見させていただきますと、農業の信用保証制度の適用、それから農家レストランの農用地区域内設置の容認、これをしたらどうなるか。私が想像すると、田舎の田んぼの中に、もしくは国道沿いの田んぼですか、鹿児島もありますけれども、そういったところに、大手チェーンのレストランもしくはファミリーレストラン、こういったものができるんじゃないかと思うんです。

 なぜかといいましたら、農業の信用保証制度、商工業だけじゃなくて、今回、農業に適用しようと。もちろん、地目、私も司法書士事務でやっていたこともありますので、田んぼの地目というのは極めて安いです。それが宅地になると大体百倍ぐらいにはなると思いますけれども、評価額が安い方がそれはいいです。

 ですが、果たして誰のための農業特区なのか。農家の方々、先ほど言ったような国際競争に勝つためであれば、やはり農家の方々の体力をつけて、輸出できるぐらいのものにするということが主点だと思うんですけれども、今回のであれば、どうしても、農家の方が自分でレストランをつくるか、なかなか厳しいと思います。実際にこれだけ競争がある中で、農家の年配の方々が、レストランをやろう、食材はどうしよう、こういったのを、全部チェーン店と競争して勝てるのか。なかなか勝てないと思います。

 では、実際、そういったファミリーレストランができたらどうなるか。実際には、そこの地元の食材をとるということはまずないと思います、今、既定の販路がありますので。恐らく、その地域で特区をしたからといって、そういったファミリーレストランが収益を上げる、このような認識も私はあるんですが、このようなことに対しては、新藤大臣、いかがお考えでしょうか。

新藤国務大臣 今委員が御心配のようなそういう事業内容であるならば、それは国家戦略特区に認定されることはないと思いますね。単に農地の転用がしやすくなるとか、それから、農地内に農家レストランができるようになりました、現状の中でですよ、それでは余り意味がないというのは委員がおっしゃるとおりだと思います。

 これから先はもう私の勝手な想像ですけれども、農業をそこで集積させる、新規就農もふやす、農水省の方で今やろうとしている農地の集約化も行われる、農地がさらにできて、そして、そこに新しい人も入ってくる。そこで何かの農業を、これは輸出も含めてもしやるようになる、その農業は、ICTを使った新しい農業になるかもしれない。もしかしたら、オランダのような植物工場のようなものもそこに入ってくるのかもしれない。そこでできた農業のいろいろなものを、観光地にもなると思います、そういったものを、地域でもって地産地消するために、また、来た人たちに楽しんでもらうために、また、農家の方々の中で、そういう自分で資産運用をしたいと思っている方々のために、レストランを展開できるようにしてもいいですよねと。

 総合的にいろいろなものが活性化する中で、使えるツールとしてこういうものが用意してあるんだというふうに考えていただきたい。

 ただ、現状、今のこれだけができました。規制緩和というのは手段でしかありませんから、その幾つかのメニューを今こうやってお出しさせてもらっているというふうに御理解いただければ、あとはアイデア次第。いいアイデアで、これは国の農業や経済に大きなインパクトを与えることができるだろうというものを我々は特区として指定をしたい、こう思っているわけです。

山之内委員 ありがとうございます。

 私も、先ほどから質疑でもあったと思いますが、税制ですね。やはり本格的に、先ほど甘利大臣からもありましたオランダのフードバレー、これは、もちろん、オランダは平地でありますし、実際、花というものも今アフリカから輸入しているだとか、いろいろな事情があると思います。日本でそのまま適用が簡単にできるかといったら、厳しい点もあるとは思うんですけれども。

 そういった産官学ですね。例えば、オランダのフードバレーであれば、そこの農学部といいますか、そういった学生がそのまま提携している企業に就職できるだとか、こういったのは地域の振興策になりますし、これぐらい思い切ったことを、ある意味、地方中の地方でやらないと、もちろん、これはまだメニューだ、これから先もあるとおっしゃられておりますけれども、少なくとも、今のこの農業の分野だけでは、とてもじゃないですけれども、地域は活性化するどころか、なかなか現状では疲弊の一途。

 やはり、先ほども言いましたとおり、消費税三%増税もありまして、今、地方からはかなり厳しい声が上がっていると思います。私も聞きます。そのような中で、やはり抜本的な、時にもう税制でメリットを与える、そういったことも検討しなければ、なかなかそちらの方に向いていかないと思うんですけれども、こちらの点に関しては、新藤大臣、いかがお考えですか。

新藤国務大臣 税制につきましても、この年末の与党税調プロセスの中に、御議論いただくことになっておりますし、こういったものを、特に地域を指定して、事業が決まった後から必要なものが上がってくるというふうに思っています。

 特に、今回の、御提案いただく際には、税の提案をいただく場合は、これは、その効果を皆さんで御自身で出してくださいと。理想的なのは、ペイ・アズ・ユー・ゴーです。そういう税の効果を、この税を変えることによってどういう効果が得られるのか、その事業性はどうなっていくのか、こういったものも踏まえて御提案をお願いしたいと言っております。

 それが全てではありませんが、いろいろなことを考えながら、できることはやっていこうではないか、こういうことでございます。

山之内委員 税のことを、ただ、全て減税すれば結局税収がなくなりますので、もちろん考えていかなければいけないことだと思います。私は、税制というのは、基本的には、そういうインセンティブを与えてそちらに向かわす、誘導させる方法であると思っております。

 その中で、私どもは、日本維新の会は、地方分権、道州制も検討するとなっておりますけれども、なぜそう言うかといいますと、私は、先ほど申し上げたとおり、国の政策としては、確かに、この状況、アベノミクスというのもした、消費増税もある意味では、厳しい点もありましたが、今の財政健全化を考えるとやむを得ない点もある、ただ、国の政策としていいことが結果的に地方にダメージが来ている、こういった現状だと思います。

 そういったものに関して、やはり国家戦略特区で、ある意味カバー、もしくはその成長を促すのであれば私は賛成なんですけれども、ただ、今このような状況では、結果、国の政策がなかなか、今これからだとおっしゃられておりますけれども、今後、やはりスピード感を持ってやらないといけないと思うんですね。そう時間はないと思っています、私の危機感では。

 やはり消費増税がこれから、あと三%、この二年間でどうなるか、さらに二%あるとどうなるか。抜本的な財政健全化、こういったものも視野に入れますと、地方にしわ寄せが来る。この中で、やはり、国ができないのであれば、どうしても、地方に財源も渡してやろうという議論も出てくると思うんです。

 そういった点は、新藤大臣、いかがお考えでしょうか。

新藤国務大臣 私は、これは持論なのでございますけれども、国と地方は対立概念であってはならないということです。そして、市町村民でない国民というのはいないんですね。

 国がだめだから地方が発展しないんだということで、その理由のみで物事が解決できるならば、私はありがたいと思いますけれども、もろもろ改善はしてきているし、同じ思いでやってきているわけですから、どうすれば地域が自立できるか、過疎地なら過疎地なりの、高齢化が進む地域ならば高齢化が進む地域なりに、どういう解決ができるのか。それを、国の制度、そして地方の自主性、これをまじり合わせて、いい成果が出るようにオーダーメードでつくっていかなければいけない、こういうことだと思うんです。

 ですから、私は分権改革の担当大臣をやらせていただいております、できることは全部やろうではないかと。しかし、ややもすると、国が障害となっているから、そこを変えてくれれば、地方でやらせてくれればうまくいくんだなどという、そういうことだけでは解決しないのではないかな。十年、十五年ぐらい前にはそういった話もありましたけれども、どんどんと変わっていくのではないかと思っています。

山之内委員 ありがとうございます。

 もちろん、私は、国が悪いから地方が活性化しない、それだけではないと思っています。当然、国にも事情があって、地方にも事情がある。その中で、どうすれば日本全体の国力が上がるかという視点ですね。

 やはり、先ほど申し上げました都市部と地方の格差、これは大きな課題になってくると思います。その中で、今回は国家戦略特区の中で農業を取り上げさせていただきましたけれども、やはり抜本的なそういった仕組みの改革、ある意味、オランダのフードバレーを例にした、こういった抜本的な改革も視野に入れて、今後、スピード感を持って進めていただきたい。なかなか時間は残されていないと思っておりますので、その面、よろしくお願い申し上げまして、私の質疑を終了させていただきます。

 ありがとうございました。

柴山委員長 次に、大熊利昭君。

大熊委員 みんなの党の大熊利昭でございます。

 本日は、四十分間よろしくお願いを申し上げます。

 本会議に引き続きまして、本件、おつき合いをお願いいたします。

 さて、最初に、ちょっと通告させていただいた順番を変えさせていただくんですが、これはまず、新藤大臣への応援というつもりで聞いていただければなんですが、本会議の前の日、質問通告をいたしますので、本会議でございますので全文を書いて事務方にお渡ししたところ、私としては総理以外は基本的に全て新藤大臣にお答えいただきたかった。なぜならば、本件は、農業とか医療とか教育関係、各担当の省庁はあるわけですが、そういったものを内閣官房あるいは内閣府の総合調整機能を持った大臣として、通常の役所よりも一段高いところにある大臣としてお答えいただきたかったというつもりでございましたが、事務方から、いや、答えられない、各省に答えさせるんだと。

 ついては、議運の昭和四十八年の取り決め、私もそれは初めて聞いたんですが、大臣は四人までだ、総理を除くと三人までだということで、医療とか農業とか教育とかやりますと、建築にいきますと、国交大臣を入れると五人目だ、だめだと。原稿を変えてくれというようなことがありまして、いや、それで原稿を変えるのでは、私も一年生議員ではございますが、国会議員でございまして、国権の最高機関でございますので、やはり五人になったから変えるというのは、そもそも、先ほど申し上げました、総合調整機能を持っている大臣なんだから全部答えられるはずだということで押し問答をしました。

 結果、大分、八割方は答えていただいたと思うんですが、残りちょっと、下村文科大臣とそれから厚労大臣に残ってしまったんですが、本来はこれはぜひ大臣に裁いていただきたかったなという希望と応援も含めて思っているところなので、ちょっと一言、ぜひお願いしたいと思います。

新藤国務大臣 大熊委員が初めて国会議員になられて、そういうカルチャーショックといいますか、いろいろと御経験されると思います。私もこれまでもそういうことをやってまいりました。

 民主主義は壮大な無駄の連続である、こういうふうに言われることもあります。

 国会というのは手続の場であります。国会法に定めのないものについては、国会先例集というものの中で、与野党のルールをつくって進めてきているわけであります。ですから、それが、では一体、四人と五人と何の差があるのか、そういうことになると思いますが、それでは三人にしてください、十人にしてください、全てに理由があることになります。なので、そういう外形的なものについては、ルールの中でいかに自分の目的を達成するか、これもやはり心がけなきゃいけないことだと私も思います。著しく時代錯誤であったり、整合性を欠いているものについては変えればいいと思うし、先例ですから、一つつくればそれが先例になるわけなんです。

 私は、総合調整というか、全体のものを私の方でやらせていただく、それが役割として与えられておりますが、個々の個別の事業、個別の政策については、それは所管の大臣たちがいて、その人たちが、これは役割分担なんですね。役割分担と縦割りはぎりぎりのところにあるわけですよ。縦割りとなってはいかぬ、私も全くそう思っています。

 最大限の調整はしようと思いますが、そこはいろいろと御議論いただいたのも聞いておりますし、私としても、したがって、ルールの範囲でできるところは対応させていただいたということでありまして、そこは双方から、両方の面からお含みおきいただければありがたいな、このように思います。

大熊委員 ありがとうございました。

 引き続き、縦割りということにならないように、ぎりぎりの線でひとつこちら側に来ていただいて、よろしくお願いをいたします。

 さて、本論に入らせていただきます。

 まず、総論的なところでございまして、甘利大臣にお伺いしたいと思っているんですが、この法律、産業の国際競争力の強化ということをはっきりうたっております。

 私はサラリーマン出身でございまして、金融業界ではあるんですが、企業買収とか合併の仕事をしておりまして、対象先はエレクトロニクスとか自動車とかいろいろな業種があるわけなんですが、やはり戦後のこの日本経済を支えてきたということになりますと、最近ちょっと元気がないですけれども、半導体初めエレクトロニクス、そして今でもしっかりやっていらっしゃる自動車産業だと思うんですね。

 ところが、今回の法案は、まあ、三本目の矢はこの法律だけじゃないとは思うんですけれども、どうも日本の得意な、強い、自動車、それから今も強いかどうか、大枠でいって強いと思うんですがエレクトロニクス、個別に見当たらないというところは、ちょっと残念だなというふうに正直思わざるを得ないんですが、このあたりについて一言お願いできませんでしょうか。

甘利国務大臣 日本再興戦略の中には、いろいろなことの項目が入っております。

 自動車でいえば、自動車の未来像と自動走行を促していくような規制緩和等々、もう既に実験が行われつつあるということも仄聞をしておりますけれども、そういう自動車の未来像、これは今後とも、燃料電池自動車等々、いろいろなことが進んでいくんだろうと思います。

 そういう個別分野の技術開発を進めていくような、あるいは実証実験を進めていくようなことについては、例えば企業実証特例制度等々を使っていろいろなことがやっていけるかと思います。

 国家戦略特区は、これから特区諮問会議でコンセプトを決めるんでありますけれども、それは、ある種、日本の社会課題をブレークスルーするような大きな、新たなフロンティアを開いていくということが中心になっていくのかなと。日本の社会課題というのは、それは日本だけの問題じゃなくて、やがて世界の社会課題になるだろう。そうすると、そういうソリューションパッケージごと、やがてやってくるところに対して輸出ができるというようなこともあわせて考えると、大きなブレークスルーができるような産業集積にしていくということでこのコンセプトを決めていくということになろうかと思います。

 個々の技術につきましては、個々の環境整備についても、競争力会議等々で今後とも取り組んでいく予定であります。

大熊委員 ありがとうございました。

 まさに今大臣がおっしゃられた自動車の自動走行関係の事柄、私も議員連盟の会に出席をさせていただいて、大変日本の得意分野を伸ばす技術、単に技術ということだけじゃなくて、都市計画まで全部入ったようなシステムとしても非常に広いポテンシャルを持った分野だろうと思うんですね。

 ちなみに、この内閣委員会でもこの夏に、平井団長以下、スウェーデンへ行ってまいりまして、かの地でも交通システムについていろいろ工夫をされているようなんですが、日本よりもそういったハイテクの部分はちょっとおくれているといいますか、逆に日本の方が進んでいるんじゃないか、スウェーデンを凌駕できるんじゃないかなというふうにも思っているところで、こういうのを国家戦略特区の法律の枠内で何とかカバーしていくことはどうなのかなと。

 例えば、自動運転ですから運転者がいない、システム、ネットワークなんかで運転させているということになると、では、一旦事故が起きたときに道交法上どうなるのかということ。やはり特例を、日本全国というんじゃなくて、その地域で、島なのか都市部なのかわかりません、ちょっといきなり都市部というのは難しいと思うんですが、何かそういう特例的なことをやらないと難しいはずなんですね。

 だから、単に自動車の技術というんじゃなくて、社会全体が、ある地域でやっていかなきゃいけない、そしてポテンシャル的にはブレークスルーできる日本の得意技術がある、世界の三大プロジェクトに入る、オール・ジャパンを牽引していくような先ほどの大臣の御発言、これに入るような話じゃないかなというふうに思うんですが、コンセプトはこれからということであれば、法律の修正かどうかわかりませんが、提案を含めてちょっと思うんですが、いかがでしょうか。

新藤国務大臣 それは非常に有効なことであります。

 私も、ITSの、自動走行の車にこの間乗ってきました。シーテックという展示会がありましたから、そこでやったんですね。一定条件の中ですけれども、物の見事にコントロールされています。ですから、こういったものをぜひ開いていこうではないかと。それから、もう既に予算化されておりまして、いよいよ今年度から自動走行の実験が始まります。これは、クローズドの、中の実験から今度は公道上に出て、本当にそれができるかどうかというのをやらなきゃいけないという意味で、離島でそういったことを始めるという仕組みが始まります。

 それから、何よりもそのプロジェクトの鍵を握るのは測位情報なんです。それが今、GPSであれば五十メートル単位の誤差がございます。それをセンチメートル単位で信号を強化したそういったものも、準天頂衛星システムというんですけれども、これはあと三年後ぐらいで衛星が打ち上がってフルサービスインになります。もう既に一機打ち上げて実証実験が始まっているんですね。

 ですから、そういったものでぜひやりたいと思います。その場合には、では公道上の実験に対してどういう措置をとるかということになるわけでありまして、既に始まっているんですね。ですから、何でも国家戦略特区にすればいいということではなくて、かわりにそういったことも含めての何か大きな事業になってくれば、それは戦略特区に入れたっていいと思います。しかし、今の御指摘の部分は、既にもう単独の事業で、これは経産省も国土交通省も総務省もいろいろな形で絡んで支援をすることになると思いますけれども、そういう取り組みが始まっている、こういうことでございます。

大熊委員 ありがとうございます。

 この分野、もう一言させていただきます。

 私、その議連に出たときにちょっとびっくりしたのは、警察、それから経産省もありました。それから、総務省は無線関係がありました。国交省に至っては局が二つ出てきました。ばらばらじゃないんでしょうけれども、そういうのをひとつ内閣府とかでまとめてオール・ジャパンでやった方がいいんじゃないかなと。そういう意味では、何でも国家戦略特区でということでもないんですが、もう一回申し上げますと、今それぞれの役所で、国交省なんかは役所の中で二つ分かれてやっている。私なんかが見ると、重複しているところも大分あるんじゃないかなというふうにも思えるので、その辺のところは、冒頭の縦割りじゃないですけれども、ぜひオール・ジャパンで、横串を刺して、お願いしたいなということ。

 もう一つ、自動車以外ですと、今度のセミコン・ジャパンですか、半導体関係ですと、インターネット・オブ・シングスというんですかね、こういったものが今後注目されていくんだと。日本は、それぞれの、洗濯機とかいろいろ、ハードウエアは、単体が非常に強かったわけですから、こういったものの強みをまた生かしていける、こういう新しい分野なんじゃないかなと思うんですね。要するに、こういうのを、今回法案に入っている旅館業とかそういうのもあるんでしょうけれども、電機、自動車をもう少しばっちり入れていただきたいというのが、要望、御提案も含めてなんですが、もう一言だけお願いできれば。

新藤国務大臣 それはぜひ進めていきたいと思います。また、そういうものこそが今、政府が実験をしているとか開発している分野もありますね。ですから、そういうものも入れたもので総合的な事業のテーマがつくれるのではないかなというような思いもございます。

 まだやっておりませんが、今回この法案を成立させていただいて、そして諮問会議を設けて、コンセプトがどんなものをやろうかというときに、先ほどから私、何度も申し上げておりますけれども、では国としてもどんなことがそこに一緒にできるのかというものもあわせて検討をしていくべきだ、こういうことだと思います。

大熊委員 ありがとうございました。

 続きまして、本会議のときにも申し上げて、総理から御答弁もいただいた社外取締役の活用の件でございます。

 総理の方から、社外取締役の活用を促進するための措置というふうな答弁をいただいているわけでございますが、社外取締役を法律で義務づけるということだというふうに、措置ということで考えていいのかどうか、この辺、教えていただければと思います。

萩本政府参考人 法務省におきましては、まず社外取締役の活用を促進するための措置を盛り込んだ会社法の改正法案を国会に提出する準備を進めております。

 具体的には、監査等委員会設置会社という新たな機関設計を導入することを予定しております。現在、上場会社の大多数を占める監査役会設置会社においては、社外監査役を二名以上置かなければなりませんが、これに加えて社外取締役を置くことには重複感、負担感があるとの指摘がございます。そこで、新たな機関設計では、指摘されている問題点を解消すべく、監査等を委員として社外取締役二名以上を置くこととする一方、監査役の設置を不要とするなど、社外取締役が置きやすくなるような工夫をしております。

 また、会社法の改正とあわせまして法務省令を改正し、一定の要件を満たす株式会社につきまして、社外取締役を置かない場合には、社外取締役を置くことが相当でない理由を事業報告に記載しなければならないとすることにより、なぜ社外取締役を置かないのかを株主などに積極的に説明しなければならないとすることを予定しております。

 さらに、東京証券取引所に対しまして、上場規則の中で、上場会社は取締役である独立役員を一人以上確保するよう努める旨の努力義務を規定するよう要望しておりまして、前向きに御検討いただいていると承知しております。

 今申し上げましたような諸施策を実施することによりまして、法律で義務づけるということまではする予定がありませんけれども、社外取締役の活用を促進してまいりたいと考えているところでございます。

大熊委員 結局のところは、法律で義務づけないというお話なんですね。

 これは、例えば、ある調査によりますと、東証一部の企業で社外取締役が取締役会に占める割合、二人以上の社外取締役を導入している企業というのは全体の二八%だ、アジア・コーポレート・ガバナンス協会というところが推奨している三人以上の社外取締役選任企業はわずか一三%だ、半数を超える会社というのは一・五%だということで、ガバナンスが非常に未熟だとされるブラジルとかインドの二〇%よりも低いんだ、こういう酷評になっているわけでございます。そして、ちょっときょうはデータを出しておりませんが、こういう会社はROEも非常に低いんですね。ROAも低い。

 本会議でも指摘させていただいたんですが、やはり、経済界の反対があるから、経団連かどこかわかりませんが、だからいいんだということじゃなくて、しっかりとここは義務づけという方向でいくべきなんじゃないかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

萩本政府参考人 委員御指摘のような指摘があることは十分承知しております。

 ただ、社外取締役の選任の義務づけにつきましては、積極、消極、双方の立場の意見がもう激しく対立している状況にございます。そこで、何度も議論を重ねた結果としまして、双方の立場の合意点として、先ほど申し上げましたような諸施策を現在考えているところでございまして、社外取締役の導入に向けた民間における自主的な取り組みを促進するためにも、まずは、これらの諸施策を積極的に推進していくことが肝要ではないかと考えているところでございます。

大熊委員 激しく対立しているというのは、投資家サイドの方と経営者団体、ここが激しく対立しているということなんでしょうかね。そうであれば、余り激しく対立している意味はないですよね。

 というのは、まあ意味はあるんですけれども、こういうことをやろうというのは、要は、株主側の議論に立ったものです。私が本会議で申し上げた、資本の競争力を高めるんだということなんですよね。だから、投資家同士で激しく対立しているのならまだわかるんです。恐らくそうじゃないはずなんですよ。経営者団体と投資家サイドの人たちが対立しているんですよ。もっと簡単に言うと、経営者団体の方が強いから入らない、そういうことなんじゃないですかね。どうなんでしょうか。

萩本政府参考人 投資家サイドの意見は、多分、委員おっしゃるとおりではないかと思います。

 ただ、そこで、では投資家サイドだけを向いて会社制度が構築できるかというと、またそれは、さまざまな利害関係者の意見を調整した上で制度を構築し、円滑に会社制度が運用されるようにまた配慮することも重要ではないかと思っておりまして、先ほどのような施策をまずは進めさせていただきたいと考えているところでございます。

大熊委員 ちょっと、時間が半分ぐらい来てしまいましたので、この問題はまた機会を見てやらせていただきたいと思います。

 次に参りまして、利子補給制度、これも本会議で申し上げましたが、ワーキンググループの議論以外に、政府として利子補給制度が有効であると判断したという総理の答弁がございますが、私がもともと代表質問でお伺いしたのは、まさにその有効であると判断した判断プロセス、そのプロセスと根拠、これをお伺いしたかったわけでございまして、この点を教えていただければと思います。

新藤国務大臣 総合特区制度において利子補給制度を活用されているわけであります。二十三年度、二十四年度の二カ年で合計四十二件、二百三十三億円の貸し付けに対する利子補給金の支給がございます。そして、そのうちのベンチャー、中小企業向けが三十五件、九十四億、件数ベースでは八三%を占めている。

 したがって、総合特区制度においては、利子補給制度がベンチャー、中小企業の資金調達に一定の貢献をした、このように認識をしているわけであります。

 今回の国家戦略特区につきましても、全ての事業にこれを適用させるということではなくて、これは、地方公共団体等から、創業の支援ですとか新規分野への進出促進など、そういう提案もございました。先駆的な研究開発、革新的な事業を行うベンチャー企業群、こういったものに関して、利子補給制度が必要なものには、また有効であると思われるものには適用できるように制度として組んだ、こういうことでございます。

大熊委員 これまでの、特に経済産業省さんなんかがやっているベンチャー支援の制度の中では、いろいろ見たんですが、人材育成とか、融資そのものを行うとか、あるいは株の出資に対する損金算入とかはあったんですが、利子補給というのはなかった。

 結局、前の総合特区の制度の中でこれがあり、今大臣が御指摘いただいたとおり、ある程度の実績がある、したがって、こちらにも、つまり国家戦略特区にも同じような制度が必要なのではないか、こういう判断のプロセスでもって入ってきた、ワーキングの方では出ていなかったけれども、こんな理解で大体合っていますでしょうか。

新藤国務大臣 ワーキングの方での御議論が、これについては大きなものとしてなかったことは事実であります。そして、政府として、これは、この特区制度の中でこういった項目も盛り込んでおいた方が有効である、また効果的ではないか、こういう判断のもとで入れさせていただいた、こういうことでございます。

大熊委員 逆に、出資分、こちらについての支援。

 要は、ベンチャー向けということになりますと、結局、ベンチャーですからハイリスク・ハイリターンなわけでございまして、資金調達、私も金融業界出身なので、こういう理屈で申し上げて申しわけないんですが、やはり出資、株で調達をすることが多いと思うんですね。ベンチャー、ハイリスク・ハイリターンで、貸し付け、借り入れで調達するというのは余りないし、お金を出す側からしても、ベンチャーに出すのなら、貸し付けで出すローリスク・ローリターンだとリスクリターンが合わないはずなんですね。

 だから、主にこれは株ではないかということで、同じベンチャーということならまずは株、今までの経済産業省がやってきたのはその線にある程度沿っているのではないかなというふうに思うんですが、投資、こちらの方へのベンチャー向けの策というのがまずあった上で利子補給もある、そういうたてつけになっているんでしょうか。その辺、ちょっと御確認を含めてお願いしたいと思います。

川本政府参考人 お答えを申し上げます。

 ベンチャー企業に対する立ち上げの支援ということでは、先生御指摘のように、出資の部分と融資の部分というのは多分パラレル、両輪になるんだと思っています。

 出資に関連しますと、これは税制上、いかに中小企業、ベンチャー企業に対する出資を促すかといったような措置というものが考えられるわけでございますが、こういった措置につきましては、先ほど来、税制の関係の御答弁を申し上げているとおり、年末までにかけて、特区の事業の立ち上げに必要な税制措置というものを講じていきたいと思っておりまして、それとあわせて、こういった融資措置というもので地域の中小企業あるいはベンチャー企業の立ち上げというものに貢献をしてまいりたいと考えております。

大熊委員 税制ということじゃなくて、出資に関する措置というのはあるのかないのかというところをちょっと教えていただきたいと思います。

川本政府参考人 いわゆる政策金融機関等による出資等の措置については、今回は入れておりません。

大熊委員 先ほど申し上げたとおり、ベンチャーなんですが、そこがまずあって、そして貸し付けのところで利子補給というなら、論理というんですかね、それが立つんですけれども、ちょっとそこがよくわからないというか、バランスを欠いているのではないかなと。

 では、もう一つ聞きます。

 前回、済みません、さんざん批判させていただいたんですが、メザニンですね。メザニンもないわけですかね。中間のもの。いかがでしょうか。

川本政府参考人 今回の制度設計の中には含まれておりません。

大熊委員 ちょっとその辺がアンバランスなんじゃないかなと。前回のPFIのようなものにメザニンで、こっちにはメザニンがないというのは、逆なんじゃないかなと、正直、制度設計として、思うんですね。その辺、もう少しバランスのいい資金調達、そういった制度設計にしていただいた方がよかったのではないかなというふうにちょっと指摘をさせていただきます。

 次に、本会議で新藤大臣が御答弁いただいたKPI、キー・パフォーマンス・インディケーターについてお伺いしたいと思います。

 衆議院の調査局の資料の中にあったんですが、新藤大臣名の「国家戦略特区コンセプト」というパワーポイントの資料があって、その中に、私も不勉強でした、KPIというのが載っておりまして、拝見をさせていただいたんですね。

 先ほどの議論ともちょっと、前の方の議論ともつながるかもわからないんですが、例えば、この中の医療分野については、項目として「日本の医療技術・サービスが獲得する海外市場規模」というのがありまして、これが、二〇一〇年、四千五百億のところ、現状ですね、二〇三〇年に五兆円にするんだ、こういう目標、KPIが設定されておりますが、仮にこれが全部できた、一〇〇%できたとして、さらに、一〇〇%ふえた分、四兆五千五百億ぐらいですか、これが全て日本のGDPに一〇〇%貢献したとしても、結局二十年後ですから、年間の名目GDPに対する貢献度は〇・〇四七%なんですね。

 つまり、先ほどのとおり、電機、自動車をどかんとやるんじゃなくて、非常に小さい。まあ、医療でもポテンシャルは大きいかもしれません。あるいは、メディコンバレー、甘利大臣もよく御存じの、デンマークの、あそこはGDPの二〇%ですから、そういった大きな目標を立て、これを五兆じゃなくて五十兆にするとか、これだと、なるほど、国家戦略だなと思うんですが、この目標、KPIそのものの値がちょっと小さいんじゃないかなと。

 もう一つ、農産物の輸出額ですね。二〇一二年、四千億。二〇二〇年、一兆円なんですね。非常に小さい。これもまた計算してみますと、八年間で四千億から一兆になるんですが、名目ベースで〇・〇一六%。物すごく小さいんです。〇・一六%じゃないです。しかも、一〇〇%乗ったとして、本当は一〇〇パー乗れば三、四割だと思います。要は三分の一ぐらいなんです。全部乗ったとして〇・〇一六%。農産物、これは目標値が小さ過ぎると思います。

 例えば、先ほど出ていましたオランダのフードバレー。オランダは世界第二位の農産物輸出国ですね。面積は九州一国と同じぐらい。オランダを抜くとか世界ベストスリーになるとか、こういう目標にぜひ、期待を込めて、目標値を上方修正していただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

甘利国務大臣 日本再興戦略の中に、それぞれその分野の産業を育成していくのをチェックするために、キー・パフォーマンス・インディケーターという達成度指標というのを百項目以上設けております。例えば、それを使って、この分野についてきちんと毎年毎年進捗状況がチェックできるように、できない場合には何が足りないかという、いわばある種、物差しとして使っております。

 経済成長全体は、いろいろな要素が組み合わさって、KPIがない部分についてももちろんGDPを押し上げる経済の分野でもあるわけでありますが、KPIに関してでいえば、進捗管理をしていく中で、このポテンシャルはもっとあるはずだ、そういうきょうのような御指摘を毎年毎年の進捗管理の中で織り込んでいって、そして上方修正するとかいうことは、これからも考えていきたいというふうに思っております。

大熊委員 ぜひ、サプライズを与えるような、そういった上方修正を両大臣にお願いしたいというふうに思います。

 そして、残り十分ぐらいでございまして、各省の皆様が来ていらっしゃるので、ちょっと各論、少し飛ばす形になって恐縮でございますが、冒頭のとおり、本来は内閣府の皆さんに全部答えていただきたかったんですが、そうもいかないということでございまして、まず、先ほども出ました農業の信用保証の御関係について、これも本会議で伺った続きでございます。

 この信用保証というのがくせ者なんですね。信用保証というのは一言で言いますとデリバティブですからね。それは皆さんよく御存じだと思います。霞が関の頭のいい皆さん、よく御存じ。デリバティブですから、農業への融資と違いますから。融資というのはストレートでお金を貸すことなんですね。デリバティブですから、信用保証というのは。非常にこれは難しいんです、応用問題なんです。

 総理の答弁、大臣だったかもしれません、済みません。DBJ、政策投資銀行のノウハウを使うとお答えなんですよ。彼らは農業デリバティブをやっていますか。これをまずお答えください。

柴山委員長 質問通告していますか、大熊議員。

大熊委員 ごめんなさい、していません。

柴山委員長 それでは、質問をかえてください。

大熊委員 それでは、具体的に通告している部分で申し上げますと、信用保証を適用する場合、金融機関の融資審査と信用保証協会の保証審査、これが同じものかどうか。信用保証協会が提示している現行の保証料に幾ら上乗せするか。要するに、これはデリバティブのプライシングですね。これはどうやってやるのか。本会議の答弁では、これはこれから検討するとおっしゃっていた。どうやってやりますか。これは通告してありますので、お答えください。

横田政府参考人 お答え申し上げます。

 十月十八日に決定されました日本経済再生本部の方針に基づきまして、信用保証協会が農業分野に保証を付与することを可能にするということで、これから制度設計を行っていくことになります。

 基本的には、金融機関それから信用保証協会ともに、与信に際しましては、財務リスクあるいは事業リスクを審査していくということになります。しかしながら、信用保証協会、農業につきましては蓄積がございません。一方で、日本政策金融公庫の農林水産事業は全国二万件の農業者のデータベースを持って与信判断に活用しているということでございます。したがいまして、信用保証協会による農業分野の保証については、このデータベースを活用しまして、保証料率の水準の制度設計、あるいはその運用ということを行っていくことを検討してまいる方針でございます。

大熊委員 要は、本会議のときもそうだったんですが、これから制度設計をすると。これからプライシングの手法を勉強するということは大変心もとないということで考えています。冒頭のとおり、融資そのものとデリバティブ、これは違いますので、非常に心配だなと本会議で申し上げたとおり、要は、最終的には国民の負担になってしまうのではないかなと大変心配だ。

 特に、この分野、農業の分野、結局、自然を相手にするということで、猛暑だとか台風だとか豪雨だとか、非常に確率的な手法というのが難しいんですね。今、データ二千件とおっしゃられましたか。それはあくまでも過去のデータですから。風速百メートルの台風が来なかったときのデータ、これまでの十年とか二十年とか三十年ですね。でも、これからは違いますから。

 つまり、金融でよく失敗する。リーマン・ショックもそうです。過去のデータで統計的手法をやったものでみんな失敗しているわけですね。専門家と言われている人がみんな失敗している。非常に心配だなということだけ申し上げて、ちょっとまた次に行かせていただきます。

 労働規制の関係でございますが、いわゆるホワイトカラーエグゼンプション、これが盛り込まれていないとは思うんですが、先ほど来出ていたように、私が思うには、地域とか企業のタイプ、外資系なのかどうなのかというよりも、働き手のタイプの違い、要は、すごく特殊なといいますか、プロフェッショナルな領域の人たちと、それ以外の一般の雇用者、労働者、こういうところを分けた特区のような、そういう仕組みであれば、地域で、この地域の外資系企業プラスその他の会社、ではその他は何だという議論にどうしてもなっていくと思うんですね。

 そうじゃなくて、本当にプロフェッショナルな、地域がどうかというんじゃなくて、あるいは外資系かどうかというんじゃなくて、プロフェッショナルな職種の方、金融でもいいですし、コンサルでもいいですし、あるいはエンジニアでもいいですが、そういう人たち用のいわゆるホワイトカラーエグゼンプション、こういったことを今後どういうふうに検討していかれるのか、あるいは、やはりそういうのは無理なのか、その辺についてちょっと教えていただければと思います。

大西政府参考人 ホワイトカラーエグゼンプションを初めといたしまして、労働時間規制につきましては、いろいろ議論があるところでございます。

 それで、国家戦略特区のワーキンググループの中におきましても、もしかしたら、先生の御指摘に類似したような、そういうエグゼンプションのような、そういうような議論もあったのかもしれませんが、厚生労働省といたしましては、現在も、労働時間法制の中には企画業務型裁量労働制というものもありますし、そのほかの労働時間の制度については、いろいろな制度がございます。

 こうしたものにつきましては、現在、労働政策審議会の方で審議をしているところでございます。

 具体的には、本年九月から検討を始めておりまして、これに関しましては、まさに労働生産性の向上という観点とあるいは労働者の方のワーク・ライフ・バランスの観点、この両方を総合的に検討してまいりたい、そのように考えておるところでございます。

大熊委員 外資系かどうかは別として、いわゆるプロフェッショナルあるいはスーパープロフェッショナルの人たちというのは、こういったエグゼンプション的な制度がないがゆえに、一種、逆に無法地帯になっていて、逆に守られていない、そういう私の実感も含めて、あるんですけれども、こういった観点については、そういうこともあるというふうに御同意いただけますでしょうか。いかがでしょうか。

大西政府参考人 労働時間の議論に関しましては、長時間労働が行われているのではないかというような御議論はいろいろなところであるというぐあいに承知しております。

 そういった労働時間の実態も踏まえまして、本年九月から、労働政策審議会の方では、そういったことも含めて、まさにワーク・ライフ・バランス、そういう労働者の保護という観点と、労働生産性の向上、そういった観点を総合的に検討を進めていきたい、そのように考えております。

大熊委員 それでは、そちらの方はまた議論の進捗を期待したいと思うんですが、最後の二、三分で、学校の関係でございます。公設民営の学校の関係でございます。

 現状でも既に株式会社の学校、通信制の学校なんかはあると思うんですが、今回、この法律で書かれております、あるいは、手法について、「方策について検討」と書いておりますが、検討をされる、これからできるであろうこの法律に即した学校と既にある株式会社の学校、この狙いの違い、こういうのは何かあるんでしょうか。大体同じような範疇で、普通の公立学校にはできないそういったものを考えるんだ、そういうようなことなんでしょうか。違いは何かあるんでしょうか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 従来、株式会社立の学校につきましては、構造改革特区のスキームで実施してきております。

 今回の公設民営学校につきましては、国家戦略特区ということで、それぞれの趣旨の違いを踏まえまして、今回は、公設民営学校についてはこのような形で検討するというふうにしている次第でございます。

大熊委員 ちょっとわかりやすく一言で、あと一分ぐらいでございまして、民間の知恵ということが先ほどの議論でもあったんですけれども、今回の法律にある、この規定の学校というのは、同じ民間の知恵でもどういう違いを出したいのかというのを、ちょっと最後に一言お願いしたいんですけれども。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の国家戦略特区による公設民営につきましては、学校自体は公設、自治体立ということでございますが、その運営について民間に開放していくということでございます。

 それに対しまして、従来の株式会社立については、まさに設置者が株式会社ということでございますので、それぞれの出資が異なるということでございます。

柴山委員長 質疑時間が終了しております。

大熊委員 また続きは機会を改めてと思います。ありがとうございました。

柴山委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 国家戦略特区法案の審議の前提として、この法案のもとになっております日本再興戦略について確認をしておきたいと思います。

 この再興戦略の中で、「失われた二十年」という言葉が出てまいります。例えば、こういうふうに書かれております。「経済が長期停滞に陥ったこの期間を指して「失われた二十年」と言われているが、経済的なロスよりも、企業経営者が、そして国民個人もかつての自信を失い、将来への希望を持てなくなっていることの方がはるかに深刻である。」こう書かれております。

 このような失われた二十年をもたらした政治の責任は誰にあるか、この点、甘利大臣にお答えをいただきたいと思います。

甘利国務大臣 バブルが崩壊をして、資産価値が下がりました。借り入れをしている企業は、金融機関に担保の追加を申し入れられる、あるいは返済が滞らないように、いろいろと企業側は、それに対処するために、過剰債務、過剰設備、過剰雇用と言われましたけれども、かなり無理をして対応していったわけであります。

 固定費を抑えて返済に回す、賃金が抑えられると、今度は消費が停滞をし、生産の減少にはね返ってくるという悪循環が始まってしまったわけであります。

 一方で、新規の事業を起こすための金融についても、金融機関は不良債権の処理を先送りして、一向に抜本的な解決ができない。

 そこで、小泉内閣のときに、期限を切って公的資金も入れるということで、各金融機関に問題処理の決断を迫ったわけであります。

 不良債権処理がなされて、金融が、経済の血液を送る心臓のポンプの役割が回復してきて、事態が多少は改善をしてきた。しかし、デフレマインドはちっとも改善されないので、心臓のポンプ機能は回復しても、抜本的な問題解決には至らなかった。

 この間、もちろん、政府がとるべき対処がおくれたということもあると思います、民間で、きちんと問題を解決する決断をしないで先送りをしてしまった、もろもろの対処の不適切さがこの課題解決を先延ばしにしてしまったというところであろうと思います。どこの誰々が全ての責任ということよりも、政府の側にも、あるいは民の側にも、きちんと対処できなかった、あるいは対処がおくれた責任があろうかと思っております。

佐々木(憲)委員 今、小泉改革以来のことを触れましたけれども、この二十年となりますと、その前も含めてであります。二十年を振り返りますと、自民党が一番長く政権についていたわけでございまして、この間、自民党以外の党が政権についた時期は、細川、羽田内閣の十カ月と民主党政権の三年三カ月で合わせて約四年、これを除きますと、あと十六年は自民党が政権についていた時期であります。

 そうなりますと、この失われた二十年というふうに、何か他人事のように言っていますけれども、それをつくり出した主な政治責任は自民党にあると言わなければならないと思うんですが、そういう自覚はありませんか。

甘利国務大臣 自民党政府にも大きな責任はあろうかと思います。

佐々木(憲)委員 デフレ克服のためには、失われた二十年をつくり出した経済的な要因をはっきりさせなければならないというふうに思います。その要因はどこにあったのか。

 統計を見ますと、一九九〇年代の前半までは可処分所得は増加をしておりました。九七年以降に大きく落ち込み始めたわけです。再興戦略では、このことについてこのように書いています。「消費者も、将来への不安や所得減少から消費を減らさざるを得ず、その結果、需要が低迷し、デフレを加速するという悪循環から抜け出せずにいた。」つまり、根本的な要因は需要の低迷にあったということではないかと思いますが、いかがでしょう。

甘利国務大臣 デフレがどういう原因で起きたのか、そのメカニズムはと世界じゅうが注視しているところでありますけれども、資産価格が落ちて、企業は、いわば自己防衛をするために、一企業、一個人としては適切な行動をとったと認識をしているんでありましょうけれども、その企業が全部集まった経済の集合体としてはいい選択ではなかった。いわゆる合成の誤謬と言われる問題がございます。

 企業は自己防衛のために、固定費を切り詰めて返済に回し、自身が倒れるのを防いだ。しかし、そういう企業の集合体、同じような行動に出ると、消費というのは圧倒的に減退してしまうわけでありますし、賃金が下がれば消費力はもっと下がっていくという負の連鎖が始まってしまう。そうこうしているうちに、デフレマインドが定着をしてしまった、こびりついてしまったということだと思います。

 つまり、お金は使わない方が価値がどんどん上がっていく、物の値段はどんどん下がり続けるわけでありますから、消費はしない方が得、投資はしない方が得という判断に次第になっていってしまったんだと思います。

 ですから、安倍内閣におきましては、こびりついたデフレマインド、つまり、景色を変えるということは、物価は少しずつ上がっていく方向に行きます、だから、購入する必要な物があれば今買った方が得ですよ、あるいは設備投資であるならば今行動を起こした方が得ですよというふうに、ある種、景色を変えていくということ。

 それから、それによって投資が起こる、企業業績がよくなったら、それは従来のように自己防衛でため込んでしまわないで、それを経済の好循環に使った方が全体としては得なんですよ、そういう環境をつくっていく。賃金や雇用を拡大させていくのに資するような税制をつくる。

 あるいは、政府も相当批判を浴びましたけれども、それを覚悟で、復興増税前倒し廃止。これだけ我々もリスクをとりました、企業の皆さん方も好循環を回すための一歩の踏み込みはされないんですかということを迫っていく。

 それぞれがやるべきことをやるという決断をするところから、経済をマイナスの循環からプラスの循環に変えていく歯車が動き出すんだというふうに思っております。

佐々木(憲)委員 今買った方が得ですよという雰囲気をつくると言いますが、一番肝心なことは、買うための所得がなきゃならぬのですよ。

 デフレ克服のために一番大事なことは、GDPの六割を占めております家計消費をどう温めていくか、そこに焦点を当てた対策、これを実行しなければならないということだと思います。

 小泉内閣から第二次安倍内閣に至るまで、これまで延べ十八回、経済対策を行って、六十九兆八千五百億円、約七十兆円かけてきたわけですけれども、財政措置をとったり規制緩和をやったり、やってきたけれども効果がなかった。それは家計に軸足を置いた対策にしっかり重点を移していなかったからだと私は思うんですよ。そういうことではありませんか。

甘利国務大臣 いわゆる緊急経済対策のようなものは、御指摘のように、累次行いました。

 つまり、それは何かというと、政府が、公が需要をつくって、需給ギャップを埋めていくわけであります。ですから、埋めた瞬間は景気がよくなるんでしょう。しかし、その後、民需がついてこないと、その支出が途切れたときに効果は終わってしまう、その繰り返しで借金がふえちゃったということであります。

 なぜ民需がついてこなかったかというと、お金は今投資するタイミングではない、お金は持っていた方が価値は上がっていくというデフレマインドを払拭できなかった。デフレマインドを払拭して、なおかつ投資環境を整備していく、投資に対する障害物を外していって、今使った方がいいですし、その障害になる障害物はどんどん取り除いていきますよということが規制緩和であろうというふうに思っておりまして、金融対策と機動的財政出動とそれから規制緩和を含む成長戦略、この三つをワンパッケージでやっていくという手当てが政府にできなかったところに、今日まで日本経済が苦しんだ原因があろうかと思っております。

    〔委員長退席、平委員長代理着席〕

佐々木(憲)委員 民需がついてこないといいますけれども、民需の中心は家計消費なんです、GDPの六割ですから。この部分が落ち込み続けてきたというのが非常に重大な事態を招いたわけであります。

 政府の文献でも、例えば労働経済白書、昨年版の三百三十七ページにこういうふうに書いてあります。日本経済において需要不足が続いているが、国内需要の大きな割合を占める家計消費を押し下げている最大の要因は所得の低下である、マクロ的には必ずしも労働生産性の上昇に見合った所得の増加が見られておらず、それは主に非正規労働者の増加によるものであり、また、非正規労働者の増加が低所得者の増加につながっている。

 それから、二〇一〇年版によりますと、非正規雇用の増加の背景としては、相対的に賃金の低い者を活用しようとする人件費コストの抑制志向が強かった、そのほか、労働者派遣事業の規制緩和がこうした傾向を後押しした面があったと考える、このような非正規雇用の増加は、正規雇用者、非正規雇用者を含めた雇用者の平均賃金を引き下げる方向に作用してきた、このように指摘をしているわけです。

 私は、これは分析としては非常に真っ当であり、当たっていると思うんです。

 つまり、国民の所得が低下をした、その最大の原因というのは、賃金が下がり続けた。なぜ下がったか。正規雇用が減って、非正規雇用がどんどんふえた。今、史上最高ですよ、非正規雇用は。こういう状態を放置したまま、幾ら経済対策をやっても、これは大企業は投資をするというふうにはなかなかいかない。そういうところに問題の根本があったのではないかと思います。

 二十年間の経済指標を見ましても、平均給与総額というのは、九〇年代に入って、九八年まで増加を続けております。その後、一貫して低下傾向にあるわけです。一方で、大企業の内部留保は、ともかく、リーマン・ショックがあろうが不況になろうが、どんどんふえて、二百七十兆円、こういう事態になっているわけです。

 つまり、日本の大企業がどんどん大きくなって、多国籍企業化して外国に出ていく、しかし、国内では空洞化が進んで賃金が下がり、内部留保ばかりがふえてくる。売り上げが横ばいでも利益を出そうとするから、賃金を抑制する。こういうことで、国内経済の中で家計をないがしろにした、そういう大企業の行動が今のような事態を生み出しているわけです。そのことをよく見ないと、やはり原因を明確にして対応しないといけない。

 したがって、私は、こういう内部留保を膨大に抱えた、そしてまた、これまでも法人税の減税をやり続けてきた、それでもデフレがおさまらない、そういう状況というのは、結局、政策の基本が国民の所得をふやすというところに直接行かないで、いわば内部留保を抱えている大企業に幾ら支援しても、それはなかなか内需拡大につながっていかないわけなんです。

 そこに問題があるというふうには思いませんか。

甘利国務大臣 バブル崩壊以降、企業は、自己防衛の考え方で個々の企業行動をとってきたわけであります。

 内部留保が二百数十兆円になった。ただ、この内部留保は現預金がそのままあるわけではなくて、設備に変わったりしているわけでありますから、必ずしも現金や預金あるいは金融商品だけではないということが一つありますが、それにしても、御指摘のとおり、GDPの六割以上を占めるのは消費でありますから、消費力が回復してこないと日本経済は本格回復軌道に入らないのは事実であります。消費力をつけていくためには賃金が上がっていかなければならない、これも事実であります。

 そこで、私どもは、かなり政府としてはやるべき範囲を超えているという御指摘もありますけれども、賃金の交渉は民民の使用者側と労働側の交渉でありますけれども、それに我々は大きく介入するつもりはありませんけれども、好循環を回していくためには賃金が物価の上昇を上回って上がっていかないと、結局、短期的にはいいという企業行動でも中長期には間違ったことになりますよという、まあ、若干ちょっと踏み込んだ提言をしております。

 そうやって消費力、消費する力をつけていくということが投資する力になっていくし、製品開発力になっていく。それが企業の力、収益力になってくるし、それがまた賃金にはね返っていけばさらにその循環は強くなりますということを、経済主体、構成する各主体にお願いをして説得をしているわけでありまして、基本的には、消費力をしっかりつけていくために賃金が上昇していくというサイクルをつくらなければならないということは、我々も感じております。

佐々木(憲)委員 ただ、今政府がやっている政策を全体として見ますと、消費税の増税は来年四月から実行しますよと。これは大変な負担増になるわけで、消費はもちろんそれで落ち込んでいく。社会保障についても、よくなるかなと思っていたら何か負担ばかりふえて、年金も減らされる。こんな状況が生まれる。

 その一方で、大企業に一定の負担を求めようとしたら、なかなかそれが波及しない、負担を求めようとしても大企業が実行しようとしない。例えば、内部留保が設備に回っていると言いますけれども、現預金は四十四兆円ありますからね。さらにその倍以上の株式ですとか、債権があるわけです。すぐ現金化できるのがそれだけあれば相当なことができるわけです。しかし、やろうとしない。

 そういう状況の中で、さらに企業支援だということで、そのうちパイがふえれば庶民も潤うだろうというような、そういう回り回ってそのうち何とかなるだろうというような感じがするわけです、政府の政策は。これでは、なかなか現在の日本経済の内需を中心とした力強い発展にはつながらないと私は思うわけです。

 そこは見解の相違かもしれませんけれども、そういう点を指摘しておきたいと思うんです。

 さて次に、国家戦略特区の形成過程、成り立ちについてお聞きしたいと思うんです。

 政府は、あらかじめこの特区のプロジェクトについて提案を募って、それをもとに戦略の内容を組み立てております。国の政策として進めるわけですから、当然、この内容については国民に公開して進めていくというのが基本だと思いますが、新藤大臣の基本的な姿勢、これを聞きたいと思います。

新藤国務大臣 これは、公開性、透明性、そういったものを重視するのは当然のことだと思います。

佐々木(憲)委員 それでは、お配りした資料を見ていただきたいんですが、ことし八月に開催した第五回国家戦略特区ワーキンググループの配布資料のリストであります。

 この資料一の「国家戦略特区コンセプト」、これについては、非公開資料、こうなっているんですね。それから、参考資料の三です、一番下、八田座長提出資料ですね、これも非公開資料になっているわけです。これは基本中の基本だと思うんですね、コンセプトなんというのは。

 私は、この資料を出すように、この間ずっと要求をしてきたんですが、なかなかこれは出てこないんですよ。ようやくきのう、私の手元のところに参りました。

 この国家戦略プロジェクトというのは、今までこれは誰が出したのかなと思っておりましたが、昨日受け取って初めて新藤大臣が出したものだというのがわかりました。

 新藤大臣はなぜ、この間、非公開にしていたのか。どう見てもこれは極秘文書とは思えないですよ、この内容は。非公開にしていた理由、これを聞かせていただきたい。

新藤国務大臣 このワーキンググループにつきましては、運営要領というものをつくっております。そして、このワーキンググループは座長が招集することになっておりますし、審議の公表につきましても、座長が適当と認める方法により行っていく、こういうふうになっているわけであります。

 そして、今回の資料が、委員が御指摘のように、極秘というわけでもない、そのとおりでございますが、ワーキンググループの委員の間で自由な討論をしていただく上で、コンセプトの内容を固めていく、その途上にあって、ワーキンググループの座長の御判断により、当初非公開として、この議論を自由なものとしたい、こういう御要請があって、その中でこのように措置されたものでございます。

    〔平委員長代理退席、委員長着席〕

佐々木(憲)委員 つまり、素案の段階はまだ議論の途中であるから、成案になったらそれを出すということで非公開にしていたと言うんですけれども、例えば、成長戦略、これは素案で公表しているんじゃありませんか。再興戦略という成案にする前、「成長戦略(素案)」で公表しているじゃないですか。あるいは一体改革、これも素案で公表して、いろいろな議論があって、そのうち成案になった。両方公開しているわけです。最初から公開して議論をして、その結果、こういう成案になりましたよ、こういうことをやっているわけで、大臣の理屈は成り立ちませんよ。

新藤国務大臣 ですから、これはワーキングの座長の御判断で、そして、このコンセプトペーパーについて議論があったわけであります。その中で、自由な議論を担保するために、当初、この問題は、結論を得るまでの間は委員間で議論の素材としていただこう、こういうことで公表をしなかったということだと私は理解をしております。

佐々木(憲)委員 全く理解できない。座長が何でそんな勝手な権限を持ってやるんですか。大臣が出した資料を、座長がこれはだめだ、こう言って隠すんですか。そんないいかげんな座長、あした来ますから、何を考えているのか聞いてみたいと思いますけれども。

 そこで、経済財政担当大臣の甘利さんにも聞きたいんですが、経済財政諮問会議、これは中断を挟んでまた再開されました。この間約十年、たくさんの参考資料、提出資料が出されておりますけれども、その資料のうち、非公開になったものは幾つありますか。

中村政府参考人 お答えいたします。

 経済財政諮問会議におきましては、資料を非公開とした例は三回ございますけれども、不良債権問題あるいは地球環境問題など、市場や外交交渉に多大な影響を及ぼすおそれがある場合に限定をしております。

 なお、これらの資料についても、その後公開をされております。

佐々木(憲)委員 過去、不良債権処理の金額、これはマーケットに影響を与えるということで、その当時、一時非公開がなされたことがある、あるいは、外交交渉に影響を与えるというようなこと、その場合はそのとき非公開だった、たった三例ですよ、十年間で。今回は、始まったとたんに非公開ばかり、これは二件出てきた。これは余りにも私は異常だと思いますね。

 安倍内閣で今回、経済財政諮問会議が再起動しましたが、ことし、これは非公開にしたのはありますか、幾件か。

中村政府参考人 お答えいたします。

 再開して以来、非公開という扱いはございません。

佐々木(憲)委員 ですから、このワーキンググループの非公開の仕方というのは極めて異例だと思うんですね。

 第五回ワーキンググループの議事概要というのが出ていますね。これを見て驚いたんですが、議事概要の四ページを見ますと、八田座長がこういうふうに言っている。「まず、議事2の「「国家戦略特区コンセプト」について」について議論したい。」と発言した部分が記録されております。しかし、その後、その後というのはその文章の後、非公開というのがぽんと書いてあって、中身は完全に隠されているんですよ。これは一体何ですかね。

 しかも、七ページのところを見ますと、八田座長が、「先ほどのコンセプトのところに戻りたいと思う。」と発言をしているんですが、中身は、読もうと思ったら白紙なんですよ、議事概要というものを見ましたら。何でその議事内容を白紙にするのか。

 それから、八田座長提出資料は、今見たところ、最後の参考資料三、これも、昨日初めて私のところに来たんですけれども、この部分の議事概要もあるはずなんですね。ところが、その七ページ以降に記されていたはずなのに、これも全く何も書かれていない、議事概要に。再三要求をして、ようやくきのうの段階で出てきて、その資料だけは出してきたけれども、肝心のその議論の中身が全く隠されたままだ。

 これは、新藤大臣にかかわる部分ですよ。あなたの提案部分にかかわることで、資料を公表したんですから、当然、今指摘した関連部分の議事概要というのは全面公開すべきだと思うんですが、いかがですか。

新藤国務大臣 まず、このワーキンググループというのが、これは、物事を決める前の本当の一番最初の初期のころのものであります。そして、そこで自由な議論をしていただこうと。

 ですから、中には意見が一致しない部分もあって、そういったものも含めて、議論を自由にするために座長がこのように御判断をされたんだと私は思っております。中身は、今、委員がごらんいただいたように、特別に何か秘密事項があるわけではありませんが、解釈をめぐってのいろいろな議論があったんだと思います。

 ですから、それについて、最終的に議論を収れんさせたもので資料を公表しているわけでありますし、閣議決定をして、自由な議論が、討論に影響が出ない、こういう判断のもとにこの資料の公開をさせていただいたということでございます。

佐々木(憲)委員 理解できないですね。自由な議論が行われるのは当たり前じゃないですか。議論すれば一致しないこともあるのは当たり前じゃないですか。経済財政諮問会議の議事録は全部出ていますよ、一致しないものも、自由な議論が。あの当時、小泉総理は議長で、大臣が発言をしたことについて、これはだめだ、こういうことだって全部載っていますよ。すぐ公開されている。

 何で八田座長がこんなことをやるんですか、勝手に。自由な議論を公開したって当たり前じゃないですか。

 これは、公開されることは当然、基本原則として当たり前だと思うんですが、どうですか。

新藤国務大臣 経済財政諮問会議とこのワーキンググループの位置づけは全く違うものであります。だからいいんだとは言いませんが、やはり自由な議論を、これは本当に、ワーキングというのはもともとの内輪の本当の議論であります。ですから、いろいろなけんけんがくがくの議論があって、それらをまだ表に出す段階でない、こういう座長の御判断があったものというふうに思います。

佐々木(憲)委員 大臣にあるまじき発言ですね、今のは。

 座長の判断に全部お任せして、大臣の主導権は一体どこにあるんですか。こんなの、公開するのは当たり前でしょう。資料を公開したんだったら、議事概要も公開するのは当たり前でしょう、それに関連してどんな議論があったか。それをなぜ隠すんですか。何が悪いんですか。それを隠している。おかしいじゃないですか。公開してくださいよ、八田座長に言って。

新藤国務大臣 このワーキングの議事の概要については、それは委員間の御了解が得られれば出すことになる、このように思いますよ。

佐々木(憲)委員 次に、この素案の三枚目にある、「必要な法令等の整備により、事業者のリスクを最大限軽減」と最初のところには書かれていたんですね。これが成案になりますと、この資料を見てわかりますように、見当たらないんですが、この部分は特区のかなめ中のかなめのところでありまして、この「事業者のリスク」というのは何を指すのか、これをなぜ削ったのか、これをお答えいただきたいと思います。

川本政府参考人 お答えを申し上げます。

 先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、この素案について委員の間で御議論をいただいて、言葉遣いについても誤解を生じないようにということで最終案が構成されたものでございます。

佐々木(憲)委員 誤解というのは、どういう誤解を想定されたんですか。

川本政府参考人 お答えを申し上げます。

 事業者のリスクを軽減するという言い方が、法令の整備が事業者のために行われるというように読まれかねない、そういう問題があったというふうに私は理解をいたしております。

佐々木(憲)委員 事業者のために行うというふうにとられかねない。でも、これは、事業者が主体になってその事業をやるんじゃないんですか。それを、今の説明だとよくわかりませんね。

 それからもう一つは、グローバル企業の呼び込みというのがあったんですが、これは「アジアのビジネス拠点の形成」というふうに変わっているんですね。「グローバル企業」という言葉をなぜ削ったんですか。

川本政府参考人 この部分については明確な記憶はございませんけれども、特に言葉を削ったというよりは、より適正な表現に変えたということではないかと思います。

佐々木(憲)委員 グローバル企業は不適切な表現であると。なぜ不適切なんですか。グローバル企業というのは当たり前じゃないんですか。何が悪いんですか。

川本政府参考人 お答え申し上げます。

 「グローバル企業」という言葉が不適切だと申し上げたのではなくて、よりわかりやすく適切な表現に変えたということで申し上げたところでございます。

佐々木(憲)委員 変えた結果、よりわかりにくくなっておりますね、これは。「アジアのビジネス拠点の形成」というふうになっておりまして、極めて漠然とした表現になっているんですよ。

 それからもう一つは、「提案者以外の関係者の批判的意見も広く聞き内容を検証する」というのがあったんですが、成案になりますと、「反対意見も含め広く国民から意見聴取」、これもかなり拡散した、漠然とした表現に変わっております。「提案者以外の関係者」という言葉を削ったのはなぜなんでしょうか。プロジェクトによって悪影響を受ける関係者を連想するので都合が悪い、こういうことなんでしょうか。

川本政府参考人 お答えを申し上げます。

 特にそういう趣旨ではなくて、通常使う用語に変えただけだというふうに理解をいたしております。

佐々木(憲)委員 通常使うという意味は、どういうことでしょうかね。「提案者以外の関係者」というと、関係者ですから、その周辺の人たちですよね。その周辺というのは、一定の影響を受ける可能性のある人たちですね。それを削ってしまうというのは、私は何か意図を感じるわけであります。

 それから次に、提案を募集しておりますけれども、その募集の件についてお聞きしたいんですが、応募したのは二百四十二の団体で、百九十七件の提案があったと聞いております。私は、先日の本会議で、その二百四十二団体のうち企業数は幾らかとお聞きしたんですが、安倍総理は、自治体は六十一件ですと答えたんですね。

 自治体の数を聞いたんじゃないんですけれども、これはよくわかりませんので、内訳を明らかにしていただきたいと思います。

川本政府参考人 お答えを申し上げます。

 二百四十二の団体でございますが、御指摘のように、公共団体は六十一、したがって、民間事業者等が百八十一団体でございます。この民間事業者等の中には、企業の団体も含まれておりますし、それから個人も含まれております。個人は九件でございます。

佐々木(憲)委員 この百九十七件の提案の中にも非公開というのがあるんですよ。あちこち非公開が出てきますけれども、非公開としたのは何件あるんでしょうか。この非公表とした理由、それをお聞かせいただきたいんです。

 なぜかといいますと、自分はいい提案だと思って提案しているわけでしょう。悪い提案と思って提案する人はいないんだから、堂々と名前を名乗って提案内容を公表するのが当たり前じゃありませんか。なぜ隠すのか。自分だけぼろもうけを上げるという仕掛けなので人に知られたら困るな、こういうことなのか、勘ぐらざるを得なくなるわけですよ。

 提案した団体も、プロジェクトの内容も、両方とも非公開というのが十一件ある。これは極めて不可解で、この十一件の内訳はどうなっているんですか。

川本政府参考人 お答えを申し上げます。

 十一件のうち、民間事業者等が十件、地方公共団体が一件でございます。

佐々木(憲)委員 これは一つ一つ聞かないとその内容がわかってこない。これはおかしいですよ、何で非公開にするのか、これだけこれから国家戦略特区というものをやろうとしているときに。

 我々は別の意見を持っていますけれども、しかし、提案する方々は、日本経済をよくしたい、こういうふうに思って提案しているんでしょう。だったら、堂々と私の提案を見てください、こんな立派な提案ないでしょうということで、それを名前も名乗り、提案者、内容についても当然公表して説明をする、これは当たり前なんであって、何で隠すのかというのがよくわからない。

 それは、隠すのは何かやましいことでもあるのかなと思うじゃないですか。これは、やはり基本原則としては、こういう、提案ですとかあるいは議論の中身ですとか、こういうのは公表するというルールにすべきだと思いますよ。

 小泉内閣のとき、我々はあの中身については非常に批判的でした。しかし、議事録の公開とか資料の公開というのは、経済財政諮問会議の場合は非常に細かくやっていました。ワーキンググループも含めてです。そういうことをせっかく自民党の小泉内閣時代からやってきたのに、ここに来て、何か急にあれも隠すこれも隠す、非公開、非公開、これはちょっとまずいんじゃないでしょうかね。

 やはり、ここは見直して堂々と国民の前で公表して議論をする、そういうことに踏み切るべきだと思いますが、新藤大臣どうですか。

柴山委員長 質疑時間が終了いたしますので、簡潔にお願いします。

新藤国務大臣 別に隠しているわけではなくて、議論をする過程のものでお出しできるものと、それから出す必要のないものもあるというのは、当然判断があると思います。

 ただ、これは先ほどから申しておりますけれども、ワーキングというのは、もう本当に一番最初の、まだ素案中の素案のときのものでございます。先ほどの委員の質問も、最初に出してある私の素案というのは、そもそもの、このプロセスは何のためにあるのかとか、そういう解説も含めた、主催者側のことも含めたいろいろな要素が入っている資料なんです。一方で、次のものは、もう一つ簡素化されているものは、説明会をやって、国家戦略特区はこういうことでやりますのでという提案者用の資料なんです。

 ですから、当然中身が、主催者側でチェックするものと提案者にお見せするものとは、これはおのずと役割が違ってくるから内容も変わってくるということであって、字数の関係で削られたりしているわけなんですね、今後わかりやすくしようとか。それが何か臆測を呼ぶようなことがあっても、これまた、まことに私も残念だ、こういうことであります。

 しかし、今後の議論というのは、これは明らかに、この法律を設定した後は、諮問会議をつくり、そしてその中でやっていくわけですから、当然、御指摘の点は我々ももとより承知の上で進めていきたいと思います。

柴山委員長 申し合わせの時間が経過しておりますので、御協力願います。

佐々木(憲)委員 公開して最後はやっていただきたいと思います。

 次回は法案の仕組みについてお聞きしたいと思います。

 ありがとうございました。

柴山委員長 次に、村上史好君。

村上(史)委員 生活の党の村上史好でございます。

 もう七時間近く、長時間の審議になっております。どのお顔を見ましても、お疲れの顔ばかりでございます。特に、新藤大臣は朝からずっといらっしゃるということで、お疲れのところ申しわけありませんけれども、あとしばらくおつき合いをいただきたいなと。もちろん、ほかの大臣も本当に御苦労さまでございます。

 質問に入る前に、私なりのちょっと気持ちをお伝えしたいなと思います。

 国家戦略特区でございます。もちろん、特区制度そのものに対する否定する気持ちは全くありませんけれども、ただ、今の日本の社会の中で、こういう国家戦略特区というものが本当になじむのか、あるいはまた、それがうまく機能するのか、その点について、若干疑問を持っております。

 特に、例えば発展途上国の中で、国家が経済の戦略を立てて、特区を用いて経済をつくっていく。その典型的な例が、中国のいわゆる一国二制度。特区制度をスタートに今の中国経済を築いてきたという意味においては、特区のうまく成功した例だと思います。

 ただ、日本の場合は、経済的にも成熟した社会でありますし、同時に、中央集権から地方分権という大きな流れがあります。そういう中で、今新たに国家主導のこういう戦略がなじむのかどうかということも含めて、そういう視点からも質問をさせていただきたいと思います。

 まず、基本的なところからお伺いをしたいと思いますが、国家戦略特区の区域の範囲、指定の数、そしてその期間など基本的な事項について、具体的に御説明をいただきたいと思います。

新藤国務大臣 指定される地域の範囲、それから指定の数、期間、こういったものについては、法案成立をさせていただいた後に立ち上げる国家戦略特区の諮問会議において、国、地方、民間、こういったものが一体となって、そういった取り組むのにふさわしいものを決めていくということでございまして、現状においてまだ何かを決めているわけではありません。そういうものを決めていただくための枠組みを今御審議いただいているということでございます。

 ただ、市町村の区域が全部入る場合もあれば、一部の場合もあるでしょう。先ほどお答えしましたが、県にまたがるものもあるかもしれません。それは、どういう事業をやるか、その目的と、またそれに対する計画に基づいて、それは千差万別、いろいろなパターンが考えられる、このように御理解をいただければいいと思います。

 地域の指定は、既に、新聞等では、また関係の方の御発言もありますが、それもあらかじめ決めているわけではありませんが、やはり第一弾として、まずは、すぐに、スピーディーに効果を上げられるようにということになると、おのずと数は絞られてくるのではないか、このように考えております。

村上(史)委員 この話、お答えも、午前中から何度も繰り返されていたことではあるんですけれども、特に言葉にこだわるわけではありませんけれども、国家戦略というネーミングです。

 本来、成長戦略特区でもいいとは思うんですが、どうも、安倍内閣は国家という言葉がお好きなようで、国家安全保障会議とか、そういう国家という言葉がよく出てまいりますけれども、やみくもにそういう言葉を使っているとは思えないんです。国家戦略という言葉、そこに込めた思い、どういう意図で、そして、どういう目的でこういうネーミングをされたのか、お聞かせいただきたいと思います。

新藤国務大臣 何度も申し上げておりますけれども、今度の国家戦略特区は、これまでの手挙げ方式で、地方や民間の方々が、国の定めた基準に沿って申請があって、それに対しての審査をして、認定をして、支援をするということと、また、それにさらに加えて、国も一緒になって仕事をしようと。ですから、国と民間と地方自治体が一体となって、まさに国の力を総動員しようじゃないか、そして、その中で日本の経済の新しい起爆剤となるような、そういうプロジェクトをやってみようではないか、それが、この経済成長戦略の象徴的なものになるような、また先導役になるような期待を込めたということでございます。

 既に構造改革特区というのがございます。それから国際戦略総合特区と地域活性化総合特区、こういうものが既にあるわけでありまして、それとはまた違う次元の、国ぐるみのという意味において、国家戦略という言葉をつけさせていただいたということでございます。

村上(史)委員 今の大臣のお答えは十分理解はできるんです。ただ、本当に、国家主導、新たな取り組みとしての思い入れといいますか、そういう強い思いはわかるんですけれども、今までやってきた特区ではだめなのかという思いも若干ございますし、それを発展させるという考え方もあると思うんです。

 今までやってこられました構造改革特区あるいは総合特区も、規制改革あるいは地域主権改革の突破口として制定をされてきた。この間、いろいろな取り組みがございました。現状をどういうふうに見ておられるのか、評価をお聞きしたいと思います。

伊藤大臣政務官 時系列的にお答えを申し上げたいと存じます。

 構造改革特区制度につきましては、これまでに、二十四回にわたりまして規制の特例措置の提案募集を受け付けさせていただいております。最後の二十四回目は、ただいまの十月十五日から十一月十五日にかけましての募集でございまして、これまでの二十三回の提案募集によりまして、七百七十件の規制緩和、特区としての対応、二百三十三件、全国的な対応は五百三十七件を実現してきたところでございます。

 経済社会の構造改革を推進するとともに、地域の活性化に寄与しておるものと考えております。

 それから、総合特区制度につきましては、地域の先駆的な取り組みに対して、規制の特例措置に加えて、税制、そして財政、金融上の支援措置を総合的に講ずるものでございまして、これまでに、四十八区域、国際戦略が七区域、地域活性化が四十一区域を指定しております。

 それぞれの地域の特性や知恵を生かして意欲的な取り組みが進められておりますが、現在、指定から二年が経過をいたしまして、その評価を先週末の十一月八日に発表をいたしたところでございます。

 これらの制度につきましては、引き続き地域のニーズに応えられるように推進していく必要があると考えておりまして、先ほど来の議論でもございましたけれども、制度の目的に応じて、取り組みを推進しつつ、各制度間の連携も図りたいと存じます。

 以上でございます。

村上(史)委員 今のお話も先ほど御答弁があった内容ではあるんですけれども、現状を高く評価しているというふうに認識してよろしいのですか。これはまだ足らない、その補う部分が今回の国家戦略特区というふうにお考えでしょうか。

新藤国務大臣 これまでの取り組みについては、高く評価をしております。

 そして、それぞれの目的に応じてそれぞれの成果が上がっているというふうに思いますし、今後も、構造改革特区それから総合特区、これについては、見直しも含めて、きちんと推進をしていきたいと思います。既にもうたくさんの地域で指定がされておりますから、それらについてはきちんとフォローをしていこう、このように思っています。

 そのことはそのこととして、別途、国家戦略特区と。これは延長上にあるのではなくて、国家戦略特区はまた別の次元から、国も交えて、国も事業体となってという先ほどの話に戻るわけでありますけれども、そういう意味では、取り組みを別の切り口からやってみよう、こういうことでございます。

    〔委員長退席、橘委員長代理着席〕

村上(史)委員 今のは次の質問にお答えになったような形になるんですけれども。

 問題意識として、最初に申し上げましたように、大臣の今の御説明は納得はできるんですけれども、ただ、大臣は地方分権推進のお立場でもございます。そういう視点から見て、ベクトルがやはり違うんですよね、今までの特区と今回の新しい特区は。国家主導、あるいは一方は地方提案型という意味においては、やはりベクトルが違うということで、その辺の使い分けを今おっしゃいましたけれども、その辺が本当に機能していけるのかどうか。

 といいますのは、会議がやたら多いんですよね。そして、総理大臣に集中する、今回の場合は。そうなると、本当に、総理が集中的に今やられるというのは、リーダーシップという面ではいいんだけれども、それに付随する会議が多過ぎて、会議が踊るというようなことも懸念をされるということ。

 あわせて、国家が主導でやるということになれば、やはりいろいろな利害、思惑というものもそこに入ってきてしまうのではないか。それも再三指摘をされているように、諮問会議のメンバーのあり方も含めて、そういう懸念を持っているということは御認識をいただきたいなというふうに思います。

新藤国務大臣 今の、検討の会議が多いということは、私もそのように認識をしております。特に、総合特区の運営の仕方については、会議が多い、それから、関係の、たしか各省の副大臣だったと思いますけれども、すごい数の人たちが入らなきゃならなくなっていて、機能がなかなかしづらくなっているんですね。

 ですから、そういう部分は今私は見直しをかけております。総合特区制度については、今後どのように展開していくかの見直しも含めているところであります。

 それから、午前中の質疑にございましたが、例えば、地方の意見を総括する、もしくはまとめるような、そういう場においては、これは総合特区においても国家戦略特区においても、ある地域に重なった場合には同じ議題になる可能性もございますから、そういったものは工夫をしていく必要があるのではないか、このように考えますが、いろいろと、運用上、工夫をしていきたいと思います。

村上(史)委員 ありがとうございました。

 それでは、国家戦略特区と地方との関係について二問ほどお尋ねをしたいと思います。

 産業の国際競争力の強化、あるいは国際的な経済活動の拠点形成ということを目的として、今回、この特区制度が導入をされるわけでございますけれども、ただ、国家戦略特区のイメージ、これ一つを見ましても、大きく三分野ございます。

 そのうち、農業というのは、基本的には大都市ではありません。地方です。ところが、国際的ビジネス、あるいは医療等の国際的イノベーションの拠点形成というのは、比較的といいますか、大都市にそれが集中するおそれがあるということで、今回の指定についても、どうしても大都市に集中する傾向にあるのではないか、そういうことを言われておりますけれども、その点についてはいかがでしょうか。

伊藤大臣政務官 そもそも、私たちは日本の国を元気にしていきたいと。安倍総理も、そしてまた新藤、甘利、稲田各大臣におかれましても、常々、日本の元気は地方からだということを言われてまいりました。

 私たちは、この政策は全体を元気にしていくということでございますので、国家戦略特区につきましては、必ずしも大都市に制限されるものではなくて、地方も視野に入れて、日本経済再生につながるプロジェクトの推進を図るものであるというふうに考えております。

 具体の地域指定につきましては、国家戦略特区諮問会議での検討を踏まえて政令で指定することとなってまいると思いますが、いずれにいたしましても、こうした趣旨で、日本全体を元気にしていく、大都市のものでもないし、全体のものであるということの考え方において決めてまいることだというふうに理解をしていただければと思います。

村上(史)委員 今の御説明は理解はできるんですけれども、それは、今までの特区においても地方を大事にし、そして地域の経済の活性化、それを通して日本全体の経済を浮揚させていくという意味においては、これは別に大都市、地方の区別はないと私も思います。

 ただ、必然的にそういうことになりはしないかという懸念が、まだ具体的に指定もされていないという状況の中では、そういう懸念があるということは考えた上で、その懸念を払拭するためには、そういう状況にもしなったときには、やはり地方への配慮というものも念頭に置く必要があるのではないかというふうに思います。これはちょっと先の話になりますけれども、その辺についてのお答えをいただきたいと思います。

新藤国務大臣 これは私も、もとより、そういった観点をぜひ入れようと。

 ですから、先ほど共産党さんが御紹介いただきましたが、このコンセプトペーパーにおきましても、私は、望まれる成果として、世界に打って出るプロジェクトにしようではないか、それから世界を取り込むためのプロジェクトにしようではないか、さらには、イノベーションそして生産性向上、新しく国が変わっていくんだ、こういうプロジェクトにしようではないか、そして多様と自律の国という意味において、地域の特性だとか文化だとか、そういったものも踏まえた、そういったものを伸ばすための戦略特区もあっていい、このようなことをコンセプトにおいては想定をしているということでございます。

村上(史)委員 それでは次に、成長戦略と規制改革の関係についてお尋ねをしたいと思います。

 今回の国家戦略特区は、成長戦略の目玉とも、また柱とも言われております。次元の異なる新たな特区による規制の特例措置によって、成長戦略に対してどれほどの効果が見込めるのか、あるいはまた、先ほども議論がありましたけれども、GDPの押し上げ効果にどれほどの期待を込めておられるのか、御見解を伺いたいと思います。

甘利国務大臣 国家戦略特区は、ただいま新藤担当大臣が説明をさせていただきましたとおり、コンセプトに従って選定された日本全国数カ所の地が、日本経済全体を牽引していく役を果たすわけであります。そこに、そのコンセプトに沿った産業集積ができ、あるいは産学官の連携ができ、そこから日本の経済を牽引していく物やサービスがどんどん生まれていくということであります。

 そこは象徴的な場所に当然なっていくと思いますが、成長戦略全体として、経済をどこまで引き上げていくか。この国家戦略特区が具体的に何%、あるいは何兆円経済効果があるという試算はまだしておりませんけれども、全体として日本経済を、向こう十年間で名目三%、実質二%以上の成長軌道に持っていく、その先導役を果たしてもらう地域というふうに御理解をいただければというふうに思います。

    〔橘委員長代理退席、委員長着席〕

村上(史)委員 従来の議論もございましたが、もちろん、これだけで、経済成長は新しい特区だけでできるものではない、合わせわざなんだということを繰り返しおっしゃっていただくことは十分理解できます。

 ただ、内閣がそこまで、新しい特区は柱なんだ、目玉なんだと言うわけですから、それなりの期待感というのはあるだろうし、その辺のことをお聞きしたかったんですが、まだそこまで至っていないということです。

 ただ、個別のことでちょっとお伺いしたいんですけれども、公立学校の公設民営もこの中に入っております。一見すれば、これは文部行政の中で学校の制度の大きな改革だという意味においてはわかるんですけれども、いわゆる成長戦略、特区制度の中にどういうかかわりを持ってくるのかというのが、これだけではわからない。人材育成とか、それは当然なことなので、あえてここに入る理由は何なのかということもお尋ねをしたいと思います。

 また、古民家あるいは歴史的建築物に関する特例並びに建築基準法の適用の除外によって活性化をしていきたいという趣旨のことだと思うんですけれども、経済成長を促すために規制改革をするんだ、また、国家戦略という名前を銘打つ割には、スケールがちょっと小さいのではないかというイメージを、私だけではなく、ほかの方もお持ちではないかなと思うんですが、その辺の御見解をお尋ねしたいと思います。

甘利国務大臣 国家戦略特区は、今後この法律が通り次第、国家戦略特区諮問会議が官民で形成をされますが、そこでコンセプトをつくり、そのコンセプトに沿った地域を指定していくわけであります。

 その際に、国家戦略特区のタイトルになっております、世界で一番ビジネスが展開しやすい環境をつくっていくというテーマでいきますと、ビジネスマンは、その地にやってくるときに家族を連れてやってくることもあるわけであります。そうすると、子供の教育が心配だとか、あるいは家族の病気、健康が心配だ、英語でそのまま診られるような医者というのは本当にいるのとか、子供がすぐ入れるようなインターナショナルスクールはありますかとか、いろいろな心配が出てくるわけです。それらを解決することによって、ビジネスが一番しやすい地になっている。

 何も、企業が立地しやすいだけで、ビジネス展開が一番しやすいとは評価は受けないわけでありますから、そのビジネスマンの家族の人たちにとって快適な地であるということも含めて環境整備をしていかなければならないということで、そういう中で、こういう医療のこととか、あるいは教育のことが挙げられているわけであります。

 もちろん、それ自身が経済効果があることはあると思いますけれども、ビジネスマンが居住する環境整備も含めて、立地環境をよくしていくということに資するのであろうというふうに思っております。

村上(史)委員 行き届いた心遣いだなというふうには思います。もちろん、そういう側面が、いわゆる環境整備という面では当然成り立つと思うんですけれども、いまいちパンチ力がないのかなという思いだけはお伝えしておこうかなというふうに思います。

 次に、規制改革について伺いたいと思います。

 今、さまざまな分野の規制について検討されておられます。この新たな特区における特例措置が政府が取り組む規制改革全般の中でどういう位置づけになるのか、また、今後の規制改革会議での検討結果は新たな特区制度でどのように生かされていく、取り扱われていくのか、お尋ねをしたいと思います。

稲田国務大臣 規制改革会議で取り組んでいる規制改革は、全国的に推進すべき規制改革であります。

 その上で、この国家戦略特区との関係ですけれども、国家戦略特区は、その地域の取り組みを踏まえつつ、国家戦略の観点から、その特定した地域に限られて規制を改革されるわけです。

 ただ、規制改革会議が進めております規制改革にとって、その取り組みが実験的な意味もありますし、また突破口としての意味もあろうかと思います。

 今後の国家戦略特区の取り組みと規制改革会議の取り組みとは、連携を図りつつ、全国的に望ましいものについては改革を推進していきたいというふうに思っております。

村上(史)委員 ということは、新たな規制改革の結論をこの特区の中にどんどん入れ込んでいくということの理解でよろしいんでしょうか。

稲田国務大臣 むしろ、国家戦略特区で、その特定の地域で進められている規制改革について、それを、望ましいものであれば全国的に展開をするという意味があるという意味での連携が原則ではないかと思っております。

村上(史)委員 それは、いわゆる岩盤規制に穴をあけるということだろうと思うんです。

 穴をあけるのもいいんですけれども、穴があいたままにしておけば、また新たな規制も出てきて、知らない間に規制が入ってくるというのが今までの常でございますので、一度あいた穴をいかに広げていくかということも必要だと思うんですが、今後の展開について、大臣はどのようにお考えでしょうか。

稲田国務大臣 今、村上議員が御指摘のように、やはり岩盤規制というのはあると思います。それについて、今、国家戦略特区で実験的にといいますか突破口的に取り組まれて、それを規制改革会議の立場からやはり全国的にも推進すべきというのは、その特区であいた穴を埋めないように、そこは推進していくべきだと思っております。

村上(史)委員 ありがとうございました。

 それでは次に、新たな特区の今後の考え方について二、三お伺いをしたいと思います。

 まず、本法案の附則において、検討規定が設けられております。今後も議論を続けて、政府は所要の措置を講ずるとあります。

 まず、その検討はどの会議体で行われるのか、お尋ねをいたします。

川本政府参考人 お答えを申し上げます。

 この法案の附則におきましては、一般的に置かれております法律全体の見直しの規定、これについては、内閣官房が中心になって制度全体の見直しを行うことになろうと思っております。

 それ以外にも、今御指摘ありましたように、再検討ということでは、先ほどもお話がございました、公立学校の民間委託のお話、こういうものについては、文部科学省が中心になって、私ども内閣官房が協力して検討していくと。

 それぞれ課題に応じてそういう検討体制をとっていくということになろうかと思います。

村上(史)委員 それでは、個別の話に移りたいと思いますが、その検討科目の中に、雇用の規制緩和として有期雇用の特例がございます。国家戦略特区になぜこの特例、雇用の規制緩和が必要なのか、根本的なところを教えていただきたいと思います。

川本政府参考人 お答えを申し上げます。

 雇用の分野については、これまでも御議論がありました。新規開業直後の企業やグローバル企業といったところが、優秀な人材を確保して従業員が意欲と能力を発揮できるようにしていくということは、これは大きな課題であるというふうに思っております。

 そういった観点から、有期雇用の特例について、これは全国規模の規制改革として検討を行っていただくということにしておりまして、この点につきまして、将来、必要な法律案を提出するということを法律上明記しまして、その実現を図ることとしたものでございます。

 特区との関係について申し上げますと、こういった規制改革の実現により、特区内はもちろんでございますが、日本全体の活性化につながるものとして議論をしてまいったものでございます。

村上(史)委員 この法律によると、来年の通常国会で結論を得るというふうになっております。

 この雇用の問題は、田村厚労大臣がいろいろとお考えのようではありますけれども、なぜ有期雇用がそれの条件整備になるのかということをお聞きしたいんですが。

甘利国務大臣 これから国内外の投資を呼んでくるときに、例えば五年を超えるある種のプロジェクトが起こるとしますと、その投資が起きる。しかし、今は、五年を一日でも超えますと、本人が無期雇用、無期転換を希望した場合、そうしなければならないわけであります。新たな投資のプロジェクトによっては、八年、九年とか、そういう期間を要する。しかし、その制約があるためにそういう仕事がそこに発生をしないということになりますと、これはそこに投資が起きないということであります。

 でありますから、新たな雇用をつくる際には、五年を一日でも超えたらその雇用は発生をしない。もともと五年と一日以上のプロジェクトは日本には起きないということになってしまうと、これは雇用機会の喪失にもなります。その際には、それに必要な、プロジェクトに必要なスキルを持っている人材でありますから、高度な人材になろうと思いますし、待遇も、平均給与よりは高い給与で雇うということになろうかと思います。

 これは、よく、そういう解雇できる法制だという誤解がありますけれども、雇用できる仕組み、それがなかりせばそこにそういう雇用が生まれなかった、そういうスキルの高い人材が集うところがなかった、そういう普通よりも高い賃金の場所がなかったということにならないように、労政審を通じて検討いただきたいということでありまして、その問題提起をこの特区法案の中でさせていただいたというふうに御理解をいただければと思います。

村上(史)委員 そのお話は何度もお聞きしておりますが、例えば、日本の企業が海外に進出する場合、相手国の雇用制度をどうこうということはなくて、その相手国の雇用の制度に合わせて日本企業は一生懸命頑張ってきたと思うんですよ。そういう面で、なぜわざわざ日本が、そういう環境整備だと、それは配慮といえば配慮なのかもしれないけれども、そこまでやる必要があるのかという思いがいたします。

 現実にヨーロッパでこの雇用規制緩和をもう既にされております。リーマン・ショック後、雇用の規制緩和がなされたわけですけれども、その結果どういうことになったかといいますと、これはILOの労働問題研究所のレイモンド・トレスという所長さんの言葉でありますけれども、労働者を解雇しやすくする規制緩和が雇用を生み出したと裏づけるデータはないんだ、現実は逆なんだということをおっしゃっています。スペインでは二五%を超える失業率につながってしまった、規制緩和で起こったのは失業手当の給付の増加と教育費のしわ寄せだったんだと。これが全てではありませんけれども、ヨーロッパではそういう一つの結果が出ているわけです。

 ですから、あえてこの日本の新しい特区制度の中でその制度を取り入れるという必然性、蓋然性はないのではないかというのが私の考え方ですけれども、もう一度御見解を下さい。

甘利国務大臣 まず、内外の投資ということで申し上げまして、これは外からの投資家に向けて用意する仕組みというわけではありません。国内外、国内でそういう事業、例えば、オリンピックが二〇二〇年に来る、オリンピックに向けてのプロジェクトを立ち上げたい、でも、それはオリンピックを過ぎたら、そういう事業自身がなくなってしまうんだと。それは、五年以内にそのプロジェクトが完成をしない、としたら、オリンピックが来ることになっても、それに向けたプロジェクトはできないということになるわけであります。これは、そういうニーズ、未来永劫でない、期限を限ったプロジェクトのニーズが起きる、しかもそれは今の法制度、労働法制度だと、五年以内に終了しないと、そういうプロジェクトは発生しないということになるわけであります。

 ということは、そういうプロジェクトに向けた人材がいながら、その人が集う場所ができないということになるわけでありますから、これは新たな雇用を生み出していく、そういうプロジェクトに見合ったスキルを持った人材が集う場をつくっていくということでありまして、これは別に対日直接投資用に開くだけではありません。国内投資家が、そういう期限を限った、しかも五年以内におさまらないプロジェクトをやりたいという場合に、その対応ができるようにしようということで御理解いただきたいと思います。

村上(史)委員 この問題については、まだまだ議論する余地があると思います。今後の審議でまた議論をさせていただきたいと思います。

 若干時間残っておりますけれども、新藤大臣お疲れでございますので、短目に終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

柴山委員長 これにて本日の質疑は終了いたしました。

 次回は、明十四日木曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時五十九分散会


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