衆議院

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第5号 平成25年11月14日(木曜日)

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平成二十五年十一月十四日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 柴山 昌彦君

   理事 関  芳弘君 理事 平  将明君

   理事 橘 慶一郎君 理事 西川 公也君

   理事 平井たくや君 理事 近藤 洋介君

   理事 松田  学君 理事 高木美智代君

      青山 周平君    安藤  裕君

      大岡 敏孝君    鬼木  誠君

      勝俣 孝明君    川田  隆君

      小林 鷹之君    小松  裕君

      田所 嘉徳君    田中 英之君

      高木 宏壽君    豊田真由子君

      中谷 真一君    中山 展宏君

      長島 忠美君    福山  守君

      山田 美樹君    吉川  赳君

      大島  敦君    津村 啓介君

      若井 康彦君    遠藤  敬君

      杉田 水脈君    中丸  啓君

      山之内 毅君    輿水 恵一君

      浜地 雅一君    大熊 利昭君

      佐々木憲昭君    村上 史好君

    …………………………………

   参考人

   (大阪大学招聘教授)   八田 達夫君

   参考人

   (北海道大学大学院法学研究科教授)        山口 二郎君

   参考人

   (株式会社政策工房代表取締役社長)        原  英史君

   参考人

   (国際基督教大学客員教授)

   (昭和女子大学特命教授) 八代 尚宏君

   内閣委員会専門員     室井 純子君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十四日

 辞任         補欠選任

  新谷 正義君     小林 鷹之君

  山田 美樹君     安藤  裕君

  赤嶺 政賢君     佐々木憲昭君

同日

 辞任         補欠選任

  安藤  裕君     山田 美樹君

  小林 鷹之君     新谷 正義君

  佐々木憲昭君     赤嶺 政賢君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 国家戦略特別区域法案(内閣提出第一八号)


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     ――――◇―――――

柴山委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、国家戦略特別区域法案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、大阪大学招聘教授八田達夫君、北海道大学大学院法学研究科教授山口二郎君、株式会社政策工房代表取締役社長原英史君、国際基督教大学客員教授・昭和女子大学特命教授八代尚宏君、以上四名の方々から御意見を承ることにいたしております。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。本案について、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 八田参考人、山口参考人、原参考人、八代参考人の順にお一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、参考人各位に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、八田参考人にお願いいたします。

八田参考人 おはようございます。

 本日は、私に、特区に関する考えを述べさせていただく機会を与えてくださいまして、まことにありがとうございます。

 題としては、「国家戦略特区で何が出来るのか」という題でハンドアウトを書きました。

 まず第一に、国家戦略特区というのは、総合特区という、ここのところ数年、非常に各地方が力を入れてきたものとどこが違うんだろうかということをよく伺いますので、まず、その比較をしようと思います。

 総合特区というのは、手挙げ方式です。各自治体が、こういう規制改革、こういう財政補助をしてほしい、そして、それをやれば地域が活性化するだろう、そういう形で、地域活性化のために手挙げ方式で幾つもの候補が挙がった中から、これはよさそうだというので選ぶ、これが総合特区であります。

 それに対して、戦略特区は、手挙げ方式ではなくて、国が主体になって、成長戦略の観点からこういう規制改革が必要だ、そして、それが国全体を伸ばすんだという考えから地域を指定する、そういう考えの特区であります。

 したがって、ここでどういう規制改革をするかというようなことは、かなり大玉の、日本全体にとって必要な改革をやろう、そういうことが目的であります。

 私自身は、この両方ともがそれぞれの役割があると思います。一方は地方活性化のため、もう一つは国全体の観点から見た規制改革ということであります。

 そして、この国家戦略特区の方は、当初構想されたときから規制改革が中心であるということがうたわれ、安倍総理御自身も、規制改革の一丁目一番地にするんだというようなことを何度かおっしゃっております。

 したがって、ここでは、本当に小さな規制改革というのも実は地方活性化のために非常に必要なんですが、まずは大きなところをやりましょうということです。

 ここで、一言、規制改革というものが、いろいろと色をつけて見られることがありますので、どういうものかということについての私の考えを述べさせていただきますが、基本的には、日本は自由な国です。営業の自由も職業選択の自由も住居選択の自由も、そういうものは全部認められている。とにかく自由がこの国の一番の基本であります。

 ただし、その自由は、もちろん制約を受ける、公共の福祉に反しない限りという制約を受ける。明確な公共の福祉に反するものがあった場合には、その自由を制限する規制が必要です。それは目的が明確でなければならない。

 そして、その公共の福祉に反するというのは、恐らく、経済学で言う外部性だとか、それから独占による弊害だとか、情報の非対称性、お薬についてどれだけの効果があるかわからない、副作用があるかわからないというときに、任せておいたら全く市場が成立しませんから、そういうものは国が関与して、きちんと認定してあげる。それから、公共財のようなものを提供する。

 そういうかなり限定された公共の福祉の目的のために国が関与するということは認められているが、それがない限りは徹底的に自由であるということが憲法の趣旨でもあるし、それから経済学の考え方でも、そうすることによって資源が効率的に配分されるというのがある。

 ところが、現実には、既得権を持った人が参入を制限する、そういう規制が満ちあふれているわけですね。それが農業しかり、労働しかり、医療しかりです。だから、その既得権によってもっともらしい理由をつけて参入制限して、本当に有能な人が入ってこれない、それは困るじゃないかというのがこの規制改革の大きな動きであります。

 したがって、規制改革全般がよくないとかいいとかいう議論というのは意味がないことで、その規制の元来の目的に照らして、今の規制が実は既得権を守るためにできているのか、それとも、本当に公共の福祉のために役に立つのか、そこを精査する必要があると思います。

 私どもは、それを精査した上で、元来の自由を取り戻すべきことは取り戻すというのが、この成長戦略の本旨だと思いまして、戦略特区でやってまいりました。

 さて、この国家戦略特区法の構造ですが、これは非常に簡単で、二つの部分に分かれております。

 一つは、意思決定組織の設計です。これはよく言われておりますように、この組織の特色は、特区諮問会議というものがトップにあって、そして特区ごとに統合推進本部、今度法律では特区会議と呼ばれることになりましたが、これは両方ともの名前が使われていますけれども、特区ごとの会議、この二本立てでいくというのが基本構想であります。

 それから、もう一つの法律の部分は、規制改革の短冊です。これは、もとの法律について手をつけるんじゃなくて、この特区では何とか法の何条について適用除外にし、こういうことにする、そういうふうに短冊がずらりと並べられている、この二つであります。

 そうすると、区域の選定はどこに行ったんだとおっしゃるかもしれないけれども、区域の選定は、この法律ができた後、特区諮問会議がされるということになります。しかし、その諮問会議ができた段階で、既にどのような規制改革、法律の改革ができているかということも、全部手元にこの法律があって、それを組み合わせてその特区ごとに改革が行える、そういう仕組みになっています。

 これが、もし最初に区域を選んで、それからどういう規制改革ができるかということを交渉したのなら、ある意味で、区域はもうとりこになってしまっているわけですが、その後、役所が嫌だよと言ったらそれでおしまいになってしまいますから、とにかく一番ハードルの高い規制改革のところは最初にとってしまった、そういうわけであります。

 それで、この特区諮問会議についての構造ですが、これは特区担当大臣が入られるということは当然なんですが、特区諮問会議自体は、総理大臣がお入りになって、そして民間有識者も入り、そして最終的には総理大臣がお決めになる。だから、私どもとしては経済財政諮問会議のような姿を考えております。

 それから統合推進本部というのは、自治体の長とそれから特区担当大臣とそれから事業者、これは総理が選ばれた事業者という者が入るということになっております。

 さて、特区法の特色を述べてみたいんですが。

 まずは、今までの総合特区なんかと比べて、国が積極的関与をするということが非常に強く出ています。その第一の特色は、この諮問会議が法律で位置づけられているということです。実は、規制改革会議は法律で位置づけられているわけではないんですね。今の会議でいえば、経済財政諮問会議が法律で位置づけられていますから、それと同レベルであるということです。

 それからもう一つは、最終的な、ここに御提出している法案では、諮問会議とか統合推進本部の常任メンバーに関係大臣が含まれない。臨時では諮問会議にお入りになるかもしれませんけれども、規制官庁の大臣がお入りにならない。それから統合推進本部では、十分各官庁の御意見は伺うけれども、意思決定には加わらない、そういう仕組みになりました。

 ということは、実に総理主導ということが貫徹した組織になっています。このことはマスコミで余り注目されていませんが、今後、特区でさまざまな規制改革の必要性が認識されると、それが推進本部で取り上げられ、そして諮問会議に上げられて、諮問会議で新たな規制改革が行われていくことになりました。これはかつてない、規制改革の強力な推進機関になると思います。

 これは、規制改革の一番難しいところはいつも、既得権を持った集団ですから、そこを破るには、最終的には首相の御決断ということが必要なので、それができるようになったのは大きいと思います。

 二ページ目に参りまして、戦略特区で行われる規制改革項目の主なものです。

 この項目では、全体的にどんなものができたかというサマリーは三ページ目に書いてありまして、星取り表まで書いてありまして、本当にバッテンだったというのは地方議会のところだけで、あとはかなりマルで、私どもはとれるものはとったという、自分で言うのも変ですけれども、かなり画期的な改革だったと思っています。

 特に岩盤規制という、労働、医療、農業で、今まで何年も何も動かなかったところに対して、あるいは検討するだけで終わっていたところに対して、実際の改革が行われるようになった。

 例えば五年以内の有期雇用の特例というのを、これは特区で、高度の専門人材に関しては、五年を過ぎた後でも契約を繰り返すようにしてもらいたい、そういうことを労働者もそれから雇う方も望むならば、そういう契約ができるようにしてほしいということをずっと主張したところ、これが全国でもって展開することになり、今度の通常国会でそれが決まるということになりました。

 雇用に関しても、私どもは、例えば差別があって、差別のために解雇するなんてことはあり得ないし、それから有期雇用の延長をしないなんてことはあり得ないし、それからいわゆる解雇権の濫用があってはならない、そういうことはよくよく周知していますし、それから、ある種の契約を押しつけるというようなことが交渉力のない人に対してあってはならないということも熟知しています。

 しかし、ここで取り上げたのは、例えば弁護士とか会計士とか修士、博士、そういう人たち、そういう自分の職業の選択肢をちゃんと認識できる人たち、そういう人に関しては、元来の自由な契約形態に戻そうじゃないかということであります。これに関しては、それであるにもかかわらず、全くそれとは別な対象にしているというようなことが言われましたが、そういうことはありません。

 それから、農業に関して一言申し上げますと、従来は、銀行や信用金庫は農業にお金を貸すことができなかった。これは、担保として土地をとってもしようがないからです、農地法で使えませんから。しかし、中小企業は信用保証制度というのがあって、無担保でも借りて、返せなかったら保険が出るという仕組みがあります。これも、農業だけが適用除外だった。今度から農業生産法人も使えるようになりました。これは、長年規制改革で言ってきたことが、ついに実現することになりました。

 さて、これまで、最近の新聞でも、何か改革が小粒だったというような批判があるんですが、それは、とにかくこれまでの十年間の規制改革と比較していただきたい。全く無知に基づく主張だと思います。

 それから最後に、今後の諮問会議の役割としては、区域の選定ということがあると思います。それから、それに続いて大きな規制改革を今後も続けていく、それが今後の仕事になるだろうと思います。

 どうもありがとうございました。(拍手)

柴山委員長 ありがとうございました。

 次に、山口参考人にお願いいたします。

山口参考人 おはようございます。北海道大学の山口です。

 私は、どちらかというと、この規制緩和路線に対して疑問を呈する側から、幾つか問題点をお話ししたいと思います。

 第一の問題は、この特区法の根本にあります、いわゆる第三の矢、成長戦略に関する疑問であります。

 既にいろいろな人が指摘しておりますが、この成長戦略、成長路線というものは、二〇〇〇年代に展開されました小泉政権下のいわゆる新自由主義的な構造改革の再現ということになると思います。その時代、確かに景気は戦後最長の拡大を続けましたが、同時に、労働者の賃金は下がり続ける、企業収益は上がるが賃金は下がるという現象が起こったわけであります。

 その分配の仕組み、あるいは雇用に関するいろいろなルールをそのままにしておいて、また今回、企業収益が改善しているとしても、一時金、大企業のボーナスはふえるかもしれませんが、普通の人々の生活に富が還元されるということは期待できないと思います。

 今回、安倍政権のもとで成長戦略がさまざまに議論されておりますが、この議論の仕方そのものについても私は大きな疑問を持っております。規制緩和はすなわち善なのかという疑問であります。

 特定の人の名前を挙げて恐縮ですが、産業競争力会議の委員をしていた三木谷さんという方、薬のネット販売の解禁について、一〇〇%解禁じゃないといって、委員を辞すると気炎を上げておられます。

 私は、楽天イーグルスの優勝には非常に拍手をしていまして、ああいう形のチャレンジ、競争というのは大いに結構だと思います。しかしながら、三木谷さんの言い分というのは、あたかも、楽天イーグルスはピッチャー中心のチームだから、楽天が勝てるように、ストライク三つでアウトじゃなくて、ストライク二つでアウトになるようにルールを変えろと言っているようなものであります。

 審議会の委員というのは、自分の企業、自分の利益をただふやすための道具なのか。これは、極めて根本的な問題です。医療、労働等の審議会においては、あらかじめ立場が異なることを前提として、それぞれの立場の代表者を入れ、それに中立、公益を代表する人が入り、全体として国のために何が必要か、公益とは何かという議論をする仕組みになっておりますが、今回の競争力会議等は、もう露骨に自分たちの利益を追求するということが展開をされております。これは、はっきり言って、公の解体あるいは国家の私物化とでも言うべき現象であります。

 戦後教育が私的な権利ばかり主張する人間を育てていって、公を尊重する気持ちが低下しているという批判が特に保守的な立場の議員の方々からよく聞かれますが、それに照らして言うならば、ああいう審議会であられもなく自分の利益を追求する人々こそ、戦後教育のもたらした所産だ。これに対して保守的な先生方はなぜ批判をしないのか。深谷隆司先生がネットでこの点については的確な批判をしておられましたが、そのような見識のある声をぜひ聞きたいと私は思っております。

 二つ目の問題として、今回の特区法案そのものについて特にきょうのほかのお三方とは違う観点から、すなわち、法律的な観点から少し疑問を申し上げたいと思います。

 憲法第九十五条では、一つの地方公共団体のみに適用する法律に関しては、その地方公共団体の住民投票による合意がなければ法律は制定できないと規定してあります。この九十五条の立法の趣旨は、国の法律によって特定の地方公共団体の自治を剥奪する、あるいは特定の地方公共団体の住民に対して法のもとの平等を侵害するということを防ぐという点にあります。

 今回の特区法案は適用する地方公共団体がまだ具体化されておりませんから、この特区法案そのものについて九十五条に基づく住民投票が必要だと主張するのは、やや無理があるだろうとは思います。しかしながら、その特区法ができた後、具体的に地域指定をして、雇用とか医療とか建築等々といった分野についてほかの地域とは違う基準を当てはめるということになりますと、いわば行政の意思決定によって特定地方公共団体の住民が本来持つべき権利を侵害するという危険があるわけであります。

 したがって、特区の地域指定あるいはその特区の中身でどのような規制緩和を行うのかということについて、地方からの意見を述べる機会を保障する、あるいは地方の側の同意を得るという手続を課すといった点でもう少し議論を深めていただきたいと思うわけであります。現状では、上からの主導で特区を指定する、そして特定地方公共団体について、ある人にとってはそれはビジネスチャンスの拡大かもしれないけれども、違う立場の人にとっては権利の侵害であるような事態が生じ得るわけであります。

 一国多制度という理念、これは、私自身もかつて論文の中で日本にも必要なアイデアではないかということは主張しました。

 ヨーロッパでは、スウェーデン等で一国多制度が進んでおりますし、イギリスではスコットランドの地方分権など、一つの国の中にいろいろなスタンダードがあるという改革は既にかなり進んでおります。この場合は、やはり下からの参加、提案に基づいて一国多制度が展開されているわけでありまして、そうすると、やはり自治体の創意工夫で多様な政策を展開していくという話になります。

 今回の特区は、いわば上からのリーダーシップの発揮というか、あるいは押しつけというか、住民あるいは地方不在の改革が進んでいくという懸念があります。したがって、特区の運用の中で住民や地方議会の発言権をどのように組み込むか。知事あるいは市町村長が会議に入るだけではやはり不十分でありまして、特区の具体的な中身、効果、予想される危険性等について地方の声をしっかりと取り入れるという工夫をしていただきたいと思うわけであります。

 さて、三つ目の論点として、特に、今回の特区法案の中で争点になりました、雇用をめぐる規制について、少し問題点を述べたいと思います。

 雇用市場の柔軟化、労働市場の柔軟化ということがずっと十数年来主張されてまいりました。その中で、ヨーロッパにおける成功例がしばしば参照されます。例えば、デンマークという国が一つのモデルであります。

 デンマークは、いわゆる社会民主主義の政権がいろいろな改革をする中で、労働市場の柔軟化、これはフレキシビリティーとソーシャルセキュリティーの二つの言葉を合わせて、フレクシキュリティーなどと言われるモデルをつくりました。

 私は、十年ほど前にデンマーク元首相のラスムッセンさんを日本にお招きしてお話を伺いました。その中で、ラスムッセンさんは、デンマークは世界で一番労働者を解雇しやすい国です、社会民主主義系の元首相がそういうことを胸を張っておっしゃるわけですね。ただし、同時に、デンマークは世界で最も国民が失業を恐れない国でありますとおっしゃいました。つまり、柔軟な労働市場の背後には、いわば解雇された、職を失った人が安心して次の仕事を探せるように、その間の生活を支える安定した基盤が存在しているということをラスムッセンさんは強調されたわけです。すなわち、失業給付、住宅、教育雇用訓練、医療、子供の教育等々、人間の生活を支えるさまざまな社会サービスが安定していて、常に必要に応じて供給されるという仕組みがあるからこそ、労働市場の柔軟化は可能になるわけです。

 今回の特区の話を聞きまして、私は、これはデンマークモデルのいいところ取りではないか、特に雇う側にとってのいいところ取りではないかという疑問を持つわけであります。

 雇用に関するルールを地域限定で緩和しますということなんですけれども、では、いわば流動化でもって仕事の安定性を失う、働く側に対するケアはどうなのかと。雇用保険とかさまざまな社会政策というのは、これはやはり国全体をカバーするいわゆるセーフティーネットでありまして、地域限定でここだけ雇用保険の給付金額を上げますとかいう話は、やはり無理ですよね。ですから、いわばルールを変えて労働市場を柔軟化していく、しかしながら、そのために発生する拡大したリスクについては、その特定の地方自治体の住民が背負えというのは、やはり非常に均衡を失した話ではないかと考えるわけであります。

 そういう意味で、仮に、雇用を柔軟化する、いわばデンマークやオランダ等のモデルを日本でも追求していくということであれば、これは、地域限定でできるところからやっていくということではなくて、やはり国全体の社会のモデルというものを考えて、柔軟化に伴うリスクの拡大に対してそれをどのようにカバーするかという国全体のセーフティーネットの議論を同時にしていかなければならないだろうと思います。

 その点で、雇用や医療等、国民の生活に密接にかかわる分野に関して、地域限定で規制を緩和して競争原理にさらす、あるいは利益追求をもっと拡大していくということになりますと、特区というものは、いわば基本的人権を保障しない、法律の保護外の無法地帯あるいは番外地をつくるという結果になるのではないかということを私は大変懸念しているわけであります。

 全体として、もちろん経済の活性化は大いに結構でありますし、私もデンマークモデルについては日本にとっても非常に参考になるものだと。観念的に規制緩和は悪だという議論はするつもりはありません。

 しかしながら、一方で、競争を促進してリスクを拡大するのであれば、やはりそれに対応するセーフティーネットについてもバランスをとって議論をしていただきたいということを再度申し上げて、私の意見を終わりといたします。

 ありがとうございました。(拍手)

柴山委員長 ありがとうございました。

 次に、原参考人にお願いいたします。

原参考人 おはようございます。政策コンサルティングの会社を運営しております原でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 国家戦略特区ワーキンググループの委員、また大阪府、大阪市の特別顧問なども務めております。そうした視点も含めて、国家戦略特区法案について意見を申し述べさせていただきます。

 今回の国家戦略特区、もともと、産業競争力会議において、成長戦略に向けての議論を行う中で、民間議員から提案がなされました。私は、産業競争力会議の民間議員のサポート役も務めておりまして、この提案には当初からかかわっておりました。

 八田参考人のお話と若干重なる部分があるかと思いますが、当初の提案の考え方に触れつつ、今回の法案に関する留意点を指摘したいと思います。

 まず、国家戦略特区という制度を創設する目的についてであります。

 目的は、規制改革の実験場として、特区で突破口を開くということであります。

 我が国には、さまざまな分野で、自由なビジネス活動を阻害する、合理性が必ずしもない規制が根強く存在しています。こうした規制を取り払うことこそ経済成長を最も効果的に実現する方策である、先ほどの山口参考人の御意見とは若干異なるかもしれませんが、こう考えております。

 いわゆる岩盤規制と呼ばれるような領域など、これまでも改革の必要性が指摘されながら、なかなか手をつけられずに来ました。

 そこで、全国一斉で前進を目指してもなかなか達成できないようなハードルの高い規制改革について突破口を開くということが、今回の国家戦略特区の根幹であります。

 これに関して、留意しておくべき点を二つ挙げたいと思います。

 第一に、特区は規制改革の場である、すなわち、ビジネス活動の自由度を高めるための場であります。この観点で、自由度が最大限に生かされるような運用が肝要であります。

 今回の法案では、例えば、特別区域計画を定めて認定を受けるといった仕組みが法定されています。こうした仕組みの必要性そのものはもちろん否定いたしませんが、問題は、こうした制度は、役所に運用を任せておくと硬直的な運用になりがちであるということだと思います。すなわち、事前に詳細に計画を確定して役所の認定を受け、民間事業者は役所のコントロールのもとでのみ活動が認められるといった運用になってしまうことがしばしばあります。これでは、国家戦略特区の価値は大きく損なわれます。

 政府は、自由なビジネス活動の環境を整えることに徹し、ビジネスへの介入は最低限にとどめるよう、十分な留意が必要と考えます。

 第二に、主眼はあくまで規制改革ということであります。ここでいう規制改革には、最大の規制である税制の改革も含まれます。規制改革の実現、これを徹底して追求することが重要と考えます。

 仮に、政策メニューとして規制改革と支援措置という両方が目の前に示されている場合、官庁は往々にして支援措置の方に力を入れがちになることがあります。なぜならば、規制と支援、これはどちらも役所にとっては権力の源泉というようなものであります。権力の源泉を減少させようという規制改革より支援措置に傾くというのは、いわば当然のこととも言えるわけであります。

 一方、現場の事業者なども、本当は規制改革が必要とわかっていながらも、短期的には、あえてハードルの高い規制改革に挑むより、補助金をもらうといったことの方を志向しがちなことがあります。

 このように、政策の供給主体、受け手双方において、規制改革より支援措置につい流れがちであるという傾向がある中で、今回の特区制度で本来の目的を達成するためには、あくまで規制改革が主眼ということを明確にして運用していくことが重要と考えます。

 次に、こうした目的を実現するための制度の枠組みについてお話しいたします。

 産業競争力会議における当初の民間議員の提案では、特区担当大臣、国、地方、民間の一体となった統合本部、それから特区諮問会議という三つの仕組みを提案いたしました。

 私の配付した資料の最後のページに、提案のイメージ図を添付しております。

 この枠組みでございますが、これまでの長年にわたる規制改革の取り組み、構造改革特区、総合特区といったものにおける成功と失敗を踏まえて、どうしたら規制改革を実効的に実現できるのかという視点で、これまで規制改革にかかわってきた方々のお知恵もかりながら、我々の考えるいわば理想形の枠組みをつくって提示したつもりであります。

 具体的には、まず第一に、特区担当大臣の創設です。

 かつて、構造改革特区、これは初期には、例えば農業へのリース方式での企業参入など、大変大きな成果が上げられました。この時期には特区担当、ほぼ専任の大臣が置かれていて、その果たされた役割は極めて大きかったと考えております。

 第二に、特区ごとに、国、地方、民間、この三者が一体となった統合推進本部、これは法律上の用語では特別区域会議ということになっておりますが、これを設けることであります。これは、特区内におけるいわばミニ独立政府と考えております。

 従来の規制改革や特区の運用では、現場レベルの規制改革ニーズが抑え込まれてしまって、なかなか表に浮かび上がってこないということもありました。これを防ぐため、この提案では、特区担当大臣、首長、民間代表で構成する統合本部を設け、現場の規制改革ニーズを特区担当大臣がダイレクトに吸い上げる、さらに、制度の運用、推進を行っていくという仕組みをつくっています。

 第三に、特区諮問会議です。

 過去の歴史を振り返れば、やはり規制改革における最大の難関は、規制を所管する省庁の壁をどう突破するかであります。特区諮問会議は、そのため、特区担当大臣と規制担当大臣で民間有識者も交えて議論をし、その上で最後は総理が決定をするという枠組みを設けるものであります。

 今回、政府で提出された国家戦略特区法案、ここでは、こうした当初の提案内容が基本的に全てそのまま反映されていると認識しています。法案の検討プロセスにおいては、一時、当初の提案とややずれた方向に向かいかけたこともあったやに聞いておりますが、自民党における議論、あるいはさらに安倍総理のリーダーシップ、例えば、規制を所管する関係大臣は意思決定には参加させないという方針を総理が明確に示されたといったことによって、理想形にほぼ近い形で法案化が達成されました。これは大いに評価すべきと考えます。

 ただ、留意点もあります。

 第一に、統合推進本部の運営に関してです。

 この本部は、先ほど申し上げたように、国、地方、民間が一体となったミニ独立政府となるべきであります。国、地方、民間がばらばらに、それぞれの立場を主張し合う会議であってはならないと考えます。まして、それぞれのメンバーが会議において拒否権を有するような運営がなされれば、特区におけるスピーディーな意思決定と推進が大きく妨げられかねません。

 この観点で見ると、法案第八条第六項で、特区会議における決定の仕組みとして、構成員の全員の合意という規定がなされていることには若干の危惧を持っております。三者が一体となってという基本に沿って制度が運用されるよう留意が必要と考えます。

 第二に、特区諮問会議での意思決定については、最後は総理が決定する仕組みとすることが重要です。

 この点、法案第八条第九項で、特区諮問会議での審議を経て総理が意思決定を行う際に、関係大臣の同意を得なければならないという規定があります。これは運用次第では、関係大臣が反対すれば物事が何も進まないという仕組みにもなりかねませんので、ここも運用上の工夫、留意が必要かと思います。

 枠組みに関して、さらに今後の課題として二点申し上げます。

 第一に、今回の法案では、国家戦略特区の枠内で制度を組み立てております。その先の課題として、全国レベルでの規制改革との統合ないし一体的運用をどう確保するかも重要だと考えます。

 今回、個別の規制改革項目について各省と議論する中でも、特区にはなじまない、特区ではできないといった議論があちこちで出てきました。例えば雇用ですとか地方議会の被選挙権といったものでありますが、私自身、これらについて特区にはなじまないというようには考えませんが、ただ、こうした主張が出てきた際に、特区でできないなら、それでは全国でと迫れるようにしておくことは重要と考えます。

 このため、規制改革会議との緊密な連携、さらに、将来的には事務局や組織の統合一体化といったことも課題でないかと考えます。

 第二に、情報公開のさらなる徹底であります。

 これは、八田参考人や八代参考人が過去になされてきたことでありますが、過去の規制改革会議などでは情報公開の徹底を大きな武器としてきました。つまり、議論を国民の前に公開し、どちらに理があるか国民が判断できるようにして議論を進めていく。これによって、表で堂々と言えないような理由で頑張り続けることは難しくなり、結果として、規制改革の前進につながってきたと思います。

 今回の法案決定に至るプロセスでは、時間的な制約がやや厳しかったこともありまして、情報公開がやや後手に回ってしまった面があり、これは反省点だと思っております。

 例えば、雇用ルールについて、特区ワーキンググループで首切り自由化を検討しているといった、全く誤った報道がなされたことがありました。もともとワーキンググループで議論しておりましたのは、一貫して、ルールの明確化、これによって雇用の拡大を図るということでしたが、この意図が全く誤解されて、報道がなされました。

 さらに、政府の結論として雇用ルールの明確化が実現したわけですが、そうすると、今度は、首切り自由化という当初の提案から後退したから問題だといって、再び批判を浴びました。私から見れば、二重に誤った批判であります。

 八田座長は、何度かの記者会見を行うなど、極めて丁寧な対外発信をなさっていたと思いますが、今後の課題として、やはり、こうした誤解を生むことのないように、議論の情報公開をより一層徹底していくということが課題かと思います。

 最後に、規制改革の各論について触れます。

 今回の法案決定に至るプロセスでは、特区諮問会議などの正式な枠組みはまだスタートしていない段階ながら、ワーキンググループを使って相当の成果が得られたと思っております。

 先ほど八田参考人から、今回の成果が小粒だというのは不見識だというお話がありましたが、この点は私も全く同感です。八田参考人が挙げられた、最後の、表のつけられていた十五項目には、これまで長年にわたって、問題提起されては何度もはね返されてきた課題が幾つも含まれています。例えば、外国医師による診療、病床規制、医学部新設、雇用ルールの明確化、公設民営学校、容積率規制の転換、農業委員会、農業信用保証など、いずれもそうした例だと思います。

 もちろん、抜けている例を探すことは簡単です。一回の国会の会期で日本の岩盤規制全てを解決し切ることはできるわけがなくて、残された課題は、当然、数多くあります。そのために、先ほど申し上げた、統合本部や特区諮問会議などの枠組みをつくって、さらなる規制改革を引き続き推進できるようにしているということだと思います。

 その上で、今回抜けている課題を私なりに幾つか挙げますと、配付資料にも書いておりますが、抜けている課題として、例えば、税制、金融、空港などの交通インフラ、外国人労働者など。それから、今回、取り上げたが十分に実現できなかった課題として、雇用、これは労働時間の問題ですとか、農業の企業参入といったような課題があるかと思います。

 今後、この特区制度がよりよく運用され、さらなる規制改革が強力に推進されていくということを強く期待いたしまして、私の意見陳述を終わらせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

柴山委員長 ありがとうございました。

 次に、八代参考人にお願いいたします。

八代参考人 おはようございます。

 私は、直接この国家戦略特区のワーキンググループには関与しておりませんで、いわば外から見た形でこの問題を考えたいと思います。

 私は、かつて、規制改革会議で構造改革特区をつくるときの直接の責任者でもありましたし、あと、できた特区を全国展開するときの評価をする委員会の委員長もやっておりましたので、いかに日本にはくだらない規制があるかというのをつくづく認識しまして、何でこんな規制があるんだろうという体験を非常にしたわけであります。

 規制というのは、当然ながら、それができたときの経済社会環境に適応してつくられたものであるわけです。しかし、日本のように、戦後、急速に経済が発展し、社会が変わってくると、当然ながら、つくられたときには合理的であった規制が古くなるのは当たり前のことでありまして、そもそも、規制改革が是か非かという問題の立て方自体がナンセンスであるわけでして、経済社会の環境に適さない規制は当然変えるべきである、どの方向に変えるかをきちっと議論しなければいけないかと思います。

 先ほど八田参考人が、非常に経済学的な観点から、どういうときに規制すべきか、そうでないかというお話をされましたが、それに加えて、一番センシティブなのは、例えば雇用、労働問題ですけれども、およそ規制が労働者にとって有利であって、規制緩和が労働者にとって不利であるという非常に単純な分け方というのは、私は極めて問題だと思います。

 例えば、規制で雇用が守られるかということを言えば、既に雇われている人の雇用は当然守られる面が多いんですが、雇われていない人に対しては、むしろ規制があるがゆえに雇用機会が減ってしまう。労働者全体から見て最適な規制は何かということをきちっと考えなければいけないわけであります。

 後でもお話が出ます有期雇用契約の五年以内の規制というのは、当然ながら、有期の人が安定した無期雇用になれることを目指してつくられたわけですけれども、その結果、結局、企業が五年以内にその人を解雇してしまえば、かえって不安定になるわけですね。これまで例えば六年、七年と働いていた人が結局四年ぐらいで仕事をやめざるを得ない状況になって、本当にこれが労働者のための規制なのか、非常に疑問があるわけですね。

 ですから、なぜ特区でそういうことをするのかというと、これは、例えば一部の専門的な労働者ですけれども、そういう規制を、例外をつくることによって本当に雇用がふえるのか、減るのかというのを試してみよう、そういう一つの試みが特区であるわけで、特区は社会的な実験だと言われるのはそういう意味であって、過去の日本のように、どこかすぐれた先進国、アメリカやフランスやデンマークをとってきて、それを目指して変えるというような余地が今の日本では余りないわけでありまして、日本自身がみずから何が最適な制度、規制かを考えていかなきゃいけない。

 そのときに、単に国の審議会で議論して、これでいこうというのは余りにも危険なわけでして、やはり、自治体の協力を得て、特定の地域で何が最適な規制かを試してみる。それによっていい成果が上げられれば、全国に展開していく。特区というのは、そういう意味で極めて重要な役割を果たしているかと思います。

 だからこそ、これまで、私のレジュメ一に書いてありますように、大きく分けて四つの特区があったわけで、沖縄、構造改革、総合特区、復興特区というのがあるわけですけれども、この四つの中で類型が二つできると私は思います。

 すなわち、沖縄、総合、復興というのは、あくまで地域振興のため、地域振興を目的としているわけで、特定の地域に限って規制を改革し、あるいは財政的な支援をすることで、その地域の経済活動を発展させる。

 これに対して、構造改革特区というのは、先ほど言った社会的実験というのをより主体にしたわけでありまして、決して特定の地域の特権にしてはいけないということであります。あくまでそこは実験場であって、それがうまくいけば速やかに全国に展開する。これを評価委員会の方でやっていたわけであります。

 私は、今回の国家戦略特区は、どちらかといえば構造改革特区の遺伝子といいますか、この考え方をやはり強く受けたものであることが望ましいと思います。

 構造改革特区の比較ということですが、国が規制改革のメニューをつくって、自治体の首長さんとの協力で、トップダウンで意思決定をする。決して住民の意向を無視するようなことはあり得ないわけで、それは、代表制民主主義ですから、首長さんというのは、地域の住民、議会の利益を体現して行動、活動する、それに問題があれば地元の方できちっとチェックしていただくというメカニズムになっているかと思います。

 それから、国と地方の税制優遇の組み合わせで、投資効果の大きな大都市部にまず重点を置く。しかし、これは決して排他的なものではなくて、地方の主要な都市にも当然その成果は波及しなければいけないわけです。

 それから、構造改革特区では、ほかの特区と違って、補助金、財政的支援をあえて排除したわけです。

 この点、いろいろ多方面から批判を受けたわけですけれども、なぜ財政支援を排除したかというと、金のためではなくて、純粋に自分の地域を規制改革で発展させようという自治体の熱意を酌み取るというのが大事であって、今回は税制上の優遇措置がつけられたということはいいことです。

 もう一つ、利子補給というのも考えられているようですけれども、この利子補給というのは、やはり財源が必要ですから、ある意味で財源の制約が、総合特区のときも一部そうだと聞いておりますが、結局、財源がなくなると、もうそこで打ち切りになってしまう危険性がある。それではやはり全国に展開ができないわけで、なるべく税制上のものだけにとどめるべきではないかと思います。

 それから、今回の国家戦略特区で大きなポイントとしては、当初の規制改革メニューというのが確かにあるわけですけれども、構造改革特区では、もうこれで終わりだったわけです。だけれども、今回は、あくまでそれは第一弾の規制改革であって、実際に特区を運営している中でいろいろな問題が出てくる。規制は細部に宿ると言われますので、そのときには当然ながら追加的な規制改革もするということが大事かと思います。

 そういう意味では、まだまだ発展形であって、第一弾、第二弾、第三弾の規制改革が組み合わされるというのが今回の国家戦略特区の大きなポイントではないかと思います。

 それから、三番目の規制改革事項の評価ですけれども、先ほど八田参考人が小粒と言うことはおかしいと言われたわけですが、私の二ページ目を見ていただくと、より具体的な例が書いてあります。

 ここでは、国家戦略特区で採用された規制改革で、一見すると非常に、何でこんなものをというふうに思われると思いますが、そのこんなものすら実は今まで実現できなかったわけで、最初の外国人医師の国内診療というのはどういうことかといいますと、これまでは、アメリカ人の医師はアメリカ人の患者しか診られない、カナダ人もシンガポールの人も診てはいけない、そういう非常識的な規制があったわけです。これが今回、ようやく全ての外国人の診療が可能になった。外国人に聞けばジョークのような規制が幾らでもあったわけです。

 こういうものも、それぞれやはり閣議決定で検討するとか結論を得るというのが決まっていたにもかかわらず、過去三年間、それ以上、放置されていて、今回、国家戦略特区で全部それが、全部というか、大きく前進したわけで、これはある意味で在庫一掃セールというか、ちょっと言い方は悪いですけれども、これまでの規制改革で議論はされながら全然結論が出なかったものについて、一挙にここで片づけたということになるかと思います。その意味では非常に大きな成果があったのではないかと思います。

 それから、先ほど言った特区、有期雇用の話ですけれども、こういう雇用について、一部の地域だけ規制を緩和するのは問題だということを厚生労働省が強く主張されたわけです。これは、実は構造改革特区のときでも同じ問題がありまして、そのときに、我々としては、特区でやるというのは、いきなり全国でやっては危険だからという理由でやるわけであって、担当省庁が特区は危険だからと言われるなら、すぐに全国でやっていただいて全く結構ですと。その方が手間が省けるわけです。

 構造改革特区のときにも、実は、特区提案として出てきた規制改革がいきなり全国で緩和された方が数は多いわけです。なぜそういうことが起こるかというと、規制改革のニーズがあっても、なかなか担当省庁としては、忙しいので、法律を改正するのを怠ってきた。そのときに、特区というものが出てくることで慌てて規制改革をする。特区をわざわざつくるには余りにも恥ずかしい規制がいっぱいありましたので、そっと全国ベースで変えてしまうということもあったわけです。

 ですから、これは特区か全国か、どちらでもいいわけで、そのときにこういう国家戦略特区のような一種の機会があれば、そこで一挙に規制改革が進むということであるわけです。

 最後に、国家戦略特区の今後のあり方ということで、これは、やはり構造改革特区のときの経験からしまして、私は、今回は、かなりそういう進め方の面においても進化している面が幾つかあるかと思います。

 規制の弊害は細部に宿るために、法律だけじゃなくて政省令についてもきちっとチェックしなきゃいけない。このためには、今まで出てきた特区ワーキンググループが、きちっと次に引き継ぐ組織ができるまでは引き続き活動していただいて、この政省令のチェックをしていただく必要があろうかと思います。

 それから、同時に、特区諮問会議ができたとしても、細かい話を一々総理が出席の場でやるわけにはいきませんので、引き続き、経済財政諮問会議の専門調査会のように、そういう委員会をつくって各省との折衝を続ける必要があるかと思います。

 それから、特区の選定は、やはり提案された改革事業を持つ地域について、できるだけ幅広い行政単位が必要ではないか。例えば、県知事がやるべきだと思っていても、その中の一自治体が反対したらうまくいかないというのはやはり困るわけでして、幅広い観点を持つ、やはり県知事あるいは都知事、そういう人たちがきちっと説得できるような余地をつくる必要があろうかと思います。

 それから、あと、細部に宿るという点をちょっと補足しますと、こういう例がございまして、構造改革特区のときに、耕作放棄地を使って、農地のところにダチョウを飼うダチョウ特区というのをつくったわけですね。

 ダチョウを飼うためにはおりが必要なわけですが、ただ、おりというものは工作物ですから、それを農地の上につくることはだめだといって、後で農水省が文句を言ってきたわけです。そうしたらダチョウ特区はできないわけで、当時の小泉首相が直接電話をかけて、ふざけるなと言われたということでありますが、とにかく、そういうことを、一々総理を煩わせるんじゃなくて、きちっとしたこういう会議の場で、実際の特区の運用に妨げになるようなことを防ぐ措置が必要かと思います。

 それから最後に、スピードが大事であります。ここはまだ決まっていないわけですが、構造改革特区の例でいえば、年二回提案を受け付けて、通常国会、臨時国会双方で法律を改正して、どんどん規制改革の追加事項をふやしていく。とにかく、年一回でも遅いわけで、年二回のペースでどんどんこの国家戦略特区をふやしていって、改革のスピードが実感されるような特区というふうにぜひしていただきたいと思います。

 以上でございます。(拍手)

柴山委員長 ありがとうございました。

 以上で各参考人からの御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

柴山委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。関芳弘君。

関委員 自由民主党の関芳弘でございます。

 参考人の皆様、本日はまことにありがとうございます。きょうは貴重な御意見を聞かせていただきました。

 いろいろな御意見の中で、私が常々疑問に思っておりますこと、また、今回の特に法案に関しての疑問も大分回答としてもう既にお話をいただいたところでございますけれども、一点だけ、私は皆様方お一人ずつにもう一回聞いてみたいことがございまして、よろしくお願いしたいと思います。

 私は、日本の社会は非常に高度に成長してきて、今、重厚な、複雑な社会構造になっていると思います。この複雑な社会構造が行き過ぎによりましたり、また、個人の、自己の欲の塊の実現のために、いろいろな規制を入れてしまって、それががんじがらめになって全然動けないような社会になってはいけないと思いますし、そういうふうな社会に今なりつつあるような危惧も感じております。

 こういうふうな中におきまして、今回の国家戦略特区という、特別な規制を外していこうというふうな考え方、私は賛成でございます。これを、今回の法案の内容につきましては、実はもっともっと、第二弾、第三弾、先ほどもお話ございましたけれども、深めて、さらに項目をふやしていっていただきたいなと思うようなところでございますけれども、まずは第一歩がなければ第二歩もありませんので、そういうふうな日本の社会を、私は、世界からもっともっとうらやましがられるような国家であり、制度のある国にしてまいりたいなと思うわけでございます。

 二十年前は、IMDが発表する国際競争力なんかは日本は世界第一位でございましたし、今は、世界の中で日本は二十数位という感じで落ちてきております。十年前の世界におけます経済の貿易取扱高は、日本はたしか一五・三%ぐらい世界の中で占めておりましたけれども、今やもう八・七%ぐらいでしょうか、半分ぐらいに落ちてきておりますね。また、一人当たりのGDPにおきましても、二十年前は世界第三位が、今、もう二十三位ぐらいになっているんでしょうか。

 このような、世界の中におけます日本の地位の低下が危惧される中におきまして、私は、これは日本人が勤勉でなくなってきたということではないと思うんです。これは、世界との競争が非常に激しくなってきて、今、それをいかにして日本は克服していくのか、その責務を我々は負っている、その世代を生きているんだと思います。

 そういうふうな中におきまして、しっかりとした強い日本、そして世界から人が集まってきて、行きたい行きたいと思われるような日本をつくるために、今回の法案は、私はぜひとも成立させていきたいと思うんですが、私の政治的な理念の根本が、どうしても今回の法案に、少しさわってくるところがありまして、その点につきまして一点質問させていただきたいと思います。

 私は、政治は、また日本の国家は、自由競争で、強い人はますます強く、ますます豊かになるべきだと思います。しかし、その目的は何かといいますと、弱い人を守るために強い人がますます強くなるべきだ、富を蓄えるべきだと思います。

 ただ、その弱者を守る手段が今十分ではないと思いますし、また、弱者を守り過ぎても、弱者が自分の力を十二分に発揮しなくなるような、そういうふうな危険性が社会また人間の心にはあると思います。

 今回のこの国家戦略特区をつくることに関しましては、規制を開放するということにおきまして、そういうふうな点でいろいろ差しさわりも出てくるところがあると思いますが、今回、また、これからつくる法案について、それがしっかりと担保され、先ほどもありましたが、セーフティーネットとか、いろいろ出てくるひずみに対して監視が十二分にできるのかどうなのか。その点につきまして、各先生方、参考人の皆様方の御意見を聞かせていただきたいと思いますので、お一人ずつ聞かせていただきたいと思います。

八田参考人 今おっしゃったことは、要するに、規制を改革して、資源の有効な配分をし、成長するときに所得の不平等が拡大したらまずいではないかということだと思います。

 私は、思いますに、基本的に、一九六〇年代の日本の高度成長というのは、高度成長をしたがゆえに、二重構造が解消して、失業が減って、そして日本の所得の分配を非常に平等化したと思います。したがって、成長が不平等化をするということはあり得ないと思います。基本的に、失業をなくすということが一番大きな目的で、それが再分配を大いに改善すると思います。

 それから、さらに、山口先生もおっしゃった、生活保護をきちんとした仕組みにする、あるいはワーキングプアに対する配慮をきちんとするということはとてつもなく重要です。これは、こういう規制改革をやると同時に、並行していかなきゃいけないと思います。

 ただし、ただ生活保護にお金をつぎ込めばいいということじゃなくて、例えば、今、生活保護の予算の半分以上が医療扶助ですね。これは、ただで行くものだから、マッサージに行く、やれ何に行くというようなことが行われる。そういう改革はしなきゃいけない。そういう改革をして、本当に必要なところに渡すということが必要だと思うんです。

 最後にちょっと、申しわけないけれども、規制改革自体が所得再分配に非常に役に立つということは、例えば国家公務員で、雇うときに、あるいは地方公務員でもいいですが、年齢制限があるじゃないですか、あれはやはり撤廃すべきだと思いますね、全てのレベルで。そして、給料は低くていいですから、新しい人は。年をとっているから高く払うなんて必要は全くない。それまでの経験なんて無視していいですから、とにかく、その能力に応じて、そのポジションにふさわしい給料を払えばいいので、それで年齢制限を撤廃すれば、物すごくふえると思うんです。私、前に規制改革の会議にいて、そういうことをやったら、何か四百倍とか五百倍とかいった率で、非常に小さいところに来ましたけれども。

 私は、そういう、枠を拡大するというようなことをやるべきだと思います。

山口参考人 今回の特区というのは、まだかなり抽象的なお話で、これは、具体的に地域にどのような効果をもたらすかという点についてはよくわからない点があるんですが、私が一つ危惧いたしますのは、現実に今の日本では地域間格差が非常に広がっていて、東京を中心とした大都市圏といわゆる地方の間でいろいろな格差が広がっております。

 今回の特区という発想は、やはり強いものをより強くしていくという思想のもとにできているわけでありまして、そうすると、要するに、ビッグビジネスが存在しない地方をどうするかということが大きな問題になってまいります。

 その点で、さっき私が強調しましたように、実際には、農村地帯であっても創意工夫でいろいろな試みをしている人たちはいるわけでありまして、規制改革をする場合に、やはりそういう現場の声を下から積み上げていって、そして地域の底上げをしていくということが必要だと思いますので、私は、頭から規制改革は悪だなんと言うつもりは全くないのでありまして、むしろ、地域の自由なさまざまな活動を縛っている問題について、やはり現場の声をきちんと反映させる政策づくりの仕組みをつくっていただきたいと思っております。

原参考人 ありがとうございます。

 これまでもずっと規制改革という言葉を使ってお話をしてまいりましたが、私の記憶では、これは二〇〇〇年ごろから、それ以前は規制緩和という言葉が使われることが多かったのが、規制改革という言葉が使われるように変わってきたと思っております。

 私の理解でいいますと、規制改革と言うようになったのは、単に規制というのはなくせばいいということではなく、よくしていくということが大事だということだと思っております。代替策もあわせて講じるというのが規制改革だと思います。

 例えば、事前規制、あらかじめ役所にお伺いを立ててやるというような規制から事後規制、事後ルールに変えていくというようなときには、これは当然ながら事後監視もきっちりやるというようなことが大事になってくるでありますとか、あるいは、規制を一定変更することによって何らかのリスクが生じる場合には、それに対する代替措置もあわせて講じる。そういう規制改革を進めていくということかと思っております。

八代参考人 御質問ありがとうございました。

 今おっしゃった点は物すごく大事であって、社会保障が大事か大事でないか、もっとふやすべきかどうかという以前に、今の社会保障制度というのは極めて私は非効率だと思います。

 どういう意味で非効率かというと、所得再分配機能が弱いんですよね。これは、日本の社会保障というのはその九割近くが社会保険、年金、医療、介護保険で、社会保険というのは基本的に中流階級の中での所得の移転にすぎない、水平的移転なんですね。本当に大事な垂直的移転、つまり、生活保護とか住宅がない人、そういう人に対する予算の比率は一割にすぎないわけです。

 ですから、これはもっと生活保護等の、今の社会保障の規模を変えなくても、中身を変えることによって再分配する余地は非常に大きいかと思います。

 先ほど八田参考人が、生活保護の半分を占める医療扶助、これを、例えば生活保護の人を国保に入れる、こういう簡単なことで随分解決できるわけで、これはかつて規制改革会議でも議論したんですが、厚労省の反対で潰れてしまったわけです。

 それから、さきの国会で廃案になりましたけれども、例えば、生活保護の人の働くインセンティブをつけるために、今は、働いて給料がふえたらその分だけ保護費が減らされてしまうわけで、いわば一〇〇%所得課税を掛けられるのと同じ状況である。これを、削除する生活保護分を行政がためておいて、それを後でちゃんと自立したら返してあげる。これは画期的だと思うんですが、それを例えば特区で実験してみる、それによってどれだけ効果があるか。

 こういう社会保障改革の実験もできるのが私は特区の大きなポイントだと思いますので、ぜひそういう意味で、所得再分配のやり方についても、特区を活用した改革というのが望ましいと思います。

関委員 参考人の皆様、本当にありがとうございました。

 先ほども申し上げましたけれども、規制の緩和ではなく規制の改革という考え方で今回の特区を私も取り組んでまいりたいと思いますし、私の政治の理念であります、強い人は自由競争でますます強く豊かになり、そして、その目的とすれば、弱い人を守るため、そのかわり弱い人も自分の実力を全力で一〇〇%出し切るような、そんな気持ちの持ち方を持った社会をつくってまいりたい。

 そのために、特区の法案がその手段となり得るような、そんな内容に一生懸命頑張っていきたいと思いますので、今後とも御指導のほどをよろしくお願い申し上げまして、少し早いようではございますけれども、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

柴山委員長 次に、輿水恵一君。

輿水委員 公明党の輿水恵一でございます。

 本日は、参考人の先生方、貴重なお話を聞かせていただきまして、まことにありがとうございます。また、質問の機会を与えていただいたことに心より感謝を申し上げます。

 初めに、きょう、参考人の先生方のお話をいただき、一つ反省しているところがございます。それは、今回の特区制度、やはりちょっと小粒なのかなと実は私も内心思っていました。国家戦略にしては余りにも、そういう思いがありましたが、八代先生の話も聞かせていただき、この規制改革を進めることがどれだけ今まで大変だったのか、ここまで具体的な項目を明記して、こうやって法案として今進もうとしていること、その御苦労と、また力がどれだけ要ったのかな、そういったことを改めて感じさせていただきました。

 規制というのは、確かに、先生方おっしゃられました、例えば雇用の問題、雇われている人の側に立って考える場合と、また、雇われていない、今から職場を求める人の側に立って考える、労働者全体に対するそういった規制改革の視点。さらに、規制に守られている人もいれば、規制が自分自身の活動を阻害している方もいる。そして、いろいろな社会や経済の環境が変わってきた中で、その規制が本当に現状に合っているかどうか、そういったものをよく見ながら、この日本がどういった国家として成長していくのか、今回の法案というのは、そういった面では大変に重要な法案であると私は改めて認識をさせていただきました。

 そこで、初めに八代先生にお伺いしたいんですけれども、個々の利益の追求から、規制改革というのは、どちらかというと全体観に立った、そういった視点の中で、地域全体、また国家全体の利益追求をする大きな重要なものなんだなというふうに感じたんですけれども、その辺の視点について、考え方を聞かせていただけますでしょうか。

八代参考人 どうもありがとうございました。

 当然ながら、あらゆる規制改革は、国全体、経済全体の利益のためにやるわけでして、これは、規制というのが、どっちかといえば、特定の利害集団の利益を守る、それによって他の事業者あるいは消費者全体にコストをかけるというものと、いわば正反対なわけです。

 規制改革というのは、ある意味で自由貿易と同じことでありまして、自由貿易というのは、国と国との間の取引の自由化によって、例えばコストが下がって消費者が利益を得る。規制も同じことであって、国内の特定集団の利益のためにほかの人を犠牲にしているわけですから、それを改善するということは、当然ながら国全体の利益になるわけです。

 それをなぜ全国で一斉にやらずに特定の地域だけでやるかというと、先ほども議論がありましたように、やはり所管官庁が、一挙に改革したら何が起こるかわからないという不安感があるわけです。ですから、それに対して、特定の地域を限定してやってみる、実験をしてみることで、その成果を踏まえて全国に展開するという二段階方式なわけです。

 これは過去の総合特区や構造改革特区でも同じなんですが、今回の国家戦略特区の大きな点は、それを最も投資効果の大きい都市でまずやってみる。これは、何といっても、今の成長戦略のポイントが、民間投資をとにかく刺激する。それから、日本の場合、海外にどんどん直接投資が行っているわけですが、逆に海外からの日本への直接投資が非常に少なくて、その差が広がっている。これがまた日本の国内の雇用を失わせる大きな要因になっているわけで、できるだけ海外の人が日本に投資してくれるような環境をつくる。そのためには、グローバルなビジネス環境にできるだけ近いものを特区の中でつくる必要があって、そのときには、やはり大都市がまず一番ふさわしいのではないか。

 これはさっきも言いましたように、大都市の独占ではなくて、それは当然ながら、速やかに地方都市にも波及していくべきものだと思っております。

輿水委員 どうもありがとうございました。

 まさに国内だけを見るんじゃなくて、世界的な中で、日本の今後の成長、また競争力というものをどう高めていくか、そういった意味で、まず特区の中で試しながら、そして全体的に広めて、国家を本当に強い国家にしていこう、そういった方向であるということはよくわかりました。

 その中で、原先生に今度はお伺いしたいんですけれども、規制改革の実験場として特区は突破口だ、まさに大事な、さらに、こういうものであれば、スピード感を持ってどしどし進めていく必要があると思います。

 その中で、一つ、今回、特区の指定というのは、一カ所とか二カ所とか、まだ具体的にはなっていないんですけれども、例えば、同じ特区を二カ所で同時に進めながら、競争原理を働かせていく。一カ所で特区を指定してしまうと、そこにあぐらをかいて、ここで、ほかが何をやるかわからないけれども、うちで思うようにやっていこう、そういうことではなくて、二カ所で、あっちよりもこっち、こっちよりもあっち、そんな競争原理を働かせながら進めていく。そして、それが全国レベルで展開するにもいい効果が出てくるのかな、そんなことをちょっと聞きながら感じたんですけれども、その辺についての見解をお聞かせ願えますでしょうか。

原参考人 大変ありがとうございます。

 極めて重要な御指摘だと思います。特区の場所をどこにするのかということについては、これは新聞報道なんかで一時期、三大都市圏みたいな、ちょっと間違った報道がなされたこともございましたが、これはまだ全くこれからで、年末から年始に、この法案が成立したら、その後に特区諮問会議をつくって決めていくということだと理解しております。

 まさに今先生おっしゃられましたように、特区で選ばれて、そこにあぐらをかいてしまうということになってはいけないわけでございまして、いかにそこでよりよい制度改革を目指していくのか。これは運用面もそうですし、それから、さらにその次の課題を見出して取り組んでいくということも含めて、そこの競争の環境をつくっていくということは極めて重要だと思います。

 ありがとうございます。

輿水委員 ありがとうございます。

 あともう一つ、興味深い御提案というか、雇用の問題なんかも今後あるのかなと。やはり国家戦略を考えたときに、日本は人口が減少していく、さらに少子高齢化の中で労働人口が減る中で、そういった雇用をどのような形で日本は確保しながら、また生産性を保っていくか。そういった視点での、新しい特区の、ただ、解雇特区とかそういうやり方じゃなくて、雇用を広げていく中で、積極的な検討も必要なのかなと思うんですけれども、その辺の見解について、一言お聞かせ願えますでしょうか。

原参考人 ありがとうございます。

 先ほどもちょっと触れましたように、何か解雇特区という誤った呼び名をつけられてしまいましたが、これは、もともと私どもが検討しておりましたのは、むしろそうではなくて、雇用を拡大するための規制改革をやる、それを特区で実験してみたらどうかという提案をしておりました。

 今回、一定の前進をしておりますが、この雇用ルールについてはまだまだ課題が残っていると思っております。労働時間の問題なんかもそうでございますし、それからあと、先生ちょっと触れられたのはそういう御趣旨かなと思いましたが、外国人の労働者の問題、これも、今後人口が減少していく中で、いつまでも避けているわけにはいかない課題だということだと思います。これも、国家戦略特区の中で、一つの重要なテーマとして議論をしていくという必然性はあるんじゃないかと思っております。

輿水委員 ありがとうございます。

 では、続きまして、山口参考人にお聞きいたします。

 先ほど、やはり権利を拡大する、また権利の侵害、地域にとっても、憲法の九十五条の中でそういった御指摘をいただいたと思うんですけれども、今回のシステムとして、統合推進本部というところで最終的には計画を決めて具体的に進める。その中で、そういったことがあるのかないのかをきちっと精査しながら進めることで、首長も入っているわけですから、この問題もある程度解決できるのかなと私は感じているんですけれども、その辺についての見解をお願いいたします。

山口参考人 もちろん、地方公共団体の首長がその会議に参加するということは最低条件だと思います。

 ただ、私が危惧しておりますのは、先ほどちょっといささか不穏当な例を出したかもしれませんが、特定の志向性を持った人々が全部独占するような会議体で、ある種の方向性を、これは国益だという形で打ち出していくということがあるならば、やはりそれに対して、その適用を受ける地域からなかなか異論を出しにくいという問題も起こるのではないか。

 やはり、特区がもたらす具体的な効果については、それぞれの地域でしっかりと検証をし、要するに、インフォームド・コンセントというものをきちっとつくるという仕組みは不可欠ではないかということを申し上げたかったわけであります。

輿水委員 どうもありがとうございました。

 最後に、八田先生に教えていただきたいんですけれども、やはり総合特区と今回の国家戦略特区、同じようなというふうな御指摘もよくいただくんですけれども、今、三本の矢が放たれて、成長戦略、やはり具体的にスピードが必要だと。

 そういった面で、国家戦略特区というのは、具体的な規制緩和の項目が決まっていて、そしてスタートをするという意味からも、そのスピード感また実効性が非常に高いのかなというふうに思うんですけれども、もう一度、その辺が総合特区とはどう違って、地域での具体的な展開がどうなされるのかについて、御説明いただけますでしょうか。

八田参考人 総合特区というのは、先ほど申し上げましたように、地方活性化のためであります。そして、こちらの方は国全体の観点からというのが大枠ですが、実際の進め方はかなり違うところがありますね。

 総合特区の場合には、まず地域を選んでから、いろいろな規制改革の要望があるんですが、それを、地域活性化統合本部の事務局員が、各省から出向した方たちです、その方たちがいろいろな省に行って交渉するわけですね。交渉するけれども、そこで向こうがだめだよと言ったら、それっきりということなんですよ。それで議論していって、それを上に上げていって、上の政治判断を仰ぐというような仕組みが余りない。

 それから、交渉する当人が、我々のような人間は本当に失うものが何もないですから各省と議論しても議論できるんですが、出向してきたお役所の方は、ここで勝ったら、また江戸のかたきを長崎で討たれるかもしれないというのがあるから、どうしても緩みますよね。それが、今回の戦略特区ではそこの難しさを認識したものだから、前もって、その交渉は我々のように失うものがない人間がやっちゃいましょうということ、もちろん事務局がサポートしてくれるわけですが、事務局としても、最後は、我々が言うからしようがないということでできた。それでこういうものがとれたと思います。だから、仕組みの違いがあると思います。

 だから、それぞれに意義があるけれども、ある程度、これまでのことから学んだ面もあるというふうに言えると思います。

輿水委員 どうもありがとうございます。

 本当に、まず、改革のメニューが用意されて、あとは、これからそれがどう展開されるかは、その規制改革をどう活用するか、今度は現場の問題になると思いますし、その突破口を開く今回の法案というのは大変に重要な意義があるというふうに私も感じました。

 さらに、今回、項目が挙げられているんですけれども、こういう制度をつくるということによって、新たな項目を追加していく、そういった可能性も十分あるわけですよね。その辺の新たな項目の追加についての柔軟性、どの程度の開かれた環境にこの制度はあるかについて、見解を教えていただけますでしょうか。

柴山委員長 質疑時間が終了しておりますので、短目に御答弁ください。

八田参考人 今回は、法的にまだ決められていないワーキンググループでやって、しかし、与党及び政府首脳の強大なバックアップ、サポートがあったから、各省がいろいろとやってくれたと思います。今度、新しい仕組みでは、制度としてそれが確立して、法的な組織でやっていかれるから、規制改革がより強力に進められるのではないか、そういうふうに思います。

輿水委員 どうもありがとうございました。

 この法案が日本の新しい未来を開く、そういったものになるように期待をして、質問を終わらせていただきます。

 大変ありがとうございました。

柴山委員長 次に、近藤洋介君。

近藤(洋)委員 おはようございます。民主党の近藤洋介であります。

 きょうは、それぞれの参考人の先生方から大変貴重な御意見を聞かせていただきまして、本当にありがとうございました。

 参考人の御意見を伺って、まず最初に、特区の話というよりも経済政策全体のあり方の話をちょっと伺えればな、こう思いまして、最初に山口参考人とそして八代参考人にお伺いしたいな、こう思っております。

 今回の特区法は、総理のお言葉をかりると、世界で一番ビジネスのしやすい国をつくりたい、こういうふうに総理はおっしゃっているんですね。安倍政権は何となくそういう路線で物事をおっしゃっているな、こういう気がするんです。これ自体はだめと言うつもりはないんですけれども、ただ、ちょっとここの辺は私どもとはやや風合いが違いまして、我々は、世界で一番ビジネスのしやすい国をつくることが日本を成長させるんだ、国の富をふやすんだ、こういうロジック、これはこれで私は否定はしません。

 ただ、日本の現状を考えますと、中長期にこうやって人口がどんどん減っていくという状況、また、世界的に、中国という国が隣に、すさまじい、資源を大量に食い尽くして、そして、どんどんどんどん安いものをつくっていく国が隣にある、近隣国である、こういう状況。要するに、昭和三十年代、四十年代と日本は違う、こういう状況を考えると、やはり日本のこれからの本当の意味での豊かさを考えると、六〇年代、七〇年代の、ややちょっと、あえて言うと、安倍さんの言っていることは古いなという気がしないでもないんです、正直申し上げると。

 何を言いたいかというと、我々が少し考えているのは、民主党がといいましょうか、イメージしているのは、やはり失業を基本的にできるだけ少なくする社会、これは大事なんだろう、雇用をきちんとつくっていくということが大事なんだろうと。

 なぜかというと、それは次につながる仕事をつくっていく、それは何でも雇用ならいいということではない。要するに、働き手の質を高めていく、働き手の質を高めていくことによってでしか日本は豊かにならないのではないか、こう思うわけであります。経済学の用語でいうと、いわゆる人的資本を蓄積できるような仕事をつくっていく、その場を提供していく。日本に住んでいる人たちに人的資本を蓄積するようなものをつくっていく、これができるような環境をつくるのが政治の役割なんだろう、こう考えるわけですね。

 そういう観点に立つと、今回の雇用特区、いわゆる汚名だ、こういうふうに指摘もされましたけれども、雇用規制の議論というのは、要は、言葉が適切かどうかは別にして、やや経営者の方の、余り成績のよくない経営者の言いわけを聞いてしまって、早く、使い捨てで、いい人だけとにかく採りたいんだと。要するに、本当は、質のいい経営者なら、人を雇って、きちんと教育して育てて、人的資本を蓄積させて、そして企業をよくするというのが本来の経営者のあり方であるし、これが日本の強みだったはずなんですね。

 それは、かの松下幸之助翁が、企業が非常に厳しい時期、会社の存亡の危機に、解雇だけは絶対しないと言って、踏ん張って松下を盛り上げたという逸話にも代表されるように、日本の経営というのはそもそもそういう強みがあって、人を大切にして、人的資本を蓄積したことによって資源のない国がここまで来た、こういうことにも証明されるように、私は、それが日本の本来の生きる道だし、日本の強みなんだろうと。

 ところが、ややもすると使い捨て的に、次から次へと雇って、はい、さようならというのがここ二十一世紀初頭から流行し続けて、それにやや影響された経営者の方々、ないしは、そういう外資の方々の言うことを聞いて、日本をそういうビジネスしやすい国にしたい、こういうふうに思っている思考がちょっと見えているんじゃないかと。だから、我々は、この問題について、もうちょっと、視点が違うのではないかという主張を展開しているわけであります。

 何を言いたいかというと、ですから、特区論についても、日本の経済の運営についても、雇用を富まし、ないしは人的資本を蓄積したところに対してインセンティブを与える、フェーバーを与えるという政策を進めるべきであって、仮に特区をもしつくるのであれば、そういうところの厚みを増す、制度でプラスをするならいいけれども、何か逆のところでインセンティブというか、解雇しやすくする的な、そこのルール、制度だけをつくっているので、非常に違和感を我々の政党は感じているということなのであります。

 ちょっと御託が長くなりましたが、こういう政策論について、山口先生はどうお考えか。八代先生は、また違ったお考えもあるかもしれません。ぜひ御所見をお伺いしたい、こう思います。

山口参考人 ありがとうございます。

 今の御懸念は、私も共有しているところでありまして、企業にとってよい環境で、企業がどんどん成長していく、それはもちろん資本主義ですから結構なことなんですが、要するに、かつての長期安定雇用の中で、企業の収益が最後はちゃんと働く人に還元されたという時代がもう終わった、この現実認識をやはりしっかりと持たなきゃいけないのでありまして、そうすると、もうけた後の富をどうやって社会全体で分かち合うかということについて、きちんとした政策論が必要になるわけであります。

 私は、もはや、かつての長期安定雇用、いわゆる終身雇用に戻るということはもう無理だと思っておりまして、むしろ、非正規で働くことを前提として、非正規でも、夫婦二人で働けばちゃんと人間らしい生活ができる、それを支えるための保育、教育等の基盤は、これはもう公的につくっていく、こういう新しい社会モデルを目指していくべきだ、これが長期的な展望だと思っております。

八代参考人 ありがとうございました。

 まことに大事なポイントでありまして、私も、今回の特区はちょっと外れて、労働市場改革全般のことについてちょっとお答えしたいと思います。

 おっしゃったとおり、失業をできるだけ減らす、次につながる雇用をふやす、人的資本を蓄積するというのは極めて重要な目的で、問題は、そのためにどういう仕組みであればいいかということですね。

 過去の高い経済成長のもとでは、先ほど山口参考人がおっしゃいましたように、ほっておいても企業はどんどん成長するわけですから、長期安定雇用というのはもう当たり前であった。しかし、それを支えてきた経済環境が九〇年代初めに大きく変わって、過去のように、不況期が短く、好況期が長い時代から、ある意味で、不況期が長く、好況期が短い時代になってきた。ですから、かつてであれば企業が簡単に過剰雇用を維持できたのが、もうできなくなってしまった。そういう環境変化の中で、どうやって労働者の雇用を安定させるかというのが大きな課題なわけです。

 そのためには、特定の企業の中だけで熟練を形成するというこれまでの日本的雇用慣行、これは、過去の人口の年齢ピラミッド形、あるいは高い経済成長の社会では非常に適していたわけですね。だけれども、今のように、情報通信技術がどんどん発達して、それから、大企業といえども倒産することがあり得る社会では、それは労働者にとっても実は非常に危険なことなんですね。

 だから、企業が仮に倒産しても、あるいは合併されても、別の企業にまた移って、ちゃんと自分の人的資源を蓄積できる、そういう労働市場に本当は変えていくことが、労働者にとっても日本全体にとっても望ましい。

 そのためにはどうしたらいいか。先ほどもあったセーフティーネットの議論と同時に、企業をかわっても不利にならないような仕組みというのが大事ではないか。今の日本的雇用慣行というのは、あくまでも労働者を特定の企業に閉じ込める、それが企業にとっても有利であったし、労働者にとっても有利であった。

 しかし、その反面、無定限な働き方を強いることによって、特に共働き世帯、特に女性にとっては非常に厳しい働き方であった。これを、いろいろな多様な働き方を法律できちっと認めて、地域限定、職務限定、正社員というのは、まさに今、非正社員でしかできない働き方を正社員でもできるようにする、そういうための規制改革なわけでして、目的は先生が考えられたのと全く同じなんですが、今の労働市場の規制というのが、実はそれに適していないようになっている。だから変えていくんだと。

 労働市場の法律というのは、あくまで労働者のためのものであって、企業にとって都合のいいものであってはいけないというのは全くおっしゃるとおりでありまして、これは規制改革会議でも、戦略特区でも、同じ考え方で私はやっていると思います。

    〔委員長退席、関委員長代理着席〕

近藤(洋)委員 ありがとうございます。

 ですから、両先生方のおっしゃるとおりだと思うんですね。

 私は、この労働市場の改革にとって、例えばジョブカード制度なども全然進んでいないわけですよね、はっきり申し上げて。そういうものも進んでいない。さまざまなものが進んでいないのに、ここのところだけぽこっと出されても、なかなかしんどいよということなんだろう、こう思うんです。やはり違和感があったんだと思うんです。

 ですから、規制の組みかえは当然必要だと思いますし、今の状況が百点だと言うつもりはないんですが、くどいようですけれども、余りできのよくない経営者の言うことだけぱかぱかぱかっと聞いて、つまみ食いをして物事が解決するものではないということは、八代先生なども労働経済学の御専門家であられますし、十分おわかりかと思うわけであります。ですから、この問題、そう取り組まなきゃいかぬ、こう思うわけであります。

 あともう一点、先ほど来、この改革は岩盤に穴をあけたんだという御発言がございました。八田先生、原先生におかれましては、それはワーキングの中で働かれていた座の先生であられますから、当然、御自身がつくられたものについて余り否定的なことをおっしゃらない、それは当然だと思います。

 ただ、あえて申し上げます。私は、先生はいいお仕事をされたと思いますが、例えば、規制改革といいましょうか、これまでの政府の改革の中でいうと、私も多少かかわったものでいうと、電力市場改革、電力改革。これは、率直に申し上げて、大変な改革で、大規制改革でございました。これこそ、岩盤に穴をというレベルではなくて、大変な大きな改革をしたわけですね。

 そういうレベルの改革と比べると、国家戦略と銘打った特区の中での、要するに、大事な改革でないと言うつもりはありません、ただ、国家戦略という名前をこれは法案につけておるんですね。ですから、ここのどこに、それぞれの規制改革に国家の戦略性というのがストーリーとして見えるのかということが指摘されているんだろうと思うんです。

 農家レストランが無駄だとは申し上げませんし、信用保証制度がすごいと、私は、これは個人的な意見ですけれども、信用保証制度ができたことは、それはそれで立派な、悪くはないとは思いますが、しかし、そこに、では日本の農業の再生の道筋、ストーリーといいましょうか、戦略がわかるのか、描かれているのかというと、残念ながら見えないから申し上げているんです。

 もし御所見があれば、今のメニューで、例えば日本の農業再生のストーリーがメニューにあるというのであれば、八田先生、簡潔にお答えいただけますでしょうか。

八田参考人 どうも、いい質問をありがとうございました。

 まず、ちょっと直接お答えする前に、何でこの規制改革ということが、これほどこだわりを持って我々は言うかというと、基本的には、既得権を廃止すると、大体消費者が得するんですよね。値段が安くなったり、サービスがよくなったり。ところが、消費者というのは薄く広く広がっているものだから、ほとんど政治的な結束ができないんですよ。

 ところが、生産者の方は少数ですから、うんと政治的にまとまって、先生方にお願いして既得権を守る仕組みをつくっていくわけです。だけれども、この薄く広い利益を得る人たちを誰かが代弁しなきゃいけないわけで、それが学問であり、それから有識者の考えだろうと思うんです。それが大原則です。

 それから、労働に関して言えば、似たようなことが言えるのは、労働組合はまとまっている。ところが、いわゆる非正規の人たちは薄く広く広がっているために、その人たちの意見が代弁されていない、そういうことです。

 そうすると、今回、先ほどお見せしましたように、残念ながら民主党政権下でもできなかった数々の規制改革を実際に断行したわけですね。それはまさに、普通ではできない、既得権が強い政治力を持つのにもかかわらず、ついに動き出したということであります。

 先ほど原さんがおっしゃったように、そんな四月か五月から始めてこんなに短期間に全ての岩盤を突破することはできませんということですが、たったこれだけの短い期間に、今まで何年もできなかったことを幾つもやってみせた。これは、その背後に政権の意欲があると思いますよ。やはり我々だけでできたんじゃないですよ。後ろに安倍首相以下の政治的な決断、力があるから、各省は、これはやはり勝ち馬に乗った方がいいなと思ってついてきたんだと思います。だから、その意味で大変な意義がある。これからの方向性が。

 農業について御質問です。

 信用保証制度、私はもう、物すごく大きな風穴があいたと思っております。

 まず、農協は経済部門と信用部門とがありますが、大体一般的に、信用部門でお金を稼いで、経済部門の損失を埋めています。したがって、信用部門というのが大きな存在意義なんですが、そこでは、預金は、組合員じゃなくて准組合員という農協以外の人からいっぱい集めています。

 だけれども、農業にお金を貸す段になると、これまで実質的に農協が独占していたわけですよ。これが今回、この信用保証のことができるから、普通の中小企業が、今まで信用組合とか地域の銀行からお金を借りて信用を組み立てた会社が、今度は農業に入っていけるんだ。初めてなんですよ。だから、ある意味で農協の金融の独占が打ち破られたんです。これは画期的なことだと思います。

 これは余り今まで気がつかれていないけれども、こういうことができるようになったというのも、岩盤の中に大きな本流がこれから流れていくきっかけになると思います。

    〔関委員長代理退席、委員長着席〕

近藤(洋)委員 農業にかかわる金融の議論、これは大変大事なポイントだと思います。これはまた大事な、これだけで大きな話なのであれなんですが、もう時間も迫ってまいりましたから。

 ただ、私は、大変な高い支持率を持って勝ち馬に乗って改革を進めようとしているというのは、だんだん成果が出てきたんだ、これはこれで認めたいと思うんです。

 ただ、やはり私は、こういう改革というのは二つポイントがあって、私も規制改革に取り組みました。これは粘り強さというのが必要だと思うんですね。まさに八代参考人などは現実ずっとやられていて思うと思うんですが、これは息の長い仕事で、要するに、きっちり長くやらないとすぐ手が抜かれる、こういう仕事だと思います。ですから、情報の公開性というのは逆に必要だと先生方もおっしゃっていただきました。

 時間ですので、最後の質問になりますが、しかし、さはさりながら、ここはちょっとまた山口参考人と原参考人に最後にお伺いしたいんですが、ただ、こういう改革も、私はちょっと、国家戦略と国が指定してやるということに対して、どこかまだ違和感がある。国会議員をやっておいて、自己矛盾のような気がするんですけれども。どうも、国家で指定をしてやるプロジェクトで余り成功したことがないんですね、最近。

 何を言いたいかというと、産業政策で国家が旗を振って成功した例が過去あるか、少なくともここ三、四十年。原さんは経済産業省にいらっしゃったから、よくわかると思うんですけれども。石油化学工業、国が旗を振って、今の状況、小さな石油化学工業しかできていないとか、自動車産業だって、通産省に反発したトヨタ自動車が、今、世界最大。こういう例を引くまでもなく、国が音頭をとって成功したためしがないんです。要するに、本当の改革は地域からしか生まれない、こういうことで我々は進めてきたわけであります。

 この上から目線改革で本当に改革が進むんだろうかという点、私は、国家戦略特区というこの名称からして、本当に進むんだろうか。官僚はころころかわりますから、その継続性ということについても、担当がかわるということについても。地方自治体の方々は、ずっとそこの場にいますから、責任があるわけでありまして、その点に含めてもやや不安を感ずるんですが、最後、この点について、山口参考人、原参考人、いかがでしょうか。

山口参考人 今回の特区の話は、やはり、大都市圏のビジネスをいかに強くするかという基本的な発想だと私は理解をしております。

 この点に関連してちょっと思い起こしますのは、国鉄の分割・民営化で二十五年たって何が起こったかという問題でして、要するに、新幹線を持っている東海とか東日本は大もうけする、しかし、北海道はもうお金がなくて、まともな維持更新さえない。要するに、地域間格差の拡大ですね。

 中国流の先富論で、大都市圏のビジネスがばっと伸びて、そこに金がたまっていく。それを特区という名前で正当化して、国全体でどうやって総合的な発展あるいは均衡を考えるのかという仕事を中央政府自体が放棄して、強いところだけどんどん行けという、そういう問題につながっていくんじゃないかなということを私は危惧しております。

柴山委員長 質疑時間は過ぎております。短くお願いします。

原参考人 ありがとうございます。

 国家プロジェクトとして予算をつけてやるような事業というのが失敗してきた例がたくさんあるというのは、先生がおっしゃるとおりだと思います。

 一方で、今回の国家戦略特区はこれとは全く違っていて、もともと、国が全国一律でいろいろな規制をかけています。そこに穴をあけるというのが国家戦略特区だと思います。

 これは、もともと国が規制を行っている以上、そこに穴をあけるのは国にしかできないということであり、従来の構造改革特区は、地方のイニシアチブで国がそういう穴をあける仕掛けをつくっていきましょうということでありましたが、これが地方のイニシアチブというだけでうまくいくのでしょうかということだと思います。そこは、国と地方と民間とで一緒になって、そういう穴をあけていくということをやっていったらいかがでしょうかというのが、今回の国家戦略特区だと思っております。

近藤(洋)委員 終わります。

柴山委員長 次に、中丸啓君。

中丸委員 日本維新の会、中丸啓でございます。

 きょうは、お忙しい中、参考人の皆様、本当にありがとうございました。

 私は日本維新の会に所属しておりまして、日本維新の会は、規制改革、構造改革、地方の自立、ずっと訴えてきているわけなんです。

 今回、そういう意味では、この国家戦略特区というものが非常に大きな改革の一里塚になるだろうというようなお話が出ているというのは重々理解した上で、ここまで、この内閣委員会の中でもいろいろ話をしたり、内閣府からいろいろお話を伺ったりしている中で一つ思ったのは、要は、この国家戦略特区という名前で、私が一番初めに抱いた、中身を知る前にこの名前から抱いたイメージは、例えば中国でいえばシンセンであったり、香港であったり、例えば韓国の釜山、港湾を使ってですね、そういう戦略的に国家を挙げて何かをしていく核になる都市をつくるんだというイメージを持っていたんです。

 どうも、いろいろお話を聞いていって、議論の論点になっているものとかを見ていると、これは、構造改革特区とか総合特区でできなかった俗に言う岩盤規制に穴をあけて、それをやることによって、実験的にそのエリアで行って、結果、それはうまくいけば全国に波及していこうというような流れになっているということは、要は、規制改革実験特区、岩盤規制打破実験特区とか、そういった意味合いの方が本来強い内容になってきているのかなと思います。

 原先生なんかもおっしゃられていたように、今まで、国家、役人さんを中心につくってきて、原先生の本がここにありますけれども、「日本をダメにする役所の「バカなルール」総覧」とかありますけれども、そういうものに風穴をあけるには国家主導でやらなければだめだというのがこの位置づけになっているような気がします。

 ただ、今の日本の経済状況、それから国際競争力の状況を鑑みますと、私は、それだけではやはり足りないと。それは大前提であるということで、ちょっと質問をさせていただければ、私は出身が広島でございまして、広島は、皆さん御存じのとおり、人類初の核爆弾が投下された地でございます。そして、日本は、国連におきまして、相変わらず、敵国条項があるとかないとか、まああるんですけれども、いろいろ言われている中で、もちろん常任理事国ではない。その中で、今、渋谷に国連大学というのがありまして、それ以外、いろいろあるんですけれども、御存じのように、拠出金はアメリカに続いて世界第二位、お金はたくさん払っているというような状況の中で、今の国連機関、ニューヨーク、ワシントン、スイスのジュネーブなんかに集中しているわけなんですけれども、実は、私のいる広島に一つ、UNITAR、国連訓練調査研究所というのがございまして、アジア太平洋地域の広島事務所があるんです。

 二〇二〇年の東京五輪まであと七年。その中で、平和のための国際的な対話の場として、日本に国連の本部機能を置こうという議員連盟が昔起きていまして、安倍総理とか、もう代がわりされていますけれども、中川秀直前衆議院議員とか、そういう方々がやられていたわけです。

 私は、この特区は、国家戦略という位置づけをしっかり持って考えれば、例えば、地元でも、国連の本部機能を広島にぜひ持ってきて、NPTの会議であったりとかそういったものをどんどん推進していこうという動きはあるんですけれども、これもいろいろ当然規制等々もございます。ビジネスの世界というふうに国家戦略特区は言われますけれども、私は、平和というものはビジネスになるというふうに会社経営時代からずっと一貫して言い続けておりまして、平和貢献型企業の平和ビジネスというものの核の拠点になるには、世界じゅうで、広島というブランドは十分に通用するブランドであるというふうに思っています。

 例えば国際平和推進特区というような位置づけで考えて、安倍首相がおっしゃられている積極的な平和貢献、そういう積極的なアジアの平和リーダーであるというものの中心軸に国連の本部を置いて、例えば、ソーシャルビジネスであったり、地雷除去のそういう機材を開発している企業であるとか、もちろん国際会議も含めて、IRであるとか、あとはNPO、NGOの事業収入に対する減税であったりとか、世界じゅうからそういったものを十分に呼び込むだけの地域ブランド価値というのは、私は広島にはあると思っています。

 若干これまでの特区の論点からは外れるかもしれませんけれども、本来、国家戦略というのは、例えばハリウッドが、世界的にアメリカの文化を広める、映画の国際戦略の発信基地になっていたりもするわけですから、本来、国家戦略特区というのはかくあるべしというような気がするんですけれども、参考人の皆様の御意見を頂戴したいと思いまして、特に今の国際平和発信特区、そういった位置づけのものというものに対して、今初めて聞かれたこともあるかもわからないですけれども、どういうふうに受けとめられたかというのを、それぞれ御意見を頂戴できればと思います。

八田参考人 御質問ありがとうございました。

 特区というのは、一般的に言えば、極めて政治性が高くて、各地方の議員さんたちは、やはりできたら自分のところに欲しいなと思われると思うので、これを選ぶプロセスというのは、やはり厳密に定義されていなければまずいと思います。

 そして、今、特区では、まだ場所の選定はないですが、どういうことをやるかということについては、有識者の意見を伺い、いろいろな事業者の意見を伺い、それから自治体の意見を広く公募して伺ってきて、そういうプロセスでやってまいりました。そのプロセスには、今御提案のことはのっておりませんでしたが、もしそういうことが重要だとすれば、この国家戦略特区以外のところでまたお考えになればいかがかと存じます。

山口参考人 今の御質問を伺いまして、私は、被爆の後の広島平和都市建設法でしたか、特別法について、憲法九十五条による住民投票が行われた極めて少ない事例だということを思い出しました。

 まさに、本来の特区というものは、今御提案のように地域から、地元から創意工夫を持った人たちが提案をして、そして国の法律を整備して、その地域の戦略を可能にするような環境整備をしていくという形で展開していくことが望ましいと思います。

 ですから、平和というキーワードで、広島地域の戦略を構築して、そこに世界の知あるいは情報、あるいは資本を集中していくということは、非常にいいアイデアだなと思いました。

原参考人 ありがとうございます。

 どういう特区をいろいろな地域でこれからつくっていくのかということについては、まさにこれからいろいろなアイデアが出てきて、活発に議論されていくということだと思います。

 年末から年始にかけて指定がなされるというように閣僚の御発言としても聞いておりますけれども、別にそれで最終的に全てということではもちろんないと思いますし、今後さらに議論をしていく、その中で、おっしゃられたような平和ということをキーワードにした特区というのもあり得ることだろうと、もちろん思います。

 ただ、その中で、先ほどの御質問にもあった、これがナショナルプロジェクト的な事業なのか、あるいは国の制度に穴をあけるというものなのかというところにも若干かかわりますが、そのときに、国の何らかの規制に穴をあけてやっていくことなのか、何か制度を変えていくことなのかというところは、もう少し練って議論をしていく必要があるのかなというように感じました。

八代参考人 議員の御提案は非常に興味深いものでございます。

 ただ、やはりこの国家戦略特区というのは、あくまでも国がつくった規制のどこをどう変えるかということでいろいろなアクティビティーを広げていく、その中には当然、平和都市としての広島の発信というのもあるかと思いますけれども、そのためには、では、国際平和を発信するためにどんな規制が邪魔になっているかということを、やはり明確に地元の人たちから発信してもらう必要があるわけです。例えば、大勢の人が広島に来るときに、ビザの規制であるとか、あるいは、そういうツーリズム的なことの中に平和都市広島を組み込むときにいろいろな規制があって思うようにできないとか、それがやはり大事ではないかと思います。

 あくまでも私の理解では、国家戦略特区というのは、予算がメーンではなくて、規制改革がメーンであって、民間が自由な活動、別にそれはビジネスにかかわらずNPOでもいいと思うんですが、民間の自由な活動を妨げる規制を取り除くことがメーンでありますので、まずその規制をピンポイントで示していただくということが大事ではないかと思います。

中丸委員 四名の参考人の皆様、ありがとうございました。

 今の皆様のいろいろな御意見を頂戴いたしまして言いますと、冒頭に私が申し上げた、それは、国家戦略特区というよりは、やはり構造改革ができなかった、構造改革特区でできなかったことを規制改革実験特区的に行っていくところにやはりメーンがあるということだと思います。

 そういう中で、結局、仏つくって魂入れずではないですけれども、国家戦略特区をつくって規制は改革したけれども、結果はどうなったかというところが非常に大事だと思います。

 要は、特区を実際に実施して、評価をどうするかという、俗に言うPDCAサイクルという意味でいえば、今の現状でいうと、PとDはある、プランがあってドゥーまで来た、チェックとアクションの部分が、私の理解不足だとは思うんですが、非常にはっきりしない部分があるんです。

 評価、検証というのは、こういうのをやれば非常に重要だと思われまして、結局、これが三年後に結果が出るのか、五年後に結果が出るのか、そのときは、政権もどうなっているのか、誰が総理かもわからない、誰が大臣かもわからない、担当役人の人も誰かわからないというと、どこにも責任の所在がない状態で、このチェック、アクションというのが、本当に評価も含めて、第三者機関の方というのはあくまで第三者ですから、誰が主体的にこれをやっていくのかというのが私にはちょっと見えないんですけれども、その辺についての御所見をそれぞれ頂戴できればと思います。

八田参考人 今委員御指摘の点は極めて重要だと思います。これはやりっ放しじゃだめで、必ずチェックと評価が必要です。

 そして、従来の規制改革会議では、閣議決定した内容について本当に各省がちゃんとやっているのかということをフォローアップする仕組みを設けております。そして、驚くべきことに、サボっている省が幾つか発見されるんですよね。だから、そういうことはやはりどうしてもチェックしてなきゃだめです。

 それから、総合特区では、中にそういうチェックする仕組みを置いておりまして、そして実際に一年後、二年後、その現地に視察に参ります。そして、もともと目標とした数値が達成されているかどうかというようなことをチェックいたします。

 私は、この戦略特区においても、委員御指摘のような、そういう方策が必ず中で組み込まれていかなければならない、そういうふうに思っております。

山口参考人 今回提案されている規制改革は実験だという説明がほかの参考人の先生方からありまして、実験であるならば、やはり検証が必要であります。過去十数年行われた規制緩和の中でも、例えばタクシーの免許の増大みたいに過当競争を引き起こす等々といった弊害を伴ったものも多々あるわけでありまして、そこはやはり中立的に、その政策の効果について検証する仕組みを用意しなければいけないと思います。

 有識者を集めたチェック機関をつくるということについても、やはり特定の立場だけではなくて、いろいろな立場の有識者を入れた、本当の意味での中立的な機関をつくらなければならないと思います。

原参考人 ありがとうございます。

 二点あると思っております。一つは、まず制度の運用ということでありますが、従来の規制改革で、特例措置を設けても、実際につくられた制度の運用のところでゆがめられてしまうということは、これはなかったわけではないわけでありまして、特に担当の省庁レベルで任せておくと、そういうことになってしまう場合がございます。

 そこの部分については、今回の国家戦略特区では、先ほど申し上げました、特区ごとの統合推進本部、国と地方と民間とが一体になって、そこでいわばミニ独立政府として機能していくということをやりますので、ここでその運用面をきっちりと見ていくということは、そこである程度できるのかなと思っております。

 それからもう一つ、成果、効果について実証、検証していくという、これももちろん重要でありまして、これも先ほど来申し上げておりますように、規制改革の実験場ということでございますから、スピーディーに検証していくということが大事だと思います。

八代参考人 議員がおっしゃいました、まさにPDCAサイクルというのは、過去の規制改革でも極めて強調されておりまして、今回も当然、これから制度の細かいところをつくっていく中で、最も重要な課題だと思います。

 その評価をどうするかということなんですが、私自身が構造改革特区での評価委員会をやっていたときの経験だと、規制改革の評価なのか、もとになった規制の評価なのかというのが極めて重要な点なんですよね。各省庁の人はとかく、規制改革をするといろいろな弊害が起こるということを言っておられるんですが、しかし、そもそもその規制自体にどんな弊害があるかということは全く考えておられないわけですね。しかし、先ほど八田参考人が申しましたように、自由市場をベースにしている日本ですから、本来は規制をする方に立証責任があるわけなんですね。それが非常に無視されているのが日本ではないか。

 ですから、構造改革特区の評価というのは非常におもしろい基準を持っておりまして、つまり、特区ができて一年で評価をするんですね。これに対しては、多くの省庁から、一年ぐらいの短い期間で何で評価ができるのかという批判があったわけですけれども、そこで評価するのは、規制改革でどんなメリットがあったかではなくて、規制を改革したことによってどんなデメリットが生じたかということを検証するわけなんですね。多くの場合は、メリットも明確ではないし、デメリットもほとんどわからない、そうであればゴーというのが当時の構造改革特区の考え方であって、規制を外しても何ら別に明確な弊害がなければ、それは各省が規制の立証責任に失敗したんだ、こういう考え方をとったわけですね。

 だから、これがこのまま戦略特区で使われるかどうかはわかりませんけれども、評価ということについても、やはりいろいろな立場からあるということをきちっと考える必要があります。

 先ほど、タクシーの規制緩和というのが規制改革の失敗の代表例のように言われるんですけれども、これは私は、中途半端な規制改革の失敗だと思うんですね。つまり、あらゆるサービスがそうなんですが、供給がふえれば価格が下がる、価格が下がることによって需要が喚起されて、次の市場均衡点に行くというのが常識だったわけですね。それに対してタクシーの場合は、参入規制は撤廃したけれども価格規制は残したわけで、当然ながら値段が下がらないから需要がふえない。したがって、タクシーの空車の山があって、運転者さんの所得が減ったわけです。

 これは、中途半端な規制の失敗というか、本来あるべき規制をしたらどうだったか、それに対して、価格規制を維持したまま参入規制だけを外したことによってどんな問題が起きたかということを分けて考えないといけないわけで、その意味でも、規制の評価及び規制改革の評価というのは極めて重要な点で、今後きちっと検証する必要があろうかと思います。

柴山委員長 中丸君、質疑時間が終了しております。

中丸委員 はい。ありがとうございました。

 最後に一言だけ、ちょっと申し上げさせていただきたいのは、改革にしろ、そういう発展にしろ、最後にやるのは人でございます。

 安倍首相が例えられている三本の矢、三つ矢の教え、私の地元では、郡山城というのは毛利の地元でございますが、三つ矢という言い方をします。そういう中で、もう一つ実は有名な、石碑になっている教えがございまして、百万一心という教えと、この二つが実はセットでございます。

 百万一心、みんなで心を合わせるだけではなくて、百を一、日という分解の仕方をして、万を一、力と分解します。一日一力一心、皆が心を一つにして毎日力を合わせて進む、それが全ての物事をなし遂げていくんだという毛利の教えでございます。三矢の例え、三つ矢の例えには、実はセットでこれがある。

 最後は人の心を集められるものになるのが国家戦略特区の成功の道筋であるということを申し伝えまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

柴山委員長 次に、大熊利昭君。

大熊委員 みんなの党の大熊利昭と申します。よろしくお願いをいたします。

 まず、山口参考人及び皆様方にお伺いしたいんですが、山口参考人の方から、今回の国家戦略特区、強いものをより強くする、そういう発想があるんだということで、主に大都市向けの事柄ではないだろうかという御発言があったわけなんです。

 実は、私、きのうの質疑で大臣に対して、全く逆の視点で、つまり、本来日本の強いところ、あるいは強かったところ、電機とか自動車、エレクトロニクス、これが全然入っていないじゃないか、本来日本の強いところをもっと強くするような、それが国家戦略ではないかと。例えば自動車の自動運転の技術、技術だけじゃなくて、あれは運転している人がいませんから、事故になったらどうするのか。これはやはり全国的にやるのは道交法の関係で難しいと思うんですが、そういうのはどうなんだというふうにもお伺いしたんですね。

 実際、国家戦略特区の項目を見てみますと、医療とか農業とか、はっきり言って日本の弱いところ、だめなところ、これが入っているわけでございまして、ちょっとそこが違和感があったわけでございます。

 山口先生がそういう御発想だというのは、それは別に否定するつもりはないんですが、残りのお三方の参考人の皆様方、この辺の基本認識をちょっと教えていただければというふうに思います。

八田参考人 基本的に、例えば医療、農業がうたわれているのは、要するに、規制があるために育たない、まさに委員御指摘のように弱い産業になっているところを規制を取っ払って自由闊達なものにしようということです。

 むしろ、特定の伸びている産業に例えば財政補助をしようとか、そういう目的ではなくて、規制が障害になっているところを取り除こう、そういうことだからだというふうに私は考えております。

原参考人 ありがとうございます。

 おっしゃるように、強いところをさらに伸ばしていくというのも、もちろん大変大事なところであると思います。そのときに、ではどこの規制を改めていくとそれが実現するのかということを考えると、恐らく、今回取り上げている中でいえば、一つは雇用の規制、雇用ルールについての制度の改革というのがあるんだろうと思います。

 それからもう一つ、先ほど近藤先生から、できのいい経営者ならといったお話もございましたけれども、これは今回の特区の話とはややずれますが、経営者をいかに正していくか、よくしていくかということも課題であろうと思います。これは、恐らく社外取締役の導入とかそういう議論になっていくので、今回の特区の話とは別だと思いますが、恐らく、そういうところを通じて、いわゆる日本の従来強かったと言われるような産業界をより強くしていくということが果たされていくのかなと思います。

八代参考人 議員がおっしゃった、なぜ弱いところばかり取り上げるのかということですが、それは、既に前の参考人が言いましたように、なぜ、同じ日本人がやっている製造業は世界で戦っているのに、医療とか農業というのは非常に弱いのか。それから、さらに言えば、製造業全般が強い中でなぜ日本の医薬品だけこんなに弱いのか。

 これはアメリカ人の友人から聞かれて私も答えに詰まったわけで、とっさに、それは所管官庁が厚生労働省で、ほかの製造業はみんな経産省だと言ったら、非常に納得してもらえましたけれども。

 やはり価格規制、企業に対する、いろいろな形での手足を縛るような厳しい規制をしていることで、本来は、医薬品産業だってほかの製造業と同じような競争力を持てたかもしれないわけです。農業だって、日本のような、中国、韓国と比べて温暖な気候、豊かな水資源、勤勉な農民、それから十分な農地があって、これだけいい条件がそろいながらなぜ日本の米や小麦がこんなに保護されなきゃいけないのか。これも規制の弊害ではないだろうか。

 ですから、もちろん、自動車は公道の自動運転についての規制もございますけれども、それは別に、入れて何の問題もないと思いますが、まずは大事なのは、こういう、規制によって、いわば国が価格決定とかあらゆることに参入しているがゆえに弱くなっている日本の産業分野を重点的に国家戦略特区で取り上げる、それによって、少なくともほかの産業並みの競争力を確立する余地は非常に大きいのではないかという発想が背後にあるのではないかと思っております。

大熊委員 ありがとうございます。

 今ほど原参考人の方からも出ました、私、本会議の方でも、経営者の新陳代謝という大変失礼な言い方をしてしまいましたが、非常に重要な点だと思っておりまして、今般のこの法律には社外取締役の問題というのは触れていない、別途検討されているのかとは思うんですが。

 この国家戦略特区、バーチャル特区というんですかね、地域ということに限らず、例えば、ある企業集団、それは社外取締役を義務づけるんだと。一方で、そのインセンティブとしては、では、役員賞与、社外取締役をやることによって企業収益が上がってくる、それによって賞与が払える、部長さん、課長さんに賞与を出す前に、やはり役員にも出さなきゃいけないだろう、それを損金算入していくというようなインセンティブを与えることで、日本の産業競争力全体が上がっていくんじゃないか、この低いROE、ROAの日本の産業界、少しでも上がっていくんじゃないかなというふうに思うんですが、今後の検討ということかもしれませんが、そういう新しい、ここに入っていないもの、こういったこともあるんじゃないかと思うんですが、その点、原参考人にお尋ねいたします。

原参考人 ありがとうございます。

 今おっしゃられたような御提案というのは十分あり得ると思いますが、ただ、今回、そういった社外取締役を導入すればという制度、バーチャル特区ということを今回やっておりませんのは、この臨時国会に会社法の改正案が出されると承知しておりますので、そこで社外取締役の導入が義務づけられるということになれば、そういう特区を設ける必然性がなくなってしまいますので、今回はそういうことにはしておりませんが、仮に義務づけがなされないということであれば、そういう可能性は十分あるんじゃありませんでしょうか。

大熊委員 二段重ねの戦法ということですね。また別途、法律の方も期待しながら推移を見守りたいと思います。

 続きまして、逆の観点なんですが、なぜ入ってしまったのかという部分で、本会議でも申し上げたんですが、利子補給、これは、八田座長のペーパーを私もちょっとネット上で拝見をさせていただいて、何か急に入ってきてどういうことなのかという御指摘があったやに聞いております。これは、本会議で私も政府に問うたところ、ワーキングとは別の議論で政府として判断したんだということでございます。

 続いて、きのうのここの場の質疑でもって、その判断というのはどういうプロセスで何ゆえかというふうに新藤大臣に伺ったところ、いや、簡単に言うと、この利子補給、総合特区で入っているから、そして総合特区である程度実績があるから、だからこっちにも入れたんです、こういう御説明だったんですね。そういうことなのか。むしろ、この特区は、こういう支援措置じゃなくて規制改革中心でやるんだということなら、向こうの特区で入っているんだったらこっちは逆に入れないという、そういう論理じゃないかと思うんですね。その辺、いかがかというのを、ちょっと八田座長にお伺いしたいと思います。

八田参考人 今の御指摘ですけれども、こういう法案を提出するのは、やはり最終的には政府の責任でされるわけで、ワーキングというのはあくまでその骨子をつくるところですが、政府が別なお考えをなさるところは、もちろんそれに従うべきだと思っています。

 ワーキングとしては、基本的にはプロセスの問題として、もともとこの特区で補助金を出すということは言っていませんでしたし、意見募集する際にもそういうことは申しておりませんでしたので、プロセスの問題として、ワーキングとしてこれは責任を持つことはできません、そういう立場を表明いたしました。しかし、もちろん、その文書にも書きましたが、政府が決定されることは当然従うべきだと思っております。

大熊委員 同じ利子補給の点、原参考人と八代参考人にも御意見をお伺いしたいと思います。

原参考人 ありがとうございます。

 この利子補給の件については、これはワーキンググループで議論している中では出てまいりませんでしたし、それから、八月から九月にかけて提案の募集を行っておりますが、このときにも、規制改革と税制措置ということで、税制措置については、ペイ・アズ・ユー・ゴー、財政負担をかけないということを前提にして提案の募集を行っていたと思っておりますので、ちょっとそのプロセスとしては違和感を感じておりました。

 先ほども私がちょっと申し上げましたように、規制改革と支援措置というのが並び立っていると、どうしても支援措置の方に流れてしまうという問題もございますので、そういった意味でも、今回の国家戦略特区というのは、これは別に総合特区がなくなるわけではないので、総合特区と同じ制度をつくっても仕方がないので、その意味では、岩盤規制の突破ができるような仕掛けというところにより注力して運用されていくべきなのかなと思っております。

八代参考人 私は、この国家戦略特区には直接かかわっておりませんので、好きなことが言える立場ですので、先ほど、冒頭言いましたように、私は、これは反対であります。

 なぜかと申しますと、やはり、今回の国家戦略特区は、私は、総合特区よりはその前の構造改革特区の遺伝子を引き継いでほしい。何が違うかというと、総合特区は最初から地域を限定して、全国には広げないこと、そのための地域振興策というのが主たる目的なわけですね。ですから、利子補給という財源を使っても別に問題はないと思うんですが、この国家戦略特区は、いずれはというか、できるだけ早く地方の都市にもどんどん広げていく、行く行くは構造改革特区と同じように全国展開することを目標にしていたら、利子補給という国の財政措置であると、どれくらい費用が必要なのかわからないわけですよね。財務省は当然そういう意味では反対するはずで、だから、そういう財政制約に係るようなものは極力排していって、税制であればもちろんその点は違うわけですから、だから、こういう利子補給が入ることによって、私は、せっかくの国家戦略特区の数が制限されるような危惧を持たざるを得ないわけで、そういう意味で反対だと申し上げたいと思います。

大熊委員 ありがとうございました。

 続きまして、ちょっと興味深いなと思って、初めてこのリストを拝見したのが、八田参考人の重点十五項目の検討結果という紙でございますが、このうち一つだけバツがついている「地方議会(被選挙権)」という問題なんですが、これは直接、産業競争力の強化というより、拠点といいますか、新しい何かの地域で若い人が例えば首長さんになって地域を活性化していく、こういうようなロジックなのではないかと思うんですが、これだけが一つバッテンついてしまったんですね。

 ここについて、同じワーキングに入っていらっしゃった原参考人と座長である八田参考人に御意見をいただきたいと思います。

八田参考人 ありがとうございました。

 実は、この国家戦略特区は、当初においてはかなり大都市中心にということが言われておりました。ところが、特区のワーキンググループに毎回新藤大臣が御出席なさいまして、最初におっしゃったことが、大都市だけではまずいよ、やはり国家戦略というのは本当に地方も活性化する必要があるから、そういうところも目配りはしようねということをおっしゃいました。それで、意見募集をするときに、そういう、地方の活性化をするのも、数多くそういうものをつくれるわけでもありませんが、意見を募集しようということで募集いたしました。

 そこで出てきた案の中で、例えば農業に関する改革なんかはたくさん出てきたわけですが、この地方議会の改革というのは大変卓抜なものでした。これは、地方議会の被選挙権の制限年齢を二十五歳から二十歳まで引き下げろというものです。二十五歳だとみんなもう職業を都会で選んでしまっていて過疎地までやってこない、二十にすれば学生がやってくるだろう、通信教育であとの二年をやれば大学はできる、そういう若い世代が過疎地に入り込むように立候補してくれると過疎地としては活性化する、そういう提案がございました。

 私どもは、これはちょっと普通じゃ思いつかない考えで、確かに過疎の地方自治体がそういうことを望むならばやってもいいということにしたらどうかというふうに思い、やっていったんですが、これは総務省の非常に強い反対がありました。そういう状況ですので、これはその反対を押してまでということではないというので、もともとが岩盤規制といった性質のものではありませんから、おりたというわけであります。

原参考人 ありがとうございます。

 八田参考人の答えられたことと重複しないようにお答えいたしますが、地域活性化という観点で非常に重要な提案だと思ってワーキンググループで取り組んだということは、今おっしゃられたとおりです。

 これについて、総務省さんから、要するに、民主主義の根幹にかかわる話なので特区になじまないということで御反対があって、今回、バツということになっているわけでございます。

 ただ、これはほかの国で見ますと、地方ごとに選挙権の年齢、被選挙権の年齢を変えている例というのは決してないわけではありませんし、北欧なんかですと、まさに特区のような実験的な制度で選挙権を、たしか十八から十六に引き下げるんだったと思いますが、ちょっともし不正確であれば済みません、そういう実験をしている例もあったかと思います。

 そんなことを考えても、十分あり得る提案かなと思っておりましたが、今後、全国レベルでむしろ検討するということであれば、その方向でさらに引き続き検討が進められるべきものかと思っております。

柴山委員長 質疑時間が終了しております。

大熊委員 はい。以上で終わります。ありがとうございました。

柴山委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 きょうは、参考人の皆さんから大変貴重な御意見をいただきました。心から感謝しております。

 私は、議論全体の進め方として、情報は全て公開し、国民の声を反映させながらまとめていく、これが基本だと思っております。

 八田参考人に具体的なことで確認をしておきたいのですが、配付した資料、お手元にあると思いますけれども、これは一ページ目を見ていただきたいのですが、第五回国家戦略特区ワーキンググループの配布資料のリストなんです。これは官邸のホームページに載っていたわけですが、それを見ますと、非公開にするというのが資料一、参考資料三、この二つが非公開となっているわけです。これを非公開とした理由は何だったのでしょうか。

八田参考人 ありがとうございました。

 私どもは、もうとにかく、極力、会議は公開すべしと思っております。そして、特に役所がとにかく普通に聞けば理屈にもならないような理屈を言うときには、それが公開されることによって、どっちに分があるかということははっきりすると思いますので、その公開ということはもう根本だと思っております。ただし、座長が判断するときには非公開にすることができるという条項がございます。

 この議論のときには具体的にどういう状況だったかというと、これは、お察しのように、非常に短い時間でやっておりますから、打ち合わせの時間なんかもそんなにとれないわけで、このワーキングの本番のときに、コンセプトの紙のたたき台を大臣がお出しになりました。それで、大臣は、これはもう忌憚なく議論してほしい、どんな批判でもいいというふうにおっしゃったんですね。それで、それならば、そこで後で公開されることになって、みんながちょっと遠慮するというようなことがあってはまずいだろうと。だから、私は、では、これは非公開にしましょう、そして存分に意見を言ってください、そういうふうにいたしました。それが理由でございます。

 それから、ここでお配りいただいたものに書いてある資料一というのは、言ってみれば、後で正式に出てきたものの本当にたたき台であります。その一部のところに関しては、大変熱のこもった議論があった。それから、私の提出資料というのは、そのコンセプトペーパーを事前に見ておりましたから、それに対する、ある意味で反論の資料として用意したものでございます。したがって、これもその議論の中身がその時点で出るというのはまずいと思いましたので、非公開といたしました。

 しかし、今は全部が終わっていますから、公開にしてあります。

佐々木(憲)委員 私は、この程度のと言っては失礼ですけれども、こういう資料は極秘資料でも何でもないので、たたき台であろうが素案であろうが、表に出して、議論をして、こういうふうになりました、これをしても何もおかしくないと思っております。

 といいますのは、例えば「成長戦略(素案)」というのがありました。これは公開していますね、素案ですけれども。それが再興戦略という形で成案になっていますね。そういうふうに、素案の段階から公表する。あるいは、一体改革の場合も、一体改革素案が出て、それでまた直して成案にしている。こういう経過、これは、国民が見て、ああそうか、これがそういう経緯でこういうふうに直ったんだなと納得できるわけですね。ですから、素案だからとか、たたき台だから公開しないというのは、ちょっとやり過ぎではないかというふうに思います。

 これは私、非公開になっているので、資料を出してくださいと何度も要求したんですけれども、なかなか出てこないんですね。おとといの午後になりましてようやくこの資料が出てくる、こういう経緯でありました。

 きのう、新藤大臣にお尋ねする機会がありましたのでお聞きしましたら、これは八田座長が決めたものです、こういうふうに言われたのできょうお聞きしたんですが、できるだけ公開していただきたいと思います。

 それから、もう一つは、参考資料三ですね。これは八田座長自身が提出した資料でありまして、「規制の立証責任について」という表題がつけられていて、これは議事録そのものが資料になっているわけですけれども、これを非公開にした理由がよくわからない。なぜならば、その議事録は既に公開されているものなんです。公開されている一部を配ったのは非公開であるというのは、理屈がわからないんですが、なぜそういうふうなことをしたんでしょうか。

八田参考人 議事録は、一部未公開というふうに書いてございます。したがって、議事録全てが公開されているわけではなくて、この資料を使った部分の議論というのは未公開でございます。

 そして、これについては、これは未公開ということを前提に議論したものでございますから、その関係の方々の承諾が要ると思いますが、もちろん全ての方が承諾されれば公開してもよろしい内容です。要するに、先ほどの役所と云々というようなのとは事情が違います。

 それから、委員が御指摘になった、いろいろなたたき台をこういう役所の文書でつくっていく段階で、ある種の節目節目に公開していくというのは当然あっていいじゃないか、もう御指摘のとおりです。

 普通の場合は、委員の間でこういう案というのはつくっていくものなんですよね。そして、中途段階ができるものなんですね。その場合に公開するのは何の問題もないと思いますよ。この場合には、もう本当に大臣が御熱心で、大臣がみずからおつくりになったわけですよ。それについて、本当に大臣が寛容にも、もうこういうものをつくったから、君たち、自由闊達に議論してくれないかとおっしゃったわけです。そこを私の判断で、それなら、確かにそうですね、それでは遠慮なく言わせていただきますねというので、そのかわりに非公開にしましょうという判断を私がしたということで、ちょっと事情が普通の場合とはかなり違うということです。それで、皆さんもそのことを了解した上で伸び伸びとした議論をされて、最後に結構いいものができ上がった、そういうことでございます。

佐々木(憲)委員 この参考資料三というのは、八代参考人の発言の部分なんですけれども、八代参考人は、これは公表していただきたくない、こういう意向を伝えて非公開になったということで理解してよろしいんでしょうか。

八代参考人 私は、特にそういうことは事務局には言っておりません。

佐々木(憲)委員 別に、既に公開されている議事録であり、御本人からはこれを非公開にしてくれということも特になく、八田座長自身が配付した資料なのに、公開しないというのはどうも理屈がよくわからないですね。

 例えば、配付資料の四ページを見ていただきますと、「だからとにかく制度を改革するときはまず特区でやってみて、全国でやるというのは規制改革でなくてもやるべきことであって、どちらがより多くの国民をモルモットにしているのか。そういうような議論の仕方ができるのではないかと思う。」と発言をしていますが、私は、この発言というのはちょっと上から目線で国民をモルモット扱いにするものだとちょっと不快に思ったんですが、こういうものを出したくなかったということなんでしょうか。

八田参考人 全くそういうことではございません。

 では、一応発言の当事者の個々の名前というようなことを伏して、そこでの議論がどういうものだったかということをお話しいたしたいと思います。

 ここの参考資料はなぜ必要だったか。しかも、これを非公開としたのは、本質的にまだ成案になっていないものだったんです。それでもう本当に非公開の議論ならばこれを出しましょうということで、恐らく八代さん自身も最終的にこれをチェックしていない、文章もチェックしていないものです。それで、それを議論のために私が提出したものです。

 それはなぜかといいますと、こういうことです。

 もともとの、事務局から提案された、大臣もごらんになったその提案の中には、提案した人自身がその規制のリスクについて評価し、そして、これはリスクがありませんということを証明しなければならないといったような文章が入っていたんです。私はそこを批判したんです。ほかの委員も批判されましたけれども、少なくとも私については発言したことは言ってもいいですが、それはあり得ないと。

 要するに、規制というのは元来ないのが原則であって、自由が原則であって、それを、規制を設けるなら、その規制を設けている官庁がその根拠を示すべきであると。それを、規制で困っている人たちが提案して、これは規制改革しても一切弊害はございませんという証明をするなんて、もうとんでもない話だ、だからそこの条項を外すべきだというのが私の主張です。

 そして、その主張をする際に、たまたま、その前に、ヒアリングのときに八代さんがおっしゃった発言、それから、そこに私が、要するにこういうことですねとまとめた議論というものは大変関係あると思いましたので、この議事録自体は、もちろんその段階ではまだ完成品になっていませんでしたけれども、非公開なところだからということで私は提出して、そして、こういう意見もございましたよ、私も賛成ですということを申し上げたと。その理由でございます。

佐々木(憲)委員 それは当然、意見は、賛成意見、反対意見、あるいは対立する意見、当然出て当たり前なので、その出ている記録、この意見に対して否定したからそれは公開しないというのは、これはおかしいと思うんです。賛否両論あって、それを国民が見て判断するわけでありまして、ですから、ちょっとこれは余りにも理屈が私はよくわからない。

 それからもう一つ、お配りした資料で、議事概要の四ページのところと七ページの、これは非公開というふうに、今、もとのが非公開というふうになったので、その部分に関連する議論のところは非公開、こうなっていると思うんですが、もとをもう出しちゃったわけですし、それから、もうそれは基本的に終わっているということなので、これは当然公開するというのは当たり前のことだと思いますが、いかがですか。

八田参考人 これは、私も含めて、非公開を原則で発言して、大臣に対して失礼なことも申し上げているわけですよね、それを今から公開するというのは、私は、その発言者の同意がなければやはり信義に反すると思います。

 それから、委員がおっしゃるように、こういうものは原則公開でやるべきだというのも全く賛成です。ただし、この場合には、先ほど申し上げましたような非常に特殊な状況があった。そこで、それは私の判断でございました。

佐々木(憲)委員 いずれにしても、公開を原則にするとおっしゃっているわけですから、今後そうしていただきたい。

 それから、最後に一点だけ、山口参考人にお聞きします。

 今回の法案が作成されてくる経緯は、アベノミクス特区を提唱した竹中氏が橋下大阪市長、猪瀬都知事、大村愛知県知事、総務大臣、こういう方々と協議をして、八田座長のワーキンググループに集まる有識者が項目を選定していく、そういう過程で、安倍総理直結で法案ができているわけですね。国会に出す前の段階から国民の声が反映するような仕掛けがないわけです。

 こういうやり方についてどのように思われるか、一言だけ、最後にお願いします。

山口参考人 先ほど来議論を伺っていまして、例えば、医療、農業、弱いところだとおっしゃいましたけれども、弱いというのは思い込みです。日本の医療は世界最高水準です。農業も、確かに価格が高いですけれども、あれだけの人が地域に分散して、農業に従事して、そしてコミュニティーを維持しているという意味でいえば、大変な役割を果たしている。

 それに対して、要するに金もうけという一つの原理を当てはめて、どんどん変えていこう、既存の仕組みを変えていこうという、ある種非常に党派的といいましょうか、特定の価値観に立った主張でありまして、それ自体が適切なものかどうか、やはり広く国民的な議論を仰いだ上で案を練っていくというプロセスが必要だと思っております。

佐々木(憲)委員 終わります。ありがとうございました。

柴山委員長 次に、村上史好君。

村上(史)委員 生活の党の村上でございます。

 きょうは、早朝から長時間、ありがとうございます。私が最後でございますので、よろしくお願いしたいと思います。

 まず、規制改革のことで、私なりの考えを述べさせていただきます。

 規制改革、誰も反対する人はいないと思います。ただ、なぜ規制改革をするのか、誰のために規制改革をするのか、そのことがきちっと明確になっていなければ、今ほどのいろいろな意見が出てくる、これは特定の人のためではないかとか、そういう議論になってしまう。

 最終的には、やはり、国民の生活の向上そしてまた安心のために資する改革であるというのが基本だと思います。それは、経済成長、経済活動のための規制改革であれ、医療の改革であれ、最終的には国民のためになるんだというところが明確になっていないから、さまざまな意見が出てくると思います。

 そういう面で、今回の特区法でございますけれども、その辺のところが必ずしも明確になっていない、そのプロセスも、最終的にどういう形で国民に、生活に恩恵がある、寄与するんだというところが明確になっていないというところが、いろいろな議論が出てくる背景にあると思います。その点が、まず一点。

 それと、規制改革なんですけれども、上から規制改革をやっていくか、それとも、やはり規制の撤廃を求める肌感覚、それを感じているのは現場の人々だと思います。そういう面では、国主導のやり方と同時に、ボトムアップの意見集約型の規制改革は手法としてあり得ると思うんですけれども、私はボトムアップ型でやるべきだと思っておりますけれども、その点について、八田先生と山口先生に御見解を伺いたいと思います。

八田参考人 ありがとうございました。

 ボトムアップ型の規制改革というのは非常に必要であります。そしてそれが、例えば総合特区、それから構造改革特区も大体下からの提案に基づいてやってきたものであります。それから、広くいえば、規制改革会議は毎年二遍、提案を全国公募しています。これは個人でもできます。したがって、こういうものがボトム型のものとしてあります。

 ところが、ボトム型ではなかなか難しいものもあるんですよね。

 例えば、大都市の都心で、都心の居住をふやすということは、そこに入ってくる人たちはまだその都心にいないわけですね。どこかいろいろなところにいて、ひょっとしたら外国にいるかもしれない。この人たちの意見をどうやって代弁するのか。そこの事業者なのか何なのかということなんですが、少なくとも、そこの地元の住民によって選ばれている議員さんや市長さん、区長さんとは相当に利害が反するんですね。新しい住民が入ってきたら既存の政治構造が壊れますから、それは反対しますよ。都心居住に反対します。そういうときに、いや、やはり国の観点からこうだから一緒にやりましょうよということで国が入っていって、全部お任せにしないでやっていくということはやはり必要だろうと思います。

 それから、国全体の観点からは、最新の医療技術を持った病院をつくる、病床をふやすというようなことも必要な場合がある。ところが、地元の医師会は反対しますよね。そうすると、これも、なかなかボトムアップの自治体からの要望としては出にくいんですが、これも国が一緒になって、こういうことをやりましょうよといったら、いろいろなことで進み出すことができる。それが今回の特区のある意味で大きな目的でもあります。

山口参考人 岩盤規制という言葉が先ほどよく使われておりましたが、これはある意味で非常に偏った言葉だと私は思っております。その根底にあるのは、例えば農業でも医療でも、既存の仕組みの中で活動してきた組織、団体は悪であるという前提に立っていると思います。しかし、実態はそう単純なものではないわけであります。

 例えば、この間、北海道新聞で、北海道も特区に指定されるかもしれないという記事がありました。農業について特区に指定して、大いに規制改革をすべし、国からそういう指示が来るかもしれないというお話であります。

 しかし、北海道にとって、それは本当に、押しつけられた、上からの指示ということになるわけですね。北海道の農業は、確かにいろいろ問題があって、農協等の既存の組織、団体の役割等についてももちろん検証することは必要ですが、東京の中央政府で、ある種、特定の思い込みで決定された政策が上からおりてくる、これはやはり、本来の地域の農業、産業等の改革にとって、むしろ大きな障害となるという危険性もあると思います。

村上(史)委員 ありがとうございました。

 それでは、原先生、八代先生にお伺いしたいんですが、いざ、この国家戦略特区が実行されたという段階で、そこでちょっと問題になってくるのが、特区に指定された地域とそうでない地域、また、民間の提案を受け入れられて、指定をされた企業とそうでない企業、その間にやはり大きな格差というものが新たに生じるのではないかなという懸念がございます。

 この規制改革は、あまねく日本じゅうに広げていくんだという趣旨はわかるんですけれども、特に企業の場合、先行した企業とそうでない企業では、大きな差が出てまいります。こういう場合に、どういう措置が必要なのか、どうすべきだとお考えなのか、お尋ねをしたいと思います。

原参考人 ありがとうございます。

 自治体ですとか、あるいは事業者ですとか、全て一律に平等に取り扱わなければならない、必ずしもそういうことではないんだろうと思います。

 特区というのは、そもそも、やる気があって、いろいろな改革に取り組みたいという思いを持っている自治体を、あえて言えば、それをちょっと違う取り扱いをして、そこで伸びていく、新しいチャレンジが成功するということが実現すれば、それはほかの自治体にとっても、よい影響を与えるでしょうという、そういう制度だと思います。

 これは、事業者にとっても、あるいはほかのいろいろな活動主体にとっても同じことでございまして、一定の特性に応じて何らかの別の取り扱いをしていくということは十分あり得るということではないかと思っております。

八代参考人 ありがとうございました。

 まず、御質問にお答えする前に、先ほどから国家戦略特区という名前に注目して、これは国から地方への押しつけであるというお考え方がいろいろ出たわけですけれども、これはそれぞれの自治体の首長さんがむしろ手を挙げられて、そこと国とが連携してお互いにトップダウンでやる、これはもう構造改革特区と基本的に同じ発想なわけで、当然ながら、その地域の声を無視して単に押しつけるなんということは、もうできるはずがないわけですね。

 そういう意味で、そうだとすると、逆に、手を挙げたにもかかわらず、指定された地域と、そうでない地域はどうしてくれるのかということで、これは、構造改革特区ではその問題はなかったわけで、声を上げたところはもう全部、そういう意味では指定されたわけです。ただ、今回の国家戦略特区は、いろいろな意味で、法人税の減税というか、税制上の優遇措置のような財政措置がついておりますので、構造改革特区のように、手を挙げているところ全てにとりあえずは出すことはできない、しかし、きちっとした検証を踏まえて、速やかに全国の希望をするところには広げていくということが当然入っていると思いますね。ですから、それは、検証の問題とか税制の問題等があって、構造改革特区のようにはできなかったということだと思います。

 もう一つは、やはり特区に限定してこういう規制を改革するということは、国民をモルモット扱いにすることだという批判者からの声があるわけですね。私は、これはまさに上から目線の考え方で、とんでもないことだと思います。私は、このモルモット説に対しては断固反対しているわけでありまして、その点は誤解がないようにお願いしたいと思います。

村上(史)委員 ありがとうございました。

 私は、そういう立場で質問をしているわけではありませんので、誤解がないように。決してモルモット扱いをするとかそういうことではなくて、特区が本当に規制改革に資するのかどうかというところが問題点であって、それに対する質疑が今なされているというふうに私は理解をしております。

 引き続きまして、山口先生に、最後になろうかと思いますけれども、質問をさせていただきます。

 きのうの委員会でも、私、質問をさせていただきましたが、検討項目の中に、先ほどもちょっと議論、先生からの御発言もございましたけれども、雇用の規制緩和、有期雇用の問題が検討項目に挙げられております。先ほど私が申し上げましたけれども、誰のための規制改革なのかということを明確にするならば、一体これは誰のための雇用改革なのか。政府からの話では、雇用の流動化を促して、そして新たな雇用を創出する、そのための規制改革になる、新たな雇用創出をしていくものだ、それと、そこで働く人々のスキルアップにも貢献するものなんだという説明はあります。

 しかし一方で、きのうも申し上げましたけれども、決して規制の緩和が新たな雇用の創出につながっていないというのが、EUの例でもきのう例示をいたしましたけれども、現実には、政府の思いとは裏腹なことも起こっているという面においては、この雇用の規制緩和というのはよほど慎重に考えるべきだというふうに思いますけれども、山口先生の御見解を伺います。

山口参考人 やはり、三本目の矢、成長戦略の議論の全体の文脈を見ますと、今回の雇用に関する規制改革のための特区という議論は、安倍総理もおっしゃっているように、企業にとって活動しやすい環境をつくるというような手段ということになるだろうと思います。

 企業が活発に投資をして雇用をつくるということは、それ自体はもちろん結構なことなんですが、雇用の質をどう担保するか、あるいは、雇用の流動化に伴って、失業のリスクを実際にかぶらされる人々の生活をどう支えるかという問題について、仮に、地域限定で何か規制緩和をするのであれば、それによって生じるリスクの拡大に対しても、その地域固有の手厚い政策を準備しなければバランスはとれない。要するに、企業にとってのみ有利な特区ということになると思いますので、この点、やはり、規制改革がもたらすリスクへどう対処するかという別の観点について、しっかりと検討していただきたいと思います。

村上(史)委員 ありがとうございました。

 四人の先生方には、本当に貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。

 質問を終わります。

柴山委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、一言御挨拶を申し上げます。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

 次回は、明十五日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時五十七分散会


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