衆議院

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第10号 平成25年11月28日(木曜日)

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平成二十五年十一月二十八日(木曜日)

    午後一時四十六分開議

 出席委員

   委員長 柴山 昌彦君

   理事 関  芳弘君 理事 平  将明君

   理事 橘 慶一郎君 理事 西川 公也君

   理事 平井たくや君 理事 近藤 洋介君

   理事 松田  学君 理事 高木美智代君

      青山 周平君    秋葉 賢也君

      大岡 敏孝君    鬼木  誠君

      勝俣 孝明君    川田  隆君

      小松  裕君    新谷 正義君

      田所 嘉徳君    田中 英之君

      高木 宏壽君    豊田真由子君

      中谷 真一君    中山 展宏君

      長島 忠美君    福山  守君

      山田 美樹君    吉川  赳君

      大島  敦君    後藤 祐一君

      津村 啓介君    若井 康彦君

      遠藤  敬君    杉田 水脈君

      中丸  啓君    山之内 毅君

      輿水 恵一君    大熊 利昭君

      塩川 鉄也君    村上 史好君

    …………………………………

   参考人

   (青山社中株式会社筆頭代表CEO)

   (中央大学客員教授)   朝比奈一郎君

   参考人

   (早稲田大学法学学術院教授)           島田 陽一君

   参考人

   (千葉大学大学院専門法務研究科教授)       下井 康史君

   参考人

   (日本国家公務員労働組合連合会中央執行委員長)  宮垣  忠君

   内閣委員会専門員     室井 純子君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月二十八日

 辞任         補欠選任

  赤嶺 政賢君     塩川 鉄也君

同日

 辞任         補欠選任

  塩川 鉄也君     赤嶺 政賢君

    ―――――――――――――

十一月二十八日

 憲法違反の推進法を廃止し社会保障の拡充を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一五二号)

 同(笠井亮君紹介)(第一五三号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一五四号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一五五号)

 同(志位和夫君紹介)(第一五六号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一五七号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一五八号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一五九号)

 TPP交渉から撤退することに関する請願(篠原孝君紹介)(第一八六号)

 全ての子どもの権利が保障される保育制度・子育て支援策の実現に関する請願(宮本岳志君紹介)(第二六四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 国家公務員法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一九号)

 国家公務員法等の一部を改正する法律案(渡辺喜美君外三名提出、衆法第一〇号)

 幹部国家公務員法案(渡辺喜美君外五名提出、衆法第一五号)

 国家公務員法等の一部を改正する法律案(津村啓介君外四名提出、衆法第一六号)

 国家公務員の労働関係に関する法律案(津村啓介君外四名提出、衆法第一七号)

 公務員庁設置法案(津村啓介君外四名提出、衆法第一八号)


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     ――――◇―――――

柴山委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、国家公務員法等の一部を改正する法律案並びに渡辺喜美君外三名提出、国家公務員法等の一部を改正する法律案、渡辺喜美君外五名提出、幹部国家公務員法案、津村啓介君外四名提出、国家公務員法等の一部を改正する法律案、国家公務員の労働関係に関する法律案及び公務員庁設置法案の各案を一括して議題といたします。

 本日は、各案審査のため、参考人として、青山社中株式会社筆頭代表CEO・中央大学客員教授朝比奈一郎君、早稲田大学法学学術院教授島田陽一君、千葉大学大学院専門法務研究科教授下井康史君、日本国家公務員労働組合連合会中央執行委員長宮垣忠君、以上四名の方々から御意見を承ることにいたしております。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。各案について、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 朝比奈参考人、島田参考人、下井参考人、宮垣参考人の順に、お一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、参考人各位に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、朝比奈参考人にお願いいたします。

朝比奈参考人 ただいま御紹介いただきました青山社中筆頭代表CEO・中央大学客員教授の朝比奈でございます。

 本日は、国家公務員法等の一部を改正する法律案などにつきまして私見を述べさせていただく機会を頂戴いたしまして、まことに光栄に存じます。関係者の皆様に厚く御礼申し上げます。

 まず、所見を述べるに先立ちまして、簡単に自己紹介を兼ねて私の立ち位置について述べさせていただきます。

 私は、現在、日本を活性化するための組織、青山社中株式会社のCEOを務めており、主要業務の一つとして、政党や議員個人などに対する政策作成等のアドバイザリー業務をさせていただいております。同時に、中央大学客員教授として、行政学について講義、研究等を行っております。したがいまして、本日のテーマである公務員制度改革につきましても、民間人の立場から、客観的に制度を見続けているという立場でございます。

 一方で、現在の会社を創業しましてまだ三年でございまして、それまでは約十四年間、霞が関は経済産業省の方に勤務しておりました。エネルギー政策やインフラ輸出政策等々、非常にやりがいのある仕事をさせていただいておりましたが、同時に、若手官僚として、率直に申し上げて閉塞感というものも感じておりました。

 かつての私を含め、若手官僚の多くは、命を削って、深夜残業、休日出勤もいとわずに必死に仕事をしているところでございますが、彼らは、残業などの業務の多忙さそのものへの不満だけから閉塞感を抱いているというわけではございません。むしろ、多忙であるがゆえに本質的な政策の企画立案あるいはその実施に時間が使えないこと、結果として政策がなかなか刺さらない、そしてもどかしさ、何のために忙しいのかわからない、こういうところに非常に問題を抱いているわけでございます。いわば、成績の上がらない受験生のように、大変、時間だけ忙しく働いている割には効果が見えなくて、世の中からバッシングされ、そういうことに対して閉塞感を感じていて、ひどいケースになると命を絶ったりということもございます。

 私もそうでしたし、少なくない若手官僚が、国難のときにあって、今こそ霞が関がもっと効率的、効果的な政策をつくるべきなんじゃないか、そういう体制にするべきなんじゃないか、こういうふうに思っておるわけでございます。

 そんな中で、私は、若手官僚の仲間と一緒に、省庁横断的な改革の会であります新しい霞ケ関を創る若手の会というものを組織しまして、これは通称プロジェクトKと呼んでおりますが、現在、三代目の代表のもと、いろいろな活動をしているところでございますが、役所を離れるまで約七年にわたって代表を務め、司令塔組織のあり方、公務員制度のあり方、業務改革のあり方等々について、単なる批判ではない建設的な提案というものを、書籍の形あるいは政権幹部への直訴という形で、実名を出して行ってまいりました。

 先生方は、ふだん、どちらかというと恐らく役所の幹部の方々とのおつき合いが多いのではないかというふうに思いますが、本日はぜひ、下々の公務員と申しますか、特に国や社会のために貢献したいと感じている若手公務員の立場に寄り添っていただいて、公務員制度に関する私のお話を聞いていただければというふうに思っております。

 時間も限られておりますので、主に三つのポイントに絞って申し上げたいというふうに思っております。

 まず第一の点なんですけれども、これは、公務員制度を貫く哲学、すなわち真の課題は何で、ボウリング等に例えて言えばセンターピンは何なのかというところをぜひわかりやすく打ち出していただきたいという点です。

 学者レベルですとかあるいは現場レベルで公務員制度についていろいろな議論をすると、それこそ無数に課題が出てきます。評価制度の不備でありますとか、政官関係についての課題、若手の士気低下、天下り問題、専門家の少なさ等々、もう枚挙にいとまがありません。

 それぞれに重要な課題であることは確かなんですが、しかし、企業の人事制度改革だとかを見ても明らかなように、耳当たりのいいといいますか、成果主義ですとか、さまざまないいと言われているものをごった煮にして改革をしていくと、もうわけがわからなくなっていく。組織全体として、一体何を目指して、そしてどこを変えていけばいいのかというところをぜひ中心に据えていく必要があるのではないかと思うわけです。机上の空論で、理屈が正しいからということで、あれもこれも一度にやって、そして現場やあるいは国民にとってよくわからない改革になるということが非常に問題であるのではないかというふうに思います。

 したがって、ボウリングでいえば、まずセンターピンは何なのかということになるんですが、私は、その点、常々、公務員制度改革のセンターピンの一つの有力な候補は、縦割り行政の打破という哲学をわかりやすく掲げることではないかというふうに感じております。真に国民のためになるいい政策をつくるためには、縦割りの弊害の象徴ともいうべき各部局間の調整コストというのをどれだけ下げるかというのが非常に重要な鍵になります。

 今回の各党の公務員制度改革関連法案等を拝見させていただくに、一つの大きな共通点は、内閣における適格性審査や幹部候補者名簿の作成あるいは内閣人事局の設置という、縦割り行政の打破ということにつながる施策が共通のものとして見られます。いわば、各省の幹部の顔を内閣に向けさせるということでありまして、私も若手官僚のころ、「は」を「も」に変えるとか、いわゆるてにをは修正みたいなことで一日費やして交渉したりということもよくありましたが、そういった無駄を幹部の意識を共通させることでなくすということが非常に有意義なのではないかというふうに思います。

 第二に申し上げたいのは、今回こそは、ぜひ、何らかの成果、アウトプットというものを必ず出していただけないかということであります。

 公務員制度についての問題の指摘は、今に始まったことではございません。きょうは資料に少し持ってこさせていただきましたが、資料一の方を見ていただきますと、役人学三則というのを書かせていただきましたが、それこそ一九三一年から、例えば第三条なんかを見ていただきますと、縦割りについての問題が皮肉を込めて書かれておるわけですけれども、ずっと指摘されているところです。

 その後も、土光臨調で公務員制度について議論されたりしておりますが、最近の動きだけを見ても、平成九年以来、私が入った年なんですけれども、行政改革会議の最終報告でも指摘がありますが、それこそ何度となく公務員制度改革に向けた閣議決定や法律というのが出されたり、審議されてきました。

 しかし、二〇〇七年から八年にかけての国家公務員制度改革基本法などの一部の例外を除いて、残念ながら、ことごとく途中で挫折している歴史でございます。資料二にその概要を書かせていただきましたが、閣議決定はおろか、法律に年限が定められていても守られないという状態が続いております。昨今、閣議決定や法律の重みというのが決定的に何か軽くなっているなという実感を持つのでございますが、若干うがった見方をすれば、公務員制度改革におけるこの挫折がそういった雰囲気をつくっているんじゃないかとすら思えるほどでございます。

 若手官僚の間でも、公務員制度改革というのは何度議論されても政局で結局動かないよ、こういう感じすら蔓延しているところでございまして、ぜひこの機会に何としても結果を出していただきたいということが重要なのではないかというふうに思っております。

 若手官僚は、政治のリーダーシップというものに期待せざるを得ません。私が申し上げるのも僣越なんですが、政治家に期待されている役割は、学者でもなければ、ましてや評論家でもないということで、ぜひ、物事をいい方向に動かす大局観を持った実務家として動いていただければというふうに切に願う次第でございます。

 政治とは、情熱と見きわめ見通す力の二つを駆使しながら、かたい板に力を込めてゆっくりゆっくりと穴をあけていく作業であるとマックス・ウェーバーも言っておりますが、板が真っ二つに割れなければだめだということでぶつかっていると何も通らないということでございまして、皆様は政治のプロでいらっしゃいますから、ぜひ、自説を掲げるということだけではなくて、何とか、若手公務員のためにも何らか穴を少しあけていただければというふうに強く思うところでございます。

 第三に申し上げたいのは、仮に、今回、与党案が通る等の結果が出たとしても、改革はこれで終わりではないということでございます。

 申し上げるまでもありませんけれども、仮に制度というものが器だとしたら、その器に魂を入れていくのは、これは運用ということになっていきます。

 例えば、今回の与党案を拝見するに、各省幹部の顔を内閣に向けさせて各省の縦割りを人事面から打破するという仕掛けとして、各省幹部の適格性審査や幹部候補者名簿の作成があるわけですが、これが仮に、単に形式的に、幹部の数が、キャリアが多過ぎるんじゃないかとか、女性の割合はこうしなさいということだけに終わってしまうと、その意味は大きく損なわれてしまうと思います。

 やはり、肝心なのは、任免協議等に当たって、むしろ内閣が原案をつくれるというぐらいの運用というのが、縦割り打破ということに関して考えると重要でございまして、そうであると、例えば与党の国公法案の第六十一条の二の第一項第三号なんかは、既存の幹部職員と大臣推薦の幹部職員の候補以外に、総理や官房長官なんかが幹部候補者をノミネートできることが読み込め得るわけですけれども、これは、政令で委任されているところ、今後の政令ということが非常に重要になるわけでございます。

 そのほか、幹部候補者の適格性審査の審査対象の人数でありますとか、若手を登用するための特例降任の規定でありますとか、こういうのも全て運用次第というところがかなり大きくなりますので、私自身、役人時代、機構・定員要求等々もさせていただきましたが、非常に、級別定数とのつなぎとか、いろいろまず事務作業が発生するわけです。こういうところも、せっかく一元化しているわけですから、ぜひ運用のところできちんと機能するように見守っていただきたいと切に願うわけでございます。

 そして、最後に申し上げたいのは、今回の公務員制度改革というのは、全く一つの改革の手段ということでございまして、当然ながら、最終目的ではございません。よい政策がつくられて、そしてそれが実施されていくという究極の目標のための、霞が関全体の、場合によっては霞が関を超えた、国会も含めたガバナンスの改革をどういうふうにしていくのかという大きな議論が本来あるべきでございます。

 その目標のために、企業でいうならば、まさに、人事制度改革、組織の改革、業務の運営の仕方、そういったものをガバナンス全体として見直すということが大事でございまして、言うならば、霞が関全体のガバナンスの改革という中で、どこの部分を人事制度改革、公務員制度改革で担っていくのか、組織改革で担っていくのか、こういう全体像を今後ぜひ意識していただきたいということでございます。

 きょう、一応参考までに、私ども若手官僚でつくりましたプロジェクトKの改革案というのを資料に入れさせていただきました。特に公務員制度改革というところについては、資料の三と四というところに書かせていただいておりますが、今回、まず一歩は進めていただきたいわけですが、ぜひ、これで終わりということではなくて、今後、霞が関構造改革の全体像というところも意識していただきながら御議論いただければというふうに思います。

 例えば、公務員制度改革の今後ということだけ考えましても、例えば、私がいた経済産業省もそうですが、各省とも実は専門家というものが大変不足しております。専門家といいますと、博士号とかアカデミックな意味での専門家、そして現場に通暁しているという意味での専門家の二通りがあるのではないかというふうに思うわけでございますが、各省とも、例えば、文部省に、どれだけ教育の現場で経験した人がいるのか、また、教育学の博士号を持って教育改革に取り組んでいる人はどれぐらいいるのか、こういった問題もございます。

 今、国難の時期でございますから、各省に専門家が入っていくような体制をどうつくっていくとか、こういったことも重要になるんですけれども、その点、短期的政策としては、公募とかあるいは中途採用の充実というのが急務なんですけれども、今回の案は、第五十四条二項にある採用昇任等基本方針で公募について指針を定めるという、これからというところになってございますので、ぜひこのあたりも今後しっかり御議論いただければというふうに思います。

 結論といたしましては……

柴山委員長 時間が終了しております。

朝比奈参考人 済みません。

 私からの意見は以上でございますが、ぜひ、まず第一歩ということで、何らかの成案を得ていただければというふうに切に願う次第でございます。

 御清聴どうもありがとうございました。(拍手)

柴山委員長 ありがとうございました。

 次に、島田参考人にお願いいたします。

島田参考人 ただいま御紹介にあずかりました早稲田大学の島田でございます。

 私は、大学で労働法を教育し、また、研究している人間でございます。そこで、これまでも、労働法学の研究者という観点から公務員制度について研究をしてまいりました。

 そこで、本日は、この労働法学という観点から、今回の国家公務員制度改革関連法案について御意見を述べさせていただきたいというふうに思います。そういう意味では、今回の法案の内在的な検討というよりは、やや外在的な見解ということになるかもしれませんが、ぜひともお聞き願えれば大変幸せだというふうに思っております。

 今回の公務員制度改革の理念については、公務員が誇りを持って職務に邁進し、若い優秀な人材が公務員を目指すことを促す改革ということが掲げられております。また、真の政治主導を確立し、政策のプロである公務員が高い倫理観と公共心を持って職務に専念できる公務員制度の実現、こういうことが掲げられておると思います。このような基本的な方向性につきましては、多くの国民の支持を得られるものであろうと思いますし、私も重要だろうというふうに考えております。

 しかしながら、私の立場、労働法学の観点からいいますと、やはり、国家公務員制度改革につきましては、国家公務員の労働基本権問題について、現時点における適切な制度化というのを伴うことが必要不可欠ではないだろうかというふうに考えております。

 以下、この観点から少しお話をしたい、このように思います。

 一九九七年の橋本内閣に始まります行政改革の一環として、公務員制度改革は、それ以来ずっと検討をされてまいりました。私の見るところは、この公務員制度改革問題の検討の過程においては、絶えず、長年の懸案でございます公務員の労働基本権問題が浮上してきた、このように思います。ある意味で、公務員制度改革問題のこの間の中では、同時に労働基本権問題を考えるということがある程度は浸透し、しかし、なかなか実現をしていかないということの繰り返しではなかったか、このように感じている次第でございます。

 なぜ、そのような、一見するとやや距離のありそうな公務員の労働基本権問題が浮上せざるを得ないのかと申しますと、現在の国家公務員制度改革でもございますように、内閣に一元管理をしていくということになりますと、必然的に、中央人事行政機関でございます人事院の機能を内閣に移管していく、この問題を避けて通ることができないだろう、このように思います。しかし、そのことが同時に、多くの方が御認識かと存じますが、労働基本権問題の再検討を促してきたこともまた事実だろう、このように思います。

 すなわち、現在の確立した最高裁判例によれば、人事院は、国家公務員に対する労働基本権制約の合憲性を維持するために必要不可欠な代償措置として位置づけられているわけでございます。したがいまして、現在の人事院の権限を移管する、縮小するということは、労働基本権制約のいわば合憲性の根拠、これを奪う可能性が高いと言えるからであります。

 この点、最高裁判例に従いまして若干敷衍をしておきたいというふうに思いますが、現在の最高裁判例によれば、公務員も、勤労者として、自己の労務を提供することにより生活の糧を得ているものであるという点において一般の勤労者と異なるところではないから、憲法二十八条の労働基本権の保障は公務員に対しても及ぶという前提を示しております。

 もっとも、公務員につきましては、国民全体の共同利益の保障という見地から、この労働基本権についても制約を受けることはやむを得ない、こういう立場をとっております。

 しかし、あらゆる制約が無条件に可能だということではなくて、本日の人事院ということとの関連で申し上げれば、最高裁によれば、憲法二十八条は生存権保障の規定だ、こういう前提に立っているわけでございますが、その生存権保障の趣旨から、法は、これらの制約に見合う代償措置として身分、任免、服務、給与その他勤務条件についての周到詳密な規定を設け、これは国家公務員法ということ、人事院規則ということになると思いますが、さらに中央人事行政機関として準司法機関的な性格を持つ人事院を設けている、このことが、最高裁判例の、現在の労働基本権の制約、その合憲性を支える重要な根拠になっているわけでございます。

 その意味で、二〇〇八年の六月に制定されました、自公民三党の共同修正を経て実現をしました国家公務員制度改革基本法が、その第十二条におきまして、「政府は、協約締結権を付与する職員の範囲の拡大に伴う便益及び費用を含む全体像を国民に提示し、その理解のもとに、国民に開かれた自律的労使関係制度を措置するものとする。」と規定したことは大変意義深いものであると私は思いました。

 その後、二〇〇九年、二〇一〇年に提出されました国家公務員法の改正案におきましては、国家公務員の労働基本権問題については先送りではございましたが、しかし、国家公務員制度改革推進本部に設置されました労使関係制度検討委員会におきまして、二〇〇九年に「自律的労使関係制度の措置に向けて」という報告書がまとめられました。そして、これに基づいて国家公務員労働関係法案が作成されたことは、皆様御周知のとおりかと存じます。

 私は、労使関係制度検討委員会のもとに置かれましたワーキンググループの専門委員としてここの議論に参加をいたしました。非常に短期間で密度の濃い議論、相当濃密な議論を重ねてまいりました。

 私個人といたしましては、最終的に国家公務員労働関係法案に示された内容には必ずしも満足しているものではございませんでした。しかしながら、少なくとも国家公務員の職員団体に団体交渉権及び団体協約締結権を付与するということによりまして、曲がりなりにも自律的労使関係制度の第一歩を踏み出そうということが明確に見えた点におきまして、労働法学の観点から高い評価を与えることができるだろうというふうに考えました。政府がいわば使用者として公務員に向き合うという仕組みになるからでございます。

 しかし、現在の法案のように、国家公務員制度改革において自律的労使関係制度の実現を置き去りにした改革というのは、これまでもそのように言われてきたかと思いますが、バランスに欠けるというふうに思います。

 近代の公務員制度は、その基本理念として、公務員の全体の奉仕者性、成績主義、政治的中立性と並んで公務員の勤労者性が掲げられています。このように見ますと、公務員の労働基本権制約というのは必要最小限にとどめるということが要請されるだろうというふうに思います。

 ただ、今振り返ってみますと、この問題は一九六〇年代からの懸案事項ではございますが、実は、争議権の全面一律禁止の法制度の合憲性でございました。先ほど御紹介した最高裁判例もそうでございます。

 しかし、国家公務員の労働関係法案は、争議権の付与というのを認めるものではなく、職員団体に十全な団体交渉権を付与し、団体交渉の結果、当局と職員団体が合意した労働条件事項について、一定の効力を付与しようというものでございます。しかも、財政民主主義の前提を置きますので、使用者機関としての政府の義務は、団体協約において合意された内容を議会に提案するにとどまるのであり、最終的な決定は、国民の総意である議会に委ねられているものでございます。

 争議権の付与は、ストライキの実施可能性を認めるものであり、直接的に公務の中断という問題にぶつかるかもしれません。しかし、団体交渉権、団体協約締結権は、そのような問題点は必ずしも起きないだろうというふうに思います。きちんとしたルールのもとにあれば、公務に重大な影響を与える可能性は少ない。かつての現業国家公務員や、地方公務員でございますが、地方公営企業労働関係法適用下の地方公務員、特別職の非常勤地方公務員においては、そのようなことが現実に実施されているわけでございます。

 今回、法案におきまして自律的労使関係制度が先送りされましたのは、状況の、環境の変化ということが言われているように承っております。

 しかし、その中身はよくわかりませんが、少なくとも、国家公務員改革基本法において自律的労使関係制度の措置が明記された以上は、その実現のめども提示されないというのは妥当性が欠けるでしょうし、また、本年もILOから示されたように、早急な公務員制度の改革の完了を求めるというようなことにも反するのではないだろうか。

 今回の法案は、確かに幹部級の公務員の扱いではございますが、多くの国民が求めている公務員制度改革は、一般の公務員も含めた公務員の方々が力を発揮する改革だろうというふうに思います。我が国の民間の労使関係においては、きちんとした労働組合があって、会社と団体交渉を経たところでは、労使協調的な労使関係が実現し、それが従業員の力量を引き出すことに大きく役立っているというふうに思います。

 そういう点では、まさに使用者機関として当局が自覚を持って自律的な労使関係制度を形成するということは、国民の期待に応える公務員にとって不可欠のものではないだろうかというふうに思います。

 現在の与党案が仮に成立をするという運びになった際にも、早急にこの自律的労使関係制度の措置を進めていただいて、バランスのとれた公務員制度改革を開始していただきたいということを切にお願いいたしまして、私の意見開陳とさせていただきます。

 どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)

柴山委員長 ありがとうございました。

 次に、下井参考人にお願いいたします。

下井参考人 千葉大学の下井でございます。

 行政法学を専攻している立場から、改正法案について若干の意見を述べさせていただきます。お配りいただいておりますレジュメに沿ってお話をさせていただきます。

 まず、「はじめに」でございますが、ここでは、法案についてコメントさせていただく前に、幾つか前提となることを述べさせていただきたいと思います。

 レジュメの最初のところでございますが、これは、私が行政法学の立場から公務員法を考えるに当たっての基本的な視点を示したものです。一々読み上げることはいたしませんが、このような視点に立つ者の意見としてお聞きいただければと思い、紹介させていただいた次第です。

 レジュメの続きでは、日本国憲法の条文をお示ししております。この憲法十五条の定めから公務員の政治的中立性という原則が導かれ、そして、この政治的中立性を実現するため、言いかえれば、政治的な情実人事を排除するために、国家公務員法は、公務員の任用が能力の実証に基づかなければならないという、いわゆる成績主義の原則を採用しているところです。そして、この成績主義の実現を図るための具体的な手法と申しますかツールが、採用に当たっての競争試験あるいは選考であり、また、昇任や降任、転任の決定を基礎づける人事評価というシステムであるということになります。

 さらに、レジュメの二ページでございますが、身分保障原則。この身分保障原則という概念は時々誤解される概念でございますが、身分保障、つまり、法律や人事院規則等に定める合理的な理由なしには公務員を免職するといった不利益処分を受けることはないという原則、概念、理念でありまして、この身分保障原則は成績主義を裏から支える、担保する基本原則である、このことも忘れてはならない点であろうと考えます。

 以上のように、競争試験、選考、人事評価、そして身分保障といった制度による成績主義の担保といった一連のシステム、これらを通じて政治的中立というものを確保し、公務員が全体の奉仕者であることを保障する、もって適切な行政サービスが提供される、その蓋然性を高めるという点が公務員制度のかなめとなる理念の一つと考えます。この点を踏まえますと、人事院という、中立的第三者性、そういう性格が制度的に保障された組織の重要性が重視されるべきであろうと考えます。

 人事院の重要性はまた別の面からも指摘しておかなければなりません。

 レジュメでは憲法二十八条をお示ししておりますが、公務員の多くは、民間労働者と同様、勤労者、つまり労働者ですから、憲法二十八条による労働基本権の保障が当然に及びます。しかし、公務員につきましては、その職務の公共性、地位の特殊性から、一定程度までは労働基本権が制約されなければなりません。ただ、この制約が憲法が保障する基本的人権の一つの制約である以上、ただ単に制約すればよいということにはなりません。制約の代償措置が講じられることが必要となります。これは先ほどの島田先生の御意見にもあったところですが。そのような代償措置の代表例が人事院による給与勧告制度であるということは周知のとおりでございます。

 そうしますと、労働基本権を制約する法制度を維持する以上は、人事院に一定の代償機能を持たせない限り、憲法との関係でさまざまな問題が生じ得るということになります。この点は、争議権の禁止を合憲とした一連の最高裁判決が認めるところであります。

 なお、以上のような成績主義の重要性、そして労働基本権制約の代償の問題は、いずれも一般職公務員にのみ当てはまることでございまして、特別職の多くについては無関係のことになります。この点は、後ほど少し関係してくる点がございます。

 続きまして、今回の法案について、ポイントを絞って簡単に意見を述べさせていただきます。レジュメでは三ページになります。

 まず、幹部職員等の人事の一元管理についてですが、この点に関する法案の重要ポイントの一つは、レジュメでもお示ししておりますが、幹部職員等の任免を二段階に分けるという点にあると思います。

 一々御説明することはいたしませんが、(1)の第一段階の審査と(2)の第二段階の審査とでは人選びの際の着眼点が異なっているという点に着目いたします。すなわち、(1)第一段階における適格性審査とは、これは標準職務遂行能力を有することを確認するための審査ですから、そこでの人選びの着眼点というか基準は、(ア)標準職務遂行能力ということになります。これに対し、(2)第二段階の具体的な任用行為における着眼点、基準は、1選考の場合においても、2昇任その他の場合においても、(イ)当該幹部職への適性ということになります。

 このような任用システムとなっているわけですが、成績主義の保障という観点から、二点、気になる点がございます。

 第一点目は、(2)の第二段階で登場する選考あるいは人事評価、これらは現在の国家公務員法上は、先ほど申し上げましたように、成績主義を実現するためのツールとして制度化されているわけですが、これらのツールが、国家公務員法改正案の幹部職員等人事においては、レジュメの(a)で書かせていただきましたように、(2)の第二段階でしか用いられないことになっております。(1)の第一段階ではこれらのツールが予定されておりません。(1)の第一段階、これは(ア)標準職務遂行能力を判定する手続ですから、成績主義を排斥するものではないのでしょうけれども、しかし、成績主義を保障するための制度的工夫が抜け落ちているのではないかと考えるわけです。

 以上が第一点目です。

 第二点目は、レジュメの(b)の下の米印のところで御紹介しておりますように、現在の国家公務員法は、選考についても人事評価についても、(ア)標準職務遂行能力と(イ)適性とのいずれをも判定するためのツールとされております。しかしながら、改正法案が予定する制度におきましては、その上の(b)のところですけれども、選考や人事評価の判定対象が(イ)適性のみに限定されております。つまり、成績主義実現のためのツール、選考や人事評価といったツールが機能する局面が狭められているのではないか。以上が第二点目です。

 以上の二点からいたしますと、国家公務員法改正案の幹部職員等の任用制度は、成績主義の理念を排斥するものではありませんが、現在の国家公務員法における一般職職員の任用制度に比べますと、成績主義を実現するための手だて、保障が不足しているのではないか、その結果、成績主義の理念が弱められたものになっているのではないかと考えられるわけです。幹部職員等といえども一般職であるわけですから、政治的中立、そのための成績主義という原則、これは憲法上の理念だと思いますが、こういった点を重視する私の立場からすれば気になる点でございます。

 確かに、(1)の第一段階の標準職務遂行能力の確認審査は「公正に行うもの」となっております。かかる定めによって、成績主義の実現が確保されるということなのかもしれません。しかし、このような抽象的な文言だけで十分なのか、具体的に保障するための制度的工夫がさらに加えられるべきではないかという疑問が残ります。

 また、(1)の第一段階の審査は、「政令で定めるところにより、」行うものという条文になっております。そして、この政令を定める際には、レジュメの四ページでございますが、「人事院の意見を聴いて定めるものとする。」となっております。

 先ほど申し上げましたように、人事院が、政治的中立、成績主義を体現する機関としてふさわしいものであるということを踏まえますと、このような形で人事院の関与を認めることで成績主義が実現されるのだということなのかもしれません。

 しかしながら、(1)の適格性確認審査についての政令で一体何を定めるのか、国家公務員法の改正案では明らかにされておりません。政令で何を定めるのか、一定程度までは法律で明確に、またはある程度詳細に定めなければ、成績主義重視の観点からは疑問が残るのではないかと考えるわけです。

 なお、この点につきましては、人事評価についての現行法の定め、これはレジュメの四ページの注の(11)でお示ししている七十条の三の第二項ですが、このような定めが参考になるように思われます。さらに、人事院の関与の程度についても、これはやや疑問があるところで、この点は、後に述べます級別定数についての定めが参考になると考えます。

 いずれにしましても、国家公務員法改正案の趣旨は、成績主義の要請を弱める、現行法に比べれば弱める任用制度を導入するということのように思えます。少なくとも、条文上はそのように見えます。しかし、そのような任用制度は、一般職の枠内においてではなく、そもそも現行法が成績主義の対象とはしていない特別職を活用して構築するのが筋と申しましょうか、少なくとも、我が国の公務員制度の法体系とは整合的であろうと考えます。あくまでも一般職制度の枠内での改革というのであれば、幹部職員等ではあっても、成績主義に基づく任免を保障することが肝要であると考えるわけです。

 幹部職員等任免手続については以上です。

 レジュメの続きで書かせていただいた二点については、御参照くださいということにさせていただきます。

 続きまして、レジュメの五ページ、人事院の権限削減について意見を申し上げます。

 先ほど申し上げましたように、人事院は、中立の第三者的機関として、公務の政治的中立性を確保するための成績主義、これを体現するのにふさわしい組織であろうと考えます。すると、成績主義、さらには身分保障に係る事務については、可能な限り人事院の所轄とする、あるいは内閣人事局の権限にするとしても、できるだけ人事院の関与を認めるべきであろうと考えます。

 このような観点からすれば、今回の国公法改正案は、採用試験に関する事務について、人事院の権限を一定程度削減し、採用試験により確保すべき人材に関する事項について政令で定めるものとしつつ、この政令を定めるに当たっては、人事院の意見を聞くこととしているわけですが、この制度については重たい意味が持たされるべきであろうと考えます。

 また、人事院については、労働基本権制約の代償措置を担う組織である点も重要です。

 民間であれば、労使交渉の対象となるような事項、すなわち勤務条件について、公務員の場合は法令で規律すべきはやむなし、勤務条件法定主義と言われるものですが、これは私は当然だろうと考えます。

 もっとも、私は、二〇一一年の国家公務員制度改革関連法案のように、法令案を協約で策定する制度というものを否定するものではございません。それはともかくといたしまして、労働基本権の制約を維持する以上、勤務条件に関する法令等の策定に当たっては、可能な限り人事院の関与を認めることが、公務員を含めた勤労者に労働基本権を保障する憲法の趣旨に即すと考えます。この点で、給与法の改正案が、内閣総理大臣による級別定数の設定に当たり人事院の意見を十分に尊重するとしている点は、極めて重要だろうと考えます。

 確かに、級別定数の設定は予算や人事管理にかかわりますので、この点に着目すれば、任命権者が決定すべき管理運営事項と言えます。しかしながら、他方、職員にとっては、みずからの給与に密接にかかわる重大関心事でありますし、また、昇進の見通しという点でもこれは重要であると思います。我が国のように閉鎖型任用制の公務員制度が実態である場合、昇進の見通し、昇進経路というものは、アメリカのような開放型任用制の国と比べ、より職員の関心度が高いものであるはずです。閉鎖型と開放型の違いは、注の(15)をごらんください。

 かかる観点に着眼すれば、級別定数は当然に勤務条件であろうと考えます。つまり、管理運営事項であると同時に、勤務条件だ。そもそも、管理運営事項と勤務条件が二律背反の関係にあるわけではないということは広く承認されているところですし、そう考えますと、そもそも管理運営事項にかかわらない勤務条件というのは余り考えられないように思います。

 最後に簡単につけ加えておきますと、我が国の国家公務員法、地方公務員法は、アメリカの法制度をモデルとしていることは明らかです。したがいまして、開放型任用制を前提とした法制度のはずです。しかしながら、実態においては、閉鎖型を中核としたシステムになっていることは言うまでもなく、この点におきまして、実は、法制度の建前と実態の間に乖離があります。公務員制度改革に当たっては、このような乖離がどのような支障をもたらしているのかという視点も必要であろうと考えます。

 以上、雑駁ながら、一行政法研究者としての意見を述べさせていただきました。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

柴山委員長 ありがとうございました。

 次に、宮垣参考人にお願いいたします。

宮垣参考人 国公労連委員長の宮垣です。

 こうした意見表明の場を与えていただきましたことに感謝申し上げます。ありがとうございます。

 政府から提出をされました国家公務員法等の一部を改正する法律案には、私たち国家公務員労働者から見て重大な問題があります。

 それは、二〇〇八年六月十三日に成立をした国家公務員制度改革基本法第十二条で、「国民に開かれた自律的労使関係制度を措置するものとする。」と規定されているにもかかわらず、今回の法律案には、この自律的労使関係制度の措置について何ら触れられていません。

 政府は、二〇〇九年三月三十一日に、今回の法律案と同じように、幹部職員等の一元的管理、内閣人事局の設置等の国家公務員法等の一部を改正する法律案を閣議決定して、国会に提出をしましたが、七月二十一日の衆議院の解散により廃案となりました。

 この法律案を国会に提出する際に、総理を本部長として全閣僚で構成される国家公務員制度改革推進本部が、二〇〇九年二月の三日に、公務員制度改革に係る工程表を策定しました。

 工程表には、「労働基本権の検討」として、

  級別定数管理に関する事務をはじめ、人事院から内閣人事・行政管理局(仮称)に事務の移管を行うことを踏まえ、また、国家公務員の使用者たる政府が、主体的かつ柔軟に勤務条件に関する企画立案を行い、コストパフォーマンスの高い行政を実現していく観点からも、自律的労使関係制度への改革は重要かつ必要不可欠な課題である。

  国民に開かれた自律的労使関係制度の措置へ向け、協約締結権を付与する職員の範囲の拡大等に関する具体的制度設計について、平成二十一年中に国家公務員制度改革推進本部労使関係制度検討委員会の結論を得る。その上で、平成二十二年中に所要の法律案を国会に提出し、準備期間を経て平成二十四年までに施行する。

とのスケジュールが示されました。

 しかし、今回の法律案の策定に当たって、自律的労使関係制度の措置に向けたスケジュールは示されていません。

 また、政府は、二〇一一年五月の十三日に、国公労連に対して、総務大臣が、東日本大震災の復興財源も含めた厳しい財政事情を理由として、二〇一三年度末までの時限的措置として、俸給及び一時金の一割カットを基本に、一般職国家公務員の給与を減額する旨の提案を行ってきました。

 その後、五月の十七日、五月の二十日、五月の二十七日に国公労連と総務大臣政務官との交渉が行われましたが、この交渉は、人事院勧告制度のもとでは極めて異例であるが、自律的労使関係制度への移行を先取りする形で職員団体の理解を得るとの総務大臣見解のもとでスタートしたものです。

 二〇一一年六月二日の総務大臣と国公労連との交渉で、当時の片山総務大臣が、合意は得られなくても法案を提出し、最終的には国会で判断していただくと一方的に宣言をし、交渉が尽くされていないことを承知で国公労連との交渉を打ち切りました。

 そして、六月三日に、国家公務員の給与減額を内容とする国家公務員の給与の臨時特例に関する法律案と、協約締結権の付与による自律的労使関係の創設を内容とする国家公務員の労働関係に関する法律案を含む国家公務員制度改革関連法案を閣議決定し、国会に提出しました。しかし、両法案とも衆議院と参議院のねじれ国会のもとで審議入りすることができずに、膠着状態が続きました。

 その後、自民党、民主党、公明党の三党合意に基づき、人事院勧告に基づかずに平均七・八%の給与を減額する国家公務員の給与の改定及び臨時特例に関する法律案が議員立法として二〇一二年二月二十二日に国会に提出をされ、二月二十九日に可決、成立をしました。

 しかし、一方の協約締結権を付与する国家公務員制度改革関連法案は、二〇一二年十一月十六日の衆議院解散によって廃案となり、労働基本権が回復しない中で、人事院勧告に基づかない賃金の引き下げが二〇一二年四月から実施をされています。

 憲法で保障されている労働基本権が不当に制約をされている国家公務員労働者にとって、給与などの労働条件決定にかかわる人事院の代償機能は重要な意味を持っています。

 人事院から内閣人事局に移管するとしている級別定数は、昇格基準や職務評価とも密接にかかわるとともに、給与の配分にかかわる問題であり、官民給与比較の重要な要素である役職別給与に反映して給与勧告にも直接影響するもので、給与とは切り離すことができない明確な労働条件です。

 一般職の職員の給与に関する法律の第八条に、「内閣総理大臣は、職員の適正な勤務条件の確保の観点からする人事院の意見については、十分に尊重するものとする。」という修正が加えられたとしても、級別定数の設定や改定の実質的な権限は使用者たる政府に移り、国家公務員労働者の労働基本権制約の代償機能を奪うことから、自律的労使関係制度についても同時に措置して国家公務員労働者に労働基本権を回復すべきです。

 また、国際労働機関であるILOの結社の自由委員会は、日本政府が行おうとしている公務員制度改革について、労働基本権を回復するよう勧告をしています。全労連、連合が二〇〇二年二月と三月に申し立てをした二千百七十七号、二千百八十三号案件については、八度に及ぶ勧告が行われました。

 二〇一三年三月の八度目の勧告では、二〇一二年十二月二十六日に発足をした新政権がこれまでの経緯の総括も行った上で、国家、地方公務員制度改革の具体的内容を検討するという日本政府の表明に留意し、委員会は日本政府に対し、これらの問題での完全、率直で意味のある協議を追求し、批准済みの八十七号、九十八号条約に示された結社の自由原則を完全に適用させるため、公務員制度改革が勧告の線に沿って、これ以上遅滞なく完了させるために必要な措置をとるよう要請し、特に次の点を強調しています。

 それは、公務員への労働基本権の付与、消防職員及び監獄職員への団結権、団体交渉権の付与、国の行政に関与しない公務員に団体交渉権と団体協約締結権を保障し、及び団体交渉に関して法的制限がある職員に関して適切な代償措置が保障されること、国の名において権限を行使しない公務員が結社の自由原則にのっとってスト権を行使でき、この権利を正当に行使した組合員や役員が重い民事、刑事罰を科されることがないよう保障することなどです。

 国公労連は、ことしの十一月の六日に、ILOの労働基準局結社の自由部を訪れ、アルベルト・オデロ次長と面談して、新たな追加情報を提出いたしました。

 その中で、オデロ次長と、日本政府が言うように、ILOの条約や勧告には法的拘束力はない。しかし、ILO条約勧告適用専門家委員会と結社の自由委員会であらゆる勧告を行っているが、専門性と権威を持っているからこそ、それができると述べられるとともに、次のように、ILO勧告の重要性について話されました。

 例えば、国連総会の決議も、国際法の面からは拘束力がない。ただし、あらゆる国が集まって議論した結果としての決議であるからこそ、各加盟国はそれを守る義務がある。ILOも、拘束力を持たすための制裁措置を行うなどの手段を持っておらず、そのかわりに、権威と専門性を持った専門家とスタッフが議論したもとで、権威ある委員会に提起し、さらには三者構成という形をとるからこそ、勧告を守るべきであると各国に主張することができると言われました。

 また、二〇〇二年十一月二十一日の全労連、連合が申し立てた案件に対する一回目の勧告である結社の自由委員会第三百二十九次報告でも、結論部分で、結社の自由原則は各国に一律かつ一貫して適用される、一国がILOへの加盟を決定するとき、それは、結社の自由原則を初めとして、ILO憲章及びフィラデルフィア宣言に具体化された基本原則を受諾しており、全ての政府はILO条約の批准によって約束した制約を完全に尊重する義務を負うとして、日本政府の各国の実情に配慮すべきとの主張を退けています。

 さらに、上級裁判所によって解釈されるものを含め、国内法が結社の自由原則に違反する場合には、当該法を審査し、結社の自由原則に合致するよう指針を与えることは、ILO憲章及び適用できる条約に定められているように、委員会としては常にその権限の範囲内であると述べ、条約批准国の国内法が結社の自由原則に合致するかを審査する権限が同委員会にあることを明らかにしています。

 次に、新たに設置される内閣人事局の所掌事務として、内閣法第十二条第十一項で「国家公務員の総人件費の基本方針及び人件費予算の配分の方針の企画及び立案並びに調整に関する事務」が規定をされていますが、政府による一層の定員削減によって、行政サービスへの悪影響が懸念をされます。

 十一月十五日の第三回給与関係閣僚会議及び閣議で、現在実施されている給与減額支給措置については、平成二十六年三月三十一日をもって終了するものとすることが決定されました。この閣議決定には、総人件費抑制の観点から、大幅な定員純減を目指し、まだ法案も成立をせず、設置もされていない内閣人事局が、新たな定員合理化計画を策定することも盛り込まれています。

 二〇一一年三月十一日に発生した東日本大震災では、国の出先機関や地方自治体で働く公務員も活躍をいたしました。震災直後に道路などのライフラインを整備し、仙台空港をいち早く復旧させた国土交通省の職員、被災した多くの労働者に心温かく接した労働行政の職員、国民の財産や権利を一生懸命守った法務局の職員、被災に遭った住民を支えた自治体の職員など、みずから被災に遭って、家が流され、家族も失いながら、不眠不休で被災者の救援活動に当たってきました。また、全国各地の国や地方自治体の公務員が被災地に派遣され、救援、復旧業務を続けました。長期にわたる被災地の復興の先頭に立っているのも、やはり私たち公務員です。

 政府、行政に対する、東日本大震災からの早期復興を初めとする国民の期待に応えるには、マンパワーが必要であり、定員削減計画の中止と増員による行政体制の確立こそが重要だと考えます。

 そのことを申し上げまして、本法律案に対する意見表明とさせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

柴山委員長 ありがとうございました。

 以上で各参考人からの御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

柴山委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中山展宏君。

中山(展)委員 自由民主党の中山展宏でございます。

 きょうは、質問の機会をいただき、ありがとうございます。また、本日は、参考人にお越しいただき、貴重な御意見を賜りましたこと、感謝を申し上げます。

 それでは、早速ですが、質問の方に移らせていただきたいと思います。

 朝比奈参考人にお伺いをいたします。

 公務員制度改革、公務員制度の問題について、年功序列、昇進のおくれによる若手の士気の低下を御指摘されておりましたが、今般の内閣提出法案でその御疑念が払拭されるかどうか、お伺いをしたいと思います。

 あわせて、また、国会や国会議員との関係にも問題がある、レクの要求、質問対応などで本質的業務ができないと指摘をされておられます。国会が首相や閣僚を長時間拘束するというような、国会改革にも似たような話がございますが、国会との関係をどのようにすればよいか、御意見がありましたら、お聞かせいただきたいと思います。

朝比奈参考人 御質問どうもありがとうございます。

 まず、第一点目の点なんですけれども、先ほど私の最初の意見陳述で申し上げましたが、若手にとって一番期待されるのは、まず前に進めてほしいということでございます。

 その前提があった上で、これも先ほど意見陳述で申し上げましたが、やはり運用というのが非常に鍵になってきまして、今回、例えば特例降任の制度なんかも入っておりますけれども、あれも、基本的には、若手を年功序列ではない形で登用した場合に、ミスがない場合はなかなか降任させられないという中で、今回、その制度があるわけですけれども、そういう制度があっても、どのように運用されるかというところがやはり非常に鍵になってくると思いますので、まずはその一里塚として今回のものを実現させていただいて、その後、ぜひ運用がきちんと進むようにしていただきたいというのが一点目で、私の意見でございます。

 二点目の点ですけれども、これも先ほど意見陳述の中の第三のポイントで申し上げましたけれども、やはり、これもかなり実態的には、霞が関の改革だけではなくて、先生御指摘のとおり、国会改革というのは、若手の雑務軽減という意味では物すごく重要だろうと思います。

 私自身も、先生御指摘のとおり、いろいろ国会議員の先生対応の仕事がございました。これはもちろん大切な仕事もたくさんあるのでございますけれども、やはり公務員として一番重要な仕事は、政策についてきちんとリサーチをして、いろいろなものを比較検討して、国民の皆様に最も役立つ政策案というものをつくり、またそれを実施していくというこの点でございますので、国会議員の先生との関係においては、ぜひこれは国会改革の方も進めていただきまして、一番わかりやすいもので申し上げれば、これももう何度も言われていることでございますが、質問の通告とか、こういうものが早くなれば、これは実は二つメリットがあると僕は思っています。

 それは、深夜残業とかそういう面ももちろんあるんですけれども、これは若手公務員でいたときの実感として、結構いい質問が出てきても、やはり前日の夜中に質問が出てきて、翌日に返さないといけないと思うと、それはどうしてもディフェンシブになるというか、もうやっておりますとか、うにゃうにゃとなるわけですけれども、これが例えば二、三週間前に質問がわかっていれば、結構いい御質問をいただいて、これはぜひ政策として検討していきたいと内心思うようなものも、私、正直申し上げれば、ございました。しかし、やはりそれが前日ですと、どうしても守らざるを得ないという、これはやはり国民の皆様にとっても不幸なことでございますので、やはりそういった国会改革の方もぜひやっていただきたいなというのが率直な意見でございます。

中山(展)委員 ありがとうございます。

 続きまして、島田参考人、下井参考人にお尋ね申し上げたいと思います。

 地方公務員の給与についてなんですが、平成二十四年度のラスパイレス指数を見ると、全地方公共団体の平均で一〇七でございます。もちろん、国家公務員の時限的な、いわゆる二年間の給与改定特例法による給与引き下げ措置の影響がございますが、それにしても、例えば静岡、宮城、千葉、私ども神奈川とか、東京、福岡、また、政令市の名古屋、川崎、横浜、さいたま、国家公務員に比べて非常に高い給与体系にあろうかと思います。

 こういった状況の原因について、地方公務員また国家公務員の制度面の方からどのようにお考えか、お示しをいただきたいと思います。

島田参考人 どうも御質問ありがとうございます。

 地方公務員の賃金というのは、細かい数字を持っているわけではございませんが、今多分、各地方公共団体で相当なばらつきがあるのではないだろうかというふうに思っております。

 私の基本的な立場からいたしますと、まずは、やはり職員団体と当局との関係でこの問題について率直に議論をし、その内容を地域住民の方々に率直に提示をして、その御理解を得られるのかどうなのか、そこが恐らくポイントなのではないだろうか、このように考えております。

 そういう意味では、国家公務員以上に、私も、ワーキングの中で、地方公共団体の方々の中で、どのように自律的労使関係制度をつくるのかというのは議論が非常に厳しい状況がございましたが、むしろ、地域住民に労使の思うところを示し、そして、その結果を地域住民の代表であられる議会で御判断をいただく、こういうプロセスが必要なのではないか、このように考えております。

下井参考人 私は、法律論としてお答えしたいと思いますが、結論的なことを申し上げれば、法律論としては特に問題はないと。政策的には、私が判断すべきところではありませんので、そこは申し上げませんけれども、つまり、私は行政法学をやっておりますので、当然、地方自治法とかも研究の対象になっております。地方分権改革ということを考えますと、地方のことは地方が決めるというその原則からすれば、繰り返しになりますが、少なくとも、法律論としては問題があるとは言いがたいということになるかと思います。

 以上です。

中山(展)委員 ありがとうございます。

 それでは、宮垣参考人にお尋ねをしたいと思います。

 この二年間の給与引き下げ、人事院勧告のマイナス〇・二%を超えて、さらに七・八%の減額でございますが、国家公務員の皆様、大変御苦労されたと思います。公務員の方々も消費者であり、減額分三千億円は個人消費にも影響があったと思いますが、生活者、消費者の視点から、今般の給与引き下げの実感、実情、その辺を御披露いただければと思います。

宮垣参考人 御質問いただきまして、ありがとうございました。

 特に、引き下げ額が七・八%でございまして、給与だけじゃなしに、一時金もでございまして、今、先生も御承知のとおり、東京地方裁判所で係争中でございますけれども、原告、三百七十の組合員から生活実態の陳述書をいただきまして、拝見をいたしましたが、非常に生活に困っております。特に子育てとかあるいはローンとか、いろいろなことを抱えている人たちは、本当に大変な思いでこの二年間を過ごしているということが、本当に職場の皆さんから声が届いているという現状でございます。

中山(展)委員 改めてまた、宮垣参考人と下井参考人にお伺いしたいと思いますが、この給与削減の特例措置は、平成二十三年九月三十日付の人事院勧告に鑑み、給与の改定について定めるとともに、厳しい財政状況及び東日本大震災に対処する必要性に鑑み、一層の歳出削減が不可欠であることからとの趣旨で行われました。

 厳しい財政状況及び東日本大震災に対処する必要性に鑑みということで、東日本大震災のみならず、厳しい財政状況を勘案したということでありますが、厳しい財政状況、決してこれから楽な財政状況は訪れないと思います。政府としては、二〇一五年、二〇二〇年に健全化目標を掲げておりますけれども、それにしても厳しい財政状況は続くと思いますが、このような理由をもとに引き下げが行われたことに関して、御意見がございましたらお願いいたします。

柴山委員長 中山君、今の質問の中で、人事院勧告を経てという部分についてはどういたしますか。回答を求める部分でしょうか。

中山(展)委員 お願いします。

柴山委員長 では、以上二点につきまして、どうぞ、宮垣参考人。

宮垣参考人 政府から提案をいただいた中身でいっても、そういう東日本の震災もあって、政府の財政も厳しいというお話から、賃下げの提案をいただきましたけれども、しかし、私どもとしましては、この間の国家公務員の給与の実態を見ても、あるいは国家公務員の総人件費の推移を見ても、決してこの国の財政事情、赤字財政の原因が私ども国家公務員の人件費に起因しているというふうには考えておりません。

 この間、赤字国債が増大をしておりますけれども、その間でも国家公務員給与は逆に下がっているというのが実態でございますし、先生も御承知のとおり、国家公務員の定員についても、この間の定員削減で実際に数も減っているというのが実態でございます。

 そういう点では、私どもは、国家公務員の給与と赤字財政の問題というのは別次元の問題だろうというふうに思っておりまして、私どもとしましては、国の財政事情について、財政規律を担保するためには、人件費というよりも、もっとほかの面で歳出削減をやっていくべきではないかというふうに考えているところでございます。

下井参考人 ありがとうございました。

 法律の研究者としては、非常に答えるポイントが難しいところではございますけれども。

 国家公務員の給与というのは、かつての三公社五現業、三公社は公務員ではありませんから、五現業、最近では、林野、これも非現業になりましたけれども、こういったものを除き、これはもう国会が全て、一円単位まで決めることであります。

 したがいまして、国民主権の原理、あるいは国権の最高機関である国会が決めたことであれば、それについて法律論としてとやかく言うことは、これはできません。政策論としてはまた別だろうと思います。もちろん、程度問題という問題はあるかと思います。余りにも削減がひどければ、それは人権侵害ということにもなりかねませんけれども、そうでない限りは、国会が決めた以上は、それについて、少なくとも法律論としては、とやかく言うことはできないということになると思います。

 ただ、人事院勧告については、やはりこれは一定程度まで尊重されなければならず、とはいえ、人事院勧告というのは、これは法的拘束力はないわけですから、ただ、人事院の位置づけ、人事院勧告の法制度上の位置づけを考えますと、幾ら法的拘束力がないといっても、やはりそれは、勧告に従わないとしても、一応の検討を踏まえて、なぜ勧告に従わないのかということを、理由を示した上で結論を出さなければ、法制度論としては筋が通らないだろうとは考えます。

 以上です。

中山(展)委員 ありがとうございます。

 最後の質問になります。朝比奈参考人にもう一度お願いいたします。

 官民人材交流についてでございますが、交流派遣、交流採用、お互いの組織の中で能力を発揮できるのかという話も当委員会において議論されましたが、その人材交流が、癒着であったり、天下りの将来の温床になるという疑念もございました。

 こういった見方に関して、私は、官民人材交流は大いに大いに広げていくべきだと思っているんですが、どのようにお考えか、ぜひよろしくお願いいたします。

朝比奈参考人 御質問ありがとうございます。

 私も、結論からすると、官民の人材交流はどんどん進めていくべきだというふうに個人的には思っております。

 先生御指摘のとおり、これが、実態的に、幹部級で行ってそのまま帰ってこないというような形で、これは形を変えた天下りではないか、こういったことも、結局、運用の問題ではございますが、最も大事なのは、先ほど申し上げましたが、今、いろいろ国難に当たって、やはり専門性を持った形の人材が政策をつくらなきゃいけない、こういうことだと思っておりまして、その観点から、リスクもありますけれども、専門性が高まるような形で政策はどんどんしていくべきではないかというふうに考えております。

中山(展)委員 ありがとうございました。

 私は、今後も、時代の変化に応じた公務員制度のありようを追求すべく、肝に銘じ、きょうの質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

柴山委員長 次に、津村啓介君。

津村委員 民主党の津村啓介でございます。

 本日は、四人の見識ある参考人の皆様にこうした質問の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。

 公務員制度改革、もうこの十数年、何度も話題になってきたテーマでございますけれども、この公務員制度改革が、どういう出発点から議論が起こってきたか、この歴史的な立ち位置というものをまず確認させていただきたいと思います。

 私の見るところでは、平成九年、一九九七年の、当時、第二次橋本内閣における行政改革会議の議論がその骨子であったかと思います。当時は、政治改革も同時に議論されていたわけでありますし、大変、橋本総理、改革意欲にあふれた方で、バブルの崩壊、あるいは冷戦の終結、そして、右肩上がりの日本社会のモデルが大きく転換を遂げた時期に、国の統治システムを変えていこうという中で、この行政改革会議の最終報告では、行政改革は、内閣機能の強化、省庁の再編成とともに、人材・任用制度の改革によって達成されるべきと、三つのことが触れられております。

 実際に、省庁の再編成というのは、いろいろな議論はありますけれども、二〇〇一年からスタートいたしました。また、内閣機能の強化については、これは実は、先日、衆議院本会議で、私は、内閣府のあり方、まだまだ課題が多い、非常に内閣府の中に縦割りが多くなっておりますし、それぞれの部局が内閣府だけで十数カ所に散在しておりまして、大臣の数、副大臣の数が少ないことも含めて、非常に機能不全を起こしかねない状況にある、ここも変えていかなければいけないという議論をさせていただきましたが、本日は、もう一つの、人材・任用制度の部分、これも、橋本総理のころから考えれば、もう十六年たっておりますので、随分積み残された議論なのかなと。

 こういったものが一体となって改革を進めていかなければ、省庁再編の意義、あるいは内閣機能の強化の意義、そうしたものも相対的に失われるわけですので、こうした大局観のある観点から、今回の法案の評価、あるいは今後の課題というものを議論させていただきたいと思います。

 そうは申しましても、私の質疑時間十五分という中で、本日は、私が重要なポイントと考えます二点、一つは内閣人事局の機能、そして二つ目は労使関係の自律性、この二つの点に絞りまして、前者を主として朝比奈さん、そして二点目を島田さん中心に御質問させていただきたい、このように考えてございます。

 まず、朝比奈さんに伺わせていただきたいと思いますが、内閣人事局の創設というのが今回の重要なポイントでありますけれども、残念ながら、二十一年のいわゆる甘利法案のときに比べますと、さまざまな点で人事院の関与が残っているというか、例えば、先ほどお触れになりました級別定数につきましても、もともとは、級別定数、任用、採用試験、研修の企画立案というのを人事院から基本的に全面移管する、実施だけ人事院だという話だったと思いますが、今回は、級別定数については、人事院の意見を聞くとともに、これを尊重ということで、ちょっと役人言葉でわかりにくいですけれども、非常に後退した印象を持っております。

 先ほど参考人は、そうはいっても、まず成案を得て、少しずつでも前に進むべきと。そのとおりだと思いますけれども、まだまだこの点は不十分、改革をさらに進めていくべきというお考えでよろしいでしょうか。

朝比奈参考人 御質問ありがとうございます。

 今御質問いただいた、内閣人事局の機能の点につきましては、私は、先ほど申し上げたとおり、まさにこれからの運用というのが非常に大事になってくると。一番の眼目は縦割りをどう排除するかですから、やはり人事局に実質的な幹部人事権の原案をつくれるような能力を持たせるということは非常に大事だと思っていまして、一番大事なのは、やはり人事局のスタッフの体制ですとか、内閣総理大臣との実際的な関係、こういったところは非常に大事になってくると思うんです。

 そういった中で、人事院の意見を尊重するということが、今回、後退ではないかという御指摘ではございますが、その点は、縦割りの排除というところに向けて、人事院の意見を尊重することが害になるような形になるのであれば、それはもちろん、より改革の方に進めていくべきだと思いますが、今の時点では、その観点からはどうかというところは、私自身、見てみないとわからないというスタンスでございます。

 いずれにしましても、きちんと今後の帰趨を見据えて、ちゃんと議論をしていかなきゃいけない話で、今回だけで終わりということではないというふうに考えております。

津村委員 引き続き今後の課題だ、よく注視しておくべきだということかと思います。

 もう一つ伺いたいと思いますが、実は、昨日までのこの委員会での議論で、必ずしもごらんになっていないと思うんですけれども、内閣人事局長を政治家がやるべきか、それとも事務方の副長官がやるべきかという議論が随分ございました。近藤理事が鋭く質問をされたテーマでございます。

 以前、麻生内閣のときかと思いますが、同様の質問に対して、当時の河村官房長官は、これは事務方を想定しているとお答えになりましたが、昨日、菅長官は、少し幅を持った、もともとのこの政治主導の趣旨を踏まえた形で考えたいということで、これから見解を示されるんだと思いますが、ここは朝比奈さんはどう考えられますか。

朝比奈参考人 御質問ありがとうございます。

 私自身は、結論としましては、制度としては、どちらでもつけるような制度にすべきと思います。

 といいますのも、これは、私どもの案を考えるときにもいろいろ議論したのでございますが、結局、政治任用そのものをどう考えるかということに尽きると思うんです。これも、幹部の政治任用に関しては、いろいろメリット、デメリットがあるところでございまして、なかなか一概にどちらがいいと言いにくいところだと思います。私自身の持論はございますが。

 大切なことは、やはり、内閣総理大臣であり内閣の意思が、仮に、幹部公務員をできるだけ政治任用にしたい、その意思を働かせるために人事局長のトップを政治家にしたいというふうに思うのであれば、そういう体制がしける体制にすべきですし、また、政治任用が多発することで情実人事その他がいろいろ起こってしまうということを懸念する人が仮に総理大臣なり幹部につく場合には、できるだけ事務方が決める形にするという体制ができるというふうに、フレキシブルにどちらにも対応できるように、今、決め打ちしない方がいいのではないかというふうに個人的には考えております。

津村委員 時間の制約がございます。残念ですが、次のテーマに移らさせていただきます。

 自律的な労使関係の確立というテーマでございますが、これもこれまでの議論から、残念ながら大きく後退をしている部分の一つかなと思っております。

 平成十九年、今から六年前ですから、二〇〇七年の行政改革推進本部専門調査会が、「公務員の労働基本権のあり方について」という報告をまとめております。少し長いですけれども、御紹介をいたしますと、その中で、「改革の方向性」と題しまして、「行政の諸課題に対する対応能力を高め、効率的で質の高い行政を確保し、国民・住民の永続的な信頼を得ていくためには、総合的な公務員制度改革の一環として、労使関係制度等についても、改革に取り組む必要がある。」と明記された上で、以下省略いたしますけれども、労使関係の自律性の確立について、非常に踏み込んだ表現がなされております。

 島田参考人におかれては、現在のこの国家公務員の労使関係について、どのような御評価でございますか。

島田参考人 どうも御質問ありがとうございます。

 現在の国家公務員の労使関係というのは、残念ながら、事実上、職員団体と当局との間での交渉は行われ、それなりの交渉の機能を果たしているとは思いますが、それが法的な仕組みにおいて完成されていない、こういう欠点があろうかと思います。

 現在は、中央人事行政機関としての人事院があるということになっておりますので、結果的に、当局というものが最終的な使用者としての責任を負えない、そういう仕組みになっておりまして、この状況におきましては、公務員の職員団体と当局がぴしっと労使として向き合って勤務条件のあり方等を真摯に議論する、こういうことが生まれてこないのではないだろうかという点を大変危惧しているところでございます。

 国民の期待する公務員として、公務員一人一人がその能力を発揮していくというためには、民間大企業の労使関係を見ましても、やはり労使の徹底したコミュニケーションの強化ということがその源泉になるというふうに考えておりますので、先ほどの意見開陳でも申し上げましたが、ぜひとも、改革法十二条にございましたような方向で、自律的労使関係制度の確立をあわせて御検討いただければ大変ありがたいというふうに考えております。

津村委員 公務員の労働基本権の現行の制約については、昭和四十八年の全農林警職法事件の最高裁判決におきまして、代償措置を設けていることが労働基本権制約を合憲とする論拠だ、そういう議論が示されております。

 島田参考人は、この代償措置論ですか、これをどう評価されているのか、そして勧告制度による給与決定システム等の現在の代償措置についての御評価も重ねてお伺いいたします。

島田参考人 御質問のとおり、昭和四十八年の最高裁以来、代償措置ということになっています。先ほど意見開陳のときに申し上げましたが、現行の国家公務員法上、人事院規則も含めた、勤務条件が法令で定められていること、さらには人事院の存在、これがこの代償措置というふうに言われているわけでございます。

 ただ、私の個人的な意見といたしましては、例えば、ILOにおきます、公務員の基本権を制約するという際の代償措置の基準として言われているのは、もちろん当事者だけで決められませんので調停する機関が必要でございますが、一つは、そこの調停内容の迅速かつ完全な実施ということが条件である、それからもう一つは、そのプロセスに当事者が参加する、つまり職員団体もそこにきちっと参加をしていく、この二点が代償措置として機能するための経験的な必要事項である、このようにILOは申しているというふうに思っております。

 したがいまして、そういう点から申し上げますと、現在の人事院制度というのは、私の見解からすれば、代償措置としても実は不十分なんであろうというふうに思っております。

 そういう意味では、今回は、決して争議権の回復という問題ではございませんので、あくまでも、団体交渉制度を通して団体協約、それも最終的には議会でのチェックというのがございますので、そういう方向でこの問題をとりあえず考えていくというのが適切なのではないだろうかと思います。

津村委員 官民交流の議論もございます。

 二〇〇九年、民主党政権が成立したときに、政治主導ということで、例えば、私は国家戦略室におりましたけれども、いろいろな、民間の人材にも大変お世話になって政策実現に努めたわけですが、残念ながらまだまだ若手の官民交流、シニアの方の官民交流というと、天下りとの兼ね合いの議論が多くなされるわけですけれども、私はぜひ、優秀な霞が関の官僚の皆さんが民間の空気を吸われて、また、朝比奈さんもそうだと思いますが、霞が関を飛び出された優秀な民間の若手の皆さんがいずれはまた政府の要職につかれたり、そういう、官民が本当にサイクルになってこの国を活性化していただきたい。朝比奈さん、青山社中の皆さん、ぜひ頑張っていただきたいと思っております。

 島田先生初め皆様、お越しいただきまして、御意見を聞かせていただきまして、ありがとうございました。感謝を申し上げ、質問を終わります。

柴山委員長 次に、杉田水脈さん。

杉田委員 日本維新の会の杉田水脈です。

 本日は、四人の参考人の方にお越しいただきまして、国家公務員制度改革関係法案について、示唆に富んだ意見を頂戴いたしました。本当にありがとうございます。

 質疑の時間が限られておりますので、早速質問に移りたいと思います。

 まずは、朝比奈参考人。朝比奈参考人は、私が市の職員時代から、自治体職員有志の会とか、地域に飛び出す公務員ネットワークなどでいろいろと交流をさせていただいておりました。ありがとうございます。

 ちょっと前になるんですけれども、「霞ケ関維新」という本がございまして、維新という言葉を使っていただいてありがとうございます、が出た当時に、今は同じく青山社中の遠藤さんと対談されている。当時は朝比奈参考人は経済産業省で、遠藤氏は文部科学省だったと思うんですけれども、対談されている記事がございました。その中に、やはり国家公務員の改革の中で、司令塔をつくるということが必要ではないかというようなことが書かれております。

 橋本行革のときには内閣官房が誕生して、まさに司令塔としてその活躍が期待されたんですけれども、結局はミニ霞が関ができたというような状態であった、それから後は、司令塔づくり、何回も挫折をしてきているというふうに語っていらっしゃるんですけれども、今回、この改革の中の目玉となりますのが内閣人事局になってくるかと思うのですが、どうでしょうか。この内閣人事局は、朝比奈参考人が思い描いているような司令塔の役割を果たし得るのかどうか、お聞きしたいと思います。

朝比奈参考人 御質問、どうもありがとうございます。

 「霞ケ関維新」にも触れていただきまして、感謝いたします。ちょうど維新の会ができるちょっと前ぐらいに、私どもが先に使わせていただいたななどというふうに勝手に思ってございますが、ありがとうございます。

 それで、司令塔組織についての御質問ですが、内閣人事局がその司令塔組織というものに値するのかという御質問だというふうに理解いたしましたが、私は、これをまず第一歩にして、本格的な司令塔組織になっていけるかどうか、まさに今後の課題ではないかというふうに思っているのが結論でございます。

 といいますのも、内閣人事局で、先ほど申し上げましたが、各省の幹部を一元的に内閣に顔を向けさせるような人事ができるかどうかというのは、結局、内閣人事局に各省の政策をちゃんと見られるだけの機能が持てるかどうかというところにかかっていると思っておりまして、これは今後の、まさにどういうスタッフを入れていって、どのように運用していくかということが非常に重要でございます。

 最終的には、もう戦前からずっと政策統合機関の議論というのは綿々とあるわけですけれども、民主党政権下の国家戦略室なんかにも大変期待したところでありますが、なかなかこれを機能させるのは難しいものでございますので、ぜひ、政治家の先生方、皆さん一丸となって、国家のために司令塔組織の強化というのに取り組んでいただければというふうに、個人的に思っているところでございます。

杉田委員 ありがとうございます。

 地方の行政を経験していまして、それでこちらの方に来たときに私が非常に疑問に思ったのが、まずは、そのような幹部の方々の評価とかそれ以前に、各省庁の人員配置のことなんです。

 やはり必要なところにはたくさん人をつけて、どんどん課題を解決していかなければいけないという形にあるんですけれども、余りにも今の各省庁の人数の割合というのが、今現在国民が抱えている課題に即していない。なかなか硬直して、それが動かせていない。例えば、農林水産省には人が余っているけれども環境省では人が足りないとか、そういったことを解決ができない。

 これが地方の行政の現場ですと、トップがトップダウンで、そういうふうなことできちっと、今必要なところに必要なだけの人数を充てていくということができるんですが、その首長とかに当たるような組織が、国の中には見当たらないんですね。

 そういったことで、私も、朝比奈参考人がおっしゃいますように、司令塔というものは非常に重要で、これからつくっていって、そういう形にしていかないといけない。内閣人事局というのも、私はそれを果たしていただきたいというふうに思っておるんですけれども、そういった各省庁の定員とかそういう問題については人事院の意見を尊重して決めますというような形に今回の改革はなっておりますが、そのような状態で、定数のばらつき、本当に必要なところにきちっと人員配置をするというような、こういう基本的なことというのは改善されるんでしょうか。お願いいたします。

朝比奈参考人 御質問どうもありがとうございます。

 先生の御指摘のお話は、主に機構・定員のお話、人員の数の配置とかになってくると思うんですが、まさに、機構・定員要求をして、そして座布団をつけてもらって、しかし、実際は、一年の中で急いで法案をつくらなきゃいけないといって、役所なんかでよくタコ部屋なんて言い方をしたりしていますけれども、そういう実際についたものと違う部屋を慌ててつくって、それはもう、帳簿上のものと実際役所に行って座席表なんかを見るとそれが全然違っているわけでありまして、これは何なんだろうというところが確かにあるんでございます。

 そういうところにおいて、まさに先生御指摘のとおり、今回の内閣人事局の発想というのは、その機構・定員の部分と、実際にその機構・定員で座布団を張りつける際に、級別定数というのが物すごく連動して関係してくるわけです。その級別定数を決める背後には、これは人事の問題とかでもいろいろ言われていますけれども、結局、財務省の予算の関係も出てくるわけでございます。そういったものをやはり一体としてきちんと迅速に機動的に決められる体制というのが大事でございまして、これも先ほど来申し上げているところでございますが、きちんとまず今回穴をあけていただいて、それが本当に先生の思い描くような、私も多分同じ絵を描いていると思うんですが、機動的、迅速に体制をつくれるということをつくっていくことが肝要かなというふうに考えております。

杉田委員 ありがとうございます。

 それでは、次の質問に移りたいと思います。

 私は、実は、今はみんなの党の代表でいらっしゃいます渡辺喜美氏が行革担当大臣だったときに、その講演をお聞きする機会に恵まれました。そのときは本当に何か物々しい感じで、大臣が講演をされている周りにSPの方がずっと囲んでいらっしゃいまして、名刺交換に近寄るのもちょっと難しいぐらい厳重にされていらっしゃいました。

 そのときの講演の内容の中で非常に驚いたことがあったんですが、当時はこういった国家公務員改革をどんどんどんどん進めていた、そうすると、大臣の家に、嫌がらせの電話とか、あと、そういうファクスとか、おどしとかが、ぼんぼんぼんぼんかかってきて、それでちょっと奥様が余りの心労で体調を崩されてしまったというような、これだけ抵抗勢力がたくさんあって、抵抗が強い分野がこの国家公務員改革なのですというような講演をされていました。

 私は非常に衝撃を受けたんですけれども、こういった抵抗というのは一体どこから出てくるのか。では、誰がそういう嫌がらせの電話をしたりとか、ファクスを送ったりとか、おどしをかけたりとかしているのかというようなことを、実際に霞が関の中にいらっしゃった朝比奈参考人と、それから労働組合の長でいらっしゃいます宮垣参考人にお尋ねしたいと思います。

朝比奈参考人 みんなの党の渡辺代表が行政改革担当大臣だったときに、まさに私どもが出していたような提案も一部取り入れていただいたり、大変改革マインドにあふれた方だと思いますが、実際に渡辺現代表にどのような嫌がらせがあったのか、私はつぶさには存じ上げないものですから、一体誰がやったのかという、犯人を特定することはちょっとできないんですけれども、一般論的には、余り適切な答えかどうかわかりませんが、当然、改革に対して非常に不快感を持ったり、あるいは、よく抵抗と言われますけれども、抵抗するような方々がされたのかなという推測はできますけれども、ちょっと特定はいたしかねますので、済みません、この程度でお許しいただければと思います。

宮垣参考人 どうも御質問いただきましてありがとうございます。

 労働組合の運動でそういうことはないというふうに思います。

 国公労連は民主的な行財政や司法の確立を求めて運動をやっているところでございまして、公務員制度改革に当たっても政府と真正面から交渉をさせていただいていますし、そしてまた、集会等も昼間に、あるいは夜に公の場でやっておるということでございまして、そういう嫌がらせを陰でやるということ自体が、正しい議論をするに当たってよくないことだというふうに労働組合も考えておるところでございます。

杉田委員 公務員とは関係ない一般の人が嫌がらせをしているとは余り私も考えられないと思いますので、内部の方とかなんじゃないかなと思います。今現在、稲田大臣がそのような嫌がらせに遭っていないかどうか非常に心配されるところなんですけれども、そのあたりで、改革が本当に厳しい改革なのか手ぬるい改革なのかというバロメーターにもなってくるのかなというふうに感じております。

 最後になります。島田参考人と下井参考人にお聞きします。

 今までとはまたちょっと、がらっと変わった視点になるんですけれども、例えば、もう人事院を廃止してしまって、公務員に労働基本権を与えるとした場合に、考えられるメリットとデメリットを簡単に御説明いただければと思います。よろしくお願いいたします。

島田参考人 どうもありがとうございました。

 人事院を解消してということのメリットというのは、きょうずっと申し上げているように、自律的な労使関係制度ができる、当局と職員団体が本当に責任を持って公務員制度を考えていく、そういうことがつくられるということだと思いますし、先ほど申し上げたんですが、そのことを通じて真摯な労使のコミュニケーションというのが実現できるだろうというふうに考えております。

 今さまざまな労働組合がございますけれども、特に、古くから労働組合のある企業では、一旦は確かに大きな紛争等がありましたが、労使ともにそれを非常に真摯に学んで、企業ということを前提にして、日本の本当にパフォーマンスのよさを示したときには、この労使の協力があったというふうに私は考えております。

 そういう点で、やはり公務員についても、そのようなことを実現していくというのは、きっかけとなるメリットがあるのではないかというふうに思っております。

 デメリットについては、私は余りないと思っているんです。ただ、もちろん、人事院が現在持っている代償機能としての部分がございますので、そこの部分、特に情勢適応の原則とか、こういう問題について、どういうふうに機能を、労使でやっていく際に考えていくのか。この辺の制度設計につきましては、今後も大いに考えていく必要があるだろう、このように思っております。

 ありがとうございました。

下井参考人 労働基本権を回復させるといいましても、いかなる公務員にどこまでということがありますので、ちょっと一律には、非常にお答えしづらい問題ではございますが、まずメリットとしては、法律論ではありますが、憲法の保障している基本的人権の保障が充実するということはあると思います。

 もう一つは、労使というのは、必ずしも対立関係のみにあるわけではなくて、今後の行政を担うに当たって、労働組合を責任あるパートナーとして位置づけることができる、そういう可能性を開くというメリットはあろうかと思います。

 それから、デメリットですが、まず、先ほど申し上げましたように、どういう公務員にどこまでということがありますので、そこは一律には答えられないという留保はいたしますが、仮に全公務員に争議権を与えるというのであれば、やはり職によっては行政の中断ということがあり得てしまうわけで、例えば警察官とかが典型例だろうと思いますが、それはいかがなものかと思います。

 もう一つは、労働基本権を回復したとして、では給与も全部労働協約で決めるのかというと、これは制度の設計の仕方次第でありまして、協約締結権を回復したとしても、勤務条件法定主義は残すという選択肢も十分あり得るわけです。

 ですから、そこら辺をどうするかによって変わってきますが、仮に、協約締結権を付与し、勤務条件法定主義を全面的にやめるのであれば、それはやはり、公金の使い方を国会が決めることはできないということになり、非常に問題だろうと思いますし、あとは、どの労働組合に所属しているかによって給与が変わってくる、勤務条件が変わってくるというのはやはり問題であろうと私は思っております。

 以上です。

柴山委員長 杉田さん、質疑時間が終了しております。

杉田委員 参考人の皆さん、本当にありがとうございました。終わります。

柴山委員長 次に、輿水恵一君。

輿水委員 公明党の輿水恵一でございます。

 本日は、参考人の皆様、貴重な御意見をいただき、まことにありがとうございます。また、質問の機会を与えていただきまして、心より感謝申し上げます。

 さて、今回の国家公務員制度等の一部の改正、内閣人事局にしっかりと集中をさせていく、私は、この制度自体、非常に大事なことだと思っています。その上で、これがどのように活用されて運用されていくか。これは今、私たち、我が国が抱えているさまざまな課題に対して、各省庁がどう連携をしながら機能的に働くか、大事な改革だと思っております。そういった意味では、これがしっかりと動くように、皆様方から御指導いただきながらも進めていきたいと考えております。

 その上で、まず、基本的なところを確認させていただきたいんですけれども、何回も確認があったかと思いますが、今回、公務員の皆さんには労働基本権の制約があって、人事院の代償機能という形で今まであった。今法案においても、適格性審査や幹部候補者名簿の作成に当たっても人事院の意見を聞く、さらに、級別定数の設定等については、意見を聞きながらもそれを尊重するという、意見を聞くとか尊重する、そういった形で、意見を聞いても聞かないというのはなかなかやりにくいんじゃないかということで、相当きちっとした、ある程度の機能が担保されているのではないかなというふうに感じております。

 その上で、島田先生に確認をさせていただきますが、公務員も労働者でありながら、労働基本権の制約があることに対して、その合憲性を担保しているのが人事院なんだと。今回のこの記述でそれが担保されているのかどうなのかについて確認をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

島田参考人 ありがとうございます。

 合憲性の担保という意味での人事院というのは、先ほども申し上げました、あくまでも現在の最高裁の判決に即したということで、私の個人的見解とは若干異なるんですが、それを前提とさせていただきまして申し上げたいと思うんですが、やはり、このような場合に、指定職の号俸決定、級別定数については、権限としては内閣人事局に移る。

 確かに、意見を尊重するというのがありました。それによって、一つの考え方としては、これは代償機能をなお保持しているんだ、こういう解釈もあり得るのかとは思いますが、しかし、権限が移管したということをどう評価するのかということになりますと、別の考え方もあり得るのではないだろうかというふうに思っております。

 結果的には、人事院という制度も残り、内閣人事局ができるという両者痛み分けみたいな印象を持つわけですが、しかし、抜本的に考えていくとすれば、むしろ内閣人事局が本当に機能するためには、そうした権限の移管をして、そのことによって生じた基本権問題というのは、きょう申し上げたような方向で検討するというのが抜本的には適正なのではないだろうかというのが私の意見でございます。

 どうもありがとうございました。

輿水委員 ありがとうございました。

 下井先生に伺いたいと思います。

 同じ内容なんですけれども、諮問機関への答申や意見、確かに拘束力というのはないものの、事実上影響力はあると思うんですけれども、下井先生の観点での内閣人事局の代償機能がどう果たせるのか、その辺の見解についてお聞かせ願えますでしょうか。

下井参考人 人事院というのは、そもそも第三者機関でありますので、意見、勧告を言うというところが本来の機能であろうとは思います。それでも人事院は今までいろいろな機能を持っていたところ、それが移管されて、それで、それらについて一定程度の関与をするということになるわけですけれども、それについてどう評価するかというのは非常に難しいところでありまして、つまり、ある人事権がどっちになければいけないというルールはないわけですので、これは国会の判断である程度までは動かすことができるだろうと。

 問題は、濫用を防止するための制度的仕組みがいかにビルトインされるかというところにあるかと思います。その意味では、今回、人事院が直轄していた権限があったのが、答申権、勧告権に移っていったということは、一つのあり方だろうとは思います。もちろん、先ほど先生御発言があったように、勧告や意見には拘束力はないわけですが、実質的な影響力は非常に大きいわけでありますから、その観点からすれば、法律で人事院の意見を聞くとか尊重するという定めがあるということは、極めて重い意味があるだろうと思っております。

 以上です。ありがとうございました。

輿水委員 どうもありがとうございました。

 その上で、先ほど下井参考人の方から、幹部職員の今回の登用に当たって、成績主義の理念が弱められている、そういった御発言がありました。私も今回イメージをしてみまして、まず適格性審査があって、そして名簿がつくられる。ここで大事なのは、その名簿の中身が、成績主義というか、そういった中身もしっかりと備えた名簿になっていれば、まさにそういったところも担保されながらそれぞれの能力がある方の登用が可能になるのかなというふうに思うんですけれども、その辺についての見解をお聞かせ願えますでしょうか。

下井参考人 御指摘のとおりかと思います。

 ただ、条文上、名簿作成の段階において成績主義というものを生かすといいますか、そういうことが「公正に行う」としか書かれていないので、保障機能はいかがなものかというふうに思っております。

 以上です。ありがとうございました。

輿水委員 ありがとうございます。

 そして、その上で、朝比奈参考人に伺います。

 まさに私も、内閣の一元化の中で、どちらかというと、例えば再生医療を国策として進めるに当たって、文科省もあって厚労省もあって経産省もあり、さらに外に広げるときに、いろいろな法律、そのためにあらゆる部門が協力をして機能的に動くような、そういう政策のコーディネーターというんですかね、そういった方がしっかりと内閣にいて、それがきちっとわかって、そのために、省益ではなくてその内閣が求めて進めようとしていることに対して具体的に進めるためのコーディネーター的な機能を持った方、また、そういったものがあればこのやり方というのは非常にいいやり方になってくると思うんですけれども、そういったことを具体的に運用の中で進める上で大切なことというかポイントとなることについて、御意見をいただけますでしょうか。

朝比奈参考人 御質問どうもありがとうございます。

 私は二つポイントがあると思っていまして、まず第一段階としては、内閣人事局しかないわけですから、やはり人事面で、先生御指摘のようなコーディネーターといいますか、全体を束ねて、そして一丸として進めていくような実際の人ですよね。こういった人が実際登用できるかどうかにかかっておりまして、今も、一応体制としては、本来であれば閣議で一体とした方針があって各大臣が任命権を持っているわけですから、理屈としてはできなくはないんですけれども、なかなか実態は縦割りになってしまうという中で、やはり内閣人事局の中で、先ほど先生も御指摘のあった、名簿の中に、場合によっては内閣の方の意向で人が入れられるというような……。

 したがいまして、任命権者たる大臣の推薦を超えた、先ほど私の最初の陳述で申し上げた政令が重要になってくるんですけれども、そういうところで実体的な人を入れ込めるかどうかというところが第一段階として非常に重要かと思います。

 第二段階としては、やはり人事ということだけではなくて、本来的には、先ほど杉田先生の御質問にもありましたが、司令塔機能というものを人事を超えた形で持つということが非常に重要だと思っていまして、その意味で、少し先の話になりますけれども、やはり霞が関全体の司令塔機能というものをどう見ていくかということが二つ目のポイントとして重要かと思っております。

 以上です。

輿水委員 どうもありがとうございます。

 まさに、この内閣人事局の体制の中でこれがいかに機能するか。それはもう、全体が見られて、その全体の方向性に合った人材をどう配置できるか、また、そこを連携をとりながらどう政策を具体的に進めるのかというところが肝だと思いまして、ここの進め方を今後はしっかりと確認をしながら私も見ていきたい。また、この法案はその第一歩というか、そういった形になる貴重なものであると思いますので、これが変な方向に行かないように取り組んでいきたいと考えております。

 先ほど、今度はもっと具体的な問題で、昔、こちらの方で働かれていたということで、まさに質問通告も早目にやって、いろいろな政策を事前に練っていくことによって具体的に進められる、そういった視点もありました。

 そういった中で、やはり今必要なことは、各官僚の皆さんも、今あることをただそのままやるのではなくて、全体観に立って、何が必要なんだろうという具体的な提案というんですかね、そういったものを持っていくことが必要だと思うんですけれども、今回、研修制度というものも各省庁で進めていく。その中で、今、具体的に日本が抱えている、そういったいろいろな問題に対して、問題意識を持ちながら自分自身で何かテーマを持てるような人材の育成、また、そのテーマを持ったことが何かの機会でどこかに伝えることができて、それがまた、議論ができる環境をつくることによって、公務員の皆さんのモチベーションも上がるし、また視野も広がるのかなというふうに感じるんですけれども、その点についての御意見をいただけますでしょうか。

 朝比奈参考人によろしくお願いいたします。

朝比奈参考人 御質問、どうもありがとうございます。

 先生御指摘のとおり、具体的な提案を持っていける。私流に解釈して申し上げれば、やはり企画をしたり、実際の制度の設計をしたりというのは、大きなデザイン力、構想力というのがまさに肝心、大事かなと思っております。

 これはちょっと私見になりますけれども、公務員だけではなくて、今、日本のいろいろな企業等々が抱えている問題の多くも、やはり大きなデザイン力、構想力、もしかすると大変失礼な言い方になりますが、政治においても非常に重要なのは、やはり日本発の構想力だったり、大きなデザイン力というのが非常に重要になってくると思います。

 その点、では、そういう企画とか構想とか、こういう能力をどうつけるのか。日本はやはり細かい、物づくりですとか、官僚でいえば、言われたものをきちんと法律に落とすとか資料をきっちりつくるとか、そういうところは結構得意だと思うんですけれども、そういった企画、構想、設計をしていく上で私は二つのことが重要かと思っておりまして、一つは、先生の御指摘にもあったように、やはり広い視野というのをどう持っていくかということかと思います。

 その点においては、やはり内閣人事局なんかを中心に、今いろいろな幹部を一元的に見られる体制をつくって、広い視野をどうつくるか。幹部育成課程なんかも今回盛り込まれておりますけれども、その辺の実際の運用というのが一つ非常に重要になってくるのかなと。

 もう一つは、やはり、ふわふわした企画力、設計力だけあっても、これは現場と乖離した形になってしまって、日本の一部の製造業の失敗なんかにもそういうところはあると思うんですけれども、そういう意味で、ぜひ専門的な知見、これも同時に重要だと思っておりまして、その辺、先ほど意見陳述の際も申し上げましたが、日本の官僚の中にもなかなかその専門家がいないというような問題点もございますので、そこと、二つとも合わせてやっていくことが肝心かなと思っております。

柴山委員長 輿水君、質問時間が終了しております。

輿水委員 はい。

 どうもありがとうございました。

 今後の日本のそういった将来像をしっかりイメージしながら、全ての国家公務員の皆さんと力を合わせて進めるような、そんな国づくりを目指して頑張りたいと思います。

 きょうは、貴重な御意見、ありがとうございました。

柴山委員長 次に、大熊利昭君。

大熊委員 みんなの党の大熊利昭と申します。本日はよろしくお願いいたします。

 まず、下井先生にお伺いしたいと思います。

 資料をいただいている中で、幹部職員のことなんですが、一般職の枠内での任用である以上、成績主義の原則が尊重されるべき、成績主義を弱めるあるいは排除する任用システムは特別職を活用して実現すべきだという資料があるわけなんです。

 ここで、今回の政府の提案というのは一般職のままの制度なわけですが、これは政府にはもちろん聞いておりますが、なかなか複雑な仕組みを使って、特別職で本来やるべきそういう制度を一般職のまま入れてきているという、このあえて一般職のままやってきているということのメリットというのは何か、逆に、本来は特別職でやるべきではないかというふうに、ストレートに、単純に考えると思われるわけですが、なぜあえて一般職のままで制度設計してきたんだろうか。

 一般職のままでやることのあえて言うメリットは一体何であるのか、この点について先生にお伺いしたいと思います。

下井参考人 ありがとうございました。

 あくまでも推測にとどまるとしか言いようがないということを最初にお断りしておきます。

 まずは、一つは、大きな変革は避けたかったのではないかということ。定員の問題がございますので、特別職になってしまうとその問題が出てくるかと思います。

 それから、あとは、今回の幹部職員登用につきましても、当然、既に公務員であった方から登用するということもいっぱいあるわけですけれども、仮に特別職を大きく活用するということになった場合、一般職の方から特別職に任用するとなると、それは今までの任用体系にかなり大きな変化が出てきて、当該公務員の給与体系とか、そういうことにいろいろ響いてくると思われます。

 ですので、そういった大きな変革は避けて、今までの制度を前提に、さほどラジカルではない改革にしたい、そういう趣旨ではないかと、あくまでもこれは推測でございますので、その点は留保していただきたいとは思います。

 以上でございます。ありがとうございました。

    〔委員長退席、関委員長代理着席〕

大熊委員 ありがとうございます。

 同じ点、朝比奈参考人にも、現場の御経験を踏まえて教えていただければと思います。

朝比奈参考人 御質問、どうもありがとうございます。

 私どもも、もともと、きょう提示させていただいているような提案の中でも、司令塔組織に入っていくような人は、本来、特別職の方が、これは、特に私どもの考えでは、やはり給与の問題で見ると、一般職ですとなかなか、既存の給与体系にどうしても縛られますので、実際、有能な人材を外から連れてくるとなると給与の処遇という問題が出てくるので、この辺は、特別職公務員で司令塔組織においては処遇した方がいいのではないかというような提案もさせていただいたことがございます。

 一方で、今回の法案等々を見るに、これは与党のものですけれども、基本的にイメージされているものが、かなり、人数的に言うと六百人ぐらいの幹部の運用ということになってきますので、そのレベルで全部特別職にするというのが果たしていいのかどうかというところが論点だと思いますので、これは今後の運用等を見ながら、やはり実際に、先ほど来申し上げているような、縦割りを排除するような形での人事運営をする際に、有能な人材がちゃんと登用できるのかというところとの実態とあわせて検討すべき問題かなというふうに考えております。

大熊委員 ありがとうございました。

 一つ前の下井先生のお話で、大きな変革、ラジカルな変革ということをしたくないのではないかという推察のお話がございましたが、ここでもう一つ、やはり推察の御答弁で結構なんですけれども、そのようなことを考えているのは一体どういうグループであるのかということ。これは、一般的には霞が関の人たちではないかというふうに推察はできるわけなんですが、その点、あくまでも推察で結構なんですが、教えていただければと思います。

下井参考人 申しわけありませんが、それはちょっと、単なる一法律学研究者としては何ともお答えできかねますので、申しわけありませんが、留保させていただきたいと思います。申しわけありません。

大熊委員 ありがとうございました。失礼いたしました。

 それでは、島田先生がおっしゃった、最高裁の判例でもって公務員そして一般の勤労者も同じなんだというお話がございました。その中で、そうしますと、公務員の中で一般職のままである、要するに、幹部職員であろうが下の方の方であろうが真ん中の方であろうが引き続き一般職ですということであれば、同じ身分なわけでございますから、そうしますと、勤労者としては、当然、持っている権利一般、これは同じである。

 例えば、何か不都合があったときに人事院に不服申し立てをするんだ、そのときに人事院がどのような検討をするのか。それは事務次官だろうが課長補佐さんだろうが持っている労働者の権利は同じだから、同じような判定が出てくるんだ、こういう認識で大体合っているのかどうか教えていただければと思います。

    〔関委員長代理退席、委員長着席〕

島田参考人 今おっしゃられた点で申し上げますと、基本的には、一般職の公務員に国家公務員法は適用になっておりますので、それに伴う制度については同様の身分保障を持っている、このように考えることができるというふうに思います。

 ただ、事案によっては、もう完全にいわばその当局の一員として行動せざるを得ないということになりますと、その地位の特殊性との関連で、具体的な部分では制約が出てくる場面もあろうかと思いますが、基本的には、一般職という限りにおいては同様という御理解でいいのではないかと思います。

大熊委員 同じ権利の点について、宮垣参考人にも一言お願いいたしたいと思います。

宮垣参考人 御質問ありがとうございます。

 島田先生同様、一般職の国家公務員については、同様に、事務次官だろうが課長補佐だろうが一般職員であろうが、同じ権利が適用となるというふうに考えております。

大熊委員 ありがとうございました。

 続きまして、朝比奈参考人から教えていただければと思うんですが、今回の制度設計で、四年前もそうだったんですが、幹部候補育成課程というのが措置されようとしているわけなんですが、これは言ってみると、日本代表のジュニア版のような、いわゆる日の丸官僚を育てるというような、そういうこれまでにない新しい仕組みだと思うんです。

 ただ、私が思うには、ちょっと残念なところは、これは政府としての基準は内閣総理大臣がつくるとはなっているんですが、設置、運用は各省がやる、こういうことになっているわけなんです。ここはやはり、内閣人事局が、日の丸官僚ジュニアを育てるのであれば、設置して運用した方がいいんじゃないか。場合によっては一部委託的な意味で各省に実施をしてもらうというのもあるかもしれませんが、主と従からいうと、主は内閣人事局の方が目的からしてよろしいんじゃないかなと思うんですが、この点について、朝比奈参考人の御意見を伺いたいと思います。

朝比奈参考人 御質問どうもありがとうございます。

 先ほど、これは別の先生の御質問のときに少しお答えしたんですけれども、やはり、日の丸官僚といいますか、先生の表現だと日の丸官僚、全体を統合してきちんとした政策を出していく官僚においては二つの要素が非常に重要だと思っていまして、一つはやはり専門性なんですよね。

 これは、いろいろな製造業の例を見ても、非常に大きな概念は正しくても、やはり現場のことがよくわからずに大きなふわふわしたことだけを言ってしまって、結局、その企業全体としてうまくいかなかったという例も多々ございますので、やはり現場の専門力と、そしてあと、同時に、しかし、そうなると縦割りになってしまいますから、視野の広さと両方必要だと思っていまして、私自身、幹部候補育成課程の中で、それをどういう割合で入れていけばいいかというのは、これから実態との中で議論をしていくべき話だと思っています。

 そういう中では、先生御指摘のとおり、今後の運用として、それは内閣人事局の方で、どちらかというと総合的な視野をつける方を重点的に入れていくということであれば、先生がおっしゃるような方向に持っていけばいい話かなというふうに考えております。

大熊委員 ありがとうございました。

 もう一点、級別定数を、今回、人事院から政府の方に設定の権限を移すということなんですが、しかしながら、人事院の意見を十分に尊重するという、四年前は、または意見を聞くということだった。ところが、今回十分に意見を尊重というふうにやや表現が強められたところなわけです。

 そうなりますと、御経験から、実際に、実務の各役所の皆さんからすると、要は、人事院にも行かなきゃいけない、それから内閣人事局にも行かなきゃいけないというところ、二度手間が起こる。調整コストを減らさなきゃいけないんだというふうに、冒頭、お話あったと思うんですが、これだとかえって、調整コストが倍近くかかる、あるいは倍以上かかってしまうんではないかという懸念を持つわけなんですが、この点について朝比奈参考人の御意見をお願いします。

朝比奈参考人 御質問ありがとうございます。

 先生御指摘のとおり、そのリスクはあると思っております。私自身、先ほども少し申し上げたんですが、機構・定員要求等々する中で、級別定数の縛りの兼ね合いとか、その背後にある財政的な問題で、結局、給与共済係との関係とか、いろいろなところの調整コストが高まってしまうと、これは意味がない。

 今回の改革で非常に大事なのは、やはり縦割りをどう打破していくかで、そういった、どういうランクの人材をどのように登用していくのかということを中央で一元的に決められるということが重要でございますので、もし、そういう過程において、実際に人事院に日参しなきゃいけないというような状況が起こってくるようであれば、それは法律のたてつけでありますとかあるいは運用の実態とかというのを変えていくべき話なのかなというふうに考えております。

大熊委員 ありがとうございました。

 私が思いますのは、今回、残念ながら、五年前の基本法でそもそも入らなかったので、一括採用ですね、今回の法案でも残念ながら入っていないということで、今回のことではないんですが、将来的に、各省で採用されているようなそういう制度と、それから一括採用という制度を比較して、メリットとそれからデメリット、どういったところがあるのか、また朝比奈参考人に教えていただければと思います。

朝比奈参考人 御質問ありがとうございます。

 私は、一括採用と一括任用というのは結構一体だと思っていまして。今も、見方によっては、皆、人事院の試験を受けて一括で採用されているというふうに、見ようと思えば見えないこともないんですね。しかし、実態は、先生も御案内のように、今、各省が採用しているという状況であります。

 私の私見といたしましては、先ほど来、申し上げております専門家集団を霞が関にどうつくるかというのが大事な中で、実際、じゃ法律職です、経済職です、土木職です、あるいは新しい職もどんどんつくっていいと思うんですけれども、そういった専門家を採用して、それが各省に一対一で張りつくということではなくて、例えば、土木の専門で入られた方で、農水省に行ったり、国交省に行ったりという形で、専門家ごとにいろいろ運用していくというのが大事でありまして、採用と任用のところの組み合わせということが非常に大事になってくるのかなというふうに考えております。

大熊委員 本日は、四人の参考人の皆様方、どうもお忙しいところありがとうございました。

 以上で終わります。

柴山委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 きょう、四人の参考人の皆さんから、それぞれの御専門の立場から貴重な御意見を賜り、ありがとうございます。

 それで、私の方からは、きょうは労働基本権に関連して御質問をいたします。

 最初に、島田参考人と宮垣参考人に、ILO勧告の意義についてお尋ねしたいと思っております。

 島田参考人は、労働学の立場から公務員制度を研究され、二〇〇八年の基本法において自律的労使関係制度を措置するとされたにもかかわらず、今回の法案では置き去り、バランスに欠ける、実現のめどを示さないのは妥当性に欠けるということを述べておられ、ILO勧告についても触れられました。

 政府のILO勧告についての受けとめ、答弁を聞きますと、ILOからは、我が国の公務員の労働基本権の制限に関して勧告されていますが、その内容は、基本的に、公務員制度改革について関係者と十分話し合うことや、改革の進展についてILOに対する情報提供を続けることを要請したものと認識しているという、非常に何か軽んずるかのような答弁として受けとめておるわけですけれども、その点で、島田参考人、ILO勧告の意義、重みについてのお考えをお聞かせいただきたいということ。

 あわせて、宮垣参考人も、全労連、国公労連としてILOへの申し立ても行ってきたということで、八度の勧告も行われております。ILO勧告の意義、重みについて、意見陳述に加えて補足的なことがございましたら、御意見を賜れればと思っております。

島田参考人 御質問ありがとうございます。

 ILOという組織は、政労使によってつくられている三者機関なんですが、この勧告を出しているのは結社の自由委員会でございますので、専門家集団でございます。

 専門家というのをどう評価するのかというのがなかなか我が国では難しいところがあるのかと思うんですが、どういう方々かというと、国際労働法の権威と言ってはなんですが、そういう方々が集まられています。その方々が、もちろん、ILOというのはあくまでも勧告でございますので、拘束力があるものではございませんので、国内の政府のさまざまな努力というのも勘案して、その時々に応じて、適切な文言で必要なことを勧告している、こういうふうに考えております。

 では、これは最終的にどうなるのかといえば、最後の最後に行けば国際司法裁判所ということになるんでしょうけれども、そういうことになったとしても、これはILOの専門家の話を聞いたところなんですが、結局、そういうときに選ばれるのは自分たちのような専門家なので、ILOの結社の自由委員会での意見というのは最終的な判断と考えてもらっていいんだというふうに聞いております。

 そういう意味では、確かに勧告ではありますけれども、非常に重要な重みを持っているというふうに私は考えておりまして、そういう点からいいますと、表現は、国際機関が国に対して言っているので、かなり温和な形をとっておりますが、やはりそこの言葉の真意といいますか、この間、一貫した流れがあると思いますので、それを踏まえて読んでみますと、やはり早急にこの問題は解決をすべきであるということは読み取れるのではないかというのが私の意見でございます。

宮垣参考人 ILOの国際労働基準から見ても、日本では、公務員の労働基本権及び政治活動の自由が大幅に制約をされているわけでございます。先進諸国では公務員にも労働基本権がおおむね認められていますし、そういう点では、ILO勧告というのは、先進国の国際社会が日本政府に対して、日本の公務員の労働基本権を速やかに回復するように求めているものだというふうに私どもは考えているわけであります。

 ヨーロッパの労働組合と懇談をしたり、あるいはILOの労働者側委員のところに行きますと言われるのが、日本政府のおっしゃっていることは、日本の中では主張をされていても、ILOの国際舞台の場では世界の非常識になってしまうということをよく言われているわけでございまして、そういう点では、国際社会の要請に日本政府も応えていただきたいというふうに考えてございます。

塩川委員 ありがとうございます。

 続けて宮垣参考人にお尋ねをいたしますが、このILO勧告の受けとめとして、政府が、公務員制度改革について関係者と十分話し合うこと、こういう要請と認識しているということなんですが、当事者として、公務員制度改革についての関係者と十分な話し合いを政府が行っているのか、この点について、経緯等を含めてありましたら御意見を賜りたいと思います。

宮垣参考人 お答えいたします。

 実は、二〇〇二年に全労連と連合が公務員制度改革でILOに提訴いたしました。

 その背景については、実は、日本政府が二〇〇一年六月の二十九日に公務員制度改革の基本設計を公表して、十二月の二十五日に公務員制度改革大綱を閣議決定しました。その大綱では、公務員の労働基本権の制約については、これにかわる相応の措置を講ずることを今後も確保しつつ、現行の制約を維持するとしていたわけであります。

 政府が、公務員のストライキの一律全面禁止、非現業公務員の団体交渉権の制限を意味する労働基本権制約の現状維持を国公労連などに提案したのは、実は、この大綱が決定をされる直前の二〇〇一年の十二月の十九日でございました。十二月二十五日には大綱を決定するわけでありますから、六日前であります。

 ところが、二〇〇一年六月のILO総会では、日本政府が公務員制度改革を労使協議も抜きに進めている状況に国際的な批判が集中をして、労働組合との交渉協議を国際公約せざるを得なかったわけであります。しかし、政府はその国際公約をほごにして、労働組合との誠実な交渉、協議の努力を尽くさずに、労働基本権制約の現状を維持したまま、人事院の機能、権限を縮小させて、政府、各省当局の人事管理権限を拡大する大綱を一方的に決定しました。

 そういうことから、全労連と連合が、現状の公務員制度がILO条約に違反する内容を持っていること、そして、公務員制度改革でその違反状況が一層深刻となることを中心に、二〇〇二年二月と三月にILOに提訴したわけであります。

 人事院の機能、権限を縮小させて、使用者たる政府の人事管理権限を拡大するのであれば、労働基本権の回復は当然のことという思いでありました。今でも、今回の法律案でも、その思いは一緒であります。

 政府の皆さんは、労働組合とのコミュニケーションを図るというふうに言われているんですが、今回の公務員制度改革をめぐっても、政府、公務員制度改革推進本部との交渉は五回ありましたけれども、そのほとんどが、政府の考えを一方的に説明するあるいは意見を聞くとの姿勢にとどまって、不誠実な態度に終始をされてきたわけであります。

 以上でございます。

塩川委員 ありがとうございます。

 次に、級別定数に関して人事院から政府に移管をする点、この点について、島田参考人と下井参考人と宮垣参考人にお尋ねいたします。

 人事院がこの委員会で総裁答弁をしておりますけれども、級別定数の設定、改定は内閣人事局が所掌することになるが、今回の法案において、職員の適正な勤務条件の確保の観点からする人事院の意見を聴取し、これを十分に尊重することとされている、これによって労働基本権の制約の代償機能が確保されることになると考える、このように述べておるわけですけれども、これで代償機能が確保されると言えるのかという懸念を持つわけであります。

 例えば、実際に級別定数に対して意見を述べる、それに対して内閣人事局側で十分に尊重するといった場合でも、実際にその意見の重みを持つような、実際のその中身が伴わなければならないわけで、そういった作業を実動部隊としてやるような人員がどうなるのか。例えば人事院の給与二課が内閣人事局に移るようなこともあれば、実際にこの級別定数の問題について議論する、深めていくという、意見を述べるその中身も伴わないんじゃないのか。そういった制度設計そのものは、この国会には何ら示されていないわけであります。

 何か口約束みたいなだけで、それで大丈夫だと言われても、はたから見たらそんなのはちょっと容認できないよ、こういう声が上がるのも当然で、この代償機能が確保されているのか。級別定数の問題について、それぞれ島田参考人、下井参考人、宮垣参考人に一言ずついただければと思います。

島田参考人 先ほども御質問にお答えしたことかと思いますが、あくまでも、級別定数というのは、これまで勤務条件に密接に関連をするというふうに捉えられてまいりまして、今の最高裁判例との関連で、人事院の代償機能という意味では非常に重要な位置だったと思っております。それがやはり内閣人事局に移るということですので、仮に意見を反映する可能性があるからといって、憲法上の基本権の代償措置としてはやはり不十分なものになっていったというふうに考えるべきだろうというふうに思っています。

 つまびらかにはできませんが、人事院としては、そういうことを言う権限を、意見を言う権限を残すことによって、言ってみれば、組織として守ったということはあるかもしれませんが、代償機能を守ったというふうには評価できないのではないだろうか、このように思っております。

下井参考人 ありがとうございました。お答えいたします。

 まず、代償機能は弱まったということは否定できないと思われます。ただし、ほかの代償措置との比較を考えたときに、例えば給与勧告も拘束力がないわけですので、その意味ではバランスがとれているのかもしれません。したがって、代償機能が弱まったということは言えても、では、それが代償機能ではなくなったとは必ずしも言えないというのが私の意見でございます。

 なお、十分に尊重するという文言が条文にあるわけでございますが、これを多少敷衍した解釈としまして、例えば実際に人事院の意見が通らなかった場合に、内閣人事局の方で、なぜ人事院の意見を聞かなかったのか、そのことを説明しなければいけないといったような義務を課す、そういう解釈は可能であろうかと思っております。それによって、多少なりとも代償機能の弱まりは手当てができるかなと考えます。

 以上でございます。

宮垣参考人 法律に十分に尊重するというふうに書かれていても、それが担保されるかどうかは非常に懸念があるところでございます。

 実は、雇用と年金の接続をめぐって、人事院が二〇一一年九月三十日に、定年延長を求める意見の申し出を国会と内閣に対して行いましたけれども、しかし、政府はそれを無視して、新年度目前の三月二十三日になって、従来からの再任用制度による雇用と年金の接続となることを決定したというのが実態でありまして、意見の申し出さえ無視をする政府が、法律に尊重すると書いてあったことを一〇〇%尊重していただかなければ、私は、労働基本権制約の代償機能を果たすことにならないというふうに思っているところでございます。

塩川委員 ありがとうございます。

 朝比奈参考人に、直接の意見陳述そのものは、幹部人事、政府全体における問題でしたけれども、労働基本権の回復の問題については、一般公務員における労働基本権の制約の問題、それに対する人事院という代償機能の役割の問題、これに関して、当然、今の法案に当たりました、級別定数の問題など課題もあるわけですが、その件について、朝比奈参考人のお考えについてお聞かせいただけないでしょうか。

朝比奈参考人 御質問ありがとうございます。

 私は、代償機能については一定程度は確保されているというふうに認識しておりますが、先ほど申し上げた、一言、若手公務員としてのもとの立場で申し上げれば、やはりいろいろ、長期残業とか休日出勤とか、そういうのが常態化しておりまして、それが労働組合としての組合交渉の話と遊離した形で存在しているというところが結構問題の根源だというふうに思っております。

 結局、労務管理、そういったものに対する評価、こういったものが直接的には一番最初にきいてくるんだろうというふうに思っておりまして、その点を非常に今回、幹部人事等を考える際に勘案されるような流れというふうに聞いておりますので、その運用を期待したいというふうに考えております。

柴山委員長 塩川君、質疑時間は終了です。

塩川委員 終わります。ありがとうございました。

柴山委員長 次に、村上史好君。

村上(史)委員 生活の党の村上史好です。私が最後の質問者となりますので、よろしくお願いいたします。いつものことながら最後でございますけれども。

 まず、朝比奈先生、島田先生にお伺いをいたします。

 総論的なことで恐縮でございますけれども、本法案の肝でもある幹部職員の一元管理、そのための内閣人事局の設置など、政治任用をツールにして国の重要政策を政治主導で実行できる、そういうものをつくっていく、確立していくということが大きな目的でございます。

 ところが、本法案とは関係ありませんけれども、国家安全保障会議あるいは国家戦略特区など、内閣総理大臣や内閣に権限を集中する形で政治主導で政策を実行していこうということになっております。

 ところが、私はちょっと心配するところがございまして、余りにも所掌事務が多過ぎて、政治側の方から全てに関与できないままに、結局、事務方、官僚に頼らざるを得ない。いろいろなメニューを官僚側から提示を受けて、最終的に決めるのは政治側でありますけれども、その中でいろいろな官僚側の思惑が入ってくるということも考えられますので、政治主導という強い思いとは裏腹に、結局、官僚依存になってしまうのではないか、そういうおそれを私はこの法案でも感じているんですけれども、その点に対する御見解を両先生にお伺いしたいと思います。

朝比奈参考人 御質問、どうもありがとうございます。

 私は、結論といたしましては、現在の制度に比べて、特別、官僚主導が強まるということはないというふうに思っております。

 ただ、先生の御懸念のとおり、実際、政治主導を目指して制度を変えたものの実態的に余り変わらない、こういう事態が十分起こり得る可能性はございまして、先ほど来申し上げていますように、したがって、運用ということが非常に重要になってくるのかなというふうに考えております。

島田参考人 私は労働法が専門でございますので余り適切な御回答はできないかと存じますが、この問題につきましては、多分、政治主導でやっていくためのスタッフとしての幹部職員というのは恐らく必要でしょうし、それを確保することは必要だと思いますが、それを、現在のような一般職、しかも六百人規模で一元管理というのが実際に可能なんだろうか。

 そういう点では、むしろこれは政治任用の特別職のスタッフとしてやり、一般職としては政治的中立性を持って役職を果たしていくというのが適切なのではないか、このように思います。

村上(史)委員 ありがとうございました。

 いわゆる政治と官僚のそれぞれの相克ではありませんけれども、そういう問題は日本だけではなくて、ドイツでもイギリスでもフランスでも今現在起こっている。そういう中で、今、両先生が言われたように、もちろん運用も大事ですし、それを支えるいわゆる政治任用のスタッフ、これの充実が、この法案ではなかなかそこまで充実した内容になっていないということで、やはり実のある公務員制度改革を実行するためには、まさにそこに注力する必要があるのではないかなという面で、今、両先生にお聞きしたわけでございます。

 それでは次に、島田先生、そして下井先生にお伺いをしたいと思います。

 もう何度も出ている質問でございますけれども、ILOの勧告が、もう十数年ですかね、ずっと勧告を受けている状態で、前に進まないという現状でございます。

 私も、三年ほど前に、その当時は与党でありましたけれども、労働基本権の付与の問題で、当時、各党に質問をさせていただいて、それぞれが、基本権の付与については検討して実現する段階だという答弁もいただいておりましたけれども、残念ながら、今回の法案では、それは全く規定がないということであります。

 私自身は、やはり、非現業の一般職に対しては労働基本権を付与するということが大事だと思っておりまして、それに合わせて人勧制度は廃止をしていくべきだ、それをこの法案に規定すべきだと思っております。

 先ほど、島田先生も、公務員制度改革をする上でバランスを欠いているということもおっしゃいました。単に労働組合にその権利を与えるというだけではなくて、公務員制度そのものを全てにわたって改革をしていくという視点からいえば、当然、付与する規定を設けるべきだというふうに思っております。

 あわせて、人事院のいわゆる廃止論がございます。この点についても、両先生の御見解をお伺いしたいと思います。

島田参考人 先生御指摘のとおりと思います。

 何度も申し上げますが、国家公務員改革法の十二条で「自律的労使関係制度を措置する」というのがあり、かつ、法案まできちっとできておりますので、少なくともそれを早期に実現していただきたい、このように思います。それが実現すれば、おのずから、人事院という制度自体は、大幅な改変を経て、廃止の方向に行くのだろうというふうに思っております。

下井参考人 御質問ありがとうございました。

 私も、基本的には労働基本権の回復というものを目指すべきだろうと思っております。

 ただし、先ほどもありましたけれども、どのような公務員にどの程度の労働基本権を与えるかというのは、これはかなり細かいところにわたって考えなければいけないことでありまして、例えば争議権について、例えば警察官とかあるいは航空管制官とかいったような人たちにまでも全面的に争議権を認めるというわけには、それはやはりいかないだろう。

 それから、協約締結権にいたしましても、これもいろいろな幅がある話でございまして、先ほど申し上げたことの繰り返しになりますが、公務員の給与を全面的に協約に委ねるというのは、私は、やはりそれは問題があると思っております。

 したがいまして、基本権の回復というのは重要事項ではございますが、仮に回復させる制度をとったとしても、全面的に回復、民間企業と全く同じというわけにはいかないと思います。つまり、ある程度の制約は、これは必ず必要。その限りにおいて、代償措置は当然必要ですので、人事院を廃止することはできない。廃止してしまうと、憲法上の問題が生じるというふうに考えております。

 以上でございます。

村上(史)委員 ありがとうございました。

 続きまして、元官僚でいらっしゃいます朝比奈先生と、それと労働組合の委員長でいらっしゃいます宮垣さんにお伺いしたいんですが、言われて久しい天下りの禁止の問題です。

 なかなか天下りというものが根絶できないということで、本法案にも期待はしたんですけれども、そこが全く欠落しているということで、その辺の、天下りを禁止していくためのアイデアといいますか、官僚側から見た見解をお伺いしたいと思います。

朝比奈参考人 御質問ありがとうございます。

 天下り対策には、多分、短期的な施策と長期的な話と二つあるというふうに考えておりまして、短期的な方は、今般もいろいろ議論には上っております、罰則をどうするのかとか、そういう話になるんですが、私は、より大事なのはやはり長期的な話だと思っておりまして、結局、これは人事全体の問題ですから、上から出ちゃだめよといったところで下からどんどん来るわけですし、幾ら塞いでもいろいろな形で抜け穴をつくっていく、こういう話になるわけですし、まあ、それは今ちょっと国民目線でやや悪意に申し上げましたが。

 元官僚という、中にいた立場でいえば、一生懸命働いてきたのに出口がない。定年延長の話もございますけれども、結局、下の士気とかいう話にもかかわってきます。

 長期的には、これは全員が全員そうというわけにいかないと思うんですが、これは、若手官僚のキャリアステップの話ともあわせまして、結局、専門性をどうつけるかということになると思うんですね。

 今問題の天下りは、これは釈迦に説法でございますけれども、結局、本人のエキスパティーズ、専門性と全く関係ない形で、何か全然違う財団の理事になるとか、こういう形が非常に問題でありまして、まあ、これは本人にとっても不幸なのでありますけれども。そういう意味では、先ほど来意見陳述で申し上げさせていただいておりますように、やはり、役人にいかに専門性をつけるか。

 これは、役人の処遇という話だけではなくて、先ほど来申し上げているように、結局、政策立案能力をどう高めて、本来的に国民のための政策をつくれる官僚制度をどうつくるかという上においても、実は非常に専門性というのは重要な課題でございまして、そういう意味では、専門性をより重視するということが、天下りという対策から見ても、政策立案能力の向上という意味から見ても、一石二鳥と申しますか、そういう意味で非常に大事になってくるのかなというふうに考えております。

宮垣参考人 御質問ありがとうございます。

 天下り問題について、国公労連は、各省庁が関係団体や民間企業に対して半ば強制的に再就職をあっせんするようなことは禁止されるというのはもちろんのことでございますし、全ての天下りを禁止すべきだというふうに考えています。

 ただ、その後の対策としては、本来的には、人事院が国会と内閣に対して意見の申し出を行っているように、年金が満額支給される六十五歳まで安んじて勤務できるような体制を整備すべきだというふうに考えております。

村上(史)委員 ありがとうございました。

 長時間、参考人の先生方には、貴重な御意見をいただきましたこと、お礼を申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

柴山委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、一言御挨拶を申し上げます。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時二十八分散会


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