第10号 平成26年4月4日(金曜日)
平成二十六年四月四日(金曜日)午前九時開議
出席委員
委員長 柴山 昌彦君
理事 関 芳弘君 理事 平 将明君
理事 橘 慶一郎君 理事 西川 公也君
理事 平井たくや君 理事 近藤 洋介君
理事 松田 学君 理事 高木美智代君
秋葉 賢也君 大岡 敏孝君
鬼木 誠君 勝俣 孝明君
川田 隆君 菅家 一郎君
小松 裕君 新谷 正義君
田所 嘉徳君 田中 英之君
高木 宏壽君 武部 新君
豊田真由子君 中谷 真一君
中山 展宏君 長島 忠美君
福山 守君 山田 美樹君
吉川 赳君 大島 敦君
後藤 祐一君 津村 啓介君
若井 康彦君 遠藤 敬君
杉田 水脈君 中丸 啓君
山之内 毅君 輿水 恵一君
浜地 雅一君 大熊 利昭君
赤嶺 政賢君 村上 史好君
…………………………………
参考人
(東北大学大学院医学系研究科教授) 大隅 典子君
参考人
(慶應義塾大学医学部長) 末松 誠君
参考人
(公益財団法人ヒューマンサイエンス振興財団会長) 竹中 登一君
参考人
(京都大学iPS細胞研究所所長・教授) 山中 伸弥君
内閣委員会専門員 室井 純子君
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委員の異動
四月三日
辞任 補欠選任
青山 周平君 根本 幸典君
同日
辞任 補欠選任
根本 幸典君 宮崎 謙介君
同日
辞任 補欠選任
宮崎 謙介君 青山 周平君
同月四日
辞任 補欠選任
青山 周平君 武部 新君
同日
辞任 補欠選任
武部 新君 菅家 一郎君
同日
辞任 補欠選任
菅家 一郎君 青山 周平君
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本日の会議に付した案件
健康・医療戦略推進法案(内閣提出第二一号)
独立行政法人日本医療研究開発機構法案(内閣提出第二二号)
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○柴山委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、健康・医療戦略推進法案及び独立行政法人日本医療研究開発機構法案の両案を一括して議題といたします。
本日は、両案審査のため、参考人として、東北大学大学院医学系研究科教授大隅典子君、慶應義塾大学医学部長末松誠君、公益財団法人ヒューマンサイエンス振興財団会長竹中登一君、京都大学iPS細胞研究所所長・教授山中伸弥君、以上四名の方々から御意見を承ることにいたしております。
この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多用中のところ本委員会に御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。両案について、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。
次に、議事の順序について申し上げます。
大隅参考人、末松参考人、竹中参考人、山中参考人の順に、お一人十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。
なお、参考人各位に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。
それでは、大隅参考人にお願いいたします。
○大隅参考人 本日は、このような機会を与えていただきまして、ありがとうございました。東北大学の大隅でございます。
基礎医学研究を行っている立場からということで、意見を述べさせていただきたいと思います。
お手元に配付させていただいております資料に基づいて進めたいと思いますが、二枚めくっていただきまして、パワーポイントを印刷したものの方からごらんいただければと思います。
今般、この健康・医療戦略推進法案、そして新独法のことが進んできたわけですけれども、そちらにつきましては、私の理解するところでは、スライド番号の一、二、三のあたりのところというふうに思っております。
それで、本日は、三つのことについて意見を述べさせていただきたいと思います。
まず第一に、研究費の制度ということなんですが、そもそも、スライドの四番のところですけれども、丸い円グラフ、それから表が下の方にありますが、我が国が健康・医療の研究開発を推進していくという上で、本当に予算というものがこれで十分なのかということにつきましては、今年度どうのこうのということではございませんが、長期的な視点からは、そこのところをぜひきちんと考えていただきたいというふうに思っております。
中でも、シーズとなる基礎研究ということなんですけれども、こちらにつきまして十分な配慮がなされているかということもお考えいただきたいというふうに思っております。
四番の右下の方の米国の例でございますけれども、NIHの予算の中にも基礎研究の予算というのは含まれております。また、そのほかに、NSF、DOEなどにおいても基礎系の予算というのが入っておりますので、これから先ずっと持続的な健康・医療研究の開発を行っていく上では、この種がなくなってしまっては元も子もないということでございますので、基礎研究というのは非常に重要であるということを強調しておきたいというふうに思います。
その次ですけれども、では、そういったボトムアップ的な、研究者自身の方から芽が出てくるというところ、それを、スライドの一番の方に戻っていただきますと、発掘したシーズをシームレスに移行させて、国が定めた戦略に基づくトップダウンの研究としての健康・医療推進のための研究を行うというふうになっているんですが、ここの、要するに、どのようにしてシーズを発掘するのかということに関してどのように考えられているかということです。
機構の中に、新独法の方の中にちゃんとした目ききというのがいるのかどうか、あるいは、私もいろいろ資料を今回調べたんですけれども、既存の組織の方から移管される方たちが新独法の方にあるというふうに見ましたけれども、そういった人材だけで足りるかどうか、そういったことがあるかと思っております。
それから、その中身ですけれども、三番のところで、主な取り組みとして、これは既存の、これまで各省庁が行ってきたものからここの機構の方に移すというものが書いてあると思います。主には、再生医療、きょう山中先生もいらしていますけれども、ゲノム、そして、がん、脳、感染症、難病等々が書いてあるわけですけれども、これだけで本当に十分かということについて、一枚めくっていただきましたスライドの、消えていますけれども、五番のところになりますが、これは米国のNIHの組織図になっておりまして、要するに、このNIHの仕組みでは、このように満遍なくいろいろな健康・医療に関する研究というのが行われております。
特に日本の場合は、米国よりも、より長寿、幸いなことに長寿なわけですから、より高齢者のところに関する研究というのは大事だと思います。具体的に申しますと、例えば高齢者におけるリハビリテーションでありますとか、顎口腔、口の中ですね、要するに、歯というのは年齢の齢という字でございまして、これが大事なのではないかなというふうに思っております。
二番目に、では、これらの研究を行う人材ということですけれども、研究というのは、高額の最先端の機器を買ったら、そろえたら、それで何か進むかというと、そうでは全くありません。これは、人が研究を行うということが非常に重要です。研究を行う人材というのは、めくっていただきまして、七番のスライドのところになりますけれども、医学部出身、あるいは私、歯学部ですけれども、そういった医療側の研究医というような立場の方、そしてさらに、多分もっと大きな人口としては、理学部系ですね。PhD出身の方で医学研究を行う人たち、こういった方たちをどのように育成し、こういった研究の方に携わっていただくかという、ここが非常に重要だというふうに思います。
この辺は、研修医制度の関係、あるいは現状の理学部や生命科学研究系の学部等々において人体に関する研究というのが不足しているということもありますので、この法案の中ということではありませんけれども、関連して、これは非常に重要なことかなというふうに思っています。また、労働契約法等の問題と人材の流動性ということの間にはコンフリクトがありますので、これも検討事項かなというふうに思っております。
それから、研究を行うのは、いわゆる研究者だけではなくて、それを支える研究支援者というのが非常に大事です。特に、例えば非常に複雑な医学の研究、生命科学の研究を行う上で、具体的に、文字の方の紙の二枚目のところをちょっと見ていただきたいんですけれども、例えば細胞を培養する、それから組み換えDNAを取り扱う、それからいろいろなイメージングを行う、あるいは組織の切片を作製する、電子顕微鏡でそれを見る等々の、こういった基礎医学、生命科学の研究を行う支援者に対して、よりそういった方たちを育成し保護できるような、そういった仕組みというのが必要なのではないかというふうに思います。
例えば、工学系でありますと、これはJABEEというシステムがありまして、そういった育成制度というのができ上がっているわけですけれども、これらの生命科学医学版のような、そういった資格認定などのコースというのもできれば、こういった研究を支援する方たちの人材の継続的な育成ということに非常に大きな役割があるのではないかと思います。
また、いろいろな医学研究におきましては、治験コーディネーターでありますとか、それから生物学統計や、情報科学的なバイオインフォマティシャン、そして例えばゲノムメディカルリサーチコーディネーター、何かちょっと舌をかみそうですけれども、こういった新しい職種というのも非常に必要になっております。クリニカルクラーク、データマネジャー等もそうなんですけれども。
また、ゲノム医療を推進する上では、遺伝カウンセラーというような方たちも非常に重要です。これは現在、二つの学会の認定ということで行われているんですけれども、こういったものが今後、国家資格などになって、もっと推薦されるということが必要じゃないかと思います。
広報、アウトリーチの活動につきましても非常に重要だと思います。どのような人材が必要なのか、そして、過剰にではなく、適切に、正しく国民に対してそれを発信していくということは非常に重要だと思います。
残り三つ目でございますけれども、機構において所掌する研究倫理等なんですけれども、最後の、スライドの八番のところになります。これはNIHの方で、下の方、緑色のところですけれども、どのような法、倫理、社会、このような対応の仕組みがあるかということを参考のために載せておりますけれども、こういったことが、医療の基礎医学そして臨床研究につなげていくときに非常に重要ではないかというふうに思っています。
特に、ゲノムコホートなどは国内における前例に乏しいプロジェクトでありますし、また、J―ADNIなどがそうですが、大規模なネットワーク型の臨床研究を推進していくときに、精度の高いエビデンスというのが極めて重要だというふうに思われますので、こういった法令等々の指針遵守のための環境というのが必要だと思います。
それから、最後でございますけれども、連日のように新聞をにぎわせておりますが、研究不正ということに対する対応、これが非常に重要だと思います。研究資金に関しましては、かなりの制度が整ってきていると思いますけれども、論文不正ということに関して、どのようにその対応をしていくか、起きてしまったことに対するその事例の取り扱い、そして、今後それらをどのようにして起きないようにするかということ、これは非常に重要な問題だと思いますので、この機構の新独法の中でも考えていただきたいことだと思います。
以上でございます。(拍手)
○柴山委員長 ありがとうございました。
次に、末松参考人にお願いいたします。
○末松参考人 よろしくお願いいたします。
私は、昭和五十八年に慶応の医学部を卒業いたしまして、九年間、内科学の診療に携わっておりました。その後、留学を経まして、現在の現職であります医学部の医化学、これは生化学というフィールドですけれども、そこの教授をしております。現在は、医育機関として、医療の人材育成に資するいろいろな取り組みをする立場におります。よろしくお願いいたします。
お手元の資料を一枚おめくりいただければと思います。
二ページでございますが、医学研究、その成果を国民へ還元するというところに、御存じのように、三つのステップがあるかと思いますけれども、基礎研究、それから橋渡し研究、そして臨床研究。候補医薬品・医療機器が患者さんに安全で有効であるかを検討する、既存の治療薬との比較をまた行うというようなところであります。
この研究成果の国民への還元というのは、より安全、有効で負担の少ない医療の提供を行う、あるいは国際的な医薬品、医療機器の提供を行う、こういった意味で非常に重要だと考えております。
次のページをお願いいたします。
しかしながら、なぜこの日本の臨床研究が劣勢かということには、いろいろなファクターがございます。後ほど竹中先生等もお話しになられると思いますが、もしこの臨床研究の劣勢がこのまま続いてしまいますと、医療の質の向上のおくれ、これは国民の不利益につながる可能性が高い。基礎研究の成果が海外に流出してしまう。
わかりやすく申し上げますと、日本の基礎研究は非常に力は強くて、薬の大もとになるいろいろな開発力はあるんですけれども、つまり、生みの親にはなるんですが、それを育ての親として世界に広げていく、そこの仕組みがいまいちかなというところであります。
医学研究で、特に国民の健康と福祉に還元できる研究の体制が十分に配慮されてこなかったのではないか。すぐれた基礎研究が日本で行われても、これを患者さんの役に立つ実用研究に結びつけられなかったというところ。そこにはたくさんの問題点がありますが、一つは、従来の省庁の縦割りの仕組みがあって、これを今回大きく改めて、いい方に向けていこうという取り組みではないかというふうに考えております。
次のページをお願いいたします。
私は、この新独法、日本医療研究開発機構の革新的医療開発のイメージということで一枚書かせていただきましたけれども、先ほどの、生みの親から育ての親、育ての親のプロセスのところは、この一番下に書いてある赤い矢印の部分です。そこにも大きな資金と的確なレフェリーシステムが必要であります。研究開発に必要なファンディングを一元化しまして、先見性のあるPD、PO、プログラムディレクター、プログラムオフィサーですが、このレフェリーシステムをどのように透明性の高いものにしていくかということが非常に重要だというふうに考えております。そして、今まで死の谷と呼ばれていたところにどういうふうにブリッジをかけていくかというところが、この新独法の大きな課題ではないかと思います。
次のページをお願いします。
まだこれからのスタートということではありますけれども、私は、創薬支援ネットワークという非常に斬新な仕組みがもう既にでき上がり始めていて、そこには多くの創薬のプロの方々、非常に情熱のあるスタッフの方々が集結し、多くのシーズが集積されつつあるというふうに考えています。
そこのシーズの、最適化研究、非臨床研究、そして臨床研究、こういったプロセスをきちんとつないでいくために、この創薬支援ネットワークというのは一つのモデルになるのではないかというふうに私は考えています。ここをさらにブラッシュアップしていくということが必要なのではないかと思います。
六ページをお願いします。
もう一つ、この新しい法律によってぜひ配慮をしていただきたいと考えていますのが、難病や希少疾患に光を当てることであります。
製薬企業も御努力はされていますけれども、患者さんの数の少ないところに対する投資というのは当然小さくなります。今回の新しい独法がこういったところにきちんと光を当てて、公費でこの患者さんたち、難病・希少疾患の患者さんたちは本当に一日一日が闘いだと思います、そういったところをしっかり支える仕組みが必要ではないかと思います。
七ページをごらんください。少しビジーな資料ですけれども、そこに私が申し述べたいことがまとめてございます。
予算の問題で、ことしはそれが四割ふえたということは大変喜ばしいことですけれども、以下に示したような仕組み、これは継続的な予算の確保が必要であるということです。
それを簡単に申し上げますと、一貫した研究支援体制、それから研究テーマの選定、特に、先ほど申し上げましたアンダイアグノーズド・ペーシェント・ディジィーズの仕組み、こういったところに地道な研究を支えるような試みが必要であると考えます。
さらに、研究費の配分に関しては、いわゆるピアレビュー、いい意味での専門家、仲間同士のレビュー、経験豊富な有識者だけではなくて、現場の研究開発に携わる若手中堅クラスのたくさんの数の方がレフェリーになっていただくことが非常に重要ではないか。他者の評価をできる資質を備えた研究者を機構と大学の連携によって育成することが極めて重要であると考えます。
最後になりますけれども、参考資料、るる御説明申し上げませんが、参考資料の一は、私どもの大学、私学で貴重な私学助成をいただいておりますけれども、そのサポートは国立の大きな大学に比べて非常に小そうございます。恐らく、これは地方の国立大学も状況は同じではないかと思います。
我々が今最もエネルギーを注入しておりますのは、大学そのものの診療形態、これも縦割りになっております。そこに横串を刺して、最初は特定の診療科から出身した若手でも、全体の診療科に目配りをできるような人材を大学がきちんと出していくということが極めて重要であるというふうに考えております。この詳細については、もし何か御質問がありましたらお答えいたしますので、よろしくお願いいたします。
以上をもって、私の発表にかえさせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)
○柴山委員長 ありがとうございました。
次に、竹中参考人にお願いいたします。
○竹中参考人 おはようございます。
竹中より、創薬、すなわち医薬品の研究開発面から意見を述べさせていただきます。
私の資料の二ページをごらんください。
私自身、約五十年間、製薬企業で仕事をしてまいりまして、若いときは研究者として高血圧や前立腺肥大症の薬をつくりました。そして、二〇〇〇年に経営者となりまして、日本発の研究開発型グローバル企業を目指して、山之内と藤沢を合併させてアステラス製薬をつくってまいりました。退任後は会社を離れて、現在、大学や研究機関で創薬研究の活性化の支援をしております。こうした背景から、きょうの御意見をさせていただきます。
三ページをごらんください。
欧州では、十九世紀の半ばに、有機化学によって創薬が成功しまして、例えばアスピリンを創薬したバイエルなどがグローバル企業となりました。
日本は、戦前及び戦後間もなくは、欧米企業から輸入しました、導入しました薬を国内で製造して販売していました。
一九六一年の国民皆保険制度の導入以降、日本企業は創薬研究を本格的に開始しました。大学の科学技術を企業に取り入れまして、そうした結果、七〇年、八〇年代には数多くの日本発の新薬が出ています。
当時の日本の企業というのは、海外での販売機能あるいは開発機能を持っていませんでしたので、こうした発明品を全部海外の企業にライセンスアウトしておりましたが、九〇年代になりまして、一部の企業は国際化を進行させまして、自分のつくった薬はグローバルに売るという格好になっております。
さらに、二十一世紀になって、市場はグローバル化をますますしております。そこに対しまして、国内企業同士の合併や、あるいは海外企業の、バイオベンチャーの買収などをして、研究開発の充実を図っております。
スライド四をお願いします。
この図は、二〇〇六年、八年、一〇年に世界売り上げ百番以内にランクされた製品を創薬した企業を国籍別に集計したものでございます。
日本は、アメリカに次いで、スイス、イギリスとともに世界第二位の新薬創出国となっております。ドイツに百年おくれてスタートしたんですが、五十年で追いつき、追い越しました。その理由と申しますのは、日本のアカデミアに、創薬に必要で、かつ応用できる高度な科学技術力が醸成されていたからでございます。
五ページをごらんください。
製薬企業は、大体、売り上げの一五から二〇%を研究開発投資しております。規模の大きい欧米企業では、年間七千億円の研究開発をしております。一方、日本の大手企業は約二千億円前後であり、四社を合計しますと七千億円前後になります。欧米企業の一社分の研究開発費に相当いたします。
右のグラフを見ますと、欧米三社は七千億円の研究開発費で大体二十から三十個の新薬をつくっておりますが、日本の四社は、同じ七千億円くらいで三十五個の新薬を創出しています。こうしたクライテリアでいきますと、日本の創薬力は欧米に負けておらず、比較的効率がいいということになります。
スライド六ページをごらんください。
二〇〇七年にグローバル販売で十億ドル、すなわち、一千億円以上売れた薬には日本発が十五製品ございます。前立腺肥大症とか、高血圧とか、アルツハイマーとか、成人病の多くの薬を日本企業がつくっております。私が若いときにつくりましたハルナールという薬も、二千億円も売れていた時代がございます。
しかし、これらの製品の特許は、二〇一〇年にほとんど満了しております。特許満了しますとジェネリック医薬品に変わりますので、企業は常に次の新しい新薬の創出に挑戦しております。
七ページをごらんください。
二〇一二年までの十年間で、日本には新しいタイプのがんの薬、がんの分子標的薬が二十製品販売されております。しかしながら、二十製品のうち一製品のみが日本発の創薬で、あとは欧米発の創薬であります。その結果、日本のがん市場の六千億円のうち、八〇%が輸入品になっております。
日本が新しい分野でおくれました原因について考えてみました。
八ページをごらんいただきます。
一九六〇年から九〇年ごろの創薬は、実験動物を使って、薬理・生化学で得られた、そうした創薬標的に対する低分子化合物というものを有機化学でつくってまいりました。
当時の日本の大学、企業は、こうした科学技術力に非常にたけており、そして創薬に成功したわけでございますが、一九九〇年代、アメリカでは、国家プロジェクトとしてヒトゲノム計画を推進し、新しいタイプの創薬、ゲノム創薬が開発されました。患者さんの御理解をいただき、ゲノム解析を行い、病気の原因分子を調べ、バイオ医薬品を開発しました。アメリカでは、ゲノム創薬を大学あるいは大学発のベンチャーがリスクをとって進めたわけでございます。
残念ながら、日本はこの手法でちょっと乗りおくれてしまったわけでございます。
九ページをごらんください。
具体的な図ですが、アメリカの大学では、患者さんからいただきました、例えばがん細胞の遺伝子解析を行いまして、同時に、患者さんの医療情報を利用させていただき、がんの原因となる分子を個人レベルで解析しまして、これを制御する薬をつくったわけでございます。特に、薬をつくる段階においてはバイオベンチャーと共同し、そして、臨床開発の後期、販売は既存の製薬会社に委託しております。
日本に欠けておりましたのは、患者さんの医療情報と生体試料を創薬に利用するための法整備が未熟であったこと、それから、既存製薬会社の強みであった低分子化合物の創薬に固執し、新しいバイオ医薬品の研究に力を入れることがなかった、さらには、リスクの高い研究領域にチャレンジするバイオベンチャーが成長しなかったことなどが挙げられます。
十ページをごらんください。
現在、日本のアカデミア創薬は大変活発になって、いろいろなシーズが出ております。しかし、これらを医薬品で開発するためには、さらに、薬効、毒性、工業化など、GLP、GMPと呼ばれる法規制に適合した応用研究を行わなければなりません。アカデミアではこうした研究ができませんので、創薬の死の谷と呼んでおります。
十一ページをごらんください。
FDAは、二〇〇七年までの十年間で、新たに二百五十の新薬を承認しております。アメリカからの製品が百十八、日本は二十三であります。
興味あることは、アメリカの百十八製品のうち七十三製品、六二%は大学かあるいはバイオベンチャーでありまして、既存の製薬会社の製品より多いわけでございます。
一方、日本は、大学、バイオベンチャーはわずか四製品でございまして、ほとんど企業から出ております。このことは、日本でも、大学、バイオベンチャーの創薬を支援すれば、国の創薬力の強化が可能だと思われることでございます。
十二ページをごらんください。
末松先生からも御紹介ありましたが、昨年五月に、大学のすぐれた基礎研究を医薬品として実用化する支援をする創薬支援ネットワークが発足しました。
医薬基盤研究所、理化学研究所、産業技術総合研究所、大学、国の研究機関が連携して、オール・ジャパンでアカデミア創薬を支援し、死の谷を克服する組織であります。私、もう既にお手伝いしておりますが、大学から多くの、百以上の御相談が来て、順調に進んでおります。
今回審議されております日本医療研究開発機構に、このネットワークで働いている企業から来た人材も移行される予定ですので、我が国の創薬力の強化を期待しているところでございます。
十三ページをごらんください。
日本の製薬企業の集まりである日本製薬工業協会、製薬協の手代木会長は、産業界におきまして、健康・医療政策に関する司令塔機能の充実強化並びに健康・医療予算の拡充、重点化を強く要望されており、革新的新薬の創出体制として、今回議論されております日本医療研究開発機構の創設、創薬支援ネットワークの強化、臨床研究中核病院の整備を期待しております。
製薬企業は、こうした御支援を活用して、革新的新薬の創出をさらに促進するんだということを力強く表明されております。
十四ページをごらんくださいませ。
総合戦略策定に当たりましては、製薬企業より、臨床研究の推進、活性化、レギュラトリーサイエンスの啓発、推進、戦略的な知財対応が要望されております。これらは、総合戦略の中に既に織り込まれているところでございます。
最後のページをごらんください。
製薬企業にとりまして、健康・医療研究開発促進に関する本二法案は、大変重要かつ意義のある法案でございます。この政策により、革新的な新薬が創出されることによる健康で安心な社会に貢献できること、研究開発活動が活性されることによる科学技術の発展へ貢献できること、そして、新製品の収益による日本経済成長への貢献が可能になります。
ぜひ前向きに御審議をしていただきたく、お願いを申し上げます。
本日はありがとうございました。(拍手)
○柴山委員長 ありがとうございました。
次に、山中参考人、お願いいたします。
○山中参考人 皆様、おはようございます。
早速でございますが、資料の二ページ目をごらんください。
私たちは、iPS細胞という技術の研究をしております。この技術は、私たちのいわゆるボトムアップ型の自由な発想に基づいた研究で生まれた成果でございますが、これが現在は、目的がはっきりした、医療応用するというトップダウン型の研究に移行して、まさに臨床研究がことし始まるという段階に達している研究でございます。
このiPS細胞研究開発に携わった経験から、今回の二法案に期待する点について簡単に御説明申し上げます。
次のページをお願いします。
三ページ目でございますが、このiPS細胞の研究は、私が、一九九九年でございますが、奈良先端科学技術大学院大学というところで、独立させていただいて自分の研究室を持たせていただいた、そのことによって始まりました。そのとき私は三十七歳でございましたが、三十代で独立して自分自身の研究を思う存分できたということが、iPS細胞というイノベーションにつながりました。
次のスライドをお願いします。
先ほどの竹中会長のお話でも明らかなように、今後、日本の新しい創薬や新しい治療というのは、企業からではなくて、多くは大学から出てこなければなりません。そのためには、大学でどうやって新たなイノベーションを導くかということが極めて大切です。
イノベーションというのは、やはり自由な発想、柔軟な発想が必要でありまして、イノベーションを導くためには、私が与えられたように、若手、三十代、場合によっては二十代の若手に独立のチャンスを与える。そして、そういった若手に、欧米に匹敵するような研究環境、建物を含めた研究環境、また研究費。
私が奈良にいたときは、自分自身の研究費というのは科研費の二百万円くらいがあっただけでございますが、奈良先端の方から支援をしていただいて、一千万円以上の研究費が当初から使えたわけであります。また、それだけでは人というのは雇えないんですが、大学から数名の技術員や学生をつけてもらった。それによって、小さいけれども、自分自身の独立した研究室を持てたというのが、こういったイノベーションにつながりました。
しかし、この独立というのは非常に注意しなければならない点があります。独立させてほったらかしにするというのは非常に危険であります。私もそうでありましたが、三十代の研究者というのは、実験の方法については一生懸命それまでやってきて上手になっていると思うんですが、それ以外のさまざまな点についてはまだまだ未熟な人間であります。
したがいまして、私も奈良でしていただきましたが、独立後も、シニアな研究者から、研究室の運営をどうするか、学生とか技術員、さまざまなトラブルもどうしても生じますので、どういった運営をするか、そして、生命倫理や研究倫理や利益相反等に対してきちっとした、独立後も継続した若手研究者の教育を行う、そういうシステムが必要であります。これを大学単位でやるのか国単位でやるのかということは、効率から考えると、国単位でやっていく方がいいんじゃないかという気もしております。
次のスライドをお願いします。
こういった、独立させていただいたことによってできた技術がiPS細胞技術であります。この技術は、患者さんの血液や皮膚の細胞をiPS細胞という万能細胞に変えて、そこから作製したさまざまな分化した細胞を再生医療や創薬に用いるということで、再生医療に関しては、ことし神戸で臨床研究が始まりますし、治療薬につきましても、幾つか有望な薬が既にiPS細胞創薬でできているわけであります。
次の六ページ目をお願いします。
このiPS細胞研究もまさにそうでありましたが、できた当時は、マウスでiPS細胞をつくった、そして、今度はそれをヒトで実現させたい、そういった基礎研究の段階ではお金もまだそれほどかかりません。一千万円くらいの年間予算でも何とかできる、数名の研究者がいればできる、そういう基礎研究の段階があります。
その後、それが本当に人間の治療に使えるかという検討になっていきますと、前臨床研究、もしくは末松先生の橋渡し研究ということで、安全性であるとか効果を動物実験等で確かめる必要があります。その段階からだんだん費用も人材もウナギ登りになっていきまして、iPS細胞技術は、まさに臨床研究、実際の人間の患者さんで効果や安全性を検証する直前まで来ておりますが、臨床研究になると、さらにぐっと加速度的に費用も人材もかかるというのが研究に係るコストであります。
次のページ、お願いします。
このように、大学発のイノベーションを、前臨床研究を経て臨床研究まで持っていくためには、莫大な予算がどうしてもかかってしまいます。ただ、我が国の科学予算というのは、アメリカのNIHに比べ、アメリカ全体に比べると十分の一程度の予算であります。決められた枠の中でどう有効に予算を使っていくかということが非常に大切でありまして、私たちは、日ごろ研究していて、ここに書いてある幾つかのことを何とか柔軟にしていただきたいと。
例えば、単年度執行という拘束があります。年度末になるとお金が使えない。私たちも今ネイチャーという雑誌に重要な成果を投稿しております。つい二週間くらい前に最初のレビューが返ってきて、追加実験をしなければなりませんが、私の部下に追加実験をしているのかと聞くと、いや、今、年度末で薬が買えないから四月にならないとできませんということで、僕は、いや、そんなの待っていられない、もう自分のお金で買うから注文せよと言いましたが、そういうことが本当に起こっています。これは、ぜひ何とかしていただきたいと思います。
それから、府省をまたぐ複数のプロジェクトの相乗り、これもできません。同じiPS細胞関連の研究であっても、プロジェクトが違うとお金は分けなければならない。機械も原則的には分けなければならない、ネズミの餌も分けなければならないという、非常に事務手続も複雑になっております。
また、特許侵害等、突発的に生じる場合に、なかなか国のお金では対応できないということで、私たちはiPS基金ということでマラソンを走ったりして寄附を集めておりますが、やはりこういったことも、国プロジェクトの場合は国からの支援をいただきたいというふうに考えております。
次のスライドをお願いします。
臨床研究を進めていくのは、あたかもジグソーパズルを組み立てている作業と同じだというふうに感じています。たくさんのピースがありまして、私たち基礎研究者ができる基礎研究も大切なピースですが、それだけでは全然だめでありまして、前臨床研究、臨床研究、治験、特許や倫理や許認可、また私たちの場合は日赤との連携も非常に大切ですし、産学連携、国際連携、広報、ファンドレージング、さまざま専門家が集まって初めてイノベーションの医療応用というのは実現します。私たち基礎研究者だけでは全くできません。
こういった人材を私たちのiPS細胞研究所では雇用しているわけでございますが、次の九ページでございますが、その大部分は有期雇用、国プロジェクトの経費で一年任期、長くても五年任期で採用している不安定な身分の方々であります。国のこのiPS研究という最前線の研究を支えてくれている方々が、このような不安定な身分で頑張っていただいているというのが現状でございます。
次のスライドをお願いします。
十ページ目でございますが、イノベーションを研究開発していくためには、研究者だけではなく、研究支援人材の確保が必須であります。大隅先生も言われていたことでありますが、いかに優秀な研究支援人材を育成するか。
公的な教育プログラムや資格認定制度が必要であると考えております。また、そういった方々がその後も大学で安定して、安心して働き続けられる処遇、キャリアパスを明確化しないと、優秀な方はどんどん民間に流れていくという結果に既になっております。
次のスライドをお願いします。
十一ページ目でございますが、末松先生も言っておられましたが、我が国は、基礎医学においては世界のトップファイブに入る高い地位を有しておりますが、臨床医学、これは発表をした論文数に基づいている結果でございますが、臨床医学では世界二十五位と、どんどんその地位が低下している。まさに、基礎は優秀だが、それを臨床応用する点でうまくいっていないというのが現状であります。
次のスライドをお願いします。
これが最後でございますが、では、いかにこの日本の優秀な基礎研究を臨床開発まで持っていくか。
再生医療や創薬の推進に必要なこと、三点だけ挙げさせていただきましたが、まず、PMDA等の審査体制の強化、審査基準を明確にし、審査員も増員するという強化が必要であると思います。また、前臨床試験から治験までというのは十年以上かかる長丁場でございますので、その間、一貫した研究支援システムが必要であると考えております。さらには、一番最後の出口でございます臨床研究、治験を行うためには、国際共同治験にも対応できるような中核拠点の整備が急務であるというふうに考えております。
今回の二つの法案によって、これらのことがよりよくなり、我が国の大学発のイノベーションがさらにふえて、そしてそのイノベーションによる新しい医療や創薬の推進が実現することを期待しております。
ありがとうございます。(拍手)
○柴山委員長 ありがとうございました。
以上で各参考人からの御意見の開陳は終わりました。
―――――――――――――
○柴山委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。平将明君。
○平委員 自由民主党の平将明でございます。
本日は、参考人の皆様、大変お忙しい中、委員会にお越しをいただき、また大変示唆に富んだ貴重な御意見をいただきました。まことにありがとうございます。
私の持ち時間は二十分でございまして、四名の参考人の皆様へ同じ質問をさせていただきたいというふうに思っております。ということになりますと、一回につきお一人様一分強ぐらいの質問時間になりますので、ぜひとも御了解をいただきたいと思います。
まずは、今回の議題でございます二法案、政府は、世界最高水準の医療の提供に資する研究開発等により、健康長寿社会の形成に資することを目的とする健康・医療戦略推進法案、そして、医療分野の研究開発及びその環境整備の実施、助成を行うことを目的とする独立行政法人日本医療研究開発機構法案を提出させていただきました。
この二法案につきまして、参考人の皆様から御所見を一人ずついただきたいと思います。
○大隅参考人 ありがとうございます。
このような法案ができるということ、これは本当に日本の中でも大事なことだと思います。
ただ、そのときに、こういった医療に関係するところだけが着目されるということで本当によいのかと。シーズというのは、もう本当に最初は出口が医療かどうかということがわからずに始まるもの、それも、誰かが目ききとしてそれをピックアップして、後々、これはその医療につながっていくんじゃないかということがあると思いますので、こういった法案で補助、支援されるところだけではなく、もう少し広い基礎研究への支援ということは必要なのではないかなというふうに考えます。
以上です。
○末松参考人 私は、この二法案がシナジスティックに働いて、先ほども申し上げましたけれども、育ての親の機能が、つまり、生みの親が生んだシーズを、育ての親がしっかりこれを育成していくという仕組みになる、大変大きい期待を持っております。
この育ての親は非常に大変でありまして、一度特定の疾患の目的のためにつくられたシーズが脱落しても別の病気に使えるケースがある、敗者復活という言い方が適切かどうかわかりませんが、そういった機能を持った目ききの方々、情熱のある目ききの方々が集結することによって大変いい方向に動くであろうというふうに考えております。
以上です。
○竹中参考人 私も、報告に申し上げましたように、この二法案に対して大変期待している一人でございます。
振り返ってみますと、二〇〇六年の九月に、安倍総理は、内閣総理大臣の所信表明でイノベーション25をお話しされまして、その中で、医薬は一丁目一番地と言われました。その後、これを受けて、二〇〇七年からは、内閣府、文科省、経産省、厚労省、この大臣並びに部門のトップの方、そして大学、それからナショセンの方、そして医療機器、医薬品の業界団体と官民対話というのもございました。そこでつくられたのが革新的医薬品・医療機器創出のための五か年戦略、今回の法案に盛り込まれているところが非常に共通しております。これが法制化されました。
これによって私どもが期待することは、この研究に関しては、先ほど山中先生もおっしゃられたように、非常に長い年月がかかるものでございますので、長期にわたって継続的なる健康・医療分野の戦略が展開できる、この点から私は非常に期待しているところでございます。
以上でございます。
○山中参考人 我が国におけるトップダウン研究を推進する上でこの二つの法案は非常に重要であり、私は賛成しております。
トップダウン研究に持っていく新しいイノベーションというのはボトムアップ研究でございますので、ボトムアップ研究につきましても御支援を継続してお願いしたい。そうしないと、トップダウン研究にやってくる研究がなくなってしまう可能性がございますので、両方のバランスが非常に大切だと考えております。
○平委員 ありがとうございます。
参考人の皆さんからも指摘がありましたが、これまで、我が国が実施をする医療分野の研究開発は、各省及びその所管する独立行政法人等において、それぞれが支援を行っているため、基礎から実用化までの切れ目のない支援が十分なものになっていなかったという反省がございます。すぐれた基礎研究のシーズが必ずしも実用化に結びついていないのではないかという問題も指摘をされているわけであります。
今回のこの二法案では、国が健康・医療戦略を策定し、これを推進するために、内閣に健康・医療戦略推進本部を新たに設置しようとしております。
そこで、参考人の皆様にお尋ねをいたします。
医療分野の研究開発について、基礎から実用化まで一貫して推進するため、健康・医療戦略推進本部にどのようなことを期待されるのか、お伺いをいたします。
それでは、また四名の参考人に。
○大隅参考人 先ほどもお話ししましたけれども、こういった事業を展開していく上では、今までの数倍、それぞれの省庁にいらっしゃるような方々のその専門性だけではなく、もっといろいろな、例えば特許について、あるいはいろいろな人材育成について、あるいは広報について、そういったところの専門性のある方というのが必要なのではないかというふうなことを考えます。
以上です。
○末松参考人 私は、配付させていただいた七ページのところの研究費の配分の仕組み、ここにピアレビューのしっかりした仕組みを入れていただきたいというのが最も重要な要望であります。特に基礎研究のピアレビュー、それから橋渡しのレビューをする人、それから実用研究のところ、それぞれの専門で全く異なる人材が必要であって、そして全体を俯瞰するレフェリーも必要であります。
その意味で、経験豊富な有識者のみならず、現場の研究開発に携わる若手が、自分がレフェリーに参加して、レフェリーとはどういうものなのかということを早いうちから教育をしていくということも極めて重要なポイントで、これを新しい機構でぜひ推進していただきたいというふうに考えております。
以上です。
○竹中参考人 総理を本部長とする推進本部は、ちょうど企業で申しますと最高経営執行会議の機能に相当するかと思います。こうした本部においては、日本及び世界の現在あるいは将来の医療環境を十分分析した上で、健康・医療分野でなすべき研究の課題を抽出して、五カ年ぐらいの戦略をきちっと立案することが重要かと思っております。その立案をトップダウンでおろすことにより、この新独法がその戦略に沿った医療研究開発に対して新しい研究を実施できるようなことが大切かと思っております。
以上でございます。
○山中参考人 推進本部には、ぜひ省庁を超えた、シームレスな研究の御支援をお願いしたいと思っております。
例えば、今、患者さんからiPS細胞をつくって、それを創薬につなげるということが非常に重要であると考えておりますが、現状では、患者さんからiPS細胞をつくるというところは御支援をいただいておりますが、できたiPS細胞で実際の創薬をする、そちらの方は十分なプロジェクトがないという現状で、つくれるけれども使えないという状況にもなっておりますので、このような途中でぶち切れになるのではなくて、最後まで一貫したシームレスな御支援をぜひというふうに期待しております。
○平委員 ただいま、内閣に設置をいたします健康・医療戦略推進本部についての期待をすることということでお伺いをいたしました。
続きまして、独立行政法人日本医療研究開発機構に求められる人材という観点からお伺いをしたいと思います。
今回の法案では、政府は、健康・医療についての施策の大綱、つまり、我が国の健康・医療の施策についてのグランドデザインといえる健康・医療戦略を策定いたします。これに沿った具体的な計画の枢要については、新しく設立される機構が中核的な役割を担うこととしております。具体的には、機構が、本部の決定する医療分野研究開発推進計画に基づいて、個別の研究費の分配を行うことになります。
つまり、この機構の行う個別の研究費の分配は、健康・医療戦略の成否に大きく影響するものでございます。同時に、将来の治療方法や創薬にも影響を与える可能性が大きいということになります。
そのため、政府は、機構の行う研究費の配分について、研究マネジメントに秀でたプログラムディレクターのもとで、専門家の評価を得ながら、研究費の配分を行っていく考えを示しております。
そこで、参考人の皆様にお伺いをいたします。
機構のプログラムディレクターに期待をする人材像、また、機構が行う研究費の配分等において留意すべき点をお聞かせいただきたいと思います。
○大隅参考人 プログラムディレクター、プログラムオフィサーの役割というのは、この機構がうまくワークするかということにおいて、非常に重要であるというふうに思います。
中でも、その一番トップに立つプログラムディレクターは、全体で一人でいいかというようなことでは、ちょっと足りないかなというふうに思います。それは、先ほどもNIHの例でいろいろな部署があるというお話をしましたけれども、健康を支えるようないろいろな医療の研究というのは、非常に多岐にわたっております。一人の方が十分にその全部のところを見るということは難しいように思います。
あともう一つ大事な点は、こういったプログラムディレクターをされる方が、自分の既存のところに我田引水になるような研究費の流し方をしていただきたくはないと思いますので、そういった方、現場で自分の研究室があるような方というのは不適切ではないかなというふうに思います。それは大きな利益相反を生むのではないかと思います。
以上です。
○末松参考人 私の方からは、三点、簡略に申し上げたいと思います。
研究マネジメントについて、研究費には、直接経費と間接経費というのがございます。間接経費というのは、特定の研究の目的だけではなくて、その研究機関を支えるインフラ、基本的な仕組み、あるいは倫理教育、そういったものに使われるお金であります。この間接経費の充当というのをしっかり勘案していただきたいというふうに考えております。
それから、二番目は、このPO、PD、あるいは、その下にたくさん設けるべきと考えておりますレフェリー、こういった人たちの資質でありますけれども、これは先ほど申し上げました横串の人材、つまり、組織も横串の改革をして、人材もそういう方にぜひ来ていただきたい、こういうふうに考えております。
具体的には、参考資料の一で、私がお示しした資料を見ていただくとわかるんですが、これは医学部のケースですけれども、卒業した学生が、それぞれの診療科で専門を決めて、卒後十年ぐらいで、自分の専門のところだけは非常に見える、そういう人材が育ってきます。でも、その中に、まれに、自分の科だけではなくて、横串で、自分のアイデアを横に広げることのできる人材というのがそれなりの数おります。こういう人たちを大学でしっかりとインキュベートして、支えて、そして、こういう機構の中でお役に立つように、我々の方も、カリキュラムですとか組織を改革して、新法人とシナジスティックに動いていくということが極めて重要かと思います。
三番目は、その意味で、研究マネジメントは、つまり大学側の改革がパラレルに動かなければいけない、このように我々も決意を新たにしているところであります。
以上です。
○竹中参考人 新独法で行われるプログラムの目的は、基礎研究の実用化を一貫して推進することでございます。したがって、プログラムディレクターの要件としては、先ほど末松先生がおっしゃられた生みの親でございますね、入り口である基礎研究、それから、出口の育ての親、応用研究、この両方を理解または遂行できる人材が必要でございます。
恐らく、基礎研究あるいは臨床研究、両方御理解する方はたくさんいらっしゃるわけですが、それまでの一貫した研究開発のプロセスを経験した方は、アカデミアでは余りいらっしゃらないのではないかと思います。
そこで、私が思うことは、特に、こういうPDになられた場合に、医薬、医療機器におきましては規制を非常に理解しなければなりませんので、レギュラトリーサイエンスというものをPMDAなどと協力してまず学んでいただけたらな、こんなふうに思います。
それから、例えば先ほど御紹介しました創薬支援ネットワークには、今、約二、三十人の製薬企業で研究開発を一貫して経験してきた五十代から六十代の人が入っております。こういう方々が、今度、新独法に移りますので、そういう方々と協働してPDの方は一貫した体制、研究の中の助言をいただいたりすることが、非常にうまくいく方法ではないかと思っております。
以上でございます。
○山中参考人 私が奈良先端で独立した後、数年間は私はいわゆる一千万円プレーヤーでありました、民間の研究費が合計一千万円程度であると。これでは十分な思い切った研究ができなかったんですが、二〇〇三年に一気に一億円プレーヤーにしていただきました。年間予算が合計一億近い、しかも、一年、二年ではなくて五年間。CRESTという研究、JSTの研究費を二〇〇三年にいただきました。
そのときに私を選んでいただいたプログラムディレクターといいますか、総括が、免疫の大家の岸本忠三先生でございます。私の申請は分化した細胞から万能細胞をつくるということで、免疫とは関係なかったんですが、岸本先生は、専門とは違うから細かいことはわからぬ、しかも、どう考えてもうまくいくわけはないと。しかし、非常におもしろい発想であるし、またその戦略も理詰めである、うまくいくかどうかは別にして理詰めであるということから私を採択していただきました。それがなかったら、間違いなくiPS細胞は私のところではできていませんので。
ということで、プログラムディレクターに私が期待するというのは、やはり岸本先生のような、専門外のことであっても、また非常にリスクが高いことであっても、何でもかんでもというわけではないですが、戦略が理詰めであるかどうか等の判断で、いわゆる目ききがきく方が求められているんじゃないかというふうに考えております。
○平委員 ありがとうございました。
本当に御協力いただいて、時間内に全て終わりました。一分ほど時間を残しておりますが、終わりたいと思います。ありがとうございました。
○柴山委員長 次に、浜地雅一君。
○浜地委員 おはようございます。公明党の浜地雅一でございます。
きょうは、参考人の先生方にお集まりいただきまして、基礎研究の分野の方々、そしてその後の臨床研究に携わる方々、そして最後には実用化に携わる方々ということで、まさに各分野に分かれての、またつながってのお話を聞くことができまして、私も先ほど、四十分だったわけでございますけれども、十分ずつお聞きいたしまして、それだけでも非常に理解が深まりまして、本当に改めて感謝を申し上げたいと思います。
まず一問目に、私は、本会議で政府に対してこの法案の質問をさせていただきました。
当初、こちらの法案ができるときは、いわゆる日本版のNIHということだったんですが、いろいろなマスコミ各社等の報道によって、予算が少ないとか、アメリカでは二十七も施設があるのに一つしかないじゃないかとか、さまざまありまして、政府の方はこの日本版NIHという言葉を使うことはやめておるんですが、私の問題意識としましては、決してアメリカのまねをする必要はないと思っております。日本人の国民性や日本人の社会構造等、さまざまアメリカとは違います。
ただし、やはり、そうはいっても日本独自のもの、予算は恐らく小さく始まってだんだん大きくなるとは思うんですが、この日本の現在の状況において、いわゆる日本版と呼ぶには、専門家の皆様から見てどういったところに日本はこれから方向性を持っていくべきかということ、少し大きな質問になりますけれども、各参考人の方に、ここは大事なところでございますので、思いのたけを語っていただいて構いませんので、長目でも結構です、一人ずつ日本の目指すべきこの法案の方向性ということをお聞かせいただければと思っています。
○大隅参考人 トップバッターだと時間が有利かもしれませんけれども。
お配りさせていただきました資料の方にも書かせていただきました。一枚目のところの一ポツの一番最後の黒丸のところですけれども、既に予定されているものというのを、手元にある資料で拝見する限りにおきましては、充当されているのが、一番大きいところで、がん、ジャパン・キャンサーリサーチ・プロジェクト、その次が再生医療、そしてその後、ゲノム医療、感染症、難病等々が続いていくわけなんです。
こういったところで始まる、これは当然ながらそれで構わないと思うんですけれども、先ほども申しましたが、日本は世界にまれに見る、幸いなことに長寿な国ということがあります。長寿でさらに健康でいるためにはどうしたらいいかということに関して、そこの医療につながる研究を行うということは非常に重要ではないかと思います。
具体的に申しますと、例えば高齢者においては、どうやって寝たきりにならないようにするか。例えば脳卒中の後にどうやってリハビリテーションをするかとか、あるいは口腔の状況をどんなふうによくすると、例えばよくかめればこれは認知症の予防につながるとか、そういったことがございます。
それから、高齢者になる前の段階、これも非常に重要で、実際には成人期のいわゆるメタボ、代謝病、糖尿病でありますとか高血圧、高脂血症、こういったものも未然に防ぐというようなところが非常に重要ではないかと思いますので、今後そういったことに関する予算の充当ということが考えられるべきかなというふうに、資料を拝見する限りではそんなふうに思いました。
以上です。
○末松参考人 私からは二点申し上げたいと思います。
山中先生の発見のおかげで、臨床の現場では、難病の人で、私の細胞を使って、そして私の遺伝子を調べて、病気の本態に迫って治療をしてほしいという患者さんが、現実の問題として病院でたくさんふえるようになりました。
その意味で、診断すらつかないような患者さんたちに光を当てる。実は、これは日本独特というわけではなくて、先行して米国のNIHがUDPプログラムというのをつくりまして、そういった方々に絶対にあなたの診断をつけますという仕組みが動いています。これはやはり、我々のような科学技術立国をしている国としては必要な点ではないかと思います。
もう一点は、先ほど大隅先生からもお話がありましたが、超高齢社会の予防医学の問題であります。
この予防医学に関しては、いわゆる旧帝大系の医育機関のみならず、地方の国公立の大学、医育機関、それから私どものような私学、そして地域の病院、診療所が情報のネットワークでしっかりと結ばれて、どういうところ、農村型と都市型でどういうふうにお年寄りの構造や生活習慣が違うのか。あるいは、ゲノムベースで生まれつきの素因がどうなのか、環境がどうなのかというところのしっかりとした調査研究を進めていく必要がある。
これをやりませんと、日本のみが、百歳以上の方に関して、つまり百寿者研究ですけれども、そういったところのデータをきちんと集めて世界に発信のできる現在では唯一の国ではないか、このように考えるので、そういった予防医学のところに対する力こぶを入れていただくことは日本の特色を出すために極めて重要ではないかというふうに考えます。
以上です。
○竹中参考人 ただいま末松先生のお答えがございましたが、私も非常に似た考え方を持っております。
日本は、このように比較的狭いところに人口がしっかり集中しておりまして、いろいろなデータベースも、私たちが企業あるいは大学において健康診断も全員が受けて、非常に多くのデータを持っております。そうしますと、こういうデータベースを、個人医療と申しますか、特に日本はきめ細かい研究ができますので、これからは患者さんの個別化医療、こういうものに役立てていただきたい。特に、医療に関する個人情報をその医療に使えるような法整備もしていただいて、こうした個人医療、こういうところに持っていけば、日本版という言葉が十分生きてくるのではないかと思っております。
以上でございます。
○山中参考人 私は、日本に加えまして、アメリカのサンフランシスコでも研究活動を行っております。毎月一回ぐらい、数日ですが、向こうでも研究しております。その経験から、日米の違いを述べさせていただきます。
日本は、研究費の大部分は、国からの研究費に頼っております。これまで複数の省庁からの研究費に頼っていたわけですが、今後は、私たちの分野では多くが、日本版NIHと言ったら怒られると思うんですが、新しい機構に集約される。
アメリカはどうなっているかといいますと、NIH等の国のお金も非常に大切でありますが、実はアメリカは、それは恐らく三分の一くらいの意味しかなくて、あと二つ、一つは州ですね。各州からの、州によりますが、カリフォルニア州であるとかマサチューセッツ州は、莫大な研究費を出しています。カリフォルニア州は、再生医療だけで十年間で三千億というお金を出しております。それが二つ目で、三つ目は、民間からの寄附であったりファンドレージング等。これが、研究者や研究機関によって違いますが、まさに三本の柱になります。
ということは、アメリカは、今、NIHの例えばR01という一番大きなグラントの採択率というのは、五%を切っています。ですから、ほとんどの研究者は、非常に優秀であっても、NIHのお金はもらえない。では、彼らは研究できないかというと、そうではなくて、州からのお金や民間からのお金で研究をしています。
また、研究費だけではなくて、研究の方針といいますか、一番いい例は、ヒトES細胞に対する態度でございますが、アメリカの前のブッシュ政権におきましては、ヒトES細胞研究は厳しく制限されていました。NIHのお金は、非常に限定した研究しかできないということでありました。日本も、アメリカに倣ってというわけではありませんが、ヒトES細胞研究は非常に厳しい制限があって、ごく限られた人しかできませんでした。
では、アメリカはそのブッシュ政権のときに限られた人しかヒトES細胞の研究をしていなかったかというと、全く違います。国のお金は確かに使いにくいんですが、カリフォルニアとかマサチューセッツは、州のお金でどんどんヒトES細胞の研究をしていました。また、州によっては、共和党の強い州は州のお金も出ないんですが、そういうところは民間のお金でどんどんヒトES細胞の研究をしていました。
ですから、二〇〇〇年代のアメリカというのは、NIHはヒトES細胞研究に反対して制限しているが、それ以外の州のお金と民間のお金で、たくさんの研究者が人間のES細胞の研究をしている。一方、日本は、国の方針で、人間のES細胞研究は非常に限られた。私自身も使っていませんでした。
それがどういう結果にあらわれたかというと、ヒトのiPS細胞ができたときに、iPS細胞とES細胞というのは、培養法は全く一緒なんです。ですから、ES細胞を使っていた人はすぐiPS細胞を使えます。アメリカは、そのES細胞を研究していた、でも倫理的問題等で大規模にはやっていなかった人が、わっとiPS細胞研究に移行して、特に創薬研究において一気に広がったんですね。ところが、日本は、ごく一部の研究者しか人間のES細胞培養の経験がなかったから、培養したくてもできないという限界がありました。
そのことを踏まえて、私が新しい日本の今回の法人に期待することは、その責任の重さであります。
アメリカは、NIHがこれはだめだと言っても、ほかのお金でその研究は進む可能性があるので、ちょっと逃げ道があるんですが、日本の場合は、国がだめだと言ったら、基本的にはその研究は日本では発展しないということになりますから、その責任の重さといいますか、それだけ非常に大切な司令塔になると思うんですけれども、アメリカと違って、それ一本しかないというところをぜひ御理解いただいて、御支援いただきたいと思っております。
○浜地委員 本当に、各専門家の皆様のお言葉ですので、非常に説得力があって、我々も聞き入って今話を聞いておりましたけれども、もう一つ、私の問題意識の中に、シーズですね、いわゆるシーズを発見するためには自由な発想が必要だと。ですので、今回も、文部科学省のいわゆる科学研究費補助金、これは新しい機構が管理する予算からは外されておるわけです。
そこで、私も、問題は、シーズは自由な発想でボトムアップだ、しかし、シームレスへの移行、いわゆる実用化というのは計画的にやらなきゃいけないということで、その中できょうヒントがあったのが、末松先生また竹中先生がおっしゃった創薬支援ネットワークということで、とにかく種を見つけて、これを実用化または臨床の方へということで、このことも実は政府に質問をしたんですが、なかなか明確な答えがなかったんですが、きょうは何か答えがあったような気がしております。
創薬支援ネットワークの仕組み、いわゆるシーズを育ての親にするということでございますが、ここをもう少しやはり深く聞いてみたいなと思っております。お二方に意見を聴取できればと思っています。
○末松参考人 私自身の専門分野ではありませんけれども、創薬支援ネットワークは、現在おられる、製薬企業でたくさんの経験を積まれた方あるいは若手の先生方、非常に情熱のある方々の集団だと思っていますが、この方々が一番恐らくつらいのは、基礎研究で本当に苦労して出てきたきっかけやシーズ、新しい知見を、あるところでデシジョンメーキングで切り落とさなければいけないものもたくさんあるわけです。むしろその方が多い。やはりそこの責任と権限、こういったところで、その決断をされる御本人が、非常にこれは胆力の要るお仕事だと思います。ですけれども、そういう方を結集してやることは、我が国では僕は十分可能ではないかと思っております。
それから、いわゆる科研費、ボトムアップ型の研究は、しっかりと今までの枠組みをやはり守っていただきたいというのは私も同じ意見なんですが、その中で、全く偶然に創薬に結びつくような発想ですとかシーズが見つかることがあるわけですね。そういったものをボトムアップ型研究のファンディングエージェンシーと創薬支援ネットワークあるいは新機構、新しくできる機構がきちんと連携をして、基礎から来るシーズを吸い上げて応用に乗せていくということが必要で、両者が分断された形にならないようにしていただきたいというのが私の考えでございます。
○竹中参考人 創薬支援ネットワークをつくるに当たりまして、一昨年から私は相談役として関与しておりました。
ここにおきましては、大学発のいろいろなシーズがございます。それを先ほど来申しました実用化に行くときに、大学ではできないような研究を御支援する、また、経験されていないものですから、どういう道筋でやったら一番いいかというところを御支援させていただいている。
したがいまして、現在では、大学の方々が実用化したい、こういう御希望がありますと、私どものネットを見たり、私どもがキャンペーンで大学を回っておりますが、そこから、私はこんなことをやっておるけれどもどうか、こういうものを、初めは無料相談、有料じゃないんですけれども、そして相談を受けまして、先生、これはまだちょっとここが足りないんじゃないでしょうかとか、中には、非常におもしろい病気の原因のような種がございます。その薬をつくりたいんだけれども、そういうシステムは大学に余りありません。そういうシステムを持っているのは、例えば、理化学研究所に化合物ライブラリーという何十万という化合物がありまして、どんな化合物がその病気の種を抑えるかというスクリーニングということができます。
そういうものに非常にいいものを、そこの、今私どもにいる職員の方が、過去にいろいろな創薬の成功、失敗の経験のある方ですから、これはおもしろいということを決めますと、そこに先生の種を渡してスクリーニングしていただいて化合物を見つけたり、こういうこともできます。
さらには、まだちょっと時期が、できてから一年もたっておりませんので、御相談はないわけですが、先生方が、こういういい物質を見つけた、これをぜひ臨床へ持っていきたいと。臨床へ持っていくためには、GMPやGLPレベルの規制に合ったような仕事をしなきゃいけないです。でも、大学ではそんなことはできません。
それから、大学の先生がそこに手を染めてしまいますと、今までのせっかくのいい基礎研究がそこでストップしてしまいます。それに関しては、かえって、こういう毒性試験をしたり、こういう例えば代謝実験をしたり、こういうものが、現在では研究開発を支援する業務会社がたくさんできております。CROと呼んでおりますが、そういういいところを御紹介して、資金の調達さえできれば、そういうことは、研究委託もできて、次の臨床研究まで持っていくことができます。そういうような支援を現在させていただいております。
特に、支援の対象は大学並びに大学発ベンチャーにし、治療領域もある程度今限っておりますが、いろいろな御相談をお受けさせていただき、特にここでは、先ほど末松先生からもございましたが、大学から来るテーマも多いものですから、非常に革新度が高い、しかしながら、例えば患者さんが少ないレアディジーズ、こういうところにも積極的にやっていこう、こんな方向で今動いております。
以上でございます。
○浜地委員 ありがとうございます。
いわゆるシーズから臨床に、実用化につなげるところが本当に一番の大事なところだと思っておりますので、きょうお話をお聞きしました、この創薬支援ネットワークが発展するように、またしっかり頑張ってまいりたいと我々国会議員も思っております。
最後に山中教授にお聞きしたいと思います。
私は山中教授の講演を以前聞かせていただきまして、iPS細胞の素材となるいわゆる臍帯血というものがございました。これについて、これまでは、臍帯血バンクというものがございまして、これをよく、ボランティアの女性の方々が、出産したばかりの母胎の方から臍帯血を運んでいるということがございましたが、このたび、造血幹細胞推進法というものが成立をいたしまして、いわゆる研究目的でこの臍帯血が使えるように、しっかりと法律で明記されたわけでございます。
その後の運用なんでございますけれども、どうでしょうか、その法律ができまして、実際に、iPS細胞に対する研究の素材としての臍帯血の供給面、このあたりが充実したのかどうか、研究の現場からお答えいただければと思っております。
○山中参考人 ありがとうございます。
臍帯血はiPS細胞のソースとして非常にすぐれたソースでございますので、先般成立いたしました法案は非常にありがたい追い風になっております。既に幾つかの臍帯血バンクを運営されている方々と話し合いが進んでおりまして、実際に臍帯血の貴重な血液をiPS細胞誘導のために使わせていただく手はずが進んでおりますので、今後、臍帯血からつくったiPS細胞が、iPS細胞ストックとして日本のいろいろな方に、将来、再生医療として使われる日が来るというふうに考えています。
○柴山委員長 それでは、浜地君、質疑時間終了です。
○浜地委員 以上で終わります。ありがとうございました。
○柴山委員長 次に、近藤洋介君。
○近藤(洋)委員 おはようございます。民主党の近藤洋介であります。
きょうは、参考人の先生方、本当に貴重なお話、ありがとうございました。やはり、物事を本質的にわかられている方々というのは、難しい話をわかりやすく御説明いただけるんだなということをきょう改めて感じ入った次第であります。
我々、政治の仕事というのはいろいろな仕事があるわけでありますけれども、やはり、我が国において、科学技術立国をつくっていく、英知を結集して、そして、多少大げさなことを言えば、人類に貢献をしていく環境をつくるというのが大きな政治の役割だ、こう思っているわけであります。
きょうの御参考人として来ていただいた皆様方は、その最先端で御活躍をされている方々、また、これまで貢献された方々ばかりであります。貴重なお時間をいただいたことに感謝を申し上げたいと思いますし、あわせて、今法案、健康・医療戦略推進法案、そして日本医療研究開発機構法案が、設立によって、少しでもこうした動きにプラスになればという思いで質問させていただきたい、こう思うわけであります。
私は、野党の立場ではありますが、政権時代には、こうした分野は極めて重要である、基礎研究も当然重要であり、かつ、その橋渡し、実用化が重要であるという思いで取り組んでまいりました。
その意味では、今法案は一つの形はでき上がったな、こう思うんです。器はでき上がったなと。ただ、問題はそこに魂をどう入れ込むか、こういうことだろう、こう思うわけであります。
その観点から幾つかお伺いしたいんですが、まず最初に、慶応の末松先生、あと竹中会長、山中先生、お三方にまず最初にお伺いしたいと思うんですが、臨床の問題であります。
臨床研究の重要性をそれぞれ御主張されて、全くそのとおりだ、こう思うわけでありますけれども、日本は非常に臨床基盤研究が出おくれている、こういう問題意識でありまして、私もそうだろう、こう思うわけであります、感じております。その中で今回、ややちょっと不満なのは、今回の法案にそこのところがどこまできちっと書き込まれているんだろうか、位置づけられているんだろうかという気がしないわけではないわけであります。
今まで、臨床基盤研究については、文部科学省において橋渡し研究ネットワークプログラムというようなプログラムで、十の研究機関と大学を中心に認定をされ、また、厚生労働省において早期・探索的研究試験拠点ですか、あと臨床研究中核病院、さらには日本主導型グローバル研究拠点等々、幾つか認定をされている。その中で、全部で二十二の機関がある、こういうことでありますが、お伺いをしたいのは、今はこういう制度なわけですけれども、その中において、いわゆるナショナルセンターと言われる国立の高度拠点、がん研究所であったり、ナショナルセンターが一体どういう役割なのか。
私は素人でございますから、医学とはちょっと離れた人間からいうと、やはりナショナルセンターというのは、やはり大学、もちろん、慶応義塾にしろ、京都大学、東大、東北大学それぞれ、旧帝大以外も含めて、国立大学は国立大学で立派であるけれども、ナショナルセンターというのはやはり専門の国立の機関であるから、臨床研究における役割もよりさらに深みを、一定の役割があってもいいのかなという気がしておるんですけれども、果たしてこのナショナルセンターの位置づけというのがどういうものなのか。問題意識として、今の体系だと、なかなかはっきりしないなという気がしておるんです。
臨床基盤研究のさらなる強化、まだ各省、ややばらばら感があるのかなという私は認識をしておるんですけれども、実際に先生方、参考人の皆さんから見て、この臨床基盤強化の体制、どうあるべきなのか。とりわけ、ナショナルセンターの位置づけをどうすべきなのかというお考えがあればお聞かせいただければと思うんですが、よろしくお願いいたします。
○末松参考人 近藤先生の御質問にお答えしたいと思います。
ナショナルセンターの役割は今まで以上に私は重要になるだろうというふうに考えております。政策的に誘導を行って大規模な疫学調査を行ったりとか、それから、大きなデータをバンキングして、そこから解析して出てくるデータをどのように国民のために生かしていくかというところのイニシアチブをとる機関として、ナショナルセンターは極めて重要だと思います。
一方で、ナショナルセンターは、人材を育成する、つまり、高校を卒業して大学に入って、医学、医療に資する人材というのは、医学部だけではなくて薬学部、看護、いろいろございます。そういった人材インキュベーターとしての機能がなかなか弱いところがあるのではないか。全部を網羅できませんので、ナショナルセンターと国立の、これは大きな旧帝大系だけではなくて、全国の地方の国立大学やあるいは私学の医育機関、こういうところと連携をして、人材インキュベーターの役割を大学が果たして、ナショナルセンターの人員もそういった流れの中に入れていくということが私は極めて重要なポイントだと思っております。
以上です。
○竹中参考人 私が企業で経験したことから申し上げさせていただきます。
医薬品の研究開発は、先ほどありましたように、動物実験あるいはヒト細胞などを使って新しい化合物を見つけます。その後、いろいろなバリアを超えて臨床研究に入るわけですが、初めは健康人でフェーズ1スタディー、その次の段階で、フェーズ2で、そのお薬が、実験結果、基礎研究で出た結果と同じかどうかということ、それがワークしないと、次のフェーズ3という、何万人という患者さんを使って大きな投資をする研究に入るわけですので、そのフェーズ2というのを非常に大事にしております。
このフェーズ2というのは、比較的、非常に専門性の高い病院において、我々は、POC、プルーフ・オブ・コンセプト、基礎で立てたコンセプトを検証するということをやっておりますが、専門性の高い例えばナショナルセンターのようなところで、がんならがん、あるいは感染症なら感染症というところで、きちっとした、サイエンスと臨床とが両方御理解いただける研究機関で、そのつくった薬が本当に人で効きそうかどうか、こういう検証をしていただきたい。
あとの、今度は、グローバルに開発するときは、世界じゅうの多くの研究機関で、フェーズ3スタディーというのは、何万人規模の方で安全性とそれから有効性を検証するわけでございますので、一番大事であるPOCスタディーのフェーズ2をナショナルセンターでやっていただける方向に行くことが私の望みでございます。
○山中参考人 今回の法案の新しい機構と、それからアメリカのNIHの違い、先ほど紹介いたしましたが、もう一つの大きな違いは、アメリカのNIHというのはアメリカ最大の病院グループでもあるということであります。一方、今回の機構は、ファンディングエージェンシーで、病院はない。そのギャップを結びつける可能性があるのがナショナルセンターではないかと。
アメリカのNIHが、そのNIHの中の病院とどう連携して有効に臨床研究等を進めているか、私も専門ではありませんので全てを完全に把握しておりませんが、そのあたりをしっかり調査していただいて、今回の新しい機構もナショナルセンターをできるだけ活用して、アメリカのいいところは見習っていくべきだと思いますので、そういった立場、役割がナショナルセンターに果たしていただけるのではないかという期待を持っております。
もう一点は、今、医療がまさに個別化医療に変わりつつあります。これまで全ての患者さんに同じ薬、同じ治療だったのが、人によって効果が違うということが、当然ですが、わかってきております。
そして、今、二つの技術。シークエンス技術、ゲノム解析技術、一人一人のゲノムを十日間で十万円程度で決められる、そういう技術。それからもう一つは、一人一人からiPS細胞等の幹細胞をつくって、幹細胞経由で、病気になっている、パーキンソン病とかアルツハイマーの人だったら脳の細胞、心臓病の人だったら心臓の細胞を、一人一人の患者さんからつくれる。
その二つの技術によって、今、個別化医療が一気に、これを早く取り入れた国が、医療費の面からも、いろいろな面からも優位に立つ。その個別化医療を実現するためには、やはり、しっかりした、患者さんの長期にわたるフォローアップといいますか、病歴の管理が必須であります。その上からも、ナショナルセンターというのは非常に重要な役割を果たすべきであるというふうに考えております。
○近藤(洋)委員 ありがとうございます。
続いて、四名の参考人の皆様にお伺いをしたいと思うんです。
大隅先生から御提言されておりましたけれども、いわゆる研究不正への対応の点をおっしゃっておりました。
この研究不正への対応、なかなか大変難しいことだろう、これで対応できるということではないとは思うわけであります。しかも、基礎の研究の不正の部分から、さらには、最近、きのうも委員会でちょっと質問させていただいたんですが、ノバルティスファーマですか、事件というんでしょうか、大学の臨床、大学病院、大学の研究機関を巻き込んだ、臨床研究における不正等々、さまざまな段階で起きている、こういうことだと思うんです。
この対応について、一つは、学術会議が三月二十四日に提言をされておって、国による臨床研究部門、しっかり関与すべきである、こういう提言。とりわけ、現在構想中の新しい独法で、一部門として、研究不正の監視及び防止の機能を持たせることもあっていいのではないかということも提言をされております。
そのことも含めて、この新独法にそういった役割を持たせるというのはどのようにお考えかということも含めて、また、現在、厚生労働省において、これも臨床研究、薬事法以外の部分について、法的な措置もどうするということを検討されているということであります。ここも、余り厳しくしてしまうと、逆に問題もある。
いろいろな論点があろうかと思いますが、なかなか簡単にこの研究不正の対応は一言でお答えしにくいかとは思いますけれども、この二点、ほかにも何か御提言があれば、それぞれ御回答をいただければ、御発言をいただければと思います。
○大隅参考人 ありがとうございます。
私自身、提言といいますか、紙の中にも書かせていただきました研究不正の問題は、科学者コミュニティーの信頼を失わせることとして非常に苦慮しております。
先ほど申しましたけれども、研究費に関してどのように不正を防ぐか、こちらの仕組みの方はかなり整ったのではないかというふうに感じておりますが、いわゆる論文を出すときの不正、こちらの対応というのがおくれていると思います。
米国の例で申しますと、一九八〇年代からこういった論文不正が問題になりまして、アメリカのNIHの上の方、HHSの方ですけれども、そちらの中に研究公正局というものができました。その研究公正局は何を所掌しているかというと、大きく分けてまず二つありまして、一つは調査ですね。何か不正が起きたときに、どのようにそれが起きてしまったのか、どれがどのぐらい悪いのかということを調査するような部門。それからもう一つは、それを未然に防ぐためにはどのようにしたらよいかということで、これは教育でありますとかいろいろな啓発活動、こういったことを所掌する。この二つがありました。
ところが、ごく最近ですけれども、このORIの一番トップの方がおやめになりました。それはどういうことかといいますと、現在、アメリカでこれまで行われてきたORIの仕組みというのが、残念ながらやはりうまくはいかなかった。特に最初の方の調査のところというのが、これはなかなか、やはり個人の保護、人権の保護、いろいろな問題がありまして、所属機関などで行う調査以上に踏み込んだことというのが実際には難しいということがあると思われます。
結局、ORIの方は今何を中心としているかといいますと、教育などを行って、どのようにして研究不正を防ぐか、何がしていいことなのか悪いことなのか、そういったことをEラーニングやいろいろなセミナーを開催するなどによって行っています。実際、例えばファンディングエージェンシーとしてのNIH、すなわち、イントラミューラルではなくて外部の方に配る方の、エクストラミューラルなどの研究費を配った場合には、そこの研究機関においてちゃんとセミナーを行うとかそういったことが行われています。
ですので、新独法の中でそういったことを扱うということであるとすれば、そのような研究費を配分した先におけるセミナー、あるいは来ていただいてということでもあるかもしれませんけれども、研究不正を防ぐようなことを中心としてそれを行っていただくのがいいかなと、個人的にはそういうふうに思います。
○末松参考人 お答えいたします。
今、大隅委員から御指摘のあった教育の重要性はもとよりなんですが、私どもの医学部、病院でも、数年前にあってはならないことが起きまして、そのときに臨床研究に関する仕組みの抜本的な見直しを行って、現在、どういう再発防止策が行われているかを簡略にお話しいたします。
まず、日本は臨床研究と治験という二つのトラックがあります。これは日本の固有の仕組みになっていて、海外ではこれは一本のレールになっております。
私どもは、年間八百件近くあります臨床研究のうちの、任意抽出で一〇%から一五%の数を外部監査にかける、こういうことを行いました。今までは、多くの大学で臨床研究に対する外部監査というのはございませんでしたけれども、それを我々は、コストを払って外部監査を行う、違反行為があれば国のガイドラインにのっとって処置をする、そういう仕組みにしております。
二点目は、臨床研究の情報の共有化です。医師が臨床研究のイニシアチブをとるわけですけれども、グループ医療というのが当たり前になっている昨今では、看護の方々それからその他のコメディカルの方々が、目の前にいる患者さんが今臨床研究の対象になっているのかどうかを電子カルテ上で見る必要があります。インフォームド・コンセントがきちんととれている症例、そうでない症例というのがリアルタイムに電子カルテ上で確認できる仕組み、これを導入いたしました。これは、やはり透明化とか情報共有ということで必要なことかと思います。
三番目は、おおよそ、ありとあらゆる病院であると思うんですが、ヒヤリ・ハットというのをお聞きになったことがあると思います。つまり、非常に小さなミスの種が後で大きなことになる。そのミスをできるだけたくさん出していく。
病院では、診療科ごとにセーフティーマネジャーというのがおりますけれども、これと同じことを基礎教室、臨床教室それぞれで行って、ヒヤリ・ハットを掘り起こしていく。ヒヤリ・ハットの報告の多い病院がきちんとした病院であるというのと同じ考え方で、臨床研究のそういう不正行為ですとか書類の不備それからインフォームド・コンセントの徹底等、それから、研究期間というのが定められていて、多くの研究者はかつては自分の申請した研究がいつまでやられているのかを忘れてしまうようなこともあります。これをきちんとノーティスして、しっかりと申請書どおりの臨床研究を進めて、国民の負託に応えていくということが重要かというふうに考えております。
以上です。
○竹中参考人 製薬企業等におきましては、薬をつくるときに、一番の初めの情報源は論文でございます。したがいまして、私どもは、非常に革新的な論文を読んで、これから薬ができると思いますと、その実験をまず追試します。
実は、先ほど私、例に出しましたバイエルヘルスケアとか、アメリカのバイオテックの大きなアムジェンがネイチャーに数年前に発表しているんですが、彼らが追試をした結果、再現性があったのは残念ながら三〇%ぐらいだったというんです。これは、再現性がなかったから不正とかそういうことじゃなくて、いろいろな実験条件とかそれがきちっとできなかったことにもよるかもしれませんが、そういうことがありました。
実は、そういうことを企業等では自分の研究に使うときには、当然でございますが、必ず追試をしているわけですが、例えば、それをせずに、そのコンセプトが非常にすばらしいということから、その誤った、不正のある発想をもとにしてまた次の研究をすれば、実はそれは無駄になるわけでございまして、本当にそれは防ぎたいということで、実は、この新独法のところの専門委員をさせていただきましたときに、議事録をお読みいただくと出ておると思いますが、私も、この不正に関する調査といいますか、そういう監査委員会というのを設けてほしいということをお願いしております。
それから、今、末松先生からございました、製薬企業における臨床研究の支援に関することは、きょうも新聞に出て、昔、製薬企業に身を置いた者としては大変つらい立場にございますが、三月二十七日に日本製薬工業協会は、臨床研究の支援のあり方に関して基本的な考え方を発表しております。
一つは、自社医薬品に関する臨床研究に対する資金提供や物品提供の支援は、きちっと契約をして行う。そして、提供したものが、例えば残ればそれは必ず返してもらう。それから、こういう研究において、例えばデータの解析をするなどのところにはその会社の人を使わない、こういうようなことをされております。また、奨学寄附金についても、今までは営業部等々から出していたところがありますが、きちっとした、そういう管理ができ得るような部門から行う、こういうような指針が既に製薬協の方から出ておりまして、これにのっとって、二度とああいうことのないようにいきたいと思っております。
なお、ちょっと蛇足かもしれませんが、御参考のために申し上げさせていただきますと、厚生労働省に申請する治験とか、それから前臨床試験あるいは有効性の試験というのは、申請書類は、必ず、厚生省においては薬事監査というのがございまして、その試験が本当に適切に行われているか、生データまでさかのぼった監査が行われております。したがいまして、治験という中では、きちっとしたそういうシステムがございます。
以上でございます。
○柴山委員長 時間は終了しておりますが、最後、山中参考人。簡潔に御答弁ください。
○山中参考人 研究不正を予防する一つの重要な方法は、日ごろの研究記録をきちっと残すことだと思います。そのためには、単純なことでありますが、ノートの記録が非常に大切です。
私たちは、十年くらい前から、ノートのつけ方ということを、学生さんを含めて全員に、少なくとも年に一回は指導しています。もともとはそれは、研究不正ということではなくて、アメリカの先発明主義に対抗するために、先に出願しても、アメリカの人が、いや、私たちの方が先に発明していましたと言われたら負けてしまいますので、それに対抗する唯一の方法がノートであるということで、そのノートのつけ方。
例えば、ルーズリーフはだめだとか、鉛筆はだめだとか、消した場合に、変更はホワイトで消してはだめで、ペケをして、何が書いてあったかわかるようにしなさいとか、もちろん日付は年まで含めてちゃんと書きなさい、そして、一番大切なのは、定期的にそれを第三者がチェックしてサイン、第三者のサインをもらいなさいと。これをずっと続けてきました。
昨年、一昨年、忘れましたが、アメリカが先願主義に変わりましたので、特許上の意味からはそこまでノートをつける必要はなくなったんですが、それが同時に、研究不正を防ぐ物すごくいい方法だということに気がつきまして、その後もそれはずっと続けています。
ですから、今後、研究不正をこの新しい機構のもとで防ぐ一つの方法は、この機構からもらったお金で研究をする場合は、そういったノートのチェックを徹底させる。私たちもチェックしています。誰々は出していませんという報告が定期的に来ます。僕たちは、出さない人は不正をしているとみなしますと言明しています。それぐらいしないと、やはり、きちっと書けない人はどうしてもいますし、また、書いていても、ちょっとしかないとか、やたら汚いとかいう人は指導しています。見られるということで、しっかり書くようになっています。非常に大きな効果がありますので。
ただ、それをチェックする方は大変なんですね。莫大な、うちだけで三百人近い者が研究室におりますので、それをチェックする人をちゃんと雇用する必要がありますから、だから、やはりこの機構の中ではそういうチェックをする支援員の方の雇用まで含めて、きちっとした対応、やはり予防というのが一番いいことだと思いますので、ぜひお願いしたいと思います。
○近藤(洋)委員 ありがとうございました。
○柴山委員長 次に、松田学君。
○松田委員 日本維新の会の松田学と申します。どうぞよろしくお願いします。
日本維新の会、維新という名前がついていますように、この日本の社会、経済の仕組みそのものを組みかえていこうという、そういう統治機構の改革を含めて、そういう政党でございますので、今回、新しい機構ができるわけですけれども、それがシステムとしてちゃんと動くものかどうか、そういう設計の視点もちょっと加えながら御質問させていただきたいと思っております。
日本の国は、かねてから、課題先進国という言葉がありますように、人類共通の課題に世界で最初に直面する国になった。その中でも最も大きな課題というのは、多分、超高齢化社会。超高齢化社会を活力ある形で運営するモデルを世界に先駆けてつくるべきであるという、これを一つの国家目標にしてもいいんじゃないかというぐらいのテーマだと思います。
超高齢化社会というと、社会保障の問題、そしてこの負担の問題というふうにすぐ行ってしまうんですが、私はもう、コストではなくてバリューであると。特に医療というのは、今どんどんコストが膨らんでいる部門ですが、バリューを生み出す部門にするということで、これは同時に経済成長にもなり、そして、国民の健康寿命を長くすることによって全体としての持続可能性もできてくる、非常に重要なイノベーションの最先端の分野だろうというふうに思っていまして、それにふさわしい機能を機構が果たせるかどうかという観点があります。
私、たまたま、十数年前から、御存じか知りませんが、横山禎徳さんという、マッキンゼーの東京支社長を昔やっていた方で、社会システムデザイナーということをやっている方からいろいろな御指導をいただいて、不肖の弟子と称しているんですが、彼がよく言っていたのは、社会システムというのは、ユーザーの立場に立ってバリューを生み出す、そのために、縦割りに対して横串を通していくことだと。
例えば、健康というバリューをつくってそれをユーザーに保証していくというシステムの中に、その中に医療という縦割りがあり、あるいは金融もあれば、通信業もあれば、運輸業もある、いろいろなものが縦割りで、そこに横串を通す。先ほど末松参考人からそれに近いお話をいただいて、実は高校の同級生なんですが、同じような考えでやっているということで、大変心強く感じている次第であります。
ただ、そういう縦割りに横串を通す人材をどうやって確保し、生かしていくか、そういう組織になっているかどうかという観点について、ちょっとその人材の面で何点か、私、三つぐらい申し上げますが、順次先生方に、お答えできる範囲でお答えいただければと思います。
一つは、国がこういう組織をつくりますと、今、公務員制度改革というのを、内閣主導人事をやるということで、かなり政治色の強い人事がこれからいろいろと政府でも進んでくる。こういうものをつくりますと、民間から人を集めるにしても、今安倍総理とかあるいは菅官房長官の求心力が非常に強いものですから、それに近い人たちがどっと入ってくる。でも、政権がかわったらどうなるんだろうかという不安を抱いている研究者の方々が結構いらっしゃるという話も以前聞いたことがあるんですが、その点についてちょっとコメントをいただける方にはいただきたいというのが一点ですね。
それから、今の医療の問題も、横串、横断と今申しましたが、例えばダ・ヴィンチといった電子治療装置というのは、これは物性科学とか、それからほかにも情報科学とか電子工学とか、いろいろな学際的な分野があるので、単に医療関係で横串を通すだけでは多分済まないんじゃないか、そういう人たちをどうやって確保していくのかというのが問題意識の二点目ですね。
それから三点目ですが、民間から人が来ても、さっき言ったように、政権がかわればまたもとに戻るとか、また行ったり来たりする、リボルビングドアという言葉がある。そうすると、周辺にいろいろな受け入れるような、アメリカですといろいろなインスティテュートとかがあるようなんですが、そういった社会システム全体としての雇用の流動性みたいな、それを担保する社会インフラみたいなものも必要だと思うんです。
今ちょっと三点申し上げましたが、それぞれ順次、どの点についてでも結構ですから、御所見をいただければと思います。よろしくお願いいたします。
〔委員長退席、橘委員長代理着席〕
○大隅参考人 幾つかの御質問がありましたけれども、私の専門性でお答えできるところとして、一番最後のところの雇用の流動性等のことを申し上げたいと思います。
本来、例えば有期雇用の方々というのは、流動性を高めるということですね、例えば博士号を取った後のポスドクと言われる方たち、博士研究員の方たちは、いろいろなところで武者修行をしなさいということで、そういった有期雇用になったわけですけれども、これが、そうすると、キャリアパス形成という上で、期間が限られていますから、その間にある程度やったとしても、また次々とそれを食いつないでいかないといけないようなことがあります。
ですので、こういった流動性を確保しながら、それでもその方のキャリアパスが通っていくような仕組みというのが必要かなというふうに考えます。
具体的には、例えば、あり得ることとしては、雇用自体は機構のようなところで雇用していただき、派遣されるところが変わるとか、そういったやり方もあり得ないか、そんなことを考えたりしております。
ありがとうございます。
○末松参考人 御質問ありがとうございます。
先ほどの横串の問題ですけれども、超高齢社会のところで、詳細は申し上げませんけれども、やはり医療周辺産業、医療にまだ行く手前のところ、ここの活性化は極めて重要だと思います。
健康長寿で御自宅におられる方、そして病院に行く前の方をどのように考えるかということで、これはもう経済産業省あるいは農林水産省の方でも政策的ないろいろなことはやられているということを知っております。
今御質問のあった人材の面でございます。
政府の公務員の方々が、大学とか、あるいは製薬企業でもいいんですけれども、それからそのまた逆ですね、大学の方がファンディングエージェンシーのPO、PDをやったり、この人材の交流は、一時、公務員の方が大学に行っているということが別の意味で、ネガティブな部分を強調されたために少し抑制的になっているような気がしますが、公務員の教育研究機関として大学を活用したりとかいう仕組みはもう少し規制緩和をしていいのではないか、このように思いました。
それから、先ほど山中先生からもお話がありましたが、研究支援者はもう本当に欠くことのできない人材集団でありまして、そこの育成をするために、果たして労働契約法、現在の五年でおしまいというのが本当にいいのかどうか、ぜひ国会の先生方には見直しをしていただきたいというふうに思っております。
私の方からは以上でございます。
○竹中参考人 私が先ほど発表しました中で、アメリカではバイオベンチャーが一九九〇年代に非常に成長したことを御報告しました。
その一つの引き金は、もちろん、大学におきまして米国のゲノム計画で新しい創薬が始まって、大学の先生がシーズを見つけられた、そしてベンチャーをつくられた。そのときに参入しましたのが企業で働いていた方々で、ちょうどアメリカは九〇年代、多くのMアンドAが起こりまして、MアンドAで残念ながら会社を離れた方々がそういうところへ行って、そういう方は、大学の先生は科学の目ききであられますが、企業から行った者は開発あるいは販売、こういうものの目ききでございまして、これらがシナジー効果を結んで、あのようながんの分子標的薬が出てきた背景がございます。
近年、ちょうど二〇〇〇年以降、私にも一つの責任があるかもしれませんが、日本でもMアンドAが活発になりまして、そして会社を離れ、いろいろなところに人材の流動化が起こっております。特に最近も非常に起こっておりまして、そういう方々がベンチャーに移ったりをしております。
日本のベンチャーは成長が悪かったという結び方をしましたが、一方で、この数年は大変ベンチャーの方もリスクマネーが入るようになりまして、企業価値が数百億円から一千億円まで成長したバイオベンチャーが結構あります。
日本発のこうしたバイオベンチャーの経営者等を見ますと、やはり、大学の先生が経営者をするのではなくて、企業で先ほど言いました経験をした人たちが行って、そしてやった会社が比較的うまくその企業価値を大きくしているようにも見受けられます。
したがいまして、企業の方も非常に現在の経営に対処するためにダウンサイジングしたりあるいはふやしたりとダイナミックに動いておりますが、そういうことによって人材が流動化すると思います。それをうまくいろいろな新しい産業の方に移っていただくことによって、新しい産業としてまたこの健康・医療、こうした分野の産業育成ができると思っております。
以上です。
○山中参考人 今の御質問の一点目の、政権がかわることは不安ではないかということでございますが、とても不安であります。やはりプロジェクトがもし短期間で変更、縮小されますと、中心研究者はもとより、それで雇用されている研究支援者等が非常に不安定になりますので、確かに不安であります。
そういった観点から、今回、研究開発機構が法案化されて法律でできるというのは、政権がたとえかわったとしても、法律で決まったものでありますから、急激な変更というのはあり得ないだろうというふうに予想しておりますので、非常にその点からも私は賛成しているゆえんであります。
アメリカの場合は、御存じのように、大統領がかわるとNIHのトップも、上層部が全部かわって、方針が大きく変わってしまうこともありますが、日本の場合はそれとまた違うメカニズムであると思いますので、その点もこの法案に期待しているところであります。
以上でございます。
○松田委員 どうもありがとうございました。大変よくわかりました。
それから、先ほどは人材の点を申し上げたんですが、次は情報の面なんです。
我々、内閣委員会で、昨年、マイナンバー法案というのを審議いたしまして、それを可決して法律が成立しているんですが、今準備しているところなんですけれども、とりあえず社会保障と税とそれから防災の三分野に限ってということで、まだ医療とかそっちの方は先の課題といいますか、そんな状況なんですが。
昨年、内閣委員会でちょっとヨーロッパに視察に行きましたところ、デンマークという国に行きましたら、バイオバンクというのがありまして、国民の検体情報が、もうほぼ全ての国民、一人一人全部登録されているわけですね。いろいろ聞いてみると、日本ではいろいろ個人情報の観点からなかなか研究に利用できないのが、向こうにはメディコンバレーというのがあったりとか、いろいろなイノベーションが行われていると。非常に向こうはどんどん先に行っちゃっているなという感じがしたんですが、保護から利活用に進んでいるということで、これは、イノベーション、とてもこれでは日本は太刀打ちできないという印象を持ったんです。
このいわゆる個人情報保護と利活用というものは、一見、二律背反のようなところがありますけれども、これはどうしていったらいいのか、こういう機構もできますこともありますので、それぞれ御参考人の方々から、順次御所見をお聞かせいただければと思います。よろしくお願いいたします。
〔橘委員長代理退席、委員長着席〕
○大隅参考人 ありがとうございます。
先ほど、ちょっと十分な説明が足りなかったかもしれませんけれども、私の配付資料の二ページ目の三ポツで、このような機構の中で行われる事業の中に、非常に長期の健康調査をしつつ、また、ゲノム情報などの非常に個人情報のものも扱うような、そういったプロジェクトというのが非常に重要だというふうに位置づけられていると思うんですけれども、そういった場合にどのような法令を整備していったらいいか。
現状の個人情報保護法との間に非常にコンフリクトが起きているということを、たまたま私が東北大学におりまして、東北メディカル・メガバンク機構ということで、ゲノムコホート研究ということを推進されているんですが、この中で、これをどうやって扱うかということを、まだまだ、本当に現場で、国の中のほかのコホート研究やバイオバンクのそういったプロジェクトの方々と御相談しながら手探りで進めているような段階ですが、こちらについて、ぜひ専門家も育成していただきつつ進めることというのが非常に重要ではないかなと思います。
あともう一つ、やはり、電子カルテ化ということもその中で進めていかなければいけない重要なことかと思います。
東北地方は津波でカルテが流されてしまって、紙のカルテというのはそういったもろいものだということがあり、そういった観点からも、電子化されるということは非常に重要かなと思います。
○末松参考人 情報につきまして、私の方から二点申し上げたいと思います。
先ほどの別の御質問でもございましたけれども、ナショナルセンター、例えば国立がん研究センターでデータベースをつくるときに、例えばタナカヒロシさんという方が一体何人いるのか、つまり、メディカルIDというのは今一応ペンディングにはなっておりますけれども、この仕組みがないために、データベースの構築がやはり一つの大きな障壁になっているというふうに考えております。
これから超高齢社会ですので、これからというか、もう今現在そうで、さらにこれからもっと超高齢化が進みます。一人の患者さんが、特定のがんだけではなくて、心筋梗塞や脳梗塞、あるいは糖尿病、こういったものを複合的に合併する方がどんどんふえていきます。その意味で、このデータベースの構築に必要なメディカルIDのところは、もう一歩ぜひ踏み込んでいただけないだろうかというのが私の考えでございます。
それからもう一点は、これは今厚労省の方で、インターナショナル・クラシフィケーション・オブ・ディジーズという、ICD分類の問題が議論をされておりますけれども、これは、いわゆる病気のいろいろな分類を異なる国で比較をする仕組み、WHOの仕組みになっているんですが、実はこのクラシフィケーション、分類のやり方も、医学の中には、新しい疾患概念とか、新しい薬ができて、その薬に反応した人しない人というようなタグづけをやっていくと、この大きな、これは国民全員の情報が入るわけですので、そういったクラシフィケーションを戦略的にやってデータベース化していくことも、日本の国民の治療あるいは創薬をどういうふうにアンメットニーズを掘り起こしたらいいのかということで、極めて重要なデータベース事業になるかと思います。
残念ながら、このフィールドには全く予算がついておりません。私、何の利益相反もございませんけれども、ぜひそういったところにも、目配りを先生方のお力でしていただければと思います。
以上です。
○竹中参考人 本日、私が使わせていただきました資料の四ページに、新薬の開発力を国別に出しておるわけですが、その中で、見て驚かれるかもしれませんが、先ほど先生の御質問のあったデンマーク、これは約五位、ドイツ、フランスと同格でございます。あの小さい国がこれだけの創薬を行っている。
この国には、非常に特色のある糖尿病を専門にするノボノルディスク、あるいは精神神経系に特化しているルンドベックなどがございまして、恐らくでございますが、こうしたデータベースのしっかりしたバイオバンク、これらを創薬に使う機会が非常に恵まれている、こんなふうに思う次第であります。
もう既にお二人の先生がおっしゃられて、また、先ほど山中先生もおっしゃられたんですが、私が思っているのは、今後、患者さんから組織をいただき、そしてその情報をいただくときに、やはり初めから創薬とかそういうところに使えるという包括的な契約のできる法整備をお願いしたいと思っております。
○山中参考人 先ほども少し述べましたが、今後はやはりいかに個別化医療を進めていくかということが非常に大切だと思います。
その上で、先ほど言いました、それぞれの患者さんの病歴と、それからゲノム情報と、そして幹細胞を含めたサンプル、この三つを常に連携させて、しっかり維持できるかというところはぜひこの機構の中でも検討していただきたい、そのためにナショナルセンターが活用されるということもあり得ると思います。
一方で、そういったゲノムと個人の、個人ごとのゲノム情報というのが、今、アメリカでも、例えばグーグルで行われておりますし、日本でも同じような動きがございます。こちらの是非については私はいろいろな意見があると思いますが、やはりそういったことも、国、この機構を中心にきちっと管理していく必要があるのではないかというふうに考えております。
○松田委員 最後に、もう時間が来ましたので、山中参考人に一点だけ。
先ほど、日本の場合は、資金はもう国しかないという話なんですが、アメリカなんかですと、結構寄附とか、それこそファンドレージングという言葉がありますが、非常にそれが発達している。
では、日本は寄附をしない国民かというと、そうでもないという話もあって、やり方がうまくないんだという説もあるんですが、どうやっていったら日本もそういうものが少し根づいていくか、先生の御見解をちょっとお聞かせください。
○山中参考人 アメリカは、ファンドレージングが物すごい盛んです。役割分担がはっきりしておりまして、それぞれのトップに医学部長であるとか研究所のプレジデント、最大の仕事はファンドレージングである、お金を集め、どれだけ集めたかでその人が判断される。
片や、日本の場合は、そういう役割分担ができていません。医学部長とか研究所長が研究をせずにファンドレージングばかりやっていたら、恐らく物すごい非難を浴びると思いますので、そういった役割分担の明確化といいますか、ファンドレージングも非常に大切な活動である、そのための専用の人材も立派な仕事である、そういう研究支援人材の一員であるというキャリアパスの明確化というか、それが必要じゃないかと。
税制が日本とアメリカで大分違うんじゃないかと僕も誤解していたんですが、よく調べると、それはほとんど変わらなくて、寄附税制は。だから、税制が問題で日本の寄附が少ないというわけではないと思います。
○松田委員 貴重な御意見をどうもありがとうございました。
以上で終わります。
○柴山委員長 次に、大熊利昭君。
○大熊委員 みんなの党の大熊利昭と申します。
本日は、まことにありがとうございます。いろいろと貴重なお話、前向きなお話、恐れ入ります。
私自身、金融業界出身でございまして、今の先生のお話、ファンドレージングの仕事は、金融の仕事のようなお仕事というふうな側面もあるんだということで、ちょっと興味深く感じさせていただきました。
さて、いろいろと前向きなお話があったわけですが、あえてちょっと、今回の二法案についての懸念事項、決して私はひねくれているというわけではございませんのですが、懸念事項について幾つかお伺いしたいというふうに思います。
各参考人の先生方、皆様にまずお伺いしたいんですが、今回、健康・医療推進本部という、本部長は総理、そういう本部を設置するということを予定しているわけですが、一方、つい先日、総合科学技術会議、これは内閣府にありまして、この機能強化ということで、単なる研究開発に加えて実用化までやるんだ、こちらの法律改正なんですね。この法律が衆議院を通過しておりまして、こちらは、医療とかバイオ、健康に限らず全部、全ての技術、そういうことなんです。こちらの議長は総理ということになってございます。
では、いわゆる学際領域というんですかね、スーパーコンピューターを使ったような創薬研究、先生方の資料にもたしかあったと思うんですが、では、これは一体どっちなんだということになりますと、決めるのは法律上は総理ということになっておりまして、あるいは政治、あるいは内閣といってもいいんでしょうか、ということなんですが、ただ、これは間違える可能性というのも、十分か、多少か、ある程度か、形容詞は別にしてあるわけでございます。
であれば、医療・健康に限らず、総合技術会議に全部一本化すればいいんじゃないかという論もあるのではないかというふうにも思うわけでございますが、この辺の関連について、四人の先生方にお伺いしたいと思います。
よろしくお願いいたします。
○大隅参考人 私も、CSTPの方の専門委員などを何回かやっておりますので、ある程度の仕組みはわかっているつもりでおりますけれども、所掌する範囲というのが、やはりこの健康・医療というものが、人の一生にかかわる健康ということになりますので、物すごく広い、私の立場からはそういうふうに思います。
ですので、これが屋上屋を重ねているようになっているのではないかというような御指摘はあろうかとは思いますけれども、むしろこれは、健康・医療の方に特化したこういった仕組みができることの方が、よりそこを推進することができるのではないかなというふうに私自身は思っております。
○末松参考人 私も大隅委員の意見に賛成でございます。これは、人の命にかかわることということももちろんなんですけれども、先ほど申し上げました、特にやはり希少疾患とか弱者の方に対する目配り、そこにきちんとフォーカスをするようなことを、全部のサイエンスを一括してまとめるという組織でそういうところまでできるかどうかというところもありますので、やはり、医学、医療のところで新しい機構ができるということは、大変、僕はありがたいことかなと思っております。
○竹中参考人 お二人の意見と余り変わるところはございませんが、今回この法案が出てきた背景は、もちろんステークホルダーであります国民の方が、今、健康・医療に一番要望が強く、その中の科学技術を一つきちっと区分けして、それを育ててみようという意図だ、このように思っておりまして、総合科学技術会議では全体を見ていただき、そして、その中の健康・医療はこの本部できちっと見ていただけたら、このように思っております。
○山中参考人 私も三名の方と同じ意見でありまして、やはり、医療分野というのは非常に多岐にわたりまして、非常に複雑化しておりますので、総合科学技術会議の中で医療分野の専門の方というのは本当に少数しかおられませんでしたので、やはり独自の、その分野だけを複数の方で方向性を決めていくということは絶対に必要だと思います。
同時に、この新しい開発機構とそれから総合科学技術会議の間の連携というのは、ぜひしっかりとっていただきたいと思っております。境界分野というのは、先生が言われたように、必ず存在いたしますので、それぞれの機構、会議がお互いに、相手がやるだろうということでどっちもしていないとか、もしくは、両方でやっていて重複している、そういうことが起こらないように、機構と科学技術会議の活動は、お互いそれぞれの会議にはそれぞれの方が参加するとか、そういったことは御配慮いただけたらなと思っております。
○大熊委員 ありがとうございました。
続きまして、先ほど来も出てまいりましたが、いわゆる新独法のPOあるいはPDと呼ばれる方々による管理あるいは支援というような観点なんですが、新独法のそういった管理以外について、当然、各研究機関、研究所による、その組織としての管理というものも、先ほど山中先生からノートをつけるんだというお話もありました。そうなりますと、二重に管理をされる、そうした場合に、各研究者の負担というのはどういったことになるんだろうか。
あるいは、国の公的なプロジェクトの方の管理がしっかり、悪く言うときつくなりますと、逆に各研究所、先生方の研究機関、研究所による管理がダブらないとすると、そちらの方は逆に手薄になるのではないかという懸念をちょっと思ったりもするんですが、この点について、各先生方の御意見を承りたいと思います。よろしくお願いします。
○大隅参考人 管理体制として、ファンディングエージェンシーの方からの管理、それから研究が行われる研究機関における管理、これは少し役割分担が違うところがあると思います。
例えば、いろいろな試薬の取り扱い、あるいは組み換えDNAの取り扱い等々は、これはもう既に国の指針がきちんと、法律ができておりまして、それにのっとって研究機関の方がやるようになっております。
先ほど、足りない部分というのは、繰り返しになりますけれども、例えば研究不正等々の対応、こちらの方はまだ整備がおくれておりますので、でも、研究は毎日行われているわけですから、喫緊に行われるとするとすれば、そういったあたりのところはぜひファンディングエージェンシーの方で進めていただければというふうに思います。
○末松参考人 私は、一点だけ指摘させていただきたいことがございます。
限られた資金の中で、いかに効果的に全体の最適化をしていくかという意味で、新しい医療研究開発機構の設置とシナジスティックに既存の大学の力を利活用していくということは、限られた予算を生かすという意味では非常に重要ではないかと思っています。
アメリカではと言いたくないんですけれども、かなり昔に、医学部と工学部の境界領域をつくるために、バイオエンジニアリングのインスティテュートというのを全米に五十カ所ぐらいつくったことがありますが、これは国のお金で全部つくったわけではなくて、優秀な研究をやっている大学をいろいろ拾い上げて、そこにファンディングをして、その大学の研究支援、あるいは、研究者の集団を一定期間NIHのインスティテュートという形で指定していくという方法がありました。
やはり既存の仕組みを、大学の機構改革とシナジーを持たせて、国が新しくつくる研究開発法人と協調してやっていくということがすごく重要ではないかというふうに思いました。
○竹中参考人 先ほども申しましたように、製薬企業等におきましては、製造承認申請を厚生労働省等に出しますと、薬事監査といって、実験成績のチェック、あるいは臨床成績のチェックがございます。
このときの企業の方の対応としては、会社の中に薬事監査部というのを設け、常に研究者あるいは臨床データのそうしたチェックをしております。そして、今度は厚生労働省からの監査があったときに、いつでもこれを見せることができるような体制にしております。
ですから、私は、二つの機構があっても、例えば、今申しました会社での薬事監査部が、大学の研究室における監査であっても、これは、将来受ける独法の監査の方針に合わせた形で準備しておけば、二重手間はほとんどないかと思っております。経験から、そう思っております。
○山中参考人 現在も、例えば私たちはJSTから御支援いただいておりますが、毎年サイトビジットというのがございます。研究所に来られて、研究の進捗状況とそれからあと会計の内容についてチェックをされるわけですが、やはり今後は、それに加えて、先ほど申しましたノートの管理であるとか、研究倫理や生命倫理に対する教育がちゃんとなされているかとか、そういうことまで踏み込んだサイトビジットが定期的に行われるべきではないかと思っております。
○大熊委員 ありがとうございました。
続きまして、これも各先生方にお伺いしたいと思うんですが、新しい独法ができることによるメリットとして一般的に説明されてきたのは、研究者の方々が、今ですと、JST、基盤研等三つの独法ですか、それぞれファンディングを要請しに行くという手間が一つにまとまって済むんじゃないかということが説明をされているわけなんですが、それ以外のメリット。
それから、逆に競争関係で、一対三で、研究者の皆さんから見ると三つのところを比較できるという側面もあったのではないかと思いますが、今度はそれが一つになりますと、これは当然、需要と供給の関係で力関係としては弱くなってしまうのではないかという懸念も持つわけなんですが、この点について先生方の御意見をお伺いしたいと思います。
○大隅参考人 どのような仕組みをつくろうとも、それを運用する人が結局問題なんだと思うんです。例えば一元化して一気通貫にという形で今回のファンディングのあり方を進めていて、私は、これは一定の評価ができることだと思います。
私の懸念は、こういった健康・医療に関する開発研究というものが応用面だけを注視していることではよろしくなくて、このトップダウンで行われるファンディングの中にも基礎研究という部分が入るべきではないか、私はこういうふうに思っております。
○末松参考人 三つあったものを一つにするということなんですけれども、そこのひょっとしたらデメリットかもしれないという御指摘に対するお答えですけれども、私の資料のまとめの七ページの研究費配分のところに、再三申し上げておりますピアレビューの仕組みのことに触れております。
一つのファンディングエージェンシーの中に、それぞれの研究フェーズで専門性の全く違う、非常に経験のある多様性を担保されたレフェリーを設けるというのは、文章に書くと簡単なんですが、実際にそれを相当数集めてきませんと、この機構は本当に動かない。しかし、そこがうまくいけば逆にうまくいくのではないか、そのように私は考えております。機構は一つで、研究費の重複性、リダンダンシーを徹底的に排していくということが重要だと思います。
一つ、これはアメリカの方のNIHの仕組みですと、イントラミューラルバジェット、エクストラミューラルバジェットというふうに分かれていて、審査をする人は若干の研究費が保障されていて、そして競争的研究資金には応募ができない仕組みになっていてという仕組みがあるんですが、これは、恐らく日本の今のその限られた予算の中でこれと同じものをつくるのは非常に難しいだろうと思います。
しかし一方で、他者の研究を評価するという資質をきちんと他者が評価してくれる、ややこしいんですけれども、レフェリーがリスペクトされていない、そこがきちんとリスペクトされるような何らかの仕組みやインセンティブの仕組みが私はあってもよいのではないかというふうに考えております。
以上です。
○竹中参考人 私自身、こういうファンドに応募したことはございません。したがって、詳しくは述べられませんが、以前の三省庁でありますと、そこに所属するといいますか、管轄になる独法などにファンディングの機構があって、孫がファンドするような形もございました。
今回一本化されることによって、どんな研究に国はファンドしているかということが明確になって透明性が上がることで、私はこの方が望ましいと思っております。
○山中参考人 先生が指摘された懸念というのは、若干、私も思っております。
日本は国の研究費が大部分だということを申しましたが、これまではそのような国の中でも、私たちに関係するといえば文科省、厚労省、経産省と三つの省の研究費があって、それぞれやはり違う担当者が決められて。ですから、ある省では注目されているがある省では注目されないとか、そういう、国の中で三つの選択があったんですが、それが一本化されるということで、場合によっては全く日の当たらない研究分野が出てきてしまうかもしれない。
ということで、先ほどの繰り返しになりますが、今回のこの研究機構の、ある意味、権限も非常に大きいと思うんですが、責任も非常に大きいですので、重複は防げるという点でも絶対いいと思うんですけれども、どんどん研究内容が変化していって新しい研究が生まれていきますので、そういうのをいかに柔軟に取り入れていくか、公平性といいますか非常に難しい課題が待ち受けていると思います。
○大熊委員 ありがとうございました。
残りの数分で、時間がなくなってきてしまったんですが、個別にお伺いしたいと思うんです。
山中先生に、今の若干関連でもあるんですが、先生の資料に、公的なプロジェクト、つまり国からのプロジェクトと企業間の個別プロジェクトが並立した方がいいんじゃないかなという記述があるんですが、国からのプロジェクトが余計に大きく強くなってきますと、なかなかやはり並立というのが難しくなってくるのではなかろうかなと。
そうすると、冒頭申し上げた、もし国側の指針が間違えた場合に、アメリカは民間とか州のお金が入ってくるということなんですが、ほかの選択肢がないという、要するに、うまくいけばとてもいいのではないかと思うんですが、逆にいった場合にはなかなか難しいのではないかなという懸念をちょっと持つんです。
似たような質問で恐縮なんですが、一言、山中先生からお願いできればというふうに思います。
○山中参考人 今の資料が私の資料だったかどうか、ちょっと、済みません。
まさにそのとおりで、繰り返しになりますが、やはり一本化されるということは、いい面もたくさんございますが、そこで選択を誤ると、大きくおくれをとる、間違った方向に行ってしまうという可能性もございますので、何度も申しわけありませんが、非常に重責というか大切な、日本の医療の行く末を決定するようなところになるので、非常にやりがいのある大変なお仕事ではないかと。
それとともに、やはり私としては、国に頼るだけではなくて、ファンドレージングを日本でももっと積極的に進めていって、直接、民間の方、一般の方から支援されて行われる研究ももっとできていっていいんじゃないかなと考えて、努力はしています。
○大熊委員 それでは、末松参考人にお伺いしたいんです。
レアディジーズ研究の資料があったかと思うんですが、実用化とかビジネス重視ということになりますと、このレアディジーズの研究というのがなかなか難しくなってくるんじゃないかなというふうにも懸念するんです。
時間が終了ということなんですが、一言お願いできればと思います。
○柴山委員長 では、末松参考人、短くお願いします。
○末松参考人 手短に。
今までも厚労省がやられていた難病の支援、これは研究レベルとそれから臨床、実地もあると思いますけれども、こういったものは、結果が出ないから、予算がないからといって切ることもできない。そこを厚労省の方々が担ってこられたんだと思います。
今後も、この医療研究開発機構の法案が通りました後は、やはりこういったところに、患者さんに寄り添って支える医療をきちんと提供するということが、法人の基本理念として残されることを願ってやみません。
以上です。
○大熊委員 ありがとうございました。
○柴山委員長 次に、赤嶺政賢君。
○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
きょう、まず最初に、大隅先生にお伺いをいたします。
今回の新しい二つの法案、産業競争力会議を中心に議論をされて、去年の六月の日本再興戦略に位置づけられました。それで、法案となった経過があります。
大隅先生が理事長を務めておられる日本分子生物学会、これを含む多数の学会が去年の六月に、「「日本版NIH」構想と裾野の広い基礎研究の必要性」という副題を持つ「健康医療分野における研究助成のあり方について」という緊急声明を出されました。この間の委員会の審議でも、その中身をちょっと我が党の佐々木憲昭議員が紹介いたしましたけれども、その中で目を引きましたのが、多くのすぐれた科学技術は、知的好奇心に始まる研究成果から生まれたものであり、長期的に次々と産業化に結びつくイノベーションを生み出すためには、異分野融合研究を含めた裾野が広い基礎研究体制を維持することが必須であるとしまして、我々は、実用化を指向した一貫性、計画性のあるトップダウン型戦略のみがひとり歩きすると、我が国の科学の発展は危機的状況を迎えかねないと危惧するものである、このように指摘をされておられます。
この声明は、昨年のいわば構想の時期に出されたものでありますが、今回、実際に法案、そしてそのための予算という具体的な形が明確になりつつありますが、この声明を出されたときの懸念事項は具体的にどういうことなのか、そして、それは今後どのようになっていくとお考えか、先生の御意見をお聞かせいただきたいと思います。
○大隅参考人 ありがとうございます。
配付資料の、ちょうどポンチ絵、パワーポイントになった一枚目のところをごらんいただければと思います。
昨年の六月時点で、三十学会が連合してそういった声明を出させていただきました。私の所属している、理事長を務めます日本分子生物学会は、その一つ前にも、七学会からの共同声明というのも出しております。そこでは、ボトムアップの基礎研究ということがなくなってしまってはこれは本当に大変だということで、多くの基礎研究を行っている者たちが声を上げたわけです。
そこで、最終的に今どのような法案になっていったかということを見ますと、一応、「研究者の発意によるボトムアップの基礎研究」ということに関しましては、文部科学省の例えば科学研究費助成事業、いわゆる科研費というものでそこのところは回しなさい、そこから発掘したシーズをこちらに持っていくんだ、そういった仕組みという形になっておりますので、一定の基礎研究というのは、全くそこが持っていかれるということでは多分なかったんだろうというふうに考えております。
ですので、これは、昨年の六月に出した声明の時点の要求から考えますと、一定の評価ができるとポジティブに捉えております。
ただ、私がその資料の四枚目のところで申しましたように、我が国の生命科学研究のパイの大きさ全体が全然足りないので、つまらないところで一々言わなきゃいけないという、そこを非常に大きく強く主張したいと思います。
すなわち、道路をつくって終わりとかそういうことではなく、私たちの健康にかかわる研究というのは、常に種をまき、水をやり、そうやって次々、苗が出たらその植えかえ、そういったことをして育てていかなければいけないものなので、それに対して、現在の日本の研究費というのは、私は足りていないというふうに思っております。
○赤嶺委員 基礎研究に対するもっと大きな支援体制が必要なときに、今回の法案に対する危惧があったということであります。
引き続き大隅先生に伺いますが、実は、今回の日本版NIH、日本医療研究開発機構をつくりますと、これまで各省で執行されていた文部科学省、厚労省、経産省の研究予算がこの機構を通じて執行されるようになるとともに、新たな調整費として百七十五億円が計上されております。
この百七十五億円の出どころについて、この間の内閣委員会でも私も指摘をしたんですが、政府全体の科学技術振興費で、各省の科学技術振興予算の四%を内閣府に吸い上げて、トップダウンの戦略的研究に配分するものであります。その総額は五百億円。そして、その三五%、百七十五億円を健康・医療分野の戦略的研究に振り分けたものであります。三月の内閣委員会で確認をしましたが、この五百億円の七割、三百五十億円は文科省の科学技術振興から吸い上げたものだということでありました。
文科省の二〇一四年度の科学技術振興予算は、前年度の八千七百五十七億円から八千四百八十三億円と、二百七十四億円の減少となっています。その中で、ボトムアップ型の科研費、これも減少しております。同じように四%の網がかけられております。
政府は、実際には、ボトムアップ型の研究費を減らしてトップダウン型戦略への資金シフトを行っているというぐあいに私たちは感じるんですが、この点では先生はどのような御意見をお持ちでしょうか。
○大隅参考人 ありがとうございます。
実際に、四%が吸い上げられてトップダウンの方に行っている、これは本当に間違いないと思いますので、そこのところはそういった問題としてはあるんですけれども、先ほども申しましたように、そもそもが、では、この健康・医療にかかわる資金の出どころをどうするかというときに、本来であれば、それぞれの省庁の今までつくられている壁のような予算の仕組み、そこのところを突き崩さないと、私が申し上げましたような健康・医療を支えるような研究を推進していく研究開発をし、それがさらに産業にも還元されていき、もちろん、国民に対して一番還元される、そこに持っていくためには、私は予算全体のところが足りないということを申し上げたいというふうに思います。
○赤嶺委員 どうもありがとうございました。
次に、山中先生の方にお伺いをいたします。
少し古い資料ではありましたが、二〇一一年一月の毎日新聞に、「明日への視点」というタイトルで山中先生の発言が掲載をされておりました。その中で先生は、
僕に課されているのは、まずiPS細胞研究の実用化です。さらに、イノベーションを生む研究環境整備を訴えたい。任期付きのポストが増えて将来の展望が見えにくく、「小さな論文を一つ書けばいい」と大きなことに挑む雰囲気が薄れているようです。海外へ出る若者も減っています。
大きな発見には頭を真っ白にして考えにふける余裕や、研究を支えるスタッフの充実が必要です。そんな挑戦を後押しする仕組みを、強く訴えていきたい
このようにおっしゃっております。
先生が訴えられますイノベーションを生む研究環境整備、先ほどの御発言などからもうかがい知れる内容がありますが、この点について、実際に直面している問題等、御意見をいただきたいと思います。
○山中参考人 ありがとうございます。
先ほども申しましたが、私は日米で研究しておりまして、アメリカに行くと本当に感じるのは、向こうの教授の先生方は一見暇そうに見えます。ぶらぶら歩いていろいろな人とディスカッションしながら、非常に余裕がある。その中からいろいろな新しいアイデアや共同研究が生まれていると思います。
片や、飛行機に乗って日本に帰った瞬間に、メールの山であるとかいろいろなサインの山であるとか、それに一気に忙殺されるようになりますので、飛行機に乗る前と乗った後で、同じ仕事のはずなのに全然マインドも変わってしまうというか、その違いは何とか、そこはやはりアメリカの、研究というのは、やはり芸術活動に近いところがあります。特にボトムアップ型の方は芸術と言っていい。真っ白なところから、ほかの人が考えつかないことを初めてやるという作業ですから、これは書類に追われていたらまずできないです。
ですから、どうやったらそういう環境、一つの答えは、やはり研究支援の人をもっと充実させる。研究者は研究に専念できる、それが非常に大切だと考えています。ありがとうございます。
○赤嶺委員 研究支援体制、これも先ほどのお話で、有期雇用が非常に多くなっているという、レジュメの中にもありますが、この問題について、本当に一生懸命情熱を持って参加している人たちが、自分の身分があすはどうなるかわからないという不安を抱えたままでは、地に足がついた研究というのはなかなか進んでいかないんじゃないかと思いますけれども、そこはどういうぐあいになっていますでしょうか。
○山中参考人 これは本当に大きな問題であります。私たちの研究所も、八割以上の方が有期雇用であります。
有期雇用の方にも二種類あって、企業で活躍されて、五十代、六十近くなって来ていただく方、この方々は、社会的にももう確立されておられて、子供さんも独立している。あとは、自分のやりたい研究をやるんだ、このiPS研究をやるんだということで、そんなに将来のことを御心配されていないんですが、それ以外の多くの二十代、三十代の方、この方々はもう本当に大変です。
最初は、iPS細胞の研究をしたいということで民間から来られて、物すごい気持ちで来てくれているんですが、それがだんだん、自分の将来がわからない、一年契約の繰り返しだと。だんだん、結婚もされ、子供さんも大きくなってくると、もうそれは気持ちだけではついていかなくなってしまいます。やはり、奥様からの突き上げも強くなってきますし。
結果として起こっていることは、そういった方、せっかく大学に来ていろいろな経験を積まれて物すごい育ったのに、将来の不安から民間にどんどん流れてしまうということの繰り返しですので、やはり、研究者でなければ研究開発はできませんので、研究支援の方々をいかにちゃんとした雇用をしてあげるかというのが、本当に大切な、特に大学におきましては教員も事務も定員はどんどん減っているわけですから、研究支援の方をちゃんと雇用する枠組みというのがございませんので、非常に大きな問題になっております。
それと、五年任期、十年任期ということで、ちょっと法律の名前は忘れてしまいましたが、有期雇用は五年までということができまして、それは非常に問題だということで、研究現場に限ってはそれは十年までということにしていただいて、非常に感謝しております。
ただ、それで終わりかといいますと、今三十の人にとったら、十年後に終わりと言われるのはもっと困る。四十の人も、五十歳で終わりと言われたら、今だったらまだどこかに行けるけれども、十年たってから、はい、さようならと言われたら、もう潰しがきかない。
だから、これは、十年になったから彼らはハッピーになったかというと、ちょっと先延ばしになっているだけですから、みんながみんなは無理だと思うんですが、本当に優秀で頑張っている人に関しては、きちっとした無期雇用、ちゃんとした雇用を提供できる、そういう仕組みが国立大学等の公的機関でも必要であると強く感じております。
○赤嶺委員 どうもありがとうございました。
次に、末松先生に伺います。
先生は、先ほども述べられましたが、法案の課題の一つに研究テーマの選定を挙げられまして、大きなプロジェクトや息の長い疫学研究を推進することは重要である、一方、企業の投資が十分とは言えない領域、患者数の少ない希少疾患・難病、診断すら難しいUDPなどに光を当て、地道な研究を支えることによって、患者さんに寄り添い、支える医療を提供することは、新法人の重要なミッションとして位置づけたいと。
先ほど来お話を伺っていても、その分野に関する情熱がひしひしと伝わってきたものでありますが、新しい法人をつくって、一番大事なそれらのミッション、これが、従来と比べて具体的にどのように前進が可能か、あるいは克服すべき問題点は何かということなどについて、先生の御意見を伺いたいと思います。
○末松参考人 一点のみ申し上げたいと思います。
従来、難病の研究、私も全てを把握しているわけではございませんけれども、えてして、特定の病気の御専門の先生のおられる特定の大学のところに支援が行く。そして、きちっと研究を進めたり、あるいは実際の医療の仕組みを変えていくということが、そこの難病の研究班というところでやられていました。
患者さんの目線から見ると、まだ年端もいかないときから御病気になって、それを一生背負っていかなければいけないケースや、あるいは、働き盛りのときに突然発症して、生命の維持の恐怖におののいて毎日闘っている患者さん、いろいろなケースがあると思います。これをきちんとケアできるところは、やはり総合病院である必要があります。
ナショナルセンターにも重要なミッションがありますけれども、一つ一つの病院であらゆる診療科をカバーして、ぎりぎりの努力でやられている地方の国立病院あるいは私学の病院、こういった総合病院を生かして、難病の方の年齢の時間軸に沿って一気通貫で診ていく。つまり、小児科でエントリーした人が例えば整形外科で、山中先生のフィールドでしょうけれども、診るケースですとか、各科が連携して、私の資料でもクラスター診療というふうに出しましたけれども、そういう患者さんの時間軸に沿って診ていく仕組みがどうしても必要だと思います。
ぜひ、新法人では、難病の方々に光を当てるために、そういった各科連携の仕組みが生かせるような指導をしていただきたい、そのように思います。
○柴山委員長 赤嶺君、質疑時間が終了します。
○赤嶺委員 ちょっとコンプライアンスの問題で竹中先生にお伺いしたかったんですが、時間となってしまいました。この面でもぜひやはり、先ほどの御答弁にもありましたが、国民の信頼を回復する上で大変大事な課題だと思いますので、しっかり取り組んでいただきたいということを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
どうもありがとうございました。
○柴山委員長 次に、村上史好君。
○村上(史)委員 生活の党の村上史好でございます。
早朝から長時間、本当にありがとうございます。この間、先生方から貴重な御意見を拝聴させていただき、私がお聞きしたいことも、たくさん他の委員の先生方が質問されました。
押しなべて印象として思いますのは、先生方は、それぞれ研究者として、今、第一線で活動されておられます。研究者として、誰のために、何のために研究しているのか、そのためにこの機構を十分うまく活用してほしい、そういう思いで皆さんお答えをいただいていたと思います。
そういう中で、研究者の立場からして、今回の法案の審査の中でよく言われているんですけれども、医学、医療の分野をいわゆる成長戦略に組み込むことの違和感というのも各委員から出てまいりました。もちろん、国民に研究成果を還元するということの結果において、産業に結びつく、新たな雇用を生み出していくという側面は、結果論だろうと思うんです。そういう面で、この法案ではそういう経済的な側面が強調されているんですけれども、それぞれ先生方のお考えというものをまずお聞きしたいと思います。
四先生方、お願いいたします。
○大隅参考人 ありがとうございます。
私自身も、国が強くあれ、そういったキャンペーンに対しては、やはり少し違和感を感じるところは自分自身にはあります。すなわち、経済が常に右肩上がりに成長していくということが絶対是なのかということに関しては、いつもそういうふうに言っていいのだろうかというふうには思います。
ただ、この法案に関して言うとすれば、国民の健康や生活というのは、国を支える礎である人にかかわることですので、ここを充実させないで一体何の施策かというふうに思いますので、国策としてこういったことを進めていくというのは非常に重要であるというふうに考えます。
○末松参考人 成長戦略につきまして、一つだけ指摘させていただきたいと思います。
経済の成長だけではなくて、恐らくこの理念の中には、日本のプレゼンスを高めて世界に貢献をするという部分があると思います。
その意味で、二〇三〇年には、例えば、地球儀を思い出していただきたいんですけれども、アフリカのエジプト以外のところ、そこは六十歳以下の人口が半分以上いるところですが、残りは全部、六十歳以上が半分以上の国になります。その中で日本が最も先端にいます。ですから、超高齢社会でどういう医療モデル、あるいは医療以外のフィールドもあるかもしれませんけれども、福祉のレベルですとか、そういったところで我々が何を外に対して発信ができるのかという、その試金石が今回のこの法案にかかっているのではないかというふうに思います。
これはぜひ、そういうところで貢献していきたいというふうに、我々も、微力ですけれども、努力をしていきたいというふうに考えております。
以上です。
○竹中参考人 製薬企業に身を置いた者としましては、成長戦略に組み込まれていることに関しては同意をしております。
過去におきまして、日本では、エネルギーとか繊維とか電子とか自動車、これらに対しまして政策的な支援をして、これらが伸びることによって、もちろん経済成長もしましたが、これらが多くの国々で活用されて、世界じゅうの国民の幸せ度が上がっているわけです。
医療に関しましても、言うまでもなく、先ほど私も出させていただきましたが、根本には、国民あるいは世界じゅうの患者さんへの福音として貢献できることではありますが、その基盤になる、また、今度、次の研究費が必要でございますので、それをビジネスとして、次の研究費を捻出するためにも、やはり産業化という視点は忘れてはならないことだと思っております。
以上でございます。
○山中参考人 私たちが日々考えておりますのは、今治せない病気やけがを治すようにしたいというその思いの一点でございますので、経済的なことを余り実は考えていないんですが、しかし、結果として、そのことが我が国の経済の発展につながるのであれば、それは本当にこれ以上にない喜びでございますので、そういった点から、そんなに強い違和感というのは持っておりません。
ただ、直接の御質問と関係ないかもしれませんが、一点、懸念に思っていますのは、私たち、病気を治したい、今治らない病気を治したいと思っているんですが、これはよく考えると、平均寿命をどんどん伸ばして、日本の高齢化社会をより加速させていることにもなっているなと。これは間違いなく、長い目で見たら、日本という国がどんどん高齢化、シュリンクしていくことにもつながっているということは自覚しております。
これはよく考えると、自分の生きている間は大丈夫だと思うんですが、自分の子供や孫の代になったら、日本という国はどうなってしまうんだろうと思うと、これはぜひ政治家の皆様に、医療も大切なんですが、日本の国が縮小していくのをいかに防ぐかというのは、医療と同じ、もしくはそれ以上に大切かもしれませんので、少子対策をぜひやっていただきたい。私たちは、それはできない、できないというか、不妊治療に多少貢献できる可能性はございますが、それは限界がございますので、いかに子供さんの数をふやすかということを真剣にやっていかないと、病気は治っておじいさん、おばあさんはふえるが、子供さんはもうどんどん減っていくということは、非常に大きく懸念しております。
○村上(史)委員 ありがとうございました。
今、最後、山中先生が、単に寿命を延ばすことが本当に幸せなことになるのかというのは、研究者のみならず、我々政治にかかわる者も総合的に考えないといけないことだと思います。まさに死生観、また人生観にもかかわってくる問題。よく引き合いに出されますけれども、世界一幸せな国、ブータンという国がありますけれども、そこは平均寿命は六十五歳ぐらいです。ですから、もちろん、長生きをして幸せな健康的な生活を営むというのは我々の理想ではありますけれども、そのことにもさまざまな角度から検討を加えていく必要があるのではないか、それは共通した認識だろうと思います。
そこで、具体の話をお聞きしたいと思いますが、先ほど来、人材の確保、スタッフの重要性、質問が何度も出ておりました。特に、研究というのは一人でできるものではないということで、いろいろな研究者あるいはスタッフが必要だ、ところが雇用の問題で不安定だということです。
ちょっと繰り返しになりますけれども、特に大隅先生、労働法の関係から、レジュメにも載っております。また山中先生も、かねてよりずっとそのことを心配されておられます。今回の機構法の中ではそれに対応できるものではありませんけれども、よりそれを具体化させるためにどういうふうな、労働法の改正で済むのかどうか、そのことも含めて、大隅先生と山中先生、恐れ入りますけれども、御答弁願えますか。
○大隅参考人 私の資料の最後の方と二ページ目のキャリアパスのところなんですけれども、一つは、まず、研究を支える研究支援者という方々、こういった方々は大抵の場合、やはり有期雇用です。プロジェクトごとに三年なり五年なり、それも一年ごとの更新というような形でやっていますけれども、こういった方々が、いろいろな国家資格であるとかそれに準ずるような資格があることによって、一つのプロジェクトが終了してもまたすぐ次に行けるような、切れ目なくそういった方たちのスキルを生かしていただいて、健康を支える医学の研究を進めていく、そういった人材として活用し、育てていき、継続的にというようなことができるというのが一つの方策として考えられるかなというふうに思っております。
ですので、それは次のまた別な法律等々のことになるのではないかなというふうに思います。
もう一点目の、労働契約法の先般の改正によって五年、あるいは、今それがさらにもう一度あれになって十年に延びたというふうに聞いておりますけれども、そこで本当に切れてしまうということでよいのかということに関しては、これは本当に大きな問題で、実際に、その方が優秀な方だったら絶対残ってほしいですし、そうじゃなかったときには、適当なところで切れていただくというのは案外よかったりすることもあるので、難しいんですけれども、大事なことは、キャリアパスという観点からいうと、そういったプロジェクト研究で雇用された方がその研究機関の方でちゃんとテニュアトラックなどの形でピックアップされて、いわゆる定員枠、大学等で定員枠と言われるような椅子に座れるような仕組み、そこをつないでいくということが重要ではないかなというふうに考えます。
○山中参考人 研究支援者の方を、いかに安定的な雇用、ポストを持っていただくかということは、いろいろ知恵は絞っていますが、まず財源が必要でありまして、これにつきましては、ファンドレージングでかなり、何人かの人はもう長期にわたって雇用できるくらいのお金は集めています、私たちの研究所でも。でも、では、そのお金があるからといってその人を京都大学の無期雇用ができるかというと、なかなか今の仕組みではできないですね。
ですから、一つの考え方としては、今、京大の場合は、誰かを無期雇用にする場合は京大総長が雇用者になるんですが、そうではなくて、研究所ごとの雇用を認めるとか。だから、あなたはiPS細胞研究所の正職員です、ただiPS細胞研究所が潰れたら、残念ながら、その雇用は消えますというような、もうちょっと柔軟な雇用とか、それが一つ考えていることです。
あともう一つは、今回の開発機構でそういった研究支援の方を無期雇用する。そして、その研究機構の方から必要な場所に出向してもらう、そのプロジェクトが終了、必要性がなくなったら違うところにまた行ってもらう、そういう別枠、機構としての無期雇用、そういう形であるとか、いろいろな工夫で何とか対応できるんじゃないかというふうには考えていますが、いろいろな法律の壁であるとか大学の中の制度の壁とかいろいろございまして、すぐにはできないんですけれども、ぜひ今後も御指導、御協力いただけたらと思っております。
ありがとうございます。
○村上(史)委員 ありがとうございました。示唆に富んだ御意見だと思います。
それと、これは先ほどの御説明で、山中先生の方から、予算の単年度の拘束の問題があって、もっと柔軟性を持たせろということでございます。もちろん、山中先生に限らず、研究なさっておられる先生方にとって、予算の執行の問題、特に日本の場合は予算は単年度主義ですので、これはもう法律を変えるしかないんですけれども。
例えば、これは基金化するということが望ましいのかどうか。研究者のお立場から、どういう形のことがふさわしいのか、お尋ねしたいと思います。大学の先生方の立場からお願いします。
○大隅参考人 ありがとうございます。
科研費が、かなりの部分が全部今基金化されていて、これは本当に一つ前の政権の時代から進んできて、それがようやく、何%かちょっと正確な数字は忘れましたけれども、ほとんどの部分になって、それを御存じない方がいたりするので、研究者サイドもそこを周知しないといけないんですけれども、それでわかったことというのは、やはり基金化されて、単年度で使い切れなかった分を次に回すと非常に使いやすいということがわかりました。
これは、研究というのは、例えばネズミを飼っていたら、三月で全部一旦中止してまた四月に新しく始まるということでは全くないので、ですから、継続的に研究費を使える仕組みというのは非常に重要だと思います。
大事な御指摘、ありがとうございます。
○末松参考人 私も基金化による年度の境を越えた運用というのは、今後も規制緩和の方向に行くべきだと思いますし、現に文部科学省のファンディングエージェンシーはそういう努力を相当されて、ある部分では非常にそれがうまく動いていると思います。
これは、私どもの研究機関、医育機関での工夫でございますけれども、こういった、例えば設備費とか消耗品というのの費目ごとの枠をつくってしまいますと、余計なコストが必ずかかる。ところが、そこをフレキシブルに、アコーディオン式に動かせるような仕組みにすると、結果的にはコストの削減になります。
これを一大学ではなくて、国の予算の中にもそういった弾力性を入れることによって、国の総予算を、もう小さくなっても有効に使えるような、そういう仕組みにもなり得るというふうに、私、私見でございますけれども、考えております。
以上です。
○山中参考人 やはり基金というのは、非常にありがたかったです。
先ほどの、年度末でお金が執行できないので研究がストップしてしまうという例も防げますし、それからあと、一億円、数千万円以上の機械というのは国際競争入札になります。それに半年近い時間がかかりますので、結局、そういう機械を単年度予算で買おうと思うと、上半期に買わない限り、下半期に買おうと思っても買えない。
でも、機械というのは今はもう半年ごとぐらいにどんどんいいものが出てきて、下半期であっても、この機械を買わないと世界の競争に負けちゃうという機械が出るんですが、単年度だと来年の四月まで待たないと。それで、来年の四月にすぐ入ってくるんじゃなくて、そこから入札を始めますから、入ってくるのはもう次の年の秋とか、秋にはもう次の機械が出てきているとか、そういう、非常にジレンマでございました。
また、今の話で、例えばシークエンサーというのは、一年たつと、一億円で一番いいものを今買っても、一年後には同じ一億円で十倍くらいの精度のものが出てくるんですね。最先端のところでは、それはやはり買い続けないと世界についていけないんです。
だから、そのあたりも今回のこの機構の中で、その古い方の機械は、最先端の研究ではちょっともうだめなんですが、でも、その他の普通の、ほとんどの研究所にとっては非常にまだいい機械なんですね。だから、それを機構に参画しているいろいろな研究機関の中で移行するというか、大学をまたいで、柔軟な、そういう意味の使い方もぜひこういった機構の中でやっていただけたら、限られた予算ですから、有効に利用できると思いますので、よろしくお願いします。
○村上(史)委員 本当に貴重な御意見をありがとうございました。
それでは、もう時間も参りましたけれども、最後に、我々は、医療だけではなくて、オール・ジャパン、産官学、それぞれが力を合わせてさまざまな政策課題を解決して、日本のあるいは国民の幸せを追求していく、これは、立場立場は違いますけれども、目的は同じだと思います。
そういう立場で、産官学の産の代表できょうは来ていただいております竹中先生、世界の最前線でしのぎを削っておられる立場でもあると思います。産業界から見て、今回の法律に対する期待と同時に、そして、いかに今後それをよりよい形で展開していくか、産業界の立場から御意見をお伺いして、終わりたいと思います。
○竹中参考人 私、研究開発あるいは経営に長年生きておりますが、過去を振り返ってみますと、私が創薬を始めた四十年前、五十年前は、産学連携も非常に小さなものでございまして、また、産学連携することすら、大学の中に立て看が出てしまうというような時代でございました。
その後、二〇〇〇年以降になりまして、ちょうど平沼さんと遠山さんがつくっていただいた法案から産学連携が非常に活性化してまいりまして、私たちも、企業の方も大学と一緒になって、オープンイノベーションというような言葉が出てまいりました。
そういう中で、我々の日本の活動は、どちらかといえば、きょう御報告しましたように、アメリカよりもプロセスはスローインプロセスで、ちょっとゆっくりだったのではないか、この反省を非常にしております。
今回、この法案ができまして、一つは、先ほど来何度も申し上げますが、医療の研究開発は非常に長時間かかるものです。そこに辛抱強く継続的に投資も行われる、これが大事なことでありまして、この法案はそれについて支援していただける法案だと信じております。特に医療関係の産業で働いていた者としては、大変歓迎している法案であります。よろしく御審議のほどお願いいたします。
○村上(史)委員 終わります。ありがとうございました。
○柴山委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
この際、御礼を申し上げます。
参考人の皆様、本日は、大変示唆に富む知見をお述べいただきまして、本当にありがとうございました。委員会を代表して心から感謝申し上げます。(拍手)
次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後零時四分散会