衆議院

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第19号 平成26年5月23日(金曜日)

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平成二十六年五月二十三日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 柴山 昌彦君

   理事 関  芳弘君 理事 平  将明君

   理事 橘 慶一郎君 理事 西川 公也君

   理事 平井たくや君 理事 近藤 洋介君

   理事 松田  学君 理事 高木美智代君

      青山 周平君    秋葉 賢也君

      穴見 陽一君    石川 昭政君

      大岡 敏孝君    大塚 高司君

      鬼木  誠君    勝沼 栄明君

      勝俣 孝明君    金子 恵美君

      川田  隆君    小林 史明君

      小松  裕君    新開 裕司君

      新谷 正義君    田所 嘉徳君

      田中 英之君    高木 宏壽君

      豊田真由子君    中谷 真一君

      中山 展宏君    長島 忠美君

      福山  守君    牧島かれん君

      山田 美樹君    吉川  赳君

      大島  敦君    後藤 祐一君

      津村 啓介君    若井 康彦君

      遠藤  敬君    河野 正美君

      杉田 水脈君    中丸  啓君

      山之内 毅君    輿水 恵一君

      浜地 雅一君    大熊 利昭君

      赤嶺 政賢君    村上 史好君

    …………………………………

   議員           後藤 祐一君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     菅  義偉君

   国務大臣

   (少子化対策担当)    森 まさこ君

   国務大臣

   (社会保障・税一体改革担当)

   (経済再生担当)

   (経済財政政策担当)   甘利  明君

   国務大臣

   (行政改革担当)

   (公務員制度改革担当)

   (クールジャパン戦略担当)

   (規制改革担当)     稲田 朋美君

   内閣府副大臣       後藤田正純君

   総務副大臣        上川 陽子君

   外務大臣政務官      石原 宏高君

   文部科学大臣政務官    上野 通子君

   防衛大臣政務官      若宮 健嗣君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    横畠 裕介君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  武藤 義哉君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  岡庭  健君

   政府参考人

   (内閣官房日本経済再生総合事務局次長)      飯塚  厚君

   政府参考人

   (内閣官房行政改革推進本部事務局次長)      長屋  聡君

   政府参考人

   (内閣官房行政改革推進本部事務局次長)      市川 健太君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長)   原  敏弘君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局審議官)            池田 唯一君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 青木 信之君

   政府参考人

   (総務省行政評価局長)  渡会  修君

   政府参考人

   (総務省自治行政局長)  門山 泰明君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 山田 滝雄君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 下川眞樹太君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 河野  章君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   石井 正文君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房長) 戸谷 一夫君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           義本 博司君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           鈴木 俊彦君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           神田 裕二君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    蒲原 基道君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           石川 正樹君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局次長) 真部  朗君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  中島 明彦君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十三日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     穴見 陽一君

  鬼木  誠君     新開 裕司君

  田所 嘉徳君     石川 昭政君

  長島 忠美君     金子 恵美君

  吉川  赳君     小林 史明君

  遠藤  敬君     河野 正美君

同日

 辞任         補欠選任

  穴見 陽一君     青山 周平君

  石川 昭政君     田所 嘉徳君

  金子 恵美君     大塚 高司君

  小林 史明君     牧島かれん君

  新開 裕司君     鬼木  誠君

  河野 正美君     遠藤  敬君

同日

 辞任         補欠選任

  大塚 高司君     長島 忠美君

  牧島かれん君     勝沼 栄明君

同日

 辞任         補欠選任

  勝沼 栄明君     吉川  赳君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 独立行政法人通則法の一部を改正する法律案(内閣提出第七七号)

 独立行政法人通則法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案(内閣提出第七八号)

 独立行政法人通則法の一部を改正する法律案(松本剛明君外三名提出、第百八十三回国会衆法第三一号)

 内閣の重要政策に関する件

 栄典及び公式制度に関する件

 男女共同参画社会の形成の促進に関する件

 国民生活の安定及び向上に関する件

 警察に関する件


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     ――――◇―――――

柴山委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、独立行政法人通則法の一部を改正する法律案及び独立行政法人通則法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案並びに第百八十三回国会、松本剛明君外三名提出、独立行政法人通則法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房行政改革推進本部事務局次長長屋聡君、内閣官房行政改革推進本部事務局次長市川健太君、公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長原敏弘君、総務省行政評価局長渡会修君、総務省自治行政局長門山泰明君、文部科学省大臣官房長戸谷一夫君、厚生労働省大臣官房審議官神田裕二君、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長蒲原基道君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

柴山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

柴山委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。若井康彦君。

若井委員 おはようございます。民主党の若井康彦でございます。

 いよいよ、この独法の通則法、質疑も終局が近づいてまいりましたので、この間、いまだにはっきりしない点が幾つかあるということで、その点について的を絞って御質問をさせていただきたいと思います。

 まず、平成二十五年の十二月二十四日に政府が閣議決定をされた組織見直しに関する基本方針におきまして、改革を推進するに当たっては雇用の安定にも配慮するとされているわけでございますが、雇用の責任は、当然個々の法人の問題でありますけれども、政府においても政治的、政策的な責任として職員の雇用の確保が図られなければならない、そのことについての見解はいかがでしょうか。まず、衆法の提出者からお答え願いたい。

後藤(祐)議員 いずれの法案にせよ、独法通則法が成立した後、我々の案と政府案では統合の数は異なるものの、個別法人の統合が予定されております。これに伴って業務の合理化は当然発生するものと見込まれます。

 ポストが減る等の業務の合理化が行われた場合に職員の雇用をどうするかということについては、民間の事業者等においても、例えば新規採用の停止、労働時間の短縮、配置転換、出向など、実際に、解雇といった手段ではなくて、他の雇用調整手段によって解雇回避の努力をする義務が、これは判例上も確立した考え方でございます。

 特に行政法人の場合、国の行政機関からの出向者も多いことから、出向者を行政側に引き揚げていただくことによる対応もかなりの程度可能ではないかというふうに思われますので、現職の法人の職員の解雇という最も深刻な影響を職員に与える方法はとるべきではないというふうに考えます。

 個々の行政法人の統合案を決めるのは法人側ではなくて政府側であるということからしても、政府側も、法人における雇用の安定を図る政治的、政策的責任があるものと考えます。先ほど申し上げたような行政機関から法人への出向者の引き揚げなど、政府側としてみずからできることをまず最大限行う必要があるほか、個別の各行政法人と協力しながら、現職の職員の雇用の安定を図るために必要な対応を図るべきだと考えます。

若井委員 同じ質問です。稲田大臣、お願いいたします。

稲田国務大臣 先ほど委員の質問の中にもお触れになりました、昨年末の改革の基本方針の閣議決定において、雇用の確保の重要性に鑑みて、改革を推進するに当たっては、独立行政法人で現在働いている職員の士気の向上や雇用の安定にも配慮する旨を盛り込んだところでございます。

 また、過去、独法の統廃合などの大きな組織見直しが行われた際には、当該法人の置かれた状況を十分勘案した上、必要な場合には、法人間の身分承継など、職員の雇用に関する法的な措置がなされております。

 今後、組織の見直しが行われる場合には、これらを踏まえて、個々の法人の状況に応じて適切な対応がなされるというふうに考えております。

若井委員 必要な場合にはというお答えですが、しっかりそこについては具体的な対応をしていただきたい。

 二番目に、職員の給与等についてお尋ねをしたいと思います。

 閣法では、独法職員の給与等の支給の基準は、中期目標管理法人、国立研究開発法人については、「国家公務員の給与等、民間企業の従業員の給与等、当該中期目標管理法人の業務の実績並びに職員の職務の特性及び雇用形態その他の事情を考慮して定められなければならない。」とされているわけでございますが、衆法においても同様の改正がされているわけです。

 この中期目標管理法人、国立研究開発法人の職員の給与等の支給の基準の規定に「国家公務員の給与等、民間企業の従業員の給与等、」と加わることによって何か変わるところがあるのか。

 そしてまた、行政執行法人につきましても、「国家公務員の給与を参酌し、かつ、民間企業の従業員の給与、当該行政執行法人の業務の実績及び事業計画の」「人件費の見積りその他の事情を考慮して定められなければならない。」第五十七条の第三項とされているわけであります。

 現行の、国家公務員の給与が考慮事項として列挙されているだけの条文から、国家公務員の給与を参酌するとされた、これによって一体何が変わるのか。一般職国家公務員給与に連動して自動的に法人職員の給与が決まるものでないと考えてよいのでしょうか。衆法の提出者からお答えください。

後藤(祐)議員 この部分は、衆法も閣法も条文の内容は同じでございますが、中期目標管理法人については、一般職の国家公務員の給与等、民間企業の従業員の給与等、あと職員の職務の特性及び雇用形態その他の事情、これを考慮するということに、新たに加わっているわけでございます。

 ただ、現在、実際の現場においては、非国家公務員型の独立行政法人における労使交渉に基づく給与等の決定においては、今申し上げたような、今回の条文で加わる一般職国家公務員の給与等、あるいは民間企業の従業員の給与等、あるいは職員の職務の特性及び雇用形態、こういったことは、当然、交渉の実態上、考慮されているというふうに考えております。

 ですから、今回の改正では、今言った三つの要素が、実態上、交渉における考慮事項として今までもあったけれども、それが条文に明確化されたということであって、給与等の決定に当たって実質的には変わらないものではないかというふうに考えます。

 行政執行法人についても、衆法と閣法の内容は同じでございますけれども、現行から比べますと、職員の給与支給基準において、現行の、一般職国家公務員の給与等を考慮という言葉から、参酌という言葉にかわります。

 実際に、現在の労使交渉に基づく各公務員型、特定独立行政法人における給与決定というのは、一般職国家公務員の給与の改定率に近いような決定がなされるケースもあれば、そうでないケースも当然あります。これが現行の考慮から参酌ということになっても、その後の労使交渉においては、同様に、各行政執行法人ごとに、一般職の国家公務員の給与改定に近いようなケースになることもあるでしょうし、そうでないケースも当然あり得るというふうに考えております。

 いずれにせよ、中期目標行政法人も行政執行法人も、その職員の給与等については、一般職国家公務員の給与に連動して自動的に決まるものではなくて、これまでと同様に、労使交渉によって決まっていくものだと認識しております。

若井委員 稲田国務大臣、いかがですか。

稲田国務大臣 まず、中期目標管理法人及び国立研究開発法人、いわゆる非公務員型の独立行政法人の給与の支給基準については、これまで通則法六十三条三項で、当該独立行政法人の業務の実績を考慮し、かつ、社会一般の情勢に適合したものとなるように定めなければならないとされておりました。

 今回の改正で、中期目標管理法人について、第五十条の十第三項で、国家公務員の給与等、民間企業の従業員の給与等、当該法人の業務の実績並びに職員の職務の特性及び雇用形態その他の事情を考慮して定められなければならないと具体的に規定をし、国立研究開発法人については、第五十条の十一で、中期目標管理法人の規定を準用することといたしております。

 この改正は、給与の支給基準を定める際に考慮すべき事項を具体化、明確化することにより、職員の給与に関する法人の説明責任を強化しようとするものでございます。

 ただし、個別法人の給与の具体的な支給基準については、これまでと同様、労使交渉を経て各法人が自主的、自律的に定めていくものと理解をいたしております。

 また、公務員型の独立行政法人の給与の支給基準については、これまで、通則法第五十七条第三項において、国家公務員の給与、民間企業の従業員の給与、当該法人の業務の実績及び中期計画の人件費の見積もりその他の事情を考慮して定めなければならないとされておりましたが、今回の改正で五十七条三項を改正し、行政執行法人について、国家公務員の給与を参酌し、かつ、民間企業の従業員の給与などを考慮して定めなければならないとしております。

 行政執行法人は、国の関与のもとで、国と密接な連携を図りつつ事業を実施するなど、国との密接性が高いことから、非公務員型の独法と比べて、国家公務員の給与水準との均衡が図られるべきであるというふうに考えております。このため、国家公務員の給与について考慮するだけではなく、事情を酌み取り、組み入れるという意味で参酌を求めることとしたものでございます。

 ただし、個別法人の給与の具体的な支給基準については、これまでと同様、労使交渉を経て各法人が自主的、自律的に定めていくものというふうに理解をいたしております。

若井委員 今の後半の御説明はちょっと気になるところでありますが、重ねてお尋ねをしたいと思います。

 独法職員の給与等の支給基準は、自主性及び自律性の発揮という制度本来の趣旨並びに職員に適用される労働関係法制度に基づき、法人の労使交渉における決定を阻害するものではないと考えてよいか。

 また、給与等の支給の基準の決定は、これまでと同様に法人が労使交渉によって定めるものであり、現行制度と変更ないことをぜひ明確にしていただきたいと思います。

 まず、衆法提出者から。

後藤(祐)議員 委員おっしゃるとおり、各法人の給与等の支給の基準の決定に当たりましては、各法人の自主性及び自律性の発揮という制度本来の趣旨並びに職員に適用される労働関係法制度に基づいて、各法人の労使交渉における決定に基づいて決定されるものであって、現行と何ら変わるものではないと認識しております。

若井委員 稲田国務大臣、お願いします。

稲田国務大臣 独法の職員の給与について、通則法は考慮事項や参酌事項を規定しているものでありまして、今回の改正後においても、個別法人の給与の具体的な支給基準については、これまでと同様、労使交渉を経て各法人が自主的、自律的に定めていくものと承知をいたしております。

 このため、通則法の規定に従って必要な考慮、参酌をされるのであれば、各法人の労使交渉における決定を阻害するものではないというふうに理解をいたしております。

若井委員 ぜひ、その原則を御確認願いたいと思います。

 それでは次に、業務方法書についてお尋ねをいたします。

 衆法も閣法も、第二十八条第二項の業務方法書の規定について改正することとしております。これについては、内部ガバナンスの強化の観点から大変に評価をさせていただきたいと考えますが、この業務方法書には、具体的にどのような内容を記載することを想定しておられますか。

 衆法提出者の方から。

後藤(祐)議員 本件については、これまでも議論されてきたところでございますが、閣法に新設された第十九条の二で、「監事は、役員が不正の行為をし、若しくは当該行為をするおそれがあると認めるとき、又はこの法律、個別法若しくは他の法令に違反する事実若しくは著しく不当な事実があると認めるときは、遅滞なく、その旨を法人の長に報告するとともに、主務大臣に報告しなければならない。」として、監事の法人の長等への不法行為等の報告義務を定めております。

 これを果たすために、本来、法人の中の役職員が監事にきちんとこういったことを報告しなきゃいけないわけでございますが、政府案の二十一条の五に基づく役員の監事に対する報告義務は、著しい損害を及ぼすおそれがある場合に限られていて、不正違法行為等の報告義務は規定されておりません。また、職員については、両方とも報告義務は課せられておりません。したがって、委員おっしゃるように、二十八条に基づいて、業務方法書の中でこれらを規定する必要があると考えます。

 具体的には、監事が第十九条の二の報告義務を果たす上で必要となる、まず一つ目には、役職員が著しい損害を及ぼすおそれがあることを発見した場合は直ちに監事に報告することとして、職員も加える必要があると思いますし、二つ目には、役職員が、他の役職員が不正の行為をし、もしくは当該行為をするおそれがあると認めるとき、または、この法律、個別法もしくは他の法令に違反する事実もしくは著しく不当な事実があると認めるときは、直ちに監事に報告することといったことを業務方法書に記載する必要があると考えます。

 さらに、現在、監事監査に関する参考指針というものが定められておりまして、監事は業務に関する重要な文書を閲覧し、理事及び職員に説明を求めることができるといった権限が規定されておるんですが、この権限に対応する役職員がこれに従う義務については規定されておりません。

 ですので、同じように、業務方法書の中で、一つ目には、監事は、業務に関する重要な文書を閲覧し、理事及び職員に説明を求めることができ、理事及び職員は求めがあった場合にはこれに応じなければならないと規定する。二つ目には、監事は、重要な財産の取得、処分及び管理について調査し、理事及び職員に説明を求めることができ、理事及び職員は求めがあった場合にはこれに応じなければならない。三つ目として、法令違反行為、業務上の事故その他業務運営に著しい影響を及ぼすと認められる事態が発生したとき及び業務運営に関する内部通報、外部告発等があったときは、役職員は速やかに監事に報告しなければならない。

 こういったことを業務方法書に定めなきゃいけないと思いますが、業務方法書の根拠規定になっている二十八条二項の「役員の職務の執行がこの法律、個別法又は他の法令に適合することを確保するための体制その他独立行政法人の業務の適正を確保するための体制の整備に関する事項」に、今申し上げたことは該当するのではないかというふうに考えております。

 なお、会計監査人についても、三十九条二項で、「会計監査人は、いつでも、次に掲げるものの閲覧及び謄写をし、又は役員及び職員に対し、会計に関する報告を求めることができる。」とされておりますが、役職員の会計監査人に対する報告義務は同じように定められておりません。したがって、役職員は、会計に関する報告を監事に求められた場合にはこれに応じなければならないといったことも、業務方法書に記載する必要があると考えております。

 以上、若干重複するところがあるかもしれませんが、今までの義務をきちっと業務方法書に掲げる必要があると考えます。

若井委員 稲田国務大臣、閣法についても同じと考えてよろしいでしょうか。

稲田国務大臣 本二十八条は内部からのガバナンス強化の規定でございます。

 今回の法改正により、法令遵守等の内部統制の体制整備を業務方法書に記載することといたしておりますが、その内容としては、法令違反行為等のリスクの把握、監視、予防体制、法令違反行為等が生じた場合の対処方法、役職員から監事に対する報告体制等を想定いたしております。

 具体的に、どのような事項を記載するかについては、自主性、自律性を重視する独法制度において、多様な業務を行う各法人が、それぞれ抱えるリスクを踏まえて検討し、主務大臣の認可を得るべきものであるというふうに考えております。

 その上で、内部統制の強化、監事機能の強化の促進等の観点から、各法人にある程度共通する事項をどの程度定めていくかについては、法案成立後、独法制度を所管する総務省を中心として検討がなされるものというふうに考えております。

若井委員 できるだけ具体的に記載ができるように、御検討をさらにお願いしたいと思います。

 次に、目標について確認をさせていただきます。

 主務大臣が設定する目標が、ある意味でお手盛り、定性的な目標であっては意味が乏しいと思います。改正後は、総務大臣が目標に関する指針を策定し、各主務大臣はこの指針に基づき各法人の目標を策定することになりますが、主務大臣の設定する目標がお手盛り、定性的な目標にとどまっているということにならないように、当該指針はどのようなものを想定したらよろしいんでしょうか、また、研究開発法人についてはどのような配慮を考えていらっしゃるのか。

 衆法提出者、いかがでしょう。

後藤(祐)議員 各主務大臣が中期目標を策定するに当たっては、総務大臣が策定する指針の内容が特に重要なものだと考えております。

 現在、各独法における中期目標を見てみますと、委員御指摘のとおり、定性的な目標しか掲げられていないような事例も見受けられます。場合によっては数値化した目標設定が困難な場合もあるかもしれませんが、本法改正後は、より定量的、具体的目標が設定されるよう、指針において具体的な基準を示すべきだと考えます。

 実際、平成十五年に特殊法人等改革推進事務局が取りまとめた独立行政法人の中期目標等の策定指針というものがございます。ここでは、目標における数値目標の必要性のみならず、数値目標で用いる指標についても例示がされています。一つ挙げますと、すぐれている例として水産大学校というのがあって、「大学校で学んだ水産に関する知識や技術を就職先で活かせるよう、水産に関連する分野への就職割合を向上させるべく大学校を挙げて取組を充実させ、水産業及びその関連分野への就職割合が七五%以上確保されるよう努める。」と、数値目標がわかりやすく掲げられています。

 一方で、改善すべき例として、海技教育機構は、「就職率を維持・向上するよう努める」としか書いていなくて、この目標設定の具体性においては随分差があります。

 こういったことを参考にしまして、この十五年の策定指針も参考にしながら、その上で、具体的な目標設定を行っている優良な例を参考にして指針を策定して、全法人の目標の水準が底上げされるようにすべきだと考えます。

 また、今回の改正では、運営費交付金の適切かつ効率的な使用の責務についても規定されておられますので、財務内容の改善に関する中期目標の設定に関しても、先ほどの事例のように、具体的、実効的な記述が行われるよう指針を定める必要があると考えます。例えば、現在、業務経費について、五年間で五%以上の効率化を図るなどと定められている法人が多く見受けられますが、このような具体的な記述は今後も必要だというふうに考えます。

 なお、研究開発型の法人に関しては、前回の連合審査会において、津村議員から、衆法と閣法における研究開発法人の目標設定における総合科学技術・イノベーション会議の関与の相違点について詳しい質疑がございました。我々が提出しております衆法においては、個別の国立研究開発行政法人の中期目標の設定にこの会議が関与できるという点が可能になっている点で、我々の案の方がすぐれていると考えますし、政府の方の案ではそのような規定になっておりませんが、ぜひ、この会議の関与をできるだけ図れるような対応が必要だというふうに、これはお願いを申し上げたいと思います。

若井委員 稲田大臣、いかがでしょうか。

稲田国務大臣 改正法第二十八条の二で、主務大臣が目標設定を行う際の統一ルールを総務大臣が策定することといたしております。

 その内容としては、今般の独法制度改革の趣旨に鑑みて、主務大臣は、目標設定に際し、事後の業績評価が適正に行われるよう、法人が行う業務の質の向上、業務運営の効率化、財務内容の健全化について、業務類型に応じて、参考例も示しながら、具体的、明確に設定し、可能な限り定量的に設定すべき旨が盛り込まれるものというふうに認識をいたしております。

 また、研究開発業務については、その業務の専門性などの特性を踏まえ、総合科学技術・イノベーション会議が指針の案を策定し、総務大臣が策定する指針に適切に反映させることといたしております。

若井委員 できる限り具体的な指針をつくっていただきますよう御検討をお願いいたします。

 次に、評価に関する指針についてお尋ねいたします。

 評価でございますが、これまで独立行政法人に対する評価は、第三者機関である各府省の評価委員会が一次チェックを、また、第三者機関である総務省の政策評価・独立行政法人評価委員会が二次チェックを行ってまいりました。しかし、この改正案では、目標、評価の一貫性の観点から、一次評価の主体が各府省の評価委員会から政策責任者である主務大臣に変更され、第三者機関のチェックは総務省に新たに設置される第三者機関である評価制度委員会のみとなるわけです。

 このことから、改正後の評価において客観的で適正なものとなるのかどうか、幾つか伺いたい。まず、総務大臣が策定する指針のうち、評価に関する事項についてどのような内容を想定しているのか、お伺いします。

 衆法提出者、いかがですか。

後藤(祐)議員 現在、各府省の評価委員会では、中央省庁等改革の推進に関する方針に基づいて評価基準を策定しております。しかし、これは各府省独自の基準になっております。このため、改正後は、総務大臣が策定する指針で主務大臣の行う評価がお手盛りにならないよう、適正かつ厳正に実施されるように、評価基準あるいは評語、S、A、B、Cとか、そういった言葉ですね、評語等の統一を図っていくものと考えております。

 具体的な評価基準の内容ですが、現在、各府省の評価委員会の評価基準のうち、他に比べてより具体的に定められているものを参考に定めることが望ましいと考えられます。

 ちょっと網羅的に見たわけではありませんが、幾つか見た中で、例えば経済産業省の評価委員会においては、委員会における年度評価の中で、「国民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上に関する事項」「業務運営の効率化に関する事項」「財務内容の改善に関する事項」、この三項目を評価項目の基本として、必要に応じて「その他業務運営に関する重要事項」を追加するとされております。

 さらに、経済産業省の評価委員会では、法人横断的な評価として、「業務の効率的な実施の観点から、一般競争入札の範囲の再検討等、適正な契約形態の選択が行われているか。契約に関する情報公開は適切に実施されているか。」また「役職員の給与等の水準は適正か。」「資産(出資を含む)は有効に活用されているか。」「欠損金、剰余金の適正化に向けた努力が行われているか。」「リスク管理債権の適正化に向けた努力が行われているか。」こういった項目について毎年調査を行うとされております。

 また、評語についても、例えば、総務省はダブルA、A、B、C、D、外務省はイ、ロ、ハ、ニ、ホ、文科省はS、A、B、C、F、ばらばらなんですね。こういったものは統一を図ることが必要だというふうに考えます。

柴山委員長 若井君、質疑時間が終了しております。

若井委員 はい。同僚議員の時間を少しいただいて、もう少し質問を続けさせていただきます。

柴山委員長 では、よろしいですね。

 どうぞ。

若井委員 今の問題、稲田国務大臣、いかがですか。

稲田国務大臣 総務大臣が策定する業績評価の指針の内容としては、今般の独法制度改革の趣旨に鑑みて、現行制度は各府省評価委員会の間でばらばらとなっている評価基準や評語、S、A、B、C、Dの五段階などを統一いたします。

 また、過去の独法改革や総務省の政策評価・独立行政法人評価委員会の活動成果を踏まえ、共通的な評価の視点として、例えば、運営費交付金の執行状況などの財務状況、保有資産の管理状況、給与水準などの人件費管理リスクの把握と対応などの内部統制などを設定する、また評価書の様式を統一することなどが盛り込まれるものというふうに認識をいたしております。

 また、研究開発業務については、その業務の専門性などの特性を踏まえ、総合科学技術・イノベーション会議が業績評価指針の案を策定し、総務大臣が策定する指針に適切に反映させることといたしております。

若井委員 最後にもう一つ。

 今の、二次評価を行う新たに総務省に設置される第三者機関が十分にその機能を発揮できるかが課題になるかと考えるわけですが、改正後のこの第三者機関がどのようなものであるのか、その点について後藤議員にお伺いをしたい。

後藤(祐)議員 この新しい評価制度委員会は、これまでのように、主務大臣から通知される紙面上の評価結果をもとに行うだけではなくて、各府省の評価委員会がなくなることも踏まえて、これまで以上に積極的な評価を行うことが求められると考えます。

 現行の各府省の評価委員会、総務省の政策評価・独立行政法人評価委員会、これはともに、主務省へのヒアリングや現地調査が今現在行われております。改正案において、十二条の七で、「委員会は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、資料の提出、意見の表明、説明その他必要な協力を求めることができる。」と規定されておりますが、この規定を根拠にして、各個別の法人に対する現地調査も可能であるというふうに解釈しております。

 実際、おとといの連合審査において、大熊議員はこの点について質問をして、渡会政府参考人は、「十二条の七によりまして、委員会は、関係行政機関の長に対し、必要な協力を求めるという規定がございます。この規定を使えばできるはずでございますし、現に、現在の政独委においても、頻繁に現地調査をやっております。」と答弁しており、我々と同様の解釈をしているものと考えております。

 いずれにしても、委員御指摘のとおり、改正後は総務省の方の評価制度委員会が唯一の第三者機関でありますから、この評価制度委員会が、個別の法人に対して、これまでの第三者機関以上に現地調査を行うなど、評価をしっかりとやっていただくことを念頭に置いております。

若井委員 稲田国務大臣、今のように進めていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

稲田国務大臣 総務省に置かれる独法評価制度委員会は、主務大臣の中期目標案、中期目標期間の業績評価、中期目標期間終了時の業務及び組織の見直しをチェックすることとし、さらに、終了時の見直しでは、主要な事務及び事業の勧告、内閣総理大臣への意見具申が可能であります。これらのチェックにおいては、委員会は関係行政機関の長に資料提出等を求めることができ、その協力のもと、主務省へのヒアリング、現地調査が可能であります。

 また、毎年度の業績評価の結果が著しく不適正な場合には、随時、委員会は、評価の実施に関する重要事項の調査審議権に基づき調査審議を進め、問題改善のための取り組みについて主務大臣に対して意見を述べることが可能な仕組みとされております。

 さらに、実地調査権限を持つ総務省の行政評価・監視の対象に独法を追加しておりまして、その調査結果を委員会が活用するなど、行政評価機能との連携により、一層、実効性のあるチェックが可能となっております。

 これらの権限に基づき、委員会は十分に機能を発揮することができ、お手盛りに陥ることはないというふうに理解をいたしております。

若井委員 大臣そして後藤議員、御答弁ありがとうございました。終わります。

柴山委員長 次に、後藤祐一君。

後藤(祐)委員 今、若井議員の質疑の中で、私の答弁と稲田大臣の答弁で、かなり共通しているところもあると思うんですが、若干の差分のところを確認したいと思います。

 まず先に、一つ別に確認しておくべきことがありまして、情報公開のところを、上川総務副大臣にきょうお越しいただいておりますが、こちらを先にしたいと思います。

 今、附帯決議の案が各党の中で協議されている状況だというふうに思いますが、この情報公開に関する規定の中で、以前の、民主党時代の平成二十四年の閣議決定で、これは公開しますよといった四つの内容のうち、二つはそのまま規定されておるわけでございますが、残りの二つがちょっとずつ違います。

 平成二十四年の閣議決定では「公務員OBの再就職先との取引状況」というのが入っていたんですが、今回の附帯決議案では「関連法人との取引状況」となっています。また、平成二十四年のときには「事業部門・間接部門別職員数」となっていたのが、今回の附帯決議案だと「業務内容別の職員数」となっています。

 確認したいのは、「関連法人との取引状況」には「公務員OBの再就職先との取引状況」は含まれるのか、また、「業務内容別の職員数」には「事業部門・間接部門別職員数」は含まれるのか、これについて上川副大臣にお伺いしたいと思います。

上川副大臣 ただいまの御質問でございますけれども、附帯決議そのものにつきましては、各党の間で今御検討されているということでございます。

 今回の独立行政法人改革につきましては、昨年十二月の閣議決定におきまして、「これまでの一律的で過度に厳格な運用を見直し、弾力化することと併せて、法人の業務運営や財務状況等の透明性を向上させるため、国民に分かりやすい形での情報公開の充実、すなわち「見える化」を推進する。」こととされているところでございます。

 附帯決議につきましては、政府としてその趣旨を尊重していくということでございますので、その上で、国民にわかりやすい形での情報公開という観点から、さらなる情報公開の充実を図ってまいりたいというふうに考えております。

後藤(祐)委員 一度閣議決定した内容ですから、ぜひこれを守っていただきたいと思います。

 続きまして、公募について。

 今、修正案について協議をされているところでございますが、唯一、二十条三項、この公募のところについて、公募の活用に努めなければならない、なお、公募を活用しない場合であっても、透明性を確保しつつ云々、努めなければならないという形の条文修正案が今各党の間で協議されているところでございます。

 この公募と透明性の関係でございますけれども、公募でない任命について、公募を活用しない場合であっても透明性を確保しつつとされるとするならば、この透明性はどうやって確保していくのか。つまり、公募でない任命について、その任命を行った理由を公表する、あるいは公募にしなかった理由を公表する、この必要があると考えますが、いかがでしょうか。

稲田国務大臣 公募によらない場合についても、必要な説明責任を果たしていくということは不可欠であると思います。そして、最適な人材を登用する上で、どのように透明性を確保するかについては、今後検討をしていかなければならない問題であるというふうに考えております。

 修正された場合の規定の趣旨、また委員の御指摘、本国会における審議、質疑も踏まえて検討していきたいというふうに思います。

後藤(祐)委員 ぜひ、公募にしない場合にはその理由をはっきりと明らかにしていただきたいと思いますし、これは条文が最終的に固まってからの話かもしれませんが、我々は、公募にしない場合の理由を明確に条文で限定列挙しております。そこも踏まえながら対応していただきたいと思います。

 続きまして、役員の定年のところでございますが、ここについては、残念ながら附帯決議の中でもまとまりを見せておりません。

 現在、役員が六十五歳、理事長、副理事長相当職が特別な事情があれば七十歳となっていて、「当該役員の知識及び経験が法人の業務運営上特に必要である場合等においては、内閣官房長官に協議の上、上記の限りでない」とされています、平成十四年三月十五日閣議決定。そして、政府が任命権を有する独法の役員の場合には官房長官協議であって、任命権を有さない場合については、各独法において「上記の趣旨を踏まえて適切に任免が行われるよう、主管府省から要請するものとする。」とされております。

 先日の審議で明らかになったように、六十五歳を超えている人が七十一名、七十歳を超えている方が十四名おられます。これらについては、任命権を有する方については全て官房長官の協議をされたんでしょうか。そして、任命権を有さない独法の役員については、「上記の趣旨を踏まえて適切に任免」とは一体どんな手続をとっているのでしょうか、そしてその手続を全ての方についてとっているのでしょうか。

稲田国務大臣 昭和五十二年の閣議決定における特殊法人の常勤役員に係る措置を踏まえ、政府が任命権を有する独立行政法人の常勤監事については、候補者の選考段階において事前に内閣官房長官に協議するものとし、法人の長については、内閣官房長官への協議を経た上、閣議口頭了解を得ることとなっております。この協議の中で、役員の年齢についても確認がされているものというふうに承知をいたしております。

 また、独立行政法人制度は、理事の任命権も含め法人の長に権限、責任を一元化しており、また、理事が法人の長をサポートする役割であることから、みずからを支える理事を法人の長みずからの責任で選任をする仕組みとしております。

 このため、副理事長、理事については、原則の在任年齢を超える者をどのような手続を経て任命するかは法人の長に委ねられていて、政府としては把握をしておりませんけれども、常勤の独法役員については事前に内閣官房長官に協議をされるものとされており、この協議の中で、常勤の副理事長、理事については年齢について確認がされているものというふうに承知をいたしております。

後藤(祐)委員 もともと法人の長は任免権がありますので、本来であれば、こういった特殊なケースについては法人の長が主務大臣に、こういうことをやるけれども御了解いただきたいというぐらいの手続をすることが、この上記の趣旨を踏まえた適切な任免なのではないでしょうか。

 ぜひ、そこの対応については、この閣議決定違反と言われないように、よくお考え直していただきたいと思います。

 残った時間を、先ほどの質疑応答の中で若干再確認したいものを聞きたいと思います。

 まず、雇用の確保について、稲田大臣が最後のところで、個々に適切な対応がなされるという趣旨のことをおっしゃられましたけれども、私の答弁では、実際、例えば個別の独法が統合されて業務がなくなった場合に、行政機関から法人に出向している方を引き揚げることで相当な対応ができるはずなんです。つまり、その部分については、政府側が直接自分の判断で対応する部分があるんですが、この適切な対応という言葉の中に、行政機関側からの出向者の引き揚げといったみずからできる部分も含まれるのかどうか、御答弁いただきたいと思います。

稲田国務大臣 今、後藤委員が御質問になった政府が引き揚げるというような選択肢も、その一つの方法として、私は含まれるのではないかというふうに思っております。

 ただ、個別の具体的な状況がありますので、その状況に応じて適切な対応がなされるべきだという趣旨でございます。

後藤(祐)委員 前向きな答弁、ありがとうございます。随分な数が行っていますので、それで随分吸収できる部分があると思いますので、ぜひ、最悪の結果はもたらさないという形でやっていただきたいと思います。

 それと、目標に関する指針、評価に関する指針について先ほど幾つか質疑がありましたけれども、ぜひ、トップランナー方式を導入してほしいんです。

 各独法の中で、一番わかりやすい具体的な指標を設けているようなもので比較的共通性があるようなもの、法人固有のものではなくて、というようなものがあればそれを指針に定めるべきですし、あるいは個別の、先ほどの水産大学校の例みたいなものというのはぜひ例示に挙げていただいて、こういった形の具体的なものを定めなければいけないという形で、ぜひトップランナー方式をこの目標に関する指針において、また、評価に関する指針についても同様の面があると思いますが、このトップランナー方式で規定されることについての御見解をいただきたいと思います。

稲田国務大臣 今おっしゃったような、いい取り組みであったり、そういう横展開する、今御提案になったようなことも踏まえて検討すべきであるというふうに考えます。

後藤(祐)委員 ちょっと戻りますが、業務方法書についての先ほどの質疑の中で、最後、監事機能の強化をできるような記載をしていこうということだったんですが、これは総務省において検討がなされるという答弁を稲田大臣がされましたので、その部分についてはちょっと通告が行っていなくて申しわけないんですが、上川副大臣、業務方法書で何を記載すべきかということについて、私からかなり具体的な事項について申し上げました。そして、稲田大臣も、ちょっと別の言い方ではありますけれども、ある程度こんな方向性というものは示されたというふうには思っております。

 きょうの質疑を踏まえて総務省において検討されるということでございますので、実際に法律上の責任となっている監事の主務大臣に対する報告義務が果たせる最低限必要な、役職員から監事への報告義務を業務方法書で、先ほどの私及び稲田大臣の答弁にあらわれているようなことは少なくとも規定すべきと考えますが、総務省としての御見解をいただきたいと思います。

上川副大臣 今回、御質問については、通告がないということでございますので、直ちに答えられないということでございますけれども、ただいま稲田大臣の御発言等、趣旨を踏まえてしっかりと対応していきたいと思います。

後藤(祐)委員 今までの検討は主に稲田大臣のもとで行われていると思いますので、これについては、ここのところ相当議論が進んだと思っておりますし、監事に関する指針についても、総務省の方で相当今までもやっている経緯があると思いますので、これは論理必然的に必要になってくる部分でありますから、ぜひ総務省の方でも、きちっと今回の審議を踏まえた、業務方法書に記載すべき事項を定めていただきたいと思います。

 あと残っている論点として、報酬の上限の話があるんですね。役員の報酬の上限なんです。

 行政執行法人の役員というのは公務員です。一般職では確かにないんですが、特別職の公務員です。一般職の公務員については、国会法三十五条で、国会議員は、一般職の国家公務員の最高の給与額より少なくない歳費を受ける。つまり、次官は国会議員より給料が安くなきゃいけないという規定があります。これからすると、少なくとも一般職の公務員は国会議員以下であるという上限が実はあります。このことを踏まえますと、確かに、行政執行法人の役員は、特別職ではあるが公務員でございます。

 先ほど稲田大臣の答弁でも、行政執行法人については、中期目標あるいは研究開発型に比べて、公務との関連性が高いと言いましたか、何らかの位置づけが、やはり公的な色彩が強い的な御発言があったと思いますけれども、そのことを踏まえましても、行政執行法人については、少なくとも、その役員は次官以下、国会議員以下とすべきだというふうに考えます。

 これは、今、法律等で規定はできないにしても、実際の運用で、今、個別の各独法の役員の給与というのは公表されていますので、それを見ますと、超えているものは今のところないようでございますけれども、ぎりぎりのところはどうもあるようでございますので、そういった運用が実際上なされるよう、うまく対応していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

稲田国務大臣 昨年末の独法改革の基本方針で、独法の長の報酬について、法人の事務事業の効果的、効率的な実施に必要な場合には、法人の長の報酬を事務次官以上とすることも可能にするよう見直しをいたしております。

 公務員型の独立行政法人である行政執行法人についても、その事務事業は多様であって、役員報酬を一律に事務次官以下とする取り扱いというのは適当ではないと思っておりますけれども、ただし、高い水準を設定しようとする法人は、当該人物に対して高い報酬を支給する必要性について、国民の納得が得られるように説明責任を果たす必要があります。

 行政執行法人は、国の相当な関与のもとに確実に執行することが求められる事務事業を行う法人であり、役員報酬は、国家公務員の給与を参酌して定めなければならないとされておりますことから、事務次官より高い水準の報酬について、国民の納得が得られるような必要性というのは、現実的には想定しにくいのではないかというふうに考えております。

後藤(祐)委員 ある程度運用の方針は示されたのかなというふうに思っておりますので、これは、現実に各独法がそういう方向で運用するように、ぜひ御指導を何らかの形でしていただきたいというふうに思います。

 今のお話もそうなんですけれども、個別の話をやっていくときに、情報公開がやはり大事になってくると思うんです。報酬の上限もそうですし、先ほどの公募の話もそうですし、定年についても、今回初めてあれだけたくさんの方が六十五歳、七十歳ルールを超えているということが明らかになりました。

 私が求めたらすっと出してきたんですけれども、こういった情報をやはり総務省のホームページで総括的に、積極的な情報提供ですね、求められて出す情報公開ではなくて、積極的な情報提供という形で行っていただくことを最後にお願い申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

柴山委員長 次に、河野正美君。

河野(正)委員 日本維新の会の河野正美でございます。

 ただいま議題となっております独立行政法人通則法の一部を改正する法律案等につきまして、三十分という質問時間をいただきました。今まで議論された内容と重複する点もあるかもしれませんけれども、よろしくおつき合いのほどお願い申し上げます。

 まず初めに、四月から消費税が八%と上がったわけであります。私、医師として二十年来、医療の現場にいた経験から、消費増税によって地域医療が崩壊しかねないという懸念をずっと持ってまいりました。

 税と社会保障の一体改革ということで、本来であれば、消費税をたくさんいただくことによって社会保障を守っていこうという考えであったと思っております。しかし、医療機関は、最終消費者とされる患者さんから消費税をお預かりいたしておりません。

 そういったことから、医療は非課税ということになっているわけでございますけれども、こういったことで、医療機関がお薬を買ったりであるとか、入院の患者さんの食べ物を買ったり、あるいは高額な医療機器等々あるわけですけれども、そういったものは全て医療機関が自己負担をしなければならない、還付されないという状況が続いております。これは、控除対象外消費税額、いわゆる損税と言っているものでございます。

 この問題は、本当は八%に上がる際にいろいろ検討されるという予定でしたけれども、大変残念ながら、置き去りにされたまま経過しております。しかし、今後一〇%に上がるということが法律上規定されているわけでございますから、一〇%に上がるまでにはもう時間もありませんので、何とかこの問題は対応できるようにしておかなければ、消費税を上げることによって医療を守るはずが、医療が崩壊してしまうという懸念を強く持っておるところであります。

 南海トラフ地震を初め大規模災害を想定した議論も、各委員会や各部署、いろいろな方面で議論されているところかと思いますけれども、そもそも、大規模な地震災害があったときに、けがをされた方であるとか患者さんが運び込まれた病院が先に壊れていたら話にならないということで、やはり病院も耐震化という問題がございます。

 耐震化の診断だけでも数百万円なり、それなりのお金がかかってくるわけですし、それで、やはりこの建物は大規模震災、災害に耐えられないのではないかということになれば、当然、補強工事あるいは建てかえをしようということになってくるわけであります。そうしますと、非常に大きな額の消費税を医療機関は負担しなければいけないということになっております。

 そもそも、患者さんサイドから見れば、最先端の医療機器のある病院で診断を受けたいという気持ちがおありでしょうから、そういったことになりますと、やはり高額な医療機器をそろえておかなければ、最新の医療機器がない病院というのはなかなか患者さんにも来ていただけないような状況になります。そうすると、また数千万、数億円という機材を買わなければいけない、どんどん買いかえていかなければいけないというような問題になります。高額機器の購入に際しましては検討するというふうに言われていたんですが、八%のときは置き去りにされていた、先送りにされていったというふうに思っております。

 こういった問題意識、地域医療崩壊の懸念から、機会をいただくごとに、きょうも差しかえでここに立たせていただいておりますが、さまざまなところで問題を提起させていただきたいというふうに思っております。

 ところで、繰り返しになりますけれども、控除対象外消費税額は診療報酬の二・五%程度という試算がございます。平成二十五年の厚労省の医療経済実態調査では約二・二七%というふうにされているようですけれども、そういった数字があります。

 したがいまして、委員あるいは政府各位の皆さん、御地元で総合病院と言われるような病院があるとしたら、大体ざっくり言って百億円ぐらいの年収があるんじゃないかなと思うんですけれども、そういった病院では、五%時代で二億五千万円ぐらい消費税を負担しているという状況があります。八%になって、よくわかりませんけれども、推定すると三・六三とかも言われておりますので、仮にこのまま一〇%になるようになると非常に大きな問題になります。今、五%で二億五千万ということは、診療報酬が上がっていればいいんですけれども、収入が全く変わっていかない中で一〇%になれば、これがざっくり五億円になる、ということは、今まで病院が利益として何とか生み出していたところからさらに二億五千万円を負担しなければいけない。非常にゆゆしき問題ではないかなと思っております。こういったことによって、非常に、もう本当に地域医療が崩壊寸前の状態にあるんじゃないかということを思っております。

 今回の法案によって独立行政法人はさらに元気になっていかなければならないというふうに認識しておりますけれども、独立行政法人は医療機関をたくさん持っておられます。その中で病院において相当に消費税負担を強いられており、経営をかなり圧迫しているのではないかと思っておりますが、この点について具体的に教えていただけますでしょうか。

    〔委員長退席、橘委員長代理着席〕

神田政府参考人 お答えさせていただきます。

 国立病院機構で申しますと、平成二十四年度におきましては売り上げ全体が八千七百三十一億円でございます。このうち課税仕入れに係る支払い対価が四千四十四億円でございまして、これにかかる消費税として百九十三億円を負担しているところでございます。課税売上分にかかります仕入れについては控除ができるということでございますので、控除されない消費税額ということでいうと百八十六億円ということになってございます。

 ただ、消費税が非課税とされております社会保険診療につきましては、医療機関等が医薬品等を仕入れる際に支払う消費税分については診療報酬において手当てをするということで、本年四月から、消費税の引き上げに際しまして、医療機関等の実態調査を行いまして、課税経費割合を把握した上で、全体では一・三六%、経費としていいますと約五千六百億円の手当てをいたしまして、診療報酬における初診料、再診料、入院基本料等の引き上げによって対応してきているところでございます。

河野(正)委員 今皆さんお聞きになったように、相当の額の消費税を負担しているということで、百八十六億控除されないということは、かなりの経営を圧迫しているんじゃないかなと思います。

 今、診療報酬で手当てをしているとおっしゃいましたけれども、診療報酬のどこに入っているのかというのが非常に不明朗ですし、診療報酬に入れたといいながら、以前の内閣では診療報酬が下がっていくということで、非常にそういった問題では、どこに入っているかわからない。あるいは、例えば、小児医療が大変だとか産科医療が大変、救急医療が大変というところに、そこに傾斜配分していきますので、ざっくり診療報酬という大枠の中で仮に消費税分を入れたとしても、どこについているかわからない、そうすると、一部の医療機関は全くもらえないというようなことになりますので、この点も正していかなければならない問題ではないかなと思っております。

 ところで、独立行政法人の病院などは、国民の視点から考えていきますと、国立病院であり、ある意味、国民の模範となるような行動をしていただかなければいけない。特に法令遵守という意味では、しっかりとした行動が求められるのではないかなと思っております。

 次に、大手新聞等でも報道されている問題でありますが、お手元に資料を配付していると思いますので、ごらんになっていただきたいと思います。

 消費税転嫁拒否行為について公正取引委員会が調査されておりますが、自治体病院が、注射針やガーゼなどの診療材料の納入業者に対して一律に商品の価格を三%引き下げるように要請をしたと。これを一部受け入れさせていた事実があったということであります。

 今、先ほど来話していますように、病院経営、非常に厳しく、大変疲弊した状態にあります。ですから、現場の経営努力ということで言えなくもありませんが、公的病院が率先してこのようなことをしているというのは非常にゆゆしき問題ではないでしょうか。

 また、一部の記事によれば、消費税率が三%から五%に引き上げられたときもそうであったが、自治体は納入業者に対して増税分を値下げするように要請するのは普通の感覚である、全ての自治体がそうしているとは言わないが、役所の末端部署まで、いわば全庁的に内々で指示が出ていることも多いというふうに言われています。

 また、多選の首長さんが君臨しているような小規模の町や村、そういったところでは、公然と、値下げに応じなければ、業者を変えるぞ、ほかの業者から取引をするぞといったようなことも現に横行しているような記事がありました。

 厳しい財政状況の中、少ない予算の中で、住民から集めた税金は効率的に使わなければならない、よって、値切る行為は税金を無駄に使わない意識のあらわれといった感覚も報道によればあるそうですけれども、本日は公正取引委員会の方からも来ていただいておりますで、この配付資料について経緯等を御説明いただけますでしょうか。

原政府参考人 お答えいたします。

 地方公共団体が設置する病院が、平成二十六年四月の消費税引き上げ等に対応するために、先ほど先生御指摘のとおり、注射針、ガーゼ等につきまして、これらを納入する納入業者に対して一律に納入商品の価格を三%以上引き下げる旨を要請したことは、消費税転嫁対策特別措置法第三条第一号後段の買いたたきの規定に違反することから、平成二十六年二月二十日、当該病院を設置する地方公共団体に対しまして、同法の規定に基づき、引き下げた納入商品の価格を引き下げ前の価格まで引き上げるとともに、引き下げ時にさかのぼって当該価格を適用すること等の指導を行いました。

 公正取引委員会は、病院を設置する地方公共団体が指導の対象となったことから、平成二十六年二月二十四日、公益社団法人全国自治体病院協議会に対し、病院を設置する地方公共団体が消費税転嫁対策特別措置法の適用の対象となること、同法を遵守することを会員に対して十分に周知徹底することを要請いたしたところでございます。

河野(正)委員 ということで指導を受けたわけですけれども、改めてちょっと確認させていただきますが、独立行政法人の国立病院機構も対象となるということでしょうか。

神田政府参考人 国立病院機構につきましても、消費税転嫁対策特別措置法の対象となりますので、本年一月に、合理的な理由なく対価を減じて支払う減額ですとか、対価の額を通常より低く定める買いたたき、それから、増税の転嫁を受け入れるかわりに経済上の利益を提供させることですとか、価格交渉の際に消費税を含まない価格での交渉の申し出を受けた場合にその申し出を拒否するといった行為が禁止されていることを周知して、遵守するように国立病院機構に求めているところでございます。

 それから、先ほど御指摘のような事案もございましたので、さらに本年三月にも通知を発出いたしまして、医療機関等が購入する医薬品等に係る消費税負担の増加分につきましては診療報酬改定において補填される予定であり、引き上げ分についても医療機関において負担すべきこと、消費税転嫁対策特別措置法において、納入業者等による消費税の転嫁を医療機関が拒否することは規制されていることについて、再度適切な対応をとるよう機構に対して求めたところでございます。

河野(正)委員 根本的には、我が国の財政状況が全方位的に厳しい状況であるということが発端ではあると思いますけれども、公的機関はやはり法律を率先して守っていかなければならないのではないかなと思っております。

 今、独立行政法人国立病院機構についておっしゃっていましたけれども、そういった通知を出されたということで、今後、それではこういった懸念はないのか、改めて厚生労働省にお聞きしたいと思います。

神田政府参考人 先ほど申しましたように、特に医薬品ですとか医療機器については、実勢価格に消費税分八%分を純粋にオンをした公定価格を設定いたしておりまして、消費税転嫁を受け入れる環境整備ということもいたしておりますので、しっかりと指導してまいりたいというふうに考えております。

河野(正)委員 ぜひともしっかり対応していただきたいと思います。

 消費税が上がっていく中で、欧米諸国並みに二〇%とか今後上がっていく可能性もあるのではないかなと思っていますけれども、やはり、しっかりとした消費税制に正していかなければ、これによって、本来、社会保障等を守ろうという趣旨であったはずにもかかわらず、医療機関が消えていく、地域医療が崩壊していくということがありますので、ぜひともしっかりやっていただきたいと思いますし、そういった税制を正すことで、一方でちゃんと納税すべきは納税していただきたいというふうに思っています。また、卸業者さんあるいはいろいろなもので生産者等々を泣かせるようなことがあってはいけない。私、消費者問題の委員会にも入らせていただいていますけれども、そういった点もしっかりとしていっていただきたいなと思って、提起をさせていただきました。

 次の質問に移ります。

 群馬県高崎市にあります独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園に関連してお尋ねをいたします。

 重度の知的障害者に対する自立のための先導的かつ総合的な支援の提供、知的障害者の支援に関する調査及び研究等を行うことにより、知的障害者の福祉の向上を図ることを目的とし、熱心に活動されているように伺っております。平成十五年十月から独立行政法人として運営されているわけでございますけれども、こういった施設を独立行政法人として運営するに至ったいきさつについてお聞かせいただきたいと思います。

蒲原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘ののぞみの園でございますけれども、昭和四十年代に重度の心身障害者が入所する施設が不足している中で、昭和四十六年に、いわば全国の重度の心身障害者のための大規模な福祉施設として、国立のぞみの園という形で設置されたものでございまして、当時、運営主体は、弾力的な運営が図られるよう、特殊法人心身障害者福祉協会であったところでございます。

 その後、設立当時は、いわば家庭において生活することが難しい重度の知的障害者の方々に対して、安心して生活する場を提供するという、そうした要請があったわけでございますけれども、いわばこうした当時の要請がだんだん変わってきている状況にございました。具体的に申しますと、施設の入所者の方々も、その人の状態に応じて、地域での生活へ移行することを積極的に推進していく、こういうニーズに変わったところでございます。

 こうしたことを背景といたしまして、平成十三年の特殊法人等整理合理化計画の中におきまして、一つは重度知的障害者の方がいわば地域で生活することが可能となるようなモデル的な処遇を行う施設ということで明確に位置づけるとともに、その組織形態につきましては、いわば現場のニーズに合った形で効率的に行う観点から、独立行政法人にするという整理がされまして、委員御指摘のとおり、平成十五年十月からそういう形態で運営を開始している、こういうことでございます。

河野(正)委員 次に、今回の独立行政法人制度改革の中で、のぞみの園についてはどのような議論がされていったかをお聞かせいただきたいと思います。

後藤田副大臣 お答えいたします。

 今回の見直しに当たりましては、行政改革推進会議におきまして、独立行政法人改革等に関する分科会を設置いたしました。委員には、四つのワーキンググループに分かれての組織の見直しを中心に検討していただきました。そのワーキンググループにおきましては、独法の組織見直しに関する過去二回の閣議決定の内容でございますが、これについては見直しの必要がないと。平成十九年の閣議決定、組織見直しにかかわる指摘はなし、平成二十四年一月二十日の閣議決定におきましても、「成果目標達成法人とする。」という、こういう二回の閣議決定の内容。

 そしてまた、各所管府省から提出された業務運営の状況、また、業務、組織見直しに関する考え方をまとめた法人シートというものを、私どもの事務局といろいろな検討をさせていただいた中で、これをワーキンググループにお示ししたところ、御指摘ののぞみの園につきましては、約三百名の重度の知的障害者に対して生活全般の支援を行うという業務の特殊性、また、所在地の移転が困難であることなどから、他の独法と統合する等の組織再編はせず、単独で存続することが適当と判断されたものと承知いたします。

河野(正)委員 それでは、中期目標管理法人というふうにされたのはなぜでしょうか。

後藤田副大臣 のぞみの園は、今お話しさせていただきましたが、重度の知的障害者に対しての生活全般の支援を提供するとともに、国の知的障害者施策を踏まえつつ、知的障害者の自立、また、地域移行の支援に関する最先端のサービスモデルを確立、実践をし、その成果をモデルケースとして全国の知的障害者関係機関に広げるという使命を負っているというふうに理解をしております。

 このような業務は、今回、我々が新たに定める独法の三類型のうち、中期目標管理型法人でございますが、この哲学は、国民向けサービス等の業務の質の向上を図ることを目的として、中期目標管理により高い自主性、自律性を発揮しつつ事務事業を行う法人に該当する、こういう哲学でございますので、その趣旨に合うということから中期目標管理型法人と整理されたところでございます。

河野(正)委員 ところで、多少前後いたしますけれども、中期目標の設定についてお尋ねをしたいと思います。

 現在、一般的な国の方向性としまして、障害者を町で見ていこうという方針があると思います。先ほど来お話もありましたように、のぞみの園では、当初、自立支援のための取り組みということで、重度知的障害者のモデル処遇を行うことにより、入所者の地域への移行を積極的に推進し、入所者数を中期目標期間において三割から四割程度縮減することとされておりました。先ほどおっしゃっていた、設立当時は、やはり安心して住める施設であるということ、生涯を送っていくような形から、今度は町に出していこうという形になっていったわけでございますが、三割から四割、入所者を縮減しなさいという目標は結構厳しいものじゃないかなと思います。

 さらには、「特に支援の必要度が高い入所者の地域への移行にも積極的に取り組むこと。」というふうにあります。障害者の地域での受け入れ体制、国民、住民の理解も含めてでございますが、そういった体制が不十分であることを鑑みますと、極めて高いハードルだったのではないかなと思います。この達成状況についてお聞かせいただけますでしょうか。

蒲原政府参考人 お答え申し上げます。

 独法の後、中期目標を掲げて取り組むということでございますけれども、具体的に、直近のものでいいますと、第二期の中期目標、これが平成二十年から平成二十四年ということになってございます。

 この目標の中では、入所利用者数につきまして、独法移行時、これは平成十五年の十月でございますけれども、そのときに比べまして三割縮減するという目標を掲げて、先生御指摘ございましたとおり、いわば地域移行のための取り組み、例えば、地域生活体験ホームといったような体験型の仕組みを入れたりして、いろいろな取り組みをやることによって地域移行を進めたところでございます。

 その最終年度であります二十四年度末の結果でございますけれども、先ほど申しました法移行のとき、平成十五年十月に比べて約四割の縮減ということでございまして、この第二期計画については達成をしているところでございます。

 ただ、一方で、のぞみの園の入所利用者の方というのは、かなり出身が全国にわたっている、こんな状況もございますし、設立当初からすると、もう相当時期がたっておりまして、三十年なり四十年入所されている方もふえてきてございますので、そうした御本人の高齢化、重篤化が進んでいるということもありますし、親御さんの方もかなり高齢化している。こんなこともありまして、丁寧な取り組みが非常に求められる、こんな状況でございますが、そうした中で、いろいろな人手、時間を割きつつ、移行先を探すだとか、丁寧な対応をやって、先ほど申しましたような成果につながってきている、こういうものと認識しております。

河野(正)委員 地域移行と簡単に言いましても、非常に大変な労力が必要で、現場では相当な御苦労があったのじゃないかなと思っております。まさに四割の達成率をしっかりクリアしたということで、すばらしい御努力があったものと敬意を表したいと思います。

 今、中央で厚生労働省の方からお答え等をいただいているわけですが、現場の方からこういった苦労があったとか、そういった話があればぜひお聞かせいただきたいと思います。

蒲原政府参考人 先ほど少し総論で申し上げましたけれども、実はこれは全国から人が来ているということでございまして、一定期間、二十年なり三十年入所した後、もともと出身地の市町村に帰すということになります。

 例えば、まず、出身地の市町村と連絡をとって、かつ、その市町村にあるサービス事業者と連絡をとって、例えば御自宅に帰る場合もあれば、グループホーム、ケアホームに帰る場合もあるんですけれども、まず、どういうところが受け入れるかということを、いわば群馬県のそこの所在地と市町村でやらなきゃいけないということ。

 さらには、具体的に、一度で移行できるわけにいかなくて、例えば、体験入所と申しましたけれども、自分の施設のところでの体験入所をやった後、何日か、その出身地のところのグループホームに体験で入るとか、こんなこともやっている。そうすると、職員が実はそこまでついていっていろいろな体験のサポートをするということをやっておりまして、言ってみれば、一人一人の地域移行のところに、今申しましたような場所の移動だとか事業者との連絡とか、非常にきめ細かなサポートが必要だということがあります。

 あわせて、さっき言いましたとおり、地元にいる親御さんがもう高齢化されたり、場合によっては亡くなられていることがあるので、そうしたところへのきめ細かな対応というのも大変苦労が多いという話を聞いておるところでございます。

河野(正)委員 私も医療現場におりまして、施設から地域へという流れはもう非常に十分に理解しておるところでありますけれども、やはり人間一人一人、それぞれの生活技能も違いますし、多くの支援、しかも一律ではない、今おっしゃいましたように、地域も全国からこの施設へ集まってきているということで、そこまで連れていって体験をさせなければいけない。非常に多くの問題があるわけであります。

 そういったところで、独法の枠組みで一律の目標管理を課すことは現場の方々に相当な御負担になるのではないかなと考えております。業務運営の効率化ということで、交付金であるとか人員を削減するなどが行われるやに聞いておりますけれども、こういったことは現場に負担をかけないのか。政府の考えはいかがでしょうか。

    〔橘委員長代理退席、委員長着席〕

稲田国務大臣 今回の独法改革は、橋本行革の省庁再編、独法制度の創設の趣旨に立ち戻って改革をするということでございまして、もちろん、効果的、効率的な運営というのは非常に重要ではありますけれども、一方、法人の事業の特性に十分配慮をしてその政策機能を強化していくということが今回の改革の目的でございます。

 業務運営の効率化については、昨年の改革の基本方針の閣議決定で、「各法人の事務・事業の実態やこれまでの効率化努力等を踏まえ、画一的で硬直的な目標ではなく、法人ごとに適切な目標を設定するよう努める。」として、柔軟な運用を図ることといたしております。

 こののぞみの園についても、こうした観点を踏まえ、主務省である厚生労働省において適切な目標管理が行われるというふうに考えておりますが、のぞみの園が担ってきている業務の公共性の高さを踏まえて、今回の改革による自主性の向上、柔軟化を生かしてしっかりと役割を果たしていただきたいというふうに考えております。

河野(正)委員 ありがとうございました。

 本当に現場では、地域住民の方に、こういった障害者の方を地域で見ていくんだということで説得をしたり、あるいは生活技能が低下している方の中では、社会の中で孤独死があったりすることもあります。非常に多くの問題があると思っております。

 こういった極めて大きな問題を独法という大きな枠組みで縛っていくことは、本当に現場で大変な思いをされている方はたくさんいらっしゃるんじゃないかなと懸念しておりますので、その点は、今お答えいただきましたようにしっかりとしてやっていただきたいと思っております。

 先ほど若干答弁にもあったかもしれませんが、のぞみの園が現在果たしている機能を鑑みますと、単独の独立行政法人として位置づけていくよりは、実は埼玉県所沢市に国立障害者リハビリテーションセンターという施設があるそうですけれども、そういったところと一体となって関連してやっていくこともメリットがあるのではないかという意見もあると思いますけれども、いかがでございますでしょうか。

蒲原政府参考人 お答え申し上げます。

 のぞみの園につきましては、先ほど来御答弁申し上げましたとおり、重度の知的障害者を対象に生活面での支援を中心に行っているところで、具体的に申しますと、もともと大規模な形での処遇からできるだけその所内で小規模処遇にして、さらに言えば、地域に移行する、そういう支援を行っているところでございます。

 一方で、お話がございました国立障害者リハビリテーションセンターでございますけれども、こちらは、主に身体障害者を対象にいわば訓練的な支援を中心としてやっている。少し具体的に言いますと、社会参加、職場復帰を目標として、まずは医療的な病院におけるリハビリ訓練から始まって、障害者の機能回復訓練あるいは就労移行支援というのを一貫して行っているという、いわば通過型の施設ということになっております。

 このように、両施設は、主な対象者あるいは組織としての目的、役割が異なっているということでございますし、実際にもサービスを提供する職員の職種や業務内容も違っているということでございますので、ちょっとこれは一律に一つということについてのメリットというのは、それほどないのではないかというふうに今は考えている、こういうことでございます。

河野(正)委員 我が国の医療あるいは障害者施策というのは、今まで、言葉は好ましくありませんけれども、収容型というふうに、そこに患者さんに入っていただいて、あるいは、先ほどの昭和四十年代にできたときののぞみの園も、もう一生涯をそこで終わっていただく、その中でどれぐらいいい生活をしていただくかということで対応されていたんじゃないかなと思います。

 海外に比べて、我が国は病床が多い、ベッド数が多いということも言われますけれども、やはり地域で見ていくということはすごく大きなお金がかかる、予算がかかるということで、結局、先ほど来、話は戻りますけれども、医療費が非常に低いまま抑えられている、抑制されているということがあって、実は、外で見るよりも、病院あるいはそういった障害者施設に入っていただいていた方が安くなってしまう。しかも、低コストだし、あるいは、マンパワー、医師や看護師等々たくさん職員がおりますので、そういったことを考えると、親御さんも中にいてもらった方が楽だ、安心できるというような考えもあって、なかなか地域移行というのが進んでいかないのではないかなと思っています。

 そういう点で、やはり地域移行はすごく大変な労力もかかりますし、予算もかかるということを認識して、しっかりと頑張っていっていただきたいと思います。

 僕は病院におりましたけれども、病院の医師として働いておりますと、親御さんなどが、障害者を残して死ぬわけにはいかない、この子たちがちゃんと一生しっかりとした生活ができるように、できる施設あるいは地域移行でもいいんですけれども、そういった政策がないと困る、本当に死ぬに死ねないといったような大きな声を聞いてきましたので、この点も踏まえて、しっかりと大きな予算をつけてやっていかなければいけない問題であるという認識をしていただきたいと思います。

 時間が来ましたので終わります。ありがとうございました。

柴山委員長 次に、杉田水脈さん。

杉田委員 日本維新の会の杉田水脈です。

 まずは冒頭、先日の委員会の中での私の発言で、新日本婦人の会は共産党の女性組織であると発言したことに対しまして、共産党の女性組織ではなく、共産党を支援する女性組織であると訂正をさせていただきます。まことに申しわけございませんでした。

 それでは、質問の方に移りたいと思います。

 きょうは、まず最初に、独立行政法人都市再生機構のことについてお尋ねをしたいと思います。

 この都市再生機構、いわゆるURなんですけれども、これは、そもそも、みんなの党の前の代表の渡辺喜美氏が行革大臣のときに、民営化というようなことで大胆な改革を掲げられたということに端を発しまして、その後は、その後を引き継いだ民主党の政権の中でもなかなか改革が難しく、そのまま、また自民党の政権の方に引き継がれたというふうに私は思っておるんです。

 この中でも、このたびは、稲田大臣が大変御苦労をされてこの報告書をまとめられたということでございますので、まずは、稲田大臣に、今回のUR改革の狙いだとか、どういったところがこの改革の中で達成されているのかということをお尋ねしたいと思います。

稲田国務大臣 今回のURの改革についてのお尋ねであります。

 URについては、業務が複雑多岐にわたる一方、都市のタワーマンション型住宅が民間と競合している、また、何といっても、約十三兆円の有利子負債を抱えて金利上昇等に大変脆弱な財務構造にある、そして、当初のURの持っていた目的がどんどん時代とともに変わってきたという問題なども指摘をされてきたところです。

 今回、独立行政法人改革の集大成とするに当たり、URが将来にわたって、高齢者等の住宅セーフティーネットや震災復興など、真に担うべき役割を持続的に果たしていくためには、改革を先送りしてはならないというふうに考えました。

 このため、行政改革推進会議における検討に当たっては、URの改革を専門に扱うワーキンググループを設けて、今後のURの役割や財務上の課題を具体的に検証し、東京都心部の高額賃貸住宅のサブリース、団地の管理コスト削減や統廃合による収支の大幅改善、関係会社の数の半減など民業補完の徹底と財務構造の健全化を両立させて、確実な実行を担保させる改革案を策定したところであります。

 今回の改革に当たっては、国交省、それからURの理事長等も来ていただいて、一緒に議論をして、今回が改革のラストチャンスであるという認識をみんなで共有したところでありまして、本年の三月に経営改善計画が作成されるなど、具体的な取り組みに着手をしているところであります。

 改革が着実に実行されるよう、国土交通省と連携をして、しっかりと引き続き取り組んでまいりたいというふうに思っております。

杉田委員 ともすればこのUR、非常に悪者にされがちなところとかがございまして、時代のニーズとはもう合っていないんじゃないかというような議論もさまざまあったかと思います。

 私は、このURにつきましては、阪神・淡路大震災のときに、例えば震災直後から全社を挙げて仮設住宅や復興住宅の建設そして復興の町づくりに多大な貢献をしてきております。今後も、都市型の震災なんかが予想されている中で、このURが培ってきた震災復興に対するノウハウというのはしっかりと引き継いでいっていただきたい。

 そのためにも、まずは改革をしっかり行って、その中で、このURを存続していくことで、そういった部分を今後の未来に向けて貢献できるような形に持っていっていただきたいというふうに思っておりますので、改革のラストチャンスという形で取り組まれたという稲田大臣の取り組みを本当に応援したいと思いますし、今後も、これからもこの改革を着実にということですので、しっかりと進めていっていただきたいというふうに思います。

 それでは、次の質問になるんですけれども、独立行政法人の通則法の改革をしていくことなんですけれども、今回の改革を契機として、地方の独立行政法人制度についてどのような波及効果があるのかということについてお尋ねをしたいと思います。

門山政府参考人 お答えいたします。

 地方独立行政法人の制度でございますが、これは、平成十三年に国の独立行政法人の制度ができたことを踏まえまして、平成十六年に、自治体にふさわしい制度ということで、関係者の御意見、ニーズなどを聞きながらつくった制度でございます。

 現状としては百十九法人ございますけれども、ほとんどが大学と病院というような今は現状でございます。

 今般の国の独法改革でございますが、業務の特性を踏まえました法人類型を設けることですとか、PDCAサイクルの強化、あるいは業務運営の改善の仕組みなど、非常に参考になるものと考えておりますが、地方独立行政法人におきます対応につきましては、改正後の国の方の独法制度の運用状況を踏まえまして、なおかつ、地方自治体に使っていただく制度でございますので、地方自治体の御意見もよく伺いながら検討していくということになろうと思っております。

杉田委員 地方の独立行政法人の制度というのは、大体国の後追いで、それも四、五年ぐらい後の形で、まあ、できた経緯もそうですし、改革も、国がここの部分ができたら次は地方の部分という形で、大体後追いで進められてきているというようなところがあるかと思うんです。

 先ほどの御答弁にもありましたが、ほとんどが大学、病院であるということなんですが、これは、私どもの大阪の方の維新の会からいろいろと要望を出させていただきまして、単に病院だとか大学だとかに限るのではなくて、もっと広く、例えば地方で持っている博物館だとか美術館とか、そういうふうなところも独立行政法人の制度を適用していくとか、そういった改革がどんどん進められてきていると思います。

 今回は、国の改革を受けて、先ほどもございましたが、PDCAのサイクルとか、そういうものの強化なんかを国の制度に倣ってしていきたいということでございましたが、私は、もう一歩踏み込んで、せっかく今もう一つ適用範囲を広げておりますが、それをもう一つ踏み込んで、地方の行政組織の中においても、公務員で今まではずっとやっていたことでありますけれども、これを独立行政法人化して切り離していくというような業務とかが、どんどんもっと適用範囲が広がっていくということを実は期待していきたいというふうに思っておるんですね。

 地方の業務というのも非常に肥大化をしてきております。片や、IT化などが進んでいく中で、いろいろアウトソーシングができる分野というのは非常に広がっておるんですけれども、ただ、ここのところも、個人情報との兼ね合いだったりとかさまざまなところで、一足飛びに民営化だとか株式会社にお任せするといったようなところにはなかなかいきにくい分野というのがあります。

 そういったところを、独立行政法人という制度を利用していただいて、そこのところでやっていただいて、まずは切り離していくというような、第一歩というふうな形で地方の行革が進んでいけばいいなというふうに思っておるんですけれども、そのあたりの展望というのはいかがでしょうか。

門山政府参考人 お答えいたします。

 地方独立行政法人法につきましては、昨年も分権改革一括法の関係で法律の改正が行われておりますが、その後、先生御指摘ありましたように、対象の拡大ということで、博物館を政令改正で対象に加えたということでございます。

 そのほかにも、ほかの施設についても幾つか、こういった形で、独法での運営ができないかという御要望などもございます。

 やはり、使っていただくのは地方自治体でございますので、自治体のニーズをよく聞きまして、今後とも前向きに検討していきたいと思います。

杉田委員 ありがとうございます。

 しっかりと地方の方でも独立行政法人の制度を活用して、地方の行革が進んでいくことを期待していきたいと思っております。

 それでは、次の質問に参りたいと思います。

 これは前回の質問の積み残しなんですけれども、ガバナンスの強化についてなんですが、監事機能を強化していくということで、これも今回の改革の目玉の一つではないかと思うんですけれども、この監事につきましては、主務大臣への提出書類を調査することや、法人に著しい損害を及ぼすおそれのある事実を役員が監事に報告させる、そういった規定が新たに設けられることとなっておりますが、これによってどのような効果が期待されるというふうに考えていらっしゃるか、お答え願いたいと思います。

後藤田副大臣 お答えいたします。

 委員おっしゃるように、十九条、また二十一条の五、また七十一条でそれぞれ、前政権時の法案に加えて、新たに、会社法などの規定を参考にしてガバナンス強化をさせていただきました。

 これらの規定によりまして、まず、法人の長を牽制する監事の機能強化という側面がございます。また、主務大臣による統制の重要性の高まりに対応しまして、監事に情報を集めやすくして監査機能の実効性をより向上させる、そして法人の自律的な業務運営の改善を促す、こういう効果が期待されるものと考えております。

杉田委員 ありがとうございます。

 法人の長を牽制するというような意図でこれをあえてつくられたということ、私は非常に意味があることだと思いますので、ここの部分が効果的に回っていくことを期待していきたいと思います。

 もう一点なんですけれども、今回の委員会の議論の中で、透明性の向上ということについてもかなりほかの野党の方々からも質問が出ているかと思うんですけれども、独法の政策実施機能の向上の中で、国民が知りたい情報がきちんと公表されてこなかったという部分が今まであって、それに対しての不信感というのも少なからずあったのではないかと思うんです。

 こういった国民の皆さんの疑念を解消するということで、きちんとした情報公開というのが必要だと思うんですが、それについての取り組みなどをどのようにお考えでいらっしゃるかということをお尋ねしたいと思います。

稲田国務大臣 昨年末の改革の基本方針の閣議決定では、「法人の業務運営や財務状況等の透明性を向上させるため、国民に分かりやすい形での情報公開の充実、すなわち「見える化」を推進する。」というふうにされております。

 この具体的な措置として、例えば、業績評価結果の業務運営や予算等への反映状況について、毎年度公表する。各法人の事業等のまとまりごとに、予算の見積もり及び執行実績を明らかにする。法人は、長の報酬水準の妥当性について、職務内容の特性、参考となる他の法人の事例等を用いて公表し、主務大臣はその説明内容の検証結果を公表する。法人は、総務大臣が定める様式により給与水準を毎年度公表することとし、職務の特性も踏まえ、当該給与水準となった理由を説明することなどが挙げられると思います。

 具体的な公表手法等については、法人の負担にも考慮しつつ、必要な情報を国民にわかりやすく、適切なタイミングで公表できるような仕組みとしていくことが必要であるというふうに考えております。

杉田委員 ありがとうございます。

 私も行政機関に働いていた経験の中で、情報公開の必要性というのは非常に感じてはおるんですけれども、ただ、過度な情報公開を求めるような風潮が今の日本には強くあるというような部分もございます。そのために非常に多くの人員が割かれて、その法人の本来の業務が結局おろそかになってしまうというような、そういったことになってしまうと本当に本末転倒だと思います。

 また、意思決定の機関についての議論だとかそういったことは、情報公開を前提としてしまいますと、そこで突っ込んだ議論ができなくなってしまうというような危険性もございますから、どこまでをきっちり情報公開されるのか。それからあとタイミングなんかも非常に必要となってきますので、そのあたりをこの独立行政法人の制度の中でもきちっと確立していただいて、きちっとした情報公開をする中で、国民の方には疑念を抱かれない、だからといって独立行政法人の業務に支障を来さないといった適切な情報公開制度というのを確立していっていただきたいというふうに思います。

 それでは、次の質問に参ります。

 今回、公募というところもまた質疑の中でもさまざまな争点となってきていると思うんですけれども、私は、公募というのはできる限り進めていっていただきたいというふうに思うんですけれども、これも、長所と短所、両方が存在するというふうに思います。

 これは、別に、公募をしたところで、すごくたくさんの応募者が集まるところと、それから公募をしてもなかなか人が集まらないというような、そういう現実とかもあります。応募する側の人から見れば、独法だから応募するとか応募しないとかいう、法人の形態によって自分が応募するかどうかを決めるのではなくて、やはりその法人の業務内容だとか特性を見て自分が応募しようかどうかというようなことを決めていくと思うんです。

 この公募というシステムがより優秀な人材の確保につながるようにというような形で行われていかないといけないと思うんですけれども、そのあたりが非常に難しい部分をどのように、公募を採用していただけるとすると、切り抜けて実施していかれるのかということについてお尋ねをしたいと思います。

稲田国務大臣 公募に関しては、今回の国会の質疑の中でもさまざま指摘がされました。

 長所としては、手続としての透明性が高く、国民の信頼確保に資する、また、幅広い層からの応募があって、当初想定しなかったような、有能でしかも意欲の高い人材を得られる可能性が広がるという長所があると思います。

 そして、今委員御指摘になったように、独法だからといって来られるわけではないので、どういう職務内容かということもきちんと公募の際には開示をする必要があるというふうに思います。

 一方で、公募を実施したものの、応募者に適任者が不在で、再公募等の追加措置を要した場合が約一割ぐらいあります。書類や面接で必ずしも十分に適格性を事前に把握し切れなかったという事例もあります。また、公募という方法では、任命権者は基本的に応募者の中からしか選ぶことができず、任命者みずからの発意による主導的人事にはなじみにくい面もあります。

 長所と短所があり、課題も見受けられるということで、本法案では、原則公募という義務づけではなくて、適任者を得るための選択肢の一つというふうに位置づけたところでございます。

杉田委員 やはり優秀な人材を集めるためにはさまざまな努力が必要であるというふうに考えますので、ぜひ柔軟な取り組みで公募というものを捉えていただいて、できるだけ公募は推進をしていただくような形で取り組んでいっていただきたいというふうに思います。

 それでは、最後の質問に移りたいと思います。これもさまざまなところで質疑がなされているところなんですが、定年制についてであります。

 今、安倍政権の方では、定年制ということについて、高齢者の活用ということが大きな課題になっておりまして、年金の受給のシステムなんかも大きく変えようというような議論がある中で、どんどん高齢者を活用していこうということとこの定年制というところが、なかなか折り合いが難しいところだと思うんです。

 ただ、我々は、やはりずっとその方がそこにい続けるということは、今度、新しい人材だとか若い人材だとかを獲得することに対しては弊害となってくることだと思いますので、ある一定、定年制というものはきちんと組み込んでいただきたいという立場でおるんですけれども。

 このようなさまざまな課題を解決して、一定のルールをつくっていくということについて、どのようなことをお考えでいらっしゃるのかということをお尋ねしたいと思います。

柴山委員長 稲田大臣、質疑時間が終了しておりますので、端的にお願いします。

稲田国務大臣 私、再チャレンジ担当大臣でもありまして、やはり高齢者の活用というのはこれからの日本にとって非常に重要なポイントであると思います。一方、一定のルールを設けるということも、若者の活躍という意味からも価値があるというふうに思っております。

 独法法人の役員については、任期を付して任用されるケースについては法律上の定年制はなく、他の制度との均衡を失することになる、また、高齢者の能力の活用も含め、年齢にとらわれない適材適所の人材登用のためには一律の基準を導入することは妥当ではないということから、定年等の在任年齢に係る規制はあえて法律で設けることは適当ではないというふうにしたところでございます。

柴山委員長 杉田さん、質疑時間終了です。

杉田委員 はい、済みません。

 年齢にとらわれないというのが、ある一定の年齢層だけが得するようなことがないような形のシステムをつくっていっていただきたいということを要望しまして、質疑を終わります。

 どうもありがとうございました。

柴山委員長 次に、大熊利昭君。

大熊委員 みんなの党の大熊利昭でございます。本日もどうぞよろしくお願いします。

 与野党の先生方の御尽力によりまして修正案がまとまりつつありまして、この辺の関係からお伺いしたいと思うんですが、これまでも随分と、ただいまも出ました公募の関係でございます。二十条の三、修正案、修正の部分、この関係なんですが、新たに修正案では、「透明性を確保しつつ」、こういうのが挿入をされております。

 そこでなんですが、原則公募ではなくて、必要に応じてという話なんですが、この透明性の確保で、この必要に応じの方法は、公募と、もともとこれは修正の前の閣法であった推薦の求め、それからその他と三つあるわけなんですね。公募、推薦の求め、それからその他、三つある。この三つの方法の中での透明性についての差はないのか、いや、やはり公募の方が透明性がより高いんだということなのか、どっちなんでしょうか。

稲田国務大臣 透明性の確保というのは、それぞれの任命形態にもよると思いますけれども、一般的には任命の過程、結果に関する情報の公表などが考えられますが、主務大臣が最適な人材を登用する上でどのように透明性を確保していくか、今後検討をしていかなければならないと思っております。

大熊委員 ぜひ今後の検討を期待したいというところでございまして、その上でも、きょう最後の質疑のようですので、その検討の方向性、それについてもうちょっと深掘りをさせていただきたいんです。

 今、大臣の御答弁で、過程の公表というキーワードが出てまいりました。そうすると、透明性がどうなんだというときに、過程の公表だということからすると、やはり差があるんでしょうか。公募と推薦の求め、それからその他、この三つについて、やはり差がある、こういうことなんでしょうか。

稲田国務大臣 公募の方が、相対的には透明性は高いというふうに思います。

大熊委員 そういう意味では、その部分についてだけ言うと公募の方がすぐれているかもしれませんが、先ほどの御答弁のとおり、任命権者の主体的な働きかけという点で劣るんじゃないかな、そう先ほどの答弁を理解したんですが、要は、公募でないと、任命権者あるいは主務大臣が主体的に、Aさん、Bさん、Cさんに、非公表の中で個別に、一本釣りなのか三本釣りなのか、声をかけに行く、こういうプロセスですね。それは何も公表しないという部分もあるんだろうと思いますが、そういう面で、やはり公募よりもややすぐれた点があるのではないかな、こういう理解をしたんですが、そういうことでよろしいんでしょうか。

稲田国務大臣 ポストにもよりますし、また、主務大臣から与えられている政策目標の実現にとって最適な人材を得る、登用するにはどうしたらいいかということを考えた場合に、最適な方法の選択は、公募であるか、公募でないか、任命権者の責任で行われるべきであるというふうに思っております。

大熊委員 ちょっと、今の文脈からすると、要は、任命権者が、主務大臣さんが、この方、この方、この方、いい人がいるんだよなというふうに強く御自身で思っているケースと、いや、ちょっとね、これは広くやっていこうと思っているケースによって方法に差が出てくるのであって、今、ポストの種類でとおっしゃいましたけれども、ポストの種類なんじゃないんじゃないですかね。

稲田国務大臣 ポストの種類という言い方が誤解を与えたかもわかりませんが、どうしてもこの人を任命権者が任命したい、この政策目標に照らしてこの人が最適だという場合には、そちらの方がすぐれているということでございます。

大熊委員 やはり、これは任命権者の意思といいますか、そちらの方が中心になって手段が選ばれる方がよろしいのかなというふうに私は思います。ポストの特性がどうのということももしかしたらあるのかもしれませんが、それよりも、やはり申し上げたような部分の方が比重は大きいのではないかなというふうに思いますので、できればそういった観点でもって検討を進めていただければなというふうに思います。

 もう一つ。冒頭、三つの方法がありますよと申し上げましたが、要は、三つは重複して使えないんだということが前提になって私も大臣も議論しているかの感じなんですが、公募であり、かつ推薦の求め、こういう方法、仕組みというのもできないものなのかな、絶対できないものなのかなというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

稲田国務大臣 あり得ると思います。

大熊委員 組み合わせもできるんじゃないかなと思うので、この辺も含めていろいろ御検討を進めていっていただければなというふうに思います。

 その関係でございますが、次に、やはり、公募であろうとそのほかであろうと、それぞれのポストの職務明細書、これが重要だと思うんですね。前回の公務員制度改革では、法律では公務員の職務明細書はなかったんですけれども、この独法についてはどういうことになっているのか教えていただければと思います。

長屋政府参考人 お答え申し上げます。

 公募に応募しようとする者にとってみますと、公募対象ポストの職務内容とか勤務条件等が明らかになっているというのは不可欠な事柄でございます。このため、本法案二十条でございますが、ここで、職務の内容、勤務条件その他必要な事項を公示するということを求めているところでございます。

 なお、現在行っている公募におきましては、職務内容書におきまして、例えば法人の業務内容、当該ポストの職務内容、勤務条件、必要な資格、経験等々を公表して行っているところでございます。

 引き続き、公募に応募しようとする者にとって必要な情報の提供がなされるよう、努めてまいりたいと思います。

大熊委員 ちょっと確認なんですが、公募のポストについてのみ職務内容が示されるということであって、そうでないポストについてはないんだという、そういうことなんでしょうか。

長屋政府参考人 公募対象ポストにつきましての職務内容となっております。

 記載の仕方はそれぞれあろうかと思いますけれども、役員でございますので、例えば組織でいえば、幾つかの部にまたがって所管するような場合にはそれぞれの部の所掌が書かれている場合もございましょうし、その辺のところは、それぞれの公募のやり方の中で工夫されていると承知しております。

大熊委員 冒頭の議論ですと、公募と、それから例えば候補者の推薦の求め、あるいはその他の措置、これが組み合わせ可能だよということでありましたね。だけれども、職務明細書は公募のポストしかありませんというのはちょっとおかしいのであって、組み合わせができるんだったら、公募ですという以外のポストについても職務の内容が明確化されていないとその組み合わせの検討ができるわけないので、これはおかしいと思うんですが。

 まあ、それは今回の法律に入っていなくてもしようがないとして、今後の検討の中でやっていただきたいんですが、どうでしょうか。

長屋政府参考人 ちょっと私も勘違いしていたところがございます。

 推薦と公募を併用するような場合には、公募の場合だけ書くというのは当然均衡を失しますし、そこのところは、そのような運用を仮にとる場合には、また運用を考えていく、そういうことになろうかと思います。

大熊委員 ぜひ、そのように。

 例えば、ある人事異動の時期のときには、今回はこのポストは公募しませんと、でも、将来についてはわからないので、やはり全てのポストに原則として、公表するかどうかは別として、こういうポストなんだということを確立しておくことは、これはもう当然必要なんじゃないか。その上で、手段を選んだり、複数の手段を同時に使ったり、そういうことになるので、そういう整理じゃないかなというふうに思いますので、そういうことでよろしくお願いします。

 時間がどんどん過ぎてまいりますので、ちょっと素朴な質問に行きたいと思うんです。

 皆様方には釈迦に説法ですが、独法はいろいろな業務があるわけなんですが、そのうち、病院というのがございます。この委員会でも何回か資金のことでお伺いした国立病院機構などがあるわけです。

 順番でいうと最後のところなんですが、病院、これは普通は医療法人じゃないかと思うんですが、独法という法人の形態で病院が行われているんだというところについて、独法じゃなければいけないのか、普通の医療法人じゃだめなのかというところの線引きですね。なぜ独法でなければならないのか。

 要は、国の政策、企画立案された政策の実行をするのが独法ですから、患者さんを治すということが国の政策の実行なのかなというのが素朴な疑問としてちょっとよく整理がつかないんですが、いかがでしょうか。

神田政府参考人 御指摘の医療についてでございますけれども、医療の担い手としては、民間の法人と公的な医療機関とございますけれども、確かに、民間の医療法人というのは、みずからが地域で必要と考えられる医療を提供するという一方で、例えば法人税などについては、ほかの普通法人と同様に課税をされるというふうになってございます。

 一方で、公的な医療機関につきましては、自治体病院もございますし、例えば日本赤十字社とか済生会もございますけれども、こうしたところでは、災害医療や僻地医療など、地域で必要な医療を提供する役割が求められているというふうに思いますし、また、公的な関与としては、病床過剰地域などでは、都道府県知事はその開設を許可しないことができるというふうにされておりますし、今回国会に提案させていただいております医療介護総合確保推進法の中では、過剰な病床機能に転換しようとする場合は中止命令ができるというような、強い公的関与がございます。一方で、法人税等は非課税となってございます。

 とりわけ、独立行政法人についてでございますが、例えば国立病院機構ですと、民間の主体では必ずしも提供されないといった、重症心身障害ですとか筋ジストロフィーといったセーフティーネット系の医療ですとか、災害時、それから新型インフルエンザなどの緊急対応の医療など、特に公共性が高い医療を担っているところでございます。

 こうした取り組みを確実に担保するという観点から、大臣による理事長任命ですとか中期目標の設定、それからさらに、災害が発生したときとか、緊急事態に対処するため必要があるというときには、大臣が必要な業務の実施を求めることができるという規定も設けておりますので、こうした非常に公共性が高い医療を確実に実施するという観点からは、独立行政法人というのはふさわしい法人形態だというふうに考えております。

大熊委員 いろいろあったんですが、そうだとしても、やはり法人税を払う必要がないということで、競争条件がイコールフッティングになっていないわけです。

 これは、言われた新型インフルエンザ対応とか筋ジストロフィー、そういったところもあるでしょう。だから、全部やめてしまえという極論を申し上げているんじゃなくて、そこはやはり競争条件がそもそも違うようにやっているわけですから、簡単に言いますと不公平なわけですから、どうしてもこれは、国の政策、あるいは緊急対応とか防災対応というところと、通常の総合病院としての機能もその地域で果たしているわけですから、そういう普通の、ほかの病院と同様のところというのとしっかり区別をする必要があるんじゃないかなというふうに思うんですね。それについて、一言お願いします。

神田政府参考人 確かに、先生御指摘のように、地域におけます、いわゆる五疾病五事業と言われるような、救急ですとか災害、僻地といった医療も担ってございます。こうした点は一般の病院でも担っている部分があろうかと思いますけれども、例えば心神喪失者等の医療観察法に基づく医療などについては、公的病院だけが担っております。特に、国立病院機構は全国の六割を担っております。また、筋ジストロフィーについては九六%を国立病院機構が担ってございます。

 こうした観点から申しますと、やはり一般の民間の医療機関ではなかなか採算がとれないといったようなことですとか、また、災害時などにおきましても、例えばDMATの派遣などにつきましても、東日本大震災がございましたけれども、国立病院機構から全体の約一〇%のところが派遣されているとか、あるいは、新型インフルエンザがあったときも、真っ先にワクチンの安全性、有効性確認のための臨床的なチェックをするというような機能を果たしております。

 やはりこうした点については国立病院機構の役割は重要だと思っておりますので、そういった点で、一定の税制上ですとか財政融資資金の活用ということについても、こうした配慮は必要ではないかというふうに思っております。

大熊委員 お話のあった、そういう民間ではちょっとできないよ、採算も厳しいよというところにやはり極力限定すべきだと思っております。

 現実問題、国立病院機構というのは、よろしいですか、年間八百億以上もうかっているんですからね。もうかっているんですよ、八百億ずつ。ある年に八百億を超えて、ずっと八百億ぐらいもうかっている。業務キャッシュフローで出ているんですよ。もうかっているんですよ。物すごくいい経営をやっているんです。それだったら、普通の医療法人としてもできる部分があるんじゃないですかということを申し上げて、ちょっと時間もあと数分なので、行きたいと思います。

 前回のちょっと積み残しなんですが、二十五条の二の、通告ですと冒頭なんですが、役員の損害賠償責任なんです。

 民主党さんと私どものみんなの党の衆法では、総理の承認が損害賠償責任免除の条件になっているんですが、閣法は、総務大臣と協議の上、主務大臣の承認ということなんですね。

 そうすると、これはハードルが低くなってしまっていまして、特に総務大臣の場合、総務大臣が自分で自分と協議するということなので、さらに自分で責任免除できちゃう、こういうことなんです。これはちょっとハードルが低くなり過ぎ、特に総務大臣の場合は低くなってしまっているのではないか、問題なのではないかなというふうに思うんですが、いかがですか。

長屋政府参考人 お答え申し上げます。

 衆法として提出されている法案につきましては、一旦廃案となりました二十四年法案を前提にしているのではないかと考えておりますけれども、二十四年法案で、損害賠償責任の免除を内閣総理大臣の承認にこれは係らしめておりますけれども、これは当時、別途、公務員庁設置法案というのが提出されておりまして、これによりまして、独法制度の所管大臣が総務大臣から総理大臣に移っておった経緯がございます。これを前提として、制度の所管大臣の承認を得るという意味で総理大臣としたものでございます。

 その公務員庁設置法、二十四年法案、ともに解散により廃案となりまして、その事務につきましては総務省の事務のままとなっているわけでございます。そういう意味で、独法制度を所管する大臣は総務大臣ということになります。

 一方で、今回の法案では、損害賠償責任の免除につきましては、総務大臣と協議の上、主務大臣の承認により免除するとしましたのは、政策の責任主体である主務大臣による法人の管理責任を徹底させるために、その主体を主務大臣とする。一方で、法制度の所管大臣である総務大臣もちゃんと関与させて、統一性を持った制度の運用が確保できるようにする、そういう考え方を持っておりまして、特段ハードルを下げるという意図を持って設計しているわけではございません。

 その中で、さらに総務大臣について御指摘ありましたけれども、法人を所管する主務大臣たる総務大臣から独法制度を所管する総務大臣への協議というのは、行政実務上行われ得るものでございます。独法制度を所管する総務大臣として、法律に従って厳正に判断していただく、これが重要であろうかと思います。

柴山委員長 質疑時間が終了しました。

大熊委員 ハードルが現に下がったと、意図するかは別にして、下がったということだろうと思います。

 最後に十秒だけ。独法に対しても、ITセキュリティー、これがかかる、一括した仕組みとして入るということで、与党の先生方から御提案があって、これは大変いいんじゃないかなと思っております。そういった間接業務系、ITができるんだから、資金の一括管理もできるだろうということを最後に申し上げて終わりたいと思います。

 以上でございます。

柴山委員長 次に、村上史好君。

村上(史)委員 生活の党の村上史好でございます。

 きょうは、総括的な質問、また見解の確認ということで質問をさせていただきたいと思います。

 特に、先般行われました参考人質疑、参考人の意見を引用しながらお尋ねをさせていただきたいと思います。

 まず、中間評価についてお尋ねをいたします。

 今回の改正法案では、主務大臣が直接評価をすることになっているため、独法から直接実施に関する報告を聞き、また評価を行うので、計画立案、実施、評価が一貫して主務大臣のもとで行われる、そのことによってPDCAサイクルが円滑、スムーズに回りやすくなるという評価がございます。

 ただ、参考人からは、評価について、事業が終わってからだけではなくて、中間の評価、途中評価というものが必要ではないかという点が指摘をされました。その点についての受けとめをお尋ねさせていただきます。

稲田国務大臣 参考人質疑の中で、樫谷参考人から、今御指摘のとおり、終わってから評価というのではなくて、途中途中何回か評価をしていかないと、しっかりやっておかないと、終わってしまってからでは遅いというような御指摘がありました。

 そして、中期目標管理法人、また国立研究開発法人については、中期目標の期間の終了時までに、組織及び業務の全般にわたって検討をすることといたしておりますが、独法は主務大臣の政策実施機関であり、独法に目標という形でどのような業務を負わせるかは、主務大臣が、中期目標期間の終了時に限らず適時適切に判断していくことが必要であるとなっております。

 その上で、独立行政法人評価制度委員会は、主務大臣が行う中期目標期間最終年度の業績評価や、中期目標期間終了時までの組織、業務等の検討に際して評価に関与することになりますが、それ以外でも、主務大臣が著しく不適切な評価を行っている場合には、主務大臣に対して意見を述べることを可能としております。

 さらに、国民生活や社会情勢など、独法を取り巻く環境が大きく変化する場合には、当該政策を実施する独法について、中期目標期間の最終年度を待たずに、政策評価、行政事業レビュー、総務省の行政評価・監視などの結果も参考に、主務大臣の政策判断により、目標の変更指示で、業務の追加や法人の個別法改正による業務の見直しや統廃合等の組織の変更が適切に行われることが必要であるというふうに考えております。

村上(史)委員 ありがとうございます。

 まさに今大臣が御答弁いただきましたように、途中での評価というものは必要なものだという認識だと思いますけれども、ただ、余りにも中間報告あるいは中間の評価ということで、組織を評価する側、される側、それぞれやはり評価疲れということになっては意味がないと思いますので、これは、まさに今大臣が言われましたように、適時、適宜やっていくということで理解をさせていただきたいと思います。

 続きまして、参考人からの指摘でございますけれども、評価の実効性をさらに上げるためには、総務大臣が定める法人の業務の特性や類型を踏まえた目標設定及び業績評価に関する統一的な指針、この目標設定や業務評価の当否、適否が評価の客観性、実効性を高める重要な要素であるという指摘をされておられます。

 総務大臣の目標設定、業務評価に関する統一的な指針は、具体的にどのように定めていかれるのか。特に、国立研究開発法人などの場合、多種多様な分野で専門性も高いという特性もあるということで、高度な専門性を持った人が関与しなければならない。しかし、他の専門家と競合する研究や、ライバル関係ということもございます。いわゆる利益相反を超えて公平公正に策定をしていくという工夫が必要だと思います。

 例えば、評価制度委員会の中に部会や分科会あるいは研究会などを設けるのも一つの案ではないかなと思いますが、含めて、御見解をお伺いしたいと思います。

稲田国務大臣 総務大臣が定める目標、評価の指針の策定に当たっては、あらかじめ総務省に設置されている独立行政法人評価制度委員会の意見を聞かなければならないというふうになっております。

 また、研究開発の業務は多種多様であり、高度な専門性を有する、専門性が多岐に分かれる、まさしく委員の御指摘のとおりでございますが、この点については、総合科学技術・イノベーション会議が研究開発の特性を踏まえた指針案を作成して、総務大臣は、同指針案を適切に反映した上で指針を策定することといたしております。これらの仕組みによって、研究開発の特性にも十分配慮されたものになるというふうに考えております。

 指針の策定に当たっては、業務の特性、実態を十分に踏まえて行うことが重要であり、総務大臣や独立行政法人評価制度委員会においては、適切な体制のもと、より実効性のある指針がつくられるよう期待をしたいというふうに思っています。

村上(史)委員 期待をされるということで、なかなか今の段階で具体的にどうこうという指針をお示しになることは難しいと思いますけれども、具体的な方針に基づいて適切な評価がされるような工夫をお願いしたいと思います。

 それでは、効率化へのインセンティブについてお尋ねをいたします。

 参考人からは、各法人が苦労して効率化を進めるインセンティブがないのではないかという指摘がございました。

 独法が簡素で効率的な行政サービスを提供するという側面からすれば効率化は当然でありますけれども、ただ、問題は、なぜ効率化をするのかというインセンティブの問題なんですが、民間企業では成果を上げている管理会計的な手法を活用することによって、マネジメントによる業務運営の適正化、効率化への対応が生まれてくるという指摘をされておられます。この指摘についてはどのように受けとめておられますか。

 特に、一生懸命やっても運営費交付金が減らされるというような側面もあるということもあわせておっしゃっておられましたけれども、このインセンティブの問題についてどのようにお考えでしょうか。

稲田国務大臣 参考人質疑で樫谷参考人から、独法のマネジメントによる業務運営の適正化や効率化が不十分であった原因の一つが、管理会計的な手法がほとんど使われていない、また、管理会計的な手法を開発して効率化を進めるインセンティブが少ないので、プロジェクトごとのコスト把握が進まないといった指摘があったというふうに認識をいたしております。

 これに関しては、昨年末の改革の基本方針の閣議決定において、法人における管理会計の活用等により自律的マネジメントの実現を図る、各法人の事業等のまとまりごとに予算の見積もりや執行実績を公表する、独法の会計基準について、事業等のまとまりごとに区分された情報を充実させるなどの見直しを行う、法人の主体的な経営努力を促進するインセンティブが機能するよう運営を改善するなどの取り組みが盛り込まれております。

 閣議決定に盛り込まれた、管理会計の活用、セグメント情報の充実、インセンティブ向上の三つの取り組みは、互いに他を促進し合う関係にあることから、政府として、これらの取り組みを一体的に進めて、独法の効果的かつ効率的な業務運営、財務状況の改善につなげていきたいというふうに考えております。

村上(史)委員 ありがとうございました。

 続きまして、利益の処理についてお尋ねをしたいと思います。

 本委員会の十六日の質疑で市川政府参考人から、法人の不要資産ではなくて、利益が政府に戻ってくるシステムの説明がございました。これまでの実績はどのようなものなのか、お尋ねをしたい。

 あわせて、四十四条は、利益を毎年度積み立てていく段階、中期期間を終了して、繰り越しと国庫納付へ振り分ける段階があります。この利益の積み立てあるいは繰り越しは簡素化や効率化の成果だというふうに思いますけれども、インセンティブの意味もあるシステムという理解でいいのかどうか、それをお尋ねしたいと思います。

市川政府参考人 御答弁申し上げます。

 まず実績でございますが、二十五年五月現在の九十八法人のうち、平成二十四年度から新中期目標期間となった法人、つまり、二十三年度から二十四年度に中期期間の切りかえを迎えた法人は八法人ございます。その八法人につきまして、繰越承認額は四千五百二十八億円、国庫納付額は千二百八十五億円でございました。その一年前、二十三年度に新中期期間を迎えた法人は四十一法人ございます。繰越承認額は約百七十七億円、国庫納付額は三百三十六億円でございます。

 この四十九法人につきまして、法人ごとに見ますと、積立金の全額を国庫納付している法人は相当数に上ります。一方で、最終年度の運営費交付金は、一旦、積立金に積んだ上でないと繰り越せませんので、これは研究開発法人などが典型的でございますが、結果として、運営費交付金の繰り越しということを行うために積立金の過半を次期中期目標期間に繰り越している法人も存在しております。

 二十四年度と二十三年度で繰越承認額と国庫納付額の大小が入れかわっているというのも、事務事業の特性上、大規模の繰り越しが認められる法人が中期目標期間終了を迎える年度は全体として繰越承認額が多くなる傾向があるためでございます。

 続けて、インセンティブのことについて御説明させていただきます。

 先日も御説明させていただきましたが、四十四条の中で、単年度の利益は、単なる積立金と目的積立金に分けられます。この目的積立金に分けるところは、まさに経営努力が認められた経費でないと目的積立金の方に持っていけませんので、そこは非常にインセンティブがきいているところでございます。

 一方で、今御説明させていただきました中期目標期間を超えての繰り越しのところですが、これは、その目標期間中にやむを得ず使用できなかった積立金は、次期目標期間中の業務の財源に充て得るというものでございまして、したがって、こちらの方は必ずしも直接インセンティブにつながるというものではございません。

 ただし、しかしながら、今般の改革におきましては、先日来御説明させていただいています、自己収入の扱いの弾力化や経営努力認定の要件緩和に加えまして、この中期目標をまたぐ積立金の繰り越しの局面におきましても、これまで中期目標期間の最終年度は、幾ら経営努力を行いましても、それが目的積立金そして繰り越しという形で報われてきませんでした。しかしながら、今回は、最終年度に経営努力認定に相当する事由がある場合には目標期間を超える繰り越しを認めるなど、繰越事由を拡大しておりまして、これもその法人が効率的、効果的に業務を行う上でのインセンティブになるもの、そのように考えている次第でございます。

村上(史)委員 ありがとうございました。

 この背景には、財務省との関係もあると承知をいたしております。効率的に、また、成果を出していくというその努力が報われるような状況をつくっていくということも大変重要なことだと思いますので、今後ともよろしくお願いしたいと思います。

 それでは、情報公開についてお尋ねをいたします。

 業務の透明性を確保するということで、全て公開のルールと今回なっております。それが必要な法人もありますけれども、ただ、先端的な研究開発に関しては、全て公開することが国益にかなうのかどうかという指摘もございます。この点についてはいかがお考えでしょうか、お尋ねをいたしたい。

稲田国務大臣 昨年末の改革の基本方針の閣議決定で、「法人の業務運営や財務状況等の透明性を向上させるため、国民に分かりやすい形での情報公開の充実、すなわち「見える化」を推進する。」とされていて、国民に対する理解を深め、法人の活動についての説明責任を果たすというふうになっております。

 他方、今先生御指摘のように、研究開発でも世界最先端の研究を行っているような法人は、例えば特許出願にかかわるものなど、即時に研究内容を公表することが必ずしも適切でない、国益を損なうという場合もあるということは十分承知をいたしておりまして、そういった、公表することで法人の研究開発業務に支障を来し、ひいては国益にとってマイナスとなるような情報公開は適切ではないというふうに考えております。

 いずれにせよ、法人の負担にも考慮しつつ、必要な情報を国民にわかりやすく適切なタイミングで公表できるような仕組みが必要であるというふうに考えています。

村上(史)委員 ちょっと時間がありませんので、その仕組みは具体的にどうなのかということをお聞きしたいんですけれども、それはまたの機会にさせていただきたいと思います。

 それでは最後に、組織の見直しについて、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

 参考人質疑のときも、私は、いわゆる統廃合等についての基準はどうあるべきなのかということを参考人に質問させていただきました。

 稲田大臣も、今回の第三者機関の厳格なチェック、あるいは総務省の独法評価制度委員会、あるいはその内容について内閣総理大臣への意見具申の仕組みを設けるなど、さまざまな形で実効性の高い見直しが図られるということを答弁されておられます。

 それでは、その存廃の、業務、組織の全般的な見直しをするときに、やはりその基準というものが必要になってくるはずであります。

 統合によって、一対一の統合なら本来二ですが、それが一・五になるということは効率化にもつながるでしょうけれども、一プラス一が二及び二・五とか、結局水膨れするという組織も今回もあろうかと思います。統廃合の中でかえって組織が大きくなり過ぎる、あるいは役員が必要以上に数が多いなどが見受けられますし、その傾向がどうしても出てくると思うんです。そのためには、どうしても明確な基準というものを設けるべきだというふうに思いますけれども、その点について最後にお伺いをして、終わりたいと思います。

柴山委員長 稲田大臣、質疑時間が終了しております。

稲田国務大臣 はい。

 委員御指摘の法人の存廃に係る基準については、今後具体的に検討されていくということになろうかと。今回の国会での委員の御指摘ですとか審議を踏まえた上で、具体的に検討されるということになろうと思いますが、私としては、独立行政法人の目的や民でできることは民でという原則、適切な役割分担といった今回の組織見直しの趣旨等を十分に踏まえて、国民の理解が得られるように検討していくべきであるというふうに考えております。

柴山委員長 終了です。

村上(史)委員 ありがとうございました。

柴山委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 前回に引き続いて、組織の改廃と労働者の雇用の問題について質問をいたします。

 今回の通則法案は、組織の改廃と労働者の雇用の問題に関連いたしまして、第五十条の四の第二項において、密接関係法人等への中期目標管理法人の役職員のあっせん等の規制の例外を設けております。

 第四号と第五号はいずれも、大臣の評価の結果生じる業務の縮小、内部組織の合理化や業務の廃止もしくは移管または組織の廃止に伴って中期目標管理法人の役職員が辞職を余儀なくされる場合について、あっせん等の禁止の例外を設け、密接関係法人等へのあっせんを可能としているわけです。

 しかし、第四号と第五号のスキームは大きく異なっております。

 第五号には「政令で定める人数以上」という要件がありますが、前回、何でこの人数要件を入れたかと理由を問いましたところ、より大規模なリストラを取り扱うためという答弁でありました。

 大臣に聞きますが、この法案は、リストラの規模にかかわりなく、解雇を余儀なくされる役職員が生じる場合のためにあっせん規制の例外を設けたものだと思いますが、いかがですか。

稲田国務大臣 前回の質疑以来、第五十条の四第二項第四号と第五号の関係についてのお尋ねがあります。

 そして、第四号の方は、離職を余儀なくされる職員のうち、一般職員に限定した再就職支援のため、人数制限を設けておりませんが、第五号では、法人の自助努力では対応できない大規模な人員削減に対応した再就職支援のための人数制限を設けているところでございます。中期目標終了時の業務、組織の見直しに伴う組織の統廃合で、一般職員に限らず、役員や管理職の職員も含め相当数の離職者が生じる可能性があるため、五号について、大規模な場合についても規定したということでございます。

赤嶺委員 ちょっと整理しながらまた伺っていきたいんですが、御答弁にありましたように、第四号の例外規定の方は人数制限はありません。離職者が小規模の場合でもあっせんは可能としております。

 その理由は、第四号が対象者を管理職未満の一般職員に限定しており、そうすれば、法人の業務運営の公正性、透明性を損なうおそれが低いので、再就職あっせん禁止の適用除外にできるということだと理解しておりますが、それに間違いありませんね。

稲田国務大臣 今委員が御指摘になったとおりだと思います。

赤嶺委員 つまり、第四号に人数要件がないのは、あっせんの対象者が管理職未満の一般職員を対象としているわけですから、その結果、法人の業務運営の公正性や透明性、これを損なうおそれが低いと考えられるわけであります。

 第五号が適用となる場合に、第三十五条第一項の規定による業務の廃止、移管、組織の廃止の措置において、政令の要件を満たしていなくても、その対象が管理職未満の一般職員というぐあいになって絞った場合に、それは影響力が小さく、法人の業務運営の公正性、透明性を損なうおそれは低いと、第四号と同じように考えられるのではないかと思いますが、この点はいかがですか。

稲田国務大臣 委員御指摘のとおりでございまして、第五号の政令で定める人数以下の場合で、その対象者が一般職員の場合は、五号ではなく四号を適用して再就職あっせんの対象となるということでございます。

赤嶺委員 そうすると、中期目標の終了時点において大量のリストラなどが、リストラというか大量の整理解雇という場合であっても、それは管理職未満の一般職員であれば、あっせんをしても、法人に対する透明性を損なうだとか、そういうものはなくなるわけですから、管理職未満の職員についてはきちんとあっせんを例外措置としてとっていく、そういう理解でよろしいですか。

稲田国務大臣 委員御指摘のとおりでございます。

赤嶺委員 第五号の法文を読む限り、そういう運用が可能になっているという理解はなかなかできないんですが、本当に中期目標終了時点において、人数要件がある場合であっても、それを満たさなくても、管理職未満の人たちについてはきちんと四号と同様な措置をとっていく、念押しですが、そのとおりでよろしいですね。

稲田国務大臣 五号の政令に当たらない場合で、管理職未満の職員については、四号を適用して、あっせんをしていくということでございます。

赤嶺委員 それでは、次の質問に移りたいと思います。

 現行法では、中期目標において掲げる事項の一番目に「中期目標の期間」、二番目に「業務運営の効率化に関する事項」、三番目に「国民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上に関する事項」となっております。

 今回の法案では、この二番目と三番目を入れかえておりますが、その理由は何ですか。

長屋政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、今回の法案では、中期目標の記載事項のうち、「効率化に関する事項」と「業務の質の向上に関する事項」、この規定の順番を入れかえてございます。

 この考え方につきましては、今回の独法改革の大きな眼目は、政策実施機能の向上を図る、このための改革でございます。その観点からしますと、その成果の発現するさまをあらわすという意味で、例えば二条の独法の定義のところでも、現行では効率的かつ効果的に行うという順番を、効果的かつ効率的に行うというふうに入れかえてございます。

 このように、改革の趣旨に即しまして、政策実施機能の向上あるいは効果的にというような観点のものにより関連のある「業務の質の向上に関する事項」というものを前に持ってきまして、「効率化に関する事項」をその後ろにしたということでございます。

 ただ、規定の順番に優劣があるわけではございませんで、この目標の記載事項の重要性というものは同列のものと解釈してございます。

赤嶺委員 優劣はないといっても、今までの法文の規定を転倒させているわけです。

 「国民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上に関する事項」のその次に掲げることになっております「業務運営の効率化に関する事項」について吟味が必要だと思います。

 これについて聞いていきたいと思いますが、この事項には人件費削減目標というのが書かれてまいりました。業務が効率化できて人件費が削減できたのか、それとも、業務が効率化していないのに人件費が削減されて、現場の労働者にしわ寄せが行っていないのか、こういうことの問題意識を持ちまして、私は、それぞれの独立行政法人において労働基準監督署から労働基準法違反で是正勧告を受けたことがあれば、それはどのような事例かについて、資料を所管する各府省庁に提出を求めました。

 時間があれば全ての関係省庁に質問をしていきたいところですが、きょうは、文科省に聞いていきます。

 もちろん、違反事例は文科省所管の独立行政法人だけに限られているわけではないわけですが、代表いたしまして、文科省所管の独立行政法人、これらの法人で、労基署から是正勧告を受けている法人が幾つで、どのような是正勧告を受けているか、説明していただけますか。

戸谷政府参考人 お答え申し上げます。

 文科省が所管しております独立行政法人全体で二十三あるわけでございます。そのうち、是正勧告を受けている法人につきましては、十法人ほどあろうかと思います。

 それで、その勧告の内容につきましては、実は、それぞれの法人の実情によりまして、いろいろまちまちでございます。

 ただ、幾つかの類型といいますか、大別した形で申し上げますと、まず、一番目といたしましては、労働基準法第三十二条の関係によりまして、時間外労働に関する協定の制限を超えた労働が行われていたといったようなこと。

 それから、二番目といたしましては、労働基準法三十七条の関係でございまして、時間外あるいは深夜労働に対する割り増し賃金の未払いといったものが見受けられたといったようなもの。

 それからあと、三番目といたしましては、労働基準法百八条の関係で、賃金台帳の不備があったといったようなこと。

 それから、労働基準法の関係ではございませんけれども、労働安全衛生法の関係で、健康診断の結果に基づく医師からの意見聴取を行っていないといったようなことがあった、そういったものに大別されるわけでございます。

 ただ、いずれの是正勧告につきましても、各法人につきまして、その後、適切な対応が行われているというふうに承知いたしております。

赤嶺委員 公務を担う、国民に対する公務サービスを行う職場でこれだけの是正勧告を労基署から受けている、それ自身も大変な驚きでありました。

 そこで、文科省に聞きますが、残業時間の協定であるいわゆる三六協定に違反して残業をさせた関係で是正勧告を受けたのは、その中の幾つの法人ですか。

戸谷政府参考人 お答え申し上げます。

 直近五年間ということで整理させていただきましたが、私どもの関係の中では、九つの法人が、今先生御指摘の三六協定にかかわる是正勧告を受けているというふうに承知いたしております。

赤嶺委員 文科省所管の独立行政法人は、先ほどお答えがありましたように、二十三です。約四割の法人で残業規則違反が指摘をされております。人件費削減の中で業務が労働者にしわ寄せされているという証拠の一つではないかと思います。

 もう一つは、人件費削減で常勤職員が削減され、非常勤職員に置きかえられてきた、これもよく指摘される点であります。

 総務省の政策評価・独立行政法人評価委員会は、毎年、独立行政法人評価年報を公表しておりますが、この中に、各独立行政法人の常勤職員数の推移の資料はありますが、非常勤職員の推移がありません。非常勤職員数の推移は、独立行政法人の業務を評価する上で欠かせない資料だと思いますが、非常勤職員の推移はなぜないのですか。

渡会政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の独立行政法人評価年報は、各年度に行われた業務実績評価等の政独委の活動をまとめて整理しているものでございまして、御指摘の非常勤職員数については掲載はしておりませんが、一方で、各年度における各法人ごとの非常勤職員数であれば、別途作成しております。独立行政法人総覧に掲載しているところでございます。

赤嶺委員 年報では資料として載せていないということでありますけれども、私が調査した範囲でも、各独立行政法人は非常勤職員の割合をふやしております。業務が効率化したのではなくて、人件費削減のために常勤職員を非常勤職員に置きかえたというのが実情であります。そして、少なくない法人で、三六協定違反、つまり残業規制違反の是正勧告を受けております。

 稲田大臣は、この各独立行政法人の業務が本当に効率化したのか、独立行政法人制度の改革として、その検証のためにも、非常勤職員の推移、研究法人では任期つき研究職員数の推移なども取りまとめて公表するべきではないか、このように考えますが、いかがですか。

稲田国務大臣 まず、独法の職員の数、常勤、非常勤の別などについては、この独法制度においては、各法人の具体的な業務執行は法人の自主性、自律性に委ねられておることから、法人が自主的、自律的に決定をすべきものであるというふうに考えております。

 また、御指摘の非常勤職員数のデータについては、総務省が毎年発行している独立行政法人総覧に記載をされていて、既に公表されているものというふうに考えております。

 今回の改革で、効率性とともに、制度の趣旨に立ち返った政策実施機能の強化、そして、独法の自主性、自律性の強化ということを図ってまいりたいというふうに考えております。

赤嶺委員 常勤、非常勤の実態がよくつかめないで、通則法では効率性だとかという議論が起こり、国民サービスの向上とか言ってみても、やはり実態に合わないと思うと思うんですよね。目標を押しつけられて、その達成のために、現場ではいろいろなひずみが起こっている。

 これまで法案の審議をしてまいりましたが、本当にこの法案が、百ぐらいある独法の実態に合ったものかどうか、その公共サービスを発展させるためには何が必要か、まだ審議が尽くされていないと思います。さらなる審議が必要だということを申し上げて、質問を終わります。

柴山委員長 これにて、ただいま議題となっております各案中、内閣提出、独立行政法人通則法の一部を改正する法律案及び独立行政法人通則法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

柴山委員長 この際、内閣提出、独立行政法人通則法の一部を改正する法律案及び独立行政法人通則法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案に対し、平将明君外五名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党及びみんなの党の共同提案による修正案がそれぞれ提出されております。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。近藤洋介君。

    ―――――――――――――

 独立行政法人通則法の一部を改正する法律案に対する修正案

 独立行政法人通則法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

近藤(洋)委員 ただいま議題となりました両修正案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 まず、独立行政法人通則法の一部を改正する法律案に対する修正案の趣旨について申し上げます。

 主務大臣は、独立行政法人の長または監事を任命しようとするときは、必要に応じ、公募の活用に努めなければならないものとすることとし、公募によらない場合であっても、透明性を確保しつつ、候補者の推薦の求めその他の適任と認める者を任命するために必要な措置を講ずるよう努めなければならないものとすることとしております。

 次に、独立行政法人通則法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案に対する修正案の趣旨について申し上げます。

 第一に、法務大臣は、日本司法支援センターの理事長または監事を任命しようとするときは、必要に応じ、公募の活用に努めなければならないものとすることとし、公募によらない場合であっても、透明性を確保しつつ、候補者の推薦の求めその他の適任と認める者を任命するために必要な措置を講ずるよう努めなければならないものとすることとしております。

 第二に、文部科学大臣は、日本私立学校振興・共済事業団の理事長または監事を任命しようとするときは、必要に応じ、公募の活用に努めなければならないものとすることとし、公募によらない場合であっても、透明性を確保しつつ、候補者の推薦の求めその他の適任と認める者を任命するために必要な措置を講ずるよう努めなければならないものとすることとしております。

 以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

柴山委員長 これにて両修正案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

柴山委員長 これより両案及び両修正案を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。赤嶺政賢君。

赤嶺委員 私は、日本共産党を代表して、独法通則法改正案及び関係法律整備法案に反対する討論を行います。

 独立行政法人制度は、行政における企画立案部門と実施部門を分離し、実施部門に運営裁量を与えることで、政策実施機能の強化をうたうものですが、その一方、多様な公共的事業や業務を一つの枠組みの中に押し込み、その縮小や廃止の道具として使われてきました。その結果、各独立行政法人には、整理統合や一方的な人件費削減目標などが押しつけられ、その役割の発揮どころか、事業や業務の遂行に支障すら生じていることは重大です。

 研究開発や行政に密着した事業など、独立行政法人制度になじまないものまでも制度のもとに置いたことの誤りは、今や明白です。行政自身の業務とするなど、制度から外すべきです。

 そもそも、制度の根本は、法人の自主性の発揮にあります。しかし、本法案は、これまでその自主性を縛ってきた仕組みを改めるのではなく、主務大臣の役割強化や組織の改廃規定の強化など、全体として、事業、業務の廃止、縮小に向けた制度強化となっており、到底容認できません。

 第一に、大臣みずから評価を行う制度への変更は、これまで以上に独立行政法人の運営を阻害する、主観的、画一的な目標を押しつけるものとなりかねません。

 第二に、組織の改廃に関する評価機関の権限強化は、独立行政法人の改廃を一層推進するものとなっています。

 第三に、法案は、組織の改廃規定を強化する一方、雇用の維持、権利義務の継承などを保障する規定を何ら設けていないことです。昨年末の基本方針は「職員の士気の向上や雇用の安定にも配慮する。」としていますが、法案は、反対に、士気を低下させ、雇用の安定を脅かすものとなっており、容認できません。

 以上、反対討論といたします。

柴山委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

柴山委員長 これより採決に入ります。

 まず、内閣提出、独立行政法人通則法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、平将明君外五名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

柴山委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。

 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

柴山委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

 次に、内閣提出、独立行政法人通則法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、平将明君外五名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

柴山委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。

 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

柴山委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

柴山委員長 この際、ただいま議決いたしました両案に対し、平将明君外五名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、日本維新の会、公明党、みんなの党及び生活の党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。大島敦君。

大島(敦)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明いたします。

 案文の朗読により趣旨の説明にかえさせていただきます。

    独立行政法人通則法の一部を改正する法律案及び独立行政法人通則法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。このため、主務大臣は、所管する独立行政法人において、次の諸点について適切な措置を講ぜられるよう求めるものとすること。

 一 各独立行政法人は、第二十八条第二項に基づき業務方法書に以下を記載すること等により、監事による内部ガバナンスの徹底に努めること。

  1 独立行政法人の役職員は、他の役職員が不正の行為をし、若しくは当該行為をするおそれがあると認めるとき、又はこの法律、個別法若しくは他の法令に違反する事実若しくは著しく不当な事実があると認めるときは、直ちに監事に報告すること。

  2 監事がその職務を行うために文書提出又は説明を求めた場合、独立行政法人の職員もこれに応じること。

 二 独立行政法人の役員の任命に際しては、公務員OBの再就職に対して国民の厳しい見方があることを踏まえ、「独立行政法人等の役員人事に関する当面の対応方針について」(平成二十一年九月二十九日 閣議決定)に基づく公募は引き続き行うものとすること。

 三 独立行政法人は、毎事業年度、財務諸表を主務大臣に提出し、承認を受けるに当たっては、「独立行政法人の保有資産の不要認定にかかる基本的視点」(平成二十二年十一月二十六日 行政管理局)に沿って、不要財産とみなされたものであって国の出資等に係るものについては、国庫納付するものとすること。

 四 政府は、独立行政法人が保有する財産をその業務の効率的な実施に必要な最小限度のものとするため、三の不要財産を除く独立行政法人の業務上の余裕金等について、その保有・運用実態を点検するとともに、適切な管理、処分等の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。

 五 独立行政法人の統廃合等の組織の見直しに当たっては、当該法人職員の雇用の安定に配慮すること。また、独立行政法人の職員の給与等は、自主性及び自律性の発揮という制度本来の趣旨並びに職員に適用される労働関係法制度に基づき、法人の労使交渉における決定に基づき対応すること。

 六 独立行政法人の情報公開については、過度な事務負担とならないことを前提に、業務内容別の職員数、関連法人との取引状況、会費等契約によらない支出の状況、交付金の使途や資産保有状況に係る情報等を含め、各法人のホームページ等で自発的かつ定期的に行うとともに、総務省はこれらの情報を総括的にホームページで閲覧可能とすること。

 七 組織マネジメントの改善を推進するためには、現場を知悉する内部人材が改革を主体的・自律的に担うことが重要であることに鑑み、組織マネジメントの改善を担う内部人材についても登用・育成が行われるよう、必要な支援に努めること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。

柴山委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

柴山委員長 起立多数。よって、両案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。稲田国務大臣。

稲田国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨を踏まえ、配慮してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

柴山委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

柴山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

柴山委員長 午後零時四十五分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後零時四十五分開議

柴山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 内閣の重要政策に関する件、栄典及び公式制度に関する件、男女共同参画社会の形成の促進に関する件、国民生活の安定及び向上に関する件及び警察に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官武藤義哉君、内閣官房内閣審議官岡庭健君、内閣官房日本経済再生総合事務局次長飯塚厚君、内閣官房行政改革推進本部事務局次長市川健太君、金融庁総務企画局審議官池田唯一君、総務省大臣官房審議官青木信之君、外務省大臣官房参事官山田滝雄君、外務省大臣官房参事官下川眞樹太君、外務省大臣官房参事官河野章君、外務省国際法局長石井正文君、文部科学省大臣官房審議官義本博司君、厚生労働省大臣官房審議官鈴木俊彦君、経済産業省大臣官房審議官石川正樹君、防衛省防衛政策局次長真部朗君、防衛省運用企画局長中島明彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

柴山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

柴山委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。近藤洋介君。

近藤(洋)委員 民主党の近藤洋介であります。

 きょうは、一般質疑の機会をいただきまして、委員長、また皆様に感謝を申し上げます。

 早速質問に入りたいと思います。

 まず最初に、官房長官にお伺いしたい、こう思うんですが、当委員会でも今国会で審議をし、成立となりました内閣人事局についてであります。

 公務員制度改革の大きな柱となった内閣人事局が、間もなく、五月三十日にスタートをする、こういう準備が進んでいるわけでありますが、この内閣人事局について、そのかなめといいましょうかトップとなる内閣人事局長につきまして、どういった方がなるのか、これは非常に大事な話であるということから、実は、昨年の十一月二十七日の内閣委員会の質疑でも私は取り上げさせていただいて、官房長官とも議論をさせていただきました。このくだりは、配付資料、委員長のお許しを得て資料を配付させていただいておりますけれども、この議事録の抜粋を添付させていただいております。

 私の主張は、当時、民主党案では、この内閣人事局長というのは、やはり政務、要するに政治家がつくべきではないか、民主党案はそういう案であると。とりわけ、この公務員制度改革の中でも、ここが官僚がなると問題があるという識者も多くあったという経緯も含めて紹介をさせていただき、ぜひ政治家を登用すべきではないかという主張をさせていただきました。その際、菅官房長官は、三人いる副長官の中から、総理が指名する副長官で考えていますという御答弁をされておりました。

 実は、麻生内閣では若干ニュアンスが違いまして、当時の麻生内閣は、事務の副長官を考えているという答弁をされておりまして、政治任用といいましょうか、政治家は充てないという御答弁でございました。事務の副長官と。

 そこからすると、この十一月二十七日の菅長官の御答弁は、三人いる副長官から選ぶということでございましたから、私は、この議事録でもあるとおり、半歩前進かな、まだ政治家の可能性は残っておるなということで、この議論を終えたわけでございます。

 その後、報道では、実は、杉田副長官という報道がございました。杉田副長官は、警察庁、警察出身の事務方のトップの方でありますけれども、杉田さんがなるのではないかという一部報道があったわけですが、二十日の記者会見で、官房長官は、こちらも記者会見の速記録を二ページ目に付させていただいておりますけれども、これに対して否定をされておりまして、加藤副長官、衆議院議員を充てる方向で最終調整しているということを明らかにされておるわけでございます。

 これは記者会見で、最終調整ということでありますから、まずお伺いしたいのですが、この内閣人事局長、大変大事な初代内閣人事局長のポジションでありますけれども、加藤衆議院議員、加藤副長官でよろしいということであるのか、この人事は、当時の十一月の議論も踏まえて、私の主張にも御理解をいただいて政治主導の人事をしたということでよろしいのか、御答弁をいただけますでしょうか。

菅国務大臣 先般成立をさせていただきました公務員制度改革の法案の中で、やはり内閣人事局長というのは極めて大事なポストだというふうに思っております。

 そういう中で、昨年の十一月ですか、確かに委員から、政務、政治主導を行うべきだということの御提言をいただきました。

 私たち安倍政権というのは、政治主導そして改革姿勢というものを基本にしながら物事を進めていきたい、そういう政権だというふうに私たちは思っております。

 ただ、この法案のつくりとすれば、三人の副長官の中から充てるという形に実はなっております。当時、委員からそうした御指摘を受けたときに、私は、私どもと同じ考え方だなというふうに実は理解をいたしました。

 そして、今の縦割りの弊害、国益よりも省益、そうしたものを排して、やはり日本の国家国民のために頑張っていただく公務員、そしてやりがいのある公務員というものを内閣としてつくり上げていくときに、委員からもお話がありました、私自身も全くそのような考え方でありました。

 総理にも、この法案が成立の見通しが立ってきた中で相談をさせていただきましたら、総理も全く同じ意見でありましたし、最高人事権者は総理大臣でありますから、総理の命を受けて、今、加藤勝信官房副長官で最終的な調整をさせていただいているのが現状であります。

近藤(洋)委員 ありがとうございます。

 官房長官がおっしゃったように、内閣人事局長は大変大事な、どのポストも大事ですが、とりわけ大事なポストでありまして、ぜひここは政治がしっかり評価する、そのことによって求心力が高まり、そして、官僚の皆様をスポイルするわけじゃなくて、やる気を前に出してもらうという意味においても、私は、局長は政務、政治家をきちっと充てるというのは必要だと思うわけであります。それをしていただいたということは評価をしたい、こう思います。

 実は、霞が関の方に話を聞くと、この人事、相当衝撃を受けている方もいるようでございます。最初に杉田副長官という報道があったがゆえなのかもしれませんけれども、驚きを持っている方もいるようでございますが、いずれにしろ、人事は発令が全てでございますから、途中経過というのは云々しても余り意味がない、こうも思うわけであります。

 いずれにしろ、加藤副長官が、最高権者である総理の意を受けて、そして適切に評価を下し、適材適所をしていくことを望みたい、こう思うわけでございます。

 ついでにもう一点。したがって、今後も政務を充てる、安倍政権の間はそういう方針であるということでよろしいのでございますでしょうか。

菅国務大臣 先ほど申し上げましたように、安倍政権というのは、まさに政治主導そして改革意欲に富んだ内閣である、私どもはこう思ってそのことを進めていきたいというふうに思っております。

 ですから、安倍内閣の間は、総理はそのような判断をされるんだろうというふうに私は思っています。

近藤(洋)委員 次の話に移りたいと思います。

 シンガポールでのTPPの交渉についてお伺いしたい、こう思います。

 甘利大臣、本当に御苦労さまでございます。閣僚会合を二十日に終えて、一つの節目といいましょうか、終えて今に至っているわけでありますけれども、このTPPをめぐって、まず、まだいまだにいろいろな報道が、報道というんでしょうか、報道機関によって、大筋合意ができたという形に強い報道をするところもあれば、そうでもない報道もある、こういうことかとは思います。

 いずれにしろ、二月と比べると、共同声明を素直に読むと、何が必要か道筋が見えてきた、課題が絞られてきたといった表現、道筋が見えてきたといった表現が出ていますので、二月よりは確実に前進していることだけは共同宣言を冷静に分析してもわかるわけでありますが、確認でございますけれども、全体の大筋合意には至っていないという理解でよいということをまず確認したい、こう思うわけであります。

 あわせて、七月に首席交渉官交渉が予定されているわけでありますけれども、全体の合意は、やはり現時点で合意をされていない、大筋合意をされていないとすると、年内合意に向けての見通しというものについて、現時点で、担当大臣としてどういうことであられるのか、お答えをいただけますでしょうか。

甘利国務大臣 大筋合意には至っておりません。何人かの閣僚から、年内合意の可能性が語られています。これは不可能ではないと思います。

 どういう道筋が必要かといいますと、要するに、今回の大臣会合で未決着の部分を事務折衝に委ねようと。もちろん全部解決するわけじゃないですけれども、そういう合意が二国間でみんな、ほぼとれました。大臣が来ているところについては、七、八カ国やりましたけれども、こういう問題が二国間で残っていますね、これはとにかく事務の責任者同士で議論させましょうと。どうしても政治的に残る部分については政治決着ということになるんでしょうけれども、そういう手順について、バイ会談をやったところでほぼそういう方向ができました。日本以外の国も、恐らくそういうことになってきたんだと思います。

 そうしますと、どういうことが大事かといいますと、これから交渉官の交渉が継続的に行われます。そしてその後、首席交渉官会議が七月、まだ日程は確定しているわけではないんですけれども、七月にやるということは決まったわけです、あと詳細な日程と場所はこれから合意をとるところですけれども。結構長い期間になると思います。

 そこでどこまで、事務折衝で処理できる部分と、どうしても大臣マターになるという部分の仕分けができるかです。私が申し上げているのは、そこで余り大臣マターのものが多過ぎると、閣僚会議を開いても、閣僚で五十も百もみんなやれというのはなかなか難しいんだと思います。

 ですから、CN会合のできいかんでその次の展望が見えてくるんだと思います。一番うまくいけば、それはどのタイミングか、年内に閣僚会合で大筋の合意が全体としてとれるところまでうまくいけばいく。ですから、これから交渉官会合、それから首席交渉官会合でどこまでさばき切れるか、その先に年内妥結ができるか、あるいはまだ難しいのか、先が見えてくるというふうに思います。

近藤(洋)委員 一点、これは要請になってしまうんですが、大臣、ぎりぎりの交渉をされて、我が国としても交渉している。野党の立場ではありますけれども、日本として、ぜひ国益をいい意味で守る交渉につなげてもらいたい、こう思うわけでありますが、その前提に立っても、やはり正しいきちっとした情報が余りに不足しているというのは否めないと思うんですね。

 日米間で一体どこまでどう合意をしているのか。もちろん、通商交渉ですから、手のうちを言ってしまったら、それは他国との交渉においてもマイナスになる、日米以外の国にとってもマイナスになるというのは私も百も承知しております。

 しかし、TPP交渉においては、かなりの部分を日米が占めるわけでありまして、日米間でここまで合意をしているから他国との交渉も進むということもあろうかと思いますし、国民の立場に立ってみても、ここまで来て日米で一体どこまで進んでいるんだというところをある程度の段階できちっと公表するというのはやはり必要ではないか、情報の適切な開示というのは必要ではないかということは、交渉の難しさは知っておりますが、あえて申し上げなければいけない、こう思います。

 民主党としては、情報開示の法案も提出しておりますので、ぜひ当委員会で議論をしてもらいたいということを申し上げて、本件についてはまた引き続き議論させてもらいたい、こう思います。

 続いて、甘利大臣にお伺いをします。

 配付資料の三ページ目でありますが、最近、大変ショッキングな数字が出てまいりました。経常収支であります。二〇一三年度の我が国の経常収支が七千八百九十九億円となり、統計として比較可能な一九八五年以降で最小の黒字幅となった、一兆円を割り込んだ、こういうことであります。

 もちろん、原子力発電所がとまっておりますから油を大量に買わなければいけない、円安でありますから輸入品の価格が高どまりしている、これは十分わかりますが、しかし、年度でいって一兆円割れというのは、貿易立国の我が国としては私は大変ゆゆしき問題であろう、こう思うんですね。

 かつ、工業製品の輸出数量も伸び悩んでいる。一例を申し上げると、スマートフォンの赤字は、二〇〇七年はたしか一千億円台だったと思いますが、今や一兆六千億円台の赤字であります。電機産業を中心に大変な状況になっている。日本の製造業の稼ぐ力というのが今非常に危機的な状況に陥りつつある、こう思うわけであります。この数字を見ると、大臣、単月、月別で見ると、我が国は経常赤字にもう既に転落という状況にもなっている、こういうわけであります。

 そこで、大臣にお伺いしたいのですが、経常赤字国に我が国が転落をした場合の問題点、マイナス点。私は、我が国が貿易赤字に加えて経常赤字になってしまったら、これはある意味で、金利に与える影響も含めて、アベノミクスというその空気感はともかく、この空気も吹き飛ぶのではないか、大変厳しい局面に陥るのではないかと危惧するわけでありますが、甘利経済財政担当大臣としては、我が国が経常赤字に転落することの問題点をどのように認識されているか、改めてお答えいただけますか。

甘利国務大臣 今の御質問にお答えする前に、先ほど申し上げなければならなかったんですが、海外出張に際しまして、国会中の海外出張に、環境整備にいろいろ御配慮いただいて、感謝申し上げます。ありがとうございました。

 ただいまの質問であります。経常収支が赤字というのは、貿易立国日本として、かつて想定をされなかった事態が、単月ではそういうときもあり得るということで、しかも、年ベースでも黒字幅がうんと小さくなっていく。

 放置すればこれはどういうことになっていくかといえば、資金需要を国内調達できなくなるということになりますから、海外からの資金調達ということは、日本の国債の評価がよりシビアな目で見られるということであります。個人金融資産がかなりありますから、直ちにそういう日本の信用不安に陥るということは、直ちに発生するということはありませんけれども、しかし、放置はできない事態だと思います。

 輸出力が円安に見合って伸びてきていないということ、これは交易条件の悪化もありますし、基本的には競争力をもっとつけなきゃいけない、こちらの言い値で売れるような立派な商品をつくらなきゃいけないということにもなるわけであります。

 さらに、原発が全停止をしていまして、その分の化石燃料の輸入が貿易赤字を促進してしまっている、それが経常赤字にはね返ってくるということもあります。安全第一、これはもちろん譲れないことでありますけれども、世界最高基準をクリアしたものについては、地元の理解を得つつ迅速に再稼働していくということも、経常赤字に陥ることを防いでいく重要な手だてだと思いますし、成長戦略で日本の競争力をつけ輸出力をつけていくということも大事なことだというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、未曽有の事態に突入していかないように総力を挙げていきたいと思っております。

近藤(洋)委員 まさに甘利大臣が今おっしゃったように、そういう事態にならないように総力を挙げなきゃいかぬということで手を打たなければいかぬわけでありますが、だからこそ、安倍政権も構造改革を進め、我々民主党政権も進めてきたつもりであります。その中で、稲田規制改革担当大臣にきょう来ていただいておるわけですが、規制の組みかえ、大改革が必要で、日本のさまざまな分野のタブーをもう一回取っ払って競争力を高めることは非常に大事だと思うわけです。

 そこで、最近、私は、これは素直に評価したいというか、ある意味で驚いたレポートがあるわけです。これは規制改革会議が出された意見であります。四ページ目をごらんいただければと思うんですが、「農業改革に関する意見」を昨日付で規制改革会議がまとめられました。

 特に農業についてさまざまな規制改革の見直し論を出していますが、注目すべきは、農協改革について規制改革会議は提言をしています。とりわけ農協の中央会制度の廃止、すなわち、地域の農協を指導する権限を持つ中央会にこれをやめさせる、中央会制度をやめる。さらには、全農について、株式会社にして、さらに輸出もできるような柔軟な経営体制にするという二点。そして、三つ目の、これも大変大きなことですが、地域農協の金融事業について農中への移管、すなわち、地域の単協が金融事業をしないようにして、窓口業務のみにして、事実上は上部団体に移管する。いろいろなことを書いていますけれども、私はこの三つに着目をしたいと思うんですが、この三つを提言されました。

 私は、地域の特性を生かして、農協が本当の意味で農業者の立場に立って強い農業をつくり、生産者にとっても、ある意味で先の見える農業をつくる意味では、今のままの農協体制は本当にいいのかという疑問を持つ一人であります。農業県山形の国会議員でありますが、そう思う一人でありますが、この提言というのは、その意味では非常に重要な提言をされたな、よくこの提言をまとめられたな、正直申し上げると民主党時代でもできなかった提言だな、率直にお見事と思う提言でありますが、この提言を大臣は担当大臣としてどう評価されているのか。また、あわせて、規制改革会議の答申及び閣議決定する行動計画にどこまで盛り込む予定なのか、お答えいただけますか。

稲田国務大臣 評価をいただき、ありがとうございます。私も農業県福井出身でございます。

 昨日、規制改革会議で農業改革についての意見を取りまとめました。それは三つの柱がありまして、一つは農業委員会改革、二つ目は農業生産法人改革、そして三つ目が、今先生が御指摘の農協の改革でございます。いずれをとっても大きな改革ですけれども、私は、この三つを一緒に進めていくことによって、危機的な農業を再生したいというふうに考えております。

 規制改革会議では、本当に農業者の方々の意見をヒアリングでも丁寧に何度も何度も聞いて、そして視察にも行って、この改革案をまとめたところであります。

 今御指摘の農協の組織の改革ですけれども、例えば中央会の制度の廃止について、これは農協の解体であるというような報道をされる方がいらっしゃいますけれども、決してそうではありません。今先生おっしゃったように、単協を強くして農業者を強くするために、果たしてこの中央会という組織が法律上の根拠を持った組織である必要が、そして法律に基づいて一律に指導しなきゃいけないような組織で今果たしてあるでしょうかと。そうではなくて、単協の自主性を生かしながら、この中央会のあり方について議論をすべきであります。

 二番目の全農の株式会社化についても、私の地元のJAの越前が時々取り上げられておりますけれども、株式会社化することによって投資も呼び込めますし、そして自主性を強化して、また、その付加価値を獲得できるということで提言をさせていただいております。

 また、信用事業の農中への移管については、単協の信用事業のリスクを排除して、そして、本来の農協の事業の強化に携わっていただくことによって単協を強くして、ひいては農業者の所得、そして日本の農業を強くするということでございます。

 政府といたしましては、この規制改革会議から出される答申を尊重して、官房長官のもとで、林農水大臣とも連携をしながら、六月に向けて議論を深め、具体的な農業改革の推進について規制改革実施計画に反映するということで、もうラストチャンスということで三本の改革を進めてまいりたいというふうに考えております。

近藤(洋)委員 ぜひこれは本気で取り組んでいただきたい、こう思うんですね。

 稲田大臣も農業県で、しかも、政治的にはまさに農業政策にこれまでも強く取り組んでこられた議員であられますから、これを出されたときは大変だったと思うんですよ。自民党農林部会がどういう空気であったか、想像にかたくありませんよ。きのうも大変だったと聞いていますよ。これは容易じゃないと思いますよ。

 私だって山形県の議員ですから、農協改革なんて、言った途端に容易じゃないと。私は、TPP、逃げちゃいけないと言っただけでも袋だたきに遭いましたからね。これは大変なんです。でも、それをおっしゃったという稲田大臣に僕は敬意を表したい、こう思います。

 その思いは、要するに、中央会というのは本当に必要なのかと。経団連と私が勤めていた日経新聞の隣に農協中央会がありますけれども、何か違和感があるんですね、あの巨大なビルにあること自体が。単協は頑張っていますよ、農協の単協は。だけれども、中央会のあの巨大なビルディングはどうも違和感があるんですよ。本当にそれでいいのかというものに対して、きちんと自民党がこれに取り組むということ自体は、幾ら農林部会でぼこぼこになっても頑張って戦ってもらいたいという気がするわけでありますが、しかし、これはなかなか容易じゃないと。

 そこで、官房長官、お伺いします。

 今、官房長官のもとで、林農林大臣と稲田大臣のもとで、こういう話でありましたが、総理も抜本的な改革をすると御発言をされました。この競争力会議の副議長としての官房長官のお立場もありますけれども、この農協改革の必要性について、こういう提言をされている中身も、意義と、また必要性についても、官房長官も一定のお考えをお持ちかと思いますが、官房長官御自身はこの必要性についてどうお考えなのか、お答えいただけますか。

菅国務大臣 農協改革については、五月の十九日の産業競争力会議において、安倍総理から、農業協同組合のあり方について、地域の農協が主役となり、それぞれの独自性を発揮して農業の成長産業化に全力を投入できるように、抜本的に見直していきたい、そういう趣旨の発言がありました。また、昨日の規制改革会議で、今委員の御指摘のように「農業改革に関する意見」を取りまとめたところであります。

 農業を、競争力のある魅力のある産業につくりかえて、地域経済を牽引する成長産業にするため、農業政策の見直しとあわせて、農業団体のあり方の見直しも必要であるというふうに考えています。

 いずれにしても、与党との御議論を踏まえながら、これから、農業者、特に担い手農業者から評価され、農業の成長産業化に資する改革案を早急に取りまとめていきたいというふうに思っています。

 現状の農業の中にあって、今のままでいいと思っている人は誰一人としていない、こう言ってもいいほど、この改革は急がれるものだろうというふうに私は考えています。

近藤(洋)委員 ぜひこれは甘利大臣にも御答弁いただきたかったんですが、時間がないのであれなんですが、組織のための改革は必要ないと思うんですね。

 誰のための改革か。やはり、農業は大事です。食料のきちっとしたものを供給するというのは大事です。しかし、今、残念ながら、全中全体がそうはなっていないのではないか、見直す必要があるのではないか。もちろん、単協を強くし、かつ生産者が希望を持って取り組めるような産業にして、その結果として輸出力も高めていく、国民生活も豊かにしていくという改革は、まさに稲田大臣がおっしゃったように、僕はラストチャンスだと思いますし、中途半端な改革にはとどめてほしくない。我々も、民主党としてしっかり提言を続けることをお約束して、質問を終わります。

柴山委員長 次に、松田学君。

松田委員 日本維新の会、松田学でございます。

 内閣委員会の一般質疑なものですから、先般、安保懇談会の報告書が出たというタイミングでもありますので、今までは、法制懇でいろいろな議論が行われている最中の中で、なかなか中身は御答弁いただけないという御答弁が中心だったんですが、これから与党内の調整という、できるだけ国会で中身の議論ができるようにしていただければと。よろしくお願いしたいと思います。

 それで、その議論が本格化する前に、若干、憲法解釈との関係で見解を確認しておきたいことが何点かございますので、幾つか御質問させていただきます。

 まず、この報告書を見て、私、ちょっと違和感を感じたのは、大筋はいいと思っているんですが、国際紛争を解決する手段としての戦争放棄というのが九条一項、この解釈が、日本が当事国である紛争解決の手段としての戦争を放棄したものということであって、当事者でない紛争のことは言っていない、だから国際法的に合法的なものはできるんだというようなことが報告書に書かれているのは、ちょっとこれは今までの私の理解とは大分違うので、まずここでちょっと違和感があったんですが。

 これに対して、またもう一つ違和感があったのは、安倍総理の会見ですかね。芦田修正論はとらないと言って、芦田修正論というのはこのことを指して芦田修正論、これを否定しているというふうにとれるような御発言があったんですが、芦田修正というのは、九条一項というのが、国際的な常識では、いわゆる侵略戦争を放棄した、これはパリ不戦条約とかそういうところでも国際常識になっていて、二項の方で「前項の目的を達するため、」というのは、侵略戦争のためということの、そのための戦力とかを保持しない、あるいは交戦権を否認するということであって、自衛のものを放棄したものではない、だから自衛隊も存続が合憲なんだというふうに理解されているんじゃないかと思ったんですが、その意味での芦田修正論というものまで否定をするのか、この辺の論理的な関係をどういうふうに政府は認識しているのか、ちょっと御確認したいと思いまして、御質問させていただきます。

菅国務大臣 いわゆる芦田修正論でありますけれども、これについては確立された定義があるわけではないというふうに承知をしております。

 一般的に、憲法第九条第一項はいわゆる侵略戦争を放棄していると解した上で、第二項は、前項の目的を達するため、すなわち、いわゆる侵略戦争を放棄するために戦力の不保持を定めているとし、自衛のための実力の保持や武力の行使は容認されているとする考え方であるというふうに承知をしております。

 政府としては、これまでもいわゆる芦田修正論の立場をとったことはありませんが、憲法第九条のもとでも自衛のための必要最小限度の実力の保持や武力の行使は認められると解していることは、従来から答弁してきているとおりであります。

 現下の国際情勢の中で、国民の生命財産、国の安全を守るためには、今後、速やかに、あらゆる事態に切れ目のない対処が可能となる法整備が必要というふうに考えております。

 このような中で、先般、総理は、我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性があるという限定的な場合に集団的自衛権を行使することが許されるという考え方について、さらに研究するように指示をされました。これを受けて、現在、与党で協議が進められております。その結果に基づいて政府としての対応を検討して、憲法解釈の必要性があれば閣議決定をしていく考え方であります。

松田委員 これもちょっと基本的なことなんですが、昔、私、阪田元法制局長官のもとに大蔵省でお仕えしたことがございまして、大変法律にお詳しい方で、ある法案をつくるときに大変しごかれた記憶がありまして、先般お会いしましたときに、政府解釈というのは変更するものではないと言って、我が維新の立場に対して牽制をされたのかもしれませんが、相当お叱りを受けたことがあるんです。

 ただ、私は、元上司といえども、今なすべきことはしなければいけないと思っております。今の政府解釈というのができたのは、もう三十年か四十年ぐらい前の国際情勢、今それが、その間、今までの間、これだけ大きな国際情勢の変化あるいは安全保障環境の変化があったというのは歴史的にもなかなかないことなのですね。これはころころ変えるべきでないというようなものではなくて、今こそ変えるべきときであるというのが私どもの立場でもあります。

 きょうは、内閣法制局長官、お見えかと思いますが、芦田修正についての答弁が今政府からもございましたけれども、政府の立場として、第一項が侵略戦争の放棄を意味しているとし、それだけでは、第二項のところで言っているだけでは、自衛のための実力行使が可能な領域について限定がない。

 これに対して一定の限定をしているのが、お配りした資料に、ちょっとわかりにくくて恐縮ですが、一枚目の一番下に政府答弁がございますけれども、「前項の目的」の「前項」はどこを指すのかという議論が当時ございまして、このときに、政府としてはどこを指しているかというと、第一項の全体、下の方にあります。そういう意味では、「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し」という方を受けているというのが政府の説に近いというふうに答弁をされている。したがって、これを受けて必要最小限なんだということなんですね。

 一方で、この安全保障の法制懇の中でもいろいろな議論が出ているんですが、憲法九条というのは、そもそも、自衛のために必要な措置というものの根拠は、憲法の前文あるいは十三条の方にある、そうであるがゆえに必要最小限なんだということで、必要な自衛のための措置というものの憲法上の根拠というのを、九条はそもそも全面的に否定しているけれども、前文や十三条で根拠を持っているんだと言うのか、九条を解釈して、それで、そこに根拠があるけれども必要最小限だと言っているのか、論理的にはどちらなのか、ちょっと法制局に御見解を示していただければと思います。

横畠政府特別補佐人 我が国は主権国家でございますので、当然、自衛権は保有していると考えております。その上で、憲法第九条という明文の規定がございます。

 そこで、これまで議論をされてきたことは、この憲法第九条、一見すると、我が国として、国際関係において実力の行使を行うことを一切禁じているように見えるものでございますけれども、その上で、憲法前文で確認している国民の平和的生存権や、憲法第十三条が生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利を国政上尊重すべきこととしている趣旨を踏まえて考えると、その憲法第九条は、外部からの武力攻撃によって国民の生命や身体が危険にさらされるような場合に、これを排除するために必要最小限度の範囲で実力を行使することまでは禁じていないということでございます。

松田委員 あくまで、芦田修正があるから自衛のためのものは禁じられていないという立場をとらないというふうに今理解をいたしました。

 それで、この議論、いろいろと、必ずしも論理的な手順が明確でないといいますか、そもそも砂川判決でも、必要な自衛のための措置をとり得ることは憲法では禁止されていないわけですね。

 その中で、どの程度の範囲かという議論が次にあって、結果として、集団的自衛権と今政府が言っているものに入るものも正当化されるというものが出てきて、そういう順序でやっていけばいいんですが、そもそも個別的自衛権、集団的自衛権という議論が先にあるものですから、集団的自衛権という概念を政府は定義して、そこに入るものは、汚い言葉で言うと、みそもくそも一緒にだめだとやってしまったところにどうも論理的な混乱があるような気がしますので、この議論は、あくまでも憲法解釈の世界の中できちっと論理立ててやるべきだ。

 一方で、憲法改正がやはり必要なんだというところは、多分、集団安全保障の議論というのはかなりそっちの方に入る議論だと思うわけであります。

 それで、今回、総理が会見で、自衛隊が武力行使を目的として湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加するようなことはこれからも決してありませんと言い切っているんですけれども、ただ、これは憲法改正というのが将来の国民の選択肢としてあって、我々日本というのは湾岸戦争のときに非常に大きなトラウマもあるわけですから、この議論を永久に日本としてはしないんだということではないと思うんですね。

 ですから、これはあくまで憲法改正を視野に置いた議論であります、今やっているのは、政府解釈と言っているのはこういうことをこれからやっていきます、その辺の区別をちゃんとつけて、もし必要ならば憲法改正のことも考えなければいけませんというような国民に対する論理的な説明の仕方というか整理の仕方をつけるべきではないかと思いますが、官房長官、いかがでしょうか。

菅国務大臣 これは総理が会見で述べておるんですけれども、国連の集団安全保障措置への参加といった国際法上合法な活動には憲法上の制約はないとする報告書、これは報告書がそういう一つの考え方を示されましたけれども、政府としては採用はできないということを明言いたしております。

 総理が示した今後の検討の進め方についての基本的な方向性からすれば、自衛隊が武力行使を目的としてかつての湾岸戦争やイラク戦争のような戦闘に参加することはない。総理は、こうした事例を挙げることによって、そのような戦闘への参加は憲法上認められないとする従来の政府の立場を変える考えはないということを国民の皆さんにわかりやすく説明した、このように考えております。

 その上で、報告書の考え方のうち、我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性があるときという限定的な場合に集団的自衛権を行使することは従来の政府の憲法解釈に言ういわゆる必要最小限度の武力の行使の中に含まれるという考え方について、今後さらに研究を進めてほしい、そういう趣旨を総理が表明したところであります。

 総理が示した今後の検討の進め方について、その基本的方向性に基づいて、現在、与党と十分に協議していくとともに、内閣法制局の意見も踏まえながら、政府としての対応というものを検討していきたいと思います。

松田委員 集団的自衛権の政府解釈を変えるのなら憲法を変えてやるべきだという意見が非常に多いんですが、ただ、憲法を改正して集団的自衛権を行使するようにする範囲というのは、これは相当踏み込んだところ、ほとんど集団安全保障に近いような世界じゃないかと思うんです。

 私は、憲法改正の問題と政府解釈の問題というのは違うんだとちゃんと区別をして、それで、国民に対して、これは多分、自民党が余りにもタカ派的な、あるいは公明党との関係で警戒心を持たれないように、会見で、いろいろな配慮をされているような会見に見えますけれども、私は、やはり論理的な区別をしっかりした上で国民にわかりやすく説明した方がいいんじゃないかという気がいたしております。

 それから、総理は、憲法が掲げる平和主義はこれからも守り抜いていくということをおっしゃっておられます。

 ただ、一方で、集団安全保障措置というのはそもそも国際平和の回復を図るということを大義名分としているわけで、一方で総理は積極的平和主義という言葉も言っておられまして、また、会見で、NATOでの総理の演説で、集団安全保障における我々の責任等についても説明し、各国から高い支持をいただいたというふうに総理は述べておられますが、こういうふうに見てくると、どうも、集団安全保障について総理自身は相当国際的な期待を持たれているのじゃないかというような懸念もするんですが、その辺は、ここで述べられた責任等というのはどういう範囲の責任等なのか、御答弁いただければと思います。

菅国務大臣 北大西洋理事会において、総理は、国際協調主義に基づく積極的平和主義の旗を掲げて、揺るぎのない平和国家として歩んでいく、日本はこれまで以上に世界の平和と繁栄に貢献していく、このことを力強く発信をいたしました。

 また、今回の安保法制懇の報告を受けて、世界の平和と安定のために、日本はどのような貢献をなすべきか、いかなる貢献が可能なのか、そのためにはどのような法整備が必要なのか、政府としての方針をまとめたい趣旨も発信をいたしました。

 この積極的平和主義に関する北大西洋理事会におけるスピーチは、出席した各国の皆さんから高い評価を得ているところでありまして、総理は、五月十五日の記者会見における総理の発言というのは、こうした意味合いにおいて発言をしたんだろうというふうに思っています。

松田委員 多分、文脈から見て、いわゆる駆けつけ警護のようなところについては我々もやっていきますよというところに期待を持たせたんじゃないかと思いますが、ただ、文脈から見ると、ふだん総理が積極的平和主義と言っている中で、集団安全保障のところまで期待を持たせたと思われてもおかしくないような、そういう会見のように見えましたので、ちょっと確認をさせていただいた次第であります。

 菅長官、大変お忙しいところありがとうございました。私からは以上でございますが、この後、我が党の安全保障の第一人者の中丸委員が具体論をさせていただきます。それまでの間、外していただいて結構でございます。よろしくお願いいたします。

 次は、あとは、甘利大臣に経済関係のことについて幾つか質疑をさせていただきたいと思います。

 まず、アベノミクスについてなんですが、いわゆる日銀の異次元緩和で二%物価目標を二年間でやりますというと、去年の四月ですから、来年には二%というのが目標になっているわけですけれども、ただ、その後の経済の推移を見ていますと、いわゆる円安によって輸入原材料の価格が上がり、それがどんどん波及して、結構物価が上がってきた。また一方で、供給面のボトルネック、最近では人手不足というようなことも非常に言われて、いわゆるコストプッシュ型のインフレというのが少しずつ起こりつつあるのではないか、あるいはこれから進んでいくのではないかという懸念もあるわけです。

 ただ、一方で、もともとこの二%の物価目標は、物価の上がり方が問題でありまして、とにかく物価が上がればいいというものじゃなくて、その内容がやはり重要なんだと思いますが、やはり基本的に、ディマンドプルの形で上がっていくという中で経済回復シナリオというのが私は想定されていたんじゃなかろうかという気がしていますので、この辺は、当初想定した、黒田日銀緩和から一年たって、そのシナリオとどういうふうな乖離が生じている、あるいは生じていないと認識しているのか。

 また、来年、二%インフレ率が実現した場合、そのうちどの程度がコストプッシュ、コストプッシュが先に進みますと、賃金がそれに応じて上がればいいんですが、賃金がおくれますとやはりデフレ効果を持ってしまいますので、コストプッシュによる部分あるいはディマンドプルによる部分がどういうふうな、いわゆる要素分解をするとどんな感じになるかという大臣の見通しみたいなものをお聞かせいただければと思います。よろしくお願いします。

甘利国務大臣 日銀の物価安定目標に向かって比較的順調に進んでいるというふうに思います。

 コストプッシュかディマンドプルかの議論がよくなされるわけでありますが、例えば、賃金上昇が生産性の向上を超えていって無理無理上げていったということになりますと、コストプッシュ要因になると思いますし、大事なことは、GDPギャップがどういう変化を示しているかだと思うんですね。GDPギャップが相当あるにもかかわらず物価が上昇していくということは、まさにコストプッシュになっていくでしょうし、GDPギャップがなくて、あるいはプラスに転じてであれば、ディマンドプル型になってくるんだと思います。

 現状、直近でいいますと、GDPギャップは〇・三にまで縮まってきております。これは、ディマンドプル型に近づきつつあるか、あるいは、そうであるかの要素が強いんだと思います。

 その中で、要素分析をして、どのくらいがディマンドプルでどのくらいがコストプッシュかというのは、私も事務方にそういう仕分けはできるのかということをちょっと振ってみたんですけれども、なかなかそこのところは難しいようでありまして、今、ディマンドプル型に順調にいきつつあるということはお答えできるんだと思います。

松田委員 本当に順調にディマンドプルでいけばいいんですが。

 お手元に資料を配っていますが、この委員会でも配ったことがあります「日本の金融資産と運用」というのがあります。これは日銀の資金循環統計に基づいているものですが、家計の金融資産千六百兆円と言われているものが実に千六百四十五兆円、そのほかも含めますと、グロスで金融資産は三千百十九兆円あるというのが昨年末の状況でしたけれども、この資金の流れが、この間、内閣委員会と総務委員会との連合審査でも申しましたように、やはり「預金等」「国債など」というところに太い線を引いたとおりの、これが基本的な日本の資金の流れである。

 これはよく見てみると、この国債も、今年度末の国債発行残高七百八十兆円のうち、五百兆円を超えるのは赤字国債。生産的なところに貯蓄が回っていないで、非生産的な、将来の富の先食い、いわゆる赤字公債の方に資産が運用されているというのが、日本経済の非常に大きな課題であろう、克服すべき姿であろうと私は思っています。

 その中で、これは厚生労働省が答えても後ろ向きの答弁しか得られないので、経済財政担当としての甘利大臣の御見解をお聞きしたいんです。

 日本の年金の話が最近よく言われるようになってきました。やはり日本の年金のポートフォリオ自体も、余りにも国債に偏ってきた。国債というのは先ほど申したように将来の増税によって償還される、富を生むための投資ではなくて富を先食いするような運用なので、これはできるだけ減らしていって、本来年金というのは国民経済の成長の果実を分配するものだという基本に立ち返ると、やはりそちらの方に、富を生む方に運用していく。

 欧米なんかも一定割合の産業投資というのは公的年金で法制化されているということもございますので、その辺について、特に今は、異次元金融緩和が成功をおさめると長期金利が上がっていって、膨大に国債を持っているということは、それ自体がむしろ、リスクがないと思っていたのがかえってリスクが大きいということもありますし、先日も法案の審議がございましたが、REVIC、あのときも申し上げましたけれども、もっと日本はプライベートエクイティーやベンチャーキャピタルを育成して、プライベートエクイティーなんかは欧米の年金なんかが相当に入っているんですが、そちらの方に年金資金の運用もシフトしていった方がリスクも下がり、リターンも上がるという考え方があると思いますが、甘利大臣はどういうふうにお考えか、お聞かせいただければと思います。

甘利国務大臣 よく、年金資金の運用ということになりますと、安全、有利という話があるのでありますけれども、安全で有利な投資対象というのはあるのかなということを考えまして、有利であれば当然リスクが伴う、安全であればリターンは少ないんだと思います。ただし、今まで、デフレ下では国債運用というのはある種、理にかなっているのかもしれませんけれども、デフレから弱インフレに変えていく際には、従来と同じポートフォリオだとかえって利回り上は極めて不利になるということが考えられるわけであります。株価がどんどん上がっていく中で、そっちに全く目配り、気配りはしないというのもおかしい話です。

 ただ、同時に、ポートフォリオを変更していくためには、ガバナンスの体制も強化をしていかなきゃいけないというふうに思います。優秀な人材を雇うにも、給与上限のがちがちの縛りの中ではなかなか人も来てくれない。そこも含めて全体を見直す中で、ポートフォリオの変更を、デフレから弱インフレに変わっていく中で、しっかりしていかなきゃいけないというふうに思っております。

 昨年の十一月に、公的・準公的資金の運用・リスク管理等の高度化等に関する有識者会議が取りまとめた報告書でありますが、こうした認識のもとに、各資金において適切なリスク管理体制を構築した上で運用の多様化を図って分散投資を進めるということを提言しているわけであります。

 現在、これを受けまして、各資金及び関係省庁におきまして、有識者会議の提言を踏まえて、運用、リスク管理体制等の見直しを進めているところでありまして、引き続き精力的に、この提言を受けた取り組みをなされることを期待いたしております。

松田委員 日本の金融資産のポートフォリオの質をよくするということで、もう一つはやはり、私は、地方の事業なんかも、PFIだとかレベニュー債だとかいろいろなことを言われながら、実際は、地方債、そして元利償還金後年度負担を地方交付税で面倒を見てくれるというスキームは非常に安易なので、やはりどうしてもそっちに偏ってしまって、これも結局は国の債務をふやしている方向に働いていって、それであれば、むしろ民間資金をどんどん導入していくべきだという、これは安倍政権の成長戦略の中にも当然のように位置づけられていることだと思うんですね。

 ただ、ちょっと私が耳にしたのは、大阪市が水道事業についてコンセッション方式を提案しているが、大阪市議会が、特に自民、公明が非常に大きな反対をしている。そもそも、水道事業のような国民の生命にかかわるものの安全、安心が脅かされるといったような、もうPFIそのものの意義を否定するような、そういう反対論も出ているというふうに聞いているんです。

 まだまだPFIに対する理解といいますか、アベノミクス、安倍政権の基本的な成長戦略に対する理解が十分ではないんじゃないかと思いますが、PFI担当大臣としてどういうふうにお考えでしょうか。

甘利国務大臣 高度成長期に一斉に整備をしたインフラが一斉に更新時期を迎える、そういう中で財政状況が厳しい、この相反する二つをどうやって対応していくかということで、PFI、PPPの手法、つまり、民間資金をインフラに導入していくという発想が出てきたわけであります。これは安倍内閣の経済政策の大きな柱の一つであります。

 御質問があって、私も初めて大阪の事態を把握したのでありますけれども、これは、安倍内閣の、政府としての方針がまだ地方議会まで、津々浦々、徹底していないなということをちょっと感じたわけでございます。

 政府としての大方針は、この大阪でのコンセッション方式を含めて、民間資金はあり余る状況にあるわけですから、これを従来の枠を超えてインフラ事業に投入していく、このスキームをしっかり構築してベストプラクティスをどんどんつくっていくということだと思います。政府の方針が地方にしっかりと共有されるように、PRにも努めたいと思っております。

松田委員 地方議会にもぜひ浸透するように、ぜひお力を出していただければと思います。

 もう時間がなくなってきたので、きょうも幾つかの質問は空振りになってしまいましてあれですが、最後に一つだけ、TPPのこともやはり聞かないわけにいかないだろうと思いますので。

 先ほど近藤委員から、国民からよく見えないという言葉がありました。これは交渉ですからしようがないという面もあるんですが、ただ、私は、もう少し、大局的な国際経済戦略というのは国民にもっともっと説明されてしかるべきだろうと思っておりまして、日本は非常に大きなチャンスをつかんでいるというふうに思います。

 先般、甘利大臣はロンドンで、TPPについて、中国もいずれは入らざるを得なくなるというふうに語ったと報道されています。これは、中国というのは国営企業体制ですから、これを突き崩すのがアメリカのTPPの一つの大きな目的だと言われているぐらい大きな問題で、一つの体制を変革するような。ベトナムというのは多分、国営企業体制というものに対して見切りをつけて、改革をしようという決意を持って入っている。そういうぐらいの大きな、外交戦略と絡むような話だと思うんですね。

 ですから、そういったような意味での対中国との関係、日米協調で中国に対してどうやって向き合っていくかというような要素が一つはあると思います。

 それから、これからFTAAPというのを大きく形成していくわけですが、そこにRCEPとTPPがどういうふうな関係を持ってFTAAPに向かっていくのかという論点もあると思いますし、片や、ヨーロッパとの間では日・EU・EPAの話が出ているわけですね。一方で、EUはアメリカともTTIPというのを進めている。そうすると、日・米・EUで一つの経済秩序をつくっていくという流れもあるかもしれない。そうすると、それとFTAAPとの関係はどういうふうになっていくのか。

 大きなダイナミックな動きの中でどういうようなシナリオを描いているか、最後に甘利大臣の見解をお聞かせください。

甘利国務大臣 もうよく御存じの上で質問されているんだと思います。

 TPPを中心に、TPPが核となってFTAAPに広がってくる、あるいは、TPPを核として日・EU、それからアメリカのTTIPにつながってくる。つまり、世界じゅうの経済連携がつながっていく一番中枢、基軸にTPPが存在する可能性が極めて高いと思うんですね。

 そこでは、貿易に関する自由化プラス、ルールに関する基本的な整合性、それから、おっしゃった国営企業、国がどんどんお金を入れている企業と民間が平等な競争条件で戦えるわけがない、そこの競争条件を整える、あるいは、国営企業が特殊な仕事をしている場合は例外としたとしても、民間と争うような場合には平等条件にしなきゃならない。そういう競争上の平等性を確保する、その基本をつくっていく、極めて大きな基礎になってくると思うんですね。そこが縦、横、斜めにつながっていく基軸になっていく。そういう点で、非常に重要視をしていかなければならないというふうに思っております。

柴山委員長 松田君、終了の時間です。

松田委員 どうもありがとうございました。

 そっちの方の国益をぜひアピールして、もっともっと主張をしながら交渉に当たっていただければというふうに、よろしくお願いいたします。

 どうもきょうはありがとうございました。

柴山委員長 次に、中丸啓君。

中丸委員 日本維新の会、中丸啓でございます。

 昨日の雨も上がりまして、お昼からの、ちょっと眠たくなってくる時間だとは思いますけれども、心の真ん中に日の丸を掲げながらしっかり頑張って質疑をさせていただきたい、このように思います。

 ちょっと通告を実はしていないんですけれども、一昨日の朝十時半ごろ、沖縄県の久米島沖で大きな爆発音とともにキノコ雲が上がったというのが現地のRBC、琉球放送のテレビのニュースで報道されたというのがインターネットの動画サイトとかにたくさん出ております。一体何があったのかというようなことでございますけれども、この件について、もし御存じのことがあれば教えていただきたいと思うんですが、官房長官、御存じないですか。わからないですか。

    〔委員長退席、関委員長代理着席〕

菅国務大臣 私のもとに特段報告は受けておりません。

中丸委員 防衛省政務官、いかがですか。

若宮大臣政務官 私のもとにも特に報告を受けておりません。

中丸委員 映像、動画入りで琉球放送のニュースで流れていた案件ですので、通常、私も安全保障委員会の理事もさせていただいております。訓練等があれば事前に文書が大体回ってきているんですけれども、爆発音ということは、事故でなければ、実弾を使った訓練か、もしくは何があったのかというのは非常に大きな問題だと思いますので、ぜひとも調査をしていただいて、また教えていただければというふうに思います。

 それでは、本論の方に入ってまいりたいと思います。

 皆さんのお手元にちょっと資料を配らせていただいているんですが、一昨日、五月二十一日付の産経新聞の一面に載っていた案件でございますけれども、私、広島生まれの広島育ちでございまして、余り勉強しなかったので広島大学には行けなかったんですけれども、広島大学で、韓国籍の男性准教授の講義について、一方的に性奴隷があったということで学生たちに説明、もちろん、平等性、中立性があるような内容ではなくて、一方的に韓国がつくっている韓国映画「終わらない戦争」というドキュメンタリーを講義の中で二百人の学生相手に行ったということが載っていました。

 先日、五月九日の質疑でも、今ちょうどまさに国立大学の法律を変えていこうというときに、実態として、こういう一方的なもの、例えばこれが連続講義で、こういう意見もあるが逆の意見もある、皆さんしっかり議論をしてほしいとか考えてほしいとか、そういう内容であればいいですけれども、これは一方的に、何か刀を焼きごてにして当てられたとか刀で鼻を刺されたとか、そういう話がたくさん出てくるわけですね。そのドキュメンタリーに出てくるのは、日本の非難の先頭になっている例のマイク・ホンダ米議員も出てくるようなものなんですね。

 要は、こういうものを授業の中で組み込むことに対して産経新聞は問題視しているわけなんですけれども、文科省としてこの事実をどういうふうに把握されているかというのを教えていただければと思います。

上野大臣政務官 中丸委員にお答えします。

 前回も「琉大ライフ」についての御質問があり、学校に任せたものなので学校の方でということをお話ししたと思うのですが、きょうのこの広島大学の授業で行われたことについて、こちらとしても調査してきました。

 広島大学のシラバスの中で、この教科は「演劇と映画」というタイトルの授業の名前です。教養教育の中で二年次対象に行われているもので、その位置づけは、それぞれの専門家が日本、アジア、欧米の演劇と映画について講義を行い、多様な文化を多角的な視点から学ぶことを目的として位置づけております。年間の予定もありますが、その中の第三回目として、「朝鮮の映画を見る」というテーマのもとに、四月二十八日に上映が行われたようです。

 大学におけるこのような教育は、国公私立の別を問わずに、各大学における教育課程の編成や実施に関する今お話ししましたような方針に基づいて行われるものとされています。御指摘の広島大学におけるこの講義の内容については、シラバスを確認する限りにおいては、映画等を通じて多様な社会的、歴史的背景を考察するものと考えられ、当該授業の一連の講義における位置づけがカリキュラムポリシーに沿ったものであると大学が判断しているかが重要であると思います。

 また、議員御指摘のように、一般的に、一面的な見解のみを取り上げるのではなく、多様な見解があることを取り上げ、考察することは、科学的あるいは批判的な思考力を、思考的な能力を養うためにも重要であると考え、文科省としましては、各大学で適切な対応が行われているかどうか、必要な助言を行ってまいりたいと思います。

 この点についてですが、今、新聞にも書いてありますように、広島大学では事実関係を確認しているところでございます。大切なことは、このような講義を通して映画を見せたり、演劇を見せることが目的ではなく、それを見せた後どのような指導をしていくか、特に政治的なものであれば、政治的な中立性を保ちつつ子供たちに何を学ばせるかという、そこのところが大切であると思っております。

中丸委員 ありがとうございます。

 多様な文化を学ぶ、文化と呼べるようなドキュメンタリーかどうかというのも疑問が残るんですけれども、韓国側にそういう意見があるというのを見せるのであれば、その反対に、大東亜戦争はどうだったのかという話を逆に見せてもいいと思いますし、そういう両方のバランスをとった中立性が保たれていない。

 僕は、実は内容もなんですけれども、この産経新聞のインタビューに対して、さっき政務官もおっしゃられましたけれども、事実関係を確認しているということは、全く授業の内容を把握していないとほぼ同等にとれるようなコメントを大学が出している、これは非常に問題だなと思います。

 この間の「琉大ライフ」の話もそうですけれども、学校が内容を把握せずに、そういった非常に偏った行動を行っている、またそれをしている学生団体に対して、お墨つきのように名前とコメントを出したりと同じようなことだろう、これは国立大学においては、こういったことは非常に根が深いと思いまして、質疑の後に、文科省さんの方に、国立大学というのは琉球大学だけではないわけですから、東京大学やほかの大学も含めて、ほかの国立大学は一体どうなっているのか教えてほしいというふうに依頼をしたら、非常に寂しい回答でして、何か、学生会がやっている出版物が東大とどこかもう一校ありますよみたいなものしか返ってこなくて、私は、そういうつもりで言ったのではなくて、そういう偏ったものに対して、大学の理事、学長、副学長、教授、准教授等がどういうふうにお墨つきを与えて活動しているかというのを知りたかったんです。

 その辺、各大学、国立大学というのはどういうふうになっているか、文科省の方で把握していることがあれば教えてください。

上野大臣政務官 先生の御指摘ですが、一般に、国立大学の役員とか職員が、依頼に応じて学生団体の発行物等に挨拶文を寄せることはあると思われますが、そうした場合に、依頼を受けた当人が、個々にその対応について判断しているのではないかと考えるところでございます。

 前回もお話ししましたように、この「琉大ライフ」のような配付物であっても、大学執行部の一員である理事や副学長の挨拶文を掲載することにより、当該発行物の記載内容について、新入学生等に対して、大学の公式な見解を示すものと誤解を与えるようなことは避けなければならないと考えております。

中丸委員 ありがとうございます。

 ほかの国立大学も含めて、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 それと、また五月九日のやはり内閣委員会の質疑で、ちょっと別な問題なんですけれども、グレンデール市の慰安婦像、それからストラスフィールドにおける慰安婦像設置の問題、こういった問題について外務省さんに質問させていただきました。

 翌日、職員の方が私の部屋に来られまして、いろいろお話を、意見交換をさせていただいたんですけれども、その後、対応がどのようになったか、決まっていることがあれば教えていただければと思います。

石原大臣政務官 お答え申し上げます。

 例えば、慰安婦像や碑が設置されている地域において、在留邦人の方々に、現地紙や在外公館ホームページ、現地日本人会安全対策委員会等を通じ、慰安婦問題をめぐり嫌がらせや暴言などの被害について、在外公館が窓口となって相談や連絡を受け付け、対処しているところであります。

 また、慰安婦像や碑の設置にかかわる動きが確認されている地域についても、外務省本省及び在外公館双方において、当該地域在留邦人やその関係者の間で緊密な連絡をとって、連携を図っているところであります。

中丸委員 ありがとうございます。

 連携を図っていく、非常に大事で、現地の皆様も、なかなか意見を聞いていただけないということから、今回、そういう意見をきっちり聞いていただけるというふうにお返事をいただいたと思います。

 ただ、問題は、像を設置されるかどうかというよりも、そういう運動、その設置によって、子供たちに対するいじめ、日本人に対する人種差別、こういう問題が起こっているのが一番大きいわけですね。

 必要なのは、今そういう活動をされている方もそうなんですけれども、彼らの安全と人権をどう守るか、ここなんですね。歴史問題がどうだったかというところではなくて、外国によっては、一番切迫している問題は、彼らにとってはそこが一番問題なんで、きょうのこの中継をインターネット等で見られていると思いますので、そういったところで彼らがまた安心して暮らせるように、ぜひとも政務官の方から、きちんと在留邦人の人権、安全は守り抜くんだということを申し上げていただければと思いますが、いかがでしょうか。

石原大臣政務官 我が国政府としては、諸外国の地方自治体において、出身国の異なる各民族が平和と調和の中で共生することを強く希望しているところであります。

 出身国間の意見の違いが持ち込まれることでいじめや暴言というようなことが起こることは大変悲しいことであり、先ほどお話をした窓口で丁寧に相談に乗らせていただきたいというふうに思います。

中丸委員 ぜひともよろしく、本当にくれぐれもよろしくお願いいたします。

 菅官房長官にきょうは来ていただきまして、先ほど我が党の松田委員の方から集団的自衛権について少しお話がありましたけれども、私はちょっと違う角度から御質問させていただきたいと思います。

 集団的自衛権の解釈をどうするか、それによってどういう法律をつくっていくかというこれからの動きもあるんですけれども、きょうのニュース、新聞等で見ると、昨日、北朝鮮と韓国の間で弾の撃ち合いがあったとか、ベトナムで中国の艦船との衝突があった、百何十回あったけれども、悪いのはあっちだ、こっちだというような話とか、飛行場をあそこへつくるんだとか、いろいろな話が今本当に世界じゅういろいろなところで出ている時期で、まさに我が国の国防、どう守るかという取り組みは、もう時間をかけてゆっくりできる問題じゃないと。

 先ほど松田委員の方から憲法九条第二項、もちろん、それは改正するにこしたことはない、私は特に、それを変えたいと思って国会議員をやっているわけですから。ただし、それはやはり時間のかかる、もちろん国民の皆さん、国民投票も含めてやっていくものではありますし、そういう中で、ただ、今、少しでも早くやらないといけないことというのがあって、この整備というのは待ったなしだというふうに思うんですけれども、今後のそういう法整備も含めた取り組み、それから今後の進め方、ざっくりとした状態でもいいんですが、スケジュール感、官房長官がお持ちのものがあれば、お聞かせ願いたいと思います。

菅国務大臣 現下の国際情勢、我が国を取り巻く環境というのは極めて厳しい状況にあるということは、委員の御指摘のとおりであります。

 さらに、百五十万人の方がもう海外で生活をしている時代になったんです。そして、一千八百万人の方が海外に旅行で渡航されている。そうした中にあって、いつどこで何があるかわからない。国民の皆さんの生命財産、国の安全を守るというのが政府の極めて重要な役割であるという観点に立って、総理は、切れ目のない対処が可能となる法整備が必要だ、そういうことを常に考えていたところであります。

 その中で、総理は、就任をして、安保法制懇というものを、懇談会をお願いして、先般、その答申を受けたわけであります。

 その中で、総理は、我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性があるという限定的な場合に集団的自衛権を行使することは許されるという考え方について、さらに検討するような指示をいたしました。今、与党間でこれについて調整をされておるわけであります。

 この切れ目のない法整備という中で、いろいろな問題が実はあるわけでありますけれども、まず、全体の方針を決めた後に、グレーゾーンと言われる部分について、法整備をまずそこから進めていく、とにかくできることから進めていく、そういう方向性にこれはなっていくだろうというふうに、この与党協議の中でも思っております。

    〔関委員長代理退席、委員長着席〕

中丸委員 我が党は、安保法制懇の報告書が出る約一カ月ぐらい前に、限定容認という形で、限定するに当たっての六要件というのを衆議院の法制局さんと一緒につくらせていただきました。私もその調査会、作成メンバーの一人として作成に参加させていただいたわけなんですけれども、それを作成した後、そういうグレーゾーンも含めて、領域警備法であるとか、こういったものも必要であろう、こういったものも議員立法も踏まえて考えていかないといけないだろうというのもやっているんですけれども、やはりばらばらに、警察権もあり、もちろん海上保安庁もあり、自衛隊もありとさまざまな中でいくと、やはりこれは包括的な、国家安全戦略基本法とか国家安全基本法とかこういった包括法が必要ではないかという議論も今行っているわけですけれども、官房長官はその辺についていかがお考えですか。

菅国務大臣 総理の具体的な考え方は、まず、切れ目のない対応をしっかり行っていくということであります。まずできることから、これは法律ですから、提案するまで時間がかかりますけれども、まずそこをやっていく。そして、全体として国の安全保障をどうするかという考え方の中で、その中で憲法解釈のもとでも可能な立法措置を行うと同時に、これまでの憲法解釈のままでそうした事態に対応できるかどうか、そういうことを検討して、もし対応することができなければ、限定的な容認というものも含めて、そこはしっかりと対応したいというのが基本的な考えでありまして、まず与党間で全体像のことを今調整している段階だというふうに思います。

 ですから、現行法でできるもの、現行法では難しい、新たな解釈が必要なもの、そうしたことの中で全体としてできるものから行っていく、しかし、トータル的にいつまでこうしますという、そういう考え方で進めていきたいと思います。

中丸委員 ありがとうございます。

 解釈云々という話で、憲法の解釈を時の政府が行うと際限がないとか、憲法は国家権力を縛るものなので、それを縛られている側が変えちゃいけないとか、こういった議論もあるわけでございます。

 私は、例えば集団的自衛権がどうとかいうだけではなくて、我々国会議員は、委員会、本会議の場におきまして、いろいろな法改正とか、新しい法律をつくったりしているわけです。その新しい法律が全て憲法の何らかにぶら下がる根拠がなければ当然できないわけでして、新しい法律をつくったり、一部法を改正する法律案、この内閣委員会でもたくさんやっておりますけれども、通常、毎日のように行っているわけです。これは誰が解釈しているのか。何が悪いのか。悪くないわけですよね、毎日、ふだんやっていることですから。

 それが、ある一定のものであれば問題があって、例えば憲法十三条の中から一部を変えるのであればどうなのか、では前文だったらどうなのか、ではこの法律だったらどうなのか、その法律ごとに云々という問題なのか。変えること自体が悪であれば全てのことができなくなるんじゃないか、そういった議論も逆に出てくるような気がするんです。

 ですから、国家の安全保障というのは本当に、この国の、我が国の領土、領空、領海、国民の生命財産も含めて、全てをしっかり守って、我が国が独立国であり、主権国家であることをきちんと行うために必要なものであります。もちろん平和国家というのは、私も広島出身の一議員として非常に大事にしていきたいと思っておりますので、限定は必要だというふうには思いますが、できるかできないかという議論をしていること自体、いかがなものかと。この国を守るのか守らないのかという議論をしているのとイコールですから。守るのは当たり前ですから、どう守るのかという話が本来一番大事な議論で、非常にそれている。

 そういう意味で、きょう防衛省、政務官も来ていただいていますので、ちょっとお伺いします。

 安倍総理が、安保法制懇の報告書を受け、さまざまなパネルを使ったり、グレーゾーンも含めていろいろな事例を示されています。このときはできるのかできないのかという話をされています。

 私は、安全保障委員会の中でもよく、こういう場合どうなんですかとか、いろいろな、武器とか兵器とか、作戦の具体例の中でこれはできるのかできないのかと言うと、いつも、部隊行動基準があり、秘匿性があるものなので、それは言うわけにはまいりませんという御答弁を十回ぐらいはいただいていると思うんです。

 そういう意味では、見えないことによって抑止力が外部の相手に対して働いているものがあると思うんですね。要は、見えないことによってディフェンスのパワーを相手に誇示して、これをやったら危ないんじゃないかなと思わせることも十分抑止力として有効だと思うんです。そういった観点のときに、今、この件はどうだ、この件はどうだ、この件はどうだという話をすれば、いや、これはできますよと言うと、全部手の内を明かすことになり、潜航して通り過ぎていく潜水艦に対してどうするか、そんなもの言えるわけないじゃないですか。でも、一生懸命それを、国民の理解も必要だと思うんですけれども、説明をしようとしている。

 私は、この見えない抑止力、これは非常に問題だと思っているんです。要は、国益を下げるようなことをやりとりしているというのは非常に問題だと思うんですけれども、いかがお考えですか。

若宮大臣政務官 中丸委員におかれましては、安全保障委員会におきましても、日ごろより、大変建設的な、前向きな御意見あるいは御質問をいただいていることに心から感謝を申し上げるところでございます。

 ただいま御指摘の点でございます。

 今月の十五日に総理に提出をされました安保法制懇の報告書をめぐりましては、おっしゃるとおり、具体的な事例に即して、安全保障にかかわりますさまざまな議論が行われているところは、十分私ども承知いたしているところでございます。

 私ども防衛省に対しましても、国会におきまして、あるいは記者会見等々、さまざまな場面で、具体的な、今委員が御指摘になられましたような事例におきます防衛省・自衛隊の対応につきましての質問というのは、確かにお受けをいたしてございます。

 しかしながら、防衛省といたしましては、委員もおっしゃられて、十回以上の、答弁を差し控えたいというお話でございましたけれども、基本的な法的な観点からの一般論ということでは御答弁を申し上げさせていただくことをいたしてございますが、自衛隊の具体的な能力あるいは対応要領など、事柄の性質上、やはり差しさわりがある、支障がある場合におきましては、答弁を差し控えさせていただいているところでございます。

 ただ、政府といたしましては、今後、与党とも十分に相談をいたしまして、具体的な事例に即してさらなる検討を深めて、国民の皆様方にやはり理解をいただくということは重要なことでございますので、理解をいただきながら、先ほど官房長官からも御答弁を申し上げましたが、切れ目のない対応を可能にするための法整備をきっちりとつくってまいりたいというふうに考えておりますところでございます。

 ただ、やはり委員の御指摘の、明らかにしないことによる抑止力という点につきましては、私自身も大変重要だなという認識を持っております。

 私どもは、我が国の国家国民を守るための防衛につきまして支障がないよう留意して、十分な対応をしてまいりたい、そのような覚悟でございます。

中丸委員 ありがとうございます。

 そういう見えない抑止力というのが、国防の上では、世界じゅう、これは存在しているわけです。やはり見えない敵ほど怖いものはないわけで、相手にとってですね、悪意を持った相手は特に。自分たちは傷つきたくなくて、自分たちの利益を得たくてやっているわけですから、そういう意味では、抑止力というのは非常に大切で、私は、この抑止力をいかに上げていくかというのは一つのテーマに持っております。

 そういう意味では、こういう見えない抑止力をうまく、言い方が悪いですけれども、口先外交ということですよね。そういった、うまく使うやり方というのがあると思うんですけれども、外務省さん的にどう思われますか。

石原大臣政務官 基本的なことでありますけれども、安全保障政策について内外に積極的かつ効果的に発信し、その透明性を高めることは、国民の理解を深めるとともに、諸外国との協力関係の強化や信頼醸成を図ることで重要であるというふうに思います。

 その一方で、外交においても、国の安全が害されるおそれがある情報など、一定の公表できない情報があることにやはり十分に留意する必要があるというふうに考えております。

中丸委員 私は野党の人間なので、いろいろ答弁を求められることはほとんどないんですけれども、今から、来週、予算委員会も開催をされるという話、そういう中で、官房長官もいろいろなこの件についてお答えがあって、あのときは、こういう場合はどうなんだとか、一つ、私が考えた答弁があるんですけれども、ぜひとも感想を聞かせていただきたいんです。

 そういう細かな事例については、要は、我が国の持つ非常にサイレントな抑止力を失うおそれがある、したがって、そういう事例が起これば、合理的に必要な、適切な対応をする、この答弁はいかがでしょうか。

菅国務大臣 その答弁で委員の方に御理解をいただければありがたいんですけれども、なかなか御理解をいただけない。ただ、適切な対応をさせていただきますということは使わせていただきますけれども。

 ただ、国家として大事なのは、国民の皆さんの生命財産と国の安全をいかにして守るかということだというふうに思います。

 今回、この安保法制懇から含めての総理の対応の中で、やはり日米同盟を強化する、強化することによって抑止力が高まるわけでありますから、結果として、我が国が武力行使をしなくて済む可能性が大きくなる、こういうことも私は大事だというふうに思っていますので、委員が先ほど来お話のありました抑止力というのは極めて大事だと思っています。

中丸委員 ありがとうございます。

 よく誤解を受けるんですが、私は決して極右でもございませんし、戦争をしたいとこれっぽっちも思っておりません。

 ですから、今、官房長官がおっしゃっていただいたことは本当にそのとおりでございまして、間違いが起こるからそういうことが起こるわけで、もうとにかく我々は専守防衛をうたっているわけで、侵略はしないと明確に国際社会に言っているわけですから。

 そのかわり、守るべきものは守る。相手が、国土を広げたい、領海を広げたい、地下資源が欲しい、領空を管理したい、いろいろなことを言ってくるとは思いますけれども、我が国は徹底して守る。日本という国は、守っていると相手に思ってもらい、徹底して守っていれば、中途半端に手出しをすると大やけどをするぞと思えば、それが抑止力の原点だと思います。

 教育問題もそうなんです。一人一人がこの国を愛し、守りたいと思う心をつくるのは教育しかないわけで、それをトータルで、きょうお越しの皆様に今後とも進めていただければということをお願い申し上げまして、中丸の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

柴山委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 集団的自衛権について質問をしていきます。

 安倍首相は、五月十五日、安保法制懇からの報告書の提出を受けて、今後の検討の基本的方向性を示しました。

 まず、官房長官に基本的な事実関係を確認したいと思いますが、安保法制懇の報告書は、政府の見解を示すものではなく、総理が記者会見の場で示した基本的方向性が政府の見解だということでよろしいですか。

菅国務大臣 安保法制懇は、政府としての対応を検討していく上で参考とするための意見を聴取する場として開催したものでありまして、その報告書は、政府としては、行政運営上の参考として扱うものであります。

 安保法制懇の報告書における提言は、国民の生命財産、そして国の安全をしっかりと守るために何をなすべきか、安全保障環境の変化に留意し、具体的事例も踏まえながら提言するものであり、専門的で現実的な議論を踏まえた貴重な提言として、そこは高く評価をいたしておりますけれども、基本的な考え方というのは、行政運営上の参考ということであります。

赤嶺委員 参考ということでありましたが、報告書は、「我が国として採るべき具体的行動の事例」として、第一次安倍内閣のもとで議論された四類型に加えて、六つの事例を挙げております。これらはもともと、有識者のペーパーとして会議に出されたものでありますが、それらが今、日米間で具体的な協議の対象になっているというわけではない、このように聞いておりますが、それはそういうことでよろしいですか。

菅国務大臣 そのとおりであります。この報告書を受けて政府がどうするかということを、この間、総理の判断として示したものであります。

赤嶺委員 それでは、一つだけ確認しておきますが、事例二として、「米国が武力攻撃を受けた場合の対米支援」、これを挙げております。アメリカが弾道ミサイルによる奇襲といった武力攻撃を受けた場合に、強制的な停船、立入検査や、我が国への回航など、これは武力行使に当たり得る措置になるわけですが、そういう措置をとるというものであります。

 アメリカの防衛のために日本が武力を行使するというものですから、日米安保条約の改定にもつながる話ですが、こんなことを日米間で話し合われたというのは私は聞いたことがありませんが、その点はいかがですか。

武藤政府参考人 特に日米の間で協議をしたことに基づいての報告書の内容ではないというふうに承知しております。

赤嶺委員 戦後の日米安保体制は、アメリカがこの地域で自由勝手に使用できる米軍基地を確保するところに最大の眼目があったわけです。しかも、七〇年代後半以降は、日米地位協定の負担原則にも反して、思いやり予算まで負担をさせてきました。これほど安上がりに基地を維持できる場所はありません。

 自衛隊も、マッカーサーの指令で創設された警察予備隊が前身であります。米軍の任務を補完する形で育成され、九〇年代以降は、アメリカの求めに応じて、海外にまで派遣されるようになりました。

 報告書は、武力攻撃を受けた米国を日本が支援しなければ、日米同盟に甚大な影響が及ぶおそれがあると強調しておりますが、これほど対米従属を重ねてきた日本の戦後史をどう捉えているのか。私は、これらの議論は全くためにする議論だということを指摘しておきたいと思います。

 報告書の内容で、もう一点聞きます。

 日本が国連に加盟したのは、一九五六年十二月です。ところが、報告書は九月となっています。報告書の原案は誰が書いたのでしょうか。政府としてチェックはしなかったのですか。

武藤政府参考人 報告書は、安保法制懇の有識者の方々、北岡座長代理を中心として、委員の方々がそれを作成されて、政府としても事務的にサポートしておったということでございます。

赤嶺委員 国連加盟の記述は外務省のホームページにあるものとも違いますが、その点はどんなふうに我々は見ていけばいいんですか。

武藤政府参考人 外務省のホームページにあるものが正しいのではないかと思っております。

赤嶺委員 どうも、専門家が書いたという割には、それは非常に、国連加盟の日にちについても記述が誤っているということを言わざるを得ないわけです。

 中身も、誤解を生む表現であります。

 国連の加盟時に、国連の集団安全保障措置や、憲章五十一条の個別的、集団的自衛権の規定について「何ら留保は付さなかった。」として、あたかも当時から政府がそうした軍事対応を想定していたかのような記述になっています。

 しかし、この問題は、国会でもこれまで議論をされてまいりました。留保という、かつて内閣憲法調査会で外務省の西村条約局長が使った言葉を認めるかどうかは別として、政府は、憲法九条の制約を持ったままで国連に加盟できると説明をしてきました。

 日本の国連加盟は憲法九条を前提としていた、そういうことでよろしいですね。

山田政府参考人 お答えを申し上げます。

 日本の国連の加盟は、昭和二十七年六月十六日付の岡崎外務大臣発、国連事務総長宛ての書簡をもって申請を行い、認められたものでございます。

 これらの手続を通じまして、日本政府としては、日本国としては何らかの留保を付したとは考えていないというのが、これまで政府として御答弁してきた一貫した立場でございます。

赤嶺委員 今私が聞いたのは、留保、憲法調査会での西村発言について聞いたのではなくて、国連加盟の際に、日本の国連加盟は憲法九条を前提としていたのではないか、こういうことであります。

 西村条約局長は、一九五二年の国連加盟承認案件の審議の際に、「軍備、交戦権を放棄した日本といたして、国際連合加盟を申請いたしますときに、この日本の国家の性格と、国際連合加盟国として憲章から受ける義務その間に問題がありはしないかということを非常に懸念いたしておりました。」このように述べた後、その後の研究で「一国に軍備がないということは欠格にならないという確信を持つております。」こう答弁しているわけです。

 国連加盟の際に、日本は憲法九条を前提としていたということでよろしいですね。

山田政府参考人 この点につきましては、昭和三十五年八月十日の憲法調査会の会合におきまして、先ほど申し上げました書簡発出時の条約局長であった下田氏が、こういうふうに発言をしております。現実問題として憲法第九条のために国連加盟が妨げられ、国連憲章上の義務を遂行し得なくなるというような危惧を政府が抱いたことはない。

赤嶺委員 ですから、憲法九条を前提としていたわけであります。そういうことです。

 西村条約局長が、一九五二年四月二日、衆議院の外務委員会で、ちょっと前から読みますと、

 その当時から私ども事務当局といたしまして、国連憲章だけしか持ちませんので、軍備、交戦権を放棄した日本といたして、国際連合加盟を申請いたしますときに、この日本の国家の性格と、国際連合加盟国として憲章から受ける義務その間に問題がありはしないかということを

懸念を申したと。

 国際連合憲章の解釈上、一国に軍備がないということ、または交戦者にならないという憲法上の性格を持つておる国といえども、憲章の解釈上加盟国となる資格の故障になるものではないという確信を深めていた次第であります。

憲法九条があるから国連加盟が認められないのではないか、そういう懸念の中で、憲法九条を持っていて、そして憲法九条を前提に国連に加盟をしてきたという経過は、これはもう、これまでの国会論戦を通して明らかであります。

 総理会見の内容について聞いていきます。

 総理の会見で、また新しい事例が出てきました。海外から逃げようとする日本人を米国が輸送しているときに日本近海で攻撃を受ける場合というものであります。これは法制懇の事例とも違います。懇談会で議論された事例とも違う事例、これを会見で示すことになったのはなぜですか。

武藤政府参考人 懇談会の報告書でも六つほどの事例を挙げていただいておりますけれども、総理は会見で、国民に理解をしていただくという観点から、二つの事例を挙げて説明をされたということでございます。

赤嶺委員 次々事例が出てくるわけですね。一体何をやりたいのか、非常に疑問に思うわけです。

 例えば、在外邦人の保護は在留先の国がその責任を果たすことがまず大前提でありますし、万一、退避が必要となるおそれが出てきた場合には、渡航情報や退避勧告を出して、民間の定期航空便などが運航している間に自主的に退避してもらうということが基本であります。

 さらに、緊急退避が必要になれば、政府が民間の航空機や船舶をチャーターする。私たちは反対でありますが、政府としては、政府専用機や自衛隊の航空機、船舶などを使う枠組みを持っております。

 外国軍隊が駐留している場合などに、その軍用機や船舶などが退避に使われる場合も現実にはありますが、そこには、米国籍の人も含めてさまざまな国の人々が乗り合わせることになるわけです。

 仮に、総理の示すような事例があったとして、米軍が必要な警戒態勢をとらないということは、これは考えられないわけです。日米間でそんなことが具体的に話し合われたことがあるとは考えられませんが、この点、いかがですか。

武藤政府参考人 日米では安全保障に関してもふだんからさまざまな協議をしておりますが、その具体的内容については差し控えさせていただきたいと思います。

 いずれにしても、総理が挙げられた事例というのは、同盟国である米国が能力を有している、それが救助、輸送をしているというときに我が国の邦人も運んでいる、それを、日本近海で攻撃があるかもしれない、そういったようなときにこの船を日本の自衛隊は守ることができない、そういうような例として挙げられたところでございます。

 それから、先ほどの報告書の国連加盟の日付でございますけれども、後ほどしかるべく訂正をしておるということで承知してございます。

赤嶺委員 間違っていたということですよね、訂正をするということは。

 今のは、日米間でさまざまなそういう協議があるというお答えでしたけれども、この問題についても日米間で具体的に議論されているんですか。

武藤政府参考人 お答えいたしましたとおり、日米間でさまざまな協議は行われていますけれども、その内容というものは、機微にわたるものについては差し控えさせていただきたいと思っております。

赤嶺委員 私は、総理が発表しているから聞いているんですよ。機微にわたるも何も、総理が堂々と発表している話じゃないですか。

 非常に考えにくい想定を、さまざまな前提を飛ばして議論するやり方は、非常に危ういと言わなければなりません。パネルを示しながら、国民の命を守るということを印象づけようとしておりましたけれども、大体、二〇〇四年のイラクの人質事件で自己責任を振りかざしたのは、当時の政府・与党ではなかったのかということを強調せざるを得ません。まさにこれらの議論は、ためにする議論であり、こういうことはやめていただきたい、このように思います。

 次に、今後、政府・与党として何を検討していくのかという点です。

 総理は、「自衛隊が武力行使を目的として湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加するようなことは、これからも決してありません。」と述べました。これは、安倍内閣のもとでは、憲法解釈の変更によって、国連の集団安全保障措置のもとでの武力行使を認めることはない、そういうことでよろしいですか。

菅国務大臣 総理は、国民の生命と財産と国の安全を守るために何が必要かということを考えた中で、先般、記者会見をさせていただいたところであります。

 そういう中で、国連の集団安全保障措置への参加といった国際法上合法な活動には憲法上の制約はないとする法制懇の報告書の一部の考え方は、政府としては採用しない、そういうことは総理が明言をしたわけであります。

 今後の進め方については、基本的方向性からすれば、自衛隊が武力行使を目的としてかつての湾岸戦争やイラク戦争のような戦闘に参加することはない。総理は、こうした事例を挙げることによって、そのような戦闘への参加は憲法上認められないとする従来の政府の立場を変える考えはないということを、国民の皆さんにわかりやすく説明をされたのであります。

 その上で、我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性があるときという限定的な場合は、集団的自衛権を行使することは従来の政府の憲法解釈に言う必要最小限度の武力行使の中に含まれるという考え方について、これは与党で検討してほしい、そういうことを申し上げたところであります。そして、与党で研究した上に、内閣法制局の意見も踏まえながら、必要なことについては政府として対応していく、そういう方針であります。

柴山委員長 赤嶺君、質疑時間が終了いたしました。

赤嶺委員 時間がなくなりましたけれども、私は、これを実行しなければ日米関係が壊れるとか、日米同盟にひびが入るとか、そういう議論が花盛りだったものですから、これらの事例についても日米間で協議しているかといえば、そうではない。やはり一方的な憲法の解釈変更は許されないということを申し上げて、質問を終わります。

柴山委員長 次に、村上史好君。

村上(史)委員 生活の党の村上史好でございます。

 きょうは集団的自衛権について、入り口の議論をさせていただきたいと思います。

 私は、集団的自衛権の容認の是非については、日本の今までの安全保障政策から、将来に向けて大きく転換をするということで、日本の将来にも大変重大な影響を及ぼす可能性のある政策転換だという認識のもとで質問をさせていただきたいと思います。

 それでは、まず、安保法制懇のことについて、二、三、お伺いをしたいと思いますが、内閣にとって今回の安保法制懇の報告書はどういう位置づけになるのか、まずお尋ねをしたいと思います。

菅国務大臣 安保法制懇は、集団的自衛権の問題に関する政府としての対応を検討していく上で参考とするための意見を聴取する場として開催したものであって、その報告書というのは、政府としては、行政運営上の参考として扱うものであります。

 そして、この報告書の提言は、国民の生命財産、そして国の安全をしっかり守るため何をなすべきか、将来見通し得る安全保障環境の変化にも留意して、具体的事例も踏まえながら安全保障の法的基盤のあり方を提言するものであり、専門的で現実的な議論を踏まえた貴重な提言をしてくれたものと高く評価しております。

村上(史)委員 それでは、そもそも私的諮問会議である安保法制懇、これは御承知のとおり、法的な根拠はありません。あくまでも総理が諮問をする会議ということで、人選も含めて総理が決められたと聞いております。

 その中のメンバーが、この法制懇の中で解釈改憲の議論はしたことはない、あくまでも集団的自衛権は憲法解釈で行使可能だという立場で議論をしたというふうにマスコミでも報道をされております。これでは、結論ありき、あるいは総理の自説を通すための一つのアリバイづくりになってしまうのではないか、そう指摘をされても仕方がないのではないかと思いますが、御見解を伺います。

菅国務大臣 安保法制懇の各委員のお考えについて政府としてコメントすることは差し控えたいと思いますが、その上で申し上げれば、私は安保法制懇に全部出席をしておりました。五月十五日の第七回会合において、報告書は合理性と正当性を持った内容だと思うといった御発言がありました。有識者の方々から、今御指摘のような不満の声というのはありませんでした。各有識者全員の方に最終結論の前に発言をいただきました。

 そして、この法制懇は総理大臣決裁によって開催をするものであります。先ほど私が申し上げたとおりであります。懇談会には、外交防衛政策に関する実務の経験者だとか、あるいは、政治、外交、憲法、国際法等の各界の関係者、経済界の民間有識者といった幅広い分野の代表の方々に参加していただいて、専門的な高い御見識の上に、結論を、予断なくさまざまな観点から議論を行っていただいたわけでありますし、そういう中で、総理の持論を認めさせるためのアリバイづくりというのは、御指摘は全く当たらないと思います。

村上(史)委員 それでは、安保法制懇から少し離れますけれども、連立与党でございます公明党さんから、今、安倍内閣が最も優先的に取り組まなければならないのは、デフレ脱却であり、アベノミクスの推進であり、いわゆる経済政策を第一に考えてやるべきである、集団的自衛権の解釈、容認問題はそれほど優先されるべき課題ではないのではないかという声が公明党内にもあるやに聞いておりますが、それに対する官房長官の御見解はいかがでしょうか。

菅国務大臣 安倍総理は、総理に就任をして最初の閣議の中で、三つの点を政権として柱として掲げて行っていきたいという柱を立てました。一つは日本経済再生、一つは東日本大震災からの復興、そして一つは、我が国を取り巻く安全保障環境が極めて厳しい中にあって危機管理を徹底する、この三本の柱、それぞれの大臣が所管大臣になったつもりでこれに当たるようにという強い指示だったんです。

 そしてまた、私ども自由民主党は、政権交代のあの衆議院選挙の際に、集団的自衛権を含む安全保障を徹底するということも選挙公約として掲げていたということもぜひ御理解をいただきたいというふうに思います。

 そしてまた、今や海外で生活している人が百五十万人おります。さらに、年間一千八百万人の人が海外に出かけていく時代であります。こうした国際化が進展する中にあって、我が国を取り巻く安全保障の環境は厳しい。こうした中で、国民の生命財産、国の安全を守るには今後何を行うべきか。速やかにあらゆる事態に切れ目のない対処を可能とする法整備というのが極めて大事だというふうに思っております。

 総理は、そういう考え方の中から、我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性があるという限定的な場合には集団的自衛権を行使することは許されるという考え方についてさらに検討してほしい、そうしたことを与党の皆さんにお願いしたわけであります。

 今、与党の中で検討をいただいております。その結果に基づいて政府としての対応を検討して、憲法解釈の変更が必要と判断されれば、それは閣議決定をしていきたい、こういうふうに思います。

村上(史)委員 今官房長官から、日本を取り巻く環境が厳しさを増している、あるいは、現在のグローバル社会の中で日本人が海外で生活をする、仕事をする、百五十万人以上になってきたと。

 もちろんそういう事実は認めますけれども、ただ、そのことと、一足飛びに集団的自衛権の行使を容認するかどうかというのは、ストレートに結びつかない問題だと思います。国家が国民の安全、生命を守るのは当然でありますけれども、ただ、その議論と集団的自衛権行使容認の問題とは直接にリンクすることではないというふうに私は思います。

 ですから、この法制懇の中身も、集団的自衛権容認の議論と、それ以外のグレーゾーンの問題やさまざまな問題がちょっと混在をしているので、恐らく国民は混乱をするんじゃないかなという思いがいたします。そういう面では、集団的自衛権の問題と、後の法的な整備というのは別々に考えて議論を進めていくべきではないかな、私はそのように思っております。

 そういう中で、安保法制懇の報告書を受けて、五月十五日に安倍総理が記者会見をされました。

 その中で、安倍総理は、法制懇が示した二つの異なる考え方の中で、我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性があるとき、限定的に集団的自衛権を行使することは許されるとの考え方に立って政府として今後研究を進めていきたい、こういう発言をされておられます。ということは、この方向に向けて総理としては議論を収れんさせていきたいという思いだと思います。

 そこで、内閣法制局長官にお伺いをしたいと思います。

 従来の内閣法制局が説明をしてきました、現憲法下では集団的自衛権行使はできないという見解を変えるとするならば、どういう法的な根拠に基づいて解釈改憲が可能なのかどうか、それをお尋ねしたいと思います。

横畠政府特別補佐人 先般、安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会の報告書が提出され、安倍総理が示した今後の検討の進め方についての基本的方向性に基づき、与党と協議していくとともに、政府部内の検討が行われるものであり、現時点では、憲法解釈を変更する必要があるか否かを含め、政府としての対応はまだ決まっていないものと承知しております。

 その上で、直接今のお尋ねにお答えすることは差し控えさせていただきたいと思いますが、一般論として、憲法を初めとする法令の解釈についての考え方について申し上げますと、平成十六年六月十八日の島聡衆議院議員に対する政府答弁書でもお答えしているとおり、

  憲法を始めとする法令の解釈は、当該法令の規定の文言、趣旨等に即しつつ、立案者の意図や立案の背景となる社会情勢等を考慮し、また、議論の積み重ねのあるものについては全体の整合性を保つことにも留意して論理的に確定されるべきものであり、政府による憲法の解釈は、このような考え方に基づき、それぞれ論理的な追求の結果として示されてきたものであって、諸情勢の変化とそれから生ずる新たな要請を考慮すべきことは当然であるとしても、なお、前記のような考え方を離れて政府が自由に憲法の解釈を変更することができるという性質のものではないと考えている。仮に、政府において、憲法解釈を便宜的、意図的に変更するようなことをするとすれば、政府の憲法解釈ひいては憲法規範そのものに対する国民の信頼が損なわれかねないと考えられる。

  このようなことを前提に検討を行った結果、従前の解釈を変更することが至当であるとの結論が得られた場合には、これを変更することがおよそ許されないというものではない

  いずれにせよ、その当否については、個別的、具体的に検討されるべきものであり、

  一概にお答えすることは困難である。

ということでございます。(発言する者あり)

村上(史)委員 わかりやすいんですけれども、ただ、いわゆる憲法も変わらない、その条文ももちろん変わらない中で、可能性があるとするならば、さまざまな議論の積み重ねを、あるいは社会的な背景も含めて、解釈が可能な状況であるという判断のもとに、政府の施策も、あるいは法律に基づいて憲法の解釈を変えることができるという意味でよろしいんでしょうか。

横畠政府特別補佐人 先ほどお答えしたとおりでありまして、議論の積み重ねのあるものについては、やはり全体の整合性を保つということにも留意する必要がある、やはり論理的に説明のできるものであることが必要である、政府としてそのような説明ができないものは便宜的、意図的な変更であるというような評価を受けるであろう、そういう趣旨でございます。

村上(史)委員 この問題についてはまだ二問ほどございますけれども、残りがあと五分ということで、次の機会に改めてお伺いをしたいと思います。

 それでは、集団的自衛権の一般的な定義について、政府の見解で結構でございますが、お述べいただけませんか。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 集団的自衛権とは、国際法上、一般に、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止することが正当化される権利というふうに解されております。

村上(史)委員 ということは、地理的な概念、あるいは特定の国を限定したものではないという理解でよろしいでしょうか。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 御質問は、私が申し上げた自国と密接な関係にある外国というのはどういう国を指すのかということにお答えするということだと思いますが、密接な関係にある外国につきましては、一般に、外部からの武力攻撃に対し、共通の危険として対処しようとする共通の関心を持って、集団的自衛権の行使について要請または同意を行う国を指すというふうに考えております。

 こういう意味におきまして、密接な関係にある外国というのは、必ずしもあらかじめ特定される性質のものではございませんし、また、条約関係にあることは必ずしも必要ではないというふうに従来から御説明申し上げております。

村上(史)委員 自国と密接な関係については改めて官房長官にお伺いしたいんですけれども、地理的概念はないということは間違いないですね。なければ結構です。

 そこでお尋ねをいたしますが、先ほどの総理の見解、記者会見で述べられている内容もそうですが、限定的な集団的自衛権の行使は容認という形の研究をしていこうということで、限定的というのは本当にあり得るのかどうかということをまず確認していきたいと思います。

 先ほど官房長官は、他の委員の質問の中で、日米関係ということを強調されました。日米同盟の深化をより密接にしていくことは我が国の安全保障上、大変重要な要素であるという意味の発言をされましたけれども、ここで言う自国と密接な国というのは、アメリカと言っても問題はないですか。

菅国務大臣 まず、先ほど私が申し上げたのは抑止力の話で、例として申し上げました。

 密接な国、アメリカということは、当然、今の日米関係を考えれば、密接な国はアメリカでと言っても私はおかしくないというふうに思っております。

 さらに、従来の政府の憲法解釈に立ったとしても、ここで言う必要最小限度の武力の行使の中に集団的自衛権の行使も含まれると解釈するべきである、さらに、我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性があるときには集団的自衛権を行使することができるとすべきであるといった考え方がこの報告書の中に示されたわけでありまして、その報告書の考え方を端的に説明したのが安倍総理の発言であります。

 政府としては、我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性があるときという限定的な場合に集団的自衛権を行使することは、従来の政府の憲法解釈に言う必要最小限度の武力の行使の中に含まれるという報告書の考え方について今後ぜひ検討してほしいということで、今、与党にお願いをしているところであります。

村上(史)委員 この限定論の話で一つ申し上げたいのは、御党の石破幹事長が、当面は限定的な集団的自衛権をということで、アメリカでそういう発言をされました。当面はということは、将来的には限定的ではないという趣旨のことだと思うんです。

 これは、ある面でいえば、集団的自衛権の性質の問題から見れば、石破さんの考え方の方が本来正しい考え方だと思います。限定的というのは、あらゆる事前の想定ということを前提にしております。ただ、紛争というのは、想定どおりのことが起こるかどうか、これは何の保証もないということで、限定的という言葉が一つの歯どめになるというのはまだ納得しがたいなという思いできょうは質問をさせていただきましたけれども、この問題については今後もやらせていただきたいと思います。

菅国務大臣 誤解されてしまうと思いまして申し上げたんですけれども、総理は、我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性があるという限定的な場合に集団的自衛権を行使することは、従来の憲法解釈の必要最小限度の武力の行使の中に含まれるというこの報告書の考え方について検討してほしいということで、それ以外の、いわゆる芦田修正論も含めて、それはとらないということを政府が明言していますから、総理が言ったことが全てであります。

村上(史)委員 終わります。ありがとうございました。

柴山委員長 次に、大熊利昭君。

大熊委員 みんなの党の大熊利昭でございます。

 午前中に引き続きまして、午後もよろしくお願いをいたします。

 最初の一問、官房長官に安全保障関係をお願いいたします。

 私も、きょう一般質疑の中で、複数の質問ということで出てまいりましたが、先日の五月十五日の、パネルを使った総理の記者会見の関連でございます。

 私が伺いたいのは、ちょっと観点が違うといいますか、大きな意味は同じなんですが、アメリカの船に乗っている、帰国をしようということで日本人が乗っている船、ここへの攻撃が日本への攻撃に当たらないという前提でお話しになっているのではないかというふうに私は理解をしたんですね。なぜならば、日本への攻撃ならば個別的自衛権が発動でき得るはずでございますから、自衛隊法七十六条の防衛出動ができ得るはずでございますから、これじゃないんだという前提でお話しになっておりましたというふうに理解をしたんですね。

 そこで、日本人への攻撃がなぜ日本への攻撃にならないのかをお尋ねしたいんです。

 比較のためにわかりやすく、では、どこの地区と言うと差しさわりがありますから、山の中に何かが落ちた、爆弾なりミサイルが落ちてきた、そこには人が誰もいませんでした。これは、場合によってはというか、日本の国土の、山の中に落ちたわけですから、日本への攻撃ではないかと私は思うんですね。人命が失われなくても、その山を持っている所有者の、山の木、財産が失われるという意味では、国民の生命と財産が失われる、そういうのが入ると思うんです。

 船に乗っている、フラッグ、旗国がアメリカだとしても、そこに一人二人ということじゃなくて多数、しかも、一般的に、恐らくそういった有事のときですと報道等もされますから、日本人がアメリカの船に乗って、あるいはほかの国の船に乗って帰国をするんだ、有事ですから、そういうことが一般的に報道される。明らかにわかっている中で攻撃された場合は、これは日本への攻撃に当たるのではないか、つまり個別的自衛権発動の七十六条の要件になり得るのではないかというふうに思うんですが、いかがでございましょうか。

菅国務大臣 まず、個別具体的な事例に即して判断する必要がありますけれども、一般論として申し上げれば、在外邦人に対する攻撃が発生したことのみをもって、いわゆる自衛権発動の三要件のうち、我が国に対する急迫不正の侵害があること、すなわち武力攻撃が発生したという第一要件を満たすとは、これは考えられません。

 総理会見における事例については、このような場合でも、日本自身が攻撃を受けていなければとの状況を設定して行っており、個別的自衛権の行使による対処は行い得ないというふうに考えられます。

 現行の憲法解釈のもとで、米艦が攻撃を受けた場合でありますけれども、我が国の領域内に存在する米艦に武力攻撃がある場合、我が国に対する武力攻撃が既に発生した場合において我が国防衛のために行動している米艦が相手国から攻撃を受けた場合、この二点だというふうに思います。

大熊委員 冒頭長官がおっしゃられた、必ず三要件の第一番に当たるとは確かに限らないんですが、必ず当たらないとも限らないんじゃないかということが質問なんですね。

 もう一回繰り返しますと、公海上におきまして、米艦、アメリカの船に多数の日本人が乗っている。しかも、それが報道されて、日本人がたくさん乗っていますよというところを狙い撃ちで攻撃してきた場合。これは公海上ですね、他国の、例えばニューヨークのあそこの湾の中で停泊している船とかそこまでじゃなくて、他国の領海ではなくて公海上、しかも日本の周辺の公海上ですね、日本に帰ってくる船。

 これは日本への攻撃に当たらないんだとすると、ちょっとどうなのかなというふうに思うわけなんですが、一般的に考えてもどうなのかなと思うんですが、現行解釈ではそれは絶対に当たり得ないんだ、こういうことなんでしょうか。

菅国務大臣 現行解釈では、当たらないということになっています。

大熊委員 確認ができました。ありがとうございました。

 そこでなんですが、今回チャレンジングな憲法解釈をされようと、その是非はちょっとおいておきまして、それは、集団的自衛権に向かって解釈を変えよう、そういうことでやっていらっしゃると思うんですが、今私が申し上げたアプローチは個別的自衛権の中で変えようということですよね、それを、日本への攻撃、要するに七十六条発動要件のうちの一つというふうにすればいいわけですから。

 よく言われるのは、北岡先生もよく言われています、個別を拡大すると危ないんだと言われますね。それは一般的に言って危ない場合もあるかもしれませんが、私が今申し上げているこのケースでは危なくないと思うんです。なぜならば、どこかを個別的自衛権を使って攻撃しに行こうということではないんですから。

 この事例について言うと、例えば、現在の自衛隊法のつくりというのは全部ポジティブリストで書いてあるわけでございます、これは釈迦に説法ですが。これができる、これができるという法のつくりで書いてあるわけでございます、現行法の個別的自衛権のもとでの。

 したがって、ここの個別的自衛権の憲法解釈を拡張すれば、それでポジリストで自衛隊法を改正して追加すれば、これは法構造としてもできるはずだと思うんですが、こういったことをせずに解釈で拡張していくときに、個別的自衛権への拡張はせずに集団的自衛権だけの拡張を検討しているというところにちょっと違和感を感じているんですが、なぜ個別的自衛権の拡張はしないのか。やはり個別をやると危険だからという北岡先生の御趣旨でやらないんでしょうか。教えていただければと思います。

菅国務大臣 そこは総理が事例を出して説明をされました。国民の皆さんの生命財産と国の安全を守るときに、いろいろな事例がありますよね。そういう中で、個別的自衛権、集団的自衛権。集団的自衛権というのは行使はできないということを今まで見解として申し上げてきました。

 しかし、今、先ほどのような事例の中で、個別的自衛権に、解釈で、できるかできないか、できないものについては、これは当然、委員も限定的容認は必要だというふうに考えられると私は思うんです、個別的自衛権が行使できないもの。

 そうしたことを、グレーゾーンの部分から含めて、当たり前というんですかね、国民の皆さんがそういう事態になったときに、今まで放っておいた部分をしっかり整理していこうという、これは総理が第一次政権のときから、国民の皆さんの生命財産、そして国の安全というのは、今の法律ではなかなか難しいという考え方に立って、前回もこの懇談会でお願いしたということでありまして、そうしたものについて、どうしても、集団的自衛権の限定容認、それから入るということではなくて、どうしたら国民の皆さんの生命財産、国の安全を守ることができるかというところから入っていっているということであります。

大熊委員 この中身の議論を、いろいろまだまだ深いところがあって、またちょっと機会を改めさせていただきたいと思うんです。

 一点、済みません、一つ戻りまして、先ほどの当たらないという部分なんですが、これは、長官じゃなくても、法律解釈の話なので政府参考人で結構なんですが、先ほど来議論のあるとおり、もともと現行解釈で自衛権があるというのは、これは九条からだけではなくて、前文だとか十三条から出てくるわけですね。

 それで、十三条に何と書いてあるかというと、国じゃなくて「国民の」と書いてあるわけです。十三条から由来するのであれば、当たらないという現行解釈はおかしいんじゃないですかね。

山田政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、国際法上の問題でございますが、一般に、公海において船舶が攻撃を受けた、そういう場合に、国際法上の個別的自衛権の行使として、その攻撃を排除し得る立場にあるのは、原則として、この船舶の旗国である。すなわち、米船であれば米国であるということでございます。

 もちろん、限界的な事例において可能性はございますけれども、それは、例えば攻撃国の発言等さまざまな状況から判断して、例えば、邦人が乗っているから、日本を攻撃するためにこの米船を攻撃するのである、そういった意図を明らかにする等の事情があって、その攻撃が我が国に対する組織的、計画的な武力の行使の着手であると判断されれば個別的自衛権が行使できる可能性はございますが、これはあくまでもこのような限界的な事例につきましてでありまして、日本人の方が乗っておられるからといって直ちに日本が個別的自衛権を行使できるというわけではない。

 仮に、もし日本が武力によってその攻撃を排撃しようとした場合には、これは米国のための集団的自衛権の行使であるというふうに判断される可能性が高いものと考えます。

大熊委員 伺っているのは、別に国際法上のことを伺っているんじゃない。国内法の、つまり憲法十三条に由来をしているんじゃないですかと、「国民の」と書いてあるわけですから、十三条に。国民の生命財産と書いてあるわけですから。国際法上のことは私も私なりには理解しているつもりで、国際法上、集団的自衛権だと見られたとしても、国内法上の扱いは必ずしも同じではないわけですから。

 十三条から由来しているのであれば、なぜそれが当たらないという解釈に今なっているのか、それはおかしいんじゃないですかというのが質問ですから、国際法上の話を聞いているんじゃないです。

山田政府参考人 国内法上の解釈は、外務省は有権的な解釈の立場にございませんけれども、まず、日本国憲法には、九条、十三条等を含めまして、個別的、集団的自衛権についての言及はございません。

 あくまでも、これらの考え方は、国連憲章第五十一条にある個別的自衛権、集団的自衛権についての考え方から持ってこられるものでありまして、国際法を踏まえた上で解釈がなされるべきものと考えております。

大熊委員 外務省は有権的解釈の立場にないという。この質問は通告していますので、政府のどなたかが答えていただかなきゃちょっと困るんですが、あくまでも国内法のことを伺っています。

 十三条には「国民の」と書いてあるので、これは、現行、国民がやられても、どこと言ってはいけませんね、山の中で人が誰もいないところに落ちてきた、これでも直ちに七十六条発動とはもちろん限りませんよ。でも、なり得るわけですよ。日本国への攻撃ということになり得る。

 例えば、国際法ということでいうと、一九七四年の侵略の定義というのが、これは一応定番になっていますよね、法的拘束力はありませんが。よく御存じだと思います。これは、その国だとか艦船だとか商船も入る、一応こういうことになっていますね。確かに、ここには、国民、その国の国民と一九七四年の国連総会決議はなっていません。しかし、これとて法的拘束力はないわけですよ、国連総会決議、侵略の決議は、御存じのとおり。

 だから、国際法の中でもいろいろある。国内法は、またこれは国際法と必ず一致とは限らないわけで、しかも、我が国の憲法、そこから解釈で由来して自衛権というのを導き出してきているわけですね、九条と前文と十三条。やはり特に十三条ですよね。国民の生命と財産、長官がおっしゃるように、これは大事なんですよ。何でその大事なものがやられているのに防衛出動できないという現行解釈なのか、おかしいんじゃないですかということを国内法上の視点から答えてくださいと、おかしくない、なぜおかしくないのかというのを答えてくださいというふうに聞いているんです。

山田政府参考人 お答えを申し上げます。

 まず、我が国の山林に攻撃を受けた場合はどうかということでございますが、これは明白に我が国の領域に対する攻撃でございますので、我が国に対する武力攻撃であって、これについては個別的自衛権の行使の対象となり得るというふうに考えます。

 それから、まず、自衛権でございますけれども、仮にこれを行使しますと、国連憲章の第五十一条に従いまして安保理に報告する義務がございます。したがって、私どもとしては、我が国による自衛権の行使は国際法に従って行われるべきものと考えております。

大熊委員 国際法と全く同じなんですか。国内法の法構成と国際法が全く同じ、そんなことはないと思いますよ。仮に、国際的に、それは集団的自衛権の行使だとされたとしても、国内法上のたてつけが違うんだということを立証すればいいわけですから。我が国は別に独立国家なわけですから、それは何もおかしくないと思うんですよ。

 要するに、聞いていることは、国内法上、なぜ、日本人を守るということにならない、それが自衛権の出動要件には当たり得ないのか。必ず当たると言っているんじゃないですよ。例えば山林を攻撃されたって、相手が組織的、計画的な武力攻撃でなければ、ただの武器の使用であれば当たらないわけですから、よく御承知のとおり。船の日本人が攻撃されたら必ず七十六条だと言っているわけじゃない。当たり得ないというのがやはりおかしい。常識的に考えても、十三条の書きぶりから考えても、おかしいんじゃないですか、どのように説明するんですかということなんですね。

 稲田大臣にいらっしゃっていただいているので、残りの一問だけでもさせていただきたいと思うので、ちょっと手短に、よろしくお願いします。

山田政府参考人 我が国の個別的自衛権につきましては既に自衛隊法上の防衛出動に規定がございますが、集団的自衛権につきましては、今まさに与党協議が行われて、それを行使するかしないかを含めてまだ結論が出ていない状況でございまして、それをさらに国内法上どのように対応すべきかという点については、まだお答えできる立場にはございません。

大熊委員 ちょっとよくわからなかった。また次回やりたいと思います。

 済みません、稲田大臣、お待たせいたしまして。

 最後数分なんですが、いつもの案件じゃなくて、ちょっと前向きな案件で、残り数分、ちょっとクールジャパンの宣伝を、どういうことになっているのか、この間、一号案件が、やります、検討しますという発表があったので、最後に、ちょっと前向きな形で一言いただければと思います。

稲田国務大臣 私、クールジャパンの初代の戦略担当大臣でございます。今御指摘のクールジャパン機構のことですけれども、これは、私が推進してまいりました、各分野、各府省の連携を強化して多様な日本の魅力を海外に効果的に発信をするという戦略に沿って、民間事業者が世界で事業展開を行う上で大変強力なツールであるというふうに理解をいたしております。これにより事業者にチャンスが広がることから、民間事業者を強力に後押しするよう、有効に使っていただきたいというふうに思っています。

 御指摘のとおり、先月、初めての取り組みが発表されましたが、発表された事業分野は、メディア・コンテンツ、食・サービス、ファッション・ライフスタイルであります。これらは、いずれも、我が国の強みを生かした、また関連市場への波及効果が見込まれる分野であるというふうに理解をいたしております。勝ちパターンとなるような成功モデルを創出することで、多くの意欲ある事業者が世界へ羽ばたくことを期待いたしております。

大熊委員 ありがとうございました。

 このクールジャパンは、亡くなった藤巻参議院議員、私どもと一緒にずっとやっていた仲間でして、大臣も藤巻議員ともこの件でいろいろやられていたというふうに承知しておりますので、ちょっと細かいところはまた次回伺いたいと思います。

 項目だけ、ちょっときょうは時間がなくなってきてしまいましたので、問題提起といいますか提案だけでもあるんですが、通告でクールジャパンの一つ前の歳出削減と公務員の業務のあり方という部分なんですけれども、要するに、公務員制度、政府案、私どもは違う案だったんですが、ともかく通りまして、内閣人事局ができますということで、ここで終わりじゃなくて、これをいかに実際の行政の効率化、スリム化に生かしていくのかというところが私は重要ではないかというふうに思っております。

 そこで、同じ行政効果を出しましたよ、決算ベースで三割お金を削減、予算ベースというのはちょっと難しい、決算ベース、したがって、決算委員会というのが大事になるわけなんですが、三割減らせましたと。そうしたら、その三割の部分を人事評価としてプラス、加点をするんだ、こういう仕組みを入れたらどうかということでございます。現在はそういったことが余りないんじゃないか。全くないとは言いませんが。ここをしっかりと制度として入れていく必要があるんじゃないかなと。

 いろいろないい仕事、こういう仕事をやってください、これは能力実績主義のもとであるんですけれども、ではそれを幾らでやったんですかという視点がないので、それを幾らでやったんですかという、つまり決算ベースの視点を入れていくことで、外から無駄だ何だと、例えば国会の方から言うということも、事業仕分け的なこともいいと思うんですが、それよりも、一番わかっているのは内部の課長さんなり局長さんなので、そこを制度として、仕組みとして。

 具体的に言うと、標準職務遂行能力表というのがあって、これを今度、きょう朝、委員長からもお話がありましたが、ここの委員会の所管に、つまり、総務委員会から、総務省からこちらに移ってきますので、大臣の所管になるので、ここを変えていくことで、これは、オートノミーといいますか、自律的に行政のスリム化ができていくんじゃないかというふうに思っているんですが、ちょっと細かい議論はまた次回やりたいと思います。

 時間が終了したということで、きょうは以上で終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

柴山委員長 次に、大島敦君。

大島(敦)委員 民主党の大島です。

 きょうは、子ども・子育て支援新制度について何点か質問をさせてください。

 平成二十四年の八月に、子ども・子育ての支援法案、これは三法案ですけれども、成立をいたしまして、今、政府内でこれをどうやって実施するかについての協議、検討が行われて、来年四月からの制度の実施に向けてのさまざまな取り組み、こういうふうに取り組んでくださいよということで発表がされております。

 私の理解としては、今手元に、内閣府、文部科学省、厚生労働省の「なるほどBOOK すくすくジャパン!」というのがありまして、この中には、全ての子供たちが笑顔で成長していくために、全ての家庭が安心して子育てでき、育てる喜びを感じられるために、子ども・子育て支援新制度がスタートすると書いてあります。

 平成二十四年の社保と税の一体改革の審議あるいはその成立に向けての話の中で、増税した部分については子育てに重点的に配分していくということで、我が党内あるいは各三党との間でも議論がされてきておりまして、ことしですと三千億円ですか、そして来年以降は多分五千億円ぐらい、一〇%に消費税が上がった時点で七千億円が子供のために使われて、そしてプラス三千億円、どこからか財源を持ってきて、一兆円は子供のために使うということで成立を見たと思います。私の同僚議員、一期生の方も、そういうことで御自身で納得して、あの審議のときに、私に対して、大島、この一票を入れると、賛成に投じると落選してしまうかもしれないと言って賛成投票した一期生も多かったんです。

 ですから、本当に子ども・子育てのために公平に使われているかということが結構大切かと思っていまして、私も安心してと。財源が五千億なり七千億なり、非常に、今の予算の中で新しく財源ができるものですから、あまねく全ての保護者の皆さんあるいは施設を運営されている方について、現状よりも少なくとも全ての方がよくなるなという理解をしていたので、皆さんに安心して大丈夫ですよということを聞かれるたびに言っていたんですけれども、今、個々に聞いてみると、そうでもないんです。

 先々週ぐらいも、認定こども園を運営されている方から私のところに、今回の新しい制度で、政府側で公定価格というのが発表されて、多分今月中には、きょうあたりか、来週か、大体公定価格が全部出そろうかと思うんですけれども、これを見て当てはめてみると、いや、結構経営に対して影響するぐらい減ってしまうという話とか、あるいは、個々の、今度は制度を大きくいじるものですから、これまで幼稚園ですと、特に私学の場合には就園奨励費ということで国から援助を受けていたのが、今度新しいシステムになると、また違う考え方ですから、そこでも親の負担が、親というよりも保護者の負担がふえてしまうというケースも散見されるやに聞いております。

 今後なんですけれども、まだまだ制度として充実していくには多少時間がかかると思います。今回は政府としても骨子案ということで多分お示しだと思うので、これからさまざまな議論を踏まえて制度設計に入っていくと思いますので、まずは、総論的な部分はちょっと後回しにして、文部科学省に各論をちょっと質問したいんです。

 子ども・子育て新制度は、小学校就学前の子供に質の高い教育、保育の機会を保障することが目的の一つであり、先ほど申し上げました子ども・子育て支援法第三条によると、市町村は、保護者の選択に基づく、多様な施設による提供体制を整備する義務を有するものとされている。

 私立幼稚園には、私学助成に残ることも新制度に参加することも選択の自由が認められる。その一方で、五歳児の半分以上が幼稚園に通って、幼稚園の園児の八割以上を私立幼稚園が引き受けておりまして、私立幼稚園が保護者に多様な選択肢を提供する現実も受けとめなければならないと思っています。

 文科省の資料をいただきました。今、改めて、ゼロ歳から五歳までの子供たちがどういう施設に預けられているのか。保育所ですと大体百五十万人、幼稚園ですと百五十八万人、認定こども園だと十八万九千人ですから、ほぼ幼稚園あるいは保育所が半分半分ぐらいの割合なんです。

 市町村の現場、これは結構、私の地元でも待機児童が非常に多いところと待機児童がいらっしゃらないところと、日本も非常に広いですから、都市部とまた地方の方だと事情が違うと思うんです。

 待機児童のいない地域においても、需要と供給、これを合わせるための事業計画の策定作業は結構大変だと思っていまして、私立幼稚園への情報提供とか相談の対応が十分に行われているのかなとちょっと疑問に思っています。そして、新制度への参加に関するきめ細やかな相談の実施、認定こども園への移行の支援、都道府県の私立学校担当部局や認定こども園担当部局との連携、市町村内の教育委員会との連携など、市町村における新制度の趣旨に沿った私立幼稚園支援の取り組みも進めていくことが必要じゃないかと思っています。

 今回の制度は非常に大きな制度改正なものですから、都道府県、市町村の担当者も資料を読むのが精いっぱいの実情で、聞かれてもよく返答できないというところがまだまだありまして、特に今回、制度としては、さまざまな選択肢が用意されている制度になっているわけですよ。

 久しぶりに私も勉強してみると、今までどおり私学の幼稚園として私学助成、就園奨励費を受け取るところもあってもいいとされていて、プラス、施設型給付ということで、新しいシステムの中で認定こども園、あるいは幼稚園、あるいは保育所へ移るというケースもあって、それぞれが今、どういうふうに保護者のことも考えて移行するのが一番ベストなのかということを悩んでいらっしゃる方が非常に多いんです。

 ですから、この点についての、まず文部科学省からの答弁をお願いいたします。

義本政府参考人 お答えいたします。

 大島委員御指摘のとおり、今回、新制度では、施設側の方が多様な選択肢を選ぶということがございますが、それの意味は、同時に経営判断をしなくちゃいけないということでございますし、また、今回の制度におきましては、市町村が計画をつくるですとか、いろいろな認定、確認についての中心的な役割を果たすということでございますから、市町村とのかかわりというのが非常に大事になっているところでございます。

 委員御指摘のとおり、これまで、従来、私立学校につきましては、都道府県とのやはりかかわりがありまして、どちらかというと、地域によりますけれども、市町村とのかかわりをそれほど持っていないというふうな地域での幼稚園もあるということは事実でございます。

 その点から、委員御指摘のとおり、市町村においてしっかりこの制度において経営判断ができるような形での支援をしていくということが肝になっているということについては、私ども、認識しているところでございます。

 そういう観点からすると、幼児期の教育における中核的な役割を果たしている市町村が新制度に円滑に移行できる、あるいは、今の私学助成の中に残るということも含めて考える場合、新制度の実施主体であります市町村が移行の支援を行うというふうなことをしっかりやっていくことが大事でございます。

 その観点から、文部科学省としましては、内閣府、厚労省と連携しながら、あるいは総務省と連携しながら、四月の十日付で通知を発出させていただきまして、市町村に対しまして、私立幼稚園等に対する相談・支援体制をしっかり整備していくということ、それから二つ目は、認定こども園への移行支援のために、調理室等の施設整備の補助など各種の事業を積極的に活用すること、それから三番目としましては、幼稚園が受けられる教育標準時間認定子供に係る施設型給付ですとか、幼稚園が行っております一時預かり事業について、国の定める基準に基づいて財政支援を行うということを明確に求めるとともに、御指摘のとおり、市町村あるいは都道府県の担当者がその趣旨をしっかり理解していただくことが大事でございますので、通知を出すだけではなくて、各種説明会を行ったりとか、都道府県ごとの説明会に担当者を派遣しまして、その周知あるいは説明を繰り返しいろいろな機会を通じまして行っているところでございます。

 また、あわせまして、学校教育を担当します教育委員会に対しましても、教育を所管する専門性を有する教育委員会が、幼児期の教育の質の向上という観点から、新制度に積極的に取り組むよう求めているところでございます。

 今後、市町村等の動きをしっかり注視しながら、引き続き、私立幼稚園が新制度に円滑に移行できるように、市町村に対して必要な働きかけを行ってまいりたいと考えております。

大島(敦)委員 森大臣、今回は、相当私どもとしては政治的に、二十四年には、皆さんの協力を得ながらこの法案を通させていただいて、先ほど述べましたとおり、相当の財政規模で、多分、こんなに子ども・子育てのために財源がつくことはないと思うんです。

 ですから、余り損得で判断するのではなくて、要は、さまざまな制度を自由に選べる方がいいと思っていて、それは、今、施設を運営する主体の方も、別にこちらでもいいし、こちらでもいいというふうにした方がいい。

 その点についても、結構細かいシステムなんです。多分、大臣も、これまでさまざまな法案の審議で、子ども・子育ての新制度について、恐らく理解はされていると思うんですけれども、多くの時間を割けなかったと思っていて、ですから、これからが、多分、概算要求それから本予算の作成に向けて、もうあと一年を切っていて、一年を切っていてもまだまだ理解が進んでいない状況の中で本当にやっていいのかなという面もあったり、いろいろと考えるところがあるんです。

 ですから、その点について、今後、よく皆さんの意見を聞いてほしいなと思っていて、この新制度は、三党合意により税と社会保障の一体改革の中で成立して、高齢者福祉に加えて、子供の分野に新たに消費税財源を充てていくことが改革の根幹となっています。

 新制度において、現在の私学助成や保育所運営費の支援水準から低下することはないと考えていいかどうか、そして、私立幼稚園や保育所に対する財政支援は、新制度により具体的にどのように改善されていくのかについてどのように試算しているのか、御答弁いただければ幸いです。

森国務大臣 一昨年の民主党政権のときの三党合意によって、民主党、自民党、公明党の三党合意によって子ども・子育て関連三法ができまして、そして、参議院の附帯決議においても、一兆円超程度の財源が必要である、そして、政府は、財源の確保に最大限努力するものという記載が盛り込まれました。大変すばらしいことだと思っています。消費税財源が、今まで医療、年金、介護という高齢者に使われていたことに加えて、初めて子供のために〇・七兆円、消費税財源の中から〇・七兆円ということが初めて入りました。これは必ず確保してまいりたいと思っています。

 これを受けて、昨年六月に、少子化社会対策会議においても、少子化危機突破のための緊急対策を決定させていただきまして、この中にも、子ども・子育て支援の質、量の充実を図るための財源として、消費税率の引き上げにより二十九年度までに確保する予定の〇・七兆円程度を含め一兆円超程度の確保に努めるというふうに決定をさせていただきました。

 三党合意を踏まえて、一兆円超程度の財源確保に努めていく方針について、何ら変わるところはございません。

 そして、二十七年四月に施行するということは、今現在、消費税の一〇%までの引き上げが総理の御判断に委ねられておりますので、その前の段階ではございますけれども、二十七年四月に施行するという方針は、これは明らかにさせていただくということを決めさせていただいたところでございます。

 しっかり始める、スタートするということと財源の確保に取り組むという決意を述べさせていただいて、そして、細かい点等について、委員のさまざまな御指摘も今ございました、自治体や事業者の皆様、関係者の皆様の御意見をよくお聞きしていきたいと思っております。

大島(敦)委員 本質は細目に宿ると言われておりまして、大きな予算を確保するとともに、政治というのは、個々の予算をどうやって細目に落としていくかということが結構大切になってきます。

 その細目について、大臣にお願いしたいのは、今回の制度には、いい面とそうでもないところが混在しているということなんです。全体が上がるわけじゃないんです。これだけ予算をつけたのに、要は全体がハッピーではないんですよ。だから、そこのところをよく相談していただいて、保護者の皆さんと施設の運営の主体となっている皆さんが今回の新制度に移ってよかったと思うような状況をしっかり整えてほしいと思っているんです。

 これは恐らく、ここのところは役所に任せておいても難しいです。内閣府があって、文科省があって、厚労省があって、内閣府の方が、確かに内閣府設置法で、文科あるいは厚労省よりも企画、調整で権限は持っているかもしれませんけれども、ここのところは、しっかりその権限を大臣として使っていただいて、バランスのとれたものにしてほしいと考えております。

 それで、きょうは総務省の青木さんにも来ていただいているので、総務省あるいは文科省に御答弁をお願いしたいんです。

 今回の制度というのは、私立幼稚園の公定価格は、国庫負担のない地方単独費用部分に加えて、初めて認可基準を満たす運営に必要な経費を確保することができる二階建ての構造になっております。もしも、この地方単独費用部分が国基準どおりに執行されなければ、さまざまな制度変更に伴う負担を乗り越えて私立幼稚園が私学助成から新制度に移行しても、かえって教育、保育の質の低下を招くおそれがあるかもしれない。これは結構、肝の部分なんです。

 私学助成、就園奨励費から今回の新しい制度に移るというのは、冒頭述べたとおり、考え方が大きく変わるものですから、ここの点をしっかり総務省としても理解してほしい。

 ですから、地方財源負担については、地方財政措置を確実に講じてほしいということと、あと、子供分野に消費税財源を充てるという一体改革の目的、消費税の使途を明確化して社会保障制度を充実する地方税法の趣旨に照らし、公定価格の地方単独費用部分の切り下げを起こさないような仕組みが必要じゃないかと考えているんですけれども、これは総務省そして文科省の方にそれぞれ答弁いただければと思います。

青木政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十七年度に施行が予定されております新制度、ここでは、お話にもございましたように、認定こども園、幼稚園、保育所による就学前の子供に対する学校教育、保育の給付を市町村が支給する施設型給付として一体化する、ここがポイントだろうと思います。

 地域のニーズを踏まえて、市町村が主体的に給付、事業を実施することになるわけでございますが、お話にもございました新制度に移行する私立幼稚園は、都道府県の私学助成から市町村による施設型給付の対象に、こう移行することになるわけでございます。

 この新制度の私立幼稚園における施設型給付の公定価格は、国と地方が費用の二分の一ずつを負担する全国統一費用部分と、それから地方が費用の全額を負担する地方単独費用部分、これを組み合わせるということとされているわけでありまして、総務省としましては、子供、保護者に対する支援が後退することがなく、いずれの地域においても良質な幼児教育、保育を受けることができますよう、この施設型給付に係る地方負担について、今後、国が定める公定価格の基準も踏まえまして、適切に地方財政措置を講じてまいりたいというふうに考えております。

義本政府参考人 お答えいたします。

 この問題につきましては、非常に大事な点でございますので、文科省は、総務省と協議、調整を重ねてきて取り組みをしているところでございます。

 具体的には、文科省におきましては、先ほど申しました四月十日付の通知で、私立幼稚園に対して十分な施設型給付が支給されるよう、市町村に対して通知を発出したところでございます。

 その中においては、国が示す公定価格の見込み、いわゆる仮単価でございますけれども、これを国基準としておりますが、その国基準に基づいて給付額を設定すること、それから、国の基準を下回る給付額を設定する場合には、その合理的な理由を明確にして、地方版子ども・子育て会議等に報告して議論を行うことなどを求めているところでございます。

 また、市町村の設定後の状況につきまして、国として調査いたしまして、その状況を公表するということもその通知の中で明記しているところでございます。

 それに合わせまして、各種会議を通じまして、その趣旨を都道府県、市町村に対してふくそうして周知、説明しているところでございます。

 幼稚園における教育あるいは子育て支援が後退することがないように、いずれの地域におきましても良質の幼児教育、保育を受けることができるように、引き続き、施設型給付の額が適正に設定され支給されるよう、関係省庁と連携しながら文科省としても取り組んでまいりたいと存じます。

大島(敦)委員 森大臣、今、総務省の積極的な答弁と、文科省と総務省で話をしているというお話なので、ここはやはり内閣府としても、ぜひ調整してほしい、文部科学省の申し入れについてしっかり対応をとってほしいなと思っていまして、よく話を聞いてほしいなと思っています。

 その点について、よろしくお願いいたします。

森国務大臣 わかりました。

 適切な移行がされまして、この新制度になったときにそごが生じないように、また、地方の方がしっかりとした体制がとれるように、文科省、総務省とも連携して取り組んでまいりたいと思います。

大島(敦)委員 財源については、多分、近年にはまれに多くの財源が確保はされているので、あとはそれをどうやって使うかということになりますので、その点についても踏まえながらの御対応をお願いしたいと思います。

 あと、残りがもうなくなりましたので、最後に一問だけ、一番最後の質問をさせてください。

 御承知のとおり、認定こども園といってもさまざまなタイプがありまして、幼保連携型認定こども園の仕組みでは、幼稚園の認可と保育所の認可の両方を得て、それぞれ独立の施設として認可基準を満たしておく必要があります。

 新制度では単一の認可施設となり、二重行政が解消されることがメリットであるとされているんですけれども、現在の仕組みの中で認定こども園に参入せざるを得なかった先駆者については、行政の都合によって二重行政の非効率を強制してきたことも踏まえ、単一施設としての認可基準を前提とする新規参入者とは異なる公定価格の措置が必要じゃないかと考えておりまして、認定こども園制度の改善を目指す制度改正によって、認定こども園の先駆者が不利益をこうむることがないように、認定こども園の普及に滞りがあっては困るものですから、その点について、大臣の見解を伺わせてください。

 認定こども園は、結構、政府としてずっと推進していたわけですよ、認定こども園をつくってくださいという施策の中で。ですから、幼稚園型の認定こども園もあれば、保育所型の認定こども園もあれば、幼稚園と保育所を一緒にした、今述べたような認定こども園もあって、それぞれが、政府が言うんだからということで制度をつくってきたところもあるものですから、その点についても丁寧な対応をお願いしたいという趣旨ですので、最後に大臣の答弁をお願いいたします。

森国務大臣 そのようなお声も寄せられております。

 公定価格は、認定こども園についても、子供の認定区分を勘案して定めることとされておりますので、教育標準時間認定の子供については幼稚園、保育認定の子供については保育所の経営実態を踏まえつつ、認定こども園として独自に求められる基準も考慮して検討を行ってまいりました。

 その際、新たな幼保連携型認定こども園については、単一の施設にふさわしい、単一の基準を定めることを基本的な考え方として認可基準を定めたところであり、その内容を公定価格の検討の前提としております。

 四月にお示しした認定こども園に係る公定価格の仮単価イメージについては、関係者の皆様から、現在の幼保連携型認定こども園の運営実態に合っているのか等のお声もあることは承知しておりますが、今般お示しするものは、あくまで仮単価であり、先ほど申し上げましたとおり、単一の認可施設としての原則を踏まえつつ、現在の幼保連携型認定こども園への影響を慎重に見きわめたいと考えております。

 政府としては、引き続き関係者の御意見を丁寧に聞きながら、平成二十七年度予算編成過程において本単価を設定するに当たり、幼保連携型認定こども園を含む認定こども園が安定的に運営できる公定価格の価格を目指していきたいと思っております。

柴山委員長 大島君、質疑時間が終了です。

大島(敦)委員 この子ども・子育ての新制度についての質問は、今後もたびたびさせていただこうかなと思っています。

 特に、繰り返しになるんですけれども、要は、私は、みんながハッピーかなと思っていたものですから、ここまで予算をつけて、あまねく皆さんがハッピーかなと思っていたんですけれども、そうじゃない方もいらっしゃるというところがどうしても解せなくて、どうしても私としては理解できないものですから、その点についても、ぜひ大臣としての対応を今後も期待するということで、私の質問を終わらせていただきます。

 本当にきょうはありがとうございました。

柴山委員長 これにて本日の質疑は終了いたしました。

 次回は、来る二十八日水曜日午後一時二十分理事会、午後一時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時四十八分散会


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