第8号 平成26年11月5日(水曜日)
平成二十六年十一月五日(水曜日)午後零時四十七分開議
出席委員
委員長 井上 信治君
理事 秋元 司君 理事 亀岡 偉民君
理事 田村 憲久君 理事 平井たくや君
理事 平口 洋君 理事 近藤 洋介君
理事 木下 智彦君 理事 高木美智代君
青山 周平君 石川 昭政君
岩田 和親君 越智 隆雄君
鬼木 誠君 勝俣 孝明君
川田 隆君 小島 敏文君
小林 鷹之君 小松 裕君
今野 智博君 桜井 宏君
清水 誠一君 新谷 正義君
鈴木 馨祐君 田中 英之君
高木 宏壽君 豊田真由子君
中谷 真一君 中山 展宏君
前田 一男君 山田 美樹君
泉 健太君 大島 敦君
福田 昭夫君 大熊 利昭君
河野 正美君 山之内 毅君
輿水 恵一君 濱村 進君
杉田 水脈君 松田 学君
三谷 英弘君 佐々木憲昭君
畑 浩治君
…………………………………
国務大臣
(国家公安委員会委員長) 山谷えり子君
内閣府副大臣 赤澤 亮正君
法務副大臣 葉梨 康弘君
内閣府大臣政務官 越智 隆雄君
財務大臣政務官 大家 敏志君
内閣府大臣政務官 石川 博崇君
政府参考人
(警察庁長官官房審議官) 鈴木 基久君
政府参考人
(警察庁刑事局組織犯罪対策部長) 樹下 尚君
政府参考人
(警察庁警備局長) 高橋 清孝君
政府参考人
(金融庁総務企画局参事官) 坪内 浩君
政府参考人
(金融庁総務企画局参事官) 中島 淳一君
政府参考人
(法務省大臣官房審議官) 上冨 敏伸君
政府参考人
(外務省大臣官房審議官) 河野 章君
政府参考人
(外務省大臣官房審議官) 岩井 文男君
政府参考人
(外務省アジア大洋州局長) 伊原 純一君
政府参考人
(財務省大臣官房審議官) 可部 哲生君
内閣委員会専門員 室井 純子君
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委員の異動
十一月五日
辞任 補欠選任
大岡 敏孝君 清水 誠一君
田所 嘉徳君 石川 昭政君
中谷 真一君 岩田 和親君
松本 洋平君 小林 鷹之君
吉川 赳君 小島 敏文君
同日
辞任 補欠選任
石川 昭政君 桜井 宏君
岩田 和親君 中谷 真一君
小島 敏文君 今野 智博君
小林 鷹之君 松本 洋平君
清水 誠一君 前田 一男君
同日
辞任 補欠選任
今野 智博君 吉川 赳君
桜井 宏君 田所 嘉徳君
前田 一男君 大岡 敏孝君
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十一月四日
サイバーセキュリティ基本法案(第百八十六回国会衆法第三五号)(参議院送付)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
犯罪による収益の移転防止に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第一五号)
国際連合安全保障理事会決議第千二百六十七号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法案(内閣提出第一六号)
サイバーセキュリティ基本法案(第百八十六回国会衆法第三五号)(参議院送付)
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○井上委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、犯罪による収益の移転防止に関する法律の一部を改正する法律案及び国際連合安全保障理事会決議第千二百六十七号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法案の両案を一括して議題といたします。
この際、お諮りいたします。
両案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房審議官鈴木基久君、警察庁刑事局組織犯罪対策部長樹下尚君、警察庁警備局長高橋清孝君、金融庁総務企画局参事官坪内浩君、金融庁総務企画局参事官中島淳一君、法務省大臣官房審議官上冨敏伸君、外務省大臣官房審議官河野章君、外務省大臣官房審議官岩井文男君、外務省アジア大洋州局長伊原純一君、財務省大臣官房審議官可部哲生君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○井上委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○井上委員長 これより質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大島敦君。
○大島(敦)委員 こんにちは。民主党衆議院議員の大島です。
今の戦い、戦争というのは、国家間の戦争はなかなか起こりにくい時代だと思っています。これだけインターネット等でさまざまな画像が飛び交う中で、国家間の戦争、対称的な戦争、戦いよりも、国家とテロ組織のような非対称的な戦いが今非常にふえている時代でして、先ほど委員長から御説明がありました今回の二法案につきましては、このテロとの闘いをどうやって防いでいるのか。その予防的な措置だと考えております。
今回、このFATF、金融活動作業部会の勧告に基づいての二法案ということで、法務委員会にも別法がかかっているかと思うんですけれども、きょうは、内閣委員会にかかっている二法案につきまして、ちょっと関連の質疑をさせていただきたいと考えております。
このFATF、金融活動作業部会の対日相互審査報告書概要というのをいただきまして、二〇〇八年の十月の三十日。ことしの六月の二十七日に、日本に関するFATF声明ということで、日本がハイレベルの政治的コミットメントを示しているにもかかわらず、二〇〇八年十月に採択された第三次相互審査報告書において指摘された多くの深刻な不備事項をこれまで改善してこなかったことを懸念しているということで、声明が出されております。
一番最初に伺いたいのは、今回のFATF勧告への対応として、先ほどの、二〇〇八年に対日相互審査の結果が公表された後、ことし六月に声明が出されています。今回、急遽だと思うんですけれども臨時国会に法案が提出されたと認識をしておりますけれども、対応に時間を要しているように思えるんですけれども、政府はどのような取り組みを行ってきたのかについて、これは財務省だと思うんですけれども、答弁をお願いいたします。
○可部政府参考人 ただいま御指摘ございましたように、我が国は、平成二十年十月、対日相互審査以降、勧告の内容また日本の評価につきまして精査をいたしますとともに、関係省庁で連携をとり、いかなる国内法整備が必要かを含めまして、順次FATF勧告への対応を進めてまいりました。
また、FATFの全体会合の場で、これまで計十回フォローアップを受けまして、その都度日本の取り組みについて説明を行ってまいりました。
FATFの方では、勧告が求めます義務を、金融機関に対する監督指針などではなく、強制力のある法令に明記することを求めており、例えば、犯罪収益移転防止法につきましては、平成二十三年に法改正を行いましたものの、依然として義務の一部が法令で明記されていないなどの指摘を受けております。
このため、警察庁では、昨年六月から有識者懇談会を開催して検討を行い、本年七月に報告書をまとめたところでございます。
また、テロリストの資産凍結につきましては、警察庁を初め関係省庁において、現行法との整合性、外国の立法例などを含めまして、さまざまな検討を行ってきたほか、関係者の権利利益の保護への配慮など、慎重に検討を行う必要がありましたことから、結果として時間を要したものでございます。
こうした検討を踏まえまして、今回、犯罪収益移転防止法改正法案及び国際テロリストの財産凍結法案を臨時国会に提出させていただいたものでございます。
○大島(敦)委員 再度伺いたいんですけれども、今回、FATFの勧告あるいは声明の中で、幾つかの論点があると思います。私が伺っていたのは、四つ論点があると伺っていて、今国会で処理、解決できる事項、そして今後の課題についての御説明をお願いいたします。
○可部政府参考人 ただいま御指摘ございましたとおり、本年六月に公表されましたFATFの我が国に対する声明の中では、四点指摘がなされております。
まず、テロ資金供与の犯罪化が不完全であること。第二に、金融及び非金融セクターに適用され得る予防措置の分野で顧客管理措置やその他の義務が不十分であること。第三に、テロリスト資産の凍結メカニズムが不完全であること。第四に、パレルモ条約の締結と完全な実施ができていないことでございます。
これらのうち、二番目の顧客管理並びに三番目のテロリストの資産凍結につきましては、それぞれ、本委員会で御審議いただいております犯罪収益移転防止法改正法案、また、国際テロリストの財産凍結法案で対応を進めることができると考えております。
さらに、一番目のテロ資金供与の犯罪化につきましても、法務委員会で御審議をいただいておりますテロ資金提供処罰法改正法案で対応を進めることができると考えております。
残るFATFからの指摘事項につきましては、パレルモ条約の締結とその完全な実施があるということでございます。
○大島(敦)委員 ありがとうございます。あと一点、残っているということでございました。
次の質問に移りたいと思います。
今回の二法案につきましては、テロ組織に対する資金をどうやってとめるかということが主眼であると考えております。資金といっても、金銭であったり有価証券、貴金属、土地建物、自動車も入るんですか、さまざまな価値のあるものをテロの組織あるいはテロの組織の人物に渡すことを防ぐという法案だと考えております。
今、さまざまな通貨が出てきております。少額な通貨であっても、携帯電話等で我が国の金融機関から諸外国、それも発展途上国の現地の結構奥の方まで送れるとも聞いておりますし、あるいは昨今のビットコインも、一回消滅したと思ったんですけれども、徐々にスタンダードというんですか、使う方もふえてきたり、あるいは仮想通貨、コンピューターゲームの中の通貨も現金化できるような、そういう時代です。
ですから、今回の法案によって抑止できるところもあるかとは思うんですけれども、要は、こういう資金の供与あるいはテロ資金をどうやって流通させるかというのは、彼らも考えながら巧妙に仕組んでいくかと思います。テロ資金供与あるいはマネーロンダリングの手法も進化していくと考えておりますので、金融庁における金融機関の監督の仕方、そういう手法の変化に対応すべきだと思うんですけれども、その点につきましてのお考えをお聞かせください。
○赤澤副大臣 御指摘のとおり、テロ資金供与やマネロンの手法の進化に応じて金融機関において適切な対策がとられることは、大変重要であると考えております。金融庁では、監督指針などにおいて、金融機関に対して、その提供する業務内容や業容に応じて、テロ資金供与やマネロン等に利用されることを防止するための体制の整備を求めております。
金融庁としては、テロ資金供与やマネロンの手法の進化に応じて適切な体制が整備されているか、引き続き、金融機関に対する検査監督を通じて確認をしてまいりたいと考えております。
○大島(敦)委員 副大臣に再度御答弁をお願いしたいんですけれども、先ほど触れさせていただいたビットコインとか、あるいはさまざまな送金の手法があって、これまでまだ、どこの役所が政府の中で担当するか、その旗振り役も決まっていないところだと思うんです。
ですから、今後もさまざまなそういうネット空間上での金融決済のあり方、新しい方法が出てくるかと思いますので、金融庁なのか、あるいは国家公安委員会なのか、その点についての政府内での旗の振り方というのがあるんですけれども、その点についての御答弁をお願いします。
○赤澤副大臣 御通告はなかったかなとは思うんですが、わかる範囲でお答えをしたいんですが、仮想通貨にはさまざまな形態のものが存在するということで、ビットコインについても、確かにいろいろ紆余曲折はありましたが、流れとしては着実に、ああいったフラットな形での資金の管理みたいなものは国際的に広まってくるだろうと思います。
一概に申し上げることはなかなか困難でありますけれども、これは先生にお叱りを受けるかもしれませんが、ビットコインについては、現行の銀行法とかあるいは金融商品取引法において位置づけられていないために、その取引等を金融庁は所管していないと言わざるを得ない状況に現在はあります。そういう意味では、この問題について司令塔をどこにするかというのは、政府内ではきちっと対応していかなきゃいけない問題だろうと思います。
あわせて、マネロン対策は国際協調のもとに講じられる必要がありまして、FATFで議論がまさに始まったところであります。国際的な取り組みも注視しながら、我が国の実態に即した対応の検討、どこが所管するかも含めて、必要性は感じておりますので、適切に対応してまいりたいと思います。
○大島(敦)委員 ありがとうございます。
ビットコインはここ数年、その前に私もコンピューターゲームを取材したことがあって、その中での仮想通貨が現金化できて、犯罪というのか警察の取り締まりの対象になったという事例もございました。今の日本の国内でも、オレオレ詐欺とか、結構巧妙に次から次へ犯罪者というのは考えていきますから、便利な面を抑止する必要はないとは思うんですけれども、便利な面とそこに潜むリスクについて、政府の中で担当の省庁がないとすると、誰も考える人がいなくなってしまいますから、その点は、大臣そして副大臣にもそういう問題提起をしていただいて、今後、政府内でどういう対策をとっていくのか考えていただければと思います。
続きまして、海外送金ということで、これまでも海外に対する送金、特に、どこに日本国として送金するのか、いろいろと考えてみたんですけれども、例えば北朝鮮に対する海外送金のあり方がどうなっているかについて、御答弁をお願いしたいと思います。
これは財務省あるいは金融庁だと思うんですけれども、我が国から北朝鮮向けへの送金というのはどの程度あるのか、その点についての御答弁をお願いいたします。
○可部政府参考人 外為法では、原則として三千万円を超えます海外送金に対して報告義務を課しております。
このうち、特に北朝鮮向けの送金に対しまして報告義務が課せられる金額は、平成二十一年五月に一千万円超へ引き下げられ、さらに二十二年七月に三百万円超へ引き下げられておりましたが、御案内のとおり、本年七月に原則である三千万円超へ戻したところでございます。
ただいま申し上げました制度に基づいて報告のありました北朝鮮向けの送金金額を申し上げますが、平成二十五年度におきましては三件、二千九百万円でございました。平成二十六年度四月から八月末までに関しましては、報告件数はゼロでございます。
○大島(敦)委員 ありがとうございます。
その点につきまして、二十六年の四月以降はゼロ件だ。その前、二十五年度においては、三件で二千九百万円である。ことしの七月三日までは三百万を超えるものですか、それについては政府に届け出なくちゃいけない。ことしの七月の四日からは三千万円を超えたものということで、十倍に引き上げた。
ただ、これは考えようによっては、超えなければいい話ですから、三百万円、三千万円、三百万円でも十回送ると三千万円になりますから、その送金の仕方というのは、多分気をつけて送られるということも想定されるかと思うんです。
ですから、その点につきまして、今後さまざまな議論があるかと思うんですけれども、やはりクリアに、どのくらいの金額が例えば北朝鮮に、あるいは諸外国に渡っているかということを見るためには、この金額というのはもっと下げる必要もあるかなとは思います。
きょうはその点につきましては指摘だけさせていただいて、今後検討していきたいなと考えております。
そして、もう一つは、今回の法案の中で、疑わしき取引に対する判断、その具体的な内容について主務省令で法案が通った後に定めるということになっているんですけれども、その点につきまして、警察からの答弁をお願いいたします。
○樹下政府参考人 疑わしい取引の届け出に関する判断の方法の具体的な内容につきましては、主務省令で定めることとしておりますので、今後、関係省庁、業界の御意見を伺いながら検討を進めてまいりたいというふうに考えております。
その上で、現時点で検討している例を申し上げますと、取引のリスクに応じまして、申告を受けた職業や取引を行う目的等に照らしまして確認するチェックリストを利用する方法、マネーロンダリングに悪用されるリスクの高い取引について厳格な判断を期するため、取引時確認の結果等に照らして疑わしい点があるかどうかの判断について、統括管理者が承認をすることなどを定めることが考え得るところでございます。
○大島(敦)委員 ただいまの主務省令を定めたとして、テロ資金の移転を防止できるかどうか、その点につきましての再答弁をお願いします。
○樹下政府参考人 テロ資金の移転が防止できるかという御質問でございます。
疑わしい取引の届け出の対象となる犯罪による収益といたしまして、組織犯罪処罰法第二条第二項におきまして、テロリストへの資金提供等を処罰対象としております、公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律の罪に係る資金というものが規定されておりまして、テロリストへの資金の提供やその収受が疑われる場合には、疑わしい取引の届け出の対象となるものでございます。
今回、疑わしい取引の届け出に関する判断の方法を主務省令で定めることによりまして、特定事業者がより適切に疑わしい取引の届け出を行うことができるようになるというふうに考えております。
その結果、テロリストへの資金提供等につきまして、その追跡が容易になるというふうに予想されますことから、テロ資金の提供等を行おうとする者にとっては大きな牽制となるものというふうに考えております。
○大島(敦)委員 ありがとうございます。
続きまして、今回の国際テロリストの財産凍結法案では、規制対象の国際テロリストを公告することとしております。国際テロリストを公告するといっても、多分、その名前で口座を開いたりすることはあり得ないと思っていまして、やはり、国際テロリストは名前を変えて口座を開設してくるかと思います。
その点について対応できるのか、そのことについての答弁をお願いします。
○高橋政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘のように、国際テロリストが複数の別名、本名以外を有しているケースもよく見られるところでありまして、例えば、アルカイダの最高指導者であるアイマン・アル・ザワヒリは、十五の別名が安保理の制裁委員会の名簿に記載されております。
こうした別名を用いて口座を開設するような場合を想定し、国際テロリストの公告に当たっては、安保理制裁委員会における名簿に掲載されている別名や警察において把握している別名についても公告することとしております。
いずれにしましても、別名を用いた口座の開設にも十分対応できるよう、国際的な情報交換などを的確に実施して、法の適切な運用に努めてまいりたいというふうに考えております。
○大島(敦)委員 一番最後に触れられた関係国との情報交換、これは国内の省庁との情報交換によっての情報共有というのが非常に大切だと思っていまして、その点について、どの口座がテロ資金として使われているのか把握していることも必要だと思うので、その点も踏まえて、御答弁を手短にお願いします。
○高橋政府参考人 御指摘のとおり、国際テロリストの財産凍結を行うためには、国際的な連携や関係省庁間の情報共有が不可欠であります。
このため、この法案の第二条では、国際的なテロリズムの行為の防止及び抑止に関する国際的な情報交換その他の協力を推進することを国の責務としております。また、この法案の第十九条では、都道府県公安委員会が関係行政機関の長に対し資料の提出その他の協力を求めることができることとしており、財産凍結等の措置を実施するために必要な情報交換をすることとしております。
これまでも、外国の治安情報機関との間で国際テロ情勢に関する緊密な情報交換を行ってきたところでありますけれども、こうした取り組みを引き続き推進するとともに、本法案に基づく国際的な情報交換や関係省庁との情報交換を通じて、国際テロリストの口座について確実に把握してまいりたい、このように考えております。
○大島(敦)委員 山谷大臣に伺いたいんですけれども、イスラム国、私は新しい形のテロ組織だと思っています。ロングテールというんですけれども、恐竜の尻尾の一番先の方、多くのところは、ネットの社会だと、十万分の一人とか五十万分の一人とか百万分の一人が反応するというエリアがあって、これまでだと、そういうところまでは反応しなかった。それが、あまねくインターネットによってさまざまな人が見る中で、そういう、十万人に一人、五十万に一人、百万人に一人の方が賛同する、そういう形態でイスラム国というこのテロ組織は世界じゅうから人が集まっているかなとも想像しております。
今回の国際テロリストの財産凍結法案、こういうイスラム国とか今後ふえてくる新しい形のテロ組織に対しての対応ができるかどうかについて、あるいはそうしなければいけないと思うので、その点についての御答弁をお願いします。
○山谷国務大臣 イスラム国との名称は、本年六月に、ISILがその名称をイスラム国とする旨の声明を出したことを受けて使用されていることとなっています。
御指摘のイスラム国、ISIL、イラクとレバント地方のイスラム国については、既に安保理決議第千二百六十七号に基づく安保理制裁委員会の名簿に記載されており、ISILが贈与を受けるなどの行為は、国際テロリストの財産凍結法案において規制対象となっているところでございます。
今、大島委員がおっしゃられたように、これからは本当にさまざまな情報を収集しながら、国際的な脅威となっているテロリスト、テロ集団に対応していかなければならないと思っております。
○大島(敦)委員 今後の課題として御検討していただければと思います。
それで、拉致の問題、やはりテロというとどうしても拉致の問題を思い浮かべるものですから。
政府見解では、拉致問題は我が国の国家主権及び国民の生命と安全にかかわる重要な問題であるという認識かと思います。先ほど、一点、北朝鮮に対する送金の問題を指摘させていただいて、今後、制裁を強化するのか解除していくのか、多分これは議論が行われると思います。
山谷大臣として、現時点で、こういう送金の問題についてのお考えがあれば、御答弁いただければ幸いと存じます。
○山谷国務大臣 ここは拉致問題特別委員会ではないので、なかなか、内閣委員会として、拉致問題担当大臣としてお答えするというのは非常に難しいんですけれども、ほかならぬ大島委員の御質問でございますので。
先般の日朝協議、平壌での協議の席で、日本側といたしましては拉致問題が最重要課題であると、委員長を初めとして両副委員長等々、特別調査委員会の最高の人たちに伝えることができました。ほかの三分科会の報告が進んでも、この拉致問題に関する報告が進まなければ、全く日本は評価しないということを伝えて、また北朝鮮側からは、過去の調査は不十分であった、時間的な制約があったことと、一部の機関の決定であったということがあったわけでありまして、今回、十時間半のいろいろなやりとりについて、今後、政府としては分析をしまして、全ての被害者の帰国に向けて、結果を出すために何をすべきかということを考えていきたいというふうに思います。
送金については、現在いろいろな総合的な判断で現状のようになっているわけでございますけれども、それ以上のコメントはこの場ではちょっと控えさせていただきたいと思います。
○大島(敦)委員 外務省にも来ていただいているんですけれども、今回北朝鮮に行かれて、報道の写真を見たときに、肩の星が一個だったものですから、普通、外務省の局長が米軍の方とお会いするときには星が三つぐらいあったのかなと思っていまして、ちょっと調べてみたんです。北朝鮮の軍は、元帥というのが一番上にいて、次帥がいて、大将、上将、中将、少将、その下に大佐、中佐、少佐となっていて、星が余り大きくなかったので少将格の方だと思うんです。
もう一つは、少将で、かつ副部長ということで、私も副部長というのは部長の次かなと思ったんですよ。北朝鮮に詳しい方に聞いてみると、部長がいて、第一副部長がいて、その下に政治局長がいて、その下に副部長が十人ぐらいいるということで、少将であったり副部長であったりしても、霞が関だと多分審議官以上じゃなくて課長クラスぐらいかなという感じを受けるわけですよ。
だから、その点についての認識が、いつごろこのメンバーが、相手方の交渉相手が明確になったのか、その点についての御答弁を伺いたいんですけれども、お願いいたします。
○伊原政府参考人 今委員の方から御指摘ありました徐大河ですが、彼が委員長を務めますこの特別調査委員会というのは、北朝鮮の最高機関である国防委員会から全ての機関を対象にした調査を行うことができる特別の権限を付与されている。だから、彼は今そういう権限を付与された特別調査委員会という組織のヘッドであるということでございますが、同時に、徐大河は、もともと国家安全保衛部の今御指摘のとおり副部長であり、国防委員会の安全担当の参事だというふうに聞いております。
そこで、一般論でございますけれども、北朝鮮の場合、こういう職責と軍の階級との間にどういう関係があるかということを少し調べてみますと、必ずしもこのポストにいる人はこの軍の階級でなければならないという関係はないということのようでございます。さらに調べますと、例えば、職責上は下位にある者が軍の階級では上位にあるといったことも見られる。
それから、この国家安全保衛部という組織、詳細はわかりません、これは秘密警察でございますので。ただ、そこの禹東則という第一副部長、つまり副部長のトップの人間は、公開されている情報によりますと大将である、つまり星四つであるということが知られております。
引き続き、北朝鮮に関しては、さまざまな情報を政府全体となって集約して分析していきたいと思っております。
○大島(敦)委員 NSCの会議が開かれて、七月四日からの制裁の緩和が決定されたと思います。NSCの審議に私も加わっていて、私どものその修正案によって相当多くの情報をNSCが各省に出せといった場合には出さざるを得ない仕組みになっています。これは私たちの発案でそうさせていただいております。ですから、本当に政府内で情報共有ができているかどうか。
特に中枢ですよね。やはりボトムアップの国ではなくてトップダウンの国ですから、本当に国家指導者との力関係、あるいは国家指導者のできるだけ近い人が交渉相手であるべきだと考えておりますので、その点を指摘させていただいて、きょうの質疑は終了させていただきます。
ありがとうございました。
○井上委員長 次に、木下智彦君。
○木下委員 維新の党、木下智彦です。本日は、お時間をいただきまして、ありがとうございます。
この法案のお話をする際に、まずこの法案の成り立ちというところで聞いていることをちょっと私の理解としてお話しさせていただくと、国際機関FATF、ファイナンシャル・アクション・タスク・フォースというところから勧告を受けて、日本の法整備がまだ不十分だということで、これに従った法整備がなされなければ、国際間の為替取引であるとかそういったものが制限される、もしくはやることができなくなってしまうということも考えられるということで、早急に法整備が必要だということで今回の法案審議に至っているというふうに理解しております。
ただ、私、そこで思う話が一つありまして、国際機関からそういうふうな指摘を受けましたということなんですけれども、現実問題として、今の日本の金融機関がこういったマネーロンダリングだとかそういった犯罪に利用されるような、そういうことの事例というのが今までに実際にあったかどうかというふうな話がまず最初にあるべきなんじゃないかなと思っているんですね。
その点で、今まで、過去、日本の金融機関がそういったことに利用されたことが実際にあるのかどうか、あったとしたらどんなケースなのかといったことをまず御説明いただければと思います。よろしくお願いします。
○樹下政府参考人 日本におけるマネーロンダリング事犯の代表的な検挙事例ということでお答えさせていただきますけれども、平成二十五年中に警察がマネーロンダリング事件ということで検挙したものといたしましては、闇金融業を営んでいた被疑者が、返済金合計約二億二千五百万円を複数の他人名義の口座に借り受け人から振り込み入金をさせていたということで、組織的犯罪処罰法違反で検挙した事犯というのがございます。また、労働者派遣事業を営んでおりました六代目山口組傘下組織の幹部の男らが、労働者派遣禁止業務であります建設業務に労働者を派遣し、その報酬合計約二千五十万円を他人名義の口座に振り込み入金させていたとして、組織的犯罪処罰法違反で検挙した事犯などがございます。
○木下委員 樹下部長からお話をいただいたんですけれども、今のお話、聞いている限りにおいては、いずれも国内の事案かなと。
では、為替取引がかかわるような事案というのは今までにあったかどうかということを、わかる範囲で結構ですので、お話しいただけますか。それからもう一つは、国際的に見たときに、その数が多いと言えるのかどうかというところも含めてお願いします。
○樹下政府参考人 海外の銀行もかかわったケースということで有名なケースを御紹介いたしますと、やや古い事案でございますけれども、五菱会という闇金のグループがございました。闇金融グループを組織いたしまして、全国の多重債務者等を対象に高金利の貸し付けを行うとともに、これによって得た犯罪収益等につきまして、スイスの銀行に約五十一億円を隠匿したり、国内の金融機関の貸し金庫に二百万米ドルを隠匿したということで、平成十五年から平成十七年にかけまして、出資法及び組織的犯罪処罰法違反で検挙した事犯がございます。(木下委員「数的にはどうなのか」と呼ぶ)
数的に、海外における検挙件数等々について数字を持っているわけではございませんので、ちょっと比較は困難かというふうに思います。
○木下委員 今、数的には余り比較はできないということなんですけれども、私の感覚でいいますと、これはすごく少ないはずなんです。
なぜ少ないかというと、やはりそれだけ日本の金融機関というのは、自主的なルール、自主的な努力によってきちっとした措置が内部でなされているから、それだから信用もあるし。国際間取引した場合も、そうはいいながら、ブランチが海外にあるかどうかということでもかかわりはあるんですけれども、他国の有名銀行と連携をとりながら自主ルールを守ってやってきたということでは、実際には、国際機関からこんな指摘を受けるような内容には決してなっていないというのが事実だというふうに私は思っております。
なのにかかわらず、国際機関からこういうふうな指摘を受けているということはどういうことかというと、法整備が後ろ倒しになっているということのあらわれだというふうに私は思っているんです。
ですから、これは、日本の一般の金融機関が、こういうルールを持ってしっかりとやっているんだ、逆に言えば、これが世界のスタンダードになり得るものなんだと。指摘を受けたことはしようがないかもしれないですけれども、本来であれば、逆に、日本のやり方を国際的にもっとアピールをしていってもいいんじゃないかなというふうに思っている。だから、こういう意味では、法律自体が整備されていないことは非常に悲しい話なんじゃないかなというふうに思っています。
これは、なぜ私がそう思うかというと、私は前、二十年ぐらいサラリーマンをしておりました。貿易商社というか総合商社だったんですけれども、最初の二年間ほど経理をしておりまして、会社に入ってすぐに、いろいろな取引の請求書だとかが回ってきます。そうしたら、一回、その当時は、商売があったときに、そこにエージェントというのがかんで、エージェントに対して報酬を支払うことが認められておりました。その際に、そのエージェントに対して支払おうとしたら、そのエージェントの会社の社長名義のケイマン諸島の口座に振り込み先を実際に指定してきているものがあったんです。
これは事実で、私みたいなところで、私が見ている、まだ一年生、二年生ぐらいのサラリーマンのところにもそういう伝票が回ってきて、これはおかしいなと思って、すぐに会社の中で指摘をしまして、そうしたら上司も、今度は、営業とそれから経理というのは中で戦っているんですね、自主的ルールが成り立っていて、しっかりと、そこはばしっととめました。
そういう事実がやはりあって、それは会社の中は相当きっちりとやっている。よその会社はどうかというのはありますが、基本的には、どこの会社もそういうルールがしっかりとなされているにもかかわらず、これが法整備ができていなかったということの方が、私は非常に悲しい話だと思っていますし、今回、こういうふうな法案を通した上で、日本はこういうやり方をやっているんだということを逆に私はアピールしていただきたいな、これは大臣にそういうお願いをしたいと思うんですけれども、ぜひともよろしくお願いします。
○山谷国務大臣 商社マンとして海外勤務もある木下委員からの御意見、本当に興味深く受けとめさせていただきました。
今回、法整備がややおくれたということでこのようなFATF勧告になっているわけでございますけれども、確かに、日本は正しい行為をこれまでやってきたというふうにも思いますし、法整備を済ませて、そうしたようなリーダーシップをとれる国として、また広報啓発、頑張ってまいりたいと思います。
○木下委員 ありがとうございます。ぜひよろしくお願いします。
では、実際にこの法律案が通った暁にというところなんですけれども、その場合に、一番恐れているところは、今までそういうふうな事業者がしっかりやってきた。ただ、法律がこういう形で整備された後に、実際に業務が、逆に今までやらなくてもよかったことまでやらなきゃいけなくなる可能性というのがあるんですね。それを実際のそういう実務に携わっている一般の事業者さんは物すごく懸念されているんです。
そういう意味で、ちゃんとした、今までのやり方というのがしっかりと反映されたような実施をしていただきたい、措置をしていただきたいと思っているんですけれども、その辺について、具体的なプランというのがあるのかどうか、そういった部分について一言お話しいただければと思います。
○樹下政府参考人 今回の法改正によりまして、疑わしい取引の判断の方法というのを主務省令で定めるということにしておるところでございます。もちろん、より的確に疑わしい取引についての届け出をしていただこうということでありますので、業者の方にも一定の負担は生じるだろうというふうに考えているところでございます。
したがいまして、今後、疑わしい取引の判断方法を主務省令で定めるに当たりましては、関係省庁あるいは業界の御意見を伺いながら検討を進めていくこととしたいというふうに考えております。
また、今回の法改正によりまして、毎年、取引の種別ごとにマネーロンダリングに悪用されるリスクというものを国家公安委員会が評価することとしております、その結果を踏まえまして、例えば、一定の類型のリスクの低い取引につきましては、顧客管理措置を簡素化するということなどで事業者の負担軽減についても検討していきたいというふうに考えているところでございます。
○木下委員 ぜひとも現場の負担が軽くなるような、そうしながらも実効性があるものをつくっていただきたいんです。そのためには、やはり現場の方々の声に耳をしっかりと傾けて、実効性のあるような措置というのをつくっていただきたいなと思いますので、ぜひよろしくお願いします。
続きまして、国際テロリストの財産凍結にかかわる部分、こちらの方について少しお話をさせていただきます。
今回、国際的なテロリズムの行為というところに対して、その資産を凍結するんだということで、これは当然のことながら必要な措置だと私は思っています。ただ、一番怖いのは、これだけでは絶対的にだめなんですよね。当然、皆さん、わかっていらっしゃると思います。というのは、資金がそういう形で資産凍結されたりとかしたときにテロリストは何を考えるか。違うやり方を考えるわけです。いろいろなことを考えると思います。
先ほど大島議員もいろいろとお話をされていたかと思うんですけれども、例えば、一つは人質をとる、身の代金を要求してくる。直接的にお金を収奪しようとするということも一つ考えられる。それからもう一つは、何かしらの資源を持っていた場合に、その地域を占領したり、それから、占領することによってその資源を闇の市場に売却して資金を得るであるとか、そういった過激なことをするのがテロリストのやり方だと思うんですね。
だから、逆に、ここで資産を凍結する、当然のことながら必要なことなのかもしれませんけれども、これとセットにして、そういったことに対する対処というのが私はすごく必要なんじゃないかなと思っております。
例えば、先ほど私が商社時代のお話をさせていただきましたが、私がいた商社では、昔、フィリピンで現地法人の社長が誘拐されました。誘拐されて、指が切られたような写真を撮られて、身の代金を要求されました。その際に、実際にどういうふうになったかということははっきりとはわかっていないですけれども、恐らくその企業は身の代金を払ったような、そういうふうな話を私は聞いております。
それ以降、そのときは私が会社に入る前だったんですけれども、その娘さんがたまたま私と同じ部署におりましたので、いろいろな話を聞いていたんです。そして、海外に私が赴任するといったときには、ちゃんとそういった海外の事案に対応するような部署がありまして、申しわけないですけれども、そこに座っていらっしゃるような、非常に目つきの鋭い、物すごく怖いおじさんが私の前に来て、いろいろな事案について話をします。そのときにどういう対処をするべきなのかということを徹底的にたたき込まれて、それで海外に送られていくというふうなことをしていたんです。
ただ、私はそこで思ったんですね。国が、例えば何か身の代金を要求された場合には、一切払えませんというふうに宣言することは一つ必要だ。当然のことだと思うんです。ただ、日本企業が狙われたときも、同じように一切そういうふうなことには対処しないという態度を示していかなきゃいけないと思うんです。
ただ、これを法律として整備するというのは相当難しいことなのかなと私は思っているんですけれども、そういったことも含めて、この法案自体を悪いとは言わないんですけれども、その裏の整備というものもしっかりとしていく必要があるんじゃないかと思っているんですけれども、非常にうなずいていただいているので、御答弁いただければと思います。
○山谷国務大臣 国際テロリストの財産凍結法案においては、規制の対象とする国際テロリストについて、安保理制裁委員会において指定され、または諸外国で既に指定されているものを想定しておりまして、これらのものはいずれも外為法により既に規制の対象としているものであります。
したがって、これらの国際テロリストを本法案において規制の対象とすることにより、報復、逆恨み等が懸念されるという状況にはないものと考えております。
いずれにしましても、本法案を適切に運用することによってテロ行為の防止及び抑止を図ってまいりたいところですが、木下委員が具体的ないろいろなことをおっしゃられました。
我が国では、テロを未然に防止するため、外国治安情報機関等と連携した幅広い情報収集、爆発物の原料となり得る化学物質の適正管理、重要施設の警戒警備、水際対策の強化等の取り組みを推進しております。国際テロリストの財産凍結法案は、これらの取り組みに加えて、テロ資金供与対策について万全を期すという観点から整備するものでございます。
○木下委員 ありがとうございます。
非常に力強い御答弁をいただいたと思います。これ以上、本来だったら余り言うことはないんですけれども、時間がもう少しありますのでお話しします。
人質というのは、人を人質にとるということ以外にも、国内の施設なんかもとられたり、もしくは勝手に入ってきて資源を収奪していくこともあると思っておりまして、それがテロリズムにかかわるものかどうかというふうなこともあるんですけれども、例えば今報道などで問題になっているような、日本の海に来てアカサンゴをとっていく。あれは収益だけを目的にしていますけれども、それがテロリストとかかわったときには毅然とした態度をとらなきゃいけない。今ですら毅然とした態度をとらなきゃいけないんだけれども、もっとしっかりとしたことをやっていかなきゃいけなくなるわけです。そういうことも含めて、しっかりとこれは整備をしなきゃいけない。
当然それ以外にも、例えば原発施設なんかも、これ自体も人質にとられる可能性があります。もうずっとこれは言われていることですけれども、警備は厳重を期することというのが一番必要なことだと思っておりますので、そういうことも含めて考えていただきたいなと。
それからもう一つあるのが、今、大島委員も言われていましたけれども、イスラム国、あそこはどういうふうな形で収益を上げているかというふうなのをちょっと調べてみて、いろいろな報道でも出ていましたけれども、シリアであるとかイラクだとか、ああいったところの産油地を占領して、そこから原油を引っ張ってきて、その原油を闇市場で売る。トルコなんかにある闇市場に売られていて、一日の収益が三億円ぐらいあるというふうな、そこまで来ているわけです。
私は、これがやはり一番大きな問題だと思っていて、今、日本にそれだけの資源があるかというと、そうではないから大丈夫だというふうなことは決して言い切れない。これから先、日本近海にある資源というのは非常に重要な要素になってくると思っておりますので。
この法案自体が、では、だめだとは言いたくはないんですけれども、これを議論するに至るときに、その周囲で考えられることはしっかりと同時に勘案をしながら、適切な措置をとっていただければなと思います。
もう時間が来ていますね。では、もしも一言ございましたらお話しいただいて、終了させていただきたいと思います。
○山谷国務大臣 本当に、治安を守るということで、国内的にも、そして国際的な連携が何よりも必要な時代になっていると思います。そうした認識のもとにしっかりと取り組んでいきたいと思います。
○木下委員 ぜひよろしくお願いいたします。
ありがとうございました。
○井上委員長 次に、河野正美君。
○河野(正)委員 維新の党の河野正美でございます。
現在議題となっております、犯罪による収益の移転防止に関する法律の一部を改正する法律案並びに国際連合安全保障理事会決議第千二百六十七号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法に関連して、本日は質問をさせていただきたいと思います。
まず、いわゆるFATF勧告への対応についてお尋ねを申し上げます。
犯罪やその収益も国を超えたレベルでの動きが進む中で、世界各国が協調して問題への対処に当たる必要性があるというふうに思っております。我が国も、国際社会の一員として、迅速に実効力のある取り組みを進めていかなければならないと思います。
ことし九月二十六日の日本経済新聞の朝刊によりますと、FATFのパリ本部に、昨年の秋、一通の書簡が届いたということであります。差出人は、我が国の麻生太郎財務大臣。内容は、資金洗浄対策を強化する法整備を早急に進めるという趣旨だったと記事には書いてございます。
具体的にこの書簡の内容はどのようなものだったのでしょうか。まず最初に教えていただきたいと思います。
○大家大臣政務官 河野委員にお答え申し上げます。
先生御指摘のFATFでありますけれども、少し説明させていただきますと、一九八九年のアルシュ・サミットにおいて設立をされた政府間の会合である。設立以降は、それぞれのサミットにおいて、FATF勧告の実施に向けた国際的なコミットメントを示してきた。
我が国といたしましても、主要メンバーとして、このFATF勧告を十分に踏まえた上で、マネーロンダリングやテロ資金供与対策の実施に取り組む旨表明をしているところでありまして、委員御指摘の麻生大臣発出の今回の書簡につきましても、その取り組みの一環であると御理解をいただきたいと思います。
○河野(正)委員 一環ということでざっくりとお答えいただいたんですが、そうしますと、これはなぜこの時期に出てきたのか。それと、この麻生大臣の手紙によって、我が国に対する拘束力というのがどれぐらい発生するのか。よろしかったらお答えいただきたいと思います。
○大家大臣政務官 済みません、ざっくりということでありましたけれども、この相互審査においては、対外非公表の資料も含めて議論が行われていますもので、各国一律に対外非公表という形で扱われています。ですから、結果が出た段階では公表できるのでありますけれども、このことについてお示しすることは今の段階では控えさせていただきたいというふうに思います。
○河野(正)委員 ありがとうございました。今の時点では公表できないということですので、その点も踏まえてしっかりと交渉をやっていただきたいと思います。
次の質問に移りますが、マネーロンダリング、資金洗浄対策について。
マネーロンダリング対策を振り返りますと、二〇〇二年、テロ資金供与処罰法、金融機関等本人確認法制定、二〇〇七年に犯罪収益移転防止法制定と、対策を一歩ずつ重ねてきているように思います。対策がいわば小出しにされてきたような印象も受けるわけでございますが、このように時間をかけて取り組んできた理由についてお答えいただきたいと思います。
○可部政府参考人 御指摘のとおり、平成二十年十月に対日相互審査が行われまして以降、勧告の内容あるいは日本に対する評価につきまして精査をいたしますとともに、関係省庁で連携をとりまして、いかなる国内法整備が必要かを含め、順次、勧告への対応を進めてまいりました。
FATFの方では、勧告が求めます義務を、金融機関に対する監督指針などではなく強制力のある法令に明記することを求めておりまして、例えば犯罪収益移転防止法につきましては、ただいま御指摘ございましたように、平成二十三年に法改正を行いましたものの、依然として、義務の一部が日本の法令で明記されていないなどの指摘を受けたところでございます。
このため、警察庁におきまして、昨年六月から有識者懇談会を開催して検討を行い、本年七月、報告書をまとめ、今回の法案提出に至ったものでございます。
また、テロリストの資産凍結につきましても、警察庁を初めとする関係省庁におきまして、現行法との関係、外国の立法例などを含めてさまざまな検討を行いましたほか、関係者の権利利益の保護について十分配慮をするという意味での検討を慎重に行ったところ、結果として時間を要しましたけれども、本国会に法案を提出させていただいたところでございます。
○河野(正)委員 少しずつ改善されてきたということなんでしょうか。
次に、取り組みを重ねてきた結果、二〇〇八年、平成二十年の第三次対日相互審査では、金融機関における顧客管理という重要項目で不履行の評価を受けるなど、概して我が国の取り組みは評価されていないんじゃないかと思います。一部お話もあったかと思いますが、そもそも、こうした国際的な組織からの勧告に対して、我が国はどの程度拘束をされているのか。今回のFATFからの勧告の拘束力をどのように捉えられているか、お聞かせください。
○可部政府参考人 FATFの勧告につきましては、我が国の立法府に対して立法を義務づける性格のものではございません。
しかしながら、一方で、FATFは、マネロン、テロ資金供与対策に関するハイリスク国を国名公表しておりまして、仮にFATFの指摘事項について改善がなされない場合には、日本がハイリスク国として国名公表される可能性がございます。そうした事態に陥った場合には、海外の金融機関が日本の金融機関との取引においてリスク管理を強化したり、あるいは日本の金融機関との取引を回避したりするなど、本邦の金融機関のみならず、企業等の国際金融取引に支障を来す可能性がございます。
また、これに加えまして、マネロン、テロ資金供与対策につきましては国際的な連携が求められているところでございますが、国際基準に合った制度整備ができていない場合には、日本がそうした対策の抜け穴として利用されてしまう可能性もあり、それを防止する観点からも、今回の御審議をいただいております法案を含めました法整備が重要であるというふうに考えております。
○河野(正)委員 次に、法改正が進まなかった場合、我が国にどのような不利益があるのかをお聞きしたかったんですが、今お答えいただきましたので、ハイリスクというふうに公表されると信用が低下するということだと理解いたしました。
今回の法改正によりまして、FATF勧告を全て履行し、評価を受けることになるのか、さらなる取り組みを促されることはないのかについてお尋ねしたいと思います。
○可部政府参考人 委員から冒頭御指摘ございました、本年六月二十七日にFATFから発出されました声明におきましては、四点の指摘をいただいております。まず顧客管理と、第二にテロリストの資産凍結につきましては、本委員会で御審議をいただいております犯罪収益移転防止法改正法案並びに国際テロリストの財産凍結法案で対応を進めることができると考えております。加えまして、テロ資金供与の犯罪化につきましては、法務委員会で御審議をいただいておりますテロ資金提供処罰法改正法案で対応を進めることができると考えております。
これらの法案が成立し、関連政省令が整備されました場合には、FATFから理解を得られるよう、関係省庁と協力しつつ、その内容につきまして丁寧に説明してまいりたいと考えております。
○河野(正)委員 次に行きます。
いわゆる共謀罪を組織犯罪処罰法の改正によって創設することについても国際的な要請があると認識しておりますが、政府の認識、今後の取り組み、どのように考えておられるでしょうか。
○上冨政府参考人 国際組織犯罪防止条約を締結し、国際社会と協力して組織犯罪と闘うことは重要な課題でありまして、同条約の締結に伴う法整備もまた重要であると認識しております。
同条約を締結するための国内担保法案につきましては、これまで三度国会に提出いたしましたが、いずれも成立に至らず、廃案になったところでありまして、このような経緯をも踏まえて、同条約を締結するためにどのような法整備が必要であるのかについて関係省庁と協議するなどしてきたところですが、条約締結のための担保法案をいつ国会に提出するかについては、未定でございます。
○河野(正)委員 ちょっと話が前後するかもしれませんけれども、いわゆる公告国際テロリストについて確認をさせていただきたいと思います。
先ほど来お話もあったかと思いますが、我が国には、現状ではこれに該当する人物は入国していないという認識だと思います。正式に確認せずとも、疑わしい、あるいは怪しいとして調査を行った事例があるのかどうか。余り手のうちを開示してもいけないと思いますので、可能な範囲でお答えいただきたいと思います。
○高橋政府参考人 お答えいたします。
本日現在、安保理制裁委員会のリストに、タリバン関係者として百三十四個人、四団体、アルカイダの関係者として二百三十一個人、六十八団体が掲載されておりますけれども、現在、それらの国際テロリストが我が国にいるという事実は把握しておりません。
○河野(正)委員 繰り返しになりますけれども、そういった方は入ってきていないということですけれども、怪しいなということで動いた例とかいうのはあるんでしょうか。
○高橋政府参考人 警察におきましては、外国の治安情報機関と緊密に連携の上、国際テロ関連情報の収集、分析に努めているほか、関係省庁等と連携した水際対策を徹底し、国際テロの未然防止に万全を期しているところであります。
こうした中、現時点におきましては、国連のリストに掲載すべき人物が我が国に存在するとの具体的な情報には接しておりません。
○河野(正)委員 ありがとうございました。しっかりと対応していただきたいと思います。
今回の法改正は、犯罪をする方の視点からしますと、非常に気に入らないような法律になってくるんじゃないかなというふうに思っております。
我が国が法整備を行うことで、国際テロリストから報復とか逆恨み、そういったことをされるおそれがないのか、また、それに対する対策を考えておられるのかどうか、お聞かせいただきたいと思います。
○高橋政府参考人 本法案におきましては、規制の対象とする国際テロリストについては、安保理の制裁委員会において指定され、または諸外国で既に指定されている者を想定しており、これらの者はいずれも、我が国において外為法により既に規制の対象としている者であります。したがいまして、これらの国際テロリストを本法案において規制の対象とすることにより、報復、逆恨み等が懸念されるという状況にはないものと考えております。
いずれにしましても、本法案を適切に運用することによりまして、テロ行為の防止及び抑止を図ってまいりたいというふうに考えております。
○河野(正)委員 次に、犯罪収益の現状についてお尋ねをいたしたいと思います。
我が国は、いわゆる振り込め詐欺というものの被害が後を絶たず、新たにネットバンキングの不正送金など、こういったものの被害も大きくなってきていると思います。こうした犯罪の現状について、そして、振り込め詐欺等の対策、今後の見通しなどについてお聞かせいただきたいと思います。
○樹下政府参考人 特殊詐欺の被害状況についてでございますけれども、平成二十六年の上半期中、五千六百八十二件、約二百六十八億円の被害となっておりまして、前年同期の四千九百七十三件、約二百十二億円を上回っている状況でございます。
また、インターネットバンキングに係る不正送金事犯の被害状況につきましては、多くの地域金融機関に被害が拡大するとともに、法人名義口座に係る被害が増加をしておりまして、平成二十六年の上半期中、千二百五十四件、約十八億五千二百万円の被害となっておりまして、過去最大の被害となりました昨年一年間の被害額であります約十四億六百万円を上回っている状況にございます。
こうした厳しい情勢を踏まえまして、特殊詐欺対策につきましては、組織を挙げた取り締まりによる犯行組織の壊滅、関係機関等と連携した犯行ツールの遮断、官民一体となった予防活動の推進など、被害抑止に資する取り締まり活動及び予防活動に取り組んでいるところでございます。
また、インターネットバンキングに係る不正送金事犯につきましては、送金先口座の売買関与者でありますとか、出金役等の徹底検挙、また、ウイルスに感染した端末の利用者に対する注意喚起等に取り組んでいるところでございます。
警察といたしましては、今後とも、金融機関等の事業者や関係機関との連携を強化するとともに、警察の総合力を発揮した取り締まりを推進し、その被害拡大の防止に努めてまいりたいと考えております。
○河野(正)委員 では、次に、犯罪防止のための人材についてお尋ねをしたいと思います。
このように、犯罪自体が国境を越えてグローバルに展開する中で、犯罪捜査に当たる人材の養成というのも急務ではないかなと考えております。現在の人員配置の状況や今後の課題をどのようにとられておられるでしょうか、国家公安委員会委員長、お答えいただきたいと思います。
○山谷国務大臣 近年、薬物犯罪捜査におけるコントロールドデリバリーの実施、危険ドラッグの原料の密輸ルートの解明、サイバー犯罪や国際的なマネーロンダリング事犯の捜査を初め、国際捜査を的確に推進する必要性はますます高まってきているところでございます。
このような情勢に対処するため、警察においては、国際犯罪捜査や国際捜査共助等に関する知識、技能を習得した者を国際捜査を担当する部署に配置し、その体制の増強を図るなど、これまでも必要な体制の整備を行ってきたところでございます。
今後は、国際捜査に従事する者の実務能力の一層の向上に努めるほか、G8ローマ・リヨン・グループ、ICPO、国際刑事警察機構等の多国間協議やさまざまな二国間協議の場を通じて、外国捜査機関との連携を強化する必要があるところです。
いずれにしましても、国際捜査の推進は重要な課題と認識しております。しっかりと取り組んでまいります。
○河野(正)委員 ぜひよろしくお願いいたします。
もう時間もなくなってきたんですけれども、やはり今、国境を越えたいろいろな犯罪もありますし、国内に目を向けたとしても、私設私書箱であるとかレンタルオフィスなど、非常にいろいろ便利なものが発生してくると同時に、そういったところが犯罪の温床になってくるというようなこともあると思います。本当に国をまたぐ犯罪が行われてくるということでございますので、しっかりと対応していただきたいと思います。
最後に、国民生活に密着した視点からちょっとお尋ねをいたしたいなと思っております。
私は福岡ですけれども、我々地方から選出された国会議員というのは、会期中はどうしてもなかなか週末ぐらいしか帰ることができないというふうに思います。近年、送金や銀行振り込みなど、本人確認というのがかなり厳しく求められております。そのため、公的なお金であれば秘書に頼んだりとかいろいろなことができるんでしょうけれども、私的なお金の振り込みなどは議員もみずから銀行に赴かなければならなくて、週末や夜間に地元に戻ったとしてもなかなか銀行窓口があいていないということで、大変な思いをしてまいりました。
現在でも、正しく利用をしている者とすれば、非常にこの制度、銀行振り込み等々の、何十万円までとか、そういったものが厳しいなというふうに思ったりするんですけれども、資金洗浄対策も含めて、一方では厳しく、犯罪の防止の観点からやっていかなければいけないと思いますので、今後、本人確認等がさらに厳しくなるのか、銀行の手続等についてこれまで以上に大変なことにならないのかということを、国家公安委員長、お答えいただきたいと思います。
○山谷国務大臣 本改正案は、金融機関等の事業者に対し、疑わしい取引の届け出の該当性を判断する際に一定の方法をとることを求めることなどを内容とするものであり、一定の負担は生じるものの、効果的なマネーロンダリング対策を実施する観点から必要な改正と考えております。
また、本改正案では、毎年、取引の種別ごとにマネーロンダリングに悪用されるリスクを国家公安委員会が評価することとしており、その結果を踏まえて、主務省令を定めるに当たっては、リスクが低い取引について顧客管理措置を簡素化するなどの負担軽減についても検討することとしております。
○河野(正)委員 利便性と犯罪防止というのは相反するところもあって、非常に大変な問題だと思いますが、しっかりとやっていただきたいと思います。
時間が来ましたので終わります。ありがとうございました。
○井上委員長 次に、松田学君。
○松田委員 次世代の党の松田学です。よろしくお願いいたします。
この法案そのものは、犯罪者の側に立たない限り、基本的にやらねばいけない法案だと思いますので、この法案の是非よりも、むしろ、今回、せっかくの機会ですので、治安を担当している大臣としての基本的な姿勢を何点かお伺いさせていただければと思っております。
実は、私、旧大蔵省の出身で、国際金融局で外為法を担当しているところにいたときに、このFATFがまだできて間もないころなんですが、九〇年に四十の勧告を策定して、その直後、九一年ごろ、この会議によく出席をしていたという経験があります。
当時、日本ではそれほど、マネロンに対する意識が余りなくて、私は、経済官庁に入ったつもりが、なぜ犯罪対策の仕事をしているんだろうというような違和感すらあったような感じで、非常に日本の意識は薄くて。
この会議に出るたびに、欧米各国から相当厳しい要求を各国に対してしてくる。日本に対しても、例えば一万ドル以上の送金については全部モニタリングしろとか、そういうことを言われて、当時、大蔵省の銀行局の人なんかと一緒に行ったんですが、とてもこれは日本の銀行家がのめる案ではないといって反対をしたりとか、そんなことをして、のらりくらり対応していたような記憶がございます。
その当時とは大分状況も変わってきたわけでして、そのときに私が感じたのは、同じ自由市場経済を基本とするアメリカも、結構民間に対するモニタリングとか監視とかは厳しくやっているんだな、日本は余りそういう意識はないなというふうに思っていたんですが、後で議論しますけれども、ここも大分変わってきていると思います。
そもそも日本で、FATFが求めている国際標準並みのマネロンチェック体制までは余り必要がなかったんじゃないかという判断が、ようやく今般法案が出ているんですが、これまでそういう判断がなされてきたということにも一定の背景があったんじゃないか。もしそうだとすれば、今般いろいろな規制強化をしますが、実効面でこれによってどの程度の意味があるのか。
単に海外から言われておつき合いでやっているということにならないかどうかという、その辺の実態的な意味合い、法改正をどうしてもやらなければいけない実態面での何かの事情変化とか、あるいは予想される事態とか、そういうものがあるのかどうか、ちょっと大臣にお聞かせいただければと思います。よろしくお願いします。
○山谷国務大臣 FATFへの対応については、平成二十年のFATF対日相互審査における指摘事項を踏まえるとともに、国内のマネーロンダリング事犯の実態を考慮しつつ、政府としての方針を関係省庁と協議し、関係団体等の意見を伺いながら、我が国としてバランスのとれた実効あるマネーロンダリング対策を講ずるという観点から、平成二十三年には犯罪収益移転防止法を改正し、取引時の確認事項を追加するなどの対応を行ってまいりました。
この改正がFATFの指摘事項に対応したものであることをFATFに対し繰り返し説明したものの、国際的なマネーロンダリング対策の強化が求められる中、厳しいフォローアップが行われ、結果として、FATF勧告で求められている顧客管理等の事項が法令に明記されていないなどの指摘を受けているところでございます。
このため、本年六月、FATFから我が国を名指しして、マネーロンダリング対策の不備に迅速に対応することを促す声明が公表されました。
こうした状況を踏まえて、FATFから指摘されている事項に早急に対応するとともに、より効果的なマネーロンダリング対策を講ずるべく、今回の改正案について審議をお願いしているものでありまして、法整備が必要だというふうに思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○松田委員 恐らくまだ日本は、テロリストとかマネーロンダリングとか、そういう実態がそれほどない、ないと言ったらあれかもしれませんが、ほかの国に比べるといわゆる切迫感が余りないという現状はあるんでしょうけれども、国際標準をやるというのは必要なことなので、これは大いに賛同するわけです。
ここで、ちょっと国家としてのリスク管理の問題について大臣の所見を伺いたいんです。
日本もそうですが、いわゆるレッセフェールといいますか、自由放任という経済システム、社会システム、自由主義経済ということでやってきたんですが、どうも二十一世紀を迎えるころから状況は変わってきたんじゃないかなというふうに認識しております。
リスクに対する認識を非常に高めなければいけない。そういった意味で、私は、国家の役割が非常に高まってきているんじゃないかという気がしているんですが、ただ、なかなかこの発想の転換が日本はできないできたんじゃないかなという気がします。その結果、平時の発想でいて有事の対応が非常におろそかになってきたということを繰り返してきたというふうに思います。
それを私が最初に認識したのが、かつての不良債権問題。住専に対して六千八百五十億円の公的資金の投入というのは御記憶かもしれませんが、あれも住専を救済するのかといって当時大騒ぎになりました。ただ、あれはあくまで、農協等から住専に相当資金が出ていた、農協に対する預金者を保護する、預金者保護というのが本当に必要なものなのですが、なかなか国民に理解されなかったんです。その後、大手銀行の破綻で、その直後に長銀の破綻等々を経て、六千八百五十億円の百倍の七十兆円ぐらいの公的資金枠が用意される。ばたばたっと日本も、いわゆる金融のシステミックリスクに対する世論の理解も進んできて、そういうものが後追い的に整備されてきたというふうなことをずっと私も観察してきたわけです。
やはり、国家全体のシステムの問題ということを考えると、有事というとすぐ戦争のことを皆さんは想像するんですが、いろいろな意味の有事というのがあって、有事に対する備えというのはまさに国家そのものの役割だろうと私は思っております。
二十一世紀を迎えた最初の年、二〇〇一年に同時多発テロが起きまして、私、当時、関税局で課長をやっていたんですが、首相官邸にテロリストの情報が入るたびに関係省庁の課長が集まっていろいろな情報交換、分析をしたりということがしょっちゅうありまして、まさに、もう日本は有事に入ったんだなというような認識もしていたんです。
当時、税関に顔認識システムというのを導入したんですが、私は、大阪の方の朝日新聞の一面の記事に、松田学、とんでもないやつだ、顔認識システムという個人情報を侵害するとんでもないやつだとさんざん書き立てられたことがありました。今はもう、顔認識システムは税関では当たり前だろうと思いますが、やはりリスクに対する国民意識というのもなかなかついてこなかったんじゃないかなという感じがします。
それが一挙に出てきたのが、やはり二〇一一年の東日本大震災。これはよく言われるように、テールリスクという概念が出てきたわけですね。なかなか確率は低いけれども、一旦起こったら取り返しのつかないことが起こるリスクというか、それに対する備えということが非常に認識されてきているんじゃないかと思います。
ある意味で、太平洋プレートが変化して首都直下型地震とか東南海大地震が起こりやすくなっているとか、あるいは一方で、地球温暖化があるのかゲリラ豪雨とか、いろいろな意味での災害も非常に、先般は火山の噴火まであったということで、何が起こるか、起こったら大変だ。
ある意味では、私も、財政もテールリスクということを考えなきゃいけないかなと。別に消費税を来年に先延ばししてもマーケットで国債を売られるリスクはそんなにないよと言っても、もしかしたらそのリスクがあるかもしれない。やはりそれに備えるのも広い意味で有事対応の一環ではないかというふうに私は思っております。もちろん安全保障や治安も全くそうでございますが。
これについて、やはり、国家としてのリスク管理を強化していくと、自由な市場に対して政府の介入というのはどうしてもふえていかざるを得ないわけであります。これは、本来、民間の自由に委ねるべき市場原理に基本的に反する面があるので、市場か国家かという対立軸。あるいは、近年でいえば、中国との関係でいうと、尖閣か経済か、尖閣を守るということと経済を大事にする、そのあたりがいろいろな対立軸になって、これはいろいろ悩ましい問題もあると思うんですけれども、大臣は、こういった対立軸に関して、両者を調和させるどういうふうな論理を組み立てているか、ちょっと基本的な点をお聞きしたいと思います。
○山谷国務大臣 哲学性を含んだ大きな問題提起でありまして、国家としてリスク管理を問われる状況にあるということは御指摘のとおりでありまして、そうした状況下で、経済活動について一定の規制を設けるべきとの意見がある一方で、規制緩和を含め、民間の自由に委ねるとの市場経済の基本原則を尊重すべきものであるという意見もあるというふうには承知しております。
こうした市場か国家かというお尋ねにつきましては、国家公安委員会委員長の立場から、御指摘の市場のあり方にもかかわる問題についてお答えすることは差し控えたいのですが、あえて私の思うことを述べれば、政府が一体となって、両者のバランスを十分に考慮して、適正な対応策を講じていくということが重要であると考えております。
○松田委員 先般沖縄に行ってまいりましたときに、中国の方々が結構不動産を購入しているんじゃないかと。大臣も御案内のとおりかと思いますが、石垣島の港の、あるマンションの部屋は中国人が買ったんじゃないか、あそこから尖閣に向かう海上保安庁の船を監視できるんじゃないかとか、あるいは、西表島に行きますと、海岸のすぐそばの小さな土が盛ってある小島のところが、あれは人民解放軍関係の人が土地を買おうとしているんだとか、どこまで本当の話か私もよくわかりませんが、ただ、そういった土地取引、不動産取引についても、やはり安全保障という観点から国が一定のことをやっていかなければいけないというのも一方で事実だろうと思っております。
世界的にはWTOといった国際ルールがありますから、投資は自由であるということになっているんですが、アメリカなんかの事例を見ても、外国投資・国家安全保障法、旧エクソン・フロリオ条項というのがございまして、御案内のとおりですが、外国資本による合併や買収あるいは取得案件に対しまして、基本的に、直接投資はできるだけアメリカに入ってくださいよとやりながらも、他方で、そういった国家安全保障上の観点から大統領がこれをいわゆる拒否する、買収案件なんかを拒否することができるという仕組みがあるわけですね。
日本の場合、やはり、こういう時代になってまいりますと、全くこの点でも自由という観点だけでいいのかどうか。現行でも外為法に基づく規制というのがあると思いますけれども、それも含めて、現状の規制で十分なのかどうか。特に外国人による不動産取引については、国益の観点からの立法措置というのが、これは日本維新の会の時代に土地取引等の規制に関する法案というのを出していますけれども、大臣の所見をちょっとお伺いできればと思います。
○山谷国務大臣 自民党にも安全保障と土地法制を考える勉強会というのがございまして、やはりさまざまな各党あるいは国民の議論の深まりを期待するところでありますが、外為法による対日直接投資等に関する規制についてのお尋ねについては、所管外でございますので、お答えは差し控えたいと思います。
○松田委員 有事といいますと、一般に軍事的な有事というのがよく言われるんですが、私は、先ほどもちょっと触れましたが、もっとかなり幅広い概念で有事というものを捉えていかなければいけないのかなと思っております。
戦争以外にも、サイバー攻撃というのも含まれるでしょうし、あるいは大災害、あるいは広範囲にわたって治安が乱れたり社会秩序が混乱する、国民の生命や財産が脅かされるような事態というのは、これは疫病とか、急激な環境汚染とか、食料、エネルギーなど物資の途絶なんかも広い意味での有事に含まれている。こういう場合は平時の統治体制ではなかなか対処できないので、特に一刻も早い対処が求められるときには、国家緊急事態ということについて考えていかなければいけないような気がいたしております。
国家緊急事態に至るまでもなく、例えば、国家基盤が破綻していくということも、ある意味で、平時において有事に備えるための重要な国家の機能、例えば、社会保障や財政が破綻するとか、治安体制が破綻するとか、国民の健康や生命保護が破綻するとか、物資供給システムが破綻するとか、いろいろな破綻があり得ると思うんですが、その破綻を防止するということは平時における有事対応だろうということで、この観点からもう少し国家の機能をしっかり確立していくことを積極的に議論すべき局面に至っているんじゃないかと私は思っています。
特に憲法との関係で論じられるのが国家緊急事態。これは、国民の権利に一定の制約を加えるとか、平時には法的に授権されていない行政権限を与えるとか、あるいは、いわゆる超法規的な予算措置を講ずるとか、憲法の一部を停止して超法規的措置をとる。これを憲法に規定している国も結構多いわけですが、そういった憲法の議論も一つあると思います。
それから、憲法に規定するまでもなく、およそ国家である限り、国家緊急事態というのは、ちゃんと国家緊急権の発動というのは当然に予定されているものであって、そのための手続をきちっと整備しておくべきであるという議論も一方であると思いますが、こういったいわゆる有事法制、あるいは憲法の問題も含めて、治安を担当する大臣から、どんなふうにお考えになっているか、お聞かせいただければと思います。
○山谷国務大臣 有事法制の整備についてでございますが、先般閣議決定された、「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」は、我が国を取り巻く安全保障環境がますます厳しさを増す中で、いかなる事態にあっても国民の命と平和な暮らしを守り抜くためのものと承知しております。この閣議決定により、いかなる事態にもすき間なく対応することが可能となり、抑止力が高まるものと考えております。
いずれにしましても、警察においても、政府の取り組みに参画する形で、危機管理のための制度及び体制のさらなる充実に努めてまいるところでございます。
さらに、憲法に緊急事態条項を盛り込むということについての御言及がございましたけれども、大規模な災害が発生したような緊急時における国家や国民の役割を憲法上どのように位置づけるかについては、大切な課題だと認識をしております。
憲法の改正については、国民の中での議論がさらに深まっていくことが何より大切と考えておりまして、私としましては、その議論の深まりや憲法審査会での検討を見守ってまいりたいと思います。
○松田委員 ちょっと次は答えにくい問題かもしれませんが、十月二十九日、先般、我が党の三宅博議員が衆院法務委員会で法務大臣に対してした質疑ですが、朝鮮総連です。
この朝鮮総連という、拉致事件に関与してきたということが明白なところに対して資金を提供してきたのが、かつての朝銀信用組合。これに対して一・四兆円の公的資金を日本政府は投入したということで、これは日本政府がテロ行為に協力したことになるのではないかという指摘を三宅議員がしまして、上川法務大臣から、犯罪の成否は個別に判断されるので答えは差し控えると。まあ立場上、そういう答弁になるのは当然だと思いますけれども。
こういった事例において、当時、本当にそこまでして朝銀信用組合を公的資金で救済する必要があったのか。これは信用秩序にも大きな影響を与えるような事例でもなかったし、むしろ、こういったケースは国家安全保障の方を優先されるべきだったんじゃないかという考え方もあり得ると思いますが、いわゆる治安、公安を担当する大臣として、どんなふうに受けとめられているでしょうか。
○山谷国務大臣 他の金融機関と同様に、預金保険法に基づいて、この法律の目的であります預金者保護等の観点から実施されたというふうに考えておりますが、御指摘の件について、つまり、そのような法令の規定にのっとり、預金者保護等の観点から適切に対処されたと考えております。
○松田委員 一通り、いろいろ聞いてまいりましたが、もう一つ。これは治安の観点から見てどうかということで、個人情報。
今度、マイナンバーがいずれ導入されるんですけれども、日本では、この個人番号制が入るのに、私が大蔵省に入ってかかわってきたころからもう三十年近く、長い長い時間がグリーンカードのころからかかって、ようやく法案が成立したということでありまして、どうも日本人の間には、政府にプライバシーを監視されるとかそういうアレルギーすら、いろいろな声が上がっている。私は、これは戦争のときのトラウマがまだ日本の国民に根づいているのかというような気もしますけれども、こういったトラウマから脱却することも戦後システムからの決別ではないかと思っております。
昨年、内閣委員会で北欧に視察に行きましたときに、スウェーデンでは個人情報は国税庁が全部管理しているんですが、企業なんかもその個人情報というものを活用できて、例えば、子供が生まれて登録して、そしてしばらくたつと、おむつの販売業者から情報が届いて、どうですかというような、そういうことがあるという話を聞いて、我々視察団の方から、そういうことをやっていると悪用されないのかという質問が出たら、国税庁の担当者は何のことを聞いているのという感じで、つまり、利便性があるからいいじゃないかという感じなんですね。
やはりスウェーデンという国は、日本と違って、恐らくヨーロッパ全体がそうだと思いますが、こういった面での国家に対する基本的な信頼というのがちゃんと根づいているんだなと。日本は、どちらかというと、政府に対する不信感が非常に、余計に強いような感じがしておりまして、むしろ、国には国民の生命と財産をしっかり守ってほしいという要請があって、やはり日本はその意味でも平和な国なのかなという感じがした経験がございます。
特にスウェーデンの場合は、いわゆる住民登録というのは教会でずっと、各地で何百年も前からなされていて、当局が個人情報について何らか把握をしているということに国民もなれているということもあるのかなと思った次第です。
今般、いわゆるマネロンについても、いろいろな意味で、いろいろな取引に対する管理というのがなされるわけですが、スウェーデンでは、資産の取引は、不動産まで含めて全部、個人番号がないとできないという仕組みになっているんですね。ここまで徹底してやると、いろいろな意味での社会の信頼感とかが出てくると思うんです。
今般の法改正で、マネロン対策、本法案の目的達成の上で、これをどういうふうにマイナンバー制度と結びつけて、マイナンバー制度を活用していく可能性があるのかどうか、預金や金融資産にも拡張してこういったことをやっていくべきかどうか、大臣としての所見をちょっとお伺いできればと思います。
○山谷国務大臣 マイナンバー法は、マイナンバーの利用を、法律または条例に定める社会保障、税及び災害対策に関する特定の行政事務に限定しており、現状では、犯罪収益移転防止法の取引時確認等にマイナンバーを利用することはできないものと承知をしております。
一方で、マイナンバーの利用範囲の拡大については、国民の理解を得ていくことが重要であることから、公共性の高い分野を中心に、個人情報の保護に配慮しつつ、マイナンバーの利用のあり方やメリット、課題等について、内閣官房を中心に総合的な検討がなされているところと承知しており、当面、政府内の検討状況や制度の施行状況等を見守ってまいりたいと思います。
○松田委員 もう時間がなくなってまいりましたが、昔、私が大蔵省国際金融局でこの担当をしていたときに、ちょうど湾岸戦争のころだったんですが、当時は外為法の規定がまだ不十分でして、イラクの資産凍結を各国がやるときに、例えば大統領命令とか大蔵省指令なんかでどんどん凍結していったんですが、日本の場合は国会で決議をしないとできない、国会で決められない限りは凍結ができないので、どれぐらいの期間だったか忘れましたけれども、大蔵省が行政指導で凍結をしていたという時期があったわけですね。その後、国会で決議があって凍結できたんですが。
あのとき、なぜそういうことができたかというと、当時は為銀主義といいまして、もう私が言うまでもないことですが、外国為替公認銀行に資金の対外取引を全部集中させて、そういう特別な地位を与える見返りにいろいろな義務を負わせていた、チェックの義務を負わせていた。そういう意味で、ある意味で効率的な体制をやっていたんですが、その後、為替の自由化で、そういう体制も全部今はないわけです。
そうなってくると、現状でどうやって、今回のマネロンも含めて、為替についての平時における有事対応というか、日常やはりこういうのをきちっとチェックしていないと、いざ有事のときも対応できないし、資産凍結をしても実効を上げることができない。
金融機関に対する検査監視体制も、かつては国際金融局が、為替検査官というのがいて、その観点で専門的に検査していたんですが、それが一旦統合されて、いわゆる財務の健全性の一環としてやれという話になって、その後、金融庁と財務省に分かれて、財務省は財務省でやっているんでしょうけれども、現状において、金融機関に対する検査監視というのは、この点ではかつての為銀主義がとられていたころに比べて十分なものかどうか、政府委員で結構ですので、お聞かせいただければと思います。
○可部政府参考人 現在の外為検査につきましてのお尋ねでございます。
外為法の六十八条などに定めます立入検査によりまして、現在、資産凍結などの経済制裁に関する確認義務、外国為替取引に関する通知義務など、外為法令などの諸義務の遵守を確保することを目的に外国為替検査マニュアルに従ってこれを行っているところでございまして、平成二十五年度は百六十七先の金融機関などに対しまして検査を実施いたしました。
委員御指摘のとおり、平成十年四月改正前の外為法におきましては、適法性の審査に加えて、外国為替公認銀行が外国為替業務を行うに足る国際的信用と能力を有しているかどうかについてもあわせて検査を行っていたところですが、現在の外為法におきましては、資産凍結などの経済制裁に重点を置いて、法に定められた諸義務の遵守状況を確認しているという内容になってございます。
このため、平成十年の法改正前と比較いたしますと、御指摘のとおり、検査の対象が外国為替公認銀行に限定されなくなった、一方で、検査の内容につきましては、外為法令の諸義務の遵守状況の確認に集中ができるという状況にございます。
こうした状況を踏まえながら、私どもとしても、検査の効率性、効果の向上を図るために、例えば早期の是正が必要な不備事例を発見した場合には、次回検査を待つことなく、早期に不備の是正を求めていく早期対応措置を導入するなどして努めているところでございます。
○松田委員 もうあっという間に時間が過ぎてしまいまして、まだほかにもいろいろ聞きたいことがあったんですが、ぜひリスク管理ということを、非常に重要な国家的な課題になっておりますので、後追い的に何かが起こったから何かをやるというんじゃなくて、大臣におかれましても、そういう観点から、積極的に国家のリスクに対してどうやって対応していくかについてお力を発揮していただければと思います。
以上です。どうもありがとうございました。
○井上委員長 次に、三谷英弘君。
○三谷委員 みんなの党の三谷英弘です。
本日は、山谷大臣に御質問させていただきますけれども、小笠原諸島におきまして本当に多数の中国の漁船が押し寄せているというような状況の中で、恐らく山谷大臣は非常にそちらの問題にも関心を強くお持ちであろうというふうに思いますけれども、きょうは法案質疑ということなので、その点につきましては日を改めて質問させていただきまして、中身について質問をさせていただきたいというふうに思っております。
まず、FATF勧告というものがあります。FATFのホームページにも、「FATF コールズ オン ジャパン ツー エナクト アディクエート アンタイマネー ランドリング アンド カウンター テロリスト ファイナンシング レジストレーション」、こういうタイトルで、一つのページを割いて、日本に対してしっかりと要求したというようなことが載っているということで、これは必ずしも日本にとってよいことではないということでございます。
そこで、四点挙げられております。先ほど来の質問を聞いておりまして、日本の対応が遅くなってしまっている理由というのは何となくわかっているので、時間も限られておりますので、その先について質問させていただきます。
今回FATFから指摘を受けている四点について、今回二つの法案をこの内閣委員会では準備しているわけですけれども、これで日本の政府の対応としては足りるというふうに考えているのかどうか、その点についてお答えいただきたいと思います。
○可部政府参考人 ただいま御指摘ございましたように、FATFが本年六月に公表いたしました我が国に対する声明の中では、四点の法制上の不備を指摘しております。
このうち、顧客管理につきましてはただいま御審議いただいております犯罪収益移転防止法改正法案によりまして、またテロリストの資産凍結につきましては国際テロリストの財産凍結法案によりまして、またテロ資金供与の犯罪化につきましては法務委員会で御審議いただいておりますテロ資金提供処罰法改正法案で対応を進めることができるというふうに考えております。
○三谷委員 今お答えいただきましたけれども、三つの点については対応しているということでございますが、四つ目の点、ザ・フェイリア・ツー・ラティファイ・アンド・フリー・インプリメント・ザ・パレルモ・コンベンション、パレルモ条約への対応というのがまだできていないというふうになっておるんですけれども、この点について、日本政府としてはどのようにお考えでしょうか。
○上冨政府参考人 国際組織犯罪防止条約、すなわちパレルモ条約を締結し、国際社会と協力して組織犯罪と闘うことは重要な課題であります。同条約の締結に伴う法整備も重要であると認識しております。
この条約を締結するための国内担保法案につきましては、これまで三度国会に提出いたしましたが、いずれも成立には至らず、廃案になったところでございます。
このような経緯を踏まえまして、同条約を締結するためにどのような法整備が必要であるのかについて関係省庁と協議するなどしてきたところでございますが、条約締結のための担保法案をいつ国会に提出するかについては未定でございます。
○三谷委員 このパレルモ条約に関しては、一般的に言う反社会的勢力というようなものを広く含むんじゃないかと思いますけれども、そういうところにおけるいわゆる共謀罪の対応というものが非常に難しくなっているんじゃないかというふうに思っております。
少なくとも、日本政府として、このパレルモ条約というものは締結をすべきものというふうに思っているのかどうか。それの前提といたしまして、今、全世界で何カ国これに批准しているのかということについてお答えいただきたいと思います。
○上冨政府参考人 パレルモ条約を締結することは非常に重要な課題であるというふうに考えてございます。したがいまして、そのための国内法整備も重要な課題であると考えております。
また、いわゆるパレルモ条約は、現在、世界で百八十二カ国が既に締結していると承知しております。
○三谷委員 世界で百八十二カ国が締結している条約ですから、主要国は大体締結しているというような条約だろうと思いますけれども、何でそれが日本でなかなか締結できていないのか。そこら辺について、平成十五年から十七年の三カ年だったと思いますけれども、そこでなかなか法案成立に至らなかった理由みたいなものがあれば、ぜひともお答えいただければと思います。
○上冨政府参考人 御指摘のとおり、パレルモ条約締結のための国内担保法としての法案につきましては、平成十五年、十六年、十七年の三度国会に提出させていただきましたが、いずれも廃案となっております。
過去の国会審議の場などにおいて御議論された主な不安や懸念といった点を幾つか御紹介申し上げますと、いわゆる共謀罪については、心の中の合意のみで処罰されるため、思想まで処罰されることになるのではないか、あるいは、会社やNGOなど通常の活動を行っている団体も対象となるのではないかなどの御懸念が示されたものと承知しております。
○三谷委員 重ねて質問ですけれども、今例示として示していただいた二つの懸念ですが、私もその法案、以前のものを検討いたしましたけれども、そういったものは処罰の対象というふうになっているのでしょうか。
○上冨政府参考人 過去のさまざまな御懸念については、提出した法案においてそれらの行為が不当に処罰されるということはないものと承知しております。
○三谷委員 いや、本当に、これが本質なんだと思うんですね。いわゆる共謀罪というものに対して、どのようにそれに向き合っていくのかという問題が一つ、なぜか大きなテーマというふうになってしまっているんですけれども、こういう世界でも当たり前の、一般的な思想、良心を罰するものではなく、そういう極めて限られた犯罪的な団体に対してのみ適用される、しかも処罰される対象が限定されているものに対して、なかなかそういったものを処罰化、法律に落とし込むことができていないということは、FATFに対して対応するということだけではなくて、日本の態度として、やはりこういう反社会的な勢力とはしっかり日本も闘っていくんだというような姿勢を見せるためには、これはどうしても必要なんじゃないかというふうに思っております。
安倍政権におきましては、昨年も、特定秘密保護法という、一般的には非常にいろいろな評価がなされたものではありますけれども、日本の国益にとって非常に重要であるというようなことで進められたというふうに私は理解をしております。私も、衆議院におきまして、特定秘密保護法に関しては、党が割れるというような経験もいたしましたけれども、しかしながら賛成をさせていただきました。
しっかりとパレルモ条約を担保する、実施するための法律についても、ぜひとも前向きに検討していただきたいというふうに思っておりますけれども、この点、大臣のお考えをお答えいただければと思います。
○山谷国務大臣 総合的にさまざまな議論の中で今検討されていると承知しています。
○三谷委員 そういうふうなお答えになるんだとは思いますけれども、本当に大事なものは大事だというふうに我々も考えておりますので、ぜひとも積極的に検討を重ねていただければというふうに思います。
それから、具体的な法案の中身に移らせていただきますけれども、まず、今回の改正点ではないんですけれども、犯罪収益移転防止法というものについてなんですが、対象となる主体が、例えば、銀行ですとか、また弁護士も、さまざまな義務を負っているというところでありますけれども、通報義務というものをいわゆる士業が負っていないというようなたてつけになっているというふうに理解をしております。
これは、世界的に見ればどうなのかということについて、まず一つの例ということで、例えばアメリカではどうかということをお答えいただければというふうに思います。アメリカにおいての弁護士というものが同じような通報義務を負っているのかということについて、お答えいただきたいと思います。
○樹下政府参考人 FATFに加盟している国、地域について申し上げますと、三十四の国、地域のうち二十五の国、地域におきまして、弁護士に対する疑わしい取引の届け出義務が法制化されているところでございます。
具体的には、イギリスやフランス、ドイツといったEU諸国や、香港、シンガポールにおいては、弁護士に対して疑わしい取引の届け出義務が課されているところでございます。
なお、アメリカにつきましては、弁護士に疑わしい取引の届け出義務は課しておりませんけれども、一万ドル以上の現金を受領した場合の報告が義務づけられているところでございます。
○三谷委員 一万ドル以上というものは、一般的な取引に関してということだろうというふうに理解をしております。
そういう意味では、弁護士に関して、こういう疑わしい取引というものを見つけたときに通報するかしないかというのは世界でも割れているというところだろうと思いますので、この点、日本だけがしゃかりきになって、弁護士にそういう通報義務を課す必要はないというふうに思っているんです。
一方で、また質問なんですけれども、こういう義務を負うところは、もちろん銀行だけに限られず、例えば、不動産を取り扱っている方々とか、宝飾業、宝石を取り扱っている方々も当然ながらこの法律の対象になってくるところではありますけれども、世界的に見て、カジノを運営されているところに関しては、こういうような義務というのを負っているというふうに理解をしてよろしいのでしょうか。
○樹下政府参考人 FATF勧告におきまして、カジノ事業者は、一定規模以上の取引を行う場合には顧客管理措置を実施しなければならないというふうにされているところでありまして、カジノ事業者につきまして、そのような義務づけをしている国はあるというふうに聞いております。
○三谷委員 そういう国があるというふうなお答えでしたけれども、より明確に。
では、アメリカそしてシンガポールではどうですか。お答えください。
○樹下政府参考人 アメリカ、シンガポールにつきましても、マネーロンダリング対策のため、カジノ事業者について、一定の場合の取引時確認や疑わしい取引の届け出義務を規定しているものというふうに承知をしております。
○三谷委員 今お答えいただきましたとおり、例えばということで、アメリカ、シンガポールということで事前に通告させていただいて、確認をしていただきましたけれども、これから日本においても、IR法案なりが通って、そういう事業者が出てきたら負うのかなというふうには思っております。
しかし、翻って、国内に目を向けてみれば、カジノというふうに認識するかどうかは別といたしまして、厚生労働省的には、ギャンブル依存症をたくさん生み出す温床というものが国内にも存在します。パチンコ業者なんですけれども、こういうパチンコ業者に対して、同じような義務を課す必要はないというふうにお考えなのでしょうか。この点について、明確な御答弁をお願いします。
○樹下政府参考人 パチンコ営業につきましては、FATF勧告におきまして、顧客管理措置を義務づけるべき事業者として規定されておりませんので、犯罪収益移転防止法におきましても、特定事業者として規定しておらないところでございます。
○三谷委員 ちょっと今の答弁についてもう一度確認させていただきたいんですけれども、FATF勧告において規定されておりませんということなんですが、パチンコ営業とはということで、明示的に除外をされているんでしょうか。
○樹下政府参考人 パチンコ営業ということで除外をされているということではございませんで、一定の顧客管理措置を実施しなければならない事業者の中に、カジノ事業者についての規定はありますけれども、パチンコに関する規定はないということでございます。
○三谷委員 つまり、今お答えいただきましたとおり、カジノ事業者に対する規定はあるけれども、パチンコ事業者に対する規定はないということなんですが、では、このパチンコというものをどのように位置づけるのかというようなことになるんだろうというふうに思っております。
警察庁の立場といたしまして、パチンコがカジノ業者であるという認定は現時点で難しいとは理解はしておりますけれども、しかしながら、世界的に見ればどうかという話なんです。実態を見て判断をするわけです、全て。三店方式だからあれはカジノに当たらないというような話を世界が認めるかどうかということをこれは考えていただきたいんですね。しっかりとこの今のパチンコ業者の実態なりなんなりを見ていただければ、これはFATFだって、やはりこういったものは規制しなきゃいけないんじゃないかというような話で、声を上げてくるかもしれないです。
また、そういうところを、今回、こうやってせっかくFATF勧告が出て、不名誉なことですよ、日本だけが取り上げられて、四つの点がまだ整備できていませんと。その一つは現時点で難しいにしても、残り三つは対応したからいいですという話で今後一切通るならいいんですけれども、このやはり一番大事な部分が欠落しているとすれば、大事な部分というふうに認められないかもしれないんですけれども、またぞろFATFから、日本は対応が不備だ何だというふうに言われて恥ずかしい思いをしなければいけないというようなことを、ぜひともここはしっかりと捉えていただきたいというふうに、これはもう私の意見としてお願いをさせていただきます。
時間も限られておりますので、この点はこの程度で、また別の機会にというふうに思っております。
それから、三つ目の点について伺いたいと思います。
国際テロリストの財産凍結法についてなんですけれども、こちらに関して、いろいろな今回の法律のたてつけは勉強させていただきましたが、見る限り、そういうテロリストが持っている財産を仮領置するんだというようなことで、テロリストの手元に財産を持たせないようにするというふうな話が主眼なのかなというふうには思っております。
しかしながら、このテロリストの手から第三者にお金が渡ったときというのは、これはもう渡り放題なんだと思うんです。そこの点について、この法案を見る限りは、第三者からテロリストに対してお金が行くことについては、スリーストライク制で規制をされているというところですけれども、いっぱいお金を持っているテロリストから第三者にお金が移ったときには、極めて例外的な場合を除いては渡り放題だというふうに理解をしております。その点についてお答えいただきたいと思います。
○高橋政府参考人 本法案では、仮領置の対象につきまして、「公告国際テロリスト又はこれに代わって当該規制対象財産を管理する者」ということとされておりまして、この「管理する者」に対しても財産の提出の命令をかけるということにしております。
○三谷委員 そこの規定の定め方について質問なんですけれども、これは本気で財産を押さえたいというふうに思ったら、こういう定め方はしないんじゃないかなというふうに思っています。
国際テロリストにかわって規制対象財産を管理する者、そのかわって管理するというようなことが実際問題として疎明できるのかどうかということについて、どういう資料があればそういう疎明ができるというふうにお考えなのかどうか、お答えいただきたいと思います。
○高橋政府参考人 公告国際テロリストにかわって管理する者であるかどうかにつきましては、公告国際テロリストとの関係あるいは財産を管理している経緯といった個別の事情につきまして、警察としましては、情報収集、分析、捜査活動、実態把握、あるいは外国治安情報機関との情報交換、関係省庁との連携等の多様な手段を講ずることによって判断していきたいというふうに考えています。
○三谷委員 その規制対象財産を管理するというところなんですけれども、これは、今の話だと、その経緯なりなんなりというふうに言っておりますけれども、この定め方だと、外形的に取引の事実というものをつくられてしまったら、普通に言って、なかなかその規制対象財産を管理するというような形には当たらないというふうに思うんです。そうすると、この法律をつくった意味というのがなくなっちゃうんじゃないかというふうに思うんですが、その点について、どのようにお考えでしょうか。
○高橋政府参考人 済みません、ちょっと質問の趣旨がよくわかりませんけれども、我々としては、国際テロリストの資産を凍結する上で、こういう制度で十分だというふうに考えております。
○三谷委員 では、もっとわかりやすく言いますと、要は、情を知って当該財産を譲り受けた者というふうにすればいいんですよ。
こういうテロリストが保有している財産だ、もちろん、今回の規制対象ではない、除外事由となる財産はありますけれども、それ以外の部分については、わかっていてそれを譲り受けたんだったら、やはり仮領置の対象にするぐらいのことをやらないと、本当に実効的に仮領置をしたいと思っているのか、どうしても、今回、FATFの勧告を受けたから、形だけ法律をつくりましたというふうに見えるんですけれども、そうじゃないんですよね。お答えいただければ。
○高橋政府参考人 形だけつくるというものではございません。実効のあるものにしたいというふうに考えております。
○三谷委員 もう時間もなくなりましたので、これで終わらせていただきますけれども、ぜひとも、テロリストに余計な財産というものが転々と移転しないように対応いただければというふうにお願いさせていただきまして、私の質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。
○井上委員長 次に、福田昭夫君。
○福田(昭)委員 民主党の福田昭夫でございます。
本日は、マネーロンダリング、テロ資金供与対策における国際協力を推進する政府間会合であるFATF勧告に基づく法律の改正等について、具体例を交えて何点か質問をいたしますので、簡潔にお答えをいただきたいと思います。
それで、質問に入る前にちょっと委員長にお伺いをいたしますが、きょう、私が提出した資料、何か却下されたようでありますが、その理由はどういう理由なのか、お答えをいただきたい。
○井上委員長 理事会において協議をしていただいた結果、今回の案件の法案と直接関係がないということで、認められないという結論になりました。
○福田(昭)委員 直接関係ないとは、どういうことで判断したんですか。
○井上委員長 理事会でそういった結論が出たということです。
○福田(昭)委員 だから、理事会を管轄しているのは委員長でしょう。
では、私の方から言いますけれども、この資料をなぜ出したか。この会社は、いわゆるテロリストでもないけれども、マネーロンダリングをやっている疑いが強い会社なんですよ。だから、出したんですよ。
いずれこの質問の機会はあるかと思うので、きょうは強く抗議だけしておきますけれども、本来なら、理事会を開いて、もう一回、資料として出すかどうか、本当は協議してほしいんですけれども、きょうのところはおさめておきます。
いいですか、この会社は、テロリストでもないにもかかわらず、マネーロンダリングをやっている疑いが非常に強い会社なんですよ。そこをよく理解をして、しっかり聞いた上で判断をしてほしいと思います。
それでは、質問に入りたいと思いますが、まず、疑わしい取引の具体例、預金取扱金融機関についてであります。
金融庁は、疑わしい取引の届け出をするために、預金取扱金融機関、保険会社、金融商品取引業者が注意を払うべき取引の類型を例示した「疑わしい取引の参考事例」を示しておりますけれども、それがどのように役立っているのか確認をさせていただきたいと思います。
先ほども申し上げましたが、これは実際に、どうも全くそれが機能していないという事例があるのでお伺いをする。特に、具体例で申し上げると、個別案件についてはそれこそ金融庁もお答えできないと思うので、一般論として金融庁にお聞きをしたいと思います。
一つ目は、元請業者から下請業者の銀行口座に下請負代金が振り込まれているのに、下請負業者が代金を支払ってもらっていないと主張するときは、どんなことが考えられるのか。詳しく言ってくれというので、詳しく言いますからね。本来なら下請負業者は元請業者に請求書を出すべきなのに、なぜか発注者に何度も請求書を出していたという証言が複数あるわけでありますけれども、そんなとき、どんなことが考えられるのか。
例えば、「真の口座保有者を隠匿している可能性に着目した事例」の「(一) 架空名義口座又は借名口座であるとの疑いが生じた口座を使用した入出金。」に該当するということはあり得ないのかということについて、まずお伺いをします。
○坪内政府参考人 お答えさせていただきます。
犯罪による収益の移転防止に関する法律第八条の規定に基づきまして、金融機関は、取引時確認の結果その他の事情を勘案して、犯罪における収益のかかわりがある疑いの認められる取引について、所管行政庁である金融庁に届けることとされているところでございます。
御指摘のケースをどう評価するかという御質問をいただきましたけれども、ある取引が法律上届け出の必要な疑わしい取引に該当するか否かということにつきましては、金融機関が、顧客の属性、取引時の状況その他みずから保有している情報等を総合的に勘案しまして、個別具体的に判断するものであるということでございますので、一概にお答えすることは困難であることを御理解いただきたいと思います。
一般論として申し上げれば、金融庁では、先ほど御指摘にございましたように、「疑わしい取引の参考事例」を公表しておりまして、例えば、借名口座であるとの疑いが生じた口座を利用した入出金、口座名義人である法人の実体がないとの疑いが生じた口座を使用した入出金などについて、疑わしい取引に該当する可能性のある取引として特に注意を払うべきものとして示しているところでございます。
○福田(昭)委員 それでは、二つ目ですけれども、二つ目は、外国から機械の部品を購入して、その代金を外国の会社と会社の本部長個人の二カ所に送金をした場合には、どんなことが考えられるか。一般的に、商取引で代金を支払うときに二カ所に送金することは考えられないが、これは外国へ送金して、しかも会社より個人、本部長への支払いの額が多額になっているとしたら、どんなことが考えられるのか。
例えば、「外国との取引に着目した事例」の「(六) 多額の信用状の発行に係る取引。特に、輸出国、輸入数量、輸入価格等について合理的な理由があると認められない情報を提供する顧客に係る取引。」に該当しないか。輸入する場合には税関でちゃんと原票を提出するわけですから、それを銀行で照合すればおかしな取引だとわかるはずなんですが、これについてはどう考えられますか。
○坪内政府参考人 お答えさせていただきます。
繰り返しになりますけれども、御指摘のケースをどう評価するかという御質問をいただきましたけれども、ある取引が法律上届け出の必要な疑わしい取引に該当するか否かということにつきましては、金融機関が、顧客の属性、取引時の状況その他みずから保有している情報等を総合的に勘案しまして、個別具体的に判断するものであることから、一概にお答えすることは困難であることをまた御理解いただきたいと思います。
一般論として申し上げますと、金融庁では、また御指摘いただきましたけれども、「疑わしい取引の参考事例」を公表しておりまして、先ほどお示しした事例に加えて、例えば、他国への送金に当たり虚偽の疑いのある情報等を提供する顧客に係る取引ですとか、口座開設時に確認した取引目的や事業内容等に照らし不自然な態様等で行われる取引などについて、疑わしい取引に該当する可能性のある取引として特に注意を払うべきものとして示しているところでございます。
○福田(昭)委員 三つ目でありますけれども、三つ目は、今の一番目と二番目の場合、いずれも発注者が下請負業者の通帳と外国の会社の本部長の通帳と、どちらも通帳と印鑑を管理していた疑いが強いが、どう思いますか。
一つ目は、下請代金がどこかへ消えてしまった事例であります。二つ目は、機械代とは違うお金が本部長に支払われた事例であり、どちらも通常あり得ないことであります。しかし、発注者が、今申し上げたように、下請負業者と本部長の通帳と印鑑を管理していれば、これが実は実現してしまうというふうに思うんですけれども、そうしたことは考えられますか。
○坪内政府参考人 お答えさせていただきます。
御指摘のようなケースの評価につきましては、顧客の属性、取引時の状況等の詳細が必ずしも明らかでないということから、一概にお答えすることは困難であることを御理解いただきたいと思います。
なお、これは繰り返しになりますけれども、当庁が公表している「疑わしい取引の参考事例」においては、例えば、借名口座であるとの疑いが生じた口座を利用した入出金、他国への送金に当たり虚偽の疑いがある情報等を提供する顧客に係る取引などについては、疑わしい取引に該当する可能性のある取引として特に注意を払うべきものとして示しているところでございます。
○福田(昭)委員 四つ目は、特定事業者は第六条第二項に基づいて確認記録を七年間保存しなければならないということについて、時効との関係で質問しようとしましたが、これははっきりしましたので、質問は省略します。
それで、これは通告していないんですけれども、第八条についてちょっとお伺いをします。
第八条「疑わしい取引の届出等」でありますが、特定事業者は、組織的犯罪処罰法第十条の罪に当たる行為を行っている疑いがあると認められる場合においては、速やかに、政令で定めるところにより、政令で定める事項を行政庁に届け出なければならないとありますけれども、行政庁はどこを指すんでしょうか。金融庁を指すんですか。
○坪内政府参考人 お答えさせていただきます。
この場合、特定機関が金融機関である場合には、金融庁に届けていただくということになってまいります。
○福田(昭)委員 では、今回のように、銀行がそうした振り込みをやっているということになれば金融庁に届け出る、こういうことになるわけですね。はい、わかりました。
それでは次に、金融活動作業部会、FATFの勧告について質問をしたいと思います。
一つ目は、先ほども質問がありましたけれども、今までに実施しなかった理由について、先ほど元大蔵省の松田委員からは、今まで日本はちゃんとやっているから大丈夫みたいな話がありましたが、その辺、もう一度お答えをいただければと思います。
○可部政府参考人 お答えいたします。
日本は、平成二十年の対日相互審査以降、勧告の内容あるいは日本の評価につきまして精査をいたしまして、いかなる国内法整備が必要かを含めまして、順次、勧告への対応を進めてまいりました。
今御指摘がございました顧客管理に関しましては、金融庁の監督指針等によりまして相当程度対応しておったところもあるわけでございますけれども、FATFの方からは、勧告で求められている義務を、監督指針などではなく、強制力のある法令に明記することを求めておりまして、その点につきまして、依然として義務の一部が日本の法令で明記されていないなどの指摘を受けているところでございます。このため、警察庁の有識者懇談会の検討を経て、今回、犯罪収益移転防止法改正法案を提出させていただいたところでございます。
また、テロリストの資産凍結につきましては、対外取引については外為法で既に資産凍結の措置が講ぜられているところでございますけれども、国内取引についてはそうした法制がないということが指摘をされてございまして、その点について法制の検討を行い、かつ関係者の権利利益の保護への配慮等、そうしたことにつきましてもあわせて検討をいたしました結果として時間を要したところでございますが、今回、この国際テロリストの財産凍結法案を取りまとめまして、臨時国会に提出させていただいたものでございます。
○福田(昭)委員 それでは、今のことについては、FATF声明についての説明がありましたけれども、そこに今回、重要な不備で四点挙げてありますよね。一つは、テロ資金供与の犯罪化が不完全であること、二つ目が、金融及び非金融セクターに適用され得る予防措置の分野で顧客管理措置やその他の義務が不十分であること、三つ目として、テロリスト資産の凍結メカニズムが不完全であること、四つ目として、パレルモ条約の締結と完全な実施ができないこと、この重要な四つを踏まえて今回改正をするということに至ったということなんでしょうかね。はい、首を縦に振ってくれておりますので、では、答えてもらいますか。
○可部政府参考人 御指摘のとおりでございます。
○福田(昭)委員 それで、二つ目でありますけれども、今回のFATFの勧告の遵守に対する評価についてであります。
対日相互審査報告書によると、四十の勧告と九つの特別勧告があるわけでありますが、それらを政府として、先ほど申し上げました四つの重点項目を考えたわけでしょうけれども、どう評価したのか。特に、NC、不履行が、四十勧告のうち九件、九つの特別勧告のうち一件ありますが、それらをどう評価したのか。特に、特別勧告の不履行の対象になっている、国境における申告及び開示を見ると、非常に重要な指摘だと思いますけれども、この辺のところはどんなふうにお考えになったのか、お答えをいただければと思います。
○可部政府参考人 委員御指摘のとおり、四十九の勧告がございましたけれども、そのうち十の勧告については不履行等々の指摘を受けてございます。
FATFの審査の過程におきまして、このうち、とりわけ重要勧告とされるものについて履行を図るということが優先課題とされておりまして、今回の六月の声明も、そうした重要勧告につきまして四点大きな課題が残っているということを指摘しておりますので、その四点について対処させていただきたいというふうに考えてございます。
○福田(昭)委員 今回の私が指摘した具体例も、外国へ送金しておりますから、ぜひ、そういった意味では、これをしっかり、特に金融庁には、監督といいますか、管理をしてほしいなと思います。
それで、時間の関係で、三つ目と四つ目は一緒にお伺いをしたいと思います。
今回の三本の法律案にどう反映させたのか、今回の改正で十分なのかどうかということでありますけれども、FATFの勧告を受けて今回提出をした犯罪収益移転防止法の一部改正、テロ資金提供処罰法の一部改正、そして国際テロリストの財産凍結法案にそれらをどう反映させ、そしてそれで十分なのかどうかという判断を、警察庁、法務省、それから金融庁、財務省、それぞれの立場でお答えをいただければと思います。
○樹下政府参考人 まず、犯罪収益移転防止法関係についてお答えをいたします。
顧客管理の充実に関しましては、FATF第三次対日相互審査におきまして不十分という指摘がなされたところでありまして、今回の改正案におきましては、疑わしい取引の届け出に関する判断の方法を主務省令で定めること、コルレス契約締結の際の確認義務に関する規定を整備すること、取引時確認等の措置を的確に行うための体制整備等の努力義務の拡充を行うことにより、FATFの指摘に応えようとするものでございます。
なお、FATFの指摘事項には政省令により対応することもありますので、本改正の施行準備とあわせまして、関係省庁や業界の御意見を伺いながら検討を進め、必要な措置を講じてまいりたいと考えております。
○上冨政府参考人 テロ資金供与の犯罪化に関してでございますが、テロ資金提供処罰法の一部改正法案については、現在も審議中でございます。昨日十一月四日に衆議院法務委員会において、採決がなされ、多数をもって原案どおり可決すべきものと決せられたところでございます。
仮に本改正法案が成立した場合のFATFの評価についてはお答えしかねるところでございますが、本改正案の内容は、テロ資金対策に関する諸外国の法制と比較しても遜色のないものであるというふうに考えております。
○高橋政府参考人 テロリストの資産凍結に関しましては、FATF第三次対日相互審査におきまして、国際テロリストが行う対外取引については外為法により規制されているが、国内取引については規制されていない旨の指摘を受けております。
この国際テロリストの財産凍結法案におきましては、外為法で規制されている国際テロリストについて、外為法で規制されていない部分の規制を新たに行うこととしており、FATFからの指摘に応えているものと考えております。
○可部政府参考人 ただいま警察庁並びに法務省の方から御説明申し上げましたように、犯罪収益移転防止法改正法案、また法務委員会で御審議いただいておりますテロ資金提供処罰法改正法案、さらに国際テロリストの財産凍結法案、この三本の法案によりまして、FATFから指摘を受けました四点のうち三点については対応を進めることができるものと考えております。
これらの法案が成立し、関係政省令が整備された場合には、FATFから理解を得られるように、関係省庁と協力しつつ、その内容について丁寧に説明をしてまいりたいと考えております。
○福田(昭)委員 ありがとうございました。
改めて申し上げますが、先ほどの具体的な事例のように、テロリストではないのに、それこそマネーロンダリングをする知能犯がいるということをぜひ皆さんはよく認識して、こうした法律の改正も踏まえて、しっかり、ちゃんと金融機関の協力をいただくということをやらないとだめだと私は思います。それこそ、外国へ送金されたお金は約一億三千万ですよ。これが不正なお金だと全くわからなかったわけだから、今回の案件では。こんな多額のお金が外国へ送金されて、しかも、どう使われたかわからない。しかも、このお金は脱税されたお金ですから。それがわからなかった、これは本当にゆゆしき事態ですよ。ですから、ぜひ、そういった意味では、しっかりやってほしいなというふうに思います。
それでは、そろそろ、時間がなくなりましたので、最後の質問に行きます。集団的自衛権の行使容認との関係についてであります。一つ目と二つ目、あわせて山谷大臣と安保法制担当政務官にお伺いしたいと思います。
まず、集団的自衛権はどこの国を守るのか、その定義をお答えください。それから二つ目は、我が国の企業や国民が、集団的自衛権の行使を容認することによってテロに遭う機会がふえると思いますけれども、テロに遭う機会がふえることに対して、国民の生命と財産を大臣や政務官はどうやって守ろうとしているのか。その二つ、簡潔にお答えください。
○石川大臣政務官 閣議決定についてのお問い合わせということで、私の方から御答弁させていただきたいと思います。
先生お問い合わせの先般の閣議決定自体は、あくまでも、我が国の存立を全うし、国民の平和な暮らしを守るためという、すなわち、我が国を防衛するためのやむを得ない措置として自衛の措置を認めるものでありますので、他国の防衛それ自体を目的とする集団的自衛権の行使を容認するものではございません。そこを御理解いただきたいというふうに思っております。
その上で、先生から御指摘のありました、テロの可能性が増加するのではないかという御指摘でございますが、我が国を取り巻く安全保障環境というのは、ますます厳しさを増しているという認識にございます。テロなどの脅威も容易に国境を越えてやってくるということも考えますと、どの国も一国のみで平和を守ることはできないという中で、我が国としてしっかりとした対応をとっていかなければならないと考えております。
その上で、今般の閣議決定によりまして、いかなる事態にもすき間なく対応することを目指しているものでございまして、このことによって抑止力が高まってくるものと考えております。万全の備えをつくっていくことで、紛争の発生あるいはテロのリスクも一層なくなっていくものと考えておりますので、御指摘は当たらないものと考えております。
以上でございます。
○山谷国務大臣 お尋ねの件につきましては、直接的には私の所管外でございますので、答弁は差し控えたいと思いますけれども、今、安全保障、我が国の安全を守るため、国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備についての考え方は、防衛大臣政務官がお答えしたとおりでございます。
警察といたしましては、引き続き、関連情報の収集、分析、外国治安情報機関との緊密な情報交換、入国管理局等の関係機関と連携した水際対策、重要施設、公共交通機関等の警戒警備の徹底等の対策を推進し、国際テロの未然防止に万全を期していくよう警察を督励してまいりたいと思います。
○福田(昭)委員 時間が来たからやめますが、そうしたら、集団的自衛権行使という言葉は使わないことです、基本的に。間違っていますよ。
以上で終わります。
○井上委員長 次に、佐々木憲昭君。
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
テロは、人の命と人権を踏みにじる、憎むべき犯罪行為でありまして、国際社会と協力して実効ある対策をとっていくことは当然だと思います。
今回の法案は、テロリストの国内取引あるいは経済活動を規制するために提案されていると思いますが、幾つか確認しておきたいと思います。
まず、国際テロリスト財産の凍結に関する特措法案についてであります。
この中には、指定された国際テロリストの規制対象財産の仮領置について定められておりますけれども、この仮領置というのはどういうことか、大臣、簡潔に説明していただきたい。
○山谷国務大臣 国際テロリストの財産凍結法案では、国際テロリストの財産凍結等の実効性を確保するため、国際テロリストの財産を増加させることとなる一定の行為を許可制により規制することに加え、国際テロリストが手元に所持している一定の金銭等を都道府県公安委員会が保管する仮領置の制度を設けることとしております。
具体的には、都道府県公安委員会が、国際テロリストが所持している現金等の財産のうち、生活費等に充てられると認められる部分を除いて、国際テロリストに対して提出命令を行い、提出された財産を保管することにより、国際テロリストがその財産をテロ行為のために利用することを未然に防ぐこととしています。
仮領置後においても、仮領置した財産が生活費等に充てるために必要な場合には、国際テロリストの申請に基づき返還することとしております。
○佐々木(憲)委員 今御説明ありましたように、一度テロリストと指定された場合、財産が事実上没収され、その処分は許可制となりますので、その者の全ての経済活動が監視、制限されるということになりますね。この効果は極めて大きなものがあると思います。
その反面、もしも恣意的に濫用されると、これは重大な人権侵害を引き起こす可能性もあります。濫用に対する歯どめ、これはどのようになっているでしょうか。
○山谷国務大臣 この法案では、国際テロリストの指定は、外為法で規制を受ける者の範囲に限定して行うこととしており、そもそも、御指摘のように、警察が恣意的に指定をすることはございません。
また、指定に当たっては、指定を受ける者にその理由を示すとともに、聴聞の手続として意見を聴取しなければならないこととしているところであり、御指摘のような懸念が生じることのないよう、法の厳格な運用に努めてまいります。
○佐々木(憲)委員 国際テロリストとして指定された者は、その者に対して通知をするということでありますし、また、公告されることで国民がそのことを知ることにもなる。
仮に本人が指定は不当だと訴えた場合の訴訟費用、これは規制の対象財産とはならない、こういう理解でよろしいですか。
○山谷国務大臣 ならないと。
○佐々木(憲)委員 本人が死亡するとか、あるいは組織が解散したり、指定の要件を満たさなくなった場合、どうなるか。指定を取り消し、権利を回復する、そういう規定はあるんでしょうか、大臣。
○山谷国務大臣 公告国際テロリストの要件を満たさなくなった場合、その者の権利を回復する規定があるのかというお尋ねですが、この法案では、公告された国際テロリストが安保理制裁委員会の名簿から抹消された場合にはその旨を公告し、指定の要件を満たさなくなった場合には指定を取り消さなければならないこととしており、以後、この法律による規制を受けることはなくなります。
また、こうした場合には、公安委員会は既に仮領置された財産を返還しなければならないこととしておりまして、一定の財産上の権利は回復されることとなります。
○佐々木(憲)委員 テロ対策という大変大事な法の目的に鑑み、恣意的な濫用がなされないようにすることが大事だと思います。
次に、もう一つの、犯罪収益の移転防止法改正案についてお聞きしたいと思います。
これは、各国が遵守すべき国際基準でありますFATFの勧告を受けて、日本独自でマネーロンダリング対策あるいはテロ資金供与対策をとるというものであります。
現在、既に犯罪収益移転防止法によりまして、銀行が疑わしいと認めた取引の届け出をしているわけですね。警察庁には膨大な情報量が蓄積されていると思います。
数字を確認したいんですけれども、直近の平成二十五年、二〇一三年の届け出受理件数、それから捜査機関等に提供した件数、これを明らかにしていただきたいと思います。
○樹下政府参考人 お答えいたします。
平成二十五年中に国家公安委員会が疑わしい取引の届け出を受理した件数は、約三十五万件でございます。また、国家公安委員会が疑わしい取引に関する情報を捜査機関等に提供した件数は、平成二十五年中で約三十万件でございます。
○佐々木(憲)委員 これは、年間に約三十万件の情報が、大変な数なんですけれども、警察庁などの捜査機関に提供されているわけですね。
過去の累積があると思いますけれども、累計でこれは何件あるのでしょうか、情報として。
○樹下政府参考人 現在、疑わしい取引の届け出の累計の受理件数は約二百四十万件でございます。
○佐々木(憲)委員 二百四十万件と実に膨大な件数であります。
この情報は、捜査機関に提供されるというわけですけれども、大臣にお聞きしますけれども、どのような捜査機関に対して提供されているのでしょうか。
○山谷国務大臣 疑わしい取引に関する情報の提供先でございますけれども、国家公安委員会においては、特定事業者から各所管官庁に届け出のあった疑わしい取引に関する情報を集約、分析し、その結果を検察庁、警察、麻薬取締部、海上保安庁の四つの捜査機関と、税関、証券取引等監視委員会に提供しているところでございます。
○佐々木(憲)委員 これは警察庁だけじゃなくて、税関とか海保とか証券取引監視委員会とか検察等に提供しているわけですね。それぞれの機関に毎年三十万件の情報が提供される、これは大変な数だと思います。
問題は、その情報の取り扱いであります。例えば、各都道府県警は、それぞれ都道府県警本部に提供されている情報というのはあると思います、これは、同じ三十万件が提供されているのかどうか、それはどのように扱われているのでしょうか、大臣。
○山谷国務大臣 都道府県警察に対し、昨年、疑わしい取引に関する情報を約三十万件提供しているところでございますが、この情報につきましては、都道府県警察においてこれを活用し、捜査を行っていると承知しております。
○佐々木(憲)委員 もう少し具体的にお聞きしますけれども、まず、件数からお聞きしますが、この三十万件のうち犯罪捜査に活用されたのは何件あるのでしょうか。実際に、検挙に至った件数、端緒事件数、それから検挙に至った捜査に活用した情報数、これを言っていただきたいと思います。
○樹下政府参考人 まず、平成二十五年中に、疑わしい取引に関する情報を端緒として都道府県警察が検挙した事件数は、九百六十二件でございます。この端緒事件の捜査に活用した情報数は、三千七百八十一件でございます。
また、そのほか、平成二十五年中に、端緒事件の捜査以外に活用した情報というものがございまして、端緒事件以外の事件の捜査に活用しまして検挙に至った情報につきましては、六百五十三件でございます。検挙に至っていないけれども捜査結果を暴力団の実態解明等に効果的に活用した情報が、一千百四十一件でございます。これら以外の事件捜査に活用した情報数につきましては、十八万八千二百六十九件でございます。
○佐々木(憲)委員 今数字をお聞きしましたが、捜査に使われた十九万件、そのうち、実際に端緒事件として捜査に使われて、検挙に至ったのは六百五十三件で、そのために提供されたのが千百四十一件、それ以外、十八万八千件、約十九万件、これは端緒事件の捜査以外に活用した情報数ということになるわけですね。
これは膨大な数なんですよ。検挙に至るまでに使われたのは極めてごく一部でありまして、そのほかの膨大な十九万件弱の情報が活用された、利用されたというわけであります。
全ての都道府県警が、犯罪収益の移転防止法十二条で言う犯罪捜査に限定して使ったのか、それ以外の目的には全く使われていないと言えるのか、この点、大臣、どうですか。
○山谷国務大臣 犯罪収益移転防止法第十二条第一項において、国家公安委員会は、マネーロンダリング事犯及び組織的犯罪処罰法等に規定する詐欺等の前提犯罪に係る捜査に資すると認めるときに、疑わしい取引に関する情報を捜査機関に提供するものと規定されています。
都道府県警察においては、提供された疑わしい取引に関する情報について、提供された内容に即して必要な捜査を行い、その捜査結果を事件検挙に活用しており、犯罪収益移転防止法の趣旨を踏まえた運用が行われているものと承知しています。
○佐々木(憲)委員 そうしますと、この十八万八千件という、いわば事件の捜査以外に活用した情報、以外に活用したというわけですから、これは十二条の範囲内で全て使っている、使用している、こういうふうに考えてよろしいんでしょうか。
○樹下政府参考人 事件捜査以外のというところなんですけれども、正確に御質問を理解しているかどうか、ちょっと自信がないんですけれども、端緒事件の捜査に活用した情報数ということで三千七百件余というものがございます。それと、端緒事件の捜査以外に活用したものということで十九万件ということでありますけれども、この端緒事件の捜査以外に活用したというものの中には、端緒事件以外の事件の捜査に活用したというものもございます。また、十八万件余につきましては、現在、情報活用中ではあるけれども、まだ事件検挙に至っていないものというものも含まれておりますので、そういった意味で、疑わしい取引の届け出に係る情報につきまして、その内容に即した捜査がそれぞれ都道府県警察で行われているというふうに理解をしております。
○佐々木(憲)委員 膨大な情報が集まって、それを犯罪捜査に活用する、十八万件活用いたしました、こういうことなんですけれども、しっかりそれが適正に活用されているのか、あるいは別の目的に活用されていないか、こういうことは、そうしておりませんと言われても、これは我々はなかなか実態を知りませんので、にわかに信じるというふうになりません。
問題は、各都道府県に三十万件、毎年毎年情報が集まり、累計二百四十万件に達している、それを活用する内規といいますかルールであります。
大臣、各都道府県警ごとに、そのマニュアルのようなもの、あるいは内規のようなものはあるんでしょうか。
○樹下政府参考人 都道府県警察に提供された疑わしい取引に関する情報の取り扱いについてということの御質問というふうに理解しておりますけれども、これは捜査のために提供されたものでございまして、その情報の性質に鑑みまして、都道府県警察において厳重に管理されているものというふうに承知をしております。
捜査に関しまして重要な事項を定める犯罪捜査規範というのがございますけれども、この犯罪捜査規範におきましても、捜査資料は適切に管理をし、これを保管する必要がなくなったときは確実に廃棄をすること、電磁的な記録の場合には情報が漏えいしないための的確な措置を講ずることなどが規定されているところでございます。
○佐々木(憲)委員 これは各都道府県警が適切にやっているというふうに言われますけれども、私は、もっと具体的な情報の適正な管理のルールが要ると思うんですよ。
例えば、国家公安委員会個人情報管理規則というのがあるわけです。その中にこういうことが書いてあるわけです。第六条に「取扱いの制限」という項目がありまして、
警察庁職員がその業務の目的以外の目的で保有個人情報を取り扱うことのないよう、教育の実施その他必要な措置を講じるものとする。
総括個人情報管理者は、保有個人情報及びそれが記録されている行政文書について、その内容に応じ、次の事項を定めて警察庁職員に遵守させるものとする。
一 取り扱う権限を有する者の範囲
二 電気通信を利用して伝達する場合における注意事項
三 取り扱うことができる場所
四 保存すべき場所
五 前各号に掲げるもののほか、適正な取扱いを確保するために必要な制限に関する事項
こういうふうになっているわけです。
大臣、こういうふうな一般的な、国家公安委員会の個人情報管理規則というのが中にありますから、その中に、各都道府県警に対してこういうことをきちっとやりなさいよというものがあるわけです。
今回、二百四十万件に及ぶ大変な個人情報が集まっているわけです。それに対して全国共通のルールをつくるべきだとここに書いてあるわけですから、きちっとした目的外使用がないようにするそういう規定をつくっていく、これはもう当然のことだと思うんですけれども、大臣としてどのようにお考えでしょうか。
○山谷国務大臣 都道府県警察においては、提供された疑わしい取引に関する情報について、提供された内容に即して必要な捜査を行い、その捜査結果を事件検挙に活用しており、犯罪収益移転防止法の趣旨を踏まえた運用が行われているものと承知しております。
都道府県警察に提供された疑わしい取引に関する情報は、捜査のために提供されたものであり、その情報の性質に鑑み、都道府県警察において厳重に管理されているものと承知しておりまして、きちんとした規定のもとに行われると思います。
○佐々木(憲)委員 一番問題なのは、恣意的な活用、濫用というものがないようにしっかりするということが大事であって、今のところ、これまでやってきたとおりのルールでやるという答弁では、新しくこういう体制をつくっていくわけですから、これは極めて不十分だと思いますよ。
これはきっちりとした管理を共通の規則によって行う、国家公安委員会のこの中にも指摘されているわけですから、これに沿ってきちっと管理していく、これを検討するというのは当然だと思うんですけれども、いかがですか。これで最後にします。
○山谷国務大臣 規定に基づいて的確に講じられるものと思っております。
○佐々木(憲)委員 終わります。
○井上委員長 次に、畑浩治君。
○畑委員 生活の党の畑浩治でございます。
本日最後のバッターになりまして、かなりかぶる質問もあろうかと思いますが、確認という意味も込めて、改めてお聞かせいただく部分も多々ございますので、よろしくお願いいたします。
まず、犯罪による収益の移転防止に関する法律の一部を改正する法律案ということで、今回、九条の改正で、外国所在為替取引業者との契約締結の際の確認義務に関する規定が整備されたということになります。いわゆるコルレス契約ですね。ここの契約の締結に際して確認義務の規定の整備がされた。
これを見て私が思ったのは、当たり前のことではないかなと思いました。取引をするのであれば、こういうことは当然確認してしかるべきだと思います。
現状では、きょうの議論もありましたが、特定事業者は、改正後の九条に掲げた事項について、もう一回確認ですが、確認は行っていないんでしょうか。あるいは、これは行っていることだとすれば、我が国でこのような規制がこれまでなかったのはなぜなのか。その辺も含めて、お答えいただきたいと思います。
○中島政府参考人 お答えいたします。
改正後の犯罪収益移転防止法第九条は、コルレス契約の締結に際して、金融機関による契約相手方のマネーロンダリング防止体制の確認を義務づける規定でございますけれども、これは、仮に契約相手方のマネーロンダリング防止体制が不十分である場合、この契約相手方の確認をくぐり抜けた犯罪収益やテロ資金が我が国の金融機関を通じて外国から我が国へ流れ込むおそれがあることから、これを防止するためのものであります。
ただ、御指摘のとおり、我が国の金融機関については、金融庁の監督指針を踏まえ、コルレス契約の締結に際して相手方のマネーロンダリング防止体制の確認を既に実施しており、実務的には改正案第九条の内容に対応できていると認識しております。
しかしながら、FATFからは、そうした確認義務が法令において義務づけられていないことについて指摘を受けたため、今般の改正案に規定を設けたところでございます。
○畑委員 明確に法律で位置づけるという改正だと思います。
次の質問をさせていただきます。
今の法律案による改正後の犯罪収益移転防止法の十一条の関係なんですが、ここで特定事業者の体制整備等の努力義務が拡充されているということになります。
これも当然といえば当然なものばかりでございまして、業界の自主的な取り組みとして行われているのだろうと思うんですが、そうなのか。そして、既に行われているとすれば、なぜ法改正が必要なのか。そのことについてあわせてお伺いしたいと思います。
○樹下政府参考人 改正後の十一条関係についてのお尋ねということでございますけれども、現行法では、使用人に対する教育訓練の実施その他必要な体制の整備ということが特定事業者の努力義務として規定をされているところでございますけれども、FATFからは、体制整備の具体的内容が不足している、このような指摘を受けておりますことを踏まえまして、取引時確認や疑わしい取引の届け出等の措置が的確に行われるように、内部管理に関する規程の整備でありますとか、統括管理者の選任、その他主務省令で定める措置を努力義務として追加することとしたものでございます。
○畑委員 済みません。確認ですが、この努力義務に書いたようなことは、このこと自体は業界の自主的な取り組みで行われてきたけれども、FATFで、法律に書かないとやはりそこは明確な担保ができないということなんでしょうか。ちょっとそこのところをお伺いしたいと思います。
○樹下政府参考人 まずは、FATFからは、明確な形で義務づけを図るべきだという指摘があったということでございます。
ただ、体制が特定事業者全て十分であったかということに関しましては、例えば金融機関等々、しっかりしたところにつきましては、これまでもそういった体制についてはきちんと整備をされてきたのではないかというふうに考えておりますけれども、特定事業者はそういう金融機関ばかりではございません。さまざまな事業者がございますので、中には十分な体制をとっておらなかったところもあったのではないかというふうに考えているところでございます。
○畑委員 わかりました。必ずしも、業界の自主的な取り組みといいながら、網羅的にされているわけでもなくて、そこはやはり法律でしっかりと位置づけて明確に徹底しようという趣旨だと伺いました。
FATFの勧告がありますから、法律改正は必要にして当然のことだと思いますが、これは国内で自主的にやっていくから、FATFの勧告を受けたとしても、そういうことはやりますよと言いながら、それは運用でやりますということにして法律を改正するような措置を履行しない場合には、何か国際的な不利益が生じるんでしょうか。その点をお伺いしたいと思います。
○可部政府参考人 お答えいたします。
FATFはマネーロンダリング、テロ資金供与対策に関するハイリスク国を国名公表しておりまして、FATFの指摘事項について改善がなされない場合には、日本がハイリスク国として国名公表される可能性がございます。
仮にそうした事態に陥った場合には、海外の金融機関が日本の金融機関との取引においてリスク管理を強化したり、あるいは日本の金融機関との取引を回避したりするなど、本邦金融機関のみならず、企業などを含めまして、国際金融取引に支障を来す可能性があるというふうに考えております。
○畑委員 ありがとうございました。
そうすると、そういう不利益が生じることはよくわかりましたが、であればもっと早く改正すべきじゃなかったかという議論も出ると思うんですが、FATFの勧告を結構前に受けていたんですね、それをここまで置いておいたという理由、ちょっとこれは通告には出していませんが、そこのところをお伺いしたいと思います。
○可部政府参考人 御指摘のとおり、平成二十年十月に相互審査を受けまして、その際の勧告の内容並びに日本の評価について精査をし、いかなる法整備が必要か検討をし、順次対応を進めてまいったところでございます。
例えば顧客管理につきましては、既に金融機関監督指針に基づいて相当程度対応をしていたところではございますけれども、FATF勧告では、強制力のある法令に明記するべしというふうに定められてございまして、平成二十三年に犯罪収益移転防止法の法改正を行いましたものの、依然として義務の一部が日本の法令で明記されていないという指摘を受け、警察庁において昨年六月から有識者懇談会を開催して検討を行い、本年七月に報告書をまとめ、今回の法案提出に至ったものでございます。
また、テロリストの資産凍結につきましては、外為法で対外取引については既に資産凍結を行っておりましたけれども、国内取引については規制がないという指摘を受けまして、外国の立法例等々を含めさまざまに検討し、また関係者の権利利益の保護への配慮等についても慎重に検討した上で、今回法案の提出をさせていただいたものでございます。
○畑委員 FATF声明というかFATF勧告で言われていることを法律でしっかりやらなきゃいけないということを措置したと。結局、FATFの求めているのは、やはり法律で明確にしっかりと位置づけるということなんですよね、これを聞いていると。
そうすると、何点か今回やっていますが、特にそこでちょっと気にかかるというか、まさに一つやっていないものであるのはパレルモ条約の締結と完全な実施という部分でありまして、ここでは、いわゆる共謀罪の創設が必要であるとされておるわけでございます。ただ、その関連法案は今回は出ていないということになります。
FATFからの勧告を放置するのは問題があるということで今回二法案が出たということであれば、その理屈からすると、やはり同時に共謀罪が出なければいけなかったのか、あるいは、これがおくれているとして、今後、共謀罪の創設が視野に入らざるを得ないだろうなと思います。
共謀罪については、これはいろいろ意見が分かれるところだろうと思いますが、共謀罪をつくる場合には、構成要件的にかなり厳重に限定をしながら、権利侵害にならないようなことをしなきゃいかぬし、そもそも、国際標準というのは、さはさりながら、共謀罪でなければそういう勧告は担保できないのかという実質の部分の検討も必要になると思うんです。
いずれにしましても、内容の議論はともかくとして、共謀罪の創設の検討はされていると思うんですが、その辺の創設の予定というか、その辺の状況をきょうはお伺いしたいと思います。
○葉梨副大臣 先生御指摘のように、国際組織犯罪防止条約、これを締結して組織犯罪と国際社会と協力して闘っていくということは、非常に重要な課題でございます。そして、その締結に伴う法整備も非常に重要と認識しております。
同条約の国内担保法でございますけれども、もう既に先生御案内のように、平成十五年、十六年、十七年と、三回国会に提出をさせていただいております。いずれも成立に至らず、廃案ということになったわけです。
私どもとしても、このような経緯、それと、やはり相当長時間の審議もされております、そこで出てまいりましたいろいろな論点も踏まえて、同条約を締結するための担保法、これについてどのような法整備が必要かということについて、関係省庁と協議をするなどしてきているところでございます。
現在のところ、いつこの条約締結のための担保法案を国会に提出するかということについては、未定でございます。
○畑委員 ありがとうございました。
次の論点に入らせていただきます。
もう一方の法律、国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法、これで、公告国際テロリストの財産の凍結ですが、これは基本的に全て凍結ということで、仮領置という議論もありましたが、生活資金等とか、先ほど訴訟の費用とかありましたが、そういう必要なものを最低限は残すという構成になっておるようであります。
ここで、逆の面から気にかかる部分がありまして、人権の面から、生活に必要な分は残すというか、返すということは、一つの構成としてはあるんですが、ちょっとうがった見方をすれば、そういう理由によって、本来領置すべきというか、押さえるべきものが押さえられないというか、どの程度の資金を残すかということに、運用にかかわってくるわけですが、そういう心配も実は私は逆にあります。
基本的に、国際テロリストというのは、乱暴な言い方をすれば締め上げるために、もうぎりぎり資金は押さえてというか、渡さないというか、そういうこともあっていいのだろうという思いを持っております。そういうことで、財産は基本的には本当に最小限、これはどの程度の生活資金を残すかという、ちょっとそこの相場観も含めてお聞きしたいなと思いまして、ちょっと細かくなって済みませんが、基本的にはほとんど凍結されるべきだと考えますが、そこの認識はいかがでしょうか。
○山谷国務大臣 安保理決議においては、生活費等に充てられる分は凍結措置から除外することを定めておりまして、この法律においても、公告国際テロリストが取得しようとする財産が、生活のために通常必要とされる費用、テロ行為のために使用されるおそれがないものなどに充てられる場合には許可しなければならないこととしております。
いずれにせよ、財産がテロ行為のために使用されることがないよう、生活費等に充てられるかどうかの認定は的確に行ってまいりたいと思います。
○畑委員 そこの生活に充てられるというのは、恐らくいろいろなレベルがあるんだろうと思うんですが、例えば、生活保護の支給レベルだとか、あるいは年金レベルだとか、いろいろあると思うんです。
ちょっと細かくなりますが、これは通告していませんが、事務方で結構ですが、生活に必要なレベルとはどの程度が想定されるんでしょうか。
○高橋政府参考人 お答えいたします。
今後この金額については詰めていかなきゃいけないんですけれども、一つの参考事例としましては、民事執行法第百三十一条第三号及び同法施行令第一条では、差し押さえが禁止される、標準的な世帯の二カ月の必要生計費を勘案して定められる金銭の額を六十六万円としておりまして、二カ月で六十六万円としておりまして、これが一つの目安になるものと考えております。
これは一つの目安でございますけれども、これらも参考にしてしっかり詰めていきたいと思っております。
○畑委員 ありがとうございました。
実は意外に多いなと思いました。もちろん、この六十六万でテロはできませんよ。できませんが、二カ月で六十六万だと、結構、まあまあの額ですよね。わかりました。これはこれで今後の運用なので、これについてのコメントはこれ以上は差し控えます。
次の議論に入らせていただきます。
今回、国際テロリストの規制でありますけれども、これに限らず、国内的にもこれに類する程度と評価される反社会的団体があるんだろうと思うんです、いろいろな団体が。このような団体の財産の凍結等の措置というのは、現行法ではあるんでしょうか。なければ、検討の予定はありますでしょうか。
○山谷国務大臣 この法案は、FATFからの指摘を踏まえ、国際社会と連携して、国際的なテロリズムの行為を防止し、抑止することを目的として、国際テロリストの財産の凍結等の措置を講ずるものであり、その規制の対象は、そのような法案の目的に照らして、必要な範囲に限定する必要があるというふうに考えております。
したがって、この法案において、国際テロリストの範囲を超えて今おっしゃられたような反社会的団体を規制の対象とするということは、適当ではないと考えております。
例えば暴力団等の反社会的団体については、政府等を脅迫することを目的として、殺人や航空機の墜落、公共施設の爆破等のテロ行為を行うなどした国際テロリストと直ちに同一に論じることはできないことから、財産凍結等の措置の対象とすることについては慎重な検討が必要であると考えております。
○畑委員 やはり、今のお答えだと、国際テロリストというのが、かなり悪質の程度が高い、通常の反社会的団体を超えるということで、まさにこういう規制が許されるという法的たてつけになっているというふうに理解をいたしました。
それでは、最後の質問でありますけれども、この法律を見ると、国際テロリストが規制対象財産の贈与を受けようとするときは許可を受けなければならないということになっております。もちろん、テロリストを指定する場合には聴聞を行わなければならないというふうになっております。
しかし、これは素朴に考えると、そういう人物が聴聞のために出頭することはあり得ないですし、許可を申請することもあり得ないだろうと思います。
結局、これは、法治国家の手続としてこういう段取りを踏むということで、当たり前のことだし、やむを得ないことだろうと思いますが、このこと自体は、テロリストに対しては実効性がある手続とは言えないと思います。
結局、思うところ、私の理解だと、こういう構成要件をふやして、結局これを守らないわけですから、守らないことに対して、こういうところの違反だということでもまた対応できる余地をふやす、罰則を科せる構成要件をふやすということにあるのかなというふうな気もしたんですが、ここのところをお伺いしたいと思います。
○高橋政府参考人 お答えいたします。
公告国際テロリストによる無許可行為が行われることのないよう、関係機関と緊密に連携し、実態把握に努めてまいることとしますけれども、無許可行為が行われた場合には逮捕等の措置を講ずることとなります。
また、この法案では、指定に当たり、聴聞の手続を経なければならないこととしておりますが、指定される者の権利利益の保護の観点から、制度上、その意見を述べる機会を確保することは必要であるというふうに考えております。
いずれにしましても、この法案が成立し、施行された場合には、国際的なテロリズムの行為の防止及び抑止の効果が十分発揮されますよう、その的確な運用に努めてまいりたいというふうに考えております。
○畑委員 この法案、結局は、FATF勧告を受けてつくったわけですが、実効性ということよりも、そういう相場をつくらなきゃいけないということと、あと、やはり、民主的法治国家体制だと手続上どうしてもこれぐらいは取らなきゃいけないという前提でつくっておりますので、フィクションというか、かなり技巧的な形でつくられているなというのは否めないことです。
いずれにいたしましても、この程度のことはやらなきゃいけないことではありますので、これは、国際テロリストに対していろいろな、行政当局が取り締まる一つの手段ができたんだろうと思うんですね。こういうことも使いながら、適切な取り締まりと対応をこれからもしていただきたいと思います。
終わります。ありがとうございました。
○井上委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。
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○井上委員長 これより両案について討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
まず、内閣提出、犯罪による収益の移転防止に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○井上委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
次に、内閣提出、国際連合安全保障理事会決議第千二百六十七号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○井上委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
お諮りいたします。
ただいま議決いたしました両案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○井上委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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〔報告書は附録に掲載〕
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○井上委員長 次に、第百八十六回国会、本院提出、参議院送付、サイバーセキュリティ基本法案を議題といたします。
本案は、前国会において本委員会提出の法律案とすることに決定し、本院で議決の上参議院に送付したものを、同院において継続審査に付し、今国会、原案のとおり議決の上本院に送付してまいったものであります。
したがいまして、その趣旨は既に十分御承知のことと存じますので、この際、趣旨の説明を省略いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○井上委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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サイバーセキュリティ基本法案
〔本号末尾に掲載〕
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○井上委員長 これより質疑に入るのでありますが、その申し出がありません。
これより討論に入ります。
討論の申し出がありますので、これを許します。佐々木憲昭君。
○佐々木(憲)委員 私は、日本共産党を代表して、サイバーセキュリティ基本法案に対して反対の討論を行います。
本法案は、サイバーセキュリティーを軍事、安全保障に密接に結びつけるものであります。
法案は、目的として、「我が国の安全保障」を明記し、新設するサイバーセキュリティ戦略本部がサイバーセキュリティ戦略案を作成する際に、国家安全保障会議、NSCの意見を聞かなければならないとしております。
政府が昨年十二月に決定した国家安全保障戦略は、アメリカとのサイバー防衛協力の推進を掲げ、先日公表された日米ガイドライン見直しの中間報告でもそのことが位置づけられております。
アメリカは、サイバー空間を陸、海、空、宇宙に次ぐ第五の戦場に位置づけ、攻撃と防御の両面から体制づくりを進めております。そして、サイバー空間での戦いに対して、軍事力の行使を含むあらゆる手段をとる可能性を留保すると明言しております。
アメリカは、この戦略の一環として、同盟国も含む各国の首脳指導者や全世界の市民を盗聴や監視の対象としていることが、米国国家安全保障局、NSA元職員の暴露によって明らかになりました。世界じゅうで外交問題にも発展したアメリカ政府によるサイバー空間を利用した無法の諜報活動に対して、安倍内閣は一言の抗議すらしなかったのであります。
法案の提案者は、本法案について、有事を想定した日ごろの対応というところに集中、特化して国家機能を強化していく、そうした国づくりのための法案の中核の一つと答弁しました。さらに、サイバー対策が真にできる国は、みずからサイバー攻撃を行うことができる能力を持った国であるとの認識を示し、そういったところとも緊密な連携をとっていくことが必要であると日米の連携を強調しました。
そのため、サイバーセキュリティ戦略は日米軍事同盟強化の一翼を担うことになるのであり、極めて重大です。
法案は、サイバーセキュリティ戦略本部が、安全保障に係る重要事項に関して、NSCと緊密な連携を図るとしています。提案者は、NSCとの連携について、外国政府等が関与したサイバー攻撃の場合が考えられると答弁しました。しかし、戦略本部にはそのような関与の分析や判断ができないことは審議を通じて明らかとなりました。一体どのような連携を図るのか、全く不明瞭なままであります。
現在、インターネットバンキングの機能を悪用し、他人の口座から不正に送金する犯罪など、サイバー空間を悪用した国民の被害が広がっております。
一部の銀行では、不正送金に対応するソフトを無料で配布するなどの対応がとられているようですが、安心、安全なネット空間をつくるためには、国民個人ではなく、事業者の側にどういう責任を持たせるかなど、大きな課題が山積しています。しかし、本法案からはそのような問題意識が全く感じられません。
本法案は、国民のためのサイバー空間の安心、安全から出発するのではなく、有事を想定した国家機能強化のための法案になっているのであります。
そもそも、国家安全保障や日米軍事同盟に密接にかかわる法案でありながら、自民、公明、民主、維新、みんな、生活の各党が起案した議員立法として提出されていることが問題です。
政府が責任を持たず、内閣官房、防衛、外務などの関係大臣からの責任ある答弁もないまま、成立させようとしていることは到底許されません。衆参合わせてわずか数時間の審議で採決するなど、言語道断であります。
以上で反対討論を終わります。
○井上委員長 これにて討論は終局いたしました。
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○井上委員長 これより採決に入ります。
第百八十六回国会、本院提出、参議院送付、サイバーセキュリティ基本法案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○井上委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
お諮りいたします。
ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○井上委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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〔報告書は附録に掲載〕
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○井上委員長 次回は、来る七日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後四時二分散会