衆議院

メインへスキップ



第11号 平成26年11月13日(木曜日)

会議録本文へ
平成二十六年十一月十三日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 井上 信治君

   理事 秋元  司君 理事 田村 憲久君

   理事 平井たくや君 理事 平口  洋君

   理事 近藤 洋介君 理事 木下 智彦君

   理事 高木美智代君

      青山 周平君    岩田 和親君

      越智 隆雄君    大岡 敏孝君

      勝俣 孝明君    川田  隆君

      小松  裕君    新谷 正義君

      鈴木 馨祐君    田所 嘉徳君

      田中 英之君    高木 宏壽君

      豊田真由子君    中谷 真一君

      中山 展宏君    松本 洋平君

      宮澤 博行君    山田 美樹君

      吉川  赳君    泉  健太君

      郡  和子君    福田 昭夫君

      河野 正美君    高橋 みほ君

      山之内 毅君    輿水 恵一君

      濱村  進君    杉田 水脈君

      松田  学君    三谷 英弘君

      佐々木憲昭君    宮本 岳志君

      畑  浩治君

    …………………………………

   内閣府大臣政務官     越智 隆雄君

   内閣府大臣政務官     松本 洋平君

   参考人

   (株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長) 小室 淑恵君

   参考人

   (独立行政法人労働政策研究・研修機構副主任研究員)            内藤  忍君

   参考人

   (三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社女性活躍推進・ダイバーシティマネジメント戦略室室長)            矢島 洋子君

   内閣委員会専門員     室井 純子君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十三日

 辞任         補欠選任

  鬼木  誠君     宮澤 博行君

  福田 昭夫君     郡  和子君

  山之内 毅君     高橋 みほ君

  佐々木憲昭君     宮本 岳志君

同日

 辞任         補欠選任

  宮澤 博行君     岩田 和親君

  郡  和子君     福田 昭夫君

  高橋 みほ君     山之内 毅君

  宮本 岳志君     佐々木憲昭君

同日

 辞任         補欠選任

  岩田 和親君     鬼木  誠君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案(内閣提出第二二号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

井上委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長小室淑恵君、独立行政法人労働政策研究・研修機構副主任研究員内藤忍君、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社女性活躍推進・ダイバーシティマネジメント戦略室室長矢島洋子君、以上三名の方々から御意見を承ることにいたしております。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。本案について、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 小室参考人、内藤参考人、矢島参考人の順に、お一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、参考人各位に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、小室参考人にお願いいたします。

小室参考人 皆様、おはようございます。株式会社ワーク・ライフバランスの小室と申します。

 本日は、資料を作成してお配りしておりますので、ごらんいただけたらと思います。

 私は、企業の働き方見直しコンサルティングという仕事をさせていただいておりまして、残業を減らして売り上げを上げるということをやっております。

 建設業で、残業が三年間で大幅に減って、当初六億だった利益が四十億に伸びたような企業さんがあります。こういった短時間で生産性の高い社会をつくりたいということを仕事にしております。また、弊社自身も、全員で残業禁止を実践し、有休消化一〇〇%をしながら、八年間ずっと増収増益という形で事業をやってまいりました。

 また、おめくりいただいたところに子供の写真が入れてあって大変恐縮なんですけれども、今、二人を子育てしています。八歳と一歳の、どっちもちょっと女子に見えるんですけれども、二人とも男子でして、二人の男の子を育てながら、けさもちょっと食事を食べさせるのに奮闘しながら、ここに何とか時間どおりに来たという状況です。

 ことしの九月からは産業競争力会議の民間議員をさせていただいておりまして、雇用・女性活躍ワーキングを担当させていただいております。

 そういった中で、女性活躍のKPIのチェックをしておりますが、二〇二〇年、三〇%を目指すということを考えていくと、現在は九・八%まで来ていなくてはならないわけですが、実際の数字は七・五というところです。

 もちろん、不十分と思っていますが、ただ、ここまで動いてきたのは、私は初めての実感です。この国が女性活躍ということに初めて動いているというふうに思っていますので、そのムーブメントに関して大変感謝をしておりますし、この動きがとにかくとまらないようにということが、女性だけでなく、この国の次世代のためではないかなというふうに思っております。

 その上で、女性活躍推進が本当に成功するポイントということをきょうはプレゼンテーションさせていただきたく、資料をつくってまいりました。

 スライドナンバーの二をごらんいただければと思います。

 現在、私どものクライアントは九百社いるんですけれども、クライアントから一番相談されるのは、女性自身が管理職になりたがらないという傾向についてです。

 今までは、女性側が向上心が弱いんだというような位置づけにしてきた企業が多いのですが、実は、これを私どもが深くヒアリングしていくと、全くそういった結果ではありません。

 女性たちが言うのは、管理職になりたくないではなくて、今、目の前にいる管理職のようにはなりたくないというふうにおっしゃいます。管理職のイメージというのは、残業代がつかなくなって、責任だけが重くなって、家庭が崩壊している、このイメージなんですね。これは全く貧乏くじなので、なりたくないというふうに言っています。ここを変えていかなくては根本的な女性の活躍にはならない、小手先の支援だけで終わらせずに、この国の労働モデルの設計そのものを見直していくということが必要ではないかと思っております。

 その上で、資料の真ん中に書かせていただきましたが、今回、女性の活躍に関する状況把握、改善すべき事項についての分析項目というのがあるかと思います、事業行動計画の策定の案のところに。そこに四つ例が出ていまして、女性の採用比率、それから勤続年数男女差、労働時間の状況、女性管理職比率という四つのポイントを見て事業行動計画をつくっていくべきというふうにあるわけですが、重要なポイントは、この三の労働時間のところだと思っています。

 この労働時間というところのチェックは、女性の労働時間を配慮してあげるではなくて、男性を含めた全従業員の労働時間の改善が重要だというふうにポイントを捉えています。というのも、今、三六協定を結べば、事実上、何時間でも働けてしまうというような状況があります。こういう中で、上司が、月末や年度末でどれだけ山を高く積んだのかという評価をすると、当然ながら、時間に制約がある人はこのレースで絶対勝てません。ですので、そういった中で、時間に制約を持った瞬間に割り切り型になるという現象が出ています。実は、これが介護をする男性に今出てきている現象なんです。親の介護で時間に制約を持った男性は、もうキャリアに未練を持つほど苦しいという状況になるので、そこから男性の割り切り型が出てきています。このままいくと、時間に制約を持つ女性も男性も割り切り型だらけ、労働市場が非常にモチベーションダウンしてしまうということが見えています。

 また、その下の中黒で書かせていただきましたが、もう一つ労働時間が大切なのは、今回、女性の活躍が非常に望まれるわけですが、ただ、それと同時に、将来の子供たちを産める環境でなくては、日本の労働人口はさらに激減してしまうわけです。これは内閣府のデータで、一人目の育児期に夫の帰宅時間が遅く、家事、育児の参画時間が短い家庭ほど二人目が生まれていないというような傾向というのがはっきり出ています。つまり、夫の帰宅時間ということが出生率には非常に重要、人間二人で二人ずつ産んでいかないと少子化になりますので、一人目で懲りてしまうような状況ではどんどん少子化になります。

 これは、私も長男を産んだときに、夫は経産省の役人なんですけれども、主な残業の理由は国会なんです。それによって本当に帰宅が遅く、二人目なんてと思ったことが本当にありましたが、かなり今経産省は働き方を変えてまいりまして、そのおかげで私も二人目を持つことができました。

 下にまとめて書きましたが、男性を含めて働き方変革をせずに、女性の労働力だけ都合よく利用することはできないのではないかなというふうに思っています。

 しかし、この労働時間のことに踏み込むと、絶対経済界が反対するんじゃないかと思っているかもしれません。しかし、私は年間二百五十回講演をしているんですけれども、経営者の多くが、何で労働時間を短くしなきゃいけないか、やっとわかったよというふうに最近言ってくださいます。その説得のプレゼンを、きょう同じものを持ってきましたので、ごらんいただければと思います。

 人口ボーナスとオーナスという考え方なんですが、この考え方を知っているという方は、きょうどれぐらいいらっしゃいますか。人口ボーナス、オーナスについてです。ありがとうございます。

 スライドのナンバー三をごらんいただければと思います。

 人口ボーナス期、これはハーバード大学のデービッド・ブルームが十年前から提唱して認知度が広がっているものなんですが、人口ボーナス期というのは、日本の七〇年代をイメージするといいかと思います。若者がたくさんあふれていて、高齢者がちょっとしかいないという状況で、こういう状況ですと、社会保障費がかさまないので、その国は経済発展するのが当たり前だと言われています。日本だと、六〇年代から九〇年代半ばで、もう終わりました。今、韓国、中国、シンガポールやタイが人口ボーナス期です。インドは二〇四〇年まで人口ボーナス期だそうです。

 ただ、この人口ボーナス期、一度終わると二度と来ません。なぜかというと、人口ボーナス期に、人件費の安さで世界じゅうからの仕事を受注して急成長した国は富裕層ができますので、子供に教育投資をします。子供が高学歴化して、人件費が上がったり、少子化になったりします。また、高齢者がふえるので、社会保障費がのしかかるという形によって、その国のGDPは横ばいになるということがわかっています。こういったこの仕組みが、実は、アジアの奇跡のほとんどは、この人口ボーナス期で説明ができるというふうに言われているわけです。

 では、人口オーナス期に入ったらどうなるのかというのが次のスライドになります。

 この人口ボーナス期が終わると、人口オーナス期という期に入ります。日本は九〇年代の半ばから、もうこの期に入っています。オーナスは、負荷、マイナスという意味で、人口構造がその国の経済にマイナスに作用するという状態を指します。働く人より支えられる人が多くなる状況によって、もう社会保障費の維持が困難になるというような、そういった問題が起きたり、労働力人口の減少が起きたりということが言われています。もうこうなると、人件費が高騰しますので、世界じゅうからの仕事を受注して爆発的な経済発展をするということはできないという状態になります。

 ただ、人口ボーナス期からオーナス期には、ほぼ全ての国が移行するんです。その中での問題は、日本は、主要国で最も少子高齢化の進行が速く進んで、すごいスピードでオーナス期に入ってしまったという、またその後、それが全く緩まないということが問題です。

 その問題の主な原因は、以下に二つ挙げました。

 一つは、最近すごく本気度を感じますが、その前まで待機児童ゼロに本気で取り組まなかったこと。産んだ女性は復帰ができない、つまりその時点で現在の労働力がまずマイナス一になってしまうということが起きました。そしてもう一つが、長時間労働環境を改善しなかったこと。この人口ボーナス期に習慣化した長時間労働の環境を改善しなかったことで、女性が仕事を続ける場合は、産むか働くかの二者択一になったということで、将来の労働力をふやせなかった。

 こういった、現在と将来の労働力をふやせない環境を放置したことによって、人口オーナス期に加速しながら入っていってしまったという状況が起きました。

 ですが、一番下に書きましたが、人口オーナス期になったら経済は終わりではないんです。オーナス期のルールというのがあります。人口オーナス期になったら、人口ボーナス期の成長をもう一度みたいな政策は、もう一切通用しません。ですので、人口オーナス期に経済発展するルールにいかに組みかえていくかということで、実は再浮上することができます。

 そのルールの違いを、スライドの五にまとめました。

 わかりやすくするために多少極端に書いていますが、スライド五の、上の四角い中を見てください。

 人口ボーナス期に経済発展しやすい働き方、こう言ってしまうと身もふたもないんですが、実は、なるべく男性が働いた方がいいんです。重工業が主体なので、筋肉がついている人の方が向いています。

 それから、長時間働いた方がもうかるんです。この時期のビジネスモデルのほとんどが、早く安く大量にモデルですので、ベルトコンベヤーを一分一秒長く動かした方が、やはり市場に多く物が出せます。時間は成果に直結していました。

 それから三つ目が、なるべく同じ条件の人をそろえた方がいいんです。市場は、均一なものを大量にというのを求めています。それから、労働者が余っていますから、わかりやすい一定条件で足切りをして、そして似たような人たちが一斉に仕事をするのが効率がいいというのが実際にあります。

 この時期は、経営者としては、転勤、残業、出張というものでふるい落として、従業員は、ふるい落とされないように必死になることで忠誠心が高まるというような、こんな手法が実は経営者として大変有効な時期です。おまえのかわりなんか幾らでもきくんだぞ戦略というふうに私は呼んでいるんですけれども、それによって非常に簡単に経営ができるというような時期だったと言えます。

 しかし、人口オーナス期になると、それが真逆のルールになります。

 下の枠の中をごらんいただければと思いますが、なるべく男女ともに働く組織が勝ちます。というのも、まず頭脳労働の比率がぐんと高くなるので、どちらを使っても大差ないという状態になる、かつ労働力が一気に足りなくなりますので、その両方を徹底的に活用できた組織が一番いい人を採ることができるということになります。

 そして二つ目に、なるべく短時間で働いた方がいいんです。というのも、時間当たりの費用が高騰化するからです。今の日本では、中国人の八倍、インド人の九倍の人件費で、光熱費が毎年上がっています。この状況で体力に任せて働かせると、必ず利益の出ない仕事をしてしまいます。本人たちは、人口ボーナス期に長時間働くと成功したという成功体験を強くまだ持ってしまっているので、本人たちの意思に任せているとだめなんですね。国として、また企業として、徹底的に短時間で成果を出させるモデルに、意識的に一気にスイッチするということをしないと、働き方の習慣によって沈んでいってしまいます。

 また、この時期の大きな特徴が、男性の介護者が出てくるということです。当然ながら、高齢者がふえると、それを介護するのは女性だけでは賄い切れません。女性も労働市場に出るわけですから、男性が親の介護で時間制約を持つということが出てくるわけです。

 こういった中で、もう一つのポイントが、共働きになると家庭の消費に影響が出てきます。今、家庭消費だけが最後上がらなくて、非常に不思議な状態になっていますが、これは、多少景気がよくなってくると、仕事が忙しくなり、家庭の中の夫婦の決定する会話が行われません。

 先日、私の夫が平日に有休がとれたので、掃除機が壊れているんだけれども、洗濯機を買いかえたいんだけれどもという話がやっと全部できて、全部買ってもらいました。こういった夫婦で会話ができないと消費の最終決定ができないので、最後、せっかく景気がよくなったのに、忙しさで消費が進まないという状況になります。やはり内需が非常に重要になってくるので、この時期、家庭に時間を返していくということも経済が上がってくる上で重要なポイントになります。

 また、一番下のポイントが実は一番重要で、なるべく違う条件の人をそろえるということです。

 市場は、もう均一なものに飽きます。ですから、違う価値観で、短サイクルで商品を常に出し続けなくてはいけません。一人がヒットを考えている間に、全く違う視点から次のヒットを考えている人が職場にいないといけない。ということで、多様な人材が社内にいないといけない中で、今後、転勤や残業の可否といったもので足切りをしていくと、介護する男性も皆ふるい落とされてしまうというような、そういった職場になり、結果として均一性が進んでしまいます。

 今後は、下に二行書きましたが、育児、介護、難病、障害といったものが労働する上での障壁ではないという状態をつくっていくということが、労働環境の整備において重要ではないかと思います。

 こうした、人口ボーナス期にしか発展できない働き方に固定化してしまったものを組みかえて、柔軟で多様な働き方に変えていく必要があります。

 しかし、単純に働き方を柔軟にすればいいということではなくて、一足飛びに柔軟な働き方に変えていくというのは、実はちょっと問題が起こります。

 重要なのは、二段階で柔軟な働き方に変えていくということなので、スライドの六をごらんください。

 左上の図、これが現在の職場だと思ってください。黒い方で、棒が長い方が長時間労働の人だと思ってください。そして、短い棒の方が時間に制約がある方です。

 今の市場は、短時間で仕事を終えることに何のインセンティブもありません。こういった短時間で効率的に働くことが評価されない職場で、成果ではかって時間管理しないという働き方を急に導入すると何が起きるかというと、全員が持てる時間を全部仕事に投入しないと勝てないというふうに思ってしまい、実は、時間をかけられると思ってかけていった人がどんどん疲弊して、生産性は結果的にどんどん低下するということが起きます。

 また、時間に制約がある、色の白い方ですね、こちらの方は、時間に制約があることで完全に負け組になりますので、モチベーションを下げてしまうということが起きます。

 問題は、右上にスライドした数年後の状態です。実は、日本は、もうあとたった三年で右上の図のようになります。二〇一七年になると、団塊世代が一斉に七十代に突入しますので、要介護で時間に制約を持つ人だらけになるからです。

 そうすると、右上の図に言葉で書きましたように、介護、育児で制約を持った大多数が割り切り型になります。そして、女性は管理職に当然なりたがりません。そして、黒い部分ですけれども、成果ではかる働き方だからという対象者になった人は、そこに全ての仕事が集中してしまいますので、せっかくの貴重な労働力が過労死寸前状態で疲弊してしまうという状態が起きます。

 ですので、一足飛びにそこに行くのではなくて、左下の図のところを一つかませていくことが重要です。

 まず、一度、時間に制約がない人材も含めて、徹底的に時間内で高い成果を上げるという働き方に国全体の習慣から何から全てをシフトしていくということです。

 それによって、全ての人にライフはありますので、例えば、見てもわからない方も、その後ろにお子さんが障害を抱えていたり、それから難病を抱えているので長時間働くと再発してしまうという方もいらっしゃいます。そういった全ての方にとって働きやすいという状況をつくった後、右下のように柔軟性をつくっていくことが重要になります。

 早出であったり、遅出であったり、中抜けであったり、在宅勤務であったり、時間や場所にとらわれずに、育児や介護の制約があっても、成果を出せば評価がされる、そういった職場をこの二段階を踏んでつくっていく。そうすれば、女性も生き生きと管理職になっていくというふうに考えています。

 下にまとめを書きましたが、育児女性、介護男性、難病や障害を持つ人も、企業の主戦力へしていく。働き方を変えれば、真の総力戦が実現するのではないかというふうに思っております。

 最後に、まとめがスライドの七になります。

 その上で、三つのポイント、政府にぜひ推進役になっていただきたい、ムーブメントをつくっていただきたいと思います。

 一点目が、政府が率先して働き方を変えるということです。

 クールビズが大変定着したので、それに対抗して、スマートビズというのはどうかなというふうに思っているんです。例えば、大臣が定時で帰る、それで、妻の家事を手伝うとか、それからもっと短く話す練習をするとか、私は、いつも国会中継を見て、ぜひお勧めしたいと思っているんです。

 これらをやることに財源は要らないんです。こうして皆さんが早く帰ると、恐らく官僚がみんな早く帰れますので、あの残業代とタクシー代が猛烈に浮くというふうに思っています。ここから財源が出てくるぐらいだと思いますので、あすからぜひというふうに思っております。

 そして二点目が、今企業は、お互いにタイトな期日を設定したり、強いクレームをつけ合うことによって、とてもストレスフルな働き方をし、お互いの残業を膨大に生み出すというやり方をしています。政府もそうですけれども、金曜にメールしてきて月曜に返事がないと怒るみたいな、こういう状況は、おもてなしの国とはほど遠い働き方だと思っています。

 これから、この疲弊合戦をやめさせるために、メールの返事は四日待つルールとか、それから極端な短納期で発注する企業名は公表するといったような、国民のストレスを下げて、実際に働き方が変わるための運動というようなものこそが、財源を必要とせずにもっとできることなのではないかと思います。

 そして三つ目が、二〇二〇年、日本にとって大変重要な年ですけれども、オリンピックにどれだけ若者のボランティアの力を引き出せるかが重要だと思っています。

 ボランティアに向けて今から語学を勉強したい、それから海外ツーリストの案内をするボランティアをしたい、こういった準備がもう若者の中では始まってきています。日本人は、社会人になると極端に勉強しなくなる国なんですけれども、こういったことではグローバル社会から置いていかれますので、インプットをもっとふやして、勉強する国というようなライフスタイルの発信が必要ではないかというふうに思っております。

 最後に、一番下のまとめですが、女性は、女性、女性と保護されたいとは思っておりません。働き方で足切りを受けなければ、実力で活躍できると思っています。

 ですので、女性活躍推進をきっかけとして、男性は残業地獄から抜け出す、そして、この国が介護と両立できる体制にシフトする、そういった一つのきっかけとしていただいて、全ての人が我が身事になっていただくことで初めて成功するのではないかというふうに思っております。

 以上です。お時間をどうもありがとうございました。(拍手)

井上委員長 ありがとうございました。

 次に、内藤参考人にお願いいたします。

内藤参考人 おはようございます。労働政策研究・研修機構の副主任研究員をしております内藤忍と申します。よろしくお願いいたします。

 今回は、貴重な場で意見陳述の機会を賜りまして、ありがとうございます。

 私は、労働法を専門としておりまして、中でも、ハラスメント問題や、イギリスの差別禁止、平等法制についての研究をこれまでしてまいりました。

 きょうは、法案の詳しい内容紹介は省きまして、次の三点について、御紹介もしくは個人の見解を述べさせていただきたいというふうに思っております。

 一点目は、私の資料はこれでございますけれども、目次をおめくりいただきまして、女性労働者をめぐる現状についてです。現状を概観しまして、女性の活躍を目指す上で何が問題になっているかを明らかにしたいと存じます。

 二点目は、本法案が採用した自律的、応答的な規制という新たな規制手法につきまして、主にイギリスでの展開を中心に御紹介したいというふうに思います。

 三点目は、一般事業主行動計画で取り上げるべき事項との関係で、女性の活躍のために解決すべき課題について考えてみたいというふうに思います。

 まず、一点目です。

 現在、パート、アルバイト、派遣社員などの非正規労働者は、女性労働者の過半数、五五・八%を占めるに至っています。これがスライド三になります。

 そして、正規、非正規労働者間の賃金格差は非常に大きくて、スライド四になりますけれども、特に、女性非正規労働者の年間平均給与は、そこには書いてございませんが、約百四十四万円足らずであります。一方、男性正社員は五百二十一万円となっています。

 レジュメのスライド四は、パート労働者とパート以外の一般労働者の所定内給与の差を見たものです。こちらでも、年齢によっては、男性正規労働者の給与が女性非正規労働者の二・五倍以上になっていることがおわかりだというふうに思います。

 次に、コース別雇用管理制度についてですけれども、この制度が導入されている企業においては、管理職に登用される可能性の高い総合職に占める女性割合が一割程度という実態があります。これがスライドの五になります。左側の図一の部分です。

 さらに、スライドの六になりますけれども、約六割の女性が第一子出産を機に退職しております。これは皆さんよく御存じのことかというふうに思います。

 どうしてやめたかといいますと、次のスライドの七でございますが、四人に一人は、仕事と育児の両立の難しさで仕事をやめています。この円グラフの赤く囲った部分です。具体的には、長時間労働等勤務時間の問題、それから、両立支援の雰囲気のなさ、子育てしながら就労を継続できる制度の不備の問題などがネックとなっております。

 そして、その円グラフのすぐ上の部分、左上の部分ですが、退職した女性の十人に一人、九・〇%は、解雇された、もしくは退職勧奨されたという回答をしておりまして、企業の均等法違反等の行為によって仕事をやめざるを得ないという状況にあります。

 それから、次をおめくりいただきまして、連合の調査でも、妊娠中や産休明けなどに心ない言葉を言われたとか、妊娠、出産がきっかけで解雇や契約打ち切り、自主退職への誘導等をされたとして、約四人に一人の女性が、妊娠、出産等を理由とする解雇その他不利益取り扱いやハラスメントを受けているという結果が出ています。

 それから次は、長時間労働ですが、こういった慣行も、女性にとっては就労継続を難しくしています。現在、こちらの今赤い点線で囲ったところは六十時間以上になっていますが、もう一つ見ていただいて、四十九時間以上で見ますと、男性正規労働者の四割強が四十九時間以上の労働をしています。女性正規労働者の二割強も週四十九時間以上働いている現状です。

 次をおめくりいただきまして、日本の長時間労働者の割合は、国際的に見て大変高くなっています。

 こうした女性労働者をめぐる現状を踏まえますと、多くの女性労働者が活躍するためには、女性管理職の積極的登用だけではなくて、正社員としての就業、男女間の賃金格差、妊娠、出産前後の就労継続等のより幅広い課題に対する対策が必要であるということがわかります。

 二点目に入ります。二点目は、スライドの十一からになります。本法案が採用した自律的、応答的な規制という規制手法についてお話ししたいというふうに思います。

 近年、大陸欧州において、法律による画一的な規制の方法について、多様な社会実態になじまず、その規制の効果に限界があるということが指摘されるようになってきています。

 そして、これにかわって、全ての当事者に開かれた交渉、対話というプロセスを要求するという自律的、応答的規制という規制のアプローチが提案されるようになってきています。具体的には、組織みずからが組織を関係当事者と協同しながらチェックして見直していくことを促進する規制ということになります。

 このような法の手続化と呼ばれる考え方は、私はイギリス労働法を専攻しているんですけれども、イギリスにおいても、労働法のさまざまな局面においての適用可能性やその是非が議論されておりまして、今回の法案に関連する差別禁止、平等法制であるところの二〇一〇年平等法などの法律でも既に導入されております。

 その一つの例として、スライド十二にありますイギリスの二〇一〇年平等法における公的機関の平等義務というものを御紹介したいというふうに思います。

 パブリック・イコーリティー・デューティーというふうに呼ぶんですが、この法規定は何を規定しているかといいますと、イギリスの全ての公的機関等は、その行政施策の実施に際して、差別やハラスメントなど、この法律、平等法で禁止される行為の撤廃及び保護特性、この保護特性というのは特有な言い方ですけれども、差別事由ということですね、差別事由を有する人々と有しない人々の機会の平等の増進を考慮する義務というのをまず負います。

 さらに、大臣が判断した場合には、この義務に加えまして、当該公的機関がこの平等義務の遵守状況を説明する情報を公表する義務や、平等義務の目的をさらに達成するために必要と考えられる目標を準備、公表する義務というものが設定されています。

 さらに、この十二枚目のスライドの一番下になりますけれども、イギリスの全ての公的機関は、必ず、みずからが行う政策上の決定が社会経済的不平等の削減にいかなる効果を持ち得るかを考慮する必要、こういう義務も課せられています。つまり、公的機関は、みずからの主たる政策の効果についてモニタリングし、必要な場合には不平等をなくすように政策を見直すという義務を負います。

 こうした自律的、応答的規制に必要なことが、次です。

 まずは、これまで述べましたとおり、関係当事者に広く情報を公開する必要がございます。さらに、開かれた交渉を行う義務がありまして、これはモニタリング体制ということになります。労働者の意見聴取か、できれば協議の義務づけということになります。

 これに関しまして、厚労省でも、以前、平成二十三年度から、「ポジティブ・アクションを推進するための業種別「見える化」支援ツール」というものを作成しています。皆さんのこのレジュメの最後につけてございます。そちらの青い色のついた部分でございますけれども、表紙と該当するページのみつけてございます。

 業種ごとにこのツールがつくられておりまして、きょうは百貨店業のものを持ってまいりましたが、この六ページ、最後のページをごらんいただければわかりますように、この図の労使協議会というところで、まず労働組合側が入って提案したり、それからその下のポジティブ・アクションプロジェクトチームというところでも労使の枠組みというものがモデルとして示されているところです。こういったのが参考になるかというふうに思っております。

 さらに、こういった規制を自主的に企業に行わせるのか、それとも義務化するのか、ここは大きな違いがあるというふうに思います。

 イギリスは、そうした試行錯誤をもう繰り返していまして、まずは自主的に企業にやらせてみようということで、数年前から、平等賃金監査それから政府のキャンペーン、大企業にキャンペーンに参加してもらって、自発的にこういった情報を公表しようということでやられています。

 しかし、結果的には、なかなか成功していない、なかなか情報を公開しないということになっておりまして、限界が見えてきております。そこで、現在では、義務づけが必要なのではないかという声が与党からもイギリスでは出ているところです。

 次に、三点目になりますけれども、それでは、女性の活躍のために解決すべき課題というのはどこにあるかというところです。

 スライド十四ですけれども、ここに挙げましたものは、ほとんど建議にも上げられているものです。男女賃金格差については建議に上げられておりませんでしたけれども、皆様のお手元にこういうものが配られているかというふうに思います。

 これは、以前、厚労省でつくっていただいた男女間の賃金格差解消のためのガイドラインというものですけれども、こちらの十五ページですけれども、趣旨のところに、「男女間賃金格差の問題を賃金・雇用管理のあらゆる点から検討し、要因を明らかにすることは、女性の活躍推進の課題を明らかにすることであるといえる。」ということで、男女賃金格差ということも非常に重要な課題となってくるというふうに思います。

 それから、長時間労働の削減ですとか、妊娠、出産、育児を理由とする解雇その他の不利益取り扱い、このあたりも先ほど実態のところで御説明したとおりでございます。

 それから、職場のハラスメント、現状では、セクシュアルハラスメントについて、均等法に企業の措置義務がありますけれども、なおセクシュアルハラスメントの相談というのは労働局に多く寄せられているところでございます。

 さらに、女性に対するパワーハラスメントという問題も今はございますので、職場のハラスメントというのも解決すべき課題かというふうに思います。

 さらに、さまざまな女性が受ける差別とそこに書いてございます。これは、シングルマザーですとか障害を持つ女性、つまり、障害という差別事由と女性という差別事由を両方持つということですね。高齢女性もそうです、同性愛者の女性もそうですね。

 こういった、さまざまな女性が受ける差別というものも、今後は女性の活躍のために解決すべき課題ではないかということを国際的な観点から申し上げたいというふうに思います。

 まとめです。まとめの上の二点につきましては、今御説明したとおりですけれども、すなわち、女性労働者をめぐる現状を踏まえますと、女性の活躍のためには、女性管理職登用といった対策に加えまして、その妨げとなっている幾つかのその他の事項、このスライド十四で述べたような事項に関しても取り組むことが必要でないかというふうに感じます。

 さらに、自律的、応答的規制のアプローチをとる本法のような枠組みで女性の活躍を進めるとすれば、労働者側からのチェック機能、つまり、モニタリング体制ということが必要になってくるかというふうに思います。

 最後に、女性が生き生きと活躍する社会、そのような社会を目指すという場合には、その活躍の妨げとなっている状況、すなわち、女性の人権が侵害されている現状を是正することを目的とすれば、達成に近づくのではないかと思います。そして、女性が生き生きと活躍することによって、結果的に、組織の生産性や業績の向上、そして、国家の経済成長ということがおのずと効果としてあらわれてくるのではないでしょうか。

 ありがとうございました。(拍手)

井上委員長 ありがとうございました。

 次に、矢島参考人にお願いいたします。

矢島参考人 皆様、こんにちは。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの矢島と申します。よろしくお願いいたします。

 私は、少子高齢化対策を中心テーマといたしまして調査研究、政策提言を行ってまいりましたけれども、近年は女性活躍やワーク・ライフ・バランスについての調査ですとか、それから、最近は企業の皆様からの御相談を受けたコンサルティングなどもさせていただいております。

 プライベートでは、私自身も高校二年の息子がおりまして、今、ぜいたくにもイギリスに修学旅行中なんですけれども、最近は、自分の子育てというよりも、むしろ部下の女性たちの子育てをしながらの活躍というものをサポートすることを私自身の課題とさせていただいているところでもございます。

 本日のテーマでございますけれども、本日は、三点述べさせていただきたいと考えております。

 まず第一に、なぜ今女性活躍推進かということでございます。次に、女性活躍推進における現在の課題。そして最後に、女性活躍推進法に対する期待と懸念というところでございます。

 お配りいたしました資料、済みません、資料の節約癖がついておりまして、一枚に二枚ずつのアップとなっておりましてちょっと見にくいかもしれませんけれども、一枚おめくりいただきまして、まず、この一の、なぜ今女性活躍推進かというところでございます。

 女性の活躍推進といいますと、日本においてもかなり長く取り組んできている大きなテーマでございまして、中には、なぜ今さら女性活躍推進なのかといった声も聞かれます。

 その中で、私どもも、実は女性活躍推進・ダイバーシティマネジメント戦略室という非常に長い名前の室を昨年の七月に設置いたしました。これが三年ほど前だったら、もしかしたら、ダイバーシティマネジメント戦略室という名前だけにしたかもしれません。その中に、あえて長い名前になるのを承知で頭に女性活躍という名前をつけたのは、やはり近年、企業の皆様から御相談を受けるテーマが、単にダイバーシティーやワーク・ライフ・バランスではなく、女性活躍というところに非常に焦点が当たっているからでございます。その背景をまずは御紹介いたしたいと思います。

 四枚目の資料にございます図をごらんください。これまでの状況としておりますが、これは少し前のデータ、平成十九年の三月に内閣府で実施されたデータでございます。

 こちらで女性の働き方の希望というのを見ていただきますと、未婚で、結婚していない場合などは、働き方の希望として、残業もあるフルタイムの仕事を希望される女性も少なくありません。ただ、子供が生まれて、子供が小さいときというのは、そういった希望をする方はほとんどいらっしゃらず、中には、三歳未満のときには一時的に働きたくないという希望を持たれる方もいらっしゃいます。それが、子供が小学生の時点では、九割の女性は働きたいといった希望を持っております。ただ、どのように働きたいかと申しますと、フルタイムだが残業のない仕事、あるいは短時間勤務、家でできる仕事、こういった働き方を希望しているわけです。

 ただ、考えてみますと、これまでの日本の企業社会においては、正社員イコール残業もあるフルタイムの仕事というのが当たり前であって、こういった子供を持った女性たちが希望する働き方というのは、日本の企業社会の中で正社員としてはあり得なかったというのが実態のところではないかと思います。

 そういう中で、右側のグラフにありますように、現実というところでは、白いところで、希望よりもかなり大きな比率で働いていない方が多くなってしまっている。そして、正社員というのは、子供が生まれた後は急激に減って、そのままふえないというような中で、非常に少なくなってしまうというような状況がございました。

 それが、近年、御承知のとおり、二〇〇九年、育児・介護休業法の改正によりまして、子供を持った方が、三歳までは、こちらのフルタイムだが残業のない仕事、すなわち所定外労働の免除や短時間勤務というのを実質的に利用できるようになった。こういうような変化がありまして、この法律の改正というのは、これまで女性たちが子供を持った後に望んでいた働き方がある程度選択できる環境をつくってきたというふうに言えるかと思います。

 その結果として、五ページ目の図をごらんいただきたいんですが、近年の状況として、こちらのグラフは企業規模別に見ているんですけれども、大企業を中心に、結婚、出産を機に離職する正社員女性がかなり減った、あるいは、やや減ったと回答する割合が高くなっております。

 これを見ると、中小企業では余り変わらないという答えも多いんですが、では、中小企業はおくれているのかと申しますと、実は、以前は、平均的に見れば、中小企業の方が就業継続する女性あるいは正社員女性の割合が高いというような状況もございまして、結婚、出産時の離職というのは、どちらかといえば、特に大企業で深刻な問題だったわけですが、それがある程度変化をしてきているというような状況がございます。

 そのような中で、離職防止にでは何が役に立ったのかということを聞きますと、特に大企業では、短時間勤務制度を利用できるようになったことという回答が一番多く聞かれます。中小企業では、育児休業制度がとりやすくなったことというのが一番で、二番目が短時間勤務制度というような状況で、こういった制度によって、離職防止というのが実現してきているという部分も見られます。

 次の七ページを見ていただきますと、では、こういった育児休業や短時間勤務といった両立支援施策で、一定程度両立、就業継続が可能になったというようなことがあるわけですが、では、法定どおり、育児休業、子が一歳までと、短時間勤務、子が三歳までをフルに利用したら、キャリアへの影響はどうなるんだろうかということも企業に聞いております。

 答えとしては、全く影響しない、余り影響しないと、どちらとも言えない、影響するが半々ぐらいの状況になっております。

 つまり、両立支援施策を企業は長いこと推進してきたんですが、実際、その制度を利用した場合に女性のキャリアがどうなるかということについては、これまで余り考えてこられなかったということです。半分ぐらいは影響しないと答えているんですが、実際、そういった取り組みを積極的にしている企業では、短時間勤務制度などは、子が三歳までではなく、就学前まで、あるいは小学校三年生ぐらいまで設けている企業も多いので、そういった企業では、さらにこういった中長期的なキャリアへの影響というのを深刻に捉えているというところもございます。

 ですので、今、就業継続の先にある女性の活躍推進ということが、企業の中でこういった面から深刻な課題になってきていた。これは、昨年六月に日本再興戦略で女性活躍推進が打ち出される少し前から見えてきていた兆候で、その中で、改めて女性の活躍ということが非常に重要な課題になってきたということを申し上げたいと思います。

 次に、では、具体的にどのようなことが課題となっているのかということを御説明したいと思います。

 九ページ目でございますけれども、日本企業における女性活躍推進の歩みというのを示させていただいております。

 まず、真ん中にあります雇用機会の均等施策。言うまでもなく、一九八五年、雇用機会均等法がございまして、差別の禁止だけではなく、積極的改善措置としてのポジティブアクションも取り組みが行われ、ただ、当時は、働く女性の裾野が広がっていない中で、一部の女性の採用、登用のポジティブアクションを進められたということなんですけれども、その中で、一部の女性に大きなプレッシャーがかかったり、その後になかなか女性たちが続けなかったりといった問題がありました。

 そういう中で、九〇年代は、少子化対策という目的もありましたが、仕事と家庭の両立支援という取り組みが積極的に行われました。ただ、これもなかなかうまくはいかなかった。それは、育児休業制度というのがあるわけですけれども、育児休業制度はとれても、育児休業から復帰した後で、出産前と同じような長時間労働が待っているということがわかっているために、妊娠した時点、あるいはさらにさかのぼって結婚した時点で、両立を諦めて離職してしまう女性がかなり多くいたからです。

 そういったことを背景に、一番下にございますワーク・ライフ・バランス、やはり、男性を含めた基本的な働き方を見直す必要というのが強く打ち出されてきたところでございます。

 一定程度、両立や均等に関係する制度が整ってきた中で、近年では、一番上にございますキャリア形成支援、こういった制度を十分に活用すること、そういったものを利用しながら、管理職等へ育成していくための女性だけを対象にした研修をするといった取り組みなども始まっております。こういったものは、いわゆる一種のポジティブアクションと言ってよいのではないかというふうに考えております。

 この女性の活躍で特に管理職などが注目されるようになってきて、ポジティブアクションに取り組む企業もふえてきたんですけれども、その下の十ページの図を見ていただきたいんですが、先ほど内藤様からも御紹介ありました厚生労働省のポジティブアクションの見える化、こちらのツールは当社の方で開発させていただきまして、その基本的な構造を示したのがこちらの図でございます。

 こちらの図を見ていただきますと、やはり女性の活躍というところで、管理職女性比率が注目されるところではございますけれども、やはりいきなり管理職だけをふやすことはできないわけでございます。

 こちらの図にありますように、採用の段階から、そして新任配置の時点で、男女同じようにさまざまな分野に配置が行われているのか、あるいは研修、異動・転勤、評価などの面で、男女同じように処遇されているのか、あるいはそういった中での職場マネジメントで、仕事がきちんと女性にも与えられているのか、こういったことが非常に重要な問題になりまして、一定程度の経験を積んだ後の十年目の配置であるとか、そういったことも大きな課題です。こちらは活躍の方の指標というふうに示しております。

 一方、定着、両立の方の指標といたしましては、三年目、新卒後の三年ぐらいの間にきちんと定着しているのか、出産時や十年目に定着率がどのぐらいあるのか、そして平均勤続年数というものが長くなってくるというところでございます。

 こういう数字をいろいろな業界で見ていきますと、やはり、これまで両立支援の取り組みを積極的に進めていた業界では、管理職予備軍というところがある程度ボリュームが出てきたというのが最近の状況でございまして、そういうことを考えますと、企業の中で、この管理職予備軍の女性たちをしっかりと管理職に引き上げようとする動機は十分あるわけで、そういった取り組みも最近では進んできております。

 ただ、次のページを見ていただきまして、また同じ図を示しておりますが、こういった中で、企業の関心が女性活躍で、その中でも管理職登用等のキャリアアップのところに注目がされてきて、女性をターゲットとしたキャリア形成支援の取り組みなどが進むのはいいことではあるんですけれども、そういう取り組みを進める中で、改めて、一番下にありますワーク・ライフ・バランス、男性を含めた働き方の見直しが十分に進んでいないことの弊害、こちらは先ほど小室様から随分丁寧に御説明いただきましたので割愛しますけれども、こちらが十分進んでいないことの弊害というのも強調されているところでございます。

 また、両立支援においても、制度は整ってきたんですが、短時間勤務などを利用される方の能力発揮といった制度の運用面での課題、こういったものも改めて注目されているところでございます。

 こういう状況の中で、今回の女性活躍推進法に対する期待と懸念ということを述べさせていただきたいと思います。

 十三ページにございますように、まず、期待といたしましては、企業の取り組みを両立支援から活躍支援へということで、進化させるという目的には非常に期待がされるところかと思います。

 やはり、これだけさまざまな両立支援施策が行われてきて、一定程度の成果が見られたところで、もうこれで十分なんじゃないかという声も聞かれてくるところでございますし、中小企業などでは、そもそも、女性はたくさん活用しているけれども、管理職には本人たちもなりたがっていないし、会社としてもそこは別に期待していないので、いいんだというような声も聞かれます。そういう中で、両立にとどまらず、活躍への支援ということを促すという効果が期待されます。

 また、計画を策定するということで、個々の企業における女性活躍の状況把握をしていただくということが非常に重要かと思います。

 先ほど、日本企業における女性活躍推進の歩みというところを御紹介させていただきまして、一般的にはさまざまな施策が出そろってきているわけでございますけれども、その効果がどこまであらわれているのかというのは、各企業によって大きな違いがございます。まだ、結婚、出産のところで正社員でも就業継続が困難な会社もございます。どの段階に課題があるのかということを明確に把握していただくこと、また、なぜ女性が管理職を目指さないのかという各社における問題点というのもぜひ把握していただく必要があるかと思います。

 女性が管理職を目指していないからいいんじゃないかと言っていた企業においても、では、なぜ女性が管理職になりたくないのかといったところで、やはり、長時間働くことが評価されるからであるとか、あるいは、管理職になれば非管理職よりもさらに労働時間が長く厳しい状況で、両立ができないからといった声が聞かれます。そういったような背景をきちんと分析することが非常に重要だと思います。

 また、公表という点ですが、この公表では、今までワーク・ライフ・バランスや女性活躍といったスローガンを掲げる企業は多かったわけですが、そういったくくりだけでは見えてこないものがたくさんございます。どう女性に活躍してほしいと考えているのか。例えば、最終ページをごらんいただきますと、多様な働き方を前提としたキャリア形成が可能な人材育成、人事異動等を検討しているかという質問をしますと、かなり企業によって回答がばらつきます。

 こういった形で、実際にキャリア形成についてどういったスタンスをとっているのかであるとか、例えば、総合職で採用した人については全て管理職を目指すというような方針なのか、あるいは、女性について、女性ならではの分野で活躍してほしいと思っているのか、男女全く同じような分野で活躍してほしいと思っているのか。こういった企業の戦略がきちんと見えるようになることで、女性にとっても就業の選択の目安になるということが非常に重要ではないかというふうに考えております。

 最後に、懸念というところでございますが、やはり短期的に管理職をふやすことだけが目標とされないことが非常に重要ではないかと考えております。

 企業によって取り組み課題、ステージが異なるということは先ほど申し上げましたとおりですし、また、働き方改革や子育てしながら活躍できる職場づくりが不十分な中で、従来の男性型キャリアに当てはめられることの弊害というのが非常に心配されます。

 また、ダイバーシティー経営の企業の方針、少し前まではダイバーシティーと言っていたはずなのに、先ほど言いましたように、なぜか一つの単線的なキャリアに当てはめることで短期的に女性の管理職をふやすというような方向にもう既に出てしまっている企業もございます。やはり、多様な人材を活用するためには、多様な働き方と多様なキャリア形成というものの組み合わせが非常に重要だと考えております。

 また、企業の取り組みのターゲットが女性のみとされないということも非常に重要かと思っています。

 女性活躍推進ということで、女性という言葉が出ておりますが、この支援の担い手は、経営者、管理職、男性が非常に重要なポイントです。管理職が、女性を男性と同じようにきちんと若い時分から育成できるということ、それから、男性が育児にも参加するということで、働き方、家庭の問題をシェアするということ、こういったことが非常に重要ですので、彼らをターゲットとした取り組みが重要であることがアピールされることが必要だと思います。

 ですので、計画の目標設定や公表指標にも、管理職という視点だけではなく、やはり多様性が非常に重要だということを申し上げさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。(拍手)

井上委員長 ありがとうございました。

 以上で各参考人からの御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

井上委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。吉川赳君。

吉川(赳)委員 おはようございます。

 まずは、三名の参考人に関しまして、本日お越しいただきましたこと、非常にありがたく思いますし、また、このような質疑の時間をいただきましたことに、心から感謝を申し上げる次第でございます。

 私の生まれたところは富士山の麓でございまして、富士山というのは、コノハナサクヤヒメという女性の神様を祭っているわけでございます。非常に美しい神様だということですが、私もちょっと見たことはないんですが、そういったことでございまして、そんな環境で育ちましたから、ある意味、女性に敬意を表して、時には恐れをなしながら育ってきたつもりでおるわけでございます。

 あわせて、私、見てのとおり男なんですが、自民党内の女性局というところの次長をやらせていただいております。これは、女性中心の局になるんですが、男性が数人入るんですね。なぜか私は当選からこの女性局の次長を預かっておりまして、何で僕が入ったかということが最近わかったんですけれども、いかにも女性の言うことを素直に聞きそうだ、そういった理由だそうでございます。

 そういうことでございますので、ぜひ、社会全般で女性を支えていく今回の法案に関して質疑をさせていただきたいなと思います。

 まず、小室参考人にお聞きしたいんですが、先ほど冒頭、父親の育児の参画による出生率の変化というものに触れていただいたわけでございます。参考までに、国家公務員ですと、現在、男性の育休が四・六%で、女性は九八・一%。目標数値ですが、公務員が三十二年度までに男性の育休を一六%にしたいということでございます。

 そして、これは民間の参考なんですが、私の地元に三島信用金庫という信用金庫があります。出産の後に、男性社員の育児休暇を三日間は必ずとるように義務化をしている、こういった取り組みをしております。三日というと非常に短い期間なんですが、しかし、そういったことに関する意識の啓発、価値観の変容、こういったことには非常に寄与しているのかなということで、民間のこういった取り組みも見られるわけでございます。

 しかしながらでございますが、三十二年までに一六%、こういった目標を掲げているわけでございますが、やはり一向に男性の育休が進まないわけでございます。そこに関して、どうしたら男性の育休が進んでいくのか。また、この目標値でございますが、果たして男性が女性のようにほぼ一〇〇%に近い数字で育休をとった方がいいのか、それとも、今の政府の一六%ぐらいというのは妥当なのか。これに関して御意見をお伺いできたらと思います。

小室参考人 御質問ありがとうございました。

 男性の育児休業については、私も、政府のKPIを見る中で最も進捗がおくれていると思っているポイントです。

 一つは、本当に、本来は男性の育休も義務づけぐらいまでやった方がいいと思っています。

 ただ、もったいないなと思っていますのは、ことし、既に育児休業給付金のパーセントが六七%まで引き上げられていて、このことは、実は、男性にはすごく大きく作用するはずのことなんですね。六七%は、社会保険料の免除も踏まえると、手取りの八割に当たります。その時期の保育料がないことも考えると、とった方が得になるという状態まで持ってきているのに、肝心の男性には全く届いていません、この情報が。

 なので、これは、せっかくやったことが届いていないというのがまず一つの大きな問題で、本来、そういったことを啓発する役割として、私も実際に入っています、厚生労働省のイクメンプロジェクトのメンバーの一人なんですが、全く予算のついていない、本気度を感じない委員会でして、何をやろうにも何のお金もないんです。

 私は、男性の育休の推進をやるのであれば、こういったプロジェクトを立ち上げてもう何年もたつんですけれども、これは民主党のときにつくったプロジェクトですけれども、この内容はとても大事なものですので、ここにしっかり予算をつけて啓発活動をするはずの委員会なんですが、私たちと本当に一生懸命知恵を出して啓発するイベントをつくったりはしているんですけれども、ここにもっと力を入れれば、やってきたことが、既に開始したことがもっと知らされるという意味で大事だと思っています。

 それから、もう一つやっていただきたいのは、なぜ男性が子供の乳幼児期にもかかわることが大事なのかを男性自身は理解していないように思います。

 これも厚労省のデータだったと思うんですけれども、子供がゼロ歳、一歳の時期に父親が積極的にかかわっていた子供の方が、社会性、協調性、我慢ができるだとか、切れにくい、仲よく遊べるといった項目が一割以上高いというようなデータがたしかあったと思います。

 ゼロ歳、一歳のときには、子供はママ、ママ言いますので、パパはかかわるほどむなしく感じるという時期だと思うんですが、実際は、その時期にかかわることが子供の社会性に寄与しているというような重要なデータをもっと知らしめることによって、男性が、その時期にこそ自分がかかわるべきだというふうに感じていただくことが大事かと思います。

 私は、女性と同じように一〇〇%の取得が大事だと思いますし、そこに向かって努力をするべき、通過点として、途中の経過はあるにしても、最終は同じようにとるということが大事だと思います。

 特に、妻が復帰のタイミングで取得をしてくれますと、復帰の週に、結局、週に三日もやはり早退したというようなことになると、戻ってきた職場も計画が立たないということで、復帰を受け入れるのに懲りてしまうという現象が、事実上、やはりあります。

 ですので、その復帰のタイミングで男性が重なってとれれば、そこで安定して妻の復帰が果たせるというような形で、両立がスムーズにいきますので、そういったとり方も含めて、もっと広めていくべきではないかなというふうに思っております。ここは本当に推進が必要だと思っているポイントです。

 御質問ありがとうございました。

吉川(赳)委員 ありがとうございます。

 一〇〇%を目指していく、義務化ということでございますね。社会全体でそういった支える制度を構築していく必要があるのかなと実感した次第でございます。

 そして、続いて、同じく小室参考人と、あわせて矢島参考人にも各自御意見を聞きたいんですが、短時間労働にすることによって子育てをしながら働く女性を支えていくということに関して触れていただきました。

 今回の法案の、まさに女性を支えるという観点から、ワークシェアリングという言葉があると思います。これは、主に雇用の創出のときに使われることが多いわけでございますが、やはりこの短時間労働においても仕事をシェアリングしていくということは非常に効果的なのかなと私は思っております。

 二〇〇九年時点で、新日本監査法人というところが調査をした結果によれば、上場企業では、全体の五%が導入をしていて、もちろんこれは雇用創出という観点からだと思うんですが、今後、ワークシェアリング導入の検討に関しては、検討をしないというのが九八%、ほぼ一〇〇%のところがこういった仕事の共有ですとかこういったものは検討しないということなんです。

 やはり、働く女性を支えていくに当たって、例えば、幼稚園、保育園の終わる五時までにはしっかり帰りたい、しかしながら、そこで仕事は切れないよという場合に、それから引き継ぐ人が必要だったり、もちろん、朝、ちょっと子供の身支度を整えて、人より一時間、二時間遅く出勤したい、その場合に、それを代行してくれる方がいればそういったものは進んでいくと思うんですね。

 ここに関しての多分問題点なんですが、我が国の職場内の情報共有、これが日本というのは諸外国に比べて余り進んでいないということで影響を受けるわけでございます。

 最近の名刺の共有ソフトのCMで、田中徳兵衛さんという方を探すというのがあると思います。それ早く言ってよという、名刺の共有ソフトのものなんですけれども、あんなCMも今流れているような状況でございます。

 そしてまた、企業側から言わせれば、案外、ワークシェアリングというのは、生産性が低下するんじゃないかとか、さらにまた、雇用される側からすると、時間が短時間労働になるので賃金が下がってしまう、こういった問題点があると思うんです。これをクリアしつつも、女性の活躍推進のために、情報共有ですとか仕事のシェアリング、これをうまく進めていくために、何か、こういった取り組みがいいんじゃないかとか、そういったアドバイスがあれば、両参考人にお聞きしたいなと思います。

小室参考人 御質問ありがとうございます。

 ワークシェアリングに関してですが、日本がこれから目指すのは、ワークシェアリングとは少し違うかもしれません、イメージは非常に似ているんですが。オランダなどのワークシェアリングは、一人分を一だとすると、〇・七ずつを夫婦でやるようなイメージです。

 ただ、日本に現在必要なのは、今一人が一・八ぐらいをやってしまっているという状況で、それを一に戻すという形なので、他国でいうと、ワークシェアリングをやると、一人当たりの収入が一人では生活していけないレベルに下がってしまうイメージがありますが、日本の場合は、労働時間を抑えていっても、一にまでしていくことがまずは大事で、それできちんと暮らせるという状態をつくっていくという意味では、ワークシェアリングという言葉はちょっと違うのかもしれないと思います。

 しかし、イメージは一緒でして、もっとお互いにフォローし合いながら仕事ができる職場をつくるという意味だと思います。これがまさに重要だと私も思っています。

 私どものコンサルでは、実はこういうことを徹底的に進めるということをやって、残業を減らして業績を上げるという結果が出ています。

 そのときに、おっしゃるとおり、仕事の属人化が最大のハードルです。自分に仕事をあえて属人化させまして、休んでいる間に、例えば自分が入院して一週間いないと、職場の人が困ったとか言うと、ちょっとうれしいというような、そういった自分の存在感を感じているようなところがあるんだと思います。

 これを変えていく上で実は一番重要なのは、有給休暇の完全取得です。私たちがやるのは、四日以上連続で休暇をとらせる予定を先に入れます。そうすると、四日休むと、休日二日と合わさって六日いませんので、自分がいなくても仕事が進む仕組みをつくらないと休めないという状況に、周りに迷惑をかけるということになるので、そうして初めて、仕事をやっと吐き出して、共有化して、知らせるということをやっとやり始めます。

 日本は、全員でなるべく休まないで属人化させるという方向に一回行っているんですけれども、これは今後を考えると非常にリスクです。

 国際会計基準をもし日本が今後グローバル化の中で批准すると、有休を積み残した分は全額企業の負債に書き込まれますので、日本企業は全部大負債になってしまうんですね。ですので、これを考えると、有休の完全消化、一〇〇パー消化もしなくてはならないところですし、これをやらせることによって属人化の排除が進みますので、こういったことが結果としてお互いがフォローし合える仕事体制をつくるというところで、非常に重要ではないかなというふうに思います。

 御質問ありがとうございました。

矢島参考人 御質問ありがとうございます。

 今お話にありましたワークシェアリングということと、今、小室さんもおっしゃったように、私も申し上げました育児期の短時間勤務というのは、少し違う要素もございます。

 私は、イギリスのワーク・ライフ・バランスの調査をしておりまして、イギリスでは、実際に、管理職の仕事をワークシェアしている例というのもお話を伺ったりしております。

 これは、考え方としては非常にすばらしいと思うんですが、やはりイギリスでも、ワークシェアの組み合わせをうまくつくる、同じような働き方のニーズを持った方で、同じような役割をきちんと果たせるような能力や経験を持った方を探すのが、組み合わせがちょっと難しいということで、実現した例というのはそんなには多くないということを聞いておりますが、発想としては非常に重要だと思います。

 日本では、このポストというもののコストと、それから期待される成果というのが、どなたがやっても一定みたいな発想がありますけれども、そうではなくて、そこで期待される役割に最もふさわしい人を探したときに、その人がたまたまフルタイムで働けなかったとき、では、ほかの人を充てるのと、その方にフルタイムでなくてもやってもらうのとどちらがいいのかと考えたときに、その方にやっていただいた方がいいのであれば、その方ともう一人シェアしていただく方を探すというような、必ずそのポストはいつもワークシェアするポストというふうに決める必要もないですし、ただ、そういうことを日本企業はつい決めなければというふうに考えてしまうので、なかなか導入が難しいのかなと。

 あともう一つは、やはり、一人当たりの生産性ということに非常に日本企業はこだわりがあるので、そのことが先ほど言いました育児期の短時間勤務の運用ということにも非常に響いております。

 やはり、時間当たりの生産性で見ていただけるようにしないと、短時間勤務というのはなかなか運用が難しく、短時間勤務の人への仕事の与え方、それから目標設定と評価というのが短時間勤務のマネジメントの大きな課題になっております。

 これは、御本人たちに任される問題ではなくて、管理職の方のマネジメント課題であるというふうに認識されて、先ほどおっしゃっていただいたような情報共有化とかサポートの仕組みというのは、管理職の方がきちんとつくられることが非常に重要だと考えております。

 以上です。

吉川(赳)委員 ありがとうございます。

 特にこれは、隗より始めよ、こういう言葉があったわけでございますが、二〇二〇年までに三〇%の指導的な地位の女性をふやすということなんですけれども、これは省内、霞が関は全然ないらしいんですよね。

 要は、例えば、課長ですとかそういった女性、育児休暇をとったときの、それを代替するような制度はあるんですが、ただ、育児休暇期間だけで育児というのはもちろん終わるわけじゃなくて、そういったものはほとんどないということでございますので、ぜひ、こういう情報共有ですとかそういったことを進めて、短時間労働というのが進めばいいのかなと思います。

 ちょっと時間が来てしまいました。実は、内藤参考人にも質問したかったのですが、申しわけございません、割愛をさせていただきたいなと思います。

 ワーク・アンド・ライフ・バランスということでございます。民主主義というのは英語でデモクラシーというんですね。でも、僕はよく言うんですけれども、デモクラシーより、でも暮らしなんですね。そうなったときに、やはり、ライフというものをしっかりと支えていける、こういった法案をしっかり目指して頑張ってまいりたいなと思います。

 きょうは、本当にありがとうございました。

井上委員長 次に、郡和子君。

郡委員 おはようございます。民主党の郡和子でございます。

 三人の参考人の皆様方には、早朝からこの委員会にお出向きいただきまして、大変貴重な御意見をいただきました。感謝を申し上げます。

 私も、民間企業で長年仕事をしておりまして、子供を育てながら仕事を続けるというのがいかに綱渡りのようなものなのかということ、それからまた、昇進、ポストを得ていくのには本当に大変だということを身をもって実感してきたわけであります。

 特に、昇進のところになりますと、階段は、最初の階段は上らせてくれるものの、その次、その次になりますと、見えない壁というんでしょうか、ガラスの天井というふうな言われ方もいたしますけれども、そういうものを大変強く感じながら暮らしてまいりました。

 このたび、こういう形で、女性を活躍させるために国を挙げて応援していこう、こういうふうな動きが出てきたことについては、大変私自身もうれしく思っているところです。

 今回、法律は、女性を重要ポストに引き上げる、そのための法律であるというふうにも考えているわけなんですけれども、いろいろお話を伺っている中で、やはり、そこに行き着くためには越えなければならないさまざまなハードルがある、そういうお話だったんだろうと思います。

 きょうお話をいただきました内藤参考人の論文を読ませていただいておりまして、その中に、こういう現状のままでは、女性管理職の積極登用という政策は、それ単独では女性労働者間の格差を拡大することに寄与し、かつ一部の女性労働者の管理職登用によって、男女労働者間に生じている格差があたかも解消したかのように解釈される危険性すらあるというふうな、こういうくだりを読ませていただきまして、私自身も同じような心配をしているんです。

 この問題意識について、この意味するところ、改めてになりますけれども、お話をいただけたらというふうに思います。内藤参考人、よろしくお願いします。

内藤参考人 御質問ありがとうございます。

 その部分ですけれども、少し御説明したいというふうに思います。

 具体的にはどういうふうに書きましたかといいますと、女性管理職の積極的登用という政策は、それ単独では女性労働者間の格差を拡大することに寄与し、かつ一部女性労働者の管理職登用によって、男女労働者間に生じている格差があたかも解消したかのように解釈される危険性すらあると私はある論文で書いたんです。

 この趣旨といいますのは、まず、女性労働者間の格差を拡大することに寄与してしまうのではないかというのは、私の先ほどの冒頭の説明で、女性労働者をめぐる現状のところで、このように男女間賃金格差があると言っているところですとか、あと総合職の女性が少ないですとか、継続就業が難しいというところのことでございます。

 さらに、一部女性労働者の管理職登用によって、格差があたかも解消したかのように解釈される危険性があるという部分については、実は、中国電力事件という事件がありまして、高裁判決が出ております。

 どういうことを高裁が言ったかといいますと、広島高裁は、昇格や賃金において男女が層として明確に分離していないこと、すなわち、ほんの一握りの女性管理職が存在していたんですけれども、それが存在していたことを中国電力の中の男女労働者間の賃金格差の合理的理由の一つとして、ここにおける男女差別を否定したという事件でした。こういったことが起きかねないということなんですね。

 管理職登用という政策自体は私も大歓迎なんですけれども、それだけを行うと、そういうことも招きかねないのではないかということを若干危惧しております。

 ありがとうございます。

郡委員 ありがとうございます。私も、そのとおりだと思います。

 雇用機会均等法が制定されてもう随分長いことたつわけですけれども、その中の間接差別ということについても、なかなか、企業の側の合理性ということにのっとって、差別であるのにあたかも差別じゃなくなってしまっているような、そういう現状があるのもまた事実なんだろうというふうに思っているところです。

 賃金格差について、三人の参考人からいろいろお話があったわけですけれども、私も、今回、やはり男女間の賃金格差を是正していくことというのが大前提になるんだろうというふうに思っておりまして、きょう、配付資料の中で、ああ、こういうものを政府は出していたんだなと改めて認識を新たにして、大変いい冊子がつくられているんだなというふうに思いました。

 特に、男女間の賃金格差解消に向けた労使の取り組み支援のためのガイドライン、これは改めて見せていただきましたけれども、本当によくできているんだな、これがそのまま実行されていけば、今横たわっている問題も解消に向かうのであろうとも思いますし、さらに労使間でブラッシュアップしていくことが重要なんじゃないかというふうに思いますけれども、この点についてはいかがでしょうか。内藤参考人に伺います。

内藤参考人 御質問ありがとうございます。

 私も、これは非常にいい資料だというふうに思っておりまして、特にごらんいただきたいのは、後半、皆さんのお手元にこれがあるかと思いますけれども、二十二ページの「男女を問わず社員の活躍を促進するための賃金・雇用管理に関する実態調査票」、ここで各企業が男女賃金格差について計算できるようになってございます。

 実は、私のいる労働政策研究・研修機構で、こういった男女賃金格差の指数というものがあるんですが、これを定期的に計算、分析している企業はどれぐらいあるかという調査を二〇〇九年にしたことがございます。これによりますと、こういった計算、分析をしている企業は、わずか三・三%にとどまっております。したがって、これによってわかるのは、格差がないというふうに、格差の存在に気づいていないということなんですね。

 ですから、こういった資料を使って、格差があるかどうか、実は、今の格差の情報というのは、この中にあるんですけれども、まさに二十八ページの下のここですけれども、簡単に男女間賃金格差指数というのが計算できるようになっております。こういったものを利用して使用者の皆さんに計算していただくということが可能なのではないかというふうに思っております。

郡委員 ありがとうございます。

 正社員の男性、女性の間でも生じている賃金格差について、本当に参考になる資料だと思いますので、私どもも、ぜひこれをPRする力をもっと大きくしていかなくちゃいけないんだなというふうに認識をさせていただきました。

 正社員だけでなくて、正規、非正規の問題、賃金格差もございます。

 実は私、先週ドイツに参りまして、ドイツでも家庭と仕事の両立というのが大きな課題になっているということを聞かせていただき、さまざまなところで意見交換をさせていただきました。

 その中では、先ほどもちょっと話題に出ておりましたけれども、管理職のパートの方もいらっしゃってうまくシェアをしているお話も聞かせていただきましたし、そしてまた、労使間で大変信頼を持って、同一価値労働同一賃金というのがなされているんだなというふうなことを思ったわけです。

 翻って、日本に戻ってまいりまして、それでは、労使間の信頼に基づいた関係性というのが日本では十分なのだろうか、あるいはまた、同一価値労働同一賃金という考え方というのが果たしてどの程度浸透するのだろうか、この点についても大変悩ましいなというふうに感じたのですけれども、この点について、三人の参考人にそれぞれお答えいただきたいと思います。

小室参考人 御質問ありがとうございます。

 労使の信頼関係についてということなんですけれども、日本社会において、ここからのフェーズが非常に重要になってくると思っております。

 当たり前のことなんですが、労働力人口が減れば、少ない方に希少価値が宿りますので、企業と労働者のパワーバランスの逆転が起きます。私から見ていて、ことしが逆転元年だと思っているんですね。

 本来は、逆転してもおかしくない人口構造にもう九〇年代から日本は入っていました。ただ、それを不景気がふたをしていまして、人不足感というのを企業は感じないで済んだことによって、ずっとそこを、相変わらず、おまえのかわりなんか幾らでもいるんだというやり方を続けました。ただ、アベノミクス効果でこのふたがあいたという感じがします。

 そうなると、ことし起きた飲食チェーンの問題のように、そこでストが起きると開店することもできないというようなことが、今後はほぼ全ての企業に起きてきます。

 こういった労働者と企業のパワーバランスはもう逆転したんだというようなことがしっかり企業側に認識されることが重要ですし、そうなってくると、成熟した話し合いというようなことをきちんとしていかなければ企業が成り立たないということになってくるという意味で、ことしから、日本において非常に重要な観点になるポイントではないかなというふうに思います。

 御質問ありがとうございました。

内藤参考人 御質問ありがとうございます。

 信頼に基づいた労使の関係性ということについて御質問いただいたというふうに思います。

 またガイドラインに戻ってしまいますが、こういったものも、労使で、企業内でどうやったらこの会社の賃金格差をなくしていくかというときに使っていけるのではないか、そのためには枠組みが必要なのではないかというのを先ほど私の報告の方で御説明させていただいたんですが、できればその過程で、労働組合もしくは従業員、労働者代表ですね、組み込めるような形になればいいのかなというふうに思っております。

矢島参考人 ありがとうございます。

 どうしても女性の両立や活躍支援というと正社員に向けた施策が注目されがちで、もちろん非正規の方へ向けた取り組みというのもいろいろあるわけで、それも重要だと思うんですけれども、一方、考えてみますと、正規社員への働きかけ、取り組みというものが、では非正規の方に関係ないかというと、私はそうではないというふうに考えております。

 例えば、先ほどもおっしゃっていただきました、同一価値労働同一賃金の話で言いますと、正社員の短時間勤務の運用を考えていきますと、例えば職場の中で正社員とパート、アルバイトあるいは契約社員の方が同じ仕事をしているというような状況がありますと、短時間勤務の運用は非常に厳しくなります。同じ仕事をしていたのに正社員の方が短時間勤務になるというような状況が生まれますと、非常に混乱が大きくなりますので、そういった中で、改めて非正規の方の役割であるとか処遇であるとかそういったものが見直されていくことにつながっていくと思います。

 また、最近、企業の中では、再雇用制度、こういったものが見直されてきています。これも、実は、正社員で仕事を続ける方がふえて、子供を持ちながら働くという環境ができてくると、再雇用ということも可能になってきますし、また、子供を持った女性の再就職というものが進みやすい環境をつくることにもつながるのではないかというふうに考えております。

 以上です。

郡委員 余り時間がなくなってしまったんですけれども、ハラスメントについてちょっと伺わせていただきたいと思います。

 労政審の建議にも、さまざまなハラスメントというふうに入っているわけです。先日、マタニティーハラスメントで画期的な判決が出たわけですけれども、この点について、いろいろな差別があるハラスメントの問題ですけれども、諸外国での知見などがございましたらば、内藤参考人にお話を聞かせていただきたいと思います。内藤参考人、よろしくお願いします。

内藤参考人 ハラスメントに関する御質問、ありがとうございます。

 そうしますと、恐らくは、関係するところとしましては、セクシュアルハラスメントですとかパワーハラスメントというところもありますけれども、私のレジュメでいいますと、十四ページのさまざまな女性が受ける差別というところも関係してくるかと存じます。こういう複合的な要素を持つ女性が受けるハラスメント、こういうことも現状ではなかなか認められにくいようになっているというふうに思います。

 これに関して言えば、イギリスにおいては、複合差別ないしは結合差別という名前で、二〇一〇年平等法という法律におきまして、差別事由を複数持つ人に対するハラスメントや差別というものが禁止されております。

 さらに、ハラスメントという項目もこの法律にはあるんですけれども、セクシュアルハラスメントだけではなくて、さまざまな差別事由、性や、それから人種、年齢、さまざまな性的マイノリティー、そういった差別事由に基づくハラスメントというものも、日本でいいますとセクシュアルハラスメントだけになりますけれども、パワーハラスメントもまだ法律で禁止されているわけではないんですが、幅広いハラスメントというものが諸外国では禁止されているところでございます。

郡委員 ありがとうございます。

 日本は、女子差別撤廃条約を批准して、なおいろいろな勧告を受けているわけですから、そういう意味での、やはり、それを守っていくんだというような法整備についても、法改正についても取り組んでいかなくちゃいけないということがわかったように思います。

 ありがとうございました。

井上委員長 次に、高橋みほ君。

高橋(み)委員 維新の党の高橋みほでございます。

 きょうは、本当に勉強させていただいたと思っております。短い時間ですので、単刀直入に質問させていただきたいと思います。

 まず、小室参考人にお尋ねしたいと思います。

 小室参考人の記事が載っている新聞記事を拝見させていただきました。そこで実は、女性だけを支援するように見える政策は失敗しがちだというようなことが載っておりました。

 これは、私も確かにそうであると思っておりまして、男性よりも女性だけが優遇されていると言われると、やはり男性から、その政策に対しては評価が低くなってしまうというふうに思っております。

 ただ、今現在、クオータ制といって、割り当て、ある程度のところを女性に、三割ぐらいは女性を優遇していこうなり、優越的な地位の管理職を女性にあてがおうというようなクオータ制、現在いろいろ導入を考えているということになるかと思うんですけれども、その点につきましてどうお考えなのか、小室参考人にお尋ねしたいと思います。

小室参考人 ありがとうございます。

 クオータ制などの取り組みは、長い目で見ると、私は大変必要だと思っています。

 私が新聞記事に書いた大きな意図は、それを受けとめる側の人たちにメリットがある出し方をしていかなければ、結果として、非常に重要なものが通らないという意味で書かせていただきました。

 というのも、他国がやっているクオータ制も全て女性のためではないわけなんです。その国の各企業が利益を上げるためなんですね。利益を上げ、きちんと税収を得て国が運営されていくという、女性に何かしらのアクションをすることが女性のためというようなことに捉えられないようにということが重要だと思っています。

 そういう意味で、私は、日本は他国と違って介護の問題が大変深刻なので、このことをもっと前面に押し出して、介護は男性も関係ある、それから、子供を産む、産まないには選択がありますが、介護の場合にはほとんどの人に必ず重なってくる。親戚の介護というのも最近出てきていますので、ほぼ全ての方が関係する項目を例に挙げることによって我が身事になっていただくということが重要かなと思っております。

 そういった意味では、私は、女性の役員の登用なども大変重要だと思っています。

 私どもに御相談いただいている企業さんで、よく最初におっしゃるのは、このまま順調に育つと十二年後に女性の役員が出ますとか言うんですね。それでどうするんですかとよくお話をしていまして、その十二年間、優秀な女子学生はみんな外資系に行ってしまうか、女性の役員を早目に、社外取締役でもいいから据えたというような企業の方にみんな行ってしまうということが起きて、結果として、人材の獲得が困難になって負けますよという話をしています。

 ですので、管理職だけでなく役員に関しても、女性がその企業を見たときに、自分が行けるアッパーラインはどこまでなのかというようなことをきちんと示して優秀な人を引きつけていくというようなことは、これは企業の業績のために重要ではないかなというふうに思いますので、出し方であったり介護の話もうまく入れていくというような、しっかりした戦略を持って広めることが重要であろうなというふうに思っております。

 以上です。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 やはり、メリットを男性にもよくわかっていただくというのは本当に大事なことだと思っております。

 今回の法案の名前が、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案ということになるかと思うんですけれども、きっと、頭に女性というふうについてしまうと、女性だけのということになってしまって、男性からちょっとこれはどうなんだろうと思われてしまうところもあるので、本当はこの法律は、女性じゃなくて男女というふうにつけた方が実はよかったんじゃないかなと思っております。

 次に、矢島参考人にお尋ねしたいと思います。

 矢島参考人がきょう渡していただいた十ページというところになるんですけれども、そこに、「女性活躍推進の構造(ポジティブアクションの見える化)」というところがあるかと思うんですけれども、そこの右側の真ん中あたりに異動とか転勤というものがありまして、異動とか転勤などの、いろいろ若い人たちが経験を積むことが女性にもきちんと与えられているかというところでここに異動とか転勤が入っているとは思うんですけれども、実は、私がいろいろ話を聞くと、どうしても、転勤があるがために女性が働きにくい、仕事をやめてしまうという方が多いかと思います。

 それを考えると、今までの男性のように、異動や転勤の権利というか、そういうものは与えられているんだから、あなたたちもこれをやりなさい、そしてまた十年間ぐらい働きましょうというふうにやられると、女性にとっては長く勤めたりするのが逆に厳しくなってしまうような気がするんですけれども、その点、どうお考えでしょうか。

矢島参考人 ありがとうございます。

 おっしゃるとおりで、こちらに書いております異動、転勤というのは、必ずしも、女性も異動、転勤をたくさんするのがいいというような意味合いではございません。

 ただ、異動、転勤には、やはり女性が活躍していく上で見直すべきポイントがたくさんあるというのは事実で、おっしゃったような意味合いで、異動、転勤が、実は、不要な、余りにも過度に多い転勤があるために、その転勤自体を見直そうという動きも企業の中に出ておりまして、男女問わず転勤を余り多くしなくていいような仕組み、あるいは、人生のいろいろな、ライフイベントが多い時期には、何か一ところにとどまれるような選択ができるような措置、そういったことも見直されています。

 逆に、転勤先があることでメリットがある場合もありまして、転勤先があるので、地元、親のもとに近いところに転勤させてもらって、そこで介護しながら両立ができるとか、そういったようなメリットがある場合もありまして、転勤には、今までどおりするのがいいというところだけではなくて、さまざまなポイントがあるので、こちらは、単に数字だけで見るのではなくて、そういった視点で、課題がどこにあるのかというのを見るのが重要だという意味で書かせていただいております。

 ありがとうございます。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 確かにおっしゃるとおりなんですけれども、例を挙げますと、北海道庁というものがありまして、北海道はかなり広いもので、実はいろいろなところに転勤せざるを得ないような仕組みになってしまいます。そうすると、一人目、二人目を産んでも、次、三人目を産もうかなというときにそこに転勤がかかってしまうと、どうしてもやめざるを得ないという人がかなり多いと伺いましたので、本当に転勤というのはいろいろな問題があるということをおっしゃっていたんですけれども、これは、日本の、転勤をする方がどちらかというといろいろな経験を積んでいいというような意識というのも少し変えていかなければいけない時期であるのかなとも思っております。

 次に、お三人にお尋ねしたいんですけれども、今回の御説明では、どちらかというと、子供を産んでも長く勤められるような政策ということを御開陳いただいたと思うんですけれども、やはりいろいろな事情で、一度やめてしまうという女性も多くて、そしてまた再就職していってからまた自分のキャリアを積んでいきたいという方たちも多いと思うので、一度やめてしまったけれども再就職して、その女性たちをやはり活用していくというためにはどのような政策が望まれるのかということを教えていただければと思います。お願いします。

小室参考人 ありがとうございます。

 再就職に関して、最近、私が有効だなと思い始めているのが、長く働いていないと、いわゆる普通の企業にいきなり就職することが本人にとってハードルが高いというようなものもあり、また企業の方も、どれだけの仕事ができる人かわからないというようなところでの、その一社目になるという勇気が持てないという企業さんが多いように感じています。

 海外の例などを見ると、そういったある程度のブランクがあった後に、一度NPOなどで働くというのがソフトランディングできる施策としていいというような例があります。

 女性自身も、人のためになる仕事であれば、まず第一歩として、仕事をしようという一歩を踏み出しやすいというところがあり、また、そういったNPOの中で、PCのスキルであったりそういったスキルを高めていって、そこから何らかの、これだけの仕事ができる人ですというような証明を出してもらって、第二ステップとして本格的な企業のところに働きに行くというような、そういった、女性にとっても急な環境変化にならない、これは子供にとっても、余りに急な環境変化というのはびっくりしてしまうというところもあるので、ツーステップを踏んで社会に復帰できるような、そういった意味では、NPOも常に人材不足の部分がありますので、うまくそこが組んで、どれぐらいの仕事ができる人かというのを認定してあげられる機関というような役割も果たせたらいいのではないかと私は思っております。

 以上です。

内藤参考人 御質問ありがとうございます。

 まずは、行政による積極的な再就職支援というものがあろうかというふうに思います。でも、これは既にやられていることかと思います。

 また、再就職支援というときに、非正規労働という形になることが多いのではないかというふうに察します。それは、正社員としての就業がなかなか難しいということもあるでしょうし、さらに、正社員として就業すると、長時間労働という問題があって、子供がちょっと大きくなったといってもなかなか両立が難しいという問題があるのではないかというふうに思います。

 ですから、やはり私は、繰り返しになりますけれども、再就職支援という視点からも、長時間労働の是正、それは、委員さっきおっしゃったような、女性だけでなく、もちろん男性の長時間労働の是正と削減というものが重要な視点になってくるかと存じます。

矢島参考人 再就職に関して女性たちに調査をしまして、再就職したときどんな働き方をしたいかというと、まずはパートで働きたいという答えが返ってきまして、そうすると、かつては、だから女性は再就職はパートでいいんだみたいな言い方がされました。よくよくきちんと調べてみますと、先ほど見ていただきました私の資料の四枚目のライフプランニングの調査をしたのはそういった経緯があるんですけれども、実は、ライフステージに応じて働き方を変えていきたいんだ、ステップアップしていきたいんだということが非常に重要なポイントで、そういう意味では、パート、アルバイトで勤められた女性が正社員への転換をするような仕組み、あるいは最初から正社員の短時間勤務制度というものがありますと、そういった形で再就職できるという可能性も広がります。

 実際に、私がコンサルティングさせていただいた病院では、看護師の短時間勤務制度を入れたところ、中で勤めていた方は育休から復帰してフルタイムで働いている方が比較的多いんですが、再就職の応募がふえたというようなお話もございます。

 また、先ほど言いましたように、企業が、自社をやめた社員の再雇用制度というものも、やはり、正社員で就業継続可能な環境が整ってくると、では再雇用もできるんじゃないかということで、今積極的になろうとしている企業がふえているところでもあり、そういった仕組みも非常に重要かと思います。

 あともう一つは、ライフプランニング支援という視点で、既に男女共同参画センターなどでも取り組んでおりますけれども、例えば、結婚、出産で一旦やめた女性がいきなり再就職セミナーに行くというのはちょっとハードルが高い。子供を産んで、子供が小さい時点から、少し自分のライフプランを長期的に考えてみるような機会、ちょっと子供を預けて学んでみようというような機会、そういったものを提供する中で、余り間を置かずに早い時期から将来のライフプランを考えていただくような、そういった取り組みも非常に重要ではないかと考えております。

 以上です。

高橋(み)委員 ありがとうございました。

 次に、内藤参考人にお尋ねしたいと思っております。

 イギリスでの労働法制について研究されているとおっしゃっておりましたので、そこでお尋ねしたいんですけれども、昔からよく言われているとは思うんですけれども、機会の平等は与えるべきである、ただ、結果の平等を目指してはいけないということがよく言われるかと思うんです。

 例えば、結果が余りにも不平等に出てきてしまった場合は、やはり機会の平等すら本当は与えられていないんじゃないかなというような私のイメージがあるのですけれども、その点、イギリスなどでは、機会の平等、結果の平等という点ではどのようなお考えで政策が打たれているのかということを少し教えていただければと思っております。

内藤参考人 御質問ありがとうございます。

 関連するかわからないんですけれども、今イギリスで、こういった法案に関連する法律として二〇一〇年平等法という法律があるんですけれども、この法律の考え方は、これまでの、従前のイギリスの差別禁止法制の中では、差別を受けたという労働者が、これは女性だけではないですけれども、差別を受けたとして雇用審判所に申し立てをする、そして一件一件処理していく、事後的に処理していくというスタイルをとっていました。ですけれども、これだと構造的な差別には対応できない、難しいという問題がありました。そして、今できている二〇一〇年平等法においては、構造的な差別や格差、差別と言えないものでも、格差というものも積極的に労使がこれを正していこうという法律になっております。そして、その中で出てきた考え方が、先ほど御紹介した自律的、応答的規制という考え方になっております。

 結論としまして、結局、結果の平等を求めるためにこういった枠組みができたのかなというふうに考えております。

高橋(み)委員 ありがとうございました。

 きょうは、とても勉強させていただいたと思っております。これからもお三人のお考えが政策に反映するように私たちも頑張っていきたいので、これからもよろしくお願いします。

 本日は、ありがとうございました。

井上委員長 次に、輿水恵一君。

輿水委員 公明党の輿水恵一でございます。

 本日は、参考人の先生方に貴重な御意見を賜り、心より感謝を申し上げます。

 初めに、小室参考人の方に質問させていただきたいと思います。

 まさに人口ボーナス期から人口オーナス期ということで、本当に、現在、私たち、二〇一五年、超高齢化社会を迎えるに当たって、どういう地域社会をつくっていくのか、大変大きな課題であると思うわけでございます。

 そして、今回、女性の職業生活における活躍、確かに、女性は、子育てとかそういった部分との両立するものが非常に多かった。しかし、これから高齢化社会になってきますと、私たち男性も、介護とか、また地域でのさまざまな活動が必要になって、地域の支え手、家庭の支え手となる、そういった時代がやってくるのかな、このように感じているわけでございますが、まさにこの人口オーナスに対応する、そういった女性が活躍しやすい社会をつくるということは、余りのんびりしていられないというか、緊急にやるべき課題なのかな、そのように感じているんですけれども、現場の実感としてどのようにお感じなのか、教えていただけますでしょうか。

小室参考人 御質問ありがとうございます。

 こういった女性に関するものの緊急度というところなんですけれども、まさにおっしゃるとおり、こういった対策を二年でやるのか五年でやるのかは大きな違いだと思っています。

 一番大きな要因としては、団塊ジュニア世代の出産適齢期の女性の適齢期がもう終わりつつあるということです。日本はベビーブームがあって、その子供たちがもう一度のベビーブームを今起こせずにいます。そうすると、人口減が激しく構造上のいびつさを生み出してしまいますので、次世代の子供たちの借金というようなものが本当に心配な状況になっています。

 それを少しでも緩和できるのかどうかというのを考えたときに、団塊ジュニア世代の女性たちの出産適齢期がまだ数年残っているうちに待機児童がゼロになるのか、それがすっかり終わって五年後に待機児童がゼロになるのかは、産める子供の数でいうと大きな違いが出てしまうので、五年ぐらいでというようなのんびりした形ではなくて、本当にこの一年、二年でどれだけ集中的にできるのかというようなことが重要だと思っています。そういった意味では、本当にそこの財源を確保して、しっかり投入していくということが大事だと思っています。

 また、一つ、私も自分で体験してわかったことですが、二〇一〇年に夫の母がクモ膜下で倒れまして、介護ということがこんなに早いタイミングで来るということに気づきました。これは晩産化の影響だと思うんですね。親も自分自身も晩産化であれば、当然、育児と介護の時期が重なります。そのときに、私の場合は、長男は四歳でした。今までであれば、育児が一段落して介護というようなイメージがありましたが、団塊ジュニア世代以降は、育児、介護、共働きという状況なんですね。これは、四十年前とは全然違う背景を持った人が今の社会の主たる労働者になってくるということですので、どれだけのスピードを持ってできるのかというところがまさに重要ではないかなというふうに思います。

 ありがとうございます。

輿水委員 どうもありがとうございました。

 本当に一つ一つの課題をスピード感を持って進めていくことが必要だなと。そのような中で、今回の女性の活躍という部分を考えたんですけれども、結局は、これからは男性も本当に働きやすい、そういった環境をつくっていくことが必要、介護も含めてです。

 そして、結論的に私が感じているのは、結局は、労働の時間をしっかりと、残業なしで、決められた時間の中できちっとなし遂げていく、そして、その時間のあり方を前にしたり後ろにしたり、あるいは分けたりしながら、その中で自分のやるべきこと、また仕事をしっかりやりながら、そこにお互いが認め合いながら、そして社会の生産性を高めていく、こういった社会の実現こそがまず第一優先なのではないかなというふうに感じるわけでございますが、この点につきまして、お三方にそれぞれの御意見を賜りたいと思います。よろしくお願いいたします。

小室参考人 ありがとうございます。

 どれだけ短時間で、生産性の高い国に今、日本がなれるのかに本当にかかっていると思っています。というのも、労働時間に制約がないことによって日本がイノベーションを生まない状態になっているということに私は高い危機感を持っています。

 日本も、竹やりでは勝っていけませんので、どうしたら高付加価値型のビジネスに転換していけるかということがグローバル社会の中での競争のポイントになっているわけですが、その高付加価値型の商品、サービスを考えるに当たっては、従業員の多様性が必要であることと、それから従業員がいかに勉強するかということが大事になります。

 この勉強の時間というのは、放っておくと従業員はしません。自分の知識やスキルが低いまま、それを、お金をもらいながら、残業代をもらいながら時間で補うという方法をとった方が実入りもいいわけなんですね。これをやってしまうと、学ばないで、知識、スキルの低いまま勝負をする人が一番お金をもらってしまうというような、これはワーキングマザーにしてみるととても腹が立つ状況なんですね。

 弊社では、全員残業禁止ということにすると、転職してきた社員はもうびっくりするわけなんです。時間内で成果を出さなきゃいけないというのは一番厳しいやり方です。きょう、後ろに二人、弊社の若手の男性を連れてきたんですが、放っておくと多分残業しがちな年代だと思うんですけれども、弊社では、六時までに成果を出したもので評価がつくと思うものですから、六時以降、必死に学びます。本も非常に読みますし、いろいろな団体に自分から積極的に顔を出して人脈をつくるということをやります。

 こういった方向に社会全体を、要するに、制約がイノベーションを生むわけですので、逆に制約をつけることで高いイノベーションを生むような、そういった、ワーク・ライフシナジーと私たちは呼んでいるんですけれども、この状態をつくっていかなければ日本の産業が沈んでしまうということではないかなというふうに捉えています。

 以上です。ありがとうございました。

内藤参考人 御質問ありがとうございます。

 委員が言われた中で、私は、やはり長時間労働の抑制ということが一番重要かなというふうに思いました。

 実際に今、育児中の女性労働者の方々にお話を聞きますと、やはり定時に帰れるということが一番重要じゃないかという感じをしました。フレックスとかということではなくて、本当に、五時なら五時、五時半なら五時半に保育園にお迎えに行けるということが重要であって、これについて、どうやったら実現できるか、労使が知恵を絞っていく、そして、国がもしかしたらそういう協議する枠組みをつくっていく、そういったことが大事なのかなというふうに思っています。

矢島参考人 ありがとうございます。

 最近、本当に、働き方の厳しい業界から御相談を受けることが多くなっておりまして、IT企業であるとか商社であるとか、あるいはマスコミ、報道関係の方々、それから、中には、警察、警察官の方への研修もさせていただいたんです。

 そういった中で、女性の問題というよりも、男性の、特に働き盛りの皆さんの働き方について、自分自身で考えていただくような研修をいたしますと、大抵の方が、何らかの自分の働き方を変える必要性を感じている。ただ、日ごろ、職場の中ではなかなかそういう話はしづらかったり、やはり社会的使命も高いようなお仕事も多いですから、言えない。

 そういう中で、ワーク・ライフ・バランスというのは女性だけの問題でしょうというふうに日ごろ言っておりますけれども、実は、男性たちに話し合っていただきますと、ほとんどの方がニーズを持っている。そういうニーズを持っていることを職場や会社全体で共有して、長時間労働をみんなでなくすことが、単に時間制約のある方の両立のためではなくて、自分たちが本当に価値の高い仕事あるいは自分たちが本当にやりたい仕事にかける時間をとるために重要なんだということを理解していただくことが重要だというふうに考えております。

 以上です。

輿水委員 どうもありがとうございました。

 先ほど、ショッキングというか、なるほどというお話をいただいたのが、女性の方で管理職になりたいという方が少ないのではなくて、今いるような、ああいう管理職にはなりたくないなと。これは、もしかしたら、女性だけではなく、若者も、ああはなりたくないなと。あるいは、高齢者もこれから活躍する場があるとしても、今までさんざん頑張ってきて、もうああはなりたくないなと。これからはそういう管理職であってはいけない。

 今お話あったように、しっかりとした時間は時間があって、そして自分自身の新しい何かをインプットするような時間あるいは社会に貢献するような時間、そういったものを持ちながら生き生きと働く、そこに管理職の理想像というものが求められれば、さらに女性の活躍の場というか、また女性のモチベーションも非常に上がってくるのかな、このように感じているところでございます。

 そういった意味で、今回の法案の中で、各企業の取り組みを公表していくという部分で、さまざまな、管理職の数というよりも、管理職に希望を持っている方とか、でも、その以前に、やはり平均残業時間がどうなっているのかとか、あるいは有休の消化率がどうかとか、この辺をきっちりやってしまうことによって、相当、皆様方が働きやすい、活躍しやすい、こういった環境ができるのかなと思うんですけれども、この点につきまして、皆様に一言ずつコメントをいただけますでしょうか。

小室参考人 ありがとうございます。

 私は、時間当たりの生産性で勝負をする国に日本を組みかえられれば総力戦で戦えるのにという思いで創業をして、今日までやってまいりましたので、本当にその社会をつくっていくことが大事だと思っています。

 今、管理職の方や企業の経営者の方もこの重要性には大変気づいてきていまして、私どもコンサルにお金を払って残業を減らしたいという企業さんがたくさんいるということなんですね。九百社に私どもから営業したことは実は一社もないんです。九百社全て、問い合わせで受注をしました。それぐらい、実は、企業は労働時間を減らしたくて仕方がない。

 でも、最後は、それがなぜできないのかというときに、イメージでいうと、業界に六社あるとすると、そのうちの四社は、もう疲弊合戦でやめたいと思っているわけなんです。ところが、まだ比較的若い従業員が多いような企業は、自分たちは残業合戦で勝ちたいと思うわけなんですね。そうすると、この二社の方がそこに応じないことによって、この四社は、自分から労働時間を短くしてしまうと、それによって負けたらいけないと思うので、いつまでも一歩も踏み出せないというところがあります。ただし、本当はやめたいと思っている企業の比率の方が断然高くなっているという状況なんです。

 このもうやめたいと思っている企業が口をそろえて言うのは、自分たちで主導するのにはもう限界がある、政府として何らかの方針を示してもらった方が、企業としては、莫大な残業代が浮いて、従業員の働き方が効率的になって、本当はありがたいんだけれども、でも、うちが言ったということになると、経済団体からいろいろ言われるから、うちが言うというわけにはいかないんだよねというところが企業の本音ですので、そういった意味でいうと、実は経済団体の方は、働き方を変えたがっているという一企業ごとの声がまだ十分に吸い上げられていないのではないかと思いますので、そういったところにぜひ力を入れて推進していただきたいと思います。

内藤参考人 御質問ありがとうございます。

 建議では、公表事項としまして、女性採用比率、勤続年数男女差、労働時間の状況、女性管理職比率ということが上がっております。これ以外にも、もしここに入らないのであれば、任意に企業において公表していただきたいものは幾つもあるというふうに思っております。

 例えばですけれども、さっきおっしゃったような年休の取得率というのもあると思いますし、男女労働者の育児及び介護休業、それから育児及び介護短時間勤務、それから看護及び介護休暇の取得率、育児・介護休業法というのは、育児休業や介護休業だけを規定しているものではなくて、看護休暇とか介護休暇とか育児の時短勤務、こういったものも多数制度としてございまして、こういったものも織りまぜて、皆さん両立されているわけですけれども、やはりこれも、育児休業と同じように、女性だけに偏っているというところがございます。

 ですから、こういうのも公表していただくということも重要ですし、育児休業後の原職復帰率とか、さまざま任意に公表していただくことで、企業がみずから変わっていくという契機になることは可能なのではないかなというふうに思っています。

矢島参考人 ありがとうございます。

 今回の法律を通じて、企業が、これまで整備してきた制度だけでなく、今ある状態を公表することというのは非常に重要だと思いますし、その中に、単に管理職比率ですとかそういった活躍度だけではなくて、男性を含めた働き方の問題というのが見えるようになってくるということはとても重要だと思います。

 今いろいろな都道府県でもさまざまな取り組みが行われておりまして、私も滋賀県で、滋賀県独自の見える化指標というのをつくる検討に参加しておりますけれども、その中でも一番難しいのは、やはり公表のハードルを余り上げてしまうと多くの企業が参加できない、できるだけ多くの企業に参加していただき、その中では各企業の独自性とか特徴をアピールできるような内容にすると同時に、それから高いレベルを目指していただくというその両方がかなうような仕組みというのがとても重要だと思っておりまして、今私自身悩んでいるところですけれども、そういった仕組みを考えていくことがとても重要なのではないかと思っております。

 以上です。

輿水委員 どうもありがとうございました。

 女性とともに男性も、全ての人々が働きやすい社会を目指して、私どもも頑張ってまいりたいと思います。きょうは本当にありがとうございました。

 以上で終わります。

井上委員長 次に、畑浩治君。

畑委員 生活の党の畑浩治でございます。

 本日は、大変貴重な御意見ありがとうございました。大変参考になったというか、本当にありがたくお伺いさせていただいた次第であります。

 それで、きょうの話を踏まえて何点かお伺いをしたいんですが、まず、矢島参考人と内藤参考人にお伺いしたいんです。

 指導的立場の女性の占める割合を高めるという法律の構成、たてつけの中で、ただ、そういうことを単純にやるのはなかなか問題で、なぜ女性が管理職を目指さないのかというところの分析も必要だというお話がございました。

 私も、思うところ、働き方の見直しが必要で、実は、私の問題意識は、今の政府案、派遣労働の話も、常用派遣に置きかえるような形だし、なおかつ、日本の問題の同一労働同一賃金も達成されない中で、雇用の流動化だけがなされているなという問題意識を持っております。

 こういう働き方の見直し、構造的な問題をしない中で、管理職の女性の占める割合を高めましょうといっても、恐らく、待遇の悪い管理職がふえたり、形だけ管理職を高めましたという計画ができてしまうんじゃないかなという問題意識を持っておりますが、そういう中で、管理職の割合を高めるという政策、今のこの体系というのはどういうふうにお考えか、所見を伺いたいと思います。

 矢島参考人と内藤参考人、お二人にお伺いしたいと思います。

矢島参考人 おっしゃるとおりだと思います。私も、先ほども申し上げさせていただきましたとおり、管理職だけが目標になるというのは、また短期的にそれをある程度達成しなければならないというのは、非常に危険ではないかなというふうに思っております。

 もちろん、先ほど申しましたとおり、両立支援の成果によって管理職予備軍がかなりボリュームが出てきた企業においては、その人たちを、ただ自然に管理職に上がるのではなくて、やはりこれまで男性と、仕事の与えられ方ですとかそういったものの経験が違ってきているので、特に管理職に引き上げるための働きかけをしているといった会社もありますけれども、そうでなくて、もっと広い意味での働き方といったところに取り組みの必要性があるという企業もございます。

 そういう意味で、管理職の目標というのは、さまざまな視点から、また管理職の目標を掲げるということと管理職登用のところに働きかける施策をするということは一緒じゃないんですよね。例えば、男女同じ評価だったら女性の方を引き上げるとか、そういった登用をすることと管理職の目標を掲げるということが同じだというふうに誤解を生んでいるところもあるんですけれども、そうではなくて、目標を掲げるということは、その目標を達成する上でどのような課題があるかを広く見ていただいて、その課題をクリアしていただくことなので、そこがイコールだと誤解されないようにすることも非常に重要だと考えております。

 以上です。

内藤参考人 御質問ありがとうございます。

 先ほどクオータ制というお話もございましたけれども、先ほど矢島さんからも、拙速な管理職登用というのはなかなか機能しないんじゃないかというお話がありましたけれども、私も、イギリスを見まして、そういう感じをしています。

 ですから、やはり、どうして女性管理職がこの職場に登用されてこなかったのか、その原因を突きとめていかない限り、そこにいきなり女性を登用しても、結局は事態は変わらないのではないかなというふうに、構造的な問題があるのではないかというふうに思います。やはりそこは各現場で、労働組合なりがあれば一緒に、どういう問題があるかということを考えた上で計画を立てていく、その方が将来的に見てきちんとした管理職登用ということが進むのではないのかなというふうにイギリスの例から感じております。

畑委員 ありがとうございました。

 それでは、小室参考人にお伺いしたいと思います。

 日本はタイトな期日設定とか強いクレーム社会で大変だというお話を受けて、私もそのとおりだと思います。

 実は私、以前、仕事の関係でドイツの方に三年間住んでいたことがありまして、ヨーロッパというのは、要はそういう社会じゃないんですよね。つまり、お客様が神様というか発注者が強いという社会ではなくて、対等な社会だと思いました。

 つまり、例えば休暇一つとっても、バケーション、ウアラウプというんですけれども、バケーションにあしたから入る場合、一週間後に入る場合、その後の仕事の発注があっても、私は休暇だからできませんとあっさりと言える社会なんです、一カ月後にしてくださいと。うらやましいなと思いまして、それが許される社会をつくっている。

 あと、買い物なんかもそうですね。クレームを受けて、できないことを客が言っても、店員とかお店の人はノーとすぐ言いますよね、クールに。ああいうことが許される社会、フィフティー・フィフティーなわけです。

 ただ、そういう社会をどうやってつくっていくかというのは、メンタリティーの問題もあって難しいんですが、端的には、どうやってつくっていけばそういう社会にうまくできるものでしょうかというのをお伺いしたいんです。

小室参考人 御質問ありがとうございます。

 もちろん、日本人のよさの一つでもあるとも思いながらも、この完璧主義というようなところが非常にお互いの首を絞め合っているというふうに感じています。

 一つは、恐らく、これは教育の中でもやはり新しい考え方を入れていく必要があるんだろうなというふうに思います。

 人口ボーナス期においては、この完璧性というようなものは非常に強みであり、それが経済発展、日本は、同じ人口ボーナス期に稼ぐ金額でいうと中国の三倍以上稼げたというようなデータがあるぐらい、非常に人口ボーナス期を生かした国ではあります。しかし、これが人口オーナス期に入ってくると非常に短所になってくるというところがあります。

 そういった中で、教育の中で、今だと、これは教師も非常に時間をかけ過ぎます、全てに対して。完璧になるまで一人の教師が全部やり切るような形で、教師同士の連携という形ではなく、一人で全部やり切る仕組みになっていたりというような、そういった教育の仕組みが、恐らく子供にもそういったメッセージになっているのではないかなというところで、教育とも連動して、時間をかけて勉強することが大事なのではなく、効率よく学び、アウトプットをしていくことが大事なんだというような、教育とも連動して変わっていかなければ、こういった社会全体の考え方というのは変わらないであろうなというふうに思います。

 ただ、短期的な仕組みでいうと、例えば航空会社のある企業さんなんかは、社内のルールとして、前日の夜、夕方五時以降に出したメールは翌朝受信したものとみなすというようなルールを企業の中でつくることによって、クレームをお互いにつけ合うなんということを社内においては禁止したりという事例などもありますので、こういった好事例なども生かして、国全体としても、できることというのがあった方がさらにいいかなというふうに思っております。

 以上です。

畑委員 ありがとうございました。

 本当にメンタリティーも変えていかなければいけないと思います。何というか、拡大型というか均等型のメンタリティーなものですから、そこも含めた多様性ということで本当に考えなきゃいかぬと思っております。

 それで、次の質問ですが、内藤参考人にお伺いしたいんです。

 先ほどのお答えの関係なんですけれども、やはり構造的な問題をしっかり踏まえて計画をつくることが必要だという仰せがございました。

 私、今の法律、政府案を見ていると、事業主の行動計画をつくるわけですけれども、事業主の行動計画策定の際に、まさに労働組合なり労働者の意見を聞いたつくり方をするようなシステムになっていないという問題意識を持っていまして、これは何だかんだいって、派遣労働法の改正案の方には労働組合の意見聴取とか過半数の労働者を代表する団体というのが入っているんですが、こっちの、女性の方の計画をつくる際にはそれが入っていないというのは不思議に思っていましたが、労働者の意向反映のためには組合の意見を聞くというのも一つだし、ほかの方法もあるんでしょうけれども、そこはどんな感じでやっていけばいいものなんでしょうか。御所見を伺いたいと思います。

内藤参考人 御質問ありがとうございます。

 私も、報告の方で、それの重要性について、労使の取り組みのモニタリングやチェック機能ということの重要性について述べましたとおり、こういったことは、イギリスの知見から、重要な視点なのではないかなというふうに思います。

 今回入っておりませんけれども、当然、自発的にそういうことをするということは可能ですので、そういったことを今後は期待できればというふうに思っております。

畑委員 ありがとうございました。

 それでは、次は、小室参考人と矢島参考人にお伺いしたいと思います。

 ワーク・ライフ・バランスでありまして、きょうもたびたび議論になりましたが、有給休暇の取得ということなんですが、私もある試算をしたことがございまして、有給休暇を完全に、法定どおりというか決まったとおりフルにどの労働者もとれれば、何とGDPの二%、成長率を押し上げる効果がある。これは財政出動なしです。つまり、ワーク・ライフ・バランスは、国民の、働く人のもちろん福利厚生というか、そういうことにもいいわけですが、経済成長にもいいな、この時代の、まさに多様性の時代における経済成長に大変いい政策だと思いました。

 ただ、きょうも議論になりましたが、有給休暇というのは何となくとりにくいというのがあるわけでして、昔私が働いているころは、役所でそれはあったんですが、今でも恐らくそこはそんなに変わっていないのじゃないかなと思うんです。

 有給休暇を取得促進するためには、会社に対するあめとかインセンティブもあるでしょうし、あるいは啓発活動もあるんでしょうが、いろいろなやり方をしなければいけないと思うんですが、そこに対する御所見をお願いいたします。

小室参考人 ありがとうございます。

 私は、ここを日本は本当に今進めておかないと、国際会計基準の批准もできないというような強い危機感を持っています。

 そういった意味で、今、有休の消化を一〇〇%しているのは、日本だと車のホンダさん、それから岐阜にある未来工業さんと我が社ぐらいだと思うんです。私がホンダさんのやり方で非常にすごいなと思ったのは、それぞれの職場で有休を一〇〇%とろうとすると、そのとき人員がどれぐらい必要で、今仕事がどの程度あるので、欠員補充率、欠補率というらしいんですけれども、その欠員補充率がどれぐらいに今なっているのかというのをマンスリーで人事が把握していて、そこが有休がとれそうにないぐらい仕事が厳しくなっているとなると、そのユニットの中でどこから人を動かすのかということを即座にお互いにやりながらという形で、有休の消化をきちんとモニタリングしてやっているという状況なんですね。

 こういった、どういうふうに管理をしていくときちんと有休の消化がさせられるのかという成熟した仕組みが企業にはないので、気合いでとか風土でというようなところに頼りがちだと思っています。そういった仕組みづくりについて支援をしていくべきではないかなというふうに思いますし、ある程度、年度の始まりに有休の取得の計画表を出させるというようなことは、進んでいる企業はされていますので、そういったことが各企業で今後ガイドラインの中に入ってくるということも重要だと思っています。

 こういったことをすれば、さっきおっしゃられていたように、本当に、ピーク時期のお盆に旅行に行けば二十万かかるところが、一、二週間ずらすところで十万ぐらいで行ける。これは、若い世代にとってみると手取りが十万ふえたのと同じことになりますので、キャッシュが出ていかずに従業員の待遇を上げられるという意味では、企業は今後は人材の奪い合い時代になるわけですから、非常に企業にとっても大きな武器となるはずですので、そういった見せ方で、企業にも、これが優秀な人材を食いとめることになるからというような見せ方で推進していくことが大事ではないかなと思います。

 以上です。

矢島参考人 ちょうど私が今コンサルティングしているIT企業では、女性たちに活躍するために必要な条件というのをいろいろ出してもらっている中で、有給休暇の取得についても意見が出ていまして、その中では、例えば申請事由を書く欄をなくしてほしいとか、やはりそれぐらいとりにくい雰囲気があるというようなところかと思います。それにおいては、今おっしゃっていただいたように、経営側にとらせるインセンティブを持っていただくということが非常に重要だというふうに考えております。

 私、旅館業における有給休暇や働き方の改善についての調査などをさせていただいておりますけれども、その中でも、各旅館業の経営者の方に伺うと、今働いている人は特に休暇のニーズがないというような言い方をされるんですね。実は、旅館業というのは、土日がもちろん休みなわけではないので、まずは年間の休日を設定するところからあるわけです。ですので、休日設定と有給休暇の区別がついていらっしゃらない経営者さんもいらっしゃいます。

 ただ、意識の高い経営者さんにおかれましては、計画的に、閑散期にすきを見て自由に予定を入れて休みをとっていただくように促すことで、かなり有給休暇の取得率を高めていらっしゃるところもあるんですね。それをやるかどうかというところで、多くの旅館業の経営者の方にインセンティブを持ってもらうために業界で検討させていただいた結果としては、個々の企業で今はニーズが見えていないかもしれないけれども、やはり、若者が働きにくいんじゃないかと考えている旅館業で有給休暇の取得率が実は高いとなれば、かなり業界全体の魅力を増すことにつながるのではないか、そういった取り組みを業界全体で進めていこうというようなプランを出してはどうかというようなことで、今取り組みを進めているところでございます。

 そういった形で、なぜ有給休暇をとるのかというインセンティブは非常に重要かと思います。

 以上です。

畑委員 ありがとうございました。

 きょう、いろいろ、三人の先生方の意見を聞いていて思ったのは、確かに女性の活躍推進だというふうになっていますが、やはり構造的な問題というのは男女共通していて、そこの構造的な問題をしっかりやらなきゃいけないということで、その問題が端的にあらわれるのは、もちろん弱い立場にある女性だったということなのだろうと思います。

 そういうことで、これをきっかけに、男女ともにしっかりと構造的な問題が改善できるような議論が進めばいいなと思っております。

 本日は、本当にありがとうございました。

井上委員長 次に、三谷英弘君。

三谷委員 みんなの党の三谷英弘です。

 本日は、お忙しいところお越しいただきまして、さまざまなお話、貴重な御意見を伺うことができました。本当にありがとうございます。

 幾つも質問させていただきたいという点はございますけれども、時間の関係もございますので、その中から幾つかということで質問させていただきます。

 先ほど畑委員も質問されておりましたけれども、やはり日本の場合の働き方を見ると、どうしてもサービス過剰というようなところがあるんじゃないかなというふうに思っております。長時間労働というものをやめさせるためには、サービス過剰ということに対する意識を変えていかなければいけないんじゃないかなというふうに思っております。

 というのも、先ほど海外の例がありました。私も、前職は弁護士でございまして、仕事をしていると、フランスのパリの弁護士は、ごめんなさい、来月一カ月休みなんですと普通に言ってくるんですよ。こっちの立場というか、日本で仕事をしておりますと、どうしても、仕事、一カ月できませんというと、やはり、当然ながらほかの同業者に仕事をとられちゃうんじゃないかと思って、では休みを返上して仕事をしますと。そういう、仕事をするために自分の余暇を犠牲にするということが、何かむしろお客さんからの評価の対象だったりも正直する。だから、そういう構造的な問題があるんだろうというふうに思っています。

 こういう聞き方をしてもなんなんですけれども、本当に、お客様は神様ですという言葉が僕はそもそもの問題なんじゃないかと思っていて、お客様はお客様なんですよ、神様でも何でもないというところをしっかり考えていかなきゃいけないんだと思うんです。

 例えば、日本のたくみのわざというのがありますよね。普通だったら、海外だったらここまできめ細やかなことは目を配らないけれども、日本のサービス、これはある意味クールジャパンのよさなのかもしれないんですけれども、日本の場合は、ここまでおもてなしをするのか、こんなちっちゃいところ、こんなところまで、サービスというところが、価格に反映されていない、目の届かないところまで物すごくというところで、物すごくサービスの時間当たりの生産性が上がっているというふうにも思えるんですけれども、その点について、できればお三方の、サービス過剰についての現状、そして、もしあるのであれば、それの改善点について、改善の方策について伺えればと思います。

小室参考人 御質問ありがとうございます。

 私が企業のコンサルをしていて、一番大きな原因であろうと思っているのは、評価についてなんです。

 どういう人が評価されるのか、それに基づいて行動が変わっていくわけなんですが、一言で言うと、今企業の管理職の方がやっている評価、本人たちはそれを成果主義というふうに思っているんですが、成果主義の定義が、月末とか年度末で締めたときの質掛ける量の山の高さで順位をつけるというふうに思っています。

 これでやっていくと、時間を無制限にかけて、とにかく一センチでも山を高く積めば評価は上がっていくという構造になります。ですので、かけた時間度外視で精度を高めていく、相手の気に入るレイアウトにまで資料を変えていくというようなことを微に入り細に入りやるということが評価アップにつながっていきます。

 今私たちが企業の管理職研修でやっているのは、これは成果主義ではありませんと。本当の成果主義は、時間当たり生産性、時間はコストですので、どれだけの時間当たり生産性だったのかということの評価に切りかえると、今あたかもトップになっている人が、実はこの時間当たり生産性ではびりになるということが起きます。これをしっかり評価の中で展開していくと、実はそういった、成果に結びつかない、お客様に価格転嫁できないほどのところまで突き詰めてしまう人というのはいなくなってくるんですね。

 こういった正しい評価を上司が部下にするということが大事なんですが、これが今までなされてこなかった背景の一つには、やはりこの国を挙げて残業代をきちんとしなかったというところが大きかったと思います。

 私は、これは政府の意図的にだと思うんですけれども、日本は人口ボーナス期からオーナス期に移行する時期に人件費がどんどん上がっていきました。構造としては上がっていました。だけれども、サービス残業をさせることによって、それを企業としては払わない企業がたくさんあったわけですが、それをわざとしなかったように私からは見えます。

 そうすると、経営者は人件費が上がっていく実感を持たなかったんですよね。サービス残業でほとんどがさせられてしまうので、時間をどんなにかけさせてもかかるコストは一定だというような、そういう認識のままやっているうちに、時間当たり生産性をシビアに見なければもう撤退しなきゃいけないようなビジネスモデルすらずっと温存してしまったというようなことが起きました。

 ですので、一番重要なのは、本当に時間外が適切に払われているのか、まずは現状でしっかりするということ、ブラック企業の撲滅をするということと、できれば、日本は平日時間外の割り増し賃金がたった一・二五倍、これはフィリピンと同じレベルなんですね。欧米の平均は今一・五から一・七五、休日出勤したら二倍払わなきゃいけない、これが海外のスタンダードです。

 そうすると、どう考えても日本の労働市場は見劣りしますので、高度外国人材が日本に来るわけもないんですね。今後は、いろいろな外国人材の議論が出ていて、移民というよりはできれば高度人材から受け入れたいというのが日本の本音だと思いますが、これでは向こうが来ないと思うんですね。

 ですので、こういった時間外というのは高いんだというようなことが、今まではうやむやにされて、これはもう、むしろ意図的にうやむやにしてきたというふうに私には見えるんですけれども、これを厳密にしていくことによって、時間当たり生産性を上げてくれなきゃ、君は部下として評価されないんだよということを上司がちゃんと言える状態になる。

 これで初めて、上司に、不要なサービスはやりません、なぜなら費用対効果が合わないのでという説明もちゃんとして、どこまでも尽くすではなくて、説明をして、あるところから断るというようなことを部下ができるようになるのではないかというふうに思います。

 以上です。

内藤参考人 御質問ありがとうございます。

 少し違った観点なんですけれども、御質問に関係するんじゃないかと思って、意見を言います。

 実は私、ハラスメント問題をやっていまして、パワーハラスメントの厚労省の委員もやっていたんですけれども、いろいろ調査をやりました中で、実は、パワーハラスメントが職場の中の人間関係で起きるものだけではなくて、実際に悩まれている人は、いわゆる顧客ですとか、第三者の方々から受けるものも悩まれているということが実態としてはあるということがわかってきました。つまり、先ほどおっしゃったようなサービス過剰といったところですね。

 つまり、顧客がある程度、わがままじゃないですけれども、言ってきた場合にも対応しなければいけない、そういったお客様は神様だというようなところがやはり日本にはあるんじゃないかというふうに思います。そして反対に、欧米ではそうじゃないところがあって、そういうことはサービスする必要はないんだ、そういうことはハラスメントになり得るんだという考えを広めていくということも一つ影響を及ぼすんじゃないかなというのが私の感覚です。

 ありがとうございます。

矢島参考人 サービス過剰というお話ですけれども、私自身も労働者であり、かつ消費者であるということで、非常に安くていいものを見ると、消費者としてはうれしいんですけれども、労働者の目線で見ると、少しどうかな、困ったなというようなことを感じることが多々あります。そういう感覚を全ての人が持つことがとても重要なのではないかな。

 家庭の単位で見れば、夫婦どちらかだけ働いている世帯もありますけれども、世帯単位で見ると、全ての世帯で労働者であり消費者であるんだということ、そういったことを消費者教育等も通じて今後広めていくこともとても重要なのではないかと思います。

 また、成果物の品質過多みたいな問題は、当社でも調査やコンサルティングをしておりますので、日々、やはり重要なテーマだと思っております。

 また、相談を受ける中で、例えば新聞記者さんなんかも、やはり締め切りぎりぎりまでとにかく走り続けて、そこでできたものを出すのがいいことなんだというふうな感覚を持っていますけれども、それは逆に、時間制約がない中で、結局はアウトプットするものの質を誰も判断していない。どのレベルなら出せるんだ、どこまでの水準なら出せるんだということを判断していなくて、そういうことをしているうちに、判断する能力も失われてしまうというところだと思います。

 当社でもやはり心がけておりますのは、クライアントに提供できる水準、時間のかけ方ではなくて提供できる水準をプロジェクトリーダーが判断できる、そういったような能力を磨くことがとても重要だと考えております。

 以上です。

三谷委員 本当の意味で女性の活躍というものを推進していくためには、男性の側も、勇気を持ってお客さんからのサービスの提供の依頼を断るということも必要なんじゃないかというふうに思っております。

 また弁護士時代の話なんですけれども、メールが来たら三十分以内に返答しろ、まず何でもいいから返事をする、何時に来ても返事をしろ、休みであっても返事をしろというふうに言われております。それで、できるだけ次の日の朝には何らかの形でレスポンスをするという、本当にこれは二十四時間働けという話なんですよ。

 ただ単に、女性の勤務時間、労働時間を短くするということだけが先走ってしまうと、はっきり言ったら、女性だからしようがないかというふうな話になっちゃうんです。これは逆差別だ、逆に差別を増長する話になってしまうんだと思うんですね。

 だから、そういう意味で、先ほど小室参考人の、やはり女性の長時間労働というのを解消していくためには、男性の側の長時間労働も引き下げていかなきゃいけない、本当にそのとおりだなというふうに思っております。そういう意味で伺っておりました。

 時間も残り少なくなってまいりましたので、実は、これはもしかしたら主に内藤参考人に聞く話なのかもしれないんですけれども、いただいている資料の中で、三ページに、非正規雇用と正規雇用の割合というのが載っているんですけれども、正直な話、自由な労働のあり方ということを考えたときには、こういう、正規が多いからいい、非正規が多いからまずいとか、そういう考え方も変えていかなきゃいけないんじゃないかというふうに思っているんですね。

 そもそも、正規雇用、非正規雇用、非正規雇用ということは正規じゃないということですから、文言上、何かよくないと出ているようなニュアンスがあるわけですよ。こういう分け方についてどのように思われるか、お答えいただければと思います。

内藤参考人 御質問ありがとうございます。

 私がスライドの三でこの図を出した理由というのは、そこのところの価値判断で出したわけではなくて、スライド四のところで、これも正規と言ってしまうんですけれども、正規と非正規の間の賃金格差がこれほどあるよということで、そしてそれが、女性労働者が非正規が多いよということを示すために出したものでございまして、非正規だからいけないとか、正規だからいいとかということを考えているわけでもないですし、確かに、おっしゃるように、言い方、言葉というのはやや問題があるのかもしれません。

 ただ、主眼としましては、賃金格差のところでした。

三谷委員 お答えいただきましてありがとうございます。

 どうしても、正規雇用、非正規雇用という話を考えると、今の就職のあり方、そこから多分問題になってくるんだろうというふうに思っております。みんな就職活動をします、大学を卒業する一年、二年前に、リクルートスーツを着て、みんなで一生懸命、どこでもいいから、ある意味、就職活動をしていくわけです。用意ドンで入社をして、そこから働き始めるわけです。

 会社から見たら、はっきり言ったら、基本的には、採用の時点で個性がないわけですから、どのポジションに誰を当てはめるかというのはその後の話になってくるわけです。だから、みんな、よりよいポジションに置いてもらいたいということで、とにかく会社への忠誠心というものを上げていく、一生懸命働いていくということで、僕は頑張っているんだからいいポジションにつけてくださいよという調子で昇進レースが始まっていく。そこから漏れているのが、簡単に言うと非正規雇用というような話になってくるので、どうしても非正規雇用の人たちが脚光を浴びたりなんなりするということはなかなか考えにくいんだろうというふうに思っているんです。

 だから、ワーク・ライフ・バランスということを本当の意味で考えるんだったら、ポジションごとに採用を進めていくということをもっともっと進めていかなきゃいけないんじゃないかというふうに僕なんかは思っているんですけれども、その点について、採用のあり方、もし御意見があれば、せっかくなので、小室参考人と矢島参考人にその辺をお答えいただければというふうに思います。

小室参考人 ありがとうございます。

 採用のあり方ということに関してですけれども、私が、採用のあり方で日本にとって一番難しいのかなというふうに思うのは、働き方が不明確な中で、ほとんど働き方がわからない中で就職する人が多いなというふうに思っています。私は、今後は、労働者が自分の働き方で企業が選べるという状況にならなくてはならないと思っています。

 そういう意味では、就活の段階で、企業の労働時間から何からがもっとクリアにわかる状況が必要だと思っています。私はよく、学生に、就活のときには二十二時にその企業のビルの前に立ってごらんという話をしていまして、そこでこうこうと電気がついているような企業はまず受けないのが大事だというふうに言っています。

 こういった就職、これからは学生の方が売り手市場にはなってきますけれども、そういった中で、企業が現状どういう働き方をさせているのか、それは正規の人もひどい働き方という状況が多いわけですから、それがつまびらかにされることによって淘汰されるというようなところがもっと出てくるのではないかと考えています。

 ありがとうございます。

矢島参考人 ありがとうございます。

 ポストを決めての採用ということについては、職種別採用というのをとっている企業さんもありますし、そういうのがふさわしい業界もあると思います。また、今議論になっている基幹的業務について言えば、まず本人の希望とかという前にいろいろな業務を経験するということもとても重要なことだと思いますので、やはりその職種とか業界とか目的に応じて採用のあり方というのは考えられるべきだというふうに思います。

 ただ、やはり今の新卒一括採用というもののあり方というのは見直されるべきものもあると思いますし、実際にそれが変わってきているところもあると思います。実際に女性が多く活躍している業界や企業さんに伺いますと、かなり中途採用に力を入れていらっしゃって、実際、中途採用の女性たちを活躍させているというような実態も見られるかと思います。

 以上です。

三谷委員 時間が終わりましたので、終了させていただきます。ありがとうございました。

井上委員長 次に、宮本岳志君。

宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。

 きょうは、三人の参考人の皆さん、まことにありがとうございます。私からもお礼を申し上げます。

 我が党は、ことしの七月の二十二日に、「女性差別撤廃条約批准国としての責任を果たし、女性差別の改善へ、条約の全面実施を 女性差別撤廃委員会への政府報告にあたって」という政策提言を発表いたしました。同時にこれは、政府に申し入れもいたしました。

 御承知のように、国連女性差別撤廃条約が一九七九年に国連で採択されてから、ことしで三十五年になります。日本が批准して、来年で三十年を迎えます。この間、世界各国は、条約に基づいて女性差別の改善と男女平等の前進へ努力を続けてまいりました。

 日本でも、この三十年間に、働く女性が三百五十万人増加するなど、さまざまな分野へ女性の進出が広がっております。にもかかわらず、女性の政治、政策決定参加でも、雇用の平等でも、実質的な改善は十分に進んでおらず、日本の男女平等度は二〇一三年の資料では世界百五位と、世界の努力と到達点から大きく取り残されていると言わなければなりません。

 女性差別撤廃条約は、批准した国の政府に、定期的に条約の実施状況の報告を義務づけておりまして、日本はこれまで六回提出し、ことしの七月が第七、八回の報告書の提出期限でありました。

 これまでの日本の政府報告に対して、女性差別撤廃委員会からは、差別をなくすための日本政府の対応のおくれ、不十分さが繰り返し指摘をされ、改善が求められてまいりました。前回の報告に対する最終見解、二〇〇九年では、約二十分野四十六項目に及ぶ懸念と改善すべき課題が指摘をされております。

 ところが、この五年間、明らかな改善が認められるのは、婚外子差別撤廃の民法改正など、ごく一部にすぎません。この問題に長年取り組んできたNGOの皆さんからは、女性差別撤廃委員会の勧告に政府が応えていると思われるものは一つもない、こういう厳しい評価まで出る始末であります。

 そこで、内藤参考人にお伺いしたいんですが、政府の取り組みがこのように進まない原因について、どのようにお考えになりますか。

内藤参考人 御質問ありがとうございます。

 私もその理由を知りたいところです。そのフォローアップというのを私も拝見しておりますが、どういったところに原因があるか、そういったところも今後はきちんと追及していかなければならない。NGOもそうですし、我々研究者も、どういったところにそのハードルがあるのか、政府が達成できない理由はどこにあるのかということをきちんと研究していかなければならないのかなというのを、今、御意見をお伺いして思いました。

宮本委員 やはり政府が行うべきは、間接差別の原則禁止を含む均等法の抜本的な改正、それから雇用形態や区分の違いによる女性差別を容認する指針の規定の廃止、ILOの百号条約に基づく同一価値労働同一賃金の原則の法制化等々、実効ある法整備、措置を一刻も早くとることだと思うんですね。

 この点についての、これまた内藤参考人の御意見をお伺いしたいと思います。

内藤参考人 御質問ありがとうございます。

 今おっしゃっていただいた中で、特に最後の実効ある仕組み、そこのところは私も関心を持って研究しているところでございます。

 今回の本法案でも、エンフォースメント、実効性確保のところで行政の指導、勧告等が記入されております。その関係で、こういった実効性確保、まあ均等法等に代表されるような実効性確保のあり方ですけれども、こういったことがどういう効果をもたらしているのか、こういった研究をきちんとしていかなければならないのではないか、今後の法制度の整備に当たってやっていかなければならないのではないかというふうに思っております。

宮本委員 ありがとうございます。

 非正規雇用が、働く女性の五四・五%を占めております。一層の不安定雇用化を進めて、女性が働き続けることを困難にするようなやり方というのは許されないと思うんですが、今国会にも、労働者派遣法の、私たちは改悪と考える法案が出されております。私たちは絶対に許されないと思っております。派遣労働者の正社員化、派遣やパート労働者への差別をなくす均等待遇の原則に立った法整備、こういったものが必要だと思うんですね。

 今度は小室参考人にお伺いしたいんですけれども、非正規雇用の女性の雇用環境の実態に関する所見をお伺いするとともに、解決のためにどういうところから着手すればよいかというような点について、ぜひ小室参考人の御所見をお伺いしたいと思います。

小室参考人 ありがとうございます。

 私は、非正規労働について専門ではないので詳しくないですけれども、それを断った上でということなんですが、私が実態の中で起きているなというふうに思っていることは、女性の百三万円の壁があります。この百三万円の壁に、女性たちみずからが自分の年収を抑えようとすると、低い賃金でも本人たちは構わないという形で仕事をするようになります。そうすると、実は同じ仕事をしているパート仲間で、本来はその仕事で食べていきたいと思っている人の時給まで抑えられてしまっているという現状が起きています。

 こういった配偶者控除というようなことは、実は、女性に影響を与えているだけではなくて、その周りで、本来はその仕事で食べていきたいと思っている人の賃金まで下げているというような傾向があるなということについては、こういったことを改善していくことが非正規労働の方の賃金が上がるということにもつながってくるというふうに思っております。

 それからもう一点は、やはり正規、非正規関係なく、本来は時間当たりの生産性が高ければきちんと評価をされるべきなんですけれども、そういったことが、現在だと、スタートがどっちで入ったのかということで全て決まってしまっている。これは、評価のつけ方が期間当たりの生産性であるということと大きく関連していると思いますので、こういったことが、しっかり評価の形が変わってくることによって、実はあの人は正規労働になってもらった方がいいねというようなことに企業の側も気づいてくるという形になるのではないかと思っております。

 以上です。ありがとうございます。

宮本委員 ありがとうございます。

 そこで、女性差別撤廃条約なんですけれども、条約では、子育ては男女及び社会全体がともに責任を負うことが必要であると明記をしております。この立場から、前回の最終見解は、日本で育児や家庭責任を女性が中心に担い、女性がキャリアを中断し、パート労働になっている問題について懸念を表明し、両立支援の取り組みの強化と保育施策、育児休業制度の拡充というものを求めました。

 にもかかわらず、この五年間、待機児童問題はますます深刻化していると言わなければなりません。育児休業制度の休業中の所得保障は改善されましたけれども、保育所不足や育児休業がとりにくい職場環境などを背景に、女性の休業取得率は、昨年度七六・三%にとどまりました。男性の取得率はわずか二・〇三%であります。

 政府が進める子ども・子育て新制度は、保育に対する国や自治体の責任を後退させ、保育の営利化、保育条件の低下と格差拡大を招き、条約の求める保育の公的保障の立場と逆行するものだと私たちは考えます。この点に関する、今度は矢島参考人のお考えをお聞かせいただければありがたいです。

矢島参考人 夫婦で子育てすることと保育所の問題と両方というふうに捉えてよろしいでしょうか。(宮本委員「はい、そうです」と呼ぶ)ありがとうございます。

 まず、夫婦での子育てというのは、女性の活躍においても非常に重要だと思っております。

 私が調査した中でも、短時間勤務の制度の希望というのは非常に女性に高いわけですけれども、それが、やはり夫の労働時間が長い人ほど、女性が短時間勤務で働きたいというような傾向がありまして、ずっと短時間勤務でないといけないのかとなりますと、夫が時々は保育園のお迎えに行くとかそういうことができれば、女性ももう少ししっかりと働けるということは確実にあると思います。

 保育園のお迎え実態なども調査していますと、最近は、送りに行く方は比較的男性がふえてきたというような傾向はありますが、お迎えはどうしても女性というような分担が多く残っておりまして、そうすると、やはり早く帰らなければいけないのは女性だけみたいな形もございます。

 そういった視点からも、やはり夫婦での子育て、育児休業というのは、確かに今とっている方は短くて、それだけではなかなか、子育てしていることになるのかということもありますが、子供を育て始める最初にその経験を共有していただいて、男性に子育てをするというスイッチを入れていただくということがとても重要だと思いますし、その先に女性たちが望んでいるのは、やはり平日に子育てに一緒に参加してくれるということだと思います。

 また、済みません、保育所の待機問題は本当に深刻な問題で、特にゼロ、一、二というところが深刻ですけれども、やはり、特に一歳で確実に入れるようになれば、ゼロ歳は育児休業をとっていたいという女性は非常に多いんですね。それが、余りにも保育所が足りないので、ゼロ歳のうちに入所させようということで育児休業を早める方も出てきている。そのためにゼロ歳児保育ニーズが高まって、社会的にもコストが大きくなるという悪循環に陥っておりますので、やはりここは、一歳で確実に入れるということが制度上の整合性からいっても非常に重要なポイントではないかというふうに考えております。

 以上です。

宮本委員 大変耳の痛い話でありまして、私のところも、妻がフルタイムで働いておりまして、子育てを、これは私も、保育所、送り迎えという名目でやりましたけれども、おっしゃるとおり、送る方は熱心でありましたが、迎えは専ら妻がやはり多かったように思いますね。

 それで、最後に内藤参考人にお伺いするんですが、女性差別撤廃委員会は、条約の実効性を高めるために、女性の権利侵害を国連に個人で通報できる制度を定めました女性差別撤廃条約の選択議定書の批准を強く促進しております。既に百カ国以上が批准しており、主な先進国の中で未批准というのは、日本と、女性差別撤廃条約そのものを批准していないアメリカだけになっております。

 国内でも批准を求める運動が広がり、二〇〇一年からことしまでの間に、参議院では、選択議定書の速やかな採択を求める請願が十四回採択をされております。

 政府は、早期批准を求める日本共産党の国会質問に、選択議定書の意義は認めるという答弁をしておりますけれども、国内の法や制度との整合性を理由に、慎重な検討を要するという態度をとり続けております。国際条約よりも国内事情を優先するというのは問題だというふうに思いますけれども、国際ルールに立った一刻も早い批准が必要だと思うんです。

 また、ILOの百十一号、雇用における差別禁止、百七十五号、パートタイムなどの、日本が批准していない国際条約の批准を進めて、世界の基準に基づく男女平等の確立を図るべきだと私たちは主張しております。

 ぜひ、この差別撤廃条約の選択議定書の批准の必要性について、内藤参考人の御意見を最後にお聞かせいただきたいと思います。

内藤参考人 御質問ありがとうございます。

 女性差別撤廃条約の選択議定書の批准及びILOの百十一号、百七十五号の批准に関しての御質問だったと思います。

 これは全く私の見解ですけれども、私としては批准した方がいいというふうに考えております。

宮本委員 ありがとうございました。

 以上で終わります。

井上委員長 次に、杉田水脈君。

杉田委員 次世代の党の杉田水脈です。

 本日は、三名の参考人の皆様、本当にどうもありがとうございます。

 まず最初の質問なんですけれども、小室淑恵参考人のワーク・ライフ・バランスのお話を直接聞くのは私は二回目なんですけれども、さらにパワーアップしていらっしゃるなというふうに思って、感心して聞いていたところでございます。

 小室参考人のお話の中にありました、ちょうど人口ボーナス期から人口オーナス期に変わっていくところに、私は、日本では働き方がもう根本から変わるようなことが起こったと思うんですね。それは何かと申し上げますと、IT改革だと思うんです。

 例えば、それまで手書きとかで文書をつくっていたものが、どんな職場でも一人一台パソコンになり、今はそれにプラスしてインターネットの技術とかが発達しておりますから、どこにいても働きができるというような形にはなってきていると思うんです。私が考えるに、人口ボーナス期のころに朝から晩まで丸一日かかっていたような仕事が、多分、このITの発達によって、二、三時間の仕事で済むような形になってきているのではないかというふうに思っています。

 そこで、三名の方々それぞれにお尋ねしたいんですけれども、このようなIT改革が起こったにもかかわらず、日本では時短が進まない、その原因はどこにあるとお考えでしょうか。

小室参考人 御質問ありがとうございます。

 ITは生産性を上げるために本来使われるべきものなんですけれども、労働時間のリミットがない中でITを導入すると、むしろ、メールを送ったらすぐ返事が来てしまうということで、際限なく仕事に二十四時間縛られるというような形になると私は思っています。

 例えば、本当に有名なIT企業で、社会からはワーク・ライフ・バランスに優しいと言われている企業の実態で何が起きているかというと、ワーキングマザーは短時間勤務をとらせてもらっているんです。しかしながら、家に帰って子供に御飯を上げたら、すぐPCをもう一度開き、ほかのメンバーは深夜までやって、そこにチャットがどんどん入ってきて、指示が飛び交っている様子を見ると、自分もそこに参加しないと評価が落ちるという恐怖感を持って、ほかの同僚が働き続けている時間までは、自分も寝る寸前まで、とにかく子供は寝ろ寝ろという感じで、はい、寝た、すぐ仕事に戻れるというような、そんな形で、家にいても心ここにあらずというような形での育児になってしまって、二十四時間をITが侵食してしまっているような形になっています。

 本来、時間や場所を柔軟に働けるという意味で、ITはワーク・ライフ・バランスに寄与するべきものなんですが、ほかのメンバーが深夜までやっている中で対象の人だけ何か早く帰らせてあげても、実際にはいいことにならないというふうに思っています。

 ITは、使い方はかなり工夫する必要があって、特に深夜にITの仕事をするとうつ病になりやすくなるというのが、やはり深夜に、昼夜逆転というような仕事の仕方をするとなりやすくなるので、いかにしてITのいい面を引き出して生産性向上に寄与させていくかという意味では、事情がない人の働き方も、きちんと時間内で終えて、その時間内で働くという中でITを上手に使うということが、この順序がすごく大切なのではないかなというふうに思っています。

 以上です。

内藤参考人 御質問ありがとうございます。

 今のお話をお伺いして、ちょっと思いついたことがございます。

 パワーハラスメントの研究をしている中で、労使の、労働組合や消費者の皆さんに、ハラスメントの担当者の方に、ハラスメントがどうして起きると思いますかというふうにインタビューしたことがございます。そのときの理由の一つとして、IT機器の発達というのがあったというふうに記憶しています。

 今、小室さんがおっしゃったことと重なるんですけれども、やはりIT機器、端的に言えばパソコンですとかメールですとかそういうことですけれども、これがあるがために、同じ島であってもメールでやりとりする、話して、口頭でのコミュニケーションであればもっと多くのことがここで決まっていくのに、一個ずつメールでしてしまう。

 その内容だけではなくて、やはりコミュニケーションをとることで職場の雰囲気というのはすごく風通しのよいものになり得て、それは生産性が向上する可能性があるわけなんですけれども、結果としてそれで労働時間というのが短くなる可能性もあると思うんですね。

 ですから、そういったハラスメントの調査の中で、IT機器というのがもたらす弊害というのは感じることはございました。

矢島参考人 ありがとうございます。

 ワーク・ライフ・バランスなどで、よく労働生産性というと、個々人が何かしゃかりきに努力をして効率よく働くというイメージがあるかと思うんですが、やはりそれだけではなくて、企業全体が高付加価値を生むような業態に変換していくこと、そして日本社会全体がそういった産業構造に転換していくことが非常に重要だと思いますし、ITを含めた科学技術の開発ですとか新産業創出、そういったものに長く日本もさまざまな政策としての投資をしてきておるわけですけれども、そういったものがきちんと日本人の労働価値の向上というところにつながっているのかどうかといった視点での検証も必要なのではないかというふうに考えております。

 以上です。

杉田委員 ありがとうございます。

 三名の方々、総じてITの発達というものに関してはいい面と悪い面があるという御意見だったかとは思うんですけれども、これだけ日本全国が、官公庁もそれから企業も、お金をかけて全部IT化したわけです。ならば、いい面を活用していく方向に持っていかなくては、何のためのIT化だったのかというのがわからなくなってくると思います。

 そこで、一点、お伺いしたいことがあるんですけれども、育児休業の話なんです。

 育児休暇、例えば国家公務員は三年とれるようになっており、これが企業に波及していったとして、育児休暇を三年とれるとしたら、子供を三人産んだら、その人は十年、会社に出てこないことになるんですよ。では、もし入社試験で同じ点数で男子と女子がいたら、経営者としては男性を採っちゃいますよね。逆に、そういうふうなことを充実させるのが実は女性の活躍を阻んでいるというようなことも出てくると思うんですね。

 そこで、私は、そういう形でITで時短というのができるのであれば、ちょうど育児休業ができたころの一日分の仕事は、さっき言ったみたいに、二、三時間でできるはずなんですよ。では、継続性を持たせて、育児休暇ではなくて在宅勤務に切りかえて、例えば一日二時間、赤ちゃんがお昼寝をしている間とかでもするということになれば、これは女性だけではなくて、男性の育児休暇の促進が進むのではないかというふうに思っておるんです。

 この点につきまして、ちょうど矢島参考人が省略された在宅ワーク、テレワークの部分にもしかしたらかかわることかもしれないので、矢島参考人のお考えをお聞かせ願いたいと思います。

矢島参考人 ありがとうございます。

 おっしゃるように、ITをうまく活用してということで、例えば今、短時間勤務で働いている女性も、会社で短時間、六時間働いて、プラス二時間家で在宅ワークをすれば、フルタイム分働けるという可能性もあります。

 また、やはり発想としては、時間でなくて成果で評価されるということが非常に重要だと思いますし、育児休業のブランクというのも、今、民間企業では、三年まで育児休業制度をつくっても、一年で大体戻ってくるようにというようなことに、女性の活躍の視点からはそうなっておりますけれども、育児休業のブランクというのも、決してマイナスの面だけではなくて、その間の経験ですとか、私自身も実際に数年ブランクがあるんですけれども、私の部下たちも結構育児休業をとったりして戻ってきますが、皆仕事に対して非常に意欲を持って、休んだ分、意欲を持って復帰してきますし、あと、時間の制約がある中で働く以上、もっと意味のある仕事をしたいと。子供を預けながら働いていて、短時間であっても、本人にとっては、やはり仕事の時間は生活の中でかなり占めているんですね。その中で、やはり意味のある仕事をしたいという非常に強い熱意を持って仕事をしております。

 そういうところの価値が、実際に当社などでは成果としてあらわれておりますけれども、そういったものを経営者の方々が認めてくださるようになることが非常に重要ではないかというふうに感じております。

杉田委員 会社に出てきてどれだけということではなくて、在宅でいてもちゃんと成果で評価をするというようなことは私も重要だと思います。これは、待機児童解消にもつながるような問題だと思いますので、きっちりと今後取り組んでいくことだと思います。

 次に、これは内藤参考人にお伺いをしたいんですけれども、この冊子、先ほど説明をしていただきました。

 一ページ目を開いて、男女間の賃金格差は依然として大きい状況ですとありまして、男性を一〇〇としたときに女性は約七割ですというのがあるんですが、もう一ページ開きますと、男女間の賃金格差は何が原因でと書いてあるところがあります。「男女間賃金格差は、男女の平均勤続年数や管理職比率に差異があることが主な要因となっています。」と言って、これを読んだときに、私は正直、首をかしげてしまったんです。

 今、同じ職で、例えば総合職で男性と女性が雇用された場合、これは同一賃金だと私は思うんですよ。あなたは女性だから七割しか上げませんという会社はないと思います。同一です。

 これに対して、例えば勤続年数が上がっていきましたというときに、女性が一年間育児休暇をとったので休みましたとなったら、一年分、同期よりもおくれてしまうわけですよ、少なくなってしまうんですね。これは、私は格差ではないと思うんですね。例えば、男性が一年間病気で休業しても同じことが起こると思います。

 それから、管理職比率というのも、同期でずっといっていっても、誰かが先に昇進したとなったら、先に上がった人の方がお給料が高くなるのは当たり前のことであって、これも別に、男性と女性の差ではなくて、男性同士でも、同じ同期同士で先に出世した人は、先にお給料が上がったりとかという格差はあるので、これを男女間格差と言ってしまうのは非常に乱暴ではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

内藤参考人 御質問ありがとうございます。

 こちらのガイドラインの四ページのところでございますね。ここの、男女の平均勤続年数や管理職比率と書いてあるところだというふうに思いますが、この平均勤続年数は、おっしゃるような、育児休業で一年間いないとかそういった場合だけではなくて、先ほど私の資料の方で御紹介したような、妊娠、出産に当たって退職する女性が六割もいるということが影響しているということです。

 つまり、職場にいる男性と女性を見た場合に、平均勤続年数を見ますと、男性の方がやはり長い。女性の方が、妊娠、出産に当たって退職する率がもちろん高いので、平均勤続年数が下がる。そのことで、平均の賃金を見ますと、当然男性の方が高くなるという趣旨です。管理職比率も同じことが言えるということです。

 ただ、管理職比率に関しましては、非常に評価ということがかかわってきますので、評価によって管理職に登用される、登用されないということがかかわってきますので、そこは差別性がないかどうか精査する必要はあるかもしれません。

杉田委員 評価といっても、これも男性間でも、先ほど言ったように、先に出世する人や、僕の方ができるのにとか、その評価に不満を持っている方は、これは女性だけの問題ではなくて、男性同士でも生じ得ることだと思います。

 出産でやめてしまう人が女性の方が多い、それは当たり前です。妊娠、出産できるのは女性しかいませんから。男性だって、例えば病気になってやめてしまった、でも病気が治ってまた復帰したとなったら、同様のことが起こってくるので、これが女性だけの問題だと言っているのは、その説明を聞いても、やはり私は乱暴ではないかというふうに感じます。

 もう一点、参考人が用意いただきましたこの資料の八ページ目のところで、不当な取り扱いやハラスメントの状況というのがあって、これは二三・二%の人が被害を訴えているのがすごい問題だみたいな形になっていますが、私は、周囲でマタハラとかに遭った人がいないと思うというのが七六・八%もあることの方がすばらしいと。どうしてそういう評価ができないのか。ここのところを出すことによって、女性は差別されているという、無理やり差別や格差を逆に生み出してしまう。ここをクローズアップすることによって、無理して、女性はこんな目に遭っていますよと言っているような気がするんですね。

 そういう文化がなかったというのは、私は当たり前だと思います。それまで男性しか働いていなかったところに例えば女性が一人となってきたら、文化がないのは当たり前です。その人がフロンティアになっていって、どんどん女性がふえていって、半分ぐらいになっていく、その過程では当然起こってくることなので、これを簡単に、女性に対する職場でのハラスメントと言うのは、これも私は非常に乱暴な理論ではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

内藤参考人 御質問ありがとうございます。

 確かに、おっしゃるように、連合の調査ですけれども、割合で見ますと七六・八%の方が、周囲でマタハラに遭った人はいないというふうにお答えになっています。割合だけ見ますと、確かに、こちらの方が多くございます。

 ただ、私は、こんなに多く、二三・二%の人が訴えているよ、こんなに多いよとは言っておらず、少ないかもしれないけれども、これだけの人がこういうことを、むしろ項目ですね、こういったことを言っている人がいるよということで、ここではお示しさせていただきました。

杉田委員 そういったようなこととか、でも、やはり休みがちになるとかいろいろなところが評価の面で賃金なんかに影響を及ぼしているというところは、これは不当なことではないと私は思うんですね。そういったことも考慮をしていく必要がある。何でもかんでも、これは女性差別だ、男女格差だと言うことは、今の日本の社会においてちょっと時代おくれな議論だなというふうに思っております。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

井上委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、一言御挨拶を申し上げます。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時五十二分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.