衆議院

メインへスキップ



第7号 平成27年5月20日(水曜日)

会議録本文へ
平成二十七年五月二十日(水曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 井上 信治君

   理事 秋元  司君 理事 亀岡 偉民君

   理事 田村 憲久君 理事 谷川 弥一君

   理事 中山 展宏君 理事 泉  健太君

   理事 河野 正美君 理事 高木美智代君

      青山 周平君    池田 道孝君

      池田 佳隆君    石崎  徹君

      今枝宗一郎君    岩田 和親君

      越智 隆雄君    大隈 和英君

      大西 英男君    岡下 昌平君

      鬼木  誠君    加藤 寛治君

      神谷  昇君    木内  均君

      小林 史明君    佐々木 紀君

      新谷 正義君    助田 重義君

      鈴木 隼人君    武井 俊輔君

      武部  新君    寺田  稔君

      長尾  敬君    ふくだ峰之君

      古川  康君    細田 健一君

      松本 洋平君    宮崎 政久君

      若狭  勝君    緒方林太郎君

      近藤 洋介君    佐々木隆博君

      津村 啓介君    辻元 清美君

      中島 克仁君    古本伸一郎君

      山尾志桜里君    足立 康史君

      小沢 鋭仁君    高井 崇志君

      升田世喜男君    水戸 将史君

      輿水 恵一君    濱村  進君

      池内さおり君    塩川 鉄也君

    …………………………………

   国務大臣         山口 俊一君

   内閣府副大臣       平  将明君

   内閣府副大臣       西村 康稔君

   法務副大臣        葉梨 康弘君

   内閣府大臣政務官     越智 隆雄君

   内閣府大臣政務官     松本 洋平君

   内閣府大臣政務官     小泉進次郎君

   総務大臣政務官      あかま二郎君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  向井 治紀君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  谷脇 康彦君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房政府広報室長)          別府 充彦君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 露木 康浩君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  辻  義之君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局審議官)            西田 直樹君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 時澤  忠君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 青木 信之君

   政府参考人

   (総務省自治行政局選挙部長)           稲山 博司君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 上冨 敏伸君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 星野 次彦君

   政府参考人

   (国税庁課税部長)    藤田 博一君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房情報政策・政策評価審議官)  安藤 英作君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           福島 靖正君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           吉田  学君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           石川 正樹君

   内閣委員会専門員     室井 純子君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十日

 辞任         補欠選任

  池田 佳隆君     鬼木  誠君

  石崎  徹君     今枝宗一郎君

  越智 隆雄君     佐々木 紀君

  加藤 寛治君     池田 道孝君

  平口  洋君     新谷 正義君

  ふくだ峰之君     小林 史明君

  若狭  勝君     古川  康君

  近藤 洋介君     津村 啓介君

  辻元 清美君     中島 克仁君

  升田世喜男君     水戸 将史君

同日

 辞任         補欠選任

  池田 道孝君     大西 英男君

  今枝宗一郎君     石崎  徹君

  鬼木  誠君     武井 俊輔君

  小林 史明君     ふくだ峰之君

  佐々木 紀君     越智 隆雄君

  新谷 正義君     平口  洋君

  古川  康君     若狭  勝君

  津村 啓介君     近藤 洋介君

  中島 克仁君     辻元 清美君

  水戸 将史君     足立 康史君

同日

 辞任         補欠選任

  大西 英男君     加藤 寛治君

  武井 俊輔君     助田 重義君

  足立 康史君     升田世喜男君

同日

 辞任         補欠選任

  助田 重義君     鈴木 隼人君

同日

 辞任         補欠選任

  鈴木 隼人君     細田 健一君

同日

 辞任         補欠選任

  細田 健一君     池田 佳隆君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 個人情報の保護に関する法律及び行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第三四号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

井上委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、個人情報の保護に関する法律及び行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官向井治紀君、内閣官房内閣審議官谷脇康彦君、内閣府大臣官房政府広報室長別府充彦君、警察庁長官官房審議官露木康浩君、警察庁生活安全局長辻義之君、金融庁総務企画局審議官西田直樹君、総務省大臣官房審議官時澤忠君、総務省大臣官房審議官青木信之君、総務省自治行政局選挙部長稲山博司君、法務省大臣官房審議官上冨敏伸君、財務省大臣官房審議官星野次彦君、国税庁課税部長藤田博一君、厚生労働省大臣官房情報政策・政策評価審議官安藤英作君、厚生労働省大臣官房審議官福島靖正君、厚生労働省大臣官房審議官吉田学君、経済産業省大臣官房審議官石川正樹君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

井上委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

井上委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐々木隆博君。

佐々木(隆)委員 おはようございます。民主党の佐々木でございます。

 きょう、個人情報保護法と番号利用法について質問をさせていただきますが、かなりな時間、かなり論議は尽くされてきているというふうに思うんですが、私は、別にITの専門家でもありませんし、このことに非常に詳しいわけでもありません。

 そういう中でずっと論議を聞かせていただいて、ちょっと疑問に思うところがあります。それは、私みたいに余り専門家でない人間にとって、この法律ができることによって、国家戦略としてやっているわけですから、将来にわたって、このことによってどんな日本になっていくのかというのが、ずっと答弁では、第一段階で、それは第二段階というお話をされるものですから、その先のことのイメージがなかなかつかめないということが一つあります。

 それともう一つ、その反対に、入り口のところで、どこら辺までが整理されてスタートをしているのかという、ここのところも、専門家でない我々にとってはいまだはっきりしていないという点をずっと感じながら論議を聞かせていただいてまいりました。

 きょうは、そういう視点で少し議論をさせていただければというふうに思うところでありますので、よろしく、技術的な話はほかの皆さんがやっていただけるというふうに思います。

 それで、まず、番号利用法について何点かお伺いをしたいというふうに思うんです。

 世界最先端IT国家創造宣言というものの中に今論議をされているものがあるというふうに思うんですが、それの目指す姿というものを、まず、大臣にお伺いしたいんです。

 国民、利用者への広報ということを今盛んにやっておられる、いろいろなツールを使って宣伝をされているというふうに思うんですが、それについて、どのぐらい実績を上げてこられて、普及しているというふうに認識されておられるのかということと、利便性の向上ということをよく言われるんですが、その利便性の向上ということは国民にとってどういう利便なんだということも含めて、大臣のこの法律に取り組むそうした姿をぜひ示していただきたいと思います。

山口国務大臣 お答えをさせていただきます。

 ただいま御指摘をいただきました、政府のIT戦略であります世界最先端IT国家創造宣言、これにおきましては、マイナンバー制度は、「今後のIT利活用の基盤となるインフラを提供するもの」というふうに位置づけをしておりまして、この制度の利活用によりまして、国、地方、民間のさまざまな手続あるいはサービス、これがシームレスかつ効率的に連携をして、まさに、あらゆることが電子的に処理できる、利活用できるというふうな社会の実現を目指すことにしております。

 先生もお話がありました、具体的な検討、取り組みとしましては、IT総合戦略本部のもとに設置をされております新戦略推進専門調査会マイナンバー等分科会におきましては、例えば、引っ越しなど国民生活のさまざまなライフイベントといいますかさまざまな状態に応じて手続のワンストップ化、あるいは官民のさまざまな手続においてオンラインで一括をして申請とか受理等が行える、そういった機能を備えたマイポータルの構築とか、あるいは国民生活で広く利用されております健康保険証などの機能の個人番号カードへの一元化等、マイナンバー制度の利活用の範囲の拡大を推進しておるところでございます。

 引き続きまして、社会全体の効率化とか、とりわけ国民の皆さん方の利便性向上に資する分野とかサービスでの利用につきまして、マイナンバー制度の利用範囲の拡大に向けた検討も推進をしてまいりたい。

 先般、私ども、エストニアの方に視察に行っておりましたが、例えば、銀行でも窓口に行かなくてほぼ全ての処理ができるというふうなことで、大変便利だというふうな国民の方々のお話も聞きました。

 そういったことを目指して、しっかりと取り組んでまいりたいと思っております。

佐々木(隆)委員 今、大臣から一部具体的なお話もいただきましたが、入り口論として、もう一度ちょっと整理をしていただきたいんです。

 今、特に大臣の方からもお話がありましたように、行政の側として非常に便利になるということは、それはわかります。それは、行政のそれぞれの機関の内部の効率化と同時に、行政同士というか、それぞれの組織同士のやりとりも非常に便利になるんだろうというふうなことはわかるわけでありますが、逆に言うと、これは、行政はもちろんでありますけれども、事業者の皆さん方にとっても、あるいは個人にとっても、一体どれほど、どういうふうに便利になるんだというのを、行政のことだけはよくわかるんだけれども、それ以外のことについて、このことが実行されることによってどれだけ便利になっていくのかということを、これは国民の皆さん方に普及させようとしているわけですから、やはりもう少しそこのところをわかりやすく説明される必要があるのではないかというふうに思うんですが、具体的に少し、それぞれの場面でお答えをいただければというふうに思います。

小泉大臣政務官 今、佐々木委員から御指摘いただいたところは大変大事な点だと思います。

 やはり、私も今担当していて、マイナンバーを導入するに当たって、例えば関係部局にも言っているのは、住基のときのように、新しい制度を始めたけれども余りサービスが認識されないとか、そういったことがあってはいけない。そういったことを心がけて、しっかりと広報、周知、そしてこの制度の理解を広めなければいけない。

 そんな中、今先生からは、行政、役所とかだけではなくて、個人とまた事業者、このメリットは何かということでしたが、今、私も具体的に周りにもいろいろ、マイナンバーになるとどうなるのかと聞いています。

 そうすると、例えば、今お子さんを持っている方だと、児童手当の給付申請などもしますよね。それで、児童手当の給付申請等に必要とされる所得の証明書、今、これは役所に行かなければとれませんけれども、こういったことも添付書類とかが不要になったり、そういった具体的なメリットもある、そういうふうに聞いています。

 そして、例えばマイナポータル、これが二十九年の七月から実際に運用ができるようになりますが、住宅ローンの残高証明、それとか生命保険の控除証明書、こういったものを電子的にマイナポータルに送ることによって、送る側とすれば、まず郵送費がかからなくなる、そして、利用者からすると、税の申告から納付まで手続をワンストップで行えるようになる、こういったような具体的なメリットも感じていただけると思います。

 それに加えて、恐らくこのメリットの中では間接、直接、さまざまな形があると思いますが、やはり、公平公正な社会保障そして税の基盤となり得るためには、所得をできる限り正確に把握をすることで公正な税や社会保障の負担のあり方なども実現することによって、社会のこの制度に対する理解、こういったものにもつながることだと思っていますので、引き続き、マイナンバー制度が導入されることによって世の中がより公平公正になるということの実感を持っていただけるように、周知の方も広報の方もしっかりとやっていきたいと考えております。

佐々木(隆)委員 その所得のことについてはまた後でちょっとお伺いしたいんですが、今、個人という点では少し詳し目に御説明をいただきました。

 これは事業者の皆さん方も対象になるわけですよね、全ての人ですから。事業者の人方にとってのメリットというのは一体何なんでしょうか。

小泉大臣政務官 事業者の方にとっても、例えば先ほど私が言及をした住宅ローンの残高証明、そして生命保険の控除証明書などは、事業者の方がマイナポータルの方に送るということは、今までのように郵送ではなくて、電子的にマイナポータルという電子的な場といいますかそういったところに送ることで、まずそこのコスト、これは事業者側が負担する必要がなくなります。

 そういったこともそうですし、これから一つ一つ事業者向けの説明もしっかりしながら、個人にとってのメリット、事業者にとってのメリット、そして行政の側にもメリットがあることによって、行政の効率化や社会の公平公正が実現に向かう、こういったことをしっかりと説明していきたいと考えております。

佐々木(隆)委員 両方相まって進んでいかなければ、それぞれがメリット感を共有できなければ、事業者の方が幾ら発信しても、個人の方にメリット感がなければそれに応じないということになるわけでありますので、いずれにしても、周知徹底というものをさらに進めていく必要があるのではないか。いろいろな手段を使って今もやっておられるようでありますけれども、正直言って、この後ちょっと質問したいんですが、私の自宅にそういう何かが届いたというふうな記憶はありませんので。

 そこで、今、事業者の中でも、ある程度大きな事業主の皆さん方は、専門家をある程度育成もしていますし、それに携わっておられる方もおられるというふうに思うんですが、個人の事業主、この人は個人でもあり事業主でもありというような人たちがたくさんおられると思うんですね、現実には。私は農業者ですから、そういった意味からいうと、これはちょっと後でそのことについてもお伺いしますが、その前に一つ、こういう個人事業主や個人とを兼ね備えているような人たちというものが、ある種、ITの中で谷間に入っていく危険性があるのではないかというふうに思ってございます。

 データについてどうするかという前に、IT総合戦略という全体の枠組みの中で、これはそれぞれの省庁が取り組んでおられるわけでありますが、特に農業分野についてお伺いしたいと思うんです。

 ずっと検討会が開かれているというんですが、私も報告書を見ましたけれども、それほど進んでいるなというような状況がありません。

 まず、農業分野におけるIT総合戦略としての分科会の進捗状況などについてお伺いしたいと思います。

向井政府参考人 お答えいたします。

 我が国の農業においては、担い手の減少、あるいは国際競争力の向上といった諸課題に直面しておりまして、農業におけるITの利活用がこのような課題を解決する有力な手段になるものと認識しております。

 このような考え方により、IT総合戦略本部のもとで農業分科会を開催いたしまして、農業分野のITの利活用の推進に関する政府横断的な課題の検討を進めているところでございます。

 具体的には、特に小規模事業者が多い農業分野におきまして、事業者を超えたデータの流通と利活用を推進するためのデータの標準化、これが重要と認識しております。そのもとで、農業データの相互運用性の確保を図ること等の方向性を掲げた農業情報創成・流通促進戦略を昨年の六月にIT戦略本部で決定したところでございます。

 また、その戦略を踏まえまして、標準化の必要性が高い項目から個別のガイドラインの策定等に順次取り組んできておりまして、本年三月末には、農作業の名称及び環境情報のデータ項目に関する二種類の個別ガイドラインを定めたところでございます。あわせて、標準化の取り組みの進捗や目標を示すロードマップを定め、公表したところでございます。

 これらの取り組みは事業者を超えたデータの流通あるいは利活用を促すものと考えておりまして、今後とも、農業分野のIT利活用に関する政府横断的な取り組みを推進してまいりたいと思っております。

佐々木(隆)委員 今のお話はIT全体をどう進めていくかということなんですが、それを進めないと結局データの蓄積もできていかないということになるわけで、データがそろっていないということは、全体のデータの中からそこだけ抜け落ちるということにもなってしまうわけです。そういった意味では、内閣府が主導してやっているわけでありますから、そこのところの抜け落ちるデータがないような仕組みにしないとトータルとしてのデータがつながっていかないということになっちゃうわけでありますので、農水省に限らない話のようでありますが、ぜひそこはさらに進めていただかなければ全体として進んでいくということにならないのではないかというふうに思いますので、その点、申し上げておきたいというふうに思います。

 そこで、今もお話がありましたように、いろいろな事業者を通じて標準化をして、そして分野としての情報を標準化していきたいという話でありましたが、要するに、小規模事業者も私は同じだと思うんです。自分のところで、自前で全部やれればいいんですけれども、そうでないとすれば、いろいろな事業者を通じてやらなければ基礎データみたいなものがつくれない、いわゆる標準化ができないということになっていってしまいますので、そういった意味では、小規模事業者も全く同じような現象が起きてくるというふうに思うんですね。

 そういういわゆる管理委託みたいなものをして個人情報を管理していくということが予想されるわけでありますが、個人情報をそういう管理委託するような場合の情報保護の上からの問題点、課題を整理されていると思うんですが、それと、それから、安全管理措置という点で、今日までどういう論議がされて整理がされてきたのかということについて、お伺いをしたいと思います。

向井政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘の、個人の情報を代理的な形で管理、あるいは委託的な形で管理するような機関というものは、今でも幾つかの業者が個々にやっている部分もございますけれども、情報流通あるいは蓄積を目的としたような、そういうふうな機関も必要になってくることは十分想定されるところでございます。

 現在、そういうふうなものに対する特殊な業的な規制というのはございませんけれども、今後、IT化を一層進めるためにも、むしろ、そういう代理をするような機関がどのような規制ないし行動規範というのが必要かというのを現在まさに検討中でございます。

 取り扱う情報がどういうものかによってかなり変わってくることも考えられますので、これらにつきましては、少し、年内、時間をかけてじっくり検討してまいりたいというふうに考えてございます。

佐々木(隆)委員 全体として進めなきゃいけないという考え方を私は持っているんです。情報というのは、全部つながってこそ初めて情報でありまして、まさにその字のとおり、情けに報いることにならないわけであります。そういった意味では、どこかが抜け落ちている状況というのは、これを進めていく上では、せっかく進めたけれども、そこのデータが入ってこない、あるいはまだ準備中だというようなところをできるだけやはり整理して、スタートができるような仕組みをつくっていかなければならないのではないかということについては申し上げておきたいし、今、これから機関をつくって検討するということでありますので、まだそこもできていないという状況だとすれば、これはやはり早急に対応していただかなければならないのではないかというふうに思います。

 もう一つは、これは小規模、個人に限らない話でしょうけれども、過剰反応問題というのがあります。

 これは、営利、非営利を問わず、みんなが参加することになるわけでありますので、適用もされるということになるわけでありますので、いわゆる消費者側も提供者側も、ここまでやってはいけないのではないかとか、本当にこんなことは大丈夫なのかとか、お互いに過剰反応になっているというような、まだスタートしていませんから特にそうなんだと思うんですが、そういうことも指摘をされているわけであります。

 これらについて、現状の認識、そして、何か取り組みをしているのであれば、それについてお伺いしたいと思います。

向井政府参考人 お答えいたします。

 マイナンバー制度は、確かに、先生おっしゃるように、一部で、例えば、税の場合なんかはむしろマイナンバーをとっていただくというふうなことになろうかと思いますし、単に本人確認をするだけの場合に個人番号カードを使う場合には、逆にマイナンバーをとってはいけないということになります。そのようなきめ細かい取り扱い方につきまして、できるだけ広報をしっかりしていくことが必要だというふうに認識しております。

 現在でも、商工会議所あるいは商工会等を通じて小規模事業者の広報に努めているところでございますけれども、やはり、小規模事業者が特にまだ認知度が少ないということもございますし、また、いろいろな業界によって特殊な事情もあろうかと思っております。それらの業界を所管している各省庁と連携いたしまして、漏れのないように広報に取り組んでまいりたいというふうに考えてございます。

佐々木(隆)委員 正直申し上げて、まだまだ広報は不十分だという印象を受けております。ですから、できるだけ、いろいろな媒体を使っていることは承知をしておりますが、さらに進めていただかなければ、このスタートに間に合わないということになってしまいますので、そこの一層の努力を指摘しておきたいというふうに思います。

 それで、ここの場所でも何度かテーマになっているもののちょっと象徴的なものを取り上げたいというふうに思うんですが、一つは預金口座の付番、もう一つは医療分野の利用範囲ということであります。

 金融機関にとっては、社会保険の関係だとか税務の関係だとかの効率化があるというのは、それは私も承知をしておりますが、ここでやはり将来的に問題になってくるのが、預金だけは把握されたというか、これに付番がついてつながったけれども、資産はどうするんだという話がずっとあるんです。これはやはり、今後、いついつぐらいまでにどうしたいんだということをある程度示しておく必要があるのではないかということが一つあります。

 もう一つは医療分野でありますが、これは、予防接種だとかについて自治体間のやりとりができるというメリットがあることは私も承知をしておりますが、特に健康診査について、組合同士の情報が交換できるんだという説明を何度かいただいております。

 現実にこれが入っていったときに、健康診断と診療との間際みたいなところが当然出てくると思うんですね。ここからこっちは健康診断だけれども、ここからこっちは医療行為なのでという、本当に区分けがこれから先できるのか、そういうまさにグレーゾーンのところが出てくると思うんですが、そういったことについて。

 この二つ、今までどういう検討がされて、整理がされてきているのかということについて、まずお伺いしたいと思います。

向井政府参考人 お答えいたします。

 預金につきましては、今回、任意に付番をできるということで、改正法案を提出してございます。御審議いただいているところでございますが、それ以外の資産といいますと、多分、不動産のことを念頭に置いておられるのではないかと思いますが、不動産の付番につきましては、マイナンバーをつくる段階、まさに一番最初は民主党政権の時代でございますけれども、その段階から既に議論がございます。

 その中で、不動産の問題点というのが一つございまして、登記が真正の所有者をあらわしていないという問題がございます。特に、相続がなされていないような登記が多数ございまして、そういうふうなものをどう扱うのか。実際に、例えば固定資産税を取り扱う場合でも、結局、実在しない人間の名称に登記がなっているがために、現に利用されている方が支払っているという場合も多数あると思います。そういうふうな場合も含めまして、そういう取り扱いをどうするのかというのは非常に難しい問題もあろうかと思っております。

 これらにつきましては、今後さらに、マイナンバーが施行されましたら、見直し規定がございますので、それらの見直しのそれぞれの段階で検討してまいりたいというふうに考えているところでございます。

 それから、医療のグレーゾーンのお話がございましたが、一応、今回は、医療保険の制度の中で、健診事業と位置づけられているものにつきまして対象としたというところでございます。

 健診か治療行為かというのは、基本的には、例えば、保険者の健診事業という場合は健診になりますし、それから、医療保険を適用したところの診療行為についてはなりますが、任意の、医療保険外の診察について、治療行為か、あるいは、例えば、全て自腹で人間ドックを受けられている場合なんかは非常に曖昧になることも考えられますが、これらにつきましては、今後、厚労省の方で検討されるものというふうに認識しております。

安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今回のマイナンバー法の改正によりましてカバーされる範囲といいますのは、医療保険者が管理する情報に限定をされております。より詳細には、今後、省令できちっと定めるという形になってまいりますので、ここで線引きがきちっとなされるものと考えてございます。

佐々木(隆)委員 最初の資産の方で、所有者と、登記者とそれから納税者と必ずしも一致しないみたいな話があったんですが、そういうのが整理されないとこれは使えないことになりますよね。だから、それもあわせてやはり早急に検討していかないと、そこが曖昧だから使えませんといったら、結果、そこだけまた使えないということになってしまうので、それはそれでのんびりやっているような話ではないんではないかというふうに思いますので、そこはあわせて検討していただきたいというふうに思います。

 それと、医療のことですが、医療の団体の方では、医療団体としてのカード化というか、何かそういうものを考えておられるということをお伺いしているんですが、利便性が向上するということはリスクも向上するということですから、そういった意味では、私は、全てがここの中に入るというよりは、どうやってそれをネットでつなぐかということをもう少し考えた方がより現実的な対応になるのではないかというふうに思いますことを申し上げておきたいと思います。

 時間があと十分ほどしかなくなりましたので、個人情報保護についてお伺いをしたいと思います。

 まず、お伺いしたいのは、目的規定です。

 この目的規定というのは新設されたんですよね。ここを見ますと、大まかに言うと、新たな産業の創出や活力ある経済社会、豊かな国民生活の実現に資するということが主たる目的になっておりまして、十一行あるんですが、「個人の権利利益を保護する」というのはたった半行しかありません。個人情報保護法なのに、どうもこれは、利活用の目的がほとんど書かれていて、保護の目的というような目的規定になっていないんですね。

 利活用の目的規定としてはわからぬわけではないんですが、個人情報保護の目的規定ですから、これは一体誰から何を守ろうとしているんだ、保護しようとしているんだというのが、この目的からはちょっと読み取ることができないというふうに思うんですが、そこについてお伺いをしたいと思います。

山口国務大臣 今回の法案におきます目的規定の改正でございますが、先生も御案内のとおり、実は既に現行法に規定をされております「個人情報の有用性」という言葉があります。これの具体例として、新たな産業創出云々、これを明示した。やはり、十年前にさかのぼって、個人情報保護法制定、おつくりをいただいたわけでありますが、その後、情報通信社会の発展といいますか、さまざまな状況の変化の中で、やはりもう少ししっかりとした交通整理をした方がいいのではないかというふうなことでの今回の改正になるわけであります。したがいまして、この「個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護すること」というふうな現行法の目的の趣旨を今回の法律で変更するものではございません。

 引き続き、個人情報の取り扱いについては、その保護を前提としながら、利活用を進めていく中でバランスをとっていきたいというふうなことであります。

佐々木(隆)委員 これは個人情報保護法ですから、もちろんそれは、それを活用していく事業者に対しても一定の規制はかぶせていくというところも入っていますが、これを読んだ消費者といいますか一般の生活者が、これで保護をされるんだ、大丈夫だというような表現には、私は正直言って、ずっとなっていないんではないかと。ほとんど、九行目まで「有用性に配慮しつつ、」の枕言葉として、産業の発展とかそういうことが書かれていて、終わりの本当の半行だけで「個人の権利利益を保護する」と書いてある。これはやはり、保護法の目的としてはちょっと何か表現が不足しているのではないかというふうに思いますので、そうではないんだということがわかるのか、これに何かを足すのか、そこはぜひ今後配慮いただきたいと思います。

 次に、いわゆる機微情報と言われているようなものの中で何点かお伺いしたいんです。

 一つは、個人情報の中で要配慮個人情報というものについて、これは一体どういうものをイメージすればいいのかということについて説明をいただきたいのと、グレーゾーンと言われているような、あらゆる分野にあるんですが、これらのものについて、これはグレーでなくしていかなければいけないわけで、それに対して今後どういう検討をしていこうとしているのか。それから、匿名加工情報ですが、これについて、保護団体がそれは管理していくということになるんですが、片や、指針は努力だと言って、運用は義務だと言っているわけで、どうもその辺のちぐはぐ感があるんですが、これらはどう実効性を上げていくのか。この三点、お願いをいたします。

向井政府参考人 お答えいたします。

 まず、要配慮個人情報でございます。

 要配慮個人情報は、事業者が正当な理由なく取り扱うことによって差別とか偏見が生じるおそれがあるため、特に慎重な取り扱いが求められる個人情報を類型化したものでございます。この取り扱いについては、取得に際し、原則として本人の同意を必要とするなどの記述がございます。

 具体的に何が要配慮情報かというので、法律には、人種とか信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴等が書かれてございます。

 人種は、人種、それから民族的もしくは種族的出身を広く意味するものでございまして、例えばアイヌ、在日韓国人等の情報が該当いたします。これに対しまして、単純な国籍は法的地位でございまして、人種には該当しないということでございます。

 信条は、個人の基本的な物の見方、考え方を意味するもので、思想と信仰の双方を含むものと考えられます。

 社会的身分は、例えば、いわゆる被差別部落出身であることや嫡出でない子であることなどがこれに当たり、単なる職業的地位は含まないと解されてございます。

 病歴とは、病気に罹患していた経歴を意味するものまたは特定の病歴を示した部分、特定の個人ががんに罹患している等でございますが、これらが該当するということでございます。

 それから、犯罪の経歴は、いわゆる前科、有罪の判決を受け、これが確定した事実が該当するというふうなことが考えられます。

 法律の列挙はこのようなことが書かれてございますが、政令におきましては、法律に列挙したものと同様の差別や偏見が生じるおそれがあるため、特に慎重な取り扱いを類型化することとしております。

 この対象につきましては、これまでの今国会における法律の審議において御指摘を受けた遺伝情報等を含めまして、政令の策定段階において検討していきたいというふうに思ってございます。ただ、法律上は性質が限定されておりますので、恣意的な拡大は行えないというふうな規定になっていると考えてございます。

 それから、続きまして、グレーゾーンの解消に向けた対応でございます。

 現行法は、特定の個人を識別することができるものを個人情報としているところ、情報通信技術の進展に伴いまして、どのような情報がこれに該当するのか、事業者が判断にちゅうちょするとの指摘がございまして、この判断が曖昧な部分がグレーゾーンと呼ばれるところでございます。

 今回の法案は、個人情報の定義を明確化することでグレーゾーンを解消したいと考えてございまして、現行法において保護対象に含まれていると考えられるもの、具体的には、身体の一部の特徴をデータ化したもの等につきまして、それのみで個人情報に該当するというものを政令で定めることとしているところでございます。

 これまでの委員会の御質疑におきまして、特定の個人を識別することができるものの解釈や政令で定める際の基本的な考え方をお示ししているところでございますが、今後の政令の制定、運用に当たりましても、技術動向、社会実態、諸外国における取り扱いの動向等を反映させ、該当性が明確となるよう努めてまいりたいというふうに考えてございます。

 最後に、匿名化の問題でございます。

 匿名化につきましては、一般的なルールにつきましては規則で定める。それで、それぞれの業界ないし分野におけます特殊なといいますか、そこの固有の問題につきましては、できるだけ実態を反映する観点から、認定個人情報保護団体等で措置されます指針によって定めることも十分考えられるというところでございます。

 これらにつきましては、これらを定めていく過程におきまして、まず実態をよく調査し、事業者からヒアリングをいたしまして、それらの上で、現にある認定個人情報保護団体もありますし、さらに、現にないものにつきましてもそれらができるような手助け等の策は講じてまいりたい。

 これらによりまして、実態を踏まえた匿名化情報というのをつくってまいりたいというふうに考えてございます。

佐々木(隆)委員 時間がなくなりましたので、結びたいと思いますが、最後に、情報保護委員会の体制です。

 前の法律を実質的には施行する前に改正しなければならないという状況の中で、大臣はその説明の中でも、日々進化をし、分野がどんどん広がっていく、さらにまた、グローバル化をしていくというようなことを理由に挙げられてきたわけであります。私もそうだと思います。

 だとするならば、やはりこの保護委員会の体制というものは相当強力なものでなければ、とてもではないけれども対応できないということになっていくのではないかということと、同時に、参考人からもいろいろありましたけれども、日々進化をしていくときに、委員さんだけが同じというのでは、これは結局対応していけなくなるというようなことも考えられる。

 これは独立性の強い委員会ですから、日々かえるというわけにはいきませんけれども、そういった中での見直し時期などを含めて、どう対応していくかの決意だけお伺いして、終わりにしたいと思います。

山口国務大臣 決意だけということでございますが、先ほど先生の御議論の中で、いわゆる保護の部分がちょっと低下するんではないかというような御指摘もありましたが、今回の個人情報保護委員会、これはもう御案内のとおりで、独立した第三者機関として、しかもここに権限等を一元化していく、そういう中でしっかり個人情報の保護もできるというふうに確信をしております。

 お話のとおり、やはりこれからさまざまな中で変化の激しい世界でございますので、委員につきましては同意人事でもございます、そこら辺はありますが、専門委員あるいはスタッフ等々、十分考えて配置をし、また見直しの検討もしていきたいと思います。

佐々木(隆)委員 終わります。ありがとうございました。

井上委員長 次に、山尾志桜里君。

山尾委員 民主党の山尾志桜里です。

 きょうは、個人情報に関するこの法案について、私、初めて質問させていただくわけですけれども、二つの観点から質問させていただきたいと思っております。

 まず、一つが、今回、五千人以下という除外規定が削除されることによって、自治会ですとか町内会ですとか、いわば営利を目的としない小さな団体もこの取扱事業者に入っていくとしたならば、本当に過重な負担が生じたり、解釈がわからなくて混乱が生じたりするようなことがないように、この質疑の中で明らかにしていきたいという点が一つです。

 そして、もう一つ、事業者の範囲が広がると、かなりさまざまな種類の事業者がその中に大くくりに含まれてくることになります。今申し上げたような自治会や町内会といった営利を目的としないようなもの、そしてまた営利を目的としている企業、そしてまた、特に名簿、個人情報の販売そのもので利益を上げることを業としているようないわゆる名簿業者と言われる企業、これを全部を一くくりに同じ規制にするというのはなかなか大変なことで、逆に言うと、今回、個人情報の利活用ということについて一定の後押しとも思えるような改正案が出ている中で、名簿、個人情報の売買そのもので利益を上げている、そういった業者については、やはり新たな把握や事前的なコントロールの取り組みも必要ではないか。

 この二つの観点から、きょう御質問を申し上げたいというふうに思っております。

 まず一点目ですけれども、例えば私の地元、愛知でも、自治会ですとか町内会ですとか、地域力を高めるような地域の中のグループですとか、そういったグループの方が、そもそも個人情報保護法ができたときから、自分たちはどのように、地域住民の皆さんのある意味個人情報をしっかり管理して、共有して、地域の取り組みに役立てていけばいいのかと、大変な御腐心をされてまいりました。

 そんな中で、こういう事例でちょっと考えていただきたいと思います。自治会が、自治会の住民の中で同意を得て個人情報を得、そして地域防災に向けて助け合いマップをつくろう、こういうことを考える事例、それぞれの地元でも本当によく御努力をされている事例、皆さん御存じのことと思います。

 まずお伺いをします。この個人情報取扱事業者の事業という解釈によって、そもそもこういった自治会等がこの事業者に当たるのかどうかということが左右されるわけですけれども、この事業というものの解釈をまずはお伺いしたいと思います。

向井政府参考人 お答えいたします。

 本法におきます事業とは、一定の目的を持って反復継続的に遂行される同種の行為であって、社会通念上それが事業と見られる程度の社会性があることを指すものでございまして、営利、非営利の別は問わないというふうに考えられます。

山尾委員 そうすると、反復継続性、社会的に見て事業というふうに理解をされる、そういうふうに考えると、さきに申し上げたような、自治会等における住民の個人情報を取り扱った地域防災の取り組みなどというものについては、これは事業に当たるあるいは当たり得るというふうに思えるわけですけれども、その当てはめについてはいかがでしょうか。

向井政府参考人 おっしゃるとおり、事業に当たるないし当たり得る場合は十分あると考えられます。

山尾委員 そうすると、これまでの法律では、こういった自治会等は原則として事業に当たるあるいは当たり得るんだけれども、五千人以下という除外規定によっておおよそ除外をされてきたというふうに思われます。

 これを前提として、今回法改正がなされると、人数制限がなくなりますから、おおよそこういうものは大体五千人以下ということが多いと思いますので、ほとんどのそういった自治会等についてはこの事業等に当たり得る、要は、この法律の規制がかかる個人情報取扱事業者に該当するようになるというふうに、ある意味、当てはめの段階では大きな転換があるというふうに思われるわけですけれども、そういった理解でよろしいでしょうか。

向井政府参考人 おっしゃるとおりでございます。

山尾委員 そうしますと、まず疑問としてお伺いしたいのは、法案の前の大綱ではこういう記載がございました。「自治会や同窓会等の構成員内部で連絡網を作成し共有する場合等、個人情報の性質及び取扱いの態様を踏まえ、個人情報取扱事業者の適用除外とする等必要な措置を講じる」というふうに大綱では書かれておりました。

 しかし、法案の段階でこの適用除外という措置は講じられず、事業に原則として当たるという成り立ちになったわけですけれども、この大綱から法案にかかる議論の中で変更があったと思うんですね。そこの経過を教えていただけますか。

向井政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の点につきましては、法制化作業の中で具体的な規定ぶりについて検討した結果、適用除外の対象を事業者単位にするのではなく、取り扱い情報単位で規定することが適当と判断したところでございます。具体的には、利用方法から見て、個人の権利利益を害するおそれが少ないものとして政令で定めるものを個人情報データベース等から除外することとしたものでございます。

 この個人情報データベース等から除外するものにつきましては、例えば、既に公になっている市販の電話帳をそのまま使う場合等、たとえ漏えいがあっても、その行為により個人の権利利益を侵害する危険性が少ないものとしているところでございます。

 これに対しまして、自治会等の保有する名簿につきましては、既に公になっているものとは言えず、漏えいがあった場合に個人の権利利益が侵害される危険性がなお存在するため、これを個人情報データベース等から除外するかどうかについては、取り扱う自治体の負担や個人情報の保護の必要性等を勘案し、慎重に検討することが必要と考えているところでございます。

山尾委員 とすれば、やはりこの質疑の中で、あるいは今後の検討、あるいはガイドラインの作成の中で、本当にそういった地域の取り組みに混乱を生じさせないような、できる限り明確な答弁で、安心して取り組みを進めていただくということは、今回本当に重要なことになるんだろうと思います。今までは事業者ではなかった自治会さんたちが、ある意味事業者に今回なるわけですから、そういった観点で質問を進めたいというふうに思います。

 先ほどの例に戻って、自治会が助け合いマップをつくりましょうということを考えたいと思います。

 まず、情報の取り扱いについては、取得、そしてまた保存、管理、そしてまた第三者提供、共有という三つの段階に分けられると思うんですけれども、この取得の段階では、各住民さんから、どの段階で、どの程度目的を明確にして、例えば、ぜひ皆さんのお名前、携帯番号、住所、そしてその他の事項を教えてくださいというふうに告知をすることが必要になるんでしょうか。

向井政府参考人 お答えいたします。

 通常、自治会の場合ですと、オプトアウトというよりは、むしろ事前に同意をとるというのが常態であろうと思いますので、少なくとも、そういうものを作成する際に、そういうことを作成することの趣旨をお伝えして同意をとるというふうなことが必要であろうかと思っております。

 その上で、まずは、同意をとる際には、事前ということでございますけれども、例えば自治会の名簿をつくるためとか、そういうふうなある程度利用目的を特定して同意をとっていただくというのが必要になってくるのではないかと考えております。

山尾委員 そういった目的を一定程度明らかにしてしっかり同意をいただけば、こういった名簿をこれまでどおりつくっていただくことは問題がないということをまずは確定させたいというふうに思います。

 そして、今度は事柄なんですけれども、例えば助け合いマップをつくるときに、名前や住所、電話番号にあわせて、例えば、この御家庭には足のお悪い、不自由な方がおられるということですとか、あるいは御高齢の方がひとり暮らしで住んでいらっしゃるというようなことですとか、あるいは赤ちゃんがいるよというようなことですとか、本当に何か火災や災害が発生したときに特段に助けが必要ですよというようなことをあらわすような情報を、もちろん同意を得て、いただくということもあり得るかと思うんですね。

 ただ、今回はこの規制の対象に入ってくる、そしてまた要配慮個人情報ということも入ってまいります。

 この要配慮個人情報には、人種、社会的身分、病歴その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取り扱いに特に配慮を要するというようなことが書かれているわけですけれども、さきに申し上げたような、例えば防災の取り組みについて必要な範囲での、つけ加えると、例えば、人種でいえば外国人の方なので緊急のときには日本語に不自由があるよというようなこともあるかもしれません。そういった事項を、もちろん同意を得て助け合いマップなりに取り込んでいくに当たって、そのこと自体は可能なのかどうか、何かそのこと自体によって、氏名等の情報とは違って、さらにほかの取り扱いに注意をするというようなことが必要となるのかどうか、その点についてお伺いをしたいと思います。

向井政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘の具体的な例に即して考えますと、いろいろな状況はあろうかと思いますが、一般論を申し上げますと、足の不自由な人がいることにつきましては、それのみではいずれにも該当いたしませんが、特定の病歴と結びついた場合には病歴に該当するというふうに考えられます。ひとり暮らしであることについてはいずれにも該当いたしませんし、外国人の方で日本語が不自由であることにつきましては、単に外国人であること、外国籍であるというだけでは該当しません。ただ、特定の人種に関する情報と結びついた場合には該当すると考えられます。赤ちゃんがいることについてはいずれにも該当しないものと考えられます。

 ただし、これらの要配慮情報に仮に該当したという場合におきましても、事前に同意をとれば取得は可能でございますので、仮に該当しておるという場合におきましても、事前に同意をとっていただく、あるいは第三者提供をする場合にも事前に同意をとっていただくということによりまして利用は可能になるものではないかというふうに考えております。

山尾委員 必要な範囲ではいずれについてもしっかり事前の同意、あるいは第三者提供においてもその事前の同意が必要だということで御答弁をいただきました。

 そして、もう一つ、そういった自治会さんなんかが困っていらっしゃるのは、例えば認知症を患っている方がおられて、なかなか御本人様からその同意をとるのが困難だという事例。でも、そういった事例については、やはり近隣住民の皆さんの支えを必要としているというような場合が今もありますし、もしかしたらこれからもふえてきて、共生社会というものを進めていく中でも問題、課題になってくるかもしれません。

 この場合の同意をとる相手はどういった方が考えられるのかというようなことについてお答えください。

向井政府参考人 お答えいたします。

 個人情報保護法におきましては、原則として本人の同意を得ることを必要としておるわけでございますが、この本人同意に関しまして、御指摘のような、認知症を患っている方など、同意したことにより生ずる結果について本人が判断できる能力を有していないなどの場合には、典型的にはその方の成年後見人等で同意をいただくということでございますけれども、必ずしも成年後見人制度が広く広まっているわけではございませんので、その辺につきましては、お子様とか、実質的に同意を得たというふうに考えられるような方の同意が必要になるのではないかというふうに考えてございます。

山尾委員 改めて、今後高齢化も進んでいく中で、成年後見制度がさらに、社会としてしっかり基盤をつくっていくことが重要で、今の事例なんかはその必要とされる典型的な一例なんだろうと思います。これはこれで、またその制度の問題としてしっかり検討していく必要があるというふうに思います。

 今は情報をいただく、取得する段階の話をさせていただきましたが、次に、第二段階といいますか、保存し管理をする段階。

 自治会さんなんかは、お店ですとか企業さんというものとはやはり違って、限られた設備の中で、有志の皆さんのいろいろなスキルをみんなで持ち寄りながら運営をしているわけですので、その保存、管理にかかわるさまざまな義務がお店や企業と同じようにかかってくると、これはまた大変困るわけです。また、そこが余り過重になり過ぎると、そういった取り組みそのものの意欲が低下したりだとか、なり手の方が、いや、そこまではとてもとてもというふうになってしまったりだとかいうことがあっては大変に困りますので、改めて問いたいと思います。

 保存、管理段階で、自治会等が事業者に該当することになった、新たにかかってくる義務というものはどんなものがあるんでしょうか。

向井政府参考人 お答えいたします。

 自治会等が現在、五千件以下の個人情報しか取り扱っていない場合には、今回の法案によって、取り扱う個人情報の数が五千件を超えない者を個人情報取扱事業者から除却する旨の規定を削除することから、新たに個人情報取扱事業者となるものでございます。

 このような者が個人情報を保存、管理する段階では、安全管理措置、従業者の監督、委託先の管理、不要となった個人データの消去、開示等請求、個人データの第三者提供についての同意取得等の義務が課されることになるというふうに考えられます。

山尾委員 今言っていただいた中で、ちょっと幾つか具体例でお伺いをしたいと思います。

 安全管理措置、これは、そういった情報を紙あるいはデータとして保存をする、あるいは、その保存をする部屋の施錠、アクセスの限定など、さまざまな観点があると思うんですけれども、今お話ししているような例でいくと、どの程度のいわば安全管理措置が必要とされるのか、お答えください。

向井政府参考人 お答えいたします。

 自治会の規模、活動内容、個人データの取り扱い状況によって異なるものの、個人データが漏えいしないようにするために、構成者名簿を管理する者が、例えばエクセルファイルにパスワードを設定するとか、紙媒体の名簿につきましては施錠する等を行うことによりまして、部外者がこれらに容易にアクセスできないようにするような対応が必要なのではないかと考えられます。

山尾委員 それでは、従業員の監督義務ということですけれども、この場合、従業員というのはどういった方が想定されて、どの程度の監督義務が必要になるんでしょう。

向井政府参考人 お答えいたします。

 個人情報取扱事業者には、従業者に個人データを取り扱わせるに当たって、必要かつ適切な監督を行う義務が課されるわけでございますが、これらの例といたしましては、従業者に対する教育及び研修を行うことが挙げられるところでございます。

 自治会等の場合には、名簿を取り扱う自治会等において名簿の作成、管理を担当している者が従業者に該当するものと思われますが、これらの者が個人情報の保護の大切さや法律の義務の内容について理解できるように、自治会等の内部においてもこれらのことを例えば啓発していくようなことが考えられるのではないかと考えられます。

山尾委員 自治会の方がそういった名簿をやってくださる方に啓発するといっても、中でそういうことをちゃんとお教えできるといいますか、講師ができるといいますか、なかなかそれは難しいことだと思うんですよね。後でまた指摘しますけれども、やはり、しっかり今回の改正を踏まえて、あるのであれば、速やかにガイドラインを設けていただく必要があるというふうに思っております。

 もう一つ、例えば委託先のこととか、削除のこととか、開示請求に係る開示義務とか、事実上やっていたかもしれないけれども、今回のこの法改正によって法律上の義務として重たいものがかかってくるということはその他にもいろいろあるわけです。

 もう一つ取り上げますと、第三者提供の段階なんですけれども、こういった例えば助け合いのマップというようなものは、市役所ですとか消防ですとか、一定程度の提供先に提供することによってその目的を達することができるという場合が結構あると思うんですけれども、そのときには、どの段階で、誰から、どんな同意をとる必要があるんでしょうか。

向井政府参考人 お答えいたします。

 第三者提供に係ります本人の同意は、第三者に提供される時点よりも前に得る必要がありますが、必ずしも提供のたびに同意を得なければならないものではなく、事前に包括的に同意を得ておくことも可能と解されてございます。

 提供先につきましても、必ずしも個別列挙することまで義務づけるものではございませんので、一般的に想定されるような例えば防災マップですと、何かの災害があったときに通常提供されるべき範囲というふうな感じだと思いますが、実際につくる場面を考えますと、やはり作成時に、これは防災マップにも利用しますということを示して同意をとっていただく、それで、その防災マップは、一般的でいいんですが、災害が起こった場合なんかにこういうところに提供されますということを示した上で同意をとっていただくのが最も現実的かなというふうな気がいたします。

山尾委員 ただ、災害が発生した場合には、二十三条一項二号の例外で、「人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。」に当たることが多いでしょうから、同意がなくても、出動する消防だとか、あるいは救出に向かういろいろな役所の方だとかにそういった情報を渡すこと自体は、これはそもそも許されていることだというふうに思いますので、そこはちょっと、今の答弁で誤解を与えたらいけないと思いますので、確認しておきたいと思います。

向井政府参考人 御指摘のとおり、法二十三条一項二号に定めます「人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合」には、本人の同意が必要ございません。それに該当しない場合でも、事前に目的を示せばよいというふうなことだというふうに考えます。

山尾委員 なので、最初の作成の段階で、そういった防災マップのようなものは、例えば、消防団に入っているこの若い方が、いざというときはお互い助け合うようにするんだよというようなマッチングなんかもあり得ると思うんですけれども、そういうことも含めて、社会通念上、納得ができる範囲で事前に渡すこともあり得るよというようなことも含めて同意を得ていくということが現実的なのかなというふうに受けとめました。

 いざ緊急時、災害発生時のときは、しっかり例外で、同意の有無にかかわらず、当然それは必要な範囲でお出しができるということも確認できて、その点はよかったというふうに思います。

 そこで、山口大臣に、このテーマの締めくくりでお伺いをしたいんですけれども、今回、こういった、自治会なんかにとっては、大きな一つの重たい転換ともなり得る。もちろん、附則の中で、改めて、小規模が入っていく際にはガイドラインをつくり必要な配慮をしていくとあるわけですが、同じ小規模の中でも、地元の小さな店舗だとかいう、いわば小さいけれどもお店、営利を目的とする一つの商店というものと、目的がどちらかというと本当に公共、共生というところにある、こういった取り組みと、やはり随分違うと思うんですよね。

 その点で、ぜひ、もしこの法改正がなされるということであるのならば、やはり、今申し上げたような問題意識に沿った、地域の取り組みをこのことによって混乱させないように、速やかに具体的なガイドラインをつくってしっかりとお示しをいただきたいと思うんですけれども、その点、いかがでしょう。

山口国務大臣 いろいろ御議論をお伺いしておりまして、まさにそのとおりだなと思う反面、やはり結構煩雑な感じもするわけですね。

 御指摘のとおり、かつて、個人情報保護法を十年前に作成したときにも、実は過剰反応がいろいろ出ました。私の町内会でも、突如、町内会名簿が出てこなくなりました。当時、説明もしたことがあるわけですが、同時に、あの当時の議論として、では政治家の後援会名簿はどうなのかから始まって、結局、小規模事業者とかあるいは政治活動云々は除外するということで整理をされたわけです。

 今回、重要な個人情報漏えい事件もありましたし、あるいは海外の状況等も踏まえて、やはりしっかり整理をしなきゃならぬというふうなことで、五千件を超えないいわゆる小規模事業者を除外するという規定を外すというふうなことにしたわけでありますが、同時に、これも御指摘がありましたが、個人情報保護委員会がガイドラインを策定する際には十分配慮をするというふうなことになっております。

 御指摘の自治会等につきましても、現行法制定当時いろいろありましたけれども、そういったことも踏まえて、過剰反応とか誤解が生じないように、今回の改正後におきましても、自治会等において名簿の作成、配付は可能であること等を周知徹底するとともに、小規模の事業者に配慮する指針を定めるに当たりましては、自治会等の実態も踏まえて、その円滑な活動を阻害することがないように、具体的な活動内容もお聞きをしながら、御指摘のガイドライン等も含めて、適切に対応するように検討を進めてまいります。

山尾委員 今回、改めて事業者に当たることになったとはいえども、自治会の皆さんなんかは、改めて必要になるようなことは、これまでもその取り組みの中でかなり一生懸命されてきていると思うんですね。ただ、やはり今回、そういう改正があり得る、そして対象になり得るという中で一番混乱を生じるもとは、不明確であるということだというふうに思います。

 きょうはいろいろな答弁をいただいて、かなり具体的に御答弁もいただいたと思いますので、これをぜひとも、委員会の質疑の議事録にとどめるだけではなくて、何かの形でお示しをいただいて、やはりそういった地域の取り組みの後押しにしていただきたいというふうにお願いをして、このテーマを一旦終えたいと思います。

 次なんですけれども、いわゆる名簿業者対策ということについてお伺いをしたいと思います。

 皆さんのお手元に資料を配付させていただきました。これは、平成二十六年の一年間、そしてこの日付であることしの五月に至るまで、警察庁が把握をしているいわゆる名簿業者の検挙事例。これは、現在、私が御質問をして、いただいた、把握をしている限りでは、いわば一年五カ月、この三件であるというふうに伺ったんですけれども、その確認を警察庁の方からさせてください。

辻政府参考人 お答えをさせていただきます。

 資料でございますけれども、個人情報を販売した行為を捉えて名簿業者を検挙した事案として、平成二十五年から現在までに警察庁に報告のあったものをまとめたものでございますけれども、二十五年中はゼロでございました。二十六年が二件、二十七年が一件で、合計三件ということでございます。

山尾委員 御訂正、ありがとうございました。

 そうしますと、これは次に法務省にお伺いをしたいんですけれども、この資料にあります一、二、三、それぞれの最終的な処分の内容を副大臣の方からお伺いしてよろしいですか。

葉梨副大臣 資料にございます一の詐欺幇助事件につきましては、送致を受けた被疑者一名は、起訴猶予を理由とした不起訴処分でございます。

 それから、資料の二の貸金業法違反幇助事件でございますが、送致を受けた被疑者三名、いずれも嫌疑不十分を理由として不起訴処分としております。

 資料の三の不正競争防止法違反事件でございますけれども、現在、検察当局において捜査中であるものと承知しています。

 なお、この事件に関しては、顧客情報を不正に入手したエンジニアについて不正競争防止法違反の罪で公判請求がされており、現在、同事件の公判が係属中であるものと承知しております。

山尾委員 お答えできればお伺いをしたいんですけれども、一番の事件の起訴猶予とされた理由は何でしょうか。

葉梨副大臣 委員も御存じのとおりで、個別の事件でございますので、なかなか、証拠の内容、その評価にかかわる事柄についてお答えするのは差し控えなければならないと思っておりますが、一般論として申し上げれば、被疑事実が明白な場合において、被疑者の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときに起訴猶予とされるものと承知しております。

山尾委員 まず、この資料、そして今いただいている答弁から感じる課題は、検挙そのものが、なされるべき検挙がしっかりなされているのであろうか。もしかしたら、これは警察だけの問題ではなくて、立法にも問題があるのではないかという点も感じます。

 平成二十六年はこの一、二の二件だということですけれども、平成二十六年、これはいわゆる特殊詐欺、振り込め詐欺なんかも含むいわゆる特殊詐欺の被害というのは過去最高を記録しています。認知件数は一万三千三百七十一件というのが警察庁の発表であります。

 もちろん、認知件数というのはこれは氷山の一角で、そういった犯罪が全て別に名簿を使ったとも限りませんし、いわゆる情を知って売るような、そういった名簿業者から必ずしも得たものとも限らないわけですけれども、とはいえ、こういった犯罪については相当数が名簿といったものを犯罪の中核的ツールとして使用しているわけで、そして、何らかの形でそれを提供した人の中には、認識の濃淡はありながらも、犯罪に使用される可能性を認識しながら、感じながら提供したということもやはり相当数あるんだろうというふうに容易に想像がつくわけです。

 私の問題意識は、一つは、こういった犯罪に定型的に利用されるような名簿の供給元については、やはり政府として何らかのアクションが必要なのではないかということも思うわけです。

 まず一つ、これは法務省に、副大臣に最後に一つお伺いをします。

 一番は起訴猶予だ、そしてこれは一般論で言えば、被疑事実は明確であるものの、情状等を鑑みて、検察官の起訴便宜主義の中で起訴猶予という判断にしたと。

 これは私の意見ですけれども、もし犯罪事実が明確であったなら、情を知りながら名簿一万件を販売したということが明確であるならば、こういったものをやはりそう簡単には不起訴にしない、猶予にしないというようなある意味の意識改革が、これから先、より必要になってくるのではないかというふうに思うわけですけれども、最後に副大臣のコメントをいただけますか。

葉梨副大臣 本件、先ほども申し上げましたとおり、個別の事案についてなかなか、私から申し上げるのは非常に困難でございますけれども、個人情報保護あるいは名簿業者の問題、今おっしゃられたような振り込め詐欺の状況等の中で、やはり具体的にどのような位置を占めていくのかということも勉強をさせていただきたいなというふうに思います。

山尾委員 副大臣、戻っていただいて結構です。法務委員会の方、やっておりますので。

 もう一件なんですけれども、もう一つの方は嫌疑不十分で不起訴になったというお話がございました。嫌疑不十分ということは、有罪立証に至るまでの証拠が集まらなかったということだと思うんですけれども、大体の場合、情を知りながら、これを知っていたということの立証が難しくて、なかなか起訴に至らないということがあり得るんだろうというふうに思います。

 そこで、お伺いをします。

 今回、八十三条というのが新設されまして、それが、個人情報取扱事業者等が、その業務に関して取り扱った個人情報データベース等を自己もしくは第三者の不正な利益を図る目的で提供し、または盗用したときは、一年以下の懲役または五十万円以下の罰金に処する、こういう新しい法改正が予定をされております。

 この処罰規定、いわゆるそういった懲役、罰金を含めた処罰規定というものが初めてこの法の中で新設をされるということですけれども、これまでの法律と比べて、この八十三条が新設されることによって、今まではなかなか立件が難しかった犯罪がこういった点でより容易になっていく、捕まえるべきものを捕まえることができるようになるというような御説明をいただきたいんですけれども、警察庁、いかがでしょうか。

辻政府参考人 お答え申し上げます。

 これまでも、犯罪に関与いたしました名簿業者につきましては、詐欺や闇金融の幇助罪で取り締まってきたところでございます。

 このような悪質名簿業者を検挙できるかどうかということにつきましては、証拠がどれだけ収集できるかなど、個別具体の事件ごとに判断されるということになってくるものでございますので、今回の法改正によりまして取り締まりが容易になるかどうかということにつきまして、にわかにお答えするのは大変難しいわけでございますけれども、ただ、御指摘の条文につきましては、個人情報の提供行為を処罰するということでございますので、警察としては、適用することができる罰条がふえるということになりますので、こういったものをまた有効に活用しながら、悪質業者の取り締まりに努めてまいりたいというふうに考えております。

山尾委員 こういった罰条がふえることによって、いわば取り締まるべきものを取り締まれる一つの選択肢がふえるということだとは思うんです。

 ただ、やはりこの法文を見ますと、事業者に当たらないものは対象にならない、あるいは、業務に関して取り扱っていない場合は対象にならないということがあるわけです。

 まずは、この八十三条の新設によって、どういった事案が検挙されることになり、今まで必要とされるものに取り締まりの及びが不十分だったところをどこまでカバーできるのかという検討を今後しっかりしていただきたいということが一点ございます。

 そしてまた、そのこととあわせて、最後に大臣にお伺いをしたいわけです。もう一つ、やはり業法としての事前把握、事前コントロールの問題なんです。

 今申し上げたように、取り締まりに対して八十三条の新設は前進だというふうに私は思っています。ただ、今申し上げたような、多分、相当網から漏れる部分というのも残っていくし、今回の法改正でいわば個人情報の利活用の後押しがされるんだというような認識が広がることによって、ちゃんと違法なもの、不正なものは取り締まっていくという要請は逆により広がるんだろうと思います。

 そういう中で、業法としての名簿業者さんというのは、それ以外の個人情報取扱事業者と異なって、名簿そのものを売買することで利益を上げるわけです。だからこそ、性質上、犯罪集団からのアクセスの可能性が類型的に高いと思うので、当然、犯罪集団からのアクセスを是としているわけでないのはわかりますけれども、ただ、その販売そのもので利益を上げている以上、一段高い責任というのがやはりあってしかるべきなんだろうと私は思いますが、業法としての今後の検討について、いかなる考え、どのような場をお考えか、最後に一言お願いします。

山口国務大臣 今回、御指摘のとおり、この八十三条、新たなツールができたわけでありますので、そこら辺もしっかり利活用といいますか、使っていただきたいし、同時に、今回、トレーサビリティー等々、いろいろな仕組みを入れましたので、いわゆる闇に潜っているものでも、出てきたところからたどることができるというふうなことはあろうかと思います。

 同時に、お話がございました、業法というふうなことでありますが、一般論としては、当然、そういったもので業規制を行うというのは可能であろうと思っていますが、ただ、先生もお話がありましたように、やはり優良な個人情報事業者といいますか、そこら辺の線引きが非常に難しいというふうなこともこれありということで、特別な規制に関しましては、政府としましては、今回の措置の実施状況等も見ながら、所管省庁も含めて、さらなる措置の必要性についても検討はしてまいりたいと思います。

山尾委員 ぜひお願いします。ありがとうございました。

井上委員長 次に、緒方林太郎君。

緒方委員 民主党、緒方林太郎でございます。

 個人情報保護法の質問に立たせていただきます。貴重な機会をいただきまして、本当にありがとうございます。

 先ほどから、佐々木委員、そして山尾委員、さらにはこれまでの審議を聞いておりますと、だんだん質問する内容が減ってきたなという感じも受けるわけでありますが、若干の重複はあると思いますけれども、大臣、よろしくお願いを申し上げます。

 今回の法律は保護と利活用のバランスをとりながら個人情報のあり方を定めたものであって、私はそれ自体に何か言うことはないわけでありますが、既に何度も指摘がありましたけれども、個人情報保護法が制定をされましてもう十年の月日が流れました。この期間、個人情報という概念が日本社会の隅々にまで行き渡りまして、それ自体、前進である部分もあるんですが、その一方で、もう何度も指摘がありますけれども、いろいろなことが、いや、それは個人情報ですからと言われて、はじかれるということが出てきています。先ほど、自治会の名簿であるとか、大臣もさっき御指摘がありましたけれども、いろいろな、例えば学校での連絡網とか、そういったものが個人情報でというもとに教えてもらえないと。

 私の経験で言いますと、とある支援者の方の近しい方が亡くなられたときに、葬儀場に電話をして、どうなっていますかという話をしたところ、個人情報でお教えできませんと言われて、そこまで行くと社会が息苦しいんですね。非常に息苦しい世の中になっているような感じがします。

 この件については何度も質問がありましたけれども、個人情報保護法ができて十年の歩みの中で出てきた、個人情報が法律の規定をはるかに超えて、個人情報だからだめだというその世の中の流れについて、大臣、いかがお考えでしょうか。

山口国務大臣 私も、何度かお話をしたわけですが、先生御指摘の例のように、最初に困ったのが、亡くなった方の確認がなかなかできない。これはもう恐れ入りました。同時に、病院に友達の見舞いに行ったときでも、一切教えてくれないわけですね。本人と連絡をとるからと言ってもなかなか、それもだめですみたいな話で、いわゆる過剰反応が多々あったということは事実なんだろうと思います。ただ、一方において、個人情報というものに対する意識、認識、これも深まったんだろうと思います。

 しかし、そういったことを受けて、今回の改正でありますが、できるだけ明確化したい、いわゆるグレーゾーンをなくしていきたい、そして利活用も含めて個人情報保護を図っていきたいというふうなことの今回の改正でございますので、今回の場合は、かつての個人情報保護法の施行時のような混乱は来さないように、しっかりとそこら辺は周知徹底、広報も含めてやらなきゃいかぬなというふうな思いでございます。

緒方委員 ありがとうございます。

 これはなかなか、関心のある方であれば、法律を読み込んだりして、法律の内容を少なくともある程度勉強したりして、なるほど、業で行っていない人間は関係ないんですね、そして五千件に満たないところは関係ないんですねということがわかるわけですけれども、世の大半の方は、そもそも、そんなことはわからないというか、個人情報は保護されて、それは人に教えちゃいけないのだというところでとまる方が世の大半であります。

 これは、法律をつくっておられる内閣府の方々にも、法律でこうなっているんだからこうですよ、だから全然関係ないんです、ばしんと切ってしまうことがないように、国民感情とか、国民がどこまで知り得ているかとかということについて、ぜひ、これは大臣が先頭に立っていただいて、これはこういうことではないですということを、記者会見だ何だという場で、メディア等々を通じて発信していただきたいというふうに思います。これは指摘にとめさせていただきたいと思います。

 その上で、今回、個人情報保護法改正でありますけれども、そもそも論として、今回の個人情報保護法の改正によって、個人情報の定義、範疇、そういったものが拡大されているということはございますでしょうか。これは、では、向井審議官。

向井政府参考人 お答えいたします。

 今回の個情法の改正におきましては、個人情報の定義の部分を改正してございますけれども、これは定義を明確化したものというふうに理解しておりまして、拡大するものではないというふうに考えております。

緒方委員 そうですね。今回の法制度の個人情報の定義というのはあくまでも明確化であるということでありますが、その明確化がどれぐらい行われているかということについて、これから少し質問をさせていただきたいというふうに思います。

 二条のところにあります個人情報の定義のところを見ておりますと、何が入って何が入らないのかということについて、残念ながらよくわからないところがまだ残ります。

 例えばですけれども、これも何度も議論に出ておりますけれども、携帯電話の番号というものについては、これは現時点ではまだ決まっていないというふうに聞いておりますが、その理解でよろしいですか。

向井政府参考人 お答えいたします。

 先生の御指摘は、いわゆる識別符号に当たると思います。

 携帯電話番号というのは、基本的には当然、個人の識別性を高めるものであることは疑いがない。したがって、もともと照合することによって個人情報となるべきものの範囲に、識別することに非常に強い働きを持っていることは事実であろうと思いますが、まさにこれ単体で個人情報になるかならないかというのはやはり議論がいろいろあろうと思っておりまして、一概に個人情報に当たるとは現時点では言えないのではないかというふうに考えております。

緒方委員 一概に言えないということでありましたが、では、一概でなく言えることがきっとあるんだろうと思います。

 ここが明確になってこないと、結局、実はここが困るところでありまして、事業者も準備をしなきゃいけないとかいうこともございます。個人識別符号のところで携帯電話の番号が入るかどうかというと、定義規定だけを見ると入ってもいいんじゃないかな、多分入るんじゃないかなというふうに私自身の理解の中ではそう見えています。ただ、それがいろいろな判断の中で、一概には言えないと。けれども、もしかしたら入ってくるかもしれない。まさにこの審議を聞きながら、携帯電話の業者の方は、どうなるんだというふうに思っていると思います。

 ただ、これは、いろいろなものが政令に入ってくる、そして個人情報保護委員会の規則に入ってくるということでありますが、これを今すぐ出してくれということは、個人情報保護委員会が立ち上がっていない中、難しいわけでありますけれども、そもそも私、知りたいのが、政令というんですけれども、どんな政令ができてくるのかということに物すごく関心があるわけです。

 個別具体的に、例えば携帯電話の番号とか、何々のカードの番号とか、パスポートの番号とか、何かそういうことで実際の物が書かれて政令に入ってくるのか、それとも、政令に落とすときも幾つかの性質のようなもの、個人識別符号の定義規定に書いてあるようなその規定をさらにブレークダウンして、やはりどこか定性的に書かれたもの、こういうことで政令に入ってくるのか、その政令のできぐあいによって、でき方によって全然違うわけであります。

 恐らく、関連業者の方々も、何が出てくるんだろうと。少なくとも、実際の物を見せてくれとは申しませんけれども、どういうタイプのもので政令ができ上がっていくのかということについて御答弁いただければと思います。

向井政府参考人 お答えいたします。

 この法案の審議の過程の中でも、例えば免許証の番号とかというのは該当するのではないかとお答えしているところでございますけれども、これらにつきましては、間違いなく、多分、免許証番号という形で政令が書かれることになるだろうかと思います。

 その一方で、全部それで書き切れるかどうかについては、今、なかなか確定的なことはお答えできないのかなと。全部具体的に列挙できるかどうかについては、今後さらに検討が必要ではないかというふうに考えます。

緒方委員 書かれるものがあり、書かれないものがあるということで、書かれたものについては、では、免許証番号というのはきっと政令に書かれてくるんだなということが今の中でわかってきているわけでありますが、そうでないものというと、実際にこれというふうに書かれないわけでありますから、引き続き、定性的な、何か性質を書いたもので、その他こういうものに当てはまるものとかいうものが書かれたりするのかなということで、やはりここは関連業者の方々からすると、自分はどうなんだという疑問が残るわけですね。

 そこは、この後また質問しますけれども、払拭をする努力をしていただきたいということですが、例えばですけれども、政令の下に、さらに省令に落とすこととか、そういうことはお考えでしょうか。

向井政府参考人 お答えいたします。

 通常、このようなものは、結局、はっきりと固有名詞的なものを書くのか、定性的なことを書くのかの二種類だと思われますので、改めて省令に落とすというふうなことは余り現実的ではないのかなと思います。いずれにしても、こういうものを作成する場合、やはり現実の企業の方々からよくヒアリングして、先生のおっしゃるようなことがないようにしていくのが必要だと思っております。

緒方委員 それで、政令をつくっていく。多分関心があるのが、政令というのがいつごろでき上がってくるんだろうかということですが、この政令というのは、これからできる個人情報保護委員会にかけた上で政令を決定するということなのか。この法律が決まったら、もうそこで政令をばんと出すのか、それとも、来年一月一日に発足いたします個人情報保護委員会での審議を経て政令も決定される、いずれでございますでしょうか。

向井政府参考人 お答えいたします。

 この法案が成立いたしましたならば、できる限り、可及的速やかに、個人情報保護委員会立ち上げ前から検討を始めたいと思っております。

 その上で、政令は閣議決定でございますので、個人情報保護委員会の審議等は必ずしも必要ではないのでございますが、その辺につきましては、現時点で確定的なことは言えないんですが、とにかくできるだけ早く検討を始めて、ヒアリングも始めて、政令をできるだけ早くつくることが必要であるというふうに考えております。

緒方委員 なかなかその前後関係、今はっきりお答えいただけなかったわけでありますが、仮に個人情報保護委員会の意見も伺った上でということになりますと、来年の一月一日に個人情報保護委員会が発足をして、いきなりそこでどんと出てくるわけではありませんから、これは個人情報保護委員会の規則も含めてでありますけれども、それから一定程度の期間を経て審議をしてということになりますと、多分来年の今ごろぐらいまでかかっちゃったりするのかなというふうに思うわけですね。

 そのころになって規則であったり政令であったりというものがばんと出てくるということになると、その前に関連業者の方とはいろいろ相談をするということでありますけれども、内閣府がこれからいろいろな関連業界の方と相談をするところに必ずしもはまらない方もいるわけです。日本全国、ありとあらゆる、この法律によって規律される事業者の方が全て、内閣府がこれから法律ができた後にいろいろな協議をしていく対象にならなくて、やはり、政令が出て、そして規則が出て、ああ、こういうふうになるんだと思って、それで動き始める方もいるでしょうし、そういう方の存在を排除してはいけないと思うんですね。

 そうすると、来年の今ごろまでかかると仮定するときに、そこから、ああ、自分たちは対象になるのである、そして、自分たちは規則によればこういったことをしなきゃいけないのである、そのためにはこの投資をしなきゃいけないということになってくると、法律の施行までのリードタイムが半年ぐらいしかないということになります。

 実は、今法律ができますけれども、政令ができて、そして個人情報保護委員会の規則ができ上がって、そこから用意ドンでスタートしようとすると、意外に準備期間というのが短いということがございます。この件について、審議官、いかがお考えでしょうか。

向井政府参考人 お答えいたします。

 そういう意味では、やはり検討を早期に始めることが非常に大事と思っておりまして、例えば規則で定めるべき事項につきましても、その基礎的な資料等につきまして、あるいは業界の意見等につきましては準備段階でもそろえることは可能だと思っております。

 そういう意味では、委員会が立ち上がり次第、可及的速やかに規則を定めるのが非常に重要だと思っておりますが、その際に、やはり双方向でつくっていくことが必要だと思っております。双方向というのは、まさにヒアリングをしながら案を示していくというふうなことが必要であろうと思っております。

 そういうふうな活動を通じまして、できるだけ準備期間がとれるように、あるいは、準備期間中の周知、広報も徹底してまいりたいというふうに考えております。

緒方委員 その方向でぜひお願いをいたしたいと思います。

 この件、できるだけ早く、リードタイムがある方が業者さんとしても準備をしやすいし、投資も恐らく必要になる業者さんが出ると思います。最後の最後は、政令が出て規則が出ない限り全体像はわからないわけでありますけれども、においぐらいは、できるだけ早くにおわせて、あなたは絶対入りますから、こんな感じで進みますから、こういう方向でもう準備を始めてくださいというのができるだけ早くできるように、これは、一般論でありますけれども、大臣にお願いしたいと思いますが、いかがでございますでしょうか。

山口国務大臣 先ほど来、大事な御議論をいただいて、本当にありがとうございます。

 個人識別符号のお話もございました。これも、ともかく、できるだけ個々具体的に書き込みませんと、やはり考え方だけでは大混乱に陥るというのは明々白々なので、そこら辺はしっかり個人情報保護委員会の方にもお願いをして、ちゃんと書き込んでいただくというふうなことはやっていきたいと思います。

 同時に、この法律が成立をして、施行までの間、おっしゃるとおり、やることはたくさんあるわけで。ただ、一方において、さまざまな、例えばさっきの携帯の議論ですけれども、一つは、プリペイドとかいわゆる法人契約と個人契約のものを分けられるのかということもあるんだろうと思うんですね。サービスの状況もあります。海外の状況もあります。そういったことをしっかり議論していただく、あるいは世論の中でも議論をしていただくという時間も必要なのかな。

 そういう中で、しっかりと保護委員会の方で決めていただくというふうなことになろうかと思いますので、そこら辺は、万全を期しながら、かつ十二分な時間をとって、施行というふうなことを考えていきたいと思います。

緒方委員 ありがとうございました。

 現場の方は、恐らく、この国会の審議を見ながら、さあ、どうなるんだろうかということを非常に注目いたしておりますので、今の大臣の方向で積極的に情報発信をしていただければと思います。

 その上で、今回の法律で匿名加工情報というものが新しく定められまして、新しく加工基準も個人情報保護委員会規則で定められるということです。書いてあることは、特定の個人を識別することができず、かつ復元することができないようにするための措置ということでして、これをまさに個人情報保護委員会規則で定める基準を待った上でということなんですが、例えば、これは何度もこういう議論はあったと思いますけれども、一般論としては、ここまでやればさすがに個人を特定できないだろうというところまで加工したつもりなんだけれども、行動パターンが非常に特異な方で、この人は毎日必ず朝十時になったらこのパチンコ屋に行って、その後この人はここに行って、こういう明らかにわかる行動パターンをとっている人というのは、実は、相当加工しても、トレースすることが可能なんですよね。

 こういう若干特異なケースではありますけれども、どこまでこの匿名加工情報というのは加工すればいいのか。そういう、全体のデータの中で特異ケースが出てきた人、その人までがわからなくなるようにするとなると、それは相当なことをしなきゃいけないわけでありまして、個人情報保護委員会規則で決めるということになっていますが、どの程度のことをすれば匿名加工情報と言えるというふうにお考えでしょうか。審議官。

向井政府参考人 お答えいたします。

 匿名加工情報の加工基準につきましては、特定の個人を識別することになる項目を削除、例えば、氏名の削除ですとか、住所の市町村以下を削除、詳細な項目を一定のまとまりや区分に置きかえる、いわゆるグルーピングでございますとか、分析対象データの平均から大きく乖離するデータ群をまとめるようなもの等の、一般的な手法を定めることが考えられますが、ただ、いずれにいたしましても、例えば、市町村でも、人口がたくさんいるところと少ないところはどうするんだとか、そういういろいろな問題が出てくると思います。

 これらにつきまして、やはり重要なことは、一方で案をお示ししながら、よく産業界ないしそういうのを利用されている方の意見を聞いていくことであるというふうに思っております。

 御指摘のような特定のパターンをとる人間の行動に関する特異値の取り扱いにつきましても、恐らく特異値を消すような関数を使うんだと思うんですが、そういうふうなことを規則で定めることは想定されるというふうに考えます。

緒方委員 ありがとうございました。

 では、質問を少しかえたいと思います。

 今回の個人情報保護法の中で、事業者さんにとって結構重い義務だなと思うものの中に、確認、記録義務がございます。これについては、個人データの第三者提供について、本人の同意があったとしても、それを出す側も受け取る側も、一定の義務が課せられるということになります。これは高井議員の方からも以前質問がありましたけれども、個人情報データベースではなくて、個人情報データであります。

 個人情報データというのは、本当に個人それぞれの情報なわけですけれども、一個一個の個人データを本人の同意があるにもかかわらず第三者提供した場合にまで確認、記録義務があるということになりますと、例えば、よくインターネットで、何か新しいサービスを受けようとすると、あなたの電話番号と幾つかの情報をいただいて、こっちに転送しますみたいな、そういう表示が出て、それをぱっと押すと、その情報がそこを通じて別のところに共有されていくとかいうことがございます。

 これは別に、私からすると、この業者に自分の携帯番号が入ると仮定するときに、そういう番号が行くことは、まあいいだろう、そういうことというのはインターネット上で物すごく頻繁に行われていることだと思うんです、今いろいろなサービスが連携していますので。

 それで、一人の個人データを、そういう感じで、インターネットのシステム上、私が同意した上で第三者提供しているにもかかわらず、その記録を全部ログで残していくということになると、物すごい義務がかかっているようにも見えるわけでありますが、向井審議官、これはいかがでございますか。

向井政府参考人 先生御指摘のとおり、ブログとか、あるいは自動的に転送されるようなサービスというのは多数ございまして、形態もさまざまであろうと思います。

 ただ、一般的なブログにつきましては、個人が書き込んだ情報の公開については、当該個人が書き込んだ内容を誰が閲覧できるかを、当該個人自身が公開範囲として指定していることから、公開範囲について事業者の裁量の余地はないというふうに考えられます。

 仮に、これを事業者が第三者に提供するものであると捉えますと、例えば、ブログに個人が友人等の写真とあわせて情報を書き込むような場合には、事業者は当該友人の同意を得ずに第三者に提供することとなり、違法状態が生ずることになるんですけれども、それは国内におきましてもそういうような整理がなされていない、要するに第三者提供とは捉えられていないというふうなことだと思います。

 したがいまして、そういうふうな、本人が、例えばブログに出したものがほかのところにも自動的に出されるようなことを意識しておる場合には、それはむしろ、本人の提供というふうに捉えるべき場合もあるのではないかというふうに考えます。

 これらにつきまして、やはり、どういうふうな形態があるかについて、不必要な場合にまで第三者提供と捉えて解釈する必要はないのではないかということが一つあるのではないか。

 一方では、第三者提供と捉えられる場合におきましても、そのような半分自動に近いような場合につきましては、包括的にこういうことが行われているというふうな書き方というのもあり得るのではないかというふうに思っておりまして、仮に第三者提供と捉えるべき場合におきましても、個人情報のトレースをする場合においてほとんど支障が生じない場合につきましては、できるだけ簡易な方法というのも考えられるのではないかというふうに考えております。

 これらにつきましては、いずれにしても、よく事業者に聞く必要があるのではないかと思っております。

緒方委員 今の答弁を聞いて、恐らく事業者の方は、あるかもしれないとか、自動性が高いものについては第三者提供ではなくて本人提供だ、そうみなすこともできるのではないかとかいう御答弁でありましたけれども、結構、今の答弁では、自分たちのサービスは大丈夫かという不安を持たれた方が多いと思います。

 ここを払拭していくのは、最終的には法律が通った後のさまざまな協議の中でやっていくわけでありますが、今の答弁ですと、自分たちはどうなるんだろうということについてよくわからなかったという方が多いだろうということだけ指摘をさせていただいて、あとは頑張ってくださいということを申し上げたいと思います。

 質問を移したいと思います。

 これはもう何度も話が出ていますが、個人情報取扱事業者について、いわゆる五千要件の廃止が行われるということで、ただ、それに対して附則のところで配慮規定を定めているということなんですが、よくわからないのは、例えば、二十件だけ顧客名簿を持っている八百屋のおばちゃんとかが、そのうちの一人の分を隣の魚屋さんに、このお客さんはお魚が欲しそうだったから、この人に連絡してみるといいよということで渡したら、これはいろいろ配慮とかなんとかがあるんですけれども、これ自体は義務違反を構成しているということですか、向井さん。

向井政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の件につきましては、どういう同意をとっているかとかそういうものもあろうかと思いますが、その義務違反に当たる可能性もあるのではないかと考えます。

緒方委員 そうなんですね。

 すごい限界事例を今私が言っていることはよくよくわかっているわけでありますが、五千件を下回る業者さんも入ってくるということで、本当に軽微なもの、社会通念上どう見てもこれはさすがに何か問題が生じるということはないだろうということも、法律の法文上においてはこれが義務違反を構成する。義務違反を構成しているというその事実自体は動かないわけであります。

 これに対して配慮をするということが定められてありますが、この配慮というのは、義務違反をしているんだけれども目をこぼすよということなのか、それとも、何かそれ以外のことなのか。配慮というのが、五千件を下回る業者さんからすると、自分は義務違反を構成しているんだけれども何をしてくれるんだろうか、お目こぼししてくれるのか、法律違反じゃないようにしてくれるのか、何なのかということが非常に疑問になるわけでありますが、向井審議官、どうでしょう。

向井政府参考人 お答えいたします。

 一般的に、小規模の事業者に配慮するという場合によくあり得るのは、多分、安全管理措置義務だと思います。これらにつきましては、大企業とは情報量も違いますし、実際の事業も違いますので、そういう小規模の事業者の実際の利用形態に応じた運用という形で緩和されるというふうなイメージかと思います。

 一方で、例えば、同意を得ないで情報を出すというのは、やはりそこのところはちょっとさすがに、先生のおっしゃる、違反になるものをお目こぼしする、そういうふうなことはガイドラインでは書けないだろうと。ただ一方で、仮にそういうことがあったとして、仮にそういうことが公になったとして、そういうときに委員会が指導する際には、やはり丁寧な指導をするといいますか、その小規模事業者がちゃんと個人情報保護法に沿った運用ができるような指導をしていくというふうなことになろうかと思います。

緒方委員 結局、この結果として何が生じるかというと、少し法律に詳しい方でも、これまでは五千件以上のデータベースを持っておられる方が対象だったけれども、これからはそういうのがなくなっちゃったから我々もこの個人情報保護法にひっかかるのよねというふうに思い、そして、その方々が、いや、だからもううちの顧客名簿からは何も教えられないのということになって、それがさらに曲解をされ、その結果として、何となく息苦しい世の中と呼んでいいかどうかわかりませんけれども、それに輪をかけてしまうんじゃないかということがございます。

 今、限界事例ではありましたけれども、五千件未満のところでいろいろな業者さんがおられて、そこに過剰反応が生じないように、くれぐれもこれからよろしくお願いをいたします。

 今回、個人データの第三者提供に係るオプトアウトの手続を用いることについて、通知または容易に知り得る状態にすることによって、またはかかる内容を届けることとしということで、その届け出事項を個人情報保護委員会が公表することとしたとしても、例えば高齢者の方で、自分の名前がそこの何かデータベースを扱っている業者さんのところに入っていることをそもそも知り得ていない人、知らない人、もしくは知っていて外してほしいなと思ったとしても、インターネットでオプトアウトの手続が書いてあったとしても、そもそもインターネットを使っていない人、仮に書いてあったとしても、やはり高齢者の方からすると、例えばここの番号に電話を下さいといっても、それに電話するなんて結構勇気が要るんですよね。全然知らない業者のところに電話して、済みません、私、どうもおたくのところに入っているようなんですけれども、それをどけてくださいと言うのは、そこまでアクションを起こすのは結構勇気が要るんですよね。

 そういう方々に対して、そもそもオプトアウトという言葉が多分わからない方もたくさんいるわけでありまして、御希望であればあなたを外してあげますよということが書いてあっても、それだけで十分にオプトアウトの手続をとるアクションに至らない方、こういった方々への対応。けれども、心の中では、実は自分の情報がどうもあそこにあるらしくて、そんなことが勝手に使われていることが気持ち悪いとは思っているんだけれども、そのアクションを起こすところまで至らない方々、特に今、日本は高齢化社会が進んでいるので、そういった方々がおられると思います。

 こういった方々についてどう対応していくことが望ましいとお考えでしょうか、向井審議官。

向井政府参考人 お答えいたします。

 オプトアウト手続、今回の改正によりまして、個人情報保護委員会に対する届け出というのが出まして、そこのサイトにアクセスすれば全てが見られる、そういうふうになっていますが、おっしゃるとおり、個々の人でそういう情報弱者と言われる方々がそう簡単にアクセスできないというのも一つはあろうかと思います。

 これらの方につきましては、できるだけ、それぞれの方の生活実態によろうかとは思いますけれども、まず一つは、そういうふうなことがあるということをちゃんと広報していくこと。そういうものが気になられる方の場合には、例えばお子さんなり、あるいは施設に入っておられる方だったら、そういう施設の人なりが成りかわって何らか見てあげるようなことも必要になってくるのかなというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、オプトアウト手続というのは、今回、これまでなかった話を届け出というふうな形でやろうと思っておりますので、これらができますと、そのサイト自体が世の中の監視にさらされることにより、そういう監視の目が多数まさに個人情報保護委員会のサイトに集まることによって適正な効果が働き得ればいいなというところも一つあるのではないかと考えております。

緒方委員 法律の仕組みとしてはパーフェクトだと思います。法律の仕組みとしてはパーフェクトでありまして、それを回避するための手段もきちんと提供するように書いてありますということなんですが、私の支持者にも結構高齢の方がおられて、そういった方々がいろいろな、今連想しながらも、あのおばちゃんはこれができるかなとか、やるかな、いや、きっとやらないだろう、その顔が思い浮かぶんですよね。

 東京の霞が関で検討し、この国会で審議し、そして法文上、見ている限りはこれはパーフェクトです。はっきり申し上げます。これはパーフェクトなんですけれども、実態としてそれが機能しないことがあり得るということだけ、大臣、一言お願い申し上げます。

山口国務大臣 おっしゃるとおりなんだろうと思います。私自身も怪しいなと思いながらも面倒くさいのでなかなかやりませんし、特に御高齢の方は、ここへ電話してどうなんだろうかということもあろうかと思います。

 そういったこともあるんですが、そこら辺はもちろん、先ほど答弁をさせていただいたようにいろいろ広報とかあるんでしょうが、一つは、実は国民生活センターの方に、ちょっとおかしいなと思ったら御連絡いただくということもあるんだろうと思いますね。あるいは、個人情報保護委員会あるいは認定個人情報保護団体、そういったところへ御連絡いただくというのも一方の手なんだろうと思いますが、消費者庁を担当しております大臣としては、そちらの方へもしっかり御連絡をいただければと思います。

緒方委員 どうしてもそういうオプトアウトの手続が、ネット上に、例えば一ページ目のところにどんと書きなさいみたいな感じのことだと思うんですけれども、そもそも字が小さかったら読めないみたいな感じの方もおられるわけでありまして、実態をよく見ていただきたいというのと、日本の社会の今の構成をよく見た上でやっていかないと、やはり絵に描いた餅になってはいけないというふうに思うので、そこはよろしくお願いいたします。

 もう時間も少なくなってまいりましたが、今回の法案によって、トレーサビリティーであるとか、第三者提供に関する届け出とか、確認、記録義務の規定が設けられているわけでありますが、私は、では、名簿屋の中で、しかも悪質な名簿屋の対応が本当にこれで十分かということについて、若干の疑義を持つものであります。

 かつて私も、今からもうかなり昔ですけれども、突然、大学の緒方さんのクラスの名簿ありますよね、売っていただけませんかと電話がかかってきたことがあります。これは二十年ぐらい前です。かかってきて、クラス、六十人ぐらいの名簿だったんですけれども、結構いい額を言われまして、三千円とか五千円とか言われた記憶があるんです、当然売っていないですけれども。

 そういうことがありまして、そのときの記憶をたどってみると、二十年前の話でありましたけれども、多分そういう人というのは物すごくアンダーグラウンドな方だと思っていて、そもそも何か店舗を開いて名簿のやりとりをしているとかということではなくて、メモリースティックか何かを持っていて、それだけを持って動いていって、必要な方のところに行ったら、ではと言って、ぴっとやってファイルを移動して、それで終わりというような、そういうアングラ化している方もいると思います。

 先ほどの答弁でもありましたとおりですが、表に出てきたところで、ばくっと捕まえるということでありましたが、それだけで本当に十分かなという気持ちがあります。これはお願いでありますけれども、今回の法制度を施行してみた後に、それでも取り締まることが難しい業者さんというのはいると私は思います。今回の法制度、さまざまな画期的なものを盛り込んでいると思いますが、これで終わりじゃないんだ、これから必要に応じて取り締まりはやっていく、先ほど業法の話もありました、そういったものも含めて、これで終わりじゃないんだ、そういう理解でよろしいですね、大臣。

山口国務大臣 これは、先ほども御答弁申し上げましたように、今回の改正で、やはり一つは、そういったアンダーグラウンドも含めた名簿業者を念頭に置いた改正でありますし、トレーサビリティーをしっかり把握できることによって、効果はそれなりに出てくるんだろうと思っております。

 ただ、やはりそれでもなかなか網羅し切れない部分も出てくるんだろうというふうな思いもしますので、そこら辺は、法執行をして状況を見ながら、そして同時に、どういう方法があるかも含めて検討していきたいと思います。

緒方委員 かつてそういうちょっと不思議な経験をしたがゆえに、この件、リアルなものとして自分自身捉えられるところでありまして、やはり、普通に生活していると、自分の情報がどこでどう取り扱われているかということについてはわからないところもたくさんございます。しかも、それがアングラ化しているということになるとなおさらでありまして、ここについては、さまざまな方法があると思いますけれども、対応をよろしくお願い申し上げます。

 それでは、最後に一つだけ。

 今回の法案の結果として、大きな目的の一つとして、諸外国とのデータのやりとりができるようになるということが目的の一つに挙がっていると思います。特にEUデータ保護指令とかデータ保護規則とかの関係で、十分性の認定ということがございます。

 これまで、日本はまだ十分性の認定を受けていない。まだ不十分だ。だから、諸外国とやりとりをするときにまだ十分なことが行えないということであります。

 今回、これだけ大きな法律をこれだけの審議時間やって、内閣府の方々もいろいろな方から意見を聞いて法案に落とし込んで、業者の方から話を聞いて、内閣法制局に行って不愉快な指摘を受けて、いろいろなそういうことはあるんだと思いますけれども、これからさらに、法案ができた後に、また各業者さんとも話をして、この制度がうまく回るようにしていく、これだけの多くの多くの人間の汗と涙の結晶のようなものができ上がってきているわけであります。

 この結果として十分性の認定がとれないということになってしまうと、こんなばからしい話はないわけでありまして、これは、今回の法案が通って、そしてこれが施行されている以上は、諸外国、典型的なのがEUの十分性認定だと思いますけれども、こういったものがきちんと確保できるように頑張ってきていただきたいというのが思いです。逆に、これがとれないということになると、それは国会で、山口大臣、何やっているんですかという話になると思います。

 やはり、今回の法律の結果として、諸外国とのデータのやりとりがうまくいくように、施行された後の諸外国との協議、しっかりやってくるんだというその決意を述べていただければと思います、大臣。

山口国務大臣 しっかりやるのは当たり前で、決意以外に若干申し上げたいんですが、これは当然、十分性取得を念頭に置いた法改正であるということはお話しのとおりでございます。

 その中で、やはり独立した第三者機関というのは結構大きかったんですね。これは今回設置をする。機微情報、これもあります。あるいは、小規模取扱事業者に対しての問題があります。あるいは越境データの移転に関する制限、あるいは開示請求権の明確化、これらが大体不十分とされておる点として、大体公にされておる資料から判断をしておったわけですが、これは十分に必要な対応を行ったというふうなことであります。

 しかし、明確に取得条件が、EUとして、いわゆる十分性取得に関して示されておりませんので、当然、もう御案内のとおりで、成立後、政令とか委員会規則等を速やかに定めると同時に、しっかりと、その内容を含めて、EUの担当部局と積極的に情報交換を行っていくことも必要であろう。

 いずれにしても、この十分性の認定取得に向けた取り組み、しっかりとやっていきたいと思います。

緒方委員 この件、本当に、ここまでやっている以上は怠りなく、必ずとってくるということでお願いをいたしたいと思います。

 先ほど最後の質問と言いましたが、もう少し時間がありますので、続けたいと思います。

 今回、個人情報保護委員会というものを独立した機関として立ち上げ、そして、その中でいろいろな規則をつくっていくということでありますが、ここにどういった方が代表されていくのかということについては非常に重要なところだと思います。

 この個人情報保護については、さまざまな業態の方がかかわるわけでありまして、個人情報保護委員会の委員の方、さらには専門委員ということで書いてあります。こういったところにさまざまな業態の方が入って意見が反映されるようにしていくことがとても重要なことでありまして、その観点から、この個人情報保護委員会の構成がどうなっていくのかということについて非常に関心があるわけでありますけれども、では、これは向井審議官。

向井政府参考人 お答えいたします。

 個人情報保護委員会の委員につきましては、例えば法律の専門家とか、あるいは民間における個人情報の実務に精通した方とか、いろいろな類型を書いておりまして、その類型はまさに先生が今おっしゃるような趣旨をあらわすための法律的な事項でございますが、それに当てはまらない人を委員として任命する際にも、当然のことながら、できるだけいろいろな範囲から委員を任命していく。

 あるいは、専門委員についても、どの程度専門委員を任命できるかというのは予算との関連もありますけれども、それもやはり幅広い範囲からしていく。

 さらに、つけ加えて申し上げますと、職員も、いわゆる霞が関の役人だけではなくて、民間とか、あるいは多数の専門家の方というものをできるだけ職員としても採用していくことが必要だというふうに考えております。

緒方委員 ありがとうございました。

 さまざまな意見が反映されるということでありましたが、これは今答えられる範囲で結構でありますけれども、委員とか、さらには専門委員、大体、数としてどれぐらいの方が想定されているのでありましょうか、向井審議官。

向井政府参考人 お答えいたします。

 委員は一応九名を想定しています。

 専門委員はちょっと、予算との関係もありますし、どういう専門分野で委員を出すかというのもまだこれから検討でございますので、具体的な数というのはさすがに現時点では申し上げられませんが、将来的にはやはり二桁は必要になるんだろうと思っております。

 それから、職員につきましても、現在五十名程度でございますけれども、最終的には百名以上必要になるのではないかと考えております。

緒方委員 わかりました。

 私、実は専門委員というのはもう少し多い数字を連想していたので、最初それぐらいからスタートして、最終的に二桁という数字でありましたので、大体相場観的にそれぐらいの数字なんだなということはわかりました。

 それぐらいの専門委員でやっていこうとすると、個人情報保護法の今回の改正によってかかわるところというのは本当に多種多様なところでありまして、できればうちの業界からも専門委員を出したい、お願いしますみたいな話が来ると思いますが、ここは公平な目で、特定の分野に偏りがないようにお願いをいたしたいと思います。

 四十分余りにわたりましていろいろ質問させていただきました。この法を通じまして利活用が進む、個人情報の保護も進む。そしてさまざまな、これからできていく政令であるとか個人情報保護委員会規則によっていろいろな懸念が払拭される。そして、払拭された上で、各事業者が施行の間までにきちんとしたリードタイムを持って体制を整えることができるというような体制をつくっていただくことをお願い申し上げまして、質問を終えさせていただきます。

 ありがとうございました。

井上委員長 次に、古本伸一郎君。

古本委員 お疲れさまです。民主党の古本伸一郎でございます。

 委員長のお許しをいただきまして、資料を少し配付させていただきました。資料を通じながら質問させていただきたいと思います。

 また、田村筆頭を初め与野党の理事の諸先生方、お時間をいただきましてありがとうございました。

 また、山口大臣、連日の御質疑、大変お疲れさまでございます。内閣府の関係、担当の官僚の皆さんを初め、いろいろと御準備に当たられておりますので、敬意を表したいと思います。

 我が党としては、本法案は大賛成であります。この後いろいろな、採決の段取り等々があるのかもしれませんが、政策論的には大賛成であります。

 といいますのも、今資料をお配りいたしました。一ページ目をごらんいただきたいと思います。

 私、これを事あるごとに出そうと思っているんです。平成二十四年、二〇一二年六月十五日、三党合意であります。当時は、私どもは藤井裕久先生、自由民主党は町村信孝先生、公明党は斉藤鉄夫先生、このお三方のサイン、これは大変重たいサインでありまして、これを出発点に社保・税一体改革法案が法案化され、国会に提出され、大変な議論の結果、成案を見たわけであります。

 そこで、私はマイナンバーを中心にお尋ねしたいと思っておりますが、二〇一一年六月の社保・税番号大綱、これを決定したわけなんですけれども、それから四年の歳月が流れました。大変感慨深いものがございます。マイナンバーと今呼んでおりますけれども、仮に和訳したならば、これは納税者番号制度なのか社会保障給付番号なのか、大臣、どちらですか。

山口国務大臣 ある意味で、どちらかとは言いがたい部分があるんだろうと思うんですね。それぞれの部分をそれぞれ持ってきて機能を果たしていくということで、イメージ的には、それのみならず、もっと大きく広がっていくものだろうというふうに理解はしております。

古本委員 当時、かりそめにも与党としてこの議論を党側で推進した者の端くれの一人として鮮明に覚えておりますけれども、もとより弊党はこの手の番号には反対だったんです、住基ネットのときも大反対の人がいましたから。名古屋の市長さん初め、いろいろありましたので。

 これをまとめる上での出発点は、やはり将来世代に借金を残してはいけない、そのためには財源なき政策は打ってはならない、これは身にしみて学びました。そのプロセスの中で深い反省に立って、財源の確保というのは、すなわち消費税の問題から逃げてはならないというところに至ったんですね。

 そのプロセスの中で、今ごらんいただきました三党合意文書、少しおさらいします。

 第七条、消費税率引き上げに当たっての検討課題ということで、当時三党で合意したんです。低所得者に配慮する観点から、給付つき税額控除等の施策の導入について、所得の把握、資産の把握の問題、以下省略しまして、この対応の可能性について検討するというふうにしたんですね。と同時に、これは当時、公明党の皆さんからの強い要望であったと記憶していますけれども、複数税率の導入について、財源の問題、対象範囲の限定、中小事業者の事務負担等、これもまた総合的に検討するとしたんです。

 めくっていただいて、裏面、これは立法であります。衆参で成立した法律の第七条であります。いわゆる社保・税一体改革法第七条であります。先ほどの三党合意に基づいて立法化したのがこちらでございます。

 アンダーラインをうちの事務所で引きましたので、そこを読み上げますね。

 「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する制度の本格的な稼動及び定着を前提に、」「給付付き税額控除等の施策の導入について、所得の把握、資産の把握の問題、執行面での対応の可能性等を含め様々な角度から総合的に検討する。」。

 パラレルで、これは併記をどうしてもしてくれと、当時の野党、自公の皆様がおっしゃるものだから併記しました。「複数税率の導入について、財源の問題、対象範囲の限定、中小事業者の事務負担等を含め様々な角度から総合的に検討する。」。

 財務省、きょう来ていただいていますが、給付つき税額控除の検討状況について、いかがでしょうか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 先生今言及されました、いわゆる一体改革の中の税制抜本改革法におきまして、低所得者対策として、給付つき税額控除、そして複数税率がともに検討課題とされていることは承知をしております。

 現在、与党におきましては、軽減税率制度の検討を進めるということで検討が行われているところでございまして、政府といたしましては、まずは与党における検討を踏まえるべきものと考えておりまして、引き続き与党の議論を見守ってまいりたいと考えております。

古本委員 きょうは小泉政務官にも来ていただいています。担務を少し離れる部分があるかもしれませんが、将来の日本を代表する政治家になる方だと私は見込んでおりますので、軽減税率、それと、給付つき税額控除という名前がこれはよろしくないんですね、消費税の税戻し、戻し税というふうに言った方がよかったと思うんですけれども、どちらの方が感覚に合いますか。

小泉大臣政務官 私の立場でお答えできることには限りがありますけれども、給付つき税額控除というのは、間違いなく、マイナンバーというのが一つのインフラとして整備され、その中で選択肢の一つになり得る、それはそう思っています。

 軽減税率などの考え方はいろいろありますが、やはり税においてはわかりやすさ、こういった観点というのは非常に大切だ、そう感じております。

古本委員 財務省、かつて物品税を自民党の皆さんが導入されたときに、例えば、コーヒーに幾ら課税、紅茶に課税、日本茶は幾らと、複数の税率が変動し、毎年の自民党税調が大騒ぎになったと物の本に書いてありますし、何よりも、私の師匠である藤井裕久先生から、当時、自由民主党田中派の保守本流の話として、生のお話として聞いたことが幾度となくございます。

 軽減税率は大変わかりやすいんですけれども、仮に生鮮食料品全般にかけたならば、平年度で、消費税一ポイント当たり約二兆五千から二兆七千入ると思いますけれども、大体何千億円ぐらい欠損しますか。

星野政府参考人 一定の仮定を置く必要がございますので、一定の仮定を置いたという前提で申し上げますと、今御指摘の、生鮮食料品に当たるものについて一%分の軽減をしたならば、一応、金額といたしましては、千七百億ぐらいから千八百億ぐらいの数字になるかと考えております。

古本委員 では、さらに、生鮮食料品のみならず、食料品全体、さらには、大衆食堂で御飯も食べますよ、牛丼屋さんで牛丼も、一般サラリーマンは毎日、ランチをワンコインで必死で食べていますよね。ここまで全部入れると、幾ら欠損しますか。

星野政府参考人 これも一定の仮定を置く必要がございますけれども、先生御指摘のとおり、仮に、外食も含めまして食料品全体について一%分軽減をした場合には、およそ六千億強、七千億近い財源が必要になると考えております。

古本委員 今のやりとりが、実は、ちょうど二〇一一年の年末から一二年にかけての連日連夜の議論がありました。当時、私どもの、拙い税調だったかもしれませんが、税調の事務方を預かる者の一人として、与党議員、衆参の諸先生方、あのころはたくさんいたんです、三百人になんなんとする先生方が党税調の部屋に押しかけてきて、熱気あふれる議論が連日連夜なされました。

 その熱気あふれる議論をしたときに、軽減税率がいいという意見も大変あったんです。でも、そのときに、大変若い政治家、具体名を出すのもなんですけれども、例えば、今惜敗している福岡二区の稲富さん、彼なんかの大演説は私は胸にしみました。

 消費税は、社会保障財源とするならば、食料品及び牛丼屋さんで食事したときの税金も軽減してくれよという話にやがてなるでしょう、なった暁には、一ポイント当たり六千億から七千億欠損するということになると、実は、軽減しなければ消費税が成り立たないということは、すなわち、消費税は税として瑕疵があるという話になるじゃないですかと。税として極めて公平、公明、そして何より透明性のある、課税漏れのない消費税ということを考えると、実は、軽減の話は楽だ、ポピュリズムに走るなら楽だ、誰だって、食料品は軽減しますと言えば、御家庭の主婦層から大変支持を得る、だけれども、これは政治家の本懐として、私は涙をのんででも軽減はしないんですと言って、大演説をぶちました。胸にしみていますよ。

 それが、なぜかくも簡単に自公の皆さんが軽減の議論に今走っているのかは、私はあのとき、何人かの若手議員と連日連夜、平場の議論でしたけれども、これで仮に解散になって選挙になっても、落選したならば政治家の本懐であるとまで言った男もいました。

 あれだけの議論があった結果、実は、給付つき税額控除の方がすぐれているんだ、一億円を稼いでいる人がビフテキを食べても軽減されるよりも、民税非課税世帯、あるいは生活保護を受けているような方々も食料品を買えばこれは消費税がかかりますから、この部分を軽減した方がいいというのはわかるけれども、その世帯に限定して給付した方がいいという議論で引っ張ったんです。大変な議論だったんです。

 そのときの大前提がマイナンバーだったんです。このナンバーが入らないことには、実は低所得だと言われながら別途ストックがあったらどうなるんだ、不動産を持っていたらどうなるんだ、大変な死亡、生命保険金を持っていたらどうなるんだ、証券口座を持っていたらどうなるんだという議論になり、これは、フローとストックをともに把握できるような番号ができた暁には、この給付つき税額控除をやろうではないかということで議論をまとめたんですよ。

 きょうは金融庁も来てもらっていますね。預金通帳に番号を振るということは大変結構なことだと思います。ただし、国民の理解がなければこんなことはできないですよ。預金通帳に番号を振るなんということ、国民の理解を得られると思いますか、金融庁。

西田政府参考人 お答えいたします。

 先生の御指摘、ごもっともだと思います。国民の理解を得て預金に付番をつけるということは、やはりまず周知、この制度の性格の説明をしっかりと国民に対してしていく、そして理解を求めていくことが重要であると考えております。

古本委員 では、金融庁、続いて。

 大臣、今回、上戸彩さんまで投入して、資料の六番、こういうチラシをつくっておられますね。大変国民的な人気のある方ですから、あやかりたいという気持ちもよくわかるんですけれども、小泉進次郎さんが前面に出た方がもっと理解が進むと思いますよ。

 なぜならば、マイナンバーというのは、ここに書いてあるじゃないですか、「公平・公正な社会の実現」。ちょっとマジックでこれはうちの事務所で丸を書きましたけれども、政府のこれは折り込みチラシです。その中で、「公平・公正な社会の実現 適正・公平な課税を実現します。 所得把握の正確性が向上し、適正・公平な課税につながります。」と書いてある。

 金融庁、今回の説明によると、ペイオフの際に、名寄せやら本人確認やら何やらで、いわゆる一千万の預保、預金保険に非常にワークするというのを喧伝されておられますけれども、現状で、マイナンバーがなくて、万が一にも金融破綻があった場合、マイナンバーがなかりせば、一千万保護されないんですか。現状でもされるんじゃないですか。

西田政府参考人 お答えいたします。

 先生御案内のとおり、現在の破綻処理制度の枠組みといたしましては、万が一金融機関が破綻した場合は、預金保険法に基づきまして、原則として、一般預金等につきまして、預金者一人当たり元本一千万円までとその利息等を保護する定額保護により、破綻処理、いわゆる先生今お話がありましたペイオフが実施されるという枠組みになっております。

 このため、預金保険法におきましては、金融機関の破綻時に預金の円滑な払い出しを確保するため、金融機関に対して名寄せに必要な預金者データを整備するなどの義務づけを行っております。金融機関は、これを受けまして、預金者データの整備等に努めているところでございます。

 金融庁といたしましては、今後、万が一金融機関が破綻した場合に、そうしたときでも預金の円滑な払い戻しができるよう、預金保険機構と連携いたしまして、金融機関に対して預金者データの整備等に係る体制整備の充実を促しているところでございます。

古本委員 要すれば、マイナンバーがなくても一千万の預金保護はされるということを今おっしゃった。今、うんと言われました。

 したがって、預金通帳への付番をするという申告をしていただくというのは、よほど金融機関へのインセンティブやあるいは預貯金をしているユーザー側といいますか国民の皆様側に何かインセンティブがなければ付番できないんだというポジションをとった瞬間に、この議論は私、暗礁に乗り上げると思いますよ。

 なぜならば、二〇一一年、この議論をやらなければならないと思い、社保・税番号大綱、当時の私どもが必死の思いで決定まで持ち込んだこれは、出発点は納税者番号だったからですよ。

 きょうは国税庁も来てくれていますね。現状で、フローとストックの所得を把握しようと思うと、それぞれあると思うんですけれども、給付つき税額控除を、例えば老齢基礎年金、毎月御夫婦二人で十二万円少しですか、満額受けておられるおじいちゃま、おばあちゃまでも、別途何か資産があるという方があれば、その方々にもきちんと負担していただきたいということだと思うんですが、国税庁もストックの把握ということはなかなか大変だと思うんですよ。

 ただ、この番号ができた暁には、フロー、ストックともに進展はしますか。するかどうかだけお願いします。

藤田政府参考人 お答えいたします。

 番号制度の導入によりまして、申告書、法定調書などの税務関係書類に番号が記載されるということになりまして、法定調書の名寄せ、申告書との突合がより効率的かつ正確に行えるようになり、所得把握の正確性が向上して、適正、公平な課税につながるものと考えております。ただ、番号制度導入後も、例えば一般の消費者を対象とする小売サービス業に係る取引情報の把握には限界があるなど、全ての所得、資産を正確に把握することは困難であると考えております。

 ただ、いずれにいたしましても、国税当局としては、新たに導入される番号を利用しながら、引き続き、あらゆる機会を通じて、課税上有効な資料情報の収集に努め、適正、公平な課税の実現に向け、所得、資産の把握に努めてまいりたいと考えております。

古本委員 きょうは厚労省も来ていただいています。

 当時の議論を思い出すんですけれども、例えばCTスキャンを撮りました、そうすると、その情報を、非常にポータビリティーがあって、例えばA病院で見立ててもらったのを、B病院に名医がいる、大変著名な先生がいる、わらをもすがる思いでその先生のセカンドオピニオンを聞きたいという場合は、今は、フィルムを貸し出す、電磁的情報、その先生にお願いして紹介状をいただいて行く、こういうことだと思うんですが、もっと便利になればいいなと。だって、言いにくいじゃないですか、患者側はやはりどうしても遠慮がありますから。

 医療従事者が管理する情報に限ると先ほど答弁されていましたけれども、今回の附則六条、三年をめどにその利活用の範囲を拡大するという射程の中に私が今申し上げたようなケースを想定するかどうか、現在の議論を簡単に教えてください。

安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 大綱以来、私ども、二回にわたりまして研究会を開いてきております。

 二年前にも一度研究会を開きましたが、なかなか詳細が詰め切れなかったということで、より具体的な場面に応じた検討ということで、昨年の五月から検討会を開始しております。これには、医療関係者、保険者あるいは有識者等に参加をしていただいたということでございまして、その中間取りまとめが十二月に出まして、その成果の一部が今回のマイナンバー法の改正という形になってございます。

 これ以外に、先生が御指摘になられましたような、医療機関間の情報連携、こういったものに使います個人番号につきましては、この中間取りまとめにおきましては、まずは、マイナンバー制度というインフラを使って、医療機関の窓口におきます医療保険資格のオンライン確認システムの導入を実現したいと思います。これによりまして、保険者と医療機関の被保険者情報に関する連携ができるわけであります。それを一つの基盤といたしまして、医療機関間の情報連携やら、あるいは研究などに活用します番号の仕組みを検討していきたいというふうになってございます。

 こういうかなり具体的な中間まとめをいただいておりますので、それを踏まえまして、今後早急に検討していきたいと考えております。

古本委員 つまり、医療情報というのは非常に機微性があると言いつつも、だって、患っているかもしれないと悩んでいる本人がこれはもう共有していいんだと思っているのであれば、もっともっと便利になれば、CTの被曝の問題は科学的にも証明されていますね、お医者さんもたくさんいますからあれですけれども。

 私は、そういうのは全て国民の合意がやはり要ると思うんですよ。さっきの預金通帳への付番の話も、大変国民の合意が要ると思うんですね。この納税者番号というのは、当時、実は手前どもも言い切れなかったんです。結果として社会保障給付番号的なニュアンスにしつらえを変えたんですね。だから、やはり私は、国民的な合意を為政者が、政権与党がとっていくということのプロセス、国民からの合意をとるというのは大変な作業だなと思ったんです。

 きょう、総務省も来ていただいていますが、我が国で、いわゆる国民投票というのはどういうケースが行えるんですか。つまり、憲法改正の国民投票以外に国民投票はできますか。

稲山政府参考人 突然のお尋ねですので、憲法改正国民投票は根拠法がございますが、それ以外のものについては、ちょっとつまびらかにはわかりません。

古本委員 できないんです。できないんだと思います。

 先週末、日本じゅうが大変注目した大阪都構想がございましたね。私は、その政策論、それと為政者としての政治論として大変注目しました。とりわけ年代別の投票行動というものが大変特徴的だなと思っていたところ、何やら小泉政務官も同じようなコメントを地方創生の会合で御発言されているということがわかりましたので、少しその議論をしてみたいと思うんです。

 資料をお配りしました。資料の三ページ、都構想でありますけれども、読売新聞調べによると、年代別では、二十代から五十代は賛成が優勢であった、七十代以上が反対が多かったということであります。

 小泉進次郎さんは、恐らくそのことをごらんになって、こういった報道を少しごらんになってこう発言されたんだと思うんです。よくシルバー民主主義と言われることもある、高齢者の意向に左右されているような日本の構造、そのことの象徴的なものだったのかも、これからもっと自分なりに分析したいと。

 限られた情報の中で何かコメントされたと仄聞しますので、ぜひ深めていただきたいと思うんですが、私は、むしろ、小泉進次郎さんの発言で注目したのは、世代別の投票結果だったというこのワンフレーズです。

 大阪市役所のホームページにアクセスすれば簡単に出てまいりますけれども、資料の五、実は、七十代以上の方の人口比率はわずかに一七・六ポイントしかないんですよ。二十代、三十代を合わせると約二七ポイントです。四十代も若いとするならば、実に四二ポイント近い方が有権者としていらっしゃるんですね。

 ちなみに、選管に問い合わせましたけれども、投票率はまだ出ていません。年代別投票率が出るのに一月ぐらいかかるというお答えでありましたので。

 ですから、むしろ、この世代の方々が、投票に行ってくれた方は都構想に賛成したんでしょうけれども、要すれば、二十代、三十代、四十代に刺さらなかった政策だったのかなと私は思ったんです。と言うと、橋下市長に、あれだけ命がけの方に申しわけないので、二十代、三十代、四十代の方というのは、政策が何であれ、やはり選挙に行かないのかなということも思うんです。

 それで、資料の四をごらんいただきたいと思うんですが、衆議院選挙の年代別投票率を分析した、これは総務省のホームページです。昨年末の、消費税先送りを賛成か反対か問う解散であったと承知しています。安全保障を問う解散では全くなかったと私は思っています。消費税を先送りするかどうかを問う解散。この解散・総選挙では、二十代の方の投票率は全国平均三二ポイントです。三十代は四二ポイント。低いんですよ。

 それで、ここに注目してください。小泉さん、昭和四十二年、この左端を見ると、何と七十代の人というのは昔は投票率が低かった。五六ポイントだった。もちろん御長寿の問題とかもありますよ。多分、今大変シニアの人は元気ですから。二十代は何と六六ポイントだったんです。逆転していたんですね。

 これが逆転したエポックメークなのが、実は、昭和四十七年から昭和五十一年、第三十三回、三十四回選挙にかけてなんです。

 これもまた私の師匠である藤井先生から直接聞いたことがあるんですけれども、このときに何があったか、山口大臣、覚えていらっしゃいますか。政治的に大変大きなことがあったんです。高齢者が選挙に行くきっかけになったんです。今ヒントを差し上げましたので。政治的なイシューがあったんです。

山口国務大臣 高齢者の医療制度だったと思うんですが、当時。

古本委員 さすが大臣です。そのとおりなんです。高齢者の医療費無料化を訴えたので一気に投票率が上がったと伺いました。田中角栄さんにそういう意味での先見の明があったと伺ったことがあります。

 では、今、若い人たちに何を訴えたら選挙に行っていただけるのかなのか、それとも、中身ではなくて、私は、誰が訴えるかによって随分変わると思うんですよ。小泉政務官、私は、何を訴えるかも大事だけれども、誰がそれを国民に問いかけるかの方が人々の心が動くんじゃないかと思いますけれども、いかがですか。

小泉大臣政務官 大変興味深い御指摘とこの投票率の結果、ありがとうございました。

 今回大阪の件で私が発言をしたのは、あの当日、結果があらわれた翌朝のテレビなどの情報に基づくと、私が今三十代男性の分類別に入りますが、その三十代の男性の七割以上は賛成でした。そして、七十代以上は反対が六割。そして、六十代以下の男性の分類別を見れば、六十代から二十代まで、全て五〇%以上賛成だったんです。あくまでもその時点での情報ですけれども。それを見たときに、ああ、大変、日本の高齢化の現状の中の構造的な問題があぶり出てきたような気がするな、そういうふうな印象を持ってその後の発言につながりました。

 そして、今、古本先生から御紹介いただいたことは、さまざまな分析をしないと正確なことは言えないと思いますが、なぜ、昭和四十二年には高齢者の方以上に若い方が投票率が高くて、今はその真逆の現象が起きているのかという一つの中には、もしかしたら、いい時代を過ごしてきた方々が、日本がよくなる、一票を投じれば日本はよくなる、そういった体感があった世代かもしれないし、一方で、今は、一票を投じても変わらない、そういった政治に対する不信感や諦めなども影響してしまっていることも一つの要因かもしれない。

 なので、古本先生がおっしゃるように、ある一定の政策を訴えることで投票率や投票行動が変わるのか、それを目指すべきなのか、それとも、ある一定の政策抜きに、投票することこそが民主主義を鍛える、民主主義を実際に参加するということなんだという啓蒙をしっかりするのか、これは非常に、これからの十八歳が投票可能になると見られる今の状況の中で、もっと議論すべき課題だと思っています。

 ちなみに、私もアメリカの三年間の生活がありましたが、民主主義は何かという質問に対して、アメリカ人の若者と日本人の若者と全く答えが違うそうです。日本人は、民主主義とは多数決と答えるそうです。アメリカ人は、参加すること、そう答えるそうです。

 ここら辺の、根本的、基本的な議論かもしれませんが、しっかりやらないと、十八歳、十九歳が与えられた権利を世の中のために行使したいと思われるような現状が生まれないんじゃないかと危機感を持ちながら、だけれども、せっかくのチャンスですから、来年以降に向けて、そういった訴えは、私自身も、個人の努力ではありますが、しっかりやっていきたい、そう考えております。

古本委員 選管部長、今回、Tシャツを維新の党の皆さんが販売したり、投票日の当日まで入り口で両陣営が演説している映像を見ていますと、物すごく新しいなと思いましたね。

 これは、憲法改正の国民投票でも同じことができますか。

稲山政府参考人 お答えいたします。

 憲法改正国民投票は、平成十九年に議員立法で制定されたものでございますが、その際の国民投票運動につきましては、基本的に自由という考え方で整理がされております。

 投票の公正さを確保するために必要最小限の規制、これは例えば、選管の職員等が在職中、国民投票運動ができないとか、そういった限られたものはございますが、一定程度のものに限られておりまして、今お尋ねがあったようなものは禁止されておりませんので、できることになります。

古本委員 自民党の皆さんの綱領で恐縮ですけれども、自民党綱領、党是として、新憲法制定、自主憲法制定と書いておられるので、いよいよ憲法改正の国民投票発議を具体の日程に自民党の皆さんならのせてくるんだろうなと私は見ているんですね。そのときに、年代別投票率が、どうしても若い世代が低い。大阪の結果はまだわかりませんけれども、恐らく二十代、三十代は私は低かったと思うんです。高かったら逆転していますよ。有権者人口は多いんですから、若い人の方が。

 これは、私は、何を訴えるかという、都構想はよくわからないという方もいたかもしれませんが、橋下さんが好きで投票したという人もいたでしょうね。だけれども、橋下さんが嫌いだから、実は二重行政という政策論は賛成だけれども、反対だという人も、行った人もいたと思うんですよ。

 したがって、今、安倍さんは、ある意味でのポリティカルキャピタル、つまり政治的な資産を物すごく抱えていると私は思うんです。何だってできますよ、その気になれば。安保法制に血道を上げるのも結構ですけれども、もっとやるべきテーマがあると思うんですよ。例えば少子化の問題、あるいは高齢者、生涯未婚率の問題。これは内閣府の御専門ですから。二〇三〇年には、男性は何と三割が生涯未婚だそうですね。

 政務官、完結出生児数という言葉は御存じですか。完結出生児数。大臣はいかがですか。厚労省に本当は答えてもらってもいいんですけれども、要は、婚姻関係が十五年から十九年続いた御夫婦の間に生まれる子供の数は、二〇一〇年調べですけれども、一・九六人。二を少し下回っていますけれども、婚姻関係にある御夫婦の間には、しかも離婚なさらずに続いたカップルの間にはそれだけ子供がいるというわけですね。

 でも一方で、日本のいわゆる婚外子率は依然として二%前後で推移していますよね。婚外子を奨励するかどうかは、政策的に、あるいは家族観、いろいろな哲学論争があると思うんですけれども、ポリティカルキャピタルを使ってでも、若い人が物すごくわくわくするような政策、今は、婚姻関係になければ税も社会保障も恩典を受けられませんから、例えばこういったことに、小泉さん、議論を前に進めていくべきだと私は思うんです。

 御自身もまだ御結婚はなさっていないと承知していますけれども、仮に好きな彼女との間に子供ができて、婚姻関係になければ、産めますか。これは相当勇気が要ると思いますよ。でも、諸外国では当たり前ですね、ヨーロッパ、フランス。そのくらいの政策を思い切って打たなければ、日本の少子化対策は本当にできますか。ベビーシッターをふやしたぐらいで、できますか。

 そういうことに政治的なキャピタルを使って、思い切って国民に問いかけるというぐらいのことをするのが小泉さんの政治的使命だと思うんですけれども、いかがですか。

小泉大臣政務官 本当に、私が語ると説得力がなくて困っちゃうんですけれども、これは今の立場を離れての持論ですけれども、私は第三子支援よりも第一子支援だと思っています。そして、さらに言えば、結婚支援だと思っています。

 私は今独身ですから、私の立場の主観をもろに入れてお話をさせていただければ、第三子以降に支援をしますと言われたときにインセンティブを感じないんですよ。第三子に行くまでにどれだけのハードルを越えるのか。結婚、そして第一子、第二子、それを越えなければ支援が来ないんです。

 なおかつ言えば、古本先生がおっしゃったように、日本は婚外子が先進国の例から比べると圧倒的に少ない。その中で、やはり結婚をするという環境をつくらないと、その後の、子供を多く持つ、持てる、そういったことになかなか結びつかないと思うんですね。

 なので、そう考えると、私は、圧倒的少数派ですけれども、第一子、そして結婚、ここら辺に一つの力を入れるべきじゃないのかな、そういう思いは正直持っていますね。

古本委員 ぜひ、完結出生児数というのを少しテークノートしていただけるといいと思います。

 少しそれましたけれども、実は、今回の都構想の住民投票を言いましたけれども、私は、あれは、国民投票のいろいろな参加するという意味で、大阪市内の皆さんに限ってですけれども、民主主義、政務官がおっしゃった参加するという意味では、物すごくいい経験をされたんじゃないかなと非常にまぶしく見ておりました。

 政策の中身は、きょうは都構想の委員会じゃありませんから触れませんけれども、少なくとも為政者は、政策的に正しいと思っていることははっきり言わないといけないと思いますね。やはり二重行政というのは非常にわかりづらかったですね。

 もう時間が来ましたので終わりますけれども、最後に大臣、給付つき税額控除、きょういろいろ議論してまいりましたけれども、マイナンバーの導入が前提だったんです。ぜひ、麻生財務大臣も含めて閣内で、そして党側にも、野田毅税調会長にも、これはやはりマイナンバーが入るんだから、あれは当時の三党の合意の出発点なんだから、少し検討のテーブルに真面目に加えるようにと進言をいただきたいんですけれども、約束してください。

山口国務大臣 先ほど小泉政務官の方からも御答弁がありましたように、このマイナンバー制度というのは当然、いわゆるインフラとして役立つわけでありますから、そこら辺も含みながら、財務大臣等々にもお話をしてみようと思います。

古本委員 これで終わるところなんですけれども、正直なところ、都構想には賛成だったんですか、政務官。

小泉大臣政務官 無駄をなくして効率的な行政をつくるということは大変意義のあることだと思っています。

古本委員 私も、政策論としては大変すぐれて、一つの見識だったと思っています。なぜならば、大都市地域特別区設置法は民主党も賛成して成立させた法律だったんです。そのことをよく踏まえた議論を私ども民主党もしなければ、単なる反対ではとても国民の賛成は得られないなと思います。

 そういった真摯な議論をお互いにし合いたいなということを申し上げて、御挨拶にします。

 きょうはどうもありがとうございました。

井上委員長 午後零時四十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十四分休憩

     ――――◇―――――

    午後零時四十一分開議

井上委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。水戸将史君。

水戸委員 維新の党の水戸将史でございます。定足に足りたものですから、私の方から。

 限られた時間でございますけれども、私も、実は総務委員会に所属をしておりまして、総務省も、これから各自治体の行政運営に関しましてもマイナンバーというのは業務上密接な関係を持ってきますものですから、少なからず私自身もこの制度につきましては関心を持っているつもりであります。ですから、全てを聞くわけにいきませんので、特に自分が疑問点に思うことに関して、順次、大臣、副大臣の御答弁をいただきたいと思っております。

 まず、幅広に申し上げて、このマイナンバー制度全般にわたって、これからいろいろな利用方法が考えられるのではないかということもあります。ましてや、今回も口座番号等々、また健康、医療情報、そういうものを盛り込んでいくんだという新たな形で追加になっているわけでありますが、今後このマイナンバー制度の利用範囲を拡充する、そういうおつもりで進めていくのか、また、それを民間事業者によるマイナンバーの利用、いわゆる民間利用にもさらに広げていくつもりであるのか、その点につきまして御答弁をいただきたいと思っております。

西村(康)副大臣 お答え申し上げます。

 マイナンバー制度につきましては、これは我が国の成長戦略の観点からも、また、世界最高水準のIT社会を実現するという上でも、積極的な活用が重要な課題であるというふうに認識をしておりまして、昨年六月に閣議決定いたしました日本再興戦略二〇一四に沿いまして、政府としても必要な取り組みを推進しているところでございます。

 具体的には、金融、医療・介護・健康、戸籍、旅券、自動車登録、こういった公共性の高い分野を中心としたマイナンバーの利用範囲の拡大などの検討を進めてきておりまして、引き続きマイナンバー制度の積極的活用に向けた取り組みを進めていきたいというふうに考えております。

 また、民間利用については、マイナンバー法の附則において、法施行後三年を目途として、マイナンバーの利用範囲の拡大等について検討を加え、必要があると認めるときは、国民の理解を得つつ、所要の措置を講ずることとされております。この規定に基づきまして、いわゆる個人情報保護への懸念、漏えいへの懸念、こうしたこともありますので、そうしたことも踏まえまして、国民の理解を得つつ、適切に対処していきたいというふうに考えております。

水戸委員 スタートして三年間、その中でいろいろと、国民の理解を得ながら、民間利用にもこれを拡大していくんだというような、そのようなニュアンスかと思われます。

 現段階におきましても、民間金融機関に対してこのマイナンバーの登録を、ある程度、任意ではありますけれども、周知をするという話もありますし、仮にこういうことがだんだん広がってくれば、当然、国民の我々自身といたしましては、やはり個人番号カードの紛失とか盗難とか不正利用、偽造、また、マイナポータルというものを個人で持つわけでありますけれども、不正にそれにアクセスされるという、いろいろな形で危険性、リスクが高まってくる、ひいては特定個人情報が流出する、漏えいするという危険性が高まるのではないかということは十二分に懸念されるのでありますけれども、それに対してどういう対策をとっていくつもりでありますか。

西村(康)副大臣 大変重要な、大事な御指摘だと思います。

 国民の利便性を高めるために個人番号カードやマイナポータル、これをさまざまな用途で活用していくことを検討していくわけでありますけれども、その際にはプライバシーの保護ということには十分留意することが必要であるというふうに考えております。

 具体的には、個人番号カードについては、顔写真やパスワードを設定することとしておりまして、不正利用されるリスクは限定的でありますけれども、これに加えて、一つには、ICチップには所得情報や健康情報などのプライバシー性の高い個人情報は保存をしないということ。それから、万が一紛失、盗難があった場合には、二十四時間三百六十五日対応するコールセンターを用意してそこで対応するということ。それから、ICチップに券面情報、いわゆる四情報、氏名とかですけれども、こういったものを収録するという、偽造対策を施すなどの措置を講じておりまして、書きかえができないような措置を講ずることとしております。

 一方、御指摘のマイナポータルについても、成り済まし防止の観点から、ICチップに格納された電子証明書によってログインすることとして、万が一個人番号カードの紛失等があった場合は、届け出をしてもらって、その電子証明書を停止することでマイナポータルの利用ができなくなる、こういった措置を考えております。

 これらの措置を通じて、御指摘のような事案が生じないよう、万全を期してまいりたいというふうに考えております。

水戸委員 今、若干副大臣もお示しをしていただいたんですけれども、いわゆる成り済まし、その当人と偽って、成り済まして、その当人に成りかわる。そのセキュリティー対策として、例えば個人番号カードに対する写真掲載とか、いわゆるICチップの搭載とかいう形で、成り済ましをさせないように、本人確認の際、本人であることをそういう写真とかICチップでやっていくんだということになるんでしょう。

 まず、写真を掲載するかどうかはやはり個人の任意という話もありますし、仮にこうしたICチップを搭載した場合、結局、これはネット上のいわゆる公的な個人認証になりますけれども、本人確認をネット上でするわけでありますから、本人のデータがネット上に流れるという話になりますので、そういうプロセスにおいて、やはり個人情報が抜き出されるんじゃないか、そういう危険性、懸念もあるんですが、これについてはどうでしょうか。

西村(康)副大臣 まず、海外でいろいろな事件や事象が起こっておりますけれども、これは、本人確認が番号のみによって行われていたり、番号に従来利用制限が設けられていなかったりする国もありまして、そういったことからいろいろな事件が生じているというふうに承知をしておりまして、こうしたことが成り済ましの事例の発生に影響したというふうに考えております。これは国会質疑でもこの点も多くの御指摘があったところでございます。

 こうした点を踏まえて、マイナンバー制度においては、まず個人番号の利用範囲を法律で限定するということにした上で、対面で手続を行う場合には、本人の写真が掲載された個人番号カード等によってマイナンバーの確認と身元の確認を厳格に行うということにしておりますし、また、ネットワークを通じて手続を行う場合は、個人番号カードのICチップに格納された電子証明書により本人確認を行うということで、こういったことを通じて、成り済まし対策には万全を期しているところでございます。

水戸委員 成り済まし、これは本当に、諸外国の事例は枚挙にいとまがありませんものですから、万全な対策はもう当然政府も考えているでしょうけれども、それに対する不安感は拭うことはできないと思うんですね。

 もっと私が懸念をするというか不安なのが、やはり、国民の方々にどれだけこのような制度が周知されているのかという、いろいろなアンケート調査とか世論調査がありますけれども、なかなか認識されていない部分があるのではないかということは、今まさに指摘されると思うんですね。

 ですから、これからスタートするこのマイナンバー制度について、ますます、もちろん、その本人の、国民自身の理解も必要ですし、また、個人番号カード、今お話を聞きましたけれども、パスワードを設定することもあり得るでしょうから、その安全の管理とか、また、個人のマイナポータルのアクセスに対する、自分がアクセスをするわけで、個人がアクセスするわけでありますから、そのコンピューターのセキュリティーの徹底ですよね。自分が自分のパソコンを使ってそういう自分の情報にアクセスする場合のセキュリティー対策も、自分自身が、個人に求められる自己管理というんですか、自己責任というんですか、そういうものと、いわゆる行政というか、公的な、政府というか国が果たさなきゃならないいわゆる責任、その辺の、個人がどの程度責任を持つのか。

 それは個人の責任ですよ、しかし、それを超えるこの部分は公的に責任を持ちますよとか、その辺が、ちょっとこの境界線がいまいちよくわかりづらいところがあるので、こういうところの明確なラインというのは設定をするようなことで進めていただきたいんですけれども、どうでしょうかね。

向井政府参考人 お答えいたします。

 基本的なインフラを使う、例えばマイナポータルを使うというふうな場合のネットワーク上のセキュリティー措置というのは当然公的に行いますが、一方で、マイナンバーカードなんかは、やはり基本的には本人が、例えば、紛失されたときには直ちにコールセンターに連絡していただくとか、そういうふうな措置は必要になってくると思います。

 これらにつきましては、基本的に広報、周知するとともに、特定個人情報保護委員会のガイドラインにつきましても、個人あるいは事業者の方の安全管理措置などを詳しく説明したものがございますので、これらについても周知徹底してまいりたいというふうに考えております。

水戸委員 周知徹底を図る図るといって、情報を提供するこちら側は一生懸命頑張るというのは、それはもう多としたいと思うんですけれども、やはり受け取る国民がなかなかうまくすんなりとこの制度についての利用方法、利用価値をわかってくれないという、確かにもどかしさがあると思うんですね。本当に、不断の努力でもっともっと周知徹底を図るような、そういうアクションを起こしていっていただきたいということは強く要望したいと思っております。

 もちろん、その対象となるのは国民それぞれでありましょうけれども、法人、特に中小零細企業についても、いわゆる民間事業者ですね、やはりこうしたマイナンバーについてもっともっと周知を図っていただきたいと思うんですよ。

 もちろん、民間事業者は、自分たちの各事業所には社員も抱えるわけでありますし、社員に関するそうした税金とか社会保障のいわゆる源泉等を含めて、そういうことをする業務的な義務もありますものですから、それに対してやはり適切にこのマイナンバー制度を利用する、そういう中において、中小企業者、民間事業者の責任というのも、結局、これは問われてくるようになると思うんですね。

 実際にこのマイナンバーを取り扱う民間事業者は、それを取得するとか利用、提供、保管、廃棄、安全管理措置、いろいろなこういうことを適切に取り扱いなさいよというふうになるんですけれども、実際に民間事業者がそうしたものを適切に取り扱っているかどうかに関してどういう形で確認をするのかということについてはどうでしょうか。

西村(康)副大臣 御指摘のとおり、民間事業者は、社会保障や税の事務のために従業員等のマイナンバーを取り扱うことになります。

 この民間事業者が適正にマイナンバーを取り扱うことを監視、監督する機関として、これは法律に基づきまして特定個人情報保護委員会が昨年一月に設置をされておりまして、この委員会が指導、助言等を行う仕組みになっております。

 この委員会では、事業者がマイナンバーを適正に取得、利用、提供、あるいは保管、廃棄等をすることができるよう、その手引となるガイドラインを昨年十二月に策定をしておりまして、このガイドラインにおいても、中小企業に配慮した特例も設けておりますし、そのポイントを解説した資料をつくりまして、これまで百回ぐらい、中小企業等を対象とした説明会を実施しているところでございます。

 御指摘の、特に中小零細企業においては、個人番号関係事務を税理士、社労士さんたちが行うことが多いことから、税理士等の団体に対するガイドラインの周知を図っておりますし、また、こうした団体、税理士、社労士といった団体と協力、連携して、中小零細企業にもこうした周知を図っているところでございます。

 今後とも、適正な取り扱いを確保するための取り組みをしっかりと進めてまいりたいというふうに思っております。

水戸委員 審議官でいいので、ちょっと具体的に聞きたいんです。

 例えば、今副大臣からお話ありましたとおり、安全管理措置、そういう業務上の、中小零細企業者がやらなきゃいけない取り扱いがあるんですけれども、実際に適正に安全管理措置が行われていることに関して確認をしなきゃいけない。

 しかし、実際は、それはどういう形で、どういうことをすれば安全管理措置がとられているということの明確な判断というんですか、また、各事業者によっては、それを管理するソフトとかシステムが違うわけでありますので、もうちょっとしっかりした、フォーマットみたいなものをつくって、民間事業者はこういうものに記載してちゃんと報告しなさいよとか提出しなさいよと言えば、民間事業者も、では、このソフトを使って、システムを使ってやろうという話になるんですけれども、そういう何か明確なものがないと、やったやったと民間事業者が言ったとしても、だけれども、客観的に見れば、それはできていないというように判断される可能性もあると思うんですけれども、これはどうでしょうか。

向井政府参考人 お答えいたします。

 今現在、特定個人情報保護委員会のつくっておりますガイドラインにつきましては、中小企業者向けにつきましては、ある意味、より事業に支障のない範囲でつくっているところでございますけれども、それらの資料につきまして、非常にわかりやすい資料を、できるだけ具体的な形でつくっていくことが重要だと思っております。

 そういう具体的な、例えば、紙に書いてあるものだと、普通、事務机というのは一つぐらいは鍵のかかる引き出しがありますから、そういう引き出しに入れてくださいとか、あるいはシステムに入っている場合はパスワードを設定してくださいとか、そういうふうな具体的な基準をつくりまして、それで周知徹底してまいりたいというふうに思っております。

水戸委員 個人情報保護委員会ですか、いわゆる第三者的な機関として、安全管理がされているかどうかのガイドラインをつくりながら、一応それをチェックするというようになるんでしょうね、これは。

 しかし、今言ったように、まちまちな対応をするような危険性は、危険性というか、中小零細企業によっては、自分たちはこれは安全だろうという形でやっているにもかかわらず、そうじゃないよと言われる可能性もありますから、これはボタンのかけ違いになるんじゃないかなということをちょっと懸念しておりますので、もうちょっとこれは、中小零細企業の立場に立った上で、どういうことが安全管理措置をとったと言えるのかとか、しっかりと明確なものをもっと示していただきたいなと思っております。

 仮にそういう形でやっていただいた場合に、しかし、そうはいうものの、民間事業者がそういう管理義務を怠ったということも当然出てくると思うんですね。そういう中で、法令違反、不備があった場合には、どのような措置を講じるおつもりなのか。また、適切な取り扱いを、実効性を、しっかりやれよと、しっかりやっているんだぞということを担保する方策を講じることは必要だと思うんですけれども、それについてはこれからどういうような考え方で臨んでいかれるか。

西村(康)副大臣 御指摘のありました安全管理措置を義務づけておりまして、マイナンバーを取り扱う事業者の漏えい、あるいは不正利用、紛失などを防ぐために必要な措置を講じているわけですけれども、特定個人情報保護委員会がつくりましたガイドラインに沿って、しっかりと周知啓発をまず行っていきたいというふうに思っております。

 その上で、これらの義務に違反した場合は、この法案上、個人情報保護委員会による指導、助言、勧告、命令の対象となるということでありまして、それに背いた場合には罰則が科せられるわけでありますけれども、いきなり罰則とかということではなくて、指導、助言、勧告、命令と順を追っていきますので、そういった法令上の取り扱いもしながら、マイナンバーを適正に取り扱っていただけるよう、法律上担保しているところでございます。

水戸委員 いまいちちょっとわかりづらいというか、具体性が非常に見えてこないような、そういう御答弁であります。

 もうちょっと具体的に、中小企業の立場に立った上で、もちろん、最初からこんなのはやらないよなんという事業者はいないと思いますけれども、事業者に対してはいろいろな、人的な確保とか、それを行う税理士さんとか社労士さんもいるかもしれませんけれども、いずれにいたしましても、やはりしっかりした形で、事業者もこのマイナンバーを活用できるような、そうした方策を、またそれを担保できるような実効性をしっかりと高めていっていただきたいと思っていますので、よろしくお願いしたいと思っています。

 今回、新たな形で預貯金に関しまして付番をするということで、あくまで任意だよという話であります。民間事業者である金融機関が主体となってマイナンバーにより顧客の情報を管理するということになりますが、これはいわゆる個人番号関係事務とされていて、例えば税務署から問い合わせがあった場合にそれに答えるということで、あくまでも銀行は、金融機関は、そのためだけの管理だよという話になります。

 仮にそれ以外の、目的外使用をするかどうかに関しましては、当然しちゃいけないんですけれども、そうした形で金融機関が利用しないとは限らないという性悪説的な形で捉えることも必要かなと思っているんです。

 そういう目的外利用するかどうか、したかどうかに関するチェックはどのような形で把握をするのか、その方法はどういうふうにとるのか、また、そういう形が発覚した場合にどのような措置を講ずるおつもりかということについてお聞かせください。

山口国務大臣 ただいま御指摘いただきましたように、これはマイナンバー法九条第三項でありますが、法令の規定によって他人のマイナンバーを利用した事務を行うこととされた事業者等が、その事務を行うために必要な限度でマイナンバーを利用することができるというふうなことでありますから、必要な限度でマイナンバーを使用することができるということにすぎず、例えば、銀行がみずからの営利の目的で顧客管理をするに当たりましてマイナンバーを利用するというふうなことはできません。

 なお、特定個人情報保護委員会は、民間事業者等におけるマイナンバーの適正な取り扱いを確保するためのガイドラインを示しておるわけでありますが、この適正な取り扱いにつきまして監視、監督を行うということにされておりまして、目的外の使用についても、今現在は、特定個人情報保護委員会というものが適切に対応していくというふうなことになろうかと思います。

水戸委員 そして、質問はもう一つありまして、結局、そうなった場合、仮に目的外使用が発覚した場合、もちろんその前にチェックする対応も必要なんですけれども、これに対してどのような措置を講じるおつもりかということについてお答えください。

向井政府参考人 お答えいたします。

 目的外使用が判明した場合には、その態様等を是正するような指導、場合によっては勧告というのがまずあって、それから、それに従わない場合には命令とか、そういうふうに進んでいくものというふうに考えます。

水戸委員 基本的には罰則規定はないんですか。

向井政府参考人 目的外使用に対しましては、いきなり直罰というわけではなくて、委員会の命令に背いたときに罰則というふうな形になろうかと思います。

水戸委員 二段階方式で、最初は勧告、指導する、それに背いた場合は処罰の対象にする、そういうような認識でよろしいかと思います。

 いろいろな諸外国の事例、例えば韓国もありましたし、アメリカもそうなんですけれども、こうした個人の口座に関する付番がハッキングによって大量流出したという事例もありますし、また、クレジットカードの会員に成り済まして詐欺事件も起こるという事例は非常に多くあるんですね。もちろん、こういうことも十二分に懸念されます。

 仮に金融機関等に対してサイバー攻撃を仕掛けられた場合、特定個人情報が流出する危険性は十分あります。そのときにはどのような対策を講じられることになるのか。また、流出が実際に起こった場合のその対応、もちろんそんなことはあってはなりませんけれども、仮にそんなことが実際に起こっちゃった場合にどのような対応をとり得るのかということについても、やはり未然の措置として、そういうことを想定しながらいろいろなセキュリティー対策をしていくべきだと思いますが、これについてはいかがでしょうか。

山口国務大臣 ただいま御指摘の、金融機関ということでありますが、金融機関が特定個人情報の漏えい等を防ぐために講ずべき安全管理措置、これにつきましては、もう既に金融庁作成の金融分野における個人情報保護に関するガイドラインの安全管理措置等についての実務指針、これがありまして、これを遵守しながら、特定個人情報保護委員会作成の特定個人情報についてのガイドラインに沿った対応をするというふうなことが必要であると考えております。

 もし万が一実際に特定個人情報の流出が起こった場合には、まずはこれは金融機関において、監督当局者への報告とか、あるいは流出の防止、あるいは被害者への通知及び当然謝罪、また二次被害の防止といった対策を講じた上で、個人情報保護委員会による適切な指導、助言等を行うというふうなことが考えられるわけであります。

 いずれにしても、顧客のマイナンバーを大量に保管する金融機関等におきましては、サイバー攻撃に備えた十分な安全対策を講じていただく必要があると思いますし、既に銀行としては、個人の大変重要な情報を保管しておるわけですから、十分これまでも対策は講じてきていただいておるであろうとは思っております。

水戸委員 本当にいろいろな意味で、不安感ばかり増幅してもしようがないとは思っているんですけれども、最善の注意と迅速な対応はやはり求めてしかるべきかと思っております。

 実際、このセキュリティー対策なんですけれども、今大臣おっしゃったように、いろいろな形で銀行にも今までのノウハウ、蓄積があるから、セキュリティーに関してもいろいろな形でやっているということはそのとおりでありましょうけれども、しかし、新しい、こういうマイナンバーという試みでありますものですから、では、例えばセキュリティー確保のためのいろいろな万全の体制をこれから新たな形でとるんだということで、いろいろな形でコスト、費用負担がかかってくるんですけれども、これはどういう形でそれをカバーする、誰が負担をするのかとか、一体どの程度の金額がかかるのかに関しては、今どういう想定をされているわけですか。

山口国務大臣 御指摘のとおりで、これまでの措置、それに加えて、新たなセキュリティー整備も行うというふうなことも考えられるわけでありますが、その場合、その機関みずからの費用負担で行っていただくというふうに思っております。恐らく、各行それぞれによって、これまでどのぐらいのセキュリティー対策を講じてきておったか等々によっていろいろ変わってくるのであろうと思いますが、いずれにしても、将来的には金融機関にも大変大きなメリットをもたらす制度でございますので、しっかりとみずからの費用負担で行っていただくということになろうかと思います。

水戸委員 では、自分のことは自分で、各銀行が、金融機関が負担をしなさいよということでよろしいですか。もう一回。

山口国務大臣 そういうことでございます。

水戸委員 金融機関に関する費用の負担は一〇〇%金融機関がやりなさいよというお話で、自己責任でやりなさいよという話で、今確認をさせていただきました。

 実際、金融機関から個人の顧客の、我々自身の情報が、例えば税務署から問い合わせがある、そういった場合、これを伝えると。これだけの預金がありますよとか、これは法人もそうでありますけれども、そういう形で当局とやりとりしますよね、金融機関が。こうして当局が金融機関に対して行った調査、その行った調査の事実とかその履歴、あるいはまた当局に金融機関がどういう情報を提供したのかということの実際のその内容、そういうものは、我々自身、個人が、自分の情報ですから、自分の情報はマイナポータルを見ればこれもわかるということでよろしいですか。

山口国務大臣 マイナポータルにおきましては、情報提供ネットワークシステムを利用した機関間での情報提供の記録を確認することは可能というふうなことになりますが、今お話しの行政機関から金融機関への税務調査とかあるいは資力調査というのはこの情報提供ネットワークシステムを通じて行うものではないというふうなことで、調査が行われた事実を本人がマイナーポータルで確認することは難しいと考えております。

 実際問題、マル査等の税務調査で本人が調べられたのを知るということ自体もおかしな話ではあるんですけれども、いずれにしても、このネットワークシステムを利用しないいわゆるそういった調査ということで、本人が確認することは難しいというふうなことでございますし、今も若干申し上げましたが、そもそも当局が金融機関に対して調査を行った事実とか、あるいは提供された情報を本人に開示するか否か、これも、当該情報提供に係る事務や情報の性質に鑑みて、当該行政機関において適切に判断をされていくことであろうと思います。

水戸委員 もう時間になりました。もっと言いたいところはあるんですけれども、もちろんこれは警察の調査とかもいろいろあるんですね。大臣、いろいろなケースがありますから、マル査の話もしましたけれども、やはり個人の知る権利というのは当然ありますものですから、当局がやましいことをしなきゃ、まあ、やましいことはしているつもりはないと思いますけれども、やはりしっかりと個人に伝えるということを僕はすべきだと思いますし、これはある意味、まだ制度の未成熟さかと思っていますので、この点につきましては、また別な機会を通じて追及していきたいと思っています。よろしくお願いします。

 どうもありがとうございました。

井上委員長 次に、小沢鋭仁君。

小沢(鋭)委員 維新の党の小沢鋭仁でございます。

 個人情報保護法、マイナンバー法について質問をさせていただきます。

 日本経済は一流、科学技術は世界の最先端を行く、こういう、ある意味では我々自身がそう思っている話がありますね。私自身もそうあってほしい、こう思っているわけですが、最近ちょっと見た話で、愕然とした本があります。後藤さんという人と森川さんという人が書いた「アップル帝国の正体」という本なんですけれども、その中にあるのは、いわゆる最近話題のシャープは、今やアップルのアイフォン5の美しい液晶パネルの独占的につくられるための専用工場になっていたと。これは、これがまた韓国に敗れて、今シャープが苦しんでいる、こういう話も、これは本には入っていないんですが、私は、あるところから聞かせていただいたりもしました。

 もう一つ、アイフォン5のカメラの目に当たる半導体チップは全てソニーが製造しており、九州にある二つの巨大工場は、文字どおりリンゴ色に染まっていた、こういう書きぶりなんですね。

 要は、一言で言うと、日本の企業は、もうこういったIT産業の下請になりつつある、こういう話なんですね。ですから、日本の科学技術は世界の最先端だ、こう我々が思っている間に、日本はどんどんおくれをとっている、こう思うんですね。

 今回のこの二法案は、その背景に、御承知のとおり、IT技術の進展、あるいはまたIT社会の変化、こういったものがあって、個人情報もきちっと保護しなきゃいけませんね、あるいはまた、マイナンバーの方は大いにそういうものを、科学技術を活用しなきゃいけませんね、こういう話になっているんですが、山口大臣は、IT技術、IT担当大臣でもあられますね。

 そして、まさに今回の本案は、世界最先端IT国家創造宣言という安倍内閣の宣言があって、これは宣言が第一次と第二次になっているようですが、世界の最先端を行きたい、こういうことを目指しているということでありますが、ちょっと、お許しをいただいて資料をお配りさせていただきましたので見ていただきたいんです。

 これは、ICT競争ランキング、見ていただければおわかりのように日本は、右にある先進国、OECD諸国、それの一番びりっけつですよ、この図の中にあるのは。それから、二枚目。これは若干資料が古いんですけれども、いわゆるIT投資マインド、経営側のITに対する基本的考え方というデータがありまして、そこに並んでいる各国の中で日本はこれも最下位です。ですから、今や日本はIT産業の中で本当におくれをとっている、こういう現状だと思いますよ。

 まず、今回の二法案のベースになっているIT社会、IT技術に関して、この状況をどのように大臣は御認識なんでしょうか。

山口国務大臣 当初小沢先生からも御指摘いただきましたが、例えばアイフォンにしても、部品等々は日本製なんですが、もう部品提供メーカーみたいになってしまっているんですね。御案内のとおり、実は、日本の貿易赤字、これはエネルギーとか円安等々いろいろ、為替等がありますが、実はアイフォンとかアイパッドによる貿易赤字というのは結構ウエートが高いというので、私も驚きました。

 そして、今御指摘のITの利活用でありますが、これもかつて私も総務関係をいろいろやっておりまして、当時、アメリカの光ファイバーのハイウエー構想、そこら辺、これは大変だと、ゴアの時代でありますが。それで、我が国もしっかりブロードバンド環境をつくろうということで、当時はさまざまな制度をこしらえて、光ファイバーを相当敷設いたしました。あの当時は、世界に冠たるいわゆる、まあまあインフラはできたよ、ブロードバンド大国だなと言っておったんですが、いつの間にか御指摘のとおりなんだろうと思いますね。私も、今、資料を拝見してちょっとがっかりした、驚いたところであります。

 二年前に決定をいたしました世界最先端IT国家創造宣言でも、当時の認識としては、利用者ニーズを十分把握しておらず、ITの利便性とか効率性が発揮できていない、あるいは各省がばらばらにIT投資、施策を推進しており、施策効果が発揮をできておらない、こうした中で多くの国の後塵を拝しておるというふうな記載がされておったところであります。

 こういうような認識を踏まえて、この宣言に基づいて、世界最高水準のIT社会を構築すべく、IT総合戦略本部が司令塔機能を発揮することによって、各省それぞればらばらに縦割りであったんですけれども、政府全体として、横串で通した取り組みを積極的にやっていこうというふうなことで進めております。

 政府情報システム改革とか、あるいはデータカタログサイトを開設する等々、オープンデータの積極的な推進等にも努めてきておりまして、御指摘のとおりで、今回の個人情報保護法及びマイナンバー法の改正案もそうした思いの中でぜひとも実現させていきたいということでやらせていただいておるわけであります。

 この国際ランキングはいろいろな資料があるんでしょうけれども、この二年間で若干上昇したというふうな資料もございます。具体的には、国連電子政府ランキングというのがあるんですが、これは二〇一二年十八位から、二〇一四年は六位というふうなことであります。また、世界経済フォーラムのICTランキング、これは二〇一三年二十一位であったんですが、二〇一五年には十位というふうなことで、そういった資料もあります。

 しかし、実感としては私も小沢先生と同じような思いを持っておりまして、特に利活用、これは驚きました。経営側のITに関する基本的な考えとIT投資マインド、これは余りに低いな。こういった話を経営者の方々からもしばしば聞くわけで、やはり利活用を中心にした、もっともっとしっかりいろいろな施策を展開していかなきゃいかぬな、そのきっかけに今回のマイナンバーあるいは個人情報保護法改正というのを活用できたらなと思っております。

小沢(鋭)委員 山口大臣とは、ブロードバンドの話が出ましたけれども、そういった話を一緒にずっとしてきたわけでありまして、懐かしく聞かせていただきました。

 ただ、要は、技術の進歩がむちゃくちゃ速いものですから、本当にあっという間の進歩ですよね。

 大臣は私の一期先輩ですが、私が九三年に当選したときは、インターネットはまだ一般化していなかったんですからね。九三年のときに、まさにコンピューターの会社だとか、あるいはまたネットワークの会社だとか情報の会社だとかに集まってもらって僕は勉強会をやって、今でいえば、ショップがいっぱいありますけれども、ああ、こんなことができるんだなどとびっくりしたことを思い出すんですけれども。

 とにかくITの技術の進化というのはすさまじいので、本当に立ちどまっていられませんので、ぜひお願いしたい。

 最後に、大臣にリファーしていただきましたので申し上げますと、少なくても経済における停滞の最大の要因は、経営者の問題ですよ。

 日本の経営者というのは、ある意味でいうと、文科系、理科系みたいな話があって、割と文科系の人がトップに立つことが多いじゃないですか、政治家もそうですけれども。そうすると、ITという話になると、それは技術の人の話ですとなっちゃうんですよ。これがもう決定的な誤りですね。ITの技術じゃなくて、経営にITをどう使っていくか、こういう話を徹底的に考えていかないと、まさに経済は負けていって、そして技術の世界ですねという話だから、要は下請工場になっちゃうんですね。日本が下請工場になっていいということであればいいけれども、私はそれではやはりだめなんだろうと思いますね。

 やはり、特に最先端国家ということを標榜するのであれば、そこは本当に、もう一回産業政策として、いわゆる経営者マインドをどう考えるか、こういう話の視点から政策を組み直していただいた方がいいと思いますね。これは御提案を申し上げておきたいと思います。さらに日本はガラパゴス化していってしまいますよ。

 それから、先ほど我が党の水戸議員が今回の法案の心配なところをいろいろ御質問させていただきました。調査室がつくっていただいている資料でも、ベネッセ事件というのがあって、こういう話がある意味では大変ネガティブインパクトを与えた、こういうふうに私も感じています。

 ただ、ベネッセの漏えい事件というのは、個人情報保護の問題ではあるけれども、サイバーセキュリティーの問題とはちょっと質が違うと私は思っているんですね。

 これはもちろん、データを一括して管理するという技術があることは、だから、紙情報ではないという意味ではITと言ってもいいのかもしれませんが、少なくても、コンピューターの箱の中から持っていったとか、あるいはネットワークの中に攻撃をして持っていったという話じゃなくて、情報がただ単に窃盗で持ち出されただけですよね。

 ですから、ここのところはよく考えないと、こういうベネッセみたいな話が起こったから、いわゆるマイナンバー制度の話も慎重にやらにゃ、まあ、慎重にやるのはいいんですけれども、立ちどまってしまうという話になったらいけないと思うんですね。

 このベネッセ事件の本質というのは、私は、いわゆる一般的なサイバーセキュリティーの問題と違う、混同されている、こう思っているんですが、どうでしょうか。

石川政府参考人 お答えさせていただきます。

 ただいま御指摘がありましたとおり、個人情報の部分も含めまして、データの利活用、非常に重要だというふうに考えております。

 御指摘ありましたように、ベネッセ事件につきましては、外部からのサイバー攻撃で情報が漏れたということではございませんで、内部の者が情報システムを不正に操作して機密情報を取得したということでございまして、そういう意味では、ハッキングというような問題ではなくて、むしろ組織管理、企業管理、内部管理の問題というところがあろうかと思います。

 他方、情報漏えいの過去の事例を見ますと、サイバー攻撃などで情報が漏れるケースももちろんございますが、内部の関係者から情報が漏れるというケースも非常に多いことも事実でございまして、いずれにいたしましても、情報利活用の促進という観点から、そういった事業者の内部管理をしっかり促進してまいりたいというふうに考えております。

 以上でございます。

小沢(鋭)委員 ということだと思いますね。

 ですから、こういう話で立ちどまらないで、もっと徹底的に利活用を考えてもらいたい。後ほどいわゆるマイナスに対する対応、負の部分に対する対応も申し上げますが、まず、徹底的に、とにかく利活用を考えてもらいたい、こう思うんですね。

 私が思い出すのは、住基ネットの問題なんですよ。住基ネットをやりましたよね。利活用はどこまで進んでいるんですか。すさまじいお金をかけてシステムを構築したと思いますよ、中央も地方も。どれだけ使ったんですか。

 住基ネットもカードを出していますよね。あれを役所へ持っていくと、役所の窓口で、これは何ですかと聞かれるんだそうですよ。これは笑えない笑い話なんですよ。こういう話にマイナンバーがなってしまってはだめだと僕は思っているんです。

 いわゆるマイナンバーを活用するためにはどういう工夫をしなきゃいけないのか、そういう話をもっと徹底的に考えたらどうでしょうか。

 例えば、いい例はETCですよ。ETCを広めるために料金を安くしましたよね、ETCの料金を。だから、マイナンバーでとる行政情報は申請料が安くなりますよというような話だとか、そういう話がないとなかなか進まないんじゃないんですかね。

 今や、例えばホテルや旅館の予約は、ネット予約は電話予約よりも圧倒的に安いですよ。民間はやっていますよ。それは一つの例でありますけれども、そういう利活用を進めるための方策を政府は考えていますか。どうですか。

向井政府参考人 お答えいたします。

 マイナンバーカードにつきましては、住基カードのことを御指摘ございましたけれども、今回、マイナンバーカードに搭載しております公的個人認証でございますが、これまで署名検証者が公的な機関に限られていたために、実質的に使われたのはほとんどe―Taxでございます。それで多分、いわゆる住基カードをお持ちの方のかなりの方がe―Taxのためにお持ちになっているということになろうかと思います。

 今回のマイナンバーカードは、そこにあります公的個人認証につきましては民間にも開放されておりますので、民間の方が署名検証者となって、例えばネットバンキングなんかで、本人確認をネット上でしたりするのにも十分使えることになっておりますし、公的個人認証を活用することによりまして、民間と連携したような、そういうサービスも十分できるんではないかと。

 それから、マイナンバーカード自体は、公的個人認証の装備も含めまして、無料で行うということになっておりまして、ここもかなり住基カードと違う点かなというふうに思っております。

 さらに、実際にマイナンバーを提出する、例えば税とか社会保障の場面におきまして、本人確認をする際に、一枚で全部できるという点ではマイナンバーカードが唯一でございますので、これらの点についてもアピールしてまいりたいというふうに考えております。

小沢(鋭)委員 民間と協力して、こういうような話もありましたけれども、政府は政府として、そういうのをどんどんやったらいいんですよ。政府も少し頭をやわらかくして、山口大臣、ぜひ、そういう利活用促進策、大いに検討していただきたい、こういうふうに申し上げておきます。

 同時に、個人情報保護の方の問題ですけれども、これは、いろいろやりようはあるんでしょうが、一番基本は、やはりそこの、もし悪用をする、あるいはまたサイバーアタックや何かをする、こういうことに対する一つの考え方は、厳罰化だと私は思いますよ、抑止力を高めるという意味では。さっきのベネッセの話じゃないですけれども、通常の窃盗みたいな話と、サイバーアタックのいわゆるそういう形での盗用はもっと厳しくする。それはなぜかといったら、一つのデータの問題じゃなくてシステムそのものに対する侵害ですから。

 そういう意味では、いろいろな保護措置をやるのはいいと思いますが、その一つの話として、徹底的な利活用を片方ですると同時に、片方では、いわゆるそういったことで法を犯した人間に関しては厳罰化をするという話にしたらどうかと思うんですが、意外とそういう意識がないんじゃないですか。

 今回のマイナンバーのまさに罰則規定、緩いんじゃないですか。どうですか。

向井政府参考人 お答えいたします。

 個人情報保護法上は、今回、直罰規定をつくりましたが、それまでは、基本的には間接罰の体系でございました。

 一方で、行政機関個人情報保護法につきましては、既にもう直罰が入っておりますけれども、マイナンバーは、行政機関個人情報保護法の体系にのっとった上、さらにその罰則を加重している。

 そういう意味では、今回のマイナンバーの個人情報保護の部分というのは、従来から一歩踏み出した罰則はつけているというふうに考えております。

小沢(鋭)委員 これは本当に、やはりそこは相当な抑止力を持たせた方がいいと思います。だから、めり張りという言葉がありますが、徹底的な利活用と徹底的ないわゆる厳罰化、こういう話があっていいんじゃないかと思っていますので、さらなるまた御検討をお願いしたいし、私も提案をしたいと思います。

 それで、向井さん、前からお願いしているんですが、例えば、実害が起こったときの、特に金銭被害、こうした話に関しては、いわゆる保険制度、だから、徹底的な厳罰化と、被害者を守るという意味ではいわゆる保険的な制度、そういう話を考えたらどうかということを申し上げてきたんですが、それはいかがですか。

向井政府参考人 お答えいたします。

 個人情報の漏えいに対する被害というのが金銭的になかなかはかりづらいという点もあって、これまで保険のようなものがなかったというのも事実でございます。

 それで、通常、例えば、ベネッセの事件のような場合、五百円の図書券を配ったりしているというのが実態だと思っています。

 一方で、マイナンバーの場合、ある意味では行政的なものが多いかと思いますが、その場合でも、今回、税務なんかで、民間でマイナンバーを管理する場面が多数出てまいりますので、そういった場合の保険が成り立つのかというのも検討してまいりたいというふうに思います。

小沢(鋭)委員 ぜひ御検討ください。

 日本が輸出を伸ばそうとしたときに、貿易の輸出保険というのをつくりましたよ。やはりそれは、そういう話がベースにあるという話があって私はいいと思っていますので、ぜひ御検討いただきたい。

 それから、マイナンバーの準備状況をお尋ねするんですけれども、二〇一七年七月をめどに国と自治体の情報システムが結ばれて、やれるようになる、こういう話になっていますが、巷間、何か準備がおくれているんじゃないか、こう言われていますが、どうでしょうか。

向井政府参考人 お答えいたします。

 そういうシステムの整備につきまして、比較的余裕を持って日程を設定いたしまして、それで進めてまいったところでございますけれども、当初の予定に比べますと、現時点で三、四カ月のおくれが生じている部分がございます。

 ただ、それはこれまでの全体の進みぐあいから考えまして、十分に間に合うものというふうに考えております。

小沢(鋭)委員 それは、国と地方、両方のシステムですか。あるいは、地方は例えば間に合わないということが起こり得るのではないですか。

 住基ネットのときもそうだったと思いますが、中央の方のシステムはかなり順調にいったけれども、地方ができなくてつながらない、こういう話で待った記憶があるような気がしますけれども、いかがですか。

向井政府参考人 先ほどおくれたという部分は、いわゆる中間サーバーと称される部分でございますけれども、もちろん、地方それぞれ、地方公共団体は多数ございますので、仮に一部の地方がおくれたとしても、情報をネットワークでやりとりする場合に、手入力で情報のやりとりができる機能もついておりまして、そういう意味では、一部のものがおくれたからといって全く全てが稼働しなくなるというわけではなくて、仮に一部のものがおくれても大半は稼働するようなシステム設計になっているところでございます。

小沢(鋭)委員 全部一〇〇%パーフェクトにできればもちろんいいんだけれども、そこまでは言わないけれども、例えば中央のシステムはできているけれども地方がだめでしたという話のときには、問題は、維持コストはそのままかかるんですよね、中央のシステムの。そういった維持コストみたいな話というのはどうなりますかね。

向井政府参考人 お答えいたします。

 維持コストにつきましては、情報提供ネットワークシステムという、いわゆる情報をやりとりする中央のシステムにつきましては、恐らく年間数十億円の単位で費用がかかるだろうと考えております。

 それはもちろん、地方がつながろうがつながるまいがかかるというのは御指摘のとおりでございますけれども、先ほど申しましたように、仮に一部の市町村がつながらなくても大半のものは動くものでございますので、そういう意味では決して無駄にならないというのと、あと、やはり、特に心配されるものは小規模な市町村だと思われるんですが、小規模な市町村につきましては情報連携する規模も極めて少ないので、そういう意味では、当初、もし仮におくれたとしても、支障がないように運用してまいりたいというふうに思います。

小沢(鋭)委員 繰り返しになりますが、一〇〇%うまくやれというところまで僕は言いませんけれども、なかなか地方がうまくいっていないんだったらいないで、そろそろちゃんとその辺の話は情報公開しておいた方がいいかもしれませんよ。ですから、もうちょっとたって、やはりだめでしたという話にならないようにしていただければ、こういうふうに思います。

 それから、きょう、民主党の古本委員から質疑がありましたけれども、このマイナンバーをやっていこうという話のときの出発点で、私も全く古本委員と同じ思いでして、消費税における手当てとしていわゆる給付つき税額控除をやっていかなきゃいけないね、こういう話があって、そのためには、まさに所得の正確な捕捉が必要で、課税環境の整備が必要ですね、こういう話から実は出発したというふうに私なんかも記憶しているんですね。

 ところが、きょうの朝の話を聞いていても、そういう話がほとんど今出ていない、こういうことなんですが、このマイナンバー制度を活用した課税環境の整備、こういう話を、財務省は今どのような対応をされていますか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 今、小沢先生から御指摘がございました給付つき税額控除の関係でございますが、これは社保・税一体改革の中の税制抜本改革法の七条の中に規定がございまして、低所得者への配慮として、給付つき税額控除と複数税率、いわゆる軽減税率がともに検討課題とされているところでございます。その中で、給付つき税額控除につきましては、番号制度の本格的な稼働及び定着を前提に、「所得の把握、資産の把握の問題、執行面での対応の可能性等を含め様々な角度から総合的に検討する。」とされているところでございます。

 現在、与党におきましては、この関連では、軽減税率制度の検討を進めているところでございまして、政府といたしましては、まずは与党における検討を踏まえるべきものと考えておりまして、引き続き与党の議論を見守ってまいりたいと考えております。

 ただ、マイナンバー制度の導入に伴いまして、例えば法定調書等に番号が記載されることにより、現状と比べて所得の把握が効率化するという一方で、マイナンバー導入後も、例えば国外所得ですとか、マイナンバーが付されていない預貯金口座の存在など、所得、資産の把握に一定の限界は残るものと考えておりまして、こういうことも含めまして、今後とも議論をしていきたいと思っております。

小沢(鋭)委員 政府は、与党の議論を飛び越えて何かやっている、こういう話は当然答弁できないのはわかりますから、今の答弁でやむを得ないのかな、こう思いますけれども、いずれ必ず、いわゆる課税環境の整備、こういう話の中で出てくる話だ、こう私は思っています。給付つき税額控除をやるかやらないかは別にして、いわゆる課税環境の整備、こういう話でマイナンバー制度が活用されるという話は、もうこれはIT社会にとっては当たり前の話です。そんなもの、みんな、所得を捕捉されて窮屈でたまらない、こういう意見がありますけれども、そんなことを恐れていたらIT社会が進まないということですよ。

 我々政治家はもう既に全部公開していますからね。資産公開もしているし、所得も公開しているからいいんですけれども、そういう社会にしていくんですよ。

 ですから、そこのところは、選択制という話ですけれども、よっぽどメリットがないと、選択制なんて進まないですよ。そうでしょう。みんな、確かに、自分の所得を全部捕捉されちゃうことになったら、気分悪いな、こう思いますよ。みずから進んで付番なんかしませんよ。だから、メリットをどう考えるかという話をしっかり考えていただいて、そういう人たちも進んでやっていくという話にしないといけないし。

 もう一点、済みません、最後に。

 付番の話もそうですけれども、ほかの話も、本当に、リスクをとりながら、だけれども利便性をとっていく、こういう話があってもいいと思っていますから、そういう選択制の話の自由度を高めて、メリットを与えて、そして、やるからには徹底的に活用する、そういう話で臨んでいただきたいと思います。

 終わります。

井上委員長 次に、高井崇志君。

高井委員 きょうがいよいよもう最後の質疑ということで、私は、この個人情報保護法については、法案審議で四回質問に立たせていただきました。あと、その前の一般質疑、それから予算委員会ではほかに三回、計七回、山口大臣にはかなり細かいことまでお聞きをいたしまして、きょうが最後でございますので、締めくくりでお聞きをしたいと思います。

 まず最初に、先週、五月十五日の私の質問に対して、山口大臣から、二十五条、第三者提供の記録義務のところでありますけれども、本人同意のある場合は二十五条の規定の対象外じゃないかというように受け取れる趣旨の御答弁があったと思うんですけれども、ちょっと、それはその発言の趣旨のとおりでいいのかどうか、もう一度確認させてください。

山口国務大臣 御指摘いただきました答弁については、時間の関係でかなりはしょってお話を申し上げたので、若干、趣旨がわかりにくかったのではないかなと思います。

 公的な立場にある方々のリストの中から名前等を第三者に提供するときの記録の作成義務に関する考え方を申し上げたものでございまして、若干お話をさせていただきますと、まず、御指摘の本人同意の場合は記録作成義務の対象外というふうなことについては、公的な立場の方々の名簿は市販をされていることがあります。しかし、これらの取り扱いについては、今回の法律におきまして、市販の名簿等、これは本人の同意などがある上に、利用方法から見て個人の権利利益を害するおそれが少ないというふうなことから、個人情報データベース等の定義から除外をするというふうにしておりますので、そもそも法規制の対象から除外をされるというふうな考え方を申し上げたものでございます。

 さらに、先日の答弁でありますが、公的な立場の方々の名簿であっても市販されていない場合の取り扱いにつきましては、個人情報データベース等から除外をされずに、記録の作成義務の対象となる場合がございます。そのために、事業者への負担に関する懸念も踏まえまして、規則の策定に当たっては、事業者の御意見というのも丁寧に聴取をさせていただきながら対応することが必要であろうというふうなことで申し上げたわけでございます。

高井委員 私の質問も、長田さんという参考人、地域婦人連合会の事務局次長さんで、その長田さんの通称地婦連と呼んでいるところに、誰かから会長の名前あるいは住所を教えてくださいと言われたときにどうなるのかという例で、ちょっとわかりにくくしてしまったので、もっと単純化して。

 午前中に緒方委員も同じような質問をしましたけれども、私も思っているのは、八百屋さん、一人でやっている八百屋さんが、顧客名簿というほどのものでもないでしょう、自分の携帯電話の中にお客さんの名前が何人か入っていて、それで、隣の魚屋さんが、あれ、いつも買いに来ているのは高井さんですよね、私も高井さんをよく知っているんですよ、だけれども連絡先を知らないので、あなたは連絡先を知っているかと言われて、ああ、知っておる、知っておると。ここでいきなり教えてしまうと、本人同意をとっていませんから、私に確認するなり、あるいは私が八百屋に行ったときに、高井さん、隣の魚屋さんが連絡先を教えてほしいと言っているんだけれども教えていいかな、いいですよと同意するわけです。

 同意した、それで教える、よくあることというか、何の問題もないと思いますが、しかし、この二十五条を法文上解釈すると、一件教えただけでも記録を残さなければならないというふうに読めるんですが、そういうケースについてはできるだけ政省令で緩和しましょうと向井審議官は答弁していただいていますが、本当にそれはどうやって、どういう政省令で今言ったようなケースが除かれるのか、何度も聞いていますけれども、もう一度明確にお答えください。

向井政府参考人 お答えいたします。

 高井先生とのやりとりの間にもいろいろ考えたりいたしますが、やり方は何通りかあるのかなと思います。

 今おっしゃられた例の場合、例えば本人から八百屋さんが委託を受けて教えたというふうにもとれますので、そういう解釈で、そもそも第三者提供でないというふうな言い方もできるのかなと。

 そうでなくて、例えば八百屋さんがもしそうなったら教えますよというのを事前に本当にとっていたとするならば、そういう個々の場合に、では、こういうものを本当にトレースする必要が法の趣旨から見てあるのかという解釈論で、こういうものは法の趣旨から見て必要ないというふうな規則のつくり方も考えられますし、やや法文を逸脱するというのであるならば、こういう顧客名簿をつくっているけれども、同意をとっているということは、多分、一部の人じゃなくてみんなの同意をとっているわけでしょうから、こういうことをしているというふうなことだけ、事実のみを書くというふうな最も簡易な方法もあり得るのかなというふうに考えます。

高井委員 この問題は何度も聞いて、実は私だけじゃなくて、泉委員や、あるいは与党の高木委員や輿水委員も聞かれましたし、あと、午前中、緒方委員も聞かれた。そして、もともとパーソナルデータ検討会に参加していた法学者の先生たちも非常に心配をしている。

 個人データベース等としておけばよかったのが個人データになったことによってこういう心配が起こるのではないかという懸念がありますので、これはもうこれ以上聞きません、ぜひ大臣も明確に御認識いただいて、しっかりそういった例は、さすがに一件一件記録を、たった一件ですよ、年間何件もあるのなら、それは地婦連がこういう場合がありますとかいう規定を置いておくみたいな答弁もされましたけれども、八百屋さんが一件教えるということまで記録をとるというのは明らかにおかしいと思いますので、ぜひ、そこは政省令、私もどうやって規定するのか難しいと思うんですけれども、しっかりと考えていただきたいと思います。

 それでは、次の質問です。四十条の個人情報保護委員会の立入検査についてお伺いします。

 委員会は、施行に必要な限度において立入検査などの権限を持つというふうに今回規定されています。では、この規定の施行に必要な限度とはどのような基準なのか。

 個人情報保護委員会が濫用的に立ち入ったり、あるいはその他の調査権限の行使をすることに対しては、やはり一定の歯どめが必要だと思います。表現の自由とか学問の自由を妨げてはならないという規定はあるんですが、そのほかにも、事業者の正当な事業活動を不当に妨げてはならないというような歯どめ策が必要だと考えますけれども、いかがでしょうか。

向井政府参考人 お答えいたします。

 具体的にどういうふうなことを指しているのかという場合、通常、このような規定の施行に必要な限度においてというのは、立入検査権限を規定している部分には大体みんな入っておりますが、基本的には、まず、個人情報委員会は、事業者から任意に話を聞く等、事実関係を精査し、必要に応じて報告徴収を行うこととなるということになろうかと思います。この報告徴収のみでは正確な事実関係の把握や必要な資料の収集が困難な場合等に立入検査を行うことを想定している。他のそのような規定のあるような委員会で現に行われているのも、通常そういうふうになっているところでございます。

 実際の運用においては、御指摘のような濫用的な権限行使を行わないよう適切に対応してまいりたいと思っておりますが、当然、御指摘のような、正当な活動を不当に妨げるようなこともあってはならないものでありまして、この点につきましてもしっかり留意してまいりたいと考えております。

高井委員 似たような委員会として公取、公正取引委員会もあるわけですけれども、やはり、なかなか事業者の立場とすると、非常に、不当なとまで言うと言い過ぎかもしれませんけれども、事業活動の妨げになるような例もあるようでございますので、やはりその辺うまくバランスをとっていただきたいと思います。

 それでは、第二十四条、これも以前聞いたんですけれども、「外国にある第三者への提供の制限」というところで、今、この条文を見ると、原則、外国にある第三者への個人情報の提供は委託も含めて規制されていると読めます。しかし、私の過去の質問で向井審議官からは、本条文はデータ保護主義をとるものではないという趣旨の御答弁をいただいています。

 そうすると、法文上は、文言は厳しいものとなっていますが、運用においては、情報の安全が確保されている限り、事実上、海外への個人情報移転は委託も含めて制限されないという理解でよろしいんでしょうか。本条文は、情報の自由な流通を妨げることにならないかという非常に大きな関心がありますので、改めて質問させていただきます。

 加えて、国境を越えるデータ流通の国際的枠組みとしては、我が国も支持をして参加しておりますAPECのCBPRという枠組みがございますが、これもかつてお聞きしましたけれども、改めて、この枠組みにのっとっていれば今回のこの二十四条による情報の移転の制限ということはされない、そういう理解でよろしいんでしょうか。

向井政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の二十四条につきましては、私も直接にアメリカの在日商工会議所等から厳しく指摘を受けて、お答えしたところでございます。

 要するに、だめだと書きつつ、抜いてあるところが結構広うございますので、現実問題としてそういうふうな保護主義には当たらない。端的に申し上げますと、提供先の第三者が我が国の個人情報取扱事業者と同様の措置をとっていればよいということでございますし、そういうふうな契約が通常なされておりますので、現状、そういうふうにしてやられるところには何ら問題がないということでございますし、そういう御説明をすると外国の方も納得されるというようなことだと思っております。

 さらに、御指摘のAPECのCBPR制度に基づく認証を受けていることが確認された場合も、当然のことながらこういう基準に該当するというふうに考えております。

高井委員 APECのCBPRという枠組み、制度は、今、アメリカ、メキシコ、日本が入っていて、四月からカナダが参加するという枠組みで、これからいろいろなルールづくりをしていくということで、参加国もまだ少ないということもあって、我が国が主導的な立場をとり得る、積極的に参加をしていけば、この個人情報保護の分野でも主導権がとれる仕組みではないかと思いますので、ぜひこれは、大臣にもちょっと御認識をいただきまして、この仕組みへの積極的な参加というのをお願いしておきたいと思います。

 それでは、二十四条に同じく定めてありますけれども、「又は」以下のところで、個人データの取り扱いについては、「個人情報取扱事業者が講ずべきこととされている措置に相当する措置を継続的に講ずるため」と、「相当する措置」という表現がありますが、この「相当する」が相当重いと、これは外国への、国境を越えるデータの流通が進まないという懸念があります。

 外国にある第三者に対して記録の作成義務、二十五条の義務も含めて、さまざまな義務を課すことになるのは過重ではないか、過剰規制ではないかと思いますが、いかがでしょうか。

 あわせて、外国のクラウドを利用する、そういうときにも本規定は対象になるんでしょうか。

向井政府参考人 お答えいたします。

 まず、クラウドにつきましても当然適用にはなりますが、こういう場合、大抵、業務委託の形態をとろうかと思っております。

 業務委託により個人データを受け渡しする場合につきましては、提供先の事業者が、我が国の個人情報保護法に基づくものと同様の措置を講ずる体制を整備している場合等につきましては、業務委託先は、国内の事業者と同様、業務委託でございますので第三者に該当しない、そういうことになりますので、したがって、記録作成義務はかからないというふうになります。

 そうでない場合につきましては、第三者に当たりますので、記録作成義務はかかってくるというふうにはなろうかと思っております。

 ただ、いずれにいたしましても、記録作成義務そのものにつきましては、当然のことながら、従来からも質疑の中で明らかにしておりますように、できるだけ常識的と申しますか、事業の妨げにならないような簡素なものにはしてまいりたいというふうに考えております。

高井委員 今の御答弁でもうあるのかもしれませんけれども、同じように外国に、業務委託における個人データの受け渡しの記録作成義務というのも過剰規制ではないか、委員会規則で定める記録事項はできるだけ簡素化すべきではないかと思いますけれども、今の御答弁と一緒ですか。

向井政府参考人 お答えいたします。

 業務委託につきましては、ちょっと先に答弁させていただきました。

 業務委託でない場合につきましては、記録作成義務は当然かかるわけでございますけれども、そこは、国内外同様に、過剰なものにならないように気をつけてまいりたい、このように思います。

高井委員 るる、もう何十分も、何時間も、この個人情報保護をお聞きしてまいりましたけれども、実は、マイナンバーという非常に重要なテーマもあって、私も大変関心を持っております。ただ、今回の改正の点というよりも、マイナンバー全体のことなので、また、いろいろな機会でマイナンバーについては引き続きずっと聞いていきたいと思いますが、最後に一問だけ。

 最も今関心を持っていますのは、国民への周知も足りないんじゃないかという議論が随分ありましたけれども、私は、もっと深刻なのは、民間企業、特に中小零細事業者に対する周知が全然足りないんじゃないかなと思います。

 アンケート調査なんかでも、二割ぐらいしかマイナンバーの対応はしていない。あとの八割の方は、そのうちの多くは、マイナンバーそのものも知らない、あるいは、マイナンバーという名前は知っているけれども、制度の中身は知らない、そして、自分の会社が何をやるかなんてましてや知らないという方が多うございます。

 そのときに、やはり中小零細企業の方が一番頼るのは、税理士とか社会保険労務士、こういった方々だと思います。しかし、この身近に、真っ先に頼るべき税理士とか社会保険労務士も余りわかっていないというのが私の実感です。

 政府は、いろいろやっているとはおっしゃいますけれども、しかし、逆に言えば、この税理士さんとか社労士さんにしっかりここを知っておいていただければ、その方々が中小零細企業にしっかりアドバイスしていただくわけですから、こういった部分を、今後、士業の方々にどのような周知、広報を計画していくのか。

 それから、もう今年度予算は予算額が決まっているでしょうけれども、これは来年の一月だけで終わる話じゃないです、その後もずっと続いていきますから、来年度予算要求では、ぜひここの部分をもっと、この間政府から説明を聞いたんですけれども、まだまだ不十分だと思うので、もっと要求をして、その対策をしっかり行うべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。

向井政府参考人 税理士、社労士が重要であるというお考えは全くそのとおりだと思いますし、実際、末端の税理士、社労士がちゃんと理解されているかというところについても、まだまだ不十分だと思っております。

 やはりこれは、基本的には、国税局なり税務署と連携しながら、税理士会とも連携して、どんどん説明できる人間をふやしていくことが非常に大事だと思っておりまして、これからそういうことを必死になってやっていきたいと思っております。

 それから、予算要求につきましては、広報予算も幾らあっても足りるというものではないものですから、来年度につきましてもぜひ確保できるよう概算要求してまいりたいと考えております。

高井委員 恐らく税理士とか社労士の上部団体には説明をし、そこから各ブロックごとにやったりはしているんですけれども、本当に末端のというか現場の方々、それからあと、年配の方々は、わしはそんなマイナンバーなんか知らぬでという社労士の方が結構多くて、やはりそういったきめ細かい対応をしていかないと、これは上部団体に言ったから大丈夫だよという問題ではないと思いますので、ぜひしっかりと対応いただきたいと思います。

 本当にこれで終わるんですけれども、大臣におかれましては、ぜひ、もう私、七回質問させていただきましたけれども、基本的にはマルチステークホルダー、関係者の声をしっかり聞いていただいて、やはり政省令に委任されている項目は非常に多うございます。きょうの午前中の緒方委員の質問で、政令はすぐにも着手するということでございますので、ぜひ、事務局の皆さんはお疲れだと思いますけれども、しかし、すぐにでも取りかかっていただいて、そして、とにかく事業者、関係者の意見をしっかりと聞いていただくということを最後にお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

井上委員長 次に、足立康史君。

足立委員 維新の党の足立康史でございます。

 ふだんは厚生労働委員会等で仕事をさせていただいていますが、本日は、重要なマイナンバー等に係る、個人情報に係る議論ですので、若干お時間を頂戴して質問させていただきます。

 今申し上げたような立場ですので、社会保障の中でも医療に特に焦点を当てて御質問を申し上げたいと思います。

 厚生労働委員会でももちろん取り上げたこともあるんですが、今もう厚生労働委員会、派遣法でひっくり返っていまして、とても冷静な議論ができる雰囲気じゃありませんので、こういう大事な話は内閣委員会でと。田村筆頭理事もいらっしゃいますので、余り関係ないかもしれませんが、よろしくお願いします。

 まず、医療に入る前に、医療と番号制度ということを考えるときに、私はいつも医療制度を考えるときには国際的な、アメリカの医療はこうなっていて、ヨーロッパの医療はこうなっていてということを当然踏まえてやります。

 医療分野についてですけれども、相当日本はハイブリッドというか、アメリカとヨーロッパと比べると、そのどちらでもない、むしろその中間に位置する、私は中間という言い方は余り好きじゃないんですが、そのいいところをあわせ持つような制度である、こう思っているわけです。

 そういう国際的な視点で見ると、個人情報の利活用とプライバシーの関係、これは大議論になるわけですが、個人情報の利活用とプライバシーをどういうふうにバランスをとっていくのかということが、立法政策としても、あるいはエンフォースメントに当たっても大変重要なわけです。

 今回のこの法案とか、あるいは政府が今進めてきている個人情報保護、そしてマイナンバーの問題、取り組み、これは国際的にはどの辺に、国際的に何かフレームがあって、大体、アメリカはこう、ヨーロッパはこう、だから日本はしかしこうだというようなことが言えるのか。医療は言えるんですけれども、番号制度はいかがでしょうかということで、これは事務方でも結構ですので、御紹介ください。

山口国務大臣 ただいま御指摘いただきました個人情報、この取り扱いに関する国際的な動向というか位置づけということでございますが、これは、先進諸国が加盟をしておりますOECDで採択をされておるOECDプライバシーガイドラインというのがありますが、これは我が国を含めた加盟各国の基本的な考え方となっておるところであります。このガイドラインにおきまして、保護とともに利活用を目的とした、国際的に自由な国際データの流通への配慮についても規定をされておるところでございます。これは、一九八〇年に採択をされたわけであります。

 さらに、昨今の欧米における個人情報やプライバシーに関する見直しの動きにつきましても、比較的保護寄りと評価をされておりますEUにおきましても、現在検討中のEUデータ保護規則案の目的の中には、やはり個人データ処理に関する個人の保護及び個人データの自由な移動に関連をしたルールを定めたものというふうに、保護と利活用の両面がそれぞれ明記をされております。

 また、よく例えで出されるんですが、米国でありますが、二〇一二年に発表されたプライバシー権利章典、これを法制化する法案が実は本年の二月にアメリカの議会に提出をされております。これはもう先生も御案内と思いますが、そもそも米国にあっては、実は個人情報の自由な流通を前提とした法体系になっておりまして、そのような中での保護に関する規定の整備というふうなことで、もともと自由な利活用というのがベースにあるというふうに考えておるところでございます。

 我が国の今回の法律につきましては、このような諸外国の制度とか運用実態を参考としながら、ハイブリッドとは言いませんが、我が国の実情に即して検討してきたものでございまして、保護と利活用のバランスというふうな世界の潮流の中で、最適といいますか最善の制度ではないかなと思っておるところでございます。

足立委員 ありがとうございます。よくわかりました。

 私も、手前みそながら、政治に転身する前は役所におりまして、駐在でブラッセルにおったこともあります。当時、そういうことで、EUのいろいろ、産業政策もそうですが、知財とかもやっていましたので、プライバシーに関しても若干触れたことがありました。

 今大臣が御紹介くださったEU、そしてアメリカの話、非常に興味深いというか、この委員会でもう既に何度も議論されていることかもしれませんので、これはさらっと終わりますが。

 ただ、申し上げたいことは、EUは相当そこに、プライバシーを守るということ自体が大目的としてあって、その中で体系が精緻につくられてきている経緯も歴史も非常にあるわけですが、アメリカは、どちらかというと、競争政策と言っていいかどうか、ちょっと厳密にはわかりませんが、ビジネスの利活用を前提として、ではプライバシーはということになっている。そこのたてつけが全く違うわけでありまして、その中で我々は、当然プライバシーにも配慮せないかぬけれども、利活用をしっかり進めていく。

 特に、私はきょう、医療を取り上げさせていただきますが、社会保障、医療の分野で利活用していくということは、単にビジネスの振興にかかわらず、社会保障を存立させていく上でも極めてクリティカルな、重要なテーマだ、こう思っている次第であります。

 したがって、余り、ヨーロッパはこうだからこうだということだけではなくて、やはりバランスに御留意いただきたいと思うし、私自身は、ビジネスはアメリカと競争しているわけでありますから、遜色のない活動がビジネスサイドでできるような枠組みをしっかり整えていく必要がある、こう思っている次第であります。

 ここからちょっと、真ん中しばらく、厚生労働省の方にもおいでいただいていますので、大臣にはまたちょっと時間を置いて御質問させていただきます。

 今申し上げたように、私は先ほど、日本の医療はハイブリッドだ、こう申し上げました。内閣委員会の皆様には余りなじみがないかもしれませんが、ヨーロッパは、要すれば、医療を考えるときに、そのお金は誰が出しているんだ、医療財政は誰がそれを負担しているんだという観点と、医療サービスは誰が提供しているんだ、こういう二つの観点があって、ヨーロッパは両方とも公がやっている、アメリカは両方とも民がやっている。日本は、皆保険ですから、お金のところ、財政のところは公がやっているけれども、主たる医療のサービスの担い手は民であるということで、準市場という言い方もされますが、非常にハイブリッドな制度を日本は持っているわけであります。

 私は、これは、こういう医療分野における個人情報、まあ特定個人情報と言った方がいいかもしれませんが、医療分野において個人情報を匿名化しながらしっかりと使っていくことは、むしろ日本は非常にそのポテンシャル、可能性はヨーロッパよりもアメリカよりも大きい、こう思っているわけですが、もし御見識、御見解があられましたら御紹介ください。

安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生から御指摘をいただきましたとおり、我が国の医療制度におきましては、医療サービスを提供する医療機関の多くは民間となっているとともに、医療保険制度については国民皆保険を堅持しているという状況にございます。

 こういった実情に応じまして、医療情報の利活用の推進に取り組んでございます。例えば、国では、保険者から吸い上げましたレセプト情報の全国規模のデータベースを活用した分析、研究を行っておりますし、また、医療保険者におきましては、データに基づく保健事業を推進するということにしております。

 一方、民間につきましては、地域医療連携ネットワーク、医療機関間の情報の共有といったことを進めるための地域医療連携ネットワークが二〇一四年時点で約二百件、全国で二百件になってきています。これは二〇一一年ごろから急激にふえておりまして、今後もますますふえていくんじゃないかと思います。そういったことで、民間におきましても極めてダイナミックに医療情報の共有、連携といったものが行われているという状況にございます。

 先生に御指摘をいただきましたように、官民の大変力になるような連携を志向しまして、今後とも進めてまいりたいと存じます。

足立委員 今御紹介いただいたような取り組みは、私も厚生労働委員会におりますので十分承知をしていますが、私が特に申し上げたかったのは、例えば皆保険制度。医療分野で情報化をいろいろ頑張っています、これはまあいいんですが、今問題になっているのはマイナンバー等々でありまして、せっかく日本は皆保険制度を持っているわけであります。皆保険制度を持っていないところで大規模なそういう情報を集めるということは容易ではありません。ところが、日本は、公的な皆保険制度を持っているわけでありますから、これをうまく使えば世界のどの国もまねができないような情報の利活用ができる、私はそう期待している。

 一方で、提供体制は、民間がサービスをやっていますから、そこのところをうまく制度設計さえすれば、民間がそのインフラ、番号制度というインフラの上にさまざまなビジネスチャンスを見出して、民間の病院、民間の医療機関が取り組んでいく、そういう絵姿が理想だ、私はこう思っているわけであります。

 そういう観点で見ると、今回の法案は、一歩前進だと思うけれども、何でこんなに時間がかかるかなと思ってしまうわけであります。例えば、メタボ健診とか予防接種とか、今回番号制度を使っていろいろやりましょうというふうに決まっている問題は私には非常に限定的に見えるんですね。もっとどんとやろうじゃないか、こう思うわけです。

 なぜ今回、これとこれ、まあこれとこれと言っては、幾つもあるのかもしれませんが、例えば予防接種とか特定健診とか、そういうことに何か限定されているように私には見えますが、これはどう限定され、それはなぜなのか、なぜそこで限定せざるを得ないのか、ぜひちょっと御答弁ください。

安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、私どもは、医療関係者あるいは保険者、有識者等と研究会を開催しております。その中で議論しておりますのは、今回の法改正にとどまらない内容でございます。

 昨年十二月に中間取りまとめを行ってございますけれども、まず、マイナンバー法で対応可能な範囲、これは行政機関等の行政事務にマイナンバーを使う、あるいは情報連携にマイナンバーを使うということでございますけれども、そういった縛りのある中で対応できるものとして、自治体間の予防接種履歴、あるいは医療保険者における健診情報の管理ということがございました。これが第一のステップと考えています。

 次のステップとして、先生から大変適切な御指摘をいただきましたが、国民皆保険がございますので、このマイナンバー制度のインフラを活用いたしまして、オンラインでの医療保険の被保険者資格を確認する仕組み、これを具体化していきたいと考えてございます。

 こうすることによって、医療保険者と医療機関の情報のやりとりができる基盤ができ上がります。この基盤を使うことによりまして、医療機関あるいは研究機関が情報の管理やらあるいは連携に用いることもできます医療分野の番号の仕組みといったものを検討していきたいというふうに考えてございます。

 以上の事柄につきまして、現在研究会の中間取りまとめの方でまとまってございますので、それを踏まえて今後取り組んでいきたいと考えてございます。

足立委員 ありがとうございます。

 今御紹介いただいた厚生労働省の研究会ですね、今御紹介があったように、昨年末ですか、中間取りまとめをされて、これは、最終報告はいつごろですか。

安藤政府参考人 申しわけございませんが、この問題、まだまだ検討しなければいけないことが多うございますので、最終報告というものにつきましてはまだ決定をされていないという状況でございます。

足立委員 ぜひ、期限を切ってというか、繰り返しになりますが、ちょっと遅いなと。遅いなというのは、別に私がビジネスしたいから遅いなと言っているわけじゃなくて、田村さんがいらっしゃいますが、日本の医療の現状、社会保障の現状を考えると、もう一刻を争うわけでありまして、別に、それが研究会でまとまったらすぐできるならまだいいですけれども、そうでもないわけですから、検討会ぐらいは期限を決めて早くまとめていただきたい、こう思っているわけであります。

 これはいわゆる医療等IDに係る議論ということですが、期限を切れない、何が難しいんですか。

安藤政府参考人 行政機関が使う番号ではございません。あくまでも民間でございます医療機関あるいは研究機関が使うものでございますので、使っていただく方の御納得が十分にいただけるような議論をしていかなければいけないと考えております。

 そういった意味におきまして、安易に期限を切って決断を迫るということはまだ時期尚早かなと考えております。

足立委員 内閣委員会ですから、余り変なところに行ってもいかぬのですが、ただ、これは大変大事な問題だと思っていまして、きょうは私は内閣委員会に来させていただいて、あえてこういう問題を取り上げているのは、厚生労働委員会は、厚生労働委員会のマインド、ずっとそこにいらっしゃるから、それが普通だと。田村さんだけは別ですけれども。そういう雰囲気があるんです。

 ここで、医師会、医師会と言ってもいけませんが、例えば三師会なんかは、マイナンバーと異なる医療IDが必要だと主張されているわけでありまして、大臣、私はそんなものは要らぬと思っています。だって、そんなもの、別の番号なんということじゃなくて、それは、マイナンバーがあって、それを、見えない符号というんですか、そういういろいろな技術的な処理をしていけば十分一定の枠組みがつくれるわけでありますから。

 それを逆に、医療等IDのような形で、マイナンバーとは異なる医療等IDをつくるなんということは、この制度運用に当たっては混乱のもとでしかない、要は百害あって一利なしだと私は思っていますが、大臣、いかがでしょうか。そこはぜひ率直な御答弁をいただければと思います。

山口国務大臣 大変ありがたいお話をいただきました。

 先ほど厚労省の方からも答弁がございましたとおりで、昨年五月から十二月にかけて開催をしました医療等分野における番号制度の活用等に関する研究会、ここにおいて、医師会などがマイナンバーとは異なる医療IDが必要というふうなことを御主張なさっておられるということは聞いております。

 その理由としては、医療情報とマイナンバーが結びつくことで情報漏えいのリスクが安易に高まるのではないかとか、あるいは患者のプライバシーが守れないのではないかとか、そういった懸念を表明なさっておられるわけでありますが、マイナンバーと医療IDのどちらを利用することがプライバシーの保護とかあるいは費用負担等の観点から本当に望ましいのか。これは、技術的対応の方法も含めて厚労省の方も検討しておると思いますけれども、いずれにしても、幅広い観点でしっかり検討していただきたいと思っております。

足立委員 御答弁ありがとうございます。

 ただ、私がここであえて御質問を申し上げているのは、私はわからないんですね。要は、今大臣も、医師会はこう言っているということは承知している、こう御答弁くださったわけですが、私もそれは承知はしていますが、理解はできないんです。だから、IT担当大臣というか、法案担当の山口大臣はそれは理解できますかというのは僣越な質問なんですけれども。

 医師会が、情報の漏えいだとかこういうことがあると言っている、しかし、マイナンバーとは異なる医療IDをつくる、言葉のあやみたいなものもあるんですけれども、少なくともそうおっしゃっている。

 私は、マイナンバーと異なる番号体系を別途つくるということに、何ら合理的理由を論理的に導き出せないんですけれども、内閣官房というか、山口大臣あるいは事務方でも結構です、ちょっと細かい話かもしれませんけれども、私はわからないんですけれども、そこを御教示いただければ。もしあれば、教えてください。

山口国務大臣 なかなか言いにくい部分もあるんですが、例えば、マイナンバーの議論のときに、かつて住基ネットをやったじゃないか、これとの関係がどうなんだという御批判も実はございました。そして、先ほど申し上げましたように、さまざまな懸念が出ておりますけれども、それぞれにしっかり私どもとしてはちゃんと御説明をして、御理解をいただけるのではないかなというふうには思っております。

向井政府参考人 お答えいたします。

 医師会が主張しておりますのは、マイナンバーそのものを医療現場で使わない、医療現場というのは病院とか診療所で使わないということを主張している。別の体系の番号をつくれとまでは主張しておりませんし、私も実際日医とも交渉しておりまして、そういうふうな感触は出ておりません。

 したがいまして、一番大事なことは、医療IDであれ何であれ、マイナンバーとそれがひもづいていて個人を特定することが一番必要でございまして、日本で個人を特定できるような手段というのは住基かあるいは戸籍しかないだろう、したがいまして、本人を特定するようなIDというのは必ず住基あるいはマイナンバーとひもづける必要があり、それさえ確保されていれば、あとはむしろソリューションの問題ではないかというふうに考えております。

 したがいまして、医療IDといっても、マイナンバー制度でも情報のやりとりそのものは見えない符号でやっておりますから、医療におきましても当然、マイナンバー制度にのっとったと仮に仮定しましても、別の符号で情報はやりとりすることになる。

 そうなると、何が問題かと申しますと、医療機関でどうしても見える番号が欲しいといった場合に何を書くのかということだけが多分問題になるんだろう。それ以外のデータベースは全部見えない符号で管理すれば、あとは匿名化でも何でもできますので。

 そうすると、医療機関で持ちます見える番号というのは、マイナンバーでやる手もありますけれども、必ずしもそれにこだわることなく、例えば、保険証の記号、番号等に枝番をつけて本人を特定する場合も考えられますし、どうしても別の番号を別途振り出したいというのであれば、費用の観点はありますけれども、それも可能ではないかと考えます。

足立委員 全くおっしゃるとおりで、だから、健康保険証にも番号を、それにちょっと付記してということ。要は、本人認証がちゃんとできればいいわけですから。

 すると、大臣もしっかりと御説明をすれば御理解いただけるとお考えだということですが、今、向井審議官がおっしゃっていただいたのは、医師会はそれは理解しているんですか、していないんですか。

向井政府参考人 日本医師会の方でもこの制度の勉強会を始めておりまして、もう既に三回ですか、行いまして、かなりの検討が進んでおりまして、恐らく理解されているものと期待しております。

足立委員 安心しました。まだ期待ですから、本当に理解されているかどうかはあれですが。

 今の話の関連で、健康保険証の問題もありますね。去年三師会が発表されたものを見ると、個人番号カードへの健康保険証の機能の取り込みについて、医師会等は反対だ、こう言っているわけですが、これも、今の関連でいくと、そうか、別の番号、健康保険証、健康保険の番号を使ってどうのこうの、まあ、それでも取り込んだらいいよね。取り込んだらいいと思うんですけれども、医師会はやはりだめですか。

向井政府参考人 日本医師会が、マイナンバーカード、個人番号カードを保険証の機能として使うということにつきましては、去年から反対ということを言っております。

 その理由といたしまして、私がお聞きしておりますのは、医療現場で、例えば、間違えてコピーしたり、そういうことが起こるのではないかとか、番号を書くのではないかとかいうふうなことをおっしゃっておって、それで、そういう容易に所得情報とひもづくようなマイナンバーを医療現場に持ち込むのはというふうにおっしゃっておるんですけれども、これは、先ほどの医療IDよりもさらにちょっと理解が難しくて、マイナンバーを使ったから容易に所得情報と結びつくこともありませんし、ましてや診療機関がわざわざ禁止されている番号を付記するとも考えられませんので、そこのところはそういうふうなことをるる申し上げてきました。

 それで、最近のやりとりでは少しは理解が進んだのかなという感じでございますが、今後とも、厚労省とともに日本医師会と議論してまいりたいというふうに考えております。

足立委員 私は、どうもはたから見ていると若干スピードが遅いんじゃないかと申し上げましたが、そのスピードが遅い理由の最たるものが関係者の御理解、関係者の最たるものが医師会だというふうに承知をしています。

 医師会もいろいろな守るべきものがある団体ですから、慎重になられるのもそれは全然違和感はないんですが、やはりこういう技術的な問題は、若干、ITリテラシー問題もあるので、そこは審議官、しっかり御説明していただいて、速やかに厚労省の検討会が進む土壌をぜひつくっていただければと思います。

 私自身は、先ほど申し上げたように、やはり医療等の、介護もそうかもしれませんが、保険です、日本の。これは釈迦に説法ですけれども、保険ですから、保険者機能がワークしないとだめ、だめというか何のために保険をやっているかわからないわけですね。

 もちろん、今の医療保険、介護保険、特に医療保険が、保険者機能を毀損するような制度改正が実は多いと僕は思っていて、保険者を都道府県にするとか、税金をどんどん入れるとか、どんどん保険者機能がワークしないようにワークしないように今政権は動いていると思います。その話は、また別途、厚生労働委員会に田村参考人を招致して、冗談ですけれども、やりたいと思いますが、きょうは内閣委員会ですので。

 これも厚生省に。要すれば、繰り返しになりますが、ちゃんと検討会を速やかにまとめて、今回の法案は我々は前向きに、河野理事を中心にやっていただいていると思いますが、とにかく早くやった方がいい。厚労省、審議官で結構ですので、とにかく早くやりますとちょっと言ってください。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 医療保険、介護保険を含めて、保険者機能の強化という観点からの御指摘をいただきました。

 私どもも、今の検討会の中での議論も進めながら、できるものから着実に、早く保険者機能を強化するという観点で取り組ませていただいております。

 そういう意味では、今回御提案申し上げております法改正の中でも、医療保険者間の特定健診情報、先ほどおっしゃったメタボ健診でございますが、などの引き継ぎにマイナンバーの利用が可能になるということを盛り込んでおりまして、これがさらに効果的、効率的な保健指導の実施、私どもが今進めております保険者によるデータヘルスというものが進む、そういう意味では、保険者機能の一つである予防、健康づくりの取り組みが進むというふうに期待してございます。

 さらに、今後の問題も視野に入れて考えますと、現在、番号制度のインフラを活用した医療保険資格のオンライン確認、あるいは医療等番号の導入に向けて、先ほど来御指摘いただいていますように検討を進めておりますので、今後も、医療情報の性格には配慮しながら、番号制度を積極的に利活用することで、資格確認あるいは給付事務の効率化など保険者機能をさらに強化するように進めてまいりたいと考えております。

足立委員 ありがとうございます。ぜひよろしくお願いします。

 最後に、残った時間で、実は、医師会にこだわるようですが、医師会がいろいろ言っている書類を読むと、大体、医療従事者には守秘義務が非常に強くかかっていて、懲役や罰金の厳罰がかかっているんですと。これは確かにそうで、聞くところによると、私、医師法かなと思ったら刑法に書いてあるんですね。非常に重い刑罰が書いてあります。一方で、医療情報あるいは医療情報を加工したものを取り扱う個人情報保護法に規定する事業者、これに対する罰則が行政処分にとどまっているということは矛盾だなんということを書いてあります。

 うんと思って読んでいたんですが、もう一回法案を読むと、今回の法案では、事業者に係る罰則が直罰規定に変わっているようですから、それでは、医師会のあれを受けて変えられたのかな、こう読んだわけですが、そういうことでいいでしょうか。

向井政府参考人 お答えいたします。

 今回の直罰は、不正の利益を図るためとかそういうふうな要件がある個人情報の漏えいあるいは詐取について、むしろ、ベネッセ事件を受けまして、ベネッセ事件は不正競争防止法上の企業秘密の詐取ということでやったんですが、これは企業秘密に当たらない場合は罰則がないんですね。そのために今回そういうふうに改正したというものでございまして、日医との関係は実はございません。

 ただし、日医がそういう主張をしていることがございまして、そういう議論の過程で日医に申し上げておりますのは、マイナンバー法のマイナンバーの入っている特定個人情報であるならば、その情報を漏えいした場合は罰則がかかります、したがいまして、マイナンバーなり、医療IDでもいいんですが、そういうのをつけた医療情報については罰則をかけるという法体系は十分考えられますよということは申し上げているところでございます。

足立委員 丁寧な御答弁、ありがとうございます。

 私は、これを見ていたものですから、それとリンクしているのかなと思いましたが、今おっしゃっていただいたように、営業秘密ですね、ベネッセに係る営業秘密、いわゆる不正競争防止法。ベネッセは、ちゃんとフォローしていませんが、不正競争防止法で処分があったということでしたか。まあいいです。

 私がここでちょっと確認させていただきたいのは、まさに、個人情報保護法、そして今審議官おっしゃっていただいたマイナンバー法、ここで罰則の体系があります。ある種、個人情報保護法が一番のベースにあるわけだと思いますが、そこの罰則の体系があります。それに対して、個人情報をいろいろ取り扱いをすると、別の法律で、この観点からいえば特別法になりますが、例えばベネッセのケースであれば不正競争防止法を守らなければならない、こうなるわけです。

 今審議官がおっしゃったことでいうと、特別法たる不正競争防止法の罰則規定も参考にして、要は、営業秘密であれば厳罰がある、でも営業秘密でなければ厳罰がない、それは極端になっているので、ここの境のところが、もし番号制度の側から見たときにこの違いが、それは極端だ、やはり平仄を合わせる意味では、全く同じじゃなくても、個人情報保護法についても直罰規定が要るな、こう御判断されたと。

 すなわち、私が聞きたいのは、不正競争防止法の罰則の枠組みと個人情報保護法の罰則の枠組みは、それは一定の参考にしながら今回の直罰規定が入った、こういう理解でよろしいでしょうか。

向井政府参考人 お答えいたします。

 不正競争防止法上の罰則が、どちらかというと、公正競争という観点から重くなっているところでございます。

 一方で、個人情報という側面から見たら、現在のいわゆる民間の個人情報の取り扱い、まず個人情報保護法につきましては、これまで直罰がなかったということでございますので、そのすき間を埋めるといいますか、そういう観点から、個人情報保護法の体系でいきますと、やはりどうしても罰則の重さは不正競争防止法に比べますとかなり軽くなってしまいますけれども、その体系の中で直罰を入れた。

 一方で、行政機関の個人情報保護法というのは、行政機関の取り扱う個人情報でございますので、これらにつきましては以前から罰則があるところでございます。

足立委員 私の問題意識は、これはなかなか、役所もいろいろな役所がありますから、不競法は経産省ですし、あるいは法務省がそれを全部並べて見ているのだと思いますが、たまたまベネッセの事件があったから気づいたという面も、特に意識したという面もあるかと思います。

 私は、そういった意味では、罰則というのはやはり体系的に整合的であらねばならない、こう思っていまして、個人情報に係る罰則の体系という観点から、改めて、その体系がちゃんと整合がとれているかという議論、あるいは、これから類似の制度を医療も含めてやっていくときに、そういう体系としてより整合性の高い法案にしていく努力が必要だと思いますが、それは一般化して、そういうことでいいですか。

向井政府参考人 お答えいたします。

 今回の個人情報保護法の改正におきまして、三年ごとに見直すというふうになっておりますし、今後は個人情報保護委員会が個人情報保護法を所管いたしますので、そういう見直しの中で、やはりそういうふうな体系的な罰則ということも考慮に入れる必要があるのではないかというふうに考えます。

足立委員 ありがとうございました。

 ごめんなさい、これは、最後、大臣にお願いしていた質問だったかもしれませんが、技術的なことなのでいいとして。

 通告は以上なんですけれども、大臣、これはそういうことで、私は、やはり医療分野でしっかりこの活用を進めていくべきだと思うし、その際には、私はきょう、医師会が単に理解が及んでいないだけだから早くしてくれみたいな、若干、日医の方からしたら失礼な物言いをしていますが、一方で、罰則なんかで日医が指摘されていることについては、もしかしたら一理あるのかなと思ってきょうは質問をさせていただいているわけで、私も一応議員ですので、バランスをとって、日医の意見の中には、単に理解が及んでいないだけの問題もあるように思うが、その指摘の中には傾聴に値するものもある、こう思っています。

 大臣、最後に、今の罰則のことだけ、今も御答弁いただきましたが、引き続き、個人情報に係る罰則の体系について、大臣のお考えだけ伺って終わりたいと思います。

山口国務大臣 先ほど向井審議官の方からお答えをした中身でありますが、いずれにしても、そういった医師会等との話し合い、厚生労働省のさまざまなこれからの検討等々もあろうかと思います。そして、実際に動き出すわけで、三年後の見直し等もこれありますので、そこら辺の中でしっかりと現実を踏まえながら検討してまいりたいと思います。

足立委員 ありがとうございました。

井上委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後二時四十二分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時五十六分開議

井上委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。池内さおり君。

池内委員 日本共産党の池内さおりです。

 マイナンバーに関連して、前回に引き続き、マイナンバーの費用対効果について質問いたします。

 前回の委員会で西村副大臣は、政府の費用対効果の試算について、「政府の第六十四回高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部における甘利大臣提出資料として、マイナンバー制度の効果をお示ししているわけでございます。」と答弁をされました。

 甘利大臣は、この資料に基づいて、その効果について、一定の仮定のもと、年間約二千四百億円の増収効果が見込まれますと発言をされています。

 前回の委員会では、私は、この二千四百億円の増収について、その根拠を質問したところ、都道府県の徴税職員一人当たりの滞納回収実績一・二三億円を算出し、マイナンバー導入によって、その効率化で浮くであろう税務職員の人数千九百八十人を掛けて二千四百億円を算出したということでした。

 この一人当たりの滞納の回収実績一・二三億円の算出根拠については、向井審議官は、「平成二十三年度の都道府県税の滞納整理済み額である九千五百十二億円を、その徴収事務にかかわる職員数の七千七百十六人で除した額として計算したものでございます。」と答弁をされました。

 総務省の県税の資料には、九千五百十二億円という数字はありません。これはどのような数字か、確認をしたいと思います。

向井政府参考人 お答えいたします。

 平成二十三年度の滞納整理済み額九千五百十二億円につきましては、総務省がホームページで公表しております平成二十三年度都道府県税の課税状況等に関する調べにおいて、滞納額のうち整理済み額とされる任意徴収の税額九千三百八十九・四億円、差し押さえ徴収の任意納税額の約六十九・三億円及び差し押さえ徴収の滞納処分徴収額の約五十三・二億円を足したものでございます。

池内委員 滞納整理済み額である九千五百十二億円の内訳は、任意徴収と差し押さえに係る徴収であり、任意徴収額九千三百八十九億円、これは九千五百十二億円のうち九九%に当たります。

 総務省に確認します。任意徴収額九千三百八十九億円の約四割は自動車税の回収ですが、これは、例えば、ちょっと納付期限を忘れて過ぎてしまった、すぐ思い出して納付した、この場合、徴税職員は督促状や電話の働きかけという回収に向けた事務を行っていないと思いますが、こういうものも含まれているということでしょうか。

青木政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、滞納になるかならないかということがございまして、滞納になった場合に、そのうち、任意徴収のものというのと差し押さえ徴収になるもの、こうなるわけでございます。

 任意徴収の金額というのは、納期限内に納付されなかった滞納額のうち、滞納者の財産について差し押さえが行われる前に滞納者が任意に納付したもの。この中には、督促等があったもの、これも含まれるわけであります。

 差し押さえの徴収の金額というのは、差し押さえが行われた後に収入されたものでございまして、都道府県等が公売処分等により徴収したものを滞納処分徴収として、また、その処分に至る前に収入されたものを任意納税として、それぞれの金額をこの都道府県税の課税状況等に関する調べの中で明記しているところでございます。

池内委員 ある都道府県の徴税担当者からお話を聞きました。そこでは、納入期限までに納入されなかった滞納分について、およそ一月後から督促の通知を送り始めるということでした。納入期限を過ぎたものなのでそれは滞納額に入り、納入を忘れたことに気がついて自主的に納入されたものというのは任意徴収ということになるでしょうと説明を受けました。

 そういう数字が含まれているとすれば、九千五百十二億円を徴税職員で割っても、一人当たり回収額にはならないのではないかと思いますが、いかがですか。

向井政府参考人 お答えいたします。

 任意徴収の金額は、納期限内に納付されなかった滞納額のうち、滞納者の財産につき差し押さえが行われる前に任意に納付したものでありまして、御指摘のとおり、この中には、都道府県職員からの督促にかかわらず、滞納者が自主的に納付したものも含まれることにしているところでございます。

 この二千四百億円の税収増とする計算過程において、その前提としている滞納整理済み額に計上される金額は、全て納期限を経過しても納付されなかった滞納額が計上されているものであり、たとえ任意徴収であったとしても、例えば、滞納整理の早期着手により滞納の長期化を防止するなど、税収増に関しては一定の効果が期待できるものと考えられるものと考えております。

 マイナンバーの導入効果は、できるだけ定量的に効果を示すために諸々の前提を置いて行った大まかな試算でございまして、今後、専門家などからさらに妥当な試算方法については指摘があるかもしれませんが、この試算を行った時点におきましてはおおむね妥当なものと考えております。

池内委員 九千五百十二億円には、徴税職員が直接は何もしないで納入されている収入額が含まれています。そして、電話や督促状での働きかけなどで、多くの滞納が任意にもう納入されている。差し押さえなどに進んでの収入というのは百二十二億円程度で、九千五百十二億円のわずか一%です。

 平成二十三年度、二〇一一年度は、一兆一千八十六億円の滞納額のうち、こうして九千五百十二億円の滞納が納入されましたが、なお徴収し切れない、残っている額があります。払いたくても払えないなどの事情がある都道府県民や事業者の滞納がそれに当たります。これは、徴税職員を幾らふやしても、それだけ税収がふえるというものではないということは明らかです。

 総務省に確認をいたします。二〇一一年度は、こうして納入してもらえなかった額、整理未済額は幾らになっていますか。

青木政府参考人 お答え申し上げます。

 最終的にどうしても払えないというものについては、不納欠損処理というものも行います。その不納欠損処理の額でございますけれども、二百十億ということでございます。

 御指摘の整理未済額、最終的にどういうふうに整理するかということについて、整理がつかなかった額でございますけれども、それは千三百九十六億でございます。

池内委員 回収することで増収するというこの試算が対象とする滞納額は、都道府県税では、今御指摘があったような額になっておると思いますが、それ以外でも、年度末まで払ってもらえず繰り越される額であるということには変わりがないと思います。これらは払いたくても払えないなどの事情がある滞納額であります。

 ここで西村副大臣にお聞きします。

 二千四百億円を算出した一人当たりの回収額というのは、納入期限を忘れて徴税職員から働きかけられる前に納入したもの、あるいは、電話での督促や督促状が送られてきて納入したなど、差し押さえに進む前に納入された任意徴税が九九%を占めています。こうした過程で徴税されずに残ったのが整理未済額、都道府県税では一千三百九十六億円に当たるわけですが、二千四百億円というこの試算は、任意徴税が九九%を占める回収額を基準に、これと同様に整理未済額を徴税できるという仮定の上に成り立っています。こうした仮定はそもそも成り立たないと思います。二千四百億円という試算は撤回すべきではないですか。

西村(康)副大臣 お答えを申し上げます。

 御指摘のマイナンバーの導入効果として二千四百億円の税収増を挙げておりますけれども、これにつきましては、それまで定量的な試算が困難であるとして、なかなか定性的にしか効果をお示しできなかったものについて、その時点で、できる限り定量的に効果を示したいということで、もろもろの前提を置いて行いました非常に粗い試算でございます。

 今後、今の御指摘を含めて、専門家などからさらに妥当な試算方法等について指摘があるかもしれませんけれども、この試算を行った時点においては、これはおおむね妥当なものだったというふうに考えております。

 制度やシステムの詳細がより具体的になってまいりましたので、より正確で国民にわかりやすい費用対効果の示し方については、今後、専門家とも相談しながら、含めて検討していきたいというふうに思っております。

池内委員 今、副大臣、粗い試算だというふうにお認めになって、私も、とてもこれは非現実的だ、仮定自体が成り立たないというふうに思うので、ぜひ撤回をお願いしたいんですが、もう一度、いかがでしょうか。

西村(康)副大臣 繰り返しになりますけれども、この試算を行った時点においては、粗い試算として、我々できる限り定量的にお示しをしようということで示したものでございますので、これはもう全体としておおむね妥当なものであるというふうに考えております。

 ただ、より正確でわかりやすい費用対効果、これについては、今後、専門家とも相談しながら、ぜひ検討していきたいというふうに思います。

池内委員 二千四百億円の増収という試算は、職員をふやせばそれだけ税収がふえるという非現実的な仮定の上に、滞納の残額を超えて、また滞納を回収できるという、それこそあり得ない試算だと私は思います。まさに、国民を愚弄する試算。改めて強く撤回を求めます。

 ほかにも、甘利大臣の試算には、マイナポータルを利用して、通知書類の郵送代を削減できるという試算があります。マイナポータルの普及が一〇〇%であるということを前提としている、こうした問題があり、試算の妥当性には数々の疑問があります。

 十三日の参考人質疑で、宇賀参考人は、政府が発表した費用便益分析について、こう述べています。まず、一旦それを公表されたということは、これは評価している、しかし、それが十分に実態を反映したものになっているかどうかという点につきましては、当然、専門の経済学者とかそうした方たちが、それをもとにいろいろ分析をして、それに基づいていろいろな問題を御指摘していくということになっていくと思いますと述べられました。

 そのためには、その算出根拠、算出式がオープンになっている必要があると思います。専門家だけでなく市民にも、費用対効果を検証したい、そう思っている方々に、試算の算出根拠、算出式にアクセスできるようにすべきだと思いますが、西村副大臣の見解をお伺いいたします。

西村(康)副大臣 御指摘のとおり、マイナンバー制度の導入に当たっては、できる限り国民に対して費用対効果を示していく必要があるというふうに私どもも認識をしております。

 そうした考え方に立って、昨年六月の段階で、マイナンバー制度の効果について、その時点において定量的に試算ができるものについて、一定の前提を置いた大まかな、御指摘のとおりの粗い試算であります。

 粗い試算でもありますので、今後、その試算過程の詳細について改めて公表することは現時点で考えておりませんけれども、繰り返しになりますが、より正確で国民にわかりやすい費用対効果の示し方について、今後、専門家に相談することも含めて検討することとしたいと思います。

池内委員 しっかりと現実に基づいた試算を行って、しかも、それを早急に公表していただきたいというふうに思います。

 次に、費用、コストの問題についての質問に移ります。

 二〇一三年に法案を審議していた時点で、マイナンバーのシステム関連の費用というのはどのように見積もっていましたか。

向井政府参考人 お答えいたします。

 マイナンバー制度の導入に必要なシステム整備費用につきましては、二〇一三年五月の時点で、マイナンバー制度の導入に伴い、新規に必要な情報提供ネットワークシステム等のシステム整備費といたしまして約三百五十億円、国や地方公共団体の既存のシステム改修費用として、精査中であるものの、最大二千三百五十億円、合計二千七百億円を見込んでいたところでございます。

池内委員 政府は、法案を審議していた二〇一三年の時点で、マイナンバーのシステム関連の費用を二千七百億円と見積もっていたと。

 現時点ではそれがどうなっていますか。

向井政府参考人 お答えいたします。

 現時点では、マイナンバー制度の導入に伴い、新規に必要な情報提供ネットワークシステム等のシステム整備費として約二百八十億円、国や地方公共団体の既存システムの改修費用として、精査中ではあるものの、約二千六百億円、合計約二千九百億円を見込んでいるところでございます。

池内委員 二千七百億円から二千九百億円に二百億円ふえました。ふえた理由を教えてください。

向井政府参考人 お答えいたします。

 マイナンバー制度導入に伴うシステム整備費用につきましては、二〇一三年時点から見込み額の精査の進んだシステムや、競争入札の結果、予算額を下回る価格で調達できるシステムがある一方、二〇一四年四月に消費税率の引き上げがあったこと、システムエンジニアの人件費が上昇していること、それから医療保険者のシステム改修費用につきまして国費で賄うことにしたこと等から、二〇一三年度時点の見込み額から比べて、現時点の見込み額が増加したものでございます。

池内委員 いろいろな理由がついて総額がふえていくというのは、これまでも公共事業費が当初予算よりも膨らんでいって問題となってきたことと同じパターンだと思います。

 マイナンバーのコストはシステム費用だけではありません。そのほかにも、通知カードの発送などにも税金がかかると思いますが、今おっしゃった二千九百億円以外にどのような費用がかかってきたか、そしてこれからかかる予定か、お答えください。

向井政府参考人 マイナンバー制度の導入準備は関係各省の予算で対応しておりまして、内閣府、内閣官房のマイナンバー担当では、システム整備費用以外では、コールセンターの運営経費など広報関係として、平成二十六年度予算で約二億円、平成二十七年度予算で約四・七億円を計上しているところでございます。

 なお、政府広報の予算でも、別途マイナンバーの広報を実施しているところでございます。

池内委員 私が事前にレクを受けたときには、個人番号カードの発行費が四百八十三億円、通知カード二百六十七億円、政府広報実施額十五億四千万円、広報予算が九億円というふうにお聞きをいたしました。

 個人番号カードの発行費四百八十三億円、通知カード二百六十七億円などの費用を合計すると、三千四百億円を超えます。実際の制度の出発には、二千九百億円にとどまらず、三千四百億円の巨額の投資がかかることになります。さらに、その外側に民間の費用負担があります。まさに巨大プロジェクトです。

 山口大臣にお聞きしますが、この秋の通知カードに始まる制度運用に向けて、この巨大プロジェクトに対する国民の理解も、また事業者の準備もおくれていることが指摘されています。肝心のマイナンバー制度そのものの周知が国民の間で大変におくれている。私は、このまま突き進む条件が欠けているというふうに思いますが、国民への周知のおくれ、事業者の準備のおくれ、そういう認識を山口大臣はお持ちでしょうか。

山口国務大臣 これまでずっと御議論いただきましたように、確かに、周知徹底という意味では、もちろん、その都度、世論調査のたびに数字は上がってきていますが、まだまだというふうな感じもしております。

 同時に、システム整備の話も、これも答弁がありましたように、一応、予定の年次には間に合うというふうな方向で進んでおります。ですから、この秋にはそれぞれ各個人にナンバーの通知があるわけでありますが、粛々とそのスケジュールにのっとって、その間できるだけのことをしっかりやりながら、何とか、先生も御指摘の、まさにビッグプロジェクトをうまくやれるように努力をしていきたいと思います。

池内委員 先日の参考人質疑で、与党の委員の方も、地元でマイナンバー制度を知っている人がほとんどいないということで、参考人に認知度向上とか普及拡大に関する意見を求めていた。なので、今、本当にこの認知のおくれというのは重大だ、突き進むべきではないというふうに私は思います。

 次に、周知がおくれているということなんですけれども、ある月刊誌で専門家は、全ての社員、契約社員やアルバイトだけでなく、その扶養家族全員に交付されるマイナンバーを十月から集め始め、来年一月から給与支払いや人事のシステムに反映させるだけでも企業にとっては大変な作業だ、加えて社外の支払い先もあるというふうに述べ、ガイドラインが求める安全管理措置についても、それを実行すると企業は幾ら負担することになるのか、私が従業員百人で支店が数カ所というところを試算したところ、初期費用で一千万円、毎年のランニングコストで四百万円という数字が出ましたというふうに述べています。

 西村副大臣にお聞きいたします。

 一部のITのベンダーなどの事業者は別として、この秋のマイナンバー実施に伴うセキュリティー費用や新たなシステムへの対応の負担は、圧倒的多数の事業者、とりわけ中小企業にとって、事実上のマイナンバー増税になるのではないか。この点、お答えください。

西村(康)副大臣 マイナンバー制度の導入に伴って中小企業を含む多くの事業者の方々に一定の御負担をいただくことになるということは認識をしております。

 ただ、マイナンバー制度は、より公平公正な社会保障制度あるいは税制の基盤であるということでありますし、情報社会において、行政の効率化、あるいは国民の利便性向上にもつながっていく、実現するためのいわば基礎的なインフラであるという認識をいたしております。

 そのインフラを導入するということで、ぜひ御理解をいただきたいというふうに考えておりますが、ガイドラインにおきましても、特に中小企業者、零細企業者に配慮した措置を設けるなど、特に中小企業の皆さんの御負担を少しでも軽減できるよう工夫をしているところでございます。

池内委員 管理がうまくいかなくて漏えいが起きた場合、プライバシー侵害や成り済ましなどの犯罪につながりかねません。重い責任も負わされます。その上に、まともな費用便益分析も示せていません。こうしたもとで新たな負担を求めるということは、私はとんでもないことだと思います。

 十三日の参考人質疑で、坂本参考人がこのように言いました。消費税を納税することもできなくて困っている赤字の企業が、マイナンバーをきちっと管理するためのシステムの改変のための投資ができるかというと、税金を納める義務と安全確保義務、どっちが大事ということでもないですけれども、どっちも大事で、どっちもしてもらわないと困るのはそうなんだが、ない袖は振れない、できないところに義務だけ押しつけても無理だというふうに思う、そこについては、周知徹底とあわせて、きちっとした対策がとれるようになるまではやらないという指摘をしていました。

 周知は既におくれていますが、その上にセキュリティー費用や新たなシステムへの対応の負担で、多くの事業者がマイナンバーへの対応がおくれる可能性は否定できないと思います。

 西村副大臣にお聞きいたします。

 この秋の実施に向けて、民間の準備状況が整っているのか、その準備状況を把握すべきではないですか。

西村(康)副大臣 御指摘の民間事業者のマイナンバー制度導入対応のための準備状況についてでありますけれども、経済界、経団連や日本商工会議所、こういった経済関係の団体から随時、意見交換、情報交換しながら、現状についても情報提供を受けているところでございます。

 また、各省庁に対して、それぞれ所管の業界団体へのマイナンバー制度の周知を依頼しているところでございまして、各省庁、各団体における取り組み状況の調査も実施をしているところでございます。

 来年一月からのマイナンバー利用開始に向けて、今後も経済関係団体あるいは各省庁と連携しながら、民間事業者の準備状況の把握に御指摘のとおりしっかり努めながら、さらなる広報媒体の作成あるいはメディアを通じて広報活動をしっかりと展開してまいりたいというふうに思います。

池内委員 日本情報経済社会推進協会などが三月に行った調査によれば、マイナンバー制度へのシステムを完了したという企業は一八・二%という状況です。企業の対応がおくれているということは明らかだと思います。この調査は、従業員五十名以上の国内企業を対象としてやりました。それ以下の企業ではさらに低い数値であるということに疑いはありません。

 システムへの対応やセキュリティーの対応が完了しないまま制度の実施に突き進んでいけば、混乱が生じ、マイナンバーを含む特定個人情報の漏えいなどの危険性が高まるということは明らかだと思います。実施前に民間の準備状況をきっちり把握していただきたいということを強く指摘します。

 最後の質問になりますが、総務省にお聞きいたします。

 この秋、通知カードの発送にかかわって、いわゆるDV対策について伺います。

 DVから逃れるために、住民票を置いたまま住所地以外の場所に移動したり避難していたりする方々がおられます。十月から通知カードが五千四百万世帯に送られるということになりますが、この場合、通知カードが加害者に渡るということになることも考えられる。どのような対策をとっていらっしゃるのか、お聞かせいただきたい。

 政務官の方に、周知に気づかずおくれてしまった場合、あるいはそうした居所、避難先の登録期間が過ぎてしまってから避難する必要が生まれた場合、こうした場合には加害者に通知カードが渡ってしまう、そういう想定もしておかなければならないと思います。この場合は、番号の変更などの対策も必要と思いますが、この点について政務官の答弁をお願いします。

時澤政府参考人 お答えいたします。

 通知カードにつきましては、市区町村が番号法施行日であります十月五日現在において現に当該市区町村の備える住民基本台帳に記録されている方に送付することとなっております。

 御指摘のとおり、住所地に住民票を残しまして他の場所に避難されておりますDV等の被害者につきましても、当該住所地に通知カードが送付されて、住所地には加害者がいるということも十分想定されるところでございます。

 このため、避難先に生活の本拠がある場合には、避難先の市区町村に転入をしていただきまして、新しい住所地にカードが送付されるようにしていただきたいということもありますが、実際には、やむを得ない事情によりまして避難先の市区町村に転入できない場合もございます。この場合もありますので、一定の配慮をいたしまして、事前に登録された居所に通知カードを送付できるようにしたいと考えております。

 具体的には、該当の方が申請に、居所情報それからやむを得ない事由等を記載していただきまして、本人確認書類の写し等を添付していただきまして、住所地市区町村に郵送していただくという方法を想定しているところでございます。

 具体的には、今、準備行為を行っておりますので、できるだけ早い時点で周知を開始したいと考えているところでございます。

あかま大臣政務官 お答えいたします。

 先ほど政府参考人が答弁したとおり、やむを得ない事情により居所市区町村に転入できないDV等の被害者については、一定の配慮をして、事前に登録された居所に通知カードを送付できるようにしたいと考えております。その旨は広く周知を図ってまいりたい、そう思っております。

 しかしながら、委員の方からの御指摘のとおり、そうした居所登録をうっかり忘れてしまったという方であるとか、通知カードの送付先情報の登録後にDV等の被害に遭ったりする場合、加害者側に通知カードが渡ってしまう、こういったことも想定され得るんだろうというふうに思っております。

 この番号法第七条第二項では、市町村長は、個人番号が漏えいして不正に用いられるおそれがあると認められるときは、本人の請求または職権により、個人番号の変更ができるものというふうにされております。

 したがって、最終的には市町村長の判断となりますが、今ほど申し上げたようなケースに該当する場合には、本人の請求または職権により、個人番号の変更が可能なものというふうに考えられております。

 以上です。

池内委員 以上で終わります。ありがとうございました。

井上委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 マイナンバー法、個人情報保護法の質問をいたします。

 前回もお尋ねしたんですけれども、マイナンバーの利用範囲の拡大の問題について、医療分野についてお尋ねをいたします。

 今回のマイナンバー法の改正は、医療等分野における利用範囲の拡大を図るものが一つとなっております。健康保険組合等が行う被保険者の特定健康診査情報の管理等にマイナンバーの利用を可能とするものであります。

 そこで、これは大臣ですか、どういうふうに変わるのかということです。

 政府は、被保険者が転居や就職、退職により保険者を異動した場合でも、マイナンバーを活用して、特定健診、保健指導の情報を保険者間で円滑に引き継ぐことにより、過去の健診情報等の管理を効率的に行うことが可能となり、効果的な保健事業を推進できると説明していますが、これまでと今後とどういうふうに変わるんでしょうか。

吉田政府参考人 事実関係でございますので、私どもの方から御報告いたします。

 現在、保険者間の特定健診のデータのやりとりにつきましては、高齢者の医療の確保に関する法律に基づきまして、まず、保険者が、保健指導等の実施のために、本人の異動前の保険者に情報の写しの提供を求めることができ、求められた保険者は、本人の同意を得た上で写しを提供しなければならないと、法律上整理がございます。

 運用に当たりましては、この仕組みができました平成二十年度から、その導入当初に厚生労働省から保険者に対して手引を示しておりまして、御本人の同意を得た上で、例えば光ディスクなどを送付するという形で、安全確保措置をした上で、それぞれ提供をさせていただいているというのが実態でございます。

 ただ、この場合におきまして、従来、必ずしもその具体的な手順が明確になっていないというのにあわせまして、保険者が保険者ごとの被保険者番号で管理をしていたということから、検索に手間がかかるなどの問題がございましたので、今回、マイナンバーというインフラを活用いたしまして、保険者の行政事務として活用させていただくということを提案申し上げているというところでございます。

塩川委員 この特定健診データの保険者間のやりとりということですけれども、手引があって、光ディスクなどを活用するということなんですが、つまり、これまではどんなふうに被保険者の方が異動された場合に保険者間でこの作業を行っていたんですか。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 今御質問いただきましたように、また先ほど御答弁申し上げましたように、異動前と異動後の保険者間、保険者が相対でそれぞれ求めをし、それに対して応えるということで、もちろん、御本人の同意を得るという手続は踏んでおりますが、相対でやりとりをしているというのが基本であろうかと思います。

塩川委員 いや、お尋ねしているのは、特定健診のデータそのものをどういうふうに渡しているんですかという実務的なところなんですけれども。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 この具体的な手引に基づきまして、先ほど申しましたような、当該記録の写しなどを電磁的方法などにより作成された記録を、光ディスクなどを送付するという形で行っているというところでございます。

塩川委員 送付というのは、メール送信とかということではなくて、郵便とか手便とか、そういうものということですか。

吉田政府参考人 全てのケースというわけではございませんけれども、私どもで承知をしている限りでは、基本的には、郵便、書留のような形で、物理的に郵送させていただいているというふうに承知をしております。

塩川委員 ですから、現行、その保険者間のやりとりは簡易書留で郵送していますということですね。

 今回の、マイナンバーにひもづけをする、利用拡大をするということでは、それは変わるんですか。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 保険者と保険者の間の動きにつきましては、基本的に変わらないものを私ども想定してございます。

塩川委員 だから、実際には、サーバーなんかには入れないわけでしょうから、そういう点では、物理的な手間というのは変わらないんだと思うんですよ。検索云々の話はありますけれども、それは一部の話であります。

 ですから、そういうことを考えると、大臣にお尋ねしますけれども、この法案でも、情報連携の対象事務を列挙した別表の二、情報連携の別表の二の方には保健事業は入っていないということでもありますし、特定健診データの情報連携はしない、データのやりとりそのものはしないということですから、保険者の事務の効率化にほとんどならないんじゃないかなと率直に思うんですが、その点はいかがでしょうか。

山口国務大臣 その情報の管理の仕方、保存の仕方等も、それぞれいろいろあったんだろうと思います。

 そういった中で、先ほど来、若干答弁もありましたが、保健事業というのは、医療保険者が法律に基づいて行う行政事務であるということが一つと、今御指摘がございましたけれども、医療保険者の事務の効率化にも資する。そして、これは結構大事なことなんだろうと思いますが、特定個人情報の保護につきましては、法律によって厳格な規制が設けられているというふうなことから、関係者の御理解を得て法案に盛り込んだというふうなものでございます。

 一方、医療機関間の情報連携等に利用する番号のあり方、これにつきましては、厚生労働省において現在さまざまな検討が行われておる。これはこれで、その動向を注視していきたいと思っております。

塩川委員 事務の効率化に資するといっても、今言ったように、実際の実務そのものは郵便でやっているようなことですから、そういう点でも、事務の効率化に資するというところ自身にほとんどメリットを感じられないわけであります。

 特定健診データの連携というのは、実際には利便性はほとんどなくて、ひもづけによる情報流出ですとか、名寄せをされる、そういった危険性が非常に増大をする、個人情報の保護に背くようなことになりはしないのかということを率直に指摘をしておきます。

 それで、大臣の答弁で、保険者が行うのは、番号法、マイナンバー法に基づいて、行政事務だということでひもづけるという話、特定健診データについても利用拡大の範囲に入れていくという話でしたけれども、やはりそこがもう一度問われるところだと思うんです。

 実際に特定健診のデータに含まれているものは何かといえば、これは前回も確認をしましたけれども、身体計測、身長、体重、BMI、腹囲だけではなくて、血圧の測定ですとか血液検査ですとか検尿ですとか、また、一定の基準のもと医師が必要と認めたものということで、心電図ですとか眼底検査とか貧血検査など、医療に係る情報そのものであります。

 厚労省にお尋ねしますが、厚労省の研究会で、医療等分野における番号制度の活用等に関する研究会が行われております。第一回の会合で、厚労省提出の資料の中に、番号制度のマイナンバーの利用範囲についてというのがあります。

 それを見ますと、社会保障番号制度は、行政機関等を情報連携対象として、社会保障、税、災害対策の各分野で利用することとされていると解説をしています。ただし、社会保障分野については、現金情報と診療情報等を区別している図が示されております。

 その研究会の議事録を見ても、事務局の説明では、今のマイナンバー法は、税と社会保障については、年金とか生活保護など現金情報を主な対象としており、診療情報については別途検討ということだと述べ、マイナンバーとは異なる、医療等分野で使える番号と、安全で分散的な情報連携基盤を設ける必要があると事務局が述べているところであります。

 そこで確認ですけれども、ここで社会保障について、その図に、現金情報と診療情報等と区別して書かれております。それに対応して、社会保障の現金情報についてはマイナンバーでいきます、診療情報等については別個の、別な個別法の対応というふうになっているわけですけれども、その場合の診療情報等の中には、この特定健診のデータというのは含まれているんでしょうか。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 今先生御指摘のように、前提として、私ども、医療等分野の番号制度に関する研究会を行いましたときの資料の整理における位置づけということかと思いますけれども、今おっしゃっていただきましたように、社会保障を便宜、現金情報と診療情報等と区分した中では、今御指摘の特定健診データについては、ここで言うところの診療情報等の方に整理できるだろうというふうに考えております。

 ただ、この研究会、今いただきました資料をもとに何回か議論を重ねまして、マイナンバーに限定せず、医療等分野の情報連携に用いる番号のあり方について、医療関係者、保険者、有識者などで検討を行った結果として、マイナンバーの利用事務について再度整理を行い、今回提案させていただいておりますように、特定健診情報についてのマイナンバーという形にはつくらせていただきました。

 また、先ほど、重ねての御指摘で、今回位置づけることにより保険者の事務の効率化について何があるのかについて、幾つかの御指摘をいただきました。

 先ほど私の方からも申し上げたかと思いますけれども、受け渡しの場面だけではなくて、保険者が保険者ごとの被保険者番号で特定健診情報を管理している現状から、受け渡す健診情報の検索が容易になるという利点は今回の措置により考えられるというふうに私ども思っております。

塩川委員 国民の皆さんに名寄せについてのさまざまな懸念がある中で、この件についてはこの後も確認をするわけですけれども、本来、医療情報については別個の仕組みが必要ですよとしてきた、その問題というのが、この研究会での議論も踏まえて今回の法案にも反映している、そこの妥当性の問題を問うているわけであります。

 あわせて、診療情報等にはレセプトデータも含まれているということでよろしいんでしょうか。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 私ども、資料を作成しましたときの整理といたしましては、現金情報かあるいは診療情報等かという区分からいえば、診療情報等の方にレセプトについても位置づけられるものと整理できるかなというふうに考えております。

塩川委員 だから、保険者が行う行政事務だからこれもあれも入れましょうというのがそもそも整理として妥当なのかということを聞いているわけですけれども、診療情報等、医療等分野における情報には特定健診データやレセプトデータが含まれているわけです。

 重ねて厚生労働省にお尋ねをしますが、そうすると、この研究会の議論を経ての結論、アウトプットのところにかかわるわけですけれども、その図で示していた診療情報等については、マイナンバーではなく医療等分野における番号制度を設けるとしていた、それはそもそもどういう理由からだったんですか。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 医療情報を一般論として申し上げれば、やはり非常にセンシティブな情報であるということから、このような形で、番号制度との関係、あるいは番号という形での特定化をするに当たっての留意点ということから、問題意識を持って研究会を始めたところでございます。

 重ねてでございますが、今回マイナンバーという形にしたのは、保険者が行政事務ということでございますけれども、この研究会の引き続きの議論の中で、関係者や情報内容が多岐にわたる医療機関同士の情報連携でありますとか研究開発に関しましては、今後さらに検討を進めるということで、私どもとしては、医療情報の性格に基づいた検討を引き続きしなければいけないという点は、問題意識としては持ってございます。

塩川委員 ですから、マイナンバーを使うのは行政機関等、等の中に保険者が入りますと。その行政事務はマイナンバーへと。しかし、医療機関は別個の仕組みをつくるんだと。

 そうじゃないでしょう。もともと言っているように、医療情報というのはセンシティブ、機微情報、そういう観点から、そもそもきちんとした扱いが必要でしょうというところが議論の出発点だったと思うんです。

 さかのぼって、この昨年まとめた研究会の報告書にも紹介されている「二〇一二年の医療等分野における情報の利活用と保護のための環境整備のあり方に関する報告書」です。ここでは、

 医療・介護等に関する情報は、個人の健康情報など一般に機微性の高い情報を含むためその保護に特段の配慮が必要であるという側面を有し、また、この分野では関係者の数や種類が多いことなどから、これらの特性を踏まえたシステムとすることが必要である。

  こうしたことから、マイナンバー法は社会保障分野の現金給付の調整や社会保険事務に関する手続等を主に想定し、医療等の分野については、厚生労働省において法制上・技術上の特段の措置を検討し、個人情報保護法又はマイナンバー法の特別法として、二〇一三年の通常国会を目途に提出することとされている。

ということであります。

 ですから、そもそものスタートは、医療等分野、その中にはレセプトデータあるいは特定健診データが含まれている、こういう医療分野については、個人情報保護法またはマイナンバー法の特別法を提出するという扱いだったと思うんですが、違いますか。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 今委員御紹介いただきました平成二十四年九月にまとめられた報告書以降、平成二十五年五月にいわゆるマイナンバー法が成立したことなども踏まえて、今回、先ほど御質問の中でいただきました、昨年の十二月、平成二十六年十二月に中間まとめをいたしました医療等分野における番号制度の活用等に関する研究会という形で現在議論を進めており、その中間段階における整理の中で、再整理ができたものとして今回提案をさせていただいて、まだ残っている課題については、引き続きこの研究会において議論をさせていただかなければいけないという認識でございます。

塩川委員 特定健診データというのは、これは、ですから、医療情報としてそもそも別個の制度に入れるということを言っているんじゃないのかという話で、それを、この昨年の研究会において、いや、保険者だから、マイナンバーの行政事務の方に入れますというのじゃ説明が足りないでしょう。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 時系列としましては、今委員御指摘いただきましたように、二十四年九月の段階における一つの合同会議としての方針、そして、それを踏まえた上でのマイナンバー法施行後の二十六年十二月にまとめた中間まとめという形で進み、今回の改正案を提案させていただいているところでございますけれども、二十四年九月の段階での合同会議においても、例えば情報連携の基盤をこれから進めるに当たりまして、二重投資を避ける観点から、政府全体の情報連携基盤として構築されるインフラを共有できる部分は共有するという問題意識も述べられておりますので、私どもとしては、先ほど来御指摘いただいておりますように、医療情報としての機微性などについて必要な配慮というものをきちっとさせていただきながら、全体として、それぞれ進めるべきものを進めさせていただくという観点で今進めているところでございます。

塩川委員 もっとさかのぼれば、二〇一一年の六月、社会保障・税番号大綱があるわけです。その中で、番号制度で何ができるのかといろいろ整理をしているわけですよ。

 それを見ると、その中には、一つの大きな分野として、医療・介護等のサービスの向上に資するものというのを挙げて、その例示として、転居した場合であっても、継続的に健診情報、予防接種履歴が確認できるようにするとあります。ですから、一つの事務として、健診情報、予防接種履歴が確認できるようにするということは挙がっているわけだけれども、これはまだ検討項目として挙がっていたということです。

 ただ、その際にも条件をつけていた、要件をつけていた。それが、社会保障・税番号大綱のその文章の注記についていますけれども、これらの利用場面については、取り扱われる情報の機微性等を踏まえて、法制度等について特別の措置を講じることが前提となるということで、要するに、情報の機微性に応じた特段の措置ということで、番号法とは別に、個人情報保護法または番号法の特別法を整備するとなっている。

 ですから、まさに、情報の機微性に着目をしたときに、この大綱の中では、特定健診データも機微情報、機微性に応じた特段の措置を行う対象となっていて、番号法とは別の法律、特別法の整備が必要だと言っていたんじゃありませんか。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 まず、今回とらせていただきました措置、特定健診についてマイナンバーデータの中での活用を考えさせていただくことにつきましては、改めて申し上げるまでもなく、重ね重ね恐縮ですけれども、特定健診情報に広げることにより、ヘルス事業が行政事務であるということや、あるいは、マイナンバー法の規定により、特定個人情報の保護としてより厳格な規制がかけられるということ、あるいは、特定健診等の情報の利用に当たっての特定個人情報の保護措置あるいはマイナンバー法の罰則、特定個人情報保護委員会の監視、監督の対象になるということも総合的に判断をさせていただいて、今回の整理をさせていただいたということでございます。

塩川委員 大臣にお尋ねしますけれども、社会保障・税番号大綱で、健診情報、予防接種履歴については、番号法とは別に特別法を整備するとなっていた。それは情報の機微性に着目をして行うんだということを言っているわけです。そこのところは変わりがないはずですよ、特定健診データについても情報の機微性があるということですから。それを、保険者が行っている行政事務というその理屈だけですりかえるというのは、それはそもそも次元の違う話なんじゃないのか、この特別法もないのに。

 我々も、医療情報の特別法をつくれと言っているわけではありません。その問題そのものについても、必要性のあり方の問題についても厳しく問われるわけですけれども、そもそも、皆さんの方が段取りをしてきた仕組みであったにもかかわらず、診療情報に含まれる特定健診データをマイナンバーの利用範囲になし崩し的に入れるようなやり方というのは、私は認められないと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

山口国務大臣 先ほど来厚労省の方からも何度か答弁がございましたが、厚生労働省においても、先ほどの研究会等々いろいろなところでしっかり議論をしてきて、結果として、保健事業は保険者が法律に即して行う行政事務であるというふうなこと。あと、効率化云々もあります。

 そして、さらに、特定個人情報の保護については、マイナンバー法のもとによって、より厳格な規制が設けられ、そういった情報の保護は大きく前進するのではないか等々の判断でこういう形になってきたのであろうと思っております。

塩川委員 当委員会での参考人質疑で、坂本団参考人が、個人番号にひもづけられる個人情報が多ければ多いほど、また、その個人情報の質が高ければ高いほど、個人番号を悪用しようとする者にとってはその利用価値が高くなる、悪意を持って他人の個人番号を入手する者がふえるはずと。このような個人番号の利用範囲の拡大への危惧の声にこそ、耳を傾けるべきであります。

 利用範囲の拡大の話でいいますと、レセプトデータのこともありまして、これは、財政制度審議会の財政制度分科会に財務省主計局が出した資料の中に、「医療の無駄排除、予防の推進等」、この中に「ICTやマイナンバー等を活用してリアルタイムにレセプトデータ等を把握し、重複受診・重複検査・重複投薬を未然に抑制する枠組み」などと、どんどんマイナンバーの利用を想定した動きが始まっている。なし崩し的な利用範囲の拡大が重大な問題となりかねない懸念というのを申し上げておくものであります。

 次に、個人情報保護法の目的、それから個人情報保護委員会の任務についてお尋ねをいたします。

 利活用と保護のバランスということで、当委員会での議論があった点について、大臣にお尋ねをいたします。

 個人情報保護法の一条の目的には、「この法律は、」中略「個人情報の適正かつ効果的な活用が新たな産業の創出並びに活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現に資するものであることその他の個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的とする。」とあります。

 五十一条の個人情報保護委員会の任務のところ、同様の記述があった上で、有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護するため、個人情報の適正な取り扱いの確保を図ることを委員会は任務とするという記述になっております。

 そこで、大臣にお尋ねしますが、ここで言っています「新たな産業の創出」、この新たな産業というのはどんなことを想定されておられるんでしょうか。

山口国務大臣 中身については、もう既に塩川先生と御議論をさせていただいた、いわゆる個人情報の有用性の具体例として、新たな産業の創出ということで明示をすることにしたわけで、意味合いが変わってきたわけではないというふうなことであります。

 この新たな産業の創出ですが、いろいろなことが今の時代の中で考え得るんだろうと思います。ビッグデータの利活用もあるでしょう。さらなる分析技術の発達によって、どういうふうな形でそういったビッグデータが分析をされ、パーソナルデータを含めてどういうふうな活用をされていくかとか。あるいはLINEのようなものも、一種そういうものなんだろうと思っております。

 また、先般、Suicaの件で問題になりましたが、あれも、いわゆる今回の法律にのっとってしっかりと処理をすることによって、また新たな展開、また新たな産業にもつながってくるような話になってくるんだろう。そういったことを一応の具体例として、こういうふうな書きぶりをさせていただいておるわけであります。

塩川委員 私が気になっているのは、ビッグデータを活用したビジネスをやりましょうといった際に、新たな事業の創出という点でいうと、つまり、個々の事業者に着目をして新事業を創出しましょう、新分野に参入しましょうということなのかなと思うんですけれども、新たな産業の創出とあるんですよ、個々の事業者の事業じゃなくて。新しい産業、新産業を起こすんだ、それがどういうものなのかなというのがお聞きしたい点なんです。

山口国務大臣 産業という言い方はいろいろあるんでしょうけれども、例えば、これから、やはりIoTの時代の中で、さまざまな個人情報も含めて、あるいは個人が類推できるような情報を含めて、いろいろ集まってくるわけですね。それの分析の仕方、利活用の仕方によっては、例えば、自動運転なんてことにもなってくるわけです。

 そういった、大きく化けていく、まさにいろいろな産業も起こるでしょうし、個々の事業者がそういった事業を始めるということもあるんでしょうけれども、そういったことをイメージ、想定しておると思います。

塩川委員 それも個々の事業者に着目してのお話だと思うんです。それが大きな固まりとなってくると。ですから、一般的なIT産業とかICT産業ということを言っているわけじゃないんですよね、それ自身は現にもうあるわけですから。

 新たな産業、それは何なのかなというのが、まさに目的規定のところですから、もう一度説明いただけませんか。

山口国務大臣 先ほど申し上げたことに尽きるわけですが、産業というのもいろいろな意味合いがあるんだろうと思います。

 私も今御指摘を受けるまで、この産業という言葉を深く考えておらなかったんですが、ただやはり、例えば自動車産業にもこの関係で大きく変化を与えることがあるでしょうし、あるいはIT産業に関しても大きく変化を与えるという話にもなってくるでしょうし、そういったことを私はイメージしています。

塩川委員 燃料電池車になれば、今までのエンジンではなくて、実際にはITやあるいは電機産業なんかも一体となるような、そういう意味では新しい展開もあるのかもしれないんですけれども、ただ、個人情報保護法の議論をしているその中で新たな産業の創出と言っている、その産業がどんなものかということについて明確な御説明をいただけないというのは、議論としては大変残念だなと思っているんです。

 事務方でもいいんですけれども、例えばこういう新たな産業の創出などという文言が法律の条文の目的規定に入っているものというのは何か御存じですか。

向井政府参考人 全てを承知しているわけではございませんけれども、私の承知している限りでは存じ上げておりません。

塩川委員 そういう意味でいいますと、今回初めてということなんですよ。初めてなのに、新たな産業についての具体的な定義といいますか、御説明いただけないというのは余りにも残念なんですが、どうですか。

向井政府参考人 大臣から御答弁申し上げているとおり、やはり、ITを使った、情報の利活用を使ったいろいろな産業というのは、これまでも既にSNSとかいろいろなものを引き起こしているわけでございます。ましてや、今のようにブログとかそういうふうなものが、ちょっと前には想像もできなかったようなものがあっという間に広がるというふうなことがございます。

 情報の利活用による産業の進展というのは非常に急速でありますので、今現在まさに想像もできないようなものが情報の利活用によっては起こり得るというのがやはり実情ではないか。そういうことを踏まえた上で、新たな産業の創出というふうな言葉を使っているというふうに考えております。

塩川委員 個人情報の保護法ですから、個人情報の保護を目的とする。その場合に、有用性に配慮しつつと。その有用性の具体例として、その活用が新産業の創出等々に資するということを書き加えたということなんですけれども、そういう意味では、どんどん利活用の方が膨らんでくるわけですよね。そういうことで皆さんも御議論されておられるんですけれども。

 個々の国民に着目をして利活用という点はわかるんです。あるいは、個々の事業者についての活用のあり方というのも、それは考えることがあるでしょう。しかし、新たな産業の創出というのを保護法の目的に書き込む重さというのは極めてしっかり受けとめなければいけない、事の重大性、重要性ということを受けとめなくちゃいけないと思うんですが、その点での十分な議論がされたのかなということを率直に疑問に思うところであります。

 政府でもいろいろこの問題について議論してきているんだと思う。あるいは与党からの意見も来たんだと思うんですけれども、こういう新たな産業の創出という文言が盛り込まれるに至った経緯について、事務方で結構なんですが、説明いただけますか。

向井政府参考人 お答えいたします。

 法案の作成過程におきましては、法制局の審査、それと並行して、与党の御議論を踏まえて、与党の御承認を得て政府で出すということでございます。

 そういう議論の過程におきまして、法制局でもいろいろな議論がございました、与党の中でもいろいろな議論がございました。そういう中で、やはり目的規定においても何らかのバランスということを考えた方がいいのではないか、利活用と個人情報保護のバランス、これが一番重要ではないかということで、こういうふうな文言が入ったところでございます。

 したがいまして、例示として書かれている部分は長いですが、あくまでそれは、配慮し、個人情報の保護にというふうにつながっているというふうに考えております。

塩川委員 そのバランスというところが気になるわけで、この後も残りの時間でお聞きしようと思うんです。

 政府の世界最先端IT国家創造宣言、昨年取りまとめたものの中に新産業創出という言葉があるんですけれども、そこも、どういう議論で入ってきたのかというところがお聞きしたかったんですけれども、この世界最先端IT国家創造宣言そのものも、IT戦略を成長戦略の柱とすることを目指しているものであります。まさに、成長戦略の具体化、具現化の一つが、今回の個人情報保護法における利活用の促進ということになるわけです。

 そこで、お聞きすると、そうすると、今回の法案というのは、個人情報の保護と利活用のバランスを図るということを目的にしているということなんでしょうか。

山口国務大臣 これも何度か御答弁させていただきましたが、まさに大変革時代、そういった背景の中で、もう十年前の個人情報保護法ではなかなか対応し切れないような状況がグレーゾーン中心に起こってきた。それに対して、しっかりと交通整理をして、そこら辺を、利活用する部分は利活用できる、しかし同時に、しっかり個人情報は守っていくというふうなことで取りまとめさせていただいたのが今回の法律であろうと思っております。

塩川委員 ですから、そこのところが、目的と、配慮といいながらも、実際にはバランスという場合に、肝心の保護のところがどうなるのかというところが問われてくるわけです。

 関連して、個人情報保護委員会についてですけれども、個人情報保護委員会は、この利活用についても扱うわけですが、その中で具体的に例示をされている新産業創出ということも個人情報保護委員会の任務に当たるということでしょうか。

向井政府参考人 お答えいたします。

 新産業の創出といった産業振興的なものはもちろん経済産業省が行うということでございますが、新産業の創出も配慮した上の個人情報の利活用と個人情報の保護というもののバランスをとっていくという、個人情報保護の政策につきましては個人情報保護委員会が担うということになろうかと思います。

塩川委員 新産業創出というのは経産省の仕事というか、経産省のために入れたわけじゃないんでしょう。そういう意味では、全体の分野についてということがそもそもの、新たな産業と言う以上は。

向井政府参考人 お答えいたします。

 個人情報保護委員会の任務はあくまで個人情報の保護と利活用ということでございまして、個人情報の保護と利活用を考える場合に、新産業の創出ということに配慮することも念頭に置きながら、利活用も推進しつつ、個人情報も保護していく、そういうことだというふうに考えております。

塩川委員 最後に、大臣にお尋ねします。

 この新産業創出、新産業育成ということに配慮するということですけれども、その新産業創出、新産業育成のために個人情報の利活用を進めていけば、個人情報の保護そのものがやはり損なわれることになりはしないかという強い危惧を覚えるんですが、その点についてお答えをいただけないでしょうか。

山口国務大臣 私としては、むしろ、個人情報というものをしっかり保護することによって、国民の皆さん方の御協力も得ながら、あるいは国民の皆さん方の利便性を高めていくために、さまざまな利活用というのが出てくるんだろうと。

 さっき申し上げましたように、やはりグレーゾーンで本当に戸惑いがある中で、またさらには、御質問が数々あったんですが、当初、過剰反応もあった等々、そういう中で、こういう法改正でしっかりと交通整理をしたというんですか、これは非常に画期的な話であって、当然、さまざまな事業活動にも影響を及ぼすでしょうし。

 ただ、同時に、余りに事業中心になって、個人情報の保護がおろそかになって、個人の権利等が侵害されるようなことがないように、これはしっかりやっていく必要があると思っております。

塩川委員 この前お尋ねしたときに、携帯電話番号のこともお聞きしたわけであります。年末の骨子案では個人識別符号の例示として含まれていたのに、法案段階では個人情報に係る定義が変更されて、現時点においては一概に個人識別符号に該当するとは言えないと後退をした。その背景には、産業界から携帯電話番号を外してくれという要望があった。新産業創出を目指すということが個人情報保護法を後退させる懸念があるということを指摘せざるを得ません。

 個人情報保護法といいながら、個人情報活用による新産業育成法となりはしないのかという危惧の思いもお話ししながら、質問を終わります。

井上委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

井上委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。池内さおり君。

池内委員 私は、日本共産党を代表して、個人情報保護法及び番号法改正案に対して反対の討論を行います。

 反対する第一の理由は、番号法を改定し、機微性の高い個人情報である預貯金や特定健診情報に番号を付番し、マイナンバー制度の利用範囲を拡大するものだからです。

 我が党は、二〇一三年、番号法案そのものに対して、国民一人一人に原則不変の個人番号を付番し、個人情報をこれによって容易に照合できる仕組みをつくることは、プライバシー侵害や成り済ましなどの犯罪を常態化するおそれがあることを第一の理由として反対しましたが、今回の改正は、預貯金や特定健診など、さらに機微性の高い個人情報に番号を付番して利用するというものであり、より深刻なプライバシー侵害や成り済ましなどの犯罪を招くおそれが増すことは明らかです。

 特定健診情報には、身長、体重、腹囲の情報に加え、肝機能検査など血液検査情報等も含まれ、機微な医療等分野情報そのものです。政府も、番号法案時には、その機微性から利用範囲とはしなかったものです。それを覆し、施行後三年をめどとする附則の見直し規定をも踏みにじっての利用拡大は、これまでの言明を二重三重に覆す暴挙であり、断じて認められません。

 第二に、個人情報保護法の改定により、法の目的の中に、配慮事項として、新たな産業の創出並びに活力ある経済社会等の実現に資することを書き込むなど、個人の権利利益の保護を後退させかねないものとなっているからです。

 今回の改正は、そもそも安倍政権が成長戦略として掲げたビッグデータ活用などを促進するものであり、法案の取りまとめ過程でも、経済界からの要求で個人情報に係る定義が変更され、携帯電話の番号がその例示から外されるなど、個人情報を保護するための規定が後退しています。

 改正案は、実際の規制の内容の多くを政令や規則に委ねていますが、その際に、新たな産業の創出等の規定を足がかりに、携帯番号の規定が後退させられたように、個人情報の保護規定を後退させられる懸念が拭い切れません。

 個人情報保護委員会の新設や一定の名簿屋対策など、個人情報を保護する上で前進と評価できる改正もありますが、法の根本と今後の運用をゆがめかねない重大な問題を含んでおり、認められません。

 以上、反対討論を終わります。

井上委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

井上委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、個人情報の保護に関する法律及び行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

井上委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

井上委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、亀岡偉民君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、維新の党、公明党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。泉健太君。

泉委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明いたします。

 案文の朗読により趣旨の説明にかえさせていただきます。

    個人情報の保護に関する法律及び行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たっては、本法が個人情報の保護と利活用の均衡を図ることを目的としていることを踏まえ、我が国における個人情報の保護と利活用が進み、より良い情報通信社会が生じるよう、特に次の諸点につき適切な措置を講ずべきである。

 一 個人情報の定義等を政令等で定めるに当たっては、消費者及び事業者等に分かりやすいものとなるよう、これらの者から広く丁寧な意見の聴取に努め、保護対象を可能な限り明確化する等の措置を講ずること。

 二 情報通信分野における技術革新の著しい進展と高い専門性に円滑に対応できる制度設計とするため、民間の実態を十分把握し、関係事業者と十分に協議するとともに、認定個人情報保護団体が定める個人情報保護指針を活用すること。特に、匿名加工情報については、その規定の趣旨が利活用を促進するものであることに鑑み、個人情報保護委員会規則で基準を定めるに当たっては、効果的な利活用に配慮すること。

 三 国境を越えた個人情報の移転は、合理的で安全なサービスの提供を可能にし、社会に裨益するものであることを踏まえ、海外における個人情報の保護を図りつつ、国境を越えた個人情報の移転を不当に阻害しないよう必要な措置を講ずること。

 四 第三者提供に係る記録の作成等の義務については、その目的と実効性を確保しつつ、事業者に過度な負担とならないように十分に配慮するとともに、悪質な事業者への対策については一般の事業者に過度な負担とならないよう実態調査を行った上で、有効な措置を講ずること。

 五 個人情報の保護と利活用が業界ごとに適切に図られるよう、認定個人情報保護団体となるための事務手続などを適切に支援すること。

 六 情報通信技術の進展や事業者の事業規模や財政状況等に応じた影響等を考慮した必要な措置を講ずることが重要であるとの視点に立ち、個人情報保護委員会は、法や個人情報保護委員会規則の適切かつ柔軟な運用に努めるとともに、事業者や関係団体に対し、必要な支援を提供すること。そのために、個人情報保護委員会の委員、専門委員及び事務局について、民間における個人情報の利活用の実務について十分な知見を持つ者、消費者保護に精通する者などをバランスよく登用すること。

 七 各地方公共団体において、地方公共団体が策定し、又は実施する個人情報の保護に関する施策の見直しに向けた検討が今後行われることが想定されることから、その円滑な検討に資するよう、相談窓口を設け、必要な情報提供を行うなど国が地方公共団体に対して協力を行うための体制整備に努めること。

 八 我が国の個人情報の保護水準が国際的に十分なものであることを諸外国に積極的に周知し、相互理解を深めるよう努めること。

 九 情報セキュリティ対策が個人情報の保護の実効性の確保にとって重要であることから、個人情報取扱事業者等が講ずべき情報セキュリティ対策の在り方について検討し、必要な支援に努めること。

 十 情報通信技術の進展により、漏えいした個人情報の拡散が容易になるなどの環境変化の中で、個人の権利利益侵害を未然に防ぐことが一層重要になっていることから、民間におけるプライバシー影響評価等によるプライバシー・バイ・デザインの取組を支援し、さらなる個人情報の適正な取扱いの確保を図ること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。

井上委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

井上委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。山口国務大臣。

山口国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、その御趣旨を十分に尊重してまいりたいと思います。ありがとうございました。(拍手)

    ―――――――――――――

井上委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

井上委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

井上委員長 次回は、来る二十二日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十五分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.