衆議院

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第11号 平成28年4月1日(金曜日)

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平成二十八年四月一日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 西村 康稔君

   理事 亀岡 偉民君 理事 平  将明君

   理事 武井 俊輔君 理事 中根 一幸君

   理事 平井たくや君 理事 緒方林太郎君

   理事 後藤 祐一君 理事 佐藤 茂樹君

      青山 周平君    池田 佳隆君

      石崎  徹君    岩田 和親君

      大隈 和英君    岡下 昌平君

      勝沼 栄明君    門山 宏哲君

      神谷  昇君    木内  均君

      北村 茂男君    高木 宏壽君

      武部  新君    中山 展宏君

      長尾  敬君    ふくだ峰之君

      松本 洋平君    宮崎 政久君

      若狭  勝君    大串 博志君

      柿沢 未途君    小宮山泰子君

      郡  和子君    鈴木 義弘君

      高井 崇志君    古本伸一郎君

      江田 康幸君    濱村  進君

      真山 祐一君    池内さおり君

      島津 幸広君    河野 正美君

    …………………………………

   国務大臣         岩城 光英君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     菅  義偉君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (行政改革担当)     河野 太郎君

   国務大臣         島尻安伊子君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)   石原 伸晃君

   国務大臣

   (一億総活躍担当)

   (少子化対策担当)    加藤 勝信君

   外務副大臣        木原 誠二君

   文部科学副大臣      冨岡  勉君

   防衛副大臣        若宮 健嗣君

   内閣府大臣政務官     高木 宏壽君

   財務大臣政務官      大岡 敏孝君

   厚生労働大臣政務官    太田 房江君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  田中 勝也君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房独立公文書管理監)        佐藤 隆文君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 中西 宏典君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   武川 光夫君

   政府参考人

   (警察庁長官官房総括審議官)           村田  隆君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    三浦 正充君

   政府参考人

   (警察庁交通局長)    井上 剛志君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    沖田 芳樹君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 佐藤 達夫君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   茶谷 栄治君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房総括審議官)         勝田 智明君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           梅田 珠実君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           吉本 明子君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局次長)           苧谷 秀信君

   内閣委員会専門員     室井 純子君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月三十一日

 辞任         補欠選任

  北村 茂男君     田村 憲久君

  濱村  進君     大口 善徳君

同日

 辞任         補欠選任

  田村 憲久君     北村 茂男君

  大口 善徳君     濱村  進君

四月一日

 辞任         補欠選任

  石崎  徹君     門山 宏哲君

  松本 洋平君     勝沼 栄明君

  阿部 知子君     郡  和子君

同日

 辞任         補欠選任

  勝沼 栄明君     松本 洋平君

  門山 宏哲君     石崎  徹君

  郡  和子君     阿部 知子君

    ―――――――――――――

四月一日

 有人国境離島地域の保全及び特定有人国境離島地域に係る地域社会の維持に関する特別措置法案(谷川弥一君外十五名提出、衆法第一八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 内閣の重要政策に関する件

 公務員の制度及び給与並びに行政機構に関する件

 栄典及び公式制度に関する件

 男女共同参画社会の形成の促進に関する件

 国民生活の安定及び向上に関する件

 警察に関する件


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     ――――◇―――――

西村委員長 これより会議を開きます。

 内閣の重要政策に関する件、公務員の制度及び給与並びに行政機構に関する件、栄典及び公式制度に関する件、男女共同参画社会の形成の促進に関する件、国民生活の安定及び向上に関する件及び警察に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官田中勝也君、内閣府大臣官房独立公文書管理監佐藤隆文君、内閣府大臣官房審議官中西宏典君、内閣府政策統括官武川光夫君、警察庁長官官房総括審議官村田隆君、警察庁刑事局長三浦正充君、警察庁交通局長井上剛志君、警察庁警備局長沖田芳樹君、外務省大臣官房審議官佐藤達夫君、財務省主計局次長茶谷栄治君、厚生労働省大臣官房総括審議官勝田智明君、厚生労働省大臣官房審議官梅田珠実君、厚生労働省大臣官房審議官吉本明子君、厚生労働省職業安定局次長苧谷秀信君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

西村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

西村委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。亀岡偉民君。

亀岡委員 自由民主党の亀岡偉民です。

 きょうは、警察というか、死因究明についてちょっとお尋ねをしたいと思います。

 実は、日本は世界で一番治安のいい国と言われておりますけれども、最近は、どの新聞を見ても必ず何か犯罪が起こるというような状況で、治安が悪化しております。そんな中で、犯罪を防止するためには、どうしてもいろいろな手だてをしなければいけない。しかも、抑止力を高めるためにどうしたらいいか。まさに大事なことがたくさんあるわけです。

 実は、きょう資料を出させていただきましたが、この死体取扱数の推移というのを見ていただければわかるんですけれども、残念ながら減ってはいないんですね。ただ、犯罪死体というのは減っているんですけれども、取扱数がふえている。これはちょっと不思議なんですが、この表全体を見ていると、どうも、全体に減ったという印象は全くないんですね。

 私なんかがちょっと疑問に思うのは、死体だといって通報があると一番最初に警察官が行く、警察官がその届けを受けた場合には現場に行き、犯罪性の有無について判断をしていると思うんですけれども、その警察官が果たして専門家なのかどうか。その警察官が行って、ちゃんと判断できるだけの能力があるんだろうか、これを私は非常に疑問に思っているんですね。

 なぜかというと、過去の事件の中でもそうなんですけれども、自殺等として判断していたもので、その後、犯罪死であると判明したものが五十二件もあったんですね。具体的なもので一番近い例でいうと、平成二十七年、京都、大阪、兵庫及び奈良において発生した青酸化合物の一連の殺人事件には五件の殺人があったわけですが、これは病死とされていたんですね。

 ですから、本当にこれはきちんとしなきゃいけない。きちんと対応しない限り、隠れた犯罪があるかもしれない。これを私は非常に疑問に思っているんです。

 ぜひ、検視官と言われている、プロと言われている警察の人たちが、どんな資格を持って、どれぐらい現場に出ているのかだけまず教えていただきたいと思います。

三浦政府参考人 検視官につきましては、警察における死体取り扱いの専門家と位置づけておりまして、原則として、刑事部門における十年以上の捜査経験を有する、あるいは捜査幹部として殺人、強盗等の捜査経験を四年以上有する警視または警部の階級にある警察官で、警察大学校における専門的な研修を受けた者をこれに充てております。

 平成二十七年中の全国の検視官の臨場率は七六%でございまして、何らかの理由で臨場できなかった死体につきましても、検視官が現場から送信された画像により死体の状況等を確認することによりまして犯罪死の見逃し防止に努めているところでございます。

亀岡委員 その経験値十年以上というのは、これは先輩にくっついて行くんでしょうけれども、後から言った研修を受けているというのは、どのような研修なのか。この研修はたった二カ月の研修だと思うんですが、この研修の中身というのはどんなものなんですか。

三浦政府参考人 警察庁では、検視官に任用される前後の警察官に対し、検視等に関する知識を習得させ、検視官としての職務を遂行し得る実力を涵養するための研修を行っております。

 この研修は、年二回に分けまして六十人ずつ、計百二十人を対象に実施しておりまして、おおむね二カ月間かけまして、大学法医学教室の教授等による法医学、解剖生理学等の講義や、大学法医学教室における解剖実習等を行っているところでございます。

亀岡委員 たった二カ月の解剖実習とかの知識で、本当にどれぐらいの専門家になれるんだろうと私は思うんですね。だからこそ、臨場率が高くても実際の解明ができていないというのが事実ではないかと私は思うんですね。

 一番大事なのは、所見でしっかりと判断をする。そして、その所見で見間違うと、全部犯罪が見過ごされていってしまう、または、もし重大な病気があった場合でもそれも見逃してしまう。ですから、この所見というのが私は物すごく大事だと思うんですが、果たして、たった二カ月間でその能力が本当に身につくんだろうか。私が二カ月間で身につくかといったら、物すごく自分は厳しいと思うんです。

 ぜひ、研修期間に関しては、本当にそれでいいのかどうか、警察はそれでいいと思っているのか、ちょっと聞かせていただきたいと思うんです。

三浦政府参考人 先ほど申し上げましたとおり、検視官の研修期間はおおむね二カ月間ということでございますけれども、その間、警察大学校等に泊まり込みで集中的に行っておりまして、またそのカリキュラムも、大学法医学教室の教授等による講義や事例研究、大学での解剖実習、現役の検視官による講義でありますとか検視官に同行しての現場での研修等、充実した内容となっているものと認識をしております。

 警察庁としては、引き続き、検視官に対する研修内容の充実に努めまして、その技術や能力の向上に努めてまいりたいと考えております。

亀岡委員 この研修は、私は、二カ月の研修のみならず、本来であれば一年に一回、最低二年に一回でもまた新たに研修を受けながら、最新事例に対する研修期間ということを設けながら、できれば、年数を積み重ねることによって新しい知識も入っていくような研修制度をつくる必要があると思うんですね。そうしていかないと、その二カ月の研修、ずっとそれだけの研修で所見を判断してしまう、だから、間違いを一回起こしたらずっと間違いが続いてしまうという可能性もあるので、もう一回その辺は考え直していただきたいと思うんですね。

 それから、多分、検視の次に、犯罪の見逃し防止から、ちょっと疑いがあると思うものは解剖に回すと思うんですね。この解剖というのは、大事なのは、解剖することによって死因を特定できる、死因を究明できる、さらには、ひょっとしたら公衆衛生上の病気も発見できるかもしれない。

 実は、二十四年に死因究明等推進法というのができて、かなり一生懸命対応していただいて、解剖率が上がっていって犯罪防止につながる、またはいろいろなものに役立つのかなと思っていると、結果的に全然動いていないような状況があるんですね。

 だから、一番大事なのは、解剖医の数が少ない。警察で解剖を委託している解剖医というのは、実際には日本ではどれぐらいいるんですか。

三浦政府参考人 これはあくまで警察が司法解剖等を委託している解剖医の数ということで申し上げますと、平成二十八年一月現在で、全国で約百五十名でございます。

亀岡委員 百五十人しかいなくて最初の表の死体取扱数を解剖するのは、全然足りませんよね。だから、本当に真剣に何かしようと思ってもできないからこそ、最初の所見でひょっとしたら間違えやすい環境というのが起こり得るんじゃないだろうか。だから、これはもっと真剣に考えていかないと、世界一安心、安全な国、これからインバウンドで外国人のお客さんも呼ぶ、そして良質な、いい方に日本に住んでもらうための安心、安全感というのは与えることができないと思うんですね。

 この解剖医の数というのは百五十人というふうに今聞きましたけれども、一人当たりどれぐらいの解剖を年間行うことになるんですか。

三浦政府参考人 警察が委託をしている解剖実施数について見ますと、平成二十七年中においては、司法解剖が八千四百二十四体、死因・身元調査法に基づく解剖が二千三百九十五体の計一万八百十九体となっておりまして、これを解剖医の数百五十人で割りますと、一人当たり年間約七十二体の解剖を実施していただいているという計算になります。

 個々の解剖医の勤務状況等によりましてお引き受けいただいている解剖数にばらつきが見られるところでありますが、多い方で年間三百体以上、少ない方では年間数体ということになっております。

亀岡委員 そんなばらつきがあって、もう少し警察は真剣に取り組まなきゃいけないと私が思うのは、場所によっては二十体以下、片や三百、この差は物すごく大きいですよね。だから、もうちょっとばらつきをしっかり考えながら、本当に解剖医をふやしていかないと死因究明はできない。そして、当然、解剖医が少ないから頼みにくいから、では所見で自分たちが判断してしまおう、そのときに間違いが起こりやすいという環境をつくっているんじゃないかと思うんですね。

 だから、私は、せっかく二十四年に法案を通しても、この二年間で対応がしっかりできていない、何のために法案を通したんだ、もう一回新たにつくり直さなきゃだめなのかというぐらい、せっかく法をつくってしっかりやれる体制をつくろうねと言っているにもかかわらず、これではこれから逆に不安をあおるばかりになってしまうような気がするので、もうちょっとそこは真剣に対応していただきたいと思います。

 それから、私は、解剖というのはすごく大事だと思っているんです。死因を究明する解剖というのは、当然、犯罪を防止するため、または犯罪があったかどうかということをしっかりと究明しなければいけないんですけれども、解剖することによって、公衆衛生上の病気とか、また変わった病気で亡くなった可能性もある、そういうことも検知できる可能性がある。そして、できれば、もしそういうことがたくさん起こった場合においては、今度は医学生の中でその問題を共有しながら新たな取り組みができる可能性があると私は思うんです。

 この検視、解剖というのが果たして、例えば厚生労働省がしっかりとそのデータを共有しながら、一緒にこれからその状況をもらいながら病気にも対応していく、もし何かあった場合にはそれに取り組むような体制ができている、そのかわり、犯罪の場合は警察と一緒になって抑止のための検視にも一緒に立ち会う、そういうデータが厚生労働省は一緒に共有できているのかどうか、ちょっと聞かせてください。

梅田政府参考人 お答えいたします。

 死亡診断書及び死体検案書は我が国の死因統計作成の資料となっておりまして、その統計は国民の保健、医療、福祉に関する施策や医学研究に活用されております。これらの作成時に、医師が解剖した場合にはその所見も踏まえ、死亡の原因を記載することによって我が国の正確な死因が把握され、施策に活用されているというふうに認識しております。

 また、平成二十六年六月に閣議決定されました死因究明等推進計画におきまして、死因究明により得られた情報の活用として、異状死死因究明支援事業等を通じて解剖等の事例を収集、分析し、死因究明体制の充実、疾病予防、健康長寿対策等に活用していくというふうにされております。

 これを受けまして、厚生労働省といたしましては、平成二十七年度より、異状死死因究明支援事業等に対する検証事業を開始しております。

 解剖結果を、死因究明体制の充実、そして疾病予防や健康長寿対策等に活用してまいりたいと考えております。

亀岡委員 ということは、もうデータの共有はできているというふうに考えていいんですね。大丈夫ですね。多分、今の話だと、し始まったというふうに聞こえたんですね。

 私は、大事なのは、やはりしっかりと、どんな病気であったか、またはこれが本当にどういう原因であったか、そして、何か見つかったものに対して同じ情報を共有しながら、公衆衛生上、新たな病気にならないために活用できるようなものに変えていくのかというのは物すごく大事なことなので、そこは必ず共有してもらいたいんですね。しっかりとそのデータを共有できるということが、犯罪抑止のみならず、公衆衛生上役に立つわけです。

 それからもう一つ、冨岡文科副大臣に来ていただいていますけれども、まさに文科省もこのデータを共有して、もしいろいろなことがあって、死体解剖によって生まれてきた新しい事実関係や情報というものを今度は新しく医学生にしっかりと教えていく、そして新たに医学向上につながるようにしていかなければこの意味がないと私は思うんですね。

 だから、この三省の連携があって初めて効果があらわれるような気がするんですが、現在どうなっているのか、教えていただければと思います。

冨岡副大臣 亀岡委員の質問にお答えします。

 解剖には何種類かあって、今、病死したものは病理解剖というものがあって、これは剖検輯報というものでデータはちゃんととってあります。ただ、司法解剖に属するような、いわゆる警察がやるような解剖は今のところはありません。

 したがいまして、文科省では、司法解剖のバックデータを共有していないので、これからは、医療研究や死因究明等に従事する人材の資質向上の観点から、当該データを活用することをやっていきたいと思っております。

 したがいまして、今、厚生労働省、警察、それから法医は文科の管轄になりますので、連携をしながら死因究明に取り組んでまいりたいと思っております。

亀岡委員 まさにそこが一番お願いしたいところでありまして、十六万の死体取扱数がある中で、それぞれがばらばらでお互い眺めているという状況ではなくて、本当にその亡くなられた方々が犯罪に巻き込まれたのか、絶対に犯罪を許さないという態度でまずしっかりとやりながら、それが厚生労働省や文科省と一緒に研究材料にも使われていく、そしてさらなる予防医学に使えるようにしていく、これは当たり前の話だと思うんですね。だから、そこにお金を幾ら使ったっておかしくない。

 本当にこれからしっかりと日本が、安全で、世界で一番優秀な国であるというふうに認めてもらうためにも、どうしてもこれは取り組まなきゃならないことだと思いますし、これから、知能犯で、いろいろ画策しながら犯罪をやってくる人たちがふえてきている中で、絶対に許さないという態度を示すことによってかなり犯罪は防げるんじゃないかと私は思っていますので、ぜひそれもお願いしたいと思います。

 実は、その中で、ぜひ河野大臣にお願いしたいことがあります。

 所見で最初に警察官が行くんですけれども、その警察官がかなりの機材を持ってしっかりと、例えば三省合同で中央にすばらしいセンターをつくることによって、現場に行った映像ほか、その場に全部入ってくる、その映像を見ながら、どこをもう一回見ろ、どこをもう一回見ろと。その送られてくるデータが報告書として全部そのまま残っていくということで、一々報告書を書かなくても、その報告される映像そして音声が全部データとして残っていって、その結果、できれば死体を解剖に回してみたり、そしてその一つ一つの事案全てを厚生労働省や文科省と一緒に情報が共有できて、そして、もし何もなければそれでデータとして残っていく。それはそれでデータとして残っていって、何かあったときにすぐにそれを引っ張り出すことができて、いろいろな事案に対応できるような環境がつくれる。

 だから、私は、一番大事なのは、三省共有のみならず、それは警察で取りまとめをしながら、内閣府でもいいですけれども、本当に情報を共有しながら、現場の警察官だけに任せるのではなくて、まさにそのデータが瞬時にして本部に来て、中央センターの方でその映像を見て判断しながら指示ができて、その指示のもとに判断がされ、そしてそれが解剖に回され、法医学の方に回されていくとか、そこを全部共通化して一つのデータとして生かしていければ、報告書を書く手間暇も要りませんし、まさにそれが一番のビッグデータとして残っていって、これからの犯罪抑止にもなるし、新しい医学の発展にもつながるし、多くの学者の勉強にもなっていくと思うんです。

 ぜひこれは河野大臣にお願いしたいことなので、取り組みを考えていただければと思います。よろしくお願いします。

河野国務大臣 犯罪死を見逃すということがあってはならないと思いますし、安全、安心な国日本をつくるためにはそれを見逃さないという、まさに先生のおっしゃるとおりだと思います。

 二十八年度の予算も、この方面は前年度七千五百万円ふやしていただきまして、二十八億円を超える予算をいただきましたので、犯罪死を見逃さないように、警察を挙げて、また各省庁しっかり連携をとってやってまいりたいと思います。

亀岡委員 ありがとうございます。

 ぜひ、初期投資にこだわらず、思い切って投資をしていただいて、しかしこれは日本の安心、安全につながりますし、それ以上に、今度は世界に、日本が一番売るべきものの一つとしてこれをアピールすることができますので、各省庁にこだわらず、縦割り意識を全部なくして、しっかりと河野大臣のもとで一元化して取り組んでいただきたい。そのことをお願いして、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

西村委員長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 転校生になりました民進党の鈴木義弘です。どうぞよろしくお願いします。

 質問時間をいただきましたことに感謝申し上げたいと思います。

 昨年の夏前に、地元のLP事業者さんから依頼にあったんです。自分たちがLPのボンベのところに一月に一回とか点検に行くんですけれども、最近すごく行政の指導が厳しくなって、ボンベが置いてあるところと、エアコンが近くにあるんだそうです、それが近過ぎるから是正しろ、こういうふうにLP事業者に要請をするんだそうです。

 これはどうなっているのというふうに経産省に問い合わせしました。そうしましたら、法律で、電源のあるところとLPボンベのところを二メーター以上離しなさいと。それができないんだったら、不燃材で覆った邪魔板みたいなものを立てなさい、こういう指導をしているんだと。法律に二メーター以上離しなさいというのが書かれている、でも、エアコンを後からつけるのはLP事業者じゃないんです。でも、エアコンがついちゃう。例えば、浄化槽のコンセントも同じなんです。

 これは、きのう保安の担当の課長さんから、こういうペーパーを出して業界の方に指導を徹底するんだというので、きょうは資料配付していないんですけれども、こういうチラシを出してやっています。

 例えば、建物であれば国交省の管轄になるんです。LPガスのボンベだとかエアコンの機材は経産省が所管している。でも、世の中には、自分たちが生活したり企業活動をするに当たって、縦割り行政じゃないところで生活をしているわけですね。でも、片や安全、安心を担保していくんだ、それで、業界を指導しながら協力をしてもらう。この文書一枚を見ても、協力なんです。

 何を申し上げたいかといえば、結局、きょうは何の日なのかと聞いたら、エープリルフールじゃなくて、内閣府と内閣官房のスリム化法がきょうからスタートするわけです。私たちも、当時、維新の党としても賛成した法案だったと思います。

 では、今申し上げたように、一つの事例です、結局、省庁間にまたがるようなものを総合調整するのが内閣府なんだという役割があるわけですね。議員立法もいろいろな形で、二省庁にまたがるようなものは内閣委員会に持ち込まれます。

 歴史をひもといてみれば、平成九年の橋本内閣の時代にこの省庁再編がスタートしたというふうに聞いていますし、バブルがはじけた後の話ですけれども、国を挙げて経済の再生が最優先で歴代内閣が取り組んできたし、安倍総理になって、経済再生、この道しかないと言い切って、アベノミクスと称していろいろな政策に取り組んでこられたんだと思うんです。

 この内閣委員会も、八人も大臣がいるんだよな、大変だよなと言いながら、委員会の委員長初め理事の先生方は、質問時間を確保する、大臣を招聘するのにいろいろ知恵を出されてやっているんです。

 橋本内閣のときに提出された行政改革会議の中間報告がもとになって、この行革が進んできたというふうに聞いております。内閣府に広義の調整事務の全てを担わせ、また実施事務を担当する外局の多くを附置することは、内閣府の組織を膨大なものとし、かえってその総合調整機能に支障を来すおそれがあることから、人事・組織管理等の行政管理事務、行政監察事務等については、別に主務の大臣を長として総務省を設ける、これはもう実施されているようです、これを担わせることによって、人事機能の所属については、総務省ほか、内閣官房、内閣府との関係において引き続き検討する、それでスリム化法ができたんだと思うんです。

 でも、今前段でお話ししたように、一つの省の中で完結できるような案件であれば連携をとってやったとしても、それをまたがざるを得ないような案件が出てきたときにどうやって内閣府、内閣官房が調整機能を果たすのか、それをまず初めにお尋ねしたいと思います。

河野国務大臣 橋本行革のときに内閣府というのができたわけでございますが、これは、総理大臣の機能をサポートする、あるいは官邸の機能をサポートする、それをもう少し強力にしようということでスタッフを集めたわけでございます。当初は、各省庁をまたがるような総合調整機能は内閣官房あるいは内閣府が担うということでスタートいたしました。

 各省庁をまたがっているものというのは先生がおっしゃるように世の中たくさんあるものですから、いろいろなものが内閣官房や内閣府に集まってきて、この二つの役所は相当肥大化をいたしました。例えば、もともと内閣官房は省庁再編時が千百人だったのが、今、二千九百人でございます。内閣府は、二千四百人から三千百人。何でもかんでも内閣府、内閣官房ということで、この内閣委員会も、大臣の所信表明に八人参りまして、そのほかに財務大臣・副総理がいらっしゃいますから、内閣府、内閣官房にかかわっている大臣が九人いるという状況でございます。

 どんどんと内閣官房、内閣府が肥大化したものですから、私が自民党の行政改革推進本部長であったときに、その前から内閣府、内閣官房を何とかせねばいかぬという議論が与党内でございまして、今いらっしゃいませんけれども、平井さんなどが中心になっていろいろな作業をしてくださいましたので、それを提言としてまとめて、内閣官房のものはなるべく内閣府に出す、内閣府が担当している業務はなるべく各省庁に割り振るということで、さまざまな業務をきょう付で内閣府から各省庁に移管をさせていただきました。

 私も、犯罪被害者の基本計画の推進なんというのが内閣府から国家公安委員会に移管されたものですから、きょうの閣議でその業務を受け取ったということになります。

 もう一つありますのが、それまでは、各省庁をまたがる業務というのは内閣官房が総合的なことをやり、特定のものについては内閣府が総合調整を担うということで、この二つの役所しか総合調整をすることができなかったわけでございますが、それは幾ら何でもこの御時世に合わないだろうということで、閣議決定の範囲内で各省庁に総合調整の機能を担わすことができるようにいたしました。

 今までは自分の省庁の担当の業務しかできなかったわけですけれども、閣議決定の範囲内でこの役所と決めればその役所が先頭になって政府内の総合調整を担うことができるようになりましたので、今後は、二つ以上の複数の府省にまたがるようなものであっても、一つの省庁を決めて、閣議決定でその省庁に総合調整の機能を担わすことができるようになりましたので、内閣府や内閣官房に何でもかんでも集めるということは必要なくなりました。

 ですから、スリム化法を受けまして、内閣官房の業務はさらに内閣府へ出していく、内閣府の業務は、各府省に担わすことができるようになったものは各府省に総合調整機能をつけて出していくということをやりたいと思っておりますし、今与党では、議員立法で出されるものも何でもかんでも内閣府にお願いをするのではなくて、省庁を決めて、そこに総合調整機能を担わすことによって各省庁に事務を任せるということを議員立法でもやってくださいというお願いをしているところでございますので、内閣府あるいは内閣官房は時の重要課題に対応するものをしっかりやる、そうでないものは各府省にどんどん移管をしていく、そういう体制をとってまいりたいというふうに思っております。

鈴木(義)委員 ありがとうございます。

 地方自治体の場合は、ワンストップサービスで、住民の方へのサービスを向上させようという取り組みをしているんですけれども、今申し上げたようなガスの件もそうですね、そうすると、今大臣から御答弁いただいたように、こういう案件がもし出てきたときには経産省が国交の方に話をするということでよろしいんでしょうか。

河野国務大臣 ガスの方が今どうなっているかちょっとわかりませんが、閣議決定で総合調整機能を各府省に担わせることができるようになりましたので、必要とあらば、政府としてはどんどんそういうことを使ってまいりたいと思っております。

鈴木(義)委員 しつこいようですけれども、課題というんですか、それをとりあえず持ち込まなくちゃいけないところは内閣府でいいということなんですか。

河野国務大臣 それは、課題に応じて、地方自治体であるかもしれませんし、各省庁であるかもしれませんのでちょっと一概に申し上げることはできませんが、個別具体的にしっかりと対応できるようにしてまいりたいと思います。

鈴木(義)委員 では、今大臣から御答弁いただいたことで、何点か確認をしたいと思います。

 四月一日からスタートするんですけれども、業務の所管と人事のねじれ、併任を含めた出向者がふえ、生え抜き職員が育たなかったというふうな話もあります。きのうも、内閣府の職員さんにどちらから来られているんですかと聞いたら、この後、島尻大臣にお尋ねする案件は文科省からの出向だ、こういう話なんですね。

 大体、出向で来て十年もいることはないでしょうから、二年か三年でお帰りになる。それの繰り返しになっていくわけです。そうすると、生え抜きの職員が育たない、こういう話になっていくんだと思うんですけれども、それはもうこの四月一日から解消していくのかどうか。

 あと、内閣府と内閣官房の組織の見直しはされたんですけれども、今後も、大臣官庁、幾つもの省庁がありますけれども、そのあり方を含めて、行革は約二十年前にやって、ほとんど手がついてきていなくて、内閣府と内閣官房だけはスリム化法ができて、それはきちっとして、権限の移譲なり担当する所管を分けましょうという話になったんです。

 では、今ある省庁のあり方についてはどう考えていくのかということだと思うんですが、御所見をいただきたいと思います。

河野国務大臣 生え抜きがよくて、そうでなければだめだということには決してならないと私は思っております。

 今、消費者庁も担当しておりますが、消費者庁にはいろいろな役所から人が来ております。また、俗に言う生え抜きと言われる、消費者庁に新たに入省する職員というのも、もう数年たっていますので、そういう人間が極めて有機的にうまく動いているのではないかと思いますので、生え抜きがいかぬということでは決してないと思います。

 内閣府の中でも得意分野というのがだんだんできてきておりますので、そこはいろいろな人材育成の仕組みというのを活用して、しっかり必要な人材を育てるということは今後もやってまいりたいというふうに思っております。

 それから、省庁については、橋本行革から相当時間がたちました。あのころのニーズと今の政策課題というのも大分違ってきているところもありますので、これは不断の見直しをしなければならないというふうに思っておりまして、今の省庁のあり方が最適かどうかということは、行革のところで検討をしっかりしているところでございます。

鈴木(義)委員 ありがとうございます。

 では、先週もお尋ねした案件で、科学技術の関係で島尻大臣にお尋ねしたいと思います。

 安倍内閣がスタートして、総合科学技術会議で総理は次のように述べておられます。私たちは再び世界一を目指します、世界一を目指すためには、何といってもイノベーションであります、安倍政権として、新しい方針として、イノベーションを重視していく、このことをはっきり示していきたいと述べられているんですね。

 ただし、科学技術は一朝一夕に生まれるものではないと私は思うんです。時代の背景や趨勢により、どんなにすばらしい発明、発見でも簡単に世に出るわけじゃなくて、その時代の背景があって、欲していればその発明、発見が世に出てくるんですけれども、時代がちょっとずれているだけでその発明、発見というのが世に出ない、私はそう思っているんです。

 この総理の発言で、世界一を目指すと言うんですけれども、日本の得意な分野だったら世界一は目指せるんですけれども、不得意な分野は無理なんです。でも、なぜか世界一、こういう言い方をするんですね。

 何の分野の何を目指すのか、その土壌が日本にあるのかということなんです。漠然と、世界一を目指すんだと。まあ、日本一を目指すという自治体の首長さんもいらっしゃるんですけれども。ですから、研究開発の分野のトレンドを探していかなければ、そのトレンドに乗っていくことができなければ花が咲かない、実もならないということです。

 人、物、金、この中の強みを生かして、長期的視点に立って国家戦略になり得る技術を研ぎ澄ましていかなければならないと思うんです。内閣がかわっても、政権交代が仮に起きたとしても、国家戦略の長期的な視点は変えちゃいけないんだと思うんですね。

 まず、そこの考え方を大臣にお尋ねしたいと思います。

島尻国務大臣 鈴木委員には、科学技術に対する御指導をいただきまして、ありがとうございます。

 今、御質問の中にもございましたけれども、前回議員のお尋ねになっていた例えばライフサイエンスのあり方等、大変重要な御質問もいただいていたというふうに思っています。

 あれ以来、かなり世の中、AIの方向性とか、あるいは倫理的、法制度的な課題についてどのように我が国として方向性を示していくんだというようなことがそれこそトレンドとしてあるのではないかというふうに思っておりますけれども、私も、研究に影響するような規制ではなくて、しっかりとした倫理的、法制度的あるいは社会的課題について十分に配慮して制度的枠組みの構築というのを考えていきたいと思いますので、遺伝子の診断あるいは再生医療、AI等、そういった部分についての御指導もまた賜りたいというふうに思います。

 今の御質問でございます、総理が、世界一を目指すためにはイノベーションが必要であり、イノベーションを重視していくということでございます。

 我が国は、先ほどおっしゃった、四月一日、きょうからまた第五期科学技術基本計画が始まるわけでありますけれども、目指す我が国の姿として、持続的な成長と地域社会の自律的な発展、国及び国民の安全、安心の確保と豊かで質の高い生活の実現、そして地球規模課題への対応と世界の発展への貢献というものを掲げております。これを掲げまして、我々としては、超スマート社会の実現に向けて取り組んでいくこととしております。

 例えば、自動走行、インフラ管理、防災等のさまざまな分野で利用可能な三次元の地図情報を基盤として構築していくとか、さまざまな分野をまたがるシステムの構築は困難な課題ではありますけれども、御質問の中でありました、では何を我が国の強みとしてやっていくのかということでありますけれども、やはり我が国の産業界が伝統的に強みとしている生産技術を生かすことによってこの取り組みを成功に導く土壌は国内に十分備わっているというふうに認識しておりまして、こういった強みを生かしてやっていきたいというふうに思っております。

 ただ、一方、委員の御指摘にもございますけれども、例えば基礎研究の成果が世の中に出るまでは長期的な視点で見なければいけない、やはり技術の進歩あるいは社会の変化に的確に対応していくための柔軟性あるいは機動性も重要だということでございまして、科学技術を担当する大臣としては、この二つのことをしっかりと、バランスというわけではありませんけれども、どちらも大事だということで、しっかり取り組んでいきたいというふうに考えております。

鈴木(義)委員 例えば、三十年ちょっと前に米の自由化が叫ばれたときに、何が一番嫌だったのかといったら、カリフォルニア米という、F1と言われるハイブリッド米なんです。ですから、種を植えて、もみがとれない。毎年毎年、アメリカの種苗会社から種を買わなくちゃいけない。では、その種はどこが一番最初に手をかけたのか。日本の琉球大学の先生だったわけです。それが中国を経由してアメリカに行って花が咲いて、カリフォルニア米になったわけです。

 米がどうだという話は農水委員会で、またTPP特別委員会で話をされると思うんです。

 それともう一つ、ヒトゲノムと言われた遺伝子の配列のものも、一番最初に手がけたのは日本の企業、メーカーさんだったわけです。それが、バブルがはじけて研究開発にお金を投資するのをどんどん削られてしまって、四百か五百ぐらいのパターンは解析できたんですけれども、大半は、アメリカの企業さんが六千パターンの解析をしてしまった。当時、十年までいかないと思うんですけれども、特許庁長官が、ゲノムは日本でやっても、もう六千パターンわかってしまっていたら、これ以上研究開発しても無駄な取り組みになってしまうだろうと。そこのところを言っているわけです。

 今大臣から御説明いただいたのは、アバウトな言い方なんですね。それは間違っていないんですけれども、でも、日本発で研究開発したものが結局よその国に、とられるという言い方はちょっと語弊があるんですけれども、花を咲かされちゃっているわけですね。そこをどう育てていくか、国内にとどめて温めて、花を咲かせて実をならせるか、それが国家戦略だと思うんです。だから、内閣がかわろうが政権がかわろうが、それは変えちゃいけないんだと思うんです。

 今はほとんど、エントリーをしないと補助金を出さない制度になっているんです。科研費もそうです。今の総合科学技術会議でもそうなんです。エントリーしてもらって初めて審査して、あなたに補助金を出しますよというやり方をしているんですけれども、そうじゃないやり方をやはり模索していかないと、もしかしたら、全然日本じゃないところで花が咲いてしまって、あのときもう少しサポートしてあげておけばよかったなという話になると思うんです。

 そこのところをどうお考えになっているか、お尋ねしたいと思います。

島尻国務大臣 委員の御指摘は、まさにおっしゃるとおりだと私も思っております。

 今、CSTIのもとに戦略的イノベーション創造プログラムそして革新的研究開発推進プログラムという二つ、SIPとImPACTというふうに呼ばれているものでありますけれども、これがやっと動き出しておりまして、徐々にその成果も出ているというふうに私も認識をしております。

 委員御指摘のように、やはり国家戦略としてどこに重点的に予算をつけて、それを開発していくのか。やはり出口というのは、今、我々人類が抱えているいろいろな課題がありますけれども、その課題に対する解決策、解決をするということが出口なんだというふうに思っておりまして、その点、先ほどお話をさせていただきました基本計画で掲げているものに向けて、しっかりと政府としても取り組んでいきたいというふうに考えております。

鈴木(義)委員 コラボレーションすることによって、新しいイノベーションが起きるんだと思うんですね。でも、先ほど河野大臣からお答えがありましたけれども、人が交流していく中で確かにきちっとした仕事はできるんだと思うんですけれども、今みたいな話はやはり一貫性がないとつながっていかないんだと思うんです。

 その役目が内閣府にあって担当の大臣を置かれているということであれば、やはりそれはきちっと申し送りするなり、どこまでのものがかちっとできるかわかりませんけれども、最終形というのはSIPで基礎研究から実用化、事業化までというふうに見据えて、そこに選択と集中をしていくんだというのはわかるんです。

 例えば、スーパーコンピューター「京」も、世界一スピードが速いんだといって喜ぶんです。では、どこの国にこのコンピューターを売ったんですかという話です。事業化というのは、国内だけの話じゃなくて、そのコンピューターをつくったら、それを売るというところが最後の事業化だと思うんですね。

 だから、今回の五百億も、予算を割いて技術会議の方で重点的に配分をするのはいいんですけれども、実用化までやるということは、最後は売るということですよね。それをやはりなし得なければ、ただ何となくイノベーションするためにやったというだけで終わってしまうんじゃないかと思うんです。

 その辺の意気込みというんですか、道筋をもう一回大臣にお尋ねしたいと思います。

島尻国務大臣 おっしゃるとおり、科学技術は成長戦略の一つになっておりますので、いろいろな意味で我が国あるいは世界に裨益するものでないといけないということは言うまでもございません。

 今お話のあったSIPでありますけれども、SIPにエントリーして、CSTIの議員が、私も含めてなんですけれども、そこにSIPの事業として実行に移すという中には、将来的に事業化が見込まれるもの、そして企業が個々に取り組むにはリスクが高い研究開発にユーザーのニーズを取り入れながら取り組んでいるということでございます。

 産学官が成果の早期の事業化そして実用化のための目標を出口戦略として共有し事業を推進しているということ、まさに委員が御指摘いただいた、これが売れるものでないといけないという考え方はこのSIPプログラムにはしっかり入っていると認識しておりますし、それは入っていなければならないものだということで、大臣がかわろうと、やはり政府の方針、国家戦略としては続けていかなければならないものだというふうに思っております。

鈴木(義)委員 時間が来ましたので終わりますけれども、一番のキーワードは目ききを育てられるかどうかということだと思いますので、今後とも取り組みをよろしくお願いします。

 終わります。

西村委員長 次に、若狭勝君。

若狭委員 自由民主党の若狭勝でございます。

 きょうは、テロ関係について少し警察庁の方とお話をさせていただきたいと思います。

 平成二十年に洞爺湖サミットがありました。そのときに、私は東京地方検察庁の公安部長をしていました。その際に、原発に対するテロと新幹線テロというのを既に恐れておりました。

 私は、政治家になった一つの大きな使命としては、そうしたテロの脅威から国民のかけがえのない命を守るということを政治家としての大きな使命として思っております。

 そこで、思いますには、今のテロに対する法整備、テロ対策法というようなものが今現在ない、これは、専門家の立場からすると、いわば非常にお寒い限りというふうに思っております。

 まさしく、オリンピック・パラリンピックというのはテロを防止して成功裏に終わらせることはもとよりなんですが、今のままですと、本当に大規模テロが起きてもおかしくない、その法整備というのができていないというふうに思っております。しかも、国際的に見ますと、諸外国は、テロ対策法については法整備ができております。いわば日本は国際的に見ますとループホール、いわゆる抜け穴になっているという指摘もあります。

 その意味で、今後、このテロ対策法をきちんとつくっていかなければ、オリンピック・パラリンピックで万が一大規模テロが起きた場合に、国際的に、日本はどうしてそうした法整備をしていなかったのかというそれこそ批判の嵐が起きてしまうというふうに思っています。

 ですから、これは本当に緊急の事態なんですよ。その観点でいろいろとお聞きしたいと思います。

 テロ対策基本法というのをつくろうとしても、もう既に時間がない。次の通常国会で通したとしても、施行期間があるとオリンピック・パラリンピックまでに間に合うか、そんなような状況だと思うんですね。ですから、かなり緊急性を要するという視点でお聞きしたいと思います。

 まず、さかのぼると、平成十三年九月、アメリカで同時多発テロが起きました。その三年後、十六年の八月に、警察庁はテロ対策推進要綱というのを発出していると思います。その一部は、きょう、資料一として皆様にその抜粋をお渡ししております。

 これは抜粋のために皆さんにお配りしているものには書かれていませんが、その一ページ目のところで、「テロの脅威の高まりの背景」ということで、幾つかその要因を掲げています。

 一つは、国境を越えたテロ組織のネットワークが広がって、逆に、テロとの闘いにおいて国際社会と共同歩調をとる日本がテロの標的とされる可能性が高いと。もう一つは、大規模、無差別テロが非常に高くなってきたというようなことを挙げて、テロの脅威の高まりがあるという分析をされているんですね。

 これは十二年前の話なんですよ。十六年八月ですから、既に十二年前にこのような発出をしているわけですね。

 それから十二年たちました。最近の国際テロの情勢いかん、大規模テロ発生の可能性は高まっているかどうかということについて、まずお聞きしたいと思います。

沖田政府参考人 御承知のとおり、最近発生したベルギーにおけるテロ事件はもとより、昨年十一月にはフランスにおいて無差別同時多発テロ事件、本年一月にはインドネシアにおいて爆弾テロが発生するなど、現下の国際テロ情勢は、十二年前と比較いたしまして、一層厳しい状況にあると考えております。

 また、昨年、シリア、チュニジア等において邦人がテロの犠牲となる事案が発生したことに加え、これまでISIL、AQが我が国や邦人をテロの標的とすると繰り返し述べておりまして、我が国に対するテロの脅威が現実のものとなっていると認識いたしております。

若狭委員 そのとおりでございますが、この要綱によれば、既に、平成十六年八月、十二年前にもう、テロ未然防止に必要有効な法制の整備が必要であるというふうにうたっております。

 それから十二年たちました。テロ資金関係以外の法整備というのはなされましたか。

沖田政府参考人 委員から今お示しのございました財産凍結法以外では、警察庁が所管するような形でのいわゆるテロ対策法といったものの法整備には至っておりません。

若狭委員 皆様に資料二をお渡ししていると思いますが、これを見ていただきますと、平成十八年の新聞では、テロ対策法やテロ対策基本法制に向けてというような記事が載っております。平成十八年には、そうしたテロ対策法に向けての機運が高まっていたということなんです。

 再度お聞きします。このような新聞報道があったんですが、今日に至るまで、テロ資金の法整備以外のテロ対策の法整備というのはなされていますか。

沖田政府参考人 委員御指摘のとおりでございまして、水際対策に関するものについての幾つかの法改正はございましたけれども、いわゆるテロ対策法、テロ対策基本法といったまとまった形での法整備はなされておりません。

若狭委員 テロ対策法なるものをつくれば、テロを未然に防止できる機会がふえるとともに、テロが実際起きた場合にその検挙というものもしやすくなるというふうに思うんですが、その意味で、欧米諸国はテロ対策についてどのような法整備をしているのか、それについてお聞かせ願いたいと思います。

沖田政府参考人 各国の実情に応じましてテロ対策のための法制が整備されておりますが、例えば欧米諸国では、テロリストを含む凶悪犯に対する無令状での捜索、差し押さえ、いわゆる行政傍受等、テロ対策のための法制が整備されているものと承知しております。

若狭委員 今の無令状の捜索というのは、裁判所、裁判官の令状なくしても捜索ができるということで理解してよろしいでしょうか。

沖田政府参考人 各国においていろいろあろうと思いますが、例えば国務大臣の許可等々が要件になっているものもございますが、裁判官の許可は要らないというふうに認識いたしております。

若狭委員 今、行政傍受という話があったと思うんですが、この行政傍受というのはなかなか国民にはわかりづらいと思うので、どういうものかを簡単に教えていただけますでしょうか。

沖田政府参考人 お答え申し上げます。

 通常、例えば現在日本でもございます通信傍受法におきましては、一定の示された具体的な犯罪の嫌疑がある場合に裁判所の許可を得て行うものでございますが、これと違いまして、行政傍受につきましては、ある程度の犯罪なりの嫌疑があった場合に、裁判所の令状なくして、一定の要件のもとに行政機関の判断で必要な捜索なり等を行うことができるというものでございます。

若狭委員 諸外国では、テロに関して、無令状の身柄拘束というのも整備されているんでしょうか。

沖田政府参考人 そのような例もあると承知いたしております。

若狭委員 我が国の法制をそうして見直して、諸外国のようなものにするという必要性はないのでしょうか。

沖田政府参考人 特にテロの場合、一旦発生いたしますとはかり知れない被害あるいは影響というものがございますので、これについては、その未然防止が極めて重要であるというふうに認識いたしております。

 したがいまして、その観点から申しますと、そうした手法というのは非常に有用であるというふうに考えておりますが、一方で、こうした手法につきましてはいろいろと慎重な御意見もあるというふうに承知いたしております。

若狭委員 平成十六年八月に発出したテロ対策推進要綱について、もう既にそのときに法整備の必要性をうたっています。十六年から現在までは、テロ情勢というのは一段と厳しくなっています。

 そうしますと、テロ対策法なるものを、それこそ人権にはきちんと配慮しながらも欧米に近づけるということは必要ではないかと思うんですが、どうでしょうか。

沖田政府参考人 今委員からお示しのありましたとおり、そうしたものの必要性とそれに対する懸念、両面から検討してまいりたいというふうに考えております。

若狭委員 要するに、十二年前にも同じようなことを言っているんですが、結局全然進んでいないんですよ。これはやはり、もっと危機意識を持たなければいけないと私は思うんです。

 私は、少なくとも、万全を尽くしますと当局が言うというのは、ある意味禁句だと思っているんですね。私も確かに、逆の立場、公安関係にいたときは、政治家などから聞かれれば、万全を尽くしますと答えますよ。口が裂けても、ちょっと危ないですとは言わないんですよ。そういう習慣というか慣習があるのはわかっています。

 しかしながら、今このときは、もう既にテロに対する脅威というのがまさしく一段と高まっているわけですから、万全を尽くしますじゃなくて、逆に、やはりきちんとした法整備をしていただかないと責任を持って対応できないというようなことを警察が訴えること、それが今求められているんじゃないかと思うんですよ。その辺はいかがでしょうか。

沖田政府参考人 テロ対策に関する法整備の重要性につきましては、私も同様に認識いたしております。

 そうした意味で、それについていろいろと問題提起され、御議論いただくことは我々にとりましても大変貴重な機会であると考えておりまして、こうした御議論等を踏まえながら早急に検討を進めてまいりたいというふうに考えております。

若狭委員 それは必ずしも警察だけの問題じゃなくて、やはり政治の問題でもあるわけですから、少なくても警察の方から、このままだと本当に自信が持てませんというようなことを今このときにはどんどん発信していただきたいんですよ。それによって我々もきちんとそれに向けて大きく動くことができるし、私は、少なくても今、個人的には、テロ対策法というのを自分なりには条文も考えているんですよ。そのぐらいなんですから、今このときにやらないと本当に手おくれになっちゃうんです。

 話はかわりますけれども、先ほど通信傍受の話が出ました。参議院において今、通信傍受法の拡大という改正案が審議されております。これについては、成立すれば一定のテロ対策にはなろうかと思うんですが、ただ、それだけだと限界があるというふうに思っておるんです。その辺について簡単に説明していただけますでしょうか。

三浦政府参考人 今回の通信傍受法改正法案におきましては、組織的に敢行される殺人、爆発物の使用、逮捕監禁等が通信傍受の対象犯罪に加えられるほか、通信傍受手続についても合理化が図られるという内容のものでございます。

 通信傍受法の改正後に、テロ組織がこれらの犯罪行為を行った場合であって、法に定める要件を満たす場合には、当該事案の犯罪捜査としてテロリストの間の通信を傍受するといったことも可能になると考えられるところであります。

 もっとも、この法律はあくまで犯罪捜査のための通信傍受について定めるものでありまして、過去に犯罪が何ら発生していない場合の通信傍受、または具体的な事案の捜査目的以外の通信傍受を行うことはできないものでありまして、御質問のとおり、一定の限界はあるものでございます。

若狭委員 そうしますと、犯罪捜査ではない、先ほど説明していただきましたけれども、いわゆる行政傍受というようなものもやはり取り入れていく必要性は感じていますでしょうか。

沖田政府参考人 取り締まり機関といたしましては、そうした手法があることは我々にとって非常に有用であるというふうに考えております。

若狭委員 確かに、いろいろプライバシーの問題とか人権の問題が絡む問題ではあります。それは、私も法律家ですからよくわかっています。しかしながら、やはり、プライバシーの問題と、国民がテロの脅威にさらされて多くの命が落とされるというようなことをてんびんに比べた場合に、今ここにおいて本当に真剣に、どこまでが法整備できるのか、その辺を十分に検討する時期に既に来ているというふうに思うわけですね。

 そこで、例えばの話、緊急逮捕というのが刑事訴訟法の二百十条に規定されていると思います。死刑、無期、三年以上の懲役とか禁錮、犯罪を犯したと疑うに十分な理由、それから裁判官の令状をとるだけの余裕がない、急速なときというような要件のもとで、裁判官の令状なくして要するに身柄拘束ができるという緊急逮捕制度があると思うんですね。これも、やはり憲法上問題になったときもあるんです。しかしながら、てんびんにかけて、これもきちんと法整備がされて、今に至っているわけですね。

 ですから、あくまでテロということに特化した形でのテロ対策法も、どこまでできるかというのを、関係省庁を含めて、今、検討を相当早める必要があるというふうに思うんですが、どうでしょうか。

沖田政府参考人 ただいま委員から御指摘のありました点も含めまして、鋭意検討いたしたいと思います。

若狭委員 少なくとも、今は検討というよりも、もっとここでやらなきゃいけないという機運をみんなで高めることなので、警察庁も、万全を尽くしますという言葉ではなくて、このままだと本当に私らは責任持てないというぐらいの思いで発信してもらいたい。それによって我々も動きます、やります。みんなで力を合わせて、オリパラに向けてテロを防止して、オリパラを成功裏に終わらせる、そういう大きな目的に向かって進みたいというふうに思っております。

 きょうは、もう一つ、公職選挙法の改正に向けてのお話もさせていただきたかったんですが、時間が来ましたので、また別の機会にということで、これにて終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

西村委員長 次に、河野正美君。

河野(正)委員 おおさか維新の会の河野正美でございます。

 本日は、経済連携協定いわゆるEPAに基づく看護師、介護福祉士の受け入れについてお尋ねをしたいと思います。

 まず冒頭、一億総活躍社会の実現の検討において、外国人労働者や専門人材の受け入れなどについてどのような議論がなされているのか、石原大臣に伺いたいと思います。

石原国務大臣 ただいま河野委員が御指摘になりましたとおり、一億総活躍社会の実現に向けた中で、今春に取りまとめますニッポン一億総活躍プランに向けて検討すべき方向性として、イノベーションの創造力を強化するための外国人材の活用を掲げさせていただいております。

 これまでの成長戦略におきましても、本格的な人口減少社会への突入を前にして、日本経済が持続的な発展を実現する観点から、外国人材の活用に関するさまざまな取り組みを進めてきたところでございます。

 具体的には、若干お話をさせていただきますと、外国人材ポイント制を通じた受け入れの促進や、あるいは神奈川県でございますけれども、国家戦略特区における外国人家事支援人材の活用などに取り組んできたところでございます。

 今後とも、こうした取り組みを進めますとともに、年央に取りまとめます成長戦略の取りまとめに向かってさらに検討を深めてまいりたいと思いますので、また委員の御支持をよろしくお願い申し上げたいと思います。

河野(正)委員 ありがとうございました。

 石原大臣、この一問でございますので、よろしければ退席されて結構でございます。

 先月二十五日と二十八日、看護師、介護福祉士資格の国家試験の合格発表がございました。その二つの資格では、インドネシア、フィリピン、ベトナムの三カ国との経済連携協定によって看護師、介護福祉士の受験が認められて、行われております。

 ことしの看護師の合格状況を見ますと、日本の新卒では約九五%、既卒者を含めても九〇%程度の高い合格率だというふうに思います。ところが、EPAの方に限って見ますと、受験者四百二十九名のうち合格者は四十七名、合格率一一%ということになります。また、国ごとにもばらつきがございまして、例えば、インドネシアは五・四%、フィリピン一一・五%、ベトナムは四一%程度というふうになっております。

 こういった状況を政府はどのような捉え方をされているのか、また原因などについてもどう思われているのか、伺いたいと思います。

梅田政府参考人 お答えいたします。

 国家試験に合格できるかどうか、これは、最終的には御本人の御努力のたまものであり、また、合格された方の受け入れ施設の御支援によるところも大ですので、御支援、御尽力に感謝申し上げているところでございます。

 先ほど議員御指摘の、国ごとの合格率の差ということでございますが、これを国別に細かく見てまいりますと、年度ごとにばらつきがございまして、その理由につきましても、年度ごとの受け入れの人数の総数が違っていたり、あるいは候補者自身の能力などさまざまな要因が考えられるために、一概にお答えするというのは現状では難しい状況にあるというふうに考えております。

河野(正)委員 これまで、合格者数が余りに低い水準にとどまるために、何度か制度の運用を改善してきているかと思います。例えば、試験問題にルビを振るとか、病名の英語併記、試験時間を一・五倍に延長するなどといったことが試みられていると思います。

 しかし、資格試験の問題は日本人にとっても極めて難しい問題であり、我が国の国家試験とかはいわゆるひっかけ問題というのも少なくないというふうに思っておりますし、そういうふうな声も聞いております。

 受験のチャンスも、看護師については在留期間中の三回プラス一回、介護福祉士は在留期間四年のうちに二回だけというふうにされています。試験に受からなければすぐに帰国しなければならないということになります。

 在留期間中は、受け入れ先となる医療機関や介護施設等で働きながら試験に向けた勉強を重ねていきます。余りに厳しい条件を課しているとも思えますが、なぜこういった仕組みとなっているのか、伺いたいと思います。

苧谷政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの、経済連携協定における看護師、介護福祉士候補者の受け入れ枠数、受け入れに当たっての諸条件につきましては、募集及び選考、雇用契約の締結、受け入れ施設における就労及び研修などの一連の過程において支障を生じさせないよう、円滑かつ適正な受け入れを行うことができるようにする必要があるということがまずございます。それから、入国する看護師、介護福祉士候補者が当該分野において一定程度の基礎的な知識を有している必要があること、こういった観点から相手国政府と協議をさせていただきまして、その中でそれぞれ各国との間で決定がなされたものでございます。

河野(正)委員 受験生本人にとっても大変厳しい生活であると思います、異国の地で働きながら勉強する。それはもちろんでありますけれども、受け入れる施設の側も、その異国での生活を支援し、受験準備に配慮をし、さまざまな支援をしていく、この負担は決して軽いものではありません。

 候補者を受け入れる施設の数がどのように推移しているのか、その確保が難しくなっているという声も聞きますが、現状を伺いたいと思います。

苧谷政府参考人 お答え申し上げます。

 経済連携協定によります看護師、介護福祉士候補者の受け入れ施設数は、平成二十七年度におきまして、まず看護師候補者につきましては、インドネシアからの受け入れが二十五施設、フィリピンからの受け入れが三十施設、ベトナムからの受け入れが八施設となっております。

 また、介護福祉士候補者につきましては、インドネシアからの受け入れが八十六施設、フィリピンからの受け入れが九十施設、ベトナムからの受け入れが五十八施設となっておりまして、近年、特に介護福祉士候補者の受け入れ施設数の大幅な増加が見られてございます。

 この要因といたしましては、訪日前後の日本語研修を合わせて十二カ月以上行うなどにより、候補者の日本語能力の向上を図るとともに、国家試験に向けた候補者の学習支援等について取り組んできたこと、あるいは平成二十六年度からは、従来のインドネシア及びフィリピンに加えまして新たにベトナムの受け入れを開始したことなどから、病院や介護施設と候補者とのマッチングが促進されたためであると考えてございます。

 政府としましては、引き続き、経済連携協定に基づく看護師、介護福祉士候補者の円滑な受け入れに努めてまいりたいと考えてございます。

河野(正)委員 受け入れ施設に対してどのような支援が行われてきたのか、財政的な支援も含めてどの程度の金額を政府として費やしてきたのか、伺いたいと思います。

梅田政府参考人 お答えいたします。

 平成二十二年度より、EPAによる看護師、介護福祉士候補者の受け入れ施設に対する支援といたしまして、外国人看護師候補者就労研修支援事業、そして外国人介護福祉士候補者受け入れ施設学習支援事業を行っております。

 これらの事業におきましては、受け入れ施設からの申請に基づきまして、候補者の日本語習得への支援として、日本語学校への就学や日本語講師の招聘等に、候補者一人当たり、看護師では十一万七千円、介護福祉士では二十三万五千円を基準額として補助しております。

 また、候補者の就労研修を担当する方への手当として、一施設あるいは一病院当たり、看護では四十六万一千円、介護では八万円を基準額として補助いたしているところでございます。

河野(正)委員 受け入れに当たってはいろいろ、研修したり大変な思いもされていると聞いておりますので、極めて低予算ではないのかなというふうに思います。

 この制度の目的は、相手国からの強い要望に基づき、経済活動連携の強化の観点から実施されたものと思います。この制度の目的が二国間の経済活動の連携の強化ということにあるのであれば、これまでの低い合格率、先ほど来お話ししたように、日本人は九〇%程度あるのに外国の方は一〇%程度の国もあるという状況を考えますと、当初の目的を達成しているとは言いがたいのではないかと思います。政府としてどのように評価しているのか、見解を伺いたいと思います。

太田大臣政務官 お答え申し上げます。

 経済連携協定によります看護師さん、介護福祉士さんの候補者の受け入れは、今御指摘のように、二国間の経済活動の連携強化という観点から、公的な枠組みによって特例的に行っているものでございます。

 今、合格率が低いではないかというような御指摘でございましたが、平成二十七年度におけるEPAによる看護師、介護福祉士候補者の受け入れ人数を見ますと、看護師さんの方は百五十五人、介護福祉士さんの方は五百六十八人となっておりまして、近年、着実に増加をいたしております。

 例えば平成二十四年度では、両方の資格を合わせまして二百人程度であったものが、平成二十七年度には七百人を超える、こういうところまで今至っております。

 また、訪日後の受け入れ施設における一定期間の就労後における看護師及び介護福祉士国家試験の合格率も、政府において日本語研修ですとか国家試験に向けた学習支援等に取り組みました結果、特に介護福祉士さんにおいては合格率の着実な向上が見られておりまして、ただいま五〇・九%。全体の五七・九%よりは多少低うございますけれども、かなりいいレベルまで達しつつあるということがわかります。

 このように、本協定により看護師、介護福祉士候補者の受け入れが促進され、国家試験の合格率向上が見られていることは、二国間の経済活動の連携強化という観点からも一定の評価ができるものと考えております。

 政府としては、引き続き、本協定に基づく円滑な受け入れと受け入れ後の支援等に努めてまいります。

河野(正)委員 今、厚生労働省の太田政務官の方からそういった御報告をいただきましたけれども、まだまだ、経済連携協定という中では極めて不十分なのかなというふうに考えておるところでありまして、このような低合格率も含めた状況、協定の相手国との約束を違えることにならないのか、相手国から何らかの問題提起がなされていないのか、外務省に伺いたいと思います。

佐藤(達)政府参考人 お答えいたします。

 経済連携協定に基づく看護師及び介護福祉士候補者の受け入れ人数の上限は、円滑かつ適正な受け入れを行うことができるかどうかなどの点を考慮して、政府として設定しているものでございます。

 実際の受け入れ人数は、定められた上限枠の中で、病院や介護施設の求人と求職者とのマッチングの結果などにより決まるものでございまして、近年、受け入れ人数は増加しているところでございます。

 いずれにいたしましても、外務省としても、候補者受け入れの拡大に向けて引き続き関係省庁と密接に連携して取り組んでいく考えでございます。

河野(正)委員 貴重な公費を投入してこれまでも取り組みが進められてきた問題であります。しかし、制度の実情を見ますと、抜本的に制度を見直しておかなければいけない時期に来ているのかなとも思います。

 現在、政府は環太平洋パートナーシップ協定の締結を目指しておられます。太平洋を自由に物やサービス、投資などが行き交う大きな経済圏としていくことで我が国の力強い経済成長を実現する、そういった趣旨と理解をしておるところであります。

 TPPの締結によって個別の経済連携協定の取り扱いがどのように整理されているのか、伺いたいと思います。

佐藤(達)政府参考人 お答えいたします。

 TPPにつきましては、協定第十二章「ビジネス関係者の一時的な入国」により、看護師、介護福祉士を含め人の移動が全般的に活発になるようにという規定が定められてございますので、そういった御認識があるかと承知してございます。

 TPP協定では、入出国管理に関する申請手続の迅速化や透明性の向上等を規定してございます。このため、一般的に締約国間のビジネス関係者の移動が円滑になるということは想定されるところでございますが、看護師、介護福祉士の移動につきましては、その受け入れを義務づける規定はなく、また、我が国は同協定に基づく看護師、介護福祉士の受け入れを約束しているものでもございません。

 したがいまして、TPP協定の発効により、フィリピン、インドネシア、ベトナムとの間で締結した各経済連携協定に基づく看護師、介護福祉士候補者の受け入れ制度に影響は及ばないと認識してございます。

河野(正)委員 TPPを通じましてアジア太平洋地域の経済成長の取り込みを目指す一方で、個別の経済連携協定で専門人材の受け入れに厳しい条件を課し続けることは、一見するとそごがあるようにも感じるわけでありますけれども、政府の見解を伺いたいと思います。

佐藤(達)政府参考人 お答えいたします。

 外務省では、これまでも、看護師、介護福祉士候補者の送り出し国政府や受け入れ施設からの要望などを踏まえまして、日本語研修の充実や滞在期間の延長など、経済連携協定で定められた制度の改善を行い、受け入れ施設における円滑な就労、研修に向けた取り組みを行ってきたところでございます。その結果、近年、候補者の受け入れ人数及び受け入れ施設側からの受け入れ希望人数はともに増加しているところでございます。

 いずれにいたしましても、送り出し国政府や受け入れ施設側の要望も踏まえ、受け入れ施設における円滑な就労、研修の実施に向けて、今後も関係省庁と密接に連携して取り組んでいく考えでございます。

河野(正)委員 厚生労働省の方もお願いできますでしょうか。

勝田政府参考人 お答え申し上げます。

 運用面でどうやって看護師、介護福祉士の受け入れを進めていくかということにつきまして、二国間の経済活動の連携強化の観点から実施しておりますので、私ども政府全体としまして、まず、訪日前の日本語研修を行う、そして、特例的な滞在期間の延長や、国家試験に向けて候補者の学習を支援していく、さらに、私どもの関係しております国際厚生事業団を通じて、受け入れ機関を訪問し巡回指導していく、こういったことをやってきております。その結果、受け入れ機関におけるニーズは拡大しておりまして、それが、先ほどお答えしましたようなインドネシア、フィリピン、ベトナムからの候補者受け入れ人数の近年の増加傾向につながっているものと承知しております。

 日本政府としましても、EPAに基づく候補者の円滑な受け入れが図られるよう、引き続きこうした取り組みを進めてまいりたいというふうに考えております。

河野(正)委員 時間がもうほとんどありませんので、最後に加藤大臣に伺いたいと思います。

 今国会では、外国人技能実習制度を見直す法案が提出されており、それぞれの仕組みの範囲内で一定の制度の見直しが進められていると思います。そうした個別の仕組みを見直していくことも必要でありますけれども、そろそろ国全体として、外国人労働者の受け入れについて、我が国社会の将来像を見据えた真剣な議論をすべきではないかと思いますが、大臣の見解を伺いたいと思います。

加藤国務大臣 御承知のように、我が国は人口減少社会に突入をしているわけでありまして、日本経済が中長期的に持続的な成長を実現していくというためには、いかにして労働力人口を維持して生産性を上げていくかということが非常に大きなポイントだと思っております。

 そういう意味で、今、女性や高齢者など多様な人材がその能力を最大限発揮し活躍できる社会を築き、さらに、人材育成を通じた労働生産性の向上に取り組んでいく必要があるというふうに思っております。

 そういう中で、外国人の活用に関しては、昨年十一月に取りまとめました緊急に実施すべき対策においても、「日本経済の潜在的な成長力を強化するための投資の促進、生産性革命を推進し、対内直接投資の呼び込みや外国人材の活用等によりイノベーションの創出力を強化する」、こういうふうに指摘をさせていただいているところでございます。

 これまでの外国人材の活用については、高度外国人材の受け入れを初めさまざまな取り組みをしております、具体的には省略をさせていただきますけれども。その上に立って、国全体としての外国人の受け入れ方針については、安倍政権ではいわゆる移民政策はとらないということははっきり言わせていただいておりますが、他方、中長期的に外国人材をどう受け入れていくのかということについては、経済社会基盤の持続可能性を確保していく、真に必要な分野に着目しつつ、総合的かつ具体的な検討を進めることとされておりまして、そうした方向に沿って検討していきたいなと思っております。

河野(正)委員 ありがとうございました。よろしく御検討のほどお願いいたします。

 このEPAに基づいて、外国人の方々に日本の医療機関で働いていただこう、介護の機関で働いていただこうということで、本当に受け入れ先の施設も一生懸命、外国人の方を受け入れるということで勉強しながらやってこられたところですけれども、余りにその結果合格率が低いということで懸念の声が出ておりましたので、そういったことで質問をさせていただいたところであります。しっかりと今後の対応をしていただきたいということをお願い申し上げまして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

西村委員長 次に、池内さおり君。

池内委員 日本共産党の池内さおりです。

 待機児童の解消というのが、今や本当に大きな政治問題になっています。

 政府は、国民の強い批判に押されて、三月二十八日に厚生労働大臣が緊急対応策を発表しました。その中身もさることながら、私は、厚労大臣が発表したことに違和感を覚えました。現行の保育制度について責任を持っているのは一体どこで、責任者は誰であるか、まず大臣にお伺いいたします。

    〔委員長退席、武井委員長代理着席〕

加藤国務大臣 どういう所管になっているかという御質問だというふうに思います。

 まず、厚生労働省について申し上げれば、厚生労働省設置法で児童の保育に関することということで位置づけられておりまして、厚生労働省は、児童福祉法の所管官庁として、保育士の養成、保育所、地域型保育に係る基準、指導監督、そして保育所の保育指針について所管をしておりますので、保育についての一義的な責任は、子ども・子育て支援新制度になってはおりますけれども、引き続き厚生労働省に帰属をしている。

 他方、内閣府子ども・子育て本部、これは私の所管ということになりますけれども、子ども・子育て支援法あるいはいわゆる認定こども園法の所管庁でございまして、保育所や認定こども園に対する子ども・子育ての支援給付、そして、認定こども園に係る基準、指導監督、さらに幼保連携型認定こども園の教育・保育要領等については所管をしているところでございます。

 したがって、保育全体については、厚生労働省と内閣府において、それぞれ役割分担をしながら連携を持って対応していきたいと思っております。

池内委員 今、役割分担というふうにお答えになったわけなんですけれども、現在の子ども・子育て支援新制度の中で、厚生労働省の役割というのは施設整備など一部のことに限られていて、制度の設計、運営、そして施策にかかわる問題というのは、既に今内閣府に統合されています。やはり内閣府の加藤大臣が司令塔になっていただかない限り、幾ら緊急対策といえども、中身のある対策が出てこないのではないかと私は思います。

 そこでお聞きしますが、厚労省が発表した緊急対策に要する予算額は幾らですか。

吉本政府参考人 お答え申し上げます。

 三月二十八日に公表させていただきました緊急対策のメニューでございますが、予算を伴わない対策も多く含まれておりまして、規制の弾力化、運用改善等についてもございます。また、二十八年度予算の補助メニューの中で条件等を見直して実施する予定のものもございます。

 予算における補助内容の拡充といたしましては、待機児童解消加速化プランに基づきまして保育の受け皿拡大を大きく進める中で、一つ、整備費におきまして、土地借料加算を特に都心部におきましては実態に合わせてできるだけ高くしていこうという内容、それからまた、工事着工前の土地借料も支援対象としていく、さらには、定期借地権契約により必要となる権利金や前払い地代などのための加算の創設、また、改修費につきましても、同様の事情で単価の改善といった受け皿確保のための施設整備の促進を図るものが、額の大きなものとしてはございます。

 これは二十八年度の当初予算に含まれているものでございますので、その関連予算を申し上げますと、保育所等整備交付金等の関連予算といたしまして七百八億。また、保育人材の確保などの対策といたしましては二百十五億。さらに、企業主導型保育事業、先般関連の法案を御審議いただきましたけれども、それに関する予算の費用といたしまして約八百億といったようなことで、これらを用いまして緊急の対策を実施してまいりたいというふうに考えているところでございます。

池内委員 本当にお寒い中身だというふうに思うんです。

 内閣府設置法を見ると、第二章の二十七の五に明確に子ども・子育て支援法が位置づけられていて、内閣府の所掌事務になっていて、この枠組みを超える形では厚労省はやれない、今の体制の枠組みの中でしか行えないということを考えれば、やはり司令塔である加藤大臣のイニシアチブが今本当に必要になっているというふうに思うんです。

 そこで、きょうはまず、なぜ待機児童がこれほどたくさん出てきているのかという認識を問いたいと思います。

 子供を産み育てながら働き続けたい、もしくは働かざるを得ないというお父さん、お母さんがふえてきた。そして保育需要は大きくふえている。その一方で、保育士の待遇が劣悪で、保育士として働き続ける人が確保できない。また、都市部では保育園を設置するための場所がないなどなど、本当にたくさん問題があります。

 これをどう解決するのかということは、党派を超えた、立場を超えた認識になっているというふうに思うんです。けれども、国は、自治体が保育所の整備を怠ったり、もしくは入所を制限したから待機児童が解消しないと考えているのかどうか。大臣、どうですか。

加藤国務大臣 待機児童の問題、ここに来ていろいろと言われておりますけれども、しかし、もともと、待機児童というのは従前からそれぞれが問題意識を持って取り組んできた課題であります。

 私ども安倍政権においても、待機児童解消加速化プランということを提唱させていただいて、二十五年から二十九年度の間で四十万人分の受け皿の拡充、そして今回、それを十万人ふやしてきたということで取り組んできたところでございまして、それまで以前に比べて倍以上のスピードで施設整備、さらには計画を超える施設整備を行ってきているという実態があるわけでありますけれども、やはり、そういう中で、新支援制度になって、受け皿、枠組みをちょっと広げたということも一つあるんだと思います。

 それから、働きながら子供を産み育てたいということを希望される方々も、我々の想定以上にふえていたということもあるんだと思っております。

 そういう中で、他方で保育所を設置しようとするときに、今御指摘ありますように、居場所をなかなか確保できない、あるいはしようとしてもなかなか進みにくいということに加えて、やはり、保育士を確保するということの難しさも当然指摘をされていることは承知をしております。

 また同時に、そこで働く方々が、誇りある仕事としてそれにふさわしい評価を受けていく、そして、その評価というのは賃金によって行われていくわけでありますから、そういったことも含めてしっかり対応していかなければならないというふうに私どもも思っております。

 先ほど御指摘がありますように、私のところにおいては、先ほど申し上げました子ども・子育て支援給付、まさに公定価格を決め、それを支給するというのを私のところで担当させていただいているわけでございますので、そういった意味において、処遇改善をするというのはそこに係る話でございます。

 これまでの議論を踏まえながら、この春に策定いたしますニッポン一億総活躍プランの中において、具体的で実効性のある処遇改善策というものをしっかりと打ち出していきたいと思っております。

池内委員 この春とおっしゃいますが、本当に緊急だというふうに思います。

 二十八日に出された政府の緊急対策を見ると、待機児童解消の具体的な手だてとされていることの一つに、人員配置基準、面積基準において国の最低基準を上回る基準を設定している市区町村に対して、一人でも多くの児童の受け入れを要請するというものになっています。

 これは、裏を返せば、自治体が国以上の手厚い配置をやっているから入所が制限されていると言っているように聞こえるわけですけれども、同じじゃないですか。

加藤国務大臣 そこは、先ほどの所管でいえば厚労省の方で進めておられる、まさに保育所の基準等に係るお話にも絡んでくるんだというふうに思いますけれども、やはり現実問題としてそこに待機児童の方々がおられる。そして他方で、国の基準を下回ることを私どもは推奨しているわけでは全くないわけでありますので、そこのところも含めて当該市町村でよく御判断をされるべきことなんだろうと思います。

池内委員 東京都のほとんどの自治体で、例えば一歳以上三歳未満の保育士配置の基準というのは、国の幼児六人に保育士一人よりも厚くしていて、五人に一人という配置を行っています。

 なぜこうしているかといえば、低年齢児の保育というのは月齢によって大きく違う、発達段階が全く違う、そうした実態に合わせて保育する専門性が求められているからです。国基準は最低限の基準を示したものであって、子供にも保育士にもできるだけいい環境の保育を実現したいということで、お父さん、お母さんの強い願いにも押されて、それに応えようとする自治体が努力をして実現してきたものです。

 だから、自治体では、待機児童を何とか解消しなきゃいけないという、今国が直面している問題に自治体も直面をしていて、ただ自治体は、待機児童解消という大問題に直面しても、この基準を下げることなく対応しようと頑張っています。それを、基準を下げて受け入れよと。大臣は、先ほどそうじゃないとおっしゃったけれども。けれども、現実にやろうとしていることは、基準を下げて受け入れよということです。許されないし、これはもう多くの国民から信頼を奪うものだというふうに私は思います。

 待機児童は、単なる頭数ではなくて、一人一人に人生があって、どこに生まれても、経済力にかかわりなく、ひとしく保育を受けなければならない、その権利があるというふうに私は思うんです。

 児童福祉法を見ると、「すべて国民は、児童が心身ともに健やかに生まれ、且つ、育成されるよう努めなければならない。」と規定されていて、「すべて児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない。」となっている。地方公共団体や児童の保護者とともに、国こそ、児童を心身ともに健やかに育んでいく責任があるというふうに思うんです。

 そこで厚労省に聞きますが、厚労省は、児童福祉法第四十五条に基づいて、児童福祉施設の設備及び運営に関する基準というのを定めています。これは都道府県において基準を定める場合の最低基準を規定しているものですけれども、その二条と四条を読み上げてください。

吉本政府参考人 お答え申し上げます。

 児童福祉施設の設備及び運営に関する基準第二条でございますが、「法」、これは児童福祉法でございます、「第四十五条第一項の規定により都道府県が条例で定める基準(以下「最低基準」という。)は、都道府県知事の監督に属する児童福祉施設に入所している者が、明るくて、衛生的な環境において、素養があり、かつ、適切な訓練を受けた職員の指導により、心身ともに健やかにして、社会に適応するように育成されることを保障するものとする。」と規定されております。

 また、同じく基準の第四条でございますが、一項で「児童福祉施設は、最低基準を超えて、常に、その設備及び運営を向上させなければならない。」、二項といたしまして「最低基準を超えて、設備を有し、又は運営をしている児童福祉施設においては、最低基準を理由として、その設備又は運営を低下させてはならない。」と規定されているところでございます。

池内委員 最低基準を上回っているところは、最低基準があるからといってその水準まで引き下げてはならない、これが法律が定めている原則です。今回の緊急対策は、それを引き下げよと言うことに等しい。

 第三条では、都道府県知事に対して、「最低基準を常に向上させるように努めるものとする。」と定めています。そして第一条の三では、厚労大臣は、「設備運営基準を常に向上させるように努めるものとする。」と定めています。都道府県知事が基準を上回るように努力し、そして、上回った水準を引き下げてはならないと法律が定め、厚労大臣には常にこれを向上させるように努力をせよと言っている。

 しかし、今回厚生労働大臣がやろうとしていることは、これらの定めに真っ向から逆らって、水準を引き下げろと言うことです。私は法の趣旨に明確に違反していると思いますが、そもそも、子ども・子育て支援法はこの児童福祉法と両輪の関係にあります。

 加藤大臣にお伺いしますが、この子ども・子育て支援法を所管する内閣府の担当大臣として、緊急対策は撤回をさせるべきではないですか。

加藤国務大臣 先ほど御指摘があった児童福祉施設の設備運営基準に関する議論、これは厚労省が御判断されるべきことだというふうに思います。

 先ほど申し上げましたように、やはり、そこにどういう基準で保育施設を設置していくのか、それはそれぞれの地域においてお考えがあるんだろうというふうに思います。

 その中において、現在の待機児童数あるいはいわゆる潜在的な待機児童数と言われている方々、さらにはその市町村における今後の動向、こういったことを含めて各市町村においては整備計画を持たれ、そして、それについて我々が集計している段階では、二十五年から五年間で四十五万六千という数字を今いただいているわけでございますので、それはしっかりと実施できるように応援をしていきたいと思っておりますし、その中に、必要な土地の確保とか、あるいは、それだけまさにふえていけばより保育士の確保というのは厳しくなるわけでありますから、それに対する処遇改善ということも、先ほど申し上げたように議論をさせていただいているということでございます。

 その上に立って、ただ、今、きょうこのときにおいて、他方で多くの待機児童を抱えるというか、子供さんを保育所に預けながら働きたいという方々がおられる、そこのところの兼ね合いをどうしていくのかという問題なんだろうというふうに思います。

 中長期的には今申し上げたような形で対応していくべき問題だと思います。ただ、今のこの状況の中でできることは何なのか。そういう中で、先ほど申し上げたように、質が国の最低基準を下回る、これは絶対に許されないことではありますけれども、その中でどう対応していくのかということは、各市町村においていろいろ御判断していただくべき問題なんだろうと思います。

    〔武井委員長代理退席、委員長着席〕

池内委員 今いろいろとおっしゃったわけですけれども、どういう基準か、それは各市町村が判断とおっしゃったけれども、私はそういう問題じゃないと思うんですよ。今回、明確に国がその基準を引き下げろと言っているに等しい、そういう緊急対策は撤回をすべきでないかということをお聞きしたわけです。

 自治体はこれまでも、保育の質を保って何とかいい保育をということで頑張ってきました。お父さん、お母さんの運動もある。こうした努力を政府自身が無にしていいのかということを言いたいと思うんです。児童福祉法に基づく基準というのはまさに省令であって、政府自身が決めているものです。それを政府自身が切り下げよと言うのは本当におかしな、無責任なやり方だというふうに私は思うんですね。

 同時に、緊急だから劣悪でいいなどということは誰も納得しません。今必要だからやるんだと言うけれども、そのことによって基準が下げられるようでは私はいけないと思うんです。

 一人一人、やはり子供たちは個性も違って生育環境も違う。そうした子供たちが一緒に成長し合える場所を国は保障すべきだし、安心して甘えたり、困ったときには助けてくれる先生が身近にいたり、発達の段階に合わせて子供たちの世界には楽しいことがたくさんあふれている、こういう保育環境を確保するために、現場の保育士さんたちは日々研修したり、さまざまな力をつけて頑張っていらっしゃるわけです。そういう保育園にこそ預けたいというのがお父さん、お母さんの願いだと私は思うんですね。何より、日々、今も成長している子供たちの発育の権利だというふうに思います。

 今、国は、小規模保育の基準十九人のところに、さらに三人押し込んで二十二人にするなどということも言っていますけれども、これこそみずから基準を引き下げる行為です。過密化を促して、さらに保育士の目が届きにくくなる。大臣、もし保育事故が起きたら責任をとれるんでしょうか、こんなことをして。

 そして、認可外保育所に預けていた長女をうつ伏せに寝かされたまま亡くしてしまった、亡くされたというお母さんに私はお会いしました。そのお母さんは、規制緩和に強い怒りを表明されていた。子供たちの命と安全を守る基準をまた切り詰めるのか、どこでもいいから保育園に入りたいのではない、こう話して、現場の願いに背を向け続けている政治への怒りを語っていらっしゃいました。

 その方は、今は長男を認可保育園に預けることができている、日々の忙しさに流されて、なかなか、子供のねえねえという声に、なあにと優しく応えられない自分になってしまうときもあるけれども、それでも、そういうときの子供の状況を保育士さんがしっかりと共有してくれる、前はこうだったけれども今はこうだねと成長を一緒に喜んでくれる、そういう保育士さんに囲まれて息子は幸せだと、涙をためて私に語ってくださったわけです。

 待機児対策というのは、いかに緊急であっても、こうした現場の願いや政治への信頼に応えるものでなければならないというふうに思うんです。何でもいいから、どこでも収容すればいいということではないと思うんです。

 大臣にお聞きしますが、今やるべきことは、緊急に、かつ現場の願いに応えて抜本的な対策を講じることではないですか。

加藤国務大臣 委員御指摘のように、保育というのは、やはり小さい子供さんを預かるということでございますし、また、小さい子供さんがこれから社会において日本の次の時代を担っていく、そして人格形成においても非常に重要な時期でありますので、そのことにはしっかりと留意をしていかなきゃいけないというのは御指摘のとおりだというふうに思います。

 また、事故等についても、確かに認可保育園に比べて認可外における事故の発生というのは比率においては高いということも、御党の違う委員から御指摘も頂戴をしたところでございます。

 ただ、事故に関しては、そういう事故があってはならないわけでありますし、また、仮にそうしたことがあった場合には、徹底してそれを検証して、二度とそれが起きない、そういった体制をしっかりと構築していかなければならないんだろうというふうに思います。

 今回の緊急対策は、何でもどこでもというわけではないということは先ほどから御説明させていただいているように、最低限ではありますけれども、国の基準を下回るということを申し上げているわけではないわけであります。やはり、今待機児童が多くおられる、市区町村によって相当偏在があるわけでありますけれども、特に多い市区町村においてその辺をどう考えていかれるのか、それについて国も寄り添いながら答えを出していきたい、そういう中で出されたというふうに考えております。

 ただ、根本的な対応は、今委員おっしゃったように、あるいは先ほどから答弁をさせていただいていますように、やはり中長期的な中で必要な保育所等をしっかりと整備していく。そして、その中においては当然受け入れ人数がふえるわけですから、保育士さんの数もふえていく。その保育士さんを確保できる、こういう状況をしっかりつくっていく。これは当然我々はやらなきゃいけないことだというふうに思います。

池内委員 緊急だからといって劣悪にならないように私たちも頑張っていきたいと思っているんですけれども、抜本的な対策の一つの柱というのが保育士の確保だということはもう明確だと思います。

 政府は、待機児童の数は、当初は二万三千人というふうに発表していました。しかし、これは実態に合わないということで厳しい批判を受けて、厚労省から先日新たに待機児童数の発表がありました。自治体が通えると判断した認可保育施設に入らなくて特定の施設を希望したことなどを理由に対象外とした計四万九千百五十三人を含めて、隠れ待機児童は全部で五万九千三百八十三人。つまり、これはもう六万人に達する勢いなわけです。

 これらの待機児童を解消するために保育士の数は何人必要だと考えていますか。

吉本政府参考人 お答え申し上げます。

 国として待機児童として把握しております数は、二十七年四月一日現在で二万三千百六十七ということでございますが、それ以外に、待機児童としてはカウントしておりません類型として、御指摘がございましたように、特定の保育園等のみ希望している方を初めとする四つの類型の方々がいらっしゃるということでございます。

 市町村におきましては、そうしたものも潜在的なニーズといたしまして、今後の事業計画を立てる際の需要を計画的に算出するためのものとしてニーズをきちんと把握していくということでやっているところでございます。

 現時点といたしましては、加速化プランにおきます四十万人を五十万人に上積みいたしまして、二十九年度末までにということで進めているところでございまして、五十万人の保育の受け皿の拡大量に必要な保育士の数は九万人というふうに考えております。

池内委員 保育士の数は九万人ということで、ぜひとも確保策をしっかりと持っていただきたいというふうに思うんですね。

 新たに国が発表した六万人の待機児童、この六万人に対して必要な保育士の数というのは、児童福祉法で定められている保育士の基準、「乳児おおむね三人につき一人以上、満一歳以上満三歳に満たない幼児おおむね六人につき一人以上、満三歳以上満四歳に満たない幼児おおむね二十人につき一人以上、満四歳以上の幼児おおむね三十人につき一人以上とする。」、この基準に照らせば、六万人の待機児童が全てゼロ歳児であれば保育士というのは二万人必要だし、四歳以上なら二千人ということになってくるわけです。

 本当に、あちこちで保育士というのが足りていない実態というのは明らかだと思いますので、計画と対策を持たなければ、要は保育士をどのペースでどうやって確保していくのかという対策を持たなければ中身のある対策にならないと思いますが、この点はいかがですか。

加藤国務大臣 今厚生労働省からお話がありましたように、我々も、二十五年度から五カ年で四十万人の受け皿拡大をさらに十万人拡大するに当たって、自然に対応できる部分を超えて、九万人の保育士の方々を確保していかなきゃいけないということを認識させていただいております。

 そういう意味において、先般の補正予算そして当初予算の中において、今勉強してこれから保育士になろうとされている方々、あるいは、一回保育士をやめられて、もう一回保育士になっていただける方々に対するさまざまな施策も盛り込ませていただいているところであります。

 また、先ほどから数度答弁させていただいておりますけれども、やはり働いていく方々が引き続き誇りを持って働いていただけるように、保育士の方々の処遇改善にしっかりと取り組んでいかなければならない、こう思っております。

池内委員 現在、保育士資格を持っているけれども保育士として働いていない人というのは何人で、そのうち、一旦は保育士として働いた経験があるけれども何らかの理由で離れているという人は何人いますか。

吉本政府参考人 保育士資格を有しているが保育園等で保育士として勤務されていない方の数でございますけれども、保育士資格の登録を行った方の数から勤務している方の数を差し引いて推計をいたしますと、約八十万人弱ということでございます。もちろん、この中には、幼稚園等で勤務されたり、またほかのところで勤務されている方々も含まれているところでございます。

 お尋ねのございました、資格を持ちながら一度勤務したことがある、その数でございます。そうした把握はしておりませんけれども、保育士資格を持ちながら今働いていらっしゃらない方々に対する意識調査をしたことがございまして、ハローワークで求職をした保育士資格を持っている方々が対象になりますが、保育士勤務を希望しない方々のうち、七割の方が保育士としての勤務経験があるといったデータがございます。

池内委員 志もあって、やりがいも感じている保育士さんがなぜ離職するかというのは、もう随分議論をされてきたことですけれども、潜在保育士がとても多い。少ない人数の保育士で多くの子供を見て、親の対応もしなけりゃいけない、事務や会議もして、さらに自分の専門性も高める学習や研修もと。本当に勤務が過酷であるということは明らかだと思います。

 その処遇というのは勤務の専門性と実態から本当にかけ離れていて、私も給与明細を見せていただきましたけれども、例えば勤続六年目の二十八歳の男性保育士の手取りは十四万千百十七円、十九年目になって四十二歳の女性保育士の場合は十五万八千五百七十一円なわけなんです。本当に処遇が悪い。

 私は、今、公定価格が余りにも低過ぎるという問題があると思うんですね。一日十一時間掛ける六日間掛ける四週でもし働いたとして、今、本俸の基準額が十九万九千九百二十円です。そうなってくると、二百六十四時間は拘束をされるということになります。新制度のもとで、保育時間の開所時間というのは一日十一時間とされているので。これを時間給に直すと、七百五十七円にしかならない。これは本当に異常な事態だと思うんです。

 大臣にお聞きしますが、こういう事態を放置していいんでしょうか。

加藤国務大臣 公定価格における常勤職員の人件費につきましては、国家公務員の給与体系の中で、その職務内容や勤続年数などの観点から、準拠するにふさわしいと考える職種や級号俸を特定して算出しているところでございます。

 具体的には、常勤であって主任の保育士でない保育士の方に関しては、福祉職一級二十九号俸の人件費をもって、積み上げ方式によって算出をさせていただいております。

 新制度においては、保育標準時間認定を受けた子供を受け入れる保育所では十一時間の開所が求められてはおりますけれども、そういう保育所であっても、チームを組み分担して保育に当たっていることから、個々の保育士の一日の勤務時間は八時間を想定しているところでございます。

 また、常勤保育士については、本俸のほか、施設所在地の地域手当、さらには処遇改善等加算もされておりますので、そういったことを考慮いたしますと、今御指摘のあるように、公定価格設定上の常勤保育士の賃金が、最低賃金を時給単位で下回っているということにはならないのではないかなというふうに思います。

池内委員 今大臣は、個々の職員は八時間と想定されているとおっしゃいましたけれども、私がお伺いした職員の皆さんは、定時になったから、さあ帰ろうとか、では残業代も出しますよなんという、そんなゆとりのある保育所なんてほとんどありません。ある保育所では、正規の職員の保育士の給料を削って、朝夕、人手が足りない時間のパートさんの給料に充てて安定した保育を保っているという努力まで、本当に悲しい事態ですけれども、そういうことまで起こっています。

 最後に、私はお聞きしたいんですけれども、野党が今、月額五万円引き上げというのがありますが……

西村委員長 池内さん、申し合わせの時間が来ていますから、おまとめください。

池内委員 補正予算を組んででもやるべきだと思いますが、いかがですか。最後です。

加藤国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、またさらにこれから保育園を拡大していくに当たっても、保育士等の確保というのは非常に重要だというふうに思っておりますし、また、それを進めていくにおいても処遇の問題というのがございます。

 これまでも、保育士の処遇改善についてはいろいろ取り組んでまいりましたけれども、また、今般の厚生労働省から発表された中にも、保育士等のさらなる処遇改善など、中長期的に取り組むとされております。

 その点を含めて、この春に取りまとめさせていただきますニッポン一億総活躍プランの中で、これは一回だけというわけにはいきませんから安定財源をしっかり確保しなければなりません、それを図りながら具体的で実効性のある待遇の改善策を示していきたい、こう思っております。

池内委員 終わります。ありがとうございました。

西村委員長 次に、江田康幸君。

江田(康)委員 公明党の江田康幸でございます。

 私は内閣委員会では初の質問となりますが、西村委員長また加藤大臣、皆様、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 本日は、一億総活躍社会の実現について取り上げたいと思っております。

 我が党は、安倍総理が掲げる一億総活躍社会とは一人一人が輝き活躍できる社会と位置づけて、全ての人が自己実現できる社会を目指して取り組みを進めてまいりました。そのため、内閣が掲げる新三本の矢である、希望を生み出す強い経済、夢を紡ぐ子育て支援、そして安心につながる社会保障、いずれも非常に大事な重要な課題であることは間違いないわけであります。

 私は、人口減少そして少子高齢化という我が国の構造的な問題に対して、アベノミクスによる成長の成果が得られつつある今こそ、真正面から取り組んでいくという政府の姿勢を高く評価するものでございます。

 今般成立しました平成二十七年度補正予算また平成二十八年度の予算におきましても、公明党の提言を踏まえて、幼児教育の無償化の推進、さらには奨学金の拡大、また認可保育所の整備の上積みや在宅介護・施設サービスの整備の上積み、そして介護休業給付の引き上げという、この新三本の矢の実現に向けた重要政策は、必要な予算をしっかりと確保することができたものと考えております。

 予算に計上されたこれらの事業をやはり着実に、しかも前倒しで執行していくことがまずは肝要ではないかと思いますが、予算の編成に先立って緊急対策の取りまとめを主導していただいた加藤大臣から、改めて、一億総活躍社会の実現の意義と今後の政府の取り組み、基本的な方向についてお伺いをさせていただきます。

加藤国務大臣 今委員の御指摘がありますように、まさにデフレ脱却が見えてきた今こそ、少子高齢化という日本の構造的な課題に正面から取り組んでいきたいということで、総理から一億総活躍社会の実現、特に、誰もが個性を尊重されて、家庭や地域、職場において将来の夢や希望に向けて取り組める、まさに多様性が認められる社会をつくっていきたい。そして、そのためにも、一人一人の希望を阻むあらゆる制約を取り除き、活躍できる環境整備をしていくことが重要だというふうに私ども認識をしております。

 そして、そのためにも、従前の三本の矢を束ねて一本の強い経済、これにしっかりと取り組んでまいりまして、そしてそれによって生まれてまいりました成長の果実を、第二、第三の矢であります子育て支援やあるいは社会保障、その基盤を強化していく。

 こうしたことによって消費も拡大され、あるいは労働の参加もふえ、さらには多様な方々が入ってこられるということによって新たなアイデアが、あるいはイノベーションを通じた生産性の向上が図られるわけであります。そして、そのことがまた経済のプラスにつながっていくという、まさに成長と分配の好循環を生み出す新たな経済社会システムをつくっていきたいということの中で、昨年十一月末に緊急経済対策を御党の御協力もいただきながら取りまとめさせていただきました。

 おとといですか、平成二十八年度本予算も成立をし、そして二十七年度補正予算も既に成立をしているところでございますので、総理から三月二十九日に指示がございましたけれども、こうした施策が速やかに実施されるよう、私も関係大臣とよく連携をとりながら対応していきたい、こう思っております。

江田(康)委員 ありがとうございます。

 ただいま御説明いただいたような一億総活躍社会を実現していくためには、政府によるさまざまなサービス事業や給付の実施の取り組みとあわせて、企業が主体となった働き方改革などが不可欠であるわけでございます。総合的な取り組みが必要であるということで、そこで、この春取りまとめられる一億総活躍プランに関連して質問をさせていただきます。

 一億総活躍プランでは、より構造的な問題として働き方改革を取り上げられると聞いております。

 これに関して、先週開催された一億総活躍国民会議では、長時間労働の是正について議論があったと聞いております。我が国は、欧州諸国と比較すれば年平均労働時間は長くて、かつ長時間労働者の割合も高くなっておりまして、こうした長時間労働が、仕事と子育ての両立を困難にして、少子化の原因や女性の活躍を阻む原因となっているわけでございます。

 この長時間労働を抑制し、多様な働き方を実現するということが大変重要でございますが、これに関しては、今国会に労働基準法の改正案が提出されておりまして、ぜひともこれについては成立を図るべきだと考えております。

 その上で、長時間労働を助長する大きな要因の一つに三六協定の青天井の問題があるわけでございます。法定労働時間は週四十時間であり、また一日八時間と定められているわけでございますけれども、労使協定によればこの法定労働時間を超えて労働させることが可能であり、その労働時間には法定上の上限がない。この問題については長らく労政審で議論をされてまいったわけでございますけれども、結論を得るところまでは至らなかった。

 しかし、今般の一億総活躍国民会議での議論を経て、安倍総理から、現在提出中の労働基準法改正案に加えて、三六協定における時間外労働規制のあり方について再検討を行う、そういう指示があったと聞きます。

 そこで、加藤大臣にお聞きをいたします。

 この長時間労働の是正の問題、さらには三六協定における時間外労働規制のあり方について、今後一億総活躍プランに盛り込んでいくべきだと思います。どのように盛り込んでいくおつもりか、大臣の所見をお伺いいたします。

加藤国務大臣 委員の御指摘がありましたように、長時間労働というのは仕事と子育てなどの家庭生活の両立を困難にするものでありますし、もちろん、働く方の健康あるいは精神も含めて、いろいろな意味で影響もございます。また、それが少子化の原因になり、女性の活躍を阻む、こういう要因にもなっているわけであります。今御指摘がありましたニッポン一億総活躍プランにおいても、長時間労働の是正を働き方改革の重要な柱として位置づけていきたいというふうに考えております。

 総理からの御発言がありましたけれども、具体的に、現在の法規制の中での執行を強化するということで、時間外労働を労使で合意するいわゆる三六協定において、健康確保に望ましくない長時間労働を設定した事業者に対する指導強化をしっかり図っていく。二点目として、これは厚労省だけではなくて関係省庁とも連携をいたしまして、下請などの取引状況にも踏み込んでいきたいというふうに思っております。現在、具体策を早急に取りまとめ、できるものから直ちに実行していきたいと思っております。

 その上で、今お話がありました、現在労働基準法改正法案を提出させていただいているところでございますので、ぜひその成立をお図りいただきたいと我々政府は思っておりますが、それに加えて、三六協定における時間外労働規制のあり方について再検討を行う、こうされているところでございます。

 長時間労働の是正措置について、先ほど申し上げましたように、この国民会議において議論をいただいた上で、ニッポン一億総活躍プランで具体的な方向性を示していきたいと思っております。

江田(康)委員 ぜひとも精力的に議論をしていただいて、具体的、実効的なものにしていただくように、よろしくお願いを申し上げます。

 続きまして、希望出生率一・八の実現に関連して、待機児童の問題について私も取り上げさせていただきたいと思います。

 政府は、待機児童解消加速化プランに基づいて保育所等の受け入れ児童数の拡大また保育士の処遇改善等に大きく取り組んできたところでございますけれども、依然として二万人を超える待機児童が存在しているのも現実でございます。

 公明党では、待機児童対策推進プロジェクトチームを設置しまして対応を検討し、先週の二十五日には、待機児童の解消を求める緊急提言を政府に提出いたしました。この中には、さまざまございますけれども、保育の受け皿の拡大に加えて、保育士の処遇改善の具体策も数多く盛り込まれているところでございます。

 これらの提言を受けて、今週、厚生労働省から「待機児童解消に向けて緊急的に対応する施策について」というものが公表されたわけでございます。

 このうち保育の受け皿の拡大につきましては、やはり規制緩和も含めた緊急的な対策を検討することが必要になっていると考えます。例えば、東京二十三区の多くでは国の最低基準を上回る人員基準等が設定されておりますけれども、これらの自治体が緊急的な対応としてあくまで国の基準を満たす全国と同水準の基準を適用すれば、各保育園ではさらに多くの子供たちを受け入れることができるようになるわけでございます。

 こうした自治体における規制緩和の取り組みは、即効性もあり、厚労省の緊急対策にも盛り込まれているところでございますけれども、さらなる受け皿拡大が図られるまでの緊急的な対応として、各自治体には、保育の質を十分確保した上で、ぜひ真剣に検討していただきたいと思います。

 また、特に都市部において短期的に保育の受け皿を拡大するためには、民間の主体が既存の施設を利用して保育園等を展開していくことが効果的でありますけれども、現在、資材の高騰や都市部での賃料が高いといった問題があるわけでありまして、国の補助等の水準が実勢に合っていないという話も事業者から伺っております。

 このような都市部の地域の実情を踏まえた支援の充実というものが大変重要であると思っておりますが、国においては前向きに検討していただきたいと思います。

 そこで、特に都市部の実情を踏まえた待機児童対策という観点から、緊急対策として効果が期待される自治体への規制緩和の要請や、また都市部の実情を踏まえた支援策の充実について厚生労働省としてどのように取り組みを進めていかれるのか、具体的にお伺いをいたします。

吉本政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の緊急対策におきましては、国の定める人員配置や面積基準を守った上で、小規模保育事業についての定員十九人を超えた受け入れを推進するなどの規制弾力化を伴う措置も盛り込ませていただいているところでございます。

 保育の実施主体はあくまで市区町村でございますので、こうした緊急対策に盛り込みました複数のメニューの中から、地域の実情に合った取り組みをできる限り多く実施していただきますように要請していきたいというふうに考えております。

 具体的に申し上げますと、今後、市区町村長との緊急対策会議、厚生労働大臣との会議でございますが、これを開催いたしまして直接お願い申し上げますとともに、その後の取り組み状況につきましても実際の進捗を確認することなどによりまして、具体的な取り組み、内容の充実を促してまいりたいというふうに考えております。

 また、都市部におきます支援策でございますが、特に賃借形式のものが多い、その中にあって実勢に合っていないといった御指摘がございましたので、二十八年度予算におきましても、賃貸物件を活用した保育園の賃借料加算を実勢に見合うように大幅に上積みするということにいたしたところでございます。

 また、緊急的な一時預かり事業を定期に利用するような場合につきましては、利用者の御負担が過大になりませんように配慮するなどといったことも緊急対策で盛り込ませていただいているところでございます。

 さらに、施設整備におきましても、整備費における土地借料加算の引き上げ、また工事着工前も対象とする、さらに賃料を含めた改修費の単価改善、こうしたものも充実を図ってまいりたいと考えているところでございます。

江田(康)委員 ありがとうございます。

 次に、保育士の処遇改善についてもお聞きをしていきたいと思っております。

 自公政権になって以降、子ども・子育て支援新制度のもとで三%程度の処遇改善は実施してきたわけでありますが、直近の調査では保育士の年収については約十三・五万円の改善が見られるなど一定の成果も見られるところでございますけれども、やはり全産業と比較すれば相当の乖離があるのもまた現状であります。

 こうした全産業との乖離解消を目指して、保育士の賃金水準をまずは四%確実に引き上げて、さらに、賃金実態を見ながらさらなる引き上げについても中期的な課題として検討が必要である、このことは公明党からも提言をさせていただいたところでございます。

 保育士の人材確保について、総理から、平成二十八年度予算成立後の会見で、高い使命感と希望を持って介護福祉士や保育士の道を選んだ人たちを、私たちは国を挙げて応援しなければなりません、経験に応じた給料アップの仕組みをつくりながら、処遇の改善にもしっかりと取り組んでまいります、そういうお言葉もございました。

 改めて、加藤大臣に、少子化担当大臣として、また一億総活躍大臣として、待機児童に向けた意気込みをお伺いするとともに、この中期的な課題である保育士の処遇改善についても一億総活躍プランでしっかりと位置づけることが重要かと考えますが、御所見をお伺いいたします。

加藤国務大臣 待機児童を解消するためにも、私どもの安倍政権がスタートしたときから待機児童解消加速化プランを推進させていただき、そして先般、受け皿を四十万人からさらに五十万人分の増という形にさせていただきました。その中でもまた必要な人材の確保ということも大変重要でありまして、二十七年度補正予算や二十八年度の当初予算の中にも必要な措置は取り込んだところでございます。

 また、先般、御党からも、緊急に対応すべき対策を非常に短期間でありながらおまとめいただきました。それらも踏まえて、政府として、待機児童解消に向けての緊急的に対応する施策を発表させていただきました。その中にも、この処遇改善の問題も当然盛り込まれております。

 保育サービスをしっかり提供していく、さらに、これからさらに保育所整備を進めていけばそれだけ多くの保育士の方々が必要になっていく、そういうことも含めて、また職員の方々に、先ほどの総理の発言の中にもありましたけれども、やりがいを持って、誇りを持って働いていただける、そのために処遇についても適切な評価をしていくということが必要だと思います。

 今委員の御指摘がありましたように、これまでもさまざまな処遇改善を図ってきたところでありますけれども、さらに、まずは〇・三兆円の分の中で、御指摘いただいております残り二%の処遇改善、こういったものも含めて、この春に取りまとめるニッポン一億総活躍プランの中で具体的で即効性のある待遇改善の施策を、安定財源を確保しつつ、しっかりと示させていただきたいと思っております。

江田(康)委員 ぜひとも具体的で実効性のある処遇改善策を示していただきたいと思いますので、加藤大臣のリーダーシップに大きく期待したいと思います。よろしくお願いをいたします。

 最後でございますけれども、希望出生率一・八に関して、子供の医療費の支援のあり方についてもお伺いをさせていただきます。

 現在、全ての自治体においては何らかの形で地方単独事業により子供の医療費の窓口負担の減免措置がなされているわけでございますけれども、これは、子供と保護者が安心して医療機関を受診できるようにするために大変重要な取り組みでございます。しかし、その一方で、こうした自治体に対して国が国保補助金の減額調整措置を行っている、この問題がございます。

 公明党は、この問題につきまして、子育て支援そして地方創生、地域包括ケアなど総合的な観点から、早急に見直すべきであると何度も申し上げてきたところでございます。

 今回、厚労省の子供の医療費のあり方に関する検討会の取りまとめにおきまして、一億総活躍社会に向けて少子化対策を推進する中で、地方自治体の取り組みを支援する観点から、早急に見直すべきとの意見が大勢を占めたと伺っております。また、総理からも、必要な対応を検討するとの話が出たところでございます。

 そこで、長年の課題でありますけれども、この国保の国庫負担の減額調整措置の見直しについては、一億総活躍プランにしっかりと、また具体的に盛り込んでいっていただきたいと強くお願いするわけでございます。どのようにお考えをお持ちか、加藤大臣の御所見をお伺いいたします。

加藤国務大臣 国保の減額調整措置を含めて、子供の医療のあり方について、厚生労働省における子どもの医療制度の在り方等に関する検討会が行われて、三月二十八日に取りまとめがなされ、今委員が御指摘のように、少子化対策を推進する中で、地方自治体の取り組みを支援するという観点から、見直すべきとの意見が大勢を占めたというふうに承知をしております。また、医療費無償化による受診拡大等が医療保険制度全体の規律や医療提供体制に与える影響等の観点も踏まえて検討を行うべきという意見もあったということでございます。

 いずれにしても、この取りまとめを踏まえて、また先ほどの総理指示がございますので、厚生労働省を中心として、この国保の減額調整措置の見直しも含めて、子供の医療のあり方について必要な対応が検討されていくというふうに承知をしておりますので、私も、その動向も踏まえて、ニッポン一億総活躍プランの中でどう取り扱うか、適切に対応していきたいと思っております。

江田(康)委員 一億総活躍社会の実現に向けては、与党としてしっかりと協力してこれを確かなものにしていくことに最大の努力を惜しまないことを申し上げて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

西村委員長 次に、大串博志君。

大串(博)委員 おはようございます。民進党の大串博志でございます。

 きょうは、官房長官、石原大臣を含め、質疑の時間をいただきましてありがとうございました。お忙しいところ、よろしくお願いします。

 きょうは、いろいろ今話題にもなっています、注目も集めています景気、経済、そしてそれが消費税の再引き上げに与える影響、道筋等々に関して質疑をさせていただきたいと思います。

 まず、総理は核サミットに今行かれて、きのうもいろいろな報道を見ていると、核サミットに行かれながら、世界的な経済学者の皆さんや、あるいは国際機関で経済を担当されている方々との意見交換をされている。伊勢志摩サミットに向けた御準備もされているんだろうな、こういうふうに思いながら見ておりました。

 先般は、国際的な経済学者でいらっしゃるスティグリッツさんあるいはクルーグマンさんを招聘されて、いろいろな意見を聞かれておったというふうに聞いております。実は、私自身もスティグリッツさんといろいろな話を、今回、二度ほど直接させていただきました。

 そういった中で、今の経済、景気の状況を受けて、単刀直入に官房長官にお尋ねしたいと思いますけれども、来年四月の消費税率の引き上げは予定どおりか、それはどういう条件下においてかということに関して、まずお答えをいただきたいと思います。

菅国務大臣 ここについては、総理がたびたび国会等で答弁をさせていただいています。まさにリーマン・ショックや大震災のような重大な事態が発生しない限り予定どおり実施していく、そのことには全く変わりありませんし、経済の好循環を力強く回していく、そうしたことによってその経済状況というものをしっかりつくり出していきたい、ここは全く同じであります。

大串(博)委員 このことが繰り返し国会で聞かれるのは、この間、若干その発言にやはり揺らぎがあったということじゃないかと思うんですね。今のように、リーマン・ショックあるいは大震災のような重大な事態が発生しない限り確実に実施をしていく、こういうふうにおっしゃっていらっしゃいます。一方で、この間、例えば消費税率を引き上げても、経済がそれで減速して税収が上がらないというような状況である場合には考慮の要因として入れるような発言もあったと思います。

 私は、リーマン・ショック級あるいは大震災級の重大な事態と、経済が減速して税収の上がりに悪影響を及ぼすんじゃないかという状況は、経済の言い方的に言うと、やはり相当差があると思うんですね。

 クラリファイさせていただきたいと思いますけれども、消費税率を引き上げたがゆえに経済が減速してしまい税収が思ったように上がらないというような状況は避けたいがゆえに、その場合には消費税率の引き上げをやはり再考せざるを得ないなということではなくて、あくまでも、リーマン・ショックや大震災等のかなり大きな状況が生じない限りは予定どおり引き上げていくということでよろしゅうございますでしょうか。

菅国務大臣 それは大串委員のおっしゃるとおりであります。

 その中で、これはぜひ御理解をいただきたいんですけれども、私自身も、税率を上げて税収がふえなければ上げる必要はないという話をさせていただきました。

 これは、記者会見で私は記者の方に聞かれたんです。総理は税率を引き上げて税収が上がらなければ上げる意味がないということを言った、それについて官房長官はどう思いますかという話だったものですから、それは当然のことじゃないですかというような趣旨を、それが新聞の一面に載ったりしておりますので、あくまでも、今申し上げましたけれども、リーマン・ショックあるいは大震災のようなそうした事態が発生したときということは間違いないことであります。

大串(博)委員 リーマン・ショックかあるいは大震災のような、リーマン・ショックは百年に一度とか言われました、大震災にしても何百年に一度、こんな状況ですね、こんな状況がない限り確実に消費税率の引き上げを行っていく、こういう考えだというふうに今お答えになりました。

 石原大臣にちょっとお尋ねしたいと思いますけれども、今、世界経済はいろいろ心配な要因もありますね。日本経済も、必ずしもいい状況だと私は思いません。

 リーマン・ショックというのを思い出してみると、よく言われるのが、麻生総理がなられたころ、夏から九月、十月とかけて、急速にニューヨークを中心とした国際金融社会に関してかなりのショックが広がったことを一般的には思い出しますけれども、でも、よくよく思い出してみると、実はあの前からも相当いろいろな金融機関が破綻したりして、ショックだともう言われていたんですね。

 そういう意味で、リーマン・ショック級のことが起こるといっても、これも一日にして起こるわけでなくて、相当なことが実は陰で起こっていた。あのころも相当な心配をされていましたよ。

 石原大臣、どうでしょうか。今、四月の頭です。消費税率の再引き上げが決定されるかどうか、ちまたの読みみたいなものを聞くと、伊勢志摩サミット、五月の末、この前後あるいは後あたりで判断されるのではないか、衆議院解散・総選挙なんということのタイミングなんかも考えるとその辺ではないかなんて言われますけれども、それにはあと二カ月弱なんですね。

 そういう中で、今、リーマン・ショック級の危機が訪れようとしていると思われますか。

石原国務大臣 リーマン・ショック級の危機というのは、やはりインベストバンクが倒産をしたり、また、大串委員が御指摘になりましたように、その前兆として不良債権の問題が表面化する、そういうような事案があってあの事態を引き起こしたというような御分析でございます。

 私も、ちょうどあのとき総裁選挙をやっておりまして、よく克明に覚えておりますが、その夏ぐらいからそういう兆候があった。それと現在の状況、もちろん、アジア、中国等々で景気が減速しているという事実はございます。また、資源国で、資源価格の急落によって国家の運営が厳しくなっている。また、産油国でもISの問題をめぐってさまざまな紛争があって、また、イラク、イランが増産をすることによって需給が変化をしているということはございますが、その当時と今が同じような状況だという認識は持ち合わせておりません。

大串(博)委員 なぜこれをお尋ねしたかというと、私自身も、リーマン・ショック級のことが仮に五月の末とか六月の頭に起こるとすると、今はそれと感覚がちょっと違うんじゃないかなと思うんですね。

 だから、リーマン・ショック級のものが本当に、百年に一度なんというものが起こるとすると、もうその兆候はあらわれていなきゃいけなくて、確かに今、世界経済は厳しいものがあります。しかし、やはりかなり質が違う、規模が違う、レベルが違うんじゃないかなと思うんですね。それにもかかわらず、五月の末あるいは六月の頭あたりに、消費税率の引き上げを先延ばしして、解散・総選挙ということになるんじゃないかといううわさが、あるいは臆測が絶えないんですね。

 先ほど菅官房長官にお尋ねしました、税収が上がらなかったら元も子もないじゃないかという言葉、繰り返しお尋ねして恐縮でしたけれども、何で私はこれを聞いたかというと、実は、あれ、これはどこかで聞いたことがあるせりふだなと思って、聞き覚えがあったんですよ。

 よくよく調べてみたら、二十六年十一月、前回の衆議院解散時の記者会見のときに総理が消費税引き上げを延期する理由をおっしゃっていますけれども、その中で、税率を上げても税収がふえないということになっては元も子もありませんとおっしゃっていたんですね。これを私は非常によく覚えていたんですよ。

 これがあるので、アベノミクスを確実にする、そういう意味で、アベノミクスということで、解散・総選挙で信を問うんですということをおっしゃった。ということだったので、あのときは、だから、リーマン・ショックだから引き上げを見送るとかそういうんじゃなくて、まさに税率を上げても税収がふえないということになっては元も子もない、よって、アベノミクスを確実にするために引き上げを延期するということだったわけですよね。だから、そういう判断なんですよ。リーマン・ショックじゃないんですよ。

 今回、今リーマン・ショックとおっしゃいました、本当にリーマン・ショックというものが起こるのかどうかというのは、先ほど申したように、私は疑問があります。だから、そこで消費税の再引き上げの延期と衆議院解散・総選挙が絡むのではないかという見方があるから、非常に違和感を覚えているんですね。

 というのは、私の政治的な感覚で言うと、衆議院の解散・総選挙は、多分総理大臣が、最後まで明らかなことを言わず、ある日突然それまでの前言を撤回して、ぽんと、あす解散します、きょう解散しますと言っていい、そういう課題だというふうに、政治的責任は問われないと私は思うんですね。

 ところが、消費税の引き上げというのは違うと私は思うんです。消費税の引き上げというものに関しては、こういう経済政策をとります、よって、こういう形で財政再建を果たしていかなければならないから消費税の再引き上げも行っていきます、あるいは行えませんということを、一定の透明性を持ってきちんと政策をアナウンスして実行していってやるべきものだと思うんですね。

 解散をいつするかどうかということと同じように、ここまではこういうふうに言っていましたけれども、あるときにぽんとスタンスを変えて、いや、引き上げはやめました、理由は、今まではリーマン・ショックと言っていましたけれども、今回は違いますと。違う理由で、例えば、今、景気が悪くて税収が上がらないかもしれないからやはり再引き上げは延期せざるを得ませんというような感じで、急にぽんと変えていいものだと私は思わないんですよ。そのそごが空中に漂っている感じがするものですから、私は非常に違和感を覚えるんですね。

 官房長官、そういうふうな違和感を覚えられませんか。

菅国務大臣 私も新聞報道を見て、よくこういうことが、何で出ているんだろうなと実は思っています。

 解散・総選挙については総理大臣の専権事項でありますから、衆議院議員というのは常在戦場であるということは、私ども、国会に議席を得てから、ここは当然のことだろうというふうに思っています。

 それと同時に、今の消費税の問題でありますけれども、これは総理大臣がたびたび申し上げていますように、先日も発言されましたように、まさにリーマン・ショックや大震災のような重大な事態が発生しない限り予定どおり行う、そういうことを総理が述べております。ですから、そこはまさに総理の発言どおりというふうに思います。

大串(博)委員 私も、先ほど申し上げたように、政策、特に財政政策は一定の透明性を持って、一貫性を持って発言したものが実行されていくべき、これに関する発言をたがえるとやはり政治的責任を問われるという類いの話だと思うんです。

 私たちは、民主党のときも、マニフェストに消費税率の引き上げは書いていなかった。それを導入したことをもって、相当な政治的な批判を受けました。それは、体感したことでもありますし、やはり受けなきゃならぬことだというふうに思いましたし、当時、野党の自民党の皆様方から、そこは大変な御叱責も受けました。

 一方で、安倍総理自身も、先ほど引用しました前回の衆議院解散のときの記者会見等々では明確におっしゃっているんですね。そのときは、先ほど申しましたように、税収がふえないということになっては元も子もないのでという理由なんかも言いながら、あるいはアベノミクスを確実にするということも言いながらでありましたけれども、消費税の引き上げを延期された上で、財政再建の旗をおろすことは決してありません、社会保障を次世代に引き渡していく責任を果たしてまいります、よって、来年十月の引き上げを十八カ月延期し、そして十八カ月後、さらに延期するのではないかといった声もあります、再び延期することはない、ここで皆さんにはっきりそう断言いたします、二十九年四月の引き上げについては、景気判断条項を付すことなく確実に実施いたしますと。これからが大事です。三年間、三本の矢をさらに前に進めることにより、必ずやその経済状況をつくり出すことができる、私はそう決意しています、こういうふうに公約されたんですね。実際、当時の政権公約の中にも、二十九年四月には消費税率を引き上げますと公約をされています。

 ここに書かれているように、はっきり皆さんにそう断言しますとおっしゃっているし、かつ、それができるような経済状況を三本の矢でつくり出していきます、こうおっしゃっているんですね。

 これが仮に、マスコミ報道で今言われているように、菅長官が今不思議だなとおっしゃったように、夏前のある時点で、いや、リーマン・ショックではないけれども、それほどの状況ではないけれども、やはり経済状況がよくなくて税収も上がらないかもしれないから、消費税の引き上げは、リーマン・ショックとか大震災とは違う理由で上げるのを延期させていただきますということになるとこの政治的な公約と大いにたがう、すなわちそこには政治的責任がやはり生じるんじゃないかと私は思うんですけれども、菅官房長官の所見をいただきたいと思います。

菅国務大臣 総理大臣が、リーマン・ショックや大震災のような大きな経済変動がない限りそこは引き上げると言っているわけですから、それについて私の立場で仮定のことに答えることは当然控えるべきであろうというふうに思います。

大串(博)委員 私は、このときの安倍総理のこの発言を非常に重視したいと思うんです。すなわち、もちろん、十八カ月後に再引き上げはします、はっきりそう断言いたしますという言葉もそうですけれども、三年間、三本の矢をさらに進めることにより、必ずやその経済状況をつくり出すことができる、私はそう決意しますと言って、これを選挙公約として打ち出されたこと、私はこれを非常に重視しているんです。その結果、できているのかということがやはり問われるというふうに思うんですね。

 著名な経済学者の皆さんのお声を聞かれて、財政問題なんかでもいろいろなアドバイスを聞いていらっしゃるというふうなことでした。スティグリッツさんの件は先ほど申し上げたとおりですけれども、クルーグマンさんからもいろいろ話を聞かれているらしいですね。

 報道で、ドイツの財政出動を促すのに何か知恵があったら教えてください、こうクルーグマンさんに総理がおっしゃったということなんですけれども、こういうことを本当に総理はおっしゃったんですか。

菅国務大臣 あの会合の中身については、精査した上で、本人の了解をいただいて公表するということになっていますので、その途中の段階で発言することは控えたいと思います。

大串(博)委員 私は、総理がこういうふうな質問をされることもむべなるかなと思う面もあるんです。今の世界経済状況を前提とすると、財政余力のある国、ドイツとか、あるいは中国もそうかもしれません、こういうところに牽引役として財政政策も機動的に使ってくださいと言うのは、私はあり得る話だと思うんです。それが伊勢志摩サミットの一つのメッセージになることもあり得ることだというふうに私は思っています。

 一方で、日本はちょっと立場が違いますね。もちろん、先進国経済の中で牽引車となっていかなきゃならないのは確かです。ただ、日本はほかの国に比べると比較にならないほど巨額の財政赤字を抱えていますね。ですから、財政再建を果たしていく、そのときに、先ほどの、総理が、三年間三本の矢をさらに進めることにより、必ずやその経済状況をつくり出していくことができる、経済を立て直しながら、それによって消費税を引き上げられるような状況をつくり出していくということをおっしゃったし、それをやはり日本はやっていかなければならないと私は思うんですね。

 ですから、財政再建の問題は、先ほど申しましたように、どこかで、リーマン・ショックか大震災かというような基準とか、それをころっと変えて、政争の具のように判断基準を変えて衆議院解散・総選挙と絡ませるということは、私は、財政再建に関しては必ずや政治的な責任が伴うという感じがするんですね。そのことを私はきょう申し上げたかったんです。

 総理はこういうふうにおっしゃっています。先ほども引用しましたように、三年間三本の矢をさらに進めることにより、必ずやその経済状況をつくり出すことができる、こうおっしゃっている。これが当時の前提ですよ。公約ですよ。この公約にもかかわらず、それが上げられないというような状況が出てくるとすると、それは経済失政だった、アベノミクスは失敗だった、このことをもって言わざるを得ないんじゃないかと私は思うんですけれども、菅官房長官、いかがでしょうか。

菅国務大臣 仮定の質問に答えることは控えたいというふうに思います。

 ただ、現状でありますけれども、アベノミクス三本の矢の政策によってもはやデフレではないという状況をつくり出すという中で、実体経済を見れば、企業収益は過去最高、さらに好調な雇用・所得環境が続くなど、日本経済の足腰は極めてしっかりしているというふうに思っています。さらに、世界経済については、一部に弱さが見られるものの、全体として緩やかに回復している、そういう状況になっているというふうに思います。

 そして同時に、安倍政権はプライマリーバランス半減という目標はしっかり達成していることも、委員御承知のとおりであります。

大串(博)委員 果たしてそうかなと。

 今官房長官は、今、日本経済の回復の足取りは極めてしっかりとしておりますというふうにおっしゃった。ちょっとそこは月例経済報告の言い方とも違うなというふうに思いますけれども、そう認知されているということだと思います。今のように言われると、ますます、リーマン・ショックのような状況に本当にすぐなり得るのかなというのは疑問です。

 それを申し上げた上で、景気の状況は本当にそうかなと思うところもあるんですね。

 石原大臣にお尋ねしますけれども、やはり景気の状況はよくないんじゃないでしょうか。例えば、三十日に発表された鉱工業生産、私はこれを注目しました、一―三月はマイナスですね。三月末も終わりました。これだけいろいろな各種数字が出てくると、やはり一―三月はマイナス成長ではないかという見方がかなり強まっていると思うんですね。そうすると二期連続かということになる。相当な状況ですよ、リーマンじゃないにしても、日本の経済全体としては。

 という中で、この間、総理が記者会見の中で、最大の景気対策は予算の成立だということをおっしゃって、その実を上げるために予算を早期に執行することが必要です、可能なものから前倒しを実施するよう財務大臣に早速指示します、こういうふうに言われました。

 きょう、政務官に来ていただいていますけれども、これはどういう内容かというふうにお尋ねしたら、ちょっと時間がないので私の方で申し上げますけれども、具体的な早期執行の内容はこれから詰めるということですね。うなずいていらっしゃいます。

 そういう中で、石原大臣、これは経済対策の一環なんですか。

石原国務大臣 今週、予算を国会で、二十八年度予算でございますが、成立させていただいて、その後の記者会見で大串委員が今御指摘されたようなことを総理が言われ、財務大臣に指示されたということは承知しております。

 もう既に二十七年度の補正予算の前倒し執行というものも行われておりますし、これで二十八年度の本予算が成立したわけでございますので、総理がお戻りになられて、また財務大臣の方から私どもにもいろいろお話があると思いますけれども、予算は全国にお金をしっかりと流していく上で非常に重要なツールでございますので、景気対策の最大なるものであるというふうに認識をしております。

大串(博)委員 そうすると、石原大臣は経済財政担当大臣ですね、景気対策等を行うとすると、大臣のところをコントロールタワーとして行わなければならない。これは大臣が総理に進言されたんですか。そうあるべきですよね。景気対策の一翼を担っていくのではないかと私は思います。

 というのは、過去の例を見るとそうですよね。前倒し執行した上で、後ほど補正予算なりで景気対策の次なる予算をつけていくというのを通常やりますよね。だから、これは石原大臣が総理大臣に建言されたのではないかなというふうに思いますので、そこの確認をさせていただきたいのが一つ。そうじゃなかったらおかしいですね。

 もう一つは、前倒し執行というのをすると、当然、年度後半に財政のお金がなくなっていきます。過去の例を見ても、二十一年度に公共事業を前倒ししました。上半期の契約目標率八〇%ということで行いましたので、当然、年度後半に関しては公の需要が、がくっと落ち込みます。何がしかのことをしていかなければならないと私は思うんですけれども、そこに関する考えは何かめぐらせていらっしゃいますか。

石原国務大臣 内閣府として公共事業の執行状況についてしっかりと取りまとめて、連休の前後、どちらになるか、できるだけ早くお示しをさせていただきたい。

 その結果、委員が御指摘されたようなことが起こっているかもしれませんし、まだこれは数字が出ておりませんので何とも言えませんし、また前倒し執行についても財務大臣の方から直接指示があったわけではございません。しかし、過去の予算の執行状況を見れば、景況判断の中で公共投資が若干足りなくなってきているというマクロの数字が出ておりますので、こういう指示が出ているものだと承知をしているところでございます。

大串(博)委員 これで終わりますけれども、こういう指示が出ているものだと承知しておりますなんという、非常に私は不安です。経済政策運営に関しては最近非常に千鳥足風で、全体の整合性がとれていないことを非常に私は心配しています。

 そういう中で、アベノミクスはやはり成功していない、経済失政に近い状況じゃないかというふうに思いますということを申し上げさせていただいて、副大臣、大変申しわけございません、PKOの話とともにまた質疑させていただくことを申し上げさせていただいて、終わります。

 ありがとうございました。

西村委員長 次に、小宮山泰子君。

小宮山委員 民進党の小宮山泰子でございます。

 本日も、内閣委員会は本当に大勢の大臣がいるんだなというのを感じながら質疑を見ておりました。改めまして、一億総活躍について、やはりこの委員会に来て思うのと、またほかの委員会にいるときにも、さまざまな施策において、昨年から一億総活躍というスローガンのもとで、各省庁でさまざまな政策立案や事業計画が行われているのを実感いたします。

 そこで、加藤一億総活躍担当大臣は内閣府におられる大臣で、各省庁が連携して取り組んでいるというたてつけではありますけれども、直接関係省庁にみずからの部下という形で持っているわけではありませんよね。そうした中で、一億総活躍関連の取りまとめで、どこまで加藤大臣の所掌としてかかわりが持てるかということが非常にわかりづらいなという思いもしております。

 私自身も県会議員もさせていただいて、また国会議員をもう十年以上今させていただきますけれども、そのときの一番華やかなスローガンを冠にしてさまざまな施策が行われるというのは多々感じております。

 この半年ほどは一億総活躍。その前は女性活躍がちょっとあって、あとは地方創生。さらにその前は国土強靱化、強靱化という言葉が随分あちらこちらに躍っていて、毎年毎年随分とさま変わりしてしまうなという思いを最近はしているものでもあります。

 そこで、まず基本的なことになりますけれども、もう既に昨年十一月に、どんなことをするのかという方針の方はお聞かせいただきましたが、そのときも具体的には余りよくわからなかったほどに多岐にわたり過ぎておりましたので、現在、予算も衆参ともに通過をいたしましたので、改めて、関係の各省庁による一億総活躍関連の取り組みがどこまで加藤大臣の所掌として、どのように所管官庁のラインの間に大臣の指示を割り込ませるようにしているのか。よく縦割りの弊害と言われますけれども、一億総活躍大臣もこの縦割りの壁というものを感じているのか。できない案件が就任以来あったのか。そんなようなところを、ちょっと具体的なこともお聞かせいただければと思っております。

 そして、あわせまして、担当大臣としてかかわっている、現在もう既に実行されていることもおありになると思います。各省庁の一億総活躍の政策、事業を何分野、どれだけの事業を推進しているのか、このあたりも実数を挙げてお聞かせいただければと思います。

加藤国務大臣 今御指摘ありますように、一億総活躍社会の実現に係る施策は、少子高齢化あるいは社会保障制度、教育または経済財政政策全般も含む、極めて広範な分野でございます。

 また、一億総活躍大臣としては、まさに霞が関の縦割りを排して、横串で関係大臣と緊密に連携しながら施策を進めていく、その方向性を持って、それに向けて総合調整をやっていくというのが私の主たる任務だというふうに認識をしております。

 そういう中で一億総活躍国民会議を立ち上げ、昨年の十一月には緊急に実施すべき対策を取りまとめたところでございまして、その取りまとめに当たっては、いわゆる三本の矢というのを総理から指示をいただいております。その目標との関係で、横断的に体系的に、各省庁で行われる施策を整理していく。

 また、第一の矢、強い経済、第二、第三、子育て支援や社会保障、この取り組みの相互の関係を成長と分配の好循環というコンセプトのもとで進めているわけでありますけれども、この一億総活躍社会の実現に向けての基本的な考え方も示させていただきました。

 それを踏まえて、その後の平成二十七年度の補正予算また二十八年度の当初予算の枠組みを構築させていただいたというふうに思っております。

 これからに関しては、まさに五月に取りまとめるニッポン一億総活躍プランに向けて、働き方改革など重要な課題について、これは総理のイニシアチブをいただきながら、しっかりと関係省庁の取り組みを促していき、国民の目線に立って、まさに一億総活躍社会、そしてそれぞれの方々の希望の実現を阻む、こういったものを除去していくという強い思いで取り組んでいきたいと思っております。

 具体的な件数を一々挙げると、どこまでがとなるのかもしれませんけれども、例えば二十七年度補正予算、二十八年度予算の編成に当たってはそれぞれ調整を図ってまいりました。例えば認可保育所の施設整備、介護施設、在宅サービスの整備については、これは例外的に多年度にわたる基金という形で予算の執行をできるような形にもいたしました。

 また、介護の施設整備については、いわゆる特別養護老人ホームは御承知のように厚生労働省、サ高住、サービスつき高齢者向け住宅は国交省と別々だったわけでありますけれども、これを私のところで関係省庁とも調整をさせていただいて、将来にわたる需要動向というのをトータルで見る中で、それぞれがどういう役割を担っていくのかということを調整し、必要な予算も確保させていただいたところでございます。

 それから、先ほど申し上げました同一労働同一賃金についても、これはこれまでいろいろな議論がございました。一つの重要な考え方だ。他方で、我が国の雇用慣行になじまないんじゃないかという懸念はある。しかし、これまでの国民会議の議論あるいはさまざまな方々の議論をしていく中で、また他方で、やはり非正規労働者で働く方の待遇改善という観点から、総理から、一歩踏み込んで考えていくということが示されたわけでありまして、そういったことにも積極的に取り組みをさせていただいております。

 いずれにしても、執行部分というのを持っていないわけでございますけれども、それぞれの執行官庁と連携をとりながら、やはり大きな方針を取りまとめて、その中に本当に必要なもの、今委員御指摘があるように、何でも冠をかぶせればいいということではなくて、本当に真に効果のある、そういった観点からも、これまでも総合調整等に当たらせていただいたということでございます。

小宮山委員 ありがとうございます。

 具体的数というのは出てこなかったわけですし、省庁に壁があるのかということはお答えにならなかったということを考えると、今の話からすると、一億総活躍大臣には省庁の壁はないという感じなのかなという思いもいたします。

 それであるならば、そのほかの大臣でも同じようにできるのではないかと思いますし、けさの鈴木委員の質疑の中で河野大臣もおっしゃっていましたけれども、今回、本日からスリム化法で、閣議決定で省庁を決めて総合調整ができるようにする。しっかりと所管官庁が事業を各省庁と行えるということであれば、そういう意味においては、過渡期的に一億総活躍大臣は必要かもしれないけれども、今後はきちんと省庁を決めて、軸となる大臣がきちんと省庁を持ち、すれば、さまざまな事業ができるということを証明させていただく、実際は、歴史的にはそういった役割で終わられる、いい意味で終わられる担当大臣、無任所の大臣なのかなというふうに思っております。

 正直、八人も大臣がかかわられる内閣委員会におりますと、こんなに本当に必要なのか、スリム化法ができたならば、もっとそれを有効に現実的に活用されるべきなのではないかというふうな思いを、きょうは質疑を聞いていて改めて強くしたところでもあります。

 そこで、今後ではありますけれども、財務省からの予算削減要求も厳しい中でありますし、削減したはずの事業が、新たなスローガンに乗っかる形で名前を変えてまた復活をするみたいなこと、ある意味、また自民党政権に戻ってから、予算がどんどん拡大をする、そんなような状況を見ていますと、大変、さまざまな意味で、スリム化と、法案が通った割には、現実の政治の世界と行政というものはスリム化をしていっていないなという思いもしております。

 そこで伺いたいのは、やはりこういった、本来スリム化をしていくこと、もっとシンプルに本来業務及び大きな意味での行政改革ということをしていく中で、こんな肥大化をするような事例、そういうものはどのように排除していくのか。この点に関しまして、大臣と官房長官に御見解を聞かせていただければと思っております。

河野国務大臣 きょうからスリム化法がスタートをいたしましたので、まず、いろいろなことを考えていかなければいけないと思います。内閣官房から内閣府に移す業務、内閣府から各省庁に総合調整機能をつけて移す業務、これをしっかりやってまいりたいと思いますし、ほっておくと、何となく、各省庁に担当させるより内閣府に担当させる方が格が上だみたいな変な意識があって、そうならないように、各省庁にきちんと業務が行くようにしてまいりたいと思っております。

 また、橋本行革から大分年月もたっていますし、あのころのニーズとは最近の政策のニーズというのも違ってきておりますので、そういう意味で、スリム化法はできましたけれども、政府全体の組織のあり方の見直しというのは不断にやっていかなければならないと思いますので、行革の部局としても、しっかりそうしたことに努めてまいりたいと思います。

小宮山委員 ありがとうございます。

 本来であればやはり、全体を取りまとめ、きちんと調整をしていくというのは官房長官の一番の大きな役割だと思っております。それが、また別にこのように特化して、一億総活躍の中でも、名目GDPの六百兆円に関しては、また別の大臣が主務というか担当するというような形もあります。

 やはりそういう意味においては、本来では官房長官が一元化すること、そして、スリム化法案がもう既に通過をしておりますし、きょうから施行もされております。

 また、補正予算の説明などを聞いていると、いつも補正予算でとっておりますからというような説明を聞くこともございます。これは、必要な予算であるならば、本来の本予算の方にきちんと入れて、年間の計画、そういったものに入るべきものじゃないでしょうか。

 そういう意味においては、本来の本予算に入るべきものが補正予算にあって、何となく分割して、全体像が少し小ぢんまりというんでしょうかスリムに見えるというのでは、本来の行政のやっていること、また国の責任で行っていることというのは、何となく、慣例でなれてしまっている多くの方がいるのは感じておりますけれども、本来しっかりと組むべきものを組む、そして、本来所管がある各省庁、大臣を中心に行政を行っていく、その方が私は望ましいんだと思っております。

 つまり、本来、本当に必要な予算は堂々と確保できてしかるべきだと思っております。その方向に、もっと官房長官、歴代の中でこの夏には在任期間が首位になられるという、それだけの実力をお持ちでございます。この点に関しましてどのようなお考えを持っているか、お聞かせいただければと思います。

菅国務大臣 安倍内閣の最優先課題の一つに、経済再生と財政再建の両立を目指す、二兎を追って二兎を得る、そういう思いの中で、私ども今全力で取り組んでおるわけであります。

 財政健全化に向けては、当然、予算の重点化、効率化、そして無駄の排除、ここについては徹底して行う必要があるというふうに思います。

 先般成立しました本年度の予算、具体的には、歳出改革に全力で取り組んで、経済・財政再生計画において示した一般歳出の目安に沿って、その伸びを対前年四千七百億円に抑制しました。

 さらに、公共事業でありますけれども、成長力強化に資するインフラ整備などを重点化しながら、対前年度と同水準であります。

 また、行政事業レビューを実施して、外部有識者の意見を交えて、事業の内容を点検、検証、予算に反映をいたしました。

 また、基金について国会でも議論がありました。全ての事業を点検し、大幅な減額を行っているところであります。

 また、補正予算につきましては、委員からの御指摘のとおりであるというふうに思っています。予算の緊急性あるいは時々の経済情勢等を踏まえた中で補正予算はつくるべきだというふうに思っています。

 いずれにしろ、政権としては、当初予算であり、補正予算であり、厳しい財政状況のもとでありますので、重点化、効率化、そこを常に頭に入れながら取り組んでいかなきゃならないと常に思っております。

小宮山委員 そういいましても、本当に中央集権的だなと最近思うこともございますし、また、地方はさまざまな努力をしております。

 その一例として、警察関係者からですけれども、道路の舗装や、横断歩道や車線と歩道のライン、信号機など表示板などの補修や、ラインの引き直しなど、身近な交通安全施設のメンテナンス費用の予算が足りないということを伺います。住民からも、交通安全や子供の安全などを守る上で大変要望の高い事業でありますが、残念ながらそのまま出せない。なので、設置までには、要望があっても相当時間がかかる事例が多く聞こえてまいります。

 その中で警察関係者の方も大変努力をされていまして、かすれかかった横断歩道を引き直す必要が生じた際には、予算がなければ、横断歩道の幅を少し短目にしたり、予算を少し減らして、少しでも安全を確保できるように、地方では本当に涙ぐましい努力をしているわけです。

 これだけ予算規模が毎年毎年大きくなっている割には、老朽化インフラの問題であったり、地方においての予算執行というものが厳しいのは相変わらず変わりません。そこで、喫緊のことでもございますので、道路安全に資する、当たり前であるはずの予算が足りない現実について、国家公安委員長、今後どのように努力をされるのか、お聞かせいただければと思います。

河野国務大臣 最近の予算と平成二年の予算を比べると、社会保障の関係予算というのは非常に大きくなっています。恐らく、毎年一兆円弱ぐらいの伸びだと思います。国債の利払い償還費という項目も大きく伸びているところでございますが、それ以外の地方交付税とその他の支出というのはほぼ横ばいでございます。

 予算の金額が大きくなっているのは社会保障と国債の利払いで、それを賄うためにその他の予算のところはなるべく切り詰めるというのがここしばらくやられてきたことでございまして、行政改革担当大臣としては、やはり予算の無駄をしっかり抑えるということをやらなければいかぬ。一方、国家公安委員長としては、道路に使える予算は幾らあってもいいという立場でございますが、やはり、人口が減っている中で、しかもコンパクトシティーというのを進めるという中で、交通安全の設備に係る予算も効果的、効率的に使わなければならぬというふうに思っております。

 指定された道路については、都道府県の公安委員会のそうした設備に関して半分の補助を国が出すことになっておりますが、国の予算は近年ほぼ横ばいで予算をいただいておりますので、その予算をやはり効率的、効果的に使えるようにしっかり警察を指導してまいりたいと思っております。

小宮山委員 ありがとうございます。

 警察法にございます整備費の案分というものが変わらなければ、本来、十分の五というふうに聞いておりますが、十分の五は地方持ちで、これが出せないからこそさらに更新できないということもあるかと思います。この点の改善も、利率を上げるとか比率を変えるとか、そういったこともぜひ御検討いただき、安全を確保するための努力をしていただければと思います。

 官房長官、お時間でしょうか、ありがとうございます。

 さて、本日四月一日、障害をお持ちの方々が待望されておりました障害者差別解消法が施行されました。

 差別はいけないことだと誰もが思っていても、現実には、障害を理由とする差別や不平等はたくさんございます。

 内閣府では、「平成二十八年四月一日から障害者差別解消法がスタートします!」のパンフレットも作成され、法施行について周知徹底に取り組んでいると伺っております。

 この法律は、不当な差別的取り扱いを禁止し、合理的配慮の提供を求めている法律であります。同パンフレットを開くと、「対象となる「障害者」は?」が記されております。しかし、この中においては、障害者の説明には難病、疾病患者についての記述はございません。

 この障害者差別解消法の施行においての啓蒙パンフレットの対象に難病に関しての記述が入っていないということに関して、説明をいただければと思います。

武川政府参考人 お答えいたします。

 難病に起因する障害のある方につきましては、障害者差別解消法案の国会審議におきまして、同法案の障害者に係る定義規定第二条一号のうち、その他の心身の機能の障害のある者に含まれる旨を政府から答弁し、確認いたしております。

 先生の御指摘の今般のパンフレットでございますが、このパンフレットは、障害者差別解消法の趣旨、内容について広く国民の皆様に御理解いただくために策定したものでございます。当該箇所の部分につきましては、その法律の、障害者の定義を明らかにするという箇所でございまして、同法の規定ぶりに沿って定義を正確に記載したところでございます。

 もちろん、難病に起因する障害のある方も、このパンフレットの、その他の心や体の働きに障害のある者に、法律と同様含まれているものと考えております。

小宮山委員 その他というのは、法文でいえば前文に入っているところに説明があるというふうに認識をしておりますが、これを認識しているのは、この法律に深くかかわり、また大変関心を寄せている方たちにはその他というところに理解がされると思いますが、場合によっては、このパンフレットしか見ないで判断をする行政の方や一般の企業の方が多くいらっしゃるのではないかと思います。

 そういった中において、今後、差別解消法においても、難病や特定の疾患だったり、そういった方々のことをちゃんと理解できるように改定をしていただきたい、そういった検討も加えていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 本日から障害者差別解消法が施行されるわけでありまして、施行されたからいいということではなくて、施行からこれはまさにスタートというのは、今委員御指摘のとおりだと思います。それを円滑に進めるため、法の趣旨、内容等々について、広く国民の方々あるいは直接携わる方々にしっかり理解をしていただくことは十分必要だと思っております。

 このリーフレットというかパンフレットについては、まさにそうした国民の皆さんの理解を促進する手段として作成をしたところでありますし、作成の段階にあっては、特別支援学校等を初めとした、実際に障害のある方々も、御意見をいただきながら作成をさせていただいたというところでございます。

 今委員御指摘の点も含めて、さまざまな御意見、御感想等もあると思いますので、今後の対応において参考にさせていただきたいというふうに思っておりますし、また同時に、このパンフレットを持って説明をするときに当たっても、御指摘の点をしっかり留意して対応するようにさせていただきたいと思います。

小宮山委員 ちょっと時間がなくなってまいりましたので、最後の質問にさせていただきたいと思います。

 三月十一日、委員会質疑において、昨年の夏の安保法案の審議の際、国会周辺で行われた抗議集会に関する警備で、参加者と警備に当たられた警察官の方々の間の様子について、河野大臣に突然ではございましたけれども答弁をいただきました。

 その中には、そうした状況について警察がどのような取り組みをしているかしっかり確認をしてまいりたいという答弁で、大変河野大臣らしいなという思いもしておりますし、その後どのような確認をされたのか。弱者を含む市民と接する機会の多い警察における、社会的弱者になりかねない、障害をお持ちの方、難病の方、さまざまな病気をお持ちの方などの理解のための取り組み、現場への周知や留意、その点に関しまして確認は進んでいるのか、お聞かせください。

河野国務大臣 前回の委員会で御質問をいただきましたので、少し調べてまいりました。

 例えば警視庁では、警察学校で、警察学校にいる間に、社会福祉事業団の職員を招いて、認知症や知的障害のある方の特性や対応要領について講演をいただいたり、新規採用の警察官が都立の障害者施設を訪問して、障害のある方への対応要領を学んだりということをやっております。

 また、警視庁の場合には、全職員、約四万人でございますが、認知症サポーター養成講座を受講する、そうした取り組みをやっております。

 また、ほかの都道府県も、今全て申し上げることはいたしませんが、知的障害の方を初め精神障害の方あるいは養護学校の生徒さんをいかに介助していったらいいかというようなことを、現地で介護実習を通して学んでいくというような取り組みをやっておりまして、これは私が思っていたより数が多いなというふうに思っております。

 ただ、そうして学んだことが現場の警備その他で実際に行われなければなりませんので、今回の差別解消法の施行に伴いまして、警察庁から都道府県警に対して、こうした教育をしっかりやるように、そしてまた、現地でしっかりと、そうした日ごろ学んだことが実際に行われるようにきちんと指導をしてまいりたいということで、通知も出させていただいております。

 しっかり頑張ってまいります。

小宮山委員 ぜひしっかり頑張っていただきたいと思います。

 知的障害の方に対しての、あの、警察官が威嚇する対応、そしてそれを誰もとめないこと、私自身、その現場を目の当たりにして、研修を受けていたならなおのこと、誰かがなぜとめなかったんだろうという憤りも非常に感じますし、逆に言えば、これだけ差別というもの、また障害者という方に接したことがない方が多いんではないかという思いを強くしております。

 ぜひ、多くの障害を持っている方、そして見た目ではわからない難病や疾病をお持ちの方、さまざまな方と警察官の方に接していただき、研修をさらに重ねていただくことを要望いたしまして、終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

西村委員長 次に、後藤祐一君。

後藤(祐)委員 民進党の後藤祐一でございます。

 引き続き、障害者差別解消法が本日施行となりましたので、まず加藤大臣にお伺いしたいと思います。

 本日より、国の行政機関、独法等、地方公共団体、地方独法においては、不当な差別的取り扱いの禁止はもちろん、合理的配慮が義務づけられます。

 今、配付資料に、先ほど小宮山委員が言っていたものの一枚をちょっと参考までに配付しましたけれども、これらにおける義務づけの具体的な実施状況はどうなっていますでしょうか。

 というのは、対応要領を策定しましたということではなくて、その対応要領に基づいて具体的にどれだけ実施済みになっているのかどうかについて、地方公共団体まで含めて、現時点での実施状況を教えていただけますでしょうか。

加藤国務大臣 障害者差別解消法の実効性のある施行を進めていくためには、まずは、それぞれの機関が対応要領等を作成し、そしてそれに基づいて関係行政機関が適切な対応を行っていくということが重要であります。

 既に、国においては対応要領というのは策定しております。地方団体においては、既に作成をしているところ、そしてこれからということでございますけれども、都道府県や政令市においては、今年度の上半期までに全てが策定されるというふうに承知をしているところでございます。

 その上で、関係各機関において、その作成した対応要領に基づいてどういう形で実施をされていくのかということについては、法の施行状況調査というのを実施しようというふうに考えております。

 具体的には、各職員に対する対応要領に関する研修の状況、また各行政機関等が実施する合理的配慮のさまざまな事例等についての調査等を行うこととしておりまして、当然、その結果については公表していきたいと思っております。

後藤(祐)委員 ぜひ、本日から実施されましたから、この時点までにどの程度用意できているか、場所によって随分差があると思いますので、今月中にも早急に実施状況調査をしていただきたいと思います。

 続きまして、民間事業者においては不当な差別的取り扱いの禁止となります。お配りの先ほどのパンフレットでその例が幾つか挙げられております。例えばその右下ですと、飲食業なんかのお店に障害者の方が来られるときに、保護者や介助者が一緒にいないとお店に入れませんよ、こういったものは、不当な差別的取り扱いとして本日から法的に禁止されます。

 ところが、例えば飲食業に対してこれをどうやって周知するのでしょうか。がちっとした団体があるようなところで、全部、例えば鉄道事業者とかそういったところは、いろいろな周知の方法が徹底される面もあると思いますが、飲食業者ですとか一般のサービス業、小売業なんかですと、なかなか難しいと思うんですね。そういう意味では、本日の新聞だとかテレビも含めた政府広報なんかは本当はチャンスだったと思うんですが、残念ながら余りそういう感じではありません。

 ぜひ、例えば飲食業であれば、保健所との接触というのがあったりします。そういったときにこのパンフレットを渡すですとか、こういうのを見ると、えっ、そうだったんだというようなところが多いと思うんです。

 実際上の周知がなされるような各業界ごとの工夫というものを内閣府がもう少し主導して行うべきだと思いますが、このあたりも含めた民間事業者に対しての周知状況、これも、要領をつくりましたというのじゃなくて、実際の現場の民間事業者、具体的な事業者がどのぐらい認知しているかというその認知度合いを上げる具体策についてどうするつもりなのか、お答えいただきたいと思います。

加藤国務大臣 まさにこれをしっかりと進めていくためには、民間の方々の対応というのは非常に重要だというふうに思います。

 事業を所管する各府省においては、不当な差別的取り扱いの禁止や合理的配慮の提供について適切に対応するため、所管する分野の事業者に対する対応指針を策定しております。既にこれを公表し、また各事業者団体等を通じて各事業者にも通知をするほか、事業者向けの説明会も開催し、また今回、リーフレットを作成したりポスターを作成したりさせていただいているところでございます。

 委員御指摘のように、保健所というのを一つの例として挙げられましたけれども、さまざまな形で、この中身がしっかりと周知そして理解をいただけるよう、これは事業を所管している各府省の協力が必要でありますから、そうした協力をさらに求めていくべき努力をしていきたいと思っております。

後藤(祐)委員 ぜひ、現場の状況を具体的に見ていただきたいと思います。

 続きまして、自殺対策に行きたいと思います。

 この国会で自殺対策基本法改正がなされました。私も議連でずっと取り組んできたんですけれども、配付資料の二ページ目、三ページ目をごらんいただきますと、残念ながら、地域自殺対策強化交付金という大変重要なお金、三ページ目にあります、これが補正から一般予算に移ったことは大変喜ばしいことなんですが、三ページ目の補助率と二ページ目の補助率を比べていただきたいんですね。二ページ目が昨年度、二十七年度です。三ページ目が二十八年度、今年度です。

 例えば、その中で若年層対策を見ますと、今までは、二ページ目の二十七年度の若年層対策は十分の十で国が全額見ることになっているんですが、二十八年度になりますと、若年層対策が国は三分の二になってしまっている。

 あるいは、今回の自殺対策基本法で、地方公共団体に基本計画をつくるということが努力義務で課されます。この計画策定にお金を使うというのも残念ながら三分の二補助で、実際、自治体の声を幾つか私も具体的に聞いておりますが、十分の十だからできたんだ、特に小さい町や村なんかですと、自己負担分が出るともう縮小せざるを得ない、あるいはやめざるを得ないといった声も具体的にいただいております。

 ぜひ、もう一つ前の年度では十分の十だったんですね、そこまで戻せれば一番いいですし、せめて二十七年度のこの補助率まで戻すべきではないでしょうか。それがもしできないのであれば、また補正予算を組むということもあるでしょうから、その補正予算で自治体の自己負担分を補填するといった、もう少し各自治体で、まさに基本計画をつくる元年でもありますから、むしろ取り組みが後退したということにならないように進めるべきだと考えます。

 これは今までは加藤大臣が担当だったんですが、きょうから厚生労働省になりましたので、太田厚生労働政務官、お願いします。

太田大臣政務官 お答え申し上げます。

 まさに委員御指摘のとおり、本日から内閣府より厚生労働省の方に自殺対策の拠点が移されまして、組織の拡充とともに、きょうより自殺対策に真摯に取り組んでいく、こういうことでございます。

 補助率についてでございますけれども、一つ委員に御理解いただきたいのは、これまでは補正予算でございました。地域自殺対策緊急強化交付金、こういう名称でございましたけれども、今年度、二十八年度から当初予算として、いわば恒久財源化をいたしたところでございます。

 中には、確かに御指摘のように補助率が下がった部分がございますが、その考え方は、一番地域の実情がわかっている自治体においてもしっかりこの対策に取り組んでいただきたい、国とタッグを組んでしっかり実効性のある対策を上げていくべきであるという観点から、緊急度の高いものは十分の十、重要度の高いものは三分の二というふうに、国と地方のタッグの明確化を図ったということで補助率の差が出てきているものというふうに御理解を賜りたいと存じます。地方の主体性をより表に出した、こういうことでございます。

 確かに、私も地方自治体におりましたので大変苦しいということはわかりますけれども、地方全体の予算の中で、今、児童の自殺が減らない、こういうことでございますので、緊急度を持って対応していただきたいと私どもとしては考えております。

 そしてまた、補正で何とかできないか、こういうことでございますけれども、私どもとしては、今回恒久財源化されたということで、まずは、この交付金のしっかりした活用ということについて地方と御相談をしながら進めていきたいと考えておりますし、また、厚労省の中には精神保健医療の充実や生活困窮者への支援等、他の対策、多様化したものがございますので、これらとあわせて、先頭に立って総合的な自殺対策の実施に取り組んでまいりたいと考えております。

後藤(祐)委員 太田政務官、府知事までやられていたんですから、ぜひ自治体の声を聞いてみてください。特に市町村。もうみんな泣いていますよ。確保できないんですよ。これは議連の中で、むしろ与党の先生方、特に厚労に大変御理解のある先生方が、まさにこの交付金は問題だ、後退しているということで、自殺対策をやっている議員の間ではみんな意見が一致しているんです。ぜひ、自民党のこれをやっている先生方の声、そして自治体の声を聞いていただいて、改善していただきたいと思います。

 太田政務官と加藤大臣、これで結構でございます。

 続きまして、先ほども少しありました横断歩道の問題を、河野大臣にお越しいただいていますが、少しだけ取り上げたいと思います。

 二月九日、私の地元の厚木市で、小学校四年生の女の子が横断歩道ではねられて死亡する事故がありました。横断歩道がかすれちゃっていてということが一つの原因ではないかという話もございます。実際、そこに私も行ってみて、塗り直しは既にされておるんですが。

 予算の問題で、これは国が交通安全施設等整備事業という予算の中で、百七十二億のうち横断歩道で十億ほど確保されているということでございます。その運用を柔軟にやってほしいということはもちろんなんですが、今、この横断歩道の塗りかえというのは県のお金でやるわけです。市町村が、自分でお金を出すからという形でやることはできません。

 これは大変もったいないというか、地方財政法二十八条の二というので、「地方公共団体相互の間における経費の負担区分をみだすようなことをしてはならない。」という大変理不尽な規定がありまして、いや、うちの市は多少お金のゆとりがあるから、県はお金がないのはわかっています、うちの市だけは横断歩道をちゃんと塗りたいんです、自分のお金でやると言っても、この地方財政法上できないんですね。

 これは大変もったいない話で、例えば県が同意した場合はやっていいとか、あるいは、形式上は県がやるんだけれどもお金は市が出すだとか、いろいろなやり方はあると思うんですけれども、ぜひ、国家公安委員長でこの問題を所管する大臣であり、かつ行政改革大臣としてまさにこういったところに切り込んでいただきたい大臣としての河野大臣の御見解をいただきたいと思います。

河野国務大臣 新しく横断歩道を市町村が勝手につくっちゃうというのはまずいと思うんですけれども、そもそもそこに横断歩道があって、かすれています、やってほしいんだけれども、県がなかなかやってくれないから、では、自分のお金でそれを塗っちゃいますというのは、何となくよさそうに思うんですが、委員おっしゃったような法律の壁があって、これはどこだったかで、パトカーが欲しいんだけれども、ないから、これもやはり県がやらなきゃいけないんだけれども、では、そのお金を町が寄附するからパトカーをくれみたいなことをやったら、裁判でそれはいかぬということになったという判例があるんだそうでございまして、なかなか大変なんです。

 これは法律を直せばいいじゃないかというと、横断歩道以外にもいろいろなところに波及するものですから、なかなか一存で法律を直しましょうというわけにはいかなくて、ただ、今言ったように、県が認めれば市のお金でというと、財政力にも差があったり、では、そこはおまえのところは自分でやれるんだから自分でやってくれと後から県に言われたりとか、いろいろハレーションもあると思うんですね。

 今、現場で何をやっているかというと、これは市町村は引き直しちゃいけないんですけれども、例えば市道の場合は、自治体が道路管理者ですから、道路を補修する、補修するに伴って横断歩道が消えちゃったら、その横断歩道を引き直すのはいいですという話になっていまして、現場では、ちょっと道路を補修して横断歩道を引き直すのはいいんだというので、何かやられていると。これは余り国家公安委員長として大きな声で言っていいものかどうかわかりませんが。

 現場はいろいろなことで知恵を出してやっていただいておりますので、まずしっかり現場に対応していただきながら、この問題は、やはりちょっと常識で考えてもいかがなものかなと思いますので、少しいろいろな方面と検討してまいりたいと思います。

後藤(祐)委員 最後の一言に行革大臣の河野大臣を見ました。ぜひ総務省と調整して、同意していればいいじゃないですか、お金を出します、県が同意します、いいじゃないですか。ぜひそういったところで、できるところから進めていただきたいと思います。

 引き続きまして、情報監視審査会の報告書、私も情報監視審査会の委員としてまとめてまいりました。これを受けて政府としてどう受けとめているかお聞きしたいと思いますが、河野大臣、これに関しては担当ではないんですが、警察の関係もありますので、ちょっと聞いておいていただきたいと思います。

 きょうは、木原外務副大臣にお越しいただいております。おとといに引き続いて恐縮でございます。

 配付資料四ページ、これは外務省の特定秘密の指定管理簿。特に、上から二つ目、十二というもの、これは、外務省の中の国際情報統括官組織に対して提供をされた一定の条件を満たすもの全部という指定の仕方で、その下あたりの、我が国周辺地域における有事だとか、竹島問題とか、日韓排他的経済水域とか、多少なりとも案件が書いてあるものならともかく、この十二については中身が全くわかりません。

 これは通告しておりますが、この外務の十二に含まれる文書等の名称、あるいは、名称だけでは内容が推察できないものについてはその内容がわかるようなものをごらんになったでしょうか。これはごらんになってくださいと、きのう通告しております。そして、ごらんになったとしましょう。ごらんになって、この文書等の名称を見ただけでどんなことが文書等の中に書かれているか理解できたでしょうか。その二つをまず伺いたいと思います。

木原副大臣 お答え申し上げます。

 昨日、通告をいただいております。そして、しっかり見ておくようにということでございました。私も見せていただいております。その上で、それを見ただけですぐわかるかという御質問であります。

 率直に申し上げて、わかりづらいということは申し上げなければいけないというふうに思います。

後藤(祐)委員 全くわからないようなものもあったのではないでしょうか。これ以上は申し上げませんが。

 そうしますと、その文書等の内容そのものはごらんになっていただけましたでしょうか。そして、この外務の十二に示された特定秘密を含む全ての文書等が、この外務の十二という特定秘密のいわば箱ですね、この箱に含まれるという適正性が、この中身を見ないで文書等の名称だけで判断できるでしょうか。まず、見たかどうかも含めて。

木原副大臣 文書全部を見てはおりません。しかし、その中に含まれるという文書について幾つかのものを見せていただきました。

後藤(祐)委員 後段の部分はいかがですか。

 その文書等の内容を見ないで、その文書等がこの外務の十二にきちっとはまっているということの適正性は判断できるでしょうか。

木原副大臣 冒頭、最初に申し上げましたように、いわゆる管理簿の記載だけで文書の中身はつぶさにわかりませんということは申し上げましたので、そういう意味でいいますと、なかなかわかりづらいということは認めざるを得ないというふうに思っております。

後藤(祐)委員 文書等の名称もわかりづらいし、その文書等の名称だけでわからないので、その文書等の中身を見てようやく、その文書等が当該特定秘密の例えば外務の十二というところに入ることで適正ですねという判断ができるということが確認されたと思います。

 そうしますと、今、配付資料の五に、情報監視審査会の提出された報告書、そのうちの「政府に対する意見」という部分を配付させていただきましたが、この(二)にあります文書等の名称の一覧、そして、文書等の名称からその内容が推察しにくい場合はその内容を示す名称、これをもってまず情報監視審査会に各行政機関の長は説明されたいという意見を提示させておりますけれども、これは外務の十二だけではなくて、文書等の名称、そして、わかりにくい場合はその内容がわかるものを全て外務省に関して提出することを確約していただけますでしょうか。

木原副大臣 こういう機会でありますので、ちょっと丁寧に御説明させていただきたいというふうに思います。

 先ほど、なかなかわかりづらいということも私は申し上げました。他方で、国民の知る権利、また説明責任ということは非常に重要だ。後藤委員の指摘もそういうことだろうというふうに思っております。したがいまして、そのことに十分配慮してまいりたいというふうに思っております。

 他方で、今回まさに御指摘をいただいている外務の十二。今十二という番号にあるものは、極めて機密度の高い情報を扱う外国の政府機関から私どもの国際情報統括官組織に対して、特定秘密に相当する保護措置が講じられているものとして、まさに先方から特定秘密とすることについて具体的な要求があったものをこの中に指定させていただいているということでございまして、なかなか全てのものについて個々具体的に記載をするということが難しいという状況がございます。そのことは、まさに知る権利そして説明責任と、他方で、まさに守るべき情報ということのバランスという問題があろうかというふうに思います。

 ただ、その中でも、御指摘いただいたような点がございますので、私たちはそのことについてこれまでも審査会の方で必要な説明をさせていただいてきておりますが、引き続きしっかりと説明をさせていただきたい、このように考えております。

後藤(祐)委員 文書等の中身はその可能性があるんですけれども、文書等の名称についてですよ。名称についても出せない場合があるということですか。意見の(二)をよく読んでください、文書等の名称ですよ。これも出せない場合があるということですか。これは大変重要な、今、間違った答弁をされているんじゃないですか。文書等の名称は出せるんじゃないんですか。

木原副大臣 先ほど申し上げましたように、まさに相手の非常に機密性の高い情報を扱う機関から、自分たちも同じように特定秘密情報としての保護をかけてあり、そして日本においてもそのようにしてもらいたいという要請があって、そういう具体的な要請に基づいて受け取っている情報でありますので、全てがそうであるというふうには申し上げませんが、全ての文書について、文書の名称も含めて開示できるというか記すことができるかどうかということは、一つ一つちゃんと判断をしなければいけない。したがって、文書の名称も提示できない場合もあり得る、このように申し上げておきたいというふうに思います。

後藤(祐)委員 この委員会に出せと言うんじゃないんですよ。秘密を守らなきゃいけない情報監視審査会に出してくださいという話なんですよ。つまり、この意見(二)は拒否したということですね、外務省は。これはゆゆしき事態であります。

 大臣、この意見(二)について、今、外務省から、木原副大臣のような前を向いた政治家がこういうお答えをされるのは大変残念なんですけれども、この意見の(二)について、文書等の名称、内容が推察しにくい場合は、その内容を示す名称をせめて各行政機関が情報監視審査会に提出するよう各行政機関に対して指示していただきたいと思いますが、大臣、よろしくお願いします。

岩城国務大臣 このたび、衆参それぞれの情報監視審査会から年次報告書が出されました。それぞれ意見等が出されているわけでありますけれども、担当大臣としてとても重く受けとめております。

 そこで、今、各行政機関が文書の名称等を審査会に提出するようというふうな、衆議院の情報監視審査会の意見の(二)ですね、この要望というか意見でありますけれども、これにつきましても重く受けとめております。

 そこで、文書の名称一覧等の提出の求めにつきまして、今後、情報監視審査会のお考えを確認しつつ、関係行政機関と調整し、適切に対応してまいりたいと考えております。

後藤(祐)委員 大臣、そのお考えは既に意見の(二)で、情報監視審査会として示しているんですよ。文書等の名称は出してくださいと、与党も含めた審査会としての一致した意見として提出しているんです。その文書の中身をどの程度出すかはいろいろあると思いますよ。ですが、文書等の名称については出してくださいと、これは審査会としての意見なんです。

 ちょっと後段はよくわかりませんが、もうボールは内閣側にありますから、意見の(二)をきちっと各行政機関が守るように督励していただきたいと思いますし、法務省はみずから判断することもできますから、法務省については少なくともやっていただきたいと思います。

 続いて意見の(一)ですが、意見の(一)は、一個一個の文書等というよりは、まとまりとしての特定秘密の名称ですね、これについてもわかりにくいと。先ほどの外務省の十二というのが、これを読んだだけでは中身が全然わからないわけです。特定秘密として取り扱われる文書等の範囲が限定され、かつ、具体的にどのような内容の文書等が含まれているかがある程度想起されるような記述となるよう、政府として総点検を行い、早急に改められたいという意見でございますけれども、まず、この総点検をしていただきたいんです。少なくとも、我々情報監視審査会は、この十ページ目に外務省と名を挙げて、意見の(一)、要するに、この題名のつけ方が余りよろしくないという価値判断もしています。

 ですから、どの程度まで書けば国民に対する説明責任を果たすのかというのはなかなか微妙なところがあると思うんですが、この総点検を、まず、情報監視審査会と、これは内調になるのかあるいは大臣になるのか、いろいろそこは御判断いただけばいいと思いますが、ちゃんとコミュニケーションをした上で、ここから先はちょっと幾ら何でもひどいんじゃないか、せめてこのぐらいにはすべきじゃないかというような意見交換をしながら、総点検をまず開始していただきたいと思いますが、意見(一)についての対応を教えていただけますでしょうか。

岩城国務大臣 意見の(一)につきましても、貴重な御意見だと重く受けとめておりますし、今後、誠心誠意努めていきたいと思っております。

 それで、御指摘の、特定秘密の内容を示す名称の総点検につきましてでありますが、各行政機関と調整しながら、なおかつ、情報監視審査会の意見を踏まえまして、確認をしながら適切に対応してまいりたいと考えております。

後藤(祐)委員 その他の意見についても、特に(三)の廃棄のところ、これは独立公文書管理監、きょうお越しいただいておりますけれども、しっかりと、勝手に廃棄されることのないように、適正な運営をしていただきますよう、この意見を重く受けとめていただくよう、外務省についてもぜひしっかりやっていただきますようお願い申し上げまして、質問を終わります。ありがとうございました。

西村委員長 これにて本日の質疑は終了いたしました。

 次回は、来る六日水曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時四十一分散会


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