衆議院

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第3号 平成13年2月27日(火曜日)

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平成十三年二月二十七日(火曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 保利 耕輔君

   理事 奥谷  通君 理事 塩崎 恭久君

   理事 杉浦 正健君 理事 田村 憲久君

   理事 佐々木秀典君 理事 野田 佳彦君

   理事 漆原 良夫君 理事 西村 眞悟君

      荒井 広幸君    太田 誠一君

      熊代 昭彦君    河野 太郎君

      左藤  章君    新藤 義孝君

      棚橋 泰文君    谷川 和穗君

      松宮  勲君    山本 明彦君

      横内 正明君    吉野 正芳君

      渡辺 喜美君    枝野 幸男君

      日野 市朗君    水島 広子君

      山内  功君    山田 敏雅君

      山花 郁夫君    上田  勇君

      藤井 裕久君    木島日出夫君

      瀬古由起子君    植田 至紀君

      徳田 虎雄君

    …………………………………

   法務大臣         高村 正彦君

   法務大臣政務官      大野つや子君

   最高裁判所事務総局人事局

   長            金築 誠志君

   最高裁判所事務総局民事局

   長

   兼最高裁判所事務総局行政

   局長           千葉 勝美君

   政府参考人

   (警察庁交通局長)    坂東 自朗君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    金重 凱之君

   政府参考人

   (法務省大臣官房長)   但木 敬一君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制

   部長)          房村 精一君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    山崎  潮君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    古田 佑紀君

   政府参考人

   (法務省人権擁護局長)  吉戒 修一君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  中尾  巧君

   法務委員会専門員     井上 隆久君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十七日

 辞任         補欠選任

  鈴木 恒夫君     河野 太郎君

  山内  功君     山田 敏雅君

  不破 哲三君     瀬古由起子君

同日

 辞任         補欠選任

  河野 太郎君     鈴木 恒夫君

  山田 敏雅君     山内  功君

  瀬古由起子君     不破 哲三君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件




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     ――――◇―――――

保利委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として警察庁交通局長坂東自朗君、警察庁警備局長金重凱之君、法務省大臣官房長但木敬一君、法務省大臣官房司法法制部長房村精一君、法務省民事局長山崎潮君、法務省刑事局長古田佑紀君、法務省人権擁護局長吉戒修一君及び法務省入国管理局長中尾巧君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

保利委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

保利委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所金築人事局長及び千葉行政局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

保利委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

保利委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。杉浦正健君。

杉浦委員 自由民主党の杉浦でございます。

 高村大臣の所信表明につきまして質疑をさせていただきます。

 その前に、高村先生におかれましては、このたび法務大臣に御就任をなされ、おめでとうございますと申し上げますとともに、まことに御苦労に存ずる次第であります。

 高村先生にお目にかかると、いつも思い出すシーンがございます。先生にもお話ししたことがあるかと思いますが、先生が初当選されたとき、二十年ぐらい前ですか、当時私は弁護士でございまして、たまたまうちへ帰って、あれはNHKだったですか、テレビを見ておりましたら、選挙の直後であります、当時の初当選議員の若手の方々が各党から選ばれまして、テレビに映っておりました。

 そのときの先生の若々しい、今も若々しいですが、笑顔が絶えず、非常に明るくて、しかもまだ政治のあかに染まっておられないといいますか、フレッシュな、今でもそうですけれども、その画面に吸い寄せられまして、私の女房、娘もおったのですが、すばらしい先生がおられますねと、ほかの先生方がかすんでおりました。正直申して、あのころは私も無党派層の一人でして、自民党には極めて批判的であったわけですが、自民党にもこういう方が入られるのか、しかも同じ弁護士仲間で、すばらしいことだと、あの画面を最後までずっと拝見し、お話に聞き入ったのを覚えておるわけでございます。

 自来、二十年近い歳月が流れたわけですが、私が弁護士会、一弁の副会長をやっておりましたときに、拘禁二法、四法の問題が起こりまして、私は担当副会長として反対運動の先頭に立ったわけでありますが、日弁連さんは主として革新派の方へ行かれるものですから、我々一弁は政権与党である自民党に陳情しなきゃいかぬということで、お願いに上がった。

 あのときは、高村先生は当選二回か三回でいらっしゃったと思うのですが、弁護士仲間の谷垣禎一先生とか、落選しましたが白川勝彦先生だとか、太田誠一先生は弁護士ではなかったけれども、大変御理解をいただいて、私どもは改正運動をやったわけなんですけれども、本当に御指導を賜ったシーンが多々ございました。

 私は、この道に入りましたのもさまざまな理由があるわけなんですが、とても高村先生には及びませんが、そういう法律の世界を生きてきて、世間の中を五十年生きて、政治の世界に、世間の常識といいますか、良識といいますか、それをいささかなりとも移し植えたいなという思いもあったわけでありました。高村先生は、そういう意味では、イメージとしては私のかがみであります。

 高村先生におかれては、近ごろは宰相の声も新聞紙上にちらちらいたしておるわけでありますが、我々法曹仲間の一人として、ぜひとも高村先生が、二十年前初当選されてテレビに登場された、あの初心、若々しさ、みずみずしさ、純粋さを失われることなく、今後ともひとつ日本の政治の前進、自民党にすれば、公明党さんから自浄能力がないとおしかりを受けておりますが、みずから襟を正して、政治がよくならないとだめでありますから、高村先生が先頭に立っていただきますように、そういう意味でも心から御期待を申し上げていることをまず申させていただきます。御答弁は要りません。

 三点ばかりお聞きしたいと思いますが、それに先だって、これは漆原先生が御質問になられるというので私は質問をいたしませんが、率直に憂えている気持ちだけを申させていただきます。申し上げるまでもなく、福岡の事件であります。

 ここにおられる皆様方には釈迦に説法でありますけれども、民主主義国家日本は三権で成立しておりますが、その一つである司法権に対しましてこの問題が持っている意味合いというのは極めて憂うべきものがある。

 地元へ帰りましても、最近はふろはありませんけれども、サウナぶろへ行きましても、周りの人の話を聞いていますと、裁判所や検察庁もおかしくなってしまったか、そういう庶民の声が聞こえるわけであります。

 政治も行政も、立法権も行政権も大事であります。外務省の機密漏えい初め、いろいろと言われておる、政治についてのおしかりはちまたに満ちておるわけです。司法がしっかりしていれば安心というわけじゃありませんが、ここで司法に対する信任が揺らぐ、揺らぎつつあるわけですが、そういうことになりますと、まことに国家の崩壊、国に対する信任の崩壊になりかねないということを憂えるわけでございます。

 庶民は、我々だったら小さな罪でもすぐ捕まえるのに何であの次席検事を捕まえないのかとか、いろいろと言っております。最高検で捜査するということでありますが、やはり権力を持っている地位にある方々というのは、通常人の土俵が直径五メーターであるならば、その半分ぐらいの直径の土俵で相撲を取るつもりで、おのれについては厳しく処することが必要だ。それぐらい処しても、世間から見れば、何だ密室の中でやっているのじゃないか、閉鎖社会のことで、かばい合っているんだろう、ふたをしようとしているのじゃないかというふうに思うわけでありますから、その点、十分心して、厳正に対処していただきたいという希望だけを申させていただきます。希望でございますので、これも答弁は要りません。

 質問に入らせていただきます。

 まず、大臣は、所信表明の中で真っ先に司法改革の問題にお触れいただいております。大変重要な課題でありますので、ある意味では当然のことかもしれませんし、私ども自由民主党も、各党においても、二十一世紀のあるべき司法の姿について真剣に議論をし、また、司法制度改革審議会につきましては、私ども自民党としては、山崎拓政調会長時代に第七の改革として検討を始めて、この審議会の設置を内閣に申し入れて進み始めたという経緯もございますので、大臣が司法改革の問題を最優先の課題として掲げておられるというのは大変ありがたく存ずる次第でございますが、まず、その司法改革の意味合い、それを進めるに当たっての御決意についてお伺いできればありがたいと思っております。

高村国務大臣 答弁は要らないとおっしゃったことの中で、二十年前の私を褒めていただきましたことを心から御礼申し上げます。二十年前のことを褒めていただいたということは、時間というのは残酷だなという御指摘があったということでもあるかと思いますが、初心を忘れずに頑張ってまいりたい、こう思います。

 司法制度改革審議会は、司法制度の改革と基盤の整備に関し必要な基本的施策について、国民的視点に立って調査審議をし、内閣に対して意見を提出することを目的として設置されている機関であります。法曹実務家三名、法律学者三名のほかに、法律家以外の有識者七名を加えて、国民各層の意見を反映して調査審議を行うのにふさわしい委員構成として、平成十一年七月の同審議会の設置以来熱心に議論を重ねていただいているということでございます。

 そういうことでありますが、司法制度改革がなぜ必要かということであります。

 今、改革、改革といろいろな改革が進んでいるわけでありますが、あらゆる改革の示す方向というのは、官僚の裁量行政による事前規制から、透明なルールに従って、国民個人個人が自己責任でもって行動する、そしてそれに対しては事後チェックをする。その事後チェックの中心機関がまさに司法であるわけでありますが、その司法そのものが、国民に対して必ずしも身近でない、あるいは使い勝手がよくない。そういうことから、まさに身近な司法、使い勝手のよい司法、そういったものをつくるための改革をしなければいけない。

 私がいろいろな集会で、ことしは司法制度改革元年だ、こういうようなことを言いましても、みんなきょとんとして聞いているわけであります。教育改革だとか経済構造改革と言うと、みんな目を輝かせて、耳そばだてて、そして、人によっては口角泡を飛ばしてやるわけでありますが、司法制度改革と言っても、何だそれというような顔をして聞いている。このことはまさに司法が国民に対して身近でないことの証拠でありまして、それだからこそ司法制度改革は必要だ、こういうことも言えるのだろう、こういうふうに思っておりまして、事後救済型の社会をつくる、そういうことのまさに事後救済の中心機関、これが司法でありますから、このための改革というのはどうしても必要だ、これが私の中心的な考え方でございます。

杉浦委員 今の司法制度改革審議会の審議の進め方を時々公式に拝聴したり、陰ながらいろいろお伺いしていて、心配していることが一つございますので、その点について大臣のお考えをお伺いしたいと思うのです。

 今の委員の中で、いわゆる法曹関係者は三人だけですね。いずれも弁護士さんですが、弁護士プロパーの人、裁判官御出身の方、検察官御出身の方。あと十人は学者とかいわゆる法曹三者以外の方なのですが、いろいろお話を伺いますと、法曹三者は、私もその世界にいたことがあるものですからわかるのですが、それぞれ意見があるわけですね。三者とも、改革しなければいかぬということで大変熱心だ。日弁連もそうです、最高裁もそうです、法務省も。熱心なのは結構なのですが、その三人の方が、代弁されているとは言いませんですけれども、非常に熱心に議論される。それも結構。悪いとは言いませんが、その熱心の余り、三者の対立が審議に持ち込まれる。これもやむを得ないと思うのですね、熱心になられればなるほど。

 それはそれでいいのですけれども、全部が悪いとは言いませんが、一般のほかの方々が、専門的な話になったり、十分な背景も御存じないものですから、嫌気が差して、中にはもう全然出てこられなくなった委員もあるといううわさも聞くわけなのですね。

 心配していますのは、この審議会では、法曹三者は三者としていいけれども、一般の、経済人も入っておられますし、学者も入っておられます、そういう方々が、国民みんなの関心を持ち込んで、司法のこういうところを改革してくれと言う場ではなかったのかという心配があるわけなのですよ。

 ですから、私ども自民党の中で言っておるのですけれども、これは本答申がこの六月に出ますけれども、中身次第ではそのままやれないなと。あるいは、場合によったら法曹三者をのけて民間だけの審議会をつくって御意見を聞かないといかぬのじゃないかという意見もあるぐらいでございます。

 民間臨調というのがあって、生産性本部が中心になっておつくりになった。民間人でつくっている。いろいろ議論して言ってこられるのですね。そちらの意見の方が新鮮なのですよ、我々にとって。そういうこともございまして、心配しております。

 大臣、状況を把握されていると思うのですが、その私の心配に対して御所見ございましたらお伺いしたいと思います。

高村国務大臣 冒頭ちょっと述べましたように、法曹実務家が三名、法律学者三名のほかに、法律家以外の有識者七名を加えて、今、私とすれば、これは国民各層の意見を反映して調査審議を行うのにふさわしい委員構成、こういうふうに考えているわけであります。今までほとんど法曹三者だけで決めてやっていたわけでありますが、こういう中で、過半数が法律家以外の人という構成をしたというのはそれなりに画期的だ、私はこういうふうに思うわけであります。

 ただ、今委員の御指摘は極めてもっともな点もあると思いますので、いわゆる法曹以外の国民、そして、いわゆる司法の使い手、そういった人たちの意見が十分反映されるように考えていかなければいけない、私もそういうふうに考えております。

 それで、この司法制度改革審議会におきましては、国会において司法制度改革にかかわる審議がなされた際の議事録だとか、各政党の改革に関する提言等を初め、インターネットのホームページを通じて受け付けた一般からの意見、要望等が随時審議会の場に供されておりますし、これまでに本審議会では、四回にわたる各地での公聴会や地方実情視察、裁判の利用者に対するアンケート調査等を実施されてきており、これらの機会を通じて各委員が国民からの意見を幅広く聴取されているものと承知しております。

 今後とも、委員の御意見も入れながら、幅広い意見をくみ上げて十分な議論がなされることを期待しておりますし、法務省としても審議会に対してそういう審議がされるよう協力をしてまいりたい、こういうふうに思っております。

杉浦委員 まだ心配していることだけは申し上げておきます。

 次に、大臣が所信で述べられている事柄で、ほかにも重要なことがたくさんありますが、私、最も大事なことだと思っておりますのが、人権擁護推進のための取り組みをしようということでございます。

 私のところに配られてきましたが、人権救済制度のあり方に関する審議会ができまして、去年の暮れに中間答申ができた。伺うところによりますと、ことしじゅうに本答申が出るというふうに聞いております。人権擁護局長にその中間答申の概略、それから、これをやるについては国連から日本に対する勧告があったというふうに聞いておりますが、その勧告の概要、それから、先進国で結構ですが、諸外国の人権救済機関がどのようなものか、どんなことをやっているのかを簡略に御説明いただきたいと思います。委員長の許可を得て、ドイツにはないようでありますが、英米仏の人権救済機関等の比較表は委員のお手元に配付してございますので、これは簡略にしていただいて結構でございます。

 要するに、私は、日本は人権擁護という点では先進国ではない、後進国だという基本的認識でおります。人間のこの基本的な権利、もちろん、義務だとか責任とかそういう面も大事でありますが、まだまだ先進諸国と比べまして甚だしく立ちおくれている。特に、人権の駆け込み寺と申しますか、救済してくれる、ここへ行けばきちっとしたことをやってもらえるというところがないところが問題だという問題意識を持っておりまして、大臣がこれをしっかりやろうというふうに思っておられることは、そういう意味で大変うれしく思っておるわけでありますが、まず人権擁護局長から、今申し上げたことを概略お話しいただきたいと思います。

吉戒政府参考人 お答え申し上げます。

 先生の方から三点ほどございましたので、順次ということで、まず最初に中間取りまとめの内容でございますけれども、これは昨年の十一月二十八日に策定、公表いたしたものでございます。

 この中間取りまとめにおきましては、人権救済制度の果たすべき役割、必要な救済措置とこれを実現するための方法、調査手続・権限の整備、それから、人権救済機関の組織体制の整備、四本の柱を中心にいたしまして、先生御指摘のとおり、人権の世紀と呼ばれる二十一世紀にふさわしい人権救済制度の枠組みに関する基本的な方向性が示されているものと承知しております。

 概要を申し上げたいのですけれども、時間の関係で、次の二点目の御質問に入らせていただきます。

 そこで、こういうふうな中間取りまとめが出されるに至った経緯といたしまして、国連からいろいろ提言があったのではないかなというふうなお尋ねでございますけれども、国連の市民的及び政治的権利に関する国際規約に基づく人権委員会、いわゆる規約人権委員会と申しますけれども、これが平成十年十一月に、我が国が出しました報告書に対する最終見解の中で、「人権侵害の申立てに対する調査のための独立した仕組みを設置すること、とりわけ、警察及び出入国管理当局による不適正な処遇について調査及び救済を求める申立てができる独立した機関等を設置すること」という勧告をいたしております。

 それから、児童の権利に関する条約に基づく児童の権利に関する委員会、これも国連の委員会でございますが、これが同じく平成十年六月に、やはり我が国が出しました報告書に対する最終見解の中で、独立した監視の仕組みを設置するために必要な措置を講ずることというような勧告をいたしております。

 こういうふうな勧告のほかに、いわゆる国際スタンダードといたしまして、平成五年に国連総会で承認されましたパリ原則、あるいは平成七年に国連人権センターが作成いたしました人権機関の設立と強化に関するハンドブック等々がございまして、こういうものにおきましても国内人権機構についての指針等が示されておるところでございます。

 それから三点目で、先生の方から配付がございましたけれども、諸外国における人権救済機関がどのようなものかということでございます。

 これにつきましては、人権擁護推進審議会におきまして、各国の人権救済に関する取り組みにつきまして基礎的な調査を行いました。それとともに、平成十一年の秋には、アメリカ、カナダ、イギリス、スウェーデンなどの四カ国を訪問いたしまして調査を行ったわけでございます。その調査の結果といたしまして、先生お配りになったような形で取りまとめが行われているわけでございまして、それは一つの抜粋でございます。

 調査結果によりますと、概略申し上げますと、個別の人権侵害事案に対する救済を任務とする機関といたしましては、この表の左の方にございます米国におきましては、連邦レベルで各種差別事案等を扱う司法省公民権局というのがございます。それから、雇用の領域における差別を扱う雇用機会均等委員会等がございます。

 次に、右側の英国でございますが、英国におきましては、特殊独立法人といたしまして人種平等委員会、機会均等委員会、障害者権利委員会等がございまして、これらの機関は、その予算、人事において独立とありますけれども、政府の監督下にあると言われております。また、自主規制機関といたしまして報道苦情委員会等がございます。

 フランスにおきましては、これは一番右端でございますけれども、個別人権侵害の救済を扱う機関はないと承知しておりますけれども、政府への助言等を任務とする独立委員会として国家人権諮問委員会があるというふうに承知しております。

 なお、ドイツでございますけれども、この表の左下の末尾に書いておりますけれども、該当なしということでございますが、ドイツはいわゆる国内人権機構と言われるものがないということでございまして、司法的救済をもって対処するというふうにされているところでございます。

 なお、先ほど御説明申し上げました国連の人権委員会あるいは児童の権利に関する委員会の勧告につきましては、先生の御指示がありましたら、後ほど委員の皆様に資料を御配付したいというふうに考えております。

 以上でございます。

杉浦委員 国連からの勧告については、委員各位に勧告文そのものを配付していただきたいと思います。

 大臣にお伺いしたいのですけれども、この中間報告はいろいろ検討しておるんですね。機関を設立することも検討されているのです。わかりやすい表現を使いますと、公正取引委員会並みの三条委員会、人権擁護委員会を置いて、人権擁護局はその事務局に差し出すぐらいして、そして人権侵犯事案についてさまざまな捜査権限を持ち、措置できる権限も公取並みに持つ、そういう機関を立ち上げる必要があると私は考えておりますが、大臣の御所見はいかがでございましょうか。

高村国務大臣 今審議会の方で、あらゆる角度からそういう御検討を願っているところでありますが、まさに審議会の結論が出ればその結論を最大限に尊重して、場合によったら人権擁護局を事務局に差し出す、そういったことも含めて最大限に尊重をしていくということはやぶさかでないわけであります。委員からの御指摘があった点もその審議会の方に、委員会でこういう指摘がありましたよということはきっちりした形でお伝えするつもりでございます。

杉浦委員 時間が参りましたので終わりますが、一問、権利保釈の問題について聞くつもりだったのですけれども、権利保釈の運用が、逃亡のおそれとか罪証隠滅のおそれを拡大解釈して、なかなか保釈が出ないという現実が長らく続いております。いずれ機会を改めて十分ただしたい思っております。

 時間が参りましたので、きょうはこれにて終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

保利委員長 松宮勲君。

松宮委員 自由民主党の松宮勲でございます。

 法秩序の維持という非常に崇高かつ重要な任務を担っております伝統あるこの法務委員会で質問の機会をちょうだいいたしまして、大変光栄に存じております。限られた時間でございます。本日私は、外国人研修制度、実習制度を中心にいたしました入国管理行政について御質問させていただきたいと存じます。

 いわゆる経済の国際化に伴いまして、海外から日本においでになる方の数というのも、一時横ばい状況でございましたが、またこのところふえつつあると仄聞をいたしております。そのほとんどは日本に対する観光目的の方でございますが、しかし中には、ビジネスのためあるいは学術研究のため、あるいは、後ほども御質問させていただきますような特殊な技能なり技術を持った人に対する日本からの招聘による滞在の方々等々、多岐にわたっているわけでございます。

 そうした中で、経済の国際化で、海外の事例を見ましても、海外からそれぞれの先進国に来る方の数というのはどんどんふえているのでございます。そしてそれは、我が国にとりましても、我が国が国際経済社会の中で本当に海外との良好な関係を形成していく意味でも、ベクトルとしては抗しがたい流れだと思います。しかし同時に、冒頭申し上げました法務省の重要な任務でございます国内の秩序なりあるいはほかの関連省庁との協力における治安の維持という、ともすれば二律背反的な、トレードオフ的な要素も、この外国人の我が国に対する往来者の数の増大というのは潜在的に含んでいる問題でございます。

 そこで、まず第一に御質問させていただきたいのでございますけれども、最近における外国人の我が国におけるいわゆる不法残留者の実態、そして、多くの場合、その不法残留者の方々は不法就労という形をとっておると思いますけれども、その辺の実態及び法務入管当局の対応策について御質問させていただきます。

中尾政府参考人 不法残留者等の現状等についてお答え申し上げます。

 まず、在留期間を超えて我が国に不法に残留するいわゆる不法残留者でありますけれども、その数は、近年やや減少傾向にはございますけれども、二十数万人台で推移しております。平成十二年一月一日現在、二十五万二千人という依然として高い水準を維持しております。この二十五万人の国籍別内訳で申し上げますと、韓国、フィリピン、中国が全体の約半数を占める状況でございます。これに加えまして、密入国等の不法入国をしている外国人が約三万人我が国にいるものと推定されておりますので、結局のところ、我が国に不法残留、不法入国をしておる不法滞在外国人は約二十八万人に達しております。しかも、これらの不法滞在者の多くは不法就労に従事しているのが実情でございます。

 当局といたしましては、来日外国人における犯罪の約六〇%は不法滞在外国人によって敢行されているという事情がございますので、我が国社会に与える重大性にかんがみまして、入国事前審査、入国の上陸審査あるいは在留審査をより一層厳格に行うように努めております。さらに、不法就労関係を手配するブローカー等が介在する悪質事案につきましては積極的な摘発を実施しておりますし、限られた人員で全国一斉摘発を実施したり、首都圏に集中しております不法滞在者に関しまして集中摘発等も実施しております。

 最近特に、空港を利用して偽変造旅券等を使用する悪質巧妙な不法入国事案等がございます。そういうものが横行している現状にかんがみまして、成田空港、関西空港支局に偽変造文書対策室を設置いたしまして、その対策の強化に努めているところでございます。

 しかしながら、不法滞在者の摘発、収容、送還等に従事いたします入国警備官の数は全国で九百九十八人しかおりません。そういうことで、摘発体制は整備されていない状況ではありますが、このような中におきまして、この数年、毎年約五万人前後の不法滞在者を退去強制の手続をとっております。

 しかしながら、依然として、海外から我が国に就労目的で入国しようとする圧力が非常に強いものでございますので、不法滞在外国人を大幅に減少させるということは極めて難しい状況にございますけれども、今後とも、関係諸機関と連携いたしまして、不法滞在者の縮減に向けて最善の努力をしたいというふうに考えております。

松宮委員 厳密なる水際作戦も含めまして、徹底した取り締まりの強化は、限られた人員、予算の中でなかなか御苦労が多いことと存じます。法務省全体の行政の中で、いわゆる選択と集中というのは入国管理行政についても必要だろうとは思いますけれども、私どもも側面から、やはり国内の秩序の維持、ひいては治安の確保という観点からも、必要な予算なりあるいは人員の確保等について微力ながら応援をさせていただきたいと存じております。

 そういう中で、私は、このところ、KSD事件絡みでとみに人口に膾炙するようになっております外国人研修生、技能実習制度についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 今御質問させていただきました不法残留、不法就労問題とも関連するのでございますけれども、外国人研修あるいは実習制度は、御承知のように、事実上は昭和五十六年の入管法改正によってスタートし、そして平成二年には中小企業にもその道が開かれ、平成五年には、一定の要件を得た研修生については、技能実習という格好で、雇用者との間で正規の労働契約も結んで、さらに労働のあるいは技術習得の練度を高めていただくというまことに結構な制度がスタートしているわけでございます。しかも、それが多くの関係者の衆望を担って、平成九年には、実質的に、研修制度と合わせますと合算滞日期間が二年から三年という方向で期間も延長され、内外の多くの課題に法務行政が十全にこたえられてきたということについて私は敬意を表させていただきたいと思っております。

 私自身は、この制度は、日本の国際社会における実質的な貢献、とりわけ発展途上国の真摯な経済発展を願う彼らの熱望にも我々がこたえ得る非常に効果的な制度だと位置づけております。いろいろな問題、今御説明されたような残留問題あるいは不法就労問題ともリンクしているかもわかりませんが、方向としては、ぜひこの制度の拡充というのをお願いさせていただきたいと思うのでございます。

 そこで、一問目とも関連して御質問させていただきますが、これまで、なかなか統計的に把握が難しいと思いますが、事実上五十六年にスタートしたこの海外技術者研修、そして最近の技能実習制度、この制度のもとでいわゆる訪日、在留を認められた方の中で不法残留なり不法就労をしているとおぼしき人たちというのがどれくらいいるのかについて、もし統計的に把握していらっしゃったら、お答えいただきたいと思います。

中尾政府参考人 不法残留の関係を申し上げる前に、研修生、技能実習生の入国者数とか在留者数の推移を若干御説明させていただきたいと存じます。

 平成七年以降、毎年四万人を超える新規の研修生が我が国に参っておりますが、平成十一年には四万七千九百八十五人になっております。研修生からいわゆる技能実習へ移行した者の数は、平成七年には約二千三百人ぐらいでございましたが、平成十一年には約一万一千人と増加して、技能実習に移行しております。

 このような状況にありまして、研修生と技能実習生の在留者数も、平成七年末の約二万人から平成十一年十二月末の約四万六千人に増加しております。

 議員先ほどお話にありました、この研修制度として独立した在留資格が創設された昭和五十七年以降、我が国に来日いたしました研修生の数は、累計いたしまして約五十七万人に達しております。

 ところが、平成十二年一月現在、不法残留している研修生、技能実習生は、これも累計で約三千七百人であります。したがいまして、全体として〇・七%の研修生、技能実習生が不法残留している形になりますけれども、ほとんどの研修生、技能実習生は予定どおり技能を習得した上で帰国しているのが実情でございます。

松宮委員 累計五十数万人の方がこの研修・実習制度で日本に来られ、そして不法で残留している人たちは〇・七%ということで、私自身も、その数字を今お聞かせいただきまして、本当にまじめに、そして法務行政の、関係する皆さん方の御尽力もあって、ほとんどの方が首尾よく目的を達して帰国されているということで、まことにこれはありがたいことだと思います。

 とはいえ、この三千七百人、〇・七%という数字もやはり看過できない数字でございますし、そして、先ほど申し上げましたようなこの制度のさらなる拡充や発展をこれから図っていくためには、いささかでも国民に不信なりあるいは不安を惹起するような要素というのは根絶していく努力をしていかなければならないと私どもは思っております。

 また、先ほども触れさせていただきましたKSD絡みで、残念なことに、一部受け入れ機関側、受け入れ企業側が研修生、実習生のパスポートを一括して預かっちゃうとか、あるいは、私の出身地は福井県でございまして、選挙区ではございませんが、選挙区外で、いわゆる給料のピンはねに近いようなあってはならない行為も一部には散見されているところでございます。

 一〇〇%完全無欠な制度というのは我々人類社会においてどこにもないわけでございます。したがいまして、この制度の場合にも、光と影、影の部分があることは不快ではございますけれども、この不快的なマイナスの側面も極力縮小していく、そして根絶の方向で努力していくということが非常に大事なことだと存じます。そのために、今申しましたようないわゆる研修生、実習生の不法残留対策、あるいはKSD絡みで一部露見いたしました、パスポートを一括して受け入れ側が預かっておるという問題、これはほかにも理由があるのでございますけれども、つまり研修生側の要望だというような、そういうニーズもあるということも聞いてはおりますけれども、しかし一般論としては社会問題化しているというような話、あるいは給料のピンはねの問題等々、これは必ずしも法務行政ではございません、厚生労働行政に絡んでくることだと思いますけれども、法務行政の観点からどう問題を認識され、そしてどうされようとしているのか、お答えいただければと思います。

中尾政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のような問題も発生していることは私どもも承知しておりますが、研修・技能実習制度そのものが制度の定着を見て、活用されていることが見受けられるところでございます。

 御指摘のような問題の背景等につきましては、私どもの方もそれなりの分析をしておりますけれども、一つには、人材育成による技術移転を目的とするこの研修・技能実習制度の本来の趣旨につきまして、研修生、技能実習生を受け入れる機関側あるいは送り出し機関等において正しく理解されないまま、研修生等を低廉な労働力で使用するというようなケースもあるやに考えられますし、あるいは、研修生、技能実習生自身も、技術を習得するということよりも収入を得るということを主たる目的として来日するというような傾向もございますので、そういったところが背景事情として考えられます。

 当局といたしましては、研修生、技能実習生に係る入国審査、在留申請の際の審査に際しまして、入管行政の立場から、受け入れ機関から提出されました研修計画について厳正に審査を行うこととしておりますが、必要な場合には実態調査等を実施して、なお問題ある事案につきましては必要な指導を行い、適正な研修、技能実習の実施の実現に努めているところでございます。

 今後とも、制度の正しい理解がされるように、適正な研修、技能実習の実施に努めたいと考えておる次第でございます。

松宮委員 大変困難な課題だとは存じますけれども、望ましい研修、そして技能実習制度の発展のためにも、負の側面についてのお取り組み、さらなる努力をお願いしたいと思います。

 そこで、大臣にお願いも込めての御質問をさせていただきますが、この制度は、先ほども申しましたように、我が国の国際化、あるいは、日本がアジア諸国を初めとする発展途上国から経済協力という側面で大変な貢献国としての役割が期待されているわけでございますけれども、もろもろの国際協力手段の中でも、今お答えになりましたような技能、技術あるいは知識を発展途上国に、技能研修生や実習生を受け入れることによって、彼らの体を通じて、母国に帰っていただいて、それぞれの母国の、派遣国の経済発展に資する。この制度というのは大変重要な役割を担っていると私は思います。

 これまでのいろいろな各方面の御要望等もしんしゃくしていただきまして、今、実習制度の対象業種が五十九業種に拡大されていると伺っております。これは、さらに関係方面からその業種の拡大についての要望も、私のところにもいただいているところでございます。

 それから、つい先般、先ほど触れました平成九年に、合わせて二年から三年という在留期間の延長を図っていただいたわけでございますが、これをさらに延長していただくことができないのか。この場合に、あくまでもこの制度の本旨は、先ほど来お答えになり、そして私も主張させていただいておりますような技能なり技術のトランスファーということでございますので、いわゆる単純労働者の受け入れということとははっきりとやはり線を引かなくちゃいけない。現実にはなかなかその辺は非常に難しいところがございますが、制度としては、あくまでもそこの線引きをしていただきながら、経済社会のニーズにもどうこたえていくかという非常にナローパスな難しい問題だと思いますけれども、しかし、例えば、三年の在留期間中に、いわゆる座学なり、あるいは職種によっては、あるいは伝授すべき技術なり技能によっては、いわゆる研修期間を短縮して、しかし在留期間は三年でそのまま維持し、結果的に実習期間を延長する、そういうような方策も可能ではないかというふうに思うわけでございます。

 さらには、現に法務省からいただいた資料の中にも中国の研修生が感想文を書いておりますが、中国で三カ月日本語を勉強してこちらへ来たけれども、やはり通じなかったと。これは、私もかつて留学した経験があります。それなりに日本で英語をマスターしたつもりで行きましたら、ちんぷんかんぷん、大変苦労したという苦い思い出と通ずるわけでございますけれども、できることなら、これも外務省なり関係省庁と連携をとりながら、海外で、日本においでになられる研修生、実習生の方々が事前に日本語を研修するようなことをODAとリンクできないかというようなことも込めまして、ぜひ大臣の御所見をお伺いさせていただきたいと存じます。

高村国務大臣 委員御指摘のとおり、研修・技能実習制度は、人材育成を通じて海外への技術移転を図り、我が国の国際協力、国際貢献を推進するものでございます。このような研修・技能実習制度の目的が十分達成されるよう、関係機関とも協力しつつ、適正かつ円滑な制度の運用を図るとともに、送り出し国のニーズ等も踏まえ、制度の一層の充実を図っていくこととしております。

 委員からいろいろ具体的なことも御指摘ありましたので、そういったことも参考にさせていただきながら、制度本来の目的が達成されるように努力してまいりたいと思います。

松宮委員 大臣の強力なリーダーシップに御期待申し上げながら、私の持ち時間はこれで終わりでございます、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

保利委員長 次に、山本明彦君。

山本(明)委員 自由民主党の山本明彦であります。

 先ほど法務大臣の方から、構造改革、財政改革と比べて、司法制度改革は国民にどうもぴんとこない点がある、こんなお話がありましたけれども、私もその一人だったかな、そんな反省を込めながら今おるわけでありますけれども、大変大事な問題でありますので、しっかりと私もこれから考えていきたいというふうに思っております。

 そして、きょう午後、裁判官制度について司法制度改革審議会が開催されるようでありますけれども、先ほど杉浦正健先生からプロの立場からお話がありましたけれども、私は素人の立場から裁判官制度について、特に裁判官の資質について少しお尋ねをさせていただきたい、こんなふうに思いますので、よろしくお願いをいたします。

 憲法の第七十六条の三項に「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。」、こうありまして、憲法によって、裁判官はだれからも拘束されない、自分一人で判断を下すというふうになっておるわけであります。したがって、それだけ裁判官は公正であり、また中立でなければならない、こういうことだというふうに思います。しかし、その裁判官が今働いておる職場、この場所が、公正で中立な判断を下すにふさわしい、そうした環境であるかどうかということも大事な問題であろう、こんなふうに思っております。

 新聞にこんな記事が載っておりました。部に係属中の事件は三百七十件、このうち合議事件を含め現在二百二十件に携わっている、法廷の開かれる水、木、金の三日間は一件当たり五分から十分の口頭弁論が日に十件ずつ、月に二、三回は複数の証人を呼んで集中証拠調べを行う、休日返上で判決を書くこともある。これはある地方裁判所の裁判官の言葉であります。私も経験がありませんからどれぐらいハードかということは言えませんけれども、大変ハードではないかな、そんな感じがいたします。

 そうしたハードな環境の中で仕事をしておると、やはり裁判官も人の子でありますから、判決内容を真剣に考えてやるよりも、少しでも多くの事件をとにかく裁いてしまえ、こんな感覚にならないとは限らないわけであります。もしそうなれば、当事者にとりましてはまさにこれは悲劇であります。そして、裁判制度に対する国民の信頼というのは一遍に吹き飛んでしまう、こんなふうに思います。

 そこで質問でありますけれども、裁判官の評価というのは、一体だれがどういった基準のもとで評価をしておみえになるのか、そしてその評価の結果をどのように生かしてみえるのか、お尋ねをしたいと思います。

 先ほど申し上げましたように、もし裁判官が、少しでも多くの仕事をこなした方が評価が上がる、こんな気持ちで仕事をしておみえになるとしたら、やはりこれは大変な問題であります。いわゆる仕事をたくさん抱え過ぎちゃうことを赤字というのだそうでありますけれども、赤字にならないように無理をする、こんな状態になっては困りますので、どんな評価をしておみえになるのか、その点をまず最初にお伺いしたいと思います。

金築最高裁判所長官代理者 裁判官の評価の問題でございますが、これはどういうふうにやっているのが基本かと申しますと、毎年、定期異動というのが春にございますが、その異動計画というものを前年の夏ごろから地家裁、高裁でいろいろ検討しております。そういう時期に、地家裁の所長、それから高裁の長官が、裁判官の能力、これは法律的な能力、判決その他訴訟運営能力、そういうことになりますが、あるいはどういう仕事が向いているかといった適性等につきまして報告書をつくっております。これが裁判官の評価資料として基本的なものでございまして、この報告書が人事配置案の作成などの資料になるわけでございます。

山本(明)委員 今、資料になるというお話でありましたけれども、これがどのように生かされておるかという質問にちょっと御答弁をお願いしたいと思います。

金築最高裁判所長官代理者 まず、今申し上げましたように、一番大きな点では、人事配置案に生かされるということでございまして、この人はどういうポストへつけるのが非常に適当であるか。特に、若い世代ですと将来のことを考えて指導育成という観点から評価もいたしますし、配置もそういう点を考えます。

 それから、部総括、これは裁判長でございますが、これについては、部の運営というふうなマネジメント的な面も多うございますので、そういう点の能力、適性はどうかというふうなことも考えて、そういう意味で人事配置案の重要な資料になる。この資料をもとに、地家裁、高裁でも相談いたしますし、最高裁とも協議をするということでございます。

山本(明)委員 今お話をお伺いしておりますと、先ほど私がお話し申し上げましたいわゆる仕事の量、どれだけ多くのものをこなしておるかということは今入っておりませんでしたので、それは入っていないということでいいですか。

金築最高裁判所長官代理者 仕事の処理の速度と申しますか、そういうものについてももちろんやはり重要でございます。一定の合理的な期間内に事件を、例えば判決をしたり和解に至らせるということは、これは裁判官に求められている責任でございます。

 ただ、では速いだけがいいのかといいますと、それはもうそういうことではございませんで、幾ら速くても審理や判決が粗雑だというふうなことになりますとこれは何にもならないということでございますので、仕事の迅速さということはもちろん問題にはなりますけれども、ただ単なる処理件数だけでその評価をするというふうなことはいたしておりません。

山本(明)委員 人の評価というのは大変難しいわけでありまして、なかなか数字であらわせるものではないということは承知をしております。大体、人が一生懸命働く、やる気が起こるのはどういうふうなときかというと、やはり自分が正しく評価されて初めてやる気が起こるわけでありますから、評価については、まさに公明で正大で、国民にも、そして当事者にもなるほどと思われるような評価をぜひしていただきたいというふうに思います。

 それで、次の質問でありますけれども、仕事のオーバーワークもそうなんでありますけれども、やはりそういった理由で裁判が長期化しておるという指摘がよくあります。私どもも、新聞の記事を見ておりますと、まだこの裁判をやっておるのかというのがよくあるわけであります。人証調べがある案件でいきますと平均で二十・八カ月、こんな資料も見ましたけれども、二年近い事件というのはやはりそれだけ当事者にとっては大変な負担がかかるわけでありますから、これを少しでも短くすべきだというふうに思っております。

 そうした意味で、長期裁判の解消のために、先ほどからお話をしておりますけれども、オーバーワークをなくす意味も含めてになると思いますけれども、裁判官の増員についてどのようにお考えかお伺いをしたいと思います。

大野(つ)大臣政務官 お答えさせていただきます。

 裁判所におきましては、これまでも、適正迅速な裁判を実現するために訴訟運営の改善に努めているとともに、裁判官の増員を図っているところでございます。その結果、平均審理期間は短縮されてきていると承知いたしております。その一方で、ここ数年の事件数の急増によりまして裁判官の負担が重い状態になっているとの指摘がされていることも承知をいたしております。

 この点につきまして、昨年十一月二十日に公表されました司法制度改革審議会の中間報告においても、裁判所、検察庁の人的体制の充実の必要性が指摘されております。裁判所におかれても、同審議会における審議結果をも踏まえつつ、新しい制度の運用等のために必要な裁判官の増員を図っていく必要があると考えておるものと承知いたしております。

 法務省といたしましても、本通常国会に、判事の定員を三十人増員することなどを内容とする裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を提出させていただいているところでございますが、引き続き、適正迅速な裁判を実現するために必要な裁判官の増員に協力してまいりたいと存じております。

山本(明)委員 私も以前当事者になったことがありまして、本当に忘れたころにまた連絡が来て、出てこいということが何回かありまして、何年かかったか私も記憶がありませんけれども、大変迷惑を受けた、そんな記憶がありますので、やはり少しでも早く迅速な処理をお願いしたいと思います。

 次の質問でありますけれども、量の次はやはり質の問題であります。

 人が人を裁くわけでありますから、それだけやはり裁判官というのは大変重大な責任があります。その裁判官に求められる資質、どんな資質が裁判官に求められるか、一番基本的なことでありますけれども、どのようにお考えかお伺いをしたいと思います。

金築最高裁判所長官代理者 裁判官に求められる資質、いろいろ難しい議論もあると思いますが、まずは、法律家としての能力、識見が高いということが必要だろうと思います。

 識見ということになりますと、これは非常に広い教養に支えられた視野の広さというものが必要でございましょうし、人間性に対する洞察力とか社会事象に対する理解力などなど、非常に多くの要素が求められているというふうに考えられます。そういった幅広い視野、識見に支えられて、専門的な能力で仕事をしていくということが裁判官に求められているところであろうと思います。

 裁判所におきましても、これまで国民の信頼にこたえるようにさまざまな努力を行ってきたところでございますけれども、今後も、裁判官の研修制度の充実を図るなどして、国民の信頼にたえる裁判官を確保すべく努力してまいりたいと考えております。

高村国務大臣 裁判官には中立公正な法廷の主宰者、判断者にふさわしい法律家としての高い能力と識見が求められると考えております。

 この点につきまして、昨年十一月二十日に公表された司法制度改革審議会の中間報告におきましては、少なくとも、裁判官は、法律家としてふさわしい多様で豊かな知識、経験と人間性を備えていることが望ましいとされているわけであります。

 私は、裁判官には、法廷の主宰者として的確に手続を遂行する能力や、当事者や国民を十分に納得させるだけの妥当な結論と説得力ある理由を示した上で、これを的確に判決書等に表現する能力に加えて、健全な社会常識と経験に裏打ちされた思考力、洞察力等も強く求められていると考えております。

 裁判官には、神様に近いような、神様に近い人なんていないかもしれませんが、できるだけ、法律的識見はもちろん、人間としての常識、そういった少しでも完璧に近い人が求められている、こういうふうに思っております。

山本(明)委員 今、大臣からもお答えいただきました。やはり大体国民のイメージする裁判官というのはどうしても、高い識見というのは当然あるわけでありますけれども、人づき合いが悪いとか、ちょっと常識に欠けるだとか、堅物だとか、近寄りがたいだとか、感性がないとか、マイナスのイメージが出てくるような気がしてなりません。

 どうしてそうなるかというと、やはり多くの人とのつき合いが少し少ないのではないかな、私はそんな感じがしております。どうしても法曹界だけのおつき合いになるということであります。これもある意味では、それが必要なことであるかもわかりませんけれども、今大臣からお答えいただきましたように、一般常識、高い教養、こういう話がありましたけれども、そうしたものはやはり多くの方とつき合うことによって、時には趣味の世界、そして時には友人と一杯酌み交わす、そうしたことによって普通の人の気持ちがわかる、普通の人になれる、そんな感じがするわけでありますから、高い識見だけでなくて、ぜひそうした素養を身につけた裁判官を育てていただけるように御努力いただきたいというふうに思います。

 そうしたことも含めて、先ほど人事局長の方から研修という話がありましたけれども、裁判官の研修について、今、どんなマニュアル、どんなプログラムを持ってみえるのか、少しお教えいただきたいと思います。

金築最高裁判所長官代理者 裁判官に必要とされます資質、能力につきましては、裁判官が日常の事件を処理しながら、専門家としての不断の研さんを通じまして実務能力を涵養するということがまず基本でございます。加えまして、こういう自己研さんを補完するために、司法研修所におきましていろいろ研究、研修等を行っております。

 判事補につきましては、従来から、任官後の節目節目に、司法研修所におきまして、実務と理論の両面における能力向上及び裁判官に求められるもろもろの知識の取得を目的とする一貫した合同研修の機会が設けられております。さらに、社会変化の著しい今日、裁判官には世の中の動きに対応し得る柔軟な思考力と幅広い視野が求められておりますから、このような能力を身につけさせるために、若手裁判官を中心に、一定期間、外の世界で裁判官以外の仕事を経験させる、そういう研修に最近特に力を注いでおるところでございます。

 また、専門化、多様化する紛争に対応するために、例えば知的財産権訴訟につきましては、東京地裁とか大阪地裁の専門部におきまして、若手裁判官が、その種の事件の経験豊富な裁判長とともに事件処理を行うことを通じて専門的な能力を身につける、こういった形でやっております。

山本(明)委員 いろいろなところに出かけて研修を受ける、大変結構なことであります。今私が申し上げましたように、少しでも法曹界以外のところで研さんをしていただければありがたいと思います。体験こそ学問なりといいまして、やはり体験することが一番でありますので、ぜひそんな形ですばらしいこれからの裁判官を育てていただきたいと思います。

 今、司法制度改革審議会で裁判官制度の改革をやっておるわけでありますけれども、その中に弁護士の任官制度があるというふうに思います。ほかのところから、第三者というのですか、新しい血を入れるということは確かに大変すばらしいことだと思いますけれども、もう既にこの任官制度は現在でもあるわけであります。しかし、実績を聞いてみますと、大変まだ数が少ないというふうにお伺いをしております。

 いろいろな理由があると思いますけれども、勤務地の問題だとか給与の問題とか弁護士の顧客の問題とか、いろいろな問題があるということも聞いておりますけれども、今まで、昨年一年間で何人、弁護士の任官があったか、今までの実績はトータルで何人なのか。そして、今ちょっと私申し上げましたけれども、弁護士の任官が少ない理由、これからどのように取り組んでいこうとするのか、司法制度改革審議会で取り上げておるわけでありますから、これは恐らく大事なことだと思いますから、早くできるわけですから、少しでも早く実行をしていただきたい、そんなふうに思いますので、その点についてお伺いをしたいと思います。

金築最高裁判所長官代理者 まず数の関係でございますが、合計で、平成十二年度、もっとも二月一日現在でございますので、一年を通じてでございませんが、三名でございます。従来からの実績ということになりますと、昭和六十三年に判事採用選考要領というものをつくりまして、弁護士任官者を募ったわけでございますが、それ以来で全員で四十九名、年間平均しますと四名弱ということになっております。

 弁護士任官がなぜ順調に進まないかという理由は、もう御指摘にもありましたように、いろいろな面がございます。とにかく、これは仕事をかえるわけでございますので、今までなさっていた仕事をかえて、依頼者等との関係も切って、相当安定した収入、高い所得も上げられていた方が多いでしょうから、そういうものを振り捨ててなるということは、これはもう大変な決意が要ることだろうと思います。そのほかにも、仕事というのが少し違いますので、そういう点で、なかなか新しい仕事に飛び込むのが難しいという面があろうかと思います。

 それから、弁護士事務所側の体制として、今申しましたような点が改善されますには、弁護士事務所が共同化するとか、いろいろそういう点が進むと変わってくると思いますけれども、そういう点が余り進んでいないというふうなこともあろうかと思います。

 それで、今後どういうふうに取り組んでいくかということでございますが、裁判所といたしましては、司法制度改革審議会にも申し上げましたが、第一には、弁護士任官者の方の経験、希望に応じて特定の専門的分野、例えば倒産事件とか知的財産権事件、家庭裁判所事件等の特定の領域の裁判事務を担当する形での任官を推進したい。そうすれば、そういう事件に経験や関心が深い弁護士さんにとっては、任官することの魅力とか任官しやすさが増すのじゃないか。

 それからまた、弁護士任官者の配置につきましても、弁護士さんが裁判官の仕事に移行しやすいように、例えば弁護士さんから任官して相当年数裁判官の経験がある裁判官を部総括にしてその部に配置するとか、そういうことも考えたい。あるいは、現在でも弁護士任官者たちに研修をやっておりますけれども、それをさらに充実していきたい、こんなことを考えております。

山本(明)委員 終わります。

保利委員長 次に、吉野正芳君。

吉野委員 自由民主党の吉野正芳でございます。

 伝統ある法務委員会で質問をさせていただく機会を得まして、感謝を申し上げます。

 私は、地方空港におけるCIQ体制の充実について質問をさせていただきます。CIQ、税関、入国管理、そして検疫であります。法務省は入国管理を担っているわけでありますので、その点についてお話をさせていただきます。

 近年、地方空港の国際化というのが大幅にふえております。今から十五、六年前、一九八五年、全国で国際定期便の航路を持っている空港は七空港でございました。今から五年前、一九九五年、十六空港にふえております。そして、二〇〇一年は十八空港です。これは東京、大阪を除いた数字です。国際チャーター便に関しましては、一九九五年、今から五、六年前ですけれども、三十七空港ございます。そして、二〇〇一年は四十二空港にふえております。このように、地方空港の国際化というのは、今本当に大きな力を持って、地域の発展、地域の振興、そして地方から国際化を目指すのだという、そんな情報の発信という意味合いも含めて進んでいるところであります。

 地方に住んでいる私たちにとっては、本当に外国というところが身近に感ずるようになりました。普通、外国旅行というと、もう準備段階から胸がわくわくして、大変な準備をして行くわけでありますけれども、地方空港から外国に行くということは、もう隣の町にバスで行く感覚、そして、ドア・ツー・ドアでありますから、簡単に行くことができます。そのくらい地方に住む人々にとって身近なものとして国際化というものが今進んでいるところだと思います。

 私ども、福島県でありますけれども、国際便が発着をできるようになりまして、高等学校の修学旅行なども国際便を使いまして外国へ行くようになりました。まさに今の若者、子供たちにとって、国際人という感覚を身につけることができるわけであります。福島県は、上海とソウルであります。まさに日本の歴史をひもといていく歴史教育の中で、日本というのは大陸文化そして韓半島の文化というものをどう取り入れ、そしてそれを日本文化として同化してきたか、そんなところまで修学旅行という学習機会を通ずることができれば学ぶことができる、そんなところだと思います。

 また、地場産業の大きな基盤として観光というところがあります。今までは小さなエリアでしか観光というものを考えることができませんでしたけれども、国際化というものを踏まえていけば、もっと大きなエリアで観光というネットワークをつくることも可能になってまいります。例えば、私は福島県ですから、福島空港に外国からお客が来れば、会津磐梯山、会津の本当に自然を見た観光もできますし、そして隣の宮城県内の松島、これも全国でも有名な観光地域であります。そして、帰りは仙台空港から帰る。こんなことも可能になるわけでありますので、いわゆる産業の活性化、地場産業の育成という意味でも大いに役立つのが地方空港の国際化だと思います。

 それで、質問であります。

 まず局長にお尋ねをしたいと思いますけれども、地方空港における国際定期便の新設及び国際チャーター便の運航状況など、そして、それに対応して、法務省としての対応について状況をお伺いしたいと思います。

中尾政府参考人 委員御指摘のとおり、地方空港への国際定期便の新設、国際チャーター便の就航が増加している傾向にございます。現在、成田、関西、名古屋、福岡、羽田の五つの空港と十六の地方空港に国際定期便が就航しております。私どもの方で、若干統計が古いわけでございますけれども、平成十一年の実績で三十六の地方空港に国際チャーター便が運航されている状況でございます。

 五十二の地方空港のうち、私どもの職員が常駐しておる空港は八空港にとどまっております。したがいまして、地方空港における出入国審査の多くは、近隣の出張所から入国審査官を出張せざるを得ない状況に立ち至っております。

 当局の全国にあります出張所は八十一カ所でございますが、そのうちの四十五の出張所は職員数三人以下でございます。二人以下は三十二出張所ございます。そういうような体制でございますので、十分に対応できない状況でございますけれども、当局といたしまして、地方公共団体等の御要望等を踏まえまして、必要に応じまして地方入国管理局やその他の出張所等から入国審査官を応援派遣するなど、限られた条件下において可能な限り対応したいと存じております。

吉野委員 ありがとうございます。

 本当に入国管理の業務は大変な業務であります。ちょっと私の福島空港の事例をひもといて質問を展開したいと思いますけれども、私どもの福島空港は、平成五年に二千メートルの滑走路で開港いたしました。二千メートルというとジャンボが飛ばないわけで、大型機が飛びませんので、すぐ二千五百メートルへの延長という要望を出しまして、開港と同時にすぐ延長が認められて、それが平成十二年、去年ですけれども、二千五百メートルの滑走路になったわけです。

 現在、国内線七便。実は四月から広島西へ、本当に小さな小型機が飛ぶのですけれども、その広島便も入れて国内便七便であります。東京には飛びません。福島県は首都圏に一番近い空港ですから東京には飛びません。国際線が上海とソウル便、二便ございます。福島空港は東京に飛ばない空港として、首都圏の空港の代替的な、補完的な役割を果たしているものであります。

 利用者のエリアとしましては、南東北そして北関東。この北関東の方々の利用がかなり多いものですから、普通、開港して、国際線が就航して一年目は珍しいということでかなり利用客もございます、ほかの地方空港はみんな二年目のジンクスとして利用客が減るわけですけれども、私どもの福島空港は、上海、ソウル便、一年目で六四・一%の搭乗率、二年目が七六・四%、実に十二ポイントも伸びております。ソウル便だけとってみますと、搭乗率七二・七から八一・八%に二年目伸びております。これは、それだけ利用する方々がいる、かなり期待をされている、そのあかしでもあろうかと思います。

 今、週五便体制でソウル便をやっております。上海便は週二便体制ですけれども、こういうすばらしい実績を上げることができたのも、実は、今局長お話しになりました入国管理業務に携わる方々の、本当に血の出るような御努力のおかげであります。私どもは仙台入管の郡山出張所でありますけれども、ここの方々は日曜日もお仕事です。ですから、当然日曜日の代休もとらなければなりませんけれども、聞くところによりますと、代休もとれない、休みもとれない、そんな本当に過酷な労働のもとで週五便体制を支えていただいております。本当に心から感謝を申し上げる次第であります。

 それで、今、福島空港のソウル便でありますけれども、アシアナ航空が毎日運航したいと。実は平成十二年の六月に日韓航空協議において、週七便体制、政府間の約束で週七便まではいいよ、お互いにいいよという形で取り決めが行われました。それを受けて、毎日運航したいということでアシアナ航空が要望を出しております。福島県も、毎日運航ができれば、お客様方、需要開拓のためには本当に役立つ。仙台空港は毎日出発しているのですけれども、お客様の中身を見てみますと、ほとんどがツアー客であります。そういう意味で、毎日運航できれば一泊とか二泊とか、利用者の需要にこたえた多様なパックメニューを組むことができるかと思いますので、毎日運航できる体制をとりたいのですけれども、今でさえ、努力に努力を重ねた体制で入管をやっておりますので、毎日運航ということは本当に増員を図っていかなければできないわけであります。

 そこで、昨年の七月に、地方空港を有している十七の県知事さんが政府に要望を出したところです。CIQの体制充実についての要望書を出したところでありまして、六項目、その中で一番はやはり人員の増強拡充という要望を出していると思います。

 そこで、これは大臣政務官に質問をいたしますけれども、日本経済は今不景気のどん底であります。今までは官主導の、財政を支出してそして景気の立て直しという形で図ってまいりましたけれども、これからは民需主導、民間主導、そういう経済運営の基本転換を図ったところだと思います。そして自律的回復を目指していく。そういう中で、民間同士が乗り入れをしたい、そして受け入れもやりたいという中で、どうして人員の増加ができないのか。民間活力をそぐことになりはしないのか、いわゆる経済の足を引っ張ることになりはしないのか、そんなところを危惧するわけでありますけれども、その辺の、増員のできない理由をお伺いしたいと思います。

大野(つ)大臣政務官 国際交流の活発化に伴いまして、地方空港を抱える地方公共団体、航空会社等からは、各地方空港における国際線の就航や増便のため、出入国審査体制の整備拡充を図ってほしいとの要望が多数寄せられていることは承知をいたしております。

 地方の経済活動等を活発化するために、法務省としても、これらの要望にできるだけこたえていきたいと考えているところではございますが、しかしながら、出入国審査や在留審査を担当する入国審査官の数は全国で千百九十六人でありまして、急激な業務量の増加に対応する体制が整っていないというのが今の現状でございまして、大変苦慮しているというのが実情でございます。

 そこで、法務省といたしましては、職員の応援派遣体制を充実強化するとともに、全国八十一カ所の出張所の整理統廃合による人員の集約化やコンピューターシステムの導入等によりまして、業務運営全般の効率化を図り、出入国審査に必要な人的、物的体制の整備にも努めてまいりたいと思います。行政需要への適切な対応を今後図っていきたいと考えておるところでございます。

吉野委員 なかなか役所としては難しい問題だということであります。

 それであるならば、いわゆる国と地方との人事交流、人員の問題は人事交流を図れば私は解決できるのかなと思っているのですけれども、その辺はいかがでありましょうか。局長にお願い申し上げます。

中尾政府参考人 委員の御指摘の趣旨はよく理解できるところでございますけれども、現行法では国と地方公共団体の業務は峻別されておりまして、外国人及び日本人の出入国審査は、入管法上、入国審査官が行うことと限定されている国固有の事務であります。したがいまして、地方公共団体の職員を国の権力的業務である出入国審査業務に従事させることはできないと考えております。

吉野委員 まさに出入国管理業務は国固有の業務でありまして、地方からの人事交流ではできない、当然だと思います。であれば、国の役人の方々をそちらの業務に向けて、そしていわゆる権限のないところへ地方からの人事交流、いわゆるドミノ方式とでも申しましょうか、そんな形ではできないものでしょうか、お尋ねいたします。

中尾政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の、地方入国管理局の審査、警備業務以外の管理業務に従事する一般職員でございますけれども、全国で実は約四十名ぐらいしかおりません。地方局単位で考えますと三名ないし五名ぐらいしか配置されておりません。これらの職員につきましても、必要に応じて出入国審査業務に応援派遣しているのが実情でございます。

 このため、地方自治体の職員を審査業務以外の部署に受け入れることによって審査要員が増加するものではないというのが実情でございますし、必ずしも実効性のあるものとは考えておりません。したがいまして、御提案の方策は、現状からいいますととり得ないものと考えております。

吉野委員 それでは、少し発想を変えてみたいと思います。

 例えば、今、韓国ソウルと我が国との交流は年間三百六十万人おります。これを約二十近くの空港で受け入れをしているわけでありまして、出る方は大量に一本で出て、後ばらばらに散らばる、そんな形でありますので、そういう意味では、人員増というのはなかなか難しい。であれば、ソウルに国の役人が出張をして、そして入国管理業務を行っていく、こんな方策も一つの案としてはあるのではないかと思いますので、これは大臣政務官、いかがお考えでしょうか。

大野(つ)大臣政務官 地方空港の国際化に伴いまして、多くの地方空港に出入国審査体制を整備する必要が生じておりますことは、委員御指摘のとおりでございます。効率が悪い面もあるということは大変否定できないものがあるわけでございますが、他方、地方の経済活動等を活発化するために、法務省といたしましても、地方空港における国際線の就航や増便について多く寄せられています要望にできるだけこたえていきたいと考えておるところでございます。

 委員御指摘のように、職員を海外に派遣し、あらかじめ入国管理業務を行わせるという方法につきましては、諸外国においてその実例があると承知いたしております。法務省としても関心を持っておるところでございます。

 委員も御案内のとおり、出入国管理制度は、各国でそれぞれ仕組みが異なっており、諸外国で実施されている方法をそのまま我が国に取り入れることはできませんけれども、今後とも、増員が見込まれる外国人入国者に対し一層効率的な審査を実施し、円滑な人的往来を実現するという観点から、御指摘の方法につきましても、その実施の可能性を十分に検討してまいりたいと考えているところでございます。

吉野委員 本当に前向きな答弁、ありがとうございます。

 最後に、大臣にお尋ねいたします。

 大臣は、昨年、十二月二十六日だったと思いますけれども、記者会見でこう述べたというふうに報道がありました。入国審査官、入国警備官が全く足りない、官僚組織の中でのやりくりではなく、政治的意思で抜本的にふやしていくのは国の責務と考えているという報道がありました。改めて、大臣のかたい決意をお聞かせ願いたいと思います。

高村国務大臣 今までの行政改革、定員削減という考え方の中で、どうしても入国審査官が足りなければ入国警備官をその分減らしなさいと。全然違うことでありますが、検察官をふやすのだったら検察事務官を減らしなさい、そういう一つの省庁の中で定員のつじつまを合わせなさい。法務省全部足りないんだと言うと、おまえのところは総論賛成各論反対か、こうやられてしまう。

 私は、そういう横並びのやり方というのは二十世紀の話であって、二十一世紀はまさに各論の時代だと思っていますから、本当に足りないところはきっちりふやさなければいけない、そういうつもりで頑張りたいと思います。私一人の力は微力でありますから、どうか応援をしていただきますよう心からお願いを申し上げます。

吉野委員 ありがとうございました。大臣の御協力をお願い申し上げます。

 これで終わらせていただきます。ありがとうございました。

保利委員長 次に、漆原良夫君。

漆原委員 公明党の漆原でございます。

 大臣は、所信で、司法改革元年というふうに本年を名づけられております。司法改革に対する大臣の決意のあらわれというふうに強く感じ、敬意を表しているところでございます。百年に一回あるかないかという大変大きな司法制度改革でございまして、大変な責務でございます。高村法務大臣、長勢副大臣、また大野政務官、本当に御苦労だと思いますが、全力でこれをなし遂げていただきたい、こういうふうにお願いを申し上げたいと思います。

 ただ、私、心配しているのは、大臣先ほどおっしゃっていましたが、この問題に対する国民の関心がいまいち少ないかなという感じを受けております。私もいろいろなところでこの司法制度改革の話をするのですが、皆さんぴんとこない。そこで、よく言うのは、参審制の話なんかをしまして、おばちゃん、あなたは裁判官になるかもしれないんだよという話をしますと、びっくりして、私が裁判官ですかということで、初めてこっちを向くというふうな感じでございます。

 先ほど杉浦委員の話もありましたが、何とか国民的な議論を喚起して、ぜひとも、国民全体がこの司法制度改革に取り組んでいく工夫を何かしなきゃいかぬのかなというふうな感じがしておりますので、どうぞ、またその辺も頭に入れて御検討いただければありがたいというふうにまず御希望申し上げる次第でございます。

 私の方からは、福岡地検の次席検事の捜査情報漏えい問題について少しお尋ねしたいと思うのです。

 大臣は、所信で、この問題についてこう述べられております。「最後に、一言申し添えます。」こう言われて、「現在、福岡地方検察庁次席検事から脅迫事件の被疑者の夫に対し、捜査に関する情報が伝えられたことについて報道されております。」「調査及び捜査の結果を踏まえ、所要の措置をとってまいりたいと考えております。」

 本当に一言申し添えられたな、こんな感じがいたします。余りにも客観的過ぎて、あるいは淡々とし過ぎて、他人事のような感じさえ私は印象として受けます。少なくとも、大臣のこの所信の文言からは、法務行政の最高責任者として、大臣御自身がこの問題をどのように考えておるのか、大臣の本当の生の声が私には伝わってまいりませんでした。

 先ほど申しましたように、大臣は所信の中で、本年は司法改革元年として位置づけ、司法改革を所管する法務省の責任者として、司法制度改革に本格的かつ真剣に取り組んでまいりたい、こう決意を述べられるとともに、「法務行政を進める上で最後によるべきところは人であります」というふうに大変重要な指摘をされておると私は思っております。

 法務行政を担当する現場の人、大臣おっしゃった人に対する国民の信頼こそが、司法改革あるいは円滑な法務行政の推進の上での大前提である、これがなくては司法改革もなし遂げられないし、また円滑な法務行政もなし遂げられない、こんなふうに私は思っておるものでございます。

 こういうような観点からすると、私は、この問題は、本当は大臣の所信の冒頭で取り上げられるべき問題ではなかったのかなという感じがします。そして、これから調査するからわかりませんが、ある意味では国民に対して疑惑を招いた、このことをまず率直におわびして、そして厳正な捜査の御決意を述べられるべきではなかったのかな、その方が、この問題を見ている国民の気持ちにぴったり合うのではないかなというふうに私は思っておるんですが、大臣はこの点いかがでございましょうか。

高村国務大臣 御指摘いただきましたこと、まことにありがとうございます。

 実は、予算委員会でこの問題について質問を受けましたときに、私としては、検察を所管する法務大臣としてこの事態を大変憂慮しており、まことに申しわけなく思います、まさに検察の公正性に疑念を抱かせたということを重大に思っておる、これを払拭するための捜査あるいは調査を、これは私自身でやるわけじゃありませんが、検察庁がそういう観点からしっかりやっていただけるものと期待をしております、そして、その調査を踏まえて私自身として判断しなければならないことがあると思いますと。これは再三再四記者会見でも申しておりまして、そして予算委員会でもそういう答弁をしたわけでありますが、ここの所信の中で、司法制度改革という極めて全体の大きなことを述べた上で、この私の所信を見ていただくとわかるんですが、具体的事案に触れたのはこの事案ただ一つであります。確かに冒頭でなくて最後であったということで、軽く扱ったのではないかと思われるとすると私の気持ちとは違うものでありますが、そういうふうに思われる方がいるということ、これは大きな話でありますから、委員から御指摘受けまして、私も反省するところ大でございます。

漆原委員 既に大臣が予算委員会等でお話をされて、国民におわびをされて、また決意を述べられたということについては存じ上げております。それと今の話を一体としてお聞きして大臣のお言葉というふうに私は考えさせていただきますので、よろしくお願いします。

 それでは、少し各論になりますが、次席検事が被疑者の夫を地検に呼び出して、あなたの奥さんは脅迫罪、ストーカー規制法違反で告訴されている、こういうことを告げる行為というのは、検察官の職務行為として適正な行為と言えるかどうか。この点はいかがでございましょうか。

古田政府参考人 今御指摘のこの問題につきましては、先ほど大臣からも申し上げましたとおり、私ども大変深刻、重大な問題と受けとめております。先にそのことを申し上げておきたいと思います。

 ただいまお尋ねの点につきましては、これは捜査の過程でいろいろな場面がございまして、一般論的に申し上げれば、ある時点でいろいろな捜査のための協力を確保するとか、真相解明に役立たせるために一定の捜査情報を関係者に告知するということもないわけではございません。ただ、御指摘のこのケースにおきまして、果たしてそれが適当だったかどうかというふうなことにつきましては、これは大変疑念が持たれているところでございまして、こういう点も含めまして、現在、最高検察庁におきまして、疑念が持たれているさまざまな点について鋭意真相解明の努力をしているところでございます。

 その過程で、もちろん御指摘の行為の問題点、これについても十分調査、捜査をするということでございますが、現時点で、まだそれについて確定的なことが申し上げられる段階には至っていないということを御理解いただきたいと思います。

漆原委員 検察官は事件の解決のためにいろいろなことをされるということは、ある範囲内において許されるということはよく理解しております。

 この例で言うと、被疑者の夫が高裁の判事だということで、被疑者の夫を地検に呼び出して、今捜査中のことをまさに教えるということがありますね。そうすると、それを広げていくと、例えば会社の上司を呼び出して教える、あるいは、学校の先生が問題があれば学校の校長を教育委員会へ呼び出して、こんな教師がいるぞ、こんな犯罪を行っている教師がいるぞ、今捜査しているんだと言う。もっと極端なことを言うと、暴力団の幹部を呼び出して、おまえの子分はこんなことをやっているよ、何とか抑えられないのかというような話にまでなるのであって、捜査中のことをそんなに第三者に教えることはいいのかどうか。仮に教えるにしても、どこまでが適正な行為として許されるのか、この辺は疑問に思っているんですが、局長はいかがお考えでしょうか。

古田政府参考人 委員御指摘のとおり、捜査を円滑、適正に進めていくためにどうすればいいかという観点から、実はいろいろな事件がございまして、その捜査、事件の内容、あるいは関係者の状況、それから非常に大事なことですけれども、捜査の進展状況、ほかに方法がないかとか種々の問題を総合的に考えまして、その上で、ある一定の場合にはそういう措置をとりまして捜査協力を求めるというようなことも、これは現実問題としてはあるわけでございます。

 ただ、それを行うにつきましては、捜査の進展状況あるいは関係者の立場その他を十分考慮いたしまして、種々、後の捜査に障害が、あるいは支障が生じないよう細心の注意を払ってやらなければならないことになると思います。また、告知する情報の範囲とか、あるいはどういうふうにその後それを取り扱うべきかというふうな問題についてもやはり十分慎重に考えてやらなければいけない。

 なかなか一般論で申し上げることが困難でございますけれども、捜査の状況等にも応じまして個別的に判断をしていかなければならない問題であろうと考えております。

漆原委員 一番一般的に素朴に疑問に思うことは、捜査の過程で情報を告げたならば、すぐ考えられることは、証拠隠滅のおそれがあるなということはだれでも考えると思います。

 そうすると、本件の場合を考えますと、証拠が完璧に固まって、いつでも裁判を維持できるという程度の証拠が固まった上でこういうことがなされたのか、あるいはそこまで至らないのにこういう行為がなされたのか。報道によると、証拠隠滅がされたというふうな報道もあるわけなんですが、やはり一般国民の関心としては、捜査されている、告訴されたという事実を第三者に告げることによって一番最初に思い浮かぶことは、証拠がそれによって隠滅されるんではないか、これが一番最初に感ずる疑問なわけですね。

 御調査されておると思いますが、本件の場合には、情報を告げたという時期が、訴訟維持できる客観的な証拠がもう十分そろったという時期なのか、まだ裁判を維持できるだけの証拠がそろっていないという時期なのか、この辺についてはいかがでございましょうか。

古田政府参考人 当時の捜査状況あるいは証拠関係等につきましては、これは現在調査及び捜査をしている段階でございますので、具体的に申し上げることは差し控えさせていただきたいと存じますが、ただいま委員御指摘のとおり、もちろん、ある一定段階で告知などをいたしますと、場合によっては証拠隠滅あるいは犯人の逃亡というふうな、非常に重大な問題を引き起こす可能性があるということは、これは当然のことでございます。したがいまして、いろいろな場面で捜査協力を求めるにいたしましても、それが果たしてそういう問題を起こさないか、あるいはそれを起こさせないようにするにはどうすればいいかとか、十分状況に応じて注意を払ってやらなければならない問題であるというふうに考えております。

漆原委員 次席検事は記者会見で、私も聞いておりましたが、被疑者の夫が高裁の判事であるということも考慮に入れたというふうな話をしておられたというふうに私は記憶しております。そうだとすると、法律家同士がかばい合ったというふうに国民は受け取っております。果たしてそういうことなのかどうかということは、きちっとやはり調べなければならない。きちっと調査をしていただいて国民の前に明らかにしていただかないと、法曹全体の信頼が失われてしまいます。

 最高検が今調査中だということでございますが、被疑者の夫が高裁の判事だということを考慮してこの次席検事はこういうことをしたのかどうか、この点についてのお調べのぐあいはどんなふうになっていますか。

古田政府参考人 ただいまお尋ねの件につきましても、御指摘の点がどういうウエートを占めたのか、そして、それが通常の検察官の判断として本当に問題がないと言えるか、そういうふうな点を含めまして、現在鋭意調査及び捜査を進めているところでございますので、その結果につきましては、またできるだけ速やかに明らかにしたいと考えております。

漆原委員 もう一点だけ局長にお尋ねしたいんですが、この検事が被疑者の夫に告げた内容でございますけれども、告訴されているよという事実だけではなくて、被疑者がプリペイド式の携帯電話を使って無言電話をしていた、そしてまたこの携帯電話の電話番号まで教えたというふうに一部の新聞では報じられております。これが真実であれば全く余計なことまで教えたのじゃないかなというふうに思われますが、この辺の調査はどういうふうになっておるでしょうか。

古田政府参考人 先ほど申し上げましたとおり、この問題につきましてはいろいろな疑念が指摘されているところでございまして、ただいま委員が御指摘のような点も、これは大変重要なポイントだと考えております。したがいまして、御指摘のような点につきましても十分これは重点的に調査及び捜査をするということにしております。そういう行為の問題点、もちろんこういうようなこともきちっと明らかにした上で考えたいと思っております。

漆原委員 最高裁にお尋ねします。

 この問題に付随して令状請求関係情報の漏えいということが問題になっております。昨年の法務委員会は一連の警察不祥事事件で大もめにもめたわけでございますが、今回は、福岡地検の次席検事の問題、また、裁判所まで令状関係情報を漏えいしたということが問題とされております。そういう意味では、法の番人であり、あるいは人権の最後のとりでと言われた裁判所までが、裁判所よおまえもかというふうな感じで、国民は非常に心配をしている、不安に思っていると思われます。

 まず、福岡地裁から高裁にコピーされたという令状請求関係資料はどんなものなのか、お知らせいただきたいと思います。

金築最高裁判所長官代理者 コピーされました資料は、令状請求書そのものと、それから令状請求の際に提出されました捜査資料というふうに承知しております。

漆原委員 裁判所ルートの情報が被疑者の夫である高裁判事に漏らされたのかどうか、この辺は非常に我々も心配しているところでございますが、御調査の結果はいかがでございましょうか。

金築最高裁判所長官代理者 お尋ねの点につきましては、現在、最高裁判所事務総局に設置されました調査委員会におきまして調査しているところでございます。漏れていないと判断するためには調査を尽くす必要があるわけでございますが、まだ調査を終結しているわけではございません。そういう意味で、調査の結論的なものについてはこの段階では御説明は差し控えさせていただきたいと存じます。

漆原委員 判事本人に、裁判官本人に容疑がかけられている、あるいは告訴されているということであれば、地裁の方から高裁の方に人事の観点で、裁判官の適格性や裁判の公正性という観点から通知が上がっていくということは私はシステムとしてわかるんですが、今回の事件は判事ではなくて判事の妻の件でございまして、また、少なくとも、判事本人以外の令状請求の資料までコピーして高裁に上げたということは行き過ぎじゃないのかなというふうに感じます。

 では判事の親御さんが容疑者ならどうなんだ、判事の子供が容疑者だったらどうするんだ、兄弟が容疑者だったら上がっていくのかと、これもやはり無限に広がっていくんじゃないかなと思います。これも、証拠隠滅の危険性などから考えると、判事だけに限定されるべきじゃないのかな、あるいは証拠資料のコピーまで上げる必要はないんじゃないかというふうに思うんですが、最高裁のお考えはいかがでしょうか。

金築最高裁判所長官代理者 本人ならばともかくという御指摘でございます。

 ただ、本件のように日々の生活をともにしておる妻の犯罪容疑ということになりますと、裁判官本人の犯罪容疑ではないといたしましても、裁判官の執務を続ける、継続するということについて影響が及ぶという事態も十分考えられるのではないかというふうに思います。やはりそれぐらい深刻な事態であったというふうに言えるかと思います。

 これが親兄弟の場合にはそういう問題は絶対起こらないのかと言えるかどうかというふうなことはともかくといたしまして、少なくとも妻の場合というのは本人に準じた考え方をせざるを得ない場合が多いような気がいたすわけでございます。

 ただ、地裁から高裁への報告の方法といたしまして、令状請求関係資料をコピーしていたという点については、これは不適切であったというふうに考えております。

漆原委員 この問題につきましては、今までいろいろな質問をしましたが、いずれにしても、調査中でまだ結論が出ていない。この調査の結果は、国民にきちっとわかるような格好で公表してもらいたいことを要望しておきます。

 最後に一点だけお尋ねしたいのですが、大臣は所信の中で人権擁護の推進という項目で述べられておりますが、メディアによる人権侵害に対する救済という観点から質問します。

 松本サリン事件の被害者の河野さんもそうなんですが、我が党においても、沢たまき参議院議員が全く事実無根の記事によって、彼女の言葉をかりれば本当に死ぬほどの苦しみを味わったという事件がございました。

 損害賠償認容額が非常に少ないのが今の裁判の実情だと思います。百万とか二百万、ある意味では弁護料にもならないというふうに言われるぐらいの安さ、低さではないのかなと私は思います。商業主義的なメディアは、裁判に負けてもそれは広告料なんだというふうなことまで言っておりまして、抑制的な効果は全くないし、被害者本人の慰謝にもつながらない、慰謝にも満たないというふうに思っております。

 この認容額を大幅に拡大する方法はないのかな、こんな観点から、懲罰的損害賠償という考え方がいろいろなところで今提案をされておるわけなんですが、懲罰的損害賠償制度というのはどんな制度なのかお尋ねしたい、そしてどんな国が法制度として採用されているのか、この二点をまずお伺いしたいと思います。

山崎政府参考人 懲罰的損害賠償制度というものは、現実の損害のてん補に加えまして、加害者に対する制裁として損害賠償を課す制度でございます。現実には、アメリカ、全部の州ではないようでございますけれども、イギリス、カナダ、ニュージーランド、オーストラリアと、いわば英米法系の国において採用されているものでございます。

 その内容といたしましては、不法行為の違法性、あるいは悪性といいますか、悪性の程度が高い場合に命ぜられる、こういうふうに承知をしております。

漆原委員 これは我が国の法制度とは全く違う法制度で、我が国は相当な因果関係にある損害をてん補すれば慰謝されたとみなす、したがって、懲罰的なものは付加されないわけでございますので、懲罰的損害賠償制度を導入するということは物すごく大きな法制度の転換だろうなというふうに思うわけで、なかなか実現は難しいというふうに私も考えております。

 ただ、いかんせん、今の裁判の判例の実情では、この損害額は低過ぎると思います。思い切って、何とか一千万とか二千万という単位の損害賠償認容額にならぬのかなという声をあっちこっちで聞くのですね。今の裁判所の判例の積み重ねの中では思い切った方法はなかなかとれないのでしょうけれども、何とか現在の法制度の中でこの認容額を大幅に千万単位までに引き上げるような方法はないのかなと思いますが、この点はいかがでございましょうか。

山崎政府参考人 御指摘の点、例えば現在の民法でも、損害賠償の額を幾らにするかということは法定されておりませんで、それぞれの事情を勘案して裁判所がお決めになっていることでございます。そういう意味から、なかなか一定の方式を定めるということは難しいように感じられますが、最近、事案によっては、確かに損害賠償額は低い、認容額は低いという声も出ていることは十分承知しております。

 ただ、この何年か見てまいりますと、徐々にではございますけれども額が上がってきているというふうに私も承知しております。けさほどの新聞で、五百万という額が認容されたという記事も載っているように記憶しておりますけれども、そういうことで、いろいろ研究はしてみたいというふうに思っておりますが、なかなかこれといった決め手がないという状況でございます。

漆原委員 最高裁にも、そういうふうな認容額をもっと上げてもらいたいという素朴な国民の声が、そうでないとやられっ放しだ、庶民としては、弁護士を頼むにも金がない、一生懸命金を集めて裁判をしても百万か二百万ではとても裁判を起こせないんだという切実な庶民の声があるということをお伝えして、そして、何とかぐんと認容額を上げてもらいたいという希望を述べさせていただいて、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

保利委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時二分開議

保利委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。枝野幸男君。

枝野委員 民主党の枝野でございます。

 お尋ねしたいことがたくさんありますので、お尋ねしたことだけに簡潔にお答えをいただければと思います。

 まず一番最初に、短く終わりそうなところからやりたいと思います。

 この国会に共同法人法案の提出を予定されていると伺っております。共同法人法案というのは、民法の公益法人に関する規定との関係ではどうなるのでしょうか。この特別法なんでしょうか。

高村国務大臣 現行法上、公益を目的とする団体については民法が定める公益法人の制度があり、営利を目的とする団体については商法及び有限会社法が定める営利法人としての会社の制度があるわけであります。しかし、公益を目的とせず営利も目的としない団体については法人格の取得を可能とする一般的な法制度がない。そういうことで、その中間的なものをつくる、こういうことであります。

 特別法ということであれば、特別法と言って差し支えないと思いますが、この法案の名称につきましては、中間法人法案としたいと考えております。

枝野委員 一般的に、公益目的を持つ公益法人というものは、営利を目的としない非営利法人の中で特に公益性の高いものという概念ではないのでしょうか。むしろ、もし非営利法人に関する一般法ができるのであるならば、その特別法として公益法人に関する法律が整理をされるという形でないと、論理的におかしいのじゃないかと思うのですけれども、いかがですか。

高村国務大臣 公益法人というものが一番最初にあって、そして特に公益のあるものについて公益法人の必要性を認め、それと別に、営利を目的とする営利法人を認めた、ただしその中間領域がないということで、新たに中間法人法をつくりたい、こういうふうに考えているわけでございます。

枝野委員 歴史的な経緯は十分存じておりますが、理屈の話として、公益性の有無というのは相対的な概念だと思います、営利か非営利かというものは明確に区別ができると思いますけれども。現に、NPO法という、ある意味では公益性、公益法人と言っていいのか、それとも非営利一般と言っていいのかというような概念の法律も存在をしています。これに何か継ぎ足すような形での中間法人の法律をつくりますと、概念的に整理されないのではないか。

 むしろ、民法そのものを改めて、民法で非営利法人一般について規定を置いて、その特別法として、特に公益性の高いものを公益法人として置くなら置く。あるいは、現在のNPOに相当するようなものを、民法の非営利法人一般法の特別法として位置づけるということをしないと、理屈が、説明がしにくい、整理がしにくい形になると思うのですが、いかがでしょうか。

高村国務大臣 必ずしも整理がしにくいというふうには考えておりません。

 まさに、先ほど申し上げたように、公益法人、これは必要だから、一定の条件のもとに国がそれを認めてつくらせる、こういうものでありまして、営利法人の場合は、一定の準則があって、それにかなうものは準則主義で認める、これが商法の株式会社等々でございます。そして、同窓会だとか、いわゆる公益でもない、営利でもない、そういったもの、まさにその中間のものがあるねということは昔から言われてきたわけでありますが、その必要性に応じて、今度新たに法律をつくる。

 歴史的なことはわかるけれどもとおっしゃいましたけれども、まさに歴史的にそういうふうにつくる必要性があるからつくるわけで、そういうことで何か特別の害があるというふうには考えておりません。

 NPO法の話がありましたけれども、NPOはまさに公益を目的としたものであって、構成員自体のお互いの利益のようなものを図っている、といっても営利ではないわけでありますけれども、お互いがそこで楽しむというようなものを図っている今度の中間法人とは本質的に差があるものだ、こう思っています。

枝野委員 これは法律が出てきたところでさらに議論をしたいと思いますが、一般に、新しくつくられてくるこれからの法人をどう見ていくか。営利でないということで、非営利法人の一般法である今度の中間法人法で法人格をとり、その上で活動を評価してもらうと、公益性が高いようだから公益という認定を受けるというような段階で物事は進んでいくのではないかと私は思いますので、こういう法律をつくることを否定しているのではなくて、どうせつくるのであれば、整理をしてつくるべきではないかということを申し上げておきたいと思います。

 さて、福岡地検の情報漏えい問題についてお尋ねをしたいと思います。

 確認をしたいと思いますが、報道等では、山下前次席検事に対して捜査が行われているというふうに報道されていますが、どういう犯罪について、どこでどういう捜査をなされているのでしょうか。

高村国務大臣 捜査については、福岡高検において、国家公務員法違反の捜査が行われております。

枝野委員 ということは、公務員の分限の問題として、調査として――最高検ですね。

高村国務大臣 脅迫の本件については福岡高検でありますけれども、この元次席検事の件については、調査とともに、最高検で捜査を行っております。訂正をいたします。

枝野委員 今話しかけたのは、捜査と調査が両方ある。調査であれば、例えば守秘義務の告知等は要らないということになりますが、捜査ということになると、これは被疑者でしょうから、任意捜査であっても、守秘義務の告知等が要るのではないか。それから、捜査をする人と調査をする人が同一の人物であっていいのかどうか。この辺のところの整理はどうなっているのでしょうか。

高村国務大臣 何か特別同一の者であっていけないという理由があるのかないのか私はわかりませんが、何かそこがいけないのではないかということがあれば、具体的に御指摘いただければ、私なりの考えを申したいと思います。

枝野委員 捜査であるならば、山下前次席検事は被疑者でありますから、その被疑者から捜査として事情を聴取するに当たっては、当然のことながら黙秘権の告知等をしなければいけないのではないでしょうか。調査であるならばそれは要らないですけれども、そこの区別は要るんじゃないですか。

高村国務大臣 捜査するときは、当然のことながら黙秘権の告知を行っていると思います。

枝野委員 調査の場合は黙秘権の告知は要りませんね。

高村国務大臣 純粋に調査であれば黙秘権の告知は要らない、こう思いますが、福岡地検の前次席検事、黙秘権のことは告知されるまでもなく知り抜いている人でありまして、そういう中で、これは調査ですよというときは、完全に調査の段階では要らない、こういうことははっきり言えると思います。

枝野委員 ですから、調査をする主体と捜査をする主体を分けなきゃいけないのじゃないかと私は思うのであります。

 なぜならば、捜査に対しては黙秘権があって、黙秘権の告知も当然必要であって、被疑者として山下次席検事はみずからに不利なことを言わない権利を持っています。しかし、調査に対しては一般的にこうした黙秘権があるとは言われていません。犯罪捜査等に利用されるという危惧がなければ、行政上の行為として調査に応ずる責任義務があるというふうに思います。

 したがって、調査であるならば答えるべきことが、捜査に対してだったら答えなくてもいいことがあります。それの主体が同一であるとすると、どちらにそろえるのでしょうか。当然刑事訴訟手続上の黙秘権を彼は行使できることになって、調査であればできる、話を聞き出さなきゃならない部分について彼は供述を拒絶することができるということになるんじゃないですか。

高村国務大臣 調査であっても、当然のことながら、被疑者になった段階からは被疑者としての立場を尊重してやっていることだ、そういうふうに考えております。

枝野委員 いや、それは一般的におかしいんじゃないですか。例えば、行政上の必要性があって調査を行う場合には、犯罪捜査に援用されないという限りにおいて黙秘権はないと一般的に言われていますので、きちんと調査と捜査を分けて行っていれば、調査の方ではもっと聞き出せることがたくさん出る、だけれども、捜査と一体化していると黙秘権の壁に阻まれることが出てくるということにならないですか。

高村国務大臣 現実の問題として、そういう壁に阻まれるとかなんだとか具体的な問題が出てくればそれはそれとして考えますが、今のところ、そういう壁に阻まれて問題があるというふうな報告は受けておりません。

枝野委員 水かけ論になりますので、またその話には戻るかもしれませんが、なぜ強制捜査をしないのですか、なぜ身柄を押さえないのですか。

高村国務大臣 捜査活動の内容に関することでありますから法務大臣が答えるべき話ではないだろう、こういうふうに思いますが、ごく一般的なことを申せば、そこに犯罪を犯したと思うに足る状況があって、そして逮捕の必要があれば、検察は一般的に逮捕するんだろう、こういうふうに思っております。

枝野委員 前次席検事が情報を、漏えいとすると評価が入るのでしょうか、捜査上知り得た事実を被疑者の夫に伝えたということは、もう本人も認めて、周知になっています。十分に犯罪としての嫌疑はあり、あともしこれが捜査として必要があるとすれば、次席検事の主観的要素以外には考えられない。相手は検察官であって、捜査に対するプロで、身柄をとらないような捜査で果たしてこの主観的な部分のところの立証が可能であるのか。

 特に、確かに、個別の捜査についてどこまで法務大臣が口を出すべきかどうかということについてはいろいろな議論があるかもしれませんが、法制上、法務大臣には指揮権がございます。これは、福岡地検の一次席検事の問題ではなくて、検察というものの信用、信頼というものにかかわっている事件であって、この山下次席検事に対する公務員法違反の捜査が、いやしくも国民から、やはり身内だから甘い、かばっているというような疑いを持たれれば、これは法務行政、検察行政において回復しがたい国民に対する不信感を与えることになります。

 そういう視点から考えれば、これだけの客観的な証拠がそろっている中で身柄をとられないというのは、やはり検察官だから優遇されているんだと国民から思われても仕方がないんじゃないですか。

高村国務大臣 これは捜査機関が判断することでありますから、法務大臣としての意見は差し控えたい、こういうふうに思います。

 国民がどう見るかということは、全体の捜査終了、そして調査終了、そしてその後でとられる処置、そういったことを見て、そういう身内が身内をかばったととられないようなやり方をしていきたいと思いますが、一義的にどうとられるかだけであって、仮に捜査機関が捜査のために身柄をとる必要がないと思う者までとるとしたら、これはまた問題であると思いまして、私は、私の立場から、身柄をとるべきだとか、とるべきでないとか、いずれについても申し述べるつもりはございません。

枝野委員 法務大臣は指揮権についてどう考えていらっしゃるんですか。指揮権というものがあるんじゃないですか、法務大臣には。

高村国務大臣 法務大臣には指揮権がありますが、これは伝家の宝刀でありますから、できるだけ控え目にするべきだ、こういうふうに考えております。

 この場合、かなり大きなことでありますから、そして政治が絡むことでもありませんから、場合によってはということを考えないわけでもなかったわけでありますが、なお捜査機関を当面信頼してやっていきたい、こういうふうに思っております。

枝野委員 指揮権は戦後一度だけしかたしか発動されていないと思いますが、その前例と比べてみたときに、本件のようなところで指揮権を発動しなかったら、指揮権なんて使い道はない。空文でいいんだというお考えなんでしょうか。それならそれで一つの見識なので構わないのですが。

高村国務大臣 空文だとは申し上げていませんが、一方でまさに伝家の宝刀、めったに抜くものではない。めったに抜くものではないものを抜くときに値するかしないかというのは一つの判断の問題でありますが、私は今なお検察の捜査を信頼しているということでございます。

枝野委員 検察の捜査を一般的に信頼されるのは結構なんですが、そもそも本件は、検察官がその信頼に値しない行為をしたという被疑事件であって、抽象的に、検察官、検察庁を信頼しているということでは国民の信頼にこたえることにはならないと思うのですけれども、いかがですか。

高村国務大臣 委員のおっしゃることは一つの見識だと思いますが、それはそれとして、私は、全体的に考えて、この件についても現時点で指揮権を発動するつもりはございません。

枝野委員 今のようなことまで申し上げて、指揮権は抽象的にはあるということをお認めになった上で、それを行使する、あるいは直接実行を起こさなくても法務大臣として何らかの行動を起こされないというのであるならば、これは検察の捜査の問題でありますが、この捜査が国民から不十分であるというような評価を受けるときには、検察庁ではなくて内閣としてその批判を受けとめるという理解でよろしいですね。

高村国務大臣 議院内閣制でありますから、国民が、指揮権を発動しなかったのがけしからぬと言うのであれば、私はそれを受けざるを得ない、こう思っています。

枝野委員 私はじゃなくて、内閣として責任を負うということですね。

高村国務大臣 法律に明定されていますように、指揮権というのは内閣の権限ではなくて法務大臣の権限でございます。

枝野委員 法務大臣の権限として書いてありますが、内閣の一員として、行政機関の一つとして法務大臣が持っている権限ですから、内閣は連帯して国会に対して責任を負うのですから、法務大臣のそういう行動については内閣が連帯して責任を負うというのは当然じゃないですか。

高村国務大臣 責任といってもいろいろな段階があるわけでありまして、大きな意味ではそういうことは言えるかもしれませんが、指揮権を発動するかしないかというのはまさに私の権限でありますから、一義的に私が負うべきものであります。

 この件について指揮権を発動しないのはけしからぬという国民の声があるとすれば、それは私が負うべきものだ、こう思っております。

枝野委員 内閣としての見解を法務大臣だけに聞いても仕方がないので、後で予算委員会などで全体としてはお伺いしましょう。

 山下次席検事は、現在福岡高検の総務部付というふうに伺っておりますが、まず、一般論として、検察官の分限についての手続というのはどうなっているんでしょうか。裁判官の場合は、裁判官弾劾裁判という手続があって、弾劾を受ければ法曹資格自体を失う、つまり弁護士もできなくなるというのはよく知られておりますが、検察官の場合はどうでしょうか。

大野(つ)大臣政務官 検察官の場合は、国家公務員法上の懲戒処分の対象になりますが、分限処分に関しては、検察庁法第二十五条の規定により、その意思に反してその官を失い、職務を停止され、または俸給を減俸されることはないので、その対象にならないということです。検察官が、心身の故障また職務上の非能率その他の事由によりその職務をとるに適しないときは、同法第二十三条の規定により、検察官適格審査会の議決を経て、その官を免ぜられることになっております。

枝野委員 つまり、裁判官と異なって、法曹資格を剥奪する形での処分はあり得ない、制度上ないという理解でよろしいんですね。

高村国務大臣 法曹資格を剥奪する手続は制度上ございません。

枝野委員 事後法でこれができるかという話はありますので、本件について法律をつくって適用すべきかどうかという話はまた議論があるかもしれませんが、裁判官に対して弾劾裁判があるように、検察官をやめても弁護士ができるというのでは国民的な理解が得られないケースが、一般論としてですよ、あり得るのではないか、したがって、検察官についても法曹資格を剥奪する形での処分の仕方という規定を置くべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

高村国務大臣 直ちにそのとおりだとか違うとか、いろいろな観点がありますので申し上げられませんが、一つの考え方だと思います。

枝野委員 裁判所にお伺いします。

 古川判事の問題でありますが、まず、一般論として、裁判官弾劾裁判に対する訴追、つまり裁判官訴追委員会に対する申し出は裁判所もできるというふうに思いますが、その辺の手続規定はどうなっていますか。

金築最高裁判所長官代理者 裁判官の弾劾手続につきましては、裁判所も訴追の請求ができるということでございます。

枝野委員 相手がいることなので答えにくいかもしれません。そのことをわかった上でお伺いしますが、古川裁判官に対して検討はなさっておられるのですか、なさっておられないのですか。

金築最高裁判所長官代理者 古川判事につきましては、その妻の被疑事件に関する証拠隠滅疑惑について種々の報道がされているところでございますが、その事実関係につきましては、現在、最高裁事務総局に置かれました調査委員会で調査中でございますが、また、告発がなされまして、捜査機関において捜査中というふうに承知しております。

 最高裁としましては、今後、解明された事実関係の調査結果を踏まえまして、適切に対処してまいりたいと考えております。

枝野委員 裁判官弾劾裁判で弾劾された裁判官は、一般論です、法曹資格を失いますね。

金築最高裁判所長官代理者 御指摘のとおりでございまして、弾劾裁判で罷免された場合には、裁判官の職は失いますし、検察官にも弁護士にもなれないことになっております。

枝野委員 弾劾訴追を受ける前に、あるいは弾劾裁判の判決が出る前に辞職をされてしまった場合にはどうなりますか。

金築最高裁判所長官代理者 裁判官が辞職いたしました場合には、裁判官の身分を失ってしまいますので、御指摘のように、前提が欠けて弾劾手続をとることができないということになります。

枝野委員 先ほどの一番最初の質問で、調査中というお話がありましたが、彼が疑われている事実関係からすれば、それが事実とすれば、当然、弾劾裁判で法曹資格は剥奪すべき案件であると私は思いますが、少なくとも、そうした手続を経る機会を確保するために、もし古川判事から辞表が提出されても受理をすべきではない、少なくとも調査がすべて終わるまでは受理をすべきではないというふうに思いますが、いかがでしょうか。

金築最高裁判所長官代理者 御指摘のような点も含めまして、先ほど申し上げましたように、事実調査の結果に基づいて適切に対処してまいりたいと考えております。

枝野委員 ですから、事実の調査が終わる前に辞表を出されちゃったら、それを、はいそうですかと受けとめてしまったら、弾劾等の予定している手続を受けられないということですよね。

 それから、選挙に立候補しちゃったらどうなるのですか。

金築最高裁判所長官代理者 辞表、退職願が出されたときにどうするかということにつきましては、そのときに解明されている事実関係によるということでございまして、現段階でどうするかということをお答えすることは困難でございます。

 それから、選挙の関係は、ちょっと記憶で申し上げてあれですが、前にございました安川事件のときにその問題がございまして、その後、法的な手当てがなされたというふうに記憶しております。

枝野委員 古川裁判官の在籍した部に対する裁判忌避申し立てが何件か出て、それは認められたというふうに聞いておりますが、忌避申し立てが出ていないけれども結審済みの事件、つまり、彼が裁判官としてこれから判決を下すことになっている、あとは判決の申し渡しだけであるという事件はあるのでしょうか、ないのでしょうか。

金築最高裁判所長官代理者 古川判事が関した事件で、結審後、言い渡し前の事件の取り扱いについては、これから申し上げるとおりになっています。

 こういう事件は全部で六件ございますが、二件については忌避申し立てがされて、これは認容されて、結局古川裁判官は審理、判決から除かれたということになりますし、三件につきましては、弁論再開をいたしまして、別の裁判官がかわりに入って、公判手続の更新をした上結審したというふうに聞いております。もう一件につきましては、弁護人から弁論再開申請がされる予定と聞いております。

枝野委員 そうですよね。当事者としては、こんな裁判官に出された判決に従う、はいそうですかとはなかなか言えない状況だというふうに思えますよね。

 古川裁判官が過去に出した判決というのはどうなるのでしょうか。控訴している案件というのは控訴審で争ってくれればいいかもしれませんが、古川裁判官がこんな裁判官だとは知らないで、裁判官、お上の言うことだからまあ仕方がないなといって結審をしてしまって、あるいは罪に服してしまっている事件、当事者としては納得できると思いますか。

金築最高裁判所長官代理者 既に確定済みの事件につきまして、これがどうなるのかというふうな点につきましては、これは具体的事件についてどういう裁判がなされるかというふうなことにかかわることでございますので、事務当局としてお答えを申し上げるのは差し控えさせていただきたいと存じます。

枝野委員 法務大臣、納得できると思いますか、当事者として。

高村国務大臣 納得できる裁判もあれば、納得できない裁判もあるのではないかと思います。

 極めてまじめな裁判官が下した裁判でも納得できない当事者もいるかと思いますが、今伝えられているような状況のもとで納得できるかと言われても、できるとはなかなか申しにくい状況にあるということはそのとおりだと思います。

枝野委員 ところが、例えば再審の事由になるかとかいろいろ考えてみると、とても再審の事由になったりはしないわけでありますよね。まさに当事者、関係者に対して裁判の信頼というものを大きく損ねている話であって、これは古川裁判官や山下元次席検事の個人的な犯罪というか事件ということで済ませてしまってはいけない。検察庁、裁判所全体として、こうしたケースを許してしまった、こうした国民が不信を抱くような話を許容してしまったということ自体、全体として責任を明確にする必要があるというふうに思うわけであります。

 もう一点、この件と直接かかわりませんが、同じように司法が、関係者の内側の人間関係で公正さを疑われている事件がすぐそばで起こっています。

 まず、これは警察が捜査をしているようでありますので、警察庁にお尋ねをします。

 二〇〇〇年の五月二十八日に、熊本県天草町高浜、林田サチ子さんほか三名が交通事故により死亡した事件、これについての捜査は現状どうなっておりますでしょうか。

坂東政府参考人 お尋ねの件につきましては、熊本県警察では、当初から、自殺、他殺あるいは事故等あらゆる可能性を視野に入れて捜査を尽くしましたが、現場の状況、車両の損壊状況、目撃状況、御遺体の損傷状況、あるいは保険加入の経緯、その他裏づけ捜査の結果を総合的に判断いたしまして、運転していた女性による業務上過失致死事件と認定いたしまして、平成十二年十月十三日に本渡警察署の方から熊本地方検察庁の方に送致した、このように報告を受けているものでございます。

枝野委員 検察は結論を出しておられますか。

高村国務大臣 現時点では、結論をまだ出しておりません。

枝野委員 その理由は教えていただけますか。

高村国務大臣 慎重に捜査をしているところでございます。

枝野委員 これは個別の問題を取り上げる目的ではありませんので固有名詞は挙げませんが、この案件は、死亡した四人のうち三人に同一の受取人の生損保が総額で六十億を超えてかかっている。死亡したのは、病院の理事長夫人の理事さんと、その病院の理事である看護婦の部長さんでありますが、そうだとしても、六十億を超える保険金がかかっている。しかも、看護婦さん二人については、その保険に加入をしたのが死亡事故の起こった一カ月前と、非常に隣接をしている。一般的には、これだけでも保険金をめぐる事件ではないかという非常に強い嫌疑に基づいて捜査が行われなければいけない客観的な状況であるというふうに思いますが、警察庁、いかがでしょうか。

坂東政府参考人 先ほども御答弁いたしましたとおり、御指摘の高額保険に加入しているといったようなこと、そういうことも十分に視野に入れながら捜査を尽くした結果、いろいろ総合的に判断いたしまして、業務上過失致死事件として送致したというところでございます。

枝野委員 しかし、これは、保険会社は支払いを拒否していますよね。事故なら当然支払われるべきであるお金を、保険会社の方は、とても事故とは思えないということで、支払いを拒否していますよね。

坂東政府参考人 保険に関することに関しましては、個人のプライバシーに関することでございますので、御答弁を差し控えさせていただきたいと思います。

枝野委員 この事件は、ここまでの話だったらば個人のプライバシーにかかわるという話であるかもしれませんが、しかし、この保険金の受取人である病院の常任理事として、熊本県警の元刑事部長、しかも警察のOBの中ではかなり大物と言われている方が、いわば天下っておられる。また、相談役として、熊本県内の警察署長経験者が入っておられる。ということになると、単純にプライバシーの問題という一般的な事件としては扱えないのではないですか。警察庁、どうですか。

坂東政府参考人 委員御指摘のように、熊本県警の元職員という者が当林ヶ原記念病院に再就職しているということは事実でございますが、それはそれとして、熊本県警におきましては、この事件に関しましては、慎重にかつ厳正に捜査を尽くしたというところでございます。

枝野委員 警察の刑事部長経験者であるこの常任理事が、この交通事故の起こったときの実況見分等の場においでになった、あるいは、捜査をする捜査員等と頻繁に接触を持っていたというふうに言われていますが、事実ですか。

坂東政府参考人 この幹部の方が、病院院長の御夫人等が帰らないといったことでいろいろな捜索を尽くして、かつ自分たちではもう十分やれないからということで、警察の方に捜索の依頼をしてきたということは聞いておりますけれども、その後の件につきましては、県警の方から十分報告を受けておりません。

枝野委員 警察という大きな組織の中で、OB、大先輩が現場にいろいろな形で当事者のような立場から介入をしてきた場合には、現場の警察官としてはそれを一般的にはそうは無視はできないだろうなと普通思いますが、そうは思いませんか。

坂東政府参考人 警察が捜査を行う場合におきましては、法と事実に照らして厳正に捜査をしているもの、そのように承知しております。

枝野委員 法と証拠に基づかない捜査をいろいろなところでやっていて、一昨年来、不祥事だと問題になっているんじゃないですか。ただそれだけじゃ説明にならないですよ。なぜこれが厳正だったのかという証明を出してください。

坂東政府参考人 答弁の繰り返しになって非常に恐縮でございますけれども、先ほども申しましたように、いろいろな事案というものを総合的に判断して今回の事件というものを業務上過失致死ということで送致したというように承知しております。

枝野委員 では、こう聞きます。昨年の八月十八日、熊本県警の公用車、しかも幹部の乗るような黒塗りの公用車が林ケ原病院にやってきている、そういう事実はありますね。

坂東政府参考人 そういったことが報道されているということは承知しておりますけれども、病院の方に警察の幹部が行ったかどうかということについては承知しておりません。

枝野委員 そういう事実関係も調べないで、何で厳正だったと言えるのですか。普通の交通死亡事故で、そして業務上過失致死だという事件で、わざわざ黒塗りで来るような警察幹部が来たりしますか。しませんでしょう。

坂東政府参考人 黒塗りで警察幹部が行ったかどうかという事実につきましても承知していない、私は承知していないということであります。

枝野委員 だから、承知してないでどうして厳正だと言われるのですか。そういったことが報道されていて、疑わしいわな、やはり癒着しているんじゃないかなと世間から思われている事実は報道等で御存じじゃないのですか。そうしたら、そういったことを調べた上で、ああ、やはりそういう変な、癒着と疑われるようなことはないな、それで初めて厳正だと答えられるのでしょう。そんなことも調べていないで、どうして厳正だって言えるのですか。

坂東政府参考人 本部長がその病院に行ったのではないかといったようなことに関しましては、それは調査いたしまして、本部長は行っていないというように報告を受けております。

枝野委員 さっきの話と答えが違うじゃないですか。

 では、ほかの人は行ったのですか、本部長以外の人は。黒塗りの車で行くような幹部が行っているという報道がされているんですよ。ちゃんと裏づけもとったんですね、本部長についても。

坂東政府参考人 本部長につきましては、ただいま申しましたとおり、行っていないということの裏づけをとったということでございますが、その他の幹部が行ったかどうかにつきましては、私は現在のところ熊本県警から報告を受けていないということを申しているところでございます。

枝野委員 今はっきり聞こえなかったのですが、裏づけをとったということでいいのですね。裏づけをとった、いいですね。もし違っていたら責任とれますね。裏づけをとったんですね。

坂東政府参考人 本部長は行っていないということでございます。

枝野委員 どっちなんですか。本部長が言っているだけなんですか。裏づけをとったと、先ほどちらっと言いましたよ。どっちなんですか。

坂東政府参考人 本件は熊本県警職員の案件についての報道でございますので、私ども警察庁といたしましては、熊本県警に本部長が行ったかどうかという事実を確認したところ、熊本県警としては行っていないという報告を受けているということでございましたので、これまでその旨を御答弁しているところでございます。

枝野委員 裏づけはとっていないということですからね。

 二〇〇〇年二月二十五日、この病院の理事長が運転免許証の更新の際に、その人が経営している病院の相談役である元警察署長の口添えで、必要とされる講習を免除して免許証が交付されたという報道がなされていますが、事実ですか。

坂東政府参考人 委員御指摘の案件は、理事長が昨年、平成十二年二月の免許更新の際のことだと思いますけれども、その際は、正規の講習を受けることなく、交通の教則等の資料を示して説明を行ったのみで免許の更新を行った、こういった報告を受けております。

枝野委員 何でそんなことが許されたんですか。何でそんなこと許されるんですか。

坂東政府参考人 更新時講習というものはやはり更新制度の根幹にかかわる重要なものでございますので、私ども警察庁といたしましては、本件の取り扱いは極めて不適正なものであるというふうに考えております。

 なお、熊本県警の報告によりますと、これを担当した職員につきましては内部処分を行ったというふうに聞いているところでございます。

枝野委員 だれからの申し入れでこんなえこひいきがなされたのですか。だれが警察に言ったのですか。

坂東政府参考人 この理事長に同伴してきました警察OBから、講習を受ける時間的余裕がないといった旨告げられたということで、先ほど申しましたような形で免許更新を行ったというふうに報告を受けております。

枝野委員 熊本県警には、OBの圧力で違法なことをする、そういう前例がこの当事者に関して直前にあるんですよ。それだったら今度の件だって、これだけ疑われることについて、県警がそう言っているから癒着はない、厳正にやったという判断だけでは足りないと思いませんか。とりあえずは警察内部でもいいですから、第三者のしっかりとした再調査をすべきじゃないですか、この保険金の問題についても。

坂東政府参考人 いずれにいたしましても、この交通事故に関する事件につきましては、先ほど申しましたように、業務上過失致死ということで、厳正に捜査を尽くした結果そういう判断をして検察庁の方に送致しているということでございます。

枝野委員 警察は検察に送致したら補充捜査できないんですか。そんなルール、いつ決まったんですか。補充捜査できるでしょう。警察庁として第三者のチェックを、熊本県警以外のチェックを入れる必要もない、これで正々堂々国民に信頼していただけると、あなた本当に思っているのですか。

坂東政府参考人 具体的に詳細は承知しておりませんけれども、補充捜査もしたというようには聞いております。

枝野委員 それは熊本県警がしたのでしょう。警察庁として、あるいはこれは九州管区局ですか、そこでちゃんとやりましたか。つまり、当事者熊本県警の中の内側の組織ではない外からやりましたか。

坂東政府参考人 監察の件につきましては、私の所管ではないので承知はしておりませんけれども、多分、委員御指摘のような形の監察的なものは行っていないのではないか、こう考えております。

枝野委員 当然監察を行わないと、直前に免許証の問題で癒着しているという話が現に証拠があるわけですから、本件だってそういった圧力があったと疑うに足りる十分な状況だと思います。

 検察がさらにきちんとした捜査をしていただければいいのですが、この病院の理事長のお嬢さんのうち二人がその病院で医師をされているそうですが、御主人がそろって検察官であると聞いております。そのうちの一名は、つい先日まで、当地、熊本地検にいたというふうに聞いておりますが、事実でしょうか。

高村国務大臣 理事長の四女の夫が検事として熊本地検に勤務していますが、同検事は林ケ原病院事件の捜査には関与しておりません。

枝野委員 これは通告してなかったのですが、熊本地検というのは検察官何人ぐらいの庁ですか。二十人も三十人もいる庁ですか。五人とか六人じゃないですか。

高村国務大臣 通告を受けておりませんので正確にはお答えできませんけれども、十人前後の庁ではないかと思っております。

枝野委員 福岡のような大きな庁で、しかも裁判所と検察庁に分かれていても、山下事件、古川事件のような話が起こっております。本件がどうこうと言うつもりはありません。二月まで当事者の親族が同じ地検の中にいた。その中での捜査というものは、相当国民から疑いを持って見られるであろうというふうには思いますよね。

高村国務大臣 一般的に、被疑者の親族がたまたまそこの地検にいたから疑いを持って見られるのでは、ちょっと検事もたまらないと思いますが、事件の全体像の中でそういうことが関係しているのではなかろうかと思われる、可能性とすればそれはあり得ることだ、こういうふうに思います。

枝野委員 確かに、東京とか大阪とかという大規模庁のところで、大都市で、その町の中に親族その他が全然いないだなんということは常識的には考えられません。しかし、この問題になっている病院というのは、熊本でも大変大きな病院、地域の名士として通っていらっしゃる方であるというふうに聞いております。しかも、熊本という人口の決して多くない、大規模でない庁であります。

 そもそも、こういったところに検察官を配置すること自体が間違っているのではないですか。関係者のいるようなところに検察官を配置するということであると、これは、福岡の事件が起こる前であるならば、検察に対する信頼というのは相当国民的に高かったと私は思いますので、そこまでの必要性はなかったかもしれませんが、この福岡の事件が起きてしまった以上は、こうした検事の配置というものについては今後は改めるべきではないですか。

高村国務大臣 検事の数だとか、その年次の人が何人いるとか、どう配置するか、そういう中でいろいろ考えていかなければいけない問題ではあるかと思いますが、そこに親族がいるから絶対にいけないとまで言い切れるかどうか、そういったことも、御指摘があったことを踏まえて、いろいろ検討してまいりたい、こう思います。

枝野委員 この事件は、さらに言うと、この病院の顧問弁護士さんも検察のかなり大物のOBであられる。警察、検察ぐるみで臭い物にふたをしようとしているのではないかという国民的な疑いを持たれても仕方がないような事件である。したがって、検察庁としての扱いというものは相当慎重に、つまり、疑いを一点でも持たれないような対応をしなければ、福岡の事件に続いているだけに、ますます検察、警察に対する信頼を失う可能性があるということを指摘しておいて、厳正な捜査を求めたいというふうに思います。

 もう一点だけ、検察が本当にちゃんと捜査をしているのですかという案件をお尋ねしたいと思います。

 新潟県上越市の南クリーンセンター施設解体工事において、業者への過払いの隠ぺいのため設計書に改ざんをしたという事件で、上越市の市長、正確に言うと広域組合の代表理事と市の担当者二人が刑事告発を受けている。この事件では、関連する民事裁判で改ざん等の事実が認定をされております。ところが、地検は事情調査等の捜査を全くした形跡がない。ちょっと異常だというふうに思うのですが、何か事情があるのでしょうか。

高村国務大臣 お尋ねの件につきましては、新潟地検、検察庁において告発を受理しておりますので、現に捜査中であると承知をしております。

 具体的事件における捜査の状況等につきましてはお答えを差し控えさせていただきたいと思いますが、あくまで一般論として申し上げれば、検察当局においては、厳正公平、不偏不党の立場から、法と証拠に基づき適宜適切に対処するものと考えております。

 まさに福岡でもおかしいことがあったじゃないかとか、そういうことをおっしゃられるかもしれませんが、一般的には、厳正公平、不偏不党の立場から、法と証拠に基づき適宜適切に対処しなければいけませんし、するものと考えておりますし、まさにいろいろな問題が起きているところでありますから、国民から疑惑を持たれないように、きっちりした捜査結果を出したい、こう思っております。

枝野委員 具体的な捜査の中身までは答えられないのはよくわかりますが、告発を受けたのはいつですか。

高村国務大臣 告発状の提出が平成十一年一月十二日でございます。

枝野委員 厳正な調査をしておるという話でありますが、二年間にわたって具体的な動きが見えないということに対しては、告発をした人物はもちろんのこと、これは政治というか行政の公正さにかかわるような案件でありますので、住民、市民を含めて相当な疑いを持たざるを得ないというふうに思いますので、きちんとした対応を求めたいというふうに思います。

高村国務大臣 告発事案が二つありまして、平成十一年一月十二日告発状提出の分と、平成十二年一月三十一日告発状提出の部分がございます。

枝野委員 十二年でも、一年たっているわけですから、余り大差はないと思うのですけれども、いずれにしろ、しっかりとした捜査を求めたいというふうに思います。

 福岡の事件にしろ、熊本の話にしても、今までは検察は信頼できるという話の中で、検察と裁判とそして警察とがさまざまな人間関係で結びついて、そのことによって法がゆがめられているのではないかという疑いを持たれております。

 私も弁護士の出身ですので、法曹三者における交流というものが全くなくていいかといえば、つい先日も、私も研修所の同期生の会に出てきて、検事になった者、裁判官になった者と話をしたりしておりますので、一般的に、判検事に全く接触しちゃいかぬとか、あるいは、警察と違う立場から検察は捜査の厳正を見るのだから、警察と検察で全く交流してはいかぬと言うつもりはありませんけれども、しかしながら、今回のような事件が出た以上は、例えば、裁判官と検察官の間で明確な一線を引くべきではないのか。

 例えば今回の福岡地検の問題で、情報漏えいそのものについてが問われていますけれども、そもそも裁判官と検察官が事件に関してさしで会うということ自体が検察官として失格であり、それに応じてのこのこ出かけていく裁判官も裁判官として失格ではないのか。職務の公正を求められる両当事者としては、もちろん、例えば福岡で検事をやっている検察官と東京で裁判官をやっている裁判官が昔からの友達で、どこかで会いますという話ならともかくとして、同じ管内で仕事をしている検事と裁判官が個人的にさしで会うということ自体が問題だ、こんなふうには思いませんか、法務大臣。

高村国務大臣 具体的な事件について個人的にさしで会う、それは問題であろうか、こう思いますが、個人的、さしで会う場合、いろいろな場合が想定されますので、一概に、絶対に会っちゃいけないとか、どんな場合でも会っていいんだとか、そんなことはちょっとこの場で言い切れない、こういうふうに感じております。

枝野委員 そういうことに対しての服務規定みたいなものはないんですか。また、つくろうとは思いませんか。法務大臣、それから裁判所、双方にお尋ねします。

高村国務大臣 検事と判事の交際に関して、それを禁ずる服務規定上の規定はありません。

 検事と判事の交際については、基本的には私的交際のあり方の問題であり、一般に、職務の公正を疑わせることのないように慎重に対処すべきであると考えておりますが、検事に対して、判事との交際に関する一般的な禁止規定を設ける必要があるとは考えておりません。

金築最高裁判所長官代理者 裁判官の服務につきましては、裁判所法、それから裁判官弾劾法、官吏服務紀律等におきましていろいろな義務が規定されておりますが、こうした規定によるほか、個々の裁判官におきまして、これらの規定や国家公務員倫理法等の規定の趣旨、内容を尊重するなどして、みずから律することによって倫理を保持してきたところでございます。

 判事と検事がつき合う場合を特に取り上げた注意事項とか服務規定というのはございませんが、これまでも、研修等の機会を通じて、検察官、弁護士との関係につきましては、裁判の公正に対する信頼確保という観点から、裁判官相互でいろいろ意見を交換してきたところでございます。

 裁判官につきましては、その自由を制約するということについての問題もございまして、服務倫理保持についてほかから律するという他律的な手法をとることは必ずしも相当でない場合があるということも考えますと、御指摘のような規定をつくることはかえって問題が出てくるというふうなこともあろうかと思います。

 今後、この点につきましては、今申し上げましたような意見交換とか裁判官相互の討論、そういう機会をふやして、内容も充実させていくというふうなことが考えられるのではないかと思っております。

枝野委員 時間ですので終わりますが、どうも、その福岡の件でもう既に検察、裁判所、そして捜査というものに対する信頼が失われているんだという前提を皆さんお持ちではないような気がいたします。今、現時点で信頼されているんだという説明だけでは説明にならないということを改めて申し上げて、きょうのところは質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございます。

保利委員長 次に、木島日出夫君。

木島委員 日本共産党の木島日出夫です。

 福岡地検の次席検事が福岡高裁判事に捜査情報を漏えいした問題についてお聞きをいたします。

 この問題は、検察・法務の、そして裁判、司法の厳正、公正な執行と、それに加えて裁判の独立という日本の国家機構の根本が問われているゆゆしい事件だと私は思います。国民はこの事件をどう見ているか。やはり裁判所と法務省、検察庁がなれ合っているんじゃないか、かばい合いをしているんではないかと見ているんではないでしょうか。司法に対する国民の信頼が根底から問われる問題だと思います。

 まず、事実関係について最高裁にお尋ねをいたします。先ほどの答弁で、福岡地裁から捜索令状と添付の書類のコピーが高裁に報告されて上がったと答弁されました。確認しますが、時期はいつでしょうか。

金築最高裁判所長官代理者 最初に、昨年の十二月十三日に捜索・差し押さえ令状について、その請求書並びにコピーがされて、それが報告されたというふうに聞いております。あと、令状請求があったときにそういうことが行われたというふうに聞いております。

木島委員 報告された日は、警察、福岡西署から福岡地裁に捜索・差し押さえ令状が提出された日即日でしょうか、それとも一定の時期が置かれていたんでしょうか。

金築最高裁判所長官代理者 この件につきましては、現在、国家公務員法違反ということで告発がなされておりまして、捜査当局において捜査中というふうに承知しております。そういうことでございますので、具体的な事実関係については、現段階では答弁は差し控えさせていただきたいと存じます。

木島委員 こんな基本的な事実、答弁差し控える事案じゃないでしょう。ゆゆしい問題じゃないですか。

 では、聞きましょう。即日か否かだけ答えてください。

金築最高裁判所長官代理者 その点の答弁は差し控えさせていただきたいと存じます。

木島委員 そんなの関係ないじゃないですか。即日であろうと後日であろうと、国家公務員法違反に直接の関係ないじゃないですか。

 では、こういう聞き方をいたしましょう。福岡地裁から捜索・差し押さえ令状そして添付書類のコピーが福岡高裁に上がったのは、裁判所の中にある内部ルールに沿って上がったんでしょうか。それとも、裁判所にある内部ルールに反して勝手に福岡地裁のだれかが上げたんでしょうか。

金築最高裁判所長官代理者 内部ルールということがどういうものを指すのかということがございますが、裁判官の妻について令状請求があった、犯罪の容疑があるという事実がございまして、こういう点について、司法行政の部門でそういう事件をだれが担当することが支障があるのか、いろいろな問題が生じてまいりますので、そういうことを報告する必要が出てくる。そういう、いわば非常に大きな意味での、裁判部門を司法行政部門がサポートするという関係においては、大きなルールの中で行われたことだと考えますが、ただ、こういうことが、例えば令状請求がされたときにはこれを報告しなさい、そういう細かいと申しますか、具体的なルールに基づいて行われた、何かそういう規則があって、それに基づいて行われたということではございません。

木島委員 よくわからぬですね。大きなルールはある、しかし具体的なそういう規則はないと。

 そうすると、福岡地裁から福岡高裁に捜索・差し押さえ令状のコピーが上がったことは、ではだれがやったのですか。令状部の裁判官ですか、書記官ですか、事務官ですか、それとも福岡地裁の所長以下管理職ですか。

金築最高裁判所長官代理者 まことに申し上げにくいことでございますが、ただいま申し上げましたように、これは現在、捜査の対象になっているところでございます。そういった、だれがどういうことをしたかという具体的な事実関係については、答弁を差し控えるべきであろうと思っております。

木島委員 捜査と関係ないのですよ、司法行政のあり方について聞いているのです。これは裁判官の妻の被疑事件です。古川判事は何の罪もないのですね。なかったわけでしょう、令状が出たときには。妻に対する、脅迫ですか、差し押さえ・捜索令状でしょう。

 そういう令状請求が警察から地裁の令状部に出た。さっきの答弁は、これは裁判所としての大きなルールの中での高裁への報告なんだと。そうすると、裁判所としては、裁判所の令状部におる裁判官や書記官や事務官としては、裁判官にかかわる、裁判官の妻や身内の犯罪にかかわる令状請求が出たときには、大きなルールの中でその事実を高裁、最高裁に報告しなきゃならぬ、そういう訓練を日ごろ受けているということなんですか。

金築最高裁判所長官代理者 司法行政部門といいますのは、裁判が適正に行われるためにそれを支援する、サポートするという役目を負っているわけでございます。

 裁判官本人について、例えば一定の犯罪の嫌疑等が出てくるということになりますと、その裁判官が、その事件は当然でございますし、ほかの事件でございましても、裁判官として仕事を継続できるかどうかというふうな問題がどうしても生じてくるわけでございます。これは本人でございませんでも、妻という非常に近い関係にある、よく夫婦は一心同体というふうな言い方もいたしますけれども、非常に近い関係にあるわけでございますから、そういう点で、やはり同じように準じて見なければいけない場合というのは出てくるのじゃないだろうか。

 そういう意味で、裁判所職員は、裁判を公正にやるということについて影響が出てくるような事実があれば、それに適切に対処するために何かの措置を考えなければいかぬという立場があるわけでございまして、それに沿って行動したものと思います。

木島委員 それでは、これが裁判官の妻ではなくて、別居している実の子供の犯罪だったら報告しなければいかぬのですか、あるいは同居している父親だったらどうなんですか、あるいは兄弟だったらどうなんですか。そういう判断を、司法行政上の観点から、この場合は報告しろ、この場合は報告しなくていいんだ、そういうルールは現場の令状部の裁判官や書記官や事務官は知っておるのですか。知らなければ判断できないですね。

金築最高裁判所長官代理者 本件のような事態は、極めて異例の、今まで例を見ない事案でございます。ですから、こういう場合にどうすべきだという一般的なルールを、具体的なルールをあらかじめ決めているわけではございませんで、今までは裁判所職員の健全な判断に従ってやっておったと思います。

 その辺、今後、考えるべきことはあろうかと思いますけれども、それぞれ部署にある職員が今まで適切な判断をして、行動していたものと考えております。

木島委員 日本の憲法は司法権の独立を規定しています。その中の根幹の部分が裁判官の独立です。令状を担当する裁判官、令状を出すべきか否かは自分の判断で決める。地裁の所長以下上司から手を出すことはできません。ましてや、捜索・差し押さえ令状が出たときに、その令状を出すかどうかを、人事権を持っている最高裁、福岡高裁がちょっかいを出せるものでは断じてありません。

 その裁判官の独立というのは、憲法上の一番大事な、司法権独立のかぎですね。それを、差し押さえ・捜索令状が出た、自分で判断しなければならぬ、そういう事件について一々、司法行政上、福岡高裁や最高裁まで報告しなければいかぬかどうか。先ほど、大きなルールがあると言いましたね。個別的な通達等はないけれども、大きなルールがあると。そんなルールは、まさに裁判官の独立を根本から侵害するとんでもないルールじゃないですか。

金築最高裁判所長官代理者 今私がお答えしておるのは、裁判官の妻について令状の発付があった、これこれこういう事実についてあったということを裁判部門をサポートする役割の司法行政部門に伝えるという観点での問題でございます。そういう意味でのルールということを申し上げているわけです。

 裁判官が事件について判断する際に独立して行う、職権の独立、これは司法のまさに根幹でございまして、御指摘のとおりでございます。この点につきましては、まさに今委員がおっしゃいましたように、独立している。本件においては、令状を出すべきであるとか出すべきでないとか、そういうことが何か司法行政部門から指示がなされるとか、そういうふうな問題ではございませんので、その点を申し上げたいと存じます。

木島委員 先ほど来の答弁で、なぜ地裁から高裁へ令状請求のコピーが上がったか、裁判官の執務に重大な影響があるからだとおっしゃいました。これは裁判所の人事行政にかかわることだからだということだと思うのです。

 私はここに、ことしの二月二十一日の、本件に関する福岡弁護士会会長の声明を持ってきております。その声明の趣旨は、今、日本の最高裁は、全国の裁判官の個人にかかわるいろいろな情報を報告と称して集約しておる。

  裁判官や職員に関する情報は「報告」として最高裁判所に集約され、事務総局が一手に管理し、人事政策の資料として利用する強固なシステムが完成していることは周知のとおりである。そして職員による捜査書類のコピーは最高裁判所への正確な報告をするための資料づくりの一環としてなされたものである。

要するに、最高裁の裁判官に対する人事行政の一環としてそういう裁判官の身辺情報を全部上げさせているんだ、そういう情報に基づいて日本の最高裁は人事行政をやっておるんだ、司法権の独立、裁判官の独立の関係から、そういう最高裁が本件の調査をする資格はない、そういう厳しい指摘が福岡弁護士会の会長から出されているのです。どう思いますか。

金築最高裁判所長官代理者 福岡弁護士会の会長声明、私も拝見しましたが、そこで確認できることとして、コピーした捜査書類に記載された情報はすべて最高裁事務総局に集約管理されているとか、これらの情報について、制度的に最高裁報告事項として事務総局に報告することになっている事柄と思われるなどというふうな記載がございます。

 しかし、捜査情報を事務総局に報告するような制度はございませんし、本件では、コピーの存在というのは最高裁に報告されておりません。報告があったのは、令状発付の事実や被疑事実の概要でございます。

 最高裁といたしましては、裁判所の事務のあり方をめぐって生じました本件の問題につきましては、可能な限り事実関係を調査して、問題点を明らかにした上で必要な措置をとることが最高裁に課せられた責務であると考えております。

木島委員 余り説得力ある答弁とは聞こえません。

 こんな形で最高裁が全国の裁判官の身辺情報の報告を受けていたら、それこそ裁判官の独立など絵にかいたもちになってしまうのじゃないか。さっき、具体的な通達等はないと言いましたが、そんな大きなルールは、そんなものがあってはいかぬわけですから、やめていただきたいと思います。

 次に、検察庁、法務省の問題についてお聞きします。

 十二月二十八日、福岡地検の山下次席が古川高裁判事を呼んで妻の被疑事実を伝えた、弁護士まで紹介したと報道されております。とんでもない捜査情報の漏えいであり、私は、これは国家公務員法違反だけじゃなくて、場合によっては、証拠隠滅の教唆とか幇助にもなりかねない重大問題だと思います。

 山下次席は本年二月二日、釈明の記者会見をしておりますが、山下次席は、古川高裁判事を呼んで、あなたの妻がこういう事件で捜査されているよと伝えたその日に検事正と福岡高検に報告しているようです。事実ですか。なぜ報告したのでしょうか。検事正と福岡高検は、その報告を受けてどう動いたのでしょうか。

古田政府参考人 山下次席が御指摘の行為をした際に、そのときに、上司及び高等検察庁、これに、どういうふうな報告なり、あるいは指示を受けたのか、これらにつきましては、現在、山下前次席を初め関係者あるいはその他の資料等を十分調査をして進めているところでございます。現時点では、まだ確定的なことを申し上げられる段階には至っておりません。

木島委員 肝心なところは全く答えようとしない。

 山下次席検事は古川高裁判事の妻の被疑事件についての担当検事じゃありません。全然担当検事じゃないのですね。担当検事でない山下次席が何で高裁判事を呼んで捜査情報を伝えたのか。これはもう山下次席検事の個人プレーとはとても考えられないのですね、担当検事じゃないのだから。担当検事で、自分が扱っている事件の被疑者の夫が高裁の判事だ、これは大変だ、あの判事はよく知っておるということで、個人的な関係から高裁や検事正に話をし、ちょっと捜査を緩めようかというのは、これは情としてはあるかもしらぬ。しかし、担当検事じゃないのですね。しかも、間違いなく、これは新聞報道でもそうですが、古川高裁判事に事実を漏えいしたその日に検事正と福岡高検に報告しているのですからね。

 これはもう私は、だれが考えたって山下次席検事の行為は個人の勝手なプレーじゃなくて、福岡地検全体の意思、あるいは高検、地検全体の検察の意思として行われた行為ではないかと合理的に考えられるのですが、そうじゃないのですか。

古田政府参考人 まず、大変一般的なことを申し上げて恐縮ですけれども、検察庁におきまして、警察から、法律上あるいは事実認定上の問題があるような事件その他につきまして、相談を受けることがございます。その事件の内容等に応じまして、適宜検事正あるいは高検にもそういう相談があったということを報告するということはございます。これはあくまで一般論でございます。

 ところで、今お尋ねの件につきましては、先ほども申し上げましたとおり、この山下元次席のとった措置がどういう経緯で行われ、かつ、どういうふうにその後事後的に報告されて、その範囲はどういうものであったか、そういう点について、現在鋭意調査、それと捜査ということにもなるわけですけれども、それを進めている段階でございます。

木島委員 福岡の地裁から捜索・差し押さえ令状のコピーが高裁に上がったのが去年の十二月十三日、そして、朝日新聞がこの問題を報道したのがことしの二月二日。この間全くこの問題は表に出なかった。

 最高裁と法務省にお聞きします。

 何でこんな重大なゆゆしき事件が一カ月以上にわたって表に公開されなかったのでしょうか。簡単で結構ですから、答えてください。

金築最高裁判所長官代理者 この件は、まさに捜査情報を漏えいするかどうかという問題でございまして、捜査にかかわる情報を裁判所から公に発表するというふうなことはできない問題ではないかというふうに考えます。

古田政府参考人 先ほども申し上げましたとおり、この山下前次席のとった措置につきまして、これがどういうふうに検事正あるいは高検に報告され、その内容はどういうものであったか、そのとった措置の詳細を、だれが、いつ、どの時期に知ったか、こういう点につきましては、現段階では、先ほども申し上げたとおり、捜査及び調査中でございます。

 ただ、一般論として申し上げておきたいことがございますが、ある事件の捜査の過程で、捜査の必要性から捜査情報のある一部を告知するというふうなこと、これは時としてあるわけでございます。こういう性質の行為につきましては、これは当然のことながら公表すべき性格のものではないということも御理解いただきたいと思います。

木島委員 私は、今回起こっている問題は、事実関係を裁判所も法務省も国会へ今ほとんど報告、答弁しませんが、決して福岡地裁の令状部の関係裁判官、書記官などの個人プレーじゃない、検察にとっても、山下次席検事の個人プレーじゃないと思うのです。裁判所全体の組織的な思惑、検察庁全体の組織的な思惑、これが両方合って身内をかばった、そういう事件じゃないかと思わざるを得ません。徹底的に真相を解明して、一定の時期に国会と国民に報告をしていただきたいと要望をしておきたいと思います。

 私は、こういう問題が起きる背景には、やはり全体としての裁判所と法務省、検察庁との癒着、なれ合いがあるのじゃないかと思います。その一つの典型的な現象が、判事、検事の交流問題ではないかと思うのです。国民は、今回の事件の背景に、裁判所と法務・検察のなれ合い、癒着があると見ています。司法に対する国民の信頼を回復する上でも、また、司法の大事な独立、裁判官の独立を守り、国民のための司法を確立する上からも、癒着はなくさなければならぬと思います。そういう立場から、判事、検事の交流はやはりやめるべきではないかと思います。

 そこで、数字だけ答弁を願います。

 まず第一に、一九八九年、平成元年以来今日までの、裁判所から法務省への人事の異動、逆に法務省から裁判所への人事の異動、人数をずっと手短に報告願います。

金築最高裁判所長官代理者 お答えを申し上げます。

 一九八九年、平成元年でございますが、裁判所から法務省へ二十四人参りまして、法務省から裁判所に二十四人参りまして、合計四十八人でございます。同じように、一九九〇年、三十一人と二十四人、合計五十五人。九一年、平成三年が二十七人と二十八人で五十五人。平成四年が三十三人と二十九人で六十二人。平成五年が三十五人と三十三人で六十八人。六年が三十五人と二十六人で六十一人。七年が三十六人と三十一人で六十七人。八年が三十三人と三十人で六十三人。九年が四十二人と三十七人で七十九人。平成十年が、法務省へ行きましたのが三十八人で、法務省から戻りましたのが二十九人で、六十七人。十一年が四十二人と三十九人で八十一人。平成十二年は両方とも三十三人で合計六十六人、こうなっております。

木島委員 おびただしい数の人間が裁判所から法務省、法務省から裁判所へ行っています。

 そこで次に、二〇〇一年、本年一月三十一日現在で結構ですが、裁判所から法務省各部門へ異動したのは具体的にどの部門に何人か、法務省以外の官庁へ何人行っているのか、その現在数を教えてください。

金築最高裁判所長官代理者 現在出向中の裁判官の数でございますが、法務省が、大臣官房が七人、訟務部門が十人、司法法制部が四人、民事局二十五人、刑事局四人、人権擁護局四人、法務総合研究所三人、地方法務局が四十人、合計九十七人ということでございます。

 ほかの省庁でございますが、合計三十一人でございます。内閣法制局二人、司法制度改革審議会一人、公害等調整委員会二人、公正取引委員会一人、証券取引等監視委員会一人、外務省一人、財務省ないしは国税不服審判所で六人、それから、いわゆる行政官への出向研修という関係のものが、検事の身分で行っておりますが十七人、合計で三十一人ということでございます。

木島委員 ありがとうございました。

 最後に一点。現在裁判官でありながら法務省なり他省庁なりに行っている人たちのふるい分けは聞きました。では、その行った先で、訟務局、地方法務局の訟務部、要するに、法務大臣が被告、国が被告の事件で国の代理人として行動する、そういう訟務関係の仕事をしている人は何人いるのでしょうか。

金築最高裁判所長官代理者 五十二人でございます。

木島委員 裁判官、裁判は厳正中立でなきゃなりません。国を当事者とする事件、国家賠償請求事件や行政事件、全部そうです。これは、原告は大体民間、国民です。被告は国です。税務訴訟もそうです。その中立でなきゃならない裁判官が法務省へ出向する、そして法務省の中では訟務部門に五十二人も行っている。国の代理人になるわけです。それがもう一回大体裁判所へ戻ってくるんですよ。そうしたらどうなるでしょうか。行政事件については民間と国との争いについて中立の立場に立たなきゃならぬ裁判官が、実際は法務省の訟務部門で働いてきた、そんな経験をしっかり持って戻ってきたら、やはり気持ちは国の方に傾くのは当たり前じゃないでしょうか。

 だから、今この問題が、国を被告とする行政事件の国民の勝率が非常に低い、ほとんど国相手の裁判勝てない、税務訴訟ほとんど勝てない、水害の事件の国賠ほとんど勝てない、そこにやはり原因の一つがあるんじゃないか。そういう判事、検事の交流、これが、大きくは裁判所と検察・法務との癒着を生み出している、強固に生み出している。こういうなれ合い、癒着の体質の中から今回の福岡の事件が起きてきているんじゃないかと思わざるを得ません。

 こういう癒着をつくり出す判事、検事交流はきっぱりとやめるべきだと考えますが、法務大臣の御所見と最高裁の御所見を最後に伺って、私の質問を終わりにしたいと思います。

高村国務大臣 法曹というのは、裁判官、検察官、弁護士のいずれの立場におかれても、その立場に応じて職責を全うすることができるとの理念に立脚しているものと承知しております。人事交流によって、行政に関する知識を磨き、法曹としての素養を深めることはあっても、裁判官と検事との癒着の温床となっているというようなことはないものと信じております。

 さはさりながら、現在の交流の実態でありますが、判事から検事に偏しているという問題があると私も思っております。この点については、現在、司法制度改革審議会においても法曹相互交流のあり方について議論していると承知しており、将来に向けていかなるあり方がいいのか、審議会における審議を踏まえて検討してまいりたいと思っております。

金築最高裁判所長官代理者 法曹というものは、どういう立場に立ってもその立場でベストを尽くす、裁判官になった場合は公正中立の立場でやるということにつきましては法務大臣からも御答弁があったところでございますが、特に、裁判所として今問題になっておりますのは裁判官のあり方で、裁判官が裁判以外の仕事を経験するということが非常に必要だということが言われておりまして、弁護士事務所に派遣するようなことも検討中でございます。

 今回の事件を契機に、裁判所も襟を正すべきところは十分襟を正すということが必要でございますけれども、裁判官が他へ行って裁判以外の仕事をするということの意義については御理解を賜りたいと存じます。

木島委員 時間が来たから終わります。

保利委員長 次に、野田佳彦君。

野田(佳)委員 民主党の野田佳彦でございます。

 ずっと法曹出身の方の厳しい質疑が続いておりましたけれども、私は法曹出身ではありません。むしろ素朴な疑問というものを中心に質問をさせていただきたいというふうに思います。

 福岡の問題については、先ほど枝野議員もたくさん取り上げました。多くは触れませんけれども、まず意見として申し上げたいのですが、教科書的に言うならば、日本は確かに三権分立の国であって、立法権と行政権と司法権とある。残念ながら、この三権それぞれが全部今不信の目で見られているという大変惨たんたる状況になっているというふうに思っています。

 立法権については、もう言うまでもなくKSDの問題があって、昨日も、この法務の委員の多くの先生方が関係をしている政倫審が開かれました。まだまだ疑惑解明は遠いというふうに思っていますけれども、大体百数十人もの国会議員が何らかの形で資金提供を受けていたということは、まさにこれは構造的な政界工作であったろう。それを含めてまさに今は立法不信だと思っております。

 もう一つは、これは外務省機密費の問題であって、あれだけ長い間公金を私的に流用している。アケミボタンだとかアケミ何とかとか随分あんなに競走馬も買って、しかも、それを調べている外務省の官房長やらあるいは会計課長やら総務課長やら、みんな病気で倒れてしまう。何ということか、こんなひ弱な外交官たちが日本の外交を担っていたのかと思うと、これまた私は行政不信だと思っています。

 そして、最後のとりでだと思っていた司法権も、先ほど来議論となっています福岡の問題が持ち上がりました。この詳細についてはもう先ほどいろいろな議論がありましたけれども、国民から見れば、こういう検事が仮にいるとするならば、こういう人たちに捜査の指揮をしてほしくないなとだれもが思うと思います。また、身内であるとか妻が仮に罪を犯したり容疑を受けられたときにそれをかばおうとする判事がいるとするならば、その人に裁いてほしくないなと思います。

 そういう極めて根底からの不信が今司法に浴びせられているということを強くやはり私どもは自覚をしなければいけないというふうに思うんです。

 その中で、先ほど随分と細かな疑問にもお答えをされていましたけれども、この本質的な国民の不信をいかに払拭するかという視点で、改めて、法務大臣の御決意、今回の捜査情報漏えい問題についての基本姿勢というものをお尋ねしたいと思います。

高村国務大臣 検察を所管する法務大臣として、今回の件によって、仮にも法曹関係者の間で特別な関係による不公平な扱いがあるとの疑いを国民に抱かせるようなことがあれば、長年にわたって司法が積み上げてきた信頼が損なわれかねないものと深く憂慮しております。

 今回の件につきましては、現在、最高検察庁において厳正な調査及び捜査を行っているところでありますので、それらの結果を踏まえて所要の措置をとってまいりたいと考えております。

 今、信頼が損なわれかねない、こう申し上げましたが、もう信頼を損なっているので、この損なっている信頼をまた取り戻すような調査結果を出して、そして、それを踏まえて信頼を回復するような措置をとってまいりたい、こういうふうに考えております。

野田(佳)委員 今の基本的な姿勢については理解をします。具体的にそういう結果をぜひ出していただきたいというふうに思います。

 その中で、先ほども、判事と検事との私的な交際についてももっと節度を持ってやるべきだというお話が出ていましたけれども、ちょうど先番の木島委員からも出ていました判検交流という組織と組織の人事交流についても、私はやはりもうちょっと慎重にすべきだろうというふうに思います。

 先ほど細かな数字が出ていましたけれども、趨勢としてはやはりこれはふえているんですよね。例えば平成三年だと、裁判所から法務省へ二十七人、法務省から裁判所へ二十八人、合わせて五十五人です。それが平成十一年だと七十一人、平成十二年は六十六人ですけれども、大体傾向的にはふえているように思います。

 私は、もちろん裁判官でもいろいろなポジションになって広い視野から物事が判断できるようにという一般論はわかりますけれども、当たるべき部門といいますか、振り分けられるポジションについてはもっと慎重にすべきであるし、決してふやしていくべきものではないというふうに思っています。

 この判検交流のあり方について、まずは法務大臣、どのようにお考えでしょうか。

    〔委員長退席、奥谷委員長代理着席〕

高村国務大臣 法務省の所掌事務の中には、司法制度に関する法令、民事及び刑事の基本法令の立案等の事務、訟務事件の遂行等、法律的知識経験を有する事務があり、また、官房におきましては、これらの法律的事務を中心とした法務省所管行政の総合調整に関する事項及び本省並びにその所管各庁の内部組織に関する事項等をつかさどっております。

 これらの事務を適正に行うために、法律に精通し、訴訟手続等の専門家である裁判官の実務経験を有する者の中から任用することは、それなりの理由があるものと考えているわけであります。

 先ほどもお答えいたしましたが、そもそも法曹は、裁判官、検察官、弁護士のいずれの立場に置かれても、その立場に応じて職責を全うすることができるとの理念に立脚しているものと承知しており、このような人事交流により、行政に関する知識を磨き、法曹としての素養を深めることはあっても、裁判官と検事の癒着の温床となっていることはないものと信じているわけであります。

 しかしながら、現在の交流の実態は、判事から検事に偏しているという問題があります。この点については、現在、司法制度改革審議会においても法曹相互交流のあり方について議論していると承知しており、将来に向けていかなるあり方がいいのか、審議会における審議を踏まえて検討してまいりたいと思います。

 先ほど、最高裁の方から弁護士事務所にも出すんだとかそういうお話もありましたが、裁判官が専門的知識のほかにいろいろな幅広い常識を備えた人であってほしいというのは国民みんなの願いだと思っておりまして、裁判所の方からいっても、裁判官がいろいろなところへ出て研修するというのはそれなりの理由があることだと私は思っています。

 ただ、先ほど言いましたように、判検というところに集中していてそのほかが少ない、その比率に大いに問題があるといえばある、そういうことではないか。私見でありますが、そういう考えを持っております。

野田(佳)委員 おっしゃるとおり、これは必ずしも判検がすべて悪いというわけではなくて、そのやり方、交流の仕方というのは多分あるだろうと思うんですけれども、それも含めて司法制度審議会で議論をされていると思うんです。

 たまたまこの福岡の事件ではありませんが、検事と判事との間に身内意識がやはりあるのかなと。法曹界というやはり独特の、身を置いたことがないのでよくわかりませんが、一種のギルド社会的な、特権階級的なものがあってそういう発想になるんだろうと思います。それを助長するような仕組みが仮にあったとするならば、それは相当に慎重に改善をしなければいけないというのが私の基本認識であります。

 その意味では、司法制度改革審議会で今回のこの福岡の問題についてコメントをされた委員がたった一人だけらしいんですね。司法制度改革審議会も大丈夫かなと、率直に言って私は思っています。もっと国民の立場で司法を変えようとするならば、こういう法曹界のギルド体質にメスを入れるのも司法改革なんですけれども、その議論が余り十分されていないとするならばちょっと心配だなと思いますが、これは質問ではありません、意見であります。

 次に私がお尋ねをしたいのは、一票の格差を合憲とする最高裁の判断についてなんですね。たまたま今、福岡の問題で国民の間に司法権に対する不信が出てきていると申し上げましたけれども、私は、個人的にはもっと前から司法、特に最高裁に対しては不信感というものがあります。

 というのは、私自身の体験からちょっと申し上げたいと思いますけれども、さきの、去年の六月の衆議院の選挙では何とか当選をしてこの場にいることができるわけですが、その前の平成八年の衆議院選挙では全国一の僅差の百五票差で破れてしまいました。残念ながら重複立候補していませんでしたけれども、重複をしていたらば惜敗率が九九・八六%なんですね。ほぼ九九・九%です。途中までの完全有効投票では二百十票リードしていました。疑問票の判定作業という、有効か無効かよくわからない票の点検作業で最後に百五票の逆転負けという、本当に一票というのは重たいなということを痛感した経験がございます。

    〔奥谷委員長代理退席、委員長着席〕

 実際にこれは裁判をいたしまして、選挙管理委員会を被告に訴えもしまして票の点検作業の途中までやったことがあるんですけれども、それを見ると、本当に思いを込めた票もあるし、本当によくわからない字で書いてある投票用紙もある。でも、私は、間違いなくそれぞれが時間をつくって苦労して投票所に行っていただいたとうとい票ばかりだと思います。そのとうとい思いとか夢とか希望を託した一票一票は、それに差があるはずは私は基本的にはないと思っています。それは、都市に住んでいようが田舎に住んでいようがやはり一票は一票で、この価値は基本的にはやはり同じにしなければならないと思います。

 その意味では、昨年の九月だったと思いますけれども、九八年の参議院選挙に対する一票の格差についての訴訟がありました。そして最高裁は、一票の格差が四・九八倍になっている状況を合憲としました。ちなみに、私の住んでいる千葉県は定数四です。有権者四百六十万四千六百七十七人、議員一人当たり百十五万一千人です。一番少ない鳥取県は定数二。有権者四十八万一千四百三十三人、議員一人当たりにすると有権者数が二十四万七千人です。百十五万一千人の千葉県民と二十四万人の鳥取県民の比率が同じである、価値が同じである、四・九八人の千葉県民と一人の鳥取県民の価値が同じである、これはだれが聞いてもおかしいと思うんです。中学生に聞いたってそれはおかしいと思うわけです。そういうような判例を、これまで数回にわたって衆議院でも参議院でも行われてまいりました。

 最高裁の判事になるということは、裁判所法にもあるように、それは識見もあって法的素養もあって四十歳以上のと、いろいろ条件があるはず、そういう立派な人たちが集まっているはずなのに、中学生でもおかしいと思うような判断を何回もやってきているということは、私は基本的には、司法はそういう意味からも不信が生まれてくるだろうと思っています。

 こういう状況を、一票の格差についてのこれまでのいろいろな判例がありますけれども、大臣はどのように見ていらっしゃいますでしょうか。

高村国務大臣 最高裁平成十二年九月六日大法廷判決は、最大格差一対四・九八であった平成十年七月十二日施行の参議院議員選挙について、公職選挙法に定められた定数配分規定は違憲とは言えないと判断したわけでありますが、この判決は、投票価値の平等は唯一絶対の基準ではなく、国会の合理的裁量にゆだねられた選挙制度の仕組みのもとで、右の投票価値の不平等が到底看過することができないと認められる程度に達しているとは言えないとしたものであって、これまでの一連の最高裁大法廷判決の判断枠組みに立ったものであります。

 私としては、これが、法律の憲法適合性について最終的な判断権を持つ最高裁の判断であると理解しており、これ以上申し上げることは差し控えたいと思います。

野田(佳)委員 高村大臣は拳法の達人ですよね、たしか。ちょっと違う、拳法の方だと思いますが、少林寺拳法だったですかね。だから日本国憲法については余りコメントされないかもしれませんけれども、今、慎重な言葉を使われました。だけれども、明らかにこういう司法の判断が国民と遊離しているという現実は間違いなくあるということについては、ぜひ御理解をいただきたいと思います。

 立法の裁量だから国会に遠慮をして判断を控えるということもこれまで随分ありましたけれども、行政についてもそうですね。違憲立法審査権という伝家の宝刀があるけれども、ほとんどこれは抜かずの宝刀になっているか、竹光ぐらいにしか使えなかったりということで、チェック・アンド・バランスという三権分立の中で、私は、司法が随分縮こまっている存在になってしまっているように思えてなりません。これは印象論で言っております。

 個々の、過去のさまざまな判断については、それぞれそれなりの評価があったり、その正否は最高裁もいろいろお持ちだと思いますけれども、そういう印象を国民が強く持っているということについては、最高裁はどのようにお考えでしょうか。

千葉最高裁判所長官代理者 事務当局といたしましては、具体的事件の当否にわたることをお答えする立場にはございませんけれども、一般的に申し上げますと、違憲立法審査権というのは、国民の憲法上の権利を保障し、また憲法規範を保障するために裁判所に負託された重要な権能であるということでございます。したがいまして、最高裁判所はもちろんのこと、我が国の裁判所は、一つ一つの事件の解決のためにその行使が必要な場合には、ちゅうちょすることなくこれを行使しているものというふうに考えているところでございます。

 結果的に、合憲、違憲という判断は、それは事案次第というふうに考えております。

野田(佳)委員 私は、最高裁の裁判官の選任のあり方であるとか、あるいは国民審査のあり方だとか、そういうところを含めて、最高裁の改革というのが司法改革の大きな目玉にならなければならないだろうというふうに認識をしています。まだ司法制度審議会の中間の答申の中では余り具体的に目に見えてきてはおりませんけれども、私は、その最終意見がまとめられる段階までには、こういう最高裁のあり方について、やはりもっと踏み込んだ議論をし、それなりの結論を出すべきだろうというふうに思っています。

 まず、最高裁判所の裁判官の選任なんですけれども、これは基本的には内閣が任命をする、指名をするということになっていますけれども、過程が随分不透明だと私は思っております。十五人の最高裁の裁判官が、大体過半数が行政官になる傾向が強いと思います。元判事だったとか、あるいは法務省出身であったりとか、あるいは検事であったりとかという方がやはりやや多目に設定をされる。最近では、今十人ぐらいがそういう傾向なんじゃないでしょうか。弁護士の方も含めると、ほとんど法曹界出身ですね。

 法的素養のある人だったら、私は、別に法曹界だけじゃなくて、民間の方がもっともっと選ばれてもいいだろうというふうに思いますし、トップである長官だって、別に日銀の総裁だって日銀のプロパーではないわけでありますから、最高裁の長官だって民間から選ばれてもいいと思うのですが、その辺の選任が、残念ながら随分かたく官寄りに選ばれる傾向が強いと思います。この今の選任手続について、ちょっと最高裁から御説明をいただきたいと思います。

金築最高裁判所長官代理者 長官も含めまして最高裁判事の方は任命でございまして、長官はまた別の言葉になっておりますが、いずれにいたしましても、これは内閣の専権に属しております。閣議でこの任命、指名が行われるということでございます。この点が、下級審、下級裁判所の裁判官任命の場合、これは最高裁の指名した名簿でするということになっておりますが、その点と違うわけでございます。

 そういうことでございますので、どういう人を任命するかというふうなことについて、最高裁の方でいろいろ申し上げるという立場にはないと考えておりますが、ただ、最高裁判事の任命に際しましては、最高裁長官が長官としての立場で内閣総理大臣に対して意見を述べるというのが慣例になっているということがございます。これは、長官が、各小法廷の構成など裁判所の運営に一番詳しい立場にあるというふうなこととか、最高裁の裁判官の選任という事柄の性質上、司法部の長の意見を聞くのが望ましいということでこういう慣例ができている、こういうふうに承知しております。

野田(佳)委員 手続的にはそうでしょうけれども、内閣がリーダーシップを振るって選んでいるという形跡、傾向は多分ないだろうと思いまして、恐らく最高裁の人事担当部門からボトムアップで出てきたりとか、あるいは一定の枠組みの中で、日弁連だったら日弁連の枠で選んでくるとかという過程で、極めて不透明で閉ざされたルートだと私は思っています。その意味では、もっと国民的基盤を置く選任の方法というものをやはり模索しなければいけないのではないかなという気がしてなりません。

 次に、最高裁の国民審査の件でありますけれども、大体、最高裁の裁判官の平均年齢は恐らく六十代の前半ぐらいだろうと思います。

 それで、国民審査というと、総選挙のときに、選任をされていた裁判官を審査する、あるいは、それから十年たったときにこういう国民審査をするという仕組みでありますけれども、大体六十代前半の人が十年たつともう七十を超えてしまっている。場合によってはお亡くなりになっているということもあるだろう。私は、極めて形骸化をしているシステムだろうと思っておりますし、実際にこれによって信任をされなかったケースはありませんでしたというぐらいに、実質的に審査に値をしないものになっているだろうというふうに私は思います。

 実際に私自身も、自分が投票所に行ってこの国民審査のペーパーを見て、どなたがどういう人か全くわからないまま、うかつにバツもつけられないなと思ってしまって、無記名で、結局は何もしないで入れる。結局、それが信任されたということになっている。これはもう本当に何かおかしいなと思っております。

 バツをつけなければ信任というやり方もおかしいし、大体それまでにどういう実績を持っている、どういう訴訟にかかわってきている裁判官なのかも、だれも知らないまま判断せよということに非常に無理があると思うのですが、実際、最高裁の裁判官の国民審査を高村法務大臣も何度も経験をされてきたと思いますが、どういう印象を持っていますか。

高村国務大臣 最高裁判所裁判官の国民審査の制度につきましては、国民が既に任命された裁判官を罷免すべきか否かを決定する一種の解職の制度でありまして、最高裁判所の裁判官にふさわしくない裁判官が任命された場合に、国民の投票により解職できるという司法の民主的基盤を明確にする制度であると理解をしています。過去の国民審査において、裁判官が罷免された例は存しませんけれども、それは、これまで任命権が適切に行使された結果、任命された裁判官について、ふさわしくないとまで判断されることがなかったということであろうと考えております。

 任命が国民の信任によって完成するという制度ではなくて、どうしようもないのを解職するという制度でありまして、国民みんなが、こんなやつにやっていてもらっちゃ困るよという場合に初めて機能する、そういうものを、ふだん機能しなくても、いざという場合に機能するものを持っておくということは必要なことであろうか、私はこういうふうに思っております。

野田(佳)委員 どうしようもない人かどうかすらわからないですから、だから、信任になっているかどうかということは、やはりそれは実質的な話ではないだろうと私は思っています。法の世界においてどうしようもないという判断がある、裁判所の世界の中においてそういう判断があっても、それは国民の中には伝わってこない、ほとんど知らないケースでありますから、それだとするならば、やはりこれはただの紙のむだにしかならない。何かあった場合にとっておく制度というそのお話もわからないわけではありませんけれども、私は、もう少し実質的な審査にすべき点があるんではないかなというふうに思っております。

 その意味では、そもそも、情報公開であるとかいろいろなことが前提になりますけれども、そうでないんだったら、自分たちが判断材料はないということで棄権ができる仕組みであるとか、やはり何らかの実質的な方法があるのではないかなと思います。

 次に、裁判所並びに法務省の人的な体制の充実の問題について触れたいというふうに思います。

 裁判所の裁判官が少ないからなかなかスピーディーに裁判ができないという話は、もう先ほども出ていましたし、よく聞く話であり、大体一人で二百件も三百件も訴訟を抱えているということ自体が、これはやはり尋常ではない姿だというふうに思いますし、大体、時は金なりという時代において、スピードが要求をされているときにおいて時間のロスというか遅いということは、私はそれだけ正義から遠くなるという認識をしています。その意味では、法曹全体の人口の拡充は必要でありますけれども、とりわけ、やはり裁判官はもっともっとふやすべきだろうと思います。

 今回、裁判所の職員定員法の一部改正法案が出ていて、三十人ほど増員をするというふうに出ていますけれども、私は、まだまだこんなのでは遠慮深いのではないかなと。司法制度改革の中でも議論をされているところでありますけれども、私は、このことについては国民の理解は得られるだろうと思っております。同様に、検事についてももう少しふやしていくことを予算措置をしていっても構わないのではないかと思いますが、この点について、それぞれ大臣と最高裁のお考えをお聞きしたいと思います。

高村国務大臣 裁判官の件は裁判所からお答えになると思いますが、裁判の長期化ということは、これは本当にゆゆしき問題だと思っております。それでも、最近、みんな努力して少しずつ短くはなっているんですけれども、まだまだ全体的に長い。裁判の遅延は裁判の拒否に等しい、こういうことも言われるわけであります。

 検察当局は従来から、刑事訴訟法の規定等に基づいて、あらかじめ事件の争点を整理し的確な立証に努めるとともに、裁判所及び弁護人と協力しつつ、公判審理の迅速化に努めているところであります。

 しかしながら、最近は、国民が注目する特異、重大な事件について、第一審の審理だけでも相当の長期間を要することが珍しくない状況にあり、法務省としては、検察が捜査処理を適正に行うだけでなく、公判審理を迅速に終結させて適正な科刑の実現することをも可能とするため、平成八年度から検事増員を行うなどの方策を講じておりますが、今後とも、必要とされる人員の確保を通じて検察体制の一層の強化を図りたいと考えております。

 なお、内閣に設置された司法制度改革審議会の中間報告において、検察官の大幅な増員を実現することが不可欠とされている上、司法制度改革審議会設置法案に対する参議院法務委員会附帯決議においては、調査審議と並行して検察官の増加を図ることとされており、これらを踏まえ、平成十三年度予算案において、検事三十名の増員を盛り込んでいるところでございます。

 これも控え目過ぎると言われるかもしれませんが、これからも国民の期待にこたえられる裁判が迅速に行われるだけの人員を確保するために努力してまいる所存でございます。

金築最高裁判所長官代理者 裁判所の人的体制の充実についてお答えいたしますが、昨今の社会経済情勢を反映いたしまして、法的紛争の解決を裁判手続に求めたいという国民の司法に対するニーズが増大しておりますし、また、裁判所に提起される事件も複雑困難化してきております。こういう傾向は、今後ますます強まっていくんじゃないかというふうに予想をしております。

 裁判所といたしましては、この通常国会におきましても、判事三十人の増員を含む裁判所職員定員法の改正をお願いしているところでございますが、今後も、司法制度改革審議会における審議結果なども踏まえまして、必要な人的、物的体制の整備に努めてまいりたいと考えております。

野田(佳)委員 司法関係予算に触れたかったんですが、時間が来ましたので終わります。

 ありがとうございました。

保利委員長 次に、西村眞悟君。

西村委員 西村です。

 今、野田さんが、立法、司法、行政、すべてにわたって元気がないということをおっしゃって、最高裁の問題にかなり時間をとられておりました。それで啓発されて言うわけではありませんが、私は、近年における最高裁の最大の不祥事は、玉ぐし訴訟のときに、判決文を事前に漏らした者が最高裁の中におるということでありました。一定の政治的目的を持った運動体とつながっている者が最高裁の中におる、そういう疑念を著しく私に抱かせた漏えい事件でございました。この問題を克服しているかどうかということが私の関心事であります。

 さて、これは質問ではございません。本日の質問は、今進行しておるいろいろな不祥事、これは何のために克服しなければならないのか。我々は、この不祥事を放置しておれば、行政における使命感を持った人材が腐っていく、ひいては行政組織が崩壊していく、そのことを防ぐために不祥事というものは克服しなければならないんだと思っております。

 よく民活と言われますが、民の世界は自由な領域で、余り我々がとやかく言うべき領域ではないのでございまして、我々が関心を持たねばならない領域は、官活、行政組織の活性化、使命感を持って仕事をする人が行政組織に伸び伸びと生活し、その仕事を全うできる体制、これが非常に重要だ、このように思うわけでございます。

 ところで、法務委員会でございますから、主に治安維持について、警備局長から事実及び実態の御説明を聞きながら、法務大臣の御所見を伺いたいという形で御質問させていただきます。

 昨年来の警察官不祥事の報道がなされまして、懲戒処分者は五百四十六名と報道されております。これは、一昨年より百九十名増加しております。この中で、これが角を矯めて牛を殺すという結果を招来しているのではないか、こういう危惧を私は持っているわけでございます。

 なぜなら、犯罪の検挙率がこれと並行して低下していっておるのではないか。例えば、カネ、カネという片言の日本語をしゃべりながら強盗が多発しておることを報道されておりますが、杳としてその犯人は捕まらない。数年ほど前に、新幹線の犬くぎが抜かれるという、プロでしかなし得ないことが起こって、その犯人が杳として捕まらない。また、送電線の鉄塔が倒されるという、これもまたプロが何かの威嚇を、サインを行っているとしか見えないような犯罪が起こって、これもわからない。政治的意図がこれらにはあるのだと思いますけれども。また、政治的意図はなくても、スーパーにおける女子高生のアルバイト数名を含む女子が一発のもとに射殺されておるのに、この犯人像も手がかりがない等々、数え上げれば切りがないわけでございます。犯罪の検挙の能力が低下している、これはシステムに問題があるのではないか、こういう問題意識を持っておりますので、二つだけ例を挙げてお聞きします。

 今申し上げたように、我が国の秘密性を持った集団が、犯罪を物ともせずに、何らかの目的を持って活動している。ここでひとつ革マルという集団のことについて取り上げますと、JRは完全民営化するという中で、警備局長のさきの答弁でも、革マルが主にJR東日本に非常な浸透を行っている。どういう実態なのか、どういう犯罪が認知されているのか、そして検挙されている者、また捜査対象になっている者は何人ほどなのか、こういうことはぜひここでお聞かせいただきたいことでございます。

 なぜなら、白河におけるJRの研修センターが無秩序状態で、泥酔の果てかどうかはわかりませんが、死亡者まで出ておる。しかし、それを事情聴取に行った警察官を五、六十名の者が取り囲んで、事情聴取も受けさせない。まるでJRが一つの治外法権的な集団であるというふうに錯覚している。これが公共輸送機関に対するヘゲモニーを握るとするならば、これはゆゆしき社会不安の原因になるであろう、このように思うからでございます。

 警備局長に、JR東日本における革マルの浸透状況、そして現状等々について、公開され得る範囲で実態を詳しく御説明いただきたいと存じます。

金重政府参考人 お答えさせていただきます。

 警察は、その責務といたしまして、極左暴力集団の革マルと言われておるものに関する情報を収集、分析いたしております。同時に、各種事件の捜査活動というのも行っておるわけでございます。

 この革マル派でございますけれども、昭和五十年代の初めまでは、対立しております中核派あるいは革労協との間で、殺人を含みます数多くの内ゲバ事件を引き起こしておりましたが、その後、組織拡大に重点を置きまして、党派性を隠しまして、基幹産業の労組等、各界各層への浸透を図るというようなことをやっております。先生も御指摘されておりました秘密性といいますか非公然性の極めて強い組織でございます。

 警察といたしましては、平成八年以降でございますが、この革マル派の非公然アジトというものを十カ所摘発いたしまして、そのアジトから押収した資料の分析によりまして革マル派が違法行為を行っておるというようなことが判明しまして、その事件捜査を進めたわけでございます。

 その結果といたしまして、JR関連の事件といたしましては、平成八年八月に盗聴器を設置する目的で国労執行委員宅に侵入した事件だとか、あるいは、平成八年十一月に資料を入手する目的でJR連合傘下のJR西労組委員長宅に侵入した事件であるとか、平成九年五月に内部資料等を入手する目的で国労執行委員宅に侵入した事件などを解明、検挙いたしたわけであります。と同時に、このJR総連、JR東労組内における革マル派組織の実態についても解明を進めてきたところでございます。これまでのこうした警察活動を通じまして、警察としましては、JR総連、JR東労組に対して革マル派が相当浸透しているというふうに見ておるところでございます。

 私ども、引き続き極左暴力集団革マル派に係る情報収集活動を積極的に推進する一方、非公然アジトの摘発などを通じまして、各種違法行為の摘発、検挙に努めてまいる所存でございます。

西村委員 この周辺、警察が認知した以外に、また私の友人はJR労組の幹部でしたのですけれども、かなり尾行される、そして転居をして、明くる日になれば、だれにも言わない転居なのに郵便ポストにはもうアジビラが入っておるということを私も聞いたことがございます。こういうふうな今の実態の御説明を聞いて何を連想するかといったら、私は三池争議を連想します。

 つい最近、三池争議のことをまた学び直しまして、本も読みました。圧倒的多数の労使協調の穏健派の中に、少数の団結した政治的目的を持った者が入って、全体としての三池争議を引っ張っていく。これはどういう構造で起こったのかといえば、今局長が、対立労組の委員長宅、執行委員宅に盗聴器を仕掛けたり侵入したと、これと同じことをやるわけですね。だから、穏健派の執行委員の、職場における論争ではなくて、帰宅して寝るところに、炭鉱住宅に少数派が押し寄せていく。奥さんはノイローゼになる、そして買い物もできなくなる。そして御主人の方は、長いものには巻かれろだ、あいつらとやれば家庭まで押し寄せられるといって、労組の方針はどうでもいいということになっていくわけです。そして、タンチョウヅルのように、本体は穏健正常なのに、頭のてっぺんだけが何か司令塔のようになって全体として引っ張っていく。こういうことが戦略としてこの過激派にあって、基幹産業の労組に浸透していくというならば、将来、これを放置すれば巨大な騒乱状態、混乱状態を惹起されかねないと思います。

 つまり、山手線がときどきとまったり、いろいろなことをします。先ほども言いましたように、新幹線の犬くぎをわからない局所で抜く。これは何なのか。こういう問題が放置されたままで我々は生活している。政治の世界として、また大臣の立場として、これは放置したらだめだ、JRが完全民営化するというふうな方針は運輸省時代からあるけれども、治安維持の観点から、完全民営化という無菌状態の中でするのではないのだ、その前に克服しなければならない労使間の問題、そしてその中に浸透する過激派の一掃という問題があるのだと私は思っているわけでございます。

 この問題も含めて、次にもう一問、局長に実態を御説明いただいた上で、大臣の所見をお伺いしたいと思います。

 さて、現在北朝鮮に拉致された横田めぐみさんの御両親を初め、拉致された人たちの家族がアメリカに行っておりまして、同盟国アメリカの新しいブッシュ政権の閣僚に拉致問題を知っていただきたいという行動をされております。我が国の外務大臣は、所信表明の演説で拉致問題の解決にも触れないわけでございます。我が国の外務大臣は、米五十万トンは渡すけれども、拉致の解決についていかなる決意を持っておるのか所信でもあらわさない状態である。こういう中で行かれておるわけですね。

 では、なぜ拉致されたのか。二十年もわからなかった。警察の御努力については、私は敬意を表します。外務省はいつも外交的配慮でそのことを抑えようとしておったけれども、李恩恵の問題に関しては、警察は発表したわけでございます。そして、日本政府自身が、十名でしたか、十一名が拉致されていると公式に認めるに至ったのは、これは警察の努力です。しかしながら、その努力にもかかわらず、日本の政治、外交は動かない。米五十万トンだけを出す。こういう体制の政治状況で、内閣の状況で、本当に使命感を持って国民の安全のために捜査をする捜査官が浮かばれるのか。必死の思いで集めた情報が生かされない。こういうことの中で拉致問題が放置されてきた。

 なぜ、我が国ではかくも速やかに、隣近所にも知られずに拉致が実行されるのか。出入国、沿岸警備についての問題点を含むその理由。総数は何人おるのだろうか。一説には七十名だとか百名だとか言われておりますけれども、この拉致問題がいまだにその実態がわからず、支援組織自体の解明もされない。この理由は何なんだということについて、局長からコメントがあればいただきたいと存じます。

金重政府参考人 日本人の拉致問題でございますけれども、警察におきましては、これまでの一連の捜査の結果を総合的かつ慎重に検討しました結果、先生御指摘ありました、北朝鮮による拉致の疑いのある事案として、現在までのところ、七件十名を把握しております。それから、拉致が未遂であったと思われるものとして、一件二名を把握しておるわけでございます。

 この種拉致事案というのは、一般論として申し上げますれば、事前の周到な準備の上で極めて組織的かつ計画的に行われるのが通例だというふうに私どもは思っております。それからまた、事後の捜査に当たりましても、被害者の方が日本におられないということでありますから、事情聴取ができないというようなこともありますし、それから国外捜査に絡む種々の問題もあったりというようなことがございますので、被疑者あるいは事実関係の特定に時間を要しておるという側面もあるというふうに私どもは考えておるところでございます。しかしながら、この種事案につきましては、その重大性ということにかんがみまして、今後とも、外務省を初め関係各機関と連携しまして、全容解明のために最大限私どもは努力していく所存でございます。

西村委員 外務省を初めというふうに、外務省の名を出されました。我が国外務省は、日本の外務省か、どうもほかの国の日本支部やないかと思われるぐらいのていたらくだ。辛光洙という男が、拉致実行犯が韓国におる、済州島にもおる。ジャーナリストが見つけ出してきた。テレビで放映もされたということ。これは外務省が頑張って、いわゆる取り調べをどうするかということを詰めなければいかぬ。外務省は全く関心を示さない。

 つまり、先ほどから言われている不祥事等々、いろいろあります。そういうことが起これば、みんな騒ぎます。しかし、全く騒がない。これだけの問題があるのに全く騒がない領域が我が国であるのです。そのものについて我々政治は取り組まねばならない、こう思うわけですね。知らず知らずのうちに忍び寄っている治安維持能力の崩壊、これを私は憂慮いたします。

 人遠きおもんぱかりなくれば必ず近き憂いあり、こう言います。治安維持能力は、検挙能力は落ちていっているのです。我々は、組織というものがいかにして活性化するかを考えねばなりません。治安維持能力が落ちていっている。JR東日本における革マルの浸透。そして、我が国の中に、まさに日本人を隠密に拉致し去る組織が厳然と存在しているというこの事実。そして、政界工作かどうか知りませんが、我が国の政治全体がそれに熱心に取り組まない。口では人権だ、人権だと言っている。そして、国民の安全を守ると抽象的には言う。しかし、具体的に起こった拉致問題には我が国政治は取り組んでいないのです。だから、家族はアメリカへ行っておる。

 こういう現状を踏まえて、私は、システムの問題、人事の問題、これは非常に重要だと思います。それから、情報収集は大丈夫なのか。情報収集をもっと能率的また効率的に、インテリジェンスのことですよ、それをするために、いかなる組織が、また金が必要なのか。その予算は大丈夫なのかという観点から、大臣に所信をお伺いしたいと思います。

高村国務大臣 治安を確保し法秩序を維持することは、国民が安心して暮らせる社会を築く上で不可欠であり、法務行政に課せられた重大な責務の一つであると考えております。

 このような責務を果たすため、新たに立法されたいわゆる組織的犯罪対策三法、団体規制法等の適正かつ効果的な運用を図るとともに、検察官の増員など体制の整備を図ってまいりましたが、今後とも、我が国の治安維持という法務行政上の重大な責務を果たすため、所要の体制整備に努めてまいりたいと考えております。

西村委員 そうでんな。そのとおりやけれども、今の治安状態があかんと時間をとってこれだけ説明しているわけですからね。

 例えば、今、機密費の問題がありますね。今の政府の答弁では、機密費減額の論理に対抗できないのです。機密費は必要だ。なぜ必要だ。情報収集に必要だ。警察、日本の治安維持のために今までの倍を確保しなければならない、こういうふうな答弁が欲しかったですな。

 情報は、金で買うか、交換するか、奪うかでしか集まらないのです。そうして、奪うというのは、それはスパイですね。命をかけてやる。そして、金で買う。もちろん、みんなに金がかかるのです。そして、インテリジェンスこそ国民の安全を守るすべてなんです。だから、そういうふうな観点からの答弁がいただきたい。

 また人事の問題です。ただ能力と識見と使命感だけで人事を行うという体制に近づければ、組織も底力が出てきます。国自身の底力も出ると私は思うのですね。先ほどから言いましたように、我々が考えるのは民活よりも官活だという観点から、先ほどの答弁をいただきましたので、もうさらには申し上げませんが、大臣、どうか頑張ってください。それで、日本の外務省というのは、あれはだめですから、治安維持に関しては。だめです、あれは。いや、外務大臣をやられていたけれども。だから、どうか治安維持の観点から、大臣、頑張ってください。御答弁、あるのですか。

高村国務大臣 委員がおっしゃること、まことにもっともだと思いまして、治安維持のためにも機密費が必要な部分があるわけでありますが、委員が所属する政党も、その機密費を減額せよというような予算についての要求をしているということは大変残念なことだと考えております。

西村委員 切り返しがうまいですな。

 しかし、私は、政府の機密費に対する論理では、減額の要求は正しいのだというふうに言っているわけですね。なぜなら、今まで差額で使っておったわけですから。飲食費ですよ。百万のワインを飲もうが奥さんをブティックに回らせようが、すべて松尾というやつがスイーパーでして、組織にとってこんなありがたい男はおりませんよね。法務委員会ですからこの辺でやめておきますけれども、政府が言っている論理では減額の要求に抗し切れない。だから政府よ、機密費が必要だと、積極的理由を治安、国防、外交の分野で示してくれと私は予算委員会でも言ったのです。

 それから、朝銀近畿の破綻というのが昨年暮れにありましたですね。ちょっと時間がないので飛ばしますけれども、これは二年前に朝銀大阪が破綻したのです。そして、おおよそ三千百億円の公的資金が投入された。三千百億円の公的資金が投入されて、それが二年でまたすっからかんになって破綻していくわけですね。

 二年前、朝銀大阪が破綻したとき、その当時日本の銀行が破綻すれば、五千万のずさん融資でも理事者等々が逮捕されておりました。朝銀大阪の役員も逮捕を覚悟したと言われております。しかしながら、マスコミ報道でも我が国の捜査機関でも、主にマスコミ報道ですね、これに関心を示したそういう報道は一切なかった。三千百億を投入したということもほとんど報道されなかった。今回も、余りにも静かだ。受け皿銀行が二年で破綻してしまったのです、三千百億を受け皿にした銀行が。

 こういう事態の中で、これだけはちょっとコメントをいただきたい。朝銀、全国で三十二カ所が破綻していって、公的資金一兆円以上が投入されようとしておると聞きます。しかしながら、破綻原因については一切明らかでない。日本の当局は調べていないのではないか。仮に、日本の銀行とこれが朝銀であるからと差別をして、外交的配慮で特別の配慮をしておるのかどうか、そういうことが我が国の機構としてあり得るのかどうか、これについて御答弁をいただきたいと存じます。

高村国務大臣 外交的配慮などということは全くあり得ませんし、ないわけであります。

西村委員 これを放置すれば本当にモラルの崩壊ですよ、繰り返しませんが。

 それから、時間がちょっとありますので、二つだけお聞きします。

 数年前、私は、全国百数十の開港場からの我が国への入国者がどういうものであるか、直ちに中央に一元的に集計できるシステムができておるのかというふうな質問をさせていただきました。そしてそれからしばらくして、いわゆる地方の開港場では携帯端末で集計できるシステムがほぼできたというふうに御答弁をいただいております。しかしながら、我が日本の偽造パスポートは東南アジアでかなり高額で取引されて、それを見破れない。そして、その偽造パスポートを購入して我が国に入国する者が、正常な目的を持って入ってくるはずがないわけでございます。我が国の治安にとって、もはや内部社会だけの問題ではなくて、我が国の外から何が入ってくるのか、何を持ち出しているのか。朝銀の問題でもそうです。破綻原因にそれがあるわけです。こういう問題は大丈夫かということについて、二つ最後に御質問いたします。

高村国務大臣 おっしゃるように、偽変造旅券等を行使して不法入国を図る事案は、ますます悪質巧妙化しておりまして、これに対応するために、成田空港支局及び関西空港支局に偽変造文書対策室を設置いたしました。これによりまして、入国審査官が審査ブースで偽変造の疑いのある文書を発見した場合に、速やかに同対策室において精密な鑑識を行う体制を構築しているわけであります。この鑑識の結果、偽変造文書と判明した場合には、不法入国事案として退去強制手続をとるなど、偽変造旅券等行使事案に対する摘発を強化しているところでございます。

西村委員 ありがとうございます。質問をやめます。

保利委員長 次に、植田至紀君。

植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀でございます。

 きょうは、所信にかかわりまして法務大臣に、いわゆる人権擁護行政にかかわって二点、一つは、昨年できました人権教育・啓発推進法にかかわる施策の推進に関連して、もう一点は、午前中も御議論ありましたけれども、人権擁護推進審議会の中間取りまとめにかかわってお伺いしたいと思います。

 まず一点目。いわゆる人権教育・啓発推進法、人権教育及び人権啓発の推進に関する法律ができたわけですけれども、この法律の中に、基本計画を策定するということが当然触れられているわけですが、まず簡単なところから、この策定の作業状況、進捗状況についてお伺いしたいと思います。

高村国務大臣 人権教育・啓発推進法第七条の基本計画でありますが、広く国民の方々に人権尊重の理念に関する理解を深め、これを体得していただくとの視点に立って、中長期的な展望のもとに策定すべきものと認識しております。

 これをどのような形で具体化していくかにつきましては、計画に盛り込むべき内容の点はもちろんのことでありますが、手続、方法の点も含め、今後、この法律を共管する文部科学省とも緊密な連絡をとりながら、慎重に検討してまいりたいと考えております。

 現在、事務レベルにおきまして、策定のための準備的な作業を進めているということを承知しております。

植田委員 まだもうちょっと、結構時間がかかりますよということなんですね。うなずいていただきましたので、それで結構です。

 では、この法制定に伴う施策の推進にかかわって盛り込むべき中身、やはり私たちも関心のあるところなんですけれども、先行事例として、人権施策にかかわりましては既に、人権教育のための国連十年に関する国内行動計画というのが取りまとめられているわけです。そして、毎年私どもも、その施策の推進の状況というのを聞いておるわけですけれども、この推進本部がまとめている人権教育のための国連十年に関する国内行動計画関連施策というのを一通り見ますと、言ってみれば、政府のいわゆる人権と名を冠した現状の施策はほぼ全部入っているわけですね。そういうことを考えると、この関連施策というのはすなわち、人権教育・啓発推進法が定義するところの人権教育、人権啓発というものを大体網羅しているのじゃないか。

 しかも、そもそもこの人権教育・啓発推進法というのが議員立法でできた経緯は、人権擁護推進審議会の教育啓発に係る答申を受けて議員立法として提案されたという経緯がございますし、そもそもの人権擁護推進審議会を設置するに至った、九六年にできた人権擁護施策推進法の附帯決議の中では、「人権教育のための国連十年の国内行動計画等を踏まえ、人権教育、人権啓発の取り組みに努めること。」と述べられているわけでございますから、当然、教育啓発法というできた法律も、この国内行動計画の延長線上でとらえることが可能であろうと思います。

 とすると、この教育啓発法の七条にあるところの基本計画策定に当たって当然念頭に置くべきは、そんなに難しく考えることもないのじゃないか、国内行動計画及び、既にそれを踏まえて行われている関連の諸施策をこれまで以上に充実強化していく観点から策定されるというのがごく自然なんじゃないかと思うのですけれども、その点については御所見いかがでしょうか。

高村国務大臣 人権教育のための国連十年に関する国内行動計画は、内閣総理大臣を本部長とし、関係行政機関の緊密な連携、協力のもとに総合的かつ効果的に施策を推進するために設けられた人権教育のための国連十年推進本部において平成九年七月に取りまとめられたものでありまして、現在、この国内行動計画に基づき、関係省庁において関連施策を鋭意推進しているものと承知しております。

 これに対しまして、人権教育・啓発推進法に基づく人権教育・啓発に関する基本計画は、人権啓発を所管する法務省及び人権教育を所管する文部科学省において策定すべきものとされていることから考えれば、直接的には法務省、文部科学省がそれぞれ所管している人権啓発、人権教育に焦点を置いて策定すべきものと理解をしております。その策定に当たっては、同法案審議の過程での衆参両議院の法務委員会における附帯決議にもありますように、人権教育のための国連十年に関する国内行動計画をも十分踏まえて、より充実した人権教育・啓発の推進を図るものとなるようにしたいと考えております。

植田委員 今の話ですと、人権教育、人権啓発、教育は文部省で、啓発は法務省でございます、そこにかかわるものについて、教育啓発法に基づく基本計画は策定しますよとおっしゃっておられるわけですが、ただ、既に先行事例があるわけですよね。

 その先行事例、例えば省庁の枠組みを超えて具体的な人権の確立、例えば厚生労働省にかかわるところだって、人権教育・啓発にかかわるさまざまな施策があるわけですよね。当然ながら所管は文部省、法務省かもしれないけれども、関係省庁の連絡会議というのも昨年設けられているわけですから、当然、日本における人権教育・啓発に係るあらゆる施策なり事業なりというものを常に念頭に置きながら、そこでの基本計画の策定に当たるというのがごく自然な発想だろうというふうに私は申し上げたのですけれども、それは不自然でしょうか、自然でしょうか。

高村国務大臣 決して不自然ではありません。基本計画は、ただいま申し上げましたように、直接的には法務省、文部科学省がそれぞれ所管している人権啓発と人権教育に焦点を当てて策定することになるわけでありますが、おっしゃるように、他の省庁等がその所掌事務との関連で行っている人権にかかわる活動につきましても、人権教育・啓発に関する中央省庁等連絡協議会の場等を活用してその情報交換に努め、基本計画に反映することについても検討してまいりたいと考えております。

植田委員 さて、人権教育・啓発法は、施策の推進について国、地方公共団体、国民の責務を定めているわけですから、当然、この教育啓発の推進というのは、言ってみれば国民的課題であるというふうに考えるのもごく至当だと思うのですが、その点は大臣どうですか。

高村国務大臣 人権教育・啓発推進法は、その第四条で国の責務、第五条で地方公共団体の責務、また第六条で国民の責務に関する規定を置いているわけであります。人権政策の確立というのは政府全体で取り組むべき課題である、こういうふうに認識をしております。

植田委員 だから、政府全体で取り組むということは全国民的課題やという理解でいいわけですよね。うなずいていただきましたので結構です。

 さて、そういうことですから、政府全体で取り組む。だから、基本計画を策定する以上は、ただ政府がちょこちょこっとこしらえて、文部省、法務省が相談して、関係省庁にもちょこちょこっと聞きますよというのではなくて、やはり地方公共団体の責務、国民の責務を定めているわけですから、自治体の意見も聞く、国民の意見も聞く。そういう意味では、全国民参加の中でこうした基本計画というものが策定されるというのも筋だろうと思うのですが、その点についてはいかがでしょうか。

高村国務大臣 人権教育・啓発推進法の法案審議の過程で、衆参両議院の法務委員会における附帯決議にありますように、基本計画の策定に当たっては地方公共団体等関係各方面の御意見をも踏まえるべきものだと承知をしております。

植田委員 御承知いただければ結構でございます。

 次、二点目。

 昨年出ました人権擁護推進審議会の中間取りまとめにかかわって、当然ながら、これはことしの七月ごろには最終答申が出るというふうに聞いておりますので、大臣にいろいろ聞くと、これは審議会で十分審議をされているものと存じますという御答弁があるかもしれません。しかし、この中間取りまとめ以前から、いろいろな形で国際的にも指摘されている日本の人権擁護行政に係る問題等々は既に出ているわけですし、また、そうしたことを踏まえて、中間取りまとめに係る中身についての大臣としての御認識というものはお答えいただけるのではないかということで幾つか御質問したいわけでございます。

 まず、この中間取りまとめの中で、やはり全体を読んでみて、私は、かなり法務省さんとしては気張らはったなと思いながらも、ただ、人権侵害の被害の救済と言う割に、その当事者の姿がなかなか見えてこない、そういう気がしてならないのです。

 というのは、例えば人権侵害の類型というのを四つに定義づけられているわけです。確かに、実際救済しなければならないわけですから、いろいろな類型をこしらえないことには、実際に救済の対象を明確化するという意味では必要なんですが、ここではおおむね四つに分けているんですよね。差別、虐待、公権力による人権侵害、マスメディアによる人権侵害と。

 差別とか虐待というのは、いわゆる人権侵害のありようを指しますよね。公権力による人権侵害とマスメディアによる人権侵害といったら、だれが人権侵害をやったかという、その「だれ」を指しているわけですよね。そうしたものが混在する中で無理やりほうり込んで、実際、人権侵害の救済の対象の枠が広がるんだったらいいんだけれども、逆に、それでもって対象が限定されることにならないかということを私は危惧するわけですが、その点はどうでしょうか。

高村国務大臣 冒頭、委員から、私がこう答えるであろうということをおっしゃられてしまいましたので、まさにそういうお答えなんですが、それでも、昨年十一月に公表された中間取りまとめにおきましても、いわゆる積極的救済の対象として、人権侵害の主体にかかわらない差別、虐待の類型が取り上げられ、これに加えて、公権力による人権侵害、メディアによる人権侵害という、人権侵害の主体に着目した類型が取り上げられているというのも委員のおっしゃるとおりであります。

 このほか、専ら任意的な手法によるいわゆる簡易な救済については、広く人権侵害一般が対象とされておりまして、人権侵害の類型に応じた効果的な救済のあり方について検討が進められているものと承知をしております。

 決して救済の対象が狭められる、そういうようなことではないと考えております。

植田委員 できるだけ、やはり当事者に根差した救済制度というものができてほしいわけです。

 では、この人権救済の対象にかかわってですが、中間取りまとめは、この人権救済にかかわって、あらゆる人権侵害を対象として、総合的な相談と、あっせん、指導等の専ら任意的な手法による簡易な救済というものと、差別や虐待の被害者など、一般にみずからの人権をみずから守ることが困難な状況にある人々に対しては、より実効性の高い調査手続や救済方法を整備した積極的救済というのに一応分けておられます。

 問題は、ここで言う積極的救済なんですけれども、この中間取りまとめで、この積極的救済にかかわって、「積極的救済の対象とする人権侵害については、その救済手続が一面で相手方や関係者の人権を制限するものでもあることから、そのような関係者らの予測可能性を確保する意味からも、対象となる差別や虐待の範囲をできるだけ明確に定める必要がある。」要するに、対象となる差別や虐待の範囲をできるだけ明確に定めよというふうにしているわけです。

 では、具体的にその対象となる範囲をいかに明確に定めるかということが問題になるかと思うんです。実際、積極的救済の対象を明確にするのであれば、こういうのはやっちゃいかぬのですよという、言ってみれば差別禁止事由とか差別禁止分野というものを明確にせぬと、特定せぬとあかんのと違うだろうかと思うんですけれども、その点は、御所見いかがでしょうか。

高村国務大臣 今度は委員の方から御指摘がなかったので、一応言わせていただきますと、人権救済制度のあり方については、現在、人権擁護推進審議会が調査審議を進めているところであり、私から意見を申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。

 なお、昨年十一月に公表された中間取りまとめにおきましても、積極的救済の対象となる差別や虐待の範囲をできる限り明確に定める必要があるとされておりますし、その差別に関しましては、人種、信条、性別、社会的身分、門地、障害、疾病等を理由とする社会生活における差別的取り扱いを基本とすべきである旨指摘されているものと承知をしております。

植田委員 この辺のところは、明確に差別禁止事由とか禁止分野を実際特定するような――実際やはりこういう国内人権機関をこしらえようということで今答申に向けて作業されているわけですから。大体諸外国の例を見ても、それだったら今度は差別禁止法のようなものがやはり制定されるということも射程に入ってくるんじゃないでしょうかということだけまず申し上げておきたいと思います。当然、こういう議論がありましたよということぐらいは審議会の中で御報告いただけるんだろうと思いますので、そうした差別禁止法にも、これから最終答申取りまとめの過程でやはり言及していただきたいなという希望だけ申し上げておきます。

 ちなみに、これは審議中ですということにはならないと思うんですが、午前中、杉浦先生が質問された中で、関連資料としていただきましたので、いわゆる規約人権委員会の最終見解、九八年十一月のがありますけれども、この最終見解の二ページの十のところで、「委員会は、調査及び救済のため警察及び出入国管理当局による不適正な処遇に対する申立てを行うことができる独立した当局が存在しないことに懸念を有する。委員会はそのような独立した機関又は当局が締約国により遅滞なく設置されることを勧告する。」とあります。政府が勧告されているわけですから、審議会でどうこうという以前に、政府としての考えは伺うことができると思うんです。

 ならば、ここで中間取りまとめが言っているところの積極的救済の対象には、例えば捜査手続とか刑事拘禁施設、出入国管理施設等々での人権侵害というものが当然ながら積極的救済の対象ということで射程に入ってくるでしょうし、それは既にもう二年前にこの規約人権委員会から勧告も受けていることですから、当然それを積極的救済の対象とするというのは国際的な潮流にも合致したものであると私は思うわけですけれども、この点は御所見はお伺いできると思います。お願いいたします。

吉戒政府参考人 内容にわたるところでございますので、私の方から答弁させていただきます。

 今委員御指摘のとおり、公権力の行使に伴う侵害、これは一つ大きな人権侵害の類型でございます。これに対しましてどう対処するかということが非常に重要な問題でございまして、これにつきまして、一般的な救済のみならず、積極的な救済の対象にもしようというような方向での議論がされているものと承知しております。

植田委員 ということは、公権力による人権侵害といった場合、今私が質問で申し上げたようなものも当然射程の中に課題としては入ってくる、そう理解していいわけですね。

吉戒政府参考人 繰り返しになりますけれども、当然検討の対象になっておるということでございます。

植田委員 やはり国際的な水準に合致した、そうした人権擁護機関というものをこれから考えていただきたいと思います。かつて盗聴法、いわゆる組織犯罪関連三法案を通すときに、こういうものが国際的に要請されているんだとさんざん聞かされました。今回もやはりこれだけ国際的要請があるんですから、それに見合った国内人権機関というものを展望していきたいと思うわけです。

 最後の質問になるんですが、現行のいわゆる人権擁護制度の問題と、そして今審議されているところの新たな人権救済機関にかかわってでございます。

 中間取りまとめの中で、現行の人権擁護制度の問題について、かなりいろいろな問題点が指摘されています。幾つか挙げますと、そもそも「政府の内部部局である法務省の人権擁護局を中心とした制度であり、公権力による人権侵害事案について公正な調査処理が確保される制度的保障に欠けている。」であるとか、「人的資源が質・量ともに限られており、専門的対応や迅速な調査処理が困難な場合がある。」とか、「国民一般から高い信頼を得ているとは言い難い。」こういうことが既に中間取りまとめで指摘されているわけですが、これら指摘というのは、やはり法務省の現行の人権擁護機関の持っている根本的な問題とか限界を指摘したものと言えると思うのですが、この点の認識については、法務大臣、いかがでございますでしょうか。

高村国務大臣 まさに今委員が指摘したようなことが中間取りまとめでも言われているわけであります。その限界や問題点があるわけでありますが、現行制度のもとにおきましても、それではほうっておいていいのかということでありませんので、できる限り改善を図っていきたいと考えておりますが、抜本的な改革を要する部分につきましては、審議会から答申をいただいた後、その内容を最大限に尊重して、人権の世紀と言われる二十一世紀にふさわしい人権救済制度の確立を目指して努力してまいりたいと考えております。

植田委員 ただ、中間取りまとめが述べる人権救済機関の組織体制というのは、どうもその根本的な見直しの姿勢というものが幾分希薄なところも見受けられるなと私は印象として持っています。確かに中間取りまとめの中で、「これまでの内部部局型の組織の充実・強化による対応には限界があり、政府から一定の独立性を有し、中立公正さが制度的に担保された組織とする必要がある。」とか、「人権救済機関は、独立性のある委員会組織とすべきである。」というふうなことが述べられています。その他、午前中の杉浦先生の議論の中でもありましたように、三条委員会ということもここでは想定されるんじゃないかと思います。

 ただ、ここで想定されるそういう人権救済機関の業務を支える事務局の整備にかかわるくだりになると、「法務省人権擁護局の改組も視野に入れて、体制の整備を図るべきである。」としているのはどうも合点がいかぬわけなんです。結局、独立性といっても、法務省のもとに置くんだったら、それだったらどうなんですか。私がここで聞きたいのは、そうなれば、例えば法務省の人権擁護行政というものが本当に私たち一人一人の人権に配慮して行われているかどうなのかということを、では一体だれがチェックするのか。法務省がやるんですかということになるんじゃないかと思うんですよね。独立性といったときに、そこは法務省と切り離すことをやはり展望すべきなんじゃないかと私は思うんですけれども、その点はいかがでしょうか。

吉戒政府参考人 お答え申し上げます。

 中間取りまとめでは、先生御指摘のとおり、政府からの一定の独立性を持った委員会組織にするということでございまして、その下の事務局、地方組織につきましては、法務省の人権擁護局、それから法務局、地方法務局におきます人権擁護部門、これの改組を視野に入れるということでございまして、具体的な提案はそこまででございます。

 従来からいろいろな御批判があることはわかりますけれども、現在の法務省の人権擁護部門が戦後五十年活動を続けてきておりまして、それなりの実績あるいは経験、ノウハウもございますので、こういうものを生かす形で組織の改編、改組というのはできないものかということが審議会において検討されているものというふうに承知しております。

植田委員 その五十年のノウハウがありながらも、この中間取りまとめは、その法務省の人権擁護機関の根本的な問題点というものを、一方で限界なりを指摘されているわけですよ。指摘されているにもかかわらず、今ある地方の法務局なり人権擁護局なりをそのまま使う、改組するというのはいかがなものか。当然、法務省が人権を所管しているわけですから、そこにいる人材を十分活用するということは私は拒むものではないですけれども、それを丸ごとという話にはならないじゃないですか。

 だから、もう一度聞きますけれども、法務省の人権擁護局なり地方の法務局なりの法務省の人権擁護機関を改組しただけの国内人権機関になったときに、法務省の人権擁護行政が果たして人権に配慮して行われているのかどうなのか、だれがどうチェックするんですか。人権擁護局が改組した、元法務省というか、その法務省の中で自主管理するんですか。それだけ聞かせてください。それはちょっとおかしな話ですわね。

吉戒政府参考人 組織の問題、これは非常に大きな政治的な問題になろうかと思いますので、今の段階で具体的なお話はなかなか難しいわけでございますけれども、いずれにいたしましても、委員会組織の、独立した人権救済委員会とでも申しましょうか、そういうものの統括のもとに事務局が存在するということでございますので、先生のおっしゃるような御懸念は当たらないのではないか、それから、改組というのはまたいろいろ幅がございますので、丸ごとそっくり移るというふうなイメージはいかがなものかなというふうに考えております。

植田委員 御懸念で済むようにしていただければと思うのです。といいますのは、中間取りまとめでも最大限これは参考にされていると思うのですが、九三年の国連総会で採択された国内機構の地位に関する原則、いわゆるパリ原則ですとか、これを踏まえたハンドブック、こういうようなものも中間取りまとめは引用しているわけです。そしてまた、そこで、これらの国際的潮流を十分視野において審議をしてきましたというふうにおっしゃっているわけですから、当然、最終答申に向けて、これら国際潮流を踏まえた審議が行われるんだろうと私も認識しているわけです。

 ならば、例えばこのハンドブックの中で国内人権機関の独立性についてかなり詳細に言及していることなんかを十分踏まえた議論をすべきなんじゃないか。五十年間のノウハウにこだわらずに、そこにもっと着目すべきじゃないか。

 非常にこれはおもしろいんですけれども、このハンドブックの中で、国内人権機関の独立性について、まず法的及び運営上の自律、財政上の自律、そして任命手続、構成と、四つの点についての独立性の確保について言及をしているわけなんです。やはり、これが一つの国際水準ですよね。うんということで結構です。

 それで、その中間取りまとめが言っている一定の独立性というものが、しにせ、法務省の五十年のノウハウということだけでは水準に合致せえへんのと違うかと思うのですよね。

 現にハンドブックはこういうことを言っています。独立した法的地位は、政府のどの省庁や公私を問わずどのような存在からの介入や妨害も受けることなく、国内機関がその機能を行使することを許すに十分な水準のものでなければならないとはっきり書いてあるわけですから、当然こういった潮流また水準というものを踏まえて審議をすべきだろうと思いますし、当然このことは踏まえられると私は思っているのですが、その辺はどうなんでしょうか。

高村国務大臣 委員がおっしゃるように、まさに審議会の方ではそういう国際的潮流を踏まえて審議をしていただいていると思っております。そして、踏まえて審議をしていただいて、その最終答申が出た段階で、法務省とすれば、それを最大限尊重してまいりたい、こういうふうに考えております。

植田委員 当然踏まえて議論されるということは、今ちょっと人権擁護局長が説明されたようなところで懸念がないような結果が当然ながら出るであろうということを、あらかじめ法務大臣もおっしゃったということで理解いたします。

 また、国内人権機関の構成について、これは人権機関をどう構成するか。当然、私は別に法務省のお役人さんがそこに事務局でおったって構へんと思うのですけれども、このパリ原則やハンドブックでは、人権の伸長と保護にかかわる社会集団の多元的な代表を確保するために必要なあらゆる保証を与える手続によって行われるとした上で、例えばNGO、労働組合、弁護士、例えばジャーナリスト、科学者なんかの職能団体、そしてまた、いわゆる哲学とか宗教思想、さまざまな潮流がこの人権機関の中に代表されることが求められているわけです。

 ですから、そういう意味では、お役所組織というよりは、民間の専門家またNGO、そうした人たちがその国内人権機関の主体として活動する、そういうことがイメージされていると思うのですけれども、これも当然国際潮流ですから、こういうことも踏まえて御議論をしていただいているだろうと思うのですが、最後、その点も一点お話をお伺いいたしまして、終わりたいと思います。

高村国務大臣 私としても、審議会の方では当然そういったことも踏まえて議論をしていただいているだろう、こういうふうに思っておりますし、何度も繰り返すようでありますが、最終答申が出た暁は最大限の尊重をしてまいりたい、こう考えております。

保利委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時五分散会


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