衆議院

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第12号 平成13年5月25日(金曜日)

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平成十三年五月二十五日(金曜日)

    午前十時一分開議

 出席委員

   委員長 保利 耕輔君

   理事 奥谷  通君 理事 塩崎 恭久君

   理事 田村 憲久君 理事 長勢 甚遠君

   理事 佐々木秀典君 理事 野田 佳彦君

   理事 漆原 良夫君 理事 西村 眞悟君

      荒井 広幸君    太田 誠一君

      熊代 昭彦君    左藤  章君

      鈴木 恒夫君    棚橋 泰文君

      谷川 和穗君    松宮  勲君

      山本 明彦君    吉野 正芳君

      渡辺 喜美君    中村 哲治君

      永田 寿康君    日野 市朗君

      平岡 秀夫君    水島 広子君

      山内  功君    上田  勇君

      木島日出夫君    山口 富男君

      植田 至紀君    徳田 虎雄君

    …………………………………

   法務大臣         森山 眞弓君

   法務副大臣        横内 正明君

   法務大臣政務官      中川 義雄君

   政府参考人

   (総務省行政評価局長)  塚本 壽雄君

   政府参考人

   (法務省大臣官房訟務総括

   審議官)         都築  弘君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    山崎  潮君

   法務委員会専門員     井上 隆久君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十五日

 辞任         補欠選任

  枝野 幸男君     中村 哲治君

  山花 郁夫君     永田 寿康君

  不破 哲三君     山口 富男君

同日

 辞任         補欠選任

  中村 哲治君     枝野 幸男君

  永田 寿康君     山花 郁夫君

  山口 富男君     不破 哲三君

    ―――――――――――――

五月二十五日

 債権管理回収業に関する特別措置法の一部を改正する法律案(山本幸三君外三名提出、衆法第二一号)

 商法等の一部を改正する等の法律案(相沢英之君外六名提出、衆法第二六号)

 商法等の一部を改正する等の法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案(相沢英之君外六名提出、衆法第二七号)

同日

 治安維持法犠牲者国家賠償法の制定に関する請願(枝野幸男君紹介)(第二〇九三号)

 同(金田誠一君紹介)(第二〇九四号)

 同(石井一君紹介)(第二一七三号)

 同(岩國哲人君紹介)(第二一七四号)

 同(土肥隆一君紹介)(第二一八七号)

 同(中川智子君紹介)(第二二一三号)

 選択的夫婦別姓の導入など民法改正に関する請願(枝野幸男君紹介)(第二〇九五号)

 同(佐々木秀典君紹介)(第二〇九六号)

 同(阿部知子君紹介)(第二一一五号)

 同(保坂展人君紹介)(第二一五三号)

 同(石毛えい子君紹介)(第二一七五号)

 同(奥田建君紹介)(第二一七六号)

 同(池坊保子君紹介)(第二一八八号)

 法務局、更生保護官署及び入国管理官署の増員に関する請願(木島日出夫君紹介)(第二一五一号)

 同(佐々木秀典君紹介)(第二一五二号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第二二一四号)

 同(石井郁子君紹介)(第二二一五号)

 同(植田至紀君紹介)(第二二一六号)

 同(小沢和秋君紹介)(第二二一七号)

 同(大幡基夫君紹介)(第二二一八号)

 同(大森猛君紹介)(第二二一九号)

 同(木島日出夫君紹介)(第二二二〇号)

 同(児玉健次君紹介)(第二二二一号)

 同(穀田恵二君紹介)(第二二二二号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第二二二三号)

 同(志位和夫君紹介)(第二二二四号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二二二五号)

 同(瀬古由起子君紹介)(第二二二六号)

 同(中林よし子君紹介)(第二二二七号)

 同(春名直章君紹介)(第二二二八号)

 同(藤木洋子君紹介)(第二二二九号)

 同(松本善明君紹介)(第二二三〇号)

 同(矢島恒夫君紹介)(第二二三一号)

 同(山口富男君紹介)(第二二三二号)

 同(吉井英勝君紹介)(第二二三三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 中間法人法案(内閣提出第七〇号)




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     ――――◇―――――

保利委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、中間法人法案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として総務省行政評価局長塚本壽雄君、法務省大臣官房訟務総括審議官都築弘君及び法務省民事局長山崎潮君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

保利委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

保利委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。塩崎恭久君。

塩崎委員 自民党の塩崎恭久でございます。

 きょうは、中間法人法の審議でございますけれども、ちょうどハンセン病訴訟の控訴断念という決断を小泉総理がされて、後ほど上田議員の方からもまた御質問があるということでございますから、余りダブらないようにしたいと思いますけれども、一つだけお伺いをしたいと思うわけでございます。

 まずもって、私も、十一日でしょうか、判決が出たときに、非常に重い判決であり、また、国会議員としても、私もずっと厚生畑をやってきた者の一人として、立法府の不作為という問題についての御指摘があって、非常に重く受けとめたわけでありますが、いろいろな問題がそれはもちろんあるんだろうと思いましたが、私は、最終的にはやはり控訴は断念すべきではないかということをそのとき自分のホームページにも書いたのを記憶しているわけでございます。

 いろいろ思い悩まれて、総理も御決断をされたわけでございますが、聞くところによりますと、きょう、閣議で政府声明を出されたということでございます。まだ実は私はその文章を読んでいないわけで、新聞等々の報道を見ているだけでございますので、この政府声明の中身、そして三権分立の中における位置づけ、それと、大臣御自身、この政府声明をおつくりになるに当たっていろいろと御尽力をいただいたと思うわけでございますが、大臣御自身としての思い入れをひとつお聞かせ願えればというふうに思います。

森山国務大臣 先ほどの閣議におきまして、この案件に関する政府声明と、それから内閣総理大臣談話というのを決定いたしまして、発表いたしました。

 政府声明は、最初の冒頭のところに、「政府は、平成十三年五月十一日の熊本地方裁判所ハンセン病国家賠償請求訴訟判決に対しては、控訴断念という極めて異例の判断をしましたが、この際、本判決には、次のような国家賠償法、民法の解釈の根幹にかかわる法律上の問題点があることを当事者である政府の立場として明らかにするものです。」というところから始まりまして、二つの問題点を挙げて申しております。

 総理の談話の方は、その法律上の問題点というよりは、それも触れてはおりますが、総理がこのような異例な決断をなさるに至った真情を吐露されて、そして国民の理解を求めるという趣旨の内容でございます。

 政府声明というのはめったなことでは出さないものでございまして、今までに全く例がないわけではありませんけれども、これ自体が非常に重いものだというふうに思っております。ですから、その中で政府が問題と考えております法律上の点については、これからもこの案件について論じられる場合に重要な参考として参照されることになるであろうと思いますが、そのような意味合いのある重要な文書であるというふうに私は理解しております。

 このような声明を出し、談話を出して、そして、国民の理解を求めつつ、問題がたくさんあるということを十分認識しながら控訴の断念という決断に至られた総理のお気持ちというのは、私も同様の気持ちでございまして、十分理解できますし、法秩序を維持する、法律を忠実に守るという責任を負っている法務大臣としては、いろいろ本当に悩ましいことでございましたが、総理の御決断によりましてこのような決着を見たことはよかったと結論的には思っております。

塩崎委員 今のお話ございましたが、政治的には大変重い声明であった、こういうことでございます。

 法秩序を守るとともに、恐らく大事なことは、患者、元患者の皆様方のこれまでの長い長い歴史に対する思いというものを我々がどう判断するのかという中で、今回このようなことをされたということでありましょうから、これはこれとして受けとめさせていただきますが、この場では、法務委員会でありますからどうかなと思いますけれども、早く全面的な患者、元患者の皆様方が御納得いただけるような方向で物事が進められるということを期待したいと思うわけでございます。

 さて、きょうは中間法人法の審議ということでございますが、まず最初にお伺いをいたしたいのは、いろいろな経緯があって、我々の知っている限りでは、公益法人の問題から特にこの点について光が当たって、今回のこのようなものになったというふうに聞いておるわけでございます。

 まず第一に、この中間法人というこの法律をつくるに当たってのこれまでの経緯と、それから、なぜこういうものが必要だったのかということについての御認識をお伺いいたしたいと思います。

森山国務大臣 現行法上は、公益も営利も目的としない中間的な団体につきましては、法人格の取得を可能とする一般的な法制度がございません。

 そのため、これらの団体が権利関係の主体として行動する場合に、不動産の登記名義人となることができないというような、法人格のある団体と同一の地位を有するわけではなく、財産管理上不都合が起こるということが多々あるわけでございます。また、団体の債権者保護に係る規定もございません。

 このような団体が法人格を与えられれば、その名義で財産を管理することができますし、また、構成員である個人や法人が団体の活動の結果によりさまざまな利益を享受することができるのでございます。さらに、法人と取引関係に立つ第三者の保護も図られるということもありまして、その社会的な意義は大きいと考えられます。

 また、実質的には公益も営利も目的としない団体が公益法人として法人格を付与されている現状にあるという認識を前提といたしまして、公益法人制度の健全な発展を推進する観点からも、非公益かつ非営利目的の団体に法人格を付与するための制度を整備する必要性があるという御指摘が従前からされておりまして、この法案は、このような御指摘にこたえるものでございます。

塩崎委員 一つ確認をしたいわけでありますけれども、民法第三十三条で、法人は法律で定めなければいけない、こういうふうになっているわけでありますが、営利、非営利、それから公益、非公益、こういうマトリックスで見て、今回の法律でもって、法人がつくれないところはなくなった、すべてが言ってみれば塗り絵が塗られた、こういうふうに考えてよろしいかどうかを確認したいと思います。

山崎政府参考人 お答え申し上げます。

 確かに文言上の意味といたしまして、この法案では「社員に共通する利益を図ることを目的とし、かつ、剰余金を社員に分配することを目的としない社団」、こう定義をしております。この定義からおわかりのように、公益を図ることを目的としない社団と定義はしておりません。そうなりますと、形式論理としましては、公益を図ることを目的とせず、かつ社員に共通する利益を図ることをも目的としない社団というのが漏れるようにも読めるわけでございます。

 しかしながら、現実には、この中間法人は、自分たちの利益のために活動することは当然でございますけれども、特定の第三者、不特定の利益じゃなくて特定の第三者を支援するあるいは後援する、こういうものについても活動ができるという理解をしておりまして、これは、今申し上げました「社員に共通する利益を図る」ということには当たらないようにも読めるのですが、そういう特定の第三者を支援することがその会員共通の利益であるというふうに理解をしていただければ、結局は漏れるところはない、すべてのものについて法人化が、どの形かは別として、できるということになると我々は理解をしております。

塩崎委員 ということは、中間法人というのは、公益的事業もできるし、営利的な事業もできるということであるわけですね。

山崎政府参考人 ただいま御指摘のとおり、公益的な活動もできますし、また営利活動もできるということになります。ただ、通常の営利法人と異なりまして、その利益をもって剰余金の分配をするということは禁ぜられておりますけれども、その点を除けば、経済活動をしても構わないということになります。

塩崎委員 わかりました。

 先ほど経緯という中で少し言っていただかなければならなかったのは、やはり行革的な観点から公益法人のあり方について再々問題点指摘がなされていて、今から振り返ってみれば、こういう中間法人的な位置づけの法人がないがゆえに公益法人にいろいろ潜り込んでしまったものがあったのではないだろうか。こういうことがいろいろあったと思うのです。

 古くは四十六年の行政管理庁のときの勧告であるとか、あと総務庁になってから、あるいは与党自社さの時代の行革PTからの提言であるとか、そういう中で、この公益法人が隠れみのになりながら、本来の公益法人がやるべきことではないことをたくさんやってきた。こういう経緯があったと思うわけでありますが、そういうこともあって、この中間法人というものをつくらなければいけないという認識は、大臣、お持ちでいらっしゃると思いますけれども、いかがでしょうか。

森山国務大臣 それも大きな一つの要因でございます。

塩崎委員 ということであれば、去年の十一月に私ども自由民主党の行革推進本部の中で、今後この公益法人改革をどうするのかということをまとめたものがございますが、その中で、言ってみれば公益法人をもう一回見直して、今政府でももちろんやっているわけでありますが、石原大臣のもとでやっているわけでありますけれども、行政あるいは独立行政法人に本来戻すべきじゃないかというもの、あるいは、今お話ありましたけれども、営利法人が本来やるべきものも潜り込んでいたということで、そちらにやはり仕分けをしていかなければいけないもの、それから今回の中間法人になるもの、こういうふうに分かれていくことになるのではないかと思うわけでございますけれども、今後、これを公益法人の行政のあり方としてどういうふうにしようとされているのか。

 それについてちょっとお伺いをしたいと思うわけでありますけれども、そもそも今回、今申し上げたように、公益法人から中間法人に移るために何をしたらいいのかという条件についてなどは特に定められていないような気がするわけでありますけれども、この法律をつくったがゆえに、これからの公益法人行政をどういうふうにしようとしているのか、その辺についてちょっと明らかにしていただきたいと思います。

山崎政府参考人 ただいま委員御指摘のとおり、公益法人から中間法人への移行というか組織変更の規定でございますけれども、これは全く置いてございません。

 この理由でございますけれども、結局、今御指摘がございましたように、公益法人のあり方の問題として、公益法人としてそのまま残すのがふさわしいというものもあろうかと思います。あるいは独立行政法人、あるいは国が直営でやるものとか、それから株式会社あるいは有限会社になるもの、それから中間法人になるもの、その仕分けがまだ政府全体としても行われていない。それから、どの法人がそういう範疇に入るかということ、その場合に財産はすべて移行できるのかどうか、そういう問題についても、まだ全くきちっとした議論が行われていないという状況でございます。そういう中で、大方のコンセンサスが得られるような組織変更の規定、これを設けることがまだ議論としては不十分の状態であったということから、この規定を置かなかったわけでございます。

 もう一つ、今後の問題としてどうかということでございますけれども、まず受け皿を設けまして、受け皿を設ければ今後移行することも可能になるわけでございますけれども、政府全体としてその仕分けをきちっとし、どういう形態で移行させるか、そういう議論がきちっともう少し行われるべきだろうというふうに考えておりますし、それがきちっとなった段階で法律的な手当てが必要であれば、これは別途また法律を設ける。その関係で法務省で関与すべきところがあれば、法務省も積極的にやっていく、こういう認識でおるわけでございます。

塩崎委員 さっき申し上げたように、この経緯の中で、昭和四十六年の勧告であるとか、その後も昭和六十年、平成四年と勧告がちゃんと正式に出てきているわけで、今民事局長さんは、全く議論していないというか、そういうようなことをおっしゃるけれども、二十年、三十年指摘され続けて、つまり、今までの狭義の公益法人の場合には税の恩典がもうはっきりしているわけであって、言ってみればタックスエクスペンディチャーとして、たまりにたまっているものというのは、それぞれ本来そこにあるべきものじゃない組織にはたまっているわけですね。

 当然、そういう問題点があっていろいろな勧告が出されてきたと思うわけでありますが、今回、中間法人というものをつくることによって、これから新たなものは当然仕分けをしながら、あなたは中間法人ですねということで行ってもらうのでしょうけれども、今までの既存の組織をどうするのかということについて何も議論していないということを余り自慢げに言われると、我々としても、血税をまけてきたわけでありますから、ちょっと寂しい思いがするわけであります。特に、今までたまってきた財産の問題についてどうするのかというのは、まだ全くどこでもやっていないということでありますけれども、それではちょっと余りにも無責任ではないかなという感じがするのですが、その辺は一体省内はどこで議論しているのか。

 あるいは、後でまた公益の問題については大臣にお尋ねしたいと思うのですけれども、公益法人という器は法務省は責任があります、要するにあとは悪いことをした中が悪いのですというのは、それはKSDみたいなときには当てはまるかもわからない。しかし、器を与えたがゆえに税制上のメリットというものを与えてしまったということは、やはり法務省としても反省をしなければいけないことで、税とこの法人の性格とが全くダブっている形でやってきたということであれば、これについて何も議論していないというわけにはなかなかいかないと思うのですけれども、いかがですか。

山崎政府参考人 先ほどの発言を訂正させていただきます。いろいろ議論は長年続けてきているわけですが、なかなか結論が出ないというところでございまして、私もその発言は訂正させていただきたいと思います。

 今後につきましては、この公益法人を、各行政庁それぞれに所管のものを持っているわけでございまして、まずそれぞれの行政庁でどういう仕切りをするかということが御議論されるべきだろうと思いますし、また、その総体を政府全体として取りまとめるということになろうと思います。私ども、この中間法人あるいは公益法人を持っている所管の法務省といたしまして、そういう移行に関して法律上の手当てがいろいろ必要であれば、私どもも十分検討していきたいというふうに思っています。

塩崎委員 公益法人については、長い間、そもそも民法三十四条というのはもう百年たっているわけでありまして、それがゆえにいろいろな問題が起きてきたということについては、民法を所管する法務省はそういう責任をもう少し感じていただいて、やってもらわなければいかぬのではないかと思いますけれども、横内副大臣、いかがでございますか。

横内副大臣 委員のおっしゃった点は、大変に大事なポイントだと思っております。今回は、中間法人という、非営利それから非公益のそういう分野が欠缺、欠けているものですから、そこのところを一つ法人として法人化できるようにするということで立法化をするわけでありますが、本来の公益法人の部分で非常に本来の趣旨に合わないようなものがある、これをどうするかというのは、もう一回、全体を整理し直してみる必要があると思います。

 この辺は、総務省も含めて政府全体の課題だと思っておりますので、法務省としてもそういう立場で取り組みたいと思います。

塩崎委員 ありがとうございました。

 今さんざん公益という言葉が出てまいりました。大臣に、そこでちょっとお尋ねをしたいと思うわけでありますが、公益というのは一体何であろうか、だれが公益かどうかということを決めるべきなのだろうか、こういった点についてちょっとお伺いをしたいと思います。

森山国務大臣 大変広範な、哲学的な御質問で難しいのでございますけれども、民法第三十四条に言う公益のことでございますとすれば、一般に社会全体の利益、あるいは不特定多数の者の利益を意味するというふうに解釈されるのではないかと思います。

 また、この三十四条では、「公益ニ関スル」と規定されておりますが、その意義につきましては、条文上の文言よりも厳格に、公益を目的とするという意味であると解釈されておりまして、公益の内容というのは非常に広範でございますけれども、この条文におきまして、祭祀、宗教、慈善、学術、技芸の五項目が例示されているほかは限定されておりません。行政運用上は主務官庁の判断に任せられているというふうに理解しております。

塩崎委員 結論的に言えば、主務官庁すなわち政府、行政府が、何が公益で何が公益ではないかということをこれまで決めてきたということだと思うのです。それによって税の恩典を与えるかどうかということも決まってきたということでありますけれども、公益というのは定義が非常に難しいと思います。

 今いみじくも大臣は、法律上は、こうおっしゃったわけでありますけれども、人間というのは法律をいつも考えて生きているわけではなくて、普通の生活をしている中に法律、法秩序というものが貫徹をしているということだと思うのです。

 最近、NPOというのが非常に流布されてきて、私ども地元でもいろいろな形でNPOに、私自身もかかわっておりますし、自民党の中で外交部会長というのを私やっておりましたけれども、今NGOに関する小委員会というものの小委員長もやっております。これも、基本的にはNPOの法人格を持ったところがやっているわけであります。

 NPOあるいはNGO活動の中で言われていることというのは、やはり社会の中での公益の定義というか、あるいは、だれがその公益を認めるのか、あるいは、だれがその公益を担うのかということについて、国内的にもあるいは国際的にもだんだんかなり変わってきているのではないのかなというふうに思うのですね。

 NPOというのは一応公益となっていますけれども、去年の年末、税調などで議論したときには、NPOにもいろいろありましてねと大蔵省が説明するわけです。例えば趣味の会なんかもありますしと。趣味の会というのは公益なのかなというのはややちょっと疑問に思ったりもするわけでありますが、そういうことで、いろいろな形で今公益というのがあり得るし、そしてだれがそれを担うのかということも、今までは、言ってみれば、国家、行政、あるいはお上が認めたところだけが担うということだったと思うのですけれども、必ずしもそうではないものがある。

 そういう中で、法的には、例えばNPOだったらNPO法人がその公益を担うということになると思うのですけれども、そういう変わり行く中で、公益の幅も広がり、担い手も広がる中で、今回のようにマトリックスとして、公益かどうかという分け方でどこまでもいけるのかどうか。

 つまり、民法三十四条というものも百年もたっているわけでありますし、明治の三十何年だったと思いますが、そのまま社会が来ているわけがないわけであって、国際的に、例えば日本のNGOがインドの地震のときに頑張って救援活動に従事するというようなこともいろいろ考えてみると、法人もなかなか今のような分け方では公益というものを定義し切れないのではないだろうか。むしろ、営利か非営利かというのは割合わかりやすいわけであって、そういう分け方をしながら、公益というのは何なのかということを。

 実はNPO法人のときにも、では税の恩典をだれに認めさすのかとか、結局国税になったわけでありますけれども、いろいろな考え方があったと思う。まだ定まっていないと思います。ですから、そういうことを考えてみると、民法第三十四条でこういう公益をお役所が決めるということについても考え直すときにそろそろ来ているのではないのかな。もう少しふわっとした準則主義、今回は準則主義で中間法人はできるわけでありますけれども、なおかつ問題は、KSDのように器を上げたけれども中身でひどいことをやるというようなことがあるわけですから、当然情報公開もそれぞれ法人がしてもらわなければいけないと思っております。

 それから、税の扱いというのは、だれかが公益性を認めた上で他と差をつけるということだと思うのですが、そろそろ本格的に、今回中間法人をつくることで、さっき言ったように、塗り絵は全部塗られるということでありますから、これはこれでいったらいいのだろうと思いますけれども、この三十四条の公益性というものについての根本的な考え直しというものをぼちぼちした方がいいのではないのだろうか。新しい社会に合った物差しというものを持ち直すべきではないのだろうかと私は思っているわけでありますので、その辺についての大臣の御所見をお伺いしたい、こう思います。

森山国務大臣 先生の御見識、大変傾聴に値すると思います。

 民法も百年たっているとおっしゃれば、本当にそのとおりでございまして、法律上に言うところの公益にも、現実の社会のありように合わせて範囲が広がってきているということは確かでございますので、おっしゃるような点を十分踏まえながら一つ一つ考えていく必要があるのではないかというふうに考えます。

 ありがとうございました。

塩崎委員 国家は共同幻想かなんという青臭い議論を昔はよくしたわけでありますが、それぞれの地域地域で、あるいは国全体でもいいわけでありますけれども、やはり、最近のはやりの言葉で言えば、ガバナンスの仕組みみたいなものが本当に随分変わってしまってきているんだろうと思うんです。そして、今、介護保険が始まっておりますけれども、一般の幅広い、新しい人たちが、例えばその一つの地域なら地域のガバナンスというものを担ってきている。それを担っている人は、まさに公益を多分担っているんだろうと思うんですね。

 そういうものをいろいろ考えてみると、小さな地域から国家に至って、さらには世界全体考えてみても、あらゆるところでガバナンスの変化というものが進んできておると思いますので、その中にあって、百年の歴史のある民法をしょっている法務省としても、ぜひとも真摯な議論を始めていただいて、新しい時代にふさわしい法体系というものをつくってもらいたいなというふうに思っております。

 もう時間でございますので、これで質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

保利委員長 次に、上田勇君。

上田(勇)委員 おはようございます。公明党の上田でございます。

 きょうは、中間法人法の法案の中身に入ります前に、先ほど塩崎委員の方からもお話がありましたが、今般、ハンセン氏病訴訟についての控訴断念という決定を政府としてされまして、大変すばらしい決断であったというふうに称賛しているところでございます。私も強く望んでいた方向でございますし、また、我が党もそうでありますし、各政党からもいろいろな働きかけがあったことだというふうに承知をしております。小泉総理、森山法務大臣、また坂口厚生労働大臣初め皆様の御努力に本当に感謝を申し上げる次第でございます。

 先ほど法務大臣の御所見を伺いまして、とりわけ法秩序を守るという職務上熟慮をされたということでございまして、本当にそうした心情というのは御推察申し上げる次第でございます。

 もう先ほど御所感はいただいたんですけれども、何かつけ加える点とかございましたら、一言いただければというふうに思います。

森山国務大臣 先ほど申し上げたとおりではございますが、この検討している間、大変多くの方に御心配をおかけしまして、また、いろいろな御意見をちょうだいし、大変私どもも深く考えさせられる非常に重要なことでございましたし、まことに貴重な経験をさせていただいたというふうに思います。

 異例の決断で総理があのような結果を出されたわけでございますが、その心情そして政府の立場というものを国民が、多くの方が理解をしてくださいまして御協力いただけるようにと心から願っております。

上田(勇)委員 政府声明では、判決の主な法律上の問題を二点挙げられております。

 こうした問題を含みながらこれで判決が確定するということになると、どういうような影響があるのか、何らかの支障が生ずるようなことになるのか。そういった懸念があるので、あえてこういう声明を出されたということなんだというふうに思うんですけれども、そういう御懸念について、法務省の方からひとつ端的に御説明をいただければというふうに思います。

都築政府参考人 今回の判決には、国会議員の立法不作為を広く認めました点、あるいは除斥期間等々、国家賠償法あるいは民法の解釈の根幹にかかわる法律上の問題点があろうかと思います。

 御質問の関係で申し上げますと、例えば、今後の国政のあり方あるいは国民の権利義務関係、また、他の訴訟への影響があるのではないかと考えられます。

上田(勇)委員 ありがとうございます。

 いずれにしましても、今回の政府の御決断は、原告の患者、元患者の皆さんだけではなくて、多くの国民が本当に安堵しているというか喜んでいる結果だというふうに思いますので、改めて森山大臣初め皆様方の御努力に賛意を表するものでございます。

 さて、それでは法案の中身の方に入らせていただきます。

 最初に、総務省の方に来ていただいていると思うんですが、総務庁の、当時の総務庁ですね、昭和六十年九月十日付の文書で、公益法人の指導監督等に関する行政監察結果に基づく勧告というのがございまして、この中にはこういうふうに書いてあるんです。「民法では、特別法によるもののほかは、公益に関しない非営利法人すなわちいわゆる中間法人の存在を認めていない。このため、かって「公益ニ関スル」の概念を広く解釈する等により、特定多数の者の利益を主たる目的とするものについても公益法人として許可してきた。」という指摘をしております。

 その後も、平成四年にも同趣旨の勧告が行われておるんですが、こうした勧告の意味というのは、それは、必ずしもいわゆる公益性が十分に認められていない団体についても公益法人に認可されている事実があって、そこが問題になるんだということを指摘している、そういうことを意味しているというふうに理解してよろしいんでしょうか。

塚本政府参考人 委員御指摘のとおりでございます。

 そのようなものが、同じものでありましても、片一方は公益法人の資格を有している、一方においてはそうでないものが存在するということで、アンバランスが生ずるし、また、取引、経済主体等のものとしていろいろ問題が生ずるということでございます。

上田(勇)委員 さらにこの勧告では、今のそういう事実を踏まえまして、「公益に関しない非営利団体についても、中間法人としての法人格を付与する途を開くことにつき検討すること」というふうに勧告をしております。

 この法案は、この指摘にも対応するものだというふうにも思われるんですが、これら一連の総務庁からの勧告と今回のこの法案との関係性についてはどういうふうに理解されておるんでしょうか。

山崎政府参考人 委員御指摘の昭和六十年の総務庁の勧告、あるいは平成四年のものもございますけれども、そこに中間法人のことがうたわれておりまして、私どもといたしましては、その勧告について、それを履行するものであるということで考えております。

上田(勇)委員 勧告を履行していただくといったら、今回のことということなんですけれども、昭和六十年というと相当前のことですね。これは十六年前ですか。昭和六十年から何回かこういう公益法人の適格性についてこうした問題が指摘をされてきて、さらに具体的に、中間法人としての法人格を付与する必要性、ここまで勧告が行われていたにもかかわらず立法化するまでに十五年以上もかかった。そのおくれてきた理由というのはどういうところにあるんでしょうか。

山崎政府参考人 確かに十五年、大変長い期間でございまして、これで速やかに対応したと言えないということは重々反省をしております。その点は肝に銘じたいというふうに思っておりますが、ただ、私ども、これを受けましていろいろ検討は内部でしておりました。今回も、この法案は二種類の受け皿を用意しているわけでございますけれども、実は、中間法人に入ってくる法人の活動というのはさまざまでございます。大きなものから小さなもの、その態様もさまざまでございまして、これを全部対応できるようにするかどうかということ、その辺のところが極めていろいろな検討が必要であったということは間違いございません。

 それからもう一つは、中間法人がどうしても必要だという分野、喫緊の課題としてあろうかと思いますが、そういうところについては個別に手当てをしてくるという方針をとってきたわけでございます。現に、昭和六十年代でございますが、具体的には年数はちょっと記憶しておりませんが、地方自治法の中で、地縁団体につきまして法人格を与えるという法律が成立しております。これはもちろん自治省の所管でございますけれども、私ども法務省も御協力してこれはでき上がってきた、こういう流れがございます。

 そういうようなことで、今までなかなか進まなかったという状況でございますが、最近のいろいろな御指摘を踏まえまして、とにかく、中間法人としての受け皿があれば法人となりたいという御希望が相当あるというふうに理解をいたしまして、今回まとめて提出させていただいた、こういう経緯でございます。

上田(勇)委員 まさに随分前から、いわゆる営利とそれから公益との中間の部分がないんだ、こういうふうな指摘があって、そうした問題点があらわれてきた一つの例が、いわゆるNPO法。NPOに法人格を付与するという法律をつくろうという動きが、数年というか五、六年前からずっとあって成立をしたわけなんですけれども、その際に、本来であれば、今回の中間法人の性格に近いような形で、目的だとか余り限定せずに、しかも準則主義で法人格を付与するような法案がつくれればよかったんでしょうけれども、結果的には公益性に限定されたものになってきた。そういう意味では、先ほどお話がありましたけれども、すべての団体をカバーできるような法律が整備されたということは、ようやくこれで全体が完成したのかなという感じがいたしております。

 これまでに公益法人として認可されている法人の中にも、必ずしも公益性が十分認められないものがある。先ほど総務省の方からもお話がありました。これと同じような性格の団体というのは、これからは、法人格を付与するときは中間法人ということになるんだというふうに思います。

 中間法人というのは税制上は普通法人ですから、営利企業並みに課税されるので公益法人よりも重くなるということだというふうに理解しておりますので、これからのことについては、公益性がそういう意味では厳しくチェックをされるということなんだろうというふうに思うんですが、そうすると、今まで認可されていたものについてはどうするのか。これはやはり公平性を確保する必要があるので、現在既に公益法人として認可されている団体についても、やはりこれは改めて公益性を各省庁で見直していただいて、それをチェックして、それに該当しない団体については中間法人への移行を促すというようなことを政府全体としてやっていかなければいけないんではないかというふうに思っております。

 ただ、そうなると、ちょっとさっきの質問にも関連するんですが、今回の法案の中には、今の公益法人から中間法人に移行していくような手続は含まれていない。先ほど理由は伺ったんですけれども、これはやはり、一つは随分前からこういう問題が指摘されているということと、それから、とりわけ今公益法人のあり方についてはいろいろ見直しをすべきであるという意見が非常に高くなっているときでありますので、今回、移行手続が整わなかったという事情についてはよくわかりましたけれども、今後速やかに公益法人の見直しが行われていくと、移行していくものが当然今までのいろいろなお話を総合していると出てくるんではないかというふうに私は思うんです。そういう意味で、今度は本当の意味で速やかに、移行手続を整えるための準備をしていただく必要があると思うんですけれども、今後の見通しについて、いかがでしょうか。

山崎政府参考人 今後の見通しの問題でございますけれども、私ども、法務省の立場で物を見ておりますので、政府の動きを全部把握しているわけではございませんけれども、現在のところ、予定がどういうふうになっているかというところは、いつごろというはっきりした線は出てきていないというふうに私は理解をしております。

 ただ、個別の各省庁でいろいろ御議論されていることだろうと思いますし、また、それぞれ各政党等でいろいろ御議論が進められているというふうに承知をしておりますけれども、具体的な計画というのはまだ定まっていないというふうに理解をしております。

上田(勇)委員 今、今後のことはちょっと未定であるということだったとしますが、公益法人のあり方については、とりわけKSD問題などがあって、運営ももっと適正化していかなければいけないし、事業の内容についても見直さなきゃいけないということがいろいろなところで議論をされまして、三月八日には与党三党で、公益法人の運営の適正化に関する合意もできているわけでございます。その中で、その主な点というのは、今ある公益法人の中身、運営のあり方、さまざまな手続、いわゆる役員のあり方だとか諸手続のあり方など、あるいは監督官庁の監督のあり方など、そういったことについて述べているんです。

 ただ、今いろいろな公益法人にそういうような適正化を進めていくと、どうしても公益性という範疇にはおさまらないものが出てくるんだろう。そうすると、今回、中間法人というのができた、そうなると公益法人から中間法人に移行していくというプロセスがないと、公益性はないから公益法人の認可は取り消しますと言っても、団体はあるわけですから、その法人格がなくなっちゃうというのでは、これは逆にそういう適正化のプロセスが進みにくくなるんじゃないかというふうに思いますので、それは法務省だけの問題ではないんですが、もちろん総務省、法務省を含めて内閣全体でこの問題をぜひ御検討いただければというふうに思います。

 それで、そういうようないろいろな不備な点、未整備な点もまだあるんですけれども、私は、この法案ができたということは、これは長年のそういう指摘を踏まえてのことであって、今後の検討もあるんですが、少なくともこれから設立しようとする団体については公益法人ではない別途の法人格が与えられるし、これから移行手続などの整備が進めば今までの洗い直しということにもなるので、よく言われておりますいわゆる公益法人の改革に大変資するものではないかというふうに認識をしているのですけれども、この辺の御認識は、法務大臣、いかがでしょうか。

森山国務大臣 公益法人の問題については、今いろいろ御指摘がございましたようにさまざまな課題がございまして、いろいろな問題点を整理していかなければいけないと思いますが、その中の一つ、第一歩として中間法人というものを設けるというのがこれからの改革のための受け皿として役に立つのではないかというふうに思いますので、もちろんこれでおしまいではなく、これがスタートであるというふうに理解しております。

 そのような考え方で、今後とも、正しい公益法人のあり方というものは、政府を挙げて、あるいは社会全体で考えていくべきことだと思います。

上田(勇)委員 どうかよろしくお願いいたします。

 それで、次に今回の法案の内容についてちょっとお伺いをいたしますけれども、今回の法案で中間法人には二類型が認められております。いわゆる有限責任中間法人と無限責任中間法人、この二つがあるのですが、これらの違いをひとつ端的に教えていただきたいということと、なぜこの二類型として立てたのかということ。また、今この中間法人として設立を予定されているいろいろな団体がございます。いろいろな例示をしていただいたのですが、そうした中で、どういうようなものが有限責任中間法人になって、どういうようなものが無限責任中間法人になるのか。ある程度の想定はされているのだというふうに思うのですけれども、そのあたりをまとめて御説明をいただければというふうに思います。

山崎政府参考人 ただいま三つの御質問がありましたので、ちょっと答弁が長くなるかと思いますが、お許しをいただきたいと思います。

 まず、委員御指摘のとおり、この法案におきましては有限責任中間法人というものと無限責任中間法人という二つのものを用意してございます。有限責任中間法人といいますのは、会社でいえばほぼ有限会社に近いものということでございます。それから無限責任中間法人は合名会社に近いもの、こういうふうに頭を整理していただければというふうに思います。

 その大きな違いでございますけれども、有限責任中間法人につきましては、その法人だけが債権者に責任を負うということで、その社員であります構成員は責任を負わないというタイプのものでございます。無限責任中間法人、これに関しましては、法人で債務を支払われない場合には社員である個人も責任を負う、こういうタイプのものでございます。

 有限責任中間法人につきましては、社員総会というものを設けまして、法定の事項あるいは定款で定めた事項について決議をするということでございまして、その決議に従って行動するのは理事でございます。それから監事も必要である。いわゆる監査役に当たるものでございますけれども、こういう形をとっております。

 それから、有限会社でございますと資本金というものがございますが、この中間法人は営利を目的とするものではございません。しかし、対債権者との関係で財産的な基礎を築くということが必要になりますので、それで基金というものを設けまして、これを三百万円、有限会社も資本金は三百万円でございますが、それと同じものを要求しております。あとのシステムはほとんど有限会社に似たものということでございます。

 それから無限責任中間法人に関しましては、この法人の業務は社員の過半数によって決めるということで、各社員が業務の執行に当たる、それぞれ権限を持っている、こういう形で構成をしているわけでございます。

 それで、この二つのものをなぜ設けたのかということでございますけれども、これは、かなり規模の大きいものと、それからそれほどでもないものと、大きく分けてその二つを意識いたしまして、やはり大きな人数の団体でありますと社員が個々にそれぞれ活動をするということは余り現実性がないわけでございますので、社員総会というものを設けまして、その中で理事を決めて現実に行動していくというタイプがいいだろうということでございます。

 それから、非常に小さい規模、これはそんな社員総会のような大きな仰々しいものを設けなくても、それぞれの個人、社員で相談をして活動をしていくという方が小回りがきいていいだろう、こういうことから設けたわけでございます。

 では、これがどういうタイプが当たるかという問題でございますけれども、全体の例としては、社員の共通の利益を図るということでございますので、いろいろなものが入るわけでございますけれども、自分たちの仲間の利益、大ざっぱに言えばこういうふうにできるかと思いますけれども、典型的なのは同窓会でございます。それから同好会というものもあろうかと思いますけれども、同窓会は、これはかなり人数が大きくなるタイプでございますので、多分こちらのタイプの方は有限責任中間法人を選ぶのではないかというふうに思われます。同好会でも、かなり規模の大きいものはまさに有限責任中間法人のタイプを選ぶということになりますが、それほど人数が多くないものであれば無限責任中間法人ということでも十分活動ができるということで、これはどちらでなければならないということもございませんし、我々もどちらを予定しているということではございませんで、それぞれ、その内容に合わせて選んでいただきたい、こういうことでございます。

上田(勇)委員 ありがとうございます。

 質問は以上でございますけれども、これで中間法人という新しい制度ができて、先ほどの質問にもありましたけれども、あらゆる団体に法人格を付与できる体制が整ったわけであります。今は、民法の公益法人、社団、財団という法人もあれば、NPO法に基づくNPO法人もある、そのほか特別法に基づいていろいろな団体の法人格があるわけです。そういう意味で、公益法人のあり方というのが今見直しになっているのですが、それだけではなくて、NPO法人、またこの中間法人も含めて、やはりもう一度、どういう内容の団体がどういう法人格なのかというのは、ひとつ体系的に見直して、それに的確な税制だとか、そういったことも、これは法務省だけの話ではないのですけれども、全体として検討していかなければいけない課題として残ったのではないかというふうに思っております。

 特に、これからの時代にこういう非営利の活動の社会における重要性というのがますます高まってくることだというふうに思っておりますので、また私たちも含めて検討していきたいというふうに思っておりますので、今後ともどうかよろしくお願いいたします。きょうはありがとうございました。

保利委員長 次に、西村眞悟君。

西村委員 民法の三十四条を基本法とする現状の法人体系においては、このたび提出されました中間法人法が成立される必要性は強く認めております。したがって、この法案に賛成しておるわけでございますが、これからちょっと立法論について大臣の御所見を伺いたいと思っております。

 問題は、この中間法人法を成立させた上で、我々立法府としては、法人に関する制度を民法三十四条改正を視野に入れた上でいかにしなければならないのかという問題であろうかと思います。

 民法三十四条から出発しておりますので、この法律の名称が示しておりますように、中間法人、今の体制では法人化できないものを法人化する。その内容は、先ほどの御答弁のように、いろいろなさまざまなものである、あらゆる同好会を含み、あらゆる同窓会を含み、さまざまなものであるということでございますね。これでほとんどの法人成りができるのだと思いますけれども、この網に漏れたのはまたその他の法人法をつくらねばならないかもわかりません。

 こういう事態ですから、権利能力というものはいかなる要件で付与されるのかという根本にさかのぼって議論してみたいと思います。

 さて、権利能力の主体は、自然人、法人、この二つしかございません。自然人は出生によって始まります。さて、法人はいかなる基本的要件を満たせば法人成りを許すことができるのか。これは法人という団体の行動がなければならない。ということは、ある自然人の行動がその法人の行動とみなされる規則をもって運用されていること、それから、さっき有限責任、無限責任という言葉が出てきましたけれども、対外的債権者から見てその債権が保護されるような体制をとっていること、この二つの要件であろうかと思います。

 ところで、大臣の御所見を伺いたいんですが、法人格取得の要件は私が今申し上げたものであって、その法人がいかなる活動をするかということとは次元を異にする問題ではないか。反対から言えば、もし民法三十四条のように、法人の活動そのものの内容が法人格付与の要件であるとするならば、中間法人法を出してきてこれは準則だということとは自己矛盾を来してくる。したがって、法人の活動内容と法人格取得の要件は論理的に別だということにはなりませんでしょうか。

森山国務大臣 大変難しい御議論でございまして、これは法人に関する民法学者の範囲ではないかというような感じがいたしますが、おっしゃるようなお考えも傾聴に値するというふうに思いながら承っておりました。

西村委員 仮に活動内容を要件とするならば、今、各種の社会福祉法人、医療法人、また公益性大ならば許認可によってする、公益性がそれより少なければNPO法の認証だ、そしてそれ以外は中間法人で準則だというふうな、まちまちの基準があること自体がおかしいんですね。もし活動内容がその要件なら、それは許可であると、一点において統一されねばならないですね。これが統一されていないということ自体が、法人としての権利能力の取得に活動内容は関係ないんだということの前提がまずあるんだ、こう思っております。

 専門家がおられて御答弁されたいような風情を見せられて、私も法律家の端くれですが、十年間実務しておりません、頭の脳みそが少々つるつるになってきておりますので、御所見をお伺いできれば。せっかくいらしておられるんですから。

山崎政府参考人 答弁の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 この点に関しましては、委員御指摘の考え方があるということは私も十分承知はしております。

 ただ、我が国においてはこの百年以上それとは全く違う方式をとってきたわけでございます。世界的に見ても、さまざまな方式、ばらばらな形で、それぞれの歴史、文化に根差しているというところだろうと思います。

 私ども理解しているのは、結局、ある法人に人格を与えるかどうかというのは、その目的によって、場合によっては、組織のあり方、規律の仕方、それから第三者の保護の仕方、それぞれが違ってくる可能性がございます。そういうところを事前にチェックして、法人の乱用がないように、あるいは、取引をする債権者が迷惑をしないようにとか、そういうことからこのようなシステムを入れたんだろうと思います。

 それで、今現在、準則主義をとっているもの、もちろん会社でございますけれども、この辺のところは、通常一般人が行われる営利活動でございまして、最終的に、その債権者が迷惑しないようなシステムと、それからあと、利潤を配当するわけでございますので、そのところの組織規程をきちっと置いておけば、何も国が関与しなくてもやっていけるということからそういう主義をとったということで、それぞれの法人の目的によって使い分けをしてきたということで、それも一つの合理性があるんではないかというふうに私は思っております。

西村委員 法律実務専門家としての御意見は、本当にそのとおりでございます。

 この質問の前提は、民法三十四条、非営利の法人に関する基本原則の改正を視野に入れた立法論としての議論でございます。この前提から出発させていただいておりますので、御了承いただいた上で議論を進めたいと思います。

 さて、今の現状では、今局長がお答えになったように、公益性のチェックによって許可になったり認証になったりするわけですね。出発点で公益性の分類をして生み出していくわけです。この中で何が起こっておるのか。結果、実態において、スタート地点で公益性を認めて出発させた法人が、その活動の実質が無益法人であり私益法人であり、はたまた不祥事を起こすという事態に我々は遭遇しておる。反対に、スタート地点では公益性はないというふうに認める今の中間法人、この活動実態が極めて公益性の高い活動をしておる場合もこれありでございます。同好会が、単なる自分たちでプラモデルの飛行機を飛ばすということだけではなくて、その広場の清掃を毎日行う、これは極めて公益性の高い活動でございます。

 数え上げれば、人間の創意工夫によって人の役に立ちたいという人間の思いがある以上、あらゆる法人、人の団体がその活動の実態において公益性の高い活動をするし、またそれを奨励しなければ、我々の真の福祉国家は実現できないわけでございます。営利法人においても極めて公益性の高い非営利の活動を展開する、これはまさに我々が目にしているところでございます。

 出発点において公益性が高いと見て、税制においてはこの法人は法人税二二%である。出発点において公益性は小なんだ、また、NPO、ないんだといって出発した法人は一律法人税三〇%である。しかし、今申し上げたように、活動実態は、人間が人の役に立ちたいという思いを持っている限り、極めて公益性の高い活動を、営利、非営利、中間法人、NPO問わずなす可能性があるわけです。

 我々は、この実態に着目して、この実態に何らかの評価を与えなければ、先ほど言いましたように、真の助け合いの、人の役に立つ行動が奨励される社会は生まれてこないんだろうと思うんですね。

 したがって、今私が申し上げたことに質問が含まれておるんですが、現行法のように、出発点における公益性の大小、有無によって法人を分類して生み出してしまえば、その活動実態に即し極めて不公平、極めて不合理な結果が招来されるのではないでしょうかということでございます。この実態はございますと私は思いますが、大臣の御所見はいかがですか。

森山国務大臣 お尋ねの件は、現行の公益法人について、設立したときに公益目的があると判断されれば、その後の活動がいろいろ変化があり多様になってきても課税上の優遇措置が受けられるのは不合理ではないかという御趣旨かと思います。

 この点、民法について申しますと、公益法人の設立について主務官庁による許可主義を採用しておりますだけではなくて、設立されました後の公益法人の事業活動についても主務官庁の広範な監督に係らしめているわけでございまして、そのような方法によって公益性を確保するという努力をしているわけでございます。

 この主務官庁の監督権限の適切な行使のために、平成八年九月、公益法人の設立許可及び指導監督基準が閣議決定されているというところでございます。

西村委員 KSD問題を例に挙げて云々するわけではないですけれども、やはり今御答弁なさった体制においてもこのような問題が起こって、公益法人全体の見直しを今しなければならないのかという問題意識があるということでございますね。

 大臣御答弁の反対側からまた御確認させていただきますが、今、公益法人についての出発点のチェック、運用過程におけるチェックを申されました。そして、公益性を確保しておるのだ、したがって税法上の特典、法人税二二%なのだ、不合理はないのだという御趣旨だったかもわかりません。

 では、公益性がない中間法人、許可に係るいわゆる民法三十四条の公益法人よりも公益性が低いNPO法、そこで出発させた法人が極めて公益性の高いことをしておる、本当に市民のボランティア、市民の力を結集し、仲間の力を結集して実に公益性の高いことをしておる、これに対する評価は抜けているのじゃないですか。

森山国務大臣 中間法人あるいはNPO、そのような法人が、おっしゃるような非常に公益性の高い活動をして、それが実態である、公益法人としてふさわしい条件を備えるようになり、その法人もそれを希望するということであれば、活動実態によりまして公益法人への道が開かれていると思います。

西村委員 そう言われれば、どうなのですかな、身もふたもない。しかし、本当に面倒な官に対する許可をいただく手続を、極めて我々がこうべを垂れねばならない公益活動を自主的にされている団体がしなければならないのか、我々はそこまで官僚統制の社会をこれから続けるのかということでございますね。

 その特典を欲しければお上の許可をもらいなさいということでいいのだ、パイプはと。そこに、私が先ほど出発点で大臣に立法論としてお聞きした、法人の権利能力取得の要件と活動内容はもうぼつぼつ離して考えてしかるべきだ。そして、大臣がお答えになったように、その活動実態が公益に即しているかどうかをチェックする体制にあるとおっしゃった。そのチェックする体制を、単に出発点において許可に係らしめた公益法人のみではなくて、社会のあらゆるところで公益のために活動している団体に対して評価するために、チェックするためではなくて、それを評価するために運用していく社会をつくるならば、本当に自発的な創意工夫のある活動がどんどん生まれていくと私は思うのです。これが真の福祉社会実現のための基礎ではないかとまで私は思うのですが、現在の体制がかくある、かくあるから心配ないとか、そんな御答弁じゃなくて、立法論として、私の今申し上げたことを大臣はいかに評価されるかどうか、お聞きいたします。

森山国務大臣 先生の御趣旨はよく理解しているつもりでございます。おっしゃるような考え方も十分あり得ると思いますが、先ほど局長が御答弁申し上げましたとおり、現在の日本のシステムは百年以上前からの歴史がございまして、現在の状況が次第につくられ安定してきたわけでございますので、この中間法人法につきましては、今の状況を少しでも改善するという、今の状況を前提にした上でさらに民間の活動を活発にするべきであって、そのために欠けているものをとりあえずこのような形で補おうという考え方かと思いますので、これはまず新しい考え方の第一歩というふうにお考えいただきたいと思います。

西村委員 現在の制度を前提にした中間法人法の必要性は十分認めております。

 これが新しい第一歩ではないのですな、中間やから。中間やから、内容は何でもええから、同窓会でも何でも法人になりたい、なってくれ、今までそんな制度はなかった、こういうことですやんか。今度は、これで漏れたやつは、先ほど言いましたように、その他の法人法をつくらないかぬ、その他の法人法をつくったらすべてが含まれる、モザイクのようにこうなってきました。

 モザイクのようにこうなってきましたけれども、繰り返しますが、根本に返れば、出発点で法人を分類していく、こういうことよりも、非営利の法人については、欧米がやっているように、活動の実態に即した各種の措置を用意しながら、出発点においてはすべて準則主義でやるのだ。そして、何をやっているか、社会にいかなる有用なことをやっているか、これを我々は評価する行政の体制をつくるのだ。そして、その活動実態に即して行政が評価することによって、国民の中での創意工夫というものが一挙に活性化し、福祉国家という活力ある助け合いの社会をつくることができるのだ、私はこのように思っております。

 「行政委託型公益法人等改革の視点と課題」という書き物がございますけれども、この中にも、法人の類型から能力主義への転換だ、行政が委託する事務は営利法人に委託したら極めて能率的にやれる場合もあるのだと。たびたび例に出しますが、KSD等のところが、お上が許可したから大丈夫なのだというよりも、本当に行政が事務を委託するのは営利法人でもいいのだという意見もこれありなのです。

 したがって、非営利法人についても、今現状の法解釈を離れてこの中間法人法を成立せしめた上で、我々が将来の我が国活性化のために、法人のあり方自体、人は個人として行動するよりも仲間と行動することによって多くの知恵と多くの力を発揮することができる、この体制をいかに我が国の制度の中で育成していくのかという問題点でございます。

 御答弁をいただいて終えたいと思いますが、繰り返しますが、出発点で類型化していく今の制度が、百年、百年と言われますが、やはりもうぼつぼつ転換し、別に外国のモデルを言っているわけではないですが、ボランティア活動は極めて活発である、また、人が人のために何かをしたいという思いがすぐ実現されるようなグループ、サークルを活発に持っているという欧米型のやり方も参考に値するんではないかな、こういうふうに思っております。私、立法府におりますので、私の問題意識としてもこれから研さんを努めますが、大臣もまたこういう問題意識の方がいいなというふうに思われるかどうか、最後にちょっとお尋ねいたしまして、終わります。

森山国務大臣 先生の基本論に立ち返っての問題意識、また問題提起、大変敬意を持って拝聴させていただきました。

 確かにそのような考え方も大いにあり得ると思いますが、また、今から新しく法人の制度をつくるというのであれば、今すぐそれをやってもいいかもしれないという気持ちさえいたします。しかし、先ほど来申し上げておりますように、よきにつけあしきにつけ、今までのいきさつがございまして、いきなり百八十度転換というわけにもまいりませんので、現状を踏まえながら、次第に改善していく、改革していくというのが現実的ではなかろうかと思いまして、このような法案を提案させていただいたわけでございます。

 大変、御高見を拝聴させていただきまして、ありがとうございました。

西村委員 だれかさんがよく使う言葉を最後に申し上げます。ウイ マスト チェンジ ツー リメーン ザ セーム。

 終わります。

    ―――――――――――――

保利委員長 次に、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 ただいま議題となっております本案審査のため、来る二十九日火曜日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

保利委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る二十九日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時二十一分散会




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