衆議院

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第16号 平成13年6月8日(金曜日)

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平成十三年六月八日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 保利 耕輔君

   理事 奥谷  通君 理事 塩崎 恭久君

   理事 田村 憲久君 理事 長勢 甚遠君

   理事 佐々木秀典君 理事 野田 佳彦君

   理事 漆原 良夫君 理事 西村 眞悟君

      荒井 広幸君    太田 誠一君

      熊代 昭彦君    左藤  章君

      笹川  堯君    鈴木 恒夫君

      棚橋 泰文君    谷川 和穗君

      松宮  勲君    山本 明彦君

      吉野 正芳君    渡辺 喜美君

      江崎洋一郎君    枝野 幸男君

      小泉 俊明君    中川 正春君

      日野 市朗君    平岡 秀夫君

      水島 広子君    山内  功君

      上田  勇君    藤井 裕久君

      木島日出夫君    瀬古由起子君

      植田 至紀君    徳田 虎雄君

    …………………………………

   議員           相沢 英之君

   議員           金子 一義君

   議員           長勢 甚遠君

   議員           根本  匠君

   議員           漆原 良夫君

   議員           谷口 隆義君

   議員           小池百合子君

   法務大臣         森山 眞弓君

   法務副大臣        横内 正明君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局東京証

   券取引所監理官)     三國谷勝範君

   政府参考人

   (金融庁証券取引等監視委

   員会事務局長)      五味 廣文君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    山崎  潮君

   法務委員会専門員     井上 隆久君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月八日

 辞任         補欠選任

  水島 広子君     江崎洋一郎君

  山花 郁夫君     小泉 俊明君

  不破 哲三君     瀬古由起子君

同日

 辞任         補欠選任

  江崎洋一郎君     水島 広子君

  小泉 俊明君     中川 正春君

  瀬古由起子君     不破 哲三君

同日

 辞任         補欠選任

  中川 正春君     山花 郁夫君

    ―――――――――――――

六月八日

 法務局、更生保護官署及び入国管理官署の増員に関する請願(水島広子君紹介)(第二四一四号)

 同(平岡秀夫君紹介)(第二四九四号)

 同(枝野幸男君紹介)(第二五一一号)

 選択的夫婦別姓の導入など民法改正に関する請願(中川智子君紹介)(第二四六四号)

 治安維持法犠牲者国家賠償法の制定に関する請願(伊藤英成君紹介)(第二四九二号)

 同(川田悦子君紹介)(第二四九三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 商法等の一部を改正する等の法律案(相沢英之君外六名提出、衆法第二六号)

 商法等の一部を改正する等の法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案(相沢英之君外六名提出、衆法第二七号)




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     ――――◇―――――

保利委員長 これより会議を開きます。

 相沢英之君外六名提出、商法等の一部を改正する等の法律案及び商法等の一部を改正する等の法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 ただいま議題となっております両案審査のため、来る十二日火曜日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

保利委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次に、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として金融庁総務企画局東京証券取引所監理官三國谷勝範君、金融庁証券取引等監視委員会事務局長五味廣文君及び法務省民事局長山崎潮君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

保利委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

保利委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田村憲久君。

田村委員 自由民主党の田村憲久でございます。商法等の一部を改正する等の法律案及びそれに関連しての関係法律の整備に関する法律案に関して、自民党を代表して質問させていただきたいと思います。

 さて、現下の経済状況といいますか、非常に日本は厳しい状況にございます。そんな中において、世界との競争といいますか、冷戦が崩壊した後に大競争時代に入っていく中で、日本の経済構造自体を変えていかなきゃならない、そういうような必要性に迫られる中で今回の法律案が提案をされてきた、そのように私は認識をさせていただいておるわけでありますけれども、与党の方でも証券市場等活性化対策でありますとか、また政府においてはこのたびの緊急経済対策、こういうものが出てまいりまして、この緊急経済対策の一環として今回の法改正が行われる、このように私は認識をいたしておるわけであります。

 まずもって、今回のこの法律、大変重要なものであるという認識はあるんですが、一番初めの質問でございますので、今回の概要をぜひともお聞かせをいただきますようお願いいたします。

長勢議員 今回の改正の概要について御説明申し上げたいと思います。

 一つの大きな目的は、自己株式の取得及び保有についての制限の見直しでございます。

 御案内のとおり、現行法体系におきましては、自己株式の取得は原則として禁止をいたしておりまして、若干緩和してきておりますが、例外的に、株式消却の場合ですとかあるいはストックオプションの場合とか、こういう特定の目的の場合のみ取得を認めておるということでやってきておりますが、今回の改正におきまして、一定の制限のもとに、取得目的にかかわらず自己株式の取得を認めるということにいたしておるわけでございます。

 その場合に一定の制限を設けておるわけでございまして、自己株式を取得する場合には、会社は、定時総会の決議をもって、配当可能利益並びに株主総会の決議により減少した資本及び法定準備金の範囲内で、次の株主定時総会の終結のときまでに取得をできる株式の種類、総数あるいは取得価額の総額を定め、その範囲で自由に自己株式を取得できる、こういうふうに規制を緩和いたしたわけでございます。

 また、この取得した自己株式も現行法では相当の時期に処分をしなきゃならぬということになっておるわけでございますが、これも、会社は、取得した自己株式は、期間、数量等の制限なく保有することができるということに改めております。

 また、第三に、保有する自己株式の処分についてでございますが、取締役会の決議により消却し、あるいは合併等の際に発行する新株にかえて使用することができるということにしておりますほか、取締役会の決議により売却処分ができるということにいたしております。

 こういう制限の見直しに伴いまして、消却目的による自己株式の取得方法等について商法の特例を定めた、株式の消却の手続に関する商法の特例に関する法律、この法律を廃止することにいたしておるわけでございます。この自己株式の取得、保有制限の見直しが大きな第一点でございます。

 もう一つ、株式の単位の見直しについての改正を盛り込んでございます。

 これは、第一に、株式の大きさに係る規制が現在行われております。つまり、発行価額が五万円を下ってはいけない、こういう規制があるわけでございますが、これを撤廃いたしまして、会社が自由に株式の大きさを定めることができるということにいたしております。

 そしてまた、額面株式の制度というものも廃止をいたしまして、無額面株式に統一をすることといたしておりますほか、また、先ほどの規制に伴いまして導入されました単位株制度を廃止をいたしまして、会社が定款によって一定の数の株式をもって一単元の株式とする、そういう旨を定めることができる単元株制度を今回新たに創設することといたしております。この単元株制度におきましては、株主は一単元の株式について一個の議決権を有する、こういうことにいたしております。

 非常に簡単でございますが、改正の概要について御説明を申し上げました。

田村委員 株式の大きさの見直し、投資単位を引き下げるという意味で、これは株式市場にとっては参加者がふえる可能性が非常に高いわけでありますから、活性化という意味から見ても影響は大きいであろう、効果は期待できるわけでありますが、一方の金庫株と申しますか、自社株式の取得、保有に関してでありますが、これが緊急経済対策として一体どのような効果を果たすのか、なかなかわかりづらいわけでありまして、ぜひともその点に関してお聞かせください。

長勢議員 経済構造も大きく変わってまいりまして、企業間の国際的な競争も激化をしておる、こういう中にありまして、今、企業の再編が焦眉の課題となっておるわけでございます。そうなりますと、会社の合併ですとかあるいは分割ですとか株式交換といったような、企業の競争力の向上を図るための企業再編というものが大変大事になってまいりまして、商法におきましても、ここ数年、これに関連する制度の整備を図ってきておるわけでございます。

 ところが、このような組織再編をするということになりますと、新株を発行しなければならぬということが起きてまいります。新株を発行するということになりますと、会社の発行済み株式総数が増加をする、またそのために一株当たりの価値というものも薄まっていくという問題がありますし、さらに、将来にわたって、配当コストが増加するといったような問題が起こるということが指摘をされておるところでございます。

 こういう問題がありますために、これらのことが企業再編のネックになるとか、あるいは企業の財務政策の機動性、柔軟性をなかなかうまく発揮できない、こういう問題がございますので、そこで今回、自己株式の取得及び保有を認めることによりまして、組織再編成に際して行わなければならない新株発行にかえて、会社の保有する自己株式を割り当てることができる、これによって、こういう問題を防ぎながら会社組織の再編を機動的に進めることができる。これは、これからの経済構造改革を進める上で極めて緊急に必要な施策である、こういう認識でおるわけでございます。よろしく御理解をいただきたいと思います。

田村委員 今、企業は再編をして生き残りをかけておる、代用自己株式を使いながら企業を機動的に再編していこうということでございまして、私も理解をさせていただきました。

 ただ、商法の原則として、基本的には自己株式の取得、保有というものを今までは認めてこなかった。例外といたしまして、株式の消却であるとかストックオプション、こういうものに対して許しておった。これを根本的に今回考え方を変えるわけでありますけれども、ある意味では、自分の資本といいますか、そういうものを要するに買い取るといいますか、株式を買い取るわけでありますから、自分のしっぽを食べちゃうみたいな、そういうおそれもあるわけであります。

 商法において資本の充実、維持というものは大変な原則でございますので、この点、しっかりとやはり経営者の方々も気にかけていただかなきゃならないわけであります。

 今回の法改正に関しまして、この点をどう担保するのか、どのような手当てがなされておるのか、お聞かせください。

長勢議員 会社の資本充実、資本維持ということが害されることがあってはならないということは御説のとおりでございます。

 そのために、今回の改正案におきましても、自己株式の取得総額についての規制もきちんとしておるところでございます。すなわち、会社は、自己株式を取得するに当たっては、自己株式の取得価額の総額について定時株主総会の決議を経なければならないということにするとともに、その総額は配当可能利益などの範囲内でなければならないということを明確にし、その規制をしておるところでございます。

 また、この改正法案では、期末に欠損が生ずるおそれがあるときの自己株式の取得を禁止いたしております。そしてまた、自己株式を取得した場合において期末に欠損が生じる、こういうことが起きた場合には取締役に一定の賠償責任を負わせるということにいたしまして、自己株式の取得によって資本の充実、維持の原則が害されないように、十分な配慮をしておるところであります。

田村委員 わかりました。

 この改正の重要性、また今のお話、資本の維持、健全性の担保、こういうものに対して手当てをしていただいておるということは理解をさせていただいたわけでありますが、今までは、どちらかといいますと、目的で自己株式の取得、保有というものに制限といいますか、例外的にこれを認めておった。今回は、原則自由ですよということで、目的も問わないというふうになっております。

 目的自身、今お話をお聞かせいただきまして、緊急経済対策として必要な目的がある、私も十分に理解をさせていただいたわけでありますけれども、同時に、取得した自己株式自体の目的、当初、緊急経済対策でありますから目的を問わないと言いながらも、企業にとってみれば目的があってこれは取得するわけでありますが、これを問わないということになっておれば、その後、この目的どおりにこれが利用されるかどうかということがわからないわけでありまして、ある意味では株主の利益を害するおそれがあるんじゃないかな、こういうことを思うわけであります。

 この点に関しては、どういう御見解をお持ちでございますか。

長勢議員 今、先ほど御説明いたしましたように、取得を自由化するということが目下の経済対策上非常に重要なことだと思っておりますが、その際、取得の目的を限定してそれに縛るということになりますと、現行の中でもそれに違反する場合の取り扱いだとか、あるいはそれが実行できない場合の取り扱いだとか、いろいろ問題も起こっておるわけでございますし、それ以上に、これから企業の財務政策の機動性、柔軟性を高める、また企業経営の選択肢をふやすということも大変大事でございますので、そういう場合に備えて、企業が経営政策として適宜に自己株式が使用できるようにしておくことが大事であろう、このように思っておるわけでございます。

 いずれにしても、自己株式が余りにも硬直的な制度となるということでありますと、先ほど申しましたように、目的に照らしても問題なしとしない、こういうことでございましたので、目的を問わずに自己株式の取得を認めるということにいたしたわけでございます。

 もちろん、今おっしゃったように、それが一部の経営者のために使われるとか、会社の目的に沿わない形で使われることはおもしろくないことは当然でございますし、そのために目的を任意に会社ごとにお決めになることも許されることだと思いますし、また、その場合には、当然その目的に沿った形で運用されるということになるものと思っております。

田村委員 いずれにいたしましても、現下の日本の経済の状況を見ますと、何としても必要な法改正であるということは私も理解をさせていただいておるわけでありますが、これだけ大競争になってきておると、当然のごとく世界じゅう、特に先進国等々もこの自己株式の保有、取得という問題に関してはそれ相応の法規制等々あると思うんですが、自己株式の取得、保有に関する規制、これに関する海外の状況というのはいかになっておるでしょうか。

山崎政府参考人 世界の状況について御説明申し上げます。

 アメリカでございますが、アメリカは取得目的による規制はございません。自己株式の取得を自由に認めているということになります。ただ、その後の扱いについて若干分かれるわけでございますが、州法によっていろいろ異なります。当然消却されるものとするという考え方をとっているところと、その後の保有を認めるもの、こういうふうに分かれております。

 それからヨーロッパでございますが、EUの関係ではEU会社法第二指令というのがございまして、これは、取得目的による限定をすることなく、株主総会の授権決議があることを要件として、自己株式を取得して、それを保有することを認める制度を採用することを加盟国に認めているということでございます。

 これを受けまして、ドイツにおきましては、原則として自己株式の取得を禁止する旨の規定を設けながらも、株主総会の授権決議に基づく自己株式の取得を認めております。フランスは、株主総会は取締役会に自己株式の取得を授権することができる旨の規定を設けておりまして、若干定め方はそれぞればらばらでございますけれども、いろいろな要件を設けながら認めているというのが現状でございます。

田村委員 わかりました。

 さて、今回の改正は、単に自己株の取得規制を緩和するだけではなくて、現行の制度、規制の不合理な点も見直されておられます。

 今までは、取得しました自己株式に関しては、貸借対照表上、資産の部に計上されておったわけでありますが、今回は資本の控除項目として計上することになっておると思うんですけれども、この点についてどのように思っておられるのか、見解をお聞かせください。

谷口議員 今おっしゃったように、現在は、貸借対照表上、資産の部に計上されておるわけでございます。

 この自己株式の計上の方法につきましては、いわゆる計算書類規則、法務省令の株式会社の貸借対照表、損益計算書、営業報告書及び附属明細書に関する規則、これによって定める事項でございまして、改正法案の成立後、法務省において、国際的な会計の動向等を踏まえて検討することになっておるわけでございます。

 したがって、今現在それが確定しておるわけではありませんけれども、現在、資産の部に自己株式が計上されておることを改めて、資本の部の控除科目として計上することが妥当だというように考えております。

田村委員 私も今までがおかしかったのかなというふうに理解しておりますので、非常に不合理な点を今回直していただいたということのように理解をさせていただきます。

 さて、このように金庫株なるものを解禁していくということになってまいりますと、その会社が自社の株式を購入するわけでありますから、当然のごとく、そこで相場の操縦でありますとか、またインサイダー取引というものが非常に危惧をされてくるわけであります。これは大きな問題の点であると思います。

 もちろん、与党のプロジェクトチームの方でも、この点、いろいろと御検討をされてこられて、それ相応の手当てをされておられると思うのですけれども、何といいましても一番市場に不安のあるところでありますので、相場操縦をどのように防止されるように考えておられるのか、ぜひともこの点をお聞かせください。

谷口議員 おっしゃいますように、現在、自己株式は原則的に禁止されておるわけでございます。これがこの改正法案では原則自由化されるわけでございます。取得、保有、処分が原則的に自由化されるわけで、そういう意味におきまして、今おっしゃいました相場操縦、またインサイダーにつきまして、より一層厳格な適用をやっていかなければならない、こういうように考えておるわけでございます。

 自社の株式の、つり上げのみではありませんが、つり上げ等をねらった意図的な株価操作が行われるおそれがあるわけでございますが、証券取引全般を対象にした現行の相場操縦禁止規定がございますが、今回、これに加えまして、特に自己株式の取得また処分の際に相場操縦が行われることを防止するため、自己株式の取得、処分の際に一定の要件を遵守すべき旨を定める規定を新設いたすことになったわけでございます。遵守すべき要件の具体的内容は、相場操縦とされるおそれの少ない取引態様を類型化いたしまして、内閣府令で定めることとなっております。

田村委員 内閣府令で定めるというお話でございますけれども、具体的にどのような要件でございますか。

谷口議員 内閣府令で定めるわけでございますが、具体的には、現在、アメリカで整備をされておりますセーフ・ハーバー・ルール等を参考にいたしまして、利用する証券会社の数であるとか、買い付けを行う時間であるとか、買い付けを行う価格、買い付けを行う数量等といった要件を定めることにいたしております。

 詳細につきましては、海外の法制、相場操縦に関する過去の判例、証券取引審議会の議論等を踏まえて、行政当局において、市場関係者と協議の上、検討していくものと考えております。

田村委員 大変重要な部分だと思いますので、ぜひとも注意をしていただきながら整備をしていただきたい。もちろん内閣府令でありますけれども、ぜひともよろしくお願いいたしたいと思います。

 続きまして、先ほど言いましたインサイダー規制、インサイダー取引をどう今回規制していくか、この点も大変重要だと思います。

 インサイダー、会社関係者が重要な事実を知ったときは、それが公表されるまでは売買は禁ずるわけでありますけれども、当然のごとく、これも自社でありますから重要な事実を知り得るのは当たり前でありまして、これに関しても証取法をどのような形で改正されて規制を強化されるのか、その点をお聞かせください。

谷口議員 現行法の状況の中でも、インサイダー取引は摘発をされておる事例がございます。今、そういう状況の中で、自己株式が自由化されるわけでございますから、より一層そういう事例がふえる可能性が高まってくるわけでございます。そういうこともございまして、今回、証券取引法の改正を行って、インサイダー取引の規制を強化いたすことになっておるわけでございます。

 それで、インサイダー取引の発生を防止するために、会社の関係者が所定の重要事実を知った場合には、それが公表された後でなければその会社の株式の売買はしてはならないという旨を規定いたしておるわけでございます。

 今回、商法改正により金庫株が解禁され、自己株式の取得が原則的に認められるということに伴いまして、自己株式の取得に伴うインサイダー取引の発生を防止するために、証券取引法を改正し、今回の商法改正で新たに認められる自己株式の取得を重要事実として追加いたしました。これまで自己株式の処分は重要事実とされてこなかったわけでございますけれども、自己株式の保有の自由化により、今後は自己株式の処分もふえるだろうということもございまして、そこで、この処分の際にインサイダー取引が行われることを防止するため、自己株式の処分も重要事実の対象といたしたわけでございます。

田村委員 御追加をいただいたということであります。今インサイダー取引規制それから相場操縦等々お話しいただいて、不公正な取引が行われないようにそういう手当てをしておりますというお話があったわけでありますが、これは、企業側が、自己株式を取得また保有をしておる場合、情報開示をどうするか、当然のごとくこれが一番大きなテーマであろうと思うのです。ディスクロージャーをどうするか。この点をやはりオープンに情報を流していかなければ、株主等々に信頼をいただけないわけでありまして、最も基本の部分であろうと思うのですけれども、今回の取得、保有に関してのディスクロージャー、どのような措置をしていくように考えておられるのか、お尋ねします。

谷口議員 今、現行法におきましては、自己株式取得の透明性を高め、投資家保護を図るために、自己株式取得の総数、価額総額、取得の進捗状況等について、発行会社から自己株券買付状況報告書を提出するようになっておるわけでございます。

 今回、金庫株を解禁し、取得目的を問わず、定時総会決議により自己株式取得が行えるようになることを踏まえまして、証券取引法二十四条の六を改正し、現在、自己株式の取得に関する決議ごとに、それぞれ三カ月ごとに報告をさせておるわけでございますが、自己株式取得の定時株主総会決議後次期定時総会まで、一カ月ごとに提出をさせること等所要のディスクロージャーの規定の整備を図っておるわけでございます。

田村委員 今回この法改正で、とにかく不公正な取引等々が行われることをやはり一番防止していかなきゃならぬわけでありますけれども、ある意味では、インサイダー取引の規制に関しても、相場操縦に関しましても、起こり得る事象というものは、これは限定といいますか、自己株式を取得、保有した状況のもとにおいて起こり得る可能性というのがあるわけでありますから、対象としては監視しやすいのかな、しっかりとした監視さえすれば不正は見つけられやすいのかなというような気もいたすわけでありますけれども、いずれにいたしましても、これは監督するところがしっかりとそういうような体制を整えていただかなければならないのであろうと思います。証券取引等監視委員会に頑張っていただかなきゃならぬなと思うわけでありますが、やはり人員の問題というのが非常に不安があります。

 日本は、今陣容は大体二百六十数名だというふうにお聞きいたしておりますが、アメリカの場合は三千人を超えておるというような話もお聞きするわけでありまして、セーフ・ハーバー・ルール等々いろいろなことをアメリカに準じて導入していこうというようなお話もあったわけであります。

 いずれにいたしましても、アメリカ並みとは言いませんけれども、それに近づいた体制を整えていくというのは、これはこの金庫株だけの話じゃないのですけれども、公正な取引を行う、健全性を担保するためには絶対に重要なことでありまして、この証券取引等監視委員会のこれからの体制、これの充実に関してどのように考えておられるのか。これは金融庁にお聞きをいたしたいと思うのです。

五味政府参考人 お答えを申し上げます。

 今回の法案で、金庫株にかかわりますインサイダー取引あるいは相場操縦の防止等の措置が講ぜられるというふうに承知をしておりますけれども、大切なのは、やはりこうした防止措置が実効性のあるものになるように事後監視をきちんと行うということであろうと考えております。こうした仕事というのは私ども証券取引等監視委員会の任務ということになりますが、新たなワークロードということになります。

 したがいまして、今お話もありましたような、現在の限られた体制で手いっぱいの仕事をしておる中では、これに適切に対応するためには人員の確保ということが不可欠でございます。おっしゃるとおりでございます。

 私どもは、今後、もちろん金庫株のことだけに限りませんが、関係当局の理解を求めまして、有効な監視活動が行えるような必要な人員確保、人員の拡充ということを求めて、その実現を図ってまいりたいと思います。

 なおまた、頭数だけそろえばいいというものではございませんので、これまで蓄積されております監視に関しますノウハウ、情報、こういったものを大いに活用する、あるいは民間から専門家を登用するといったような努力をこれまでもしておりますが、こうした形で監視能力というものを高めていく、あるいは電算システムを導入して情報の分析を行いまして、事務の効率化というようなことも図っていく、こうした量、質両面で体制の整備を図っていく考えでございます。

田村委員 ありがとうございました。

 提案者の先生方に敬意を表しまして、質問を終わらせていただきます。

保利委員長 次に、上田勇君。

上田(勇)委員 おはようございます。

 三党の提案者の皆様、法案の提出に至るまでの御努力に対しまして、心から敬意を表しますとともに、本日の審議、まことに御苦労さまでございます。

 この法案、いわゆる金庫株の解禁という問題が提起されたときには、当初は、一部に株価対策としての面を強調する向きがございました。しかし、自社株の取得、保有をしたとしても、理論的にはその株価が変わるというものでもありませんし、また逆に、それが影響があるとなると、それこそ株価操作というようなことにもなりかねないということで、当初、私もそういった趣旨については少し疑問に思っていたところであります。

 先ほど提案者の方からも答弁がありましたけれども、この自社株の取得規制の緩和、これは、経済環境が非常に激しい変化の中で企業経営の機動性、柔軟性を高めていくんだという目的であるということで、私もその趣旨、意味するところは理解するところでございますし、また、その他この法案に含まれております改正点も、いずれも必要なものだというふうに認識をしているところでございます。

 今、田村委員の方から、自社株の取得、保有のことを中心に質問がございましたので、私の方からは、それ以外の部分を中心に何点か御質問させていただきたいというふうに思います。よろしくお願いをいたします。

 まず、今度の法案では、株式の大きさに関するさまざまな規制が撤廃されているわけでありますけれども、どういう規制が撤廃されているのか、その概要及び趣旨について提案者のお考えをお伺いいたします。

根本議員 上田議員にお答えをいたします。

 ただいま、株式の大きさについてどのような改正がなされたか、そしてその趣旨の御質問がございました。

 株式の大きさにつきましては、従来、株式の発行額の五万円以上の規制等々の規制がございました。この規制があるがために、例えば、資産が少なくて株価が高いネットベンチャーのような企業、これが株式を分割したくても規制の制限があるから株式の分割ができない、したがって、個人投資家にも買いやすいような価格にもならない、こういう問題点も指摘されておりました。

 要は、これからの株式市場を考えるに当たって、個人投資家も参入しやすく、それから企業も、本来は企業が市場における株価動向あるいは株主管理コストを勘案して自由に定めるようにすべきではないか。要は、株式市場の活性化対策も含めて、今回、基本的には株式の大きさについては会社が自由に定めることを可能にする、こういう改正を行うというものであります。

 改正点は六点ございます。第一点は、会社設立時の制限の撤廃であります。現状、会社の設立に際しては、発行する株式の発行価額が五万円を下ることができない、こういう規制がございますが、これを撤廃いたします。

 二点目は、株式分割時の制限の撤廃。株式の分割に際して、額面総額が資本額を超えることができないという制限、これを撤廃いたします。分割後の一株当たりの純資産額が五万円を下ることができないとの規制、これも撤廃をいたします。

 三点目は、額面株式の制度の廃止であります。額面株式の制度を廃止いたしまして、額面無額面による規制の区別あるいは額面未満発行の禁止等の額面固有の規制、これを撤廃いたします。

 四点目が、単位株制度の廃止でありまして、株式の大きさを引き上げるために暫定的かつ過渡的な措置として導入された単位株制度、これを廃止することにいたしました。

 一方で、単位株式の制度は廃止するわけでありますが、単元株制度、これを新たに創設いたします。具体的には、会社は、定款で一定の数の株式をもって一単元の株式とする旨を定めることができる、この場合には、一単元の株式につきまして一個の議決権を有するということにいたしました。

 六点目が、端株制度の整備でありまして、端株券の廃止等端株制度を整備することにいたしました。

上田(勇)委員 今、答弁の中にもあったのですが、単位株制度を廃止し、新たに単元株制度を導入するということであります。単位株制度を廃止することによって、株式の流動性が高まって個人投資家が少額でも株式市場に投資しやすくなる、そういった効果が期待できるのではないかというふうに思うのです。ただ、そうすると、せっかくそういう単位株制度を廃止したのに、それとはまた逆の方向の単元株制度を導入するということはちょっと目的が相矛盾するのではないかというようなことも考えられるのですけれども、その単元株制度導入の趣旨をお伺いしたいというふうに思います。

根本議員 議員おっしゃられるように、単位株制度を廃止して、新たに単元株制度を創設することにいたしました。

 そもそも、単位株制度というのは、昭和五十六年、商法改正におきまして一株の大きさの最低限度を五万円とする、こういう規制が設けられました。そのときに、当時は額面五十円の株が多かったものですから、額面五万円未満の株式を一株五万円以上と併合するように誘導するために暫定的かつ過渡的な制度として導入されたものが単位株制度でありまして、今単位株制度を採用している企業は、上場企業でも九割ぐらい採用しております。

 実は、単元株制度を導入する主な理由でありますが、一株の株価の小さい会社において、株式併合の費用を要することなく株式併合と同様の効果を実現することができる。要は、今単位株制度を採用している会社、その単位株制度の受け皿という目的が一つであります。

 それからもう一つは、使い勝手という点でいえば、一株の株価の高い会社において株価の割負けの状態を解消しようということで、株式の分割を行う際に分割割合の数の株式を一単元とすることによっていわば株式管理費用なども従前と同様にできるという会社にとっての使い勝手もありますので、単元株の制度を、単位株制度の廃止にかえて、単位株制度の受け皿ということも含めて新たに制度を創設することにいたしました。

上田(勇)委員 それで、その単元株についてでありますけれども、法案では、一単元の株式の数を千株及び発行済み株式総数の二百分の一以下に制限しておりますけれども、その理由はどういうものなんでしょうか。

根本議員 一単元の株式の数を余りに大きく設定いたしますと株主の議決権を不当に奪うことになりますので、改正法案は、一単元の株式の数を制限しようと。具体的には、先生おっしゃられたように、一単元の株式の数は、千、発行済み株式総数の二百分の一に相当する数を超えることができないとしておりますが、この理由は、今現在の単位株採用株式の大部分、これが一単位の株を千以下としておりますので、このような会社が円滑に単元株制度に移行できるようにするために一単元の株の数の最大を千と定めました。

 それから、もう一点の発行済み株式総数の二百分の一、これは、現在の最低資本金である一千万円、これを現行法下の最小の株式の大きさである五万円で除した数、これが二百分の一ということでありまして、小さな会社で不当に少ない株式数によって会社を支配することを防止するため一単元の数の最大の割合としております。

上田(勇)委員 次に、今度の法案では株式の額面が廃止されております。株式の額面というのはほとんど現状において経済的な意味合いがなくなっているという意味で、それをすべて無額面にするということは、その趣旨はよくわかりますけれども、ただ一方、既に発行されている株式というのは額面のものもございますけれども、この既に発行されている額面株式というのはどのような取り扱いにされるんでしょうか。

根本議員 これまで発行されていた額面株式、例えば株券や定款に五十円などの一枚の金額、これが記載されております。今回の改正によりまして、額面株式の制度が廃止される。廃止されることになりますと、これらの記載、これは株券などの効力には何の影響も与えない無意味な記載になります。したがいまして、改正法施行後におきましては、株券などに額面に関する記載があったとしても、実はその記載は何の意味も持ちませんので、その株券が無効になることはなく、株券を回収するなどの特段の手続も不要になる、こういうことでございます。

上田(勇)委員 先ほど単元株のことについて何点か質問させていただいたんですけれども、既にある会社が新たに株式を発行する場合に、これは、今既に発行済みの株式との均衡を図るということもありますし、実務上のさまざまな課題があるので、これまで単位株の制度を採用していた会社においては単元株の必要性というのはわからなくもないんですけれども、しかし、新たに設立する会社が株式を発行する場合には、今お話もあったように、今回いわゆる額面株式制度も廃止されるわけでありますし、会社設立時の株式の発行価額を五万円以上とする規制も廃止されるということになると、新設の会社というのは株式の額面の大きさを自由に設定できるわけであります。

 そうすると、既存の会社が実務上の問題があるので単元株制度を必要とするというのはわからなくはないんですが、これは、基本的な考え方からいえば、やはりもっと株式の流動性を高める、個人投資家でも買いやすくする、市場を活性化していくという意味では、やはりなるべく小口の取引を優先すべきである、そういうのをもっと後押ししていかなければならないというふうに思うので、そうすると、新設の会社については、単元株制度、これを設ける必要はないんではないかというふうに思うんですけれども、その辺のお考えを伺いたいと思います。

根本議員 先ほど申し上げましたように、今、既設の会社で単位株制度を採用している企業は、九割ぐらい単位株制度を採用しております。実は、先生おっしゃられたように、これからは自由に会社が決められるわけですから、これは会社が自由に決めるべきだ、こう思いますが、今単位株制度を採用している会社、例えばみずほホールディングもそうですが、例えば三社が合併して一つの持ち株会社をつくる、千株で一単位の議決権だったものを一株一議決権ということになりますと、実は株主がどういう状況になるかというと、要は千株が一株になるわけですから、一方では千分の一になって、株価は逆に千倍になる、こういうことが生じまして株主が混乱をする。つまり、そういう従前と同じような状況の方が株主にとってもわかりやすいんではないか。こういうことで、今単位株制度を採用している企業が合併するあるいは持ち株会社になる、そのときの株主にとっての取り扱いを同じにするようなケースもあるんではないかというのが一点であります。

 それから、これは、そういうケースがあるので、新たに新設された会社にとっても単元株制度を採用できるようにした方がいいんではないかという例でありますが、もう一つの例としては、例えば設立後早い時期に上場するようなベンチャー企業におきましては、設立当初から多くの上場会社が利用する単元株制度を採用しておいた方が、例えば将来株式の分割をする等々のときに事務費用も軽減できるという効果もあるんではないか。その意味では、これから会社を設立する場合に単元株制度を採用できるようにする余地を設けておいた方が、株主あるいは会社双方にとって利便性がいいんではないかという観点から、単元株制度を会社設立当初からも認めようということにいたしました。

上田(勇)委員 私この問題を質問させていただいたのは、単位株の制度が導入されたときに、ある意味では少数株主に対する企業経営者からの対策というような面もあったので、どうも、企業経営の側から見て都合のいいところは緩和するけれども、そういうような都合の悪いようなところは形を変えて規制を残しておくんではないか、そういう危険性もあるんではないかということでこういう質問をさせていただいたんですが、今いろいろと御説明をいただいて、その趣旨については理解したところでございます。

 次に、この法案のもう一つの大きな点であります法定準備金の減少の問題についてお伺いをしたいというふうに思います。

 この法案では、法定準備金に関して減少手続の整備が行われておりますし、また、利益準備金の積立額を資本準備金の額と合わせて資本の四分の一まで積み立てれば足りるというような改正が含まれております。この改正の趣旨をお伺いしたいというふうに思います。

谷口議員 おっしゃいますように、今回、この改正法案で法定準備金の減少手続を導入いたしたわけでございます。資本準備金、また利益準備金を含む法定準備金でございますが、この法定準備金は、会社の純資産額が資本の額を下回る事態があった場合に、このようなことを防ぐための機能でこのような法定準備金があるわけでございますが、御存じのとおり、一九八〇年代にエクイティーファイナンスが頻繁に行われました。当時、時価発行増資が頻繁に行われたわけでございますが、現行商法では、発行価額の二分の一を超えない額を資本準備金とすることができるということになっておるわけで、このようなことで多額の資本準備金が積み上がっている状態になっておるわけでございます。

 ちなみに、今、平成十二年の三月現在でございますが、上場公開会社全体で、資本金が合計で約五十一兆円、法定準備金が約五十五兆円ということになっております。また、一社当たりの法定準備金の平均額が百から二百億、このようになっております。また、主な企業の資本金との状況を見てまいりますと、例えばトヨタ自動車が資本金三千九百七十億円に対しまして資本準備金が四千百四十億円、ソニーが資本金四千七百二十億円に対しまして資本準備金が六千三百七十三億円ということで、資本金を超える資本準備金が積み上がっておるわけでございます。

 また、資本準備金とは別に、配当を行った場合に、配当の十分の一を資本の四分の一に達するまで積み立てを行うという利益準備金があるわけでございますが、このような利益準備金、また資本準備金などの法定準備金は、欠損のてん補であるとか、また資本の組み入れの場合しか現行法では取り崩しができないというようなこともあり、今のような多額の準備金が積み上がった状態になっておるというようなことがあるわけでございます。

 今、資本におきましては、資本の減少手続が整備されておるわけでございますが、申し上げましたように、法定準備金におきましてはそのような減少手続がないというようなこともあり、また、この法定準備金を一たん資本に組み入れて、その組み入れた段階でまたそれを減資するといったような方法がとれるわけでございますが、これはいわば法定準備金を減少することに実体的になるわけでございますので、法定準備金の減少手続を認めないという理由もないだろうというようなこともあり、従来この立法上の不備を指摘されておったところもあり、今回、この改正におきまして、資本の減少手続と同様の考え方に基づき、法定準備金の減少手続を設けたわけでございます。

上田(勇)委員 いわゆる法定準備金が、当初想定されていた適正な水準よりも、それを超えて積み上がってきているという現状は今の御説明でわかりました。

 そうすると、この改正によって当然法定準備金の額は減少していくことになるというふうに思うんですけれども、ただ一方で、この法定準備金というのは、債権者保護のために資本を充実させる目的で積み立てられてきているものでありますので、この改正に伴いまして法定準備金が減少していくということになると、やはりその債権者の権利が制約を受けることになってくるというふうに思われます。

 今、自社株取得の特例法がありまして、それでは、基本的には、速やかに消却する自己株式についてのみ取り崩しが認められているんですけれども、今回、この改正によりますと、この法定準備金で取り崩したものというのは、いわゆる金庫株の取得のためにも、また、その他自由に使えるようになるわけであります。

 また、今回、いわゆる自己株式の取得、保有は配当可能利益の範囲の中に限っているとはいえ、当然準備金の積み立てが減少していくわけでありますので、本当に果たしてそういう債権者保護というのが大丈夫なんだろうか、当初からの資本の充実によって債権者を保護するという目的が損なわれるというようなことはないのだろうか、その辺の御見解を伺いたいというふうに思います。

谷口議員 上田議員おっしゃいますように、債権者保護を十分考えていかなければならないというように思っておるわけでございます。今回、法定準備金、資本準備金と利益準備金を合わせた法定準備金で資本の四分の一まで積み立てればいい、このように変わるわけでございます。また、先ほども申し上げましたように、この積み上げられた法定準備金を取り崩すわけでございますが、この法定準備金の取り崩しにおきましても、取り崩しの順序は問わないということでございますから、実体的に資本準備金と法定準備金が、いわば性格が従来の態様と変わってくる、こういうようになるわけでございます。

 それで、御存じのとおり、現在、資本の減少におきましては、株主総会の決議の日から二週間以内に官報により公告をし、会社に判明しておる債権者、知れたる債権者に対して個別に通知を行い、債権者が異議を申し立てた場合には、会社は弁済しなければならないというようなことがあるわけでございますが、この資本の減少の規定を準用いたしまして、法定準備金の減少手続におきましても、公告、知れたる債権者に対する通知を行うということによって債権者保護の手続を行うということで、会社債権者の保護は十分図られておるというように認識をいたしておるわけでございます。

上田(勇)委員 今御説明をいただいたんですが、実は、ここは今回の法改正の中で従来の商法の考え方から相当大きく変わっている点ではないのかなというふうに思います。いわゆる自社株の取得も、配当可能利益の中に限っているとはいっても、その枠組みの決め方自体が変わってきているわけでありますので、そういう意味では、債権者保護の問題については引き続きよく吟味をしなければいけない面があるんじゃないかというふうに思います。

 もう時間が余りございませんので、最後に法務大臣にお伺いをしたいというふうに思いますけれども、ここ数年、経済社会の大きな変化に対応しまして、商法改正が議員立法も含めましてたびたび行われてまいりました。従来、法務省で、法制審議会での議論にはかなり時間がかかるというような批判も相当あったわけでありますけれども、最近はかなりスピードアップしているという面では、非常に評価しております。

 これまでいろいろな改正が行われたんですけれども、今後さらにまだ改正を必要としている課題がたくさんあるわけでありますけれども、今の経済環境の変化のスピードを考えたときに、やはりすぐに、また計画的に対応していかなければいけませんし、さらに、新たにニーズも生まれてくる可能性もあるんじゃないかとも思います。

 この時代の変革のスピードに対応した会社法制の見直しについて、最後に大臣の御見解をお伺いしたいというふうに思います。

森山国務大臣 おっしゃいますとおり、企業法制の中核をなす会社法制につきましては、時代の変革の速度におくれることがないように、必要な見直しをしていかなければならないと考えております。

 法務省では、このような考え方から、企業間の国際的な競争の激化、情報技術の革新、新規企業の資金調達の需要の増大など、会社を取り巻く社会経済情勢の変化に対応いたしますために、企業統治の実効性の確保、高度情報化社会への対応、企業の資金調達の改善、企業活動の国際化への対応という四つの視点から、法制審議会における検討に基づきまして、会社法制の大幅な見直しについての検討を行いました。そして、ことしの四月十八日に、商法等の一部を改正する法律案要綱中間試案というのを公表いたしました。この公表いたしました中間試案につきましては、現在、広く国民の意見を照会しているところでございまして、いわゆるパブリックコメントを求めているわけでございます。

 法務省におきましては、その結果も踏まえまして引き続き検討を行いまして、所要の商法改正法案を国会に提出したいと考えております。

上田(勇)委員 ありがとうございました。

 以上で終わります。

保利委員長 次に、小泉俊明君。

小泉(俊)委員 民主党の小泉俊明でございます。

 早速質問させていただきますが、今回の商法改正は、自己株式の取得の制限並びに単位株制度を見直すという株式に関するものでございます。そこで、まず大前提といたしまして、個別質問に入る前に非常に基本的な問題でございますが、御認識について御確認させていただきたいと思います。

 まず、株価がこの日本経済に及ぼす影響や重要性について提案者はどのようにお考えか、どなたかお一人で結構でございますので、御見解を御披露いただけますでしょうか。

相沢議員 現在の株価水準については、皆さん御案内のとおり、ひところから見ますと相当な水準に低下をいたしております。このことは、当然株を所有されている方々に大きな影響があることはもちろんでありますけれども、同時に、銀行、保険等広い意味におきましての金融機関がその資本を減らすということになりまして、BIS規制その他の関係から申しましてもこれが貸し出しに影響を及ぼす。さなきだに貸し渋りというようなことが問題になっておるこの状態のもとにおきまして、株価が下がるということは一層その情勢を厳しくするという心配もあるわけであります。

 不良債権の整理が今促進されようとしておりますけれども、不良債権の大きな原因はもちろん地価の暴落でありますけれども、同時に株価の下落ということも当然一つの大きなファクターになっております。でありますので、不良債権の整理を促進するということは当然必要なことでありますけれども、でき得べくんばその不良債権をできるだけ減らしていくということが願わしい状態でありますから、私どもは、物価とか土地とかに関しましてもそれを安定させるということを一つの大きな目標として、日銀もそのようなことを考えながら物価の水準をゼロに置くということを一つの金融の操作の目標に考えておるわけで、インフレターゲティングという考え方までまだ割り切っておりませんけれども、私は、当然そういう考え方を取り入れていくべきじゃないかというふうに思っております。

 そのような関連もありますので、やはり株価に関しましても、現在のような水準ではなくて、どのような水準がいいかということにつきましては議論があるでしょうけれども、少なくとも今の株価水準は日本の経済の実力からいうと低過ぎる。それで、もう少しこの安定を図る必要があるんじゃないかというふうに考えております。

小泉(俊)委員 ここ十年、アメリカにつきましては平均株価は約五倍、また、ヨーロッパ、ドイツ等についても平均株価は三倍、その中で日本だけが株価が約四分の一になる、こういう状況なわけでございます。今、不良債権の問題、土地の下落、いろいろ言っていただいたんですが、日本株式市場自体の何らかの問題点がやはりあるのではないか。この点につきましてどのようにお考えでございましょうか。

相沢議員 私は、どれか一つが原因だということではないと思いますが、一つは、株式市場に対する関心の度合いがあるかと思うんですね。株価は、三万九千円という史上最高のところから今や三分の一に落ちている。その原因はいろいろありますけれども、やはり一つは、株というものは極めてリスキーなものだ、そしてまた、株を買った多くの人たちが株価の下落によって大変な打撃を受けている。ですから、個人でいいますといわゆる株式市場離れを起こしている。

 これは、アメリカが個人金融資産の二一・二%、イギリスが一七・三%、ドイツが一三、四%と思いますが、今、日本は投資信託を含めても六%か七%という極めて低い水準にあるということが一つはやはり問題じゃないか。ですから、個人に、株式市場に対してさらに積極的に参加するようなことが促進できないか。千四百兆と言われる個人の金融資産が仮に一%動いても十四兆の金が株式市場に入ってくるわけでありますから、そのためにはどうすればいいのかというようなことも今、証券税制の改正の問題等と絡めて検討をしている段階であります。

 したがいまして、私は、いろいろある原因の中の一つは、やはり個人の投資家の関心が極めて薄れているというところが原因じゃないかというふうに考えております。

小泉(俊)委員 今お話しいただいたわけでございますが、確かに株価が三分の一まで下がってきた。それではまず、根本的な問題なんですが、株価維持のために政府がそもそも介入することの是非につきまして、どのようにお考えでございましょうか。

相沢議員 市場のことは市場に任せよということをおっしゃった方もありますけれども、私は、今申し上げましたように、株価水準が非常に下がっているということは問題がありますから、そういう言い方はいささか無責任じゃないかというふうに思っているのであります。

 でありますけれども、本来、政府が、例えば政府資金を出動させまして直接的に株価の維持を図るとかなんとか、そういうような行動をすべきではないというふうに思っておりますけれども、やはり、株価が一定の、一定という言葉が適当かどうか知りませんけれども、ある程度の水準に回復するための努力をいろいろな施策の面において政府が考えるということは、私は当然のことであり、差し支えないというふうに思っています。

小泉(俊)委員 それでは本論に入ります。

 現行法は、商法二百十条におきまして、消却とストックオプション以外は、何十年間にもわたり自己株式の取得を原則制限してきたわけであります。そこで、今回の改正法を議論する前に、まず商法二百十条の自己株式の取得制限の趣旨につきまして、もう一度御確認させていただきたいと思います。

金子(一)議員 幾つかの項目があると思いますけれども、何といっても一番大きい点が、資本の維持の原則、これを毀損させないということ。もう一つ、それに続きましては、インサイダー取引、相場操縦がややもすれば起こりやすいのではないか。そのほかに幾つかあるかと思いますけれども、この点だと思っております。

小泉(俊)委員 基本的なところは四つほどあると思うんですけれども、今おっしゃいました会社財産の財産的基礎を弱くする、会社債権者保護の観点。また株主平等の原則の問題。また、株価操縦等によって一般投資家を害する。そしてまた、経営者が会社資本で保身を図る。幾つかあると思います。このような大きな弊害があるために、今まで商法二百十条はこれをずっと何十年にもわたって禁止してきたわけであります。これを改正するわけですから、現行法の趣旨から考えますと、よほどの改正の積極的な理由がない限り、これは合理性がない、そう思います。

 ところが、これは商法の一部を改正する等の法律提案理由ですが、これを読みますと、「会社をめぐる最近の社会経済情勢にかんがみ、」と、一行で済まされている。これは全く理由になっていないんですよね。

 ですから、まず第一番目に、自己株式取得の自由化をする改正法の趣旨、目的がどこにあるのか、これを具体的、明確に述べてください。

金子(一)議員 先ほど来答弁ありましたように、一言で経済産業をめぐる状況というのは確かにわかりにくいと思います。

 御存じのとおり、我が国の産業界、いろいろな状況変化というのを今迎えております。特に、平成九年には、持ち株会社の解禁と合併法制の見直しをやってまいりましたし、十一年、この年には株式の交換、株式移転の創設が行われましたし、この四月、いよいよ、会社分割法制、いわゆる産業再生法、一斉にスタートしております。

 これも、こういう状況の中にありながら、一方で具体的にそれを進めていく、株式交換、吸収等々を行っていくということになりますと、現在のままでありますと、新しい株式を発行して、相手方に吸収とか合併とか分割とかいう手段を講じるしか道がない。

 さっきちょっと委員が御指摘になられたかもしれませんけれども、既に過剰株式が我が国の市場の中であるという部分もあるわけでありますので、そういうような状況の中でまた新株を発行していくというのが本当にいいんだろうか。特に、こういう効率を求められる時代でありますから、企業としては、不動産、人、それから持っている現金と同時にこういう株というものを一つの企業戦略、資産として有効に使えるようにしていきたい。これが今回の法改正の、経済社会状況を見ながらということの一番大きな理由であります。

小泉(俊)委員 今お話聞きますと、まず株式の需給の問題、合併、分割等を速やかにしていくということと、今需給をおっしゃっていますから、当然これは株価対策にもなっていると。ただ、本家本元のアメリカにおきましては、根本的理由は企業防衛でございますが、この点はいかがでございましょうか。

金子(一)議員 今回、法改正の趣旨というものが目的を定めずということでありますので、予防的な企業防衛ということにも、企業戦略の一つとして当然に入ってくる可能性があると思っております。

小泉(俊)委員 それでは、今お話しいただきました趣旨について、幾つかちょっと質問させていただきます。

 まず、企業防衛、今お答えいただきましたが、株式会社における実質的所有者は株主ですよね。株式会社におきましては、徹頭徹尾、当然多数決で運営されるというのが大原則でありまして、そうしますと、多数の株式を有する者が経営権を取得するというのは、株式会社制度自体当然の話であります。

 それを、この改正によりまして、現在の経営者が会社資金で保身を図る、現在の経営者の地位を守るだけであって、どうも合理性がこの趣旨からするとないんじゃないかと思うんですね。特に、無能な経営者の延命とか自己保身に使われて、かえって日本経済にマイナスになるのではないかと思うんですが、いかがでございましょうか。

金子(一)議員 株主総会で授権をされた取締役会でそれを実行されるわけですよね。そして、それが使い方として企業防衛、結果として使われ方が出てくる。そのときに、今度は株主が、これは経営者の保身じゃないかということを言えるという権限を持っていますね、次の定時株主総会で。代表訴訟ということもあり得るかもしれません。明らかにこれは使われ方がおかしいぞと。

 それから、無能な経営者とおっしゃいましたけれども、そんな無能な経営者がいつまでもやっていられるわけないんです、こういう時代ですから。

 ですから、そういう意味では、我々がこれは保身だとかなんとかと言うことではなくて、やはり株主総会できちんとそこは株主たちが問い詰めていく。逆に言えば、それだけ経営者というものがディスクローズ、これはかなりディスクローズをはっきりいろいろなところで定めておりますものですから、そのディスクローズが前提になりますので、今度は取締役に対する責任というものが、株主代表訴訟も今度法案の準備が進んでおるようでありますけれども、非常に厳しく経営者がそれを問われるというのが、まさに今その大前提になっていると思っております。

小泉(俊)委員 会社が取得した自己株式は、当然議決権ありませんよね。ということは、経営者の自己株比率を守るために結局これは使えるんですよね。

 ですから、やはり日本経済がうまくいかない理由というのは、経営者、本当に優秀なんですか。本当に民間企業が優秀であれば、既にこの状況変化に対応して、十分活力ある道行っていると思うんですね。ところが、今、御案内のように、どういう方が経営者になっているかといいますと、ほとんどの経営者が管理畑ですよ。人事やっていた方がみんな取締役になって、企画とか営業とかそういうのをやっていたのがみんな排除されているんですよ。そういう無能な経営者の自己保身のためにこれが使われる可能性があるという点がありますので、この改正の一つの趣旨がもし企業防衛にあるのであれば、これは適当ではない、合理性はないと私は思います。

 次に、株式の需給、先ほどお話されました。

 持ち合い株の解消売り、これが株式の一つ大きな下落の原因になっていますので、これを解消しようということが確かに今回の、先ほどおっしゃいましたように、一つの目的だと思います。しかし、持ち合い株の売り圧力というのは、御案内のように今四十兆円と言われています。自己株式の取得を解禁したことによって、株式の需給対策というのは有効性あるんでしょうか。

金子(一)議員 私、今回の法改正の趣旨が、需給対策として、株価対策だということを申し上げたつもりないんです、念のため申し上げますと。

 需給というのは、結果として出てくるかもしれません。特に、直接金融市場というものがこうやって出てきますと、経営者としては経営戦略上いろいろな形で使ってくる。その結果として需給というものが出てくる可能性もある。

 ただ、株式市場に対しては、需給という意味では、一時的にはそういうことはあり得ても、長期的には、あくまでも株価というのはその企業の将来性、収益性、我が国の将来性にもかかってまいりますから、そういう意味では、これが本当に効果があるかという御質問ですけれども、それは効果があったとしても一時的なものにすぎないはずだ。あくまでも理論的には中立です。そういう立場で今回この法改正に臨んでおります。

小泉(俊)委員 この点についてもう一つ質問しますが、自己株取得解禁しましても、実際に取得できるのはかなり優良企業ですよね、いろいろな要件、かなり厳格になっていますので。

 そうしますと、例えば経団連なんかは、今回、株式の取得自由にしてくれというお話を大分しておりますが、ところが、経団連に入っているほとんどの会社は赤字経営で、資金ないんですよね、実際。そうしますと、銀行の追加融資等で、借入金でこれをやれば、かえって財務体質が悪化します。

 こういう意味では、本来、自己株式の取得を自由化するこの合理性もちょっと弱いんじゃないですか。

金子(一)議員 今おっしゃられたのは、ややもすれば株式対策としてそういう行動をされるとすれば、そんなこと意味がないでしょうという御趣旨かもしれません。

 ただ、先ほど申し上げたように、我が国の企業が国際競争力をつけていく、そして分社化していくというのが既にいろいろありますよね。だから、経営が少々悪いところでも、新聞紙上でも、何か赤字会社だけれども、しかし分社化、この部門を切り離していくとか、いろいろなのが出ていますよね。そういうものにはやはり対応していく。ただ、しょせん配当可能利益の範囲というところは、ここは私たちも譲っていませんものですから、そういう部分の制約がきいてくることはあるんだと思います。

小泉(俊)委員 いろいろ今お話をお伺いしたんですが、今先生のお話を聞いていますと、今回の改正の目的は、どうも会社の分社化とか合併とかそういうのを促進することが主たる目的で、ほかは付随の問題であると。しかし、一番最初に私が、商法二百十条の何十年にもわたって自己株式の取得を制限してきた趣旨をお伺いしましたが、これだけ弊害があるから何十年も禁止しておいて、今言った理由でこれを改正する合理性はあるんですか。

金子(一)議員 そうなんでしょうか。我々は、そうではなくて、もう繰り返しませんけれども、これまで禁止してきた、その禁止してきた理由の防止措置が手当てできれば、むしろ、企業の再編というのはいろいろな形がありますけれども、そういうもので有効な資源として株式を企業戦略に位置づけていくということは、我が国産業界全体としての国際競争力をつけさせていくという意味で必要な環境整備であると思っております。

小泉(俊)委員 次に移ります。

 自己株式取得を自由化する場合、さまざまな新聞また論文等におきまして、直接的な弊害が大分指摘されていますね。

 一つの弊害が、何しろ企業自身による株価下落防止、つり上げなどの株価操縦、これをして一般投資家を害すのではないか、また、内部情報に基づいて売買するインサイダー取引、この危険が大きい、この二点が一番大きい点だと思います。これに対して今回大分手当てをされているようでございますが、その具体的内容につきまして、簡単で結構でございますので御披露いただけますか。

谷口議員 今おっしゃいましたように、今回自由化されるわけですね。基本的に原則自由化。自己株式、今まで原則禁止されておったものが自由化されるわけで、まさにおっしゃるように、株式市場の公正性、健全性が損なわれるということがないようにやっていかなければならないということで、相場操縦またインサイダー取引につきまして厳格に行われるように規定をしたわけでございます。

 まず、相場操縦でございますが、今回、先ほども申し上げましたような、自己株式の売買を幅広く行うことができるということになったことに伴って、相場操縦の防止をしていかなければならないということで、自己株式の取得また処分の際に遵守すべき事項を内閣府令で定めることといたしました。

 また、自己株式の取得や処分の際にインサイダー取引が行われることを防止するために、今回、商法改正で新たに認められる自己株式の取得または処分にかかわる決定を、インサイダー取引規制の重要取引に追加をされることになったわけでございます。

 また、ディスクロージャーの観点から、今まで、自己株券買付状況報告書を三カ月に一度提出するということになっておりましたが、これを一カ月ごとに提出する、こういうことになったわけでございます。

小泉(俊)委員 今お話しいただきましたように、株価操縦、インサイダー取引に関しまして、内閣府令及び証券取引法百六十六条の改正、またディスクロージャーの点、確かに法整備はされているわけですよね。

 しかし、そうなりますと、これでこの不正行為を防止するための施策がまず現実的に実効性を持っているのかどうかということが一番重要だと思います。もしこの不正行為を防止する実効性が不十分であるならば、弊害だけが大きくなりまして、今度の改正というのは合理性は全くなくなるわけですよね。

 そこで具体的にお尋ねいたしますが、相場操縦並びにインサイダー取引に関して、証券取引等監視委員会の最近の告発数というのは一体どれぐらいあるか御存じですか。簡単にお答えください。

五味政府参考人 平成四年に証券取引等監視委員会が設立されまして以降、インサイダー取引による刑事告発は十三件、相場操縦による刑事告発は四件でございます。

小泉(俊)委員 今お答えいただきましたように、インサイダー取引、私が調べたところによりますと、平成十年、十一年、十二年の三年間でたった七件なんですね。相場操縦に関しましては、何と、平成五年からことしまでの九年間でたった四件ですよね。これで現実的に不正行為の防止の実効性はあるとお考えですか。

谷口議員 まさに今おっしゃったような、金融庁の方からこの報告がございましたが、摘発の件数が少ないというような状況を指摘されたことだと思いますが、いずれにいたしましても、今回のこの相場操縦の改正に伴って、我々は、そういうような相場操縦が行われないようなことになるだろうということを考えておりますし、また一方で、証券取引等監視委員会の体制の強化、御存じのとおり今二百六十名程度の体制でございますから、そのあたりの体制を十分に整え直して摘発事例をふやすようにやっていかなければならないということで、今、体制の強化につきましても言っておるわけでございます。

小泉(俊)委員 明らかに質問に明確に答えていただいていないんですが、このインサイダー、三年間でたった七件、相場操縦、九年間でたった四件、これは実効性はほとんどないと私は思っています。これをあるというのであれば、その認識自体が事実誤認であると僕は思います。

 それで、また、アメリカのSECの刑事手続の件数、これは本当はこちらで調べましたのでお話ししますが、ここ四年間で三百九件ですよね。何で日本とアメリカでこんなに告発の件数が違うんですか。

五味政府参考人 今おっしゃった件数は、私の手元にはございませんのでなんでございますけれども、私の手元にあります数字によりますと、一九九九会計年度におきまして、米国のSECが刑事手続をとりました件数は六十四件でございます。この六十四件の中には刑事告発のほかに捜査当局に対する情報提供が含まれておるという開示がなされておりますが、この内訳についてはディスクローズされておりません。

 それで、アメリカに比べて件数が少ないではないかというお話でございますけれども、申しましたように、統計上、刑事告発だけをとっているわけではございませんのと、もう一つ、今何百件という数字をおっしゃったのは、多分、民事手続あるいは行政手続、日本の証券取引法あるいは証券取引等監視委員会に与えられておりません権限の行政罰でございますとか民事罰でございますとか、あるいは行為差しとめ命令でございますとか、こういったものが統計に含まれておるわけでございますから、単純な比較というのはできないと思います。

小泉(俊)委員 数字のあれはいろいろ言えるんですが、現実的に摘発の件数が余りにも少な過ぎる。これではやはり一般投資家は日本の株式市場に不信感があるんですよ。これではいつまでたっても個人投資家を市場に呼び込むことはできないと私は思います。そういった状況の中で今回のような改正をすれば弊害ばかりが大きくなる、これは火を見るより明らかだと私は思います。

 具体例を聞きますけれども、時間がちょっとないんですが、例えば、日本オラクルという会社が去年の四月二十八日、店頭から一部上場する際に、これは日興証券主幹事で二十五万株ブックビルディング方式で公募したわけですよね。一株八万二千二百二十二円、百株単位ですから約八百二十万ですよ。これが、投資家が取得代金を払い込んでも株式を入手、売却できない十日間、公告期間、この間に何と市場価格が八万七千円から七万円まで下がりました。また、十四営業日で五万円まで下がった。会社が集めたお金は二百億なんですよ。ところが、一般投資家はわずか十四営業日で八十億円も損しています。

 こういったものを摘発しないで、相場操縦はないと言えるんですか。

五味政府参考人 日本オラクルという個別の会社のお名前を挙げての捜査あるいは調査に関するお尋ねでありますので、今後の私どもの活動に差し支えますから、これについてのお答えはいたしかねます。

小泉(俊)委員 いずれにしろ、私は、今の不正行為の防止の体制が極めて不十分である、これをこのままにして、今回のような株価操縦、インサイダーがやりやすい法改正をすることはやはり合理性に欠ける、そう思うわけであります。

 最後に、私どもは、今規制が不十分で、自己株式取得自由化に関しましては合理性が薄い、これをさんざん申し上げてまいりました。しかし、提案者の皆さんたちは、これは大丈夫だ、今の体制を強化しながら現状でも十分不正行為は防止できる、そうおっしゃっているわけですが、もし、改正によって、不当な株価操縦等により一般投資家に損害が生じた場合、提案者の皆さんはどうやって責任をとるつもりですか。立法者が全く責任ないとは言えませんよ。明確に答えてください。

金子(一)議員 我々としては、当然でありますけれども、そういう相場操縦ないしはインサイダーというものが行われない、そういう万全の措置を今回の提案ではとらせていただいた。

 同時に、あわせて、今後、日本SECに十分な、こういう状況というのが出てくれば当然でありますけれども、より幅広い、よりきめ細かいチェック体制というものを、監視体制というものをとっていただくということはもう当然であると思っておりますので、そういう趣旨を踏まえて今回の法を提出させていただいております。

小泉(俊)委員 さんざん申し上げますように、どう考えましても、今の摘発件数等を見れば、これは不十分なんですよ。それをあくまでも、いい、大丈夫だとおっしゃるのであれば、金子先生、これは責任とられますね、ちゃんと。

金子(一)議員 我々は当然に、先ほど申し上げたように、今度のインサイダー並びに相場操縦の万全の防止措置というもの、これは推敲の上に推敲を重ねて今回の措置をとらせていただいておりますし、同時に、その上で検査を十分やっていただく、そこのところは全く大事なことだと思っておりますので、そういうつもりで進めさせていただきたいと思います。

小泉(俊)委員 今のままでも十分だという御認識、十分わかりました。もし法案が通りまして実際にそういう事態が生じた場合、政治責任をしっかりおとりいただけますようお願い申し上げまして、質問を終わります。

保利委員長 次に、江崎洋一郎君。

江崎委員 民主党の江崎洋一郎でございます。

 本日は、法務委員会の場ではございますが、私は本来財務金融委員会の委員でございます。今回の金庫株の解禁につきましては、本来の目的、また証券市場の健全発展と申しますか、その意味でどのような影響を与えていくのか、これからいろいろ質問をさせていただきたいと思っております。

 まず、今回の金庫株の解禁につきましてですが、企業再編時における金庫株の活用あるいは企業経営の自由度を高める、経済構造改革を進める。例えば、バブル期にエクイティーファイナンスが非常に行われた結果、今市場がややだぶつきぎみである、これらの過剰な株式を圧縮していくあるいは企業間の株式の持ち合い解消を行う、そういったツールの整備という意味においては、今般の取得目的を限定しない自社株取得を認めるということは、我が国が取り組まなければならない構造改革の方向とも整合するとは考えられます。

 また、間接金融中心から直接金融中心への流れを加速させるという意味でも有効な施策の一つと考えておりますし、また、企業も今回の措置に期待を寄せているという声はございます。

 経済構造改革を進めるといった観点では、今次解禁は一つには有用とは思われますが、しかし問題は、なぜ今回政府の緊急経済対策に盛り込まれたのか、また金庫株のねらいというものがそもそもどういうことをお考えなのか。私が前段で申し上げたようなことであれば、それはある意味で問題ないとは思いますが、しかし、なぜ緊急経済対策ということでここに入ってきたのか、お答えいただきたいと思います。

金子(一)議員 今回の趣旨をそれなりに江崎議員は御理解をいただいていると思いますけれども、今御指摘いただいたのが私たちの趣旨でもあります。

 与党がやりました緊急経済対策の中には、人為的に株を買い上げる株価対策というものは全く否定をされたという経緯があったということだけは、あえて申し上げさせていただきたいと思います。

江崎委員 今、総論はいただきましたけれども、緊急経済対策というところにポイントを置いて私は質問をさせていただいたわけでございまして、そこにつきましてぜひ御答弁いただきたいと思います。

金子(一)議員 既に先ほども御答弁させていただきましたとおり、産業再生法がすべて、平成九年からでありますけれども、どんどん施行されておられること、御存じのとおりであります。この四月からは分割までできております。

 しかし、実際にそういう産業再編というものが我が国産業界の中で現実に既に動き始めている中で、これも先ほど申し上げましたけれども、現在の方法では新株をいろいろな対応のときに発行せざるを得ないという状況になっている。これは、資本の効率、株も含めました企業にとっての資産の効率化という点から有効に利用させるということはなるべく早くやった方がいいと。

 それから、何で早く、何でこの国会でというのも御質問があるかと思いますけれども、これは御存じのとおり、株主総会で決議をしていただく必要がある。そういうことになりますと、これを今回の国会ではなくて次の国会ということになりますと、決算期によって違いますけれども、会社によっては一年間これがさらに実行できない状況も出てくるということもありまして、今回、緊急経済対策の中で今国会でやらせていただくということを我々決めさせていただいたところであります。

江崎委員 そのタイミングにつきましてもう少しお伺いしたいわけでございますが、先ほど金子議員が株価調整ではないということではございましたが、報道機関によれば、昨年末から年初にかけての株価急落に危機感を抱いた前政権が、株式市場の需給調整策の一つとして関係省庁に検討を急がせたというような報道も見受けられるわけでございます。そういった事実があるとすれば、これは、本当のねらいは株式市場における価格形成への介入ということにもなりかねないとは思うのですが、その点はいかがでしょうか。

相沢議員 緊急経済対策の特命委員会というものをつくりまして、与党三党が協調いたしましていろいろの問題を検討した中の一環にこの証券市場活性化対策があったわけであります。

 御案内のように、それは、不良債権の急速な整理と申しますか、直接償却を含む不良債権の整理、これが一つのテーマ、それから株式市場の活性化対策が一つ、それからもう一つが、土地資本の流動化を含む都市再生、この三つの大きなテーマを緊急経済対策というところで与党三党で協議いたしまして、一つの結論を三月九日に出したわけであります。それを受けて、当時は森総理でありましたけれども、政府側もこれを重く受けとめて、その実現に向かって努力をする、こういう話があったわけであります。その証券市場活性化対策の中の一つの項目であります。

 もちろん、当時そのことが特に言われたのは、株価が下がっていることと無関係ではございません。でありますから、それはそういうような見方をされる方もあろうかと思いますけれども、やはり証券市場活性化対策の幾つかの項目の一環としてこのことを取り上げたということでありまして、ほかに、個人の譲渡益課税に対する問題とか、法人、個人を含めて二重課税を廃止するようにするとか、あるいは、銀行保有株式につきましてこれを制限する、これとの関連におきまして株式の保有機構を考えるとか、いろいろなそういう対策の一環としてこのことが考えられておったのであります。

江崎委員 そのタイミングということについてはちょっと明確な御答弁とは思えませんが、次に、法の形式につきましてお伺いしたいと思います。

 今回の法改正の形式を見ますと、今回、議員立法で金庫株の一部を解禁しまして、残余の部分、いわゆる売却の部分につきましては、明年四月一日に間に合うようにこの秋以降に閣法で手当てをするという、いわば法律の流れとすれば異例な対応かと私は感じております。こうした継ぎはぎ的な対応の結果、かえって実務を混乱させるようなことになりはしないか。部分開業というような形で急ぐ余り、安全面への配慮、例えば、先ほど小泉委員からもありましたが、インサイダー取引規制の問題あるいは相場操縦規制の問題等々、この辺がおろそかになってしまうという危険がないのか、お伺いしたいと思います。

金子(一)議員 大変厳しい御質問をいただきましたが、処分の問題を先送りしたわけではありません。今までの法律は、購入のときに限定列挙で制限を加えていた。処分については何もなかったのです。今度は、入り口、取得するときは原則自由、しかし処分については極めてはっきりさせる。ストックオプション、代用自己株、売却というのもあります。

 今、売却するときの方法がまだ決まっていないんじゃないかという御指摘でありますけれども、売却は決まっているんです。これは新株発行に準じてやるということでありますから、ある意味出口を、今までなかったものがあったんです、自動的に合併しちゃったものが今持っている株がある、処分の方法は今の法制では何も決まっていないんです、勝手に売られちゃう可能性もあるし、経営者のいいように使われちゃう可能性も現商法ではあるんですから、それを、むしろ今回早目にそういう処分に関する規定もつくっちゃった。そういう意味で、処分は先送りしたという御指摘は必ずしも当たらないと思っております。

 ただ、強いて言えば、処分のところで決まっていないというよりも、最終的に四月一日から処分してください、四月一日までは処分を認めないということについては、経理上、それから、資本勘定でやらせていただく検討が進んでおりますけれども、税務上の問題、これを公認会計士協会等々ともう少し時間を下さいということで、今そこだけ残っているということでありまして、あくまでも商法上の話は今回で一貫して解決しております。

 それから、出口が決まっていないからかえって何か非常にインサイダー等々が起こりやすいんではないかという御指摘が今ありましたけれども、これは、インサイダーにしても相場操縦にしても、取得のときだけじゃなくて処分のときに関しても今回法制手当てをさせていただいておりますので、その分の御心配、十分かどうかという御議論はそれぞれのお立場があるかと思いますけれども、手当てはとらせていただいたつもりであります。

江崎委員 安全面への配慮につきましては後ほどもう少し詳しく質問をさせていただきますが、次に、先にちょっと法律の技術論としてお伺いしたいと思います。

 今回の改正案では、これまで特例法で認めておりました法定準備金を自社株取得の財源に充てることを商法本則で認めるという扱いになっております。我が国においては、これまで重視されてきておりました資本充実の原則という関連におきましては十分な法制面の手当てが行われているのか、自己株取得は株主への資本の払い戻しとみなされるわけでございますが、会社の利害関係者の保護には十分に配慮がされた形になっておるのか、お尋ねしたいと思っております。

谷口議員 資本充実の原則のことをおっしゃったわけでございますけれども、これは、内訳を見ますと、今回、法定準備金まで含めて自己株式取得の財源範囲ということになったわけですが、配当可能利益のところは利益処分と見られるわけですね、利益配当ですね。また、準備金に食い込んだところは持ち分の払い戻しというようなことになるわけでございますが、そのような観点で、総じて財産の払い戻しという性格があるわけでございますので、株主平等の原則であるとか債権者保護の立場に立った対応を今させていただいておるわけでございます。

江崎委員 会社の利害関係者に対しましての十分な御配慮は今後ともいただきたいというふうに考えております。

 それで、この法律につきまして、少し諸外国の制度との比較ということでお話をさせていただきたいんです。例えば米国におきますと、これは各州によって法律も違うようで、各州会社法ということで整理がされておるようでございますが、この外国の制度と乖離した制度とはなっていないのか、あるいは、諸外国ではこの金庫株というものが一体どういう利用実態になっているのか、また、実績についても、どのようなケースで使われているのかということについてお伺いしたいと思います。

 アメリカでも、一定の規則、例えば先ほど来申し上げているインサイダーあるいは相場操縦、そして取得財源の問題等々についてはいろいろ規制があるわけでございます。そういった点から、国際的な資本市場の標準から本法案が乖離していないのかどうかということについてお伺いしたいと思います。そして、先ほどちょっと申し上げたとおり、アメリカの企業はどのようにこの金庫株を利用されているのかについてお答えをいただきたいと思います。

山崎政府参考人 諸外国の実績についてはちょっと私どもも調査できておりませんけれども、法制について御説明をさせていただきたいと思います。

 アメリカにおきましては、取得目的による規制はなくて、自己株式の取得を自由に認めております。その後、処分の方で州によって若干形態が分かれるということでございまして、ある州では当然に消却すべきものというふうにしておりますし、ある州においてはその保有も認めるという形で、分かれております。

 それから、ヨーロッパにおきましては、例えばドイツでございますけれども、原則として自己株式の取得は禁止するという規定を持っているんですけれども、株主総会の授権決議に基づく自己株式の取得を容認しております。それから、フランスにおきましても、株主総会は取締役会に自己株式の取得を授権することができる旨の規定を設けているわけでございまして、ある意味では今回の改正案に近いということでございまして、世界的にも例があるというふうに承知をしております。

江崎委員 どのような利用がされているかということについて。

三國谷政府参考人 御案内のとおり、アメリカでは州により法律が異なりますが、例えばデラウエアあるいはニューヨーク、ここに随分の上場会社の企業が設立しておりますけれども、こういった企業におきましては、例えば、企業の財務戦略の一環といたしまして、余剰資金を株主に払い戻すことによりまして株主に利益を還元する、あるいは、企業再編に際しまして新株を発行するかわりに自己株式を利用することで株式の希釈化を防ぐ、あるいは、自己株式を取締役や従業員に公開して経営のインセンティブを与える、そういったいろいろな目的で自己株式の取得が行われていると承知しております。

 実績でございますが、これはある民間の調査によるものでございますけれども、アメリカは、過去五年間の合計で約八千億ドル、これは一ドル百二十円に換算いたしますと約百兆円、件数にして約六千八百件の自己株式取得が行われていると承知しております。

江崎委員 そういった意味では、法整備につきましては諸外国と遜色ないという理解で認識させていただくということでよろしいですね。

 それでは次に、少し先ほど触れさせていただきました安全面につきましてお話を続けさせていただきたいと思いますが、先ほど相沢先生からもございましたが、金庫株解禁の方向が打ち出されました与党三党の証券市場等活性化対策中間報告におきましても、解禁に当たっては、「不公正取引の防止や投資家への情報開示などに関し万全な措置を講じ」という一文がございます。こうした面につきまして、今次立法に際しまして改めて措置をとられたのか、また、それらが十分と見てよろしいのか、お伺いをしたいと思います。

 まず、この中間報告で指摘しておりました金庫株解禁に係る不公正取引の防止措置としまして、インサイダー取引規制関係、相場操縦禁止規定関係、ディスクロージャー関係、証券取引等監視委員会関係、四つ柱があったわけでございますが、これらについて具体的措置というものが追加的にとられたのかどうか、お伺いしたいと思います。

谷口議員 今おっしゃいましたこと、大変重要なことでございます。我が国株式市場の公正性、また健全性が損なわれることのないように、所要の証券取引法の改正を行ったところでございます。

 まず初めに、相場操縦でございますが、自己株式の取得また処分の際に相場操縦をなされることを防止するために、自己株式の取得または処分の際に遵守すべき要件、これはアメリカのセーフ・ハーバー・ルールを参照したわけでございますが、そのような要件を内閣府令で定めることといたしておるわけでございます。

 また、インサイダー取引の防止におきましては、今回商法改正で新たに認められる自己株式の取得または処分にかかわる決定をインサイダー取引規制の重要事実に追加をいたしたわけでございます。

 また、ディスクロージャーの関係の改正といたしましては、現在、自己株式の取得に関する決議ごとに、それぞれ三カ月に一回自己株券買付状況報告書を提出させておるわけでございますが、これを一カ月ごとに提出をさせるというように改正を行ったところでございます。

 このようなことで、不公正取引の防止、また投資家への情報開示などについて万全の体制を講じたところでございます。

江崎委員 その中の特に証券取引等監視委員会、市場の番人でございますが、この点につきまして改めてお伺いしますが、不公正取引に係る規制の遵守を徹底させるという意味では大変重要な役割を担うわけでございます。この体制強化ということが、先ほど来小泉委員のお話にもありましたが、問題ではないかと私は考えております。

 証券取引等監視委員会がこれまでに行った実績、インサイダー取引規制の告発、あるいは相場操縦規制の告発の実績ということにつきましては、先ほど小泉委員の質問の中にございましたので省かせていただきますが、消却特例法のもとで自己株式取得企業の数が増加したと思われます。証券取引等監視委員会では、そうした外部環境の変化というものが実際にあるわけでございますが、この現状の中で、相場操縦のおそれのある案件について適切な対応というものが図れているのかどうか、また自己評価というものについてお伺いしたいと思います。

 そして、ここに、これは金融庁が出された資料でございますが、アメリカと日本の証券取引等監視委員会の組織体制というものの比較があるわけでございますが、二〇〇一年度で見ますと、陣容を単純に比較してみましても、米国のSECの三千二百八十五人に対しまして、日本の証券取引等監視委員会は二百六十五人。あくまで法的な役割というものが違うという部分もあろうかとは思いますが、証券市場の規模あるいはいわゆる株式の発行量等々、そういった銘柄数も含めて、この十分の一以下の人数で果たして本当に適切な監視というものが行われているのかどうか。現状、金庫株解禁以前の問題としても大変懸念される状況じゃないかと思います。

 こういった意味で、要員数のみならず、専門家、やはり金融のいろいろな相場操縦あるいは犯罪につきましては、金融の中身を、実体取引をかなり把握して理解をしている人でないと、なかなかこの摘発というのも難しいと思います。また、会計、税務の専門スタッフの数というものでも非常に心配されるわけでございまして、今の、非常に残念ながらまだまだ十分でない体制の中で、金庫株の解禁が耐え得るものなのか。また、今後要員の充実というものが課題と認識しているのであれば、アメリカの体制イコール日本の体制とは思いませんが、しかしながら、日本の市場に見合った適正人員というのがあると思うんですが、果たしてどういう展望をお持ちなのか、お伺いしたいと思います。

五味政府参考人 お答えいたします。

 外部環境の変化などに対応した取り組みというまず第一点でございますが、この点に関しましては、限られた陣容ではございますけれども、その時々のマーケットのトピックになっているような案件につきましては、注意深く監視の目を光らせるようにしております。一例を挙げさせていただきますと、例えば、最近問題になりましたEBにつきましては、いち早く価格判定日における値動きというものをチェックいたしまして、これまでに三件の作為的相場形成の摘発を行っているというようなこともございます。

 マーケットというのは非常に速く動くものでございますし、状況の変化が激しいわけでございますので、これに適切な対応をするということを常に心がけております。特に日常監視という部分では、特異な値動きをする株、こういったようなものについて常時監視をいたしまして、取引の手口を分析し、必要があれば証券会社から売買取引を行った者の氏名や属性を聴取するといったようなことで、その先の検査あるいは捜査が必要かどうかというようなことを常に注意深く解明していっております。また、そうした結果、違法行為が発見されますれば、厳正に対応するということをしております。

 なお、アメリカのSECとの比較がございましたが、先生がおっしゃいますとおり、守備範囲が大変に違いますので、人数だけを単純に比べることは困難でございます。私どもといたしましては、犯則事件の捜査並びに取引の公正の確保のための検査、あるいは、日常の市場監視でございます取引審査、こうしたものを限られた陣容の中でできるだけ効率的に図るということで対応しております。

 なお、御指摘にございましたように、人数だけではなくて、大切なのは能力とか効率とかいう部分でもございまして、こうした点につきまして、これまでの取り組みといたしましては、民間の専門家を登用する、あるいは法曹資格を持つ者を職員として採用するといったようなことを行い、あるいは蓄積されました監視ノウハウといったようなものについて、これを整理し活用していくといったような能力面での向上策、あるいは、市場の分析を行うにつきまして、コンピューターシステムを積極的に開発し取り入れることによって監視の効率化を図るといったようなことも行ってきております。

 人員につきまして、適正規模ということについての展望というお尋ねがございましたが、具体的な定員と申しますのは、やはりその時々の予算、機構定員要求、そしてその審査の中で決まっていくものでございます。あらかじめこの時点で何人が適正規模といったようなことを申し上げるのはなかなか難しい面がございますが、この金庫株の解禁ということに伴いまして申しますならば、現在、監視委員会の陣容で行っております特別調査あるいは検査、取引審査、こうしたもので実際のところ手いっぱいという状態でありますので、金庫株の解禁に伴いさまざまな弊害防止のための措置が講ぜられましたけれども、その実効性を担保するという意味では、御指摘のとおり、監視委員会の任務が極めて重要でございまして、この新たなワークロードというものにどう対応するかということになりますと、まずもって大切なのは人員の拡充であります。この点につきましては、関係当局の理解を得られるようにこれから具体化をしてまいりたいと考えております。

江崎委員 残念ながら大変頼りない御答弁で、本来であれば、この金庫株解禁に伴ってさらに仕事がふえるわけですから、当然人員増を要求し、さらに拡充をしていく必要ということを熱弁してくれなきゃいけない立場であると思うのですが、大変抑えぎみな発言で、ちょっとがっかりいたしました。

 しかし、そうなりますと、逆に、金庫株の解禁というものは、タイミング的に、証券取引等監視委員会の拡充とパラレルな形で行われない限り市場の信頼性というものが危惧されるのではないかと私は大変心配しております。そういった点で、今後、証券取引等監視委員会の拡充というものは、政府としては一日も早く促進、進めていただきたいというふうに考えております。

 それで、一つ気になりなりましたのは、金融庁の御意見の中で、民間や、法曹資格者の登用ですとか、専門家とは申しますけれども、私もかつて銀行に勤めておりまして、その中で外国為替相場の中で仕事をしておった者ではございますが、マーケットのことはマーケットに聞けというぐらいに、やはりマーケットの中の人間でないとわかり切れない取引というものもありますし、またそのマーケットも、たった三年離れただけでもまた感覚を取り戻すのに逆に五年かかると言われるような、相場の取引の中での複雑性というものも今非常に増している状況にあります。

 そういった意味で、恐らく当時の大蔵省のいわゆる為替課の方が、外国為替の相場に対するトレーニングということで銀行等に人を送り出して相場の実践ということで学ばせていたようにも思います。証券取引等監視委員会の中では、監視する、外側にいるということではなくて、そういった具体的な実務に接する、まず中に入ってトレーニングを受けるというようなことはやられておられるのですか。そうでないと本当の取引というのはわからないと思いますよ。ちょっと御答弁いただきたいと思います。

五味政府参考人 現状では、職員を民間企業に出向あるいは派遣して、そちらで仕事をさせるということは行っておりません。私の記憶がはっきりいたしませんが、何か公務員制度上の問題があったのではないかと思います。

 したがいまして、私どもでは、現在六名おりますけれども、民間からデリバティブディーラーなどを中途採用するという形をとることによって、実際のマーケットの動きを実際に体験した人間を逆の立場から、マーケットを監視する側で活用するということを行っておるところです。

江崎委員 今はいろいろ規制もあるということでトレーニングできないということでございますけれども、しかし、それは非常に実戦的でない人間を育てているということではないかと思います。そういった意味では、そういう部分でこそ規制緩和が必要で、積極的に民間の現場を経験していただきたいというふうに思います。

 また、アメリカの例を引いてもこれは日本にすぐにはマッチしないかもしれませんが、SECで仕事をしている人間の中には、実際に自身が金融犯罪を犯したというような、そういった意味での経験者という者もいるようでございまして、取引が非常にトリッキーと申しますか、その中において、かつて相場操縦をしたという経験者等を実際に中にほうり込んで逆の摘発に使うというようなことも行われているようでございます。

 日本の中では倫理面の問題でいろいろ難しさもあろうかと思いますが、しかし、そこまで真剣にやっているということを証券取引等監視委員会の皆さんには御認識をいただき、さらに頑張っていただかなければ、市場の健全化あるいは信頼というものは必ずしも取り戻せないのじゃないかなというふうに心配をしておりますので、ぜひとも力を入れていただきたいと思います。

 そして、証券取引等監視委員会につきましては最後の質問になりますが、予算面で一つ伺いたいと思っておるのですが、先ほど適正な人員規模はおっしゃられないということではありましたけれども、金庫株関連法案が今出ておるわけでございます。成立するかどうかというものは別にしても、いずれにせよ要員増というものは必要になってくると思います。

 この要員増というものにつきまして、今後、補正予算案に盛り込んでいくことを考えておられるのかどうか、ちょっとお答えいただきたいと思います。

五味政府参考人 補正予算を編成するという方針が出ているとは承知しておりませんので、補正予算に関してコメントするというのは難しゅうございますが、私どもは、機会をとらえまして、とにかくできるだけ早い機会に体制の拡充というものを実現する必要があると考えております。

江崎委員 行政改革の時代ではありますけれども、必要なところには必要な人を配置する。不必要なところから減らして必要なところに回せばいいわけですから、そういった意味では、重要なところにはぜひとも要員増ができるような体制整備を急いでいただきたいというふうに考えております。

 それでは、次の質問に移らせていただきます。

 金庫株の性格ということについてでございますが、ある種究極の相場操縦手法となり得る危険を秘めておるわけでございます。したがって、金庫株の解禁に当たっては、先ほどもございましたが、相場操縦禁止規定関係の整備を図るということが不可欠の前提条件となるわけでございます。この点について御質問させていただきたいのです。

 検討されております内閣府令として、相場操縦禁止規定というのが手元にございます。米国の自己株式買い付けに係る相場操縦禁止規定のセーフ・ハーバー・ルール等と比較してこれは遜色ないというものなのかどうかを一つはお伺いしたいと思います。

谷口議員 今おっしゃったように、米国のセーフ・ハーバー・ルールを参考といたしまして、利用する証券会社の数であるとか、買い付けを行う時間であるとか、買い付けを行う価格、また買い付けを行う数量等要件を定めておるわけでございます。アメリカにおけるセーフ・ハーバー・ルールと何ら遜色のないものというように考えております。

江崎委員 私も、この内閣府令の概要というのを見させていただきまして、アメリカのこのルールをほぼ参考にされて非常に規制はしておられるなとは思いましたが、しかし、実態面としては、金庫株を利用する企業にとっては、この五つをやらなければどうなのかな、相場操縦と認定されなくて本当に安心だなということはなかなか言い切れないのではないかと思います。

 そういった意味では、米国におきましては、いわゆるノーアクションレターという、政府に、こういう取引をしたいんだ、それに対して政府が、こういう取引であればどうぞおやりください、アクションは起こしませんよという意味でのノーアクションという文章のやりとりを企業と行うというような事情もあるように伺います。

 今政府内におきましても検討をしているとは聞いておりますが、金庫株解禁につきまして、こういったノーアクションレターというものを政府と民間との間でやりとりするような体制まできちっとできるのかどうか、これも大変重要な問題だと思いますので、その点についてお伺いしたい。

 あともう一点、この内閣府令に際しまして、周知期間の問題もありますし、また、より完成度を高めるという意味においては市場関係者の意見を聞かなければいけないと思います。具体的にどういうスケジュールで何を行おうとしているのか。この二点についてお伺いしたいと思います。

三國谷政府参考人 二点のお尋ねでございますが、アメリカにおきまして、インサイダー規制あるいは株価操縦につきましてはノーアクションレターの発出例はないと承知しております。ただ、今回、相場操縦についての内閣府令という段階に至りますならば、私ども、市場関係者とも意見交換を十分行って、実用に即した、かつ効果的な制度にしてまいりたいと考えているところでございます。

江崎委員 もう少し具体的に、いつどのようなことを考えておられるのかをお聞きしているわけでございます。これからやるのは当たり前の話で、六カ月しかないわけですから、今後のスケジュールというものをお伺いしたいのです。

三國谷政府参考人 まず、法案が今審議中ということでございますが、その後に至りますれば、いろいろな関係団体あるいは経済界との意見交換をした上で、また、省令という形になりますと、パブリックコメント、こういったものにも付しまして、十分にその辺をやっていきたいと思います。

 最終的には、この施行日に合わせましてそういった手続を完了させる、そういう形になろうかと思います。

江崎委員 それでは同じ答えだと思うんです。もうちょっと具体的に、どういう機会を設けて、どれぐらいの人間と具体的に行おうとしているのか、構想ぐらいあると思いますので、教えていただきたいと思います。

三國谷政府参考人 私どもがこのような政省令等を作成する段階におきましては、一つは、経済界、実業界、経団連とかそういった団体、あるいは証券業協会、取引所、そういったところといろいろ個別に相談することもございますし、またオープンな場でいろいろ説明会等を開き、あるいは要望を聞くという手続を経て作成しているところでございます。この問題につきましても、そういったしかるべき場を設けまして、きちんと意見交換をいたしまして作成してまいりたいと考えております。

江崎委員 ぜひとも、充実した形での意見交換を、また民間の意見をきちっと聞いて、そこを反映させるような格好を検討していただきたいというふうに考えております。

 私の質問ももうこれで終わらせていただきますが、やはり我が国の株式市場というものにつきましては、残念ながら、まだまだ海外の投資家から見た目というのは大変厳しい現状にあるわけでございます。そういった意味で、金庫株というものが信頼性を損ねるような取引に使われてしまっては、また海外からのさらに厳しい目にさらされるということにもなりかねないと思います。そういった意味で、私自身は、市場のインフラ整備というものが整わない中で金庫株が解禁されるということについては大変懸念をしております。

 今後、金庫株の売却処分にかかわる規定整備に当たっても、とにかく不公正が起こらない、また実効性のある監視ができる、そして証券取引等監視委員会の体制整備が充実するということをきちっと約束していただきたいと思います。

 また、現在、お話にも出ておりますが、銀行株式買い取り機構の問題もいろいろ議論はされております。こういった機構に際しましても、株式市場の相場が、公正な価格が形成されるような仕組みにしていかなければいけないと思います。そういった意味で、ゆがめることがないように、また日本の健全な証券市場育成のために今後とも議論を深めていきたいと思います。

 以上で、私の質問は終わらせていただきます。

保利委員長 次に、中川正春君。

中川(正)委員 民主党の中川正春です。

 引き続き議論をさせていただきたいというふうに思うんですが、最初に、ちょっと確認といいますか、お尋ねをしておきたいのです。

 今回のこの法案というのはなぜ議員立法という形で出てきたんですか。普通であれば、こういうのは審議会にかけて、これまでのいろいろな議論を踏まえながら慎重にやる。さっきから話を聞いていると、これはそんなに急ぐような話ではないんですね。緊急対策とは関係ないんだというふうな話も出てきていましたけれども、それをこういう形で急いでやっていくということは何があるのか、そこから尋ねていきたいと思います。

金子(一)議員 先ほど来御説明しておりますとおり、我が国の経済状況はどんどん動いているものですから、ある意味、これは非常に急ぐという認識で我々与党では考えて今国会に提出をさせていただいております。

 かねてから、今度の一連の商法改正等々については法務省も検討をされていました。しかし、会社法制にかかわる全体の商法改正というものを次の国会でという準備をされていたようなものですから、法務省としてはこの部分だけを取り出してということはなかなかやりにくいという判断があったんだと思います。これは法務省がどう判断するかの話でありますけれども、我々は、議員立法でこの部分は非常に急ぐという認識のもとに取り上げさせていただいた。

 ただ、先ほど申し上げましたように、後でまた法務省にも伺っていただきたいと思いますけれども、法務省もそれなりの準備をしてきているということでありますので、法制審の手続を省略しちゃってというお話も何かちょっとありましたけれども、法制審のヒアリングにかわるものは相当既に行われている。実務家との間の、日本証券取引所ですか、こういったようなところの人たちとの打ち合わせ、法制審にかわるものかどうかわかりませんけれども、これはそれなりの準備は既にされておられたと伺っております。

 もう一つ、強いて言えば、議員立法が非正常で閣法が正常かということに関しましては、御党も今度立派な法案をどんどん出していただいているわけでありますし、こういうたぐいのものが、議員立法が正常ではないということでは決してないと思っております。

中川(正)委員 ちまたで聞こえてくるところは、どうもこれは筋が悪い。専門家に言わせると商法が曲げられているというふうなことがあって、しかし、選挙対策用としてはやらなきゃいけない、その中でこうして議員立法をとらざるを得なかったというふうな理解を私はさせていただいたのです。

 さっき、法務省の話をということであったんですけれども、どういう見解をお持ちですか。

横内副大臣 委員も御存じのように、現在、商法の全面的な改正の作業をしておりまして、法制審議会で議論をしているところでございます。

 今回のこの商法改正は、緊急経済対策の一環として、与党において、急いでこれをやる必要がある、そういうことから提案をされたというふうに伺っております。

中川(正)委員 全く答えになっていないんですが、聞いたってなかなか本音はおっしゃらないでしょうから、そういうことにしておきます。

 そこで、急いでというところをもう少し聞いていきたいんですが、さっきから聞いていますと、相沢さんと金子さんと、ちょっとニュアンスが違うんですね、急いでというところが。相沢さんの話では、どちらかというと正直だと思うんですが、もともとこれは株価対策なんだ、持ち合い株を解消しなきゃいけないし、そういう形の中でこの議論がまず出てきて、それから今回の形になったというふうなニュアンスがありました。それを全く否定されるというのが金子さんだったんですが、もう一回統一見解を、これは何のためにやるのかということを。

金子(一)議員 こういう金庫株というものが株式市場に与える影響というものは、これは市場のそのときの状況ですとか、さまざまな環境によります。それから、私たちもそこは随分議論はいたしましたけれども、短期的な効果というのはあり得ても、しかし、市場がどういうふうにそこを判断するか。市場というのはあくまでも、企業の収益性と将来性、ここがベースでありますから、需給という御指摘が先ほど来ありましたけれども、私たちは、これによって効果があるということがためにこの法案を出したというつもりはありません。

 そこは、相沢議員と私たち、議論をしている過程で全くの共通でありますから、多少言葉のウエートがどちらに重きがあったかという程度だと思っておりますし、決して私が不正直というわけでもありません。

中川(正)委員 たしか相沢さんは株式市場の活性化という表現をされましたが、どっちにしても、もう一つ基本認識として、今の株式市場をどういうふうに理解をするかということ、これも一つ基本認識をはっきりさせていかなきゃいけないことだというふうに思うんですね。

 一般的には、株のボリュームそのものが大き過ぎるんだ、持ち合いということもあって、これを解消していく、特に金融機関が新しい構造改革を始めてくる中で、株のいわゆる制限ということもこれあり、ここのところを一気呵成に同時に達成をしていこうと思うとなかなか大変ですねという認識、これは私も持っているんですよ。

 それはどうなんですか。皆さん方には共通した認識だと思うんですが、それでいいんですか。

相沢議員 私と金子議員と答弁のニュアンスが違うというお話でありましたけれども、そういうふうにお聞きになられたかもしれませんが、しかしそれは、私ども、そういうつもりはないのであります。

 ただ、私は、ちょっと繰り返しになって恐縮ですけれども、緊急経済対策の中に三つの大きなテーマがある、不良債権の処理と株式市場の活性化、それからもう一つが土地流動化を含む都市再生、その株式市場の活性化対策の中の一つの項目だということを申し上げているのでございます。

 その株式市場活性化対策をなぜ緊急経済対策の一つの大きな柱として取り上げたかということについては、株式市場の株価というものとは、それは無関係だというふうに私は思っておりません。ただ、例えば、今のお話でもちょっと触れたと思いますけれども、銀行が保有している株を制限する、それとの関連におきまして銀行保有株式取得機構を考えるというような話は、これは株価対策とは直接の関係はないわけですね。

 非常に市場価格の変動する株式を多く抱えているということは、銀行の経営上問題がある。そして、アメリカは株の保有をかつて原則禁止、それからヨーロッパにおいても制限をしている。そういう情勢の中で、日本も銀行の株保有を制限する。ですから、金融安定の考え方の線上にその対策を打ち出そうというふうに考えているわけであります。

 ですから、いろいろな要素で株式市場活性化ということを考えているので、それが市価対策、株価対策にというふうにそう短絡してお考えいただかないようにお願いしたいと思います。

中川(正)委員 問題意識は共通だと思うんですよ。放出させなければならないということがあり、結果としてそれは市場へ向いて株が出るわけですから、価格ということ、これは全体のシステムとして考えていかなければいけないということ、そこは共通した形になると思います。

 そのもう一つ前に、全体として日本の株自体のボリュームがどうなのかということだと思うんですよね。これはよく指摘されることでありますが、いわゆる株のバブルを境にしまして、その前から、だから十年前、それから二十年前、ずっとさかのぼっていくと、本当に顕著な傾向というのが出てきます。

 それは、具体的に、一九八〇年で千九百九十七億五千百万株なんですね。だから約二千億株ですね。これがバブルの頂点に行きますと、三千百六十五億三千六百万株、こういうことなんですね。現在が三千四百三十三億株というプロセスですね。これに対して総額が、バブルの前、八〇年で七十三兆円。それが、バブルを経ていって、百八十二兆円、三百六十五兆円、現在では四百四十二兆円。

 結果的に、バブルが崩壊したというけれども、株については、株式発行数、それから総額についても大きく崩壊はしていないんですね。そこのところが、現在の株価が高過ぎるのか安過ぎるのか、それともまあこれぐらいのところなのか、あるいはもうちょっと低くてもいいのかという、そんな議論の分かれるところだと思うんですよ。

 共通して言えるのは、どうも今しなければいけないのは、このボリュームというものを正常な状況に下げる。それからもっと言えば、ROE、いわゆる一株当たりの利益率、いわゆる利益を還元する株というものに対する投資の魅力といいますか、特に一般の個人投資家にとっての本来の株式投資というものに対する魅力を増していくということから考えていくと、今、持ち合いで持っているものを市場に放出される、あるいは、もう一つ後ろにある全体の株式市場のボリュームが企業の活動に対して大き過ぎるというようなことが指摘をされます。

 これは、私が指摘しているだけじゃなくて、専門家の間から絶えずその指摘が出てくるわけです。ここのところを見逃していくと、日本の株というのは見誤るんじゃないか、いわゆる麻薬を打ち過ぎてしまうんじゃないか。

 今我々一生懸命になっているのは、銀行をどうするか、不良債権をどうするか。株価が時価会計になって上がり下がりするものですから、それで一喜一憂して、株を何とか支えなきゃいけないということで一生懸命になるわけですけれども、その後ろにある構造というものがもっと議論されなければならないんじゃないか、その上に立って政策が出てこなければならない、こんなふうに思うんですね。

 そこについての株の基本認識。さっき活性化と言われましたが、これは、個人投資家に何とか入ってきてほしいということだと思いますし、外人の買いがどんどん入っていますけれども、持ち合いということじゃなくて、活発に取引されるような形態に持っていきたいということだと思うんですが、その奥にある全体のボリュームの問題についてはどんなふうにお考えですか。

金子(一)議員 中川議員、もう既に大変勉強をされておられまして、私たちも、今回の法案作成に当たりましてかなり同様の議論をさせていただいておりまして、基本的な認識は全く変わらないと思っております。

 特に総量の部分、さっき数字を挙げられました。あのバブルのときに多くの企業がエクイティーファイナンスというものをどんどん発行してしまった。この部分の解消がほとんど行われていないというのは御指摘のとおりであると思っております。したがいまして、私たちとしても、この増量した部分というものを消却していってほしいということの要請といいますか、我々の気持ちでありますけれども、ここを消却してくれるのが本当は一番いいと思っております。

 ただ、今の現状で考えてまいりますと、直接投資の方へどんどん今マーケットが移っている。そうしますと、そういう行動を放置したまま進めていく、つまり過剰資本というものを処理しない企業というのは、これはもう株主からも取引先関係からもいずれ見放されてくる。それができないところは、つまり過剰資本と思われているような会社、その資本を有効に活用できない企業は、当然でありますけれども、衰退といいますか、見放されていく。

 今回の金庫株の議論とは必ずしもその部分は関係ありませんけれども、そういう消却という方法は、特例として企業がそういうことをやれるような準備といいますか環境整備は、中川先生御存じのとおり、国会でもしてきたわけですよ。そういう中で、繰り返しますけれども、企業がこれからの経営戦略としてそういうものをどういうふうに有効に活用するか、もしくは効率的に活用するかというのが、多分おのずから競争力の決め手になってくるんだと思います。

中川(正)委員 その共通認識の上に立って議論をしますと、どうも今回の金庫株の意味合いがわからなくなってくるんですよ。

 というのは、本来は消却をすべきところなんですよね。もともとねらいというのは、証券市場の活性化という漠とした話だけで、本音のところがなかなか出てこないんですが、できれば、放出したときにそれぞれが自己株を買い取って持っていきやすいような形をといいますか、そんなところから議論が始まったわけですが、これは、本来はそこで持っているだけじゃなくて、消却してしまう。消却してしまうことによって、本来の株に対する魅力が出てくるということ、これをねらっていかなければならないということであるにもかかわらず、逆に、そうじゃなくて、いや持ち続けていてくださいよ、それでまた時が来たら放出してくださいよという枠組みをわざわざ今の時期になぜつくらなければいけないか。こういうことなんですね。

金子(一)議員 今回の枠組みは、市場から吸い取って、やがて放出してくださいよということではなくて、消却もできる、ストックオプションにも使える。

 それから、今回一番問題になっておりますのは、全体の市場の問題もさることながら、つまり、エクイティーファイナンス等々によってボリュームがふえたものを減少させるのが大事だというお話、御指摘ありましたけれども、それと金庫株とは違いますよと私があえて申し上げたのは、個々の企業にとってみれば、今度、市場から買い上げてきた金庫株というものを、先ほどから説明しておりますとおり、産業再編に使えるということ。

 もし今のまま使えないとすると、さなきだに株式市場が過剰感があるところにまた新たに新株を発行するという、先生がまさに御指摘される懸念のことを企業としてはやらざるを得ない。だから、今ある範囲の株式を産業再生に、合併とか分割とかいろいろありますけれども、そういうものに使いましょうということでありますから、まさに今度の金庫株の目的というものが、市場対策というのは副次的な効果という部分はもちろん否定いたしませんけれども、それよりももっと、今申し上げた焦眉の急としての産業再生の動きの中で、新たに過剰な新株を発行させるということを防止しながら効率的にできるというのが今回の法の趣旨だと思っております。

中川(正)委員 MアンドAの場合は、新株発行するといったって、とったりやったりですから、トータルで変わらないんだと思うんです。

 その議論じゃなくて、もう一つ言えば、ここで一番必要なのは、魅力のある市場と、それから市場に対する信頼だと思うんですよね。

 いかに信頼を市場につくり上げていくか。これがないから、特に日本の個人投資家なんというのは株を買うというのはギャンブル、それこそさっき証券取引等監視委員会の実績が出ていましたけれども、あんなていたらくですから。それはだれが見ても、今の証券市場というのは、正常に動いているということじゃなくて、本当にごく一部の機関投資家がその中で特殊な金もうけをやっているんだ、それに我々関係ないよというぐらい、我々がちまたを歩いたら、先生でもそうだと思うんですが、一般の投資家は言っていますよ。

 そういう人たちに対して、いや、そうじゃないんだよ、これは個人にとっては、資本に参加をしていく、それを運用して、活用していく、そういう健全な、そしてまた必要な市場なんだよという、そこをかち取っていかなきゃいけないと思うんですね。

 ところが、今回のは、その一番大切なところをまた反対向いて行っているわけですよ。もともとこういう機能を入れ込むんじゃなくて消却をしなきゃいけないところに、金庫株という形で持っていいですよと片方で言って、もう一方で、ではインサイダー取引大丈夫ですね、あるいは、それぞれ一部の人がこれでまた利益を得ていくというような構造になりませんねということに対して、四月までちょっと待ってください、その中身はもう少し相談してからにしますという話が一つ出てきて、かつ、アメリカの制度がずっと出てきましたよ、それに対してセーフ・ハーバー・ルールを適用していきますよという話が出ましたけれども、一番大事な、それをいかに運用していくかという部分、これに対して確証がないんですよ。

 日本が一番これまで責められているところというのは、仕組みはいろいろアメリカのまねをしてつくっているけれども、中身でやっていることは全然違いますねと。これは海外の投資家も言っていることでありまして、そこの、運用に対してのしっかりとした議論がないままに、さっきの証券取引等監視委員会あたりの答弁を聞いていますと、これまでと全く変わらないような形でしかやっていけないというふうなものが出ているわけじゃないですか。

 本当にこの証券市場を何とかしていこうという一つの共通認識があるとすれば、与党の皆さんも、ここのところはやはりしっかりやっていかなきゃいけないところだというふうに思うのです。その前提がなければ、この法律は、不安だけが増強して、肝心の機能というのは全く働いていない。いわゆる市場に対するメッセージもその逆なんだと。専門家からは、こんなものは何をやっているんだというふうな形で見られる可能性もある、決めつけませんけれども、可能性もあるというような議論でしかないのじゃないかということなんですね。そこについて、どうですか。ちょっと反論してください。

相沢議員 日本の経済規模等を考えまして、果たして今の株が多いかどうか。これは議論があるかもしれませんが、しかし一般にそういうような印象があることは事実でありますし、また、特に持ち合い株の解消ということは経済界からも強い要望があるわけであります。

 私どもは、株式市場活性化対策を検討いたしましたときも、銀行の保有株式の共同取得にあわせまして、やはり企業の持ち合い株の解消を進めるために、例えば等価交換を考えたらどうか。これは非常に要請の強いところであったわけであります。このことも検討いたしました。まだ課題として残っております。

 ただ、その際に譲渡益が発生する場合があるわけですね、それをどうするか。それに対して通常の課税であるとすると、魅力がないばかりか促進されない。ですからその場合に、譲渡益課税について、非課税とすることが無理なら、例えば繰り延べを認めるとか、何か方法を考えられないかということも検討をいたしておったのであります。

 少なくとも、そういう形でもって持ち合い株の解消ということを促進することによって、市場の出過ぎた株を減らすということも真剣に考えておりましたし、またこれからも考えたいと思っているのです。

 それからもう一つ。証券取引等監視委員会の問題に関しましては、予算とかあるいは行革の関係がありまして、事務局の立場としてはなかなか言いにくいことだと思うのですけれども、確かに、金庫株の解禁の問題とも関連をいたしまして、やはり体制の充実を図っていかなきゃならない。特に人員であります。そのことについては、私も去年金融再生委員長をやっておりましたし、痛感している問題でありますから、これからもバックアップしてやっていきたいと思っております。

 ただし、これは余計なことかもしれませんが、アメリカのSECと日本の証券取引等監視委員会と違う点は、SECの場合は、証券の企画、指導等、そういう行政もあわせてやっております。それを日本の場合は金融庁が持っておるということであります。その点の違いがある。それから、もちろん株式の数も、上場銘柄もアメリカが五割増しという状況でありますし、それから、金額の点その他についても大きな差がありますから、直ちに三千対二百何十という比較にはならぬと思います。思いますが、いずれにいたしましても、その体制整備について、我々も及ばずながらバックアップしてまいりたいということを申し上げておきます。

中川(正)委員 どうですか、相沢議員、すべてアメリカの方式でなくてもいいと思うんですが、少なくとも、もう少し独立性を持たせて機能的にやっていく、そのような方向というのは、いわゆる証券市場が大切なだけに大事なことだと思うんですよね。今、金融庁の下にいて、一つの本当に小さな部署だけで、その範疇の中でやっていくよりも、企画立案能力も持たせながら総合的に対応していくというふうなこと、これぐらいまでひとつこの際は踏み込んだらどうだということ、これは私たちの気持ちなんですが、どう思われますか。

相沢議員 自民党の中におきましても、この問題に関しましては、ちょっと正確な名前を忘れましたが、小委員会を設けて検討をいたしております。いなくなっちゃったけれども、塩崎氏が委員長をやっていましてね。それで、この委員会におきましていろいろな議論をしたのでありますが、結論的に言いますと、そういうような考え方、あるいはまた今の体制でやったらいいということで、意見が分かれております。

 いずれにいたしましても、このことについてはこれからも検討を続ける問題だというふうに考えていますが、直ちに、アメリカのSEC体制がいいというふうに私どもとしては考えておりません。

谷口議員 まず初めに、先ほどの件について私の考えていることを述べさせていただきたいと思うのです。

 今、中川委員の方も、市中に供出されている多数の株を消却するということはいいことだということをおっしゃって、しかし消却だけでいいんじゃないかというようなお話だったのかと思いますけれども、ROEのことに言及されたと思います。過大な資本金を削るというのは、ROEを基本的に高めることになるわけですから、これはそういう意味ではいいことなんだろうと。

 また、経営の多角化といいますか、今も金子提案者の方からもおっしゃったわけでございますが、組織の再編だとかまた事業の再編だとかいったときに、みずから持っているその自己株を供出できるというような選択肢が広がるというのは、やはり当該企業にも極めて有益なんだろうというわけでございます。

 ですから、今おっしゃったように、証券市場の公正性、健全性の問題があり、かつまた証券市場に参加する参加者の問題もあるわけで、基本的に、我が国の最近の経済状況を見ますと、やはり構造的にいろいろな問題を含んでおります。そこで、株式市場が公正でまた健全であらなければいかぬ、一方で、そこに参加しておる企業が元気にならなければ景気の回復もないわけでございますから、こういう構造改革を行った上で、当該企業の再編に資するという意味においても、今回の自己株の原則自由化というのは資するものなんだろうというように思うわけでございます。

 そこで、証券取引等監視委員会のことについてお話をさせていただきたいわけでございますが、やはりアメリカの状況を見ておりましても、どうも証券市場だけをチェックするということではなくて、御存じのとおり、業際が取り払われて、銀行だとかまた保険だとか、こういう一体的な流れで、自由に営業ができるというような流れがあるわけでございます。

 そういう状況の中で、全体的なチェックと申しますか、そういう意味においては、むしろ金融庁の証券取引等監視委員会の体制を充実させて、今中川委員のおっしゃった企画立案等も当然そこに入れまして、総合的なチェックを行うということがより一層そのチェックの体制を高めるということになるのではないか、このように思っております。

中川(正)委員 企画立案までそれに入れ込んで証券取引等監視委員会を見直していくというのは、これは政府・与党の共通意思なんですか、個人的な話ですか。(谷口議員「個人的」と呼ぶ)個人的な話なんですね。頑張ってください。

 私が言っているのは、さっきのような目的であれば、一つは、一般の金庫株までどういう形でやってもよろしいよ、いわゆる制限なしですよというところまで広げるということは、これまでなぜそれをせずに目的を限定してきたかということから考えると、逆さまだと思うんです。

 まず市場に対して信認を得るための装置というのをしっかりつくっておいて、これまで装置ができたから、今回はその目的を自由化させようというんだったらわかる。だけれども、今、逆で、自由化をまずしますよ、それで装置は後から考えますと。さっき、それは政府の意思ですかと言ったら、いや、そうじゃなくて個人的な見解だ、こういうところに終わるわけですから、ここのところがしっかりやっていないということは事実なんですよね。

 それに対して自由化するというのは、そんなに効果がないにもかかわらずこれだけ自由化しておいて、結局は、市場に対する特に個人投資家の信認を失うだけの効果しかないということじゃないですかということなんですね。

 そこで、個人的見解はよろしいですから、ちょっと金融庁に聞いてみましょうよ。金融庁がそこのところをしっかりと、具体的に日本版SECをどう考えていくか。やはりこれがないと我々は賛成できませんよ。国民もそうだと思うんですよ。

三國谷政府参考人 お答えを申し上げます。

 近年、金融コングロマリットの出現といった、一つは金融の担い手の一体化、あるいは金融商品の一体化、こういった流れが急速に進展していることを踏まえますと、銀行、証券、保険の各分野を業態横断的に所管し、企画、検査、監督、監視と機能別に編成している金融庁の現体制はこうした流れに沿っているものと考えております。金融を取り巻く環境の変化に的確に対応した、機動的かつ総合的な政策の遂行が可能な体制になっておると考えております。

中川(正)委員 もうこんな答弁はやめさせなさいよ、与党。何とかしてくださいよ。こんなのでは進みませんよ。

保利委員長 金融庁三國谷監理官、御発言ありますか。――速記がとりにくくなりますから、私語は慎んでいただきたいと思います。

 金融庁三國谷監理官。

三國谷政府参考人 現在の中央省庁改革によります新体制がスタートしたばかりでございますので、私ども、組織論につきまして直接コメントするということはいかがかとは思いますけれども、私ども、現在、金融コングロマリットの出現といった、金融の担い手の一体化あるいは金融商品の一体化といった流れが急速に進展していることを踏まえますと、銀行、証券、保険の各分野、繰り返しになりますが、これを業態横断的に所管し、企画、検査、監督、監視と機能別に編成しております金融庁の現体制はこうした流れと一致しているのではないか、金融を取り巻く環境の変化に的確に対応した、機動的かつ総合的な政策の遂行が可能な体制になっているのではないかと考えているところでございます。

中川(正)委員 なかなか、現実的なというか、具体的な話が出てきませんから、この際、全くの目的の自由化ということじゃなくて、さっきから言われているMアンドA対策であれば、MアンドA対策をそれに追加して、セーフ・ハーバー・ルールも含めて入れておいて、証券取引等監視委員会、これの方向性がはっきりするまでそれで限定した運用にしていく、そんな話にしたらどうですか。

金子(一)議員 ちょっと御質問の趣旨がよくわからなかったんですが、今回、代用株、MアンドAみたいなものにだけ対応するような法改正にしておいたらいいんじゃないの、つまり部分的にだけ何か直したらいいんじゃないのという御趣旨の話ですか。

中川(正)委員 いや、さっきから聞いていたら、皆さん、株価対策じゃないと言うんでしょう。金庫株で持っている必要がないんだ、それはMアンドA対策なんだということでしょう。だったら、それに限定したらどうですか。

 それで、自由化するということは、さっき言ったように、インサイダー取引、それに対する、ちゃんとした市場の信認を得られるような日本のSECの体制ができていないということがはっきりしているじゃないですか。だから、それをはっきりさせて全体の議論をしたらどうですかということなんですよ。

金子(一)議員 我々の趣旨は決してそういうことではありませんで、今回の行為というのが、単にMアンドAだけでなくて、取得を全体として自由にするかわりに、つまり入り口のところを自由にするかわりに、むしろ出口のところをはっきりさせることによって、現在、法が不整備になっているところも直しておきたい。それから、今までの、特定の目的のために特定取得するというようなやり方というのを今回改めていきたい。ストックオプションの目的、MアンドAの目的、何とかの目的というような規制をやるよりも、こういうような、より資本の効率が求められる状況になっておりますので、全体として企業にとっての資産というものが効率化を図れるようにしていきたいというのが今回の眼目であります。

 今御指摘のように、MアンドAの部分だけ改正したらいいじゃないのということになりますと、なおさらに、余談でありますけれども、出口のところの規制というものを全く抜かしちゃうみたいな話になりますものですから、そうではない、全体のことを考えていきたいというのが趣旨であります。

中川(正)委員 いや、出口の規制、株主の意思を反映していくということ、これについては別に反対していないですよ。大いにそれは入れたらいいじゃないですか。

 ただ、目的を限定させていくということでないと、逆に市場の信認というのはこれでさらに崩れますよ、何のためにこれをやっているんだということになりますよということを指摘しているんです。そこのところは並行議論になると思います。

 皆さん、これを出してきたんだから、そう体面にこだわらずに、一番もとの話がもう崩れているんだから、株価対策じゃないという話をしなきゃいけないんだから、そうだとすれば、そんなに無理をしないで、限定した形で一番素直な法律に変えていくべきだ、こんなふうに私は思います。

 以上であります。ありがとうございました。

保利委員長 本会議散会後直ちに委員会を再開することといたしまして、この際、休憩いたします。

    正午休憩

     ――――◇―――――

    午後二時六分開議

保利委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。西村眞悟君。

西村委員 当法務委員会が連続して基本法に関する審議をしておるわけでございます。前のときは中間法人法、これは民法三十四条の公益法人の設立原則に関することでございました。このたびはまた商法という基本法の改正でございまして、これも定款の絶対的記載事項を変更さすというような内容を含んでおります。

 そこで、この質問の入り口で私が奇異に感じていることを申し上げてから、具体的な質問に入りたいんです。

 民法という基本法の審議に当たっては、民法三十四条、公益法人は、一般的禁止、個別的禁止解除、つまり、許可制によって設立するというのは、時代の趨勢においてもう改正すべき必要があるのではないかと申し上げたときに、法務大臣は、百年続いておる制度でございますからということで、改正にはお触れにならなかった。このたび、緊急経済対策ということで、商法の基本原則を変更するという法案が出てきておるわけですね。

 これは、御質問いたしますよと申し上げてはいなかったんですが、したがって感想程度で結構でございますが、我々は、基本法をいかに変更していくのかということについて統一した一つの姿勢が必要ではないかな。

 つまり、時代の推移と経済の動向に照らし、立法事実が変化したことに照らし、合理的と考えれば、立法府は、憲法であれ民法であれ商法であれ改正するんだ。一方では、改正の必要なしというときに、百年続いているからという理由が、法務大臣が御答弁なさった唯一の理由だったと思いますけれども、こういう姿勢ではだめなんだ。法を立法するところは、合理的と判断すれば、審議を尽くしていかなるものでも変える。百年続いたという理由では、変えないという理由にはならないということではないかなと思うんです。これはお知らせしていませんが、何かありますか。

相沢議員 私、先生の御意見に全く同感でありまして、ただ単に百年続いたからという理由だけでそれは変えるべきではないということにはならない。

 ましてや、商法のように、それこそ日々新たに動くところの経済界の要請に対応しての法制ということになれば、それはしょっちゅう変えるということについてはまた問題があるかもしれませんけれども、やはり時宜に適した改正というものはやっていかなければ、かえって経済の発展を妨げる原因にならないかというふうに思っております。

西村委員 このたび、緊急経済対策ということで、商法の改正ですね。商法二百十条の自己株式の取得というのはやはり緊急経済対策なんだろうとぴんとくるんですが、そのほかの、額面無額面株式制度を廃止する、設立に際して発行する株式の価額の規定を定款の絶対的記載事項から削除する、商法百六十八条の三の最低株式発行価額の規定を削除する、これらは緊急経済対策とどういうふうに関係しているのか、簡潔に御説明いただけましたらありがたいと思います。

漆原議員 今回の改正で百六十八条の三を廃止したその趣旨ということで今お尋ねいただいたわけなんですが、百六十八条の規定は、株式の大きさが小さいと会社が要する株主管理費用、コストとの間に不均衡が生じて経済的に見て問題がある、したがって発行価額を五万円以上とするというふうな規制をそういう理由で設けたわけですね。

 しかしながら、株式の大きさというのは、各会社が資金調達の便利、また株主管理コスト等を考えて自由に決めるのが本来のあり方だろうと私は思っております。法でこれを幾ら幾らというふうに強制するものではない。また、株式の大きさについての規制があるために、今度は株式の分割ができないという不都合が生じます。あるいはまた、株式の流動化が阻害されているという現実の指摘もございます。

 また他方、株主管理費用のコスト削減を図ることについては、必ずしも株式の大きさを大きくすればいいというのではなくて、今回、単元株制度を採用して、単元未満株の議決権を否定することによって同じ効果が期待できる、こう考えております。

 そこで、改正法においては、これらの事情を考慮して、株式の大きさについての規制を撤廃する、したがって、これによって資金調達の便利、そしてまた株式の流動性が確保されて経済対策につながるだろうという考えでございます。

西村委員 百六十八条の三だけにお答えになりましたけれども、百六十八条の三は、昭和五十六年ぐらいに改正されて、その立法趣旨は、つい二十年前、本当に価額の小さな株式が大量転々流通するのを防ごうじゃないかという趣旨じゃなかったかなと思うんですね。この立法趣旨は現在何の障害になっておるのか、ある意味ではこの立法趣旨はまだ合理性を維持しておるのではないか、こういうふうに思いますが、この立法趣旨にまさる経済的緊急対策効果があるんだというふうにお考えですか。

漆原議員 五十六年の改正のときは、例えば千円の株式であった、価額千円の株式に株式の管理コストが三千円もかかった、これではコストがかかり過ぎて大変だという話があった。そういうことで、株式の大きさを五万円以上にしようじゃないかという観点の立法趣旨が強かったんじゃないかなというふうに記憶しております。

西村委員 緊急経済対策の緊急性とどういう関係があるんですか。また、先ほど聞きました額面無額面の廃止、発行価額の定款絶対的記載事項からの削除等は緊急経済対策とはどういう関係がございますか。

漆原議員 先ほど申しましたように、株式の流動性を確保する、あるいは小さい金額でも株式の売買ができる。例えば、額面株が大きな金額になっておりますと、券面額に拘束されやすい、あるいはこれは誤解なんでしょうけれども、そういう誤解も生ずる、また、株式分割の手間がかかる。そういう意味では、単位を小さくして資金調達の便利あるいは株式の流動性を確保できる、こういうふうに考えております。

西村委員 私、別に反対しておるんじゃないんです。基本的な法律に対する改正ですから、立法趣旨はやはり記録に残すべきだ、こう思うんですね。

 額面株式は、誤解を生ずるとおっしゃいますけれども、既に百年の歴史がありまして、株式というのは割合的単位であるということぐらいはみんな知っておるので、今、額面株式を誤解して混乱が起こっておるという状況もないわけですけれども、まあ、そういう趣旨で改正だというわけでございますわな。

 さて、次に、二百十条について御質問しますけれども、理論的に、株式というものは有価証券である、転々流通する有価証券である、したがって、日本銀行が日銀券を取得するように、本来は自由な領域にあるんだ、このことについてはいかがですか。本来は、理論的に、株式という有価証券を取得するのは、日本銀行が日銀券を取得するのと同じように自由な領域にあるんだということについてはいかがですか。

山崎政府参考人 株式取得の自由、これは、閉鎖会社の場合はいろいろ制限もございますけれども、一般の第三者が取得するということに関しては自由であるということでございます。ただ、自己株式はまた別問題かというふうに理解をしております。

西村委員 他の有価証券は自由だというお答えなんですが、私は、自己株式も、株券が有価証券である限り、本来自由な領域にあるのではないか、こういうふうに御質問しているんですね。

 私が指導を受けた先生の昭和十年の助手論文を読んだとき、私はついに二百十条の合理的な規制の意味を発見できなかった、こういう結論であったのを記憶しておるわけですが、自己株式は、政策上いろいろな配慮が必要だけれども、本来は自由な領域にあるんではございませんか。

山崎政府参考人 この自己株式については、やはりこれは政策判断でやるということで、論理的にこうでなければならぬということではないというように理解をしております。

西村委員 ありがとうございます。政策判断と私も思います。そのお答えをいただきました。

 さて、その次に、その政策判断で、自己株式取得に関するいろいろなプロセス、手続、規制と言ってもいいものがまだ改正案でも設けられておりますけれども、株価を操作して不当な利益を上げる等々は証券取引法上で規制されておるわけでございますね。それ以外に商法という基本法で自己株式の取得に関して規制があるわけですが、このプロセス、手続の概要を御説明いただきまして、何を防ぐための、どういう不都合を防ぐための今残している政策的な規定なんだという御説明をいただけませんでしょうか。

漆原議員 現在の商法で自己株式の取得を原則制限している、これは、先ほど来話がありましたように、会社の資本充実、資本維持の原則、これが一番大きな理由だと思います。

西村委員 私は、会社の資本充実ということがどうもよくわからぬですね。取締役が先物取引で商品を買いあさって欠損を生じる、これも資本充実に反するんだというふうになるのかどうか。先ほど御答弁は明確に、理論上、自己株式といえども有価証券であると。したがって、有価証券を購入するというのは商業活動をする会社の自由な領域にあるということで、会社が自己株式を購入したときになぜそれが資本充実の原則に反するのか、原則反しないんだろう。こういうことになれば反するから、こういう手続的な規制、プロセスに乗せて自己株式を購入するんだという御説明があれば私の質問に対して納得できるんですが。

漆原議員 大変失礼しました。

 今回の改正では、いわゆる金庫株を解禁することにしておりますが、自己株式の取得及び保有が無制限に行われますと弊害を伴うおそれがあることは否定できないところでありまして、これに対処するためには、財源や取得のための制限を設けることはやむを得ない、こう考えております。

 具体的には、まず第一に、自己株式の取得は株主に対する会社財産の払い戻しという性格を持っております。したがって、これを無制限に行われると、資本維持の原則に反して会社財産を害するおそれがある、こう考えます。そこで、今回の改正法案では、自己株式の取得財源を配当可能利益等に限定し、期末に欠損が生ずるおそれがあるときはその取得を禁止することにしております。また、自己株式を取得した場合において現実に期末に欠損が生じた場合には、取締役に一定の賠償義務を負わせているところでございます。

 次に、会社が恣意的に一部の株主から株式を買い受けたり、あるいは特定の者に時価よりも安い、低い価額で自己株を売り渡す等の行為によって株主の平等が害されるおそれもあります。そこで、改正案では、自己株式の取得方法については、原則として市場における取引または公開買い付けによることにしております。相対取引によるときは、そのことについては株主総会の特別決議を要件としております。また、他の株主にも売り渡しの機会を与えることとして、株主に平等に売却の機会を保障することにしております。また、自己株式の売却処分につきましては新株発行の場合と同様な手続をとることにしております。

 第三に、会社経営陣が金庫株を用いて不当に自分の、自己の支配権を維持強化するおそれがある、こう指摘もされております。そこで、今回の改正案では、保有する自己株式を特定の者に譲渡することによってその者の支配力を強めることを防止するために、自己株式の処分については新株発行の場合と同様の手続を講じるところでございます。

 最後に、自己株式の売買に伴って相場の操縦だとかあるいはインサイダー取引が行われるおそれがあります。そこで、この改正においては、整備法案において証券取引法の所要の改正を行ってその防止を図っているところでございます。

西村委員 今出てきた取締役の責任についてちょっと御質問しますが、自己株式を取得して営業年度の終わりに欠損が生じたときは、買い受けた取締役はその欠損額を上限として賠償責任を負うわけですね。この欠損は自己株式を取得したから生じたのであるという因果関係は、この取締役の責任については必要ないんですか。それとも、単に、二百六十六条でしたか、取締役の責任がありますね、これの特例でしょうか。特例であれば、自己株式の取得に関してこの特例を設けねばならない立法上の理由とは何でしょうか。

漆原議員 今回の法案では、自己株式の取得が会社財産の払い戻しとなって会社財産を危うくするおそれがあることから、自己株式の取得をした会社の期末の財産状態が悪化した場合に、取締役に一定の補てんの責任を負わせることにしております。これは、現行法においての中間配当あるいは消却のための自己株式の取得の場合と同じ考え方でございます。改正法案のもとでの自己株式の取得については、取得した自己株式は資本の控除項目とされますので、消却のための自己株式の取得の場合に準じた責任を負わせることが妥当であると考えます。

 したがって、改正法案では、期末において、貸借対照表上の純資産額が二百九十条第一項各号に定められた控除項目の合計額を下回った場合に、その差額と、その営業年度中に取得した自己株式の取得価額の総額とのいずれか少ない場合について、取締役に賠償責任を負わせているというところでございます。

西村委員 取締役の責任についてですが、私がお聞きしたのは、商法二百六十六条でしたかで、放漫な経営をして欠損を生じた、損害を生じた取締役は善管注意義務違反で責任を負いますよね。この責任は、注意義務違反と損害発生に因果関係があることが前提ですね。この自己株式取得に関しては、その因果関係は必要であるのかないのか。このことなんです。

 たまたま欠損が生じたときに自己株式を取得しておったら、すべて取締役の責任だという法案なのか。それとも、因果関係はやはり厳然として必要であるという前提なのか。そして、この特例を設ける必要性は、自己株式に関してどういう根拠で必要なのかということなんです。

漆原議員 商法の二百六十六条の規定との関係でお尋ねでございますが、この改正案における取締役の賠償責任というのは、二百六十六条とは関係ないというふうに考えております。

 二百六十六条の場合は、善管注意義務違反による損害なんですが、ただ、原則として、経営の判断の失敗については株主代表訴訟の対象にならないというような考えが強いものですから、今回は、欠損が生じる場合には自己株式を取得してはならないという条文と今回の責任の条文をワンセットのものとして、二百六十六条とは別個な、創設的な意味でこの法律をつくった、規定を置いたというふうに理解しております。

西村委員 ちょっとわからなくなってきたんですよ。

 取締役の責任というのは善管注意義務ですわな。それで、私がお聞きしたのは、欠損が生じたときに、他の原因で欠損が生じたのである、しかし、たまたま自己株式を取得しておった、したがって、因果関係もへったくれもなしにその要件だけで取締役は欠損額全額の連帯賠償責任を負うのか否か、この規定によって。こういうことですね。

 二百六十六条の取締役の善管注意義務からくる会社に対する責任の一般規定とは関係ないとおっしゃったので、これはどういうことかな。もう少し、私が今言った因果関係は要らぬのかどうかも含めて御答弁いただいた方がいいと思います。

漆原議員 基本的に、二百六十六条の条文とは別な考え方で置いたと理解しておりますので、因果関係は要らない、欠損額全体について原則として責任を負うというのが原則的な私どもの考えでございます。ただ、それについて注意義務を怠らなかったということを立証すれば責任は免れる、こういう構成にしてあります。

西村委員 ということは、挙証責任を転換しているということだけですか。二百六十六条の特例として、損害と行為の間の因果関係の立証責任を取締役に負わせたんだというふうに解釈した方がいいんですか。

漆原議員 今委員がおっしゃったような理解をしていただいて結構だと思います。

西村委員 しかし、取締役にはある意味じゃ過酷な責任ですね、因果関係のあるところ敗訴ありですから。

 それで、私がこの質問の前提に掲げておりました、本来自由な領域にあるんだ、ただ、不都合が起こる危険性は最小限回避の担保をしなければならないという原則からすれば、このような過酷な責任をもって自己株式取得を可能にするというのは、改正前の二百十条の方がまだましではないか、こういうふうな感じがするのですが、これが真に緊急経済対策になるのか、機動的な会社の株式運用等々に資するのかという点については、まあやってみなければわかりませんから、自信を持って資するという答弁をいただいてもしゃあないんですけれども、どうなんですか。

 自由な領域にあるものに対して余りにもちょっと過酷過ぎないかというのが私の感想ですが、二百六十六条の一般規定でいいのではないか。株主総会で決めているじゃないか、全株主が合意してやったんじゃないか、そこまで手続的に重くしているんだと。ただ単に、代表取締役会の機動的なことだけで商品取引、先物取引がどんどんできるんですけれども、それにおいての損害も二百六十六条でカバーしているとするならば、株主総会で決めて、静々と手続に流していって自己株式を取得した、そしてたまたま欠損が出てしまった、決算したときに、自己株式取得をしているから取締役に行くのだとばあんと直結するというふうな責任体制は緊急経済対策にならないんではないかなというふうに感想を持ちますが、いかがですか。

漆原議員 今委員おっしゃったように、挙証責任のあるところに敗訴というのは、まことにそのとおりだと思います。

 ただ、一方では、自己株取得というのは、自分の会社の財産の株主への払い戻しという性格も持っておるわけですね。そういう意味で、現行法においても、先ほど申しましたように、消却の場合には同じような条文が置いてあるわけです。したがって、一方では機動性という要点もありますが、もう一つは、債権者を害してはならない、債権者の保護、会社財産の不当な流出を防ぐという点も商法の大きな要請でありますから、その調整を図った。そしてまた、現行法でも株式消却の場合にはそういう法律があるわけですから、今回の改正法もその同じような考え方で条文化したということで御理解をいただきたいと思います。

西村委員 最後にしますけれども、私は、自己株式の取得は出資の払い戻しだという発想がわからぬのですよ。自己株式を取得したんです。会社が購入したんです。購入代金じゃないんですか、有価証券で、財産科目になるんですから。自動車を会社が買う、それの株主になった、自動車相当額の代金を払う、これは出資の払い戻しと言いませんわな。自動車が有価証券たる株式だ、それがたまたま自分の会社だ、これだけの話じゃないかと思います。

 時間が来ましたのでこれでやめますが、この点については、先ほど御答弁、確認いただいた、商業活動として自由な領域にあるんだ、本来禁止されているものを特別に禁止を解除しているんじゃないんだ、本来自由な領域にある、しかし必要な規制は最小限度するという自由主義経済の当然の原則で、もう少し点検した方がいいかなという感想を持ちながら、質問を終わります。ありがとうございました。

保利委員長 次に、木島日出夫君。

木島委員 日本共産党の木島日出夫です。

 今回の議員立法による商法改正の一つの柱が自己株式の原則解禁という問題であります。

 法務省にお聞きをいたします。

 我が国に商法、会社法、いわゆる株式会社法制が確立してから百年を超えるわけであります。我が国の株式会社法は、基本的、原則的に自己株式の取得、保有を禁じてきました。改めて、その基本的な考え方はどのようなものであったのか、きちっと整理して答弁をしていただきたい。お願いをいたします。

山崎政府参考人 理由は四つほどあると理解をしております。

 まず第一は、資本維持の原則。けさからずっとこの文言が出ていると思いますけれども、結局、自己株式の有償取得をするということは、実質的には株主に対する財産の払い戻しと同じではないかということでございます。ですから、そういう関係で、自己株式が大量になるということになると、それだけ財産が空洞化する、会社の債権者を害するおそれがあるのではないかということが第一点でございます。

 それから第二点は、会社が恣意的に一部の株主から株式を買い受けたり、保有する自己株式を特定の者に時価より安い価格で売り渡すということによって株主間に不平等を生じさせるおそれがある、いわゆる株主平等の原則に反するのじゃないかということでございます。

 それから三番目でございますけれども、自己株式の取得により議決権を有する株式の総数が減少するわけでございますが、そうなりますと、一部の者の支配力を相対的に強めることになるおそれがあるのではないか。また逆の場合もございます。保有する自己株式を特定の者に譲渡するということになってその人の支配力が強くなる。こういう支配の公正の問題。

 それから四番目が、午前中から出ておりますように、インサイダー取引が行われるおそれがあるのではないか。

 この四つに大体集約できると理解をしております。

木島委員 非常にわかりやすく整理されていると思うのです。

 私、この四つの観点というのは、いずれも株式会社法制の持つ基本的な性格に由来するものだと思います。株式会社法制は基本的に有限責任でありますから、出資された株式、いわゆる資本、その範囲内でしか出資者、株主の責任はない。基本的な性格が有限責任である、ここに最大の特徴があるわけです。それが、資本主義の発展に寄与した、広く国民大衆の資本を集める最もふさわしい仕組みだということであります。それは逆に言いますと、会社との取引の相手である債権者から見ますと無限責任を追及できないという立場で、取引の安全というもう一つの大きな柱から見ますと、資本充実の原則がまことに欠かすことのできない本質的な要素だと思います。これは、株式会社法制が続く限り守り抜かなければならない大事な原則だと私は考えております。

 そういう立場から、歴史的に見ますと、我が国の場合、ずっとその原則は戦前戦後守り抜かれてきたわけでありますが、九四年、九七年、九八年、二〇〇〇年とそれぞれ、法務省、政府提出の商法改正法案あるいは議員立法として、一部自社株、自己株式取得が解禁をされてまいりました。改めて、今回非常に大事な大事な原則にかかわる改正法案でありますので、その歴史的な自社株、自己株取得解禁の具体的中身、これも整理して法務省に御答弁を願います。

山崎政府参考人 四回分の改正についてお尋ねでございますので、順番に申し上げます。

 一九九四年、平成六年の改正でございますが、これにつきましては、使用人持ち株制を実現するために、使用人に譲渡するための自己株式の取得、それから定時総会の決議に基づく利益消却のための自己株式の取得、閉鎖会社における株主の相続人からの自己株式の取得等がまず認められたわけでございます。

 それから、一九九七年、平成九年の商法改正でございますが、これではストックオプションとして使用するための自己株式の取得が認められたほか、いわゆる消却特例法がございますけれども、これが制定をされまして、取締役会の決議に基づく利益消却のための自己株式の取得が認められたということでございます。

 それから、三番目の一九九八年、平成十年でございますが、これにつきましては、今申し上げました消却特例法が改正をされまして、取締役会の決議に基づく資本準備金を財源とする自己株式の取得が認められたわけでございます。

 最後に、二〇〇〇年、平成十二年の商法改正でございますが、これは、会社分割制度の創設に伴いまして、いわゆる吸収分割の場合に例外的に自己株式を取得することができるということの改正が行われたと承知しております。

木島委員 九〇年代に入って、徐々に徐々に自己株式取得の原則禁止が解除されてきた。二つの側面から解除が広がってきた。一つは自己株式取得の目的面から、もう一つは原資、資本金、資本準備金、利益準備金とありますが、自己株式を取得する原資について広がりが出てきた。

 私ども日本共産党は、これらの解禁拡大に基本的に反対の立場で態度表明をずっとしてきたわけでありますが、拡大されてきたとはいえ、やはりそこには、これまでの改正法には限定がなされていたと思うのです。資本充実の大原則を初めとする、自己株は基本的に取得をしてはならぬという株式会社法制の基本的考え方からくる制約はあったと思うんですね。

 そこで、改めて、こういう四回の改正についてお聞きしましたが、こういう限定がつけられたその主たる理由、考え方、どんなところにあったのか、これも法務省からきちんと説明いただきたいと思うのです。

山崎政府参考人 一番代表的な限定でございますが、これは株主総会の決議が要るということと配当可能利益の範囲内で行うというものがございます。これにつきましては、自己株式の取得が実質的には株主に対する会社財産の払い戻しだ、そういう性質を持つものであるという考え方から、自己株式の取得は利益配当と同様の性質を持つということになることから、株主総会の決議が必要である。利益配当でございますから、配当可能利益の範囲内で行う、こういうのが一つの範囲の定め方でございます。

 それから、若干違う定め方をしているものもございます。例えば、定款による授権を要するという形で行われているものもございます。ただ、これも定款を定めるときにきちっと総会を通しておりますので、その範囲内でという同じような仕切りかと思います。

 それからもう一つは、先ほど委員の方からも説明ございましたけれども、準備金を用いて取得を可能にするという、平成十年の消却特例法の改正におきましてとられたものでございます。これは、資本準備金と利益準備金の合計額から資本の額の四分の一に相当する額を控除した額の範囲内で自己株式を取得することができる、こういうことでございまして、この理由は、大量のエクイティーファイナンスによって、会社内に多額に積み立てられました資本準備金を活用して株式の消却を促進することにあったということで承知をしております。

 大体、以上の理由によるものというふうに承知しております。

木島委員 そこで、提案者にお聞きをしたいんですが、今、百年に及ぶ我が国の株式会社法制の基本的な考え方、自己株式取得に関する基本的な考え方が法務省から説明がありました。

 今回は原則的に解禁をするという改正法案なんですが、提案者として、株式会社の基本的なありようからくる自己株式原則禁止の考え方、その背景にある考え方、こうしたものは、二十一世紀、これからの我が国の株式会社法制の発展にとって守るべきものだと考えておりますか、それともこんな原則はもう捨て去っていいと考えておりますか。株式会社法制の根幹にかかわる問題ばかりでありますので、今回提案する皆さんの、代表者で結構ですが、基本的な認識をお聞かせいただきたいと思うのです。

漆原議員 今回、自己株式を取得し保有できる、原則として自由にするという理由でございますけれども、二つあります。一つは、社会経済的な必要性への対応という経済対策としての側面と、もう一つは、過剰規制の見直しという規制緩和の側面が挙げられます。

 まず第一点の社会経済的な必要性への対応という点については、企業が、競争力強化のために今盛んに合併だとか株式交換あるいは会社分割等の組織再編を行っておりますが、その再編の際に発行すべき新株にかえて会社の保有する自己株式を割り当てすることができることを可能とするなど、自己株式の活用をより柔軟にすることが要請されております。新株発行に伴う会社の配当負担の増加だとか、あるいはそれによって株式の価値が相対的に下がるということを防ぎながら、機動的な組織再編を行うことが可能になります。

 また、自己株式の取得を原則として自由化してその活用方法を多様化することによって、会社が自己株式を取得する機会がふえるために、その結果としてでございますが、株式市場における株式の需給バランスの改善に資することにもなるというふうに考えております。

 二番目の過剰規制の見直しという観点でございますが、この観点では、現行商法が自己株式の取得を禁止しているのはそれに伴う弊害を防止するためでありましたが、自己株式の取得を禁止しなくても他に適切な防止措置を講ずることができるというのであれば、自己株式の取得を禁止することは過剰な規制であると言わざるを得ず、それを放置しておくことはかえって企業の活動を制約することにもなりかねない、こう考えております。

 そこで、改正法案におきましては、指摘されております種々の弊害に対して適切な防止措置を設けた上で、自己株式の取得及び保有を原則として自由とすることが規制緩和の観点からも適当であると考えたものであります。

 したがって、委員先ほど申されたように、株式会社の性質に由来するいろいろな制限、しかしそれに反しない程度であれば、それによっていろいろな弊害が防止される防止策を講じれば、改正しても構わない、こういうふうに考えておるところでございます。

木島委員 提案者から、原則自己株式取得を今回解禁したその理由が述べられたんですが、私が聞きたいのは、その必要性、理由の前に、提案者として、日本の百年間の株式会社法制のよって立つ原則、資本充実の原則、株主平等の原則、経営者の会社支配の公正、これは弊害とは違うんですね。弊害ではないんですね。基本的なこういう考えで日本の株式会社法制、会社法制、資本主義のありようを前進させていこう、そういう考えですよ。

 この考え方に対して、守るべき価値のあるものなんだと考えているのか、今ちょっとおっしゃられましたが、競争力を強化するためにはそんな原則はもう守るに値するものではないんだ、そんなお考えで今回の立法提案をなされているのか。その根本的な百年間の日本の会社法制を貫いてきた原則に対してどういう考えをしているのか、そこを聞きたいんですよ。

漆原議員 いろいろな弊害についてどう対処しているか、そこのところを御理解いただければ、お答えになるんじゃないかなと思います。

 今回の改正では金庫株を解禁することとしておりますが、自己株式の取得及び保有が無制限に行われると、委員おっしゃったような弊害を伴うおそれがあることは否定できません。これに対処するためには、財源や取得のための制限を設けることはやむを得ない。先ほど申したとおりでございます。

 具体的には、まず第一に、自己株式の取得は株主に対する会社財産の払い戻し、こういう性格がありますので、無制限に行われた場合には、資本維持の原則に反して、会社債権者を害するおそれがあります。そこで、今回、改正法案では、自己株式の取得財源を配当可能利益等に限定し、期末に欠損が生ずるおそれがあるときは取得を禁止しており、さらにまた、取得をした場合においても、現実に欠損が生じた場合には取締役に賠償責任を負わせております。

 次に、会社が恣意的に一部の株主から株式を買い受けたり、特定の者に時価より安い価格で自己株式を売り渡す等の行為によって株主の平等が害されるおそれがあると言われております。そこで、今回は、改正法案では、自己株式の取得方法について、原則として市場における取引または公開買い付けによることとしております。相対取引によるときは、売り主について株主総会の特別決議を要することとした上、他の株主にも売却の機会を与えることとして、株主に平等に売却の機会を保障することにしております。また、自己株式の売却処分につきましては、新株発行と同様の手続によることにしております。

 三番目に、会社経営陣が金庫株を用いて不当に自己の支配権を維持したり強化するという指摘もなされておりますが、改正法案では、保有する自己株式を特定の者に譲渡することによってその者の支配力を強めることを防止するために、自己株式の処分に際しては新株発行と同様な手続によるということにしております。

 最後に、御指摘のような相場操縦、インサイダー取引がなされるおそれがありますが、これは、整備法案において証券取引法の所要の改正を行って、その防止を図っている。

 したがって、原則は維持しながらも、弊害について適切な措置を講じつつ、その原則の範囲内において所要の改正を加えている、こう考えております。

木島委員 今日の我が国の会社をめぐる現状を大局的に見ますと、例えば山一の倒産、拓銀の倒産、そごうの倒産、東京一部上場の大手金融が、都市銀行がこんな形で倒産するということは恐らく考えられなかった事態であろうと思うんです。あと、大建設会社の経営危機。

 例えば、山一なり拓銀が倒産したときの状況は、御案内のとおりであります。最大の問題は、預金者の預金が守れるかという問題でありました。今は仕組みによって守っておりますが、それが、これから恐らくしばらく後には一千万を超える預金が保証されないという時代が来る。そうしますと、大建設会社の倒産にしろそごうの倒産にしろ、物すごい多数の、会社と取引をした債権者が支払いを受けられない。社会的な大混乱を起こすわけであります。

 ここまで非常な激動といいますか、会社法制にとっても激動の今日の日本の資本主義の状況から見ますと、最後のよりどころ、資本金、資本準備金、一定の割合で利益準備金を積み立てろという商法のこの原則は、こんな状況だからこそ維持し、むしろ強化しなきゃならぬのじゃないか。そういう局面に今日本の経済が、大きな企業、中小もそうでしょうが、置かれているんじゃないかと私は思うんです。

 一九六〇年代、七〇年代、八〇年代の前半、バブルの時代、右肩上がりで、高度経済成長で、企業は大きくなるものだ、資本は大きくなるものだ、そういう神話がまかり通っていた時代であるならば、私は、商法が求めた資本充実、維持の原則というのは、こんなものはなくたって会社は大きくなり、資本はおのずと充実し、会社債権者の権益を害するようなことは考えられないんだということで通ってきたかもしれません。

 しかし、九〇年代以降、こんな状況が目の前にあるからこそ、百年前の商法の基本原則、有限責任である、そして一番大事なのは資本の充実と維持なんだ、会社取引債権者を守ることなんだという、この原則はむしろ強化しなきゃならぬ、そういう客観的な状況に今入っているんじゃないか。

 ところが、こういう局面において、提案者の方は、本当に目先の利益だけでしょう、しかも、今の会社経営陣の目先の利益でしょう。競争に勝ち抜きたい、結果としてROEを高めたい、そんな、本当に目先の考えでこの一番大事な原則を投げ捨てる、資本準備金に手をつける、そして無制限に自己株式を取得できる、そして保有していつでも売却できる、消却ももちろんできる、そんな法制に転換するということは、私は全くもって時代錯誤だと思うんです。

 それで改めて聞いているんですよ。資本充実、維持の原則を、今日の日本の経済情勢のもとで、株式会社を取り巻く情勢のもとで、提案者はどう考えているのか。目先の短期的な、ことし、来年の株価をどうするかなんという観点でこの大事な原則を覆してもいいのか、そこを聞いているんです。

    〔委員長退席、奥谷委員長代理着席〕

漆原議員 改正案では資本充実の原則を排斥したというふうな委員のお考えのようでございますが、我々は、取得原資については基本的には現行法と同じであるし、今回の改正作業に当たっても、資本充実の原則に十分配慮した、いろいろなところでいろいろなことを配慮した、そして今回の法案をつくり上げた。したがって、資本充実の原則というのは維持をしていかなければならない、この考え方は我々も同じでございます。

木島委員 どうも根本的な認識が違うんじゃないかと思うんです。

 時間も迫っておりますから、それでは次に、弊害の部分についてお伺いをいたします。

 これまでの商法が自己株式取得を原則禁止してきた、そして、拡大はされつつあったとはいえ、一定の自制をしてきた、歯どめをかけてきたやはりもう一つの大きな柱が、証券取引の公正という問題だったと思うんですね。株式相場の操縦、それからインサイダー取引だと思うんです。

 午前中から再三この点に集中した質疑がありますが、端的にお伺いしますが、今回、こういう自己株式原則解禁という仕組みを持ち込む、そしてそのかわりに証券取引の面でこの二つの弊害を防止する新たにつけ加わる規制というのはどんなものなんですか。

小池議員 御指摘のとおり、今回の商法の改正、すなわち金庫株の解禁でございますが、証券取引法の改正で具体的に三点ございます。

 まず一つには、自己株式の売買の際の相場操縦のおそれがあるということから、自己株式の取得または処分の際に一定の要件を遵守すべき旨を定める規定の新設がございます。これは、アメリカのセーフ・ハーバー・ルールなどを参考にいたしまして、検討の上、内閣府令として規定をするという方向になっております。

 二番目が、自己株式の取得または処分にかかわります決定をインサイダー取引の重要事実として規定をする。この部分は、これまで自己株式の売買ということはなかったわけですから、重要事実として加えるということでございます。

 三点目は、ディスクロージャーの強化ということに当たるかと思いますけれども、現在は三カ月ごとに提出させております自己株券買付状況報告書、これを一カ月に短縮するということ。

 この三点を柱にして証券取引法の改正をいたしますが、それに加えて、もちろん証券取引等監視委員会によります監視、取り締まり等々の一層の強化ということも考えております。

 以上です。

    〔奥谷委員長代理退席、委員長着席〕

木島委員 アメリカのセーフ・ハーバー・ルールのお話がありました。

 金融庁をお呼びをしております。

 アメリカでは、自己株式取得が原則解禁、そしてそのかわりにSECがきっちりとルールをつくって株式相場操縦やインサイダー取引を防止するという仕組みがつくられているとお聞きをしておりますが、セーフ・ハーバー・ルールとはどういうものなのか、これも大事なところですから、きちっと答弁をいただきたい。

三國谷政府参考人 アメリカの相場操縦防止、インサイダー取引規制でございますが、アメリカにおきましては、一九三四年の証券取引所法におきまして、基本的には、相場操縦的または欺瞞的な策略もしくは術策を用いること、こういうことを違法としております。これは一般的、包括的な規定でございます。

 この下にSEC規則がございまして、通称10b―5というのがございますが、ここも要すれば、「いずれかの者に対して詐欺もしくは欺瞞となりまたは詐欺もしくは欺瞞となるおそれのある行為、慣行または業務方法を行うこと。」これに基づきまして相場操縦及びインサイダー等の実際の規制をしていると承知しております。

 この規制のもとにおきまして、一つ、10b―18というのがございまして、そこに適用除外、セーフ・ハーバー・ルールの規定があるわけでございます。そこにおきまして、一定の要件等を掲げまして、そういったもののある程度該当するものであれば、そういったものだけを理由として違法とすることはない、こういった形で規制していると承知しております。

木島委員 非常に大ざっぱな答弁しかされませんでした。

 いろいろあると思うんですよ。単一のブローカーによる取引とか、一日の取引の開始の時期と取引の終了の時期は取引しちゃいかぬぞ、第三者による値つけといいますか、取引価格以下での価格を設定しろ、いろいろあると思うんです。

 私の方に、与党の方から「米国のセーフ・ハーバー・ルール等をも参考とし、以下のような内容を基本として、内閣府令を策定する。」というので五項目あるんですが、例えばその二つ目のところをちょっと読んでみましたら、「証券取引所の取引終了時刻の直前三十分間以外の時間に自己株券の買付けを行うものとすること。」アメリカのセーフ・ハーバー・ルールは、毎日証券取引が始まるその出発点のところもだめだ、出口もだめだ、両方ふさいでいるんですが、私のところに渡っている内閣府令の概要は、入り口は規制しない、出口だけだ、こういう違いが現にあるんですね。今金融庁はそういう答弁全然しませんでしたが。

 ですから、私は、えたいのわからないような内閣府令ではしっかりした審議できないと思うんです。それで、一番肝心かなめのところでありますから、ぜひ当委員会にアメリカのセーフ・ハーバー・ルールの細かい点まできちっと全文、そして提案者が考えている内閣府令の中身全部。府令ですから、当然法律ができてからつくられる、そういう理屈はわかっていますが、私はこの法案は反対でありますが、仮に成立したときにどんな内閣府令をつくろうとしているのか、アメリカのセーフ・ハーバー・ルールとどこがどう違うのか、その違いはどういう意味を持つのか、やはり一つ一つきちっと精査しなきゃいかぬと思うんですね。提案者、ありますか、そういうもの。出していただけませんか。

小池議員 今御質問の中にもありましたけれども、海外の法制の例、そして過去の判例等々、また市場関係者から現場の状況なども聞いて、しっかりとしたものをつくっていかなければならないということで、検討を続けていくということだけお伝えしておきたいと思います。

木島委員 検討を続けていくという答弁だけで、私どもは、はあそう、じゃ結構です、おつくりくださいというのでは、白紙委任であって、国会としてはまことに無責任きわまりない。こんな態度を法務委員会が許していたら、立法責任問われると思うんですよ。

 肝心の中身についてちゃんと精査をして、こういう内閣府令が絶対つくれる、それは法務大臣だけじゃなくて内閣としてそういう府令をつくりましょうという明確な答弁があって初めて、ああそういう株価操縦の心配はないんだな、インサイダー取引の心配はこれでチェックできるんだなということになると思うので、私は今の答弁じゃとても納得できないですね。

 何か答弁したいようですから、金融庁。

三國谷政府参考人 例えば取引の開始の問題等につきましては、日本の場合には板寄せがある、アメリカの場合にはそういったものがない、そういった違い等の実態に着目しているわけでございますが、いずれにいたしましても、きっちりとしたものをつくってまいりたいと考えております。

木島委員 決意表明だけじゃ全然だめですよ。そんなものでこれを認めていったら、やはり立法不作為問われますよ。

 どういうルールをつくるか。それは、法律、政令、省令あるでしょう。取引所の規則だって私はいいと思うんですよ。そういうルールをしっかりつくることと、もう一つの大事な勘どころは、それが実効あるかどうかの取り締まりの体制、アメリカでいえばSEC、日本でいえば証券取引等監視委員会がどういう体制を持つかということだと思うんです。

 午前中、同僚委員からも指摘がありましたが、ふやしたいという希望表明は先ほどありましたが、希望表明だけじゃだめなんですね。新聞報道等によりましてもいろいろそこは指摘されているわけでありまして、数字はもう必要ないと思うんですが、地方の財務局に配置した職員も含めて日本の場合は約二百五十人、アメリカのSECは三千百人。

 今、率直に言って、政府・与党は行革を進めていますね。公務員の数四分の一を切り捨てる。そういう流れの中で、幾らこの法務委員会で証券取引等監視委員会の職員をふやしたいというような希望の表明を提案者から出されたって、これは政府の行革基本計画の根幹にかかわる問題ですから、それは変えるんだという確証がなければ、それは絵にかいたもちになる。逆に言うと、だまされたことになってしまう。そんな言葉を信じて、ああ結構ですよといって通したら全然ふえなかったなんということになれば、やはり立法府の責任が問われる、そういう問題だと思うのです、体制というのは。どうでしょうか。

相沢議員 金融庁は答えにくいかもしれませんので私が申し上げますが、ちょっと正確な数字を覚えておりませんが、出発当初から毎年、証券取引等監視委員会の定員は、全般的な定数削減の態勢の中で特別に配慮をしてもらいまして、ふえております。平成十三年度は十二名だったか。それも少ないとおっしゃればそうかもしれませんが、しかしそういうことでありますから、今後も、そういう体制を固めるということについて私どもも同じような考え方を持っておりますし、また、我々も金融庁をバックアップして、そういう体制を強化することに努力したい、このように考えています。

保利委員長 時間が参っております。

木島委員 はい。時間が参りましたから終わりますが、ぜひ、セーフ・ハーバー・ルールのすべてと、そして提案者が今検討されております内閣府令の全部を、理事会協議を経てこの委員会に提出されることを委員長にお願い申し上げまして、質問を終わります。理事会協議やっていただけますか。理事会協議やってください。

保利委員長 私は、コメントはいたしません。

木島委員 終わります。

保利委員長 次に、植田至紀君。

植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀です。

 きょうは、金庫株解禁に係る商法改正の議論でございますけれども、ちょっと冒頭の時間をおかりいたしまして、違う案件で法務大臣にお伺いしたいと思います。

 といいますのは、六月一日に大阪地裁で、いわゆる在外被爆者の差別的取り扱いにかかわって憲法違反のおそれがあるといった、政府にとってみれば厳しい判決が出されたわけでございます。

 恐らく法務大臣もこの要請書はお読みだろうとは思いますけれども、ここに、端的にそこでの裁判長がおっしゃったことが引用されていますけれども、「被爆者援護法も社会保障と国家補償の性格を併有する特殊な立法というべきものである。」「さらに、同法が被爆者が被った特殊の被害にかんがみ被爆者に援護を講じるという人道的目的の立法であることに照らすならば、」「我が国に居住も現在もしていない者を排除するという解釈を導くことは困難というほかはない。」「被爆者援護法は、被爆者が今なお置かれている悲惨な実情に鑑み、人道的見地から被爆者の救済を図ることを目的としたものなのであるから、」「同法の根本的な趣旨目的に相反するものといわざるを得ない」「解釈に基づく運用は、日本に居住している者と日本に現在しかしていない者との間に、容易に説明しがたい差別を生じさせることになるから、憲法十四条に反するおそれもあり、」ということで、被爆者の人権尊重を第一に掲げた上で、この間の政府のありようというものを、言ってみれば厳しく否定したわけでございます。

 このことを踏まえまして、そんな難しいことをお伺いするつもりはございません、何か言質をとろうというようなことを聞くつもりはございませんが、これは法務大臣としてもお答え可能だと思いますが、まず、そもそも被爆者援護法を人道立法として御認識かどうかということについて、今紹介いたしました判決文も念頭に置きながら、御答弁いただければと思います。

森山国務大臣 被爆者援護法の目的は、その前文にありますように、原子爆弾の投下の結果として生じた放射能に起因する健康被害が他の戦争被害とは異なる特殊な被害であることにかんがみ、保健、医療及び福祉にわたる総合的な援護対策を講じることと書いてございます。そのようなことが目的であるというふうに承知しております。

 今先生がおっしゃいましたような、人道的な見地からの救済を図るのではないかという御質問だったかと思いますが、もちろん、このような法律をつくりましたときには、人道的な、より広い気持ちで何とか援護したいという気持ちがそこにあったということは確かだと思いますが、法律上の目的ということになりますと、今申し上げたような法律の前文にあるとおりだというふうに考えます。

 この法律を残念ながら私ども所管しておりませんので、これ以上のことを申し上げるのは控えたいと存じます。

植田委員 いずれにしても、人道目的の法律ではないということは言えないわけですよね。だから、人道立法として事実上認識せざるを得ないわけでございますから、そのことがいみじくも判決に出ておったわけですけれども。

 参議院の方でもこの種の議論があったかに聞いていますけれども、この判決の中でもう一つあったのが、通達を法律の上位に置いたらあきませんよという、いわば通達行政への批判であったかと思います。そういう意味で、ここでは、当事者の方々も、少なくともこうした法文の明文規定によらないで通達一本で行うことの合理的根拠を一切判決では認定していないというのが今回の地裁判決の特徴だろうと思われます。

 これは決して専門的な質問ではないと思うわけですが、常識的に、法律の上に通達があるわけではありませんから、そこのところはいかがでしょうか。やはり通達の上に法律があると理解するのがごく普通だと。専門的質問ではないと思いますので、よろしくお願いいたします。

森山国務大臣 通達は法令の解釈や運用方針等に関する示達事項などを内容とするものでありまして、通達が法律の上にないことは明らかでございます。

 この案件における法律と通達との関係につきましては、ちょうどその訴訟の場での争点となっているわけでございますので、ここで詳しく申し上げるのは適当ではないというふうに思いますが、訴訟では、この通達について、この法律の趣旨を確認し、それに基づく事務取扱方法を指示したものでございまして、通達で権利を制限したものではないと主張しているところでございます。

植田委員 その二点だけまず確認させていただいた上で、まあ言いたいことは、私としてはのどから出かかっておるわけでございますけれども、改めて、そこは大臣としてのお立場を離れたところで、今回の判決、またこうした実際の当事者の方々のそうした思いを受けとめられる中で、今どうした心情でいらっしゃるかということをやはりお伺いせざるを得ないわけでございます。

 私が今のどから出かかっていることを聞いてしまうと、今厚生労働省とも相談しておりますということになろうかと思いますから、そういうやぼなことを聞くつもりはありませんけれども、今回、例えばハンセン病の場合でも、私ども、そうした判断については非常に評価しております。ハンセン病とか結核とか原爆の被害者、それぞれ、どれが一番しんどくて、どれが一番しんどくないかなんということははかり得ないわけでございます。ただ、原爆被害者の場合、特徴的なことを申し上げれば、これは治す薬がありませんから、死ぬまでつき合っていかなきゃならない、その被害と闘っていかなければならない、そうした被害の特徴ということも十分御承知されておられると思いますから、そうしたことも含めて、印象なり思いで結構でございますから、大臣の今の御心情をお話しいただければと思います。

森山国務大臣 まず、大阪地裁の判決については、国の主張が一部認めていただけなかったことは残念だったと思っています。

 しかし、私自身といたしましては、先日、原告の方にも、ちょっとですがお目にかかる機会もございまして、被爆されたことについては、大変お気の毒なことであったというふうに思っております。

植田委員 お気の毒であったと。それは当然お気の毒でございますから、もうそれ以上申し上げませんけれども、そのお気の毒であったというところから思いが出発するのであれば、やはり控訴を断念していただくということも、頭の中に常によぎっておられるだろうなと推察だけはさせていただきますが、いずれ結果は出ることでしょうから、その点だけは、私の思いとして、そうした方向で御決断、御判断されるように、この場をおかりして強く要請をしておきたいというふうに思っております。

 以上で結構でございます。お手数をおかけいたしました。

 それで、次に、例の金庫株の話に入りたいと思うわけですけれども、来週も私は時間をいただいておりますので、きょうは、言ってみれば提案者の方に御教示いただきたいなということで、私なりに、まずはこの法案の認識を新たにしたいという意味で、そういう形で質問を幾つかこしらえてみました。

 そして、特に技術的なこと、またやや個別、各論に突っ込んだような話については来週また、私が希望したわけではありませんが、社民党では法務委員は私しかおりませんので必ず私が出なきゃならないということでございまして、日々いろいろな、畑違いのことも勉強させていただいて非常にありがたく思っております。今回も、相変わらずインターネットで金庫株というのでいろいろと検索して、まず資料を渉猟するところから始めるんですが、経団連のある方が、今回の金庫株解禁について、経済界は以前から金庫株を解禁してほしい、つまり企業が自己株式を購入、保有できるようにしてほしいと要望してきました、特に最近は、企業同士が保有し合ってきた株を売却する持ち合い解消の動きが株式市場で売り圧力になり、株価を圧迫しています、金庫株はその受け皿となり、株価を安定させる効果が期待されますと。

 恐らく、そうした財界からの要請というものがあったということは事実としてあったでしょうから、やはり、趣旨説明の中での、現在の社会経済情勢ということの中には、この金庫株の解禁というものが低迷する株価に対して幾ばくかの効果をもたらすであろう、言ってみれば株価対策の一環の中には位置づけられる、そのことを全否定することはできないんだろうなと思います。

 ただ、私自身は、ではこれが証券市場の活性化に大いに有用かどうかということについては疑問を持っております。それは後でお伺いもいたしますけれども、そのことを差しおいてまずお伺いしたいのが、では、この間の株価の下落の要因、原因、そうしたことについてはどういうふうに御認識されているのか、提案者の方からお伺いいたします。

相沢議員 御案内のように、株価は、かつて東証の平均株価三万九千円が三分の一まで下がったという状況で、低迷をいたしております。

 その原因はいろいろあろうかと思います。恐らく、これ一つが原因だということは株価に関しては言えないんだろうと思いますが、一つは、やはりバブルがはじけたということ。結局、地価の異常な上昇を中心として盛んな投資が行われる、エクイティーファイナンスが拡大される、こういうような情勢が、金融の引き締め、特に不動産に対する総量規制という極めて厳しい金融引き締め措置が一つの大きな引き金となって地価の暴落が始まった、それが一つの大きな原因じゃないかというふうに私は思っております。

 それから、結局、それが金融機関の持つ債権を不良化させる最大の原因の一つだというふうに思っておりますけれども、その不良債権がふえてくるに従いまして、それを整理する。現在また、不良債権の整理を二、三年の間にやれ、直接償却を含めてやれということでもって、銀行に対してかなり厳しく指導が行われている。このこともやはり、不良債権の処理を通じて企業の破綻を招来する、それがまた従業員を吐き出す、雇用の不安定を招く、完全失業率の上昇を来す、こういうことにつながってまいる。

 それからもう一つは、そういうことも含めまして、景気の先行きに対して非常に不透明な感じをみんな持っておる。これは国内もそうですし、外国から日本を見る目もそういう点にある。したがって、最近は、この十カ月ほどはかなり外資も入っておりますけれども、ひところのような情勢ではございません。現在でも外資の東京市場におけるシェアは恐らく四〇%から五〇%になっていると思いますが、それの動向が大きく株価に影響を及ぼすというようなことで、いろいろな要素が絡まっていると思いますから、これ一つが原因だというふうに私は言えないというふうに思っているのでございますが、繰り返しますけれども、やはり、将来の景気情勢に対する不透明感、お互いに経済の先行きに対して自信が持てない、こういうところが一つ大きく影響しているというふうに思っております。

植田委員 今御説明いただいたとおりだろうと私も理解するわけですが、その結果、実際の株式市場の現状に対して企業の発行済みの株式が多過ぎるんじゃないかということは、やはり直接の要因の一つだろうと私は思うわけです。要するに、その一部が持ち合いになって市場で流動化しない、それで残りの部分だけで株式の需給がなされている。さらには、それで株価水準が形成されてきたら、ますます下落の要因としてそれが回ってしまうと思うんです。

 そのことを考えるのであれば、今回のこの金庫株という話もありますが、株価対策ということで政策として考えるのであれば、まず、それぞれが過剰な株の数というものを、株を整理するといいますか、減らす努力をすべきなんじゃないのかなというふうに私は素朴に思ったんですが、その点はいかがでしょうか。

金子(一)議員 今回のこの金庫株なんですけれども、株価対策という観点から考えれば、消却をさせるといったような、何か別の観点、法案というものがまだあったのかもしれません。

 ただ、そうじゃなくて、私たちは同じことを言っているんです。本来の目的は、企業がいろいろな産業再生を行っていますよね。株を交換するとか、合併のときに相手方に自社株を渡すとか、こういうことが行われるわけですね。産業再生法と俗に言います。このときに、同じことだと申し上げましたのは、今の法制度ですと、株が過剰だ、過剰だと議員からまさに御指摘いただいているとおり、さなきだに株が過剰なのに、産業再生が行われてきますと、それを実現するためにまた新たに株が発行されるという状況が今現実に起きている状況、今の置かれている状況なんです。

 ですから、株式を交換する、企業が合併再編をするときに、新たに発行するなんというんじゃなくて、現在ある株というものを、持ち合いであろうが市場であろうが、既にある株を有効に利用していこうというのが今回の目的でありまして、最大の目的は、株価対策というよりは、午前中からずうっと申し上げているのでありますけれども、産業再生等を有効に、企業が持っている不動産とか現金とか株といったようなものを総合的に有効に使わせていこうと。

 強いて言えば、副次的に確かに株価対策になるということは、もちろん否定しません。それは何でかといいますと、企業が再編を一生懸命やろうとしている理由は、当然でありますけれども、企業の収益力を向上させるからやるのです。向上させるためにやっているわけです。

 したがいまして、株価というのは、基本的には、相沢議員からもお話ありましたように、企業の将来性ですとか将来における収益性といったようなものが一番の尺度だと思っておりますものですから、そういう再編が円滑に行われることによって、収益の向上を通じて株価が上昇をしていく。だから、株価対策、直接の対策ではありませんが、副次的にはそういう効果を持ってくるのは当然だと思っております。

植田委員 いろいろな新聞を検索していても、やはり提案者としては、株価対策として今回の法律を出すんだというふうに印象づけをされるのは非常に本意ではないということなんでしょうか。

 ただ、いずれにしても、今の御説明を伺っていますと、今回の金庫株の解禁というものが、副次的であるかどうかは別にいたしまして、株価の下落対策として有効かどうかということについては、さほど効果はないだろうという御認識はなさっておられると。買い上げれば需給関係が一瞬改善されるでしょうけれども、長期的に見て、そういう対策としてこれを考えることは余りできないだろうなという御認識だろうというふうに理解いたしました。

 そこで、実際、発行株数が過剰になって、それをどういうふうに減らしていこうかという問題意識でちょっとお伺いしたいわけですけれども、八〇年代にエクイティーファイナンスがどんどんやられて、大量に転換社債が発行されて、それが株価の高騰のときにどんどん株に買いかえられたという中でやはり過剰になったんだろうなと思うわけです。もちろん、過剰の定義が何だと言われればちょっと私も困るわけですけれども。

 ですから、そうしたことが過去にあったということを踏まえて、まず大量のエクイティーの消却をやって発行済みの株式を減らす、そういうことが必要になっているのかなというふうに思うわけです。

 というのは、私がこだわるのは、一番冒頭に紹介いたしましたように、明確に財界からは、金庫株は株価が安定する効果が期待されますということで、そういう思いでの要請はあったはずでしょうから、そういうことで今回、株価対策とこの金庫株はリンクはしているわけですから、そういう部分を考えるのであれば、例えば今申し上げたような、発行済みの株式を減らす、そういう方法も考えられるんじゃないかと思うわけですけれども、その点についての御見解はいかがでしょうか。

金子(一)議員 二つ植田議員と共通の認識にしておきたいのですけれども、私、申し上げたのは、産業再生等々を通じまして企業が収益力を上げられるとします、そのことによって期待株価というのは上がってくるでしょうね、これが一つです。

 それからもう一つは、需給という側面に着目して、会社が今市場に流れている株というのを買い取る、この点については非常に一時的な話だと思うのです。しょせん、収益性がその企業になければ、一時的に需給が改善されましても、収益性が認められなければ、何だこの会社はと、これは需給なんて意味をなさない。そういう意味で副次的だということを申し上げたのです。

 それから、確かに御指摘のとおり、九〇年代、バブル期のエクイティーファイナンスの過剰発行というのは我々も認識しております。したがいまして、これをどういうふうに処理してもらうのか。もう既に申し上げましたとおり、消却特例法というものを国会でも用意して、そしてそういう環境をつくってまいりました。

 残念ながら、これは我々の立場でありますけれども、期待されたほどの企業が消却をまだ行われていないという状況。私たちはそういう目で、むしろ本当はもう少し消却をという期待は持っておりますが、会社経営上、そういう資本を配当に回していくのか、あるいは他の有効な次の成長分野への投資というのでしょうか、それに回していくのか、それはそれぞれの企業が判断することでありますから、私たちがとやかく言うことではないと思っております。しかし、方向としては、そういういずれの方法によっても、必ずしも消却しなくたって、それがよりパフォーマンスのいい分野に、つまり成長分野にどんどん投資されていけば、それは多少株式数がその会社にとって多くたって、それに匹敵する、それに値する収益分野をきちんとつかんでくれればいいわけですから、一概に数を減らせばいいということでは決してないんだと思っております。

植田委員 私がずっと聞いた認識が共有できるだろうと思うのですけれども、要は、私は、株価対策としての今回の金庫株の問題はどうなんだろうかという入り口の部分で、そういう問題意識できょうはちょっと組み立ててみたわけです。ですから、例えば効果がないでしょうと言ったら、それは副次的な話だと。それは非常によくわかるのですが、今回株価対策としてのというまくら言葉つきにお伺いをさせていただきますと、例えば、銀行株についてはやはり大変逆効果になるんじゃないかという声もお伺いします。要するに、自社株を買い取るとその分自己資本比率が少なくなってBIS基準にひっかかってきやしないかというようなことになってきて、逆にそういうことをしてしまうと、基準をクリアするのが相当困難になってくるんじゃないかということが指摘もされておるわけですけれども、特に銀行株にかかわって、今のそうした声に対してどういうふうな御認識をお持ちか、お伺いしたいと思うのです。

金子(一)議員 植田議員御指摘のとおりだと思っております。したがいまして、銀行は、残念ながら、自社株消却といったようなものが自己資本比率を維持しようと思うと非常にやりにくい状況ではあると思っております。

 ただ、銀行、金融界もいろいろな形で組織再編というものは彼らとしてもまだあり得るわけです。四大グループ云々言っていますけれども、まだまだ多くの話があるでしょう。したがいまして、単なる、買って自己資本比率が下がってしまいますね、だからできませんねという話ではなくて、今度の金庫株については、目的を制限せずに、ストックオプションでも、それから今の産業組織に伴うものでも使えるわけでありますから、そういう意味で、私たちが主張している当初の産業再編の中で必要があれば金融機関も使われるのではないかと思っております。

 しかし、自己資本比率という観点に着目すれば、ずっと保有し続ければという議論からいえば、もう議員御指摘のとおりだと思っております。

植田委員 時間がありませんので、あと一、二点お伺いしたいわけですが、実は、監視体制にかかわって幾つかお伺いしたかったのですけれども、さきの木島先生が、大体のあらかたの問題提起を時間オーバーして展開されましたので、そこは私の方は残念ながらはしょらせていただきますが、金庫株を解禁した場合の最大の監視システムというのは、やはりそれは株主総会だろうと思うわけです。ただ、私のように株を全然持ってへん人間でも、株主総会というもののイメージ、例えば、開会して三分でおしまいの株主総会というのもようけあるわけですね。

 そういう意味で、提案者の皆さん方からしてみたときに、今の我が国の株主総会が、経営者の例えば不当行為を十分監視する能力というものが十分あるのかということについて、非常に私は疑問を持っておるわけですけれども、それは十分あります、今の体制で大丈夫ですということは、言い切れるんでしょうか。その点の御所見、お伺いいたします。

金子(一)議員 ここにいる議員もみんな株主総会へがんがん出たことがないものですから、そういう意味で、植田議員と同じ立場かもしれません。ただ、やはり株主総会というものが、経営者の保身に今の金庫株を使ったのかどうかということのチェック機能というものを果たす、やはり最大の場所だと思っています。

 それから、これから国会に出てまいります、既に提案されておりますけれども、株主代表訴訟というものも大きな、株主にとってのいわば監視、チェックシステムになっていると思っているんです。

 このことは、もうこれだけ情報が発達し、マスコミが発達し、そして先生もすべてインターネットで、金庫株とは、経団連とはという情報が今とれる時代でありますから、経営者が、取締役会がどういうふうにこれを使ったのかということについては、もう手にとるようにわかるわけでありますから、株主総会が、もう一分、二分、はいしゃんしゃんという時代ではありませんし、問題があるのに、はいしゃんしゃんとやるような企業は、経営者は、すぐにアウトになると思いますし、そういう会社というのは、必ずおかしくなっていくだろう。

 少し言い方が度が過ぎましたけれども、株主総会というのは、それなりの監視機能というのをきちっと果たしていけるものと思っております。

植田委員 十分果たしていけるということと、その後で聞こうと思っておったんですが、株主代表訴訟にかかわっても言及されました。その点については、来週時間をいただいておりますので、特にこの部分については、土日もありますので、準備して、改めて、それらの正当性がどれだけあるかということについて、やや具体的にお伺いできればと思っております。

 きょうは、以上で終わります。

保利委員長 次回は、来る十二日火曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時四十三分散会




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