衆議院

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第19号 平成13年6月19日(火曜日)

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平成十三年六月十九日(火曜日)

    午前九時二分開議

 出席委員

   委員長 保利 耕輔君

   理事 奥谷  通君 理事 塩崎 恭久君

   理事 田村 憲久君 理事 長勢 甚遠君

   理事 佐々木秀典君 理事 野田 佳彦君

   理事 漆原 良夫君 理事 西村 眞悟君

      荒井 広幸君    熊代 昭彦君

      左藤  章君    笹川  堯君

      鈴木 恒夫君    棚橋 泰文君

      谷川 和穗君    西田  司君

      松宮  勲君    望月 義夫君

      山本 明彦君    吉田 幸弘君

      吉野 正芳君    渡辺 喜美君

      枝野 幸男君    大石 尚子君

      日野 市朗君    平岡 秀夫君

      水島 広子君    山内  功君

      上田  勇君    藤井 裕久君

      木島日出夫君    瀬古由起子君

      植田 至紀君    徳田 虎雄君

    …………………………………

   法務大臣         森山 眞弓君

   法務副大臣        横内 正明君

   法務大臣政務官      中川 義雄君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    山崎  潮君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    古田 佑紀君

   法務委員会専門員     井上 隆久君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十九日

 辞任         補欠選任

  太田 誠一君     望月 義夫君

  中川 昭一君     吉田 幸弘君

  山花 郁夫君     大石 尚子君

  不破 哲三君     瀬古由起子君

同日

 辞任         補欠選任

  望月 義夫君     太田 誠一君

  吉田 幸弘君     中川 昭一君

  大石 尚子君     山花 郁夫君

  瀬古由起子君     不破 哲三君

    ―――――――――――――

六月十八日

 選択的夫婦別姓の導入など民法改正に関する請願(大島敦君紹介)(第二八二三号)

 同(中田宏君紹介)(第二八二四号)

 同(土屋品子君紹介)(第二九三五号)

 国民がより利用しやすい司法の実現のための裁判所の人的・物的充実に関する請願(植田至紀君紹介)(第二九三三号)

 治安維持法犠牲者国家賠償法の制定に関する請願(田並胤明君紹介)(第二九三四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 民事訴訟法の一部を改正する法律案(内閣提出第六九号)

 刑法の一部を改正する法律案(内閣提出第五八号)(参議院送付)




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     ――――◇―――――

保利委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、民事訴訟法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として法務省民事局長山崎潮君及び法務省刑事局長古田佑紀君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

保利委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

保利委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐々木秀典君。

佐々木(秀)委員 おはようございます。

 法務大臣初め皆さん、きょうは御苦労さんでございます。大事な民事訴訟法の改正の審議も、きょういよいよ最終日ということになりましたので、私もしっかりお聞かせをいただきたいと思いますので、おつき合いをよろしくお願いいたします。

 それで、前回、同僚の委員からも質問が出ておりますけれども、本法の改正の趣旨ですが、森山大臣は提案理由の説明で、この改正案が民事訴訟における証拠収集手続の一層の充実を図るものだということと、いわゆる公務文書関係の文書提出義務の存否を判断するための手続を整備する必要があるんだ、こういう趣旨のことを述べておられます。

 実は、民事訴訟法については、一九九六年、つまり平成八年の第百三十六回国会で、七十年ぶりの全面的な改正が行われたわけですね。本来ならば、文書提出命令関係についてもこの段階で決着がつけられているべきものだと考えるわけですが、しかし、このときにつくられました政府原案、これは公文書の関係について文書提出義務の対象外としているなどということがあって、法曹の中からも、それからまたマスコミの関係などからも、これは官民格差がひどいじゃないかということで大変な御批判があったんですね。

 そういうこともあって、国会での議論もあり、この件については見直すんだということで附則の二十七条の修正が行われて、それで二年内に検討して改めてつくるということになったことは御了解のことだと思います。あわせてまた、行政情報公開法の審議も進んでおりました。これの成り行きなども考えながら、それで再検討するというように了解をされたものだと思います。

 そこで、そうしたことを検討の上でこの改正案の提案に至ったんだと理解することでよろしゅうございますか。その点をもう一度確かめさせていただきたいと思います。

森山国務大臣 先生御指摘のとおり、また私が提案理由の説明で申し上げましたとおり、この法律案は、民事訴訟における証拠収集手続の一層の充実を図るため、公文書に係る文書提出命令について、文書提出義務を一般義務とするとともに、文書提出義務の存否を判断するための手続を整備するなどの措置を講じるものでございます。

 具体的には、第一に、公文書についても、私文書の場合に提出義務が除外されている文書のほか、いわゆる公務秘密文書等を除いて文書提出義務があるものとしております。第二に、除外文書に該当するかどうかの判断は裁判所が行うということにしておりますし、第三に、除外文書に該当するかどうかの判断のため、いわゆるインカメラ手続を設けるというようなことがその要点でございます。

 先生がおっしゃいましたような経緯を経まして見直しの試みがなされたのでございますが、政治情勢その他の関係で目的を果たさず今日に至ったということでございまして、今回ぜひともと思っております。よろしくお願いいたします。

佐々木(秀)委員 情報公開法は一九九九年の五月の七日に成立をしております。しかし、後に述べたいと思いますけれども、情報公開法とそれから民事訴訟法とは制度的な目的を異にしているというところもありますので、この違いなどもまたお伺いをしたいと思うんですけれども、今大臣がお述べになったように、こういう立法趣旨、提案理由の説明がありましたけれども、証拠収集手続の一層の充実を図るということなんですね。それからまた、法務省の民事局がこの改正要綱をつくったときに説明の文書をつくっておられると思いますけれども、それによりますと、民事訴訟における公文書についての文書提出命令の制度を拡充するために所要の改正を行うんだ、こういうように記載をされていると思うんですね。

 そこで、拡充と言う以上は、文書提出命令の制度は従来よりももっとさらに有効な制度として機能をさせようという考えに立ってこの改正に着手されたんだ、考えられたんだと思うんですけれども、もちろん、この拡充という位置づけは、今申し上げましたように、情報公開法が制定される、あるいは各地に情報公開条例も存在しているわけですね、こういうものの存在なども当然前提にしてこれとの関連でも考えている、そして、従来よりももっと有効な制度として機能させようという思いがあったんだと思うのですけれども、こういうふうに理解してよろしいですか。

 それとあわせて、今度の改正でその点の有効性が確保されると考えているのかどうか。私どもから見ると、それにしては、やや、ちょっとまだ抑制的じゃないか、問題が多過ぎるんじゃないかとも考えているんだけれども、それについて、では民事局長からお話をしていただきましょう。

    〔委員長退席、奥谷委員長代理着席〕

山崎政府参考人 今回法案を提出するに至った経緯は、今委員御指摘のとおりでございます。

 私どもといたしましては、従来、非常に文書提出命令の範囲が狭かったわけでございまして、やはり十分な証拠に基づいて裁判を行った方が実体的真実がつかめるだろうということから、平成八年に拡充の方向で提出申し上げたわけでございます。

 そのときの考え方は、従来は、例えば、特別ないろいろな関係がある、個別の接触があるような、接点があるような証拠、これを提出することができるに限っていたわけでございますけれども、これでは狭いということから、それ以外のものは、一定の除外事由を設けながら、その除外事由に当たらなければすべて出しなさい、こういうシステムに拡充をしたわけでございます。

 その考え方について、私文書についてはそのとおりになっておりますけれども、公文書の扱いが少し違っておりました。これがいろいろ御批判の的になりまして、出直したわけでございます。その出直すにつきましては、いわゆる情報公開法でございますが、これの制定の作業と並行しておりましたので、その考え方、共通するところは共通する、お互いにその目的が違いますから、違うところは違うということになりますけれども、それを見ながら、拡充の方向で考えたわけでございます。

 それで、基本的には、今回の法律案につきましては、私文書と同じような除外事由を設けているものはそのまま除外事由になっておりますが、これ以外に、公文書につきましては二つ例外事由を設けております。それが、二百二十条の四号のロとホでございます。これを除外事由にしたということでございますけれども、そういう意味では、私文書より除外事由が加わっているということになりますけれども、従来のような非常に狭い範囲よりも拡充しているということは間違いないわけでございます。そういう意味で、私どもも、なるべく多くのものを法廷に出せるようにという考え方から設けたということでございます。

佐々木(秀)委員 今の民事局長からのお話でもわかるように、一部について、一定の条件を設けて除外している。除外をしているということは、すべての文書、私文書であろうと公文書であろうと、原則として文書提出命令の対象になるんだよと。一方、情報公開法についても、かつては請求してもなかなか見せてもらえなかったものについても、この行政情報というのは原則として国民に公開すべきものなんだよと。しかし、いろいろな条件それから事情などから、一定の情報については、これは開示することを御勘弁願いたいというか、了解してもらいたい、こういうことなんだよと。

 そうすると、この民訴の文書提出命令についても同様のことが考えられているはずだと思うのですね。つまり、除外というのは原則に対する例外なんであって、原則としてはすべてのものが、原則としてはですよ、文書提出命令の対象になる、こう考えていいのですか。

山崎政府参考人 この法律の条文の立て方からいけば、この四号の位置づけは、除外事由に当たらないものについては提出をすべきだということでございますので、原則として提出をするという建前でできております。

    〔奥谷委員長代理退席、委員長着席〕

佐々木(秀)委員 まさにそのとおりだろうと思うのですね。ですから、除外事由というのはあくまでも例外でなければならない。

 ところが、どうも今回の改正案を見ていますと、そうであるはずなのに、その除外事由がちょっと多過ぎるというか、これは情報公開法の方でもそうなんですね。ですから、私どもは、情報公開法のときに見直し規定の修正をつけて、それで全般的な見直しもしようということになっているわけですけれども、そうした点では、今回の改正についても、関係者の御努力は多としながらも、やはり問題が残されているのではないかと考えざるを得ないわけであります。

 そこで、もう一つ、念のためですけれども、これも同僚委員からも質問が出ているのですが、この情報公開法と民訴法の文書提出命令との関係なんですけれども、これも、共通するところは、従来ともすれば、行政としては、行政のやり方については、よらしむべし民に知らしむべからずというのが、明治以降、我が国の行政にはずっと一貫して流れてきたのではないかと私は思うのですね。

 しかし、戦後、民主政治がとられるようになった。そして特に、民主主義の先進国であるアメリカでは、もう三十数年も前に情報自由法などという法律がつくられて、まさにそれが民主政治、民主的な行政の要諦になっているということもあり、お隣の国の韓国でも、三年ぐらい前に、先に国民の知る権利までうたった行政情報の公開法をつくっているなどということで、我が国はその点の作業が大変おくれていた。しかし、これではいかぬということで、これも関係者みんなで努力をし合いながら、やっと行政情報公開法をつくり上げたということになるわけですね。

 これによって、行政情報というのは本来すべて主権者たる国民のものなんだ、だから、これを原則として、どんな情報であっても国民に知らせるのが原則なんだということになったと思うのですね。しかし、特殊な条件のあるもの、いろいろな事情のあるものについては、防衛の秘密だとか外交の秘密だとか、これはだれにもというわけにはいかないよということについては、国民の理解も得られるだろうということで、これを除外しているわけです。

 そこで、行政情報公開法と民事訴訟法の文書提出命令に共通するところは、要するに、そういう公的な文書、公的な情報であっても国民の知る権利にこたえなければならないということになるわけですが、ただ、行政情報公開法の方は、その理論的な根拠は、一つは、政府の説明責任、これが基礎になっている。政府の説明責任という観点から、国民のだれもが、目的のいかんを問わず、行政情報の開示を求めることができるという制度である。

 それに比べて、こちらの民事訴訟法による文書提出の関係では、これは国民の裁判を受ける権利の実行として、司法が適正な裁判を実現するために、その担保として、現に進行中の裁判において、裁判所が司法判断に必要とする情報文書を提出させるという目的であるわけですね。

 ですから、だれしもという点と、その当事者がという点、それから、その当事者が求める裁判で裁判所が公正、的確な裁判をする、真実を発見する、こういう大きな公益の目的がある、この点において、やはり両者の間は違うわけですね。これは、制度的な相違があるということは当然だと思うのです。したがって、そこでのそれぞれの法律の機能というのは違ってきてよろしいのではないかと私は思うのです。

 したがいまして、情報公開法で開示を求めて開示される文書、これは、当然のことながら、その請求者が取得できるわけですから、それを公にする、つまり証拠として提出することも一向に差し支えない、当然のことになるわけですけれども、しかし、行政情報公開法の関係で、仮にそれが開示されないような文書であっても、今言う司法の判断にとって必要だという場合には、別な意味でこれを文書提出命令の対象とするということは十分考えられることだし、また考えなければならないことであろう、それが制度の真意にもかなうことだろうと考えるわけですね。

 そういう意味では、先日の同僚議員からの質問に山崎局長が答えられて、情報公開法よりも文書提出命令の方の対象文書というか、考えていることは広いか狭いかということについて、一般的には広いと考えていいのではないかという御答弁があったと思うのですが、その点をもう一度確認させていただきたいと思います。

山崎政府参考人 前回、確かにこの点はお答え申し上げております。そのときに、若干この部分は広いけれどもというふうに申し上げたと思いますが、その点をちょっと繰り返させていただきたいと思います。

 情報公開法の中で、五条の一号から六号まで除外事由がございますけれども、その一号と二号がいわゆる個人情報に関するもの、これが記載されている行政文書と法人情報が記載されている文書がございます。情報公開法では、これが記載されていればもう自動的に除外事由になる、こういう立て方をしているわけでございますけれども、こちらの民事訴訟法との関係では、そういう文書であって「公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがある」場合だけその提出義務を免れるということで、それ以外は出さなければいかぬということで、そういう意味ではこちらの方が広いということで考えています。

 それ以外の事由はほぼ同じ程度かなというふうに考えております。

佐々木(秀)委員 ほぼ同じという御説明がどうもちょっと気になるのですよね。これは、一般的に言ってもそれから実際に言っても、明らかにこの民事訴訟法の方が広い、こう理解しなければならないのではないかと私は思うのです。

 現に、例えば情報公開法の五条の六号では、これは「国の機関又は地方公共団体が行う事務又は事業に関する情報」の場合ですね、これを「公にすることにより、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」、これが公開の対象から除外されることになっているのですね。

 しかし、今局長が言われた、今度の改正案の二百二十条の四号のロ、今指摘のありました「公務員の職務上の秘密に関する文書でその提出により公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるもの」というのは、先ほど申し上げましたように、情報公開法の五条の六号の方では「事業の適正な遂行に支障を及ぼす」、単純に「支障を及ぼす」と書いてあるのです。ところが、この民訴の方では「公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがある」、こう書いてある。しかも、その前に「公共の利益を害し、」と、今言われたようにこれがついている。二重に縛りがかかっているわけですね。

 ということになると、公共の利益を害するかどうかという判断、それから公務の遂行に著しい支障があるかどうかという判断、これはやはり判断を求めなければならないだろうと思うのですよ。この判断というのは、その文書の保有者が判断すべきものでなくて、客観的な判断がやはり必要になってくる。とすれば裁判所だということになるだろうと私は思うのですね。

 そういう意味では、今、情報公開法の五条の三号以降については同列にというお話だったけれども、私は明らかにこれだって違うのではないかと思うのです。この点、もう一回ちょっと確認したいのですが。

山崎政府参考人 ただいま委員御指摘の点、確かに、法文上はまず「著しい」がつくかつかないかというような違いがあるということはそのとおりでございます。これは、形式面ではこちらの方が重いと当然なるわけなのですが、ただ、実質の解釈として、行政情報公開法五条六号については、単なる支障ではなくて、やはり著しいということが解釈上入っている、こういうふうに理解をされておりまして、もしそういう理解であるならば同等だということで、私はそれで申し上げたということで、文言としてはやはり、「著しい」ということであれば、比較としてはこちらの方が重いということになろうかと思います。

 あと、「公共の利益を害し、」ということでございますが、これは前にも少し答弁させていただいたかと思いますが、その後に、公務の遂行に著しい支障を及ぼすというのが典型例として書かれておりまして、それに当たればすなわちイコール公共の利益を害すということになるということで理解をしているわけでございまして、そういう意味では、そこのところも実質的にはそれほど違わないと我々は理解はしております。

佐々木(秀)委員 今のお答えは問題だと私は思いますよ。

 前段は了解します。行政情報公開法の、さっき指摘した条項ですけれども、これに「著しい」という言葉はないけれども、むしろ著しいというような意味合いが解釈できるのだということ、これはいいと思うのです。まさに著しい支障がなければ出すべきだと私は思いますからね。そういう意味ではいい。

 しかし、今の、後のお答えはいかがなものかな。つまり、二百二十条の四号のロ、これは「公共の利益を害し、」「公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれ」。今の御答弁だと、公共の利益を害することと公務の遂行に著しい支障とをパラレルに置いているように思えるのだけれども、私は違うと思うのです。これは前回も同僚議員が大分お聞きしたでしょう。そのとき、民事局長は、公務の遂行というよりは公共の利益の方が重大なのだというお答えだったと私は思うのですよ。そうでしょう。そして、公務の遂行の著しい支障が公益を害することの一類型というか、そういうふうにとらえた。これは違うのではないかな。公務の遂行というのは、あくまでも行政のですよ。行政にネックが生ずるとか、行政の遂行にネックが生ずるということでしょう。だけれども、公共の利益を害するということはもっと広いでしょう。もっと広い意味でしょう。だとすれば、どっちが重要かといえば、公共の利益の方が重要だと私は思うよ。多少公務の遂行あるいは執行に支障が生じたとしても、それは内部の問題だもの、行政内部の問題。それが直ちに、例えば国民やあるいは住民に不利益を生ずるような結果をもたらすなどということはとても言えないのだ。だから、そういう意味で、パラレルに置くというのは、あるいは「公務の遂行に著しい支障」が公益のある一形態、ある部分だというのならわかるけれども、パラレルにという言葉は、それはもう理解できない。納得できないですよ、それは。

山崎政府参考人 委員御指摘のとおり、私、やや説明不足でございまして、前に申し上げたとき、この「公共の利益を害し、」ということの典型的な類型が「公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれ」である、そういう考え方でできているということでございまして、典型でございますから、それ以外の部分もあるわけでございまして、ですから、「公共の利益を害し、」という方が広くて、それで「公務の遂行に著しい支障」というのはその中の典型の部分ということで、それ以外にもあるという考え方でございますので、パラレルというのはイコールと、ちょっとそういうふうに言ってしまいましたけれども、そうではございませんので、訂正させていただきます。

佐々木(秀)委員 その点をやはりわきまえておいてもらわないと困るんですよ。公務に支障があれば直ちに公共の利益を害することになるなんというのは、そんな解釈になったら、これはえらいことになるので、そうじゃないことをきちんと、私どもお互いに確認をしておきたい、こんなふうに思います。

 それから、通告しております四番目はちょっとはしょります。

 そこで、いよいよ、一番問題になっております二百二十条の四号、刑事記録等の提出除外の問題です。

 これは、この辺も前回、同僚議員からも質問があったんですけれども、どうも、今度の改正が考えられている中で、この刑事記録の関係を除外するということは、当初は要綱の中に盛り込まれることについてはなかったんじゃないのかな。それで、最終段階になって、法制審議会が、御承知のように、平成八年の九月に法制審議会民訴法部会の中に文書提出命令制度小委員会だとか研究会が置かれて、それで鋭意検討されてきた。平成十年の二月六日に部会が開かれて、要綱案が賛成多数で可決された。その要綱案の中にはこの刑事記録除外が入っている。そして、二月の二十日の法制審の総会で了承されて、政府に答申された、内閣に答申された、こういうことです。

 この間、平成十年、年が明けてから四回にわたってこの部会が開かれて鋭意検討作業が続けられたというお話だったけれども、その中で、刑事記録削除がどの段階で入って、どの程度の審議をされたのかということについての御説明がなかったように思うんです。その点だけ、もう一回確認させてください。

山崎政府参考人 端的に申し上げます。

 文書提出命令の小委員会に、この制度全体の枠組みについて要綱としてお示ししたというのは、平成十年一月二十三日でございます。これは小委員会でございます。すぐその後に、一月三十日の小委員会でもこの議論を続けております。それから二月の六日に開催されました部会でございますね。それから二月の二十日に開催されました法制審議会の総会、この四回で議論をしたという経緯でございます。

佐々木(秀)委員 それで、二月の六日の部会でこの要綱案が賛成多数で可決された、こういうことになっていますね。賛成多数ということは、採否をとったということになるわけですね。全会一致じゃなかったということになるわけでしょう。そうすると、このときに異論があったはずなんだけれども、特に私は、異論があったというのは刑事記録の除外についての異論などがあったと思われるんですけれども、それがどうなのか。あったとすれば、委員の中の数としてどの程度の方が、あるいは、典型的な、代表的な例としてどんな説を述べられたのか、簡単にそれを御説明願います。

山崎政府参考人 委員御指摘のとおり、採決が行われました。反対の人数、正確なことを今は覚えておりませんけれども、弁護士会の御推薦の委員の方という記憶でございます。

 その考え方は、もちろん、日弁連の方で反対の声明、意見書をまとめられておりますけれども、そこに盛られた内容でございますが、大ざっぱに言えば、刑事記録を特別な除外にするのではなくて、一般の公文書と同じような扱いにして、そこでインカメラ等を使って、裁判所の判断で、提出させるべきかどうか、これを審査すべきじゃないか、こういう御意見だというふうに理解しております。

佐々木(秀)委員 いずれにしても、最終段階で弁護士会からの異論があったということですけれども、私は、もう少し早目にこの議論が開始されていたら、例えば法制審の中の研究者、学者などからも恐らく異論が出たんじゃなかろうかと思うんですね。これは民事訴訟法部会ですから、刑事関係の学者などが入っていたのかどうか、ちょっと私了解していないんだけれども、そういう方は入っていたんですか。

山崎政府参考人 刑事法の学者は入っておりませんという記憶でございます。

佐々木(秀)委員 ですから、本当は、民訴の部会だとは言いながら、民訴の改定だとは言いながら、この刑事記録の扱いの問題などというのは、やはり専門家である刑事関係の研究者、学者などの意見も聞くべきものだったのではないかと思うんですね。時間をかけて、もう少し早目にこうした考えが示されていれば、そういう配慮も、恐らく法務省の中でも、法制審議会の中でもあったのではなかろうか。例えば参考人として意見を聞くということだってあってしかるべきだったのではないかと思われるだけに、私は、やはり議論が不足していたのではないかという思いを否めないんですね。

 今後のこともありますから、後にこのことについてもお尋ねをしたいと思いますけれども、どうか、そうした点も大事なことだろうということで認識をしていただければありがたいものだと思います。

 時間が迫ってまいりましたので、具体的な事例として七番目の問題を挙げたんですけれども、これはちょっとはしょらせていただいて、八番目の問題。

 結局、今私が指摘しましたわけですけれども、やはり今度の改正案で刑事事件記録を一律除外しているという点は、もちろん刑事記録が全く民事訴訟法上、証拠としてあらわれないというわけではないよ、いろいろな法律があって、それに基づいて出し得るんだよということの御説明であるわけですけれども、しかし、それにしても、一律除外をするということについては、これはマスコミなどもやはり相当強い批判をなさっているわけですね。せめて、これをインカメラの対象にはできなかったんだろうか。

 先回の同僚議員の質問のときに、一律にインカメラの対象にする、つまり、裁判所にその採否の判断をゆだねるために、裁判官だけがその要求する刑事記録、あるいは、もう一つありますね、ほかの文書もそうですけれども、この除外されている文書について、一応裁判官に検討の機会を与えるその対象からも外すということ、これはいかがなものかという批判があるわけです。

 しかし、これをやるといろいろな弊害があるということを森山大臣はおっしゃっておられるんだけれども、その弊害というのは一体どんな弊害なのか、具体的なイメージとしてちょっとわいてこないんですよね。ただ単に関係者のプライバシーだというようなことで済まないと私は思うんです。それこそケース・バイ・ケースで、関係者の秘密を漏らさないような方法だってあるわけだし、名前を伏せるとか、いろいろなことだってできないことはないわけだし、殊に、見るのは専門家の裁判官ですからね。

 山崎局長は、長年豊富な裁判官経験もお持ちになっていらっしゃるわけだから、そういう体験からしても、職業的な、専門的な裁判官としてはそういうセンスも持っているわけだし、裁判官がひそかに裁判官室で見ることが直ちに他人の迷惑になるなどということは、私はとても考えられないんだけれども、にもかかわらず、インカメラの対象からすっぽり外しちゃったというのは、これはいかがなものかと思うんだけれども、これはどういう配慮だったんですか。

山崎政府参考人 この点については、二つの問題がございます。

 一つは、そもそも、刑事の記録を開示すべきかどうかというのは刑事の世界で裁判官等が判断しているわけでございますが、そういう中で、民事の裁判官が判断を加える、その場合に、民事の方で、刑事で考えている開示の範囲を超えて提出を命ずるということ、これが果たして民事の観点から的確な判断ができるのかどうか。それについて、捜査当局等が、これはプライバシーにかかわる、あるいは捜査の今後の問題にかかわるということを個別の事件ごとに言わなきゃいけないわけでございますけれども、では、それがどこまで的確に言えるかという点がございまして、そこがきちっと言えない事件もあります。そうなりますと、裁判所の的確な判断を仰ぐということにもならないという点が一つあるじゃないかということ。

 それと、インカメラで見られる書類はこのAという書類だ、これを請求するといった場合に、捜査記録というのは膨大にございますので、その全体を見ないで、ではこれが捜査に影響があるかどうかということが果たして決められるかどうかという点でございます。今回、インカメラ手続は私文書についても設けてあるわけでございますけれども、当該文書のみしか見られないという構造になっておりますので、そういう関係から、的確に判断できるかどうかという点にも疑義があるということから設けなかったということでございます。

佐々木(秀)委員 どうもこの説明でも私は納得いかないんですよ。

 それは、民事の裁判官が刑事的な感覚を持っているかなんといったら、そんなものは持っていないことはないですよ。例えば地方の支部なんかに行ったら、民事だって刑事だって何だって裁判をやらなきゃならないんだから。私どもだって、弁護士だけれども、刑事事件も民事事件もやるんですから。それはわきまえながらやっているんだから、そんな使い分けできないことはない。

 そして、問題なのは、全体の記録を見なかったら、必要かどうか、あるいは妥当かどうか、支障があるかどうかということはわからないと言うけれども、別に、それこそ刑事事件そのものを裁くんじゃないんですから。そのうちのその部分がこの民事裁判に、真実を明らかにするためにどうしても必要だということで要求があるんですから、その観点から判断すればいいことなので、全体を見なかったらそれだけを証拠として提出命令をかけることはできないなんということは理屈に合わないですよ。この点はこれからも十分検討してもらいたいと思うんです。大事な検討課題だと私は思います。

 そこで、時間が参りましたので、最後に。

 実は私ども、きょう、修正提案をすることにいたしました。本来ならば本体改正まで求めたいんですけれども、時間的な余裕もないということなものですから、全体についての見直し、そして、この改正の結果これがどういうように運用されて、どういうような支障が出てくるかなどを含め、そして、今の刑事記録一律除外なども含めて、ぜひ見直しをした上で、よりよい民事訴訟にしよう。司法改革審議会からも意見書が出ましたね。国民のための裁判の実現、そして、より迅速で、みんなが納得する裁判をどうやって実現するかということなんですから。

 そういう意味で、この文書提出命令の制度というのは非常に重大だ、まさに大きな大きな公共の利益のためのものだと私は思うんです。だから、それが阻害されるような法律であれば、それは仏さんをつくって魂入れないようなものなので、その魂を入れるためにも、私どもとしては、この見直しの修正提案をしたいと思っているんです。そういうことについて、法務大臣、その趣旨を御理解いただいて、法務省としてもしっかり対応していただけるかどうか、その点についてお答えいただきたいと思います。

森山国務大臣 今御提案しておりますこの改正法案は、基本的には、全体として見ますと、公文書を対象とする文書提出義務の範囲が現行法に比べて格段に拡大することになるとは考えております。しかし、この点に関して、一部からは、刑事訴訟関係書類を民事訴訟において利用できる範囲が狭くなるのではないかという御懸念が表明されておりますし、また、民事訴訟の当事者は、刑事訴訟法等の閲覧制度等について、開示による弊害が生じない範囲において刑事訴訟関係書類等を訴訟に利用することができますので、実際にも広範に利用しているという状況もございます。

 もっとも、おっしゃいますように、最近、犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律や改正少年法が施行されまして、刑事訴訟記録等の開示の範囲が拡大されたという事情もございますので、今後とも、刑事手続関係の開示制度による刑事事件関係書類等の民事訴訟における利用状況を見守りながら、文書提出命令制度のさらなる改善を図る必要があると認められる場合には所要の見直しを行っていくべきであるというふうに考えます。

佐々木(秀)委員 時間が参りましたので、以上で終わります。どうもありがとうございました。

保利委員長 次に、西村眞悟君。

西村委員 今、情報公開と文書提出命令の関係については佐々木委員が詳しくされましたので、御質問の通告をさせていただいているところからは外して、今、大臣が答弁された部分から入っていきたいと思います。

 今、大臣は、民事訴訟において刑事記録は広範に利用されている、したがって、佐々木委員が修正案として提示されたものに対して、利用状況を勘案しということを申されたわけです。ところが、この文書提出命令は、刑事記録は一般的に民事訴訟において公開禁止だということになっておるわけです。今まで、この大臣の答弁がなければ、いささか民事訴訟の実態とこの文書提出命令の条文の趣旨は矛盾するなということで済んでおりましたけれども、今の大臣の御答弁と、修正案を受け入れるということで、条文の中で相互矛盾を来しておる。

 一般的に民事訴訟における刑事裁判記録は文書提出命令があっても出さないんだ、先ほど局長が御答弁されたような趣旨で出さないんだというのが条文の趣旨ですよね。しかし、現実には、我々、実務をやれば、実況見分調書等は不可欠なものですから、民事訴訟でも出てきておるんです。しかし、それは条文上あらわれていなかった、実務でやっておった。

 しかし、大臣は今、修正案に対する対処方を聞かれて、広範に利用されておるものですからとおっしゃった。だったら、一般禁止とどう整合さすのか。実務で行われている実況見分調書等は、この文書提出命令の改正が通った時点で一切排除するのか、それとも、今までどおり広範に利用した状況をさらに見守って、どう利用されるかと。条文なしに各地の各法廷で行われているようなことを放置するのか、それとも禁止するのか、こういうことを聞きたくなります。これは今、私の思いであります。

 それで、司法の目的は何かということになりますね。司法の目的は、法を適用して法と正義を実現さすことではないのかということでございます。これについては御異論ないと思います。これは、民事、刑事問わず、そうでございます。

 刑事は、御承知のとおり、証拠収集は国家権力がやる。民事は、証拠収集、法と正義の実現のための前提たる実体的真実の探求は各当事者がやる。しかしながら、裁判所がだまされて実体的真実と違うことを事実として認定して、そこに法を適用しておれば、社会正義の実現はできず、司法の使命を果たすことはできない。したがって、裁判所も、証拠の収集、証拠が法廷にあらわれるということは、司法の、民事司法の一つの生命線だという認識を持たねばなりませんね。御答弁をお願いします。

森山国務大臣 おっしゃるとおりだと存じます。

西村委員 したがって、いかなる証拠を法廷に顕現さすかということは、単に法廷の問題のみならず、日本の刑事司法全体の一つの重要な問題である。

 そこで、私が思いますのは、刑事であれ民事であれ同じ司法であります。刑事裁判記録というのは、言うまでもなく刑事裁判における作成された記録でありますね。刑事、民事を問わず、司法である限りは実体的真実の探求が生命である。実体的真実も認定できずに法の適用も何もないわけで、何ら社会的な司法の正義を実現することもないわけです。

 しからば、この法律は何か。実体的真実究明を任務とする司法において、同じ司法が作成、保管する刑事裁判記録の提出を全面的に同じ司法の証拠収集から排除しておるという建前は、司法の任務と矛盾するのではないか、こう思いますが、いかがですか。

森山国務大臣 民事訴訟におきまして、実体的真実を解明するために刑事裁判記録等の刑事事件に係る訴訟に関する書類を証拠として利用する必要がある場合があることは、否定できないところでございます。

 しかし、民事訴訟における実体的真実の解明というのはあくまでも私人間の権利義務関係の適正な判断のために行われるものでございますから、民事訴訟において、刑事訴訟法等が認める範囲を超えて刑事裁判記録等を開示することを認めることといたしますと、関係者の名誉、プライバシー等の利益に重大な侵害を及ぼしたり、将来の捜査、公判に対して悪影響を与えるなどの弊害が生ずるおそれがございます。

 すなわち、刑事裁判記録等は、国家刑罰権の実現を目的として、刑事訴訟における実体的真実の解明という公益の追求のために、強制処分を含む強力な権限を行使いたしまして、関係者の名誉、プライバシーに深く立ち入って作成されるということがたびたびあって、それが通常と言ってもよろしいかと存じます。

 そこで、刑事裁判記録等につきましては、関係者の利益保護、捜査の秘密及び刑事裁判の適正の確保などの利益と、これを開示することによって図られる公益とを調整する観点から、刑事訴訟法等において、開示の要件、方法等について独自の規律を設け、弊害が生じない範囲においてその開示を認めるものとしております。

 したがって、刑事裁判記録等を開示することによる弊害の有無は、刑事訴訟を担当する裁判所等において最もよく判断できるところでございまして、その範囲を超えて民事訴訟を担当する裁判所がその提出を命ずることができないものとすることは、制度として矛盾はしないと考えます。

西村委員 先ほど大臣は、刑事であれ民事であれ、生命線は実体的真実だとおっしゃった。その実体的真実を端的にあらわすものが刑事における証拠収集または刑事記録である。これは、国家が刑罰権発動のために万全を期すわけですから、極めて精緻な証拠が集まっておる。

 さて、民事においても、先ほど大臣の答弁では、当事者間のことですからと。当事者間のことですからどうでもいい、真実なんかどうでもいいんだということにはならない。民事も刑事も同じだ。もし当事者間のことだからどうでもいいんだということで民事訴訟を積み重ねますと、本当に社会秩序が崩壊します。

 したがって、実体的真実の探求が生命線だという裁判において、それが実体的真実の探求のために必要なものならば法廷に出さねばならないということについては、民事、刑事、差はないんじゃないですか。したがって、私は、ちょっと矛盾するなと。先ほどの佐々木議員の質問の中に、インカメラ方式でも、民事、刑事の裁判官の世界のことで、いろいろ判断が無理だ等々ありますけれども、そうであれば判断できるようなシステムをつくったらいいわけです。

 問題は、裁判官は法廷で勝負するわけですから、その法廷に文書提出命令があって、この証拠が必要だなということであれば、顕現させてもいいかどうかは判断したらいいことで、何も一般的に禁止する必要はないんじゃないか。むしろ、一般的に禁止しておるのが自己矛盾を来しておるのではないか、実務ではあらわれているんですからというふうに思うんですが、御答弁はいかがですか。

森山国務大臣 先ほども申し上げましたように、基本的には、実体的な真実を追求するということが民事でも刑事でも重要なことは当然でございますけれども、民事の場合と刑事の場合に、追求するべき必要のある事実というものが多少違うのではないか。

 先ほど申し上げましたように、刑事の場合は、その関係者のプライバシーとか名誉とかそういうことにも踏み込んであくまで真実を追求しなければならないという側面がございますし、民事の場合は、求められているものが当事者間の争いの実体を明らかにするということでありますので、内容が本質的に違うのではないかというふうに私は感じます。

    〔委員長退席、奥谷委員長代理着席〕

西村委員 これは、内容は違わぬのです。真実は一つなんですね。この真実に私人としての切実な利害がかかっておるときに、例えば、この裁判に負ければ、事実は負けるはずがないけれども、負ければ一家離散、生活手段もすべてなくなるという国民の切実な利害関係に、実体的真実を探求して、法を適用して擁護するのが民主主義国家の司法の役目なんですよ。だから、刑事と民事とは同じなんです。同じなんです、本当は。だから、やはり法にあらわす必要がある。

 大臣も先ほどの答弁で、広範に利用されておるので利用状況を勘案して云々という御答弁をされておりますのでこれ以上言いませんが、我が国の法文化として、やはりもう少しこの条文は――建前はいいんですよ。実態はどうされているのか。民事でも刑事の記録を使っている、それは当たり前だ。刑事でしか、例えば交通事故の実況見分がなければ、その証拠がなければ、真実は発見できない、こういうことはあるんですよ。あるから実務ではやられている。この現状を無視して一般的に禁止しておいて、後は利用状況を見るという条文も入ってくるということは、法の自己矛盾を来していると思うわけでございます。

 我が党は現段階においてこの法案が成立することを望んでおりますけれども、ただし、よりよい、実態に即した法案を、裁判所のインカメラに対する体制等々が、この法案が通過し、そして附則も修正で入った段階でなされるべきであろう。

 佐々木議員が先ほど言われたように、刑事裁判の記録は刑事裁判官でなければわからないんだということなんかないんですから。国民の記録なんですから。刑事司法は国民のためにある。民事も刑事も実体的真実については変わらない。刑事の方は、刑罰権の発動、これも社会正義の実現。民事の方は、一国民の切実な利害。これが、裁判所が事実も探求できずに間違った判決ばかり下したら、日本の社会秩序は崩壊し、大臣の任も務まらないということであります。

 これで質問をやめます。

奥谷委員長代理 次に、木島日出夫君。

木島委員 日本共産党の木島日出夫です。

 今回の民事訴訟法の改正法案で、何といっても最大の問題は、刑事関係記録を一切合財文書提出命令から除外するという問題だと思います。これは、従前の日本の裁判の実例からも反する大変な後退だというふうに思いますので、まずその問題について質問をいたします。

 二百二十条四号ホ「刑事事件に係る訴訟に関する書類若しくは少年の保護事件の記録又はこれらの事件において押収されている文書」は一切合財文書提出から排除されるということであります。

 これは法務省にお聞きしますが、「刑事事件に係る訴訟に関する書類」はどういう概念でしょうか。

山崎政府参考人 お答えを申し上げます。

 刑事事件の中身でございますが、被疑事件と被告事件、これは双方が入ります。

 この「刑事事件に係る訴訟に関する書類」ということでございますが、これは、今申し上げました被疑事件それから被告事件の双方を含むものでございまして、その事件に関して作成された書類という概念でございます。

 書類の中には、細かく言えば、捜査書類がございます。それからもう一つの大きなものとしては、公判調書、証人調書等のいわゆる狭義の訴訟書類が含まれます。それ以外としましては、保管者が弁護人あるいは私人であるもの、例えば嘆願書とかそういうのがございますけれども、そういうものも含まれるということでございます。

木島委員 そうすると、確認しますが、被疑事件、被告事件双方入るというので、不起訴記録も全部入る、起訴記録で証拠として提出しない検察官手持ち記録も全部入る、警察官手持ちの不送致軽微事件の記録も全部入る、こう確認していいですか。

山崎政府参考人 ただいま御指摘の書類は全部入るということでございます。

木島委員 それでは次に、「少年の保護事件の記録」、これは概念はわかりますから質問しません。

 「これらの事件において押収されている文書」、この概念はどういう概念でしょうか。

山崎政府参考人 先ほど書類という概念を申し上げましたが、これ以外に押収されている文書もございます。押収は、証拠物または没収すべきものの占有を取得する刑事上の強制処分でございますけれども、そういう強制処分により取得されている文書ということでございます。例えば会計帳簿等が押収されていればその押収物ということになるわけでございますので、そういうものを指すということでございます。

木島委員 要するに、ここでわざわざ「押収されている文書」という概念を持ち込んできたのは、捜査記録で捜査官が作成した文書でもなし、公判調書や証人調書など裁判所において作成された書類でもなし、第三者である私人の所有の文書で、捜査のために検察、警察が押収手続によって押収した文書ということですね。要するに、この「押収されている文書」という概念は、その所有権者は第三者である、捜査機関でない、そういう文書であるということを確認していいですね。

山崎政府参考人 そのとおりでございます。

木島委員 ここまで一切合財、民事の損害賠償その他の事件で文書提出命令から、門前から排除するというのは本当におかしな話だと思うのですよ。

 では、押収されている第三者所有物、会社関係の事件の会社の帳簿なんか全部そうでしょう、この第三者である会社が、民事裁判の当事者あるいは第三者として、検察、警察に押収されてしまった自分の所有の帳簿を民事裁判に出して結構ですよと。損害賠償請求民事訴訟が適正に証拠調べが行われ、被害者の損害が適正に賠償されるためには真実が発見されなければいかぬ、ついては、検察、警察に押収されているのは自分の所有物だ、これを民事裁判に出して結構だ、出してもらいたい、そういう要求があっても、同意があっても、この法律だと、検察が握っている限り、それはもう文書提出命令からはじかれる、そういう結果をもたらすのですが、法務大臣、こんな理不尽なことが通ると思いますか。法務大臣、素人的に考えてください、こんな理屈が通りますか。どう思いますか。これは大臣の認識を伺います。本当に不自然でしょう。

森山国務大臣 おっしゃるようなことがあるのは問題が残るだろうとは思いますけれども、いろいろな条件があるのではないかと思います。

 私、先生のような法律の専門家でございませんので、先生のお考えの本当のところはよくわかりませんけれども、前提としていろいろな条件があって、その上でということならば、考え得るのではないかというふうに思います。

木島委員 前提条件なんか何にもないんですよ、この法律は。そうでしょう。二百二十条四号ホ「刑事事件に係る訴訟に関する書類若しくは少年の保護事件の記録又はこれらの事件において押収されている文書」、それに当たるだけで一切合財文書提出義務から排除されている、そういう法案ですよ。

 判断の余地はないのです。裁判官が判断したいと思っても判断の余地はないのですよ。申請すら却下されるのです。任意に出すかどうかは別ですよ。もちろん拒んだ場合ですよ。任意に出してくれるなら文書送付嘱託でいいでしょう。この法律はそんな場面じゃないのです。検察、警察が、自分が刑事事件で確保した書類は一切合財民事裁判には、自分から進んで出すのはともかくとして、命令されては出さない、命令が頭から出せない仕組みになっている。

 では、法務省、何でこんな条文にしたのですか。

山崎政府参考人 先ほどの質問に対するお答えをまずさせていただきたいと思います。

 押収されているもので、それを使っても構わないという場合ですね。もしこれが捜査に影響があるということであれば、捜査当局の判断で捜査に影響があるということならば、これを開示することはできないということになりますし、もしも捜査に影響がないということであれば、捜査当局から押収された人は、下付申請というのですか、戻してもらうという手続ができるわけでございます。それで、本人が使ってもらっても構わないということであれば、それを訴訟の当事者に提供して裁判所に提出するということが可能なわけでございますので、だめな場合と可能な場合、両方があるということでございます。

 それから、ただいまの点について、刑事記録等を一切除いた理由でございますけれども、これは、先ほど来ずっと申し上げておりますけれども、基本的に、刑事訴訟法等の規定がございまして、刑事事件あるいは押収書類等に関しましては、刑事の世界でどこまで開示をするか、刑事事件としてどこまで開示しても差し支えないか、そういうようなことを第一次的にそこで判断して運用されているわけでございますので、その考え方を尊重するということでございまして、それを超えて、全部の事件の中身がわかっているわけではない民事の関係の裁判官がその範囲を超えて提出を命ずる云々ということは不都合であるということから設けているわけでございます。

木島委員 大変インチキな答弁ですよ。捜査に影響あるなしで決まるんだ、一律じゃないんだと。とんでもないインチキ答弁でしょう。だれが判断するんですか、捜査に影響あるなしは。裁判官には判断できるんですか。文書提出命令を申し立てる申立人に判断できるんですか。できないでしょう。捜査官の勝手じゃないですか。

山崎政府参考人 もちろん、捜査当局の判断で決められることでございます。

木島委員 だから、この今回提出されている民事訴訟法の文書提出命令の場面というのは、捜査当局が拒絶したときにあえて裁判所が文書提出命令を出せるかどうか、そういう法律なんですよ。捜査当局がこれは出しても構わぬなんというのは文書提出命令の世界じゃないんですよ。そんなもの、出してくださいと文書送付嘱託をして、結構ですよと出せばいいだけの話。そういう法律なんですよ、この法律は。だから、そんなごまかし答弁は通用しないですよ。そうでしょう、そういう場面でしょう。

 では、さらに聞きましょう。

 捜査当局が出せないと主張するけれども、民事訴訟で、真実発見のために、正しい民事裁判のために、もっと突っ込めば、原告でいえば損害賠償が正当に犯罪被害者にとって回復できるように、あるいは会社事件で、株主訴訟なんかで会社の言い分が正しく通るように、また株主の言い分が正しく通るように、どうしても刑事記録が必要な場合がある。当然その中には、会社帳簿なんか基本的に必要でしょう。しかし、捜査当局が捜査の必要上出せないと言ったときに、いや、そうじゃない、捜査当局はそういう判断をするけれども、さらに高次の公益的な判断をして、捜査の必要性よりも、これは民事の実体真実解明の方が優先すると司法当局、裁判所が判断して文書提出命令を出す、出せるかどうかがこの民事訴訟法の根幹問題でしょう。ところが、そういう判断権を与えないわけですよ、この四号ホは。だからおかしいと私言っているんですよね。

 法務大臣、どうですか。そういう場面なんです。おかしくないですか。裁判官に判断させたらいいんじゃないですか。捜査当局が、捜査の理由でこれは出したくない、出せないと考えている、しかし実体的真実発見のためにはどうしても民事裁判にその記録が必要だ、そのぎりぎりの局面での法律なんですよ、これは。裁判官に何で判断させないで、窓口ではねちゃうんですか。何でそんな法律を提出してきたんですか。答えてください。

森山国務大臣 刑事記録について、裁判所のインカメラ手続によって提出義務の有無を判断させる仕組みを採用する場合には、除外文書に該当するかどうかは事件ごとの個別の判断によらざるを得なくなるわけですが、監督官庁が民事裁判所に対し、捜査の秘密などとの関係上、詳細な事情を述べることができないときには、民事裁判所は適正な判断をすることができないことになります。また、民事裁判所は、文書提出命令の申し立てがされた文書のみをインカメラ手続で閲読しても、開示による弊害の有無を的確に判断することは困難であると考えられます。

 このように、民事裁判所は、制度上、刑事記録の提出による弊害の有無を刑事裁判所や検察官と同等に的確に判断できるような立場にはないということを申し上げたところでございます。

木島委員 それも違うのですよ。インカメラのお話が今答弁上出てきましたが、インカメラと関係ないのですよ、この刑事記録は。インカメラの手続に入らないのですよ。インカメラで裁判官がのぞくのは、出すべきかどうかを判断するためなんですが、その手続に入る手前のところで切られちゃうのですよ、刑事記録というのは。そういう仕組みなんですよ。はなから、刑事関係記録を、民事裁判の当事者が裁判所に文書提出命令を申し立てて、その刑事記録を保管している検察、警察にそれはだめですと言われたら、もうインカメラの手続に入れないのですよ。判断権を失うのですよ、裁判所は。それがこのホなんですよ。だから、今の答弁じゃ納得できないですね。

 では、重ねて聞きます。法務省に聞きますが、これまで我が国の民事訴訟で、刑事記録の保管者が出さない、出せないと主張したけれども、裁判官が民事裁判の判断にはどうしても出すことが必要だということで文書提出命令を出した、そういう判例はありますか。

山崎政府参考人 そのような決定が何例かございます。中身を御説明いたしますか、それだけでよろしゅうございますか。(木島委員「有名なものを」と呼ぶ)有名なのは、東京高裁六十二年七月十七日の決定というのが一般的に出ておりますけれども、これは、不起訴記録につきまして、現在の民事訴訟法でいいますと二百二十条の三号のいわゆる法律関係文書に該当するということで、提出を命じたという例がございます。

木島委員 非常に大事な、立派な決定を我が国の裁判所はもう既に出しているのです。今、民事局長からも答弁がありましたが、昭和六十二年七月十七日東京高裁第四民事部の決定であります。第一審は静岡地裁で、昭和六十二年一月十九日の決定であります。いずれも、文書の保管者である警察が提出を拒絶したものに対して、出すべきだという判断が下った事件であります。

 どういう事件かといいますと、警察の違法な捜査を理由とする国家賠償請求民事事件において、不起訴処分となった被疑事件の参考人調書に対する文書提出命令の申し立てが認容された、大変画期的な事件でございます。いろいろと判決理由は一審、高裁ありますが、非常に大事な判例でありますから、一審判決の文書をちょっと読んでみます。

 「次に、相手方は、」これは文書の保管者、警察、静岡県側でありますが、「刑事訴訟法上の守秘義務を根拠に、本件供述調書の提出義務はない旨主張する。」るるいろいろ書いてありまして、「原告にかかる業務上横領被疑事件については、」この捜査記録なんでしょうね、「既に捜査の密行性・秘密保持の必要性は、実質的に失われており、かかる状況のもとで、証拠調べのため本件供述調書を当裁判所」民事裁判所「に提出することは、それが右被疑事件の送致の際にも検察庁に」送致されていない、「静岡県警察が自ら保管してきたものであることを考慮しても、なお刑事訴訟法第四七条但書にいう「公益上の必要その他の事由があつて、相当と認められる場合」に該当するものというべきである。仮に刑事事件記録を公にするか否かの判断が、相手方」静岡県側「主張の如く、刑事手続の公正な運用という観点から、第一次的には、当該記録の保管者の裁量に委ねられるとしても、それは、適正迅速な民事裁判の実現等それ以外の公益上の必要にも十分配慮した、合理的なものでなければならず、また、文書提出命令の申立の採否にあたり、民事裁判所が守秘義務の範囲を具体的に画することを否定するものでないことも、多言を要しないところである。」

 要するに、この刑事訴訟上の記録は警察が握っていたのですね。その刑事事件というのは、静岡県警が地検に送検していないのですよ。何で送検しないか、もう明らかでしょう。警察の違法な捜査がいろいろ問題になった事件だから送検しない。しかも、これの裁判記録を読みますと、もう問題の事件は時効が来ているのじゃないですか。だから、そんな供述調書を民事裁判に出しても、全然刑事事件の捜査に影響ない、そういう事件。

 それにもかかわらず、この民事国家賠償、警察官の違法な捜査を理由とする国家賠償請求事件において、その大事な参考人調書を警察は出すのを拒絶したのですよ。恐らく、この文書を出したら、捜査が違法な捜査だったというのが民事裁判で明るみに出されて、警察側、静岡県側が敗訴しちゃうから、隠したのでしょうね。そういう局面の事件ですよ。

 それで、裁判官が、捜査の必要性、刑事手続の公正な運用、そういう観点も十分に配慮の上で、しかし、本件は民事の裁判の実体的真実のために警察は出すべきであるという判断を下した。確定しているのですよ。これが司法判断というものですよ。

 ところが、今回の法案は、もうはなから、先ほど答弁がありましたね、不起訴記録も入るのだ、不送致記録も入るのだ、警察が握っている書類も入るのだというのですから、これは二百二十条四号ホに当たりますから、文書提出命令の申し立てすらできないのです。任意に出してくれればいいですよ。しかし、そんな局面じゃないですよ。出したがらないものを、請求すらできないのですよ。おかしいでしょう。こんな立派な判決がもう出ないのですよ、この法律が通っちゃうと。――もう民事局長はいい。法務大臣、おかしいと思いませんか。

山崎政府参考人 恐縮でございますが、ちょっと前提として、この法律のつくり方をちょっと御説明申し上げます。(木島委員「いや、そんな前提はいいです。恐らく任意に出すからいいだろうなんということを言うから。そうじゃないです」と呼ぶ)いや、違います。この一号から三号は影響を受けないということを……(発言する者あり)

奥谷委員長代理 静粛にしてください。(発言する者あり)静粛にしてください。

 山崎民事局長。

山崎政府参考人 大臣の御答弁を求めているということはわかります。ただ、この法律のつくり方の建前だけは御説明をさせていただきたいということでございます。それを申し上げるだけでございます。

 要するに、今度の法律で、二百二十条四号に新しい一般義務の規定を置きました。これは間違いございませんが、民事訴訟法の平成八年の審議のときにもきちっと申し上げておりますけれども、従来の一号から三号、この解釈は一切変わらないということを申し上げているわけでございまして、この法案でも同じように考えております。

 ですから、そういうことで、個々の裁判の判断で、一号から三号に当たるということで提出を命ずることができないということを言っているわけではございません。従来どおりの解釈であることだけは御理解いただきたいということでございます。

木島委員 全然、説明にもなっていませんよ。この法律は、刑事事件について、文書の保管者が提出を拒んだら、提出命令を申し立てしたって、それは裁判所の判断の対象にならぬということでしょう。

 では、次に移りましょうか。

 前回の民事訴訟法の改正審議をした国会では、一九九六年六月七日、衆議院法務委員会、当委員会で附帯決議をしました。同月十八日、参議院法務委員会でも附帯決議をいたしました。その中心点は二つ。一つ、公務員の職務上の秘密に関する文書に関しては、司法権を尊重する立場から再検討するべきである。二つ、不合理な官民格差を生じない方向で再検討すべきだという附帯決議であります。全会一致でこれが採択され、当時の法務大臣もその趣旨に沿って行動すると決意を述べられておりますが、その附帯決議の中心点の一つである、司法権を尊重する立場から、公文書の提出命令の問題については検討を加える、再検討するという附帯決議ですよ。

 それをもっと詰めれば、先ほど私が示しましたような判決ですね。昭和六十二年七月十七日の東京高裁決定、また第一審の静岡地裁決定。警察は出さないというかたくなな態度をとったけれども出させた、そういう裁判官の判例がある、司法権の判断がある。そういう公文書の提出命令問題については、文書保管者である国や地方自治体が出すのを嫌がるけれども、民事裁判の適正のために、当事者が提出命令を求めてきたら、裁判官がより高次な立場に立って、冷静に判断する。司法権が判断するということなんです。その司法権の判断を尊重する立場から、文書提出命令に関して再検討しなさいという附帯決議ですよ。

 なぜこんな附帯決議が出たか、もう明らかですよ。前の民事訴訟法の大改正法案は、公文書の提出に関しては、文書保管者である公の判断に任せるような、そんな条文になっていたから、全会一致で、そんなものはだめだということでこういう附帯決議が出たのですよ。どうですか。

 そうすると、今度の法案を読みますと、刑事事件に関する記録では、もうはなから司法権が尊重されないことになるのじゃないですか。この附帯決議を尊重するとした法務大臣の決意に反する法案だと私は思いますが、法務大臣、どうですか。

    〔奥谷委員長代理退席、委員長着席〕

森山国務大臣 先ほどの説明にもございましたように、従来の提出義務の枠組みはそのままで、さらに公文書については拡大したものというふうに理解しております。

木島委員 だから、大臣、それは根本的な間違いなんですよ。従来の枠組みがこれで変更されるのですよ、この法案で。

 というのは、刑事記録の提出問題なんですよ。従来では、裁判官の判断に任されていました、刑事事件の記録を出すべきか否か。だから、高裁のような立派な判決が出てくるわけですよ。今度、この法案が通りますと、こういう判断ができなくなるのですよ。それがホですよ。そういう問題なんですよ。だから、ホは削るべきだ。何でこんな改正法案が出てきたのか。

 大臣、だから前提が違うのですよ。従来と同じだというのなら、私は、二百二十条の四号ホは削除してもらいたい。削除しますか。従来と同じだというのなら、削除してください。

山崎政府参考人 先ほど私が御説明したあれですけれども、四号は基本的に除外事由を設けながら拡充する。しかし、一号から三号までの解釈には影響を与えないということでございまして、これは私文書でもそういうふうに動いているわけでございます。

 ですから、個別の判断として、例えば双方間の法律関係文書に当たるとか、そういう判断ができるものについては裁判所が命令を出してもいいということになるわけで、個々の判断によるわけでございまして、一般的に制度ではじかれているというわけではございません。

木島委員 一般論の話なんか私はしていないのですよ。刑事記録に関する文書提出命令問題に絞って、私はずうっと最初から質問しているじゃないですか。出せないでしょう。四号ホがあるから、はなからはねられるのでしょう、刑事記録については。それだったら、この四号ホを削ったらいいじゃないですか。

山崎政府参考人 いえ、四号のホができたからといって、それは一般的に提出の除外にはなっておりますけれども、法律関係文書あるいは当事者が引用した文書だということになれば、これは一号と三号でございますけれども、その事由に個別に当たるわけでございますので、それは提出を命ずることができるという考えです。

木島委員 だから、ごまかしなのですよ。私の質問は、一、二、三に当たらないで、そういう場面を質問しているのですよ。当然の前提ですよ。そんなごまかし答弁はだめですよ。一、二、三に当たらないで、四号だけが問題になった局面でどうなるかという質問ですよ。当然ですよ。当たり前ですよ。答えられないでしょう。もし従前と同じだというのなら、この四号ホを削るべきですよ。

山崎政府参考人 私が趣旨をちょっと取り違えてお答えしたかもしれませんけれども、四号の関係では、除外文書でございますから裁判所は提出を命ずることはできない、法律関係とかそういうものに当たらない限りはできないということでございます。

木島委員 だから、従前はそうじゃなかったわけでしょう。従前の民事訴訟法、ちょっと組み方は違うのでしょうけれども、こういう判決を出せるような状況はあったわけですよ。従前、組み方が違いますから、刑事訴訟法の四十七条ただし書きの「公益上の必要その他の事由」に当たるのかどうなのかというのにかなり焦点を絞って判決が書かれておりますが。

 改めて、では、一号、二号、三号に当たらない場合で、どうしてもその民事裁判の真実解明のために刑事記録が必要だとなった場合で、刑事記録の保管者が提出を拒絶したときには、もう文書提出命令申請は直ちに却下される、裁判所は審査の対象にしない、そういう法案であることは間違いないでしょう。確認だけしておきます。

山崎政府参考人 そのとおりでございます。

木島委員 だから、おかしいじゃないですかと私は言ったのですよ。特に、押収文書なんというのは第三者所有物件ですからね。それをたまたま検察が押収してしまった場合、それで、その文書の所有者が、いや民事裁判に出してやってくれと言っても、検察が出さないと言えば出せなくなってしまう。それもおかしい。前のこんな立派な判例も、今回はもう全くつくり出すことができない。司法権の判断を仰ぐことがはなからできない。附帯決議にも反するのじゃないですか。これはもう削除以外にないのじゃないでしょうか。大臣、答弁を求めます。

山崎政府参考人 先ほど、押収物に関しましては、やはり捜査の秘密というのですか、今後の捜査に影響があるという状況ではまだ一般的に外に出せないというのはそのとおりでございまして、もしそういう状況がなければ、一たんその提出者に戻す手続がございますので、それで提出をするということで可能であるわけでございます。ですから、全く出ないということではないということでございます。

 それから刑事の、例えば裁判所の判断で、これを出しても公判に影響がないというものは当然提出されることになりますし、では、裁判所にまだ行っていないという、いわゆる不提出の記録あるいは不起訴記録でございますが、この中でも、代替性のないもの、例えば手に入らないような証拠の関係がございます。こういうものについては、今運用でかなりその提出を広く認めて御利用いただけるようにという形でやっておりますし、代替性のあるというか、その御本人がおられるなら証人として呼んで聞けばいいわけでございますので、そういうことで、実質的には我々としては大きな支障は生じていないはずだ、具体的にあるならば、どういう事例かということをぜひいろいろお聞かせいただきたいということでございます。

木島委員 だから、最大の事例として、私は、静岡地裁の判決、東京高裁の判決の事例を出したじゃないですか。

 こんな例はこれからも出てくるのですよ。警察の違法な捜査を理由とする国家賠償請求事件で、もう不起訴処分になって、そんな刑事事件は時効でもう終わりだ、捜査の必要性は全くなくなってしまっている、文書提出を拒絶する理由は全く客観的になくなってしまっている、それでも警察は出してこないのですよ。自分に不利益になるからでしょう。恥さらしになるからでしょう。そんなもの幾らでもあり得るのです、これから。

 そういう問題こそ国家賠償請求事件として損害賠償の民事裁判になるのですよ。原告が検察を相手にしたり国を相手にして、法務大臣、被告になるかもしれません。出したがらないですよ、いろいろ理屈を言うけれども。そういうときにこそこの民事訴訟法が動き出すのですよね。ところが、刑事事件はもうだめだ、そういうことになったらおかしいじゃないですか。そういう検察庁の態度が正しいかどうかをこそ、当該民事裁判の裁判官に判断させるべきじゃないか。

 法務大臣、非常に首をこう縦に振っておりますので、そう思いませんか。そういう局面の事件だからこそ、その民事裁判の裁判官に、警察、検察は文書を出すべきか否か判断させるべきじゃないでしょうか。法務大臣、どうでしょうか。

森山国務大臣 木島先生の大変豊富な御経験と高い見識のお説を拝聴いたしまして、うなずいておりましたのですが、この法案に関する限りは、先ほど来いろいろ御説明申し上げましたようなことで、この条項はぜひ必要であろうというふうに思っております。

木島委員 もう情報公開法との関係は時間がありませんから質問をやめます。

 実際、これまでの論議の中で、法務省当局は、こういう法体系にしても民事訴訟の現場では法務当局は任意に提出しているのだと。交通事件の実況見分調書など、文書送付嘱託がなされればそれに応じて大体出しているから差し支えないのだ、九九%こたえるから民事裁判の判断に支障はないというようなことを盛んに言います。

 しかし、これは事実に反するということを私は強調しておきたいと思います。

 その一つの例として、日弁連が調査をいたしました、文書提出命令を求めたが拒絶された百八件の例が報告されております。捜査、公判中の事件が二十件、不起訴記録が五十五件、確定記録が二十九件、労働災害の事件が四件。いずれも、死亡など非常に重大な事件の結果の民事損害賠償請求事件が中心です。労災事件にしろ、刑事事件にしろ、いずれも、その証拠がなければ死亡した遺族側の損害賠償請求が認められないぎりぎりの局面での文書提出命令でありますが、百八件の例が拒絶をされた。不当な拒絶のために真相が明らかにならず敗訴した、非常に深刻な実態が噴き出しているのですよ。だから私は、刑事事件をこんなはなから提出を拒絶するような法体系は間違っておる、だれが考えたって間違っておると思うのです。

 では、ほかにもたくさん質問したいことがあったのですが、時間ですから終わりますが、見直しを直ちにやるべきだと思うのですが、もう一回だけ法務大臣の答弁を求めます。

森山国務大臣 先生の御意見は非常に、お立場から信念を持っての御意見であるというふうに敬意を表しますが、この法案については、提出した内容におきまして御理解いただければありがたいと思います。

木島委員 一たん出したからもう動かせないというのはおかしいと思うのですよ。改革というのは、あなたの内閣が掲げているじゃないですか。みずからの出した法案が正しくないとわかったら、直ちに改革して改めるというのが法務大臣のとるべき立場ではないかということを申し添えて、私は質問を終わります。

保利委員長 次に、植田至紀君。

植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀です。

 先週、またきょうも、もうそれぞれ弁護士の先生方からかなり中身の濃い議論がされておりますので、今さら私のような者が深く突っ込んでできるような中身を持ち得ていないことを恥ずかしく思いながら、おさらいの意味も込めて、お伺いしたい点を幾つかお伺いしていきたいと思います。

 まず、法務大臣に基本的なところを、もうこれは何度も質疑等でもあるかと思いますので、かぶる部分はあるとは承知しておるのですが、改めてお伺いしておきたい点を幾つかお伺いいたします。

 少なくとも、今回、文書提出命令の制度を拡充するために本改正案が提出されたとするのであれば、当然ながら、従来より有効にこれが活用できる、そういう制度にしようという意思に基づいたものだというふうにまず理解してよろしいでしょうか。

森山国務大臣 植田先生のおっしゃるとおりの趣旨でございます。

植田委員 となりますと、例えば、これから幾つか情報公開制度とのかかわりについて後でお伺いしようと思っておるのですが、情報公開制度の場合は、言ってみれば単なる趣味であっても、行政チェックでも研究でも、いろいろ、それは目的を問わずだれでも開示を求めることができるわけです。もちろんその点についても除外規定は問題があると思いますが、それはここで論ずる課題ではないだろうと思いますが、民事訴訟に供するために公文書の開示を要求するということと、それはもう全然意味が違うだろうという点と、ならば今回の改正案というものは、適正な裁判のために、少なくとも情報公開制度では開示を求められない情報というものが裁判所の要求によって出てくるものなんだなということ、この二点、そういう初歩的な理解をしておいていいのか。その辺についても御教示いただければと思いますので、法務大臣、お願いいたします。

森山国務大臣 おっしゃるとおりでございます。

植田委員 そこで、これもちょっと幾つか、この情報公開法の五条の一号から六号について、もう何度も山崎参考人が御答弁されているところですが、ちょっと細切れになるのですが、もう一度確認をしておきたいのです。

 まず、個人情報、法人情報については、これは情報公開法では五条の一号と二号で非公開となっているわけです。ただ、ここでも当然、情報公開法で非公開になった文書であったとしても、少なくとも今回の改正案を見る限り、民訴法においては、「公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障」のおそれがなければ、それは出されるのだなという理解でいいのでしょうか。その点についてはいかがでしょうか。

山崎政府参考人 ただいま御指摘のとおり、情報公開法では、個人情報あるいは法人情報に当たればそれだけで不開示事由という形でございますが、こちらの民事訴訟法では、そういう情報であっても、公共の利益を害し、あるいは公務の遂行に著しい支障を与えるものでなければ提出を拒んではならないという形になりますので、こちらの方が広いという形になるわけでございます。

植田委員 当然ながら、民事訴訟法での文書提出義務というものは、文書提出命令によって実現される利益と、提出を認めないで保護しようとする利益の内容、制限の程度との実質的な比較考量だろうというふうに思います。とするならば、そうしたことにかかわる具体的な事例も念頭に置きながらその辺のところを議論されたのだろうと推察するわけですが、その辺の検討というのは、法制審議会ではどういう議論があったのか。どういう検討がなされたのでしょうか。

山崎政府参考人 この点につきましては、文書提出命令制度を検討するために、法制審議会の部会の下に小委員会というのがございますけれども、そこを中心に検討を進めました。これとともに、別途の研究会をつくって、並行して検討してまいりました。

 その中で、各種団体、あるいは経済団体、行政法学者、労働団体から推薦を受けた有識者の方々、あるいはマスコミ関係の方々、消費者団体の方々等、そういう方から参加をしていただき、あるいはヒアリングをさせていただいて意見を聞いてまいりまして、そのような中で、それから情報公開法の制定も並行して行われておりましたので、それとの対比で検討をしてきたということでございます。

植田委員 これも、先週の審議、またきょうの佐々木先生のお話でも出ておったように思いますが、金曜日でしたか、民事局長が、例の公共の利益または公務の遂行の著しい支障、その辺の定義づけをめぐって、私の聞いた範囲では、「公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれ」について、公共の利益を害するおそれのある場合の一類型と理解しているので、このおそれのある内容をより明確にするために特に明文で規定したと。

 大きな範囲は公共の利益を害するおそれということでおっしゃっておられましたし、きょうもそういう趣旨でお話しされていらっしゃったと思うわけですが、私は、やりとりを聞いていて、実に初歩的なところでよくわからないのですが、例えば公務の遂行に著しい支障があるかどうかという類型があり、またほかにも幾つかの類型があって、それらの類型を総称して公共の利益というふうに理解すればいいのでしょうか。

 より大きい範囲が公共の利益とあって、民事局長の御説明では、「公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれ」というのは、その公共の利益を害するおそれある場合の一類型とおっしゃっていますから、幾つもの類型があって、それを総称して公共の利益と呼んでおるというふうに理解したらいいのでしょうか。その辺はどうなんでしょうか。

山崎政府参考人 「公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれ」というのが「公共の利益を害し」の場合の典型的な例でございますが、かなりのウエートを占めるということでございますけれども、それ以外にも、公務に著しい支障を生ずるわけではないが公共の利益を害するという範疇のものも当然あるということでございまして、幾つか類型ということではございませんけれども、差し引きした分野にはそういう分野があるということでございます。

植田委員 そうなれば、これは先日の審議でもそういう話があったかと思うのですが、これもちょっと教えておいてほしいのですが、要するに、公務の遂行に著しい支障があるのだけれども公共の利益に資するなんというケースは、そもそもないということでいいのでしょうか。

山崎政府参考人 ただいまおっしゃるとおりでございまして、「公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがある」というのは典型で言っているわけでございますが、これに当たるものは公共の利益を害するというところに当たることになるわけでございます。

植田委員 ちなみに、私も何ぼ聞いてもその辺がよくわからないのですけれども、何か話を伺っていると、公共の利益を害するというもののほとんどのウエートが公務の遂行に著しい支障が生じた場合ということで、かなりウエートを占めるとおっしゃっていましたですね。

 そうなると、幾つかの類型があったとして、どんな類型があるのかわかりませんが、公務の遂行に著しい支障を生ずるような公共の利益を害する一類型があります。一方で、別の形で公共の利益を害するような別の類型があったとする。そのそれぞれの類型同士が対立し合うような場面というのはないのでしょうか。

山崎政府参考人 先ほど来私が申し上げている関係では、両者が対立する場面、バッティングする場面ということはないというふうに理解をしております。

植田委員 あと、続いてお伺いしたいのですが、情報公開法との関係で、情報公開法の五条の六号の規定で非開示とされておる文書についても、これも公共の利益を害さないと判断される限りにおいては提出されることがあるわけですね。その点についても一応逐一確認させていただきたいのですが、まず六号の部分についても確認させてください。

山崎政府参考人 六号でございますけれども、これは、条文をちょっと省略いたしますが、「公にすることにより、次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」、こういう除外事由が書かれております。公務の遂行に著しい支障があるものということで、こちらは書いておるわけでございます。

 その形式的な差は、「著しい」があるかどうかという点は違いがございます。ですから、形式上は、こちらの方は著しくなければならないわけですから、こちらの方がある意味では重いといえば重いのですけれども、ただ、現実の解釈としては、いわゆる情報公開法の五条六号でございますか、意味上はやはり著しいというふうに理解されておりますので、範囲はほぼ同じではないかというふうに考えております。

植田委員 この六号にイロハニホとありますが、要するに、これは民訴法の今回の改正でも情報公開法と同じ解釈なんか出てこないよということですか。出る場合はないのですか、同様の理解。

 私は、要するに、この六号のものが情報公開法では出ないけれども、出る場合もあるのでしょうということだけ聞いているのです。そんな難しいこと私は聞きませんので。

山崎政府参考人 個々の場合はちょっとわかりませんけれども、この事由に当たるものについては提出されないということになろうかと思います。

植田委員 では、今度は五号なんですけれども、この五号では、「公にすることにより、率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ、不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれ又は特定の者に不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼすおそれがあるもの」、これも情報公開法で非公開になっているわけですけれども、民訴法の場合は、民訴法における文書提出命令制度というのは、当然証拠として必要となる際の制度ですから、僕のシンプルな理解では、情報公開法の五条五号で書かれているような事態そのものがそもそも想定されないのなら、ここで言われているものは、場合によっては提出、出される場合もあるのかなと思うのですが、その点はいかがなんでしょうか。

山崎政府参考人 ただいまの五号の点でございますけれども、これは民事訴訟法におきましては二百二十条の四号のロとして、こういう五号に書かれているような点を勘案して、それが公務の遂行に著しい支障を来すおそれがあるかどうかという点で判断をされるということですから、その書き方は違いますけれども、実質はほぼ同じであるというふうに理解をしております。

植田委員 事前のレクを聞いていても、実質的には、要するに五条の五号、六号で書いているのはほとんど出てこないよという話ですね、民事訴訟法のこの手続においても。

 聞いているのはそんな難しい話じゃないのです。情報公開法の五条の五号、六号では、これは全部非開示となっているのですけれども、場合によって、それはレアケースかもしれへんけれども、ほぼ同様の理解、ほぼとおっしゃっておられましたから、レアケースで同様にならない、そういうケースもすき間で出てくるのと違いますか、そういう事例が全く想定されないことはないでしょうということを伺っておるわけです。

 ほぼ同様の理解とおっしゃっているから、ほとんど丸く重なり合うのじゃなくて、場合によってはこういうときは出るのだよという場合もある。それは個々のケースでしょうから、今その実例を説明することは無理だと思うのですが、出る場合もあるよということは、そういう理解をしておいていいのかどうかということだけ。余りしつこくやって悪い答弁とったら、後でまずいですが。

山崎政府参考人 私がほぼと申し上げたのは、やはり民事訴訟におきましては、裁判の必要性との関係とか、個々の事情によるわけでございますので、そういう判断で、民事訴訟の場面では提出される場合もあり得るということを前提にしております。

植田委員 私が素朴に思ったその疑問、要するに出る場合もあるということですね。情報公開法の五条の五号、六号では非開示になっておるが、その場面において出る場合もあるという御答弁だというふうに理解いたします。

 次に、時間がどんどん過ぎていきますので、特に公文書提出命令にかかわって、資料保全の課題ということと、また公共の利益、行政への支障、個人のプライバシーの実態ということで、一つの実例として、HIVの訴訟の勉強をさせていただく中で、幾つか気になった点ということについてお話を伺いたいのです。

 九六年の二月に公開された厚生省のファイルと、実際、安部、松村両氏を被疑者とする刑事事件の際に検察によって押収されたファイルとの相違というのが指摘されている。そのことについての感想なりなんなりを聞くわけじゃない。まずそういうことが指摘されているという事実がある。

 そして、九九年の七月に、実際の当事者でもある川田龍平さんと郡司さん、いわゆる郡司ファイルの持ち主と言われる郡司さんとのNHKの対談の中で、郡司さんが抜き取りを、ある一部分の資料の、メモの一部を抜き取ったことを認めておられるということです。そして、そのときに、これは後でビデオを回せばはっきりするわけですけれども、意味がないから抜き取られたというふうに回答をされている。

 もしこのとき押収されてへんかったら、それ自体なくなっていたかもしれへんわけですけれども、たまさか、川田さんのお部屋からお借りしてきたのですが、川田龍平さんはこういう写真を実際撮られて、よく読んでみると、ここには、例えばトラベノール、いわゆる汚染の非加熱製剤の回収を指示したようなそういう記述があるということで、そのメモが欠落していると。これはあくまで事例ですから、それについて、では、郡司ファイルが実際どうだったのか、改ざんされたのか、抜き取られたのかということの事実認識を問うても、それはしんどい話でしょうから。

 そこで、お伺いしたいのですけれども、この郡司ファイルというものは業務に関係する内容であるということは、裁判所、検察両方とも認めている話ですけれども、例えば、大学ノートにこんな個人メモというふうに書いておけば、中身に業務内容を記していても公開を免れるようなことがあったらあかんと思いますし、また、どさくさに紛れて改ざんされるようなことがあってもいかぬと思いますが、とりあえず、その点についてはそういうことで、私の理解としてはそういうことはあってはあかんよという理解でいいのですね。その点について御答弁お願いします。

山崎政府参考人 一般論として申し上げれば、もともと公文書で扱っていたものを、何かの状況に応じて個人メモと書き加えるということは、それはあるべきではないということだろうと思います。

 この法案との関係で申し上げれば、仮に個人のメモ、会議の例えばメモ等がございます、それであっても、自分の備忘録だけで済むというものであればこれは個人のものかもしれませんけれども、最終的にそれは組織で共用するということであれば、どんなに手書きでやって、大学ノートに書かれようと、それからその表紙に個人メモだというふうに書かれようと、これはもう組織で使うものだということで、これは文書提出命令の対象になるというふうに理解をしております。

植田委員 そこだけもう一回、具体的に確認しておきます。

 例えば、所管の許認可の案件に関する会議とか、業務に供するために個人的に、自発的に記録したようなもの。一つの部署といっても、例えば十人がいて、例えば植田という担当者が一つの仕事を担当しているから、一々隣の人に知らせる必要がないけれども、いずれどこかに配属がえになれば引き継ぎもせぬといかぬなということで、いろいろと個人的に、自発的に記録を残しておく場合があろうかと思います。最終的にはそれは実際に引き継ぎで使わないかもしれませんけれども、でも、そういう記録があったとして、例えばそういう記録媒体、ノートであるとかテープ、またパソコン等で筆記した電子的なファイル等々も当然自己使用文書からは除外されるという理解でいいんでしょうか。

山崎政府参考人 ただいま委員御指摘の事例であれば、個人といいながら、引き継ぎをしてその状況はやはり後任者にもわかっておいてほしいということであれば、これはやはり組織で使うものだという理解だろうと思います。これは、文書の場合ももちろんございますし、今委員御指摘のとおり、ビデオテープ、録音テープあるいはパソコンの中に入っているとか、いろいろな態様はあろうかと思いますが、純粋に文書と言われるものは文書提出命令ということになりますし、いわゆる準文書、文書に極めて近い形の形態のもの、文書ではないんだけれどもそういうものについては準文書として文書提出命令をかけることができる、こういう法制になっております。

植田委員 そこの自己使用文書から除外される中には、たまさか自分の職場のフロッピーで使ったものもあったかもしれないけれども、家に持って帰ったりすることもあるので、私物のノートであるとかパソコンに記載されたようなものであっても、業務にかかわる内容であったら、当然それは除外、自己使用文書でなくて業務に資する文書だというふうに理解していいんでしょうかということ。

 また、フロッピーというのはいろいろ入っています。業務にかかわる文書もありますし、たまに、家族旅行に行くためにちょっと旅行計画を打っていたというようなものはもう完全な私文書で、いろいろな文書が入っている。そこから少なくとも関係記録を選択するということも当然可能なのかということについても確認しておきたいと思います。

山崎政府参考人 ただいま御指摘のように、公務で使用するものであれば通常は職場のフロッピーに入っているはずでございますが、何らかの形で落ちてしまったという場合もあろうかと思います。それで個人のファイルにあった。これもやはり公務のものでございますので、自己使用文書とはその部分は言えない。ただ、ほかにいろいろなデータが入っているという場合、それはやはり個人の秘密の問題もございますので、そこは除いて、当該部分だけを提出する、こういう形でございます。

 ただ、電子ファイルの場合、ちょっと申し上げておきたいんですが、通常フロッピーに落として再生が裁判所で可能なもの、これは準文書として扱われて、文書提出命令と同じようにされるんですけれども、そうじゃない、大型のコンピューターの中に入っているものとか、こういうものはちょっとできませんので、それは別に検証とか鑑定の対象になる、別のやり方をさせていただく、こういうことでございます。

植田委員 例えばファイルでも、一ページ目だけ開いてみたら、法務省忘年会のお知らせ、赤坂どこそこ何時にてとか書いてあって、二枚目から何かけったいなことが出てくるとかそういうこともあるでしょうから、念入りに調査が必要だとは思います。

 もう一点これにかかわって、先ほどのHIVのかかわりで、かつての菅厚生大臣のときの資料の公開、これは情報公開法以前ですから公開基準もなかったわけで、メモを抜いたからというても、実際それは事実であったにしても、法的義務、責任というものはないのかもしれないんですけれども、ただ、情報公開法の施行以後も、HIV訴訟の関係者が関係資料を要求したら、例えば審議会の参加者の名前であるとか内容がほとんど墨塗りで出てきたということも、先日、実際見せていただきましたし、お伺いいたしました。

 これやったら、役所が判断したらおのれに不利な資料は一切出さぬのか、やはりそういうふうに当事者は思うだろうと思うんです。少なくとも、理屈を言えば、公共性とか業務への支障とかプライバシーとかいうもので判断されたかと思うんですけれども、今回の民事訴訟での公文書提出というものはやはり情報公開のそのレベルとはちょっと違ってくるだろうということを改めて思うんですけれども、その点もう一度お願いします。

山崎政府参考人 情報公開法で個人情報にわたる点、これは先ほどちょっと申し上げましたけれども、除外されるということから、あるいは、その名前が出ることによって自由な討議を妨げられるというようなおそれがあるような場合、先ほど五号で申し上げましたけれども、こういうことで多分その墨塗り等がされるんだろうというふうに理解をしております。

 こちらの法律の方の関係でございますけれども、やはりその氏名が出ることによっていろいろな圧力がかかるということもございます。そういう点は、それが出てしまうと今後の自由な討議を妨げるということであれば、やはり公務の著しい支障があるというふうに理解されますので、その辺のところの考え方はそれほど違わないんではないかというふうに理解しております。

植田委員 民訴の場合、目的を超えて、相手側に害をなすためにそんな利用をするのであれば、当然、原告側だって罰せられることになるでしょうから、少なくとも入手した側にも責任を求められますから、そういう意味で、だれでも請求できる情報公開制度とはやはり違うんだろうなというふうに私は思っております。

 もう一点だけ、例えば、これは旧厚生省のファイル隠しという言い方をするとまずいんでしょうが、答えられないんでしょうが、少なくとも、例えばさっき言ったように、改ざんしたり抜き取ったりというような行為というものが、これは実際になされたとするんであれば、個人の責任回避であるとか組織防衛とかということにしかならないわけですから、そういう意味では、そういうことがなされるというのは公共の利益、行政の支障には当たらないわけですので、そうした行為というものが頻繁に起こるような事態はあってはならないというふうに考えておりますが、その点はいかがですか。

山崎政府参考人 具体的な事例についてお答えするのは、所管でもございますので、ちょっと差し控えさせていただきたいと思いますが、一般論として言えば、委員御指摘のとおり、証拠隠し、改ざん等、これはあってはならないというのは当然のことでございます。

植田委員 それは個別の事例について答えることは難しいんでしょうが、一般論としてはそのとおりですから、それについては個々の事実が明らかになれば、その事実についての理解についてはまた伺う機会があろうかと思います。

 もう一点、いわゆる刑事記録の開示にかかわって、これもちょっと実例を出しながら幾つかお伺いしたいわけです。というのは、犯罪被害者においてもその真実を知る機会が失われるおそれがあるということで、特に少年事件においては確定証拠以外にやはり犯行の背景を示す資料が多いわけですけれども、これも十分被害者の目に届くようなそういう仕組みがまだまだ不十分じゃないのかなということで、一つ実例を挙げながらお伺いしたいわけです。

 九八年、茨城県の牛久市で、当時十四歳の岡崎哲君という方が、友人に、友人であったかどうかわかりませんが、殴られて亡くなった、そういう事件があった。この場合、実際、殺されてしまったわけですが、当初、警察の方はけんかによる死亡として、なおかつ、豚にしかまれに見られない心臓疾患による偶発性まで駆使して、被害者に死亡原因を帰するような調書をつくっていた。これは犯罪被害者の規定以前でありまして、お伺いいたしますと、特に御両親が独自に調書を入手されたわけです。そうすると、警察が署名もない調書をつくっておったとか、そういう事実も明らかになってきた。たまさか今回、不幸中の幸いといいますか、独自に調査をされて、そして幾つかの知り得た事実が明らかになってきたわけです。

 例えば、九八年からかなりたって二〇〇〇年、これは毎日新聞によりますと、中学三年の岡崎哲君が同級生に殴打され死亡した事件で、茨城県の龍ケ崎署が、被害者が挑発したと強調した複数の書類や岡崎君の両親が署名を拒否した供述調書をそのまま証拠として水戸家裁土浦支部の少年審判に提出しておった云々かんぬん、そういうことも明らかになってきているわけですが、仮に刑事記録にかぎをかけてしまうなら、例えばこの例のように民事訴訟を通してこうした事実が知り得なくなるんじゃないかということを私は非常に危惧するのです。

 特に、少年事件で被害者が知りたい情報というのは、意外と瑣末な目撃証言とかそういうものも含まれるわけでございます。特に今回のように、警察の捜査そのものに問題がうかがわれるような事例であるとするならば、採用された証拠以外にも重要な資料というものがあるんじゃないかということは、当然予測できることです。

 そういう意味で、公平な民事裁判を行うという意味において、刑事記録に全部かぎをかけてしまうということになると、公平な裁判を受ける権利という観点からして問題なのではないか、そう思わざるを得ないわけですが、御見解をお願いいたします。

山崎政府参考人 ただいまの点、刑事記録と少年の記録、二つ御質問かと思いますけれども、まず少年の問題に関しましては、本年の四月一日から施行されております改正少年法におきまして、被害者等が損害賠償請求のために必要であるなどの正当な理由がある場合には、少年保護事件の審判開始後の記録、その記録も社会記録と法律記録がございますけれども、法律記録の方は閲覧することができるというようなことで、今委員御指摘のような問題点にこたえるために改正法が制定されまして、施行されているということでございます。

 また、刑事記録の関係に関しましても、被害者保護の関係の法律が制定されまして、既にこれも施行されているという状況でございまして、これも委員御指摘のような事態にこたえるというような手当てがされているということでございます。

植田委員 岡崎哲君の事件というのは、その意味では、旧少年法の最大の不備の情報開示というものをある種象徴する事件であっただろうというふうに思われますが、確かに今のおっしゃることもわからないではないですよ。

 ただ、私が心配しておりますのは、改正少年法で開示が実施された現在だって、被害者の家族はやはり民事訴訟を起こすわけですね。そして、実際、私、いろいろな方にお話を伺っていますと、岡崎哲君のお父さん、お母さんが入手された資料を超えるような情報開示が改正少年法ではなされていないんじゃないかという指摘も受けるわけなんです。

 そういう意味で、本来、被害者、関係者に対して懇切丁寧な説明、また情報開示が行われるべきなのです。それにもかかわらず、十分知りたい内容が含まれておらない。もちろん、開示というのは、逆に犯人の、やった加害者側の更生と関係人のプライバシー等考慮されるべきだけれども、やはり不開示事由が拡大的に解釈されておる傾向があるんじゃないかという指摘もあるわけでございますが、その点はいかがですか。

山崎政府参考人 ただいまの少年法の関係について言えば、この改正法が施行されたのはことしの四月でございますので、その後の運用というのは、ちょっとまだいろいろデータが出ておりません。その関係で、ちょっと私も具体的なことはわかりませんけれども、まず、この法律を設けて、その運用をきちっと見守りたい。委員が御指摘されるような何かいろいろ弊害等があるのかどうかについて、まず検証してみる必要があるだろうというふうに思います。

 刑事の関係の被害者についても、まだ施行されてそれほど時間がたっているわけではございませんので、その辺も運用状況をきちっと見守りたいというところでございます。

植田委員 今のお話はよくわかりますけれども、いずれにしても、本法案、民訴法が結局施行されて、そして訴訟において、少年法の開示資料を超える資料が出されなくなる、そういう事態を私は非常に危惧しております。

 そういう意味において、今回の岡崎君の事例でございますけれども、御遺族の方が本当に一生懸命弁護士の方の協力を得ながらやって、ある意味ではたまさかそういうことになったわけです。それでも、私もメールをいただいておりますけれども、御遺族、岡崎さんの方も、加害者少年の個人情報などが開示できないことは理解せざるを得ないのでしょうが、例えば裁判所と加害者側の弁護士のやりとりを開示できないというのは全く納得できないというふうにおっしゃっています。裁判官の裁量で、自分たちの都合の悪い情報や、加害者の保護の名のもとに、当然開示されてよい情報が開示されないようなことはあってはならないことだと思いますというふうにおっしゃっておられます。

 既にこういう事例があるんだよということを十分御理解、また御認識いただきたい。結果を見てと言いますが、結果は出ているわけです。出しても墨塗りのものが出てくるとか、そういう結果が出ているわけですから、そういうことも含めたところで、十分これからも検討していく課題であるということだけは認識しておいていただきたいと思います。

 あと、時間がありませんが、幾つかお伺いしたいわけですが、例えば、あるジャーナリストの方が、これは犯罪の直接の関係者ではありませんけれども、警察の留置所内で起きた警察官による婦女暴行事件に関する刑事記録の開示を請求したところ、拒否されたものですから、裁判で争った。最終的に最高裁まで行って、開示されなかったという例があるわけです。

 これは、警察の留置所内で警察官が婦女暴行事件に関与した、もう確定刑事記録でございます。その開示を請求したのですが、出なかった。これは公務員の犯罪でございますから、もちろん公共性の高い関心事でもあります。にもかかわらず、こういう裁量判断による開示というものが必ずしも機能していないという実態があるんじゃないかと思います。

 その点どうなのかという点と、特にこの開示率については、こういう事例で開示されなかったというお話を伺いますと、特にそういう警察関係のことは本当に非開示率が高いのと違うか、ひょっとしたら、数々の不祥事を耳にしておりますと、警察の隠ぺい体質というものがやはりこういうところにうかがえるんじゃないかというふうに理解せざるを得ない面もありますので、その点ちょっとお伺いいたします。

古田政府参考人 ただいまお尋ねの件につきましては、警察官が犯人であった事件について、一般的にどの程度の開示請求があるか、必ずしも承知はしておりません。

 ただ、今委員が御指摘の件につきましては、これは、事件の内容等で、非常にいろいろな意味で被害者及び犯人のプライバシーに深くかかわる問題がたくさんあったものと承知しております。そういうことから、これは、裁量とおっしゃいましたけれども、まさに裁判所に対して不服申し立ての制度がつくられているわけで、最終的に裁判所の判断を経て、これは全部か一部かちょっと記憶しておりませんが、不開示にすることが相当だという判断がされたものでございます。

 そういうことで、結局、事件の内容によりましていろいろなケースがあるわけで、それぞれについて、刑事確定記録の場合には、まずは第一次的には保管者である検察官が判断はいたしますものの、その判断の当否については裁判所の判断を受けられることになっておりまして、そういう点で、御指摘のような場合も、十分そういう要素も考慮して裁判所において適正な判断がされるものと考えております。

植田委員 時間がありませんので、もうこれ以上そこは突っ込みません。

 あと二点だけ聞いて終わります。

 一つは、いわゆる刑事記録の一律除外にかかわってですけれども、もう再三議論されているわけですが、民事の裁判官が刑事記録を見ることに何の不都合があるのか。地方では兼職している場合もあるわけですから、この間の議論を聞いておりますと、民事の裁判官がその刑事記録をちゃんと見て判断するということに、僕は何の不都合も感じなかったわけですが、どういう不都合があるのか。端的に最後教えてほしい。

 もう一つ、二百二十条の四号の提出除外事由の立証責任というものは、これは出してほしいと言った側はどうやって立証するのだという話がありますから、そんなのはわからないわけですから、その立証責任について行政がやはり責任を持つべきなのではないかと思うわけですが、その二点お伺いして、終わります。

山崎政府参考人 まず、第一点の問題でございますけれども、刑事関係の記録については、刑事の裁判所等がそのみずからの判断で開示して差し支えないものか、それともそれは不相当なものかということを判断する建前になっておりますけれども、民事裁判の方でこれを全部行うということは、例えばその裁判の記録全部を見て判断するというような構造になるならば、それは一般的に法律家でございますから可能だということもできるかもしれませんけれども、この構造上は、その全部を見て判断するという形をとっておらないわけでございまして、ある文書だけが必要かどうかという場面から審査をするということになるわけでございます。そういう点で、やはりおのずと限度があるということで、今回の法律は、刑事の方の判断にゆだねるという形をとったわけでございます。

 それから第二点については、立証責任のことでございますが、四号というのは、除外事由を除いて一般的な文書でございますので、そういう意味では非常に広いことになりますので、やはり除外事由に当たらないということを言っていただかないと、ただ四号だと言われても、そうすると、非常に何でもかんでも乱発するというおそれもあるわけでございますので、とりあえずは申し立て側はきちっとそれを言っていただく。しかし、現実には、相手方も、いや、この文書に当たるのだ、除外だということを言わないと、提出命令が出てしまうわけですから、実質的にはその相手方からやるということで、申し立て側にそれほど酷な立証責任を課しているわけではないというふうに私どもは理解をしております。

植田委員 時間が参りましたので、以上で終わります。お疲れさまでございました。

保利委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

保利委員長 この際、本案に対し、長勢甚遠君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党及び自由党の共同提案による修正案、木島日出夫君外一名から、日本共産党及び社会民主党・市民連合の共同提案による修正案がそれぞれ提出されております。

 提出者から順次趣旨の説明を求めます。佐々木秀典君。

    ―――――――――――――

 民事訴訟法の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

佐々木(秀)委員 ただいま議題となりました自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党及び自由党の各会派共同提案に係る民事訴訟法の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、提案者を代表して、その趣旨及び概要を御説明申し上げます。

 政府提出の本法律案は、刑事事件関係書類等については他の制度による利用を予定するなど、その効果については実際の運用等の実施状況を見ていかなければならないものであります。

 そこで、本修正案は、「政府は、この法律の施行後三年を目途として、この法律による改正後の規定の実施状況並びに刑事事件に係る訴訟に関する書類及び少年の保護事件の記録並びにこれらの事件において押収されている文書(以下「刑事事件関係書類等」という。)の民事訴訟における利用状況等を勘案し、刑事事件関係書類等その他の公務員又は公務員であった者がその職務に関し保管し、又は所持する文書を対象とする文書提出命令の制度について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」との文言を、附則に加えて修正を行おうとするものであります。

 以上が、本修正案の趣旨及び概要であります。

 委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

 以上です。

保利委員長 次に、木島日出夫君。

    ―――――――――――――

 民事訴訟法の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

木島委員 民事訴訟法の一部を改正する法律案に対して、日本共産党、社会民主党・市民連合を代表して修正案を提出いたします。案文はお手元に配付されているとおりであります。その趣旨を説明いたします。

 今回の内閣提出の民事訴訟法の一部を改正する法律案は、公文書提出命令の規定を整備するものでありますが、その内容は、これまでの判例や現在の運用などにおける実績からも後退している点が多々あると言わざるを得ません。

 とりわけ、刑事訴訟記録及び少年保護事件記録等の提出義務を一律に除外する点については、捜査等への影響や関係者の名誉などを考慮するとしても、インカメラ手続によって裁判所が適正に判断することは十分可能であります。そのほか、秘密公文書の提出義務の除外事由、高度の秘密公文書の扱い、公務員が保管、所持する特にノート、メモ類の扱いなど、いずれも提出義務の範囲を大きく制約するものとなっております。

 民事訴訟の審理を充実させるためには、公文書提出命令の拡充が求められております。確実な立証に資する規定とするために提出したのが本修正案であります。

 修正案の内容は、

 一、刑事訴訟書類及び少年保護事件記録等に関する提出義務の一律除外を削除すること、

 二、秘密公文書に関する提出義務の除外事由から、「公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるもの」の文言を削除して、「公共の重大な利益を害することが明らかなもの」だけを除外の対象とすること、

 三、国防・外交文書、犯罪・捜査文書の特別扱いをやめ、一般公文書と同等の扱いとすること、

 四、公務員又は公務員であった者が保持する文書は、ノート、メモ類等も提出義務の除外の対象にはしないものとすること、

 五、公文書の場合において、「提出除外事由に該当する」旨の立証責任が文書保持者にあることを明示すること

であります。

 委員各位の御賛同をお願いいたしまして、趣旨の説明を終わります。

保利委員長 これにて両修正案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

保利委員長 これより原案及び両修正案を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。瀬古由起子君。

瀬古委員 私は、日本共産党を代表して、日本共産党及び社会民主党・市民連合提出の修正案に賛成し、内閣提出、民事訴訟法の一部を改正する法律案並びに与党、民主党、自由党提出の修正案に反対の討論を行います。

 本改正法案は、五年前の民訴法全面改正の審議において、公文書の文書提出命令の規定が余りにも制限されているとして、与党提案による全面削除という異例な修正を受け、改めて提出されたものでありますが、相変わらず、公文書は基本的には出したくないという不当な姿勢が示されています。

 第一に、刑事訴訟書類、少年保護事件記録をインカメラ手続にゆだねることなく、全面排除している点です。これまで、プライバシー保護のために閲覧禁止とされた刑事確定記録でも、正当な理由があれば閲覧できるとした事例や、不起訴事件の参考人調書の提出命令が認められた裁判例もあります。こうした文書提出命令の流れを逆流させようとするものであり、到底認められません。交通事故、労災、薬害、公害などの損害賠償請求事件では、刑事記録の必要性は極めて高く、また、会社役員に対する株主代表訴訟における贈収賄、総会屋への利益供与、背任などの追及や官官接待の不正をただす住民訴訟などにおいても、刑事事件の証拠文書などは欠かせないものであり、本改正案は、これらの悪事に完全にふたをしてしまおうとさえするものであります。

 第二に、秘密公文書の除外規定に「公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるもの」としていますが、これまでの判例を後退させるものであり、改悪と言わざるを得ません。薬害エイズ事件で、当時の厚生省が、医療現場での混乱を避け、スムーズに加熱製剤の導入を進めたいがために資料公開をしなかったとされていますが、公務の遂行に著しい支障を生じるおそれを理由に拒絶できるとなれば、現状よりさらに提出拒絶を広げることになります。

 ほかにも、国防、外交、犯罪捜査に関するいわゆる高度の秘密公文書について、裁判所が官庁の主張をうのみにして、文書提出が閉ざされる危険が極めて大きいこと、また、公務員の保管、所持するメモ、ノート類を私的文書として除外していることも、いずれも重大な欠陥と言わざるを得ません。

 我が党は、社会民主党・市民連合と共同して修正案を提出しておりますが、民事訴訟の審理を充実したものにするためには、公文書提出命令の拡充こそが求められており、修正案の採択を期するとともに、本改正案並びに四党修正案には反対するものであります。

 以上で、私の討論を終わります。(拍手)

保利委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

保利委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、民事訴訟法の一部を改正する法律案及びこれに対する両修正案について採決いたします。

 まず、木島日出夫君外一名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

保利委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。

 次に、長勢甚遠君外三名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

保利委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。

 次に、ただいま可決されました修正部分を除いて原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

保利委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

保利委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、奥谷通君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党及び自由党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。奥谷通君。

奥谷委員 ただいま議題となりました附帯決議案について、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。

    民事訴訟法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、附則第三項の検討を加えるにあたっては、その審議の経過を広く開示し、国民の意見が十分反映されるよう格段の配慮をすべきである。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

保利委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 奥谷通君外三名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

保利委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。森山法務大臣。

森山国務大臣 ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと考えます。

    ―――――――――――――

保利委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

保利委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

保利委員長 次に、内閣提出、参議院送付、刑法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。森山法務大臣。

    ―――――――――――――

 刑法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

森山国務大臣 刑法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 クレジットカード、プリペイドカードなど、コンピューター処理のための電磁的記録を不可欠の構成要素とする支払い用カードは、広く国民の間に普及し、今日では、通貨、有価証券に準ずる社会的機能を有するに至っておりますが、近時、これら支払い用カードの電磁的記録の情報を不正に取得してカードを偽造するなどの犯罪が急増しており、国際的な規模で、また、組織的に敢行されることも少なくない実情にあります。

 ところが、現行法上、このような偽造カードの所持やカードの電磁的記録の情報の不正取得などの行為が犯罪化されておらず、この種事犯に対し適切な処罰を行うことが困難な状況にあるほか、その現に果たしている社会的機能の共通性にもかかわらず、適用される条項はカードの種類によって区々であり、その内容も有価証券等に関する罰則との均衡を欠くに至っているなど、これら支払い用カードに対する不正行為に的確に対応できる法整備が必要となっております。

 そこで、この法律案は、このような状況を踏まえ、支払い用カードに対する社会的信頼を確保するため、刑法を改正し、所要の罰則整備を行おうとするものであります。

 この法律案の要点を申し上げます。

 第一は、クレジットカードなど、代金または料金の支払い用のカードを構成する電磁的記録を不正に作出し、供用し、譲り渡し、貸し渡し、輸入し、または所持する行為を処罰するものであります。法定刑は、不正作出、供用、譲り渡し、貸し渡し及び輸入については十年以下の懲役または百万円以下の罰金、所持については五年以下の懲役または五十万円以下の罰金としております。

 なお、預貯金の引き出し用のカードを構成する電磁的記録についても、いわゆるデビットカードの普及の実情等にかんがみ、支払い用カードの場合と同様に取り扱うこととしております。

 第二は、支払い用カード電磁的記録の不正作出の用に供する目的で、その電磁的記録の情報を取得し、提供し、または保管する行為及び器械または原料を準備する行為を処罰するものであります。法定刑は、三年以下の懲役または五十万円以下の罰金としております。

 第三は、国外犯処罰規定を設けるものであります。

 その他所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、この法律案の趣旨であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。

保利委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

     ――――◇―――――

保利委員長 次に、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政に関する件、特に司法制度改革に関する諸問題について調査のため、明二十日、参考人として司法制度改革審議会会長佐藤幸治君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

保利委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、明二十日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十八分散会




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