衆議院

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第3号 平成13年10月24日(水曜日)

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平成十三年十月二十四日(水曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 保利 耕輔君

   理事 奥谷  通君 理事 塩崎 恭久君

   理事 田村 憲久君 理事 長勢 甚遠君

   理事 佐々木秀典君 理事 平岡 秀夫君

   理事 漆原 良夫君 理事 西村 眞悟君

      荒井 広幸君    太田 誠一君

      左藤  章君    笹川  堯君

      鈴木 恒夫君    棚橋 泰文君

      谷川 和穗君    松野 博一君

      松宮  勲君    山本 明彦君

      吉野 正芳君    渡辺 喜美君

      枝野 幸男君    肥田美代子君

      水島 広子君    山内  功君

      山花 郁夫君    青山 二三君

      藤井 裕久君    木島日出夫君

      瀬古由起子君    植田 至紀君

    …………………………………

   最高裁判所事務総長    堀籠 幸男君

   参考人

   (日本弁護士連合会会長) 久保井一匡君

   参考人

   (早稲田大学法学部教授) 戒能 通厚君

   参考人

   (日本放送協会解説委員) 若林 誠一君

   法務委員会専門員     横田 猛雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月二十四日

 辞任         補欠選任

  吉野 正芳君     松野 博一君

  日野 市朗君     仙谷 由人君

  不破 哲三君     瀬古由起子君

同日

 辞任         補欠選任

  松野 博一君     吉野 正芳君

  瀬古由起子君     不破 哲三君

    ―――――――――――――

十月二十四日

 民法改正における選択的夫婦別氏制度の導入に関する請願(石井一君紹介)(第一八号)

 刑法三十九条への附帯文追加に関する請願(島聡君紹介)(第五九号)

 犯罪捜査のための通信傍受法の廃止に関する請願(北川れん子君紹介)(第一一四号)

 同(佐々木秀典君紹介)(第一一五号)

 同(鳩山由紀夫君紹介)(第一一六号)

 同(原陽子君紹介)(第一一七号)

 同(保坂展人君紹介)(第一一八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 司法制度改革推進法案(内閣提出第一号)




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     ――――◇―――――

保利委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、司法制度改革推進法案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、日本弁護士連合会会長久保井一匡君、早稲田大学法学部教授戒能通厚君、日本放送協会解説委員若林誠一君、以上三名の方々に御出席をいただいております。

    ―――――――――――――

保利委員長 この際、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所堀籠事務総長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

保利委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

保利委員長 この際、委員会を代表して一言ごあいさつを申し上げます。

 各位におかれましては、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いを申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、久保井参考人、戒能参考人、若林参考人、堀籠事務総長の順に、各十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。

 それでは、まず久保井参考人にお願いいたします。

久保井参考人 日本弁護士連合会会長の久保井でございます。

 本日は、当委員会におきまして、参考人として司法改革に関する意見陳述の機会を与えていただきましたことに、まずもってお礼を申し上げたいと思います。

 早速ですが、日弁連は、平成二年以来今日まで、市民による市民のための司法を目指して司法改革運動を展開してまいりましたが、今回の法案は、基本的にはその方向を目指すものとして賛成であります。この点につきましては、既に去る十月十九日の理事会で承認を得ております。

 司法制度の目的は、言うまでもなく、個人の尊厳と人権の擁護にありますが、日本の司法制度には二つの重大な欠陥があると考えています。

 一つは、司法のボリュームが小さいということであります。

 例えば、日本の法曹人口は、お手元にお配りしましたレジュメに記載しましたとおり、諸外国に比べて極端に少ないのであります。そのため、国民が手軽に利用できない状況にあります。ちなみに、日本の司法の規模がいかに小さいかは、司法は国の三権の一つと言われながら、裁判所予算がわずか三千百億円、国家予算の〇・三九%にとどまっていることに端的にあらわれています。

 二つ目の欠陥は、市民が、ごく一部の例外を除いて、裁判にほとんど参加していない点であります。世界の先進国の中でいまだ陪審も参審も採用していない国は、日本以外にはオランダ、韓国だけと言われているところであります。

 しかし、二十一世紀を迎え、これからの日本は、これまでのような行政にどっぷり依存する社会が終わり、個人も企業も自立を迫られていること、地域、企業、家庭など、これまで日本を支えてきたコミュニティーが崩壊しつつあること、グローバル化、国際化していくこと、経済においては特に自由競争が激化していくことなどさまざまな要因を考えますと、今こそ、国民の基本的人権の擁護と社会正義を実現するため、そして個人や企業の自立を助けるつえの役割を果たさせるため、さらに、透明で公正なルールに支配される社会を実現するため、司法機能を大幅に充実させる必要があります。

 ところで、去る六月に司法制度改革審議会の公表されました意見書は、次の五つを改革の柱として提唱しています。

 一つは、法曹人口の増加とロースクールであります。二つは、国民の司法参加、いわゆる裁判員制度の提唱であります。三つは、裁判官改革であります。四つは、司法へのアクセスの拡充、具体的には、法律扶助の拡大、被疑者の公的弁護制度の導入であります。そして、五つは、弁護士改革であります。これら五つの改革は、いずれもぜひとも実現させる必要があります。これから始まる立法作業の段階において、決して後退をさせてはなりません。

 日弁連も、弁護士改革を含め全力を挙げて取り組む決意であります。これまでの弁護士は、市民にとって敷居が高く近づきにくい存在であると批判されてきましたが、これからは、市民に身近で開かれた法律家に脱皮していくつもりであります。

 具体的には、まず、あらゆる改革の出発点であり土台であります弁護士人口の増大につきまして、昨年の十一月一日、臨時総会を開き、今後は国民の必要とする数と質を受け入れる増員の方針を決議いたしました。そのほか、法律事務所の基盤整備を進めるため、現在、法人化に取り組んでおり、また、過疎地対策として、全国的に法律相談センターを設置するとともに、各地に、日弁連会員から特別会費を徴収して公設事務所の設置を進めています。そのほか、弁護士倫理の向上、専門的能力の向上、社会のあらゆる分野に活動領域を拡大することなどに努めています。

 そして、人権、公害、消費者問題を初めとする公益活動を強化し、さらに、弁護士任官、ロースクール設置、運営への参加など積極的に取り組んでいます。

 こうした意味で、今回の法案の第四条の日弁連の責務条項は、日弁連のこれまでの活動を評価していただき、今回の司法改革の担い手としての役割を与えていただいたものとして誇りに思い、これを積極的、主体的に受けとめていきたいと考えています。したがって、この第四条の責務条項にふさわしい推進本部の中での役割、具体的には、相当数の事務局員を日弁連から派遣することなどを認めていただきたく、希望いたします。

 続いて、この法案に基づいて設置される推進組織について意見を申し述べます。

 まず第一は、顧問会議の充実であります。

 今回の司法改革の立法作業が意見書にのっとって行われているかどうかをウオッチする、またプッシュする機関として顧問会議が設けられる予定と聞いていますが、そのメンバーの相当数は、まずは元審議会の委員にお願いすべきと考えています。これは、意見書の内容がよくわかっておられるからストライクゾーンの判定がしやすいこと、そのメンバーは二年前に国会の承認を得て選ばれた公正な方々であることを考えれば当然であります。また、元審議会の委員に加え、国民各層の代表の方を公平に選ぶべきであります。

 次に、検討会の位置づけを正しく行っていただく必要があります。

 これから始まる審議会の意見書の具体化の作業は事務局だけで行われてはなりません。法律実務家、学者等のみならず、制度の利用者あるいは制度の参加者である国民の代表が多数参加する検討組織が行うべきであります。そして、その検討組織の位置づけはあいまいなものであってはならず、独立した諮問機関として明確な根拠規定のもとに設置すべきだと考えます。

 なぜなら、今回の意見書の提言は、審議期間が二年間に限定されていたことなどから、制度設計について今後の検討にゆだねられている部分も多くあります。例えば裁判員の数などはその典型であります。また、既に結論が出ているように見える点でも、いよいよ制度を具体化する段になると解釈によって幅のある部分も多いのであります。

 このような点は、本来なら審議会の期間を延長してでも決めてもらうべきだったとも言えるものであります。したがって、少なくとも事務局だけで決着をつけることは許されるものではなく、民主的な検討組織をつくってこれを行っていただきたいのであります。

 そして、立法作業の透明化について申し上げます。

 何より重要なことは、今回の立法作業は、事務局の密室作業であってはならず、国民にガラス張りの状態で行うべきだということです。少なくとも顧問会議と検討会議は、審議会のときと同じ程度のリアルタイムでの公開、傍聴を進めていくべきであります。このことは既に審議会の意見書でも求めているところであります。つまり、意見書は、改革の内容のみならず、改革の過程についても国民の目に見えるわかりやすい形にすべきことを強調しています。

 司法制度改革審議会が、事前の予想を超えて前進的な改革案を打ち出した最大の原因は、六十三回の毎回の審議と逐語による議事録を公開した点にあると言われています。したがって、このたびスタートする司法制度改革推進本部についても、同様の公開性は不可欠であります。実現過程の透明性と国民参加なしに、立派な司法改革が実現することはあり得ないと確信するところであります。

 続いて、今回の法案は、第六条において、政府に対し、必要な立法上の措置だけでなく財政上の措置を義務づけています。私は、財政上の措置が今回の改革の成否を握っていると思います。

 日本の司法は余りにも小さい。冒頭に申し上げましたが、司法は、立法、行政とともに国の三権の一つと言われながら、その裁判所予算はわずか三千億余りであります。仮に法務省の予算六千億を加えても、トータルで一兆円にすぎません。

 法律扶助は、昨年十月、ようやく民事法律扶助法をつくっていただき、国庫補助二十五億円の予算をいただきました。その御努力には心から敬意を表しますが、世界の先進国に比べると比較になりません。例えば、英国は約一千五百億円ですし、東アジアでは、韓国に比べても圧倒的に少ないのであります。

 今回の改革で提唱されているロースクールについても、金持ちしか行けない学校にしてはならないのであります。そのためには、国の財政上の措置による奨学金の制度などがぜひ必要なのであります。仮に、これらの財政上の措置をしていただいても、今話題になっている銀行の公的資金の導入の一行分を充てれば十分可能な数字であります。

 最後に、今回の司法改革の持つ意義について申し述べることをお許しいただきたいと思います。

 日本の歴史上において、司法は、これまでずっと国民のためのものでなく、為政者が国民を統治するためのものにすぎなかったと思います。その淵源は、八世紀に唐の律令制を導入し、日本にも律令国家を建設したときにさかのぼります。律令の律は刑法、令は行政法を意味しますが、要は、国が人民を治めるための法制度でありました。

 明治維新によって先進国の法制度を輸入しましたが、そこでも主たる目的は、とりあえず形だけの近代化を進め、幕末に結んだ各国との不平等条約を早期に解消したいということにありました。第二次大戦後に初めて国民主権の新憲法が制定されましたが、残念ながら、戦後五十年を経ても司法が国民のものとして十分に定着してこなかったのであります。

 今、二十一世紀を迎え、ようやく司法が国民の権利や生活を守る制度に生まれ変わろうとしています。国会議員の先生方におかれましては、今回の司法改革が、単に法曹界の利害に関することではなく、日本社会に真に国民主権を確立するために不可欠の構造改革であることを御理解いただきますようお願いいたしまして、私の意見表明を終わります。

 どうもありがとうございました。(拍手)

保利委員長 ありがとうございました。

 次に、戒能参考人にお願いいたします。

戒能参考人 早稲田大学の戒能でございます。

 私、前に、司法制度改革審議会設置法案のときにやはり参考人として発言をさせていただきました。まだこの法案については委員の審議に入っていないという段階で参考人としての発言を許していただけるということを大変光栄に思っております。

 私の話につきましては、非常に細かな字で恐縮ですが、参考人意見ということで、私の名前の入ったペーパーが提出されておりますので、それに基づいてお話しさせていただきたいと思います。

 なお、このレジュメ的なペーパーの後ろの方には、私が法律時報という雑誌に書きまして、十一月号、もう間もなく刊行される予定の文書の一部が入ってございますが、これまでお話しすると全く時間がなくなってしまいますので、それはあくまでも参考までということにさせていただきます。

 そもそも、私が理解するところでは、この法案というのは、司法制度改革審議会の意見にのっとって、司法に携わるもろもろのアクターを一つの目的に束ね、しかも不退転の決意で審議会の意見を実現するという点を骨子とするというふうに理解しております。司法制度改革推進本部が内閣に置かれ、総理を本部長として、設置から三年内に関連法案の成立を目指すということになっております。その意欲を高く評価したいところでございますが、まず第一点として御指摘申し上げたいのは、司法の独立との関連でございます。

 司法の独立あるいは司法にかかわるもろもろのアクターの固有の自治というのをどのようにこの法案では考えておられるのかということでございます。もちろん、形式的な三権分立の原理に矛盾するかどうかというようなことを申し上げたいということではございませんで、今回の司法制度改革審議会あるいは司法の今後の方向性としては、まさに司法部の独立のための条件を整備するということが不可欠の前提であろうかというふうに思います。

 それからもう一つ、本日、この多様な論点についてすべてお話しすることはできませんので、私はたまたま大学の教授としてここで参考人として発言をさせていただいておりますので、とりわけ、この司法制度改革というのは大学改革でもあるということに御留意いただきたいというふうに思います。

 御存じのとおり、司法制度改革審議会は、人的基盤の拡充という中で、法科大学院というものを設置することによって法曹人口を近い将来五万人にする、毎年三千人ずつの法曹が育っていくようなシステムを構想しているわけでございます。それをどこが担うか、これはまさに大学でございます。ですから、そういう意味で、司法制度改革審議会の理念を実現するためには、まさにこの法科大学院というのがうまくいくかということが最も中心的な問題というふうになっているわけでございます。

 二点目に行きます。

 審議会が強く意識しておりますのは、急速なグローバリゼーションの展開に伴う経済社会の構造変化に対応すべき、国民という利用者の立場に立った制度的インフラとしての司法の整備ということでございます。

 しかし、このようなグローバリゼーションに対するアプローチという点では、司法制度改革審議会のフィロソフィーにおいて、例えばの話でございますが、英国のブレア労働党政府の理論的支柱と言われておりますアンソニー・ギデンスの説くところのグローバリゼーションに対する理論といいますか、それに相当するようなフィロソフィーが必ずしもあるようには私には見えないわけであります。

 ギデンスによれば、グローバリゼーションに伴う状況というのは、国家という公的な機関というものが、NGO、市民団体等々の運動あるいはその活動によっていわば融解していく、解けていく。しかし、市民団体あるいはNGOというのは国家にかわることはできないわけでありますから、日常的なその市民の活動が、まさに日常的に国家の再定義を必要としているという状況にあるわけであります。ギデンスは、それを新たな民主制の萌芽というふうに規定いたしまして、その民主制の萌芽をいかに国家の枠組みの中に取り込んでいくかという不断の努力が必要であるというようなことを言っているわけであります。

 このギデンスの理論というのは、単なる空論ではございませんで、現在、ブレア政権がさまざまな施策を行う際の理論的バックボーンになっているということでございます。その中で、とりわけ司法というのは、新たな国家の再定義の中で極めて重要なモメントとして位置づけられていることを御指摘申し上げたいと思います。

 司法制度改革審議会は、司法改革を、政治改革、行政改革、地方分権推進、規制緩和等の経済構造改革等の諸改革の最後のかなめというふうに位置づけておられるわけであります。あるいは、国民のお上依存の統治客体意識からの脱却と自律的個人によって支えられる自己責任社会の実現を目指すということを言っているわけであります。そのような国民とプロフェッション、具体的には弁護士等々のリーガルプロフェッションとしての法曹によって支えられる公共性の空間、これは非常にわかりにくい表現ではございますが、公共性の空間の再構築ということ、好んでそれに言及しているわけでございます。そのような公共性の空間というのは、自律的個人によって支えられる社会のことを言っているわけでございますが、日本社会においてそのような自律的個人によって支えられる公共的空間をつくり上げていくためには、実はそこに国家の役割というのが極めて重要なものとして存在するというふうに私は理解しているわけであります。

 ブレア労働党政権がサッチャー、メージャー保守党政府と異なるのは、まさに、個人が自律し、そして自由競争社会の中に入っていくための条件を付与する、そういうところに政府の新たな役割を再定義しているわけでありまして、そういう意味では、単なる規制緩和とか自由競争のみがいわゆる構造改革の原理であってはいけないというふうに私は考えるわけであります。例えば、その中で、グローバリゼーションというのはモダニティーあるいはモダナイゼーションと裏腹の関係にあるというようなことが言われておりますし、これは、そもそも近代国家がつくり出してきたさまざまなシステムの再構築ということを意味するわけでございますので、司法制度改革というのはそういうものとしてやはりとらえる必要があるということでございます。

 したがって、この司法改革というのは、一国的構造改革的視点のみでは不十分である。例えばの話、法科大学院が今話題になっているわけでございますが、法科大学院というものは、ある意味では法曹の画一的な生産というところを考えているわけですけれども、現在の日本の法務が国際的に直面している状況というのはかなり深刻なものがあるというふうに私は理解しているわけでございます。すなわち、日本の法務は国際的にはほとんど問題視されておりません。そのような国際法務に十分に打ちかつような法曹をつくり上げるためには、一定のやはり戦略的な構想が必要なのでありまして、それは必ずしも画一的な法科大学院をつくればできるものではないというふうに私は考えるわけでございます。

 そこで、私は、司法制度改革審議会の最も重要な原理といいますか方向性というのは、もちろん法案はそれを前提にしているというふうに信じますが、推進法の中心はやはり司法部の独立の強化ではないかというふうに考えるわけであります。行政の不作為を批判し、その積極的な役割を発揮させるように、あるいはそれを鼓舞するような司法部をつくり上げるということが司法改革の要諦であろうというふうに思います。このことは、私が司法制度改革審議会設置法案のときに申し上げたとおりでございます。

 弁護士が体現すべきとされる人権擁護あるいは社会正義の実現というのは弁護士法一条の規定でございますが、私は、これこそまさに司法の理念であるというふうに考えるわけでございます。法案の四条は、これがもし弁護士自治の制限の根拠規定というふうに使われるのであるとすれば、これはやはり司法制度の改革の理念に反するというふうに私は考えるわけでございます。法案の三条が司法部の独立を個々の裁判官の独立から再構築するという含意、これを何とかそういうふうに読みたいわけでございますが、法案の三条の「国の責務」がそういうふうに読めるか。つまり、三条こそまさに司法権の独立を実現していくための国の責務というふうに読むべきだと思いますが、それには余りにもこの三条は抽象的ではないかということを御指摘申し上げたいと思います。

 次に行きます。

 司法改革は大学改革として現に急速な勢いで進んでいるわけでございます。委員の皆様は御存じかどうかわかりませんが、五条二号の基本方針で法科大学院が言及されておりますが、六条によって、この基本方針に基づく施策については財政上の措置が講じられなければならないというふうに言われております。久保井日弁連会長が言われましたように、この法案の帰趨はまさにこの財政的措置にかかっていると私も思います。

 例えばの話、法科大学院の学生が払うべき授業料というのは今の法学部の学生が払う授業料よりもはるかに高額化することが予測されるわけでございますが、しかしそれは奨学金制度の改革だけでできるのか。あるいは、法科大学院の教員をどうするかというのは大変にお金のかかる話でございます。それだけのことを含めて財政的措置というふうに言っているのかどうかということが非常に気がかりでございます。

 最後に、法科大学院について私は危惧を持っております。制度を変えれば内容も変わるという命題は真であるのか。法学部教育で今構想されているような法曹養成は本当にできないのかということであります。

 早稲田大学に私は所属しておりますが、早稲田大学では法学部教育を前提として法曹養成のための努力をしてきた、そういう経験がございます。その経験によれば、法学部教育で十分に法曹養成はできるという信念を持っているわけでございますが、果たして法科大学院をつくれば今よりもすぐれた法曹ができるのかどうかということは、ぜひ御検討いただきたいと思います。

 そもそも、法科大学院の問題は、アメリカ型ロースクールではなくて日本型ロースクールをつくる、そういう話から始まったのではないかと思いますが、それがいつの間にか、法学部教育と切り離されたと言うとちょっと語弊があるかもしれませんが、法科大学院の三年間の課程で完結的に法曹養成ができるようなシステム、これはアメリカ型でございますが、そういう方向に変わったわけですね。

 法科大学院の問題というのは、実は司法制度改革審議会では十分な討論がなされていないというふうに私は思います。これは仕方がないわけでございまして、二年間の審議期間という中で法科大学院の十分なる設計までして、そして提言をするとすれば、恐らくそれはできないことになったろう。したがって、法科大学院については、司法制度改革審議会の提言は、私に言わせればいろいろな面で穴があるというふうに考えるわけでございます。

 そのことについては、質疑の中で申し上げたいので、個々を詳しく御紹介することは避けますが、一例だけ紹介しておきますと、実は法科大学院に対しては、二〇一〇年ぐらいから新司法試験に一元化するということが目指されているわけでございます。つまり、二〇一〇年には法科大学院は完全な形で確立する、そういう想定に立っているわけですが、しかし、司法制度改革審議会はその中で、二〇一〇年以降も予備的な試験に合格すれば新司法試験を受けて法曹になれる道というものを考えようとしているわけであります。

 法科大学院については、例えば、私が先ほど申し上げましたように、法学部教育との連続性がなくていいのかどうか。今なくていいという前提に立っているわけですが、果たしてそれでいいのか。それから、三年間の期間というのにあわせまして、法学既修者に対しては二年間のコースが用意されている、そういう問題もございます。

 このことについて、後で議論の中でぜひ私の方からもう少し補足的な発言をさせていただきたいと思いますが、時間が来ましたので、一応私の発言はこれで終わりにいたします。(拍手)

保利委員長 ありがとうございました。

 次に、若林参考人にお願いいたします。

若林参考人 NHK解説委員の若林です。

 司法制度改革という将来のこの国の形を決める大事業、それを推進する法案の審議に当たりましてこうした機会を与えていただきましたことに、まず感謝をしたいと思います。

 これから私が述べます意見は、NHKとしての見解というようなものではなくて、司法問題を取材し、見詰めてまいりました一ジャーナリストとしての意見というふうにお聞きいただきたいと思います。

 まず、この法案についてでありますけれども、司法制度改革を進める上で、強力に推進するための法案としては必要だろうというふうに思います。ぜひ早期に成立をさせていただきまして、執行体制をとっていただきたいというふうに思います。しかしながら、現在検討されております推進体制につきましては、幾つか心配な面、危惧する面がありますので、その点を中心に話をいたしたいというふうに思います。

 まず、その心配される面に入る前に、この司法制度改革審議会は一体どのような審議会であったのか、その意見書はどのようなものであったのかというところからお話をさせていただきたいと思います。

 この意見書は、将来のこの国の形をつくるということで、一つの理念に貫かれております。私も、壮大な大河ドラマのシナリオ、その骨格ができたのかなという気がいたします。その意味では、審議会は十二分の役目を果たしたのではないかというふうに思っています。

 とりわけ重要なのは、やはり国民参加の裁判員制度、そして法曹人口の大幅増、それを支える法科大学院構想ではないかというふうに思います。

 裁判員制度について言いますと、その意味は私は二つあると思います。一つは、司法が国民に直接の接点を持つということであります。国民的な基盤、正統性をそこに置くということは、従来の司法のあり方、ややもすれば上からの統治のための仕組みという性格を強く持っていた司法が、国民に根差した、そういった根拠を持つ契機になる大変重要な制度だろうというふうに思います。

 もう一点は、この裁判員が無作為に抽出されるということです。そして、選ばれれば、これは国民の義務、責務として裁判員になるということです。これは、子供に例えば日本の司法制度を教えるというときに、君は将来ひょっとしたら裁判員になるかもしれない、そうしたら、もしかしたら人を死刑にする、そうした判断をしなければならないということを子供のときから教えるということを意味するのだろうと思います。

 私たちは、戦後の社会を振り返ってみますと、自由、権利といったことは随分習いましたけれども、しかしその一方で、社会の一員としての義務といいましょうか、そういったものについては大分希薄であった。その意味でいうと、お客様であったというふうに思うわけですね。国民が本当に主体的にこの社会にかかわるという教育をする契機にもこの制度はなるというふうに私は思っています。

 二つ目の、法曹人口の大幅な拡大は、小さな司法から大きな司法に大転換をする、その前提条件をこのことが保障するのではないかというふうに思います。

 今回の改革、その一条を見ますと、規制緩和をこれから進めていく上での条件整備といった色彩が強く出されておりますけれども、今の司法の現状を見ますと、そもそも現状がやはり十分期待にこたえていなかった、司法本来の役目を果たしていなかったという現状認識ももう一つ一方では必要ではないか。その意味でいうと、一条は、現状認識の点において少し欠けている面があるというような気もしております。

 さて、審議会ですが、そのようなものというふうに私は受けとめておりますけれども、ここまで踏み込んだ改革になるというのは、実は、私も二年前の今ごろは想像しておりませんでした。そういう意味でいいますと、ジャーナリストとして想像力の欠如ということを思わないわけではありませんけれども、どなたかが、たき火をするつもりだったら山火事になってしまったというふうにおっしゃったそうですけれども、同じような感想を私も抱いております。

 では、なぜそうした踏み込んだ審議、そして意見書になっていったのか、その理由を私なりにまとめてみますと、四点あったのではないかというふうに思います。

 まず第一は、その審議会の委員がユーザー中心になったということです。法曹の出身者は三人、また法律学者三人ということで、従来、法制審議会などの主たるメンバーであった人たちは全体の過半数に達していません。ユーザー中心、そして有識者中心の審議会になった、これが第一点です。

 二点目は、審議が委員主導で行われたということであります。事務局というのは黒子に徹しておりました。その事務局の皆さんの努力は大変大きかったと思いますけれども、審議が明らかに委員主導であったということが二点目の重要なポイントです。

 三点目は、全会一致という方針を最後まで貫き通したということではないかと思います。従来の法曹三者の協議を見てまいりますと、対立が解けないまま、意見の対立を残して一つの結論を出して、そしてそれが国会の審議に至っても尾を引くというようなことがしばしばありました。そこでまとまった内容というのはやはり力を持ちません。全会一致、最大公約数でまとめるという努力をなされたという点も大変重要だったろうと思います。

 そして四点目、これが一番重要なところでありますけれども、審議の公開ということであります。

 既にほかの参考人もおっしゃっておりましたけれども、私は審議会をほぼ毎回傍聴いたしました。その経過を若干申し上げますと、当然、手続の透明性、公開性というのが司法制度にとりましては生命線であります。審議会も当然公開で行われるというふうに思っておりましたけれども、実際、第一回の会合では公開を渋る委員の方がいらっしゃったということで、公開がそのときは実現いたしませんでした。

 審議会の公開を求める意見がいろいろありました。私も、またほかの新聞社、そして通信社の論説委員の皆さんも、ぜひ傍聴したいという希望を実は出しました。こうした傍聴希望、公開の希望に対しまして、審議会の委員の皆さんも大変重く受けとめていただきまして、実質的な審議の段階、翌年の一月からだったと思いますけれども、全面公開ということになりました。委員室が大変狭いために、テレビモニターによる公開ということではありましたけれども、議論の経過を逐一私たちは聞くことができたというわけであります。

 その効果がどのようなものであったかというのを、ずっと聞いていた私の率直な印象として申し上げますと、まず第一は、国民の目や国民の耳がその審議の内容を見詰めているんだ、聞いているんだということのもたらした緊張感ではなかったかと思うわけであります。

 委員の皆さんは大変よく勉強なさいました。また、本来業務、自分の仕事をなげうってこの委員会に没入されていたというふうに思います。体調を崩された方もいらっしゃいますし、自分の本来の仕事ができなかったということも多かったように思います。そして、そこでの皆さんが話をしておられる言葉というのは、借り物の言葉ではなくて、自分の言葉で語られていたというふうに思います。国民の目や耳が聞いている、見詰めているというその緊張感。よく、本音の議論ができないから公開しないということを言われますけれども、しかし、本音というのはややもすると自分の既得権、利害を語るのに本音をしゃべりたいというような意味ではないかと思うんですが、司法というのは道理の世界であります。道理の世界で議論をするという場が確保されたのではないかというふうに思います。

 二点目の効果としてありますのは、今回の司法制度改革は、国民の間からほうはいとして司法制度を改革してほしいという声がわき起こったものではないわけです。しかし、審議が公開され、そしてリアルタイムでそれが報道されることによりまして、国民の関心がやはりどんどん深まっていったのではないか。そして反応があらわれ、意見があらわれ、それがまた審議会の議論に反映されていく。そうした双方向のコミュニケーションが成立していったというのが、この二年間の審議会の過程であったように思います。そのことが審議の内容をより豊かにし、そして司法制度というその根本的なところまで踏み込んでいった最大の要因であったというふうに私は感じております。

 さて、これからの推進体制の問題ということでお話をしたいと思いますけれども、四点指摘をしたい、お願いをしたいと思います。

 まず第一点は、今るる申し上げましたように、公開の重要性ということであります。

 現在、準備室段階で検討されていますのは、顧問会議あるいは検討会といったものの議事録などの公開をする、あるいは、いろいろな案がまとまったらその都度説明をし、意見を求めるということのようであります。確かにそれも形式的には公開だとは思いますけれども、実は、リアルタイムで議論をオープンにするということがどれほど重要かということをぜひ理解をしていただきたいというふうに思います。

 先ほども申し上げましたように、この審議会の議論がダイナミズムを持ったというのは、まさにリアルタイムの公開があったからにほかならないというふうに思っているわけです。法律に公開をきちっと位置づける、あるいはこの委員会の質疑の中でそこのところを確認をとるといった歯どめの措置というのを皆さんにぜひお願いしたいというふうに思います。

 二点目は、顧問会議、検討会の性格ということであります。

 今回の意見書というのは、確かに大きな方針を示してはおりますけれども、具体的な制度内容の設計にまで踏み込んでいない部分が大変多く残されています。また、意見が必ずしも一致していない点もあります。

 一つの例を申し上げますと、裁判員制度です。裁判員の数、評決の方法、選出あるいは忌避の方法、あるいは証拠開示のルール、争点整理のやり方、あるいは、調書裁判から直接主義、口頭主義への転換といったさまざまな検討課題が残されております。これをすべて解決していくということは、日本の刑事司法手続を全面的に根本から見直すことにほかならないと思うわけです。そうした大変重要な課題が残されている。

 また、行政に対するチェック機能の強化について言いますと、突っ込んだ議論には入っておりません。これは、一司法改革にとどまらず、行政改革にも関するものでありますし、三権の、行政と司法、あるいは司法と立法との関係をどういうふうにつくっていくのかという非常に根本的な問題も含んでいる。こうしたことの検討が残されているわけです。これを、現在では顧問会議という格好で、お目付役、大所高所からちょっと意見を言ってもらう人たちと、検討会というのは事務局の立法作業をお手伝いする専門家のチームといった位置づけ、性格がどうも強いようですけれども、そうしたところで果たしてできるのかというふうに思うわけです。

 三点目は、人選の問題ということです。

 この審議会で語られた内容、意見書は百数十ページの大変大部なものでありますけれども、そこにまとまるまで、一言一句について大変さまざまな検討が行われました。六十数回の議事録すべて公開されておりますけれども、これを読めばわかるではないかというふうに言われるかもしれませんけれども、その審議会の二年間の経過をきちっと理解をし、そしてそのことをこれからも発展、継承させていく、それはやはり人がつながっていくということが私は重要ではないかというふうに思っています。

 委員の皆さんの継続ということもありますけれども、今回新しくできます推進体制を見ますと、推進本部、五十人ほどのチームになるというふうに聞いておりますが、そこに入る方の中でこの審議会に関与した人はどうも一人もいないということになるようです。全く別の各省庁から、あるいは法曹三者からの皆さんでその事務局をつくっていく。本当にその審議会の議論の経過がそこに継承されていくのか、そこのところは私は大変心配をしているところです。

 また、この顧問会議あるいは検討会の中に、法曹三者あるいは官庁、法律学者だけではなくて、やはりユーザーの視点を持った人をたくさん入れていただきたいということも重要なポイントだと思いますし、事務局の中に民間人の登用ということもぜひ考えていただきたいというふうに思っています。

 四点目は、そうしたことを可能にするには、やはり予算の問題と定員の問題があろうかと思います。

 司法制度の改革の話になりますと、財政上のネックがあるということをしきりに言われます。どうも昔の大蔵省あるいは財務省のお役人が足を引っ張っているのじゃないかというような感じを抱かせるわけですけれども、本当にそれでいいのかという感じがいたします。財政上、そして各省庁の定員の問題があるようですけれども、司法制度の改革という将来のこの国の形をつくる大改革のためには、全く別枠という発想で取り組んでいく必要がある。それは政治の責任ではないかというふうに思っています。

 以上、私の発言を終わらせていただきます。(拍手)

保利委員長 ありがとうございました。

 次に、最高裁判所堀籠事務総長にお願いいたします。

堀籠最高裁判所長官代理者 司法制度改革推進法案について意見を申し上げます。

 初めに、この法案について意見を述べる機会を与えていただき、当委員会に対し厚くお礼を申し上げます。

 私は、裁判所の視点から、この法案の意義、司法制度改革に関する考え方等について意見を申し上げたいと存じます。

 この司法制度改革推進法案は、我が国の社会経済情勢の変化に伴い、司法の果たすべき役割がより重要になることにかんがみ、本年六月に内閣に提出された司法制度改革審議会の意見の趣旨に沿って、司法制度改革について、その基本理念や基本方針、国の責務等を定めるとともに、その推進のため、内閣に司法制度改革推進本部を設置するものとされています。このように、この法案は、二十一世紀のあるべき司法制度を実現するため、その改革の推進に関する方針と体制等を整えるものであり、その意義は非常に大きく、この法案の趣旨に賛同の意を表したいと存じます。

 現在、我が国は、高度技術化、社会の複雑多様化が進展する一方、厳しい社会経済情勢のもとで、あらゆる分野において、今後進むべき方向性を求め、懸命な努力が重ねられています。このような状況の中で、司法制度についても、これまでの実績と問題点を検証し、今後司法制度が果たすべき役割を的確にとらえ、それにふさわしい体制を構築していかなければなりません。裁判所としては、裁判制度の運営を担う立場から、この法案の示す司法制度改革の方向に沿い、国民のニーズにかなう、あるべき司法制度の実現に向けて最大限の努力をしていきたいと考えております。

 この法案は、司法制度改革審議会の意見の趣旨に沿うものでありますが、裁判所は、この改革審議会の審議の過程において、これに全面的に協力するため、裁判制度の運営を担う立場から、裁判の実情等について情報を御提供するとともに、主要な課題、あるべき司法制度の将来像について意見を申し上げてまいりました。裁判所としては、改革審議会の意見は裁判所が目指す改革とその方向性を同じくするものであると考えているところであります。

 この法案は、改革審議会の意見を踏まえ、司法制度改革に関する施策を総合的に策定し、実施する国の責務を定めています。裁判所としては、改革審議会での審議と同様、政府や国会における検討に際し、その要請に応じて、裁判制度を運営する国の機関という立場から、改革を実現する責務を負うものとしてできる限りの協力をしてまいりたいと考えておりますし、裁判所がみずから積極的に進めるべき課題につきましても、同様の認識のもとに、内閣に設けられる改革推進本部等と適切な連携を図りながら、改革に向けた施策の検討に主体的かつ積極的に取り組んでいきたいと考えています。

 この法案では、司法制度改革推進の基本方針として、大きく三つの見地から改革の方向性が示されています。裁判所としては、この方向性に沿った方策が推進されるべきものと考えているところでございます。

 まず第一に、国民がより利用しやすく、より迅速、適切かつ実効的にその使命を果たすことができる司法制度を構築するため、民事及び刑事の手続制度等の整備拡充を図ることが掲げられています。

 司法制度改革審議会の意見では、民事、刑事の両分野にわたり、改革に関するさまざまな提言が示されました。裁判所としては、提言と同様の問題意識に立って、より迅速で充実した審理を実現するため、幅広い視点からの手続制度の改革、各種の専門的事件に的確に対応するための制度の整備を進めていく必要があると考えています。今後、政府や国会において所要の立法作業が進められることになると思われますが、裁判所も、裁判の運営を担う立場から、所要の措置を講じるとともに、運用面でのさらなる見直しを含め、検討を進めてまいりたいと考えています。

 また、基本方針の第二として、法曹人口の大幅な増加、裁判所等の人的体制の充実、法曹養成制度の見直しなど、司法制度を支える体制の充実強化が掲げられています。

 司法制度の充実強化を図る上で、多数のすぐれた法曹を確保することは最も重要な課題の一つであり、今回新たにその設置が提唱されている法科大学院が、質量ともに豊かな実務家の養成にこたえるものとなることを期待しています。裁判所としても、これまでに蓄積した実務教育のノウハウをもとに、法科大学院の教育内容が充実したものとなるよう積極的に協力するとともに、裁判所が所管する司法修習について、法科大学院との連携の上に立った、多数のすぐれた法律実務家を養成するためにふさわしい制度となるよう、その改革のあり方を検討していきたいと考えています。

 法曹の質と量の拡充を図る上では、国民に最も近い立場で多様な活動をする弁護士の機能の拡充が極めて重要であると思われます。国民のニーズに沿った弁護士、弁護士事務所の機能のあり方、さらには弁護士会の果たすべき役割のあり方についての改革が進められることを期待しています。

 裁判官のあり方についても、この法案において、裁判官制度の整備等を図ることが基本方針の中で触れられており、改革審議会の意見でも、高い質の裁判官を安定的に確保するための改革の方向性が示されました。裁判所は、既に改革審議会の審議の場において、改革の方向性について種々の提言をしたところでありますが、改革審議会の意見書の趣旨に沿って、よりよい裁判官制度を築いていくための改革に積極的に取り組んでいきたいと考えています。

 裁判所は、現在の裁判官の任用制度のもとで、これまで、中立公正な裁判をひとしく実現するため、全国にすぐれた裁判官を配置することに努めてまいりました。今後とも、このような裁判官の資質をより高いものとし、国民の信頼を確保していく必要があることに変わりはないと考えております。

 しかし、率直に申し上げて、現在の裁判官の任用制度、養成制度には、時代の趨勢に従い見直すべき点が生じていることも否めないように思われます。複雑多様化する社会状況の中で、さまざまな事柄を的確に理解し、妥当な判断を形成する上で、裁判官がこれまで以上に柔軟な思考と幅広い識見を身につけることが重要なものとなっています。そこで、若い裁判官に多様な経験を積む機会を提供するとともに、弁護士任官を推進するなど、さまざまな経験を有するすぐれた人材を裁判官に任用していくための方策等について積極的に取り組んでいく必要があると考えています。また、裁判官人事についても、国民に対する説明責任を果たすという昨今の要請にこたえていく必要があると考えています。

 さらに、今述べたような各種の手続制度の改革を実効あるものとし、司法制度の機能を大きく向上させ、国民のニーズにこたえていくためには、裁判制度を担う裁判官の増員等、裁判所の人的体制のさらなる充実強化を図っていくことが不可欠であります。

 基本方針の第三として、国民の司法制度への関与の拡充等のため、国民が裁判官とともに刑事訴訟手続に関与する制度の導入等を図るという方向性が示されています。

 裁判所の視点から見ましても、司法に対する国民の信頼を深め、その信頼をより強固なものとし、司法制度の基盤を強化していく上で、このような国民の司法制度への関与の拡充等は大きな意義があるものと考えています。この問題は、我が国の司法制度の根幹にかかわる重要な問題であることから、適正な手続と真実の発見という裁判の本質を見据えつつ、国民の負担を十分に配慮したすぐれた制度が考案されることを期待しています。

 今回の法案の目指す司法制度改革は、利用者である国民の要請にどのようにして的確に対応していくかということが基本となると思われます。

 今回の改革において検討すべき課題は司法制度のあらゆる分野にわたっており、その実現は、法曹三者のみならず、多くの組織と機関、ひいては国民全体の理解と協力を得ていくことが必要であります。そのためには、施策の実施に当たって生じるさまざまな問題点を明らかにし、国民の理解を得ていくように努めていくことが言うまでもなく重要であると考えています。

 この法案では、改革推進本部の設置期限は三年とされ、政府は改革推進計画を定めることとされています。政府におかれては、この法案の成立を期すとともに、司法制度改革を実現するための方策の具体化につき鋭意検討を進め、三年以内を目途に関連法案の成立を目指すなど所要の措置を講ずるとの方針を定められたと伺っていますが、今申し上げた視点から検討が進められるべきと考えております。

 最後に、今回の司法制度改革に対する国民の期待は、これまでになく大きいものがあると思われます。裁判所としましては、国民のニーズに沿ったあるべき司法制度の実現を目指して、政府及び国会における検討に協力するとともに、裁判制度の運営にかかわる課題について、裁判所職員が一丸となって計画的かつ積極的に改革を進め、司法権を担う国の機関としての責務を果たしてまいりたいと存じます。

 以上、司法制度改革推進法案について意見を述べさせていただきました。(拍手)

保利委員長 ありがとうございました。

 以上で御出席の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

保利委員長 これより参考人等に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松宮勲君。

松宮委員 自由民主党の松宮勲でございます。

 半世紀ぶりの我が国司法制度の大改革の劈頭に当たりまして、四人の参考人の皆様方に大変お忙しい中御出席賜り、そして非常に傾聴に値すべき大変貴重な御示唆をちょうだいいたしましたこと、まずもって心より厚く御礼申し上げさせていただきたいと存じます。

 時間の関係で、私は、二、三点にポイントを絞って素朴な御質問をさせていただきたいと存じます。

 今度の我が国司法制度の改革は、二年余にわたります審議会の結実が六月十二日に出されました意見書でございまして、この意見書を踏まえて、いよいよこれを詳細設計し、そして家に例えますならば家のビルディングを図る、しかも時間は三年間という限られた中でいかに公平かつ効率的に家の大建築を図るかということが、法曹界の関係者のみならず、私ども立法府に課せられた大変大きな課題だと認識をいたしております。

 かつまた、多くの参考人の方々から御指摘いただきましたように、我々立法府といたしましても、皆様方の御意見をしっかりと受けとめさせていただきながら、本当に国民に開かれた、いわば国民の、どなたか参考人の方がおっしゃいましたように、人間としての尊厳と、その尊厳を保持し増強していくバックボーンであるべき基本的人権の擁護というのをやはり基底に据えつけた、しっかりとした、新しい時代にふさわしい司法制度の構築ということが私ども立法府に課せられた課題だろうと思いますし、それを裏づけるものといたしましては、時間がございましたらまた後ほど述べさせていただきたいと存じますが、推進法案の第六条に記されているところの、所要の立法措置とともにやはり財政的裏づけの確保、これは基本的には行政府の権限マターではございますけれども、予算の審議というのは私ども立法府にあるわけでございますので、我々としても、真正面から受けとめさせていただいて、誤りなき対応を図らなければいけない、その思いを強くさせていただいた次第でございます。

 今度の意見書、意見書を踏まえてこれから立法化されるであろうさまざまな法案の大出発点となります今次推進法案、全般についての私の感想をほんの一言申し上げさせていただきますと、規制の撤廃とか緩和等、我が国をめぐる内外の環境の激変を受けて云々というくだりで始まっておりますが、個人的には、私自身は、何も、司法制度の改革というのは、それがメーンのドライビングホースではないだろうという気もいたしておりまして、もとより、どなたかの参考人がおっしゃいましたように、現在の我が国の実情に照らしても、やはり小さな司法でございまして、国民の潜在的な司法に対する期待というのはもともと大なるものがあったけれども、これを顕在化し得る状況まで至っていなかったということでもございます。

 それから、世の中は今グローバリゼーションとか規制緩和一色で飾られているようでございますが、私は、やがて物事というのは揺り戻しがあるような気がいたしておりますし、我が国には我が国の、この四つの島で二千何百年培われてきたところの人間としての生きざまというのもありますし、それが化体されて、経済を初めとするいろいろな人間の営為がこの国で展開されているわけでございますので、それにふさわしい、日本的な歴史と私どもの民族のマインドを踏まえた、しかも国際的に通用するような新しい司法制度の構築というのが時代の要請かな、こういうようにも愚考しているところでございます。

 それはさておきまして、私は、今回の司法制度の改革の大きな眼目、幾つかございますが、最も大きなものはやはり法曹人口の増大だろうと思っております。

 新しい時代にふさわしい皮袋の形成をするにいたしましても、その皮袋に盛るべきお酒、モルトがどうなるかによって、司法制度の改革の成否はもうほとんどこれに帰するわけでございます。

 そういう中で、約十年後、二〇一〇年には司法試験の合格者を三千人、そして二〇一八年ごろには法曹人口を現在の二・五倍の五万人に持っていくということで、私は、需要に照らしますとそういう数がまあ妥当かなというある種の感触は持っておりますが、問題は質と量のバランスの問題でございます。

 そこで、まず久保井参考人に御質問させていただきたいと存じますが、日弁連さんは、中でのいろいろな御議論を踏まえて、司法人口の拡大ということに対しても大変大きな決断をされたと伺っております。確かに、弁護士さんの偏在の問題、あるいはこれから高まるであろう弁護士さんの国際競争力に耐え得るだけの新しい事業の拡大への対応と、たくさん課題がある中で、この法曹人口の増大、そしてその法曹人口の増大を裏づける最も中核的な柱としてのロースクールのありようについて、改めて日弁連としての御意見なり御注文等がございましたら、お聞かせいただきたいと思います。

 あわせて、戒能参考人に御質問させていただきますが、参考人は先ほど、現在の大学の法学部と新しくつくられるであろう法科大学院との関係、あるいは、そこに若い、将来の志を持った人が数年間束縛されるということになるならば、それなりの経済的裏づけも必要になるというような問題もございますし、それから、お二人とも、時間の制約でお触れにはなりませんでしたが、いずれも関係するのは、法科大学院を全国各地につくっていくとなったら、その法科大学院のある種の競争原理と同時に、それぞれの個性をどう発揮させていくかということで、それを裏づけるのはやはり今度はティーチングスタッフの確保の問題だろうと存じますけれども、その辺につきまして、戒能参考人の御意見をまずお伺いさせていただきたいと存じます。

久保井参考人 ロースクール、いわゆる法科大学院のありようについては、日弁連といたしまして大変関心を持っております。

 おっしゃいますとおり、法曹人口を現在の千人から十年後に三千人、そういう方針が出ておりますが、それを受け入れるについては、当然法曹の質を落としてはならない、質を高めていかなければならないということが条件であります。

 ただ、一つだけコメントさせていただきますと、三千人という数字は、確かに現在と比べますと三倍でありますから大きいですけれども、しかし、諸外国と比べますと決してとてつもなく大きい数字とは言えない。例えば、アメリカとかヨーロッパはさておきまして、アジアにおける韓国なんかが一つの比較になると思いますが、人口が日本の三分の一の国でありますけれども、法曹人口を来年から千人にする。日本は十年後に三千人ということですから、人口比からしますと、韓国は既に日本の三千人を来年から採用するというような方針を打ち出しておりまして、そういうものと比べますと、我々もやはり、しんどくともこれを受け入れていかなければならない。弁護士会にとっては、確かに、人口が急激にふえることについては重い側面はございますけれども、しかし、歯を食いしばってやはり受け入れていくということが必要だと思います。

 それから、人口がふえることは質を落とすという御心配はもっともでありますけれども、しかし、切磋琢磨して競争するということによって、勉強もしなければならない、やはり社会に役に立つ弁護士、そして利用者に利用してもらう弁護士になるために弁護士同士が競っていく、そういうプラスの面もございますので、競争が激しくなれば質が落ちるとばかり言えないという点も御理解いただきたいと思います。

 さて、ロースクールですけれども、今、二〇〇四年の開校ということが既に決まっておりますから、それに間に合わせるべく関係者の努力がなされておりますが、私は、日弁連として二つの点に注文をつけたいと思っております。一つは、ロースクールのシステムの問題であります。

 現在検討中のロースクールが安易な方向に流れる危険性があるのではないか。つまり、現状の法学部を中心として、その上にちょこんと二年制の大学院を乗せるだけで済ませる、そういう傾向が若干出てきているのではなかろうか。しかし、それは本来、ロースクールをつくる目的からいうと、そんなことではいけない。

 ロースクールをつくる目的の一つに、法学部を超えた他学部、理科系を含め、理学部、工学部、あるいは経済学部、そういう他学部の出身者も広く弁護士を初めとして法曹界に受け入れる。そういうことをしなければ、国際的な知的財産権の法的な紛争にも耐えられない。

 日本の弁護士は物理がわからない、化学がわからない、国際的な条約についての理解もできていないということでは困るわけでありますから、そういうすそ野を大幅に広げていく。そしてタフな法律家、役に立つ法律家をつくるという意味で、既存の法学部を前提とすることでなくて、少なくとも半分ぐらいは他学部の出身者、社会人がこぞって入学をするような、そういう形にすることによって幅広い法律家を養成する。そういうことが必要で、その意味からすると、既存の大学の上に二年制の大学院をちょこんと乗せるのではなくて、三年制の独立したプロフェッショナルスクールをつくるという審議会の意見書の方針、原点に戻っていただきたいというのが一つであります。

 それからもう一つは、実務を重視した、ちょうど日本の医学部は基礎医学と臨床医学の融合した形でかなり成功していると私は思いますけれども、ロースクールでは、今までの知識偏重の教育ではなくて、実務に根差した教育。それには、我々弁護士がすぐれた教官をたくさん派遣するという責務が前提になりますけれども、そういう実務に根差した教育ということを前提に構築してほしいということ。現在の予備校のやっている知識の詰め込みを、予備校と同じように大学院がやるというようなことになりかねない。そういう生きた、社会に役に立つ実務教育を基盤としたロースクールにしていただきたいということであります。

 それがシステムに対する注文でありますが、もう一つの大きな柱として、先ほどから出ておりますけれども、金持ちだけしか行けない学校にしてもらっては困る。今の受験生も、ややもすれば、合格率が二%ということですから、金持ちの息子でなければ長年の浪人生活に耐えられないということがありますから、現状でも金持ちだけしか法律家になれないのではないかという批判はございますが、ロースクールになった場合、それをそのまま金持ちの子供でなければ行けないということになってはいけない。そのためには、どうしても国の財政的な措置、奨学金制度の整備、その他貸付制度、さまざまな工夫が要ると思いますけれども、将来の日本社会を背負う法律家の養成のために、ロースクールについてそういう財政的な強い御支援をいただきたい。

 その二点でございます。

戒能参考人 松宮議員、御質問ありがとうございます。私が時間がなくて申し上げられなかったことを言わせていただく機会を与えていただいたことになりますので。

 今、久保井会長からございましたように、今回の司法制度改革の帰趨、成否は、私はやはり法科大学院が成功するかどうかにかかっていると思うのですね。久保井会長がおっしゃったように、日本のローヤーは、法律はわかるかもしれないけれどもおよそ自然科学の知識がないとか、そういうことは私は何も法科大学院をつくらなくてもできると思うのです。

 一例を挙げますと、例えばイギリスでは、学部段階で法曹教育が行われまして、そして、その後にバーエグザムとかローソサエティーの試験がございますけれども、学部段階で自然科学とか経済学とか、そういうさまざまな科目を配置して、その中で自然科学の分野についてもやれるようになっていますし、それから、そもそも自然科学の学部を出た人も、一定の試験を受ければローヤーになるための資格試験を受けられることになっています。

 そういう意味で、私は、法科大学院をつくるということの主要な趣旨が、もし自然科学等々の分野からもローヤーが出るためにつくるということであれば、これはやはりそういう問題ではないだろうというふうに思うのです。つまり、法科大学院をつくるという趣旨は、そうではなくて、やはり現在の法学部では法律実務をこなせるような、少なくともそういうローヤーの卵を養成することはできないだろうという、どうも法学部不信があるのではないかと私は思うのですね。

 しかし、果たして法学部教育だけではあるべき法曹養成ができないかというのは、確かに法学部教育の問題があって、それが一方では司法試験予備校等々の隆盛を導いたとか、そういうことはあることは事実ですけれども、しかし、多くの法学部では、やはりあるべき法曹を目指す、そういう学生をどうやって養成するかという非常な努力を続けてきたわけです。

 そういう意味で、私が申し上げたいのは、法科大学院をどういうふうに設計するかということが実は一番、まだ不透明な部分が非常にたくさんあって、そしてそれは確かに司法制度改革審議会で一定の枠は出されましたけれども、そのことについてやはりもう少し専門的な詰めがぜひ必要だということを申し上げたいわけでございます。

 現在、中教審の方で、法科大学院の例えば設置基準等々の審議が進んでいると聞いておりますけれども、先ほど若林さんからもございましたような、司法制度改革審議会に見られるような透明性はないのですね。実は、それではどういう基準が今議論されているか、全く私たちには伝わってこない。つまり、これだけ大事な問題というのはぜひ公開していただいて、そしてこれはまさに大学にいる我々のような者が検討する機会を与えていただきたいというふうに思っています。

 それから、もう一つ考えていただきたいのは、多分、司法制度改革審議会の考えている法曹というのは、単なる弁護士さんとかいわゆる法曹だけを考えているのではなくて、例えば皆さんのような政界に進出するようなローヤーとか、つまり、アメリカのローヤーというのは、これは決して法曹だけではないわけでして、例えば現在では議員のほとんどがローヤーでもあるというようなこととか、そういうように、政界への進出あるいは公務員の世界への進出、あるいは企業とか、あらゆる分野に進出していっているわけです。

 ですから、今の法学部、あるいは法曹あるいは法曹養成ということを考えますと、大体それは法曹になることを前提にした教育になっているわけですね。どうもそれではやはりだめだというのが法科大学院の理念であって、そうだとすると、それでは今の法学部の教員だけでそれができるかということが非常に大きな問題として出てくると思うのです。

 それから、最後にもう一点言いたいのは、司法制度改革審議会は、特に司法試験という一発試験のみで法曹資質を判断するのではなくて、プロセスとしての判断にしようというふうに言っているわけですね。これは非常に重要なことで、実は私もまたそういうことができればいいと思うのですが、プロセスにおける教育判断というのは日本ではまだ成功した例はないと言われているのですね。それほど難しい。プロセスによる養成ということがどれほど大変なことかということは、これは我々は身をもって感じているわけでございまして、プロセスによる判断ということであれば、果たして二年ないし三年の法科大学院でいいのかということがあると思うのですね。

 もちろん、学部段階も含めてプロセスという議論がございますけれども、私は、例えばその中で法学部教育と連続した法科大学院というものがあってもいいと思うのですね。

 現在の司法制度改革審議会の御提案によりますと、法学部教育と連続した法科大学院は基本的に認めないという方向になっているわけです。つまり、それはなぜかというと、これは開放性、公平性とかそういうふうになってくるわけでして、もし法学部教育から連続しますと、それはどうしても自分の大学の卒業生を優遇することになるのではないか、そういう論理なんですね。

 それは私は非常におかしいと思うわけでして、やはり法学部教育と法科大学院は連続すべきだ、そういう法科大学院もあってもいいのではないかと思うのですね。ですから、私は、法科大学院の多様性というのは、そういうものも含めた多様性ということをぜひ検討していただきたいというふうに思っています。

 まだ言いたいことはございますが、一応以上です。

松宮委員 ありがとうございました。

 もう一点だけ。本来、二、三用意していたのですけれども、時間の関係で一点、若林参考人に御質問させていただきたいと存じます。

 先ほど、今回の審議会の意見書が非常に画期的な内容になったゆえんについて、基本的には非常に開かれたプロセスでオンゴーイングの過程を経てきたという御指摘がございまして、私もまことにそうだなという感じがいたしております。

 ただ、この意見書を踏まえて、これから本格的に内実となる司法制度改革を実現していくためには、私は、やはり国民全員が自分たちの問題としてこの司法制度の改革を受けとめて、そしてアクティブに参加するプロセスをまた構築していくというのが大事な課題だろうと思っております。

 ところが、私の感じるところでは、今回の幾つかの大事な改革のポイントの一つとして指摘されております、まさに刑事裁判における裁判員制度の導入でございますけれども、無作為抽出というプロセスを経てやるにしましても、国民で、今この改革の方向を存じておられる方というのは、恐らく十人のうち一人もいらっしゃらないだろうという感じがいたします。

 そこで、端的にお伺いいたします。

 どのようにして、これから限られた時間で国民に開かれた司法制度を構築し、そして支えていくためには国民もまたそのバードンシェアリングをしなければいけないのだ、そういうマインドを醸成していくすべというのを、マスコミで御精通していらっしゃいます若林参考人から御示唆いただきたいと存じます。

若林参考人 問題認識は私と共通しています。確かに、審議会が意見書を出しました後、この司法改革問題が報道される量、新聞の紙面でも私ども放送でも少なくなってきていることは確かなんですね。私は非常に単純に考えているのです。結局、報道される量によって国民の関心が高まるのではないかというふうに思っているわけです。

 ではどうしたら報道される量がふえていくのか。それは、やはり同時進行的に、そこで検討されている内容、議論されている内容がどんどん発信されていく、そしてそれに対する反応が返ってくるというダイナミズム、双方向のコミュニケーションのプロセスがあって初めて国民に浸透していくのだろうと思うのですね。

 この審議会の中で一度、三日間、朝から夕方まで集中討議をやったことがありました。そのときは、会場の都合ということで、実は傍聴ができなかったのですね。そこで、傍聴ができなかったときに大変重要な決定がなされたのですが、法曹人口の増加でありますとか裁判官制度の改革といった大変重要な意見交換がなされましたが、終わった後私たちにレクチャーがありました。しかし、中で語られている内容というのはなかなか、二、三十分のレクチャーでは私たち理解できないことが多かった、そのために必ずしも正確な報道がなされなくてきちっと伝わらなかったという経験を私も持っています。

 ぜひ同時進行での公開ということの重要性を理解していただき、そのことが国民の理解を得るゆえんになるのではないかというふうに思っています。

松宮委員 ありがとうございました。以上で終わらせていただきます。

保利委員長 次に、佐々木秀典君。

佐々木(秀)委員 民主党の佐々木秀典です。

 きょうは皆さん御苦労さまでございます。

 時間が限られておりますので、端的に質問に入らせていただきたいと思います。

 最初に、日弁連久保井会長にお尋ねをいたしますが、先ほど久保井会長のお答えで、ちょっと誤解を招くのじゃないかなと思いますので申し上げておきますと、法曹人口が千人から三千人にふえるというのは、これは年間ですね。一年間で新しく法曹になる人口が、今大体千人なのが今度は三千人にふえる、こういう趣旨ですね。

 そこで、実は今度の司法改革に対して、日本弁護士連合会そして所属する弁護士さんたちも、社会的責務を自覚しながら非常に積極的に取り組む姿勢を持っておられることはよくわかりました。このことは、この意見書が出たときの日弁連久保井会長談話でもわかりますし、その後の理事会だとか総会での御議論を通じてもわかることなんですね。

 ところが、この推進法を見ますと、第四条で「日本弁護士連合会の責務」という規定がございます。何も政府でつくるこの法律の中にわざわざ日本弁護士連合会の責務を書かなくたって、既に日本弁護士連合会の決意というのは、今のさまざまな方法によって国民の皆さんに伝達されているのだから、こういう規定を置く必要はないのではないか。この規定があることによって、行政だとかあるいは政府から強い自治権を持っている弁護士会に対して干渉だとか何かの契機になるのではないかという心配を、実は私どもも感じますし、それからまたいろいろその点について御意見を言う方もあります。弁護士さんの中からもそういう声が聞こえてまいります。

 それと、これは後で戒能先生にもまたお尋ねをしたいのですが、第一条の目的。これは先ほど戒能先生も若林さんも述べられましたけれども、この目的条項に「国の規制の撤廃又は緩和の一層の進展」などなどと書いてあって、こういうような目的との関連で司法改革が行われていくんじゃないかということになると、第四条の日弁連の責務もやはりこの枠内でということと関連してくるんじゃないか、これも問題があるんじゃないか。

 私は、この間、十八日の代表質問で、先ほど御指摘がありましたように、本来司法の目的、役割というのは、弁護士法の第一条に言うように、人権が擁護されるべきこと、社会正義が実現されるべきこと、それから行政に対する司法の優位、それが私は法の支配だと思っているんですが、その法の支配が貫徹されなければならない。そういうことのための改革でなければならない。というのは、実は現状がそういう点において不十分であるからだ、こう認識しているんです。

 そこで、久保井会長に、今の私の質問、特に第四条を置かれたことについて、恐らく弁護士会の中でもいろいろ御議論があったと思うんですけれども、これについてどう受けとめどう対応されるおつもりなのか、お聞かせをいただきたいと思います。

久保井参考人 今、佐々木先生から御指摘いただきました法案の第四条の責務条項が最初に法案として示された段階で、弁護士会の中で御指摘のような心配をする御意見もございました。そこで、私ども十分にいろいろ検討いたしましたけれども、これはやはり素直に受けとめるべきではないかと。つまり、十年来にわたって司法改革を我々頑張ってきたその活動の実績を評価していただいて、この実現段階でますますその役割を積極的に果たしてほしい、そういう期待をしていただいているということで、やはりこれはそういう役割を与えていただいたことについて素直に受けとめるべきではないかということになりました。

 もちろん、弁護士会が十分に活動していくためには、行政の介入あるいは政府の介入があってはなりません。したがいまして、この実現過程においても、我々は、そういうものがもしあったとしたら、全力を挙げて弁護士自治を守り抜くつもりであります。

 また、この条項があるために、司法改革のあり方、つまり一条との関係で、おっしゃるように規制緩和という言葉がぎらついておるという御指摘ですけれども、我々としては、やはり規制緩和が一つの契機になったかもわからないけれども、究極的には司法は人権擁護と個人の尊厳を確立するための制度であることは先生御指摘のとおりでありますので、そういう危険性をはねのけてやっていく、正しい司法改革を実現するために頑張っていくということで、最終的には、理事会も含めて、弁護士会ではこれを積極的に受けとめることにさせていただいた次第です。

 以上のとおりでございます。

佐々木(秀)委員 もっとお尋ねしたいのですが時間がありませんから、それでは次に戒能参考人にお伺いしたいと思います。

 さっきお触れになりましたように、今の私の質問でも触れたのですけれども、本法の第一条の目的条項で、国の規制の撤廃、緩和ということがある。一方、人権擁護だとか正義の実現ということが書かれていないんですね。この点、この間の代表質問では、内閣総理大臣にかわって官房長官が、いや、司法の役割として基本的人権の擁護は大事だと。そういうことはうたってはおられるんだけれども、しかし、私は、規制緩和という言葉がこの間の審議会の意見書の中でも必ずしも第一番に出ているとは思えないんですよ。「政治改革、行政改革、地方分権推進、規制緩和等の経済構造改革等の諸々の改革に取り組んできた。」その上で国民の自主自律などの点からと、こうなってくるんですね。

 だから、意見書を受けての今度の立法であるにしても、この規制緩和のということが余りにも前面に出過ぎているのではないかという心配があるんですけれども、その点いかがお考えでしょうか。

戒能参考人 佐々木委員の御見解に私も同様の危惧を抱いています。

 この一条は、これこそまさに司法制度改革審議会の理念を集約してうたうべきだと思いますから、ここになぜ規制緩和というのが最初から、要するにこれは司法制度改革審議会の言葉でいえば事後監視型社会、そういう言葉、要するに、規制緩和することによってさまざまな被害がその結果として起こるであろう、それを救済するのが司法だという、どうもそこだけを持ってきた。司法制度改革審議会はそれだけを言っているのではなくて、先ほど私が言いましたように、私には非常に不満ではございますけれども、例えば公共性の空間とか、あるいは、市民が自律していく社会を構築、そのための司法の役割ということを言って、そしてその中で法の支配ということを言っているわけですね。その法の支配という言葉も消えてしまっている。これは一体どういうことなのかというのは私は非常に疑問に思います。

 それから、今、久保井会長のお答えではございますが、そういうことを前提にした場合に、この第四条というのは弁護士自治との関係で一体どういう意味を持つかということは、私はそのインプリケーションについては非常に危惧を持ちます。例えば、綱紀についての問題とか懲戒問題について、御存じのように大変な論議があるわけでして、これに例えばどういう方を加えていくかということはこれは大変大きな問題ですけれども、そういう意味で、例えばそれにもし弁護士会が応じない場合にこの四条というのはどういう意味を持っているかということは、私は非常に危惧を感じます。

 したがって、司法制度改革審議会からこの推進法に至るときにいろいろな理念的なものが抜け落ちてしまっているというように私は理解しているわけでして、その点をさっき委員は突かれたんじゃないかというふうに理解します。

佐々木(秀)委員 そこで、先ほど裁判所堀籠事務総長からも司法改革に取り組む裁判所の決意をお伺いをいたしました。お話によりますと、裁判所としてもこの意見書を評価して、そして、目指す方向は大体同じだということで、積極的な協力、御努力をなされるとともに、みずからやるべきことについてもやる、こういうお話でしたね。

 お聞きをいたしますと、実は、この意見書が出た後、九月とお聞きしておりますけれども、最高裁判所は、人事制度のあり方研究会という研究会を設けて、既に裁判官の人事制度について検討を始めている、こういうようにもお聞きをしているわけですけれども、これはどんな構成で、まだ日は余りたっておりませんけれども、どんなことについて話し合われ、これからはどんなことについて協議をなされようとしておられるのか、その辺をお差し支えなければお知らせいただきたいと思います。

堀籠最高裁判所長官代理者 最高裁判所は、委員御指摘のように、事務総局に裁判官の人事評価のあり方に関する研究会を設置いたしまして、裁判官の人事評価のあり方全般について調査検討をすることといたしました。

 司法制度改革審議会において、評価権者及び評価基準を明確化、透明化するなど、可能な限り透明性、客観性を確保するための仕組みを整備すべきであるとされたところでございます。

 この点につきましては、最高裁判所といたしましても、既に司法制度改革審議会の中で、人事の透明性の要請が社会一般における最近の流れであるとの認識に立って、諸外国の制度等も参考にしながら、現場の裁判官の意見も十分に聞いて、裁判官の人事評価の検討を進めたいという考え方を明らかにしてきたところでございます。

 そこで、このたび、司法制度改革審議会の意見を踏まえまして、裁判官の人事評価の制度の具体的検討の一環といたしまして、裁判官の人事評価のあり方全般について多角的に調査検討するため、事務総局に研究会を設置することといたしました。このメンバーは、元最高裁判所判事の大西勝也弁護士、それから元日本弁護士連合会事務総長の稲田寛弁護士、それから元広島高等検察庁検事長の弁護士の緒方重威弁護士、それから読売新聞社調査研究本部主任研究員の金丸文夫氏、それから学習院大学法学部教授の長谷部由起子教授、それから裁判官の立場ということで、東京高等裁判所部総括判事の吉本徹也判事、それから東京地方裁判所部総括判事の福田剛久判事、この七名で構成しておりまして、第一回の研究会は九月に開催いたしまして、およそ一年程度の予定で調査検討することになっております。

佐々木(秀)委員 ありがとうございました。

 メンバーについて具体的にお示しをいただいたことは結構だったと思いますが、しかし、この研究会、今透明性をということを強調されました。だとすれば、私は、研究会で話し合われている内容などについても国民の皆さんにお知らせするのが非常にいいんではないかと思うんですね。ところが、従来、どうも最高裁は、今人事評価とおっしゃいましたけれども、人事の問題については司法行政の秘密だということで一向に明らかにされませんでした。

 実は、きょう久保井会長の後ろには宮本弁護士、宮本康昭元裁判官がおられます。忘れもしない昭和四十六年、宮本元裁判官は判事補から判事に任官されるときに任官を拒否されました。しかし、その任官拒否の理由については全く明らかにされませんでした。当時、矢口さん、人事局長だったですかね、ここに証人としてお出になったけれども、ついに人事の秘密だといって明らかにされないままに、まことにわかりにくい再任拒否が行われたわけですね。

 そういう例を見ても、私は、今本当に大事なのは、最高裁判所が司法改革を言うのだったら、こういうことについてやはり透明性を出していかないと国民の皆さんから信頼されないと思うんですね。ですから、これからそういう審議の内容についても、どんな方法で透明性を確保していかれるのか、その点を、簡単で結構ですから、お話しいただきたい。

 それともう一つだけ。さっき裁判所としての責務ということをおっしゃった。第三条に国の責務がありますが、裁判所の責務という条項はありません。しかし、お話を承ると、この第三条の中に裁判所の責務というのは当然入っているんだ、こういうようにお聞きしていいか、これもあわせてお答えください。

堀籠最高裁判所長官代理者 まず、裁判官の人事評価のあり方に関する研究会でございますが、これは、司法制度改革審議会では最高裁判所が検討すべきということになっておりましたが、広く民間の方の意見を聞いた方がいいということで民間の有識者の方を入れた研究会でありますが、これは研究会の委員の皆さんの了解を得まして、研究会の検討の過程の概要は公表するとともに、研究会の結果は公表するという了承を得ておりますので、そういうことになると思います。

 それから、再任の問題でございますが、これは、私どもも下級裁判所の指名諮問委員会というものを設けるべきである、その指名諮問委員会では、当然そこで審議され、そこの意見によっては、場合によったら本人に開示ということも検討されるのではないかというふうに期待しております。

 それから、裁判所は国の機関でございまして、国といった場合には、国権の最高機関である国会と同様、裁判所も入るということで、裁判所は協力していきたいと考えておるところでございます。

佐々木(秀)委員 もう一つお尋ねしようと思ったんですけれども、時間がありませんので、要望だけ申し上げておきます。

 裁判官の給源として広くということです。特に、最も考えられるのは弁護士から裁判官にということですね。これについては現在も御努力されていると思うんですが、これからも恐らく弁護士会と十分協議をなすって、できるだけ多くの良質な弁護士さんに裁判官になってもらうという御努力をぜひやっていただきたい。これは弁護士会と最高裁判所の両方にお願いをしておきたいと思います。

 時間がありませんので、最後に若林参考人にお尋ねをしたいと思います。

 若林参考人は情報の公開ということを非常に強調されました。また、私どもとしても評価しておりますけれども、審議会がすべて議事をリアルタイムで公開したこと、本当によかったと思っておりますが、実は、当初は事務局では多少その点については難色があった。それを克服して全部をということについては、若林参考人を先頭にして、マスコミの方々が大変努力をされたということを聞いております。

 今度の場合は、いよいよ法案づくりということになると、その法案作成の密行性などということがまたもう一つの問題として出てきて、審議会の場合とは違うんだよというようなことにならないとも限らないということを私どもは心配しておるんですね。

 本当に全部公開されればいいと思っているんですが、この辺についてどうお考えなのか、どういうようにしていったらこの公開が実現できると考えておられるか、この辺をお尋ねしたいと思います。

若林参考人 実際にどのような推進体制ができるかまだわかっておりません。その推進体制ができて、検討過程、検討の仕組みが明らかになった段階で、私どももぜひ公開をという努力はしていきたいというふうに思っております。

佐々木(秀)委員 いろいろまだお尋ねしたいことはたくさんあったんですが、時間が限られておりますのでこれで終わりにしたいと思います。

 きょうは、四名の参考人の皆さん、いろいろ私どもにお教えをいただきましたし、また最高裁判所が現に取り組んでおられることなどについてもお聞かせをいただきました。これから、あす、あさってとまたこの法案の審議に入りますので、きょうお伺いした御意見などを参考にしながら、しっかり私どもとしても取り組んでいきたいと思っております。

 ありがとうございました。

保利委員長 次に、漆原良夫君。

漆原委員 公明党の漆原でございます。

 きょうは、四人の先生方、本当に貴重な御意見ありがとうございました。

 まず久保井参考人からお伺いしたいんですが、一点目は、弁護士会において、弁護士が大幅に大変飛躍的な増大をするということは、ある意味では大変な乱訴の危険性があるとか、それだけ仕事があるのかとか、会内で大変な議論があって、御苦労をされて取りまとめされたんだなということを本当に敬意を表しております。

 今のままの仕事のやり方で、あれだけふえる弁護士、多分やっていけないんじゃないかなと、私は今本当は率直のところ思うんですね。弁護士は訴訟活動が中心なんだ、訴訟活動以外のことはある意味では弁護士の本来業務ではないんだというふうな伝統的な考え方が、私もそうなんですが、あるわけなんですが、そういうものをもう変えていかなきゃならないと思うんです。

 そういう意味では、飛躍的な増大をした弁護士の今後の新しい弁護士像、どんなふうな社会貢献をしていくのか、そういうところについての御意見をまず承りたいと思います。

久保井参考人 お答えいたします。

 確かに、これまでの弁護士は裁判所の周辺に事務所を持っておりまして、比喩的に言うなら裁判所門前町的な存在であったと言われております。これを社会の隅々まで活動領域を広げていくということが現在課せられている大きな課題であります。

 例えば個人ですね。今まで顧問弁護士といえば大企業あるいは中小企業ぐらいしか顧問弁護士というのは置かなかったんですけれども、今や個人も、高齢化社会になりますと財産管理等で苦しんでおられる方もたくさんおられます。したがって、高齢者の介護に関するトラブルあるいは財産管理、そういう問題を弁護士会がやはり個人一人一人のホームドクターのような形で御相談にあずかる、場合によったらトラブルの解決を担当していく、そういうニーズが急激に今高まっている。

 それからまた企業におきましても、日本全体の企業の数が、正確なことは存じませんけれども、八百万とかお聞きしておりますけれども、顧問弁護士とか監査役という形で弁護士が関与させていただいているのはまだ一%かそこらだと。だから、適正な、適法な企業経営というものが今日の課題になっておりますから、弁護士はやはりいろいろな企業のお役に立つような形でやっていくということをこれからどうしてもやらなければならない。これは企業の適法経営ということを確保するためにも必要なことだと思っております。

 さらに行政の分野においても、最近、行政の中に弁護士を送ってほしいということで、国の中央省庁の方からもかなりの数の弁護士の要請をいただいておりますけれども、国だけでなくて、自治体関係でも弁護士の活動分野というのは年々ふえてきております。

 そういう意味で、いつでもどこでもどんな問題でも社会のニーズにこたえられる全天候型の弁護士、全方位型の弁護士に脱皮していくという方向でただいま努力しております。

 たまたま来月、広島で、二十一世紀の弁護士の活動分野をどう拡大するかというシンポジウムを全国的レベルで開催することにいたしておりますけれども、先生御指摘のとおり、ふやしていただいた人口を有効に国民のために活用するための努力をしていきたいと思っております。どうぞよろしくお願いします。

漆原委員 もう一点だけお尋ねしたいんですが、弁護士偏在の問題でございます。

 一人しかいない、だれもいないという地域がたくさんあるわけでございますが、ホームドクター的な弁護士ということであれば、どこにも気軽にだれでもいつでも相談できる、身近なところに弁護士がいる必要があるわけですね。しかし、また一方、弁護士は自由業ですから、仕事の多いところに弁護士がたくさん来るというのもまた自然の現象でございまして、先ほどの先生のメモには、偏在の解消として公設事務所というふうなものも書いてあります。

 確かに、公設事務所をどんどんつくっていただいて、そこに弁護士を派遣していただく、そして身近に法律相談あるいはリーガルサービスを受けられるというふうな体制づくりがぜひ必要だと思いますし、また、おのおのの弁護士も、公設事務所というと、半分何か仕事してあげているみたいな感じになりやすいものですから、自分の事務所を地方に持てるような、何らかのそういう措置ができないものなのかなというふうに私いつも思っているんです。

 そういう意味で、これは予算が伴うんですが、法律扶助という制度をもっともっと大きくする。私が、前にこの委員会で話したことがありますが、オーストラリアに行きまして、法律扶助の実態を弁護士事務所で聞いてみました。弁護士事務所の収入の何と六割が法律扶助で賄えるんだというふうな、全体の費用の六割を法律扶助事件で賄っているというふうな話を聞いて、そういうことであれば、どこでも、過疎地域でも弁護士事務所が開けるんだなと思って心強い思いをしたんですが、その辺について御意見があれば承りたいと思います。

久保井参考人 お答えいたします。

 偏在問題を解消するという点は、今、日弁連に課せられました最大の課題とも言えると思います。確かに、弁護士が東京、大阪に七〇%集中している、そういう状況にあります。

 そこで、平成八年に過疎対策宣言を打ち出しまして、とりあえず第一段階として、いわゆるゼロワン地域、弁護士がゼロもしくは一人しかいない地域に法律相談センターをつくるという運動から始めました。おかげさまで、各地の御支援をいただきまして、二百カ所、法律相談センターの設立をすることができました。

 昨年から過疎対策の第二段階に移りまして、公設事務所を全国につくりたいということで、第一号は島根県の浜田市につくりましたが、その後、次々と希望が出てまいりまして、短期間の間に五カ所、今設立の協定が成立している地域が十一カ所ございます。さらにまだ、自治体の方からうちにもぜひ来てほしいというようなところが出てきておりまして、これを早急にどんどん進めていきたいというふうに思っております。

 さらに、おっしゃるとおり、個人の弁護士の開業支援、公設事務所じゃなくて自分の事務所を自分で持つのに弁護士会に支援してほしいという要望もありますので、開業支援制度もつくりまして、十分な金額でないんですけれども、一般会員から集めた特別会費をもとにひまわり基金という基金をつくって、そこから開業支援もいたしております。

 しかし、根本的にはまだまだ不十分でありまして、そういう不十分を解消する策として、法曹人口の三千名増員ということは大変な負担でもありますけれども、そういうものをこれから生かしていきたい。

 職業選択の自由との関連がありますから、強制的に配置するというわけにまいりませんけれども、さまざまな誘導策、情報の提供、地方の方が働きがいがあるという声もあちこちから上がってきておりますので、そういう形で、偏在を一日も早く解消していく努力をしていきたい。法律扶助の予算をふやしていただくということは非常にありがたいわけですけれども、そのふやした予算を有効に活用するためにも、全国にそれを担う事務所をつくっていくということも必要だと思っておりまして、これからも努力をしていきたいと思っています。

漆原委員 ありがとうございました。

 戒能参考人にお伺いしたいと思うんですが、先生のレジュメの三番目に、今推進法を議論しているわけでございますが、推進法の中心は司法部の独立性の強化であるんだというふうな御指摘があります。ここのところをもう少し詳しく御説明いただきたいと思います。

戒能参考人 司法の独立の強化ということを申し上げたのは、一つは、この推進法案というのは、内閣総理大臣を本部長とする推進本部が指揮をして関連法案をつくっていくということですが、これは行政府の長が司法の問題を扱うということになりますので、非常に微妙な問題を含むわけですね。つまり、司法権と行政権の関係というのがあって、この法案上はやはり行政権優位構造になっていますね。それが第一点です。したがって、法案そのものの構造として、これは一種の憲法問題的なところがございますけれども、その配慮が必要ではないか。

 第二点目は、先ほどの議論にもかかわるわけですけれども、この司法推進法案の第一条は、さっきも申し上げましたが、規制緩和との関係において司法をとらえていくということですけれども、今、日本にとって必要なのはやはり行政に対するチェック機能、つまり司法部のチェック機能というのが非常に重要な役割を果たして、現に最近の裁判所は、そういう意味では少しずつ変わりつつあると思うんですね。

 それから、とりわけ、これは本委員会の職掌事項ではございませんけれども、公共事業のあり方とかそういうものについて、例えば日本では公共事業を途中でストップさせるための訴訟が構造的に保障されていないとか、それから、欧米では違憲立法訴訟に関する論議が非常に盛んであるわけですが、これはドイツとアメリカで特にそうなんですけれども、日本では違憲立法審査制というのはほとんど問題にもなってないということは、やはり司法権の独立との関係が非常にあるんじゃないか。

 最終的には、私は、今回の司法改革の中で一番ある意味では先送りされている問題として、やはり裁判官選任制度の問題があると思います。裁判官が、きょう来ておられるので非常に言いにくいんですが、最高裁事務総局のもとにいわばコントロールされているという状況にあるということは、司法部にとって、司法の独立をみずから否定してしまうことになっているんじゃないかというふうに私は思っているわけでして、そういう意味で、裁判官選任制度の改革というのが、推進法案そのものには書いてございませんけれども、最高裁の先ほどの御努力は伺いましたが、そういう点こそがやはり司法改革の最も根幹にかかわる、しかも重要な問題だというふうに理解しております。

 それが、司法権の独立について申し上げたかったことでございます。

漆原委員 ありがとうございました。

 続いて、若林参考人にお尋ねします。

 先ほどちょっと話がありましたが、裁判員制度でございます。無差別抽出でございますから、仕事もどんな仕事をしているか、能力があるかないか、男女の別、いろいろな要素を全部捨象して、とにかく無差別で、場合によっては選挙人名簿か何かで選ぶんだと思いますが、これが本当に実現できる社会的条件が整っているのかなという心配を私は物すごくしているんです。どうも、今現在見ても、前提の基盤を整える作業がなされていない。急にこれをやったとしても、裁判員が集まらなかったりして、本当にうまく実動しない可能性もあるんじゃないかなと思います。

 先ほど参考人がおっしゃいましたが、審議の過程をオープンにすることによって国民の意識を喚起して、これがみんなに知れ渡っていって、皆さんの意識が醸成されていくんだという趣旨の話がありましたが、何かもっと政府として力を入れてやる必要があるんじゃないかと思うんですが、重ねて御意見をお伺いしたいと思います。

若林参考人 裁判員制度が本当に日本の国民の中に根づくのかというのは、これからの最大のテーマの一つだろうと私も思います。

 ただ、幾つかの情況証拠といいますか、例えば検察審査会の現状を見てみますと、日弁連が検察審査会のメンバー経験者のアンケート調査をやっております。今手元に細かなデータは持ち合わせておりませんけれども、ある日突然呼び出された市民が一体どのようにその審査会にかかわっているか。私たちが想像する以上に、そこにかかわった国民、市民は、やはり自分の責任というものの重さを感じ、そして非常に真剣に議論、討議し、そして妥当な結論を出していくといったことが行われているやに聞いております。

 去年、アメリカの裁判官と話をしておりましたら、アメリカの裁判官が、陪審員裁判が終わった後、陪審員にどんな評議をしたのか自分はいつも聞くんだと。そうすると、自分が見たことのない、気づかなかった論点というのは必ずそこの中から出てきているし、それから、陪審員の議論というのは本当に真剣で、責任を持って自分たちの責任を果たすという非常に充実したものになっているということを語ってくれたんですね。その裁判官いわく、アメリカ人にできるんですから日本人にできないはずはありません、こういうふうにおっしゃっていました。

 私は、まさにそういうことだというふうに思うんです。どうも、今までの日本の社会というのは、市民、国民というものを信用しなさ過ぎたのではないかというふうに思っているんですね。国民の間にそういう条件が整ったらこの制度を導入してもいいんじゃないかという議論をしますが、これは百年たってもそういうことには多分ならないんだろうと思います。そういう制度をつくっていくんだと。それは、同じ共同体にいる市民として、国民としての責務としてそれにかかわっていくんだということが理解をされていく、そのまさに意思疎通のプロセスとしてこの制度ができていくだろうと思うんです。

 だんだん制度のアウトラインが見えていく、こういう議論が出ているよということを私たちは発信しますし、それに対するリアクションもあるということで国民の理解を得ていく、それ以外ないのではないかというふうに思っています。

漆原委員 御意見の中に、今回の審議会の内容が深まったその理由として、リアルタイムにオープンにしたからだというふうなお話をお伺いしまして、本当に感銘を受けました。この推進法案は、その公開性については何も規定がないわけでございますが、ここのところは、あしたから始まります審議の中においてきちっと、おっしゃるような意味でも担保をしていきたいなというふうに考えておるところでございます。

 最後に、堀籠参考人にお尋ねします。

 先ほど佐々木委員の方からも人事評価研究会の話がありまして、お伺いさせていただきました。ただ、これの公開については、ある意味では議事録とか結果だけの公開みたいな話というふうに私はお伺いしたんですが、審議の過程、内容まで、先ほどの話じゃありませんが、まさにリアルタイムにオープンにしていく御用意はないのかどうか。また、特に裁判所の中は一般国民には本当にわからないんですね。我々法律に携わっていても、裁判所の中身は全くわからないわけでございまして、どんな基準でどんなことで人事がなされているのかわからない。これは、やはり人事基準の明確化、きちっとオープンにしていくことが必要じゃないのかなというふうに思っています。この審議のプロセスまで、議論の中身までリアルタイムにオープンにすることができないのかなということで、これを一点、お伺いします。

 もう一つ、新しい制度、裁判員の制度なんですが、この方たちは全く法律に素人なわけですから、専門の裁判官を前に萎縮する可能性も十分あるし、そういう意味では、裁判官が本当に上手にリードをしていかないと、せっかくできた制度の中身がなくなってしまうという心配もあります。この点についてどのようにお考えなのか。

 二点をお伺いしたいと思います。

堀籠最高裁判所長官代理者 まず、裁判官の人事評価のあり方に関する研究会でございますが、これは、正規の委員会、すなわち国家機関としての審議会ではなくて、外部の民間の有識者の方の意見を聞いて最高裁事務総局としてどういう人事のあり方がいいかを定めるための、法的な位置づけでいえば懇談会に相当するものでございますので、各委員の意見というものが重要であるというふうに考えております。それで各委員の意見を聞きましたところ、検討の過程における意見、概要は発表していいということでありますので、この概要は発表することになると思います。それから、その結果も公表したいというふうに考えております。

 それから、裁判員制度につきましては、先ほど参考人から意見がありましたように、これから決めなきゃならない問題点がいっぱいあるわけでありまして、これは政府及び国会で十分議論していただくことになるわけでありますが、法律ができて裁判所が運営する責務を負った場合には、裁判員となった皆さんにわかりやすい方向で努力するために、裁判所といたしましても、懸命な努力をし、誠実にやっていきたいというふうに考えているところでございます。

漆原委員 これで終わります。四人の参考人の皆さん、どうもありがとうございました。

保利委員長 次に、西村眞悟君。

西村委員 自由党の西村でございます。

 まず第一に、国家制度としての三権分立の原則から見る司法の任務の観点から、事務総長と久保井会長にお尋ねいたします。

 言うまでもなく、三権分立における司法というものは、立法、行政とは利害関係なき第三者として離れた地位にありながら、根本規範によって行政及び立法の営為が合致しているのか否かを審査する任務を負っております。

 現憲法上も、七十六条から八十一条までは、裁判の独立と裁判官の良心、そして最高裁判所が独自に規則を制定し得るという憲法上の権限を決めたものでございます。

 その意味から申しまして、今回の法案は、司法改革の推進計画案の作成及び推進本部の本部長、副本部長、本部員、すべて行政の、内閣総理大臣を初めとした人員によって占められ、そのほかの人員は一切入っていないのでございます。

 なぜ事務総長と久保井会長にこの件についてお尋ねするかと申しますと、推進本部がいかなる司法の改革をするかというのは、裁判所と弁護士会によって出てこざるを得ないのではないかなというふうに思いますのでお尋ねするんですが、この法案の、また司法の二十一世紀に向けた大改革の出発点において、ここに非常な矛盾があるのではないか。すべてが、推進計画及び推進本部が行政によって占められたその中で、三権分立という憲法体制において有効なる、また憲法上疑義なき改革案を推進することができるのか否かという点でございます。

 事務総長また久保井会長、よろしくお願いいたします。

堀籠最高裁判所長官代理者 我が国の憲法は三権分立をとりまして、その中で、司法制度に関する事柄でありましても、法案の作成権限は行政権を有する内閣及び国会が持ちまして、法律の制定は国権の最高機関である国会が行うという仕組みになっているわけでございます。憲法上、裁判所は立法政策に関する法案の提出権もないし、そういう施策を述べて国会に要請するという権限もないわけでございまして、憲法の範囲内で与えられました法律を誠実に施行するというのが現在の仕組みである。こういう現在の憲法の仕組みのもとでは、この推進法案のようなやり方はやむを得ないのではないかと思っています。

 最高裁判所に与えられております違憲立法審査権、内閣及び国会の行ったことに対する審査権は、具体的な事件が裁判所に係属した際に、その事件を判断するに必要な限度で憲法解釈、法律解釈あるいは合憲性を判断するという仕組みになっている。こういう制度のもとでは、意見を求められた場合には司法制度を担う立場から意見を述べることになりますが、基本的には、政策立案というのは内閣が行い、国会が御審議するという建前になっている。こういう憲法のもとでは、このようなやり方が憲法の趣旨に反するとか司法権の独立に反するということは言えないのではないだろうかというふうに理解しているところでございます。

久保井参考人 私からも一言申し上げますが、ただいま堀籠参考人が言われたとおりだと思います。あくまでも国会が国権の最高機関であって、法律をおつくりになる。内閣、国会が法律をおつくりになるわけですから、将来の司法制度をどういうものに見直していくかということにつきましては、国会で新しい制度をつくっていかれることは、決して三権分立の原則に反しないと思います。

 ただ、一言加えますと、確かにそうではあっても、当事者として、裁判所あるいは弁護士会、これは裁判所法とか弁護士法そのものをつくる権限はありませんけれども、時代の変遷、社会の要求によって自己改革の努力をしていくということは、これは法律論とは別に当然していかなければならないことでありまして、その意味で、私ども弁護士会も、不十分ながら、この新しい世紀にふさわしい弁護士像を模索して改革案をみずから提示しているわけでありまして、それをまた国会の先生方に取り上げていただいて、最終的な立法にこぎつけたいというふうに思っているわけでございます。

西村委員 ありがとうございました。今お二人は立法について答えられました。私は、行政が全面的に関与することがいかがかと申し上げたわけですね。

 本来ならば、この法案の流れから見れば、私の今の質問はちょっと異端だろうと思いますね。なぜなら、この法案は、国民に対するサービス機関としての司法の流れの中で行われておって、国家の三権分立上の司法の権限については何ら関心を示していない。したがって、行政が法律案を提出すること自体、立法権に対する侵害ではないかという意見があるのにかんがみれば、推進本部の本部長は最高裁長官と衆参議長である、そして副本部長は弁護士会会長である、こういう体制こそある意味では望ましいし、この体制をつくれば、憲法改正の発議権があるのは国会ですから、憲法裁判所を我が国でつくるのはいかがか、また、特別裁判所を我が国でつくるのはいかがかということまで議論の範囲が広がり得るわけですね。

 私の意見ばかり申し上げても、先生方にお聞きする番ですから、今ちょっと触れました、国民の紛争に関与する国家機関としての司法という観点から、多少質問したいのです。

 国民の信頼を確保する、したがって国民が関与すればいいのだろう、いろいろ言われています。いろいろ言われていますが、まだ実験以前のことでありますから。原点を押さえますと、国民の信頼は司法において何があれば確保されるのか。実体的真実の発見、これに尽きるわけですね。

 何ぼ国民が関与しても、うそを見破ることができずに裁判が行われれば、こんなことは人民裁判になってしまって、国民の信頼なんか得られるはずがない。しかるに、この法案で、司法の任務が実体的真実の発見であるという文言はないのです。国民の信頼だとかいろいろな文言はありますよ。司法は、国民のサービス機関でありますけれども、厳しい国家の刑罰権というものを発動する場でございますから、単なるサービス機関ではなくて、そこには、厳しい実体的真実を発見するにはいかなる体制で臨まねばならないのかということがなければなりません。

 そこで、お聞きいたしますが、実体的真実の発見は現状ではどうも不十分になってきたんだ、したがって国民からいろいろな職業についている裁判員を選んでその裁判の場に参加させなければ実体的真実が発見しにくくなっているのかどうか。これも久保井会長と事務総長にお尋ねいたします。

久保井参考人 裁判員制度を採用した社会的な背景といいますか、その本質的な原因に関する大変鋭い御質問をいただきましたけれども、確かに、裁判の生命線は実体的真実の発見にあることは先生御指摘のとおりでありまして、日本の刑事裁判、民事裁判についても同じようなことが言える場合もあると思いますけれども、主として刑事裁判は、長い歴史の中で誤判の問題が大変大きな人権侵害として取り上げられ、日弁連もそれに取り組んでまいりました。

 その一つに、職業裁判官がやはり麻痺をする、たくさん事件を処理するので、澄んだ目で物を見ることができていないのじゃないか。したがって、陪審とか参審とか、あるいは今回採用された裁判員という形で、市民が一つ一つの事件を興味を持って澄んだ目で見る、それによって誤判を防ぐ、そういうことがやはり正しいのではないか。そういう実体的真実の発見に寄与するために採用されたという側面も非常に大きいと思います。

 しかし、それに加えて、やはり市民の世紀、民主主義社会でありますから、結果は職業裁判官が判断される場合と変わらない場合も多いかもわからないけれども、しかし、みずからやはり司法権を統治の主体者として行使するということによって、より一層国民の納得が得られる、あるいは被告人を初めとする関係者の納得が得られる。手続における民主主義というものも、実体的真実に寄与する面プラス民主主義社会の大きな要請ではないかというふうに思います。

 そういうことが裁判員制度なり国民の司法参加を採用させた原因になっているのではないかと考えております。

堀籠最高裁判所長官代理者 裁判、特に刑事裁判にとって一番重要なものは、委員御指摘のように、適正な手続のもとに実体的真実を発見することであるというふうに考えております。

 私ども裁判所を担う者としては、現在においてもこの刑事裁判における実体的真実の発見のための努力というものはいささかも揺るいでいないし、また、実体的真実を発見する裁判をやっているというふうに考えているところでございます。

 今回の司法制度改革審議会で国民の司法参加が入りましたのは、裁判の過程に国民が加わることによって裁判が国民にとってもより身近なものになり、身近になるということがむしろ裁判の国民支持の基盤をつくる上でいいのではないかというような考えから提言されたものではないかというふうに私どもは理解しているところでございます。

西村委員 私、この審議で実体的真実の発見という司法の最重要の言葉を聞いたのは、先ほどの事務総長の御発言のみでございましたから、この点は強調しておきたいのですけれども、やはり任用の見直しという先ほどの事務総長の御意見で国民の信頼を確保しながら、より職業的使命感にあふれた裁判官によって実体的真実の発見に資するという体制をいま一度模索すべきだと思うのです。

 なぜなら、民主主義だから国民が参加するのはみんなええんやと。これは当たり前、だれも反対しません。しかし、その民主主義の根本たる選挙においても、半分の人間が選挙に行かぬのです、我が国で。先進国の陪審制度がもてはやされております。しかし、陪審員になる負担から逃れたいために逃げ回っているのが実情なんです。ましてをや、職業的使命感もなく、いろいろな職業があって、そして、あなたが裁判員だ、裁判に来てくれと言われて、これを使命感にあふれてやりますか。きれいごとじゃないんです。具体的に、一人の人間を刑務所に入れるか入れないかの問題をやる。こういうことで、この根本の例は我々の選挙、半分選挙に行かぬのですよ。これが民主主義の我が国の実態だ。この実態を踏まえなければ絵にかいたもちになって、美名のもとに司法が融解してしまう、私はこういう危機感を持っております。

 それから、質問せないかぬので、日弁連について申し上げますと、日弁連の社会的存在意義がこれからいよいよ問われるという段階に参りまして、久保井会長には本当に御努力いただくことになろうと思いますので、どうかよろしくお願いいたしますという前提で、今までの日弁連というのは、国家権力は人民の敵であるというマルクス主義的思考を暗黙の前提にしながら、人権擁護としては、単なる国家に盾突くことが人権擁護であるという、それこそ国民の目から見ればイメージがあった。これはどうか払拭していただきたい。

 その意味で、人権擁護とは何かといえば、北朝鮮に拉致された日本人、これを救うということが社会正義実現の弁護士会の最大の人権擁護の主張であらねばならないし、もう一つ、先ほどの教科書採択をめぐるあの騒動を見てください。新しい教科書をつくる会の事務所が放火され、人民の鎖と称する人の輪のデモによって杉並区役所が包囲され、採択する教育委員会には無言電話、脅迫電話がかけられて、この中で国民の教育に深くかかわる教科書が採択決定されていった。この事態になぜ日弁連として無関心なのか。

 ここが日弁連転換の中心だと私は思いますが、久保井会長、妙な質問だと思いますけれども、私はある意味では根本だと思うので、どうかちょっとお答えいただけますか。

久保井参考人 大変広範な哲学的な御質問をいただきまして、ありがとうございます。

 弁護士会は、御承知のとおり在野の団体でありまして、確かに、警察、検察庁の行った犯罪捜査あるいは起訴、そういうものに対して非常に弱い立場にある被告人、被疑者の人権を守りながら正しい法の適用を求めていく、そういうことが中心でございます。したがいまして、一見、現象的には、国家権力に刃向かうというようなシチュエーションが普通の職業に比べて多いということは、職業としてある意味では誇りであり、当然の姿だろうと思っております。

 そういう意味で、我々日弁連は、強制加入団体で、思想的にはさまざまな人がすべて加入しておりまして、決して、おっしゃるような偏った思想の団体ではないということを御理解いただきたいと思います。

 それから、今具体的に提示されました問題についてのコメントはちょっと差し控えさせていただきますけれども、しかし、そういう北朝鮮の拉致の問題とか、あるいは教科書採択をめぐって発生しているさまざまな好ましくない事態、そういうものを取り上げていくということについては、これは日弁連としても考えていかなきゃいけないと思いますけれども、やはり、第一義的には、捜査機関、警察とかあるいは政府の方で努力をしていただいて、我々もそれを側面的に可能な範囲内でお手伝いをしていくということは、これはやっていかなきゃいかぬと思いますけれども、その程度で御容赦いただきたいと思います。

西村委員 答えにくい質問を突然させていただきまして済みません。以後、私も会員の一人である弁護士会会長として、よろしく司法制度改革に御努力いただきますように。

 また、これは質問じゃないんですが、事務総長にぜひお願いします。

 安易に裁判員制度という流れを受け入れるのではなくて、先ほど事務総長が言われた任用制度のあり方をいま一度立て直されて、時代の流れに即応していく御努力を今こそ続けていただきたいと要望して、私の質問を終わります。ありがとうございました。

保利委員長 次に木島日出夫君。

木島委員 日本共産党の木島日出夫です。

 四人の参考人の皆さんには、大変貴重な意見、ありがとうございました。

 最初に、久保井参考人から二点お聞きしたいと思います。

 一つは、法案第四条の日弁連の責務にかかわる問題であります。

 佐々木委員からも質問がされておりましたが、この条文に対しては、弁護士自治の観点から危惧する意見もございます。私は、そのこともさることながら、この法案では、司法制度改革の定義が第一条にきっちりうたわれているということ。国の規制の撤廃または緩和の一層の進展その他の内外の社会経済情勢の変化に伴い、司法の果たすべき役割が重要だからという観点でつくられた司法制度改革審議会の意見書の趣旨にのっとって行われる司法制度の改革と基盤の整備を司法制度の改革と定義をして、そして二条でその基本理念をうたって、それを受けて第四条の日弁連の責務という構造になっているわけであります。

 私は、司法制度審議会が設置され、二年間審議をされてきた、再三この場に立ちまして、今回の司法制度改革の問題の背景には、日本の司法制度を根本から変えてもらいたいという各界各層の要求が渦巻く中での審議だった。大きくは、一つは、特に経済界が求めて進んでいる規制改革、その結果として出てくるさまざまな紛争、これを、言葉は悪いですが、一丁上がり式に解決する、そういうことを司法制度に求める大きな流れ。そしてもう一つは、司法の基本的な任務は基本的人権の擁護ではないか、とりわけ三権分立のもとの司法のもとでの一番の任務は、行政、場合によっては立法、行政府に対する、違憲立法やあるいは誤った行政に対する最後のチェック機関としての司法、それに最大の役割を求めて司法改革を求める流れ。私は、率直に言って、この二つの大きな流れのぶつかり合いの中で論議が行われてきたし、その結果としてつくり出されたのが今度の審議会の意見書であったんではないかと考えるわけであります。

 そうしますと、私は、率直に言って、この法案の第一条は、その二つの流れのうちの前半だけをつまみ食いをしてきまして、規制緩和を背景とした問題のみを取り出してきて、それに対応する司法をつくるのが司法改革だと位置づけてしまって、それを受けて日弁連の責務を持ってきている。これはちょっといかがかなと。

 ですから、私は、全体の司法制度改革審議会の最終意見書をどう評価するかにかかわる問題でありますが、前進面もあるだろう、そしてまた後退面もあるだろう、論議が不十分な面もあるだろう。ですから、司法制度改革審議会の最終意見書を金科玉条にしてこれにがんじがらめになるということは、決して正しい態度ではないんではないか。そういう観点から四条を振り返ってみて、この条文が入ることによって、日弁連があれにがんじがらめになってしまうことを危惧するわけであります。

 たしか日弁連は、今度の最終意見書の中で、民事裁判における敗訴者負担制度の導入は絶対反対だという立場に立っておるはずであります。私も絶対反対です。今回の司法改革の理念に反するからです。そういう危惧があるんですが、どうでしょうか。

久保井参考人 ただいまの御質問にお答えいたしますが、先生がおっしゃいました、今回の司法改革が、基本的には、経済界の大きな流れとそれから人権の流れ、その二つの流れがせめぎ合って、その結晶としてこういう審議会の意見書が出てきたという御認識は、私も同様でございます。

 特に、日弁連は、経済界が司法改革を主張されるよりもかなり前から、司法改革宣言、人権のための司法、市民のための司法を旗印に闘ってまいりまして、その後で経済界がやってきて乗ったといいますか、我々の車に乗ってきた、そういう受けとめ方もできるんじゃないかというふうに思っております。

 そういう成果であるにもかかわらず、今回の法案の第一条には、日弁連の流れがはっきり書いていないではないか、経済界の流れが目立ち過ぎるではないかという点につきましては、確かに、第一条の文言を見ますとそういうような嫌いもないではありません。

 しかし、よく見ますと、規制緩和によってさまざまな人権侵害が起きるといいますか、そういう状態に対処する必要がある、つまり、規制緩和のもたらすさまざまな弊害に対処するためには、司法機能を強化する、つまり、社会的弱者とかセーフティーネットを整備する必要がある、そういう趣旨が含まれているものと解釈いたしまして、その第一条は、決して経済界のための司法改革というところまでは言っていないんじゃないか、我々の目指してきた人権のための司法改革ということも含まれているんではないかという解釈をしております。

 しかしながら、確かに文言の上ではその点が少しあいまいであることは御指摘のとおりでありますし、それを受けた第四条。第四条は、先般の審議会の意見書を実現することが前提での条文ですから、審議会の意見書を金科玉条のごとくやるということについて、我々としては決してそうは思っていない。審議会の意見書が出た直後に私の会長声明を出しましたけれども、確かに評価すべき点は非常に多い、しかし不十分な点もある。その中の一つとして、今おっしゃった敗訴者負担の問題とか、その他、刑事裁判に対するメスが十分入っていないとかいうことは申し上げております。

 そのことは、これからの立法作業でも引き続き国民の立場に立って最大限努力していく。特に敗訴者負担につきましては、審議会の最終段階で、裁判制度の利用を萎縮させないことという一つの条件を獲得することができましたので、これからの立法作業で万一国民の裁判を受ける権利あるいは提訴を萎縮させるような形での立法作業がなされる事態になれば、我々としては断固としてそれには反対をしていくというつもりでおります。

 したがいまして、日弁連としては、あくまで最終的には国民の立場に立って正しいと思われる司法改革を追求していくという覚悟でおりますし、第四条があるからといって、それに妥協していくということは全く考えておりませんので、御理解をいただきたいと思います。

木島委員 それでは、もう一つ質問いたします。

 参考人は、先ほど公述で、立法作業の透明化、情報公開が大変大事だとおっしゃられました。まことに私も同感であります。審議会が二年間基本的に公開がなされた、これが大きな役割を果たした。私も同じ認識であります。それならば、この推進法案をつくる、この法案の立法過程がどうだったか。残念ながら、二年間審議会は非常に透明性を高めて立派にやった、しかし、あれが終わった途端に、この推進のための法案づくりが密室に潜ってしまったんじゃないか。官邸の中の一部の官僚と、日弁連からも何人かの弁護士がこの法案づくりに参加しているとお聞きしておりますが、残念ながら、国民に見えないところでこの推進法案がつくられてしまったんじゃないかと思うんです。そこが残念でならないんです。

 いよいよ問題はこれからですね。ですから私は、実際に推進体制も、情報の全面公開と国民の意見を全面的に受ける、その双方向の作業を欠かしてはならぬと思うわけであります。一層、国民の皆さんへの情報公開、国民の声を反映させるための制度的保障が必要だと思うんですが、具体的にどんな点を日弁連として考えているのか、簡潔に御意見を願いたい。

久保井参考人 先ほどのメーンのスピーチの中において申し上げましたけれども、審議会が当初の予想を超える非常に前向きな意見書を発表していただいた最大の理由は、審議会を公開していただいたことにあるということは、もう各参考人がおっしゃられたとおりであります。実現段階においても、少なくとも審議会と同程度の公開をどうしてもしていただきたい。そのために、我々としては、各方面の方々のお力添えをいただいて公開を求める運動をしていきたいというふうに思っております。

 また、弁護士会としては、国民の代表として意見を述べていく責務があると思っておりますので、審議会の事務当局と交渉いたしまして、毎週一回、定例の連絡会、そこで、過去の一週間でどういう作業をしていただいたかというようなことの御説明をいただいて、それに対して意見を述べる。あるいはまた、さまざまなテーマごとの打合会を頻繁に開くという形で、国民の声をその場で代弁していくというようなことも、今予定されている顧問会議、検討会議とは別に、そういう機会を設けていただくようなことも現実に既にスタートしておりますので、そういう機会をふやして、そういう機会において国民の声を反映していきたいというふうに思っております。

木島委員 ありがとうございます。

 戒能参考人と若林参考人に質問したいと思うんです。同じような質問になるかと思うので、一遍に質問いたします。

 戒能参考人は、推進法の中心は司法部の独立性の強化だとおっしゃられました。行政の不作為をきちんと批判できる司法部の構築が大事だと。私も同感なんです。その面で五条の指針は不十分ではないか、三条は余りにも抽象的ではないかと言われました。

 そこで、この二年間の改革審議会、官僚法曹体制を打破する、そして本当に民主的な、国民の立場に立った裁判所をつくってもらいたいというのが一つの今回の論点だったと思うんですが、私は、率直に言って、この二年間の論議を見ますと、今の日本の裁判所の中にある官僚的な側面に対するメスが入るのが非常に不十分だったのではないかと思うんです。その結果がこの法案にもあらわれているんじゃないかと感じてならないんですが、そんな感度から、今回の審議会の意見書と二年間の審議のあり方で全体的にどう評価するか、簡潔に述べていただきたい。

 同じ質問になるかと思うんですが、先ほど若林参考人は、第一条、現在の日本の司法の現状認識が欠けてやしないかという言葉を使われました。行政に対するチェック機能、こういう部分での突っ込んだ議論がされてこなかったんではないかとおっしゃられました。同じような認識なのかどうかわかりません。その内容について、よりちょっと詳しく認識を御披露いただきたいと思います。時間の制約がありますので、もう一問、堀籠参考人に聞きたい点がありますので、お答え願いたいと思います。

戒能参考人 今、木島委員からございましたように、私も、司法制度改革審議会の一つの到達点として本日の審議対象になっております推進法案が出ているわけでございますが、この中に具体的にあるのは三条と五条の関係でございますが、ここからは、やはり現在の日本の司法の最大の問題として、木島委員の言われたいわゆる官僚司法の構造、これを変えていく具体的手がかりはほとんど見えてこないというふうに思っているんですね。

 先ほど、そもそもこういう法案について、特に内閣総理大臣が本部長になるような行政主導型の話が少し出ましたが、司法の独立というのは、本来的には、法専門職つまりリーガルプロフェッションの独立性、これをいかにつくるか。そういう意味で、日弁連の年来の主張であります法曹一元というのが少なくともこの法案には全く出ていないし、司法制度改革審議会における審議においては、基本的には法曹一元はもはや瓦解したといいますか、そういうふうにも受けとめられているわけですね。

 この点でちょっと申し上げたいのは、やはり先ほど来時々出てくる言葉に、在野法曹、在朝法曹、在朝というのは言っていませんでしたが、在野法曹という言葉がございますが、これは、日本の司法ができてきたときの非常に特殊な構造の中で、法曹というのが、検察官、裁判官と弁護士が在朝、在野で分かれてしまっているということですね。これが実は日本の司法を非常に弱くしているのだと私は思っています。したがって、本来であれば、こういう専門的な司法の問題というのは、英米であれば、恐らくこれは裁判所主導型で審議がされるだろうというふうに思います。それは決して憲法とは矛盾しないというふうに考えられているわけですし、それはやはり憲法の理念である法の支配の実現そのものであるというふうに考えられていると思います。

 そういう意味で、これは将来的な課題でございますけれども、日本にとってやはり必要なのは、法専門職、それを在朝、在野と分けるのではなくて、それがまさに専門性のゆえに一つの独立した集団となるということが必要ですし、その中でやはり法曹一元という問題が考えられるべきである。ですから、裁判官の選任問題というのは、単に最高裁事務総局の問題ではなくて、やはり法曹全体の問題であるというふうに私は考えるわけでして、そういう意味で、法専門職の自律性をどういうふうにつくり上げていくかということが、私がきょう申し上げた法科大学院の設計にもかかわる重要な問題だというふうに理解しております。

若林参考人 手短にお答えいたします。

 第一条の関係、私は、現状に問題があるというふうに思っています。ただ、現状に問題がある、過去こうであったではないかということの議論になってくると、責任問題、泥仕合になるということを過去何度も繰り返してきたわけです。これから新しい、どういう制度をつくっていこうかというこれは前向きの法律ということで、そこのところを善意に解釈すれば、泥仕合を避けたいということでその現状認識の部分は欠落したのかなとも思いますが、やはりそこの部分はあってもいいのではないか、これが第一点です。

 裁判所の官僚制度の問題は、余り手短に話をしますと誤解を招いてはいけないと思いますので、私の今の感想だけ申し上げますと、最近の裁判所の判決を見ますと、明らかに姿勢の変化が出ていると思います。裁判官制度の問題がいろいろ語られておりますけれども、今現実的な改革として司法制度改革審議会が提起した制度は、私は現実的な制度だと思っております。それをきちっと実行に移すということが今非常に重要ではないかというふうに感じています。

木島委員 時間の制約があって大変恐縮でございました。

 堀籠参考人に一点お伺いしたいと思うんです。先ほどの公述の中で、裁判を実際に担っている裁判所として、今回の司法制度改革審議会の意見書に対して、意義は非常に大きいものがある、賛同したいという言葉が吐かれました。大変結構なことではないかとは思います。実は、今回の司法制度改革論議の一つの大きな論点が裁判官制度の改革だったと思うんです。

 そこで、もう一度この意見書を読み直してみますと、かなり具体的な、思い切ったことが触れられていることも事実なんです。法曹一元という言葉は確かに入っておりませんが、かなり思い切ったことが触れられております。

 ちょっと指摘しますと、「裁判官制度の改革」、第一、「給源の多様化、多元化」の中に、

  特例判事補制度については、計画的かつ段階的に解消すべきである。このためにも判事を増員するとともに、それに対応できるよう、弁護士等からの任官を推進すべきである。

  弁護士任官等を推進するため、最高裁判所と日本弁護士連合会が、一致協力し、恒常的な体制を整備して協議・連携を進めることにより、継続的に実効性のある措置を講じていくべきである。

こう結論づけております。

 そして、中身の文章なんかを読みますと、最高裁判所と日弁連が本年四月十二日付で弁護士任官等に関する協議会設置要綱を策定するなどして、互いに協力して弁護士任官等を推進することに合意しているところであるということも評価しているわけであります。その上で、「恒常的な体制を整備して協議・連携を進めることにより、弁護士任官等の推進のために継続的に実効性のある措置を講じていくべきである。」という結論になっているんですね。

 私は、戦後の日本の司法制度改革の歴史を見ますと、臨時司法制度調査会意見書では、法曹一元は機が熟せずということで葬られました。そしてこの間ずっと、残念ながら、弁護士任官を前進させるんじゃなくて後退させるような状況があったんじゃないかと思えてなりません。それだけに、私は、今の具体的な指摘は非常に重いと。私は、この分野は立法化が必要ない分野だ、新しい法律をつくらなくてもどんどんと弁護士から裁判官に任用することが、当局がやろうとすればできる課題だと思っているんです。

 そんな面から、ぜひ、どういう具体化を図ろうとするのか、具体的な点も踏み込んで御発言願えれば幸いであります。

堀籠最高裁判所長官代理者 審議会の意見書にありますように、弁護士任官の推進は最高裁判所にとりましても重要な問題と考えておりまして、現在、日弁連との間で弁護士任官等に関する協議会を開催し、鋭意検討しているところでございまして、このような形で日弁連と連携を図るなどしつつ、積極的に弁護士任官推進に向けて方策を検討していきたいと考えているところでございます。

木島委員 終わります。ありがとうございました。

保利委員長 次に、植田至紀君。

植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀と申します。

 きょうは、お忙しいところ、四人の参考人の皆様方、長時間いろいろと示唆に富むお話をお伺いさせていただきまして、御礼申し上げます。日ごろから不勉強なものでございますから、幸い、今回ちょっと日程が変則で、参考人の質疑を聞いて、そして木、金と質疑に臨むということで、私にとってみれば非常に勉強になりました。本当にありがとうございました。

 それで、限られた時間の中で幾つかお伺いをさせていただきたいわけでございますが、まず、久保井参考人に、特に弁護士制度の改革等々に関連して三点ばかりお伺いしたいと思います。

 既に、弁護士へのアクセスの拡充でありますとか費用の透明化、また弁護士倫理の強化等、また運営への国民参加といったさまざまな点で弁護士会自身が御努力されて、かなり前進をしているというふうに私も認識いたしております。そういう意味で、弁護士法一条にありますように、社会正義を実現する、基本的人権を擁護するという観点から、そうした弁護士の社会的使命を大前提にしてそうした制度整備というものをこれからも進めていく必要があるかと思います。

 そこで、幾つかお伺いしたいんですが、今回時間も限られていますので、業務の質の向上でありますとか、特に隣接法律専門職種との関係見直し、また、国際化への対応等といった課題について、お答えできる範囲で結構ですので、その点についてどういう展望、御見解を持っておられるのかということについて、まず一点目、お伺いしたいと思います。

 二点目につきましては、日弁連で、綱紀・懲戒制度の改革の一環ということで、弁護士会の懲戒委員会に市民委員を入れる、そういう案が提起、提案されているというふうに伺っております。ただ、これについては、一部の方々から、弁護士自治が侵されるおそれがあるんじゃないか、そういう反対の立場の方々もいらっしゃるやに私は聞いておるんです。

 そこで、懲戒委員の構成がどうなっているのか、また、その委員に市民を参加させる意義、また、例えばそういう反対されている方々の理由というものをどういうふうに理解されているのか。ただ、いずれにしても、社会に開かれた弁護士会というものをこれからイメージしていかなければならないということは当然でございますから、そうした弁護士自治が侵されることなく市民がそういう場に入っていける、参加できるという条件はどういう知恵があるのかということについて、二点目、お伺いしたいと思います。

 それと、三点目。当然ながら、弁護士の皆さん方は非常に高邁な社会的使命を持って活動されておられるわけです。当然、そうした日々の活動なりについて、弁護士会、また弁護士の個々人の皆様方も、みずからを常に検証しながら改めるべきところは改めていく、やはりそうした真摯な姿勢というものが我々一般人から見ての弁護士の皆様方に対する社会的信用にかかわってくるだろうという観点から、お答えしにくいかもしれませんが、昨日、各紙、新聞で報道されております件についてお伺いしたいんです。

 といいますのは、私も、参考人の質疑でどんな質問をしようかといろいろと考えあぐねていましたら、たまさか各種報道で、日弁連が特定の政治家の政治資金パーティーの券を購入していたということが報道をされているということでございます。この報道によれば、大阪の弁護士の方が質問状を送られたと。私もその質問状自体は読んでおりませんが、新聞の報道での質問状の要約を読んでみますと、「弁護士の思想や信条は様々。強制加入団体である日弁連の特定政治家支援は許されない」ということで質問状を送られたようでございます。私も、この点は全くそのとおりであると思います。ほかの報道を見ましても、私も詳しくは承知しておらない、勉強不足は恥じ入りながら申し上げるんですが、南九州の税理士会でしたか、そこも強制加入団体ですから、やはりそうした献金というものは違法であるという最高裁判決も出ているやに私も仄聞いたしております。

 そういう意味で、強制加入団体であるところの日弁連が特定の政治家に対してかかる行為を行うということはそもそも違法ではないのか、間違っているんじゃないかという点でございます。その点についての御見解。

 及び、報道によりますと、日弁連側は、儀礼の範囲内ということでコメントされたようなんですけれども、恐らくこのことは、今回だけ、一回限りでそういうことがあったとは思えませんですよね。何か報道によれば、渉外交際費というものがあってそこから出費されているということですので、今回明らかになったケースだけではなくて、これまでもそうしたことを時に応じて対応されていた。恐らく、日弁連の解釈としては、儀礼の範囲内ということで、許容されるということでやっておられたことは当然推察できるわけです。

 そういう意味で、例えば、いかなる基準で儀礼の範囲内というものを確定させてそういうことに出費をしていたのか、また、これまで例えば年間どれぐらいそういうケースがあったのか、そもそもそうした調査を今やっておられるのか、そして、今後どうした対応を考えておられるのかということについても、ちょっと長くなりましたけれども、大きく三点、まず久保井参考人にお伺いしたいと思います。

久保井参考人 お答えいたします。

 まず第一点の、業務の質の向上についてどのような方策を考えているかという御質問であります。

 まず、法律事務所の基盤整備を進める。これまで、どちらかといいますと個人事務所中心で弁護士は活動をしてきたわけでありますが、時代の大きな流れと要請にこたえるために、事務所の共同化を進めるということは大変重要な基盤整備だと考え、先般弁護士法の改正をしていただきましたけれども、現在、弁護士事務所を法人化するという作業を進めておりまして、来年の四月一日からスタートする。これができますと、事務所の体制整備の上に大きなプラスがあるのではないか。

 ついでに申し上げますと、法人化した場合に限って支店を出すことができる。支店は過疎地の対策にも結びついていくのではなかろうかというふうに期待しております。

 それから、さらに、弁護士の業務の質の向上のために、現在の時代にふさわしい十分な実務研修あるいは倫理研修を大幅に取り入れて、これをなるべく多くの会員に普及する形で推進しております。一部は義務化もしておりまして、社会からの御批判が続出しております綱紀・懲戒、残念ながら不祥事もかなり発生しておりますので、そういうものを一日も早くなくしていきたいという努力をしております。

 さらに、隣接との関係というお言葉をいただきました。

 他の、司法書士、税理士、弁理士等との協働作業、これは、スローガンとしてはそういう方向で努力してきておるわけですが、なかなか順調に進んでいるとは言えない、そういう状況にありますが、今般、司法改革で一定の方針が出てまいりましたので、そういう状況下で、他業種との協働化、総合化といいますか、そういうものについても努力をしていきたいというふうに思っております。

 ワンストップサービスという言葉がありますが、市民の皆さんが弁護士の事務所を訪ねて、次々と他業種を訪ねていく、それは大変不便でありますから、一カ所を訪ねればその問題の処理が可能なような、そういう体制を目指して頑張っていきたいと思っています。

 それから、国際化につきましては、確かに、我が国は島国であるために、弁護士だけでなくて、一般的に見ても国際性が乏しい、語学能力一つ取り上げても十分でないということがあります。我々の場合も同様でありまして、渉外案件を処理する能力が十分でないということで、最近は、その点の反省を込めて、渉外弁護士がかなりふえてきておりまして、弁護士会としても、そういう国際的な要求といいますか、国際的な案件にたえ得るような養成に努めていきたいというふうに思っております。

 それから、二番目の御質問、綱紀・懲戒手続について、弁護士自治との関係でどう考えているかという御質問であります。

 確かに、綱紀・懲戒手続が甘い、弁護士が自分の身内には甘いという御批判をいただいております。そういう御批判をなくしていくためには、透明で公正な綱紀・懲戒手続、そういうものをやはりつくっていかなければならない。そういうことから、外部委員を市民の皆さんにお願いして、綱紀・懲戒委員会をできるだけ適正なものにしていくという努力を今しております。

 懲戒委員会の構造がどうなっているかという御質問でありますが、現時点で、弁護士委員の方が一名だけ多い、市民といいますか、弁護士以外の委員の数が一名だけ少ないという状況にあります。

 綱紀委員会の方は、参与員という形で、弁護士でない市民の方、学識経験者の方々に入っていただいております、あるいは、裁判所、検察庁からも来ていただいておりますが、参与員ということになりますと議決権がありませんので、正式な委員になっていただいて議決権を行使していただく、ただし、弁護士自治との関係で、過半数は弁護士が占めるという前提で、その範囲内で加わっていただく、そういうような改革案を現在検討いたしております。

 会内には、もとより反対意見もございます。それはやはり、弁護士以外の方々の数がふえる、権限が強くなるということによって、弁護士の自治が危うくなるのではないかという心配をされる意見があるわけです。しかし、やはり社会から孤立した形で弁護士会の運営をするということは、ひとりよがりになってしまう。究極的には、国民の皆さんに支持される形で弁護士会を運営することによって弁護士の活動が成り立つといいますか、信頼をかち取っていくことができるわけでありますから、多少不自由になったとしても、最終的には、過半数は弁護士会で確保しているのでありますから、自治を侵されることはないということで、反対の会員を説得いたしているところでございます。全体としては、執行部の考え方を理解している方の方が圧倒的に多い状況にあります。

 それから、三番目の、具体的案件に関する御質問でございます。

 御指摘のとおり、弁護士会は、みずから活動を常に反省しながら、改めるべき点は改めていく、そういう姿勢をとるべきだという御指摘はそのとおりでございまして、私もそのことは当然のことだと思っております。

 さて、本件の問題につきまして、新聞報道にありますとおり、ある大阪の会員から私に対して質問状が来ていることは事実であります。そして、その指摘されている内容について、パーティー券を日弁連の金を使って購入している点は、一部そういう事実がございます。新聞報道の、すべてが日弁連の支出によって購入されている事実はございませんが、残念ながらといいますか、一部そういう事実はございます。しかし、これにつきまして現在調査を命じておりまして、その調査の結果を見ないと詳細なことはちょっと御説明いたしかねます。

 ただ、ほかにもあるか、あるいは年間どれぐらいかということでございますが、全体的なことはわかりませんが、本件以外にも過去に同様の、全く同じではありませんけれども、同種の支出がなされているという事実はあるようでありまして、それについては、一定の基準があって、その基準のもとに処理してきたということは、調査はまだきのう、きょうのことでございますので、過去どういう基準で行ってきたかはわかりませんが、明確な基準があったわけではないようであります。しかし、私が予想していたよりはそういうケースが多いといいますか、何をもって多いと言うかは別として、そういうものがかなりあったような状況と今のところ報告を受けております。これはいろいろな考え方のもとに行われたことでありますが、しかし、国民的な御批判、会内からの御批判というのもありますので、やはり改めるべきは、先ほどの御指摘ではありませんが、改めていかなければならないと思っています。

 さらに、南九州の税理士会の最高裁判決の趣旨からすれば本件のパーティー券は違法ではないかという御質問ですが、これも詳しい検討はまだできておりませんし、判例も見ておりませんが、ただ、事案が少し違うのではなかろうかというふうには思っています。税理士法の改正に反対するために会員すべてに特別会費の負担を執行部が提案して、それを総会で決議したということで、その決議が最高裁で無効だという判決が出たということでありますが、本件の場合はそういう案件ではございませんので、少し事案が異なるので、直ちにそれを当てはめるということにはならないんじゃないかと思います。

 しかし、仮にその点は別といたしましても、やはり社会的に見て非難されるべき行為あるいは会員から見てさまざまな御批判がある行為については、改めるべきは改めていかなければならないというふうに考えておりますので、どうぞ御理解いただきたいと思います。

植田委員 済みません。ありがとうございました。

 いずれにしても、会長御自身が残念という表現はされておられますから、いずれにしても、事実関係等々が明らかになれば、それは我々も目にすることはできるだろうと思っておりますので、これについては予定はしておりませんでしたけれども、お伺いをさせていただきました。

 時間がちょっとありません。ひょっとしたら、すべての参考人の方にそれぞれお伺いできない、質問をいろいろ用意しておったんですけれども、できない場合は御容赦、お許しいただきたいと思います。

 最高裁堀籠事務総長にお伺いしたいのですが、いわゆる弁護士任官の増大にかかわって、飛躍的にこれをふやしていこうと思えば、限られた分野だけあてがうのやったら一部ちょこっとふえるだけだろう、むしろ非常勤裁判官制度というものを導入するということをこの際やはり検討すればいいじゃないか。国民のための司法ということであれば、既に諸外国でもやられているわけでございますから、憲法違反には私は当たらないだろうと思うのですが、その点、端的にお願いできますか。

堀籠最高裁判所長官代理者 委員御指摘のように、弁護士任官が進んでおりませんので、進めるためにはどうしたらいいかということで、現在日弁連の当局と検討しているところでございますが、その一つとして、いわゆる非常勤の制度ということも検討になっておりますが、それに伴うどういう問題があるのかという点も十分検討した上で、弁護士任官しやすい制度を構築していきたいということで、現在、鋭意協議しているということで御理解いただきたいと思います。

植田委員 済みません。いずれにいたしましても、それぐらいのことをしない、現状のままということにおさまってしまいますと意見書に反するだろうというふうにやはり言わざるを得ないと思います。

 最後に戒能参考人にお伺いしたいわけでございますが、法科大学院構想とのかかわりで、特にその点についてはまた論文の中身を勉強させていただきたいと思いますが、それにかかわって、司法試験と司法修習のあり方について、例えば司法研修所を増設して、弁護士会、大学、市民によって運営するとか、もっと教育に厚みを持たせる研修制度というものを創出していくべきじゃないか。特に、やはり判例に偏重した研修だけではなくて、むしろ判例を批判的に検証していく、そうした教育システム、カリキュラムなんかもあっていいのじゃないかと思いますし、また、この間、行政法であるとか労働法が選択科目からなくなっているわけですが、やはりそうした試験科目、研修所のカリキュラムの見直しというものもこれからかなり大きな課題になってくるのじゃないかと思いますが、その点についての御所見をお伺いして質問を終わりたいと思います。

戒能参考人 法科大学院については御質問ありがとうございます。本当にこれは我々にとっては非常に切実な状況にありまして、特に今最後に言われた研修所の問題ですね。多分毎年三千人ずつ法曹が出てくれば、恐らく今の研修所では完全に破綻しますから、そういう意味でも研修所をどうするかというのは大問題ですし、それから、法科大学院の課題として、いわゆる法曹実務のところまで我々が、要するに法科大学院のカリキュラムの中に入れるかというのは、これはアメリカではそういうふうになっているわけですけれども、果たしてそれが日本のモデルたり得るか。ですから、それは十年ぐらいのスパンでいずれにしてもそれを考えなければならない問題なんですが、私はきょう特に先生方に申し上げたいのは、やはりそういう十年ぐらいのスパンで考えるべき問題について、日本には残念ながら、大学ごとのもちろん教授会等々がございますけれども、それを横断的に審議する場がない。そういう場をぜひつくっていただくことも今度の推進法の審議の中でぜひ御検討いただきたいというふうに思います。

 それから、我々が今カリキュラムについて非常に議論をしておりますけれども、それと同時に非常に大事なのは、法科大学院については適正審査とか第三者評価の問題があるわけでして、これは大学の自治との関係で非常に大きな問題、つまり、我々がカリキュラムについて今までは自治的に決めているわけですけれども、しかしこれは当然のことですけれども、法曹にとって必要なカリキュラムというのは、やはりそれは法曹の観点からのもあるわけですね。ですから、そういう意味では、我々も大学の自治だけを言っているわけにはいかないのですけれども、それはやはりしかるべき協議の場とかあるいは討論の場がなければ、一方的に、一種の上からの干渉というものが生じかねませんので、そういう意味でこの法科大学院の具体的設計を含めた我々のサイドからの合意調達というのもぜひ検討していただきたいということを特に申し上げておきたいと思います。

植田委員 若林参考人にお伺いしようと思っておったのですけれども、時間がちょっとなくなりまして、失礼をおわび申し上げまして、質問を終わります。

保利委員長 以上で参考人等に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人各位には、長時間にわたり大変貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。

 次回は、明二十五日木曜日午後一時五十分理事会、午後二時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時八分散会




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