衆議院

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第2号 平成14年2月27日(水曜日)

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平成十四年二月二十七日(水曜日)
    午前九時三十分開議
 出席委員
   委員長 園田 博之君
   理事 佐藤 剛男君 理事 塩崎 恭久君
   理事 棚橋 泰文君 理事 山本 有二君
   理事 加藤 公一君 理事 平岡 秀夫君
   理事 漆原 良夫君 理事 西村 眞悟君
      荒井 広幸君    太田 誠一君
      上川 陽子君    後藤田正純君
      笹川  堯君    下村 博文君
      鈴木 恒夫君    西川 公也君
      西田  司君    平沢 勝栄君
      福井  照君    保利 耕輔君
      松島みどり君    柳本 卓治君
      吉野 正芳君    岡田 克也君
      鎌田さゆり君    佐々木秀典君
      日野 市朗君    水島 広子君
      石井 啓一君    藤井 裕久君
      木島日出夫君    中林よし子君
      植田 至紀君    徳田 虎雄君
    …………………………………
   法務大臣         森山 眞弓君
   法務副大臣        横内 正明君
   法務大臣政務官      下村 博文君
   最高裁判所事務総局民事局
   長
   兼最高裁判所事務総局行政
   局長           千葉 勝美君
   最高裁判所事務総局刑事局
   長            大野市太郎君
   政府参考人
   (内閣審議官
    兼司法制度改革推進本部
    事務局長)       山崎  潮君
   政府参考人
   (警察庁刑事局長)    吉村 博人君
   政府参考人
   (警察庁警備局長)    漆間  巌君
   政府参考人
   (法務省大臣官房司法法制
   部長)          寺田 逸郎君
   政府参考人
   (法務省民事局長)    房村 精一君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    古田 佑紀君
   政府参考人
   (法務省矯正局長)    鶴田 六郎君
   政府参考人
   (法務省保護局長)    横田 尤孝君
   政府参考人
   (法務省人権擁護局長)  吉戒 修一君
   政府参考人
   (法務省入国管理局長)  中尾  巧君
   政府参考人
   (公安調査庁長官)    書上由紀夫君
   政府参考人
   (外務省欧州局長)    齋藤 泰雄君
   政府参考人
   (財務省大臣官房審議官) 木村 幸俊君
   政府参考人
   (財務省主計局次長)   杉本 和行君
   政府参考人
   (厚生労働省社会・援護局
   障害保健福祉部長)    高原 亮治君
   法務委員会専門員     横田 猛雄君
    ―――――――――――――
委員の異動
二月二十七日
 辞任         補欠選任
  左藤  章君     福井  照君
  中川 昭一君     西川 公也君
  不破 哲三君     中林よし子君
同日
 辞任         補欠選任
  西川 公也君     中川 昭一君
  福井  照君     上川 陽子君
  中林よし子君     不破 哲三君
同日
 辞任         補欠選任
  上川 陽子君     左藤  章君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――
園田委員長 これより会議を開きます。
 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 各件調査のため、本日、政府参考人として司法制度改革推進本部事務局長山崎潮君、警察庁刑事局長吉村博人君、警備局長漆間巌君、法務省大臣官房司法法制部長寺田逸郎君、民事局長房村精一君、刑事局長古田佑紀君、矯正局長鶴田六郎君、保護局長横田尤孝君、人権擁護局長吉戒修一君、入国管理局長中尾巧君、公安調査庁長官書上由紀夫君、外務省欧州局長齋藤泰雄君、財務省大臣官房審議官木村幸俊君、主計局次長杉本和行君及び厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長高原亮治君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
園田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
園田委員長 次に、お諮りいたします。
 本日、最高裁判所千葉民事局長兼行政局長及び大野刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
園田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
園田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐藤剛男君。
佐藤(剛)委員 自由民主党の佐藤剛男でございます。
 昨日、森山法務大臣の御所信を拝聴いたしました。感銘いたしましてお聞きいたしました。そして、本日、非常に重要なる現下の情勢の時期に森山法務大臣のような御立派な方をお迎えいたしまして、光栄の至りであります。私ども、一生懸命委員としましてやらせていただきたいと思っております。横内副大臣、下村法務大臣政務官には、何とぞよき補佐をお願い申し上げたいと思います。
 私は、こういう問題から切り込みたいんですが、一八五三年、日本にペリーがやってきました。そして開国を強圧したわけでありますが、そういう過程の中で、大失敗の一つの大きな歴史があったわけであります。それは何かというと、日本とアメリカを中心としまして不平等条約をつくってしまった。
 不平等条約というのは何が不平等かというと、一つが治外法権条項というのがあったわけであります。わかりやすく言えば、アメリカ人が横須賀で日本の女性を殺しても裁判権を日本は持っていなかった。それから、関税自主権が維持されなかった。この二つの不平等条約を改定するために、日本の明治の外交はどれだけのエネルギーを費やしたか。小村寿太郎、陸奥宗光というような大外交官がおりましたが、明治の外交史を眺めますと、大体ロシア問題と不平等条約の改定であります。
 そして日本は何をやったか。不平等条約を改定するために日本は、つい二年前、三年前だったですか、民法、商法百周年の記念事業が行われました。あるいは弁理士法が百年たったわけですね。そういうふうな形の中で、日本はそういうきちんとした法律の整備を行う。行わなきゃ認めないというわけだ。日米不平等条約を直そうとしても相手にされなかったわけだ。それで、日清戦争で、まさか日本は清に勝てないだろうと思っておったところが、勝った。そういうようなことでやっと応じた。こういう歴史をたどっているわけであります。今の民法も商法も、あらゆる法体系というのはそういうふうな日本の近代化をするために形成されてきた。特に、知的所有権関係のものがあの時期に成っているというのは非常に意味を持っておると私は思います。
 今日、司法改革、大臣が昨日所信表明されましたが、その改革という問題を第一に挙げられましたが、そういう観点で私は非常に重要であると思います。
 それから、さらにまた別の見方をすれば、私は、家に栄枯盛衰があるごとく国家も栄枯盛衰があると思っております。五つの条件がきちんとしていれば国というのはもつと思っております。五つとは何か。
 一つは、きちんとした防衛をする。きちんとした守りをやる。国防であります。
 それから第二が、やはりしっかりとした治安の体制ができている。ところが、この治安の面については後ほど少しく御質問いたしたいと思いますが、どうも最近の治安状況を見ると肌寒い状況になっておる。
 第三が、しっかりとした外交をやる。
 第四が、民族の誇りを教える教育をやる。これは、今度の司法改革で、二十一世紀の法曹、人材インフラを養成する。そしてロースクールの観点で、私も自民党の中の責任委員長に就任させられたわけでありますが、そういう意味において、この問題というのは非常に重要な人材育成の観点、これも法務省の関係であります。
 そして第五が、私は司法だと思っておるんです。司法に対して信頼を国民が持っている限り国というものは維持存続するわけでありますが、この国防、治安、外交、民族の誇りを教える教育、そして司法の問題について揺るぎがありますと、家の栄枯盛衰と同じように、国も非常に危険であると。
 そういうふうなことを眺めていきますと、この五つの部門について、必ず栄枯盛衰があるならば、それをいかに栄え続けさせるかが政治家の使命であると思いますし、行政官の使命でもあると私は思っているわけであります。
 そこで、昨日の森山法務大臣の御趣旨も含めまして、少々幅広い観点でお聞きいたしたいと思いますので、関係局長を参考人にお迎えいたしているわけでありますが、そういう面でひとつお聞きいただきたいと思うわけでございます。
 それでは、まず治安の問題についてお聞きいたしたいと思っております。
 最近、国民に対してアンケート調査で聞きますと、皆さん何が一番御心配ですかとやりますと、景気、これは当然返ってくるわけですね。次に出てくるのが、やはり治安である。治安に対する不安感というのが猛烈に起きているわけでございます。
 それで、この面について、関係参考人から、数字も含めましてひとつ取り組み方についてお願いいたしたいなと思っているわけでありますが、一つが、昔は日本というのは、女性も夜自由に一人で歩いていける、そういう安全神話があった。まだ、地方に行きますと、私福島ですが、田舎の方に行きますと、玄関があきっ放しでやっているという状況です。その意味では、逆に都市の方が住みにくくなっているという現象でもありますが、ここ最近の状況を見ますと、非常に検挙率は下がっている、犯罪の発生件数はふえている、そして犯人が捕まらない。こういうことで、いろいろな動機があると思いますが、特に海外からの不法滞在者が約二十六万人おる、こう言われているわけでありますが、そういうふうな面につきまして、これは水際作戦としまして入国管理という体制もきちんとやらなきゃいかぬ。あるいはCIQということで、日本には空港もあれば港もある、そういう面についての対策もやらなきゃいけない。
 それから、さらに私が懸念している問題は、検挙はしたけれども、それを入れておくと言ってはいかぬが、拘束する刑務所あるいは拘置所、これがもう満杯であって、幾らあれしてもいっぱいになっちゃう。百何%ですよ。女性の場合にはさらにその収容率というのはオーバーになっています。こういうような状況があります。
 そこで、法務大臣、まず治安の問題一般で、私、細かいことも、今申し上げたようなことについて、限られた時間でありますので総括的に、そして刑事局長あるいは中尾入管局長初め関係参考人が補足的な数字をおっしゃっていただき、ひとつこの委員会としまして最初に取り上げていただきたい。
 以上です。
森山国務大臣 御指摘のように、日本は長い間、世界に冠たる治安のよい国ということを誇りにいたしてまいったのでございますが、おっしゃいますような心配が出てきたことは事実でございます。
 治安を維持するために最も基本的な施策というのは、犯罪を摘発して、事案の真相を明らかにした上で、刑罰法令を適正かつ迅速に適用して適正な科刑を実現することというふうに思いますが、最近の捜査、公判活動をめぐる状況を見ますと、今まで考えられなかったような態様の凶悪殺傷事犯とか、御指摘のような来日外国人や暴力団による組織的な犯罪、大型の財政経済事案などが多発するなど、検察を初めとする捜査機関が対応を迫られる犯罪が質量ともに増加、複雑化しているわけでございまして、非常に困難を来している。そういう変化がございますし、国民の意識の多様化ということもございまして、否認事件が増加しまして、捜査等に対する一般国民の協力を得ることも以前に比べて困難になりつつあるというようなこともございまして、捜査、公判活動が従来にも増して困難の度合いを深めているというのが現実だと認識しているところでございます。
 このような状況を踏まえまして、検察の人員や組織体制の充実強化、各種法令の整備等に努めてまいりたいというふうに思っております。
佐藤(剛)委員 ちょっと数字を関係政府参考人からお聞きしたいと思っています。
 今、行刑施設において受刑者の収容人員が急増している、これはしっかりしなきゃいかぬよということを先ほど申し上げたわけでありますが、多くの刑務所において収容定員を超える過剰収容となっているわけでありまして、その現状、それから、将来どういうふうな計画を持ってやるのか。三年計画でやってこれを解消するのか、どういうことなのか。私は、そういうふうな一つのタイムスケジュールの中でこの問題というのを処理していく必要があると思いますので、関係参考人、補足願います。
鶴田政府参考人 お答えいたします。
 現在の過剰収容の状況ですけれども、本年一月で、行刑施設における収容者は約六万五千四百人となっておりまして、収容率にしますと一〇一%となっております。このうち、特に受刑者を収容する刑務所等ですが、こちらの方は収容率は一一〇%となっておりまして、行刑施設の本所七十四庁のうち六十一庁において過剰収容ということになっております。
 今後、この過剰収容の動向というものがどうなるか。主な原因は、主として、新受刑者といいますか、その年に新しく実刑判決を受けて刑務所に入る、そういう受刑者がふえていることに主な理由がございます。その背景には、社会環境の変化とか国際化とか、経済不況の長期化とか、さまざまな要因が考えられるわけですが、そういったものが大きな変化がない限り、私どもとしても、今後、過剰収容の状況が続くのではないかと思っております。
 当面、予算的な措置によりまして、施設の増築、中の改築ということで収容を図っておりますけれども、さらにその後の長期的な問題につきましては、そういった予測を踏まえまして新たな対策を考えていかなければならないということで今検討しているところでございます。
佐藤(剛)委員 入国管理体制については、大臣初め大変な御尽力があって、百二十名ですか、増員した。これで私は十分とは全然思っておりませんが、しかし、これは画期的なことであるわけでありまして、これをやはり何年間かの長期的な形で、五年計画で何人ふやすとか、あるいは空港CIQの問題についてどうするか、これも含めて、そしてその施設について、これが足りなければ、それに対する実需というようなものを、これは補正であり、あるいはPFIというようなものの制度を使ったり、いろいろな面でむしろ考えてもらいたい、具体的に。これを私は申し上げておきます。
 では、次はテロの問題について質問させていただきます。
 今回、この委員会に、テロ防止条約関係法案ということで、国連の条約で、私の記憶では二十二か何かが皆入りますと効力を有する、恐らく二十ぐらい今入っていると思いますけれども、そういう意味で、日本が条約に入ることによって、テロに対してしっかりとした、毅然とした態度をとる法制整備というのは重要であります。今、法務省で熱心に審議を、法制局審議も終わらんとしておるということを聞いて、喜ばしいことなのでありますが、これについて、きょうは公安調査庁長官、おいでですね。
 実は、テロ対策の最重要課題の一つとしましてテロの未然防止というのがあるわけでありまして、そのためには、広くテロについての情報活動というものをやっていかなきゃいけない。私も一月にイギリスに行って、IRAだの何だの、イギリスはテロの関係の本場でございますから、行って研究してきましたが、二〇〇一年テロ対策法だとか、そういうのがどんどんでき上がっておるというような状況でもあります。
 それで、私お聞きしたいのは、公安調査庁において、凶悪テロの再発を防止するためにどのように対応しているのかというのが一点。それから第二は、オウム真理教に関する観察処分を定めましたいわゆる団体規制法の立法の際に、衆参両院の法務委員会において、当委員会においてもそうですが、附帯決議でテロ対策の調査研究を求めていますが、その進捗状況はどうなっているか。二点、以上です。
書上政府参考人 お答え申し上げます。
 委員御指摘のまず第一点でございますが、今回の米国における凶悪テロ事件発生直後から、私ども公安調査庁におきましては、特別調査本部を設置いたしまして、各種関連情報の収集の強化、特に国内における危険分子、海外における危険団体、こういったものに関連する情報を収集いたしまして、これを国内における警察等関係の機関に適宜提供し、未然防止に努めているところであります。
 それとあわせまして、国際的な動きといたしまして、テロ資金供与の防止ということが大きな課題になってございまして、これにつきましても、我が国の政府内において、関係法律に基づいた規制措置が現に講じられておるわけでございますので、これの関連でも必要な情報を適宜関係機関に提供してきているところであります。
 また、御指摘の第二点の、いわゆる団体規制法の成立の際の附帯決議の問題につきましては、最近の国際間におけるテロ組織による無差別大量殺りく型の事件の発生、これが大変国際的に大きな広がりが見られてきておりますので、こういったことを念頭に置きまして、団体規制という観点から、御指摘の附帯決議の趣旨を踏まえて、諸外国におけるテロ対策に関する法制度あるいはその運用状況、こういったものについての調査研究を進めてきておるところでありますが、こうした現状を踏まえまして、最近におけるテロ組織の活動実態、これに関する調査結果を踏まえまして、有効なテロ対策のあり方について、法整備の可否、これを念頭に置きながら、早急に結論を得るように、現在鋭意私どもの中で多角的な検討作業を進めておるところでございます。
佐藤(剛)委員 長官、今おっしゃられたことを速やかに、そしていかなる場合が発生しても懸念のないように、懸念を払拭するような形で進めていただきたいとお願いしておきます。また、この問題についてはいつしか触れますから、よろしくお願いします。
 次は、いわゆる触法精神障害者の問題。
 昨年六月の大阪教育大学附属池田小学校で痛ましい事件が起きたわけでございます。重大な犯罪に当たる行為をした精神障害者の処遇の決定方法あるいは入院治療のあり方、さらには、退院後の継続的な治療を確保する方法、こういうようなことについて非常に国民の高まりがあった。今までの制度、このままで大丈夫なのかどうか。それからまた、一面、この機会に、その精神障害者に対する福祉のレベルアップ、これは私は非常に重要だと思っておりますし、常にこの問題というのは誤解と偏見を持ちますから、そこら辺、気をつけて言葉を使いながら進めていかなければならないと思っておりますが、幸いにも非常にいいコンビで、法務省、それから裁判所、それから厚生省、この協力のもとでプロジェクトチームがあれして、与党内で私は座長をやらせていただきましたが、刑事局長初め皆さんの御努力でいい形で進んでいると思います。
 それで、ここで一括しまして御質問申し上げますので御報告をいただきたい。
 一つは、この新たな制度というものの目的、目的を持った制度としてどういう形で考えるのか。それから、この新たな制度において、裁判官とお医者さんとが共同して、重大な触法行為、殺人、傷害、強姦、放火、傷害致死等々大体六つぐらいのものを考えているわけでありますが、そういう行為をした精神障害者の処遇を判断する仕組みを整備するとされているわけでありますが、この判断の仕組みを取り入れる趣旨、これについての御質問。
 それからもう一つは、重要なことは、これからのアフターケアの問題であります。アフターケアについて、保護観察所に新たに精神保護観察官を設置するという形で私ども聞いておりますが、この病院とか地域社会の保健所等々と、コーディネーターといいますか、連携しまして、本件の観察・指導をしていくということが非常に重要ではないかと思うわけであります。
 それで、現在、新聞に、こういう保護観察所に精神保健観察官というのを置きますよというふうなことが載りましたら、地域でもそうですが、全国ベースで動いているのじゃないかなと思いますが、非常にまじめな方々が保護司になっておられるわけでありますが、その保護司の方々が、自分たちのように、経験のある方はいいですけれども、経験のない方々にとっては非常に不安である、これはしっかりした形でやっていただけるのでしょうねということを、私自身もしわ寄せがないようにと受けているわけであります。そこら辺の問題を、保護司に対しまして、この委員会の場で、御不安はございませんよということを、大臣からのお言葉、また関係局長からのお言葉、そういうふうなものを発していただきたい。
 以上でございます。
森山国務大臣 いわゆる触法精神障害者に係る新たな処遇制度は、心神喪失等の状況で重大な犯罪に当たる行為を行った者については、まずもって治療の確保を図るということが大切でありまして、継続的に適切な治療が行われることによりましてその病状が改善されるように、そして、それに伴って、これらの者がその精神障害のために同じようなことをもう一度また繰り返すというようなことがないようにするということが、本人のためでもあり社会全体のためでもあるというふうに思うわけでございます。
 このため、裁判官と医師が共同して入院治療の要否、退院の可否などを判断する仕組みを考えまして、また退院後の継続的な治療を確保するための仕組みもあわせて整備するということが必要であると考えておりまして、法務省といたしましては、厚生労働省とともに、今国会においてそのような仕組みを整備するための必要な法律案を提出したいというふうに考えております。
 佐藤先生にもいろいろと御心配をおかけし、御苦労いただいておりまして、大変ありがたく思っておりますが、できるだけ早くそのような案をしっかりと決めまして提案をしたいというふうに考えておりますが、終わりにおっしゃいました、退院後のアフターケアの関係で保護司の方に過大な負担がかかるのではないかという御心配のことでございますが、この制度におきましては、退院後も継続して必要な医療を確保するということがまず重要でございます。ですから、退院後のアフターケアを実効あるものとするためには、その人の生活状況を見守って、その相談に応じて通院や服薬を行うように働きかけるという必要がございます。そのためには、精神保健や福祉に関する専門的な知識及び経験を持っている職員がこれに当たることが必要であると考えておりまして、そのような知識、経験を有する専門職員として、精神保健観察官を全国の保護観察所に配置するということを考えております。
 現在の行財政改革のもとで定員を取り巻く情勢は極めて厳しいものがございますけれども、必要な人員の確保について努力をしたい、できる限り努めてまいりたいと思いますので、先生方の御支援もいただきながらぜひその目的を果たしたいと思っております。
 一般の保護司さんにつきましては、今まで申し上げたようなこの制度において必要とされる専門的な知識あるいは経験を有する方というのがほとんどいらっしゃいませんのが実際でございまして、保護司の方々に、この制度における処遇に直接関与していただくということは適当ではないというふうに思っております。
 さらに、現状でも保護司の方々は保護観察という非常に困難な仕事を無報酬で引き受けていただいているわけでございまして、その御労苦は大変大きなものがございますから、今回の制度のもとでさらに御負担をおかけするということは、保護司制度そのものにも影響が出てくるというふうに思われますので好ましくないというふうに思いますので、そういうことはしないようにということを考えておりますので、必要となる職員の確保ということがまずもって先決だというふうに考えております。
 以上でございます。
佐藤(剛)委員 ただいま森山大臣から明確な御答弁が発信せられまして、全国のまじめな、非常に大変な仕事をされている保護司の方々は御安心なさったんじゃないかなと思っておるわけでありまして、感謝申し上げます。
 次に、どうしても大臣にお聞きしたいなと思っておりました、この委員会において過去どうなのかわかりませんが、それはいわゆる選択的夫婦別姓制度の問題であります。
 この問題につきましては、私は、自民党の中で、いろいろな意見集約に必要なる需要があればそれにこたえるのが、五%であれ一〇%であれこたえるのが立法の仕事であるだろう、政治家の仕事であるだろうという認識のもとで努力している者の一人でございます。
 私が感ずるのは、選択的夫婦別姓という言葉を使った瞬間に日本の中で非常に誤解が生まれた。オプショナルという意味の選択だったと思うんですが、逆に、みんな夫婦別々で構いませんよという、あるいは強制的にするような気持ちに受け取っている方々が相当おるなということを、地元からなりいろいろな接する人の話を聞きますと、ああ、そうだったのかなという感じを持った。私は、同一といいますか、夫婦同姓というのは原則でありますから、この原則は基本と置いておいて、そして言葉は適当かどうかわからないんですが、日本は言霊の国でございますから、いろいろ言葉の使い方は注意しないといかぬのですが、例外的、そういう形の文章というのは法律に書けないと思いますが、そういう気持ちを含めて、例えば別姓をしていた方々が同姓になる、数年たってなる、あるいは十年たってなる、それは認める。しかし、同姓の人が別姓になるというのはあたかも逆に行っちゃうわけですから、それは認めないという意味において、例外的、エクセプショナルといいますか、そういう夫婦別姓制度というような観点ならば、その誤解とかあれが解けるのじゃないのかなと思っておるわけであります。
 というのは、私ども議論いたしていますと、恐らくどの政党もそうだろうと思います、みんな考え方が、みんなそれぞれ価値観が違う問題だろうと思いますが、この点につきまして、大体反対する人の立場からは、そもそもこういう夫婦別氏制度というのを選択的にも例外的にも導入するということは、家族のきずなを弱めるような法改正になっちゃうんだ、あるいは子供はどうするんだ、児童虐待や青少年の犯罪が増加すると。今は同姓でありますから、同姓の中でも別に家庭破壊なりされているという現状というのは当然それはあります。ありますが、今の場合は何も選択的夫婦別姓制度というのを導入しているわけではない。だから、そういう意味において、いろいろな誤解あるいは偏見というのがあります。
 最近は、読売新聞に、先週ですか、内閣法制局長官をやっておられました大森さんがこの問題について一つの見識ある論文を書かれたので、これを契機に先生をお招きして、また自民党の中でも御意見を拝聴するというようなことをいたしたいと思っておりますが、まさしくライフワークとして取り組まれてこられました森山大臣、私は森山大臣のときに実現しないと実現できないんじゃないかと思うぐらいのものでございますし、私は、そういう意味において、法務部会長としましても全面的な御協力を申し上げたいと思っておりますが、これについて、大臣のお言葉から、この問題についてどのようにお考えなのかということを可能な限りお聞かせいただけたらと思って質問する次第でございます。
森山国務大臣 大変先生にもこのことで御苦労いただきまして、まことにありがとうございます。
 女性の社会進出とか少子化ということが進んでまいりまして、そういう社会状況の変化ということから、氏を変えるということが事実上の障害になりまして法律上の結婚が困難になったという方が次第にふえてきているようでございます。したがって、やむを得ず事実婚を選択しているという方々も現にたくさんいらっしゃると伺っております。
 このように、選択的夫婦別姓、この言葉がいいかどうかはちょっと、私も必ずしもいいとは思っていないんですけれども、この選択的夫婦別姓の制度というのは、あくまでも法律上の結婚をして、家族関係を法的に安定したものとすることを望む方々のための制度であるというふうに考えております。
 おっしゃいました大森元内閣法制局長官の御意見におきましても、夫婦同氏を強いる現行制度は、男女がともに社会活動を円滑に続ける上で大きな支障となっているということをおっしゃっておりまして、一家族当たりの子供の数が少ない長男と長女時代には、夫婦別氏が可能となれば、婚姻の障害がそれだけ少なくなるといった御指摘をされているわけでございます。
 政策判断の問題といたしましても、現行制度を維持してこれらの方々を事実婚のままの状態に置くというよりは、法律上の結婚をする道を開いて、社会にとっても安定した御夫婦が普通にたくさん見られるという方が望ましい、社会的にも必要なことだというふうに思っております。
 子供に対する影響というのを心配される方が確かにいらっしゃいますけれども、家族のきずなといったものは法律で強制することによって成立するわけではございませんと私は思います。家族を構成する人々の相互の愛情とか思いやり、譲り合い等によりまして醸成されてくるものでございまして、氏が同一であるかどうかということが決め手になっているとは私は思いません。また、別氏夫婦の子に対する偏見というのも一部にございますけれども、むしろそのような偏見がなくなるように努力すべきではないかというふうに思っております。
 さらに、選択的夫婦別氏制度とは、種々の事情によって同じ氏にすることが困難な人たちに、別氏のままで法律上の夫婦となる道を開くための制度でございまして、これまでどおり同氏を望むという方はもちろんそれで結構でございまして、何の影響も受けないわけでございます。
 ですから、誤解といいましょうか、間違った思い込みというのが一部にまだあるようでございますので、そういうことをできるだけ解消していくように努力しなければいけませんと思いますが、先生にもいろいろとこれから御指導いただき、大勢の議員の先生方にもお力添えをいただきまして、できるだけ事実上困っている御夫婦が問題を解消することができますように努力いたしたいと思います。
佐藤(剛)委員 ありがとうございました。この委員会で森山大臣から御答弁いただいた意義は高いものと思います。多といたします。
 最高裁の千葉局長においでいただいているわけでございまして、実は司法改革の問題についていろいろお聞きしようと思っておりまして、山崎さん初め申しわけないなと思っておるんですが、またそれは別の機会にちょっと集中させていただきますが、その中で、実は自民党の中でも数年前に、佐藤幸治先生の司法制度改革審議会をつくる前に、内閣でできる前に議論した経緯があるのであります。一つのそれぞれの専門分野の訴訟、例えば税理士の判断を非常に必要とするような税務訴訟、これは私の知識ではアメリカの十分の一ぐらいしかない。そして不服裁判所というのが税務署にある。そこで一たん決まったものは、これはずっと上がって、最高裁まで上がってくるのに、結論が出てくるのに六年ぐらいかかる、六年。それから、みんなそのためにお金を積むんですよ。だから金がない人は訴訟できない。ですから、そういうふうなことをこれは直さなきゃいけない。
 これから医療の問題も出るよ、医療過誤の問題も出るよ。あるいは知的所有権。先ほど弁理士の問題がありましたが、この問題について弁理士法の改正というのをなされるわけでありますけれども、そういうふうな問題というのがこれからあるわけでありまして、その意味では東京、大阪の各知財の部の拡充、一種の特許裁判所的なことの方向もあると思うんです。ただ、私が今一番心配している問題というのは、税というような国民が非常に関心を持っておって、そして窓口でやって一たん決まっちゃうともう救いようがない。専門家がどうだという話をやっていって、不服審査なりやって、調べてみますと、恐らく九十何%が、そこで決まったものは全部行きます。
 最高裁判所の体系というのは、それは裁判官は優秀な方々がおられますが、私は、そこに税理士とかなんとか、そういう専門家を導入して、そういう人たちの意見というものをきちっと聞いてあれするということが重要であると思いますが、最高裁判所千葉局長、もう時間がないわけでございますので、私の今の質問に対して要領よくお答えいただきたい。
千葉最高裁判所長官代理者 専門的知見を要する事件の処理につきましては、専門家の活用が大事でございます。税務訴訟におきましては裁判所調査官というのがございます。知的財産権訴訟におきましても調査官がございます。それから、医事関係訴訟につきましては、鑑定人の確保ということで、日本の学会に鑑定人の推薦の依頼ができるようなシステムを考えてございます。
 今、委員からの御指摘もございましたけれども、専門家をいろいろな場面でこれから十分活用していって、専門訴訟の迅速処理、適正処理に努めたいと考えております。
佐藤(剛)委員 ぜひ、最高裁においてはこの問題を真剣に取り上げていただきたい。司法改革の中の、行としましては数行分、この隣接部分ということで書いてありますが、掘り下げれば非常に重要な課題であります。国民がみんな注目しているところであります。そういう問題を含めて本件についてお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
 本日は、たくさんの関係者においでいただきまして、十分あれしませんで申しわけないと思いますが、あしからず。失礼しました。ありがとうございました。
園田委員長 石井啓一君。
石井(啓)委員 おはようございます。公明党の石井啓一でございます。
 私、法務委員会に所属するのはこの通常国会が初めてでございまして、法務委員会における初質問でございますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 さて、まず最初に、報道されました、東京入管における中国人の逃走事案についてお尋ねをいたしますけれども、現在、大臣官房がリードしてこれについての調査を進められているというふうに承知しておりますけれども、まず、この調査の状況がどうなっているのか確認をさせていただきたいと存じます。
森山国務大臣 現在、官房が主導いたしまして本件に関する調査を鋭意行っておりますので、いましばらく御猶予をいただきますようにお願いしたいと存じます。
石井(啓)委員 簡潔なお答え、ありがたいのでありますけれども、余りにもそっけないのでもう少しお尋ねしたいと思いますが、今月中に何か結論、結果を出されるというふうにお聞きしておりますけれども、きょうあすしかございませんので、まず、この調査結果をいつ明らかにされますでしょうか。
森山国務大臣 なるべく早くと思っておりますが、何月何日ということまで今申し上げることができない状況で、大変申しわけございませんが、できるだけ早くということで御理解いただきたいと思います。
石井(啓)委員 それでは、今月中、もしかすると三月に入るかもしれないということでいらっしゃいますか。
森山国務大臣 今月中という話は、私は申し上げたかどうかちょっと記憶がないんですけれども、できるだけ早くということで、残念ですが、何月何日とは申し上げかねるわけでございます。
石井(啓)委員 それでは、報道の中で、この逃走事案、中国人に関する文書が破棄をされている、公文書が破棄をされているという報道もございますけれども、この点についてはどうなっていらっしゃるんでしょうか。
森山国務大臣 この案件は、おっしゃいますように、本来あってはならないような事件でございまして、まことに遺憾で、申しわけないと思っております。
 他方、調査を担当しておりました入国管理局におきましては、いずれ事実を解明して公表するべく調査を進めていたところでございますが、事実が十分解明できないまま一部だけ公表するということも、かえってその後の調査を困難にするということがございまして、事件発生から四年余りを既に経てしまったわけでございますが、関係書類が保存されていないということや、関係職員の供述が食い違うというようなことがございまして、困難な点が多く、調査が長引いているというふうに聞いております。
 おっしゃいますように、関係の書類が、何分にも何年も前のことでございますので、そろっていないということでございまして、大変申しわけないと思いますが、従前にも増して適正な職務執行が行われますように、事件及び事故の発生を予防しなければいけないと思いまして、そのようなことを厳重に申しておりますし、このようなことが仮に発生したら、的確な、かつ迅速な事後処理が可能となるように職員を指揮監督してまいりたいというふうに思っております。
石井(啓)委員 いずれそう遠くないうちに調査結果が明らかにされると思いますので、その中で、いろいろ報道されている嫌疑も明らかにしていただきたいと存じます。
 そもそもこの問題は、平成九年に被摘発者が逃走した、それを隠したこと自体がそもそもの問題ではありますけれども、もう一つ、東京入管から本省に報告が上がってきたのが昨年の六月というふうにお聞きしておりますが、それ以降もなかなか公にしてこなかったということで、法務省が、本省がこれを隠ぺいしようとしたんじゃないかというふうに疑われている、そのこと自体が非常に残念な事態であるというふうに私は思います。
 やはり、半年以上経過しても公表していなかったということ自体は反省すべきだというふうに思っておりますし、大臣も記者会見等でもそういうふうな旨の発言もございますけれども、改めて、これについての見解、あるいは、今後同様の事案が生じた場合にどういうふうに対処されるのか、その点についてお聞きしたいと存じます。
森山国務大臣 大変残念なことでございまして、大いに反省をしておりますし、また、関係の職員に対しては厳重に注意をいたしまして、二度とこのようなことがないように厳しく申し渡してございます。
 万一そんなことがありましたときは、できるだけ速やかに正しい報告を本省まで上げてもらって、そして、みんなでできるだけ速やかな解決を図るという体制をきちっとしていきたいというふうに思います。
石井(啓)委員 昨年、法務省関係といいますか、司法関係でいろいろな不祥事が続きましたね、福岡地検、福岡地裁の捜査情報の漏えい問題ですとか、あるいは裁判官の買春疑惑だとか痴漢容疑だとか。国民が政治を信じるというのは、どこまで信じているかよくわかりませんけれども、少なくとも、国民の信頼の最後のよりどころが司法だったというようなところは共通の何か常識だったんじゃないかなと思いますけれども、その最後のよりどころの信頼が揺らぐようなことがありますと、これはやはり大変なことかなというふうに私は思います。
 法務省についても、私は、隠ぺいする意図はなかったというふうに思いますけれども、そういうことが疑われるようなこと自体が、大変遺憾なことであり、残念なことでございますので、今後はこういうことが二度とないように、ぜひしっかりとお願いをいたしたいと存じます。
 続きまして、ワールドカップサッカー大会に関しまして、これは大臣も所信表明の中で述べられておりますけれども、今回は、史上初めて二カ国で共催する、日韓の共催ということでありますから、この日韓の共催を成功させるためには、日本と韓国との間の出入国、これが円滑にいくということが非常に大切になると存じます。
 所信の中で触れられていらっしゃいますが、具体的にどういう対策をおとりになるのか、お聞かせいただきたいと存じます。
横内副大臣 御指摘のように、歴史的なスポーツ大会でございまして、両国間の相互理解や友好関係を深める大変によい機会でございます。この大会の期間中に、これは国土交通省の予測でございますけれども、日韓の間を十一万人の観客が移動するというふうに言われております。そこで、今委員が御指摘になりましたように、日本と韓国との円滑な出入国方策ということが大変に重要な課題になっているわけでございます。
 そこで、幾つかございますけれども、まず一点として、この機会に両国民の円滑な交流に貢献するために、本年一月一日からですけれども、韓国人に対するビザの発給の要件を大幅に緩和をいたしました。従来は、御承知のように、有効期間一年で十五日間ということだったわけでありますが、一定の要件に該当する人については有効期間を五年にして滞在期間も九十日にするというような大幅なビザの発給要件の緩和をしております。
 また、大会期間中には、すべての韓国人を対象にいたしまして、滞在期間三十日の期間限定の査証免除、ビザの免除の措置を実施するということで、今両国政府の間で協議が行われております。
 三点目といたしまして、同時に、お互いに交流を円滑にするために、日本の入国審査官が韓国の空港で審査をして、日本に入ってくる人間を事前に審査をする、これをプレクリアランスというわけでありますが、これも実施できるように現在鋭意両国間で協議が行われているということでございまして、いろいろな方法で出入国審査、それから両国の交流が円滑に行われるような措置をとることにしているところでございます。
石井(啓)委員 ぜひよろしくお願いいたしたいと存じます。
 それから、サッカーの大会に関しては心配されますのが、いわゆるフーリガンと言われる騒ぐことを目的としてサッカー観戦に来る熱狂的なファンが、特にヨーロッパに多いわけでございますけれども、せっかくのワールドカップサッカー大会がこのフーリガンの暴動等で後味の悪いものになってはいけないということがございますし、特に開催地の住民の方は非常に心配をされている。私は、茨城県を地元としまして、カシマスタジアムを抱えておるものですから、やはりフーリガン対策をしっかりやってほしいという要望がございます。
 昨年の臨時国会で出入国管理法を改正されて、フーリガンについての入国拒否それから強制退去が法的に可能にされたわけでありますけれども、これはぜひ運用を厳しくやっていただいて、実効の上がるものにしていただきたいと存じます。この点についてのお考えを伺いたいと存じます。
横内副大臣 フーリガン対策につきましては、今委員が御指摘になりましたように、さきの臨時国会で出入国管理法の改正をさせていただきまして、フーリガンが我が国に入国した場合には上陸を拒否する、あるいは、入国後フーリガン行為を行った者に対しては迅速な退去強制が行われるというような体制を法律の改正によってとることができるようになったわけでございます。この改正法は三月一日から施行されますけれども、この改正法が実効性のあるものになるようにしていかなければなりません。
 そのためには情報の収集が大変大事でございまして、現在、警察庁初め関係機関を通じまして、関係諸国に対してフーリガンに関する情報提供の協力を依頼しているところでございます。
 法務省としては、間近に迫った大会の開催に向けてこれら情報の収集に努めまして、改正法の趣旨を十分に生かして、フーリガンに対して厳正に対処をしていきたいというふうに考えております。
石井(啓)委員 ちなみに、その改正法の中で、入国拒否の事由として、最後のところで、おそれのある者という表現になっているのですね。改正法第五条の五の二ですか、最後の、おそれのある者。このおそれのある者というのは、これはどういうふうに客観的に把握するのかなというのが、ちょっとどうなっているのかなという問題意識がございまして、本人が、私はそんなつもりはないというふうに抗弁されたら、これは入国拒否できないのかしらと。おそれのある者というのはどういうふうにきちんと把握されるのだろうかというふうに問題意識を持っているのですけれども、この点についてはいかがでしょうか。
中尾政府参考人 そのおそれの点についてでございますが、基本的には、私どもの方で入手いたしましたフーリガンに関する情報がまず前提になろうかと思います。
 この条文の要件は、まず、かつて過去にフーリガン行為を行って刑に処せられたとか海外に追放処分を受けたとか、そういう前歴のある者ということで客観的に把握できるわけであります。その中身と現に行われる試合との関係あるいはその時間的な関係等々、そういう相互の関連性から私どもの方で判断せざるを得ないと思います。
 もちろん、それぞれの諸国におきましてそれぞれの処分をした内容によっては、明らかに直近のものであれば同様のことを、同様の対戦の場でありますので、そういうフーリガン行為が行われるような試合というものはかなり限られてまいりますので、そういう試合に際して来日したということになりますと、そのおそれというものの危険性というものが高まる、そういうふうに考えているところでございます。
石井(啓)委員 ぜひこれはしっかりとやっていただきまして、なるべく水際で入国自体防げるようにしっかりやっていただきたいと存じます。
 それから、これは時間が迫ってまいりましたので最後の質問でございますけれども、夫婦別姓制度について、私もお尋ねを申し上げたいと思います。
 私も賛成の立場からお伺いをいたしたいと存じますけれども、これは大臣も非常に積極的なお立場で、大臣の所信にも述べられておりますけれども、私は、やはり相当議論も深まってきましたので、なるべくこれは早期にやっていただきたいというふうに思っていますが、制度創設に向けての御決意と、今後どういうふうにお取り組みをされるのか、これは大臣と民事局長それぞれにお尋ねをいたしたいと存じます。
森山国務大臣 大変価値観が多様化してきた最近でございまして、また一方において少子化も進んでいるということで、女性が職業について、結婚する前に数年間あるいはそれ以上、それなりに自分の名前で社会的に認められ、それを基盤にして活動しているという人が少なくない。
 少子化ということに関連いたしましては、長男長女同士の結婚という話もたくさんあるわけでございまして、そのような場合に、別氏が法的に認められれば結婚することが可能なのに、それが認められないという現状で事実婚にするしかないというような方が少しずつふえております。この方々が、やはり自分たち自身のステータスを安定させたい、また子供のことも考えて法的にきちんとした夫婦となりたいと思われるのは当然のことでございます。
 そのような世の中の変化、そして国民の多くの人の気持ちにこたえるということは必要ではないかというふうに私はかねて思っておりましたが、昨年の八月に公表された世論調査におきましてもそのような傾向がはっきりとあらわれております。
 さらに昨年の十月、男女共同参画会議基本問題専門調査会におきましても「選択的夫婦別氏制度を導入する民法改正が進められることを心から期待する」というお言葉をいただいておりまして、この男女共同参画会議の長は総理でもございますし、法務大臣はそのメンバーでもあります。その御趣旨に従って、このような状況を踏まえて、できるだけ早期にこの問題が解決できるようにさらに努力を続けていきたいというふうに思っております。
房村政府参考人 この問題につきましては、ただいま大臣がお述べになりましたように、法務省として、大臣の御指導のもと、できるだけ多くの方の理解を得て、早期に実現を図りたいと考えているところでございます。
 具体的には、できるだけ多くの方々の意見を得られるような制度のあり方であるとか、先ほども選択的という名称についての御議論も示されましたが、そういった点も含めて制度のあり方を検討すると同時に、いろいろな事情でどうしても同氏にすることが困難である、こういう人たちのために法律的な婚姻の道を開くのだ、そういう制度の趣旨を多くの方々に理解していただけるよう今後も御説明等の努力を続けたい、こう考えております。
石井(啓)委員 大臣、ぜひこの通常国会で法案提出すべく頑張っていただきたいと思うんですけれども、最後に大臣の御決意を伺いたいと思います。
森山国務大臣 大変激励をいただいてありがとうございます。どうぞ先生方の御指導、御協力をいただきまして、そのようなことができますように今後とも努力を続けていきたいと思います。
 ありがとうございました。
石井(啓)委員 以上で終わります。
園田委員長 漆原良夫君。
漆原委員 公明党の漆原でございます。
 まず第一番目に、司法制度改革についてお尋ねします。
 大臣が、所信の中でこの司法制度改革を第一番に取り上げていただいて、その実現に向けて強い決意を表明されておられます。大変敬意を表したいと思っております。
 この推進法の第七条は、政府に司法制度改革推進計画の策定を義務づけておりますが、その作業の進捗状況についてお尋ね申し上げたいと思います。
山崎政府参考人 司法制度改革推進計画についてお尋ねでございますが、この計画につきましては、二月十九日に開かれました第二回顧問会議において、その骨子について御議論をいただいたところでございます。その結果を踏まえまして、三月七日に予定されております第三回の顧問会議、ここに計画本体全文をお諮りいたしまして、その上で、本部会合を経て三月中には閣議決定をお願いできるようにしたいと考えておるところでございます。
 この計画につきましては、私ども立てているものは政府としてのものでございます。これ以外に、最高裁、日弁連でそれぞれ自分の所管事項のところについて計画を立てております。三本あわせて計画を立てているという状況でございますが、お互いに共通するところもございまして、連絡をとり合いながら作業を進めているという状況でございます。
漆原委員 ぜひとも、日弁連、最高裁と連携を密にしながらやっていただきたいと思います。
 それで、今後のことなんですが、この国会に提出される法案はどのくらいになるのか。特に十五年、十六年の国会では大変な数になるんだろうというふうに思っておりますが、概略で結構でございますが、お教えいただければと思います。
山崎政府参考人 予定されている法案の数の御質問でございますが、ただいま計画を練っているところでございまして、その計画によっては運用で終わるものもございます。場合によっては法案を出さざるを得ないものもございます。それから、法形式もまだどのようにするか決まっていないところもございます。
 なかなか数で申し上げるのはちょっと申し上げにくいんでございますが、非常に対象が多岐にわたる、広範にわたるということから、質掛ける量といった総体は膨大なものがあるだろうというふうに予想しておりますが、具体的な数は、もう少し、しばらくしてある程度判明したところでお答えを申し上げたいというふうに思います。
漆原委員 私は、実はこの司法改革関連法案を現在のこの体制のままで審議することに強い危惧の念を持っておるんです。今局長がおっしゃったように、質、量ともに膨大な法案が出てくるわけでございまして、それを森山副本部長が、強い決意で臨まれておるのはよくわかるんですが、副本部長が法務大臣と兼務しながらやられる。また、国会においても、この法務委員会が通常の法務の作業と法案の審議と並行してやらなきゃならない、こういうことになるわけでございますが、果たして、そういう本来の業務、本来の仕事のほかに大変な作業を抱えてやることになるわけなんですが、今のままでは本当に司法改革関連法案についての十分な審議ができるんだろうかという強い危惧を持っておりますが、大臣、この点はいかがでございましょうか。
森山国務大臣 先ほど事務局長から申し上げましたように、司法制度改革関連法案は、まだ具体的には幾つになるということ、またいつになるということもはっきりいたしませんが、質、量ともに膨大なものになるであろうということは十分予想がつくわけでございまして、そのような法案の御審議について、国会に大変大きな御負担をおかけするということになるのではないかと思うわけでございますが、司法制度改革実現のためにはどうしてもそれをお願いしなければならないということで、先生初め専門家の先生方には何かとお世話になると思いますが、よろしくお願いしたいと思います。
 国会でどのような形で御審議をいただくことになるだろうかということは、国会が御判断されるということでございまして、私がここで、自分の考えがあったとしても申し上げることは差し控えたいと存じます。
漆原委員 私どもも、大臣と同じように、法務委員会で審議するんだということであれば、もう骨身を惜しまず、昼夜を問わず、全力でこの法案の審議に努力したいという決意でございます。大臣と同じでございますが、私の考えを述べさせてもらいますと、この際、国会においては司法改革推進特別委員会の設置をすべきではないのかなと思います。内閣においても、推進本部と同じように任期を三年に限定をした司法改革推進担当大臣を任命すべきではないのかな、そう思っているんです。
 実際に、二十本、三十本という法案を通常国会でやるといっても実務上は非常に難しい。また、これは特別委員会だけできてもだめなんですね。どうしても大臣のとりっこになりますから、衆参の法務委員会でも大臣が必要だ、この特別委員会でも法務大臣が必要だ、こうなりますと、結局、特別委員会をつくった意味がないわけですね。そういう意味では、私は、国会で特別委員会をつくるということと推進担当大臣を新たに御任命いただくというセットでやらないと、実はこの司法改革関連法案の重要な審議をする体制にならないんじゃないかというふうに思っておるんです。
 先ほど大臣もおっしゃいましたが、私がこう申し上げると、大臣、どうでしょうかと言うと、大臣は、いや、それはもう国会でお決めになることだと。それはもう当然のことだと思います。ただ、私どもも全員が国会議員なわけですから、どうやったらこの司法制度改革が国民の期待にこたえられる立派なものになるかという観点から、その方法論としてどうすべきかという観点から、ぜひともこれは考えていかなきゃならないし、もうぜひとも、場合によっては、法務大臣から総理にお願いをしたり、我々も国対だとか議運にお願いしたりして、本当に十分な審議ができるような体制で臨むべきではないのかなという感想だけを述べておきたいと思います。
 次に、触法精神障害者の処遇に関する法律についてお尋ねをします。
 所信で述べられておりました。裁判官と医師が共同して入院治療の要否や退院の可否を判断する仕組みの整備をするとおっしゃっておられましたが、裁判官や医師のおのおののこの判断についての役割、これは初めての制度でございます、おのおのどんな役割に従って判断していくのか。その役割分担を教えていただきたいと思います。
古田政府参考人 ただいまお尋ねの問題につきましては、端的に申し上げますと、精神障害が原因、あるいはその重大な影響下で起こった行為ということでございますので、それにどう対応するかということにつきましては、医療的判断が非常に重要なポイントになるわけでございます。
 しかしながら、その一方で、これが、本人の意思に反して入院させる、あるいは通院を義務づける、そういうふうな義務を生じさせる面があるわけでございまして、そういうことになりますと、そこで、いろいろな生活環境等からして入院させる必要があるのか、そこまではいかないのか、そういうふうな点についても慎重な判断というのが必要になるわけでございます。
 そういうある意味では純粋な医療的な面と、一方で、社会の中でどういうふうに処遇していくということが適切なのか、この両方の面があるわけでございまして、そういうことを考慮いたしまして、医療的判断は、やはりこれは医師の判断が非常に重要になる、一方で、そういう生活環境等も踏まえた治療継続の可能性、それから起こってくる同様の問題行動の実際に発生するおそれとか、そういう点についての判断、そういう点については、医療的判断を基礎としながらも、やはり法的な判断というのが必要になってくる。その両者の要素を調和させるために、裁判官と精神科の医者の合議体によって処遇を決定することが最も適切であると考えているということでございます。
漆原委員 お医者さんの判断と裁判官の判断、二つ、全く分野の違う人が判断するわけなんですが、医療の観点からの判断と、それから法律の観点からの判断、どっちの方が優先するのか。今お伺いしていると、医療判断をもとにして、それを大前提として法律的な判断をしていくんだというふうに私は理解したんですが、そういう理解でよろしいんでしょうか。
古田政府参考人 結論的にはそういうことになろうかと思いますが、申し上げたかったことは、医療的判断の部分につきましては、これは精神科のお医者さんの考えというのが非常に重要なポイントになる。一方で、先ほど申し上げましたいろいろな生活環境等も踏まえた判断というのは、これは裁判官の考え、法律的な目で見てのそういう考えというのがやはり大きなウエートを占めていくであろう。そういうふうな、実際上の観点の相違といいますか、それで相互に議論することによって適切な結論が得られるということを期待しているということでございます。
漆原委員 退院後も継続的な治療を確保するための仕組みの整備というふうに大臣は述べておられました。
 保護観察所に精神保健観察官を置くというふうに報道されているわけでございますが、この新しい精神保健観察官、その役割は一体どんな役割なのか、どういう資格なのか、どういう人が有資格者になるのか、人数はどのくらい考えておられるのか、この辺の御説明をいただきたいと思います。
横田政府参考人 お答え申し上げます。
 まず、保護観察所に置く精神保健観察官の役割でございますけれども、これは、御質問にもございましたように、まず、通院患者に継続的な治療を受けさせるといいますか、医療の確保をすることが最大目的でございます。
 そのためにどういうことをいたしますかといいますと、今考えていますものですと、大きな枠組みの中で申し上げますと三点ほどございます。
 一つは、その対象者に対する観察と指導でございます。対象者がきちんとその医療を続けるかどうか、また、例えば、薬を飲みなさいということで投薬されていればそれをきちんと飲んでいるかどうかといった、間違いなく医療機関の指示に従って適切な医療をみずからも継続しているかどうかということを観察いたしますし、その状況によりましては通院あるいは服薬といったことを勧める、指導するといったような、観察・指導という分野がございます。
 それから第二点でございますけれども、これは、こういう継続的な医療の確保といいますのは、精神保健観察官がひとり観察・指導していればいいというものではございませんで、医療機関でありますとか、あるいは地域の保健婦さんだとか福祉事務所だとか、そういった関係機関が、やはり地域一体となってその対象者を見ていかなければいけないということでございますので、精神保健観察官は、そういった中で一つの中心的な存在として、それらの関係機関あるいは関係の方々との間に立って、ネットワークといいますか、コーディネートしながら医療が確保できるようにしていく、そういう役割を担っていくようにしたいと思っています。
 それから三点は、生活環境の調整ということでございます。その対象者が、医療がうまくいって治る、治った場合にやはり最終的にはまた通常どおり社会復帰しなけりゃいけないわけですけれども、その社会復帰の受け入れの問題について、家族あるいは関係機関と協議し、あるいは相談するなどして、そういった場をきちっとつくっていく、そういう仕事を担当するというふうに考えております。
 したがいまして、今度は資格等でございますけれども、こういったことができるためには、やはりこのような対象者の方々に対する医療についての専門的な知識、あるいはとりわけ経験といったものがなければ、これは適切な観察・指導あるいはコーディネートができませんので、そういう精神保健に関する、あるいは福祉に関する専門的な知識経験を持っている人が絶対に必要であります。
 現在想定しておりますのは、これは法律によって資格を与えています精神保健福祉士という資格者がございますけれども、例えばそういった方々を中心に置いて、そのような知識経験を持っている方の中から精神保健観察官というものになっていただくということを考えております。
 ところで、人数でございますけれども、ここ数年の統計から推測いたしますと、本制度の対象者となる人数は年間三百数十人ないし四百人くらいに上るのではないかというふうに考えております。それらの数の者を数年間継続的に観察・指導等行うということになりますと、やはりそれに必要な人員というものが必要になりますし、これは全国の保護観察所に精神保健観察官というものを置かなければ実効は期しがたいということになりますので、そのような必要な人員といいますか、職員の確保にできる限り努めてまいりたい、このように考えております。
 以上でございます。
漆原委員 保護司さんの話が先ほど佐藤委員から出ましたが、私も何人かの方から要請を受けておりまして、保護司さんは、この観察官の作業、仕事は違うんだということを、要請を受けております。私も、大丈夫だよ、今回はあなた方が使われることはありませんよというふうに申し上げているんですが、ただ、事実上、山奥にちょっと行ってよというような話になるんじゃないかという御心配もしておられます。
 いずれにしても、精神保健観察官という、この人数の確保と充実を図っていただかないと、心配、懸念が実現するわけでございます。しっかりとこの辺図っていただきたいなと思っておるところでございます。
 最後に、人権擁護推進法についてお尋ねしますが、この法案はメディアの側から大変不評でございます。メディア規制につながるということでいろいろな新聞に書かれておるんですが、この法案はメディアによる人権侵害に対してどのような基本的なスタンスに立っておるのか、御説明を願いたいと思います。
吉戒政府参考人 先月末に法案の大綱を公表いたしまして、その関係で各方面から御意見をいただいております。
 今、先生のお尋ねのメディア関係の点でございますけれども、今、最後の詰めの作業をしておりますけれども、新しい人権救済制度のもとにおきましては、報道機関による一定の人権侵害について実効的な救済を図りたい。その基本的なスタンスでございますが、三点ございます。
 まず第一点に、この制度は、特に弱い立場にある犯罪被害者の方、これは、犯罪被害者本人とその家族、それから被疑者、被告人の家族、それから少年の被疑者、被告人、こういう方に対する報道によるプライバシーの侵害、それから過剰な取材、これに限定して救済の対象にするというものでございます。広く一般の報道被害を対象にするものではございません。それが第一点でございます。
 それから第二点でございますが、もとより表現の自由、報道の自由、これはもう最大限尊重すべきものでございますので、報道の自由の保障の観点から、この事件の調査は専ら任意の調査によるということにいたしております。そしてさらに、今、新聞あるいは放送等で自主的な紛争処理機関がつくられつつございますけれども、そういうふうなマスメディアにおきます自主的な紛争解決の取り組み、これも尊重いたしたいということも法案の中に明記したいと思っております。
 それから第三点に、この制度はあくまで事後的な救済でございます。一定のプライバシー侵害にかかわるような報道がなされた場合、あるいは過剰な取材がなされた場合に救済を行うというものでございます。およそ事前規制にわたるということはございません。このあたり、よく御理解いただきたいなと思っております。
漆原委員 以上で終わります。ありがとうございました。
園田委員長 平岡秀夫君。
平岡委員 民主党の平岡秀夫でございます。
 早速入らせていただきますけれども、最近の報道で、平成九年五月に東京入管に収容された者が逃亡し、昨年の五月に大阪の生野署で逮捕されたという事件がございましたけれども、この件について、森山法務大臣は、報告をいつ、どのような方法で、どんな内容の報告を受けたのか。二月十五日に行われた大臣の記者会見では何か報告を受けたようなことをちょっとおっしゃられているようでございますけれども、教えていただきたいと思います。
森山国務大臣 たしか六月の二十日だったと思いますが、本省の入管局長及び総務課長から報告を受けました。その報告の内容は、昨年の六月六日、東京入国管理局が大阪府警の生野警察署から、この生野警察署に逮捕されている中国人が平成九年五月に東京入国管理局の摘発を受けながら取り調べ中に逃走した旨供述しているので、事実関係について調査願いたいという依頼を受けた。そこで、関係記録等を精査いたしましたところ、当該中国人を立件した記録が見当たらないものの、調査した結果、当該中国人は、当時埼玉県警幸手警察署と合同摘発し、警察から身柄を受領した一人であって、その後、取り調べ中に逃走され、記録、旅券及び本人の荷物等も発見するに至っていないという内容でございました。
平岡委員 今のは六月二十日に報告を受けたというお話でございましたけれども、その後何らかの報告は受けておられますか。
森山国務大臣 私は、その報告を受けまして、徹底的な事実関係の解明と厳正な対処を指示いたしました。しかし、その後の報告を受けておりませんでした。いずれ、徹底的に事実を解明して、その結果を報告してくれるものと期待していたわけでございます。
平岡委員 今のは報告を受けていないというお話だったんですけれども、二月十五日に新聞でいろいろ報道されましたけれども、その日に記者会見でいろいろ答弁しておられます。その際には何らの報告も受けていないんですか。
森山国務大臣 その新聞記事が出まして、私も、正直申しまして、そのときまでいずれ出てくるだろうと思っておりましたものが新聞に報道されましたので、どうなっているのかということをもう一度確認いたしたわけでございますが、鋭意調査をしているところで、もう少し待ってほしいということでございました。
平岡委員 六月に報告を受けて、その後、二月のそのときまでに何らの調査内容については進展がなかったんですか。二月十五日に報告を受けたときには、それなりの調査結果として進展があった内容が報告されているんじゃないんですか。
森山国務大臣 かなり時間がたっておりましたものですから、逃亡事件が起こってから大阪で捕まったという間に。ですから、その間の時間的な経過がございまして、担当者の証言とか、あるいは文書の所在とか、そのようなものを確認するのに非常に手間取っていたようでございます。
平岡委員 何か全く答弁になっていないんですけれども、ちょっとそこはまた後で聞くとして、新聞報道を見ると、入管から逃亡する例というのは過去も何か年間数件ぐらいあるとかというような記事もあるんですけれども、入管から逃走する例というのは過去数年間どの程度あるのか、これは事務方でも結構ですけれども、教えてもらえますか。
中尾政府参考人 お答え申し上げます。
 可能な限り私どもの方で調査いたしましたところ、平成九年から平成十三年までの五年間で、今回のように警察から引き渡しを受けた外国人につきまして、その取り調べ中に逃走した事案は、今回の件のほかに一件一名あると承知しております。
平岡委員 何か自分で勝手に限定してからしゃべらないでください。
 私が聞いたのは、入管から逃走した例というのは過去に何件ありますかということを聞いているんですよね。それはいいです。
 その今言った一件一名というのはいつの案件ですか。
中尾政府参考人 平成十三年の十一月二十六日に東京入管が警察と合同摘発を行った後、警察から身柄を受領いたしまして取り調べ中でありました韓国人が、職員の監視のすきを見て逃走した案件でございます。
平岡委員 大臣、この件については報告を受けていますか。
森山国務大臣 受けました。
平岡委員 どういう内容の報告で、どういう方法で受けましたか。
森山国務大臣 今、入管局長が申し上げたような事実を受けたわけでございます。
平岡委員 先ほどの件にちょっと戻ります。
 この件については、五月の二十二日に生野署でこの問題になっている人が逮捕されておりまして、六月六日に大阪入管を通じて東京入管にいろいろなことが照会されているようでありますけれども、警察庁の方に伺いたいと思いますけれども、この対象となった人物の名前、そしてどういう内容を照会したのか、教えてもらえますか。
漆間政府参考人 お答えいたします。
 照会した名前は、自称ハオレンユウ、これも自称でございますが、一九五五年十一月十五日生まれの中国人男性であります。照会内容は、その自称ハオレンユウが平成九年五月ころ収容されていた東京入管から逃走したと申し立てましたので、生野署では、府警本部を介しまして、当該事実があったかどうかについて、大阪入管を通じて東京入管に電話で照会を行ったというものであります。
平岡委員 その照会に対しては、入管当局から、いつ、どのような回答を受けましたか。
漆間政府参考人 先ほどの照会に対しまして、即日、逃走した事実はないとの回答を入管当局から電話で得ております。
平岡委員 入管当局からはそうした逃走した事実はないという報告を何かしたようですけれども、入管局、法務大臣でもいいんですけれども、法務省、どうですか。
中尾政府参考人 お答え申し上げます。
 私どもの方から今の段階で正確に申し上げられるのは、六月六日に照会を受けたことはそのとおりでございますが、回答の関係で申し上げますと、六月八日に、幸手警察から身柄を受けましたが違反調査中に逃亡したことが判明したということでありますので、その旨、生野署に対して大阪入管から、逃走の事実があったということを回答しておるところでございます。
平岡委員 警察庁、確認ですけれども、六月八日に逃走した事実があるという報告はあったというふうに今答えられたんですが、それは事実ですか。
漆間政府参考人 先ほどの回答は六月六日の分でありまして、即日に、逃走した事実はないという回答は、これは電話を受けて、ちゃんと残っております。
 六月八日の分についても照会をしておりますけれども、この辺についてはまだ、関係者の記憶ではそういう逃走した事実はないという回答を受けたという記憶でありますが、文書が残っておりませんので、現在、その辺について精査しているところであります。
平岡委員 入管当局もかなりいろいろ混乱しているようですけれども、六月六日には逃走事実がないと言い、六月八日にはあったというふうに連絡したと言うけれども、生野署の方にはそうした記録は残ってないという。そして、六月二十日に大臣のところにこの報告があった。
 六月八日から六月二十日までの間、一体何が行われていたんでしょうか。そして、森山大臣に対して何を報告したんですか。先ほど森山大臣は、逃走した人の記録は見当たらないという報告を受けたというふうに言っていますけれども、たったそれだけですか。もっといろいろ報告を受けた内容があるんじゃないですか、大臣。
森山国務大臣 先ほど申し上げたとおりでございます。
平岡委員 先ほど、事実関係の解明をするように指示をした、厳重な調査を指示したというふうに、これは二月十五日の記者会見で、直接は言ってないんですけれども、記者の質問に対してそういうお答えをしているわけですけれども、具体的に何を指示したんですか。
森山国務大臣 そのようなことが起こるのは非常に困ることでありますので、そういうことがないように、また、その事件については具体的な事実をできるだけ詳細に把握するようにということを申したわけでございます。
平岡委員 そういうことそういうことと言いますけれども、どういうことですか。具体的にもっと、どういうことを指示したか、何を指示したんですか。
森山国務大臣 このような取り調べ中の者に途中で逃走されるというようなことは非常に困ったことでありますし、そのような事件があったというのであれば、なぜそのようなことになったか、どういう問題があったのか、これからどのように対策をするのかというようなことを、具体的に調査して報告してほしいということであります。
平岡委員 常識的に言って、逃走の事実関係の調査なんというのは、もう既に五年前の話ですから、そんな話じゃないと思うんですけれどもね。
 調査を命じたのは、公文書偽造あるいは公文書破棄の問題じゃないんですか。大臣、いかがですか。
森山国務大臣 もちろんそのようなことも含まれるわけでございますけれども、私自身といたしましては、そういうことも含めて、きちんと事実を把握して報告するようにということを言ったわけでございます。
平岡委員 そういうことも含めて、公文書破棄あるいは公文書偽造のような問題も含めてということは、そういう報告があった、先ほど記録が見当たらないと答弁されましたから、そういうこともあったということなんでしょうけれども、この件については東京入管局から入国管理局の方に対して何回か報告が上がっているというふうにちょっと聞いています。新聞報道でも何か報告書が出されているというふうに出ていますけれども、この報告書は、いつの時点で、どういう中身の報告書か、これは当局で結構ですけれども、御答弁願えますか。
中尾政府参考人 お答え申し上げます。
 現在、この関係につきましては、私どもの官房の方で、官房主導で、私どもの調査経緯も含めまして、鋭意洗い直し、見直しをやっていただいているところでございますので、その関係もありますので、今、委員の御質問に即して答えられる限りのことを申し上げたいと存じます。
 先ほど申し上げたように、六月八日の時点で、東京入管から大阪入管を通じて、生野警察に対しまして、当該中国人が逃走したという事実があるということを連絡いたしまして、その関係も含めまして、六月八日の段階で、東京入管の方から本省の総務課長の方に口頭の報告がなされております。
 この内容でございますが、先ほど大臣に報告した内容にほぼ同旨でございますが、平成九年の五月二十一日に東京入管局は……(平岡委員「端的に言って、長くならないように」と呼ぶ)東京入管局は、警察から引き渡しを受けた外国人のうち一人が調査中に逃走した事案があったと。当該外国人は、午後一時三十五分、引き渡されたものの、東京入管の地下一階における違反調査中に逃げられて、職員が庁舎内外を捜索したけれども身柄を発見することができなかったということでございます。
 その後、六月の十八日に東京入管の方から本省の総務課長の方に、事案の発覚の経緯とか当該中国人の身分事項、あるいは、同人に係る記録、旅券、所持品についての所在が不明であるということについての報告がありました。そして、その後三度にわたり、東京入管の方から入管局の総務課長に対して報告書等の送付があった、こういうことでございます。
平岡委員 今までの流れをずっと追っかけてみると、結局、大臣に対しては公文書が破棄されているあるいは偽造されているといったような内容の報告がされているということだと思うんですけれども、それが全く公表もされることなく、そしてずっと、新聞で報道されるまで放置されておったということに対して、これは大臣に大きな責任があると思いますけれども、大臣、その責任に対してどう感じておられますか。
森山国務大臣 私が聞きましたのは、破棄とか偽造とかということではなくて、その文書がなくなっているということを聞いたわけでございます。
 それにしても、不注意あるいは問題があるということは当然でありまして、そういうことがないように気をつけなければいけない。なくなったというのはなぜなのかということもきちんと把握しなければいけないということを注意したということでございます。
平岡委員 文書がなくなっているということは、それはあっちゃならないことでありますけれども、さらに、その文書がなくなっているということの持っている意味合いが非常に大きい意味合いですよね。逃走したというのは、まあそれは不注意もあったんでしょう。それ自体があっていいこととは思いませんけれども、それ以上に、文書がなくなっているということについての問題というのは、もっともっと大きな意味があるわけですね。
 これに対して、大臣が、そういう報告を受けながら、事実関係を厳正に調べなさいと言いながら、全くそれから後何もされないで放置されてきたということに対しては、これは大臣に責任があると思うんですけれども、大臣、どうお考えですか。
森山国務大臣 おっしゃるとおり、私も反省しなければいけないと思っております。
平岡委員 確かに反省はしていただかなきゃいかぬのですけれども、反省だけで済む問題ではないと思いますね。これは重大な犯罪行為になる可能性がある。そして、当局が組織ぐるみでやっているかもしれない、こうした問題ですね。大臣、これからどういう責任をとってまいりますか。
森山国務大臣 現在の具体的な事実について詳細に把握をしようと努力をしているところでございますので、現時点でどうするかということをお答えすることはちょっと難しいんでございますが、できるだけ早くその結果を把握いたしまして、そのときにあわせて御説明させていただきたいと思います。
平岡委員 これまでの大臣の記者会見とか、あるいはいろいろなマスコミ等に対する事務当局からの説明では、大臣に対しては逃亡した事実だけが報告されてあったというようなところでとまっておって、きょうの質疑で、それ以上に、記録がなくなっていたといったようなことまで報告がされていたというようなことも入っております。
 そういう意味では、大臣、本当に大臣の責任は非常に大きいと思うんですね。これは、本当にきっちりとこれから大臣の目で進行管理をしていただきたいと思いますし、そして、場合によっては、さらに私もこの問題については大臣の責任を問うていかなきゃいけないというつらい立場に置かされるかもしれませんので、どうぞしっかりと管理していただきたいというふうに思います。
 たまたま私は、昨年の五月の十八日でしたか、この委員会で、金正男の不法入国問題について御質問申し上げました。そのときに、パスポートのコピーが流出した問題について、これは入管当局から出ていないんですかと質問したら、大臣は、調査した結果、入管当局から出ておりませんというふうに簡単にお答えになってしまっているんですけれども、その問題についても本当にそうだったのかどうか。私は、こんな事実が隠されているとすると大いに疑問に思っております。そういう意味では、法務大臣、しっかりと、大臣なんですから進行管理をしていただきたいというふうに思います。
 時間がないので、次の問題に移らせていただきたいと思います。
 大臣、今月二十日に、大臣名で難民の認定をしない処分取り消し通知書というのが出されておりまして、相手方はミャンマー国籍を持っているゾー・ミン・トという方なんですけれども、この取り消し処分については御存じですか。
    〔委員長退席、山本(有)委員長代理着席〕
森山国務大臣 承知しております。
平岡委員 承知しているということは、森山眞弓大臣の名前で通知が出されておりますから、当然その内容についても、今回の質問も含めてよく理解されておられると思うんですけれども、これについて、なぜ認定をしない処分の取り消しを行ったんですか。
森山国務大臣 お尋ねのミャンマー人のことにつきましては、難民不認定処分等取り消し請求訴訟の審理の過程におきまして、本人尋問等により明らかにされた事情によりまして、この当該ミャンマー人については難民不認定処分時において難民性があったと認められたことから、難民不認定処分を取り消したわけでございます。
平岡委員 ちょっと先走りますけれども、今のは、何か認められたからというふうに言っておられますけれども、今まではずっと訴訟の過程の中で、原告の主張に信憑性はないというような主張をしておられるようですけれども、そしてその理由で難民とは認めないと主張してきたんですけれども、その主張が間違っていたということですか。
森山国務大臣 最初に難民の申請をされたとき、そのときと最近の時点では本人の事情も大分変わったようでございまして、その詳細については、プライバシーその他ございますので、ここで申し上げることは差し控えるべきだと思うんですけれども、いろいろな状況が何年かの間に変化してきたようでございます。したがいまして、現在においては難民性を認定し得るということになったと聞いております。
平岡委員 本人の事情が変わったと言ったから、本人のせいにしているようでありますけれども、本人についてどういうふうに事情が変わったんですか。
森山国務大臣 本人のせいにするというわけでは全くございませんが、本人を取り巻くさまざまな事情が変わったということが判明したわけでございまして、それを細かく具体的にここで申し上げるのは適切ではないと存じます。
平岡委員 ここでなかったら、どこで答弁というか明らかにしてもらえますか。
森山国務大臣 公表するのは差し控えるべきだという趣旨でございます。
平岡委員 アフガン難民の不認定に際しては、なぜ不認定にしたかという理由を法務省さんは明らかにされておられますけれども、どうしてこの件については、そうした難民認定をしない処分の取り消しをした理由について明らかにできないんですか。
中尾政府参考人 これは、先ほど大臣の方から御答弁した範囲で、その辺の事情、理由について御説明させていただいたものと思います。
 議員が御指摘のことは、難民不認定当時の事情とその後の事情、あるいは本人に係る事情等々をどういうふうにどう考えたかという話に尽きるのだろうと思います。ところが、この関係につきましては、この本人尋問の関係が去年の暮れにあったわけでございます。日時等は手元に資料がございませんので正確なことは申し上げませんが、(平岡委員「裁判における尋問ですか」と呼ぶ)はい、もちろん。ですから、先ほど大臣が申し上げました訴訟の審理の過程における本人尋問等ということで御説明を、お答え申し上げたところでございます。
 その結果、その内容について処分当時明らかになっていないさまざまな事情もあり、それらの裏づけ等もした上で、難民性が処分当時にあったという判断をすべきではないかということがはっきりいたしましたので、私どもといたしましては、処分の見直しを速やかに行うのがこの手行政の観点から申し上げますとベターだろうということで、大臣の御了解を得て処分の取り消しをした、こういうことでございます。
平岡委員 この問題についてちょっといろいろ入っていくと非常に複雑な問題が発生しそうな気がするのですけれども、最初に行った難民の認定をしない処分について言うと、ある時点でその判断をしているわけですね。今度はその取り消しをするということは、ずっと行って、その後の事情でいろいろ聞いたら、何かいろいろなことがわかってきた、あるいは本人の事情が変わってきた、そして取り消したという、そんな話になるのですけれども、当初したときは何の問題もなかったということですよね、今の説明は。
 その取り消すというのは、やはり最初に認定をしないという処分をしたときの判断でいけば、それは正当であったという判断ですか。
    〔山本(有)委員長代理退席、委員長着席〕
中尾政府参考人 これは、難民不認定の処分時の事情に照らして当該を判断したということは、その限りにおいては妥当であったということでございます。
平岡委員 確認ですけれども、その認定をしないという処分をした当時は、それはそれで正しかった、その後いろいろ起こった事情を勘案して、今回取り消しをしたということですか。
中尾政府参考人 若干誤解があるかと思いますけれども、つまり、処分時に現に存在した事実が処分時に判明していない場合もございます。後日、そのような事情が判明し把握できたということになりますと、処分時に引き直せば、そういう事情を踏まえて判断を現時点でやり直せば、別の判断が出るケースもございます。
 したがいまして、処分時当時に明らかになっていない事実まで処分時に明らかになったものとして当該処分時の判断の当否を問うことはやや問題があろうかと思います。
平岡委員 今の説明の中で、処分時に現に存在した事実であるけれどもその時点ではわからなかった、その後判明したという事実があった場合に、認定をしない処分の取り消しがあり得るという話でしたけれども、このケースについて言うと、具体的にどういう事実が判明したのですか。
中尾政府参考人 この点につきましては、先ほど私どもの大臣の方から御説明申し上げたように、具体的な理由、事実関係等につきましては、本人のプライバシーとの観点から、今以上のことは申し上げることは差し控えるべきだというふうに考えております。
平岡委員 この裁判にかかわった人のお話をちょっと伺いますと、これは三月五日に結審をする予定であったということですね。ほとんどいろいろな主張というのが出されて、証人尋問あるいは本人尋問も行われているというような中で、どうも当局の方は、これは裁判負けそうだ、負けたときに、いろいろと判決でいろいろな認定についてのあるべき姿が示されるかもしらぬ、そうしたことになると大変だから、この時点で処分を取り消してしまおうじゃないか、認定をしないという処分を取り消してしまおうじゃないかというふうに判断したのではないかというふうな危惧も持たれているのですけれども、大臣、その危惧に対してちゃんと答えてもらえますか。
森山国務大臣 先ほど申し上げましたように、不認定処分の取り消しということをいたしましたのは、裁判の過程において事実が詳細にわかって、そして認定するべきであるということがはっきりいたしましたので、速やかにそのような措置をとったわけでございまして、それ以外のことは何も考えておりません。
平岡委員 これは、難民の認定をしない処分を取り消すということであって、この方について言うとこれからどうなるのか。この方は、この難民認定だけでなくて、退去強制令書も出されたままになっているわけですね。これはこれからどうなるのですか。
中尾政府参考人 その点につきましては、今回の難民不認定処分の取り消しを踏まえてしかるべく対応を、早急に対応したいというふうに考えております。
平岡委員 ちょっと仕組みを教えてもらいたいのですけれども、こういう状況になったときには、難民の認定をするかしないかというのはいつまでにやらなければならないという制度になっているのですか。
中尾政府参考人 いつまでという期限はございません。難民不認定処分を取り消すことによる効果は、基本的には難民申請がなされている状態に戻るということでございます。したがいまして、改めて確認の意味で御本人に連絡いたしまして、御本人から事情を再度確認した上で、速やかに難民認定処分の通知を行うということになろうかと思います。
平岡委員 これも細かい話だから、ついでに聞いておきますけれども、退去強制令書についてはどうなるのですか。
中尾政府参考人 退去強制令書が発付されております。その処分に対しては異議の申し出があって、定かではありませんが、これも訴訟になっているはずだと思います。したがいまして、この難民認定の関係の手続と退去強制手続は、基本的には別個で行われてはおりますけれども、こういう事態に相なりますと、それは無視できないわけでございますので、それはそういうことで退去強制手続の関係のところに反映させて、しかるべき処分を、対応を行うことになろうかと思います。
平岡委員 この場合の退去強制令書の発行されている理由というのは何ですか。これ、このまま維持されるべきものなんですか。
中尾政府参考人 退去強制事由というのは別の問題でございますので、この者については退去強制事由があることであります。
 したがいまして、その限りにおいて、退去強制処分の当否が次の段階で問題になっておりますけれども、それは難民の有無にかかわらず、例えば不法滞在であれば、それは難民であるか否かにかかわらず、不法滞在の事実あるいは不法入国の事実、これは残りますので、それ自体は退去強制事由ということで退去強制事由に該当しますので、退去強制されることになります。しかしながら、入管法上、難民認定を受けた者については退去強制事由がありましても特別在留許可を与える、こういうことになっております。
平岡委員 今の話を総合していくと、これから難民認定の作業にまた入る、それまでの間は、退去強制令書については当然のことながら執行されることはなくて、難民認定が仮にされたならば、この退去強制令書も効力を失う、そういうことでよろしいでしょうか。
中尾政府参考人 退去強制令書自体が効力を失うというわけではございません。基本的には、大臣の方の特別在留許可ということでその在留資格が与えられる、退去強制事由があるということは当該その者が本邦に在留する資格がないものですから、資格があるように大臣が特別在留を許可する、こういうことであります。
 したがいまして、特別在留許可をいたしますと、一般論で申し上げますと、通常定住者という資格が与えられて、本邦に正規に在留できる、こういうことになろうかと思います。
平岡委員 この件については、一九九八年三月から問題が発生しておって、非常に長い間難民申請をしているゾーさんについては、不安な状況に置かれているわけであります。できる限り速やかに難民の認定をしていただいて、特別在留許可を出していただくということが必要であると思いますけれども、大臣、どうでしょう。
森山国務大臣 今局長から御説明しましたような手続を経ていただきまして、適切に対応したいというふうに思います。
平岡委員 この問題に関連して、日本の難民認定手続というのが、諸外国の例に比べてみても、ちょっとまだ後進性というか、非常におくれているのじゃないかというような指摘が随分あるのです。これは特に質問通告はしていませんけれども、この点に関して、大臣が答えられるなら大臣でいいのですけれども、あるいは答えられなければ入管局長でもいいですけれども、現在の日本の難民認定手続について、これからどのようにしていくべきだというふうに考えておられるか、一言お願いします。
中尾政府参考人 難民認定の問題というのは、難民条約に基づいてそれぞれの国が国内法を整備し、それに基づいて難民手続というものがそれぞれの国情に合わせてつくられているわけであります。
 ところが、最近の国際的な情勢を見ますと、特にヨーロッパにおきましては、難民問題、難民認定の乱用者の増加に非常に苦慮しておりまして、難民認定の迅速化ということ、あるいは、難民申請に事をかりてテロリストその他の者が間違って難民申請することのないように、そういうことも含めて、かなり総合的、多角的に検討されておる時代になりつつあります。
 したがいまして、そういった世界的な情勢、そして我が国の地理的な情勢等々を含めまして総合的に、あるべき姿、あるべき手続というものは鋭意検討していかなきゃならないというふうには考えておるところでございます。
平岡委員 ぜひこの難民認定手続については、諸外国の例も考え、そして、本当に難民を受け入れるという日本の姿勢を示すという意味で、きっちりと検討していっていただきたいというふうに思っております。
 時間がないので、もう一つ通告している問題について入りたいと思います。
 先ほどお二人の同僚議員の方から、触法精神障害者に対する処遇の問題についてのお話がございました。私も、この問題について質問しなければならないのですけれども、実は私、今の政府の案、まだ確定はしていないのでしょうけれども、進められている案に対して大変危惧を持っているわけであります。
 どういう危惧かというと、精神障害で苦しんでいる人たちに対して、さしたる根拠もなく、あなたは重大な犯罪行為をまたするかもしれない人ですよというレッテルを張って、そして、この人たちを社会から隔離していく。まるで、かつてハンセン病の問題で社会隔離をした、この人たちが、結果的には、人にうつる可能性が少ないということが言われておったにもかかわらず、そういうおそれはないということがわかったにもかかわらず、そのまま続けられた、そんなような社会的な状況を起こしてしまうのではないかということを非常に危惧しているのです。
 与党三党で去年の十一月に案が示されたときには、このような重大な犯罪行為に当たる行為を再び行うおそれがあるというようなことを判断基準にするようなくだりは全くなかったのですね。それが、今示されつつある政府案ではそういう文言が使われている。これは、与党三党の検討の後、一体何が起こったのですか、大臣。
横内副大臣 私から御答弁をさせていただきます。
 御指摘の与党三党のプロジェクトチームの報告書では、重大な犯罪に当たる行為をした精神障害者の処遇につきまして、「より確実な治療効果・病状の判断の下で入退院や通院の要否が決定されるべきである」ということを基本的な考えとして述べているわけでございまして、法務省が現在検討している法律の案もこれと異なるものではないのでございます。
 与党三党のプロジェクトチームの報告書というのは基本的な考え方を述べているわけでありまして、具体的な要件なんかにつきましては法案検討段階での検討に譲られているわけでございますので、決して、その考え方として、その二つの考え方が食い違ったとか、そういうことではないということを御理解いただきたいと思います。
 そこで、法案の検討の過程での我々の考え方としましては、こういった触法精神障害者に対しましては、まずその治療を確保することが一番大事であるということでありますけれども、その処遇については、人の自由の制約を伴うものですから、医療を行うことが必要であるという理由だけで国がその者に対して強制的な医療を行うということには問題があろう、そういう観点から、対象者の自由に対する制約や干渉が許される範囲を具体的に限定するために、継続的な医療を行わなければ再びそういった重大な犯罪に当たる行為を行うおそれがある、そういう要件を加えるのが適切だと考えたものでございます。
 こういう考え方は、現在の措置入院の制度も、自傷他害のおそれがあると、やはりおそれがあるということを要件にしておりますから、措置入院制度も同じような考え方でありますし、また、諸外国のこういう類似の制度においても、同様のそういった再犯のおそれというようなものを要件にしているということでございます。
平岡委員 現在、政府が検討している案というのは、昭和四十九年の改正刑法草案、あるいは昭和五十五年に法務省刑事局が検討しておった保安処分制度の骨子、どっちかというとこの保安処分制度の骨子なんでしょうけれども、これに非常に類似した制度になっておりまして、これらは当時、国民的な批判を受けまして実現されることはなかったわけです。そうした案と比べて、この案というのは、また同じようなことを政府がやろうとしているのじゃないか、こういう危惧を多くの人が持っているということを指摘したいと思います。
 時間がないので、ちょっとこれに関連して、次の質問に移りたいと思います。
 今副大臣も言われましたけれども、精神障害のために再び対象行為、対象行為というのは重大な犯罪行為に当たる行為ですけれども、再び対象行為を行うおそれがあるということについて、裁判官あるいは精神科医が判断することになっているのですけれども、裁判官というのは、精神障害のために再び対象行為を行うおそれがあるということについて判断できるのですか。そういう能力があるのですか。特に、先ほどもお話がありました精神保健福祉法の中で、措置入院の中に自傷他害のおそれという言葉があって、それとはまた違った意味で、そうした犯罪行為、重大な犯罪行為を行うおそれがある、これを裁判官が判断できるのですか。これは、最高裁、来ていただいていると思いますから。
大野最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
 仮に、裁判官が委員御指摘のような判断をする立場に立って、そのような法律ができるということになりますれば、裁判所といたしましては、その適正な運用、判断が行われるように努めてまいりたいというふうに考えております。
 なお、この判断をするためには、必要な資料が裁判所に提出され、さらに、精神科医等の御協力が得られることが必要であるというふうに考えておりますので、その点についての御配慮をお願いしたいというふうに考えております。
平岡委員 今の質問に関連して、いずれ法案審議が始まりますから、最高裁の方で、裁判官が再犯のおそれを判断するためにどんなものが必要か、これを一応整理して、ぜひ報告してほしいと思いますから、用意しておいてください。
 それから次に、厚生労働省に対してですけれども、精神科医が再犯のおそれを判断するということになるわけですけれども、精神科医は何を根拠に判断できるのですか。そのおそれはどの程度の期間にわたって判断することになるのですか。これについてお願いします。
高原政府参考人 新たな制度におきましては、裁判所は対象者に対しまして、精神障害者であるか否か、及び、継続的な医療を行わなければ心神喪失等の状態の原因となった精神障害のために再び対象行為を行うおそれの有無につきまして、医師に鑑定を命じるということになっております。
 現代の精神医学、特に司法精神医学と呼ばれる領域は近年特に進歩が著しいところでございまして、その者の精神障害の類型、過去の病歴、現在及び対象行為を行った当時の病状や治療状況、病状及び治療状況から予測される将来の症状、対象行為の内容、過去の他害行為の有無及び内容等を考慮いたしまして、慎重に鑑定を行うことによりまして、継続的な医療を行わなければ再び対象行為を行うおそれの有無を予測する、そういうことは可能であるというふうに国際的にも認められております。
 また、おそれについて予測はどの程度できるのかという、期間もしくは確率というふうなことについてのお尋ねであるというふうに理解いたしますと、一般に、現代の司法精神医学におきましては、数カ月、例えば六カ月程度の精神障害者の病状の変化や問題行動に及ぶ可能性を予測することは一般的に可能であると考えられております。
 そのような予測の当否を的中率というふうな形で数値化するということはなかなか難しゅうございますが、相当確実だというふうな形で国際的な論文に出ておる、ないしは国際的な専門家から我々が聴取したところでございます。
平岡委員 さまざまな危惧を私申し上げましたけれども、大臣、最後に、この議論を聞いて、触法精神障害者に対する処遇の問題について、どういう気持ちでこの法案を作成されるか、その気持ちをちょっとここで御披露ください。
森山国務大臣 特に最近起こりましたこの関係の事案が大変深刻な、残酷なものであったということが非常に大きな印象として今も私の頭から離れません。それをきっかけにして非常に社会的にも関心が出てまいりまして、このまま放置することはできないというふうに思いまして、専門家にいろいろと勉強してもらった結果でございます。
 精神障害をお持ちの方々にとっては、まず治療をしていただいて、そして二度とそのようなことが起こらないようにしなければいけないというのがまず第一でございますし、そして、そういう方が十分に治療を受けて、安定した精神状態になり、社会の一員として普通に暮らしていただけるという状況を持つということが社会全体にとっても大変大切なことだというふうに思いますので、その両方の目的を十分に果たすような法案をぜひつくっていただきたいというふうに考えているところでございます。
平岡委員 私が申し上げた危惧を十分踏まえて検討していただきたいと思います。
 以上で終わります。
園田委員長 植田至紀君。
植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀です。
 きょうは、与えられた時間の中で、入管行政、難民認定問題にかかわりまして、特に収容施設における処遇の問題を中心に何点かにわたってお伺いしたいと思います。
 といいますのは、実は、私ども社民党では、先週、二十一日だったんですが、東日本の入国管理センター、実際に調査団を出しまして、私自身牛久まで行ってきたわけでございます。
 そこで受けた説明なり私たちが見聞した中で幾つか疑問点もありましたものですからお伺いするわけですが、まず簡単なところからお伺いします。法務大臣はこの施設は視察されたことがあろうかと思うわけですが、大臣なりのこの東日本のセンターの印象なり御感想なりあれば、まずそこからお伺いしたいと思います。
森山国務大臣 私は、昨年の六月二十九日に視察させていただきました。大変環境のいい、当時は六月の末でございましたので、緑豊かな中に、平和な環境の中に設置されたよい施設だなというふうにまず思ったわけでございます。
 この施設は、入管行政の一つである退去強制手続において欠くことのできない重要な施設でございまして、宗教とか生活慣習などが異なるさまざまな人たちが入っているわけでございますので、職員としてはいろいろと配慮しなければいけないことがたくさんあろうと思いますし、人権を尊重するということは当然のことでございまして、そのようなことを踏まえて一生懸命に努力をしているなということで、心強く思った次第でございます。
植田委員 非常に百点満点の御答弁ですけれども、確かに風光明媚なところにあることは認めますけれども、収容されている方々がその環境の中で生活しているわけではございませんで、確かに、入った玄関先はよっぽどかんぽの宿よりはええところですけれども、さあ入ったら、まあいろいろなところがありますね。
 その中身についてはこれからお伺いするわけですが、まず、この入国管理センターの位置づけですけれども、行刑施設ではありませんが、拘禁施設ではあるわけです。この管理センター等々の施設が、一九五七年に国連の経済社会理事会で決議された被拘禁者処遇最低基準規則、処遇最低基準というものがあるわけですけれども、それが適用される施設として理解していいのかどうかという点、まずその点をお伺いさせていただけますか。
横内副大臣 御質問の規則は、一九五七年の被拘禁者処遇最低基準規則、国連経済社会理事会で採択をされたものでございますけれども、この規則は、被拘禁者の処遇及び施設の管理について、理念として努力すべき基準を示すものということでございまして、法律的に各国政府を拘束するものではない、努力すべき基準というものだというふうに言われております。
植田委員 要するに、適用される施設かどうですかと聞いたわけですから。努力すべき基準として出されているのはよく承知しています。これを踏まえて例えば入国管理センターの収容施設では対処なさっているんですかということをお伺いしたいんです。
中尾政府参考人 お答えを申し上げます。
 先ほど私どもの副大臣がお答え申し上げたとおり努力を定めた基準でございますので、その努力に向かって所定の努力をしているということでございます。
植田委員 当然、これによって拘束は受けるわけではないが、これにのっとって努力しなさいよという基準であるから、これを理想とするならば、それに近づくために不断の努力を入管行政の中においても行っておられるという趣旨と理解いたしますが、果たしてそうであるかどうかは引き続き質問の中で、幾つか疑問点を提示させていただく中で明らかにさせていただければと思います。
 あと、入国管理施設が制約を受けるような国際条約等々はどんなものがあるのか、また、国際的条約上の要請にこたえるべき、こたえ得る施設として当然ながら入管の施設はあるんだろうけれども、そういうことでやっておられるのかどうかという点、後学のためにもちょっと教えておいていただけますか。
中尾政府参考人 ただいまの委員の御質問に直接お答えできるだけの資料は今手元に持っていないわけでございますけれども、先ほどの点を若干補足して申し上げれば、さまざまな事情のある中で、私どもでできる限り所要の努力をしなければならないということで、努力をしているということで申し上げたわけであります。
 そういう限りで、その辺のところに書かれてあることを踏まえながら、私どもでできる範囲のことをできる限り努力しながらやっているというふうに御理解賜ればありがたいと思います。
植田委員 今のも昨日の晩に通告しておりまして、一言で言うと、入国管理施設が制約を受ける、また規定づけられる国際条約というのがありますかということは、これは質問通告してあるんですよ。資料がありませんと言っても困るんですよね、ちゃんと聞いてあるわけですから。なければない、あるならあると答えていただければいいんです。今すぐ出てこないのなら、後の答弁のところで、出てきた段階で示していただいても結構ですから。
 次、行きます、時間ありませんから。
 収容者の法的地位について御説明いただきたいんですが、あくまでこの収容者というのは行刑者ではないということで認識してよろしいでしょうか。
中尾政府参考人 委員のおっしゃる行刑者という意味を、私ども、通常使われていない言葉でございますので、受刑者という言葉ではなかろうかと思うんですが、受刑者でないことは明らかでございます。
植田委員 とすると、いわゆる犯罪を犯して刑に服しているということではないわけですよね。
 ただ、少なくとも、入管での収容者に対する処遇のありようと、刑務所でのいわゆる受刑者に対する処遇のありようというのは、おのずと違っているわけですけれども、その点、特に入管の職員に対しては、確かに不法滞在した人々が収容されているわけでございます、中には間々、麻薬の密売等にかかわって、さまざまな犯罪を犯して、結局そのことでそこにほうり込まれた人もいるでしょうけれども、そういうケースもあるにせよ、少なくとも不法滞在であるということはそうであったとしても、そのことすなわち犯罪者であるというふうに定義をして収容者に対する処遇に当たりなさいというふうに教育されているのか。そうでないのであれば、どういう形で職員に対して指導なさっているのか、その点、ちょっとお教えいただけますか。
 まあ、ちょっとこちらの言い方がまずかったら、こういう形で言っていただいても結構です。少なくとも刑務所の受刑者との処遇の違いは何かということを私は知りたいわけですので、その意味で、入管の職員に対して、そこで決定的に違う指導の仕方というのは何かあるんですかということです。
中尾政府参考人 基本的にどこが違って、その関係についてどういう指導をしているのかという御質問だろうと思います。
 受刑者ではありませんので、基本的には収容所内での自由というのはできる限り尊重をし、遊戯あるいは室内でトランプをするなりそういう形で遊ぶなり、いろいろなことでそういうところの配慮はしておりますし、いろいろな関係の面接その他についても、受刑者とは違いますので、できるだけの配慮をするようには指導はされているものと承知しております。
植田委員 ちょっと話が処遇にかかわって飛ぶわけですが、この間、アフガンの難民認定をされた方々、昨年もこれについては質問をさせていただいたところですけれども、結果的に二十数名がこの東日本の入管に収容されておられるわけですが、そういう方々の弁護をなさっておられる、また支援なさっておられる方々のお話等も伺っておりますと、当然ながら、彼らは難を逃れて、日本を大変当てにして来られたわけですね。行った先でえらいとんでもない目に遭ってしもうたということで、非常に精神的にもめいっているし、ストレスもたまっている。
 そういう中で、持病が悪化するとかさまざまな形で入所後の症状が悪化している、またそうした症状に対してセンター側の対応が不十分であるというふうな点について、何度も弁護士の方等が申し入れをされているにもかかわらず、その後何ら進展が見られていないじゃないかという指摘もあるわけでございます。
 もし進展しているというのであれば、進展しているとお答えいただいても結構でございますし、少なくともそうしたことが指摘をされている事実は当然事実として受けとめられていると思いますが、その点については、現段階、状況はどうでしょうか。
中尾政府参考人 個々具体的に委員御質問されました関係の種々の申し出が東日本センターの方に寄せられていることは承知しておるところでございますが、その辺の前提事実自体が、私どもの方で把握している前提事実とそういう申し入れの前提事実とにややそごがあるわけでありますので、その辺のところで、委員の方からすれば十分やっていないではないかという御批判もあろうかと思いますが、私どもの方としては、その辺のところも踏まえながら対応に努めているものと承知しております。
 医療の関係につきましても、医師、看護婦が常駐をしておりますが、これは週に四回常駐しているわけでございますし、外部の医師にも、必要な場合には診せるように対応しているものと承知しておるところでございます。
植田委員 そういう話は、私も現地に行って聞いてきたわけでございます。私も別に、片一方、一方の話だけを聞いて伺っておるわけではございません。ただ、それぞれ指摘されている、対応が不十分だという中身がすぐれて具体的であるがゆえに、非常に気になっておるから聞いておるんです。
 では、一つ一つ尋ねますよ。
 まず、恐らくお医者さんも一生懸命やってはるだろうと、私はそういうふうに信じたいですが、それはまあ、間々、そうしたお医者さんの方の熱意が、逆にコミュニケーション不足等で患者の側に伝わらない場合だってあるでしょう。やはりそこは患者のニーズにも対応してあげなければならないわけですが、例えば、症状を訴えているのに触診や聴診をしない、病状の説明をやってもらえないという点で、コミュニケーションがとれていない、こういう指摘があります。
 こういう指摘があることは承知されていますか。もし、そういうことを承知した上で、いやそういうことはないというふうに報告を受けているということであれば、そういうふうにお答えください。
中尾政府参考人 お答え申し上げます。
 医療というものは、当該本人にとっては生命、身体にかかわる重大な問題でございますので、医師と患者との間で十分なコミュニケーションをとった上で適切な処方、治療をやらなければならないことは十分私どもの方は承知しております。コミュニケーションの重要度は申すまでもないことだろうと思います。
 そのコミュニケーションが十分されていないというところまでは私の方では承知しておりませんが、今委員御指摘のことでございますので、私の方で改めてその実情を確認させていただきまして、またの機会には、許していただければお答え申し上げたいというふうに思います。
植田委員 だから、今も、細かな話になるとなかなか承知していない話が多いと思うんですよね。要するに、一方的にこちらも言っているわけじゃないんですよ。
 また、具体的に言いますと、検査体制が不十分だという指摘もあります。例えば、他人の心電図を患者に渡している、そういうことがあったという指摘もあります。
 もう一問一答していると時間がありませんから、もう一つ、医薬品の内容。これは、医薬品の中身も大体資料をいただきましたけれども、医薬品の内容が限られていて、かつ本人に薬を選ばせているという点が指摘されているというところもありますけれども、この点、二点まとめてどうですか。
中尾政府参考人 この点につきましては、正確にお答え申し上げたいと思います。
 まず、他人の心電図を渡したのではないかという話を聞いているが事実かと。これ自体は基本的にはあってはならないことでありますので、私の方も確認をしてみましたところ、御指摘のような事実はないということでございます。
 しかしながら、そういうようなお話が出ておるということはどういうことかということで確認をしましたところ、東日本センターにおいて心電図検査を実施した際、これはパソコンか何か知りませんけれども、心電図のところに別人の姓名、氏名がたまたま印刷されてしまったということがあったと聞いております。これは、検査前に本人の性別、年齢等を入力しないまま検査をしてしまったために、心電図計に記録されていた、直前に検査を受けた者の性別、年齢がそのまま印刷されたというミスがあったということでございますが、実際の検査結果自体は、名前は違っておりますけれども、当該患者さんのものであったというふうに報告を受けているところでございます。
 それから、医師が処方する薬について、患者の方で選択、つまり被収容者の方で選択させているのではないかという御指摘でございますが、基本的には、医師の方で、医薬品の投薬に当たりましては、それぞれの症状に基づき医師が判断した上、適切に行っているというふうに聞いておりますし、御指摘のような事実はないものと承知しております。
 ただ、医薬品につきましては、同種の医薬品で効能は同じでも、例えば粒状のもの、粉末状のもの、あるいは同じ効能でも製造メーカーが違う、あるいは飲みなれた薬の場合もありますし、そうでない場合もありますので、そういった点で、どちらの薬が飲みやすいか、性能は同じでも飲みなれた方を収容者に選択させて投与したというようなことはあるというふうには聞いております。
植田委員 今、二問聞いたうちの心電図の話、他人の心電図を渡したという事実はなかったけれども、ケアレスなミスがあったことはお認めになるわけですよね。これが、私がその辺の何とか病院に行ってそういうことがあったら普通大ごとですわね。たまたまのミスということで済まされる話じゃない。
 その意味においては、他人の心電図を患者に渡しているという事実はなかったけれども、検査体制にはずさんな、不十分なところがあったという点については当然お認めになるわけですね。一応確認しておきます。
中尾政府参考人 お答え申し上げます。
 検査体制そのものにミスがあったというところまで御指摘を受けるという点につきましては、少なくともそういう印刷をミスったということはまことに申しわけない話だろうと思いますが、当該その者の検査をしてその結果が心電図上に正確に出たという意味においては、その当該検査はまともであるというふうには思っております。
植田委員 検査はやったが、それは間違っていない。それなら、それについての、今回のミスの責任の所在だけもう一回。だれがミスったからそういうことになったんですか、その責任の所在だけはっきりさせておいてください。
中尾政府参考人 この点は、その原因も含めて、委員の方から質問通告を受けた後の調査で、今の範囲で申し上げましたけれども、その辺の具体的なミスの担当あるいはその責任者は何かという点は鋭意調査して、しかるべき対応をさせていただきたいというふうに思っております。
植田委員 こういう本来あってはならぬようなミスがあるということは、少なくとも入管局長もお認めにならざるを得ないわけですね。だから、こうしたことが積み重なってくると、いろいろな疑心暗鬼、不信感が、しかも塀の中のことですから、基本的に密室でのことですから、私たちも常時あそこに行くわけにはいきませんので、当然ながら、患者の皆さんが例えばお医者さんの診察に対して不審を抱いたり、また薬の内容も、確かにお医者さんは、薬の錠剤なりなんなりをこうして全部張って、これはこういう薬ですと説明用に置いていますけれども、コミュニケーションそのものが十分にとれない中では、要するに何を言うているかわからへんという中で、ますます患者さんの側が、収容されている側が不信感を持つことは容易に推察できると私は思うわけです。それをどうクリアしていくかということをまず課題設定しておいていただきたいわけです。
 今回の問題、これは単純にちまちまと聞いていますけれども、まだ十分掌握なさっていないことが幾つもあるわけですから、その辺のところは十分お調べいただいて、どうせまた私も、この場で聞くか別途聞くかわかりませんけれども、これで終わりにするつもりはございませんから、よう調べておいてください。
 それと、こういう事実もあったと指摘されております。要するに、自殺未遂をした患者であるとか意識不明の可能性のある患者をそのまま放置しておった、そして翌日になってようようお医者さんの診察を受けさせたというような事実があったというふうに指摘がされております。
 この点についてはどうでしょうか。まさにこれは緊急時の対応が全く不十分であった、もしこれが事実であるとするならば。ゆゆしき問題ですけれども、その点についての事実関係はどうでしょうか。
中尾政府参考人 委員御質問の案件というのは、東日本入国センターに収容中の者が二月十四日に自損行為を行った事案についてだろうとは思います。
 この事案であるとするならば、この関係につきましては、職員が被収容者の自損行為を発見後、応援職員を求め、応援職員とともに、興奮して暴れる被収容者を保護し、直ちに同センター診療室において医師による治療行為を受けさせるなどの適切な処置をとったというふうに聞いておりますので、翌日まで放置した事実はないというふうに承知しているところでございます。
植田委員 今の御答弁、当然議事録に残るわけですから、それも見た上で、改めてその事実関係はもう一度こちらも精査させていただきたいと思います。
 例えば、患者とのコミュニケーションがとれていないという指摘も、その背景にさまざまなこうした指摘があるがゆえに、私どもはうなずかざるを得ない部分があります。例えば、心電図はちゃんと間違わずにとったけれども名前が間違っていました、それはちょっとミスったというような話は、少なくとも我々世間一般、普通通用する話ではないですわね。赤ちゃんを産んで、その赤ちゃんの名札を間違えました、番号を間違えましたといったら、違う子を育てないかぬことになってしまいますわね。日本における医療社会でこうした対応というのは本来あってはならぬことですし、実際、こうした例について裁判にでもなったら、お医者さんの側が敗訴する場合だって私は高いと思いますので、その点はかなり注意をしていただきたいと思うわけです。
 そこで、こうしたさまざまな指摘がなされているわけですが、確かに努力目標とおっしゃいましたけれども、処遇最低基準の中にも、先ほどの努力目標であるこの処遇最低基準の二十二条に「すべての施設において、少なくとも一名の、ある程度精神医学の知識をも有する、資格ある医官の診療が受けられなければならない。医療業務は、地域社会または国家の一般的保険行政との密接な関係の下に組織されなければならない。医療業務には、精神異常の診断及び適当な場合におけるその治療のための精神医学的な業務が含まれるものとする。」というふうに定めているわけです。
 今のような指摘、中にはそういう事実はないと確認されたと入管局長が答弁なさった部分もありましたが、再度確認してみないとわからない部分も確かにありましたよね。そして、ケアレスなミスもあったことは事実として認めざるを得ないというようなことがあるとするならば、これが努力目標であるとしたとしても、その努力目標に達するには、東日本の入管センターでの医療の分野における処遇の水準というのは、まだかなり乖離があると指摘せざるを得ないわけですが、私がそういう認識を持つことは誤っているでしょうか。局長、どうでしょうか。
中尾政府参考人 医療の問題というのは、お金もかかりますし、医師も必要ですし、かなり専門分野の問題でございますので、器材の問題もございますし、人と物の制約がどうしても公的な機関の場合はあり得るわけであります。さりながら、その中において私どもといたしましてはできる限りの努力をしなきゃならないというふうには思っております。
 委員御指摘の規則の二十二条の問題につきましても、私どもといたしましては、昨年から入国管理センターにおいて、拘禁性ストレス等による精神障害症の、不安定な者がカウンセリングを受けられるよう、メンタルヘルスケアの専門家である臨床心理士の派遣を委託して、定期的なカウンセリングを実施したというふうに聞いております。
 一つ一つ、委員の御指摘も踏まえまして、今後とも努力をしてまいりたいと思います。
植田委員 私も、御指摘とチェックを繰り返しながら、これからもこの点については申し上げさせていただきたいと思っていますので、よろしゅうお願いします。
 時間がありませんから、次に、保護室、隔離室の問題についてお伺いしたいんですが、法務大臣、昨年このセンターへ行かれたということですけれども、隔離室、保護室というのはごらんになられましたか。
森山国務大臣 もう半年以上も前のことですので、具体的にちょっと記憶しておりませんけれども、ずっと全部見せていただきましたので、多分見たんではないかと思います。
植田委員 いや、そんなに印象に残らないような部屋だとは私は思わないんですが、まず隔離室がある。隔離室というのは、鉄格子がある独房みたいなところですわね。そして、その向かいぐらいに保護室というのがあるわけなんですよね。それが四つ部屋があったのかな、そして隔離室が三つ部屋がある。そして、入管の所長の説明によれば、ストレスがたまって精神的にかなり高揚しやって暴れたりする、だから隔離しなきゃならない、また、薬物中毒の方も間々いる、そういうことで暴れたりする、みんなと一緒にできへんからまず隔離室に入れるんだ、それでもだめな場合は保護室に入れるんだと。
 保護室は、これは実際暗室ですわね。周りはもうコンクリートの壁。上から、一応カメラがあるので、どういう動きかは職員の人が見れるようになっているんですが、トイレに至っては、金隠しもない、こんなトイレですわね。あんなの今どき製造しているんかいなと思うようなトイレがありますわ。しかも、水は外からしか流せないという。そんなところで、保護室となぜか名前はおっしゃっているそうです。これは西日本の入管にもあるようです。
 そこで、ここの保護室、隔離室について、当然必要だから置いておられるんですけれども、一つ大きな問題があると思うんです。
 というのは、例えば、まあ雑居房と言うとおかしいですけれども、数人で収容されている中で、一人はどうしても暴れて、切り離さないかぬということになれば、単独の部屋に入れて落ちつくのを待つという場面もあるかもしれませんよね。そういう意味で保護室、隔離室があるんでしょうけれども、この保護室の利用については、精神科医、医師の資格を持つ技官の承認と、その上で所長の決裁が要る。これは、入管へ行ったときも、最終的には所長の責任で収容者を保護室に入れるということを決裁するんだとおっしゃっていましたが、いつ、どういうケースで、どういう場合にその保護室に入れたか、何時間入れたか。それは、入管の職員は、いや、ここは十分か十五分ぐらいしか、落ちつくまで入れておくだけですよってに、そんな二日も三日もここに閉じ込めているわけじゃございませんねんとにこにこしながら言うんですけれども、幾らにこにこして言われたって、では、過去どういうケースの場合に何時間入れたのかというような記録が一切ないわけですよね。この点、私は非常に納得がいきません。
 要するにそれは、入管局長に聞きますけれども、そうした保護室の利用、活用について一切記録を残さなくてもいいわけですか。後々、保護室に例えば植田という人間が入れられた、そこで著しい人権侵害を受けたと私が訴えても、それが人権侵害であったかどうかを確認するすべもないわけですよ、データがないから。記録ぐらい残しておけばいいんじゃないですか。そういうことをする必要がないと考えているのであれば、ないと考えておられる根拠を言ってください。私は必要だと思いますけれどもね。
中尾政府参考人 この点につきましては、委員御指摘のお話は、私自身もっともだろうとは思います。その辺の記録の関係がどのようにどうなっているのかを含めまして、委員の方から通告を受けた後に、これはきっちり調べをするように申し渡しているところでございますので、この点は、具体的な記録関係、統計と記録は違いますので、統計はないという報告は受けましたが、記録関係がどのようになっているのか調査して御報告させていただきたいとは思います。
 それから、保護室の問題は、自損行為を図るおそれがある被収容者に対しては、自損行為につながるようなもののないところに置かざるを得ないということで、この保護室自体は必要不可欠なものだろうと思います。先般、イギリスのディテンションハウス、つまり同じような収容センターに参りましたときにも、やはり日本と全く同じような保護室があって、これは、他の関係で、処遇ですばらしい基準に達している収容施設であっても、同じようなものはつくらなきゃならないというような必要性を感じたところでございます。
植田委員 まず、統計はとっていないということですが、業務日誌等をつけていれば、何月何日にこう決裁して、別に私は固有名詞まで教えろとは言いませんよ、それは残ってあるだろうということですね。そう推察できるわけですね。要するに、過去さかのぼって日誌を見れば、改めて調査し直せば、どういうときにどういうケースで使ったかということは明らかにできるということですね。
中尾政府参考人 お答え申し上げます。
 その点を含めて、不正確なことを私この場で申し上げるわけにもまいりませんので、委員御指摘の点を踏まえてきっちり確認をした上で申し上げたいと思います。
植田委員 これも努力目標だと言われれば身もふたもないわけですが、先ほどの処遇最低基準の三十一条にはこうあるわけですよね。「体罰、暗室拘禁及びすべての残虐、非人道的または屈辱的な刑罰は、規律違反に対する懲罰として、絶対に禁止されなければならない。」
 ちなみに、この保護室というのも、一応明かりはあるようですけれども、スイッチは外にあるわけですから、真っ暗にすることは大いに可能です。電気がついていたのか消していたのかということをきちんと明らかにできるかどうかは、まず一つ要請しておきたいと思います。
 また、三十二条の一では、「密閉拘禁または減食による懲罰は、医官が、被拘禁者を診察し、その者がこれに堪えうると書面によって保証した場合でなければ、科されてはならない。」ということもあります。
 ですから、私が知りたいのは、これに抵触しない範囲でやっておるのかやってへんのかということです。暗室拘禁は、これはまずそもそもやったらあかんと書いてあるわけですよね。努力目標ですと言うけれども、電気をつけるか消すかの話でしょう。場合によっては電気を消してもいいというふうに判断されて、入管がその保護室を真っ暗にして押し込めることも可能なわけですから、どういう状況において保護室を活用したのかということを明らかにしていただきたいと思います。
 明らかにできるでしょう。私がそのデータを取り寄せた上で、これに抵触するやないかと言うてここで私が仮に怒っても、いや、これは努力目標でございますという答弁をあらかじめ用意されているわけですから、気にせぬと事実をありのままに調べてください。
 それと、もう一点。
 自損行為、みずから傷つける、そういう行為をしないために保護室というものに入れるんだとおっしゃいましたですよね。それは、きのうも質問のレクのときに、例えば金隠しがないような、まるで特注のこんなトイレで用をしているのも、金隠しみたいな突起物があったらそこに頭をぶつける可能性があるからではないでしょうかなどと、質問取りに来た人がおっしゃっていました。
 それだったら、何で周りがコンクリートの壁なんですか。実際、中を見ましたら、つめでがりがりとやった跡も残っていますし、血の跡も残っています。本当にそういうふうに収容者の生命をおもんぱかっておられるのだったら、周りをマットにすればいいじゃないですか。コンクリートの壁やったら、頭をぶつけたら何ぼでも、こぶの一つや二つつくれますよ。そういう配慮もすべきなんと違いますか。どうですか。
中尾政府参考人 お答え申し上げます。
 委員の御指摘していただいたのも一つのアイデアであろうかと思います。それも踏まえて検討したいと思います。
植田委員 あと幾つか残りの質問があったわけですけれども、もう一つ、最後に、このように保護室の利用についても所長の決裁でできるわけですが、難民申請をしておられて現に収容されている方々から苦情が出ている、不満の声が上がっているのは、要するに、おれたちを麻薬の売人なんかと一緒にせんでくれ、同じところに収容せんでくれというふうな声が上がっているわけですよね。
 少なくとも、そういうところはそれぞれの事情に応じて区分をすることは可能なのじゃないかと思うわけです。これは、内部規則の解釈のレベルで、そういう処遇は、それぞれのそこに収容されている事情に応じてある程度仕分けができるのじゃないかというふうに思うわけですが、その辺の配慮は今後なされるおつもりはありますか。
中尾政府参考人 被収容者の処遇につきましては、種々の観点を総合的に考えて妥当適切な対応をせざるを得ないわけでありますが、被収容者につきましては、国籍、言語、宗教、その他違反事件の内容等、それぞれさまざまに違うわけでございます。保安上の支障がないと認められる範囲で、それぞれについて居室を指定し、適切な処遇を行わざるを得ないわけでございます。
 委員御指摘の点についてでございますが、基本的には、収容センター内におきましてそれぞれの被収容者を平等に処遇するというのは基本の基本であろうと思います。したがいまして、難民であると主張、つまり難民認定申請中であることのみをもって、そのことの理由のみをもって、直ちに他の被収容者と区別した処遇を行うことはやや困難ではないかと思いますので、その点は御理解を賜りたいというふうに思います。
植田委員 時間が参りましたので、かなり質問をやり残したわけですが、終わりますけれども、幾つか宿題が残っていると思いますので、それについては可及的速やかにお調べいただきたいと思いますので、その点はよろしくお願いいたします。
 また、保護室については、法務省、法務大臣は昨年見たけれども忘れているとおっしゃいましたけれども、私は、そもそもその保護室が適正に利用されているか、されていないかということが検証できない状況に置かれていることが問題だというふうに思っております。ですから、これから検証していくための素材を誠実に調査なさって提供していただきたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 以上で終わります。
園田委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時二十三分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時開議
園田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。日野市朗君。
日野委員 大臣には、このような、日本が一つの大きな壁にぶち当たっているような時期に法務大臣をお務めになって、大変御苦労さまでございます。
 どうも、一つの国がこういう、日本のように調子が悪いときというのはいろいろなことが起こるものでございますよね。もちろん経済も悪い。そうすると、治安の方も悪くなってくる。いろいろなところで意気が上がらない。ソルトレークのオリンピックなんというのは、まさに意気が上がらない日本を象徴しているような感じもするわけでございますね。やはりそういうものなのだと思うのです、その国のエネルギー、その民族のエネルギーというのは。こういう時期にこれから、刑事、民事を問わず、いろいろな法的秩序というものに対して我々はきちんと注意をしながらこれを運用していかなくてはいかぬと思う。
 特に私が今気になっておりますのは、午前中、佐藤さんだったかな、治安の問題について触れておられましたが、このことはやはり、日本人、特に政治家としては共通の関心事であろうというふうに思います。
 そこで、治安の点からまず一つ大臣の御意見を伺いたい。ちょっと揚げ足取りになります、申しわけないけれども。
 というのは、我々も治安の問題について、私も弁護士なものでございますから、随分長い間治安の問題については関心を持って見てまいりました。そして、最近の治安状況というのは非常に悪いと私は思って見ているのですね。昔から、日本というのは治安がいい国だとされてきた。これは、刑罰による威嚇、つまり刑罰法令がきちんと作用をしていたということもあるのでしょうが、そのほかに、文化の問題、教育の問題、経済の問題、こういったものがいろいろ複合して、治安の問題の中には問題点としてあるわけでございますね。でありますから、これは法務省だけがどうこうできる、法務大臣だけがどうこうできるということではないことは私もよく知っていながら、あえて質問をさせていただくのです。
 治安の問題を大臣の所信の中でお話しになって、幾つかの点が並んでいるわけですが、さらに一層の創意工夫、こういう言葉をお使いになっておられます。私もずっと長い間この治安の問題を見てきて、では自分自身どういう知恵があるのだよと。治安が悪くなる傾向にあります。では一体おまえだったらどうするのだと言われると実は困る。だから私はあえて揚げ足取りと申し上げたのですが、さらに一層の創意工夫、どういうものがあるのかということについて大臣の御意見を伺いたいのですが、その前に、現在の治安の状況、これが現実にどうなっているかということを数字的にちょっと警察庁の方から述べていただきたい、こう思います。そして、その後、大臣の方から、では一層の創意工夫には具体的にどんなものがあるのか、このことについてお伺いしたいと思います。
吉村政府参考人 治安状況ということでございますが、交通関係のいわゆる業務上過失致死傷の事件を除きます刑法犯の認知件数と申しておりますが、昨年の刑法犯の認知件数は二百七十三万五千六百十二件ということでありまして、戦後最多になっております。検挙人員は三十二万五千二百九十二人でありまして、一昨年と比べますと、約一万六千人、五・一%ほど増加をしておりますものの、検挙件数は約三万件マイナスの五十四万二千百十五件であります。
 検挙率がいろいろと喧伝されておるわけでありますが、検挙率は、認知件数分の検挙件数でありますので、先ほど申しました数字で割り出しますと、昨年は一九・八%であります。かつて、検挙率ということでは、五〇%台から六〇%台でありましたものが、平成元年になりまして五〇%を割り込みました。一昨年も二〇%台でありましたが、昨年はさらに数字的には悪くなって、一九・八%という数字になっております。
 検挙率の低下の原因として私ども考えておりますのは、まず、いわゆる従来型の聞き込み捜査などの手法を活用した捜査が、最近の社会情勢下、非常に困難化しているということがあろうかと思いますが、そのほかに、いわば犯罪の増加に検挙がなかなか追いついていかないということがあります。
 例えば、細かく数字は申し上げませんが、強盗をとりましても、最近の推移では、検挙件数、検挙人員は結構伸びておりまして、たくさん捕まえておるわけでありますが、それにも増して認知件数がふえているという状況で、結果的には、分母分の分子でありますから、強盗の検挙率も下がっているという状況にあります。
 ということで、犯罪増加に検挙が追いついていかない。すなわち、新たに次々に事件が発生をいたしますと、その事件の早期検挙にまず当たらなければならないということでありますし、また、その結果、被疑者の余罪解明がなかなか十分になされないということもあって、検挙件数等がなかなか伸びないという状況にございます。
 さらに加えまして、最近は来日外国人による刑法犯の問題もございまして、例えば二十年前と比べますと、来日外国人で刑法犯で捕まった人間が約七倍にふえております。昨年はそういうことで、来日外国人刑法犯検挙人員が七千百六十八人になっておりまして、この種の事件処理には当然通訳も必要となってくるなど、なかなか困難な捜査を余儀なくされているという状況にございます。
 ただ、この中にあって、いわゆる殺人罪の検挙率については、ここ十年をとりましてもおおむね九五%を前後しているということではございますが、全体の検挙率の議論をいたしますと、今御説明申し上げたとおりでございます。
日野委員 これだけ犯罪がふえる、そして社会が多様化してくる、犯罪の形もまたいろいろ違ってくる。それから、一般市民から警察が非常に頼られていて、本当に小さなことまで警察の方に相談が行く。私はこれは本当はいいことだと思うのですね。いいことだと思うのですが、人数が限られている警察の組織が十分対応できないということもあるようですね。何か、玄関の前で猫が死んでいるみたいな話まで持ち込まれるのだなんという報道をちょっと耳にしたことがあるのです。非常に気の毒だとは思うけれども、やはり何といっても、世界で最も有能な警察と称された日本の警察の犯罪の検挙率が二〇%を下回るというのは、これはやはりゆゆしき大事ではないか。日本の社会を支えていた基本となる部分、これに揺さぶりがかけられている、そのように私は思いますので、ひとつ、警察は組織を挙げて頑張ってもらわなくてはいかぬですね。
 それと同時に、世間の耳目を非常に聳動した事件というのがありますよね。例えば世田谷の一家四人の殺人事件のようなものがあります。あれはもう一年半近くになりますか、まだ全然どうなっているかわからぬのですが、こういう重大事犯についてきちんとした対応ができていないという印象を国民が持つ。それから外国人なんかも持つ。そういうことがないようにぜひともしてもらいたいと思う。ひとつ、そういう重大事犯に対する特別の対処を考えておられるんなら、ちょっと述べてください。
吉村政府参考人 今御指摘のありました世田谷の一家殺人事件でありますが、一昨年の暮れの発生でありますので、一年余を経過しておるわけであります。御指摘のとおり、現在まだ検挙には至っておりません。
 先ほど、殺人の検挙率は九五%前後とは申し上げましたが、確かに委員おっしゃるように、いわゆる世間の耳目を聳動させたような事件がなかなか検挙に至っていないというのは、これはその意味では非常に残念なことでもありますし問題だと思いますので、一生懸命やらなければならないと思っておりますが、御承知のとおり、事件は一つ一つ顔が全部違いますので、なかなか、この公式であれば犯人まで到達するというふうにまいりません。したがいまして、この世田谷の一家殺人事件につきましても、警視庁で成城警察署に捜査本部を置いて今も地道に捜査をやっておるわけでありまして、特別捜査本部の解決ということになりますと、なかなか特効薬というのはないのが実態でございます。
 その中で、先ほど申し上げましたような地道な聞き込み捜査でありますとか、あるいは、大量生産時代で証拠物の特定がなかなか難しいわけでありますが、遺留品の捜査でありますとか、市民から寄せられるいろいろ各種の情報もございますので、そのつぶしの捜査でありますとか、現在鋭意やっておりますので、何とか一日も早い事件解決に向けて警視庁も努力をしておりますし、私どももサポートしてまいりたいというふうに考えております。
日野委員 それでは、さっきお話をした揚げ足取りの部分でございますけれども、実際おまえだったらどうすると言われると、私も、警察と検察との関係がどうなっている、人員がまことに少ない、そういった事情。それから刑事訴訟法には、あれは何条でしたかな、百九十一条かな、ちょっと調べてきたんだわ、百九十一条から三条ばかり、警察と検察との関係なんかについての規定もちゃんと置いてあるところです。しかし、これにどういう工夫をすれば大体どうなりそうだというような方向性でも法務省内で一応御検討なさっているのかどうか。ここは揚げ足取りの部分であります。ひとつ大臣、さらに一層の創意工夫とおっしゃっているわけですから、その具体的な内容を御説明いただきたい。
森山国務大臣 先生御指摘のとおり、治安ということは、安心して暮らせる社会というものをつくるのに最大の重要な要素でございまして、暮らしを安心してすることができないという社会では経済も文化も何にもできないわけでございますので、これなくして国家の発展は到底考えられない、非常に重要な基本的な条件だと思います。
 それで、私の所信の中でもそのことをちょっと触れたわけでございますが、その言葉は、もう少し前の方から申し上げてみますと、「検察体制、矯正行政、出入国管理行政等について、より一層の創意工夫を重ねる」というふうに申し上げたわけでございまして、しかし、おっしゃいますように、どこをどのように工夫するのかとおっしゃられますと、これという決め手がはっきりあるわけではございません。しかし、与えられた条件の中で、何とかよりよいものをつくっていかなければいけない、さらに大きな力が出るような知恵を働かせていかなければいけないという思いでございます。
 具体的にとおっしゃいますが、例えば、先ほど外国人の犯罪が多いというようなお話がございましたので、入国審査について、さらに機器を整備するなり、人員をできるだけ有効に使うようにして体制を整えるとか、あるいは、いろいろな新しい犯罪、新しい事象について、それに対応する刑罰法令を工夫していくとかいうようなことが今ちょっと思いつくわけでございます。
 また、一方において、先ほど先生もちょっとおっしゃいましたように、昔は犯罪とは考えられなかったようなことを、法律に書いてそれを禁止したり罰したりしなければならなくなった時代、そういう社会になったということもありまして、犯罪の数も基本的にふえる傾向にあるんではないかと思うんです。
 例えば児童虐待であるとか配偶者の暴力とかいうようなことは、昔は個人的な問題、家庭の中の話ということで、法律に書いたり、あるいは警察にお願いしたりということがなくて解決していた部分が多かったはずなんでございますが、今日はやはりそれだけでは済まない。やはり法律に規定して、そのうちのある部分を犯罪として罰するというようなことがないと平和な社会を本当に築くことはできないということで、従来は法律の対象ではなかった、あるいは刑罰の対象ではなかったものが犯罪の中に入るという事態もあるんではないかというふうに思いまして、いろいろ悩ましく考えあぐねているところでございますが、だからこそ、先ほどもお話が出ておりました司法制度改革などを中心にいたしまして、抜本的な司法のあり方を考え直すということが今求められているんではないでしょうかと思います。
日野委員 いろいろ言いわけになることはあるんだと思う。私自身も決して大臣ばかり責めるわけじゃありません。ただ、私もやはりこのような仕事をやって、法律の仕事をやってきた身として、こうだからこうなってしまっているんですという言いわけばかりじゃなくて、もっと積極的な転換、我々が取り組む姿勢についての転換、これは必要だと思っているんですね、決して小手先ばかりじゃなくて。
 ですから、治安の問題については、これは非常に重要な部分です。なぜかというと、人の生命、身体、財産に対する直接の侵害行為を取り扱うわけでございまして、ほかの経済的な問題とか文化的な問題とはちょっと次元の違うところがある。でありますから、私は、治安をきちんと守ってまいりましょうとするための人員の増加、それから、何か警察なんか見ていると、ITなんかも十分に使いこなしていないなと思われる場面場面に時々出くわしたりするんですが、そういうところにかかるお金はちゃんと要求をしていくということは必要だと思うんですね。そんなことを言うと、ほかが全部同じようなことを言う、こうおっしゃる方がいるわけですね。しかし、これは人間の生命、身体、財産に対する直接的な侵害でありますから、ここのところはひとつ留意して取り組んでいただきたいものだというふうに私は考えております。
 そして、大胆に自分たちの体質を切り変えていくということも必要なんだろうというふうに思うんですね。そこで、私、この点、検察と警察との関係はもっとその間風通しがよくていいんだろうし、特に重大事犯と言われるものについては検察の方がいろいろ乗り込んでいく、場合によっては警察の方が検察で取り扱っている問題についての協力をきちんと行っていくということは必要だと思うんです。現在、検察の側の特捜部の仕事なんかについては警察なんかもいろいろ協力をしていますが、そのほかは大体、警察でまず前段の捜査をして、公訴提起のための捜査ということで検察庁で捜査を行って、そして公訴提起したり不起訴処分を決めたり、そんなことをやっているわけですが、具体的に、重大事犯なんかについての検察と警察との関係、現実にはどんなふうになっておりますか。
吉村政府参考人 警察と検察との事件捜査の場面においての協力といいますか連携関係のお尋ねだと思いますが、一般的に申し上げまして、警察が、特に殺人事件等の重要な事件で、検察当局と全く相談なく事案処理をして送致をするということはあり得ないわけでありまして、実態としても、事前に、ほぼこういうことで犯人が特定できるのではないか、証拠関係としてはこうなるのではないかということを詰めて、検討を終えた段階で、あるいは検討しつつ、当該検察庁といわば事件相談をいたしまして、処理をする。そういたしませんと、せっかく犯人を検挙いたしましても、最終的に捜査が不十分なゆえに起訴に至らないということになっては、本来の捜査目的を達したことにはならないわけでありますので、少なくとも重要事件についてはそのような対応をしておりますし、また、いわば小さい事件というと語弊があるかもしれませんけれども、個別の事件の捜査の過程におきましても、ケースケースで事前に検察庁と相談をし、事件を処理しているというのが実態でございます。
日野委員 いずれにしても、両方でそれぞれ隔意なく意見を述べ合っておる。どうも刑事訴訟法の規定を見ると、ちょっと縛りがきつ過ぎるかなと思われる点もございます。ぜひひとつ、そこいらは隔意なく情報を交換し、意見を交換し合って、遺漏なきを期していただきたい、こんなふうに思います。
 それでは次に、ちょっとテロ対策について伺います。
 警察庁の方はあとは結構でございます。
 大臣は所信の中でもテロ対策について述べておられますし、これからもこのテロ対策という部分は、一般の国民、一般の世界の市民にとってまことにこれは迷惑な話でありまして、テロの根絶を期さなければならないという点については、これは世界的に世論の一致を見ているところであろうというふうに思うのですね。それで、警察庁のテロ対策ですが、きょうも条約の話も出ておりましたが、いろいろなあらゆる手段を使って、そしてテロなんということが起きないように万全の手だてを講じていただきたいと思うのです。
 ある一つの法律、つまり無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律というのがございます。これはオウム対策で制定された法律でありますが、この審議には私もいろいろ質疑をさせていただきました。臼井さんが法務大臣だったですね。そして、提案理由の中には国際的なテロ団体についても触れておられるのですよ。しかし、どういうわけか、質疑で、では国際的な問題もこれは取り扱うのですな、この法律でやるのですなと言うと、どうもわかったようなわからないような答弁ばかりして、そこを逃げ回っておられた。私に反対されるんじゃないかと思ったのですかな、私はそんなことなくて、むしろこれは使えますなということだったんですが、どうもそこいらがあいまいもことした返事をしておられました。
 そこで、大臣はどう考えますか、この無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律、これは国際的なテロ対策としても、テロをしようとする団体に対する対策としてお使いになるお気持ちがおありでしょうか。
森山国務大臣 無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律というのは、我が国における公共の安全の確保を目的としているわけでございます。ですから、国際テロ団体というのはいろいろあるとは思いますけれども、その団体の実行する無差別大量殺人行為が我が国の公共の安全に向けられたものであるかどうかということとか、これらの団体が我が国において支部や組織を持っているかどうか、そんなことを立証し得る情報をしっかり把握しなければならないことが前提になるかと思いますので、国際的なテロ団体であるからという一種の一般的な認識だけで直ちにこれを適用するということは難しいと思います。
日野委員 私の聞き方が悪かったかもしれません。そういう国際的にテロ行為をやっている団体が我が国の内部で活動をしようとするとき、この法律を適用するおつもりがおありかどうかということを聞いたわけです。
森山国務大臣 今申し上げましたように、我が国の公共の安全の確保ということが目的でありますので、そのような具体的な可能性があるといいましょうか、心配が考えられるという場合には、検討する価値は十分あるだろうと思いますし、そのような観点から証拠その他をしっかりと集めて、必要であれば適用することもあり得るかもしれないと思います。
日野委員 では、今の程度の御答弁からいろいろ推測をさせていただくということにしたいというふうに思います。
 では、ちょっと論点は別の方向に変えさせていただきたいというふうに思います。
 法務省としては、民事についても刑事についても、法制度をつくるという政策の策定、それについて一つの政策をずっと持ってやってこられたわけでありまして、そして重大な論点については、どう対応していくかということについてちゃんと法制審議会の意見を聞きながらやってきたわけですね。これが伝統的な手法であったというふうに思うのです。ところが、そういった伝統的な手法を誇り高く維持するという法務省の姿勢とは、これはちょっと変わってきたのかなと思わざるを得ない点が、幾つか、私、思うところがあります。
 例えば少年法です。これはもうずっと省内で検討を重ねてきて、そして国会に提案をするという段階で、どうもこいつは大分時間がかかると思ったのかどうか、最終的に国会を通ったのは、麻生太郎君外何名の議員提案で国会をパスしたという形をとっておりますね。少年法の問題、これはずっと法務省が取り組んできた大問題でございますね。それをこのような取り扱いでいいのかな、法務省は誇りを失ってしまったのではないか、こう思います。
 それよりもっとひどいのは借地借家法ですよ。これも民事の不動産に関連する重大な基本法だったわけですな。そして、法制審議会なんかでもこれは十分検討をして、国会に出した。一たん出したんだが、今度はそれを引っ込めちゃった。そして、どのようにしてこの借地借家法が改正されたかというと、良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法という法律の中にすっぽり取り込んでしまったわけですね。そして、保岡興治君外何名かの議員提案で、良質な賃貸住宅等の供給の促進というレベルで、この借地借家法を処理したわけですね。
 我々は、この委員会で、きちんとした議論をしましょう、通すものは通しましょう、だめなものは反対しましょうということで手ぐすね引いていたら、逃げられちゃったわけですね。この法務委員会という、伝統を持った、精鋭をそろえた委員会から別のところへ逃げていっちゃった。こんなことでいいのかねと思うんですが、これは従来の法務省の伝統的な手法とはえらく違うというふうに思うんですが、大臣、御感想をひとつ。
森山国務大臣 確かに、おっしゃいますとおり、法務省としては、従来から、国民の権利義務の根幹にかかわる民事法、刑事法のような基本的な法律の改正を行います場合には、内閣から御提案するに当たりまして、法律の専門家のほか有識者の方々に加わっていただいて、法制審議会における幅広い観点からの御審議をいただくということを経て、計画的に立案作業を行うという手順でずっとやってまいりまして、今後も、基本的にはそのような進め方、その時々の要請にこたえながら、そのような進め方でやっていくのが一番オーソドックスなやり方だというふうには思います。
 しかし、一方において、社会の変化が非常に速くなっておりまして、この問題については至急対処しなければいけないということが次々に起こってまいりますので、立法府である国会における議員の先生方の御発意によって、議員立法という形でそういうことが行われるということも最近は時々見られるようになってまいりました。少年法とか借地借家法の改正もそのようなケースであったのではないかと思いますが、どれでなければならないということはないと思います。
 オーソドックスな方法を得るのが本筋でございましょうけれども、それをまた別の、特に議員の皆さん方のイニシアチブで議員立法という形で補っていただく、あるいはスピードに追いついていくためには必要であるということもあろうかと思いますので、どちらも大変大切な方法ではないかというふうに思います。
日野委員 私、特に借地借家法、これについては、良質な賃貸住宅の供給などと同じレベルの議論をされちゃ困っちゃうわけですよね。こんなことはなさらないように、ひとつ、大臣には強く要請しておきたいというふうに思うんですね。
 一つ問題点はあると思うんですよ。確かに、全体の流れを見て法制審というのは時間がかかり過ぎている。この点について御感想、それから、もっと法制審の議論を早くやってしまう、促進するというような方向は必要だと思うんですが、どのようにお考えでしょうか。
森山国務大臣 最近は、大変その問題について法制審議会の先生方も注意をしていただくようになりまして、例えば、昨年末でしたか、通していただきました刑法の改正で、危険運転致死傷罪というようなものをつくっていただきましたが、あれは、たしか八月のころに諮問いたしまして、二カ月ぐらいで答申をいただいて、すぐに法案にさせていただいて御審議願ったというようなことでありましたので、従来のほかの、今までのケースから見ますと、大変スピードアップしていただいたわけでございます。あれは問題が非常に具体的で絞られておりましたので、それも可能だったんだろうと思いますが、法制審議会も社会の動きが速いということを十分御留意いただいて、ぜひ今後も御協力をいただきたいというふうに思っております。
日野委員 政治家が絡むとどうしてもやはり、自分の支持のバックグラウンドといいますか背景といいますか、そういったものにややもすれば流されがちになることが間々見受けられる。私は、借地借家法もそうだったと思うんですが、そういうことではなくて、国家百年の大計を考えるという視点は、これは法務省だから持てるんだというふうに一面言えると思いますよ。
 それは、政治家だってみんな、我々は国家百年の大計考えている、こうは言うけれども、自分の有力な支持団体であるとか何かから圧力がかかると、これは政治家としては弱いんですわな。やはり私自身も、みずからを省みてもそういうふうに思いますので、この点については、法務省は法務省としての国家百年の大計を考えていくというプライドを持って仕事をしてもらいたい。
 私は、この国会に出てくる商法の一部改正について、これは特にそういうことに留意をしながらやっていかなければならぬ部分だな、こう思います。特に、コーポレートガバナンスの部分が含まれているわけですね、今度の商法改正には。今度、商法改正案が出てきたら、それはそれなりにきちっとまた議論をさせてもらいますが、私は、この部分について、さていかがなものかという思いを捨てるわけにいきません。
 というのは、企業の管理、マネジメント、ガバナンスですね、そういったものについて、グローバルスタンダードに合わせるという考え方、これは政治の側からの主張です。しかし、私に言わせてもらえば、これはグローバルなスタンダードではない、アメリカンスタンダードではないか、こう思っておるわけですね。そして、今それに合わせるために一生懸命政治の場がしきりと走って走って、私は、恐らく法制審議会の議論より先に政治の場の方で結論を出した、こう見ているんですが、ごらんになってください。アメリカは今確かに景気がいい、しかし、それはドルが支配していた時代、それの夕焼けみたいなものでして、ぱっと華やかに見えるけれども、これからは、一つの通貨圏としてユーロ圏が出てくるわけでしょう。それから、アジアだって今のまま黙っているわけではない。今までどんどんアメリカに集まっていったお金が、今度はアメリカからよそに出ていく、そういう経済の流れというのは、これは見えているわけですね。
 そのような中にあって、このアメリカンスタンダードによるコーポレートガバナンスを考えていいのか。私は、あと何十年かたったら、えらいことをあのときに日本の法務省はやってくれたと言われやしないか、こんな危惧の思いを実は持っているわけですね。
 経済界がわっと騒いだのは、あの大和銀行の株主代表訴訟での、八百三十億円ですか、取締役に対する賠償請求が出た。それで政治の場が、経済界からいろいろ注文を受けてわっと騒いで、どんどん先に走ったという状況があると思うんです。私は、こういうことであると、それこそ国家百年の大計を誤るという思いがしているわけですね。
 法案の審査を前にして、今、大臣にこれについての感想を問うのはちょっと酷であろうと思いますから、今私は大和銀行事件の話やらしましたが、やはり法務省は法務省として、何度も同じ言葉を使わせていただきますが、誇りを持って国家百年の大計を考えていくべきだ、こう思いますが、大臣はいかがですか。
森山国務大臣 大変励ましていただきましてありがとうございます。
 商法なんかのような民事基本法の改正を検討するに当たりましては、国民の権利義務の根幹にかかわるものでありますから、法律専門家のほか有識者や関係各府省の方々によって構成される法制審議会におきまして、比較法的な見地など幅広い観点からの検討を踏まえて論議をいただきまして、その答申を得て内閣提出の法律案を立案するということで進めております。
 おっしゃいますとおり、前国会におきましては、議員提案によって提案されましたコーポレートガバナンスに関する商法等の改正法案が成立いたしましたが、これは、実効性のあるコーポレートガバナンスを構築することが喫緊の課題であるということの認識に基づきまして、かねてから与党において検討されておりまして、それが議員提案によって国会に提出されたものでございまして、国会における修正協議を得て成立するに至ったというふうに承知しております。
 このような議員立法というのは、先ほども申し上げましたように、立法府であります国会に属する個々の議員の方々がその御判断に基づいてなされるものでございまして、それはそれで評価すべきであるというふうに思いますが、国家百年の計、当然国会だってそのつもりで皆さんやっていただいているわけでございますけれども、特に、法律整備、法制度というような問題については、法務省もその責任ある役所といたしまして、遠い先のことまでできるだけ見据えてしっかりとやっていかなければいけないというふうに考えるところでございます。
 ありがとうございます。
日野委員 政治的な動きは政治的な動き、役所としては役所としてきちんとした仕事をやってもらいたいということを申し上げて、終わります。
園田委員長 鎌田さゆり君。
鎌田委員 民主党の鎌田さゆりでございます。初めての委員会で、初めての質問でございますけれども、どうぞよろしくお願いします。
 昨日、大臣の所信を伺いました。冒頭に、国民の権利の保全を通して云々、国民が安全に暮らせる社会を築くために欠かすことが云々、そして、改めて国民の視点に立って何がその利益にかなうかを十分に念頭に置いて制度の運用を行うという御決意をお示しいただきました。私も全く同感、共鳴でございますので、ぜひそのお気持ちでもってこれからの法務大臣としてのお仕事、そしてまたきょう私が質問をする幾つかにつきまして、このお気持ちでもってお答えをいただきたいということをあらかじめ申し上げたいと思います。
 昨年の八月に、全く関係のない第三者が届け出をした婚姻届によって戸籍が書きかえられてしまったという事件が東北の地方都市でありましたけれども、大臣、御存じでいらっしゃいますね。
森山国務大臣 承知しております。
鎌田委員 この事件なんですけれども、これはだれにでも当てはまる、いわば国民全体にかかわる問題だという認識を持たなければならないと思います。なぜなら、虚偽の届け出によって書きかえられた戸籍、これによって一個の別人格が、しかも存在していない人物がつくられてしまいました。一方では、真実存在している本人はこの社会から法的に抹殺されてしまった、そのことを意味しているからであります。
 そこで、二点続けてお伺いをいたしますけれども、この手の戸籍偽造等戸籍にまつわる犯罪の実態はどれほど把握していらっしゃいますでしょうか。あわせて、私が関係各機関からお聞きをする限りなんですが、今回のようなケースは、今までにはない、いわば想定外のものであったと考えられるようですけれども、その認識はお持ちでいらっしゃいますか。
房村政府参考人 お尋ねのような戸籍の偽造に係る事件でございますが、これについての公式の統計というようなものはございませんが、私どもで、新聞報道等あるいは事件のあった市区町村からの報告というようなことで、可能な範囲での把握はしてございますが、年間数件から十件まではいかないような数でございます。
 それから、今回のことにつきまして、何か戸籍を偽造して、さらに住民票を動かして、それをいろいろな方面に使っているというようなことを聞いておりますが、従来の戸籍の扱いからは余り想定されていなかったような利用のされ方かとは思っております。
鎌田委員 今の御答弁でほぼ想定外のケースであるという内容のものだということを聞き取れたわけなんですけれども、現に、この事件の後、この事件が発生した自治体の戸籍事務、この窓口を中心に役所への市民の電話が殺到しております。それだけこの問題が、この事件が、わずか数人の問題ではない、自分の戸籍は大丈夫なんだろうかと不安を覚えた事件だったわけで、さらにこれは、先ほども申し上げましたように、すべての国民がこの犯罪の標的にさらされる、そういうおそれがあるということは、ぜひ重々に御認識をしていただきたいと思います。
 この間、婚姻無効の確認がなされました。戸籍が訂正されております。現行法の手続、手順の観点からしますと、適正に事が進められていると見えるんですけれども、実はそうとも言い切れないと私はあえて申し上げたいと思います。
 私は、少なくともここに一人の、もしくは何人かの人々の人権が著しく侵害される危険性を含んでいて、事実、今回の事件の過程においては、被害者の方の人権が非常に侵害される、そんな状況に追い込まれたということを指摘したいと思います。
 そこで、まず、この訂正のことについてお伺いしていきたいと思うんですけれども、訂正をされるまでのどうしても必要とされるべき時間、事務手続がございますね。物理的なその時間の間なんですけれども、ここの間の人権をいかにして守っていくかということは、これまた非常に重要な問題だと思うんですね。
 今回のケースを事例に挙げますと、八月二十一日に事件が発生しています。二十二日にそれが公に発覚をしたわけなんですが、それから戸籍の訂正に向けてさまざま動きがありまして、実際に訂正されたのは、十一月に家裁の審判がおりてから後の話、十二月に入ってからです。この間約四カ月間ございます。この間、例えば私鎌田さゆりは、私は鎌田さゆりだとどんなに主張したとしても、社会的には、法的には、書類上には存在していないんですね。大臣のお名字を借りて大変恐縮ですが、その間は森山さゆりに四カ月間なっちゃうんですね。
 この間、たまたまその自治体では知事選挙がありました。あってはならないことがその間起きています。たまたま、この被害者の方は二十の女性で、初めての選挙権行使のときだったんです。しかしながら、鎌田さゆりで投票用紙が来ない、森山さゆりで投票用紙が来る。私は鎌田さゆりだから鎌田さゆりで投票したいと思っても、役所からはそれを認められない。そんなに鎌田さゆりで投票したいんだったら棄権したらいかがですかのようなことが、信じられないと思うんですが、実際にございました。あってはならない、基本的な人権行使の場面でそれを阻害するようなことが実際に起きております。
 たまたまこれは選挙に関してなんですけれども、この四カ月間、この被害に遭われている方は、例えば運転免許も取れません、実際の本人の名前では。それから、もちろん結婚もできません。もちろん、訂正になって婚姻無効の確認がおりるまではまだ結婚していますから、ほかの名前で結婚していますけれども。
 とにかく、あらゆる面において、その訂正がされるまでの間、その本人の基本的な人権が侵害著しいということを御認識していただいた上で、この間その方たちの、その方の人権を保障する仕組みというものを早急に考えなければいけないと私は思うのですが、いかがでしょうか。
房村政府参考人 ただいま先生から御指摘がありましたように、偽造届けとかその他何らかの理由で真実に反する記載が戸籍になされた場合に、戸籍法では、家庭裁判所の許可を得て訂正をする、あるいは確定判決に基づいて訂正をするという道を用意しております。
 そして、そのような厳格な手続を定めておりますのは、やはり戸籍が基本的身分関係を公証するというその役割の重要さをかんがみまして、訂正するについてはきちんとした手続に基づいてやっていただく、そういうことでなされているわけであります。
 その結果、どうしても、当事者の方が急いでやっていただいても、今御指摘のように数カ月間のブランクが生じてしまうという事態は起こり得るわけでございます。その間、戸籍等の記載に基づいてなされる事柄というのは、どうしても戸籍の記載に基づいてしまいますので、御指摘のように、本来婚姻をしたことがない、全く自分が名乗ったわけでもないような氏で氏名を表記されるという事態が生ずることになります。
 もちろん、法律的な権利とか義務とかというものがこれでなくなったりするわけではなくて、当然その方には帰属しておりますし、選挙権もあるわけですが、それを特定するときに使われる氏名が自分の意に反した氏名になってしまうということはもう御指摘のとおりでございますし、また、婚姻をしようと思えば戸籍訂正するまでできないではないかというのは、全くもうそのとおりでございます。
 そういう意味では、この戸籍の偽造がなされますと、件数は少ないとはいえ、なされた方には非常に大きな御迷惑がかかるということは、もうそのとおりでございます。
 その間のその人たちに対する救済をどうするかということでございますが、これがまたなかなか難しいのは、その戸籍の表記に基づいていろいろな手続を進めるような決め方をしているものというのは、やはりそれなりにそういうしっかりした根拠に基づいた手続として考えているためということがありますので、それを個別的にどういうぐあいにして救済するかということになると、正直に申し上げて、なかなかいい知恵がない。できるだけ早く訂正をするということかなとは思っておりますが、さらに私どもも、大変大きな御迷惑を国民におかけすることになるということを踏まえて、検討していきたいと考えております。
鎌田委員 非常に苦慮されている御答弁で、苦慮というか困った問題だなという御認識は持っていらっしゃると思いました。最後のところでの、行数にすれば二行ぐらいのところが結論かなと思うんですが、これから検討しなくちゃいけない課題だという御認識はお持ちのようです。
 そこで大臣、やはりこのお仕事の、この国の最終的な責任者は大臣であろうと思います。この数カ月間、必ず空白の時間というのは生じまして、本当にこれは御本人じゃなきゃわからない精神的な苦痛を伴っております。この間の救済の方法というものを、これから大臣の責任のもとで、御検討、お考えをいただきたいと思うわけですが、いかがでしょうか。
森山国務大臣 戸籍制度は、日本国民の親族的身分関係を登録、公証する制度といたしまして、我が国の社会に定着して国民の信頼を基本的に得ているわけでございます。しかし、戸籍の偽造届け出事件が発生いたしますと、この制度に対する信頼が揺らぐばかりではなくて、関係の方々がさまざまな不利益をこうむる、先生が今いろいろ事例をお挙げになったとおりでございます。
 法務省といたしましても、このような問題は非常に重大な問題であると思いますので、先ほど局長が申し上げましたように、難しい課題ではございますけれども、真剣に検討していかなければならないと思っております。
鎌田委員 この点につきましては、今の御答弁をもって私の方も理解をさせていただきたいと思いますので、おっしゃったとおりにぜひ御検討いただきたいと思います。
 続いて、まず初めになんですけれども、今のに続いて訂正という問題についてまたいきますが、そもそも戸籍とはというところでお伺いしたいんですが、だれもが知るところの国会図書館にある戸籍の解説書をひもときますと、こんなに私も真剣に読んだのは初めてなんですけれども、戸籍とは人の重要な身分に関する真実を適法に記載したものという理解でよろしいでしょうか。
 なぜならば、第五章の「戸籍の訂正」のところに、「戸籍の記載が不適法または真実に反するときは、すみやかにその訂正の方法を講じ、つねに戸籍の記載を適法かつ真実に合致するものにしなければならない」さらに、「戸籍の記載を不適法または真実に反するままに放置しておくわけにいかない」とございますが、私が先ほど申し上げたような理解でよろしいでしょうか。
房村政府参考人 御指摘のとおりでございます。
鎌田委員 戸籍が偽造されたというこの事実は、身分に関する真実と言えるんでしょうかということを、まずあえてお伺いをしたいと思います。
 さらに、訂正された戸籍なんですけれども、訂正後の戸籍です、手続上は全くそのとおり、事実、正しいやり方に基づいて訂正されています。しかし、その人にとって真実ではないんですね。このことについてどう考えていらっしゃいますか。
房村政府参考人 御指摘のような偽造の届け出に基づく戸籍の記載というものは、もちろん真実に反したものでございます。そういう場合には、先ほど議員からも御指摘がありましたように、しかるべき手続を経て戸籍の記載を訂正いたします。
 ただ、ただいま御指摘いただいたように、訂正というのは、訂正の経過がわかるような訂正の仕方を現在の戸籍ではしておりますので、御本人から見ればおよそ本来真実でないものが、消されたとはいえ形としては残っているということになるのが現状でございます。
 そういうような訂正方法をとっているということは、一つには、もともと戸籍というのは紙に書くものですから、一たん書いたものを消すとしても、どうしてもそれはもとが残ってしまう。それから、戸籍の真実性の担保のために、戸籍に手を加えたときには、どのような形で手を加えたかがはっきりわかるように残しておくことが望ましいというようなことから、現在そういう取り扱いがなされているわけでございます。
鎌田委員 ただいま答弁の中に、訂正の経過という言葉がございました。訂正の経過。事務処理の手続の経過ならば、まさしくそうなんですが、ではその手続をしたのは何でかといえば、虚偽の婚姻届が出されて、そして裁判所から婚姻無効の確定がおりたんだけれども、しかしながらそれは第三者の犯罪行為で、今捜査中であって、いずれ捜査の結果も出てきますけれども、やはりこの事件に遭遇をした本人、被害者の心情からしますと、まず婚姻のために除籍されます。それから、婚姻無効の確定と、それから名前上には大きないわゆるバッテン印がついています。これは当たり前の作業なんですけれども、でも、その人にとっての生きたあかし、真実に基づくべき戸籍がいわゆる傷ついたままで残されていく、それが訂正の中身なんですね。
 それは、訂正の経過を正しく書くんだからというふうに、本当にもう血も涙もない形で訂正の事実だけをそこに書くのであれば、そのとおりでしょう。しかし、そこには犯罪があって、そしてその間明らかに精神的苦痛を、基本的人権が侵害されるような、そんな苦痛を背負ってきた被害者の生きたあかしにはなっておらないのですね。
 どなたか著名な作家の方の御本の中に、法律の法という字はさんずいに去ると書くけれども、さんずいとは血と涙を指して、血も涙も去ってしまう、それが法律だというように、非常に有名な作家の御本にありましたけれども、今回の事件で本当にそう思いました。一般に生活している人の困っている悩み、気持ち、それと、この国会で制度をつくっている議員とそれから役所の人たちは同じ目線に立っていない。そういうことをまず考えなければいけないのではないかなと思うのです。
 そして、特に今回は若い方が被害に遭われています。女性の方はもちろん名字が変わっています。二十です。これから、まず平均寿命まで生きたとしても五十年から六十年は生きると思うんですね。そして、亡くなってもなお残る戸籍なんですね。そこのところに、将来自分の子か孫か孫孫かわからないけれども、ああ、おばあちゃん、何だってこのときこういうことがあったんだねと。そのとき、いや、違うんだよ、こういう事件があってこうなんだよと言う人はだれもいなくなっているとしたら、だってそれはやはり事実だからしようがないでしょうと済ませていいものかどうかということをぜひ考えていただきたいのです。
 それで、先ほど大臣のお話にもありましたけれども、戸籍制度を有する我が国で、やはり国がその当事者と同じ目線に立って、今すぐやらなければいけないことは今すぐやる、そういう気持ちになって議論を、検討をしなければいけないと思うのです。
 無効の記載がなされておりますこの訂正の戸籍に、今後、その無効となった理由、今回の場合は第三者による虚偽の届けによるものだった、そのような真実が記載されるように、もちろんこれは戸籍法だけの問題ではないと思います、関係各機関で議論、検討していく必要性があると思いますけれども、いかがでしょうか。
房村政府参考人 まず最初に、その訂正の経過を書いているという点でございますが、これは確かに、正確な記録を残すという戸籍を管掌する立場からの要請に基づいてしていることは間違いないわけでありまして、その戸籍を利用する国民の立場から、そういう記載がいつまでも残ることについてどうだという御指摘を受ければ、それは確かに我々もそういう点も配慮して今後考えていかなければいけないということは痛感しております。
 それから次に、訂正の理由の点でございますが、現在一応、訂正する場合には、その理由をあわせて記載するということにしておりまして、婚姻無効の裁判確定というような法律的な訂正の理由を書いております。それをさらにもう少し具体的な事実関係で、偽造の届け出によるというようなところまで書くかどうかということについては、いろいろな面を考慮しなければなりませんが、ともあれ検討はしてみたいと思っております。
鎌田委員 これは、私もこの問題にかかわって、ぜひにと、私の念願でもあるし、被害に遭われている方々、それから御家族、そしてまたその自治体全部の願いであると思っても、別に私そこに利益誘導していないから堂々と言えますけれども、やはりこれは早急に検討しないと。
 今までこれでよしとしてきたというのは、社会的なこういう犯罪がまずなかった、今回まれなこういうケースが出てきてしまったということもあります。だけれども、本当にこの訂正された後の戸籍を見ますと、その被害者の方、親御さん、六十近い親御さんがその娘さんに、自分の生きている限り命をかけておまえの戸籍をきれいにもとどおりに戻すと涙を流して父親が娘に誓っているのです。だけれども、いかんせん現行法のままでは何ともならない、ましてやその訂正の作業過程の中においてそういうことは認められない。
 これは、今回まれなケースです。ですけれども、これから先、全国民に当てはまるケースであるということも同時に言えます。そしてさらに、こういう犯罪が出てくるという危険性は、今インターネットが普及していますが、ネット上の情報をとってみても、戸籍の売買が車の転売に関して本当に横行しています。特にホームレスの方々を相手にして、おっちゃん、あんたの戸籍三万円で売んねえか、売ってけろや、そんなことが日常茶飯に行われている。その情報がネット上で盛んに流れています。
 それをもってすれば、やはりそこから発生して、関連して、連動して出てくるこの問題に早急に対応していかなければいけないと思いますので、この訂正の件につきまして、きょうはここでとどめたいと思います。
 続きまして、再製について伺います。
 実は私は、この再製の問題につきましては、今までのようにきょうはここまでというわけにいかないので、粘りたいと思いますけれども、法務大臣は市町村長の過誤による記載の場合戸籍を再製させることができるとなっていますけれども、では、偽造された届け出に基づく、真実に反する戸籍の記載が無効であったと確認された場合、再製が認められていないということは、これは改めるべきじゃないでしょうか。いかがでしょうか。
森山国務大臣 いわゆる戸籍の汚れというのを嫌う日本の潔癖な国民性という、国民感情を無視することはできないと思います。偽造の届け出によって戸籍の記載をされた方が戸籍の記載の原状回復を望むという心境には十分配慮しなければいけないというふうに思いますし、その御本人にとっては非常に重大な問題だということはもう十分わかるわけでございます。
 現在、その方策として、偽造の戸籍を再製できるものとする具体的な方法について検討しなければいけないということで、戸籍法の改正も含め考えなければいけないというふうに思っております。
鎌田委員 ということは、改めるべきではないでしょうかというふうに御質問したのに対し、改めるお考えがあるというふうに受け取ってよろしいのですね。
森山国務大臣 そのことも含めて種々検討を進めていきたいと思います。
鎌田委員 冒頭に指摘をさせていただきましたように、これは非常にまれなケースで想定外のケースであるということは御認識をいただいていると思うのですけれども、戸籍の再製のところに、先ほども引用しました解説書の中になのですけれども、「戸籍の再製には、法定の再製事由には直接当らないが、取扱上認められる特殊な場合がある。それは、市町村長の過誤により誤った戸籍の記載がなされた場合であって、たとえば、婚姻、離婚または死亡等の当事者を誤って他人にその記載をしたり」云々とあります。そのようなことは往々にして見られなくはない、たまにはあるというふうにあるようです。ところが、このような記載は職権による訂正で消除されるとはいうものの、その文字は消されてもなお読むことができるので、関係人にとっては甚だしく迷惑なことであると。「そこで、このような記載をされた戸籍については、相当と認められる関係人の申出により、滅失のおそれのある戸籍の再製手続に準じて、再製することができるものとされている」そしてさらに、「しかし、無効な届出に基づきなされた記載が訂正された場合は、市町村長の過誤による記載ではないから、この取扱は認められない」ということも書いてあります。
 ですけれども、大臣から今御答弁をいただきましたように、今回のこの無効による訂正は、私が今ちょっと引用しました後段のくだりの方の、市長村長の過誤による記載ではないから取り扱いは認められないという方に入るかもしれませんけれども、今後こういったことを改めていって再製ができるようにその仕組みを考えていくというふうなことで私は理解をさせていただきたいと思います。
 それで、戸籍を再製するに当たってなのですけれども、具体的に、今大臣はそういうものを検討するというふうにおっしゃっていただいたのですが、再製をするというふうになりますと、今の解説のみならず、今現在ある戸籍法の改正というものに踏み込まなければいけないと思うのですね。あるいは、戸籍法の再製の運用基準といいましょうか、そういったものを変えていかなければいけないと思うのですが、その辺のところを、今大臣は種々検討していくというふうに非常に強い、前向きな御答弁だと受け取ったのですが、これから先の目途のようなものについてお知らせいただけますか。
房村政府参考人 偽造届けに基づくような虚偽の記載が戸籍にされて、それが訂正されたとはいえ残っているということについて、非常に迷惑をこうむっている国民の方々がいらっしゃる、そういう前提で、そういう方々にどう対応するか。当然、戸籍の再製ということはその選択肢の大きなものだろうと思っております。私どもも、そういう意味で、必要があれば戸籍法を改正するということも含めて、そういう要望にこたえる具体的方策を現在検討しているところでございます。
 ただ、その場合に、当然、どの範囲の再製を許すのかということもございますし、また、再製前の戸籍の取り扱いであるとか、記載の仕方とか、そういったいろいろな周辺部分も含めて検討いたしませんとなかなか成案が得られないものですから、今直ちに具体的にスケジュールをお示しするような段階ではございませんが、大臣の答弁にもありましたように、前向きに検討を進めているところでございます。
鎌田委員 どの範囲までというふうに、いかにも本当に大変なのだ、難しいのだというような御答弁だったのですけれども、でも、これは昨年の八月に事件が起きまして、その後九月の十一日、忘れもしない九月の十一日の夜といえば、夜十時過ぎにアメリカから同時多発テロのニュースが舞い込んできました。その日の日中、東京のこの永田町近辺は、大あらし、真っ暗やみのお天気でした。その日に、事件から一月もたたないうちに、法務大臣は、直接被害者の声を聞くという、その場に臨んでくださいました。被害者は、もうその当時から既に、今私がるる申し上げてきたような内容を書面につづって大臣に直接訴えています。そのときも、きょうと同じようなことをそれから何回かにわたって要望として皆様にはお伝えをしてきております。
 ですから、きょうは、難しいからそれも検討しなくちゃいけないからスケジュールも出せないというような御答弁ではなくて、少なくとも、今国会が難しいのであればことしじゅうには何としてもけりをつけるとか、ことしじゅうには被害者の方々のそういう気持ちにこたえられるように、目標はそこに置いていますぐらいのことは言えないんでしょうか。もう一度お願いします。
房村政府参考人 ともかく、私どももできるだけ努力をしたいと思っておりますし、できるだけ速やかに対応できるように最大限の努力を払うつもりでございます。
鎌田委員 さっきより一段ぐらい上がったかなと思うんですけれども、大臣、本当にこれは多くの方々が悲願の思いでもって望んでいらっしゃいます。
 大臣が昨年九月十一日に会ってくださったこと、名刺をいただいて感激をして、直接声を聞いてくださったこと、心の底から感動して、本当にあのときは、私は常に神様を信じている人間ですけれども、みんながみんな神様に感謝した。なぜなら、秘書官がいろいろお手伝いをしてくださって、大臣が九月十一日に会ってくださったけれども、あれを一日でも後に延ばされたら、テロのことで多分私たちは大臣に私たちの声を直接訴えることはできなかっただろうという思いで、森山眞弓法務大臣、そして神様にみんなで合わせて感謝したんですね。
 ぜひ大臣、私はもともと知性は余りない人間ですけれども、知性をかなぐり捨てて、本当にこの思いを、本当に情けの部分、血も涙もない、そんな法ではない、ことしじゅうにしっかりとその目標を見定めていけるように大臣初め一丸となって取り組んでいただける、そんな御答弁をもう一度期待して、大臣、お願いします。
森山国務大臣 昨年の九月十一日以来、先生が大変御熱心にこのことを進めておられまして、また、私もたまたまお会いすることができたし、直接のお声も聞きまして、本当に御本人にとってはいかに深刻なことかということをつくづくそのときから痛感しております。
 ですから、ぜひ何とか皆さんが喜んでいただけるような結論に一日も早くいきたいというふうに思っておりますが、先ほど局長が申しましたように、難しい問題も一方にはございますので、何月何日、いついつまでにということを今申し上げることはちょっとできないんですけれども、できるだけ早くできますように努力いたします。
鎌田委員 女同士、心の底でひそかに一日も早くという言葉と、その方々に一日も早く喜んでもらえるようにという言葉で、ことしじゅうにといったら、まだ今二月ですから、私は何も、今国会じゅうに、六月までにけりをつけてよ、こんなことを言っているわけではないのでございますので、ぜひことしじゅうに、ともに私も応援団として協力をしたいと思っておりますので、大臣初め、ぜひそのことをよろしくお願いいたします。
 続きまして、最後になりますけれども、今回の事件のケースについては、やはり未然防止という観点は避けて通れない問題だと思います。届け出を受ける窓口のところで、実は水際で防げれば何ということはなかったのかな、そんなふうにも思うんですね。
 この出された婚姻届なんですけれども、聞いてびっくりじゃない、本当に見てびっくりなんですけれども、まず届け出印、判こがシャチハタなんですね。シャチハタで何で悪いのと言われれば、ああ、いいのかなと思うんですが、普通、婚姻届にシャチハタを押していくがやと思うのです。
 それから、あと、字の間違いが至るところにあるんですね。それを二本線でぴっぴと消して、そして違うのを書き直している。それから、これは虚偽の届け出ですけれども、夫となる人の職業、車屋(サラリーマン)と。何だ、これは、結婚の届け出を出す人の書くものかなと。別にこれは差別じゃありません。当たり前の基本的なことなのです。こういう箇所が至るところにあるんですよ。これを届け出て、受け付けて受理してしまっているというところが事の発端だと思うんですね。
 今回、この事件が起きた自治体では、とにかく水際で防ぐことが大事だということで、独自に身分確認の方策を講じたりしております。私は、これは大いに評価すべきことだと思っているんですけれども、自治体が独自に未然防止策をとっていることだというふうにして、よかったね、評価しますよというふうに済ませてしまうのか。それとも、今ここで法務省が責任を持って――何か身分確認を事細かに聞いたりなんだりかんだりすると国民に負担をかけるから、基本的な人権の侵害にもつながるおそれがある、そういうことをおっしゃり、これからも続けて未然防止の策を法務省として、国として講じないでいくのか、伺いたいと思います。
房村政府参考人 実は、私どもも、問題になった届け出のコピーを送ってもらって見ました。先生の御指摘のように、判この問題とか、訂正があったりというようなこともあって、私もどうなのかなと思ったのです。
 私自身は、もちろん戸籍の窓口の経験がないわけでございますが、そういった市町村で戸籍の窓口を実際に経験した人たちに聞くと、いや、婚姻届にはいろいろなものがあるんです、それは大勢いるので、これは本当にちゃんと書いたのかなというようなものもあるんですが、しかし、実際に、本当に婚姻する届け出であって、かつ、そんな三文判的なものもあれば、字がいいかげんなものもあるんですと。そういうものを一つ一つやっているとまた国民と非常にトラブルになることもあって、多少の訂正があっても基本的に正しい事柄が書いてあれば扱っているんですというような説明を受けることがあります。
 本件の場合には真実に反したものですから、そういう弁解は通らないわけですが、そういう窓口でのチェックの仕方というものについてはなかなか、怪しいと思っていろいろ根掘り葉掘り聞くと、特に事柄がプライバシーにもかかわる問題もあるものですから、非常にトラブルが生ずるというようなこともあって、市区町村の窓口もいろいろ苦労をしているというぐあいには聞いております。
 今回の偽造を契機に、仙台市の方では独自に、届けを持参した方の身元確認をするというような運用をされているようでございます。それはそれなりに評価すべきものと思っていますが、国としてそういう届け出の真実性担保の措置を何かとり得るかということでございますが、年間、婚姻が大体八十万件を超えておりますし、離婚でも二十数万件あって、相当の数に上っております。そういうものについての確認作業ということになりますと、提出する国民の方々の負担とか、その受け付けをする市区町村の窓口の負担とか、そういったさまざまな要因を考慮しなければなりませんし、偽造届けというのは、もちろんあってはならないことですが、現実に数としてはごくわずかな数である。そういうようなことを考えて、法務省として、国として、市区町村に相当重い負担をかけることになるような確認の義務を課すことについては、従来、難しいのではないかということを申し上げてきたわけでございます。
 ただ、非常に大きな問題でありますので、今言ったような諸事情を含めて、今後も国としても検討はしていきたいと思っておりますが、なかなか難しい問題があるということも御理解いただきたいと思います。
鎌田委員 検討という言葉が出てきましたので、いたずらに検討という言葉を使ってはいないというふうに信じますので、ぜひ検討していただきたいんですけれども、そのとおりに。
 今までいろいろ私お聞き取りをしていると、国としては、これは怪しいぞ、おかしい、変だぞと思ったときまで身分確認をするなということは別に自治体に対して言っていないと。しかし、それを今度自治体にまた聞き取りをすると、でも、国の方ではそういう身分確認をするようなことはすべきではないというようなニュアンスで、国の方がそれができるような法整備をしていないんだから我々はできないんだと。だから、両方から聞いていますと、国は、何もそんなことまでするなとは言っていないんですよと言う、そして地方は、自治体は、だってそんなことができるような法整備されていないんだものと言う。お互いに、この法解釈をめぐって言葉をいたずらに逃げの道具に使っているというふうに聞こえるんですね。
 それで、もう時間ですから、最後に私、大臣にお伺いをしたいと思います。
 今、ずっとるるお尋ねをしてきたり、意見として、要望として申し上げてきたこと、これは、ほかの省庁にまたがるようなこともあります。しかしながら、やはりこの国の戸籍制度、そしてそれを所管している法務省、法務大臣の最終的な責任のもとでこれらのよりよい方向への改善というものがなされなければいけないと思うんですね。ですから、この未然防止のことも含めて、大臣、具体的な分野ではありますけれども、それこそ大臣の、女性のきめ細やかさを生かして取り組まなければいけない課題だと思っておりますので、未然防止ということで、国が地域、地方に何らかの指導が必要ではないですかということも含めて、そのことへのお答えと、改めてこのことへの決意みたいなものをお知らせいただければと思います。
森山国務大臣 考えてみると、日本における婚姻届というのは、だれでも簡単に出せるというか、非常に出しやすくしてあると思うんですね。昔、今の民法になる前は、ある人が結婚しようと思うと、戸主とかその他いろいろな人の了解をとって、そして手続が大変だったのではないかと思うんですが、そういうものをやめて、本人同士の合意のみによって成立するという憲法上の精神を生かそうということで、本人がそう思いさえすれば結婚届を出すのは非常に簡単だという道をつくっているんだと思うんです。
 ですから、おっしゃるような形態に今なっているわけで、字をきちんと書かなきゃいけないとか、本当の、実印を持ってこなきゃいけないとかと言い出しますと、それまた大変な負担にそれぞれなるわけでございますので、そこのところの兼ね合いをどうするかというのが非常に難しい問題ですね。
 一方において、今の戸籍法ができた時点では思いも寄らなかったようなことを考える犯罪者がいて、それを悪用してそういうものに使うという事態が出てきた今の世の中でございますので、それを新たな目で考え直さなければいけない面も確かにあると思います。
 難しいこともたくさんあるというのは先ほど局長が申し上げたとおりでございますけれども、現在の社会でどういうやり方が最もふさわしいかということは基本的に考えていかなければいけないというふうに思います。
鎌田委員 ありがとうございました。
園田委員長 西村眞悟君。
西村委員 自由党の西村でございます。
 これから、大臣の所信表明をお聞きして、その所信表明に直接的、具体的には触れられなかった部分について、重要と思われる箇所について、若干の項目、質問させていただきます。
 まず、法務行政の基本的使命は、法秩序の維持と国民の権利の保全を通して国民生活の安定と向上を図ることであるというふうな根本の原則を申し述べられたのでお伺いいたしますが、平時におけるこの法秩序を維持しながら、それが国民生活の安定につながるというふうな状態の場合もありますけれども、平時の状態が何らかの理由で破れて、非常時にはこの法制度が機能しない、または、平時の法制度を維持しておればこの事態においては国民生活の安定を図れない、このような事態を社会生活において我々は想定しなければならない事態に立ち至っております。私は、いわゆる有事法制と言われることを申し上げております。
 この内容については、いろいろ、種々さまざまでございますが、別にとりたてて特別なこと、例外的なことを申し上げておるのではありません。アメリカの有名な判決文の中にある言葉は、だれも満員の映画館の中で火事だと叫ぶ権利は持っていない。人間の権利というものは、その状況の中でそれが行使し得るものか、し得ないものかということが決まってくる。
 この意味で、平時ではなくて、有事にはいかなる法制に切りかえて国民生活の安定を確保するのか、社会秩序の維持を確保するのか、破壊された秩序を回復するのか、このような有事法制の研究、そして具体的な策定がどうしても必要だ。この問題を無視すれば、立法の不作為、行政の不作為の責任を問われるんだ、このように思いますが、大臣の見解はいかがですか。
森山国務大臣 総理の施政方針演説にもございましたように、平素から、日本国憲法のもとで、国の独立と主権や国民の安全を確保するために、有事への対応を含め必要な体制を整えておくことは、国としての責務であるというふうに考えます。このような観点から、有事に対処するための法整備については、現在、防衛当局を初め関係省庁において検討中であるというふうに承知しております。
 法務省におきましても、政府の一員として、国民の安全を確保し、有事に速やかに対応できる体制を整えていかなければならないと認識しており、そのための法整備についても、その可否を含め必要な検討をしていきたいと考えております。
西村委員 先ほどの質問の中でも、検討という言葉はいつも使われますなという言葉ですが、これはやはり立法不作為の問題になります。
 具体的に事態が発生しまして、例えば、今の病院法では、病院でなければ手術ができない、しかし、天幕を張って病院外で医師が手術しなければその人を助けることができない場合がある。そのような場合に、法を守ってみすみすその人が死に行くのを放置するのがいいのかどうかということですね。それを可能にする法体制がなければ、不作為の、殺人の責任を問われるということでございますから、どうかよろしくお願いいたします。
 それから、大臣は文部大臣の御経験があるということで、ぜひこの点についてはお聞きしたいんですが、法務行政の分野における法は、法は法なきを期すということが理想だと思います。刑罰法規を発動しなくとも、取り締まり法規を発動しなくともよい社会を我々は目指さねばならない。その意味で、今、学校、公教育で起こっている事態はゆゆしき事態である。
 例えば、三十日以上の児童生徒の不登校は、小学生で二百七十九人に一人、中学生の場合は三十八人に一人、合計十三万人を超えております。これは平成十二年ですが、高校中退者の数も十万人を超えております。これは、大臣、法務行政にゆゆしき影響を与える我が国の公教育制度の破綻ではないですか。どう認識されておりますか。
    〔委員長退席、山本(有)委員長代理着席〕
森山国務大臣 学校教育が必ずしも十分な期待する効果を発揮していないという心配は、かねていろいろなところでいろいろな方がおっしゃっていることでございまして、それは、社会全体の変化、あるいはその社会に住んでいる、あるいはその社会を構成している国民一般の意識、あるいは生活の仕方の変化ということに起因するのではないかと思いますが、それが学校の子供の不登校その他の現象にあらわれているのかもしれません。それがまた、あわせて、社会の中の治安の不安定化といいましょうか、そういう現象にもなってあらわれているというふうにも考えられますので、関係は大いにあろうというふうに思います。
西村委員 公教育制度の破綻なんです。関係が大いにあるんです。もう御認識はそのとおりですが、はっきり、十数万人の小中学生が学校に来ない、十万人以上の高校生が中退するという事態を破綻だと認識した上で、内閣一丸となって教育の改革に取り組まねばならない。
 森内閣のときには、教育の改革は明言されておりました。小泉内閣になりまして、聖域なき構造改革というスローガンばかりは、十数カ月、聞き飽きるぐらい聞いていますけれども、やはり中心は、子供を救えということなんです。魯迅の「狂人日記」の末尾は、清朝末期のあの惨状の中で、子供を救えという一文で終わっております。我々日本もその状況に来ていると思いますね。
 そういう意味で、文部大臣経験者であり、現法務大臣でありますから、抽象的なスローガンに変わったりとはいえ、閣僚の一人として、前の教育の改革に、公教育は破綻しているんだ、そこからあらゆる社会悪が起こっている、子供たちの人生がこれから五十年ずたずたになっていきますぞという観点から取り組んでいただきたい、このようにお願いします。ちょっと御答弁を。
森山国務大臣 教育の改革が必要であるということで、それぞれのお考えでいろいろな訴えがなされ、またスローガンが掲げられて、ここ十年ぐらいたっております。
 今の内閣も、文部科学大臣を中心といたしましてさまざまな努力がなされていることを私もそばで拝見して承知しておりますが、私は私の立場で、あるとき少年院に行きまして、その実態を見せてもらい、その管理者、あるいはその周りの皆さんのお話を聞く機会がございまして、そのときのお話を聞いておりましたら、学校の問題と非常によく似ているというか、ほとんど同じ現象、同じような社会の問題があらわれているというふうに思いまして、大変共通の面が大きいな、むしろ同じことではないのかなというふうに思った次第でございます。
 この問題は、法務行政の面でも、また文教行政の面でも、全く同じ問題から派生しているさまざまな課題をそれぞれに抱えているという気持ちでございまして、その問題に取り組まなければいずれの問題も解決しないであろうというふうに思いますので、子供の問題、少年の問題ということが非常に大きなかぎだということを、日ごろ、このところ特に痛感しているところでございまして、御指摘は大変敬意を持って拝聴させていただきました。
西村委員 私も日ごろちょっと思っていることで、大臣にも、具体的な暴走行為のことですが、認識をともにしていただきたいことがあります。
 と申しますのは、警察が暴走行為を追いかけ回して路上でいろいろやっておりますけれども、あれに使われる車両は過半数が盗難車両なんですね。したがって、盗難事犯ということを徹底的に追及すれば、暴走族問題は半数以上解決していくわけですね。
 だから、単に現象を追いかけるのではなくて、その現象を生み出す原因が窃盗の放置だ。まずバイクの窃盗から始めまして、これを油断しておれば、車に行った、そしてなお油断しておれば、国内では青少年の暴走族行為に行き、マフィアの金もうけの手段になった、こういうことですから、どうか窃盗という犯罪に対する地道な取り締まり活動が非常に有効であるということを再確認していただきたいと存じます。
 御答弁ございましたら。
下村大臣政務官 私の方より答弁をさせていただきたいと思います。
 いわゆる暴走族の暴走行為について窃盗車両が使用されているということ、先生から御指摘ございました。昨年も、警察の調べでは、窃盗罪で暴走族を二千四百六十一人検挙しているところでございます。
 検察当局としましては、警察当局と緊密な連携を図りながら、警察当局でも必要に応じて暴走行為に対して機動隊を動員するなどして対応するということでございますが、この連携した捜査を遂げ、適切に事件を処理していくことにより、犯罪による社会不安の解消に向けて努力していくことがより一層必要と考えております。
    〔山本(有)委員長代理退席、委員長着席〕
西村委員 質問を変えます。
 大臣は、所信で、最近における犯罪情勢、またテロの問題を指摘されております。
 ここの部屋に来る直前に送られてきた月刊誌に、「北朝鮮からの覚醒剤に青少年は溺れ、中国犯罪者たちの強盗に脅える――かつての治安国家はこんなに堕落した 「犯罪天国」日本」という見出しが躍っております。大臣の御指摘よりも、むしろ今私が読み上げた雑誌のこの見出しの方が実態に即しているんじゃないか、こう思えるぐらいでございます。
 以上のような状況を踏まえて、より一層の創意工夫をするというふうに所信で述べられました。その創意工夫でございますけれども、尋常の方法ではだめだ。大臣は、情報収集体制の強化、新しい法整備の可否も視野に入れてということを言っておられましたが、一例を挙げて、これはどうしますかということをお尋ねするのですけれども、捜査手段の中に、前も触れたかと思いますが、司法取引という手法を導入する段階に来ておるのではないか。
 例えば覚せい剤。十年前は一キロ押収すれば新聞に載った。しかし、ことしも昨年も二トンを超えておる、押収量は。そして、先ほどの見出しじゃないですけれども、北朝鮮からの覚せい剤に青少年はおぼれるんだ。摘発されたものが二トン、数トンなら、摘発されずにこっちに入ってくるものはその何十倍かわからない。つまり、これはアヘン戦争をしかけられているようなものではないか。その量から見れば、アメリカで炭疽菌があっちこっちに配られて大騒ぎしておりますが、それに匹敵するテロではないか、このように思うのです。
 覚せい剤は、耳かき一杯〇・〇三グラム、五千円ぐらいで売られております。この〇・〇三グラムを追いかけるということよりも、一トンを入れてくる組織をつぶすということが、この国家のある意味では非常事態、社会の非常事態に対応する行政の責務である。これがなぜできないのかということについて、情報収集のあり方、それから捜査の手法のあり方、二つとも抜本的な見直しをしなければならない。
 そこで、具体的に聞きますが、司法取引、〇・〇三グラムの者に、刑事免責を与えるからすべてしゃべれと言う手法も有効だというのです。これがあれば、社会的腐敗現象を起こす多くのいわゆる犯罪組織的なものの巨悪、背後にいる巨悪を時によれば有効に突きとめ得るという手段が得られるわけです。今のままで、言い方は悪いですが、同じところに同じような突撃を繰り返して、大山鳴動してネズミ一匹で、〇・〇三グラム売った者とか持った者がちょろちょろ逮捕されて、そして本体は悠々と金もうけをしている、日本は麻薬テロに襲われっ放しだという事態から脱却できる。そう思えばこれは一種の戦争なんですよ、ブッシュじゃないですけれども。
 その意味で、せっかく一層の創意工夫をすると言われた、それから、新たな法制度の可否、情報収集の体制と。どうですか、司法取引というやり方を具体的にやると。全く拒絶反応を示されるのかどうか。
森山国務大臣 おっしゃいますような司法取引という方法が行われている国もあると聞いております。確かに、大変密行性、組織性が強いというような犯罪に対して、現行の捜査方法ではなかなか真相の解明が難しいという現実もございますので、そのような場合には有効な捜査方法として司法取引というものが考えられるのではないかという御指摘はあり得ると思いますけれども、また、そのほかにも種々考えられると思いますが、これが有効ではないかということは確かにあると思います。
 そして、この点については、司法制度改革審議会の意見書の中でも、犯罪の動向が複雑化、組織化の度合いを強めていて、従来の捜査・公判手法では十分に対応し切れなくて、刑事司法はその機能を十分発揮しがたい状況に直面しつつあるということから、新しい時代における捜査・公判手続のあり方を検討しなければいけないという言い方で、その可能性もあるいは内蔵していらっしゃるのかもしれないというふうに思われるわけでございます。
 しかし、司法取引を初めとする新たな捜査方法の導入というのは、適正手続の保障の観点、あるいは国民の司法に対する信頼の確保の観点などから検討すべき点があるとの指摘も一方にございます。
 したがいまして、このような問題点とか我が国の法制度全体に及ぼす影響などを踏まえまして、犯罪情勢全般の変化や社会システムの進展に伴う捜査困難化の実情などを総合的に分析いたしました上で、これにいかに的確に対処するかという観点から、種々の方策を検討してまいりたいというふうに思います。
西村委員 大臣の所信では、昨年の九月十一日以降、テロの問題がぱっと生まれたというふうな趣旨での言及があるわけですが、私、冒頭、有事法制のことを言いました。それで、別に特別なことじゃないんだ、満員の映画館の中で火事だと叫ぶ権利はないんだというふうなことなんだと。その意味からするならば、私は、もうこれは有事だと思っておるんです。
 十年前は一キロか二キロで、今は二トンから何十トンが入ってくる、それも外国から入ってくる。これを防ぎ切れない。青少年が吸っている、おぼれている。十三万人が不登校だ、高校生十万人が中退しておる。有事なんです。こういう認識を持っておるんです。
 さて、また次に行きますが、ブッシュさんが来て悪の枢軸だということを言いました。小泉総理大臣もそれに同調しました。北朝鮮に対して、同調しておる。ちょっと時間が足らなくなったので質問項目は省きますが、人権を擁護するのが法務行政の務めなら、大臣は、北朝鮮に拉致された日本人の人権を救うというのは法務大臣の責務だと思われますか。
森山国務大臣 北朝鮮による日本人拉致疑惑につきましては、警察庁によって、七件十人の事案が指摘されておりますが、いかなる者によってであろうと、我が国の領域の中で日本国民を拉致して外国に連行するというようなことが仮にあったとすれば、当然被害者の人権をじゅうりんする極めて悪質な犯罪であるとともに、我が国の主権に対する重大な侵犯でございまして、到底許されるべきことではないというふうに思います。
西村委員 だから、法務大臣が許されるところではないという認識を示すならば、法務大臣として人権を救出するのが法務大臣の責務である、こうなりますが、よろしいですね。
 それから、これは国家によるテロでしょう、拉致は。テロだと思われているのかどうか。それから、今七件十名と言われましたけれども、よど号の妻たちというのが帰ってきて、彼女らの証言からは、もっといるということで、これを突き詰めて重大な関心を持って見ていただきたいということが私の要望であり質問でありますが、いかがでございますか。
森山国務大臣 テロリズムという言葉につきましては必ずしも定義が確立しているわけではございませんし、また、拉致問題につきましても、その目的などについて明らかにされているわけではありませんので、これがテロリズムに当たるかどうかはなかなか即断しがたいものがあるというふうに思いますが、いずれにせよ、これが許されざる行為であるという私の認識については、先ほど申し上げたとおりでございます。
西村委員 日本政府の言葉というのは非常にわかりにくい。ブッシュさんが来て、あれはテキサスの人ですから少々わかりやす過ぎてあれですが、せっかく小泉さんもわかりやすい言葉を使っているのですから。
 それは定義はまちまちですよ。しかし、日本国政府の定義を申し上げましょうか。大韓航空機爆破はテロだと言ったのです。その大韓航空機爆破という国際的テロを可能にするための日本人化教育が必要だったのです。金賢姫が死ねば、あの爆破は日本人がやったということになっていたのですから。その大韓航空機爆破という国際的テロを実行するために日本人化教育をする材料として日本人を拉致する、これはテロです。まあ聞きませんけれどもね。それで、北朝鮮というのは、大韓航空機爆破をやったからテロ国家なんですな。日本政府もその認識は変えないはずだ。
 だから聞きますが、このテロ国家に、みずから北朝鮮の大使館と称して日本国内にある組織が朝鮮総連、この朝鮮総連に人事権を握られて運営されている信組が朝銀という信用組合、これが破綻した。さて、ここに国民がひとしく疑問に抱いているのは、北朝鮮というテロ国家に、大臣も所信で述べられたように、テロ組織に対して資金を供給することをやめねばならない国際条約があって、我が国も国内法でそれを整備しなければならない、こういうことですね。今まさに、今言いました北朝鮮というテロ国家の支配下にある朝鮮総連の支配下にある朝銀が破綻して、そこに総計一兆円の資金を投入していくという事態に対して、所信で、テロ組織に対する資金を供与することをできなくする法律を国際的な義務においても国内的にも整備しなければならないと表明された法務大臣は、この今進行している事態にいかなる認識を持っておるか。やってくれ、私どもは関係ない、それは金融当局がやることだ、そう思われるのか。それとも、法務大臣として所信を表明した以上、重大な関心を持って、一兆円投入してもいいと思っているのか、悪いと思っているのか。どっちですか。
森山国務大臣 テロへの資金供与禁止措置といたしましては、現在、法務省におきましても、関係省庁と協力いたしまして、テロ資金供与防止条約を締結いたしますために、具体的なテロ犯罪に使われることを意図した資金提供等の犯罪化に関する新法を制定するべく鋭意作業を進めているところでございます。テロ資金の供与の防止は、テロ活動の防止のために重要な対策だと考えているところでございます。
 お尋ねの破綻金融機関の処理につきましては、御指摘の金融機関が我が国の法令に基づいて設立された国内金融機関の一つでありますので、預金者保護の観点から、預金保険法等の関係法令に基づいて行われるものでございまして、金融庁、所管庁におきまして適切に対処してもらえるものと思っております。
西村委員 そのお答え以上のことは期待できないんでしょうな。
 万景峰号というのが来まして、これは月に一回ぐらい日本に来ているわけですが、朝鮮総連からの脱退者とか北からの亡命者の言によると、ここにいろいろな物資を積み込んで、北に運び、お金も運んでおると。これは聖域になっておるのかどうか。例えば、ノドン、テポドンミサイルの部品は多くは日本製であり、前、日本海で韓国と銃撃戦をして沈んだ工作船を引き揚げてみれば、内部の部品、精密部品はすべて日本製だった。どこから運んでおるんだということなんです。それは万景峰号がどういうふうな審査を経ているのか、さっぱりわからない。
 そこで大臣にお聞きするんですが、この万景峰号というものに対する対策は今までどおり法務行政として流れていくんですか、それとも何か強化されるんですか。
森山国務大臣 外国籍の船舶の我が国港湾への入港に関しましては、テロリズム対策の観点から、所管省庁が関係法令に基づいて、必要かつ厳格な措置を講じているものと承知しております。
 お尋ねの万景峰号につきましても、その入港の際には同様の措置が遺漏なく行われているものと考えております。
西村委員 今までどおり行われているから、これからも今までどおりやったらだめなんです。本当に今までどおりを点検せないかぬですね。今までどおり行われているから今までどおりやったら、何で所信表明で創意工夫だとか強化だとか言うんですか。あれはリップサービスじゃないでしょう、本当に。
 さて、テロ組織とかそのものは結局我が国内の問題なんです。外国で発生してあるからとかいう、それが内部を動かして、内部に入り込むことを防がねばならないし、また我々自身が、日本は安全神話で、本当に日本の中はどうなっているのかということをもう一遍点検せないかぬ。そこから始まるわけです。オウム真理教みたいな事件が、世界で初めて化学兵器をまいた事件が起こったのも日本なんですね。
 そこで、最後の質問になりますけれども、情報の収集体制、またさらなる法整備、これの具体的には何を言われておるのかという部分について聞いてまいりますが、結局、情報をいかに収集するか、インテリジェンスをいかに収集するかということに尽きるんですが、それは、奪うか盗むか、買うか、交換するか、この三つのうちの一つか二つか三つを総合しなければ情報、インテリジェンスは集まりません。この体制にあるのかどうかなんですね。
 お聞きする前に一応具体例を挙げて御質問しますが、私は、JR東日本の労組の中に革マル派が浸透しているということの御答弁をいただいたことがあります。これは昨年の二月二十七日の法務委員会、当委員会での御答弁ですが、警備局長は、警察といたしましては、JR総連、JR東労組に対し革マル派が相当浸透しているというふうに見ておると。法務大臣は、革マル派が重要な公共輸送機関である東日本旅客鉄道株式会社の労働組合内にその勢力を浸透させていることは憂慮すべき問題であると認識をしておりますというふうな答弁をいただいております。
 いろいろな委員会でも質問しましたが、大臣も、このJR東日本、総連の労組の中に革マル派が浸透しているという事実認定については同様でございますか。
森山国務大臣 各種の情報を総合いたしますと、JR総連・東労組には革マル派が相当浸透していると認められるようでございます。
西村委員 このごろ松崎明というJR東労組顧問という方が、サンデー毎日にインタビューを掲載され、毎日新聞から「鬼の咆哮」という本を出版されております。
 そこの一月二十日号のサンデー毎日には、松崎さんの発言として、「私は、共産党も社会党にもソ連にも反対で、革マル派(注4)をつくった一人なんです。六四年にソ連に行って、このソ連、社会主義じゃないと思いましてね。そこから私の闘いが始まった。当時は共産党員でしたが、新しい党を作って、粛清の歴史であったスターリンの歴史に本当の意味で終止符を打つのは私らと思ってね、行け行けどんどんで私はやってきたんですよ。だからストライキ、順法闘争をまじめにやった。」と書いてあります。
 「注4」というのはサンデー毎日が書いて、「注4・革マル派 正式には革命的共産主義者同盟革命的マルクス主義派。組織、イデオロギー闘争を重視する過激派。」と書いてある。
 さて、JR東労組の中に革マル派が浸透しているということに対して、歴代法務大臣、法務当局は、その事実を認定して憂慮を示しております。しかしながら、私が革マル派をつくったんだと言う松崎さんという方がJR東労組の顧問をしておる。
 そして、先ほど紹介しました「鬼の咆哮」という本の百三十ページにはこういうことを書いてある。「破防法という憲法違反の法律を基礎にして設置されている公安調査庁も「小さな政府」のスローガンのもとで、整理縮小の対象になっている。もはや「無用の長物」として潰れかかっているというわけだ。官僚の側からすれば、整理縮小は困る。ポストがなくなる。だから、裏でいろいろ画策したり、様々なでっち上げ工作をする。例えば「JR東労組は革マルに影響を受けている」というような公式文書を出して、「公安調査庁が必要だ」とのメッセージとともに予算を獲得しようとする。」
 それから、今私のような質問をしている議員を名指しして少々非難するわけでございますが、それは飛ばしましても、「こういうくだらないことを裏で言ったりやったりしているのが公安調査庁である」と書いておる。
 大臣が今認められた、JR東労組の中に革マルが浸透しているというこの発言は、公安調査庁、無用の長物が予算を獲得するためにでっち上げ工作をした架空のうそである、私の質問もそのうそを引き出すための質問だ、こういうふうに書いておる。
 さて大臣は、この松崎さんの公安調査庁に対する認識と同様の認識をお持ちですか、それとも、そうではないんだという認識をお持ちですか。
森山国務大臣 御指摘のような著作物が出版されたということは承知しておりますが、公販されている一つ一つの著作物の内容についてコメントすることは差し控えたいと存じます。
 なお、革マル派は、暴力によって民主主義的国家秩序を破壊することを容認する危険な過激派団体の一派であると思っております。
 したがいまして、治安維持の観点から、公安調査庁においては、今後とも、同派に対する調査を鋭意進めましてその実態の把握に努めるとともに、同派構成員による不法事案が生じた場合には、その背景事情も含めて徹底的に解明し、厳正に対処すべきものと考えております。
西村委員 それで、最後に聞きますけれども、覚せい剤一つでも今の体制ではどうかという問題意識が私にあります。北朝鮮製の覚せい剤を中国の船で日本に運ぶというふうに、ルート図をつけて、いろいろ雑誌でももう出始めたわけでございます。
 それで、先ほど、一番重要なのは情報の収集であると。情報は、奪うか買うか交換するかしか集まらない、どうするんだという問題意識は持っておられるから、所信でも、情報収集体制の強化をするんだと言われた、さらなる法整備の可否を含めてこの体制を克服するんだと言われたと私は思います。したがって、具体的に、新たな法整備とは何か、どの方向にベクトルは向いておるのか、情報収集体制の強化とはどの方向にベクトルが向いておるんだ、こういうことは、大臣、お答えになっていただきたい。
 余りにも深刻になってきた。大臣は先ほど来、検討という言葉を使われておりますが、もはや非常時です。テロなんです。テロというのは、ぼかんとニューヨークのビルが爆破される、目に見えるというのもテロでありましょうけれども、青少年の中に覚せい剤が十数トン蔓延するというのがテロなんです。国家がつぶれるんです。その意味で、もうぼつぼつ具体的に言っていただく時期ではないかと思ってお聞きするわけでございます。御答弁をお願いします。
森山国務大臣 昨年九月の米国における同時多発テロの事件をきっかけにいたしまして、我が国政府は、平成十三年十月八日付で緊急対応措置をつくりまして、その中に、政府関係各機関によるテロ関係情報の収集活動の強化ということを通じましてテロ行為の未然防止をしよう、そのために万全の措置を講じようということでやってまいりました。
 御指摘の情報収集組織の再編強化につきましても、政府関係各機関の情報の収集、共有等の強化を図る観点から、情報源の多様化とともに、関係機関による一層の連携強化を推進する必要があるというふうに考えております。
 公安調査庁におきましては、政府の適切かつ有効なテロ対策の措置に寄与するという観点から、これまでもテロ関連情報の収集に鋭意取り組みまして、国際情報収集の強化ということを初め、国際テロ担当部門への調査力の一層の重点配置、関連要員の能力向上のための研修の充実、外国機関等との協力体制の拡充など、所要の措置を講じて、政府のテロ対策に一定の寄与をしているというふうに考えております。
西村委員 最後に質問いたしますが、先ほどの「鬼の咆哮」という本のこれは帯ですけれども、今、国際的テロと闘っているブッシュ、ブレア、そして、ブッシュさんに、悪の枢軸という表現はテロに対する毅然たる決意を表明したものだ、我が日本も米国、国際社会と協力し、主体的に取り組んでいくんだ、こう日米共同記者会見で述べられた小泉さんをこの本では、「世紀の犯罪人ブッシュ、ブレア、コイズミ!」と帯で書いておるわけですね。こういう本ですよね。
 書いた著者は、おれは革マルをつくった一人なんだと言っている。そして、大臣も答弁されたように、我が社会におけるJRという強力な、巨大な公共輸送機関の中に革マル派が浸透しているということを非常に我々は憂慮しているんですね。その革マル派をつくった人間が、今私が大臣とともに議論した、浸透しているという憂慮を、公安調査庁が予算を獲得するためのでっち上げだと言っている。
 我々は闘う民主主義として、こういう事態に対してはもう少し明確におっしゃっていただいた方がいいんじゃないですか。これは漫画じゃありませんか。どう思われます。我々が今議論したことが、公安調査庁に予算をまくためのでっち上げですか。革マルをつくったとみずから認めている人物がそれを言っているんですよ。そして、その人物はいまだにJR東労組の顧問なんですよ。この事態を、法務当局をつかさどる大臣としてどうお考えですか。
森山国務大臣 その松崎さんがどのような考えでそういうふうにおっしゃったかわかりませんけれども、公安調査庁は与えられた使命を遂行するために懸命に努力をしているのでございまして、でっち上げなどということは全く根も葉もないことであるというふうに思います。
西村委員 これで終わります。
園田委員長 木島日出夫君。
木島委員 日本共産党の木島日出夫です。
 私は、きょうは、国政上も国民的にも大変大きな問題になっております、国後島に九九年に建設された友好の家、いわゆるムネオハウスの建設にかかわる鈴木宗男議員の入札介入疑惑についてお聞きをいたします。
 外務省は、一昨日の二月二十五日、衆議院予算委員会におきまして、私の質問に答えて、友好の家の建設請負契約について二つの重大な事実を明らかにいたしました。それは、第一には、支援委員会は九九年七月七日、一般競争入札を実施いたしたが、たった一つ入札に参加した渡辺・犬飼ジョイントベンチャーの応札価格が三回とも、予定価格であった三億九千七百万円を超えていたので、その日の入札は不調になったこと。二つ目には、それでやむなく、七月十四日、支援委員会は、渡辺・犬飼ジョイントベンチャーとの間で、予定価格である三億九千七百万円に、これに対する五%の消費税額である一千九百八十五万円を加えた四億一千六百八十五万円で随意契約を締結した。この二点でありました。
 本日、外務省から私のところにその工事請負契約書が届けられましたので、外務省に確認をしておきたいと思います。
 工事請負契約書、平成十一年七月十四日。発注者、支援委員会事務局事務局長末澤昌二。請負者、渡辺・犬飼特定建設工事共同企業体。工事名、国後島緊急避難所兼宿泊施設建設工事。工事場所、国後島、何と読むんでしょうか、市内。工期、平成十一年七月十四日から平成十一年十一月三十日まで、ただし現地工事期間は、平成十一年八月十五日から平成十一年十月二十九日までとする。請負代金額、金四億一千六百八十五万円。(うち取引に係る消費税額等)金一千九百八十五万円。以下省略であります。答弁のとおりでございました。
 この四億一千六百八十五万円から消費税額である千九百八十五万円を差し引いた三億九千七百万円が、支援委員会が決めていた予定価格であった、そうこの契約書からきちっと読み取れるわけですが、外務省、それでよろしいんですね。
齋藤政府参考人 そのとおりでございます。
木島委員 そこでお聞きします。
 北方四島人道支援事業によって支援委員会が発注する建設工事や物品調達などは、どんな法律、政令、規則等に基づいて行われているのでしょうか。
齋藤政府参考人 支援委員会事務局の会計処理規則に基づいて行われているというふうに承知しております。
木島委員 私は、事前に外務省から、今御答弁の文書はいただいております。
 平成五年一月二十五日、規則第四号、改正平成八年十一月二十八日、支援委員会事務局会計処理規則。それから、私のところに外務省からもう一つ文書が届けられておりまして、平成七年十月二十六日、規則第十四号、支援委員会事務局契約事務取扱細則。これがこれらの工事請負契約の発注や物品の調達、また会計のあり方を決めている基本的な規則類であると伺ってよろしいですか、外務省。
齋藤政府参考人 そのとおりに御理解いただいて結構でございます。
木島委員 支援委員会事務局会計処理規則第三条によりますと、「本事務局の会計は、(日本国の法令および)この規則の定めに準拠して処理しなければならない。」とあります。その規則の中には、第三章では契約に関する守るべき諸条項がかなり具体的に書かれております。
 そこで外務省にお聞きします。
 この会計処理規則三条で支援委員会事務局の会計が準拠して処理しなければならないと言う日本国の法令、どんなものを想定されているんでしょうか。どんな法律を想定されているんでしょうか。
齋藤政府参考人 基本的には会計法を念頭に置いていると理解しております。
木島委員 さらに、今会計法だけ述べましたが、会計法、予算決算及び会計令、また、公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律というのも我が国内法にはございます。こんな法律も、一応国内法ですから、準拠しているとお聞きしてよろしいでしょうか。
齋藤政府参考人 御理解のとおりでよろしいかと思います。
木島委員 そこで、具体的な問題についてお聞きをいたします。
 先ほど、冒頭指摘しましたいわゆるムネオハウス、友好の家の工事請負契約書によりますと、随意契約でありますが、予定価格である三億九千七百万円にちょうど五%の消費税額千九百八十五万円を上乗せして発注するという契約になっております。
 なぜ消費税額を上乗せしたのでしょうか。現実に支払われているんでしょうか。外務省。
齋藤政府参考人 委員会事務局が消費税を加えた金額を支払ったというふうに承知しております。
木島委員 なぜ消費税額を上乗せして発注したのかという質問、不適切だったのであれば言い方を、聞き方を変えますが、要するに、外務省は、あるいは支援委員会は、この工事請負契約においては、渡辺・犬飼ジョイントベンチャー側は消費税の納税義務がある、支援委員会、発注者側は担税者として消費税額を渡辺・犬飼ジョイントベンチャー側に支払う義務がある、そう考えていたからこのような消費税を乗せて支払ってあげたんでしょうか。そう聞いてよろしいんでしょうか。
齋藤政府参考人 事務局の理解はそういうことであったというふうに思います。
木島委員 支援委員会は、北方四島支援事業におきまして、この今私が取り上げている友好の家だけではなくて、北方四島のそれぞれの島に、あるいは診療所、あるいは桟橋、あるいは発電所、あるいはプレハブ倉庫など、日本の業者に建設請負契約を発注して、現地にこれらの建物を建造して、そしてロシア側に引き渡しております。
 これらの建設請負契約においても、この友好の家、いわゆるムネオハウスと同じように、発注価格のほかにその金額の五%の消費税をつけて受注者側に支払っているとお聞きしてよろしいんでしょうか。
齋藤政府参考人 基本的にはそのとおりであると思います。
木島委員 財務省をお呼びしております。
 私の消費税に関する理解を述べます。
 消費税法第四条「国内において事業者が行つた資産の譲渡等には、この法律により、消費税を課する。」第三項「資産の譲渡等が国内において行われたかどうかの判定は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める場所が国内にあるかどうかにより行うものとする。」第二号「役務の提供である場合 当該役務の提供が行われた場所」、第五条「納税義務者」「事業者は、国内において行つた課税資産の譲渡等につき、この法律により、消費税を納める義務がある。」
 北方四島は消費税法上国内ではないと私は今考えております。そうしますと、役務の提供、建設工事でありますが、これらが提供された場所は国外であります。そうしますと、これらの請負契約では消費税納税義務が受注者側にはないんではないでしょうか。私の理解は正しいでしょうか、財務省。
木村政府参考人 お答え申し上げます。
 北方領土で行われます資産の譲渡等につきましては、消費税は課税されません。
木島委員 財務省がお認めになりました。大変な、法律的に間違った契約が行われたことになります。
 ムネオハウス、いわゆる友好の家の請負契約では、消費税額として、ちょうど、基本的な受注価格というんでしょうか、それがたまたま予定価格と同一額だったわけですが、三億九千七百万円の五%の金額である千九百八十五万円がいわゆる消費税として支払われている。
 財務省に確認しますが、そうすると、これは当然支払われるべきでないお金が支援委員会からこの渡辺・犬飼ジョイントベンチャーに支払われた、そう見ざるを得ないと私は思いますが、財務省、そういう理解でよろしいでしょうか。
杉本政府参考人 消費税の解釈については先ほど主税局審議官からお答えしたとおりでございますが、具体的なこの契約につきましては、国の政府調達の契約ではございませんので、それぞれのところで対処されていることだというふうに考えております。
木島委員 それじゃ、支援委員会が、役務の場所が外地である、北方四島である建設請負契約、これは納税義務あるんですか、ないんですか、ではもう一回答え直してください。
杉本政府参考人 先ほど申しましたように、消費税の解釈は主税局審議官から申し上げたとおりでございまして、北方四島に関しましては、北方領土で行われる資産の譲渡等については消費税の課税対象外とされているところでございます。
木島委員 消費税の根本的に課税対象の取引じゃないんですよ。外地での役務の提供ですから。さっき法律を私は読み上げたでしょう。法律そのものじゃないですか。
 突然の質問でありますから、外務省、驚かれたかもしれませんが、法律的にも間違ったいわゆる消費税相当額の支援委員会から渡辺・犬飼ジョイントベンチャーへの支出であった、出捐であったとお認めになりますか、外務省。
齋藤政府参考人 事実関係を調査した上で適切に対応してまいりたいと考えております。
木島委員 事実関係はもう契約書で明らかじゃないですか。この契約書に書き込まれています。二十五日の衆議院予算委員会での私の質問に対しても、あなたははっきりと答えたじゃないですか。随意契約で、予定価格であった三億九千七百万円に五%の消費税を掛け算して出てきた数字を乗せて契約した、その結果、四億一千六百八十五万円の契約額になった。その事実はもう動かせない事実ですよ。消費税納税義務がある役務の提供、工事請負契約だったか否かは、答えは、今の財務省の答弁で明確。納税義務のないこれは取引なんですよ。
 この二つで、もう明確に答弁できるでしょう。認めたらどうですか、これは間違ったんだと。法律上正しくないお金が千九百八十五万円払われたんだと率直にお認めになったらどうですか。調査する必要なんかもう全然ないじゃないですか。
齋藤政府参考人 委員会事務局が御指摘の消費税を加えて支払ったということは事実だと思いますけれども、それ以上の事実関係につきましては、調査の上対応してまいりたい、こういうふうに申し上げた次第でございます。
木島委員 だから、今財務省が、消費税法の解釈によって、北方四島は国外の地だ、外国の地だ、だから消費税法上納税義務のある取引ではないんだと明確に答弁されたでしょう。それは正しいですよ。だれが消費税法を読んだって、そういうふうにしか読み取れないんですよ。
 こんな基礎的なことを支援委員会が知らずに、消費税額一千九百八十五万円ですよ、払うべきでないものを払ってしまっている。まさに税金の違法、無法な支払いだと言わざるを得ないじゃないですか。それを何でお認めにならないんですか。調査なんか必要ないんじゃないですか。
齋藤政府参考人 ただいま園部外務省参与が、本件を含めまして事実関係を中心に調査しているところでございまして、その事実関係の調査も踏まえまして、適切に対応してまいりたいというふうに思います。
木島委員 そういう答弁の態度を見ると、非常にかばい立てしていると思えてなりません。
 もう明々白々ですよ、これは。はっきりとこの場でお認めになって、財務省も隣にいるんですから、これは間違った支払いであった、速やかに、こういうのを民事法でしたら不当利得というのでしょう、返還の手続に入るべきだと考えますが、外務省、どうでしょうか。
齋藤政府参考人 当時委員会事務局が消費税を加えて支払ったということは、先ほど申し上げましたような理解に基づいてでございますが、改めまして事実関係を調査しまして、財務省ともよく相談をいたしまして適切に対応してまいりたい、こういうふうに考えております。
木島委員 さっき、私は冒頭、支援委員会はどんな法律、政令等に準拠して業務を行うのかと聞いたのは、こういう問題があるからです。明確に、この支援委員会の内部規則によっても、日本国の法令及びこの規則の定めに準拠して処理するんだと書かれているじゃないですか。
 消費税納税義務のある取引かどうかなんというのは、消費税の基本をわかっていりゃだれだってわかることじゃないでしょうか。何でこんな不可解な契約が結ばれたか。そのことこそが、私は問われなければならない一連の問題と不可分に結びついているんじゃないかと思えてなりません。
 そこで、それでは、この問題はとりあえず横に置いて、次の問題に進みましょう。
 一昨日の衆議院予算委員会において、齋藤局長は、私の質問に対して、答弁の中でこのように答えられました。
 九九年七月七日の入札が終わりましたため、渡辺・犬飼ジョイントベンチャーと随意契約交渉を実施いたしまして、その過程で、さらに数度にわたり予定価格を超える価格が提示された、こういう大変な事実を齋藤局長は答弁をされました。
 それでお聞きをいたします。
 七月七日から随意契約締結の十四日までの間に、いつどこでどんな随意契約あるいは価格交渉があったのか、非常に大事な時期の一週間でありますから、細大漏らさずここで答弁願いたい。
齋藤政府参考人 支援委員会事務局は、七月七日、札幌で入札を執行いたしました。唯一の応札者でございました渡辺建設・犬飼工務店ジョイントベンチャーを対象に三回入札を行いましたが、いずれの回もジョイントベンチャーの応札価格は予定価格を上回り、入札が不調に終わったことは一昨日申し上げたとおりでございます。
 これを受けまして、同事務局内部規則に基づきまして随意契約交渉に移行いたしまして、七月十二日までに契約内容について合意したというふうに聞いております。その後、同事務局内部の決裁手続を経て七月十四日に契約締結に至ったというふうに理解しております。
木島委員 一昨日、あなたは私の質問に答えて、七月七日の入札が不調に終わった後随意契約交渉を実施した、その過程で、さらに数度にわたり予定価格を超える価格がジョイントベンチャー側から提示された、こう答弁されたのですよ。
 あくまでも、渡辺・犬飼ジョイントベンチャーは、予定価格よりは高い値段でよこせ、随意契約でもいい、予定価格より高い金額で発注せい、そういう執拗な要求を繰り返していたと読み取れるあなたの答弁だったんですよ。そこをもっと細大漏らさず答弁してくれということです。
齋藤政府参考人 随意契約交渉に移行したわけでございますけれども、その段階で、何度か承知しませんけれども、依然として予定価格を上回る価格の提示があったというふうに理解しております。
木島委員 それでは、逆に聞きますが、渡辺・犬飼ジョイントベンチャー側が予定価格を下回る、普通当たり前です、競争入札の場合、予定価格を下回る価格を提示しなかったのは、なぜなんでしょうか。どう事実をつかんでいますか。
齋藤政府参考人 私どもとして、それがなぜなのかというのは具体的に承知しておりませんが、この点も含めまして、ただいまの調査の結果、明らかになることがあれば、それを待ちたいというふうに考えております。
木島委員 客観的な、合理的な推測を働かせてください。一般競争入札と言いながらたった一つのジョイントベンチャーしか入札できなかった、入札期日に三回も予定価格をはるかに上回る入札の札を入れた、応札した、不調になった、その後、相対交渉に入った、そこでも予定価格より高い金額を提示し続けた、最後にやむなく予定価格で決着した、そういう経過でしょう。そうでしょう。
 不自然に思いませんか、この渡辺・犬飼ジョイントベンチャーの行動は。何でこうも執拗に予定価格を上回る金額しか認めようとしなかったんでしょうか。どう思いますか、外務省として。どう思いますか、本当にこれ。答えてください。
齋藤政府参考人 この席で私が憶測を交えてお話しすることは適当ではないと思いますので、調査の結果を待ちたいと思っております。
木島委員 まだ調査していないんですか、そこは。
 では、なぜこうも執拗なまで予定価格を下回る価格の提示がジョイントベンチャー側から出てこなかったか。それは、両者が予定価格を事前に知っておったこと、そして、かつ鈴木宗男官房副長官がこの契約を実際には仕切っていて、自分たち渡辺・犬飼ジョイントベンチャー以外には絶対に競争相手が出てこない、自分たちだけなんだということを知っており、また確信をしていたからこそ、予定価格以下では絶対に受けなくても頑張れるんだ、そう思っていたからじゃないですか。そういう合理的な推測が成り立つんじゃないですか。外務省、そう思いませんか。答えてください。
齋藤政府参考人 先ほども申し上げましたとおり、この席で私が憶測を交えてお話しすることは適当ではないと思いますので、調査の結果を待ちたいと思います。
木島委員 調査は外務省の内部調査でしょう。総理から指示されたんでしょう。しかし、国会は国会ですよ。国会に対して事実を報告する責務があるんでしょう。
 私、一昨日も指摘をいたしました。日本共産党の現地の調査等によって、渡辺・犬飼ジョイントベンチャーは、みずからの手でこの工事を施工する能力がなかったことは明らかです。その意思もなかったんじゃないでしょうか、丸投げなんですから。
 では、お聞きします。工事が実際どの程度の費用でできるのか、渡辺・犬飼ジョイントベンチャーは見積もり、積算していましたか、していませんでしたか。外務省、つかんでいますか。答えてください。
齋藤政府参考人 外務省が当時どこまで承知していたかということも含めまして、私確信がございませんので、調査の結果を待ちたいと思っております。
木島委員 随意契約をするときには、両当事者はどんなことに配意してやらなければいけないということになっていますか。質問します。
齋藤政府参考人 支援委員会事務局会計処理規則によりますと、「競争に付しても入札者がないとき、又は再度の入札に付しても落札者がないとき、若しくは落札者が契約を結ばないとき」は「随意契約によることができる。」というふうに規定されております。
木島委員 それはどういう場合に随意契約ができるかという、随意契約に入ることのできる条件ですよ。私の質問はそうじゃないんです。随意契約に入るときに、価格についてですよ、両当事者はどんなことを勘案して価格交渉しなければいけないのか、価格決定をしなければいけないのか。日本の法体系にはあるでしょう。幾らで随意契約してもいいんだなんという法体系じゃないでしょう。どうですか。そこを聞いているんです。
齋藤政府参考人 私の一般的な理解で申し上げれば、予定価格を上回る形での随意契約はできないのではなかろうかと思います。
木島委員 それだけではないんじゃないでしょうか。随意契約をするときには、本当にきちっと積算をして、この建物を建てるにはどのぐらい本当にかかるのか積算をして、適正な値段を割り出して随契しなくちゃいかぬ、そういうのが基本じゃないんでしょうか。どうでしょうか。
齋藤政府参考人 この件について前広に御通告をいただいておりませんでしたので、この点について明確にお答えすることができませんことをお許し願いたいと思います。
木島委員 そういうことなんですよ、要するに。随意契約をやることもやむを得ないという条件はあるでしょう。私は、本件はそれに当たらないということは、一昨日、既に予算委員会で主張をきちっとしました。勝手に、オール北海道ではなくて、鈴木宗男議員の横やりによって、鈴木議員の圧力によって根室管内の業者しか入札に参加できないような枠組みがつくられた。そういう枠組みをつくれば一つの企業しか適用を受ける企業はないということはもう事前にわかっていたということは、既に我が党の佐々木憲昭議員の示した内部文書でも明らかなんですね。
 勝手にそういう枠組みをつくり出しておいて、そして一社が案の定入札してきた、予定価格より高い金額しか応札してこない、成立しない、随意契約の交渉をする。随意契約の交渉は先ほど言った仕組みです。私の言ったとおりです。それが基本ですよ。しかし、相変わらず予定価格より高い金額を提示してくる。予定価格より低い金額でしか契約結べないんでしょう。国だって地方自治体だって支援委員会だってそうですよ。予定価格というのは、契約を結ぶ天井なんですからね、最高限度額なんですから。それで随意契約で予定価格で契約するなんて、そのこと自体が異常なんですね。
 私は、この取引には五つの異常があると思いますよ。
 第一、一般競争入札と言いながら一社しか入札に参加できない仕組みがつくられ、そのとおりになったということ。
 二つの異常、入札期日の応札がすべて予定価格を上回って不調になったこと。
 三つ目の異常、本体の予定価格が三億九千七百万という規模の請負契約です。三億、四億という規模の請負契約です。こういうものを一般競争入札から随意契約に切りかえてしまった。何のまともな手順も踏まずに切りかえてしまった。これも異常です。
 四つ目の異常、発注価格が予定価格と一円も違わない、同額である。まことに異常きわまりない形です。
 五つ目の異常、法律的に支払い義務のない消費税まで千九百八十五万円乗せた契約が行われている。
 もう本当に異常きわまりない契約だ、外務省、そうは思いませんか。
齋藤政府参考人 本件にかかわります事実関係につきましては、ただいま行われております調査の結果を見て判断したいというふうに考えております。
木島委員 では、時間も迫ってきておりますから一つだけ聞きましょう。
 なぜ予定価格そのものを請負契約として随意契約することを支援委員会は認めてしまったんでしょうか。これでは、鈴木宗男議員の介入による事実上の無競争入札という横やりに、契約価格の面でも屈したことになってしまうんじゃないでしょうか。なぜ予定価格よりも当たり前の低い価格に抑えて随意契約をしなかったんでしょうか、しようとしなかったんでしょうか。どうですか、外務省。
齋藤政府参考人 その点も含めまして、調査の結果を待ちたいと思います。
木島委員 何にも答えません。
 七月七日に入札が不調になってから十四日に予定価格で随意契約するまでの間に、それでは、支援委員会事務局から、事実上指導し、すべての金の出どころである外務省ロシア支援室に相談はありませんでしたか。そういう記録はありませんでしたか。
齋藤政府参考人 その間の具体的なやりとりについては、ただいま承知しておりません。この点も含めまして、調査の結果を待ちたいと思っております。
木島委員 もう何を聞いてもしゃべらないと。
 私は、こういう背後で、この間の一連の経過に対して報告書が出てくる、その報告書がねじ曲げられるんじゃないかという懸念をしますよ。ねじ曲げるつもりがないのなら、ここで堂々と答えていい質問ばかりですよ、私が今しているのは。法務大臣、そう思いませんか。
 それで、最後一点だけ、法務省刑事局長にお聞きをいたします。公正入札妨害罪についてであります。
 刑法九十六条の三、公正入札妨害罪の公の入札とは何か、支援委員会が行う入札はこれに該当するのか、法解釈を教えてください。
古田政府参考人 「公の競売又は入札」とは、公の機関、すなわち国またはこれに準ずる団体が実施する競売または入札をいうものと解釈されております。
 ただいまお尋ねの支援委員会、これにつきましては、個別の事案の当てはめの問題でございまして、その当該委員会の法的性格その他に関する証拠関係によって決せられるべきものでございますので、この時点でその点についてお答えすることは差し控えたいと存じます。
木島委員 法務省まで一緒になって法律解釈について答弁しようとしない。私は既に一昨日の予算委員会で、またその前の質問でも、本件一連の疑惑は、単なる行政問題だけではないのではないか、刑事事件にも該当しやしませんか、そういう観点でやはり捜査がなされてしかるべきだという指摘をしたところでございます。
 小泉総理の指示によって、今外務省内での調査が行われております。先ほど私は危惧の念を言いました。そういう刑事事件になるかどうか非常に微妙な問題も含む調査だと思います。かりそめにもこの調査の経過において、法務省の関係者、検察の関係者がこの調査の報告書づくりにかかわって、事実を隠ぺいしたりねじ曲げるようなことがあっては断じてならぬと思うんです。法務大臣の責任が問われることになります。一切そういうことをしない、させない、法務大臣、すべての法務省関係の皆さんにそういう政治的指導をしていただけますね。さわりませんね。答えてください。
森山国務大臣 事実を正確に把握されて、正しい報告がされるように期待しております。
木島委員 質問に答えていません。
 法務省が関与することによって事実を、できるだけ刑事事件にならぬような方向で報告をつくるような形で法務省がサポートするようなことは断じてしてはならぬと思うんですが、どうですか。そんなことさせないとここで答弁できますか。
森山国務大臣 法律と証拠に基づいて正しい報告をしていただくものと期待しておりますし、法務省の者がどのようにかかわるかはわかりませんが、その結果によって曲がるというようなことは考えられないと思います。
木島委員 時間ですから終わります。考えられないんじゃなくて、そんなことしちゃならぬのだという答弁が出てこないところに私は大きな危惧を持っているということを最後に指摘して、質問を終わらせていただきます。
園田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後三時四十六分散会


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