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第5号 平成14年4月3日(水曜日)

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平成十四年四月三日(水曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 園田 博之君
   理事 佐藤 剛男君 理事 塩崎 恭久君
   理事 棚橋 泰文君 理事 山本 有二君
   理事 加藤 公一君 理事 平岡 秀夫君
   理事 漆原 良夫君 理事 西村 眞悟君
      荒井 広幸君    太田 誠一君
      後藤田正純君    左藤  章君
      鈴木 恒夫君    平沢 勝栄君
      保利 耕輔君    松島みどり君
      宮澤 洋一君    柳本 卓治君
      吉野 正芳君    岡田 克也君
      鎌田さゆり君    佐々木秀典君
      日野 市朗君    水島 広子君
      山花 郁夫君    石井 啓一君
      藤井 裕久君    木島日出夫君
      矢島 恒夫君    植田 至紀君
      大島 令子君    徳田 虎雄君
    …………………………………
   法務大臣         森山 眞弓君
   内閣府副大臣       村田 吉隆君
   法務副大臣        横内 正明君
   外務副大臣        杉浦 正健君
   政府参考人
   (警察庁生活安全局長)  黒澤 正和君
   政府参考人
   (警察庁警備局長)    漆間  巌君
   政府参考人
   (防衛庁防衛局長)    守屋 武昌君
   政府参考人
   (総務省総合通信基盤局長
   )            鍋倉 真一君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    古田 佑紀君
   政府参考人
   (法務省矯正局長)    鶴田 六郎君
   政府参考人
   (法務省人権擁護局長)  吉戒 修一君
   政府参考人
   (法務省入国管理局長)  中尾  巧君
   政府参考人
   (公安調査庁次長)    栃木庄太郎君
   政府参考人
   (外務省中東アフリカ局ア
   フリカ審議官)      小田野展丈君
   政府参考人
   (食糧庁次長)      中川  坦君
   政府参考人
   (海上保安庁次長)    須之内康幸君
   法務委員会専門員     横田 猛雄君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月三日
 辞任         補欠選任
  吉野 正芳君     宮澤 洋一君
  不破 哲三君     矢島 恒夫君
  植田 至紀君     大島 令子君
同日
 辞任         補欠選任
  宮澤 洋一君     吉野 正芳君
  矢島 恒夫君     不破 哲三君
  大島 令子君     植田 至紀君
    ―――――――――――――
三月二十八日
 司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律案(内閣提出第五二号)
四月二日
 商法等の一部を改正する法律案(内閣提出第七七号)
 商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案(内閣提出第七八号)
同月一日
 重国籍の容認に関する請願(大出彰君紹介)(第一一九七号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律案(内閣提出第五二号)
 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――
園田委員長 これより会議を開きます。
 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 各件調査のため、本日、政府参考人として警察庁生活安全局長黒澤正和君、警備局長漆間巌君、防衛庁防衛局長守屋武昌君、総務省総合通信基盤局長鍋倉真一君、法務省刑事局長古田佑紀君、矯正局長鶴田六郎君、人権擁護局長吉戒修一君、入国管理局長中尾巧君、公安調査庁次長栃木庄太郎君、外務省中東アフリカ局アフリカ審議官小田野展丈君、食糧庁次長中川坦君及び海上保安庁次長須之内康幸君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
園田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
園田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐藤剛男君。
佐藤(剛)委員 自民党の佐藤剛男でございます。
 本日は、いわゆる拉致問題について、限られた時間を活用しまして質問させていただきます。関係省庁の参考人としましておいでいただいている方々、感謝申し上げます。
 それから、ちょっと一つ忘れたんですが、軽水炉関係でちょっと質問いたしたいので、外務省の杉浦外務副大臣、状況等につきましてお話を賜れれば幸いであります。
 御承知のように、横田めぐみさんが北朝鮮に拉致されていることがわかりまして、マスコミで大きく取り上げられたのが約五年前、九七年のことでありました。それを契機に、本問題が日朝国交正常化の交渉において非常に重要なテーマとして取り上げられてきたわけでございまして、御高承のとおりであります。
 私は外務省は非常に及び腰であるというふうに考えている政治家の一人でありますが、ところが、今般新たに、有本恵子さんをロンドンで誘い出しまして北工作員が北朝鮮に連れていったと、よど号犯のもとの奥さんであります八尾恵さんがちゃんと法廷で宣誓をして、そして法廷のところで証言が飛び出しました。
 これまで、北朝鮮に拉致されたといっても、まさかという、本当かという感じを持っている国民は少なくなかったんじゃないかと思いますが、ここに来て、宣誓をした、旅券法違反等についての問題の中で、やはり本当だったんだということのショックを受けているのではないかと思います。
 そういう状況の中で、私は、これからお聞きしようと思っておりますのは、現行刑法との関係で、先ほど来理事会で御了承を得まして配付いたしておりますが、この拉致というもののそもそも論から、現行刑法は適当ではないんじゃないか、拉致に対応するようにできていないんじゃないかということを中心に質問をいたしまして、そして、日朝正常化というものを、資料を配付いたしておりますが、世界の中でこれだけの国が北朝鮮との間で外交関係を持っておる、百五十一カ国持っているわけであります。百五十一ある。それから、韓国との間には百八十四カ国ある。持っていないのが異常なのでありまして、アメリカ、日本という状況にある。
 そういうふうな状況の中でこの拉致問題が起きているわけですから、これを契機としまして、これを使って国交正常化をしないと、今の北朝鮮の動向は非常に危険であるということを私はここで問題提起をいたすものであります。
 それでは、最初に法務省にお聞きします。
 いわゆる拉致という言葉、これは刑法に私はないと思いますし、日本の法律に、あらゆる法律でありますが、ないと解しておりますが、それについての確認を求めます。
古田政府参考人 委員御指摘のとおり、拉致という言葉は刑法上は用いられておりません。そのほかの法律でも、私の承知している限りではないように思います。
佐藤(剛)委員 それでは、警察庁に聞きます。
 警察庁警備局長。警察庁は、このお手元に配付した資料の中で、これは警察庁から私は入手したのでありますが、北朝鮮による拉致の疑いのある事案ということで、いわゆる九件ですね。それで、この拉致という言葉は、警察が、警察というのは取り締まりやるところだから、最初に拉致だと言うものは拉致なんでしょうけれども、どういうものを拉致といい、そして、拉致でないものの中に拉致というものはあるんだと見ております、私なりの調査もいたしておりますが、その点について見解を求めます。
漆間政府参考人 私どもが北朝鮮による拉致の疑いと言うときに使っている拉致という言葉でございますが、これは、本人の意思に反して連れていかれることという意味で使用しているわけであります。
 これは、基本的には、いろいろな形態がございまして、例えば刑法で言うような逮捕監禁とか、あるいは略取とか誘拐とか、いろいろな形態がございまして、そういう形態をすべて一つ一つ挙げていくというよりは、むしろ全体として、人が連れていかれるというときに一般的に使われる用語が拉致でございますので、したがって拉致という言葉を使っております。
佐藤(剛)委員 拉致というのを、私、広辞苑で調べてきたのであります。そうしましたら、拉致というのは意思に反して連行すること。例えば、袋をかぶせて持っていくとか、ひもをひっかけて引っ張っていくとかというのを拉致というのでしょう。それしか書いていない。
 それで、この拉致というのは警察庁がつくった言葉なんですか、いわゆる一般に拉致というときの。その点について、いかがですか。
漆間政府参考人 先ほど申し上げましたように、拉致というのは、その人の意思に反して連れていかれるという意味でございまして、これは、我々として、全体をくくるにはこの言葉が適当であろうということで、警察として使っている言葉でございます。
佐藤(剛)委員 私なりに拉致というのはいろいろあると思うのですが、一つは、身分偽装ですね。北朝鮮工作員が日本人に成り済ましまして、身分獲得をねらって、それで、身寄りのない人とか工作要員との年齢的類似性など、一定の条件に適合する人物を持ってくる。もちろん、その発見のためには在日朝鮮人などの協力を必要とするわけだろうと思います。これで発表しております中にこういう人たちが入っている。
 それから、キム・ジョンイル、金正日総書記でありますが、彼が言った話から伝わってくるわけでありますが、これは一九七〇年代の中盤、工作活動強化のために、現地人による外国語教育の必要性を指示して、そして北朝鮮工作要員への日本語教員、そういう日本人化教育要員として連れていくというような一つの類型があります。アベック拉致事件なんというのはその系統じゃないかなと私なりに理解いたしておるわけであります。
 それからもう一つが、あそこにいますよど号、よど号に結構まだおりまして、田宮さんは亡くなっていますが、それから娘さんたちが日本に帰ってきている、そういうケースがありますが、よど号グループの勢力拡大とでもいいましょうか、そういうみずからの勢力拡大のために、欧州等において日本人をだますといいますか、そして北朝鮮に誘引する例。私は有本恵子さんなんというのはそんなたぐいかなと思っております。
 それから、工作要員候補というか、洗脳してマインドコントロールする、そして成人後に工作員にすることを企図して幼い日本人を拉致する。人さらいみたいな話ですね。そういうことでございまして、ここら辺はなかなか実例把握が難しいのでありますが、信憑性は疑問でありますが、横田めぐみさんの事件というのはこれで説明ができるのかなと。もちろん、横田めぐみさんについては日本語教員になっていたとの話もありまして、そこら辺は私の力の及ばないところであります。
 いずれにしましても、そういう類型に分けられるのではないかと思っております。ですから、僕は、もしこういう類型に分かれるならば、先ほど警察庁がおっしゃいましたが、私のところの配付資料というので置いてありますけれども、この略取誘拐。昔は、片仮名のときは拐取といったんですね。それが平仮名になりますと略取誘拐という形、これの罪が二百二十四条以降の形態。
 ところが、局長、今警察庁が手をかけているのは全部旅券法違反みたいですね。九件の中で出てきているものの問題というのは、略取誘拐でもなければ、この有本さんは、説明によりますと、金正日、これが指示をして、そして亡くなった田宮さんというよど号の人がやってきて、それで有本さんという語学を研修している人を捕まえて、それでコペンハーゲンから北朝鮮に送った、そういうケースだということを証言しているんですね。そうですね、局長。
 そういうような形になってきまして、例えばマインドコントロールをやってきたら、向こうから一万人ぐらいの人間が――向こうには、北朝鮮に日本改革村というのがあるそうです。だれに聞けばいいかわかりませんが、あるのかないのか、私行ったことないからわかりませんが、そういうところでマインドコントロールして、あたかもサリン事件の、山梨に何とか一色村というのがありますね、あれと同じようなものが向こうにいて、そこで、例えば千人なら千人、五十人でもいいですが、来て、それから日本で呼応して、それにこたえて、わっと内部で勃発して、一緒に呼応して行った、そういうことになってきて、昔の言葉で言いますと朝憲紊乱、今の平仮名の刑法になりましてからなくなりましたが、いわゆる統治権をひっくり返す。こういうふうな状況にいったら一種の内乱罪の予備罪じゃないかなと私は思っているんですが、そこら辺までは全然手がつかず、いわば旅券法で何かやっておるというところで、拉致というものは警察庁発表のものしか拉致じゃない、そういうのはおかしいんじゃないかという感じを持っているんですが、警察庁。
漆間政府参考人 拉致が未遂であったものも含めました九件については、旅券法違反でやっているということではございませんで、基本的には、それぞれによって違いますが、場合によると、刑法二百二十五条、二百二十六条、これの言う略取誘拐、そういうことを念頭に置きながらもやっておるわけでございまして、全部旅券法違反でやっているというようなものではございません。
佐藤(剛)委員 では、そうではない場合、刑法というのは構成要件にきちんと該当していなきゃだめなんです。それは局長に説明するまでもない話ですが。そうしたらば、拉致という何だか一般の言葉だか何だか、広辞苑に出ていても、意思に反して何々だというような話を言っていること自身について疑問をお持ちになりませんか。感想を。
漆間政府参考人 私どもは疑問を持っていないわけでありまして、例えば、有本恵子さんの事案をとりますと、これは、刑法の二百二十五条に結婚目的で誘拐するという規定がございますが、それに当たるのではないかということで、今現在捜査をしておるところであります。
佐藤(剛)委員 指摘するだけしておきます。
 というのは、日本人失踪事件が相当あります。警察庁が拉致と言わないだけです。こういう問題について現行刑法は不適当である。そしてそれに対応するシステムというのを、刑法改正をやるか、あるいは特別法をつくってやらなきゃならないということであります。たくさんの失踪事件があります。それはこの国会の場で一々申し上げると、私なりの捜索はいたしておりますが、問題がありますので、他に移ります。
 それでは、杉浦副大臣。日朝関係が今正常でない。向こうにも日本の施設もない、事務所もない。朝鮮の方は、日本の方には朝鮮総連という形の、実質的には私は人事権等のつながりが金正日の関係であると思っておりますが、そういう中で、先ほど配付資料の中で示しましたように、全世界ですよ、全世界の中で北朝鮮と国交を持っているのは百五十一カ国あるのですよ、百五十一カ国。ないところというのは、アジアをごらんになりまして、ないところというのはどこがありますか。ほとんどないんですよ。それから、アメリカというのがない。ここですね。イラクとは断交断絶をしておる。こういう部門でありますが、拉致問題を契機にテーブルに着けて国交正常化する一番の私はチャンスだと思っているわけであります。
 それでまず、アメリカのブッシュ大統領がこの間日本にやってきた。来られて国会でスピーチされた。その前に、テロリスト国家だということで七カ国を指摘しております。これはどういう国が七カ国になったかというと、イラク、イラン、北朝鮮、シリア、リビア、スーダン、キューバ、この七つですね。ちょっと御確認求めます。
 そして、儒教の国は北朝鮮だけである。テロという観点で北朝鮮をアメリカはとらえておる。その点について、副大臣、現状とそれから国交関係の問題についてどのようにお考えになるのか、外務省の見解をお聞きします。
杉浦副大臣 法務委員会、久しぶりでございますので緊張しております。
 お答えする前に、外務省の当該問題に対する態度が弱腰であるというおしかりをいただきましたが、各方面からおしかりをいただいておりますが、私どもはそのおしかりを謙虚に受けとめさせていただいて、この問題は国民の生命にかかわる問題であると同時に、我が国に加えられた重大な犯罪行為でありますから、きちっと対応していくという姿勢で今後とも頑張ってまいる所存であることを申し上げさせていただきます。
 お尋ねの点でございますが、アメリカがテロ支援国家に指定したのはクリントン政権時代でございました、九三年。以来ずっと毎年指定しております。ことしも指定いたしました。
 そして、先生が御指摘のようなあの国の状態でございますので、我が国としても、東アジア地域の中でただ一カ国正常化されていない国でございますので、今までずっと交渉を続けてまいったことも御承知のとおりですが、現在交渉を中断しております。基本的には、アメリカ、韓国としっかり共同して、近々に三国対応の次官級協議も行いますが、対応してまいるという方針で、できるだけ早く正常化していくという方針で臨んでおることに変わりはございません。
 アメリカの対北朝鮮政策も、この間日米首脳会談が行われた際に、パウエル国務長官と我が外務大臣との会談の中で、向こう側は、北朝鮮といつでもどこでも前提条件なしに対話を行うとの我々の方針に変更はない、合意された枠組みやKEDOへの取り組みは不変であると述べ、強調しておられたと聞いております。ブッシュ大統領もいろいろ申しておられたわけですが、北朝鮮との問題については平和的に解決したいと考えていることも小泉総理に言っておられたところでございます。
 ただ、いわゆる悪の枢軸発言、これは一般教書演説でブッシュ大統領が唱えたわけですし、それから、日米首脳会談でも、北朝鮮については彼らの行動パターンを変えるように、これはブッシュ大統領ですが、国際社会は協力していく必要がある、我々はすべての選択肢を排除していないが、平和的に、こう言っておられますので、クリントン時代よりも態度は厳しいかなという印象は持っておりますが、ポリシーの面については基本的に変更はないということで、米韓と協力して解決に向かって当たってまいる所存でございます。
佐藤(剛)委員 では、次は村田副大臣。
 日本にある朝鮮総連系の、朝鮮総連の下にある銀行で、私の理解では十六社、朝銀の組合が倒れて、そして、もう既に約五千三百億円もの援助をいたしておるというふうに理解いたしておるわけであります。
 それからまた、さらに、十六の信用組合、信組、そういうものが編成がえになりまして、そして五つの経営体になってくるわけでありますが、未処理案件についての額ですね。これからやろうとしている話。税金を使ってですよ。もう既に税金を使ってやっているのが約五千三百億ある。そこら辺について、まず御確認をいただきます。
村田副大臣 まず、冒頭委員が、朝鮮総連の傘下にあります信用組合、こうおっしゃいましたので、必ずしもそうではありませんで、各朝銀も、中小企業等組合法に基づきます日本の、県知事が認可をおろした信用組合でございますことを御指摘をした上で、残りのまだ……(佐藤(剛)委員「既にやった五千三百億の確認」と呼ぶ)はい、わかりました。
 それでは、平成十年五月に朝銀大阪の朝銀近畿への事業譲渡に際しまして、金銭贈与が二千六百二十六億円、このほかに資産買い取り四百七十六億円。十三年十一月に破綻九朝銀に対しまして二千六百六十億円、資産買い取り計四百六十九億円でございまして、金銭贈与額は、おっしゃるとおり五千二百八十五億円であります。資産買い取り額は九百四十五億円になっております。
佐藤(剛)委員 ですから、もう既に約五千三百億円弱のものが、税金が使われておる。これはまあしようがないですよ、これは日本の中のあれだから。しかし、まだ未処理案件というのが約四千四百億弱あると私は理解いたしていますが、そうでしょうか。それについてまた注ぎ込まなきゃいかぬ。
村田副大臣 未処理の金融機関につきましての資金贈与額につきましては、三月の二十九日にペイオフコスト超の報告がなされたところでございまして、資金援助手続は完了いたしましたけれども、具体的に幾らになるかというのは、最終的に今後預金保険機構の運営委員会において、その議決によって決定されるということでありますので、いまだ確たる数字は申し上げられませんが、これまで六朝銀の十三年三月期決算におきます公表債務超過額は四千三百四十七億円でございますので、御指摘のような額になるのではないかと言われているところであります。
佐藤(剛)委員 ですから、日本の国の資金が、その金というのは、いろいろな情報、私はわかりませんけれども、新聞だ、雑誌だと、北朝鮮に流れていると。それで、流れたものが、仮にもアメリカはテロ国家だと言っているわけですよ。核拡散、来るんだ、ICBMがあるんだと。それで、日本に撃ち込んでこられたらどうするんですか、防衛庁。
 向こうからICBMが東京に来ると、何分で来るんですか。
守屋政府参考人 北朝鮮は、今、射程千二百キロのノドンの開発を既に完了しまして、配備を行っていると考えられます。これは日本の全部を射程に置きますけれども、これは一分間に三百キロメートル走りますので、この射程ですと日本には十分以内に到達すると。
佐藤(剛)委員 私の理解では八分と言われている。片っ方で、四分で来たところに、四分で打ち落とさなきゃ入っちゃう。日本の第二次大戦後のところの、灰じんに帰しちゃう。
 こういう事態の中でいるわけだから、私は、こういう拉致の問題を活用してきちんとテーブルにつけて、そして日朝の回復を、先ほど示した、世界がこれだけやっているのに、やっていないのが異常でしょう。そうしたら、どういうことの状況になるのか。テロの状況になる。それがなぜなのかということの問題を私は提起いたしておるわけであります。防衛庁、もういいです。
 それから、次は農林省。
 五十万トンの米を日本が出した。これはよく、北朝鮮、何か知らないけれども、出したけれども全然お礼がないなんて言うけれども、日本は北朝鮮に、外交関係がないんだから、これは直接じゃなくてWFPを通してやっているんでしょう、世界食糧計画。五十万トン。幾らでやっているの。十分の一ぐらいの価格だと思いますけれども、その確認。
中川政府参考人 平成十二年に実施をされました五十万トンの北朝鮮への米の支援でございますが、これはWFPを通じまして無償で供与しております。
 その際の米の評価額は、トン当たり二十二万円でございますから、五十万トンといたしますと約一千百億円程度になると思います。
佐藤(剛)委員 それだけのものを、間接的だからありがとうなんて言いっこないんですよ、そんなもの。赤十字に金を出して赤十字が持っていくのと同じ話になる。日の丸がくっついていて宅急便等の中にあるような話で、破いちまえばわからない。だから、そういう強気論者の人たちがいるんだけれども、もう時間がなくなっちゃった。
 それから、海上保安庁。
 不審船について、私は粛々として揚げて、その中に麻薬が入っているか、人間が入っているか、機械が入っているか、みんなやったらいいんじゃないかと思うが、そういうことを揚げることについて中国が反対している。国際法上何か問題があるのかどうか、揚げることについて。
須之内政府参考人 お答えをいたします。
 不審船の乗組員は、漁業法に基づく検査忌避罪あるいは当庁の保安官に対します殺人未遂罪を犯しております。これらの犯罪捜査の一環といたしまして、我が国がその船体を引き揚げることは可能でございます。
 ただ、現場は我が国が事実上中国の排他的経済水域として扱っている海域でございまして、船体の引き揚げにつきましては、国連海洋法条約上中国が有しております天然資源の保存等の主権的権利あるいは海洋環境の保護等についての管轄権に妥当な考慮を払って行う必要があるということでございますので、中国との間で調整しつつ適切に対処していきたい、こういうふうに考えております。
佐藤(剛)委員 何もけんかしろと言っているわけじゃないけれども、国際法上何ら問題はないはずだと私は思っておるので、粛々として揚げることに専念をしていただきたい。
 それで、あと、私は軽水炉の問題についてあれしようと思いましたが、もう時間がなくなっちゃいました。また一般のときに本件の問題についてはさらに聞きますが、警察庁が拉致と言っておると拉致だと。拉致でない、消息不明になった方がたくさんいる。私が調べた限りにおいてある。その問題を考えていったらどうするのか。
 それから、それに対して、拉致と言われているなら拉致罪というのをきちっとつくったらいい。僕が先ほど類型をつくった。そして、きちんとしてできなかったら、内乱罪だ、略取誘拐罪なんてできる話じゃないよ。そういうもので国家が転覆されるかどうかというさなかなんだから、しっかりやってもらいたい、本件の問題は。
 拉致の問題、金融の問題について、金融の問題は朝鮮総連に該当しないからなんて、今、副大臣そうおっしゃっていたけれども、そうじゃない。問題がある。きちんとこれから、例えば未処理の問題をやるならば、これは朝鮮総連と完全に切った話で定款だの何だのをやってもらいたいし、朝鮮総連の中の息がかかったような子会社なんというのは困る。考えてもらいたい、一兆円のものをあれこれ出そうとするんでしょう。冗談じゃない。そういうものを、金を出してもらったものは社会主義のこの国なんだから、回って回って八分で来るミサイルに化けられたんじゃたまったもんじゃない。
 ということでありまして、もう時間が切れましたので、私はまだ不満でありますけれども、またの機会にさせていただきます。ありがとうございました。
園田委員長 鎌田さゆり君。
鎌田委員 おはようございます。きょうもよろしくお願いします。
 きょうは、法務省のみならず、幾つかの省庁が連携して取り組むべきと私考えております問題について質問をさせていただきたいと思います。
 まず、森山大臣にお伺いをさせていただきます。
 大臣は、女性の政治家でいらっしゃいます。子供を育てる多くの女性の気持ちもともに理解をしていただいている、私も尊敬をしている政治家でありますけれども、その大臣に伺います。
 今、特に大都市部は、いわゆるピンクチラシが町中にはんらんをしております。このピンクチラシなんですけれども、児童の通学路、こういうところにまではんらんをしておりまして、青少年にとって非常に有害な環境になっております。そして、家出をしてきた少年少女たち、この子供たちが、十四、五歳が中心なんですけれども、そのピンクチラシをまく係なんですが、まき屋というふうに称されまして、アルバイト感覚で一晩五千円、六千円でバイトをしているのが実態です。あるいはまた、少女の場合には、売春婦としてこれに関与をしたりというのが実態であります。それで、直視をするにたえない女性の写真、こういったもので、ピンクチラシは本当に大変な状態であるわけなんです。
 都市の名前は伏せてあるんですが、これはある都市のピンクチラシがまかれている状況なんですけれども、よかったら、大臣、ちらっと見ていただけますか。
 その写真にもありますように、夜の間に一時間に一回巡回をして、私も実際に夜何度も大きなごみ袋をしょって回収に歩いておりますけれども、三十分も回収に歩けば大きいごみ袋が二つ、三つにあっという間になります。一時間回収してもまたすぐまかれますので、一晩で何十万枚という単位で回収されているときもあります。そこにありますように、朝になって、地域の町内会の方たちがそれを回収している。せっせと掃き方をしている。時には、自分の小さな子供が、お父ちゃん行ってくるねと商店街のちっちゃな子供がランドセルをしょって行くのを、おう、行っておいでと見送るお父ちゃんは、わきでそのピンクチラシをせっせと掃き方して回収しているんです。
 大変にこれは大きな問題だと私は思っておりまして、特にそういった写真が生々しい状態で載っているというのは、これは女性やあるいは子供たちにとっての人権との関連を一概に否定できない実態となっているのではないかと思うんですが、森山大臣、そういう極めて重大なゆゆしき問題であるという認識はお持ちでいらっしゃいますでしょうか。
森山国務大臣 委員が御指摘のような状態がところどころで散見されるということは私も承知しておりますし、東京でも、また私の地元の方でもないことはありませんので、大変深刻な問題だと思っています。
 ピンクチラシというのが、私もしげしげと見たことがないのでよく詳しいことはわからないんですけれども、非常に子供にとってよくない、子供の教育上よくないばかりではなくて、子供自身の人権の問題でもあるということを私は強く感じております。
 そういうことも一つの動機になりまして、二年半前に提案させていただいてつくることができました児童買春・ポルノ禁止法の動機の一つにもなったわけでございまして、あれは、こういう問題だけではなく、むしろそれよりもっと深刻な人権侵害についてのものでございましたけれども、それを議論しているときにこの問題も大変出てきていまして、何とかできないかという話になりました。
 その後、ほとんど同時でございましたでしょうか、売春防止法とか風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律などの審議がございまして、それで司法的にこういうものも処理できるというふうになったと承知しておりますが、基本的には教育の問題であり、特に男の大人の問題ではないかというふうに思っております。
鎌田委員 ありがとうございました。はっきりとただいまの答弁の中で、特に子供の人権の問題ととらえている、そしてまた、大臣、これまでの御実績の中でも確実に取り組んでいらっしゃることも披瀝をいただきまして、ありがとうございました。共通認識に立っているということで、これから私が質問を進めてまいります内容についてもお聞きをいただきながら、ぜひ共鳴をしていただきたいなというふうに思うんです。
 まず、警察庁にお伺いをいたします。
 デートクラブと売春ということでの捜査、摘発の実態、これは近年どのような傾向にあるでしょうか。あるいはまた、暴力団を含む犯罪組織の資金源の拡大につながるとの懸念の声を聞きますけれども、その可能性についてはどのような認識をお持ちでしょうか。
黒澤政府参考人 これは、いわゆるデートクラブということに限りませず、売春全般でございますけれども、私ども、善良な風俗の環境の保持あるいは青少年に与える影響が大変大きいわけでございまして、鋭意取り締まりに努めておるわけでございますけれども、ここ数年来の傾向として、検挙状況からは必ずしも際立って増加しておるとは言えないような状況ではございます。
 そしてまた、売春事犯に関係する暴力団の検挙状況でございますけれども、大体総検挙人員の二〇%を超えるぐらいの比率、例年そんなような状況でございます。
 暴力団を初め組織犯罪はいろいろな資金源があるわけでございますけれども、薬物でありますとか賭博、のみ行為、こういったものが典型的、伝統的な資金源といたして大変大きな比率を占めておるわけでございますけれども、必ずしも実態はわからないんですけれども、そういった中で売春、ピンクチラシ、こういった関係につきましても昔から組織犯罪集団が資金源としておる実態にございまして、資金源の面からも、私ども、この種事犯を重大視いたしておるところでございまして、今後ともこの種事犯の厳正な取り締まり、積極的な取り締まりに努めてまいりたいと存じております。
鎌田委員 必ずしも科学的な根拠というか、統計をもってというわけではないけれども、昔からそのようなふうに言われている、そしてその資金源の拡大というものも懸念をされているということでよろしいというふうに受け取りました。
 そこでなんですけれども、ピンクチラシは、先ほど大臣がおっしゃったように、この東京にもあります。それから、大臣の御地元にも、また私の地元にもあります。これは、いろいろ聞いたり見たり調べたりしてみますと、地域によってばらばらなんですね。いわゆるピンクチラシとは何ぞやという定義もありませんし、本当にばらばらなんです。
 私が見る限り、この東京で見るピンクチラシはまだかわいいなと。まず服を着ていますから。何だかアイドルのブロマイド写真がちょっと色っぽくなったような、まだかわいいなと。ある都市では、きょう持ってきましたけれども、とにかく一秒として見ていられません。私、一応正常なそういう感覚を持っていると思っていますので、一秒として見られないんです。もう生々しいの限度を超えています。こんなのが町中に何万枚とあふれて、そして、自治体によっては十年、いやそれ以上、地道に毎日毎日回収して、市民挙げて、アピールを採択したり地道な運動をしているにもかかわらず、特段にふえているわけでもないとおっしゃったけれども、つまり、ずうっと同じような状態が続いているんですね。
 イコール、これも大臣さっきおっしゃいました、これは大人の男にも問題があると。結局、これを利用するお客がいるから、これでもうかる業者がいるから、だから相変わらず同じような状態でまかれている。でも、やはりこれは何とかしなくちゃいけない、そういう時期に私は来ていると思うんですね。
 というのは、このチラシを見ますと、写真があって、それから、よくスポーツ新聞に掲載されている三行広告、これと同じような言葉、キャッチフレーズ、これと電話番号が必ずついています。この三点セットなんでしょうけれども、ここの中で、今度、電話番号というものの存在についてちょっと焦点を当てたいんです。
 取り締まりを現場で行っている警察関係の方々からすれば、ピンクチラシとは、写真とこのキャッチコピー、言葉と、そして電話番号と三つが一緒だというふうにお感じになっていらっしゃるかもしれない。でも、これでもうけているあくどい大人、業者にすれば、ここに書いてある電話番号がないと商売が成り立たないのですよね。だって、このチラシを手にして、ここにある電話番号にそばでも頼もうかなと思って電話する人なんていませんから。明らかに目的は一つなんですよ。そば屋に電話をかけるつもりでかける人はいないもの。だから、ここの電話番号というものが、その存在そのものが、このピンクチラシとの関係というか、なくてはならない不可欠なものだという認識を私は持っているんです。
 それで、警察庁の、現場で取り締まりを行っている皆様にもそういう認識があるかお聞きをしたいんです。
黒澤政府参考人 委員御指摘の営業は、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律においては、「異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業で、当該役務を行う者を、その客の依頼を受けて派遣することにより営むもの」、いわゆるデートクラブはこれに当たるかと思うのでございますが、これは無店舗型性風俗特殊営業の一つとして位置づけておるものでございます。無店舗型でございますので、物理的に町中に店舗を構えておるわけではございませんので、利用する者は、これら業者が配布するビラやチラシ等に記載されておる電話番号、この番号に架電することにより役務の提供の申し込みを行うことが通例である、かように承知をいたしております。
鎌田委員 前段、じっくり目をつぶって聞いていてもわからないような非常に難しい言葉が並びました。ただ、後段の方で、その電話番号というものはピンクチラシにとってなくてはならないもの、これがあってこそ、これにかけてくるお客さんがいてこそ、デートクラブの業者の人たちはそこから利益、もうけを得ることができると。そして、売春を目的とした女性がそのデートクラブから派遣をされる、そういう仕組みになっていることが明らかだと思うんです。
 では、次に、総務省さんに伺います。
 昨年の十二月中ごろでしょうか、政令十二都市の市長さん方が連名で要望書を国に上げております。その要望書のあて先は、小泉総理を初め、福田官房長官、片山総務大臣、森山法務大臣、そして警察庁長官の方にお出しをしているようですけれども、その要望書の二項目めに、電話番号の利用制限というのがございますね。
 実は私は、前に青少年問題特別委員会がございましたときに、電話番号というか電話の加入権の没収云々についてちょっと触れて質問をしたことがあったのですが、これは明らかに、問題に非常に慎重に取り組まなければいけない、加入権の没収は人権の侵害にもなるのじゃないかというおそれもあって慎重にならざるを得ないというふうにずっと考えておったのです。ここに来て、司法の判断が完璧に下されたもの、シロクロはっきりしたもの、シロなのかクロなのかわかんないグレーのものではなくて、クロだと司法の判断がおりたものに対してのみ電話番号の一時的な利用制限をかける、そのことを政令十二都市の市長さん方が連名で国に要望しておりますけれども、私は、これはぜひ前向きに、実現に向けて検討すべき内容だと考えているんです。
 ただ、きっと返ってくるお答えは、電気通信事業法の中に、公平な、公正な役務提供の平等云々かんぬんが出てきて、なかなかまた難しいというお答えが返ってくるのかなと思いながらですが、去年の十二月にその要望書が出ていますから、それを受けてということで、電話番号の一時的な利用制限、これを総務省が電気通信事業者であるNTTに対して行政指導を行っていくべきではないか。いわゆる契約約款の中においてそのような指導をすべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
鍋倉政府参考人 先生の方が電気通信事業法についてはお詳しいのかもしれませんが、これはもう言わずもがなでございますけれども、通信というのは、基本的人権である表現の自由を保障するために、通信の内容や利用目的を問わず自由に利用できるのが原則であろうというふうに思っております。
 NTTに対する契約約款の認可につきましても、こういった観点から認可基準が電気通信事業法上設けられておりまして、その基準に従って認可をしておりますので、先生の御指摘のような観点から、法に規定をされていないような形で行政指導するというのは、なかなか困難ではないかなというふうに考えております。
鎌田委員 確かに、電気通信事業法の提供義務、「正当な理由がなければ、その業務区域における電気通信役務の提供を拒んではならない」とあります。確かにそうだと思います。
 しかし、電気通信事業法の第一条「目的」、本当にその基本となる「目的」のところに、「電気通信事業の公共性にかんがみ、その運営を適正かつ合理的なものとすることにより、電気通信役務の円滑な提供を確保するとともに」云々かんぬんありまして、「公共の福祉を増進することを目的とする」とあります。
 売春防止法だとか風営法だとか、明らかに公共の福祉に反しているものだと司法判断が下っているもの、クロだとはっきりしたもの、これはもう公共の福祉に反しているということを言ってもだれも異論を唱えるものではないと思うんですね。
 私は、複数の、幾つかの地域でNTTがハムレット状態になっているということをよく理解していただきたいのですよ。地域の町内会やPTAや役所あるいは議会、そういうところから、何もグレーのものにまでやってと言っているんじゃないんですよ、ましてやシロのものにやってと言っているんじゃない、クロと司法判断が下ったものに対してのみ一時的に、三カ月もしくは六カ月、電話番号の利用制限をかけてください、そういう要望がずっと長年出ている、NTTに対して、各地域で。ところがNTTは、電気通信事業法の、今おっしゃったそこのところがあるからできないと。もし総務省が、あるいは事業法の中で、運用の面で委任規定だとか契約約款で何か解釈が、新たな展開が出ればというふうに、もう本当に挟まれて、大変なハムレット状態なんですよ。そういうことをここら辺でぜひ理解していただきたいのですね。
 そして、そうやっていつまでたってもこの電気通信事業法を云々、どうのこうの言っている間、その間、この業者はずっともうけ続けるんですよ。ずっと。そして、家出してきた十四、五歳の子供たちがこれをバイトでまいている、何の罪の意識もなくて。自分が売春防止法で悪いことをしてしまっているなんて意識がない。四、五千円のバイト代でやっている。
 こういうことをほったらかしにするのはもうやめましょうよ。自治体で取り組んでいるところ、長いところではもう十四、五年になっている。だれかがどこかできちっと決断をしてやらないと。ましてこれは電話ですからね。今のこの時代、電話なんて古いですよ。インターネットとかそういうのでも、大変な裏サイトで同じような情報が流れている。そっちの方を何とかしなくちゃいけないとか議論するのも大事かもしれないけれども、でも、今すぐやれるものもやらないで、そういうハイテクのことを議論したって何にもならないじゃないですか。
 もう一度お聞きします。
鍋倉政府参考人 繰り返しになって恐縮でございますけれども、通信というものが、基本的人権である表現の自由を保障するために最も必要なものであるということ、あるいは、今先生もおっしゃいましたけれども、ハイテクもあらわれておりますが、いろいろな面でこの電気通信というのが社会経済あるいは日常生活を支えるインフラであるということで、非常に不可欠な手段になっているという実態でございます。
 仮に、今先生御指摘のような、電話が犯罪や公序良俗に反する目的のために使用された、あるいはそのように使用される可能性が高いといった事情があるとしましても、そのゆえだけをもって事業者が役務提供を拒むことができる正当な理由に該当するというのは、電気通信事業法の解釈上はなかなか困難ではないかなというふうに思っております。
 ただ、先生がおっしゃいますような点につきましては、電気通信事業法という観点ではなくて、刑罰論全体として御議論をしていく話ではないかなというふうに考えております。
鎌田委員 むっとします。刑罰の問題で、全体として考えてほしいって。そういうふうに問題を大きく大きくして、そして、目の前にあるやれることもやれなくしてしまうのが今のお話なんですよ。
 確かに、青少年問題特別委員会のときに、いわゆる有体物に限られている没収、刑法の中で定められているもの、電話番号という有体物ではない無体物だけれども、これを没収物に加えられないか、そういう議論も必要だということも申し上げたし、必要性も感じています。だけれども、それを議論していたら、刑法という大きなその枠組みを議論することをしていたら、わずか三カ月、六カ月、明らかに司法判断がおりたものに何もしないことでこの現状は何も変わらないということを続けていく。
 だから、大きな問題はこれからきっちりと議論をしていくけれども、まずやれる部分のところにおいて柔軟に、そして私権、人権の侵害にならないような範囲でその知恵を絞らなくちゃいけないときだということを何で御理解いただけないのかなというふうに思うんですね。
 森山大臣、今御答弁の一部の中に人権云々という表現がまた、私は本当にもう何百回聞いたかわからないのですけれども、確かに、本当にそうなんです。電話番号、電話加入権というのは本当にそれと重要なかかわりがある。だからこそ、わずかな事例だけれども、司法の場できちんと刑が確定をして判決がおりたもの、悪いことをした、だからこれだけの罰がある、そういう判断が下ったものにだけでも電話番号の利用制限をかけていく、それは総務省がNTTに契約約款の中で行政指導ということを申し上げているんですが、一方で、そこにどうしても人権ということが出てくるんですね。御感想の程度でよろしいのですが、お考えをお聞かせいただきたいのですけれども。
森山国務大臣 通信の自由といいますか、表現の自由を助ける通信の使用の自由ということは、今総務省の方でお話しになりましたように、非常に重要なことだと思います。
 お話しのようなケースについて、基本的な解決は、そのような営業が行われないようにすることでございましょう。ですから、さまざまな、売春防止法その他のこれに関する法律があるわけですので、それに基づいて司法の判断が厳しく下って、そして営業ができなくなるように、そういう営業をしている人間をきちんと処罰をして、場合によっては収監して措置をしていくということの方が基本的に重要なのではないか。電話だけ仮にとめたとしても、またその人が営業を続けるようであれば、また違う番号をとってすぐにやり始めるのではないかというふうに思いますから、基本的にはそういうことをしている人間を厳しく処罰するということが重要なのではないかと思います。
鎌田委員 今、二つの点について、逆に何かありがたいような気持ちをしながら聞いておったのですが、御指摘ありました。
 後段の方のことについてちょっと一言私から申し上げさせていただければ、本当に、たかが電話番号一時利用制限なんですよね。ところが、こういう方たちというのは、一気に何十万枚と印刷するんですね。だから、例えば東京でピンクチラシをまいているデートクラブの業者、印刷所は東北の山奥だったりするんですよ。そこで一回に何百万枚と印刷しますから、例えばこのチラシの業者が、この電話番号に利用制限がかかったとすると、ストックしてあった何十万枚、何百万枚が一気に使えなくなっちゃうんですね、この番号ですから。これだけで業者にとっては非常に商売に影響というか、手間がまたかかっちゃう。またこの番号で印刷しなくちゃいけなくなる。あるいは、この番号が一回使えなくなると、もう一回加入を取り直すとおっしゃったけれども、業者にとっては本当に電話番号をまた取り直すというちっちゃなことですけれども、そのちっちゃな手間を業者にかけていく、積み重ねさせることによって、ああ、この商売、割に合わないやと。まずこの商売は続かないのだ、そういう意識を持たせた上で、そして大臣も御指摘になったように、売春防止法だとか風営適正化法できちんと処罰をしていくというのがまさに本筋だと思うんです。
 そこで、もう一度警察庁にお伺いします。
 地域によっては、このピンクチラシ撲滅に向けて、ピンクチラシ撲滅の条例を設けているところがあったりします。しかし、見ると、本当にこれまでしか、ここまでしかできなかったのだなと。何の罰則規定もない。努めるものとする、何々を努めるものとする、そればかりで、一生懸命つくったはいいけれども、地元のマスコミからも、何の役にも立たない条例つくって何喜んでいるんだ、こんな非難も受けるぐらいです。
 さっきも申し上げたように、この実態は地域によって本当にばらばらなんですね。ですから、地域が独自にこの回収に自助努力で取り組んでいる。何らかの制度規制、条例規制、法規制が必要だという考えに基づいて、地方で、ここまではやれる、それを最大限努力して条例をつくっているところがあります。しかし、その条例には罰則を盛り込むことができない、何の意味もなさない。
 このような実態を、きちんとその条例が実効に即した形になるように、例えば売春防止法、風営適正化法で、その法律の中で、条例で罰則規定が盛り込めるように委任規定を設ける、そういったことも一つの知恵ではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
黒澤政府参考人 委員御指摘のように、いろいろな考え方があろうかと思います。
 風適法では、これは直罰、直ちに罰則がかかるというわけではございませんけれども、ビラの広告制限区域というのがございますけれども、そこは条例で区域を定めることができるような、そんなような仕組みもあるわけでございます。
 それから、法目的は違いますが、屋外広告物法では、条例で罰則を設けることができる。これは屋外広告物法で、目的が委員の言っておられる趣旨とは違うかもしれませんが、こんなような仕組みもございます。
 地域の実情に応じて、条例をどのようにつくっていくのか。ただ、そういった中で、罰則ですべてが解決するのかどうか、その辺も大いに議論があろうかと思います。
 いずれにしましても、法全体の枠組みの中で検討をすべき問題かと存じます。
鎌田委員 済みません、最後に一言。
 とんでもない答弁だったと思います。罰則だけですべてが解決できるとは思っていないと。当然ですよ、そんなの。そんなの当然とわかっている。だけれども、やらなきゃいけないことの一つとして、ずっと長年かけて訴えている自治体があって私もこうやって必死に訴えているんです。そんな、地方の地域住民と同じ目線に立てないようなのでは困ります。
 最後に、これは、もともとはやはり電話利用にかかわる電気通信事業法というところの契約約款が大きく問題になっています。しかしながら、警察庁や法務省も関連して、横の連携でもってこれはしっかり検討していかなくちゃいけない問題だと私は信じてやみません。ですから、これから先、きょうも同じようなこんなやりとりで、私、引き下がりたくありませんから、最後に、横の連携でこれからこの問題について、利用制限あるいは関連する法律の運用の問題についてきちんと議論をしていくということを、どちらかの省のどなたかお答えをいただきたいと思います。本当なら三つからそれぞれいただきたいんですけれども、時間がありませんので。
古田政府参考人 委員の先ほどからのいろいろな御指摘、大変示唆に富む部分がいろいろあるというふうに考えております。
 この問題につきましては、ただいま警察庁あるいは総務省の方からもいろいろなお話がございましたけれども、非常にいろいろなところに関連する問題であります。また、刑事法の中だけで見ましても、没収と申しますのは、刑法では有体物、あるいはそれを拡大いたしましても権利というようなたぐいのものでございまして、電話というのもだんだん変わってまいりまして、そういうような権利性みたいなものがなくなってきている。利用の制限というようなお話でございますが、これを例えばどういうふうにすればそれは実効がある制度になり得るのかとか、これもまた現実を踏まえるといろいろな問題が出てくるわけでございます。
 そういうような非常に広い範囲にわたる問題でございますので、いろいろな角度から、それぞれの所管の分野でどういうようなことができるのかというふうなことについて、我々としては刑事の分野で何ができるか、そういうことを考えてみたいと思っております。
鎌田委員 しっかりお願いいたします。
 以上です。ありがとうございました。
園田委員長 山花郁夫君。
山花委員 民主党の山花郁夫でございます。
 森山法務大臣におかれましては御案内のことかと思いますけれども、私、亀井静香会長のもとで死刑廃止を推進する議員連盟の事務局次長をやっておりますので、きょうはそのことに関連をいたしまして少し御質問申し上げたいと思います。私は死刑廃止論者なんですが、きょうは、現行のままであったとしても、少し制度の運用として問題があるのではないかと思うところについて何点か御質問を申し上げたいと思います。
 議連の方では今、死刑を廃止して、ただ仮釈放のない終身刑というものを法定しようではないかという形で今検討をいたしております。三月三十一日、この間、日曜日ですけれども、亀井会長も「サンデープロジェクト」というテレビに出ていろいろ話をされておりました。
 ところで、昨年の暮れのことでございますが、十二月二十七日の件についてです。二名の死刑確定囚に対して死刑の執行がございました。
 前から指摘があったことかとは思いますが、この確定囚というのは今何十名かいらっしゃると思いますけれども、この中で、どういう順序で執行される人というのが定まっていくのかということについてお伺いしたいと思います。
 だれをということは法務省の刑事局が決めるということは承知をいたしておりますが、市民的及び政治的権利に関する国際規約、いわゆる国連人権規約でありますけれども、国内法としての性格も持っているわけであります。その第六条に「何人も、恣意的にその生命を奪われない」という規定がありまして、読み方、どう読むかということにもよるんでしょうけれども、この趣旨からすれば、だれが執行の対象となるかということについてある程度客観的な基準が必要なのではないかと思うんですけれども、この点、いかがでしょうか。
森山国務大臣 死刑の判決が確定いたしました場合には、法務大臣の命令によって執行しなければならないということになっております。原則といたしまして、死刑判決が確定した順に検討を行っておりまして、個々の事案について関係記録を十分に精査いたしまして、刑の執行停止とか再審、非常上告の事由あるいは恩赦を相当とする情状の有無などにつきまして慎重に検討いたしまして、これらの事由などがないと認めた場合に初めて死刑執行命令を発するということになっておりまして、慎重かつ適正に対処しているところでございます。
山花委員 ちょっとわかりづらいというか、大変お答えも難しいことだということは理解できないことはないんですけれども、もう少し明確にならないのかなという気もするところであります。
 つまり、人の命を絶つという、本当に重要な話なわけでありますから、今までのケースでも、例えば判決が古い順にでもないように見受けられます。もちろん今御答弁がありましたように、いろいろな事情をということはわかるんですけれども、もう少し明確にしていただければと思います。これは要望として申し上げておきたいと思います。
 ところで、今回の、十二月の二十七日のうちの一人でありますけれども、長谷川死刑囚が執行をされたわけでありますが、恐らく個別のケースについては余りお答えいただけないと思いますが、ただ、今回、ちょっときょう本を持ってきているんですけれども、今市販されているので、「裁判資料 死刑の理由」という本があります。これは、一九八四年から九五年までに最高裁で死刑が確定した四十三件の事件について、犯罪の事実とその量刑理由というものが収められております。
 事実を読むと、大変ひどい、もちろん死刑判決がおりている事件ですから大変ひどい事件だと思われるケースが多々ございますし、長谷川死刑囚のケースでも、以前、人を一人あやめていて、原田さんの弟さんをやはり保険金を詐取する目的で殺害したということで、死刑判決がおりているわけであります。
 死刑の次に軽い刑罰といいますと、もちろん申し上げるまでもありませんけれども、無期懲役ということになるんですが、死刑と無期懲役というのは、刑罰としてももう質的に全然違うわけでありまして、こういう裁判の資料を読みますと、裁判所も大変慎重に検討されているんだなということは感じます。例えば加害行為の態様であるとか、あるいは動機であるとか、さまざまな事情をしんしゃくして決定しているんだと思いますが、恐らく、裁判官としても非常に重大な決断なんだろうなと思います。
 ただ、この四十三件の資料を見てみますと、やはり被害者遺族の気持ちということがほとんど漏れなく出てまいります。被害者が極刑を望んでいるのももっともなことであるとか、被害者もいまだ許す気持ちにはなっていないであるとか、そういったような言葉が出てまいります。裁判官なんかの方の判断において、やはり被害者の気持ちというのは一つの大変大きな判断要素になるのではないかと思うわけであります。
 例えば、ほかの事情からすれば無期か死刑かどっちかかなというところでも、やはり被害者がこう言っているから死刑を選択せざるを得ないというケースもあるのではないかと。逆に、先ほど御紹介したのは死刑判決が出たケースですから、被害者の方も許してあげるということを言っているからということで無期になったケースも中にはあるのではないかと思います。すべての事件がそうだとはもちろん申し上げませんが。
 そうだとすると、被害者遺族のお気持ちというのが分水嶺となるケースもあるのではないかと考えるわけでありますけれども、例えば、判決時においては被害者の遺族の方が加害者に対して極刑を求めるという気持ちだったとしても、その後にいろいろな事情があって気持ちが変わることもあるわけであります。弟を殺された原田さんの場合には、長谷川死刑囚が後に自分のしたことの重大さということに気がつきまして、何通も何通も手紙を出すんです、申しわけなかったという。最初は原田さんも読む気がしないで、全部捨てていたと言うんですよね。あるとき中を見たら謝罪の言葉がいっぱい書いてあって、会ってみたいと思うようになって、被害者の遺族の原田さんと弟を殺した長谷川死刑囚と何度か会うようになってから、死刑を執行しないでほしいという気持ちになったと聞いております。
 実際、もう御存じのことかと思いますけれども、高村法務大臣のときに原田さんは上申書を出していますね。全部は読みませんけれども、「被害者遺族として彼等に対し望み要求要望する事は決して死刑執行ではなく謝罪、償いだと考えます。生きる存在があるからこそ、そこに謝罪、償う気持ちが生まれるのではないかと考えています。」途中略しますが、「私、一被害者遺族としまして加害者に対し必ずしも死刑を望むものではありません。」ということで、十三年四月十八日に高村法務大臣にこういった上申書を出しているわけであります。
 最終的に執行命令を出すのは法務大臣ということになるわけですけれども、こういった被害者の遺族の方のお気持ちというのは、もちろん判決時に裁判所は恐らく考慮したんでしょうけれども、その後のこういった事情というのも執行命令を出すに際しては考慮すべき事情であると考えますけれども、いかがでしょうか。
森山国務大臣 今先生もおっしゃいましたように、死刑の判決というのは非常に重大なものでありますから、裁判所もその判決を最終的に出す場合には大変慎重な審理を経て言い渡すものでございます。長い間の時間をかけて、また大勢の人の苦労の末に証拠を固めて、そして捜査を行い、訴訟が行われて、多分多くの場合二審も三審も経た上で、最終的にどうしてもこの場合は死刑だということで決定された判決ということでありますので、法務大臣としては、裁判所の判断を尊重しながら、法の定めるところに従って、慎重かつ厳正に対処するべきものであるというふうに考えます。
 被害者の遺族が死刑執行を望まないからということで、死刑を執行できないということにはならないというふうに思いますし、遺族の御要望はもちろん死刑執行を判断する上での一つの要素として考慮されることはあり得ると思いますけれども、それだけで最終的な決定を動かすということは、むしろ適当ではないんじゃないかというふうに思います。
 いずれにいたしましても、法務大臣といたしましては、法の定めるところに従って、慎重かつ厳正に対処するべきものと考えております。
山花委員 中段から後段部分については、私としては余り満足できないお答えだったんですが、ただ、間に一言、考慮すべき一つの要素であるというお話があったかと思いますけれども、ことしに入りまして、一月の二十八日のことですが、砂防会館で死刑執行についての抗議集会というものが開かれました。
 今お話をしました原田さんが講演をされていたわけですけれども、そのとき私が写した筆記ですから必ずしもちょっと正確ではないんですけれども、その中で私とても印象に残ったのは、原田さんが、自分の弟を殺した殺人の犯人ですけれども、長谷川敏彦君と君づけで呼んでいたのが大変印象に残っておりますが、そのときに原田さんがおっしゃっていたことです。
 面会をするようになった、顔を合わせて話すことが大事なんだな、生きていて初めて償えると彼が思っていることがよくわかるようになった。執行によってこの事件が終わったわけではないであるとか、彼らを許しているつもりはないんだ、許しているのではないけれども、彼が望む贖罪をするというその存在を認めよう、そういう気持ちになった。彼は限られた空間で一生懸命償おうとしている、それをどうして国家権力が断ち切ろうとするのか、おかしいじゃないですか。第三者だから被害者感情なんということが言えるんじゃないか。高村法務大臣は少なくとも長谷川敏彦君の執行は直ちにはしないと言ってくれた。目の前で申し上げるのもあれですけれども、そのときに、森山法務大臣はおかしいじゃないですかと原田さんはおっしゃっておりました。
 今回のケースについて言いますと、面会ができなかったこと、あるいはこの執行については大変怒りを感じるというふうに言っておりましたが、恐らく、裁判所が判断をして、権力分立ということからすると、行政の長としてはそれは無視することはできないのだというようなお話を、前回、一般論として質疑をさせていただいたときにされておりました。
 ただ、法務大臣に最後に執行命令のサインをするということが要求されておるのは、これは、判決時とは違った事情があったときに、そういうことも含めてもう一度考慮する機会が与えられているのではないかと考えるんですが、ちょっと違った観点から伺いますけれども、執行命令というのは法務大臣が最後に署名しなければいけないというこの趣旨について、いかがお考えでしょうか。
森山国務大臣 申し上げるまでもなく、死刑というのは人の命を絶つ極めて重大な刑罰でございますから、その執行に当たっては、法務行政の最高責任者である法務大臣において、刑の執行停止、再審、非常上告の事由あるいは恩赦を相当とする情状の有無などについて慎重に検討した上で命令を行うことを必要としたその理由だと思います。
山花委員 ちょっと個別のケースを参考にしながら一般論として伺いますが、執行命令が出た後の外部交通についてでございます。
 今回の事件を担当された稲垣弁護士なんですけれども、恩赦の出願を準備しておりました。ただ、準備していた資料が一つだけ間に合わなくて、長谷川死刑囚に資料の到達を待つかどうかということを問い合わせる手紙というものを発信しております。昨年十二月の十九日のことであります。
 拘置所の説明では、一般論としては翌日の二十日には届いているものと思われるという回答をいただいているようですが、稲垣弁護士は、あの筆まめの長谷川さんが返事を書かなかったというのはちょっと考えられないと言っているわけです。私はあってはいけないことだと思いますが、これは本当に書簡を本人に届けてくれたのだろうかという疑問を執行の後に出したコメントの中でも言われております。
 これはまさか拘置所長が、二十日に例えば手紙が来る、執行がされたのが二十七日ですから、サインから五日以内に執行という話になると、二日ぐらい前に拘置所長としては命令が出るのかなということをある程度わかっていて握りつぶしたんじゃないかぐらいの、まあそうは書いていないんですけれども、そういう気持ちを持っておられるようです。
 執行命令の前後で、処遇であるとかあるいは書簡のやりとりについて違いというのは出るんでしょうか。検閲を強化するというようなことがもしあるのであれば、お答えいただければと思います。私は、あってはいけないことだと思いますが。
横内副大臣 死刑の執行命令の前後で、そういう扱いの違いというものはないというふうに承知しております。
山花委員 明確に、ないということですね。万が一あったら大変なことだと思いますので。
 また違った論点、面会についてのお話をしたいと思います。
 被害者遺族が死刑の執行に反対しているこの原田さんのケースというのは非常に珍しいのかもしれませんけれども、初めてのことではありません。例えば一九八〇年に富山県と長野県で起きた連続誘拐殺人の被害者の一人、陽子さん、当時十八歳ですけれども、その母親であります長岡瑩子さん、こういったケースもあります。これは一九九二年の十二月五日、「ザ・スクープ」というテレビ朝日の番組で、検証、死刑は必要か、娘を殺された母の告白というところでも紹介されておりますし、また、かつて死刑廃止法案というものが昭和三十年代に審議されたときに、そのときの会議録がありますけれども、その年の一月十八日に妻子を殺された弁護士の磯部常治さん、この方も公述人として廃止論を述べております。
 その中で、「抽象的に申しますならば、私はやはり死刑廃止に賛成なんであります。廃止論者なのであります。これは、先ほど委員長のおっしゃった一月の妻子の、私の被害者の立場、現実に被害者の立場になった、その身になっても、なお私は死刑は廃止すべきだという論なんであります。」という形で述べられている方もいらっしゃいます。かつて、こういった方がいらっしゃったわけであります。
 原田さんは、一九九三年に長谷川被告の死刑が確定して以来、三回、長谷川死刑囚と面会をいたしております。現在では、通常は死刑確定囚との面会というのが非常に制限されているわけでありますが、昔はかなり自由に会えていたという話も聞いております。例えば免田栄さんは御存じですよね、再審で無罪となった。免田さんが拘置所でインコを飼っていまして、インコが逃げちゃったんですが、高校生がそれを拾うんですよ。捕まえて、免田さんに届けて、免田さんと面会したというような、そんな話もあったりして、これは弁護士でなければ六親等内の親族でも当然ないわけですけれども、そういう人が会えたりしているんです。
 少なくとも面会については、弁護士、親族以外でも、拘置所のある程度の判断によって可能ではないかと思うんですが、その点、御配慮いただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
横内副大臣 死刑確定者に対する面会につきましては、死刑確定者の心情の安定に配慮をしながらその身柄を確保するという確定者に対する拘禁の目的に照らして、個々具体の事案ごとに施設の長が決めていることでございます。
 一般的には、しかし、御指摘のように、親族との間では原則として自由であるというふうにしておりますし、また、親族以外でありましても、弁護士の場合には認めております。その他の者で必要と認められる者との間でも、これを許可している場合があるというふうに承知しております。
山花委員 個別のケースによっては、拘置所長の裁量というか、通達の範囲内で可能だというふうに理解をいたしました。
 その次、ちょっと時間も押してまいりましたので、死刑の告知についてお伺いいたします。
 長谷川死刑囚に対して、確定後、原田さんは三回お会いしているんですけれども、その後、多分拘置所長がかわったのを契機にしてだと思うんですが、会うことができなくなりました。原田さんが六年ぶりに長谷川死刑囚と再会したのが通夜のときであるというふうにおっしゃっておられました。私は、ちょっとこういうのは気の毒だなと思うんです。
 長谷川死刑囚は、原田さん、大場知子さんあてに遺書を残しております。私、原田さんから御了解をいただいておりますので、ちょっとその遺書の一部分を御紹介いたしますが、「原田家の皆様には、生涯、癒し得ない悲しみと苦しみを与え、今もって、計り知れないご迷惑をお掛けしています事を、ここに、改めて謝罪し、お詫び申し上げます。」から書き始まる遺書であります。「生きて罪を償う事を、切にお望み下さった正治様には、そのご期待に応える事が出来なくて、本当に残念で、申し訳なくてなりません。」ずっとるる続くんですが、「明男さんには、」明男さんというのは殺しちゃった人ですけれども、「明男さんには、あの世へ行った時に会わせて頂けると思いますので、その折りには、土下座してお詫びし、この世で果せなかった償いもさせて頂く気持ちでいます。」最後ですが、「最後になりますけど、もう一度、心からお詫び申し上げ、そして、お礼申し上げます。本当にありがとうございました。ご無理をなさらないように、末永くお元気でいて下さい。それでは、さようなら。再会の日まで。」というのを残して処刑をされております。
 一般論としてこれも伺いますが、その上で、執行当日の朝に告知をされて絶命するまで、昼ぐらいまでですから数時間のことだと承知をいたしておりますけれども、一般論として言うと、そのとおりでございましょうか。
横内副大臣 一概にはお答えできないわけでありますけれども、死刑確定者本人に執行の告知をしてから執行するまでは数時間程度を要すると承知をしております。
山花委員 当日の朝にいきなり告知されて数時間ということで、ちょっとこれはどうかなと思うんですが、確認をいたしますけれども、こういった遺書が残せているということは、告知後、遺書を書くぐらいの時間は与えられていると理解してよろしいんでしょうか。
横内副大臣 死刑の執行の当日、確定者本人に告知をした後、希望のある者に対しましては、遺言を聞いたりとかあるいは遺書を書かせているというふうに承知しております。
山花委員 こういったことについて、まず、執行当日の朝に告知ということは、私は別に告知を事前にすれば死刑はどんどんやっていいなんと言うつもりは全くないんですが、ただ、運用として、ちょっと人道的にどうかなという思いがあります。
 例えば、当日の朝に告知を受けて、全然心の準備もできていない人もいるでしょうし、あるいはそれでも受け入れる人でも、例えば最後に親族に会いたいとか、そういう希望を述べた人が今までかつていなかったとは思えないわけです。中には恐らくいたんだと思いますよ。最期のお別れができないというのはちょっと余りにもむごいのではないかと思うんです。
 このことについて、例えば一九九八年の十一月、国連の規約人権委員会からも、家族らに刑の執行を事前告知しないことは人権規約に違反すると、政府に対して改善の勧告が出ております。また、これを受けて、その年の十二月三日、当時の中村正三郎法務大臣ですけれども、事前告知をするかどうかを検討するということを答弁されております。
 もう四年たとうとしているわけでありますけれども、この点、せめて、告知については運用の話でしょうから、運用について配慮を求めたいと考えるわけでありますけれども、いかがお考えでしょうか。
森山国務大臣 死刑確定者に対する執行の告知は、御承知のとおり、執行当日、執行に先立ち行うものでございますが、一たん執行の告知をした後に親族などとの面会を行わせるということは、死刑確定者の心情の安定を損なうことになりますし、不測の事態を招来することが懸念されますし、また、かえって死刑確定者本人に過大な苦痛を与えたり、親族等に対しても無用の苦痛を与えかねないものと考えられますので、執行の告知をした後親族等との面会を行わせることは望ましくないというふうに思います。
山花委員 九八年の法務大臣の答弁より少し後退したような印象を受けます。つまり、当時は、事前告知をするかどうかを検討するという形で答弁されております。
 あと、国連規約人権委員会からの、そうは文章では書いてありませんけれども、今は死刑を執行している国の方が、全体としては、国の数だけでいうと執行している方が少なくなってきていると思うんですが、その中でも日本のようにこんな急にというケースは極めてまれであるという形で言われている。裏を返せば、今言われたような懸念というのは杞憂ではないかと思うんですが、ちょっと時間があれですので、もう一回、検討していただきたいということを改めて申し上げたいと思います。
 最後に御質問申し上げますが、死刑のことに関しては、非常に密室でというか、情報が乏しい、つまり情報公開が非常にされていないのが現実でありまして、むしろ昔の方が公開されていたんじゃないかなというふうに思われるケースがあります。
 一つ、その例として、前から御要望申し上げておりますが、刑場の視察を申し上げているんですが、刑場についてはかつては割と見られていたようですね。私、刑法学者の平野龍一さんからお話を聞いたことがあるんですけれども、平野先生も、若いころ僕は見たことがあるとおっしゃっていました。三つボタンがあって、だれが本当のボタンを押したのかわからないようになっていてというのを見ましたという話を、私は学生時代に聞いたことがあります。
 さっき、冒頭お話ししましたけれども、「サンデープロジェクト」でも刑場の写真が映って、執行の際の音声を流しておりました。何時何分執行と言って、ばたんという音がして、何時何分終了と。だから、昔はマスコミももしかして撮れていたのかなという気がするんですが、これは、何度要請をいたしましても、委員会としてであればいいけれども、個人として見に来るのはちょっと御勘弁願いたいという話でした。
 ただ、もちろん死刑制度については、きょうこの委員会の中でも、議連に入っていらっしゃる方、あるいはお声かけしたけれども、いや、私は存置論だという方もいらっしゃいましたけれども、皆さん一致して同じ意見だということはあり得ないんだと私は思いますが、ただ、議論をするための前提として情報が余りにも乏しいという気がいたします。今東京拘置所は建てかえているわけでありますけれども、恐らくそこにも刑場があるんだと思いますが、この民主主義の社会において議論をするためには情報の公開ということが非常に重要ではないかと私は思います。
 永山則夫さんという方がいらっしゃいましたね。この人も執行されたわけですけれども、その弁護士をされていた人も、例えばの話、どうも永山さんが持っていたはずのものが返ってこないというケースを指摘されております。この場でそれが本当かうそかという話をしようというのではないんですけれども、そうやって余りにも公開されてないがゆえに、いろいろな憶測が生まれたりであるとか、あるいは、かつて、法務委員会だか決算委員会だったかちょっと忘れましたけれども、志賀先生が、「そして、死刑は執行された」、そういう本があって、ここに書いてあることは本当かという質問をして、法務省の方は、いや、それは事実じゃないですと言っているんですけれども、要するに、余りにも公開されてないがゆえに、いろいろな話が尾ひれ羽ひれがついてしまうのではないかという気がしております。
 もう時間がなくなりました。三月二十日に、ヴェルター・シュヴィマー欧州評議会の事務総長が来日して、一九九七年以降、欧州評議会には日本はオブザーバー参加しているけれども、死刑廃止という価値も共有しているものと思うとおっしゃっておられました。議連の方で懇談をしたんですけれども、こういった議論のためにも情報公開が必要だと思いますが、改めて、刑場の視察ということについて御検討いただきたいと思いますけれども、お願いいたします。
森山国務大臣 刑場の視察につきましては、死刑という最も重い厳粛な刑を執行する場でございますので、その性質上、本来公開にはなじまない場所であるというふうに思いますし、死刑囚やその家族等の名誉や心情に対する配慮などを考えなければなりません。慎重に検討しなければならない問題であると思います。ただ、先ほど先生がおっしゃいましたとおり、法務委員会の決定があるなど、国政調査権の発動の一環として要請がなされました場合には別でございます。
山花委員 そういうことですので、ぜひ委員会としてやっていただきたいという御要望を委員長にも申し上げますとともに、法務大臣には、ことしは抗議に行かなくていいような年になりますよう要望を申し上げまして、質問を終わります。ありがとうございました。
園田委員長 西村眞悟君。
西村委員 引き続き、御質問いたします。
 前回、拉致の問題についての質問に対する御答弁は、これは政府全体として真剣に取り組まねばならない、現在、副大臣を中心としたプロジェクトチームができて、そこに法務副大臣も参加している、適切に対処すべくスタートをしておるという趣旨の御答弁をいただいております。したがって、大まかなところ、政府全体として取り組まねばならないこの拉致日本人の救出問題に関して、具体的に法務省として何を進めようと考えておられるのかということを大臣にまずお聞きしたいと存じます。
森山国務大臣 北朝鮮による日本人拉致容疑事案問題に関するプロジェクトチームというものが、関係省庁間の情報交換等、緊密な連絡調整を図ることを目的といたしまして設けられまして、関係副大臣等を構成メンバーとして副大臣会議に設置されたというふうに承知しております。
 法務省といたしましては、副大臣を中心といたしまして、刑事局、入国管理局及び公安調査庁におきまして、プロジェクトチームにおいて取り上げられた課題をも踏まえながら、幅広い観点から法務省としての対応のあり方などを検討していくことにいたしております。
西村委員 そこで、横内副大臣が参加しておられるので、可能な限りお伺いしたいんですけれども、このプロジェクトは具体的にどういう課題を今検討しておるのか。法務省からいかなる提案をし、法改正をも含めた議論が果たしてなされておるや否やという進行状況について、法務省サイドからどういう提案をされているのかについて御答弁いただきます。
横内副大臣 拉致問題のプロジェクトチームにつきましては、現在まで二回、一回目は三月の十九日、二回目は三月の二十九日というふうに、二回開催をされております。
 今までの二回では、拉致の疑いのある事案の概要だとか、あるいは外務省から、日朝国交正常化交渉とか日朝赤十字会談の交渉の状況といったことを関係の省庁から説明を受けまして、意見交換を行っているというところでございます。なお、三月二十九日に開催された二回目の会合で、さらに、そのプロジェクトチームの下に、関係各省庁の担当者間の情報交換等を行う場として、関係省庁連絡会議の設置ということも決めたところでございます。
 このプロジェクトチームの会合での具体的な内容、今提案はどういう提案をしたかというような御質問でありますが、具体の内容、詳細につきましては、捜査の中身にかかわることでもありますし、また、これからの外交交渉を適切に進めていかなければならないということからしまして、取り扱いには細心の注意をする必要があるということで、プロジェクトチームの会合の席上でも、お互いに細心の注意をしようという申し合わせもしておりまして、これを明らかにすることについては差し控えさせていただきたいというふうに思います。
西村委員 御趣旨、よくわかります。しかし、プロジェクトができたのはいいことでして、例えば万景峰号とか、在日の方が物を持って帰国するということをどう規制していくのかということは、政府全体から、各役所から出たプロジェクトを組まなければスムーズに進まない問題ですね。ということは、法務省単品、また外務省単品では解決できない問題を、今私が例に挙げた問題も含めて検討しておると承知してよろしいんですね。
横内副大臣 検討の内容につきましては、繰り返しになりますけれども、この会合の場で安倍副長官からも、そういった交渉その他非常に機微にわたることでもあり、お互いにひとつ十分注意をしながら扱っていこうという申し合わせでございまして、お答えはぜひひとつ差し控えさせていただきたいと思います。
西村委員 新潟県庁には、「横田めぐみさんらが無事戻ってくることを願っています 北朝鮮による拉致疑惑の解決は県民の願い」と掲げておるのですね。こういうことで、例えば北方領土返還の垂れ幕を掲げている官庁もおりますね。領土と国民があって国があるわけですから、今この問題でプロジェクトを組むに当たって、例えばこういうこともいいんですよ、領土のことを垂れ幕に掲げておるんだから、どこか外務省のところに掲げたらよろしいとか、そういうことも含めて、このプロジェクトを大事にして、具体的な活動の場とするように大臣及び副大臣に要望して、次に移ります。
 垂れ幕のこと、おもしろいアイデアでっせ。新潟県庁に垂れ幕が掲げてあるから、前の外務大臣が、拉致問題はどうですかと聞かれて、いや、私は県会議員ではありませんと答えた、その答えのきっかけになったかもわかりません。したがって、我々の中央省庁の壁に、拉致日本人は国家の主権の侵害であり人権侵害である、これは許さない、一日も早い救出の努力は国民の悲願である、こういうふうな垂れ幕を掲げれば、この問題は一新潟県の問題ではない、全国民の国家的な願いだということが垂れ幕一つのことで明確になると思いますので、要望しておきます。よろしくお願いいたします。
 次に、事務的なことをお聞きしますので、よろしくお願いします。
 私、前回、再入国の問題についてちょっと取り上げさせていただきまして、事実の前提として、一年間に在日の朝鮮人の方が何人、日本から出国し、また入国しておるのか、この概要を、北朝鮮からの新規入国者も含めて、数字でお教えいただけますか。
中尾政府参考人 お答え申し上げます。
 まず第一の御質問でございますが、一応これは、日本に在留する朝鮮半島出身の特別永住者であって、韓国旅券によらず出入国する者という限定で申し上げさせていただきたいと思います。
 昨年、平成十三年度で、再入国許可による出国者は一万二千二百四十人でございます。逆に再入国許可による入国者は、平成十三年が一万二千七百四十三人でございます。
 次に、北朝鮮からの新規の入国者数でございますが、平成十三年が二百五十四人であります。概略、大体各年度もこの前後の数字にこの数年なっておるところでございます。
西村委員 ありがとうございます。
 この中で、許宗萬という朝鮮総連の実質上最高幹部が一年間に何回ぐらい往復しておるのか、朝鮮総連の幹部が何回ぐらい往復しておるのかということはお答えできますでしょうか。
中尾政府参考人 特定個人の問題でございますので、プライバシーに係ることでありますので、この場でお答えを申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思います。
西村委員 最近、私の耳にも入るのですから大体公知の情報なんだとは思うのですけれども、許宗萬という朝鮮総連の最高幹部が北朝鮮に行って、また帰ってきた。金正日書記と会見をして、金総書記から指示を受けた、その指示の内容は、破綻した朝銀の受け皿銀行に近く投入される我が国の公的資金をできる限り北朝鮮に送金せよ、持って帰れという指示であったということは、私の耳に入るのですが、警察の方も察知しておられるのかどうか、真実なのかどうか、お伺いしたいと思います。
漆間政府参考人 警察としましては、公共の安全と秩序の維持という責務を果たす観点から、北朝鮮及び北朝鮮と密接な関係を有する朝鮮総連の動向については重大な関心を持っているところでありまして、その一環として、委員御指摘の会見が行われたということは承知しておりますが、その具体的内容につきましてお話しすることは、今後の警察活動、全体的な情報収集活動にも影響が生じますので、把握しているか否かも含めまして、答弁は控えさせていただきます。
西村委員 同様の観点からまたお伺いしますが、金融監督庁は、破綻した朝銀の受け皿銀行が朝鮮総連の支配ないし影響下にないことを前提にして公的資金を投入する、反対からいうならば、支配関係があれば投入できないんだという判断で投入していくんだろう。既に六千億円が投入されておるという前提で、警察としては、今のお答えを含めて、この受け皿銀行が朝鮮総連といかなる関係にあるのか、全く無関係で、純粋なる日本の金融機関として機能しておるのか、そうではないのかということについても重大な関心を持って対処していただきますように、もちろん、その中で背任、横領等の事例があれば警察として対処されるのは当然でございますが、それ以外にも十分な情報収集を行っていただきたい、このように要望いたしますが、警察としての御答弁をお伺いいたします。
漆間政府参考人 警察としましては、いわゆる朝銀については朝鮮総連と密接な関係にある団体であると認識しておるわけでありまして、お尋ねの受け皿の信組に関しましても、朝鮮総連との関係につきまして引き続き重大な関心を持って情報を収集しているところであります。
西村委員 次に、再入国の許可についてちょっとお伺いします。
 法的に再入国を許可するか許可しないかは国家の自由裁量である、これが原則である、これはよろしいでしょうか。
中尾政府参考人 そのとおりでございます。
西村委員 それで、前回御質問させていただいたときの大臣が引用された法律は、平和条約国籍離脱者及びその子孫については我が国が特例を設けておる。つまり、かつて我が国、日韓併合時代にあった朝鮮半島の人たちは、そのときに日本にいたならば、そしてその子孫が今、日本におるということですから、平和条約国籍離脱者及びその子孫に当たるわけであります。この特例がある。大臣のお答えでは、こういう特例があるので、一律には再入国を原則の自由裁量に従って許可しないということは難しいのだとお答えになったので、ちょっと調べてみますと、どうもこれは、一律にはできない、個別的にはできるという問題ではなくて、ある意味では、今まで一切再入国については日本国政府は許可しないということは言えなかったのではないか、こういうふうに思うのです。運用はどうなっておりますか。
中尾政府参考人 お答え申し上げます。
 委員御案内のとおり、法務大臣は、特別永住者に対する再入国許可に関する入管法の適用に当たりましては、特別永住者の本邦における生活の安定に資するという入管特例法の趣旨を尊重するものとされておりますので、これにのっとって運用しております。
 実際のところ、特別永住者の再入国許可につきましては、特別永住者以外の一般の在留外国人に比べまして長い有効期間を定めることができるということになっておりますので、それに従ってやっております。
西村委員 ちょっと細かいことになって恐縮なんですが、今まで、これは許可しない、平和条約国籍離脱者及びその子孫について再入国を許可しないという事例がありましたか。きのう言っていなかったので恐縮ですが、今わかればお教えください。
中尾政府参考人 平成十二年度の資料しかないので申しわけございませんが、平成十二年度で六十五件不許可にしております。
西村委員 不許可六十五件の事例があるということで、その再入国は国家の自由裁量であり、その上に特例が乗っているという原則が守られておるわけでございます。したがって、大臣にお伺いしてお答えいただきたいのは、平和条約国籍離脱者等の出入国管理の特例法を前提にしても、拉致された日本人の救出のために、例えば重要な情報を金正日と交換するために行き来しているという人たちに関しては再入国について考えるという態度に転換していただきたいなということでありますが、大臣の御見解はいかがですか。
森山国務大臣 特別永住者につきましては、その歴史的な経緯及び我が国における定住性にかんがみまして、その法的地位の安定化を図るとの入管特例法の趣旨を尊重して、その者の海外渡航が円滑に行えるよう配慮した上で再入国の許可を行う必要があるというふうに考えております。
 入管特例法第十条に定める再入国の特例は、このような趣旨から規定されたものと承知しておりまして、現在においても合理性と必要性が認められるのではないかと思っております。
    〔委員長退席、漆原委員長代理着席〕
西村委員 御説明はわかるんですけれども、これは、朝鮮半島と我が国の歴史的な特殊な経緯からこの法律があるわけです。ということは、朝鮮半島にある国と我が国は特殊な関係にあるという前提なんですが、歴史的なことはともかく、現在においては余りにも違い過ぎる。そして、アメリカの認定では、テロ国家であり悪の枢軸であると。そして、現実に北朝鮮によって日本人が拉致されておる、北朝鮮のテポドンミサイルは日本に照準を当てておる、こういうふうな、現在の国家を前提としては余りにも違うではないか。ただ日本だけが、現在の状況を見ずに、出発点の二十世紀前半の特殊な関係だけで、五十年以上経過したこの現在の特殊性から目をそらして、特例をまだ堅持している。
 ぼつぼつ普通の国同士に戻って、永住している方々の生活基盤の安定については、単なる北朝鮮の方のみならず、あらゆる外国人で日本に永住されている方々にも配慮しなければならないのは当然でございますから、この特例を北朝鮮に関して撤廃することも含めて、特例のあり方の検討を始めればいかがかと思いますが、大臣の御見解はいかがですか。
森山国務大臣 入管特例法というのは、在日韓国人三世以下の子孫の法的地位問題の解決を図るために、日韓両国政府間の合意に基づきまして制定されたものでございますので、我が国政府だけの都合によって一方的にこれを改正するということは、国際約束の観点から難しいのではないかと思います。
西村委員 時間が余りましたが、これで終わります。
中尾政府参考人 先ほどの件で、再入国不許可の件数を六十五件と申し上げましたが、これは全体の不許可件数でございまして、その中で朝鮮人の方が何人入っているかのところはちょっと今手元にございませんので、全体で六十五件と。再入国許可の総件数は、申請件数は大体年間五十数万件でございますので、それの六十五ということで御理解いただきたいと思います。
    〔漆原委員長代理退席、委員長着席〕
西村委員 質問をやめるという前提が今狂ってしまった。再開しようと思っても、やめると言ってしまったから、やめます。
 ありがとうございました。
園田委員長 木島日出夫君。
木島委員 日本共産党の木島日出夫です。
 三月二十日の当委員会に続きまして、鈴木宗男議員の私設秘書、コンゴ人ムルアカ氏の日本への在留資格の問題に関してお聞きをいたします。
 まず第一に、法務省入管局が九四年五月十六日に、ムルアカ氏に対して公用への在留資格変更をした件についてであります。
 前回、私は、鈴木宗男議員の私設秘書、ムルアカ氏の在留資格が九四年五月十六日に、それまでの人文知識・国際業務から公用に変更され、在留期間が一年からデュアリングミッションに変更された問題を指摘いたしました。そして、ムルアカ氏は当時公用の旅券も持っておらなかった、さらに、日本の外務省が、ムルアカ氏が公務に従事している者であるとの口上書の接受もしていない、そういう人物に対して公用の在留資格を付与したことに基本的な、根本的な疑問を呈したわけでありますが、法務省入管当局は、本来十年保存しておくべき審査記録を五年以上たったからという理由で廃棄したという答弁で、まともな答弁ではありませんでした。
 前回の質問で、法務大臣はこの問題に対する調査を約束されましたが、調査されましたか。どんな調査をしましたか。調査結果はどんな状況でしたか。
森山国務大臣 平成六年五月十六日のムルアカ氏の公用への在留資格変更許可に関しまして、本年三月二十二日以降、平成六年当時の審査担当者等から事情を聴取いたしまして、文書の保管状況等を調査いたしました。
 その結果、まず、本件の在留資格変更許可に関し鈴木宗男議員の関与があったのではないかという御指摘がございましたが、そのような事実は確認されませんでした。本件変更許可は適正に行われたものと認められます。
 その次に、本件ムルアカ氏に係る在留資格変更許可申請書類は、所定の手続に従いまして、平成十二年一月に、他の外交、公用への変更許可申請記録とともに廃棄されているという旨の報告を受けております。
木島委員 私が疑問を呈した最大の問題は、公用への在留資格変更が行われた九四年五月十六日と全く同じ日付の、鈴木宗男議員作成名義の東京入管局長あて労働ビザ発給申請書のコピーが現にこの我が国に、この国会にも出回っているということであります。政治家から在留資格に関する要請があったとすれば、当然、上級公務員の関与が考えられるわけであります。
 そこで、今、調査結果の報告がありましたが、法務省は、本省の入管行政に関与していた者、また、今審査担当者から事情を調査したという趣旨の答弁をされましたが、肝心の当時の東京入管局長、また次長、その下に位する審査の最高幹部である審査監理官、こういう上級官僚から事情はきちっと聴取したんですか。
中尾政府参考人 お答え申し上げます。
 委員の御質問の関係者につきましては、その必要が認められないことから、事情は聴取しておりません。
 この点につきましては、先ほど委員御指摘いただきました平成六年五月十六日付の鈴木宗男議員の「東京入国管理局御中」と題する文書があるがゆえに、当然そういう者のところに働きかけがあったのではないかという前提でお話をいただいたわけでありますけれども、このような文書自体、私どもの方の東京入国管理局の方に提出されたかどうかということも確認されておりませんし、なおかつ、その後、委員の御指摘を踏まえまして、この文書そのものが果たして提出されたかどうか等につきまして検討いたしました。そもそも、この文書の体裁そのものから考えまして、提出されていない可能性の方が高いのではないかというふうな見方もできるのではないかという結論に達しました。
 すなわち、この文書の上の方には、No.〇〇四―CON.SP―九四と書いております。このCON.SPというのは多分フランス語だろうと考えられます。このCON.SPというのは、フランス語の場合であるということにすれば、極秘ということになろうかと思います。極秘と書いてある当該文書が東京入国管理局の方に出されているというよりは、むしろ出されていないのではないかという疑いを私ども持っております。
 それからもう一点は、そもそもこの文書がマスコミその他に出てきた経緯にかんがみますと、ザイール日本通商代表部の元理事長が所持しておったものを朝日新聞の方に出した、その旨の報道が本年の三月十一日にあったということでございますので、何ゆえにそこの元理事長がこれを持っておるのかということになりますと、かえって出されなかったのではないかという憶測を私どもは持っておる、こういうことでございます。
木島委員 法務省の本省の入管行政に関与していた者、また当該東京入管局の局長、次長、審査監理官という上級官僚からの調査はしていないという明確な答弁がありました。調査はずさんだと私は思います。
 必要が認められないと今局長は答弁をいたしましたが、私は、このときの在留資格変更がおかしいのではないかという指摘は、何も同日付の鈴木宗男作成名義に係る文書のコピーが出回っているという問題だけを指摘したわけじゃないんです。公用の旅券も持っていなかった、そして、当時の大使館の勤務員であるという口上書の接受を日本の外務省はしていないんだ、そういう身分の者に対して、公用の在留資格が付与され、そして、デュアリングミッションという在留期間、もう特権ですよ、こういうものが付与されたことに根本的な疑問を提起したわけです。
 常識的に、私も入管行政をよく承知しておりますし、幾つかいろいろかかわったこともありますが、政治家からこういう問題が指摘をされますと、日本の入管行政、まことに不透明なところがありまして、これはもう通常の東京入管局の担当審査官が審査する事項じゃないんですよ。本省の入管局の幹部、そういう者がかかわってくるんですよ、在留資格の問題については。だから、そこを調査しなければ、どんな形で鈴木宗男議員が関与したのかしないのか、真相は出てこないということを私は前回指摘したんですよ。
 法務大臣、どうですか。こんな調査では真相は出やしないじゃないですか。いや、大臣。入管局長、答弁はもういいです。大臣、調査は不十分じゃないですか。当時の本省入管局の幹部、そして、東京入管局長、次長、一番偉い審査官、その調査をきちっとして、この関係をここに明らかにすべきじゃないですか。大臣、どうですか。
森山国務大臣 この調査は非常に大がかりに、徹底的にやったつもりでございます。
 三月二十二日、二十五日及び二十六日の三日間にわたりまして、東京入国管理局職員延べ四十八人を動員いたしまして、東京入国管理局本局及び同局の文書が保管されている立川出張所の倉庫などにおきまして調査を実施いたしましたと報告を受けております。
 入国管理局におきまして、公用への在留資格変更許可申請書類については、その在留期間の更新がないのでこれを利用することはございませんので、別途一括保管してありまして、平成十二年一月に、本件ムルアカ氏に係る申請書類も、保存期間の二分の一以上を経過しまして、保存の必要がない文書と認められたことから、東京入国管理局長の決裁を経て、東京入国管理局文書取扱細則により廃棄されたという報告を受けました。
 そのとき廃棄された文書の分量は、段ボール箱千二百箱分の文書だったというような報告もございました。
 そのようなことで、徹底的に調査をいたしましたのでございますが、当時の担当の首席審査官、統括審査官、上席審査官から、本件については、鈴木議員等からの関与があったという事実は確認されませんで、適正に処理がなされたと認められるというような報告を受けているわけでございます。
木島委員 大がかりで多数の者から調査したと答弁されましたが、私が提起しているのは、政治家が絡んでいるんじゃないかという指摘です。この種の問題で政治家が絡めば、その在留資格を付与すべきかどうかについては、本省の幹部、また東京入管局でも局長、次長、上級審査官、そういうトップの者が判断するんじゃないかと私は指摘しているんで、たくさんの者から調査したと言うけれども、肝心かなめのその人たちからの調査をしていない。さっき局長が答弁したとおりで、これはまことに調査はずさんだ、引き続きそういう立場にある者から徹底した調査をしてもらいたいということだけきょうは求めておきまして、次の問題に進みます。
 第二は、九九年二月の鈴木官房副長官の要請で、ムルアカ氏の公用在留資格で私設秘書などの活動ができるよう、法務、外務両省局長間の交渉が行われた件についてであります。前回の法務委員会で私は指摘をいたしました。文書も皆さんに配付をいたしました。
 九九年二月十七日、外務省天江中近東アフリカ局長が、ムルアカ氏の活動に関する相談と題する、そういう趣旨の文書を持参いたしまして、当時の法務省竹中入管局長を訪問し、ムルアカ氏が公用の在留資格を保持したままで、白鴎大学等での講義や、鈴木副長官の私設秘書として活動をして、少ないけれども収入を得ている、こういう事実を認めてほしい、こういう相談であったわけであります。
 このいきさつについて、外務省にまず聞きますが、この間、外務省は当時の天江中近東アフリカ局長から詳しい事情聴取をしておりますか。
小田野政府参考人 御説明申し上げます。
 当時の中近東アフリカ局長でありました天江局長より累次事情をお聞きいたしました。
 それから、今、委員の方から、冒頭、鈴木議員の依頼によってというふうな御発言がございましたが、ムルアカ氏よりの依頼に関しましては、鈴木議員の関与があったとは承知しておりません。
木島委員 前回も、私の質問に対して、相談はムルアカ氏からあったと。しかし、竹中入管局長から知恵を受けて、報告は鈴木官房副長官にしたという答弁がここで出たわけであります。
 そのことを前提にして、前回配付しました「ジョン・ムウェテ・ムルアカ氏の活動に関する相談」、その文書はだれが作成したんですか、外務省。
小田野政府参考人 当時の天江局長の指示によりまして、担当者がタイプを打ったというふうに承知しております。それですので、実際に書きましたのは別でございますが、中身そのものにつきましては、天江当時の中近東アフリカ局長でございます。
木島委員 はっきりしない答弁ですが、この文書は全部天江局長の指示でつくらせた、そう聞いていいですね。
小田野政府参考人 私どももそういうふうに承知しております。
木島委員 文書を読みますと、ムルアカ氏が公用の在留資格を持ちながら種々の収入を得る活動をしてきたことが具体的に書かれております。四つ指摘されております。
 (イ)コンゴー民主共和国通商代表部代表としての種々の活動。
 (ロ)栃木県の白鴎大学で六ヶ月の契約で非常勤講師として週に一回アフリカ関係論に関する講義(講演)。
 (ハ)鈴木内閣官房副長官の私設秘書としての活動。
 (ニ)東京電気大学で電気工学に関する研究。
 なお、上記(ロ)及び(ハ)については報酬を受け取っている由。白鴎大学からは月四万五千円受領しており、私設秘書としての収入は一定してない由。同人に依れば税金もきちんと払っている由。
このような記載がございます。
 そこで、法務省に入管法の基本原則をお聞きいたします。
 本人は、当時、公用の在留資格でありました。公用の在留資格では、入管法で資格外活動の許可がなければこのような種々の収入を得る活動はできない、そういう基本原則である。間違いございませんか。
中尾政府参考人 そのとおりでございます。
木島委員 資格外活動の許可を法務省入管当局から得ないでこういう活動をすれば、入管法上は違法な活動になるわけであります。
 そこで、外務省にお聞きをいたします。
 入管法上違法な活動をしていた。まさに外務省の中近東アフリカ局長が書いた文書にもろに書き込まれた。本当にひどい話でありますが、これは、入管法上違法な活動のみならず、外国政府の公用在留資格を持った人物が日本の官房副長官の私設秘書活動をしていた。今は日本はコンゴ民主共和国に対してはODAはとまっておりますが、いろいろなODAその他の関係があった国、二国間関係であります。これは明らかに、そのこと自体、二つの国の利益を代表する、利益相反にもなるでしょう。そのこと自体許されないことじゃないかと私は思いますが、外務省、どうでしょうか。
小田野政府参考人 御説明いたします。
 まず、外務省は、現行の法制度のもとでは、本人がどのような旅券を持っているか、あるいはどのような在留資格であるかというのは、一義的にはわからない、把握することのできないような状況になっております。
 その中で、鈴木議員がムルアカ氏を私設秘書として雇用したわけでございますけれども、これについては、まさに雇用主がどのような人物を雇うかということについては、第一義的に鈴木議員の側の御判断であったというふうに承知しております。
木島委員 とんでもない答弁じゃないですか。外務省の中近東アフリカ局長がつくった文書で、前回の質疑応答の中で、これはムルアカ氏からの陳述でつくったというのは推測できますよ。外務省の中近東アフリカ局長がつくった文書の中に、このムルアカ氏はコンゴ民主共和国の通商代表部の代表であると同時に鈴木官房副長官の私設秘書だと書き込んでいるじゃないですか。そんなの、外務省がどんな旅券を持った人物かつかめないなんという答弁では、答弁にならぬじゃないですか。
 利益相反じゃないですか。今の時点でもいいですよ。外国の東京にある在日大使館の勤務員か、公用としての在留資格を持って公務に従事する者ですよ。その者の地位と、日本の政治家、官房副長官の私設秘書という地位は両立しないものだ、そういう立場に外務省は立てないのですか。まことに異常な外務省の姿勢ですよ。そんなことだったら笑い物になるんじゃないですか。
小田野政府参考人 まず第一に、ムルアカ氏が在留資格につきまして相談に参りました際に、天江局長よりムルアカ氏に対しましては、出入国管理及び難民認定法によれば、資格外活動を行う場合には法律違反になる可能性があると指摘したというふうに承知しております。
 それから、二番目でございますけれども、ムルアカ氏が、当時の中近東アフリカ局長に対しまして、大使館に勤務しているというふうに述べておりまして、それが今のメモのところにも書いてございます。
 したがいまして、ムルアカ氏が鈴木議員の私設秘書や大学講師という職務を兼職し報酬を得ていることと、それから、外交関係に関するウィーン条約の第四十二条によって禁じられている、本人の申し立てで言う大使館に勤務しているという部分でございますが、外交官の個人的な利得を目的とする職業活動及び商業活動との関係について、当然のことながら同局長としては疑問を抱いてしかるべきであったと考えます。同局長がこの点を何ら問題視しなかったということは、認識が足らなかったと言わざるを得ないと思います。
木島委員 今答弁で認めましたが、この文書に、彼は公用の在留資格を取得していると書いてあるのです。公用の在留資格というのは、入管法を知っていれば常識です、コンゴ政府のために公務に従事する者なんですよ。それが日本の官房副長官の私設秘書と両立するはずがないのです。今、最後にようやく認めましたがね。
 それでは、続いて聞きます。
 天江局長はなぜ、入管法上も違法だ、そして両国関係の間でも外交関係でも異常なこういう状態を是正するんじゃなくて、何で逆に便宜を図るような行動をとったのか、調査しておりますか。調査結果を報告してください。
小田野政府参考人 当時の中近東アフリカ局長が法務省に対しましてこのような照会を行った背景には、ムルアカ氏が我が国とアフリカ諸国の草の根レベルの友好関係の促進に活発な活動を行っているというふうに同局長が認識していたということがあったと承知しております。
木島委員 そんな程度の活動をした者に対してこんな便宜を与えるのですか。
 ことしの三月に外務省が、コンゴ民主共和国政府から伝えられた事実として、重大な事実を発表いたしました。今ムルアカ氏が持っている外交旅券は偽造だ、そして、彼が当時持っていた公用旅券は、九八年十二月以降流通を終えており、もはや有効ではない、これがコンゴ民主共和国政府から外務省に伝えられた内容であります。
 そうすると、九八年十二月以降、彼が持っていた公用旅券というのはもう有効ではない、流通を終えているということが今明るみに出されたわけであります。九九年二月の時期というのは、この前後関係で言えば、もう有効な公用旅券ではないというその後ですね。
 もう一つ言いましょう。
 この二〇〇〇年以降、実は、コンゴ民主共和国の在東京の大使館の臨時代理大使の地位をめぐって、一方のンガンバニもとの臨時代理大使と、そして新しく任命をされてきたングウェイ、そしてその後のムキシ氏と、物すごい権力闘争が行われ、かぎをどっちがとるかとか、入居を認める、認めない、大変な紛争が二〇〇〇年に発生しているのです。その紛争に対して、もう事実は外務委員会等で明らかでありますが、鈴木宗男氏もこのムルアカ氏も、当時の外務省の一部幹部と一緒になってンガンバニ氏の側について、ングウェイ氏やムキシ氏の大使としての地位を、臨時代理大使としての地位を妨害する物すごい内政干渉、国際的に恥ずかしいような、片割れについて内政干渉を翌年二〇〇〇年から始めているのですよ。その前の年の出来事ですね。だから、私は、これは重大な問題だということを改めて指摘しているわけであります。
 今の外務省の局長の、そんな程度の活動でこの人物に便宜を図るなんということは、到底理解できないことを当時の外務省はやったということを指摘しておきたいと思います。
 法務省に聞きます。
 前回、三月二十日に皆さんにお渡しした私の資料によりますと、文書に書いてあること自体が入管法違反ですから、本来、竹中当時の入管局長は、これは違法だ、そのことを指摘して、その違法に対する法的措置を速やかにとるのが法務省としてのとるべき態度ではなかったでしょうか。今から振り返ってみてどうでしょうか。
中尾政府参考人 御質問の点にお答え申し上げます。
 今から振り返って当時の対応がどうかということでございます。冷静に考えてみればやや厳正さを欠いたかなという印象は持っておりますけれども、ただ、これは非常に難しい問題がございまして、当時、ムルアカ氏が日本人の女性と婚姻をして、日本人配偶者等としての実態を有しておりますので、日本人配偶者として申請をすれば間違いなくその資格が与えられ、しかも、その活動自体が制約のない活動ができるということでございますので、そういった事情もありますと、ややその辺のところも考慮されたのではないかというふうに考えます。
木島委員 おかしな話ですよね。そんな、日本人配偶者がいるなんということは、この文書には何にも書いていないんです。何でそんな便宜を図るためにいろいろな知恵を当時の入管局長がしたのか。そのこと自体がまことに異常だ。この書いてあること、文書そのものの中に違法なことが書いてあるんですよ、本来活動ができない資格外活動をしていたということですからね。その違法是正措置を全くとらないで、日本人妻がいるから何か便宜を図れそうだなんて、そんな態度を当時の入管局長がしていたということ自体がこの問題の異常さを浮き彫りにしていると私は指摘します。
 それじゃ、続いて、時間が迫っておりますが、当時、入管局長はどんな回答を天江中近東アフリカ局長にしたんですか。結論だけ答えてください。
中尾政府参考人 お答え申し上げます。
 これは、竹中局長と天江局長のバイの話でございましたので、当時、竹中局長の方から検討方指示を受けた担当者が、まず竹中局長に対しまして、ムルアカ氏の、通商代表部の代表、大学の非常勤講師、私設秘書としての活動が、同人の現に有する在留資格、公用の活動の遂行に当たりその妨げにならないことが口上書等によって立証された場合には資格外活動の許可を与えることができるが、これが立証されない場合には、当時同人が日本人と婚姻した実態があることから、日本人配偶者等の在留資格への変更申請が可能である旨報告したものと承知しておりますし、その後、同局長から担当者に話がなかったことから、担当者といたしましては、竹中局長から天江局長に対して、担当者が報告した内容どおりの回答が行われるものと理解していたと承知しております。
木島委員 そこで、じゃ、外務省に聞きます。
 前回私の質問に対して、天江局長は法務省からの回答に関して、九九年三月一日、鈴木官房副長官に報告したと答弁をいたしました。しかし、どんな説明をしたか今確認中だというのが、前回、三月二十日のここでの外務省の答弁でした。調査しましたか。そして、その結果どんな報告をしたんですか。答弁願います。
小田野政府参考人 ムルアカ氏の在留資格の問題につきまして、九九年三月一日、外務省の当時の中近東アフリカ局長より鈴木内閣官房副長官に対しまして行った説明の内容については、当時の関係者であります中近東アフリカ局長、アフリカ第一課長、その他当省関係者から累次にわたりまして聴取を行いました。
 その結果、これら関係者の記憶はいずれも極めてあいまいでありまして、鈴木副長官に対する説明の内容及び副長官の反応等の具体的なやりとりについて、外務省として事実関係を確定するには至りませんでした。
木島委員 非常に大事な、根本的に大事な肝心のところがあいまいで、いまだにまともな答弁ができません。引き続き、きちんとした調査を当時の天江局長に対してやっていただきたい。
 最後に一点、質問だけします。
 外務省は、本年三月十二日、先ほど言いましたように、ムルアカ氏のために作成された外交旅券D一三一二八八、これは偽造文書であるとコンゴ民主共和国政府から伝えられた。そしてまた、その前の公用旅券の方は一九九八年にはもう失効していたという事実も伝えられたわけであります。外務省が文書を発表しております。
 そこで、私の調査によりますと、ムルアカ氏は、二〇〇〇年三月までにはもう失効しているということでありますが、失効した二〇〇〇年三月一日以降、四回にわたって再入国許可の手続をとり、出国、入国をしております。一、二〇〇〇年三月十五日、二、二〇〇〇年十月六日、三、二〇〇一年八月三十一日、四、二〇〇二年一月十七日、これは出国であります、その後に、当時、再入国しているんですが。
 このとき、この再入国許可申請手続で使われた旅券は、外務省が先日コンゴ民主共和国から伝えられたいわゆるD一三一二八八の偽造と指摘されたパスポートであると思われますが、その事実は間違いないでしょうか。これは法務省。
中尾政府参考人 お答え申し上げます。
 委員から御質問いただいたムルアカ氏の再入国の事実はあるということは、四回あるということは承知しております。
 その際に使用されたパスポートの関係ですが、Dの一三一二八八が使用されたというものについては二〇〇〇年十月以降のものでありまして、二〇〇〇年三月のものはそれ以外のものであります。
木島委員 では、一回だけは別にしてもいいでしょう。私の調べでは四回ですが、今の答弁は、十月以降というと三回、二〇〇〇年十月六日、二〇〇一年八月三十一日、二〇〇二年一月十七日。
 いずれにしろ、相手国政府、発行権限を持っている政府が偽造だと指摘して通知してきた旅券が使われて再入国手続が行われた。そうなると、この再入国許可手続、これは入管法上違法になりませんか。そして、彼は今、日本に在留しているわけですが、彼の日本の在留資格も入管法上は違法になりませんか。それが偽造のパスポートだとなったら違法になりませんか。法的関係を教えてください。
中尾政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほどちょっと私勘違いして、四回とも委員御指摘のとおりD一三一二八八でございます。
 それから、次の点の法的評価の関係についてお答え申し上げます。
 この点につきましては、これは一般論で申し上げることにならざるを得ないんですが、仮に偽造旅券であって、その偽造旅券を行使して本邦に入国したということが判明した場合には、それは不法入国ということになります。したがいまして、不法入国になりますと、当該上陸許可は取り消されるということになります。
木島委員 時間ですからもう終わりますが、今、一般論として答弁されました。しかし、既にこれは一般論では済まない状況になっているんです。それは、民主共和国政府から日本の外務省に対してこれは偽造であるという通告があり、外務省はその旨法務省に伝えているはずです。相手国政府、発給権限を持った政府が偽造だと言っているんですから、具体的などういう形態での偽造だったのかは調査する必要があるでしょう、しかし、相手国政府のその通告には拘束されるはずです、日本の外務省も法務省も。
 ですから、少なくとも彼の今の在留資格、再入国許可手続に関して、法務省入管当局としては、彼から事情聴取をし、そして、違法であれば法的措置をきちっととるべきだと私は思いますが、答弁を求めて質問を終わります。
中尾政府参考人 お答えを申し上げます。
 この関係につきましては、既に私どもの方で、委員御指摘の点も含めまして、所要の調査を進めているところでございます。
 一点申し上げたいのは、コンゴ民主共和国の口上書の方で偽造だというふうにされている点でございますけれども、これは原文自体がフォードキュマということで、フランス語でフォードキュマというのを偽造文書ということで訳した上で私どもがいただいておりますけれども、フォードキュマの解釈として、法的な偽造だけじゃなくてそれ以外のものも含むと一般に言われているところでございますので、その根拠等につきまして、外務省を通じまして調査を今鋭意していただいているところで、御理解賜りたいと思います。
木島委員 法務省、外務省、きょうの質問、答弁でも、調査が不十分だということはもう明らかだと思うんです。私が指摘した問題について、引き続き徹底した、当事者、関係者から調査をしていただきたい。特にこの問題は、鈴木宗男当時の議員、また鈴木宗男官房副長官の関与が根本問題ですから、その問題について徹底した調査をされ、当委員会に報告されるよう心から要望いたしまして、質問を終わります。
園田委員長 大島令子君。
大島(令)委員 社会民主党・市民連合の大島令子でございます。
 私は、きょうは、死刑制度を強く廃止したいという一念から質問をさせていただきます。きょう、山花委員も死刑制度廃止という観点で御質問されました。私もまた同じ立場から、議員連盟の一員として質問をいたします。
 まず、政府参考人にお伺いいたしますけれども、確定死刑囚のだれを処刑するかということについてだれが決めるのか、また、それはどのような基準に基づいているのかお伺いいたします。
古田政府参考人 委員御案内のとおり、死刑の判決が確定いたしましたときは、その死刑の当該判決の執行をすべき責務があるわけでございますが、死刑の判決の場合にはその執行までどういう手続を踏むかということを申し上げますと、死刑の判決が確定いたしました場合には、関係検察庁から死刑の執行に関する上申がございます。そして、その場合に、確定記録を取り寄せまして、省内関係部局におきまして判決及び確定記録の内容を精査いたしまして、刑の執行停止をすべき事由、あるいは再審、非常上告の事由、さらには恩赦を相当とする情状の有無、そういうものがないかというふうな点について慎重に検討をした上、こういうふうな事由がないと認められた場合に法務大臣が死刑の執行命令を発するという手順になっている次第です。
大島(令)委員 質問に対して答えてください。だれが決めるのかということと、どのような基準でということを聞いております。もう一度お願いします。
古田政府参考人 先ほど申し上げましたとおり、死刑の執行命令は、これは法務大臣がすることとなっているわけでございます。
 また、基準というお話でございますが、これも先ほど申し上げましたが、死刑の判決が確定した場合には、当該判決の執行をすべき責務ということが法務大臣に定められているわけでございます。
大島(令)委員 では、大臣に伺います。昨年十二月二十七日に二名の方が処刑されましたけれども、その二人の方を大臣が、この人この人と言って選んで、判を押したのですか。
森山国務大臣 死刑確定者の名前が全員示されまして、その中で、今刑事局長が御説明申し上げましたようなさまざまな検討するべき事項がまだ未解決といいますか、まだ残っているという人がおります。そういう人は除外いたしまして、あとは死刑の確定の順序に従って決めていくわけでございます。
大島(令)委員 それでは、時期について伺いますけれども、いつ執行するのかというのはだれが決めるのでしょうか。
古田政府参考人 いつという、お尋ねの趣旨は必ずしも明らかではございませんけれども、先ほど申し上げましたとおり、さまざまな角度から検討いたしまして、死刑の執行を判決どおりにすべき事案であるという判断がなされた場合に、執行命令の発出を法務大臣がするということになるわけでございます。
大島(令)委員 もう一度、古田刑事局長に伺います。執行日を選定するのは、だれがどのような基準に基づいてされているのか、御答弁ください。
    〔委員長退席、山本(有)委員長代理着席〕
古田政府参考人 先ほど申し上げましたとおり、さまざまな検討を経て死刑の執行命令が発出される。その場合には、刑事訴訟法上五日以内に執行するべきこととされておりますので、そういうことによって決まっていくということでございます。
大島(令)委員 国家が人の命を奪うというのに、さまざまな検討という答弁はないでしょう、国会の場で。ここに六法全書を持ってきました。このどこに書いてあるか、刑事局長、示してください。
古田政府参考人 もう一度繰り返して申し上げますと、刑の執行停止事由があるかないか、再審、非常上告の事由があるかないか、あるいは恩赦を相当とする情状があるかないかという点について検討するということでございます。
大島(令)委員 昨年、十二月二十七日という仕事納めの前日に異例の二名の確定者を執行しました。もしこれがなければ、昨年一年間は死刑の執行がゼロという年になるはずでした。にもかかわらず、過去の統計から見ますと異例なんですね、なぜ仕事納めの前の日という異例な日に執行日を決めたのか。
 大臣から命令書が届いて五日以内にというふうに聞いておりますけれども、それはだれが決めたのか、お答えください。
古田政府参考人 先ほどから申し上げておりますとおり、五日以内ということが法律上の要件でございます。したがいまして、実際に執行をする現場であります拘置所その他の執行の準備が整い次第ということでございます。
大島(令)委員 私は、執行後の一月十五日に名古屋拘置所の所長に会ってまいりました。そのときの拘置所長の答弁では、自分の意思ではなく、直接の命令権者は法務大臣なのでお答えしかねるということで、一切拘置所長の判断で執行に関しては何も決められないと言っておられました。もう一度答弁をお願いします。
    〔山本(有)委員長代理退席、委員長着席〕
古田政府参考人 繰り返しの御説明になりますけれども、法務大臣の執行命令が発出されてから五日以内ということでございます。
 したがいまして、執行をすべきかどうかということについて、もとより拘置所の所長の裁量等はないわけでございますが、その期間内のいつ執行するかということは、執行の準備等々の準備の期間を考慮して決められるということでございます。
大島(令)委員 もう一度伺います。
 これは国会の法務委員会の場です。刑事局長、死刑確定囚といえども、国家が人の命を奪うということに関しまして、執行対象者ですとか執行日を選定する基準を国会に示せないということはないでしょう。もう一度答えてください。
古田政府参考人 御指摘のとおり、人の命を奪うという非常に厳粛な重い刑の執行でございますので、もとより慎重にも慎重を期してやっているわけでございますが、先ほどから申し上げていますとおり、死刑の判決が確定した以上、当該判決の執行の責務というのがあるわけでございまして、その上にもさらに慎重な検討を経て、死刑の執行について問題がないという判断に至った場合に、死刑の執行に関する命令を大臣の方で発出される、こういう仕組みになっておりますので、ただいま申し上げました時期とかそういう部分につきましても、要するにそういうふうな問題がないということについての判断を経て、その時点でということになるわけでございます。
大島(令)委員 今の答弁では、基準を示せないということは、毎年必ず執行するというアリバイつくりにしか思われません。政治的な判断で、昨年、死刑を執行ゼロという年をつくられないための、そういうふうにしか私には受けとめられません。
 次に、大臣に伺います。
 刑事訴訟法の四百七十二条で、死刑以外の刑罰は検察官の指揮のもとに行われると書いてありますけれども、唯一、死刑のみが法務大臣の命令によって執行することになっております。この重みについて大臣はどう受けとめておられますか。
森山国務大臣 それは先生がたびたび強調しておられますように、人の命を絶つという大変重大な刑罰の実行でございますので特別に慎重を期すということを、この法律にあるいはこの取り決めに意味を持たせているというふうに思います。慎重の上にも慎重を重ねまして、検討し、その上で最終的に決定するということでございます。
大島(令)委員 大臣に伺います。
 では、昨年十二月二十七日、名古屋で処刑されました死刑囚の何を知った上で、何を慎重に慎重に審議した上で執行命令書に判を押したのか、教えてください。
森山国務大臣 死刑が確定するまでのさまざまな裁判、あるいは訴訟のプロセスにおける審議の様子、そして訴訟の控訴、上告を重ねて慎重に決定された、最終的に死刑もやむを得ないという判断を裁判所が下されたこと、そして、もちろんその対象になった重大な犯罪の内容等についていろいろと検討をいたしまして、そのほか、先ほど刑事局長が申し上げましたように、刑の執行停止とか再審あるいは非常上告の事由の有無、恩赦を相当とする情状の有無等につきまして検討を重ねた上で決めたわけでございます。
大島(令)委員 大臣に伺います。
 検討には何日ぐらい要しましたか。
森山国務大臣 もちろん、今申し上げたことをすべて私が一人でやったわけではございませんで、このことにかかわっております担当の人々が検討を重ね、私も数日考えさせていただきました。
大島(令)委員 大臣、この写真を見てください。あなたが判を押して処刑された人の絞首刑の写真でございます。
 単に判を押したのではなく、自分の手を汚さずに、この写真の現実があるわけなんです。絞首刑の現実というのはこうなんです。私が大臣に、六月四日、就任して初めて議員連盟の一員としてお会いしましたときに、刑場を私は見たことがないとおっしゃいましたね。私もまた見たことがございません。しかし、現実に名古屋拘置所の刑場で私たちが引き取った遺体の首はこうだったんです。
 大臣、御自分の押した判がこういう結果になるということを私はお示しさせていただいておりますけれども、今この写真を見ての感想を述べてください。
森山国務大臣 法務大臣の責任上そのような決定をしなければならなかったということは、大変大きな重い意味があるということをかねて思ってはおりましたが、今写真をお示しいただきまして、さらにその思いを深くいたしております。
大島(令)委員 確定死刑囚も、当日の朝初めて自分がきょう執行されるということを知りました。また、処刑に携わる刑務官の人も、出勤拒否をしたらいけないということで、当日の朝告げられるということで、執行する人にも精神的な負担を強いることがこの処刑の現実でございます。
 そこで、大臣に伺います。
 刑務所職員の募集案内及び服務規定には、死刑執行の職責があることが明記されていますか、いませんか。
森山国務大臣 私は、その募集要項を見ておりませんので、承知しておりません。
大島(令)委員 政府参考人でも結構です、お答えください。
古田政府参考人 矯正局で行っております募集要項について、私自身も承知しておりませんので、お答えを差し控えます。
大島(令)委員 憲法三十六条、もう既にどなたも御存じだと思いますけれども、「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる」と。憲法ということで広く知れ渡っておりますけれども、私は、名古屋拘置所で昨年十二月二十七日に処刑された死刑囚の遺体を見て初めて残虐な刑罰であるということを感じました。
 ここに、法医学者が、「死刑による肉体の破壊」ということで文章を書いております。
 死刑の執行が肉体に及ぼす影響もまた甚大である。その様子は、「がくりと首を折り、飛び出した眼球。人によっては鼻血を吹き散らし、口からは舌とともに白いような粘液を吐いてこときれている死刑囚。つい二十分足らず前には、自分の足で処刑されるべく歩いていた一個の人間。ひとつの生命体が、こんな無惨な変わり果てた姿になって、だらりと吊るされている」と報告されているとおり、目を覆うような凄惨な状況を露呈し、仮に瞬時に死刑確定者が意識を喪失するものであったとしても、これが過酷な肉体的苦痛や熾烈な肉体損壊をもたらすものであることは否定できない。
 ちなみに、法医学者は、死刑屍について「顔面は淡紫紅色を呈し、鼻翼を圧するに右鼻孔から汚穢淡褐色でやや希薄なる液をもらし、死体の位置を動かす毎に口腔から前記同様の液をもらす。舌尖」舌のことですが、「舌尖は歯列の間に挟まれて歯の痕がある。頸部臓器は、甲状軟骨の上部で皮下組織を残して殆んど全く破断せられ、胸骨舌骨筋、扁甲舌骨筋、甲状舌骨筋、中舌骨甲状靭帯は離断せられ、甲状軟骨は上切痕から下方に向かって破砕し、左右径六センチメートル、上下径二・五センチメートル、前後径四センチメートルの空洞を形成する。」首の中が空洞ということでございます。
 「左右の胸鎖乳様筋の上部に約扁桃大の筋肉間出血があり、咽後結締組織間に約しゅけん大の組織間凝固を認むる」として、十四例の死刑屍の解剖所見からこの法医学者はこのように述べています。「死刑屍の頸部臓器は一般縊死の場合と異なり、広範なる範囲にわたりて断絶させられ、甲状軟骨体及びその上角並びに舌骨大角の骨折、筋肉の離断及び出血、頸動脈内膜の裂傷若しくは断裂、頸部脊椎の骨折等を認めた」ということで、絞首刑の執行に激しい肉体の損壊を指摘しております。
 今大臣がごらんになった写真も、縄の跡がここに見えました。私も、首が長く伸びているな、何でこんなに首が伸び切っているんだろうという写真を見まして、なるほど、法医学者のこの鑑定のとおりだなということを感じたわけなんです。
 仮に重大な事件を起こしたとしても、生きている人間を国家によって、特に大臣においては自分の手を汚さずしてこういう結果をもたらすということに関して、今の法医学者の所見を申し上げましたので、改めて、残虐な刑だということに関して、大臣の見解を伺います。
森山国務大臣 今のお話、よく承りました。非常に厳しいものだということが改めてよくわかりました。それだけに、慎重の上にも慎重を重ねてやらなければいけないということがさらに考えられたわけでございますが、そのような重大な死刑の判決を確定するというまでには、さまざまな人が慎重な検討の末、多くの場合、二審、三審を経て、最終的にほかにとるべき道がない、このような犯罪者の場合には、このような容疑者の場合には死刑しかほかに方法がないということを裁判官がお決めになったものでございます。
 そのようなプロセスを経て決められた死刑、それが確定いたしました者については、法務大臣の務めといたしまして、それを執行しなければいけないということでございまして、最高裁判所におきましても死刑は残虐な刑罰には当たらないという判断が何度も示されているところであり、法治国家の仕組みとしてこのような制度がある以上は、これを適切に実行していかなければいけないというふうに思います。
大島(令)委員 昨年四月十八日、私は、この昨年十二月二十七日に処刑された死刑囚の被害者の遺族と一緒に、高村前法務大臣に面会しました。
 高村法務大臣は、被害者の遺族がこの人を執行しないでくれと言っているんだから、まさか事務方が自分に書類を上げることはないでしょうということで、死刑の執行を見送りました。短期間の任期でございましたけれども、高村大臣は死刑を執行しなかったわけです。このときの被害者遺族の要望というものに関して大臣交代時の引き継ぎ事項に入っていたかどうか、お答えください。
森山国務大臣 高村前法務大臣と今おっしゃったような面会があったということは聞いておりましたけれども、その際に前大臣が、御指摘のように、遺族が望まなければ死刑を執行しないというような趣旨で発言なさったことはないというふうに承知しております。
 前大臣は、その際、死刑の判決は裁判所が慎重な審理を尽くした上で言い渡すものであり、法務大臣としては裁判所の判断を尊重しつつ、法の定めるところに従って慎重かつ厳正に対処すべきであって、被害者の遺族が死刑執行を望まないからといって死刑を執行できないということにはならないとまずお述べになった上で、遺族の御要望は死刑執行を判断する上での一つの要素として考慮され得るという趣旨をお述べになったというふうに承知しておりまして、いずれにいたしましても、引き継ぎ事項という項目として公式に上がってはおりませんでした。
大島(令)委員 執行の判断の材料となるということで、今の御答弁ですと、大臣がかわるごとにやはりその判断は個々の大臣にゆだねられるというふうに理解してよろしいわけですね。
森山国務大臣 あくまでも法治国家の法務大臣でございますので、法律に従ってその責任を果たすということにおいては基本的に変わりはないと思います。
大島(令)委員 韓国におきましては、昨年の十月末に、鄭大哲国会議員により死刑制度廃止法案が提出されました。三月には国会で公聴会も開催したと聞いております。
 韓国では、金大中大統領の政権になりまして、法律があるにもかかわらず執行していない。これはなぜだと大臣はお考えでしょうか。
森山国務大臣 韓国のことでございますので、私も具体的な国情あるいはその内閣の考え方等について詳しく承知しておりませんので、日本の法務大臣といたしましてはコメントを差し控えさせていただきたいと思います。
大島(令)委員 今、世界では、死刑廃止に向けたうねりが大きくなってきております。底上げ現象が起きているわけです。国会でも、私ども、亀井静香さんを会長にして死刑廃止議員連盟が今、死刑廃止法案を一生懸命つくっております。
 韓国においては、そして台湾においても、二〇〇四年までに廃止しようという動きがあります。アジアの中で、先進国ということで、文明国家を誇っている日本が韓国やアジアよりもおくれをとるというような状況が今まさにアジアの中から出ているわけなんですね。
 そういう意味で、私は大臣に、韓国では法律があっても執行していないわけですから、大臣の判断で判を押さなければいいわけですから、一時死刑執行を停止して、死刑制度というものを考えるそういう場を持っていただきたいと思うわけでございます。
 そこで、最後の質問になりますけれども、大臣はきょう、昨年十二月二十七日、名古屋拘置所で処刑された方の、絞首刑の跡を見ましたね。死刑囚というのは、やはり加害者の親族もまた離れていき、拘置所においては過酷な生活を強いられております。私ども、二十四時間以内に親族が遺体を引き取らないと、拘置所の中でだびに付され、無縁仏になると聞いております。幸いこの方は、実のお姉さんや義理のお姉さんがおりましたので、私も二十四時間以内に会うことができて、遺体を引き取り、私たちNGOのボランティアによって教会で通夜をやり、葬式を挙げ、だびに付すことができたわけなんです。こういう死刑囚は限られているわけでございます。
 文明国家を誇るのならば、森山大臣にぜひ、大臣が法務大臣である限りもう二度と執行しないでいただきたいとこの場でお約束をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
森山国務大臣 文明国家というのにはいろいろな定義があると思いますし、それぞれの国の事情、歴史的背景、文化、さまざまな条件がみんな違いますので、その国の政治のやり方あるいは行政の進め方もそれぞれ違うと思います。日本の場合は、まだ今のところ、国民の大多数、七、八割が死刑の存続ということをやむを得ないと考えておられますし、残念ながら凶悪、残虐な犯罪も減る方向ではございません。
 そのようなことを考えますと、法務大臣といたしましては、やはり法の秩序を守るということが必要であると思いますし、法治国家というのも文明国家の一つの必要な特性ではないかと思いますので、私は、法務大臣の務めといたしまして、法律に決められたことをまじめにやっていかなければいけないというふうに思っております。
大島(令)委員 八割支持しているという世論調査に関しまして、私もデータを持っておりますからきちっと述べたいわけでございますが、初めて法務委員会で質問させていただきますので、時間オーバーということなく、きょうはこれで終わりますけれども、また死刑廃止に関して議論をこの委員会の場で進めさせていただきたいことを申し上げて、質問を終わらせていただきます。
     ――――◇―――――
園田委員長 次に、内閣提出、司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 趣旨の説明を聴取いたします。森山法務大臣。
    ―――――――――――――
 司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
森山国務大臣 司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
 この法律案は、司法書士及び土地家屋調査士につき、規制改革における資格制度の見直しの観点から、事務所の法人化、資格試験制度及び懲戒手続の整備、資格者団体の会則記載事項の見直し等を行い、あわせて、司法書士については、国民の権利擁護の拡充及び司法書士の有する専門性の活用の観点から、司法制度改革の一環として、簡易裁判所における訴訟代理権等を付与することとし、もって国民生活の利便性の一層の向上を図ることを目的とするものであります。
 以下、法律案の内容につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 まず、司法書士及び土地家屋調査士に共通する事項であります。
 第一に、事務所の法人化を認めることとし、司法書士が司法書士法人を、土地家屋調査士が土地家屋調査士法人を設立することができることとしております。
 第二に、資格試験制度の整備といたしまして、筆記試験合格者に対する翌年度の試験における筆記試験の免除等の措置を講ずることとしております。
 第三に、懲戒手続の整備といたしまして、国民一般からの懲戒申し出制度の創設、懲戒処分の官報公告による公開等を行うこととしております。
 第四に、資格者団体の会則記載事項の見直しといたしまして、資格者間の公正な競争を活性化するため、報酬に関する事項を削除するとともに、研修、資格者情報の公開等に関する事項を追加することとしております。
 次に、司法書士に関する事項といたしまして、所定の研修の課程を修了し、かつ、法務大臣の認定を受けた司法書士は、簡易裁判所において、請求額が九十万円を超えない範囲の民事訴訟、民事調停等の手続について代理する業務を行うことができることとしております。
 以上が、この法律案の趣旨でございます。
 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに可決くださいますようお願いいたします。
園田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
園田委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
 ただいま議題となっております本案審査のため、来る九日火曜日午前十時三十分、参考人として日本司法書士会連合会会長北野聖造君、日本土地家屋調査士会連合会会長西本孔昭君及び日本弁護士連合会弁護士制度改革推進本部副本部長児玉憲夫君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
園田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 次回は、来る五日金曜日午前九時三十分理事会、午前九時四十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時七分散会


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