衆議院

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第12号 平成14年4月23日(火曜日)

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平成十四年四月二十三日(火曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 園田 博之君
   理事 佐藤 剛男君 理事 塩崎 恭久君
   理事 棚橋 泰文君 理事 山本 有二君
   理事 加藤 公一君 理事 平岡 秀夫君
   理事 西村 眞悟君
      太田 誠一君    左藤  章君
      笹川  堯君    下村 博文君
      鈴木 恒夫君    西田  司君
      林 省之介君    平沢 勝栄君
      保利 耕輔君    松島みどり君
      柳本 卓治君    山本 明彦君
      吉野 正芳君    岡田 克也君
      鎌田さゆり君    佐々木秀典君
      首藤 信彦君    中村 哲治君
      日野 市朗君    水島 広子君
      山花 郁夫君    石井 啓一君
      藤井 裕久君    木島日出夫君
      中林よし子君    植田 至紀君
      徳田 虎雄君
    …………………………………
   法務大臣         森山 眞弓君
   法務副大臣        横内 正明君
   法務大臣政務官      下村 博文君
   財務大臣政務官      吉田 幸弘君
   政府参考人
   (内閣官房内閣審議官)  伊藤 哲雄君
   政府参考人
   (警察庁警備局長)    漆間  巌君
   政府参考人
   (金融庁総務企画局長)  原口 恒和君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    古田 佑紀君
   政府参考人
   (法務省入国管理局長)  中尾  巧君
   政府参考人
   (公安調査庁長官)    書上由紀夫君
   政府参考人
   (外務省大臣官房領事移住
   部長)          小野 正昭君
   政府参考人
   (外務省アジア大洋州局長
   )            田中  均君
   政府参考人
   (財務省大臣官房審議官) 藤原 啓司君
   政府参考人
   (財務省国際局次長)   岩下  正君
   法務委員会専門員     横田 猛雄君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月二十三日
 辞任         補欠選任
  中川 昭一君     林 省之介君
  松島みどり君     山本 明彦君
  鎌田さゆり君     中村 哲治君
  不破 哲三君     中林よし子君
同日
 辞任         補欠選任
  林 省之介君     中川 昭一君
  山本 明彦君     松島みどり君
  中村 哲治君     首藤 信彦君
  中林よし子君     不破 哲三君
同日
 辞任         補欠選任
  首藤 信彦君     鎌田さゆり君
    ―――――――――――――
四月二十二日
 夫婦別姓制度の導入を図る民法改正反対に関する請願(伊吹文明君紹介)(第二〇五二号)
 同(石破茂君紹介)(第二〇五三号)
 同(小里貞利君紹介)(第二〇五四号)
 同(大野松茂君紹介)(第二〇五五号)
 同(木村義雄君紹介)(第二〇五六号)
 同(北村誠吾君紹介)(第二〇五七号)
 同(斉藤斗志二君紹介)(第二〇五八号)
 同(坂本剛二君紹介)(第二〇五九号)
 同(橘康太郎君紹介)(第二〇六〇号)
 同(棚橋泰文君紹介)(第二〇六一号)
 同(中本太衛君紹介)(第二〇六二号)
 同(中山太郎君紹介)(第二〇六三号)
 同(中山利生君紹介)(第二〇六四号)
 同(仲村正治君紹介)(第二〇六五号)
 同(葉梨信行君紹介)(第二〇六六号)
 同(蓮実進君紹介)(第二〇六七号)
 同(宮腰光寛君紹介)(第二〇六八号)
 同(森岡正宏君紹介)(第二〇六九号)
 同(谷津義男君紹介)(第二〇七〇号)
 同(保岡興治君紹介)(第二〇七一号)
 同(渡辺具能君紹介)(第二〇七二号)
 同(相沢英之君紹介)(第二一一二号)
 同(岩倉博文君紹介)(第二一一三号)
 同(大原一三君紹介)(第二一一四号)
 同(奥野誠亮君紹介)(第二一一五号)
 同(倉田雅年君紹介)(第二一一六号)
 同(古賀正浩君紹介)(第二一一七号)
 同(佐藤静雄君紹介)(第二一一八号)
 同(鈴木俊一君紹介)(第二一一九号)
 同(近岡理一郎君紹介)(第二一二〇号)
 同(中馬弘毅君紹介)(第二一二一号)
 同(中川昭一君紹介)(第二一二二号)
 同(中曽根康弘君紹介)(第二一二三号)
 同(西田司君紹介)(第二一二四号)
 同(西野あきら君紹介)(第二一二五号)
 同(野呂田芳成君紹介)(第二一二六号)
 同(萩野浩基君紹介)(第二一二七号)
 同(林幹雄君紹介)(第二一二八号)
 同(菱田嘉明君紹介)(第二一二九号)
 同(平井卓也君紹介)(第二一三〇号)
 同(平林鴻三君紹介)(第二一三一号)
 同(福井照君紹介)(第二一三二号)
 同(藤波孝生君紹介)(第二一三三号)
 同(堀之内久男君紹介)(第二一三四号)
 同(牧野隆守君紹介)(第二一三五号)
 同(三ッ林隆志君紹介)(第二一三六号)
 同(山本公一君紹介)(第二一三七号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律案(内閣提出第六一号)


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     ――――◇―――――
園田委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官伊藤哲雄君、警察庁警備局長漆間巌君、金融庁総務企画局長原口恒和君、法務省刑事局長古田佑紀君、入国管理局長中尾巧君、公安調査庁長官書上由紀夫君、外務省大臣官房領事移住部長小野正昭君、アジア大洋州局長田中均君、財務省大臣官房審議官藤原啓司君及び国際局次長岩下正君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
園田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
園田委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。平沢勝栄君。
平沢委員 おはようございます。自由民主党の平沢勝栄でございます。
 大臣にお聞きしたいんですけれども、まだ大臣お見えでございませんので、ほかの質問から先に入らせていただきたいと思いますけれども、時間が限られていますので、答弁の方は簡潔に要領よくお願いいたしたいと思います。
 最初にお聞きしたいと思うんですけれども、今月号の文芸春秋に元日本経済新聞の記者の杉嶋さんが、「私と北朝鮮「三つの約束」」という記事を書いております。この杉嶋さんという方は、二年数カ月北朝鮮に拘束されて最近釈放された方でございますけれども、この記事を読んでみますと、一言で言うと、内閣情報調査室、そして公安調査庁、そこにいろいろと情報を提供していた。写真やビデオや各種情報を、北朝鮮に行って帰ってきてから伝えていた。そうした公調や内調に伝えていた情報が北朝鮮側に筒抜けであった。
 一言で言えばそういったことがるる書かれているわけでございまして、日本の情報機関は、情報の収集も極めてお粗末というか、これからしっかりしていかなければならないなと思っておりますけれども、もっとしっかりしなきゃならないのは、情報の収集以上に、情報の管理、保全ということではないかなと思いますけれども、これについて、公安調査庁とそれから内調、簡単に答えてくれますか、どういうふうに考えておられるか。
書上政府参考人 我が国の公共の安全にかかわる情報が外部に漏えいするということは、絶対にあってはならないことと考えております。当庁としては、そのような情報を取り扱う業務に携わっておりますので、かかることがないよう厳重な管理に努めてきているところでございます。
 今委員の方から御指摘になりました件に関しましては、実名の手記でございますし、しかもそこの中で述べておられることが、当庁等の情報の漏えいがもとで拘束されたかのごとき主張でございますので、この問題は大変重大かつ深刻に受けとめて、現在全力を挙げて内部調査に努めているところでございます。全国的に情報の管理体制を総点検するとともに、該当部署につきましては、担当職員あるいは記録等を精査いたしまして、現在徹底した調査を進めているところでございますが、現在までのところ、言われているような情報の漏えいはなかったものと考えておるわけでございます。
 ただ、いずれにいたしましても、かかる疑念が生じたということについては大変遺憾なことでございますので、今後とも、この調査を契機に、なお一層情報の管理、保全に万全を期してまいりたい、かように考えている次第でございます。
伊藤政府参考人 内調といたしましては、内閣の重要施策に必要な情報収集、分析、そして報告するという重要な任務に携わっておりますので、その観点から、情報の管理、保全については万全の措置を講じており、当室の非公開情報が外部に及ぶことはないと承知しております。
平沢委員 私は杉嶋さんに直接お会いしていろいろとお話を伺ったんです。杉嶋さんの言っておられることが一〇〇%正しいとは私も思いません。しかしながら、公安調査庁あるいは内調と接触していた、そういった事実、そして、そこで提供した内容、それが北朝鮮側に漏れていたということについては正しいのではないかなという感じを、私も直接接触し、るるお話を伺って、そういう印象を持っております。
 ちなみに、杉嶋さんと接触したのは私だけじゃなくて、ジャーナリストの方も少なからずおられるわけですけれども、そうしたジャーナリストの方も、いろいろな観点からお聞きして、そういった印象を持っておられるようなんです。
 したがいまして、もちろん私の方は、杉嶋さんの言われていることを一〇〇%正しいと言うつもりはありませんけれども、杉嶋さんのお話では、取り調べの過程で、北朝鮮側の係官が、日本から毎日のように送られてくるEメールやファクスやそういった情報をいっぱい山積みのようにして取り調べを受けたということを言っておられるんです。もちろん、これは公調、内調だけじゃなくて、マスコミ関係者や、日本の中にいろいろと北朝鮮に情報を提供している人がいっぱいいるということでしょう。日本はスパイ天国ですから、そういうことなんでしょう。
 しかし、その中に公安調査庁あるいは内調の関係者がいないとも限らないわけでございまして、今、先ほど答弁がありましたように、これがもし事実ならば、今後公安調査庁や内調に情報を提供する人なんかいなくなりますよ。これはもう大変に深刻な、かつ重大な問題でございますので、その辺をしっかり受けとめて、今後万全の体制をとっていただきますようにお願いをいたしたいと思います。
 では次に、拉致の問題についてちょっとお聞きしたいと思います。
 北朝鮮との関係については、不審船の問題とか朝銀の問題とか、あるいはミサイルの問題、いろいろな問題がありまして、いずれもこれは重大、深刻な問題でございますけれども、とりわけ、そういう中で重要な、かつ深刻な問題は拉致問題でございまして、この拉致問題、最初に発生したのは一九七七年ですけれども、いまだなお結果を見ていない、解決をしていないわけでございまして、この間、我々も含めて、そして外務省も、関係当局全体で真剣にこの問題については反省しなければならないのではないかなと思っております。
 そういう中で、この前、全会一致で、衆参で日本人拉致疑惑の早期解決を求める決議というのがなされました。その中に「ご家族の方々の悲痛な叫びに、今あらためて心耳を傾け、この疑惑解決に真剣に取り組まなければならない。」ということも書いてあります。「国家主権並びに基本的人権・人道にも関わる極めて重大な問題である。」ということも書いてあります。「国民の生命・財産を守ることが国家としての基本的な義務であることに思いを至し、毅然たる態度により拉致疑惑の早期解決に取り組むべきである。」ということも書いてあります。
 当たり前のことでございますけれども、この決議が今回全会一致でなされたというのは、私は、遅きに失したという感はありますけれども、当然だろうと思います。かつては国会でも、拉致疑惑はあるかどうかわからないと言っていた党もあったわけですけれども、今回、全会一致でこうした決議がなされたということは、遅かった気はしますけれども、大きな前進ではないかなと私は思っております。
 私たちも今度、二十五日に、拉致された方々を救出するための新しい議員連盟を立ち上げる予定でございます。今までの議員連盟もありましたけれども、装いも新たに、新たな議員連盟を立ち上げまして、今度の議員連盟は、具体的に行動していきたい。単に国会の中だけで活動するのではなくて、国会の外に出て、場合によっては実力行使も辞さないで、徹底的に活動していきたい。外国の機関にも働きかけたい、国内のいろいろな機関にも働きかけをしたい。そういうことによって、一日も早いこの拉致被害者の救出のために私たちは努めていきたいということで考えているわけでございます。
 そういう中で、先日、参議院の外交防衛委員会で、被害者の御家族である横田さんの御両親、それから有本さんの御両親が御発言されておられますけれども、それを読んでみますと、例えば横田さんのお父さんはこういうことを言っています。要するに、まだ結果が出ていない、何もやってくれていないというふうに感じる面もある、ですから、我々家族は、救出のために、外務省に対して、拉致の進展がないまま米の支援を行わないでくれとか、政府に拉致に対する対策本部を設置してほしいとか、万景峰号をとめてくれとか、いろいろなことをお願いしてきた、何度も外務省や官邸に対してお願いしてきた、しかし、どういうわけか北朝鮮に関してはなかなかスムーズな動きができていない、こういうお話がありました。
 そして、有本さんのお父さんはこういうことを言っております。「この十四年間にわたった外務省の態度が私にはちょっと解せないのであります。今ここで外務省改革が大きく叫ばれておりますが、この外務省改革の中にも北朝鮮外交というものを一つ加えていただいて、外務省がこの十四年間にわたる北朝鮮外交を一応検証していただきたい、」こういうことも言っておられます。
 外務省のアジア局長、来ておられますけれども、対北朝鮮外交、今まで拉致問題にどういうふうに取り組んできたのか、この御家族の方の悲痛な叫びをどういうふうに受けとめておられるのか。ちょっとコメントをいただけますか。
田中政府参考人 私も、参議院の委員会で有本さん、それから横田さんの家族の御意見、聞いておりましたし、本件、まさに日本の国民の生命財産にかかわる問題でありますから、一刻も早く解決をしなければいけないというのは非常に強く私も思った次第でございます。
 これまでの北朝鮮外交がどうかということでございますけれども、私はこれまで、拉致の問題が明らかになってから、この問題をおろそかにしたということは絶対にないと思います。相手が北朝鮮ということで、どういう解決方法を探求すれば一番早期に解決ができるかということを、それぞれの時代において、外務省のみならず当時の政党も含めて、ベストな判断をしようというふうに思ってきたわけだと思います。ただ同時に、今委員が言われておりますように、明確な結果が出ていないということについては十分反省をすべきであろうというふうに思っております。
平沢委員 私は、長年外務省とこの問題でやり合ってきましたけれども、外務省がこの拉致問題に真剣に取り組んできたなという感じは受けないわけでございまして、かつて、田中さんじゃありませんけれども、前のアジア局長は御家族の方に何と言われたかというと、拉致問題の解決なくして日朝国交正常化はしないでほしいと言ったときに、何て答えられたかわかっていますか。当時のアジア局長は、世論が許せばそういうこともあり得るかもしれないけれども、世論が許すことはあり得ないからそんなことはあり得ないと答えているんですよ。
 今は、森前総理もそうですけれども、小泉さんも、拉致問題の解決なくして日朝国交正常化はあり得ないと言っていたんですけれども、当時のアジア局長は、拉致の御家族の方々に対して、世論が許さないから、拉致問題の解決なくして日朝国交正常化、そんなことはあり得ないということを言っておられたんですよ。世論じゃないんですよ。外務省が許さなかっただけじゃないですか。ですから、今の一生懸命取り組んできたというのは、私は、御家族の方も納得しないだろうと思いますし、国民の皆さんも納得しないんじゃないかなと思っております。
 ここに拉致問題について国際世論に訴える資料というのがあるんです。我々もこれからいろいろ国際世論に訴えていきたいと思うんですけれども、まず、自民党がつくったこのパンフレット。自民党がつくったパンフレットは、いろいろなことが書いてありまして、拉致問題というのは、要するに国民の生命財産を守ることが政府の最高の義務である、我々はこの問題の解決のためにあらゆる努力を払わなければならない、拉致問題の解決なくして日朝国交正常化はあり得ない等々、るるうたっているんです。そして、詳細に拉致事件の概要が書いてあるんです。これが自民党のパンフレット。
 次に、警察庁のホームページ。これは何て書いてあるかというと、北朝鮮に十一人の日本人が拉致された疑いがある、北朝鮮はなぜ日本人を拉致したのか、それは日本人を拉致して、その日本人に北朝鮮人が成り済まして、それで日本人に成りかわって活動するために日本人を拉致した、それが主な目的である。そして、どこから日本人を拉致したかという詳細なマップまでついて、そしてその詳細をるる書いたものをホームページで流しているんです。これが警察庁の英文のパンフレット。
 対して、外務省がつくったパンフレット。この前、私、川口外務大臣にお聞きしたら、外務省はパンフレットをつくっていないと。ところが、党の外交部会でお聞きしたら、田中さんは、つくっておられるということでお答えされたわけです。すぐ下さいと言ったら、いや、帰ってから相談なんというばかなことを言われているから、外国に渡しているものを相談するもヘチマも何もないだろうということで言ったら、やっと外務省が持ってきたのがこの資料なんです。
 この資料を見たら、何て書いてあるかというと、日本の警察庁は北朝鮮に拉致された疑いのある者が十一人いるとしていると言って、あと、十一人の概要が書いてあるだけなんです。自民党のパンフレットに比べ、そして警察庁のホームページに比べ、恐らく外国に渡しているということなんでしょう、外務省がつくったこのパンフレットというより、単なるファクトシートですよね、簡単な。一言で言えば、木で鼻をくくったようなファクトシートですけれども、この一つを見たって、外務省が拉致問題に本気になって取り組もうという姿勢は全く感じられないんですけれども、何でこんな、一言で言えば余りにもそっけないというか、お粗末な資料しかつくれないんですか、外務省は。それをちょっと答えてください。
田中政府参考人 私どもが諸外国との関係で御説明をするというか、まさにこの問題を解決していくために二つ大事だと思っているわけで、一つは、国際的な認知、国際的な認識を高めるということ。それは結果的には国際的な圧力につながるということだと思いますし、それは、米国との関係でも韓国との関係でもヨーロッパとの関係でも、非常に克明なやりとりの中でやっている。そのときにファクトシートとして基本的な事実関係を書いたものを紙として渡しているということであって、自民党がおつくりいただいたようなパンフレットとは性格が違うというふうに思います。
平沢委員 だからだめなんですよ。もうちょっと国際世論に訴えるような資料をつくるのが外務省として当たり前じゃないですか。この資料、もう一回言いますと、人ごとのようなんですよ。日本政府としてぜひこの拉致問題の解決に皆さん方の御協力をお願いするなんということは一言も書いていない、ほかのところは書いてありますけれども。要するに何て書いてあるかというと、日本の警察庁は十一人拉致疑惑があるということを言っている、ただそれだけのことなんです。人ごとのような形で書いてあるファクトシートなんです。こんなもの外国に配ったってしようがないじゃないですか。そうじゃなくて、もっと大変に深刻な問題だ、日本としてはこの問題の解決なくして日朝国交正常化はあり得ないと考えている、ぜひ諸外国の皆さん方の御理解と御協力をお願いしたいくらいのことをなぜ書けないんですか。
田中政府参考人 私どもが申し上げているのは、外交としてこの問題を解決しなければいけない、結果を出さなければいけないということであって、結果を出す唯一の方法というのは、北朝鮮との関係できちんと話をして解決をすることだと思います。その関係で……(平沢委員「いや、パンフレットのことを聞いているんですよ」と呼ぶ)それは、パンフレットというか、国民あるいは諸外国の国民に対して啓発するような種類の書類ではない、要するに外交交渉の一環として諸外国政府に話をするときに、こういうファクトですということを示す紙であります。
平沢委員 それなら、日本の警察庁じゃなくて、日本の政府がこういうことでという形で何で書けないんですか。人ごとのように、日本の警察庁はと。外務省は知りませんよともとれますよ、これは。ですから、日本の政府としてはということで何で書けないんですか。
田中政府参考人 私どもは、拉致の問題について警察当局が調査をされ、その判断に基づいて行動をしているということです。
平沢委員 今の答弁を聞いていると、やはり外務省というのは情けないというか、やる気のない役所だなという感じを強くしているんです。
 別な話題を聞かせていただきますけれども、おととしの十月の米支援。WFPからは十九万五千トンの支援要請があったんですけれども、最終的にこれは五十万トンになったわけでございます。当時、党の外交部会に出られておられた方もおられますけれども、私は、これはおかしいんじゃないかな、WFPの要請が十九万五千トン、なぜ五十万トンなんだということで、強く反対させていただいたわけです。もちろん党の中でも、当時の報道にもありますし、私も現場にいたからわかりますけれども、鈴木宗男さんが強くこれは五十万トンということで主張されたわけでございますけれども、外務省も同じように強くこの問題を五十万トンということで主張されたわけでございますけれども、先ほどの拉致の御家族の方々の発言にありますように、米支援するのはもうやめてほしい、拉致問題の解決なくしてという悲痛な叫びを上げておられるわけです。
 そういう中で、当時、五十万トンという、WFPの要請を上回る支援がなされたわけでございますけれども、なぜそういった形になったのか。そして、その当時、必ずこの五十万トンの支援については結果を出します、結果が出なければ責任をとりますというような発言もあったわけでございますけれども、おととしの十月の五十万トンの支援の結果が出たのかどうか、どういう進捗が見られたのか、それをちょっと教えてください。
田中政府参考人 私が承知しています当時の状況というのは、少なくともその年の残り及び昨年を通じ約八十八万トンの食糧が必要になるということで、日本の食糧支援の必要性ということで五十万トンということが政府で決定がされたということだと承知しております。
 この食糧支援というのは、まさに大きな意味で、北朝鮮の深刻な食糧不足を改善していくことがいろいろな意味で北朝鮮を国際社会にインボルブして懸案の解決をたやすくするという趣旨だったんだろうと思いますし、その結果を、直ちにどういう結果が出たかということを判断するのは早計ではないかというふうに思います。
平沢委員 だからだめなんですよ。このときに、必ず拉致問題を初めとした北朝鮮との関係で進捗が見られる、それについて責任をとるという話だったんです。ところが、その後何が起こったんですか。金正男が入ってき、不審船が来、そして行方不明者の調査が中止と、何にもいいことないじゃないですか。マイナスの方向にばかり行っているじゃないですか。だから私は、外務省にはもっとしっかりしてもらいたいなと思っております。
 大臣、お着きになられましたので、大臣お疲れさまでございます。次に大臣にちょっとお聞きをさせていただきたいと思いますけれども、まず、昨日、大阪高検の公安部長が詐欺などの容疑で逮捕されたわけでございまして、今、政と官に対するいろいろな不信が言われていますけれども、検察官というのは全国で千数百人しかおられませんし、不正を追及する機関ですから、いわばいろいろな機関の中で最も国民の信頼の厚い機関であることは私は間違いないだろうと思うんです。そこの現職の検事、しかも公安部長という最高幹部の一人が逮捕されたわけでございまして、国民の皆さんは、驚きというか信じられないという、要するに、検察庁おまえもかというような気持ちではないかなと思いますけれども、それについて大臣はどういうふうにお考えになられるでしょうか。
森山国務大臣 全くおっしゃるとおり言語道断なことでございまして、私といたしましては、驚くというか、あきれるというか、信じがたい思いでございました。
 しかし、相当の事実がありましてあのような状況になったわけでございますので、この上は事実をしっかりと把握いたしまして、その上でさらにその後の処置についても考えるべきであるというふうに思っております。
平沢委員 今回の事件、今報道されただけ見てみますと、金額もそれほど大きくありませんし、場合によっては在宅でやっても、私も長年捜査に携わってきましたけれども、おかしくないかなという気がしないでもございませんけれども、これを強制捜査したのはどういう事由なのか。今、報道によりますと、この公安部長が、検察庁の中の調査活動費といいますか、情報収集活動に使われる費用について、いろいろ内幕をマスコミ等に暴露する、そういったこともあって、検察庁が報復というか口封じのためにやったんじゃないかというようなことも巷間言われていますけれども、これについてはどうですか。
古田政府参考人 具体的事件の捜査方法にかかわる問題ではございますけれども、事案の性質にかんがみまして、概略御説明申し上げます。
 強制捜査に至った経緯、理由、これは、現職の検察幹部が暴力団員と密接な関係を保った上でさまざまな違法行為に及んだという、それ自体大変悪質重大な事件でありまして、当然ながら、通謀による罪証隠滅のおそれとか、こういうことももちろん考慮しなければならない。中には職権乱用にわたる部分もある。さらには、いろいろな疑惑がほかにもあるというふうなこともございまして、これは強制捜査をすべき事案と判断したものと承知しております。
 ただいま委員御指摘のような、この人物が、いわゆる情報提供、内部告発者であるかどうかということはまだ確認はできておりませんけれども、そういうこととは関係なく、要するにこの事件自体が大変悪質重大な事件、そういうことでございます。
平沢委員 今度の公安部長は、財テク検事と言われて、前々からいろいろ競売物件を落として財テクに励んでいたということが言われているわけでございまして、所得税法違反を初めとして、他の犯罪もあるんじゃないかなということも言われているわけでございますけれども、なぜ今までこうしたことがわからなかったのか、そしてそういった人間がなぜ公安部長という要職につけたのか、これはどういうことでしょうか。
古田政府参考人 今の委員の御指摘、私どもとしても、どうしてこういうふうになっていったのか、これも十分原因を突きとめなければいけないと考えているところでございますが、一点申し上げますと、職務ではなくて私的な生活の部分での話でございましたので、そういうことからなかなか状況がつかめなかったという点は御理解いただきたいと思います。
平沢委員 今度の報道の中で一つだけ解せないのは、暴力団関係者と庁内で会っていたということなんですけれども、庁内に入るときには当然名前を書いて入るわけですから、そういう記録が残るわけですよ。普通、暴力団関係者が入ってくるのであれば、記録をそこに残すなんということは常識的にもあり得ない話だなと思うんですけれども、検察庁の場合は暴力団でも自由に入れるのかどうか、それをちょっとお聞きしたい。
古田政府参考人 参考人等で呼び出して暴力団員が来るということはよくありますが、もちろん、非常に著名な暴力団員であれば名前だけでわかることもありますが、名前だけでは必ずしも暴力団員とは特定がつかない。それともう一つ、これはさらにいろいろこれから調べることでもありますが、別名を使用していたという疑いもございまして、そういうことから把握ができなかったものではないかと思っております。
平沢委員 いずれにしましても、今回の件で検察庁の信用というのは地に落ちたというか、大変失墜したんじゃないかなということで、これを立て直すというのは容易ではないなという感じがしますけれども、今後、検察庁の信用を取り戻すために、どういうふうに考えておられるのか、監督責任も含めて大臣からお答えいただきます。
森山国務大臣 千数百人もおりまして、全国で毎日非常に苦労しながら、国の安全のため、また国民生活の安心のため、社会正義の実現のために一生懸命苦労しております検察官が、この一人のために大変名誉を傷つけられた、それだけでも重大なことだと私は受けとめております。
 そのような観点から、この事実をしっかりと把握いたしまして、その上で厳正に対処していくべきだと思っています。
平沢委員 ありがとうございました。
 もう時間がありませんので、次の質問に移らせていただきますけれども、先ほどの拉致問題の議連では、今回いろいろな対応をとることを考えておりますけれども、そういう中で、税関の荷物検査、これをもっと厳しくやるべきではないかなということも考えておりますし、再入国の許可あるいは乗員の上陸許可、こういったことについてももっともっと厳しくやるべきではないかなということを考えております。きょう税関も来てもらっていますけれども、北朝鮮との往来の荷物、商業貨物とか当日持ち出しの荷物の検査というのはわかるのですけれども、あらかじめ朝鮮総連の新潟の事務所に集められた荷物、これは一回千七百個くらい例えば万景峰号なんかについてはあるはずですけれども、この荷物のチェックに北朝鮮、朝鮮総連の人間を立ち会わせている。私ども得ている情報では、それによって朝鮮総連の荷物の検査は事実上フリーパスだということを聞いておりますけれども、なぜ北朝鮮の人間を荷物検査に立ち会わせているのか、朝鮮総連の人間を立ち会わせているのか。そして、検査は、千七百個くらいある荷物をどのくらい検査をしているか、どういう検査をしているのか、それをちょっとお知らせください。
藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 ただいま委員御指摘にありましたように、この新潟に参りますマンギョンボン92号で北朝鮮に向けて出国する旅客は比較的高齢者が多くて、また、日用雑貨、食料品等の多量のお土産品があると聞いております。
 このため、先ほどおっしゃっておられましたように、出国の旅客は、前もって携帯品のリストとともにその携帯品を新潟市内にある朝鮮総連の事務所あてに送付されました後、またさらに保税蔵置場に搬入されるわけでございますが、その後税関におきましては、こういう多量の携帯品を適正かつ効率的に処理するという観点から事前の検査を行っておりまして、その際に当該携帯品の保管管理者として朝鮮総連の担当者が立ち会っているものでございます。
 いずれにいたしましても、税関におきましては、この輸出携帯品につきまして、検査率の数字そのものは、今後具体的な取り締まりに支障がございますので御勘弁いただきたいと思いますけれども、エックス線検査あるいは開披検査を行うなど、厳重な取り締まりを実施しているところでございますけれども、昨今における情勢の変化等も踏まえまして、一層厳正な検査の実施等について検討してまいりたいと考えております。
平沢委員 今の答弁は全く納得できないわけで、朝鮮総連の人間が立ち会っているというのは、いわば余計な検査をするなよという監視役だということで私どもは聞いておりますけれども、いずれにしましても、税関、これから検査をさらに徹底して、ほかの国と違うんですからね、要するに、敵性国家、テロ国家とアメリカが認定している国との往来の荷物に関することですから、しっかりやってもらいたいと思います。
 時間が来ましたので、最後に一言だけ。入管、この北朝鮮との再入国許可、乗員の許可、これは許可ですから法律を改正しなくても政府の裁量でできると思うんですけれども、これについて一言だけお願いできますか。
中尾政府参考人 お答え申し上げます。
 委員御案内のとおり、入管特例法の十条二項では、特別永住者に対する再入国の許可に当たりましては、これらの方々の本邦における生活の安定に資するとの本法律の趣旨を尊重すべきものと定められておるところでございます。
 したがいまして、在日朝鮮人の方々が北朝鮮に渡航するための再入国の許可を受けるに当たり、再入国を許可に係らしめていることからいたしまして、個別の審査の結果、不許可処分があり得ることは当然ということになります。
 したがいまして、一律にこれを認めないということは、今お話し申し上げたような規定の趣旨からも困難であると考えておるところでございます。
平沢委員 かつて、大韓航空機事件のときは、乗組員の上陸についてはその審査をより厳格にするという対応措置を政府はとったことがあるわけでございまして、いずれにしましても、私は、幾らでも対応としてはとり得るんじゃないかな、今の答弁はちょっとおかしいんじゃないかなと思いますけれども、これはまた別の機会に譲りたいと思います。
 時間が来たので、終わります。ありがとうございました。
園田委員長 平岡秀夫君。
平岡委員 民主党の平岡秀夫でございます。
 法案の質疑の前に、今平沢委員の方からもちょっと質問がありましたけれども、大阪高検の前公安部長の逮捕の件についてちょっと確認をしていただきたいというふうに思っておりますので、質問を申し上げたいと思います。
 我々が承知している三井環大阪高検前公安部長の逮捕の容疑というのは、新聞で、いろいろな証明書の詐取であるとか電磁的公正証書原本不実記載であるとか公務員職権乱用、あるいはきょうの報道なんかでは所得税法違反といったようなこと、あるいは接待容疑といったようなことも書かれていましたけれども、どうも我々がこれまでいろいろな犯罪を見てきた中でいくと、それほど大きな犯罪という感じはしなくて、何か微罪を集めてきたような、そんな印象もちょっとあるわけであります。
 当然、検事という立場にありますから、法律を守る、あるいは守らない人に対して厳しく対処するということは必要だと思うんですけれども、どうも何か裏に隠されているものがあるのではないかなという印象がちょっとありまして、先ほどの刑事局長の答弁の中に、これは悪質重大な事件である、いろいろな疑惑はまだほかにもあるんだというような答弁がございました。これは本当に逮捕の真相といったのは一体何なんでしょうか。先ほど答弁ありました悪質重大な事件ということの具体的な意味は何なのか。それから、先ほど答弁にありましたいろいろな疑惑はほかにもあるのだというその疑惑というのは一体何なのか、御答弁願います。
古田政府参考人 まず、端的に申し上げまして、検察官の立場で暴力団関係者と密接な関係を持って、その上でさまざまな違法行為に及んでいる、そのこと自体、これは当然悪質重大と言わざるを得ないと判断しているものでございます。
 それから、疑惑というようなことを若干申し上げましたけれども、これは今後の捜査の内容にもかかわることでございますので、具体的に申し上げるのはこの場ではちょっと差し控えたいわけですが、いずれにいたしましても、酒食の提供を受けているとかいうふうな情報の提供などもございまして、こういう点で余罪として取り上げるべき点はないかとか、例えばそういうふうなことがあるわけでございます。
 それからもう一点、公務員による職権乱用、こういうのがどちらかというと微罪ではないかというような御趣旨のお尋ねでございますけれども、これにつきましては、昨年も某検察庁におきまして、検察事務官でございますけれども、身上照会を職務と無関係にやったようなケースにつきまして、逮捕して事件を処理しており、検察庁としてはこの種事犯については厳正にこれまでも対処してきているところでございます。
平岡委員 具体的な犯罪容疑についてはこれからいろいろな捜査の中でまた出てくるのだろうと思いますけれども、先ほどから申し上げましたように、いろいろな報道されている中身を見ますと、この検察官個人のいろいろな問題もあろうかと思いますけれども、検察官を監督するといいますか、検察官が属している組織というものが本当に組織の中の綱紀というものをちゃんと保持するための努力がされていたのか。あるいは、いろいろな疑惑が生じたときに、なぜもっと早く個別に状況を把握して、そしてこれほどまでに大きな事件に至るまでに何らかの手が打てなかったのか、そうした疑問を持つわけでありますけれども、この監督責任というような問題についてどのようにお考えか、大臣から御答弁いただきたいと思います。
森山国務大臣 組織である以上、当然上の責任者の監督責任ということは免れないと思いますが、それがどのような態様の、どのような程度のものであったかということを、やはり事実をしっかりと把握いたしませんと何とも申し上げられないわけでございまして、この三井という容疑者の行いました行為がどのようなものであったかということを正確に把握するということがまず第一の前提だろうと思います。その上で厳正な対処をするべきだというのが私の考えです。
平岡委員 いずれにしても、犯罪の部分についてはいずれ捜査の結果としての起訴というようなこともあるのかもしれませんけれども、こうした問題が起こってしまった組織としての責任について、監督責任といいますか、その点については、いずれ当局の方からも我々あるいは国民の皆さんにきちっと説明していただくということをお願い申し上げたいと思いますけれども、それでよろしいでしょうか。
森山国務大臣 当然、決定いたしましたときには、国民の皆様にしっかりと御説明申し上げたいと思っています。
平岡委員 それでは、そういうことでよろしくお願いいたしたいと思います。
 それでは、法律案に関しまして御質問申し上げたいと思いますけれども、まず最初に、法律案の具体的な中身に入ります前に、一体今、テロ活動に関する資金というものがどのような状況になっているのか、あるいはそれをどのように把握しているのかといったような、背景にわたる事項について我々としても知っておかなければいけないという意味で御質問申し上げたいと思います。
 まず最初に、テロリストといいますか、あるいは、今回法律の対象としているのはテロ行為を実行しようとする者といったような表現になっているようでありますけれども、そのようなおそれのあるような人たちが日本においてどのような資金調達活動あるいは収集活動というのを行っているかということについて、これを所管しているのがどこなのかというのは難しい問題もあるかもしれませんけれども、その資金活動の状況をどのように把握しているのかについて御質問したいと思います。
漆間政府参考人 警察としましては、いわゆるテロリストの我が国における資金活動あるいは国外送金動向、これについては重大な関心を持って情報収集に努めているところでありますけれども、情報収集活動で把握する内容については、やはり今後の警察活動に支障を生ずるおそれがありますので、その詳細は申し上げることはできません。ただ、現実に検挙した事例につきましては、その概要については申し上げることができます。
 過去の検挙事例では、平成十二年に、スリランカ人六人を出入国管理及び難民認定法違反で検挙して関係場所を捜索した結果、スリランカにおいてタミール国家樹立を求めるタミール・イーラム解放のトラというテロ組織に関する資料を押収し、この資料から、テロ組織に関連する外国人が我が国で資金調達等に関与していることがうかがわれた事案があり、この事案では、約四千五百万円が海外に送金されていたということが判明しております。
平岡委員 確かに、活動の内容は、いろいろな問題があろうかと思いますから、ここで公表するというようなことにはならないんだろうと思いますけれども、今警察庁の方でいろいろな情報収集をしているということについては、今後、この法律ができるとまたいろいろな形で関係が出てくるであろうと思いますので、その関連でまたちょっと御質問したいことが出てくるかもしれませんので、そのときはよろしくお願いしたいと思います。
 私が質問しようとした国外のテロリストに対する資金流出の把握の状況についてもあわせて今御答弁いただきましたので、この点についてはちょっと省略いたします。
 昨年の九月十一日に米国で同時多発テロが起こったわけでありますけれども、その後、九月二十二日付の官報でタリバン関係者等についての告示が行われまして、これに基づいて資産凍結が行われているというようなことも言われております。この件も含めまして、現在、これはテロリストというふうに決めつけるのがいいのかどうかちょっとわかりませんけれども、テロリスト関連で資産凍結をしている状況というのがどのようになっているのかについてお伺いいたしたいと思います。
吉田大臣政務官 昨年九月以降の資産凍結等の現状いかんという御質問だと思いますが、平成十三年九月以降、外為法に基づいて資産凍結等の措置を講じたのは、国連制裁委員会で指定をされましたタリバン関係等二百八十七個人と団体、その他テロリスト等計二十二個人、団体で、このうちタリバン関係者等六団体については、本年六月に国連制裁委員会のリストから外れたことを受けて措置を解除しているところであります。したがって、現在、資産凍結等の措置の対象は、三百三個人、団体が対象となっているところであります。
 また、本措置において実際に凍結をされたのは、アフガニスタンの中央銀行など政府系銀行の預金口座四件にあった約六十万ドルであります。これらについては、本年一月に国連制裁委員会が資産凍結等の措置を解除したことに伴って我が国も解除したということから、現在は、外為法に基づいて凍結されている資産というのはございません。
 以上であります。
平岡委員 今は、九月二十二日の官報で告示されたタリバン関係者等を指定する件についての状況であったようでありますけれども、それ以外にも、その後、昨年十二月、ことしの一月、四月にも資産凍結ということが行われているというふうに聞いているんです。その状況はどういう状況になっていますでしょうか。
岩下政府参考人 お答え申し上げます。
 全体といたしましては今大臣政務官から答弁がございましたとおりでございまして、先生御指摘の追加指定の対象者も含めまして、現在のところ、アフガン中央銀行等が既に解除になりましたので、現実に凍結されている口座等はないということでございます。
平岡委員 今のタリバン関係者等の資産凍結というのは、これは外為法で行われているということでありますから、基本的には、居住者と非居住者の間の取引について、許可制のもとで監視をするといいますか見ていくというような形で資産凍結が行われているというふうに承知しているんですけれども、今度は逆に、国内のテロリスト、あるいは今回法律の対象となっているテロ行為を実行しようとする者で国内にいる者が例えば国内の金融機関に預金等をしているような場合、これは一体資産凍結といったようなことができるんだろうかという一般の人たちの疑問もあろうかと思うんですけれども、これについては資産凍結というのはできるんでしょうか。
 これは本来なら金融庁の所管の話なのかもしれませんけれども、金融庁からはこの問題については直接できないという話も聞いておりますけれども、今回の法律改正等も含めて、国内の資産についてどのようなことになるのかということについて、ちょっと御教示をいただきたいと思います。
古田政府参考人 今回の法案は、いわゆるテロ行為として用いられる犯罪行為に対する資金の提供、これを処罰するということでございますので、今先生御指摘の一般的な資産の凍結ということは含まれていないわけでございます。
 ただ、この法律が成立いたしました場合には、提供された資金、こういうものにつきましては、没収、追徴の対象になりますので保全手続などがとられることができます。その意味で、凍結と同様の効果を持つということはございます。
 それから、一般的な資産の凍結につきましては、これは国内法上、やはり憲法上の問題その他、慎重に検討しなければならない点が多々ございますので、現在、どういうふうな方法がとり得るのか、関係省庁でさまざまな角度から検討しているというところでございます。
平岡委員 今の御説明だと、没収とか追徴の対象になるというようなことでの、国内資産の凍結というよりはむしろ取ってしまうというお話だったですけれども、それはあくまでも今回の法律改正によって有罪とされた人を対象にということだろうと思うんです。
 その前の段階でも、いろいろな法律に基づいて、例えば没収保全命令といったような仕組みもあるやに聞いておるんですけれども、そっちの方はどういうことになりますでしょうか。
古田政府参考人 若干御説明が足りなかったと思いますが、この法律案におきまして組織的犯罪処罰法を同時に改正いたしまして、資金提供罪において、提供された資金あるいは収集した資金、これを犯罪収益といたします。そのことによりまして、こういうふうな資金につきましても組織的犯罪処罰法に基づく事前の保全手続がとられるということになりますので、そういう意味で先ほど申し上げたように凍結という効果も生ずる場合がある、そういうことでございます。
平岡委員 以上、この法律を審議するに当たっての背景的なことを少しお聞きいたしました。
 法案の内容にちょっと入っていきたいと思うんですけれども、この法案については、構成要件が非常にあいまいであるとかあるいは条約との関係で非常に疑問があるんではないかといったようなことが指摘されていることがございます。そういう点も含めて御質問申し上げたいと思うんですけれども、まず最初に、この法律のもととなっている条約におきましては、その第三条で、概要を申し上げますと、国内問題についてはこの条約を適用しないのだということで、結果的にはある一つの国の中だけで行われているテロ行為のための資金収集活動あるいは提供活動については処罰の対象にすることを条約として義務づけていないというふうに私としては理解しているんですけれども、今回の法律案では、そこのところが必ずしも国内問題と国際問題を区別しないですべてが犯罪となるという形になっていると思うんですけれども、これはちょっとこの条約を超えてしまっていて、何か逆に非常に大きな問題があるような気もするんですけれども、この点について大臣、どのように認識されてこの法律がつくられていると思っておられますでしょうか。
森山国務大臣 この条約は、国内において同国人が資金提供・収集行為を行い、しかもその犯人が当該国に所在する場合については適用しないということになっておりますが、この法律案はこのような資金提供・収集行為も処罰することにしております。おっしゃるとおりでございます。
 ところで、そのような場合について条約の適用対象とされないのは、それが当該国の純粋な国内問題であって、そのような行為の処罰を国際条約によって義務づけるという必要はないということからにすぎないと解されます。しかし、そのような場合における資金提供・収集行為も、公衆等脅迫目的の犯罪行為の実行を助長、促進するという点では条約が適用される場合と何ら変わりがございませんので、条約上適用対象とならない国内的な行為を国内法により処罰の対象とするのがおかしいという御批判は当たらないのではないかと考えます。
 さらに、このような国内的な行為であっても、例えば国内に所在する他国の施設等に対して行われることを予定している場合には、本条約に基づき他国が裁判権を有することが考えられますので、このような行為について条約上の義務を履行するためにも国内的な行為一般を対象にする必要があると考えます。
平岡委員 今、詳しく説明していただきましたけれども、結論的に言うと、条約によって義務づけがされるのはあくまでも国と国との関係の問題であるから、条約には純粋国内問題については規定をしていないという理解であって、純粋国内問題について法律で処罰をするということを決めること自体は、それは禁止はされていないのかもしれませんけれども、この条約においてはやるという方向で考えているんでしょうか。それとも、それはもう全く国内問題として関知しないという位置づけになっているんでしょうか。
 その点の理解はどうなりますか。これは条約だから外務省に聞かないといけないのかもしれませんけれども。
古田政府参考人 条約の解釈についての前にちょっと一言申し上げたいことがあるわけでございますが、このテロ資金供与防止条約がいわばどういう犯罪行為についての資金提供行為が犯罪かを求めているかと申し上げますと、ハイジャックでありますとかいろいろな、かなり多数の類型がございます。
 これらの犯罪自体につきましては、これは相当広範囲に実は各国が管轄権を持つことが義務づけられているわけでございまして、そういう意味で、そのターゲットとされる犯罪について、各国が裁判権の設定の義務づけを負っているものにつきまして、これが仮に国内で起こったということでありましてもそれが対象にならないということにするのは、やはりテロ関係のこれまでの条約の裁判権設定義務等の関係から見ても適当なものではないというふうに考えているところでございます。
平岡委員 条約との関係は今御説明されたということで、ある程度の理解はできるわけでありますけれども、具体的に国内法制をどうするかという問題について言うと、もう少し国内における論議というものがしかるべきところで行われるべきではなかったかというような感じもしております。その点だけちょっと指摘させていただきたいと思います。
 そしてまた、あいまいな構成要件という意味でいきますと、また条約との関係でちょっと私が疑問に思うのは、今回の法律案の中では、資金の提供であるとか資金の収集ということを処罰の対象にしているわけでありますけれども、条約の方で資金というものの定義を見ますと、かなり広い範囲で書いてあります。有形であるか無形であるか、動産であるか不動産であるか、こういったものを問わないのだと。あるいは、これらの財産に関する権原または権利を証明するあらゆる形式の法律上の書類または文書なんかも含むのだといったようなことで書いてあるんですね。
 そういう意味でいきますと、ちょっと今回の法律の中で、資金の提供という資金というのは、私の理解では、現金そのものには限らないとは思いますけれども、非常に現金に近いようなものしかちょっと思い当たらないというか思いつかないのですけれども、この辺は、条約との関係は大丈夫なんでしょうか。大臣、どのようにお考えになってこの法律ができているんでしょうか。
森山国務大臣 この法律で資金と申しますのは、まず、その経済的価値が特定の人のために利用されることを予定して提供、収集される現金その他の支払い手段のほか、そのような現金等が果実として得られること、または換価によってそのような現金等にかえられることを予定して提供、収集されるその他の財産を申します。テロ資金供与防止条約における資金も同様の趣旨であると理解しております。
平岡委員 今の大臣の理解というのはそれでいいのかどうか、またちょっと議論したいと思うんですけれども、その前に外務省に、今の大臣の説明と条約で規定している資金との関係というのは、それはそれで整合性がとれていると理解してよろしいのでしょうか。
小野政府参考人 お答えいたします。
 本条約上の資金の定義につきましては、今先生が御説明なさりましたとおりでございます。先生の御質問の中に、現金以外の財産も本条約上の資金に該当するのかというような御質問もあったかと思いますので、その点についてまずお答え申し上げます。
 現金以外の財産、例えば有価証券ですとか貴金属、土地建物等につきましてもこの条約上の資金に該当する場合があるというふうに考えております。ただし、テロリストに対する物質的支援につきましては対象としないことが条約作成時の審議で一応確認されております。
 そういうことから考えますと、当該財産を提供する行為は、条約に言う対象犯罪というものに使用されることを意図してまたは知りながら行われた場合には、条約上の犯罪に該当するというふうに考えているわけでございます。
 そういうことから、本条約上のこのような資金の意味については、ただいま法務委員会で御審議いただいている法案においても当然ながらこれを十分踏まえて資金の提供及び収集を犯罪とする旨定められていると承知しておりますので、条約の履行上に問題はないというふうに考えている次第でございます。
平岡委員 条約とこの法律の関係では余り問題ないというお話でありましたけれども、ただ、やはり一般の常識でいくと、資金という概念は、我々一般人では、通常、現金とかあるいはそれに非常に近いような支払い手段といったようなものに限定されるような気がするんですけれども、ある人が、これは資金に当たらないと思って、何らかの不動産なり、あるいは、例えて言うと、動産で高価なハンドバッグであるとか、そういうようなものを提供することがこの法律による犯罪になるんだというようなことを言われてしまうと、非常に疑問に思ってしまうわけですね。
 そうすると、処罰法の構成要件というのが本当に一般の人たちが理解している常識の範囲でつくられているのかどうかということに対して、非常に疑問に思われる場面があり得るような気がするんですけれども、その辺のこの法律の適用について何か問題は生じないんでしょうか。
古田政府参考人 確かに、資金というのは流動性の強いものということであろうと思います。
 ただいま外務当局からも御答弁がありましたとおり、この条約は、要するに、例えば不動産にいたしましても、不動産自体の効用を提供するというふうな意味での提供行為は資金の提供行為とはならないという前提でございます。
 したがいまして、不動産を不動産として、例えば何かの犯罪実行のためにその不動産が必要だということで提供している、こういう場合にはこれは含まれないことになるわけですが、一方で、その不動産を換金するなりそういう方法で、まさにテロのために必要なファンドを得させる、そういうふうな意図で提供した場合には、これは資金の提供ということになるわけでございまして、そのものをそのものの効用を発揮させるために提供したということでは、ここで言う資金には当たらないので、御指摘のような問題は起こらないと考えております。
平岡委員 いずれにしても、これは処罰法でありますから、刑罰法規でありますから、その構成要件がどういうものであるかきちっとわかるためにも、資金というものが一体どういうものなのかということについて一般の国民の方々にわかるような努力というものをしていただかなければ、条約との関係でも非常に疑問が多いというふうに思っております。
 そういう意味で、もう一つ聞いておきたいと思うのは、構成要件の中でも、例えば資金の提供、この提供という概念なんですけれども、贈与したりとか、あるいは、贈与でないにしても、資金を貸してあげる、使ってくださいといって、そのかわり後で返してくださいというような貸し付けとかというのは提供に入るのかなというふうにも思うんですけれども、例えば、銀行が送金をしたり、人が現金を持って運搬をするとか、預金の引き出しに応じるとか、あるいは借りた金を返すという形で資金を提供するといったようなこともこの資金の提供の提供という概念に入るのか。非常に幅広い概念のような気がするんですけれども、その点は、この提供というのは一体どの程度の範囲のことを考えているのか、この点についてもちょっと教えていただきたいと思います。
古田政府参考人 資金の提供、これは既に幾つかの法律でこれを処罰する類型がございまして、そういう意味で、その内容というのは明確だと考えているわけでございますが、ただいま御指摘の具体的な場面に当てはめて申し上げますと、貸し付けをするというのは、まさに資金を提供する行為に該当すると考えられます。
 一方、送金あるいは運搬をするということは、それ自体は、ある財物の価値をあるところからあるところに支配を移転するという行為ではなくて、それを行うための手段ということでございますので、それ自体が提供ということになるわけではないわけでございます。
 ただ、提供されるということの状態、そういうことを知った上でやれば、これは場合によっては幇助犯ということはあり得るということでございます。
 また、預金の引きおろしとか債務の返済、これは法律上の義務として行うものでございますので、こういうものは一般的に資金の提供ということには当たらないものと考えております。
平岡委員 一応、今の説明というのは、これからの法律の適用においても、一般の人たちに、どれが、どういうことが犯罪になるのか、あるいは犯罪にならないかということをよく知ってもらうという意味においても、確認をしておきたいというふうに思います。
 そして、またこの構成要件の問題なんですけれども、法律の第二条の「資金提供」の中で「情を知って、」というような言葉があるわけでありますけれども、この概念も、ほかのところでもいろいろ使われているということなんだろうと思いますけれども、この辺もかなりいろいろ疑問視している方がおられまして、例えば、自分がカンパをしたりするというようなことが場合によってはテロ行為に使われるかもしれないというふうに思って提供するというのは、この「情を知って、」の要件に該当するというふうに考えるんでしょうか。それとも、何かもうちょっと積極的なというか具体的なものがなければ、この「情を知って、」という要件に当たらないというふうに考えるんでしょうか。その辺はどのように考えたらよろしいでしょうか。
古田政府参考人 御指摘のとおり、「情を知って、」というのは、これまでも幾つかの罰則の中での用例がございますが、ここで申します「情を知って、」というのは、資金提供の相手方が公衆等脅迫目的で一条の各号に掲げる犯罪行為を実行する意図を有していることを知ってという意味でございます。
 この「情を知って、」の程度は、ただいま御指摘のような、もちろんそれなりの合理性は必要でございますけれども、そういう行為に利用されることがあるかもしれないといういわゆる未必的な認識でも足りると解されるところでございます。
 しかしながら、それだけで提供罪が成立するかといいますと、そういうわけではなくて、条文上、さらに当該行為の実行を容易にする目的が必要とされているわけで、これは、資金提供の相手方による当該犯罪行為の実行を容易にすることを積極的に意図しているということを必要とするということでございますので、単に、その可能性があるかもしれないという程度の認識をしていたというだけでは本罪の対象にはならないということになります。
平岡委員 今のをちょっと平たく言うと、相手方がテロ行為をするかもしれない、場合によってはこの金が使われるかもしれない、しかし、自分はそのテロ行為を容易にするというつもりでこの資金を出すのではないというふうに考えていれば、この法律の適用はないというふうに考えてよろしいんでしょうか。
古田政府参考人 結論的にはそういうことでございまして、要するに、ちょっと誤解を招くかもしれませんが、テロ行為を積極的に支援するような意図、こういうような目的ということになろうかと思います。
平岡委員 それから、第三条の「資金収集」のところなんですけれども、ここにいろいろなことが書いてありますけれども、収集の方法というのがありまして、勧誘し、あるいは要請し、またはその他の方法により資金を収集というふうに書いてあって、収集の方法というのが、何かいろいろなものが入って、一体何が入って何が入らないのかというところも非常に漠としていてあいまいだということで、本当にこれは構成要件たり得るのかという疑問を呈している方も大勢おられるわけであります。
 例えば、通常の経済取引をする人がいて、そこで上がった利益というものを例えばテロ行為のために使おうというような人がいたとするというときに、これはこの「その他の方法により、資金を収集」、そういう概念に当たるんでしょうか。この「その他の方法」というのは、一体どの程度の範囲のものを意味しているというふうに考えたらよろしいんでしょうか。
古田政府参考人 例示で、勧誘、要請というふうな言葉を入れてあるわけでございまして、基本的には、相手方に働きかけて資金の提供を受けるという行為が中心になるわけでございますけれども、ただいまお尋ねのようないわゆる経済取引はどうか。これはいろいろな場面があるわけでございまして、単に自分の財産を換価するというだけの意味の経済取引、これは、特にそのことによって新しく何かプラスアルファの利益を生じさせているとか、そういうことではございませんので、それ自体が資金の収集ということに該当することは、これは困難であろうと思うわけです。
 しかしながら一方で、テロ資金、犯罪行為のための資金、これを獲得すること自体が目的でいろいろな営業をする、そういう場合には、これは場合によってはここで言う「収集」に当たり得ると考えております。
平岡委員 今の説明でいくと、換価するだけ、例えば百円の価値のあるものを百円で売るのであれば当たらないけれども、百円の価値のものを百二十円で売ったら対象になるんだというような、そんなふうにもちょっと聞こえたんですけれども、「その他の方法」というのがどういうものかということについて言うと、あいまいな仕切りになっているような気がしてしようがないんですけれども、その点、法律の適用に当たって問題は生じないでしょうか。
古田政府参考人 実際問題として、こういう犯罪行為のための資金の調達の方法というのはいろいろなパターンがあるわけでございまして、例えば株の取引でございますとか、そういうような形態でやるというような、要するに株の売買の利益で株を扱うというようなケースもこれはあり得るわけでございまして、ただいま申し上げましたような、単純に物の等価交換という意味での売買みたいなものは別といたしまして、利益を上げる目的のいろいろな経済取引行為、こういうものは、ケースによってはここで言う「収集」に当たる場合が考えられるということでございます。
平岡委員 いずれにしても、今回の法律、概念がちょっとあいまいな部分が相当あるので、これは適用に当たっては細心の注意をしていただかなければいけないと思いますし、乱用が起こるようなことになってしまっても困ると思いますので、ぜひこの法律の具体的な適用というものについての周知徹底というのを図ってもらいたいというふうに思っておるところであります。
 そういう意味で、これを見ますと、テロ行為を実行しようとする者というのも第三条の中にあるんですね。これも、どうやってそれを認定するのか、特定するのかというところについても非常に疑問に思っておる人がたくさんおるわけであります。
 例えば、先ほど資産凍結のところで、タリバン関係者等というのは国連の組織が認定する形で、これはテロ行為を実行しようとする者という形で定義されたものではありませんけれども、外国のしかるべき組織がある程度の認定をするということであるならば、それはそれとして一つの判断材料になるんだろうと思うんですけれども、このテロ行為を実行しようとする者というのは一体どういうふうにして特定し、どういうふうにして認定していくのかというところについてはどのように考えたらよろしいんでしょうか。
古田政府参考人 「公衆等脅迫目的の犯罪行為を実行しようとする者」、これは、一条各号に掲げてある犯罪行為を具体的に実行しようとする具体的な意図を持っている、そういう者ということになるわけでございますが、それの実際の捜査あるいは認定につきましては、これはいろいろな犯罪の意図についての捜査と同じことでございまして、いろいろな状況、あるいは共犯者がいるような場合にはその関係者の供述、そういうふうなものを総合して認定するということになると考えられるわけでございます。
平岡委員 繰り返しになりますけれども、いずれにしても、ちょっとこの法律の構成要件というのは、具体的な判定をする場面において紛らわしい場面が非常に多いような気がいたします。そういう意味で、法律の適用に当たって細心の、慎重な注意を払っていただきたいと思いますし、また、一般の国民の皆さんに対してもこの構成要件の具体的な内容について周知が図られるような、そうした努力は少なくとも必要であるというふうに思っております。
 そこで、この法律の中身について申し上げますと、法定刑が「十年以下の懲役又は千万円以下の罰金」という形に、資金提供もあるいは資金の収集もなっているわけですけれども、私がほかの資金提供罪の法定刑をちょっと調べてみますと、三年以下、五年以下、七年以下といったような懲役あるいは禁錮といったような中身になっているようでありまして、他の資金提供罪に比べるとかなり厳しい内容になっているというふうに、比較すればそういうふうに見えるわけでありますけれども、この量刑の妥当性というのは、どのような判断に基づいてこういう量刑になっているんでしょうか。これは大臣からお願いします。
森山国務大臣 資金提供罪、同収集罪の法定刑を定めるに当たりましては、我が国の既存の国内罰則の法定刑との均衡を考慮するとともに、他国におけるこの種行為に対する罰則との均衡についても十分考慮する必要がございます。
 まず、主要国の罰則との均衡という観点からは、G8のうち、現在までにこの条約を締結しているのはイギリス、フランス及びカナダでございますが、イギリスは資金提供罪、収集罪につき、十四年を超えない期間の拘禁刑もしくは罰金刑またはその併科といたしまして、フランスは十年以下の拘禁刑及び百五十万フラン、日本のお金にしますと約二千五百万円でございますが、以下の罰金とし、カナダも十年以下の自由刑としているのでございます。
 このような国際的な処罰の均衡という観点や、また我が国の既存の国内罰則との均衡という観点から、資金提供罪、収集罪の法定刑について、自由刑は十年以下の懲役とすることにいたしたものでございます。
 なお、これらの罪については企業などがかかわる事案もございますので、法人の刑事責任等の事案に応じた処罰を可能にする等の観点から、一千万円以下の罰金刑をも設けることにいたしたのでございます。
平岡委員 もう一つ。先ほどの資産の凍結の話のところでも出ましたけれども、資金提供あるいは資金収集を処罰することは今回の法律の一つの中身であるわけでありますけれども、条約の中では、資金の没収についても条約の規定があるわけであります。今回、犯罪の対象となった資金の没収についてはどのような取り扱いになるのか、この点について御教示いただければと思います。
古田政府参考人 ただいま御審議願っている法案におきましては、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律を附則において改正いたしまして、資金提供罪及び資金の収集罪を同法の前提犯罪とし、資金提供罪によって提供された資金を同法上の犯罪収益とする、そういうことにしております。
 また、収集罪によって得られた資金は、これは当然犯罪により得たものということで、犯罪収益に含まれることになります。そのことによりまして、資金提供罪によって提供された資金あるいは収集罪によって収集された資金などにつきましては、組織犯罪処罰法上の犯罪収益となりますので、これが有体物あるいは金銭債権、こういう場合には、同法十三条一項により没収が可能となりまして、こういうふうな財産でない、ほかの無体財産権的なものがもしあるとすれば、それはその価額を追徴できる、そういう仕組みになることになります。
平岡委員 国内にあるものについては今のような仕組みで多分機能するんだろうと思うんですけれども、今回の法律のもとになっている条約の世界を考えてみますと、国際的な資金の流れというものが一応意識されているわけであります。
 例えば、日本の国内で収集されたものあるいは提供されたものが国外に移されているといったようなケースも多く想定されるわけでありますけれども、国外に流出してしまった資金についての没収の手続というのは一体どういうことになるのか、この点についても御教示いただければと思います。
古田政府参考人 まず、裁判の問題ということでは、外国にある場合であっても、没収の裁判自体は、言い渡すということは可能であると考えております。
 あとは、それを現実にはどういうふうに執行するかということになりますと、これは没収の裁判等に関する国際的な共助ということが問題になるわけでございますけれども、組織犯罪処罰法において、日本国が外国からの依頼を受けてそういう面についての共助が可能になるような手続を定めてございますので、日本から外国に頼むということも、これも可能な場合が通常であろうと考えております。
平岡委員 今、国内法の世界の中で、国際的な共助ということの仕組みの中で、外国に流出してしまった資金についての没収ということも行うことが可能な場合があるというような御説明でありましたけれども、ちょっと条約の方を見てみますと、法律上の相互援助といったような規定が第十二条にもあるわけでありますけれども、これを見ると、必ずしも、没収手続については、国際的な協力というのが条約上義務化されているというか、努力をしなきゃいけないといったような位置づけになっていないようにも思うのですけれども、この点、条約の方ではどういう考え方をとっているのか、外務省の方から御教示いただければと思います。
小野政府参考人 お答えいたします。
 先生御案内のように、この条約上は、締約国は自国の法的原則に従ってテロ資金提供の犯罪に使用される資金等を没収するための適当な措置をとるという規定になっているわけでございます。
 他方、各国における没収の要件、手続等に関する法制というのは異なっておりまして、そういう意味では、この条約上の規定というのは、ある締約国において没収が確定した資金が他の締約国の領域内に所在する場合において、当該国の締約国に対して当該資金の没収を義務づけるものでは必ずしもないという点は、先生御指摘のとおりでございます。
 他方、ただいま法務当局からの御説明がありましたとおり、我が国としては、個々のケースにおきましては、外国にある財産の没収または追徴の確定裁判というものの執行の共助を当該国政府に対して要請し、かつまた協力を求めていく考えであるわけでございますが、G7等の主要国等におきましても、我が国と同様、外国政府からのかかる要請がある場合には協力を行うことができるというふうになっているものと承知しております。
平岡委員 この没収手続についても、国際的な協力というものが必要であるということは多分疑いないところだろうと思いますので、できる限り協力が進むような形での条約の見直しなりあるいは運用の改善なりということをまた考えていっていただきたいというふうに思います。
 それで、没収についてもうちょっと聞いてみたいんですけれども、先ほど、没収の手続というのは、組織犯罪法の中で規定があって、そこで行われていくことになるんだというような話でありましたけれども、ここで言うところの没収の対象となるものは犯罪収益ということであります。
 例えば、ある犯罪によって収益を上げた者に対して没収をするというケースの場合は、ある意味では没収の対象となるものが特定しやすい、これだけのものが犯罪によって収益として上げられた、それに対しての没収をかけるというのは比較的簡単なような気がするんですけれども、例えば、先ほど資金収集罪の話がございましたけれども、これについて言うと、先ほどの説明の中にも、ただ単に物を換価するだけであれば、それは収集罪に当たらないんだというような説明もありました。
 収集の目的というのはいろいろあるだろうと思いますし、収集の方法というのもいろいろあるだろうと思います。そういう意味で、収集罪の適用がされた場合に没収の対象となる金額というのは、どの部分がその収集罪の対象となっている資金なのかという特定が非常に難しいような気がするんですけれども、そうした資金提供罪、収集罪の適用を受けた資金というものはうまく分別できるのかどうかという点について、どのようにお考えになっているか、お聞かせいただきたいと思います。
古田政府参考人 お尋ねは、恐らく二つの問題を含むものと考えます。
 一つは、収集あるいは提供された資金、これがそのままの形で残っていなくて、いろいろなほかの資金といわば混同してしまっているような場合どうなるかということでございます。
 これにつきましては、組織犯罪処罰法で、財産につきまして混和が起きた場合には、その混和が生じた財産のうちから、その提供された資金の額に相当する部分、これが没収できるということとされておりますので、額が特定できれば没収をするのに支障はないということになります。こういうふうな財産自体がそもそもなくなってしまったということになりますと、これはまた別でございますが、そういう場合には追徴が可能になるわけでございます。
 もう一つは、例えば収集罪で、犯罪行為の実行のための資金を収集する目的と、場合によっては他の目的が混在して併存しているような場合にどうなるかというふうなお尋ねと考えますけれども、これは、しばしば違法目的と合法目的が存在するお金の移動というのはございまして、原則としては、事案によりますけれども、違法目的と合法目的の部分が明確に区別がつかない場合には、全体について犯罪が成立するというふうに認定される場合が多いと承知しております。
 その中で、どの程度の没収をすべきか、あるいは追徴すべきかということになりますと、これまた事実認定の問題にかかわるわけでございますが、違法目的の用の場合の方が非常に多いというふうな場合には、全体について没収、追徴ということが考えられるわけでございます。その辺につきましても、部分的な没収、追徴ということも可能なわけでございますので、特定ができる場合においては、その範囲で行うということになると考えております。
平岡委員 技術的な問題なので、これ以上突っ込んで議論するということはちょっと難しいので、また機会があれば御質問したいと思います。
 あと、今回のテロ資金提供処罰法に関して言うと、組織的犯罪処罰法の世界の中でいろいろな手当てをしているんですけれども、ちょっと疑問に思ったところが、組織犯罪処罰法の第十条のところに犯罪収益等隠匿罪というのがあるわけでありますけれども、この中で、提供の未遂罪が適用されている場合の資金については隠匿罪の対象から除かれるというような法律の仕組みになっているようにちょっと見えるんです。例えば、提供するために準備している資金を隠匿するという人についてもこの処罰の対象となってもおかしくはないんじゃないかというような気もするんですけれども、この点について隠匿罪の処罰の対象から除いたのはどういう理由によるんでしょうか、御教示いただければと思います。
古田政府参考人 まず、提供する目的で準備していたお金、これを隠匿するということは、まだ提供行為に着手されていないわけでございますので、その提供行為の実質的には予備の段階の行為を処罰するということになりまして、これは、もちろんそういう考え方もあり得るかとは思いますけれども、条約等から考えましても、かなり広範囲な処罰をすることになってしまうという問題があるわけでございます。そこで、そういう場合は、そういうふうな意味での犯罪類型は設けなかったわけでございます。
 それからもう一つ、未遂でとどまった場合の、これは提供行為に着手した後に結局は届かなかったという場合ですけれども、そういうふうな場合の資金につきましてこれをマネーロンダリング罪から外した理由は、それは目的とする提供行為が完成しておらず、その犯罪によって生じた利益という性格が、まだ得るに至っていない。それから、例えば途中で思い立って送金をストップしてやめた場合に、そのお金をほかにいろいろな形で使うということは、これ自体を犯罪の対象とするということは相当問題があるわけでございますので、そういうことも考慮いたしまして、相手に届かなかった以上は、たとえその届かなかったお金のその後の使い方等の関係で仮装等の事実、そういうような行為があったとしても、そこまで処罰の対象とすることは適当でない、そういう考えでございます。
平岡委員 今の点は、そういう理解に立たれているということであれば、それはそれとしては私も理解したいと思います。
 最後になりますけれども、今回、こういうテロ資金提供処罰法といったような法律が新しくできるわけであります。これまでの犯罪の類型よりもまた新しい犯罪ができるということになるわけですけれども、この法律ができることによって、先ほど、冒頭私がちょっと質問いたしましたけれども、国内におけるテロ資金の収集あるいは提供の状況についての把握というのが容易になるんでしょうか。もっと突き詰めていくと、例えば、収集、提供は犯罪になったわけでありますから、いろいろな強制捜査も可能になってくるんだろうと思いますけれども、そういう捜査を通じて国内におけるテロ資金の状況の把握というのは容易になるのかどうか。この点について、警察庁あるいは法務省の捜査当局にお伺いいたしたいというふうに思います。
漆間政府参考人 ただいま御審議いただいている法律案が成立いたしますと、犯罪収益の疑いのある取引というのは金融機関が金融庁に届け出ることになっていますが、テロ資金供与の疑いのあるものについても金融機関が金融庁に届け出るということになるわけでありまして、罰則の担保はございませんけれども、これが的確に行われるのであれば、この辺について、テロ資金を全体的に我々として把握するという面では、非常にそれが容易になる方向に行くだろうというふうに思います。
 それから、これからテロ資金供与についての処罰が行われることになれば、そういう事案について我々が認知した場合に、それを強制捜査によってさらにそこからいろいろな情報収集をし、いろいろな資料を得るというような手段もあるわけでございまして、そういう意味では、広範に、いろいろなテロ資金がどういうふうに動いているかとか、そういうことを把握するのには大変有力な武器になるというふうに思っております。
平岡委員 今のお話で、いろいろな捜査が幅広くできるようになるという答弁でございましたけれども、逆に言うと、余りにもちょっと範囲が広くなり過ぎて、いろいろな捜査が勝手に行われるというか、さまざまな人たちの人権が無視されるような形で行われるということについての危惧を持っておられる方がおられますので、その点についての慎重な捜査ということもお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
園田委員長 首藤信彦君。
首藤委員 民主党の首藤です。
 きょうは、この公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律案に対して質問をさせていただきます。
 この問題は、既に外務委員会において討議されましたテロリズムに対する資金供与の防止に関する国際条約、この国際条約を国内的に実効あらしめるための法律であると理解しております。そこにおいて、この法律のいろいろな要素があるわけですが、私は、この最大のものはこの法律が対象としている行為に対する定義である、そういうふうに思うんですね。
 というのは、今までにもたくさんの犯罪と定義されているようないろいろな行為があるわけですけれども、国際社会においても、犯罪行為で、例えば誘拐であればキッドナップとか、あるいは殺人であればマーダーとか、そういう言葉がありながらなぜテロリズムと言わなきゃいけないかというと、やはりそれはテロリズムという一つの犯罪類型をテロリズムという名で定義しなければいけないということが問題なのであります。ですから、世界ではテロリズムというのが言葉として定義化されているわけですが、残念ながら日本ではテロリズムというのをそのまま使うことができない、そこで公衆等脅迫目的の犯罪行為、こういう表現に恐らくなっているんではないかと思うんですね。しかし同時に、そのことは、国際社会が求めていることと我が国がこれからしようとしているものの間に微妙な差異があるということを指摘せざるを得ないと思うんですね。
 特に、定義であります。この定義において、テロというかこういう行為は、人の身体を傷害したり、誘拐したり、人を略取したり、人質にしたりするとか、そういうのをいろいろ書いてあります。あるいは、凶器によって身体に重大な危害を及ぼす、こういうふうになっているわけであります。しかし、テロリズムというのは、むしろ、そうした従来の犯罪で定義されるようなものではなくて、それをみんなに知らしめるというところに重要な眼目があるということは外務委員会で私が指摘したとおりであります。
 当然のことながら外務委員会における条約審査というのは御研究されていると思いますが、そこで私が指摘したのは、英語の原文における「テロリズム・イン・オール・イッツ・フォームズ・アンド・マニフェステーションズ」、このうちの「イン・オール・イッツ・フォームズ」、すべての形態におけるテロリズムでありますが、その次に書いてある「マニフェステーションズ」、要するにそれの表現形態、表示ということが実は「あらゆる形態のテロリズム」というふうに翻訳されているがために、テロリズムの本質的な部分が抜け落ちているということを外務委員会で指摘させていただいたわけです。
 ここにおいても、今、もう一度お聞きしますが、テロを、今までの犯罪で定義されているような凶器による殺傷とかあるいは人質、誘拐、こういうものだとこの法律では定義されているわけですが、同時にむしろ、そういうものを人に伝える、人を恐れさす、人を怖がらせる、人に心の変動を起こさせる、こうしたものがテロリズムであるというふうに解されるんですが、その要素はこの法律の第一条の定義においてどのように表現されておられるでしょうか。法務大臣、いかがでしょうか。
森山国務大臣 テロリズムという言葉につきましては、国際的にもまだ確立した定義があるわけではないと承知しております。
 いわゆるテロ資金供与防止条約の上でも、犯罪化が求められているのは、これまで国際的にテロ行為として問題となり、いわゆるテロ防止関連条約上で定められた犯罪行為、及び、住民を威嚇しまたは政府等に対して何らかの行為を行うことを強要する目的で行われる殺傷行為のために資金を提供する行為等であるというふうに理解しております。
 なお、日本政府といたしましては、平成十三年十月五日に、金田誠一議員が提出されました質問主意書に対する答弁書の中におきまして、「一般に、「テロリズム」の用語は、特定の主義主張に基づき、国家等にその受入れ等を強要し、又は社会に恐怖等を与える目的で行われる人の殺傷行為等をいうものとされている」という答弁をいたしております。
首藤委員 法務大臣、ちょっと質問を理解されていないんだと思うんですが、それはわかっております。
 問題なのは、その中における、テロリズムのうちの半分、すなわち、実際に物を、凶器を使って殺傷したり、爆発物を爆発させたり、あるいは人を誘拐する、従来の犯罪行為として定義されているもの以外の部分に関してこの法律においてはどのように表現されているかということをお聞きしているんです。法務大臣、いかがでしょうか。
古田政府参考人 大臣からお答えする前に、前提となることだけちょっと申し上げますけれども、この法案におきましては、公衆等あるいは政府等を脅迫する目的ということを前提としているわけでございます。これは、公衆を脅かす、あるいは国、政府等を脅かすという場合には、それが伝わらないと、メッセージが伝わらないと、もちろんそういうことにならないわけでございます。ただ、このメッセージの伝わり方というのも、明示的に伝えるということもありますでしょうし、あるいは、当然こういう団体がやる、あるいはこういうグループがやっているであろうというふうな黙示的な伝わり方をする場合もあるであろう。
 そのどちらの伝わり方をするにいたしましても、いずれにせよ、社会に伝わり、あるいは国、政府等に自分たちの行動が伝わって、そのことによってこれらのものを脅迫するということを目的としている、そういう仕組みにしているわけでございます。
    〔委員長退席、山本(有)委員長代理着席〕
首藤委員 刑事局長、それはやはり従来的な警察の考え方でテロリズムをとらえておられますけれども、そうじゃないんですよ。
 今の現代社会におけるテロリズムというのは、例えばオサマ・ビンラーデンという人の映像が出てくる。これはただのイスラム社会の中年の白いひげのおじさんがいろいろ話していることなんですよね。別に脅迫しているんじゃないんですよ。これをやらないともうあなたの国は滅びるよと言っているわけでもないし、あなたの社会も、あなたの家族は殺されるよということを言っているわけでもないんですよね。しかし、そういうことを、そういう主張なんかをいわゆる宣伝活動するということも一応テロリズムの定義になっているんです。これは脅迫しているんじゃないんですよ。ですから、従来の犯罪的な、警察的な発想ではこのテロリズムというのは対応できていないわけですよ。
 だから、どの部分でこの法律においては対応できているかということをお聞きしているんですが、いかがですか。
古田政府参考人 この法案は、いわゆるテロ資金防止条約の批准のための担保ということでございまして、その観点からいたしますと、そこで犯罪化が求められておりますのは、これまでのテロ関係条約……(首藤委員「いや、だからそれは違うと言ったでしょう、これは違うと。こういうふうに違うと言ったでしょう、先ほど」と呼ぶ)実際の条約の条文といたしまして犯罪化が求められているのはそういう点でございまして、ただいま御指摘のような点までは、これは犯罪化が求められていないものと理解しております。
首藤委員 法務大臣、これは大きな問題なんですよ。テロリズムというのは、半分は確かに人を殺傷したり爆発したり誘拐したりする行為なんです。しかし、あとの半分、むしろ、テロリズムという語源からいうように、恐怖を与える、心理的なものである、こういう犯罪なんですよ。ですから、今のサイバーネットの時代にはこの問題が物すごく大きくて、この問題をやるということを規制しないと、テロを抑止することにならないんですよ。
 ですから、この問題に関しては、外務委員会での論拠を踏まえてもう一度きちっと研究していただきたい、そういうふうに思うわけであります。
 これだけ話してしまいますと、これだけで三日ぐらいかかってしまいますので、次に移らせていただきたいと思いますが、同じようにこの定義で、従来の犯罪として定義しやすい、警察の観点からは定義しやすいというのはあるんですけれども、現実に起こっている危険からいうと随分抜けている点があるわけですね。例えば航行中の航空機や船舶、こういうふうになっておりますけれども、では停止中なのはどうなのかということですよね。テロリズムは停止中の船舶とか停止中の航空機にだって行われるわけですね。
 それからまた、爆発物を爆発させる、こういうふうな条件になっております。しかし、御存じのとおり、例えばインドのボパールで、殺虫剤の工場でバルブが破損したために三千人の人間が深夜のうちに死んでしまうという状況が起こっているんですね。ですから、別に爆発物を爆発させなくたって、だれかが化学プラントでバルブをしゅっしゅっと回すだけで、それは膨大なテロになるということが言われているわけでありまして、それこそいわゆるNBC兵器、すなわち核や生物化学兵器というものの恐ろしさがここにあるわけですよ。
 ですから、今テロリズムというのは、そうした、どどおんと爆発させたり、暗殺したり、銃で撃ったりするんではなくて、本当に、バルブをひねっていくとか、あるいは研究所にいる人たちが自分たちが持っている菌をばらまいていくとか、そういうテロリズムになっていくのに、この法律ではそうした新しい形のテロリズムに全然対応できていないと思うんですが、この定義はその意味では物すごい時代おくれの定義だと思いますが、法務大臣、いかがでしょうか。
横内副大臣 委員のおっしゃる定義というのは、テロリズムの定義ですか。それとも、先ほどちょっとおっしゃった航行中の航空機ということの定義でしょうか。
首藤委員 この法律で定義されている、法律の対象となる公衆等脅迫目的の犯罪行為の定義でございます。
古田政府参考人 ただいまお尋ねの点につきましては、まず航空機あるいは船舶につきましては、確かに、一条二号のイ、ロ、ハにつきましては、これは航行中という限定をかけてございます。これは、ハイジャック等のいわゆる関連条約がそういう前提であることによるわけでございます。しかしながら、航行中でなくても、一方で爆弾テロ防止条約等もございますし、こういうことを踏まえまして、航行中の航空機等に限定せず、同条の二号のニで、爆発物を爆発させる、あるいはそれに非常に重大な損傷を与える方法で攻撃をして破壊するというふうな行為も対象としているわけでございまして、そういう意味で、テロ行為と言えるような重大な加害行為は網羅されていると考えております。
 それと、ただいまお話にありました、例えば化学工場等を爆発させるというのも、これはやはり、そういう建造物等に重大な損傷を、破壊を与える行為ということで対象とすることとしております。
    〔山本(有)委員長代理退席、委員長着席〕
首藤委員 きちっと答えてもらっていないですよ。今は変わっているんだから。そういう爆発とかいうんじゃないでしょう。化学工場だって、普通の人がバルブをひねったときどうするか、ひねっちゃいけないというバルブをひねったときにどうするかということを聞いているわけですよね。ですから、それは確かに、いろいろずらずら言ってお答えになるのは結構ですけれども、近代テロというもの、この法律が対象にしなきゃいけない、これから一番、アメリカもそうなんですけれども、この国際条約が目指しているものはこういうものじゃないんですよ、はっきり言うと。
 それでは、法務大臣にお聞きします。サイバーテロにはこの法律はどのように対応できますか。
森山国務大臣 第一条の「定義」というところに、「この法律において「公衆等脅迫目的の犯罪行為」とは、公衆又は国若しくは地方公共団体若しくは外国政府等を脅迫する目的をもって行われる犯罪行為であって、次の各号のいずれかに該当するものをいう。」として、一に、「人を殺害し、若しくは凶器の使用その他人の身体に重大な危害を及ぼす方法によりその身体を傷害し、又は人を略取し、若しくは誘拐し、若しくは人質にする行為」とありまして、これでほとんどの場合はカバーできるのではないかと思います。
 二以下に、航行中の航空機あるいは航行中の船舶、その他いろいろなことが書いてございます。「爆発物を爆発させ、放火し、」ということも二号には載っておりまして、これらのことを読みますと、今おっしゃったようなことはカバーされるのではないかと私は理解いたします。
首藤委員 それはもう全くカバーされておりません。テロリズムの基本的な研究を見れば、そういうものではない、そういうもので定義されていないところに今のテロリズムの問題があるわけですよ。例えば文明に対する反発とか、ここに定義されていないですよ。国家とか公衆とか、国もしくは地方公共団体を攻撃しているんじゃないんですよ。文明に対するとか、そういういろいろなものがあるんですが、ともかく、それを言いますと私の持ち時間がもうみんなないんで、次に移りたいと思います。
 テロの難しさというのは、いわゆるステーツスポンサーズテロリズム、要するに国家が支援しているものが多いわけですね。それのうち、もちろん今までのリビアがやっていたとかいろいろなことがあるんですけれども、今実は、当たり前のことですけれども、アメリカが物すごくテロリズムをやっているんですよ。アメリカが昔は、例えば、キューバ侵攻、キューバ再侵攻をするためにいろいろな民間団体にお金を出してテロ活動をやらせていたんですね。最近の新しいバージョンはどうかというと、いわゆるアメリカが定義した悪の枢軸国、こういうものに対して、周辺国にいろいろな団体があったりNGOがあったり、こういうところに供与して実はテロ活動を行っているんですよ。典型的な例はクルド族ですね。イラン、イラクの周囲にあるクルド族への支援というのは、かなりのテロ活動なんですよ。
 こういうアメリカがやっているテロ活動もまた当然この法律の対象となりますでしょうね。そうですね、法務大臣、いかがですか。
森山国務大臣 国家が背後で支援している行為の具体的な内容が必ずしも私はよくわからないんでございますけれども、あくまでも一般論として考えますと、先ほど申し上げた本法律案の一条に言うところの「公衆等脅迫目的の犯罪行為」とは、公衆等を脅迫する目的による一条各号列記の行為でございまして、我が国の刑罰法規の構成要件に該当し、かつ違法であるものを意味するわけでございます。
 このような犯罪行為に当たるものであれば、お尋ねのような場合であっても、当該犯罪行為の実行のために資金を提供し、または収集する行為については、資金提供罪または資金収集罪が成立すると考えます。
首藤委員 全然きちっと答えていただいていないですよ。これでは法律の審議にならないですよ。
 今、僕はこれは架空の話をしているんじゃないんですよ。本当に目の前で起こっていることなんですよ。イラクという国が悪の枢軸であり、そういう国を封じ込めたり、あるいは不安定化させるために、周囲にはいろいろなNGOがあって、そういう人たちが反政府勢力をある意味で支援しているわけですね。そういうところに、アメリカという国家だけではなくて、アメリカにいるさまざまな個人やさまざまな政治団体がいろいろな形で、昔から何とか何とかソサエティーとかありますね、そういうのが支援しているんですよ。
 ですから、当然のことながらそういうのもこの法律の対象となるわけでありまして、法務大臣、法律をよく御存じのお立場から、それは当然この法律の対象となると私は解釈するんですが、法務大臣の見解はいかがでしょうか。
森山国務大臣 おっしゃるお気持ちはわかるんですけれども、この法律は、国を罰するものではございませんし、団体を罰するというものでもないと思います。だから、個人に対する罰則でございますので、そこのところがちょっと違うんじゃないかというふうに思うんでございます。
首藤委員 これは全く違わなくて、私が、例えばそういうイラクのフセイン政権を打倒するというと、勢力に、あるいは私じゃなくても個人が、そういう形でNGOを経由したりあるいはさまざまな団体を経由して資金提供を、現に多くの人たちがやっているわけですが、そういうことも当然対象になるというわけでありまして、これは課題としてぜひ研究していただきたい、そういうふうに思うわけです。
 かようにこの法律は難しい。刑事局長さんがいろいろ定義されますけれども、今までの法律の定義ではこの法律は実効あらしめることができない。もう一度真剣に考えていただきたいと思います。
 時間がないものですから、次に資金の問題について移らせていただきますが、「情を知って、」という言葉があります。「情を知って、」要するに内情を知って、これが本当にテロなのかどうかということを知るということでありますが、これはもう非常に難しい。
 これは、今イスラエルで爆弾テロをやっている例えばハマスなんというグループがありますけれども、これはもうよく御存じのとおり、さまざまな社会活動、教育活動、難民救済ということを活動しているところの一部の武力行為なわけですね。ですから、ハマスぐらい有名になれば大体わかりますけれども、そうでなければ、果たしてその団体が福祉活動をやっているのかテロ活動をしているのかというのは非常にわかりにくいんですね。しかもその形状が、例えばマフィアとかそういう大きな団体ではありませんから、さまざまな小さい団体がいろいろなネットワークを組んでやっている、そういうところ。全く関係ない、本当に中東のある地域のある村の子供たちの小学校のための絵本を出しているというのも、実はネットワークからいくとどこかで自爆テロをやっている人たちと結びついてくるわけですね。
 ですから、この「情を知って、」というのは、犯罪要件としてどの程度実際的には確立できるのか。そこのところはいかがですか。刑事局長で結構ですから。
古田政府参考人 御指摘の「情を知って、」という要件につきましては、これは既存の罰則にも要件とされている例は幾つもございますが、要するに違法な行為であることの認識が必要であることを明らかにするものであります。
 ただいまお尋ねのような点につきましては、これは、団体自体に対する資金の提供とかあるいはグループ自体に対する資金の提供ということではなくて、ある一定の重大な犯罪行為を具体的に行う意図を持っているということがわかった上で資金を提供することを処罰するということでございますので、やや委員のおっしゃっていることとは場面が違うのではないかと考えております。
首藤委員 いや、これは全然違わないですよ。要するに、犯罪行為だという定義をするにはその犯罪行為を特定しなきゃいけないんですよ。しかし、今みたいなネットワーク社会の中で、しかも海外でやっていることをどうやって知り得ますかということを聞いているわけですよ。ですからそうしたものを、国内的なもので世界で起こっているそういう動きをどれだけ把握できるか。できないわけでしょう。
 では、日本のテロリズムの研究の状況はどうですか。例えばその定義を、アメリカは政府が決める、それからテロ白書で決めている、あるいは国連の決議で決めている。こういう幾つかの有名なところがありますけれども、現実に今はそんな有名なところはこんなテロ活動、テロの支援なんかしていないわけですよ。もう名もない小さい小さいところがネットワークを組んでやっている。それがネットワーク社会の犯罪というものじゃないですか。
 ですから、それを今の警察の体制でどういうふうにとらえるのか。どのようにこの犯罪行為をこのネットワークテロの中で定義づけられるのか、それはどなたか専門家に答えていただきたい。いかがですか。
古田政府参考人 ただいまのお尋ねは、どういうふうな活動をするか、そういう具体的な意図をどういうふうにいわば察知するかということについての情報収集の問題であろうと考えるわけですが、これにつきましては、国際的にもいろいろな形での情報交換、これを密度高くしなければならない、そういうふうなことも近時特に意識されておりまして、組織的な活動でございますので、さまざまな情報収集等の手段を通じてできるだけそれを把握するということで、今後、世界でそういう方向で物事が進むものと考えております。
首藤委員 結構です。
 今図らずも言っていただいたように、日本はそういうことを定義する体制がないんですよ、はっきり言うと。研究だってほとんど行われていない。日本でテロリズムの研究家なんというのは本当にもう五本の指、そういうような状態の中で、どうしてこの法律が適用できますか。これは深刻な問題なんですよ。だから、そういう能力がないのに法律だけできたらおかしいじゃないですか。こんなものは、法律として通そうとすること自体が間違いですが、私の質問の中で幾つか重要な点があるので、次の資金のことについてお聞きしたいわけです。
 例えば、仮にテロリストのネットワークが日本に口座を持っている、そうした口座は日本国内でどうやって見つけられるか。例えば、今のウイルスチェックのように、何かパソコンで打っていると、あ、急にウイルスが入ってきましたと、こう画面に出るとか、どういう形で、今の、現実に資金供与の対象となるようなテロネットワークの口座を見分けますか。金融庁、いかがですか。
原口政府参考人 組織的犯罪処罰法のように、金融機関は、顧客から収受した、受け取った資金が犯罪収益等である疑いがある場合には、当該取引を金融庁に届けなければならないというふうにされているわけでございます。
 この疑わしい取引かどうかというのは極めて主観的なことでございますので、金融機関は、日ごろ集積した知識に基づきまして、また、取引相手の属性ですとか取引の態様とかそういう各種の情報を総合的に判断をして、当該取引が疑わしい取引かどうかを判断するということになりますが、そういう主観的な要素もございますので、金融庁からも、各金融機関に対しまして、疑わしい取引の判断の参考となるような取引類型をまとめた参考事例集を配付しておりまして、金融機関はこういったものも参考にしながら判断をしているというふうに認識をしております。
首藤委員 今までの知見に基づいて、さまざまな知恵を使って発見しているということですか、疑わしい取引を把握しているとおっしゃるわけですか。では、最近問題になった、コンゴの外交官詐称の問題になったムルアカ氏の口座というのははっきり把握しておりますでしょうか、金融庁、いかがですか。
原口政府参考人 この届け出というのは犯罪捜査に係るものでございますので、個別の取引の状況については答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
首藤委員 そんなことはわかっているんですよ。ですから、そういうのは警察から言われてやっているのか、それとも自主的に、この辺は怪しいとして判断してやっているのか、金融庁、もう一回、いかがですか。
原口政府参考人 仕組みといたしましては、まず各金融機関が疑わしい取引と判断したものを届けていただきまして、それについて金融庁の方でまた種々の情報等を判断をして、捜査に資するというふうに判断いたしたものについては捜査当局に提供する、そういう仕組みになっております。
首藤委員 結局、疑わしいと思わなかったら出てこないわけですよ。だから、疑わしいと思うのが、日本国内で疑わしいということを理解できるそうした体制がないと、これは結局永遠に把握されないということなんですよ、残念ながら。それがなければ、結局、アメリカに、ここは危ないですよ、ここは怪しいですよと言われて、ああそうでございますかといってチェックしているだけだというお寒い体制の中で、どうしてこんな法律が守れるか。これは法務委員会の皆さんも、この部屋におられるすべての皆さんが真剣に考えていただきたいテーマだと思います。
 時間がありませんので、最後に、このテロと関係あるわけですが、こういうテロがあるような地域では、当然のことながら難民が発生します。あるいは、アフガニスタンみたいにテロをやっつけるために爆撃したりする。そうすると、膨大な難民が出てくるのですね。今、アフガニスタン難民というのが問題になっていますが、五百万人ぐらいいます。次に出てくるのは、悪の枢軸難民ですよ。恐らく、悪の枢軸と目されたところに何らかの経済制裁が行われ、あるいは実力行使が行われれば、膨大な数の悪の枢軸難民が出てきます。当然のことながら、数多く日本に来ることになります。
 これは法務大臣にも何度も何度もしつこく質問させていただきましたけれども、例えば、ハザラの人たちがタリバンに追われて逃げてきた。その人たちが、牛久や十条の入国管理センターで、ひどい人は、私が牛久に行ったときでも、私が行ったその日に、二百三十二日もそこに勾留されているという人がいるんですね。こういう非人道的なことを、日本自体が新たな人権侵害をしているということで、この国内における難民の問題について真剣に考えていただきたいと思うのですね。
 法務大臣、よくお願いしたいのですが、この問題は、今問題となっている有事法制におけるジュネーブ四条約のプロトコール、要するに国際人権の問題と非常に密接に関係を持っている。これに対して日本は、国内における難民の受け入れを含めて、あるいは有事法制におけるジュネーブ四条約のプロトコール批准も含めて、どのようにデザインを考えておられるのか、最後に法務大臣の御意見をお伺いしたいと思います。
森山国務大臣 有事の際に我が国に大量の避難民が流入するかもしれない、するであろうというような話がよくございまして、そのような場合にはどうするかという議論がよく聞かれるところでございますが、もし万一そのようなことになりましたときは、関係省庁が連絡をとりまして、政府全体としてこれに取り組まなければいけないというふうに思います。
 法務省ももちろん、出入国管理行政を所管する立場から、かつてのインドシナ難民等の先例も参考にいたしながら、大量避難民対策が円滑に行われますように、体制の整備及び滞在施設の確保に努めるというほか、的確に対処していきたいというふうに考えておりますが、これはあくまでも政府全体の問題として、政府挙げて考えなければいけないことだと思っております。
首藤委員 終わります。
園田委員長 西村眞悟君。
西村委員 これは法務当局にお答えいただくのが適当だと思います。
 以下、本案についての少々技術的なことをお聞きします。
 まず、第二条に関しまして、「情を知って、」という文言が冒頭にございますが、この文言がなくても、条文は故意犯を処罰の対象としているということが明らかになるのでございます。この「情を知って、」の文言なき構成要件の上に「情を知って、」という文言を加えることによって以下の構成要件を何か限定する意味を有するのか、また、限定するとすれば、通常の故意犯の何を限定するのか、また、限定しないとすれば、この「情を知って、」ということを入れたことによって、拡大するのか、どういう機能があるのか、これについてちょっと御答弁いただきたいと存じます。
古田政府参考人 委員御指摘のとおり、犯罪は故意犯が原則でございます。そういう意味で、当然ながら、認識というのが必要であるということは、これは大前提になるわけでございます。
 しかしながら、従来、資金提供罪、幾つかパターンがあるわけでございますが、これは「情を知って、」ということを、つまり、相手の犯罪行為でございますので、それを提供者において認識しているということを明示する観点から、そういうふうな文言を用いるということとなっているものと理解しております。
 おっしゃるとおり、この「情を知って、」というのは、相手の犯罪行為、相手が犯罪行為をしようとする意図を持っているということを知って、そういう意味でございますので、それは故意犯の要素といえば、おっしゃるとおりかもしれませんが、そういう点を明示する、したがって善意のものは含まれないということを明確にする、そういう機能があるものと考えております。
西村委員 それでは、法律用語として故意にという言葉があるのであります、なぜ故意にという言葉は使わないのかということであります。
 「情を知って、」という文言を、情という言葉を過去使ったことはあるんでしょうけれども、私が思い出すのは、外務省機密漏えい事件の西山被告の起訴状にある、情を通じてという、我々が学生時代に印象的な起訴状でございましたので覚えているんですが、情というのはさまざま、情を通じての方にも使えるし、今の御説明では、故意犯であることを明示することだという趣旨の言葉とは少しずれるんじゃないですか。
 情を通じてという情は故意の問題じゃないですね。男女の肉体関係を通じて情報を引き出したという意味で、かつて検察は情を通じてという言葉を使った。「情を知って、」とは何か。男女関係を利用してこの資金提供することかと解釈しても、検察がかつてその言葉を使って堂々と起訴状に書いているわけですから、そう強弁することも可能である。
 したがって、この言葉は適当ではない。今お答えになった趣旨であれば、故意にという言葉を使うべきだと思いますが、いかがでございますか。
古田政府参考人 情という言葉は、ただいま委員御指摘のようなコンテクストで使われることもありますけれども、いわゆる、どういう事情であるか、こういうことで「情を知って、」ということを使うのがこれまでの犯罪として規定されている罰則の使い方であると承知しております。
 先ほど、私、認識というのは故意の一部とはなり得るということは申し上げましたが、先ほども申し上げましたとおり、これは、自分の行為の問題ではなくて他人の行為であって、その他人の行為がどういう性質のものであるかを認識していることが必要であるということを明示する、そういうために置かれていると理解しているわけでございまして、故意にというようなことになりますと、これはまた非常に広い概念でございますので、かえって広過ぎて、逆にそういうことを書いても法的な意味は乏しいものではないかと考えております。
西村委員 私としては、故意にということを書いても法的意義が乏しいのなら、「情を知って、」と書くのも乏しいのだろうと思いますが、「情を知って、」という言葉の次に続く公衆等の脅迫目的の云々という構成要件を明確にするものであって、限定するものでも拡大するものでもないと解釈しておくということでございますね。再度確認をさせていただきたい。
古田政府参考人 「情を知って、」という言葉に限って申しますと、先ほど申し上げましたように、提供の相手方の具体的な犯罪行為の意図を知っている、それを認識しているということを明らかにするということでございます。したがって、善意のもの等は含まれないという意味で、そこら辺、法律上限定が明確になるということでございます。
 続きまして、あるいは私、御質問を的確に理解しておりませんけれども、犯罪行為の実行を容易ならしめる目的ということとしておりますので、これは、実行を容易ならしめる積極的な意図というのが必要であるということでございまして、その意味で限定的な機能を持たせているわけでございます。
西村委員 余り問答しても仕方がありませんから、法運用において、私の質問した趣旨が反映されれば、まあ、今御答弁をなさった趣旨が反映されればと思います。
 次に、この第二条の以下の構成要件、公衆等脅迫目的犯罪行為であることを知って云々という場合の、どの範囲を知っておればこの構成要件に該当するのか。
 例えば、「実行を容易にする目的」でのその実行を、原子炉爆破を容易にする目的で資金を提供すると思っておったけれども、実は航空機爆破をしよったと。受け取る方は航空機爆破の目的で動いておったけれども、提供する方は原子炉爆破の目的で金を渡した、こういう場合にはどうなるのかということを明確にしておきたい。
 つまり、第一条のどれかに該当するものとの認識があって、それを容易にする目的を有しておればそれで十分なのか、第一条各号の具体的に該当することまでも知って、その実行を容易にする目的がなければならないのかということであります。いずれでしょうか。
古田政府参考人 必ずしも、一条各号の特定の行為をするということまでの認識は必要ではなくて、ここに掲げております行為のいずれかを実行する意図があるということを具体的に認識していれば足りると考えております。
西村委員 つまり、井戸に毒をまくとかいろいろな行為が含まれるけれども、出す方が何を考えておろうが、またやる方が何であろうが、具体的にすれ違っても、第一条に該当するものの範囲であればこの構成要件に該当するということでございますね。
 次に、三条に関しては、これは街頭カンパ行動も含むのかということであります。「資金の提供を勧誘し、若しくは要請し、又はその他の方法により、」云々。例えば、地下鉄でサリンをまこうというふうな意図を持って、その資金を集めるために自然保護を掲げて街頭カンパ活動を行う、また、これは現実にある、死刑廃止の街頭署名、カンパを集めながら、実はいわゆる非公然活動の資金団体に流す、こういうことです。この街頭カンパ行動も含むんでしょうか。
古田政府参考人 この資金収集罪は、要するに公衆等脅迫目的の犯罪行為の実行を意図している者が、その実行のために使用する、そういう目的で資金を収集するということが犯罪でございます。したがいまして、表にあらわされた名目がほかの名目でありましても、実際にそういう目的で集める場合には、この資金収集罪に該当するということになります。
 なお、この機会に、先ほどのお答えについて若干補足させていただきたいわけですが、いずれにいたしましても、実際問題として、どういう犯罪行為をするのか、そういうことが具体的にある程度のことがわかっていないと、資金提供というのも現実問題としてはなかなか難しい問題があろうかと思っております。
 ただ、いずれにいたしましても、一条の各号に掲げるどれか、ある特定の、これでなければならないということではない、そのどれかに当たる行為を含む行為をするんだという認識があれば足りるということでございますので、補足させていただきます。
西村委員 それで、第三条の「他の方法により、資金を収集」、この「他の方法」というのは、勧誘もしくは要請以外の方法、つまり、強奪、詐欺、窃盗、こういうことは含むんでしょうか。含むとすれば、例えば、詐欺、強盗と本法における犯罪はどういう関係に立つんでありましょうか。
 また、この両犯罪は、次の第四条の、自首した場合の必要的減軽もしくは免除の刑はどの範囲に及ぶのか、本法だけなのか、本法と観念的競合に立つこの強盗にも及ぶのかということについて、御答弁いただきます。
古田政府参考人 法律案三条の「その他の方法により、」、これにつきましては、前に例示がございまして、勧誘あるいは要請ということでございます。そこで、自分が積極的に相手方に働きかけて、相手方の意思に基づいて資金の提供を受ける、こういう場合のその他の方法ということで考えているわけでございます。
 そこで、ただいまお尋ねの、例えば、強盗であればどうか、詐欺であればどうか、こういうことでございますが、強盗の場合には、相手の意思に基づいて提供を受けるということではなくて、無理やり奪ってしまうというようなことでございますので、それは本法で言う収集ということにはならないものと考えております。しかしながら、詐欺の場合には、これは今申し上げましたように、積極的に相手方に働きかけまして、その意思に基づいて提供を受ける、そういうことになりますので、この条文で言う収集に該当するものと考えております。
 この場合には、御案内のとおり、一個の行為によって資金収集罪と詐欺罪の両方の罪名に触れるということになりますので、この二つの犯罪が成立して、刑法上、五十四条一項のいわゆる観念的競合として、重い罪の刑で処断されるということになると考えております。
 その場合に自首減免規定がどのようになるかということで申し上げますと、これはまず、どちらが重い犯罪かということで、重い刑を先に決めるということになります。したがいまして、この資金収集罪の方が重いということになりますれば資金収集罪によって処断されることになりますので、四条の自首減免規定が働くことになる。一方、観念的競合であるもう一つの犯罪の方が重いと判断された場合には、これはそちらの刑によって処断されることになりますので、この四条の自首減免規定は働かないと考えている次第でございます。
西村委員 ちょっと、条文の読み方として今御答弁になったようなことが成り立つのかということなんですが、「資金の提供を勧誘し、若しくは要請し、又はその他の方法」というのは、まさにその他の方法なんでありまして、勧誘、要請以外の方法だということに読めるわけですね。勧誘、要請以外の方法だというふうに読めるこの「その他の方法」の内包される概念が、勧誘、要請に類似するものだとは到底読めないと私は思います。
 例えば、その次に当たる「資金を収集したとき」という文言を入れかえまして、その実行のために使用する資金を収集する目的で、提供を勧誘し、もしくは要請し、また類似の方法で人に働きかけることによってとか続くんでしょうけれどもね。
 まあ、構成要件を読むというのは難しいんでしょうが、私は、今の御答弁が、その他の方法が上記にあるものの類似であって、人の意思に働きかけるという限定を有したものだとは到底読めないというふうに申し上げておきます。
 現実的、テロ組織の実態から見ても、私の申し上げている方が実態に即しているのではないんでしょうか。あらゆることで資金を収集している。人の意思に働きかける、そういうふうな生易しいことではありません。あらゆることで資金を収集します。したがって、今の御答弁には納得しかねるということを申し上げておきます。
 次に、これは大臣にまたお聞きすることが適当かと思いますが、今我々が審議しているのは、資金が動くときの動かし方、どういう意図で動かしたかということで罰するということですが、つい数日前から一昨日まで開かれたG7においても、テロの資金となるこの金を凍結すると。こういうふうな法体制は我が国にはないんだろうと思いますが、アメリカ等々は、前にも申し上げたと思いますが、凍結しておるんです。
 例えば、北朝鮮という国家があって、非常に友好的な国家でありましたけれども、突如として金政権ができて、国際的にこれはテロ国家だ、そして我が国にある北朝鮮の国家資産は国際的テロに利用されるものになった、こういう場合は、例えばアメリカがイランでやったように、我が国も北朝鮮の我が国国内で保有し自由にできる資産を凍結する必要がある。
 当局に確認のためお聞きして、大臣に立法的な問題意識をお聞きしますが、現在では、私の申し上げているように、動いていない資金がそのままテロに使われる場合に、それを直ちに凍結するという法体制はないんでしょうか。また、ないとすれば、テロに要する資金を根絶やしにしようという国際的な風潮、そして我が国の必要性の中でこの立法措置は必要だと私は思いますが、大臣はいかに思われますかということ。二つお聞きします。
古田政府参考人 まず前提についてのお尋ねがございましたが、現在、お尋ねがどういう場面を想定しているのか必ずしもわかりにくいところもありますものの、テロ行為等の資金ということで、動いていない資金、保有しているだけということでございましょうか。
 それを直ちに凍結ないし没収するというふうな制度はございません。ただ、それが例えばほかの殺人の予備とかそういうことにもし当たるような場合があれば、その限度で対応は可能な場面があるわけでございます。
西村委員 質問の趣旨ですが、現在においては、戦前に行われた宣戦布告に関しての日本資産の凍結とかアメリカ資産の凍結とか、そういう国家間のことではなくて、非国家組織のテロに対していかに国際社会がその資金をとめるかという問題意識に移っております。
 今我々が犯罪で没収できるとかいうことは法体制にあるんですが、例えば、テロ組織がいつテロを行うかわからぬけれども、この組織はテロ組織であるとこれを認定して、そしてあらかじめそれに使われる我が国内にある資産を凍結するという体制、今それはないという当局のお答えでしたけれども、大臣、この国際社会のテロに対する克服のための風潮の中で我が国にもこの法体制は必要だと私は思います。有事法制の一環としてこれは必要なんだ。その意味で、大臣はどういうようにお考えですか。
森山国務大臣 現在のところは、今刑事局長が御説明申し上げましたとおり、そのような法律あるいは措置を許す体制にはなっておりませんのでできないと思いますが、国際的な情勢あるいはそのほかの要請によりまして、そういうふうなことが必要な事態も起こり得るかとは思います。その際には改めて検討しなければいけないかもしれませんが、現在のところ、そのような事態にはまだ至っていないかというふうに思います。
西村委員 私の認識は至っておる、もう既に至っておると。なぜなら、我が国は、国民を守るという新しい体制に、十九世紀的な法体制から移行しなければならない。
 例えば覚せい剤が、十年前は一キログラム押収されただけで新聞に出ていた。〇・〇三グラムが五千円でいまだに売買される。それが数トンにわたってコンテナで入ってくる。これを防圧する体制に我が国はない。簡単に言えば、これはアヘン戦争をしかけられているんだということ、これは非常時なんですよ。
 ということなんですが、次に移ります。
 前回質問をして、御答弁はいずれいただきますというようなことを言っておきました。パナマ船籍船内における日本人機関士の殺害事件、そしてそのパナマ船籍船が姫路に入港して、どうするか、ああするか、詰め将棋の詰まない状態が続いている、これをいかに処置されましたかということをお聞きします。
森山国務大臣 御指摘の事件は、公海上にある外国船籍の船舶内で発生いたしました外国人を被疑者とする事件でございまして、我が国の刑事裁判権はございませんが、我が国は、裁判権を持っておりますパナマ共和国に積極的に協力しようということで、既にパナマ国からの要請に応じまして捜査共助を実施いたしております。
 現在、パナマの政府は、我が国が提供した証拠に基づきまして、犯人の引き渡し請求に関する検討を進めているものと承知しておりますが、法務省といたしましても、犯人の適正な処罰の実現のために、関係省庁とともに、犯人の同国への引き渡しに向けて引き続き同国政府との調整を進めていきたいと考えております。
西村委員 既に申し上げたように、外国船籍ならそれは外国だと我が刑法にも書いてある、これは十九世紀なんです。
 パナマはあの船を自分の船だと思ってない。パナマが意図するところは、諸外国の船舶に対する税制上の規制をかいぐって、自分の船籍にしておれば、有利な法制をパナマがつくり、その有利な法制を利用させることによって幾ばくかの外資を獲得することがパナマの目的であって、それ以上に、その中で起こった犯罪を捜査して犯人を捕まえて、またパナマ国内に移送して刑務所に入れるという意図は全くないんですね。だから、今お答えになった、それでまた我が刑法にある前提は、教科書の前提であって現実の前提ではないんです。したがって、それについては立法措置が必要だと思うんですね。
 我が国は本当にほとんどの物資を輸入しておりますが、飛行機、空を飛んでくるものは意外に少なくて、九十数%は船である。九五%を超えていると思いますが、それは船なんです。その船の多くが日本船籍ではなくて、例えばパナマであるとかリベリアであるとか、日本の船籍にすれば金が高い、規制が多い、だからほかの船籍にしておるんでしょう。そして、それらの国はみんな自分の船だと思ってない、日本の船だと思っておる。
 こういう中で、つまり、日本の、我が国の社会経済を支える動脈の役割を果たしている日本船員がその中で殺害されて、日本の姫路に入ってきているのにパナマにお伺い立てはできないとかいうふうなことの特例を、もうぼつぼつ我々立法府としては検討すべき段階に来たのではないか、このように思います。
 刑法的に言うならば、刑法二条の国外犯は、国家的法益に対する侵害だけをくくっておりますが、これをいじくるのか、それとも便宜置籍船に限っての特例を設けるのか、これはやはり緊急を要するべきだと思うんですがね。いかがですか、その点は。
森山国務大臣 パナマあるいは幾つかの国が、そのような意図で船籍をいろいろな国に提供するといいましょうか、いろいろな国の船に提供して、それで自分の、パナマなどの国の利益にしているという話はよく知られているところでございまして、今先生がおっしゃいますような事態はあり得ることでございます。
 しかし、パナマの方にとっても、そのようなやり方をするということは、自分の国の国益でもありますので、その結果パナマと日本の間で問題が生じますとパナマにとってはやはり困ることでありますから、パナマの国がこのケースについて全く無関心で、何もする気がないというふうに断定することもできないと思います。
 ですから、パナマとの交渉を今いろいろなルートでやっておりまして、公的にもまたさまざまなところを通してやっておりまして、パナマの政府もできる限り協力をする、また日本もパナマの考えに対して協力して捜査を共助していくということで今やっておりますが、しかし、先生御指摘のように、日本人が被害者になったというようなこのケースを見ますと、今の刑法が十分ではない、あるいは欠けている面があるというふうな感じも確かにいたします。
 調べてみましたら、戦前までは日本の刑法にそのような条項があったそうでございまして、新しく戦後憲法が変わりましたときに、国際的な信頼ということを強調いたしまして、それぞれの公式な籍のあるところのそれぞれの外国に任せようではないかという考えから、刑法も今のような形になったというふうに説明を聞きました。しかし、昭和二十年代のことでございますので、当時の日本の事情あるいは国際情勢、また海運業界の様子というのも全く今は違っておりますので、改めて検討するべき課題ではないかなと私も個人的には感じております。
 これから、このケースに関しましては現行法でやっていくほかございませんので、できるだけ努力をいたしまして、現在の法制のもとで解決をするべく努力を続けていきたいというふうに思っております。
西村委員 積極的な御答弁をいただいて、ありがとうございます。現在の状況が続けば、私は、日本の動脈を守る日本人船員に自力救済の装備をしろと勧めざるを得ない。また、今回の殺された船員がもし私の家族ならば、私は復讐する。
 パナマは、引き渡せとは言っていないんですね。積極的には何も動かない。だから、日本が日本人を守るという観点からやらねばならない。まして、その日本人の役目は、我が国の経済を支えるための動脈を担っている役目を果たしている日本人であります。
 次に、これも前に言っておきましたけれども、台湾人の、台湾出身者の外国人登録証には中国と記載されておりますね。これはおかしいんじゃないか、外国人登録法の趣旨に反するんじゃないかと私は質問して、御答弁を今回いただこうと思っていますが、外国人登録法は、外国人の居住関係及び身分関係を明確にならしめ、もって在留外国人の公正な管理に資することを目的としておるわけでございます。これは第一条でございます。
 さて、公正な管理とは事実に基づく管理でなければなりません。事実の相違を無視すると重大な不公正な管理に至るわけでございますし、我が日本の国益上の判断も誤るわけでございます。殊に、中華人民共和国と中華民国、台湾というものを同一にして論ずることは、我が国の国益上重大な判断ミスに至ることは事実でございます。まして、外国人登録法四条は、市町村長は登録原簿に次のことを登録しなければならない、第七号、国籍の属する国における住所または居所とあります。
 具体的にどこに住んでいるのかということまで登録原簿に登録しなければならないわけでございますから、中国といって中華人民共和国の扱いをしても、中国だからと言える、台湾という扱いをしてもいけるという中途半端なことをしておってはならぬのではないですか、こう思っているんですが、これは、中国として台湾と書くとか、中国、台湾と書くとか、ここは違うんですよと。大陸の共産主義中国と違う、こちらは民主主義的に選任されている台湾ですよということを明記することが、事実に即することであり、また、我が国の国益に即することであると思うんですが、大臣いかがですか。
森山国務大臣 外国人登録法の施行というのは昭和二十七年でございますが、それ以来、台湾の出身者につきましては、外国人登録上の国籍欄において一貫して中国と表記しておりまして、この表記は、日中国交正常化、昭和四十七年九月でございましたが、その国交正常化の前も後も変わっておりません。このような表記は、国籍の表示として妥当なものであろうと思っております。
西村委員 事実として、台湾と中国、違うやないかと言うておるわけで、事実として違うんですよね。中華人民共和国は台湾を実効支配したことは一度もない、台湾の人は中華人民共和国の国民だとは思っていない、こういうことですから。それから、その二十七年以降に我が国は台湾との国交が切断されて、今、北京の中華人民共和国、こうなっている、この事実一つを見たって、違うんですよね。国交が切断された、そして、今、中華人民共和国と国交を開いているということは、事実として違うからこうなっているんで、この事実に基づいて外国人登録法がなされるということが、我が国の主体性を示すことだと思います。
 例えば朝鮮半島においては、北朝鮮とは国交がないが、事実としてこれは北朝鮮に所属する人たちだというふうにはちゃんとなっておると思うんですね。同様に、台湾についても、国交はないが事実としてこの人は台湾であるということが登録で明確になるようにすることが、外国人登録法第一条に示す公正な管理に資する、そして、それに基づく判断を誤らないということではないんでしょうかと私は思っております。
 これについては、また後日申し上げます。
 さて、最後の質問ですが、これは昨日お配りしておりました文芸春秋五月号の、杉嶋岑という人が、「私と北朝鮮「三つの約束」」というふうな手記を発表しまして、なぜ自分が一年数カ月にわたって北朝鮮に拘束されたのか、それは、内調、公安に自分が北朝鮮のことを語った内容が北朝鮮当局に筒抜けであって、それゆえにスパイ容疑として一年数カ月勾留されたんだ。そして最後は、こういうことで締めくくっております。「私は、国家の機密情報がいともたやすく流出する管理体制の甘さに憤りを持っている。機密漏洩が犯罪となるのかどうか、私にはわからないが、国家の安全に関わる以上、利敵行為には厳しく対処すべきであると考えている。」
 私は、この杉嶋さんの言っていることがすべて真実だという前提ではなくて、最後のこの文章には大賛成であります。私は、議員になってからすぐ、スパイ防止法が必要だ、国家の安全と国民の安全はスパイ防止法がなければ守れないという認識を示しておる者でございますが、まず、名指しされた公安、内調の御見解を伺うとともに、このような、我が国の国民に対する情報が外国政府にだだ漏れであり、また、我が国内にその情報を収集する外国政府の機関が存在するという現状は、警察から見て治安維持に責任を持てる現状なのかということ、おのおの答弁いただくとともに、大臣の御見解もいただきたいと存じます。
 ただ、私はここで、内調が正しいのか、公安が正しいのか、杉嶋さんが正しいのかというふうな小さな問題で議論をしているのではなくて、北朝鮮においては日本人がどういう根拠で勾留されるのか。赤十字会談では、四十数名の北に渡った日本人が行方不明になっているがどうかという照会を行っている現状にかんがみるならば、杉嶋さんのこの体験は貴重なものであり、我々は、ここから国家国民を守るための体制を構築するための資料を得なければならないと思っております。こういう観点からお聞きしておりますので、今申し上げた公安、内調、警察、そして大臣の御見解を伺います。
書上政府参考人 今、委員から御指摘になりましたこの問題につきましては、私ども、我が国の公共の安全にかかわる情報活動をしております公安調査庁として大変ゆゆしい問題であり、仮にこれが事実といたしますと、組織の存亡にかかわる重大な、深刻な問題であると受けとめております。
 そういった視点から、この手記が公表されて直ちに、全国的に情報の管理の体制に不備があったのかないのか、こういったことの総点検の指示をするとともに、当該部署におきましては、担当職員から綿密な事情を聴取するとともに、当時の記録等を精査して現在その真相について調査中でございますが、現在までのところ、手記で言われるような事実はなかったものというふうに考えておるわけでございます。
 ただ、いずれにいたしましても、なぜこういうことが手記で言われているのかということについては、これはまた全般の問題もございますので、そういった視点から改めて当庁の情報の管理、保全、こういった面について不備があったのかなかったのか、これを一般的にも再点検をいたしまして、情報の管理、保全に万全を期する体制を速やかに構築したい、かように考えておる次第でございます。
伊藤政府参考人 御質問にお答えする前提として、一つ御理解いただきたいことがございます。
 内閣情報調査室では、種々、幅広い情報源からの情報収集、これは非常に重要な活動の一つと承知しております。もちろん、北朝鮮に関しましても、なかなか情報がないところを、専門家含め、そういう情報源を開拓して情報収集に努めてきております。ただ、いかなる個人からどのような情報収集を行っているかということをお答えすることは業務遂行に支障を生じさせるおそれがございますので、従来より、具体的などういう情報源があるというふうなことについては答弁を差し控えさせていただいている次第でございます。
 その前提を置きまして、したがいまして、杉嶋氏という個人と接触があったことを前提として答弁することは差し控えさせていただきますが、内調は内閣の重要施策決定のために必要な情報を収集する、そういう非常に重い任務を与えられておりますので、情報の管理、保全については万全の措置を講じておりまして、当室の非公開情報が外部に漏れることはないということで御理解願いたいと思います。
漆間政府参考人 警察としましては、入手した情報が第三者に伝わるなど情報の管理が十分に行われなかった場合には、情報提供者との信頼関係が崩れるのみならず、当該情報提供者に危害が加えられるおそれもあり、犯罪の予防、鎮圧及び捜査に著しい支障が生じることとなると考えております。
 したがいまして、情報機関が保有する情報が断片的なものであれ、これは厳格に管理することは当然のことでありまして、もし情報が漏れているということが現行法制に違反するのであれば、これは厳正に対処すべきものだと考えております。
森山国務大臣 我が国の公共の安全にかかわる情報を取り扱う官庁におきまして秘密情報の漏えいなどがあってはならないというふうに考えます。
 公安調査庁などにおきまして、このような認識のもとに、従来から情報の管理、保全に万全の措置を講じているところでございますが、今後もさらに一層最大の努力を続けていくものと考えております。
西村委員 それぞれ御答弁ありがとうございました。
 私は、情報収集機関の御苦労は本当にわかるつもりであります。ただ、我が国の体制は、情報収集機関の方たちの御苦労に見合った体制にはないのです。なぜか。
 情報というのは、盗むか、買うか、交換するかでしか集まりません。そして、我が国はどの行為をできるのかといえば、盗む、買う、この行為はできない。個人的な非常な負担で買う行為はされておるかもわかりませんが、昨今の我が国における議論を見ていますと、明らかに盗む、荒っぽいことですな、忍び込んで盗んでくるということですよ、これはやられっ放し。革マルにもやられておる。検察の情報だだ漏れ。盗まれておるので、盗むことはできない、法体制上できないのですよ。この国会でも、それに反対して大騒ぎする勢力がまだおる。
 それから、買う、これはできない、金がない。何だ、機密費を明らかにしろと。私は機密費は必要だと思っているのです。機密費を扱うやつが余りにもばかだったからそういう議論が起こる、これも仕方がない。しかし、現実においては買うこともできない。
 あとできるのは、交換することだけじゃないですか。交換することですよ、情報を渡して情報をくれということですよ。これをやっておるのですよ。だからだだ漏れになるのだ。だから、努力はわかるけれども、体制を考えにゃいかぬ。
 それからもう一つ、日本人がどういう根拠で北朝鮮に勾留されるのか。北朝鮮は何を根拠に勾留して、何を根拠に放してくるんだ。
 このままほっておいたら、外務省が、自分の太陽政策が功を奏した結果だと自画自賛しかねない。こんなの、外務省とは関係ない。これは、アメリカ、ブッシュが九月十一日以後テロを締めて締めて、北朝鮮に標的を定めてくるのをかわすために、今向こうの人を呼んで交渉するとかの一環でこれをやっている、こういう道具に日本人がされておる。
 ぜひ、委員長、この杉嶋、この方を我が委員会に呼んで、じっくり聞く必要があると思いますね。公安が正しいのか内調が正しいのか、そんな小さな問題じゃないのです。我が国の情報収集の体制はもう破綻していることは確かなんですから。だから、北朝鮮とは何だ。日赤で四十数名の行方不明者は要請している。この人も、向こうのやり方次第では杳として消息を絶ってしまってわからないということになりかねなかった杉嶋氏ですから、ぜひ呼んでいただきたい、このように要請して、私の質問を終わります。
園田委員長 お申し出の件につきましては、理事会で検討させていただきます。
 次回は、来る二十六日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午前十一時五十三分散会


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