衆議院

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第13号 平成14年4月26日(金曜日)

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平成十四年四月二十六日(金曜日)
    午前九時一分開議
 出席委員
   委員長 園田 博之君
   理事 佐藤 剛男君 理事 塩崎 恭久君
   理事 棚橋 泰文君 理事 山本 有二君
   理事 加藤 公一君 理事 平岡 秀夫君
   理事 漆原 良夫君 理事 西村 眞悟君
      荒井 広幸君    太田 誠一君
      北村 直人君    左藤  章君
      笹川  堯君    下村 博文君
      鈴木 恒夫君    西田  司君
      平井 卓也君    平沢 勝栄君
      保利 耕輔君    松島みどり君
      松宮  勲君    柳本 卓治君
      吉野 正芳君    岡田 克也君
      鎌田さゆり君    佐々木秀典君
      日野 市朗君    水島 広子君
      山花 郁夫君    青山 二三君
      石井 啓一君    藤井 裕久君
      木島日出夫君    中林よし子君
      植田 至紀君    徳田 虎雄君
    …………………………………
   法務大臣         森山 眞弓君
   法務副大臣        横内 正明君
   法務大臣政務官      下村 博文君
   政府参考人
   (警察庁長官官房審議官) 芦刈 勝治君
   政府参考人
   (法務省大臣官房長)   大林  宏君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    古田 佑紀君
   政府参考人
   (外務省大臣官房領事移住
   部長)          小野 正昭君
   政府参考人
   (外務省総合外交政策局長
   )            谷内正太郎君
   政府参考人
   (外務省総合外交政策局国
   際社会協力部長)     高橋 恒一君
   法務委員会専門員     横田 猛雄君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月二十六日
 辞任         補欠選任
  後藤田正純君     平井 卓也君
  中川 昭一君     松宮  勲君
  柳本 卓治君     北村 直人君
  石井 啓一君     青山 二三君
  不破 哲三君     中林よし子君
同日
 辞任         補欠選任
  北村 直人君     柳本 卓治君
  平井 卓也君     後藤田正純君
  松宮  勲君     中川 昭一君
  青山 二三君     石井 啓一君
  中林よし子君     不破 哲三君
    ―――――――――――――
四月二十五日
 裁判所速記官制度を守り、司法の充実・強化に関する請願(不破哲三君紹介)(第二二三八号)
 夫婦別姓制度の導入を図る民法改正反対に関する請願(臼井日出男君紹介)(第二二三九号)
 同(小野晋也君紹介)(第二二四〇号)
 同(金田英行君紹介)(第二二四一号)
 同(熊谷市雄君紹介)(第二二四二号)
 同(小林興起君紹介)(第二二四三号)
 同(中谷元君紹介)(第二二四四号)
 同(米田建三君紹介)(第二二四五号)
 同(石川要三君紹介)(第二三〇七号)
 同(今村雅弘君紹介)(第二三〇八号)
 同(阪上善秀君紹介)(第二三〇九号)
 同(桜田義孝君紹介)(第二三一〇号)
 同(田中和徳君紹介)(第二三一一号)
 同(田村憲久君紹介)(第二三一二号)
 同(西川公也君紹介)(第二三一三号)
 同(古屋圭司君紹介)(第二三一四号)
 同(松野博一君紹介)(第二三一五号)
 同(御法川英文君紹介)(第二三一六号)
 同(山本幸三君紹介)(第二三一七号)
 同(西川京子君紹介)(第二三五三号)
同月二十六日
 夫婦別姓制度の導入を図る民法改正反対に関する請願(金子恭之君紹介)(第二四〇三号)
 同(木村太郎君紹介)(第二四〇四号)
 同(自見庄三郎君紹介)(第二四〇五号)
 同(谷畑孝君紹介)(第二四〇六号)
 同(長勢甚遠君紹介)(第二四〇七号)
 同(原田昇左右君紹介)(第二四〇八号)
 同(平沢勝栄君紹介)(第二四〇九号)
 同(藤井孝男君紹介)(第二四一〇号)
 同(松宮勲君紹介)(第二四一一号)
 同(持永和見君紹介)(第二四一二号)
 同(吉田幸弘君紹介)(第二四一三号)
 同(衛藤征士郎君紹介)(第二四四二号)
 同(小此木八郎君紹介)(第二四四三号)
 同(原田義昭君紹介)(第二四四四号)
 同(松岡利勝君紹介)(第二四四五号)
 同(宮本一三君紹介)(第二五二四号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律案(内閣提出第六一号)
 更生保護事業法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三四号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――
園田委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房審議官芦刈勝治君、法務省大臣官房長大林宏君、刑事局長古田佑紀君、外務省大臣官房領事移住部長小野正昭君、総合外交政策局長谷内正太郎君及び総合外交政策局国際社会協力部長高橋恒一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
園田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
園田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐々木秀典君。
佐々木(秀)委員 民主党の佐々木秀典です。
 きょうは、いわゆるテロ資金供与防止法案の審議ですけれども、それに先立って、例の大阪高検での検事の不祥事件について若干お確かめなどをさせていただきたいと思います。
 四月の二十二日に、大阪高検の前公安部長ということになるのでしょうか、三井環検事が、詐欺あるいは電磁的公正証書原本不実記載、公務員職権乱用というような罪名の被疑事件で逮捕されました。現在、身柄勾留のまま捜査が進んでいると思いますので、まだ捜査の全容ということの御報告はいただけないのかもしれないけれども、少なくとも新聞などで報道されているようなことが事実だとすれば、暴力団とのつき合い、その関係、そしてそこで金銭的な利益を得ている、あるいは、報道では被疑事実にはなっていないけれども、この暴力団から接待を受けたり、あるいは金銭の授受もあるやの報道もある。これらのことがもしも事実だとすれば、今言われているような捜査の対象になっている被疑事実のほかに、当然のことながら国家公務員倫理法違反の問題も出てまいりますし、場合によると収賄というようなことも出てくるかもしれない。ここ数年の間に何件か検事の不祥事件というのはありましたけれども、それらに比較しても、今度の事件というのは質的に違う、検察への国民の信頼を大きく大きく毀損する重大な事件だと私は思うのですね。
 今、御案内のように、残念ながら政治家の中でもいろいろな問題を起こしている人がいて、そうした人が検察の捜査の対象になるんじゃないかということも言われている。それだけに、正義の実現者としての検察に対する国民の期待と信頼というのは極めて高いものがある、そういう中で起こった事件です。検察の傷つけられた信用をどうやって回復するのかということは、私も重大な問題だと思う。それだけに、これについては法務省としてもきちんとした対応をして、国民に対して説明をする責任があると私は思います。
 同時に、これも報道されているところによると、この三井という検事は、法務省あるいは検察の調査機密費の問題をあちこちに言って、自分なりの資料なども集めて、それを提供してきた、報道機関とも接触をしてきたというようなことも言われています。これも私は確かめたのですけれども、我が民主党の幹事長である菅直人議員のところにも、三井検事から、在任中に、ことしの春らしいですけれども、資料が送りつけられてきているそうです。もっとも、菅さんは、これを見たところ、必ずしも全部が正確だとは思えない、本人から会いたいという連絡もあったけれども会わなかった、こう言っております。しかし一方、自民党の野中広務議員は、この三井検事からの面談要望に応じて会っているのですね。そういうようなこともある。
 今度の三井検事の逮捕というのは、法務省として、いわば彼が摘発しようとした事実を隠ぺいするためにした、口封じのための措置ではないかとさえ言われているのですね。これは、この逮捕後に原田検事総長が記者会見をされて、そういうことがないということを言われているようだけれども、このことについてもやはり法務省としては説明責任を果たす必要があるだろうと思うのですね。ですから、この二つの問題、非常に国民は注視をしていると思うわけです。
 聞くところによりますと、参議院の法務委員会では、法務大臣は一応これについての御説明、御報告をなさったと聞いておるのですけれども、衆議院のこの法務委員会では、先回の委員会で若干の質問があってお答えありましたけれども、正式な御報告などはまだいただいておりませんけれども、これについて、法務省としてどうなさるおつもりか、法務大臣としてどうお考えになっているのか、お聞かせください。
森山国務大臣 先生御指摘のとおり、報道されていることが事実とすればとんでもないことでございまして、全くけしからぬと私も怒っているところでございます。
 四月二十二日、大阪地検におきまして、大阪高検公安部長でありました三井環検事を、暴力団関係者らとの共謀による電磁的公正証書原本不実記録、同供用及び詐欺並びに公務員職権乱用の被疑事実によりまして、共犯者である暴力団関係者ら三名とともに逮捕したわけでございますが、簡単にその概要を御説明申し上げますと、逮捕事実の概要といたしまして、第一に、三井検事が暴力団関係者と不動産取引を行いまして、その過程で暴力団関係者らと共謀の上、不正な手段により不動産登記の登録免許税率の軽減を受け、登録免許税約四十八万円相当の納付を免れようと企て、みずから虚偽の住民登録をし、これを利用して区役所から登録免許税率の軽減を受けるために必要な証明書をだまし取ったというものであり、第二に、三井検事が、暴力団関係者との不動産取引交渉が難航するや、その交渉に利するため、みずからの職権を乱用して、交渉相手である暴力団関係者の前科調書を不正に取得したというものでございます。
 本件につきましては、三井検事が不動産取引に絡んで暴力団関係者から金銭の提供や酒食等の接待などを受けている旨の情報が大阪高検に寄せられましたことから、大阪高検において慎重に内偵を進めたものでございますが、犯罪に問うべき行為があることが明らかになりまして、大阪地検に指示いたしまして捜査を行わせることになったものでございます。
 大阪地検としては、本件が、現職の幹部検察官が暴力団関係者らと共謀し、あるいは検察官の職権を乱用したという事案でありまして、極めて重大かつ悪質である上、暴力団関係者らとの通謀による罪証隠滅のおそれがあるということから、強制捜査が必要であると判断いたしまして、裁判所から令状の発付を受けまして、三井検事及び共犯者である暴力団関係者らの逮捕に踏み切ったものでございます。
 これは、冒頭にも申し上げましたように、他人の刑事責任を追及するべき検察庁の幹部としてあるまじき、まことにとんでもない事件でございまして、本当に遺憾のきわみでございます。
 大阪地検におきまして、本件につきましては今後全容の解明がなされるというふうに考えておりますが、その解明に基づきまして厳正に対処していかなければいけないというふうに思う次第でございます。
 なお、調査活動費の問題についても先生言及なさいました。
 調査活動費につきましても、その性格上、すべてを御報告申し上げるということができない部分もございますけれども、できる限り明らかにいたしまして、しっかりと説明し、御理解を得るべく努力をしなければいけないというふうに思っております。
佐々木(秀)委員 いずれ捜査の進展によって、今法務大臣がお述べになられたような事実のほかにも不祥事があるのかどうか、これはきちんと御報告をいただかなければならないと思うんですね。
 ただ、これも報道によりますと、部内では、いろいろこの検事についてはやはり問題があるというようなことで、退職勧奨とかあるいは公証人としての職を用意するからというようなこともあったけれども、本人がそれを断って、拒否したなどということも言われたりしているんですね。
 それと、一方、内部告発だそうですけれども、暴力団とのつき合いなどということを告発する者がいたということは、かなりの人にこれは知られていたんじゃないかとも思われるし、それから、これもまた部内の人に聞くところによると、この検事は不動産を、マンションなんかを何軒も持っているということで、ある意味で評判になっていたということも聞くんだけれども、法務省なり検察庁としては、そういうことをどの程度掌握されていたのか。それに対して、掌握されていたとしたら、なぜ今日まで、こういうことになるまでそのまま放てきして、放置していたのか、その辺はどうなんですか。
大林政府参考人 人事のことについてお尋ねがありましたので申し上げます。
 検察官の人事管理につきましては、本人の経歴、意向等を踏まえて適切に対処しているところであります。お尋ねは、特定の個人の人事にかかわる事柄ですので、お答えを差し控えさせていただきたいと存じます。
 ただ、今公証人のことについてお触れになりましたが、一般論として申し上げれば、後進に道を譲るために退職をお勧めし、その後の進路の一つとして公証人に就任する希望があるかどうかを打診することはあります。ただ、個別の人事にかかわる事柄でございますので、この程度にさせていただきたいと存じます。
佐々木(秀)委員 個別の問題だと言うんだけれども、こういうことが二度とあっては困るんですよ。千二百人からいる検事はみんな一生懸命だと言っているんだけれども、人間なものだから、裁判官でも不祥事件を起こす人がいるわけだし、検事だってどこでどう狂うかわからないということがあるんですよ。まして、こんな世の中なものだから、真っ当だった人も突然何かのきっかけで真っ当でなくなることだってあるわけだ。だけれども、こういうことになっちゃ困るんですよ。だから、それだけに人事の面についても十分に気をつけてもらわないと私はいかぬと思う。
 だから、個別の問題だからといってお答えできないというだけではなくて、今後の問題としても、検察なり法務省なり、相当これについては重大な意識を持ってやっていただかないとどうにもならぬと思うんですよ。そういう意味で申し上げている。
 いずれにしても、きょうはこの問題が主題ではありませんから、いずれまた機会を改めて、これは集中的にでもやはり質疑をする必要があるんじゃなかろうかと思います。また、責任を持った御報告もいただきたいと思いますので、それを御要望しておきたいと思います。
 そこで、本題の法案の方に移ります。
 今ここで審議されておりますテロリズムに対する資金供与の関係の法案ですけれども、これはいわゆるテロリズムに対する資金供与の防止に関する国際条約、これは平成十一年の十二月九日の第五十四回国連総会で採択になっておりますね。これの批准に基づいて国内法を整備するんだという要請、これに応じてつくられたのが今この私どもが審議をしている法案だと思います。
 ところが、先日、この条約については我が国は批准をし、国会での承認もしたわけですけれども、しかし、世界の主要国の中で、特にアメリカなどがこの条約をまだ批准していないというふうに聞いているんですね。アメリカなどは去年の九月の十一日のテロということもあって、ブッシュ大統領は世界の各国に世界じゅうのテロを撲滅するために協力をしろということを呼びかけているわけですけれども、その肝心のアメリカがまだこの条約を承認していない。ほかにも主要国で承認していないところがあるようです。
 きょうは外務省はお呼びしていないんですけれども、法務省の方でこのことについておわかりか、そしてアメリカなどがこの条約を承認していないのは何か事情があるのかどうか、その辺のところをおわかりでしたらお聞かせをいただきたいと思います。
古田政府参考人 主要国におきますこの条約の締結状況は、G8諸国で申し上げますと、現在までにイギリス、フランス、それからカナダが締結していると承知しております。
 御指摘のアメリカについては、現在、この条約を締結するための関係法案も含めて国会で審議中であると聞いております。
 なお、この機会に全体の締約国等の状況を申し上げますと、四月二十五日現在で三十一カ国が締約国になっており、この条約は四月十日に発効しております。
佐々木(秀)委員 最もテロに対して積極的な取り組みをしているはずの、またしなければならないアメリカがまだ慎重にそういう国内法の整備を含めて検討している。それに対して、日本の方は、いち早くこの条約を締結し、批准し、そして国会承認まで経て、そしてこの国内法の整備までどんどん進めているというのは、ちょっとテンポが速過ぎるんじゃないか。そのために、どうも法案も、見てみますと、少し内容が雑なのではないかと思われてならないんですね。
 そこで、中身についてお尋ねをしたいと思いますけれども、今のこの条約の方ですけれども、この条約は国際的なテロ行為に対する資金提供の防止を目的としているわけですね。したがって、ここの条約で言っているテロというのは、国際的な、つまり一国だけじゃなくて、数カ国にもわたるようなテロ行為ということを想定していると思われるわけです。今度のこの国内法がこの条約との関係でつくられるものだとすれば、本法の対象とするテロというのもやはり国際的な規模のテロ、それに対する資金の提供などが問題になるということでなければならないと思うんですけれども、本法の各条項を見ますと、このテロ行為の定義の中でそういう限定がないんですね。つまり、我が国一国だけでも完結するようなそういう行為についても対象とできるようになっているんじゃないかと思うんですね。
 そうすると、この国内法とそれから条約との整合性という点で問題があるんじゃないか、国内法の方が条約よりも対象範囲がうんと広くなるんじゃないか、そこにまた乱用の危険も生じてくるんじゃないかということを指摘する向きがあるんですけれども、この辺についてはどういうふうにお考えになっているんでしょうか。
古田政府参考人 この条約におきましては、いわゆる犯罪が全く一国内にとどまるという場合についてはこの条約は適用しない、そういう規定はございます。
 ただ、これは、前提となりますテロ関連条約、ハイジャック防止条約とか、こういうものが幾つかあるわけでございますけれども、これらの条約につきましては、そういうふうな行為が一国内で行われるものであっても、ほかの国でも処罰ができるようにしなければならないというようなことで、全般的に、非常に広い、国際的に防圧が必要であるという観点から管轄権を認めているものでございまして、そういう意味では、この条約の前提となっております各種のいわゆるテロ関係条約の犯罪行為というのは、一国内にとどまるものとは考えられていないというケースが非常に多いわけでございます。
 また、その一方で、先ほど委員御指摘のような国際的な、数カ国にわたるというところまではこの条約は特に要求しているわけではない、そういうこともあるわけでございます。
 もう一点申し上げますと、この法案は、ただいま申し上げましたテロ資金防止条約、これの批准がもちろん主要な目的ではございますけれども、一方で、昨年の九月の国連安保理決議第千三百七十三号というのがございまして、この決議は、すべての国が、自国民による行為または自国の領域内における行為であって、テロ行為を実施するために使用されることを意図してあるいは使用されることを知りながら資金を提供する、こういう行為について、これを犯罪化することを求めているわけでございまして、これを実施するということも必要なわけでございます。
 また、実質的に申し上げましても、非常に重大な犯罪行為について、それについての資金提供を、本当に今国内だけの問題であるからという理由だけでこれを犯罪化しないということは、これはいかにもバランスを欠くという面もございます。
 そういうことから今回の法案を提案させていただいたわけでございまして、先ほど申し上げましたような事情から、条約の範囲を著しく逸脱する、そういうことはないと私どもとしては考えております。
佐々木(秀)委員 という御説明があったわけですけれども、私は、この条約との整合性ということを考えると、むしろこの対象となるテロ行為というものの定義について、本法の中で国際的なテロということをやはり明記すべきだったんじゃないかなと思うんですね。今局長の御説明ありましたけれども、そこで概念を広くしちゃうとどうしても乱用の危険も出てくるものですから、そういう点でどうもいかがなものかという疑問を払拭できません。
 そこで、ほかにもこの法律にはさまざまな問題があると思うんですけれども、一つは、本法は、犯罪の予備あるいは準備、そういう行為に対する幇助、これを助けるという、その幇助を独立犯として処罰するということになっているわけですね。幇助というのも刑法でいえば共犯の一類型になるわけですけれども、しかし、刑法の共犯類型というのは、大体は実行犯との共犯ということを考える、それを前提にして共同正犯あるいは教唆、幇助ということが共犯類型として考えられている。
 ところが、本法の場合では、この幇助の対象というのは、実行犯ではなくて、犯罪の予備、つまり、テロという本体的な犯罪、その予備あるいは準備の幇助を独立に処罰しようということで、私は、刑法の予定する犯罪類型としては極めて特異というか異例の措置だと思うんですね。
 そこからも処罰範囲が拡大するという危険が非常に大きくなってくるんじゃないか、これを心配するわけですけれども、こうした心配についてはどうお考えになっていますか。
古田政府参考人 確かに、委員御指摘のように、現在の刑罰体系の中で、予備行為あるいは幇助行為自体を独立して処罰の対象とするという例はさほどは多くない、これも御指摘のとおりでございます。
 ただ、この条約におきましては、資金の提供あるいは資金の収集、それ自体を犯罪化して、実際のテロ行為に該当するような犯罪行為、こういうふうなものは起こらなくても、その前で処罰ができるようにするということが、これは条約の中で動かしがたい義務となっているわけでございまして、そういうことで、これはどうしてもそういう犯罪類型を設ける必要があるわけでございます。
 ただ、その場合に、おっしゃるとおり、これが無制限にいろいろな場面で適用されるということになりますと大変問題がございますので、そういう点から、犯罪行為の類型、どういう犯罪行為が意図されているか、こういう点について、これを重大な犯罪行為にまず限定する、かつ、そういう重大な犯罪行為を行うことを、意図があるということを知っているということを大前提としているわけでございます。
 さらに、それに加えまして、これは、積極的にそういう行為を容易にできるようにしてやろうという意図があるということまで絞りをかけたわけでございます。
 そういうことから、相当厳重な絞りをかけていると考えておりまして、御指摘のような拡大、乱用というふうなことは、そこまでの御懸念は当たらないのではないかというふうに考えております。
 なお、一点申し上げますと、これまでも、例えば薬物の製造でありますとか密輸入あるいは売春などでやはり資金提供罪がございます。これらにつきましては、情を知って、つまり、そういう意図があるということを知ってという要件がありまけれども、それ以上に、積極的にそれを実行させようとか支援しよう、そういう意図がない場合でも処罰の対象にしているわけでございますが、それに比べるとこちらの方はより限定してある、そういうことでございます。
佐々木(秀)委員 というお話なんだけれども、私はやはりいろいろな点で懸念が払拭できないんですよね。
 そこで、これも見ますと、ううんとうならなきゃならないんだけれども、例えば構成要件がはっきりしているかどうか。これは罪刑法定主義からも私は問題があると思うんだけれども、どうも構成要件が本法では不明確なんじゃないかな。特に第二条の資金の提供、第三条の資金の収集、この構成要件ですね。
 例えば第二条では、「情を知って、公衆等脅迫目的の犯罪行為の実行を容易にする目的で、」こうなっているんですね。「情を知って」ということは、いわゆる故意、犯意と違うのかどうか。今も局長のお話の中で「情を知って」という言葉が出たんだけれども、情を知ってというのはどの程度のことを知っていればということになるのか。
 それからまた、犯罪行為の実行に資する目的でとか、実行そのものを助けるということならともかくとして、「実行を容易にする目的で、」、容易にするというのはどういうことまで言っているのか。これも解釈の仕方によっては非常に広くなっちゃうと思うんですね。
 それからまた、第三条で、「資金の提供を勧誘し、若しくは要請し、又はその他の方法により、資金を収集したときは、」これあたりも、その他の方法なんていって、どんな方法を想定しているのか。これもまた幾らだって解釈のしようによっては広げることができる。そして、勧誘のほかに、要請する、つまり頼むというか、お願いするというか、そういうこと自体が犯罪行為になるというのは、これもまたいかがなものかと思うんですね。こういう構成要件の規定の仕方というのは、余り感心しないと思うんですよ。
 しかも、テロそのものだって定義が非常に難しいでしょう。国連の中でもすったもんだしていますよね。テロというのはいかがなものかということで、なかなか結論が出ないような議論が行われている。
 それからまた、きょうあたりの新聞を見ますと、例のイスラエルとパレスチナの関係です。パレスチナの方は自爆テロが多いんですね。これは明らかにテロだと言っていいでしょう、無差別に人を殺傷するということなんだから。もちろん私どもは、こんなことはあってはならない、好ましいことじゃないと思っています。しかし一方、イスラエルが正規の軍隊、組織的な軍隊を例のパレスチナの自治区の中にどんどん侵攻させて、これもまた無差別に人を殺していることについて、近隣のアラブ諸国がこれは国家を挙げてのテロ行為だと言って非難していますね。事ほどさように、テロというのはなかなか複雑で、その定義づけが難しいところがあるんじゃないかと私は思うんです。
 そしてまた、例えば東ティモールの独立運動なんかにしても、政権を持っている党から見ると、そういう独立運動なり活動というのはテロだ、こう言いますし、それからまた、現に国家の元首だとか要職になっているような方でも、かつてはその国の独立のための活動あるいはゲリラ活動なんかをやって、そのことがテロだった、あるいはテロの首謀者だったと言われた人たちが現在はその国家の枢要な地位を占めているとか、いろいろあるわけですね。
 私も実は、二月にイスラエル、パレスチナに行ってまいりまして、両国の首脳なんかにも会って、イスラエルの軍事攻撃、あるいはそれに対する報復としてのテロ行為が繰り返されている悲惨な実情を見てきたんですけれども、そういうことを考えると、余り軽々に、テロ、そしてそれに対する幇助の目的での資金の提供、資金収集というのも、一つ間違えば際限なく広がっていく危険がある。
 そういうことから考えると、構成要件は相当厳重に、シビアに規定すべきだと思うんですけれども、この二条、三条の規定の仕方というのは、私は、構成要件が非常に不明確で、これは実際に捜査をする人たちの解釈によっては幾らでも広がっていくんじゃないかという心配を持たざるを得ないんです。捜査の当局である法務省・検察あるいは警察の方で、これについてどのように抑制的にやっていけるのか、その辺をお伺いしたいと思います。
古田政府参考人 ただいまのお尋ねの中に非常に多岐にわたる点が含まれているように思いますが、前提問題としてごく簡単に申し上げますと、情を知ってとか、あるいは資金の提供をする、こういうのは既に法文上、これまでも確定しているものでございます。
 また、資金の収集で、要請ということについての御指摘もありましたけれども、要請自体が犯罪になるわけではなくて、あくまで資金を現に手に入れるということが犯罪行為になるわけでございますので、そういうふうな点で、おっしゃるような不明確ということにはならないと考えております。
 ただ、それはそれといたしまして、もちろん、こういうふうな資金の獲得、これは、いろいろな正常な活動とか、こういうものでも同じような形態をとるという場面というのはしばしばあるわけでございますので、もちろん、それが犯罪行為に当たるかどうかということについては、いろいろな客観的な状況、資料、そういうものから慎重に判断して行うべきことは当然でございまして、そこら辺については、もとより十分、捜査の過程においても慎重に対応することとなると思われます。
 また、その一方で、いずれにいたしましても、こういう処罰法規自体、これの適用については捜査当局限りでできるわけではございませんで、裁判所による裁判手続を経なければなりませんし、特に強制捜査ということになれば、これもまた裁判官のチェックが入るわけでございまして、捜査機関限りでいかにでも使えるとか、そういうふうなものでは全くないと考えております。
芦刈政府参考人 警察といたしましても、本法律が施行されました場合には、本法に基づきましてテロ資金提供行為等の取り締まりに当たってまいるところでありますけれども、その際、当然のことながら、法律の趣旨にのっとりまして適正に捜査を進めてまいりたいと考えているところでございます。
佐々木(秀)委員 こういうことを言うのは、これまでもやはり、解釈の仕方によって、その解釈を拡張することによって、例えば警察などは問題になる捜査を行ってきたという事例がないわけではなかったから私はそれを指摘しているわけです。
 今も申し上げたように、大体、テロ行為そのものについても、概念規定をするのはなかなか難しいんですよ。例えば、さっきのパレスチナの人々、難民がたくさんいる。これを援助しようということで、日本の国内でそういうことについての募金運動をするというようなことが、イスラエル側から見ると、むしろパレスチナのテロを援助していることになるというような指摘だって出てくるだろうと思うんです。それに対して募金をする、カンパをするような人たちも、解釈のしようによってはこの構成要件に該当しないとは言えないですね。
 しかも、この第二条、第三条を見ると、資金の提供、資金の収集で、ここで言う資金というのは金額が幾らなんということは書いていないわけですよ。金額の多寡なんというのは全然問題になっていない。だから、極端に言えば、千円ぐらいをカンパしたという人についても、それが場合によってテロ行動に対する間接的であっても援助になるというような見方をされれば、意図的にやろうと思えば、これで逮捕できないことはないんですね。しかも、この予定されている刑罰は重いですよ。第二条についても第三条についても、十年以下の懲役または千万円以下の罰金ですから、これは大変な重罰だと私は思うんですね。
 こういうことがみだりに適用されるということになると、私は、国民の人権を非常に侵害することになる、そういうおそれを内包している条文だ、法律だと言わざるを得ないので、くれぐれも捜査当局は、恣意的な運用をしてもらっては困るし、十分に配慮をしながら活動に当たってもらいたい。このことを心から私は留意してもらいたいと思ってこの質問をしているわけですから、どうかそのことを意識していただきたいと思います。
 それからもう一つ、本法では、テロ行為と資金の供与との結びつきというのは必ずしも考えられていないんですね。例えば具体的に、去年の九月十一日にあったあのニューヨークのテロ、実行犯は死んじゃっているわけですけれども、しかし、それを共謀した者たちなどというのが摘発をされたり、逮捕されたりしている。まあ、本当の首謀者はだれかということについてはまだ確定されていないようだけれども。
 それで、現にこういう、例えばあの九月十一日のテロ行為、これが行われることを知っていて、まあそれが「情を知って」ということになるんでしょうけれども、そういうことを知って、それに対する活動資金として金を出していた、それで実際にああいうテロが行われたということになると、これは資金の提供とそのテロとが結びついている、こういうことになるわけです。
 だけれども、本法では、テロ行為自体とそれから資金の供与との結びつき、これは全く考えられていないですね。さっきもお話があったように、資金の供与自体を処罰の対象にしているわけだけれども、この結びつきというのはなくてもいいんだろうか、私はそう考えるんですけれども、これについては、法務省、どう考えていますか。
古田政府参考人 まず、条約の問題として、テロ行為との、いわゆる犯罪行為との結びつき、これがどの程度のことを要求しているのかということがございます。
 それで、その当該行為だけかということになりますと、これは条約上、例えば「直接又は間接に」というような言葉が入っていたり、それから安保理決議の千三百七十三号も同様、「直接又は間接」というふうな文言が用いられているわけでございます。
 そういうことからいたしますと、これは本当に犯罪行為そのもの、例えば先ほど例に挙げられました米国の多発テロの場合であれば、飛行機によって突入するその行為自体に対する資金と申しますよりは、もちろん飛行機を調達するための資金あるいは飛行訓練その他の資金、こういうふうなことを、要するに犯罪行為を実際に実行するために諸般の準備が必要、そういうようなことも全体をとらえて、これはやはりそういうことに対する資金の提供も犯罪化するという必要がある、そういうことであります。もちろん、その実行行為と全く結びつかないような、全然別な目的の寄附とか、こういうようなものを処罰の対象とするということはこれはあり得ないわけでございますが、そういう意味で、その犯罪の行為と、少なくともそれを容易にする、つまり、まあ別な言葉で言えば支援する、そういう目的という結びつきは、これは必要であるということにしたわけでございます。
 収集の方は、これは実行のために必要な資金ということでございますので、先ほどの準備行為とかそういうことも含めてではありますけれども、それ自体で、そこで結びつきというのは明示しているという考えでございます。
佐々木(秀)委員 条約を締結し、批准をし、国会でも承認しているわけですから、私も、それに基づく国内法整備としてのこの法律を全面的に否定するわけではありません。まあ、必要なことは必要だろうとは思うんです。しかし、何にしても、この規定の仕方その他からいって、適用を相当厳格にやっていただかないと、乱用の危険が出てくると私は思うんですね。
 冒頭にお聞きをいたしましたけれども、アメリカなどでは、この条約の締結そのものがまだだということですし、国内法の整備もまだ準備中だということだ。これは日本が先駆けているわけですけれども、今私が指摘しただけにとどまらない、いろいろな問題がやはりあると思うんですね。
 だとすると、本当は我が国でも、この国内法をつくるについてはもうちょっと慎重でよろしいのではないだろうか。少なくとも専門家などの御審議もいただくような、法制審議会にまずこれをかけて、そこで御協議いただいた上で国会に提出されるというようなことでよかったのではないかな、そんなふうに思うんですけれども、本法は法制審議会にかけていないわけですね。これはどうしてだったのか。これは法務大臣からお答えいただきましょうか。
森山国務大臣 この法案は、昨年アメリカで同時多発テロ事件が発生いたしまして、国際社会においてテロ撲滅のための対策をさらに推進することが緊急の課題になっておりますことを踏まえまして、日本政府として、早急にテロ資金供与防止条約を締結するとともに、国連安保理決議第千三百七十三号を実施するという国際的な要請にこたえるために必要な国内法整備を行うものでございまして、その基本的な内容は既に条約等で決まっているものでございます。
 また、本法案の内容は、公衆等脅迫目的の犯罪行為を定義した上、このための資金の提供及び収集行為を処罰し、これらに係る所要の国外犯処罰規定を設けるという限られた場面に関するものでございまして、法務省所管の刑事の基本法令の制定、改廃には当たらないと考えられる上に、この条約の的確な実施を図るため、金融庁等においても金融機関による本人確認等に関する法律案等を提出する予定であったことなど、ほかの省庁とも歩調を合わせながら立案作業を進めなければならないという制約もございました。
 以上の事情を踏まえまして、法制審議会には作業状況を御報告するにとどめることにしたものでございます。法制審議会には、ことしの二月十三日開催の第百三十六回会議におきましてこの旨の御報告をいたしまして、御了解をいただいたわけでございます。
佐々木(秀)委員 本当はもっと慎重にやっていただきたかったと思うんですけれども、とにもかくにも、今私が懸念しますように、構成要件的にいっても問題がある。そういうことから、くれぐれもこの運用については乱用にわたるようなことのないように、ひとつ捜査当局は厳重にやってもらいたいと思いますので、そのことを要望して、質問を終わります。
 ありがとうございました。
園田委員長 午前十時四十五分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午前九時四十七分休憩
     ――――◇―――――
    午前十時四十九分開議
園田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。木島日出夫君。
木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。
 議題になっております公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律案について質問いたします。
 大変難しい名前の法律案でありますが、略称いたしますと、テロ防止のための資金提供処罰法といってもいいのではないかと思います。
 私ども日本共産党は、昨年九月十一日のアメリカでの同時多発テロに関して、直後の九月十七日、世界の首脳にあてた書簡を通じまして、三つの点を指摘いたしました。
 一つは、このようなテロは絶対に許されない卑劣な犯罪行為であること、二つは、いかなる宗教的信条や政治的見解によっても正当化できるものではないこと、そして三つには、このような野蛮なテロを根絶することは、二十一世紀に人類がこの地球上で平和に生きていく根本条件の一つであるということを明らかにしたわけであります。
 それで、本法案は、一九九九年十二月九日、米国の同時多発テロよりも二年前の第五十四回国連総会において採択されましたテロリズムに対する資金供与の防止に関する国際条約、そしてそれに加えて、昨年九月二十八日の、自国内でのテロ資金提供行為の犯罪化を世界各国に求めました国連安保理決議第一三七三号に基づくものであります。
 したがって、これは国連を中心にした、法による、非軍事によるテロ根絶の方向に合致するものであると私どもも考えておりますので、基本的に賛成であります。
 大事なことは、こうした国際条約や国内法がテロ根絶のために真に実効性を持つこと、そして同時に、刑事法でありますから、これが乱用されて政治活動の自由等基本的人権を侵害することのないように、犯罪の構成要件を明確に定めることだと思います。実効性を持つことと乱用されないこと、二律背反の要請ではありますが、これが大事だと思いますので、その観点から法案についてお聞きをしたいと思います。
 まず、この法案がテロ根絶のための実効性を持つか、その問題についてお聞きします。
 私は、そのためには、世界のすべての国々でこの条約が締結をされ、批准をされ、国内法が制定される、それが大事だ。一部の国だけで国際、国内テロ根絶のための資金提供を防止するための処罰をつくっても、ほかの国々が同調しないということになれば、それは実効性を欠くわけでありますから、それが大事だと思います。
 そこで、外務省にお聞きをいたしますが、現在、この条約の締約国、批准国、それぞれ何カ国になっているんでしょうか。とりわけG7諸国の締約、批准状況はどうでしょうか。条約は発効しているんでしょうか。それらの現状についてまず御答弁願います。
小野政府参考人 お答え申し上げます。
 本条約は、ことしの四月十日に発効しているわけでございます。
 締約国数でございますが、国連が確認している最新の状況によりますと、四月二十五日現在、本条約締約国数は三十一カ国でございます。ちなみに、昨年の九月十一日のテロ事件の当時は、実は締約国数は四カ国でございました。そのうち、G8では英国のみが締約国だったわけでございますが、今日それが二十七カ国が加わりまして三十一カ国ということになっているわけでございます。
 例えば、欧州、北米では、イギリス、フランス、オランダ、スペイン、オーストリア、それからカナダ等十三カ国。それからアジアでは、スリランカが締結済みでございます。ロシア・NIS諸国では、アゼルバイジャン、ウズベキスタンといった国が締結しておりますし、中東アフリカではアルジェリア、中南米では、グアテマラ、キューバ、ボリビア、ペルー、チリなど九カ国。アフリカでも、象牙海岸、マリ等、それから大洋州でもパラオ等が既に締約国になっているわけでございます。
 それから、署名国についてちなみに申し上げますと、九月十一日の時点では比較的少なかったわけですが、現在では署名国も三倍に達していまして、百三十二カ国という状況でございます。
 また、先生御下問のG8の状況でございますが、現在、未締結国は、我が国のほか、米国、ドイツ、イタリア及びロシアの四カ国になっておりますが、このG8の未締結国につきましても、それぞれの国は本条約の締結に向けて具体的な作業を急いでいるというふうに承知しておりまして、米国は、昨年十一月に法案が下院の審議に付された後、十二月十九日に下院を通過いたしまして、現在、上院の司法小委員会で審議されているわけでございます。米国務省としましても、一日も早く同条約を締結することが何よりも重要であるというふうに言っておりまして、議会に対しても積極的に働きかけているという状況でございます。
 ドイツにおきましては、現在、連邦政府内で本条約の批准のために必要となる法案の作成作業が既に完了しておりまして、関係法案が連邦議会に提出されたというふうに承知しております。
 イタリアにつきましても、法案が委員会等の審議に付されているところというふうに承知しております。
 ロシアにつきましては、近く法案が承認されまして、大統領より議会に提出されることになるというふうに承知しているところでございます。
 以上でございます。
木島委員 署名国数それから批准国数、数字は示されました。しかし今日においても、この国際条約について百三十二カ国が署名しておりながら、いまだに三十一カ国しか批准をしていない。そこにはどういう背景があるんでしょうか。余りにも少な過ぎると思わざるを得ないんです。とりわけ今、先進諸国、G8諸国での状況をお話しになりましたが、この時点でまだアメリカ、ドイツ、イタリア、ロシア、日本もようやく今この段階に来ているんですが、批准していないわけですね。それはなぜおくれているんでしょうか。
 そもそもこのテロに対する資金供与防止条約の出発点は、一九九六年七月のパリにおけるG7、P8の閣僚会議における先進国の合意、これから世界でテロ対策が大事だ、だから資金供与などを防止しよう、こういう先進国の合意に基づいて世界へ発信されたはずだったんじゃないでしょうか。その先進国ですらいまだにこんな状況というのは、いかがなものかと思うんです。
 本年三月十八日の読売新聞の社説なんかによりますと、こんな状況では、「条約が発効しても十分な効果が期待できない。特に、同時テロの被害国で、国際テロ撲滅の先頭に立っている米国が、条約批准や国内法整備に消極的な姿勢を見せているのは無責任だ。」こういう指摘までがあるんですね。先進国の状況、それから、なぜいまだに三十一カ国なのか、その辺の背景、国際社会の状況、外務省が一番把握していると思いますので、つまびらかにしていただきたいと思います。
小野政府参考人 本条約の成立経緯、作成経緯につきましては、今委員が御説明になられたとおりでございまして、九〇年代に入りましてまさに重大なテロ事件が非常に多発してくるという状況の中で、テロリズムに対する根絶という大きな問題を考える場合には、さまざまな措置をとらなくちゃいけない、特に資金面での根絶というものが非常に重要だということを、G7、一九九六年、ちょうどリヨン・サミットがございましたけれども、そのサミット及びその後のパリにおきますテロリズムに関する閣僚会議において認識が高まってきたという経緯があるわけでございます。
 そういう中で、一九九九年、先ほど委員が言われましたように、国連総会において、フランスが本件条約の作成を呼びかけて条約案を提示いたしまして、それでアドホック委員会で条約が検討され採択されるに至ったものというふうに承知しております。
 そういう中で、今日まで約二年余にわたり、恐らく関係国は、それぞれの国内法制の整備、特に資金をとめるという点についてそれぞれの国内法制の整備ということで取り組んできたというふうに承知しているわけでございます。特にG8に関しましては、まさに指導的にこの条約を批准しなくちゃならないということは常に折に触れて議論されてきているところでございまして、G8諸国がみずからリーダーシップを発揮する、こういうことで、今回の九月十一日の米国同時多発テロを契機としてそれぞれの国が加速度的に作業を進めてきているというふうに承知しているところでございます。
 日本におきましては、同様に昨年の十月、署名を了しまして、加速度的に関係省庁の間で議論を深めてまいりまして、今回、国会の御承認を得るというところにたどり着いたということでございます。日本に関しましては、御案内のように、九月十一日の時点では英国のみがG8では締結していたわけですが、その後、今日、フランスが本年一月、それからカナダが本年二月に締結しているという状況でございまして、我が国としても、先生御指摘のとおり二年余りかかっているわけですけれども、他のG8諸国に比べて必ずしも我が国の締結がおくれたということではないんではないかというふうに認識しているわけでございます。(木島委員「何でこんなに三十一と少ないのかの背景」と呼ぶ)
 先ほど申し上げましたように、それぞれの国の政府内の国内立法、それから手続的な手当てというものに、それぞれ検討を進めてきている、それにやはり時間がかかっているんではないかというふうに理解しているところでございます。
木島委員 今、なぜいまだに三十一カ国なのかという問いに対して、手続が大変なんだとおっしゃられましたが、そういう問題じゃなくて、この条約締結がなかなか進まない背景には、やはりテロというものの定義に対して国際社会の中で大きな意見の相違がある。
 もっと簡単に言いましょう。民族自決を求める闘いなどは除外すべきだというアラブ諸国の意見、それと、これに対する先進国の反対。もう一つ、テロを行う国家もあるではないか、イスラエルが名指しされているわけですが、テロ国家に対してもきちっと規制をすべきではないかというアラブ諸国の意見に対して、先進諸国はそういう立場に立っていない。この基本である、テロとは何か、こういう概念について国際社会の中で大きな意見の食い違いが厳然としてあるということが、私は、やはり残念ながらこのテロ資金防止条約が進んでいないという背景にあるんではないかと見ているわけでありますが、そのことだけ述べて、我が国の問題について、大臣お見えですから、私から一言お聞きしたいと思うんです。
 今答弁にありましたように、この条約に我が国が署名したのは、昨年の九・一一同時多発テロの五十日も後の昨年の十月三十日であります。九九年九月の国連総会から二年も放置し続けたのはなぜか。昨年九・一一のテロが起きても、政府がやったことは、御承知のようにこの問題ではありませんでした。テロ特措法を成立させて自衛隊を出動させることは速やかにやった。そればかり一生懸命で、この条約締結を後回しにしたんですね、日本政府は。本当に日本政府は国際社会からテロを根絶するという立場に立っていないんじゃないかと私は思わざるを得なかったんです。
 テロ特措法の審議にも私は直接参加した一人として思うんですが、なぜ二年も放置されたんですか。法務大臣、どういう所見でしょうか。
森山国務大臣 条約の締結ということは外務省の所管でございまして、法務省はかねてから、外務省を初めとする関係省庁と協力いたしまして、この条約を締結するための整備が必要である、その整備が必要な国内法等について鋭意検討を行ってまいったところでございます。
 昨年の同時多発テロが発生いたしまして、国際社会におきましてもテロ撲滅のための対策をさらに推進するということが喫緊の課題となっていることを踏まえまして、関係省庁からの全面的な協力をいただくことができまして、検討作業が集中的に進められた。結果、所要の検討を終わりましたので、この条約実施のための国内担保法案を提出させていただくことができたということでございます。
木島委員 この問題はそのぐらいにいたしまして、もう一つの側面であるこの国内法が、刑事法制であります、これは政治活動の自由に関する問題ですから、乱用されて国民の人権が侵害されることがあってはこれまたいかぬわけでありますから、今度はそういう立場から法案に即してお聞きしたいと思います。
 この法案の第二条が、資金提供罪という新しい犯罪の構成要件が書かれております。「情を知って、公衆等脅迫目的の犯罪行為の実行を容易にする目的で、資金を提供した者は、十年以下の懲役又は千万円以下の罰金に処する。」
 私がこの条文を読みましてちょっと奇異に感じたのは、「資金を提供した者は、」というのが犯罪の構成要件ですが、資金提供の相手方が条文には明記されておりません。資金提供の相手はだれなんでしょうか。なぜ相手方を特定、明記しなかったんでしょうか。
古田政府参考人 この資金提供罪が成立するためには、提供者におきまして、資金提供の相手方が公衆等脅迫目的の犯罪行為を実行する意図を有していることを知っている、つまり、情を知っているということが要件とされているわけでございます。そこで、資金提供の相手方は、おのずと、こういう犯罪行為を実行する意図を有している、そういう個人とは限りません、グループである可能性もあるわけですが、それに限られるということになってまいるわけでございます。
 なお、資金提供罪については、これまでも複数、例えば薬物の製造でありますとか密輸、あるいは売春を業とする罪、こういうふうなものについても設けられておりますが、これらにおきましても、いずれも、資金提供の相手方というのを明記しているわけではなくて、ただいま申し上げたように、そこは解釈で当然そうなるという理解であったように承知しております。
木島委員 そうすると、この二条が成立する資金提供の相手方は、公衆等脅迫目的の犯罪行為を意図している者だという答弁でありました。この法律の第一条、まさに定義にかかわる部分ですが、この犯罪行為を意図している者ということですね。わかりました。個人も集団も含むということですね。
 それでは、第一条の公衆等脅迫目的の犯罪行為の定義に関してお聞きをいたします。
 この定義の仕方を見ますと、犯罪行為者は定義されていないんです。今、答弁は、第二条の資金提供の相手方はおのずと第一条の犯罪行為を意図している者だとおっしゃいました。しかし、この第一条の定義の仕方を見ますと、テロ行為の定義はしているが、テロリストの定義はしておりません。
 アメリカでは、九・一一同時多発テロを受けまして、世界の各地のテロリストの組織を名指しいたしましたね、アブ・サヤフとかアルカイダとか。そういうテロリストの集団、組織を名指し、特定をして、これに対する資金を凍結、封鎖したんではないでしょうか。
 この法律の組み立ては、そういう相手方は特定しない、行為のみを特定して法律が組み立てられている。これは、なぜこのような犯罪構成要件の組み立て方をしたんでしょうか。
 一つの私の問題意識を申し上げますと、相手の属性を明示しない、テロリストを明示しないで、テロ行為の形態のみを明示したんでは、これを実行する者への資金提供を犯罪とする構成のやり方では、法の実効性がなかなか生まれてこないんではないかという問題意識を私は持つんですが、どうでしょうか。
古田政府参考人 ただいま御指摘のように、この法案は、あくまで行為を中心といたしまして、その行為に対する資金提供ということにしているわけでございますが、これは、この法案が担保しようとしておりますテロ資金供与防止条約、あるいは国連安保理決議の千三百七十三号、これらはいずれもその中に、行為に関する資金の提供、これを処罰するという構成になっていて、いわゆるテロ団体でありますとか、テロ組織というふうな部分というのは、特にこの条約では明記されていないわけでございます。
 これは、従来から、国連関係の条約におきましては、テロ行為自体を定義するわけではなくて、テロ行為としてよく用いられるような重大な犯罪行為を犯罪化することを義務づける、そういうふうな方法で条約を制定してきたわけで、このテロ資金供与防止条約も、その流れと同様に、特定の行為、それに関連する資金の提供を犯罪化するという構成になっておりますので、それに合わせたものでございます。
木島委員 私は、こういう法律のつくり方というのは、もう一つの側面、逆に解釈が恣意に流れて乱用されるということにもつながってしまうんじゃないかと。要するに、資金提供の相手方が特定されないで、行為だけが特定されていますから、そういう行為を意図している者というのが犯罪構成要件ですから、逆に政府の恣意に任されてしまうんじゃないかということを危惧するわけでありますが、法務省は、そういう危惧はお持ちになりませんか。
古田政府参考人 委員御指摘の点につきましては、私どもとしては、やはり行為を中心に構成することの方が、いろいろな場面で具体的な妥当性が特に犯罪として見た場合に多いことは実際であり、かつ、構成要件的な意味での明確性ということも、やはり行為を中心にするということがこれまで少なくともとられてきた方法であると考えております。
木島委員 それでは、行為の具体的中身について立ち入ってお伺いいたします。
 先ほどもちょっと触れましたが、昨年十月の国連総会第六委員会のテロ作業部会による包括テロ防止条約案の審議におきましては、テロの定義をめぐって意見が対立して、結果的に包括テロ防止条約は成立しませんでした。
 焦点は二つありました。一つは、外国の占領、侵略、植民地主義、覇権に対する自由と民族自決の闘争はテロ行為ではないとするイスラム諸国の主張をめぐる先進諸国との対立であります。もう一つは、イスラエルなどの国家によるテロも対象にせよというイスラム諸国の主張と同じく反対する先進諸国の対立だったわけでございます。
 そこで、ずばり聞きます。民族自決のための闘争としてのこの第一条に掲げられているような行為は、法案第一条の「公衆等脅迫目的の犯罪行為」に含まれるのか、それとも、今国連でまさに論議が激しく闘わされている分野ですが、民族自決のための闘争として行われるその一環としての行為は、これは除かれると解釈されるのか、御答弁願います。
古田政府参考人 この法案は、我が国の刑罰法規上犯罪行為に該当する、すなわち、我が国の刑罰法規上違法とされる犯罪行為であるということが大前提でございます。
 お尋ねの民族自決としての闘争行為、これは具体的にどういうことを想定するか、非常にいろいろなケースがあり得る、そういう意味では、一概に申し上げるというのは大変難しいところがございまして、結局、個別具体的な状況に照らして判断されることになると思われるわけでございます。
 ただし、先ほども申し上げましたように、いずれにせよ、そういう行為でありましても、そもそも犯罪行為と言えるようなものと認定できるものでなければ本条には当たらないということにはなるわけでございまして、これにつきましては、やはり国際法的な問題ということもございますでしょうし、また、非常に現実の問題として申し上げれば、日本国外のある地域で具体的にどういうことが行われ、それが本当に合法か違法かというふうな判断をするということについては、これは、いろいろな事実関係、証拠資料等非常に難しい問題がございますので、そういう場合に、本罪の適用ということについては、これは非常に慎重に行わなければ、検討をして考えなければならない問題と考えております。
木島委員 民族解放のための闘争にもいろいろなケースがある、一概に申し上げられないという答弁でした。
 実は、日本弁護士連合会が、この法案に反対の態度を表明しております。その一つの理由がこの問題なんです。日弁連の声明にはこのような指摘があります。南アフリカのアパルトヘイトに反対する活動や、東ティモールの独立などを支援する国内の団体に資金カンパをするような行為すらが犯罪行為として処罰の対象とされる可能性がある、それは非常に人権保障上問題だという指摘をいたしまして、この法案に反対の立場に立っているのですね。
 お聞きいたしますが、例えば、東ティモールの独立を目指す闘いがある、組織もある、いろいろな多様な行動をやっているでしょう、その行動の一つには、この法案第一条の定義に触れているような形態がたまたまあったとします。しかし、だからといって、その独立を目指す運動体に対する資金供与は決してこの法案第二条には該当しないと聞いてよろしいですね。この日弁連の心配に対してどう答えますか。
古田政府参考人 ただいまお尋ねの点でございますが、まずその犯罪行為をするということを知っていて、かつなお、積極的に当該行為をいわばやりやすくするようにするという意図を持っているということが必要でございますので、その団体あるいはグループの中でそういうものをする者がたまたま、もしいたといたしましても、その前に行われた、そういうグループ資金のカンパなどが本条に当たるということはございませんし、また仮にそういうことが過去に多少あった場合であっても、一般的にそういうことを積極的に支援する目的があると認定できるということは、これは非常に困難なことでございますので、御懸念のような問題はないと考えております。
木島委員 それでは、もうちょっと立ち入って法案の条文に即してお聞きします。
 そうおっしゃいましたが、第一条の三つの類型、第一は、人を殺害、その他傷害、略取、誘拐、人質であります。第二は、航空機あるいは船舶に対する危険を生じさせる諸類型です。第三は、爆発物に関する諸類型でありますが、明確な概念もあるのですが、非常に法律家から見て不明確な概念もありますので、ただしておきたいと思います。
 第一条第一号の中に、凶器の使用その他人の身体に重大な危害を及ぼす方法により人質にする行為というのがあるのですね。凶器の使用はわかります、私。しかし、その他人の身体に重大な危害を及ぼす方法による人質にする行為、こういうのが構成要件なんですね。いかようにも解釈されて大変心配なんですが、どういう概念ですか。
古田政府参考人 人の身体に重大な危害を及ぼす方法、これは、具体的に例を申し上げますれば、例えば炭疽菌を散布するとか、あるいは放射性の物質によって汚染するとか、そういうさまざまな形態があるわけでございます。要するに、人の身体に非常に重大な危険を及ぼす、そういう性質の行為ということでございます。
 ただ、今委員御指摘の点につきましては、この「重大な危害を及ぼす方法により」というのは、身体を傷害するということにかかっているものでございまして、人質にする行為にはこれはかかっておりません。
木島委員 そうですか。そうすると、もう人質にする行為だけでこの法律は動き出してしまうということになるわけですね。
古田政府参考人 人質にする行為というのは、これは、人質にする行為が日本で犯罪行為に該当するときは、監禁等を手段とする、あるいは誘拐等を手段とするということが大前提になっているわけでございまして、そういうことで、そういう方法によって人質にした場合は、これは含まれるということでございます。これは、人質をとる行為の処罰に関する国際条約があるわけでございまして、それを前提としている、それでこういうものを含ませるというでございます。
木島委員 もう一つ、じゃ、第二号の方のいろいろな類型の構成要件の中で、航行に危険を生じさせる行為、ほしいままにその運航を支配する行為というのがあるのですね。これも非常に漠とした概念でありまして、こういう言葉をみだりに刑事法制に持ち込んでくるというのは、私はちょっといかがかなと思うのですが、具体的にどんな行為なんでしょうか。これで乱用のおそれはないんでしょうか。
古田政府参考人 ただいまお尋ねの点で、例えばほしいままにその運航を支配する、これはいわゆるハイジャック処罰法一条一項の運航支配罪がございますが、そこで、ほしいままにその運航を支配したという構成要件が定められておりますが、それと同じものでございます。
 また、航空危険につきましても、これは航空危険罪処罰法で、航空の危険を生じさせるという構成要件がございまして、これを用いたものでございます。これは、いろいろな方法があると思いますけれども、例えば管制関係を混乱させて航空の危険を生じさせるというふうなこともありますでしょうし、要するに、飛行機の航行が危険な状態になることに当然つながるような性質の行為ということでございます。
木島委員 具体的に、航行に危険を生じさせる行為をやって逮捕されて罪に問うという場面とか、ほしいままに運航を支配して危ない状況をつくり出す、そういうことが行われて、それで逮捕して投獄するなら私はわかるのです。しかし、この法律はそうじゃないんでしょう。そういうことを意図する者に対して資金を提供したことに対して、それが可罰的違法性があるというので逮捕できるんでしょう。ですから、まだ行われてないんですね、この犯罪行為が。これは、犯罪行為をやろうとする、意図する者に対して、それを知って資金を提供した、そういう場面でも既遂になるわけで、まだ行為が行われてない段階で発動される法律なので、見えないわけですね。ですから、非常にあいまいな構成要件というのはどうかなという一抹の危惧を持っているということを私は指摘しておきたいと思うのです。
 それと、法務大臣にこれは意見を求めたいのですが、先ほど来、例えば民族自決を求めて抑圧的政府と闘争中の勢力には、いろいろな多様な行動があるのですね。場合によっては、その中の一つには、刑法の言葉を言えば人質なんということに該当するような行為も出てくるでしょう。そういうあいまいな行為概念で、しかもそれが現に行われているのではなくて、そういうことをやろうとする意図がある者に対して金を送ることを処罰の対象にしている。解釈次第で非常に適用されるおそれが広がってくる。だから、私は、イスラム諸国が、包括テロ防止条約の定義をめぐって、民族自決運動は除外してくれという要求をしているのも、やはりそこにあるんじゃないかと思うのですね。ですから、この法の解釈運用には特段の慎重さが求められるのじゃないかと私は思うのですが、担当大臣としての御所見をここで述べていただきたい。
森山国務大臣 これは、国際的な要請に基づきまして、特に昨年の同時多発テロ以降、このような条約が必要である、それで署名が推進され、そしてこれから批准もするために国内法を整備するということで、国際的な状況に見合って対応するべきものということで進めてまいったものでございます。
 しかし、おっしゃるような危惧も感じられることでもあり、またそのようなことを指摘される方もございまして、当然、これは刑事法でございますので、適用に当たっては十分慎重に対処するべきものと考えております。
木島委員 もう一つの問題について聞きます。
 先ほど、国連では、国家によるテロ、そういう行為を防止するための枠組みをつくるかどうかについても意見の対立があると指摘をいたしました。では、この法案では、国家によるテロとしての行為は、この法案第一条の「公衆等脅迫目的の犯罪行為」に含まれるんでしょうか、法務省。
古田政府参考人 国家によるテロというのが、これまたさまざまな範囲をイメージして用いられるところもございまして、一概に申し上げるということは大変困難でございますが、例えば、仮に何らかの国家意思みたいなものが背景にあるというようなことでありましても、当然それが犯罪行為に当たるというものにつきましては、これは本罪の対象にはなり得るということでございます。
 そのほか、さまざま個別事情でそれぞれに判断しなければならないわけで、その判断に当たっては、先ほども申し上げましたように、物によりましては、国際法上どういうふうに考えられるか、そういうふうな点も十分含めて判断しなければならない場面もあろうかと思っております。
木島委員 では、具体的に聞きますが、バルカン半島の諸国に見られるような、事実上一国の中で内戦状態になってしまっている、そういう場合の紛争当事者の一方に対する資金供与などは、この第一条の定義に入るんでしょうか。実は、日弁連などからは、第一条第一号には「人を殺害し、若しくは」云々という言葉で、人という言葉だけで概念の縛りがない、しかし、国際条約はもっと縛っていたんじゃないかという批判的意見があることを踏まえて答弁願います。
古田政府参考人 何度も同じようなことを申し上げますが、特定のいろいろなケースにおいて、それぞれどういう事情であるかということは個別的な判断ということがどうしても必要になるわけでございまして、一概にお答えするというのは大変困難でございます。
 いずれにいたしましても、先ほども申し上げましたとおり、外国の領域内において起こっているいろいろな現象につきましては、それの内容、それが、日本の犯罪行為として違法性を、日本で行われたとすれば違法性を持ち得るものかどうなのか、こういう点については非常に慎重な判断が必要になると考えられるわけでございます。
 そういうことで、いずれにいたしましても、外国での問題につきましては、何度も繰り返しになりますけれども、十分判断ができるような資料ということが当然ながら必要で、それがなければ判断は非常に難しいだろうと考えております。
木島委員 個別的な事案できちっと一つ一つ区分けするんだとおっしゃいましたが、そうじゃないんじゃないでしょうか。一国内での内戦状態になっているという場合には、交戦当事者にはジュネーブ条約の基本的な精神がかかるわけですから、そういう内戦状態になっている紛争当事者については、この第一条は適用ないんじゃないでしょうか。もう時間が迫ってきているようでありますが、そこだけはきちっとしておいてほしい。
古田政府参考人 端的に申し上げれば、ジュネーブ条約上、交戦団体と認められるようなものについては、国際法上いろいろな戦闘行為は許されるということであろうと思いますので、そういうものについては該当はしないということになると思います。
木島委員 はい、ありがとうございました。
 では、最後に、本当は細かく聞きたいところだったんですが、「情を知って、」という解釈と、もう一つ、「公衆等脅迫目的の犯罪行為の実行を容易にする目的で、」という目的犯の解釈、この二つを厳格に答弁願います。
古田政府参考人 「情を知って、」と申しますのは、資金提供の相手方が公衆等脅迫目的で第一条各号に掲げております犯罪行為を実行する具体的意図を持っていることを知ってということでございます。
 その「実行を容易にする目的」と申しますのは、容易にするという言葉をパラフレーズするのは難しいわけでございますけれども、端的に申し上げれば、実行ができるように支援する、あるいはそれをしやすくするという意図、そういう積極的な意図を要するということでございます。
木島委員 時間ですから終わりますが、私は、非常に細かく立ち入って刑事法の解釈について聞きました。それは、この法律が非常にあいまいな構成要件を背景にして乱用されてはいかぬ、政治活動の自由に触れる問題ですから、決してそういう運用をしてもらいたくないということからであります。しかし、この法律そのもの、また、こういう国際条約そのものは、非軍事により国際社会からテロを根絶するという大きな方向に向かっておりますから、賛成するわけです。賛成はするけれども乱用はいかぬという立場、思いを込めて、細かい、立ち入った質問をいたしました。
 終わります。
園田委員長 植田至紀君。
植田委員 社会民主党の植田至紀でございます。
 与えられた時間の中で幾つかお伺いしたいわけですが、まず外務省さんに、この法案の中身をお伺いする前に、外務委員会でも当然議論はあったかと思いますが、幾つかの点をちょっとおさらいしておきたいと思いますので、条約にかかわってお伺いいたします。
 まず、この条約の起草者はだれだれ、だれだれといっても固有名詞じゃないですよ、どういう人たちによって起草されたのかということをお伺いします。
小野政府参考人 お答えいたします。
 先生御案内のように、一九九六年七月にG7及びロシアが参加してパリで開催されましたテロリズムに関する閣僚会議におきまして、テロリズムに対する資金供与を阻止するための措置をとることをすべての国に要請するということになったわけでございますが、一九九八年の秋の国連総会におきまして、フランス政府が本件条約の作成を呼びかけて条約案を提示したわけでございます。その結果、我が国を含む主要国に対しまして、条約交渉の開始に向けての協力が開始されまして、まず、G8各国間で予備的な検討を開始した後、一九九九年三月に、国連総会により設置されましたアドホック委員会におきまして条約の草案の検討が開始され、一九九九年十二月になりまして、この条約が採択されたという経緯でございます。
植田委員 要は、この条約の起草に当たって、当然ながら、条約を見ればはっきりしていますけれども、劇薬はさまざまな副作用はあるだろうという危惧はあるわけでございます。
 国際人権法の専門家というものはこの起草には参加していますか、していませんか。
小野政府参考人 していないというふうに承知しております。
植田委員 すなわち、この条約そのものの起草に当たっては、各国の法規制の担当者が集まって起草した。そして、国際人権法の専門家というものはそこでは参加をしていないということは、すなわち、今回のこの条約の起草に当たって、いろいろと議論もあるだろうと思いますが、少なくとも人権にかかわる、またそれに与える影響等についてはそもそも議論されなかったという理解でいいわけですね。
小野政府参考人 ちょっと、その交渉経緯、それから交渉の中身につきまして、現在はっきりしないわけでございますが、この起草委員会等における議論の中で、例えば本件テロ行為等に伴う犯罪構成要件等につきましては、交渉の過程におきまして、犯罪構成要件が十分明確化されて各国が適切な運用に当たれるようなものにするとの点に最大限の工夫が凝らされ、努力が払われたというふうに認識しております。
植田委員 そこで最大限の工夫を凝らして条約ができたんでしょうから、その点じゃなくて、要するに、人権の制限についてやはり歯どめが必要だ、必要でない、そうした議論があったのかなかったのか。これは、あったのならあった、こういう議論でしたでいいのです。そういうことはそもそもこの条約の起草に当たって議論をしていないということであれば、そういうお答えで結構なんです。別に外務省を懲らしめる話ではなくて、事実経過を教えてくださいということですから。
小野政府参考人 本条約第十七条でございますが、ここでは、「いずれの者も、この条約に従って抑留され又は他の措置若しくは手続がとられている場合には、公正な取扱い」、これは「当該者が領域内に所在する国の法令及び国際人権法を含む国際法の関係規定に基づくすべての権利及び保障の享受を含む」という規定がございます、これが保障されるという条約がございますので、この条約の起草段階において、当然人権という問題につきましても議論されたというふうに承知しております。
植田委員 人権の制限の歯どめにかかわって議論されて、それが十七条に反映されている、それは事実認識ですけれども、ただし、あくまでもこれは、かかる国際人権法の専門家たちがこのことについてさまざまな意見を述べた形跡はないわけですよね。そのことについて議論に参加はしていないわけですよね。大体こんなところでこの文言をほうり込んでおけばいいだろうということで、そうした専門家は議論には参加していないが、法規制の担当者がこれでよろしいやろうということで入り込んでいるわけですよね。だから、国際人権法の専門家がかかる条約の起草には一切参画していないわけですね。もう一回、そこだけ。していないんですね。
小野政府参考人 人権の問題について参加しているかいないかという点につきましては、現段階ではちょっと確認はできないという段階でございますが、先ほど申し上げましたような十七条の解釈等につきましては、今先生の御指摘のとおりだろうというふうに思っております。
植田委員 要は、具体的な起草の過程における議論等々について、私はそんなに難しいこと聞いておりませんが、実に簡単なことを聞いても、必ずしも掌握していない部分があるわけですね、外務省さんとして。あるわけですよね。あるのかないのか。
小野政府参考人 各国の人権専門家がどのような形でこの議論に参加したか、いなかったかということについては、確認する必要があるというふうに考えております。
植田委員 ほんまは国会で議論する前段階でそんなことは確認しておかないかぬ話じゃないでしょうか。少なくとも、条約の性格から見て、もう発効しているわけですけれども、さあ批准します、批准してから、起草の過程における議論について子細はそれから調べてみます、これは順序逆と違いますか。そう思いませんか。どうですか。
小野政府参考人 今委員の御指摘を踏まえまして、至急確認したいと思います。
植田委員 少なくとも、出てきたものが、具体的にどういう過程を経て、どんな議論を経て最終的にこういう形でまとまったのかという過程について、死んだ子の年を数えるような話ですが、至急調べてください。それは報告をしてください。
 今の話はそういうことで、次に、これは外務委員会でも、私も未定稿を取り寄せて、我が党の今川正美委員がこの条約にかかわって何点か質問されているわけですが、改めて、おさらいになりますが、外務省さんに、テロリズムの定義というのをまず示していただけますか。テロリズムの定義とは何でしょうか。
谷内政府参考人 テロリズムという言葉につきましては、国際法上確立した定義はないということをまず前提として申し上げます。
 それで、では国際社会はテロリズムあるいはテロ行為というものをどのように取り扱ってきたかということを申し上げますと、例えば、テロ防止関連条約の作成に当たりましては、ハイジャック、人質行為、爆発物の設置等、典型的ないわゆるテロ行為に該当する一定の行為類型につきまして、これを犯罪とし、処罰のための法的枠組みを設定する、こういう対応を個別個別に着実に積み重ねてきているというのが実態でございます。
植田委員 十七日の外務委員会の質疑でも、これは川口外務大臣が、「テロリズムにつきまして厳密な定義が存在するわけではなくて、国際的にも大きな議論があると思います」と。恐らく今答弁でおっしゃった大前提の部分ですよね。
 私が疑問なのは、そもそもテロリズムといった場合、これを思想という言葉で呼ぶのはやや問題があろうかと思いますが、一つの思考なり、考え方なり、方向性なりというものを指すんだろうと思います。そのテロリズムというものが、厳密な定義が存在しておらずに、なおかつ国際的にも大きな議論があるということを大前提にしながら、今後段でおっしゃった御答弁というのは、まさに行為を指しているわけですよね。テロリズムというのは行為を指しているのかどうなのか。
 テロリズムという一つの前提があって、その上に立って、その考え方なり、思考なり、方向性に基づいて何らかの行為がなされるのをテロ行為ととりあえず呼んでみましょう。だからそこは、今おっしゃったのは、テロリズムの定義をおっしゃったのではなくて、いわばある種の、一言で言うと、何となくこういうようなのをテロというのかいなとおぼしき犯罪行為について、こういうものですよとおっしゃったわけですね。ですから、テロリズムというのは今定義されていませんよね。
 では、テロリズムというものが厳密に定義できないにもかかわらず、なぜテロ行為が定義できるのでしょうか、御教示いただけますか。
谷内政府参考人 今おっしゃいましたように、テロリズムといいますと、これは特定の主義主張に基づいているという観点も含んでおりますので、そういう意味では、一つの考え方あるいは行為に結びついた考え方というふうに一般には思われると思いますけれども、他方、テロ行為とテロリズムについて、これまた厳密にその二つを分けて考える考え方はございませんで、テロリズムにつきましても、一般的な考え方としては、今申し上げましたように、特定の主義主張に基づきまして、国家等にその受け入れなどを強要し、または社会に恐怖を与える、こういうような目的で行われる人の殺傷行為を一般に言っておるわけでございます。
 したがいまして、日本語の語感とはちょっと違うのではないかと思うのですが、テロリズムとテロ行為が截然と分けた形で定義されているわけではございません。
植田委員 それはそうだと思うのですよ。厳密な定義がなされておらずに大きな議論があるわけですから、そのことについての定説的な理解がそもそもまだ存在していないということですよね。だから、私は今、こういうふうに整理するのが一番妥当じゃないですかと言いましたけれども、それも別に定説的理解ではなくて、ただ素朴にお伺いしたわけです。
 では、そのテロ行為を実際に定義しましょうといっても、今のおっしゃったお話ですと、これまた一見具体的なようでありながら非常に判然としませんね。うなずいておられるということは、答弁なさっていて、自分でしゃべっていることが判然としないけれども、大体一般論としては、テロ行為とはこういうところでいえば大体妥当だろうという線を今おっしゃったわけですよね。とするならば、実際、しゃあないですわ、テロ行為というものをいわば認定するということに当たって、やはり一定の基準というのは明確になっていなければならないわけですよね。その基準から、不本意ながら逆算してテロ行為というものを類推するしかないわけですが、その基準の明確化についてはどうですか。
谷内政府参考人 テロ行為及びテロリズムにつきましては、今先ほど一般論で申し上げたわけでございますけれども、実際問題として、国際社会において、政治的な場でいろいろなテロとかテロリズムはけしからぬ、そういう意味での議論は別にいたしまして、国際法上ないし条約上の議論に入っていきますと、これは犯罪の構成要件等の観点から、何らかの形でその行為を特定する必要があるわけでございます。
 そういう意味で、今回のテロ資金供与防止条約におきましても、こういったものを同条約上の犯罪に該当するということでその条約の中に別途規定しておりまして、このことは、御承知のように、ほかのテロ条約でもそれぞれ個々の条約目的に応じてテロ行為を決めている、こういうことでございます。
植田委員 ただ、これは今川さんもお伺いされたことですが、改めて確認したいのは、その答弁を受けてもう一回伺いたいことが一点だけあるからなんですが、いわゆる条約の二条一項、規制すべき活動、「文民又はその他の者であって」云々かんぬん、そしてただし書きで、「住民を威嚇し又は何らかの行為を行うこと若しくは行わないこと」、これが、要は非常に範囲が広い、ほとんど無限定になるんではないかという指摘があるわけなんですよね。だから、それが無限定ではないとおっしゃるその理由を、では次にお伺いできますか。
谷内政府参考人 これは、テロ資金供与防止条約の解釈そのものに入ってまいりますので、私がお答えするのが適当かどうか、ちょっと自信はございませんけれども、適当ではないと思いますけれども、今の先生の御質問にお答えさせていただきますと、今回のこのテロ資金供与防止条約では、おっしゃるように、第二条一項の(a)におきまして、ハイジャック、爆弾テロその他の、同条約の附属書に掲げる九本の条約上の犯罪を構成する行為ということを言っておりまして、この九本の条約には、それぞれ個別にその規定があるわけでございます。
 それを踏まえて、それ以外にも第二条1の(b)で、先生が既に読み上げられましたけれども、住民の威嚇または政府等への強要を目的として、人の死等を引き起こすことを意図する他の行為、これは解釈論の世界に入っていくわけですけれども、これは今の九本の条約との関連でこれが出てきておりますから、当然九本の条約に入っている行為類型を念頭に置きながらこの抽象的な規定がさらに解釈論として詰められる話である、こういうふうに思います。
植田委員 外務委員会では林参考人がお話しされているわけですが、今その答弁の前段をおっしゃったわけですよね。
 私がちょっと疑問に思いましたのは、今のお話はわかります、その上で、この外務委員会の未定稿を見ますと、「そもそもここにおきます行為というのは、死または重大な傷害を引き起こすということで、殺傷行為というのがまず前提にある」、そして、「その殺傷行為の目的が住民を、住民ということは特定の個人ということではございません、」云々、そして、「この行為の外延はかなり客観的に明確なのではないかなというふうに思っております。」という答弁でございました。ただ、これは、事が実際に起こればの話じゃないのか。事が実際に起こったとしても、行為の外延はかなり客観的に明確になる。いろいろと言葉をつけ足さなければ客観的に明確だ、外延はかなり客観的に明確になる。実際に起こればの話ですね。
 そのことが予測されるような事態というのは、こういうふうな御答弁を仮に聞いたとしても、私は何一つ客観的に明確にできへんの違うやろかと思うんですが、その点いかがですか。
谷内政府参考人 現実にいわゆるテロと称してよいような行為を行った場合に、その外延がどこまでいくかというのは、今先生が御紹介いただいたとおりの理解を私も持っております。
 他方、それでは抽象的でよくわからないではないかとおっしゃられますと、これは、国際条約はそもそもそういう側面がございますけれども、多数の国が参加して、問題はそういったテロ行為を、大きな外延をさらに超えるものも含めて、そういうものが起こらないように何とか国際社会全体で取り組んでいこう、こういう発想でそもそもできておるわけでございます。
 したがって、その条約の精神として、できるだけ広い範囲内で、そういった一般的な意味でのテロがなるべく起こらないようにということを念頭に置いて考えられておるわけでございます。
 他方、実際の行為が行われますと、それにつきましては、今申し上げましたように、九本の条約のそれぞれの個々の行為類型及びこの第二条一項(b)の、抽象的ではございますけれども、その九本の条約との関連において厳密に考えられた内容によって個々に判断していく、これは一般論ではございますけれども、一般論で言えばそういうお答えになるわけでございます。
植田委員 一般論以上の話は聞けぬだろうと思っておったんですが、あと、もう一点。
 話はちょっと変わりますが、どうも今回の条約については、えらい迅速に、積極的に作業をされておられたわけですが、日本はこの間、国連人権関係の諸条約の批准にはやはりえらい消極的ですなという印象を持っているわけです。これは印象というより、事実そうですよね。やっとこさ拷問等禁止条約であるとか人種差別撤廃条約、これらはようやく批准しましたけれども、そもそも自由権規約の一、二の選択議定書はまだやっていませんよね。
 また、これは私も法務委員会でやりとりしたこともありますけれども、いろいろなそういう条約委員会からの具体的な国内法制度の改革を求める勧告、これも、ああやこうやとジュネーブあたりに言って、なかなか従わへんことが多いわけです。私の主観からすれば、日本としてはやっていますということをおっしゃっているんでしょうが、従っておらへんな。
 その一方で、組織犯罪だのテロ規制だのというのは、例えば起草と同時に国内法化の作業をする。えらいまた扱いが違いますね。えらい待遇が違いますね。人権はえらい冷遇されているけれども、この種の問題はえらい厚遇されているんだなと。
 やはりここを、例えば国際条約について、人権関係の諸条約とこうしたテロとか組織犯罪の関係のものをどうも使い分けているんと違うか。私としては多分にこれはひっかかるというか、許せぬ、ダブルスタンダードだなと思うわけですが、そうした意見は私一人の意見ではないと思います。かかる意見についてはどういう見解をお持ちですか。
高橋政府参考人 お答え申し上げます。
 人権分野につきましては、委員御指摘のように、まだ未締結の条約がございます。しかしながら、人権分野だけではなくて、それ以外にも未締結の条約がございまして、未締結の条約につきましては、それぞれの条約の趣旨及び目的、それから締結の必要性、それからさらには条約の実施に際する国内法制との整合性といったような事項を十分に勘案した上で、その取り扱いにつきまして個別に検討いたす、そういう方針で検討を行っているところでございますので、御指摘のように、人権の分野の関係の諸条約とそれからテロの防止関連条約ということで、そういう分野でもって取り進め方を異なる対応をしている、そういうようなことはございません。
植田委員 それは扱いを変えていますとは言えませんでしょうけれども、例えば包括的テロ防止条約の対立点や云々という話はもう先ほどもありましたから繰り返しませんけれども、少なくとも、テロの定義をめぐって紛糾した上、起草がストップしているわけですよね。
 そもそも前提となるテロの定義、根本的な、基本的な問題で各国間で対立があり、そしてストップをしている。その一方で、こっちだけはどんどこ先にやりましょう。もしそれであれば、国際的に既に、人権関係諸条約で、おおむねそんな対立点もなく批准されておる条約、幾らでもありますがな。
 一々ここでは申し上げませんが、ここでは、今のお話ではどうも首肯しがたいということだけ申し上げておきます。首肯しがたいと言っても、いや、そんなことありませんとおっしゃるんでしょうから、それはやりとりしても仕方がありませんが、いずれ、その点について、じゃ、どんな基準なのかということは、一回、その点に限ってお伺いすることもあるかと思います。
 次に、今回の法案にかかわりまして、法務省さん中心になると思いますが、構成要件等について幾つかのお伺いをしたいわけです。
 ちなみに、条約は、国際的なテロ行為に対する資金提供を防止する。この条約の三条によれば、「犯罪が単一の国において行われ、容疑者が当該国の国民であり、当該容疑者が当該国の領域内に所在し、かつ、他のいずれの国も第七条1又は2の規定に基づいて裁判権を行使する根拠を有しない場合には、適用しない。」云々とあるわけです。すなわち、条約は一国内で完結するテロ行為は対象としていないと理解いたします。
 しかし、法案はそれらも対象になるわけです。すなわち、一国の中で完結するテロ行為も対象となる。この点は、いい悪いの話はおいといても、条約の範囲を超えるものという理解をしてよろしいですか。
古田政府参考人 ただいま条約の三条についての御指摘がありましたけれども、本法案によりまして、公衆等脅迫目的の犯罪行為に対する資金提供等を処罰しますのは、いわゆるテロリズムに対する資金供与の防止等を求める国際的要請にこたえるというものでありまして、その主たるものとしては、本条約のほか、国連安保理決議千三百七十三号があり、同決議におきましては、すべての国が「自国民による行為又は自国の領域内における行為であって、テロ行為を実施するために使用されることを意図して又は使用されることを知りながら、資金を故意に提供し又は収集する行為を犯罪化する」ということが求められているわけでございます。こういうところからも、やはり国内の行為でありましても、資金の提供を犯罪化することが必要であるわけでございます。
 さらには、本条約の履行ということから申し上げましても、例えば資金提供等がすべて国内で行われても、その目的であるテロ行為が他国で行われる、あるいは自国内の外国の国民やあるいは施設等に対して行われることが予定されるということもございますし、その一方で、もともと本条約の前提となっております各種のテロ関連条約が、それぞれテロ行為としてよく用いられる可能性のある重大な行為について、これを犯罪行為とすることを義務づけ、かつ、これに広範囲に各国が裁判権を設定することが義務づけられている。そういうふうなこともございますので、国内における資金提供等も犯罪化するということとしておきませんと、国際的な要請に十分にこたえるということはできないと考えております。
植田委員 別に納得はしませんが、るるお述べいただきまして、理由はよくわかりました。
 次に、先ほども外務省に聞いたところですけれども、いわゆるテロ行為なるものの定義にかかわって、先ほども外延的には明確だということで、条約で言えば二条一項に係るところですが、じゃ、法案はどうかということ。恐らくこの法案の一つの論点だろうと思いますので、繰り返しになる部分もあるかもわかりませんが、法案で、公衆等脅迫目的の犯罪行為を対象として、一から三まで犯罪類型を挙げているわけですが、まず簡単なところだけ一つお伺いします。条約では市民に対しては威嚇、政府に対しては強要と書き分けていたと思うんですが、この法案ではどっちも脅迫というふうに起こされたのはどういう理由でしょうか。
古田政府参考人 この法案を作成するに当たりまして、一般的にいろいろなすべての犯罪類型にまで広がるということを防止する必要がある。その際に、条約の趣旨を考慮して、どういう範囲の犯罪にするかということで、一つは、一般公衆の中に恐怖感を巻き起こすような行為、そういう目的での行為。もう一つは、政府等につきまして、これは確かに強要という一定の行為をさせあるいはさせないということに条約上はなっておりますが、その手段としては、当然ながら政府関係者等に恐怖感を巻き起こさせるような行為、それを当然の前提としている。また、もう一方で、同じ殺人につきましても、例えば国家代表等保護条約などにおきます殺人につきましては、そういうことは要求されてはいない。
 しかし、それにしても、やはりそういうことをするためには、少なくとも、何らかのある行為等を求める前提としてのプレッシャーをかけるための、そういう恐怖感を巻き起こさせる行為ということが問題になるというふうなことを考慮いたしまして、そこのすべての前提となる、要するに、恐怖感を起こさせることを目的とした行為ということで限定を加えたものでございます。
植田委員 条約で威嚇、強要と言っているのを何で一つに統一したんですかと、それだけの話を聞いていただけなのに、えらい詳しいお話です。
 今のお話の後段部分とも重なるんですが、第一条の一号で、「人を殺害し、若しくは凶器の使用その他人の身体に重大な危害を及ぼす方法によりその身体を傷害し、又は人を略取し、若しくは誘拐し、若しくは人質にする行為」とある。繰り返しになるかもしれませんが、これはやはり無限定だろうと。脅迫目的ということでくくって限定しているように見えますけれども、公衆等脅迫目的の犯罪行為なるものが、じゃ、具体的にどう定義するのかというのはさっぱりわかりませんね。
 それで、そんなやりとりしていたら時間何ぼあっても足りませんから、一つだけ聞きます。
 「公衆又は国若しくは地方公共団体若しくは外国政府等」、外国政府等の等というのは条文に書いていますが、ここで公衆というのは何ですか。初歩的なことですからすぐ簡単にお答えいただけると思いますが、どうぞ。
古田政府参考人 公衆とは、一般的に、不特定かつ多数という意味で理解されていると考えております。
植田委員 不特定多数ですから、二人以上だったらいいわけですよね。
古田政府参考人 不特定かつ多数でございますので、二人とか、そういう数の概念ではなくて、要するに社会一般を構成するもの、つまり、そういう意味で不特定かつ多数ということでございます。
植田委員 要するに、今しつこく聞きましたけれども、公衆に対する脅迫行為ということで網をかける。殺人や傷害事件が多く該当することになりますよね。もう答弁はいいです、時間がありませんから。少なくとも、この法律をこしらえぬでも当然断罪されるような犯罪は幾らだってあるわけですよ、今の刑法で。そうしたものもわざわざここにほうり込んでやるんですかということです。
 それと、二条一項で、犯罪行為の実行を容易にする目的があればよいとしている。この容易にするというのはどういうことですか。それだけまず聞きましょう。
古田政府参考人 容易にするということは、それが簡単にできるようにする、やりやすくする、そういうことでございます。
植田委員 簡単にできるようにすることですよね。簡単にできるようにするということ、とりあえずまず一つおいておきますね。
 では、今回、条約を超える処罰範囲も設定した、それは事実であるんだけれども、我が国における固有の理由、立法事実を明らかにしてほしい。
 というのは、今、そういうテロ行為というか、ここで定義されているような犯罪をやりやすくするような実例が幾つも幾つもこの日本社会にもあるがゆえに、こういう法律をつくらないかぬと考えたんでしょう。今までの、現行の法体系では網をかけられへん、しょっぴくことができへん、しかし、そういうゆゆしき者がぎょうさん泳いでいる、それを何とか引っ張っていかないかぬということで、簡単にするような行為があちこちで横行しているということなんですが、立法事実はいかがですか。
古田政府参考人 お尋ねの趣旨がいま一つ不明でございますが、私たちとしては、先ほどから申し上げますように、条約が、犯罪行為に使用されることを知って、あるいはそれを意図して、しかも直接、間接にということでございますので、その趣旨を正確に国内法的に実現したいと考えたものでございます。
植田委員 要するに、我が国における固有の事情というのはないんですか。条約及びそうした国際的な要請に従って日本の法文に載っけたということであって、国内において具体的な事例というものはないわけですね。私が聞いたのはそういうことだけなんです。そんな難しいことじゃないんです。
古田政府参考人 先ほどから申し上げておりますとおり、条約の趣旨に従ってつくったもので、国内的な事情によってこういう要件を定めたものではありません。
植田委員 要するに、そもそも、条約をそのまま素直に法律にしたらこうなりましたよということに尽きるわけですね。
 それで、私がそもそも気になっているのは、先ほども質疑でありましたけれども、この種で実際自分が捕まるんか捕まらへんかと、いろいろな事例があります。例えばパレスチナでの問題。これは、お巡りさんも答えられへんとレクで言うてましたから、一応聞いた上で法務省に聞きますが、例えば、これは今川さんも取り上げていましたけれども、イギリスに留学している清末さんという学生さん。虐殺があったというジェニンのキャンプで人の盾になって、イスラエル軍の銃撃で今もまだ足に銃弾が残っている。何か連休中に日本で手術をされるそうですけれども。イスラエル軍に包囲されているので、彼女が日本大使館に救援を頼んだところ、直接聞いた話ですが、難民キャンプはテロリストの巣だ、来る方が悪いと、その大使館の警備対策官がおっしゃったそうでございます。
 これは余談ですが、実際、例えばそうした難民キャンプ、恐らく自爆テロをするような人もいるかもしれませんし、自爆テロを使嗾している、そうしたことを指示しているような人も、要するに、そこにテロリストもいるかもしれません。NGOやそうした学生さんは、市民運動を含めて、例えばその難民キャンプの中にテロリストがいることも十分承知しているし、そこでかかるテロ行為が策謀されているということも承知している。しかし、そこには、けが人もおれば、子供もおれば、病人もいる。そういう人たちをやはり救わなければならない。薬や物資やカンパをする。実際、果たしてそうした場合はどうなるんですか。
 これは、個別事例には答えられないかもしれませんが、少なくとも、実行を簡単にする目的に該当するかもしれないという意識は、その当事者はあると思いますよ。テロリストがそこにいることがわかっていれば、実際、カンパをして薬や食糧を渡しても、ひょっとしたらそれが弾薬に化けるかもしれないというぐらいの理解はありつつも、そこで呻吟しているしんどい民衆の人たちを救いたいという思いでみんな救援活動をするわけで、これは北朝鮮に対する米支援でもそうだし、イラクに対しても、またアフガン難民に対してもそうです。
 アフガン難民の支援でも、その難民キャンプの中にテロリストがおるかもしれませんし、実際おるということを現認しておっても、そこにいる圧倒的多数の子供や女性、高齢者、病人、けがをした人、そういう人たちを救わなければならないという思いでそうした行為をやる。しかし、結果としてそれがかかるテロ行為をやりやすくするために使われる可能性も一方で念頭にあるわけでございます。そうした場合、私がそういう行為をやった場合、私はやはり逮捕されちゃうんでしょうか。これはまず警察庁にお伺いします。
芦刈政府参考人 個別的事例につきましては、いろいろお示しありますけれども、私どもといたしましては、本法二条の、情を知って、公衆等脅迫目的の犯罪行為の実行を容易にする目的で資金を提供する行為を処罰するということにされておりますので、こういった要件に当てはまるかどうか、証拠に基づき厳正に認定をし、そういった個々具体的な事実関係に即して判断をしてまいりたいというふうに考えております。
植田委員 法案をこしらえはったのは法務省さんですから、例えば今の事例なんかの場合、どういうふうになるんでしょうか。法務省さん、いかがですか。
古田政府参考人 犯罪行為の実行を容易にする目的をもってということでございますので、その実行を容易にすることを積極的に意図するということが必要でございます。一般論としてそういうことでございまして、たまたま結果的にそうなるとか、そういうことは含まないということは法文上明確であると考えております。
植田委員 要するに、ならないわけですね。積極的に意図していなければいいわけですね。
 例えば、私が逮捕でもされて、私はそれは知っていました、テロリストがいることも、そこに自爆テロをやる人がいることも知っていました、どうやらあの辺にいたことも知っています、ひょっとしたら私が送った物資やカンパがそういうふうに使われることも想像がつきました、でも私はそうじゃなくて、そこにいる子供たちを救いたかったんです、だからカンパや食糧を送ったんです、積極的な意図はありませんでしたよと言ったら帰してくれますか。それだったら、積極的な意図はなかったんですね、植田さんは立派なことをやられました、お疲れさまでした、きょうはゆっくりお休みなさいというて警察から出してもらえますか。古田さん、いかがですか。
古田政府参考人 いずれにいたしましても、積極的な意図が認められない限り本罪の適用はないということでございまして、それで御理解いただきたいと思います。
植田委員 結局、今回、これは私は破防法や団体規制法よりも悪いやろうと思うのは、破防法や団体規制法は団体の認定の規定があるわけですよ。そんな手続がないまま、積極的に意図するしないということを判断するのは、捜査機関がその都度判断するわけですね。要するに、そうしたことはその都度その都度の事例に関して、例えば、私も十日も二十日も勾留されて、おまえは積極的に意図しただろう、意図しただろうと一日じゅう言われたら、はいと、ひょっとしたらそんなことを言ってしまうかもしれません、そういうことを含めて、すべて捜査機関にゆだねるということで理解していいんですね、局長。
古田政府参考人 これは刑罰法規でございますから、実際に処罰という意味での適用であれば、当然裁判所の判断になるわけで、捜査機関の判断ではございません。また、強制捜査についても、そういうふうな目的が認められるという合理的な疑いがあるということの判断は当然裁判官が行うわけで、捜査機関が恣意的に行うものではございません。
植田委員 私は今一言も、恣意的にやるんですねなんて聞いていませんよ。そんな答弁用意されていたんですか。捜査機関がその都度判断するんですよねと。私は何も、恣意的に判断するんじゃないかと一言も今質問で言っていませんよ。捜査機関にゆだねられるんですねと。要するに、まず積極的に意図しているかいないか、それだけ聞いただけで。そうなんでしょう。
古田政府参考人 捜査機関にゆだねられるというお言葉の趣旨を、私誤解したかもしれませんが、いずれにしましても、処罰という意味での適用であれば裁判所の判断になりますし、捜査の段階においても、強制捜査ということであれば、これは捜査機関の判断だけでできるわけではなく、裁判官の判断が前提となるということを申し上げたわけでございます。
植田委員 もう一つ実例を教えてください。面倒かもしれませんが、それ聞いて終わります。
 例えば、きのうも公安調査庁の資料をよこせと言ったらけさになって来ましたが、いわゆる過激派等々が地方議会等に進出していますわね。例えば、あるAというセクトがあったとしましょう。そこが明らかに綱領において暴力革命を志向している団体である。そうした中の構成員の一人が、さるどこかの、県議会議員でもいいや、市議会議員でもいいや、選挙に立候補しました。もちろんそんな公約掲げて立候補しないでしょうが、たまさか同じふるさとの後輩であった植田という人間が、まあ彼のことはようわかっているけれども、昔からお世話になった友達で、あんちゃん、お兄ちゃんやから、まあ一万円ぐらいカンパしようかと。そういう場合どうでしょうかね。
 要するに、個別具体的な事例で、みんな不安なんですよ。だから、その辺ある程度言うていただかないと、要するに際限なく広がるという不安があるから日弁連だって反対しているんですよね。
 だから、今みたいにどぎつい例、どうでしょう。
古田政府参考人 いろいろ個別の、特に植田議員の心情というようなことを前提としてのお尋ねみたいなところがございまして、それについてお答えできるとすれば、あくまで一般的なお答えとしてしかできないわけでございますが、先ほどからも繰り返し申し上げているとおり、これは、ある特定の重大犯罪行為をしようとすることを実際に知っていながら、それを、まあ簡単に申せば支援する、そのために提供するという行為を処罰するものでございますから、そういうものに通常、今御指摘のようなケースが一般的には当たるとは考えにくいということだけは申し上げられると思います。
植田委員 時間がちょっと超過いたしましたので、あと申し述べたいことは反対討論で申し上げるとして、質問は以上で終わります。
園田委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
園田委員長 これより討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、これを許します。植田至紀君。
植田委員 私は、社会民主党・市民連合を代表して、公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律案に反対の討論を行います。
 言うまでもなく、テロリズムは許されるものではなく、断固それを阻止し、そして断罪されるべきものであることは言うまでもないことであります。
 しかし、なぜ十分な審議もせずにこの法律が通過していくのか。警職法改正、破防法制定、団体規制法、組織犯罪対策法以上に問題をはらむ法案であるにもかかわらず、その本質が国民に十分知らされることもないまま、それも圧倒的多数で可決されようとしていることに、大きな懸念を抱くとともに、強く抗議するものであります。
 以下、主な反対理由を述べます。
 まず第一に、本法案は、国際的なテロ行為に対象を限定せず、一国内で完結するテロ行為を対象としており、それ自体問題があるテロリズムに対する資金供与の防止に関する国際条約の範囲すらはるかに超える規制となっていることであります。
 第二に、犯罪の予備段階での資金提供が犯罪化され、予備または準備の幇助を独立犯として処罰することは、刑法の共犯概念と相入れないものであります。かかる措置をとってまで処罰範囲を拡大する立法の根拠は何一つ明らかにされていません。
 第三に、本法案は、公衆等脅迫目的の犯罪行為を対象としているため、実際には、公衆に対する脅迫行為が無限定となり、政府の解釈が際限なく拡大するものとなっていることであります。
 第四に、事実認定が捜査機関にゆだねられ、恣意的な判断の危険性が大きく、その判断のいかんによっては、確定的もしくは未必的故意による資金提供でなくとも処罰対象となる可能性があることであります。
 第五に、刑事法制に重大な変更をもたらしかねない法律でありながら、法制審議会にも諮らないという、本来踏むべき手続に瑕疵があることであります。
 そもそも国連においても十分な議論が尽くされなかったいわば欠陥条約の要請にこたえ、拙速に立法化する立法事実が一体どこに存在するのか、政府はその一点すら明らかにしようとしない。かかる法案がわずか数時間の審議で採決されるならば、必ず将来に重大な禍根を残すことでありましょう。
 以上申し上げて、私の討論を終わります。
園田委員長 これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
園田委員長 これより採決に入ります。
 内閣提出、公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
園田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
園田委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、佐藤剛男君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党及び日本共産党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。加藤公一君。
加藤委員 ただいま議題となりました附帯決議案について、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し趣旨の説明といたします。
    公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。
  本法が、テロリズムに対する資金供与の防止に関する国際条約等の国際社会の要請を受けての国内法整備として立法化されたものであるという趣旨を踏まえ、本法における資金提供罪及び資金収集罪の構成要件の内容が不当に拡大され、捜査権の濫用につながるような事態が生じることのないよう、本法の趣旨及び内容について、関係機関に対する周知徹底に努めること。
以上であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
園田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 佐藤剛男君外四名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
園田委員長 起立多数。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。
 この際、ただいまの附帯決議につきまして、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。森山法務大臣。
森山国務大臣 ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。
    ―――――――――――――
園田委員長 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
園田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
     ――――◇―――――
園田委員長 次に、内閣提出、参議院送付、更生保護事業法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 趣旨の説明を聴取いたします。森山法務大臣。
    ―――――――――――――
 更生保護事業法等の一部を改正する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
森山国務大臣 更生保護事業法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
 更生保護事業は、民間篤志家のたゆまぬ努力によって維持運営され、犯罪者の社会復帰に大きく貢献するとともに、国が行う保護観察その他の更生の措置を円滑に実施する上で重要な機能を果たしております。特に、更生保護事業の主たる担い手である更生保護施設は、これまで多くの者を受け入れ、その社会的自立を促すとともに、再犯を予防し、国民の安全と治安の確保に重要な役割を果たしてきております。
 ところで、近年、犯罪情勢の悪化を背景とする矯正施設収容者の増加を受けて、出所後に更生保護施設の保護を必要とする者も着実に増加する傾向が見られます。しかも、その中には高齢犯罪者のように自立に特別な配慮を要する者や、累犯者及び薬物・アルコール依存者等のように、その改善更生には社会生活に適応させるための専門的な働きかけを要する者の増加が顕著な傾向としてうかがえるのであります。また、昨今の少年による凶悪重大な事件などに端的に見られるように、親の監護能力が弱体化する中で、本人の対人関係上の問題や社会適応力の欠如等の問題に対する適切な援助が求められております。
 このような現状にかんがみ、これらの者の社会復帰を促し、その改善更生を助けるためには、更生保護施設における処遇機能を一層充実させ、同施設において、犯罪者や非行少年に対し、その問題性に応じた適切な処遇をなし得るものとする必要があります。
 そこで、この法律案は、以上述べた犯罪情勢に的確に対応するため、更生保護施設の処遇機能を充実強化するとともに、更生保護事業の一層の発展を図る見地から、更生保護事業法及び犯罪者予防更生法等の一部を改正するものであります。
 次に、この法律案の要点を申し上げます。
 第一は、更生保護施設に委託する保護内容を充実させることであり、次の三つの点を内容としております。その一は、更生保護施設を犯罪者処遇の専門施設として位置づけ、従来の宿所及び食事の提供等に加えて、社会適応を促すための積極的な処遇をも更生保護施設に委託できるようにするものであります。その二は、少年院満期退院者や労役場出所者等の社会復帰を促すため、これらの者を更生緊急保護の委託対象に含めることであります。その三は、高齢犯罪者の増加等に対応し、本人の自立能力等個別事情に応じて更生緊急保護の期間を従来の六月から最大一年まで行い得るようにするものであります。
 第二は、近時の社会情勢の動向を踏まえ、更生保護事業の一層の適正化を図る見地から、同事業に対する規制緩和を図ることであります。更生保護施設を設置して行う事業は被保護者に対する処遇の適正が強く求められますので、引き続き認可制を維持することとしておりますが、それ以外の一時保護事業及び連絡助成事業につきましては届け出制に改め、その活性化を図ろうとするものであります。
 第三は、更生保護事業に対する社会の理解と協力の促進を図るため、事業の透明性を確保するための規定を設けることであります。
 第四は、その他の所要の改正を行うものであります。
 以上が、この法律案の趣旨であります。
 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに可決くださいますようお願いいたします。
園田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時三十二分散会


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