衆議院

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第3号 平成14年11月1日(金曜日)

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平成十四年十一月一日(金曜日)
    午前九時三十分開議
 出席委員
   委員長 山本 有二君
   理事 塩崎 恭久君 理事 園田 博之君
   理事 棚橋 泰文君 理事 加藤 公一君
   理事 山花 郁夫君 理事 漆原 良夫君
   理事 石原健太郎君
      小此木八郎君    太田 誠一君
      左藤  章君    下村 博文君
      杉浦 正健君    高木  毅君
      中野  清君    林 省之介君
      平沢 勝栄君    保利 耕輔君
      松島みどり君    保岡 興治君
      柳本 卓治君    吉川 貴盛君
      吉野 正芳君    枝野 幸男君
      鎌田さゆり君    永田 寿康君
      日野 市朗君    平岡 秀夫君
      水島 広子君    山内  功君
      石井 啓一君    斉藤 鉄夫君
      藤井 裕久君    木島日出夫君
      中林よし子君    植田 至紀君
      徳田 虎雄君
    …………………………………
   法務大臣         森山 眞弓君
   法務副大臣        増田 敏男君
   文部科学副大臣      河村 建夫君
   法務大臣政務官      中野  清君
   財務大臣政務官      田中 和徳君
   厚生労働大臣政務官    渡辺 具能君
   経済産業大臣政務官    西川 公也君
   最高裁判所事務総局人事局
   長            山崎 敏充君
   政府参考人
   (内閣審議官
    兼司法制度改革推進本
    部事務局長)      山崎  潮君
   政府参考人
   (法務省大臣官房司法法制
   部長)          寺田 逸郎君
   政府参考人
   (財務省大臣官房審議官) 村瀬 吉彦君
   政府参考人
   (財務省主計局次長)   勝 栄二郎君
   政府参考人
   (文部科学省大臣官房審議
   官)           清水  潔君
   政府参考人
   (文部科学省高等教育局長
   )            工藤 智規君
   法務委員会専門員     横田 猛雄君
    ―――――――――――――
委員の異動
十一月一日
 辞任         補欠選任
  笹川  堯君     小此木八郎君
  中川 昭一君     杉浦 正健君
  横内 正明君     高木  毅君
  鎌田さゆり君     永田 寿康君
  仙谷 由人君     枝野 幸男君
  石井 啓一君     斉藤 鉄夫君
  不破 哲三君     中林よし子君
同日
 辞任         補欠選任
  小此木八郎君     笹川  堯君
  杉浦 正健君     林 省之介君
  高木  毅君     横内 正明君
  枝野 幸男君     仙谷 由人君
  永田 寿康君     鎌田さゆり君
  斉藤 鉄夫君     石井 啓一君
  中林よし子君     不破 哲三君
同日
 辞任         補欠選任
  林 省之介君     中川 昭一君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 連合審査会開会に関する件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律案(内閣提出第二号)
 司法試験法及び裁判所法の一部を改正する法律案(内閣提出第三号)


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     ――――◇―――――
山本委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律案及び司法試験法及び裁判所法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 両案審査のため、本日、政府参考人として司法制度改革推進本部事務局長山崎潮君、法務省大臣官房司法法制部長寺田逸郎君、財務省大臣官房審議官村瀬吉彦君、主計局次長勝栄二郎君、文部科学省大臣官房審議官清水潔君及び高等教育局長工藤智規君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
山本委員長 次に、お諮りいたします。
 本日、最高裁判所事務総局山崎人事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
山本委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。杉浦正健君。
杉浦委員 自由民主党の杉浦でございます。
 まずもって、法務委員でない私に長時間質疑の時間をお与えいただきました山本委員長その他筆頭を初め理事各位の御配慮に感謝申し上げたいと思います。
 既に手続をとっておきましたので、私の第一東京弁護士会における講演録及び一弁会員の野崎幸雄氏の、これは一弁会報に載った巻頭言でございますが、これを質疑の便宜のため配付させていただきます。
 私の講演録の冒頭に、相当長時間を割いて司法改革の経緯を話させていただいております。司法改革そのものは、そこで述べておりますとおり、政治主導で始まりました。橋本総理の六大改革と言っておられたころ、当時の山崎政調会長が、司法改革が必要ではないかという質疑を本会議でなさいまして、七大改革として取り組もうという総理の決意表明があってスタートを切ったわけでございます。
 私は、それを受けて発足いたしました自民党の、当初は特別委員会、後に司法制度特別調査会となりましたが、保岡先生のもとで、当初事務局長、後には副会長兼事務総長として、司法制度改革全般について、法曹三者初め各界関係者が参加された大変な熱気の中で司法改革の議論を推進してまいった立場でございます。ロースクールの問題もその中で起こってまいりまして、大変な議論があったところでございます。
 経過は省略いたしますが、アメリカで発達、成熟したロースクールという制度に似たものを日本に導入することについては、相当議論がございました。
 まず、このロースクール論議の出発点となったのは、司法改革全体と軌を一にしておりますけれども、最近の法曹三者の質が低下しておるんじゃないか、これは最高裁、検察庁、弁護士会、ほぼ共通の認識でございました。それから、時代の要請で、これは繰り返しませんが、法曹の数をふやさなきゃいけない、質を高めると同時に数もふやさなきゃいかぬ、平成二十何年度には三千人まで持っていこう、それぐらいの量が必要だ、隣接業種の協力も要る。グローバル時代と申しますか、国際時代の中で日本が、しかも一方においては、内においては規制緩和も進めていく、撤廃も随分いたします。自己責任社会に向かおうという趨勢でございます。そういう中で、法曹の量の確保と同時に、質も必要であるということから議論を出発したわけであります。今のような体制でとてもそれだけの量の確保並びに質の向上は望めないんじゃないかということでございます。
 さまざまな論議がございました。まず第一の質問は、なぜ文部科学省のみの管理、法務省は共管でもありません、学校教育法上の大学院の一種として設けるという方向になったのか。
 これは、私、ここにも述べましたけれども、自民党がまとめました、この後ろについておりますが、自由民主党司法制度調査会の報告「二十一世紀の司法の確かなビジョン」、平成十三年五月十日付でありますけれども、最終的に保岡先生がおまとめになったわけですが、この直前に外務副大臣に就任いたしまして、一年五カ月、外務省改革に没頭しておりました。その間に、この「確かなビジョン」を発表したしばらく後に司法制度改革審議会意見が取りまとめになり、その推進本部ができまして、司法改革の推進に当たられたわけですが、そういう中でこういう結論になったわけでございます。このことをもうつい最近知ったわけですけれども、知るに及んで、最高裁や法務省の方と議論をいたしました。法曹三者、日弁連ともやりました。あなた方の責任が果たせるのか、権限ないじゃないかと。
 もちろん、文部科学省は協力する、意見を述べることになっているけれども、例えば設置基準は、学校教育法上によれば、これは文部省の省令で決まります。中教審に諮られますけれども、人を何人か出しているだけで、意見を言っても事実上無視されているじゃないか。少なくとも私どもの司法改革論議の中では、当時、文教制度調査会とか文教部会等の協力は行いませんでした。司法に関係する我々で我々の後輩を育成するしっかりしたシステムをつくらないと、今の大学教育、法学部、それから法学大学院もありますが、これではとても対応できないというところから出発したのであって、でき上がったものが、法務省、最高裁の責任と権限が明確になっていないというのはどういうわけですかということを随分議論しましたが、もうでき上がって、党議決定直前だ、中教審なんかもまとまっているというわけでございました。
 いろいろな選択肢はあったと思います。読んでみていただきたいですね。この私の資料につけておりますが、自民党の「確かなビジョン」の中に、法曹教育の部分、第八として、「二十一世紀の法曹養成の在り方」というのだけ抜き刷りいたしましたが、読んでいただけばわかりますけれども、学校教育法上の大学院をつくるなんて一言も言っておりません。山本委員長はよく御存じだ。議論が分かれて、さまざまな意見があって、自民党としては、正直言って、はっきりしたクリアなロースクールの像を描き切れなかったというのが実際のところだと思います。さまざまな意見がございました。
 私は、今、法曹教育、法学部から司法試験を経て法曹三者が生まれてくる過程の中で、司法研修所というのは最も機能している部分だと思います。山本先生もお出になった、私も司法研修所を出てまいりました。司法研修所が果たしている役割は非常に大きいと思います。ここはどこがいいかといえば、裁判官、検察官、弁護士の中の最も優秀な人が教官となって、実務に当たっている人が教えているところが眼目だと思います。今の法学教育は、一言で言って、法曹のプロを教育するという点でははっきり言って大失敗、役に立っていないというところが現実なんではないかと思うのです。
 この野崎先生の文章にございますが、野崎先生はアメリカのロースクールでも勉強しておられて、そこでの先生方の熱心な教育姿勢に触れておられます。そこで我が国の高等教育のあり方に大きな疑問を持ったと言っておられます。そこに書いてありますけれども、「司法試験合格者のなかで、塾に通った経験のないものは、絶無といってよい。」と触れられております。絶無のようであります。要するに、大学の法学部に通っておったのでは司法試験に受からない。ここに塩崎先生いらっしゃいますが、塩崎先生の御子息が通られた、だけれども、大学へ行かないで予備校ばかり行っておったと申しておられました。
 野崎先生は機会あるごとに、法学部の教授は教育者として授業に力を注ぐべきであり、卒業はもっと難しくすべきではないかと問いかけておられたと。答えはおおむね否定的で、その理由としては、教授はまず研究者である、卒業を難しくすることは大学運営を困難にする、学費が減りますからね、父兄は猛反対するだろうということを挙げるのが常であったと。
 今の大学教育、法学部における教育は、少なくとも法曹を養成するという意味では明らかに失敗してきたんじゃないかというのが私どもの認識でございました。その法学部の改革、その上に大学院があるわけですから、それを改革するのは教育者である先生方の責任だ。それには触れないで、私どもは議論したわけでございます。
 予備校が繁盛しております。大学の授業に出ないで受験予備校に通わなければ司法試験に通らないという実態がある。私どもの若いころの先生方にも何人かいらっしゃいましたが、最近の教員の中でも、講義で何年も前から同じ講義ノートをただ読み上げているだけという先生もまだいらっしゃるようであります。
 それから、一般論でありますが、大学の先生方は、大学経営や入学試験の実施などに関する雑用が多過ぎて教育に専念できないということが実態のようでもございます。そういう実態の先生方にこのような大学院の中心になってやってもらってもどういう結果が出るか。非常な不安を感じておるのは私だけではないと思います。
 政治家である法務大臣にお伺いいたします。大臣はどういうふうに御認識なさっておられますか。法学部及び法科大学院の教育について、率直にお伺いしたいと思います。
森山国務大臣 先生の御指摘のとおり、現在の大学の法学部と称するものは、決して法律の専門家を養成するというだけではございませんで、むしろそういう人は数が少なくて、一般の公務員とか会社員とかになるという道を選ぶ人の方が多いのが現状でございます。ですから、法律の専門家を養成するという観点から見ますと、おっしゃいましたようにさまざまな問題点がございまして、これを何とか改革しなければいけないということは、先生もきっと同じお気持ちであろうと思うわけでございます。
 予備校が大変はやっているということもよく言われる話でございまして、その結果といいますか、そのようなさまざまなことが重なり合いまして、司法試験に合格しプロになる方々、優秀な方もたくさんいらっしゃいますけれども、その中には、受験技術に偏するといいましょうか、そういう嫌いのある人たちも出てきてまいりまして、その点が多くの先輩方が心配していらっしゃることでございまして、実際に実務について法律の専門家として社会のために貢献していただくためには司法試験の技術だけがうまいというのは考え物ではないか。そのようなことから、このたび司法制度改革審議会におきましていろいろ御検討なさった結果、現在御提案申し上げているような法科大学院の内容のようなものが出てきたわけでございまして、それを検討いたしました上で、法案をお願いしているわけでございます。
 法科大学院は、新たな法曹養成のために、少しでも内容のよい立派な、しかも優秀な若い人たちを育てたいという考え方で、多くの方が知恵を集めていただいたものでございますが、これが新たな法曹養成制度における中核をなしていくべきものというふうに考えております。
 これを学校教育法上の専門職大学院の一つとして位置づけまして、従来、学校教育法には専門職大学院というのはなかったわけでございますが、この法律専門家を養成する法科大学院が先駆けとなりまして、これから社会に求められるさまざまな専門職の人たちを養成していくその分野を新しく開拓していきたい、そのような文部科学省自身のお考えもあり、法務省の方の、後輩をたくさん養成していかなきゃいけないという気持ちもありまして、それぞれの考えが一致して、このような内容になったものでございます。
 ですから、法律専門家の先生方にとりましては、みずからの後継者を育てていくという大変重要な分野をこの法科大学院が担うわけでございますので、御自分で法科大学院の教員となっていただく、あるいはカリキュラムや教材の検討にも貢献していただくなど、積極的に関与していただきたいというふうに思います。
 法務省といたしましても、法科大学院が大変重要な人材養成機関であるということにかんがみまして、司法制度を所管する立場から、文部科学省その他の関係機関と密接に連携しながら、法科大学院における教育が充実したものになるように必要な範囲で意見を申し上げ、そのほか必要な施策を講じてまいりたいというふうに考えております。
杉浦委員 最高裁、法務省にお伺いします。
 いろいろな設計の仕方、選択の余地はあったと思うんです。例えば防衛大学校のように特別法で設立するとか、学校教育法上のあれでも共管にはできなかったのかどうかとか、あるいは、最も実績を上げている司法研修所を改組して、大学の中にずっと根をおろしていって、そして学生の中から優秀な人材を吸い込んで実務家が鍛える。あるいは、国立ロースクールといいますか、国の責任をもっとしっかり果たすという選択もあり得たんじゃないか。いろいろあったと思います。
 私に言わせれば、法務省と最高裁は責任を逃げたと言わざるを得ないけれども、なぜこのような仕組みに同意されたかわからないけれども、しかし、いわば協力者として、今法務大臣がおっしゃったように積極的に関与ができるはずで、特に大切なのは教員の派遣であります。第一線の実務経験十年以上、最も優秀な裁判官、検事、弁護士を送り込まないと、この法科大学院はだめです。
 その教員の派遣等について、当局は、その与えられている協力者としての地位、権限を適正に行使して責任を十分果たしていく用意があるのかどうか。日弁連は呼べませんでしたので、本当は日弁連にも聞きたいところでありますが、最高裁と法務省に、検事を扱う寺田さんがいいかな、検事を本当に派遣するのかどうか、協力するのかどうか、お伺いしたいと思います。
山崎最高裁判所長官代理者 裁判所といたしましては、次代を担う法曹を養成していくためのプロセスとしての法曹教育の中核をなす法科大学院の教育内容が充実したものとなるよう、さまざまな点で積極的に協力してまいりたいというぐあいに考えております。
 ただいま委員の御指摘の教員の派遣の関係でございますけれども、そういった観点で、法科大学院において実務との架橋を図る教育が行われるよう、裁判所といたしましても実務家教員の確保について、OB、現役裁判官を含め、できる限りの協力をしてまいりたいと考えております。
寺田政府参考人 先ほど杉浦委員の御指摘のとおり、今回の法科大学院を中核とする法曹養成制度の改革というのは、基本的にだれが教えるのかという点が実際にその制度が成功するかどうかの大きなかぎを握るという認識を私どもも杉浦委員と共有しているわけでございます。
 その点が非常に重要でありますので、先ほど日弁連にお触れになりましたけれども、法科大学院をおつくりになろうとする方々と最高裁、私どもと日弁連との間で、具体的にどういう形で教員を派遣し、どういう方が具体的に望まれておられるか。あるいは、杉浦委員は既存の教育者については必ずしも十分でないとおっしゃっておられたわけでございますけれども、既存の教育者もしかし十分な成果を上げ得る方々もおいでになる、ただ実務の知識経験等で必ずしも十分でない方もおいでになるわけでございますので、そういう方々に実務の要素を何らかの形でつけ加えるような工夫もまた必要になるわけでございます。そういうさまざまの点につきまして四者の間で協議をするという形を最近スタートさせております。
 今後、具体的にどのような形でどのぐらいの人数を派遣するか。私どもも、恐らく杉浦委員の御指摘のとおり、必ずしもかなり上の方だけではなくて、やはり中核を担う機関でございますので、年代的にもかなり中堅と言われる方も必要ではなかろうかとは思っておりますが、いずれにいたしましても、どういうニーズがあるか具体的に把握した上でその派遣のあり方等を検討したいと考えておりますが、先ほど冒頭に申しましたように、最も重要なポイントであるという認識を持っておりますので、最大限の努力をいたすつもりでございます。
杉浦委員 この三法案については特に申し上げることはございません。
 これは文教委員会でやっているようですが、学校教育法の一部を改正する法律案は、法科大学院の創設とは書いてなくて、専門職大学院制度の創設。今大学院で幾つかビジネススクール的なものとかやっておるのをもっとエンカレッジしようということで、専門職大学院をロースクールに限らずビジネススクールとか工業所有権とかいろいろやろうということのようですが、これはむしろ文部省当局が、今の高等教育が法科にとどまらずいろいろな分野で社会に役立つプロの養成という点では欠けておるということを認識されて、その反省の上に立ってしっかりやっていこうという一種の決意表明と受け取れば、評価できないわけではございません。ですから、この三法案についてどうこう言うつもりはありません。
 ただ、残念なのは、これから少し詳しく入りますけれども、この制度設計であります。これが学校教育法上の大学院ということになれば、省令で定められる。そこには裁判官、検察官、弁護士、委員一人ずつ出しているだけですか。法務大臣の権限じゃないんですね。今の制度設計上に幾つか問題がある。これから指摘してまいります。
 最初に私言いたいのは、この制度設計で、どこの共管にするか、どういう性質のものを立ち上げるか、その部分で政治に相談がなかった。むしろ、ここでその設置基準を議論したっていいぐらいであります。国会の承認を得ろと言いたいぐらいであります。私は、当委員会でも十分議論していただきたい、これはいいものをつくらなきゃ意味ないわけですから。このままいきますととんでもないものができ上がる可能性が大きい。非常に危機感を持っている次第でございます。
 制度設計上の幾つかの問題、これは司法制度改革審議会の意見に基づいて中教審でおつくりになったもの、私の講演録の末尾に、資料二、三としてついておりますが、そこに記載されているさまざまな問題点について若干触れさせていただきたいと思います。
 まず、認可の問題に触れます。
 結局、文部省認可ということになる、学校教育法上の大学院でありますから。私ども自由民主党の「確かなビジョン」では、認可はできるだけ容易に出せと。六十五ページの下段にございますけれども、法科大学院の設置については、よりよい法曹を求める利用者の視点に立って、教育内容や教員体制等について必要な基準は最小限度の客観的なものにとどめ、この基準を満たしているものについては広く設置を認めていくべきだというふうにまとめております。一方の極端な意見は、どんどんつくってもらえ、自由設立にしろという意見もございました。いや、やはりきちっといいものをつくらなきゃいかぬ、厳格にしなきゃいかぬという意見もありましたが、ここに落ちつきました。これはむしろ自由設立に近い考え方でございます。司法制度改革審議会の意見でも、私どもの提言に近い提言が出ております。
 ただ、文部省の設置基準はあいまいなところがあって、設立を絞るんじゃないか。例えば施設及び設備は、七十三ページにありますが、「法科大学院の目的に照らし十分な教育効果をあげることができると認められるものとする」となっておりまして、その客観的、例えば建物がどうのこうのとか何がどうのこうのとか言って、今の大学の設置、学部の増設については文部省は物すごいですね。極めて厳しいわけですが、同じような設置基準を設けて認可を絞り込む可能性があるというふうに思っておりますが、この点については文部科学省はいかがお考えでございましょうか。
工藤政府参考人 私ども、このたび関連いたしまして学校教育法の改正について御審議を賜っておるわけでございますけれども、その中におきまして、新たな専門職大学院制度の創設のほかに、設置認可にかかわります国の事前規制の緩和、つまり設置認可をさらに弾力化しようということと、事後的なチェック体制の充実を図ろうということにしてございます。
 したがいまして、法科大学院の設置認可に当たりましても、司法制度改革審議会の御答申にありましたような最低限の基準をリーズナブルなものと定めて、それをクリアしたものについては広く参入を認める仕組みを予定しているところでございます。
 したがいまして、校地、校舎等の基準につきましても、これまで、余りにも大学が多過ぎるじゃないかという御批判もあるように、それを厳しいと受けとめるかどうかはございますけれども、これまでも参入規制をしているわけではございませんし、特に大学院につきましては、自己所有でなくても、ちゃんと教える教室なりしかるべきスペースが確保されればいいわけでございますので、そういう方向で広く法科大学院の設置を認めてまいりたいと思っております。
杉浦委員 終わります。
 残余の質問は、後ほどまた。
山本委員長 次に、左藤章君。
左藤委員 自由民主党の左藤章でございます。
 杉浦先生の質問の途中で三十分をいただきまして、ありがとうございます。
 まずもって、増田法務副大臣、また中野政務官、御就任おめでとうございます。
 それでは、時間もありませんので、質問をさせていただきたいと思います。
 今、いろいろ杉浦先生からお話がありましたけれども、今回のロースクール関連法案というのは、やはり長年の司法制度を根本から改革、また、これからの司法制度を支える重要なものであると考えるわけなんですが、そこで、新しい司法試験の方についてお伺いをしたいんです。
 新しい法曹の養成の中核である法科大学院の修了者のほかに、平成二十三年と聞いておりますが、予備試験の合格者にも受験資格を与える、こういうことになっております。
 そこでお聞きしたいんですが、まず、修了者の人たちが五年間に三回受験できる、こういうことになっています。これは、なぜ五年間に三回にしたのか、その根拠と、また、今後、平成二十三年度からやられる予備試験をどの程度の中身にするのか、またどの程度の合格者を想像してこういう制度にしているのか、法務副大臣にひとつお伺いをさせていただきたいと思います。
増田副大臣 左藤委員の御質問にお答えを申し上げます。
 現行司法試験につきましては、受験者の大量かつ長期間の滞留によるいろいろの弊害が指摘されているところであります。このような弊害が新司法試験にも受け継がれた場合には新たな法曹養成制度の趣旨が損なわれる、こういうおそれがあるために、法科大学院修了後五年間に三回に限って司法試験の受験を認めることとして、そのような弊害を可能な限り防止しようとしたものであります。
 以上です。
左藤委員 予備試験の方はどうか。
増田副大臣 予備試験についてのお尋ねでありますが、法科大学院修了者と同等の学識、能力及び法律に関する実務の基礎的素養を有するかどうかを判定することを目的としまして、短答式及び論文式による筆記並びに口述の方法により行うこととしております。
 また、法科大学院修了者と同等の学識、能力等を判定するという予備試験の性質に照らせば、その合格者数をあらかじめ想定することは相当ではない、このように考えております。
左藤委員 ということは、そのときになって、現状を見ながら判断するということだろうと思います。
 それで、先ほど杉浦先生からお話がありましたことなんですが、この法科大学院というのは、多くの大学がつくろう、設置しようとしております。
 特に、私どもが心配しているのは、東京とか大阪の大都会じゃなくて地方で設置される場合、先ほどお話がありました教員の確保。これは、教員の確保というと物的、人的な面もありましょう。そして、教員を確保するためには、地方にはいない人材をわざわざ出張していただいたり、いろいろしなきゃならない。そういう面では、当然財政上の問題が出てまいります。
 これについて、これは文科省の担当になるんだと思いますが、文科省の方はどのようにお考えになっておられるか、質問をさせていただきたいと思います。
工藤政府参考人 今、どういう地域配置で大学が設置されるかというのは、まだ設置申請も法案が通った後の来年の話でございますが、私どもにいろいろ御相談に見えているもの、あるいは各地での検討状況などを見ますと、北は北海道から南は沖縄まで、大変広い範囲で、全国的な中で御検討いただいてございます。そういう中で、先ほどの御質問にもございましたように、教育に当たる、実務経験のある方々の教育スタッフの体制というのは大変大事な眼目でございまして、先ほど寺田部長の方からも御紹介ありましたように、関係者によりまして、人材派遣のあり方、あるいは、現に大学の先生でいらっしゃる方についても逆に実務研修を受けていただくような仕組みのあり方などにつきまして御協議いただき、協力体制を確保しようとしているところでございます。
 また、現に私どもに御相談いただきました幾つかの例の中でも、地方の弁護士会の方々がむしろ積極的に地元の大学を応援しながらやっていこうという機運なども伺っているところでございます。
 そういうことも含めまして、私ども、関係省庁とも御相談しながら、人的派遣についてどういう仕組みでの支援の体制ができるのか、さらにはまた、加えて法科大学院の立ち上げ、さらには運営につきましての財政的な支援、あるいは学生に対する支援のあり方についてもあわせて遺憾なきように検討してまいりたいと思っております。
左藤委員 今おっしゃったように、本当に地方というのは、それは裁判官とか弁護士さんとか、またOBとかがいるかもしれませんが、大会社が地方は少ないわけですから当然法務部の実務経験者はいないわけですから、その辺も含めてひとつよろしくお願いをしたい、このように思います。
 今、倒産とかいろいろふえて、金融、財政の関係とか、国際関係の問題、また医療訴訟の問題とか、知的財産権の事件とか、こういうのが非常にたくさん出ております。そういう専門分野、特に理系に強い法曹が今後必要じゃないかな、こういうふうに私は特に思うわけであります。
 そこで、ロースクール、いろいろ考え方があるんだろうと思いますけれども、入学者の五割以上は理系という法科大学院が設置されてもいいんじゃないかなと。もちろん少なくてもいいんですが、やはり五割以上あって、そういう今後の社会背景に対応できるようなすばらしい法曹を育ててほしい、このように私は思うんです。また、隣接法律専門職が入学したり、単位履修したり、また、ロースクールを出てもそういう分野に行きたい、このように思う人もおられると思うんですけれども、これについて、理系のそういう関係について、文科省としてどういう考え方を持ちどう対応していくのか、ひとつお願いを申し上げたいと思います。
工藤政府参考人 まさに御指摘のとおりでございまして、多様な法曹養成というのが今求められているわけでございまして、単に法律プロパーの法学部出身者だけということではなくて、いろいろなバックグラウンドを持った方々が法科大学院に入学し、また活躍していただくことが期待されるわけでございます。
 ベースといたしまして、現に、今まだ法科大学院はないのでございますけれども、法学部以外の、例えば農学部とか工学部とか理学部とか、理系の学部におきましても、工業所有権に関する授業などが大変年々盛んになってきているところでございますので、現にそういうニーズがあると私どもも承知してございます。
 法科大学院の設立あるいは入学者選抜に当たりましても、法律の専門的な知識を問うて入学者選抜をするということではございませんで、むしろ、その基礎となります判断力とか思考力とか分析力とか表現力とか、そういう基礎的な資質を試すような適性試験を実施することも予定されているわけでございまして、幅広い分野から入学者を集め、おっしゃいますように、医療過誤に強い法曹人でございますとか、知的財産に強い法曹人でございますとか、いろいろな分野の特色ある人材が育っていくことが期待されるところでございますし、私どももそれをバックアップしてまいりたいと思います。
 また、隣接職種の方々が入学し、あるいは一部講義を受講していくような機会はどうかということでございますが、これにつきましても当然考えられるところでございますし、正規に入学して学生になりますほかに、科目等履修生という制度もございまして、一部の単位を修得しながら、さらに専門知識をブラッシュアップしていくということもございますので、そういうこともかみ合わせながら、いろいろなニーズに対応できるように私どももバックアップしてまいりたいと思っております。
左藤委員 今、工藤局長からお答えをいただいたんですけれども、改めてちょっと法務大臣にもお伺いしたいと思うんですね。
 理系出身者の専門職を持った人がその技能を生かして法曹界に出る、こういうときの、文部省側の考え方はわかりましたけれども、法務省側として、制度設計ですとかカリキュラムについてどういう工夫をすべきだとお考えになるか。また、実務的訓練を受けて、その実務内容や法曹倫理を修得しなきゃならない、こういう面も含めて、法務大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
森山国務大臣 先生御指摘のとおり、多様な人材が法曹の世界に入ってもらいたいというのが一つの大きな希望でございますし、法科大学院を考えております一つの目標でもございますので、その面に十分意を用いていきたいと考えております。
 これからの法曹の中では、理科系の出身者を初めとしまして、それ以外の、法律以外の分野の人材というものが多数集まっていただくということが重要だと思っております。ですから、法科大学院の入学者選抜、入学試験におきましても、法学部以外の出身者や社会人を受け入れまして多様性を確保していくということを工夫しなければならないと思っておりますし、法曹の多様性を高めるために必要なカリキュラム編成等についての制度設計にも、その面で十分注意をしていかなければいけないと考えております。
左藤委員 今、法務大臣のお答えどおりだと思うんですが、そうすると、やはり法務省も、カリキュラムとかそういう面について文部省と十分意見を出し合い、検討するということでございますね。確認のため、ひとつお願いします。
森山国務大臣 十分意見を申しまして、協議をして決めていきたいと思います。
左藤委員 実は、司法試験を実施する、所掌する司法試験委員会なるものが七人で構成をされる予定だと法律上なっております。
 そこで、お伺いしたいんですが、この七人の司法試験委員会の委員ですね。先ほどの、しつこいようですが、理系に強い人、卓越した人たちを入れるべきだと私は考えますけれども、それについてのお考えはいかがでございますか。副大臣よりお願いを申し上げたいと思います。
増田副大臣 ただいま大臣からお答えもございましたが、司法試験委員会につきましては、法曹三者以外の意見を反映させるために、法曹養成に関係を有する分野におきまして活躍されている学識経験者を委員に加えることが相当であると考えております。先生の御指摘のとおりであります。
 委員の御発言、御指摘を踏まえまして、その構成等についてもさらに検討してまいりたいと考えております。
左藤委員 次に、法科大学院の学生に対する財政支援の件でちょっとお伺いをして、これは文科省になると思いますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。
 法科大学院の、今の考えですと少数精鋭というのか少数で授業を行うということになりますと、授業料がかなり高くなるんじゃないかな、このように思います。いろいろ我々も勉強して、一人頭、経費、二百七十万かかるんじゃないかなとか、授業料が二百万ぐらいかかるんじゃないかなとか、いろいろ想像をしておるわけなんです。そうすると、今の育英会を中心とする奨学金の手当ては、学生がしっかりと勉強する余裕がないんじゃないかな、このように思うので、私は、やはり育英会以外に政府の保証ローンとか、そういう面での財政の援助をする必要があるんじゃないかな、このように思いますが、これについての文部省の考え方をひとつお願いを申し上げたいと思います。
工藤政府参考人 法科大学院が立ち上がりましたときに授業料がどうなるかというのは、今の段階ではまだ不明でございますが、推進本部の方でアンケート調査した昨年十二月の結果によりますと、各公私立の大学で御検討中のもの、まだ未定でございますが、大変ばらばらでございます。年額で百万以下のものもあれば、三百万弱のものもございまして、大変幅があるわけでございます。
 いずれにしても、仮に授業料が高くなりまして、経済的に困難な学生が進学できないということがあってはならないわけでございますので、学生に対するいろいろな形での支援策が必要であると思ってございます。
 それは、今御指摘がありましたように、私どもだけではなくて、関係者みんなが知恵を出しながら対応しなきゃいけないと思ってございますが、現に、国の奨学金制度としましては日本育英会の奨学金がございますほかに、地方自治体あるいは公益法人、それから大学独自で奨学金をお出ししているところもございます。さらには、政府系金融機関等におきます教育貸し付け、ローンの制度もあるわけでございます。
 育英会の奨学金について申しますと、今、無利子貸与、有利子貸与を含めますと、両方併用した場合に、年額で二百六十万前後のお金をお貸しすることができるのでございますが、これで十分かどうか。余り多額にお貸しして、返済にまた困るようなことがあってもいけないわけでございますけれども、少なくとも、平成十六年の法科大学院立ち上げに当たりまして、学生の需要に応じますように、来年度の概算要求、来年の夏の概算要求になろうかと思いますが、そこで、さらなる育英会の奨学金の事業の充実に努めますほかに、いろいろな他の多元的な支援策も含めまして、関係省庁とも御相談してまいりたいと思っております。
左藤委員 学生によっては、地方から出てきて下宿をしたりする人もいますので、そういう方面のことも踏まえて、来年の話ですけれども、いろいろな各大学院の授業料等を踏まえて、ぜひひとつ、そういう学生が安心して勉強ができるような奨学金の充実をお願いを申し上げたいと思います。
 それで、法科大学院をいよいよつくるということになりますと、適格認定という問題が出てまいります。これでこの大学院は大丈夫かという話が出てくるわけですが、この前文部大臣が本会議で、適格認定の件で、大学評価・学位授与機構が法科大学院の第三者評価を行うことを検討しているという答弁がございました。
 評価委員としては、公正を保つために、大学教授など文部省関係者だけじゃなくて、やはり法曹三者の方々も参画する必要があるんじゃないかな、文部省だけにお任せするというのはちょっとおかしいんじゃないかと私は思うのですね。それについてどう考えられるのか、それが一点。
 もう一つは、一つだけの評価委員会でいいのか、複数あってもいいんじゃないかな、こういう考え方もあるわけです。これはやはり評価機関がそれぞれ切磋琢磨をして、どっちのあれがいいのかということになるんだろうと思いますし、その辺についての考え方を文部省にちょっとお伺いしたいと思います。
工藤政府参考人 おっしゃいますことは、まことにごもっともなことでございまして、私どももそういうような方向で考えているところでございます。現に今、大学評価・学位授与機構では、評価の試行段階ではございますけれども、いわゆる大学関係者だけではなくて、産業界の方々あるいは言論界の方々など、大学人以外の学識経験者の方々にもお加わりいただいてやっているところでございます。
 現に、法科大学院の評価になりますと、実務家の御協力は欠かせないことでございますので、今回の御提出しております法案にも書いておりますように、私どもと法務省とは当然のことでございますが、法曹関係者と十分御相談しながら、節目節目でいろいろな御参画をいただき、しかも、御指摘の評価の場におきましても法曹関係者の御参画をぜひいただきながらやっていく必要があると考えております。
 それから評価を複数でやるべきということも、まさに御指摘のとおりでございまして、私どもも一定の安定的な、しかも適切な評価ができる仕組みがとられるべきという大枠の要件さえ具備すれば、どんな立場からでも評価機関の主体になり得るものと考えてございまして、そういう複数の評価機関が立ち上がることを期待し、また、そういうことが可能になるような制度設計としているところでございます。
左藤委員 ちょっと質問を事前通告していませんでしたのですが、適格認定の件、文部省から今御意見いただきましたが、やはり法務省としてもその辺は、法曹三者は当然入っていただくということも含めて、どのように思われ、どのようなお話をなさるつもりでございますか。大臣からひとつお願いを申し上げたいと思います。
森山国務大臣 今文部省の局長も言われましたように、この法科大学院というのは、特に法曹三者を育てるという観点から申しましても、法曹界の協力は欠かせないというふうに思いますし、法務省の立場から申しましても、立派な法曹の人材を養成していただくというためには、法曹界からの意見も十分申し上げなければいけない、法務省としても、積極的に意見を申し上げて、そして、よりよい法科大学院ができますように協力しなければいけないというふうに思っております。
左藤委員 ぜひひとつ、適格認定、よろしくお願いを申し上げたい、このように思います。
 実は、法曹界の方々、すばらしい方もおられるのですが、先ほども杉浦先生からお話ありましたように、試験に受かることだけを目的にいろいろ勉強する方がたくさんおられて、いろいろな社会性とか人間性というのもなかなか身につけるチャンスがなく、そのまま試験に受かって司法界に入ってしまうという方がたくさんおられると思うのですね。今度の制度でその辺も大いに見直しをしなきゃならないし、我々にとって、一般国民から見ると、特に裁判官という人たちも含めて、頼るところというのは法曹界の人、何かあったときは法曹界の人、こういうことになるわけでありますので、そういう人間性や社会性というのをどこで、今回の改革でどの段階で身につけていくつもりであって、どういう考え方をなさっているか、法務大臣からひとつお伺いをさせていただきたいと思います。
森山国務大臣 おっしゃるとおり、これからの司法を担っていく法曹に必要な資質というのは、もちろん専門的な法律知識も必要でございますが、それ以外の幅広い教養も備えて、豊かな人間性を持たれた、社会や人間関係に対する洞察力などがすぐれていらっしゃるという方が必要でございます。
 ですから、先ほど来お話が出ておりますように、法律の専門家、法律の学校を卒業した人ばかりではなく、むしろそのほかの専門を持っている人もたくさん入っていただいて幅広くということも、そういう考え方に基づいている一つの方法だと思いますが、これからの新しい法曹養成制度の中では、法科大学院の中の勉強、これはもう専門職になるための専門知識の勉強が中心ではありましょうけれども、それも試験に受かるための技術ではなくて、もっと幅の広い、人格の養成ということにもつながる内容であってほしいと思います。
 法科大学院における法曹倫理に関する授業というようなことも考えておりますし、法律相談等の実務社会との接触を内容とする教育ということも重要だと思います。さらに、司法修習における実務修習もその後続いてあるわけでございますので、そのような過程を通じまして御指摘のような社会性や人間性が養われるということを期待しております。
左藤委員 今大臣から御答弁ありましたが、本当に大学院の中でも、実務とかいろいろやってみて覚えるんだろうと思います。司法試験に受かってそれぞれの道を考えられるわけですが、弁護士とか検察官の方というのは、依頼人とか被疑者とか、また、いそ弁をやって先輩から指導を受けたり先輩検事から指導を受けたりというような経験をするわけですね。
 ところが、仕事上の性格もあるんですが、どうしても裁判官の方は、余り接触し過ぎるとおかしい話もございますし、やはり弁護士とか検事から上がってきた話を聞いてどうだこうだというジャッジをするわけなので、どうしても、先ほど申し上げた社会性というのが非常に実社会と離れていくんじゃないかな、こういう不安を我々は非常に持っているわけなんです。それは、余り裁判官が気さくで、一杯飲み屋でいつも飲んでいたとかいうのも困るわけであるので、その辺非常に難しい問題はあるんですけれども、裁判官の方も、実社会に触れて、そういう人間関係の、人間の機微というものを知ったり社会の実態を知ったりということを、実際は難しいけれどもしなきゃならない、必要じゃないかなと私は思うわけです。
 そこで、どういうふうに裁判官にそういう経験をさせるのか、こういう工夫をちょっと最後に質問させていただきたいな、こう思います。これは、法務大臣の意見もあろうかと思いますが、司法制度改革推進本部の方にひとつ御意見を賜りたいと思います。
山崎政府参考人 司法の役割が大変重要性を増している最近でございますけれども、この中で法曹の役割、とりわけ裁判官の役割が一層重要性を増しているということだろうと思います。
 こういう中にありまして、ただいま委員御指摘のように、多様で豊かな知識あるいは経験等を備えた裁判官を確保するということは極めて重要になってまいります。
 こういうような認識のもとに、司法制度改革審議会意見におきましても、「原則としてすべての判事補に裁判官の職務以外の多様な法律専門家としての経験を積ませることを制度的に担保する仕組みを整備すべきである。」とされております。これを受けまして、当本部におきましても、司法制度改革推進計画に従いまして、こうした仕組みの整備の取り組みをしていきたいというふうに思っておりまして、私どものいずれ御審議をいただくテーマであるということでございます。
左藤委員 ありがとうございます。くどいようですが、やはり一般市民、国民から見ると、裁判官が、神様と言ったらおかしいですけれども、それが最高のジャッジをしていただけるということになりますので、ぜひひとつ、実社会をよくわかっている裁判官を養成していただきたい。また、我々もサラリーマンのとき、手形を持ってうろうろしたそういう覚えがあります。そういう苦しみもわかっていただける裁判官を養成していただきたいな、このように思いまして、改めてお願いを申し上げて、質問を終わらさせていただきます。どうもありがとうございました。
山本委員長 次に、杉浦正健君。
杉浦委員 憲法調査会の採決があったものですから御無礼したんですが、引き続いて質問させていただきます。
 設計上の問題として教育内容及び方法がございますが、これは、私ども自民党が検討したものと審議会の内容、それから法科大学院設置基準等、ほぼ同内容でございます。
 中教審のところでは、教育内容としては、「法曹として備えるべき資質・能力を育成するために、法理論教育を中心としつつ実務教育の導入部分をも併せて実施する」「実務との架橋を強く意識した教育を行う」とありまして、「教育方法については、少人数教育を基本として、事例研究、討論、調査、現場実習その他の適切な方法により授業を行う」「双方向的・多方向的で密度の濃いものとする」こうなっておりまして、私ども自民党の議論したものともほぼ軌を一にいたしております。ですから、これは答弁求めません。一致しておると思います。
 そうなりますと、少人数教育。専任教員も、一人当たり学生十五人以下になることになっております。密度の濃い少人数教育となりますと、学費が高くなると思うんですね。
 いろいろな方からお話をお伺いします。年額二百万円ぐらいだろうという方もありますし、いや三百万円はかかるよ、いやもっとかかるという方もいらっしゃいます。それは、大学院の大きさ、教授にどういう人を迎えるか、弁護士で稼いでいる人を迎えるためには何千万という給与を払っても来てくれるかどうか。裁判官だって一千万円は超えているでしょう。専任の実務教官を置くだけでかなり費用がかかる等々を考えると、相当の学費がかかることになります。そのような学費を負担できる人しか来れないということになってはだめなことは明白であります。お金持ちしか行けない。しかも標準三年間ですね、二年短縮もありますけれども。膨大な学費がかかる。
 私ども自民党の中でも、審議会でも、奨学金その他の措置、それから大学の助成、国費による助成等、さまざま考えなきゃならないということを言っておるわけなんですが、文部省にお伺いします。標準的な法科大学院で学費は年額どれぐらいになるのか、それに対して、公費による助成、奨学金その他、どういうものを考えておられるのか、簡潔にお答え願いたいと思います。
工藤政府参考人 まだ各大学とも検討中でございますので、どれぐらいの授業料設定になるかというのはそれぞれの設置者の御判断によるわけでございますが、司法制度改革推進本部の方で御調査いただいた昨年の暮れ段階での公私立の動向によりますと、年額の授業料、まだペンディングとしながらも、御検討中のものは、百万円以下のものもあれば三百万近くのものもあるということでございます。いずれにしても、しっかりした教育を行おうとすればするほどコストがかかるのは予想されるところでございます。
 それにしましても、先生御指摘のように、経済的に困難な方々が学費が高いために進学できないということはあってはならないことでございまして、そのための支援策は十分講じなきゃいけないと思ってございます。
 私どもの所管でございます日本育英会の奨学金のほかに、地方自治体あるいは公益法人や大学などでの奨学金もございますし、あるいは政府系金融機関等によりますローン制度もございます。それらも含め、関係方面とさらに御相談していかなきゃいけないと思いますが、少なくとも日本育英会の奨学金につきましては、有利子、無利子の貸与制度があるのでございますが、現行では修士課程で年額にしますと約二百六十万円お貸しできるのがアッパーリミットでございます。たくさんお貸しいたしますと返済いただくときの負担がかかるわけでございますが、少なくとも御希望によって、このアッパーリミットでいいのかどうかというのは問題意識として持ってございまして、平成十六年の法科大学院の発足にあわせまして、私ども、さらにその充実を図る必要があると考えているところでございます。
杉浦委員 学費とも関連しますが、制度設計の基本的な問題としては修業年限の問題がございます。
 原則三年間、二年短縮もある、学生に選択させるというわけのわからないことも書いてございます。法学既修者は一年短縮可で二年、非法学、経済とかそういう方々は、法学をやるから三年と、制度設計としてよくわからない。むしろ、法学を勉強してきた人たちに法学以外のことをみっちり勉強させる必要があるんじゃないかと思うわけであります。
 なぜ三年なら三年、二年なら二年としてやらないのか。長期化するほど学費が高くなります。仮に三百万としますと、三年で九百万。奨学金というのは返済義務を伴うものであります。短い方がいい。修士課程は通常二年間ですから、私は、二年間にしたらどうか、こう思うわけでございます。
 そして、二年間の入学を、四年生のときからもう入る。学校教育法上、三年卒業というのが新しく設けられて、まだ卒業生は出ていないわけですが、飛び入学というのがある。これは実績があるようです。飛び入学とか三年卒業を制度化して、事実上もう三年生で学校を卒業しろ、そして四年生から入れというふうに制度化すべきじゃないか、やるんなら。
 そうしますと、新しいロースクールの卒業生は、標準的なものでは今の大学卒業から比べると一年多いだけ、つまり一年埋め込まれますから、こういうことになります。司法研修所はこの法律で、今一年半ですが、一年に短縮するということですから、それを加えますと、今の大学卒業後二年で、順調にいけば、司法試験も通って、研修所も終わって、法曹の世界に旅立てるということになります。
 今は、標準ですと大学四年プラス研修所一年半ですから、卒業後一年半で実務に入れるという計算になるわけです。半年ですか、それにしても延びるわけでありますが、もし飛び入学、三年卒業をやらないということになりますと、一年延びます。二年にして一年延びる。標準三年とすれば二年延びる。ですから、標準三年ということにいたしますと、大学を出て、三年間ロースクールへ行って、司法試験を通って研修所一年、四年ということになります。
 今は一年半ですね。二年半もの長い間、高い学費を払って勉強することに意味があれば、いいロースクールができて、評判がよくて、高い学費を払っても皆さん続々入りたがる、そういうすばらしいロースクールができるというベストシナリオを期待しておりますが、そうなったとしても、これだけ長い修学期限はいかがなものかというふうに思うわけでございます。学費が高いということからすればなおさらのことでございます。
 司法修習生の給費も、後ほど最高裁に伺いますが、検討することになっておる。今は給料をもらっております。私のころは四万三千円、今は二十何万もらっているようですが、これを奨学金に切りかえるということも一法でしょう。任官した人については返済免除、弁護士になった人からは返してもらう。これは一法だと思いますが、いろいろ考えられる余地があると思います。
 高い学費と関連して、長い修学年限というのは可能な限り短縮すべきだと私は思っております。
 工藤局長と何回話しても、大学の自主性に任せるというふにゃふにゃした返事で、これは変なことをやっていると来ませんよ。だから、設置基準を明確にして、学生は原則として三年で卒業するか、飛び入学で必要な法律の勉強もした上でロースクールへ入ってくるべきだという原則を立てるべきだ、こう思いますが、文部科学省の御意見はいかがでしょうか。
工藤政府参考人 法科大学院の制度設計に当たりましては、アメリカのロースクールも参考にしながら、大変熱心な御議論の末、標準三年の修業年限のコースとして設定を予定しているものでございます。ただ、法曹資格取得までの期間の短縮を図るために、法科大学院で予定している教育のうち一部を、法学部卒業者あるいはそれ以外も含めて、そういう知識と能力を有する方々については一年以内の短縮を認めるような制度設計にしているわけでございます。
 そういう中で、法科大学院に入学するに当たって、もっと飛び入学あるいは早期卒業をということでございます。これにつきましては、現に高校から大学段階への飛び入学というのを昨年の法改正で制度化してございます。それから、学部段階から大学院に入学するに当たっての学部三年卒業あるいは飛び入学という制度もあるわけでございますが、これは考え方でございますけれども、確かに、早くどんどん法科大学院を修了するということも一つでございますが、できるだけ多様な能力、資質を持つ多様な法曹養成ということからしますと、それぞれ学生の選択もございますし、大学の教育方針もあるわけでございます。
 ただ、確かにこういう特急コースといいましょうか、早く入学し早く修了する制度はございますので、その活用あるいはその趣旨につきましては、法案が成立後、関係方面に改めて周知しながら、その活用を図ってまいりたいと思っております。
杉浦委員 どうも制度化までは考えていないようなのですが、ぜひ検討してほしい、すべきだ、こう思います。
 今、あなたもおっしゃったけれども、法学以外のものを学んだ方、経済とか医学だとか技術だとかあるいは社会の経験のある方、広く人材を各界から求めるというところが大事だというのも、私どもの議論の中で一貫しておったことでございました。法学部を出た者は二年、それ以外の者は三年なんということにいたしますと、学費はかかる、三年も勉強しなきゃいかぬ。非法学の人が来ると思っているんですか。しっかり考えてほしい。
 それから、法学卒業生、今の法曹になってくる若い人たちを見ておって、これは最高裁も検察庁も弁護士会もみんな共通に感じていることですけれども、非常識な者が多いといいますか、法学ばかといいますか、非常に視野狭窄的な人たちが多い。入ってきたとき左藤先生がおっしゃっていましたが、健全な円満な、社会のことにもよく理解があり、社会人から見て本当に尊敬するに足る、幅広い教養を持った裁判官、検事、弁護士という観点から見ると、偏った方が非常に多いわけであります。むしろ、法学をやってきた人たちは、もっと広く、経済、歴史、社会、いろいろと勉強してもらい、実地の研修もしてもらって、二年でなくて三年にするのなら一年間みっちり広く勉強してもらうことが大事だと思うのです。そう思うのです。
 この点はこれ以上聞いても、工藤さんの返事はいつもふにゃふにゃあのとおりだから、答弁を求めませんけれども、ぜひ検討すべきことだと思います。
 それで、密接な関連を持ってくるのが教員の問題でございます。
 冒頭、私は、司法研修所が世間からも評価が高いし法曹教育の中で重要な役割を果たしていると申しましたのは、教えている方が実務家であります。裁判官にしても検事にしても弁護士にしても、十年以上経験を持った優秀な方をそれぞれ選んでおります。人格識見ともに優秀な人をそれぞれ選んでいる。そういう人が教育に当たっているということが評価の高いゆえんだ、中身がいいゆえんだと思います。ロースクールもまさにそうだと思います。今設計されている制度設計では、この点が極めてあいまいで、到底、私どもが目指しているロースクールのいい教育の成果を上げられるとは思えないということを指摘申し上げたいと思います。
 私の資料に、中教審のところで「教員組織等」とありまして、「専任教員のうち相当数を実務家教員とする。(相当数は概ね二割程度以上。)」こうなっております。十二名というのが最低限必要な専任教員数でありますから、二割というのは二・四人、二・四ということは三ですか、あとは実務家教員でなくていいということになっております。ということになりますと、法学部教育をだめにした今の大学の先生方が教えるということになるんでしょう。
 野崎先生がおっしゃっているように、先生方が意識を変え、態度を変えて真剣に取り組んでいただくことが基本的に必要なんですが、絶対的に欠けているのはその方々の実務経験です。ほとんど実務経験のある方はいらっしゃらない。中にはありますよ、弁護士から教授になった方もいらっしゃいますが、おおむね、ほとんど実務経験のない方々ですよ。そういう方々が中心になって本当にロースクールの成果が上がるのかと言いたいわけであります。
 いろいろとここのところを強調してまいりまして、非常勤教員を採れ、裁判官、検事、弁護士から優秀な人に週一回とか半日でもいいから来ていただいて教鞭をとってもらうということもやるべしということで、それも考えておられるようでありますが、やはり問題は専任教員です。パートタイムの先生だけでなくて、やはり専任に教える先生がどうかということが問題であります。
 アメリカのロースクールの場合は、もう育ちも違いますが、実務経験のない人はいないと言っていいと思います。実務との架橋を図る教育において、実務を知らない人が、先生方は知っているとおっしゃると思いますよ、だが、体験しない、経験しない人ができるとは思わないわけです。
 実務界からそういう人を送り込むとすれば、相当高額の所得が要ります。私、弁護士会におった際に、一弁の場合、三人教員を送り込んでおるのですが、受けてくれなくて苦労しました。みんな、物すごい所得がある。三年間ほとんど棒に振るわけです。それでも、研修所の教育であれば教育しなきゃいかぬという使命感でみんなやってくれました。今度は七十、八十、百ぐらいできるという話じゃないですか。じゃ、そういう高給を取った弁護士で専任に、七十人、八十人という人がいるんですか。裁判官、検事もどうですか。なおさら、この「概ね二割程度」ですよ。一校一人としても、私、本当にそら恐ろしい感じがする。
 これは制度設計上、文科省専管だから、協力でいいんですから、どれくらい長続きするか。むしろ弁護士会なら弁護士会が責任を持った体制にして、二弁がやっているようですが、じゃ、二弁なら二弁が責任を持ってどこかの大学と提携してロースクールをつくりますということになれば必死になってリクルートするでしょう、弁護士会の中から。協力体制でできるかどうか甚だ疑問に思っております。
 最高裁、検察庁、日弁連に対して、腰を据えて、立派な実務家教員を送り込むように、三者協議があるみたいだけれども、それから、文科省の方も協力して受け入れるようにしてほしいと思います。
 と同時に、これは答弁を求めたいけれども、十年後見直しとなっていますが、十年以内に、今の大学の先生方に、必ず研修所へ一年行って実務経験三年しなさい、裁判官でも検察官でも弁護士でも、それを義務づける。今すぐ全員というのは無理だから、十年たったら、司法研修所並びに実務経験三年なら三年以上ない者は教壇に立てないぐらいの方向を持って臨んでいただかないと、今の大学教育の、法学教育の轍を踏みますよ。文部省の決意のほどをお伺いしたい。
工藤政府参考人 おっしゃいますように、教授スタッフに実務経験者あるいは実務家の方々の御参画というのは必要不可欠なことでございます。
 それで、法務省、最高裁、弁護士会、それと大学関係者でそのための方策について連絡協議の場を設けているところでございますし、この二割以上という最低限の基準はまさに最低限でございまして、司法制度改革の骨格である法科大学院、いつまでも待っておれない、平成十六年四月に立ち上げるに当たって、少なくとも二割以上からスタートしようじゃないかということでございます。
 それとともに、大学の先生がそのまま当然に教鞭をとるということではございませんで、大学のこれまでアカデミックな場にばかりおられた方々についても実務研修を受けることを設置基準の上でも求め、その場として司法研修所で受け入れられるかどうかというのはありますが、その場としてはどういうことがあるか、関係者でのまた協議も必要でございますけれども、ぜひ、実務家の方、大学の教員を含めて、まさにこの法科大学院の目的に沿うような形での教授スタッフが、体制が整いますように、関係方面とも協議しながら万全の体制を組んでまいりたいと思っております。
杉浦委員 工藤さん、研修じゃだめなんです。裁判官として、この人を死刑にするのか無期懲役にするのか、ぎりぎりのところで苦悩しないとだめなんですよ。弁護士として、一人の人権を守って泥まみれになって努力することが大事なんですよ。研修じゃだめだということは言いたいと思います。
 法務省、最高裁に対して。
 二割として七、八十人から百人ぐらい。文科省は最低二割だと言っていた。三割、四割、実務家教員を送るためには、百人を超える第一線の地裁の裁判長クラス、あるいは右陪席か、それぐらいの人を送り出す。あるいは検事も新人じゃだめですよ。決意があるかどうか、両方にお伺いしたいと思います。相当の人数を出さなきゃいけない。
山崎最高裁判所長官代理者 裁判官の派遣の人数の点でございますけれども、設置されます法科大学院の数だとか実務家教員に求められる具体的な教育内容あるいは派遣の条件等、いまだはっきりしていないところがございますものですから、現段階で具体的なことを申し上げることは難しいと思います。
 ただ、私どもとしましては、経験、能力等に照らしまして、実務家教員にふさわしい裁判官を確保できるように努力していきたいというぐあいに考えております。
寺田政府参考人 先ほども申し上げましたように、この制度が生きるかどうか、大いに成功するかどうかのかぎは、教員にどのような者が確保されるかということにかかっております。
 ただいま最高裁の方からもお話がございましたように、具体的な数につきましては、検察庁、法務省においても全く事情は同様ではございますが、私どもとしては、これだけ長い間多くの方々によって議論され、これからの社会を担わなきゃならない法曹の養成について大変な御努力をいただいたわけでございますから、その御努力に見合うだけのことはぜひ達成したいという覚悟でやらせていただきたいと思います。
杉浦委員 最後に、野崎先生も述べておられます。「時代は、新しい法学教育を求めている。しかし、それが成功するかどうかは、実は、教授が教育者に徹するかどうか」だ。教授の資格、内容、資質を含めて言っておられます。そのとおりだと思うのです。
 今の状況でどれだけできるかわからないと最高裁山崎さんおっしゃったけれども、七十、八十の大学が手を挙げているわけだ。一校に一人出したって七、八十人かかりますよ。工藤さんが言うように最低二割だったら、裁判官二人出してください。その倍かかると百五十人。今出せますか。あなたは前向きに努力すると言った。約束どおりやってください。
 私が心配しておりますのは、ベストシナリオにはなかなか紆余曲折があるだろう、皆さん御努力いただかなきゃいかぬが、最悪を心配しております。新しい司法試験、中身はこれから法務省が検討する。それと予備試験もある。それからロースクールの入学試験がありますね。何らかの試験をやるでしょう。
 そうすると、今までの経過からすると、予備校が業務が多角化して繁盛するんじゃないか。ロースクールの予備校だ、予備試験の予備校だ、司法試験だ。ロースクールが本当にいいものができれば、高いお金をかけて予備校へ行かなくても済むけれども、できが悪ければ必然的にそうなります。司法試験をやって、その合格者から法曹を採るわけですから、必ずそうなります。予備校の人たちは内心喜んでいますよ。ある方から聞いたことがある。
 このロースクールを通って司法試験に行くほかに、予備試験を設けて、ロースクールへ行かなくても司法試験に挑戦できる道を残すことは、私ども政治の世界で強く主張して実現したことであります。
 つまり、どういうものができるかわからない。できていない。関係者が努力すると言っているけれども、結果を見るまではわからないですよ。また、バイパスを設けることによって、できの悪いロースクールがたくさんできれば、そういうのは淘汰される。そんなところへ行ったってしようがない、高いお金をかけて、長い年月をかけて。予備試験に通ってすっと本試験に行った方がよほどいいということになりますから、そのロースクールを淘汰する方法にもなります。だから、これは絶対確保しなければいけないと思います。
 ただ、試験のあり方については、これは法務省の問題ですから、これから我々は十分に検討させてもらいます。今までの法曹養成の中で、司法試験のあり方が大きな問題でした。中身、方法、この点については十分に今後改善するように努力してほしいし、我々もウオッチしてまいります。
 いろいろと申し上げたいことはありますけれども、時間が参りましたので、最後に法務大臣から。
 いろいろお聞きになっておられましたが、また、私が一人で言っていますけれども、個々に話すと、皆さん心配しておられるのですよ。最高裁でも、検察庁でも、弁護士会の幹部の方でも、本当にどういうものができるのだろうかと。実績があるのは司法研修所だけですよ。あとはない。法学はだらしない。先生方も、この野崎先生の御指摘になるとおりの方々ですよ、現実は。中には一生懸命になっている方がいらっしゃることを知っています。ただ、大勢としては、本当にどうなのかなと心配されることばかりであります。
 法務大臣が、このロースクールを成功させるために、法曹三者のかなめになって前進させるという決意の御表明をお伺いして、終わりたいと思います。
森山国務大臣 このロースクールは、司法制度改革の中心であり、また非常に重要なスタートでございます。これにつきましては、まだこれからつくるものでございますので、いろいろ心配な点、懸念される点もございますが、先生が御指摘くださいました点も含めまして、十分みんなの知恵を集めて、ぜひともいいものにつくっていきたいというふうに考えておりますので、今後とも御支援くださいませ。ありがとうございました。
杉浦委員 ありがとうございました。
山本委員長 次に、漆原良夫君。
漆原委員 公明党の漆原でございます。
 通告と順序が逆になりますが、まず財政支援策についてお伺いしたいと思います。
 まず、冒頭に法務大臣にお伺いしたいんですが、先日私は、この法科大学院を進める立場の者として大変つらい思いをしたわけでございます。新潟のある女子大学生でございますが、私と話をしておりましたが、法科大学院に私は行きません、予備校に通います、予備試験を受けます、こう言うわけですね。どうしてと聞くと、二百万かかるか三百万かかるかわからない法科大学院に行くお金が私にはないんですという話でした。お金がない、三年間でも六百万から八百万かかる、そんなお金、自分のうちにはありません、私は予備校で予備試験を受けて頑張りたいと思うというふうに言っていましたので、いや奨学金制度もあるので、予備校に行かなくてもロースクールでしっかり勉強できますよというふうに励ましたりはしたんですが、大変つらい思いをしました。
 今回、法科大学院が新たな法曹養成制度の中核という、ある意味では国家的な大改革の陰に、経済的事情のために司法試験受験の制約を受けている、こういう方が存在することを私どもは忘れてはならないというふうに思っております。現在の法曹の中でも、苦学の末に司法試験に合格して、そして、人権感覚の豊かな人情味あふれる法律家はたくさんいらっしゃるわけでございまして、この法律が法科大学院を国家的な司法制度改革の柱、中核と位置づけた以上、彼女のように経済的理由で法科大学院に進学できないということは、これは国の責任としてあってはならぬことだなというふうに思っております。
 法科大学院は、お金持ちの特権階級のためにあるものじゃない、資力の有無にかかわらず、志のある者はだれでも進学ができるんだという開かれた大学院でなきゃならぬと思いますし、また、私どもは、そういうふうな制度設計をこの法律の審議の中でしていかなきゃならぬというふうに思いますが、このことに関する大臣の御所見を求めたいと思います。
森山国務大臣 おっしゃるとおり、法科大学院がお金持ちだけのものになってはとんでもないことでございまして、志のある、能力のある人たちにすべて開かれたものでありたいというふうに考えております。
 そして、その法科大学院というものが、よく立派なものにできるかどうか、そして多くの人材を集めることができるかどうかということが、これから後に続く司法制度改革の成否を決定するということになるわけでございますから、これは大変重要な問題点だと思います。資力が十分でないという者が、そのための理由で入学できないというようなことがあってはとんでもないというふうに私も思いますので、先ほど来もちょっとお話が出ておりましたが、奨学金の整備とか活用など、国として必要な財政的な措置を講じていかなければならないと考えております。
漆原委員 文科省にお伺いしたいんですが、法科大学院の年間の授業料は、大体どのぐらいになるのか、どのぐらいとして試算されているのか、また、奨学金の申し込みは大体どのくらいの金額になるとシミュレーションされているのか、その辺のことをお答えいただきたいと思います。
清水政府参考人 お答え申し上げます。
 授業料、学生納付金についてのお尋ねでございますが、授業料自体は、原則的に申し上げますと、設置者が独自の立場からさまざまな状況を勘案しながら独自に定めているということでございまして、法科大学院もこれと同様の形になるだろうというふうに思っております。
 実は、授業料設定につきましては、文部科学省として試算はいたしておりません。ただ、平成十三年十二月の司法制度改革推進本部のアンケート調査によりますと、四十七大学のうち百万円以下の授業料を検討中が五大学、百万から二百万円の間が二十六大学、二百万円を超える授業料を検討中の大学が十六大学というふうに分かれております。
 もちろん、この授業料をお考えになった背景には、恐らく独立採算的な授業料設定ということを前提とされてのものであろうというふうに思っております。各大学は、今後、例えば都市部、地域部、あるいは学生獲得戦略等々も勘案しながら決定されることになっていくというふうに思っておりまして、実は、それぞれの構想をお持ちの大学の構想の内容にもよりますので、把握することは困難であります。
 ただ、先生のお話にございましたように、例えば、これまでの修士課程の平均授業料プラス学費の平均でいえば、七十五万というふうなのが平均でございますけれども、これよりは高くなるということは御指摘のようにあるだろうというふうに思っています。
 それで、問題はその場合の奨学金のシミュレーションということでございました。私どもといたしまして、実はそういうふうなことでもございますので、奨学金の基本的な制度設計にまだ具体的に立ち至るところまでは至っていないわけではございますけれども、基本的には、先ほど森山大臣からの御答弁がございましたように、いわば法科大学院を希望する学生が、これは社会人の方も含むわけでありますけれども、経済的理由のみをもってその機会を奪われるというようなことはあってはならない、基本的なそういうものを踏まえながら奨学金の制度設計というものを当然考えていかなければならない、こんなふうに思っている状況でございます。
漆原委員 経済的理由のみを理由にして法科大学院の道を、入ることをふさがれるものではないという大臣のお答え、それから今の文科省のお答え、大変私は満足をしております。
 今回の法案の第三条第五項は、国の責務として、政府は、法曹養成の基本理念にのっとり、法曹養成のための施策を実施するため必要な財政上の措置を講じなければならない、こう明記をしておるわけでございますが、法科大学院の学生が希望する場合には、その入学金、授業料を全部奨学金で賄えるというふうにきちっとはっきりおっしゃったらいかがでしょうか。
清水政府参考人 これから奨学金の新しい形、ちょうど育英会の法人化に向けての学生支援の総合的なあり方について今検討中という状況でもございます。授業料等学生納付金について、まだまだこれから制度設計という中で、今検討中ということではございますけれども、基本的には先ほど申し上げましたように、進学の機会が奪われないよう、入学金の問題もかねがね御指摘いただいておりますように、ある意味で学生が入学するときに大きな負担になるという現実もございます。そういうことも勘案しながら、貸与月額の増額、その他さまざまな充実策についてこれから検討させていただきたい、こういうふうに思っております。
漆原委員 しつこいようですが、要するに、今私の目の前に将来が心配で大学院に行こうかどうか悩んでいる人がいらっしゃる。これはもう審議官が私の立場になっても同じつらい思いをされるわけなんですが、今は明確な法体系になっていないけれども大丈夫ですよ、経済的な理由だけで大学院に行く道はなくなりませんよ、必ず資力がないあなたであっても大学院に行けるようにしますよ、公的支援をしますよというふうにはっきり言っていただきたい。それは、いろいろな今後の策はこれから考えるとしても、そういうふうな資力の有無によって進学の機会を奪わないというふうにおっしゃったわけだから、それならば、安心してくださいよ、必ず公的支援をするからというふうに明確にお答えできないものでしょうか。
清水政府参考人 お答え申し上げましたように、奨学金、それは育英会のみならずさまざまな形の奨学金、あるいはローンということも含めまして、先生御指摘のように、基本的に、そういうまさに経済的理由によって機会を閉ざされることがないというようなその方向に向けて全力を挙げていきたい、こういうふうに思っております。
漆原委員 だから、そういうふうなことを言うと何かわからなくなってくるんだよね。せっかく、経済的理由によってその道は閉ざされないというふうに大臣もおっしゃった、あなたもおっしゃったんだから。もうちょっと強く言うと、そういう方向でもいいという話になる。これじゃ全然、受験生あるいはその親御さんは安心できないですね。
 もう十六年から始まるわけですよ、もう来年一年しかないわけです。だから私はあなたに答弁を求めているのは、制度設計はこれからいろいろなことを考えて複合的にいろいろな制度を使うけれども、お金の問題は心配要らないよというふうな制度設計を必ずするということを明言してもらいたい。それが今受験生あるいは受験生を持つお父さんお母さんが一番悩んでいることなんだから、そこのところを明確にしてあげることが、法律をつくるあなた方、私どもの仕事じゃないのかな、私はこう思うんですね。そういうふうにするんだということをきっちりとやはり受験生あるいはお父さんお母さんに言ってあげないと、せっかくつくる法科大学院が何か行きにくいものになっちゃう。
 そういう意味で、私はこの公的財政支援というのが一番大きな問題だと思うし、受験生にとってみれば、あと一年後に差し迫った法科大学院に行こうかどうかというときに一番大きなハードルになっているわけだから、そこのところをはっきりと明言してもらいたい。もう一度。
清水政府参考人 全力を尽くさせていただきます。(漆原委員「何、もう一度、頑張って」と呼ぶ)全力を尽くさせていただきます。
漆原委員 全力を尽くしてもらいたい。全力を尽くすということで、今は承知をいたしておきます。
 今、法務大臣あるいは文科省からお答えがあったけれども、財務省はこの点についてどんなお考えか、お聞きしたいと思います。
田中大臣政務官 漆原委員の御質問にお答えをいたしたいと思います。
 法科大学院については、現在、まさに法治国家日本の将来を見据えて、その制度設計についての審議がされております。我が国のこれからの法曹界を担う人材育成についての支援は、当然、極めて重要な課題だと思っております。
 今後、具体化される法科大学院の実情を踏まえつつ、関係機関とも十分に相談をしながら検討を進めてまいりたいと存じます。
 具体的な検討に当たっては、弁護士として豊かな経験をお持ちの漆原先生から、貧しきゆえに学ぶことができないというようなことがあってはならないという大変強い御指摘がございました。私の方も、司法制度改革審議会の意見書で取り上げられております先生の御指摘を十分踏まえて、現下の厳しい財政事情ではございますけれども、一生懸命施策推進に向けて取り組んでまいりたいと思います。
 必要な予算措置を講じてまいりたいと思いますので、大切なことについては十分心して取り組んでまいりますので、そのことをお答え申し上げて、私の答弁とさせていただきたいと思います。
 以上でございます。
漆原委員 本当にしっかり頑張っていただきたい。今、田中財務大臣政務官の強いお答えをいただいて、私も安心しております。
 要するに、文科省あるいは法務省が何かやろうとしても、最後はやはり財務省との折衝になって、そこで、金もらえない、予算がつかない、結局だめになっちゃう。そういう意味では、このロースクール構想のかぎを握っているのはまさに財務省でありますから、本当に経済的理由で行けない弱い人の立場に立って、だれでも行けるロースクールをつくるためにはあなたのお力が一番大事なわけだから、ぜひとも頑張ってもらいたい。エールを送ってお礼を申し上げます。ありがとうございました。
 それでは、次の質問に移らせていただきます。
 予備試験でございますが、この法案では、予備試験については受験資格を設けないことになっております。しかし、審議会の意見書の中では、「経済的事情や既に実社会で十分な経験を積んでいるなどの理由により法科大学院を経由しない者にも、法曹資格取得のための適切な途を確保すべきである」と指摘して、「例えば、幅広い法分野について基礎的な知識・理解を問うような予備的な試験に合格すれば新司法試験の受験資格を認めるなどの方策を講じることが考えられる」というふうに指摘されておりますが、この意見書では、予備試験の受験者には一定の資格を求めていると私は思っております。
 今回、なぜ予備試験の受験者に受験資格を設けなかったのか、その理由をお尋ねしたいと思います。
山崎政府参考人 ただいま委員御指摘のとおり、改革審議会の意見では受験資格という形で取り上げられたということはそのとおりだろうと思います。
 今回の法案に関しましては、この予備試験に関しまして、法科大学院を経由しない者の中からもすぐれた人材を選抜して法曹資格を付与する、こういう道を開くということから、受験資格は設けておりません。
 これは、法科大学院を経由しない事情につきましては受験者によってさまざまでございます。予備試験の例えば経済的事由ということを一つとってみても、本当に経済的な事由で法科大学院に行かれなかったのかどうかを、どのような資料に基づいて、だれが、どう判断をするか。あるいは、それ以外の受験資格、これも考えざるを得ないということになりますと、非常に多岐にわたりまして、とても一定のものを全部掲げ上げてやることが難しいという状況でございました。
 仮に、これが、どこかが審査をするということになりますと、受験資格なしと言われた方は、それは処分に当たりますので、これに対してまた裁判を起こすというような構図にもつながっていくということがございました。そういうことから、予備試験の受験資格を一定の事由のみに限定するということは非常に困難でありまして、また、場合によっては相当でないと考えられるというようなこともございました。
 また、現行の司法試験、これは第一次試験でございますけれども、これにつきましては受験資格が定められておりませんで、だれでも受験をすることができるという制度になっている、こういうようなこともいろいろ考慮いたしまして、現在御提案させていただくような案になったということでございます。
漆原委員 法科大学院を中核とした新しい法曹養成制度、これは法科大学院ルートが原則であって予備試験ルートは例外である、私はこう考えておりますが、この私の認識に誤りがあるかどうか、お尋ねしたい。
 そしてまた、もう一つ、法科大学院ルートと予備試験ルートはおのおの対等だ、自由に競わせればいいじゃないかというふうな考え方もあるようでありますが、それに対してはどのように考えておるのか、お答えをいただきたいと思います。
山崎政府参考人 ただいま御指摘の点につきましては、この法案として提出をさせていただく前提としまして、かなり議論が長時間にわたり多岐な観点から行われてきたわけでございます。この中には多々意見がございまして、かなり意見が割れるところであるというように我々も認識しているところでございます。
 現在、今指摘されました点につきましては、私どもの基本的な考え方は、新たな法曹養成制度におきまして、法科大学院を中核的な教育機関と位置づけることが求められてきているところでございまして、予備試験につきましては、法科大学院の修了者と同等の学識及びその応用能力並びに法律に関する実務の基礎的素養を有するかどうかを判定することを目的とする試験という位置づけをしておりまして、法科大学院を中核的な教育機関とする新たな法曹養成制度の趣旨に沿った制度設計という位置づけをしているわけでございます。
 いろいろな考え方はございますけれども、そういう考え方の趣旨を御理解いただきたいというふうに思います。
漆原委員 法科大学院は、原則として卒業するまで三年かかる。大学を卒業して新司法試験を受ける年齢は二十五歳から六歳になります。また、授業料も年間二百万、三年間だと六百万以上かかると言われております。こういう状態だと、だれも法科大学院に行かないで、みんな予備試験を受験するようになってしまうんじゃないかという心配をしております。そういうふうになってしまったのでは、結果として、司法制度改革審議会の意見書も懸念しているように、法科大学院を中核とする新たな法曹養成制度の趣旨を損ねるという結果になるんじゃないかなという心配があるんですが、どうなんでしょうか。この点はいかがでしょうか。
山崎政府参考人 ただいまの点につきましては、大変重要な御指摘かというふうに思います。
 法科大学院におきましては、少人数による密度の高い授業を行うということによりまして、将来の法曹としての実務に必要な学識あるいはその応用能力等、その基礎的な素養を涵養するための理論的かつ実践的な教育体系を実施するというふうにされているわけでございまして、そのような法科大学院における教育は、単に司法試験に合格するためのものだけではなくて、将来のことを考えれば、法曹となろうとする者にとって十分に魅力のある教育機関、こういうものになるというふうに考えているわけでございます。
 例えば、法科大学院におきましては、法曹倫理教育もきちっと行われますし、あるいは、必須科目以外の選択科目という枠が設けられておりますけれども、この中で、例えば知的財産権の科目を多くしてそれに強い者を育てるとか、あるいはビジネスロー、いろいろなジャンルがあるかと思いますけれども、そういうところの専門性の基礎をつけるということでございまして、これは、受かった後の躍進というんですか、伸び、これに大きく影響するわけでございます。
 そういうような教育もするということでございますので、やはり今後法曹となろうとする者にとっては大変魅力的なものであるというふうに考えておりますし、この法案を御承認いただいた後はそういうものにしなければならないという決意を持っているわけでございます。
 こういうことで、御理解をいただきたいと思います。
漆原委員 法科大学院としてはそういうふうに僕はあるべきだと思うんですが、受験生の心理としては、金はかからぬ方がいい、それから簡単な方がいい、こういうことですよね。
 そうすると、さっき言ったように、年数もかかる、それから金もかかる、こんなロースクールよりは予備試験を受けて行った方がいい。それこそ塾に通って一生懸命予備試験の勉強をして、それで新司法試験を受けた方がよっぽど年齢も早いし金もかからない、こうなってしまうんじゃないかなと思うんですが、予備試験では一体何を判定するのか。このハードルが低ければ、みんな予備試験へ行って、本来ロースクールが目的とした趣旨は達成されない。したがって、予備試験では一体何を判定するのか、その目的と、そしてその試験内容、受験科目を聞きたいと思います。
山崎政府参考人 先ほど来申し上げておりますけれども、予備試験の位置づけでございますけれども、法科大学院の修了者と同等の学識及び応用能力並びに法律に関する実務の基礎的素養を有するかどうかを判定する、これを目的とするものでございます。そういう関係から、法科大学院で基本的に教えられるもの、これをその受験の科目に取り込んでいるということになります。
 具体的に申し上げますと、まず基本的な科目でございますけれども、これは、憲法、行政法、民法、商法、民事訴訟法、刑法、刑事訴訟法です。これに加えまして、一般教養科目というものが加わるわけでございます。それから、法科大学院において実務の基礎的素養が涵養されるということを考慮いたしまして、法律実務基礎科目というものを設けているわけでございます。
 予備試験におきましては、法科大学院において教育が十分にされます、それと同等の論理的思考力あるいは口頭表現能力等を判定するために、筆記試験のほかに口述試験も設けるということになっているわけでございます。
漆原委員 予備試験は、ロースクール、法科大学院卒業者と同等の能力を有するかどうかを調べる試験なんだということになるわけですね。
 それで、増田副大臣に最後にお尋ねしたいんですが、今山崎さんがおっしゃったように、予備試験というのは、法科大学院を卒業した、修了したと同等の能力があるかどうかを試すんだということで、今、受験科目、試験内容を聞きましたが、今の段階、聞いただけでは非常にハードルが高いなというふうな気持ちがしております。しかし、そのくらいやらなければ、ロースクールを卒業したと同等の能力があると認められない、私もそう思います。
 しかしながら、この試験の内容を、悪く言えばレベルを下げることによって、ハードルを下げることによって、幾らでも予備試験ルートが拡大をしていく可能性はあるわけでございまして、もしもその運用の段階で試験内容のハードルがどんどん下げられていったとしたならば、やはり結局、予備試験が本来目的としたロースクールの趣旨を損ねる結果になると思うんですね。
 そういう意味では、運用の段階では十二分に、この試験内容が所期の目的、今回の目的のとおり厳しいハードルを維持するように私は運用していかなければならぬと思うんですが、この点について副大臣の御所見を求めます。
増田副大臣 漆原先生のお尋ねでありますが、私、個人的にも考え方は同じであります。
 予備試験は、法科大学院の修了者と同等の学識及びその応用能力並びに法律に関する実務の基礎的素養を有するかどうかを判定するものであり、今までの御答弁のとおりであります。
 法務省といたしましても、このような予備試験の趣旨を十分に踏まえました上に、法科大学院を中核とする新たな法曹養成制度の理念にのっとり、先生も御指摘、御発言のように、これが適切に運用されるよう配慮してまいりたいと考えております。
漆原委員 以上で終わります。ありがとうございました。
山本委員長 次に、斉藤鉄夫君。
斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫でございます。
 私は文部科学委員会の理事をしておりまして、文部科学委員会も、学校教育法の改正ということで今審議が進んでおります。
 今回の学校教育法の改正は、まず一つは、法科大学院に代表されるような専門職大学院という制度を新たにつくるということ、それから、第三者評価を大学やこの専門職大学院に対して行う、第三者評価という制度が取り入れられました。一学校教育法の改正というと、何か小さな法案のように思いますが、これは大改革でございます。大学の大改革につながる法案でございまして、今その議論をしているところでございますが、私は、そういう大学改革という観点からこの法科大学院について質問をさせていただきたいと思います。
 まず、この法科大学院は、学校教育法上の大学院の一形態として新たに新設される専門職大学院ということでございますけれども、非常にプリミティブな質問ですが、今まで法曹三者につきましては司法研修所というものがあったわけですが、その拡大充実ではなくて、全く新たに制度をつくって、専門職大学院、法科大学院というものをつくって、大学院教育の充実、大学教育機関の充実という方法をとったのはなぜかという点を最初に法務省にお聞きしたいと思います。
増田副大臣 国民生活のさまざまな場面におきまして、法曹に対する需要が一層増大をいたしております。ますます多様化、高度化していることから、高度の専門的能力及びすぐれた資質を有する多数の法曹を養成する必要があります。
 そのためには、新たな法曹養成制度における中核的な教育機関として法科大学院を創設し、かつ、これを全国的な規模で多数設置をすることにより、各法科大学院の創意工夫と、法科大学院の間における切磋琢磨とでも申しましょうか競争や、第三者評価制度等を通じてその教育の内容の充実を図ることが重要であると考えております。今回改正される学校教育法の規定による専門職大学院の一つとして、法科大学院を創設することとしたものであります。
斉藤(鉄)委員 よくわからないんですけれども、お医者さんになるには、医学部を出て、医師の国家試験を受けてお医者さんになる。この医学部は、学校教育法上に規定された大学で行う。
 それから、私、だれも知らない国家資格なんですが、技術士という資格がございます。これは、工学部ないし理学部を出て、文部科学省が所管する技術士試験を受けて、国家資格として技術士というものがあります。この技術士については全く無名でございまして、だれも尊敬してくれないんですけれども、理科系の、まあ取っても、ほかのお医者さんや弁護士さんと違って食べていけないという弱いところがありまして、余り知られていないところでございます。それはどうでもいいんですが、これも大学、そして国家試験、そして専門職というルートがあるわけです。
 なぜ今回この法曹三者だけ、これまでのルートとは違って専門職大学院というのをつくるのか。私、これからの時代、重要なんだということはよくわかるんですが、そういう素朴な疑問に対して、なるほどと、すっとわかるような、納得できるような説明をぜひお願いいたします。
山崎政府参考人 ただいま御指摘の点でございます。よく医学部と比較されるわけでございまして、従来からもいろいろ御議論がされてきたことは承知しております。
 私、この問題に関しては、二、三点理由があろうというふうに思っております。
 まず第一は、医学部は、医師の養成に特化した学部であるということになろうかと思います。一貫した六年教育をしているということになりますけれども、では法学部はどうかということでございますが、これは法曹養成のみを目的とするものではなくて、法的素養を持つ者を社会のさまざまな分野に送り出す、こういう目的を持っているということが少し違いがあるかなということでございます。
 それと二点目は、他方、法学部教育についてはいろいろ批判もございまして、実務と乖離しているというような御指摘もございまして、その中をすべて変えていくということが非常に難しいのではないか、従来の流れもございますので。そういう問題がございます。
 それから、これはかなり魅力的な話だろうと思いますが、これからの法曹につきましては、経済や理数系、法学部以外の方、こういう能力を持った方にも来ていただきたいということになるわけでございます。そうなりますと、従来の法学部の中にそういう機能を持たせるというのは非常に難しいわけでございますので、学部から超えたところに新たな教育機関をつくってそこに導入をする。こういうようなことから今回の法科大学院の構想が出てきたというふうに理解をしております。
斉藤(鉄)委員 今後、ぜひ実態でわかるような形、そういうものにしていただきたいと思います。
 ブリッジ法案の第二条に、法科大学院は法曹養成の中核的機関である、このように規定されております。一つの学校、ある種類の学校を取り上げて、何々の中核的機関であるというふうに法律で定められているものはほかにございません。そういう意味では、学校教育法上でも非常に特殊な部類に位置するわけですけれども、中核的機関であると規定されているこの意味はどういうことでございましょうか。
山崎政府参考人 新しい法曹養成制度でございますけれども、これは、社会情勢あるいは経済情勢の変化等に伴いまして、高度の専門的な能力あるいはすぐれた資質を有する多数の法曹が求められるということになるわけでございますが、こういう要請から、法科大学院における教育と司法試験それから司法修習との有機的連携をさせることによって法曹の養成を図るというものでございます。
 法科大学院の修了者に司法試験の受験資格が認められているということなど、法科大学院における教育が法曹養成において非常に重要な意義を有しているということから、この法科大学院を法曹養成の中核的な教育機関として位置づけているものでございます。
斉藤(鉄)委員 法科大学院の教育内容を踏まえて司法試験の内容も変わりませんと、結局、一発試験で見るというこれまでの弊害は解消されないばかりか、法科大学院の意義さえ失われかねないと思います。
 先ほど漆原委員の方から予備試験の話が出ておりましたけれども、いわゆる本試験である司法試験のあり方についてはどのように変えていかれるんでしょうか。これは法務副大臣にお聞きすることになると思います。
増田副大臣 新たな法曹養成制度におきまして、法科大学院を中核的な教育機関と位置づけ、その修了者に司法試験の受験資格を認めますとともに、試験科目の内容についても、法科大学院における教育内容を踏まえたものとすることとしております。御案内のとおりであります。
 したがって、それらをもとにして教育を展開していきたい、このように考えております。
斉藤(鉄)委員 法科大学院が中核的養成機関ということでございますので、その趣旨が貫徹するような司法試験でなければならないと思っておりますし、その点、ぜひよろしくお願いいたします。
 先ほどの漆原委員の質問ともちょっと重複いたしますけれども、予備試験ルートはあくまでも例外的措置というのが与党三党合意の本意であると私ども公明党は考えております。
 予備試験ルートを太いパイプとして残すべきだという意見も一部にあるようでございますが、それでは、学校教育法を改正して新たな種類の学校制度をつくって、かつそこに第三者評価という非常に新しい制度まで導入して行う意味がない、このように思うわけです。
 法務委員会の世界だけでなく、いわゆる教育ということも考えますと、今回、全く新たな試みですので、これを成功させなくてはいけない、このように思います。そういう意味で、あくまでも予備試験ルートは例外的な措置なんだというふうに考えておりますが、この点についての法務省の基本的な考え方をお伺いいたします。
山崎政府参考人 ただいまの点につきましては、この法案の提出をさせていただく際にも、政治の世界でもそれ以外でもさまざまな議論がされてきたところでございます。これはもう、考え方によって本当に百八十度考え方が違うような意見も提案されております。
 先ほど、漆原委員の方にもお答え申し上げましたけれども、私どもの基本的なスタンスは、この法曹養成制度におきまして法科大学院を中核的な教育機関として位置づけるわけでございまして、その関係で、予備試験については、法科大学院修了者と同等の学識、能力及び法律に関する実務の基礎的素養を有するかどうか、これを判定することを目的とするということでございまして、新たな法曹養成の基本理念に沿った制度設計という位置づけをしているわけでございまして、この趣旨から内容はおわかりいただけるというふうに思っております。
斉藤(鉄)委員 今のお答えは、予備試験ルートは例外的措置だ、そういうことを示しているんだ、こういうふうに受け取れる答弁というふうに理解をさせていただきたいと思います。
 これまで専門職大学院というのも、いわゆるビジネススクールというものもございまして、これもスタートしております。そして、今回は法科大学院ということで本格的にスタートをする。これからの、高度に発達した文明社会といいましょうか、高度な情報社会において、まさしくこれまでの大学教育にプラスしてこの専門職大学院という制度が非常に重要になってくる。これが定着するかどうかというのは、本当に私は日本社会が欧米社会と伍してやっていける社会になるかどうかの一つの大きな試金石だと思っておりますし、教育問題に非常に大きな関心を持っている我々としても非常に重く受けとめているところでございまして、ぜひこの法科大学院が成功するように、結局、つくったけれどもみんな予備試験ルートでやっちゃったということのないように、ぜひお願いをしたいと思います。
 それから、法科大学院は、理論と実務、この実務というところが非常にポイントになるわけでございますが、実務の勉強をするとなりますと、やはり弁護士さんや検事さんや裁判官の皆さんに直接来ていただいて教えていただく、またはディスカッションをするというふうなことも、これは当然必要になってくるわけでございます。
 ビジネススクール等では、実際のビジネスマンが学生とディベートをする、討論するというふうなことが半分以上を占めていると言われております。法科大学院でもそうでなくてはいけないと思うのですが、しかし、弁護士さんたちは大変お忙しい人たちでございまして、まして非常に収入の高い方々でございますので、そういう方々を呼ぶというのは、これは現実にはかなり難しい面があるのではないかと思いますけれども、この点についてどのように考えていらっしゃるでしょうか。これは実際の運営ですから、法務当局にお伺いします。
寺田政府参考人 ただいま委員も御指摘になりましたとおり、あるいは先ほどからも再三御議論がございますとおり、社会の第一線で活躍している法曹が現実に法科大学院で教壇に立つ、あるいはそれに関係するさまざまな分野でサポートするということが大変大事でございます。
 具体的には、今委員も御指摘のとおり、大変難しい問題も実はございます。現役の裁判官あるいは検察官について、これを派遣するにつきましては、あるいは新たに法的措置が必要かもしれませんし、もちろんそれに伴うさまざまなバックグラウンド的な問題もございます。また、今おっしゃったような、むしろ先端的な分野で活躍されているような弁護士さんに現実にロースクールで教えていただくというような環境をつくるには、これまた別の意味でのさまざまな工夫が必要になります。
 新しい法律には、これは連携法と呼ばせていただきますが、そういったことを解決するためにさまざまな国の責務というのが規定されております。その中には、教員の確保というのが一つございますし、また関係審議会への参画ということもあるわけでございます。具体的なありようは、先ほども申しましたとおり、ロースクール、法科大学院をつくろうという関係者の方々と法曹三者との間で今具体的に話し合いをすることが始まっておりますけれども、今後、その法曹三者あるいは法科大学院の関係者だけでなくて、より幅広いいろいろな御支援もいただかなきゃなりません。その点について私どもも検討し、また御支援も賜りたいというふうに考えているわけでございます。
斉藤(鉄)委員 その点、御配慮よろしくお願いします。
 今回の改革は、先ほど申し上げましたように、大学改革という側面も有しております。法科大学院は、新しい学校でございますけれども、しかし学校教育法上の高等教育機関という位置づけでございます。そういう位置づけである以上、いわゆる学問の自由といいましょうか、大学の自主性、これも尊重されるべきでございます。教育基本法、そしてそれにのっとった学校教育法、その基本理念は大学の自主性の尊重ということでございまして、この考え方、理念のもとにこの法科大学院も入るということでございますが、この大学自主性が尊重されるべきである、これは当然の前提と考えますけれども、これについての見解を推進事務局にお聞きします。
山崎政府参考人 ただいまの御指摘、大学の自治が尊重されるべきである、これはそのとおりでございます。私どもも、その関係で、国が法科大学院における教育に関する施策を策定、実施するに当たっては、大学における教育の特性に配慮しなければならないという規定を設けております。これは、いわゆる連携法と言わせていただきますけれども、その中に規定を置いているわけでございます。これとともに、大学の責務につきましても、「自主的かつ積極的に努めるものとする。」という規定を置かせていただいておりまして、そういう趣旨を踏まえているということでございます。
斉藤(鉄)委員 教育基本法、今その見直しが議論されておりますが、この第十条、教育行政というのがございまして、これを読むのはもう時間がありませんのでやめますけれども、基本的には、教育行政は、大学の教育の中身については口出ししちゃいけない、その整備確立を目標として行わなければならないということでございまして、金は出すけど口は出さないというのが基本的な側面でございます。したがいまして、例えば、医学部の教育に対して厚生労働大臣が文部科学大臣に何か物が言えるというふうな文言は全くございませんし、例えばビジネススクールについても、経済産業大臣が文部科学大臣に物が言えるというふうな規定もございません。
 ところが、今回は、法務大臣が特に必要があると認めるときは、文部科学大臣に対し、勧告、変更命令など必要な措置を講ずることを求めることができる、こう規定されているわけですが、まず、国家機関としての法務省の関与は極力抑制的であるべきだ、このように考えますが、これについての見解と、この抑制的であるべきということは、今回の法案ではどのように出ているかということをお伺いします。
山崎政府参考人 確かに御指摘のとおり、連携法の中に今の条文がございます。これにつきましては、法務大臣が文部科学大臣に対して意見を述べることができるということでございますけれども、法務大臣が法科大学院に対して直接権限の行使をするという性質のものではないということでございます。
 それから、やはり先ほど申し上げましたけれども、国が法科大学院における教育に関する施策を策定、実施するに当たっては、大学における教育の特性に配慮しなければならないということも規定しておりますので、これをあわせ読んでいただければ、先ほど御指摘のような趣旨になろうかというふうに思っております。
斉藤(鉄)委員 それでは、法務大臣が文部科学大臣に対し、勧告、変更命令など必要な措置を講ずることを求めることができるというのは、具体的にはどんな場合なんでしょうか。
山崎政府参考人 典型的には、第三者評価機関が大学院を評価するわけでございますが、ここで適格認定が行われるということが連携法に規定されております。要するにマルかバツかということになるわけでございますが、バツとなった場合には、これは文部科学大臣の方から法科大学院に対し報告とか調査、一般的な調査でございますが、そういうものを求めるという規定になっております。その結果は法務大臣の方にも連絡があるということでございます。
 法務大臣としては、そういう状況を見て、これはやはり法令違反の状態にあるおそれがあるというようなことになったといたした場合、やはりこれはお互いに連携して教育をやっていこうという立場でございますので、そういう場合には、まず文部科学大臣に対して必要な措置をとっていただきたいという意見を述べるということでございまして、要するに法令違反の状態にあるかどうかということが一つのキーポイントになりまして、教育のあり方そのものに対して一般的にチェックをする、こういうものではないというふうに御理解をいただきたいと思います。
斉藤(鉄)委員 よくわかりました。
 確認ですが、そうすると、法科大学院のカリキュラム、成績評価、入試、それから教員など、教育のあり方、内容については言及しないということだとお伺いしました。この点、非常に大事な点だと思います。よろしくお願いいたします。
 第三者評価について、これは文部科学省への質問になろうかと思います。
 第三者評価、これは大学及び法科大学院を評価するわけでございます。ある意味では、これも日本の大学にとっては、欧米ではもう歴史がありますけれども、日本では、一部の国立大学でされておりましたけれども、学位授与機構及び一橋大学などは外国の評価機関に評価してもらうというようなこともございましたけれども、しかし、日本では非常に歴史が浅い。新しい制度を導入するということで大学側は戦々恐々としておりますけれども、この第三者評価機関の独立性の担保、これが非常に重要だと思います。客観的な第三者評価ができるかどうか、これがポイントになるかと思いますけれども、この点について文部科学省はどのように考えておりますでしょうか。
清水政府参考人 お答え申し上げます。
 学校教育法においては、文部科学大臣の認証を受けた認証評価機関が評価を行う、その評価を受けることを義務づけられる、こういう関係になるわけでございます。したがいまして、認証評価は、国から一定の距離を置いた認証評価機関が責任を持って主体的に行うということになります。したがいまして、評価基準についても評価機関がみずから定めるということとしております。また、評価結果によって、それ自体によりまして行政処分あるいは直接的に資源配分を行うというような仕組みには設計していないところでございます。
 なお、認証評価機関の認証でございますが、基本的に、認証の基準を満たすものであるかどうかということにつきまして、文部科学大臣が判断はするわけでございますが、専門的な判断として中央教育審議会の意見を聞いて判断する、認証評価基準の策定に当たっても意見を聞く、このような仕組みをとることといたしております。
 その意味で、認証評価機関に対する国の関与は最小限とし、評価機関が独立性を持って自立的に評価を行う、そういう仕組みとして考えているところでございます。
斉藤(鉄)委員 しかし、現実には、既に税金でつくった大学評価・学位授与機構というのがある。これが大学評価はすると言っている。これから民間でそういう評価機関ができるわけですが、スタートから違うわけですね。民間は民間の資金で、これから準備を始めてつくる。片や、税金で大学評価・学位授与機構が、そうそうたる人材を集めて、もう既にできている。そうすると、もうここしか評価機関はなくなるじゃないか、大学評価・学位授与機構しかなくなったとしたら、これはその内容を見ても、お役人もたくさん天下っていますし、結局国が評価をする、文部科学省が評価をする、第三者評価じゃなくなるんじゃないか、こういう懸念がありますが、その懸念を払拭していただけますか。
清水政府参考人 評価機構についてでございますが、評価機構は、実は役割が三つの大きな柱から成っております。
 一つは、もちろん評価を行うということでございますが、もう一つは、先ほど斉藤先生からも御指摘がございましたように、評価の手法あるいはその評価が行われる射程でありますとか、つまり、そういう評価それ自体に対する研究というのが我が国の評価が未成熟な状況によっては極めて大きな役割を果たすというふうに考えております。また、三番目は、評価に関する情報を集約し、それを幅広く社会に提供していくというふうなことでございます。
 したがいまして、もちろん評価機構は認証評価機関となって評価を行うということはあり得るというふうなことでもございますし、それがある意味でさまざまな大学側の選択の機会の拡大、あるいはそういう意味での競争という観点から意味があるというふうに考えております。
 しかしながら、先ほど申し上げました点については、少なくとも認証評価の部分については、例えば財政投入の部分も、きちんとしたそこの仕分けは考えていかなければならないというふうに思っておりますし、当然のことながら、認証評価を行うに当たっては、競争的な環境ということで、例えば手数料等について他の機関と比べて有利となるというふうなことがないような、そういう配慮をしていきたいというふうに考えております。
 いずれにいたしましても、各大学がそれぞれ、自分がどこの評価を受けたいかということで認証評価機関を選ぶわけでございます。そしてまた、複数の評価機関が、一定の基準に該当しているか否かだけではなく、まさにそこにおける、例えば法科大学院における教育がどういう形で発展していくか、将来を見越しながら、多様な観点から改善、育成を図っていく、そういう役割を大いに期待している、こういうふうなことでございます。
斉藤(鉄)委員 イコールフッティングになるように、ぜひ制度設計等、よろしくお願いします。
 最後の質問ですが、第三者評価、事後チェック、これは第三者が行うということでいいんですけれども、いわゆる事前規制になろうかと思いますが、しかし、設置基準、これは文科省が行うものでございます。今の時の流れは事前規制から事後チェックということで、今回の学校教育法でもこの事前規制については、設置基準についてはかなり緩和されておりますが、しかし、この法科大学院につきましては、そうはいっても事前チェックもきちんとやるべきではないか。新たに、新しい制度の学校に入ってくる学生の心情を考えれば、きちんと文部科学省が太鼓判を押した法科大学院に入りたいという素直な気持ちもございます。
 この設置基準についての考え方を最後に聞いて質問を終わります。
清水政府参考人 法科大学院が法曹養成の中核的な機関ということのためには、まさに質の高い法曹を養成するという観点から、教育水準の維持をどれだけ確保できるかということであろうかと思っております。
 司法制度改革審議会のあの意見書においても、基本的な考え方として、法科大学院の設置においては、適正な教育水準の確保を条件として、自発的な関係者の創意を基本にして適正な配置になるよう配慮するというふうにされておるところでございます。すなわち、設置の時点と第三者評価とが相まって教育水準をどのように確保していくか、かように考えておりまして、カリキュラムあるいはそれを支える教育体制というのは、法科大学院の教育の成否を大きく左右するものになるだろうというふうに思っております。
 お話のございましたように、設置基準については法科大学院の理念、特性を十分踏まえたものとすると同時に、設置基準を満たすものは広く参入を認めるということは原則としつつ、その内容をなすカリキュラム、教員など、必要な審査は適切に行ってまいりたいというふうに考えております。
斉藤(鉄)委員 終わります。
山本委員長 午後二時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時一分休憩
     ――――◇―――――
    午後二時一分開議
山本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
 ただいま議題となっております両案審査のため、来る八日金曜日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
山本委員長 次に、連合審査会開会に関する件についてお諮りいたします。
 ただいま文部科学委員会において審査中の内閣提出、学校教育法の一部を改正する法律案について、文部科学委員会に対し連合審査会開会の申し入れを行うこととし、あわせて、本委員会において審査中の内閣提出、法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律案及び司法試験法及び裁判所法の一部を改正する法律案について、文部科学委員会から連合審査会開会の申し入れがありましたので、これを受諾するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 また、連合審査会において、政府参考人から説明を聴取する必要が生じました場合には、出席を求めることとし、その取り扱いにつきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 次に、最高裁判所から出席説明の要求がありました場合には、これを承認することとし、その取り扱いにつきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 なお、連合審査会は、両委員長間で協議の上決定いたしますが、来る六日水曜日午前九時から開会する予定ですので、御了承願います。
    ―――――――――――――
山本委員長 両案の質疑を続行いたします。日野市朗君。
日野委員 司法制度改革推進本部の第一号の法案が出てきたということでございますね。私、この関係資料を眺めまして、ああ出てきたなと思いました。いつもながらきれいによくできているなと思います、表紙はですよ。
 それで、私ずっとめくってみまして、本当によくできているなと思うんです。ただ、不親切だなとも一方で思います。何のことやらわからぬ。私、まだ二十五年には達しませんけれども、二十数年間国会におりますが、資料の不親切さというものを今まで常に思った。そんなことぐらい常識だと言われればそうかもしれません。
 私、特に法科大学院という耳なれない一つのシステムを見まして、さて、では法科大学院というのはどういうものだということでずっと参照条文を拝見いたしました。そして学校教育法がこれに書いてあるんですな。六十条の二、六十五条、その辺に書いてある。六十八条の二なんかにも書いてある。そして、もっと詳しく見ようと思って私の六法全書を見ましたら、この条文は書いていない。この条文は学校教育法にはないんですよ。つまり、現存しない法律をあたかもあるかのごとくにここに書いてある。何でこういうつくり方になるんでしょうね。これはこれから出すのでございますよとか、今、国会に提出してあるのでまだ成立はしていないんですが、これが成立したらこうなるんですよと、何でそこのところがちょっと書けないのかと思うんですな。
 これは、提出された司法制度改革推進本部の山崎さんがおりますから、これをまず当面、具体的にこの資料をつくられた者として、ひとつ説明してみてください。
山崎政府参考人 ただいまの御指摘の点は、私ども、学校教育法の一部改正案につきましては、その改正内容が法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律案と密接に関連するということから、読んでいただいて御理解いただくために、その便宜として参照条文に掲げさせていただいたわけでございますが、御指摘のような、まだ成立していないという注書きをするかどうかという点につきましては、私もそういう点は初めて聞くことでございまして、ちょっと今後検討させていただきたいと思います。
日野委員 これを大臣に伺うのはちょっと気の毒かとも思いますが、大臣、どう思いますか。これは改めなくちゃいかぬじゃないですか。まだない法律がここにあたかもあるかのごとく麗々しく書いてあるわけですね。これは今、文科委員会で審議中、私が知っている範囲ではそうなっているわけですが、それならそれとちゃんと書いておかなくちゃ。どうお思いになりますか。今まで私も余り注意して見なかったけれども、大体こういうふうにしてつくっているのが慣例だと思うんですが、もしそれだとしたらこれは直すべきだ、私はこう思う。いかがでしょうか。
森山国務大臣 今お手にしておられるようなそういうたぐいの資料は、今までどんなことがありますか、実際にそういうときはどうするかというルールがあるのかどうかも私よく存じませんが、確かにおっしゃるとおり、現に今別の委員会で審議中であるということを一言書いた方が親切であるとは思います。
日野委員 私は、ぜひそうしてもらいたいと思います。これを見るのは国会議員だけではないですからね。現に、そういった利害関係を持つ運動体とか学者なんかもこれをごらんになるだろうと思う。そうすれば、これはどんなものかな、これはちょっと不親切だなと思うに違いない。こういうところをまず改革すべきだと思いますね。
 まずジャブはそのくらいにして、今度はまた別の質問に移ります。
 ところで、司法制度改革推進本部としてこの法律をお出しになっているんですが、私の理解するところでは、司法制度改革推進本部というのは永遠な機関ではありませんわな。この法律は司法制度改革推進本部よりもずっと長い寿命を保たれると思うんですが、さて、この法律の主務官庁はどこになりますか。今まで聞いていますと、そこに法務大臣はお座りになっている、しかし、答弁をしているのは大体半分以上は文科省のお役人が来て答弁しておられるわけですね。さて、これはどっちが主務官庁なんですか。どうでしょう。まず、これも山崎さん、司法制度改革推進本部の方からちょっと答えていただけましょうか。
山崎政府参考人 ただいま御指摘の法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律でございますが、これは法務省と文部科学省の共管でございます。
日野委員 共管だと言えばそれはそうでしょうね。ただ、主務官庁というのは責任を持ってこの法律を執行していくお役所でありますね。法科大学院の教育と司法試験との連携等に関するという非常に重大な問題でありますからね。共管ということで今さっとお答えになった。共管というのはまさに共管でありましょう、これは文科省もかなり、かなりどころか非常にかかわりあるんでね。
 そうすれば、この法律について、森山法務大臣は今ここにお座りになっておられるが、もう一人遠山大臣がここにいて、きちんとこの委員会の審議に対して責任を持つ、こういうことが必要なんじゃないんでしょうかね。
 副大臣、おいでになっていますが、どうですか、文科副大臣。
河村副大臣 今回の法科大学院をつくっていくという問題は、司法改革の視点とそれから大学改革、教育改革の視点、両方の視点から生まれたものでありまして、いわゆる司法試験制度も法律が出ております。それから、我々の方も、法科大学院をつくる、いわゆる専門職大学院をつくろうという、一つの教育改革の観点から学校教育法を改正していくということでありますから、我々の方としては学校教育法の改正に責任を持ち、そして司法試験制度について法務省に持っていただいて、その連携をしなきゃいかぬという面がございます。それについて共管でやりましょう、こういうことでこれまで時間をかけて協議し、今日に至っておるようなわけでございます。
日野委員 法務大臣に伺います。
 法務大臣としてお答えをいただきたいんですが、私は、法曹の養成ということ、これは非常に重い課題でありまして、このことについてやはり法務省が責任を負うべきだ、こう考えているんですよ。
 なぜそう考えるかというと、法曹の役割、これは、正義の実現、それから人権の擁護、こういうことがあります。正義の実現という問題は、正義というのは非常に難しい概念でありますから、わきに置きましょう。
 まず、人権の擁護ということを考えてみると、私は、人権を擁護するということは、国家権力に対して自由であるということ、国家権力から一方で独立をしているということ、これが決定的に重要なことだというふうに思います。人権を侵害するというのは、これはいろいろな側面から考えられるわけですが、人権の侵害が一番問題になるのは国家権力による人権の侵害であります。でありますから、国家権力からはできるだけ離れたところでこの法曹の養成というものをきちんとやっていかなくちゃいかぬ。
 法曹にとって一番大事なのは、いろいろな知識なんかは後でまた問題にします。しかし、その中の中心になるもの、それは何かといったら法曹倫理ですね。そして、法曹の倫理の中心になるものというのは、人権を守る、そのためにきちんとした仕事をしていくということでありますから、教育の段階から国家権力からできるだけ独立をしていくということが非常に大事な観点であるというふうに私は思いますが、法務大臣としていかがお考えになりますか。
 私は、もう少し言わせていただくと、文部科学省がこれだけ法曹の養成にくちばしを入れていいのかいねという思いを込めて伺います。
森山国務大臣 法曹の養成というのは、確かに先生がおっしゃいますとおり、非常に重要な柱の一つとして、人権の尊重、その擁護ということがあることは、私もそのとおりだと思いますが、文部科学省のかかわっていらっしゃる一番大きな仕事は、人材の養成、育成ということでもございまして、人権擁護について非常に造詣の深い、あるいは情熱を持った人材をつくるということから申しますと、文部科学省も大いにかかわっていただく必要があると思いますし、国家全体の人材の育成という意味で十分にかかわりがあることだと思います。
日野委員 それではちょっと議論をいたしましょう。
 私が申し上げたのは、法曹の養成というのは、ほかの例えば専門職を養成するということと決定的に違うということを先ほど申し上げたわけですね。というのは、法曹というのは、その使命として人権の擁護というものがある。人権の擁護ということは、国家権力と切り離されたところで、国家権力から独立したところでそういう非常に崇高な使命というのが行われるものなのでありますから、文部科学省がその養成課程にいろいろとかかわってくる、しかも権力的にかかわってくるということはけしからぬと私は思っているんですね。
 そういう観点から今おっしゃったので、それは、入れ物をつくれとかなんとかいう観点とは若干違うんですな。大学院の入れ物をつくれなどということとは若干違う。こういう認識はひとつお持ちいただきたいと思うのですが、法務大臣、いかがですか。
森山国務大臣 おっしゃることは、かなり私も同感でございますが、そのような考え方をもちまして、この法律におきましても文部科学省のかかわりというのは、先生は権力的とおっしゃいましたけれども、できるだけ権力的な介入をしないようにという配慮を随所にしていただいているというふうに考えます。その一番重要である外側の枠組みといいましょうか、あるいは財政的な問題とか、そのようなことがどうしてもかかわってまいりますので、そのような意味で文部科学省がかかわっていただいているというふうに私は理解しております。
日野委員 私はちょっとここのところをしつこくお話ししておきますが、これからこの法律によって法科大学院がつくられ、そして法曹の養成が行われていくわけです。私は、ここの中で、やはり文科省の方は法科大学院の教育の一つの課程というものに対して節度を持ってかかわってもらいたい。
 それと同時に、一方で言えることは、法務大臣は、そういう法曹養成のために自分たちが過去どういう仕事をやってきたのか。それから、これからどういうことをやっていかなければならないのか。私は、あくまでも申し上げます。人権擁護のために非常に貴重な人材をここでつくり上げていくんだ、権力から独立をして、場合によっては権力とは命をかけても張り合っていく、そういうことが法曹の値打ちですから、そういう法曹を養成していくんだ、こういう誇りを持ってこの法律の執行に当たってもらいたい。そのことは強く念を押しておきたいと思いますが、よろしいか。
森山国務大臣 よくわかります。先生のお考えは十分私どもも理解しているつもりでございまして、その御趣旨を尊重しながらこれからも懸命にやっていきたいと思います。
日野委員 私は、この法案について非常に危惧するところがある。それは、法務省とそれから文科省、ここの共管というふうにすらっと司法制度改革推進本部の方は逃げた。私は、逃げたという言葉をあえて使いますが、すらっと身をかわされたけれども、本当は、これは非常に微妙なところなんですな。文科省の役割それから法務省の役割、ここは非常に微妙なところなのであって、その調整ということが非常に大事だ、私はそう思います。
 そうすると、それはだれがやるんだ。司法制度改革推進本部の本部長である総理大臣がやることなんです。そうすると、当然のこととして、これを今審査している当法務委員会、または、理事会では連合審査をおやりになるということをお決めになったようですが、その連合審査なんかにも総理大臣が出てきて、この我々の質疑にたえ得るような、たえられるような答弁をしてもらわなくちゃいかぬ。
 私は、そのことは当然のことだと思うんですが、ここで司法制度改革推進本部から来ておられる方々に、じゃ、総理大臣が出てくるかどうかということを聞いても、これはちょっとお答えになりにくいだろうと思うんです。まず、共管しているということで、今ここに法務大臣はおいでなものですから、どうですか、法務大臣、総理大臣を連れてくるような努力をひとつしてもらえませんか。これはぜひやるべきだと思いますよ。
 そうでないと、こういうデリケートな問題を含んだ、しかも、非常に重要な国家の三権の一つを担う人材を養成するんですから、育成していくんですから、これはもう非常に大事な過程を踏もうということですから、総理大臣の考え方、これを我々はただしておきたいと思うし、ただしておいて約束を取りつけるところは取りつけなくちゃいかぬし、私は、総理大臣にぜひ出てきてもらいたいと思う。
 このことについて、大臣の御意見も伺いたいし、それから法務委員会の委員長がどのようにこの委員会の取り仕切りをされるかにもかかわりますので、まず大臣の御意見を伺って、それから委員長からも、まことに異例のことで恐縮ですが、御意見をいただければ、こう思います。
森山国務大臣 確かに先生がおっしゃいましたとおり、司法制度改革推進本部の本部長は総理でございまして、会議がありますたびに、大変御熱心に出席もしていただき、発言もしていただいております。
 ただ、法律の審議、この二法案につきましては、この十月十八日に閣議で提案が決定されましたとき、総理大臣から、この二法案は司法制度改革の実現に向けて司法制度改革推進本部が取りまとめたものであり、その国会対応については副本部長である法務大臣がするようにという御指示がございました。したがいまして、私法務大臣が、この二法案の審議に当たりまして、主任の大臣であります内閣総理大臣にかわりましてここで答弁させていただいているというわけでございますので、それを御理解いただきたいと存じます。
山本委員長 日野委員の御指摘は、すぐれて委員会の運営の仕方とかかわりますので、理事会で協議させていただきたいと存じます。
日野委員 司法制度改革推進本部は、全閣僚が委員になっているわけですね。ですから、こういう重大な問題であれば、全閣僚が、何も予算の全閣僚出席のもとにというような形を私は要求するんじゃありませんが、こういう点について聞きたいというふうに求められれば、やはりこの委員会に出てきて答弁をいただく。そのくらいの重さを持った作業、これを今我々がやっているんだということを、これはみんなで思いを新たにするということが必要ではなかろうか、そんなふうに私は思っておりますので、あえていろいろなことを申し上げました。
 そこで、私は実はこの法律は気に入らぬのです。気に入らないというと、すぐ反対するかという意味ではそれはないんですよ。気に入らない。なぜかというと、ここの法律の中では、まず法曹の量、それから質が問題になっています。私も法曹の端くれとして、どうも今の法曹は質が悪いと言われているような気がして、これは非常に不快感を隠さないでこの法律と相対しているわけでありますが、法曹の量についてまず伺っておきましょう。
 平成二十二年には司法試験合格者三千を目指すというのが一つ。司法制度改革推進本部、それから閣議などで決められていることですが、大体、三千人を目指すというような見解があって、それがもうどんどんひとり歩きしてここまで来てしまっているわけで、今は三千についてどうこう言おうとは思わないが、まずちょっと聞いておきたいのは、この三千という根拠です。何で三千人なのよということ。私、合理的な根拠があるんだろうかというふうに思います。
 我が国では、確かに弁護士の数なんか少ないですね。裁判官も少ない。それは検察官も少なくて気の毒です。そういう現状を知っていながら、もっと数はふやさなくちゃいかぬとは思いますが、何でこの三千という数字が出てきたのか、これはぜひ伺っておきたいなというふうに思います。
 三千の根拠は何ですか。これは、形式的にここでこういうふうに決まりましてと、例えば司法制度改革審議会でこう決まりましたとか、推進本部でこう決まりましたではなくて、実質的な三千の根拠をちょっと示してみてください。
山崎政府参考人 ただいま御指摘の三千人の問題でございます。具体的には、本年度から合格者が千二百名にふえまして、十六年から千五百人体制、それから平成二十二年に三千人体制ということでございます。
 この根底にありますのは、現在、規制緩和の時代を迎えておりまして、事後チェック型の社会にしていこうという大きな流れがございます。そういう関係から、やはり司法のニーズ、あるいは果たす役割、これが大変重要なものになってまいります。それとともに、司法の裁判に持ち込む前にADR等で解決をしていくというニーズも高まるわけでございます。これ以外にも、社会の隅々に法的な解決がきちっと行われるようにというニーズが高まります。また、国際的な問題、特にグローバル化しておりますので、そこの紛争あるいは法律的な解決、これのニーズも大変多くなる、こういう状況でございます。
 そういうことから、やはり法曹をふやして、どこの町にでも法律家がいて相談ができる、こういう体制をつくり上げていこうというのが根底にあるわけでございます。
 具体的にこの三千がどうして出たかでございますけれども、改革審の意見書では、先進国で一番法曹の数が少ないフランスが三万六千ぐらいですか、順次ふえていきますので、私ども日本でも、現在二万二千人台の法曹だと思いますけれども、これを五万人体制にしよう、それが平成三十年に向けて五万人体制にするということでございます。これでいきますと、フランスが現在三万六千といいましても、ふえていきますので、そこに追いつくかどうかもわからないという状況ではございますけれども、そういうことを目標にしたわけでございます。
日野委員 いや、私も、この三千、具体的にこの数字の実質的な根拠というのは、ちょっと意地悪な質問だということは自分でもわかっていたんです。
 なぜかというと、人数が少ないということは、もうこれは間違いない。私自身も随分、弁護士をもっとふやさなくちゃいかぬ、それから大都市部に偏在しているものを地方にも展開してもらわなくちゃいかぬ、それから裁判の長期化の問題を解決しなくちゃいかぬ、そういったいろいろな問題について取り組んできたつもりでいます。しかし、三千にしたからといって、全部が解決するという問題でもこれはなかろう。
 例えば、弁護士の地域での偏在という問題ですね。これ一つ考えてみても、私は、これを三千にしたからといって偏在が改まるかというと、その次に来るいろいろな障害があって、それを一つ一つ乗り越えていくという大事な、そして重苦しい作業があるなと思います。
 それから、裁判の長期化の問題なんかは、私、もっと単純に考えていいんだと思うんですよ。もっと法廷をふやす、裁判官をふやす。宅調なんというばかばかしいことはやめて集中的に審理ができるようにしていけば、裁判の長期化なんかかなり食いとめられると思う。口頭弁論が終わって、きょうあたりだと、では次の期日は来年の二月何日なんて裁判官が期日簿をめくりながら言うと、傍聴席がざわざわっとするわけですな。こんな状態はなくさなくちゃいかぬことは、これはわかっている。
 では、それを直すなら法廷をもっとふやす。そんな立派な法廷でなくたっていいですよ、もっとふやす。それから、裁判官もふやす。そんなことの方がこれははるかにいいだろう。
 それから、法律家の不足問題、それからいろいろな問題の解決、ADRの問題。これも、司法書士の方々が、今度、今弁護士がやっているような仕事もやれるようにする。それから、司法書士のみならず多くの方々がいろいろ参入できるような形をとっていけば、法曹の量の問題は何とかカバーしていけるんじゃないか。
 それから、量の問題だって、何も法科大学院なんかで勉強した者をどんどん採ろうということじゃなくて、現在のシステムの中でも何とか大学に頑張ってもらう。予備校と大学が競争して、大学がごろごろ負けて予備校にばかりみんな行って勉強するみたいなところを変えていくためのシステムというのは、大学が頑張ればいろいろこれはできるんじゃないか、そんなふうに思いますな。ですから、私は、三千にするために法科大学院をつくらなくちゃいかぬというその発想がどうにもわからぬ。
 まあ、ロースクールの前に、質の問題についてお話をしましょう。
 今の法曹のどこが質が悪いんですか。よく言われるのは、裁判官は視野が狭い、これじゃいかぬというのは我々常に考えていることですな。これは、その人間の資質というよりは、任官してからの裁判所の中の教育が悪いんだと私は思っていますよ、はっきり。それから、弁護士なんというのはかなりいろいろもまれますから、むしろ弁護士なんかは視野の広い、でかい人間が育っていく。
 そしてあと、裁判なんというのは当事者構造ですから、質が悪いということを特に取り立ててやらなくたって、三者、例えば民事でいえば、原告、被告代理人それから裁判官、これがもみ合えばかなり質の点はカバーできるだろうし、刑事は、裁判所、検察庁、弁護人、それがもみ合えばかなりこの質はカバーできるだろう、こう思っているんですが、質が悪い、質が悪いと。
 悪いとははっきりとは言っていないようですが、もっと質を高めるということは、結局、質が悪いというのと同じことを言っているんです。これは、どういう点で質が悪いと言われているのか。どうお考えになりますか。これは、大臣にも意見を伺いましょうし、それから推進本部の方からも意見を伺いましょう。いかがですか。
森山国務大臣 質が悪い悪いというふうにたびたびおっしゃいましたけれども、特に質が悪いということを言っているわけではございませんで、先ほど本部の局長から詳しく申し上げましたような理由で、まず、数をもっとふやしていかないといけないという観点から、今までと同じ試験をやって合格者の数は二倍、三倍とふやしていけば、同じ養成のやり方で同じ試験をやっていけば、結局、合格する人のレベルが下がっていくのではないかということは容易に想像できるわけでございます。ですから、養成の仕方そのものを変えなければいけない、そういう考え方でこの法科大学院という構想が出てきたわけでございます。
 今までの法曹の方々、日野先生や委員長初め、ここにもたくさんいらっしゃいますが、立派な方がたくさんおいでになりまして、それぞれに立派な仕事をしていらっしゃるということは私も全く同感でございますけれども、これからもっと人数がふえるということが、たくさんの法曹が必要だという時代であり、そういう人たちをつくっていかなければいけないとすれば、養成の仕方、試験の仕方、その他、全体的に思い切って内容を変えていかなければいけないのではないか。
 そういうことで法科大学院という、スポットではなくてプロセスによって養成をしていく、そして全体としてレベルを維持し、あるいは向上していくということが求められるというふうに考えておりまして、あえて申せば、今までは大変立派でありましたけれども、さらにこれ以上伸ばしていきたいということでございます。
山崎政府参考人 ただいま大臣がお話をされた視点、そのとおりでございます。
 それにちょっとつけ加えさせていただきますけれども、先ほど私、国際関係もいろいろグローバル化しているということを申し上げましたが、単にグローバル化だけではございませんで、非常に複雑多様化している、あるいは高度化している、こういう時代を迎えているわけでございます。これからますますそういう時代が来るだろうということでございます。
 そうなりますと、既存の形の教育をしているだけではなかなか専門家が育っていかないということでございます。また、現在法律家になっている方々も、次から次へ新しいものを理解していかないと対応ができなくなるということでございます。この当法務委員会でも毎国会物すごい数の法律が御承認されておりますけれども、それだけ時代が動いているわけでございます。
 そういうものを育てていくということになりますと、やはり徹底した専門家教育が必要である。こういうことから、やはり法科大学院というものを設けて、そこで徹底した専門教育をする、こういうふうに結びついているわけでございます。
日野委員 おっしゃることは、大臣のおっしゃることも、局長のおっしゃることもよくわかるような気はするんですが、どうもすとんと胸に落ちないんですな。では、どういうころで落ちないのか。いろいろ私、この法律を見ながらしみじみと考えてみた。しかし、要は、もっと一生懸命勉強させたい、こういうことなんですね。
 しかし、勉強というのは詰まるところその本人がするものでございますよ。質を高めるためにまず専門的法律知識を身につけさせる、これはそのとおり、非常に大事なことでしょう。ただ、法律的知識を身につけさせただけではだめなんで、その法律はどのような意義を持って、どのようにして、どのような社会的な現象を背景にしてできているのか、そういった筋道ですな、そういったものをきちんと考える論理的な発想といいますか、こういったものを身につける、それを法科大学院でやろう、こういうふうに言っているわけですね。
 それから、幅広い教養というようなことも一つのメルクマールのように挙げられています。さて、ここまで来ると、ちょっと幅広い教養と言われると困っちゃうんですな。幅広い教養よりは狭くて深い教養というのが値打ちを持っていることだってこれはあるわけで、むしろそういう人に深みのある非常にすぐれたパーソナリティーがあったりするものでございますな。
 ですから、まさか幅広い教養というのが、雑学博士で、テレビのクイズ番組に出ればいい成績をとるような者を育てようなんということではないんだろうとは思いますけれども、こういう非常に抽象的な物言いをされると、これは困るねというふうに私は思います。
 それからもう一つは、国際的素養という言葉が使われている。それは、まさにグローバル化して、国際的ないろいろな動きがある、そしてビジネスも国際的に展開をする、人もビジネスも、それから文化も国際的に展開をしていく。こういう中で、国際的な素養があることが必要なことは言うまでもないことですが、では、法曹人として国際的な素養ということになるとどういうことになるのか。私は、非常にこの点も疑問に思わざるを得ないんです。
 法科大学院のようなものをつくって、その前段で、もちろん法律的な知識をそれぞれ学部で習ってきて、そして法科大学院に入ったとして、そこまでの段階で専門的、法律的な知識は身についていて、さらに何をやろうとするんですか。より広い法律的な知識を得させようとするんでしょうか。それとも、そういった論理的な思考の能力を身につけさせようというのであれば、どういうことをやればそういったものが身についてくるのか。私、この点、自分の経験にも照らしてみて思うんです。
 私について言えば、そういうのは結局、自分で学部の間にいろいろ勉強した過程で身についているのであって、それから実務の研修をやる、それから実務をやる、その人生の長いスパンの中で徐々に身についていくものなのであって、法科大学院に三年くらい入れてやって、それで身につくものだとは思わないが、この点どうでしょうか。
山崎政府参考人 先ほどちょっと私御説明が不十分だったと思いますけれども、徹底した専門的な教育をするということでございますけれども、私はそれで完成しているという意味で言っているわけではございません。将来、仕事についたときに、自分としてはどの道に行くべきかということの選択になるような基礎的なものを教えていくということでございまして、また、委員御指摘のとおり、力をつけるためには自分なりに意識して努力をしなければならないというのは、当然もう前提としてあるわけでございます。そういうことを申し上げているわけでございます。
 それからもう一つ、ちょっと感覚的に私は違うかなと思っているのは、例えば、法科大学院に入るときには、法律をやっていない方、法学部以外の方、社会人の方も入っていただくということでございますので、最初に法律をやってきて、そこの法科大学院で別のことということではなくて、基本的には、ほかの分野、例えば理科系の勉強をしてきた、あるいは語学の勉強をしてきた、そういう方に入っていただいても結構でございまして、その中で基本的な法律をやるとともに、非常に専門的なところについても勉強をしていく。その中には、法曹倫理とか人格を磨くような内容も当然含まれてやる。総合的な教育をするということでございます。
 先ほど、幅広い教養というふうにおっしゃられましたけれども、私は、やはり法律家である以上、どんな現象にもいろいろ対応していかざるを得ませんので、とりあえずは広く持つ必要があろうかと思います。その上で深い、両方持つ必要があるというふうに考えております。
日野委員 最後に私は、ちょっと国際的な素養ということについての議論をしておきたいと思います。
 私は、今の法曹たちは国際的な素養がない、もっと国際的な争訟にもたえられるような法曹を育てろとか、アメリカあたりの弁護士が日本に乗り込んできて、乗り込んできてというのは、こちらで弁護士登録をしてという意味じゃありません、向こうの弁護士がこっちに来てビジネス界で大活躍をして、そして日本の企業はそのために負けているんだみたいな話をする人がいるが、私の知っている範囲では、向こうの弁護士が日本に乗り込んできて、がんがん日本のビジネス界をかき回していくような例は余り多くないだろうと思う。私は知りません、随分私もいろいろな外国に展開している企業の話なんかも聞きますが、まず語学の問題、それからその国特有の法律の問題、文化の問題、そういったものがあって、私はそんなにそれは簡単じゃないと思う。
 この点についてどうですか。私が今挙げたような例、経済産業省、知っていますか。
西川大臣政務官 先生、大分御遠慮されて、うわさを聞くがというような話で、そんなに余りないだろう、こういう話をされました。私どもの方もよく調べてみましたが、外国法事務弁護士が増加している、これは事実でありますけれども、まだ数は本年の二月で百八十四人でございます。
 そして、経済産業省はどう見ているんだということでありますが、国内の弁護士の人口は約二万人にとどまっている、そして欧米諸国と比較しても法曹人口は量的には少ない、こう受けとめています。経済社会の複雑化、専門化、高度化の進展で、企業活動の訴訟はもっとふえてくるだろう、こう予測しています。それで、今後どうだということは、我が国においても、弁護士人口の増加を含めて、リーガルサービスの充実を我々はやるべきだ、こう理解しています。
 以上です。
日野委員 私は、それはふえていくことは結構だし、できるだけそういう国際的な活動をできるような弁護士がふえていくことも必要だろうし、もちろん裁判官、検察官もそういう方面の能力を持っていくことは必要だと思う。しかし、そのことのために法科大学院をつくって、三年間でそういう素養をきちんと身につけさせることができるなんということは夢みたいな話だ、私はこの点は指摘しておきたいわけですね。
 それで結局、私は法科大学院に対して決して好感を持っていないものですから、皆さんにいろいろな問題を投げかけましたが、この問題ばかりやっていますと、もっともっといろいろ話したいことがありますが、肝心の問題点に触れられませんから、別の点に移っていきたいと思います。
 今度は、法科大学院という耳なれないシステムができるわけです。これは文部科学省が学校教育法を直して、そしてこれをちょこっと入れたわけですな。ちょこっと入れたと言うと怒られるかもしれませんが、こういう今までなかった法科大学院というシステムをつくった。そして学校教育法の改正をやる。これは結局、法科大学院というものをつくるためにこういう専門職大学院というものをひとつつくろうということにしたわけでしょう。いかがですか、文科省。
工藤政府参考人 御存じのように、司法制度改革審議会の答申におきましては、司法制度の大改革の一環としまして、プロセスによる法曹人の養成が必要である、それをしっかりしたものにするために、学校教育法上の大学院として位置づけるべしという御提言がございました。
 他方で、私ども学校教育法上の大学院というのは、伝統的には研究後継者の養成という色彩が大変強い法律上の規定になってございまして、現にそういう大学院が多いわけでございますが、ただ、現実にはいろいろな分野でいろいろな需要がございまして、現在の修士課程、博士課程という仕組みの中で、特に修士レベルでございますが、いわゆるビジネススクールといいますか、実務界に軸足を置いたような形の高度専門職業人の養成の大学院が現にあるわけでございます。
 今回の法科大学院構想の御提言を受けながら、改めて中央教育審議会の御審議をいただきまして、これまでございますそういう高度専門職業人養成の機能をもう少し学校制度の中にしっかり位置づけるというのは、法科大学院だけでなくて、ほかの分野でも御要請があるわけでございまして、改めて御審議した結果、この際、従来の修士、博士という課程とは別に、専門職大学院という制度をしっかり学校教育法の上で明確化すべきじゃないかという結論を得まして、今回の学校教育法の改正を御提案しているところでございます。
日野委員 私、現在もう既に大学院制度の中で、専門大学院、これは修士課程としてあることは承知をしております。例えば、青山学院だとか神戸大学であるとか、中央大学、一橋大学、京都大学、九州大学、それぞれ、国際マネジメント研究だとか、それから経営学研究科だとか、そういう形で、職業とは関係なしに、やはり大学院としての専門的な部分を研究しますよ、そこを出たら修士にしますよという形で存在しているわけですな。
 ところが、今度は、そこを出たら司法試験を受ける資格を与えますよというような形ですね。そうすると、これは職業の選択と密接に結びついている大学院をつくるわけです。そういう大学院のニーズはありますか。
工藤政府参考人 中央教育審議会で御審議いただきまして、この夏、八月に最終の答申をいただきます前に、中間報告という形でオープンにいたしまして、パブリックコメント等もいただきました。各界から大変反応が多うございまして、特定の国家資格ですぐにということでもございませんけれども、例えば、もう少し知的財産に強い専門家が必要だねということでございますとか、あるいは、今の専門大学院としてある程度先行してございます大学院の関係者も、これが今までの大学院の中に若干後追いでできてきたものでございますから、もう少ししっかりした位置づけをする中で、いわゆるプロフェッショナルスクールとして本格的な専門家養成をする必要があるんではないかという声などがございまして、必ずしも国家資格に結びついた分野だけではなくて、いろいろな分野でのニーズがこれからも増大していくものと私どもは期待しているところでございます。
日野委員 私、こういう大学院ができてくると、例えば公認会計士さん、税理士さん、弁理士さん、こういった士へんの人たちですな、こういう人たちもそういった中にくくられていくような悪い予感がしているんです。悪い予感というのは、文部科学省あたりからいえば、我々が管理するんだからというふうに言うかもしらぬが、やはりこういう職業選択の自由、それから職業人の持っている自由と誇りに基づくいい仕事、こういったものは、必ずしもそういう規制だとか監視だとか、監督や管理、そういったものにはなじまないものですな。
 ところで、公認会計士とか税理士について、やはりこういう専門職大学院というフィルターをひとつ通したいというような考え方があるのかどうか。これは、管轄しているのは財務省なんですが、実はきのう、うっかりしていて、私、このことを通告しなかったんじゃなかったかなと思いますが、来ておられて、答えられたら答えてください。
勝政府参考人 お答えいたします。
 具体的な話は今のところまだ伺っておりません。
日野委員 では、弁理士さんについてはどうですか。これは経済産業省。
西川大臣政務官 まだこの話は出ておりませんが、今後検討してみたいと思います。
日野委員 文科省、あなたの方から、法曹の方はこうなっているんだから、公認会計士だの何かもこんなふうに専門職大学院というものを利用したらどうですかなんて言われると私は困るんですね。法曹の養成のためにほかの士へんの人たちに迷惑をかけるようなことがあってはいかぬと思うのです。
 どうですか、見通しは。文科省の方からそういう話をしていくようなことは絶対ないということを言えますか。
工藤政府参考人 専門職業人の養成というのはいろいろなレベルで行われております。高校段階でももちろん職業教育はありますし、大学段階でもあるわけでございますが、やはりだんだん人材の養成の高度化というのが、国内的にも求められていますし、国際的な関係でも、同一性、同等性などを考えますと求められている趨勢にあるのは確かでございます。そのために、私ども、いろいろな要請を受けて、こういう仕組みを御用意しようと。これをほかのところに強制するとか、こうしたらどうですかということを先生御心配のような形でするつもりは全くございません。
 ただ、先ほどちょっと御紹介申し上げましたが、既に専門大学院として、会計の分野につきましては中央大学でそういう修士課程の専攻が設けられてございますし、それから、先ほど財務省の次長の方はちょっと手持ちの資料がなかったようでございますが、私ども承知しているところでは、平成十二年の段階でございますけれども、大蔵省の公認会計士審査会での検討グループでの論点整理で、この専門職大学院の検討の動きを受けながら、会計に関する教育機関の設置についてもロースクールに相当するような専門のものを設けるべきじゃないかという意見もあったというのが意見の一つとして整理されているところでございます。
 ただ、そういう各界の御要望に応じて、こういう仕組みを活用しながらプロフェッショナルの養成をしていくというのは十分あり得ることではないかと思っております。
日野委員 だから私は文科省にやってもらうと嫌なんだよね、すぐ何でも取り込もうとするから。実際、これは文科省だけじゃなくてほかの省庁も似たようなところはあるけれども、やはりその職業人養成の課程には、それぞれずっと長い歴史を引きずりながらみんなやっているわけで、それが、こういうものがあるからというのでみんな管理の対象にされてくるということは非常に問題があると私は思いますので、文科省には、そんなことはしてもらっちゃ困るよということは強く私の方から言っておかなくちゃいかぬと思います。本当は、法曹の養成なんというのは法務省が誇りを持って今までやってきた、これからもやっていかなければならぬ仕事をもうすっかり文科省にとられちゃったでしょう。これは私は非常に嘆かわしいと思う。それで、余り時間もなくなってきたので、次、何か連合審査もあるようだから、そのときは大臣を徹底的に追及しますからね。
 一つだけ言っておきますよ。例えば適格認定の問題、それから第三者評価の問題、それから、法科大学院のカリキュラムまでつくっているわけだね。こんなのは大学にそれぞれ任せたらいいじゃないの。大学の自治との関係どうなっちゃうのよ、こう私は言いたい。ここまでやってはそれは行き過ぎだ。
 しかも、読んでみたら、何か横文字でわけのわからないことを書いてあるので、私なんか語学に弱いものだから、一体これはどんな意味だと思ってじっと中教審答申のその部分を見たら、後ろの方に注釈が出ているんだよ。日本語で注釈しなくちゃいけないような横文字を使うことないじゃないの。それは後でまた連合審査のときにちゃんと聞かせてもらうということで、きょうは私の時間はあと三十分ですから、そこのところはそっちに回します。
 それで、まず、きょうほかの委員たちも問題にしていたことを聞きます。
 法科大学院については、先生を何人にしろというところまで文科省がちゃんと決めてくれた。いや、えらいことを決めてくれたなと僕も思うんですが、先生はボランティアで来てくれるわけじゃないと思います。高い給料になる、こう思います。さてそうすると、それはもう当然授業料にはね返ってくるわけです。大体授業料はどのくらいかかるんだろう、これはみんな心配するわけですよ。この法科大学院のシステムを見て、あら、これは高い授業料になるよといって心配するわけだ。
 文科省で一応シミュレーションと称して、まあ、こんなものはシミュレーションと言うかどうかはわからぬが、大体試算をしてみた結果というのを私もちらちらっと見させていただいた。そうすると、百万以下というところもあるようだけれども、私が見たところで、百万以下なんかでおさまりっこない、大体三百万ぐらいかかるんじゃないか。一年間の授業料ですよ。そうしたら、三百万まではいかないで、上限大体二百五十万ぐらいじゃないか、こんなふうに言ったりしているんですが、私はかなりかかると思う。
 それに、生活費というものが入りますね。生活費が入る。それに、大体四年制の大学の学部を卒業して二十二歳、それから三年間ということになると大体二十五歳ぐらい、もう結婚適齢期、結婚もするだろう、そうするとお金もかかるだろう。子供ができる人もいるだろう、それにもお金がかかるだろう。お金持ちしかこれは入れないわ、こう思うことになりはしないか。これはみんな心配していましたね、さっきから。
 さて、どうするんです。そんなお金持ちしか入れないような大学になったら、これは大変です。どんなふうにするおつもりか。これは非常に政治的な部分を含んでおりますので、文科省の方の副大臣からちょっと構想を聞かせてください。お金持ちしか入れないような法科大学院にしないためにかくやりますよという方針、どうぞひとつ。
河村副大臣 委員今御指摘がありましたように、各大学でどのぐらいと考えているかというアンケートをとってみますと、百万以下というのもありましたが、二百万から三百万と答えた大学もかなりあるということですから、いわゆる修士課程に行くよりは高額になる可能性がある、こういうふうに想定されます。
 大学それぞれの判断でこれは設定していくでありましょうから、こちらの方から幾らにしろと言うわけにいかない面が多分にあろうというふうに思います。独法化します国立大学も、国が持つといいますか、設置者になってつくっていくわけでございます。そういう面で、恐らく授業料にはばらつきがあるだろうということであります。
 しかし、おっしゃるように、金持ちでなければ行けない専門職大学院、法科大学院であってはならぬという観点からも、文科省としては、特に奨学金制度、これをもっと充実させることが一つ。それからローン、それから私学助成、これも各法科大学院に対して考えていかなきゃいけないだろう。こういう構想で、これからの支援策につきましては、もちろん関係機関とも打ち合わせをしながら多元的に検討をしていかなきゃいけない課題である、このように考えております。
日野委員 きょうの午前中からの質問を伺っておりました。それから、本会議での質問も伺っておりました。そうしますと、皆さんおっしゃっていることがあるんですね。塩川大臣は本会議では、いろいろ検討させていただく、こんなことを言っています。それから、きょうの午前中の質問を伺っておりますと、全力を尽くします、心して努力をいたします、こう言っているんです。何とも抽象的なんだね、みんな。抽象的ですよ。まだ先のことだからと思って手を抜いていたら大変ですよ。すぐに来ますし、制度の設計なんというのはそんな簡単にできるものじゃない。
 それで、私も二十年以上もこの国会におりますと、努力をするとか、心してとか、全力を尽くしてなんというのは空疎な言葉だ、よく知っています。もうちょっと具体的に、まず財務省、どうなんですか、ここのところについては。もうちょっと具体的に財務省の方向性ぐらい示してもらわないと。
勝政府参考人 お答えいたします。
 法科大学院につきましては、現在、まさにその制度設計についての議論が行われているところでございまして、法科大学院の学生に対する国としての支援につきましては、今後具体化される法科大学院の実情を踏まえつつ、関係機関とも相談しながら検討してまいりたいと思っています。
 具体的な検討に当たりましては、司法制度改革審議会の意見書におきまして、「資力の十分でない者が経済的理由から法科大学院に入学することが困難となることのないように、」と指摘されていることを踏まえまして、片方では現下の厳しい財政事情等にも留意しつつ、真に重要と考えられる施策につきましては必要な予算措置を講じてまいりたいと考えております。
 以上でございます。
日野委員 それでは、文科省、どうですか。
河村副大臣 私はかねてから、奨学金等については、これは希望をすれば全部もらえるようにすべきだと。成績とかなんとかじゃなくて、希望したら奨学金は全部出すようにすべきではないかということをかねてから私、文科省にも言ってきた、政治家の一人として言ってきたわけでございまして、今回こうした形になってかなりの高額になるということであれば、それに見合うだけの奨学金を出すというのは私は当然だろうと一つは考えております。
 ただ、併用貸与の形でありますが、既に日本育英会でも、修士課程に対しては二百十五万から二百五十万程度のものを年額として出して、博士課程になりますと年額三百万という奨学金を出しております。平成十五年度もそれが出せるような形で、修士課程で二百六十万、それから博士課程で三百一万ということで今予算要求をしているような状況下にあります。
 それからもう一つ、この法科大学院をつくるについて、大学院だけのコースだとこういう問題もあるだろうということで、予備試験を経ますけれども、いわゆる今までのコースで来られた方々、その道も当然残しておくべきだ、いわゆる自学でやる道、この方法も残せという声もございまして、今回の制度設計の中にはその部分も残っておるわけでございます。
 だから金持ちでない者はそっちへ行けという意味では決してございませんけれども、そういうコースも残しながら、総合的に法科大学院が活用できるようにということの制度設計でなされておるわけでありまして、文科省としても特に奨学金の問題、それから、財務省等については、今答弁ありましたが、ローンの組み方等々についても、私はこれに対応できるものをちゃんとつくっていただくということが必要であろうというふうに思っておるところでございます。
日野委員 奨学金の問題、いろいろ出てきましたが、塩川大臣の本会議での発言も、これは日本育英会のことについていろいろ言っておられるわけですが、私は、育英会のような事業の拡充というようなものは、これは言うまでもなく必要だと思います。
 ただ、私、非常に気に入らないのは、これは文科省で一応の試算をやっているわけですが、今副大臣は、二百五十万、三百万という一応の数字をずっと挙げられたんですが、気に入らない点が一つあるんですね。
 文科省でやったのは、生活費が私立の場合は百十万六千円と計算している。大体百十六万とか百十七万とか百十四万とか、生活費をそんなところで計算しているんですよ。もうみんな御承知だと思う。その一覧表は、私も持っているくらいだから、皆さん当然ごらんになっている。
 大体、百十万六千円の生活というのはどういう生活でしょうね、これは。百十万六千円、十二で割るとどうなります。男でも女でも、ひとり者でもこれは厳しい。それに、結婚をする、そして子供も生まれるというようなことになってくると、ちょいとこれは計算の基礎がそもそもおかしいのではないかというふうに言わざるを得ないと私思うんですが、ちょっと御感想を。
河村副大臣 これは、シミュレーションする場合に、日本育英会などの奨学金、教育ローンそれから授業料免除制度、そういうものの中から出てきた学生の生活調査ということになっておりまして、委員御指摘のとおり、これは平均支出、平成十二年、生活費百十四万六千円が平均でありまして、国立が百十七万、これはどういうわけでしょうか、私立は百十万、私立の方が節約するのが多いんでしょうか、そういう数字になっておりまして、これに学費等を加えて二百万台の数字を出している。
 学生の生活費ですから、一般の家庭のそれとは違う。恐らくこれは下宿してということでしょうけれども、この中には自宅から通える人たちもおるでしょうから、そういうものの平均だろうと思います。私も子供、大学生を持っておりますが、一月十一万とか十万、家賃を含めればちょっと厳しい、相当厳しいと言ってもいい数字だろうと思いますが、これは恐らく自宅や何かのものも平均した数字で押さえてあるなという印象であります。
日野委員 私、特に文科省に集中的に聞いているのは、この法案の第三条第五項、「財政上の措置」、こうありますな。では、そのお金は、まず財務省がこれだけ出しましょうということになって、それはどこを通るかというと、文科省に行くだろうと思う。私は、これは法務省には行かないだろうと思うんですよ。法務省、どうですかな。答えられますか。このお金を主管するのは法務省じゃなくて文科省だろうと思いますが、どうですか。さあ、ここは非常に厳しいところだから、心して答えていただかなくちゃいかぬ。
工藤政府参考人 法科大学院にしっかりした教育を行ってもらうために、しっかりした大学院を立ち上げするのに必要な支援をする必要があるということでございますが、その支援のあり方としましては、今お話ありますような学生に対する支援、それは、奨学金、日本育英会のほかに、地方自治体でございますとかあるいは公益法人でございますとか、あるいは個々の大学で考慮している場合もございます。そういう奨学金のほかに、政府系機関などを含めました各種の教育ローンなどもあるわけでございます。
 そういう学生に対する支援のほかに、大学に対する支援ということもあります。さらには、本日もいろいろ御質問ございますように、実務家の教員を確保するために、法曹三者の御協力を得ながら、どういう形でそれを確保するかということも含めた支援のあり方もございます。
 それらも含めまして、私どもの省だけではなくて、関係各省が全力を挙げて、財政事情の許す限り支援を検討していかなきゃいけないというふうに受けとめてございまして、私どもの方としては、先ほど副大臣の方から御答弁申し上げましたように、奨学金の関係、あるいは私学助成を含める大学に対する直接の御支援など、充実方策を検討していかなきゃいけないと思っているところでございます。
日野委員 気持ちだけじゃだめです。もっと具体的な策を示さないと。
 私、財務省とそれから文科省に聞きます。具体的に聞きましょう。
 例えばアメリカでは、ロースクールの学生にアメリカの連邦政府の保証ローンをつくっているんです。日本ではどうですか。つくれませんか、つくりますか。
勝政府参考人 お答えをいたします。
 お尋ねの政府保証教育ローンの創設につきましては、民間でできることはできるだけ民間にゆだねる、あるいは適切な受益者負担が求められるという昨今の諸事情のもとで、種々の方策における国の関与のあり方を考えながらこれから検討してまいりたいと考えております。
工藤政府参考人 ただいま手持ちの資料がございませんけれども、アメリカの場合には、御指摘のように、格別ロースクールにというよりは、全体的に連邦政府の奨学金、それから各大学、特にアメリカの大学は結構個別に基金を持っている大学が多いものでございますから、各大学がそれぞれの御判断で奨学金を、かなり充実したものを用意していると承知してございます。
日野委員 奨学金だとか政府保証ローン、これは結構返しているそうです、アメリカあたりの実績は。結構返している。滞納率というのは本当にわずかだというふうに伺っていますから、日本も積極的にそのくらいやらないと、みんな予備試験にとられちゃうよ、これは。いや、まじめな話。予備試験の方がいいんですからね。
 では、時間がなくなっちゃったんですが、予備試験について伺いましょう。
 午前中も山崎局長言っておられたが、これは受験資格についての制限をすることはできませんな。
山崎政府参考人 受験資格制限はございません。
日野委員 そうすれば、高い授業料払って三年間も何も法科大学院に行っていることはないんですよ。それよりは、勤めて、企業法務の仕事でもしていた方がよっぽどいい。企業法務をやっている人たちにとって非常に有利な制度であることは間違いないんで、そんなことでもやっていた方がはるかにいいわけです。
 それと、予備試験の予備校、こっちの方がいいだろうと思うんですね。何しろ、教員の話はきょうはしなかったけれども、法科大学院の教員、これは恐らくかなりの数は、今まで大学で教えていて予備校との競争に敗れた大学の先生たち、それが入り込んでくるんですよ。まあ、何年間も同じノートで講義するかどうかは別として、まず、ひ弱な人たちが恐らくこの大学院の先生になって入ってくるだろう。
 最近、私、大学の先生方と時々名刺を交換して、何とか大学大学院教授という名刺を非常にいっぱい受け取ります。大学院教授になっている。それは、大学院の方にそういう人数を集めておけば、人数をふやしておけば、学部にいるよりはそっちの方に国から余計お金が出るという配慮なんかもあるんでしょう。ただし、大学院教授というのは非常にふえている。そういう人たちが先生をやっているところに三年間いるよりも予備試験の方に流れた方が、マーケットメカニズムからいえば、市場原理からいえばはるかに得ということになりませんか。
 こういうことについてはどうお考えですか。これは、もう大臣もその点については検討されておられるでしょうから、大臣からも伺いたい。それから、推進本部の山崎事務局長からも伺いたい。こういう問題についてどう考えているか。
山崎政府参考人 ただいま御指摘のとおり予備試験のルートもございますが、私どもが考えるポイントは、法科大学院は試験のためだけの学校ではないということでございます。先ほど来私申し上げておりまして、繰り返しで恐縮でございますが、やはり将来プロになったときにどういう専門性を身につけるか、そういうところの基礎を学べるということでございますので、将来を買うと言っちゃおかしいですけれども、そういうようなシステムでございます。
 どちらが魅力的かといえば、私は、時間がかかって金がかかっても、きちっとした将来の自分の設計ができるという方に魅力を感じますし、また、そういうものにならなければならないというふうに考えております。
森山国務大臣 この法案におきましては、法科大学院を法曹養成の中核的な教育機関として位置づけまして、その修了者に新司法試験の受験資格を認めるということとあわせて、新司法試験を法科大学院における教育内容を踏まえたものとする一方で、法科大学院を経由しない者にも法曹資格を取得する道を開くために、今お話しの予備試験というものを導入することにしたわけでございます。
 御指摘のように、法科大学院を経由しないで予備試験ルートを選ぶ方ももちろんあると思います。そして、その準備としてさまざまな学力獲得の方法がとられるであろうということも考えられるわけでございますが、法務省といたしましては、法科大学院を中核的な教育機関とする新たな法曹養成制度を構築するという今回の法案の基本的な理念にのっとりまして、新司法試験及び予備試験の内容に工夫を凝らしまして、制度が適切に運用されるように努めてまいりたいというふうに考えております。
日野委員 お二人とも同じことを言っているわけですが、願望としては私もわかる、それは。しかし、世の中はもっと厳しいものでございまして、お金も安く上がる、それから、予備試験に行けば時間もそんなにむだにしないで済むというようなことになれば、予備試験にどっと流れていくということは、これは防ぎようがないのではないかなんという感じさえ私はしております。
 予備試験というのは、私はなくせないと思う。それなら予備試験をやめたらいいじゃないかと言ったら、なくせないと思う。アメリカのロースクールなんかでも、司法試験の受験資格について、予備試験はなくせないんですね。
 よく言われることは、リンカーンも予備試験だった、こう言うんですね、リンカーン、あの人は、大統領になったから偉いんじゃなくて、法曹、弁護士としても偉いんですよ。我々がもってかがみとするに足る弁護士だ。あの人の反対尋問の技術なんというのは、今でも教科書になって我々が勉強するくらい偉い人なんです、あの人は。
 そういう人が予備試験だったから偉いというよりは、なくせないというよりは、私は、日本の制度として、もしこれをなくしたら憲法の問題が出てくるんじゃないかと思う。職業選択の自由との問題が出てくるんじゃないか。だから、この予備試験というのは絶対なくせない、私はこう思っているんです。
 ですから、午前中から、これが例外的な制度なのかどうかということについてお二人の議員から質問がありました。そして、それについては山崎局長がお答えになって、人がいい方々、いい人格の方々だったから、ああ例外ですな、例外ですな、こう言っていたが、私は例外じゃないと思うんです。この点、ひとつ確かめておきましょう。どうですか、局長。予備試験は例外なんですか、例外じゃないんですか。
山崎政府参考人 午前中から、原則なのか例外なのかとさまざまな角度から聞かれておりますけれども、私が申し上げているのは、法科大学院が法曹養成の中核であるということの位置づけをお考えいただければある程度わかるかと思いますけれども、それと、予備試験のルートは、法科大学院を修了したと同等の能力等を備えている、これをテストするという位置づけでございますので、趣旨はおのずとおわかりいただけるかと思います。
日野委員 同等の能力かどうか、これをどういう試験で一体チェックをするんでしょうね。私は、そういうチェックの仕方というのは非常に難しいと思う、チェックなんかできないと思いますよ。そうすると、まずその人のキャリアに重い比重を置こうじゃないかと。
 例えばこういうことをやっているんですよ。あのハーバードなんかでも、ハーバード大学の試験システムでは、その人がどういうキャリアを踏んできた人なのか、今までどういう社会に役立つような仕事をしてきたのか、それからスポーツなんかの実績はどうなのか、こういうことを試験のときにかなり高い比率で配分しているんですね。ジョン・F・ケネディ大統領、彼なんかはかなり水泳で実績を上げたのが高く評価されてハーバードに入ったんだなんて、これは政敵が言っていることだから、恐らく学業の成績もよかったんだろうと思いますが、そういう選考の仕方もあるんです。
 私、ちょっと気になるのは、先ほども言いましたが、企業法務をやってきた人たちがここに入りたいというニーズがあるんです。産業界ではそれを非常にねらっています。その企業法務に特別に高い点数を上げたりなんかするということは私は非常に問題があると思う。なぜなら、私は、先ほどから言っているように、大事なのは法曹倫理だと言った。私、自分の弁護士実務をやっていた当時、あきれ果てたことがある。こんな偽証を平気でやるやつらが企業の法務をやっているのかと、あきれ果てて激怒したことがある。
 私は、企業法務をやっている人たちというのは、そういった法曹倫理という点では非常に欠けるものがあると。これにもキャリアを重視しますよというようなことが書いてあるが、そういう企業法務なんかをやった人たちに高い評価をするようなことはよもやあってはいけないと思う。どうですか。
山崎政府参考人 予備試験に関しまして、どういう職業を経験した、あるいはそれ以外のどういう社会で経験をしたというのは、一切関係がございません。
 ただ、委員御指摘の点は、多分条文のところにそういうようなくだりがあるということで言われているのかと思われます。連携法と言わせていただきますけれども、その中でそういうくだりが記載されているところは確かにございます。ただ、これは、法律実務基礎科目でございますけれども、これに関して、法科大学院に行かなければ学べないものではない、ほかのところでも学べるよということを注書きしただけでございまして、そちらを有利に扱うという趣旨ではないということでございます。
日野委員 文科省もここの点はぜひ気をつけていてもらいたいというふうに私は思います。
 今の局長の言われたことはまさにそのとおりであって、実際の法曹の養成における法科大学院とよそから来た者では非常に違うということ、気をつけておいてもらいたいものだと思います。
 それから一つだけ、時間が来たようですからこれだけ聞いてやめますが、司法試験合格の中の比率ということはこの間も本会議でも問題にしていたわけですが、これについては、法科大学院と予備試験、これとの間には何の差別もないわけでしょう。差別もないというか、公平に取り扱うわけですね。つまり、これは法科大学院だからこっちの方は余計に採りましょう、これは予備試験だからこっちの方は少な目に採りましょうということがあるのかないのか。
山崎政府参考人 予備試験に受かった方と、それから法科大学院を卒業された方、いずれも司法試験を受ける場合には対等でございます。そこで数量の調整の余地はございません。
日野委員 これで終わりますが、不吉な予言を最後に。
 この法科大学院構想は、随分苦労して皆さんお考えになったが、この予備試験のところから破綻をしてくるであろうと私は思います。もう既に、予備試験用の予備校、こういったものの準備が進んでいるということを皆さんにお話をしておきたいと思います。
 終わります。
山本委員長 次に、枝野幸男君。
枝野委員 民主党の枝野でございます。
 私も同じような悪い予感をしている一人でありますが、質問に入る前に、ちょっと手続的なことで何点か申し上げておきたいことがございます。
 私は、政府委員制度廃止という国会改革の趣旨を厳格に守るべきだというふうに思っておりますので、政府参考人の御答弁は結構でございます。政治家だけお答えをください。
 二つ目。非常に細かいことなんですが、気がついてしまったので、御指摘だけしておきたいと思います。
 まず、この法案は司法制度改革推進本部という行政機関がつくられて提出しておりますので、この法案の説明をされるときの森山大臣は法務大臣ではなくて国務大臣ではないかということを御指摘をしておきたいと思います。それは、便宜上、お呼びになるときに法務大臣とお呼びになっても構わないと思いますので、それ以上申し上げませんが、実は、副大臣の方のこの法案にかかわるに当たっての立場というのが、ちょっと法律上の根拠に、立法上のミスがもともとあったのかなと私は思います。
 国務大臣は総理大臣の命を受けて、この法案はもともと法務省の長としての所管の法律案ではないけれども、国務大臣として総理大臣の指示を受けてここで御答弁される担当になるということは根拠法が内閣法としてございますが、幾ら調べてみましても、副大臣の方の職務権限といいますか職務の所掌は、「その省の長である大臣の命を受け、」というようなことで、省の長、行政組織の各部の長を補佐するという書かれ方でしか、少なくとも国家行政組織法等副大臣の位置づけをしている法律ではありません。したがって、法務省の長たる法務大臣から指示を受けて法務省の所管のことについて補佐するということについてはありますが、国務大臣としての森山大臣の命を受けてということについてはどこの根拠法に基づくことになるのだろうか、実はよくわかりません。恐らくこれは国家行政組織法の組み立て方あるいは内閣法の組み立て方の中のエアポケットではないかというふうに思いますので、これはぜひ政府として御検討をいただいた方がよろしいのではないか。きょうのところはすべて森山大臣にお答えいただけるということでございますので、そこの点については御指摘だけしておいて、先に進みたいと思います。
 きょうは厚生労働大臣政務官にもおいでをいただいていて、まずそちらからお尋ねをさせていただいておりますが、医師の国家試験制度について、参考のためにお聞かせをいただきたいということであります。
 医師の国家試験の受験資格は原則として大学の医学部の卒業というふうに聞いておりますが、それでよろしいのかどうか。また、そうなっている理由はどうなっているのでしょうか。
渡辺(具)大臣政務官 枝野議員御指摘のとおりでございまして、大学の医学部もしくは医科大学において所要の学問を修めた者であります。
枝野委員 そういう制度にしている理由は何ですか。
渡辺(具)大臣政務官 医師たる者として必要な学問を修めるにふさわしいところで学問をした、こういうことでございます。
枝野委員 それでは、大学の医学部の、医師たるにふさわしい教育を受けているという教育内容についての政府の責任者はどなたですか。
渡辺(具)大臣政務官 大学の医学部あるいは医科大学における教育に関しましては、これは文部科学省の所管となっておりまして、厚生労働省といたしましては、その教育に対しまして是正を指導するなど、そういう法的権限は与えられておりません。
枝野委員 それでは、お医者さんがしっかりとした技術、知識を持っておるかどうか、医師のレベルがしっかりしているかどうかということについての責任は政府の中のどなたにありますか。
渡辺(具)大臣政務官 それは医師の資格試験を行う役所であります。
枝野委員 先ほど大臣政務官は、医師にふさわしい教育を受けてきたかどうかということが必要だから、医学部卒業というのが原則として受験の要件だとおっしゃられた。だけれども、医学部教育の内容についての責任は厚生労働大臣はお持ちではない、文部科学大臣がお持ちであると。
 先ほどちらっと先走ってお答えになられたと思いますが、医師の養成をする上での教育にふさわしくないような教育をしている大学の医学部の先生、あるいは医師を養成する教育プロセスの中で教えるに値しないようなレベルの教育をしている、そういう大学、医学部の先生がいるということを厚生労働省、厚生労働大臣が気がついたときは何かできますか。
渡辺(具)大臣政務官 その問題の内容によりまして考慮すべきであって、単なる問題ということではその責任がどこにあるかは断定できないと思います。
枝野委員 いずれにしても、何らかの理由で、こんな医学部教育を受けて出てきた人に医師の国家試験を受けてもらっても困りますというような教育をしている大学がもしあったときに、それを医者のレベルを維持しなければならない厚生労働大臣が気がついたときに何かできますか。
渡辺(具)大臣政務官 先ほど申し上げましたように、大学の医学部あるいは医科の専門の大学における教育の法的権限は文部科学省にありますが、厚生労働省はその教育に関する法的権限は有しておりません。ただ、実態的に、大学におけるカリキュラムの内容等についての会議等については積極的に参加をしておりまして、医学教育の充実にも努めているところであります。
枝野委員 そのカリキュラムとか医学教育の充実等について、何か根拠になる法律はございますか。
渡辺(具)大臣政務官 特に根拠になる法律はございません。
枝野委員 それで支障はありませんか。
渡辺(具)大臣政務官 今の医学あるいは医制の状況においては、ある一定以上の医師が誕生している、教育されているというふうに考えております。
枝野委員 いや、それは現状としてそうなっているというだけであって、制度として、お医者さんのレベルは厚生労働大臣が権限を持っているんだけれども、教育は文部科学大臣なんですよね。その教育を受けてきていることが、受験要件にしているぐらい大事なことなんですよね。万が一、医学部教育が堕落をするような医学部があったとして、そこを卒業してきている人が医師国家試験を受けて合格をして入ってきてしまっては困るんですよね。そのことについて何の権限も厚生労働大臣はお持ちでないんですよね。何かそれは不都合は生じませんか。
渡辺(具)大臣政務官 そのことにつきましては、いろいろ具体的に問題があれば、あるいは多くの人よりそういう問題が指摘され、また役所でもそういう問題を把握すればそのような検討はあり得るかと思いますが、先ほど申し上げたように、今のところ一定以上の水準を持った医師が誕生している、こういうふうに考えております。
枝野委員 どっちから攻めても攻められそうなんですが、まずこちらから攻めましょう。
 そもそも、今日本のお医者さん、実は私の義理の弟も医者ですから、医師全体としては悪いだなんと言うつもりは全くありませんが、残念ながら不届きな行動をとる医者も少なからず、まあ医者は分母の数が大きいですから、いらっしゃいます。それから、残念ながら医療事故のことが最近大変深刻にいろいろなところで出ています。少なくとも、医師としての資格を与えるに値しなかったのではないかと思われるような人が、残念ながら医師の資格を持って紛れ込んでいる可能性というのは否定できないんじゃないですか。
渡辺(具)大臣政務官 具体的に何をおっしゃっているかよくわかりませんが、仮定の質問でございますのでなかなか答えにくくて、何かもう少し具体的な御指摘をいただければお答えしたいと思います。
枝野委員 いいですか、私は、具体論じゃなくてシステムの問題をお伺いしていて、どこかでこんな医療ミスがあったからけしからぬとか、そんな話をしているんじゃない。
 システムとして、厚生労働大臣には医学部教育について何の権限もないんですね。そうおっしゃっていますね。その医学部教育できちんとした教育を受けてくるということが前提になっているからこそ、医師国家試験の条件にしていらっしゃるわけですよね。ところが、その医学部教育でいいかげんなことが起こっていたとしても、厚生労働大臣は権限を何もお持ちでない。では、もしここで変なことが起こっていて、その人が試験を受けて合格して紛れ込んできたということは、抽象的には、システムとしてはあり得るわけです。
 しかも、現実のお医者さんに対しては、一人一人を見たら大部分の方はしっかりしているかもしれないけれども、少なくとも世間の中には、この人がお医者さんなの、困るわねと言われるような人が紛れ込んでいるようだと世間の認識はされているということも感じていらっしゃらないんですか。日本じゅうのお医者さん、全員医者として適切な人ばかり、一〇〇%ですとおっしゃるんですか。
渡辺(具)大臣政務官 医学部の学生の教育に関しては、文部科学省に法的には任せられておりまして、実態的には、先ほど申し上げましたように、大学のカリキュラムをつくる段階等におきまして積極的に参加をさせていただいて、また積極的な意見も言わせていただいて、そしてその後に医師として資格たり得るかどうかの試験を厚生労働省でして、そのシステムの中で今一定以上の医師がつくられている、そういうふうに思います。
枝野委員 つまり、先ほど何ら根拠になる法律はありませんとおっしゃった。法律は何もないけれども、実際はカリキュラムなどに口を出して適切になるようにおっしゃっている、やっているんだから、実際そこのところは問題はないという趣旨でございますね。そういうことでしたね。
 では、そこまでお尋ねをしておいて、厚生労働大臣政務官は以上で結構でございます。ありがとうございます。
 既にお気づきだと思いますが、医師養成システムについてお尋ねをしたのは、従来の医師の養成システムと非常に類似のシステムを法曹養成のシステムの中に今回取り入れようとしている。医師の場合は、医学部での教育というものが必要条件になって、そこを受けてこないと原則としては医師の国家試験は受けられない。その上で、試験を受けて合格した人が医師になる。しかし、基本的には、それは大学教育、学校教育ですから、教育内容については文部科学大臣が主管の大臣である。
 今度の場合も、大学と大学院の違いはありますが、医学部の場合、六年制ですから似たようなところがあると思いますけれども、法科大学院については文部科学大臣が所管をしている学校教育法上の学校であって、そこについては、後で細かく聞いていきますが、権限がないんじゃないか。それに対して、そこを出てきていることというのが条件になっている以上は、そこでの教育についてしっかりと、少なくとも法務大臣が一定の権限を持たないといけないんではないかという問題意識であります。
 そこで、まず伺っておきますが、法務大臣あるいは広い意味での法務省は、法科大学院の教育内容、こういう教育をするべきだということを決定する、あるいは、そこでの教育内容が適切なものが行われているかどうか、適切な水準が維持されているかどうか等について何か言う権限はございますか。
森山国務大臣 お答えする前に、一番最初に提起されました問題について一言御説明したいと思います。
 私は、司法制度改革推進本部の副本部長という立場で、この法案の提案に当たって国会に対する説明は私がするようにという総理からの御指示がございまして、それを受けてここでやらせていただいているんですが、その御指示がありましたときに、わかりました、法務省の副大臣と大臣政務官の協力をいただいてやりますというふうに申し上げまして、それを了承されたということでございますので、強いて根拠とおっしゃればそういうことにあろうかと思いますので、一言申し上げた次第でございます。
 それから、法科大学院のカリキュラムにつきまして法務大臣が何か発言することがあるのかというお話でございますが、カリキュラムをつくっていただく過程で意見を申し上げることは大いにあるというふうに思います。
枝野委員 まず、前段の話で、その話は伺っていましてよくわかっているんですが、総理から御指示を受けられた、しかも、この本部の副本部長である森山国務大臣は、法務大臣であると同時に国務大臣ですから、国政全般について、そもそも元来権限をお持ちである。その中で、特に総理から御指示を受けたから、法律的な根拠に基づいて総理から命ぜられたということになるんですが、実は、副大臣の立場についての根拠法は、私が知る限りでは国家行政組織法にしかなくて、そこには、先ほど申しましたとおり、「その省の長である大臣の命を受け、」つまり、法務省の長たる法務大臣の命を受けていろいろするということはあるんですが、内閣総理大臣から、国務大臣たる森山大臣に協力してあげてくださいとか、そういうことで命を受けるとか、それに基づいて何かするという法律的な根拠がないんです。
 だからしゃべっちゃいかぬときょう言っているわけじゃ、排除しますという話じゃなくて、一般的にそれは法の欠陥じゃないですかということで、ぜひ内閣官房などと御検討いただけたらいいというふうに思います。
 さて、それで本題の方ですが、そうしますと、御相談をされるとかという話がありましたが、基本的には法的権限はお持ちではないという理解でよろしいですか。つまり、例えば、もしこの法律が通って法科大学院ができました、どうもそこでやっている教育が、この間司法制度改革推進本部等でいろいろ議論をしてきた想定とは全然違った中身になってしまっているというようなことが生じた場合に、法務大臣は何ができるんですか。
森山国務大臣 先ほどから御指摘のように、法科大学院の教育につきましては文部科学大臣が所管していただいているところですけれども、新たな法曹養成制度におきましては、法科大学院を法曹養成のための中核的な教育機関と位置づけるところから、法科大学院について法令違反が疑われるような場合には、司法制度に関する企画及び立案を所管する法務大臣におきまして文部科学大臣に対して必要な措置を講ずるように求めることができるということになっておりまして、一定の権限と責任を有することになっております。
枝野委員 済みません。二つ教えてください。確認なんです。一つは、法令違反があった場合ですね、今のお話は。それから、それはどこに根拠があるんですか。少なくとも、今回提出されている法案ではないですね。今のはどこの法律に基づいてのことですか。
森山国務大臣 法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律案の第六条の三項でございます。
枝野委員 それは、要するに、特に必要があると認めたときは文部科学大臣に対し必要な措置を講ずることを求めることができるということですね。これが求められたら文部科学大臣はそれに従う法的義務がありますか。文部科学副大臣。
河村副大臣 委員お尋ねの法的な義務はございません。ございませんが、しかし、司法制度全体を所管する法務大臣と学校教育制度を所管する文部科学大臣が密接な協力体制を持つ、これがこの法科大学院の根幹にあるわけでございますから、法務大臣から御指摘があった点については、十分に意見を踏まえて、具体的に法科大学院の整備等に生かしていく、これは当然のことであろうというふうに思っています。
枝野委員 いいですか。そもそも抽象的、一般的な意味からいえば、内閣は一体なんですから、文部科学大臣と法務大臣、それは意見がいつも一致して同じように行動していただくという建前になっています。建前になっていますが、それは皆さんの立場からは否定するでしょうが、ついこの間までの竹中経済財政担当大臣と柳澤金融大臣は、同じような部分のところを重なって所管していながら、全然違う方向を向いて、私たちの予算委員会などでの質問に対してばらばらな御答弁をされていて、物が決められないで来ているんですよね。だからこそ、この六条三項の規定があるんじゃないですか。というような規定を置かなきゃいけないんじゃないですか。
 そもそも、内閣は一体でやっているんだから、密接に連携してやっているんだからということがあれば、こんな規定も置く必要はない。そもそも、法務大臣はとか、文部科学大臣はだなんて規定は要らない、内閣はでいいんじゃないですか。実際には、文部科学大臣が主務大臣としていろいろ行っていて、文部科学大臣の立場からやっていることと法務大臣の立場から見たこととがずれる場合があるから、こういう調整規定や調整のための法律をつくらないといけないということなんではないですか。違いますか。
山本委員長 どなたに聞いているんですか。
枝野委員 どなたでも。内閣の一員でいらっしゃいますから、一体でいらっしゃいますでしょうから。
山本委員長 法務大臣。
森山国務大臣 内閣が一体だということは当然でございますが、この法律案につきましても、特にかかわりの深い両大臣がそれぞれの立場で必要に応じて発言し、あるいは協議を求めるということができるように、念のため書いてあるものだと思います。
枝野委員 そうなんですね。もし一体でうまくみんな、一連の内閣、きちっとやっているんだということだとしたら、この法律自体が念のための法律にしかならないんですよね。この法律があるから、法務省の側、つまり司法制度改革の推進の側が、いや、文部科学省が好きなようにやるわけじゃないようにこういう法律をつくったんだという指摘が時々あるわけですよ。せっかくこの法律をなぜつくったかといったら、それは、学校教育は文部科学大臣だけれども、司法の重要性にかんがみて、司法の立場からちゃんと物が言えるようにこの連携等に関する法律も一緒につくったんだと、大変な成果であるかのようにおっしゃる方がいるんですが、要するに、念のためつくった法律でしかないんだということを私は強く指摘しておきたい。
 その上で申し上げますが、文部科学大臣が、この教育内容、カリキュラム等についての基本的な責任があるお立場である。さて、この間、司法制度改革については長年にわたってさまざまな議論がなされ、ロースクールについてもさまざまな議論がなされてきました。その従来の議論に基づいてロースクールが組み立てられ、ロースクール設置が認可され、ロースクールが運営されていくという根拠はどこにあるんですか、法律上の根拠は。
森山国務大臣 ちょっと御質問の趣旨がよくわかりませんが、もう一度おっしゃっていただけますか。
枝野委員 一般的には、例えば法科大学院を文部科学大臣が設立認可を与えるかどうかということについては、学校教育法の理念に基づいて認可が行われるわけですが、今回は、ロースクールをつくっていく、法曹養成をしていくという別の、もう一つの理念もあって、そのことも織り込んで新しい法科大学院は設立が認可されたり、文科省から指導を受けたりすることになるんではないんでしょうか。それには根拠になる法律をつくってあるんではないですかとお尋ねをしているんです。要するに、この連携等に関する法律の五条に基づいてそういうことがなされるということではないですかとお尋ねをしています。
河村副大臣 法科大学院のいわゆる認可といいますか設置については、学校教育法の設置基準に基づいてやる、ここが根拠になっておるわけでございます。
枝野委員 学校教育法の理念に基づいて、学校教育法に基づいて設置が認可されるというときには、この法務委員会を初めとして、司法制度改革推進本部などで従来いろいろ議論されてきたことがあります、ロースクールはこうあるべきであるということについては考慮されないんですか、されるんですか。
河村副大臣 御指摘は、当然考慮されるわけでありまして、この法科大学院を学校教育法上に位置づけるその根拠になった第一点は、司法制度改革審議会の意見において、法科大学院は法曹養成に特化した実践的な教育を行う学校教育法上の大学院とすべき、こういう指摘を受けてこの法科大学院を置くということになり、そのための学校教育法の改正に基づいてこれを設置するということになったわけでありますから、いわゆる司法改革の観点からこれを受けとめて法科大学院を置くという、法科大学院を置く理念というものは学校教育法の改正の中において当然生かされた形で設置される、こういうことであります。
枝野委員 先ほど来、わざわざ私、五条とまで申し上げているんですけれども、連携等に関する法律案の五条には、文部科学大臣は、法科大学院の教育課程の認証についての評価をするときに、その評価の基準については、この法律に書いてある基本理念を踏まえたものになるよう意を用いなければならないという規定がありますよね。少なくとも私が見る限りでは、学校教育法に基づく文部科学省の法科大学院に対するさまざまな権限行使に当たって、司法制度改革の理念について何かしなさいと書いてあるのは、まずこれが一つわかるんですけれども、これだけですか、これ以外にありますか。これは、主務大臣としてはむしろ法務大臣ですよ。この法律ですから、森山大臣です。
森山国務大臣 今文部科学副大臣が御説明になりましたように、先生も御指摘なさいましたが、この第五条にございますように、法曹養成の基本理念を踏まえて定められる法科大学院に係る設置基準を含む、を踏まえたものになるように意を用いなければいけないとありますが、その理念というのは、この法律の第二条にいろいろと書いてございまして、これは司法制度改革のときに議論されましたさまざまな問題点をここに列記しているというふうに思います。
枝野委員 では逆に、裏返してこういうふうに聞きます。
 文部科学大臣は、大学の設置の認可をするに当たっては認可基準をお持ちだと思います。認可基準をつくるに当たって拘束される法律は何ですか。
河村副大臣 これは学校教育法になるわけです。
枝野委員 学校教育法の中には、司法試験の理念にかかわるような法律の規定、条文はありますか。あるいは今回の改正でございますか。
河村副大臣 学校教育法にはございません。
枝野委員 物事を単純化しましょう。学校教育法以外に、文部科学大臣が設置認可の基準を設定するに当たって司法制度改革の理念を考慮しなきゃならないというような趣旨について規定している法律はありますか。
河村副大臣 それがありませんので、今回のブリッジ法によって理念がはっきりしたということであります。
枝野委員 このブリッジ法の中で、例えば設置基準をつくるに当たって、司法制度改革の趣旨、司法制度改革推進本部でこれまで繰り広げてきた議論、こういったことを踏まえなければならないという規定はどこにありますか。
河村副大臣 これは、二条に理念がありまして、五条にそのことを踏まえてとなっておりますから、それを受けて文部科学省は法科大学院をつくっていく、こういうことになるわけであります。
枝野委員 そうです。あるのは二条と五条だけです。
 しかしながら二条には、「法曹の養成は、」ということでいろいろ書いてありますけれども、例えば条文一号を読みますと、法科大学院は法曹養成のための中核的な教育機関ということで書いてある。それから、入学者の適確な評価及び多様性の確保に配慮した公平な入学者選抜を行うと書いてある。少人数による密度の高い授業と書いてある。将来の法曹としての実務に必要な学識及びその応用能力、法律に関する実務の基礎的素養を涵養するための理論的かつ実践的な教育を体系的に実施すると書いてある。確かに理念はきちっと書いてある。
 問題は、これは森山国務大臣だと思いますが、この間、司法制度改革推進本部をつくる過程、そしてつくられた中で議論されてきたのはこんな抽象的な話だけですか。具体的に、実務家の教員の割合がこれぐらいなくちゃいけませんねとか、そういうことを議論してきたんじゃないんですか。
河村副大臣 先ほどの質問の中で、さらにこのブリッジ法、連携法の「国の責務」という第三条がございます。この第一項で、法科大学院における教育の充実並びに法科大学院における教育と司法試験及び司法修習生の修習との有機的連携を図る責務を有して、そして、第三項において「国は、」こうあります。国が、法科大学院における法曹である教員の確保とか、あるいは教員の教育上の能力の向上のために必要な施策を講ずる、関係する審議会等における調査審議に法曹である委員を参画させる、こうありまして、ここで明確になっておるというふうに私は思うんです。
枝野委員 今の私の質問には。
森山国務大臣 もちろん、司法制度改革の審議会の皆さん方は、いろいろ具体的な議論もなさいまして、かなり御意見がまとまっておりますが、さらに詳細なことにつきましては、この法律を認めていただきました後で、政令、省令等で決めるということになると思います。
枝野委員 それを決めるのは学校教育法での学校の設置基準ですから、文部科学大臣がお決めになるんですよね。
河村副大臣 そういうことであります。
枝野委員 実は、これはむしろこのロースクールを推進していた人たちに聞かせたい話なのです。要するに、今までいろいろな細かいことまで議論して、実務家の教員をどれぐらい確保するとかいろいろなことを議論されてきています。その中に、法務大臣は少なくとも当事者としてどっぷりとつかっていただいているから、その議論の経緯も全部踏まえた上で、あるいは広い意味での法務省という意味でも踏まえてそれはおやりになるんだろうなという一定のプロセス上の信頼があります。
 しかし、実際にどの程度の教員をどう配置する、どうカリキュラムを組ませるというような設置基準をつくるのは法律上文部科学大臣なのであって、そこに対してさて法務大臣は何ができるんですか、司法制度改革推進本部は何ができるんですか。読んでみると、意を用いなければならないとか抽象的ないろいろなことは書いてあるけれども、今までの議論で、一定比率はともかくとして、従来の大学の先生が横滑りするような話ではもうだめですよねなんという大事な話が延々議論されてきているんだけれども、それを担保する何かあるんですか。
河村副大臣 この法科大学院というものは、いわゆる教育機関の一つとして重要な位置づけでありますから、これを設置するについては、中央教育審議会においてこれまでも議論をしてきたし、これからもする部分があるわけでありますけれども、いわゆる法務省の担当者にもそこへ入っていただいて意見を述べていただいておりますから、その中で法務省側の意見というものがそこへ十分入ってきておるというふうに考えております。
枝野委員 そうなんです。文部科学省のつくった輪に法務省に参加していただくという場のつくり方なんです。基本的に司法改革は、当事者としての法曹三者、最高裁判所と検察庁・法務省、そして弁護士、そして、もちろん当事者のギルド的なことになってはいけないから外部の人たち。法務省はそのワン・オブ・ゼムでしかないんです。ワン・オブ・ゼムでしかない。法曹三者と言われたときに、法務省は三つのうちの一つでしかない、三分の一でしかないんです。ところが、この文部科学省のつくった枠組みの中に入っていくのは法務省でしかないんです。中央教育審議会に弁護士会の代表、最高裁事務総局の代表を入れるつもりはありませんよね。
河村副大臣 法科大学院の問題について特に意見を求めなきゃいかぬということであれば、当然そういう措置はされる。例えば分科会であるとかそういう形でやれると思いますが、中央教育審議会の全体の中には代表的な方にもちろん入っていただくことは現実にありますけれども、そのことに特化してやる場合には、その分科会なりそういうものをつくってそこでやることになるというふうに考えます。
枝野委員 結局、私の申し上げたとおりなんですよ。当事者はあくまでも文部省で、文部省のつくったテーブルの上に、法務省のあるいは司法改革の御意見聞かせていただきましょうであって、今までの司法改革、ロースクールをつくってやっていかなきゃならないという議論を、将来を見据えて考えてつくってきた人たちとは離れていって、今までやってきた人たちの意見は、御意見は御拝聴します、たくさんいる委員の中に何人かはお入れしますと。全く主導権が変わってしまうんだということを、これはむしろ、法務省にというよりも、日弁連あたりに強く言わなきゃいけない話として、指摘をしておきたいというふうに思います。
 この同じ流れの中で、もう一点。先ほど来言っている五条、法科大学院には適格認定をする、法科大学院評価基準をつくって第三者機関で評価をする、これがあるからそこでの教育内容の水準は大丈夫なんじゃないかというようなことを言っているようでありますが、この第三者認証評価機関は、だれが、どういうふうにつくったり認めたりするんですか。
河村副大臣 このメンバーの決定の最終は文部科学大臣が責任者になるわけであります。
枝野委員 第三者認証評価機関があるから大丈夫だと言われているんですが、その第三者認証評価機関というのは、連携法の五条二項に書いてありますが、基本的には学校教育法に基づいて、法科大学院のためにつくられるんじゃなくて、大学、大学院一般のレベルをきちんと維持するための第三者機関としてつくられるのです。文部科学省が、文部科学省の視点から、評価機関として認定できるかどうかということが行われる。
 この認定について、一般的に大学、大学院の評価機関として適切であるかという基準のほかに、法科大学院だからということで特別扱いをするつもりはございますか。
河村副大臣 これは、六条の三項等に、法務大臣と文部科学大臣との関係が述べてあるわけでありまして、当然、法科大学院に係る設置基準の制定、改廃、あるいは認証基準の制定、改廃、あるいはその評価を行う者の認証することと取り消し、こうした重要事項については法務大臣の意見を聞くということになっているわけであります。
枝野委員 法務大臣の意見を聞くですよね。法務大臣の責任じゃなくて、文部科学大臣の責任でお決めになるわけですよね。
 もう一回、さっきの医師の養成の話のところで聞いた話と同じようなことを聞きます。
 この新しい制度ができ上がった後、司法試験に合格して研修を受けて出てきた法曹の中に、こんな人を何で司法試験合格させてしまったんだろうというような人間が出てきてしまったときの行政上の責任者はどなたですか。
森山国務大臣 そういう不適格な人が合格しないように、十分注意したいと思います。
枝野委員 今の話は、政治的な御答弁としてはいいんですけれども、論理的にはなっていなくて、私が申し上げたいのは、司法試験をこれから所管する司法試験委員会は法務大臣のもとに置かれるわけです。そして、その司法試験を受験する条件として、司法試験を受けるための中核的なプロセスとして法科大学院をつくります。目玉なわけです。ところが、その法科大学院においてどういう教育が行われるのか、その教育のレベル、中身、そういったことについての責任者は文部科学大臣ですね。念のため確認します。
河村副大臣 文部科学大臣であります。
枝野委員 今回の、ロースクールを中核に置く、法科大学院を中核に置く、それが受験資格だということを中核にするということは、そこでの教育が的確に行われているということを前提に司法試験が行われて、適切な時代の要請に合った法律家が出てくるという仕組みを組んでいるわけです。その責任は、主務大臣としては法務大臣なんです。
 ところが、その中核を占めるロースクールの教育内容についての責任者と権限は文部科学大臣で、法務大臣は、先ほど来申し上げているとおり、繰り返しやっているとおり、意見を述べることができるけれども、あくまでも文部科学大臣なんです。権限のないところに責任は発生しないと思うんですが、いかがですか。
森山国務大臣 最終的には、司法試験の責任者は、法務大臣のもとに置かれる司法試験委員会でございまして、責任がどこにあるかとおっしゃられれば、どういう人が合格するかという点については法務大臣の責任であると思います。
枝野委員 ロースクール教育についての権限はないんですよ。権限はないけれども、最終的には責任は法務大臣にあるんですよ。やはり権限のないところに責任を与えちゃいけないんですよ。権限のある人に責任を負ってもらわなきゃいけないんですよ。それが当たり前じゃないですか。当たり前のルールじゃないですか。
 法務大臣のもとに置いた司法試験委員会。司法試験委員会は、試験そのものの実務をやったりとか、法律的なことをやるということであれば、政治的、行政的責任の責任者はやはり法務大臣。その法務大臣が担当大臣としてこのロースクールの法律を出してきた。当然、ロースクールについての権限と責任も法務大臣がお持ちにならなければ、責任の所在があいまいになるんじゃないですか。
森山国務大臣 おっしゃるような関係がございますので、意見を申し述べるということができるようになっているわけでございます。
枝野委員 必要な意見を言うだけだったら、例えば野党の国会議員でも、こういうところで必要な意見を述べることはできるんですよ。先ほど、ついぽろっとおっしゃったんでしょうが、言わずもがな、確認みたいな趣旨のことをおっしゃいましたとおり、意見を言うだけでは権限ではないし、そこに責任が発生するものではないんですね。
 そこのところの視点から、もうちょっと似たような視点で、別の角度からお聞きをしてみたいんですけれども、設置基準は文部科学大臣がおつくりになる。大学の設置というのは認可ですよね。認可ということは、条件を満たしたら認可をするんですか。それとも、条件を満たしたものがたくさんあるときは、数を少し抑制しなきゃならないという判断を含めるんですか。どっちですか。
河村副大臣 数を幾つまでにするというようなことではなくて、基準を満たせば認可するということであります。
枝野委員 したがって、法科大学院の数、法科大学院の全部合わせた総定数がどれぐらいになるかということについては、文部科学大臣はコントロールしようがないわけですね。
河村副大臣 これは、設置基準を満たしておればこれを認可するという方向でありますが、文部科学省としては、これまでの、いわゆる法曹人口、今後の定数の問題、そういうことを考えながら、認可について、数的に基準はいたしませんが、そういうことを踏まえた上で、各地域において今検討されておるのではないか、そのように考えております。
枝野委員 ちょっと待ってください。認可制というのは、基準を満たしたら法律の制度として認可をする義務があるんじゃないですか。だから、思いもかけずたくさんのところから認可してくれというオーダーがあったら、これでは多過ぎるなと思っても、基準を満たしていたら認可しなきゃいけないんじゃないですか。違うんですか。
河村副大臣 そういうことになります。
枝野委員 したがって、ロースクールを出た人の何割ぐらいは司法試験に合格するような制度にしようかだなんて議論をさんざんしてきました、五割がいいのか、七割がいいのか、その議論は全く成り立たないことになりますね、森山大臣。
森山国務大臣 しかし、大学院の教育の内容につきましても、法律の中にもちょっと触れておりますけれども、少人数教育でやるべきであるということ、それからその他、実務家の教員をたくさん集めなければいけないとか、いろいろなことがございますので、先生が御心配なさっていただくように、非常に多くの人が条件にかなった申請を出してくるということは、実際問題としては少ないのではないかと思います。
枝野委員 そんなことがコントロールできないんじゃないですかということを申し上げているんです。逆に足りないかもしれないじゃないですか。法曹人口を少なくとも一年間で三千人合格という話をしているのに、総定数が全国を合わせたって二千しかなかったなんてこともあり得るわけじゃないですか。それは、少なくとも制度としてはやってみないとわからない仕組みじゃないですか。そこを行政指導的に何かまたごちゃごちゃとやって調整するんですか、法律の根拠なく。
 だから、わからない制度をつくっているわけですよ。もしかすると、ロースクールにみんなわっと人が集まるから、金あるからばっともっとつくろうというようなところが出てきたっておかしくないわけですし、それはもう全く法律的には、制度としての組み方としては根拠ない話なわけです。
 しかも、そうだとすると、両方あり得るわけですけれども、ロースクールを出たらほとんどみんな合格するということになるかもしれないし、ロースクールは出たけれどもという話になるかもしれないし、これは制度をスタートしてみてからでないとよくわからない。適切な程度になるかどうかというのは、偶然とは言わない、やはりいろいろなマーケットメカニズムも働くのかもしれないけれども、しかし、これは我々が意図してできるものではない。
 ということになると、さあ司法試験、どうなるんでしょう。例えば、ロースクールを出た人の何割ぐらいが司法試験に合格するような制度を組もうかといろいろな議論がありましたが、明確な答えはたしか出していないんだと思います。
 ロースクールを出た人は八割、九割が大体合格するぐらいの設定で例えばたまたま法科大学院ができ上がったら、それは恐らく、法科大学院でちゃんと授業を受けていればまあいいかなということになるかもしれない。
 九割、十割、十割とはならないでしょうが、九五%ぐらいは合格するような試験になったらどうなりますか。とりあえず落第させられない程度にしておけばいいわな、そんなものですから、幾ら一生懸命授業をやっていただいたって、ほとんど全員がそこで合格するんだったら、やはり人間は手を抜きますよ。そうですね。
 逆に、半分ぐらいしか受かりませんねという仕組みになったらどうなりますか。当然のことながら、学校で隣に座って、少人数で教育を受けている隣の人がライバルになるんですから、学校で受けている授業だけじゃやばいよねと、しかも競争試験になりますから、当然、今までと同じように予備校へ行って勉強しようという人が出てくる。
 結局、よほど偶然運よく定数の八割ぐらいが合格するような総定数にならないと、このシステムはそもそも機能しないんじゃないですか。
森山国務大臣 おっしゃるように、あらかじめ何人が、何%ぐらい入って、そして何人ぐらいが受験をして、その何%が合格するというようなことを決めることはできません。やってみなければわからないと、おっしゃったとおりでございます。ですから、法科大学院の数につきましても、国が規制して決めるのではなくて、法科大学院相互の切磋琢磨、競争の中で、教育内容の十分なものが生き残り、不十分なものが淘汰されていくということになるのではないかと思います。
 また、法科大学院の中では、厳格な成績評価あるいは修了認定等による厳しい選抜が行われるというふうに承知しております。
 なお、新司法試験につきましては、受験資格を法科大学院修了者及び予備試験の合格者ということにしておりますので、受験者の滞留による弊害を防止するための方策として、受験回数の制限ということも導入するつもりでございます。
 こういうことから、法科大学院の数を抑制するといったような過度の規制を行わなくても、現在の司法試験のような過度に厳しい競争試験となるということを避けることができるのではないかと思います。
枝野委員 今、現在の司法試験は過度に厳しい競争試験とおっしゃいましたけれども、そもそも、何でこの制度、つまりロースクール構想というのが出てきたんですか。
 だんだん時間がなくなってきたので、こちらからいろいろ一方的にしゃべりますが、今の司法試験の制度を、数が足りないというんだったら、合格者の数をふやせばいいんですよ。合格者の数をふやしたらレベルが下がるというのは非常に形式的な硬直的な議論で、なぜならば、私の周りでも、弁護士になりたい、裁判官になりたい、だけれども、今の合格率のこの試験では、大学四年生では受からないかもしれない、一年留年で五年生ぐらいでは受からない確率の方が高い、だから、力があるし、意欲もあるんだけれども、これは四年で普通に卒業しておいた方がいいよねといって、適性、能力があるのにあきらめていった人がたくさんいるんですよ。
 合格者がふえて、合格しやすい試験になれば自動的にたくさん受かるからレベルが下がるだなんていうのは、机の上の計算ですよ。むしろ、もっと当たり前に四年生、五年生で受かる試験にした方が、意欲と能力のある人がばんばん受けてくれてレベルが上がるかもしれない。そんなことはやってみないとわからないことなんですよ。
 だから、ロースクールを入れるということの唯一根拠があるとすれば、予備校競争になっているということや、あるいは、プロセスを大事にする教育をしましょうということです。でも、プロセスを大事にする教育をするんだったら、予備試験はどうなるんですか。別のルートで勉強してもそのプロセスと同等ぐらいのことはできるという前提だから予備試験を入れているんですよね。そうですよね。そこの部分だけ。
森山国務大臣 ロースクールを卒業した人と同じような能力を持つ人がほかの方法でもあり得るということから考えられたことです。
枝野委員 いいですか。大学がなぜ予備校に負けたか。私は、この委員会でも、申しわけないけれども、少なくとも法曹実務家養成という意味では、試験に合格するテクニックだけじゃなくて、法曹実務家養成の教育のレベルとしても、大方の司法試験予備校の方が今の大学教育よりもよっぽどいいと明言をしておきます。
 なぜそうなるか。大学や大学院は、競争が限定されているんですよ。設置基準があって、文部省から設置していただいて、認可していただいたら、そこには補助金も一般的には出て、間違いなく、かなりのレベルで競争が限定されているんです。
 ところが、司法試験の予備校は民間ですから、いい教育をしなかったらだれも来てくれないんですよ。だから、予備校の方がいい授業をやってきた、少なくとも私が受けたときには。いや、大学は大学で、僕は大学で受けた教育は別の意味で感謝しています、意味があったと思っていますけれども、法曹実務家養成としては、私は九五%ぐらい、予備校の教育がよかったせいで司法試験にも合格したし、そのときに受けた教育のことをベースにして、その後の法律家としての実務もしたし、今、法律家の視点から政治活動をしているんです。それは明らかなんです。競争がこっちの方が激しいから、いいものを提供しなきゃいけないのは決まっているんです。
 テクニックだけで受かる試験なんかやってきたんですか、今までの司法試験委員は。もしそうだとしたら、今までの司法試験委員は物すごい責任を感じてもらわなきゃいけない。司法試験は、テクニックだけで受かるような簡単な試験を出しているんですか。全然違うと私は思いますよ。単に暗記して、大事なところだけ覚えたら答えられるような、そんな生易しい試験を出していないです。
 法科大学院をつくった、予備試験もある。予備試験だったらもっと早く受かるかもしれない。予備試験をまさか競争試験にはできないですよね、予備試験の性格上。同等の力を持っている者に与えるんですから、同等の力を持っている人がロースクールの定員の倍ぐらいいたら全部合格させなきゃいけないですよね、予備試験の制度として。うなずいていらっしゃいます。
 そうすると、そちらの方が競争が激しい分だけ一般的にいい教育をしますから、競争の激しくない、しかも、誘導尋問みたいなことだったら申しわけないんですが、適度の定数になります、その適度の定数の中の法科大学院に入ってしまったら、それなりの、みんな来てくれるわなという競争の激しくないロースクールと、どちらが合理的な教育をするんですか。競争の激しい方だと答えないと社会主義ですよ。この国は資本主義、自由主義の国なんですから、自由競争の方が、少なくともサービスや物品の提供、供給という意味では、競争のあった方がいいものを出すというのが、かつてのソビエトや中国や北朝鮮と違って、我が国が資本主義、自由主義だということの意味じゃないですか。
 明らかに、この制度をつくっても、やはりみんな予備校の方にがっと行く、そういう仕組みになりますよ。そう思いませんか。
森山国務大臣 法科大学院も、先ほど申し上げましたように、設置することは、それこそ基準に合っていれば認められるわけですので、予想以上の数になるかもしれません。しかし、その中で実際に実績を積み重ねていって、淘汰されていくものは淘汰されていくでしょうし、また、学生自身も厳しく査定をされて、大変勉強もきちっとしなければ卒業できないということになりますと、おのずから、そういう先生のおっしゃるような問題点は避けられるのではないかというふうに思います。
枝野委員 避けられるんだったら、今までの大学教育の中でこんなに予備校に侵食されずにやってきているんですよ。みんな、高校を卒業して法学部に入った人のかなりの人は、弁護士になりたい、法律家になりたいという意欲で法学部に入る人が一定比率いますよ。
 そこで、大学で、普通は、授業を受けてきちんとやっていれば四年で卒業して受かる人もたくさんいるんです。少なからずいるわけです、現実には。だけれども、実は大学で受けている教育よりも、予備校、ちょっとお金かかるけれども行ってみたら、そっちの方がよっぽどわかりやすい教育をしてくれていて、大学では何かよくわけのわからぬことしかやってくれない。だからみんな予備校行って、予備校を通じて司法試験に受かってきているんです。
 今までの大学は、では司法試験に必要な素養は教えてきてなかったんですか、そんなことないですよね。必要な素養を教育しようとしてきたけれども、別のところの方がいい教育をしているからみんなそっちに流れていった。同じ轍を今回も踏むことになりますよ。
 踏むことになるだけだったら別にいいんです。どうせ法科大学院つくったって、みんなやはり予備校行って、よりわかりやすく教えてくれる人たちから教えてもらって、それで合格するだろう。それはそれで全然構わない、その限りでは。だけれども、二つ困ったことがある。一つは、今までよりも金と時間がかかる、間違いなく。二つ目、大学の既得権を守ることになる。
 現に、この間の大学の動きというのは、良心的な意味で頑張らなきゃいけないなと動いていらっしゃる方もあるかもしれないけれども、トータルとしては、法科大学院ができたら、そこに学生が集まってくれないといよいよおれたちの地盤沈下がしてしまうから、頑張って法科大学院をつくらなきゃなという競争をわっと一斉に始めているじゃないですか。
 だから、もし法科大学院、ロースクールというプロセスを大事にする教育をしなきゃならないと本気で思っているんだったら、ロースクールの入試自体を司法試験的な、資格試験的なものにして、そこに合格した人を、つまりロースクールで今の司法研修所教育のようなことをやる。
 司法研修所のように全部税金で賄いなさいということだとなかなかたくさんつくるということはできないでしょうけれども、三千人、四千人定数で、学校教育法上の学校、大学でなければ大学の自治という問題はありませんから、かなり国で厳格な監督をした教育内容、カリキュラムを組んで、それで運営は民間があってもいいかもしれないけれども、司法試験に合格した何千人という人をそこで実務的なトレーニングをする。それで、卒業のときの二回試験も一定のレベル、水準を維持するということの方が、私は現実的なロースクールの組み立て方だと思う。
 残念ながら、この制度を組めば間違いなく大失敗に終わるということを法曹三者に対して、決してこれは実は法務省の責任だけだとは思わない、法曹三者それぞれに対して強く警告をして、質問を終わりたいと思います。
 以上です。
山本委員長 次に、木島日出夫君。
木島委員 日本共産党の木島日出夫です。
 今回の、法科大学院を設立し、これを法曹養成制度の中核に据えるという制度変えは、戦後半世紀を超えて形づくられてきた我が国の法曹養成制度を根本から変えるという中身であります。
 そこで法務大臣に、まずその理念、趣旨をお聞きしたいと思うんです。
 昨年六月十二日の司法制度改革審議会の意見書は、このように述べています。「新たな法曹養成制度の整備」「司法試験という「点」のみによる選抜ではなく、法学教育、司法試験、司法修習を有機的に連携させた「プロセス」としての法曹養成制度を新たに整備すべきである。その中核を成すものとして、法曹養成に特化した教育を行うプロフェッショナル・スクールである法科大学院を設けるべきである。」
 そこで、まず法務大臣に、この意見書の改革の基本的理念は何か、どう受けとめているのか。根本問題ですから、しっかりとした答弁を求めます。
森山国務大臣 先生御指摘のように、昨年の六月に出されました司法制度改革審議会の意見は、お読みになっていただいたとおりでございまして、これからの日本の国民のさまざまな場面において法曹に対する需要が一層増大している、多様化、高度化もしているということから、高度の専門的な能力及びすぐれた資質を有する多数の法曹を養成する必要がある。したがって、その養成のために、従来にはなかった法科大学院というものをつくって、プロセスを大事にした養成をしていこうではないかということでございまして、その構想がこの法科大学院に実ったというふうに考えております。
木島委員 今の答弁は、質のよい法曹を大量に必要としていると、量の問題を言いましたね。そういう需要、我が国社会の要求に対して、現行の司法試験と司法修習制度では追いついていかないという認識だということですね。それは具体的にどういう点をいうのでしょうか。
 それともう一つ。それだけなんでしょうか。量だけの問題なんでしょうか。今回、半世紀を超えて根本的な法曹養成制度の変革をやろうとするのは、単なる量だけの問題、そういう認識なんでしょうか。その二つ。
森山国務大臣 もちろん量だけではございませんで、数もたくさん必要ですけれども、あわせて内容についても、質の面でもさらに高度で多様なものが求められるということを考えております。
木島委員 では、その具体的理由の根幹。細かい話は私きょうは聞こうとしませんし、やりとりしようとしません。現行の点のみによる選択であるいわゆる司法試験、そして一年半の司法修習、これでは量的にもついていけないと考えている根本理由を述べていただきたいのと、今の仕組みでは法曹の質的にはもうだめなんだと考えている、どういう部分なのか、具体的な中身ですね。それは政治家としての大臣の答弁でも結構です。非常に大事な根本問題ですから、答えてください。
森山国務大臣 今の司法試験あるいはその後の修習という仕組みでは、もちろん立派な方も出てはおりますけれども、最近の傾向といたしまして、試験の、受験の技術ということにかなりウエートが置かれて、受験生本人もそうでありますし、また大学の方も、大学だけではなくて大学の教育とはまた別に別のことをやってもらわなければいけないと初めからあきらめているような面もあるのではないか、私は個人的にそう思っているわけでございます。
 そのために、先ほど来もお話が出ておりましたような塾とか予備校というようなものがはびこりまして、その中でいろいろな受験技術は身につけて、そしてその結果受かるという人が時々というか、しばしば出てくるようになったということでございまして、これから求められております法律家、弁護士さんも裁判官も検事も同様でございますが、法曹の皆さんは、そういう方ではなくて、より広い視野から、より一層高い理想を持ち、かつ現実の実務にも大変詳しいというような、多くのことが求められるわけでございますので、そのような専門的な職業人として十分な教育がされ、そしてその結果、幅広い教養を身につけ、かつ判断力その他、多角的な能力を持った法曹が新しい法曹の担い手として出てきてほしい、そういう考えでございます。
 ですから、今までの、長年やってまいりました司法試験というものも決して否定はいたしませんけれども、その弊害が目につき始めましたので、それを何とか改めていきたいということから、基本的に養成のやり方を考え直そうということでこのようになったというふうに思っております。
木島委員 実は私も、戦後の全く公平、平等、開放された司法試験と、裁判官、検察官、弁護士になろうとする者が一つの器に入って統一、平等の修習を受けるというこの戦後の司法修習制度は大変いい役割を果たしてきたと考えているわけでありますが、五十年を過ぎて、今日まで推移を見ていますと、やはりそれはもう今日の実態は限界に達していると考えているわけであります。
 司法制度改革推進本部から出された数字をちょっと見ますと、昭和二十五年から三十五年までは、出願者数は四けたであります。二千五百から八千三百台であります。合格者が約三百。それから、昭和三十六年に出願者が一万人台に乗りました。昭和四十五年に二万人台に乗りました。平成十年には出願者数が三万人台になる。今年、平成十四年は何と、出願者数がウナギ登りに上って、四万五千六百二十二人です。合格者数は、五百人台になったのが昭和三十九年です。ずうっと五百人台が続いて、七百人台にしたのが平成五年、そして御案内のように、平成十一年に合格者千という数字です。
 ことしの状況を見ますと、出願者数が四万五千六百二十二人、受験者数が四万一千四百四十九人。ほとんどすべての皆さんは本当に一生懸命法律を勉強した方々であろう。そして、合格者が仮に千二百人といたしますと、そのパーセントたるや、本当に二%強という状況なんですね。やはりその矛盾というのはもう耐えがたいところまで来ているんだろうと思うんです。
 ですから、私は、司法制度改革審議会の意見書にある、法学教育、司法試験、司法修習を有機的に連携させ、プロセスとしての法曹養成制度を整備する、そしてその中核に、学校教育法なんでしょうが、法科大学院というのを据えるということは賛成です。
 問題は、その理念、趣旨が貫徹されるような法科大学院の制度創設をしなきゃならぬ。そしてそれに連携する司法試験、あるいはもっと言うと司法修習もその理念にしっかり沿うように制度設計をしなければならぬ。気持ちはそういう気持ちだけれども形がそれに伴わないようであったら、これは破綻すると思うんですね。
 それで、幾つか問題点を質問します。
 最大の問題は、何といっても、午前中、午後、ずっと同僚委員から質問をされた、司法試験受験資格に法科大学院の修了者だけではなくて、言葉は悪いかもしらぬけれども、いわゆるバイパス、予備試験合格者に対等、平等な形で司法試験受験資格を付与したという、この問題だと思うんですね。
 それでお聞きします。基本問題です。
 司法試験法第四条、司法試験の受験資格について、法科大学院修了者だけではなくて、司法試験予備試験合格者にも受験資格を対等、平等な形で付与した、こうしたバイパスをつくったその根本的な趣旨、理念は何なんでしょうか。
森山国務大臣 予備試験は、法科大学院を経由されない方々にも法曹資格を取得する道を開きますために、法科大学院修了者と同等の学識、能力を有するかどうかを判定いたしまして、その合格者に新司法試験の受験資格を認めるという試験でございまして、そのような趣旨でございます。
木島委員 司法制度改革審議会の意見書によりますと、なぜそういうバイパスを残すのかの趣旨が書かれているんです。こういう言い方をしているんですね。「経済的事情や既に実社会で十分な経験を積んでいるなどの理由により法科大学院を経由しない者にも、法曹資格取得のための適切な途を確保すべきである。」
 だから、法科大学院修了者のみが司法試験受験資格を得るということが基本であり中核だけれども、経済的事情とか実社会で十分な経験を積んでいるなどの理由でたまたま法科大学院を経由しない者にも司法試験を受ける資格を与え、法曹への道を開いてあげよう、そういうことを意見書は言っているわけです。
 そして、問題なのは、意見書はこう述べています。「このため、後述の移行措置の終了後において、」移行措置というのは、中途ですね、だんだん法科大学院修了者がふえていく、その移行期ですね。「終了後において、法科大学院を中核とする新たな法曹養成制度の趣旨を損ねることのないよう配慮しつつ、例えば、幅広い法分野について基礎的な知識・理解を問うような予備的な試験に合格すれば新司法試験の受験資格を認めるなどの方策を講じることが考えられる。」
 要するに、法科大学院があくまでも中核なんだ、そういう法曹養成制度の趣旨を損ねないように配慮してバイパスをつくるべきだというのが意見書の根本的考えなんです。
 そこで、お聞きします。
 今回の政府から提出された三法、つなぎ法、司法試験法改正それから学校教育法の改正、これの中に、この意見書が言うような、新たな法曹養成制度の趣旨を損ねることのないよう配慮しつつやれと指示されたわけですが、どんな配慮がなされているのか、具体的に答弁願いたい。
森山国務大臣 御指摘のように、予備試験について、法科大学院を中核とする新たな法曹養成制度の趣旨を損ねることのないようにという制度設計が求められておりますが、今回の法案におきましては、法科大学院修了者と同等の学識、能力等を有するかどうかを判定する試験としておりまして、法科大学院を中核的な教育機関とする新たな法曹養成制度の趣旨に沿った制度設計としております。
木島委員 再々午前中からそういう答弁ですが、問題はそうじゃないんですよ。法科大学院を中核として新しい法曹養成制度をつくるんだと。しかし、それだけで全部埋め尽くしたんじゃだめなんで、先ほど言ったような経済的事情等によって法科大学院は出れないけれども、入れないけれども、物すごい能力があって、実力があって、法曹たるにふさわしいと判定できるような人には、予備試験をやって、司法試験受験資格を認めてあげようじゃないかと。しかしそれはあくまでもバイパスであって中核ではないという位置づけでしょう。そういうふうに配慮しろというのが意見書なんですよ。
 ところが、この意見書を実行する今の段階において、与党内の論議も私、知っています。自民党の一部の皆さんの中には、このバイパスを太くしろ、せめて法科大学院修了者から半分、バイパスである予備試験合格者から半分、将来三千の合格者ですか、半々ぐらいにしていいじゃないか、自由競争をさせて、どっちか負けたらつぶれてもいいじゃないか、そういう極論をする意見もあるわけです。しかし、そういう論では、法科大学院を中核とする新しい法曹養成制度の趣旨を損ねてしまうということじゃないんでしょうか。
 その認識を法務大臣に聞きたいんですよ。そこの根本問題なんですよ。
森山国務大臣 確かに、意見書では、先ほど来御指摘のような内容で、また私が申し上げたような趣旨を十分酌んだ上で制度設計をいたしておりますが、この問題についてはいろいろな御意見がございまして、先生御指摘のような議論が今なお大変にぎやかなところでございます。
 しかし、これは最終的に新しくやる司法試験の結果を見てみなければわからないのでございまして、まだ法科大学院もスタートしておりませんし、まして予備試験もやっていないわけでございますので、どのような人たちが何人ぐらい、どちらを受けるかというようなことが全くわかりません現段階におきましては、これについては何ともコメントのいたしようがないというふうに思います。
木島委員 現在既にもう、この法律が成立することを前提にして、全国の各大学や弁護士会では法科大学院設立のための準備が進んでおります。
 ちょっとどなたでも結構ですが、アンケート調査もしているようですから、現在どのくらいの数の法科大学院がつくられようとし、その定員、一年間何人ぐらいが法科大学院修了者として吐き出されてくるのか。どんな状況なのか、概略でいいですから教えてください。
清水政府参考人 お答え申し上げます。
 司法制度改革推進本部が、かつてアンケート調査を行っております。御案内のように、その時点では百校を超える大学が構想を有しているというふうな話でございます。
 私どもの方として、今、具体に各大学の準備状況について申し上げるのはなかなか難しい面もございます。現段階で、私どもに逆に相談に来ているということで申し上げますと、いろいろな形で私どものところに、ちょうど中央教育審議会で、例えばあり得べき設置基準というのはどういう形であろうかということを中間報告を出し、先般答申もいただいたところでございますが、そういう照会、相談等の件数を申し上げれば五十件程度、五十大学というふうなことでございます。
 ただ、個々の内容については、私ども、それで何名というのはまだ集計を特にいたしておりません。
木島委員 まことにそれはアンケートのとり方が非常に不十分じゃないですか。
 大体四千から五千近い定員がつくられようとしている、あるいはつくりたいという願望も含めて、地方の大学は苦労していますよ。しかし四千ぐらいの、法科大学院の一年間の定員というぐらいで準備が進んでいるとお聞きしているわけです。
 そうしますと、それがそのとおり、設置基準が満たされて設立が認められて運営されていきますと、毎年四千人が法科大学院から修了者として出てくる、みんな一生懸命勉強したとして。そして将来、司法試験の合格者は三千にしたいというわけでしょう。大体感じはわかるじゃないですか。一方、法科大学院以外のルートですね、ことしでも四万五千人が出願して、四万一千四百四十九人が受験しているわけですから。
 では、全国の法学部の数というのはどのくらいあるんですか、一応それを聞いておきましょう。法学部は、何人ぐらい一年間に卒業生が出てくるんですか。数字だけで結構です。
清水政府参考人 法学系の学部、学科も含めますと四万四千人ということです。
木島委員 決して現在の日本の法学部卒が法曹に行くわけではありません、ほんの一部です。それは前提にしても、現在、司法試験を受験しようとする子供たちがこれだけいるという状況ですね。
 そうすると、やはり制度設計をどう考えているのか、ロースクールからどのくらい受験者が出てくるのかというのは大体想定できるわけですから、それで割合を聞きたいんですよ。五分五分なんという意見もあるわけですが、三千人の司法試験合格者を想定したときに、想定でいいですよ、ロースクール卒業生を大体何人ぐらいを想定しているのか、ロースクールを通らないバイパスの予備試験受験生がどのくらい出てきて、何人ぐらいが合格するだろうと見ているのか。その大きな制度設計が一番大事なんですよ。
 先ほど同僚委員から、今のこの仕組みだったら予備校が大きくなって、そっちの方が力が強いから、必ずロースクールは淘汰されていくだろう、そうしたら、この制度の趣旨は根本から破壊されていくだろうと指摘されているわけで、現実的な指摘ですよ。私もそう思いますよ。その制度設計がしっかりなければね。それでお聞きしているんです。
森山国務大臣 先ほども申し上げましたように、これから始める話ばかりでございますので、今の段階で最終的に予備試験とロースクール卒業生が何%ぐらいであろうということは、せっかくの御質問ですけれども、お答えいたしかねるわけでございます。
木島委員 本会議での答弁もそうですね、想定できないというわけです。
 私は、本当にそれは無責任だと思うんです。そんな無責任な立場でこの戦後五十年続いてきた日本の法曹養成制度の根幹を変えるなんというのは、法律の提案者として無責任だと私は思うんですよ。それは無責任だけじゃなくて、意見書が皆さんに制約を課した、今回の法曹養成制度改革の趣旨を損ねちゃいかぬぞ、配慮しなさいという、その根本に背くことになるんじゃないか。どうですか。
森山国務大臣 大変難しい御質問でございまして、配慮せよとおっしゃることに十分に配慮しながら、できるだけよいロースクールをつくっていくように努力したいと思っておりますが、そのロースクールがまだこれから始まるわけですから、今文部科学省の方から、五十件ぐらいの相談があるとおっしゃいましたけれども、実際に基準が示されて、それを満たすことができるのがどのぐらいあるかということも、ちょっと見当が今のところまだついておりませんし、予備試験に至ってはさらにもっとはっきりいたしませんので、この段階で申し上げるのは非常に難しいということを御理解いただきたいと思います。
山崎政府参考人 先ほど来の御質問でございますが、予備試験ルートから来る人と法科大学院のルートから来る人のそれぞれの合格の、採用する比率を問うているんだろうと思いますけれども、この予備試験を受かった人とロースクールを修了した人、これは全く自由競争の世界でございますので、これはもう実力主義でございますので、どちらからどの程度入るということは全くございません。それはもう実力次第ということでございます。
木島委員 そうなんですよ。ロースクールから来る人にしろ予備試験から来る人にしろ、受験資格を与えられた以上、同じまないたの上で司法試験を受けるわけですから、それに片一方が有利なような点数のつけ方はできないのは、憲法十四条からいって当たり前なんです。
 問題はそうじゃないんですよ。要するに、何人ぐらい生み出そうとしているのかということなんですよ。いわゆる予備試験合格者イコール司法試験受験資格を付与される者を年間何人ぐらいつくろう、あるいはつくる気がないのかということなんですね。
 逆に、法務大臣、こういう聞き方をしましょう。もし万が一、こういう新しい制度をつくり出してロースクールは立ち上がった、五年、十年進んできた、しかし一方、司法試験を受けたいという人たちもますますふえてきた、景気が悪くて法曹になりたいという人が、ロースクールなんか行く気はない、しかし勉強したいという人はますます日本でふえてきた、その数が減らないということで、今おっしゃったように自由競争の世界で司法試験が行われた、それで、予備校へ行って予備試験に合格して司法試験受験資格を取る、そっちの方の数がどんどんふえていって、全体の司法試験合格者の三千人のうちの二千人を超えてしまうような状況が生まれたときには、それは、皆さんが言う、あるいは司法制度改革審議会の意見書が言うロースクールこそが新しい法曹養成制度の中核なんだという理念で出発する、それが失敗したという評価をされる、そういう認識でいいですか。仮定の質問ですが、大事なところなんですよ。
森山国務大臣 そういう仮定もあり得ると思いますけれども、私どもの考えとしては、プロセスによる養成ということで、判断力とかディベートの能力とか議論の方法とか、そういうことにもかなりの重点を置いた教育をロースクールはするつもりでございますので、そのようなことを踏まえた上での同じ能力を独学で、あるいは塾といいますか予備校などでにわかにはつけにくいのではないかというふうに思いますと、最終的な司法試験の受験の内容あるいは合格する条件も、法科大学院で身につけたもの、それを頭に置いた上で、そのような判断基準で合否を決めるということになるんであろうと思いますので、先生のおっしゃるような仮定は非常にありにくいことだというふうに思います。
木島委員 私は、率直に言いまして、本当に皆さんが考えているようなロースクールの理念が生かされ、少人数で非常にいい教育がされた、そして生み出された人の持っている力、法律技術や受験技術は余り高くないかもしらぬけれども、法律の根本、社会の根本に対する物の見方や問題の解決の基本、そういう非常に大事な部分はしっかり身につけた、これは理念型ですけれども、ロースクール出身者と、純粋に法律技術を徹底的に頭に入れる、大事だと思うんですよ、もうほとんど法律は身についちゃったという、受験校を通過してロースクールは出ない、そういう人とは基盤が違うんじゃないかと私は思うんですよ。私はどっちがいいという評価はしません。しかし、基盤が違う。その基盤が違う二種類の受験生を、皆さん方が出した法律ですと同一にして自由競争なんだというのは、私はちょっと違うんじゃないかなという問題提起だけはしておきます。
 それで、皆さんのこの法曹養成制度の改革の理念を本当に生かそうと思ったら、そしてこの審議会意見書が指摘しているようにロースクールを新しい法曹養成の中核に据えようと思ったら、やはりバイパスは数を絞らざるを得ないんだろう。予備試験合格者の数と言ってもいいです、予備試験合格者の数を最初から絞り込まない限り、私は失敗すると思うんですよ。
 それで、お聞きします。
 例えば、将来、三千の司法試験合格者をつくろうとしたときに、バイパス、予備試験合格者はもう一割にしちゃえ、毎年三百人しか予備試験合格者はつくらないというような制度を設計しようとしたら、それは憲法違反になるんでしょうか。あるいは、そういう意思は今のところ全然政府の方にはないんでしょうか。
森山国務大臣 先ほど来申しておりますように、法科大学院の修了者と予備試験の合格者というのは同等の資格で平等に新司法試験を受けるということでございまして、あらかじめその割合を決めるようなことは大変難しい、今申し上げにくいということを言いましたけれども。
 特に、予備試験におきましては、法科大学院修了者と同等の学識、能力を有するかどうかを判定するわけですが、その内容といいますか、条件が新しい司法試験法の第五条に載っておりまして、これにもございますように、短答試験や論文試験をやった後、口述試験もあるわけでございます。口述試験は、筆記試験に合格した者について、法的な推論とか分析、構成に基づいて弁論をする能力などを有するかどうかの判定に意を用いて、法律実務基礎科目について試験をするというようなことが書いてございまして、これだけではまた抽象的というおしかりを受けるかもしれませんが、そういう点に特に注目して、それを重視しながら予備試験についても判定していくわけですので、先ほど私が申し上げましたように、予備試験の受験者が予備校その他でいわゆる受験技術を身につけたというだけでは簡単には合格しにくいと思いますし、さらに、そちらの部分ばかりが非常に多くなって、この制度がそもそも破綻するのではないかという御心配はないのではないかというふうに思っております。
木島委員 だから、私はそれが甘いんじゃないかと思うんですよ。
 この予備試験の制度設計を見ると、現行司法試験と余り変わらないですよ。行政法と一般教養科目が入っているだけですよ。憲法、民法、商法、民訴法、刑訴法、刑法、現行司法試験受験生はそれを徹底的に勉強して、四万数千人が受験しているわけですから、それに行政法と一般教養科目が入るだけですよ。だから減らないですよ、これは。
 ということで、減らない限り、対等、平等の司法試験に入れたら、二年、三年のロースクール出身の人たちよりは、司法試験のあり方というのは非常に難しいし、わけのわからないものなんですが、自由競争だと最後は点数でつけざるを得ないわけですね、点数でつけていったら、予備試験合格者組の方が上に来るのではないか。そうすると理念が壊れていくんじゃないか。もうその論争はやめます。そういう非常に大問題がある。
 識者の皆さんは、やはり原点を忘れるなと。これはことしの八月二十六日の朝日新聞の社説ですが、「改革の原点を忘れるな」と。バイパスの拡大は改革の理念を真っ向から否定するものだという厳しい指摘もある。そういうことを主張する多くの学者もおられる。今の答弁を聞いている限りは、私は安心できないですね。
 さっきのを答えていただけませんか。もし予備試験合格者の数を年間二百人、三百人と絞ることは憲法違反になるかどうか。
山崎政府参考人 憲法違反になるということはございません。
 ただ、どのぐらいの数を限定するかとか、そういう点につきましては、やはりこれは、どのぐらいの能力があるかということでございますので、あらかじめ決めることはなかなか難しいはずでございます、試験でございますので。あらかじめ少なく設定して、本当に優秀な方がその三倍も四倍もといったときに、では全部それを振り落とすのかということにもなりますし、それから、あらかじめ多く設定しておいて、非常に点数は悪いんですけれども枠をとった以上合格させるということになってもおかしいわけでございますので、そのときの受験者の成績の状況、これで本当に法科大学院を修了したと同等と見られるかどうか、そのラインで線を引いていくというしかないと私どもは思っております。
木島委員 運用で数を絞っていくというやり方なんでしょうが、非常にそれは受験生にとっては過酷な話じゃないでしょうか。予備試験受験者が四万人もいた、しかし、ことしは政策判断で五百人にしてしまえと。それはできますよ、点数が上からずうっとついてくるわけですから、足切りの点数を上げればいいわけですから。しかし、どういう理念でバイパス、予備試験合格者の数を決めるかがわからないまま、時の司法試験委員会というんですか、その人たちのさじかげんで、ことしは五百にしよう、ことしは千にしよう、ことしは三百ぐらいにしようなんということをやられたら、予備試験の受験生はたまったものじゃないと私は思うんです。
 だからこそ私は、この法案審議の中で制度設計をしっかりつくる、ロースクールを中核に据える、あくまでも予備試験は補足にすぎない、補足といえば言葉は悪いけれども、念のためのバイパスにすぎないんだというならいうで、数でもうきっちり、憲法違反でないというのなら、透明性を持たせた方がいいんじゃないかというふうに意見は申し上げておきたいと思います。
 そこで、問題は、法科大学院が法曹養成の中核になりますと、今度は、私は次の問題は、法科大学院へ志望者が殺到するという現象もこれは考えておかなければいかぬと思うんですね。日本の法学部卒が四万数千人いる。今回の制度設計は、法科大学院というのは、法学部出身者だけじゃなくて医科系も来てほしい、経済学出身者も来てほしい、間口が広がるわけですね。そうしますと、問題は、次に法科大学院の入学者選抜について出てくると思うんです。
 審議会意見書は、法科大学院の入学者選抜に関しては、公平性、開放性、多様性を確保すべしと指摘をしております。そこで、この意見書が言っているような法科大学院入学者の選抜の公平性、開放性、多様性というのは何なんでしょうか。法科大学院の受験生に関する合否の判定の基準、要素は何なんでしょうか。
 適性試験で見ると書かれております。法律の知識ではない、法律学の学識ではなく、法科大学院における履修の前提として要求される判断力、思考力、分析力、表現力等の資質を試すものが法科大学院入学者選抜の適性試験なんだと書かれております。これは余りにも一般的、抽象的で、判定に恣意性は生じないんでしょうか。公平性がどのように担保されるんでしょうか。まずお聞きします。
清水政府参考人 法科大学院の入学者選抜については、各法科大学院が入学者選抜を行うわけでございますけれども、御指摘のように、意見書では、適性試験を受けるようにというふうなことになっているわけでございます。要するに、法律学の知識だけではなくて、その履修の前提として必要とされる判断力、思考力、分析力、表現力等の資質を有するかどうか、つまり、法学部、法学以外の出身者あるいは社会経験を有する者を入学させるに当たって客観的公平性をどれだけ確保していくかということの中で、一つの適性試験の活用というのが提案されている、こういうふうなことでございます。
 客観、公正というのはなかなか難しい概念でございます。入学者選抜については、時に客観、公正の呪縛が、あえて申し上げると過度の点数主義となる危険性というのもあるわけでございます。そうではございますけれども、いずれにしても適性試験は選抜のための重要な資料になる、そして、適性試験とあわせながら各法科大学院においてさまざまな形で、将来の法曹としての先ほど申し上げたような資質を有するか否かを判定していくということになろうと思っております。
 ただし、適性試験について、まだなかなか成熟していないということもありまして、これは基本的にいろいろな形での関係者の協力あるいは調査研究あるいはデータの蓄積等が必要になってくるだろうというふうに考えております。
木島委員 非常に難しいし、わからない。
 例えば、今想定されているのは、東大なんかは三百人の定員の法科大学院をつくろう、早稲田も三百人の定員の法科大学院をつくろう、地方のローカルのところでは、五十とか六十とか、そういう定員の法科大学院をつくろう、そういう手がずっと挙がっているわけですね。
 今、東大法学部は、たしか六百三十ですよ。そして、この意見書等を読みますと、設置法学部、東大のように法学部があり法科大学院をつくろうとしているのを設置法学部、それと、他大学、他学部卒業生の割合、社会的経験を積んだ者の選抜、一定割合はよそから入れなさいというふうに書いてあるんですね。一定割合というのは何人ぐらいを想定しているんですか。それをしっかり文科省の設置基準か何かで書き込むつもりですか。そこはもう大学院設置者の自由に任せちゃうんですか。自由に任せちゃうと、もう一定割合なんか入らない、自分のところの法学部卒業で全部法科大学院の入学者が埋まってくると私は思うんですが、どうなんですか。
清水政府参考人 意見書の趣旨を踏まえまして、法学部以外の出身者等を一定割合以上入学させる措置ということで、いろいろ論議がされております。例えば二割以上というふうな幅を持たせてはどうか、こういうふうなことでございます。
 今お尋ねは、設置基準等で担保するのかというふうなお話であったかと思っておりますが、このあたりについては私どもまだ、まさに法案をお認めいただいた後に設置基準をということでございますが、基本的に、設置基準としては、やはり改革審意見書にございますように、いわゆる客観、公正で、その趣旨を満たすように、一定の他学部出身者や社会人等を積極的に受け入れるようにということを何らかの形で書き込むのかな、ただ、数的な割合まではどこまで設置基準の段階で示せるのかなというところ等を検討している最中でございます。
木島委員 それはちょっといかぬですね。やはりそこはしっかり枠をあけておかないと、とてもじゃないけれども、東大、早稲田、京大、中央、自分のところは法学部たくさん抱えているわけですから、その卒業生を全部自分のところの大学院に入れるような状況になってしまいますよ。ましてや、他学部の学生たちを入れたい、よその地域の出身者を入れたいなんというふうにはならぬわけですから、そんな答弁では私納得できぬですね。
 では、次。審議会意見書には、法科大学院の全国的な配置、展開の問題ですが、「関係者の自発的創意を基本にしつつ、全国的な適正配置となるよう配慮すること」とあります。先ほど全般的な設置準備の状況を聞きましたが、私が一番心配しているのは、地方になかなかできないんじゃないかということなので、適正配置に今準備状況はなっているでしょうか。
 それと、意見書には、夜間大学院とか通信制大学院を持つような法科大学院をちゃんとつくって、昼間働く人たちにもこういう道を開けということが指摘されておりますが、事前のアンケート等によりますと夜間大学院や通信制大学院をつくろうと考えている大学あるいは設置予定者がどのくらいあるのか、教えてください。
清水政府参考人 先ほどお答え申し上げましたように、私どもに今相談に来ている中で、お尋ねのありました、例えば社会人等を対象として、夜間といいますか、いわば昼夜ということでございますね、例えば夜間もあるし、週末には昼間もという形で、昼夜という形で御構想をお考えになっているものも伺っております。
 ただ、それが今幾つぐらいか、いろいろな形でのそれぞれの可能性を模索しておられるということでございますので、幾つということはまだ申し上げられるような状況ではないというふうに考えております。
 全国的な適正配置ということについてでございますけれども、先ほど意見書を御指摘いただきましたように、教育水準の確保というものを前提としながら、さまざまな形での関係者の創意を重要にしていこうということで、そういうことでございますと五十件程度、これがかなり全国的にも広がりを見せているということは御相談いただいているのでも申し上げられるというふうに思っております。
 私どもとしては、基本的には、やはり法科大学院がその理念というものを生かせるような水準の確保というものを目指して、それぞれ多様なカリキュラム、工夫を行ってもらいたい、そういうものを全体として、適正配置も配意をしながら支援していく、そういうふうなスタンスでございます。
木島委員 適正配置の問題や、夜間大学院、通信制大学院、昼夜大学院と言うんですか、そういうものを本当にきちっと確保しようと思ったら、これは、私はやはり自由競争に任せたのではできない部分だと思うんですね。東京一極集中になりますよ。そうはいっても地方は苦しいわけですから、先生方を確保することだけできゅうきゅうとしているわけですから、そういう点で、この適正配置の問題ではかなり思い切った行政主導にせざるを得ない。しないと、本当に東京だけに集中してしまうということを懸念するんですが、そういう行政主導にするつもりはあるのかないのか、答弁ください。
清水政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほどお答え申し上げました私どもに相談の来ている部分で、ある程度少し分類してみますと、そのうち東京圏が約四割。これは学校数ということでございます。(木島委員「数は」と呼ぶ)数、ちょっと今手元に持っておりませんが、四割……(木島委員「大学の数だけじゃ困るんだ。定員なんだ」と呼ぶ)定員について集計はしておりません。
 四割ということで、大阪圏も入れると五割、六割近くというふうな状況で、まさに先生御指摘いただきましたような、そういうことは念頭に置きつつ、私どもは、基本的には、関係者がまさに水準を満たし、これはある意味で大学のこれまでの教育の意識改革というものを前提に伴わないと成功しませんので、そういうものを求めつつ、まさに御努力をぜひしていただきたいというふうに考えておりまして、今の時点で、例えば私どもがここにはこれだけなければならないというような形でそういう指導を行っていくというふうな考えはありません。
木島委員 これは、地方に本当に必要な法科大学院を設置するのは大変な作業です。それだけに、私は、裁判所にしろ法務省にしろ、教員の面で本当に万全の協力をするということをやらないと、気持ちがあってもできませんからね。全力を尽くして支援していただきたいという要望だけは申し上げておきたいと思います。
 それから次に、法科大学院に対する第三者評価制度、認証評価制度についてお聞きいたします。
 文科大臣は、さきの十月二十九日の衆議院本会議で、複数の評価機関が設立されることがあり得ると答弁をいたしました。きょうも質問に答えておりますが、法科大学院について、具体的にどのような評価機関を複数想定しているのか。数とか構成とか、それからまた、法科大学院評価基準、調査権限、どのようなことを想定しているのか、お聞きします。
清水政府参考人 第三者評価機関につきましては、機関の方から認証の申請をしていただくということになります。
 そういう意味で、第三者評価機関として今検討されているというふうに私どもが承知しておりますのは、大学評価・学位授与機構が検討を行っていると承知しておりますし、また、日弁連の関係団体においても第三者評価をやることについて検討されているというふうに承知しております。
木島委員 学校教育法の改正法案六十九条の三第三項によりますと、定期的に認証評価を受けるものとすると規定されております。
 この法科大学院に関する認証評価、定期的とはどのくらいの期間にするつもりですか。もう固まっておりますか。
清水政府参考人 今、五年に一度というふうな期間で検討しておるというふうな状況でございます。
木島委員 一番関係者が心配をしているのは、この第三者評価で自分の大学院修了者の司法試験合格率が低いということが評価の対象にされたらかなわぬなということなんですが、その心配はどうなんでしょうか。
清水政府参考人 第三者評価を行うに当たっての評価基準自体はそれぞれ評価機関が策定するということになるわけでございますが、基本的に、法曹養成、まさに司法制度改革のこの法科大学に寄せられた理念というものに即した形の事項について、きちんとそれぞれ評価基準を策定していただくということになろうというふうに思っております。
 基本的に、そこの中で評価といいますか、例えば合格率の状況等について、その大学院における状況を全体として把握するための資料としてあれするのは当然あり得ることだろうというふうに思っておりますけれども、そのことによって認証評価が、全体としてそれで評価されるということでは必ずしもないだろうというふうに思っております。
 つまり、この改革の理念を生かした多様な特色ある法曹養成への真剣な取り組みを評価し、基本的には、教育の質、まさに教育の機能の質、システムというものをきちんと改善できるようなそういう評価であり、また、場合によりましては、合格率がたとえ低くとも、特色ある、しっかりしたそういう法科大学院がきちんと社会的にも評価されるというふうな意味で、私どもとしては認証評価制度にも期待しているところでございます。
木島委員 いろいろ問題がありますが、きょうは財務省も呼んでおりますので、最後に一点だけお聞きします。
 今回の法科大学院構想の現行司法試験制度との根本的な違いは、資力がないといかぬ。今の司法試験制度は、自分の生まれ育った家が全然金がなくても一生懸命勉強すれば合格する、それがいいところなんですね。そこで、資力のない者にも門戸を閉ざさない、そういうシステムを本当につくれるかどうか、これが大事だと同僚委員からも再三質問がありましたから、繰り返しはいたしません。
 そこで、財務当局に具体的にお聞きをいたします。
 法科大学院について、特別の貸与制度というのをつくることを認めますか。
 二つ目。国民生活金融公庫の貸出上限が二百万じゃないか。さっき、二百六十万という答弁も聞きましたが、しかし、現実には、法科大学院、私学の場合は授業料だけで年間二百万かかる。生活費が百万かかる。ですから、国金の貸出上限をせめて四百万から五百万にしてもらわないと大変だ。そうしていただく予定ありますか。
 それから、不足部分の補充として、民間活用型の政府保証ローンの創設をすべきだ。これは、先ほど一部答弁もいただいたようですが、本気になって政府保証の民間ローンの創設を財務省は認めるという立場に立っていただきたいと思うんですが、その三つだけ、具体的な要望ですが、答弁願います。
村瀬政府参考人 お答えいたします。
 御指摘の国民生活金融公庫の教育貸し付けにつきましては、先生御案内のとおり、昨今の行政改革の流れの中で、昨年十二月に閣議決定されました特殊法人等整理合理化計画におきまして、民間でできることは民間にできるだけゆだねるという原則のもとに、政策的に必要性の高いものに限定して、規模を縮減するというふうに定められました。こうした御指摘を踏まえまして、貸付規模を縮減するという観点から、本年四月より、貸付対象者の所得上限額を引き下げております。
 教育貸し付けの貸付限度額の引き上げというのは、こういう流れの中で、教育貸し付けの規模拡大等につながるということから、政策金融機関の改革の観点からいいますと、慎重に対処しなければならないという問題であると考えております。
 また、教育ローンの貸付限度額につきましては、平成六年度より現在の二百万円ということになっておりますが、それ以降の平均の貸付単価を見ますと、百三十万円というふうに安定的に推移をしておるところでございます。
 いずれにいたしましても、財務省といたしましては、引き続き、国民生活金融公庫が民業補完に徹しつつ適切な役割を果たしていくように対処してまいる所存でございます。
木島委員 今、財務当局からの答弁、お聞きのとおりです。
 審議会意見書には、こういう言葉があります。奨学金、教育ローン、授業料免除制度等の各種援助制度の整備、活用をしなくちゃいかぬ。これはよっぽど法務大臣が、司法制度改革のための副本部長ですか、現在の内閣の財務当局の姿勢を変えさせなければ、意見書の趣旨に反することになりますよ。現にああいう答弁をしているんですから、大事な質問に対しても答弁しないんですから。政府保証ローンをつくってくれというのに答弁もしないわけですから。
 法務大臣の決意をちょっとお聞きします。
勝政府参考人 お答えいたします。
 まず一番目と三番目の点ですけれども、一般論としまして、法科大学院につきましては、現在まさにこういう場でも制度設計についての審議が行われているところであります。
 法科大学院の学生に対する国としての支援につきましては、基本的には、今後具体化される法科大学院の実情を踏まえつつ、関係機関とも相談しながら検討を進めてまいりたいと考えております。
 また、具体的な点でございますけれども、お尋ねの政府保証の教育ローンの創設につきましては、民間でできることはできるだけ民間にゆだねる、また、適切な受益者負担が求められるという昨今の諸事情のもとで、種々の方策における国の関与のあり方を考えながら検討してまいりたいと考えております。
森山国務大臣 法科大学院の成否というのは、これからの司法制度改革の一番重要な基本でございます。そこに人材が十分受け入れられるということが必要でありまして、経済力がないために、資力がないために、せっかく能力と意欲のある者が学べないということはとんでもないことだというふうに私は思いますので、財政当局の御理解もできるだけ得るように最大の努力をしていきたいというふうに思っております。
木島委員 もう時間ですから終わります。ただ私は、明治以来の百三十年の日本の歴史を見ますと、いろいろあるけれども、いい点は、金がない者でも一生懸命まじめに頑張って勉強すれば社会的にいい活動をできるということだったと思うんです。戦後の司法試験だってそうですよ。全然、破産してもう一銭もない家庭でも、だからこそ、一生懸命法律を勉強して司法試験を突破して、社会のために貢献するという人材が生まれてきたんですね。
 今回、ロースクールでしょう、それが中核になるんでしょう。そうすると、一年間で三百万かかると三年で一千万ですわな。だから、私は、今の日本の奨学金制度自体にも不満なんですが、本当に根本的に奨学金制度を改めるぐらいにロースクールの大学院生に対して財政的援助をしないとやはりいかぬということを申し述べまして、きょうのところは質問を終わります。ありがとうございました。
山本委員長 次回は、来る五日火曜日午前九時四十五分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時三十三分散会


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