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第4号 平成14年11月5日(火曜日)

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平成十四年十一月五日(火曜日)
    午前十時開議
 出席委員
   委員長 山本 有二君
   理事 佐藤 剛男君 理事 塩崎 恭久君
   理事 園田 博之君 理事 棚橋 泰文君
   理事 加藤 公一君 理事 漆原 良夫君
   理事 石原健太郎君
      太田 誠一君    左藤  章君
      笹川  堯君    下村 博文君
      中野  清君    平沢 勝栄君
      保利 耕輔君    松島みどり君
      保岡 興治君    柳本 卓治君
      吉川 貴盛君    吉野 正芳君
      鎌田さゆり君    中村 哲治君
      日野 市朗君    平岡 秀夫君
      水島 広子君    山内  功君
      山田 敏雅君    石井 啓一君
      藤井 裕久君    中林よし子君
      植田 至紀君    徳田 虎雄君
    …………………………………
   法務大臣         森山 眞弓君
   法務副大臣        増田 敏男君
   文部科学副大臣      河村 建夫君
   法務大臣政務官      中野  清君
   財務大臣政務官      田中 和徳君
   政府参考人
    (内閣審議官
    兼司法制度改革推進本
    部事務局長)      山崎  潮君
   政府参考人
   (法務省大臣官房司法法制
   部長)          寺田 逸郎君
   政府参考人
   (文部科学省高等教育局長
   )            工藤 智規君
   法務委員会専門員     横田 猛雄君
    ―――――――――――――
委員の異動
十一月五日
 辞任         補欠選任
  鎌田さゆり君     山田 敏雅君
  仙谷 由人君     中村 哲治君
  不破 哲三君     中林よし子君
同日
 辞任         補欠選任
  中村 哲治君     仙谷 由人君
  山田 敏雅君     鎌田さゆり君
  中林よし子君     不破 哲三君
    ―――――――――――――
十一月五日
 成人重国籍の容認に関する請願(北川れん子君紹介)(第三号)
 治安維持法の犠牲者に対する国家賠償法の制定に関する請願(岩國哲人君紹介)(第一三七号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律案(内閣提出第二号)
 司法試験法及び裁判所法の一部を改正する法律案(内閣提出第三号)


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     ――――◇―――――
山本委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律案及び司法試験法及び裁判所法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 両案審査のため、本日、政府参考人として司法制度改革推進本部事務局長山崎潮君、法務省大臣官房司法法制部長寺田逸郎君及び文部科学省高等教育局長工藤智規君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
山本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。平岡秀夫君。
平岡委員 民主党の平岡秀夫でございます。
 きょうは、法科大学院、そして司法試験の関係の二法案を審議するわけでございますけれども、この法科大学院も今回の司法制度改革においては非常に重要な柱であるということであります。
 ただ、私自身も党の中でいろいろな勉強会に参加しているんですけれども、私がこれまで参加してきたものの中に国民の司法参加という分野の問題がございまして、きょう両法案の質疑に入る前にちょっとその点について、現在の検討状況についてお聞きしておきたいというふうに思っております。
 裁判員制度については、平成十六年の通常国会で提出が予定されているというふうに聞いておりますけれども、どうも国民の皆さんの関心がまだいまいち足りないんではないかというように一般に言われておりまして、せんだって、先月末締め切りということで、裁判員制度・刑事検討会の方で裁判員制度に関する意見募集というものを行ったそうでございます。先月末なものですから、まだその意見の状況が集約されていないのかもしれませんけれども、先ほど言いましたように、国民の関心がまだいまいち足りないというような認識の中で、今どんなような状況が国民の皆さんの中から声として上がっているのかということについてまずお聞かせいただきたいと思うんですけれども、先月末の締め切りで行われました意見募集についてはどの程度の意見が寄せられているんでしょうか。
山崎政府参考人 ただいま御指摘の裁判員制度に関します意見募集でございますけれども、これにつきましては、本年の八月一日から十月三十一日までの間ということで意見募集を行わさせていただきました。現在意見の集約中でございますけれども、郵便、電子メールを合わせまして二千通を優に超える意見が寄せられているという状況でございます。
平岡委員 二千通の意見が寄せられたということで、この数をどう評価するかという問題はあろうかと思いますけれども、その意見募集で出された意見について言うと、大体どういう内容のものがどういう方向性を持ってあったかというような、そういう整理はある程度できていますでしょうか。
山崎政府参考人 大変恐縮でございますが、現時点ではまだその整理はできておりませんので、御容赦願いたいと思います。
平岡委員 それで、国民の司法参加、裁判員制度については、さまざまな意見がいろいろなところで出されているということを私も承知しているわけですけれども、検討した結果として、さまざまな点についてある程度の方向性を我々も持っております。その方向性を十分に踏まえて検討していただきたいというふうに思っているわけであります。
 今回のように法科大学院法案が出たときに、いろいろな論点についてまだまだ議論をしなければならないというような状況に私は今現在なっているんじゃないかなというふうに思いますけれども、そうした議論が法案の段階で出るんじゃなくて、法案を作成していく段階でもきちっと出て、そしてそれが十分に検討されたものである必要があるというふうに思っているわけであります。
 その点で重要な点と私が考えている点についてちょっと申し上げたいと思いますので、その点についての現在の検討の状況、あるいはその方向性について教えていただきたいというふうに思います。
 まず第一点は裁判員制度でございますけれども、裁判員の数を職業裁判官との関係でどのように考えるかという問題があって、やはり今回の国民の司法参加という観点から考えますと、裁判員の数を裁判官よりも圧倒的多数とすべきではないかという意見がかなり強くあると思います。例えばフランスでは、職業裁判官三人に対して市民裁判員が九人いるといったような状況になっております。この点についてはどういう状況になっていますでしょうか。
山崎政府参考人 ただいまの御質問に関しまして、全体的にちょっと前提を申し上げたいと思いますが、現在確かに私どもの方で検討会を設けまして議論を始めておりますけれども、これは、制度の大きな枠組みについて、まず大きな論点、一わたりの議論を行うということでやっておりまして、まだそれが一巡していないという状況でございますので、いろいろ意見は出ましても、方向性が出ているということではないというふうに御理解をいただきたいと思います。
 現在、今御質問がございました数の問題でございますが、この関係につきましては、私どもの検討会においては、裁判官三名に若干の人数の裁判員が加わる構成が適当であるという意見、あるいは、裁判員の人数は多い方がいいと思われるので十二名程度の裁判体という構成もあり得るという意見などが述べられております。
 今回の意見募集では、まだ集約中ではございますが、確定的ではございませんけれども、裁判員の数を余り多くし過ぎることは相当でないという意見と、裁判員の数を裁判官の三倍以上にすべきであるという意見、こういうような意見でやはり分かれているという状況でございます。
平岡委員 意見が分かれているということでありますけれども、国民の司法参加という視点から考えたときには、裁判員の数を職業裁判官よりも圧倒的多数とするという観点からぜひ検討していただきたい。これは私の意見みたいなものでございますから、法案として集約していく段階でまたいろいろと議論させていただきたいというふうに思います。
 それから、裁判員制度に関しまして第二点ですけれども、やはり国民の司法参加という視点から考えますと、裁判員主導の評議が行われるということが重要であろうというふうに思います。そういう視点から見た場合には、評議をする場において、議長といいますか、その評議を進行していく立場に立った人はやはり裁判員であるということが必要ではないか。あるいは、その評議における議決というのは、裁判員の絶対多数を条件とするといったようなことが必要ではないかというふうに考えているんですけれども、この点についての検討状況というのはどのような状況でしょうか。
山崎政府参考人 ただいま御指摘の点で、まず検討会の検討状況を申し上げますけれども、評議の議長にだれがなるべきかという点については、検討会では特段の意見は述べられておりません。意見募集に関しましては、この点については、裁判員が議長になるという意見もございましたけれども、検討会ではそこにスポットを当てた議論はされておりません。
 それから、評決のあり方の問題でございますが、検討会におきましては、現行の裁判所法の定める単純多数決の原則によるべきであるという意見が述べられております。ところが、意見募集におきましてはさまざまな意見がございまして、原則として全員一致とすべきであるという意見、あるいは特別多数とすべき意見、この特別多数というのは三分の二なのか四分の三なのか、そこは余りはっきりいたしませんけれども、そういう意見、あるいは単純多数決とするべき意見ということで、やはりさまざまに分かれているという状況でございます。
平岡委員 第三番目の論点としては、裁判員が参加する裁判においては、直接主義、口頭主義を徹底していくということが、裁判の効率的な実施という観点からも、あるいは裁判員が適切な判断をするということからも必要だと思うわけですけれども、それを実現していただきたいとともに、それを実現していくために、公判前の全面的な証拠開示制度を導入する、あるいは被告人に無罪立証のための証拠収集の機会を確保させるということが必要であるというふうに考えておりますけれども、この点についての検討の状況というのはいかがでしょうか。
山崎政府参考人 ただいまの公判手続のあり方、要するに直接主義、口頭主義の問題ですね、この点に関しまして検討会では二つ意見がありまして、裁判員があくまで公判廷で心証をとることができるようにすべきである、全部口頭で行えという考え方が一つございます。これに若干違う意見もございます。公判廷で一回聞いただけで証拠の内容をすべて記憶しているわけではないので、裁判員も記録の読み直しができるものとすべきであるという意見とに分かれている状況でございます。
 証拠開示に関しましては、順次これから行うということで、今のところまだ議論が行われておりませんので、この点は御容赦願いたいと思いますが、これが今月の下旬から行われる予定でございます。
 それから、意見募集におきましては、直接主義、口頭主義を徹底すべきであるという意見、あるいは、争いない事実については同意の書証等の活用ができるようにすべきであるという意見、あるいは、全面的証拠開示制度を導入すべきであるという意見、争点整理に必要な範囲での証拠開示の拡充をルール化すべきであるという意見などがございました。
 以上でございます。
平岡委員 裁判員制度については最後のテーマとして申し上げたいと思いますけれども、市民が裁判員になるということについて言えば、さまざまな障害が予想されるわけでありますけれども、市民が裁判員になりやすい環境を整備するということが必要ではないかというふうに思います。
 マスコミに取材を求められたり、あるいは、そのマスコミの取材によってさまざまな外部からの、圧力と言うと言葉が悪いかもしれませんけれども、影響があったりといったようなこともあるでしょうし、また、裁判員として活動するに当たって自分の仕事を犠牲にしなければならない、さまざまなことがあろうと思うんですけれども、その点の検討についてはどのような状況でしょうか。
山崎政府参考人 ただいま御指摘の点は大変重要な点でございます。
 私どもの検討会におきましては、職を持つ国民が裁判員としての義務を果たすということになりますので、果たしやすい環境をつくる工夫が必要であるという意見が出ております。それから、裁判員の旅費、日当を負担に見合ったものとして充実させるべきであるという意見、あるいは裁判員の個人情報の取り扱い、あるいは、裁判員の安全確保について検討する必要があるというような意見が述べられているところでございます。
 意見募集におきましてもやはり同様に、裁判員が出頭しやすい環境を整備すべきであるという意見が寄せられておる、こういう状況でございます。
平岡委員 ここから大臣に聞きますので、通告はしていませんけれども、ちょっと答弁の方をお願いしたいと思います。
 今事務局の方からもいろいろ御説明がありましたように、さまざまな問題について、この裁判員制度に関して言えば、まだまだ慎重な審議といいますか、いろいろな意見があちこちに出ている、そんな状況でありまして、必ずしも集約されているという状況ではない、この状態の中での意見募集であったということであります。
 ということになると、ある程度政府としての方向性が示されるときにはもう一度、やはり国民の皆さんに裁判員制度というのはこんなものなんですよという制度の趣旨を理解してもらうとともに、本当に国民が司法参加できる、そうした仕組みになっているかどうかについての国民の意見を求めるということが私は大切ではないかというふうに思っています。国民のための裁判、そういう概念で進めてきている、そういうお話でございますから。
 ということで、十六年通常国会に法案が提出されるということなので、まだ先の話でありますけれども、ある程度政府としての案がまとまるような段階では再度国民の皆さんから意見を十分に聞く、広報に努めるとともに、そういう機会を持っていただきたいというふうに思っていますけれども、大臣の御所見をいただきたいと思います。
森山国務大臣 確かに、日本にとっては、裁判員制度あるいは国民の司法参加というのは今までほとんどやったことがない話でありますので、なじみがない、理解ができないという点が現在まだ相当あると思います。私も、ヨーロッパなどへ出張させていただきましたときには、それぞれの国の裁判員制度を、どんなふうにやっていらっしゃるのかという話を聞いたり、現場を見たりして、今勉強している最中というところでございます。
 ですから、今本部の方のさまざまな検討も進行中でありまして、ある程度姿が見えてこないとPRもしにくいわけでございますし、皆さんの御意見を承るといっても、こちらに全く何にもない場合は意見も言いにくいでしょうと思いますので、それぞれの段階で、必要な意見の聴取あるいはPR等に心がけていきたいと思っています。
平岡委員 今御答弁されましたように、ぜひそういう努力を政府としても行っていただきたいというふうに思います。
 それでは、法案の関係の質問に入らせていただきたいと思います。
 まず最初に、法科大学院関係の質問をさせていただきたいと思うんですけれども、今回、専門職大学院という仕組みの中でこの法科大学院というものが位置づけられているという形での法科大学院法案になっているわけであります。専門職大学院については文部科学委員会の方で十分な審議がされると思いますから、あと、連合審査も予定されているというふうにちょっと聞いていますから、そちらの方にゆだねるとして、私の質問は、専門職大学院であろうがなかろうが、法科大学院についてどうあるべきかという視点から質問させていただきたいというふうに思っております。
 ただ、答弁の方は、多分専門職大学院にとって必要なことは何なのかというような視点の答弁もあろうかと思いますので、適宜そこは文部科学副大臣の方からお答えしていただいても結構だろうというふうに思います。
 それでは、まずそもそも論でございますけれども、法科大学院に対する第三者評価というのが専門職大学院の評価ということの一環の中で位置づけられているわけでありますけれども、この評価というのは何のために必要なんでしょうか。
河村副大臣 お答え申し上げます。
 法科大学院というのが法曹養成の中核的機関になる、このいわゆる教育水準というものを非常に高めていくということが極めて重要なことでありますから、そのために、その一環として第三者評価を導入するということになるわけでございます。
 法科大学院の教育水準については、いわゆる専門的な見地から見て第三者評価機関が評価を行って、その結果を社会に公表する、そして社会から評価も受ける、それによってさらに法科大学院自身がみずから行う法曹教育のレベルを上げてもらう、そのことを促すためにこの評価が導入される、こういうことであります。
平岡委員 私も、第三者評価という点からいえば、これは確かにこれからも充実させていくべきだというふうにも思っているんですけれども、今言われたように、評価をして、それを社会に公表して、その公表した結果としてみずから努力をしていくというようなことに誘導していく、そういう仕組みであるならば、本当は、評価を受けるかどうかについても大学の判断にゆだねてもいいんじゃないか。つまり、評価を受けるということが社会的に一般的な風潮として、国民が必要であるというふうに判断するならば、そうした評価を受けない大学というのはやはりそうした評価にたえない大学である、そういう評価といいますか、そういう評判になっていって、おのずと淘汰されていくというふうなことになるのではないか。
 そういう意味では、この評価をどのように義務づけていくか、あるいは評価の仕組みというものをどのように法律的に仕組んでいくかという点についてはいろいろなやり方があるのかなというふうには思うんですけれども、ただ、法科大学院について言うと、必ずしもそうはいかないのかなというふうに思います。
 司法制度改革審議会の意見書の中に、今回、法科大学院を修了した人については司法試験の受験資格が与えられるということもありますので、こういうくだりがあります。「修了認定の厳格性を確保するため、適切な機構を設けて、第三者評価(適格認定)を継続的に実施すべきである。」というふうにこの意見書の中に書かれているわけであります。そういう位置づけにこの第三者評価を置くとしたならば、やはり司法試験の受験資格を与えることになる予備試験というのがありますけれども、これは法務大臣というか法務省所管の司法試験委員会が実施するということになっているわけですけれども、この司法試験委員会が評価の責任を負うということが必要ではないかというよりはむしろ論理的ではないかというふうに私は思っているんですけれども、なぜ司法試験委員会の評価ということができていないのかという点について、これは法務大臣にお聞きしたいと思います。
森山国務大臣 司法試験委員会は、司法試験を実際に実施する関係のことを検討して決めていく委員会でございますので、法科大学院の評価というのは、法科大学院の中における教育の内容あるいは水準、その他必要な項目をチェックして、そして世間に公表してわかってもらう、透明性を維持するという趣旨でございますので、ちょっとその目的が違うのではないかと私は思います。ですから、司法試験委員会が大学の評価をするというのは、目的も違いますし、仕事の内容が違うのではないかと思いますので、このように分かれているのでございます。
平岡委員 大臣にそういう答弁をされるとちょっと困るんですけれども、司法制度改革審議会の意見書の中に、先ほど私が読みましたように、「修了認定の厳格性を確保するため、適切な機構を設けて、第三者評価を継続的に実施すべきである。」という意見が出ているんですけれども、法務大臣はそれは必要ないというふうに御判断されて今回の法案を提出された、そういう意味ですか。
森山国務大臣 いいえ、私はそのような意味で申し上げたのではございませんで、この審議会の意見に基づきまして検討を進め、法科大学院については今提案させていただいているわけでございますが、ここにあるとおりの内容の目的を持ってやっていくわけでございますが、司法試験委員会はまた別の役目を持っているということを申し上げたわけでございます。
平岡委員 司法試験委員会が別の役割を持っている。確かに別な役割も持っているとは思います、これだけではないと思いますけれども、司法試験の受験資格について言うと、今私が申し上げたように、再三言うのもあれですけれども、意見書の中にこういうふうにすべきであるというふうになっているわけでありますから、ここについて、この大学の評価機関、これはある意味では、ちょっと後からも質問しますけれども、どうもできるかどうかも法律上ははっきりしない機関になっているわけでありますよね。そういう状況の中で、法務省として、法務大臣として、あるいは司法制度改革審議会の意見書を実現しなければならない立場にある司法制度改革推進本部として、この第三者評価について全くかかわらなくていいのか、そういう問題があると思うんですけれども、もう一度、そこの点についてどのようにお考えになっているか、御答弁いただきたいと思います。
森山国務大臣 法科大学院の評価につきましては、今いろいろおっしゃっていただいたようなことで評価を行うわけでございますけれども、法務大臣も文部科学大臣に対して意見を言うことができるわけでございまして、例えば、調査をした結果、文部科学大臣において、当該法科大学院が法令違反をしていると認められるときには、学校教育法の規定に基づきまして勧告、命令等の措置を講ずるなどして法科大学院の質の保証を図るということになっておりますが、そのような問題がありましたときに法務大臣は文部科学大臣に対して意見を述べることができるわけでございまして、関係を全く持たないというわけではございません。
平岡委員 確かに、いろいろな評価に当たって、文部科学大臣に対して法務大臣がいろいろな関与はされるというような仕組みができていると思うんですけれども、先ほどちょっと私が申し上げた点について、ちょっと飛びますけれども、質問し
てみたいと思うんです。
 今回の学校教育法の改正法案の六十九条の三の第三項のところをちょっと見ていただければと思うんですけれども、ここには、「専門職大学院を置く大学にあつては、認証評価を受けるものとする。」というふうに書いてあるんですけれども、そのただし書きのところに、認証評価機関が存在しない場合も想定した規定というのがあるんですよね。ということは、これは、そういう認証評価機関が存在しない場合でも、先ほどの意見書の中にある、適切な機構を設けて第三者評価を継続的に実施すべきであるという要請が満たされているというふうに考えられるんでしょうか。存在しないということがあり得るという前提でこの法律ができているということで意見書の要請が満たされているというふうにお考えになっているんでしょうか、法務大臣。
河村副大臣 これは、法律的には受けることが義務づけされております。しかし、特別な理由によって、例えばアメリカのそういう特別な機関で、アメリカに評価機関がありますね、そういうところで受けてきたというケースもありましょうし、今回、今、実は評価機関の設立については、例えば日弁連も検討されているように聞いておりますし、また、学位授与機構も検討しているわけでありますから、当然評価機関ができるという想定でございますが、今の時点で日本にはこれができないという場合も想定して、例外という形で設けてあるということでありまして、原則はあくまでも受けることが前提になっておるわけであります。
平岡委員 できたら受けるということが前提なんでしょうけれども、できていない。これは「存在しない場合」と書いてあるので、できていない場合を想定しているということ自体、これは意見書の要請は制度として満たされていないんではないかということもちょっと申し上げたいと思うんです。
 それからついでに、このただし書きの最後の方を見てみますと、そういうふうに何か認証評価機関が存在しない場合その他特別の事情がある場合であってというので、存在していない場合がある、そのときには文部科学大臣の定める措置を講じていたら別に認証評価を受けなくてもいいんだ、そういうくだりがあるんですよね。これについて言うと、私も条文をずっと見てみましたけれども、文部科学大臣の定める措置をつくるときとか何か考えるときに法務大臣が関与するという仕組みに全くなっていないんですけれども、これは文部科学大臣だけに任せておいていいんでしょうか。どうでしょう。これは通告していませんでしたので、事務当局から答えてもらっても別に構いません。
山崎政府参考人 この点の解釈につきましては、いわゆる連携法でございますが、そこにきちっと明記されておりませんので、関与はできないということになろうかと思います。
平岡委員 関与できないということになると、先ほど大臣が、認証するときあるいは何か基準を設けるときはいろいろ意見を述べることができるとか言われましたよね。そういうことでちゃんと担保されているからいいんだ、こういうふうに言われましたけれども、できていないときには全然担保されていないということになっちゃいますよね。大臣、それでいいんですか。――これは特に通告をしていなかったものですから、大臣が答えられるのに少し手間取っているようでございますので、事務局の方からもどうぞ。
山崎政府参考人 その解釈については先ほど申し上げたとおりですが、この関係では、法科大学院については必ず第三者評価の適格認定を受けなければならないということが連携法で書かれておりますので、その関係の評価機関、これは必ず一つはつくられるということになろうかと思います。大学評価・学位授与機構ですか、こういうものが検討を行うということを予定して今その作業を進めているわけでございますので、これはその関係ではできるというふうになろうかと思います。
平岡委員 今のは、制度的な問題じゃなくて、事実上できるからいいんじゃないですか、こんな答弁になっているわけでありますけれども、我々は今制度をどうするかということを議論しているわけでありますから、制度としてそこに本当に対応できるという仕組みがない以上は、やはりちゃんと制度としてきちっとどうあるべきかということを法案提案者としても考えていただきたいというふうに思います。
 この議論ばかりしていてもあれですけれども、河村副大臣、何か御意見ありますか。
河村副大臣 今のただし書きの問題ですが、こういう法案をなぜつくったかということだと思います。
 というのは、今、一橋大学とかほかの大学にもあります専門大学院がございます。ビジネス関係とか財政金融とか、その専門大学院についての評価機関が今の時点では専門で日本でやるのがありませんので、そういうものは外国の一級の評価機関の評価を受けておりますので、そういうことも想定してといいますか、これは当然できるという前提ではありますけれども、間に合わないとかそういうことがあった場合の一つの本当に例外的な条件として置いておこうということで置いたわけでございます。今既に学位授与機構もございますし、日弁連も検討されておるのでできることは間違いない。しかし、念のために、そういうことも専門大学院にあったので、法律上瑕疵のないようにというふうに考えておるわけであります。
平岡委員 念のために置いたということであるならば、念のために置いたときの法務大臣の関与のあり方についてもしっかりと制度的に置いておいてほしいというふうに思います。その点について、また機会があったら、整理したところで皆さんの説明を伺ってみたいというふうに思います。
 時間がないので先に進ませていただきたいと思いますけれども、評価機関については、私も、学校教育法の規定とかあるいは今回の連携法、いろいろと読ませてもらいましたけれども、どうも具体的なイメージが余りわいてこないということであります。
 そこで、この認証評価機関というものについて、具体的にイメージがわくような感じで説明していただきたいと思うんですけれども、事前にいろいろ私の説明してほしいポイントというので通告してありますけれども、どのような人たちがつくって、どのぐらいの数できるのか、そしてその評価に従事する人たちは具体的にどんな人たちなのか、評価基準はどのようにして作成されるのか、評価の頻度、評価実施期間、評価の方法、手段などはどのようになるのか、こういったような問題があろうかと思います。
 さらに、中央教育審議会が例として提言している機関認証基準の一つの中に、評価結果に係る不服申し立て制度というようなものも認証するに当たって必要なことだというふうに書いてありますけれども、それはどんなようなものになるのか。こういうようなイメージがほとんど皆さんからの説明の中ではわいてこないんですけれども、非常にたくさんの項目があって、これは答弁していると大変時間がかかるかもしれませんけれども、大体イメージがわくような感じで説明していただければと思いますけれども、これは河村副大臣からでよろしいんでしょうか。
河村副大臣 質問通告を一遍に全部言われたような格好になりますが、この認証評価機関でございますが、先ほどもちょっと一部申し上げましたけれども、まず、評価の基準とか方法とか体制等が公正かつ的確に評価を実施できる機関かどうか、あるいはその基準に適合しているかどうかということになって、それが適合していれば申し出のあったところについてはすべて認証するということにはなっておるわけです。
 先ほど申し上げましたように、大学評価・学位授与機構と、それから日弁連の関係団体が法科大学院の第三者評価について検討されている、今のところこの二つが考えられておるわけでございます。ともかく、法科大学院の教育内容があらゆる多様な観点から評価できるかどうかということが一番大事だろうというふうに思っておるわけです。
 そこで、どういう方が評価委員になっていくかということでございますが、まずは当然大学関係者が入ってくるだろうし、それから、法曹三者の法律事務に携わる人たち、それからさらに、いわゆるリーガルサービスを受けている人たち、すなわち企業の法務の方々とかそういう方々の経験者、法科大学院の教育に対して深く広い見識を持っておられる方々、そういう方にお願いをするということになるだろうというふうに思います。もちろん、その認証評価というものが客観的で公平性で多様性という点が重視されることは当然であろうというふうに思っております。
 それから、評価の基準でありますけれども、評価基準はいわゆる認証評価機関自身がその内部における適切な手続を経て定めることになっておるわけでございますが、法科大学院の目的に照らして、大学関係者、法曹関係者、幅広い意見を踏まえて適切に決めていく。当然、パブリックコメントなんかも入ってくるわけでございます。
 そして、その評価機関の認証基準について、細目については省令で決めるということになっておりますが、評価基準の策定に際しては今の幅広い意見を聞くと同時に、その透明性や内容の適格性を確保する手続をとることが必要だということもこの法案に規定をされておるところでございます。
 さらに、その評価はどのぐらいやるのかということでありますが、一般の大学の評価は七年に一度やっておりますが、この法科大学院については、いわゆる専門職大学院に関しては五年以内に一度は必ずやるということになっております。
 さらに、その評価の中身でありますけれども、これも細目、一部想定されておるわけでございますが、法曹三者等で構成する評価委員が、法科大学院の教育研究活動の状況を書面審査、そしてそれだけじゃなくて実地調査もやる、あるいはそこの学生の意見も聞くというようなことも当然あって、状況を把握していくということでありますが、評価機関としてはみずから定める法科大学院評価基準に適合しているか否かの認定を行う、いわゆる適格認定と言っておりますが、これを行うということになるわけでございます。
 さらに問題は、評価される、それに対して大学側は不服申し立て、これが当然なければならないわけでございまして、そのことがきちっとできているかどうかもその評価機関の認証の一つの大きな課題になっているわけでございまして、そのことがちゃんと整備されていなければこの機関としては不適切、認証されないということになるわけでございますから、当然不服申し立てはきちっとされているということが大前提でございます。
 以上、はしょって申し上げましたが、そういう形で評価機関を今まさに設立されようとする、それを我々としては適格であれば認証するという形で待っている、こういう状況下にあるわけでございます。
平岡委員 ざっと説明していただきましたけれども、やはり評価基準というものが具体的にどんなものが必要なのかという、余りにも情報の開示ができていないんじゃないかというところを私はちょっと指摘しておきたいと思うんですけれども、この評価基準についてはいつごろまでにその具体的なものが示されるということになるんでしょうか。
河村副大臣 この法案が成立いたし次第、省令で決めるということで検討をするわけでございますが、さっき一部ちょっと申し上げましたけれども、書面審査以外にも実地調査を行うものであるとか、あるいは評価委員に対しての研修をやるものであるとか、そういうことが当然細目としては入ってくるのではないか、こう思っておりまして、中央教育審議会の中に法科大学院部会というのがございますので、そこで専門の方々にさらに検討していただく、こういうことになるわけでございます。
平岡委員 専門職大学院一般について言うと、学校教育法の改正も含めて、法律ができてからお示ししますということでもいいのかもしれませんけれども、法科大学院について言うと、具体的に、法科大学院をこういうタイミングでつくっていこうというような流れで進んでいるわけでありますから、やはりきちっとした認証基準というものをこの法案審議の際にもあらかじめ示されるということが私は必要ではないかというふうに思います。どの程度のことが説明できるのかはちょっとわかりませんけれども、この審議をしている間にでもぜひ我々にお示ししていただきたいというふうにお願いしたいと思いますけれども、どうでしょう。
河村副大臣 この委員会中に間に合うかどうかについては私もちょっと自信がありませんが、できるだけ速やかにそういうものが明らかにできるように最大限努力していきたいし、この法案ができ次第早急に、いわゆる法科大学院部会において検討を急いでもらいたい、このように私も考えておりますので、意見を踏まえて対応したいと思います。
平岡委員 ぜひよろしくお願いしたいと思います。
 法科大学院について次の論点に移りたいと思うんですけれども、司法制度改革審議会の意見書の中に全国的な適正配置の問題が書いてあります。「法科大学院の設置については、全国的な適正配置となるよう配慮すること」という要請が意見書の中で行われていますけれども、せんだってのこの法務委員会での審議では、認可基準を満たす場合には法科大学院については認可しなければならない、適正配置について指導していくつもりはないんだというような答弁が行われました。十月の二十九日の本会議での文部科学大臣の答弁でも、適正配置にも配慮しながら各大学の努力を支援してまいりたいといったような答弁にとどまっていて、本当に全国的な適正配置というのができるのかどうかというところが私は非常に不安なわけでありますけれども、本当に質問したいところの前提として、まず、全国的な適正配置というのはどのようなものと考えておられるのか、これを御答弁いただきたいと思います。法務大臣。
森山国務大臣 国民にとって利用しやすい司法というのが、この司法制度改革の大きな目的の一つでございます。ですから、身近に法曹が存在するということが大変重要だと考えておりますが、そのような結果をもたらすために法科大学院の配置についても地理的なバランスなどを十分配慮して配置してほしいという御趣旨と私はこの意見書を拝見しているわけでございます。
 例えば、弁護士さんがどの地域で仕事をするかというのは、最終的にはその本人の選択によるほかないわけでありますけれども、法曹の適正配置の重要性にかんがみまして、法科大学院も適正配置をして、そして法科大学院の修了者がその地域で働くというようなことが促されるような取り組みについて、文部科学省初め関係機関とも相談してやっていきたいというふうに思っております。
平岡委員 非常に優等生的な答弁で、私も基本的には全然異論はないんですよね。異論はないんですけれども、この前の委員会の答弁では先ほど私が言ったような答弁になって、それでは一体どうやって全国的な適正配置を実現していくのかというところが全く見えなかったんですよね。全く見えなかったんですよ。だから今回また取り上げているわけです。
 例えば、認可基準を満たす場合には認可しなければならないんだ、これはせんだっての文部科学省の答弁だったんですけれども、そうすると、認可基準の中に、全国的な適正配置に資するようなといいますか、それに配慮するような基準というものを設ければ、せんだっての答弁とも整合性がとれるのではないかというふうにも思うんですけれども、この法科大学院に係る設置基準の中に、法科大学院の全国的適正配置についてもそれを判断項目として入れるというようなことを考えておられるのかどうか。これは、文部科学副大臣の方がいいのかもしれません。
河村副大臣 設置基準の一番の基本は、法曹養成のための教育水準がいかに守られるかということに最大の力点が置かれておるわけでありまして、過疎地等々について、例えばその適正基準を少し緩めてでもどうしてもあの地域につくりたいというわけには、これはそうすべきではない、こう考えておりますので、その地域地域において大変御努力をいただくことになると思いますが、できるだけそういうのが望ましいわけでありますから、例えば二つの大学を一つにして連合的につくっていただくとか、いろいろな配慮の仕方はあると思うんです。
 しかし、適正配置、そのためにいわゆる基準を緩めるというわけにはいかないのではないか。一定の基準はクリアしていただく、その上でさらに配慮するということはある。例えば、問題は、スタッフをどういうふうに確保するかとか、その辺に一番、地方でおつくりになる場合には御努力が要ると思いますね。そういうことに対しての情報を差し上げるとか、いろいろな手助けはできると思うのでありますが、設置基準を緩めてでも認めるということは結果的によくないと考えておりますから、そのことはしないで、できるだけ適正配置については我々として最大配慮する、こういう答弁を申し上げてきたところでございます。
平岡委員 私も別に、設置基準を地方については緩めろというようなことを言うつもりはないんですけれども、例えば設置基準の中に、その周辺にどれぐらいのニーズがあるかというようなことを考える中に、地方にも法科大学院が設置されるような、あるいは設置されることが促されるような基準を設けたらどうかというような趣旨で質問をしたわけであります。
 それはともかくとして、今の御答弁を聞いていますと、スタッフの確保なんかに資するような情報の提供をしていきたいというような、一つの具体例として副大臣が挙げられましたけれども、果たしてそれだけで本当に全国的な適正配置ができるのかということについては大いに疑問があるんですけれども、今度は法務大臣の方にお聞きしたいと思います。
 本当に法科大学院が全国的に適正配置されるように、それが実現されるようにしていくために法務省としてこんなことをしていきたいというような策というのは何か考えておられないんでしょうか、どうでしょうか。
森山国務大臣 法曹が全国的に適正な配置に結果的になるようにということが一つの大きな目的でございますので、そのような観点からは工夫のしようがあるのではないかと思います。
 ただ、法科大学院が、先ほど河村副大臣が御説明になりましたように、重要なのは教育の内容でございますので、その内容について緩めるということはできませんけれども、情報を提供して手助けをするというようなことももちろん一つの方法でしょうが、私どもとしては、法科大学院を適正に配置するということは、その目的は法曹が全国的に適正な配置になるようにということであるということを考えますと、そちらの方もあわせて努力してみたい、そちらの方がむしろ重要ではないかというふうにも思っております。
平岡委員 法科大学院の全国的な適正配置というもののバックといいますか、そのもともとの根源にあるのは法曹の全国的な適正配置であるということで考えておられるという御答弁がありましたけれども、司法制度改革審議会の意見書の中には明確に「法科大学院の設置については、全国的な適正配置となるよう配慮すること」という要請がされているわけであります。
 文部科学省の方でもそういう視点を失うことはないと思うんですけれども、先ほど言いましたが、もともとの根源が法曹の適正配置ということであるならば、やはり法務省としてしっかりとこの法科大学院の全国的な適正配置についての具体的な推進策というものを用意しない限りは、なかなかそういうことが実現できないのではないかというふうに思いますので、ぜひそういうことについても配慮していただきたい。ここに「配慮すること」と書いてあるので、配慮すること以上にもっと努力してほしいというふうに思います。
 時間がないので、司法試験関係についてちょっと触れてみたいと思います。
 司法試験の合格者については、平成十六年に千五百人、平成二十二年に三千人というふうに事前に説明も受けているわけでありますし、こうした内容が意見書の中にも出ているわけでありますけれども、平成十六年から二十二年までの間の年次別の合格者というのがどのようになっていくのかということが全く示されていないんですけれども、この点についてはどのように考えておられるんでしょうか。
山崎政府参考人 ただいまの御指摘の点は、そのとおりでございます。平成十六年から千五百人体制にして、二十二年から三千人体制ということでございまして、その間は意見書におきましても記載がされておりません。
 これは、現在千人のところから千五百になるというような、かなりの人数になるわけでございますので、その辺の新たな法曹養成制度の整備状況を考えながら決めていくということで、具体的には、現在はその数字がどうなるかということは申し上げられないということでございまして、整備状況がうまくいくようであれば、またその段階でふやしていくということも考えられるということでございます。
平岡委員 今の答弁は、整備状況がうまくいったら考えるというような話のように聞こえたんですけれども、そうじゃなくて、まずやはり、大体合格者というのはこういうふうに推移していくんだ、そのために必要なことは何なのか、そういうような頭で進めない限りは、千五百人がずっと続いて、平成二十二年になったら急に、意見書でも言われているから三千人にしようかというような、そんなやり方になってしまう。整備状況が整っていないからしばらくは千五百人のままだというようなことも許されるような答弁に聞こえちゃったんですけれども、それじゃやはりおかしいじゃないか。大体こういうふうに合格者を考えていくので、それに対応した整備をしていくんだという決意が示されなければいけないんじゃないかというふうに思うんです。
 それとあわせて、ちょっと疑問なのは、平成十八年以降に新司法試験が始まるというわけですけれども、その合格者と現行司法試験の合格者の振り分けというのが、やはり全く先ほどの人数の中にも示されていないということになっているわけであります。やはり、どっちの試験でどれぐらい採るかということが示されないと、受験をしようとする人は、どっちの試験でどういうふうに受ける、どういうふうに準備していったらいいんだろうかというようなことが全くわからない状態になってしまう、そういう懸念があるように思うんです。
 この新司法試験合格者と現行司法試験合格者の振り分け、これは経過的な期間だけの問題ではありますけれども、その点についてはどのように考えておられるんでしょうか。
森山国務大臣 司法試験の合否の判定というのは、各年度におきます司法試験委員会の合議によって行われるものでございますが、新司法試験と現行司法試験のそれぞれの受験者の数というのが全く今のところはわからないわけでございますし、また新司法試験を受けるべき法科大学院の卒業生も何人になるのかもわかりません。法科大学院そのものもまだ設立されていないわけですから、学校が幾つできて、そこから卒業生が何人出て、そして受験する人が何人ぐらいあるということが全く今のところはわかりませんので、あらかじめ今の段階で両試験の合格者の内訳とか割合を決めておくということは不可能でございます。
平岡委員 今の説明もわからないではないんですけれども、そうすると、いつの段階でそういう振り分け的なものが示されることになるんでしょうか。
森山国務大臣 もう少し状況が進みましてある程度見当がついてまいりましたら、新旧司法試験の受験者の動向などを見きわめまして、適切に判断していくということになると思います。
平岡委員 言葉の限りにおいてはいいんですけれども、例えば、毎年毎年、ことしは幾つ法科大学院ができたから、何人入ったから、じゃこれぐらいにしようというようなことで、設置状況を見ながら毎年新司法試験の合格者を考えて、そして足りない部分というか残りの部分を現行のものでやる、そんな手順で進んでいくということなんでしょうか。これは事務局でいいですけれども。
山崎政府参考人 まだ具体的にそこまで詰めているわけではございませんけれども、法科大学院ができて、そちらの方にかなり受験生が流れていくということになりますと、現行の司法試験の受験者数、これも減ってくる状況にあろうかと思うんですが、やはりそういう全体の流れを見ながら決めていくということで、一たんこれでやるからといって固定はできない、そういう数字だろうというふうに理解をしております。
平岡委員 冒頭申し上げましたけれども、我々は制度をつくればそれでおしまいというんじゃなくて、この制度に乗っかってこれから受験をしようとしている人たちが何万人もいるわけですよね。そういう人たちに、自分たちがどういう試験を受けていったらいいのか、そういう情報を適切に提供していかない限りは、やはり人の一生ですから、我々がその人たちの一生を台なしにしてしまうということにもなりかねない話だと思いますから、できる限り前広に試験の情報については提供するという努力をしていっていただきたいということを要請しておきたいというふうに思います。
 それで、今度は予備試験の関係について、時間がないので進みたいと思います。
 せんだっての委員会審議の中で、民主党の枝野議員が、予備試験については資格試験みたいなものですよねと言って、特に答弁がなかったんですけれども、うなずいている方が何人かおられたんで、多分それでいいんだろうと思うんですけれども、そういう理解でというか、予備試験というのはそういう能力を持っているということを認定する資格試験的なものであって、あらかじめ合格者数はこれだけであるということを示すようなものではないということでいいという御確認の答弁をいただきたいと思います。
山崎政府参考人 今回の法案におきましては、司法試験の受験資格を法科大学院の修了者と予備試験合格者、こういうふうに決めているわけでございまして、そういう関係から受験資格が付与される、そういう試験である、こういうことでございます。
平岡委員 受験資格が授与されるということはわかるんですけれども、そうじゃなくて、あらかじめ合格者数が何人いるとかということではなくて、ある一定の能力があるということが証明されれば何人でも合格する、そういう資格試験的なものですねということを確認したいんです。
山崎政府参考人 性格は今御指摘いただいたとおりかと思います。
平岡委員 そうだとすると、何人でも通るということになると、もしかすると、予備試験で通った人がわんさか出て、法科大学院卒業生としての受験資格がある人と、本当にどっちが多いのかわからないというような事態もこれは想定されるような気がするんですよね。それでもいいんだというような意見も与党の中ではあったようでありますけれども、本来の、今回の法科大学院構想というのは、やはりどうしてそういうものをつくらなきゃいけないかということの論議があったと思うんですよね。一発試験で通ってということではなくて、本当に法曹として適格性のある人を養成していこう、そういう過程の中で法科大学院構想というのが出てきて、やはり基本的には法科大学院卒業生が法曹の道へ進んでいく、そういう大きなパイプをつくっていこうということがそもそもの発想だったと思うんですけれども、果たしてそういうことができるんだろうか。
 今、予備試験の受験資格については何らの制限もされていないということになります。せんだってからの同僚議員の人たちの質問を聞いていると、こんな仕組みをつくっちゃうと、予備校で予備試験を受けるための講座というのができて、そこで非常に短期間で集中的にやって、しかも安くできるというようなことになってしまったら制度の趣旨が失われてしまうんではないかというふうに言ったら、何か事務局の方の答弁では、いや、中にはお金がかかっても、時間がかかっても、そっちの方がいいんだという人がいるからいいんですというような答弁があって、非常におかしい答弁だなというふうに思ったんです。
 私がさっきから指摘しているような弊害が起こる可能性は十分にあると思うんですけれども、その点についてどのように考えておられますでしょうか。
山崎政府参考人 前回の答弁の趣旨でございますけれども、私、申し上げたかったのは、今回のこの法案に関しましては、法科大学院を教育の中核とする、こういう位置づけで行われておるわけでございまして、なぜそうなのかということでございますけれども、これは、単に司法試験に受かるためだけの法科大学院ではないということでございまして、もちろん受からなかったらどうにもならないという問題はありますけれども、受かった後に、どれだけ自分が専門性をつけて社会で活躍できるか、そういう点の基礎を教えるところでもあるということを申し上げたわけでございます。まさに、例えば知財関係とかビジネスローとか、いろいろ自分の得意分野を持って活躍しようとする方、こういう方には、法科大学院の中のいわゆる選択科目の中にそういうものを投入してやればそういう基礎が培われるわけでございますので、そういうことを考えたら、時間がかかっても、金がかかっても、そちらの方を選んでいくのではないか、こういうことを申し上げたわけでございます。
平岡委員 この前の答弁の趣旨を言っていただいて、私が質問したのはちょっと違うのですけれども、それはともかくとして、時間がないので、予備試験の必要性については、この司法制度改革審議会の意見書の中でも触れられていまして、「経済的事情や既に実社会で十分な経験を積んでいるなどの理由により法科大学院を経由しない者にも、法曹資格取得のための適切な途を確保すべきである。」というふうに言っているわけですね。
 経済的事情というのを考えてみますと、経済的事情で法科大学院には入れない人というんじゃなくて、入れなかった人、入れなかったけれどもいろいろな経験を積んでやってきたというような人なんだろうと思うんですね。そういうふうに考えると、私は、一つの案としては、そういう経験というものを考えたら、いろいろな経験で、どんな経験、どんな経験と言うわけにはいかないので、ある程度の一定の年齢制限みたいな形で受験資格を制限するというか、枠をはめるということもあるんではないかなというふうに個人的には思うんですけれども、大臣は、この予備試験の受験資格を制限することについてどのようにお考えになっているかということを最後にお伺いいたします。
 私は、さっきも言いましたように、法科大学院をつくるという構想の中で、やはり予備試験というのは本当に例外的なものであるべきだという考え方に立って今質問しているわけですけれども、大臣としてそういうふうにあるべきではないかと思うんですけれども、どうでしょうか。
森山国務大臣 おっしゃるとおり、法科大学院が中核となってこれからの法曹を育てていかなければならないと思っております。
 いろいろな理由で法科大学院には入らなかった、あるいは入れなかった方にも道を残しておくということは必要だと思いますけれども、あくまでも法科大学院が中核であって、そういう立場で教育内容もしっかりとしていただきたいというふうに思っております。
平岡委員 さっきから言っているように、気持ちは大体そんなに違わないのですけれども、その気持ちというのが本当に制度にあらわれているのか、制度で確保されているのかというところを聞いているわけでありますから、やはり予備試験も大臣が言われたような趣旨がちゃんと制度として成り立っている、そういう案を出していただきたいということを最後に申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。
山本委員長 次に、中村哲治君。
中村(哲)委員 民主党・無所属クラブの中村哲治です。
 私は、二十代のほぼ大半を司法試験の受験に当てました。司法試験は私自身五回受けております。家庭の事情で結局それは断念せざるを得ませんでした。
 私の同世代の友人の中で非常に多くの人が、まだ依然として受験生活を送っております。
 九〇年代初頭のバブル崩壊の後、多くの法学部生が、この日本を公正、公平な世の中にしていかなくてはならない、その理想に燃えて法曹を目指して勉強をしてきました。この十年間、受験者数は非常に大きな増大を遂げておることは、皆さん御存じのとおりでございます。
 ある人は銀行員をしておりました。その現場で感じた矛盾、それを法曹となって変えたい、その思いで三十を過ぎても今受験を続けております。また、京都大学法学部の大学院を修了し修士号を取りながら、またことしも論文試験に落ちてしまったと嘆いている友人もおります。
 大臣、きょう質問通告はしておらなかったのですけれども、一般社会的な感覚から見て優秀だと言われている人たちがこのような形で、就職もできずにと申しますか、受験生活を続けている中で、社会に隔離されるような状態に置かれながら、もちろんアルバイトをしながら生活の糧を稼いでいる人はたくさんおりますけれども、そのようなぎりぎりの生活の中で一発勝負にかけている人たちが強いられている状況についてはどのようにお感じでしょうか。
森山国務大臣 そのような方々の法曹への情熱ということには敬意を表しますが、それにも限界があるのではないかなと思います。ですから、適当な機会に自分の進路を真剣に考えられて、方向を定めた方がよろしいのではないかと思います。
中村(哲)委員 試験に落ちている人間は自己責任でやっているのだから仕方がない、恐らくそういう趣旨ではないかなと思います。それでは、なぜ現行の司法試験制度を変えて法科大学院制度をつくるのか、そこの問題意識が不明瞭になると私は思います。
 確かに、現行制度だから、その中でされるのは個人の勝手かもしれない。しかし、そういう感覚で本当に今の時代に必要な制度改革ができるのであろうか。そこを感じていただきたいわけでございます。
 例えば、現行の司法試験で問題と言われている点として、いわゆる丙案の問題があります。受験開始三年内の人を論文試験において優遇するという制度であります。本当にこの制度が優秀な法曹を育成するためにプラスになるのかどうか。制度開始から数年たち、もう丙案はなくなることは決まっておりますけれども、この総括も含めて、法科大学院の制度設計を司法制度改革の中に位置づけていただきたいと思います。
 質問通告はありませんけれども、大臣、もう一度御答弁をお願いできますか。
森山国務大臣 今の司法試験、あるいはそれに合格して法曹になられた方々の中に多少の問題を感じたというところが、この司法制度改革の大きな要因だと思います。
 いわゆる一発勝負といいましょうか、試験に受かりさえすればいいということで、先ほど例に出されたような方々が一生懸命に準備をし勉強をして受験した、だけれども、多くの方はうまくいかない、合格する方はごく少しでというような状況でありますので、何とかしてこの試験に受かりたいという気持ちで、受験のためにだけ勉強する、受験の点が少しでもよくとれるようにという試験の技術に熱中するというような傾向になってまいりまして、それが、広い視野を持った、人間関係もよく保てる、あるいは人を説得したり説明したりすることが十分できるというようなことが求められるにもかかわらず、そういうことは二の次、三の次になってしまって、目の前の試験に受かることだけに夢中になるというようなことが全体として非常に大きな問題だ。
 そういう意識からこのような改革を提案され、そして今私どもが御審議願っているということでございまして、法科大学院は、そのようなことにならないようにするために、ある一定のときに試験を受けるというだけではなくて、プロセスによって教育をし、その中で直接、少人数の教育で、しかも討論、議論等を中心にした内容のものにしていきたいという考えから、この構想が出てきたわけでございます。
 おっしゃるような問題点を少しでも解決したい、そういう気持ちからでございますので、先生の御指摘になったことにこたえるものであるというふうに私は思っております。
中村(哲)委員 つまり、現実的には現行制度に問題点も多々あるということだと思います。
 伝え聞く話では、論文試験などであらかじめ採点基準を決めている。最近は、考える問題をたくさん出したいということで、その考えてもらうための試験にする、そして、そのための基準をつくっているということなんですけれども、その基準を変えざるを得ないという話も聞いております。というのは、採点基準を決めて何千人という答案を見たときに、ほとんどパターン化した答案がたくさん出てきて、最初の基準では引っかからない人ばかりになってしまう。これじゃ採点ができなくなる。どうしても多くの受験生が書いている論点に点を振らないといけない。そういうことになっているのではないか。それは司法試験の制度としては本末転倒であると思います。
 現行の司法試験制度の運営のあり方。法科大学院の卒業生が出てくるまでにもまだ時間がありますし、また、経過措置も五年間あります。その間は現行の司法試験制度も残るわけですから、現行司法試験制度の運用の見直しも内部で行っていただきながら司法制度改革を進めていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
森山国務大臣 現行の司法試験が問題がある、それも検討しろというお話でございますが、それは当然、毎年新たな問題を考えるわけですし、考査試験もするわけでございますので、そのようなときに、今の世の中にふさわしい法曹が出るように、この場合も努力していっていると思います。
中村(哲)委員 非常に積極的な答弁をいただきましたので、引き続き運用の改善もお願いしたいと思います。
 それでは、質問通告をさせていただいた質問に入らせていただきます。
 私は、本日、法科大学院の入学試験、そして法科大学院の内容を中心に質問をさせていただきます。
 まず、法科大学院の入学試験はいつなされるのか。募集要項はいつ出されるのか。今法曹を目指されている学生さん、また法科大学院に入学したい学生さんたちにはそれが一番大きな関心事だと思いますので、確認させていただきたいと思います。
河村副大臣 この法科大学院の設置認可は十二月ごろが予定されておりますので、入学試験はそれからになるわけでございます。一般の大学院は、御承知と思いますけれども、大体十月ごろに、前年度やってしまいます。そして四月入学ということでございますが、この法科大学院については、最初の設置認可、特に初年度はそうなりますので、当然募集要項についても大学院の入学者選抜が行われる二カ月前までには発表するということで今進んでおるところでございます。
中村(哲)委員 つまり、二〇〇三年の十二月に認可が出る、そして入学するのが二〇〇四年の四月ですから、その間に初年度は試験がなされるのではないかという話だと思います。そして、例年は、普通の大学院の場合は十月ぐらいになされることが多いので、それぐらいになされることになるのではないか。うなずいていらっしゃるので、答えは聞かずに、次の質問に移らせていただきます。
 法科大学院を検討している大学は幾つぐらいあるのか。いかがでしょうか。
河村副大臣 多くの大学で法科大学院設置について御検討いただいておりまして、各大学の自発的な取り組みを文科省としては尊重しているわけでございますが、設置基準を満たしていただければ、これは広く参加していただきたい。先ほど議論もございましたが、適正配置の問題もございます。現時点で、直接照会、相談にお見えいただいた、御相談をいただいた大学等は約五十件程度でございます。
中村(哲)委員 五十件でいいのかどうかというのは、自発的な取り組みですから、多いか少ないかというのは国が指導するわけにもいかないでしょうから、五十件ということを想定しながら質問をさせていただかないといけないなと思っております。そして、そのときに関心として出てくるのが、全国にあまねく法科大学院を設けていく必要があるのではないかということでございます。
 昨日、十一月四日の朝日新聞に、全国に法律サービス拠点を設ける、政府が検討、司法過疎解消目指すという記事が出ております。このことと関連して、ゼロワン地域をなくしていくためにも、やはり全国に法科大学院をつくって、その出身者がその地域で法曹として活動していける、そういう仕組みをつくるべきなんじゃないかなということを私は感じます。
 小泉総理も十月二日に、司法制度改革推進本部顧問会議第六回会合のあいさつ趣旨で、全国あまねくリーガルサービスが必要であるということも述べられております。
 地方への優遇策ということが必要になってくるのではないかと思うんですけれども、森山大臣及び文部科学省にお伺いいたします。
河村副大臣 先ほども御答弁申し上げましたが、法科大学院の設置については各大学の自発的な創意、これが基本でございます。同時に、法曹教育の根幹をなすための適正な教育水準をいかに保つかということが非常に大事になってまいります。
 そのことを中心に置きながら、どうしても大学が大都市に集中いたしておりますので、その点から法曹人口そのものが地方に少ないということであって、そのために、法科大学院をつくろうとする場合の、いわゆる実務家教員といいますか、スタッフの確保等々、いろいろ御苦労があるわけでございます。そういうことも十分配慮をしながら、しかし、あくまでも教育水準だけは確保してもらうという前提で、多元的な、できるだけ全国に法科大学院ができるような取り組みについては、文科省としてもこれを支援したい、このように考えております。
中村(哲)委員 支援したいという力強い御答弁を伺ったと思います。
 つまり、その地域に本当はつくりたいんだけれども、創意工夫をしているんだけれども、なかなか自分たちの力だけでは及ばない、だから相談に乗ってほしい、そういう相談、申し出があったときに文科省としては力強く支えていく、そのように考えてよろしいですか。
河村副大臣 いわゆる司法制度改革審議会の意見においてもそういうことが指摘されております。当然、情報をいろいろ教えてあげるとか、そのためにできるだけできやすい形で御支援を申し上げる。あるいは、一つの大学だけではなかなかそろわない、そうすると、二つの大学が一つになっておつくりになったらどうでありましょうかとか、そういうような提言をさせていただく。いろいろ努力をしてみたい、このように考えております。
中村(哲)委員 予算措置などでの協力はいかがでしょうか。
河村副大臣 今どういう形で支援をできるかについて検討中でございますが、できるだけ適正配置ということを考えながら、そうした財政的な支援等々については十分考えられるのではないか、このように考えております。
中村(哲)委員 財政的な支援も考えられるという、本当に誠実な答弁をいただきまして、ありがとうございます。
 それと同時に、過疎地対策としては通信教育ということも考えられるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
河村副大臣 授業そのものに、インターネット等、衛星通信、そういった多様なメディアの活用ということは、これは社会人等々の方々には非常に学習需要にこたえられる有意義なものだというふうに考えますが、ただ、そこまで中村先生お考えかどうか、通信制のものをつくるというところまで今の時点では制度設計ができておりませんので、いわゆる手段としての効用といいますか、そういうものは大いに可能ではないか、こう思っておるわけでございますが、これについては、どのような形なら適用できるか、さらに検討を要するのではと考えております。
中村(哲)委員 意見書の方にも「夜間大学院や通信制大学院を整備すべきである。」との意見が載っておりますので、ぜひ検討していただきたいと思います。
 英会話学校などでは、インターネットを使って、またテレビ電話を使って教育がもうできておりますので、そういったものも活用しながら、過疎地の人たちが近くに法科大学院がないから法曹になれない、そのようなことを排除していただきたい。もうITで補えるところは補えるんですから、そこは十分に活用していただきたいと思います。うなずいていただけましたので、次に行きたいと思います。
 法科大学院の入学試験について伺います。法科大学院の入学試験というのは、どのような形式になるのでしょうか。
河村副大臣 法科大学院の入学者選抜につきましては、単なる法学的知識ではなくて、いわゆる法曹としての適性を問う、判断力でありますとか、思考力、分析力あるいは表現力、この適性検査をまずやる。そしてまた、各大学院においても、小論文や面接等を実施して、学業成績がベースになっておりましょうが、学業以外の活動実績、あるいは社会人としての活動実績等も総合的に考慮できるものというふうになっておりまして、法曹の多様性を確保して、各法科大学院においても、社会のさまざまな場面で活躍する法曹が養成されることが望ましい、こう考えております。
中村(哲)委員 確認なんですけれども、適性検査というのは適性試験のことだと思うんですが、その適性試験を含めて考えられるものというのは、まず共通の適性試験がある、そして各大学ごとに面接や小論文を行い、かつ、先ほどおっしゃった学業成績、また社会人としての実績なども考慮をしながら総合的に判断される、そのように考えてよろしいですね。
 そういうことだとおっしゃっていますので、その適性試験の問題というのは、どこがつくることになるんでしょうか。
河村副大臣 適性試験でございます、適性検査と申し上げましたが。
 適性試験については、今、大学入試センターから、また日弁連の関係財団がその実施に向けて準備をされているというふうに伺っております。
中村(哲)委員 モデルになっているアメリカの場合は、どういうところがつくっているんでしょうか。LSATですね。
河村副大臣 アメリカの場合は、ロースクール・アドミッション・カウンシルというところが実施しておりますLSAT、いわゆるロースクール・アドミッション・テスト、ここにおいて、いわば選抜の資料の一つとして活用されているというふうに伺っております。
中村(哲)委員 大学入試センターを想定しているという話ですけれども、大学入試センターは大学入試じゃないかと私は感じておるんですね。私は、実は大学入試センター試験の一回目を受験しておりまして、そういうことからしてもすごくなじみのある試験ではあったんですが、その実施機関、大学入試センターがこの適性試験をやるというのは何かちょっと違うのではないかというような感覚を持つんですが、そのあたりの点は問題はないのでしょうか。
河村副大臣 大学入試センターが法科大学院の適性試験をやることについていかがであるかという御指摘でございますが、大学入試センターは、既に御案内のように、国から一定の距離を置いた独立行政法人という形で、もちろん、現時点でやっているのは大学入試のことでありますけれども、これについてはもう二十年の歴史を持っている、実績を持っておりますから、そこに、もちろん今のスタッフがそのままということじゃなくて、今までやってきたことを生かして、組織を生かして、そこへ適性試験にふさわしいスタッフをそろえて、そこで適性試験をやっていただいたらどうだろうと。
 もちろん、法曹、日弁連等も第三者機関を考えておられるようでありますから、そういうものもできることも望ましいことだというふうに思っております。
中村(哲)委員 ちょっとイメージがわかないのは、適性試験を実施する機関が二つあれば、二通りの試験が適性試験の場合に起こってくる可能性があるということなんでしょうか。
河村副大臣 これは、二つできた場合にどっちを選ぶかという問題があろうと思います。これは、恐らく制度の問題、中身の問題になってくると思いますね。
 これは、これから始めることでありますから、そういうものを生かして今後また司法試験をお受けになる、そうした結果との相関性はどうであろうかとか、ある程度実績を積んでいかないと何とも言えませんが、まさに、少なくとも両方、これはどちらでやられてもという評価であれば、受験者がどちらをお受けになってもいいという制度設計になれば、私はそれはそれで結構ではないかというふうに思うんです。
中村(哲)委員 おっしゃることはわかるんですが、手続的なことをそれじゃちょっと聞かせていただきたいんです。
 事前にお話を担当省庁から伺ったときに、手続的には、現時点では法科大学院協会設立準備会ということになると思うんですけれども、そのような法科大学院の集まりが委託することになるんではないかというふうに聞いておったんですけれども、そこがもし委託するのであれば一つに限られるのか、それとも、大学院ごとに選べるように複数委託して、その中で各大学院が選ぶことになるのか。そのあたりの整理はどのようになっているのでしょうか。
河村副大臣 まだ明確に決まっているわけではございませんが、今おっしゃった準備会が今、実は、大学入試センターと日弁連の法務研究財団の両者に対して適性試験に係る調査研究の依頼をなされておるところでございまして、その結果を踏まえて、それが適性試験をやる実施機関としてふさわしいかどうかという評価をいただいて、そして各法科大学院へ推薦するということになっておりますから、これはどう見てもこっちの方がいいんだということになればそちらを推薦するということもありましょうし、どちらかをやっていただいて、あとはまさに法科大学院間でいわゆる教育の内容を競争していただきたい、適正であるということになれば、どちらか大学側でお選びください、こういうこともあり得るだろう、このように考えます。
中村(哲)委員 つまり、適性試験の実施機関は一つの場合もあるし複数の場合もある、それは準備会なり設立後は協会の方が自主的に判断して決めることである、そのように考えてよろしいですね。そうそうとおっしゃっているので、次に行きたいと思います。
 次に、適性試験から各大学院の入学試験までの流れというものはどのようになるのか。と申しますのは、法学部出身者と他学部出身者と同じ条件で同じ試験を受けて入学が決まるのかどうかというところの整理も含めてお聞きしたいと思います。
河村副大臣 適性試験を受けるところまでは一緒でございますが、法律を専門にやってきた方々には、二年に短縮ということになっておりますから、いわゆるこれまでの法律知識の試験をあわせてやるということになっております。
中村(哲)委員 つまり、適性試験をまず受けますよね。その後に、その適性試験を指定している法科大学院、恐らく数校あると思いますが、その数校に願書を出す、そして各校の入学試験を受ける、入学試験自体の判定は適性試験と先ほどおっしゃったような総合的な判断で決まる。一方で、三年を二年に短縮するという試験は入学合格者を対象にして別途行う、そういうことでよろしいんですね。
河村副大臣 出願の時点で、いわゆる法学既修者と法学の未修者がおられるわけでございます。そこで、法学既修者については、適性試験とあわせて法学の基礎知識を問う試験が課せられるということになるわけであります。
中村(哲)委員 ここは大事なところなので確認をさせていただきたいんですが、まず、入学試験自体が法学履修者とそうでない者で定員が分かれるのかどうなのか。事前の説明では、入学試験自身は、法学部出身であってもそうでない者であっても、法学を学んだ者であってもそうでない者であっても、まず三年間の期間の法科大学院の試験として関係なしに試験される。そして、それは同じ日に入試をやるのかどうかということは技術論としてはあると思いますが、一定の法学知識がある者というようなことを入学合格者対象に別途判断して、その試験をクリアすれば二年に短縮する。その二年に短縮される人も、法学部出身者というのではなくて、その試験において法学の知識が一定程度あるという者を対象としている。そのように私は事前に説明を受けているんですけれども、いかがでしょうか。
河村副大臣 これは、法科大学院へ受験をする場合に出願しますね、そこではっきり申告をしていただくわけです。例えば、経済学部なりあるいは医学部の出身でも、もう私は十分法学も一緒に勉強してきた、自信がある、それで二年で行きたいと言われれば、そちらを選ばれれば、法学の知識の試験も一緒に受けていただくということになるわけです。
 それから、先ほどちょっと御指摘になりましたが、その比率をどういうふうに選ぶかというような問題があろうと思いますが、これはもうそれぞれ法科大学院の自主性といいますかそれに任せて、こちらの方から何割がこれでしなさいとかいうことは考えていないわけで、各大学院の自主性に任せるということになっております。
中村(哲)委員 それは私が事前に聞いていた話と違うんです。三年の履修期間というパターンが原則であって、その三年の合格者をまず決める。その中で、入試のときに法学履修の検定試験もやる場合もあると思いますよ、それは大学によって検定の仕方というのはいろいろあると思いますけれども、三年間を二年に短縮するのかどうかというのは別の試験でやると。だから、あらかじめ枠を決めるという話ではなくて、まず定員数を適性試験プラス小論文、面接などを含めた総合テストで決める、そしてその合格者を対象にして、その試験が入試の日にやるのか後日やるのかは大学の判断でしょうけれども、その後で二年に短縮する人というのは別の試験で短縮すると。だからこそ、入学試験の出願申請の段階では、ある意味で、後で二年に短縮するのはだれかわからないわけですから、定員枠は設けていない。そのような制度だと私は聞いているんですが、いかがでしょうか。
河村副大臣 委員御指摘のとおり、原則は法科大学院は三年制だとしているわけですね。二年制のコースもあるわけです。これをどういうふうな割合にするか、どういうふうに決めるかについては、法科大学院の判断によってお決めいただいたらいいということになっておるわけです。
中村(哲)委員 確認なんですが、最初の段階で、入学試験の合否の段階で二年のコースと三年のコースときちんと分けて募集要項に書くということでよろしいんですか。
河村副大臣 その問題についても各大学院の独自性でおやりいただくということで考えております。だから、最初からきちっと分けてやるところもありましょうし、一緒にやるところもある。ただ、適性試験でおしまいの方と、いわゆる法律基礎試験を受ける方と、両方もちろん出るわけでございますが、そこの仕分けについては各法科大学院の判断にお任せしたい。
中村(哲)委員 私は何でこんなにこだわっているかと申しますと、入学試験自身が法的な知識というものを加味して行われるのか、そうでないのか。例えば法律履修者という枠をつくってやるのであれば、そっちに申請していても、三年というコースの中では通っていても、法学の知識がないから落ちるということもあるわけですよね。募集要項の時点でそれを分けてやるのか、そうでないのか。
 私が事前に聞いていたのは、まず三年の試験をみんな受ける、受かった人を対象にして二年に縮めるかどうかというのは別途試験で判断する。私はこの方が合理的だと思うんですね。私、事前にもそのように聞いているんです。いかがでしょうか。
河村副大臣 原則はそれが基本になるだろうというふうに思います。しかし、大学院によって、もう最初から試験をそういうふうに分けてやることも現時点の設計では可能だというふうになっております。
中村(哲)委員 そうすると、適性試験を受けながら、論文試験と面接をしながら、かつ法的な知識も加味して入学試験を行う大学も出てくる可能性はある、入学の合否判定においてですよ、それも可能であるということでしょうか。
河村副大臣 できるだけ大学院の自主性に任せたいと思うんですが、さっき申し上げたように、入学試験はあくまでも、適性試験というんですか、これが最大問われるわけですね。そこでは、法律的な要素ではなくて、法律的要素を問えば法学部でやってきた方が当然有利になりますから、本当の法曹の適格人材かどうか、まず基本的なところを見ようというのが適性試験。今委員の言われたように、それでまず選んでおいて、二年を希望する人にはもう一度さらに試験を課するというやり方もありましょう。
 どちらにしても、適性試験は全員受けていただくということが大前提で、二年コースを選ぶ人が法律的な基礎要素の試験をさらに追加で受けていただく。それが同時になるか明くる日になるか、その日に一遍にやるのか、そこら辺はもう大学院の側の判断でやっていただきたい、こういうことになると思います。
中村(哲)委員 これ以上議論をしても仕方ないんですが、それなら、法案審査をするときの事前に省庁と打ち合わせなり、実質的な審議をするためにやりとりをすることの意味自体が問われるんじゃないかと私は思いますが、そんなことを幾ら言っても仕方ないので、次に進みます。
 適性試験を受け、その後複数校に出願をすることができると。その複数校の受験が可能な場合、滑りどめというところで、早く合格をしたところに例えば入学金を払い込まなくてはならない。その払い込みについては、滑りどめの場合は後で返してもらうとか、そういったことを検討すべきではないかと考えるのですが、いかがでしょうか。
河村副大臣 今の御指摘の問題は、今までの入学試験で相当問題になってきたところでございまして、大学も、経営上できるだけたくさんの人に受けていただいて、入学検定料以外にも入学金も取る、施設整備費も取る、もっとひどいのになると授業料まで取ったというケースがあって、これはもう大問題になったわけでございます。
 現時点で、授業料とか施設整備費等に関するものは、両方受かった場合にどちらかに入れば返却するということになっておりますが、恐らく、大学院側にとっても定数確保という問題がありますから、あらかじめ定数を確保するための予約金的なものは求めていくのではないか、こう思っております。
 ただ、できるだけ、費用負担の低減というのは必要なことでありますから、ぎりぎりのところまでは、返却できるものについては返却してもらう。ただ、いわゆる学生確保のための予約金程度のところまでは認めざるを得ないのではないか、こう思っております。
 そういうことのためにも、法科大学院に入るための経済的措置については十分対応していかなきゃいかぬ、このように考えておるところでございます。
中村(哲)委員 副大臣、入学金が、例えば百万で済めばいいけれども、二百万、三百万というところが出てくる可能性があるわけですよ。早く受験だけさせておいて、滑りどめの学生だけ確保する、そういうふうなケースになったときに、果たしていいのかどうか。普通の大学と違うのは、これは専門職大学院です。法曹になる人というのは基本的にこの法科大学院に行くわけですよね。そういったところで、二百万、三百万のような入学金を取って滑りどめをさせなくちゃいけない、そういう制度を果たして許すのかどうか。
 今、御存じのとおり、大学の入試でさえこの入学金の返還訴訟というものが起きております。どういった思想で、入学金を払い込ませての滑りどめをしてもいいというふうに大学に認めるのか、そこが問われると思います。それは、この法科大学院に進まれる人たち、個人の人たちにどのような金融的なケアをするかという問題とも大きくかかわってくるわけですよ。
 今から議論させていただきますけれども、育英会の問題や、また国民金融公庫の問題、その融資枠を幾らにするか、その検討のときに入学金が幾らになるかわからない、そんな査定では、金持ちしか法科大学院に行けないということになるじゃないですか。金持ちの子供しか行けない。そうして本当に公正、公平な世の中をつくれるのかどうか。
 今の私学の医学部の問題というものは、みんな承知のとおりです。「ブラックジャックによろしく」という漫画が今大ベストセラーになっております。専門職につくために多額のお金が必要であるとすれば、それは日本の社会が階級化していくということでもあります。そこは強く検討していただきたい。
 では、議論を続けていきたいと思います。
 入学金そして授業料、こういった学費は幾らぐらいになりそうなのか、モデルとなっているアメリカではどうなのか、あわせて伺いたいと思います。
河村副大臣 入学金、授業料がどのぐらいになるかというのは一つの大きな課題、関心事だというふうに考えておりまして、法科大学院の授業料については、各設置者といいますか、各大学、法人側の判断に従って設定されることになっております。
 現時点で試算はいたしておりませんが、アンケートをとって、これは文部科学省というよりも、司法制度改革推進本部が公私立大学に対してお願いをしたものでございますが、これによりますと、これに回答してきた大学が四十七大学あったわけであります。昨年の十二月に公表されたものでありますが、百万円以下でやるということを検討されている大学は五つ、百万円から二百万円の間が二十六、二百万円を超えるものを検討中、まあ三百万までだと思いますが、これが十六大学という結果が出ております。
 現段階でどの程度になるかということはまだ把握しがたいのでありますが、法学系の修士課程の授業料よりは割高、高額になるということが今想定をされておるところでございます。
 アメリカでございますが、ロースクールの学費は、これはちょっとデータが古いんですけれども、平成十一年、そんなに変わっていると思われませんのでそれを申し上げますが、州立大学が平均九十九万八千円といっておりますから百万、それから私立大学が年額二百七十一万九千円というんですから二百七十二万、これが平均になっております。
中村(哲)委員 そのような試算がなぜ必要かというと、金持ちじゃない子弟でもきちんと法科大学院に行けるような奨学金の制度、スキームをつくらないといけないというところからなんですね。ある意味、授業料が幾らになるのか、入学金が幾らになるのかといったら、市場原理の話かもしれません。しかし、きちんと機会が保障されるためには、国の方で賄える仕組みをつくれるのかどうか、そこが問われるわけでございます。だからこそ、査定も必要だし、そのような仕組みづくりも必要なんだと思います。
 今、副大臣おっしゃいましたけれども、アメリカの場合であれば、各種の奨学金制度が充実しております。民が主導した奨学金制度もたくさんあります。篤志家も、自分の出身大学の学生に対して奨学金を設けたり、直接自分の出身大学に寄附をする、そのような形でお金を回していっているのがアメリカの姿だと思います。
 そんなことを考えると、日本の場合、どのような奨学金の仕組みにするのか、まず理念を問わなくてはなりません。金持ち以外でもなれる、つまり、個人の収入として幾らあったのか、個人の資格で奨学金がもらえるかどうかを決めていく、このような仕組みにしていくべきだと考えますが、いかがでしょうか。
河村副大臣 お話のように、当然個人の資格で得られます。当然それは大事なことだというふうに思います。
 そこで、私の基本的な認識からいきますと、奨学金が必要だと言われる方には、その制度があまねく受けられるような制度設計にすべきだろうというふうに、これは今の大学についても私は同じように考えているんですが、そういう基本的な認識に立ってこの制度を設計すべきだ、このように考えています。
中村(哲)委員 私が質問をするということをメールマガジンで流した後に、今受験をされている三十五歳のサラリーマンの方から意見をいただきました。
 その意見の中では、私たちが大学院に行こうとしたら、その企業に対して将来プラスになるのかどうか、そういうことをきちんとプレゼンテーションしないと認められない。もしそれにかなわなければ私たちはやめて行かないといけない。しかし、三十半ばになって、子供も二人いている。その中で全く生活がそれで成り立っていかないのであれば、その時点で法曹になる道を断たれてしまう。だから、将来きちんと返すということを約束して、それは約束して、しかし、子供を二人抱えながら、妻も養いながら、キャッシュフローとしてはきちんと手当てをしてもらえるような、そういう仕組みにしないといけないと私は考えます。副大臣の意見もそのようなお気持ちだということを確認させていただきたいんです。
 それと関連して、日本育英会の奨学金というものもどのようになるのか、あわせて副大臣に伺いたいと思います。
河村副大臣 生活者の皆さんにどうするかという問題も当然、年齢層が高くなれば出てきましょうし、一般の貸与基準にプラスアルファして別途貸与するという方法も、今の育英制度の中にはございます。これは、二十万とか三十万とか、そんな大きい金額ではありませんが、プラスして乗せるということも今の制度上ございます。
 それから、これは専門職の大学院ですから、今の大学の修士課程、それから博士課程でもらっておられる方々がおられます、大体その辺が一つの目安になって決まっていくというふうに考えております。
中村(哲)委員 それでは、この首都圏では家賃も出ないような状態になるのではないでしょうか。
 十三万掛けるということは、百五十万ほどですか。そういった額で本当に足りるのかどうか、そんなようなところはいかがお考えでしょうか。
河村副大臣 無利子奨学金の年額は百二万、それから有利子奨学金は、上限の月額、一番多くを選択した場合で百五十六万ということですが、それではさらに足らないという方々には、プラス有利子奨学金もあわせてやれば、併用貸与制度でやれば、修士課程で二百五十八万まで受けられることになっております。
中村(哲)委員 それでもやはり授業料ぐらいしか出ないということになると思います。だからこそ、国民金融公庫の融資の額を引き上げるなどの措置が必要なのではないかということになってくるんです。
 財務省に伺います。日本育英会の奨学金を拡充するためにも、予算を拡大する必要があるのではないか。そして、日本育英会の独立行政法人化が検討されているけれども、それについて財務省がどのように考えているのか。まず、その育英会に対する財源措置について、財務省に伺います。
田中大臣政務官 お答えをいたします。
 日本育英会においての法科大学院の学生に対する奨学金についてどのように対応するかというお尋ねでございますが、その財政措置をどうするかについても、今後具体化される法科大学院の実情というのを十分踏まえていかなければならない、こう思っております。
 今、委員の御質問の趣旨は、私も実は過去に日本育英会の奨学金をいただいた学生であった時代もあるわけでございまして、十二分によく承知をしているつもりでございますが、今後、当局、関係者等と打ち合わせをしながら、真剣に検討をしていかなければならないと思っております。
中村(哲)委員 真剣に検討していただくということですが、奨学金の額の拡大があるのかどうか、そこはきちんと言及をしていただきたいと思います。
 あわせて、国民金融公庫の融資額は今現在幾らなのか、そして、法科大学院制度をつくることによってこれを拡大していく必要があるとお考えなのか、まずそこを御確認させていただきたいと思います。
田中大臣政務官 国金の年間の貸付限度額は、現在、平成九年度から、学生や生徒一人当たり二百万円以内ということになっております。ちなみに、平成十三年度の平均貸付単価は約百三十万円、こういうことになっておるわけでございます。
 今、法科大学院の学生についての奨学金の制度等に言及があったわけでございますし、国金の貸し付けについても、そういうことになれば、その時点で関係者とも相談をしなければならないと思っておりますけれども、これは、今の時点ではまだ具体化しておりませんので、今後の課題、このように承っておきたいと思います。
中村(哲)委員 田中政務官とお話しさせていただいて、それでは、まず大前提をお伺いしたいと思います。
 田中政務官は、先ほど私が、金持ちしか行けないような法科大学院ではおかしい、そういうふうな主張をさせていただいたときに、うんうんとうなずいていただいていたわけでございますから、今の制度では現実的に法科大学院に行けないという人に対して、そういう人たちを少しでも減らしていく、そういった意味で財務省としては取り組んでいきたいという御決意がおありなのかどうか、まず、そこだけ確認させていただきたいと思います。
田中大臣政務官 まず、恐縮でございます、年間二百万と言いましたけれども、貸し付けの総額が二百万でございましたので、訂正をしておきたいと思っております。
 今のお話についてでございますけれども、私も先日この委員会で御答弁をさせていただいたのですが、貧しいゆえに法曹を目指す人たちの勉学ができ得ないということは、答申にもなされたように、重大な問題でございまして、やはりその資金の手当てをどうするかということは、財務省にとっても当然重要なことだ、国の将来を考えるときに極めて重要なことだ、このように思っております。
 ただ、先ほど来からお話ございますように、まだ今検討されている段階でございまして、具体にどのようにするかということは今後の事項だと思っておりますけれども、私自身、これはやはり真剣に検討しなければならない、このような思いを持っております。
中村(哲)委員 真剣に検討しなくてはならないというのは、私にとっては甚だ残念な、不十分な御答弁だなと感じております。現実に、もう再来年からは法科大学院の入学者が生じるわけですよ。そのときに、自分が会社をやめて、子供を二人抱えて、法科大学院に行っていいのかどうか、そのことはもう来年、サラリーマンの皆さんは決断を迫られるわけですよ。
 この国が本当に人に投資することにシフトできるのかどうか。財務大臣は、「人間力向上、それから科学技術の振興ということを重点の一つに入れておりまして」と本会議でも御答弁なさっております。我が国が、物をつくることに投資する、そういう国から、いや違うんだ、二十一世紀は情報化の時代でもあるし、人への投資が非常に重要なんだ、そういうことを考えるのか、今、その岐路に来ていると思います。
 政務官、どうですか。
田中大臣政務官 委員の御質問の趣旨は私も十二分に承知をしておるつもりでございますし、理解もしておるつもりでございます。
 ただ、財務省の当局の立場ということになってまいりますと、やはりどうしても数字をはじいていかなければならないということが出てまいります。そういうことで、責任ある答弁について、実は数字をもって、まだ関係の皆さんとの協議、また申し入れ等ございませんので、今後詰めていかなければならないことが山積しておるわけでございます。
 ただ、大臣の発言もあったということを今御紹介いただいたわけでございますが、私もそのとおりだと思いますし、既に答申の中でも十二分にそのことについては強く指摘されておりまして、私どもも、本当に重ねて、速やかに、真剣に、そのときをひとつ迎えるために準備をしてまいりたいと思います。
中村(哲)委員 かなり積極的な答弁、意気込みを聞かせていただいたんではないかと思います。財務省としても真剣に取り組んでいく、財務大臣に頑張っていただく、そういうことで次の質問に行きたいと思います。
 時間がありませんので、質問の順番を変えまして、法科大学院ができることによって従来の法学部はどのように変わるのか。例えば、法科大学院を擁する大学の法学部と法科大学院を有しない大学の法学部はどのような違いを持つのか。いわゆるリーガルマインドを学ぶことの意義が見出せる場としての法学部としての位置づけとするのか。今までの法学部というものが法曹養成の役割を担っていたことも事実です。もともとそのような趣旨で法学部はできたはずでございます。ここのあたりの整理をどんなようにするのか、政府から見解を伺いまして私の質問とさせていただきます。
河村副大臣 極めて重要な御指摘だと思います。
 これまでの法学部教育というのが、いわゆる基礎的教養教育とか、あるいは法学教育とか、その役割が十分明確でなかったのではないかという指摘もあったわけでございまして、法科大学院が法曹に特化してそちらの方へ移っていくということによって、それ以外の法学部の役割というのが強く出されるということで、法的素養を中心にした教養教育、これに重点的にシフトできましょうし、複数の専門分野を同時に履修できるようなカリキュラムというのも含まれる、それから、法曹以外の法律関係の専門職の養成を中心にやれるというようなことで、これは各大学もそれに向けて努力をいただかなきゃなりません。
 卑近な例で申し上げてあれでございますが、私も、法曹にたくさん人材を送り込んでいるある大学の学部長から、法学部の三年、四年の授業がやりにくいんだ、現場にもう学生がいなくなる、法曹に行くために予備校に行ったりとか自宅研修、自分でやってしまっている、これで非常に困っておるんだということからも、今回の法科大学院の設立を非常に歓迎する言葉を聞いております。
 そういう意味で、私は、充実した法学教育ができて、その方面に生きるいわゆる法曹だけじゃなくて、その法学素養を生かした場所というのはあるわけでありますから、法学部教育というものが充実していく、このように確信をいたしております。
中村(哲)委員 時間が参りましたので、終わらさせていただきます。ありがとうございました。
山本委員長 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時二分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時三十分開議
山本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。石原健太郎君。
石原(健)委員 初めに大臣にお伺いしたいと思うんですけれども、既にこの場で何回かお答えになった繰り返しになるかもしれませんが、その点は御容赦いただきたいと思います。
 司法、法曹界の現状をどのように見ておられるか、またどんなところが改革されるべき点とお考えか。今回の法科大学院設立への連携法の御提案を踏まえながら、お聞かせいただければと思います。
森山国務大臣 司法につきましては、例えば、裁判に大変時間がかかるということや、国民にとっては何となく近づきがたいというような感じを持たれておりまして、本当はもっと身近な必要なものであるわけですから、そういう問題点を直していかなければいけないと思いますし、法曹につきましては、国民生活のさまざまな場面におきまして法曹に対する需要が一層増大するであろうというふうに考えますし、また多様化、高度化しつつあるところでもございます。ただ、そのような社会の法的需要に必ずしも十分には対応できていないというのが残念ながら現状でございます。
 そこで、このたびの司法制度改革におきましては、司法制度改革審議会の意見を踏まえまして、裁判の充実、迅速化、法曹の質的、量的な拡充、国民の司法参加などを図りたいというふうに考えております。
 このようなわけでございますので、その改革の第一歩といたしまして、法曹の養成の重要な柱である法科大学院を中核にした教育機関ということ、そして、法科大学院と司法試験、司法修習などを有機的に連携させた新たな法曹養成制度を構築するということが必要であると考えまして、このたびのこの法案を御提案申し上げているところでございます。
石原(健)委員 将来のあるべき姿というか理想的なイメージ等もお伺いしたかったのでありますけれども、今大臣が最初に御答弁になった時間の問題とか身近なものかどうかとか、そういう点が解決されていけば、大体理想的なといいますか、改革審の意見書なんかの提言にもかなったものとなるというふうに考えてよろしいでしょうか。
森山国務大臣 おっしゃるとおりでございますけれども、法曹の将来像ということになりますと、社会の法曹に対する需要の拡大、また多様化、専門化ということもございますし、さらには、国際的にも大いに活躍してもらえるようなそういう人ももっと必要だというふうに考えておりますので、これらのことに対応するべく法曹の養成をしっかりとやっていきたいというふうに考えまして、もしそれができれば、これまでよりもより幅の広いさまざまな分野で活躍していただけるであろうと思っております。
石原(健)委員 改革審議会の意見書では、将来司法試験の合格者三千人を目指し、また質の変化も目指すよう提言しております。また、弁護士のみならず、裁判官、検察官の大幅増員も提言しています。今回の法科大学院の創設は、裁判官、検察官の大幅増員も視野に入れていると考えてよろしいのでしょうか。
森山国務大臣 内外の社会経済情勢の変化に伴いまして司法の果たすべき役割がより一層重要になると考えられますが、このような司法を支える裁判官、検察官の増員につきまして、司法制度改革審議会の意見は、「全体としての法曹人口の増加を図る中で、裁判官、検察官を大幅に増員すべきである。」というふうに言っております。
 政府といたしましては、本年三月閣議決定を行いました司法制度改革推進計画におきまして、裁判官、検察官の大幅な増員を含む司法を支える人的基盤の整備の充実を図ることが必要というふうにしておりました上、これらを着実に実施するために、本部の設置期間中においても、裁判官、検察官の必要な増員を行うというふうにしております。
 今後の各年度の裁判官や検察官の具体的な増員につきましては、こうした推進計画のもとで、各種の制度改革の進展や社会の法的需要を踏まえますとともに、その制度等を効率的に運用しながら必要な措置を講じていくものと考えておりますが、そのようなことも踏まえまして、法務省といたしましては、平成十五年度の予算要求におきましては、検察官五十人の増員を要求したところでございます。
石原(健)委員 改革審の意見書に沿った改革を進めていくには、新たな財政支出も相当必要になると考えられます。財政当局は従来、実績重視、前例踏襲型の面が強く感じられます。特に最近は税収の大幅な落ち込みがあり、また、民間とのバランスをとるためとはいえ、公務員の賃金カットさえ予想されております。
 こうした厳しい状況下で意見書の提言を実現していくには、局面を打開していく不退転の決意が必要かと思います。また、強い信念と強力な行動力も必要と考えられますが、そのような強い決意をお持ちかどうか、信念はいかがか、その辺をお聞かせいただければ幸いです。
森山国務大臣 おっしゃるとおり、この提言をもとにして構想を実際に実現していこうと思いますと、いろいろな財政的な負担もふえていくであろうと思います。しかし、これは内閣挙げて重要な課題だということで取り組んでいることでございまして、財務当局の方も大いに御理解をいただけるものと期待しております。
石原(健)委員 この委員会でも大学院生の奨学金の充実の問題が幾度か取り上げられ、大臣もその充実強化へ向けての強い意欲を再々示されました。しかし、財政当局の答弁を聞く限り、何か心もとない感じがしたり、威勢のよい答弁をされても具体性が乏しかったりしております。
 この奨学金の問題を乗り越えることは、将来の改革への第一歩であり、必要不可欠なものと思います。重ねての答弁は求めませんが、奨学金の充実はぜひ実現してくださいますよう、私からも強く要望申し上げます。
 さらに、こうした改革を実現するには、財務当局の理解を得ることはもとより、納税者たる国民の全面的合意、賛同、世論の後押し、マスコミの力強いバックアップも欠かせないものと考えます。こうした面への取り組みはどのように努力なさっておられるのでしょうか。また今後どうされるおつもりなのか、事務当局よりお答えいただければと思います。
山崎政府参考人 ただいま御指摘いただきました点は、大変重要であろうと私どもも認識しておるところでございます。
 私どもの本部の方におきましては、これまで新聞、テレビ等を利用しました政府広報、これをかなり活用させていただきまして、それから、司法制度に関するパンフレット、これも最近自前で新しいものをこしらえました。各都道府県のところに置いておいていただいて、目を通していただくというような活動もしているところでございます。
 今後もこの広報活動を積極的に進めてまいりたいというふうに思っております。今までも法務大臣にも何回か御出演をいただいて広報活動に努めているところでございますが、なお一層努めたいというふうに思っております。
石原(健)委員 世間一般にはまだまだ十分な浸透はしていないというふうに私らは感じられるところでありますので、今おっしゃったように一層の活動をよろしくお願い申し上げます。
 といいますのも、従来、道路や橋、新幹線などをつくる際には、よしあしは別にしましても、大陳情合戦が繰り広げられます。また、かつての話で極端かもしれませんが、米価闘争のときもすごい運動でしたし、賃上げ春闘も活発でありました。私は、十分、二十分あるいは一時間、時間を短縮するために数百億、数千億のお金をかけてたまにしか車の通らない赤字の高速道路をつくるよりは、この司法改革を着実に進めていただくことの方がはるかに国民のためになるということを強く信じているということを申し上げ、次の質問に移ります。
 大学院の設置基準についてでありますが、党内の議論では、今の大学の設置基準のように細々、微に入り細をうがってつくられたのではクリアするのにとても容易ではないという意見が出されました。今度の連携法の法律案第二条には、この法律は規制緩和の要請のもとに作成されるのだという趣旨が述べられております。設置基準というようなものは規制の典型的なものと思われます。できるだけ簡素なものが望まれますが、お考えをお聞かせください。
工藤政府参考人 大学や大学院の設置基準といいますのは、大学を設置し維持していく上での最低基準という性格を帯びてございまして、平成三年以降なのでございますけれども、私ども、基準の大綱化といいますか、大枠だけにとどめて、できるだけ各大学の自己責任のもとでの教育の自律をお願いしているところでございます。
 今回の法科大学院の設置基準につきまして、基本は同じなのでございますけれども、他方で、先般来委員の先生方から御質疑で御心配いただいておりますように、新しい制度の発足に当たりましてしっかりした法曹養成をしなければいけない、そのために、いろいろ審議会の方からの御提言もあるわけでございますけれども、法科大学院の設置基準を策定するに当たりましても、この法案が成立した後に関係の審議会で御議論いただくことではございますけれども、教育の内容、方法でございますとか、教育体制などの面で質の高い法曹を養成するためにふさわしい基準となるように、しかも、御提言ありましたようにできるだけ大綱的なものになるように、その兼ね合いを考えながらしっかりしたものを制定してまいりたいと思っております。
石原(健)委員 この大学院の入学資格といいますか、入学についてですけれども、推薦入学というようなことはそれぞれの大学院でできることなのでしょうか。また、年齢制限というものはございますでしょうか。
工藤政府参考人 大学院への入学資格は、基本は学部卒ということでございますけれども、これも近年結構弾力化してございまして、大学の学部を出なくても、それぞれの大学院で能力、資質があると認めさえすれば入学を許可することがあり得ます。
 したがいまして、それぞれの法科大学院への入学に当たりましても、それぞれの大学院で自主的にお考えいただくことではございますが、普通は年齢制限はございませんし、それから、入試のやり方につきましても、多様なバックグラウンドを持つ方々が入学しやすいように、適性検査を受けるとか、法律の専門知識のみでない入試選抜を基本としてお願いしようと思っておりますけれども、中には推薦入学ということもあり得ないわけではないと思っております。
石原(健)委員 法科大学院には法科出身者以外に他の学部の卒業生の入学も期待されているようです。二割ぐらいをめどとするようなお話もあったような気がいたしますが、現実にそうした希望者がそれほどたくさんいるのだろうかという疑問もわいてくるのでありますけれども、こうした疑問に具体的にお答えいただけたらと思います。
工藤政府参考人 現在、国公私の大学で法学部関係の一学年の定員といいますか学生数というのが約五万人弱でございます。他方、司法試験を受験される方というのは、法学部出身者というのはそんなに、メジャーはメジャーではございますけれども、その卒業生のすべてではございませんし、多様な方々が法曹を目指していらっしゃるわけでございますが、今後の制度の定着状況にもよりますけれども、しっかりした教育を行い、それが社会的に、あそこの法科大学院はやはりいいものだねという評価を定着させながら、法科大学院でプロセスとしての養成がしっかり行われることを期待している次第でございます。
石原(健)委員 入学の選抜についてでありますけれども、法科出身者への出題と他学部の出身者への出題は同じなのか別なのか伺わせてください。他の学部の卒業生が法科出身者と同じような法律知識を持つということは、普通の人ではなかなか容易でないと思われるからであります。
 また、入学後の履修の際、他の学部の出身者には法学部門の学習を手厚くしてあげる必要があると思いますが、この点はどのようにお考えになっているのでしょうか。
工藤政府参考人 法科大学院の構想は、これまでの法学部なり司法試験をお受けになる前の段階での実態の反省から、しっかりした、しかも三年制の教育課程をしっかりした大学院で行うべしということが提言されたのを受けてのものでございます。したがいまして、法学部あるいは法律的な素養があるなしにかかわらず、入学されて三年間きっちり勉強されますと新しい司法試験を受けられるだけの付加価値がつけられると期待されるものでございます。
 したがいまして、法科大学院の入学に当たりましては、従来のように法律学についての基礎知識を聞くという試験ではなくて、法科大学院における履修の前提として必要な判断力でございますとか、思考力、分析力、表現力等を試す適性試験を、どういうバックグラウンドの方でも共通に受けていただくということが前提でございます。したがって、法学部出身者に有利不利ということではないだろうとは思います。
 他方で、御承知のように、ある程度法学的な素養がある方、それは法学部卒業者だけではございませんで、法学部を出ようが出まいが一定の法律知識、三年間の履修のうち一定部分をもう既に勉強しているねという方については、法学既修者として一年以下の年限の短縮、単位の免除ができる仕組みを予定しているわけでございますが、それについても、先ほどの入学試験とは別にその短縮のための法律試験を受けていただくことになるわけでございます。
 ですから、法律的な素養がなくても三年間きっちり学べば立派な法曹のスタートラインにつけるような人材養成を期しているものでございます。
石原(健)委員 将来一層、外国語、単に英語ばかりではなく、中国語とかドイツ語等に堪能な法曹の養成が必要になってくるかとも考えられますが、この点、大学院での外国語教育はどのように考えておられるのか、お考えを聞かせてください。
工藤政府参考人 今や、法学関係に限らず社会的に求められている人材としては、語学力それからパソコン等のコンピューターの情報処理能力というのが、いわばツールとして必須に近くなってきてございます。そのために、学部段階で、理系、文系を問わずにほとんどの大学でそういう情報処理あるいは語学に力を入れているところでございます。
 新しい法科大学院で語学そのものの授業をどうするかというのは、それぞれの大学院での御見識の問題ではございますけれども、法科大学院は、先ほど御質問ありましたように、法学的なバックグラウンドのない方についても、きっちり勉強すればそれだけの法学的な付加価値がつくほどの、結構過密といいましょうか、大変なカリキュラムを組むことになりましょうから、法科大学院独自に語学そのものの授業科目というよりは、むしろそれぞれの法科大学院の特色づけといいましょうか、知財に強い法科大学院とか、あるいは国際取引だとか国際関係に強い法曹養成とか、それぞれの法科大学院ごとの切磋琢磨の中で特色づけが見込まれるわけでございますが、その際に、英語等の外国語でのディベートを行って授業の一環とするとか、そういう語学的な色彩の強い授業科目を組むことは十分考えられることじゃないかと思っております。
 それから、他方、法学的な基礎のない方に法学の基礎知識の授業をもっと多くという御質問でございますけれども、それについても、入学後、少なくとも、卒業といいましょうか大学院の修了段階で、法学部卒業かどうかは別として、すべての方々がある程度の付加価値がついて修了できるように、それぞれの大学院でお考えいただくことではないかと思っております。
石原(健)委員 法科大学院には、現職の裁判官、検事等実務家が先生を兼ねることが予想されているようであります。その場合、東京とか大阪、そしてまた地方とで人材は公平に派遣されるべきだと考えます。また、私立の大学院と国立とでも公平に派遣されることが望ましいと思います。
 この面での公平を確保するための方策等について、お考えになっていることがあればお示しください。
寺田政府参考人 委員も御指摘のとおり、この法科大学院への実務家教員としての派遣というのは、法科大学院の成否にとって非常に重要な事柄でございます。
 当然のことながら、検察官あるいは裁判官にとってもOBの方々がおいでになりまして、この方々も相当法科大学院においては戦力になるということで認識はされておりますが、しかし、現状を見ますと、それだけでは十分ではない。当然のことながら、現役の裁判官あるいは検察官が直接法科大学院で教鞭をとるということも必要になってくるのではないかという見通しでおります。
 その場合に、今御指摘がありましたとおり、幾つかの問題点がございますが、まず第一に、国立大学と私立大学の問題がございます。国立大学にとりましては、いわば同じ公務員でございますので、何らかの手だてというのを特に必要としない場合もあるわけでございますが、私立大学にとりましては、派遣するとなりますと、それだけでは十分ではない、何らかの新しい法的な措置というものを必要とするわけでございます。
 また、地方と中央の問題がございます。午前中も、この法科大学院の適正配置ということについて大変厳しい御指摘がございました。私どもも、直接的には、適正配置につきまして何らかの強制的な手段を用いるというようなことはできないわけでございますが、現実に、地方大学、地方の法科大学院を予定されておられる関係者にとりましては、教員の確保というのが最大の問題点だというふうに認識されていると私どもも承知しております。
 このような面で、地方にはそのような実務家の現役の教官ということはおよそあり得ないというようなことはないように、私どもも十分に配慮申し上げたい、こういうふうに考えております。
石原(健)委員 司法試験合格者のほぼ一〇〇%近い人が予備校と何らかのかかわりを持つと聞いておりますが、法科大学院できちっと勉強して卒業すれば予備校とかかわりを持たなくても多くの卒業生が司法試験に合格できるような仕組みになるのでしょうか。見通しについてお聞かせいただければと思います。
山崎政府参考人 この点に関しましては、司法制度改革審議会の意見書では、「法曹となるべき資質・意欲を持つ者が入学し、厳格な成績評価及び修了認定が行われることを不可欠の前提とした上で、法科大学院では、その課程を修了した者のうち相当程度(例えば約七、八割)」と書かれておりますけれども、その者が「新司法試験に合格できるよう、充実した教育を行うべきである。」というふうに記載がされております。
 これがどうもひとり歩きしているところがございまして、受かるようにきちっとした教育をまずすべきだということをここでうたっているわけでございます。そのとおり合格していくことが理想かもしれませんけれども、最終的には、これは試験でございますので、あらかじめどのぐらいが受かるということを定めることは残念ながらできないという性質のものだということで御理解をいただきたいと思います。
石原(健)委員 司法試験と予備試験の試験科目の主な違いと、その違いを設けた理由を説明してください。
山崎政府参考人 若干時間がかかるかもしれませんが、お答え申し上げます。
 まず、予備試験の性格でございますけれども、これは、法科大学院修了者と同等の学識、能力及び法律に関する実務の基礎的素養を有するかどうかを判定するということを目的としたものでございます。
 そこで、どういう科目かということでございますけれども、これは、法科大学院で基本的に教えられているもの、これについてテストをするということでございます。したがいまして、基本的な法律科目、これを具体的に挙げれば、憲法、行政法、民法、商法、民事訴訟法、刑事訴訟法ということになります。これに加えまして、一般教養科目というものが試験科目になります。これが最初の短答式という試験で、丸をつけていく試験でございますけれども、そういうことでテストがされるということでございます。
 その後に、論文式でございますね、これは記述の能力がきちっとあるかどうか、分析力があるかどうかを見るもの、これも行われることになります。その場合には、法律に関します実務基礎科目というものも新たに一科目加わるということになります。
 この試験に受かった方は、最後に、口述式試験、要するに応対能力をきちっと試すというものでございますが、これが一科目について行われるということでございます。
 それが予備試験のイメージでございます。
 それでは、司法試験の本試験はどうかということでございますけれども、これは、法科大学院修了者または予備試験合格者を対象といたしまして、裁判官、検察官また弁護士になろうとする者に必要な学識及びその応用能力、これを備えているかどうかということを判定するものでございます。
 この法科大学院におきましては、基本的な科目を教える以外に、例えば公法系の科目ということで、憲法と行政法、これが両者にまたがったような問題の設定をして、きちっと理解をしてもらうというような教育も行います。さらに、民事系になりますと、民法、商法、民事訴訟法、これが全部融合したような問題で、きちっと教育をしていく。それから、刑事系でございますけれども、これは、刑法、刑事訴訟法、こういうようなところの融合問題、こういうこともきちっと教えて、応用能力、問題解決能力をきちっと身につけてもらうということを行います。したがいまして、司法試験の本試験はこの科目が基本となるということでございます。
 これに加えまして、法科大学院では必修の科目以外に選択科目というものを設けることになりますので、その選択科目で、例えば知的財産権あるいはビジネスロー、そういうものに強い人を育てようと思えば、そこに科目を集中してやっていくということになります。そういうような選択的な専門性を持った能力もきちっとつけていただきたいということから、大部分の法科大学院でそういうような選択科目で教えられているもの、そういうようなものを抽出いたしまして選択科目として何科目か掲げまして、その中から一科目を選択してもらうということでテストをいたしますということでございます。
 なお、この本試験の方につきましては口述試験はございません。これは、法科大学院で議論をする場合には、大講堂で一方的に教師が講義をするんではなくて、生徒と先生で対話をしながら教えていく、あるいは生徒間で議論をさせる、こういうふうなことを徹底して行うということになりまして、そこをきちっと卒業できるということになれば、そういう能力は備わっているということとして見ますので、口述式試験はないということになります。
 こういう違いがあるということでございます。
石原(健)委員 そうしますと、今、教師と大学院の学生とがきちっと徹底的に討論して討論の能力も身につけるというようなことなんですけれども、それは全部の法科大学院についてそのようにされるということで、また設置基準か何かでそういうことを決めるわけですか。
山崎政府参考人 この点に関しましては、いわゆる連携法と言っている法律でございますが、この中にも、基本的理念の中に、少人数による教育ということがきちっと入っていると思います。
 こういうような基本的な理念を踏まえた大学院の設置基準にもなりますし、第三者評価の基準にもなっていくということでございますので、そのいずれかできちっとそういう点については基準として盛り込まれるだろうというふうに理解をしております。
石原(健)委員 司法試験なんかは、出題の傾向、配点の仕方でいろいろ工夫が凝らせると考えます。公平の観点、若者への配慮、思いやりといった面からも、全員が一斉に司法試験を受けるとか、全員がまず予備試験を受けるようにした方が、公平の観点やなんかから好ましいじゃないかというふうにも考えられますが、その点はいかがでしょうか。
山崎政府参考人 ただいま二つの御指摘があったかと思いますけれども、一つは、予備試験のルートをパスしていきなり本試験を受けさせたらどうかというのが一つの御指摘かと思います。
 この点につきましては、今回の法案につきましては、法科大学院で将来に向けた基礎的な専門性を持ったきちっとした教育が行われていくということ、これを試験と司法修習でお互いに連携してやっていきましょう、こういう思想でございます。そうなりますと、そういう能力をある程度持っていることを前提に司法試験を組んでいるわけでございますので、予備試験をやらないまま本試験だけということになりますと、その前の基礎的な前提の知識、能力等があるかどうかがテストできないということになりますので、これはやはりバランスを欠くんではないか。今回の教育の理念とは少し違ってくるということでございます。
 もう一つは、今御指摘の点は、法科大学院卒業者にも予備試験を受けさせたらどうか、こういう趣旨だろうと思います。それが平等だろうという御指摘だと思います。
 確かにそういう御指摘をされる方もおられるんですけれども、ただ、法科大学院で徹底して、三年なら三年教育をするわけでございます。それで、これはこの理念にも盛られておりますけれども、厳格な成績認定を行って、厳格な修了認定も行うということにしておりまして、こういうものが第三者評価の対象にもなるわけでございますので、そこで相当なふるい落としがきちっとされるということが前提になりますので、相当厳しいチェックを受けて卒業をしていくということになりますので、その能力は有していると見て、予備試験は受けないということに合理性があるというふうに私どもは理解をしております。
石原(健)委員 改革審議会の意見書にのっとってわざわざ立派な理念のもとに法科大学院をつくるからには、当然こちらの卒業生に予備試験というようなことよりウエートが置かれるものと考えられますが、そのような理解でよろしいのでしょうか。
 この点が明確でないと、これから法曹を目指そうとする若い人たちにいたずらに迷いとか心配や悩みを持たせることになるのではないかと思うからです。改革副本部長としての法務大臣のお考えをお聞かせください。
森山国務大臣 法科大学院の修了者と予備試験の合格者とは同等の資格で平等に新司法試験を受験することができるものでございます。新司法試験の合格者の数の中でそれぞれが占める割合をあらかじめ決めるようなことは、試験の公平性の観点から相当ではないというふうに思います。
石原(健)委員 私の質問した趣旨と大臣の御答弁とちょっと行き違いがあるんじゃないかなというような気もするんですけれども、法科大学院をつくるということは、今度の改革審議会の意見書にのっとって、みんなでいろいろ議論しながらせっかくつくっていくわけですよね。そういう大学院をせっかくつくりながら、これから法曹を目指そうとする若い人たちが、大学院を目指した方がいいのかな、それとも、法律事務所なんかに働きながら、仕事を実地に体験しながら、またさらに、書物の上で勉強していく方がいいのかな、そういう迷いが出てくるんじゃないかなという気もするんですよね。大学院がいいのか、それとも自分なりに勉強した方がいいのかという。
 そういう意味で私お聞きしたんですけれども、今回の法改正の理念なんかからいいますと、当然大学院が、先ほど中核になるというような御答弁もありましたね、中核になるということはそっちが主体だぞというふうに理解していてよろしいんでしょうか。
森山国務大臣 ちょっと御趣旨を取り違えまして失礼いたしました。
 中核になるという意味は、こちらが望ましいという気持ちをあらわしたつもりでございましたが、しかし、いろいろな理由で法科大学院に入らないあるいは入れない方々のチャンスがなくなるのもよくありませんので、同じ力を持っている人にはチャンスを与えようということで、それを見るための試験でございますので、一遍そちらにも受かったら、同じチャンスで両方とも受けられるということでありますから、そういう意味で申し上げたわけでございます。
石原(健)委員 改正後の司法試験合格者の決め方についての考えをお聞かせください。
 例えば、一定の点数をクリアすればみんな合格だぞとか、あるいは、三千人と決まっているんだから三千人以上は合格にはしないんだぞとか、その辺の決め方について御説明いただけたらと思います。
山崎政府参考人 決め方は、今私がこういうやり方をすると言うことはなかなかできないことでございまして、最終的には、今回の法案で御承認いただく司法試験委員会、ここで当落を決めていくということになりまして、かなり独立性の高い委員会でございますので、そこで御判断いただくということになります。
 法曹の人口をどういうふうにふやしていくかということにつきまして、十六年からは合格者千五百人、それから平成二十二年からは三千人体制でいこうという形で今計画がされておりまして、基本的にはその千五百なり三千、前後はするかと思いますけれども、大体その辺の数字のところを合格者として認めていくということになろうかと思います。その年々によって、点数というか、できのよしあしというのは当然ございますので、その辺のところは委員会の方できちっと決めていただくということになろうかと思います。
 現段階で、どういうふうにやるということはちょっと申し上げられないということを御理解いただきたいと思います。
石原(健)委員 それから、司法修習生の修習期間中の待遇について、現在の状況と将来の方向、あるいは、任官する、官につく予定の人にだけ一定の処遇を考えて、任官を望まない人には給費しないとか、いろいろな考え方もあるかと思うんですけれども、その点についてのお考えを聞かせていただけたらと思います。
山崎政府参考人 ただいまの御指摘は、今回の法曹養成制度の中で入っていない項目でございます。これは、私どもの方の法曹養成検討会というところで、テーマとして議論はしております。ただ、今回は結論が得られなかったということで、もう少し先にまた御審議をいただくという予定でございます。
 中間的な整理がされておりますが、こういうことでございます。法科大学院制度を含めた法曹養成制度全体を視野に入れつつ、貸与制等の代替措置の導入を含め、給費制のあり方を見直すことについて検討する、こういうことで方向性が示されているわけでございます。ただいま御指摘のような任官する者云々とか、そういうところはまだ具体的にこれから検討をしていくということでございます。
石原(健)委員 修習の期間は短縮されるというふうに聞いていましたが、一年ということに変更になるわけですね。
山崎政府参考人 今回の裁判所法の一部を改正する法律案、ここで修習期間を一年半から一年というふうに短縮して、これは御承認を得るということになりますが、給費の問題については切り離してもう少し先にまた御承認をいただく、こういうことでございます。
石原(健)委員 修習期間を終わった後、独立したとか任官したとかあるかと思うんですが、その後の継続教育についてはどのような検討がなされるのか、どんな点が望まれているのか、わかっている範囲でお答えいただけたらと思います。
山崎政府参考人 ただいまの御指摘の継続教育は大変重要な話でございます。
 今回の法曹養成につきましては、先ほど修習期間を一年半から一年へと申し上げましたけれども、この中には、ここでかなり教えられている、職についたときに必要な非常に技術的な項目がございますけれども、そういうものにつきましては全部仕事を持ってから教えるようにしようということで短縮が可能になってきているわけでございます。それと、現在修習で教えているものを法科大学院で教えるということから短縮が可能になっておりますけれども、そうなりますと、やはり仕事についてからもう少し技術的な専門性を持ったものも教育をするということになりますし、それ以外にも職業人として備えるべきいろいろな倫理とか教養だとか、そういうものについても、研修等を踏まえて能力をきちっと図っていくということになろうかと思います。
 それ以外に、今回は御承認を得るわけではございません、もう少し先にということになろうかと思いますけれども、裁判官でも検察官でも、自分の仕事を離れて、別の、他の仕事についてそれからまた戻る、こういうような他職経験ということですね、これが改革審の意見書にも盛られておりまして、私どももその方向で今検討を加えているところでございます。
 要するに、内部にいるだけではなくて、もう少し民間の通常の感覚を学んで戻るように、こういうような継続教育も考えているところでございます。またいずれ御承認を得たいと思います。
石原(健)委員 質問を終わります。どうもありがとうございました。
山本委員長 次に、植田至紀君。
植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀です。
 まず、この連携法という法案でしょうか、この基本理念にかかわって、これは最初の一問、法務大臣にお伺いしたいわけです。
 この二条に、法曹養成の基本理念ということで、「多様かつ広範な国民の要請にこたえることができる高度の専門的な法律知識、幅広い教養、国際的な素養、豊かな人間性及び職業倫理を備えた多数の法曹が求められていることにかんがみ、」云々とあるわけですけれども、この二条の基本理念に、弁護士法一条にある人権の擁護者、人権という言葉が入っていないのはなぜなんでしょうか。もし、そうした問題意識、人権というのを読み取るとするなら、この二条の中のどこで読み取ればいいんでしょうか。読み取りようがないということであれば、そういう説明でもまず一問目は結構でございますが、まずその点について御説明いただきます。
森山国務大臣 およそ司法が国民の基本的人権を擁護し、社会正義の実現を図る役割を担っているということは申すまでもないことでございまして、この法案の第二条に言う「司法の果たすべき役割」にもこのような内容は当然含まれていると考えます。
 第二条においては、法曹が備えるべき資質について規定しているところでございますけれども、人権擁護というのは、司法の果たすべき役割、むしろそれよりさらに上位の概念になるのではないかというふうに思いまして、あえて人権擁護という文言をここに規定する必要はないかと思ったわけでございます。
植田委員 ちょっと済みません、上位の概念と言っていただければそれはそれでわかるのですが、要は、言わずもがなのことだから書きませんでしたということなんですか。そういう理解でいいんでしょうか。
森山国務大臣 当然のことでありますので、必要ないと思いました。
植田委員 シンプルな答弁で結構でございますが、要は、言わずもがなのことですから、当然、この法律全体といいますか司法制度改革の底流にそういう意識がそもそも貫通しておるというのが前提だということで理解しておきます。それを前提とした場合に、果たしてそうなのかという疑問が当然生まれてくるわけでございますが。
 次に、三条の関係、五条も含むでしょうか、三条の関係でちょっと教えてほしいわけですが、この三条の三項でしょうか、「国は、法科大学院において将来の法曹としての実務に必要な学識及びその応用能力並びに法律に関する実務の基礎的素養を涵養するための教育が行われることを確保するため、法科大学院における法曹である教員の確保及び教員の教育上の能力の向上のために必要な施策を講ずる」というふうにあるわけですけれども、これは具体的にどういう中身か。
 要は、教員の能力向上のための具体策というのは、現段階でどういうことを考えておられるのでしょうか。
寺田政府参考人 先ほども申し上げました教員の確保を含めまして、今後の法科大学院における教育体制をどうするかということにつきましては、現在、法科大学院の設立準備会と法曹三者、裁判所、法務省、弁護士会との間で協議会を設けて、いろいろ御相談を申し上げているところでございます。本日もその協議を行っているところでございますが、法科大学院側からは具体的に、やはり実務経験というものの乏しい現在の研究者教員というものを何とか実務家の教員の持っている実務的素養に近づけたいという御要望がおありでございまして、私どもといたしましては、そういう実務の御経験について多少なりとも触れていただくような場の設定、これは具体的には、例えばその実務が行われている現場をごらんいただくとか、あるいは研修所で行われている実務教育の一端をごらんいただくとかいうようなことがあろうかと思いますが、具体的には今後検討していくところでございます。
 私どもとしても、この点についてできるだけのことをさせていただきたいと考えております。
植田委員 今の御説明でいきますと、今の大学の法学部のそれぞれの教授の方、先生の方々に実務経験というものを知っていただく、そういうお話ですか。今の法学部のそれぞれの、民法でも憲法でも労働法でも何でもいいですわ、そういう方々に、いわゆる研究者としての教授、助教授ということだけではなしに、そうした実務経験を、法科大学院の教員としてたえ得る能力を持ち得るように訓練をするというお話を今されたということでいいわけですか。
寺田政府参考人 差し当たっての教鞭をとっていただく教員の方々の能力の向上という意味では、現在私が申し上げました点が最大の問題でございます。ただし、もちろん、今後新たに教員になられる方について国がどういう施策を講ずるかということは、これは文部科学省の方とまたいろいろ御相談をさせていただいてやらせていただきたいということでございます。
植田委員 実際にいらっしゃる法学部の先生方に、そうした実務経験をかいま見る機会を持って、そうしたことの知識なり実務なりというものに精通していただくというのは、もちろんそれはそれで大事なことだと思いますけれども、そうなると非常ににわか仕立ての話ですわね。言ってみれば、大学の先生方が実務講習を受けにどこかに行くようなものですよね。
 もちろん、当面はそういうしのぎもせないかぬけれども、今後もっと教員なり教学体制というものを充実させていくことは当然認識されているだろうと思うわけですが、法案説明のときにもよく伺ったのは、法学部の研究者としてのそういう教員の方々、教授や助教授や講師の方々だけではなしに、実務に精通されている、そうした部門で活躍されていた、また活動されている方々を、それは常勤か客員か非常勤かわかりませんよ、そういう方々もそうした法科大学院の教員として積極的に採用して、カリキュラムの内容、教育内容というものを豊富化していきたいんだというような話を伺ったわけですが、それはそういう理解でいいわけですか。
寺田政府参考人 これは私ども法務省の方からお答えするのが適当かどうかわかりませんが、先ほど申しましたように、教員全体の能力向上をどうするかということにつきましては、文部科学省と十分御相談をさせていただきたいと思います。その能力の向上の中には、今委員の御指摘になられましたような教育上の技術の問題も非常に大きなウエートを占めるということは十分認識いたしております。
植田委員 今答弁の一番最後でおっしゃった技術ですよね。実際に実務に精通している方だからといって、では教育者として適切かどうかですね。そうしたみずからやっていた実務経験を次代を担う人たちにうまく伝えていく、ここはやはりスキルが必要だろうと思うんですよ。
 それで、ここはあえて私は法務サイドにお伺いするわけですけれども、むしろそれは、そうした実務経験がある方にせよ実際の法学部の教員にせよ、法科大学院という枠組みの中で、いわば何を伝えるのか、何を教育していくのかという、教育方法なり技術なりというものの開発が必要だろうと思うわけなんですね。ただ何となく、むやみに、とにかく実務経験、実務を重視しましょうといって、大学の先生を引っ張ってきて実務の講習を受けましたといったって、生まれてこの方一度もそんなことをやっていない人が、ちょこちょこっとそれを見て、はい、実務わかりましたということにもならないだろうし、また逆に、実務には精通しているけれども実際人に物を教えたことがない方々に、教えるという技能、能力を身につけていただく場合、ここの部分のスキルの開発ということになれば、むしろ法務省さんというか、そっちサイドのやはりノウハウなりがおありだろうと私は思うがゆえに、むしろそちらの方に聞いているわけなんですね。
 それは重要だということだけではなしに、言ってみれば、そうした教員を養成する新たなカリキュラムも、法科大学院をこしらえることによって別途また用意せぬといかぬと思うわけですが、それがこの三条の、法科大学院における法曹である教員の確保及び教員の教育上の能力の向上のための施策というところに包摂されているのであれば、もうちょい明示的に、具体的に御説明がいただけてもいいんじゃないかなと思ったので、ちょっとしつこいようですが、もう一度お願いします。
寺田政府参考人 名選手が必ずしも名監督、名コーチにならないということはただいま委員の御指摘になったとおりでございまして、やはり教育上のスキルというのは非常に重要な問題であろうと私どもも十分認識いたしております。
 今後具体的にどうするかということでありますと、現段階で申し上げることは非常に少ないわけでございますが、しかし、司法研修所にもノウハウがあり、あるいは私どもの法務総合研究所にもノウハウがございます。そういったものを活用して、教育的にどういうふうに教えるのが適切かというようなところを順次開発し、あるいはさらに研究を深めてまいりたい、このように考えております。
植田委員 そこのところが、まだ言うことが少ないというのが非常に不安なんですよね。ほかの午前中の議論、また先週の議論も聞いていましても、個々の問題について、今回のロースクールの関連法案がいいものなのか悪いものなのか検証する素材を提供してくださいと言った瞬間、今みたいなお話になっちゃうんですよね。いいか悪いか判断する素材をもうちょっと提供してほしいわけなんです。
 例えば、法科大学院をこしらえる、その法科大学院がどういう教育内容なのか。何も私はそこでの教育内容をお上が縛れと言っているんじゃないわけなんですよ。ただし、そこで教える人たちを養成していかなきゃならない。その養成の仕組みなり具体策というのが、これから相談しますといっても、五年後にこしらえる話じゃないわけですので、実務家であろうが大学の先生であろうが、今回の法科大学院の理想形に近づけるだけのカリキュラムに対して、それにたえ得る教員を養成するというのはやや先行的にやらなきゃならないんじゃないんでしょうか。
 だから、これからやりますといっても、そんなに日数ありませんわね。実務家の方も大学の先生方も優秀な方やからすぐに間に合うといえばそうですけれども、今のお話やったら、やはり自分でもしゃべってはって不安になりませんか。自分でしゃべってはっても、何かちょっと大丈夫かいなと、やはりそこは文科省も不安になっちゃうと思うんですよ。要するに、法科大学院ができたけれども、実際そこで教える教員の体制がこれからぼちぼち相談させていただきますという話では、不安じゃありません、自分で答弁なさっていて。
寺田政府参考人 どんな制度も、できる前は不安でございます。私どもも、正直申し上げまして、すべての準備が全く順調に整っているということを申し上げるには至っておりません。
 ただ、私どもは、先ほど申し上げましたように、法科大学院協会の関係の先生方も非常に熱心にやっておられますし、それと私どもも、法曹三者もなかなか意見がまとまりにくいところでございますが、この点に関しては、三者を挙げて法科大学院を応援しようということで体制をつくっているところでございますので、そこはひとつ御理解を賜りたいと思います。
植田委員 ほかの質問もありますので、ここで余りしつこくやっても申しわけないので、一応御理解賜っておきます、言っていることについては。
 ただ、実際気になるのは、そうなると結局、これは答弁求めませんが、恐らく受験予備校なんかで講師の方で優秀な人もいるでしょう、法科大学院がそういう人を引き抜いてやるようやったら、これは何のこっちゃという話になりますわね。そういうこともあり得るんじゃないか。
 だから、先行的に、法科大学院における教員がどうした教育をしていくべきなのか、そのスキルの開発は可及的速やかにやっていかなければあかんなということは、当然御認識されているんだと思いますけれども、しつこいですけれども、それだけ申し添えておきます。
 それと、同じく三条の四項で、「国は、法科大学院における教育に関する施策を策定し、及びこれを実施するに当たっては、大学における教育の特性に配慮しなければならない。」ということでございますが、まず、この大学における教育の特性に配慮するというのは、どういう意味として理解すればいいんでしょうか。
山崎政府参考人 ただいまの点につきましては、二条に法曹養成の基本理念を掲げておりますけれども、その中で、法科大学院の教育が各法科大学院の創意をもって行われるものとするということを規定しておりまして、いわば大学の自主性を尊重するということでございまして、このことのあらわれでございます。
植田委員 各法科大学院の創意をもって云々ということが二条で書かれているということなんですが、これはそういうことで十分配慮していただければいいわけなんですが、ただ、五条の中では、法科大学院の適格認定等について文部科学省の権限等も定められておるわけです。これは端的に言って、これだけの条文で書き込んでおけば、大学側のそういう意味での創意、学問の自由なり大学の自治というものは十分確保され得るということでしょうか。そこは端的にお答えいただけるところだと思います。
山崎政府参考人 大学の自治とか自主性を尊重しなければならないということは、ここはある意味では注意的に書いていることでございまして、もともとそういうものを尊重しなければならないという考え方がございます。それをやはり侵してはならないということを注記的に書かせていただいた、こういう理解でございます。
植田委員 この部分は、他の委員会等でも学教法にかかわってそういう話を聞かれるだろうと思いますので、私の方は、ここの法案にかかわってその辺の御確認だけさせていただくにとどめさせていただきます。
 次に、法曹養成全般にかかわって何点かお伺いしたいわけです。
 まず、幅広い人材の確保ということについて簡単にお伺いしたいわけですけれども、もちろん、私も、幅広いバックグラウンドを持っている法曹の必要性については、別に私に限らず、だれしも異論は差し挟まないだろうと思いますし、基本理念にうたわれている項目等も見させていただければ、やはり、ある程度社会経験を経た人なんかが法曹界にいるということも望まれているようには思うわけです。
 司法制度改革審議会の意見書においても、当然ながら、社会人の法曹への道を閉ざすものであってはならないということで、法科大学院、ロースクールの入学者選抜に当たっては、「公平性、開放性、多様性の確保を旨とし、」とか、「社会人等としての経験を積んだ者を含め、多様なバックグラウンドを有する人材を多数法曹に受け入れるため、法科大学院には学部段階での専門分野を問わず広く受け入れ、また、社会人等にも広く門戸を開放する必要がある。」と。
 私は、結構なことだろうと思いますし、そのとおりだし、そうあるべきだろうと思いますけれども、じゃ、現在の司法試験ではこうした多様な人材を確保するには限界があるというふうに考えておられるんでしょうか。
寺田政府参考人 制度上必ず限界があるということはなかなか申しにくいわけでございますが、しかし、現実を見ますと、例えば平成十三年度の司法試験の合格者のうち、全体で九百九十名でございますが、学生が、これは大学院生も含めますが、約三割の三百名。六百二十三名が、約六三%でございますが、無職でございまして、その他、仕事を持っておられる方々、これは公務員、会社員、さまざまなお仕事がございますけれども、こういう方々が六十七名、七%弱でございまして、多様なバックグラウンドを持っておられる方が合格するにはなかなか難しい状況にあるわけでございます。
 それには、たびたび改革本部の事務局長の方から御説明申し上げましたような制度上の問題あるいは実際上の問題等があるわけでございます。
植田委員 無職が六百二十三名ということですから、何年もかかって受けてはる人がぎょうさんいやはるんやろうなと。三百人は学生の間に、大学院に行きながらでも受かっているんでしょうが、社会人ということになると、九百九十名で六十七名ですから、一割にいかへんわけですわね。
 私は質問のレクの段階でもうちょっと細かいデータがないかと言ったんですが、ないということやったんで、大体、今の説明からいけば、確かに多様な人材は合格はしているけれども、バランス的には、結果だけ見ればやはり偏在が見られるということだろうと思います。本来的にはそういう多様な人材を確保すべきなのに、試験の結果だけ見るとなかなかそうでもない。個々の合格者には、それぞれ個性のある方、経験を持った方がいらっしゃいますけれども、なかなかそうした人材を確保しにくい条件が現行の司法試験の制度にはある。それゆえ、法科大学院においてはそういうことがないように、多様な人材を確保するということで、当然ながら選抜なりまたカリキュラムなりは組まれるというふうな理解でいいんでしょうか。
工藤政府参考人 おっしゃいますように、こういう法科大学院が言われてきた背景には、知的財産権問題でございますとか、医療過誤の問題でございますとか、単に法律知識だけではなくて、いろいろな分野の専門知識を得た経験豊富ないろいろな分野の方々が法曹界に入っていただくことが望まれるという状況を反映したものでございまして、法科大学院の制度設計に当たりましては、入学者選抜において、法律的な基礎知識を問うての入学者選抜というよりは、先ほど先生も御指摘ありましたように、公平性、開放性、多様性を旨としながら、適性試験をすべからく受けていただくということなども含めまして、そういう配慮をさせていただくことを前提としてございます。
 そのために、私ども、法科大学院設置の段階での依拠していただく最低限の基準でございます大学院の設置基準の上でもそういう旨を標榜させていただくことを予定してございますし、設置後は、アフターケアといたしまして、第三者評価という仕組みを通じまして、その理念をぜひフォローアップしていただくようにということが制度設計になってございます。
植田委員 一つ質問したら三人とも手を挙げていただくというのは結構なことですね。それぞれが当事者意識を持って審議に臨んでおられるということでございますので、結構なことだとその点は評価したいと思います。
 さて、もう一点だけ。その話についてはもう一度後で伺うこともありますので、ちょっと話がそれるわけではありませんが、もう一つ。これは、基礎的なデータがあるのかどうかということを聞きたいわけですが、学費等の負担。
 先週、今週、この午前中の議論でもありましたけれども、私はダブりを避けますので細々とは聞くつもりはないんですが、いずれにしても、現状では司法試験に受かろうと思ったら優秀な予備校に入ることが必要だと言われているわけですが、予備校の学費でも年間百万程度かかるということで、法科大学院の学費だと年間二百万以上だろうということで、奨学金も整備はされるという決意はもう何遍も聞いています。そのことを今聞くわけじゃないんですが、いずれにしても、経済的に厳しい条件にある者が法曹を目指すという道がやはり狭められかねないなと。
 だって、今でも、司法試験受けて何遍滑っても、三遍でも四遍でも五遍でも六遍でも受けられるというのは、それなりにぼんぼんやさかいにそういうことができるわけです。私は受けるようなこと考えたことないんですけれども、うちなんか、そんなの受けると言うだけで早く仕事せいと言われて、そんなの一回滑ったらそれで終わりやったろうと思いますが、現状で、司法試験の合格に至るまでの経済的な負担というのはどれぐらいになっているのかというようなことを、例えば司法試験をいわば所管されている法務省さんとしてそういうデータを調べたことがありますでしょうか。もしなければないでいいですし、それに近いものがあるんであればそれに近いところでも結構ですけれども、そういうバックデータというのがあるのかどうか、御教示いただけますでしょうか。
寺田政府参考人 私どもといたしまして、直接、経済的負担がどの程度に上るかということの公式な調査をしているわけではございませんが、受験生の間のアンケートの結果によりますと、司法試験受験のために九九%の方が、現在、おっしゃるようないわゆる予備校というものを御利用なさっておられます。それで、平均約五年を試験のために要するということでございますので、その間の予備校の経費というものが一般的に経済的負担の最低限のものであろうというふうに考えられます。
 その予備校の負担でございますが、おっしゃるとおり、初年度は約百万、二年目以降は少なくとも三十万程度は必要になるというようなことでございますので、最低でも二百数十万はかかるというふうに私どもとしては理解をいたしております。
植田委員 要するに予備校に行くだけで二百数十万、これは平均五年間でかかるということですから、五年間、予備校の学費だけで生活できるわけやないんで、田舎から東京の優秀な予備校に出てきて、そこの家賃も払わないかぬ、朝昼晩、一回抜いても御飯食べないかぬとなると、それは相当な経済的負担になりますから、実際、それだけの負担が許せるような経済的な条件がある者でないと現状でもなかなか厳しいわけでございます。
 ですから、そうした厳しい条件が今回法科大学院ができることによってなお厳しくなったらまずかろう、なおしんどくなったらこれは何やということになるわけなんで、この間も奨学金についての議論があったところですが、これについてはもう答弁求めませんけれども、あえてこれは文科省さんには聞きませんけれども、四の五の言う前に、奨学金というのは本来は給付であるべきものだということ。
 本来は奨学金というのは給付で、要するに制度設計というのはシンプルでいいんですよ。ややこしいことをごちゃごちゃとやらなくても、親の収入が少ない、要するに一定の収入よりも低ければ奨学金は基本的に出しますよと。その場合、仮に貸与でも仕方がないです。優が多けりゃ、要するに成績条項を設けて、成績がもう一つランクよければ給付ですよ、それだけの制度設計でいいだろうと思うんです。それは、大学院なり行く学部なりで、例えばいわゆる社会科学系、文学系、理工系、医学系と、それぞれ学費が違いますから、そのそれぞれの負担に応じて、今度は金額においてちょっとそれぞれいじればいいだけであって、それだけのシンプルな制度で私はいいだろうと思うんですよね。だから、恐らくここは頑張りますと言うしかないでしょうし、かといって、ではお金がありますかというと、大変だとおっしゃるんでしょう。
 大体、教育が未来への先行投資だなんて言ったのは、これは橋本行革のときから文科省さんはさんざん言ってきはったわけなんですよね。先行投資なんですから、そういうところはきちんと言っていかなきゃなりませんし、制度的に余りちまちまいじらないでほしいなと。あくまで奨学金は給付なんだ、本来は給付であるものが奨学金なんだ。だから、経済的理由と成績条項を兼ね合わせてシンプルな制度設計にすればいいわけです。
 ただ、その場合、やはりバックデータとして、例えば法科大学院ができたときにどれぐらいの経済負担があって、例えばその法科大学院に行く学生さんのうちどれぐらいがそうした奨学金なりなんなりがないと困難なのかということをある程度見積もりはしておかぬとあかんと思います。
 実際、そういうことで、法科大学院に行かれる方々というのは極めて優秀な方々でしょうから、奨学金ということであれば、司法試験に通られたら、その段階で免除でもいいだろう。例えばそういう返還免除規定も、私は、必要な部分は必要だろうと思っています。
 言いっ放しで終わりますけれども、いまだに私は奨学金を返していますので、毎年九月になるとごそっと銀行の口座から育英会へ引き落とされるので、年末まで生活の再建がこの十何年大変なんです。それは個人的なことですが、本当にこれは大変です。毎年、がくんと。私は、それは奨学金恐慌と言って、大体十二月ぐらいに何とか景気回復するんですけれども、やはりその間は個人消費は抑えられますね。
 それは結構でございますが、しつこく言いませんけれども、少なくともそういう前提でやはり考えてほしいということだけは聞いておいてください。あくまで、奨学金は本来は給付の形であるべきなんだということと、その前提がやや今の事情の中で崩れているけれども、本来の原則に立ち返ったところで、シンプルな制度設計を今回の件についても考えてほしいと思います。
 それともう一つ、現行制度でのいわゆる合格者の資質なんというのはなかなか言いづらいだろうと思うんですけれども、最近の若い者はなっていないというレベルなのかもしれませんが、司法試験の合格者や修習生、若い法曹が、今おっしゃったように九九%予備校に行っておるということですが、予備校中心の受験勉強の影響で法曹としての適格性に疑問を抱かせる面があるというふうな批判的な意見が、これはもちろん主観的なものを含むと思いますけれども、こうした資質の問題というのは、なかなか実証的に検証するということは難しかろうとは思うんですけれども、そうしたことについて、直接その事実関係に接近できないにしても、そうした傾向なり背景なりというものが、司法試験の長い歴史の中で何か特徴的な傾向というのが見られるのかどうなのか。ここはちょっと大事なところだと思うので、教えていただけますでしょうか。
寺田政府参考人 これはなかなか定量化できる問題ではございませんので、お答えしにくいところでございますが、先ほどもちょっと触れました、受験生が予備校に行くのと傾向を一にするわけでありますけれども、そういうことが非常に現象として多くなりましたのと軌を一にいたしまして、試験委員、司法試験には考査委員というのがございますが、考査委員の間からは、全体的に物事を分析する力が弱くなっている、どうも画一的な答案が目立つ、多少応用で揺さぶったような質問をするとついてこられなくなってきているというような意見が強くなってきております。
植田委員 そういう問題が出てきているわけですが、これはむしろ司法試験を目指す側の問題であって、司法試験そのものに問題があったとは私は思わないわけなんですけれども、例えば、これからそういう現状も見据えながら、法曹人口をいずれにしてもふやしていくという課題を設定したときに、直ちに現行制度では困難だという結論が導き出されるのでしょうか。それの背景説明というのはどういうふうになされますでしょうか。
寺田政府参考人 これはなかなか難しいところでございます。
 正直申しまして、今の試験でおよそ制度として成り立たないというようなことはなかなか申しにくいことでございますが、しかし他方、世界的に見ますと、やはり法曹というプロフェッションの教育というのは大学院レベルにあって相当の専門性を身につけるということが何よりも肝心になっております。つまり、法曹資格を与えるための試験をするより前にそのような専門的な深い教育をするというのが、これは国際的な傾向にもなっておりますし、我が国の現在の法学部教育の実情にかんがみますと、そのようなことを法学部で行うのは難しいだろうという判断に立っているわけでございます。
 他方、では研修所でそういう教育を行うということになりますと、これはいろいろな、今の研修所の給費制を初めとする国が運営している制度の限界というのが当然あるわけでございまして、そのような問題をバランスよく解決するには、このような法科大学院の制度が現状ではベストだと言えるのではないかというのが私どもの考え方でございます。
植田委員 一言で言えば、これは後で学部教学の問題も、きょう時間があると思いますので聞くつもりでいますが、いずれにしても、法曹界の将来像を描いたときに現行の制度のままでは限界がある、端的にはそういうことで理解していいのであれば、そうだとおっしゃっていただけますか。
寺田政府参考人 現在の受験生のありようを前提といたしまして、かつ今後社会で求められる法曹の資質というものを考えてみた場合に、現行制度には限界があるという認識でございます。
植田委員 わかりました。それはそういう問題意識だということで、後でまた学部教学の問題を聞くときにお伺いすることもあろうかと思います。
 そこで、法科大学院の設置基準と評価等についてお伺いしたいんです。
 これは、ちょっと前にお伺いした多様な人材の確保とかかわってくるわけでございますけれども、推進本部の法曹養成検討会では、いわゆる非法学部と社会人出身者が三割を超えればいいんじゃないかというふうな話があったやに聞いていますけれども、また、その辺が努力目標ということになっているようなんですけれども、そのあたりの経緯と、結論めいたものが出ているのであれば、その辺も御説明いただけますでしょうか。
山崎政府参考人 ただいま御指摘のとおり、私どもの法曹養成検討会、ここで議論が行われまして、入学者選抜における多様性の確保を図るための具体的な基準といたしまして、法学部以外の出身者とそれから社会人、これの合計が三割以上となるように努めるとするような意見が出たということでございます。それはそのとおりでございます。
植田委員 努めるということですから努力目標ということなんですけれども、要は、心配なのは、どうせ法科大学院のある大学には恐らく法学部があるでしょう、そこの法科大学院が我がところの法学部の出身者を入れることは妨げられないわけで、恐らくその出身者が一番多かろうと思いますけれども、やはりその法科大学院にそこの学部回生が行けないことには、その法学部だって存続が危ういということになってしまうわけなんですね。
 ただ、法科大学院の本来の獲得目標というのは、神髄というのは、多様な法曹の養成にあるわけですから、社会経験を積むとか別の学問を修めた者が多数入ることによって、例えば私みたいに日本史を専攻していますと、今の法律は不得手でございますけれども、律令制度はひょっとしたら詳しいかもしれません、そういう多様な人材が法曹の知的な社会的背景のボリュームを豊かにするだろう。だから、そうであるのであれば、むしろその辺の学生の多様性の幅とか、教員の構成も含めてですけれども、第三者機関にそういうことも含めて評価させる必要があるんではないのかというふうに思うのが一点。
 もう一つ、大学においても、例えば法学研究科のもとに法科大学院を置くなんというのは、これは実際今回の法科大学院の構想からすると適切ではない。もしそういう大学があるならば、あるようですが、適切じゃないと思いますけれども、大学においても、開放的な、また多様な入学選抜を行うということであれば、法学部と切り離して法科大学院独自のそうした意思決定ができるような仕組みをやはり設けておく必要があるんじゃないのかな。結局、大学全体の経営にしてみればそれはそうでしょうけれども、法学部と法科大学院というものは一応別のものとして考えるのであれば、そういう形をやはりとっておく必要が多様な人材を確保するという点からはあるんじゃないかと思います。
 その二点については御見解をお伺いします。
工藤政府参考人 結論から言いますと、おっしゃるとおりだと私どもも思っております。
 第一点目の多様な学生を受け入れる仕組みをどうするかということでございますが、これは制度設計の基本にもかかわるのでございますけれども、私ども、設置基準ですとか、あるいは認証評価の仕組みなど御提案を申し上げているわけでございますが、これはあくまでも大学の教育内容等に国が事細かに関与するということでは決してないのでございます。大枠を定めて、大学自身の自己努力を促すような仕組みを整えようということなのでございます。
 したがいまして、他学部等の出身者の入学割合につきましても、大学院の設置基準の上で数量的に細かく縛るということよりは、第三者評価を行っていただくその評価機関自身の認証基準として幾つかの複数の振り分けができれば、それぞれが独自色を出しながらリードしていただくことではないかというふうに理解してございます。
 それから、教授会等のいわば管理運営の責任体制のあり方でございますけれども、これは、従来の法学部のままでは今回の新たな法曹養成への対応ができない、そのために新たな仕組みをつくろうということでございますので、従来の法学部の教授会がそのまま新しい法科大学院の教授会と兼ねるということはまずあり得ない。人数がどれぐらい兼ねる方がいらっしゃるかどうかにもよりますけれども、少なくとも意思決定と法科大学院の運営につきましては法科大学院が独自に行っていただくことが必要だと思っております。
植田委員 ありがとうございました。
 そこで、改めて、そのちょっと前にお伺いしました、いわば現行制度に限界があるというお話のところに戻るわけですが、これはむしろ文科省さんの方になるのかな。学部における教育内容にかかわるところが主になると思うんですが、寺田部長の先ほどの御答弁ですと、私が法曹界の将来像を描いたとき、現行制度では限界があるんだということをおっしゃったわけです。
 ただ、寺田部長は、要するに、法学部での教育内容ですとか、司法修習のそうしたものをいじるということだけではもう困難だというふうな認識を示されたと思うんですね。それはそれでいいですね。要するに、もう今さら法学部の学部の教育内容をいじっても、司法修習の制度の内容をいじっても、限界があると。ただ、バックデータ、背景として示されているのは、実際、司法試験の考査委員の方々のお話を聞くと、画一的になっている、応用問題を出すとみんなばたばたといっちゃうという傾向が顕著だというお話だけですので、ちょっとそれだけでは実証性に欠けるんじゃないかという疑問を持ちつつお伺いするわけです。
 まず、先ほども私申し上げましたように、司法試験が悪いというよりは、司法試験に臨む、受ける側の主体の問題というのが大きくあるかと思います。では何で九九%も予備校に行くんかいなと、わざわざお金払って。なぜかというと、当然、法学部がきめの細かい法曹養成のゼミとかカリキュラムを組んでへんさかいに予備校依存というふうな傾向を生んだということは、これは明らかだろうと思うんですよね。要は、大学に行っておっても司法試験の合格には役に立たへんなということになっているのが、結局、司法試験を受験する学生たちが予備校に通いもってそれを受けるということになっているのではないんでしょうか。
 まずその点、そういう事実認識でいいのかどうか。これは文科省さんの方に聞く方がいいですよね。
工藤政府参考人 勉強の動機づけというのはそれぞれ学生個人の問題でございますが、私自身の世代で、同級生などで司法試験を受けたのがおりますけれども、当時は余り、今おっしゃいましたような予備校だとかというのは言われていない時代でございました。
 ただ、基本的に、現行というか今までの法学部がどういう問題があったかといいますと、先生も先ほど来おっしゃっていらっしゃいますように、学部段階では、一定の法的素養といいますか、リーガルマインドを養うような教育は行っているわけでございますが、司法試験向けの、傾向と対策といいますか、教育に特化しているわけではないというのがございます。ですから、学生御本人の勉強の仕方によっては、現役時代に予備校へ通わなくても受けてこられた方もいらっしゃるわけですけれども、これだけ過激な競争率の国家試験で、なかなか法学部の授業だけでは受けられなくなってきているという現実があるのは確かだろうと思います。
 それと、そういうふうに幅広いリーガルマインドを育成しながら幅広い人材を世に送り出しているわけでございますが、逆に見ますと、目的養成という側から見ますと、法学的な専門的教育をしっかりやっているかどうか、あるいはリーガルマインドをもとにしながらしっかりした教養教育をやっているか、そういう教育面でいえば若干中途半端な位置づけにないではないというのが学部教育じゃないかと思ってございます。
 他方で、法学部にも大学院を置かれているところが多いわけでございますけれども、既存の大学院ではどうしても研究者養成の色彩が強うございますので、研究論文を書いたりということで、なかなか実務的な教育課程になっていないとか、ましてや司法試験向けの勉強をする場にはなっていないという現実があるのは確かでございます。
植田委員 その現実をお認めになっているわけですが、何も現在の法学部の学生が全員司法試験に受かるわけでもなければ受けるわけでもないわけですよ。でも、今私が言っているような話のレベルでいくと、要するに、法学部の学部教学、教育の体制が、実際そこで学んだことが、別に弁護士になるとかならない以前に、社会に出て、それは企業に勤める、何になる、そのことに役立っていないということになっちゃいますよね。
 弁護士をこしらえるということにおいて法学部の学部教学がどうやこうやという以前の問題として、実際に今の法学部の学部教育自体が、そこで学んだことが、何も弁護士なり裁判官として生かすだけの話じゃないわけですよね。そこで学んだ知識なり蓄積なりというものが、では社会に出て生かせるような教育になっているのかどうかということが今の法学部に問われているんじゃないんでしょうか。私はそう思うんですよ。
 だから、そこのところの問題認識というのはどうお考えかということをもう一度聞かせてください。
工藤政府参考人 法学部卒業生の進出の状況は、法曹界はパーセンテージにすればごく一部でございまして、むしろ一般のサラリーマンといいますか、会社員を含めたサラリーマンになっている者が卒業動向としては多いのでございます。
 その場合に、そういう人材育成で全く役に立っていないかといいますと、リーガルマインドという言葉がいいかどうかですけれども、ある程度の法的素養、法的な理解をできる人材育成ということでは寄与しているのかな。ただ、それがそれぞれの職業にどれだけ特化した専門教育になっているかとなりますと、国家試験の関係以外は目的養成としてしているわけではございませんので、それぞれの大学の教育方針、それから学生自身の姿勢などいろいろ複雑な要素が絡んでございますが、少なくとも法曹養成という観点から見る限りは、現行の教育体制が甚だ大きな問題があったということを申し上げているところでございます。
植田委員 全般的な話は私、申し上げましたけれども、少なくとも局長の方も法曹養成という観点における限界はお認めになっているわけですけれども、これは素人考えで申しわけないんですけれども、本当に素朴に質問させてほしいんです。
 要は、私は、だからこそ学部教学を改善していけばいいんじゃないのかと思っているわけですが、法学部なり法学研究科なりというもののカリキュラムなりそこでの中身、教育内容というものをこれまで改善できなかった大学が、法科大学院という枠組みをつくった途端にそういう問題が解決しちゃうというのは、どうもけったいな話に思えてならないんですよ、何か魔法みたいなものでもあるんかいなと。法学部があってもだめだけれども、その法学部を持っている大学が法科大学院をこしらえたら将来の法曹人にふさわしい皆さんを教育できるというのは、一体どの辺にそんな手品みたいな話があるんでしょうか。それが私、ようわからへんのです、非常に素朴で申しわけありませんが。
工藤政府参考人 先ほど申しましたように、現行の法学部関係は、国公私含めますと相当の卒業生を輩出しているのでございますが、必ずしも法科大学院に向けて、あるいは特定の何かのための目的養成をしてということではない教育体制になってございます。
 それで、他方で、大学の勉強では足りないところを予備校へ行ったり御本人が自学自習したりなどを含めまして、かなりの人数が司法試験を受けたりして法曹界へ行っているわけでございますが、法学部の先生方も、法曹養成のあり方に思いをいたしたときに、今のままでやり切れるかといったときには、やはり大きな問題意識を感じていたのは確かだろうと思ってございます。
 これまでも、私どもの方の審議会での大学関係者の意見を聞いてもそうでございますし、司法制度改革審議会での熱心な御議論も、そういう経緯の中から法科大学院が構想されてきたと承知してございますが、そういう意味で、現行の法学部の枠、あるいはそれを変えてでの取り組みというよりは、外国の例も参考にしながらの、目的養成に特化したこういうプロフェッショナルスクールでしっかりした教育を行った方がいいんじゃないかということが構想され、これについては大変多くの大学の関係者も、まさにこのためにだったら取り組みやすいねということで、カリキュラムの検討でございますとか第三者評価の仕組みも含めたトータルの仕組みについて熱心な御参画、御検討をいただいているところだと思ってございます。
植田委員 いや、状況の説明はそれでいいんですが、さっきも、法科大学院で一体だれがどんな教育者として登場するんだというときに、今まで実務のことはようわからへんだけれども、当座、法学部の先生たちに実務の経験なり実務のことも見ていただいて、知っていただいて、見聞いただいて、そしてその方々に法科大学院でも教えてもらえるようにすればいいじゃないかというふうにおっしゃっていましたですよね。そして、スキルの開発については、まだ恐らく相談なさっているところなんでしょう。
 法科大学院という器をつくるのはいいんですけれども、スキルはないわ、それで今までの法学部の先生にちょこっと実務を見てもらって、それが教授ですといって来て、だからそんな法科大学院ならば今の法学部の学部教学を改善するということがなぜ不可能なのかというのは、私、さっぱりわからへんわけですよ。
 当座、やはり例えば実務経験のある、恐らく日弁連の方々からも協力を仰ぎながら、そうしたロースクールに対して講師なりなんなりで来てもらうとかいうことをいろいろと考えておられるとは思いますよ。でも、実際、例えばA大学の法学部があって新たに法科大学院ができました、A大学の法学部の教授の中から何人か法科大学院教授で行かれるんでしょう。でも、実務経験ないからちょこっと実務を見てもらいましょう、こんなものですよということで、そういう人たちが大学院に入ってきた人に物を教えるということになると、非常に貧相な話やと普通思いますわね。それやったら学部教学を、カリキュラムを改善する余地はないのか。
 実際、現状の法学部で、法曹コースとかいうのは余り聞いたことはありませんけれども、例えば社会福祉系の大学ですと、明らかにそうした資格、さまざまな士のつく資格獲得を目標にしたゼミなりコースなりというのが、そういう社会福祉の関係の大学はそんなに数は多くないけれども、あるわけなんですよ。法学部にそういうのがあっても別におかしいとは私は思わないんですよね。何でそういうことを考えられないのか。
 要するに高度な教育内容があればいいわけですから、例えば大学のゼミで法曹コースがあったり、また新たな修士課程を設置する。だって、きょうび大学院なんてごまんとありますから、大学院を出て研究者になっている人の方が少ないでしょう、実際。とりあえず就職に詰まってしまったから、就職浪人すると言うたら親に怒られるので、大学院に行くと言うたら堪忍してくれるやろということで大学院に行くのだっておるわけですから。だから、そういう修士課程を新たに設置するとか、そういうことはもうほぼ無理なんですか。そういうことはそもそも議論されなかったんですか。カリキュラムの改善の余地があったのかなかったのか、その辺はどうやったんですか、教えてもらえますか。
工藤政府参考人 これは、司法制度改革審議会で大変御熱心な御議論の中で、いろいろな方策の中で、外国の例なども参考にしながら構想されてきたものでございます。確かに、先生おっしゃいましたように、今の法学部あるいはその法学研究科で特別のコースをつくってしっかりしたカリキュラムをやればいいではないかというのは一つの御見識だと思いますが、この新しい法科大学院といいますのは、単に理論上の、従来の法学部あるいはその法学の大学院で行われているカリキュラムあるいはその担当の先生方そのままではなくて、理論と実務の架橋といいますかブリッジでの実務的な専門教育をしていただこう、そのためのコースであるということなんでございます。そのためには新たなカリキュラムが必要でございますし、それにふさわしい教員が必要でございます。そのときに、今の大学の先生方だけではだめですよね、大学の先生方そのままではだめですよねというのが前提なんでございます。
 したがいまして、将来の望ましいあり方としましては、法科大学院の先生方というのは大体が法科大学院を修了するなどして法曹資格を持っている方々になるのが望ましい、かなり遠い将来の見通しでございますが。ただ、そこまで待っておれないではないか、法曹の量、質、両面の充実のために、現行の法学部の関係者を活用しながら新しい仕組みをとれないかということが検討されまして、それで最低限二割以上の実務家の方もお招きしよう、それから現在いるアカデミアンの先生方にも、そのままじゃなくて、実務的な研修、トレーニングもしていただいて、できれば在職中に司法試験にもトライいただいて、理想の法科大学院を担うにふさわしい教員になっていただきたい、そういう願いを込められながらの制度設計であり、そのためのスタートを期しているものでございます。
植田委員 時間がありませんのであと一問だけ聞きますが、今の話でいくと、法学部の学部教育はそのままで、新たに枠組みとして法科大学院ができるということですよね。そういうことですよね。そうなるとどうなるかというと、恐らく予備校も、ロースクールを目指す予備校だってできてきますよね、これから。それならどうなるか。さっきA大学と言いましたが、B大学の法学部の学生がそのB大学の法科大学院に行くために別に予備校に通っている、こういう不細工な話も出てくるんじゃないですか。
 要するに、法学部の中身は変わらへんわけですから、そこの法学部でしこしこ学んでいるだけではそこの法科大学院には本来行けないはずですよね。法学部の中身も変わらなきゃ、今のままで行けるかというと、行けないと学生たちが判断したら、自分のところにある法科大学院に行くために、B大学法学部の学生が、優秀や、ここは評判がええと受験予備校に通ってB大学法科大学院を目指すというような不細工な、けったいな現象が起こりかねません。これは、他学部の学生だったら他学部受講の関係も限定ありますからそういうこともあるかもしれませんけれども、そういうこともあるんじゃないですか。容易に想定できませんか。
 だから、私はその学部教学の問題を言っているわけなんですよ。今、学部教学はそのままで、それで新たに法科大学院というスキームだというふうにおっしゃるから私はあえて聞いたんですけれども、その点、どうなんですか。一つの大学の中で法科大学院ができれば、法学部だって、いずれにしてもカリキュラムの改革なりなんなりをしなきゃならないでしょう。とするならば、そういうことができるのであれば、何も法科大学院がなくたって、法学部の単体でもできたじゃないですか。へ理屈めいたことですけれども、こういうことはあり得ますから、ちょっと教えてもらえますか。
工藤政府参考人 どんな制度をとりましても、ダブルスクールといいますか、当該学校以外でさらに深い勉強というのはないわけじゃないですね、語学なども含めまして。ただ、今回のケースで申し上げますと、別に法学部出身者だけではなくて、多様なバックグラウンドを持った方、しかも大学においでになれなかった方も含めて、三年間きっちりしたコースをつくろうじゃないかということなんでございます。
 それで、まだできておりませんので、お互いイメージがわきにくい。それが学生には不安と期待、両方与えているのかもしれませんけれども、少なくとも、どういう方でも、法律的な知識を持って入学試験に臨むというよりは、先ほどるる申し上げておりますようないろいろな素養、法科大学院で勉強するに必要な基礎的な素養を判定するような適性検査をしっかり受けていただいて、全く法律的な知識のイロハも知らなくても、三年間きっちり勉強すれば専門家になれるようなコースをつくろうではないかということなんでございます。ですから、法学部出身者に有利、不利ということではないのがこの法科大学院の制度設計なんでございます。
 ただ、他方で、ある程度法学的な素養がある方については、法学部出身者である、否にかかわらず、一年以内の短縮ということがありますから、それを志望する学生にとってはそのための試験を受ける勉強をしていただかなきゃいけない。そのために予備校に通われるかどうかというのは個人の選択の問題でございますけれども、だからといって全くネガティブに考えることでもないのかなという気もいたします。
 いずれにしましても、既にほかの分野で一部先行しているんでございますが、日本でいろいろな分野の専門家、プロフェッショナルを養成するための仕組みを、学部段階だけではなくて、しっかりした大学院段階でやるべきではないかというのが中教審でいろいろ議論されてきた結果でございまして、そのプロフェッショナルスクールの一環としてこの法科大学院も構想されているのでございます。
植田委員 言いたいところもあるんですが、まだこれで質疑が終わりということはないだろうと思いますので、きょうのところは以上で終わります。お疲れさまでした。
山本委員長 次回の法務委員会は、来る八日金曜日午前九時理事会、午前九時十分委員会を開会いたします。
 なお、連合審査会は、明六日水曜日午前九時から開会いたします。
 本日は、これにて散会いたします。
    午後三時二十分散会


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