衆議院

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第10号 平成14年11月20日(水曜日)

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平成十四年十一月二十日(水曜日)
    午前九時一分開議
 出席委員
   委員長代理理事 佐藤 剛男君
   理事 塩崎 恭久君 理事 園田 博之君
   理事 棚橋 泰文君 理事 加藤 公一君
   理事 山花 郁夫君 理事 漆原 良夫君
   理事 石原健太郎君
      岡下 信子君    左藤  章君
      笹川  堯君    下村 博文君
      中野  清君    平沢 勝栄君
      保利 耕輔君    松島みどり君
      保岡 興治君    柳本 卓治君
      吉川 貴盛君    吉野 正芳君
      鎌田さゆり君    中村 哲治君
      日野 市朗君    平岡 秀夫君
      水島 広子君    山内  功君
      木島日出夫君    中林よし子君
      植田 至紀君    徳田 虎雄君
    …………………………………
   法務大臣         森山 眞弓君
   法務副大臣        増田 敏男君
   法務大臣政務官      中野  清君
   最高裁判所事務総局民事局
   長
   兼最高裁判所事務総局行政
   局長           千葉 勝美君
   政府参考人
    (内閣審議官
    兼司法制度改革推進本
    部事務局長)      山崎  潮君
   政府参考人
   (警察庁長官官房国際部長
   )            小田村初男君
   政府参考人
   (法務省大臣官房司法法制
   部長)          寺田 逸郎君
   政府参考人
   (法務省民事局長)    房村 精一君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    樋渡 利秋君
   政府参考人
   (法務省矯正局長)    中井 憲治君
   政府参考人
   (法務省入国管理局長)  増田 暢也君
   政府参考人
   (外務省大臣官房参事官) 三輪  昭君
   政府参考人
   (外務省大臣官房領事移住
   部長)          小野 正昭君
   法務委員会専門員     横田 猛雄君
    ―――――――――――――
委員の異動
十一月二十日
 辞任         補欠選任
  横内 正明君     岡下 信子君
  仙谷 由人君     中村 哲治君
  不破 哲三君     中林よし子君
同日
 辞任         補欠選任
  岡下 信子君     横内 正明君
  中村 哲治君     仙谷 由人君
  中林よし子君     不破 哲三君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――
佐藤(剛)委員長代理 これより会議を開きます。
 委員長の指名により、私が委員長の職務を行います。
 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 各件調査のため、本日、政府参考人として司法制度改革推進本部事務局長山崎潮君、警察庁長官官房国際部長小田村初男君、法務省大臣官房司法法制部長寺田逸郎君、民事局長房村精一君、刑事局長樋渡利秋君、矯正局長中井憲治君、入国管理局長増田暢也君、外務省大臣官房参事官三輪昭君及び大臣官房領事移住部長小野正昭君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
佐藤(剛)委員長代理 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
佐藤(剛)委員長代理 次に、お諮りいたします。
 本日、最高裁判所事務総局千葉民事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
佐藤(剛)委員長代理 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
佐藤(剛)委員長代理 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。木島日出夫君。
木島委員 日本共産党の木島日出夫です。
 名古屋刑務所において発生いたしました受刑者に対する暴行傷害事件に関して、大変ゆゆしい事件だと思いますので、事実関係を明らかにすることを中心にして質問をしたいと思います。
 最初に、法務省刑事局からお聞きをいたしますが、名古屋地検特捜部は、去る十一月八日、名古屋刑務所の刑務官五名を特別公務員暴行陵虐容疑で逮捕したようでありますが、被疑事実はどのようなものなんでしょうか。
樋渡政府参考人 お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、本年十一月八日、名古屋地方検察庁におきまして、前田明彦等名古屋刑務所の看守等五名を特別公務員暴行陵虐致傷の被疑事実により逮捕したものと承知しておりますが、その被疑事実の要旨は、被疑者五名は、看守等として名古屋刑務所に勤務し、被収容者の処遇、戒護及び規律維持等の職務を担当していたものであるが、共謀の上、平成十四年九月二十五日午前八時十五分ころから同九時四十分ころまでの間、同所保護房において、同所に収容されていた懲役受刑者当三十年に対し、その必要がないのにその腹部に革手錠のベルトを巻きつけて強く締めつけ、腹部を強度に圧迫する等の暴行を加え、よって同人に加療約四十日間を要する腸間膜損傷等の傷害を負わせたというものであると承知しております。
木島委員 名古屋地検は、この犯罪事案をいつ、どんなことから認知したんでしょうか。捜査の端緒を述べてください。
樋渡政府参考人 お尋ねの件につきましては、本年九月二十六日、名古屋刑務所から名古屋地方検察庁に対する通報がなされましたことから端緒を把握し、捜査を開始したものであると承知しております。
木島委員 どんな通報だったんでしょうか。その内容について御報告ください。
樋渡政府参考人 先ほど被疑事実の要旨を申し上げましたが、受刑者がそのような状態でけがをしたということの通報がなされたというふうに承知しております。
木島委員 刑務所などで受刑者が死亡などいたしますと、当然、刑務所の責任者から検察官に対しては行政行為の一環としての通報がなされるという仕組みになっていると思うんです。
 そこで、私、聞くのは、この通報というのは、そういう矯正を預かる法務行政の責任者としての行政通報だったのか、それではなくて、犯罪の嫌疑ありということで、正式な告発じゃないんでしょうけれども、そういう司法的な処分を求める意味をも込めた名古屋地検への通報だったんでしょうか。その二つの違いが私は法的にはしっかり区別されるものだと思いますので、その辺、答弁してください。
樋渡政府参考人 名古屋刑務所の方から名古屋地検に対しましての連絡は、先生のおっしゃる行政的な意味で、そういう事実が発生したというまずの第一報であったと思います。それに端緒を得まして、刑務所内のことでございますから、犯罪性があるかどうかということを名古屋地検が捜査をする端緒を得たものだというふうに思っております。
木島委員 それは文書でなされるものなんですか、通報というのは。その文書は今きちっと保管されていますか。
樋渡政府参考人 名古屋の刑務所長から名古屋の次席検事あての口頭の通報であったということであります。
木島委員 次の質問に移ります。
 被疑事実の要旨は、名古屋刑務所保護房で革手錠のベルトを強く締めつけられて傷害を受けたということのようですが、保護房に入れられるようになったのはどういう理由だったんでしょうか。これは法務省矯正局にお聞きします。
中井政府参考人 お答えします。
 名古屋刑務所からは、当該受刑者に暴行等のおそれがあると判断し保護房に収容したとの報告を受けております。
木島委員 もっと具体的な、保護房に入れなければならない理由は報告ないんですか。
中井政府参考人 委員御案内のとおり、現在、本件一連の経緯につきましては、名古屋地検において捜査中でございますし、これとあわせまして私ども矯正当局におきましても調査中でございます。お尋ねの具体的な事実関係につきましては、今後の捜査や調査等で明らかになるものと思います。
 なお、私どもの当局の調査結果につきましては、できるだけ早く取りまとめ、大臣にも御報告の上、公表いたしたいと考えております。
木島委員 きょうは、捜査の内容に立ち入ろうという質問ではありません。矯正行政が正しく行われたかどうかについて集中的に聞きたいと思っているんですから、これは答弁すべきであります。
 法務省にお聞きしますが、保護房へ収容するのは勝手にできないはずであります。通達があるはずであります。今、現実にことしの九月段階で生きている通達というのはどういうものですか。その通達によりますと、保護房に収容するには要件が必要なはずであります。どういう要件が通達されていますか。
中井政府参考人 お答えいたします。
 種々ございますけれども、多分、委員お尋ねのものは、平成十一年十一月一日付の「戒具の使用及び保護房への収容について」という通達がこれに該当するものではなかろうかと思います。
 その通達の内容についてでございますが、まず、「戒具の使用又は保護房への収容に当たっては、事態に応じ、その目的を達成するため合理的に必要と判断される限度を超えてはならないこと。」に留意しろと。戒具は、必要以上に緊度を強くして、使用部位を傷つけ、または著しく血液の循環を妨げる等健康……(木島委員「それは後で聞きますから。保護房収容についての要件。今のは戒具使用についての要件」と呼ぶ)
 本件の事案に即して簡単に申しますと、「保護房収容のみでは、逃走、暴行又は自殺を抑止できないと認められる場合に限り、保護房に収容されている者に対して戒具を使用することができる」、こう定められておりまして、その前提条件につきましては、私が先ほど説明しかけたところでございます。
木島委員 私は、既に法務省から今答弁の通達をいただいているわけです。「戒具の使用及び保護房への収容について(通達)」6に「保護房収容等」とありまして、
 (1)収容要件
  次の各号のいずれかに該当する被収容者であり、かつ普通房に収容することが不適当と認められる場合に限り収容すること。
 ア 逃走のおそれがある者
 イ 他人に暴行又は傷害を加えるおそれがある者
 ウ 自殺又は自傷のおそれがある者
 エ 職員の制止に従わず、大声又は騒音を発する者
 オ 房内汚染、器物損壊等異常な行動を反復するおそれがある者
これだけであります。厳格であります。
 九月二十五日の朝、被収容者が保護房に入れられたときの状況ですが、この収容要件のどれかに該当していたんでしょうか。
中井政府参考人 名古屋刑務所からは、お尋ねの「イ 他人に暴行又は傷害を加えるおそれがある者」に少なくとも該当する、かような報告を受けております。
木島委員 他人というのは、だれでしょうか。
中井政府参考人 名古屋刑務所の職員でございます。
木島委員 この受刑者は、本年四月ごろ、ある懲罰を受け、これを不服として、その懲罰が不当であるとして名古屋弁護士会に人権救済の申し立てをしていたということを私は伺っているんですが、事実とすれば、受刑者ですから、当該刑務所の知らない間に弁護士会に救済申し立てなどできる状況ではないと思いますが、そのとおりですか。
中井政府参考人 当該受刑者が名古屋弁護士会あてに人権救済に係る申し立て書を発送していた旨の報告は受けております。
木島委員 いつ受刑者は名古屋弁護士会に人権救済の申し立て書を発送したんでしょうか。
中井政府参考人 報告によりますと、平成十四年四月八日でございます。
木島委員 四月八日に、そのような人権救済申し立て書が、当事者、受刑者から名古屋弁護士会に発送された。それを受けて、名古屋弁護士会から名古屋刑務所に対して、受刑者の申し立てに係る人権救済事件の調査をしたいという旨の何らかのアクション、連絡等はありませんでしたか。
中井政府参考人 ございました。
木島委員 具体的な時期、内容等を答えてください。そんなそっけなく答えないで、まとめて一連の状況を答えてください。
佐藤(剛)委員長代理 優しく答えてください。
中井政府参考人 かねて、簡潔に答弁するように、不足部分があればさらに尋ねるからと、こうありまして、どうも失礼いたしました。なるべく詳しく答えるようにいたします。
 名古屋刑務所からの報告によりますと、九月九日でございますけれども、名古屋弁護士会から、お尋ねの申し立ての概要や質問事項が記載された文書が送付されております。
 その文書によりますと、この人権救済の申し立ての趣旨は、当該受刑者が、就業時間中に作業を怠けたといいますか、怠業した規律違反行為によりまして懲罰手続に付されたこと等について人権救済を申し立てたものだ、かように名古屋刑務所の方で承知している、その旨の報告を私どもは受けております。
木島委員 ありがとうございます。
 では、続いてお聞きしますが、この受刑者が名古屋刑務所に入所してから本年九月二十五日までの間、保護房に入れられたのは何回でしょうか、いつごろでしょうか。それから、戒具の使用を受けたのは何回でしょうか、いつごろでしょうか。
 名古屋弁護士会の方によりますと、本年二月入所以来、革手錠が十六回やられている、保護房は八回されているというような話を伝え聞いているんですが、それも参考にしながら答弁してください。
中井政府参考人 先ほど答弁させていただきましたように、現在調査中でございますので、その調査中途の段階ということでお聞きいただきたいわけでありますが、これまで私どもが調査いたしました結果は、保護房の回数、革手錠の使用回数とも、御指摘の回数よりもさらに少ないというぐあいに承知しております。
 ただ、御指摘の点もございますので、なお引き続き調査したいと考えております。
木島委員 今つかんでいる保護房入所の日にち、回数、それから革手錠使用の日にち、回数、それは特定していただけませんか。
中井政府参考人 詳細なデータはただいま手元に持っておりませんが、現在までの調査結果で回数のみを申しますと、保護房に収容した回数は五回でございます。戒具の使用回数は七回でございまして、このうち、一たん戒具を使用した後解除いたしますわけでございますけれども、それでまた再使用するという場合がございます。それが二回あるという旨の報告を受けております。
木島委員 それらは、いずれも、受刑者が名古屋弁護士会に懲罰を不服として人権救済を申し立てをした後でしょうか。
 さらにもうちょっと特定しましょう。日を言ってくれればいいのですが、言わないので、こっちから聞きましょう。名古屋弁護士会から名古屋刑務所に、こういう人権救済事案が来ておる、調査したい旨の話が、先ほど九月八日にあったと言いましたね。その前後、どちらでしょうか。
中井政府参考人 突然のお尋ねでございまして、日付に関するデータを現在所持しておりませんので、現段階で確としたことは申し上げられませんが、いずれ、一連の調査等の機会で取りまとめまして公表させていただく、かように考えております。
木島委員 それでは、こっちから聞きます。保護房に入れられたのが五回と答弁されましたが、私の方から日にちを特定して聞きます。九月十二日、九月十三日、九月十七日、九月十八日、九月十九日、この五回だったんではありませんか。
中井政府参考人 お尋ねの件については、私どもの資料に確認して、さらにお答えしたいと思います。
木島委員 これは、法務大臣、もう既に参議院法務委員会でも再三にわたって厳しい質問がされているはずなんですね。当然、とっくの昔に調査が済んでいるはずなんです。わかっているんじゃないでしょうか。
森山国務大臣 今、検察庁の方で捜査中でございまして、その捜査の妨害にならないようにということを配慮しながら、法務省サイドでも事実を調査しておりますので、もう少しお時間をいただきたいというふうに思います。
木島委員 そういう態度がだめだというんですよ。身内をかばう態度にしか思えないというんですよ。私だって、もうある程度の事実、つかんでいるんですからね。
 四月に、名古屋弁護士会に人権救済の申し立てをした。九月八日ですか、先ほどの答弁、名古屋弁護士会から刑務所にその旨が正式に伝えられてくる。九月十二日に、もう細かいことは言いません、時間の関係がありますから、金属手錠をかけられ、保護房に収容され、革手錠をかけられた。十三日にも、保護房に収容された。十七日も、前田、今被疑者から制圧をされ、保護房に入れられた。十八日にも保護房に入れられた。十八日には、受刑者がつけていたノートを見つけられ、何を書いているんだと言われ、制圧を受けた、そして保護房に収容された。本日の朝日新聞の朝刊に、彼がつけていたノートが破棄されたかのごとき報道が出ていますが、その日の出来事だったんじゃないでしょうか。
 九月十九日も、保護房から解放されましたが、この日は取り調べ室で話をし、受刑者は、前田被疑者から、名古屋弁護士会への救済申し立てを取り下げろと言われた。受刑者は、この時点まで、連続的に五回ほどですか、保護房に入れられて、精神的、身体的に大変追い詰められていたので、一たんは弁護士会への人権救済申し立てを取り下げることに同意した。
 こういう事実をもう法務省はつかんでいるんじゃないですか。
中井政府参考人 先ほど来、同様な答弁で恐縮でございますけれども、私どもは、法務大臣から、管理体制も含めましてきちんと調査を遂げるようにという指示を受けております。
 当然のことながら、名古屋の刑務所からは種々の報告を受けておりますし、私どもも、官房審議官を長とし、局付検事も入れました特別調査チームを編成いたしまして、現地に赴かせております。それらの個々の調査結果も逐次私のところに報告が上がってきております。
 さはさりながら、委員、当然御案内のとおり、これらは断片的な証拠というか調査結果でございまして、それらを総合勘案して事実を認定していくという作業がこれから必要なわけでございます。もうしばらく御猶予いただきたいと思います。
木島委員 時間が迫っていますから、では、九月二十五日の受傷があったときのいきさつについてお聞きをいたします。
 刑務所の中には医師がいますか。その医師の診断を受けていますか。その医師の診断を受けたのは何時何分の時点でしょうか。
中井政府参考人 お尋ねの件につきましては、事案発生当日でありますところの本年九月二十五日、名古屋刑務所からの報告によりますと、本人が腹痛の訴えをいたしまして、これに基づきまして、刑務所の医師による診察が行われました。その結果、外部の病院に搬送することになりました。その当該施設外の病院におきまして、さらに医師による診断を受けまして、手術を実施したもの、かような報告を受けているところであります。
木島委員 内部の刑務所の医師では対応できないというので、外部の病院に受診させた。それは加茂病院だったと思うんです。それで、時間を聞くんですよ。刑務所の内部の医師の診察を受けたのは何時何分の時点か、加茂病院に搬送して、加茂病院の医師の診察を受けて手術をしたのは何時何分か。その時間の状況が非常に大事だと思うので、具体的に答えてくださいよ。
中井政府参考人 時間の問題を詰めるのはもう少しお時間をいただきたいと思いますけれども、いずれにいたしましても、本人の腹痛の訴えがありましたら直ちに医師による診察を行いまして、その結果、速やかに外部の病院に搬送したというぐあいに報告を受けております。
木島委員 肝心なところを答弁されないので、次に聞きます。
 先ほどもちょっと質問したのですが、平成十一年十一月一日の矯保三三二九矯正局長通達「戒具の使用及び保護房への収容について」によりますと、「6保護房収容等」「(4)保護房に収容されている者に対する戒具の使用 保護房収容のみでは、逃走、暴行又は自殺を抑止できないと認められる場合に限り、保護房に収容されている者に対して戒具を使用することができること。」とありますね。こんな状況がこの受刑者には九月二十五日あったんでしょうか。どれに該当するという報告ですか。
中井政府参考人 名古屋刑務所によりますと、お尋ねの要件に該当すると認められたので、保護房に収容されている当該受刑者に対し戒具を使用した、かような報告を直後に受けております。
木島委員 当然ですが、保護房は、かぎがかかって逃げられないような仕組みになっているんですね。それを確認しておきます。
中井政府参考人 そのとおりでございます。
木島委員 そうなんですよ。だから、保護房に入れたら、それでもなおかつ、この通達によると、逃走、暴行、自殺抑止できないと認められる場合に限り戒具使用が認められるんですよ。
 だから、どういう状況にあったと報告を受けているんですか。この戒具によって傷害を受けたんでしょう。それが、特別公務員暴行陵虐で、今同じ法務省傘下の検察から捜査を受けているという事件でしょう。どれに該当したという報告なんですか。
中井政府参考人 お尋ねの通達の「収容要件」の、6の(1)のイに少なくとも該当する……(木島委員「戒具の使用ですよ。(4)。保護房に収容されている者に対する戒具の使用、三つしかないでしょう。逃走、暴行、自殺だけですよ」と呼ぶ)暴行等というぐあいに報告を受けております。
木島委員 時間が来ましたから、最高裁をお呼びしているので、一点だけ聞きます。
 保護房に収容されている者に対して戒具の使用は違法であるということで、国家賠償請求訴訟に国が敗訴した事件が幾つかあると思うんです。最高裁がつかんでいるだけ、裁判所と日にちと中身、もう時間がありませんから、それだけでも答弁願います。
千葉最高裁判所長官代理者 保護房内における革手錠の使用を違法であるとして国家賠償を認容した事例でございますが、一つは、札幌地方裁判所、平成五年七月三十日の判決がございます。それからもう一つは、東京高裁、平成十年一月二十一日の判決がございます。それからもう一つ、千葉地裁、平成十二年二月七日の判決がございます。それから、大阪地裁、平成十二年五月二十九日の判決がございます。最近のものとして、東京地裁、平成十四年六月二十八日の判決がございます。
 以上でございます。
    〔佐藤(剛)委員長代理退席、園田委員長代理着席〕
木島委員 時間ですから終わりますが、本件は大変ゆゆしい問題でありますので、当委員会においても、きょうは具体的に資料要求はしませんけれども、資料要求等しっかりして法務省の責任をただしていく必要があるということを申し述べまして、質問を終わります。
園田委員長代理 水島広子君。
水島委員 水島広子でございます。
 短い時間ですけれども、まずは法務大臣に少年犯罪についての質問をさせていただきたいと思います。
 ちょうど約二年前に、国会におきまして少年法改正の審議が行われまして、その時期、非常にこの国会内において少年犯罪というものが大きな話題になったわけですけれども、それですべてが終わったわけではなく、今も子供たちはまだまだ大変な状況に置かれているわけでございます。そのような視点から質問をさせていただきたいと思いますが、まず、矯正処遇のあり方を考える上で、どのような子供たちが少年犯罪を起こすのかという基礎データは極めて重要だと思っております。少年犯罪の背景について、二年前に法務大臣に質問しましたところ、極めて主観的な答弁しかいただけなかったというふうに記憶をしておりますが、その後、法務省として少年犯罪を起こした子供の特徴についてどのような把握をされていらっしゃるでしょうか。
森山国務大臣 今少年院に収容されている少年の特徴を申し上げますと、近年では、強盗、傷害、暴行、恐喝といった凶悪で粗暴な非行を犯した少年が増加傾向にございます。また、集団で非行を犯した者も増加しております。また、少年とその保護者等の関係を見てみますと、保護者等からの虐待体験を有する者が少年院在院者には少なくないというふうに聞いております。
水島委員 犯罪を犯す子供たちが、みずからが被虐待体験を持っているということはもう随分広く一般的にも知られてきていると思いますし、今の法務大臣の御答弁の中でもそのことが語られていたわけでございますけれども、そのような子供たちの特性に立ってどのような矯正処遇が必要かということを考える必要があるわけですが、二〇〇〇年の十月二十五日の法務委員会で、私は、普通の受刑者が出所後二年以内に再犯で再入所する割合が六三%であったのに対して、アミティという民間の犯罪者更生組織のプログラムに参加して心理学的ケアを受けた人の再受刑率は二六%であったというアメリカのデータを挙げまして、日本の刑務所でもそういうことをするつもりはないのかと質問をいたしましたところ、保岡大臣が、「それはもうもちろん心理学、教育学、あらゆる専門的な知見を活用して創意工夫をして、矯正処遇のより一層の充実を図っていくことは大切なことだ、そう思っております。」と答弁をされております。
 少年院におきまして、被虐待体験の多い子供たちというような特徴を考えますと、ますます精神的なケアは重要であると思っております。子供たちの虐待を受けているというその特徴に基づいて、矯正施設の中で何が行われているのか、あるいは何が必要だと思われているかを御答弁いただければと思います。
森山国務大臣 少年院に入院してくる少年に対しましては、今先生が言われましたようなさまざまな教育方法、矯正方法によりまして、少年の改善更生の実を上げるべく、みずからの非行事実に向き合わせて、被害者の痛みや苦しみを理解させる指導などをまず行うところでございます。
 また、先ほど申し上げましたように、その家族にも問題があるということを考えますと、特に被虐待経験を有する少年が少なくないということなどを考えますと、少年の特徴を十分に踏まえながら、例えば自分が親になって築く将来の家庭像を描くような働きかけといたしまして、父親教育とか育児教育などの疑似体験などもさせるというようなこともやっておりまして、いろいろな施設でそんな取り組みを始めているということを聞いております。
 むしろ少年たちの父親、母親等にも考えてもらいたい、むしろ教育を受けてもらいたいという気持ちが私などはするのでございますが、その少年を中心として、心理的な、あるいはさまざまなたぐいの教育をいたしまして、将来自分が親となったとき、将来家庭人となったときにどうあるべきかという姿を、自分の家庭の姿では直接には学ぶことができなかったような子供たちでありますので、そういう面も入れながらやっているところでございますが、今後とも有効な矯正教育を行うように努力していきたいと思っています。
水島委員 虐待を受けた子供たちというのは自尊心に致命的な欠陥を持っているわけです。つまり、自分を大切に思えない、自分が生まれてきたということを肯定することもできない、また、自分が生きていくに値する人間だという確信を持つこともできない。そういう自尊心の致命的な問題を抱えているわけでございまして、これは子供たちもみずから言っていることですけれども、自分を大切にも思えないのに、他人のことをもっと大切に思うなどということができるわけがない。これは犯罪を犯した子供たちみずからが語っていることであるわけです。
 そのような観点から考えますと、被害者の痛みや苦しみをどれだけ説明されても、それを実感として、どれだけ重要なことか感じることもできないでしょうし、また、自分自身が人間として生きていこうという意欲も持てないのに、将来の家庭像と言われてもぴんとこないのではないかとも思います。
 きょうは初めて茨城の少年院で被害者の御遺族が子供たちに対して講演をされるというふうに伺っておりますけれども、こういった取り組みは非常に重要であると思う一方で、その受け皿となる子供たちの自尊心が余りにも低いままであると、どんな手だてを講じてもそれが心にきちんと有効に浸透していかないのではないかと思っておりまして、まずは、自尊心に致命的な問題がある子供たちの自尊心を回復させていくということが何よりも重要なのではないかと思っておりますけれども、大臣はどう思われますでしょうか。
森山国務大臣 おっしゃるとおりだと思います。少年犯罪対策というものを効果的に進めていきますのには、目に見えたその犯罪の事実だけではなくて、その裏にあるさまざまな背景、原因、事情などを解明しなければならないと思います。
 法務省の研究機関である法務総合研究所におきましては少年非行に関する研究を行っておりまして、例えば平成十二年に、全国の少年院在院者を対象に、被虐待経験の有無などについて調査いたしました。少年院在院者のうち何らかの虐待を受けた経験のある者が約半数に及んでいるということがわかりました。虐待を受けたとき、家出とか、お酒を飲んだり、薬物を使用したり等の問題行動に至る者が少なくないということも明らかになったわけでございます。
 そのような調査の結果報告書を関係各省庁にも提供いたしておりまして、総合的な対策の手助けになればというふうに考えたわけでございますが、また、法務省におきまして、少年犯罪等に関して得られた各種のデータを犯罪白書とか矯正統計年報等の各種統計にも登載して公表しておりますし、関係省庁の緊密な連携のもとに青少年の健全育成及び非行等問題行動の防止に関する施策を総合的かつ効果的に推進するための会議であります青少年育成推進会議にも参加して、適宜意見を述べているところでございます。
 今後とも、必要に応じまして、少年犯罪等に関する各種データを積極的に提供いたしまして、各方面における青少年行政施策に生かしていきたいというふうに考えております。
水島委員 子供の問題で各省庁が密に連携していくということはとても重要なことだと思っておりますし、また、本日いただいた御答弁から察するに、今、矯正施設において、この自尊心の低下ということに関して、そこに集中をした特定のケアがされていないというふうに受け取らせていただいております。法務大臣はその重要性を認識されているという今の御答弁の内容であると思いますので、虐待をされた子供たちに一体どのような働きかけが有効であるのかというようなことは、他省庁、厚生労働省などときちんと連携をしていただく中で、その有効な手段というものを矯正施設の中でも取り入れていくべきだと思っております。
 虐待をされている子供たちが多いから虐待がないようにと周りに働きかけるのも重要な方向性ではありますけれども、虐待をされている子供たちが多いから、どういったことがその子たちを救っていくのに必要なのか、そういう方向性でもぜひ他省庁と連携していただきたいと思いますけれども、その点については再度確認させていただいてよろしいでしょうか。
森山国務大臣 先ほど申し上げました各省庁との連絡の中で、それも重要なテーマと考えて努力していきたいと思います。
水島委員 また、改正少年法では観護措置の期間が延長されているわけでございますけれども、義務教育年齢の子供たちにとっては、その間また教育が分断されるということがますます挫折体験になっていくというようなことにもなりますけれども、この間の義務教育についてはどのような配慮がされているんでしょうか。
中井政府参考人 少年鑑別所におきまして被収容少年に対して義務教育をするということにつきましては、法令上の定めは設けられておりません。さはさりながら、少年鑑別所は少年の身柄を一定期間拘束しているわけでございまして、この事実にかんがみまして、学習を希望する少年に対しては、鑑別実施等に支障が生じない範囲で自習時間の確保に配慮しております。
 また、施設の保有する学習図書や教材を積極的に貸し出すということもしておりますし、学習図書の差し入れ及び居室内で所持することのできる冊子の冊数でございますけれども、これについても配慮しているところであります。
 また、被収容少年が在籍しておりますところの学校の教員の方が面会される際には、その当該教員の方によりまして少年の学習進度を確認したり、あるいはその学習上の個別指導の実施等が可能になるように、面会時間等についても配慮しております。
 さらに、少年の学習機会をさらにふやすと申しますか一層充実する、こういう観点から、教科学習の支援を目的といたしまして学習用のパソコンを貸し出しましたり、あるいは、外部の方の協力を得まして学習に関する助言や指導を得られるなどにも努めているところでございます。
水島委員 犯罪に巻き込まれる子供たちを見ておりますと、もちろん家庭的な背景もあると同時に、やはり学業における挫折体験というものも大きな要因であると思っておりますので、さらにこういった中で学業が分断されてますますついていけなくならないように、特段の配慮が必要であると思っております。
 その貸し出されたパソコンがどのように使われているのかとか、ちょっといろいろ細かく気になる点もありますけれども、きょうは時間がございませんので、またこの点についてはしっかりとした御配慮をお願いして、次に進ませていただきたいと思います。
 現在、名古屋刑務所における暴行が問題になっているわけですけれども、医療少年院における暴行事件なども報道されているわけです。四月十一日に、私は、青少年問題特別委員会で、国連子どもの権利委員会による勧告に関連して、少年院の中で子供が教官から暴力的な処遇を受けた場合、どういう申し立て、救済手段があるのかということを質問いたしました。そのとき御答弁をくださった法務副大臣は、家族を通して人権侵犯の申告や民事訴訟あるいは告訴、告発をすることができるというようなことをおっしゃっていたわけです。そのときも指摘をいたしましたけれども、これは大変不十分な答弁だと私は思います。
 先ほどから、家庭環境に問題がある子供が多いということを大臣も答弁されているわけですけれども、家族が家族としてきちんと機能していないから子供が少年院に収容されているという現実もあるわけですので、それを踏まえて考えなければいけないと思いますが、この点について大臣にもう一度御答弁いただけますでしょうか。
増田副大臣 お答えをいたします。
 法務本省及び各施設を監督いたします矯正管区によります定期的な監査がまず実施をされております。不適正な処遇が行われている疑いがある場合には、厳正な調査がもちろん行われております。また、被収容少年から、家族などの面会や部外の民間篤志家との面接の際に、不適正な処遇を受けたことについて申し出を行うことは可能であります。請願やあるいは人権侵犯申告、民事訴訟、告訴、告発などの方法もとることもできることになっております。
 少年が不適正な処遇を受けたことについてみずから申し出たような事例ですが、私、保護司をしておりまして、私も観察所で相談を受けたことが何回かあります。そこで、少年院においては、不適正な処遇があった場合、通例、少年が日記に記載したり他の職員に申し出ることにより判明する例が多く、そのような場合には、当該施設において適正に対処しておると思います。
 なお、平成十年から平成十三年の三年間に少年院の処遇について外部に申し立てた件数、御参考でございますが、六件あるとの報告を受けております。
 以上です。
水島委員 子どもの権利委員会の勧告の中には、設備及び記録への全面的アクセスや査察の確保、抜き打ちの訪問、子供及び職員との秘密の話し合いを持つこと、苦情の申し立ての手段が確保されていること、そして、子供がその存在及び運用について十分に情報を提供され、かつ承知していることなどが盛り込まれているわけで、これは当然少年院においても守られるべき内容であると思っております。
 また、虐待された子供たち、大切にされた経験のない子供たちだからこそ、きちんと少年院の中で人権が守られているのだというような特段の配慮が必要ではないかと思っておりますので、この子どもの権利委員会の勧告の内容に沿って、少年院ではそれぞれの項目についてこういうふうに確保されていますということを、ぜひまた次回質問しましたときには明確に御答弁いただけるように御準備をいただきたいと思っております。
 最後に、大臣に、逸失利益の問題についてお伺いしたいと思います。
 交通事故などで子供が亡くなった場合の賠償金の算定方法についてはかねてから社会的な議論があるということは、大臣も御存じだと思います。生きていれば将来得られたはずの利益である逸失利益の算定方法が男女で異なるという重大な問題がございます。
 男の子が亡くなった場合には男性労働者の平均賃金、女の子が亡くなった場合は女性労働者の平均賃金に基づいて逸失利益を計算すると、男女の賃金格差が大きい現状を反映して賠償金にも大きな差がついてしまいます。私自身にも娘と息子がおりますけれども、どう考えてもこの子たちの逸失利益に差があるとはとても思えないわけでございます。この問題について、法務大臣はどのようにお考えになりますでしょうか。
森山国務大臣 基本的には、男女の賃金格差があるということに問題があるんではないかと思います。統計を見ますと、これは全国の平均賃金格差、男性と女性、女性の場合は男性の六六・二%ということになっているようでございますが、これは、実は私が労働省の婦人少年局長をやっていたときは五〇%そこそこでありましたので、それなりに上がってきたんだなとは思って見たのでございますけれども、一〇〇%対六六・二%ではまだまだ大きな格差がある。そこが基本的に平等にならなければ、今御提起なさったような問題も基本的には解決しにくいという感じがいたします。
 しかし、それを待っていたのではあと何年かかるかちょっとわかりませんが、いずれにしましても、被害者が亡くなった場合の逸失利益というものを算定しなければならないということになりますと、平均賃金というのは一つの大きな材料であることは確かでございまして、それが使用されるということが多数の場合、例があるわけでございまして、場合によっては、区別をしないで、男女両方合わせた全体の平均賃金を使うという例も最近ないことはないようでございますが、そのときのケースの状況によっていろいろの算定方法があるのではないかと思います。
 最初に申しましたように、男女の賃金格差がなくなるというようなことが基本的に重要であると思っています。
水島委員 何となく森山大臣らしからぬ答弁だなと伺っておりますけれども、女の子の場合は全労働者の平均賃金でというふうに計算しても、男の子の場合は男性労働者の平均賃金でという方法にしてしまうと差がついてしまうわけですし、また、判決によって、こちらは女性労働者の平均賃金、ある判決では全労働者の平均賃金という方法にしてしまいますと、同じ女の子同士であってもまたそこで差がついてしまう。このように、男だから女だからという理由で命の値段に差をつける、そういう発想そのものが私には全く受け入れられないものなんです。
 自分自身の娘と息子を見ておりましても、どちらの子供の方が将来お金を稼ぎそうかというふうに見ますと、どうもうちの場合は娘の方が稼ぎそうな感じもいたしますし、そのように考えまして、もう一度、これは法務大臣というお立場を捨てていただいて結構でございますので、女性政治家森山眞弓さんといたしまして最後に一言力強い御答弁をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
森山国務大臣 これは命の値段に差があるというふうにおっしゃられますとまことに理不尽なことだというふうに思います。しかし、何とかして逸失利益を計算しなければならないという必要に迫られていろいろな材料をそろえますときに、平均賃金というのがいろいろな意味で材料になるということはまた否定できない事実だと思いますので、そこのところはやはりケース・バイ・ケースでやるしか今のところないんではないか。基本的には平均賃金が違うということが問題だというふうに重ねて申し上げたいと思います。
水島委員 もう時間ですので終わりにさせていただきたいとは思いますけれども、ぜひこういったことも子供の人権上の問題として、法務大臣には毅然とした態度をとっていただきたいなと思っております。
 ケース・バイ・ケースでといいましても、子供の場合、その子が将来どういう大人になるかということに関してはもう無限の可能性を持っているわけでございますので、女の子が、自分が死んだときの方が賠償金が少ないんだなと思うことでどのような感覚を持たされるかということ、また、同じように子供を愛している親からして、それがどれほど悲しいことであるかということをもう一度人権上の観点から御配慮をいただきまして、ぜひ前向きに御検討いただけますようにお願いを申し上げまして、質問を終わらせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。
園田委員長代理 中村哲治君。
中村(哲)委員 民主党・無所属クラブの中村哲治でございます。
 難民問題について、本日は質問をさせていただきます。
 先週末、二〇〇二年十一月十六日に、日本弁護士連合会、東京弁護士会、第一東京弁護士会、第二東京弁護士会の共催でシンポジウムが行われました。「難民認定制度の改正に向けて」というシンポジウムでした。そこで、緒方貞子前国連難民高等弁務官からメッセージが寄せられました。「開かれた視野が求められる庇護政策改革」というタイトルでした。その一部を読ませていただきます。
 国連難民高等弁務官任期の最後に、私はヨーロッパの人々に次のように訴えました。「今なお多くの人々が人権侵害の蔓延する国々から逃れていますが、このうちのほんの一握りしか難民として認定されません。各国が難民保護における協力や責任分担を回避してきたため、難民保護には否定的な面が目立ってきました」。同じことが日本についても言えると思います。日本における認定数を見れば、難民の保護にあたって日本は先進国の中ではるかに遅れを取ってきました。
また、このようにも書かれております。
 日本が難民条約に加入して以来二十年間で認定した難民の数は合計で三百人にも至りません。また、インドシナ難民の場合を例外として、日本は、海外の難民キャンプで耐え難い生活を強いられている難民に対して、受け入れの枠組みを設ける努力をしてきませんでした。その結果、日本が国内で保護してきた難民の数は少なく、この点で日本の負担は極端に少なくなっています。これとは対照的に、日本はいわゆるエンターテイナーを毎年十万人近く合法的に受け入れていますが、日本の出入国管理においては、エンターテイメントが難民に対する思いやりよりもはるかに優先されているのでしょうか。この事実は、私たちに深刻な問いを投げかけます。それは、日本が難民条約を支えている精神や価値観を真に理解し、実践してきたのだろうかということです。
 これまで日本の難民保護がこのような状況であった背景には、私たちの価値観や偏見の問題があるのではないでしょうか。日本人は、日本が単一民族の島国であるという錯覚のもとに暮らしてきましたが、これはあくまでも錯覚であり、人・モノ・情報などが広く行き交うグローバル化した今日の世界においてはとうてい維持し続けられないでしょう。私たちは島国根性や外国人に対する偏見や差別を打ち捨て、外の世界の問題を自分たちの問題としてとらえる必要があります。
まだまだ続きますけれども、このような日本社会のあり方、日本の今までの取り組んできたあり方に対する厳しい批判を述べられているんだろうと私なりに受けとめます。政府として、このような物の見方に対する御感想はいかがお持ちでしょうか。
森山国務大臣 緒方貞子さんは、私、長く存じ上げておつき合いしておりますし、大変良識のある、しかし信念を持った、立派な方だと尊敬しております。難民問題について時々発言されるお言葉も非常に傾聴に値する、立派な御発言が多いわけでございますが、このメッセージに関しましては、新聞でちょっと拝見いたしましたが、ちょっと腑に落ちないなと思う点がございます。あの緒方さんがこのようなことをおっしゃるだろうかというようなポイントも幾つかございまして、腑に落ちないわけでございます。
 難民の認定につきましては、従来から日本は、国際的な取り決めである難民条約等によりまして、難民と認定すべきものはきちっと認定しておりまして、各種の保護も与えてきております。この条約を誠実に履行してきたものと自負しているわけでございますが、そして、緒方さんもそのことは御存じであると確信しております。
 もちろん、近年の難民問題に関する国内外の関心、議論等の高まりもありまして、いろいろな世論の声に真摯にこたえるためにも、今後とも、難民条約の趣旨にのっとって、より一層適正な難民認定の運用に努めていかなければいけないと考えておりますが、緒方さんが言及されたというエンターテイナーの入国と難民の認定というのは、申請数及び判断要素や法的根拠が全く異なるものでございますから、本来比較の対象にするのはおかしいといいましょうか、無理があると考えますので、エンターテイナーの方が難民に対する思いやりよりもはるかに優先されているというような表現は解せないと思いますし、緒方さんがそのようなことをおっしゃるというのは腑に落ちないというふうな感じで受けとめたところでございます。
    〔園田委員長代理退席、佐藤(剛)委員長代理着席〕
中村(哲)委員 このメッセージについては、昨日、法務省の方にお渡ししておりますので、大臣もお目をお通しになったことだと思います。
 大臣がおっしゃった腑に落ちない点というのはエンターテイナーの一点だけでよろしいのでしょうか。
森山国務大臣 その点と、それから全体としての日本の姿勢という点について、日ごろ緒方さんが私に個人的にお話しなさっているお言葉とはちょっと違うなという感じを受けております。
中村(哲)委員 それでは、そのメッセージの、先ほどお読みさせていただいた後にこのように書かれております。
 「そして、政府は日本の国際的・人道的な役割を維持するためにも、難民の受け入れにより積極的になるべきです。そのためには、申請期限や異議申立て手続き、難民に要求される立証責任などについて、法手続きに則って改善していく必要があります。しかし、規則を変えるだけでは十分ではなく、それを運用する立場にある人々が開かれた視野を持って柔軟に対応することが不可欠です。庇護制度を蝕む障害として、虚偽の申立てを行って在留期間を延ばそうとする濫用者の例が常に挙げられますが、制度を運用する側の濫用もあり得ます。例えば、難民認定に関わる職員や空港の入国審査官が、人道的精神よりも管理思考を優先して庇護希望者に対応するような場合、それは庇護制度の濫用にあたるのではないでしょうか。関係者の方々が、人道的な視点を日々の職務遂行に広く反映させることが何よりも重要です。」このように書かれております。
 このことも、先ほど森山大臣がおっしゃった、日ごろの緒方さんの発言とは違うということの御認識でよろしいですね。
森山国務大臣 もちろん、日本の政府の入国管理のやり方が完璧で何の欠点もないとは申しません。いろいろ問題があることはあると思いますので、私どもなりに、皆さんの御意見を広く伺いながら改善し、より納得のいく、皆さんに受け入れられるものにしていくべきだというふうに考えておりますので、緒方さんが御指摘なさったことも、うなずける面も確かにございます。
中村(哲)委員 御指摘なさった点に納得するところもある、いろいろな人の意見を聞きながら制度の改革に取り組んでいくというお話でしたので、まさに日本人が外国人をどのように自分たちの仲間として受け入れていくのか、そういう観点からの取り組みをぜひお願いしたいと思います。
 それでは、条約の解釈、また国際法における難民条約の位置づけなどについて質問をさせていただきたいと思います。
 条約法条約というものがあります。条約法条約三十一条一項及び二項によれば、難民条約は、条約文、この条約文には前文及び附属文を含めますが、その条約文や、締結国間でなされた難民条約の関係合意である最終文書の規定に従い、かつ、難民の人権の広範な保障という難民条約の趣旨、目的に照らして解釈されなければならないということはよろしいですね。
森山国務大臣 条約の解釈の問題につきましては、実は外務省の所管に属する問題でございますので、法務省といたしましては、難民条約を誠実に履行するという立場から、難民の人権に十分配慮した行政運営を行ってまいりたいということを申すほかございません。
中村(哲)委員 国務大臣としてそのような答弁でいいのかどうかというのは、私は甚だ疑問でございます。
 当然のことですけれども、法務省も入管難民法に基づいて行政を執行しているわけです。その法律というものは憲法の枠内にある。その憲法という法規範のもとには国際法が法律よりも上位の概念としてある。そういったことで、法律の解釈運用には、もちろん憲法の解釈運用も必要ですし、その間に入る国際法の解釈運用も、それは省としてしなくてはならないことです。法体系としてはこのような結論になると思います。
 だから、条約そのものの解釈は外務省が行うことであるという御答弁は確かにそのとおりでしょう。しかし、入管難民法の解釈運用については法務省が有権解釈の権限があります。そういった意味においては、法務省の内部で条約法条約に基づいて難民条約をどのように解釈して入管難民法の適用に当たっていくのか、この姿勢は問われるわけでございます。今の大臣の御答弁は、そのような法務省としての責任を放棄しているとしか思えません。いかがでしょうか。
増田副大臣 諸外国の判例は、それぞれの国の法制のもとで個別に発生した具体的な事案に対してなされた司法判断であります。判断の前提となる事実関係は個々の事案ごとに異なりますし、我が国と法制も異なるでしょうから、諸外国の判例が直ちに我が国の難民認定制度の運用に当たっての解釈準則になる、このように決めつけることはいかがかというふうに考えております。
中村(哲)委員 副大臣、私、今そのことは聞いていません。
 今、副大臣がお読みになったのは、諸外国の判例は我が国の入管難民法の定める難民認定制度の解釈準則になり得るのかという事前の質問通告に対する答えです。今、そのことは聞いていません。
 きちんと議論の流れを把握して御答弁してください。今わざわざ副大臣は、大臣が御答弁になるところをかわって答えられたわけですよね。そうではないですか。
佐藤(剛)委員長代理 しっかりと答弁してください。
増田副大臣 お答えをいたします。
 私の方で先に勘ぐって御答弁をした点があったら、訂正をしておわびをいたします。
 そこで、条約法に関するウィーン条約の解釈の問題につきましては、先ほど答弁もございましたが、外務省の所掌に属する問題でありますが、いずれにいたしましても、UNHCRの作成した御指摘の文書は参考資料として十分尊重しており、今後とも適切な難民制度の運用に努めていきたい、このような所存でございます。
中村(哲)委員 副大臣、私、UNHCRが示した文書なんということを一個も話をしていませんよ、まだ。何でそんな書かれた文章ばかり読むんですか。議論の流れをきちんと把握しているんですか。
佐藤(剛)委員長代理 増田副大臣、質問にきちんと答えてください。
増田副大臣 いろいろ先に言って恐縮でございましたが、国連高等弁務官という御質問が発言の中にございました。したがって、それらをとらえまして、UNHCRという表現をしたわけであります。別に、ほかに考えがあるわけではありませんので、御理解を賜りたいと思います。
中村(哲)委員 それでは、私のもとの質問に対する答えはどうなんですか。副大臣、答えてください。
森山国務大臣 たしか、もとの御質問は私にあてたものであったかと思いますので、私から申し上げます。
 法務省といたしましては、当然、難民条約を誠実に履行するという立場から、難民の人権に十分配慮した行政運営を行っていくという覚悟でございます。
中村(哲)委員 委員長にお願いがあります。
 このような形で、私が大臣に聞いたことを副大臣が答えられていって、結局、その答えが不十分である、質問に答えていないから再び大臣がお答えになる。このような審議のあり方でいいんでしょうか。
佐藤(剛)委員長代理 ちょっと注意しますけれども、大臣に質問をした話が根でしょう、根本でしょう。それを副大臣が答えたわけでしょう。副大臣で満足しない部分を法務大臣があれするのは当たり前の話じゃないですか。余り怒らないで、静かに質問してください。
中村(哲)委員 大臣が最終的にお答えになるのであれば、大臣が最初からお答えになればいいわけでございます。話がかみ合っているのならばいいんですけれども、かみ合っていなかったわけですから、そこは以後、委員長の御運営にお願いしたいという……
佐藤(剛)委員長代理 だから、委員長の運営に何か文句があるんですかと言っているんです。質問の仕方を、もう少しわかりやすく質問をして、そして大臣なり副大臣が答えられるようにしておいてくださいよ。(発言する者あり)静かにしてください。(発言する者あり)不明確だから不明確な答弁になってしまうんだから。
中村(哲)委員 議事録できちんと後日把握していただいたらいいかと思いますが、私は不明瞭な質問はしていないと思います。
 もうこのことを幾ら話しても仕方ないので、次に進みたいと思います。
 今、大臣の御答弁では、適切な解釈、運用をしていくと。当然、条約法条約に基づいて難民条約も解釈していく、その範囲内で、入管難民法の解釈、そして法の執行に当たっていくということでよろしいですね。
森山国務大臣 おっしゃるとおりでございます。
中村(哲)委員 日本弁護士連合会が、ことし、二〇〇二年十一月に「難民認定手続等の改善に向けての意見書」というのを書かれております。その中の四ページに「法務省総合研究所の研修教材の中では、迫害を受ける虞れが同程度に立証された場合であっても、出身国が日本の友好国である申請者については不認定とし、出身国が非友好国である申請者については認定とするという結果になることがありうることを認めていた。」と書かれております。
 この事実関係の確認をさせていただきたいんですが、いかがでしょうか。
佐藤(剛)委員長代理 副大臣、質問の趣旨がわからなかったら質問を返すことできますから、やってください。
増田副大臣 大変失礼をいたしました。正常に戻していただきたいと思います。
 そこで、現在発行されております法務省の研修教材にそのような記述をしたものはまずございません。
 ただし、昭和六十年代に発行された研修教材に、委員が引用されたような意味に誤解されかねない表現をしたものがありますので、適当でないため、その後の改訂の機会に訂正をいたしました。
中村(哲)委員 正常に戻しているつもりですので、よろしくお願いいたします。
 不適切と受け取られかねない表現があったということで削除したということでございました。そういうふうな表現を書くような背景がひょっとしてあったのかもしれないということは、今後改善していかないといけない点なんだろうなということは思います。
 それでは、次に、いわゆる六十日ルールについてお尋ねをさせていただきます。
 この弁護士会の意見書にも六十日ルールの廃止について挙げられております。今、六十日を例えば百八十日だとか一年だとかにする方針も議論をされているようですけれども、そもそも申請期間の定めを持っているということ自体が、一つ、日本における法の特色だと言えると思います。この申請期間を設けるということに対しては、これをなくした方がいいのではないかと私は考えるんですが、いかがでしょうか。
    〔佐藤(剛)委員長代理退席、園田委員長代理着席〕
森山国務大臣 申請期間を特定するということは、よその国でも多くの場合やっているようでございます。
 しかし、いわゆる六十日ルールにつきましては、今月の一日に、私の私的懇談会でございます出入国管理政策懇談会というのがございますが、そこから難民認定制度に関する検討結果の中間報告というのを提出していただいております。その中で、申請期間を設けることには現在でも合理的理由があると考えた上で、その延長に係る提言がなされておりますので、この提言等も踏まえながら、今後検討してまいりたいと思っています。
中村(哲)委員 今のは延長なんですが、期間を設けること自体の当否についてもう少し議論をさせていただきたいと思うんですけれども、何のためにその期間が必要なのかということもあわせて、大臣、副大臣、どちらでも結構ですから、お考えをお聞かせください。
森山国務大臣 先ほど申した中間報告のリポートがこれですけれども、その中には、無期限に申請を認めると証拠の散逸等によって適正な難民認定が妨げられるおそれがあるばかりか、乱用者を誘発するおそれもあるようなことから、申請期間を設けることには現在でも合理的理由があるというふうに記述されておりまして、そのとおりかと思います。
    〔園田委員長代理退席、佐藤(剛)委員長代理着席〕
中村(哲)委員 証拠の散逸という点に関しては、証拠を持たずに難民というのは大体来ていますから、重要な証拠というのは本人の供述と出身国の情報なのであるから、期限の制限の正当理由にはならないんじゃないかなと思います。それから、早期に難民の申請を行うことが通常であるということを理由とすることに関しては、諸外国の裁判例のみならず、日本の裁判所においても、地裁の判決ではありますけれども、ことしの一月十七日の判決で否定されております。
 そういうことを考えると、申請期間というものの正当性というのが今日においては失われてきているのではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
森山国務大臣 証拠の散逸というお話でございますけれども、確かに難民申請者自身が詳しい証拠をたくさん持っていることは少ないと思いますけれども、例えば、自分がどこそこの国の出身で、こういう団体に属していて迫害を受けたというようなことをおっしゃる、それが本当かどうかということを調べなければいけないというのがこちらの仕事ですが、その場合の証拠、つまり証明するようなさまざまなものが、余り期間を長くしたり、あるいは無期限にいたしますと、散逸してしまうということが大いにあり得るということは御理解いただけるかと存じます。
 そういうことでございますし、また、乱用者の問題も決して否定はできませんので、その他もろもろのことをお考えになって、学界、マスコミ界、その他多くの方々に御参加いただいて出していただいたこの報告書は、そのような結論になっているわけでございます。
中村(哲)委員 証拠の散逸の点で、長期間に行われると散逸するということで、大きな判断基準になるのは立証責任の問題なのかなと思うんですね。立証責任が申請者の側にあるのであれば、そのお考えは論理的に当たらないと思うんですね。立証責任が国の側にあるということになるのであれば、今おっしゃったことがそのまま当てはまると思うんです。
 でも、そういうふうに二分できるのかどうかというのも一つの議論としてはあると思うんですが、そこのあたりの整理というのは今後の検討課題ということでもよろしいですので、立証責任と、また申請の期間というものも関係してくるのではないかということ。今お答えを聞いた上での質問ですから、今お答えになれないかもしれませんけれども、今後検討するということでも結構ですから、お答えください。
森山国務大臣 今のお話も含めて、その他審査のあり方全体についていろいろな提言をいただいていますので、検討していきたいと思います。そのうちの一つということで御理解ください。
中村(哲)委員 それでは、申請者の収容の長期化について次にお伺いいたします。
 難民問題の一つの大きな問題として、長期にわたる収容が挙げられております。政府としては、不法入国者として一律に扱っているのかもしれません。しかし、その結果として、現実に行われている長期間の収容というものは、収容者の人身の自由を非常に大きく制約しているのではないかと私は感じております。この長期間の収容に対する一般的な御見解で結構ですので、まず簡単に御答弁いただきたいと思います。
森山国務大臣 現在のやり方で申しますと、難民認定手続と退去強制手続は別個、独立の手続でございまして、退去強制事由に該当するものについては、従来から、難民認定手続が行われている場合でも退去強制手続をこれと並行して行うということになっておりまして、一般論で申し上げれば、退去強制手続は身柄を拘束して進めることになっておりまして、難民認定申請中の者であっても例外ではなくて、退去強制令書に基づく身柄の拘束については、適正な手続にのっとって行われております。これが直ちに被収容者の基本的人権や自由等を規定した憲法の趣旨に反するものではないと考えております。
 なお、収容施設における被収容者の処遇に当たりましては、保安上支障がない範囲内においてできる限りの自由を与えておりますし、また、被収容者の情状等を考慮しまして身柄の拘束を解く必要が生じたときには仮放免を弾力的に運用するなど、人権に配慮したことをやっておりますが、先ほど申し上げたこの報告の中に、難民認定申請中の者の法的地位という項目がございまして、その中にも今御指摘のようなことが言及されております。
 ですから、あわせまして、これからの検討課題にしていきたいと思っています。
中村(哲)委員 では、少し具体的にデータを交えてお話をさせていただきたいと思いますので、質問を続けさせていただきたいと思います。
 我が国に対して難民認定申請をした者のうち現在収容されている方々は何名で、その方々の収容期間は平均どの程度か、お答えください。
増田副大臣 簡明にお答え申し上げます。
 今月十九日現在の被収容者で難民認定申請を行ったことのある者の数は四十九人であり、その平均収容期間は約二百六十七日であると承知をいたしております。
中村(哲)委員 それでは、そういった方々を除き、今収容されている方は何名で、その方々の収容期間は平均どのくらいでしょうか。
増田副大臣 やはり今月の十九日現在の被収容者のうち難民認定申請をしたことのない者の数は千八十五人であると承知をしております。また、これらの者の一人当たりの平均収容期間は約五十日となっております。
中村(哲)委員 このデータからわかりますことは、難民認定申請をした者の平均が約九カ月、そうでない人たちは五十日ほどだということですね。つまり、難民絡みでない人たちは早くどんどん入れかわっていくから、恐らく平均期間は短い、しかし、難民申請をしている者は極めて長い収容期間があると。九カ月ということですから、当然もっと長い人たちもたくさんいらっしゃるということだと思います。
 大臣、副大臣、どちらでも結構なんですけれども、ちょっとイメージしていただきたいのですが、もし副大臣が非民主的な国にいらっしゃって民主化の運動をしたとする、そのような中で迫害を受けそうになったとか、受けるおそれがあった、命からがら逃げてきて、パスポートを持っていないときもあるでしょう、ある国に入って難民の申し立てをした、そういったときに、申請した途端に身柄を拘束されて、平均九カ月間ということですけれども、いつ仮放免されるかもわからない状態でずっといくということは、大臣のお気持ちとしてはいかがお感じになられるでしょうか。副大臣で結構です。
増田副大臣 いろいろな事情、背景があって延びているんだと思いますけれども、結論的には心配で心配でたまらないと思います。
中村(哲)委員 心配で心配でたまらない、本当にそうですね。私も何度か西日本センターに足を運びまして、直接難民申請されている方々にお会いをしてまいりました。まさに今副大臣がおっしゃった心配で心配でたまらない、それを現実に収容所に入った中で日々感じておられます。自殺未遂も起きてきたりしております。
 これはもうデータを見ているだけじゃなかなかわからないことですし、書いたものだけじゃわからないことで、やはりイメージをしていただくことがすごく大事だと思うんですね。入管行政において外国人の人権ということを文字で書かれますけれども、やはり彼らも悩みもするし苦しみもする、切れば血が出る人間なんですね。そういった方々を収容しているということをまた感じていただいて、行政に当たっていただきたいなと思うわけでございます。
 そして、次の質問に移らせていただきますけれども、このような無期限、期限が定められていませんから、無期限の収容というものは収容者にとって相当精神的なストレスを与えていると思うのですが、実際自殺未遂事件も幾つもあったと聞いています。昨年一年間で、収容施設内での自殺未遂事件は幾つあったんでしょうか。
増田副大臣 自損行為を行った者が自殺を意図していたかどうかは判然としない場合もありますので、自殺未遂の数としては具体的に把握しておることが困難で、これはありません。これを含めた自損行為として現在当局が把握している件数は、昨年十月以降本年九月末までの一年間で、入国者収容所において四十一件となっております。
中村(哲)委員 四十一件ということですので、この数字を重く受けとめていただきたいと思います。副大臣がおっしゃった、不安で不安で仕方ないということがこういう結果にまさにつながっているんですね。
 そして、もう時間がないのでどこまで聞けるかわかりませんが、収容をそもそも行う必要があるのかどうかということについてお伺いいたします。
 いわゆる収容前置主義と言われているものがありますけれども、この理由はどのようなものでしょうか。
増田副大臣 退去強制手続における収容は、容疑者の出頭を確保して容疑事実に係る審査を円滑に行い、かつ最終的に退去強制の処分が確定したときにその者の送還を確実に実施することのほか、送還までの間その者の本邦での在留活動を禁止することを目的としております。
 入管法におきましては、身柄不拘束のまま退去強制手続を行う場合の規定が設けられていないだけでなく、第四十四条等の規定が、退去強制手続において、すべての身柄が収容されていることを前提としているわけであります。退去強制手続については、すべて容疑者の身柄を収容して進める収容前置主義をとっていると解されているものと承知をしております。
中村(哲)委員 時間が参りましたのでこの辺で質問を終わらせていただきますけれども、今の御答弁に対するまた再度の質問についても、後日、質問主意書かまたこの委員会の場でお尋ねさせていただきたいと思います。
 本日は、本当に真摯な御答弁、副大臣ありがとうございました。
佐藤(剛)委員長代理 次に、石原健太郎君。
石原(健)委員 最近外国人が、我が国に来る人がたくさんおりまして、登録者数で見ますと、平成九年百四十八万人、それから毎年少しずつ増加して、十三年には百七十八万人になっているようです。その結果、外国人の犯罪数もふえておりまして、いろいろ法務当局あるいは警察当局、御苦労なことだとは思うんですけれども、この外国人登録者数と比較してみますと、平成九年には〇・九%だった犯罪発生率が十三年には〇・八%に下がっている。また、地方裁判所の刑事事件新受件数で見ますと、平成九年で三・六%、平成十三年では三・〇%になっているようであります。
 外国人も日本人もこれは区別なく、犯罪はどんどん取り締まっていただくのがいいとは思うんですけれども、外国人犯罪という言葉がしばしば新聞とか雑誌で見られるわけであります。また、警察とか法務省なんかでも外国人の犯罪というのを区別してやっておられるようですけれども、外国人犯罪という言葉が世の中に周知徹底していって喧伝されるようになりますと、日本人の心の中に、外国人というと犯罪という言葉がだんだん浮かんでくるようになるんじゃないかと思うんですよね。
 そして、心の中にそういう気持ちがあるとつい、もともと日本人は外国人に対して特別視するというような見方もあるようですけれども、外国人と会うと何となく警戒心を持って対したり、何となく偏見を持ったりして、それがまた外国人に反映すると思うんですよ。そうしますと、外国人、特に犯罪に関係ないような外国人は嫌な気分を持つようになるんじゃないか。
 私は、大勢の外国の人が日本にやってきて、科学技術のこととか風景のこととか、日本のよさをいろいろ知ってもらって、そして自分の国に戻られて、日本というのはこういういい国なんだ、こうすばらしかったということをいろいろ言ってもらうことが、日本の海外における評価の向上につながっていくと思うんですよね。それが日本に来て、外国人というと犯罪者じゃないかというような目で見られていたのでは、不愉快な思いをして、自分の国に帰ったときには、例えば自動車を買うにしても、日本の自動車はどうも、あのときああいう嫌な思いをしたから買いたくない、アメリカの車を買おうとか、こうなる可能性もありますし、また、そういう方がだんだん社会的地位が向上して上になっていったときに、外交交渉なんかするときにでも、日本に対して何となく不快な気持ちを持っていると交渉も容易でないんじゃないか、こんなふうに考えるわけです。
 それで、警察とか法務省におかれましても、犯罪を取り締まるのは大いにやっていただいていいんですけれども、なるべく外国人犯罪ということをとりたてていろいろにやっていただかないように、この機会にぜひお願いしておきたいわけであります。
 それからもう一つ、外国人が大勢日本に来ますと、日本の国にも活気が出てきたり、そういう外国人からいろいろなことを学ぶこともできるので、私は、外国人に対して日本の国がオープンだということは大変いいことだと思っておるわけであります。
 それで、まず最初に警察の方にお尋ねしたいんですけれども、最近の外国人、特に南米あたりから来ている日系人の犯罪がふえつつあるということを聞いております。その状況についてお伺いしたいということと、新宿の歌舞伎町で外国人同士の抗争が起こっているんじゃないかなんという雑誌の記事なんかも目にするんですけれども、あと、雑居ビルでの火災もあれは外国人に関係しているんじゃないかなんという、これはうわさなんでしょうけれども、新宿のそうした治安の対応についてどういうふうになさっているのか。この二点、お聞きしたいと思います。
小田村政府参考人 御質問にお答えいたします。
 本年上半期におきます来日外国人犯罪の国籍別検挙状況を見ますと、ブラジル人の犯罪が急増しているということが特徴点でございまして、刑法犯の検挙件数は、昨年上半期と比較しまして、約二千四百件、三・三倍の増加となっております。来日ブラジル人の犯罪は、その九八%が正規の滞在者によるものである点に特徴があります。また、その多くが不登校あるいは無職の十代、二十代の若者による窃盗であるということであります。
 これらの犯罪多発の背景でありますが、日系人が滞在資格を得て来日、就労いたしましたものの、多くの家族が日本社会に溶け込めず、集住地域を形成している中で学校にも行かず仕事にもつかない若者が多くなっている現状があると考えられるところでありまして、警察による犯罪の検挙のみにとどまらず、官民の関係機関等が連携した総合的な対策が必要であるというふうに考えております。
 また、歌舞伎町におけるさまざまな犯罪の対策でありますが、従来から警視庁においてさまざまな取り組みを行ってきているところでありますが、現在、また先生御指摘のような犯罪が発生しておりますので、六月には副総監を長とする盛り場総合対策部隊というようなものを編成いたしまして、制服警察官による街頭活動の強化を初めとして、私服警察官による取り締まり等も強化をしているところであります。
 また、本年の二月には歌舞伎町地区に五十台の防犯カメラを設置いたしまして、二十四時間警察官によります監視体制をとりまして、不法行為に迅速的な対応を行っているところでございます。
石原(健)委員 次に、法務大臣にお尋ねしたいのですけれども、日本の国に百七十八万人の外人登録されている方がおいでだ、これからもまた増加していくのかなとは思うんですけれども、多数そういう人たちが日本に来ていたり、またこれから来るだろうというようなことについては、大臣としてはどのようなお考えをお持ちになっていらっしゃいましょうか。
森山国務大臣 先生がおっしゃいましたのは、外国人登録をしている外国人ということのようでございますが、そのようにきちっと正規に入国をして登録をしてという外国人の場合は、非常に問題は少ないだろうと思います。
 むしろ、私どもが問題と考えておりますのは、不法に入国したり不法に滞在したり不法就労したりというような人々が、これまた少しずつふえているということでございまして、その点については非常に心配をしているわけでございます。不法滞在していると思われる人というのが、約二十五万人ぐらいおりまして、そのような人々の中から、先ほど来お話しのような犯罪も多発しておりまして、深刻さを深めておりまして、日本人が外国人というものに対する警戒心を抱くもとになっているというふうに思います。
 ですから、法務省といたしましては、適正な出入国管理をしっかりとやっていくということが重要だと考えておりますし、さらに、テロリストとかその他不法入国や不法就労を企てる好ましからざる外国人の入国を阻止するために、厳重な出入国管理をしなければいけない。それ以外の外国人の円滑な受け入れは、それはしっかりやっていかなければいけない。大変難しい仕事でございますが、国際親善、国際交流と、それから不法入国や不法滞在を排除するということを両方うまくやるという難しい仕事に毎日努力をいたしております。
石原(健)委員 御苦労はよく理解させていただいているところであります。
 今まで入国だ何だというと手続なんかがいろいろ大変だったわけで、私なんかも外国に行ったりするとき、個人的に行くといろいろ苦労を感じるようなときもあるんですけれども、最近、APECビジネス・トラベル・カードというのですか、こういう仕組みができて大分出入国の手続が簡単になるというようなことも聞いておりますが、この点について外務省の方から御説明いただけたらと思います。
三輪政府参考人 お答えいたします。
 APECビジネス・トラベル・カードというものは、適切な入国管理に配慮しつつ、APEC域内でのビジネス関係者の移動を円滑にするために提言されたものです。
 九六年に、オーストラリア、韓国、フィリピンで運用が開始され、現在ではそれにニュージーランド、マレーシア、チリ、香港、台湾が加わり、合計八つのメンバーがこの制度に参加しております。
 我が国政府に対してもAPEC域内の経済界及び我が国国内の経済界から、この制度に参加すべきとの強い要望が累次なされてきております。委員御指摘のとおり、去る十月メキシコで開催されましたAPEC首脳閣僚会議におきまして、我が国として、本制度に来年度より正式に参加する旨、表明したところでございます。この制度の工夫及び運用について、簡単に御説明いたします。
 カード入手を希望するビジネス関係者は、自分の所属する国の政府に申請を行い、各国政府は責任を持って所要の審査を経た上でカードの発給対象者を決めることになっております。その際、各国政府は事前に関係相手国政府から承認を得ておく必要がございます。
 具体的には、例えば外国政府がビジネス関係者にカードの発給を検討する際に、事前に日本政府に対し、この人物に関する情報を送付することになっておりまして、日本政府としてはこの人物に関して事前の審査を行うことになっております。そして、日本政府が不適切と判断すれば、この人物がカードを利用して日本に入国することを断ることができることとなっております。この事前審査を経て、事前に承認された者についてのみ、承認した国及び国の査証手続が免除されることとなっております。カード保持者で日本への来日を希望する外国人ビジネスマンの情報は、日本の入国管理当局にも送付されております。
 このような工夫によって、円滑適正なビジネス関係者の移動に資するよう、配慮を行ってきているところでございます。
石原(健)委員 九六年からスタートして、日本は二〇〇三年からというので、ちょっとそこにずれがあるような感じもいたしますが、法務省としては、このような入国方法についてどのように考えておられるのか。それからまた、今後どういうふうに進んでいくのがいいとお考えになっているか。その辺、お聞かせいただけたらと思います。
増田副大臣 法務省といたしましては、二つありまして、一つは、不法就労者を多数発生させている国や偽造旅券等が多数不正に使用されるおそれのある国との査証免除措置には慎重に対応をせざるを得ない、これが一つであります。
 他方で、そのような問題のない国につきましては、人的交流を一層促進するとの観点から、査証免除を拡大する方向で対応することとしております。
 御参考に、先生御案内のとおりでありますが、ビザなし入国が結構だという免除国は現在約六十あります。
 以上です。
石原(健)委員 外務省の方、もう戻っていただいて結構です。
 法務省にお尋ねしますけれども、日本に入国を申請して拒否をされるという人はどのくらいいるんでしょうか。その理由も聞かせてください。
増田政府参考人 我が国の空海港で上陸を拒否された外国人の総数ですが、平成十一年が九千四百五十七人、平成十二年が八千二百七十三人、平成十三年が一万四百人となっております。
 その理由でございますが、毎年共通して、入国目的に疑義のある事案、これが過半数を占めております。その他、有効な査証を所持していない疑いのある事案、あるいは、上陸拒否事由に該当する事案でございまして、例えば平成十三年で申しますと、全体一万四百人の中で、入国目的に疑義のある事案は六千四百五十七人、有効な査証等を所持していない疑いのある事案が六百二十一人、入管法で定める上陸拒否事由に該当する事案が二百十二人となっております。
 過去三年間を見ますと、毎年最も多いのは韓国でございます。次いで中国でございます。平成十三年の場合、三番目に入国拒否者の多いのはインドネシアでございます。
石原(健)委員 一番目の理由をちょっと僕メモをし損ねたのですけれども、何でしたっけ。
増田政府参考人 入国目的に疑義のあるものです。
石原(健)委員 百何十万も日本にいるわけですから、日本に行ってみたいなという人はなるべく入れてやるのがいいのじゃないかなという気もするんですよね。
 入国するには、何か、研修だ、就学だ、技術だと細かく分かれているようですけれども、こういうものの項目に該当しないということなんですか。
増田政府参考人 ただいま委員が挙げられました研修などは、入国目的に疑義のある事案には直接には含まれておりません。
 入国目的に疑義があるので最も典型的なのは、観光を理由として我が国に入国しようとする人物で、ところが、審査の過程で、本人に聞いても、所持金が足りないとか、観光地のことをよく知らないとか、あるいはホテルの予約もないとかで、観光と言うけれども本当は我が国にそのまま不法に残って就労目的ではないかと疑われる、こういうケースが圧倒的に多いものでございます。
石原(健)委員 日本も、今失業者も多いですし高校生なんかの就職もなかなか大変なようではありますけれども、日本で就労するのがいけないという理由はどういうところにあるんでしょうか。
増田政府参考人 現在の入管法では、我が国で外国人が就労する場合には、あらかじめその活動に応じた就労資格を許された人だけがその許された期間内我が国に在留して働くことが許される、こういう制度になっております。その就労する資格のない人は我が国で働くことはできない、こういう制度になっております。
石原(健)委員 現状は、日本の労働力というのは余っているぐらいで余り問題ないと思うんですけれども、将来は、今少子高齢化が進んでおりまして、日本の国も、かつてのドイツとかオーストリーとかイギリスみたいに外国の労働者をどんどん受け入れていった方が国にとって都合がいいという状況がいずれは来るんじゃないかという気もしますし、そういう場合にどう対応していくのかということは、そのとき慌ててやるよりも、大体予想されるわけですから前もって検討されておかれることがいいんじゃないかと思うんですけれども、その点についてはどうでしょうか。
増田政府参考人 ただいまお尋ねの少子高齢化をにらんだ外国人労働者の受け入れについては、もともと我が国の外国人労働者受け入れについては、例えば最も新しいのでは平成十一年に閣議決定がございまして、その中で、専門的、技術的労働者は受け入れに積極的に取り組もう、しかしながら、単純労働者の受け入れについては、雇用であるとか国民生活とか、あるいは送り出す国自体あるいは入ってくる労働者本人にもいろいろ影響するところが多いから、これについては国民のコンセンサスを踏まえて十分慎重に対応する、こういう閣議決定が出ております。
 したがいまして、今後この方針をどうするかについては、これは入管当局だけの一存ではいきませんので、もし必要があればほかの省庁とも連絡をとりながら検討していくことになろうかとは思いますが、その点については、ちょっと私の方から今お答えすることは差し控えさせていただきます。
石原(健)委員 では、次に移りますけれども、不法滞在者と正規の滞在者の犯罪を起こす比率はどのようになっていますでしょうか。
増田政府参考人 申しわけございませんが、その具体的な数字は今私の方で手元に用意しておりませんので、ごく大ざっぱな言い方しかできませんが、刑法犯について言うと、不法滞在者の検挙者がおよそ半数になっているというふうに理解しております。
石原(健)委員 刑法犯は、不法滞在者と正規の滞在者と半々ぐらいということですね。
 不法滞在者、正規の人もそうなのかもしれないのですけれども、そういう人たちは入国者収容所というところに収容されるようになるのでしょうか。その入国者収容所の役割とか利用状況について説明していただけたらと思います。
増田政府参考人 入国者収容所は法務省の設けております機関の一つでございまして、その役割といたしましては、本邦からの退去を強制される者を収容し送還する実務をつかさどることとされております。つまり、退去強制令書が発付された者を送還までの間収容する施設でございます。
 全国に三カ所設置されておりまして、茨城県牛久市に収容定員四百四十九人の入国者収容所東日本入国管理センター、大阪府茨木市に収容定員三百人の入国者収容所西日本入国管理センター、長崎県大村市に収容定員八百人の入国者収容所大村入国管理センターがそれぞれ設けられております。
石原(健)委員 この入所されている者についてなんですけれども、さっき難民認定されるのに百七十日とかなんとかという話もありましたが、なるべく、いろいろな事情はあると思うのですけれども、余り長いことそこにとどめ置かないように工夫するのも一つの方法じゃないかという気もするのです。
 入所日数短縮のためにどのような取り組みをされているのかということと、入所させられている人の人権についてはどんな点に配慮されているのか、お聞かせいただきたいと思います。
増田政府参考人 まず、お尋ねの後段の方からお答えいたしますが、人権についてでございます。
 入管施設における被収容者の処遇につきましては、法律によりまして、保安上支障がない範囲でできる限り自由を与える、こう決められております。
 したがいまして、入国管理局におきましても、被収容者の人権に配慮する見地から、例えば被収容者の書信の発受信、親族、知人、弁護士との面会などは可能でございますし、テレビの視聴、新聞、雑誌の購読、物品の購入、礼拝等の宗教活動などを認めておりますほか、入浴、運動等の機会の確保にも努めております。
 食事につきましても、被収容者それぞれの国の、いろいろな国がございますが、風俗、習慣、宗教等に配慮して、栄養士がカロリー計算の上栄養バランスに配慮した食事を配ぜんするなどの配慮を行っております。
 それから、長期化の防止についてでございますけれども、私どもといたしましても被収容者の収容期間が短くなるように努力しているのでございますが、被収容者の中には、帰国する費用あるいは旅券等の送還要件を整えるのに時間を要する者とか、退去強制を受けたことを不服として退去強制令書発付処分の取り消し訴訟を起こしている人たちもおりまして、そのために収容が長期間に及んでいる例がございます。
 そのうち、例えば退去強制令書発付処分取り消し請求訴訟が起こされますと、権利保護の観点から裁判の推移等について配慮を必要とする場合がございますし、旅券のない被収容者につきましては、旅券を速やかに発給するように、その人物の国籍国の大使館に旅券の発給方を申し入れているのですが、国によっては、送還されることを望まない自国民に旅券を発給することに消極的な国もございます。そのために旅券が取得できずに送還が実現しないケースもございます。また、帰国費用の工面が困難な人物については国費をもって送還することに努めております。
 このように、長期被収容者の増加を防止するために、当局といたしましては、これからもさらに取り組みを一層推し進めてまいりたいと考えているところでございます。
石原(健)委員 いろいろ御苦労なさっている感じが受け取れるわけでありますけれども、最初に大臣が、なかなか入管行政は難しいといいますか、難しいものだと思うんですけれども、特にどんな点に重点を置かれて入管行政に取り組んでおられるか、局長さんからお伺いしたいと思います。
 そして、冒頭に申し上げましたように、外国人というと何となく犯罪と結びつくと、めぐりめぐって日本の国益を損なうような結果になっていくんじゃないかということも考えられるんですよね。その辺、そうしたことの起こらないように再度お願い申し上げて、質問を終わりたいと思います。
 では、局長さん、よろしくお願いします。
増田政府参考人 外国人を相手とした仕事であるためにいろいろと苦労はございますけれども、基本的な姿勢といたしましては、先ほど大臣からもお話がございましたが、好ましい外国人については我が国においでいただく分には大いに歓迎するという姿勢をとっているわけで、ただその反面で、我が国で法に違反する不法滞在、不法就労、こういう人物についてはやはり厳正な姿勢で臨まざるを得ないということで、日夜努力しているところでございます。
石原(健)委員 どうもありがとうございました。
佐藤(剛)委員長代理 次に、植田至紀君。
植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀です。
 きょうは、時宜も得ておりますんで、矯正施設職員に対する人権教育の推進、研修等々の内容等について、矯正局長を中心にお伺いをしたいと思います。そして最後、その質疑の内容も踏まえて法務大臣にも二点ばかりお話をお伺いしたいと思っております。
 きょう、ちょっとテキストで活用させていただきますのは、人権教育のための国連十年に関する国内行動計画、今では人権教育・啓発推進法もできておりますんで、その法律によって規定されたところの人権教育・啓発に関する基本計画、これにも規定づけられていると思いますけれども、いわゆる特定の職業に従事する者に対する人権教育の推進というところにかかわるわけですが、毎年私どもこの資料をいただいておるわけです。その関連施策としてきょうは矯正施設の職員に対する研修が実際どうなっているのかというのを、私の手元にありますのは平成十一年、十二年、十三年度のそれぞれの実績について触れたものでございます。十四年度についてはまだでしょうか、来年になるでしょうか。とりあえず、この三年間でこの研修の内容等々がどういう形で充実強化されてきているのかということを中心にまずお伺いしたいと思うわけです。
 お持ちだろうと思うんで、やや繰り返しにはなりますけれども、平成十一年度の実績においては、「国内行動計画策定後、研修科目の中に、セクシュアルハラスメント、被収容者をめぐる人権思潮に関する講義を設けるなどして、人権教育の内容の充実を図っているところであり、研修の内容については、実務等に反映されている。」というふうに報告されております。そして、十二年度実績では、主な研修科目で平成十一年度になかったものが一つ加わっておるわけですけれども、これが平成十二年度で高等研修課程、二時間の講義のようですが、人権関係国際条約というのが加わっております。
 私の手元にありますのは、これは「主な研修科目」というふうになっておりますので、すべてを網羅しているのかどうかというのは不明でありますけれども、少なくともここで表記されている、十一年度では行刑法、少年院法、憲法、人権問題、人権擁護、矯正行政の動向と基本方針、被収容者処遇に関する国際準則、少年司法と国際準則、セクシュアルハラスメント、被収容者をめぐる人権思潮、この十項目に加えて人権関係国際条約というのが加わっていますけれども、まずとりあえず、加えたのはそれだけなのかという点。それと、他の継続してやっておられるそれぞれの研修科目について、まず十一年度と十二年度との間では具体的にどんな工夫を加えられたのか、または特段ないのか。その二点、まずお伺いいたします。
中井政府参考人 まず、講義関係からお答えいたしますと、お尋ねのとおり、高等研修課程におきまして人権関係国際条約に関する講義、これを平成十二年度に新たに研修科目といたしますとともに、同年度から実施している次第でございます。
 第二点は、講義内容の点についてのお尋ねでございますけれども、具体的な講義は私どもの矯正研修所やその支所で行われているところでございまして、いろいろな科目の研修がございますけれども、人権教育に係る研修も講義しております。
 その主体でございますけれども、矯正研修所の教官のほかに矯正局の職員、部内の職員はもちろんこれはかんでいるわけでございますけれども、それ以外に大学教授、それから弁護士あるいは法務職員等専門的知識を有する部外の方に講師としてお越しいただきまして、それぞれの講義内容に人権教育という観点から意を尽くしていただいていると承知している次第でございます。
 また、私どもの方では、いわば教材面のことがあるわけでございますけれども、教材面からの配慮といたしましては、平成十三年度から、矯正関係国際準則集というのを研修教材として発行いたしまして、これを用いまして国際的な人権規約等の周知徹底を図るといったようなことをしております。
 今後とも、講義内容等に工夫を加えるとともに、人権教育に関する各般の充実化に努めてまいりたいと思います。
植田委員 準則集というのが十三年度にこしらえられたと。十三年度のものはまだ聞いていなかったんですが、結構でございます。とりあえず今は、十一年から十二年でどんな変化があったか。当然、研修ばかりやっているわけにもいきませんから、限られた時間の中でどれだけ有益なものをやっていくかというのは当然課題であります。
 次に、今度は十二年度と十三年度との相違点なんですけれども、細かくて済みませんね。平成十二年度では今言ったように十一項目、主な研修科目として挙げられていますが、平成十三年度実績と比較いたしますと、平成十二年度までやっておった上級管理研修課程の矯正行政の動向と基本方針という講義と、十二年度に新たに登場していた高等研修課程での人権関係国際条約というものが十三年度実績の主な研修科目からは落ちていまして、新たに高等研修課程で二時間、犯罪被害者の現状というのが加わっております。ですから、十二年度は十一科目ここには表記されているんですが、マイナス二、プラス一で、計十科目になっておるわけですが、これは私の持っている資料では「主な研修科目」というふうになっておるので、単にこの報告書の別紙のスペースの関係上落としたということだけなのか、今言った、矯正行政の動向と基本方針というのと人権関係国際条約というのは実際に科目から外したのかどうか。これは簡単な事実関係ですので、教えてもらえますか。
中井政府参考人 上級管理研修課程におきます矯正行政の動向と基本方針に関する講義についてでございますけれども、「主な研修科目」には記載してございませんが、平成十三年度におきましても平成十二年度と同様の内容により実施しているものと承知しております。
 次に、人権関係国際条約に関する講義についてでありますが、平成十二年度において実施していた被収容者処遇に関する国際準則と講義内容が重複しておりますので、平成十三年度は、これらの研修科目を整理統合いたしまして、被収容者をめぐる人権思潮に関する講義として実施したものでございます。
 このほか、高等研修課程におきまして犯罪被害者の現状に関する講義もやっておるわけでございますけれども、これも、犯罪被害者に関しまして昨今社会の関心が高まってきている、そういう状況がございますので、この問題に関する知見を高める、それとともに被害者の立場をよく理解するということが結局のところ人権に関する理解に資するものと考えまして、平成十三年度に新たに研修科目とするとともに実施しているところでございます。
植田委員 十二年度では、わざわざ、被収容者をめぐる人権思潮、人権関係国際条約に関する講義を設けるなどして、人権教育の内容の充実を図っている。でも、やってみたら中身が重なってしまいましたと。でも、実際、この国際条約だって二時間でしょう、国際準則も二時間でしょう。だから、計四時間でやっておって、そもそも、そんなにかぶることはないようなカリキュラムをそこは組めばいいだけなのと違うんですか。
 ダブるところが多いからということで、せっかくそうした、言ってみれば国際的な状況を把握していくために二つの科目で計四時間あっていたのを二時間に圧縮するというよりは、中身について、それぞれの講義内容を検討を加えて精査をすればよかったんじゃないかと思うので、その点、どうでしょうか。
中井政府参考人 御指摘の点を踏まえまして、今後検討し、人権教育の充実に対して努力してまいりたいと思います。
植田委員 いや、だから、せっかくこしらえたのを一年でやめるというのも寂しい話でございます。ぜひもう一回、検討し直してください。また、犯罪被害者の現状について新たに加えられたということ、これは大切なことだろうというふうに思っております。
 それと、ちょっと質問として用意してなかったんですが、一通り、研修科目とありますけれども、いずれにしても、これは座学の範疇を超えるものではないわけで、こうしたものをいかに現場で職務の遂行に反映させていくか。言ってみれば、そういう意味では一つの実務的な、こうした場合のケースはどう対処するんだとか、実際起こり得るような状況に応じた模擬的な対処方等、これらを踏まえてそうした研修等というのはこの中ではちょっと見受けられないので、そういうことはやっておられるのか、また、今後考えられる余地はあるのかということについても御教示いただけますか。
中井政府参考人 現在の研修システムというのは、基本的に、座学と申しますか、講師の側から一方通行で各般の教育内容を伝達するといいますか、講義するという格好になっております。
 委員の御指摘の点については、今後とも検討してまいりたいと思います。
植田委員 検討していくというのは、その検討した結果を今度またお伺いするということでございますので、いずれまたそれはお伺いいたします。
 それで、この十一年度、十二年度、十三年度、それぞれ人権教育の内容の充実を図っている。それは、それぞれ講義の中身がいろいろな形でつけ加えられたりしておりますので、一定理解はいたしますが、私がちょっと気になるのは、十一年度でも十二年度でも十三年度でも、「国内行動計画策定後の研修等の実施(改善)状況」についての項目では、「研修の内容については、実務等に反映されている。」というふうにされておるわけでございます。「実務等に反映されている。」というのは、実際に成果が上がっているという御認識なのでこういうふうな文言になっているんだと思いますが、具体的に、その成果がどういうものであって、どう反映されているのかについてお教えいただけますか。
中井政府参考人 研修の成果が具体的にどう上がっているのかというお尋ねと思いますけれども、研修と申しますのは、基本的に、職員の職務に関する必要な知識でありますとか技能等を習得させるということがございますし、それから、職務遂行能力、資質等、これも向上させるという目的も当然あるわけでございます。
 さはさりながら、今申し上げたような趣旨でございますので、それを成果の問題として、例えば定量的に、こうこうこうであるといった形でそれを分析、まとめるということはなかなか難しいところではございます。
 さはさりながら、御案内のとおり、研修を終わりますと実践に返っていくわけでございますし、当然、その研修の結果はどうだったかというようなことのフォローアップはしておりますし、日常的に、例えば研修についての感想はどうであったかというようなことも確認はしております。
 その結果によりますと、まず、研修を受けた研修生自体の方からは、非常に有意義であるとか、今後の職務執行に役立てたいというようなことが出ておりますし、また、その後も、矯正研修所あるいはその支所で私ども教官を持っておるわけでございますけれども、その教官がフォローアップをやっておりまして、一体その後どういう状況なのかということを面接などしております。その際のフォローアップの結果を申し上げますと、相手の立場を理解して接するようになりましたとか、適法な職務執行を心がけることになったというような報告を受けているところであります。
 このようなことから、日常的な勤務において生かされているものと承知しているわけでございますけれども、今後とも、広く、そういう反応等についてできるだけアンテナを広げながら、人権に関する研修の効果的な実施、これに役立たせるために研修の充実を図ってまいりたい、かように考えております。
植田委員 ちょっと長過ぎましたね。時間がないので、私も急ぎ足で言います。
 要するに、そんなのは具体的に述べようがないわけですね。わかっていて聞いているのです。まして、研修を受けた人が、それは職員ですわな、それは、どうやったと聞かれて、眠かったとかだるかったとか言うわけないんで、有意義だったとか勉強になりましたと、みんな一様に言うでしょう。それはちょっと手前みそやと思うんですよ。
 もっとも、矯正のところは、「実務等に反映されている。」とやや控え目に表現されているのはまだいいですわ。きょうは言いません、更生保護とか入管のところなんというのは、「人権尊重に対する意識の一層の向上が図られた。」とか、入管の入国審査官のところなんかは、同じ項目では「これまで以上に外国人の人権を尊重した公正かつ適正な入管行政が遂行されることとなった。」とか、えらい、随分好きなことを書いてはります。
 「実務等に反映されている。」ぐらいというのは、その意味では、真摯な姿勢だろうとは思うんですよ。思うんですが、そもそも、反映されている、どうした成果があったかというのは、過去にこんな問題があって、そしてそれがどう解決され、どういうふうに変化していたかということがとらえられなければだめなわけですよね。だから、来年、十四年度の実績を書くときは、こんな「実務等に反映されている。」なんて断定的に書かずに、実務等に反映すべく努力をしているとか、努めているところであるぐらいになさったらどうでしょうか。
 やはり「実務等に反映されている。」というのは、これは断定しているわけですやんか。まあ、何とかよくなっているのかなと、ほわんとしたようなことは報告で上がっているけれども、実際どうなのかというのははっきりしないので、実務等に実際反映すべく努めているところであるぐらいに、次、報告されるときはなさったらどうですか。
中井政府参考人 研修の成果につきまして、先ほども申したように、今後とも、いろいろなアンテナを使いまして、その内容を吟味した上、それを適切にあらわす表現ぶりで御報告したいと思っております。
植田委員 それと、これは資料として請求いたしますけれども、今回の、今やっておられる研修、十一年度、十二年度、十三年度だけで結構でございますので、それのカリキュラム等々、資料としてお願いいたします。これは事前にも言っておりますけれども、一応、この平場でもお願いしておきます。
 そこで、せっかくこういうことをやっているにもかかわらず、名古屋方面で何か事件がありましたね。ここで、その容疑に直接かかわる問題について、事実関係について問うつもりはありません。ただ、それ自体掌握してへんことはけしからぬことですけれども、暴行容疑と直接関係のない事実関係はお答えできるだろうと思うので、五人逮捕された、この五人の刑務官が、今言ったような人権教育に係る研修を受けたのかどうなのか、どの課程をいつ受けたのか、明らかにしていただけますでしょうか。A、B、C、D、Eでいいです。わかっているのは新聞にも出ていますけれども、別に固有名詞まで聞きません。教えてください。
中井政府参考人 温かい配慮、ありがとうございました。
 Aでございますが、初等科研修を昭和六十二年に卒業した後、平成六年に中等科を卒業し、平成八年に高等科を卒業しております。続きましてBでありますが、昭和五十六年に初等科を卒業し、平成元年に中等科を卒業しております。続きましてCでありますが、昭和五十一年に初等科を卒業しております。次にDでありますが、平成八年に初等科を卒業しております。次にEでありますが、平成十年に同じく初等科を卒業しております。
植田委員 とすれば、例えばこの人権教育の推進というものが政府の中でも意識的に取り組まれるようになって以降、今回逮捕されたこのA、B、C、D、E、五人の容疑者というのは、そうした意識的な講義は受けておらぬということですね。
中井政府参考人 初等科研修、中等科研修、高等科研修という形では受けていない、そのとおりであろうと思います。
植田委員 結局、やはりこうした研修というものについて、中身について吟味するのもいいですけれども、こうしたさまざまな充実強化を図った段階で、とりわけ新しい科目については、既に課程を修了している者に対しても研修をさせるとかというようなことを考えなければ、せっかく行動計画に基づいて、それで、人権教育研修に関するさまざまな工夫が加えられている。そうした工夫を加えた中身についてはできるだけ周知徹底させるという意味において、それが初等科とか中等科とか、特別の課程を設けてもいいですよ、今までそうした中身について受けてこなかった人に対しては、まず座学としてでもそれを教えたらなあかんのと違いますか。それはどうなんですか。それも考えるべきではないでしょうかね、こういう事件があった機会に。
中井政府参考人 実は、名古屋刑務所に関する事件とセットのお話でございますので、その点から申し上げますと、まず、大臣から、事案の事実関係はもとよりのこと、管理体制等についても徹底した調査を行うように、それを踏まえた上での再発防止策、これは当然、委員御発言の人権等に関する研修の問題等も入ってこようと思いますけれども、これをきちんと検討するようにという指示を受けております。まずそのラインの話が一つございまして、これはそう遠くない将来、私どもがこうこうこういうことをいたしますということを御報告できると思います。
 次に、この事件と離れまして、一般論として、私どもの各種研修を終えた後の再研修をどうするかという問題は、これはさらにもう一段階高い問題になろうと思います。これについても、御指摘の点を踏まえまして検討させていただきたい、このように考えます。
植田委員 それも検討されるということですから、結果についてはまた御教示いただく機会があろうかと思います。
 それで、報道によりますと、逮捕されたある刑務官が、これは読売の十一月十四日ですけれども、指示に従って取り押さえただけで暴行したつもりはないと述べているというようなことが報道されておりますが、これは事実なのかということ。そして、事実だとするならば、当然ながら指示をした上司がいるわけですね。その刑務官は業務命令を淡々と遂行したにすぎないという認識を持っているということですから、まず、そうしたことは事実かどうか。ちょっとここは暴行容疑に直接かかわる、事実関係にもかかわりますけれども、そのことで追及するということではなしに、指示した上司がいるでしょう。では、その上司に該当する人物は、まあ五人に含まれておったら別ですが、含まれているなら含まれている、含まれていないのであれば、この方については人権教育に係る研修というのは受けられているのかどうなのかということを教えてもらえますか。
中井政府参考人 お尋ねの新聞記事の内容でございますけれども、逮捕された複数の刑務官が供述していることがわかった、こうなっております。私どもは、逮捕中の人間がどのような供述をしたかということは知り得べき立場に基本的にないことをまず御理解いただきたいと思います。
 それを踏まえた上での御答弁でございますけれども、いずれにしましても、この上司がだれであるかということは非常に重要な問題でございまして、現在、名古屋地検において、逮捕、勾留の上捜査されていることでございますので、その段階においていずれ明らかになってくると思います。
 もちろん、私どもも、先ほど来大臣からの指示内容を答弁させていただきましたけれども、鋭意調査もしてまいりまして、その調査……(植田委員「上司がだれかぐらいすぐわかるでしょう、捕まった人間がはっきりしているんだから」と呼ぶ)その上司というのが一名に限定されれば論理的になるわけでございますけれども、実は相当縦の系列がございますし、私から御答弁するのもなにかと思いますけれども、仮に具体的な指示ということになりますと、刑事事件的に申しますと、共謀の範囲がどの範囲に及んでいるかということになるわけでございます。私どもが承知している限りでは、現在、共謀の範囲がたしか五名ということで逮捕になっていると思うのですが、その内容にあるかどうかということにつきましても、恐らくそれをもとにいたしまして各般の捜査が行われているわけでございますし、私どもも可能な限りの調査を進めているところでございますので、もう少し時間を拝借させていただいて、ある程度まとまった段階で公表したい、当局としてはかように考えております。
植田委員 私がここで聞きたかったのは、この事件自体がけしからぬことですけれども、今、恐らく答弁のしようがないところが多いからそういうことは直接聞かないで、からめ手のところだけ聞いているわけですが、実際、刑務官たちにやっていると言われているこうした人権教育というものがどれだけ徹底されているのかという話を私はしたかったわけですが、徹底されていないというのが実際のところ明らかになってきたわけでございますね。いいカリキュラムを組んでも、その人らはもう既に受けてやっているわけですから、そんなのはかぶさってこないわけですから。しかも、私はこれはもう聞きませんが、けさの朝日でも、人権救済の申し立て等のノートを破棄したと。こんなことを教えてますのかということになるわけですね。
 それは単純な話なんですよ。難しい国際条約を座学で教える、それも大切ですし、私はどんどんやるべきだと思うけれども、罪を憎んで人を憎まずやということを徹底させればいいわけですよ。しかし、残念ながらそうではなかったというところで、法務大臣に二点ばかり最後にお伺いいたします。
 今回、人権教育のための国連十年国内行動計画でも、刑を終えて出所をした人に対する社会復帰と、差別なり偏見を解消する、そうした啓発活動を推進しなきゃならないと書いています。そして、本人が真摯に更生の意欲があっても現実は非常に厳しいと書いてあるわけです。出所してまじめにこれから更生していきたいという人にとっても大変な状況がある、だから啓発を推進しなきゃならないということ、それは正確な事実認識でしょう。刑を終えてまじめに生きようとしている人かてそうなんですね。そんな状況があるのに、刑務所内でこんな暴行を受けたりして人権侵害を受けたような人らが、さあ、出所してそんな気持ちになりますやろうか。実際、今回名古屋で起こったようなケースというのは、本来、矯正施設であって、更生させなければならない施設で刑務官自身がその更生を妨げるような、そういうケースであったという事実認識でよろしいですか。
森山国務大臣 確かに、受刑者を刑務所に収容する目的は、その拘禁を確保しながらその者の改善更生及び円滑な社会復帰を図るということに目的があるわけでございます。それを行うべき立場にある名古屋刑務所の刑務官五人がこのようなことになりまして、受刑者の改善更生を図るべき刑務所の意義をゆるがせにしてしまったということでありまして、本当に残念であり、遺憾のきわみと言わざるを得ないと思います。
 この事件につきましては、今後の捜査等によって明らかになるものと思いますけれども、今後の捜査や、私が特に頼みました調査の結果等も踏まえまして、再発防止に最大の努力をしていかなければいけないというふうに考えております。
植田委員 考えておられるということですね。レアケースなどという言いわけはこの場合通用しない。一回でもこういうことがあったら、それはけしからぬ話なんですからね。
 私は非常に温和ですから、そんなに厳しく矯正局長にも言いませんが、先ほど検討する検討するといろいろおっしゃっていましたが、法務大臣、矯正施設における研修なんというのは今回徹底的にちょっと見直してやっていただきたいのと、それとあわせて他の、法務省さんは特定の職業に従事されている職業が多いわけですけれども、入管も更生保護もみんな、この報告を見れば、調査票を見れば随分大層なことを書いてはります、さっき紹介したみたいに。そうしたことがほんまに遂行されているのかということを一回検証してみて、そしてその検証の上に立って、まずは人を育成していかなければだめなわけですから、そうした人権教育に係る研修の充実を、法務大臣みずから音頭をとって、各局長集めて、やれと指示していただけませんでしょうか。法務大臣、最後にお願いいたします。
森山国務大臣 私は、矯正局に限らず、ほかの局の仕事に関しても、人権の尊重というのは非常に重要だ、基本的な問題だと考えておりますので、御指摘を踏まえて頑張ってやっていきたいと思っております。
植田委員 頑張ってやっていただいた結果をまたここで、できればその検討結果が私としては非常に高く評価できるというふうなやりとりができることを希望しておりますので、鋭意検討なさっていただきたいと思います。
 以上で終わります。
佐藤(剛)委員長代理 次に、吉野正芳君。
吉野委員 自由民主党の吉野正芳でございます。
 なぜ今司法改革が必要とされているかということで、私は素人なりに考えてみました。
 今の日本の社会は事前規制でできています。ことし国交樹立五十周年記念ということでインドに行ってまいりました。びっくりしました。高速道路を逆走しました、二十分間くらい。高速道路を子供が横断しています。私はできません。高速道路、右を見て左を見てといってもひかれて死んじゃうかなと思います。このように、私たちの今の日本の社会は事前規制ということで、安心、安全というものを保障されている。自分が生きるという安心、安全に対して個人的には何ら考えなくても規制によって保障されているのが、今の日本のある意味ではすばらしい事前規制のおかげだと思っています。
 でも、それでいくと、活力がだんだんなくなってしまった。人に頼るような、そんな社会になってしまった。それでは国際競争の面からも勝てない。そういうことで、活力を出すためにはどうすればいいか。規制を取り払い、そして競争原理というものを導入して活力を生んでいこう、これがある意味での小泉改革だと思います。
 競争をするということは、公平な土俵がなければならないわけであります。相撲をとるのに公平な土俵で相撲をとらなければ本当の意味のフェアプレーな競争が起こり得ない。そういう中で、土俵には行司役がおりますので、ある意味の、国民の間には法的なサービス需要というものが大きく増大する、そういう意味で、町の法律屋さんというところが大変これから必要になってくる、重要になってくる。こういう社会になるために司法制度改革というものがあるんだというふうに私は考えております。
 そういう中で、町の法律屋さん。普通の人は、何かトラブルが起こるとすぐ裁判というわけにはいきません。裁判所から通知が来るともうどきどき、何か大変なことになったというのが普通の国民の意識であります。でも、いろいろな法的サービスを解決するためには、いわゆる裁判によらないADRという方法をもっと拡充、普及していく必要があろうかと思いますので、その辺の御見解を伺いたいと思います。
山崎政府参考人 ただいま御指摘の点は、大変重要な問題点だろうというふうに認識しております。まず、事後チェック型の社会で裁判によって解決をする、これは当然大事な話でございますが、すべてそれで解決ということになればやはり訴訟社会を招いてしまうということでございますので、やはりそこに至らない解決というものがぜひ必要である、そういう機構をきちっとすることが大事であるということだろうと思います。
 私ども、今回の司法制度改革の中では、ADRの拡充・活性化、これについて大きなテーマになっているところでございます。私ども、現在、検討会を置きまして検討中でございます。この中で二つのポイントがございます。
 まず、ADRの関係機関はたくさんございますので、それの連携がございます。これに関しましては、本年の六月に、関係省庁等から成りますADRの拡充・活性化関係省庁等連絡会議、これを設置しております。ここで、情報の提供とかあるいは担い手の確保、そういうものについて横断的、重点的に取り組むべき連携促進策について検討している、こういうことでございます。それともう一つは、関係省庁だけではなくて関係機関等の連絡協議の場として関係諸機関連絡協議会、こういうものを設けたいというふうに考えて、今鋭意その準備にかかっているところでございます。
 それともう一つは、ADRの共通的な制度基盤、こういうものをつくって、いわゆるADR基本法と言われるようなもの、これを設けまして、その方策をきちっと定めていくということも今検討中でございます。
 いずれにしましても、計画に従いまして、十六年の三月までには所要の措置を講じたいと考えております。
吉野委員 ADR基本法、本当に早急に整備をすることを御期待申し上げます。
 町の法律屋さんをたくさんつくるためには、いわゆる法科大学院というものをつくって、質の向上そして量の確保を図っていくわけですけれども、きのうの私のところの福島県の地元紙に、十八年度以降を目指して福島大学と山形大学が連合方式をもって法科大学院をつくりたいという大きな見出しで記事が載っておりました。大都会には集中していくわけでありますけれども、地方での法科大学院の設立、まあ島根県とか岩手県なんかも弁護士会が中心となってつくっていこうという部分があるんですけれども、なかなか地方では法科大学院の設立についてはハンディキャップが多いかと思います。特に実務者の教員の確保という問題でもハンディキャップが多いと思いますので、その辺は何か支援策を用意して、地方で設立をしようということであればそれに対する支援をすべきだと私は思うんですけれども、御見解を聞きたいと思います。
山崎政府参考人 全国でどのぐらいの法科大学院ができるか、今のところまだはっきりはいたしませんが、昨年、私どもの方でアンケート調査をしたところによりますと、設置の予定ありというのが七十三の回答がございました。検討中というのが二十五の大学でございます。それで、ブロック的に見ますと、全ブロックにつきましてその予定がある、こういうことでございます。それで、ブロック内でどこにつくられるか、これはまだ私どもも必ずしも完全に承知はしておりませんけれども、いろいろな構想があろうかと思います。
 いずれにしましても、この点につきましては、法科大学院はそれぞれのところの御工夫でつくっていただくということになりますので、官側から強制するとか、そういうことは一切ないわけでございますけれども、ただ、そういう声が上がったときには、やはり教員の派遣という問題が一番大事だろうと思いますので、私どもも、関係機関と協力しながら、できる限りの協力をさせていただきたい、こういうふうに考えております。
吉野委員 地方での法科大学院設立の動きに対しては、ぜひ国として大きな支援をお願いするものでございます。
 法務委員会で、昨年でしたか、宮城県、福島県に行って、私も参加をして調査をしてまいりました。福島刑務所に行ってまいりました。そのときに、定員オーバーというのですか、本当にひどいところで、受刑者の皆様方が更生に向けて一生懸命している姿を見てまいりました。いわゆる過剰収容という問題について、現在どういう状況で、これからどういう対策をしていくのか、お尋ねをしたいと思います。
増田副大臣 行刑施設の過剰収容が進んでいる、その関係のお尋ねでございますが、委員御指摘のとおり、行刑施設の収容人員は、ここ数年、急激な増加が続いております。
 本年十月末、全国で約六万九千人、収容率一〇六%に達しました。特に、受刑者等、既決被収容者は五万七千人、収容率一一六%となっております。本年に入って既に約三千二百人の増加となりまして、行刑施設の本所七十四庁中六十二庁で収容人員が収容定員を超過する超過収容の状況で、一二〇%を超える施設も十二庁あります。
 このような状況ですので、現下の諸情勢から見まして、当分まだ続くだろうというような考え方を持っております。
吉野委員 今まで前の方々が質問なされた名古屋刑務所での事件、これも事件の背景には過剰収容があるのではないのかなと、私、推察をいたします。過剰収容があれば、受刑者そしてまた職員の方々は、大きなストレスを持つことになりまして、いらいら感が募ってくる、凶暴になってくる。これは人間でありますから、当然のことであります。
 それで、名古屋刑務所での収容状況、そして今度の事件にそういう過剰収容の問題があったのかないのか、その辺のバックグラウンドとして、収容状況と事件との関係についてお伺いしたいと思います。
中井政府参考人 名古屋刑務所でございますけれども、府中刑務所、大阪刑務所に続きまして、我が国で三番目に大きな刑務所でございます。その収容状況が、収容人員が収容定員を超えます、いわゆる過剰収容になりましたのは平成十一年の十一月以来のことでありまして、本年十月末には、人員で申しまして二千二百七名、収容率は一一五%に達しておりまして、ここのところずっと常態的な過剰収容の状況となっております。
 この収容者の内訳でございますけれども、暴力団の関係者等犯罪傾向が進んだ者でありますとか精神障害者を収容しておりますほか、全国的に外国人受刑者が増加しておりまして、その関係で、平成十年からは外国人受刑者も収容することになっておりまして、いわゆる現場において非常に処遇が難しいという被収容者を多数収容している状況にございます。
 他の大きな施設との比較等も、現在、大臣の指示を受けましていろいろやっておるところでございますけれども、独居の数が非常に少ないわけでございます。中で何かもめごとがある、けんかがある、あるいは暴行事案があると、全部独居に収容しないといけないわけでありますけれども、これが少ない。したがって、処遇が非常に困難な者の部屋の割り当てに苦慮しているという現状にあると認識しております。
 また、刑務官一人当たりの負担率も他の同種施設と比較しては高いというような認識を持っておりまして、過剰収容により業務量自体がふえておりまして、勤務条件というのが非常に悪化しているところでございます。
 また、委員御指摘のとおり、ただいまのこの過剰収容は全国的に同様でございますけれども、被収容者の方から見れば、一人部屋に何で二人入れるんだ、六人のところにどんどん、七人、八人と入れるのは、これは刑務所側がやっておるのに違いない、こう思うわけでございまして、そういった被収容者の不満でありますとかストレスがふえてくるということは、少なくとも、事件との直接の関連は検証しにくいわけでございますけれども、被収容者側からの不服申し立て件数や職員等に対する暴行事案、懲罰といったもの、これら増加の一因になっていること自体は認められるのではないかと思っております。
 いずれにしましても、過剰収容に伴ってさまざまな問題が派生しておりまして、それが今回の事件の背景にどのような関連を有するかということにつきましては、現在、慎重に検討作業を続けているところであります。
 また、名古屋の特殊性ということで、特に事件との関連性があるかどうか、これはなかなか軽々に申し上げられませんが、単なる事実説明として受けとめていただきたいわけでありますけれども、名古屋矯正管区の管内では、昭和六十一年に名古屋刑務所の幹部の官舎が散弾銃で銃撃されております。また六十二年には、やはり刑務所近くで一般市民が金属バット等で攻撃をされました上、短銃で銃撃されて、犯行声明がございまして、刑務官を短銃で撃ったというようなこともございました。また、平成五年でございますけれども、岐阜刑、これは名古屋のすぐ近くでございますけれども、そこの門衛のところの出入り口の施設がございますけれども、そこが銃撃されております。また、同じく七年には岐阜刑の駐車場の職員の車がやはり銃撃されておる。また昨年、十三年でございますけれども、名古屋刑務所の駐車場に置いておられましたところの職員の車が銃撃されたというような事件も続いております。
 これらの点は、府中刑務所、大阪刑務所とは異なる背景ではないかと我々は認識しているわけでございまして、これらが本件とどのような関連を有するのか、あるいは関連性は全くないのか、そういったことも含めまして、現在、捜査の進展状況を踏まえながら、可能な限りの捜査を行い、背景事情について解明し、できるだけ早い機会に御報告したいと考えております。
吉野委員 今のお話を聞けば、本当に大変な御苦労をなされて、刑務官の方々は受刑者の更生のために努力をしているわけであります。だからといって、人権侵害というこの事件の部分は言語道断であります。ただ、御苦労をしているということをきちんと、委員長、今お話を伺いましたから、過剰収容解消のために御努力をお願いしたいと思います。
 それで、福島刑務所なんですけれども、外国人が多いのです。何で強制送還できないのかと、私、単純に不思議に思ったのですけれども、なぜなんでしょうか。
増田副大臣 まず、平成十四年一月一日現在で不法残留者数が約二十二万四千人と、依然と高水準にあることに加えまして、我が国に潜在している密航者約三万人を加えますと二十五万人にも上る不法滞在者が潜在しているものと推測をいたしております。
 また、殺人、強盗、放火及び強姦など凶悪犯罪を犯して検挙された外国人の約半数が不法滞在者で占められており、国民の生活を脅かす外国人犯罪の温床となって御心配をいただいているわけであります。
 このような状況を踏まえまして、不法入国者等の上陸を阻止するための措置として、全国の国際定期便が就航しております空海港等に最新鋭の偽変造文書鑑識機器を配備をいたしまして、厳格な出入国審査を実は行っております。平成十三年中には約三万五千人を強制送還しておりますが、今後とも、二十五万人にも上る不法滞在外国人の縮減を図るために、関係機関との連携により摘発等を一層強化し、我が国の治安維持に努めてまいりたい、このように考えております。
 ありがとうございます。
吉野委員 ぜひ努力をしていただくことをお願い申し上げます。
 これから日本は新しい時代、新しい社会に向かってまいります。今まである法制度を、例えば会社更生法が今のっかっております、こういう形で今後、経済活動に関する民事基本法制の整備作業が進んでいるというふうに伺っておりますけれども、法整備の状況、そしてスケジュール、そしてあと、文語体で片仮名のような、ああいう私みたいな素人が読んでもわからないような法律文を口語体に直すという話も聞いておりますので、その辺のスケジュールについてお伺いをしたいと思います。
中野大臣政務官 吉野委員にお答えしたいと思います。
 御指摘のとおり、法務省におきましても、経済活動に対する民事基本法制の整備が我が国の構造改革にとって極めて重要な課題であるとの認識に基づきまして、これを鋭意進めておるところでございます。
 まず、現在までの整備の状況でございますけれども、既に整備を行ったものといたしまして、今御指摘もございましたけれども、商法関係につきましては、昨年の臨時国会及びさきの通常国会におきまして、会社法制の大幅な見直しを内容とするところの大規模な改正を行ったわけでございます。また、今国会におきましても、会社更生法案及び建物の区分所有に関する法律等の改正法案を提出いたしまして、今御審議をいただいているところでございます。
 次に、今後のスケジュールについて申し上げたいと思いますが、引き続く民事基本法制の整備の課題といたしましては、まず第一に、複雑多様化した現在の経済取引の実態に即応するために、短期賃貸借制度の見直し等を内容とするところの抵当権その他の担保権及びその実行としての執行手続に関する法制の見直しがまずあるわけであります。
 それから第二番目といたしまして、民事訴訟の審理期間を短縮いたしまして、証拠収集等の方法の拡充を図る等、審理の充足とか迅速化を図るための民事訴訟法の見直しということが二つ目としてあります。
 それから三つ目といたしましては、いわゆる長引く不況を反映して企業や個人の倒産が大幅に増加している現況にかんがみまして、先ほど会社更生法の問題がございましたけれども、これと一緒に、破産手続を簡易・迅速化するとともに、現代に見合った倒産時の権利義務の関係の規律を図るための破産法等の大幅な改正等についても現在検討を進めておりまして、この三つの課題につきましては、いずれも来年中には国会に法案を提出する予定でございますので、よろしくお願いをしたいと思うわけでございます。
 このほか、今御指摘がございましたけれども、民法典及び商法典につきましては、今お話しのとおり、いずれも明治時代に制定された法律でございまして、表記が片仮名とか文語体とされておりますが、そのほか現代では用いられていない用語で、例えば商法でいいますと、番頭、手代とか、民法でいいますと僕婢だとかというような、今使われていない用語が多分にございますので、これらを国民一般の皆さんにわかりやすくするために全面的な現代化を行うことを予定しておるわけでございます。
 この民法典及び商法典の現代化は、できれば平成十七年ごろの法案提出を目途といたしまして、今鋭意努力しているということでございまして、これからもよろしく御指導を賜りたいと思います。
吉野委員 まさに今スピードが一番大事な時代でありますので、小泉改革、構造改革を進める上でも、それらの法整備をよろしくお願い申し上げたいと思います。
 時間も来ましたので、新しい時代に向かっての刑事立法はどのような方向で進んでいくのか、最後にお尋ねをしたいと思います。
増田副大臣 簡明にまず先に申し上げます。大きな柱が四つあります。
 それは、国連国際組織犯罪条約の締結のために必要な法整備の検討を進めています。それから、日米間の捜査共助等に関する条約、これを締結するために必要な国際捜査共助法等の改正ついて準備を進めています。それから、国際的な人の移動が日常化した今日における国外での日本国民の犯罪被害の実態をも踏まえまして、日本国外において日本国民に対し殺人罪などの重大な犯罪を犯した者に刑法を適用するものとする刑法の一部改正を行うための作業を進めております。それから、強制執行を妨害する犯罪等に対し事態に即した処罰が可能となるよう刑法等の改正の検討を進めています。
 このような犯罪の国際化、組織化に対処するための刑法の改正等の法整備につきましては、いずれも来年の通常国会に所要の法案を提案することができるように準備を進めているところであります。法務省といたしましては、今後も時代の要請に的確に応じて刑事立法を行うべく最大限の努力をしていきたいと思います。よろしくお願いいたします。
吉野委員 これで終わります。どうもありがとうございました。
佐藤(剛)委員長代理 次回は、来る二十二日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午前十一時五十八分散会


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