衆議院

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第12号 平成14年11月26日(火曜日)

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平成十四年十一月二十六日(火曜日)
    午前九時三十一分開議
 出席委員
   委員長 山本 有二君
   理事 佐藤 剛男君 理事 塩崎 恭久君
   理事 園田 博之君 理事 棚橋 泰文君
   理事 加藤 公一君 理事 山花 郁夫君
   理事 漆原 良夫君 理事 石原健太郎君
      太田 誠一君    岡下 信子君
      奥山 茂彦君    金子 恭之君
      後藤田正純君    左藤  章君
      笹川  堯君    下村 博文君
      中野  清君    西川 京子君
      馳   浩君    平沢 勝栄君
      保利 耕輔君    松島みどり君
      松野 博一君    水野 賢一君
      保岡 興治君    吉川 貴盛君
      吉野 正芳君    鍵田 節哉君
      仙谷 由人君    永田 寿康君
      日野 市朗君    平岡 秀夫君
      牧  義夫君    水島 広子君
      山内  功君    石井 啓一君
      藤島 正之君    木島日出夫君
      中林よし子君    植田 至紀君
      徳田 虎雄君
    …………………………………
   法務大臣         森山 眞弓君
   内閣府副大臣       伊藤 達也君
   法務副大臣        増田 敏男君
   法務大臣政務官      中野  清君
   最高裁判所事務総局民事局
   長
   兼最高裁判所事務総局行政
   局長           千葉 勝美君
   政府参考人
   (内閣法制局第二部長)  山本 庸幸君
   政府参考人
   (内閣府産業再生機構(仮
   称)設立準備室次長)   小手川大助君
   政府参考人
   (金融庁総務企画局長)  藤原  隆君
   政府参考人
   (法務省民事局長)    房村 精一君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    樋渡 利秋君
   政府参考人
   (厚生労働省大臣官房審議
   官)           青木  豊君
   政府参考人
   (厚生労働省大臣官房審議
   官)           新島 良夫君
   法務委員会専門員     横田 猛雄君
    ―――――――――――――
委員の異動
十一月二十六日
 辞任         補欠選任
  左藤  章君     馳   浩君
  中川 昭一君     水野 賢一君
  平沢 勝栄君     後藤田正純君
  保利 耕輔君     岡下 信子君
  松島みどり君     金子 恭之君
  柳本 卓治君     松野 博一君
  横内 正明君     奥山 茂彦君
  鎌田さゆり君     牧  義夫君
  仙谷 由人君     永田 寿康君
  水島 広子君     鍵田 節哉君
  不破 哲三君     中林よし子君
同日
 辞任         補欠選任
  岡下 信子君     保利 耕輔君
  奥山 茂彦君     横内 正明君
  金子 恭之君     西川 京子君
  後藤田正純君     平沢 勝栄君
  馳   浩君     左藤  章君
  松野 博一君     柳本 卓治君
  水野 賢一君     中川 昭一君
  鍵田 節哉君     水島 広子君
  永田 寿康君     仙谷 由人君
  牧  義夫君     鎌田さゆり君
  中林よし子君     不破 哲三君
同日
 辞任         補欠選任
  西川 京子君     松島みどり君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 会社更生法案(内閣提出第五七号)
 会社更生法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案(内閣提出第五八号)


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     ――――◇―――――
山本委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、会社更生法案及び会社更生法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案の両案を一括して議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 両案審査のため、本日、政府参考人として内閣法制局第二部長山本庸幸君、内閣府産業再生機構(仮称)設立準備室次長小手川大助君、金融庁総務企画局長藤原隆君、法務省民事局長房村精一君、刑事局長樋渡利秋君、厚生労働省大臣官房審議官青木豊君及び大臣官房審議官新島良夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
山本委員長 次に、お諮りいたします。
 本日、最高裁判所事務総局千葉民事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
山本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。平岡秀夫君。
平岡委員 民主党の平岡秀夫でございます。
 きょうは、会社更生法の審議ということでございますけれども、会社更生法がなぜ提出されるに至ったかというのはさまざまな経緯があろうかと思います。きょうは、質問の時間の配分がありまして、当初通告した質問とはちょっと違う順番で質問させていただきたいというふうに思っております。
 今回の会社更生法の改正については、さきに民事再生法が施行されて、この民事再生法に基づく会社の再生というものが非常にうまくいっている、あるいは会社にとどまらずいろいろな人たちの再生がうまくいっているというような評価をよく聞くところではあるんです。ただ、ちょっと翻ってみますと、手続の迅速さというものを一つの大きな価値観として置いていたと思いますので、債権者であるとかあるいは労働者といったような方々の権利が十分に守られているのかどうか、安易に権利が侵害されているのではないかといったような批判も聞くわけでありますけれども、民事再生法施行後の運営のあり方について、法務大臣としてどのような評価をしておられるかということをまず最初にお聞かせいただきたいというふうに思います。
森山国務大臣 民事再生手続につきましては、現在、一カ月平均で百件近くの申し立てがございます。大変活発に利用されていると考えられまして、中小企業等の再建に役に立っていると思われます。
 しかしながら、これまでに申し立てがなされた数多くの事件の中には、民事再生手続の制度の趣旨や内容が必ずしも正確に理解されていなくて、債権者や労働者の権利が害されている事案があるという指摘があるということも承知しております。
 法務省といたしましては、今後も、民事再生手続の制度、趣旨等の周知徹底に努めますとともに、民事再生手続の運用状況について見守り、見直しの必要性が認められる場合には速やかに対処してまいりたいというふうに考えております。
平岡委員 ちょっと抽象的な評価であったので、さらに突っ込んで聞きたいというわけではございませんけれども、また、この問題についてもいろいろと議論する場があろうかと思います。そうはいっても、今回、会社更生法が出るに当たっては、民事再生法との関係で、民事再生法では必ずしも十分ではないといったような点があるので、会社更生法を全面改正しなければいけない、あるいは民事再生法の手続よりは会社更生法の手続の方がいいといったような趣旨もあったんだろうと思うんですね。
 そうしますと、民事再生法と今回新たに改正される会社更生法、あるいは改正前の会社更生法も含めてということになろうかと思いますけれども、法律的には、守備範囲、それぞれの法律がカバーする範囲というのはどのように違っているというふうに考えたらよろしいんでしょうか。その辺をちょっと明確に御説明いただきたいというふうに思います。
房村政府参考人 守備範囲の違いとしては、まず最も大きく違いますのは利用対象でございます。
 会社更生法、これは、現行法も今回の改正法案も同一でございますが、株式会社に限定をしております。これに対しまして民事再生法は、手続の利用対象につきましては特に限定はしてございません。これは、民事再生法に基づく民事再生手続が、担保権つきの債権、優先権がある債権、それから株主の権利、こういったものは手続の外に置きまして、また、企業の組織再編行為も原則として手続外で行う。こういうことにいたしまして、そのかわり、再生手続そのものは迅速かつ低廉に行えるようにする、対象も範囲を絞らない。
 これに対しまして、会社更生法の方は、対象を株式会社に限定するかわりに、手続内に、担保権つきの債権、優先権のある債権、それから株主の権利、これをすべて取り込みます。また、株式会社の組織再編行為も更生計画によらなければならない。こういうことで、株式会社をめぐるすべての権利関係を更生計画によって変更するという強力な手続にしてある、こういう仕組みの違いがございます。
 一般的に言えば、民事再生法が倒産法制の一般法であって、会社更生法が特別法の関係に立つ、こういうことになろうかと思います。
 そういうことで、守備範囲としては、民事再生手続は特に限定がなく、株式会社も含めてすべて利用できます。株式会社以外の法人、個人は民事再生法の守備範囲に属する、株式会社の再建については両手続の選択が当事者にゆだねられている、こういう関係に立つわけでございます。
平岡委員 今の御説明では、法律的にというか制度的にはそういうふうな守備範囲になっているということなんでしょうけれども、そうすると、逆に、株式会社だけ取り出してみれば、私たちは民事再生法でいこうか、会社更生法でいこうかというような場面にどうしても出くわすわけですね。そのときに、法律的にはどっちでも行けるんだからどっちでもいいじゃないかという議論には多分ならなくて、制度の趣旨にのっとって、あるいは制度の中身を見て、こっちに行った方がいいんじゃないか、あっちに行った方がいいんじゃないかという判断をされるんだろうというふうに思うわけであります。
 この前からいろいろ問題になっている、民事再生法の手続に入ったけれどもうまくいかなくて会社更生法の手続の方に入っちゃったというケースが時々指摘されていますけれども、例えば、マイカルのケースもそうだったわけであります。このマイカルのケースは、民事再生手続の申し立てをして、次には会社更生手続の方に申し立てをしたわけですけれども、これは大体どのぐらい時間的にロスをしたと言うと言葉は悪いかもしれませんけれども、新しい手続に入って次の手続に入ることになったのか、もしおわかりでしたら、ちょっと通告していないので正確なことはわからないかもしれませんけれども、最高裁の方で答えていただければと思います。
千葉最高裁判所長官代理者 申しわけございませんが、記憶で申し上げさせていただきますと、マイカルの民事再生の申し立ては平成十三年の九月であったかと思いますが、更生の申し立ては、これは資料がございまして、平成十三年の十一月二十二日の申し立てでございます。
平岡委員 今のケースでも、約二カ月ぐらい時間をロスしたというのは表現がいいのかどうか、ちょっと私もわかりませんけれども、本来ならば会社更生手続にさっと入っていればその手続がどんどん進められて、より迅速な会社更生が図られたのかもしれない、こういうことがあり得るんだろうと思うんですね。
 そうすると、制度的には、法律的にはこういうふうに分かれているけれども、利用者の立場に立ったときには、こういうときにはこっちの方に行った方がいいんじゃないか、こういうときにはあっちの方に行った方がいいんじゃないかというような基準なりがある程度示されている方が、利用者にとってもありがたい制度ではないかというふうに思うんですけれども、そうした基準を民間の利用者の方々にお示しをするというようなお考えは法務省の方にはないでしょうか。
房村政府参考人 御指摘のように、株式会社の場合には、民事再生手続と会社更生手続、その選択ができるわけであります。
 両手続の特徴は先ほど申し上げたとおりでありまして、基本的に言いますと、担保権つきの債権、あるいは優先権がある債権、これについて権利変更をしないと企業の再建ができない、こういうような場合には、やはりそれを取り込む会社更生手続でないと再建がうまくいかないだろうと思います。また一方、逆に、担保権者等の同意が得られて、特に手続内にそういう人たちを取り込まなくても再建が可能だという場合であれば、再生手続で迅速に処理ができる、こういう特徴があろうかと思います。
 したがいまして、一般的に申し上げれば、事業規模が大きくて権利関係が複雑な大企業は会社更生法に、事業規模が小さくて権利関係も比較的単純な中小企業は民事再生法ということは言えようかと思います。
 ただ、大企業であっても、先ほど申し上げたように、担保権者等のほとんどの同意が得られて、手続内に取り込まなくても再建が可能だという場合であれば、民事再生法を使って迅速に再生をするということも十分あり得ますので、これは、それぞれの企業の事業規模であるとか利害関係者との関係、担保の設定状況、そういうさまざまな状況によって、どちらがより使いやすいかというのは相当個別的な事情に左右されると思うものですから、一般的に申し上げると先ほどのようなことなんですが、それをさらに具体化した基準の設定ということになると非常に難しいのではないか。そういう制度の特徴の違いを十分周知することによって、当事者に適切に判断して使い分けていただくということの方がよろしいのではないかと思っております。
平岡委員 今言ったように、当局が使い分け基準を示すということも確かにいろいろ問題があるのかなという気もしないでもないわけですけれども、やはり、こういった制度ができて、利用者にとってみれば、どっちを使っていいかわからないというような状況が生じるのは決して好ましいことではないというふうに思いますので、それぞれの制度の趣旨をよく国民の皆さんあるいは会社経営者の皆さんにもわかるように、まあ、いざとなれば弁護士の方がちゃんと相談してくれるんだろうと思いますけれども、そういう相談をする前に、大局的な判断をするときにも、やはり経営者の方々もよくわかっている必要があろうかと思いますので、趣旨の徹底を図っていただきたいというふうにも思っているわけであります。
 次に、労働契約の承継の問題についてちょっと御質問をさせていただきたいというふうに思います。
 会社分割の場合と営業譲渡の場合で、この委員会でもかなり議論されておりましたが、会社分割の場合には、会社の分割に伴う労働契約承継等に関する法律というのがあって、こちらの方で、労働者の権利というもの、労働契約というものが守られているというような説明がよくされているわけでありますけれども、これは一般の話としてそういうことが言われているわけであります。
 今回、会社更生法が改正されるわけでありますけれども、これは改正前も改正後も取り扱いは変わらないんだろうと思いますけれども、会社更生法のもとで会社分割が行われる場合には労働契約承継法の適用は当然にあると考えてよろしいんでしょうか。
青木政府参考人 労働契約承継法は、商法の規定に基づいて会社の分割が行われる場合に適用されるものでありますので、会社更生法の規定に基づいて行われる会社分割についても労働契約承継法の規定が適用されるものというふうに考えております。
平岡委員 そういうことなんだろうと思いますけれども、そうすると、手続の流れを考えたときにちょっと疑問が出てくるのは、会社更生計画の中で会社の分割も行うけれども、その際にあわせて人員の削減もするという一体的な会社更生計画がつくられる可能性も十分にあるんだろうと思うんですね。そうなったときには、労働契約承継法の適用というのはどのような流れになっていくのかというのをちょっと御教示いただければと思うんです。
青木政府参考人 会社更生計画において会社分割と人員削減の両方が行われるという場合には、更生計画の定めによって行われる会社分割に際しては、承継される営業に主として従事する労働者の労働契約は承継される、それ以外の労働者の労働契約は承継されないということになります。
 したがって、承継される営業に主として従事する労働者についての契約の際には、労働者の意に反して会社が人員削減を行うことはできないだろうというふうに思います。それ以外の営業に従事する労働者については、一般の人員削減の問題であるというふうに考えております。
平岡委員 今の説明だと全然イメージがわかなかったので、ちょっともう一度説明していただきたいと思うんです。
 労働契約承継法について言うと、分割する際に、基本的には人員の削減ということが分割そのものには予定がされていないということなんで、この法律の適用されるままに、特に人員が移動しない状態での分割が行われる。そして、会社更生の手続の中では、これは人員が多いからどうしてもやはり削減しなきゃいけないというときには、人員の削減というのは、分割とはまた別の問題として、つまり、分割された後にまた削減の計画というものが立てられてそれが実行されていく、そんなようなイメージなんでしょうか。もう少し明確にわかるように教えていただければと思うんです。
青木政府参考人 今委員おっしゃったとおりでありまして、承継される営業に主として従事する労働者についてはそのまま承継されるということでありますので、削減ということは生じてこないわけで、その際削減をするには別途労働者との個別の同意ということが必要になるだろうというふうに思っています。
平岡委員 本当は、この点もうちょっと細かく議論をしてみたいなというふうに思うのですけれども、きょうの質問の趣旨は、とりあえず会社分割の場合には労働契約承継法の中で労働者の保護が相当程度に図られているという前提があるにもかかわらず、営業譲渡については労働者の雇用に関する保護法制が整備されていないのではないかという指摘があるということで、この問題については、既に何回もこの委員会でも審議をされていまして、私もその審議を聞かせていただいているのですけれども、政府の答弁を聞いていますと、ちょっと納得がしがたいといいますか、説明の言葉が足りないんじゃないかというふうにも思う点があるので、ちょっと確認をしてみたいと思うのです。
 これは、十一月の十九日のこの委員会で、同僚の山内議員が質問をした件について、青木政府参考人が答弁されているんですけれども、例の研究会報告の概要をちょっと説明されておられるわけですね。
 ここでは、「個別労働者の同意を必要とする特定承継である営業譲渡、そういう営業譲渡の法的性格からして、あるいはまた、債務超過部門の譲渡による不採算部門の整理等に活用されるという営業譲渡の経済的な意義というようなことからして、また、特定の営業に従事するというよりも会社に就職するという労働者の意識が強い我が国の雇用慣行というようなことから、そういった際の労働契約関係の承継について法的措置を講ずることは適当でないと指摘がなされているところであります」、こういう説明がされているんですけれども、どうも私、この説明というのは、営業譲渡によって、新しい会社といいますか、譲渡を受ける方、譲り受ける方に労働者が移っていく場合と、それから、労働者がもともとの会社に残るという場合、それぞれに分けてきちんと説明されていないんじゃないかなというような気がちょっとしているわけであります。
 例えば経済的な意義というようなことを言っていますと、「債務超過部門の譲渡による不採算部門の整理等に活用されるという営業譲渡の経済的な意義」ということを言っていますけれども、会社更生法の世界あるいは金融機関の再建の場合でも、例えば金融機関の再建をとってみますと、営業譲渡をする対象となっているのは、健全な部分を健全な金融機関に持っていく、残った部分が整理される、そういう仕組みで営業譲渡が行われているというのが一般的だと思うのですね。
 そうすると、普通の金融機関の職員は、やはり自分は引き継がれる先のいいところの営業の部門として引き継がれて、新しい会社の方に移って働きたい、そういう意思を持っているんだろう。だから、残ったからといってそれでいいんだということじゃなくて、その営業に従事していた人が、その営業が譲渡される際にはあわせて自分も行きたいというふうに思っていて、残されるということに対してはやはり不満があるんだろうと思うんですね。
 そうすると、会社分割における労働契約承継法のように、そういう主として営業譲渡の対象になった部門に従事していた職員についてはやはり労働者の保護を図っていかなきゃいけないという点があるんではないかと私は思うんですね。そういう点が、ここには私はちょっと説明されていないような気がする。
 つまり、移っていく職員については、皆さんの説明では、営業譲渡は特定承継であるから個別労働者の同意が必要なんだと言われていますけれども、では、譲渡される営業に主として従事していた労働者で移らない人については何らの保護も図られていないんじゃないか、こんなふうに思うんですけれども、その点について、厚生労働省、いかがでしょう。
青木政府参考人 委員御指摘のような事情、状態もあろうかと思います。そういう場合には、譲り渡し会社自身としては、やはり会社全体として雇用義務というのは持っているわけでありますので、例えば、いろいろな部門への配置転換だとか、そういった雇用を続ける努力というものが必要だろうというふうに思っております。
平岡委員 努力は、多分どこでも一生懸命努力しなきゃいけないということであって、それは会社分割においても同じなんだろうと思うんですよね。分割される際に、労働者の人たちをどのように処遇していくか、労働者の人たちがなるべく納得できるような、満足できるような形で労働者の方々を配置していくということは、それは経営者たる者の努力であることは同じレベルだろうと思うんですけれども、会社分割については、先ほど来から言っているような労働契約承継法という形での労働者の保護が図られているにもかかわらず、営業譲渡ではそうする必要がないんだという、この論拠が私にはどうしてもちょっと納得がしがたいということであるんですけれども、どうでしょうか。
 これは、既にもう検討されて終わってしまった話で、これ以上研究会でも検討する余地はない、あるいは、厚生労働省としても検討するつもりはないということなのか。それとも、私が指摘したような点も含めて、やっていただけるかどうかわかりませんけれども、さらにまだ詰めなければいけない点があるのでさらに検討をしていきたいということなのか。どっちなんでしょうか。
青木政府参考人 営業譲渡は、まさに委員御指摘のように、非常にさまざまなパターンといいますか、態様があります。そういったことでありますので、一律にそういうルール化するというのは大変難しいということだろうと思います。
 そういうことで、基本的には、先ほどお話にありましたような営業譲渡のいろいろな性格からしても、あるいは果たしている役割からしても、法律的に整備をするというのはなかなか難しいだろうというふうに思っているわけですので、営業譲渡についての指針、事業主の方やあるいは労働者の方にそれぞれ意識していただくような指針を策定したいということで今検討をしているところでございます。
平岡委員 今、指針を検討しているというお話でありました。それはそれで別にいいことだと思いますけれども、指針を検討する場合に、法律としてきっちりと制度化しておかなければならないというふうなことがあるのであれば、やはりそれはきちっと法律的な整備を図っていただきたいということをお願いしたいというふうに思います。
 それで、この営業譲渡に関連して、これもやはりやりとりを聞いていてわからなかった部分があったので確認をしたいと思うんです。
 実は、これは民事局長の答弁の中にもあったんですけれども、この会社更生法改正要綱試案補足説明の中にも、例の更生計画認可前における更生会社の営業の譲渡について、なぜこれが必要なのかというくだりがちょっとあって、こういうふうに書いてあるんですよね。「企業が倒産状態にあることが公になると、その営業の価値は一般に急速に劣化するといわれており、更生会社についても、営業の価値を維持するため、更生計画によらずに早期に営業譲渡を行うことが、更生債権者、更生担保権者、株主等の利害関係人にとって必要となる場合も生じうる。」
 こう書いてあって、この営業譲渡の対象となる部分というのは、これはいい部分でしょうか、悪い部分でしょうか。どちらを念頭に置いてこの制度はつくられているというふうに理解したらいいんでしょうか。ちょっとその辺が、この説明でも、せんだっての民事局長さんの答弁でもよくわからなくて、どんなケースを考えているのかなというふうにもちょっと思ったものですから、確認をしておきたいと思います。
房村政府参考人 法律上は特に限定はございませんので、優良な部分をいわば高い価額で譲渡するという場合もありますでしょうし、逆に、不採算部門で企業の負担になっている部分を早く切り離して会社全体の負担を軽くしたいということから、そういう部分を多少安くても早く営業譲渡してしまいたい、こういう場合もあろうかと思います。法律上はどちらも可能なようなことでございます。
平岡委員 多分そういうことだろうと思いますけれども、先ほどのまた営業譲渡の議論に戻ると、営業譲渡はケースとしてはいろいろなケースがある。営業譲渡されるものがいい場合もあれば、悪い場合もある。
 そういうケースを考えていくときに、やはり労働者の保護という観点から考えたときには、きめ細かい制度をつくっていかないと、行くときには同意が必要で、残るときは同意が必要ないという前提の中で、営業譲渡されるのは悪い部分が行くんだから、そっち側の方で同意を求めていれば、それでもう経済的には問題ないじゃないか、残れるんなら全く問題ないじゃないかというような単純な発想だけで営業譲渡を考えていただいたんでは、営業譲渡における労働者の権利の保護を考えていただいたんでは、私はちょっと単純過ぎるんではないかというふうにも思いますので、検討されるにはいろいろなケースをきめ細かく考えて、どういう場合に本当に労働者の保護を図っていかなければならないかという視点を忘れないようにしていただきたいというふうに再度お願いをしておきたいと思います。
 それから、人の質問ばかり引っ張り出してきてまことに恐縮なんでございますけれども、議事録を読んでいたらいろいろ疑問がわいてくるものですから、ちょっとまた質問させていただきたいと思うんです。
 例の六十七条三項で、DIPの関連でありますけれども、旧経営陣であっても管財人となる道が今回開かれているということで、そのような場合の労働組合からの意見聴取の問題がございました。
 この点についても、やはり十一月十九日の同僚の山内議員の質問の中にありまして、労働者の意見を聞くべきではないかというような質問があったのに対して、民事局長の方から、管財人を選任する場合には、更生開始決定をする前の段階で労働組合から意見を聞く場合があって、その場合にはちゃんと意見が聞けるんだ、そのことによって、管財人の選任については裁判所に対して意見を言う機会は保障されております、こういうふうに言っておられて、堂々とした答弁をされておられるんですけれども、ちょっと条文を見てみますと、これは第二十二条で、意見を聞きなさいというのがあるんですけれども、そのときに、例外的に更生手続開始の決定をすべきことが明らかである場合には別に意見を聞かなくてもいい、こうなっちゃっているんですね。
 そうすると、さっき言ったDIPによる管財人を選ぶ場合、これは、更生手続開始の決定をすることが明らかな場合と、どういう管財人を選ぶのかというのは必ずしもイコールじゃないわけですよね。必ずしもイコールじゃないときには、例えば今言ったように、更生手続開始の決定をすべきことが明らかである場合には意見を聞かないでいい。意見を聞かないでいいということは、管財人として、今までの取締役であったような、経営者であったような人たちが選任されることについて意見を聞かなくてもいいという。決して民事局長が答弁されているように機会が保障されているということにはなっていないんじゃないかというふうに思うんですけれども、その点についてはどのようにお考えになっておられますでしょうか。
房村政府参考人 開始決定をするときには原則として労働組合の意見を聞くということにしておりますが、御指摘のように、更生手続開始の決定をすべきことが明らかである場合、そういう場合には意見聴取をすることを要しないとしております。
 これは、例えば親子会社の一方について更生手続が既に開始されていて、その審理の中で他方についても開始要件が満たされているということが明らかになっている、こういう場合には、迅速に手続を開始するということを優先いたしまして、聴取するまでの必要はないとしたわけでございます。したがいまして、そういう場合には、事前に労働組合として管財人の選任について意見を述べる機会が保障されているというわけでないのは御指摘のとおりでございます。
 ただ、そのような場合でありましても、開始をしました後、財産報告集会が開かれますと、その場で利害関係人として管財人の選任について意見を述べるということが労働組合にも保障されておりますし、その集会が開かれない場合につきましては、書面で裁判所に対して管財人の選任について意見を述べるということが法律上保障されておりますので、そういう機会を通じて労働組合の意見を裁判所に伝え、裁判所に対して管財人の解任を事実上求めるというようなことは可能になっております。
    〔委員長退席、佐藤(剛)委員長代理着席〕
平岡委員 今言われた条文をすぐにぱっとフォローできるほどよく勉強もしていないので、また今の答弁を精査させていただいて、その答弁でいいのかどうかということについては、私なりにまた検討させていただきたいというふうに思います。
 そこで、せんだっての参考人質疑の際にも参考人の方が言われておりました。今回の会社更生法の中で、労働組合からの意見を聴取するあるいは労働組合からの意見陳述といったようなものがいろいろなところに規定としては置かれているけれども、ただ単に聞きおくというか、聞きましたというアリバイづくりだけをして、あとは好きなようにやっちゃったというんじゃ困りますよ、そういう参考人の説明がございました。
 この新しい会社更生法の中を見ますと、四十六条、百八十八条あるいは百九十九条といったようなところに、いろいろな場合に労働組合等による意見陳述あるいは意見聴取ということが規定されているんですけれども、どうも、どのような時期にどの程度のことが意見聴取されるのか、あるいは意見陳述することができるのかということが必ずしも明確になっていないので、ちょっと条文ごとに聞いてみたいと思うんです。
 四十六条、これは裁判所が管財人による更生計画の営業譲渡を許可する場合の意見聴取ということなんですけれども、これはどの時期でどのような内容のことを聞くということになるんでしょうか。そして、その前にちょっと形式的な疑問であるんですけれども、許可する場合には意見を聞かなければならないというふうに書いてあって、許可をしない場合には意見を聞かなくてもいいんだというようにも何か条文がなっていて、普通は許可するかしないかを判断するために意見を聞くんじゃないのかなというふうに常識的には思うんですけれども、その点の解釈といいますか、考え方も含めて、ちょっと御説明をしていただきたいというふうに思います。
房村政府参考人 まず四十六条、営業譲渡の際の労働組合の意見聴取でございますが、時期といたしましては、管財人から営業譲渡の許可の申し立てがあった後、許可をするまでの間ということになります。
 その聴取する内容等でございますが、これは法律上特段の定めはありませんが、この更生計画認可前の営業譲渡について裁判所の許可を必要としたということは、更生計画によらずに営業譲渡を行う必要性及びその譲渡契約の内容の相当性を担保して、最終的にその営業譲渡が更生会社の事業の更生のために必要であるか否かということを裁判所が判断する、こういうことでございますので、裁判所が意見聴取する内容としても、更生会社の事業の継続のために更生計画によらずに早期に営業譲渡を行う必要があるのかどうか、また営業譲渡の対価を初めとする譲渡契約の内容が相当であるかどうか、こういう点について、その企業内部にいていろいろ情報も持っている労働組合から聴取をするということになろうかと思います。その他関連することは当然組合として述べることは可能だとは思っておりますが、聴取の中心はそういうところになるのではないか。
 それから、営業譲渡に対する許可をしない場合には聞かなくてもいいのかということでございますが、これは、御指摘のとおり、許可をするかしないかを判断するために聞いているわけですから、原則として労働組合等の意見は聴取しなければならないものと考えられますが、ただ、例えば管財人が株主に対する公告とか通知の手続をとることなく営業譲渡の許可の申し立てをした場合のように、聞くまでもなくもう不許可とせざるを得ない、こういうことが明らかな場合にまで聞かなければならない必要はない、そういう解釈でよろしいのではないかと考えております。
平岡委員 最後のケースの場合は、そうであるならば、ほかのところにも、許可しないことが明らかな場合とか、もう更生計画に行くことが明らかな場合は聞かなくていいと書いてあるんだから、そういうふうに書けばいいじゃないか。何も、許可する場合は必ずやりなさい、許可しない場合は適当に、聞いても聞かなくてもいいですよというのはちょっとやはり制度としておかしいなというのは、私の細かい点でございますので、どうでもいいのかもしれませんけれども、そういう仕組みをつくるときはちゃんとやっていただきたいなと思うんです。
 最初の、いつ意見聴取するのかというのは、許可をするまでの間、それは当たり前ですよね。これは許可した後に聞いたって意味がないので、許可するまでの間というのは、それは制度として当たり前なんですけれども、しかし、意見聴取をしたら、それを踏まえて合理的にその意見を検討する期間を置かなければいけないだろうというふうに思うので、許可するまでの間なら前日でもあるいは直前でもいいんだというんじゃなくて、やはり本来の制度の趣旨を考えたら、意見を聞いたら、その意見の是非を検討する合理的な期間を置いて、そして許可をするかしないかという判断をするというように、ぜひ、これは裁判所の方で運用されるんでしょうから、裁判所の方のお願いになるのかもしれませんけれども、そういう手続をとっていただきたいというふうにも思うわけです。
 次に、百八十八条、これは裁判所による更生計画案についての意見聴取ということで書いてあるんですけれども、これも、見ますと、百八十九条で、更生計画案について決議に付する旨の決定をするというのを裁判所が行う、それから百九十九条に、更生計画案についての認可または不許可の決定をするとか、こうあるんですよね。
 そうすると、この更生計画案については、裁判所として意見を聞かなければいけないタイミングというのはいろいろあるのではないのかなというふうに推測をするんですけれども、この百八十八条の意見聴取は、どのタイミングで、どういう内容のことを聞くんでしょうか。何のために意見を聞くかということが全く条文にも示されていないので、その点を明確にしていただきたいというふうに思います。
房村政府参考人 この更生計画案についての意見聴取でございますが、これは御指摘のように百八十九条で、裁判所がその更生計画案について決議に付するかどうかということを決定するわけですが、その前提として労働組合から意見を聞く。そして、この意見等を参考にした上で、更生計画案について、不公正な内容の更生計画案であったり遂行可能性のない更生計画案であれば決議に付する旨の決定がされないということが百八十九条の一項の三号にございますので、こういうことを判断する資料として労働組合から意見を聞く。これは、労働組合というのは企業内部で相当の情報を持っておりますし、また、労働組合が協力するかどうかということが更生計画の遂行可能性にも大きな影響を与えますので、そういう点を判断するという趣旨から、労働組合の意見を聴取するということにしているものでございます。
平岡委員 条文的には、百九十九条の認可または不認可の決定をする前でもよさそうにも読めることは読めるんですけれども、そうじゃなくて、百八十九条の決議に付する旨の決定をする前に意見聴取を行うということが法律的に義務づけられているというふうに考えてよろしいでしょうか。
房村政府参考人 御指摘のとおりでございます。
平岡委員 ちょっと時間が足りないので、それ以外の意見聴取、意見陳述についてはちょっと省略いたしまして、二つの点について今意見聴取のお話を聞かせていただきましたけれども、裁判所による意見聴取という仕組みになっているんですけれども、その段階になって初めて組合とかあるいは従業員を代表する人たちから意見を聞くというのも、何か、せっかくつくったものをまた改正したりあるいは否決したりするというようなことにもなってしまうという、経済的にはロスの問題もあろうかと思いますし、労働者の意見がどれだけ反映されるかという点について見ても、必ずしも十分なことにならないんじゃないかなという気がするんですね。
 そうしますと、裁判所による意見聴取だけじゃなくて、管財人がいろいろなものを決定する前に労働組合等の人たちから意見聴取をすることを義務づけるというようなことを制度的に仕組んだらどうかというふうにも思うんですけれども、この点についてはどのようにお考えでしょうか。
房村政府参考人 更生手続が円滑に進むためには、労働組合等の協力が不可欠だろうと思います。そういう意味で、管財人として労働組合等と十分な意見交換をするということは日常的に行っているものと思われます。
 ただ、問題となります営業譲渡あるいは更生計画案の策定というのは、時間的制約の中で管財人が非常に急いでやらなければならないという性質がありますので、これにつきまして、法律上、常に労働組合の意見聴取等を義務づけることといたしますと、今回の改正の一つのテーマである手続の迅速化という観点から問題が生ずるおそれがあるのではないか。そういうことから、今回そのような、一律に義務づけるということはしておりません。
 ただ、先ほども申し上げましたように、手続の円滑な遂行あるいは更生を可能にするということのためには、労働組合の協力を求める趣旨で、いろいろな情報交換等は現実に管財人の方々は行っているようでございます。
平岡委員 見解の相違なのかもしれませんけれども、物事を円滑に進める際に、どこでどういう相談をしてやるのが一番円滑なのか。政府と与党の関係でも、大体、政府の方が法案を用意するときに、早目に与党の先生方に相談に行っていたらその後はスムーズにいくけれども、物事が決まった後に、こういうふうになりましたと行ったら、何でわしのところに先に説明に来ないのかといってへそを曲げられて時間がかかるというようなケースもあろうかと思うんですよね。
 そういう意味でいったら、やはり管財人の方々が物事を決定する前に相談をする、協議をする、意見を聞くといったようなことも制度としてはあってもいいんじゃないか、その方がむしろ円滑に進むんじゃないかというような気もしますので、それは私の意見かもしれませんので、とりあえずそこだけにとどめておきたいと思いますけれども、いろいろとこれからの制度の運用のあり方を見た上で、また検討していただければというふうにも思っている次第であります。
 次の質問に移ります。
 これも何度か議論されているところであるので、私もこの議論を聞いた上で疑問に思っているという点でちょっと質問させていただきたいと思うんですけれども、新会社更生法の百三十条の五項で、使用人の預かり金のうち共益債権となる範囲というのを、更生手続開始前六カ月の給料に相当する額または当該預かり金の額の三分の一に相当する額のいずれか多い額というふうにしている。その根拠として説明されているのが、現行法での給料、これは百十九条の後段とか、退職手当、百十九条の二で、やはり六カ月に限定しているようなことがあるというふうなことを言っているんですけれども、もっとその前にさかのぼって考えると、なぜ給料とか退職手当がそのような六カ月といったような制約というか制限をしているのかという点については、どのように理解しておられますでしょうか。
房村政府参考人 現行の会社更生法におきましては、御指摘のように、給料につきましては開始前の六カ月分、それから退職金については退職前六カ月分もしくは三分の一に相当するいずれか多い額の方、これを共益債権ということで優遇しております。
 これは、実体法上、労働債権、いわゆる給料等は、先取特権が与えられるなど、その特質に応じた保護が図られている。それを会社更生においても、その観点からさらに保護を厚くする。そのままですと、優先的な更生債権にしかなりませんので、それを一定範囲に限って共益債権とすることによって保護を厚くしているわけでございます。
 その範囲を六カ月に限定した趣旨でございますが、これは民法で先取特権を与えているのが六カ月の範囲に限っている。そういう意味では、実体法の範囲においても、六カ月というのが特に保護を要する期間といいますか、その程度の額が特に保護をする必要があるということが示されている。それを考慮いたしまして、商法上は給料債権全部に先取特権が与えられるわけでございますが、そのうちの六カ月に限って共益債権として一層の保護を図った、こういう考え方でございます。
平岡委員 私が質問したのは、何で給料とか退職手当がそのような取り扱いになっているのかということを聞きたかったんですけれども、余り答えていただけなかったので、また機会があったら答弁していただきたいと思います。
 ただ、社内預金の実態というのが一体どういうふうになっているのかというようなことを踏まえて検討されたのかどうなのかなというところにもちょっと疑問があって、厚生労働省さんにお聞かせ願いたいと思うんですけれども、皆さんが把握している限りにおいて、給料の六カ月分以上の社内預金をしている労働者の方々というのはどの程度の方がおられるか。数とかあるいは全労働者における割合とかというようなことを、何かサンプル調査でもあるんでしょうか。どういうふうに実態を把握しておられますでしょうか。
青木政府参考人 給料の六カ月分以上の社内預金をしている労働者の数と割合ということですが、これについては把握しておりません。しかし、平成十四年三月末時点で、労働者一人当たりの預金額は百四十九万円。これを平成十三年の労働者一人当たり月間現金給与総額、これが三十五万円でありますので、これで割りますと、約四・三カ月分ということになります。
平岡委員 平均すると四・三カ月ということであれば、多分六カ月を超えている方もかなりの割合おられるんじゃないかなというふうにも思うんですね。
 そうしますと、ちょっと私もいろいろ疑問に思うところは、例えば給料の支払いがおくれていて、六カ月間も払ってもらえないというようなときには、労働者の方々は何かその前に手を打つことができるんだろう。だから、一カ月給料がおくれちゃった、二カ月おくれちゃったときは、何か払ってもらうための手段を講じることができるというふうに私は思うんですね。
 それが六カ月しか認められないといっても、その間何もしていなかったことに対しては、仕方ないから六カ月で我慢してもらおうということもあり得るんだろうと思うんですけれども、預かり金になると、給料は当然に毎月毎月支払っていただいていた、しかしあるとき突然、会社更生法の手続が進められることになっちゃった、そうしたら自分の預金は何か十カ月分も一年分も置いてあったというような事態であって、労働者の方々にとってみれば全く寝耳に水のような状態でこうした問題が生じてしまうこともあるんだろうと思うんですね。
 そうすると、何も給料とか退職手当のようなものと同じように、同列に取り扱うというのが、やはりちょっと不自然な感じが私にはするんですけれども、この点についてはどのようにお考えになりますでしょうか。
房村政府参考人 その保護の範囲をどのようにするかということで、今回、預かり金についても、退職金等と同じ六カ月分ということにしたわけでございます。ただ、これは典型例は社内預金でございますので、六カ月分を超える部分は拘束されているわけではございませんので、それは危険を考慮して分散をするということは十分可能なわけでございます。
 退職金等については、ちょっと六カ月分以外の退職金を前取りするわけにはまいりませんけれども、預かり金についてはそういうことで対応も可能でございますので、ただいま御指摘のように、寝耳に水で知らなかったということがないように、今回、この改正法を成立させていただきました場合には、その趣旨をできるだけ周知徹底いたしまして、そのような問題が起きないようにしたいと考えております。
平岡委員 制度の趣旨を徹底していただくことも必要だと思うんですけれども、会社が危なくなったら、社員の人になるべく早く教えてあげて、六カ月以内にとどめるようにという指導をするのも何か変な感じも私はするので、制度の趣旨の徹底はいいとしても、会社がどのような状態にあるのかということを労働者の方々にどの程度前広に、どの程度正確に伝えるのかというのはやはり疑問があるような気もしますから、制度的にこれでいいのかどうかというのは私も疑問に思いつつ、ちょっとこれ以上の質問をしても仕方ないかと思いますので、とりあえずやめますけれども、ちょっと検討として不十分ではなかったのかなというふうな気もしております。
 時間がないので、金融機関の更生手続特例法についてちょっと質問したいと思います。
 実は、きょうは整備法を持ってこようと思ったんですけれども、余りにも厚いものですから、筋肉が余り強くない私は運べなかったのできょうは持ってきていませんけれども、金融機関の更生手続特例法というのは、あの整備法の中でもほとんど、もう九〇%ぐらいを占めているぐらい分厚い法律になっているんですよね。むしろ会社更生法よりもたくさんの改正があって、私なんか見たら、この金融機関の更生手続特例法も全面改正した方がわかりやすいんじゃないかと思うぐらいの内容になっているというふうに思うんです。
 整備法という制約の中で一部改正法という形になっているということなんだろうと思うんですけれども、本当にこの金融機関更生手続特例法が整備法という枠内でその改正の中身がおさまっているのかどうかというのが、余りにも大部なために検証する能力が私にはちょっとなかったのでございますけれども、そこは整備法の枠内にとどまっているということを、監督当局といいますか、法律所管当局からまず宣言をしていただきたいというふうに思います。
藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 更生特例法は、御案内のように、株式会社を対象とする会社更生法が適用されない協同組織金融機関及び相互会社につきまして会社更生法と同様の手続を定めるとともに、債権者の数が膨大であります等の特殊性を有します金融機関の倒産手続につきまして、会社更生法、民事再生法、破産法等の特例を定めているものでございます。
 今般、会社更生法が手続の迅速化、合理化及び再建手法の強化を目的といたしまして全面的に改正されることとなったことに伴いまして、更生特例法につきましても、会社更生法に倣い同様の改正を行うということで、一体の法整備をお願いしたものでございます。
平岡委員 ただいまの説明は、多分、今回の金融機関更生手続特例法は新しい会社更生法の枠の中で整備法として改正が行われているという説明だったというふうに理解させていただくんですけれども、次にちょっと疑問になるのは、これは株式会社である銀行に限定して考えていただければと思うんですけれども、経営が困難になってきました、ある人は金融機関更生手続特例法に基づく会社更生を申し立てたい、あるいはそういう手続を進めていくべきだという方がおられ、逆に、金融機関についてはそれ以外の、経営が困難になった場合の対処するための法律というのが、例えば銀行なら銀行法の中に早期是正措置といったような形でもあったり、いろいろするわけですね。
 経営困難になった金融機関に対して適用される法令としては、金融機関更生手続特例法以外にどんなものがあるというふうに認識したらよろしいんでしょうか。
藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 金融機関の経営が悪化いたしました場合には、まず銀行法等の業法が適用されまして、業務改善命令等が発出されることになります。その後、さらに経営が悪化いたしまして、当該金融機関が預金等の払い戻しを停止するおそれがある場合、こういう場合には預金保険法が適用されまして、金融整理管財人による業務及び財産の管理を命ずる処分等がされることになります。また、当該金融機関につきまして更生手続、再生手続等の開始の申し立てが行われました場合には、会社更生法、民事再生法及びこれらの特例としての更生特例法の法令が適用されることになります。
平岡委員 そうすると、経営が困難になった金融機関について言うと、いろいろな法律の適用可能性がある、そういう状態に入ってくるわけですよね。
 ちょっと条文を見てみますと、預金保険法の世界では金融整理管財人という人がおって、この人は金融庁長官の指揮監督を受けた形でいろいろ金融機関の整理、管財を行っていく。そして、この金融機関について金融機関更生手続特例法に基づいて会社更生手続が進められるということになれば、更生管財人というのが登場してきてやる。どうも、その二人が登場してきたりするような場面というのがあったりすると何か非常に混乱するなと。あるいは、それぞれの管財人に対して金融庁長官はこういう命令を出す、逆に、裁判所は会社更生管財人に対して別の命令を出す、こんなことも理屈の上では何かあり得るような気がするんですよね。
 そうなると、もうめちゃくちゃな世の中になってしまうような気がするんですけれども、これらの関係というのはどのように整理されているのか、どのように混乱が生じないようになっているのか、その点についての法整備という仕組みから、法制度の整備状況という意味から見てどのようになっているというふうに理解したらいいのかということについてちょっと御説明をいただきたいというふうに思います。
藤原政府参考人 お答えを申し上げます。
 預金保険法に基づきまして整理管財人による管理を命ずる処分がなされますと、御案内のように金融整理管財人が選定されることになります。その後に更生手続開始の決定がなされますと、会社更生法または更生特例法に基づきまして管財人も選任されるということになります。
 実際にはこのような事態が生ずることはなかなか考えにくいとは思いますが、会社更生法または更生特例法上の管財人は、窮境にある、困った状態にあります会社につきまして、利害関係人の利害を適切に調整するということでその会社の事業の再生、維持を図るということでございますし、また、預金保険法上の金融整理管財人につきましては、預金者保護を通じまして信用秩序の維持を図るという、それぞれの制度目的に整合的な形でその業務を遂行することになると思っております。
平岡委員 そういう形になりますというのは、それはそれでいいですけれども、それぞれの二人の権限を調整するための仕組み、あるいは預金保険法に基づく金融機関に対する、金融機関をよりよくさせるためのさまざまな手続、そして金融機関更生手続特例法に基づくさまざまな措置、これが一体となってしまうようなときに、どっちがどのように優先するのか、どっちがどのように引っ込んでいくのか、そういうようなことがないと何か非常に混乱してしまうような気がしてしようがないんです。同じような不安はお持ちじゃないでしょうかと言うと、持っていないと言われるだろうと思いますけれども、そういう整備の必要性というのは果たして本当にないんでしょうか、どうでしょう。
藤原政府参考人 先生御指摘のように、理屈の上ではそういうことがあり得ることだと思っておりますが、実際には、裁判所は、必要があると認めるときは、更生会社の事業を所管する行政庁に対しまして当該更生会社の更生手続について意見の陳述を求めることができるとか、または、その当該行政庁につきましては、裁判所に対して当該更生会社の更生手続について意見を述べることができるというような、こういう調整のプロセスがございまして、こうした規定も踏まえまして、金融機関の更生手続を進めていくに当たりましては、裁判所と金融庁との間で十分な意見の調整が行われていくものと考えております。
平岡委員 同じ行政庁なら意見の調整も図りやすいんだろうと思いますけれども、裁判所と行政庁で意見を調整するというのはやはりかなり難しいのかなという気もします。今回、この会社更生法、私は、これはつくるのに大分時間がかかるんじゃないですかと言ったら、いや、すぐできます、この臨時国会に出しますと言われたんですけれども、実は、時間がかかるのはこの金融機関の更生手続特例法の方に時間がかかるというふうな説明もありました。そういうことで、必ずしも預金保険法とかとの調整もするような時間的余裕はなかったのかなという気もするんですけれども、これからペイオフが解禁されるということになりますと、まさに金融機関の中でも会社更生手続にのっとっていろいろなことが行われるという可能性も出てくる。そのときに、何か制度的な整備が不十分なためにもたもたしているというようなことが生じないように、十分な検討をしておいていただきたいというふうにお願いをしたいと思います。
 時間がなくなりましたので、最初の質問にちょっと戻らせていただきます。
 最初にした質問に戻らせていただきますと、今回、会社更生法を全面改正するに当たっては、不良債権処理との関係で、不良債権処理を加速化するためには、あるいは不良債権の処理を促進するためにはこの法律が必要なんだというような趣旨の説明がちょっと行われていたような気もするんですけれども、どうもそこは、この前の木島委員の質問の中でも、いや、ちょっと趣旨が違うんじゃないですかというような御質問がありました。
 もう一度、この不良債権処理の問題と新しい会社更生法の制定の関係、どのような趣旨でこの新会社更生法の早期成立が必要であるというふうになるのかということを、大臣から懇切丁寧な説明を受けさせていただきたいというふうに思いますので、よろしくお願いします。
森山国務大臣 会社更生手続を初めとする法的倒産処理の手続は、私的整理、不良債権の売却と並びまして、金融機関の有する不良債権を直接処理する手段の一つとされております。また、会社更生手続は、倒産状態に陥った大企業のうち再建の価値があるものを選別し、その再建を図ることによりまして企業の解体、清算を防止する手続でございまして、雇用の維持及び取引先企業の連鎖倒産の防止など、不良債権処理に伴って生ずる社会経済的損失の軽減にも寄与すると考えられます。
 過去一年間、平成十三年の十月から平成十四年の九月までを見てみますと、その間の主要な会社更生事件における更生会社の負債総額、過剰債務額を見ますと、その合計額は四兆円を超えておりまして、その半額以上が金融機関の不良債権であると考えられます。
 したがいまして、会社更生手続は、これまでも不良債権の処理に重要な役割を果たしてきてはおりますが、今回の改正によりまして、手続の迅速化及び合理化が図られまして使い勝手が向上いたしまして、より一層大きな役割を果たすことになると考えられるわけでございます。そこで、不良債権の処理を促進するためには、これに伴って生ずる大企業の倒産に備えて新会社更生法の早期成立が必要であるということを申し上げたのでございました。
平岡委員 一般に、不良債権の処理という場合の不良債権というのは、金融機関がたくさん不良債権を抱えてしまっているためになかなか金融機関が本来果たすべき金融仲介機能を果たせないことが問題であるといったようなことも言われるわけですね。そうなると、やはりこの新会社更生法というのは、金融機関にとってみて、不良債権の処理を進めていくために本当に役に立つものであるならば、本当の意味での不良債権処理の促進に役立つ法律ということなんだろうと思うんですけれども、最高裁に来ていただいているので、今、この会社更生手続の申し立てで、全体としてどれぐらいあって、そのうち金融機関が申し立てているのがどういう状況なのか。最近の三カ年間ぐらいでも結構ですから、ちょっとその趨勢を教えていただけますでしょうか。
千葉最高裁判所長官代理者 会社更生手続の債権者申し立ての関係につきましては、全国的なデータはとってございませんが、東京地裁、大阪地裁について申し上げますと、平成十二年につきましては、全部の更生手続におきましては二十三件、そのうち債権者申し立て件数は二件、金融機関の申し立てはそのうちゼロでございます。平成十三年は、東京、大阪の更生申し立て事件は三十四件、そのうち債権者の申し立てが五件、金融機関はそのうち四件ございます。それから平成十四年につきましては、東京、大阪の更生申し立て件数七十件でございますが、債権者申し立て件数が十六件、金融機関の申し立てはそのうちの十一件、こういう数字でございます。
平岡委員 時間がないので終わりますけれども、本来であれば、金融機関の申し立てが行いやすくなっているというようなことであるならば、かなり不良債権の処理の促進ということにもなるのかなという気がするんですけれども、どうもそこのところの脈絡がないままに、この法律を早く成立させてほしいという趣旨から、不良債権処理の促進に役立つ役立つと言って、ちょっと何か人の気持ちをごまかす、ごまかすと言うと言葉が悪いですね、少しその気にさせているというところもあるのかなと思いましたので、本当はもっと突っ込んで聞きたかったんですけれども、時間がないのでこれで終わります。ありがとうございました。
佐藤(剛)委員長代理 次に、日野市朗君。
日野委員 今、平岡さんから非常に合理的な心配が述べられていましたね。私も全く同じように思っているんです。平岡さんの質問の継続みたいな形になっちゃうわけですね。平岡さんの心配の根底にある一つの意識、それは銀行に対する国の取り扱いの変遷であろう、一つはそう思いますね。
 かつて、銀行というのはつぶれないとされていた。なぜなら、これは護送船団方式をとっていたからです。護送船団方式というのは、その当時の大蔵省銀行局あたりが非常に苦労しながら、いろいろなところから金をかき集めてきては特定の銀行を救済していく、特定の金融機関を救済していく、こういう形をとっていたわけですね。それがいかぬということになりまして、銀行は非常に不良債権を抱え込んで、非常に大変な経営になっているわけです。きのうあたりも四大銀行の経理内容が公表されましたけれども、ええ、日本の銀行というのはこんな状態なのということを、我々かなりのショックをもって受けとめざるを得ない。こういう状態の中で、ではこの会社更生法、そしてこれに伴う金融機関に関する特例法、これがどのように機能するかといったら、私は機能しないと思うんですよ。そううまく機能するわけのものではないと思う。
 今、平岡さんがいろいろ述べた心配というのはまことに私は合理的だと思うんです。我々今、一つの制度を一生懸命議論しているわけですね、会社更生法というものを。しかし、それ以外の力が銀行をめぐってはいろいろと働いているわけです、現在でも。金融庁あたりが中心になっていろいろな、しかも落ちつきのない動きと言ったら担当者にしかられるかもしれませんけれども、一体どういう方向を目指しているのかすら国の方針としてはっきりしないというようなことで、非常に銀行も困っているだろうし、その銀行を使っている我々も困っている、こういう状態が続いている。
 さらに問題なのは、小泉内閣の改革加速のための総合対応策、これが特に「金融・産業の再生」という項目を掲げまして、金融を再生させる、産業を再生させる、そのために一つの機構をつくって、そして銀行の救済をやろう、それから膨大な不良債権の悩みを銀行に投げつけている産業を救済しよう。こういう非常に、私に言わせてもらえば行き当たりばったり、しかもこの対応策、きょうは小手川さんにおいでいただいて内容を私はこれから聞いていこうと思いますが、まだ十分決まっていないという答えが随分出てくるんだろうと思います。しかし、片っ方では会社更生法、これについて我々は真剣に議論をしているわけですな。
 一体、新しい機構とそれから会社更生とどっちを使うんだという非常に深刻な悩み、これは経済人も感じるだろうし、政治家も、一体どういうふうにこれを、景気を立て直していくために使い分けていくかということは非常に大きな悩みだと思うんですよ。
 しかも法務省は、会社更生法という課題を我々に投げかけて、我々もこれに真剣に今取り組んでいる。片っ方でこんな抜け道みたいなのをつくられて一体どうするつもりなんですかな、これは。ちょっとお答えいただきたい。我々は今真剣にやっているんですよ、この会社更生法の審議を。こんなものよりはもっと手っ取り早い、特定の企業を意識しているのかどうか知りませんけれども、そういう企業を救済しよう、そういう金融機関を救済しようという片っ方の仕組みを今つくろうとしている。我々に一生懸命議論させている法務省、これをどうお考えになりますか。
森山国務大臣 会社更生法は、経済的に窮境にある株式会社につきまして、その事業の維持更生を図る法的倒産処理手続を定めるものでございます。これに対しまして、今話題になっております産業再生機構は、企業再生に取り組む新たな組織として預金保険機構のもとに創設される予定でございますが、その具体的な内容につきましては現在内閣府におきまして検討されているものでございます。
 したがいまして、産業再生機構と会社更生法との関係は現段階では明確ではございませんが、法務省といたしましては、内閣府等の関係省庁と十分に連絡をとりつつ、企業再建をめぐる諸制度が全体として適切なものとなるように努力してまいりたいと考えております。
日野委員 大臣、失礼だが、今の答弁、全く私理解できません、何を考えておられるのか。それは、こういうことをおっしゃっているのかなと私考えるんですよ。我々が今やっているよりはもっと大きい政治的な力が働いている、こういうことを今おっしゃっているのかな、こう考えるんですね。
 ほかの省庁と十分検討しながらやっていく、これは当然でしょう。しかし、我々は、会社更生法、会社を更生させていくために最も適切な方法であるべき一つの指針、一つのルール、これを今検討しているんですね。そのルール以外のところに産業再生機構、これはまだ仮称だ、こういうことですが、そういったものを持ち込んできて、会社更生法なんかばかばかしくて使っていられないよ。それよりは、この産業再生機構でちゃんと不良債権も買い取ってもらおうじゃありませんか。
 そして、これは一応公表された資料に基づいて私は申し上げたいんだが、もちろん不良債権も買い取りますが、「追加融資や出資、信託、保証機能等を備える金融機関」としてこの産業再生機構をつくっていく、こういうことなんでしょう。これはもう会社更生法なんかよりももっともっと強力ですよ。それを買い取って、そのほかに追加融資をする、さらに出資もする、信託行為もやる、保証機能を備える金融機関、しかも政府保証まで考えるということですからね。これはばかばかしくて会社更生法なんか使っていられません。そっちの方を使った方がいい。
 ここの関係は、小手川さん、どうお答えになる。
小手川政府参考人 今議員御指摘のとおり、この再生機構につきましてはまだこれからいろいろ詰める点があるのでございますが、現時点で、今議員御指摘の点について、若干関係するのではないかというところを申し上げますと、やはり今度の機構の一つの中心的な概念は、金融機関、特にメーンバンクと債務者の間で何らかの経営改善計画というものが現に存在するか、あるいはもうほぼ大体でき上がっている、したがって、その計画をベースにいたしまして、企業の再生を念頭に置いた一つの価額というものが計算できるというのが一番中心の概念だと思っております。
 したがって、そのような価額について、メーンとそれから新しくできる機構の間で交渉していくという格好になってくると思うのでございますが、一つ、中心としましては、いわゆる要管理債権というものを中心的な対象としてございますので、その点で、RCCの方は、これは破綻懸念先以下ということですから、そこで一つ対象が違うのではないかと思っております。
 したがって、基本的に、今議員がおっしゃったいろいろな仕組みの中で何を使うかということについては、債権者側の方で、例えば金融機関の方でこれをいろいろ検討して、どういうふうなスキームを使うかということを決定していくということになってくるのではないかと思いますけれども、その際に、債務者の状況によりまして、この再生機構に持っていった方がいいのか、それからRCCに持っていった方がいいのか、あるいは法的整理という形をとった方がいいのかということを当然いろいろ検討した上で持っていくのではないかというふうに考えております。
日野委員 今述べられたことは、会社更生法と同じ意識なんですね。会社更生法も、ちゃんと更生計画というものを立てて、それにのっとってやっていきますよ。小手川さん言われたのも同じことですよ、結局。それからあとは、再生を念頭に置くんだ、これも同じことです。会社更生法で、これでは再生できませんよといったらもう更生ではなくて別の手続に移るわけでして、産業再生機構だって、これはもう全然だめだといったら最初からやらない。
 つまり、私こう思うんですな。今いろいろな大きい企業が経営が危ない、こう言われているわけですな。そういった個々の企業、あれとこれとこれといろいろ喧伝されているところはある。そういったものを救済するための、個々の企業向けの一つの産業再生機構なのではないか、こういう疑問を持つんですね。そうでなければ、会社更生法でおやりなさいよ、これは。
 今、せっかく会社更生法という、本当に法務省も急いでつくられて、我々から見たらちょっと拙速かなと思うような節もないではないが、我々もそれに協力をして、それこそ会社を更生させ、産業を更生させよう、こうやって努力しているのに、こう、ひょっと幾つかの会社に割り込まれてきたんじゃ、これは公正という理念が損なわれるんだ。ここらはどうお考えです。よもや個々の会社を対象にしてやっておられるんじゃないんでしょうな。
小手川政府参考人 私ども、十月の三十日に対策が出まして、それから十一月の八日に、当初四名だったわけですが、その後十二日に約二十名ぐらいの人員をいただきまして、今まさに詳細について内容を詰めております。
 具体的な日程としましては、通常国会には間に合うようにということで現在法案の準備をさせていただいておりまして、したがいまして、まだそういう段階でございますので、今議員がおっしゃったような、何か具体的な個別の企業のことを頭に置いてこの機構をつくるとか、そういうふうな経緯でできたというものではないというふうに承知してございます。
日野委員 この公表された資料に基づいて私はあくまでも言いますよ。「政府として、関係省庁からの出向や機構の資金調達に対する政府保証の付与など、所要の人的・財政的支援を行う。」これは強力だわ。こんな強力な機構、ちょっとない。しかも、その必要とする資金については政府保証の付与までしようと。政府保証の金を使えるんだったら、これは何でもできる。何でもできますよ。会社の更生なんというのはお茶の子さいさいだ。
 こういう強力な機構ができてくると、しかもこれから公正の理念ということを損なわずにきちんとやっていくということだったら、会社更生法なんというのはおかしくて使っていられないじゃないですか。どうですか。これは大臣でもいいし、房村さんでもいいですよ。
房村政府参考人 産業再生機構の内容につきましては、先ほど大臣からも申し上げたとおり、現段階では明確ではありませんが、法務省が今回提出しております会社更生法は、担保権者、優先債権者あるいは株主、こういう、会社に利害関係を持つ者をすべて取り込み、また会社の再編行為もその手続の中で行うという包括的かつ非常に強力な手続を備えているわけでございまして、会社の更生については、この会社更生法でなくてはできないという部分は必ずあるわけでございまして、その部分についての整備を緊急に行うということは、産業再生機構がどのようなものになるにいたしましても、企業の再生にとって必要だ、こう考えております。
日野委員 では、小手川さんに伺いますが、こうやって産業を再生させていく、企業を再生させていく、更生でも再生でもいいや、そのために使われるツール、道具、これはどんなものになりますか。
小手川政府参考人 基本的に、機構は非メーンから原則としまして債権を買い上げる、それで、メーンとともに債権者として非常に大きな割合を持つことになりますので、その債権者という立場で、当該債務者企業の抜本的な再建策をつくって、それを実行に移していくという形でございます。
 したがいまして、今法務省の方からもお話がありましたように、会社更生の方は、あくまでも法的な枠組みの中での整理でございますが、この機構の方は、あくまでも、そういう意味では、何か私的な整理であるというふうに認識してございます。
日野委員 政府が関与して私的ということはないでしょうよ。私的な再建委員会なんというものをつくったりなんかするのとはわけが違うんだよ。しかも、国民の税金であるお金を使わせるための政府保証まで用意して、これが私的な整理ということはないでしょう。
 それは、ちゃんと法的なきちんとした手段を、国会で認めるような手段を使わなきゃ、これはあなた、えらい問題ですよ。それは、三権分立の建前に対して大きな挑戦をすることになる。どうなんですか、そこらは。
小手川政府参考人 お答えします。
 今申し上げましたように、あくまでも、再建計画をつくりました後といいますか、それから、つくります場合には、あくまでもメーンバンクとそれからこの機構というものが協力しましてその企業の再生を進めるという観点から、いわゆる法的な強制力を持つものではないわけでございますものですから、その段階を見れば、私が先ほど申し上げましたような、いわゆる法的整理というものではないということでございます。
日野委員 不良債権は買い取ってもらえるわ、それから金も貸してもらえるわ、出資もしてもらえるわ。そしたら、これは強制しなくたって、だれだって飛びつきますわな。
 私は、法務委員会を代表してと言うとおかしいが、私の気持ちとしては、こんなに今会社更生法の審議をやっていて、そんなところから割り込んでこられたらかなわぬ。しかも、これでは、この機構を見ると、特定の企業を、社会的な影響力が大きいからとかなんとかいう理屈をつけて特定の企業を救済するために、産業再生機構だなんといって適当な名前をつけてやっている仕事のように見えてならない。そのことだけは、こういう意識もありますぞということだけはきちんと受け取って、大臣にもお伝えください。変なことをやらないでもらいたい。きちんと、だれが見ても納得できるような形でやってもらいたい。
 私も、産業再生反対だなんて言っているわけじゃないんですよ。しかし、法治国家である以上、民主主義の国家である以上、踏むべき手段をきちんと踏み、そして国民が納得できるような形をつくらなければ、そんなものはかえって日本という国を損なう。私はそう思いますので、よくそのことは大臣に伝えておいてください。総理にも伝えておいてください。
 では、今度は本来の法案の方に戻ります。また時間がなくなっちゃって、どうも済みません。
 更生法では時価主義をとるわけですな。この時価というのは、私にはわからぬのです。物の価格というのは、資本主義社会では、しかも市場経済をとっている国家体制では市場で決まるんです、市場で。客観的に、これが時価でござんすとは言えないですわな。
 ところが、時価主義をとる。これは、時価だよということを建前として述べておけば大体みんな納得するのかな、そういう気持ちなのかもしれませんけれども、しかし、時価というのは市場で決まる。しかも、一番重要なのは、この間も言ったけれども、不動産なんというのは一物三価と言われるわけでしょう。売買価格で決まり、それから固定資産税の評価基準ですな、それもあるし、それから相続税の評価基準もありますし、いろいろな価格があるんだね。
 これは、結局は、時価とは何かというのは省令に落として決めようということなんですか。
    〔佐藤(剛)委員長代理退席、漆原委員長代理着席〕
房村政府参考人 時価の具体的内容をこれ以上細かく決めるということはする予定はございません。時価につきましては、御指摘のように、まさに市場で決まるのが筋であります。
 ただ、財産を評価する場合に、現実に売れる場合は売ったものが時価ということになろうかと思いますが、売らないまま評価をするという場合に、市場で売れるとすればどの程度の価額になるのかということを行うのが、まさに時価として評価するということでございます。
日野委員 それがよくわからぬのですよ。一応時価としておいて、客観的に決まる、現実に決まるときはその価額に従う、こういうことなんでしょうかね。
 商法三十四条に、流動資産についてはどう、固定資産についてはどう、債権についてはどう、こういう規定がありますよね。これとの関係をどうするのか。いかがでしょう。
房村政府参考人 今回、その商法の時価の考え方と同一の考え方で時価評価を行う、こういうぐあいにしております。
 商法について、さきの改正で、財産評価の部分を省令に法律から移す、こういうことをいたしましたので、今回の会社更生法におきましても省令で定めるとしておりますのは、実質商法において省令で定めているのと同様の内容を省令で定めるということを考えたものでございます。
日野委員 これは、商法なんかによりますと、それから旧会社更生法なんかの決め方、個々の資産の価額の総和が企業の価額ということに決まりますわな、昔だったら。では、今度の新更生法では、企業全体の価額はどう決めるんですか。
房村政府参考人 その点につきましては、今回の改正法でお願いしております個々の財産の評価を時価で評価するという場合には、その個々の財産の積み上げが貸借対照表あるいは財産目録にあらわれるわけでございます。
 これに対しまして、企業全体としての価値をどう算出するかという考え方につきましては、そういう財産評価を積み上げるという考え方と、継続価値、企業が継続するものとしての企業全体の価値を算出するという考え方がございます。この考え方は、企業が一定期間に上げる収益を見積もりまして、それに基づいて現在価額に還元して企業の価値を考える。
 改正前の、現行の会社更生法におきましては、財産の評定等につきましても、企業が継続して行うことを前提として評価するというのは、その考え方に基づいたものと言われております。そういう場合には、今言ったような企業の継続価値を全体として評価した上で、それを個々の財産に割り振るんだ、このような理論的説明もあるところでございます。
 ただ、現実にそれを行うとなりますと非常に難しくて、いろいろ混乱をした、こういうこともありまして、今回、時価評価に統一をして評価の確実性を図りたい、こう考えているところでございます。
日野委員 のれん代なんかはどういうふうに評価しますか。そういう企業についている信用ですな、これの評価はどうなりますか。
房村政府参考人 一般に言われておりますのは、個々の財産評価とそれから企業全体としての評価をした場合に、個々の財産評価を上回る企業全体の価値があるという場合に、その差額がいわゆるのれんだ、こう言われております。
日野委員 最近、倒産した企業を丸々買うビジネスというのが存在していますね。しかも、かなりの勢いでこういうビジネスというのはその市場を広げているわけですが、こういうビジネスと会社更生手続全体との関係はどうなりますか。
房村政府参考人 具体的にどうなるかということですが、考えられますのは、会社更生の中でも、更生の手段として営業譲渡等が活用される場合が当然ございますので、そういう場合には、営業譲渡の譲り受けというようなところでそういう会社が出てくる可能性はあろうかと思います。
日野委員 問題は、営業譲渡をする場合の価額をどう決めるかなんですよね。原則は時価で財産の評価をしますわな。そうすると、企業としては、安くても売ってしまった方がメリットが多いという場合、すっかり営業譲渡してしまった方がいいという場合がかなりあるだろうと思う。買う方も、それで買って、その企業の事業内容をさらに発展させるということがあり得るわけです。ところが、時価にしておくと、こういう倒産した企業なんかは買い手がなくなっちゃう、そういう心配はありませんか。
房村政府参考人 一般に、営業譲渡の場合、その譲渡される営業の収益力に着目して対価の算定は行われるというぐあいに言われております。営業を丸ごと譲渡することのメリットというのは、それを構成する個々の財産の価額の集合以上の価値がその営業にある、それが収益力にあらわれる、こう言われているわけであります。
 したがって、会社更生の中で営業譲渡するかどうかということを考える場合には、当然、その営業に含まれる個々の財産の評価額、これと、営業を全体として譲渡するときの対価、こういうものを評価して、営業譲渡を行うことが債権者等の利益になるかどうか、企業の更生に役に立つか、こういうことを比較した上で判断することになろうかと思います。
日野委員 この時価問題については、いろいろ密接に最高裁の規則であるとか省令であるとかが関係しますから、そこいら、余り蛇が棒をのんだようになっちゃうとまずいんじゃないかなと思いますので、そこいらの柔軟性は必要かなと思う場面の一つですね。
 それから、私、さっき産業再生機構についてお話しした点については、法務大臣も、これからいろいろ閣議であるとか閣僚懇談会であるとか、それから省庁間のいろいろな連絡の中で問題になるときは、私のような意見もあったということはひとつよく記憶にとどめておいていただきたい、こう思います。
 終わります。
漆原委員長代理 続いて、鍵田節哉君。
鍵田委員 民主党の鍵田でございます。
 きょうはどうも委員の出席状況が余りよくないように思いますが、そういう過酷な環境の中で二回目の質問をさせていただきます。
 本来でございますと、森山大臣や副大臣なども先ほど来いらっしゃったので議論をしたいところでございますけれども、過去の経過や事実関係の確認をする質問をきょうはさせていただきますので、まことに残念ながら大臣との議論は次回に譲らせていただきたいと思っております。
 それでは質問に入ります。
 まず、過去の委員会の審議の中でも議論が出ておりました社内預金問題について、厚生労働省に来ていただいておりますのでお聞きをしたいと思っております。
 過日の我が党の山内委員の質問に対しまして、社内預金の問題については、あくまでも労使の自主的な判断に基づいて決められた規定に基づいて実施をされておるわけでありますし、余り大きな問題になっておらないので、これについての見直しをするつもりはないというような御答弁があったように私は聞いております。
 しかし、過去に、大手の工作機械メーカーや百貨店などでも、大型倒産において、社内預金をめぐる問題が非常に新聞などでも報道されたわけでございます。この問題は、更生手続の中で一定の解決を見たというふうに言われておるわけでございますけれども、解決したからいいという問題ではないわけでありまして、今後、解決が非常に困難になるケースも出てくる可能性があるわけでございますから、そういう意味では、やはり現在の社内預金に対する規制といいますか、その範囲では非常に不十分ではないか、こういうものについて再度見直しをし、そして今後の混乱防止を図るということが必要なのではないかというふうに思っております。
 そういう意味で、解決したからいいんだというような解釈で安穏としておられるのかどうか、そういうことで何らかの手だてを考えていかなくてはならないのではないかということについて、まずお聞きをしたいと思います。
青木政府参考人 社内預金については、委員御指摘になりましたように、最近の大型倒産事案におきましても幾つか問題になりましたけれども、預金額の全額がいろいろな計画の中で返還される、あるいは返還される予定になっているというようなことでありまして、そう大きな問題は生じているとは思っていないわけでありますが、一人当たりの社内預金額から見まして、今回の改正によっても、社内預金はおおむね相当の額が共益債権として保護されるというふうに考えております。そういうことから、今回の法改正によって特段の問題が生ずるとは考えていないところであります。
 しかし、厚生労働省としては、今回の法改正に伴う会社更生手続における社内預金の取り扱いを労働者が十分理解していただく、そして、その負うべきリスクを納得した上で預入が行われるよう周知を徹底していきたいというふうに思っています。
鍵田委員 先ほど、一人当たりの預金額が四・六カ月分ということをおっしゃっておったんですが、実際は、個人によって非常に大きな格差があると思います。したがって、個々の社内預金の金額を検証してみますと、かなりの金額に上っておる人もいるわけでございまして、これらが債権として残ってくるということになってきますと、この確保が非常に難しいわけでございますし、また産業再生を急ぐという面から見てまいりますと、今後これらがさらに大きな問題として出てくる可能性もあるわけでありますから、ぜひとも再検討していただきたいということを申し上げて、次の質問に入ります。
 次の質問につきましては、法務省の方にお聞きをしたいわけでございます。
 社内預金以外にもいろいろな預かり金がございます。これも過去の質疑の中で出ておったわけでありますけれども、いわゆる労働債権であるとか社内預金とはまたちょっと違った趣旨の預かり金がございます。旅行会がありまして、それの積立金でありますとか、互助会をつくって慶弔のための基金を積み立てておく、そういう制度もあります。それからまた、毎月チェックオフして組合に渡します組合費がその中間にあって、企業が倒産したというふうな例で、過去にも、組合費が組合に支払われないという事件が起こったこともございました。それから、民間の保険会社と契約をして生命保険などに加入しておるケースの場合などに、保険料が会社の方にチェックオフされたけれどもそれが払われておらないというようなケースがあるわけであります。
 こういうものについては、一つ一つ、どういうふうなことになるのかということと、それから、私はこういうものは少なくとも社内預金などとは別枠に見て処理するべきではないかというふうに思うわけですけれども、その辺は法務省としてどのようにお考えになっておられるのかということをお願いします。
房村政府参考人 社内預金のほかの、旅行会あるいは互助会、組合費、保険料といったさまざまなものについての扱いがどうなるかという御質問でございます。
 これは、実態もまたさまざまであるようでございます。御指摘の旅行会とか互助会ということになりますと、いわゆる旅行を目的とする旅行会、互助会というような任意団体が徴収して、そこが保管しているという場合も多いだろうと思います。そういう場合であれば、これは会社の預かり金にはなりません。ですから、そこは具体的な保管の態様によるのだろうと思います。会社が預かっているという場合もあろうかと思いますが、そうなりますと、これは預かり金とせざるを得ないということになります。
 また、組合費、保険料等についても、差し引きの形態、保管の形態、こういったものによって具体的な法的構成が異なってくる場合はあろうかと思います。したがいまして、これもあくまで一般論でございますが、会社が預かっているということが徴収の方法とか保管方法から判断される場合、これは現行法でいえば預かり金ということになります。
 そういったものについて、仮に会社が預かっているとして預かり金となった場合に社内預金とは別枠とすべきではないか、こういう御主張でございますが、これについては、社内預金以外の預かり金についても、基本的な性格としては、労働者のものを会社が預かっているという点については共通でありまして、しかも労働債権等の優先権が与えられていない。その債権について、どの範囲で優先的な取り扱いをするかということが今回の改正の内容でございますので、私どもとしては、やはりこれは、預かり金としての法的性質というのは共通でありますので、社内預金、それ以外の預かり金、これを通じて、今回お示しいたしました給料の六カ月分もしくは三分の一という総額の範囲で優先的な共益債権として保護を図るという考え方が妥当であろう、こう思っております。
鍵田委員 社内預金が高額に及ぶ場合にはそちらを優先するとなりますと、今申し上げたような預かり金についてはこの対象にならないということにもなってくるわけでありまして、一つ一つの性格といいますか、そういうものによりましてもう少し厳格に判断をされて、別枠にするなどの方法も必要なのではないかというふうに思いますので、そういう検討もお願いをしたいと思います。
 それでは、厚生労働省の方に、営業譲渡における労働者保護のための法的措置につきましてお聞きをしたいと思います。
 先ほどの平岡委員の質問の中にも出ておりましたけれども、私は、実は労働契約の承継法の審議のときに、労働者保護についての法的措置が必要だという見地から、ぜひとも研究会を立ち上げて、その中でこれをつくってほしいということで質問をさせていただきました。また、その研究会の委員の選任におきましても、これは、いろいろな立場に立ってこういう問題についてのお考えを持っておられる委員の方がいらっしゃると思いますので、やはり委員の選任につきましても十分留意をされてこの研究会を立ち上げてほしいということで質問をさせていただきましたし、そういう立場から附帯決議をつけることにも努力をさせていただいたんですが、そういう法的措置が必要でないというふうな結論がまさか出るとは思っておらなかったわけでございますけれども、そういう結果が出てしまったわけでございます。
 先ほどの平岡委員との議論の中では、研究会の結果が出た、結論に基づいての議論であったんですが、私は、その中でどんな議論があって、どういう経過でそういう結論になったのか、法的な措置が必要だというふうな意見がなかったのかどうか、その辺につきまして、事実関係をひとつお答えいただきたい。どういう形で決められたのか、採決をされて決められたのかどうか、何か委員の中で反対の意見もあったやに私は聞いておりますので、その辺の経緯をお聞かせいただきたいと思います。
青木政府参考人 今まさに委員がおっしゃったように、会社分割制度ができる際の労働契約承継法の国会審議の際の附帯決議で、立法上の措置の要否も含めまして研究会で研究をしていただく、こういうことでお願いをしてまいりまして、ことし八月にその研究会報告がまとめられたわけであります。
 それまでの議論では、法的措置を講ずることを前提に議論するんだという御意見も、先生方複数ございました。一方、営業譲渡の経済的意義から、法的措置を講ずることは適当でないというような意見もございました。活発に意見交換がなされました。
 最終的には全員了承という形で、いろいろな理由から、委員が御指摘になったようなところで、営業譲渡の際の労働契約関係の承継については、法的措置を講ずることは適当でないという提起がなされました。むしろ、円滑に企業組織再編が行われるためには、企業が判例法理を含めた現行の法的枠組みを踏まえまして、労使関係に配慮しつつ対応する、労使間で十分な情報提供が行われることが必要であるといたしまして、企業組織再編に当たって、企業が講ずべき措置、配慮すべき事項等に関する指針を策定して、その周知を図ることが必要であるというふうに提言をされているというふうに理解をしております。
鍵田委員 では、そのことに関連して、私はやはり、確かに労働者保護が強く行われておると営業譲渡がやりにくいという立場の方もいらっしゃることはよく承知をしておるわけでございますが、そういう中にあっても、営業譲渡によって企業を救うということもあり得るわけでありますから、その再建過程では、そういうことも活用しながら、なおかつ労働者を保護する方法というのは法的に必要なのではないかという考え方を持っておるわけでありますが、とりあえず今のところはそういう結論が出ておるわけでありますから、指針を急いでいただきたいというふうに思います。
 特に、これからはそういう営業譲渡などの事案もたくさん起こってくるのではないかというふうに思いますので、一日も早い指針の策定をお願いしたいと思いますが、いつごろできるのか、今どういう問題点が、その指針作成について何か問題点があるのかどうかということについてお答えいただきたいと思います。
青木政府参考人 今申し上げました、この八月に出されました研究会報告に基づいて指針をつくるということで、今、労使それから学識経験者から成る研究会を設けまして検討したいというふうに考えておりまして、年度内を目途に指針を策定していきたいというふうに考えております。
 まずは、現実の企業が講ずべき措置等の指針でありますので、労使の理解、協力も必要でございますので、そういった参加をいただくべく今お話をしているところであります。
鍵田委員 できるだけ急いでいただきたいというふうに思います。
 それでは、次の質問に移りますが、ILOの百七十三号条約につきまして、この批准がまだ日本はされておらないわけでございますが、これの見込みがどうなっているのかということでございますし、これを批准する場合には、特に、関係する法律の整備も必要ではないかと思いますし、関係省庁に対しての働きかけも必要になってくるのではないかと思います。特に、国税徴収法などの改正というふうなことも必要になってくるのではないかと思います。
 そして、この百七十三号条約につきましては三部構成になっておるというふうに承知をしておるわけでありますが、特に第二部の特権による労働者債権の保護という部分だけでも批准を急ぐべきではないかというふうに考えておりますが、それらにつきましての厚生労働省としてのお考えを聞かせていただきたいと思います。
青木政府参考人 まず、ILO百七十三号条約の批准の見込みということでございますが、この条約におきましては、労働債権については、支払い不能前一定期間の賃金債権等の労働債権について、その優先順位を国税、社会保険料などの債権よりもさらに高いものとする、それから、保証機関による保証については、倒産等の場合に限定せず、すべての労働債権について保証機関による保証を行うことを規定しております。
 しかしながら、我が国における各種債権の優先順位、あるいは倒産の場合に労働者の救済を図る未払い賃金の立てかえ払い制度は、今申し上げました条約が求めているものとは異なる内容となっております。このため、この条約については、その内容において我が国の法制度と異なる点が見られることから、批准することは困難であって、慎重な検討を要するというふうに考えております。
 それで、関係省庁への働きかけ、いろいろな法律との調整という御指摘でございますが、賃金等の労働債権の保護を強化するということは大変重要な問題であるというふうに思っております。
 御指摘のように、民法とか国税徴収法等それぞれの実体法によって、労働債権とか租税債権などの各種債権の優先順位が定められているわけであります。このような実体法上の優先関係を前提とした倒産手続における各種債権取り扱いについては、現在法制審議会の中において倒産法制の見直しの中で検討をされているというふうに認識しております。この法制審議会において、厚生労働省としましては、労働債権の保護の重要性について意見を申し上げてきているところであります。今後とも、労働債権保護の観点から、適切な対応に努めていきたいというふうに思っております。
 それで、ILO百七十三号条約の二部についてだけでも批准することは考えられないかというお話でございますが、ILO百七十三号条約の第二部は、使用者が支払い不能に陥った場合における労働債権の保護を目的としておりまして、この条約では、支払い不能前一定期間の賃金債権等の労働債権について、その優先順位を国税、社会保険料などの特権を付与された債権よりさらに高いものとするということを規定しております。
 これは、今申し上げましたように、我が国の現行法制における労働債権の優先順位の定めとは異なっております。このため、百七十三号条約の第二部につきましても、その内容において我が国の法制度と異なる点が見られますので、本条約を批准することは困難でございます。慎重な検討を要するというふうに考えております。
鍵田委員 まあ、困難であるということであって、批准する必要はないということではないように思うんですが、それはそういうことでよろしいでしょうか。答弁はいいです。
 だから、現実の問題として、やはりそういう、例えば企業倒産の場合には、現場において債権の回収を一生懸命やるわけですが、そのときに回収をしようとしますと、まず国税からの差し押さえ、社会保険料の差し押さえを解除してもらって、そして残ったものを回収するということになるんですが、国税や社会保険料が非常に多額に上っておるために、ほとんどが回収はできないというふうな事例が往々にしてあるわけなんです。
 したがって、このILO条約などに基づいて、国税や社会保険料よりも高い先取特権を与えて、そして労働者を保護するということは、やはり政府として必要なのではないか、こういう観点から質問をさせていただいたわけでございます。ぜひともこれにつきましては、困難ではあるけれども努力をしていただきたいと思っております。
 最後に、法務省の方に二問お願いをしたいんですが、あとわずかな時間でございますので。
 今回の更生法の改正の中で、営業譲渡の判断について労組からの意見聴取がなされることになっておりますが、これは実質的に聞きおくだけでもいいという何か意見があるやにも聞いております。事実、他の法律の中でも、意見を聞くという場合には、必ずしも尊重するとかということではなしに、反対であっても何でもいいから、要は意見を聞いたんだという実績さえあればいいんだというふうな解釈をする人があります。そういうことなのかどうか。
 特にDIPなどのところでも、現役の取締役が管財人に選任されるということが今後起こってくるというような場合には、やはり現場のことは非常によくわかっておる労働者の意見を聞く、そしてそれを尊重するという立場になられるのかどうか。これはもちろん裁判所が判断されるわけですが、その裁判所に対して重く受けとめられるのかどうか。その辺について、法務省としてどういう見解を持っておられるのか。
房村政府参考人 御指摘の営業譲渡の許可の場合を初め、今回の会社更生法においては、いろいろな場面で労働組合の意見を聞くという制度を取り入れております。
 これは、御指摘のように、労働組合が会社の内部事情に非常に詳しいということ、また、更生会社の事業の維持、継続ということに関しては労働組合の協力が必要不可欠である、こういうような点から、裁判所が種々の判断を行うときにその労働組合の意見を聞くということを法律で定めたものでありまして、当然のことながら、裁判所としては、その労働組合の意見を重要な資料として十分に尊重した上で判断をされるものと考えております。
鍵田委員 では、最後の質問に入りますが、この労働組合の関与手続につきまして、他の法律にもこういう手法を取り入れる、そういうことをお考えになっているのかどうかということについてお聞きをしたいわけでございます。
 特に、今度の改正案では、手続開始前の労組からの意見聴取でありますとか、財産状況の報告集会を招集しない場合の管財人の選任についての意見を述べることができる旨の労組への通知であるとか、その場合における関係人説明会の期日の労組への通知、財産状況等に関する報告書の要旨を記載した書面の労組への送付というようなことにつきまして、労働組合の関与ということが改正案の中で盛り込まれたわけでございます。
 やはり、最近は民事再生法にも非常に申請が多いというふうに聞いておりますが、この民事再生法にも同じような手法を取り入れられるということは必要なのではないかと思うわけですけれども、それらについて法務省のお考えはいかがでしょうか。
房村政府参考人 今回、会社更生法で取り入れました労働組合の手続関与の中には、民事再生法には存在しないものがあるのは御指摘のとおりでございます。
 同様の規定を再生法に置くかどうかという点でございますが、これは会社更生法と民事再生法、同じ再生を目指すとはいいましても、手続の特質が違います。特に民事再生手続は簡易かつ迅速な手続という点に特色がありますので、今回取り入れた手続関与の規定の今後の運用状況、こういうものを見た上で判断をしたいと考えております。
    〔漆原委員長代理退席、佐藤(剛)委員長代理着席〕
鍵田委員 終わります。ありがとうございました。
佐藤(剛)委員長代理 次に、永田寿康君。
永田委員 きょうは、財務金融委員会から出張をしてきて、金融庁に、今の金融機関の問題とかあるいは今後の話も含めて、ちょっと質問をしてみたいと思います。
 さて、先日、日経新聞の一面に、生命保険会社の予定利率引き下げを可能とするような保険業法の改正を検討しているというようなニュースが流れましたけれども、今のところの検討状況は、金融庁の中でどうなっているんでしょうか。検討しているのか、していないのか、あるいは今後できるかどうかも含めて検討しているのか。その三つの分類しかないと思うんで、簡潔にお答えいただきたいと思います。
伊藤副大臣 お答えをさせていただきたいと思います。
 金融庁が生命保険会社の予定利率引き下げを認める法改正を行う方針を固めたとの報道が一部ございましたが、金融庁がそのような方針を決定したという事実はございません。
永田委員 再三問題になる話ですが、これはやはり憲法の保障する財産権にもかかわる話だというふうに思いますので、ぜひ、まさか違憲の法律をつくることはないと思いますけれども、慎重にやっていただきたいなというふうに思います。
 また、同時に、民主党の方針としては常々、金融機関がこういう契約者との契約をたがえるようなことがあったときには当然経営者の責任を問うというようなことを主張してまいりました。ぜひその点にも配慮を置いた上で、やるんであれば制度をつくっていただきたいなというふうに思います。
 さて、前回、財務金融委員会で質問したことの続きをちょっとやっていきたいなというふうに思っています。
 まず、とんでもない答弁があったのを伊藤達也副大臣は覚えていらっしゃいますでしょうか。もう議事録にも載っていますね。
 金融機関の経営者会議ないしは取締役会などに金融庁の検査官が陪席をするということが金融再生プログラムに書かれておりまして、それはどういうねらいでそういうことをやるんですかというふうに申し上げたら、伊藤副大臣は、リスク管理を強化することだ、それがねらいであるというふうにおっしゃいました。検査官が陪席することによってリスク管理が強化されるという因果関係が私には理解できなかったので、どうしてリスク管理を強化することができるのか教えてくださいというふうに申し上げたら、議事録にもあります、「今そうした点も含めて、検討を実務的にいたしているところでございます。」と。つまり、検査官が陪席することとリスク管理が強化されることの因果関係はこれから検討するというお話でした。その検討は進みましたでしょうか。
伊藤副大臣 財務金融委員会で委員が御指摘をされておりますのは、その法的な権限がない中で何かこうした検査官の陪席というのを考えているんではないかという御指摘だったと思います。
 私どもは、そのときにもお答えをさせていただきましたように、関係の法律に十分留意をしながら、そしてこの検査官が陪席をするという可能性を検討していきたいということで今作業をさせていただいておりまして、まだ検討の作業は続いている状況でございます。
永田委員 質問に真っすぐ答えてください。
 私は、検査官が陪席することによってどうしてリスク管理が強化されるのかという因果関係を質問しているんです。どうしてそういうことにつながるのか、因果関係を私にもわかるように説明してください。
伊藤副大臣 私が過日の委員会でお話をさせていただきましたのは、特別支援という枠組みを前提にしてお話をさせていただきました。
 この特別支援というのは、個別金融機関が経営難やあるいは資本不足に陥った場合に、その危機管理の体制を強化して、そして経済が底割れがないようにしていく、そのために政府、日銀が一体となって万全の対応をしていきたいということでございます。そして、現在の法律の体系のもとで特別支援を受けることになった金融機関に対するガバナンスというものを強化していく、その一環として取締役会などに検査官を陪席させるということを検討して、先ほど御答弁をさせていただきましたように、その関係法律、今の法体系というものに十分留意をしながら、こうしたことが可能かどうかということの検討を進めていきたいというふうに考えております。
永田委員 要するにガバナンスを強化するためだというふうに考えてよろしいのでしょうか、今の答弁の中では。
 しかし、何の権限もない、取締役会や経営者会議で発言する権限すらない検査官が陪席することによってガバナンスが強化されるという考え方は、僕はどうしても理解できないんですけれども、そこをもう少しわかりやすく、そのところに焦点を絞って説明してください。
 特別支援という枠組み全体がリスク管理を強化しようとしているものであることは私にも理解できます。そこの説明ではなくて、どうして検査官が陪席していることによってガバナンスが強化されることにつながるのか、その因果関係を説明してください。
伊藤副大臣 この特別支援の枠組みを使うことによって、先ほどお話をさせていただいたように、政府、日銀が一体的な取り組みによって危機管理の体制を強化していく。そのために、日銀の特融というものを使って底割れを防ぐ、あるいは、場合によっては公的資金の投入ということもあり得る、そういう意味で公的なかかわり合いというものをこの特別支援の枠組みの中で受けることになるわけでありますから、その中でガバナンスというものを強化して、そして、検査官が陪席をすることによって、法令違反等々の問題等が生じないようにモニタリングの体制というものをしっかりつくっていくために検査官の陪席の可能性というものを、現在ある法律の体系の中で関係法規との関係というものにも十分留意をしながら実現することができないかどうかということを今検討させていただいているわけであります。
永田委員 モニタリングの強化ということが今度は出てきたんですけれども、経営者会議とか取締役会というのは、本来ならばあってはいけないことですけれども、役所に知られては困るようなことを話し合う場所だと僕は思うんですね。それは、残念ながらありますよ、大きな銀行ですから、何万人もの行員が働いているわけですから、不正な融資が行われることもあるし、引当金が足らない場合もあるし、役所に知られては困るようなことを話し合うことが多々あるんですよ。そこに検査官が陪席をしたら、僕は逆にガバナンスは弱まるんじゃないかというふうに思うんです。
 その結果、話し合うべきことが話し合えなくなった、そして、銀行の手足が多少縛られてしまった、そのことによって生じた結果について、金融庁は一体どうやって責任をとるんですか。何の権限もない人がそこにいることによって経営に対して影響を与えるということについて、金融庁はそれが正しい道だと思っているんですか。お答えください。
伊藤副大臣 先ほどからお話をさせていただいているように、これは、特別支援という枠組みに入った金融機関に対して陪席の検査官の常駐というお話をさせていただいているわけであります。
 ですので、そこで、委員が御心配されているのは、検査官が同席することによって何か経営のあり方をゆがめるとか、そういうことではなくて、公的な関与を受けている金融機関に対して、私どもとして、しっかりとしたガバナンスを強化していくという視点の中で検査官を常駐させるということの意味というものを考えていきたい。それを、委員が御心配されているように、現行の法規の中でできるのかどうか、関係する法律にも十分留意をしながらこの施策の実現可能性について検討していきたいというふうに思っております。
永田委員 同じところを繰り返すのはもういいですから。特別支援という枠組みがあって、そこに入った銀行はリスク管理を強化するために日銀なども活用してやっていこう、そういう姿勢は僕はもう理解できていますからこれ以上繰り返すことは不要です。そうじゃなくて、経営者会議、取締役会に金融庁の役人が陪席をする、そのことによってどういうような効果をねらっているのかということなんですよ。
 だって、そこで発言することは、当然身内の取締役だけが話している場合に比べて変化が起きますよ。変化しなかったらそこに陪席させる意味がありませんね。陪席させることによって何か変化が起こるから陪席させるんでしょう。どういう変化を起こそうとしているのか、それをまずちゃんと説明していただかないと。
 きょうの報道では、竹中大臣が、銀行に対して過剰な関与はしない、こういうことを明言されています。過剰というのは主観的な判断ですから、どこまでを過剰だというのは人によって違うのかもしれませんけれども、しかし、経営者会議に役人が陪席をするというのは、僕はすごく大きなプレッシャーになると思うんですよ。どんな人だって、始終後ろに警察官がついて回られたら、それは生活に影響を受けますよね。それは、違法なことがあっちゃいけないのは当然ですよ。人間だから違法なことをやっちゃいけないのはそれは当然ですけれども、だけれども、だからといって警察官が常に後ろについていていいというものでもないでしょう。そういう話なんですよ。一体どういうような効果をねらおうとしているんですか。改めて、そこに絞ってお話をしてください。
佐藤(剛)委員長代理 わかりやすく説明してください。
伊藤副大臣 私の説明がうまくないのかもしれませんが、今委員がお話しになられたように、特別支援という枠組みの中に入った金融機関に対して、その金融機関が再生の道筋をしっかり歩んでいけるように、ある意味では日銀の特融を使い、ある場合には公的資金を投入するということになっているわけでありますから、そこで法令違反等の事態が起きないように検査官を陪席させるということでガバナンスを強化するということができないかどうか、そういう意味で検討をさせていただいているということであります。
永田委員 今、法令違反のことが起こらないようにするために金融庁の役人をそこに陪席させる、そういうお話をしました。しかし、法令違反のような行為が行われるのは当然好ましいことではありませんけれども、それを取り締まるあるいはそれを監視したりする権限が金融庁にあるのかというと、僕はそれは微妙な問題だと思うんですよ。
 いいですか。金融庁は、確かに金融機関に対する監督権限を持っています。ですから、健全に、金融システムが破壊されないように金融機関が企業体として経営されていること、運営されていくことは、それはとても大切なことです。そのためにルールをつくり、そして法令などを執行していく立場に金融庁はあると僕は思います。しかし、金融庁がつくったルールに従わないような金融機関があった場合、その違法行為があるかないかを調べたりあるいは取り締まりをしたりする権限は、僕は金融庁の権限の中に含まれないと思うんですけれども、いかがお考えでしょうか。
伊藤副大臣 繰り返しになりますけれども、金融庁が何か法律の枠組みを踏み外してということではなくて、繰り返しになりますけれども、今の、現行法の体系の中で、そして関係の法律に十分留意をして、そしてこの問題の検討をしていきたいということでございます。
永田委員 私の質問は、三回ぐらい同じ質問を繰り返さないと理解していただけないようなんですけれども、いいですか。金融庁は、法令をつくってそれを運用していくことによって金融機関を監督していく責務があると思います。しかし、一たび定めた法律に違反するような行為が行われているかどうかを調べたりあるいは違反者を摘発したりする権限は僕は金融庁にはないと思うんです。それは警察の仕事だと思うんです。法令違反に対して捜査をしたりあるいは法令違反だといって告発をしたりする、起訴をしたりする、そういう権限は、僕は金融庁じゃなくて警察とか検察の仕事だというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。
佐藤(剛)委員長代理 納得いくように答弁願います。
伊藤副大臣 繰り返しで本当に恐縮でございますが、私どもは、今委員が御指摘になられたことも含めて、関係する法令に十分留意をして、現行法の体系の中でこうした方策が可能かどうか、今検討をさせていただいているところでございます。
永田委員 ありがとうございます、委員長。すばらしい委員長の御指摘でだんだん答弁が改善されているかと思ったら、なかなかそうでもないんです。
 本当に、もう、同じことを繰り返されるならば、それは私の質問に答える能力かないしは意思がないというふうに考えてこれ以上の質問をしないということになりますから、気をつけてくださいよ。それは僕の責任じゃありません。僕の質問に対してちゃんと答えることができれば、僕は誠実に議事の運営を進めていきたいと思っています。しかし、何度聞いてもちゃんとまともに答えていただけない、あるいは既に答弁したことを繰り返すだけで時間を浪費しようとしている、こういうことは僕は誠実な態度だと思えませんから、そういうことが今後起こった場合には質問をとめることもあり得ますので、十分留意して答弁するように心がけてください。
 金融機関の経営に対して過剰な関与はしないというようなことをおっしゃっていた。しかも、けさの報道では、竹中大臣は、銀行の国有化も考えていない、このような趣旨の発言をしています。しかし、国有化しないで検査官を陪席させるということは、僕は不可能だと思うんですね。
 これは、要するに、合理的に突き詰めていくと発言が矛盾しているんですよ。まず、商法の改正はしないという答弁が前回の財務金融委員会でありました。商法の改正をせずに金融機関の経営者会議に検査官を陪席させるというのは、僕は事実上不可能だと思います。だけれども、それを可能にするのは銀行を国有化した場合なんですね。国有化して、役員なりなんなりに金融庁の意向を受けて動く人を送り込めば、逆に、取締役会から金融庁の検査官を陪席させたいというふうに呼ばせることができるわけですよ。だから、国有化すれば僕はできると思います。だけれども、国有化もしないと言っている。
 一体どういう方策でこの陪席ということをやろうとしているのか全く見えないんですけれども、どういう仕組みでやろうとしているんですか、説明してください。
伊藤副大臣 まさにその仕組みのところについて、特別支援の枠組みそのものについても今検討をいたしているところでございます。その中で、繰り返しになりますけれども、今ある現行法の体制、関係の法律に十分留意をして、先ほどお話をさせていただいているように、危機管理体制の強化、そして、経済の底割れが起きないような形でこの仕組みというものを導入していきたいというふうに思っております。
永田委員 要は、この金融再生プログラムというのはその程度の技術的な検討も終わっていないで、ただ単にぽんと投げて、これからこういうことを検討するんですよと言っている、そういう位置づけのペーパーなんですか。どういう位置づけのペーパーなのか。
 だって、これは金融機関は物すごく注目しているわけですよ。これを見て、工程表が出る前に、不良債権処理を上積みしようということで、きのうの銀行の中間決算でも既に積み上げをしているわけですよ。株価にも少なからぬ影響が出ているわけですね。しかし、何か副大臣の話を聞いていると、法的な、技術的な検討もまだ終わっていないようなものだ、こういうお話なんですよ。ということは、これはその程度の軽い位置づけだということを金融庁がおっしゃっているというふうに考えていいわけですか、教えてください。
伊藤副大臣 この再生プログラムは、いわゆる基本的な方向性を打ち出すためにこの再生プログラムというものを作成をさせていただき、公表をさせていただいたわけであります。
 今、委員が御質問されておられる特別支援というのは、先ほどから御説明をさせていただいているように、危機管理体制を強化していく、そして、経済の底割れを起こさない、そのために日銀と政府との協力体制というものをしっかりして、そして特融というものを使って流動性を確保し、必要があれば公的資金を投入していくということで、この枠組みの方向性をこの中に打ち出させていただいたということでございます。
永田委員 いいんですよ。何か方針を、金融システムが破綻しないようにリスク管理を強化して、日銀の特融なども視野に入れながら、景気の底割れをしないように万全をとっていく、そういう話だったら、その数行だけ書いてあれば、ああ、そういうことなんだろうなと僕らも思うけれども、具体的な方策が書いてあるわけですよ。そのうちの少なからぬ部分が実現可能かどうかも検討できていないということを先ほどから、今検討しているということは、まさに検討が終わっていないということですよね。先ほどから繰り返し繰り返し、僕はもうこれ以上繰り返す必要はないと言っても繰り返したがるぐらいに検討はしているとおっしゃっているわけですから、きっと検討はまだ終わっていないんでしょう。
 こんな、技術的な検討が終わっていないようなものを世の中に投げていいんですか。それは僕は非常に無責任な姿勢だと思うんですけれども、実現できないものが含まれていた場合には、金融庁はどういうふうにして責任をとるんですか。
伊藤副大臣 今お話をさせていただいたように、この再生プログラムは、基本的な方向性を打ち出させていただいたものであります。そして、この特別支援というのは、政府と日銀が一体となって万全な危機対応をしていくということで、この枠組みを整備していきたいという考え方を打ち出させていただきました。
 その整備をしていくに当たって、具体的に、日銀の特融による流動性の対策をしていく、必要な場合には預金保険法に基づく公的資金の投入をしていく、そして、検査官の常駐的派遣ということを検討していきたいということでお話をさせていただいているわけであります。
 なぜ検査官を常駐的に派遣をさせるのかということにつきましては、先ほどお話をさせていただいているように、ガバナンスをしっかり強化していくという枠組みの中で、ある意味では公的な関与をしながら銀行の再生というものを実現していくわけでありますから、その中で、こうした派遣を通じて実現をしていくことが関係法規の中でできるかどうかということを今検討させていただいているということでございます。
永田委員 聞いていないことを何度も繰り返して時間を浪費するのはもう本当にもったいないと思うんです。では、違う部分に行きます。
 僕は、前回の財務金融委員会の質問の最後に、これは通告とはちょっとずれますけれども、多分、副大臣も相当な関心があってお聞きになっていたと思いますから聞きますけれども、銀行が持っている国債の額がとんでもない額に上っているということを僕は金融担当大臣に、竹中さんに指摘したんですよ。
 つまり、どういうことかというと、今、八十兆の国債を金融機関が保有しているわけですよ。株も大量に持っているわけですが、株価がマーケットで上下する、それによって自己資本の額が変わる、変わることによって銀行の経営に影響が出るようなことがあってはいけないということで、株価の持ち高は規制をしているわけですよ。しかし、国債も価格が上下するんですね。株価だけを見ていていいのかという問題があって、株価は価格が上下するから余りたくさん金融機関が持っているのはけしからぬということであれば、国債も余りたくさん持っていてはいけないんじゃないかというふうに僕は思うんですね。だって、株価の変動率と国債の価格の変動率というのは、実はそんなに変わらないんですよ。
 そういうことを考えると、国債の持ち高はある程度規制するべきだと僕は思うし、もっと言うと、不動産を担保にする融資は法律で上限が決められていて、株式を持つ上限も法律で決められるという話になれば、青天井で金を突っ込める資産は国債だけなんですよ。だから、国債をあんなに買っているわけですね。しかも、リスクウエートもゼロですよ。
 そこで、僕は前回、竹中大臣に、これはおかしいんじゃないですか、金融マーケットがゆがんでいて国債だけこんなに買えるのはおかしいんじゃないですかというふうに申し上げたら、確かに不健全な結果になっている、不健全な状態にあるということを竹中さんは認めました。つまり、今の制度を続けていれば、銀行が、株でもなく、土地でもなく、あるいは民間貸し出しでもなく、国債を買いたくなるのは、合理的な判断の結果なんですよ。それは、谷口副大臣もたしかおっしゃっておられたと思いますよ。
 そこで、そういう合理的な判断の結果招いている状態がある。その状態を竹中大臣は、不健全な状態だと言いました。つまり、僕はこれは制度が不健全なんじゃないかと思っているんですね。だって、制度があってその結果合理的な判断をしたら、そうしたら不健全な結果が生じたんだったら、それは制度が不健全だと言わざるを得ない。
 この不健全な制度を直すつもりはありませんかという質問をしたいんですけれども、いかがでしょうか。通告にないので、それはルール違反だというんだったら引っ込めてもいいですけれども、お任せします。
伊藤副大臣 今の問題は、それぞれの金融機関のリスク管理の判断の中で対応されているというふうに思います。
 恐らく、竹中大臣が御発言をされましたのは、これからの金融機関に果たしていただきたい役割の中で、金融機関本来の役割というのはやはり信用創造をしていくことだ、資金仲介機能をより強化していくということにやはり金融機関の最大の役割があるんだろうというふうに思います。ですから、そういう機能を磨いていっていただきたい、また、それが実現をしていかないと、より強化されていかないと、この経済構造改革を支えていく金融のこれからの姿にならないのではないか、そういう思いの中で大臣は御発言をされたのではないかというふうに思っております。
永田委員 事情はわかっているんですよ。ですから、それはそれでいいんですけれども、問題は、今ある制度に従って合理的な判断をしたら不健全な結果が生まれているわけですから、それは制度が不健全だというふうに判断するのが僕は普通だと思うんですね。
 その制度を健全な形に戻していくというような考え方はありませんかというふうに申し上げているんです。あるいは、不健全な制度を不健全なまま放置するおつもりなんですかということなんですけれども、いかがでしょうか。
伊藤副大臣 そういう意味では、今回の再生プログラムが、今お話をさせていただいたように、金融機関の信用創造をしていく機能、資金仲介機能というものをより質の高いものに上げていただきたい、強化をしていただきたいということで再生プログラムを公表させていただいておりますし、私たちの思いもそこにあるわけでありますから、そうしたことを通じて、資金仲介機能の強化を実現していっていただきたいというふうに思っております。
永田委員 でも、それは無理なんですよ。だって、国債に八十兆からの金が張りついているんですよ。これを融資に回そうともしないわけですよ。それを合理的なポートフォリオの判断の結果であるというふうに金融庁はとらえている。
 確かに、今ある現行制度の中だったら、銀行がそういうふうに走るのは当たり前ですよ。だって、リスクウエートがゼロなんだもの。貸し出しをしたら少なからぬリスクウエートがかかってくる。それは、中小企業とか、要するに相手の財務内容とかにもよりますけれども、少なからぬ部分がかかってきちゃう場合もあるわけですよ。一体、今の環境の中で、リスクウエートがゼロの資産と、リスクウエートがある資産、ゼロではない資産とどっちの方を選ぶかといったら、それは銀行は当然国債を選びますよ。
 だから、金融仲介機能を発揮してほしいというならば、むしろ国債に余り現金を張りつけていちゃいけない、金融機関は余り国債を買っちゃいけないというような方向に歯どめをかけていかなきゃいけないんじゃないのかなというふうに思うんですよ。
 それは、何もリスクウエートをいきなり一〇とか二〇とかにしろという話じゃありませんよ。例えば、一金融機関当たり自己資本の何%までは国債を持ってもリスクウエートはゼロにしてあげるけれども、そこから先は一〇にするよとか、そこから先は二〇にするよとか、そういうように段階的に引き上げていく方策もあると思うし、僕は、青天井で国債を持っていて、幾ら持ってもリスクウエートがゼロだというのは放置できない状態にあるというふうに思うんですけれども、いかがお考えでしょうか。
伊藤副大臣 今の委員の御指摘は、私どもとして受けとめさせていただきたいというふうに思います。
 ただ、私ども、現在の時点で、何か委員が御指摘のような形で制限を加えるとか、あるいは規制をしていくということは考えておりません。私どもからすれば、やはり不良債権問題を正常化して、そして、金融機関がリスクをとって、リスクに対応して貸し出しをしていく、信用創造していく、そういう方向にぜひ向かっていただきたいというふうに思っております。
永田委員 では、別の切り口から質問したいんですけれども、株は保有できる上限を法律で決めたわけですよね。実際に証券等買い取り機構みたいなものをつくって、あるいは日銀が銀行から株を買うなんということも言っているわけですよ。一方で国債は制限を加えていないんです。
 株の性質と国債の性質を分析した結果、どういうような性質が違うから国債は制限をしない、株は制限をするという制度上の差がついているのか、どういうような性質が違うからというふうに説明しているんでしょうか、教えてください。
伊藤副大臣 これは、基本的にはそれぞれの金融機関のリスク管理の中での判断がなされているわけでありまして、委員は、今回、株の持ち合いという日本の独特の構造の中で、株に対する制限をするということをやっているんだから、国債についてもというお話だと思いますけれども、私どもは、今の段階では国債についてどうこうするということは考えていない。
 そのことよりも、不良債権問題というものを何としても正常化させていく、そのために、金融と産業の一体的な再生の中でこうした問題を解決していきたい。そのことによって金融機関に本来の審査能力というものを強化していただいて、リスクに十分対応できるような経営のあり方というものに向かって経営の改革をしていただいて、信用創造というものをぜひ今まで以上に発揮していただきたいというふうに思っております。
永田委員 僕も、金融仲介機能はしっかり磨いていただきたいなというふうに思うし、もう少し中小企業に対する貸し出しをふやしてほしいなとは思う。だけれども、やはり国債の持ち高を規制するつもりはないとおっしゃるのはちょっと幾ら何でも僕は暴論だと思っています。
 郵貯、簡保の資金が、何百兆の単位で国債を買ってくれるわけですよ。あるいは、銀行も制度上青天井で国債を持てるようになっているわけですね。そういうように、国債というのは、経済学の世界でいえば、非常に有利な資産、要するに、買ってもらいやすいという意味で有利な資産というふうに制度上なっているわけですね。
 だから、よく役所は、今でも金利がこんなに低いんだから、国債の利回りが低いんだから、それはつまりマーケットはもっと国債を買いたがっているんだというような説明をしますけれども、そうじゃなくて、こんなにもたくさんの国債が円滑にマーケットで消化されてしまうほど金融マーケットがゆがんでいるんですよ。株や土地と比べて、国債というのは違った取り扱いをされているということなんですね。それを放置しておくというのは、僕はちょっと暴論だと思います。
 今すぐにやれというのは大きな制度の変更になりますからちょっと無理かもしれませんけれども、いずれの日か必ずそれをやらなきゃいけない課題であるというような認識を持っていただくぐらいの答弁をぜひいただきたいんですけれども、最後に一言いただけないでしょうか。
伊藤副大臣 ある意味では、日本の金融市場というものをどういう形でより活性化させていくかということについては、やはり総合的な視点が必要だというふうに思っております。
 今の段階では、大変恐縮ですが委員と意見が必ずしも一致しないというところがございますが、委員から重ねて御指摘をいただいておりますので、私どもとしましては、そうしたことも受けとめていきたいというふうに思っておりますが、繰り返しになりますが、現時点でそうした何か国債に対して制限を加えるということは考えておりません。
永田委員 全く通告もない質問に誠実に対応していただいた渡辺君を初め先輩方には、本当にありがとうございました。これで質問を終わりたいと思います。
佐藤(剛)委員長代理 午後一時十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時六分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時十九分開議
佐藤(剛)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。山花郁夫君。
山花委員 民主党の山花郁夫でございます。
 午前中の質疑の中でも、会社更生法の関連で、労働債権の保護についての議論がございました。
 そこで、厚生労働省にお伺いしたいんですけれども、賃金確保の手段として賃金不払い罪というものがございますけれども、この賃金不払い罪での送検事件数は年間どれぐらいでしょうか。また、ここ十年でどれぐらいの推移をしているのでしょうか。全国の事件数であるとか、あるいは東京労働局管内の件数とか、おわかりになればお願いします。
青木政府参考人 賃金不払いに関する送検件数は、平成十三年、一番最近で、全国で五百八件、東京労働局では十五件ということになっております。
 それで、過去十年間の状況でございますけれども、平成四年から全国で順次申し上げますと、百十四件、二百四十二件、二百五十三件、三百十二件、三百二件。平成九年からは二百九十六件、三百五十二件、四百一件、四百八十六件、そして平成十三年、五百八件ということになっております。
 それから、東京労働局では、平成四年から四件、十一件、十一件、十六件、十件。平成九年からは十八件、十七件、五件、八件、そして平成十三年、十五件という状況になっております。
山花委員 平成四年が百十四で、平成十三年が五百八ですから、大変ふえてきているわけでありますけれども、厚労省としては、この賃金不払いの事案について、労働者の権利救済の観点からどのような態度をとるべきであるとお考えでしょうか。
青木政府参考人 賃金不払い事案については、労働者及びその家族の生活にとっては非常に大きな影響がございますので、従来から厚生労働省としては情報の早期把握に努めております。そして、労働基準法に照らしまして問題が認められる事案を把握した場合には、その是正に向けて必要な指導を行うなど、速やかな解決に向けて的確かつ迅速な対応に努めているところでございます。
 それから、行政指導にとどめるべきでない重大かつ悪質な法違反については、司法処分を行って、厳正な対応を行っているところであります。
山花委員 法務省、検察庁にお伺いしたいと思います。
 賃金不払い罪での起訴率というのがほかの犯罪に比べるとやや低いように感じられるのでありますけれども、これは一体どういう事情によるのでしょうか。
 また、労働基準監督署から賃金不払い罪での送検があった場合、厳正に処理すべきと考えますが、いかがでしょうか。
樋渡政府参考人 お尋ねの点につきましては、検察におきまして、一般的に賃金不払い事件の起訴に消極的ということではございませんで、各事件ごとの具体的状況にかんがみ、法と証拠に基づいて厳正に対処していると承知しております。
 全体的に、道交法を除く全刑事事件の起訴率は、今覚えておりますところで大体二十数%弱、言いかえますと、四分の三は不起訴処分になっている。これは、我が国には起訴猶予制度があるわけでございまして、各般の事情、事件ごとの事情に基づいて検察官が処理しております関係で、必ずしも起訴をしていないから消極的だとか、そういう対応にはなっていないというふうに思っております。
山花委員 賃金確保の観点からすると、賃金不払い罪というのは、払えという促進の面からすると一つの制度だと思いますけれども、これがすべてではないと思いますし、また実際払えないケースもあるわけでありまして、このために賃金の立てかえ払いの制度というものがあります。
 厚生労働省にお伺いしたいのですけれども、会社が倒産して未払いの賃金であるとか退職金がある場合、あるいは賃確法に基づく賃金立てかえ払いの処理がおくれているというケースの話も聞きます。特に法律上の倒産でないようなケースですけれども、私が聞いたケースですと、六カ月ぐらいかかったというケースもあるようであります。賃金四原則とも五原則ともいいますけれども、確定日払いであるとかそういった趣旨からすれば、やはり早急に立てかえ払いについても処理すべきであると思いますが、実際に立てかえ払いがなされるまではどれぐらいの時間がかかるものなんでしょうか。
青木政府参考人 今委員まさにおっしゃったように、事案により状況はさまざまでございますので、一概には申し上げられませんが、労働福祉事業団に申請がなされてから支給されるまでに要する時間はおおむね一カ月から三カ月程度ということになっていると思います。
山花委員 ところで、今、会社更生法の審議をしているわけですけれども、更生法のケースでも破産手続に移行するケースがございます。そこで、破産宣告があった場合、例えば賃金立てかえ払いの請求書のペーパーがありますけれども、そこの賃金の額の証明については、もちろんそれは両者が書くケースがあるのですが、一般論として申しますと、破産手続に移行したケースでは破産管財人が使用者たる立場に立つと承知をいたしておりますので、賃金の証明については破産管財人の方が書くというふうになると思うのですが、そのような理解でよろしいのでしょうか。
青木政府参考人 破産宣告があった場合の立てかえ払い制度に基づく証明書、未払い賃金の額の証明は、おっしゃったように、原則として破産管財人が行うということであります。
山花委員 これはこの委員会でも今まで、破産管財人がいろいろな人がいて、人を得ればいいんだけれども、中にはちょっと困った人もなんという話も出てきたような記憶がございますけれども、中にはやはり困った人がいるケースもあって、そういうときにはなかなか証明書の記載をしてくれないというケースがあるようです。
 これも私の耳に入っているところでは、例えば、破産管財人が証明をするのに、破産宣告があって三カ月もたってからやっと書いてくれたというケースがあって、これではいかにも遅いと思われるのですけれども、こういったケースについてはどういう対処をすればいいのでしょうか。
青木政府参考人 仮に証明事項の一部または全部について破産管財人の証明がなかなか受けられないというような場合であっても、これにかえまして、その労働者の申請に基づいて労働基準監督署長が必要事項の確認を行うということといたしておりますので、そのような方法で対応ができるかと思います。
山花委員 一般論としてはそのとおりだと思いますが、ただ、監督署の方でもぜひ調査のところで御配慮いただきたいのは、これは申し上げるだけにしておきますけれども、労働者の賃金というのも実はよくわからないケースがあって、というのは、例えば、残業をしたかしなかったかということについて、自分自身ではそれが認められているのか認められていないのかはっきりしない、そういったケースもあるわけで、そうすると、一体幾らかということはむしろ労働者側はよくわからないケースというのは結構あるわけですよ。なので、その点について、やはり本来であればもともとの使用者で、破産後は管財人ということになるんだと思うのですけれども、その方にしっかり調査をしていただきたいと思いますし、また監督署の方も、なかなか管財人がやってくれないケースではしっかりそこは調べてやっていただきたいと思います。
 最高裁にお伺いしたいと思いますけれども、第一東京弁護士会が編集いたしました「破産管財の実務」という本があります。この本には、東京地方裁判所民事二十部裁判官の指導を受けたという記載がありますけれども、これはそのとおりでしょうか。
千葉最高裁判所長官代理者 委員御指摘の書物の前書きには、東京地方裁判所民事第二十部の裁判官には一方ならぬ御配慮をいただいたという記載がありますが、具体的にどのような関与をしたかについては把握してございません。
山花委員 それはそれでそういうことなんだと思うのですが、ただ、この本には、破産管財人は団交に応じなくてもいいような旨の注釈がされているのですけれども、どうも実際に出ている命令等と比べますと、ちょっと違うのかなと。
 確かに、最高裁で類似のケースで否定した事案があるのはあるんですが、それは具体的なケースで、この事案ではだめよという話をしたということだけでありまして、実際の実務と取り扱いが違うような気がしております。
 また、仮にそれに書いてあったとしても、これは仮定の話ですので、裁判所の判事の方がそれについて指導して、編集の際それでいいというアドバイスをしたとしても、それがほかの裁判体や裁判官を拘束するものではないと承知をしております。
 ちょっと意地の悪い聞き方かもしれませんけれども、破産管財人は団交に応じなくてもいいというような文書とか書籍、こんなものを最高裁が頒布するなんということはないですよね。指導したことはないということを明確にお答えいただきたいと思います。
千葉最高裁判所長官代理者 我々で把握しているところでは、そのような書籍等を裁判所が公式に頒布したということはございません。
山花委員 最高裁さん、もう結構です。
 厚生労働省にお伺いをしたいと思います。
 今の関連なんですけれども、会社が破産宣告を受けたようなケースで、労働者の解雇問題であるとか労働協約の履行問題、あるいは賃金や退職金の支払いなどにつきまして破産管財人に団体交渉の命令が出ているケースがございますけれども、この点については把握をされていますでしょうか。
青木政府参考人 御質問の件につきましては二つあると存じております。
 一つは、破産会社において労働組合や労働者が存在する場合、破産管財人は財産管理を行う限度において労働者の労働関係上の諸利益に対して実質的な影響力ないし支配力を及ぼし得る地位にあることから、使用者と解することが相当であり、団体交渉に応ずべきであるということが昭和五十九年、大阪地労委から例として出されております。
 また、破産宣告前になした解雇の撤回等を求めて団体交渉を求めた場合、破産管財人は、団体交渉応諾義務を含めまして、その職務権限の範囲内で破産会社の地位を引き継いでいるものと考えられ、解雇等の問題は経済的、管理的な問題に属するので、破産管財人は団体交渉に応じるべきとされた例が徳島地労委から昭和六十三年に出ております。
山花委員 今も御説明があったと思うんですけれども、団交の相手方というのは、破産手続に移行する前であれば、もともと会社が法人格を持っているわけですから、当然使用者と、組合があるケースでは労働組合という形になり、破産手続に移行して破産管財人にすべての権限が移行したケースでは、実際は労働法の世界では破産管財人が使用者たる立場に立つものだと私は理解をしているんです。
 そこで、今お話がありました田中機械事件などでもそうなんですけれども、破産宣告以前の退職や解雇であっても、例えば退職金や解雇予告手当が未払いであるというようなケースで、本来であれば、未払いのものについては恐らく団交の対象とならないのでありましょう、そもそも払わなきゃいけないということでありますから。ただ、そもそもその未払いのお金が、労働債権があるかどうかということについて争いがあったり、つまりは存否についての争いがあったり、あるいは未払い賃金があるということは確定しているんだけれども、その支払いの方法、例えばもう破産手続に移行していますから、配当条件とかそういうことについて事実上交渉の過程では破産管財人に団交のような状態になるケースがあるわけでありまして、田中機械事件なんかもそれに類する事件であったと思います。
 今おっしゃいましたように個別具体的にはいろいろなケースがあると思いますけれども、一般論として伺いますけれども、破産管財人に団交の義務があるというような一般的な理解でよろしいでしょうか、厚生労働省。
青木政府参考人 破産宣告前の事案といいますか、未払い賃金等のものについては、破産法に基づく手続によりその後処理されることになりますので、その手続によらないで、破産管財人として労働者との話し合いによって処理することはできないわけでございますので、一般的には破産管財人に団体交渉の応諾義務があるとするのは難しいのではないかというふうに思います。
山花委員 もう一回、ちょっとそこのところを確認したいんですけれども、個々の事案で実際地労委などで認められているケースもあるんですが、一般的にということではなくて、個別の事案に当たったときに団交義務があるケースがあるというお話になるんでしょうか、ちょっと確認をお願いします。
青木政府参考人 一般的には困難であると思いますけれども、全くないかというとそうとも言えないという意味で、委員おっしゃったとおりだと思っております。
山花委員 では、そうしたら、一般的には難しいということであれば、少し個別の話をさせていただきたいんです。
 先ほどの御答弁の中には、破産宣告以前の解雇が争われているようなケースという御指摘がありました。そうであるとすると、ちょっと破産宣告後の話をしたいんですけれども、破産管財人が解雇したというケースでは、その解雇は団交の対象となりますか。
青木政府参考人 破産管財人は、破産財団との間に労働関係が存在する労働者がその破産宣告後における労働条件に関して団体交渉を求めた場合には、使用者として団体交渉応諾義務があるものと考えております。
山花委員 もう一点伺いたいと思いますけれども、破産宣告前の会社との労働協約というものがありますけれども、この労働協約に破産管財人は拘束されると理解してよろしいでしょうか。
青木政府参考人 おっしゃるとおりだと思います。
山花委員 法務省にお伺いしたいんですけれども、今度は破産管財人の問題について伺います。
 破産手続に移行するときに、債権者が裁判所に対して破産債権の届け出ということを行いますよね。そうしますと、破産管財人の方はどういった届け出があるかという紙が手元に来るわけです。そうしますと、破産管財人はそこで債権調査というものを行いまして、本当にあるのかどうかとか、あるいはその中身について点検をするわけですけれども、その債権調査期日というのが、裁判所で行われるときというのは、大体第一回の債権者集会というのとあわせて行われるものと理解をしております。
 そこで、通常はその場で破産管財人が届け出を見て、これは認める、認めない、認めないと言ったもの、あるいは認めると言ったものに異議が提起されたりとか、その後のことはありますけれども、一回そこで振り分けを管財人自身はするわけです。そのときに、これは労働債権だけの話ではないですけれども、あえて労働債権というテーマでやらせていただきたいと思いますけれども、破産管財人は届け出がなされました賃金などの労働債権についても調査する義務があると理解してよろしいですね。
房村政府参考人 御指摘のように、破産管財人は、破産手続で債権の調査期日に届け出がされました債権の存否あるいは内容について異議を述べることができるとされております。
 当然、その前提といたしまして、破産管財人としても、債権者が提出した資料及び自己が有している資料、こういったものを調査いたしまして、必要があればさらに調査をした上で、債権の存否または内容についての調査を行うということが制度上予定されていると考えております。
山花委員 先ほども、破産管財人が証明書を記載しない場合どうするんだという質疑をちょっと聞いておられたと思うんですけれども、同じような話がありまして、労働者側に労働債権の届け出についての立証の資料というのがないことがあるわけです。
 普通に働いていて、ある日突然会社がつぶれちゃったなんという話を聞くわけです、あえてつぶれたと申しますが。つまりは、普通に働いている人は、それが会社更生なのか民事再生なのか何だかわからないです。つぶれちゃったということで、お金を払ってもらえるのか、そういうことになったときに、よっぽど、タイムカードか何かを自分でコピーして、あるいは出勤表なんかを全部コピーして手元で持っていて、自分の本来の給与額がこれぐらいで、残業の申請もすれば会社は普段これぐらい認めてくれていて、こういう言い方は微妙ですけれども、やった分は本当は払わないといけないですから、ということがはっきり手元に資料があればいいんですけれども、普通はそこまでやっていないですよね。
 よっぽど途中で、何か組合からこういうことをやった方がいいぞという話があったり、あるいは弁護士さんがついていたりすればやるでしょうけれども、普通は途方に暮れてどうしようという状態でずるずるといってしまいますから。後から弁護士さんなんかがついてちゃんと手続をやってくれるということになっても、今月本来もらうべき金額は一体幾らだったんだろうかという資料が手元にないことが多いわけです。
 そうすると、本来であれば、逆に破産管財人の立場からすれば、そういうものを持ってきてくれれば、届け出について、ああ、さようですかと認めやすいんですけれども、ないケースというのもあるわけですね。
 少し命題として置きかえて質問しますが、労働者が労働債権の届け出をするに際して、立証資料というものを添付する必要があるでしょうかというのが一点。そして、今申し上げましたように、実際はないケースが多いわけで、そういう場合にも労働者は立証資料の添付をしないと認めてもらえないという話になるんでしょうか。
房村政府参考人 破産法では、御指摘のように、債権を届け出る場合に証拠書類を添付するということを求めております。
 しかしこれは、手元にある、提出できる証拠書類を添付しろということを法は予定しているわけでありまして、御指摘のような証拠書類がない、こういう場合には添付のしようがありませんので、そういう場合に添付をしないからといって届け出が無効になるということはありません。添付なしの債権の届け出ももちろん有効でございます。
 それから、そういう証拠書類がついていない債権についての扱いですが、これはもちろん、証拠書類があればそれを検討して容易に認否ができますが、ない場合であっても、ないというだけで否認するということは考えられないわけでありまして、破産管財人としては当然、会社を管理しているわけでありますので、その管理している会社にある資料で判明する限り認められるものは認める、こういうことになろうかと思います。
山花委員 つまり、立証資料の添付がなくても、ないからといって破産管財人はそれだけで債権届け出を認めないという措置をしてはいけないのであって、破産管財人の職務として調査を行うべきだという御答弁だったと思います。
 今回、ちょっとこの問題ではっきり確認をしておきたかったと申しますのは、ここのところ、こういう破産手続というのがふえてきている反面、どうも管財人がそういう職務になれていない方も結構いらっしゃるやに聞いておりまして、誠実にやってくださっている方はもちろんたくさんいらっしゃるとは信じたいんですけれども、そうじゃないケースもあったり、あるいは今申し上げましたように、労働債権の届け出があって、資料を持ってこいというようなことをむしろ管財人から弁護士さんに言うケースがあるんですね。
 一応紹介をしますと、つい最近でもあったんですけれども、前略ということで、破産株式会社、名前は伏せますが、仮にS社とします。「Sの破産管財人として以下のとおり御連絡いたします。平成十四年五月二十八日付で破産債権届け出書を提出されていますが、退職金の基準となる在職期間がいつからいつまでで、かつ数式の根拠を資料(退職金規程等)を添えて書面でお送りください。」ということで、退職金規程なんてそんなのは会社側が本来持っているものだと思うんですけれども、「なお、破産会社の従業員は、いずれもS厚生基金に加入しており、退職金の支給は前記基金によってすべて賄われることが予定されており、これまでだれ一人として退職金についての債権届け出をされていませんでした。しかるに、今日、貴殿に限って債権届け出をされたのはなぜか、その理由をあわせて、同書面にて御説明お願い申し上げます。」と。
 何か随分偉そうな感じもするんですけれども、本来はこうではなくて、破産管財人の方で調べていただく。個々のケースもあるでしょうから、持っていれば出してちょうだいね、そういう協力をしましょうという話とは別に、ないときにここまで言うというのはおかしいと私は思いますので、ちょっと今確認をさせていただいた次第であります。
 もう一点、少し細かい話ですけれども、厚生労働省の方にお伺いします。
 破産宣告がされて労働者が失業したとします。失業保険を受給するために離職証明というものが必要になりますけれども、このための証明書は、先ほどの立てかえ払いのときの話に近いんですけれども、これも破産手続に入ってしまって、職安に行って三点セットを出してくださいと言われて、後で慌てて、あ、離職証明が必要なんだというケースがあるようですけれども、この証明書は破産管財人が記載すべきものと理解してよろしいでしょうか。
新島政府参考人 雇用保険の離職証明の提出の関係でございますけれども、破産管財人が実務上は法人の経営権を引き継ぐということでございますので、破産管財人が行うことになるということでございます。
 さらに、手続がおくれている場合の取り扱いでございますが、これは、速やかに関係書類を提出するよう指導するということにしております。
 さらに、指導したにもかかわらず作成が行われないというケースもあろうかと思いますが、こういう場合には、労働者から公共職業安定所に対して確認の請求ができます。この請求に基づきまして、公共職業安定所長が調査をして確認をする。それをもって離職票を作成するという手続になっております。
山花委員 時間が参りましたので、ちょっと要望だけ申し上げておきます。
 会社が倒産した場合に、本当に賃金の確保というのは、午前中の質疑の中でも多くの委員の方が指摘されておりましたけれども、国税債権とかその他の債権にも優先され、最後は本当に早い者勝ちの中で落ち穂拾い的にやっていくしかないのが破産の実務で、その中で、本当に破産管財人がちゃんと一生懸命やってくれる方であればいいんですけれども、労働債権というのはほかの大口のところに比べると小口ですから、どうも後回し後回しにされたり、証明書の記載などについてもどうも面倒くさがられたり、そういうケースが多々あるようでございますので、特に厚労省は、監督署などについても今後ともしっかりと御指導いただきますようお願いを申し上げまして、質疑を終了させていただきたいと思います。
 ありがとうございました。
佐藤(剛)委員長代理 次に、藤島正之君。
藤島委員 自由党の藤島正之でございます。
 法案の内容に入る前に、法務大臣の見解をもう一度確認しておきたいと思います。
 実は、二十三日の新聞に、「革手錠され暴行」ということで、また高松刑務所の件が出ているんですね。ちょっと読んでみますと、「「監獄人権センター」は二十二日、東京都内で会見し、高松刑務所を十七日に出所した元受刑者の男性が、刑務官ら十人に対する特別公務員暴行陵虐致傷容疑の告訴状を高松地検に郵送した、と発表した。刑務所内の待遇改善を求める手紙を同センターに送ったことで目をつけられ、革手錠による暴力で全治数カ月のけがを負った」と。証拠写真も公開しています。おなかのあたりをけがしている写真なんですけれども。「告訴状によると、男性は昨年六月に待遇を相談する信書を同センターに送り、刑務官らから何度かそのことで責められる発言をされた。同十月四日、別の受刑者とのトラブルを理由に保護房に連行され、「とことんやってやる」などと言われて革手錠を締め付けられ、数人がかりで床に落とされた。革手錠の使用は二十六時間半に及んだ」「約五カ月後に高松地裁から認められた証拠保全手続きで撮影された写真には、けがの痕跡が残っている。」写真ですけれどもね。「男性は十分な治療も受けなかったといい、現在も片足を引きずるなどの後遺症があり、国家賠償請求訴訟を年内にも起こす予定」だ、こういうことなんですけれども、若干割り引いたとしても、これは相当なものだなという感じがするんですね。
 先般も御指摘しましたけれども、神戸刑務所長の件があったんですが、またこういうのが出てきておる。こうしますと、今もう立て続けに三件出ているんですが、全国にこういうことが蔓延しているのかなと想像せざるを得ないような、そういう感じが実はするわけですね。
 全く密室の中なものですから、人間関係というのは天と地みたいな差があるわけですね。つい最近、神奈川県警の捜査関係で暴力団の被疑者が自殺したという話があって、自殺じゃなくて警察官によるものじゃないかという話があって、民事裁判ですけれども、結局、裁判所は、警察がやっていることは何をやっているのか全くわからない、信用できないということで、まあ折衷的な判決なのか、要するに、警官による不意な暴発というような表現なんですが、本当のところは暴発じゃなくて射殺だったのかどうか、よくわかりませんけれども、要するに、密室の中でやられているわけですから、相手といいますか、国民側に非常に不利な状況になる。しかも、権力で、いろいろな手段があるわけですね。そうなりますと、この刑務所の問題も同じなんですけれども、国民から見て、本当にそんなことをやられているのかなという不安、これは非常に大きなものがあると思うんです。これは刑務所だけじゃなくて、もうちょっと手前に戻せば、捜査の段階でも、警察でもそうですけれども、各地検でもそういうことが行われているんじゃないか、そんな疑義も出てくるということなんです。
 こういうのを踏まえて、例えば、法務省なりが選んだ中立的な人にいろいろ巡回してもらってチェックをしてもらうとか、そういうことも含め何か改善した方が、長い法務行政の信頼という意味ではいいんじゃないかな。ここをいいかげんにごまかすと、かえってそれは長い目で法務行政によくない、私はそういうふうに感じるんですが、法務大臣はどういうふうにお考えになりますか。
森山国務大臣 御指摘の高松刑務所における件を含めまして、矯正施設におきまして刑務官による暴行事件が発生しているという訴えが各地でいろいろと出ておりますことは、私も承知しております。もしそういうことが本当に事実だとすれば、まことに申しわけないことでございまして、人権侵害という点からも絶対に許されないことだというふうに考えております。
 先生も大変、刑務の仕事あるいは法務の行政全体に対する信頼ということを御心配いただいていると思っておりますが、私も非常にそのことが心配でございまして、名古屋刑務所における事件の調査も既に指示しておりますが、この際、全国の矯正施設における処遇の実情を徹底的に調査して、真相を明らかにいたしまして、再発を防止するということが今こそ必要だというふうに思っておりますので、そのための対策を早急に検討しております。
 なお、高松刑務所の件を含めまして、訴えがなされたものについては検察庁において適正な捜査がなされるというふうに考えております。
 十分注意して対処していきたいと思っております。
藤島委員 我が国は本当に、民主主義国家として非常にいい国だと私は確信をしているんですね。そういうことからも、徹底的にこの件は調査して、きちっとした結論を出していただきたいと要望しておきます。
 それでは、法案の内容について、前回に引き続き審議させていただきたいと思いますが、会社更生手続とアメリカ連邦倒産法のチャプターイレブンの関係ですけれども、平均の処理期間というのか、これはどんなふうに考えておりますか。
房村政府参考人 会社更生手続の平均的な処理期間でございますが、一九八〇年代の事件を見ますと平均大体三十三カ月かかっておりました。これが、九〇年代に入りますと二十八カ月と相当の短縮がされております。
 一方、アメリカについて見ますと、これは、一九八九年の調査によりますと約十九カ月、そして一九九八年の調査によりますと約十四カ月、こう言われております。ただ、アメリカの事件の申し立ての中には、いわゆるプレパッケージという、当事者間でほぼ話がつきまして計画も固まった後申し立ててすぐ処理してしまう、こういうものも含めた全体の数字でございますが、そういったプレパッケージを除いた事件の処理期間を見ると、最近でも十八カ月から二十四カ月程度、こういう報告もございます。
 ただ、一般的に申し上げれば、やはり日本の会社更生手続の方が、アメリカのチャプターイレブンの手続に比べますと、相当期間、時間を要しているというのが実情でございます。
藤島委員 今回の改正はそういうのを踏まえていたというふうに思いますけれども、実態面からいってもかなり、極端に言いますと半分ぐらいで済んでいるというのもあるわけですね。
 次が、取引先の中小企業、これが、本当にこんな状況ですと大変なんですね。その点、今回の手続は、これまでの手続との差、どういう配慮をしているのか、御説明ください。
房村政府参考人 会社更生法におきましては、やはり取引先の中小企業の保護ということを当然念頭に置いております。会社更生の手続が始まりまして、更生債権の弁済が禁止されますので、そのまま手当てをいたしませんと、取引先、特に中小企業が連鎖倒産をしてしまう、こういう危険性が高いわけであります。
 そういうことから、従来から設けられております制度としては、取引先の中小企業に対する弁済を可能にするということで、更生会社を主要な取引先とする中小企業が更生債権等の弁済を受けなければ事業の継続に著しい支障を来すおそれがあるときは、裁判所は、更生会社の資産状態、当該中小企業との取引状況等を考慮して、その弁済を許可することができる、こういう制度を従来から設けているところでございます。当然のことながら、今回もこれは維持しております。また同じように、少額の弁済に関しましては、従来から、少額債権について弁済をすることが更生手続を円滑に進行するということに資する場合には、この弁済の許可ができるという制度がございます。
 これらに加えまして、今回新たに、やはり少額債権につきまして、少額の更生債権等を早期に弁済しなければ更生会社の事業の継続に著しい支障を来すときは、更生計画認可前でも裁判所の許可を得て弁済することができると、さらに弁済できる機会をふやしております。これらを活用することによりまして、連鎖倒産の防止ができるのではないか、こう思っております。
 また、中小企業の有する更生債権は少額のことが多いわけでございますが、そういう少額の更生債権等につきましては、更生計画を定める場合に、債権者間の公平を害しない範囲で、弁済率や弁済時期等の点で優先的な取り扱いをすることが許容される、こういうことになっておりますので、これらを活用すれば保護が図れるのではないか、こう考えております。
藤島委員 更生会社の方を円滑にするという意味で弁済を図れるというのを中身で説明されましたけれども、それはちょっと次元が違う話だろうと思うのです。
 一緒に聞きたかったのは、連鎖倒産の防止について、今説明ありましたけれども、連鎖倒産は本当に大事なことなんですが、説明以外に何かほかにありますか。どうですか。
房村政府参考人 連鎖倒産の防止としては、ただいま申し上げましたような弁済をするということによる形が中心でございます。その他の少額弁済も、要件としては確かに連鎖倒産防止が直接の要件にはなっておりませんが、これを活用することによって、中小企業が弁済を受けて更生手続開始の影響をできるだけ軽減する、こういう意味では役に立つ、こういう趣旨で申し上げたわけでございます。
藤島委員 中小企業だけじゃなくて、取引関係がかなり大きい関係になっていると、連鎖倒産ということはかなり大きいところでもあり得るんですけれども、そういう点については、今回は特段の配慮はなされていないということですね。
房村政府参考人 御指摘の点につきまして、今回の改正で特に変わった点はございません。
藤島委員 それでは、次に移りますが、株主の責任ですね。やはりこれは債権者に大変な犠牲を強いるわけですね。恐らく九五%ぐらいカット、残りの五%を十年あるいは十五年返済というような。ふだん、倒産までわからなかったような債権者が急にそうなるわけですから、当然、株主も相当責任をとる必要がある。あるいは一〇〇%責任をとる必要があるのかもわかりませんけれども、その関係はどういうふうになっておりますか。
房村政府参考人 御指摘のように、会社更生手続では、債権者についての権利変更を行って、多くの場合、相当の割合の債務免除を得るわけでございます。当然、そうであれば株主についてもその権利について制約を図らないと公平を害する、こういうことになります。
 この点について、会社更生法では、株主の権利については更生債権者等の権利よりも劣後的な取り扱いをしなければならない、こういうことを明記しておりますので、会社更生計画を立てる場合には、必ずその株主の権利を消滅あるいは減縮させるという権利変更が必要となります。実務的には、債務超過の状態にある更生会社の場合には一〇〇%減資をしまして、従来の株主の権利はゼロにしてしまう、その上で新たに資本を充実させる、こういうことが行われていると承知しております。
藤島委員 ということは、法律上の規定じゃないけれども、実際には一〇〇%減資で一〇〇%責任をとる、こういうふうに理解していいんですか。
房村政府参考人 これは、もちろん個々の会社の内容にもよるわけでございますが、一般的に、一〇〇%減資ということが行われている例が多いと承知しております。
藤島委員 新たな規定を設けなかったけれども、現実に今、大体そういうふうに行われているので同様に行われるだろう、こういうことですね。
 それではもう少し、今度は、細かいんですけれども、文書の開示制度ですね。十四条とか十五条があるんですが、これは、今回のいろいろな意味での手続の透明化という観点から非常にいいことだ、こう思うんですが、これについて説明をしてください。
房村政府参考人 御指摘の事件関係文書の開示の制度でございますが、これは、まさにおっしゃられたように、手続を透明化するということでつくったものでございます。
 これは、倒産処理手続におきましては債権者等の利害関係人の手続関与を実質的に保障する、そして、その利益を適切に保護する、こういうことが必要になるわけでございますが、そのためには、裁判所に提出された事実関係文書等の開示の制度を整備する、それを利害関係人が見て適切に判断をして行動していただくということが何よりも必要だろう、こういうことから、従来、規定上明確でなかった開示の制度を明文で定めたものでございます。
藤島委員 制度として非常にいいと思うんですけれども、現実に、非常に手間暇というか、いろいろやるに際して足かせみたいなものがあってはいかぬと思うんですが、その点についてどういうふうに考えていますか。
房村政府参考人 御指摘のように、文書の開示、閲覧、謄写の場合には、できるだけすべてのものを見せるということが望ましい姿ではあります。
 しかし、同時に、会社更生関係は、会社の事業内容につきまして相当秘密の部分にわたる報告書等が裁判所に提出されることもございます。あるいは、関係する者の秘密が含まれる文書もございます。そういったものの保護も図らなければなりませんので、今回、規定上はやや複雑で、時期と閲覧を申し出る人との関係で要件等を個別に定めておりますが、これは、できるだけ多くの人に閲覧を許すという観点と、今申し上げましたような秘密保護、こういったものの調和を求めてこういう規定にしておりますので、裁判所において、この規定の趣旨を踏まえて円滑な運用をしていただけるもの、こう考えております。
藤島委員 裁判所の判断の問題になるんでしょうけれども、意外と、規定があっても実際になると、裁判所の判断で制限が現実に行われて、本当に欲しいものがなかなか手に入らないとか、あるいは、申し込んでから本当に手に入るまで大変な手間暇、時間がかかる、こういったことが現実にあるわけですね。この点について、きょうは最高裁を呼んでいませんけれども、法務省として、そういうことのないように協議をしていただきたい、こう思います。
 それから次に、今回新しく、書面による議決権行使、これは具体的にはどういうふうなことをイメージしているのか。今、ITとか何かもいろいろありますね。そういうのを含めて説明してください。
房村政府参考人 今回の改正で、手続の合理化の一環といたしまして、御指摘のように書面等による議決権行使の方法、これを幅広く認めることとしております。内容としては、もちろん、書面による場合は当然従来どおりでございますが、それに加えまして、電磁的方法、おっしゃいましたインターネットのEメールであるとか、そういった方法も今回の法律で使えるようになります。
 具体的には、裁判所が、電磁的方法に関する裁判所側の処理体制の整備状況であるとか、個別具体的な事案における利害関係人の人数、その投票方法に要する費用とか時間等、こういった諸要素を考慮して、具体的な投票方法の採用は決定することになろうかと思います。
藤島委員 これは本当に時代の流れというか趨勢なんだろうと思うので、この点は先を見てどんどん採用してもらう方向で、必要があれば規則等はどんどん改正して、やりやすいように前向きに取り入れる方がいいと私は思いますので、運用の方をきちっとしていただきたいというふうに思います。
 それから、今回、新しい七十七条の二項、更生会社の管財人は、職務を行うために必要があるときは、更生会社の子会社に対してその業務、財産の状況につき報告を求めたり、検査することができる、こういう規定があるんですけれども、これはどういうことなのか。あるいは、七十七条三項には、正当な理由がない限り報告または検査を拒むことができない、こう言っているわけですけれども、では正当な理由というのはどういうことなのか。この二点、お願いします。
房村政府参考人 現行の会社更生法におきましては、更生会社の業務及び財産の状況を把握する必要があるということで、管財人に更生会社についての調査権限を与えております。
 ところが、大規模な株式会社が倒産した場合に、過去の例を見ますと、グループ企業間で不適切な経理処理が行われたり、あるいは、グループ企業を通じて資産隠しが行われている、こういうような事例も少なくない。こういうことから、子会社等に対する調査権限を管財人に与えるべきだ、こういう指摘がございました。また、株式会社につきまして、商法あるいは商法特例法に基づきまして、株式会社の監査役には子会社あるいは連結子会社に対する調査権限が与えられております。
 こういうことから、今回の会社更生法案におきましては、管財人に子会社あるいは連結子会社に対する調査権限を与えるということといたしました。
 ただ、これは、子会社とは申しましても別法人でございまして、別の営業等を行っているものですから、当然その会社の秘密に属する事項、営業秘密というようなものもございます。これに触れる調査について、子会社としてやはり困るという場合も当然あるわけでございます。
 商法上もそういうことで、監査役の調査に対して正当の事由があるときは拒めるとしておりますので、この会社更生法におきましても同様に、秘密にわたるような場合には正当な理由として拒むことができる、こういうことを定めたものでございます。
藤島委員 今、内容で秘密にわたるということなんですが、だれがどういうふうに判断するんですか。子会社、連結会社がこれは秘密ですといって全部拒否したらどうなるんですか。
房村政府参考人 もちろん、一次的にはその子会社の責任ある立場の人が正当な理由があるかどうかということは判断をするわけでございますが、この規定に関しましては違反に対する罰則もございますので、そういう場合には最終的に裁判所がそれは正当な場合であるかどうかということを判断する、こういう仕組みになっております。
藤島委員 そのたびに、では裁判所に判断をしてもらうというんじゃちょっと手ぬるいような気はするんですけれども、もうちょっと拒否する理由を厳し目にしておいた方がいいかな。あるいは、例えば運用の指針でこういうのはどうかとかいうのを、指導指針みたいなものを出せばかなりまた明確になるとは思うんですけれども。
房村政府参考人 当然、裁判所に任命された管財人からの調査の要請でございますので、それを断る場合に、正当の事由があるという一言で済むということは考えられないわけでございまして、どういう事情で正当な理由があるのかということは拒絶する側が説明をすると思いますし、その間のやりとりは当然あり得るわけでございます。それでなおかつ管財人の側がどうしても納得できないということで、ぎりぎりになれば裁判所という担保がございますので、断る方もいいかげんな理由で断れば、最終的には裁判所の判断まで行くということが担保となって適切な運用ができるのではないか、こう考えております。
藤島委員 子会社とか連結子会社といっても、かなり薄い関係もあればきつい関係で更生会社との関係があるわけですね。余りきつい関係じゃない場合は、みんなもういい、裁判所でやってくれ、全然うちには痛くもかゆくもないといったような形で断るケース。これは現実に運用されていくと、裁判で少しずつ、こういうケースは正当な理由に当たる当たらないというのは出るのかもしれませんけれども、最初のうちは現場ではかなりもめてくる。関連会社は余り出したがらないわけですよ。
 そこら辺があるなという感じがするものですから、これは裁判所が決めるのかどうか知りませんけれども、大体大まかな指針で、こういうものは正当な理由に当たる当たらないといったような、そういう規則みたいなのを決めた方がいいのかなという感じがするんですけれども。
房村政府参考人 正当の理由というのもかなり具体的状況でさまざまでございますので、省令とかそういった規則のような形で決めることは難しいかとは思いますが、先ほど来申し上げているような、今回の子会社に対する調査権限を与えた趣旨及びそれを踏まえた場合の正当な理由というのはどんな場合か、こういうことについては法務省としても周知徹底を図って、円滑に運営されるように、こういう努力をしたいと思っております。
藤島委員 それでは、次に移りますけれども、担保権消滅制度を今度新しくつくっておりますね、百四条から百十二条までですか。これについての趣旨を説明してください。
房村政府参考人 今回、御指摘のように、担保権消滅制度という新しい制度を設けたわけでございますが、会社更生が開始されますと弁済は任意でできなくなる、こういうことから、会社財産に担保権が設定されている場合に、その担保権を消滅させる方法はございません。
 ところが、例えば更生計画によらずに早期に営業譲渡を行う必要がある、その営業譲渡の中の財産に担保権がついている、担保権がついておりますとやはり譲渡を受ける方は困りますので営業譲渡が進まない、そのときにその担保権を消滅させたい、こういう場合がございます。また、そういう場合でなくても、会社にとって不要な財産であって、持っておりますと例えば固定資産税等の負担が重い、それを早く軽減したいから処分をしたい、あるいは逆に値下がりが予想されるので早く処分をしてしまいたい、こういうような場合がございます。そういうときに、この担保権を何とか消滅させて早期の処分を可能にする、こういう道をつくりたいということで考えました。
 その方法といたしましては、その担保の目的物相当の価額を裁判所に管財人から預ける、それによりまして抵当権等の担保権を消滅させる、そうしますと任意処分が可能になります。一方、担保権者の方は、裁判所にお金が預けてありますので、担保権が消滅されても手続上不利に扱われる心配はない。会社更生の手続が進みまして、更生計画が認可されて担保権者の権利が確定いたしますと、計画に従って担保権者は弁済等を受けることができる。裁判所に預けてあったその金額は管財人に渡されて、更生計画に従ってその処理がされる、こういう手続といたしました。
藤島委員 大変いい制度だと私は思うんですけれども、百四条で、今おっしゃったように管財人が裁判所に納付しますね、それはどういうふうにその後扱っていくことになるのか、細かい話ですけれども。
房村政府参考人 基本的には裁判所が保管をしておりまして、そして、更生計画が認可されますと裁判所から管財人に渡されて、更生計画で定められた使途に用いられる、こういうことになります。
 万一更生計画が認可に至らない、手続が廃止されてしまう、こういう場合には、裁判所にそのお金が留保されておりますので、それを通常の担保と同様に配当の手続をする。こういうことによりまして、担保権者としては確実に弁済を受けられる、こういう形になります。
藤島委員 この担保権消滅制度の問題のもう一つとして、新しい制度になるわけですけれども、乱用というか悪用というか、先ほど、どういうケースがあるのでということで、そのために制度を設けた、こうおっしゃっているんですけれども、その制度の逆用というか、そういった面は全然心配しないでいいのかどうか。もし何かあった場合には対抗してどういう措置ができるんだ、こういう点があるのかどうか。
房村政府参考人 この担保権消滅の制度は、基本的に裁判所の許可にかかっておりまして、事業の更生のために必要であるかどうかという点を基本的に裁判所が判断いたします。
 また、目的物の価額について、管財人がこの額ということを言った点について担保権者の方で不服があれば、裁判所に申し出て、裁判所がその額を決定する、こういう手続になっておりますので、乱用ということは考えにくいと思っております。
藤島委員 裁判所がやることですから乱用はないのかもわかりませんけれども、新しい制度ということで要注意かな、こう思います。
 それから、もう何回もここで議論がありましたけれども、営業譲渡と労働権の問題ですね。
 先週金曜日に参考人質疑があったときも、制度的には今の法律制度なのかなという御答弁だったんですけれども、しかし運用の問題で大変違ってくるんだということを参考人がおっしゃっているんですね。その運用に係る指針といったようなものを何か考えているのかどうか、それはもう運用だからお任せだというのか、その辺について伺いたいと思います。これは裁判所の方になるのかもわかりませんけれども、法務省として何かそういうことを考えているのかどうか。
房村政府参考人 基本的に、営業譲渡につきましては、御指摘のように、運用がどうなるかということ、その場合の指針というような点は問題になろうかと思います。
 ただ、その点、裁判所の運用ということになりますが、基本的に相当数の事件が東京、大阪に集中して処理されております。その中で、裁判体としておのずから基準的なものが、指針が内部的にはできているように思われますので、今後もそのような形で運用の適正を図っていくということになるのではないかと思っております。
藤島委員 何か指針を定めるような、そういう気持ちがあるのかどうか、あるいはもう現実に裁判所なりが判断するのに任すのかどうかですね。
房村政府参考人 営業譲渡の許可等についての指針ということになりますと、これはやはり裁判所の判断ということになりますので、その指針等も裁判所において適正な処理のために内部的に検討されるということではないかと思っております。
藤島委員 この問題は非常に深刻な問題になるんですね。どういう条件で何人ぐらい一緒に行くかどうかという話で、制度だけはあるんですが、私は、この会社更生において営業譲渡の制度はこれから不可欠だと思うんですね。やはり、切って生きていける部分は生かし、だめな部分は整理するということで、全部を生かそうといったらこれはそうはいかぬし、では全部をだめだというのですぐ切っちゃう、これもまたいかぬので、営業譲渡を通じて生きるものはどんどん生かしていく、こういう制度が大事なんです。
 その中で、現実的に悲惨なのは、そこに営業譲渡で行く労働者なんですね。行く行かない、自分が入るのか入らないのか、あるいはどういう条件で行くのかどうか、その辺が大変重要なので、先週の参考人質疑の際も、その点が非常に心配だ、こういうふうにおっしゃっているので、何回か議論になったんですけれども、もう一回確認的に。
房村政府参考人 御指摘のように、営業譲渡をどのような場合どのような条件で行うのがいいかというのは、まさにその会社の個々の状況によって当然千差万別でございますので、そういったものについての指針というのはなかなか難しいかとは思っております。
 ただ、御指摘の営業譲渡が行われた場合の労働者の保護、あるいはその労働契約の扱い、こういったものに関しましては、先日来、厚生労働省が催しております研究会の結果に基づく指針というものが厚生労働省で策定されるということになっておりますので、私どもも、それを踏まえて、できるだけの協力をして、適切な処理がされるように努力をしたいと考えております。
藤島委員 あと、労働関係で、労働債権の問題、先ほども出ていましたので伺いませんけれども、やはり、税金あるいは社会保険の方が優先しているということは本当にどういうものかな。現実に首を切られていく人が、その前に何十日か働いた、もらえるはずのものが結果的にほとんどもらえないで、税金とか社会保険の方が先に会社の方から取られていく、これはやはり人道上の観点からも問題じゃないか、こういうふうに思いますので、あえて答弁を求めませんけれども、ここはもう少し研究の上、何か現実的に救われるような措置、これを図っていただきたいな、こう思います。
 それから、関連整備法がありますね、これによる整備の概要について説明してください。
房村政府参考人 基本的には、会社更生法を準用しているものの整理というようなものがございます。それは各種の法律で非常に多く準用されておりますので、今回の全面的な見直しに伴って必要な整備が多い。それからもう一点は、民事再生法につきまして、今回会社更生法でとりました新しい仕組みを再生法の方でも採用した方がいいというものがございますので、その改正法に合わせて再生法を改正する。大きく分けますとこの二点が今回の整備法の主要な内容でございます。
    〔佐藤(剛)委員長代理退席、漆原委員長代理着席〕
藤島委員 今、最後に言われた再生法の一部改正に及んでいる部分がありますね。それはどういうことを、どういう考えでどういうふうにしているか。
房村政府参考人 幾つかございますが、主要なものを挙げますと、まず、先ほど御説明をいたしました、少額の債権を弁済しなければ再生債務者の事業の継続に著しい支障を来す場合の弁済の許可、これを更生会社と同じように再生会社に対しても適用する、こういう改正が一つございます。
 それから、保全管理人が権限に基づいてした行為によって生じた請求権を当然に共益債権とする。これは、従来は裁判所の許可を得ないと共益債権にならなかったものですが、それを当然になる、こう今回の会社更生法の改正でいたしました。これを再生法でも同じようにいたしました。
 それから、再生計画案決議のための関係人集会が開催された場合に、再生債権者が債権者集会に出席せずに書面等によって議決権を行使することができる。これも今回会社更生法で新しく設けた制度でございますが、これを再生法でも同じような制度にする。このようなものが大体主なものでございます。
藤島委員 もう一つ、今後、破産法等の見直しに絡んで、そちらの方でやろうといったことで今回盛り込まなかった部分があると聞いているんですけれども、それはどういうものがあるんですか。
房村政府参考人 破産法の整備の際の検討にゆだねられたものとしては、最も大きなものは、先ほど委員から御指摘がありました、労働債権、租税債権等を含む各種債権の優先順位、これがございます。これは現在、破産法の整備の中で検討を進めているところでございます。
 それから、未履行の双務契約をどう取り扱うか、あるいは否認権の行使、否認をどうするか、こういうような倒産実体法につきまして、これも破産法の中で検討をするということで残されております。これらが一番大きな問題でございます。
    〔漆原委員長代理退席、佐藤(剛)委員長代理着席〕
藤島委員 先週の参考人質疑の際に、今後の問題として指摘された部分があるんですね。それは、各倒産法制間の円滑な移行を可能とする措置、これがはっきりしていない。今説明があった部分とちょっと違うんですよ。各倒産法制、幾つかこれでまた整理されてできるわけですけれども、その相互間の移行がスムーズにいくための措置が必要なんじゃないか、こういう指摘があったんですが、この点についてどういうふうに考えていますか。
房村政府参考人 失礼しました。
 今御指摘の他の倒産処理手続との移行の関係、これも当然、破産法の整備が倒産法制の中のほぼ最後でございますので、それとあわせてそれぞれの手続の移行規定の整備も現在検討を進めているところでございます。
藤島委員 検討を進めているというのは、どんな方向というか、何かあるんですか。
房村政府参考人 移行規定を整備いたしまして、移行に関して権利の扱いの間に矛盾が来さないように、あるいは手続のむだが省けるように、こういうような観点から、どのような移行規定の整備を行うのがいいかということを検討いたしまして、破産法とあわせまして来年の秋には法案として御審議をお願いしたい、こう考えているところでございます。
藤島委員 民事再生法をつくったときは移行が非常にすっきりわかりやすいことで選べるという、私は非常によかったなと実は思っているので、この法制について、その辺、幾つかあるのを選びやすく、またそれによって迷惑をこうむる人の少ないような、何かそういううまい方法を考えてやっていただきたいと思います。
 それから、もう一つ指摘があったのが、所要の税制措置についてやはり考えるべきじゃないか、こういう指摘があったんですが、その点、どういうふうに考えますか。
房村政府参考人 実際に更生に携わった、特に管財人の経験のある方々に伺いますと、更生計画立案あるいはその遂行に当たっては税制の影響が非常に大きいということはおっしゃっておられますので、御指摘のとおりだろうと思います。
 ただ、税制のことになりますと、法務省として独自にどうということはできませんので、それは関係省庁とも連絡をとりながら、できるだけ更生を踏まえた税制の実現がされることを希望しているところでございます。
藤島委員 これはやはり法務省の方からでも持ち出さないと、財政当局の方からおのずと出てくる話じゃない。そこを踏まえて前向きに検討した方が、せっかくのこの新しい法律の運用が、法律だけできても実際使われなきゃ何も意味ないので、なるべくたくさん使われることがいいと思うので、そのためにあるんじゃなくて、実際そうなったときにこの法律ができるだけ使われる方がいいわけで、そのためにはやはり税制なんかがあると非常にスムーズにいく。私、先ほど申し上げたように、何もつぶすのが本意じゃないので、こういう時代ですから、なるべく本当に再生してもらわないといかぬものですから、そういう意味で、税制も法務省の方から持ちかけるような、そんなことをやっていただきたいな、こう思います。
 最後に、法務大臣に、倒産法制全体の関係の見直しですね、これで終わったわけじゃないのですが、大体どんな方向で、スケジュール的にはどういうふうに考えているのか、これをお伺いします。
森山国務大臣 いろいろ御指摘ございましたように、倒産法制に関する残された検討課題がいろいろございます。破産手続の全面的な見直しとか倒産手続における各種債権の優先順位の見直しなどを含む倒産実体法の検討及び商法が定める会社整理手続、特別清算手続の見直しなど、いろいろございます。
 これらの検討課題につきましては、現在、法制審議会倒産法部会におきまして審議をしていただいているところでございまして、破産手続の全面的な見直し及び倒産実体法の検討につきましては、平成十五年のうちに成案を得まして、関係法案を国会に提案したいというふうに考えております。
 また、それ以外の検討課題につきましても、できる限り早く成案を得まして、関係法案を国会に提出したいと考えているところでございます。
藤島委員 これまで幾つか指摘した点その他、せっかく法律、私はいい法律だと思っているんですけれども、運用の方でも支障のないように、また今後の法制についても前向きにひとつ国民のために考えてやっていただきたいと思います。
 終わります。
佐藤(剛)委員長代理 次に、木島日出夫君。
木島委員 日本共産党の木島日出夫です。
 十一月二十二日に続きまして、会社更生法について法務省と厚労省に聞きたいと思います。
 二十二日の質疑では、新たに導入されようとしている会社更生計画認可前の営業譲渡と、その場合の労働者の雇用契約の承継の問題についてお聞きをいたしました。会社分割時における雇用承継と比較をいたしましても、営業譲渡のときにおける労働契約の承継、労働者の雇用の承継が法的に全く保障されていないということが明らかになったと思うんです。労働者の雇用と労働条件を保護する上で大問題だ。その手当てが本改正法案には何もない。
 一方、本来厚生労働省が手当てをするべき、会社分割法のときに手当てをした労働承継法のようなものが全く今回政府から出てきていないという点を厳しく私は指摘をいたしました。
 それじゃ、翻って、商法改正、会社分割法等労働契約承継法は万全だったのかという点について、きょうは最初に立ち入ってお聞きしたいと思います。
 実は、万全じゃない。会社分割法等労働契約承継法が昨年四月から施行されました。一年半の実績を積んでいるわけでありますが、実は現実の世界では、大企業の身勝手なリストラ攻勢のもとで、この法律が適用される部分でも、労働者の雇用と賃金、労働条件が乱暴に切り捨てられている、切り下げられている、そういう現状があるわけであります。
 最初に法務省と厚生労働省にお聞きしますが、昨年四月から施行されている商法、会社分割法を適用して会社が分割された件数がどのくらいあるのか、数字だけで結構ですが、つかんでおりますか。
森山国務大臣 統計によりますと、会社分割制度の創設を含む改正商法が施行された平成十三年四月からことしの九月までに、全国の法務局及び地方法務局においてなされました会社分割関係の登記の件数は、株式会社につきましては、分割による設立の登記が五百四十件、分割による資本の増加の登記が三百四十件、有限会社につきましては、分割による設立の登記が百二十八件、分割による資本の増加の登記が二十二件となっております。
青木政府参考人 私どもの所掌ではありませんけれども、私どもとしては、平成十三年四月から一年間で官報に掲載された分割会社は五百三十八社というふうに承知しております。
木島委員 それでは、分割の数は厚労省の所管ではないとおっしゃったので、厚労省の所管でありましょうことについてお聞きします。
 会社分割に伴い、従前の会社に勤務していた労働者の労働条件が、この法によって新しくつくられる設立会社等に移籍されることによってどうなったのか、労働条件の引き下げ等がなされたか否か。分割に伴って移籍された労働者の労働条件が切り下げられてしまった、それは雇用もそうですが、労働条件もそうです、賃金もそうです、その辺の調査分析を厚生労働省はなさっているんでしょうか。御答弁いただきます。
青木政府参考人 そのような調査は、まだ施行後間もないところでありますので、いたしておりません。
木島委員 厚生労働省は、昨年四月の会社の分割に伴う労働契約承継等に伴う法律の施行に際して、労働契約及び労働協約の承継に関する適切な実施を図るための指針を策定、同日、昨年の四月一日付で告示をいたしました。
 お聞きします。指針では、労働条件は基本的に設立会社等にどのように承継されるべきだとしておるのか、答弁願います。
青木政府参考人 商法等の改正法附則第五条で、分割会社は労働契約の承継に関して労働者と協議するものとすると規定しておりまして、それらに関する指針を定めております。
 例えば、その際、労働者との事前の協議をする、あるいは、労働者が分割される営業に主として従事する労働者に該当するか否かについての考え方を十分説明して、希望を聴取した上で分割が必要だというようなこと、また、この規定に反する場合には分割無効の原因となるというようなことを指針として定めております。
木島委員 答弁では商法附則第五条を挙げましたが、そうじゃなくて、それは後でまたじっくり聞きますから。
 分割法が適用されて、そして労働契約承継法が適用された、そういう場合に、分割会社から新しく設立された設立会社等に労働者の身分が移籍される。これに私どもが反対したのは、民法六百二十五条で、労働者本人の同意が本来必要なはずなんだが、承継法によると、労働者の同意なくしてそのような場合には、もちろん主たる業務に従事する労働者でありますが、移籍されてしまう、強制的移籍になるんです。それで我々は反対したんですが、そのような場合に、労働条件に関してどうなるんだ、基本原則はどうなんだ、労働条件が維持されるのか、そのことについて指針は明示しているのじゃないか、どう明示しているのかと聞いておるんです。
青木政府参考人 指針では、「会社の分割を理由とする労働条件の不利益変更等」ということで、「労働契約の内容である労働条件の変更については、労働組合法における労使間の合意や民法の基本原則に基づく契約の両当事者間の合意を必要とすることとされていることから、会社の分割の際には、会社は会社の分割を理由とする一方的な労働条件の不利益変更を行ってはならず、また、会社の分割の前後において労働条件の変更を行う場合には、法令及び判例に従い、労使間の合意が基本となるものであること。」としております。
木島委員 不利益変更のところだけ答弁されましたから、では、私、じっくりこの指針を読んでおりますので、まず、会社が分割されて設立会社等に労働者が移籍を余儀なくされたときの基本原則、労働条件が基本的に維持されるという点で、指針はこう書いている。読みますから聞いておいてください。
 「基本原則 維持される労働条件 商法又は有限会社法の規定に基づき設立会社等に承継された労働契約は、分割会社から設立会社等に包括的に承継されるため、その内容である労働条件は、そのまま維持されるものであること。」これが基本原則だと指針はうたっていますね。
 それから次に、今答弁に出ましたが、「会社の分割を理由とする労働条件の不利益変更等」については、このような記述が指針にあります。大事ですから読んでみます。
 「労働契約の内容である労働条件の変更については、労働組合法における労使間の合意や民法の基本原則に基づく契約の両当事者間の合意を必要とすることとされていることから、会社の分割の際には、会社は会社の分割を理由とする一方的な労働条件の不利益変更を行ってはならず、また、会社の分割の前後において労働条件の変更を行う場合には、法令及び判例に従い、労使間の合意が基本となるものであること。」このような記述がある。
 もう一つ言っておきましょう。解雇の問題ですが、指針では、会社の分割を理由とする解雇については、現在我が国の最高裁の確固とした立場であります整理解雇の四要件、これが厳然と適用になるんだ。
 私は三つに整理したんですが、このようなことがこの指針ではきちっとうたわれていると確認してよろしいですか。
青木政府参考人 それらの点について、指針において記載されております。
木島委員 そうすると、厚生労働省に聞きますが、厚生労働省はそういう指針まできちっと出して、労働契約承継法がきちっと守られるように監督をする立場にある。では、こうした指針の示している基本原則に反するような状況が目の前にあらわれたときには、厚生労働省としてはどのように対応するつもりなんでしょうか。
青木政府参考人 先ほど申し上げましたように、こういった規定等に反するような場合には、いろいろなところで、例えば分割無効の原因となり得るというようなことでもありますし、そういったことを十分周知してまいりたいというふうに思っております。
木島委員 周知するのは結構なんですよ。それにもかかわらず、今すさまじいリストラが吹き荒れているんですよ、この指針なんかを無視して、あるいは労働契約承継法の条文まで無視して、勝手気ままな労働条件の切り下げ、切り捨て、賃金の切り捨て、解雇、このようなものが目の前にあらわれたときに、厚生労働省としてはどうするのかということを聞いているんですよ。当事者がみずからの権利を守って裁判を起こすのは、それは当然です。やると思うんですよ。厚生労働省としてはどう対応するのかという質問です。
青木政府参考人 解雇とかいろいろな場合があると思いますが、例えば、現在でも、労使間のそういう紛争については円滑に解決がなされるように紛争処理のための特別のシステムを設けておりますし、具体的には労働局において御相談に応じているというところでございます。そういったものを活用していただいて、紛争が生じた場合にはその円滑な解決に努めていきたいというふうに思っています。
木島委員 非常に大事だと思うんです。労働局に相談していただきたい、そして相談に応じてこの指針の趣旨が生かされるようにしっかり指導するということと聞いてよろしいですね。
青木政府参考人 いろいろな現行の制度でありますとかいろいろな考え方、そして、両者で円滑に紛争が解決されるように十分努力していきたいというふうに思っております。
木島委員 大体、大事なことを言おうとしないんですよ。この承継法の精神、この指針の精神に沿って正しく事態が解決できるように指導するのは当たり前だと思うんです。そうでしょう。大事だから、そこはちゃんと答弁したらどうですか。
青木政府参考人 おっしゃるように、この指針の趣旨、そういったものを踏まえ、もちろん、紛争が起きる以前からそういうことがないように十分啓発、指導もいたしますし、具体的な紛争が生じた場合には、そういったことを活用して、円滑な解決が行われるようにしていきたいというふうに思っております。
木島委員 私はここに、労働組合でありますJMIU日本IBM支部が作成したチラシを持ってきております。
 日本IBMのハードディスクドライブ部門、HDD部門といいますが、ここがことし九月二日、会社分割法により分割をされまして、いろいろ法的手続を経て、日立製作所に移されることになります。労働契約承継法による労働者の同意なくして日本IBMの労働者は日立製作所に移籍させられるということになります。
 その労働者の皆さんが今最も不安に駆られている問題は、労働条件の引き下げが行われやしないかということと、分割、移籍に絡んで雇用が危殆に瀕するんじゃないか、雇用が守れるのかという問題であります。
 日本IBMと日立製作所との間ではどのくらいの賃金格差があるか、わずか一つの例でありますが、このチラシに数字が書かれておりますので御披露しておきますと、分割され、日立に移籍されようとしている日本IBMの三十四歳の労働者、製造でありますが、本給が二十三万円、手当が月十九万円、月収が合わせ四十二万円、年収が六百八十八万円であります。移籍をされようとしている先の日立製作所、三十五歳、技能職、基本給十万円、手当二十万円、月収三十万円、年収は四百六十万円であります。
 先ほどしつこく質問いたしましたが、厚生労働省の指針によりますと、会社分割に伴うこのような賃金ダウンは、労働者との協議、そして労働者の同意なく会社が一方的に行うことはできない、こう書かれておりますが、そう確認してよろしいですね、厚生労働省。
青木政府参考人 御指摘になりました具体的な事例については承知をしておりませんが、指針で、分割に伴う一方的な労働条件の変更については、これはできない、そして労働者の同意を得る必要があるということは、そういうふうに考えているとおりでございます。
木島委員 余り深入りしませんが、一つだけ確認しておきたいと思います。
 この指針の中の会社分割を理由とする労働条件の不利益変更等の中に、「会社の分割の前後において労働条件の変更を行う場合には、法令及び判例に従い、労使間の合意が基本となるものであること。」とありますが、「会社の分割の前後」こう書いてある趣旨はどんな趣旨なんでしょうか。
青木政府参考人 それは会社の分割の前と後の会社の間での話ということで、そういうふうに記載をしております。
木島委員 一方的な切り下げはだめだというんですから、それを拘束するのは、分割会社とともに、新しく移籍される設立会社等をも縛る、そういう指針だというのは当然だと思うんです。そこを確認できましたので、最後に、この問題で厚労省にお願い方々の質問をしておきます。
 この指針を本当に実効あらしめるためにも、厚生労働省は、会社分割に伴う労働条件の引き下げや解雇の現状についてしっかりこれは調査をし、検討もし、指導もし、場合によっては、現行労働承継法では不十分だというようなことがあれば法改正も提起する、法務省にやらせるべきことがあったら法務省へも問題提起する、そういうことが必要かと思うんです。まだこの法律が施行されて一年半の段階で、まだ調査していないということですが、そういうことが大事だということを私感じているんですが、厚労省、どうでしょうか。
青木政府参考人 今委員が御指摘になりましたように、まだこの法律は施行されたばかりであります。しかし、働く人たちの労働条件、そういった観点から、労働者保護という観点から、これについての実情はやはり把握する必要があるだろうとは思っております。
 したがって、この施行状況を十分見て、もちろん法務省とも十分連携をとりながら注視していきたいというふうに思っております。
木島委員 それでは次に、会社分割と労働承継の問題に絡んで、先ほどちょっと答弁が先にありましたが、商法附則第五条問題について法務省にお聞きします。
 会社分割を認めた商法改正のときに、商法附則第五条が規定されました。その内容は、会社分割について労働者との事前協議義務を分割会社に与えたことであります。
 そこで法務省に聞きます。
 この商法附則五条第一項でありますが、この協議義務違反があり、協議が行われなかった場合、会社分割の法的効力はどうなるんでしょうか。
房村政府参考人 御指摘の、商法の附則五条で定められております協議でございますが、これは会社分割を実行する前提として必要な手続として法律で定められているものでございますから、御指摘のように会社が労働者との事前協議を一切行わなかった、こういうような場合には、手続の瑕疵が重大であるものとして、会社分割が無効とされる場合もあり得ると考えております。
木島委員 では、私、設問しましょう。
 過半数の労働者との協議をやらなかったという場合はどうでしょうか。
房村政府参考人 基本的に無効の原因となるというのは、極めて重大な手続の瑕疵があるという場合で、想定されておりますのは、およそ欠くというようなことが想定されておりますが、その過半数としなかったという具体的状況いかんによりますので、これは、一般論としては何とも言いがたいと考えております。
木島委員 会社分割法、できて新しい法律ですから、解説する論文がなかなか少ないんですが、「商事法務」ナンバー千五百七十、二〇〇〇年九月五日に、岩出誠さんという弁護士が「労働契約承継法の実務的検討」上中下、やっております。その中で今の問題をかなり深く分析、解明をしておりまして、商法附則五条の個々の労働者との協議をやらなかった場合、その違反の効果はどうかということで、こういうことが載っているんですね。「承継労働者のうちのわずか一人との協議義務違反により、」わずか一人、「わずか一人との協議義務違反により、一般債権者・株主等を含む分割手続全体が無効となるとする」ことはできないだろうということです。私見として、「分割にかかわる全労働者との協議義務違反があるような場合、または、従業員の過半数代表を意識する労働法制との整合性からは、少なくともその過半数以上の従業員との協議をまったくしないような場合には、協議義務を定めた立法趣旨を潜脱するものとして、重大な手続上の瑕疵との評価を受け得るもので、そのような解釈も、国会での修正経緯からは可能かとも解される」、こういうことを言っているんですね。
 先ほど民事局長は、全くやらなかった場合は無効ということもあり得るということを言いまして、過半数のときはどうかという質問に対しては答弁を濁しましたが、そういう論述がある。これはどう評価されますか。
房村政府参考人 基本的に、協議を定めた趣旨というのは労働者の保護のためであろうかと思っておりますが、その手続に違反したときにどのような効果を与えるのかということは、手続全体の構造あるいは労働者の保護のためにどのような解釈をとるのが適切か、こういうことを踏まえて判断されることになろうかと思います。
 したがいまして、協議違反に関しても、当該労働者に分割先あるいは設立会社のどちらに行くのかという選択権を与えることで保護を図れるという考え方も現に提唱されております。
 そういったことを踏まえて全体として判断をすることになろうかと思いますが、私どもとしては、この手続を設けた趣旨からして、およそ欠くような場合には手続自体が無効になるということもあり得るだろう、こういうことを申し述べたわけでございます。また、異なる立場から、ただいま御指摘のような解釈というのも、それはあり得るところかとは思っております。
木島委員 先取りして答弁した部分もあるので確認しておきますが、例えば千人の労働者のいる企業が分割されて五百人が移籍を余儀なくされる、労働契約が新しい会社に承継されるというような場合に、五百人の労働者が移籍される、たまたま十人だけこの手続を踏まえなかったという場合に、その十人については、大方の通説的なものですと、十人だけ協議をしなかったということで会社分割無効というのは難しいだろうということを言っている学者も、しかし、その場合その労働者をどう救済するかということになりますと、この岩出さんも、また法制審の委員でもあります江頭憲治郎東大教授も、有斐閣の「株式会社・有限会社法」第二版では、そういう個々の労働者の協議をしなかった場合には、その個々の労働者は新しい会社に移籍するかもとの会社、分割会社に残留するか選択権があるということを書いているんですね。
 今、房村民事局長はそれをちょろっとしゃべったわけですが、法務省としてもそういう解釈に立っているということを聞いてよろしいですか。あるいは、立っているなら立っているということをきちっと答弁してほしいのですよ。
房村政府参考人 基本的に、どういう法的効果が生ずるかというのは最終的には裁判所が御判断になることですが、考え方として、協議違反があったときに個別労働者の救済としてそういう選択権を与えるという考え方があるということは私どもも認識している、こういうことを申し上げたわけでございます。
木島委員 それではもとに戻りましょう。
 労働者との事前協議を全く行わない、そして、会社分割が法的にも無効となるような状況が生じた場合に、分割無効の訴えを提起できるのはだれでしょうか。分割無効というのは訴えを起こさなければ分割無効にならぬわけですね。労働者は分割無効の訴えを提起できるのでしょうか。
房村政府参考人 一般的に申し上げますと、分割無効の訴えの提訴権者は株主、取締役、監査役、清算人、破産管財人または分割を承認しない債権者と法定されております。
 労働者がこの提訴権者の中に入るかという問題ですが、もちろん労働債権等の債権者ですので、そういう立場でこの分割を承認しない債権者となるという場合はあり得るわけでございます。
 それ以外に、会社が労働者との事前協議を全く欠く、そのことによって分割が無効となるという場合に労働者が提訴権者に入るか、こういう御指摘だろうと思います。
 これについては、明文上は今申し上げましたように記載がございませんが、このような条文が設けられた趣旨、及び無効原因が今言ったような手続を一切欠いて無効になる、こういう場合であるということを前提といたしますと、分割の効力を争っている労働者は分割を承認しない債権者に準ずる者として分割無効の訴えを提起できるという考え方も十分成り立ち得る、こういうぐあいに考えております。
木島委員 立法の不備の部分なんですね。そこを補うような大変大事な答弁が出たと思うので、そのようにこの法案が運用されることを私は期待したいと思いますし、本当は、そういう不備は法の明文をもって埋めておくことが大事だと思うのですが、この問題は、前回法務委員会の最後の修正のどさくさのときに入ってしまった商法の附則ですから、そういう不備が生まれたという経過だけは指摘しておいて、今の答弁は大変大事だと思います。
 それで、次の質問に移ります。
 社内預金の取り扱いについてです。これは更生会社の問題です。会社分割の問題はこれで一たん打ち切って終わりまして、今回の会社更生法の改正法案について質問します。社内預金の取り扱いについてであります。
 最初に、法務省に確認をしておきますが、更生会社にその労働者が積み立てていた社内預金は、現行会社更生法第百十九条によりますと、共益債権となって更生計画によらずに弁済されるべきもの、こう理解してよろしいですか。
房村政府参考人 御指摘のとおりでございます。
木島委員 実は、今、新潟鉄工という会社が会社更生手続中なんであります。
 この会社に対する労働者の社内預金が莫大な金額になっていると言われております。私も北信越ですから、新潟も一つの地域でありまして、四十億円にもなるんじゃないかとも言われているわけであります。一人当たりにして、多い労働者では八百万円にもなる者もいると言われております。
 ところが、この会社更生管財人は、事もあろうにこれらの社内預金を、今民事局長が明確に答弁されましたように、法律でもきっちりと明文をもって規定されておりますように共益債権とは認めずに、優先的更生債権として扱い、更生計画の中でのみ弁済するという態度、要するに、随時弁済、労働者の返還請求を拒み続けております。まことに不当、不法な態度を、現に東京地方裁判所に係属している新潟鉄工の会社更生事件の更生管財人がとり続けている。
 この管財人のとっている態度は、法律解釈として誤っていると考えますが、答弁願います。
房村政府参考人 具体的な事実関係については承知しておりませんので、コメントを差し控えますが、先ほども申し上げましたように、現行会社更生法のもとにおきましては、会社に預けられております社内預金は共益債権として随時弁済をすべきものでございます。
木島委員 明確であります。
 法務省はまだ事実をつかんでいないようですから、一つだけ聞いておきます。
 この更生管財人は、社内預金を持っておる労働者に対して、優先的更生債権として届け出ろ、そういう届け出を強要しているんですよ。
 ですから、労働組合が、とんでもない、社内預金は共益債権として取り扱われるべき債権であるということを言って、わざわざ東京地方裁判所民事八部に上申書を出して、優先的更生債権届け出書に記載した社内預金は共益債権として取り扱うべきであり、管財人から優先的更生債権届け出書の提出を求められたので、これは届け出しないと切り捨てられたら大変だというので、届け出はします、しかしとりあえず異議をとどめて提出しておきます、これは本来共益債権じゃないか、こういう係争になっているんですよ。有名な話なんですよ。
 法務大臣に聞きましょうか。こんな更生管財人、そしてこんなものを容認している東京地裁、裁判所の対応をどう考えますか。会社更生法を所管している法務大臣としての所見をお聞きしておきたいと思うのです。
森山国務大臣 具体的な事件につきましてはコメントを差し控えたいと思いますが、一般論で申し上げますと、使用人の社内預金を含む預かり金の返還請求権は、実体法上、一般の先取特権等の優先権が認められているものではないため、本来であれば、会社更生手続において一般更生債権として取り扱われることになります。(木島委員「いや、現行法を聞いている。さっき民事局長が共益債権であると答弁したじゃない。そんなこと聞いていない」と呼ぶ)
 現行の会社更生法が特に預かり金の返還請求権の全額を共益債権としているのは、現行の会社更生法が制定された昭和二十七年当時の預かり金に関する特殊な実情を考慮しているものでございます。しかし、我が国では、昭和三十年代以降、社内預金が普及いたしまして、現在では更生会社の預かり金のほとんどは貯蓄性の社内預金でございまして、現行の会社更生法の制定時とは全く事情が異なっております。(木島委員「改正法のことを聞いているんじゃないんだよ。現行法どおり東京地裁の管財人はやっていないじゃないか、どう考えるんだという質問なのに、全然とんちんかんな答弁している。だめだよ、これ」と呼ぶ)
佐藤(剛)委員長代理 許可を得てから質問してください。
森山国務大臣 そこで、今回、会社更生手続における預かり金の取り扱いについての見直しを行いまして、会社更生手続における給料の請求権等の取り扱いとの均衡をも考慮いたしまして、使用人の預かり金の返還請求権のうち共益債権として取り扱う範囲を、更生手続開始前六カ月間の給料の総額に相当する額または預かり金の額の三分の一に相当する額のいずれか多い額に限定したものでございます。(木島委員「そんなことを聞いているんじゃないんですよ。現行法と違うことを現に東京地裁はやっているじゃないか、どう思うんだという質問です」と呼ぶ)
房村政府参考人 ただいま大臣から御説明しましたのは、今回の会社更生法案の内容の説明でございます。
 現在の会社更生法を前提とした扱いにつきましては、先ほど来御答弁申し上げておりますように、社内預金についてはその全額が共益債権となるものでございます。
 ただ、具体的な裁判所に係属している事件について、法務省としてのコメントは差し控えさせていただきたいと思います。
木島委員 余り詰め切るのはやめましょう。しかし、もう民事局長の答弁で明確なんです。現行法では、社内預金は共益債権なんです。随時弁済しなきゃならぬのですよ。優先的更生債権じゃないんです。優先的更生債権というのは弁済できないんです。更生計画にちゃんと弁済計画を載せて、更生計画が認可されたときに計画どおりに弁済する。十年かかるかもしらぬのです。全然質的に違うんですよ。もう明確なんです。
 まあ、余りこれをやりますと、法務省が個々の裁判官を批判したなんということになると、司法権独立にもかかわっちゃいかぬですから、もうそこだけ、私、答弁を得ましたから、終わります。
 さて、それで、これからが法務大臣に聞こうとするところなんですよ。今回の会社更生法の改正で、この社内預金の法的地位はどうなるんだ。大きく後退させられることになるんですね。
 手短に、結論だけ民事局長から答弁してください。
房村政府参考人 御指摘のように、現在、その全額が共益債権とされておりますが、今回の改正法におきましては、更生手続開始前六カ月間の給料の総額に相当する額または預かり金の額の三分の一に相当する額のいずれか多い額の範囲で共益債権とされる、こういうことになります。
木島委員 もうこの委員会で各同僚委員から再三厳しく指摘されておりますし、答弁もありますので、もう私からしゃべっちゃいましょう。一番答弁できちっと答えているのが、社民党の植田委員の質問に対して房村民事局長が、何でこんな改悪をするのかということに対して、主に三つ理由を挙げているじゃないかと答弁を読みました。
 一つは、そもそも、社内預金の債権の性質としては、労働債権じゃなくて通常の貸し金請求権だ、本来優先権がない債権ではないかというのが一。
 二つ目には、先ほど法務大臣がるる答弁しましたが、昭和二十七年当時の、そういう全額共益債権にして保護した立法事情も今なくなっていると。何か調べてみますと、昭和二十七年当時の炭鉱労働者の給与について、遠隔地に銀行がある、一時だけ会社に預かってもらっていた、そのために、もしものことがあったときには共益債権として守ってやろう、そういう状況だったと言われておりますが、そういう昭和二十七年当時の立法事情もなくなっており、今日では社内預金というのは貯蓄性の性格が基本ではないか、そうすると、退職金とか未払い給料よりも優先的に保護を与える必要はないじゃないかというのが二つ。
 それからもう一つは、保護の度合いの強い給料とか退職金だって六カ月分かもしくは三分の一しか保護していないんだから、バランス上、社内預金も今回の改正法案のように絞り込んでもいいじゃないか。
 主に三つだと私は読み取りましたが、それでいいと思うんですが、私は、この答弁はまことに気に食わぬし、成り立たぬのじゃないかと思うんです。時間の許す限り、一つずつ質問しましょうか。
 民事局長は、昭和二十七年の立法当時の立法理由がなくなったとおっしゃいました。ずっとこの間の経過を私は調べてみましたら、実は、昭和四十二年六月二十日の衆議院法務委員会において会社更生法の改正法案が提出されていまして、審議が行われているんです。もちろん参議院の法務委員会でも審議されていました。そこではどんな改正が出されたかといったら、今日と全く同じような改正法案を政府は出してきているんですよ。
 これは、昭和四十二年六月二十日、衆議院法務委員会会議録第二十三号です。いろいろありますが、政府の会社更生法改正の要点の「第三に、使用人の社内預金については、更生手続開始前六カ月間の給料相当額または社内預金の三分の一に相当する額のうち、いずれか多い額を限度として共益債権とし、その他の部分を優先的更生債権として、会社更生法上の社内預金の地位を明確にする」ということを言って、その答弁で、新谷さんという政府委員が理由を言っているんです。
 このときも、新谷さんですか、昭和二十七年の立法当時のことをいろいろ言った上で、だんだん拡充されてきまして、社内預金制度というものが行われるようになった、非常に、解釈上その預かり金の中に社内預金が入るのではないかという疑義が生じてきた、そういう意味で、昭和四十二年当時の解釈としては、この会社更生法の預かり金という中に社内預金も含むという解釈になっている、しかし、保護が強過ぎる、未払い給料や退職金に比べて保護が強過ぎるという、今ちょうど民事局長が答弁したと同じようなことを、昭和四十二年の六月二十七日の衆議院委員会で答弁しているんですわ。
 しかし、残念ながら、この改正案は参議院において見事に修正されまして、政府は引っ込めざるを得なかった。それで、現行の会社更生法の預かり金が全額共益債権として保護される法律制度が厳然としていまだに残ったんですね。
 どうですか、大臣。五十年間、そういう制度が保たれてきた。政府は昭和四十二年ごろそれを圧縮しようとしたけれども、それは国会で否決された。今日の状況と同じじゃないですか。そうしたら、今回も、こんな労働者の権利を切り縮めるような改悪はやはり引っ込めるべきじゃないですか。どうですか。短く。
房村政府参考人 昭和四十二年改正の際に、今回と同様といいますか、共益債権の範囲を限定するという趣旨の改正を提案いたしまして、最終的に修正でもとに戻ったというのは御指摘のとおりでございます。
 ただ、私どもといたしましては、その後も、基本的な考え方として、共益債権として預かり金全額を扱うということと、労働債権としての給与あるいは退職金の保護との間のアンバランスというのは解消していない、また、預かり金、社内預金をめぐる社会情勢の変化もありますので、そういうことを踏まえて、再度、今回の改正で合理化を図りたい、こういうことでございます。
木島委員 あくまで未払い給料、退職金とのバランスを言うのですが、私は、給料、退職金と社内預金の保護の度合いがバランスを欠くという主張には根拠がないと思います。
 社内預金というのはどういうものか。労働の対価として一度は労働者に払われたもの、しかし、会社と労働者との特別な関係、支配従属関係と言ってもいいかもしれません、その関係によって会社に預けられたもの、預けざるを得なかったもの。だから、労働基準法第十八条も、会社が労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理する場合の特別の規定を置いている、そして保護している。
 未払い給料、退職金はいまだに払われていない労働債権ではありますが、この社内預金というのは、一たん払われたけれども、特別の関係でもう一回会社に貯蓄を余儀なくされたものじゃないか。会社更生時にこれを共益債権として全額保護をするというのは、私は当たり前だと思うんですね。もしバランスを欠くというのなら、私は、むしろ逆に、未払い給料や退職金の方をも全額共益債権として、労働者の血と汗の結晶であるこの労働債権を守るべきがバランスを是正する方向ではないかと思うんですよ。どうですか。
房村政府参考人 基本的に、受け取った給料がもとになって預けられたという点は多分御指摘のとおりだろうと思いますが、しかし、それは、労働者が受け取った給料を銀行等に預金する場合と本質的に変化がない、変わりがないわけでございます。また、労基法上も、社内預金が強制にわたらないような制約を種々しておりまして、社内預金一般について、労働者の意に反して会社に預けられた、こういう実態にあるとは考えられませんので、その点については、法律的に見る限り、給料債権あるいは退職金債権と社内預金の法律的性質は異なるだろうと思っております。
 また、給料あるいは退職金債権の優遇度合いということにつきましては、実体法における優先権を考慮しつつ、特に保護を強化すべきという範囲を会社更生法において共益債権としているものでございますので、その点については今回も維持をする、こういう考え方でございます。
木島委員 やはり会社が成り立っているのも労働者の営々とした労働によるわけですよ。その一部がこういう形で蓄積されていたのが、会社経営者の経営失態からまさに危機に瀕している、そういう場合どうするかという局面ですから、やはり全額守るというのは当然じゃないかと思うんです。
 ここに、昭和四十二年七月二十日、参議院法務委員会の会議録があります。亀田得治参議院議員が、自民党、社会党、公明党三党を代表して、共同の修正案を出しております。そして、法務省が社内預金の権利を切り縮めようとしてきたことをばっさりと押し返す、大変立派な修正案を出しております。昭和四十二年と今日の社内預金の法的性格が変わっているわけじゃありません。昭和二十七年と違うんですよ。今日においても、まあ社会党はなくなりましたが、これらの政党の後裔の皆さん方が、今回の社内預金の権利を縮減する法案には断固として反対をしていただきたいと期待をしたいと思います。それで次の質問に移りたいと思います。
 取締役の管財人就任についてであります。DIP方式とも言われているようです。
 改正法案六十七条三項によりますと、百条一項に規定する役員等、査定決定を受けるおそれがある取締役を管財人にすることはできない。要するに、従前の取締役でも、損害賠償の請求を受けるような査定を受ける取締役以外は管財人になれる道を開こうとするものであります。モラルハザードになるんじゃないでしょうか。
房村政府参考人 現行の会社更生法におきましては、「管財人は、その職務を行うに適した者のうちから選任しなければならない。」こういう定めがあるのみでありまして、特段、選任資格に制限は設けられておりません。実務上は、更生会社の旧経営陣は経営に関与していたという一事をもって一律に管財人に選任しないという扱いがなされていると承知しております。
 ただ、例えば、会社再建のために支援企業から取締役として派遣をされまして、会社で再建の中心になって、計画を立て、それに基づいて更生の申し立てをする、こういうような場合もございます。そのような場合には、当該取締役は会社がおかしくなったということに関して何らの責任もないわけでありますし、また、その能力あるいは知識というものを会社更生に役立てる必要が非常に高い、管財人に任命したい、こういう場合も当然あり得るわけでございます。そういう場合を考えまして、管財人のいわば欠格事由として損害賠償の査定を受けるおそれがあるということを明記することによりまして、それ以外の者については、管財人としての適性がある者であって、裁判所が適当と認めれば任命できる、こういうことを明らかにしたものでございます。
 そのような仕組みでございますので、裁判所が管財人を選任するということでございますから、こういう規定を置いたからといって、直ちにそれがモラルハザードを招くというおそれはないと考えております。
木島委員 ただ、今回の会社更生法改正の最大の旗印は、迅速性、合理性でしょう。要するに、使い勝手をよくしようということでしょう。何で民事再生法に比べて会社更生法が使い勝手が悪いのか。いろいろあるでしょうが、その中心問題の一つは、会社をつぶした経営陣が引き続き実権を握って会社再生をやれるかどうかなんですよ。民事再生法はそれを認めているんですね。しかし、会社更生法はそれは認めていない。今、民事局長は、現行法にも法の規定はないと。ないんです。ないけれども、現実の運用は、だれ一人として会社をつぶした取締役は管財人に選任されてはいないわけです。当然ですよ。
 今回、使い勝手をよくしようという最大の理由に、会社をつぶした取締役陣でも、損害賠償を受けないような取締役なら管財人にさせて、引き続き経営させようというんでしょう、そういう道をあけようというんでしょう、法律によって。モラルハザードそのものじゃないですか。私は、損害賠償の査定決定を受けるおそれのある取締役の範囲は非常に狭いと思うんです。これはもう既に民事局長の答弁がありますが、商法二百六十六条の損害賠償責任を問われる場合なんでしょう。イエスかノーか。
房村政府参考人 御指摘の商法上の責任が追及される場合でございます。
木島委員 そうですね。そうすると、商法二百六十六条の取締役の損害賠償責任というのは非常に狭いんですよ。例えば、違法の配当、株主に不当に利益を供与した、いろいろ金銭の取引をした、まあいろいろありますが、一般的には法令、定款違反でしょう。そして、こういうことをやった取締役会決議に賛成をした取締役も損害賠償を受ける、そういうものでしょう。法令、定款違反がなければ責任を問われない。そうすると、会社をつぶすというのは、そんな生易しいものじゃないですね。
 違法をしなくたって、経営の間違い、経営の失敗、投資の失敗、さまざまな原因で会社はつぶれていくわけです。取締役というのは、特に会社更生法が想定している大会社の取締役陣というのは、そういう違法、不当をやらなくたって、きちっとした経営をやって、雇用を守り、下請を守り、地域経済を守る責務があるんでしょう。その責務を全うできなかった、投資に失敗した、つまらぬことに手を出した、違法じゃないかもしらぬ。しかし、そういう経営陣を会社更生の管財人に選任する道を開くというのは、私は、やはりおかしいんじゃないかと思わざるを得ないんです。
 これは、法務大臣、どうでしょう。政治判断ですよ。大会社を想定しているんです、会社更生法というのはね。だから、違法、不当じゃなくても、そういう経営の失敗をやったような取締役には全部退去してもらう、当たり前じゃないですか。どうですか。何でこんな法律をわざわざつくってそんな取締役にまで管財人になり得る道を開かなきゃならぬのでしょうか。日本社会全体がモラルハザードと言われていますが、何でそんなモラルハザードをわざわざ会社更生法の改正で盛り込まなきゃならぬのですか。これはもう大臣ですよ、これは政治家としての答弁を聞きたいですよ。
森山国務大臣 これは最終的には裁判所が選ぶわけでございます。裁判所が選ぶときの選択の範囲というものをこれによって決めるわけでございますので、おっしゃるような経営の責任がある人、あるいは、会社をつぶしたとおっしゃいますが、つぶした責任のある人について裁判所がそのようなことを決めることはないと私は思います。
木島委員 大臣は裁判官性善説に立っておる。そういう立派な裁判官で埋め尽くされているなら結構なんですが、私、さっき言ったでしょう。法律上、社内預金が共益債権だと、もう民事局長も堂々と答弁する。法律を読めば当然そうだ、そういう運用だ。当たり前の原則が目の前で管財人によってねじ曲げられて弁済されないんですよ、優先的更生債権だと言って。そんな不当な管財人を免罪しておるんですよ、東京地裁の裁判官は現に。何をするかわかったもんじゃない。だからこそ法律で、そんな取締役陣は管財人になれないということを入り口のところで縛ったらいいじゃないですか。
房村政府参考人 再生法との比較で申し上げますと、おっしゃるように、再生法の場合には、現経営陣がそのまま引き続き、再生手続を開始した後も経営に当たる。今回の会社更生法の検討の中で、やはり使い勝手を追求して、会社更生法においても再生法と同様に現経営陣がそのまま居座るということを原則とすべきではないかという意見があったのも事実でございます。
 ただ、議論の中で、会社更生法で、担保権者も含めて関係者をすべて取り込んでその権利変換をして相当の負担を願う、こういう手続を進めるに当たって、会社の経営陣がそのまま居座ったということでは債権者の理解が得られないだろう、手続が円滑に進まない、こういうことから、やはり管財人を裁判所が選任して、その管財人が会社の経営及び財産の管理を掌握する、こういう現行法の仕組みをそのまま維持する、こういう考え方がとられたわけでございます。
 したがいまして、おっしゃるような、使い勝手を重視して経営陣をできるだけそのままその地位にとどめるということを考えて今回のこの欠格事由を置いたわけでなくて、まさに御指摘のような、経営について責任のある者については基本的には選ばない、そういうことを前提として管財人を選任する、しかし、先ほど申し上げましたように、経営陣にいるからといっておよそ責任がなかったような者まで使えないということでは裁判所の選択の幅が狭まる、こういうことから設けたわけでございますし、また、裁判所の管財人の選任については、債権者、労働組合を初めそれぞれが意見を言えるわけでございます。そういうことを活用すれば、おっしゃるようなモラルハザードという問題は生じない、こう考えているわけでございます。
木島委員 大会社が適用されることが想定されているのが会社更生法ですよ。ですから、経営を破綻させたような取締役陣は恐らく選ばれないだろうというなら、法的に窓を閉めておいたらいいじゃないですか。そして、身ぎれいな、何の傷もない人を管財人に選んで、そういう知識経験がある人なら管財人の下に使用人として使ったらいいじゃないですか、そういうことはできるんですから。
 最後に、管轄について。
 東京地裁と大阪地裁を特別扱いにして、ここに重複的に管轄権を認めました。理由はもうお聞きしません。私は、こんな改正はおかしいと思うんです。いいですか。地方に本社があり、地方で製造業を営み、そこに労働者がたくさんいて、関連の中小企業もたくさんある、そういう企業の会社更生を何で東京、大阪でやらなきゃならぬのですか。もう不便きわまりなくなるんじゃないですか。それは、債権者の一つである大手銀行がほぼ東京に支店が集中しておると、大手銀行の便益のためじゃないですか。こんなおかしな管轄をつくり出すというのは、私は本当に納得できないと思います。
房村政府参考人 ただいまの点は、会社更生というのは非常に複雑で、経験のない者にとってはなかなか円滑な手続の進行が図れないという特色がございます。これは裁判所にとってもそうでありますし、管財人となる、法律管財人の弁護士の場合もそうでございます。そういうことから、どうしても、円滑な進行を考えますと、専門的なスタッフのそろっております東京、大阪に事件を持ってくるという当事者の希望をかなえたい。その場合であっても、本社のところには当然管財人代理等が行って、その経営に当たり、あるいは財産の管理に当たるわけでございますので、そこは当然会社の維持更生のために必要な措置がとられるはずでございますので、問題はないものと考えております。
木島委員 もう時間ですから終わりますが、私は、今から二十八年前、長野県の片田舎で更生管財人を任命されて十五年間苦労した経験がありますよ。田舎にある会社ですよ。従業員も取引先も、全部長野の田舎ですよ。そんなものをもし東京で更生開始決定されたらどうなりますか。司法にとってもよくない。逆にこういう事件をしっかり田舎でもやる、だからこそ裁判官も勉強する、弁護士も勉強する、職員たちも勉強して、会社更生事件をやれるような立派な司法部になろうということになるんじゃないですか。そういうことを切り捨てて東京と大阪だけに集中するなんというのは、私は、銀行の利益を図るだけじゃなくて、日本の全国の司法の前進のためにもよろしくないということを強調して、質問を終わります。
佐藤(剛)委員長代理 次に、植田至紀君。
植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀です。
 私も、別に連歌の会ではありませんが、今話題になっておりました大規模裁判所の競合管轄と労働者保護にかかわってという課題からお伺いをしていきたいというふうに思っております。
 一応この間何度か御答弁されていると思いますけれども、今回の大規模裁判所の競合管轄については、本来民事再生法と等質とも言われる今回の更生法案なんですけれども、民事再生法には当然規定がないわけですが、今回法案に東京、大阪中心主義ということで規定を設けられた。これはもう答弁を省略してもらうかうなずいてもらうだけでいいんですけれども、一応確認させてください。
 要は、理由は、他の地方の裁判所に比べて東京、大阪地裁というのは、更生事件の取り扱いがそもそも多い、そして処理に手なれた裁判官、書記官がたくさんおる、そして倒産処理専門部は東京と大阪の地裁のみにある、これが理由でございますか。一応、イエスかノーで。
房村政府参考人 御指摘のとおりでございます。
 つけ加えれば、管財人として適任の方も選びやすい、こういうこともございます。
植田委員 今おっしゃった理由というのは、先日、先週の金曜日の参考人質疑の中で、とりわけJAMの小山副書記長がおっしゃっていました。要するに、裁判所には合理的な理由があるのかもしれぬが、今回のこの東京、大阪中心主義は我々の側からすれば全く合理的な理由はないとはっきりと私の質問に対して断言されておられました。
 それは何も根拠がないわけではなくて、ここで事例を一つ申し上げたいわけですけれども、これは民事再生法のもとでの、石川県金沢市の三善工業という会社がありまして、その案件についてなんですが、実際、民事再生法には大規模裁判所の競合管轄の規定はないわけですけれども、今回この三善工業は、東京に本社も本社機能もないんだけれども、いわば脱法的にと申しましょうか、民事再生の申し立てを東京地裁に対して行ったという事案です。
 そして、これについて、ことしの三月十四日、日本労働弁護団が最高裁と東京地裁民事二十部に対して、三善工業に関する民事再生法の運用の仕方に問題があるということで申し入れをなさった。申し立ての理由が大きく二つあったということです。その一つが、民事再生法は再生を目的としているにもかかわらず、申し立て直後に全従業員を解雇して、申し立て代理人が清算目的での申し立てであるということを公言しておるという点。もう一つは、東京に営業所があることを理由に管轄のない遠隔地の東京地裁に申し立てたことが不当ではないかということを弁護団が申し入れた。
 この件については、最高裁、東京地裁もこの日本労働弁護団の申し入れを重視されて、会社代理人に労働組合との誠実な話し合いを求められた。結果、比較的短期間のうちに七割に近い退職金は確保することになった、こういう事案でございます。
 この三善工業の場合、まず労働組合があったということ、そしてその労働組合が全国的な産業別労組に加盟しておった、我々はいわゆる中央単産と呼んでいますが、そこに単産加盟をしておった組合で、実際、東京地裁でもそれなりに対応することが可能であったがために、それぞれの組合員の方々、労働者の方々が比較的納得のいくというか、甘受し得るだけの結果をおさめられた。
 しかし、本来、こうした組織のない会社であった場合、やはり弱い立場の従業員というのは、当然、結局、申し立て会社の側の一方的な説明に応じるしかすべがないということになってしまうでしょうし、また、仮に労働組合があったとしても、それが単立の組合で、いわゆる中央単産に加盟していない場合というのは、やはり裁判所に対して意見を述べたり交渉するというのはかなり困難を伴ったであろうということは想像にかたくないわけです。
 例えばこうした実例が既にあるわけですね。こうした現場の教訓なり経験というのが、果たして今回の法案の中身を定めるに当たって生かされたのか生かされなかったのか。局長、どうでしょうか。
房村政府参考人 具体的な事件についてはコメントは差し控えさせていただきますが、一般的に申し上げれば、本社が東京あるいは大阪にない会社に東京、大阪に競合的管轄を認めるという今回の法案が適用された場合に、いろいろな面で連絡等不便が生ずるということは予想されます。
 そういうことから、今回の法案におきましては、書面等投票の導入によって議決権行使方法を多様化する、要するに、裁判所まで赴かなくても議決権が行使できるというような方法をとる。あるいは、債権の認否についても書面主義を中心とする。それから、当然、意見については書面での意見の陳述もできますので、そういったような方法をとることによってできる限り負担を軽減する。あるいは、損害または遅滞が生ずるおそれがあるというときには移送ができる。それなりの法律的な手当てはいたしております。
 それと、実際の問題として、特に労働組合との関係を御指摘でございますので、そこについて申し上げますと、本社が東京あるいは大阪になくて東京、大阪に申し立てられた場合に、会社更生法においては、必ず管財人が選ばれ、管財人が会社の経営と財産管理を掌握いたします。したがいまして、管財人としては、会社を更生手続の間経営をしていかなければならない。そういうことでありますので、仮に東京、大阪で選任されたといたしましても、その営業の中心である本社所在地、そこに管財人みずから、あるいは少なくとも管財人代理、これは常駐して経営に当たる、あるいは労働組合との協議、交渉等を行う、こういう体制をとらなければ、およそ会社更生の手続が進みません。その点が、現経営陣がそのまま経営に当たる民事再生手続とは大分違う点でございます。
 したがって、会社更生について見ますと、確かに遠距離にある場合もあろうかとは思いますが、労働組合として、会社経営の任に当たっている管財人との折衝その他がおよそ不便になるということは考えにくいと思っております。
植田委員 私が今紹介した事例等については、これは民事再生法のもとでございますので、御承知であったかどうかは別としても、その個別の事実はともあれ、負担軽減の措置としては、そもそも文書による陳述もできまっせ、むしろ裁判官だったら、口頭によるよりも文書の方がより適切に処理する習性があるよなんというようなことをレクでも伺いましたが、今、後段のお話、局長は断言なされますけれども、実際、本当に会社更生手続において、労働組合もしくはその労働組合の執行部なり代表する者と管財人においては、日常的な協議なり団体交渉の回数というのはやはり格段にふえてくるでしょう。ましてや、そういう場合、仮に遠隔地の東京地裁において管財人が選任された場合、その協議なり交渉に、時間的にも費用的にもかなり組合の側が制約される局面は否定できないと私は思うんですよ、一切御心配ないとおっしゃいましたけれども。
 しかも、実際、先ほど三善工業の件を申し上げたときに、中央単産であれば、そこがいろいろ面倒を見たりできるでしょうから、そこのセンターが交渉するということも、要するに、現場の労働組合、下部組織の現場の単産の意見を聞きながら中央単産の方々が管財人と交渉に当たるという場合は、例えば先日来られたJAMなんかはそれは確かに可能でしょう。しかし、そうでない場合、いわゆる未組織というかそういう単産未加盟の組織の場合、協議、交渉のための上京等を強いられる、そういう局面はやはり出てくるでしょうし、企業にすべて労働組合があるとは限らないわけですから、労働組合がなかったらどないするんですかということもあるでしょう。
 そういう点について、実際そういうことになれば、極度の犠牲を強いられることになる方々は出てくるんじゃないですか。そうなると、裁判所による監督というものも十分されるのかどうかという懸念もやはり強く出てくるわけなんです。その辺はどうお答えになりますか。
房村政府参考人 先ほど申し上げましたように、管財人が選任されますと、要するに会社の経営に当たるわけでございます。したがいまして、労働組合との協議あるいは団体交渉、こういったものも当然使用者として応ずる必要があるわけでございますが、これを実際に行うときに、管財人のみならず、管財人代理というような補助者を使って当然種々の処理をすることになろうかと思います。会社の経営を行うということになれば、本社機能を営んでいるところに直接管財人が行くかあるいはその代理が行くかしなければ、会社の経営は成り立たないわけでございますから、また組合との交渉も当然そこで行われるはずでございます。
 もちろん、管財人が仮に東京、大阪にいて、本社が地方にある場合に、その連絡等で管財人の側の負担がふえるのか、あるいは組合あるいは労働者の側の負担がふえるかという問題はありますが、本社がすぐそばにある場合に比べれば、多少負担がふえることはあり得るとは思っております。
 ただ、今申し上げたように、東京、大阪で手続が開始されると、労働者の側が必ず東京、大阪に出てこなければ交渉もできない、意見も言えない、そういう仕組みにはなっていない。企業活動を続ける場合には、当然そこが営業等の本拠ですから、そこで通常は必要な組合交渉等もなされるでありましょうしということを申し上げているわけでございます。
植田委員 局長のおっしゃっているのは、それは法律上そうなんでしょう。それなら、何で労働組合の人が、我々にとっては何の合理性もないと言うんでしょうということなんです。もうそこはいいですよ。おっしゃっていることはわかります。要するに、法律上は、常識で考えれば、管財人が東京におったって、奈良の大和高田という片田舎の町まで管財人が出向いていかないかぬ局面は当然出てくるだろうし、それは労働者の方に負担があるか、管財人の方に負担があるか、多少のことはあるだろうという話ですけれども、その多少の話にこだわっているわけですやんか、そこは。
 それは御心配御無用じゃなくて、そういうことがあり得るということはお認めになっているわけでしょう。認めておられながら、少なくとも、今言ったように、文書による陳述で十分可能なんだからそれでよしとしなはれと言うて、実際問題、労働組合としても辛抱を強いられているというのが、今回の法案が提案されている経過なわけですよね。
 だからそれが、先ほどの話に戻りますけれども、裁判所の側に合理的な理由はあるかもしれへんけれども、受けとめる組合にとっては合理的な理由がない。組合にとってそうであるとするなら、組合もないような未組織労働者にとってみればどうなんですかと。私、常識で考えて、出てくるとは思いませんよ。
 だから、ここはもう局長、いいです。いずれにしても、今のやりとりを聞いておられて、森山法務大臣、実際そうした問題があるということは念頭にはあろうかと思います。現状では、ただし裁判所の都合でそういうことですということであったにせよ、実際、今すぐに東京、大阪地裁の中心主義を削除するといってもなかなか無理やとおっしゃるでしょうから、これから法曹人口もふえてきて、本来だったら、それぞれの裁判所にそうしたノウハウを持つ裁判官が配置されるのがこれからの理想とされる形なんだろうと思いますね。
 ですから、そうした推移を見ながら、当然、ここの競合管轄については、やはりこれからロースクールをこしらえて、優秀な法曹人がいろいろな法曹界に巣立っていく、そんな中で、どこに行ったってノウハウを持っている、大阪、東京でなくても、どこへ行っても、そうした使い物になる人がちゃんと配置されているような状態を理想とされる、そんな状況をつくるためにロースクールをこしらえるわけでございますから、そうした中で、いずれこれは見直す対象になってくるというふうに私は理解しておりますけれども、いずれそうした時期は来るという理解でよろしいですね、法務大臣。
森山国務大臣 会社更生法案におきましては、会社更生事件の特殊性と専門性ということを考えまして、全国どこにある会社であっても、専門的な処理体制が整って、管財人の確保も容易な東京地方裁判所または大阪地方裁判所に会社更生事件を申し立てることを認めているわけでございます。
 もっとも、先生がおっしゃいますような、非常に大きな事情変更が起こるというようなことがございまして、将来、この規定を見直すということも必要だというような事態になりましたら、それはもちろん、そのときに必要な措置を講じるということになるだろうと思います。
植田委員 そういう措置を必然化するような司法制度改革をやっておられるわけでございますから、そこは、いつ何どきということまで私は問うてないわけで、もうちょっとはっきり言ってほしかったなとは思いますが、別にその答弁をとったから、ではこの法案、オーケーというわけではございませんから、次の質問に移りたいと思います。
 午前中の質疑でもあった点なので、ここはちょっと重複はするんですけれども、更生手続等への労働組合の関与にかかわってお伺いをしたいわけでございます。
 企業の再建を行うに当たって、当然ながら、労働組合、もしくは労働者の代表などの協力というものが不可欠である。ここから先は午前中もやりとりがあったので繰り返しにはなりますが、もう一度伺いたいわけです。更生計画についても、その計画ができてしまってから意見を聞くというよりは、更生管財人が、その業務の進捗状況、提案しようと考えている方法、たたき台の段階ですね、そこでの情報提供等をやはり労働組合なり労働者の代表に行う。そういうことで、更生計画の策定段階から組合の関与というものを認めるのが至当であると私も考えておるところですが、そこは重複して構いませんので、もう一度お願いできますでしょうか。
房村政府参考人 今回の会社更生法案では、更生手続の迅速化を図るということから、更生計画案の提出期限を一年以内、こういうぐあいに法律で決めております。そのようなことから、管財人は、相当短期間に更生計画をつくらなければならない、こういう状況に置かれておりますので、その間に労働組合等と協議を行うことを一律に法律で義務づけをするということになりますと、更生計画案の作成の遅延を招くというおそれもございます。
 それから、この更生計画は、管財人以外に、更生債権者あるいは株主もつくることができる、こうなっております。もし、管財人に協議を義務づけるということになりますと、計画を作成する場合、他の関係者にも同じような義務づけをする必要があろうかと思いますが、そこまでの義務づけを法律で規定することが合理的かどうか、こういう問題もございます。
 このようなことから、今回、この法案では、一律に協議を義務づけるということはしておりません。ただ、更生計画を円滑に遂行していく、あるいは適切な更生計画を作成する、こういうためには労働組合の協力というものが必要とされるという実情から、実際上は、管財人が更生計画を作成する過程で、労働組合と種々情報の交換あるいは意見の交換、こういうものを行っているというのが実態だというぐあいに承知しております。
植田委員 改めて聞いてみますと、一点目、更生計画をこしらえる、そこで円滑に進めるに当たって、実際上、管財人が労働組合と意見交換をしながら進めている実情というものを、今の局長の話ですと、十分承知されているということですから、現実にそういうことは存在している。だから、法律にその実際上やっていることを条文に書き込んだ瞬間、迅速化という観点から問題が起こるというのはちょっと当たらないんではないか。当たるんであれば、その理由を説明してください。
 それと二点目。もし仮に管財人に対してそうした組合の関与ということを規定づけたら、他のところにもそれを規定づけなければならないというふうにおっしゃいましたね。それが二つ目の理由ですよね。それについて、組合との関係における、管財人と労働組合、労働者との関係性において、要するにすみ分けが全くできない話なのかどうなのか。もう一度、その二点、説明してもらえますか。
房村政府参考人 実情として、多く、意見交換あるいは情報交換をしているということは、先ほど申し上げたとおりでございますが、法律で書くとなりますと、そういう個別の、どのような形で行うのがいいか、あるいは、場合によれば省略しても問題がないのか、こういうことを無視して一律に強制をするということになりますので、それは手続の遅延を招くおそれを生ずるということはあるだろうと思っております。
 それから、他の債権者あるいは株主等が作成する場合にも協議を義務づけるということになりますと、必然的に、そういう協議が調わないので提出期間を延ばしてくれ、こういうようなことが出てくる可能性もありますし、やはり法律的にそういったものについてまで協議を義務づけるということは相当でないだろう、こう考えております。
植田委員 ここだけで長々とやりとりするつもりはございませんが、仮に、別に法律で組合の関与、この関与というのは、実際、何のトラブル、それはトラブっているから管財人が登場するわけですが、要するに、そことの間で円滑に物事が進んでおれば、すっすといく話なんですわ。本来、円滑に進んでおれば、迅速に処理できるわけですよ。だから、私は別に迅速化自体、否定しませんよ、あらかじめ迅速にしなければならないという大命題のもとに、それこそ、丹念な検証が必要だという労働者側の要求なり要望というものが、では、ここで切り捨てられる場面が出てくるよと。しかし、多くの場合は、実際、実情として労働組合なりと相談しながらやっておる現実を法律上に書き込んだ瞬間、迅速化という点からするとそんな問題が起こるというのが、私、さっぱりわからへんのですよ。現実に行われているわけでしょう。
 そしてそれが、そのことによって、では具体的にどれだけ遅延しているのか、どれだけ引き延ばされてしまっているのかという実例がどれぐらいあるんですか。実際、どんなものなんですか、それは。
房村政府参考人 要するに、現状で意見交換あるいは情報交換が行われているというのは、管財人の判断で、手続を円滑に進めるために柔軟にそういうことを行っているということだろうと思います。これを法律で一律に協議を義務づけるということになれば、当然遅延を招く場合があり得るということは予想されるわけでありまして、そういった一律の義務づけというのは相当でないだろう。やはり事案に応じた柔軟な処理が管財人において行えるようにしておく方が手続の円滑な進行に資する、こう考えております。
    〔佐藤(剛)委員長代理退席、委員長着席〕
植田委員 もう一問だけ聞いて次に進みますけれども、そこで起こったさまざまな労働者の要求なり要望なり、いろいろ出てくるでしょう。それでやりとりしてしまうと迅速性において問題も生じる。そこは、そうした労働者の諸権利をどう保護するかというよりも、手続の迅速化の方を優先するという政策判断をなさったという理解をさせていただいてよろしいんでしょうか。もしそうではないのであれば、どう違うのか教えてもらえますか。
房村政府参考人 基本的に、管財人は使用者の立場でもありますので、労働者の保護の観点で協議が必要あるいは交渉が必要ということについて言えば、それは使用者としての交渉義務というのは当然あるわけですから、それを活用して労働者の権利を守るということは、労働組合として十分あり得るわけでございます。
 私が今申し上げているのは、管財人が更生計画を作成する際にどの程度の義務づけをするか、こういうことで考えれば、それは管財人の自由な裁量で円滑に進めるような余地を与えた方が手続全体が円滑に進む、こういうことを申し上げているわけでございます。
植田委員 そこで、実際、こういう場面もあると思うんですよ。更生管財人が更生計画をつくる過程また更生計画を遂行する上で、どうしても避けて通れない解雇というものを検討せざるを得ない場面も出てきますよね。
 この点について、では、実際、そうした場合においては、これは直接生首にかかわる話なんですから、労働組合を招集して、例えば合理化計画について諮問をするとか、組合との協議をするとか、そしてまた、その協議をするに当たって労働組合側に対して解雇計画にかかわる情報を開示するということは、やはり明らかにさせておかないことにはいかぬのと違いますでしょうか。
房村政府参考人 労働者との間の労働契約でございますが、これは、更生計画でそれを変更することはできませんので、更生計画を遂行する上で例えば整理解雇がどうしても必要だ、こういう場合には、管財人は使用者の立場で整理解雇を実施するということになります。
 したがいまして、その場合には、労働関係法規あるいは労働協約、そういったものの適用を受けた、いわゆる通常の使用者が行うのと全く同じレベルで行わざるを得ませんので、労働契約等で労働組合との協議、そういうものが必要であれば、それは当然そういう手続を踏んで行う必要がありますし、また、一般に判例等で認められております整理解雇を適法とする要件、こういったものの適用もございます。
 したがいまして、そういった点については、従来からの法律的な保護がそのまま当てはまりますので、更生手続上特段の手当てを加える必要はない、十分な保護が図られている、こういうぐあいに考えております。
植田委員 次に、もう一点お伺いしたいわけですけれども、現行では、更生管財人の選任について、現在の経営陣というものが更生管財人には選任されないようになっていますが、今回は、経営責任のない取締役等を更生管財人に選任することが可能になっているわけです。
 実際、マイカルのように、旧経営陣が居残ってしまってとんでもないことになった事例もあるわけですが、そうした事態をできるだけ避けるためには、旧経営陣の方が管財人に移行するときは組合等からの意見聴取を裁判所が行うということをあらかじめ規定しておいていいのではないのかと思うんですが、その必要はないんでしょうか。
房村政府参考人 裁判所が開始決定をするときは、原則として開始決定前に組合から意見を聞くことになっておりますので、そういう場合には、当然、開始決定と同時になされる管財人の選任についても組合としては意見を述べることができるようになっております。
 また、例外的に意見を聞くことなく決定ができる場合、そういう場合には、確かに事前に意見を述べる機会は与えられておりませんが、開始決定後の財産状況報告集会において管財人の選任について意見を述べるということができますし、集会が開かれない場合には、書面をもって裁判所にその点について意見を述べるという機会は保障されておりますので、それなりに組合に対しては意見を述べる機会が保障され、裁判所もそういった意見を踏まえて選任等を行うということになろうかと思っています。
植田委員 要は、意見聴取を行った上で、その人物の能力なり姿勢なりというものは、裁判所においてそこは慎重に判断するので御安心くださいということでございますね。
房村政府参考人 もちろん、裁判所において適切な方を選任されると思っておりますが、その点について疑問があればさらに利害関係人は裁判所に意見を言う機会が保障されておりますので、そういうことを通じて管財人の適性というのは担保されると考えております。
植田委員 次に、とりわけ下請の中小企業、親ガメの方じゃのうて子ガメの方でございますけれども、そこにおける下請の中小企業の経営の安定、また、下請労働者の雇用、賃金確保にかかわってお伺いしたいわけです。
 実際、最近の大型倒産事件では、とりわけ会社更生法を利用した再建事例、特にゼネコン、流通、金属など、そういうどの場合でも更生会社は再建される。しかし、その更生会社の生産を実体として担ってきた専属の下請中小企業では連鎖倒産が大量に発生している。その下請中小企業で働いている労働者の失業、そして賃金、退職金等の不払いというのが発生している。これは、おおむね事実認識として共有できるかと思います。
 その意味で、今回新たな会社更生法案が出されたわけですけれども、私は先日の質問の冒頭でも申し上げましたように、別に迅速化がけしからぬと言っているわけではないんです。ただし、企業の事業の再編や産業の再編、そこの利便性を高めていくだけではだめだろうということをずっと言ってきたわけです。実際、そうした下請中小企業の事業の継続や労働者の賃金確保にとって、どのような点で今回具体的な措置が盛り込まれているんでしょうか。
房村政府参考人 御指摘のように、会社更生手続が開始されますと弁済が停止されてしまいますので、下請の中小企業の連鎖倒産ということが発生する可能性があるわけでございます。
 これに対する会社更生法の対応でございますが、これは、従前からある措置ではございますが、まず第一に、更生会社を主要な取引先とする中小企業が、更生債権等の弁済を受けなければ、事業の継続に著しい支障を来すおそれがあるときは、裁判所は、更生会社の資産状態、当該中小企業との取引状況等を考慮して、その弁済を許可することができる、これがその最も中心的な措置でございます。停止されれば直ちに連鎖倒産になる場合に弁済を認める。無条件で弁済を認めてしまいますと、最終的に適正な更生ができなくなるおそれもありますので、当然更生会社の資産状態とか取引状況を考慮してということにはなりますが、この制度によりまして連鎖倒産の防止を図っているということがございます。
 それから、直接的に連鎖倒産の防止ということで法律の条文上は出てまいりませんが、一般的に、中小企業が有する更生債権が少額にとどまるということから、少額債権の弁済を裁判所の許可でできる場合が定められておりまして、これを活用することによって中小企業の救済が図られるという面がございます。
 その一つは、少額債権を早期に弁済することによって更生手続が円滑に進行する、こういう場合にできますので、これを活用して相当程度中小企業の救済が図られる。今回、それに加えましてさらに、少額の更生債権等を早期に弁済しなければ更生会社の事業の継続に著しい支障を来すときは、許可を得て弁済することができるという制度を導入いたしました。これも、主として更生会社と少額の取引をしているところを念頭に置いたものでございますので、中小企業の救済に大いに役に立つ、こう考えております。
 そのほか、更生計画の中でも、少額の更生債権については弁済率や弁済時期等の点で優先的な取り扱いをするということが一般的に認められておりますので、このような方法で中小企業の保護を図っているということでございます。
植田委員 そこは、局長ではございませんが、事前にお役所の人といろいろお話しして、私の自分の質問メモに書いてあることをしゃべられるなと思ったら全部そのとおりで、別に八百長でやっているわけじゃないんですけれども、大きく三つですね。更生会社を主要な取引先にしている中小企業に対しては計画許可前に弁済の制度がある、そして少額の更生債権等についてはこれも計画前の弁済、そして更生計画の中でも少額の更生債権については優先的に取り扱うということですけれども、ちょっとそれは後でもう一度、この設問の最後で法務大臣に伺うところです。
 ちょっと離れて、実際、更生会社への依存度の高い下請の中小企業の場合、更生債権の弁済が長期間にわたると経営が維持できへんという可能性が高いということなんですが、今回、弁済期限を二十年から最高十五年に圧縮された。先日の参考人質疑では、私は十二年と言ったんだがという参考人の方も、十二年というのはどういうところから出てきた数字なのかよくわかりませんが、議論の過程では十年という話もあったわけですね。実際、今私が前段で申し上げましたように、下請中小の場合、期間が長いほど大変なわけですから、十五年というふうに決定したのはどういうバランス論でお決めになられたんですか。
房村政府参考人 弁済計画の最長期間、現行法では原則二十年としております。これは、時代の変化の速いこういう時代状況に合っていない、いかにも長いという指摘がかねてからありました。特に二十年先の弁済計画というようなものについて、その遂行可能性というようなものは適切に判断できない、こういう指摘もあって、これを短縮するということに関しては法制審議会においても一致した認識でございました。
 これをどこまで短縮するかということで、民事再生法で十年としておりますので、それと同様に十年ということでもいいのではないか、こういう御意見もあったわけでございます。ただ、民事再生法が対象としておりますのは一般の債権で、担保つきとか優先権のあるものは全部除いた債権だけでございます。ところが、この更生計画では担保つきの債権あるいは優先債権、そういったものも取り込んでおりますし、また全体としての債権額の大きなものもあるということから、十年に短縮してしまうと更生計画が樹立できない場合もふえてくるのではないか、こういうことからやはり十年ではやや短いだろう、こういうことから、現行の二十年と十年のちょうど半ばである十五年ということに落ちついたというのが経過でございます。
植田委員 理由は大体わかりますけれども、下請の場合、やはり少額でも首をくくるかくくらぬかという瀬戸際、そういう岐路に立たされる場面が多いわけですから、それはダブルスタンダードになるというふうにおっしゃられれば身もふたもないんですけれども、下請のそうした対象については、例えばこの十五年という期限をもうちょっと短縮するという例外措置をとる、期限を圧縮するという措置をとるとか、また実際、少額弁済の目安を引き上げるとかそういう手当てをしておかないことには、一番最初にお伺いした、基本的には少額弁済はこういうふうにしてますよってに、中小企業に対してもその損失の軽減に寄与してますねんといっても、それはちょっと現場の状況とは乖離したことにはなりませんでしょうかね。どうでしょうか。
房村政府参考人 一般的に申し上げれば、少額の債権を余り長期分割にされると、それは不利益になります。そういう点では、計画を樹立するときには計画の内容が関係人にとって公平公正でなければいかぬ、こういう要請がありますので、一般に、少額債権についての弁済期間は短期に定めるというのが通常の扱いでございます。
 では、これを一律に法律で短くしてしまうかといいますと、中には、場合によると多少期間が長くなっても総額での弁済額がふえる方がいい、こういう場合もございますので、そこは当該関係会社の実情に応じて、選択の余地の広い方が適切な計画が立てられるのではないか、計画としてはやはり上限だけを決めておいて、その中でそれぞれの債権の特質に応じた公平な計画をつくっていただく、こういうことが望ましいのではないかと思っております。
植田委員 実際、あえて伺いますけれども、では、弁済額の上限とか金額の目安というのは大体どんなものなんでしょう。大体三百万から五百万ぐらいと違うかな、少額の。そんなものでしょう。大体目安だけでも。
房村政府参考人 少額債権と申しますのは、当然、会社の規模とか相手方、それから会社にある資産、どれだけ払えるかということにもかかわるわけです。少額債権をたくさん払ってしまって後の更生ができなくなるようでは困りますので、ここはなかなか一律には言えません。
 ただ、中には、規模の大きなもので五百万程度でも少額とされたという例があることは事実でございますが、ちょっと目安というには、今言ったように余りにも多様でございますので……。
植田委員 全体的な基準でなくて相対的なものだということは理解していますが、そういうことでいけば、五百万という例もあったということでございますね。
 そこで、今のやりとりを踏まえて、ちょっと法務大臣に伺いたいわけです。
 実際、中小企業を経営なさっておられる方々やそこで働いておられる労働者の方々の話を聞いていますと、今回の会社更生法案というのは、まさに大企業のための踏み倒し法だとか、中小企業いじめの希代の悪法ではないかというふうな声も聞くわけです。それはなぜかといいますと、要は、いわゆる少額弁済では全く不十分やさかいにそういうふうに出てくるわけですよ。
 例えば、ゼネコンが会社更生法を利用した初期の実例で、多田建設、これは九七年七月に会社更生法を申請して、再建のテンポは速かったんです。実際、二〇〇八年には無借金経営の優良企業に生まれ変わる。結構なことでございます、まさに更生法を活用したお手本のような、十年で更生ということになるわけですので。
 しかし、多田建設さんはそれでいいけれども、建設会社というのはぎょうさん下請があります。実際、九七年の倒産直後に十社以上が連鎖倒産している。そして倒産を免れた下請会社の場合でも、多田建設から受け取る下請代金は一二%、しかも、それも八カ年の分割弁済というのが更生計画の内容だった。いや、結構なことでございます、御同慶の至りですとはこれは私も到底言えない実例だと思います。
 ちなみに、取引銀行の方は、これは担保権を持っていますので、しっかりと五〇%を回収する。それを現場で見ていたら、これはおかしいやんけ、銀行だけは特別扱いされているのと違うんかと、やはりこれは素朴に、現場で働いている労働者そして中小企業の経営者の声というのは聞いてほしいなと思うわけです。
 要は、下請代金の九割を踏み倒して大企業は生き延びていく。片や一方、下請の中小企業は連鎖倒産を強いられるか、結局、下請代金の踏み倒しに遭って労働者に給料を支払えなくなる。実際、今多田建設を出しましたけれども、建設業の場合ですと、下請中小企業が受け取る下請の代金というのは、言ってみればほとんどはそこの労働者の賃金、手間賃なんですわ。
 という現実を踏まえたときに、先ほどからるる局長が申し述べられた、言ってみれば、少額弁済で十分だ、これで中小企業、安心してください、ばっちりよと森山法務大臣は自信を持っておっしゃることができますでしょうか。
森山国務大臣 会社更生手続には、下請中小企業を初めとする取引先の中小企業の保護を図ることのできる各種の制度が設けられておりまして、先ほど来局長がるる御説明申し上げたものも含め、いろいろなものが用意されております。
 具体的に簡単に申しますと、更生会社の取引先中小企業に対する早期の弁済を可能とする制度や、更生計画において、取引先の中小企業の有する債権を弁済率や弁済時期等の点で優先的に取り扱うことを可能にする制度などでございます。
 したがいまして、このような制度によりまして下請中小企業者に対する保護は図られているものと考えております。
植田委員 要は、私が今具体的な声を紹介しましたけれども、十分だとおっしゃるわけですね。――いや、大臣に聞いているんですよ。そんな難しいことを聞いていない。後で局長に聞く場面は幾らでもありますので。
 今のお話は、十分でございますというふうに法務大臣から私は答弁を受けたという理解でいいわけですね。
森山国務大臣 できる限りのことをやっておりまして、十分だと思っております。
植田委員 そうおっしゃっていただいても困るわけですが、ここはちょっと局長に事実関係、というのは、細々聞いても、恐らく、そうした御指摘の点についてはそれぞれの事案ごとに判断されるというふうな御答弁が返ってくる種類の話ですので、ちょっと具体的な話で、法律の話じゃありません。現実に、今そうした下請の現場でどういうことが起こっているかということを一つ一つ、お互いに共通認識を持つためにおさらいをせぬといかぬなというふうに思うので、そこをちょっとおさらいしたいと思うんです。
 現在の日本の産業構造の中で、言ってみれば、大企業独自で生産、営業が成り立っている会社というのはほとんど皆無に等しいだろう。とりわけ建設業の場合、大手ゼネコンでも外注生産の依存度が七割を超えている実態にある。要するに、下請なしに建設工事はできない、そういう実態にあるわけです。しかも、最近のアウトソーシング化の進展の中で、製造業でも、工場の製造ラインの大部分を生産請負というふうに呼ばれている下請会社に委託するケースもふえていると言われています。
 ただ、問題は、この生産請負会社が実際、本当に企業の実体があるのかどうかという点は非常に怪しいわけですので、実際、違法な偽装派遣だという指摘もあるわけですが、今はそのことについて問おうとしているわけではありません。とりあえずそのことは今おいておいて、建設業はもちろんのこと、こうした製造業の分野でも、例えば今言ったような生産請負でやっている、アウトソーシング化でふえている下請会社というのは、ちょっと古い言い方で言えば口入れ屋みたいなものですわね。うなずいてはるから大体イメージはわいてはると思うんですが、要するに、大半が労務提供事業ということになれば、委託する大企業がかかる下請会社に支払う代金というのは、その大部分は実際上はそこで働いてはる下請労働者の賃金だと考えられますよねということで、まずお願いします。
房村政府参考人 法律上の形式のことを問わずに額が実際上どういうものかということであれば、御指摘のような場合は、多分、人件費的なものが大部分であろうというぐあいには思われます。
植田委員 ただ、現在の民法、商法の倒産法制の枠組みのもとで、実際、大企業が倒産した場合、こうした下請業者であるとかアウトソーシング会社の受け取る請負代金というのは、別に何の優先権もない一般債権にすぎないわけですね。実質的には下請労働者の賃金だということを局長もお認めになるけれども、さあ、その大企業がそれでこけたときには、法律上は労働債権にはなりません。一般債権扱いされますから、全額回収の見込みもありません。そして、会社更生法案でいえば、今、法務大臣が十分だとおっしゃった手当てでいっても、十年がかりで一割方を回収するという仕組みになっておるという理解でいいわけですね。
房村政府参考人 今の下請的なものにつきましては、先ほど法的形式を抜きにすればということを申し上げましたが、会社更生法上の保護を考えるときに、その実質に着目して、雇用契約と考えられて労働債権扱いできる部分は当然あろうかと思います。そういうことが無理であれば一般債権ということになりますので、これは、実際にとられておる就労形態とか賃金の払い方とか、そういったものを総合して個別的に判断することになろうかと思います。
 それから、免除率が非常に高くて少額をという御指摘でございます。これは、それぞれの会社の実情に応じた更生計画を樹立するしかないわけでございますので、場合によれば、非常に少額の弁済しか受けられない場合もあろうかとは思います。ただ、一般的に言えば、会社更生計画が作成されたということは、更生せずに破産によって清算する場合に比べれば、それでもなお弁済としては多くの額が入る、こういう状況だろうとは思います。
植田委員 冒頭申し上げましたように、今言ったようないわば請負型のありようが、とりわけ製造業、大手ゼネコンでももう七割だと言われているわけです。そもそも、全体の枠組みとしてそうした類型化できるようなありようがある中で、それぞれ個別事案ごとに判断されるといったときに、必ずこぼれ落ちる人たちが出てくるでしょう。その谷間に落ち込む人たちが出てくるでしょう。
 今おっしゃっているのは、それは別に間違った答弁をされているとは私は一言も言いません。私が言いたいのは、現実問題、私が親方のもとに雇われて行った、でも実際、現行法上では労働債権にならない局面があるでしょうということを言っているわけですよ。場合によっては労働債権として位置づけられるときもありますよという話を局長はなさっているわけで、私は、ならない場面についてどうするのやということをこれから検討すべきではないのかと。だって、下請会社が回収できへんかったら結局どうなるか。労働者に対して、済まぬけれども、払えぬようになったから済まぬなということで終わっちゃうわけですわ。
 そこで、実際、そうした法の谷間に落ち込んでしまう多数のそうした請負の労働者の方々が出てくることは必定だろうと思いますので、法務大臣、いいですか、次、お伺いするんですが、よそでそれは検討してもらったらええこっちゃということやなしに、そうした倒産時における下請の労働者のいわば債権保護の仕組みについて、来年以降、破産に関連した関連法の改正もあるようですけれども、そろそろその仕組みについて、どうした知恵が出せるかということについて検討する必要は全く感じておられませんでしょうか。私は大いに、その検討の結果どうなるかは別にしても、検討する課題としては、今私が申し上げているような事例が既に存在しているわけですから、課題としてそういう課題設定をなさってはいかがと思うんですが、検討するおつもりはありますか。
森山国務大臣 倒産時における下請中小企業者の保護に関しましては、会社更生法案におきまして新たに、少額債権を早期に弁済しなければ更生会社の事業の継続に著しい支障を来すときは、裁判所の許可を得て弁済することができる制度を創設したところでございますが、議員の御指摘も踏まえまして、今後も社会経済情勢の変化を踏まえまして所要の検討を続けてまいりたいと思います。
植田委員 所要の検討というところが精いっぱいのところなんでしょう。またいずれその点についてはお伺いすることもあるかと思います。
 最後に、あとわずかですけれども、これも参考人質疑のときにもちょっとお伺いしたことなんですけれども、幾つか質問をやり残したところはちょっと飛ばすところもありますが、まず民事局長に、私、参考人質疑でも伺ったんですが、そもそも現在の再建型の手続が、さきにできた民事再生法と会社更生法という二つの型が併存している、私は、本来そうした併存しているというのは必ずしも望ましくないだろうと。
 例えば、先日のときも、マイカルのような事例がある、どっちを選択するかで、言ってみれば経営陣の首が飛ぶ云々という話にもなったわけですので、そうした手続選択の誤りというのが企業再建にとっての障害になったという事例もあるじゃないかということでお話を伺いました。お二人の参考人に伺ったんですけれども、御両人とも別に肯定も否定もなさらずに、ありていに言えば、さきに民事再生法を走らせたことだしというような趣旨であったというふうに記憶しておりますが、日本みたいにそうした再建型の手続が複数存在するというのは、実際、世界を見渡しても少ないというふうに伺っておるんですけれども、とりわけ、アメリカなんかの再建型手続は、その法律の中でいろいろな仕組みはあるでしょうけれども、基本的には連邦倒産法一本というふうに伺っております。
 そこで、幾つかの主要な例で結構ですので、とりわけそういう先進国における再建型の手続というものの法制化というのは現状どうなっているのかということについてお伺いをしたいと思います。
房村政府参考人 諸外国の倒産法改正の動向でございますが、アメリカ合衆国につきましては、現在、御指摘の新連邦倒産法が一九七八年に制定されております。その後、何回かの改正がされまして、現在、九七年に新連邦倒産法の再検討に関する報告書というものが出まして、さらにその使い勝手を向上するための検討が進められていると聞いております。これは、チャプターイレブンということで、統一的な制度になっております。
 それから、イギリスにつきましては、七〇年代に経済の停滞に伴って倒産件数が増大したということで、八六年に新倒産法が制定されましたが、これは、債務者の個人、法人の別によって別々の法律になっていたのを一本化いたしまして、個人につきまして破産と任意整理、それから法人につきまして清算、任意整理等四種類の手続、こういうものを一つの法律で定めているということでございます。ですから、中身としては相当の分類がされるという形になります。
 それから、ドイツにおきましては、九四年に新倒産法が制定されまして、九九年から施行をされているところでございます。
 あと、フランスは、八四年と八五年に企業倒産法制が整備されまして、八九年に個人倒産法制が整備されております。
 そういうことで、先進諸国いずれも、近年倒産法制の全面的な見直しがなされているところでございます。
植田委員 そういうことも参考にしていただければいいかと思うんですけれども、今の法律を直ちに、だって、今の法律といったって、今の法案はまだできてもいないわけですから、それは先の話、鬼の笑う話ですけれども、実際、民事再生法自身も会社更生法との併存を前提にしていますので、いろいろと困難なことはわかるんですが、実際、企業の再建手続は複数併存している、しかも、それが単に選択の問題ということではなしに、その選択の結果いかんによって障害が生じかねないというふうな問題が現にあるとすると、やはり問題だろう。
 恐らくは、この法案も成立して施行され、そして運用されていくんでしょうけれども、当面はそれぞれ、民事再生法は中小企業、会社更生が大企業というふうに誘導しながら、いずれかの段階で、やはりそれを統合して、企業の再建手続自体を一本化していく。もちろん、そのときにも私がこの間ずっと聞いていた問題というのは常について回る話ですけれども、労働債権や、働いておられる方々の保護というのはついて回る話ですが、そういう検討も早目に開始しておいた方がよろしいのじゃないかということを法務大臣にお伺いします。
森山国務大臣 おっしゃいますように、会社更生手続と民事再生手続とを統合して一つの手続とする方が望ましいという意見もあるわけでございますが、その一方で、債務者の法人、個人の別、債務者の規模や業務内容、事件の規模、必要となる再建手法など、倒産事件の種類に応じた手続類型を別々に設けるべきであるという意見もございます。
 しかし、現時点におきましては、民事再生手続を再建型倒産処理手続の基本的な手続としながら、大規模な株式会社のための特別な手続として会社更生手続を併存させるということによって、おおむねこのやり方でコンセンサスが得られているのではないかというふうに考えているところでございます。
植田委員 今後の話も聞きたかったんですが、それはいずれまた状況を見ながらやる機会もあろうかと思います。
 今回、私、二回、百二十分質疑をさせていただいて、時間がありませんからもう答弁は要りません、また私の今回の法案に対する対応は後で討論しますので、そこで趣旨は御理解いただけるだろうと思うんですが、一点、この間ひっかかっているのが、先週からの議論の中で、これは聞いておいてもらうだけでいいのですが、何で大臣所信の中で、この会社更生法案がさも不良債権処理の役に立つツールの一つであるかのようにおっしゃるのか。
 私は、聞いていてあれは愕然としたんですよ。逆だったらいいのですよ。小泉内閣がやろうとしている構造改革の中の一番間違った不良債権処理の加速、それでこぼれ落ちてかわいそうにつぶれた企業を助けたるんだというぐらいの矜持を持っておっしゃってほしかったですね。わざわざ間違った政策の戦犯にみずからノミネートをされるような、そんなことをおっしゃらなくても。みずから、みずから出す法案の位置をおとしめたんじゃないか、私は非常にその点は残念だ。だって、実際聞けば、参考人質疑をやっても政府から聞いても、いや、ツールの一つではありますけれども、そういうことを想定しておったわけじゃなくて、先からずっとずっと検討してきたとおっしゃってきたわけでしょう。だったら、私は今回の法案は反対しますけれども、出す側ももっと自信を持って出してほしかったなと。
 趣旨は私は理解しつつ質疑をさせていただいてきたつもりですので、そこのところは御理解もいただけると思いますが、ちょうど時間が来ましたので、終わります。
山本委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
山本委員長 これより両案を一括して討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、順次これを許します。中林よし子君。
中林委員 私は、日本共産党を代表して、会社更生法案ほか一案について反対討論を行います。
 反対の第一は、本改正が小泉政権の進める不良債権処理促進の環境整備を進めるものだからです。本改正は、更生計画認可前の営業譲渡の導入によって倒産した会社の切り売り等をやりやすくし、大規模株式会社の主要な債権者である大銀行等にとって、会社更生手続、すなわち不良債権処理の迅速化を図るものです。
 第二は、会社更生手続の中で経済的に弱い立場に置かれる労働者や中小企業を切り捨てるものだからです。会社更生手続に、更生計画認可前の営業譲渡制度や社内預金保護の縮小等、労働者等の権利保障が弱められています。
 営業譲渡は既に民事再生法で導入され、譲渡時における労働者の全員解雇など数々の深刻な事態を招いています。私が具体的事例で指摘したのに対して、大臣は、法務省として問題は認識しているとしながらも、個別のケースについては大変残念ながらコメントは差し控えたいと無責任な答弁でした。譲渡による会社の切り売りは、倒産会社の更生に役立たないどころか、そこに働く労働者の雇用、中小業者の営業にとって深刻な生活と営業の危機を招くことは明らかであります。
 このように、本改正は、倒産事件で既に起こっている労働者の雇用の問題を初め、労働債権の順位を引き上げる問題、社会問題化しているショッピングセンターの敷金の問題などに全く手をつけていません。
 第三は、倒産の原因をつくった経営者が、その社会的責任をとらずに、引き続き更生会社の経営に参加できる仕組みをつくり、経営者のモラルハザードを招きかねないものとなっているからであります。
 会社更生手続は、無担保債権だけでなく、担保つき債権、租税債権等も含めて、債権のカット、繰り延べによって更生会社を身軽にして、会社の更生を図る手続です。債権者にだけ痛みを押しつけながら、経営者だけが生き残れるようなやり方は、社会的に許されるものではありません。
 以上、反対の理由を述べ、討論を終わります。(拍手)
山本委員長 次に、植田至紀君。
植田委員 私は、社会民主党・市民連合を代表して、会社更生法案及び会社更生法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案に反対する立場から討論を行います。
 反対の理由を申し述べる前に、一言、社会民主党・市民連合としての問題意識を申し上げておきます。
 本法案は、経済的に窮境にある大規模な株式会社の迅速かつ円滑な再建を可能とするため、会社更生手続について迅速化及び合理化を図るとともに、再建手法を強化して、現代の経済社会に適合した機能的なものに改めるものであり、本法案の立法趣旨や緊急性については理解しないわけではありません。また、更生会社における債権者の重要な一員である労働組合の関与について、民事再生法と同水準の関与に加え、更生手続開始決定前の労組からの意見聴取等が規定されたことも一定の前進であることは評価いたします。
 しかし、重要な幾つかの点において、大きな危惧を持たざるを得ないのであります。
 第一には、営業譲渡と労働契約の継承の関係であります。
 営業譲渡が容易に認められるようになれば、労働者の雇用と営業が分断されることにもなりかねず、雇用が不安定となる危険性が極めて高くなります。実際に、民事再生手続における営業譲渡にかかわって、解雇などの労働問題が発生し、雇用が切り捨てられるという事態が既に数多く発生しています。
 現行制度よりも使い勝手がよくなった会社更生法では、営業譲渡が多用されることは確実に想定されることであり、営業譲渡に際して、当該事業部門で働く労働者の雇用に関して法案で的確な保護措置がとられる必要があります。
 第二には、本法案においては、現行制度よりも、労働債権の保護に関する規定が現状維持あるいは後退していることであります。
 更生手続下における賃金は従来どおり、退職金も従来どおりなど、働く者の置かれた立場を理解するに足る前進は見られません。また、社内預金、すなわち使用者からの預かり金に至っては、従来は共益債権であったものが、法案ではむしろ後退すらしております。
 労働債権については、法務省が労働債権保護の重要性について認識し、また、本法案と同趣旨の民事再生法の制定時に、衆参両院で労働債権の優先権の維持に関し特段の配慮を求めるという附帯決議がつけられたにもかかわらず、それらが本法案の立案過程において全く反映されなかったのであります。
 第三に、下請中小企業の事業継続や、下請中小企業に働く労働者の雇用安定に関してであります。
 会社更生法を利用するのは、もともと規模の大きな会社が想定されていますが、この大会社には、当然ながら数多くの取引下請会社が存在しています。大会社が会社更生法を申請した場合、これらの下請企業が雪崩を打って連鎖倒産することは確実です。
 近年の大型倒産で会社更生法を利用した再建事例を見ると、更生会社は再建されるものの、その生産を実態的に担ってきた下請中小企業に働く労働者の失業、賃金、退職金の不払いがこれまた数多く発生しています。しかし、本法案は、これら下請中小企業の事業継続や労働者の雇用確保について、全く配慮しておりません。
 主として以上に関し、この間の質疑において真摯な答弁を求めてまいりましたけれども、政府の前向きな姿勢は、結局、明らかにされませんでした。よって、残念ながら、本法案につきましては反対するものであります。
 以上です。
山本委員長 これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
山本委員長 これより採決に入ります。
 まず、内閣提出、会社更生法案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
山本委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 次に、内閣提出、会社更生法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
山本委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
山本委員長 この際、ただいま議決いたしました会社更生法案に対し、塩崎恭久君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党及び自由党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。山花郁夫君。
山花委員 ただいま議題となりました附帯決議案について、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。
    会社更生法案に対する附帯決議(案)
  政府は、本法の施行に当たり、次の点につき格段の配慮をすべきである。
 一 本法の趣旨、内容、民事再生法との相違等について、関係団体はじめ広く国民に周知徹底されるよう努めること。
 二 新しい更生手続が適正かつ迅速に運用されるよう、裁判所の人的・物的体制の整備に配慮すること。
 三 更生手続において選任される管財人の適任者の確保等の方策について、必要な措置をとるよう努めること。
 四 企業組織の再編に伴う労働関係上の問題への対応については、現在、政府において検討を進めているガイドラインを早急に策定するとともに、施行後、当該問題の実態把握に努めた上で、法的措置を含め必要な検討を行うこと。
 五 第四十六条の規定による営業譲渡については、更生会社の事業の更生のために必要である場合にのみ行われるものであることを周知徹底し、この制度が適正に運用されるよう配慮すること。
 六 倒産時における賃金債権、退職金債権等の労働債権、担保付債権、租税債権、公課債権等の各種の債権の優先順位について検討を進め、所要の見直しを行うこと。
 七 更生手続における社内預金の保護措置が変更されたことにかんがみ、その変更点について使用者ならびに労働者に周知徹底されるよう努めること。
 八 労働債権の保護については、多様化する労働形態に対応して十分な配慮がなされるよう周知徹底に努めること。
以上であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
山本委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 塩崎恭久君外三名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
山本委員長 起立多数。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。
 この際、ただいまの附帯決議につきまして、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。森山法務大臣。
森山国務大臣 ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。
    ―――――――――――――
山本委員長 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
山本委員長 次回は、明二十七日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時四十八分散会


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