衆議院

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第13号 平成14年11月27日(水曜日)

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平成十四年十一月二十七日(水曜日)
    午前九時一分開議
 出席委員
   委員長 山本 有二君
   理事 佐藤 剛男君 理事 塩崎 恭久君
   理事 園田 博之君 理事 棚橋 泰文君
   理事 加藤 公一君 理事 山花 郁夫君
   理事 漆原 良夫君 理事 石原健太郎君
      左藤  章君    笹川  堯君
      下村 博文君    中野  清君
      平沢 勝栄君    保利 耕輔君
      松島みどり君    保岡 興治君
      柳本 卓治君    吉川 貴盛君
      吉野 正芳君    渡辺 博道君
      仙谷 由人君    中村 哲治君
      日野 市朗君    平岡 秀夫君
      水島 広子君    山内  功君
      石井 啓一君    木島日出夫君
      春名 直章君    植田 至紀君
      保坂 展人君    徳田 虎雄君
    …………………………………
   法務大臣         森山 眞弓君
   法務副大臣        増田 敏男君
   法務大臣政務官      中野  清君
   政府参考人
   (法務省民事局長)    房村 精一君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    樋渡 利秋君
   政府参考人
   (法務省矯正局長)    中井 憲治君
   政府参考人
   (法務省保護局長)    横田 尤孝君
   政府参考人
   (法務省入国管理局長)  増田 暢也君
   法務委員会専門員     横田 猛雄君
    ―――――――――――――
委員の異動
十一月二十七日
 辞任         補欠選任
  横内 正明君     渡辺 博道君
  水島 広子君     中村 哲治君
  不破 哲三君     春名 直章君
  植田 至紀君     保坂 展人君
同日
 辞任         補欠選任
  渡辺 博道君     横内 正明君
  中村 哲治君     水島 広子君
  春名 直章君     不破 哲三君
  保坂 展人君     植田 至紀君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 連合審査会開会に関する件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案(内閣提出、第百五十四回国会閣法第七九号)
 裁判所法の一部を改正する法律案(平岡秀夫君外五名提出、第百五十四回国会衆法第一八号)
 検察庁法の一部を改正する法律案(平岡秀夫君外五名提出、第百五十四回国会衆法第一九号)
 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案(水島広子君外五名提出、第百五十四回国会衆法第二〇号)
 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――
山本委員長 これより会議を開きます。
 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 各件調査のため、本日、政府参考人として法務省民事局長房村精一君、刑事局長樋渡利秋君、矯正局長中井憲治君、保護局長横田尤孝君及び入国管理局長増田暢也君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
山本委員長 この際、森山法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。森山法務大臣。
森山国務大臣 本年十一月八日、名古屋刑務所看守長渡邉貴志、副看守長前田明彦ら五名が特別公務員暴行陵虐致傷罪により名古屋地方検察庁に逮捕されましたが、矯正行政の意義を揺るがしかねないまことに遺憾な事件であり、関係者及び国民の皆様に重ねて深くおわび申し上げます。
 この事件については、名古屋地検において、本日、五名を公判請求することとし、現在、所要の手続を進めていると聞いておりますので、これまでに報告を受けている範囲で事案の概要等について御説明いたします。
 まず、事案の概要等について申し上げます。
 本件被害者は、本年二月二十一日に名古屋刑務所に入所しましたが、その後、戒護のため、保護房において革手錠を使用されることがあり、その過程で刑務官から事情聴取を受けるなどしておりました。
 被害者は、本年九月二十五日朝、面接室において、前田副看守長からこれまでの規律違反等について事情聴取を受けましたが、同人は、被害者が相変わらず自己の非を認めようとせず反抗的態度をとったことに立腹し、被害者の座っていたいすの足をけるなどいたしました。このため、被害者が立ち上がろうとしたところ、同日午前八時十五分ごろ、異状に気づいて駆けつけた刑務官において、被害者が前田副看守長に暴行を加えようとしている旨判断し、被害者を引き倒して制圧し、これを受けて前田副看守長が金属手錠をかけた上、渡邉看守長の指揮を受けて保護房に収容いたしました。
 その後、前田副看守長は、被害者が既に制圧され、暴行を振るうおそれもないのに、懲らしめのために革手錠を使用することを考え、上司である渡邉看守長の了承を得、他の刑務官もこれに加わって、まず、中サイズの革手錠ベルトを被害者に使用いたしました。しかし、強く締まらなかったことから、小サイズの革手錠を取り寄せた上で、前田副看守長らにおいて、渡邉看守長の指示を受けつつ被害者に装着し、一番円周の狭くなる穴で固定しようとしましたが、それが困難であったため、その次に狭い穴で固定いたしました。
 その後、同日午前九時四十分ごろ、前田副看守長は革手錠を解除しようとしましたが、その際、さらに被害者を懲らしめようと考え、強くベルトを引いたり、一たん解除したベルトを再度被害者に巻きつけて強く引くなどしたものであります。
 犯行後、被害者は保護房に放置されていましたが、被害者の異状に気づいた前田副看守長が医師に連絡し、診察の結果、腸間膜損傷等の傷害を負っていることが判明したため、病院に搬送され、開腹手術を受けました。
 このような事件の背景について御説明いたします。
 刑務所における戒具の使用については、監獄法十九条一項により、在監者に逃走、暴行または自殺のおそれがある場合に使用でき、さらに、革手錠については、平成十一年十一月一日付矯正局長通達により、必要以上に緊度を強くして使用部位を傷つけ、または著しく血液の循環を妨げるなど、健康を害するような方法で使用してはならないとされております。
 同年当時、名古屋刑務所においては、革手錠の使用は極力控えられておりました。しかし、受刑者数が増大する中、処遇困難な受刑者が増加したこと等もあり、前田副看守長らの進言を受け、同十三年夏ごろ、上司において、施設内の規律維持のため、監獄法に定める要件があれば革手錠の使用を差し控える必要はない旨了承をいたしました。その後、革手錠を使用する頻度がふえ、特に本年に入ってからは、使用件数が増加するとともに、十分な監督がなされないまま、現場の刑務官の判断で革手錠が使用されるとの実情も生じておりました。
 現在、名古屋地検においては、本年五月二十七日に名古屋刑務所内で革手錠を使用された収容者が死亡する事案についても捜査を継続中で、早急にその結論を出すものと思いますが、同刑務所の関係では、そのほかにも、本年十一月十八日に元受刑者からの告訴を受理した事案もあり、背景事情を含めてその全貌を徹底的に解明するとの観点から、今後とも厳正な捜査を行うものと承知しております。
 また、検察当局による捜査とは別に、人権擁護局においても、事案の重大性にかんがみ、関係受刑者や刑務所関係者等から事情聴取するなど、名古屋法務局人権擁護部と共同して人権侵犯事件として鋭意調査を進めているほか、矯正局においても特別調査チームが引き続き徹底的な調査を行っており、全国行刑施設における革手錠使用案件についても、使用要件、使用方法等につき施設長による指導監督等が適切になされていたか、なお調査を継続しております。
 最後に、再発防止策等について御説明いたします。
 革手錠につきましては、矯正局において、全施設に対してその適正な使用につき改めて注意を喚起し、矯正管区に対してもその適正な使用に関する指導監督の強化方を指示いたしましたが、将来の再発防止に向けた抜本的対策の検討、立案にも着手しております。
 必要に応じ、局外の意見等も参考にし、抜本的な対策を策定する予定ですが、当面の緊急措置として、革手錠使用案件について矯正局及び矯正管区に速やかに全件報告すること、ビデオ設備のある施設においては、保護房における革手錠使用時等の状況について録画することにつき、矯正局長通達を発出することとしております。
 また、関係者の処分については、今後の捜査及び調査の結果を踏まえ、監督者を含め、厳正に対処する方針です。
 以上、御報告申し上げます。
    ―――――――――――――
山本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。漆原良夫君。
漆原委員 おはようございます。公明党の漆原でございます。
 ただいま法務大臣から、名古屋刑務所の事件に関する事件の概要、背景、再発防止策などについて御報告を受けましたが、大変に驚いております。今日本の刑務所内でこんなことが行われていたのか、本当にびっくりしておりますし、また本当に残念なことであります。刑務官が受刑者に暴行を加える、考えられないことであります。
 現在の矯正施設が過剰収容問題等のさまざまな困難な問題を抱えておりまして、矯正に対する国民的な関心も高まり、政府・与党の重要政策として今取り組んでいるさなかに今回の事件を初め刑務官による事故が多発し、矯正行政に対する国民の信頼が大きく失墜をしております。矯正行政の信頼回復に向け、さらに徹底した真相の解明、そして今後、名古屋刑務所はもちろんのこと、他の刑務所等においても、このような事件が発生しないように、再発しないように万全な対策を講ずる必要があると思います。このような観点から質問をしたいと思っております。
 今、平成十一年に保護房への収容及び戒具の使用に関する局長通達が出されているという報告がありましたが、なぜこのような通達が出されるようになったのか、その背景と理由について、まず御説明をいただきたいと思います。
中井政府参考人 お答えいたします。
 大臣の御報告にありましたように、平成十一年十一月一日付で矯正局長通達「戒具の使用及び保護房への収容について」が発出されております。この通達は、平成三年以降、矯正当局におきまして、各種の協議会の協議事項あるいは通知等を通じまして、戒具の使用及び保護房への収容につき適正な運用がなされるよう行刑施設等に対し指導してまいりましたけれども、その集大成といたしまして、それまでに発出された通達を廃止し、一本の通達に集約するとともに、戒具の使用及び保護房への収容についての留意事項等をより明確にし、自後の運用及び事務処理のより一層の適正を期するために発出したものでございます。
漆原委員 今回の名古屋刑務所の事件で革手錠の使用が問題になっておりますが、全国の行刑施設で革手錠の不適切な使用を理由とした裁判がなされておると聞いております。
 まず、国家賠償請求訴訟になった件数はどのくらいあるのか、その裁判で国側が敗訴になった件数はどのくらいあるのか、どういう理由で敗訴になっているのか、また、敗訴事案について、その後国が控訴して逆転をした件数があるのかどうか、その辺についてお尋ねしたいと思います。
中井政府参考人 これまで、革手錠の使用が違法であるということ等を理由といたしまして行刑施設の被収容者から提起された国家賠償請求訴訟についてでありますけれども、当局といたしましては、必ずしもその全容、正確な件数を把握しているわけではございませんけれども、おおむね数十件ぐらいはあるのではないかと承知しているところでございます。
 これらの訴訟のうち、国が一審段階も含めまして敗訴いたしました事案で当局が把握しておりますのは、全体で五件でございます。この五件の敗訴事案に係る革手錠の使用を見ますと、いずれも平成元年から同八年にかけて行われたものと報告を受けております。
 これら五件の敗訴事案のうち一件についてでありますが、委員の御質問にもございましたように、当初は、保護房収容中の者に対して革手錠を使用したことがその必要性なしとして違法とされたのでありますけれども、国側が控訴いたしましたところ、控訴審においては、革手錠の使用に違法はなかったとして国が逆転勝訴しております。したがいまして、敗訴が確定した事案件数から申しますと四件ということになります。
 次に、この四件の内訳でございますけれども、平成元年の革手錠使用に係る一件につきましては、革手錠の使用要件それ自体が認められないということでございました。残る案件は、平成三年以降の革手錠使用に係るものでございますけれども、当該被収容者の暴行を抑止するために革手錠を使用したことそれ自体は違法はないとされたのでありますけれども、例えばその使用方法で、革手錠で両手首を固定する位置が、両手を前だとか両手を後ろとかいろいろあるわけでございますけれども、その両手を後ろとしたことが違法とされたというものでありますとか、使用期間の面におきまして、当初の使用は適法なんだけれども、一定の時点以上を経過した使用継続は違法である、こういうぐあいにされているというぐあいに承知しているところでございます。
漆原委員 名古屋刑務所の革手錠の使用件数が急増したということでありますが、新聞等によっても、名古屋が非常に多い、ほかの刑務所では少ない、名古屋はその十倍近くあるというふうな報道もなされております。
 全国の革手錠の使用件数、そして名古屋刑務所での使用件数、この数字がわかったら明確に教えてもらいたいと思います。
中井政府参考人 全国の行刑施設における革手錠の使用件数につきましては、このたびの名古屋刑務所における九月の傷害事件の報告を受けまして、当局におきまして取り急ぎ調査いたしました。その結果を御報告いたしますと、全国ベースで申しますと、平成十二年が五百四十八件、平成十三年が五百八十三件、平成十四年、これは期中でございますが、九月末までの使用件数の合計が六百三十一件となっております。
 このうち、名古屋刑務所における革手錠の使用件数の占める数でございますけれども、平成十二年は三十二件、平成十三年が五十八件でありましたが、平成十四年に入りまして急増いたしまして、九月末までの使用件数は百五十八件となっております。
 この革手錠の使用状況等につきましては、なお現在、私どもの特別調査チーム等において詳細な調査を継続しているところでございます。
漆原委員 今御報告がありました平成十四年九月まで、全国六百三十一件中、名古屋刑務所百五十八件、これはもう異常に多いと言わざるを得ない。ほかの施設に比べて名古屋刑務所の革手錠の使用状況、私は異常だと思うんですが、法務当局はこれを掌握したのかどうか、いかがでしょうか。
中井政府参考人 御指摘のとおり、名古屋刑務所における革手錠の使用は、本年に入りまして急増しております。その事実を把握いたしましたのは、今回の事件が発生して、とりあえずの、取り急ぎの特別の調査を実施してからのことでございます。
 ちなみに私どもは、全行刑施設における革手錠の使用状況について、本省もしくは矯正管区が一年交代で監査しておりますけれども、それはその直前のおおむね一年分を対象期間としておりますので、本来ならば、十四年に入っての数字は来年度実は監査する予定になっておった。それで、この事件が起きた当時は、昨年度の分もことし監査する予定で、まだ監査に入っていなかった、そういう状況でございます。
漆原委員 名古屋刑務所における異常な革手錠の使用は名古屋刑務所全体で組織的になされているんじゃないかというふうな疑いもありますが、今回逮捕された五人の関与件数について掌握されているのかどうか、聞きたいと思います。
中井政府参考人 今回の事件発生を受けまして、本年一月から九月までの革手錠使用案件について調査いたしました。このうち、逮捕、勾留中の五名についての関与件数でございますけれども、指揮者でありますところの渡邉看守長が四件、それから革手錠を実際に実施する際の主導者というか、中心となっておった前田副看守長が八十六件、それから実施の補助者が三名、現在逮捕、勾留中でありますが、それらの者はそれぞれ、四十二件、七件、五件であったという報告を受けております。
漆原委員 先ほど大臣の御報告にもありましたように、本年五月二十七日に名古屋刑務所内で革手錠を使用された被収容者が死亡しております。この五月の事案を本当に適切に処理、対応しておれば今回の九月の事案は起きなかったんじゃないかというふうに思いますが、この点はどうでしょうか。
中井政府参考人 まず、お尋ねの名古屋刑務所の五月の死亡事案についてでございますが、これにつきましては、被収容者が急死しているわけでございますけれども、その死因等に不明な、つまびらかでない点がございましたので、名古屋刑務所から名古屋地方検察庁に通報いたしました。その後、名古屋地方検察庁の捜査に全面的に協力いたしますとともに、捜査の支障でありますとか関係人のプライバシー等に配意しながら刑務所側でも調査を進めた間に、新たに本件、現在逮捕、勾留中の九月の事件が発生したという経緯にございます。
 名古屋刑務所では、五月の死亡事案発生後、刑務所長が幹部職員に対し、革手錠使用や保護房収容等に関し適正な運用を図るよう指導したという報告は受けているわけでございますけれども、その後の革手錠の使用件数等から見ますと、必ずしもこの指導が周知徹底していなかったことが現時点ではうかがわれるところでございます。
 御指摘のとおり、五月の死亡事案発生後、特に革手錠使用の指揮者に当たるべき者をも含めまして、革手錠使用に関する実践的な訓練をよく実施するなど、もっと踏み込んだ指導がなされるべきではなかったかという思いはございます。
 先ほどの大臣の御報告にありましたように、十分な監督がなされないまま現場の刑務官の判断で革手錠が使用されるとの実情が生じましたことにつきましては、まことに遺憾であると考えております。
漆原委員 大臣、大臣は先ほど、今回の対策としてビデオの撮影及び報告を義務づけるということをおっしゃっておられますが、このような重大な危害を加えるおそれのある革手錠の使用に対し、これまでの法務当局の認識というのは甘かったんじゃないかというふうに言われても仕方がないと思うんですが、大臣はどのようにお考えでしょうか。
森山国務大臣 まことに残念なことで、本当に申しわけないことだったと思っております。
 矯正当局では、かねてから、革手錠が被収容者の体を直接拘束するものであるということから、戒護の目的を達成するため合理的に必要と判断される限度を超えてはならないことなど、革手錠の使用要件を厳守するのはもとより、その使用に当たりましても適正にこれを行うべきであること等につきまして、本省巡閲や矯正管区の監察等を含めまして、機会あるごとに現場施設に対して指導するなどしてきたところでございます。
 さらに、平成十一年には、戒具の使用及び保護房への収容に関する矯正局長通達を出したところでもあるのでございますが、それにもかかわらず、この通達に違反し、そのような事件を発生させたということは、痛恨のきわみと言わざるを得ないというふうに思っております。
 先ほど御報告申し上げましたとおり、革手錠の使用につきまして、当面の緊急措置といたしまして、矯正局及び矯正管区に速やかに全件報告をさせるとともに、使用時等の状況をビデオにより録画することといたしまして、本日、新たに矯正局長通達を発出する予定としておりまして、今後のより適切な運用の確保を図りたいと考えております。
 現在、矯正局の特別調査チームが、本件の原因、背景事情等の徹底的な調査のほか、全国行刑施設における革手錠の使用状況等の調査を継続しておりますので、この調査結果を踏まえ、このような事件が二度と起こらないように抜本的な対策を講じてまいりたいと考えております。
漆原委員 大臣にもう一点お尋ねしたいんですが、報道によりますと、こんなふうに言っています。受刑者は名古屋弁護士会に人権救済の申し立てをしており、これに対し刑務官が感情をエスカレートし、過剰な制圧行為に及んだ可能性があると。
 これは新聞報道でございますが、捜査中でここまで掌握されているかどうかわかりませんけれども、もしこういうことが事実であれば、これは大変な問題であります。どうか、この点についての事実関係の解明を全力でやっていただきたい。人権救済の申し立てをしたらそれを逆恨みして制圧行為に及んだなんということが許されていいはずがないわけですから、そこのところは、今後の捜査の中で、動機、事案の解明をしっかりやっていただきたいと思います。これが第一点。
 もう一つは、人権救済の申し立てと検閲の問題であります。
 今回も、刑務官からいろいろな人権侵害を受けているということを理由にして名古屋弁護士会に人権救済の申し立てをこの被害者はしたようでございますが、それが加害行為を行ったとされている刑務官に全部知れるというシステム、これではもう被害を受けた受刑者は救済の申し立てのしようがないと思うんですね。
 だから、そう考えてみれば、私は、この人権救済の申し立て、刑務官の処遇に対して、処遇が間違っているんだ、被害を受けているんだ、助けてほしい、こういう被害者の申し立ては検閲の対象から外すべきだというふうに思いますが、大臣はいかがお考えでしょうか。
森山国務大臣 この件につきましては人権擁護局も大変憂慮しておりまして、先ほどの御報告でも申し上げましたが、人権尊重の立場から調査を始め、続けているところでございます。
 一般に申しますと、被収容者が出す信書を検閲することに一応なっておりますが、この目的は、施設の規律とか秩序を害する行為や、逃走あるいはその他収容の目的を阻害する行為を防止するということとともに、検閲を通じて知ることができる事項を当該被収容者に対する処遇の適切な実施に役に立てたいということもございまして行っているわけでございます。ですから、被収容者が弁護士さんとか司法機関等に各種の不服申し立てのための書面を発信される場合であっても、このような規律及び秩序を害する行為等の記載の有無を確認するという限度におきまして、検閲は必要であるとは考えております。
 当然のことですけれども、検閲によってわかった内容をこのような目的以外に流用するということは許されませんし、まして、施設にとって不都合な内容であるからといって、発信をとめるというようなことはおよそあってはならないというふうに考えております。
漆原委員 これは中井局長で結構ですが、検閲をする人、これはどういう立場の人になるんでしょうか。
中井政府参考人 被収容者が在監しておりますところの行刑施設の職員でございます。
漆原委員 いや、職員であることは間違いないと思うんだけれども、担当の職員がいると思うんだけれども、どういう立場の人、例えば刑務所の所長だとか、あるいはそういう担当の人がいるのか、どういう役職の人がいるのか、その人と当該刑務官との関係はどうなっているのか、この辺いかがですか。
中井政府参考人 一般的に申しますと、そういった検閲業務に当たりますのは、書信係と申しまして、これを専従にやっている職員が従事しております。したがいまして、被収容者の処遇に直接携わる者がその検閲を行うという取り扱いはないものと承知しております。
漆原委員 例えば、何とか係という人が信書を見た、その内容を仮にほかの担当の、今回でいえば刑務官にこんなのが出ているぞと漏らした、こうなると何か処罰の対象になりますか。
中井政府参考人 一般的に申し上げれば、処罰という意味では対象とならないと思います。(漆原委員「懲戒でもいい」と呼ぶ)事柄の違法性の度合いに応じて具体的に判断されるべき事項かと思います。
漆原委員 受刑者が助けてくれといって不服申し立て書を出した、その内容が、おまえのことが書かれているぞというふうに信書を見る人から当該刑務官に知らされる、こんなふうなことがあってはもうとんでもないことですね。だから、そういう内容を他人に知らせること自体が違法なんじゃないのかな、規律違反なんじゃないのかなというふうに私は思うんですが、明確に規律違反と言えないんでしょうか。
中井政府参考人 先ほど大臣が御答弁されましたように、検閲目的には、大まかに分けて、一個だけでございませんで、施設の規律及び秩序を害する行為を防止するということがございます。それからもう一点が、逃走その他収容の目的を阻害する行為を防止するということもございます。また、さらにもう一点といたしまして、検閲を通じて知ることのできる事項を当該被収容者に対する処遇の適切な実施に役立たせる。この三点あるわけでございまして、この三点の目的に応じて書信係からそれぞれの担当職員に対して必要最小限度の情報が伝達されることは、これは違法とは言えないのではないか、かように考えております。
漆原委員 生徒が学校の先生に、自分の仲間にいじめられているということを何とかしてほしいというふうに言ったら、学校の先生がそのいじめた人を呼んで、おまえ、あいつからいじめられているというふうに言われたけれども、どうなんだ、こんなふうな苦情申し立てがあったぞというふうに言った、それがまたいじめの原因になったと同じことですよ。違うかな。
 今、逃走だとか秩序だとかあるいは処遇に役立たせると言うけれども、人権侵害があったということを言っているのに、人権救済の申し立てをしているのに、その事実を侵害した人に知らせることなんか、何にもこれは処遇の改善になりませんよ。だから、そんなことを言わないで、むしろ受刑者が自由に物事を言える状況、環境をつくっておかなければ、いじめられているということなんだから、受刑者が自由に刑務所外の人に救いを求める方法、手段を講じておかなければ、受刑者の人権なんというのは尊重されないんじゃないですか。どうでしょうか。
中井政府参考人 御指摘の点はまことにそのとおりだと思います。
 先ほど申しましたように、大まかに分けて三つぐらいの検閲目的があるわけでございますけれども、当然のことでございますけれども、検閲の際に書信係が内容を了知することはあり得るわけです。しかし、当該内容につきまして、今申し上げた大まかに分けた三つの目的以外で流用することは許されないことでございます。
 例えば、今申し上げる例に敷衍して申し上げますと、人権救済の申し立てをしたということ自体が、何も、規律及び秩序を害することにもならず、逃走その他収容の目的を阻害することにもならず、もとより、被収容者に対する処遇の適切な実施にその情報を流用することがないと一般的には考えられるわけでございまして、このような場合にその了知した内容を目的以外に流用するということは許されない、かように考えているわけでございます。
漆原委員 最後に大臣、今やりとりを聞いていてどんなふうにお感じになったのかわかりませんが、看守にいじめられている、困った、助けてくれ、こういう受刑者の要望、受刑者が本当のことを自由に言える環境づくりをするためには、やはり私は、こういう不服申し立てあるいは人権救済の申し立ては検閲の対象から外すべきだというふうに思いますが、もう一度大臣の所見を求めます。
森山国務大臣 この事件を契機といたしまして、この事件自体の真相を解明するということも大変大事でありますが、その上で再発防止ということを徹底的にやらなければいけないと考えております。
 そのうちの一つといたしまして、刑務官の仕事ぶりあるいは受刑者の処遇その他、全体としてよく見直さなければいけないということを考えておりますので、先生の御指摘も踏まえまして十分検討していきたいというふうに考えております。
漆原委員 ぜひともいい方向で、そういう検閲を一部見直すという方向で検討していただきたいということを重ねてお願い申し上げておきます。
 それから、大臣おっしゃった、当面の施策として、ビデオ設備のある施設については、保護房での革手錠使用状況について録画をするとありますが、この名古屋刑務所の五月の死亡事案、九月の致傷事案について、事案の状況を撮影したビデオテープ、報道によると一部あって、悲鳴が録音されているというふうな報道もなされておりますが、その五月の事案と九月の事案のビデオテープが存在しているのかどうか、いかがでしょうか。
中井政府参考人 お答えいたします。
 実はこれは捜査と密接に関連する事項なので、ただいま私が刑事局長とも協議させていただいて御答弁させていただきます。
 お尋ねの名古屋刑務所の五月の死亡事案のテープの存否でございますけれども、これは、現在、名古屋地方検察庁において捜査中の具体的事件の個別証拠があるかないかということにかかわりますものですから、今後の捜査等の過程でおのずと明らかになってくる事柄であろう、かように思っております。
 また、現在、公判請求手続が進行中であると御報告させていただきました名古屋刑務所の九月の致傷事件のビデオテープにつきましてでございますけれども、これまでこれの答弁は差し控えさせていただいたところでありますが、本日、この事件につきまして公判請求手続が進められること等にかんがみまして申し上げますと、当方の調査で当該ビデオテープの存在は確認しており、既に名古屋地検に渡されているとの報告を受けております。
漆原委員 最後に、報道によりますと、この被害者は、人権救済の申し立てについて、いろいろな資料を自分の大学ノートに書き込んでおいた、またいろいろな暴行があった事実も書き込んでおいた、それを刑務官が来て全部取り上げて破棄したというふうな報道もなされております。
 いずれにしても、一連の今の私が申し上げたことも含めて徹底した真相解明をしていただきたい、そして、断じて今後こういう事案の再発がないように頑張ってもらいたいということを申し上げて、質問を終わります。ありがとうございました。
山本委員長 次に、山花郁夫君。
山花委員 民主党の山花郁夫でございます。
 冒頭、ちょっと大臣に確認をさせていただきたいことがあるんですけれども、過日もこの問題について少しお伺いをいたしましたが、そのときには、しかるべきときに報告をしたいという御発言がございました。
 ただ、きょう御報告いただいたことにつきましては、十一月の事件については比較的事案などについても御報告があったんですが、五月の死亡事案については、捜査中ということで短い御説明だったんですけれども、これは本当に我が国の法務行政の信頼の回復、あるいは本当に今回それを傷つけたということだと思いますので、これについてはまた別途御報告をいただけるというふうに理解してよろしいんでしょうか。
森山国務大臣 事態が解明されました段階で、御報告の機会を得られるかと思います。
山花委員 委員長、また別途、その問題については当委員会でもやはりしっかりと点検を行うべきだと思いますけれども、御配慮いただけますでしょうか。
山本委員長 理事会で協議させていただきます。
山花委員 それでは、この十一月の事件について今御報告があったところに関しまして、少々不明な点もございますので、質問をしていきたいと思います。
 今、大臣の御発言によりますと、本件の被害者は、本年二月二十一日に名古屋刑務所に入所しましたが、その後、戒護のため、保護房において革手錠を使用されることがありと、使用されることがありという表現でしたけれども、これは何回ぐらい今まで使用されていたんでしょうか。
樋渡政府参考人 お答えいたします。
 本件被害者は、名古屋刑務所におきまして、九月十二日から二十五日までの間、五回保護房に収容されまして、七回革手錠を使用されておりました。
山花委員 保護房が五回で革手錠が七回ということでございますね。
 また、大臣の御発言の中で、その過程で刑務官から事情聴取を受けるなどしておりましたということですので、これは何か規律違反があって、それに対して、恐らく面接室か何かで、どういうことだという事情聴取を意味しているんだと思いますけれども、これはどういった規則違反があったのか、事情聴取を受けるに至った過程などはわかっているんでしょうか。
樋渡政府参考人 まず、全般的にお答えいたしますと、本件被害者は、本年四月ごろには懲役作業を怠業したことにつきまして、本年六月ごろや本年七月末ごろには他の受刑者との間で問題を起こしたことにつきまして、本年九月ごろには、懲役作業を拒否したり、刑務官に対して反抗的な態度をとったり、ノートの使用規則に違反したことなどについて、事情聴取をされていたものと承知しております。
 具体的に申し上げますと、本年四月ごろは、被害者は、刑務所内の工場で懲役作業中、エアドライバーのエアを体に吹きつけるなどをして怠業したというようなことが一つ一つ事情聴取されていたということでございます。
山花委員 済みません、もう一回ちょっとお願いしたいところがあるんですが、最後、ノートの使用規則違反と言われましたか。ノートの使用規則違反。もう少し具体的に御説明はいただけますでしょうか。あるいは、きょうの時点ではそこまでということでしょうか。ノートの使用で何かまずいことがあるのか、ちょっと疑問なんですが。
樋渡政府参考人 ノートに同房者、受刑者の名前や看守の名前を記載していたということが規律違反で問われたものでございます。
 その使用規則がなぜあるかということのお尋ねだろうと思うのでありますけれども、ノートに他の受刑者の氏名や連絡先等を記載していた場合、例えば出所後に金品等を無心に行ったり、あるいは当該ノートを外部の者に送付して、その者が当該記載内容を知ることによって不正連絡等を企図されるおそれがあるなど、受刑者の教化上や施設の規律、秩序維持上支障が生ずるおそれがあることから、これらを未然に防止するために、ノートを使用するに当たっての心得事項の一つとして、ノートには他の受刑者の氏名、住所、電話番号等は記載しないよう指導しておりますが、このような記載があったことをもって直ちに規律違反行為として懲罰を科すということはないものというふうに報告を受けております。
山花委員 かつてこの委員会でも、規律がちょっと厳し過ぎるんじゃないかというような議論もあったと思いますし、今御説明を伺った限りでも、そういう記載をすると確かにそういうおそれ、抽象的なおそれはあるかもしれませんが、そこまで抑制しなければいけないのかとちょっと疑問がございます。ただ、その点については、意見は今のところそういうことで、またしかるべきときに議論させていただきたいと思いますが、きょうの法務大臣の御説明に関連して先を急ぎます。
 その後、事情聴取を受けている際に、反抗的態度をとったことで、前田副看守長が立腹して被害者の座っていたいすをけるなどした。このため被害者が立ち上がろうとしたというわけですから、いすをけったことによって転がり落ちていると思うのですが、これだけで特別公務員暴行陵虐の構成要件に当たっているような気がいたしますけれども、その後、被害者が既に制圧されているにもかかわらず、懲らしめのために革手錠を使用することを考えとあります。
 革手錠というのは当然、懲らしめのために使う戒具ではありませんので、違法なことであったという、法務大臣の御発言ですからそういう御認識だと承りますが、その上で、しかし強く締まらなかったことからということで、小さいサイズの革手錠を取り寄せて、渡邉看守長の指示を受けながら被害者に装着し、一番円周の狭くなる穴で固定しようとしましたが、それが困難であったため、その次に狭い穴で固定しましたとあります。
 これが恐らく原因となったのでありましょう、腸間膜損傷等の傷害を負ったということですから、これは相当きつく締め上げたのではないかということが推測されるんですけれども、この被害者のウエストのサイズと、一番円周の狭くなる穴は何センチか、あるいは、実際に一番狭いところに固定しようとしたのが困難だからその次に狭い穴ということですので、それが何センチかということは今わかっているんでしょうか。
樋渡政府参考人 報告によりますと、小さなサイズのベルトの最小の穴で固定した場合の円周は六十センチでありまして、最小から二番目に小さい穴で固定した場合の円周は七十センチであるということでございます。また、被害者の胴回りは約八十センチであったということでございます。
山花委員 約八十センチの人を最初六十センチで固定しようとしたというんですから、相当これは締め上げないと無理です。七十でも相当きついと思いますね。相当これはひどい事案だったのではないかということが明らかになったのではないかと思います。
 その次ですけれども、大臣からの御説明で少しわからないところがあったんです。その後ということで、同日午前九時四十分ごろ、革手錠を解除しようとして、強くベルトを引いたり、再度被害者に巻きつけてということがあったようですが、その後のことの時間的な経緯がちょっとよくわかりません。被害者は保護房に放置されていましたが、被害者の異状に気づいた前田副看守長が医師に連絡し、診察の結果ということで傷害が判明ということなんですけれども、同日の九時四十分ころにいろいろあったという以降の時間的な経緯について御説明いただきたいと思います。
森山国務大臣 御説明申し上げる前に、一言追加の御報告を申し上げます。
 ただいま、九時三十二分に名古屋地方検察庁におきまして、名古屋刑務所刑務官五名を特別公務員暴行陵虐致傷罪によりまして名古屋地方裁判所に公判請求したとの報告がございました。
 起訴されましたのは、名古屋刑務所看守長渡邉貴志、副看守長前田明彦、同岡本弘昌、看守小沢宏樹、同池田一でありまして、その公訴事実の要旨は、被告人五名は、名古屋刑務所に勤務し、被収容者の処遇、戒護及び規律維持等の職務を担当していた者であるが、同刑務所に収容されていた懲役受刑者、当時三十歳が、かねてから反抗的態度を示しているとして、懲らしめの目的で、共謀の上、本年九月二十五日午前八時十五分ごろから午前九時四十五分ころまでの間、同刑務所保護房において、その必要がないのに、同人に対し、その腹部に革手錠のベルトを巻きつけて強く締めつけ、腹部を強度に圧迫するなどの暴行を加え、よって同人に加療約七十日間を要する外傷性腸間膜損傷等の傷害を負わせたというものでございます。
 ただいまの御質問に対してお答え申し上げます。
 被害者は、九月の二十五日午前九時四十五分ごろ、革手錠を解除された後、保護房に放置されておりましたが、前田副看守長が被害者の異状に気づいたことから医師に連絡し、午前十時四十分ごろ、医師が診察をしたところ、腸間膜損傷等の傷害を負っていることが判明し、同日午後零時ごろ、手術をするため愛知県豊田市内の病院に搬送され、同所において開腹手術をしたということを承知しております。
山花委員 十時四十分に医師が診たということですので、そういたしますと、約一時間後ということになります。
 今回の件で、これは大臣にお伺いしたいんですけれども、保護房に収容することについての管轄は今保安部門になっていると思います。これをやはり医務の部門と共管にするか、あるいはもう本当に医務の方に移すとか、そういうふうにしないと、戒具を使用して、すべてのケースが今回と同じようなことになっているとは申し上げませんけれども、やはり、例えば保護房の収容の前あるいは後に医師による診断などを義務づけるような形にしないと、今回も約一時間、医師に診せるまで時間があってこういうことになっているわけですから、本当の意味での、本来的にはこういった事件が起きないことがもちろんなんですけれども、その後の処理として適切な処理がなされるためにはそのようにすべきであると考えますが、いかがでしょうか。
中井政府参考人 保護房でございますけれども、その性格について御説明いたしますと、監獄法令に基づく戒護のため隔離の必要がある場合についての独居拘禁の一形態でございまして、逃走、暴行、傷害、自殺または自傷するおそれがあり、また、その制止に従わず、大声あるいは騒音を発し、あるいは房内を汚染させる、器物損壊をする等の異常な行動を反復するおそれのある被収容者の鎮静や保護に充てるために設けられた居房でございます。
 今の申し上げた意味におきまして、保護房へ収容するか否かということは、まさに施設の規律及び秩序の維持のためになされる措置の一つでございますので、これの保護房収容等につきましては、まさに保安業務に通暁した保安部門の所管とせざるを得ません。したがいまして、矯正当局といたしましては、保護房の管轄を医務部門へ移管することは相当でないと考えておるところであります。
 なお、先ほど大臣の御発言にもございましたように、矯正局から通達を出しておりまして、保護房へは、精神または身体に異常のある者については、医師に診察させ、健康に害がないと認められる場合でなければ収容してはならない、また、急を要し、あらかじめ医師に診察させることができない場合には、収容後、直ちに医師に診察させなきゃならない、これに加えまして、保護房収容中の者については、常に医師にその心身の状況を確実に把握させ、必要に応じて診察させることとされているところでございます。
 したがいまして、保護房収容中の被収容者の健康の面につきましては、医務部門が関与し、適切に管理することとされておるわけでございまして、矯正当局といたしましては、今後とも、保安、医務、両部門の連携を密にさせまして、適正な運用に努めていきたいと考えております。
山花委員 いや、そうなっているというのはそうなっているんでありましょうけれども、ただ、今回のケースでも、例えば保護房に入れるかどうかという話ではなくて、革手錠の使用についても、今の大臣の御報告ですと、前田副看守長らの進言を受け、同十三年夏ごろ、十三年の夏ですから去年の夏ですね、上司において、施設内の規律維持のため、ここからなんですが、監獄法に定める要件があれば革手錠の使用を差し控える必要はない旨了承しましたと。監獄法の要件さえ整っていれば通達は無視してもいいというようにも強く推測されるような、そういう話が出ているわけでありまして、やはり制度設計の上で共管にするような形が望ましいのではないかと思います。この点については、ちょっと時間もありますので、意見だけ申し上げさせていただきたいと思います。
 ところで、ちょっと革手錠の方に論点を移していきたいと思いますけれども、現在、革手錠というのは各刑務所に何本ぐらい備えつけられているんでしょうか。また、総計で何本かということを把握されているでしょうか。
中井政府参考人 革手錠は、全国の行刑施設に整備されております。その本数は、平成十四年三月三十一日現在で約千百本でございます。
 各施設ごとの整備状況についてでございますが、施設の収容規模でありますとか保安、警備上の必要度等によって異なります。例えば、拘置所などの小規模施設では数本くらい、収容人員が多い大規模施設の中では二十本を超える革手錠が整備されている施設もございます。
山花委員 ところで、十一月十六日付の東京新聞の記事で、保護房とか革手錠に関する情願、告訴・告発の件数についての記事が出ております。私も同様のものが今手元にありますけれども、報道によれば公式のものではないという話でありますが、情願、告訴・告発の件数というのが、九一年には情願が六百四十四であったのに対して二〇〇〇年になると二千三百八十二、訴訟が八十九に対して二〇〇〇年が二百五十九、告訴・告発が百九十六に対して二〇〇〇年が三百十六、その他が九一年が三百であったのに対して二〇〇〇年が千二百六十四、このような資料がありますけれども、この報道の件については確認をされていますでしょうか。
中井政府参考人 特定の新聞の記事内容についてのお尋ねでございますけれども、お尋ねの記事に係りますところの情願、告訴・告発の件数等のデータにつきましては、矯正当局で公開した事実はございません。また、当然のことながら、当該記事に出ておりますところの資料というものも私どもが取りまとめたものではございません。
 ただし、当該新聞の記者から私どもの担当者が資料の写しなるものを示されまして、コメントを求められた経緯はございます。その際に、取り急ぎ中をざっと確認した限りでは、情願や告訴・告発の件数等の数値自体は私どもが把握しているものとおおむね同じような傾向にあるのかなという報告は受けております。
山花委員 それは今現在でも同じような認識だということでよろしいでしょうか。つまり、大体こういった数字だと。
中井政府参考人 大体おおむね同様な数字であるという認識でございます。
山花委員 ところで、これは革手錠使用のケースではないのですけれども、平成十一年に府中の刑務所で、十二年に横須賀の刑務所で、十四年にまた府中の刑務所で、保護房で収容された方が亡くなっているケースがあるのですけれども、これの死因、どういった形で亡くなられたのかについて御報告いただけますでしょうか。
中井政府参考人 平成十一年の府中刑務所の事案でございますけれども、同年八月、同刑務所に収容中の四十代男性の受刑者が、職員の制止に従わず、大声を発し、房の扉を殴打するというようなことがございまして、保護房に収容いたしましたとの報告を受けております。その収容翌日、職員の呼びかけに応じなかったために、保護房収容を解除いたしまして、救急医療措置を講じたものの、同日死亡したと聞いております。死因は急性心不全とされまして、外傷等もなく、同刑務所の対応に問題はなかったと報告を受けております。
 続きまして、平成十二年の横須賀刑務所の事案についてでありますが、同刑務所収容中の五十代男性の受刑者が、職員の制止に従わず、便器のふたなどの房内の備品を壊すなどの異常行動を反復しておりましたため、保護房に収容いたしました。収容の翌朝、職員の呼びかけに応じなくなったため、保護房収容を解除いたしまして、救急医療措置を講じたものの、同日死亡いたしております。その死因は脳腫瘍であり、外傷等もなく、同刑務所の対応には問題はなかったとの報告を受けております。
 平成十四年の府中刑務所の事案につきましては、同年三月、府中刑務所に収容中の四十代男性の受刑者が、職員の制止に従わず、大声を出したりあるいは騒音を発するなどいたしましたために、保護房に収容いたしました。収容後十二日目でございますけれども、職員の呼びかけに応じなくなったため、保護房収容を解除し、救急医療措置を講じたものの、同日死亡いたしました。死因は急性心不全とされ、外傷等もなく、同刑務所の対応に問題はなかったという報告を受けております。
 また、これらいずれの案件につきましても、革手錠は使用しておりません。
山花委員 十二年の横須賀の件は脳腫瘍ということなので、今の御報告からはそんなに違和感はないのですが、十四年の件ですと、十二日間保護房に入っていたということだけでも、私は今ちょっとおやっと思ったのです。
 府中のケースですと、局長、今御自身で御報告をされていて、先ほどの医療の部分とはちゃんと連携していますよという御報告と、自分で何か矛盾を感じませんか。つまりは、あけてみたら亡くなっていたというような状況なわけですから、やはり中に入って適時お医者さんが点検していればそういうことは起こらなかったのじゃないかというふうに思います。これは通告はしておりませんけれども、ちょっと今御答弁の間で私は非常に違和感を感じたのですけれども、この件は、少しこちらも御答弁を精査させていただいて、また改めて取り上げさせていただきたいと思います。
 これも通告していないのですが、大臣、今の話からすると、ちょっとおかしいと思いませんか。つまりは、やはり医務部門がもうちょっと関与していないとこういう事件というのは起こってしまうと思うのですけれども、ぜひ御検討をいただくことはできないでしょうか。
森山国務大臣 先ほど矯正局長が御説明したような目的で保護房の収容ということはしているわけでございますので、まずは、表に立つ責任のあるのは保安部だと思います。必要に応じて医療部門もかかわってくるということで、当面はそれで対処するべきではないかと考えております。
山花委員 時間もなくなってまいりましたので、幾つか事前にお答えいただくことをお願いしていたケースがあるのですが、こちらから何件か少しお話を申し上げて、一点だけ。
 平成十三年に岡山刑務所、十四年に下関の拘置支所で、保護房に収容されていた者が重病で病院に搬送されたというケースもございます。これは革手錠を使用しているケースではありませんが。大阪拘置所では、ことし三月二日の夜、拘置所の独居房で首つり自殺を図って大阪市の病院に搬送された方が亡くなられております。滋賀の刑務所では、二〇〇一年十一月二十七日に自殺を図ったケースがあって、この後は仮釈放になったのでしたか、そういったケースが出ております。
 非常にこういうケースが多いということが気になるのですが、特にことしに入って千葉の刑務所が非常に気になっております。
 例えば、ことしの五月五日、午前零時十分ごろ、窓の鉄格子にシーツを巻きつけて首をつっているのを職員が見回り中に発見して、死亡したというケースがありましたね。これは、まず一つ、事実関係の確認を求めたいと思います。
 また、千葉の刑務所で、ことしに入ってから受刑者や被告が自殺するのはこのケースだけではなくて、数件あると聞いておりますけれども、実態を把握しているでしょうか。
 またあわせて、私は、この千葉の数字というのはことしに入ってちょっと異常じゃないかと思うのですけれども、この辺の御認識について伺いたいと思います。
中井政府参考人 お尋ねの千葉刑務所における自殺案件についての事実でございますけれども、ことしの五月五日、午後零時ごろ、千葉刑務所におきまして、業務上過失傷害等の罪名により収容中の五十七歳の男性受刑者が、居室の窓に設置されている鉄格子にシーツを結びつけて縊首自殺しているところを職員が発見いたしまして、直ちに救命措置を講じながら外部の病院に搬送いたしましたが、同日午前一時ごろ同病院の医師により死亡が確認された旨の報告を受けております。
 また、千葉刑務所から、本年に入ってこれ以外にも二件の自殺事故の報告を受けております。一件目は、本年一月五日に受刑者が、居房の上部に設置されましたラジオのスピーカーのカバーに通したひもを用いまして、同様縊首自殺した事案でございます。二件目は、同月十八日に受刑者が、居房の窓に設置されている鉄格子に通した上着を用いまして、やはり同様に縊首自殺した案件でございます。
 お尋ねのとおり、千葉刑務所におきましては、本年中に三件の自殺事故が発生しているところでございます。
 自殺というのは、事柄の性質上、完全に防止するということは非常に難しいものでございまして、例えば中には、自分の首に巻きつけて布団の中に寝た状態のまま自殺するというような形もございまして、なかなかこれを発見、防止することは難しいんでございますけれども、いずれにいたしましても、拘禁の確保ということは行刑施設の基本的使命でございますので、いろいろ過剰収容等で職員負担は増しておりますけれども、事故防止のため適切な措置を講じるよう指導してまいりたいと思っております。
山花委員 ちょっと時間を調整させていただきますので、少し続けさせていただきます。
 要するに、千葉の刑務所については続いているというのは間違いないわけで、今回の革手錠での件も、一つ出てきて、後からいろいろ調べてみたらやはりこれだけ問題があったということですので、わからないですよ。千葉の件はたまたま続いて、偶然なのかもしれませんけれども、偶発的なのかそうでないのかということについてはぜひ点検をしていただきたいということを申し上げたいと思います。
 最後に、法務大臣が今後の再発防止策ということで、「ビデオ設備のある施設においては、保護房における革手錠使用時等の状況について録画することにつき、矯正局長通達を発出することとしております。」とあります。
 ビデオ設備のある施設においてはというふうに限定がついてしまっておりますが、先ほど漆原委員からのお話で、ビデオテープの存在というものは確認しているという話もありましたけれども、ただ、報道によると、一回録画したのをまた消しちゃったなんということも報じられておりますし、革手錠使用案件について、もっと言えば保護房を使用したケースについてはビデオカメラで録画をしておいて、それを矯正局なり矯正管区に、使用した件についてはこういうことであるというふうに、ちゃんとビデオも報告書と一緒に報告するという形をとることがやはり再発防止ということでいいますと一番適切なのではないか、このように考えるんです。
 もちろん、現在ビデオ設備のあるところ、ないところあるんでしょうけれども、今後ないところについては備えるべきではないか、そして今申し上げたような形で再発防止ということを図るべきでないかと考えますが、いかがでしょうか。
森山国務大臣 先ほど確かに報告申し上げました中で、再発防止のための緊急措置として、ビデオ設備のある施設においては、保護房における革手錠使用時等の状況について録画することにつき、矯正局長通達を発出するということを申し上げました。
 ただ、矯正局において通達を発しまして、当分の間ビデオ設備のある施設においては保護房における革手錠使用等の状況を録画するということにいたしましたのは、あくまでも当面の緊急措置でございまして、根本的には、もっとよく慎重に検討し、いろいろな方策をそのほかにも考えなければならないというふうに考えております。
 現在、ビデオ機器設備の状況から、被収容者を保護房に収容して革手錠を使用した際、すべてをビデオカメラで録画するということを義務づけることはできないわけでございますが、そのような点も考慮いたしまして、ビデオ機器の設備がない施設におきましては何かそれにかわる方法を考える、あるいは革手錠の使用についても全件を報告するなど、そのような取り扱いをとりあえずしたいというふうに考えております。
山花委員 時間が参りましたので、質問を終わります。ありがとうございました。
山本委員長 次に、中村哲治君。
中村(哲)委員 民主党・無所属クラブの中村哲治でございます。
 先週に引き続きまして、難民問題について二度目の質問をさせていただきます。本日は、難民申請者及び難民申請について不認定とされたけれども取り消し訴訟を行っているような人たち、いわゆる難民絡みの人たちの収容についてお聞きいたします。特に、仮放免について議論をさせていただきたいと思っております。きょうは副大臣を中心にお伺いいたします。
 前回の質問で、難民絡みの人とそうでない人と収容期間にどれほどの違いがあるのかという質問をさせていただきました。そのときに、難民絡みの人は現在四十九人収容されていて、平均二百六十七日、ほぼ九カ月間収容されているという話でした。また、そうした方々ではない方々は千八十五人収容されていて、平均日数は五十日だった。つまり、難民絡みかそうでないかということで、九カ月と五十日と大きな差があるということなんですね。難民絡みの場合において、なぜこのように収容が長期に及んでいるのでしょうか。
増田副大臣 お答えをいたします。
 難民認定申請が不認定となり、退去強制手続に基づきまして収容されている者につきましては、その大半が旅券等送還要件が整わなかったり、難民不認定処分取り消し請求等の訴訟を提起したことなどの理由から、比較的収容期間が長期となっております。
 以上です。
中村(哲)委員 ということは、帰したくてもなかなか帰せない、客観的状況が整っていないという理解でよろしいんでしょうか。
増田副大臣 おっしゃるとおりでございまして、帰る要件が整っていない、このように実はなっております。
中村(哲)委員 少し実質的なお話を答弁に基づいてさせていただきたいと思っております。私の質問の趣旨が明瞭でない場合はまた聞き返していただいて、実質的な審議をさせていただきたいと思っております。
 前回の質問で副大臣にお聞きしたことに、こういうことがありました。いつ仮放免されるかわからない状態でずっといくという状態にあるということは大臣のお気持ちとしてはいかがお感じになられるでしょうかということを私はお聞きしました。そうすると、副大臣は、「いろいろな事情、背景があって延びているんだと思いますけれども、結論的には心配で心配でたまらないと思います。」とおっしゃいました。
 収容されている側のお気持ちになった場合には心配で心配でたまらない、そういうふうに大臣もお答えになっていたので、そのお気持ちでまたイメージしながらお答えいただきたいんですけれども、退去強制令書に基づく収容は無期限となっています。ここは質問通告していることでもありますけれども、結果的に無期限に身体の拘束がなされている、そのことについて大臣は、この間は心配で心配でたまらないという結論でおっしゃっておりましたけれども、それについての感想はいかがでしょうか。
森山国務大臣 退去強制令書が発付された者につきましては速やかに送還するということが前提でございますが、今おっしゃったように、送還要件が整わないなどのことで収容期間が比較的長期間に及ぶということは現実にあるわけでございます。そのような場合には、仮放免を弾力的に運用するというようなやり方で柔軟に対応いたしております。
 なお、退去強制手続における収容は刑罰ではございませんが、被収容者の処遇に当たっては、保安上支障がない範囲内においてできる限りの自由を与えるということなど、人権に配慮した取り扱いに努めております。
中村(哲)委員 人権に配慮した取り扱いをしているということなので、そこの実質的な議論をさらに進めさせていただきたいと思っております。
 収容令書に基づく収容、つまり、三十九条に基づく収容というものは、四十一条で期限が三十日と決まっております。やむを得ない事由があるときであっても、最大三十日しか延長することができません。つまり、最長でも六十日間というのが三十九条での収容の期間であります。そして、この退去強制令書に基づく収容というのは、五十二条五項による収容なんですけれども、その収容を考えた場合、三十九条、四十一条の収容期間から考えると、長期にわたるような収容というものは、この五十二条五項の収容というのは想定していないんではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
増田副大臣 退去強制令書を発付された外国人につきましては、入管法第五十二条第三項の規定により、御発言のとおりであります、速やかに本邦外に送還することとされており、送還することができないときは、同条第五項の規定により、送還可能のときまで収容することとなっております。
 このような規定の趣旨から、本来、長期にわたる収容は望ましいものではありませんけれども、できる限り迅速な送還に努めているところでございますが、いろいろの理由から収容期間が長期に及ぶ場合もあります。そのような場合には、健康状態等個別の事情にかんがみまして、身柄の拘束を解く必要が生じたときには、仮放免を弾力的に運用するなどして柔軟に対応する、このようなことにしております。
中村(哲)委員 大臣の御答弁、そして副大臣の御答弁で、仮放免を弾力的に運用して人権に配慮をするという姿勢を改めて示していただいているんだと思います。
 仮放免の質問に入ります前に、最後に一点だけ確認させていただきたいんですけれども、そのような趣旨で考えると、少なくとも、難民認定の申請中には当該申請者に対して退去強制令書は発付すべきではないと思うのですが、いかがでしょうか。
森山国務大臣 一般論で申し上げますと、退去強制手続と難民認定手続とは別個独立の手続でございますから、難民認定手続の有無及びその進行状況にかかわらず、退去強制事由に該当する者について所定の退去強制手続を進め、退去強制令書を発付して、これを執行したとしても、法律上の問題はないと考えます。
 しかしながら、退去強制令書発付前に難民認定申請を行う場合もありますが、その場合には、実務の運用といたしましては、法務大臣の認定、不認定の処分がなされるまでは退去強制令書の発付を行わないのが通常の取り扱いでございます。また、退去強制令書発付後に申請を行う場合にも、申請者の立場にも十分配慮いたしまして、退去強制手続による送還は認定、不認定の結論が出るまでは行わないということにいたしております。
中村(哲)委員 その御答弁の流れから、仮放免の制度について質問を進めさせていただきます。
 さて、そもそも、仮放免制度を設けている理由はどういう理由なんでしょうか。
増田副大臣 退去強制手続は、身柄を拘束して進めることとされております。仮放免制度は、入国者収容所長または主任審査官が、収容されている者について、健康上その他やむを得ない事情がある場合に、収容されている者または一定範囲の関係人からの申請に基づき、または職権で、保証金を納付させ、必要な条件をつけるなどして、例外的にその身柄の拘束を解く制度であります。
中村(哲)委員 私なりに好意的にまた解釈をいたしますと、判例が出ています。五十一年十二月十三日、東京地裁の判決でございます。行政は必ずしも、最高裁の判決が出ていなければ判例にとらわれる必要はないかと思いますけれども、一応、三権分立のもとにおいては、地裁の判決であっても、その法令の解釈においては尊重しないといけないというのは大原則だと思います。恐らく、この判例に基づいて大きな枠組みが決められているんだと思います。というのは、私が先日法務省からいただいた資料にも、「仮放免の趣旨に関する裁判例」ということで、五十一年の判決が引用されているからでございます。
 そこをもう少し読ませていただきますと、「仮放免の制度は、右の原則に対する例外的措置として、自費出国又はその準備のため若しくは病気治療のため等身柄を収容するとかえって円滑な送還の執行が期待できない場合、その他人道的配慮を要する場合等特段の事情がある場合に一定の条件を付したうえで一時的に身柄の解放を認める制度と解すべきである。」このように書いております。
 つまり、特段の事情がある場合に放免することを可能とする制度であると。特段の事情がある場合というのはどういう場合なのか。二つありまして、身柄等を収容するとかえって円滑な送還の執行が期待できない場合というのが一つ、その他人道的配慮を要する場合というのがもう一つでございます。ここの解釈をどのようにしていくのか、具体的な当てはめをどうするのかというところがこの場所で議論すべきことなんだろうなと私は考えております。
 そうすると、判例が言う「人道的配慮を要する場合等特段の事情がある場合」というのは、このような難民絡みのケースによると、収容期間も定められず、そして、平均九カ月間にもわたり、いつ出られるかということもわからないまま収容されている、そのケースはこの場合に当たるんじゃないかな、私はそのように考えるんですが、いかがでしょうか。
増田副大臣 一般的に、入管法第五十四条の規定によりまして、仮放免の請求があった場合には、入国者収容所長または主任審査官が、その者の情状及び請求の理由となる証拠、その者の性格、資産等、これらを考慮いたしまして総合的に判断の上、その許否を決定することとなります。そういうことになっております。
 そこで、人道的配慮を要する場合等を引き合いに出され、条文、東京地裁の判例等も出されまして、どうなんだ、このようなお尋ねでございましたが、今申し上げましたように、やはり、その許否を決定することは、総合的に判断の上決定する、このようなことになっていると思います。
 一般論として申し上げますと、収容期間の長短のみをもって一律に仮放免の是非を判断することは必ずしも適当ではないのかな、このような考えを持っております。個々の事情等を十分判断しながら御趣旨を体して取り組んでまいりたい、このように思います。
中村(哲)委員 そこの議論を少し、副大臣と、具体的イメージを持ちながらお話をさせていただきたいと思います。
 前回も質問させていただきましたけれども、副大臣が、第三国、ほかの国にいらっしゃって、そこで、そこの国民として民主化運動に取り組んでいた、すごく弾圧を受けて命からがらほかの国に逃げていった、難民申請をしたら、いきなり収容されてしまって、ほかの国では収容されないケースもありますから、ああ、収容されてしまった、いつ出られるのかと思ったら、いつ出られるかわからない、言葉もなかなか通じないわけですから、すごく不安になってしまう。副大臣は、心配で心配でたまらないとおっしゃいました。
 もう一度イメージしていただいて、収容されて、無期限で、いつ出られるかわからないという状態というものは、人道的配慮を要する場合ではないと実感されるでしょうか。
増田副大臣 通告がなかったと思いますが、せっかくのお尋ねですから、私見と言っては恐縮ですが、議論したいということで考えを申し上げたいと思います。
 簡明に申し上げますと、全部その法のとおりに日本に来た方がやってくれればまことにぐあいがいいんですが、そうではないんだ。私が自分で調べた範囲では、結局、こう言うと変ですが、私たちの国に来た、そして難民申請をした、なかなかそれが通らない、そして、それではどうなったかというと、その間、切れて、帰られる方もあれば、全く地下に潜ってしまってその後どうなったかわからぬ。その数字が私の調査では二十万を超えているだろう、このように実は私は理解をしております。
 したがって、こう言うとなんなんですが、そういうことを踏まえると、やはり慎重に対応していくべきだな、こういう思いを実は持っております。
中村(哲)委員 大臣、実は、二十万を超えているというのは、難民絡みでも必ずしもないわけなんです。私が今回議論させていただいているのは、難民絡みの人たちの話なんですね。難民絡みの人たちが無期限で長期に収容されている。そういった状況を勘案すると、人道的配慮を要する場合に当てはまるということを前提として考慮をすべきなんじゃないか。その一点だけ確認させていただきたいんです。
増田副大臣 不法入国者のことを申し上げたんですが、難民絡みの関係を今度は抽出して私の考えを申し上げます。
 こう言うとなんなんですが、私たちの国へ難民で来られるという方は、四方全部海ですし、大変距離がありますし、なかなかそんなに数が多くない。私の調査では、二、三百人を超えることはないだろうというふうに私は今おぼろげに記憶いたしております。
 そこで、今度は、そういう方々が私たちの国に来た。そしてその人々を、先ほど無期限の収容という御発言がございましたが、すぐ言ってくれて、そろっておれば調査ができるんですね。それらが、私への報告また私の知っている限りでは順当でない。そういうことが無期限の収容という形に、収容というよりは時間がかかるという形になっていってしまうんだろう、こういう理解をいたしております。
中村(哲)委員 時間がかかるというのはそれでいいと思うんです。ただ、それが長期間の収容にわたった場合に、人道的配慮を要する場合として考えなくてはいけないのではないか。仮放免が認められているケースということを逆に考えると、そこが配慮されているからこそ認められているとも言えるんじゃないかと思うんですよ。だから確認をさせていただいているんですが、いかがでしょうか。
増田副大臣 大変に難しい問題でして、いついつ私たちの国に来た、いつ結論が出ますということを明快にして行政を執行することは、必ずしもいいのかな、問題が残るのかな、こういう懸念を私は持っています。
 難民の方がおいでになった、難民認定ができなかった、時間がかかる。それで今度は、向こうへ帰るにも、出てきた自分の国からパスポートがもらえないというような場合にはどういうことがあるんだろうというようなことも、実は前回の先生の御指摘をいただいてから真剣に考えてみましたが、やはり当面、今の制度でやっていく以外にないのかなというふうに考えております。
中村(哲)委員 副大臣、そのお話はわからないでもないんですが、それを考えるときに、三十九条収容の場合は原則三十日と決められているわけですね。やむを得ない場合も最長で三十日。それはなぜかというと、人身の自由に対する制約であるということで、法文上も最大限の配慮がされている。
 そもそも、その三十日、三十日、合わせて六十日という期間と比べても、なぜ五十二条の五項での収容に無期限、期限が定められていないのかということを考えると、速やかに退場してもらう、出国してもらうということが前提だったんだと思うんですよ。それとの比較。
 また、先ほど大臣にも確認させていただきましたけれども、難民絡みでない方たちというのは、平均五十日しか収容されていない。普通の一般の不法入国者ですよね。だから、それと比べても、どれぐらいの日数収容されていれば人道的配慮をしないといけないのか、そういうことはおのずと考えなくちゃいけないんじゃないかなと私は思うんです。
 それから、仮放免といっても、無条件で解放されるわけではありません。総合的に判断をされるということも必要ですし、保証金も積まないといけない。また、保証人が必要になってきます。そういったことを総合的に判断するということが必要だと思うんですよ。
 今収容されている人の漠然とした不安というのは、自分たちはいつまで収容されているんだろう。仮放免というのは、人道的配慮を要する場合等特段の事情がある場合には認められるということを聞かされていても、そのめどがどれぐらいなのか、どれぐらいの期間入れられていればこの検討はしてもらえるんだろうか、何も知らされていないので非常に不安だと思うんですね。
 法的に言えば、期限の定めを区切っていないんだから、いつまででも入れていてもいいだろうという解釈も成り立ち得るのかもしれないんですけれども、そもそも五十二条で期限の定めを切っていないというのは、三十日、三十日ということと比べても、それよりもはるかに短い期間で出すであろうから定めていないというのが合理的な法律の解釈のあり方だと思うんですね。先ほどそのような答弁もあったと思います。仮放免を弾力的に運用して人権に配慮するという御答弁もあったかと思うんですよ。そういった意味で、何日ぐらいならば適当なのかなという議論をさせていただきたいなと思っているわけなんです。
 今、難民絡みじゃない場合は平均五十日ですから、乱用のケースも含めると、例えばその倍程度、だから、三十日、三十日と比較しても三カ月ぐらいというのを一つのめどとすべきなのではないかなと考えているんですが、いかがでしょうか。
森山国務大臣 確かに、いつ出られるかわからない、それが非常に長期にわたって既に収容されているというような人の立場に立ちますと、大変不安だろうと思いますし、また、それも人道的配慮の中の一つとして考えるべき条件だろうとは思います。
 しかし、ケース・バイ・ケースで、いろいろな人がおりますし、いろいろな条件がありますので、あらかじめ何百日以上ならとか何十日までならとかいうようなことを一律に決めることは大変難しいと思います。
 いずれにいたしましても、そのような問題がございまして、そのほかにもいろいろとこの難民問題の法律関係では検討しなければならないことがたくさんありますものですから、現在、法務大臣の私的懇談会であります出入国管理政策懇談会というのを数回やっていただきまして、そしてその一応の中間報告が出ております。これの中にも、難民認定の申請中の者のステータスということについてもう少し明確にするべきではないかということも御提言いただいておりますので、そのようなことも含め、至急検討いたしたいというふうに考えております。
中村(哲)委員 時間が参りましたので、最後に一つだけ、簡単に。
 総合的な判断をするときに、NPOが絡んでいる場合というものは逃走のおそれもないですし、五十五条の取り消しの趣旨から見ても、逃走のおそれがないような、しっかりしたNPOがついているような場合には、弾力的に仮放免を認めていくというのは一つの方法としてあるのではないかと思うのですが、最後に一点お伺いいたします。
増田副大臣 仮放免の許否に当たっては、被収容者の情状また仮放免の請求の理由となる証拠並びにその者の性格だけではなく身元保証人の職業、収入、素行、被収容者との関係等を考慮して総合的に判断する必要がありますことから、特定の身元保証人がいることのみをもって画一的に許可をする条件とはなりませんが、総合的に判断する際には、信頼できる身元保証人がいることも一つの要素として考慮してまいります。
中村(哲)委員 終わります。
山本委員長 次に、石原健太郎君。
石原(健)委員 先ほどの大臣の報告をお聞きしたり、また今までの新聞報道等を見ますときに、今回起訴された五名の中には、刑務官としての適性を欠いている人がいるのではないか、刑務官には向いていない人がいるんじゃないかというような感じを持ちましたが、法務当局はどのようにお考えでしょうか。
中井政府参考人 今回起訴されました刑務官についてでございますけれども、いずれも所要の選抜試験を経まして採用された後に、初等科研修でありますとか中等科研修、中には高等科研修も受講している者がございます。
 さはさりながら、今回の事案の、発生事態の重大さに思いをいたしますときに、やはり、遺憾ながら、これらの職員というものは、人権に対する基本的な意識が欠如していた、かように考えることは否定できないと思っております。
石原(健)委員 選抜の際の試験なんかも重要な要素とは思いますけれども、やはりそういう人間的なところも今後は見られて採用されていかれるようにしたらいいんじゃないかと思うんです。
 また、報告でもありましたが、上司の監督の責任が十分ではなかったというような部分もあったかと思われます。それで、名古屋の刑務所長という人は、どういうような経歴を経て、いつごろ任命されたんでしょうか。
中井政府参考人 名古屋刑務所長が現職につきましたのは、十四年四月でございます。
 それまでの主な経歴を申しますと、平成六年四月函館少年刑務所長、平成七年四月徳島刑務所長、平成九年四月長崎刑務所長、平成十一年四月東京管区第二部長、平成十三年四月福岡刑務所長を経まして名古屋刑務所長となったものであります。
石原(健)委員 刑務所の中におきましても、適正な人事配置ということが大事になってくるかと思われます。また、刑務所というのは、どっちかというと閉鎖的な社会になりがちじゃないかという感じもするんですけれども、人事異動とか人事交流などはどのようにされているのか、御説明ください。
中井政府参考人 お答えいたします。
 刑務官のうち、幹部職員でございますけれども、その人事異動や人事交流等につきましては、長期に在職いたしますとマンネリ化に陥りやすい弊害がございますので、それを防止したいということとか、いろいろなポストによって当該幹部職員の職務能力の向上を図りたいというような観点から、先ほどの経歴でもおわかりかと思いますが、大体二年ごとぐらいで人事異動を実施しているところであります。
 これら幹部以外のほかには、かつては、一般職員については、原則として人事異動がございませんでした。しかしながら、やはり一般職員といえども幹部職員と同じ観点からの人事異動等が必要ということを考えまして、平成九年度からは人事異動の対象としております。他の行刑施設における勤務を経験させるように努めましてやっています。また、当然のことながら、これは、行刑施設内部におきましても、さまざまなポストの配置がえといったことをできる限り行っているところであります。
 また、御指摘のとおり、幅広い経験を積むことによりまして視野が広まるものですから、そういった観点から職員養成を行いたいということで、行刑施設だけでございませんで、例えば少年施設でありますとか、法務省の他の組織等における勤務を経験させるなどといった交流人事にも配慮をしております。
 ことしの春の実績で申しますと、今申し上げた刑務官全体の人事異動のトータルでございますけれども、約九百二十名が人事異動の対象となっております。問題の名古屋刑務所でございますが、ことしの春には、一般職員八人を含みます四十四名につきまして人事異動を実施いたしました。
 今後とも、適材適所と申しますか、それを徹底いたしますとともに、幅広い人事交流等を実施しまして、御指摘の点につき、適切な対応ができるように努めてまいりたいと思っております。
石原(健)委員 わかりました。
 昔はいざ知らず、こういう時代になってきますと、やはり就職してから退職するまでずっと一カ所の刑務所で刑務官をやるというのもなかなか大変なことだと思うのですよ。今おっしゃったように、いろいろ交流すると、視野も広くなったり人間も練れてくるんじゃないかとは思います。
 それで、今回の経過を見ますときに、先ほど大臣の報告にもありましたが、上司の人たちの人事管理とか指導が全く不適切だったと思いますけれども、この点に関してはどうお考えになっていますでしょうか。
中井政府参考人 先ほど来の大臣の御報告等を踏まえまして今回の名古屋刑務所の事件というものを改めて思い起こすわけでございますけれども、基本的に、私ども矯正局から出しております通達を踏まえた革手錠使用の要件を厳守するとか、あるいは適正な使用方法を実施するという点におきまして、所長を含めまして幹部職員から第一線の職員に対する周知徹底を図らなきゃいけないわけでありますけれども、これがまず十分ではなかったという感があります。これに加えまして、実際に革手錠を使用する場面におきましても、使用要件とか使用方法につきましての幹部職員によるチェックというものがこれまた不十分であったと言わざるを得ないと思います。
 また、たびたび答弁しているところでございますけれども、ことしに入りまして、名古屋刑務所におきましては革手錠の使用件数が急増しているわけでございますね。これにつきましては、今申し上げました所長以下のラインがこれを承知しているはずでございますが、それに対する特段の指導なりチェックなりといったことが十分されていないという感を持っております。
 結論から申しまして、名古屋刑務所の幹部職員の人事管理と申しますか、指導監督といった点につきましては、不適切な面があったということは事実であり、まことに遺憾であると考えておるところでございます。大臣から、管理体制等も含めてきちんと調査するようにと指示を受けております。今後とも、事案の原因とか背景事情等をさらに掘り下げて調査いたしますとともに、同じような案件が二度と起きないように、幹部職員の人事管理あるいは部下に対する指導監督のあり方等についてよく検討をいたしまして遺憾なきを期していきたい、かように考えております。
石原(健)委員 報告の中に処遇困難な受刑者という言葉がありましたけれども、どのような人のことなんでしょうか。また、最近の受刑者に何らかの傾向等見られるようでしたら、教えていただきたいと思います。
中井政府参考人 最近の受刑者の傾向等について、とりあえず最初に御説明させていただきたいと思いますけれども、行刑施設の収容人員というのはここ数年急激に増加しておりまして、いわゆる過剰収容の状況にございます。既決、受刑者等はこれに該当するわけでありますが、既決の被収容者だけを見ますと、五年前の平成九年十月末に比べて一万五千人ふえておりまして、約五万七千人となっております。収容率は三〇%増加いたしまして、一一六%に現時点で達しているところであります。
 また、全般的な傾向を申し上げますと、委員御案内のとおり、昨今、非常に犯罪が凶悪化傾向にございまして、当然のことながら、刑が長期化する傾向がございます。
 その被収容者の内訳を見ましても、いわゆる暴力団関係者、これは名古屋刑務所の場合、特に比率が高いわけでございますけれども、それとか覚せい剤事犯者あるいはこれに伴ういろいろ精神面に問題が生じ得る被収容者もおるわけであります。あるいは、再犯を犯して入ってくる者という、いわゆる処遇に困難を伴う受刑者の占める割合が非常に高いということがございます。
 加えまして、いわゆる高齢化社会が進展しておりまして、これは刑務所の中においても同様でございまして、六十歳以上の受刑者が、平成三年末の二千名ぐらいから平成十三年末には五千二百人にふえております。また、言葉の問題その他ございます外国人受刑者につきましても、平成三年末の千三百人から平成十三年末には三千五百人と、この十年間で約二・六倍に急増しております。
 これらは、処遇上あるいは保安警備を行う上で特段に配慮が必要とされるわけでございまして、これら受刑者が増加しているということでございます。
 私どもといたしましては、過剰収容の急場をしのぎますために、一人用の独居に二人入れたり、あるいは六名用の雑居に七名あるいは八名という形でしのいでおりますほか、集会場や倉庫等、これは被収容者の生活空間になるわけでありますけれども、それを改修いたしまして居室や工場などに転用するなどしております。
 結論から申しますと、被収容者が居住する空間というものが非常に狭くなっておりまして、被収容者にとりましては、現場にいる刑務官が自分たちをどんどん狭いところへ入れているんだ、こういう認識になるものですから、不満やストレスとかが増大いたしまして、不服申し立て件数や工場に出るのが嫌だという形に伴うところの懲罰件数もふえておりますし、いわゆる施設内での暴行傷害事案というのも急増しております。職員数は増加しないものですから、必然的に職員の負担も増加しているという形になっているわけでございます。
 特に名古屋の場合、暴力団比率が高いわけでございますけれども、暴力団関係者というのは組織への帰属意識が強うございまして、組織間の対立抗争といったものを行刑施設内に持ち込みます。保安事故が起きる危険性が高いということもありますし、かつて、歴史上、いろいろそういう案件がございましたけれども、衆を頼んでその当該施設を我がものに乗っ取りかねないような、そういう規律、秩序を乱した事例も過去にはございました。また、他の一般受刑者に対していろいろ威圧するというようなことがありまして、そういった行刑機能を低下させるような者が非常に多いということでございます。
 それから、覚せい剤事件の受刑者が非常にふえてまいりますと、これはそもそも、犯罪の罪質上、余り悪いことをしたという意識がございませんし、後遺障害によりまして、突如乱暴な行動に出ましたり、あるいは医療措置が必要になるということもございます。
 また、高齢受刑者につきましては、そもそも、身体的疾患、あるいは運動機能が全般的に低下している例が多うございまして、一般受刑者とともに集団で処遇することが困難であるというような状況になっております。
 外国人受刑者は、当然御理解いただけると思いますけれども、言葉での意思疎通がそもそも非常に容易ではございません。また、食事とか宗教等の面でも相応の配慮をしなければなりません。また、価値観も違う場合もございます。したがいまして、処遇に対する不平不満が非常に生じがちになってきているわけでございます。
 このような状況が現状でございますけれども、私ども、治安の最後のとりでと自分たちで自負しておりますので、何とか気合いと根性で頑張っていきたい、かように考えております。
石原(健)委員 刑務所の現状と御苦労な点はよくわかったんでありますけれども、それにしても、今回のような、矯正とはまるで正反対の出来事が起こったり、そういうことがやられているということは、これは大変まずいことだと思います。私は、この際、やはり一番大切なことは、一日も早く責任の所在を明確にして、責任ある人はきちっと責任をとっていく、そういうことが大事じゃないかと思っておりますので、申し上げておきたいと思います。
 それから次に、保護司についてお聞きしたいんですけれども、保護司の選任の基準とかそうしたことに対する考え方などをお聞かせいただけたらと思います。
横田政府参考人 お答え申し上げます。
 保護司の選任の基準ということでございますが、これは保護司法という法律に定められておりまして、その第三条でございますが、「人格及び行動について、社会的信望を有すること。」、「職務の遂行に必要な熱意及び時間的余裕を有すること。」、「生活が安定していること。」、それから「健康で活動力を有すること。」ということが法律に定められている条件で、この条件すべてを具備する者の中から法務大臣が委嘱をするということになっております。
 この選任についての考え方でございますが、現在、保護司は全国で四万九千人ほど委嘱されております。最近の一つの問題は、年々高齢化する傾向にあるということでございまして、平成十四年の一月一日現在では、六十歳以上の方が六八・六%を占めておりまして、平均年齢が六十三・三歳となっております。
 高齢であるから不適切であるということは言えないわけで、保護観察は、御承知のように、犯罪者あるいは非行少年の立ち直りに手を差し伸べるということでございますので、何といいましても、保護観察を行う者と対象者との間の人間的な触れ合いといいますか、魂と魂の触れ合いといいますか、そのようなことがやはり基本になるわけです。それを考えますと、豊かな人生経験を持って、語るべきものを多く持っている高齢の方がふさわしいという場面はたくさんあるわけです。
 しかしながら、一方で、現在の保護観察の対象者の約七割が少年であります。そうしますと、どうしてもそこで、保護司さんと観察対象者である少年との間に、いろいろ考え方とか行動とか意識のギャップといいますか、ずれとか、そういうのが出てまいります。やはりそこで、そういった意味では、もっと若い方もまた必要だということになります。
 しかし、要は、保護観察の本質からいいますと、年齢も含めて、やはり年齢や分野とか幅広い保護司層というものを形成することが大事だろうと思っています。
 そこで、私どもといたしましては、従前から、保護観察所におきましては、若手保護司の確保に努めておるわけでございまして、地方自治体とか教育あるいは福祉関係等いろいろな分野にいろいろ御説明し、御協力をお願いしてその確保に努めているということで、これからもこの保護司の確保、採用につきましては、このような基本的な考え方で進めてまいりたいと考えております。
 以上でございます。
石原(健)委員 詳しく御説明いただいたので大体わかりましたけれども、立派な経歴を積んで経験を経た高齢の方が、最近、さっきおっしゃった、金髪、茶髪の若い人たちと行き会うと何をどうしゃべりかけたらいいかなかなかわからないんだというような、そんな話もあるわけです。
 保護司の方もそうした面で本当に大変だと思いますけれども、今後どんなことを期待されているか、簡単にお話しいただけたらと思います。
横田政府参考人 お答えいたします。
 今委員のお話もございましたように、観察対象者が若過ぎて、保護司さんの方でも高齢の方はどう対応していいかわからないということがおありかと思いますが、私どもは、保護司さんに対する研修なども行っておりますし、そういった中で、今の若い人たちの物の考え方あるいは行動のパターンといったようなものもいろいろな機会にまた御説明申し上げて、保護司さんもまた、それに対して理解を示した上でその立ち直りに手を差し伸べるというようなことをしていただいておるところでありまして、そういったことも含め、また、先ほど申し上げましたように、いろいろな年齢そしていろいろな分野から保護司さんを確保するという方向で充実を図ってまいりたいと考えております。
石原(健)委員 次に、ちょっと地元のこともありますのでなんですけれども、法務省の地方の諸機関の統廃合の状況について御説明いただければと思います。
増田副大臣 法務省所管の地方機関の統廃合につきましては、従来から組織の簡素化、効率化や行政サービスの向上の観点から実施してきたところでありますが、平成十一年四月二十七日に閣議決定されました国の行政組織等の減量、効率化等に関する基本的計画におきまして、法務省の地方支分部局である公安調査事務所、法務局及び地方法務局の支局、出張所並びに地方入国管理局出張所の整理合理化の方針が示されております。
 そこで、法務省としましても、同閣議決定にのっとりまして、当該地方支分部局の整理合理化を計画的に現在進めているところであります。
石原(健)委員 統廃合する場合に地元の納得とか了解はどういうふうに得られているのか、また一連の統廃合で業務はどのように改善充実されていくのか、その点についてお聞かせいただけたらと思います。
房村政府参考人 法務省の中でも適正配置、一番多くしております法務局の実情について申し上げます。
 法務局は、非常に数が多い、現在でも七百六十庁ございます。他の国の機関を見ますと、簡易裁判所が約四百四十、税務署が五百二十、公共職業安定所が約五百九十ということで、これらと比較してもなお非常に多い小規模分散型の組織となっております。
 そういうことで、閣議決定にのっとってこの統合を進めているところでございますが、登記所は地元と非常に密接な関係がございます。そういうことから、地元の方々の理解を得て円滑に進めるということを心がけまして、この適正配置を実施する場合には、必ず法務局の側から地元の市町村等へ赴きまして、この統廃合の計画を進めて理解を得る、こういう努力を何回も重ねまして、最終的には円満な形で統合を進めているということが実情でございます。
 それから、その効果でございますが、やはり何といっても、小規模でございますと事務の適正処理あるいは人員、予算の効率的運用ということに支障が生じます。これを統合することによりまして、分業処理体制を確立してより効率的に処理をする。あるいは、登記所の場合、登記がもちろんメーンでございますが、支局、本局になりますと、それ以外の人権擁護事務であるとか国籍事務であるとか、そういったものもございますので、そういったところをより充実して、トータルとして法務局の行政サービスを充実させる。こういうことでその効果を国民の方々に還元するということでございます。
石原(健)委員 次に、入管にお尋ねしたいんですけれども、その前に、日本に入国拒否される人が年間八千人ぐらいという話を前にされて、私は、日本で働きたい人は働かせたらいいんじゃないかと言いましたら、局長さん、ちょっとびっくりした顔をされていましたが、私、田舎の方に住んでいるんですけれども、近所の人たち、私より二十、三十ぐらい年上の人は、昔、昭和の初めごろだと思うんですけれども、みんなボルネオとかフィリピンとか、おれはハワイで働いてきたとか、朝鮮だ中国だと、日本人が大勢外国に働きに行っていたんですよ。日本が大変なときに日本人はどんどん外国で働いてきて、今度よそが大変なとき、日本では入れないぞというのは、僕はちょっとおかしな考え方じゃないのかなと思って、あのとき、どんどん働かせたらいいんじゃないかというふうに言ったんです。
 それで、福島県でも郡山市に出張所が設置されて、私の知り合いの人なんかも、大変便利になって好都合になったと喜んでおります。郡山に出張所ができてどんなぐあいになっているかということと、入管の今後の統廃合の進め方について、簡単にお聞かせいただけたらと思います。
増田政府参考人 ただいま委員御指摘になられました郡山出張所につきましては、海型から内陸型への再編を進めるために、平成九年十二月に、それまでございました仙台入管の小名浜港出張所を廃止して新設したところでございますが、福島県に在留する外国人が在留に関連するさまざまな申請を行う上で利便性が向上したと考えておりますし、福島空港における出入国審査にも効率的かつ柔軟な対応が可能になっていると考えております。
 このように、地方におきます出張所は、かつては海港における出入国審査に対応するため海港近辺に設置されているのが大半でございましたが、近年は空港における出入国審査あるいは在留審査の必要性が飛躍的に高まってきたため、これらに対応できる体制づくりが急務となっております。
 また、先ほど副大臣の答弁にもございましたが、平成十一年の閣議決定なども踏まえまして、地方入管の出張所につきましても、海型から内陸型への再編を進めるとともに、縮減を図る、こういう方針が盛り込まれたこともございまして、かつて九十七カ所出張所が設けられておりましたが、七十八カ所まで統廃合してまいりました。
 このような状況を踏まえまして、出張所の統廃合については、原則として海型の出張所を廃止し、内陸型の出張所に人員を集約させることによりまして、業務を効率化させ、ひいては行政サービスの向上を図るという方針で行っておりますが、その統廃合の対象となる出張所につきましては、業務量、周辺に在留する外国人の数、出張所を統廃合した場合の関係者への影響、これらを総合的に判断して今後も再編を進めてまいりたいと考えております。
石原(健)委員 法務局とか入管とかというのは、住民とじかに接する本当に法務省の窓口だと思うんですよ。時間がありませんから答弁は要りませんけれども、今後とも、そうした意味で窓口のサービスの向上とか、窓口の方々への教育というんですか、そういうことにもなおこれからも一層取り組んでいただけたらとお願いして、質問を終わります。
 どうもありがとうございました。
山本委員長 次に、木島日出夫君。
木島委員 日本共産党の木島日出夫です。
 ことし九月二十五日に名古屋刑務所で起きた事件について、去る十一月二十日の質問に続いて質問をいたします。
 本日の法務大臣の報告を受けて、具体的に質問をしたいと思います。
 法務大臣の報告によりますと、被害者たる受刑者が九月二十五日に保護室に入れられたのは午前八時四十分ころかと思います。報告によりますと、「その後、前田副看守長は、被害者が既に制圧され、暴行を振るうおそれもないのに、懲らしめのために革手錠を使用することを考え、上司である渡邉看守長の了承を得、他の刑務官もこれに加わって、まず、中サイズの革手錠ベルトを被害者に使用しました。」とあります。
 そこで、お聞きをいたします。その後、前田副看守長が懲らしめのために革手錠を使用することを考え、中サイズの革手錠ベルトを使用したというのは、いつの時点なんでしょうか。何時ごろでしょうか。もっと具体的に聞きます。保護房に入れられてからどのくらい時間が経過した後、前田副看守長はこのような行動をとったんでしょうか。
樋渡政府参考人 お答えいたします。
 被告人前田は、九月二十四日夕方、被害者から、これまで懲罰を受けた理由となった非行を認めるという話を聞いておりましたが、翌二十五日午前八時ごろ、刑務所内の面接室におきまして面接した際に、相変わらず自己の非を認めない被害者の反抗的……(木島委員「それはいいですよ。聞いていることだけ答えてください。それはもうさっき報告を受けていますから」と呼ぶ)はい。要はその時間的経過でございますけれども、同日の午前八時十五分ごろ、異状に気づいて駆けつけた刑務官において、被告人前田に事情を確認することなく、被害者をその場に引き倒して制圧して、同被告人において被害者に金属手錠をかけ、さらに、駆けつけた被告人池田らが被告人前田の指示を受けて被害者を保護房に収容したという一連の行動でございます。
木島委員 いや、だからそれはさっき報告を受けましたよ、保護房に入れたのは午前八時十五分ごろだと。報告によると、その後、前田副看守長が、暴行を振るうおそれもないのに懲らしめのために革手錠を使用することを考え、それをやったと。
 だから、どのくらい時間が経過した後こういうことをやったのかということを聞いているんです。非常に大事なんですよ、これは。保護房に入れたら、かぎがかかって、もうそこから逃げられないんですよ。だから聞いているんです。これは非常に大事な時間なんですよ。はっきり答えてくださいよ。その一点ですよ。大事なことですよ。
樋渡政府参考人 先生の御質問の趣旨はよく理解しておりますけれども、八時十五分からの一連の行動でそうなったという報告しか受けておりません。
木島委員 まことに、本当に大事な、肝心のところの報告を受けていないと言ったでしょう。ずさんだと思うんですね。まさか、保護室に入れてからずっと前田は保護室に同室していたんですか。そこだけ聞いておきましょう。そうじゃないんでしょう。まずは、この受刑者はたった一人で保護室にいる時間帯が続くんでしょう。どっちなんですか。
樋渡政府参考人 なかなかお答えしづらいんでございますが、要は、それは供述をとっているというふうに思いますけれども、およそそういう具体的、細かなことは法廷において明らかにされていくものだというふうに思います。
木島委員 いや、一番大事なところなんですよ。
 では、法務省に聞きます。暴行を振るうおそれもないのに懲らしめのために革手錠を使用することを考えた、そしてそれを実行した、それで受傷したんです。暴行を振るうおそれもないのに懲らしめのために革手錠を使用することは許されているんですか。
中井政府参考人 法令上許されておりません。
木島委員 許されていないんです。
 ところが、十一月二十日、私がここで法務省に聞きました。平成十一年十一月一日、矯保三三二九、矯正局長通達、新通達でありますが、「戒具の使用及び保護房への収容について」「6 保護房収容等」「(1) 収容要件」ア、イ、ウ、エ、オと五つある。どれに該当すると報告を受けているかと聞いたら、中井局長は明確に私に答弁をいたしました。議事録に載っております。
 これは保護房収容じゃなくて戒具の使用のところでありますが、暴行等というぐあいに報告を受けておりますとあるんですね。「暴行を振るうおそれもないのに、懲らしめのために革手錠を使用することを考え」というのがきょうの報告です。十一月二十日の私に対する答弁は、暴行等というぐあいに報告を受けておりますと中井局長は答弁しております。うその報告が、名古屋刑務所から本省矯正局あるいは法務大臣になされたということですか。
中井政府参考人 これまでの捜査結果を踏まえますと、事実に反した報告がなされたものと認識しております。
木島委員 重大なことだと思うんですね。うその報告をした責任者はだれですか。
中井政府参考人 名古屋刑務所長であります。
木島委員 その処分を法務大臣はどうするつもりですか。
森山国務大臣 全体の事実が明らかになりました段階で、厳しくいたしたいと思っております。
木島委員 さかのぼって、では、九月二十五日朝、面接室での出来事についてお聞きいたします。きょうの報告によりますと、「本年九月二十五日朝、面接室において、前田副看守長からこれまでの規律違反等について事情聴取を受けましたが、同人は、被害者が相変わらず自己の非を認めようとせず反抗的態度を取ったことに立腹し、被害者の座っていたいすの足をけるなどしました。」こう報告されました。
 お聞きします。受刑者たる被害者が、「相変わらず自己の非を認めようとせず反抗的態度を取った」と報告されましたが、具体的に、「自己の非を認めようとせず」というのは何でしょうか。「反抗的態度」とはどんな具体的な言動をしたんでしょうか。具体的に暴行を加えるおそれなどの行為があったんでしょうか。大変大事なところですから、報告を求めます。
樋渡政府参考人 お答えいたしますが、作業中の怠業などについて反省をしているかというようなことを聞いておりまして、報告書によりますと、それを前日は認めるかのような言動をしながら、当日朝はまた認めないというようなことの行き違いがあったということが反抗的態度だというふうに思われたという形跡があるように思います。
木島委員 怠業、サボタージュですね、していたじゃないか。前日は認めるような態度をとっていたが、その日は認めるような態度をとらなかった、それが反抗的態度だと言うんですが、怠業していたかどうなのか、怠業が問題になっていた、その怠業というのはいつの時期の怠業の問題だったんですか。
樋渡政府参考人 本件被害者が本年四月ごろに懲役作業を怠業したということでございまして、その具体的な内容は、刑務所内の工場で懲役作業中、エアドライバーのエアを体に吹きつけるなどして怠業したというふうに聞いております。
木島委員 何で、四月ごろの怠業したかどうかの問題が、九月二十五日になって面接室に呼びつけられて問題にならなきゃならぬのですか、半年もたって。何でですか。
樋渡政府参考人 四月ごろの怠業につきまして、ずっと反省しろ反省しろと言っていたようであります。
木島委員 大事なことを言っていないですね。私は、十一月二十日のとき、その問題を詰めたでしょう。その四月ごろの怠業した、しないで懲罰を受けたことを不服として、この受刑者は名古屋弁護士会に人権救済の申し立てをしていたからじゃないんですか。
樋渡政府参考人 おっしゃるとおりのことでございまして、この弁護士会あてに人権救済の申し立てをしたのは、この怠業があったとして当時の担当職員の取り調べを受けるなどしていることについての、それが不当であるということの内容でございます。
木島委員 事実が明らかになりましたね。四月に刑務作業中怠業があったということをとがめられて、この受刑者は懲罰を受けた。その懲罰を不服として、まさにこの受刑者は名古屋弁護士会に人権救済の申し立てをしていた。前回の私の質問に対して答弁が出ました。名古屋弁護士会から名古屋刑務所に、人権救済の申し立てが受刑者からあった、いろいろ調査したいということの通告があったのが九月九日。それで、まさにこの事件につながってくるわけですよ。
 要するに、前田副看守長は、その名古屋弁護士会への救済申し立てを押さえつけてしまう、つぶしてしまう、取り下げさせる、そういう思惑があって一連の行動に及んでいたということがかいま見られるんじゃないかというふうに思います。
 それで、要するに、九月二十五日の朝、面接室での受刑者の行動について、もうちょっと具体的に答弁してください。反抗的態度があったと、きょう、法務大臣からの報告ですが、どうなんですか、前田副看守長に暴行を加えるようなそぶり、態度を示したのかどうか。非常に大事な中心点ですから、はっきりと答弁してください。
樋渡政府参考人 冒頭に大臣から報告がありましたように、被害者が相変わらず自己の非を認めようとせず、反抗的態度をとったことに立腹して、被害者の座ったいすの足をけるなどした、このため、被害者が立ち上がろうとしたところ、それを聞きつけて駆けつけてきた他の刑務官たちが、これは前田副看守長に暴行を加えようとしているんだというふうに即断したというふうに報告を受けております。
木島委員 これは非常に大事な中心点です。
 では、聞きますよ。
 同日午前八時十五分ごろ、異状に気づいて駆けつけた刑務官において、被害者が前田副看守長に暴行を加えようとしている旨判断したと。
 では、その刑務官というのは、池田という者ですか、異状に気づいて駆けつけたというんですが、どのぐらい離れたところから見ていたんですか。一緒に同席していたんですか。その刑務官は、被害者、受刑者のどんな振る舞いを見て前田副看守長に暴行を加えようとしている旨判断したんですか。その判断の根拠、それについて答弁ください。
樋渡政府参考人 この報告は、すべて地検の捜査に基づいて報告を受けているものでございまして、地検の捜査は、各人の供述、それから客観的状況等をすべて網羅しながらこういう事実認定をしているということをまず御理解いただきたいのであります。したがいまして、本人たちがこのような供述をしましても、それを必ずしも捜査官が信用しているかどうかというのはまた別でございまして、これは公判廷の立証で明らかになっていくだろうと思います。
 駆けつけた者は同席していたのかという点につきましては、同席していたという事実はないようでございまして、それがどの辺にいたかということは、私ども詳細に報告を受けておりません。
木島委員 今出てきている事実は、面接室で受刑者が前田副看守長から事情聴取を受けた、そして四月ごろのサボタージュについて、それを前田副看守長の思惑どおり受刑者が認めなかった、それに対して前田副看守長が立腹して、受刑者が座っていたいすをけ飛ばしたんですよ。そうでしょう、報告は。それで受刑者が転んだんでしょうね、それで立ち上がろうとしたんですよ。それだけですよ。受刑者が前田にいすをけ飛ばされて転んで、立ち上がろうとした、それだけですよ、今出てきておる事実は。それを見て、異状なことが起きたというので、刑務官が、前田副看守長に暴行を加えようとしているなんて判断すること自体が信じられないじゃないですか。
 では、今、法務本省は、矯正局は、そんな暴行を加えようとしているなんということはないと認定しているということを聞いていいですか、それしか言えないんなら。要するに、保護房収容の要件があるかどうかを私は詰めているんですよ。
中井政府参考人 私どもは事実に反する報告を受けていたわけでございます、先ほど御答弁いたしましたように。したがいまして、冒頭申し上げているとおり、現在の捜査結果を伺う限りにおいては、保護房の収容要件、これは充足していない疑いが濃厚である、かように考えております。
木島委員 それなら、法務大臣、法務大臣は法務委員会にこの報告をしたんですから、その報告書によると、同日午前八時十五分ごろ、異状に気づいて駆けつけた刑務官において、被害者が前田副看守長に暴行を加えようとしている旨判断し、被害者を引き倒して制圧し、これを受けて前田副看守長が、金属手錠をかけた上、渡邉看守長の指揮を受けて保護房に収容しました、そういう報告だけでしょう。今矯正局長から、保護房収容の要件はなかった、うその報告を受けていたと答弁しましたね。こんな法務大臣の報告、すべきじゃないでしょう。そう名古屋刑務所からは法務省に報告があったが、これは事実でなかったということを我々国会に報告すべきだったんじゃないでしょうか。法務大臣、どうですか。
森山国務大臣 私は、報告を受けましたものを委員会に御報告申し上げようということで、受け取ったものをそのまま、特別に私自身の考えを入れることなく申し上げたところでございます。
木島委員 次に移ります。
 先ほど法務省刑事局長は、この被害者、受刑者が本年九月十二日から九月十九日の間、五回保護房に収容された、七回革手錠を使用されたと答弁をいたしました。既に私が十一月二十日に具体的に日時を挙げて質問したんですが、そのときは残念ながら答弁がありませんでした。
 改めて確認します。その五回というのは、九月十二日、九月十三日、九月十七日、九月十八日、九月十九日、この五回であることに相違はありませんか。
中井政府参考人 一回目が九月十二日収容、九月十三日解除、二回目が九月十三日収容、同日解除、三回目が九月十七日収容、同日解除、四回目が九月十八日収容、翌十九日解除、五回目が九月二十五日収容、同日解除の五回であります。
木島委員 五回の保護房収容の収容要件は、通達の6の(1)のア、イ、ウ、エ、オのうち、それぞれどれだったか、御答弁願います。
中井政府参考人 いずれも、暴行のおそれが認められたとするものであるという報告を受けております。
木島委員 その報告が真実かどうか、要するに本当に暴行を受けるおそれがあったのかどうか、調査は進んでおりますか、行われておりますか。調査結果、答弁していただきたい。
樋渡政府参考人 捜査の観点から申し上げますと、検察当局におきましては、本件捜査の過程で、本件以前の被害者に対する革手錠の使用についても可能な限り捜査したところでございますが、本件のような事実関係が認められないなど、訴追するに足りる犯罪の嫌疑は認められなかったとの報告を受けております。
木島委員 ではもう一つ、七回革手錠の使用があったと答弁されました。その七回の内訳を日ごとに答弁いただけますか。
中井政府参考人 お答えいたします。
 一回目、九月十二日使用、同日解除、二回目、九月十三日使用、同日解除、三回目、九月十三日使用、同日解除、四回目、九月十七日使用、同日解除、五回目、九月十八日使用、同日解除、六回目、九月十九日使用、同日解除、七回目、九月二十五日使用、同日解除の合計七回であります。
木島委員 それでは、私の方から具体的に、九月十二、十三、十七、十八、十九日の具体的状況はどうだったか、私がつかんでいる事実を端的にぶつけますから、イエスかノーかで答えてください。
 九月十二日の状況。
 私が聞いているところによりますと、受刑者が運動していた、運動後の検身のときに、口中、口の中について調べを受けるため受刑者が口を開いたところ、指示なく口を開くななどと指導を受け、受刑者が言いがかりではないかと述べたところ、反抗するのかと言われ、金属手錠をかけられ、保護房に収容され、革手錠をかけられた。このように私は事実を調査しているんですが、イエスかノーか端的にお答え願います。わからなきゃわからない、調査未了なら調査未了で結構です。
樋渡政府参考人 詳細な報告は受けておりません。
木島委員 では、九月十三日のこと。私の行っている調査によりますとこういう状況です。
 副看守長の前田容疑者に何をにらんでいるんだと言われ、受刑者がにらんでいませんと答えたところ、その目がにらんでいるなどと言われ、制圧、これはうつ伏せに押さえつけられ、後ろ手にされることであります、制圧を受けた、その後保護房に収容される。こう事情聴取しているんですが、どうでしょうか。
樋渡政府参考人 同じく、詳細な報告を受けておりません。
木島委員 それでは、九月十七日の出来事。
 私の調査によると、受刑者が眼鏡を磨いていたところ、前田主任から、何をしている、弾をつくっているとの報告を受けている、出てこいと言われたので、スリッパを持って出ていこうとしたら制圧を受けた、昼ごろまで保護房に収容された。こう事情を聞いているんですが、どうでしょうか。
樋渡政府参考人 同じく、詳細な報告を受けておりません。
木島委員 それでは、続いて九月十八日の状況です。朝日新聞にもその一端が出ていたんじゃないかと思うんですが、私の調査によりますとこういうことであります。
 受刑者はこれまでの出来事をノートに記していた、例えば保護房のこと、刑務官に名刑をなめるななどと言われたこと、そういうことをノートに記していたが、午後三時ごろ、そのノートを前田主任が見つけ、何を書いているのだと言われ、制圧を受けた、そして保護房に収容され、一晩を過ごした。一晩を過ごしたのは、先ほどの保護房収容と解除の日程から合っております。受刑者は腹部の調子が悪くなり、食欲がなくなってしまい、夕食をとらなかった。こう状況を聞いているんですが、どうでしょうか。
樋渡政府参考人 詳細な報告は受けておりません。
木島委員 それでは、最後、九月十九日の状況であります。
 私の調査によると、受刑者は朝食もとらないでいたところ、前田主任からお茶くらい飲めと言われ三杯ほど飲んだ、これ以上要らないと思い四杯目を断ったらお茶をかけられた、昼前に保護房から解放された後、取り調べ室で話をし、人権救済の申し立てを取り下げろと言われた、受刑者はこの時点までにかなり身体的、精神的に追い詰められ、取り下げることに一たん同意した。このことは私、十一月二十日の質問でも事実を一部摘示しました。この十九日の出来事はどうだったでしょうか。調査は済んでいますか。
樋渡政府参考人 何度も同じことで申しわけございませんが、詳細な報告でありません。
 なお、一連のそのお話を伺っておりますと、要は、本件の犯行につながっていく過程のようにも見受けられますので、恐らく公判では明らかにされるだろうというふうに思っております。
木島委員 単に刑事事件の背景事情として重要だというだけじゃないんです、私がこの問題をここで出しているのは。刑事事件について深入りするつもりはないんです。矯正行政が正しく行われているかどうなのか、通達の趣旨が生かされているのかどうか、受刑者の人権が本当に守られているかどうか、それをただしたいんです。密室の中であります。そして、うその報告が法務省に上がっていたということも答弁がありました。大変な問題なんです、法務大臣。正しい報告が上がらなければ、人権侵害が行われていても、そうした違法な矯正行政を正すことはできませんね。正しい報告が上がることが根本ですね。
 どうですか。徹底して、これら一連の事件について、刑事事件とは関係なく、矯正行政のあり方が正しかったのかどうなのかという観点で本格的な調査が必要だと思いますが、法務大臣の御所見を伺って、時間ですから、質問を終わります。
森山国務大臣 事態の徹底的な解明が何より大事だと思いますので、先生のおっしゃいますとおり、報告が正しく行われなければいけないと思います。これから、私がかねて指示しておりました調査をさらに徹底的に行うように指示いたしまして、事実を十分把握したいというふうに思っております。
木島委員 時間ですから終わりますが、新通達によりますと、「記録」という欄で、「戒具を使用した場合、解除した場合又は使用方法を変更した場合には、戒具使用書留簿及び視察表に記録すること。」とあります。また、「被収容者を保護房に収容した場合、解除した場合又は収容期間を更新した場合には、保護房収容書留簿及び視察表に記録すること。」とあります。また、「戒具使用中又は保護房収容中の者の動静は、少なくとも十五分に一回以上の割合で当該被収容者ごとに作成する書面に記録すること。」とあります。
 一連の記録を当法務委員会に提出されること、そして、診断書もあわせ提出されることを委員長に求めておきます。
山本委員長 理事会で協議させていただきます。
木島委員 終わります。
山本委員長 次に、保坂展人君。
保坂委員 社会民主党の保坂展人です。
 私も、今の木島委員のことを質問しようと思っていました。しかし、中身についてやられたので、法務大臣に、まず大もとの見解を伺いたいと思うんです。
 人権救済の申し立てをするというのは、刑務所内というなかなか外部と交信することが不可能な世界で、名古屋弁護士会に人権救済の申し立てをしようとしていること自体がこうした暴行の引き金を引いていく。また、十一月二十日の新聞には、ノートにこういった経緯を書いているのを発見して、大変刑務官は怒って、懲罰ということになる。
 こうした事態というのは、一つの特異なケースではなくて、やはり日本の矯正施設自体の体質に起因するんじゃないか、そういう認識をお持ちかどうか。つまり、人権救済はけしからぬ、何をやっているんだ、こういう江戸時代同様の感覚がまだ根深いんじゃないか。確かに、矯正施設の収容人員が多くなってきた、そういう問題はあるかもしれないが、根っこには、今私が指摘した問題があるというふうに私は思いますが、いかがですか。
森山国務大臣 刑務官は定期的な研修も受けておりまして、人権の尊重ということが非常に大事だということを自分の職業に関連して具体的に学んでいるわけでございます。大半の刑務官はそのことを十分心得て忠実に職務を実行していると思います。
 しかし、残念ながら、このたびのような事件が起こりまして、大変申しわけないと思いますし、この事実を解明して、処分すべき者はきちっと処分し、再発を絶対に防止していかなければいけないというふうに考えておりますが、現在の刑務官全体として考えますと、人権尊重の意識ということは非常に大きな部分を占め、それを十分心得て仕事をしていると考えます。
保坂委員 それでは、刑事局長そして矯正局長にも伺っていきたいんですが、今回、名古屋刑務所でこういった事態が起きていることが、捜査によってこれから明かされる、また公判によって事実が認定をされていくという事態になったわけですが、それ以前にもたくさんの訴えがあったんですね。
 私のもとにもと名古屋刑務所にいた方から、これは個別、この事件とかケースについてではなくて、制度について問いかけがございます。例えば、告訴、告発というものをした場合に、刑務官がつまり検閲をして届けられるシステムになっているんですね。ここに問題ないかということを、まず捜査側の刑事局長、どういうふうに考えますか。その後、矯正にも聞きます。
樋渡政府参考人 検閲の問題につきましては、刑事局でお答えする立場にはないというふうに思います。告訴、告発につきましては、その訴え出る御本人からの告訴、告発を検察当局がじかに受けるものというふうに承知しております。
保坂委員 先ほど、個別具体的なケースについてはまだお答えできません、いずれは公判廷で明らかになりますと言われているので、今制度の問題を言っているんです。
 矯正局長に聞きます。つまり、施設内で起きたこのようなことについて、例えば暴行を受けた、あるいは大変な人権侵害を受けた、あるいは大けがしたというような告訴、告発をする際に、刑務官がそのものを見て検閲をするということで、やはり事案の中身がその刑務官の中に知らされるわけですね。また、そのあて先は捜査機関でしょう。その告訴、告発、これについてやはり検閲をするということを考え直してはどうかと言うんです。
 今までそうしていたというのはわかります。しかし、このような事態がある以上、捜査機関に対して告訴、告発をするときに、目的外使用だとか、やれいろいろなことで一般のお手紙と一緒に扱っているんでしょう。これを考え直すということはありませんか。そこに絞ってお答えください。
中井政府参考人 お答えいたします。
 委員十分御案内のとおり、検閲は監獄法令に基づいてやっているわけでございます。その目的につきまして、施設の規律及び秩序を害する行為、それから逃走その他の収容目的を阻害する行為、これを防止するという点がございまして、確かにお尋ねのように、捜査機関に対する告訴、告発というものは直ちにこれには該当しないだろうと思います。
 さはさりながら、同時に、法令上、検閲を通じて知ることができる事項を当該被収容者に対する処遇の適切な実施に資するという観点もございます。この観点から、今お尋ねの案件については、当該目的で知り得た事項を被収容者に対する処遇の適切な実施に資することは、法令上、許されていると考えております。当然のことではありますけれども、今申し上げた三つの目的以外に検閲により了知した内容を流用することは許されておりませんし、また、施設にとって不都合な内容であるからといって、これの発信をとめるようなことはおよそあってはならないと考えております。
 システム上は、先ほど刑務官が検閲しているとおっしゃいましたけれども、私どもの方でこの検閲に従事する職員は書信係とか申しておりますけれども、これは専ら専従する体制になっておりまして、処遇に実際携わるところの刑務官が検閲するというシステムにはなっておりません。
保坂委員 今までこうだったという話はわかったんですが、もう一度、刑事局長にお聞きしますけれども、これは捜査の機密ということがあると思いますね。あってはならないことですが、刑務所の中でも犯罪が刑務官によって行われたかもしれない。行われた容疑が非常に高くて今捜査は始まっているわけですけれども、そういうことはあるわけですね。とするならば、今の検閲の点が一つ。
 それから、今度は、聞き取りで捜査に入る際、やはり刑務官の方が立ち会っている。これも捜査当局としては、これは法務省の中で十分話し合っていただきたい。いかがですか。これは変えることも含めて検討しなきゃいけないと思いますよ。
樋渡政府参考人 まず、先生のおっしゃる検閲につきましては、法に基づいて矯正局の行政としてやっていることだというふうに思われます。
 捜査の秘密に関しましては、適宜その任に当たっております検察官が調べをする際にどういう調べをするかということの問題だろうというふうに思っております。今後どうするか、それは省内で検討すべきかどうかも含めまして、みんなで考えることもあろうかというふうに思います。
保坂委員 つまり、あり得ないんだということが起きているわけですね。それはあり得ないということで、法令上定められているからとか秘密は漏らさないんだからということをそのまま、やはりこれだけの事態が起きて、またそういう従来のルールでやっていこうということにはならないと私は思います。
 矯正局長にお尋ねしますが、名古屋刑務所からは法務大臣あての情願という形で、昨年は三十件ですか、かなり大量に出されていますね。この扱いというのは、これは何か検閲はないみたいなんですね。しかし、これだけの声があって、処理されたんですか。何か具体的に調べたりとかそういうことをされたんですか。扱いについて、きちっとやったのかどうか。
 個別じゃなくて、とにかく情願という制度自体が機能してないんじゃないかと私は指摘したいんですね。例えば、名古屋ではこれだけ出ているけれども、動いた気配がありますかということ。
中井政府参考人 情願全般についてのお尋ねと名古屋の事例についてのお尋ねがありますので、二つに分けて御説明したいと思います。
 法務大臣あて情願の申し立て件数でございますけれども、過去三年間で合計七千件ございます。近年非常に著しい増加傾向を示しております。この情願書が法務省に進達されますと、当局におきまして、所要の調査を遂げて調査結果に基づいて裁決を行うこととなります。申し立てに係る施設の措置に違法または不当な点がある場合には採択の裁決をいたします。また、申立人である被収容者の救済を図るべく、施設に是正措置を講じさせるなどしております。また、施設の措置に違法または不当な点がない場合であっても、必ずしも適切でない取り扱いが認められたときは施設に改善を指導するなど、より適正な施設運営に努めているところであります。
 平成十三年について申し上げますと、年間で二千四百件余りの情願を処理いたしました。このうち、採択されたり是正改善措置を講じたものは百件を超えております。私どもの理解するところでは、情願制度は監獄法上の不服申し立て制度としては十分機能していると思っております。
 それから、名古屋のデータについてお尋ねでありますが、名古屋刑務所の被収容者が行った不服申し立てのうち法務大臣情願の件数は、平成十二年が十七件、平成十三年が十七件、平成十四年十月末日現在で三十件となっております。この処理については今申し上げた一般と同じであると理解しております。
保坂委員 大臣に伺いますけれども、すべてうまくいっていると言うんですね。どうしてこういうことが起きるんでしょうか。
 今のように、情願の機能はしっかり機能してしっかりと目を光らせていると。やはり僕は、情願という言葉自体がどうかなと思いますけれどもね。情けで願うでしょう。やはりこれは、大臣直訴とかあるいは別途申し立てとかいう言葉でしっかりこれを受けとめていくシステムをもっと強化すべきだと思いますけれども、いかがでしょう。
森山国務大臣 情願という制度は監獄法という大変古い法律に基づいて決められているものでございまして、確かにその言葉の表現などは非常に古い時代の感覚で考えられたものだと思いますので、その点は私も、最近初めて見たような気がいたしまして、これは何だろうと思ったぐらいでございますが、そういう点で見直すべき点は確かにあるかと思います。
 しかし、現在のところ、当局といたしましては、捜査の全容を知るという立場にはございませんので、今回の九月の傷害事件の原因については必ずしも明確に把握しておりませんので、被収容者からの告訴、告発や情願に不適切な対応があったかどうかということも、これが原因になっているかどうかわからないというところでございます。
保坂委員 大臣に情願なんですよね。ですから、この機能が本当に動いているのであれば、このような、つまり名古屋刑務所の今問題になった、きょう冒頭大臣が述べられたような事態は防げたはずだということを指摘します。
 そして、きょうは死刑の問題を久しぶりに議論させていただきたいと思いますが、緊急の事態が二つ起きています。
 これは矯正局長の方からお答えいただきたいんですが、実は九九年二月にこの法務委員会で袴田巌さん、こういったプロボクサーだったんですね。「神さま 僕は犯人では、ありません。」と言って、獄中から物すごく手紙を書き続けて冤罪を訴えたという方なんですね。この袴田巌さんの件について質問させていただきました。
 というのは、その九九年の法務委員会があった日に、実は彼はもう既に十年間弁護士と会っていないんです。絶対に自分は無罪だと言って手紙を書き続けた、訴え続けた。しかし、そうはならない、有罪になっている。そして、上告をしたり、最高裁も死刑ということを確定している。もちろん、再審への道はあるわけですけれども、絶望感は広がっていくわけですね。弁護士なんて会わない。家族は会っていたんですね。
 ところが、この九九年の時点で私が驚いたのは、お姉さんの秀子さんという方がいらっしゃるんですね。三年と半会えていないと言うんですよ。十五回東京拘置所へ行くんだけれども会えていない。当時の矯正局長とも議論しましたし、また、やはり肉親が会えないというのはおかしい、異常な状態だということで、たまたまその日、会えたんです。この法務委員会が三年前に開かれた日に会えた。会えたけれども、一分しか会えなかったんですね。元気か、おお、元気だというやりとりしかできなかった。巌やというような呼びかけをしたら、いや、おれは違う、何とかの神だ、別人だろうと言って帰っちゃったんですね。それで、お姉さんがこの前来られました。それからまた三年半以上たったんですね。東京拘置所に二十回行ったそうです。会えない。面会室に出てこない。これは、私はゆゆしき事態だと思います。
 徳島ラジオ商殺しの事件の再審決定をした秋山弁護士、そのときは裁判官でしたが、弁護士に転じられまして、この再審の開始を今準備をしている、間もなく始まるだろうというふうにその弁護人はおっしゃっていましたけれども、弁護士との打ち合わせもできない事態。だって、十年会っていないんですから、お姉さんだって会わないぐらいですから、この事態を何とかやはり、矯正当局は解決する必要があるんじゃないか。冤罪を訴えていますからね。これは、国際的に見ても大変珍しいケースだと思います。どういうふうにしますか。ぜひ、まず肉親を会わせてほしい、あらゆる努力をしてほしいと思います。
中井政府参考人 現在、私どもの矯正施設に収容している特定の被収容者に関する処遇に関する具体的なお尋ねかなというぐあいに理解しておりまして、お伺いするところによりますと、被収容者みずからが面会を拒否されているという話でございます。
 そういたしますと、私どもといたしましては、当然、委員御案内と思いますけれども、これは、行刑施設の長が本人の状況等にかんがみていろいろな判断をして、面会等も含めて運営していく、こういう法律上の構成になっております。もちろん、こういった場で委員がおっしゃられたこと、私どもはそれは行刑施設の方にお伝えはいたしますが、直ちに矯正局長として今こうする、どうするというシステムになっていないことだけはひとつ御理解を賜りたいと思います。
保坂委員 これはもう政治家同士で大臣に伺いたいんですよ。この袴田さんの件については、東京拘置所にも行っていろいろ話をしました。そしてまた、長いことの拘禁だけではないんですね。確定してからの緊張があります。そうですよね、確定死刑囚ですから緊張があります。そういう中で、朝起きたり、食事をしたり、運動したりすることについては、要するに房内の生活については格別の支障はないんだそうですよ。しかし、おれはもう袴田巌じゃないというふうになっちゃったわけです。だから、弁護人にも会わないし家族にも会わない。これはやはり、精神的な病気になっているというふうに判断していいんではないかと私は思います。
 心神喪失の状態にあるときは法務大臣の命令によって死刑の執行停止ということは、刑訴法にもありますし、またこれは国際的に見ても、彼が冤罪かどうかというのも大問題なんですね、しかし、万が一冤罪じゃない、私はそういうふうな言い方をしますけれども、この状態を放置することはできないんじゃないかというふうに思います。
 法務大臣、質問は端的なことなんですが、大臣と一緒でもいいです、あるいは私だけでもいいです。やはり国会議員として、諸外国ではこういう事態が起きると国会議員は刑務所の中に入るんですよ。どういう状態なのか、そして施設の長とも話をして、工夫をするなり、お姉さんと対面させて、治療をどういうふうにするのかとか、きちっとしたことをやるんですね。これは今のままでは進まないんです。具体的に何らかの努力をしていただきたい。お姉さんが二十一回目、二十二回目会いに行っても会えないでしょう。いかがですか。感想も含めてお答えください。
森山国務大臣 被収容者の方が会いたくないとおっしゃっているという話もございますし、断片的に聞くところによりますと、少し常軌を逸し始めた精神状態なのかもしれないとも思います。
 東京拘置所におきましても、お医者さんのカウンセリングとかそういうことをやっているというふうに聞いておりますが、拘置所の方で具体的にその症状を見て適切な判断をしていってほしいというふうに考えております。
保坂委員 もう一人、今度は波崎事件、冨山さんという死刑囚の問題についても、この際伺いたいと思います。
 「死刑廃止論」を著した方で有名な最高裁判事だった団藤重光さんがインタビューに答えて言っているんです。この波崎事件の上告棄却のときにいろいろ迷った、裁判長が上告棄却の宣告をして退廷をしかけたときに、傍聴席から人殺しという罵声を浴びた、やはり、本当は無実だったのかもしれないと、私はこの瞬間決定的な死刑廃止論者になったということを、今から十年前にインタビューに答えていらっしゃるんです。
 この方は、冤罪を訴えています。今、年齢は八十五歳で、東京拘置所にいらっしゃいます。そして、高血圧、動脈硬化、腎障害、排尿困難、目もほとんど見えなくなってきている。面会のときは車いすでようやく来るのだが、食事もなかなかとれない。最近の手紙では、呼吸不全、そして、おなかが異常に膨張して尋常じゃありませんということを訴えられているんですね。八十五歳ですよ。全身あちこち異状が出てきて、やはり、きちっと病院に移して治療に専念させるべきだというふうに思います。
 国連決議で、八九年に、死刑の宣告または執行が行われない最高年齢、つまり、死刑確定囚であっても、こういう国連決議があるんですが、最高年齢というのは日本の場合決めておりませんよね。八十五歳にしてこういう状態で、目も見えない、そして身体的に非常に弱っているという方に緊急救済措置をとる必要があると思いますが、法務大臣、いかがですか。
森山国務大臣 御本人の病状に応じまして、拘置所で適切に判断すると思います。
保坂委員 適切な判断がなかなか矯正施設の中で行われないんですね。これは、今矯正局長も言われたように、そこまでのことができないシステムになっているんですよ。
 だから、例えば八十五歳にしてそれだけ異状を訴えても、確かに拘置所の中の医療的な施設はありますよ。ただ、例えば歯医者にしても、これは抜くしかないんですね。全部抜いちゃう。入れ歯とかそういうことはなかなかできないというふうに聞いています。事は、身体的に大変弱られているということです。
 今、袴田巌さんの話をしました。そして、冨山さんの話をしました。私ども国会議員がきちっとその状態を調査するということについては、大臣の見解はいかがでしょうか。私どもが、あるいは精神科医を伴って、あるいは内科医だとかそういうお医者さんとともに、今どういう状況にあるのか。拘置所は一生懸命やろうとしているというふうに報告を上げてくるでしょう。しかし、もう一回客観的に見るということが必要だと思うんですが、いかがでしょうか、大臣。これは政治判断なので、ちょっと大臣に一言お願いしたい。
森山国務大臣 今委員がおっしゃいましたことを施設の長に伝えまして、適切に判断するよう指示したいと思います。
保坂委員 最後に、私ども国会の中で、超党派で死刑廃止を推進する議員連盟をつくっております。一方で、我が国で死刑制度を維持する、そういった声も世論調査などでかなり高い数字になっているということを存じ上げた上で、国際潮流はやはり死刑廃止の方向に向かっている。
 森山法務大臣も、これはごく簡単な質問ですが、司法人権セミナーというのを五月に開かせていただきました。大臣にもごあいさついただきまして大変ありがとうございました。また、当時の横内副大臣が二日間全部座って熱心にメモをとって、また、欧州評議会の議員の、時に鋭い質問にもお答えになっていました。出席議員は六十人を超えて、衆参の議長や衆参の法務委員長からもごあいさつをいただきました。そういう意味で、欧州評議会は大変、そのシンポジウムに関しては、日本の国会で真剣な議論が行われたという評価をされているんです。
 ただ一点ちょっと、誤解を招くかなという部分がございました。
 それは、日本には、死んでおわびをする、そういった表現をよく使う部分があってという、森山大臣がごあいさつの中で触れた部分なんですね。これは、終わってから欧州の方の議員の方から、日本は死んでおわびする文化というようなことで死刑の問題を考えているのかという質問も受けたりしましたので、その真意はいかばかりだったかということについてお尋ねいたしたいと思います。
森山国務大臣 先生方が大変御熱心に催されました死刑廃止セミナーにおきまして、私、ごあいさつ申し上げた中で、我が国では、大きな過ちを犯した人が大変申しわけないという強い謝罪の気持ちをあらわすときに、死んでおわびをするというような表現をよく使うわけでございますが、これが我が国独特の罪悪に対する感覚をあらわしているのではないかというようなことを申し上げました。
 私がこんなふうに申し上げましたのは、我が国では、国民世論の多数が、極めて悪質、凶悪な犯罪につきましては死刑もやむを得ないと考えておりますので、その背景の一つには、そんなふうな気持ちの表現があるのではないか、大きな過ちを犯したときには強く謝罪をしなければならないという独特の罪悪に対する感覚があるのではないかと思いましたので、そのようなことを申し上げたまででございます。
保坂委員 この議論は、ぜひこれから深めていきたいんですが、あと一問で終わりますが、死んでおわびをするというのも一つの考え方です。しかし、生きて償いをする、そして、苦しいけれども生きて責任をとり続ける、あるいは、やれることをすべてやるということも一つの考え方だと思います。
 そして、私どもは、死刑にかわって事実上の終身刑、長期間釈放されることのない刑を設けてはどうかということをこれから提案していきたいと思っていますけれども、日本人が、みずから亡くなる方が大変多い。三万人台ですよね、自殺をする方が。これはもう本当にとめなければいけない風潮だと思います。そして、死んでおわびをするというのは、やはり切腹の文化にも近いのかなということも少し思いますね。
 ですから、命の尊厳ということを考えると、この問題については、きょう結論が出るほど時間がありませんので、ぜひ、死刑制度について積極的に法務省としても大臣としても議論に臨んでいただきたいという要望ですが、いかがですか。
森山国務大臣 委員初め、何人かの議員の皆さんが、今お話しのような法案を立案するべく努力していらっしゃるということは、私も新聞等で拝見して承知しております。
 法律の上でどのようにあるべきかということを真剣に議論していただくということは大変重要なことで、その先生方のお仕事あるいはお考えについて注目していきたいというふうに思っています。
保坂委員 時間になりましたので、終わりたいと思います。
 ぜひ、この問題、今回は名古屋刑務所の中での事件ですけれども、拘置所の二人の方の処遇については緊急だということを申し上げて、終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
     ――――◇―――――
山本委員長 次に、第百五十四回国会、内閣提出、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案、第百五十四回国会、平岡秀夫君外五名提出、裁判所法の一部を改正する法律案及び検察庁法の一部を改正する法律案並びに第百五十四回国会、水島広子君外五名提出、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。
 各案につきましては、第百五十四回国会におきまして既に趣旨の説明を聴取しておりますので、これを省略いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案
 裁判所法の一部を改正する法律案
 検察庁法の一部を改正する法律案
 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
山本委員長 この際、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案に対し、塩崎恭久君外二名から、自由民主党及び公明党の共同提案による修正案が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を求めます。塩崎恭久君。
    ―――――――――――――
 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案に対する修正案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
塩崎委員 ただいま議題となりました修正案について、その趣旨を御説明いたします。
 第一は、本制度による入院等の要件を明確化し、本制度の目的に即した限定的なものとすることについてです。
 本制度による処遇の対象となる者は、その精神障害を改善するために医療が必要と認められる者に限られるのであって、このような医療の必要性が中心的な要件であることを明確にするとともに、仮に医療の必要性が認められる者であっても、そのすべてを本制度による処遇の対象とするのではなく、その中でも、精神障害の改善に伴って同様の行為を行うことなく社会に復帰できるよう配慮することが必要な者だけが対象となることを明確にするため、政府案の関連する規定を修正するものです。
 第二は、本制度が対象者の社会復帰のための制度であることの明確化についてであります。
 本制度は、対象者の社会復帰を促進することを最終的な目的とするものであり、このような制度であることをさらに明確にするため、本制度の処遇に携わる者は、対象者が円滑に社会復帰をすることができるように努めなければならないこと、審判においては、対象者の精神障害の状態に配慮しなければならないこと、本制度による医療が、個々の対象者の精神障害の特性に応じ、かつ、その円滑な社会復帰を促進するために必要なものでなければならないこと等を明記する規定を政府案に加えるものです。
 第三は、一般の精神医療等の水準の向上を図るべき責務の明確化についてです。
 本制度の指定医療機関における医療が最新の司法精神医学の知見を踏まえた専門的なものでなければならないことはもとより、一般の精神医療についても、本制度による高度な医療水準を及ぼすことにより、その水準の向上を図るなど、精神保健、医療及び福祉全般の水準の向上を図ることが重要であることから、これが政府の責務であることを明記する規定を政府案に加えるものです。
 第四は、この法律の施行状況の国会報告や検討等についてです。
 今回、この法律により新たな処遇制度を創設することにかんがみ、政府に対し、この法律の施行後五年を経過した場合において、この法律の規定の施行状況について国会に報告するとともに、その状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その検討の結果に基づいて法制の整備その他の所要の措置を講ずることを求めるものです。
 以上が、修正案の趣旨であります。
 何とぞ、十分な御審議の上、委員各位の御賛同をお願いいたします。
山本委員長 これにて修正案の趣旨の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
山本委員長 この際、連合審査会開会に関する件についてお諮りいたします。
 ただいま議題となっております各案に対し、厚生労働委員会から連合審査会開会の申し入れがありましたので、これを受諾するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 また、連合審査会において、政府参考人及び参考人から説明または意見を聴取する必要が生じました場合には、出席を求め、説明等を聴取することとし、その取り扱いにつきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 次に、お諮りいたします。
 連合審査会において、最高裁判所から出席説明の要求がありました場合には、これを承認することとし、その取り扱いにつきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 なお、連合審査会の開会日時等につきましては、委員長間で協議の上決定いたしますので、御了承願います。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時十九分散会


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