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第5号 平成15年4月1日(火曜日)

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平成十五年四月一日(火曜日)
    午後二時開議
 出席委員
   委員長 山本 有二君
   理事 佐藤 剛男君 理事 塩崎 恭久君
   理事 園田 博之君 理事 吉田 幸弘君
   理事 河村たかし君 理事 山花 郁夫君
   理事 漆原 良夫君 理事 樋高  剛君
      太田 誠一君    小西  理君
      後藤田正純君    左藤  章君
      下村 博文君    中野  清君
      平沢 勝栄君    保利 耕輔君
      星野 行男君    保岡 興治君
      吉野 正芳君    渡辺 博道君
      鎌田さゆり君    中村 哲治君
      日野 市朗君    水島 広子君
      山内  功君    上田  勇君
      高橋 嘉信君    木島日出夫君
      中林よし子君    保坂 展人君
      徳田 虎雄君    山村  健君
    …………………………………
   法務大臣         森山 眞弓君
   法務副大臣        増田 敏男君
   法務大臣政務官      中野  清君
   政府参考人
   (法務省大臣官房長)   大林  宏君
   政府参考人
   (法務省大臣官房付)   中井 憲治君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    樋渡 利秋君
   政府参考人
   (法務省矯正局長)    横田 尤孝君
   法務委員会専門員     横田 猛雄君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月一日
 辞任         補欠選任
  吉川 貴盛君     渡辺 博道君
  石原健太郎君     高橋 嘉信君
  不破 哲三君     中林よし子君
同日
 辞任         補欠選任
  渡辺 博道君     吉川 貴盛君
  高橋 嘉信君     石原健太郎君
  中林よし子君     不破 哲三君
    ―――――――――――――
四月一日
 法科大学院への裁判官及び検察官その他の一般職の国家公務員の派遣に関する法律案(内閣提出第一〇一号)
同日
 児童保護に名を借りた創作物の規制反対に関する請願(石毛えい子君紹介)(第一一八〇号)
 同(齋藤淳君紹介)(第一一八一号)
 同(保坂展人君紹介)(第一一八二号)
 同(中村哲治君紹介)(第一二一二号)
 同(金田誠一君紹介)(第一二五五号)
 同(北川れん子君紹介)(第一三一七号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――
山本委員長 これより会議を開きます。
 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。
 本日は、行刑に関する問題を中心に質疑を行います。
 この際、お諮りいたします。
 各件調査のため、本日、政府参考人として法務省大臣官房長大林宏君、大臣官房付中井憲治君、刑事局長樋渡利秋君及び矯正局長横田尤孝君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
山本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河村たかし君。
河村(た)委員 河村たかしでございます。
 まず、この間は例の保健助手さんの宿日直のところで終わりましたけれども、ちょっとその前に、私も名古屋でございますので、きのうきょうと名古屋拘置所へ行ってきました。それで、渡邉貴志さん、今被疑者ということになっていますけれども、面会を申し込んできまして、きのうきょうと三十分ずつ会ってきました。やはり客観的に両方の意見を聞かないかぬですからね。看守さんの、現場の人は非常に熱心にやられておる方がほとんどなものだから、どういう気持ちでおられるのか、また取り調べはどうであったかということを聞いてきたんですよ。
 私の問題点としては、どうも今回のものは、何か、法務大臣に悪いけれども、法務大臣、ちょっと話は違うけれども、韓国では、去年の秋ごろだったかな、一人の方のいわゆる暴行致死事件で、十日、九日後ぐらいに法務大臣と検事総長が辞任されたと知っていますか。知っていますか。
森山国務大臣 新聞で読んだような気がいたします。
河村(た)委員 気がしますというのはよう多いんですけれども、何かこれはようわからぬけれども、知ってみえるわけですね。
 どうですか、今の御自分の方は。申しわけないけれども、何遍も言いますけれども、先輩に大変申しわけない、御無礼なんだけれども、仕事ですからね、これは。御自分の場合は、三カ月分給与を返上される、それが六カ月になっただけだ。韓国の場合は、これは検事総長まで辞任ですよ、お一人のことで。だから、この拷問ということについては、やはり非常にデリケートなんですね、これは当たり前ですけれども。憲法にわざわざ公務員の拷問は絶対にと書いてありますから、これを禁ずると。それと比べてどうですか、自分の三カ月分の給料と韓国の対比は。
森山国務大臣 韓国の事情は、小さな囲みの記事であったような気がいたしますので、余り詳しいことは書いていなかったと思いますし、詳しいことはよく私も存じません。
 しかし、我が国の名古屋に関連する事件につきましては、先日来申し上げておりますように、関係の皆さん、特に被害に遭われた犠牲者の方々、その遺族の方、また心配していただく国民の皆様、国会の先生方には大変申しわけないと重ねておわび申し上げなければならないと思います。
 しかし、私の場合は、おわびを重ねて申し上げるばかりではなくて、このようなことが二度と起こらないようにしなければいけないということも強く責任として感じているわけでございまして、一連の事件を一つのきっかけといたしまして、行刑あるいは矯正行政全体についての反省をこの際いたしまして、新しい目で、新しい世紀の行刑はいかにあるべきかということをきちっと方向づけをしなければいけないというふうに思います。
 私自身は、何度も先生方に厳しい御批判をいただき、いろいろ御指摘をいただきまして、本当につらい思いをいたしました。その思いを持って、二度とこのようなことがないようにできるだけの努力をしなければいけない、それが私のこれから与えられた責任だというふうに思っております。
河村(た)委員 まことに申しわけないけれども、この間言いましたように、それでは世の中済まぬ場合というのは幾らでもある。また、きょうはちょっと十四分しかないからやめますけれども、ホテルニュージャパンの社長、この方は逮捕されていますからね。新宿ビル火災のオーナーというか管理人、直接の管理者じゃないですよ、その上におる人ですよ。逮捕ですよ、逮捕、ビル火災。業務上過失致死ですか、これ。それと比べてどうですか、自分の方は。
森山国務大臣 ビル火災の会社の責任者の責任と比べるのはちょっと難しいと思いますが、私についての御指摘は、先ほど来御説明申し上げましたように、これから二度と起こらないような仕組みをきちんとつくっていくということがむしろ大きな責任であるというふうに考えております。
河村(た)委員 いや、もうモラルハザードだよ、悪いけど。本当に、もうこんなこと私も何遍も、功成り名を遂げたというと御無礼だけれども、やはり法務大臣ですから。では立派な人は許されるのかということですよ、庶民的に言えば。では大臣だから許されるのか、庶民はお縄になるのか、こういうことですよ、言っておきますけれども。ホテルニュージャパンだって、管理者じゃなくて社長がですよ、社長が逮捕されて有罪判決ですよ、これ。それがあなただけなぜ許されるんですか、というのが素直な偽らざる気持ちだね、僕は。そうやって言えるのかと、次の世代に対してですよ。
 やはりきちっと、あなた、法の実現者としての、最高責任者と自分も言ってみえますけれども、やはりここのところは、本当にもうこんなことを何遍も私も言いたくございませんので、よくわかってみえると思いますが、やはりそこはしっかりされた方が僕はいいと思います。
 また、きょうはちょっと時間がありませんので、何遍も、まことに申しわけない、人間の、人生の先輩に、言う方もつらいですけれども、しかししようがないです、これは。
 それと、今ちょっと途中になりましたけれども、問題は、トップがこういう状況なんですね、三カ月ないし六カ月の給与の。それで、僕が思ったのは、看守さんたち、続々と逮捕されているわけですよ。彼らは本当に責任があるのかということで、僕はやはり行ってきました、本当に、接見に。では、一人、ちゃんとここで、あなた、委員会で言うけれども、あなたの名前を名乗ってもいいかと。いいと言いましたので言います。
 これは、渡邉貴志さんという看守長ですけれども、きのうときょうと朝会ってきまして、そこで、いろいろなことがありましたけれども、例えば、こういう取り調べがあったかどうか。検事から言われた、あなたたちは二度と元の仕事に戻れない、すべて認めてくれ、あなたたちは否認しても他の人は認めているのだぞ、情が悪くなるだけだぞ、このままなら。こういうふうに検事が言ったと言っておりますけれども、これは本当でしょうか。
樋渡政府参考人 お答えいたします。
 お尋ねは、起訴された特定の被告人の捜査段階の供述の任意性や信用性、その前提となる取り調べの適否について問われることになるものと思われますが、そのようなお尋ねはまさに今後の公判において判断されるべき事柄に関するものでありますので、なかなかお答えいたしかねることでございますが、あくまでも一般論として申し上げますと、捜査当局におきましては、捜査に適正を期し、客観証拠の収集に努めますとともに、取り調べに当たっては、自白の任意性や信用性を確保するための努力を重ねているところであると承知しております。
河村(た)委員 そういうルールになっておるかどうか知りませんけれども、本当に冤罪というのは恐ろしいんですよね、これ。変な言い方ですけれども、私は、やはり刑務官の暴行というのはあったんではないかということで、それを漫然と放置した大臣にも責任があるのではないかという立場ですけれども、やはり両方聞かないかぬ。歴史が証明していますから、権力の横暴というのは。だから、やはりここのところはしっかりしてもらわなあかんですよ。本人がいいと言ったから言っています、私も。絶対不利に扱うことのないように、少なくとも私がここで言ったことによってということです。
 もう一つ、まだ幾つかあるんですけれども、冒頭陳述の中に、「二人がかりでベルトを強く引き、被告人渡邉が」、これはその渡邉さんです、「渡邉が「もう一段」などと、更に狭い円周となる穴に尾錠の爪を入れるように指示」したというくだりで、あなたはもう一段締めろということを言ったのかと言ったら、とんでもないということで、これは渡邉氏が言ったことですけれども、看守長が言ったこととすれば、より適正な職務執行になるから、こうしてくれと言われて、仕方がないとして認めた、こういうふうに彼は言っておるんですよ。これが本当だとすれば、大変なことですよ。そういうことですよ。
 だから、言っておくけれども、大臣を初めトップの方は楽して、現場のまじめな看守に全部罪をぶっかけようとする、とんでもないことじゃないの、これは。これは本当ですか。
樋渡政府参考人 冒頭陳述に書かれているとしますれば、そういうふうに検察が認定する証拠があって書いていることであろうと思いますが、いずれにしましても、このことの有無は、裁判所が裁判の過程で明らかにするものだと思っております。
河村(た)委員 今の二つのことについて、刑事局長、これは別にちょっと調べてもらえぬですか。これは別の問題ですから、もしこういうことを言ったとすれば。これは別の話ですよ、検察の問題で。これはどうですか。
樋渡政府参考人 繰り返すようで申しわけございませんが、供述の信用性、任意性等にかかわることでございまして、これは裁判の過程で明らかにされるべきものだというふうに思っております。
河村(た)委員 裁判の過程というよりも、そういうことが行われたかどうかということはまた別個のことですよ、本人の罪ということよりも。
 検事というのはやはり法の正義の体現者でしょう、最も。検事それから法務大臣、こういうところが、こんなことがもしあるとすれば、僕は本人にどっちが本当か言わないかぬから、こういうのは非常に重要なポイントになってくるわけですよ。これはこれで別にちゃんとやってくださいよ。ちゃんと検事に聞いて、あなた、最高責任者でしょう、聞いて、検事総長に言われてもいいですよ、こういう調べをやったのかどうか、私に教えてくださいよ。もう一回聞いてください、委員長。
樋渡政府参考人 そういう調べがあってはならないことは確かでございますから、そういうことがあったかどうかということが、これはまさしく裁判で問題になることでございますので、その裁判の過程で明らかにされるべきことだと思っております。
河村(た)委員 それでは聞けませんけれども、ちょっと答弁だけもらっておきますけれども、こういうことを言うということは、多分、その渡邉さんも非常に勇気が要ったと思うので、先ほどうなずいておられたけれども、こういうことをここで言ったことによって不利益なことが一切ないということ、それだけ答弁しておいてください。
樋渡政府参考人 そういうような御懸念は、決してありません。
河村(た)委員 では、時間がありませんからきょう最後にしておきますけれども、例の保健助手の問題で、ぜひこれは、これを言うとわかりますけれども、八施設の宿直勤務と超過勤務手当の額をきちっと出してほしいということを要望しておきますので、その旨、ちょっと言っていただけますか。
山本委員長 理事会で協議させていただきます。
河村(た)委員 理事会で協議せぬでも、これは出るものだから。
山本委員長 いや、理事会で協議させていただきます。
河村(た)委員 理事会で。情けないな、それは。では、とりあえず、まあいいわ、そう言っているので。
 では、終わります。
山本委員長 樋高剛君。
樋高委員 自由党の樋高剛でございます。
 きょうも質疑の時間をいただきまして、ありがとうございました。
 私は、国会の委員会というのは、やはり政治家同士の議論の場にすべきではないかという考え方があるものですから、きょうは、政府参考人の方にはお越しをいただかないという形で議論をさせていただきたいと思いますけれども、この集中審議が始まりまして、やっと回ってきたかなということであります。今まで、これで三日目でありますけれども、大臣と議論ができるという機会を与えていただきまして、ありがとうございました。
 今回、私自身もさまざまな勉強をさせていただきました。そんな中にあって、まず率直に、素直に申し上げたいのは、まず、刑務所、矯正施設で働いていらっしゃる方々の御苦労に対しては、私は素直に敬意を申し上げなくてはならないというふうに思うわけであります。
 いろいろな話も伺いましたけれども、本当に職務自身も物すごい大変です。実際のところ、本当にストレスがたまるのではないかと思いますし、そういった一つ一つ、全国の施設で一生懸命まじめに頑張っていらっしゃる方々の努力によって、日本はある意味で法治国家としての体制を継続していられるわけであるということも私は今回痛切に感じたわけでありまして、この場をおかりして衷心より感謝を申し上げたい。
 それと同時に、法務大臣そして法務省の方々を初めとする法務行政に携わっていらっしゃる皆様方の御尽力と、それと社会の治安維持に対して御尽力いただいている公安業務と申しましょうか、そういう法務行政、法務業務に携わっておいでであられる方々の揺るぎない努力によって、日本が法治国家として機能しているんだなということも私は改めて再認識をしたわけでありまして、深く重ねて敬意と感謝を冒頭申し上げたいと思います。
 しかしながら、今申し上げた法務行政に携わる方々に対して頑張っていただきたいということと今回の行刑事件とは全くの別問題である、与野党一致して真相解明、そして制度の改革、そして責任問題にしっかりと取り組むことが国民からの要請であろうというふうに思っております。
 そして、一つ考えなくてはいけない話は、行刑事件について議論しているわけなのでありますけれども、刑務官の一部の方々の犯罪、今裁判中の案件も含めまして、捜査中の案件も含めまして、今進行中なわけでありますけれども、私の友人でも刑務官の方がおいででございます。別に友人がいるからかばうという話では一切ありませんけれども、あたかも全員が暴行を働いているかのごとく思われてしまっている面も一部感じられておりまして、やはりそこには情報の正確性ということも重要でありますし、もちろん、悪いことを行ってはいけないというのは当たり前の話でありますけれども、一方で、刑務官の方でも一生懸命まじめに働いていらっしゃる方々がほとんどだと私は信じたいと思いますし、だからこそ、今回の行刑事件では、真相をきちんと明らかにするということが私は大切であろうというふうに思います。
 そして、その起きた事件がそもそも一部の個人の行いによって発生したのか、もしくは集団なのか、もしくは組織ぐるみなのかということも厳格に細かく精査をしなくてはならないのはもちろん言うまでもないことでありますけれども、組織ぐるみもしくは制度上の不備によって行われたということであるならば、そこを政治が機敏にリーダーシップを発揮して改革をしていかなくてはいけないということをまず総論として申し上げさせていただきたいと思います。
 そして、私は、やるべきことというのは三点に絞られるのではないかと自分なりに整理をしてみました。
 まず一つ目は、真相を解明すること。一体そこで何が起こったのかということを明らかにしなくてはならないと思います。そして二つ目は、再発防止のための制度の改革。真相を検証して対策を具体的に講じていく、しかもそれはスピーディーに講じていかなくてはならないということ。そして三つ目は、これは政治と行政の責任をどうとるか、国民が納得いく責任をどう示していくか。この三つを私はまず冒頭指摘をしておきたいと思います。
 委員長にお諮りをいたしますけれども、先般の自由党の山田正彦議員、さまざま、今の三つのポイントに絞りまして議論をさせていただきましたけれども、やはり真相を解明するに当たって、今まで死亡帳なりさまざまな資料、法務省さんそして関係の皆様方の努力によって資料開示になっておりますけれども、まだまだこれでは真相解明にはとても、私はまだ至らないと思います。
 やはり一番思ったことは、もう本当にらちがあかないと思ったわけでありますけれども、やはり司法解剖執刀医師の参考人招致を私は冒頭で求めたいと思います。
 具体的に申しますと、名古屋刑務所、死亡帳がありましたけれども、あれは整理番号を振ってありますが、十二―一番、これは司法解剖を行われております。そして十四―十二番、これも司法解剖が行われております。そして十四―十九番、これが私、重大事案だと思いますけれども、この三件につきまして、まず執刀医師、司法解剖なさった先生の、お医者さんの参考人招致を求めたいと思いますが、いかがでしょうか。
山本委員長 しかるべく理事会で協議させていただきます。
樋高委員 まず私、きょう、行刑事件について議論する前に、新聞記事で、きょうも出ておりますが、きのう、そして先週の土曜日にも既にさまざまな部分が出ておりまして、ちょっとこの疑問点、お尋ねをさせていただきたいのです。
 また各論に入っていきますけれども、その前に、これはきょうの読売新聞にも書かれておりますけれども、法務省は、監獄法を廃止し、二〇〇五年の通常国会、つまり二年後ですけれども、新法、つまり行刑法案(仮称)と書いてありますが、提出する予定と書いてありますけれども、そういう方針なんでしょうか。
森山国務大臣 一連の事件が起こりました原因をいろいろと解明してまいります間にさまざまなことが明らかになってまいりまして、過剰収容であるとかあるいは個人のそういう性格もあったかもしれないとか、その他もろもろの話の中の一つとして、基本的には、今、刑務所の基本的な運営のための法律が、監獄法という明治四十一年にできたという大変古い法律に基づいている、それが大きな原因だということを言う方もございます。
 確かに、明治四十一年では非常に古いことはもうだれが見ても明らかでございますし、内容も大変、当時の感覚でつくったものですから、現在私たちがぜひ必要と思っておりますような人権の尊重というようなことは当時の人々の頭には入ってなかったということもありまして、そういうことがほとんど書いていない、全然書いてないと言ってもよろしいわけですが、そのようなことを考えますと、新しい法律、少なくとも今の法律を改正するという必要があるのではないかということも多くの方が指摘をするところでございます。
 しかし、いろいろな理由を明らかにし、さらに再発を防止していくというためには、法務省の人あるいは関係者ばかりでいろいろ考えているのではだめだからというので、昨日、民間の有識者の方々にお願いをいたしまして、行刑改革会議というものをようやく置くことができました。その皆様方にいろいろな問題を提起し、あるいは皆様方がお考えになるさまざまな新しい問題も加えまして、新たな目で新しい時代の行刑をいかにするべきかということを大きな立場から考えていただきたいというふうに思っておりますので、その場でお話しいただくテーマの重要な一つであることは確かでございますが、法務省として、今、何も決めているわけではございません。
樋高委員 今大臣がおっしゃいました行刑改革会議ということが立ち上がったということでありまして、発表なさったその後の記者会見で、ことしいっぱいに方向性を出したいという旨おっしゃったようですけれども、やはり私、そもそもこういう事件が起こる前に政治が手を打たなくてはいけないと思いますけれども、まず、制度の改革ということでありますが、ことしいっぱいという方向でよろしいのでしょうか。
森山国務大臣 問題は非常に大きく、多岐にわたっておりますので、すべてのものをことしいっぱいというのは難しいかと思いますが、しかし、さまざまな問題点を今部内におきまして整理をいたしまして、調査検討委員会の報告書というものもとりあえずまとめたものがございますので、そのようなものを材料にしながら、大きな立場からお考えいただきたい。
 大きなもの、また今すぐできるものもいろいろございますでしょう。今すぐできるものはできるだけ早く着手いたしましてやっていかなければいけませんし、非常に大きなものは勉強に着手するということを決めていただくだけでもいいかなと思いますが、その他、全体を通して言えますことは、ことしいっぱいぐらいには方向だけでも出していただきたいというふうな感じでございます。
樋高委員 そこで大臣に私、提案を逆にさせていただきたいと思いますけれども、今大臣もおっしゃいましたけれども、すぐにできることと、そして全体の大きなことで、ある意味で時間をかけなくてはならない部分もあることもよく私はわかりますので、そこはやはりきちんと事前に項目を整理をしていただいて、もちろん、年内に議論してもまだまだ足りない部分も分野としてはあるかもしれませんし、逆に言えば、今すぐできることも私はたくさんあると思いますので、そこはきちんと整理をしてやっていただきたいというふうに要望をさせていただきたいと思います。
 そして、大きなところからまた議論に入っていきたいと思いますけれども、河村議員もおっしゃっておいででありましたけれども、私は憲法の方の切り口から入っていきたいと思うのであります。
 まず三十六条ではこういうふうにうたわれています。「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。」ということでありまして、公権力による不当な暴力行為、そして公務員による暴行陵虐を絶対にさせてはならないというのが内閣そして大臣の責務である。また、憲法の九十九条では憲法尊重擁護義務というのが御案内のようにうたってありまして、「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」と書かれているわけでありまして、この憲法違反に値したということの重みをしっかりとやはり、もう大臣も重々認識していることもわかってはおりますけれども、改めまして、今回の事件を振り返りまして、やはり現実に公務員による拷問及び残虐な刑罰が平素から広く行われていたということが明らかになったことにつきまして、どのような大臣の反省の気持ちをお持ちなのか、改めて伺わさせていただきたいと思います。
森山国務大臣 憲法第三十六条では、おっしゃるように「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。」と規定いたしておりますが、これは、残虐な刑罰及び拷問を例外なく禁止しようとするものであると理解しております。
 特定の行為が憲法に違反するか否かにつきまして確定的な所見を申し上げる立場にはございませんけれども、今回のいわゆる五月事件、九月事案及び十二月事件といった一連の名古屋刑務所事件は、あってはならない残虐な事件でございまして、法務大臣である私といたしましても大変重く受けとめている次第でございます。
樋高委員 それで、まず事実の解明、これをいつまでをめどに行うか。その事実の解明に基づいて原因を考え、そして先ほど行刑改革会議も立ち上げ、それまでの調査検討チームもあり、いろいろ準備はしているということでありますけれども、まず真相解明、事実解明。
 三つの事件もありました、ほかにもまだ疑わしい案件がたくさんあります。それをいつまでをめどに行うつもりなのか、伺いたいと思います。
森山国務大臣 現在までに、一月余り前から設けました省内の主要な幹部から成ります行刑運営に関する調査検討委員会というのがございますが、そこにおきまして、名古屋刑務所三事件の原因に関しまして、行刑施設における処遇方法の実情や過剰収容等の背景事情、戒具の使用状況、人事制度や報告・監督体制の問題など、組織全体の問題にまでさかのぼって調査分析をいたしてまいりました。
 昨日、その中間報告ということで、とりあえず一まとめいたしまして、公表いたしたところでございますが、この事件につきましては現在名古屋地方裁判所において公判中でございますので、公判で明らかとなる事実関係等をも踏まえまして、引き続き必要な調査を行ってまいりたいというふうに考えております。
 この事件あるいはこの調査検討委員会は今後も続けて持っていきまして、行刑改革会議の必要となさる資料、あるいはさらなる事実の解明に、今後とも続けてやっていきたいと考えております。
樋高委員 裁判中であったり捜査中である、それはそれでもちろんしっかりやっていただかなくちゃいけないわけでありますけれども、一方で、そもそも事件を起こしてしまった中にあって、やはり法務省さんが主体的に、いつまでに事実関係をきちっと明らかにしようという、まず日にちをきちんと切っていないところが私は物すごく腑に落ちないわけであります。
 やはり日にちを区切って、例えば六月なら六月、五月なら五月まで、この事実解明、一方で、現実に捜査なり裁判というのはずっと引き続きもう何年も続いていってしまうわけですから、やはりこれだけ国民が関心を抱いて、そして何があったのか、そしてどういう問題であったかということがやはり明らかにされなくてはいけないと思うのでありますけれども、日にちをきちんと区切っていただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
森山国務大臣 先ほど申し上げました調査検討委員会におきまして、名古屋三事件の原因に関しまして、行刑施設における処遇方法の実情や過剰収容等の背景事情、戒具の使用状況、人事の制度や報告・監督体制の問題点など、非常に多岐にわたって調べております。しかも、かなり前にさかのぼってやっておりますので、全体を明らかにするという日をはっきり今ここで申し上げるのは難しゅうございますけれども、とりあえずの報告、中間報告を昨日まとめまして、発表させていただきました。
 この委員会といたしましては、名古屋刑務所事件ではなくて、全国の施設における他の死亡案件約千六百件につきまして不審な点がないか精査いたしているところでありまして、必要があればいろいろと検討してみたいというふうにも思っておりまして、所要の作業に着手しておりますほか、昨日この委員会の第四回の会合も開いたのでございますが、そこにおいて、行刑施設における医療体制の実態について調べるということに決めまして、それもやることになっております。
 そのようなことをすべて、非常に範囲が広く、多岐にわたって、時間的にも長くまたがるものでございますから、いついつというのは非常に難しゅうございます。各テーマごとにできるだけ早くというふうに考えておりますが、必要によっては特別調査班を増強するなどいたしまして、できるだけ早くということを申し上げる次第でございます。
樋高委員 河村議員もおっしゃっておいででありましたけれども、別に大臣に対して何の恨みがあるわけでもございませんし、大臣は品格があって仕事ができる方であるということも私は伺っておりますし、法務省の中でもすごく安定感のある大臣であるということも率直に伺っておりますので、日々の御尽力に対しては本当に敬意を申しますけれども、しかしながら、大変残念ですけれども、こういう事件が大臣が就任中に起きてしまったということについて、やはりこれは、責任は免れないのではないかということを私は率直に申し上げさせていただかなくてはいけないというふうに思うわけであります。
 やはり、今疑惑をいつまでにということで、ちょっと、もちろん継続してやればやるほどもっともっと溝は深くなっていきますので、また新たな事実も出てくるでしょうし、いつまでたっても疑惑は解明されないのかもしれませんけれども、一方で努力をしているのも私は素直にそれについては敬意を申し上げますけれども、一方で、やはりきちんとした日にちを切って、そして疑惑がある程度解明された時点で、大臣におかれましては、大変私も本当に言いにくいですし、言いたくはないんですけれども、やはり責任をとっていただくということが私は大切なのではないか、重要なのではないか。
 むしろ、ここで改革の道筋をつけて、こうしてある意味で中間発表をなさったわけでありますから、そこでむしろ潔しとして、そしてある意味で改革のレール、方向性を示した時点で、疑惑の解明がある程度なされた時点で、そこで職を辞する可能性があるということでも、例えばですけれども、もし言及をしていただくのであれば、それはむしろ歴史、後世に名を残す名大臣になると私は思いますけれども、いかがでしょうか。
森山国務大臣 今先生がおっしゃいましたように、私の在任中にこのような事件が起こり、そしてそれが明らかになりまして、非常に社会に大きな問題を提起し、大きなショックを与えたということを考えますと、本当に申しわけなく思いますし、その責任を果たすことができるならば何でもしたいという気持ちで今いっぱいでございます。
 しかし、それだけに、私がたまたまこの場にこのような立場でいるということは、私にとっては一種の天命ではないかというふうに思いますので、その天命を真剣に受けとめまして、できるだけ早い時期に、二度とこのようなことが起こらないという仕組みや考え方をきちんと決めていくということが私の責任であろうというふうに思うわけでございまして、それは調査検討委員会あるいは行革会議等、既にきのう指名はさせていただいてはおりますが、まだこれから始まるところでございまして、どういうふうになるか全く今のところ見当がつきません。先生方の御指摘などを踏まえて真剣に検討したいと思いますが、そのような結果、ある程度の方向が見定められなければいけない、それが私の責任だというふうに考えております。
樋高委員 平成十三年の十二月、一番最初に情願が上がった時点で、そこできちんと、私もずっと細かくもう膨大な資料を精査させていただきましたけれども、一番最初、情願についてなんでありますが、そこで見ていただいて、その時点できちっと手を打っていればこんなに話は私は大きくならなかったし、むしろそこで本腰を入れて改革に着手していただければこういう事件は起きなかったんだろうというふうに思うわけであります。私、予算委員もしておりますので予算の審議もずっと議論を拝見させていただいておりましたけれども、大臣の答弁の中で、いわゆる情願を却下したのは法務大臣名でやった、それはもう実際そのとおりだと思いますけれども、では、それは、根拠は何かというお尋ねに対しまして、法務省の文書決裁規程の中に、いわゆる情願の決裁という項目があって、その中で、特に重要なものは大臣、そして重要なものは事務次官、そして一般的なものは局長だから、そしてその名義人は大臣というふうに書かれてあるから、そのとおりのことが行われたんだと思っていると答弁なさったわけですけれども、このこと、大臣、間違いありませんでしょうか。
森山国務大臣 理論上はそのとおりでございます。
樋高委員 ということは、特に重要でなかったということを、別に重箱の隅をつつく話じゃないんですけれども、特に重要でなかったということをそのままこの情願の処理に関しては実際、現実にずっと続けていた、つまり大臣は、特に重要ではなかったということをむしろおっしゃっていることに等しいわけでありますけれども、要するに、特に重要でなかったとみずから証明していることに私はほかならないのではないか。その部分を指摘なさる議員の方がいらっしゃらなかったので、私は申し上げておきたいというふうに思います。
 それで、大臣に伺いますけれども、情願についての資料を法務省からいただきました。重々皆様方目を通していらっしゃると思いますけれども、例えば、「暴行に関する法務大臣情願の件数、内容、処理結果」ということであります。
 平成十二年、処理事項数ということで三千百六十九件、そのうちの暴行に関するものが百二十件。そして、平成十四年に至りますれば、処理事項数は、二年後でありますが、倍になっている、六千七百六十九件、そのうちの暴行に関する件が百三十件ということであります。
 そして、やはり注目しなくてはいけないのは、例えば平成十二年、この約百二十件の暴行に関する情願の中で、裁決、要するに採用したという意味だと思いますけれども、約三〇%と書かれております。つまり、計算上は約三十六件。そして、それに対して平成十四年は、暴行に関するもの約百三十件のうち裁決されたのが六〇%、約六割ということでありますので、計算上は七十八件。つまり、この暴行に関する申し立て、情願の暴行に関する申し立てが、平成十二年から平成十四年、二年を経て倍になっている。しかも、その内容、これを見て本当に驚いたんですけれども、具体的にどういうことなのか。
 もちろん、全部が全部、本当にそのことが行われたのかどうかはわかりませんけれども、職員に殴られた、たたかれた、けられた、胸ぐらをつかまれた、職員に殴るけるの暴行を受けた、複数の職員から暴行を受けた、戒具を使って暴行された、きつく絞められた、そして職員に首を絞められたということもありますけれども、このことについて、大臣、どういう御感想をお持ちになりますか。
森山国務大臣 私もこのごろ、一月余り前から情願を全部目を通すようにいたしておりまして、その中には、ここに書いてありますような項目に分けようと思えば分けられるものが結構ございます。
 一部とはいえ、そのようなことが書かれるというのは非常に残念なことだと思いますが、それが本当にそうだったのかどうかということを調べないとその後の処置ができませんので、内容によりますが、内容の中で暴行に関する問題が入っているような場合には、矯正局ではなくて人権擁護局の方に調査をさせるようにいたしておりまして、人権擁護局の方も鋭意努力をいたしておりまして、大変に、みんなで、情願の内容について精査し、適切な措置をするようにということに努力をいたしております。
樋高委員 情願につきまして大臣御自身が目を通されるようになったということでありますけれども、先般行いましたこの法務委員会でも、情願の処理について、矯正局ではなくて人権擁護局に回された案件もあったと先日おっしゃいましたが、これはどういった案件だったんでしょうか。
森山国務大臣 情願の文書を見る限り、受刑者が職員から乱暴な扱いを受けた、特に暴行を受けたというようなものがたまにございまして、そのようなものは、真相を解明して、必要な処置をしなければいけないということで、そのようにやっているわけでございます。
樋高委員 大臣が見られた情願の中で、暴力案件というのは現実にあられたということでございますか。
 やはり、文書ではなくて、今度ぜひ刑務所に一度足を運んでいただきたいというふうに思うのでありますし、その方々からやはり直接、もちろん全部が全部お会いしている暇がないのはよくわかりますので、一度名古屋刑務所の方に足を運んでいただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
森山国務大臣 受刑者のおりますいろいろな施設、刑務所もそうですが、そういうところへも既にかなりの数行っております。
 名古屋刑務所は、昨年末以来ちょっと事件が起こりましたので、その問題について少し様子が落ちついたら、あるいは、私が行って邪魔にならないような事態になったところで行ってみたいと考えまして、一月の中ごろにそのつもりにいたしたのでございますが、ほかの用件で行けなくなってしまいまして、以後しばらく時間がないものですから名古屋にはまだ行っておりませんが、ほかの刑務所にはかなり幾つも行っておりまして、ある程度は見ているつもりでございます。
樋高委員 名古屋には、ぜひ、この事件に絡めて、やはり現地に行ってしっかりと調査をしていただきたいと思いますし、今きちんと現地に行って話を伺うことによってまた新たな発見もありますし、またそれをさまざまな行政に生かしていくということも、そこで新たなすぐにできる方策をまた考えることも可能だと思いますので、しっかりとお願いをいたしたいと思います。
 巡閲官情願という制度も私拝見をさせていただきました。二年に一度に限り、いわゆる本省の課長クラスの方が現場に赴いて直接、情願の方はペーパーでありますが、この巡閲官情願というのは、直接ヒアリングをする、直接不服の申し立てを伺うということでありますけれども、そもそも二年に一度というのは長過ぎるのではないかというふうに私は思うわけであります。
 これは府中刑務所の資料なんですけれども、日本人の受刑者執行刑期の一覧表がありまして、人数ベースだと思います。六カ月以下は〇・一%、一年以下が六・七%、二年以下が二六・四%、合計約三割の人が二年以下で出所なさるということでありますので、この三割の方々は現実問題として巡閲官情願にはほとんど当たっていかないわけであります。
 やはり、これなんかもすぐにできる、もちろん人的労力を割かなくてはいけませんから、そう簡単にはいかないよという話もわかりますけれども、一方で、これもすぐにできる話ではないかと思いますけれども、このインターバル、期間、例えばこれを、できるならば二年に一度ということではなくて一年に一度ぐらい行く、そういうふうにすべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
増田副大臣 お答えをいたします。
 巡閲は、刑務所等に対して少なくも二年間に一回行うこととされておりまして、御発言の趣旨のとおりであります。その際、被収容者は、巡閲官に対しまして、書面または口頭により情願を行うことができることとされております。
 巡閲官情願は大臣情願とは異なりまして、書面のみならず口頭をもって直接不服を申し立てることに意義があると思われますところから、巡閲官情願の頻度を含め、情願制度全体のあり方については、行刑運営のあり方全体を徹底して見直すために設置されました行刑運営に関する調査検討委員会で検討することとされているところであります。
 また、昨日発足いたしました民間有識者により構成されております行刑改革会議においても、被収容者の救済申し立て制度のあり方等の問題として、検討課題の一つにされるものと理解をいたしております。
樋高委員 こういった、具体的にすぐできることも多々あると思います。今副大臣がおっしゃったように、二年以内ということでありますから、あとは運用の問題でありますので、そのインターバルを短くしていくとか、それをまたきちんとオフィシャルに発表して、やはり、こういうふうに変わったんだよという姿を見せるところからぜひスタートしていただきたいというふうに思います。
 私は、具体的に、個人でいろいろ勉強させていただいた中で、五つの改革の柱を申し上げたいというふうに思います。
 一つは、まず、保護房全体の監視、特に、先週の金曜日も横須賀刑務所に視察に行ってまいりましたけれども、ビデオ記録の重要性というものを痛感いたしました。保護房にビデオの設備がないところもたくさんあるのもわかりますし、また、ビデオを設置するとなると予算がかかるのもわかりますけれども、やはり、今こういった問題が明らかになって、すぐにできることの一つではないかというふうに思います。
 保護房の録画設備を緊急に全国に配置する。今、本予算が通って、次の補正予算をやるとかやらないとか、また議論が持ち上がっておりますけれども、やはり、こういったところに少しでも予算をしっかりとつけて、ビデオ記録を撮っていく。
 もしそれが潔白で何もないということであれば、何もないということも逆に言えばビデオで解明できるわけであります。しかし、そこで何か行われたのであれば、それもまたビジュアルにわかるわけでありますから、それをビデオで記録して、それをまた上書きしたりとか、横須賀の刑務所でも一週間ぐらいで上書きされちゃうような話もしておりましたけれども、それで消えちゃうんだそうです。
 したがって、それをきちんと三年なり五年なり保管するということも私は大切な、大きな、すぐできることの一つだと思いますけれども、いかがでしょうか。
増田副大臣 お尋ねの趣旨はよく理解ができました。
 名古屋刑務所の五月及び九月に発生をいたしました死傷事案を踏まえまして、矯正局におきましては、昨年十一月二十七日付をもって、当面の緊急課題としまして、保護房監視用カメラまたは携帯用ビデオ機器による、革手錠の使用開始時、変更時、解除時など職員が革手錠を取り扱う場面をビデオ録画することとしておりましたが、さらに大臣から、行刑運営に関する調査検討委員会に検討方が指示されました結果、本年三月七日以降は、革手錠の使用開始からその使用を終わるまでの間、つまり革手錠使用中の全期間について、その状況をビデオ録画することといたしております。
 御指摘の保護房内の関係でございますが、保護房内をビデオ録画により監視することは、客観的事実を担保する方法として大変有効であると考えておりますので、可能な限り必要な機器の整備に努めたいと考えております。
樋高委員 しっかりとお願いをいたしたいと思います。
 そして、私が今考えております二つ目の改革の柱。これはやはり、刑務官不足の問題、増員をしなくてはならないという問題であります。
 この名古屋刑務所などの事件のいわゆる原因を過剰収容だけに求めてはならないのは当然でありますけれども、一つの大きな要因でもあったのも私は事実なんではないかと。もちろん、これだけですべての問題が解決されるわけではないけれども、それと同時に、問題のすりかえをしてはならないんでありますけれども、現実問題、昨日いただいたその資料を見ますと、いわゆる一〇〇%を超えている、収容率に対して、定員に対して収容者数というのが大きく数を上回っているという問題は、これはゆゆしき状況ではないかと思います。
 刑務官の定員は全国で一万七千名。一方、被拘禁者の実数は、平成八年に約四万八千名であったものが、資料を見ますと、平成十四年には六万六千五百名、わずか五年余りの間に二万人も増加をしているんだそうでありまして、過剰収容が進む中で、ただでさえ大変な過剰労働を強いられている刑務官の方々に対して、精神的、物理的な負担が極限まで達するのは容易に推測をされるわけであります。
 この刑務官不足を理由に、もちろん、繰り返しになりますが、人権侵害を正当化は決してできませんけれども、刑務官不足を今まで放置してきた責任というのも私は問われなくてはならないし、早急に改めなくてはいけないと思いますけれども、いかがでしょうか。
増田副大臣 近年、行刑施設におきましては、被収容者の急増に伴いまして、刑務官の業務量が非常に増加をいたしました。週休日が確保できていない施設があるほか、年次休暇取得日数についても年々減少するなど、刑務官の負担増が顕著であります。
 これを踏まえまして、現在御審議いただいております平成十五年度予算案におきましては、行刑施設の職員について、二百四十三人の増員が計上されております。
 現在の犯罪発生状況などから見まして、被収容者は今後も増加することが予想されますので、その動向を踏まえながら、今後とも必要なる要員の確保に努めてまいりたい、このように考えております。御支援をお願いいたします。
樋高委員 御支援もいたしますけれども、その前にまず、副大臣みずから、今現実にその当事者でありますから、責任を持って、リーダーシップを発揮して、指導力を発揮して行っていただきたいというふうに思います。
 そして、三点目。刑務所医療の独立性の確保の重要さというのを指摘申し上げたいと思います。
 刑務所医療の問題点は極めて深刻であります。医療がいわゆる保安部門に従属していることによって、外国の事例等も私よく検証してみましたけれども、いわゆる拷問の抑止力となり得ていない部分も私は大きな問題ではないかと思います。むしろ、隠ぺいに加担しているのではないかと疑わざるを得ないような状況でもあるからであります。
 刑務所内の医師は、拷問を防止するいわゆる倫理的な責務を担っていると私は思っております。しかしながら、現在の制度では、その機能を果たし得ないことが明らかでありまして、例えばフランスなんかでは、九四年でありますから今からもう八年か九年前でありますが、刑務所の医療の管轄を司法省から厚生省に移しまして、地元の病院から医師が来て診察する制度改革を行って、成果を現実に上げていらっしゃる。外部からの監察機能も担えるわけですけれども、この独立性の確保を図ってみる方向に私は進めていくべきではないかと思いますけれども、どのようにお考えになりますか。
森山国務大臣 行刑施設における医療というのは非常に重要なことでございます。診療の対象が被収容者であるということに伴ういろいろな専門的な配慮が必要でございます。さらに、被収容者の身柄の確保及びプライバシーの保護の観点から、施設内において診療が行える体制を維持しなければならないとか、非常時に登庁できる医師を確保して、急患への対応が速やかにとれる体制を持っていなければならないというような理由もございまして、施設に常勤の医師を配置するというやり方で今日までやってまいりました。
 被収容者に対して入所時健康診査とか定期健康診断等を実施して、心身の異常の発見とか把握には努めておりますが、患者が新しく発生しました場合には必要な医療措置を行いますし、また専門的な治療が必要な難しい病気になりました場合には、あるいは非常に急迫、切迫した状況であるというようなときには、医療刑務所へ移送したり専門の病院に移送したりというようなことをいたしております。
 いずれにせよ、外部の医療機関の協力も得まして、医療体制の万全を期しているところではございますが、今後とも、御指摘の点を含めましてさまざまな御意見を考慮しながら、行刑施設における医療体制の一層の充実に向けて努めてまいりたいと考えております。
 新たな指示の事項といたしまして、医療体制のあり方の問題をとらえて、行刑運営に関する調査検討委員会においても検討するように指示いたしたところでありますし、また、この問題については、行刑改革会議にも特にお医者様の専門家に入っていただいてお知恵を拝借したいというふうに考えておりまして、そのようなことにいたしたところでございます。
樋高委員 次に、四点目なんですけれども、刑務官の労働基本権の確保ということも御指摘を申し上げたいと思います。ILO条約から見ても、刑務官に私は労働基本権があってもいいのではないかというふうに思います。
 現状の刑務官の労働条件、まさしくさっきのいわゆる過剰労働という話もありますけれども、今の人事制度のままで刑務官を増員しても根本的な再発防止に必ずしも私はつながりにくいのではないかということも指摘をしていきたいと思います。
 昨年の十一月の二十日、国際労働機関理事会がジュネーブで開かれまして、刑務所、拘置所などの刑事施設職員の自主的な団体、つまり労働組合を設立する権利を認めるよう勧告をしました。刑務官の団結権というのは世界のほとんどの国で認められております。団結権を否定している国は、ナイジェリア、パキスタン、マレーシア、メキシコ、カメルーン、スリランカ、スワジランドなど極めて少数にすぎないわけでありますけれども、刑務官の労働者としての権利、職場の声がまさしく上に上がっていくような仕組みそのものもつくっていかなくてはいけない。今回のような事件を少しでも未然に防止するためにも、労働基本権、団結権の確保も私はひとつ視野に入れて議論すべきだと思いますけれども、このことについて最後にお伺いをし、私の質問を終えたいと思います。
森山国務大臣 我が国におきまして、国家公務員法上、刑務官の団結権を認めていないわけでございますが、その任務にかんがみまして、特に強固な統制と厳正な規律に服せしめる必要があるということからだと聞いております。
 近年、行刑施設におきましては、被収容者の急増に伴いまして刑務官の業務量が増加し、週休日が確保もできないという施設があるほか、年次有給休暇の日数についても年々減少するなど、刑務官の負担増が明らかでございます。
 そのために、行刑施設におきましては常日ごろから、職員の勉強会とか個別相談等の機会を活用いたしまして、できる限り刑務官の職務上の悩みや相談を上司が聴取するように努めているところでございますが、今後とも積極的に刑務官の意見を聴取してまいりたいと考えております。
 先ほどお話のあったILOの結社の自由委員会の中間報告におきまして、監獄において勤務する職員が団体を結成する権利の付与の問題についても指摘されておりますことにつきましては、我が国の刑務官についての法制度の理解が十分ではなくて、また、過去のILOの見解と整合しない部分があるということを感じておりますので、法務省といたしましては、最終報告までの間にILOの十分な理解が得られますように必要な情報を提供してまいりたい、具体的な説明もしたいというふうに考えております。
 なお、過剰収容等による刑務官の負担増は承知しているところでございますが、昨日取りまとめられました行刑運営に関する調査検討委員会の中間報告におきましても、職員の負担軽減を念頭に置きまして、処遇体制及び処遇方法のあり方の見直しや職員の心理的なケア体制の整備などを掲げているところでございます。
    〔委員長退席、佐藤(剛)委員長代理着席〕
樋高委員 ありがとうございました。
佐藤(剛)委員長代理 木島日出夫君。
木島委員 日本共産党の木島日出夫です。
 資料配付を委員長お願いいたします。
佐藤(剛)委員長代理 はい、どうぞ。配付してください。
木島委員 名古屋刑務所内で、受刑者に対する暴行陵虐事件など、一連の大変ゆゆしい人権侵害事件が相次いで発生をいたしております。この問題にどう対処するか。私は、三つの観点が大事だと思います。第一には、事件の全容、問題の所在を徹底的に解明すること、要するに行刑のうみを出し切ること。第二に、法務大臣から現場の刑務官に至るまで、すべての関係者がその責任の大きさ、責任の重さに応じた責任をきっちりとるということ。そして第三に、矯正行政のありようを、受刑者の基本的人権を基本に据えて抜本的に改めることだと思うんです。
 法務大臣にお聞きしますが、私は、この三つの中でも、第一の、事件の全容の徹底的解明、問題の所在の徹底的解明が大事だと。これが不十分では、責任をとることも矯正行政の改革も不徹底に終わるからであります。私はこう考えてこの質問に臨んでいるんですが、法務大臣の一連のこの行刑問題に対する基本的なスタンス、お述べください。
森山国務大臣 私は、一連の名古屋の刑務所事件のうち、最初に九月事件で強制捜査が開始されました際に、このような事件については何よりも真相解明が重要であるということを強く申しまして、そのためには検察による厳正な捜査及び矯正局による徹底した調査が行われることが肝要であるとの判断に立ち、矯正局に対し、徹底した調査と検察捜査に対する全面協力等を指示いたしました。
 あわせて、関係部局に対しましては、名古屋刑務所事件に関して、大臣として指揮指導する上で必要な情報等を報告するよう指示しておりまして、節目節目に、刑事局からは検察による捜査の状況や方針等について、矯正局からは事件が発生した背景や原因等に対する特別調査チームの調査検討状況等について報告を受けております。
 また、行刑運営に関する調査検討委員会を設置いたしまして、委員会を通じて報告を受けるという体制も行っておりますが、今後とも必要かつ十分な情報を得て、さまざまな角度から分析、検討し、問題の核心に迫れるよう適切に指揮指導してまいりたいと考えております。
 さらに、刑務官の抜本的な意識改革を迫るようなシステムをつくり上げるということも必要でありまして、従来の常識や発想にとらわれない大胆な方策を打ち出していかなければいけないと考えます。
 昨日、有識者による行刑改革会議を発足させ、そこで国民の視点に立って幅広い観点から検討していただくということになっております。
 なかなか大きな問題であり、多岐にわたることでございますので、決して容易ではございませんけれども、今後も矯正行政の最高責任者といたしまして改革の先頭に立って、国民の信頼回復に向けて全力を尽くしてまいりたいというふうに考えております。
木島委員 この問題は、刑務所という閉ざされた世界、法務省という一つの同じように閉ざされた役所の中での問題であるだけに、私は、その全容の解明はどうしても外部の者の手で行われることが大事だ、必要だと思うんです。
 一つは国会です。まさにこの法務委員会がその場であろうと思うんです。それで、法務当局は、国会の委員会の真相解明の要求に全面的に協力することが求められる。資料提出その他であります。よろしくお願いしたい。
 もう一つは、今法務大臣るる述べましたが、法務当局による自主的解明であります。これも大事であります。
 昨日、法務省内に設置された行刑運営に関する調査検討委員会が、行刑運営の実情に関する中間報告、これを発表いたしました。私、全部読んでみました。しかし、まだまだ名古屋刑務所三事件の全容の解明は不十分、不徹底であります。
 これは中間報告と銘打ってありますが、最終報告はいつまでに出すんですか。それだけ聞いておきます。
大林政府参考人 お答え申し上げます。
 今の調査はできるだけやろうというふうに考えておりますが、委員御承知のとおり、最近、死亡案件千六百件について、いろいろと議員の先生から疑問が呈されているところでございます。
 調査委員会といたしましては、犯罪等の可能性のあるものについては、これは徹底して調査しなければならないというふうに考えておりますし、最近、医療体制の実情の問題もいろいろ御指摘を受けているところでございます。
 調査委員会といたしましては、これらをあわせて調査していきたいというふうに考えておりまして、数等あるいは多岐にわたっていること等もございまして、今ここで、いつまでというお約束はできませんが、できるだけの努力はさせていただきたい、こういうふうに考えております。
木島委員 めどぐらい言ったらどうですか。一年とか半年とか。
 ついでに、では、行刑改革会議というのを立ち上げる。法務大臣の私的諮問機関ですね。これの任務は何なんでしょうか。名古屋三事件の真相解明、そういう任務は持つんでしょうか。
大林政府参考人 お答え申し上げます。
 行刑改革会議は、民間の英知を結集し、国民的視点に立って、幅広い観点から行刑運営のあり方について一切の聖域なしに議論し、国民から信頼される抜本的な行刑改革のための御提言をまとめることを目的としております。
 したがいまして、名古屋の事件も含めてどうすべきか、矯正としてどうすべきかということを視野に入れて、調査なり御提言なりいただくことになろうかと思います。
木島委員 既に起きた事件の真相解明も、この行刑改革会議の任務とすると聞いてよろしいですね。
 名古屋刑務所での三件の保護房における受刑者に対する刑務官による特別公務員暴行陵虐致死致傷事件についてお聞きをいたします。
 時系列に言いますと、平成十三年十二月十五日が消防用ホース放水による陵虐致死事件です。平成十四年五月二十七日に起きたのが革手錠による暴行陵虐致死事件であります。さらに同年、平成十四年九月二十五日に起きたのが革手錠による暴行陵虐致傷事件であります。立て続けに三件の特別公務員による暴行陵虐事件が発生しております。すべて隠ぺいされ続けてまいりました。
 事件が明るみに出たのは、昨年五月の革手錠致死事件と昨年九月の革手錠致傷事件が昨年十月であります。一昨年十二月の消防用ホースによる致死事件に至っては、表に真相が明るみに出たのがことしの一月末になってからであります。現在、御案内のように、三件とも刑事事件として被告人が起訴されております。
 三件に共通している問題は何か。保護房に繰り返し収容されていること、そして金属手錠、革手錠を何度も使用されて、そうした虐待が密室の中で長らく続けられる、そういう中での暴行陵虐行為による致死、死亡、傷害事件だったということが共通であります。
 そこで、私は、この名古屋三事件について法務当局に、この三人の受刑者の名古屋刑務所への入所歴、保護房収容歴、金属手錠、革手錠使用歴、これを時系列で、日だけではなくて時分まできちんと明らかにしてほしいと要求をいたしましたところ、提出をされてまいりました。それで、皆さんに、お手元に配付したとおりであります。驚くべき状況であります。
 ごらんください。平成十三年十二月に発生した最初の消防用ホース放水致死事件は資料の1―1、2に、革手錠と金属手錠使用歴、保護房収容歴が書かれております。それから資料5、これが平成十四年五月に発生した事件の革手錠の使用歴が書かれております。それから三つ目が資料10、これが平成十四年九月の革手錠による致傷事件の革手錠、金属手錠の使用歴、保護房収容歴であります。
 私は、法務当局からいただいたこのペーパーをそっくりそのまま印刷して、きょう皆さんに配付しております。すべてこれは法務当局の作成であることを確認してください。
    〔佐藤(剛)委員長代理退席、委員長着席〕
横田政府参考人 お答えいたします。
 すべて法務当局において作成いたしました。
木島委員 私は、平成十三年十二月十五日に発生した消防用ホース放水による陵虐致死事件が最初に起きた事件でありますから、この事件の真相の解明が特に重要だと考えて、以下、時間をいただいて、質問に入ります。
 まず、この事件でありますが、保護房収容についてでありますが、まず、この受刑者が名古屋刑務所へいつ入ったのか、何回目の入所であるか。私の調べですと、この受刑者は平成十一年十一月十一日に名古屋刑務所に入所しておる、たしか懲役五年五月の刑で入所している、四回目の名古屋刑務所への入所である、こう承知しているんですが、相違ありませんか。
横田政府参考人 お答えいたします。
 委員御指摘のとおりでございます。
木島委員 さて、それを確認して、保護房収容の実態について質問いたします。
 資料1―2を見てください。驚くべき保護房収容の実情であります。
 この受刑者は、平成十一年十一月十一日に名古屋刑務所に入所したんですが、ごらんください、3「保護房収容・解除時刻・収容理由」であります。その「回数」の三番から七番まで、平成十三年一月二十六日から七番目の保護房解除が行われる平成十三年五月十七日、一日も間がありません。連続百十二日間の保護房収容であります。この間、四回一時解除が行われています。しかし、一時解除であります。
 それからもう一つ、平成十三年十一月二十二日から死亡、殺されたという表現が当たっているかどうかわかりませんが、死亡した前日の平成十三年十二月十四日まで、連続二十三日間の保護房収容であります。この間わずかに一回、平成十三年十二月七日の午後一時四十分から翌十二月八日の午後九時十九分まで保護房から解除されたのみであります。
 法務省にお聞きします。平成十一年十一月一日の矯正局長通達によりますと、保護房収容期間は三日を超えてはならない、ただし、継続する必要あるときは二日ごとに更新できるとあります。保護房収容は刑務所長の命令によってなされるものだということが通達にも書き込まれております。この連続した保護房収容が必要だったとは到底私は思えないんです。
 この通達に沿って、きちんと二日ごとに保護房収容要件のチェックがされていたのか。皆さんはそういうところをしっかり見定めておりますか、答弁。
横田政府参考人 お答え申し上げます。
 保護房収容の要件につきましては、ただいま委員御指摘のとおり、平成十一年十一月一日付の矯正局長通達、「戒具の使用及び保護房への収容について」という通達で定められております。
 これによりますと、逃走のおそれがある者、それから他人に暴行または傷害を加えるおそれがある者、自殺または自傷のおそれがある者、職員の制止に従わず大声または騒音を発する者、房内汚染、器物損壊等異常な行動を反復するおそれがある者であり、かつ普通房に収容することが不適当と認められる場合に限り保護房に収容することができるとされております。その収容期間でございますが、これも委員御指摘のとおり、三日を超えてはならないと規定されております。そして、三日を超えて収容を継続する必要が認められる場合には、二日ごとに更新できるとされているところでございます。
 この十二月事件の被害者が名古屋刑務所において保護房に収容されているときの期間更新の理由は、当局で承知しております関係書類によりますと、残飯、汚物をまき散らす等の房内汚染、それから職員への暴行のおそれ、それから大声を発し続けるなど、一般の居室での収容は困難であると判断されましたことからでございます。その都度チェックされていたものと承知しているところでございます。
 なお、当局で承知しております関係書類によりますと、十二月事件の被害者の保護房収容期間は、平成十三年一月二十六日から同年五月十七日までが計百十二日間で、その間四回ほど収容を解除し、解除の翌日に収容することが繰り返されております。さらに、同年十一月二十二日から十二月十四日までが計二十三日間で、この間に一回収容を解除し、解除の翌日に再収容している、こういう事実、これは先ほどの資料のとおりでございます。
木島委員 到底そんなことは信用できないんですよ。連続百十二日間保護房収容でしょう、朝から晩まで。たまたま四回ぐらい解除されて、一日ぐらいですか、記録を見れば、表に出てきただけ。そんなに、百十二日間も、あるいは平成十三年十一月二十二日から死んだ前日の十二月十四日まで二十三日間、大声を上げ続けてきたということ、信用できますか、あなた。
 次の質問に移ります。
 保護房収容理由、ここに書き込まれております。暴行のおそれ、大声、房内汚染、騒音であります。この受刑者に精神の異常はなかったんでしょうか。精神疾患での受診記録はありませんか。
横田政府参考人 お答えいたします。
 関係記録の相当部分が捜査当局に押収されておりますので、その中におきまして、現在当局で承知している限りについてお答え申し上げます。
 当該受刑者は、平成十一年十一月に名古屋刑務所へ入所した後、保護房に収容された同十二年の三月末ころから、職員が再三にわたって指導をするも食事をとらず、精神科医による診察を実施しましたところ、拒食、食事の拒否ですね、拒食による脱水症状が認められたことから、経鼻栄養法、これは鼻を経てという経鼻栄養法でございますが、それによる栄養補給を実施していること、その後しばらくは保護房収容がなかったものの、平成十三年一月下旬ころから房内汚染等により保護房に収容されるようになり、精神科医による診察が行われましたが、精神病的所見は認められなかったこと、その際にも拒食による脱水症状が認められましたことから、同様の栄養補給、つまり経鼻栄養法でございますが、それを実施していることなどが一応認められたところでございます。
 なお、保護房収容時、房内汚染を繰り返すため、その都度精神科医等の診察を実施していると聞いておりますが、その詳細につきましてはまだ十分把握してございません。
木島委員 真実がまだ、全容、出てきませんね。
 平成十一年十一月一日の矯正局長通達によりますと、「一 留意事項」「(五) 戒具使用中又は保護房収容中の者については、常に医師にその心身の状況を確実に把握させ、必要に応じて診察させること。」とあります。今の御答弁でも、記録が検察が持っていってしまったのでよくわからないがという前提つきで、拒食等ありますね。ですから、後で一連の診療録等を私は要求したいと思いますが、きょうはそのところでとめておきます。
 法務大臣に感想をお聞きします。
 保護房収容中の受刑者は入浴、運動はできません。入浴できません、運動もできません、夜間、明かりを消してもらえません、夜間消灯もありません。いいですか、そんなような状況で、小さな部屋の中です、何もありません、長期間連続して閉塞され続ければ、その閉塞感、被抑圧感、隔絶感、疎外感が大きくなって、それだけでも私は心身に異常を来してしまうのが常識じゃないかと思うんですが、法務大臣、この実態、どうごらんになりますか。
森山国務大臣 保護房に入れられるにはそれなりの理由があってのことだとは思いますが、長期間そのような状態に置かれるということは本人にとっても非常に疎外感があり、また寂しくもあり、心細くもあり、いろいろな問題があったことだと思います。
木島委員 法務省に確認しますが、保護房に入ったら入浴はできない、運動はできない、消灯が認められない、事実ですね。
横田政府参考人 お答えいたします。
 委員のおっしゃるとおり、いずれもできません。
木島委員 次に、この受刑者に対する金属手錠、主に革手錠の使用についてお聞きをいたします。
 資料の1―1をごらんください。これもなかなかすさまじいものでございます。1が「革手錠の使用開始・解除時刻・使用理由」でありますが、ごらんのとおり十回の回数を数えていますが、平成十三年十一月二十二日から革手錠の使用が頻発をしております。特に十二月十日から死亡の三日前の十二月十三日にかけては、丸々一日じゅう革手錠をやられていたというのが、平成十三年十二月十日、平成十三年十二月十二日からそれぞれ翌日まで。ごらんください、丸々一日ですね、という状況であります。
 保護房収容中にこのような金属手錠や革手錠使用は、その必要性自体に疑問がわくんです。そんなこと、必要ないんです、自殺のおそれがない限り。保護房なんて、だれも傷害、他害すること、不可能なんですから。
 確認しますが、丸々一日革手錠をかけられていたということになりますと、三食の食事や用便のとき革手錠を外してやったかどうか、確認していますか。
横田政府参考人 お答えいたします。
 その点につきましては、十分把握しておりませんでした。
木島委員 把握する記録がなかったということなんでしょうか、そういう調査が進んでないということなんでしょうか。
横田政府参考人 おっしゃるとおりでございます。(木島委員「どっち」と呼ぶ)十分、記録、証拠の関係がございます。(木島委員「調査不十分」と呼ぶ)いえ、書類の関係でございます。押収されている、そういったようなことがございますし。
木島委員 私は、刑務所に入った経験のあるさる高名な人から実態を聞いておるんです。革手錠をされたまま食事できますか、水飲めますか、大便できますか、想像してくださいと言われました。これは必ず一日続いていますから。
 それは、大変大事なことは、平成十一年十一月一日の新しい通達にはちょっと書き込まれているんですよ。「革手錠の使用方法」「(三) 使用中の者の食事、用便等に当たっては、手錠を一時外すこと。これにより難い場合には、できるだけ次のような措置を採ること。」「ア 片手の腕輪を外す。」「イ 両手又は片手を前にし、バンドを緩める。」いわゆる犬食いというんでしょうか、こういうことは本当に人権侵害そのものですから、そういう避ける配慮もあるんですが、まあしかし、こういうことまで通達にきちっと書き込まれているんですが、それが調査もできてないというのは、まことに私は、この事件の調査不十分というそしりを免れないと思うんですね。
 さてそこで、次の質問です。平成十三年夏ころ、まさにこの受刑者が保護房や革手錠で苦しめられたその真っさなかでありますが、平成十三年夏ころ、名古屋刑務所では革手錠使用要件を緩和したと言われます。既に当委員会にもそのような報告が出ております。昨日出された中間報告には、こんな記述があります。「方針を転換して、」「現場の刑務官に対し、要件があれば革手錠を使用するよう指示した。」こういう記載がここにあるんです。それが平成十三年夏、名古屋刑務所。
 そこでお聞きします。平成十一年十一月一日のあの通達のどこをどのように名古屋刑務所はここで緩和したんでしょうか。具体的に答弁ください。
山本委員長 樋渡刑事局長。(木島委員「刑事局、関係ないな。矯正だ」と呼ぶ)
 とりあえず。
樋渡政府参考人 とりあえずと申しますか、捜査の結果、報告を受けている範囲内でお答えいたしますと、花岡首席矯正処遇官におきまして、平成十三年夏ごろに至り、要件があれば革手錠を使用するよう指示したものでございますが、これはあくまで使用の要件があれば革手錠を使用するようにとの指示にとどまっておりまして、その要件には御指摘の平成十一年十一月の矯正局長通達に定められた要件が当然に含まれるものでありますから、矯正局長通達の要件そのものを緩和したものではなかったというふうに承知しております。
木島委員 何ですって。要件を緩和したものではない。
 これまでも法務省は、当委員会に対して、革手錠要件緩和が行われたと報告しているじゃないですか。たしか九月の革手錠致傷事件のときの法務大臣報告、我々もらっていますよ、大部のものを、去年、この委員会に。そのときにたしか、平成十三年夏、要件緩和がされたと書いてありましたよ。
 昨日私どもにいただいた「行刑運営の実情に関する中間報告」十五ページのところ、読んでみましょうか。「平成十三年夏ころに至り、被収容者の増加と精神障害を有する者など処遇困難な受刑者が増加するに及び、花岡首席矯正処遇官においても、このままでは所内の規律を維持できないとの危機感を抱くに至り、それまでの方針を転換して、前田副看守長ら現場の刑務官に対し、要件があれば革手錠を使用するよう指示した。」
 「方針を転換し」という言葉が使われているじゃないですか。だから、じゃ、それまでどうだったんで、この平成十三年夏、どう切りかえたのか、答弁してくださいよ、これ。
樋渡政府参考人 私がお答えするのもどうかと思うのでありますが、あくまでも、捜査の結果の報告を受けている範囲内でお答えいたしますと、名古屋刑務所は処遇困難な受刑者を多数抱えておりまして、同刑務所におきましては、受刑者に対し革手錠を使用されることが多かったのでありますが、平成十一年四月、新しい首席処遇専門官が就任した際、革手錠の使用は極力控えるとの方針を示し、さらに同年十一月には矯正局長により革手錠使用等に関する通達が発せられましたため、名古屋刑務所におきましても、従前に比し、革手錠の使用は控えられるようになったということであります。
 革手錠を使用した平成十四年五月及び九月の事案で起訴されている被告人前田は、同十一年二月から処遇困難者が集まる独居房を受け持つ舎房主任を務めていましたが、同年四月以降、刑務官に対して暴行の気勢を示した受刑者を制圧しても革手錠を使用する必要はないなどと、前記、先ほど申しました首席矯正処遇官らから指揮されたことに不満を抱くようになりまして、再三にわたり、その首席矯正処遇官に対し、規律維持のため革手錠を積極的に使用することを許可してほしい旨、働きかけておりましたが、その許可を得られないでおりました。
 しかし、平成十三年夏ごろに至りまして、処遇困難な受刑者が増加し、受刑者も定員を超えて約一千九百五十名に増加するに及んだことから、首席矯正処遇官もこのままでは施設内の規律が維持できないと考えて、被告人前田の意見を入れ、被告人前田ら刑務官に対し、それまでの方針を転換して、要件があれば革手錠を使用するように指示したというふうに報告を受けております。
木島委員 それが今、私は法務当局一連のごまかしだと思うんですが、要件があれば緩和したと。
 具体的に、死亡した受刑者の革手錠使用、法務大臣、よう見てください。いいですか。
 要件緩和があったのは、平成十三年夏ころだというんでしょう。たしか、この受刑者は平成十一年十一月十一日に入所していますよ。平成十二年の三月三十日の欄、見てください。午前七時九分に革手錠が使用され、午後四時四十三分に解除です。まあ、まともでしょう、こういうのは。二回目も、平成十三年の一月三十一日のうちの出来事です。午後零時十三分に使用され、午後三時十一分に解除。二時間ですよ。飯を食う時間は大丈夫でしょう、これは。三回目だってそうですよ、平成十三年一月三十一日でしょう。午後三時十六分に革手錠がはめられて、午後四時四十五分に解除ですよ。まあ、いいでしょう、こういうのは。
 ところが、私、これ見てみましたら、丸一日革手錠がやられたのが、四がそうです。平成十三年五月二日から三日にかけて、約丸一日。これが、平成十三年夏以前の要件緩和がされたと称する前の事件はこれだけです。ごらんください。五以下が非常に多くなっている。多いだけじゃなくて、五、六、八、九、十、平成十三年九月二十三日、平成十三年十一月二十二日、平成十三年十二月五日、平成十三年十二月十日、平成十三年十二月十二日、殺される直前まで丸一日というのが続いている。非常にふえていますよ。
 要件緩和の結果そのものじゃないですか。だから、本当に一日じゅう、真夜中まで革手錠する必要が本当にあったんだろうか、なかった。それは要件緩和の結果のなせるわざじゃないか。そう見るのが常識的な法律家の見方じゃないですか。そういう調査を徹底的に私はやらないかぬと思うんです。こういう流れの中で、ホースで肛門にまで水を浴びせかけて殺してしまったんですからね。こういう流れの中にあるんですよ、この暴行陵虐事件というのは。
 では、確認しますが、まだようわかりませんが、平成十三年夏、名古屋刑務所で行われたという革手錠使用緩和というのは、法務本省の承諾や法務大臣の決裁を得ていない、そういうことですね。
樋渡政府参考人 捜査の結果の報告によりますと、法務本省への報告も了解もないということでございます。
木島委員 私は、この答弁がおかしいというんじゃなくて、刑事局長が答弁するのはおかしいと思うんですね。矯正局の仕事ですよ。私は、刑事事件聞いているんじゃないんですから。矯正行政聞いているんですよね。まあいいでしょう。やめましょう。
 私は、法務大臣、この受刑者が、その年の十二月の十四日に、消防用ホースで水を浴びせかけられて、それが原因で死んでしまった。明らかに過剰な保護房収容そして革手錠の使用、その流れの中で出てきているということを考えると、平成十三年夏にこういう革手錠使用要件の緩和とか、異常な革手錠の現実的な使用、こういうことをきちっとチェックできていれば、消防用ホースによる放水受傷そして致死という異常な事件の発生は、そういう異常なあり方にちゃんとメスが入っていれば回避できたのじゃないかなと思えてならないんですが、どういう印象でしょうか。
森山国務大臣 確かに、一番最初の事件でございますので、このときの報告が正確に上がっており、事前にいろいろとチェックができれば、その後のさまざまなことは防げたかもしれない、防げる可能性が大いにあったというふうに考えます。
木島委員 それでは次に、事件そのもの、平成十三年十二月十四日午後二時二十分ころ発生した、消防用ホースの水の放水による直腸破裂、肛門挫裂創による致死事件についてお聞きいたします。これは、まず刑事局にお聞きいたします。
 本年三月四日、被告人乙丸幹夫に対する特別公務員暴行陵虐致死事件の起訴がなされ、続いて、本年三月二十日には岡本弘昌、高見昌洋に対する特別公務員暴行陵虐致死幇助事件の起訴がされております。公訴事実はどのようなものですか。
 それと二点目。これで、この事件の捜査、公訴提起は終結ですか。
樋渡政府参考人 お答えいたします。
 本年三月四日、公判請求に係ります被告人乙丸に対する公訴事実の要旨は、被告人は、副看守長として名古屋刑務所に勤務し、被収容者の戒護、規律維持及び警備等の職務を担当していたものであるが、平成十三年十二月十四日午後一時二十分ころ、同刑務所保護房において、懲役受刑者、当時四十三年に対し、懲らしめの目的で、その必要がないのに、臀部を露出させてうつ伏せになっている同人の肛門部を目がけ、消防用ホースを用いて多量に放水する暴行を加え、肛門挫裂創、直腸裂開の傷害を負わせ、よって同月十五日午前三時一分ごろ、同刑務所病室棟集中治療室において、同人を直腸裂開に基づく細菌性ショックにより死亡するに至らしめたものであるというものであると承知しております。
 また、本年三月二十日、公判請求に係る被告人岡本及び被告人高見に対する公訴事実の要旨は、被告人岡本は副看守長、被告人高見は看守部長として名古屋刑務所に勤務し、被収容者の戒護、規律維持及び警備等の職務を担当していたものであるが、同刑務所副看守長として同様の職務を担当していた乙丸幹夫が上記犯行を行ったのに先立ち、前記保護房内及び前記懲役受刑者の身体等に付着した汚物を除去する目的で同房内に立ち入った際、前記乙丸が上記懲役受刑者の身体に対して放水する可能性があることを認識しながら、同人をうつ伏せにした上、同人のズボンを引きおろすなどし、もって前記乙丸の上記犯行を容易にしてこれを幇助したものであるというものであると承知しております。
 なお、本件十二月事案につきましては、この三名の起訴をもって捜査は終了したというふうに聞いております。
木島委員 この事件は三名以外は幇助者はいないという認定ですか、検察は。
樋渡政府参考人 お尋ねにつきましてはそのとおりでございますが、委員長、先ほど私、公訴事実を読み上げました中で時間が間違っておりまして、平成十三年十二月十四日午後一時二十分ごろと申し上げましたが、午後二時二十分ごろの間違いでございますので、訂正をお願いいたします。
木島委員 質問を移りますが、私は、問題は、このときの乙丸らによる消防用ホース水の放水という暴行行為を当時の久保勝彦名古屋刑務所長が知っていたのか知らなかったのか、いつ知ったのか、根本問題だと思っているんです。
 それで、昨日法務省から出された行刑運営の実情に関する中間報告をそういう観点からずっと私なりに読んでみました。かなりこの事件の前後関係、記述はあるんですが、その肝心のところが見えてこないんですよ。判然としないんです、中間報告でも。
 それで聞きます。久保勝彦刑務所長は、乙丸らによるホース水の放水というこの事実をいつ知ったのか、どのように知ったのか、調査は進んでいますか。
横田政府参考人 お答えいたします。
 当時の所長は現在入院中でございまして、いまだ詳細な事情聴取が行えない状況にございますために、この当時の名古屋刑務所長が十二月のいわゆるホース事件におきまして被告人らによる暴行傷害事実を知ったのがいつかについて確定的なことは申し上げられませんが、これまでとりあえず調査したところによりますと、乙丸幹夫副看守長が逮捕され、容疑事実の概要が報道された本年二月十二日の時点ではないかと思われます。
木島委員 驚きましたね。当時の所長について、病気だからまだ調査は不十分、知ったのはことしの二月じゃないか、何を根拠にそんなことを言っているんですか。これは本当に大事なことですよ。根拠は何ですか。法務当局が今、当時の名古屋刑務所長が平成十三年十二月十四日の乙丸らによるホース水の放出、それを知ったのはことしの二月じゃないか、何が根拠ですか、それは。大変な答弁だと私は思いますよ。
横田政府参考人 これは、入院する前に矯正局の参事官らが現地名古屋刑務所において概略ヒアリングを行ったことが、関係者らに一わたりですね、そのときの結果でございます。
木島委員 いつ、だれが、どこで、刑務所長に対してヒアリングしたんですか。これは本当に大事ですよ。あり得ないんですよ、私に言わせれば。後でずっと幾つか質問やりますけれども、ことしの二月まで所長が知らなかったというのはあり得ないということを私は確信しているんでね。
 いやいや、今の質問に答えてください。今病気で入院中だ、調査できない、それは私も認めましょう。では、いつ、だれが、どこで、どんなヒアリングを当時の久保勝彦所長にしたんですか。
中井政府参考人 突然のお尋ねですので、記憶に従って申しますけれども、入院する直前に私どもの職員が事情を聞いたと承知しております。報告を受けています。(木島委員「いつか、時期を言ってください」と呼ぶ)入院の前だと聞いております。(木島委員「死んだ受刑者の入院の」と呼ぶ)いえいえ、御本人が入院される前に聞いていると聞いております。
木島委員 それはいつかと聞いているんです。平成何年何月。
中井政府参考人 久保元所長が入院したのは本年二月二十一日でございまして、その直前ころと聞いております。
木島委員 そうすると、何ですか。この問題が、この事件が一番伏せられていたんですけれどもね、確かに。隠ぺいされ続けてきたんですけれども、しかし現実には、革手錠死亡事件も発覚し、前の年の十月は革手錠致傷事件も発覚し、大問題になっていたわけですよ。ちょっと信じられないですね。
 では、次の質問に移りましょう。私は、当時の久保所長がこの乙丸らによるホース水の放水、これを当時知らないはずがないということを、ちょっと論を立てます。
 いいですか。本件受刑者は、さっきの保護房を見てください、革手錠使用状況を見てください、平成十三年十一月二十二日から事件発生の十二月十四日まで連続二十三日、保護房収容なんです。途中解除が一日あった、それを認めたとしても、十二月八日からこれは十二月十四日まで、確実に、完璧に連続七日間の保護房収容中の事件なんですよ。いいですか。また、本件受刑者は、革手錠使用のところを見てください、十一月二十二日以降、十二月十三日、事件の前日まで、ホースで水をぶっかけられる前日まで、これは五回、革手錠を使用されているんです。
 それで、私は、平成十一年十一月一日の矯正局長の通達を読みます。通達「一 留意事項」「(四) 戒具使用中又は保護房収容中の者については、巡回、監視用テレビカメラ等により、綿密かつ頻繁に視察し、その動静を的確に把握すること。」同じく「(五) 戒具使用中又は保護房収容中の者については、常に医師にその心身の状況を確実に把握させ、必要に応じて診察させること。」それから、同じ通達の「九 記録」「(三) 戒具使用中又は保護房収容中の者の動静は、少なくとも十五分に一回以上の割合で当該被収容者ごとに作成する書面に記録すること。ただし、特異な動静については、適宜視察表に記録すること。」こういう通達なんです。
 先ほど来、本当に適正に保護房収容がなされていますか、戒具、革手錠使用が本当に適正になされていますかと。答弁は、なされていますという答弁でしょう。
 それなら聞きますよ。どうですか。保護房収容中、十五分ごとにちゃんと視察をして書面にしたためろというんですよ。平成十三年十二月十四日午後二時二十分ころ、まさにホース水を浴びせかけられた時刻です。彼は保護房収容中であります。
 私がきょう提出した資料1―2を見てください。保護房収容解除の時刻、見てください。3「保護房収容・解除時刻」十一のところです。平成十三年十二月十四日午後三時二十八分解除。これは何で解除されたんですか。手術のためですよ。肛門裂創のためです、肛門縫合のためですよ。
 そうすると、どうですか。まさにホース水をぶっかけられた同日午後二時二十分ころから、肛門裂創によって、治療のため保護房解除になった午後三時二十八分の間まで、十五分に一度見るということになると、少なくとも四回、巡視の記録、視察表はなけりゃなりません。こんなこと、所長が知らないということはあり得ますか。
横田政府参考人 お答えいたします。
 先ほど申し上げましたように、当時の所長は現在入院中でございまして、いまだ詳細な事情聴取は行えないものの、これまで矯正局が行った調査の結果、本年、十二月事件におきましては、ホースの放水による暴行に関与した職員がその事実を隠ぺいし、名古屋刑務所の所長等の幹部職員は安易にそれら部下職員の報告をうのみにしたとうかがわれるところでございます。
木島委員 そうなんですよ、皆さんの報告書を見ると、みんな、やった職員のせいにしているんですよ。幹部職員が知ったかどうかまで書いていないんだけれども、全部乙丸らが隠ぺいしたことにしちゃっているんですよ。私、それがとんでもない中間報告のインチキ、ごまかしだと、それで今質問を詰めているんです。いいですか。
 では、資料要求を委員長にしたいと思います。
 この所長らによるその後の矯正局長や名古屋矯正管区長に対する報告がうそだったということは、ここに全部書かれています。全くインチキの報告がなされたということは、皆さん、ここに書かれております。
 そこで、改めて、平成十三年十二月十七日、名古屋刑務所から名古屋矯正管区への司法解剖が実施される旨の報告、それから二つ、名古屋刑務所長の矯正管区第二部長鍬間部長あて報告、司法解剖の結果報告と題する文書、それから三つ、平成十三年十二月八日から平成十三年十二月十四日までの保護房収容書きとめ簿及び視察表、決定的に大事な文書です。当委員会に提出されるように求めます。
山本委員長 理事会においてしかるべく協議させていただきます。
木島委員 資料の4―1を見てください。これがインチキな報告書なんです。「被収容者死亡報告」と題する、問題の、名古屋刑務所長が矯正局長と名古屋矯正管区長にあてた、法律に基づく、規則に基づく被収容者死亡報告であります。この「死亡に至る経緯」の中身が全部うそ偽りだったということは、この中間報告でも明らかにされています。現実に起訴されている公訴事実と全然違うということももう明々白々でありますから、きょうはそこは一つ一つ追及はいたしません。
 私が聞きたいのは、資料4―1を見てください。「名刑発第一一六号 平成十三年十二月十九日」、作成日付ですね、名古屋刑務所長の押印があります。矯正局長と名古屋矯正管区長殿となっています。
 ところが、昨日皆さんから私がいただいた行刑運営の実情に関する中間報告を見ると、名古屋事件が、ずっと調査結果が書かれているんですが、その十二ページのところによりますと、十二ページの下から三行目になるんですが、皆さんの調査結果によると、被収容者死亡報告がなされたのが、「翌十四年一月中旬に」と書いてあるんですよ。何でしょうかね、これは。(発言する者あり)そうなんですよ。被収容者死亡報告は平成十三年十二月十九日付の文書ですが、あなた方のきのうの中間報告は、これは平成十四年一月中旬に名古屋矯正管区及び矯正局に被収容者死亡報告がなされたという報告を私どもはいただいておるんです。
 どっちが本当なんですか。この十二月十九日というのはでっち上げで、本当は一月中旬だったという意味なんでしょうか。それとも、皆さんのきのうの中間報告が間違っていたということなんですか。
横田政府参考人 お答えいたします。
 本件の被収容者死亡報告は、名古屋刑務所において平成十三年十二月十九日付をもって作成された後、平成十四年一月中旬に送付され、矯正局においてはこの文書を平成十四年一月十六日に受理しております。
 お尋ねの、被収容者死亡報告が名古屋刑務所において平成十三年十二月十九日付をもって作成された経緯につきましては、同刑務所における事務手続によるものと聞いているところでございますが、なぜ当該日で作成されたのかは承知しておりません。
木島委員 これはえらいことですよ。死んだのは平成十三年十二月十五日だ。大変な死に方をした。それで死亡報告書が平成十三年十二月十九日に作成をされ、矯正局長や矯正管区長ですか、届いたのが一カ月もたった平成十四年の一月十四日、十六日、こんなことあり得るんですか、こんな重大なことが。
 そんないいかげんな組織なんですか、法務省の本省と矯正管区長と問題の刑務所との関係は。一カ月もたたないと物が行かないという、そんなシステムなんですか。大変なことですよ、これ。法務大臣、どうなんですか、これは。
横田政府参考人 御説明いたします。
 名古屋刑務所におきましては、本件、被収容者の死亡報告を平成十三年十二月十九日に起案、作成した後、所内決裁に回付いたしましたところ、所内決裁に時間を要し、結果的に同所から発送されたのが平成十四年一月中旬だろうというふうに聞いております。
木島委員 所内決裁に何で時間がかかったんですか、こんなもの。隠ぺいのためじゃないか。ちょっと大事な、本当に大事なところ、これ。名古屋刑務所ぐるみ隠ぺいかもしらぬのだ。
横田政府参考人 失礼しました。現在承知しているのはこの限りでございます。
木島委員 では、所長が判こを押したのはいつなんですか。平成十三年十二月十九日なんですか。それとも文書が完成されて発送直前の平成十四年一月十四日、十六日ごろなんですか。判こを押した日時を特定してください。大事な文書ですよ、これは。
横田政府参考人 ただいまの時点では承知しておりません。(発言する者、離席する者あり)
山本委員長 質疑終了後、理事会でしかるべく検討させていただきますので、どうぞ理事の皆さんはお席にお帰りください。
木島委員 委員長、私の質問時間、ちょっととめておいてください。もったいない。
山本委員長 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
山本委員長 速記を起こしてください。
木島委員 ではしっかり、調査は非常に大変だということを承知しています。刑事事件になっているということも承知しています。しかし、だからといって私は、矯正局が、法務大臣が、法務行政として徹底的に真相を明らかにする義務が免除されるわけでもないし、回避していいわけじゃないんですよ。
 私は、法務大臣のこれまでの衆議院予算委員会での答弁、それは間違っていると思うんです。刑事事件になったからさわっちゃいかぬということじゃないんですよ。矯正局としての責任はあるんですよ。法務大臣の責任はあるんですよ。私は、刑事事件になったからさわれないというのは、それは隠ぺいだと思うんです。ということだけ言って、余りかっかしてもいけませんから、穏やかに質問いたします。
 中間報告を読みました。今の一連の名古屋刑務所長から名古屋矯正管区長や法務省矯正局長に上がった種々の報告書が全くうそ偽りであったことが全部ここに書かれております。なぜうそ偽りが行われたかについてもある程度の分析が書かれております。しかし、中間報告そのものに、このような誤った報告が行われるに至った経緯の詳細については十分に解明されていないと記載されております。中間報告そのものが何でこんなうその報告がされちゃったのか十分に解明されていないと自覚しているようですから、それは徹底的に調査してほしいと思うんです。
 私は、皆さんの調査は当てにならぬからと言うと言い過ぎですが、もう内部調査じゃだめですから、この国会で徹底的に、なぜ誤ったうその報告が上がったか徹底的にこれからも追及していきたいし、ちょっとその立場から、一番肝心かなめのところだと思いますので、質問します。
 いいですか、中間報告にはこんなことが書かれているんですよ。十二月十五日早朝の名古屋地検への通報の時点から客観的事実に反する事実が通報された、地検に通報するときからもううそが始まったと書いてあるんですよ。「消防用ホースによる放水の事実は隠蔽され、」ということも書いています。すごいですね、隠ぺいしたということを皆さん、みずから認めました。肛門部の裂傷は、受刑者が自分で直腸を傷つけたものと推定されるとの誤った推定が伝えられている、そういうこともこの中間報告に書いてあります。そのとおりでしょう。
 しかし、私、これ、全部文章を、眼光紙背に徹するといいますか、これでは言い過ぎですが、本当に行間を読むようにして見ましたが、結局この中間報告は、現場の刑務官において隠ぺいが行われ、客観的事実に反する事実がつくられ、肛門に受刑者がみずから指を突っ込んだなんという誤った推定が流布されていたと、法務大臣、いいですか、すべて現場の刑務官のせいにしているんですよ、この報告書は。
 肝心かなめの名古屋刑務所長が、そういう事件があったときに、知らないはずがないんです、さっき言った、十五分ごとに監視して帳面に書かなきゃいかぬのですから。知らないはずがないんですが、一体名古屋刑務所長がいつ知ったのか、知って目をつぶっていたのか、何にもこの報告書には書いていないんだ。一番肝心なことが書いていないんですよ。ということは、この中間報告は、名古屋刑務所長という刑務行政の最高幹部を、幹部職員をかばったものじゃないかと私は思わざるを得ない。法務大臣、どうですか。
森山国務大臣 非常に難しい問題で、かつかなりの日数がたっておりますので、恐らく調査するにはいろいろと支障があったのだろうと思いますが、しかし、先生が御指摘のような点もあり得たかと思います。
 調査検討委員会におきまして、わかりましたことをとりあえずまとめたのが中間報告でございますので、さらに必要であれば詳しく調べる必要があると思います。
木島委員 私は、この調査で一番大事なのは、とりあえず調査でわかったことを記述して我々に報告したと言いますけれども、大臣、そうじゃないんですよ。現場の乙丸らが悪いことをやった、とんでもないことをやったということはもう明らかなんです。検察が起訴しているんですよ。刑事裁判になっているからもういいんですよ、そんなことは。問題は、名古屋刑務所の幹部が知っていたかどうか、さらには矯正管区長が知っていたかどうか、さらには本省、刑事、矯正局長が知っていたかどうか、さらには法務大臣、あなたが知っていたかどうかこそが今問われているんですよ。
 ところが、この中間報告、どうですか、みんな、末端の乙丸らがうそをついた、隠した。名古屋刑務所長が知っていたかどうか一言も、調査もしていない。
 こういう調査報告しかできないのはなぜか。調査している主体が法務省の官僚だからでしょう。事務次官が最高責任者になり、刑事局長、矯正局長、保護局長、こんな連中みんな集まって一生懸命やったら、名古屋の刑務所の所長をかばってあげよう、この累が本省に及ばないようにしようとなるに決まっているじゃないですか。そんな調査では全然だめだということを私は言っているわけです。
 死亡報告を見てください。これには、平成十三年十二月十四日午後二時二十分ころ、転房するためですか、保護房を開扉した際、職員が事案者の着用していたズボンに血痕が付着していたのを発見したとの記載があります。これが真っ赤なうそだというんですね。ズボンに血痕なんか付着しているはずがないんです。消防ホースでぶっかけて、血が出たので慌てて本人を保護房から解除して手術させたんですからね。そうでしょう。
 しかし、平成十五年三月四日起訴に係る公訴事実、さっき刑事局長に読んでもらいました、平成十三年十二月十四日午後二時二十分ごろ、さっき一時間間違ったのは私は故意じゃなければいいと思うんですが、まさに同時刻、二時二十分ころは、まさに乙丸容疑者らによって受刑者に対する消防用ホースを用いた放水というとんでもない、前代未聞の暴行陵虐致傷行為が行われていた、まさにその時刻なんですよ。同じ時刻が書かれているんですよ。まさに消防ホースによって暴行陵虐が行われた二時二十分ごろ、その同じ時刻に乙丸らが受刑者のズボンに血痕が付着していたのを発見したなんという、そういうことを書いているということは、私は、やはり天網恢々疎にして漏らさずだと思うんですね。
 同じ時刻をここに書き連ねた、それに刑務所長が判を押しているということは、私は、名古屋刑務所長は平成十三年十二月十四日午後二時二十分という時点もう既にホースで放水が行われたということを知っていたということが、はしなくも、同じ時刻を書き込んでしまったということでわかってしまったんじゃないか、私は推理作家でもありませんが、こう思わざるを得ないのですが、どうですか。
横田政府参考人 お答えいたします。
 平成十三年十二月十四日午後二時二十分ころ、保護房に収容されている当該受刑者を他の保護房に転房させる際、移す際、同人のところへ赴いた職員が、同受刑者のズボンに血痕の付着を認めたとして上司に報告したことから、お尋ねの被収容者死亡報告が作成されたというふうに聞いております。
木島委員 だから、それは全部うそだったということがこの中間報告に書いてあるし、起訴状に書いてあるじゃないですか。
 十二月十四日午後二時二十分ごろというのは、まさに乙丸ら三人が寄ってたかって受刑者のズボンを下げ肛門に目がけてホースの水をぶっかけて挫裂創を発生させた、そして、血が出たんでしょう、慌てて保護房を解除して、刑務所内の医療施設に送り込んだ。そうでしょう。
 もうこれはこれで終わりましょう。
 私は、この資料4―1、2、そしてこれには死亡診断書が添付されているんです。きょうの質問の結果、これが一カ月おくれで矯正局長と名古屋矯正管区長に上がったそうですが、どうですか、これを見てください、この文書、死亡に至る経過、この文章だけでいかに疑問が噴き出してくるか。私、幾つか挙げますよ。何にも基礎知識のない人がこの報告書を見た場合の疑問ですよ。
 1、直接死因である急性心不全と肛門直腸裂創との因果関係。全然わかりません。
 2、直腸肛門裂創が生じた原因。解剖医が、本人が肛門から指を挿入し、直腸裂傷したと断定しているんです、解剖医が。解剖医がそんなこと断定できるはずないので、その断定した根拠は何かという疑問が、この文書そのものから出てきます。
 3、さっきの質問にかかわります。十二月八日からの保護房収容中の異常行動の反復、また、ズボンに血痕付着、これはうそなんですが、こう書かれている。ズボンに血痕付着との関係。ズボンに付着した血痕の量はどのくらいかなというのは、だれだってこれは疑問に思うんです、この文書を読めば。そういう疑問。
 4、止血、直腸粘膜縫合手術をした医師、職員が、裂創の方法、病状について本人に問いただしたが、「本人は何ら申立てすることなく、痛み等の訴えもなかった。」という記載があるんですよ。本当でしょうか。私は、嫌な言葉だけれども、本人、死んでいます、死人に口なし。これだけの肛門裂創があって痛みの訴えがなかったなんていう記述、信用できますか、この文書を読んで。そういう疑問が出てきます。
 5、司法解剖が行われましたことがわかりますが、その結果の記述が全くないこと。
 それで、これだけの疑問がすぐ出るんですよ、これを見れば、常識的に。ですから、保護房収容時から死亡時までの詳細について、当時の法務省本省中井矯正局長、名古屋矯正管区長、これらは、名古屋刑務所に詳細な事実関係の報告を求めるのは当たり前、調査に乗り出して当然だったと思うんですが、法務省本省矯正局や名古屋矯正管区はそのような行動をとったでしょうか。お答えください。
横田政府参考人 お答えいたします。
 お尋ねの十二月事件につきましては、平成十三年十二月十五日、名古屋刑務所から名古屋矯正管区に対しまして、名古屋刑務所において受刑者が保護房収容解除後に急性心不全で死亡した旨の報告があった、さらに、司法解剖が実施された後の平成十四年一月十五日、受刑者が汚物を壁に塗りつけるなどの異常行動を反復していたこと、解剖医から聴取した所見は、自傷行為によると思われる腹膜炎による死亡、急性心不全であった旨の被収容者死亡報告があったところ、名古屋矯正管区におきましては、当該受刑者の異常行動から、肛門から指を挿入してたまたま直腸に傷をつけたことも十分に考え得るものと判断し、特に事案を究明するための調査を行わなかったというふうに聞いているところでございます。
 また、矯正局に対しましては、死亡当日の平成十三年十二月十五日、名古屋刑務所において受刑者が保護房収容解除後に急性心不全で死亡した旨の報告が名古屋矯正管区から本省担当者にあり、さらに、司法解剖が実施された後の平成十四年一月十六日、矯正管区に対するものと同様の被収容者死亡報告が名古屋刑務所からあった、これは先ほどのとおりでございますが、当時、特に問題ないと判断いたしまして、事案を究明するための調査を行わず、法務大臣への報告もしなかったと聞いております。
木島委員 質問に答えていないんですよね。
 私は、医者じゃありません、医学の知識はありません。今は真実が明らかになっています。起訴もされています。乙丸らの犯行もわかっています。しかし、そういうのを仮に全然わからなくても、医者の知識なくても、この被収容者死亡報告の「死亡に至る経緯」の欄を読んだだけでも、人が一人死んでいるんですよ、保護房収容中だというのは明らかでしょう、これに書いてあるんですから。それで、ちょっと調べれば、革手錠もやられていたというのもすぐわかるんですよね。常識的に、これは普通の死に方でないなんというのはわかって当然なんですよ。
 だから、ここのときに矯正局長が動かなかった、名古屋矯正管区長も動かなかったんでしょう。それで、何かこれまでの国会の答弁によると、法務大臣にまで報告しなかったというんですから。本当かどうか、私は疑っているんですけれども。そういう行為自体が、もう大失態、大失点と言わざるを得ない。
 そこで、私は、当時の名古屋刑務所長は今病気だとお聞きをいたしましたが、参考人として、当時の名古屋刑務所長、司法解剖した医師、縫合手術をした医師、三人を当委員会に呼んでください。そして、資料要求は、縫合手術をした診療録、検視結果報告書、司法解剖記録、解剖所見、これらを提出することを求めます。
山本委員長 理事会においてしかるべく協議させていただきます。
木島委員 それで、最後、じゃ、法務大臣に聞きますが、平成十三年十二月十五日、法務省本省担当者に報告があったが、「特に問題はないと判断し、当時、法務大臣へは報告しなかった。」こういう記載があります。本当に、法務大臣、これ、全然報告受けなかったんですか。改めて質問します。
森山国務大臣 ございませんでした。
木島委員 次の質問、情願について移ります。
 今まで明らかにしたように、本件受刑者は、平成十一年十一月十一日、懲役五年五月の刑で名古屋刑務所に入所してから、死亡した平成十三年十二月十五日の間、保護房収容、金属手錠、革手錠使用を繰り返されております。そのあげくの果ての死亡であります。この間、こうした処遇に不満を持ち、この受刑者は情願の手続をとろうとしませんでしたか。法務省、答弁願います。
横田政府参考人 お答えいたします。
 この当該事件にかかわります受刑者が、施設に法務大臣に対する情願書の作成を申し出たものの、法務大臣に進達するに至らず、これを取りやめたことが二回ございます。
 このうち、一回は、作成を終えたとして大臣あてに進達を申し出ましたが、その日のうちに本人が申し出を取り下げ、その際、作成した情願書は本人がみずから破棄したとの記録があるということでございます。
 また、ほかの一回につきましては、情願書の作成を申し出ましたものの、実際に作成することなく取りやめたとの記録があるということでございます。
木島委員 大変な事実が出ましたね。
 じゃ、その二回の日付、言ってください、いつか。
横田政府参考人 時系列的に申し上げますと、平成十三年七月二日に、法務大臣あての情願書作成の申し出が出ております。これは許可になっております。そして、七月九日にこの作成期間の延長の出願がございまして、許可。十二日にこの情願書の進達を出願いたしまして、その日に取り下げております。
 それから、もう一回でございますが、十三年の八月八日に情願書の作成を申し出ましたが、即日、保留したいということもまた申し出ております。そして、十日にこの作成の取り下げをしております。
 以上でございます。
木島委員 先ほどの資料1―1、「革手錠の使用開始・解除時刻」を見てください。まさに、この四と五の間ですね。名古屋刑務所が革手錠使用の緩和をした、まさにその時期、二回にわたって情願申請した。情願の中身、何だったんでしょうか。答弁願います。
横田政府参考人 お答えいたします。
 情願の中身はわかりません。
木島委員 どういうことですか。情願の中身わからない、そんなことあり得ますか。こういうのは身分帳にきっちり書き込まれるんじゃないんですか。
横田政府参考人 一件目につきましては、情願書を取り下げまして、みずから破棄しているということでございます。それから、二件目は作成に至っておりませんので、わからないということでございます。
木島委員 みずから破棄って、破棄させられたんじゃないですか。その辺、調べついていますか。
 まさに、その次の年の九月事件、私、去年質問しましたよ。不服申し立てすると弾圧されるんでしょう。去年の九月の革手錠致傷事件は、外部の、弁護士会、名古屋弁護士会に人権申し立てをしたんですよ。それを懲らしめの対象にした、それが懲らしめの理由にされたんでしょう。どうですか、それは。
 みずから破棄した。とんでもない答弁。本当に本人の自主的な意思で、進達まで行ってですよ、情願書作成の許可があって、情願文書を書いて、進達の許可まで出て、みずから取り下げるなんてあり得ますか。これは、本当に大変な問題。
横田政府参考人 お答えいたします。
 先ほど申し上げましたように、みずから破棄したという記録があるということでございます。したがいまして、もう一つ、その取りやめた理由につきましても、関係書類が、当局に申し立てておりませんので、これにつきましても不明でございます。
木島委員 では、その記録はどういう記録でどういう文書なのか、だれが作成したのか、いつ作成したのか、何と書かれているのか、全部読んでください。将来、提出を求めますけれどもね。まず全部読んでください、記録があるというのなら。
横田政府参考人 お答えいたします。
 これは視察表に書かれていることでございまして、これには、前田主任立ち会いの上シュレッダーにて廃棄するという記載があるということでございます。
木島委員 前田主任立ち会いでシュレッダーにかけたということですか。例の、かの前田主任ですね。同一人物ですね。これまでの革手錠の、いろいろな事件を起こしている、今起訴されている前田主任、同一人物ですか。
横田政府参考人 お答えいたします。
 同一人物でございます。
木島委員 それだったら、もうそのこと自体でこれは自主的な取り下げじゃなくて、情願、せっかく進達まで行ったのに押しつぶされた、前田が押しつぶした。一見、明白じゃないですか。
横田政府参考人 お答えいたします。
 委員は、強制的に取り下げていないかという御指摘でございますけれども、本件につきましては、関係職員らが勾留されておりましたり関係書類が押収されている等の事情がございまして、公判の推移も見ながら、今後調査を進めてまいりたいと考えております。
木島委員 だから、刑事事件に名をかりた隠ぺいだと言うんですよ。こんなの、刑事事件は関係ないですよ。前田という、皆さんの部下だ、刑務官。私は、これは本当に、法務大臣、大事だと思うんですよ。
 平成十三年七月、情願が進達まで行った。恐らく、私の推測ですが、この平成十三年五月ごろの革手錠の使用、それから保護房の収容状況、余りにひどいということが訴えじゃなかったんでしょうかな。そうしたら彼は殺されなくて済んだんじゃないですか。決定的ですよ、これは。そんな調べはあなた方は中間報告で全然一言も書いていない。何ですか、この中間報告は。法務大臣、こんなのでいいんですか。
森山国務大臣 今わかっている限りのことを御説明申し上げたと思いますけれども、その中間報告をつくっております間に感じましたことは、名古屋の刑務所におきましては、情願の件数が、収容人数が多いにもかかわらず比較的ほかの刑務所に比べ少ないということがわかりまして、これは何か問題があるのではないかということが察せられる事態になりました。これは別途、別にきちっと調べなければいけないということになっておりまして、これから十分調べたいというふうに考えております。
 この件がどのようないきさつであったかはわかりませんけれども、名古屋の刑務所全体としてそのような傾向があるということがわかったわけでございます。
木島委員 わかっていることを中間報告には書いた。とんでもないですよ。
 私は、この質問をするに当たって法務当局に、この受刑者、死んだ受刑者は情願したことがありますかと質問してみたら、ぱっと来たんですよ、二回しているということ。わかっているじゃないですか。何でそんな大事なことをこの報告書に書かなかったんですか。わかっていることを、根本的に、基本的に大事な、彼の命にとってかかわることを。一般的な情願なんてないんだ、彼自身が情願していたんだから。何でそんな、書かなかったのか、わからない。
大林政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほどから委員が決裁関係あるいは今の情願の関係、経緯についてお尋ねでございます。
 これは前々から申し上げているとおり、今は刑事被告人がいて、勾留されている者もいます。しかし、今私もお聞きいたしておりまして、確かに疑問な点が多々あるように思います。調査検討委員会では、事実調査を、先ほども言いましたけれども、一般的に本件だけじゃなくて死因の関係の調査をするつもりですが、今おっしゃられた、先ほどから疑問になっている点につきましては、改めて私どもの方、メンバーで再度調査いたしまして、報告書なりにするかどうかちょっとまた検討させていただきますけれども、今の勾留されている被告人も含めて事情を聞きたいと思いますので、御理解いただきたい、こういうふうに思います。
木島委員 実は、きのう私が皆さんからいただいた中間報告、本当に大事なことが書かれています。
 資料一三―二というところに「大臣情願の取下率」、調べがついているんですよ。驚くべきことに、名古屋刑務所は、平成十三年に取り下げ率がウナギ登りに高くなった。いいですか、平成十年取り下げ率一六・六七%、平成十一年一二・五〇%、平成十二年三五・二九%。問題の、今私が質問している、二回取り下げさせたでしょう、平成十三年取り下げ率五八・八二%。平成十四年には八・三三に落ちた。ところが、府中とか大阪とか全国は物すごく取り下げ率は低い、平均一五%。まさに力ずくで取り下げをさせてしまったんじゃないか。
 そうすると、この取り下げ率五八・八二%というのは、命がけの情願を抑え込んで取り下げさせて、そしてその後、この死亡事件、ホース事件ですからね。私は、ほかにも、こういう情願をしたけれども抑え込まれて取り下げをさせられてすさまじい仕打ちに遭っている事件が、隠れているのがたくさんあるんじゃないかと思えてなりませんので、徹底的に調査をしてほしい。
 それで、資料要求をもう一回やります、委員長に。情願に関する資料要求です。平成十三年七月二日の出願、七月十二日取り下げの情願の出願書、情願書取り下げ書、進達書、その他、関連書類全部出してください。平成十三年八月八日出願、八月十日取り下げの出願書、取り下げ書を出してください。
 時間が迫っていますから、ホース水の放水による陵虐致死事件は、これで終わります。
 次に、平成十四年五月二十七日に起きた革手錠暴行陵虐致死事件についてお聞きします。こちらの方は、この報告書によってもこれまでの国会答弁でも、この事件が起きたのは平成十四年五月二十七日ですが、五月末ころ矯正局長から法務大臣に報告したとなっております。この中間報告の二十ページにも、その旨簡単に書かれております。
 それでは、法務大臣に聞きます。これはあなたが直接報告を受けているんですから、記憶があるでしょう。いつ、もっと正確な日、どんな報告を矯正局長から受けたのか、しっかりと答弁ください。
森山国務大臣 お尋ねの件につきましては、当該事件の発生当時である平成十四年五月二十七日、第一報として、名古屋刑務所から受刑者死亡事案について矯正局及び名古屋矯正管区に電話にて報告されまして、翌二十八日、名古屋刑務所から事案の概要に係る緊急報告が発出され、続いて四回目の追報告の発出にて司法解剖時における解剖医の所見を随時当局及び同管区へ報告されております。
 その後、被収容者死亡報告が同年七月に発出されまして、その中で司法解剖時の総合所見として、死因は現在のところ不詳である、肝挫裂による腹腔内の出血、血腫が死因に何らかの形で関与したことは否定できない、直接の死因については各臓器の病理学的解剖を実施しなければならない旨報告がなされているものと承知しております。
 私がこのことを報告を受けましたのは、死亡のありました数日後の五月の末ごろですね。当時の矯正局長、鶴田という人でありましたが、名古屋刑務所で保護房に収容し革手錠を使用していた被収容者が死亡した。そして、司法解剖が行われて、今後、捜査機関による捜査が引き続き行われることになった。さらに、同事案については、死因が現在不詳であるため、既に名古屋刑務所長から名古屋地方検察庁に通報の上捜査を依頼しており、公正な第三者的立場からの捜査によって死因等の事実が明らかにされるのを待って、その結果を踏まえて必要に応じて所要の措置を講ずることにしたいという趣旨の口頭による報告を伺いました。
木島委員 大臣、この事件の最大の特徴は何かといったら、この死亡させられた受刑者は、名古屋刑務所に入所したその日のうちに殺されているんですよ。受刑者が名古屋刑務所に入所したのは、平成十四年五月二十七日であります。その日のうちに保護房に収容され、その日のうちに革手錠をかけられ、その日のうちに革手錠で死亡してしまったんですよ。午前九時五十分入所です。死亡確認は午後八時三十分です。名古屋刑務所に入った十時間四十分後に死んでしまっているんです。司法解剖結果からも、横隔膜挫裂、腹腔内四百ミリリットルの血液が出てくる。革手錠による暴行陵虐の疑い。容易に解明できる事件だったんです。あなたは報告を受けているんです、五月の下旬。日にち、言わないんですけれども。大臣は、もうこれは重大問題だという認識、持ったですか。印象をお聞かせください。
森山国務大臣 重大な問題だということを感じました。
木島委員 それは五月末の時点で感じましたか。
森山国務大臣 報告を聞いたときにそう思いました。
木島委員 もう質問を終わります。最後にこれを指摘しておきます。
 ところが、その直後、平成十四年六月六日、法務大臣は、全国の矯正管区長、刑務所長、少年刑務所長及び拘置所長会同をしまして、全国の刑務所長を集めて、全国の矯正管区長を集めて法務大臣訓示しているんです。今もホームページに載っていますよ。この事件の直後ですよ、重大な事件だと感じた直後。こういうふうに書いてあります。「このような過剰収容時代を迎えた現状の下で、行刑施設の運営が全般的に良好に推移しておりますことは、皆様方を始めとする職員の方々の御努力のたまものであり、心から敬意と謝意を表する次第であります。」と。
 そんな認識、全然ないじゃないですか。現実には名古屋でこんな事件が起きていた。前の年の十二月には、ホース死亡事件もあった。それは法務大臣まで報告なかったというのが、今のところそういう状況になっていますが、少なくとも五月の革手錠死亡事件は報告があった。良好にいっているなんて言ったら、名古屋の刑務所長、何と思って帰りますか。おれたちの刑務行政、よかったと法務大臣に言われた、もっと徹底的に締め上げようということになるんじゃないでしょうか。
 私は、もう時間ですから終わりますが、名古屋刑務所事件のたった二つの事件だけ挙げました。もう法務大臣、やはり大臣の資格ないですね。大臣、やはり辞任すべきじゃないか。
 それと、ほとんどまともな調査ができていないということ、きょうの私の質問によっても明らかだと思うんです。徹底的にうみを出さなきゃだめだということを、そのためにこれからも法務省は、刑事事件、真っ最中ですから大変だと思います、関係者が入院していたりして大変なのはわかりますが、そんなことを乗り越えて、人が死んでいるんですから、調査されんことを心から期待いたしまして、質問を終わります。
山本委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時三十五分散会


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