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第8号 平成15年4月18日(金曜日)

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平成十五年四月十八日(金曜日)
    午前九時一分開議
 出席委員
   委員長 山本 有二君
   理事 佐藤 剛男君 理事 塩崎 恭久君
   理事 園田 博之君 理事 吉田 幸弘君
   理事 河村たかし君 理事 山花 郁夫君
   理事 漆原 良夫君 理事 樋高  剛君
      太田 誠一君    岡下 信子君
      小西  理君    左藤  章君
      笹川  堯君    下村 博文君
      中野  清君    浜田 靖一君
      平沢 勝栄君    保利 耕輔君
      星野 行男君    保岡 興治君
      吉川 貴盛君    吉野 正芳君
      中村 哲治君    日野 市朗君
      水島 広子君    山内  功君
      上田  勇君    白保 台一君
      黄川田 徹君    木島日出夫君
      中林よし子君    保坂 展人君
    …………………………………
   法務大臣         森山 眞弓君
   法務副大臣        増田 敏男君
   法務大臣政務官      中野  清君
   最高裁判所事務総局総務局
   長            中山 隆夫君
   最高裁判所事務総局刑事局
   長            大野市太郎君
   政府参考人
    (内閣審議官
    兼司法制度改革推進本
    部事務局長)      山崎  潮君
   政府参考人
   (法務省大臣官房司法法制
   部長)          寺田 逸郎君
   政府参考人
   (法務省民事局長)    房村 精一君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    樋渡 利秋君
   法務委員会専門員     横田 猛雄君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月十八日
 辞任         補欠選任
  後藤田正純君     岡下 信子君
  笹川  堯君     浜田 靖一君
  上田  勇君     白保 台一君
  石原健太郎君     黄川田 徹君
  不破 哲三君     中林よし子君
同日
 辞任         補欠選任
  岡下 信子君     後藤田正純君
  浜田 靖一君     笹川  堯君
  白保 台一君     上田  勇君
  黄川田 徹君     石原健太郎君
  中林よし子君     不破 哲三君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 裁判の迅速化に関する法律案(内閣提出第九八号)

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     ――――◇―――――
山本委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、裁判の迅速化に関する法律案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として司法制度改革推進本部事務局長山崎潮君、法務省大臣官房司法法制部長寺田逸郎君、民事局長房村精一君及び刑事局長樋渡利秋君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
山本委員長 次に、お諮りいたします。
 本日、最高裁判所事務総局中山総務局長及び大野刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
山本委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山内功君。
山内(功)委員 民主党の山内功でございます。
 自分の息子が人の倫理に反してとんでもない事件を起こした、世間も見放している、しかし母親だけは息子の更生を信じて、ずっと時間をかけてこつこつとお金をためて弁償金に回す、たまたま判決の期間が二年を過ぎてしまった。しかし、これはやはりやむを得ない事態ではないかな、それに対して適正な判決をしてやる、それが裁判所の姿でもないかなと私は思っております。
 審理期間が二年を超えるのは刑事事件では〇・四%、民事事件では七・二%にすぎないという統計結果もございますが、なぜこの法律を作成する意味があるのか、お尋ねします。
森山国務大臣 委員おっしゃいますとおり、近年、裁判にかかる期間というのは割合に短くなりつつございまして、おっしゃるような傾向があらわれているわけでございますけれども、しかし、複雑で専門的な、あるいは国民の大勢が注目するような重大な事件等につきましては、依然としてかなりの長期間がかかっているというのが事実でございます。
 この法案は、このような事案、事件も含めまして、第一審の訴訟事件の一層の迅速化を図ろうとするものでございまして、そのための基本的な枠組みを規定する点に意義があるというふうに考えます。
 このような観点から、本法案では、二年という審理期間の目標を掲げた上で、運用面におきまして、充実した手続の実施によりできる限りこの目標の実現を目指すとともに、審理に長期間を要する事件についてはその原因を明らかにするなどいたしまして、目標の実現に必要な制度、体制の整備を図るという総合的な方策を実施することによって、全体として速めようというふうに考えているわけでございます。
山内(功)委員 しかし、例えば民事事件で七・二%しか超えていない事件、この事件はやむを得なかったんじゃないかと思うんですけれどもね。例えば医療過誤とか建築紛争、知的財産権を争う訴訟、公害や薬害、あるいは行政事件、労働事件など、当事者が多数で証拠が偏在をしている、専門的知識も必要だ、そういう事件が今まで二年を超えていたのであって、これは、こういう事件が七・二%もまだあるから二年以内に抑えるべきだという考え方は、少しむちゃな気もするんですが、どうでしょうか。
山崎政府参考人 委員御指摘のとおり、二年を超える民事事件のかなりのものにつきましては、今御指摘がございましたような専門性を有する事件、これが占めているという実態であろうというふうに思われます。
 ただ、もともと、事件が難しいあるいは非常に当事者が多数であるとか、いろいろそういう命題は抱えていると思いますけれども、その中でも、運用等でここ年々その審理期間は短縮されてきているところでございまして、その中でもいろいろ工夫の余地は十分にあるというふうに私どもは理解しているわけでございます。
山内(功)委員 刑事事件でいえば、例えば強姦事件などのように、事件当初は被害者の感情も非常に激しいものがある、なかなか示談にも応じてくれないというような事件の類型もあると思うんですね。それから、民事事件でいえば、遺産分割で親子が骨肉の争いをしている、あるいは境界の問題で、隣人あるいは部落やその地域での、隣人だけではなくて住民同士の対立にまで発展しているような、そういう問題もある。
 だから、当事者間の感情的な対立の激しい場合もあるわけですから、二年の要件を課すということはやはり酷な場合もあるんじゃないかと思うんですけれども、どうでしょうか。
山崎政府参考人 ただいま委員の方から二つ事例が紹介されましたけれども、確かに、民事でいえば感情の対立の激しい事件、こういうものがございます。それは私どもも承知しているつもりでございます。そういう事件について、どのように感情を落ちつかせていくかということ、これも裁判の一つの使命であるということも私は承知しているつもりでございます。
 こういう事件につきましても、それをどの程度の範囲でやっていくかということです。これは、拙速な裁判は避けなければなりませんけれども、やはり可能な範囲内、可能なその審理の期間の目標、その中で感情を和らげながら決着をしていくということが必要であろうというふうに考えているところでございます。
山内(功)委員 しかし、先ほど述べた刑事事件のような、当初は被害感情もかなり深刻なものがあっても、時間がたって示談に応じてくれるというケースも結構あるわけです。
 それから、刑事事件に限って言えば、否認事件で、捜査段階の調書の任意性とか信用性とか、争われる事件が二年を超えて終局に向かっていくという事件も結構あるわけですから、余りこの二年ということを例えばそういう事件に当てはめるとやはり拙速感が否めないんですけれども、どうでしょうか。
山崎政府参考人 この法律の目的では、やるべき手続はきちっとやる、要するに、充実した手続はきちっとやりながら、その範囲内で審理期間を二年を目標としてやっていこう、こういうことを掲げているわけでございます。
 したがいまして、合理的な審理方法であれば、必要なものは二年を超えるということだってあり得るということでございまして、その一つの目標を立てて、可能な限りそこでおさまるように裁判をやっていくということでございまして、何が何でもすべての事件がそれでは超えたら不当であるかということを言っているわけではないというふうに御理解をいただきたいと思います。
山内(功)委員 私は、長期化している事件を迅速化するためには、まず第一に、これを担う担当の裁判官や検察官、そしてそのもとで働いておられる職員の皆さんを大幅に増員することがまず一番最初に求められる国、政府の姿勢だと思うのですが、どうでしょうか。大臣にまずお願いします。
森山国務大臣 全くおっしゃるとおりでございまして、裁判を速くいたしますためには人的体制の充実が何よりも必要であるということは、私も全く同意見でございます。
 充実した手続のもとで裁判の迅速化を図るために、現在、司法制度改革推進計画に従いまして、裁判所、検察庁の人的体制の充実等の必要な体制の整備を行っているところでございますが、本法案が成立いたしました場合には、引き続き、この法案の趣旨や最高裁判所による検証の結果を踏まえまして、その時々における事件数、犯罪動向等も考慮いたしました上、関係省庁とも御相談しながら、充実した手続のもとで裁判の一層の迅速化を実現していきたいというふうに考えておりまして、増員を含めて必要な体制の整備を行いたいと考えているところでございます。
山内(功)委員 その適宜適切な増員を図っていくというのは、それはもう全く最低限必要なことだとは思うんですが、例えばこれから司法試験の合格者が三千人にふえていく、そうなったときに、例えば裁判官の数は今後十年間でこれだけの人数にしていきますとか、検察官の数はこれだけの人数にしていきます、あるいは十年間で二倍化することを数値目標として設定してこれからの増員計画を図ってまいりますというような、具体的な話をできればお聞きしたいと思うんですね。
 例えば、現場の裁判官が、例えば最高裁に、自分は事件数が多くて処理し切れないので裁判官の数をふやしてくれというのはなかなか言いにくいと思うんです。なぜならば、事件数を適切に、迅速にこなしていくということを、最高裁からそういう裁判官像を求められている、最高裁におられる方以外の裁判官はそういうふうな評価をされていると思っていますから、やはり自分に能力がないというふうに見られるのではないかというような意見を最高裁に言うことはちょっと難しいと思うんですね。
 だから、そういう意味でも、最高裁判所としては、その裁判官の数とか職員の数などについてはどういうような考えを持っておられるのでしょうか。
中山最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
 裁判官の適正な数というのが一体どのくらいかというのは、これは非常に難しい問題でございまして、事件数がどうであるかとか、あるいは訴訟手続、裁判手続のあり方がどんなものになってきているかとか、あるいは裁判官を支える書記官等の人的体制がどうなっているか、OA等のそういった物的体制がどうなっているか、そういったものを総合的に考えてやっていかなければならないわけでありますけれども、今委員がおっしゃいましたように、法曹人口のうちどのくらいが裁判官であるというところからこれが適正であると言うのは、率直に申し上げて、なかなか難しいところがございます。
 そこで、最高裁判所では、平成十三年の四月に司法制度改革審議会に対して、当時の裁判所の民事、刑事あるいは家事、少年、全部含めまして審理期間というものをもっと短くする、もちろんこれは適正さをないがしろにしてはならないことであることは確かでございますけれども、当時、例えば証人等の人証を調べる民事訴訟事件の平均審理期間は二十・三カ月でございました。これを十二カ月で平均審理期間を持っていくというふうにするためには今後十年間どのくらいの裁判官が必要であるかというものを、現場の裁判官の声も聞きまして、無理のない裁判官の一週間の生活というものをシミュレーションして打ち出したものがございます。それが四百五十人、十年間で四百五十人の裁判官がふえれば現在の事件数のもとではそういったことができるということになっておりまして、この四百五十人という数字に基づきまして、ここ二年間、毎年四十五人ずつの増員をお願いし、それを実現してきたところでございます。
 四十五人といいますと、いささかシャビーではないかとお考えかもしれませんけれども、これは横浜地裁本庁とほぼ匹敵する人数でございまして、毎年その横浜地裁本庁ができてきているというところで、裁判所の方もそのあたりを考えてきているということをぜひとも御理解いただきたいと思っております。
 今後、この迅速化法ということになりますと、私どもは、平均審理期間を一年に持っていくというよりも、全部を二年以内にというところをまず努力目標にせよということでありますから、さらにそれに上乗せしていろいろ考えていかなければならないのではないかというふうに考えているところでございます。
 以上です。
山内(功)委員 人的の問題もそうですけれども、裁判所の法廷があいていない、だから次の審理の期日を先延ばしせざるを得ないというようなことも聞いたことがございますので、物的な設備も含めて、しっかりと最高裁の方も問題意識を持って対応していただきたいと思います。
 それから、迅速化を推進するための第二の問題として、民事事件においては、証拠の偏在を正して実質的に当事者対等を実現する証拠収集制度の強化、例えば文書提出命令を徹底する、実効化していく、あるいは、大きな組織、団体で容易に立証が可能な訴訟については、そちらの側に立証責任をどんどん転換して訴訟の進行を進めていく、そういう制度的な解決を図って民事訴訟の改革をしていくべきではないかと思うのですが、この点について御見解をお願いします。
森山国務大臣 御指摘のとおり、民事事件において当事者が必要な証拠や情報を適切に収集することができるようにするということは重要であると考えております。
 そこで、現在国会に提出しております民事訴訟法等の一部を改正する法律案におきまして、訴えの提起前における証拠収集等の手続を拡充いたしまして、相手方に対して主張、立証の準備に必要な事項を照会することができる手続や、文書の所持者に対してその送付を嘱託することができる手続などを設けることにしております。このように、証拠収集制度を強化することによりまして、民事裁判の充実、迅速化が図られるものと考えております。
 なお、今後とも、公文書を対象とする文書提出命令制度などの証拠収集制度のあり方については検討を続けてまいりたいと考えております。
山内(功)委員 それから、刑事事件につきましては、第三番目の問題として、争点を早期に明らかにして争点集中審議をする前提としての起訴後の速やかな検察官手持ち証拠の開示や、密室における捜査過程を公判において客観的に検証できるようにする捜査過程の可視化が不可欠だと考えますが、法務大臣はどのように考えておられるのでしょうか。
森山国務大臣 刑事裁判の充実、迅速化の実現のためには、十分な争点整理のための新たな準備手続の創設と、証拠開示の時期、範囲等に関するルールの明確化が必要でございます。特に、導入が予定されている裁判員制度の対象となる事件につきましては、職業裁判官でない裁判員にとってわかりやすい裁判を実現するとともに、可能な限り審理期間を短くして裁判員の負担を軽減するという見地からも、その必要性は高いというふうに考えております。
 そのような見地から、現在、司法制度改革推進本部におきまして、充実した争点整理のための新たな準備手続の創設と証拠開示の拡充について検討が行われているものと承知しておりまして、法務省といたしましても、最大限の協力をしたいと考えております。
 なお、捜査過程の可視化に関しましては、平成十四年三月十九日に閣議決定されました司法制度改革推進計画におきまして、被疑者の取り調べの適正を確保するため、取り調べの都度、書面による記録を義務づける制度を導入することといたしまして、平成十五年半ばころまでに所要の措置を講ずるということになっておりますことから、法務省におきまして、これに基づき、書面に記録すべき事項等について、関係省庁とも協議を重ねつつ、技術的、実務的な見地から鋭意検討を続けているところでございます。
山内(功)委員 私の方で第一から第三まで指摘をさせていただきましたけれども、今お話を伺っていれば、まだまだ今の制度自体が不十分で、これから運用面あるいは制度の拡充を含めてしていかなければいけないということになるわけですね。
 私、今のこの法律にかかわっているというか最大の影響を与えている司法制度改革審議会が裁判所を利用した人にアンケート調査をしたところ、裁判に勝った人を含めて、この裁判に満足をしたかどうかについては、一八%の人しか満足感を覚えていない。このアンケート結果、大変気になるんですが、大臣、このアンケート結果を見られて、国民は、迅速な裁判はもちろん要望しているでしょう、だけれども、迅速な裁判だけではなくて、自分たちの訴えにしっかりと十分に耳を傾けてくれて、内容のある、だから、勝った人は満足、負けた人も納得できるというような審理をしてくれる裁判の姿を望んでいると思うんですね。
 そうすると、この法案で「二年以内のできるだけ短い期間内に」と書いてあるんです。これは二年以内にということで絞っているし、しかも、プラス、できるだけ短い期間にと、二重に絞っているんですね。司法改革審の満足度調査のアンケート結果がすごく気になるので、この条文を、例えば二重に絞っているどちらかを削るとか、できれば二年以内にとか、そういうような条文の体裁にできないんでしょうかね。どうでしょうか。
山崎政府参考人 ただいまの点でございますけれども、これは目標でございます、二年というのは。
 それで、現実には、この条文でも手当てがされておりますように、やはり充実した手続、これもしなければならないと言っているわけでございますので、やるべきことはやった上で二年の目標に近づけていきましょうということを言っているわけでございまして、目標ができるだけ二年に近くとかいうことになると、結局何も目標を決めていないということと同じ意味を持ってしまうということから、目標を二年と掲げて、では二年、そこに滑り込めばいいのかということでございますけれども、そうではなくて、それでもやはりできるだけ短い期間内にということを目標に掲げているわけでございまして、これをどちらかを削るということは難しいというふうに考えております。
森山国務大臣 今委員がお示しになりましたアンケートの結果でございますけれども、これは、私の承知しているところでは、必ずしも速さだけを問うたものではないようでございますが、いずれにしましても、裁判について、勝ったか負けるか、どちらかの当事者は必ずしも満足していないといいましょうか、納得していないという人もいるかと思います。
 しかし、一般に、世間一般としては、裁判にかかわった当事者以外の人は、新聞その他で目にする、そのときそのときの世の中を非常に揺るがした大事件が大変長くかかっていて、五年も十年も、あるいは二十年近くもかかるというようなケースを見ますと、裁判というものはもっと速くしてもらえないものかというふうな一般的な世論があることもまた確かではないかと思いますので、今山崎局長が御説明いたしましたような方向で、一つの目安をつくって、そのために努力をしていこうということは御理解いただけるんではないかと思います。
山内(功)委員 この法律では裁判所や当事者の迅速化に対しての責務も規定されているので、少しお伺いしておきたいと思います。
 この裁判所の責務の対象となる手続主宰者には、鑑定人や調査官、書記官、調停委員は入るのでしょうか。
山崎政府参考人 手続を主宰する者ということでございますけれども、その中に典型的に含まれるのは裁判所、裁判官でございますが、そのほかに調停委員会等も含まれますので、お尋ねの調停委員は調停委員会を構成する者として含まれるということになろうかと思います。
 これに対しまして、裁判所等を補助するにすぎない者というものについては含まれないというふうに考えておりまして、例えば書記官、調査官等がそれに当たるわけでございます。
 ただ、この点は委員御案内のとおり、書記官が独自の権限に基づいて、例えば支払い督促、これは手続を主宰するわけでございまして、そういうものについてはここの主宰者に含まれますけれども、それ以外の補助業務を行うという場合には含まれないというふうに解釈をしております。
 それからもう一つお尋ねの、鑑定人等でございますが、これは証拠方法でございまして、そういう証拠方法に当たるようなものについては、これは含まれないというふうに考えているところでございます。
山内(功)委員 税務訴訟や特許訴訟などで税理士や弁理士が訴訟に関与するようなこともこれから出てくるわけで、いろいろな、裁判手続に関係する人がふえてくるとは思うんですが、この司法改革で一番の目玉は裁判員制度だと私は思うんですね。
 裁判員制度が採用されるのならば、迅速に手続がどんどん進んでいくことによって、それまで全く裁判所に関与をしていない、いわば手続的な言葉自体にも余りよく理解していない一般の市民の方が裁判に関係するわけですから、迅速、迅速というスローガンよりは、より充実とか納得という言葉に重点を置いて訴訟の終結を見るというような形に訴訟手続というのは変わっていくんじゃないんでしょうか。
山崎政府参考人 確かに、裁判の充実、これは当然必要なことでございます。裁判員の方々を迎えて裁判を行っていくという場合に、まさに理解をしていただいて充実した裁判を行うということは当然に必要なことだろうと思います。
 そういう中で、そういうことを行いながら、それでは裁判に長い時間かけていいかということは、これは裁判員の方々、一般の国民の方でございますので、御協力をいただくわけでございますので、できる限りそれは短い期間で行っていくということ、やはり両方が必要になろうかというふうに私は理解をしております。
山内(功)委員 それはもちろんそうなんですよ。裁判員の方が裁判所に拘束される期間は短いほど市民生活にも影響がないでしょうから、それは当然のことなので、そういう意味でも、最も迅速化の協力義務が、課せられると言ったら失礼かもしれませんけれども、だから、裁判員という方は、もちろん迅速化というのは必要だと思うんです。だけれども、その次の条項に当事者の責務まで入っていますね。
 私たち、こうやって法務のこととか少しずつわかってき出した者にとっては理解できることでも、一般の人には余り理解できないこともあると思うんですよ。すごく卑近な例としては、ちょっと速記も工夫していただきたいのですけれども、例えば、一般の人が、裁判所に行くまでは遺言(ゆいごん)だと思っていた、隣同士との土地の争いは境界(きょうかい)争いだと思っていた、それから家が抵当で売りに出されるというのを競売(きょうばい)だと思っていた。裁判所に入ったら、いや、それは境界(けいかい)なんです、遺言(いごん)なんです、競売(けいばい)なんですというふうに、非常に簡単な例を言いますけれども、裁判の用語というのは本人訴訟の本人にとってもすごく、言葉だけでもちょっと遠い存在に最初は圧倒されると思うんですね。
 だから、裁判員の方が手続主宰者の中に入るのかどうかも含めて、もう一度御見解をお伺いしたいのですが、それもそれとして、一般の方に迅速化、特に本人訴訟で初めて裁判所の門をくぐった方にも、あなたには二年以内のできるだけ短い期間に訴訟を終結させる義務があるんですよ、責務があるんですよというようなことを言うのはちょっと酷なところもあるんじゃないかなと思うんですが、どうでしょうか。
山崎政府参考人 ただいま二つ御質問かと思いますが、まずは裁判員制度の問題でございます。
 これは、まだ今検討中でございまして、裁判員の位置づけをどうするかということによって性格が変わってくるというふうに私ども考えておりますけれども、手続を定めていく主体という権限、それを与えるということになればこれは受訴裁判所を構成するということと同じになるわけでございますので、この手続の主宰者に当たる可能性はございます。
 それから、その手続的な権限はない、事実の認定と罪の重さを決めていくんだ、あるいは有罪、無罪を決めていくんだということになれば、それは手続の主宰者ではございませんので、その場合にはここに含まれないということになるということで、いずれにしましても、まだちょっとそこの検討がきちっと行われておりませんので、それいかんによって入ったり入らなかったりということになろうかというふうに予想をしているわけでございます。
 それからもう一点は、当事者、例えば本人訴訟でということで言われておりますけれども、それを二年以内のできるだけ短い期間に終わらなければなりませんよという責務を課して本当にわかるのか、こういうことでございます。
 私ども、当事者でありましても、裁判所の公的なものを利用いただくわけでございまして、やはりその当事者の方にも協力をしていただき、それをサポートする代理人の方、それからもちろん裁判所、これがすべてがひとしく、裁判をできるだけ短い期間に終わらせるようにやっていこうということをそれぞれ意識していただいて進める必要があろうかというふうに思っておりまして、やはりその点は当事者の方々にも十分周知をして意識をしていただくということが必要かというふうに考えております。
山内(功)委員 私が先ほどお聞きしたのは、特に初めて裁判所の門をくぐるような裁判員とか、あるいは本人訴訟の、特に簡裁事件が多いんでしょうけれども、本人で訴訟を行う場合の本人、そういう人たちにとって、迅速化だけを要求するのじゃなくて、やはりその人たちにわかる、理解のできる言葉、仕組みで充実した審理をさせて、少なくとも一八%以上の満足度を与えて納得をさせて、できれば一審できちんと双方が胸にすとんとおりる判決や和解ができる、そういうような仕組みがやはり必要じゃないかなと思うんですね。本来、裁判を主宰する裁判所の責任だと思うんですけれども、それを当事者、あなたにも責務があるんですよというような法案にちょっと聞こえてくるものですから、その点をちょっと指摘させていただいているわけです。
 この「当事者」の中には、刑事被告人も含まれることになるんですか。
山崎政府参考人 ただいまの御質問の前に、今委員がおっしゃられたことで、やはり当事者の方に裁判について理解が可能な易しい言葉あるいは説明で理解をしてもらった上で、その上で手続を進めていくということは、これは当然私もそういう配慮が必要であるということは考えておりまして、その上で、なるべく短い期間内にということでございます。
 当事者の責務に関しましては、ここの七条でごらんいただくとおわかりかと思いますけれども、「可能な限り裁判の迅速化に係る第二条第一項の目標が実現できるよう、手続上の権利は、誠実にこれを行使しなければならない。」ということでございまして、乱用してはいけませんよということを申し上げているだけでございまして、そこの点は、何が何でも、じゃ、裁判所が訴訟指揮をやってその手続の流れに全部従えということを言っているわけではございません。当然、主張できる権利は主張していただく、しかし乱用してはいけない、こういうことをうたっている、当然のことをうたっているということでございます。
 その中に、御指摘の刑事被告人も含まれるということでございます。
山内(功)委員 刑事被告人については、憲法三十七条で、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利が保障されています。
 実際、無罪を争っている刑事被告人、あるいはいろいろな事情があってどうしても執行猶予をとりたい刑事被告人が、やはりそれは争う権利があると思うんですね。先ほど言われたような乱用にわたる場合は、それは議論も時間があればしたいですよ、どういう場合に乱用となるような。だけれども、ちょっときょうは時間がないので。被告人が争ってもいい権利があると思うんです、こういう場合には。
 そうすると、二年以内に終局させる義務を刑事被告人にも課すことは、それはちょっと憲法上問題があるんじゃないかと思うんですが、大臣、どうでしょうか。
森山国務大臣 裁判の迅速化を図るに当たりましては、制度面、体制面の整備だけではなくて、個別事件における関係者の努力もなければ、その目標を達成することは困難でございます。
 そこで、この法案におきましては、受訴裁判所等に、可能な限り裁判の迅速化に係る目標を実現するように努力する責務を規定しているわけでございますが、これに対しまして、裁判の当事者等の立場は、手続の主宰者として迅速な裁判を実現すべき立場にある裁判所とはおのずと異なる面もありますので、本法案では、当事者等の責務について、可能な限り裁判の迅速化に係る目標が実現できるよう、「手続上の権利は、誠実にこれを行使しなければならない。」と規定するにとどめているわけでございます。
 これと同じ趣旨の規定は、現行の刑事訴訟規則第一条第二項などにも既に置かれているわけでございまして、このような内容の責務を当事者に課すことに憲法上の問題はないかと思っております。
 さらに、裁判の迅速化に当たって、当事者の正当な権利利益を害することがあってはならないということは当然でございまして、この法案では、その旨も明示しているところでございます。
山内(功)委員 事務局長、今大臣が刑訴規則の話をされたんですけれども、それは法律よりももっと下位の法律ですよね。
 やはり刑事被告人は、だから先ほど言いましたけれども、防御する、正当な権利を行使する権利がありますでしょう。だって、無罪なら、やはり無罪という判決が出なくちゃおかしいでしょう。
 ですから、今、当事者と書いてあって、それを条文上いじれないというなら、刑事被告人についてはこういうふうに考えますよとか、当事者の責務として厳しい書きぶりになっているので、少し、正当な権利の行使は制限しませんとか、手続上の権利にそんなに影響を及ぼしませんとか、そういうような、少なくとも刑事被告人を意識したような何か書きぶりはできないんですか。
山崎政府参考人 刑事被告人の関係で、刑事訴訟規則で定められているということの御指摘でございますが、確かに法律にはございませんけれども、その法の精神を受けていることは間違いないわけでございます。
 それから、民事訴訟に関しては、これは法律上で手当てがあるということでございまして、その内容は、法律で決めるか規則で決めるかといういかんにかかわらず、常識的な、乱用はいけないということを言っているわけでございますので、それは常識的な規定であるというふうに理解をしております。
 私ども、この法案で、では、被告人の権利はどうあるべきかということでございますけれども、必要な権利は行使していただくということが前提でございまして、これを誠実に行使しなければならないということだけを言っているわけでございまして、当然、必要なものは権利行使をするということが前提でございます。そういうことのために、その注意のために、二条の三項に「当事者の正当な権利利益が害されないよう、手続が公正かつ適正に実施されることが確保されなければならない。」というふうにうたっているわけでございまして、まさにそのことを規定しているわけでございます。
山内(功)委員 検証のことについてもお聞きしておかなければなりません。
 検証をすると条文に書いてありますが、検証の主体を最高裁のみとしています。それは、まず、なぜでしょうか。裁判官は、検証される側の立場にあるのじゃないでしょうか。検証される側が検証する側に立つというのは、少しおかしなことにもとれると思います。
 それから、最高裁のみと規定しておられるのですが、政府、法務省は、二年以内の制度設計に向けてのそれこそ検証はされないのでしょうか。
山崎政府参考人 ここでうたっている検証でございますけれども、これは、例えば手続に要した期間とか、その長期化の原因等、調査分析をして行うわけでございますけれども、これに必要な資料は、手続を実施する裁判所において最もよく収集することができるという性質のものでございます。このような調査分析を行う場合には、裁判所における個々の手続の審理に密接に関連するという調査分析が不可欠となるわけでございまして、個々の裁判の独立との関係、これに十分に配慮をしなければならないという性格のものでございます。
 したがいまして、裁判所の内部以外の政府、法務省がその調査に加わるということにつきましては、やはり個々の裁判の独立という点を考えるといかがなものかということから、ここからは除外をしているということでございます。
山内(功)委員 もし、二年以内の制度設計をしっかりとやるということでしたら、例えば、検証は、最高裁だけではなくて、弁護士や検察官、マスコミなどを含めた学識経験者らが行うべきではないかと思いますが、その点はどうでしょうか。
山崎政府参考人 確かに、この法案では、検証の主体を最高裁とするということで、それが相当であるということで規定をさせていただいておりますけれども、ただいま御指摘のとおり、最高裁が検証を実効的に実施するというためには、やはり、調査の方法、調査結果の分析等についても、検察庁、弁護士、弁護士会あるいは学識経験者、そういう方の意見を聞く場を設けることが考えられますし、また、調査の実施等に関しましても、検察庁あるいは弁護士会、それに御協力をいただくということも必要になってくるというふうに考えられております。
 だから、実際の運用上、適切な工夫がなされるということを期待しておりますし、最高裁判所の方でも今それをお考えだろうというふうに私どもは考えております。
山内(功)委員 最高裁判所がさまざまなことを検証した結果、一般の人に向かって、この点が皆様方が誠実に権利行使をしていませんよというような内容が公表されると、そのことによって、国民に裁判を受ける権利についての萎縮効果が働くのではないか、裁判を受ける権利を侵すことになるのでないかという危惧もしているんです。
 裁判の独立を侵害してはならないというような条項をしっかりと入れ込んでいただきたいと思いますし、身近で頼りがいのある司法の実現に全力を挙げていただきたいと思うのですが、最後に、大臣と最高裁から一言ずつ伺って、終わりたいと思います。
森山国務大臣 最高裁判所による検証に当たりましては、裁判所における個々の手続の内容に関連する調査分析が不可欠になると考えられますが、その場合には、憲法上保障された裁判官の独立に影響を及ぼすことがあってはならないことは当然でございます。
 最高裁判所におかれましては、検証の実施に当たって、この点についても適切に配慮されるものと認識しているわけでございます。
中山最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
 最高裁判所としても、この検証ということが実際に実施されるということになりました場合には、裁判の独立、裁判官の独立に十分配慮しなければいけないと思っておりますし、また、その検証の結果というものが、国民が裁判を利用するに当たって阻害するようなことのないように、使い勝手をよくするようなものの形で、その結果というものを反映していくべきだというふうに考えていることだけを申し上げておきたいと思います。
山内(功)委員 終わります。ありがとうございました。
山本委員長 次に、山花郁夫君。
山花委員 山花郁夫でございます。
 質問に先立ちまして、法務大臣、先日の本会議の質疑の中でも少し驚いたんですけれども、例のイラク攻撃があったときの閣議の話であります。
 小泉総理は、イラク攻撃が、米国によります攻撃が始まってから数時間後に、その方針を支持するという声明を出されましたけれども、閣議の折にはそういった話が個々にはなかったと。私はてっきり、総理がああいう方針を出されたわけですから、閣議でそういう方針だと、つまりは、この内閣ではそういう方針でいくんだという話があったんだと思っていたんですけれども、そうではなかったようですが、それは間違いないんですね。
森山国務大臣 閣議において、そのようなお話はございませんでした。私個人にも特別にお聞き合わせもございませんでしたので、そのようなことを申し上げたわけでございます。
山花委員 私、まだ一期目の議員なのでよくそういったことはわからないんですが、ただ、非常に不思議な感じがするんですよ。つまり、かなりこれは日本国にとって、どういう選択をするのかということは重要な問題だと思うんですけれども、そういうことについて閣僚の皆さんに意見を諮られていないと。
 率直な御感想として、そういうことでも構わないと思われますか、それとも、いやそれはもうちょっと丁寧にやった方がいいんじゃないかと。いかがでしょうか。
森山国務大臣 この間の答弁は、私に対してということであったのでそういうふうにお答えしたんですが、当然、外務大臣その他、ほかの大臣にもあるいはお聞きになったかもしれないと思います。しかし、総理大臣が各方面からの情報を収集されて、そして御自分で最高責任者として判断されたことであるというふうに私は理解したわけでございます。
山花委員 ただ、我が国は大統領制をとっているわけではありませんから、議院内閣制をとっていて、政府の方針といったときには、大統領の方針ではなくて内閣の方針、一体性を持った内閣の方針のはずであります。ですから、確かに外務大臣には相談をされたかもしれませんし、一々個別、本当に、例の名古屋の事件のときに、逐一捜査情報を全部法務大臣に上げろと言っているということではなくて、大事なことはやはりちゃんと上げなければいけないという話をしたときに極めて類似した状況だと思うんですけれども。
 いろいろな役所がありますよ、厚生労働省もあれば文科省もあれば、そこでの政策について逐一閣議で全員の合意を得て、法的な建前としてはそうなんでしょうけれども、というわけにはなかなかいかないとは思います。ただ、今回の本当にいわば国の安全保障にかかわる問題を、外務大臣と、状況はわからないですよ、外務大臣と総理だけで決められたのではないかもしれません、防衛庁長官なりなんなり、あるいは有事関連ということでその他関係閣僚いらっしゃいますから、国家公安委員長であるとかそういう方には諮られたのかもしれませんけれども、本来であれば、やはり閣議の中できっちりとした方針を出されて、あるいは、事態は動いていますから、中身、完全にコンクリートはしていないまでも、方向性については例えば関係閣僚に一任をするという確認ぐらいはしておくべきではなかったかと思うんですけれども、今までの御説明ではそれもなかったような気がするんですけれども。
 二点あります。つまり、何か一任するというような話が、その程度の話はあったのかなかったのか、仮になかったのだとすると、やはり国家の命運にかかわることについてはキャビネットとしての合意が必要ではないかと思われるんですけれども、その点についての御所見をいただきたいと思います。
森山国務大臣 私は、この間の問題についてはいろいろな情報がたくさんありまして、総理がそれらを収集されて慎重に考えられ、必要な人には相談されたかもしれません。その結果、結論を出されて決定されたということは、それはそれなりにごもっともであり、納得できると思います。
 これから起こるかもしれない幾つかのいろいろな問題、さまざまあるかと思いますが、それはその問題によって、またやり方が違うのではないでしょうか。
山花委員 今、有事の関連の議論もございますけれども、安全保障にかかわるときには、我々のスタンスはやや政府とは違うのかもしれません。つまり、今、今回の決定について必要な方には諮ったのかもしれないというお話でしたけれども、米国の攻撃を支持するということは、間接的には我が国もテロの対象となる可能性が出てくる問題であります。
 そうであるとすると、幸いなことに今のところそういう事態にはなっていませんけれども、我が国の中で何か重大な事柄が起こる可能性もあって、そうすると、今議論されている法案ではなくて現行法の枠内で緊急事態に対応する必要が出てくるかもしれない。つまり、国内であれば警察力でしょうし、場合によってはそれは現行の法制の枠内での自衛隊の活用という話も出てくるかもしれない。そうしたときに、いかに人権侵害を最小限にとどめながらそういった安全保障を確保していくかということが必要になるわけですから、私は、法務大臣も、こういった決定をするに当たっては、人権については責任を持たれているわけですから必要な方であると思いますけれども、今回はそういう話がなかったということなんだと思います。
 この点については、きょうは法案の日ですのでこれぐらいにとどめさせていただきたいと思いますけれども、本来は法務大臣もかかわるべきではないかということは申し上げておきたいと思います。
 ところで、今回のこの法律案でありますけれども、できるだけ二年の範囲内で裁判を終わらせましょう、こういった話になっております。本会議でも指摘をさせていただきましたけれども、私は、今回のこの法律案についての立法事実がよくわからないところがございます。法務大臣の御答弁についても、複雑、専門的な事件や国民が注目する重大事件において長期間を要するものがある、私はそのことは否定はいたしません。ただ、ここのところを全体として見たときに、訴訟が長引いているというような印象は受けていないんですけれども。
 最高裁に伺います。平均の審理期間、地方裁判所における第一審、民事であれば通常訴訟で結構ですので、少し長いスパンで、五年なり十年なり前から現在まで延びている傾向にあるのかどうかということについて、お尋ねいたします。
中山最高裁判所長官代理者 民事の第一審通常訴訟事件の平均審理期間から申し上げますと、十年前の平成五年は十・一月、平成十年は九・三月、昨年の平成十四年度が八・三月となっております。また、刑事第一審通常訴訟事件の平均審理期間は、平成五年が三・四月、平成十年は三・一月、平成十四年が三・二月となっております。
山花委員 このように、民事は、十年前が十・一月が、八・三月になってきております。刑事事件は三・四から三・二で、誤差の範囲内かもしれませんけれども、若干短くなっております。
 だんだん短くなっている傾向にあるのをさらに加速させるということなのかもしれませんけれども、しかし、資料配付をお願いいたしております、委員のメンバーのところにもお手元に届いておりますけれども、その八・三月の平均の内訳を見てみますと、このようになっております。
 民事訴訟事件について、六二%の事件が六月以内で終わっております。プラス一七・一%、約八割近くが八カ月で終わっている。二年を超えるのはわずか七・二%にすぎません。刑事訴訟事件に至っては、九二・四%の事件が六月以内で終わっております。今の御説明ですと、平均で三・二カ月ということですから、もっと言えば、この九二・四%を占めるこの六月以内というのもほぼ三カ月以内で終わっていると。平均ですから、数字的にはそういうことになります。二年を超えるのはわずか〇・四%にすぎないわけであります。
 こうやって見ますと、何で今回のような法案が出されてきたのか、私には大変理解に苦しむわけであります。つまり、二年以内にほとんどの訴訟を終わらせましょうなんという目標は既に達成されているわけですよ。つまり、今、平均の時間が例えば民事で八・三月ですから、六カ月以内に終わらせましょうとか、それでも反対される方もいるでしょうし、問題だという方もいらっしゃるでしょう。ただ、中身の賛否は別として、これはあくまでも論理の話、立法事実の話です。
 六カ月以内のものを例えば三カ月以内にしましょうという目標を立てられるのであれば、中身の賛成、反対は別として、それは理屈としてわかりますし、刑事訴訟事件について、今三・二月が通常だから、一カ月で終わらせましょうというのは、それはそれとして目標としてわかります。また、期間だけの問題ではないかもしれません。実質的な、法廷を開くのを何日ぐらいを目安としましょう、そういうことならまだわかります。
 ただ、今回の法案で、何でこういう二年という数字が出てきたのか、その根拠についてどういうことなのか、改めてお尋ねしたいと思います。
森山国務大臣 御指摘のとおり、最近は民事、刑事ともに期間が短縮される傾向がございまして、それは大変いいことだと喜んでいるわけではございますけれども、一方において、非常に大勢の国民の注目を浴びた重大事件につきましては、一部ではございますが、非常に長くかかっているということもまた事実でございまして、そのようなものがみんなの目に触れることが多いということもありまして、裁判というと長くかかるという印象を持っている国民が結構たくさんいるわけでございます。
 この法案は、このような事件も含めまして、第一審の訴訟事件の一層の迅速化を図りたいということを考えまして、国民が納得できる合理的な期間であり、そして制度、体制の整備を通じて実現が可能であるということを考えまして、とりあえず二年ということが一つのそのような期間ではないかというふうに考えたわけでございまして、その上で、その運用面において、充実した手続の実施によってできる限りこの目標の実現を目指すとともに、審理に長期間を要する事件についてはその原因を明らかにするなどして、目標の実現に必要な制度、体制の整備を図るという、総合的な方策を実施するということによって迅速化をしようと思っているものであります。
 二年以内のできるだけ早い期間にということでありますので、現在も二年を切っているものもたくさんございますけれども、そういうケースでも少しでも早くということを目指しているわけでございます。
山花委員 必ずしも納得のできる話ではないんですよ。
 というのは、今の御答弁からも明らかなように、まず一つは、国民の耳目に触れるような事件というのは大変長いものがあると。それはそのとおりだと思います。本会議でも申し上げましたけれども、過日結審いたしましたリクルート事件の裁判などでも、マスコミも、長過ぎるじゃないかという意見、大変多うございました。
 ただ、言ってみれば、統計的に言えば、日本の裁判が長過ぎるというのはかなり誤解に基づいているわけでありまして、諸外国と比べても決して長くないですよ、日本の裁判というのは。ただ、極めて特殊なケースがあって、それが印象に残っているということであれば、それは、だったら、国民の皆さん、それは誤解ですよということを言えば済む話であって、その上でその誤解、要するに、大変こういう言い方を議員がするのはいかがなものかと自分でも思いますけれども、国民の多くの方が誤解されていて、実態はかなり違うわけです。そして、いわば、国民の皆さんが大体納得されることで二年というお話でしたけれども、誤解に基づいた認識を根拠にして二年という数字が出てきているというような話ではないですか。
 本来、役所というのは、例えば、私、何で今回はそんなに役所の方が国民の方の、大変結構なことだと思いますよ、国民の意見を聞いて、大体それが納得するところだというのは。でも、ふだんの仕事ぶりと違いませんか。国民がどう言おうと、これが正しいんだと言えば、そうやって何か頑張られるじゃないですか。今回、何でこんなことになったのか。
 もっと言えば、小泉総理の司法制度改革推進本部顧問会議におけるあいさつ、去年の七月五日のことです。この方は、わかっていらっしゃるんだか、わかっていらっしゃらないんだか、とても司法制度改革本部の本部長の言葉とは思えないようなことを言っていますね。裁判の結果が必ず二年以内に出るよう改革していきたいと。先ほど来の御答弁とは全然違うことを言っているわけですよ。必ず二年以内に出るように改革していきたいと。刑事、民事とも、地裁の判決が出るまで五年、十年という時間が費やされる場合がある現状はひど過ぎると。ひど過ぎると言っているんですよ。二年以内という目標の達成が困難であるというなら、これを可能にする仕組みを考えなければいけないと。言ってみれば、全く現状がわかっていない方の発言のような気がします。
 本来であれば、こういう委員会でも、本部長が出てきて、どういう認識でこういうことを言われたのか、そして今回の出てきている法案の中身と違うのか、あるいは先ほど来の答弁が事実に反することを言われているのか、このときの本部長の発言と現在出てきている法案は、もし先ほど来の御答弁が間違いないということであれば、この発言はもう撤回されたのかどうか、確認しなきゃいけないような話だと思います。
 必ず二年以内に出るように改革していきたいと言っていますよ。常識的な目標を掲げたとか、努力するとか、努力目標だなんという話じゃないですよ。これを受けてこの法案、出てきたんじゃないんですか。いかがなんですか。
山崎政府参考人 確かに、総理大臣の御発言を受けたということで、この法案、出てきたという経緯はございます。
 総理の発言は、その断定的に言われていることだろうと思いますけれども、その発言と私ども今考えているところ、これ自体は違いがない、同じ方向を向いているということでございます。
 これは、総理は、確かにそのときの御発言で、すべての事件を終結させるというニュアンスでおっしゃっておりますけれども、そこは私ども法律専門家で訴訟の実態ということを考えて、目標は掲げますけれども、できるだけ充実した手続、これをきちっとやる、それが前提で、何が何でもそこに押し込むというのはいろいろな事件の事情によっては難しい点もあるということを意識しながら、このような法案をお出ししているということでございまして、基本的な考え方については同じであるというふうに理解をしております。
山花委員 わかりませんね。
 つまりは、最近非常に事件が長期化しているという傾向があって、五年、十年かかる事件が物すごくたくさんあるというのでこういう発言が出てきたのならまだわかりますよ。そして、そういった状況があって、ひど過ぎる、できるだけ短くしましょうと。方向が同じだと、今の答弁。
 そういうことであれば納得できる話かもしれません。しかし、もう繰り返しませんけれども、今の現状、こういうのがあって、しかも現状がひど過ぎる、五年、十年かかると。五年、十年という時間が費やされる場合があるのはひど過ぎると。繰り返します。裁判の結果が必ず二年以内に出るよう改革していきたい、必ず二年以内に出るよう。全然違うじゃないですか。これは本部長に聞かなきゃわからないですよ。
 委員長、出席を求めます。
山本委員長 この件に関しましては、理事会で慎重に協議させていただきます。
山花委員 だから、今回のこの問題については、本当に、どうして二年という数字が出てきたのか、非常にわからないところがあります。
 また、先ほどの山内委員からの指摘もございました。では、もう一度、改めて伺いますけれども、二年という数字は、法的な効果、つまりは、当事者の訴訟追行行為にとって法的な効果はないものだということでよろしいですね。
山崎政府参考人 基本的には、目標でございますので、それについての法的効果は、それは個々の訴訟法等でいろいろなものを定めれば別でございますけれども、この法案の中では効果はないというふうに考えております。
山花委員 個々の法律であればということですけれども、先ほど来質疑を聞いておりましても、気になることがございます。例えば、当事者に責務を課すという話であります。
 法務大臣に本会議でお伺いしたときに、当事者の責務ということで、これは刑訴法とか民訴法の規則にもこういうのがあるんだという話でした。ただ、先ほども指摘がありましたけれども、まず、刑事訴訟法に関していえば、二年内という話は全くないわけで、誠実に権利行使をすべきだという規定は確かにあるかもしれません。ましてや、民事訴訟法については、当事者に対して迅速化をせよという責務はないわけであります。「当事者は、信義に従い誠実に民事訴訟を追行しなければならない。」という条項はありますけれども、迅速化しなければならないという責務はないわけであります。
 そこで、非常に懸念されますのは、権利乱用法理についてであります。権利乱用の規定というのは民法の規定でありますけれども、一般に、この条項というのは、民事訴訟法、刑事訴訟法のような訴訟法にあっても、公平の原則から、あるいは権利の一般的な法理として、刑訴、民訴の世界でも援用されることがございます。そこで、従来であれば権利乱用とされなかったものも、例えば二年間を超えているからということで、それを理由に権利乱用だとされるのではないかという懸念があるわけですけれども、そういったことはないわけですね。
山崎政府参考人 二年を超えたという、それだけの理由で権利乱用ということにはならないと思います。それが当然必要な権利行使であるということならば許されるというふうに考えております。
山花委員 この当事者の問題について、特に本人のケースを想定してみたいと思います。
 私は、責務を課される人として、裁判所とか検察官のような、もっと言えば当事者の代理人でありますけれども、弁護士のような資格を持っているプロの方々が責務を課されるというのは、それはそれとしてあり得る話なのかなと思います。
 ただ、極めて個別の、個別のというか具体的な、限定されたケースですけれども、一つの例として申し上げます。刑事事件です。刑事事件で死刑を求刑されている被告がいたとします。法務大臣は、死刑であってもしっかり執行せよという方でありますが、まだ確定前の話だということで御理解いただきたいと思います。求刑されている方がいたとして、裁判をやっている過程で、これは有罪であろうというような雰囲気になってきたといたします。もう嫌疑自体はクロだ、そういったときに、一生懸命、被告人もそうですが、弁護側も情状の立証に努めるような、そういった訴訟活動に入っていったとします。こうしたケースでは、情状の立証ですから、例えば、仲よくしていた友人を呼んでくれとか、奥さんに証言してほしいだとか、あるいは小学校のときの先生を呼んでほしいだとか、ともかく、ありとあらゆる方を呼ぼうとします。
 どっちの角度から見るかということです。それが権利の乱用だという目で見る方もいらっしゃるかもしれませんけれども、ただ、被告人がどういう生い立ちであったのか、あるいは、どうしてそういった犯行の動機を抱くに至ったのか、あるいは、どうしてそういう人格が形成されていったのか、本当にそのことを理解してほしいがために、この人もこの人もということで、証人を呼んでほしいというやり方をするケースだってあるわけです。
 結果として、わかりませんよ、裁判官の心証は全く動かずに、話は聞いたけれども結論はこうだということかもしれませんけれども、しかし、もともと裁判というのは、結論は一つであっても、それに至る手続を保障してあげる、それがまさにデュープロセスの思想なわけであります。
 ですから、ゆめゆめ、そういったときに、特に刑事で長期化している事件というのは、例えば否認事件だったりするかもしれませんけれども、否認だけじゃなくて、そういったケースで長引くケースがあったとして、裁判所の側で、もう二年を過ぎているからそういった証人は呼ばなくていいということは起こらないわけですね。つまり、法的な効果がなくて、二年ということについては、それを理由として権利乱用がないということであれば、権利乱用そのものではないかもしれません、訴訟指揮の上でも、そういった二年だからということを理由として、裁判官の判断ですから外からは見えませんけれども、そういったことは起こらないということで確認してよろしいですね。
山崎政府参考人 ただいま御指摘の例で考えれば、それは情状証人をやるのは当然だ、心情的にも当然である、人の生死がかかっているわけですから、それは、私は理解できて、当然やるべきだというふうに思います。
 そのやる範囲の問題だと思うんですね。普通の常識で考えれば、やる必要があるものは当然やらなきゃいかぬ。しかし、それが、極めてその数が多くなったり、常軌を逸するような形になれば、それは乱用と判断されるおそれはございますけれども、そうでない限りは、そういうことはないということでございます。二年を超えたからといって、それがだめだということにはならないというふうに考えております。
山花委員 権利乱用にわたってはならないのは当然のことを前提とします。ただ、今回のスキームでいえば、当事者、つまり本人にも責務を課しているわけです。法的な効果がないんだ、ないんだと言われても、しかし、疑念は残ります。つまり、死刑を求刑されている被告人に対しても、二年以内で終わらせるように努力せよということを一応責務として言っているじゃないですか。そういう努力をしなければいけない。
 つまりは、全くの法律の、訓示規定かとか効力規定かとか、そんなのは、我々は議論していますけれども、刑事被告人は、本人は素人ですから、まあ素人だから法律を読まないかもしれないけれども、そんな法律を見たら、自分には、早く死刑を求刑というか、終局させる責務があるんだと読めるじゃないですか。
 この条項には問題ないですか、つまり本人を含めるということについて。
山崎政府参考人 これはまさに法の趣旨の徹底の問題が一つあろうかと思います。
 それとともに、被告人を含めることの是非の問題でございますけれども、一生懸命、代理人は訴訟の進行等に努めるということでも、本人が全くそれに協力をしないということで、それでいいかという問題も起こってくるわけでございまして、やはり裁判を進めていく、これは公的なものとして進めていくわけでございますので、それに関与する方々は、ひとしく、それぞれの立場は違い、濃淡はあるかもしれませんけれども、やはり裁判を充実し、かつ迅速化していくというそれぞれの責務がある。それを負わないと、私は、かえっておかしいだろうというふうに思います。
山花委員 しかし、例えば、今回の法案は裁判の迅速化ということをうたっているわけですけれども、それは、年間何万件かあれば、一件かそこらもしかしたらあるのかもしれませんけれども、私は、当事者が、特に本人が、誠実に責務をあるいは権利行使をしなかったということによって裁判が長期化した、そういうケースはほとんど聞いたことがないんですけれども。いいですか、当事者にそういう責務を課すことによって何で迅速化できるのか、私には全く理解ができません。
 つまり、権利の乱用にわたる場合には、今の状態だって失権しているわけですよ。今までの御答弁ですと、権利乱用にわたる場合であれば、それは失権するのは当然だけれども、それ以外のことでは当然権利行使していただいて結構だ、そういう話なんですけれども、何で迅速化をするために当事者に責務を課すのかということについては、余計私には理解が困難になりました。
 つまり、当事者が誠実に権利を行使しない、これによって裁判が遅延した、そういう因果関係があるようなケースというのはあるんですか。
山崎政府参考人 個々の事件について、今手持ちがございませんし、的確にはお答えできませんけれども、当事者が訴訟の進行をかなり引き延ばしているというふうにうかがわれるものは、それはございます。そういうふうに実感をしております。
山花委員 それにしたって、一回、二回の期日が延びることはあっても、二年も延びることは私はないと思います。
 また、今、当事者のことについてお話がございました。私はきのう、ある弁護士さんに会ってまいりました。私は、この事件は冤罪の可能性があると思っているような事件なんですけれども、これは、裁判所もそうですし、検察も問題がありますね、およそ冤罪ということであるとどこかに無理があったんだと思います。例えば、今個別の事件についていろいろ申し上げると問題がありますので、事件は申し上げませんけれども、これは検察の冒頭陳述でこんなことを言っていますね。これは、強姦未遂事件の冒陳です。
 被告人は、ここでは名前を伏せます、Aを眠らせて抗拒不能にして姦淫しようと考え、かねてから処方を受け保管していたハルシオン、ハルシオンというのはいわゆる睡眠薬ですね、ハルシオンあるいはそれに類する睡眠導入作用を有する薬物をビールに混入した。Aは、それまでは足元がふらつくこともなく、意識もしっかりしていたのに、被告人に注がれたビールを飲んだところ、その薬物の睡眠導入作用により、急に意識を失った。そこで、被告人は、遅くとも同日午後十一時十九分ころまでにということで、あるところに行って、麻酔作用を有する笑気ガスを吸引させた。これで意識を失ってしまうというんです。
 素人が聞くと何となくあるのかなと思いますけれども、しかし、医学的には全くあり得ないことを言っているんですよ。つまり、口から飲んでその場で気絶するなんというのは、映画の世界ではあるかもしれません。しかし、私は医学には素人ですけれども、皆さん、その程度の知識はあるんじゃないですか。つまり、口から飲んだものが作用するなんというのは、だって、睡眠剤というのは、胃に入って、腸壁で吸収されてから肝臓に行って、そして脳に作用するわけですから、飲んだ途端に気を失うとか、ましてや、笑ってしまうような話ですよ、ビール、アルコールにハルシオンは溶けないんですよ。
 こんなむちゃなことを検察が言って、個別の事件ですからこれ以上申しませんけれども、一つは、これは検察もちょっと注意をしていただきたいと思いますね。医学的な話について、余りにもむちゃなことを言ったりしている。
 また、少年冤罪事件ということで有名な事件ですけれども、草加事件のときも、これも結構むちゃくちゃな話ですよね。被害者の遺体にAB型の唾液がついていたことが発見されるんですけれども、AB型の唾液がついていたということは、恐らく加害者がAB型の人なんでしょう。しかし、これはもう既に判決も出ている事件ですので申し上げますけれども、最高裁の十二年二月七日に判決が出ています、これで認定されている事実によれば、この犯行に加わったとされている少年たちにAB型の人はいないんですね。ところが、検察がどう言っていたかというと、A型の少年の唾液とB型の方の、体液も合わせてのようですけれども、これがまざるとAB型になるんだと。
 お医者さんがいらっしゃいますけれども、そんなばかな話があるわけないのであって、そういうことを平気で言う、私はこの検事の方の言っていることもさっぱりわからないですが、ただ、要するに、ちゃんと医学的なことを調べていれば、全くこんなおかしなことが起こるわけはないということがわかるような事件であります。
 きのう私が会ってきた弁護士さんというのは、その前の強姦の関係の事件をやっている弁護士さんですが、驚いたことに、一審で有罪判決が出ています。細かな事情は申し上げませんけれども、今事実認定のことだけで申し上げれば、全くずさんな認定をしたと。二審でも、その弁護士さんは引き受けて、いや、こんなばかなあれはないだろうと。間違いなく無罪になると信じていたようです。全く今まで弁護士しか経験のない方ではありません、三十六年間裁判官をやっていた弁護士さんです。非常に嘆いていました、自分が判事のころはこんなむちゃくちゃなことはやっていないと。
 しかも、訴訟指揮が粗過ぎると。証人尋問をしていたら、時間が少し延びてしまった、十二時までという約束だったので、十二時が近づいてきて、十一時ぐらいから被告人尋問を始めた、被告人尋問をやろうとしたところ、裁判長から、途中であっても時間になったら打ち切ると宣言をされたというんです。これは弁護士の方が聞いたら驚くんじゃないですか。つまり、こんなような訴訟指揮をやっているケースが今でもあるわけです、今でも。
 ましてや、大変懸念されるのは、本来もっと充実させた審理を行わなければいけない、そのことが先決事項としてあって、あるいはそのためには、きのうその弁護士さんも言われていました、自分が判事のころと違って、今受任件数がふえているから、従来であれば鑑定だとか証人尋問とかもっと時間をとってやったものもやらなくなっている、ましてや、受任した時点で全部振り分けていて、これはクロというのをあらかじめ予断を持ってやっていると。そういった現実が今あるわけです。
 その中で、今回のようなこうした法案が出されることによって、ますます審理が粗っぽくなって、そして、先ほど申し上げましたように、御答弁の中ではあくまでも常識的な範囲内での責務なんだと言われていますけれども、これは今ですらこうなんですから、こんな法律ができたら、裁判官は二年たったらできるだけやめてしまおうと思うことが非常に懸念されるわけです。
 本当に、こういう二年内という数値目標を立ててよいと、副本部長たる法務大臣、確信は揺らぎませんか。
森山国務大臣 この法案の第七条は、当時者等の責務につきまして、可能な限り裁判の迅速化に係る目標が実現できるように、手続上の権利は、誠実にこれを行使しなければならないと規定しているわけでございまして、これと同趣旨の規定が、先ほども申し上げましたが、刑事訴訟法の規則第一条第二項などにも既に書かれているわけでございます。したがいまして、このような内容の責務を当事者に課すことに、それ自体問題はないと思います。
 また、この法案におきましては、裁判の迅速化に当たりまして、当事者の正当な権利利益を害することがあってはならない、当たり前のことでありますが、それを改めて明示しておりまして、受訴裁判所等の責任も、充実した手続を実施することにより、可能な限り裁判の迅速化に係る目標を実現するように努めるものというものでございまして、いずれにいたしましても、裁判所が二年という審理期間の目標のみに拘泥いたしまして、必要な審理を尽くさないままに正当な権利行使を制限するような事態が起こらないようにということは当然であり、そのように努力をしているわけでございます。
山花委員 だんだん時間が押してまいりました。ほかにも、裁判官のてん補の問題であるとか、あるいは開廷日の問題とか、まだまだあるわけでありますけれども、恐らく最後の質問になるのかもしれません。
 裁判所と、刑事局長、突然で恐縮ですけれども、今までこういった個別の話を申し上げました。すべてがそうだとはもちろん思っていませんよ。常に検察というのは何かいろいろな証拠を捏造して、医学的なデータもむちゃくちゃなことをやってと、常にそんなことがあるわけだとは思っていませんけれども、現にこういうケースがあったりとかするわけですので、検察に対しては、本当に適正に捜査の際にもやっていただきたい。
 つまりは、医学的な知見からしておかしくないように、それはもちろんやっておられるとは思いますけれども、改めて、医学的な見地からしても矛盾のないような立証活動に努めていただきたいので、その旨一言と、裁判所の方には、現在でも、先ほども、利用者が必ずしも、勝訴したケースでも満足していないという方々がたくさんいらっしゃるということでしたけれども、今回の法律の成否にかかわりなく、証拠調べの手続などは丁寧にやっていただくという、一言いただきたいと思います。
樋渡政府参考人 検察当局におきましては、常に適正な捜査に心がけているものというふうに承知しておりますし、また、あらゆる機会を通じて、適正な捜査をするように留意をしていただいているところでございまして、そのことは今後とも変わらないというふうに思っております。
中山最高裁判所長官代理者 裁判におきまして適正というのは生命線であります。幾ら審理が速くできたからといって、適正さがないがしろにされるということでありますれば、それは一体何のための改革かというふうに思っておりますし、大方の裁判官、ほとんどの裁判官、皆同じ気持ちだろうと思います。
 今回のこの法律が成立いたしましても、そのあたりのところは、裁判官同士、お互い自戒し合って、きちんとした裁判を運営していこうということに努めていきたいと思っております。
山花委員 終わります。ありがとうございました。
山本委員長 次に、樋高剛君。
樋高委員 自由党の樋高剛でございます。きょうも質疑の時間をいただきましてありがとうございました。
 まず、委員長にお諮りをいたしますけれども、今回のこの司法制度改革、総理が一番最初に言い始めて、きょうの審議でも出ておりましたけれども、総理が本部長であるということでありますので、やはり総理に、小泉総理の御出席をいただいて審議をするべきと思いますけれども、いかがでしょうか。
山本委員長 先ほども、その件につきましては申し出がございました。理事会において慎重に検討させていただきたいと思います。
樋高委員 そして、今回は裁判の迅速化に関する法律ということでありますけれども、今回、私改めて、第一審の審理期間の現状、どういうふうになっているか、また、審理が長期化している案件、事件というのは一体どういうものなのかということを自分なりに精査、改めて振り返ってみたところであります。
 きょうもずっと議論に出ておりますが、裁判の長期化ということも一つ問題とされておりますけれども、審理の期間が二年を超えているものは、民事で七・二%、刑事訴訟で〇・四%、審理期間が五年を超えるものは、民事で〇・七%、刑事事件で〇・一%と。長期化されるものに、いわゆるマスコミなどで取り上げられる社会的関心の高い事件が多いので、感覚として、実際よりも裁判が長期化している割合が高く感じているのではないかということは率直に思ったわけでありますけれども、さはさりながら、審理の期間が長引いている、長時間かかっているということも、一方で、現実には、件数は少ないにしてもあるわけでありまして、この審理に長期間を要している原因は一体どこにあるというふうにそもそも認識していらっしゃるのか、お答えをいただきたいと思います。
増田副大臣 お答えをいたします。
 訴訟が長期化する原因は多岐にわたります。主なものといたしましては、当事者が多数である、事件の内容が複雑、専門的であるなど、事件の性質、内容に関するものがあります。また、期日の調整が困難で、当事者等が訴訟の進行に協力的でない、あるいは必要以上に詳細な尋問が行われるなど、当事者に関するものもあるかと思います。争点整理の訴訟指揮が不十分、裁判官の手持ち事件数が多過ぎるなど、裁判所に関するものもあるのであろう、このように理解をしております。
 指摘されているもの、以上申し上げましたが、心に体して取り組んでいきたいと思います。
樋高委員 事件の性質ですとか、専門的知見を要するですとか、また当事者の協力が得られない、もしくは裁判官、検察官、弁護士の不足など、いわゆる複合的要因によって審理が長引いているということだとは思うんですけれども、では、そういった原因をやはり解消しなくては、迅速な裁判は望めないのではないかというふうになってくると思うのであります。
 法務大臣に伺いますが、今、いわゆる現状、原因、要因というものがはっきりしたわけでありますけれども、それでは、この法案によってどのようにして裁判が迅速されるのか、御説明いただきたいと思います。
森山国務大臣 この法案は、二年という審理期間の目標を掲げました上で、運用面におきまして充実した手続の実施により、できる限りこの目標の実現を目指すとともに、審理に長期間を要する事件についてはその原因を明らかにするなどいたしまして、目標の実現に必要な制度、体制の整備を図るという総合的な方策を実施することによりまして迅速化を実現しようとするものでございます。
樋高委員 実際のところ、第一審が二年以上かかっている割合は、刑事訴訟では〇・四%にすぎないわけでありますけれども、そもそも、総理が国民受けをねらったパフォーマンス法案であるという指摘も聞かれますが、これについてどのようにお考えになりますか。
森山国務大臣 総理が、長期化する裁判のさまざまな問題について非常に心配しておられるということは確かでございまして、そのような御発言が顧問会議の席でもあったことは私も記憶しております。
 全体としては、おっしゃいますように、相当の迅速化が最近図られてまいりましたのですけれども、複雑、専門的な事件や国民が注目する重大事件等におきまして、依然として長期間を要するというものがあることもまた事実でございます。
 この法案は、このような事件も含めまして、第一審の訴訟事件の一層の迅速化を図ろうとするものでございまして、そのための基本的な枠組みを規定する点に意義がありまして、国民の期待にこたえる司法制度の実現ということを目的としたものでございます。
樋高委員 政府がいわゆる、こういう、そもそも、先ほど申しましたとおり、刑事、民事、また諸外国とも比較をいたしましても、そんなに件数的には多くない。私冒頭申しましたとおり、イメージとして、印象として、何となく長いなというふうに思っているわけでありますから、その中でこの法律案の名前、裁判の迅速化に関するということが、ある意味では政治的な意味も含んでの話だというふうな指摘も私は外れてはいないと思うわけであります。まずそのことを申し上げておきたいと思います。
 まず、迅速化の目標を設定したということに関してであります。
 まず、第一審の訴訟手続を二年以内のできるだけ短い期間に終局させるということでありますけれども、なぜ二年以内としたのか。二年という期限の根拠をまずお尋ねしたいと思います。
増田副大臣 お尋ねの件ですが、先ほど来の議論を委員は熱心にお引きで、いろいろとメモをとられていたようであります。それらの答弁も参考にしていただきたいと思います。
 そこで、裁判は国民の納得できる合理的な期間内になされることが一番肝要である、このように考えます。また、制度、体制の整備を通じての実現可能性のある、このように考えられることから、二年という期間を目標に掲げたものであります。
樋高委員 副大臣、それで本当に、二年でいいというふうに本心としてお考えですか。
増田副大臣 多少私見が入りますけれども、私もずっと政治をやってまいりました。そういう中で、国民一般的に周知をしていないものは、たとえ専門家が理解ができても、きちんとした期間を明示する、これも一つの責任でありまた一つの手法だろう、このように考えます。
 もちろん、懸念されるいろいろなこと、前からいろいろ御発言がありましたが、そのようなことは絶対あってはなりません。したがって、そういう意味からも、私は、二年を明示することは、今回はこれでいいだろうというように個人的にも判断しております。
樋高委員 国民にとって裁判は長いなという印象、イメージが深くしみついてしまっているわけでありますけれども、その印象を払拭することによって初めて身近な司法の実現は可能になってくるんではないかと思うわけでありますが、そういう意味においては、二年という期限を今回数字として示したことは、私は素直に評価をしたいとは思います。
 しかしながら、二年というのはあくまで目標である、拘束力がないということであります。そうすると、ではこの法律案は何なのかということにまた戻っていってしまうわけでありますが、副大臣、拘束力がないということでありますから、ではこの法律案は要らないじゃないかということにもなりかねないと思うんですが、いかがでしょうか。
増田副大臣 本法案では、裁判の迅速化に係る最高裁が行う検証を行います。その結果を二年ごとに、国民に明らかにするため公表することになっております。その検証の結果については、国の施策の策定及び実施に当たりましては適切な活用が図られなければならない、このように規定しておるところであります。
 そのような枠組みを通じて裁判の迅速化の実効性が確保されるものと考えており、私も、最高裁が検証し、二年ごとにそれを公表する、このことが国民の皆様にはよく伝わるだろう、そして、それが大きな実効性を持たせる意味にもつながっていくと理解をいたしております。
樋高委員 同じ意味で法務大臣に伺いますけれども、先ほど来、推進本部事務局の方も、要するに拘束力がないというか、これはあくまで目標であるということでありました。そうすると、どうしてもやはり原点に返ってしまって、この法律案は本当に必要なのかということと同時に、先ほど申しましたとおり、それはもうパフォーマンスでこの法律案を出しているんじゃないかというふうな指摘が出てきても不思議ではないと私は思いますし、そのように思うわけであります。
 今、増田副大臣は、その後、有効性を持たせるための手段はどういうものであるかということをおっしゃったわけでありますけれども、そもそも、大臣、もちろん、これは閣法でありますから必要だから出されたのもよくわかっておりますけれども、そこの疑問点を、一番最初の原点でありますけれども、これを出したということ、そもそも、これはあくまで目標であって、必ずしも二年以内でなくてもいいんだということであるならば、では法律案は必要はないんじゃないかということにどうしてもまた行き着いてしまうわけなんでありますけれども、大臣の御所見を伺います。
森山国務大臣 「二年以内のできるだけ短い期間」というふうに言っておりますわけでございまして、二年以内だからいいというわけではございません。できるだけ、国民にとって必要な、アクセスのしやすい司法であるべきだという司法制度改革の精神から申しまして、気軽に裁判なら裁判に持っていくということがもっとしやすくなるようにしたいということから考えますと、できるだけ短い時間で結論が出してもらえるなら、それも一つの大きな役目を果たすんではないだろうかと思います。もちろん、その間において権利の擁護ということは十分にしなければいけませんし、また、十分な、必要な手続をきちっとしなければならないということが前提でございますけれども。
 要するに、法廷あるいは法律に対するアクセスがオープンで、どなたでも気軽に利用していただけるということが理想でありますので、そのような観点から申しますと、二年以内のできるだけ短い期間ということをうたいましたのはそれなりに大きな意味があるというふうに私は思っています。
樋高委員 では、お尋ねをいたしたいんでありますけれども、実効性が上がらなかった場合、成果が上がらなかった場合、どうするんでしょうか。
増田副大臣 本法案の附則第三項は、「この法律の施行後十年を経過した場合において、この法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずる」こととしております。
 仮に御指摘のような事情が生じた場合には、この規定に基づきまして必要な措置が当然講ぜられることになると考えております。
樋高委員 検証を二年ごとというか定期的に行うということでありますけれども、そのときに増田法務大臣であれば検証をしっかりとしていただけるんではないかと思いますけれども、必ずしもそうであるかどうかわからないわけでございまして、これはしっかりと検証しなくちゃいけないのと同時に、あと、私は盲点だと思うのでありますけれども、一審の終局については二年以内という目標を設けましたけれども、では、高裁、最高裁における審理期間、ここもそれならば目標をきちっと設けなくては、控訴していけばやはりまたそれなりに期間が長くなってしまうわけですから、第二審、第三審、高裁、最高裁における審理期間についてもやはりある程度目標を定めるべきであるというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
増田副大臣 本法案では、控訴審、上告審も含めまして、第一審の訴訟手続以外の手続につきましても、それぞれの手続に応じてできる限り短い期間内に終局させることを目標といたしております。したがって、迅速化を図るべきこと、このような方向で歩んでいくものと考えています。
樋高委員 高裁、最高裁の方にも目標を定めるべきではないかと申し上げているんですが、それについてはどのように考えますか。
増田副大臣 基本的に、その迅速化のことで含まれて進むものと理解しております。殊さらに定めなくもそういう方向でいくというふうに理解をいたしております。
樋高委員 大変恐縮でありますけれども、説得力がないわけでございまして、副大臣も笑っていらっしゃいますけれども。一審だけではなくて、やはり高裁、最高裁における、もちろんいろいろな、そんな簡単にはいかないよという部分もよくわかっております。わかっている中で私は申し上げているわけでありまして、やはりそちらの部分も目標を定めるべきだと私は思いますけれども、いかがでしょうか。もう一度伺います。
増田副大臣 訴訟事件の控訴審や上告審や、訴訟以外の手続につきましては、現時点で、すべての手続につきまして具体的な期間の目標を設定することは困難であると考えます。本法案では、それぞれの手続に応じまして客観的、合理的な短期間内の手続の終局を目標に設定しているところであります。御理解を賜りたいと思います。
樋高委員 それでは、制度、体制の整備について伺いたいと思いますけれども、具体的な制度、体制の整備としてはどのようなことを今想定をしていらっしゃるんでしょうか。
森山国務大臣 訴訟手続の整備につきましては、今、この国会に提出されました民事訴訟法の一部改正法案におきまして、計画審理の推進、証拠収集手段の拡充などが、また、人事訴訟法案におきましても、人事訴訟の家庭裁判所への移管などが規定されております。刑事事件につきましても、充実した争点整理のための新たな準備手続の創設、証拠開示の拡充、公判の連日的開廷、裁判所の訴訟指揮の実効性の担保などの具体的な方策が検討されているところでございます。
 法曹人口の大幅な増加や裁判所、検察庁の人的体制の充実等の体制の整備につきましても、現在、政府において、司法制度改革推進計画に従い、必要な取り組みを行っているところでございまして、また、最高裁判所や日弁連におかれましてもそれぞれ積極的に必要な取り組みを行われているものと伺っております。
 この法案が成立した場合には、さらに本法案の趣旨や最高裁判所による検証の結果も踏まえまして、必要な制度、体制の整備を行っていきたいと考えております。
樋高委員 よく言われることでありますけれども、裁判の長期化の要因としてはやはり法曹人口が少ないというふうにも言われておりますけれども、今後、二〇一〇年からは年間三千人の司法試験合格者を確保するということでありますけれども、法曹人口をふやすということ、これはやはり、私はいつも思うんですけれども、きちっとしたその十年後、二十年後、三十年後、もちろん二〇一〇年に三千人というところ、数字をまたここで出されたのは、珍しく出されているのは評価をいたしたいと思うんですけれども、それで十分なのかということもきちっと考えなくてはいけないと思いますが、いかがでしょうか。
中野大臣政務官 法曹人口の増加につきましては、御承知のとおり、平成三年ごろから、五百名なのがことしは千百八十三名、それが、今委員おっしゃるとおり、平成二十二年ごろには約三千人程度を目標にするとやっておりまして、大体、結果として現在よりも約倍の、三十年にはいわゆる法曹人口が五万人というような推定をし、目標にしているわけでございます。
 それで、その中で、司法制度改革審議会の意見におきまして、法曹の数というものについて、今委員がおっしゃいましたけれども、社会の要請に基づいて決定されるということで、合格者数をいわゆる年間三千人とすることは、これは上限を意味するものじゃないということは確認されております。
 しかし、これについてはいろいろな御意見もございますし、将来における法曹人口の増加のあり方ということにつきましては、例えば、制度として極端な訴訟社会というのを国民は望んでいるとは私も思っておりません。しかしながら、現実に法曹に対するニーズというものがある、これも事実でございますから、そういう社会的な要請に照らしてこれから決定されるべきだと思いますので、その点は御理解を願いたいと思います。
樋高委員 法曹人口の大幅な増員も当然必要でありますけれども、それに伴って、インフラ、箱の整備、また裁判所職員の増員、サポート体制も当然伴わなくてはいけないと思うんですけれども、それらに対して現在の見通しはいかがなんでしょうか。
中野大臣政務官 お答えいたします。
 法曹人口の問題については御答弁申し上げましたけれども、それは具体的に今頑張っておるわけでございますが、委員が御指摘のとおり、国民の期待する司法を構築するためには、それと一緒に司法の人的基盤を充実強化することが必要不可欠だ、そういう意味で、今おっしゃったとおり、判事さんとか弁護士さんとか検事さんだけじゃなしに、裁判所の職員とか検察庁の職員、そういうものの一層の充実が必要だ、そしてまた、そういう意味で、これらの人的な整備と一緒に、司法制度改革の進展によるところの庁舎の問題、おっしゃるとおりいわゆるインフラ整備ですね、それも重要な課題であるということは考えておるわけでございます。
 それで、法務省といたしましても、司法制度改革審議会の意見の趣旨にのっとりまして、司法制度改革推進計画のもとにおきまして、各種の制度改革の進展や社会の法的需要も踏まえまして、これらの制度や既存の施設を効率的に活用しつつ、司法の人的、物的基盤の充実強化に向けた適切な措置が講じられていく必要があるということは考えておるわけでございます。しかし、御承知のとおり厳しい財政事情の中で、どちらかというと、今委員に申し上げましたような問題が具体的にどうかということはなかなか申し上げられませんけれども、私も政治家として、この委員会におきまして、法務大臣を助けまして、そういう意味での、法曹人口の増加はもちろんでございますけれども、いわゆる関係の職員の増員とかインフラの整備につきましても、これは当然やるべきだ、それでまた努力するということについては、はっきりと申し上げます。
樋高委員 しっかりとお願いをいたしたいと思いますけれども、審理期間ということを考えたときに、国や大企業などが訴えられた場合、いわゆる民事で提訴された場合ですね、長期化する傾向がある。証拠収集が難しいなどさまざまな原因、要因も私も考えたんですですけれども、やはり改善すべき点、問題点はどういったところにあるのか。
 私は、証拠の開示に対してのやはりルールづくりというのをひとつ今後視野に入れて検討していくべきではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
中野大臣政務官 私も実は事業をやってまいりまして実感するのでございますけれども、民事訴訟におきまして、どうしても力の強いといいましょうかそういう方が、長期化することによって裁判を有利にするとかというような、いろいろな傾向があるということについては私自身も実感をいたしております。
 そういう中で申し上げたいと思いますけれども、委員が御指摘したとおり、民事訴訟の長期化を防ぐには、当事者が必要な証拠や情報というものを適切に収集できるようにすることが重要である、それはそのとおりでございます。それで、御承知と思いますけれども、平成八年に、現在の民事訴訟法の制定に際しまして、いわゆる提訴後といいましょうか、裁判が始まった後については証拠収集の充実が図られておるのですけれども、今回この国会に提出しました本民事訴訟法の一部を改正する法律案につきましては、訴えの提起前に証拠収集等の手続を拡充する、つまり、相手方に対しまして主張とか立証の準備に必要な事項を照会することができる、そういう手続とか、それからまた、文書の所持者に対してその送付を嘱託することができる手続などを設けるということになっておるわけでございます。
 このように、今委員がおっしゃったような、具体的に証拠収集制度を強化するとともに、計画的な審理を実施するということによりまして、民事裁判の充実それから迅速化が図られるということができると思っております。
樋高委員 中野政務官からも自分の出番をつくってくれということでございましたので、きょうは指名をさせていただいております。どうもありがとうございます。
 それで、この目的のところ、第一条でございますけれども、法務大臣に伺いますが、きょうずっと議論を私も今させていただいて、裁判を速めましょう、しかし、その前提として充実化を図りましょうよということをおっしゃりたいんだと思います。しかしながら、この目的の第一条の中にはどこにも充実化ということが書かれていないんです。そして、この第二条のところになって初めて「充実した手続」というふうに書かれてあり、また、この後ろの方でも一、二カ所書かれている程度なわけですけれども、これはなぜ、充実化を大前提にした上で迅速化を進めるということであるならば、この第一条の目的のところに、裁判の充実化をまず第一にやって、その上で迅速化を進めますよということにしなかったのか。素朴な疑問なんですけれども、いかがでしょうか。
森山国務大臣 この第一条の中にも「公正かつ適正な手続の下で」という言葉が入っております。
 この法案では、裁判の迅速化が拙速な裁判につながらないようにするために、裁判の迅速化の趣旨に関しまして、裁判の迅速化に当たっては、当事者の正当な権利利益が害されないよう、手続が公正かつ適正に実施されることが確保されなければならないということを規定しているわけでございます。また、本法案では、裁判の迅速化が充実した手続の実施により行われるものとしておりますが、その内容は、必要な主張、立証を尽くすなど裁判の目的を達するのに必要不可欠な行為を行うことを前提とした上で、手続を集中的かつ効率的に行うことを意味するものでございます。
 この法案では、このような考え方のもとに、拙速な裁判は当然避けなければならない、第一審の訴訟手続を二年以内のできるだけ早い期間に終局させるということを目標に実現しようとしましたので、このような書きぶりになりました。
樋高委員 私、わかっていて聞いているんですけれども、この「公正かつ適正な手続の下で」。それもわかりますけれども、そうじゃなくて、充実化という三文字をぽこっと入れてしまえばそれでいいだけの話ではないかと私は言いたいのでありますけれども。
 最後に一問伺いたいと思います。手続の公平性や責務や検証につきましては、また次回、もし機会がありましたら伺いたいと思います。
 そもそも論なんですが、迅速化には、最高裁、検察庁、そして弁護士会、法曹界三者の協力が必要不可欠、また連携が必要不可欠であるというふうに思いますけれども、やはりそれぞれの立場もあり、また主張もなかなかかみ合いにくいというふうにも思うわけでありますけれども、それをやはり克服していかなくてはいけないという側面もあるのでありますが、いかがでしょうか。
森山国務大臣 御指摘のとおり、裁判の迅速化を含め、一般に、裁判の適正な運営のためには裁判官、検察官、弁護士の法曹三者の協力が必要不可欠でございます。
 これまでも、基本的には、国民が裁判を通じて適正、迅速かつ実効的な救済が得られるようにすることが必要であるということの認識におきましては、法曹三者には共通の認識があったと考えておりますけれども、司法制度改革審議会意見では、弁護士任官の促進とか、法律専門職間の人材の相互交流の促進も提言されておりまして、これらの交流がより一層盛んになることが期待されるところであることを考えますと、国民の期待にこたえる司法制度を構築するためという観点に立ちまして、法曹三者は改めて相互に協力していく必要性について認識していただかなければならない、そうしていただけるものと確信しております。
樋高委員 裁判の迅速化とともに、充実化の目標をしっかり据えていただかなくてはいけないということを御指摘申し上げ、また、今回この法律案、二年以内ということでありますけれども、それはあくまで目標にすぎない。やはりその都度その都度検証をしていただいて、この法律案には中身は書かれていないわけですから、目標を達成するために具体的な方策を状況に応じて、もしこの法律案が成立しました暁には、そのときそのとき状況に応じて対策を講じていただきますように強く要望いたしまして、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。
山本委員長 次に、木島日出夫君。
木島委員 日本共産党の木島日出夫です。
 裁判の迅速化に関する法律案、司法制度改革の大変重要な法案だと思うんです。しかし、大変大きな問題のある法案だと思います。
 委員長、定足数、足りているでしょうか。
山本委員長 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
山本委員長 それでは、速記を起こしてください。
木島委員 最高裁にお聞きします。
 第六条、「受訴裁判所その他の裁判所における手続を実施する者は、充実した手続を実施することにより、可能な限り裁判の迅速化に係る第二条第一項の目標を実現するよう努めるものとする。」という法案であります。これは、具体的な裁判を実施している単独裁判官か合議体なら裁判長を律する条文だと思います。この条文ができますと裁判体は具体的にどういうことをしなければならなくなるんでしょうか。
中山最高裁判所長官代理者 今般の民訴法の改正等にもございますけれども、計画審理等々、今回の充実した審理、適正をきちんと実現するという当然の前提でありますけれども、それを受けて、計画的な審理等を行って迅速な裁判を実現する、こういう責務を負うということになるわけであります。
木島委員 もうちょっと具体的に答弁してほしいんですが。
 二条一項の目標を実現するよう努めるものとする。そうしますと、第一審の訴訟手続については二年以内のできるだけ短い期間内にこれを終局させる、そういう目標を実現するように努めるものとする。裁判体に与えられた責務であります。具体的にどういう法的効果が発するんですか。要するに、裁判長なり裁判体はこの法律ができることによってどういう状況に置かれるかということを聞いているんです。
中山最高裁判所長官代理者 立案当局であります司法改革推進本部等の先ほど来の御答弁を拝聴している限りでは、努力規定ということで承知しております。
木島委員 先ほど推進本部事務局長は、法的効果はないという答弁をしました。大変な答弁だと思うんです。どういう意味ですか。
山崎政府参考人 私が申し上げたのは、充実した手続を行うことによりと、ここに入ってございます、それをやることはやった上で、その二年の目標に向かって審理をやっていきましょう、こういうことを申し上げているわけでございます。やることをやるについて、二年の期間ですか、これを超えるということがあっても、必要なものはやらなければならない。
 そういう意味で、では法的効果はあるかと言われれば、それを超えたら一切いかぬということにはならない、こういうことを申し上げているわけでございますし、あるいは、訴訟はそこでストップしなければならないとかそういう効果はないということを申し上げているわけでございます。
木島委員 裁判体は、あるいは裁判長は、訴訟指揮権を持つ絶対者です、法廷指揮権を持つ絶対者です。証拠採用の是非を決定する決定権者であります。証人調べの内容が悪ければ質問をとめる権利も持っております。次回期日をいつにするか指定する権利も持っております。こういう裁判体、裁判長、裁判官が、自分が担当しているその事件が二年以内に終局するように目標が与えられて、実現するように努めるものとする。そういう裁判所の責務という形でこの条文はつくられているわけであります。
 どういう影響が出ますか。
山崎政府参考人 やはり目標でございますので、目標に向けてその審理がその期間内に終われるように努力をするというのは、当然それは出てくると思います。ただ、それによっても実質の審理がそこで終了をしない、要するに、充実した手続ができないということになれば、そこで終わりということではございません。必要な、やるものはやる。しかし、念頭に置くのは、やはり二年ということを念頭に置きながら審理を進めていく、こういうことになろうということでございます。
木島委員 この第六条は、第八条に連動する条文であります。第八条は、最高裁判所は、裁判の迅速化を推進するため必要な事項を明らかにするため、裁判所による手続に要した期間の状況、その長期化の原因その他必要な事項についての調査及び分析をやる、裁判の迅速化に係る総合的かつ多角的な検証を行う、そういう条文が八条であります。
 そうすると、個々の裁判体、裁判官の訴訟指揮のあり方、非常に丁寧に証人を喚問して証人調べをやるタイプの裁判官、事実認定について大変難しい問題が発生したと感覚鋭く感じますと、直ちに、当事者の申し出等に基づいてでしょうが、鑑定とか検証とか堂々とやる、そういう裁判官、そういう訴訟指揮をやりますと、なかなか二年では終わらない。常識であります。
 この六条、八条が入ってくることによって、まあこの程度の証人尋問ならもうやらない、こういう、やるべきかやらざるべきか非常に際どい、判断に迷うような鑑定や検証はもう時間がかかるからやらない、それで結審して判決をしてしまうということに当然なりませんか。なるおそれをあなた方は感じませんか。
山崎政府参考人 ただいま御指摘の点ですが、必要なものはやるべきだというのは、私、朝からずっと申し上げているところでございまして、この六条でも、充実した手続を実施することによって、それで目標に向かって努力をしなさいということを言っているわけでございますので、これはまさに今委員が御心配なさるような点、そういうことにならないようにということでこの文言を入れているわけでございます。
 それと、二条の三項でございますか、「裁判の迅速化に当たっては、当事者の正当な権利利益が害されないよう、手続が公正かつ適正に実施されることが確保されなければならない。」と入れているわけでございまして、必要なものはこの文言に従ってやるということでございます。
木島委員 最高裁は、私が指摘したような懸念を全く感じていないんですか、この法律がつくられ、こういう条文が入ることによって。
中山最高裁判所長官代理者 私ども、これまでも、できる限り充実した審理のもとに審理期間を短くすべきである、こういうふうに考えてまいりました。長期未済事件を少なくするという努力もしてきたわけであります。そのときの一審裁判官の目標は暗黙のうちに、二年以内にはそういったものは処理しなければならない、そのための努力をしよう、こういうことでやってまいりました。今回はそういったものがある意味で数字化されたというところでございますので、これまでの裁判官のあり方というものがこれによって大きく揺らぐということはないと思っております。
 もし仮に、今委員御指摘のような粗い審理というようなものが実態として出てきて、その結果、控訴率が高まる、あるいは上級審においてそういった破棄、取り消しというようなことが出てまいりますと、それはむしろ、もう病理現象のあらわれでございます。
 先ほどもお話し申し上げましたけれども、裁判所にとりましては、裁判の適正というのはぎりぎりの生命線でございますから、これをきちんと維持した上でこういったほかのものにも対応していく、こういう考えでいるということでございます。
木島委員 ことしの二月に、司法制度改革推進本部事務局が「裁判所における手続の迅速化に関する意見募集の結果について」発表しております。調査局の資料によりますと、首相官邸のホームページにも載っているようであります。そこに、どんな意見が寄せられたか、全部でしょうか、書かれております。
 「迅速化の状況についての検証について」、どんな意見が寄せられたか、私の質問に関係することをピックアップしてみましょうか。
 例えば、「迅速化の検証を最高裁が行うことは、そのような人事評価の正当性の根拠と判断資料の収集の権限を最高裁に与えることになるなど、極めて問題が大きい。」それから「最高裁による検証には大きな危惧があり反対。裁判官は件数主義に陥り、それが粗製濫造の「一丁上がり判決」の多発を生んでいるが、最高裁にチェックさせることは、この事態をさらに悪化させるだけである。」次、「最高裁の検証は、迅速に裁判をすすめることが裁判官の評価につながることを含み、当事者の権利利益が損なわれないか危惧される。」次、「最高裁が「検証」するとなると、裁判官の「ひらめ」度が格段にアップすることは明らか。」「「ひらめ」度」というのはわかりますか。魚のヒラメ、上ばかり向いているという意味です。次、「最高裁による検証システムには反対。検証の実施主体は、訴訟関係者と訴訟手続を利用した市民からなる第三者機関にすべきである。」
 この調査局の資料には十の意見が、これで全部なんでしょうか、出ておりますが、今言ったように、この法案の六条、八条が入ることによって粗製乱造、一丁上がりになる、本当に必要な鑑定、検証をやらなくなる、本当に必要な証人尋問をやらなくなるということをほとんどの皆さんが懸念している。こういう懸念、法務大臣はどう見ますか。
森山国務大臣 御指摘のような懸念をお持ちになる気持ちはわかるような気がいたしますが、実際には、そのような御心配をしていただく必要はないかと思います。
 法律そのものにも適正な手続をきちんとしてということが書いてございますし、法律というものを忠実に守っていただく判事さんたちでありますので、そのようなことを心配していただかなくてもいいのではないかというふうに思いますが。
木島委員 そんな認識でこの法律を出したんなら、とんでもない間違いを犯すと私は指摘しますよ。
 現に行われている裁判だって、本当はやるべき証人尋問ややるべき鑑定、検証をはしょって、いわゆる一丁上がり式で数だけ追っているんじゃないですか。それは今の最高裁の人事体制が、たくさんの裁判を落着した裁判官を優秀な裁判官として人事に判断の材料に使う、現実にそれがまかり通っているでしょう。だから、裁判官の会話なんか聞いてごらんなさい。おれは一カ月何件落とした、あなたは落とす数が少ないじゃないか、そんな話ばかりでしょう。それが配転と結びついてくるわけでしょう。そういう懸念がない担保がどこにあるんですか。
山崎政府参考人 ただいま御指摘の点、現実にどのように、どの程度あるかということを、現在、私、ここで今申し上げるつもりはございませんけれども、仮にそういうことがあれば、これは三審制をとっているわけでございます。したがいまして、そういう調べが足りないものがあれば、これはまた控訴審でもきちっとそれを是正をしていただくということになりましょうし、三つの審級を経て、それなりに淘汰をされていく、きちっとされていくというシステムをとっているわけでございます。
 また、個々の裁判については、各地方裁判所単位ごとに、一審協議等いろいろな協議の場もいろいろございまして、そういう中でもいろいろ議論がされているというふうに承知しているところでございまして、そういうものに基づきながら、あるべき裁判の姿を追求していくということになろうかと思います。
木島委員 先ほども同僚委員から再三指摘されておりました。
 民事事件についてちょっと質問いたしますと、平成十三年民事既済事件、十五万七千四百五十一件中、二年以上は一万一千三百八十三件、七・二%にすぎません。
 この法案は、二年以下で終わっている裁判に対してももっと短くしろということが二条からうかがえますが、基本的には、二年以上かかっている裁判を二年以内にしろ、それを目標にして審理を促進しろということだと思うのですね。
 そうすると、この法案が一番ターゲットにしているのは、二年以上かかっている民事裁判、二年以上かかっている刑事裁判、それの短縮化だというふうにうかがえますが、法務大臣、それでいいですか、基本的なもの。
山崎政府参考人 基本的にはそのとおりでございます。ただ、それだけではなくて、そういうものもできる限り短く、こう言っております。
木島委員 そうすると、先ほども同僚委員から指摘されておりましたが、現状を見ますと、二年以上かかっているものにはそれなりの理由がある。行政事件とか労働事件とか公害事件とか、その他その他、例えば集団で起こしているような事件、大変難しい事件がほとんどではないか。事実認定も難しい、法的判断も難しい、そういう事件がほとんど二年以上かかっているのではないかと思います。
 森山法務大臣は、そういう認識はありませんか。本来、半年や一年で終わるような事件がだらだらとやって二年以上かかっているんじゃなくて、非常に難しい、時間のかかる裁判が、大体この統計でいっても二年以上かかっているんだ、そう見ていませんか。
森山国務大臣 裁判所は誠実にやっていただいていると思いますけれども、現在、二年を超えるような事件には、医療過誤とか建築紛争など、御指摘のような新しいタイプの、あるいは難しい技術的な問題のあるようなものが多く含まれているということを承知しております。
木島委員 そうすると、この法律をつくる意味は何なんだろうか。
 現状でも、民事裁判の十五万件のうち二年以上かかっているのは一万ちょっとだ。しかも、法務大臣も答弁しましたし、法曹家にとってはこれは常識なんですが、二年以上かかっているのは物すごい難しい事件ばかりだ。さっき言ったような種類の事件ですよ。それで、先ほど私の質問に対して事務局長は、まさにそれがこの法律をつくる、そういう長くかかっているのを二年以下にするというのを一つのターゲットだとお認めになりましたね。
 そうすると、おかしいじゃないですか。本当に難しい時間のかかる事件、かけて当然の事件、それを二年以内にはしょるという、そのための法律になりはしませんか。そうだったら、大変な法律になりますよ、これは。粗製乱造推進法じゃないですか。
山崎政府参考人 先ほど大臣から御答弁がございましたけれども、確かに、非常に難しい事件、専門性の高い事件、そういうものが二年を超えているということが多いかと思いますけれども、そうかどうか、それ以外にもあり得る話でございまして、そういうことをまず検証しましょうというシステムでございます。
 そういうふうに難しい事件でも、運用でかなりの努力で縮めることもできますし、それをやってみて、結局運用ではできないんだということになれば、検証でその結論を出していただきたいのです。できなければ、何が足りないのかと。それじゃ手続なのか、手続だったら、その手続を改正しなければならないという施策に結びつけるわけでございます。いや、手続をやってもまだだめだ、それは人なのかということになれば、人をふやしていくようにお願いをするということでございまして、そういうことを通じて具体的に裁判を迅速化させていく一つのシステムを言っているわけでございまして、そういう意味において非常に意義のある制度だと私は考えております。
木島委員 順序が逆なんですよ。この法律をつくって、本当に長過ぎやせぬか、余分なむだな証拠調べをやってやせぬか、そういうのを調べる。逆でしょう。現状どうかということを私は聞いているんですよ。それが先ほど同僚委員が言う立法事実のありやなしやの問題なんですよ。立法事実というのは、この法律をつくる客観的事情、理由があるかどうかということですよ。
 では、そういう分析を今してないんですね、あなた方。こういう法律をつくって裁判官や裁判体や当事者まで縛り上げないと迅速化が進まない、それでは国民の批判に耐えられない、そういう客観的な分析を持ってないということですね、あなた方は。
 ないでしょう。そんなのないんですよ、現状には。長くかかっているのは、長くかかる理由があるんですよ、現状は。だから私は、そういう現状分析をしてなくてこんな法律を出してきたこと自体がおかしいと思っています。現状分析をしたら、こんな法律、出るはずないんです。
 私は先ほど、本当に今時間がかかっている事件の幾つか、種別を挙げました。そういうものはどういう事件かというと、力関係が圧倒的に差がある当事者による裁判なんですよ。行政事件もそう、労働事件もそう、薬害もそう、公害もそう、建築紛争もそうでしょう。片や強大な力を持つ、単なる力じゃありません、証拠をたくさん持っているのが大体被告です。原告当事者はほとんど証拠ゼロです。薬害の原告を考えたらわかるでしょう。証拠ゼロから出発します。医療過誤もそうです。そうでしょう。そういう圧倒的な証拠にアクセスできる力関係の差がついている裁判がほとんど。証拠を迅速に出させなければ、裁判は迅速に進みません。
 なぜ今日本の裁判が、ほんの一部が長期化しちゃっているかというと、大体一審での被告ですよ。圧倒的な証拠を握っている行政庁なり大企業なり製薬メーカーなりが、出すべき証拠を渋る。それでなかなか審理が進まないというのが、裁判をやっている弁護士さんたちの実感じゃないでしょうか。そう思いませんか、法務大臣。
山崎政府参考人 すべてがそうかどうか、それはちょっとわかりませんけれども、そういう問題があるとすれば、私、前職の折にも文書提出命令の御審議をいただきましたけれども、そういう改正の努力は続けてきているわけでございます。また、今現在、法務省民事局の方でもまた今後その検討を続けられるというふうに伺っておりまして、ですから、そういう検証をしてみて、やはり手続に問題があるということならば改正をせざるを得ない、こういうことを言っているわけでございます。
木島委員 だから、それは逆だと言っているんですよ。そういう検証をしてない。現状はそうなんですよ。長引いているのは、そういう圧倒的な力関係の差がある。相手が証拠を握っているのに出さない。行政庁を見たら明らかじゃないですか。今の名古屋刑務所のあの事件を見たら明らかじゃないですか。刑務所や法務省は、ちっとも真実を語ろうとしないじゃないですか。それで時間がかかるんですよ、こういう裁判は。
 ですから、そういう状況のときに、そういうところへの証拠開示義務、あるいは民事訴訟法なら民訴の証拠提出義務、こういうものを徹底的に強化する、そういう状況をつくらない段階で、今のいじられていないような段階で、二年以内だ、二年以内だと迅速化だけを強調したらどうなりますか。証拠調べができない。被告が証拠を出さない。ああ、二年がもう目の前に迫っている。はい、結審。証拠不十分で原告敗訴。目に見えているじゃないですか。
 ですから、こういう現状の中でこの法律によって迅速化のみが一面的に強調されることは、社会的弱者が起こした裁判は敗訴、そういうことになりはせぬか。どう思いますか、法務大臣。
森山国務大臣 裁判の迅速化を進めていきます上で、証拠収集手続の充実など、必要な制度、体制の整備を図っていくことが重要であることは確かでございます。
 しかしながら、本法案は、このような制度、体制の整備が先に行われることを待つのではなくて、二年という審理期間の目標を掲げた上で、運用面において、充実した手続の実施により、できる限りこの目標の実現を目指すとともに、審理に長期間を要する事件については、その原因を明らかにするなどいたしまして、目標の実現に必要な制度、体制の整備を図るという総合的な方策を実施することによりまして、裁判のより一層の迅速化を図りたいと考えているわけでございます。
 例えば、民事訴訟法の一部改正をする法律案を現在国会に提出しておりますけれども、その中におきまして、訴えの提起前における証拠収集等の手続を拡充いたしまして、相手方に対して、主張、立証の準備に必要な事項を照会することができる手続や、文書の所持者に対してその送付を嘱託することができる手続などを設けることにいたしております。
 このように、証拠収集制度を強化することによりまして、民事裁判の充実、迅速化も図られるものと考えております。
 なお、今後とも、公文書を対象とする文書提出命令制度などの証拠収集制度のあり方についても検討を続けてまいりたいというふうに考えておりまして、いろいろな手段を講じまして、内容の充実と期間の短縮ということを図っていきたいのでございます。
木島委員 民事はこのぐらいにして、刑事裁判についてはもっと極端ですよ。同僚委員からも指摘がありました。平成十三年の日本の刑事裁判、全既済人員が七万一千三百七十九人ですが、二年以上かかっている被告人は、二年から三年は百六十一人、三年から五年は六十七人。五年以上は、わずかに三十六人の被告人しかいない。そうすると、二年以上かかっている人を全部足したって、二百六十人ぐらいじゃないですか。
 恐らく、かかる理由はあると思うんですよ。否認事件だと思うんですよ。否認事件で、そして、今、日本の刑事裁判はどういう状況になっておりますか、何と言われていますか。自白偏重、自白偏重。書類だけで有罪判決が認定されるという状況でしょうね。
 ですから、そういう中にあって、否認をして、取り調べの仕方が横暴だ、任意性がない、担当検察官、担当警察官によって暴行、脅迫されて不当な自白をさせられた、そういう調書だ、それを争う。任意性を争って、そして証人尋問してくるわけですね。取り調べした警察官、場合によっては検察官、そして被告人本人も、証人尋問を徹底的に積み重ねることによって、その自白した調書が証拠能力があるかどうか、証明力があるかどうかを刑事裁判官は判断するんです。それで有罪か無罪かが決まるんです。
 ですから、恐らく、年間七万一千三百七十九件のうち、わずか二百数十件が二年以上だというのは、やはりそういう状況があるからだと私は思うんです。
 そうしますと、どうですか。そういう状況を前提にいたしまして、ただ二年以内に裁判を上げてしまえということになったらどうしますか。もう余分な証人調べなんかやめてしまえということになりはしませんか。そういう任意性を争っていると、警察、拘置所の中で不当な調べが行われた、そんなのは一方的な言い分だというので、そういう調書の信用性に対する弾劾、そういう証拠調べをはしょって、判決になりはしませんか。
 そうすると、本来、不当な調べによって無罪であるべき者が不当な自白を強要されていたという真実が表に出ない、迅速化の名によって真実が表へ出ない。そうすると、冤罪の温床にもなりはしませんでしょうか、そういう心配を法務大臣は感じませんでしょうかということだけ、きょうは質問して、きょうで終わりじゃないでしょうから、私の質問は終わります。
森山国務大臣 刑事裁判の充実、迅速化の実現のためには、十分な争点整理のための新たな準備手続の創設と、証拠開示の時期、範囲等に関するルールの明確化が必要でございまして、特に、導入が予定されている裁判員制度の対象となる事件につきましては、職業裁判官ではない裁判員の皆さんにとってわかりやすい裁判を実現するということが必要でありますとともに、可能な限り審理期間を短くして裁判員の負担を軽減するという見地からも、その必要性は高いと考えております。
 そのような観点から、現在、司法制度改革推進本部におきまして、充実した争点整理のための新たな準備手続の創設と証拠開示の拡充について検討が行われているものと承知しておりまして、法務省といたしましても最大限の協力をしたいと考えております。
 なお、捜査過程の可視化に関しましては、平成十四年三月十九日に閣議決定されました司法制度改革推進計画におきまして、被疑者の取り調べの適正を確保するために、取り調べの都度、書面による記録を義務づける制度を導入することといたしまして、平成十五年半ばころまでに所要の措置を講ずるとされたことから、法務省におきまして、これに基づき、書面に記録すべき事項等について関係省庁とも協議を重ねながら、技術的、実務的な見地から鋭意検討を行っているところでございます。
木島委員 終わります。
山本委員長 次に、保坂展人君。
保坂委員 社民党の保坂展人です。
 法務大臣にまず伺います。これは予告していませんので、もう本当に基礎的な質問でございます。裁判の役割は何でしょう。
森山国務大臣 突然のお尋ねで、しかも大変基本的な問題でございますので、十分お答えできるかどうかわかりませんが、私の感じとしては、争われている事実関係を明白にいたしまして、そして、どちらの言い分が正しいかということを決定するものだというふうに思っています。
保坂委員 突然で済みませんけれども、刑事裁判であれば、その犯罪事実の認定なり刑罰の確定ということだと思いますし、民事上は、当事者間の争いがある場合、どちらが正しいかということを判断して、損害賠償請求であればその金額を決めるとか、さまざまだと思いますけれども、さて、その中で、行政訴訟について伺いたいと思うんですね。
 つまり、今同僚議員からも出ていましたけれども、行政を相手に、例えば「もんじゅ」なんかもそうですね、原発だとか、行政というものを相手にさまざまな訴訟を起こすということの意味、それは今大臣がおっしゃった範囲の中に含まれてくるのかどうか。行政訴訟に特徴的なもの、どこに特徴があると認識されているかということをお願いします。
森山国務大臣 行政訴訟と一口に言いましても、いろいろな種類があるかと思いますけれども、行政当局に対する、さまざまな行政当局の決定なりあるいは執行なりに対して不満がある方々がそれを言われまして、その結果、その御不満が正しいか、あるいは行政の決定の方が正しいかということを法律上決定していくものだと思います。
保坂委員 これは、では、寺田法制部長に聞きたいんですけれども、よく裁判の反射的効果という言葉がありますよね、反射的効果。社会的な反響と言ってもいいんでしょう。どういうことでしょうか。
寺田政府参考人 今の文脈では、二つの意味があろうかと思います。
 狭い意味の反射的効果でございますが、これは、行政訴訟の場合は、直接当事者間にその判決の効果は生ずるわけでございますけれども、しかし、これによって影響を受ける、権利までとは言えないけれども、影響を受ける方々というのがいらっしゃいます。例えば、あるところが国立公園に指定されている場合に、それが国立公園でなくなったということになりますと、その周りにおられるお土産屋さん、こういう方々はそれぞれ影響を受けられるわけであります。こういうものが行政訴訟における一般的な反射的効果というふうに言われるわけであります。
 ただ最近では、これよりやや広い意味で、行政の適正さのあり方そのものが行政訴訟において問われているわけでありますから、これは非常に広い社会的な効果を持つわけでありまして、そういったものも最近では反射的効果に挙げられるというふうに理解しております。
保坂委員 的確な答弁だったと思いますけれども、国立公園が認められなくなるということに対して例えば住民が裁判を起こした、それでやはり認められるようになったというときに、同様に取り消されようとしていた、例えば十カ所の国立公園が同時にその影響を受けるということもあろうかと思います。
 私は、自分で体験がありますので、そのことについて大臣にもちょっと感想を求めたいんですけれども、先ほどちょっと裁判って何ですかというふうに申し上げたのは、やはり裁判の中にも、世に訴える、注意喚起をする、あるいは人々の考え方に一石を投じる、あるいは少数の意見であってもそのことをよく考えてほしいということを、社会という大変広いものに対して裁判を通していわば主張をする、そういう役割もあります。
 実は、私は中学生のころに、今も政治活動を行っているんですが、政治活動を行ったということで、ちょっと早過ぎた嫌いがあるんですけれども、そのことを、大変生意気な少年だったということで、内申書に記載をされたということがあります。例えばベトナム戦争に反対だとか、あるいはさまざま政治的な意見の表明をしたのはちょっと中学生としてはだめだという学校の主張と、生意気な中学生だった私とのやりとりがいろいろあって、この生徒はやはり相当に問題があるということで、内申書に書かれたわけなんですね。それによって、十五歳ですか、三つか四つ高校を落ちて、定時制高校に入るということになったんですが。
 さて、これが裁判になったんですよ、内申書裁判という裁判なんですけれども。これが一九七二年に提訴をされて、そのときの弁護人が今民主党の仙谷由人さんだったりするわけです。彼も二十八歳だったんですけれども、私は十五歳で、お互い若かったんですが、七二年に始まって、一審判決まで六年かかりました。これは地裁判決六年で、七八年に地裁判決が出たんですね。高裁で八二年です。そして、最高裁まで行きましたので、一九八八年、つまり十五歳のときの争いの結論が出たのは三十二歳だということで、十六年やりました。
 これでは、訴えの利益はどこに行くのか。全く、三十二歳になって、その内申書は問題があったという判決をいただいてもなかなか、もう仕事もしておりましたし、そのときの当事者性というのはもう既にないわけです。裁判をやっている意味は何があるとすれば、理念係争型といいますか、あるいはその制度を問い直すという形の意味しかないわけなんですね。
 実はこの裁判、やってみて私は大変驚いたんですね。何が驚いたかというと、少年時代、少し社会に対して、今も疑問を持っていますけれども、もっと強い疑問を持っていましたので、少年特有の。裁判なんというのは、なかなか人の声を聞いてもらえないんじゃないかという思いを持っていました。ところが、私自身がこの事件について東京地裁段階で何と三回、たしか二時間ずつ本人尋問。つまり、本人の証言を弁護人に問われる形で、むしろひとり語りのように話す機会がございました。
 この機会は、一回目は、どういうふうに生まれたか、どういう幼少時を過ごしたか、親との関係はどうだったか、そして小学校、中学校とどういう子供だったか、そのくらいで一回目は終わっちゃったんですね。それで、裁判長は、別ににこにこもせずに、次にではどうぞということで本件に入って、どうしてそういう行動があったのかということを、三回にわたって六時間証言をした。
 その結果、一審判決は私の方の訴えが認められたという判決があり、その後、高裁、最高裁でこれが否定をされてしまったんですけれども、この長い裁判、当時の、もう亡くなりましたが、宇野裁判長という方は、一番最後に、三回聞いていただいた後に最後に聞かれたのは、私に対して、仕事はされていますかというんですね、していますと。うまくいっていますか、何とかやっておりますと。独身ですか、独身ですと。しかし、どうして裁判長がこういうことを聞いたのかなというのがわからなかったんですね、当時若かったから。それから十年か十五年たってみて、ああ、なるほどな、やはり法廷という無味乾燥に見えるところにも人間のドラマがあるんだなということで、やはりちゃんと聞いてくれたという気がしました。せかしたりなんかせずに、きちっと聞いてくれた。
 そういうことを体験していますので、この十六年も裁判をやったということに対して、私は満足をしています。当事者性の利益はありません。しかし、実はこの裁判によって、学校の教員が、こいつが憎いからといって、内申書に変なことを書くということは事実上できなくなりました。それはもうやっちゃいけないということになった。次に出てきたのは、内申書を、本人のものだということで、開示をする動きも出てきたんですね。
 さて、こういう裁判、やはり長くかかると思うんですね。この二年という枠からやはりはみ出しそうな気がします。当時、新しかったんですよ、家永教科書裁判というのは教える側の裁判です、この私がやった内申書裁判というのは学ぶ側の裁判なんですね。新しいジャンルの問題提起が出てきたときには、どうしても時間がかかる。
 こういう話を聞いて、ちょっと何か思われることがあったら。いかがでしょうか。
森山国務大臣 保坂先生の中学生時代のお話を承りまして、「栴檀は双葉より芳し」ということを思い出しました。保坂先生の中学生時代らしい、大変興味のあるお話でございました。
 これは私の個人的な感想ですが、裁判という観点から申しますと、裁判を起こす人、あるいは裁判で訴えたい気持ち、そのようなものはその一人一人によって違うと思います。その結果、社会的にも大きなインパクトを与えたとか、あるいは多くの人にこの問題の存在を気づいてもらうという結果になり、初めからそれが目的でやるという方もいらっしゃるかもしれません。
 しかし、裁判そのものの本当の目的は、法律上の適否を判断して、それにのっとって法律上に必要な措置をとるということであろうと思いますので、そのようなことに限定して考えますと、もう少し全体として短くできたかもしれないなという気がいたしますが、先生のおっしゃいますように、今まで例がなかったような新しい問題を法廷に持ち込むということになりますと、それは確かにいろいろ、証拠その他、調査するのに時間もかかり、手間もかかって、多くの人がどういうふうに始めていいかわからないという時間もあると思いますので、多少の時間は必要だと思います。
 これからもそういうケースがあるかもわかりません。先ほど来お話が出ておりますように、どんな場合でも二年を絶対超えてはいけないという意味ではありませんので、必要な証拠調べや必要な証言をとるということは当然やらなければいけないというふうに思っています。
保坂委員 それでは、事務局長に伺いますが、今大臣にお答えいただいたんですけれども、この種の私が体験したような裁判が今後提訴されたときに、やはりその二年以内ということがそんなにしゃくし定規に当てはめられるわけじゃないだろうとは思いますが、ちょっと確認したいのと、もう一つは、これは七条に当事者の義務というのが入っていますよね。これは仮に、私のもう子供の世代に当たるんでしょうか、そういう少年が教育、学校現場で新しいジャンルの訴訟を起こしてかなり社会的な注目も集まりというようなときに、当事者の努力、例えば私がもしタイムマシンに乗って今十五歳だったら、この法律が成立をしたら当事者としてどういう努力をしなければいけないんですか。当事者としての努力というか、誠実に何をするんですか。
山崎政府参考人 御質問は二つあったかと思いますが、まず、しゃくし定規に二年でということを私は申し上げておりません。
 先ほど、委員の体験された裁判のことをお聞きしました。私も、裁判というのは、確かに権利がどちらにあるかということを決める、そういう側面が中心ではありますけれども、最終的には当事者の納得という側面もございまして、そういう側面もきちっと反映をさせるというのは当然当事者として行える、その範囲であるというふうに私も理解をしております。
 それからもう一つは、当事者についてこれがどう働くかということでございますけれども、この点も申し上げましたように、必要なものはやるべきだということをこの法律で言っておりますので、そこのところはきちっとした理解をしていただきながら、ただ、そういうことを乱用してはいけないよと言っているだけでございますので、そこだけは注意をしていただきたいということでございます。
保坂委員 ちょっと、どういう当事者の努力が必要か、これは当事者というのは私は削った方がいいんじゃないかと思いますけれどもね、今指摘だけにします。
 裁判が遅い遅いと言われておりますが、裁判所の実務の中で異常に速いのが令状審査ではないかというふうに思うんですよね。この令状に関して、司法制度改革審議会でも随分意見が出ているようです。やはり形骸化しているんじゃないかとか、あるいは、裁判所は捜査機関の行動をきちんと見きわめることに対して随分抑制的だ、そして、令状審査においては、警察官あるいは検察官の捜査当事者が提出する証拠を見て、その言い分だけを聞いて、他者の当事者である被疑者には証拠は示されずに、弁護人の関与もないというような問題が司法制度改革審議会でも語られたと思うんですが、最高裁に聞きます。
 捜索・差し押さえ令状、検証令状のこの二種類ですが、過去三年間に何件請求されて、却下は何件だったでしょうか。
大野最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
 捜索・差し押さえ並びに検証許可状の請求、発付、却下の関係ですが、平成十二年度におきましては、請求が十八万三千百二十九件、却下は七十六件、取り下げが二千三十九件。平成十三年度におきましては、請求が十八万七千百四十六件、却下八十三件、取り下げが二千三十八件。平成十四年度におきましては、請求が十九万一千二百八十三件、却下七十五件、取り下げが二千四百四十二件ということでありまして、却下率はいずれも、ここ三年間〇・〇四%、数字として〇・〇四で、ずっと一緒です。そして、取り下げと却下両方合わせますと、平成十二年度には一・一五%、平成十三年度は一・一三%、平成十四年度は一・三二%という数字になっております。
保坂委員 この質問を聞いたのは、実は私、昨日、個人情報保護の特別委員会で、情報はだれのものかというテーマで刑事局長と議論させていただいたんですが、その過程で随分、新発見というか新しい事実に遭遇したんですね。
 というのは、私どもが持っています携帯電話でございますね、この携帯電話を各種捜査で、いわばこれは検証令状、捜索・差し押さえ令状などで押さえているんですが、現物ではありません。何を押さえているかというと、通話記録、通信履歴といいますか、過去の通信ですね。これは、どこからかけたのか、そしてだれにかけたのか、どのぐらいの間かけていたのかというような通話当事者間の情報と、位置情報、通話した場所の情報が入っています。
 そして、実はもう一つの概念があって、位置登録情報というのが、実は我々が携帯電話を使わなくても、スイッチを入れている限り、電波が交換局と定期的に結んでいるわけです。つまり、私が大阪にいたのか、札幌にいたのか、東京にいたのかということは電話局は知っている、こういうことになります。
 これについて警察庁に、具体的な事件、例えばルーシーさん殺害事件であるとか、先月判決が出た、二十四歳のOLの方が殺された恵庭における殺人事件などで証拠採用がされているということを通して議論をしていったところ、刑事局長が、過去の通信記録については、差し押さえ令状ですか、というような扱い。
 そして、ここからが大事なんですね。きょうはそれだけに絞って聞きたいんですが、未来の記録、つまり、かくかくしかじかの人物の今後二週間の通話情報、位置情報などを出せという場合は、検証令状でとられるというふうに答弁されているんです。
 それはいつごろから始まったんですか、そんなことは。私、盗聴法の議論をこの委員会で随分やりました。相当に激しい議論と深い議論があったと思うんですが、検証令状で、これから例えばその人物が二週間なら二週間、どこに動いてどういう会話をするかというようなことが、実態としてとっているということが警察庁からも明らかになりましたが、いつごろから始まったんですか。何件くらい、そういった検証令状の取得で捜査情報を得ているんでしょうか。わかる範囲で結構です。
樋渡政府参考人 裁判所の検証令状等を得ましてお尋ねのような所在位置に関する情報を収集するという捜査手法は、御指摘のように、携帯電話等の通信機器の普及に伴い行われるようになったものと推察されますが、法的には特段新たな類型の令状ではございませんでして、捜査当局におきまして、証拠のあり方に応じて従来からの捜査手法を活用して証拠収集するというものでありますので、法務当局としては、いつごろから行われるようになったのかとか、どのくらい行われているのかということにつきましては把握していないということを御理解いただきたいと思います。
保坂委員 法務大臣、実はこれはちょっと探して持ってきましたけれども、いわゆる通信傍受法の法案なんですよ。ここの、この委員会でさんざん激しい議論をしました。
 この通信傍受法の中には、実は、本人に告知をするという手続がちゃんとあります、二十三条で。本人に対して知らせるんだと。そして、その本人も当該部分を閲覧し、またコピーをすることができるというようなところがあるのですね。これは、なぜこんな条項がついたのかというと、やはり通信の秘密というのは大変、基本的人権の核心だ。それから、従来の捜査と違って、これから起こるかもしれない現象について、犯罪についていわばリーチをかけてみるというのが通信傍受、盗聴捜査ですね、平たく言えば。でありますからして、こういう条項がついたと思います。
 今、刑事局長がお答えになった、検証令状で我々の携帯電話を、我々というか国民一人一人の携帯電話を、十日間どこに行くのかという、これもこれから起こり得ることについての探知ですね。そうすると、全く法の整合性がないというか、これから起こり得ることについて、しかも郵政省のガイドラインでは、実は通信の中に入れている位置情報もあるんですね。それは先ほど言った、電話をかけていないときに電波を発している位置登録情報は通信じゃない、通信の前提条件ではあるけれども通信じゃない。しかし、電話をかけたときの、発信しますよね、そうするとどこというのが出るんですよ。それが電話局に蓄積される。その情報はやはり通信情報というふうに見ているんですね。
 とすれば、この扱いをちょっと今後考え直さなきゃいけないというか、ちょっとこれは大問題じゃないかと思うんですね。いかがでしょうか。
森山国務大臣 通信傍受は、現に行われている他人間の通信の内容を当該通信の当事者のいずれの同意も得ないで受けるものであることから、従来の強制処分に比して厳格な要件、手続によることが適当と考えられまして、通信傍受法によって通信の当事者に対する通知制度等が設けられたわけでございます。
 これに対して、携帯電話の位置情報や通話記録は、通信内容自体ではない上、電気通信事業者が課金、苦情対応、不正利用の防止その他の業務上の必要性に基づいて正当に記録しているものであると聞いております。
 したがって、携帯電話の位置情報や通話記録を検証の手続により得た場合、対象犯罪の限定や事後措置の規定を設ける必要はないというふうに聞いています。
保坂委員 いや、これは何か大変なことが明らかになったな。私は、そういうことが出てくるとは思わずに特別委員会の方で質疑していたのですけれども。
 刑事局長、これはどうですか、この通信傍受法というのはそんなに使われていないんですよね。国会の報告というのもほんの薄い、何件か、数件でしたよね、二件ですか。
 それで、いいですか、電話でこれからいい何とか薬物を持っていくから、しっかりしたやつだからというような感じじゃないんじゃないですかね、実際のところは。その人物がやはりどこに動いていくかという方が高度な情報だし、そして郵政省のガイドラインあるいは審議会、研究会でもこれは大問題だと言っているんですよ、位置情報というのは。携帯電話という便利な機能を逆さまにすると、これも十一けたなんです、住民基本台帳と同じように。河村さん、十一けたなんですよ。十一けたの位置発信装置を皆さん持って、私も持って日々歩いているということになるんですよ。
 それを、あと一週間とか十日間、その人がどうあるかということをとられたら大変ですよ。しかも、その捜査上の疑いが当たらなかったときは、どうですか、これは本人に告知すべきじゃないですか。通信傍受法と全然整合しない、扱いが。これをどう考えますか。余り考えていなかったのでしょうか。
樋渡政府参考人 いわゆる通信傍受法では、検察官または司法警察員が傍受できる通信といいますのは、原則として、犯罪の実行、準備または証拠隠滅等の事後措置に関する謀議、指示その他の相互連絡その他当該犯罪の実行に関連する事項を内容とするものに限っております。
 したがいまして、相手方に告知するというものは、傍受記録に記録された当事者に対しまして告知するものでございまして、検証令状によりまして、本人の位置等をもし検証する必要があれば、裁判所の許可を得てその検証をするということでありまして、通信の秘密とはいささか、通信傍受法による通信内容の傍受とコードとは違うだろうというふうに思っております。
保坂委員 裁判所、これは大問題ですから、慎重に答弁してくださいね。
 これは、その人がどこにいたかなんというのはプライバシー中のプライバシーなんですよ。下手すると、電話で話した内容なんてどうだっていいことが多いんです、実は。どこにいたか、最高のプライバシー。それを、たまたま技術の中で電話会社が持っているわけですよ。
 それを、今刑事局長が答弁するように、通信じゃないから、令状請求すれば出しているんですか、裁判所は。これから起こり得る犯罪、どういう疎明資料を出しているんですか。ちゃんと審査しているんですか。どういう見解を持ちますか。裁判所、答えてください。
大野最高裁判所長官代理者 位置情報の確認という検証令状だと思いますが、これにつきましては、将来起こる犯罪というケースも全くないかということになれば、それは違うかもしれませんけれども、多くの場合は、既に犯罪が起きていて、そしてその犯罪に対する嫌疑についての資料、それを踏まえた上で、さらに当該被疑者があれば被疑者がどこにいるかということを確認するための必要性ということについての資料を要求し、その必要性を認められた場合にそういった令状を出しているというのが実情であろうかと思います。
保坂委員 最高裁から、憲法との兼ね合いでしっかり、その位置情報について厳格にやっているかどうかということを改めて聞きたかったのですが、それはちょっと時間がもう押しているので。
 何件ありましたか、過去三年間。却下数。
大野最高裁判所長官代理者 先ほどの検証の数の中に入っておりまして、どういう内容の検証の令状を取り扱っているかということについては資料がございませんので、件数等はわかりかねます。
保坂委員 刑事局長はわかりますか。もしわからなければ調べていただけますか。
樋渡政府参考人 今、最高裁事務総局の刑事局長が答えられましたように、統計としては出ておりません。
 しかも、これはほとんどの場合、警察の方で令状を請求してやっているものだと思いますので、法務当局としてはなかなか調べようもないというところでございます。
保坂委員 それはうそなんですよ。
 実は、この古い法律案、これをめくっていたら、ちゃんと書いてあるんですね、検証令状による通信傍受捜査の五例。これは法務当局として調べられるという証拠なんですね。
 これは大臣に、大問題ですから、警察に問い合わせることも含めて、検証令状によって未来の位置を知るという捜査が過去三年間どのぐらい行われてきたのかというのをきちっと調べていただけますか。いかがですか、法務大臣。
森山国務大臣 関係省庁にもよく問い合わせまして、可能であれば調べたいと思います。
保坂委員 これは大問題。委員長にもお願いします。過去三年間の件数を当委員会に提出していただきたい、求めたいと思います。
山本委員長 理事会でしかるべく協議いたします。
保坂委員 終わります。
山本委員長 次回は、来る二十三日水曜日午前九時三十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時九分散会

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