衆議院

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第11号 平成15年5月9日(金曜日)

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平成十五年五月九日(金曜日)
    午前九時三十二分開議
 出席委員
   委員長 山本 有二君
   理事 佐藤 剛男君 理事 塩崎 恭久君
   理事 園田 博之君 理事 吉田 幸弘君
   理事 河村たかし君 理事 山花 郁夫君
   理事 漆原 良夫君 理事 石原健太郎君
      太田 誠一君    小泉 龍司君
      小西  理君    左藤  章君
      笹川  堯君    下村 博文君
      中野  清君    西川 京子君
      平沢 勝栄君    保利 耕輔君
      星野 行男君    保岡 興治君
      山口 泰明君    吉川 貴盛君
      吉野 正芳君    鎌田さゆり君
      齋藤  淳君    中村 哲治君
      日野 市朗君    水島 広子君
      山内  功君    上田  勇君
      山田 正彦君    木島日出夫君
      中林よし子君    保坂 展人君
      徳田 虎雄君    山村  健君
    …………………………………
   法務大臣         森山 眞弓君
   法務副大臣        増田 敏男君
   法務大臣政務官      中野  清君
   最高裁判所事務総長    竹崎 博允君
   最高裁判所事務総局総務局
   長            中山 隆夫君
   最高裁判所事務総局民事局
   長
   兼最高裁判所事務総局行政
   局長           園尾 隆司君
   最高裁判所事務総局家庭局
   長            山崎  恒君
   政府参考人
   (司法制度改革推進本部事
   務局長)         山崎  潮君
   政府参考人
   (法務省大臣官房司法法制
   部長)          寺田 逸郎君
   政府参考人
   (法務省民事局長)    房村 精一君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    樋渡 利秋君
   法務委員会専門員     横田 猛雄君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月九日
 辞任         補欠選任
  後藤田正純君     小泉 龍司君
  中川 昭一君     西川 京子君
  保利 耕輔君     山口 泰明君
  鎌田さゆり君     齋藤  淳君
  不破 哲三君     中林よし子君
同日
 辞任         補欠選任
  小泉 龍司君     後藤田正純君
  西川 京子君     中川 昭一君
  山口 泰明君     保利 耕輔君
  齋藤  淳君     鎌田さゆり君
  中林よし子君     不破 哲三君
    ―――――――――――――
五月八日
 刑法の一部を改正する法律案(内閣提出第五一号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 裁判の迅速化に関する法律案(内閣提出第九八号)
 民事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提出第六六号)
 人事訴訟法案(内閣提出第六七号)
 刑法の一部を改正する法律案(内閣提出第五一号)


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     ――――◇―――――
山本委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、裁判の迅速化に関する法律案、民事訴訟法等の一部を改正する法律案及び人事訴訟法案の各案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 各案審査のため、本日、政府参考人として司法制度改革推進本部事務局長山崎潮君、法務省大臣官房司法法制部長寺田逸郎君、民事局長房村精一君及び刑事局長樋渡利秋君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
山本委員長 次に、お諮りいたします。
 本日、最高裁判所竹崎事務総長、中山総務局長、園尾民事局長兼行政局長及び山崎家庭局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
山本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山内功君。
山内(功)委員 民主党の山内功でございます。
 年間三十万件近い離婚件数のうち、その約一割近くが裁判所を利用しての離婚となっているようでございます。数多く問題を抱えた当事者がその解決を託す、それにこたえる制度となっているのかがまさに問われる問題だろうと思っています。
 人事訴訟が家庭裁判所に今回の法律の改正では移管されることになるわけですが、そうなったときに、裁判所の人的あるいは物的な体制は整えられているのか、まずその点からお聞きしたいと思います。
中山最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
 人的体制の整備につきましては、裁判官あるいは裁判書記官につきましては、これは、これまで地裁で人事訴訟に関与してきたわけでございますので、地裁から家裁へ機動的に人員をシフトするということで基本的に対応はできるということを考えております。しかし、家庭裁判所調査官につきましては、家裁への人訴の移管に伴いまして、新たにこれに関与するということになることを踏まえ、さきの定員法の審議でも御審議いただきましたとおり、三十人の増員というものを家裁事件の充実強化ということでお認めいただいたところであります。
 さらに、人的体制に加えまして、裁判官あるいは調査官、書記官等がそれぞれの立場でどのように人事訴訟にかかわっていくことが新たな仕組みのもとで有用であるかということについて、率直に内部で職種を超えて議論し、さらにその辺のところを考えていきたい、そのための各種協議会や研究会も今般用意をしているところでございます。
 また、物的体制の整備といたしましては、既存のものを利用するのはこれは当然のことでありますけれども、必要な庁においては、法廷の改修あるいは電話会議システム等新たな設備の導入、そういったことを図っていきたいというふうに考えております。
 以上でございます。
山内(功)委員 今いろいろ説明をされましたけれども、人事訴訟ももちろんですが、それに密接に関連する損害賠償訴訟の管轄についても認めるということになるわけですから、かなりの事務量が一時急激にある時期を境にしてふえていく、施行日を境にしてふえていくということで心配もしております。この密接に関連する損害賠償請求訴訟の具体的な類型としてはどのようなものを考えているのか、お聞きしたいと思います。
房村政府参考人 人事訴訟と密接に関連する損害賠償請求訴訟ですが、典型例は、不貞を原因として離婚請求の訴訟を起こします、その場合に、その不貞を原因とする損害賠償請求訴訟、これを起こす場合がまさに密接に関連する損害賠償請求訴訟の典型例だろうと思っております。
山内(功)委員 それ以外の典型的な類型ももう少し説明を伺いたいのですが、それを含めて、今後家庭裁判所で扱う訴訟事件としては、これを拡張していく方針なのでしょうか、それとも、今言われたような不貞の損害賠償請求訴訟のように、今は限定して考えていて、今後の課題だということにされるのか、その点も含めてお聞きしたいと思います。
房村政府参考人 損害賠償請求訴訟ですので、人事訴訟の原因に何らかの違法行為があれば、それに関連して損害賠償請求訴訟を起こすということになろうかと思います。典型例としては先ほど申し上げたようなものでございます。
 今回の人事訴訟の家裁への移管は、家庭裁判所で審理をするのにふさわしい事件として、人事訴訟及びこれと密接に関連する損害賠償請求訴訟を移管するということとしたものでございますが、基本的には、今回、家庭裁判所で扱うのにふさわしい事件は家庭裁判所の方へ移管をした、こう考えております。
 ただ、今後、いろいろな状況を見ながら、さらに拡充する必要があるのかどうかということは考えたいと思いますが、基本的に、今回でふさわしい事件は移管をすることにしたと考えているところでございます。
山内(功)委員 例えば、家庭裁判所というイメージだと、そういう不貞のこととか、あるいは親子関係とか、いろいろなことがあると思うんですが、もう一つぴんとくる類型としては、遺産の争いごとをきちんと解決してくれるのが家庭裁判所であろうと国民は思っていると思うんですよね。だから、そういう遺産関係にまつわるような、あるいは被相続人が死亡したことによっていろいろと出てくる問題点について、遺産の範囲あるいは遺産相続人というものの人の範囲とか、そういうものをいろいろ決めるということについても、やはりそれは家庭裁判所で今後考えていく類型として思っておられるんですか。
房村政府参考人 遺産の分割ということになりますと、いかにも家族の関係、家庭の関係という感じがするわけでございますが、実際に問題となっております遺産分割に関連する民事訴訟というものは、遺産分割の前提問題としての遺産の帰属性が争われる場合、あるいは、実体法上、遺産分割の対象とならないと解されている権利義務に関する民事訴訟、例えば遺留分減殺請求とか、そういうものにより取り戻された財産の共有物が想定されているわけで、訴訟の性質としてはまさに民事訴訟でございます。
 これを適切に解決するために、例えば家庭裁判所調査官を使うというようなことは考えがたいわけでありまして、事件の性質としては、やはり地方裁判所で民事訴訟として審理、判断するのが適当な事件ではないか、こういうぐあいに考えております。
山内(功)委員 先ほど、三十人ほど調査官の増員が図られたということを言われましたけれども、今回の人事訴訟法改正の最大の目玉というのは、訴訟事件になったときにも積極的に調査官制度を利用するということが新設されることが大きな着目点だと私は思うんですね。
 そうしますと、そのたった三十人で事足りるのかなと思うんですが、まず、そもそもこの家庭裁判所調査官制度を拡充することの意味合いについてお聞かせ願いたいと思います。
森山国務大臣 人事訴訟法案の第三十四条におきましては、離婚訴訟等における子の監護、監護者の指定、養育費、財産分与の定めなどの附帯処分や親権者の指定についての裁判をするに当たりまして、家庭裁判所調査官による調査を活用することができるというふうになっております。
 これは、これらの裁判に当たりましては、家庭の諸問題について専門的知見を有する家庭裁判所調査官による調査を活用するということが、適切な判断をするためには有益であるという場合も少なくないと考えられますので、家庭裁判所調査官に事実の調査をさせるということを認めるものでございます。
山内(功)委員 しかし、今の家庭裁判所調査官の方々が現場でどういう訴えをされているのかというのはつぶさにはわからないんですけれども、例えば、今の負担で仕事量としてはどうなのか。これが人事訴訟、あるいはそれに密接に関連する損害賠償請求訴訟が家裁に移管になることによってどういう仕事量がふえるのかなどを含めると、調査官の現場というものはもう仕事ががらっと変わるんじゃないかとも思えるんですが、その辺の現場での負担増についてはどう考えたらいいでしょうか。
山崎最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
 現在の家庭裁判所全体の事件動向等を見ますと、少年事件の事件数は長期的に見れば減少傾向にございますが、成年後見関係事件など家事事件の増加傾向というものは依然として継続しておりまして、しかも、内容が複雑困難な事件が増加してきているというような状況にございます。
 人事訴訟の家裁移管によりまして、家裁調査官としては、新たに、一定の婚姻の取り消しまたは離婚の請求を認容する判決に附帯して行う子の監護者の指定、その他、子の監護に関する処分等の附帯処分についての裁判または親権者の指定についての裁判等のために必要な事実の調査という事務を行うことになりますので、家裁調査官の果たす役割はふえると考えております。
 いずれにしましても、人事訴訟における家裁調査官の関与のあり方につきましては、家裁における人事訴訟の審理のあり方や家裁調査官の専門性を生かした事務処理のあり方などとともに、検討を行っていく必要があると考えております。
山内(功)委員 今までの家庭裁判所の調査官というのは、学生時代あるいは研修所での研修を積んで、その専門的な知識あるいは心理学の学問など自分の蓄えを実社会と生の事件に当てはめて、どちらに親権を与えるべきかとか、養育費の額についてどうしようか、そういうようなことを今までされていたと思うんです。
 例えば、先ほど相続人の範囲とか相続財産の範囲を決めるというのは訴訟事件に非常になじむので、急々には、密接に関連する事件だということで家庭裁判所には移管しないというようなお考えも承ったんですけれども、しかし、一つ例として出された不貞行為にしても、例えば男性は、最近は女性の不貞行為も事件としてはあると思うんですけれども、多くの男性の不貞行為で争われる事件、女性が不貞の確実な証拠を握っていないと思うと、もうぎりぎりまで否認するわけですよね。だから、不貞行為があったかどうかというのは、物すごく原告、被告で対決する。そして、証拠に基づいてしっかりと認定をしていくという意味では、それはもう人訴事件、それに伴う密接に関連する損害賠償請求訴訟だから家裁のということじゃなくて、極めて普通の一般民事事件の形態でもあった、今までもそうだったと私は思うんですよ。
 だから、そういうような、例えば離婚が認められるか認められないのかということが争点となっている事件があって、それに基づいて、養育費の問題とか、慰謝料の問題だとか、財産分与の問題とかがあるわけですよね。その今言った三つの問題点については、家庭裁判所は、確かに調査官は能力がすぐれていると思いますが、そのもととなる離婚をさせていいか、婚姻を取り消していいかというような部分についても判断をするということになると、もう物すごく大変なことに、今までの調査官に課せられた仕事と全然違うわけですよね。だから、そこまでは家庭裁判所調査官には関与させません、先ほど言ったような三つの分野についてしっかりと調査官に事実調査をさせますというのがこの法律の趣旨だとは思うんですけれどもね。
 そういうことが簡単に、今までの調査官に心証を分け隔てをしてきちんと考えていくということまで期待できるものなんでしょうか。
房村政府参考人 人事訴訟、例えば離婚についても、これは当事者が対立して非常に厳しく争われる訴訟であるというのは御指摘のとおりだろうと思います。
 ただ、今回家庭裁判所に移管することに伴いまして、人事訴訟に関して調査官を活用する場面と申しますのは、婚姻の取り消しまたは離婚の訴えに係る請求を認容する判決において、子の監護者の指定その他子の監護に関する処分または財産の分与に関する処分をする場合、これについて事実の調査をすることができる、この事実の調査をするについて、家庭裁判所調査官に裁判所は事実の調査をさせることができる、こういう形になっておりますので、家庭裁判所調査官が関与をするのは親権者の指定またはその他の付随の処分、こういう部分に限られております。
 これは現在でも家事審判法で調査官が調査をする職分と全く同一でございますので、調査官の仕事の性質としては従前と同じ内容のものをたまたま訴訟事件に関連して行うことになった。訴訟そのものの、離婚そのものについて、あるいは婚姻の取り消しそのものについて調査官が関与するわけではございませんので、その点は従来と変わりがない。また、その点は裁判官も調査官も十分意識をしていると思いますので、そういう御懸念のようなことはないと思っております。
山内(功)委員 裁判官や調査官がしっかりとそれぞれの分野で研修を重ねていかれて、意識を持って、例えば、調査官のそういう事実調査の資料が離婚の存否の認定に使われないようなことも、各手続主宰者がしっかりと意識を持ってほしいとは思っています。
 ただ、それを担保するためにも、当事者の関与というのがやはり重要だと思うんですよね。だから、裁判所による家庭裁判所調査官に対する調査命令の発令あるいは調査の方法、内容及び調査結果の活用のそれぞれの場面において、当事者の関与というのが必要になると思うんですが、この改正案ではどういう点について配慮がなされているのでしょうか。
房村政府参考人 まず、家庭裁判所調査官に対する調査命令の発令でございますが、これは、この法律では受訴裁判所の職権によって行うということとしております。これは、その必要性は裁判所が一番よく判断できるということからそうしておりますが、当事者としては、その職権発動を促す申し立てをするというようなことは十分可能でございます。
 また、具体的に調査官が調査を行うという場合に、調査というのは対象者の協力を得ながら行うわけでございますので、当事者にもその協力を求めるということも十分あり得るわけでございまして、そういうときには、調査官から当事者に対して、その調査の内容等についての説明があることは十分あり得るわけでございます。
 また、事実の調査の結果を裁判資料として活用するに当たっては、当事者が十分それについて防御できるように、その記録の閲覧を保障するというようなことをこの法律でも手当てをしております。
山内(功)委員 訴訟記録中の事実の調査に係る部分の閲覧の請求について、裁判所の許可を要するということが規定の中に盛られているのですが、その制度を設けたのはなぜなんでしょうか。
房村政府参考人 この事実の調査は、子の監護者の指定とか財産分与ということ、あるいは親権者の指定、こういうものに関連して調査をするわけでございますので、その調査の内容としては、子供の利益とか当事者の高度なプライバシーに触れる部分が相当ございます。
 同じ内容を家事審判事項として調査をするわけでございますが、家事審判においては、そういった事実の調査の特性を考慮いたしまして、その記録の閲覧について、裁判所において判断をするという構造をとっておりますので、同じ性質の調査を人事訴訟に関連して行った場合にも、その訴訟記録の扱いにおいては、家事審判手続におけるのと同様に、裁判所の許可に係らしめるということとしたものでございます。
山内(功)委員 調査官の仕事量が単純にふえるということからすると、将来についてはどういう計画、増員計画、あるいは全国の裁判所への配置についてはどういうふうに考えておられるのでしょうか。
中山最高裁判所長官代理者 先ほども家庭局長の方から答弁がございましたとおり、成年後見関係事件初め家事事件が増勢にありますので、しかも、内容も非常に複雑困難なものがふえてきているということから、家庭裁判所調査官の役割はますます重要なものになり、その人的体制の充実というのが強く求められてきている、こういうふうに認識しております。
 さらに、今回の人事訴訟の移管によって、離婚訴訟等を利用するユーザーの立場としては非常に使い勝手のいいものになる。そうなりますと、家裁に提起される人事訴訟というのは、これまで以上に、これまで地裁が受け持っていた以上に多くなる可能性もあるというふうに思っております。
 しかしながら、もう一つの方では、そういった人訴が家裁に移管されることによって、その体制、仕事の役割分担といいますか、かかわり方というものをどのようにやっていくのが一番適正な処理に資するかどうかというところの検討も進めていかなければなりません。そのあたり、しばらく実情を見なければ難しいというところもございまして、今直ちに中期的な増員計画というものをお示しするのはまだ時期尚早であるということは御理解いただきたいと思います。
 しかし、いずれにしましても、最高裁としては、この人訴移管によって事件が滞るようなことのないように、適切な処理をできるように体制を充実してまいりたいということだけは申し上げておきたいと思います。
山内(功)委員 次に、参与員の問題についてお聞きしたいのですけれども、人事訴訟に参与員を関与させることとしたのはなぜなんでしょうか。
房村政府参考人 現在、家事審判において、国民の良識を審判に反映させるという趣旨で参与員制度が利用されているわけでございますが、人事訴訟は家庭に関する訴訟でもありまして、その審理及び裁判には一般の民事訴訟以上に一般国民の良識を反映させることが望ましい、こう考えられます。
 そこで、家事審判に導入されております参与員制度を人事訴訟にも導入いたしまして、職業裁判官以外の者を参与員として審理に関与させ、裁判官がその意見を聞くことができるようにということを考えたわけでございます。
山内(功)委員 これは、調停委員さんが参与員となることは可能なんでしょうか。
山崎最高裁判所長官代理者 可能でございます。家事調停委員が、その後、参与員になるということもございます。
山内(功)委員 もしそうだとしますと、調停で何回か期日が開かれている間に、例えば当事者が、この調停委員さんには話しにくいとか、例えば、この調停委員さんは女性は家庭にいるべきだという思想が強くて合わないわと思っている調停委員さんと出くわしたとしますね。そうすると、その人がずっと、調停でもくたびれるけれども、訴訟に移ったら、その人がまた裁判官の右か左か斜め下かどこかにいる。それもまたつらいものがあるんじゃないかなと思うのが一点ございますし、例えば鳥取県なんかで、もし仮に調停委員さんが参与員となることができないというようなことになれば、今度はその人材を探すのは随分大変だろうなという思いもありますので、調停委員が参与員となるということが可能だと最高裁が言われるのは、そういう面ではいいのかなとは思うのですけれども、人間的な心のつながりができない調停委員さんが参与員になるということに伴って、当事者の司法に対する満足度というものが充実できない、充足化されないということも心配するのですけれども、どうなんでしょうか。どちらでもいいです。
房村政府参考人 一般的に調停委員が参与員にもなれるというのは最高裁判所からお答えしたとおりだと思いますが、具体的に訴訟に移行したときに、調停に関与した調停委員が同じ事件に参与員として関与をすることができるかどうか、これは、この法律では特に禁止はしておりません。しかし、実際の問題としては、やはり調停委員として知り得たことが人事訴訟の判断に影響を及ぼすということは必ずしも望ましいことではありませんので、それは運用としてはできる限り避けるような運用がされるのではないか、こう思っております。
 ただ、地方のいろいろな実情を考えますと、法律で一律に、調停に関与した者は参与員として関与してはならないということになりますと、御指摘のようにかえって不便になってしまうということもあるので、この法律では特に禁止はしておりませんが、運用としては多分そういう配慮はされるだろうと思っております。
山内(功)委員 人事訴訟については裁判の公開を停止するという規定も盛り込まれるわけですけれども、これについても、憲法上は裁判の公開が原則となっているので、適合性をどう考えたらいいのか、教えてもらえますか。
房村政府参考人 御指摘のように、憲法では裁判の公開を定めておりますが、今回の法案では、その二十二条で、当事者尋問等の公開停止ということを決めております。
 これは、要件といたしましては、当該人事訴訟の目的である身分関係の形成または存否の確認の基礎となる事項であって自己の私生活上の重大な秘密に係るものについて尋問を受ける場合において、その当事者または証人が公開の法廷で当該事項について陳述をすることにより社会生活を営むのに著しい支障を生ずることが明らかであることから当該事項について十分な陳述をすることができず、かつ、当該陳述を欠くことにより他の証拠のみによっては当該身分関係の形成または存否の確認のための適正な裁判を行うことができない、こう認めるときは、裁判官全員一致の決定で、尋問の公開をしないで行うことができる、こういうことを定めたわけでございます。今読みましたことから明らかなように、本当にぎりぎりの場合でございます。
 憲法で裁判の公開を保障しているということは、もともとそれ自体が目的ではなくて、裁判を一般に公開することによって裁判が公正に行われることを制度として保障したものというぐあいに理解されております。したがいまして、今述べましたように、裁判の公開を困難とする真にやむを得ない事情があり、かつ裁判を公開することによって、かえって適正な裁判、すなわち人事訴訟において適正な身分関係の形成または存否の確認が行われなくなる、こう認められるような極限的な場合において、なお憲法が適正な裁判の実現を犠牲にしてまで裁判の公開を求めているとは解されないわけでございます。
 そこで、今回、このような厳重な要件を定めまして、その公開の停止ということを認めることとしたわけでございますが、これは、憲法で言っているような、この条件を満たす場合にはまさに公の秩序を害するおそれがあるという場合に当たると理解しております。
山内(功)委員 簡単に整理して言うと恐縮なんですけれども、もし仮に非公開にした方が真実が語れるとするならば、裁判の全事件を非公開にしたらいいんですよね。だから、そこの見きわめというんですかね、これはやはり随分大切なメルクマールだと思うんです。
 だから、公開の停止が拡大しないように人事訴訟のみに限るべきだと思うのですが、どのような方向性として考えておられるんでしょうか。
房村政府参考人 憲法では公開を原則としておりますが、その停止もできるということが憲法八十二条二項では定めているわけでございます。この憲法上の公開停止の規定は訴訟類型を問いませんので、どのような訴訟であってもこの憲法の要件を満たす場合には公開の停止ができるということになっているわけでございます。
 今回、この人事訴訟法をつくるに当たりまして、公開をすることによりかえって人事訴訟における適正な裁判が行われなくなって、誤った身分関係の形成または存否の確認が行われるおそれがある、しかも、人事訴訟においては、その身分関係の形成または存否の確認の基礎となる事項が自己の私生活上の重大な秘密にかかわる場合が多い、こういうことから、この人事訴訟特有の場面について特に具体的な要件を定めて、公開停止を定めたものでございます。
 したがいまして、ほかの訴訟類型において、憲法の範囲内でやはり公開停止に関する規定を設けるかどうかということについては、それぞれの訴訟類型ごとに個別具体的に検討されるべき事柄であって、今回は、ともかく人事訴訟についてその特有の性質に応じて憲法の範囲内で規定を設ける、こうしたものでございます。
山内(功)委員 大臣、最後にお聞きしますが、この人事訴訟法改正案が制定されますと、どのように人事訴訟の充実、迅速化が図られるのか。人事訴訟法案と裁判迅速化法案との関係を含めて、最後に伺いたいと思います。
森山国務大臣 この法律が制定されますと、家庭裁判所に人事訴訟が移管されることになりまして、離婚の訴え等に係る訴訟におきましてしばしば審理、判断に時間を要する親権者の指定等の裁判のために、専門的な知識を有する家庭裁判所調査官の調査を活用することが可能となりまして、より迅速に必要な訴訟資料の収集を図ることができるようになると思います。また、人事訴訟への参与員の関与を認めることにより、国民の良識を訴訟の結果に反映させることも可能となってまいります。
 したがって、これらの制度等により、人事訴訟の審理の充実、迅速化が図られることになると考えております。その意味で、人事訴訟法案は、裁判の迅速化に関する法律案に言うところの必要な法制上の措置に当たるものと言うことができると考えます。
山内(功)委員 終わります。どうもありがとうございました。
山本委員長 次に、山花郁夫君。
山花委員 民主党の山花郁夫でございます。
 法務大臣に、裁判の迅速化に関する法律案についてお伺いしたいと思います。
 本法案は、裁判を迅速に行うということを目的としているようです。
 ところで、私ごとで恐縮ですが、三年ぐらい前に父を亡くしまして、アミロイドーシスという病気だったんです。アミロイドーシスというのは、余り聞いたことのない方もたくさんいらっしゃると思いますけれども、難病指定されていて、治らない病気だったんですね。治らない病気ですから、どこのお医者さんに行っても恐らく結果は一緒だったのかな、そんなふうに思っているんですけれども、ただ、いろいろとできる処置をやっていただいて、手を尽くしていただいたと思っていますし、そのお医者さんに対しては大変感謝をしております。
 恐らく、お医者さんなんかでも、医療過誤として訴訟で争われるようなケースは、物によっては、結果としては一緒だったのかもしれないけれども、患者さんなり遺族なりの方にちゃんと説明をしていなかったりとか、そういったことで争いになったり、あるいは、医療過誤で訴訟になっているケースだけじゃないです、一般の国民の方が病院だとかお医者さんに対して不満を持つケースというのは、必ずしもちゃんと説明されていない、あるいはやり方が、納得のいくやり方で治療してもらえなかったとか、そういうことじゃないかと思うんですけれども。
 何を言いたいかというと、よく法律の入門書の教科書などを読みますと、裁判だとか法律だとかというのはお医者さんに似ている、つまり、病気というのが、身体に対する自然科学的な分野で言うところの不正常なメカニズムになったとき、それを正常に戻すということだと。法律というのは、社会がノーマルに動いている分には必ずしも必要ないのかもしれないけれども、紛争になったときにそれをしっかりと正す、ノーマルな状態にするということであるというようなことが教科書にも書いてありますし、私もそういうものなんじゃないかなと思っております。
 つまり、裁判の迅速化法というのが提案されていますけれども、今の裁判に対して、これは、勝った人、勝訴した人も含めて満足度がかなり低いというようなアンケートの結果もありまして、一つは、だから本当にしっかりとした、充実した審理が行われているのかどうか、そこのところを点検していかなければいけないのではないのかなと思います。
 つまり、一般の方とお話をすると、こういうケースはどうですかというふうに聞かれると、大体皆さん、法律で一義的に決まっているように思われていますけれども、実際は、必ずしもそんなに明快に割り切れるものではなかったりだとか、あるいは事実関係が、AさんとBさんがいたときに、Aさんが言っていることとBさんが言っていることが違ったりだとか、そこをはっきり確定させないことには何とも言えないケースだとか、いろいろあるわけです。
 一義的には決まっていないにしても、およそ裁判になって結論が出るということになれば、後から振り返って考えれば、その事件については結論が決まっていたのかもしれないし、あっちの裁判所に行こうがこっちの裁判所に行こうが上訴しようが、同じ結論が出るかもしれない。
 ただ、ある裁判所のときには満足したかもしれないし、ある裁判所のときには満足しないかもしれないというのは、やはりそれは先ほどの医療の話に極めて近くて、要するに、裁判官が自分の話を聞いてくれた、そういう手続がちゃんとあって、裁判というものに対する信頼というものもできてくるんだと思います。そういう意味では、我々の世界も結構似ていて、そういう話は聞いていないとかいうのが非常につらいケースがありますけれども、やはり当事者の方からすると、そうやってしっかり話を聞いてもらったりだとかするということが本当に大事なことだと思うんです。
 そういう意味で、従前からも当委員会でも同じような意見が随分と繰り返されていますけれども、裁判の迅速化ということだけではなくて、本当に充実した審理ということを行う必要がある。
 そして、決してそれは二律背反じゃないと私は思うんです。例えば、訴訟指揮にもかかわることかもしれませんけれども、ちゃんと争点整理があらかじめしっかりできていて、これに関する証拠というのは一体何なのかというのを当事者がよくわかっていて、それについてしっかりと議論をぶつけて、それで結論を出すというのがあくまでも本来の姿だと思いますし、そうだとすると、やはり迅速化ということだけではなくて、裁判の充実ということが本当に必要なんではないかと思うんですけれども、この点について、改めてお考えを伺いたいと思います。
森山国務大臣 おっしゃるとおり、裁判の迅速化、大事ではございますけれども、その内容が充実しているということも非常に重要なことだと思います。ですから、裁判の迅速化に当たりましては、必要な主張、立証を尽くすなどの裁判の目的を達するのに必要不可欠な行為をすべて行った上で、手続を集中的かつ効率的に行うということによって迅速化を実現していくという必要があるというふうに思うわけでございます。
 そのような意味で、裁判の迅速化が充実した手続の実施により行われなければならないというのは、先生御指摘のとおりでございます。
山花委員 私は、お医者さんも裁判所も余り経済的合理性を追求してはいけないような場所ではないのかなと思っているものですから、今のような指摘をさせていただいたんです。
 最高裁にお伺いしたいんですけれども、一つは、充実ということと迅速ということと関連すると思うんですけれども、最高裁のホームページなどを見ると、各支部などにもちゃんと裁判官が配置されていて、裁判官というのは大変多いのかなというふうに見えるんですが、実はそうではないケースがあって、というのは、てん補の問題です。
 実際は、箱はあるんですけれども、例えば旭川地裁、具体的に申しますと、名寄の支部ですと、奇数の月ですと第三水曜から金曜に本庁から一名てん補されている。偶数の月には第三木曜から金曜に本庁から一名てん補ということで、そこに裁判官がいる時間だけとらえると、極めて短いですね。しかも、水曜から金曜日といっても、水曜日の午後から始めて金曜日の午後には帰ってしまいますので、実質は二日しかいないというようなケースもあって、そうしますと、例えば、訴訟当事者が証人尋問をやってほしいというような申請をして、証人尋問ですから相手方のあることですから、呼ばなければいけない。ただ、日程を合わせようと思うと、結局ピンポイントでしか合わないものですから、そうすると、必然的に、もう構造的に長期化してしまうような問題でもあると思います。
 恐らく、いや、そもそも、こうやって人が少ないところは事件も少ないんだというお話なのかもしれませんけれども、ひょっとすると、そういう答弁を考えられているのかもしれないですけれども、ただ、これは鶏が先か卵が先かみたいな話かもしれません。
 もともと裁判所の法廷の開廷件数が少ないし、そうすると、当然弁護士さんも余りそこにいる人じゃなくて、やはりふだんは札幌の方で仕事をしていて、たまたま受任した事件が地方というか、例えば名寄の方だったので、弁護士さんの方も出向く。その地域も確かに弁護士過疎だったりするというような現象なのかもしれません。ただ、もともと裁判をやるという発想がないものだから、つまりはもともと余り開かれていないし、御近所の人も裁判なんかやったことがないからということで、そもそも裁判で争おうという気が起こらないケースもあるのかもしれません。
 こういった裁判官が不在の庁について、もっと人員をふやすということが今後必要、今後というか今も必要なのかもしれませんけれども、今後も必要なんじゃないかと思いますけれども、この点、どのように考えられていますでしょうか。
中山最高裁判所長官代理者 ほとんどお答えいただいたような感じもいたしますけれども、今御指摘のあったような名寄、あるいは旭川管内でいいますと紋別、そういったところは裁判官が非常駐ということで、てん補で事件処理を行っております。
 そういうところは、例えば一人の裁判官を置く事件数が到底ない、五分の一程度しかないということでありますので、仮にそこに一名を配置するということになりますと、あとは何をしていればいいのかというところもございます。国民の税金で賄わなければならない国家機関でありますから、そのあたりの効率性というものは考えなければならないというふうに思っております。
 ただ、それのために適正、迅速な裁判が実現できないということになると問題でございますから、そのあたりは裁判所としてもきちんと見てきているつもりであります。例えば、非常駐支部の民事第一審通常訴訟の平均審理期間は九・四カ月、これは普通の地裁の平均審理期間が八・三カ月でありますから、少し長いということでありますけれども、誤差の範囲内。刑事事件につきましては、非常駐支部の平均審理期間が二・九カ月、それに対し、刑事第一審通常訴訟の平均審理期間は三・二カ月でありますから、その辺はむしろ短いというようなことにもなっております。
 そのあたり、病理現象が出てきますれば、あるいは事件数がふえてきているというようなことが出てきますれば、機動的に対応してきているというのが実情でございます。
山花委員 そのことと関連するかしないかということもあるんですけれども、ひとつ、これは最高裁というか裁判所に検討していただきたいことがございます。
 裁判をやるということで法廷が開かれるということになると、平日の大体十時ぐらいから五時ぐらいで終わっています。もちろん人がそんなにふんだんにあり余るほどいるわけじゃないし、大体ローテーションが決まっていますから、今直ちにということは難しいことは重々承知はしております。
 ただ、証人尋問にこだわるわけではないですけれども、一般の国民の方が民事裁判で一つ腰が引けるのは、例えばサラリーマンの方なんかだと、ウイークデーの十時から五時の間、裁判所に来なさいという、あるいは行かなきゃいけないといったら、結局会社を休むしかないですよね。あるいは証人尋問でどうしてもあの人に話を聞いてほしいけれども、勤め人なのでなかなか仕事も忙しくてという方なんかについて、証人尋問をどうしてもやってほしいんだけれどもということになると、そう簡単にまた会社も休めないというケースもあるわけです。
 私は、これから土日開廷するであるとか、あるいは深夜、十一時、十二時とは申しませんけれども、九時ぐらいとか、今の勤務状況で考えるとそれは到底無理だという話になると思うんですけれども、早番遅番じゃないですけれども、そういうローテーションをつくったりとか、これからもっと少し人員をふやしてやれば可能だと思いますし、ましてや、今後、裁判員制度というのを今検討されているわけで、ということは一般の方に裁判に参加していただくという話になるわけですから、そうすると、ウイークデーの十時から五時までの間に来てくださいなんと言って、およそ勤め人は来られるわけないじゃないですか。
 裁判員制度、今後そういうのが導入されていくということを視野に入れて考えると、およそ、だから広く一般国民の人に参加してもらいますよという建前になっていながら、実際はサラリーマンの人はもうシャットアウトするというようなことになってしまってもいけませんから、今後、将来的に土曜とか日曜日に開廷したりであるとか、あるいは夜少し遅い時間も、つまり仕事が終わって帰ってきてからも来られるような時間、そういう時間も開廷する必要があると思います。この点についてはいかがでしょうか。
中山最高裁判所長官代理者 一つの御見識だろうと思います。
 ただ、夜間の、休日の開廷につきましては、これは訴訟関係人等のニーズが本当にあるのかどうか、あるいは出頭を求められる相手方や証人の負担との関係、セキュリティー確保の問題、職員の執務体制、これを維持するためのコストなどを総合的に考慮していかなければならないだろうと思っています。裁判所の中には、今、夜間調停を受け付けているというところもございますが、率直に申し上げまして、余り利用者はいないというのが実情でございます。
 また、今、裁判員制との兼ね合いでもお話がありましたけれども、最高裁では、昭和六十年から陪審あるいは参審制の調査研究を進めてきております。私は、その間、刑事局の課長をしておりましたときがありましたけれども、そこで接した調査報告によりますと、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、いずれも夜間あるいは休日開廷をしているというところはございませんでした。記憶の限りではございません。これは多分、そういった陪審員あるいは裁判員の負担といったものを考えてのことかなと思っております。
 私は、裁判官として、今十時からというお話でしたが、九時半からということもあるんですけれども、五時まで一日入っておりますと、率直に申し上げまして、かなり疲れます。そういう意味で、裁判員制になればそれだけでも相当の負担がある、しかも、裁判員制の場合には、恐らく、直ちに五時から帰宅するということではなくて、その後残っていただいて中間評議といったようなものをやっていかなければならないんだろうと思います。その負担はますます強まっていくんではないかなと思っています。
 そういうことを考えますと、連日的開廷が求められていることを前提にいたしますと、家庭での団らんといいますか、息抜きできる時間というものも必要かな、それを土日にとっていただくことも大事かなというふうにも思っておりますので、感想めいたことでございますが。
山花委員 ただ、今のお話で土日のところでちょっと気になるんですけれども、キリスト教の文化圏のところで日曜日が休みというのは、それは当たり前のことだと思うんですよ、開廷していないですし。
 あと、今言われたような国の特に公民意識と申しますか、ちょっと日本と違うのかなと思うところがあります。というのは、アメリカでもイギリスでも、日本ですと、国政選挙だけではなくて、選挙というのは大体日曜日が投票日になっていますけれども、そういった国は平気でウイークデーが投票日だったりとかして、会社へ勤めていても、今から選挙へ行ってくるからと言って抜けて帰ってくるというのは割と当たり前にやっていますね。公民権の行使だということを言えば会社だって平気で抜けられるような文化のある国と、本当は日本もそうだったらいいのかもしれないですけれども、なかなかそうではない日本という国の中で、裁判員に指名があったんでということで、ではちょっと行ってきますというような、なかなかそういう感じにはなりません。
 ただ、今言われたような国と、だからほかではないからということで日本と比較されるのは、直ちにストレートには私としてはちょっとすとんと来ないような気がします、こちらも感想めいたような話ですけれども。
 今いろいろこのような話をしてきましたけれども、今回迅速化ということで、本来であれば、むしろ箱がちゃんとあるということが必要なんだと思います。つまり、東京地裁なんかに行くと、次の法廷をいつにしましょうかといったときにも、箱が埋まっていてなかなか次の期日を決めるのも大変だなんという話も聞きますし、あるいは、人の問題もあって、裁判官も人によっては一人二百件以上持っていたりだとか、そういう人もいらっしゃるようです。平均でも百五十を超えるぐらいですか、それだけ持っているわけですから、本来であれば、判事であるとか、そういう方ももっとふやしていかなければいけないんではないかと思うわけです。
 迅速化法というのをこう出されているわけなんですけれども、迅速化を進めるためには本来どれぐらいの判事というもの、あるいは人員の増というものを検討されているのかということについてお伺いしたいと思います。と申しますのも、今後、ロースクールというものができて年間三千人の法曹が誕生して、弁護士もふえます、検事もふえます、裁判官もふえますということになっているわけですけれども、ある程度のそういう見通しがないといけないと思うんですが、この点についてはどのようなお考えをお持ちでしょうか。
山崎政府参考人 この点に関しましては、この法案の中でも、裁判官を初めといたします裁判所の人的体制の充実、これが必要であるということから、この案文でも「裁判所及び検察庁の人的体制の充実」、これを明示しているところでございます。
 この法案の趣旨は、二年という目標を立てまして、それで現実に調査分析をしてもらいまして、本当にでは二年に近づけて事件を終わらせていくというためには、何か手続が足りないなら手続をちゃんと整備しましょう、人が足りないのなら人をふやしていきましょうというところから具体的にそこを目指した人数が浮かび上がってくるわけでございまして、ですから、アプリオリにどれだけ必要だということを持っているということじゃなくて、検証しながら具体的な人数をはっきりさせて、それで人的充実を行っていこう、こういうものでございますので、現在私どもで、では具体的に何年に何人とか、そういうようなものを持っているわけではないということは御理解を賜りたいと思います。
山花委員 お立場がお立場ですので、最高裁がことし何名ふやしたいとか、そういう話にならないのはそれはわかるんですけれども、ただ、法科大学院のときの連携法のときも非常に不思議だなと思っていたんですけれども、どうも今回のこの司法制度改革については、何か、やってみなければわからないというような話が多いような気がするんですね。
 だって、法科大学院をつくって年間三千名法曹資格を持つ人が出てくるわけですよね。そうしたら、みんなが弁護士になるわけでは当然ないでしょうし、それこそ今の三倍、四倍の数、年間、法曹がふえるわけですから、それも単年度で見たときにという話ですよね。どんどん累積していきますから、物すごい数の法曹ができるわけですよ。そうした中で、必然的に裁判官になる人だってある程度ふえてくると思いますし、この法律があろうがあるまいが、今裁判官は受任件数が多くて大変だという声はあるんじゃないですか。
 したがって、もう少し具体的な人数を、ごめんなさい、迅速化の法案に絡めて聞いたからそういうお答えになったのかもしれませんけれども、本来、やはり司法制度改革本部として、ある程度、例えば一割とか二割とか、少しざくっとした数値目標みたいなものを持っていてもおかしくないと思うんですけれども、それはないんですか。
山崎政府参考人 迅速化法を離れて、司法制度改革そのものとして具体的にどのように人的体制を充実していくか、こういう御質問だろうと思うんですが、確かにこの中の計画で人的体制の充実を図っていくということが盛り込まれております。
 現在は、私どもといたしましてお願いしているのは、それぞれ、裁判所、検察庁、その事件の動向等がございますので、そういう点を毎年毎年きちっと勘案していただいて、裁判実務に支障を来さないように、そういうことを全部手配をお願いしているわけでございます。そういうことは通常のルートとしてきちっとやっていただいて、ではそれに加えて将来的にどういうふうにしていくかというところが具体的な目標等イメージがないと、なかなか具体的な数字が浮かび上がってこないわけでございます。
 そこで、それを可能にするためにも、今回の法案、二年というまず目標を持って、それにどれだけのものが必要になってくるかという具体的なものを出して、これを充実させていきたいというふうに考えているところでございます。
山花委員 ただ、その数値的なものをできるだけ早い時期に出すよう努力していただきたいと思います。
 例えば、法科大学院に今の時点で行きたいと思っている学生さんは結構いらっしゃるんですよ。また、私の知り合いでも、大学を出たんだけれども、今の司法試験を受けようかしら、法科大学院ができたら何か受かりやすくなるような話も聞いているんだけれどもどうしようかしらなんということも言われている方もいらっしゃいます。ただ、当たり前の話ですけれども、みんな弁護士になりたいと思っているわけではなくて、裁判官になりたいと思っている人もいるし、検察官になりたいと思っている人もいる。
 現行の司法試験制度を前提として、大体毎年判事あるいは検事に任官される人がどれぐらいの数だというのは、それは大体皆さんわかっていますから、そうすると、もともと今何人ぐらい合格するんでしたっけ、千人ぐらい合格しているんでしたっけ、その中から、自分はこういう道に進もうというふうに目的意識を持って、そして人生の選択をしていくわけじゃないですか。それが今後三倍ぐらいにふえて、だけれどもどれぐらいの人が判事として採ってもらえるのかわからないとか、こういうことだとちょっと、学生さんにとっても大変不安だと思いますし、これから法科大学院に行こうと思っている人なんか、ましてや将来何になろうか、当然、勉強してから進む道、考えが変わる方もいるかもしれませんけれども、そういった学生さんたちのためにも、大体これぐらいのものなんだということを、改革本部が言うべき話なのかあるいは最高裁の方なのか、それは仕切りはちょっと私よくわかりませんけれども、できるだけそういうのを出された方がいいと思いますので、早い時期に、大体これぐらいというのを、迅速化法の話とも離れてもやっていただきたい、要望だけさせていただきたいと思います。
 時間が残り少なくなってまいりましたので、民事訴訟法の一部改正について質問をしたいと思います。
 今回のこの改正で、既に議論も出てきた話ですけれども、特許権等に関する訴えの専属管轄化ということがございます。専属管轄化に伴って、これは日野委員であるとか山内委員からも指摘がございましたけれども、地方に在住している方だって、いろいろ発明の意欲がある方だとかそういう方がたくさんいらっしゃって、紛争は東京や大阪だけで起こるわけではもちろんないので、そうすると、訴訟の運営の主体としての裁判所としては、専門家を、できるだけ専門的な知識を持っている人に集約して行うという話は、これはもちろんわからないではないんですけれども、利用者の側からすると、それで裁判を受ける権利が害されることがあってはよくないと思いますので、電話会議システムだとかあるいはテレビ会議のシステムというのがあるわけですから、こういった訴訟手続の制度だとかあるいは移送の制度があるんだという、こういった趣旨についての周知徹底ということをぜひお願いしたいと思います。お願いいたします。
房村政府参考人 御指摘のように、特許権に関する裁判は非常に専門性が高いものですから、やはり、これを充実させて適正、迅速に裁判をするためには、集中して専門部を養成していくということをせざるを得ないわけでございます。そういうことによって、地方の方にとってもやはり適正、迅速な裁判を受けられるということでメリットはあるだろうと思っています。
 ただ同時に、地方にいるがゆえに負担も多くなりますし、それは、御指摘の電話会議システムであるとかテレビ会議システムをできるだけ活用して、できる限り地方にいる不利益を除去するようにする、あるいは、本当に損害が生ずるおそれがある場合には移送を活用するということは必要だろうと思っておりますし、そういう趣旨は、私どもとしても、本法案が成立した場合にはできる限り広く周知をしていきたい、こう考えております。
山花委員 時間がきょうは余りないので、法務大臣に、最後と言うにはちょっと早いかもしれませんけれども、質問をしたいと思います。
 迅速化法に関する八条の検証の問題です。
 二年以内のできるだけ早い期間に裁判を行うという目標を定めて、そして、どれぐらいできるかということを最高裁が検証するという話になっております。
 民事訴訟法の専門家で新堂幸司先生の「民事訴訟法」という教科書の前書きか何かに書いてあって、新堂先生が最初に論文を書かれた、出世論文を書かれたのが、「民事訴訟法理論はだれのためにあるか」という論文だったと思います。私は、ああなるほどなと思ったのは、法曹三者の人たちにとってみれば、訴訟というのは大量の集団的な現象だけれども、一般の国民にとってみれば、裁判というのは一生に一度あるかないかのことだと。だから、その一度きりのことで不信感を持つと、もうそれがその人にとってはすべてですから、やはり設営主体の側でなくて利用者の側から民事訴訟の理論を考えていきましょうというのが新堂先生の発想なんですね。
 私は、今回のこの迅速化法の制度設計でやはり気になるのは、最高裁というのは訴訟の運営を行う主体ですから、その人が、人というかその組織が、自分たちの行っていることに対して自分たちで検証を行うということになると、言ってみれば自分で自分を評価しているわけですから、どうしても設営主体の側の視点が強くなってしまうのではないかという懸念を持っております。
 この検証を行うに当たっては、法曹三者だけではなくて、例えば、学識経験者ももちろんですけれども、先日参考人に来ていただいたマスコミの論説委員の方なんかのお話も非常にわかりやすかったです、ああいった方々からもこの検証に関与するような、そういった形というのが本当は望ましいのではないかと思っておりますけれども、この点について、検証のあり方について改めていかがお考えかということをお尋ねしたいと思います。
森山国務大臣 裁判が最終的には国民のためにあるということはもう当然のお話でございまして、最高裁判所が検証を実効的に実施するのには、おっしゃるとおり、調査の方法や調査結果の分析等について、裁判所以外の法曹とか学識経験者の意見を聞く場を設けるということは考えられますし、また、調査の実施等について、裁判所以外の法曹が協力するということも必要であるというふうに考えております。
山花委員 今回のこの法案、八条の方では、最高裁がそういった検証を行うということで、我々も、本来であれば委員会のようなものをつくって検証というものを行うべきではないか、その中に学識経験者なりマスコミの人なり、そういった方に入っていただくのがいいのではないかと思っていたんですけれども、今回、こういった形の法律案ということで提出をされました。よもや、法律案としてつくる前に最高裁によって事前にメールなどでいろいろチェックしてもらって、これで確定したということではないと信じているということだけ申し上げまして、質問を終わりたいと思います。
山本委員長 次に、中村哲治君。
中村(哲)委員 民主党・無所属クラブの中村哲治でございます。
 四月十五日に、私は、民事訴訟法等の一部を改正する法律案及び人事訴訟法案について、本会議において代表質問をさせていただきました。本会議での私の代表質問、そして当委員会でのやりとりを踏まえまして、なお残っている私の懸念について、本日は質問をさせていただきます。
 まず初めに、民事訴訟法等の一部を改正する法律案についてお尋ねいたします。
 代表質問において、本法案における計画審理の対象として想定している訴訟を確認させていただきました。大臣からは、大規模な公害事件や専門的な事項が争点になる医療過誤、建設関係事件を事例として挙げられました。これについては、五月七日の当委員会におきまして山内議員も詳しく確認されましたので、ある程度範囲が明らかにされたと思います。
 そこで、最高裁にお伺いいたします。
 本法案が適用され、審理の計画を定める場合、現状の訴訟状況を踏まえれば、大体何割程度の訴訟が審理の計画を定めるべき対象となると想定しているのか、お答えください。
園尾最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
 どの範囲の事件について計画審理を実施するかということにつきましては、個別の事件ごとに裁判体が決定するということになりますので、現時点でこれを正確に予測するということは難しいわけでございますが、ただ、私がこれまで民事裁判を行ってまいりました経験などに基づきまして分析いたしますと、計画審理によって二年以内の裁判を目指すというような事件がどの程度あるかという点については、こんなことが言えようかというふうに思っております。
 現在、既に全民事訴訟事件の九三%前後の事件が二年以内に終わっております。したがいまして、二年以内の裁判を目指すという観点から取り組みを検討していかなければならない対象事件としましては、全体の七%前後ということになるわけでございます。
 その中には、人的体制の整備や人事配置の工夫ということをしなければよりよい改善が見出せないというような事件もございますし、また、鑑定人の推薦体制その他専門家の補助体制ということを整備しなければ効果的な改善が難しいというような事件も相当数ございます。さらに、一方当事者が破産宣告を受けたというような事情がありまして手続が中止されておるというような事件につきましては、そのような進行をさせることが難しいということになります。
 したがいまして、そのような事件を差し引きいたしますと、計画審理によって二年以内に終結を目指すべき対象事件というのは、数から見て、先ほどの七%前後というものからさらにかなり少なくなってまいりますが、そのような認識でございます。
 このような実務の実情を踏まえまして、計画審理という方策が、なるほどこの事件についてはやるのが適切であるというような事件について実施されていきますように、今後も見守っていきたいというように考えております。
中村(哲)委員 それでは次に、証拠収集手続の拡充についてお伺いいたします。
 計画審理を進めるためには、計画をつくるだけでは無理であって、証拠収集を初めとして情報の収集の手段、方法を拡充する必要があるというふうに考えておりましたので、代表質問では証拠開示の手法の必要性を指摘させていただきました。
 大臣は、私の考えに基本的には同意された上で、本法案において訴えの提起前における証拠収集手続を充実させていること等を発言なさった一方で、米国のディスカバリー制度については否定的な回答をなさりました。これについては、先日山内委員が確認されたときにも同様の回答をされております。
 そこで、ディスカバリー制度は、米国で多大な費用や手間がかかるために批判されている制度であって、我が国における導入は慎重にしなければならないということでしたけれども、その懸念されている点についてもう少し詳しく説明していただけませんでしょうか。
房村政府参考人 委員御指摘のアメリカのディスカバリー制度でございますが、これは相手方の手中にある証拠を収集する強力な手続として機能している反面、次のような弊害が指摘されております。
 まず、この制度においては、訴訟の争点と直接関連しない証拠についてまで広範に開示が要求される、こういうことから、開示者に対して、これに対する費用、時間及び手間等の面において過大な負担を強いることが少なくない、こう言われております。このようなことから、ディスカバリーを要求する側が、いわゆる証拠あさり、どんな証拠があるかということを広くあさるということのために使うということ、またこのディスカバリーの負担が非常に重いものですから、その負担にたえられない弱者の側が不本意な和解を余儀なくされる、こういうことも言われております。
 また、そのディスカバリー手続に着目して、嫌がらせとか和解を強要するための訴訟を起こす、こういうことも言われて、それがひいては訴訟遅延あるいは司法コストの増加をもたらす、こういうような指摘がアメリカにおいても現実になされておりますので、日本でこのディスカバリーを採用するかどうかという点を検討するに当たっては、このような指摘も踏まえて相当慎重に検討する必要がある、こう考えているところでございます。
中村(哲)委員 日本とアメリカの訴訟の構造のあり方から、ディスカバリーは日本においてはちょっと検討を差し控えるというような観点の分析はありますか。
 例えば、手続の前提が違うとか、そういった意味での違いから生じてくるディスカバリー制度の問題点というのはありませんか。
房村政府参考人 これは、アメリカのディスカバリーの場合は訴え提起後にやりますが、ディスカバリーの交渉は基本的にすべて当事者に任されております。ところが、日本の場合には、訴訟提起後は、訴訟進行に当たって裁判所が主導権を持って計画的な進行を図るという基本構造をとっておりますので、構造的にはややマッチしない面があることは事実でございます。
中村(哲)委員 それでは、証拠開示の方法について、今回御提案されている訴えの提起前の証拠収集以外に、今後何か新しい制度は検討されていないでしょうか。
房村政府参考人 私どもとしては、この計画審理のためには、訴訟提起前に証拠を集める手段を拡充する必要があるということで、今回改正をお願いしているわけでございます。
 そういう意味で、今回の法案が成立しました場合に、その利用状況等を踏まえながら、問題点を調査して、さらに証拠収集の拡充が必要となるかどうかということについては検討をしてまいりたい、こう考えております。
中村(哲)委員 例えば、法制審などではどういうことが検討されているでしょうか。
房村政府参考人 現時点において法制審で検討しておりますのは、証拠関係では文書提出命令の問題について具体的な検討をしておりますが、広く一般に証拠収集手段を拡充するかどうかという点については、この法案の施行がされましたら、その状況等も踏まえて、さらに必要な検討を加えたいと考えているところでございます。
中村(哲)委員 時間がないですので、次に行きます。
 専門委員制度について、私は、裁判官の知識の拡充の観点から、本制度の創設は有意義なものと考えております。しかし、もともと民事訴訟法というものは対立当事者間において主張や立証を尽くす中から真実を究明して法律関係を確定するものであることを考えると、この導入には一定の制限が必要ではないかということも代表質問で指摘をさせていただいたところでございます。
 具体的には、裁判所はどのような場面で専門委員の関与を求めて専門的知見を導入するのかということをお聞きしました。そうすると、これまでの御答弁では、争点や証拠の整理の段階、証拠調べの段階、さらには和解の際を想定しているとの話でございました。
 そこで、お聞きいたします。
 専門委員の意見が裁判官の心証形成に影響を与えることは極力避けなければならないことは、政府自身がお認めになっておられます。専門委員の関与を極力限定すべきという観点から考えた場合、証拠調べが必要なのは争点整理が終わった後の段階なのだから、十分な争点整理ができていれば証拠調べの段階まで専門家が関与する必要はないのではないかというような考え方も出てくるところだと思います。専門委員の関与は、あくまでも争点整理の段階までというふうに限定すべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。
房村政府参考人 御指摘のように、争点整理が適切に行われて証拠調べに移った場合、どういう点が争点であるかということについてはもう整理ができているわけでございますが、その証拠調べの中で、例えば証人の証言あるいは鑑定人意見、こういう中に専門的事項に触れるものが相当含まれることは予想されるわけでございます。これが適切な説明が加えられておれば裁判官も理解できるでありましょうが、中には、専門的事項が突如出てくるということも十分予想されるわけでございます。
 そういう場合には、専門委員を活用してその証拠の意味を明らかにする、こういうような必要が生ずることは予想されますので、やはり証拠調べの段階においても専門委員を活用できるような措置を講じておく必要がある、こう考えております。
中村(哲)委員 つまり、後でそういうふうな懸念が生ずる場合もあるので、手段としては確保しておくけれども、原則として、争点が明らかになったぐらいのところまでにとどめておくのが原則的な運用のされ方というふうに認識していいわけですか。
房村政府参考人 いや、それは扱われている問題の専門性の程度にもよるわけで、証拠調べ段階においても、相当専門的な事柄が出てくるということが予想されれば、専門委員を活用するということをあらかじめ考えておくことは当然だろうと思います。それはやはりその専門性の程度いかんということではないかと思います。
中村(哲)委員 証拠調べにもある程度かかわらないといけないけれども、心証形成には極力影響を与えてはいけないということになってきますと、専門委員の役割について、きちっとした規定を設ける必要があるのではないかと考えます。
 専門委員の役割については、裁判官の知識の補充を旨として、争点に関する判断は述べてはいけない旨の規定を設ける必要があるのではないかと考えますが、もし、もう既に盛り込まれているのであれば、どの部分が規定に当たるのか、それについても述べていただけますでしょうか。
房村政府参考人 御指摘のように、専門委員の関与は、決して裁判官の心証形成そのものに関与するということはあってはならないわけでございます。
 そういうことから、今回の法案の九十二条の二では、まず、「争点若しくは証拠の整理又は訴訟手続の進行に関し必要な事項の協議をするに当たり、訴訟関係を明瞭にし、又は訴訟手続の円滑な進行を図るため必要があると認めるときは、」こういうぐあいに、訴訟関係を明瞭にしたり手続の円滑な進行を図るためなんだ、こういうことをはっきりうたっております。また、証拠調べ段階に当たっては、「訴訟関係又は証拠調べの結果の趣旨を明瞭にするため必要があると認めるときは、」ということで、これも要するに、趣旨を明瞭にする、こういう目的のために専門委員を使うということを法律上明記しております。
 ですから、これは専門委員の方にも十分御理解いただく必要がありますし、裁判官としては当然この法の趣旨を踏まえた運用をする、こう考えております。
中村(哲)委員 代表質問におきましては、専門委員に関しても、中立性、公正性の観点の質問もさせていただきました。
 中立性、公正性に欠ける専門委員であれば、かえって訴訟そのものの信頼を失うおそれがある、そのため、専門委員の中立性、公正性の確保と、専門委員が関与する際の手続の透明性の確保についてどのように保障するのかということについて、代表質問でお聞きいたしました。大臣は、除斥及び忌避の制度を設けていることや、当事者双方の申し立てにより専門委員の関与を取り消す手段も設けている旨を御答弁なさいました。
 また、先日の山内議員の質疑の際に、最高裁判所からは、現在、専門委員のリストをどのようにつくるのか検討中という回答もありました。
 そこで、裁判所としては、当事者双方が自身で適切な専門委員を確保できない場合等に対応するために、各裁判所において候補者のリストを整備していくという方針が定まっていると理解してよろしいんでしょうか。
園尾最高裁判所長官代理者 専門的な問題というのは、専門家の数も限られる、それから内容も極めて難しいということですから、訴訟が起こりましてから考えるということでは迅速な対処ができないというおそれがございますので、これは、御指摘のとおり、あらかじめ裁判所において、専門委員のリストといいますか、むしろ専門委員の任命自体を幅広く行っておきまして、具体的事件に応じて必要が生じた場合に、適切な者をさらにその中から指名していくというような仕組みを考えてございますので、御指摘のとおりということになります。
中村(哲)委員 それでは、山内委員が提案したように、その候補者リストの作成、管理に当たっては、裁判所のみで検討するのではなく、弁護士や専門家など、幅広く第三者が加わった委員会をつくって、その委員会が担当すべきということを考えますが、その点についてはいかがでしょうか。
園尾最高裁判所長官代理者 公平性、中立性ということは、裁判所が裁判手続を行う上で最も重要なことでございますので、専門委員の選定に当たりましては、幅広い層から専門委員をできるだけ選ぶように工夫するということのほかに、ただいま御指摘のような第三者機関の意見を聞くというような手続についてもさらに検討するという考えでございます。
中村(哲)委員 時間がありませんので、特許関係の専属化についてもお聞きしたいと思っていたんですが、山花委員も先ほど述べられましたので飛ばしまして、次に、人事訴訟法案について少しお尋ねいたします。
 代表質問で、家庭裁判所に対する人的、物的な手当てについて確認したところ、最高裁判所が適切に対処するとのことでしたが、具体的にはどのように対応をなさるつもりなのでしょうか。来年度の予算手当てや人員の手当ても含めて、もう少し具体的な説明をお願いいたします。
中山最高裁判所長官代理者 裁判官と書記官につきましては、これまで人事訴訟が地方裁判所にかかっていたわけでございますから、そこの担当していた人員を家庭裁判所の方にシフトするということによって、現実的な対応は可能であります。
 問題は家庭裁判所調査官でございますが、これは、さきにこの法務委員会でも御審議いただきましたとおり、定員法の審議の際のとおり、三十人の増員をお認めいただきました。これを適切に活用してまいりたいと考えているところであります。
中村(哲)委員 次に、人事訴訟法二十二条の公開停止の議論もさせていただきたいんですが、先ほど山内議員とのやりとりを聞いておりまして、結局、公の秩序を害するおそれがある場合ということを各訴訟類型によって判断するという話でしたが、それを考えますと、具体的には、人事訴訟法よりも広がるということはほかの訴訟ではないというふうに考えていいということですよね、少なくとも。
房村政府参考人 公開停止につきましては、憲法上、公の秩序に反するような場合に公開停止をすることができるとなっておりまして、これは各訴訟類型を通じて適用があるわけでございます。
 今回、私どもが考えましたのは、人事訴訟法に特有の場面について、その憲法が予想している要件あるいは手続を明確にすることによって裁判所が安定した判断ができるようにということを考えたわけでございます。
 他の訴訟類型について同様の問題があるかどうかということは各訴訟類型ごとに検討すべき事柄である、今回は人事訴訟に限って、こういう場面があるので、この場合にはこういう手続、要件を定めることが憲法の安定的な運用をもたらすことにつながるんだ、こういうことでございます。
中村(哲)委員 さらに確認をさせていただきたいところですけれども、本日は後に本会議も迫っておりまして、時間もタイトでありますので、ここで質問を終了させていただきます。
 ありがとうございました。
山本委員長 次に、石原健太郎君。
石原(健)委員 先日、参考人質疑がありまして、杉井厳一弁護士の御意見なども聞かせていただきました。また、私の手元の方に、弁護士会関係の方、ほか市民団体の方なんかも、意向を、要望書等を寄せていただきますが、そうしたこの間の参考人質疑とか要望書などの感じから、今回のこの審議している法案に対しまして、弁護士会の意向が十分反映されていないのではないかというような感じを私持つわけでありますけれども、その点につきまして、副本部長の法務大臣のお考えをお聞かせいただけたらと思います。
森山国務大臣 この法案は、国民からの意見を募集いたしましたほか、最高裁判所、法務省とともに日弁連からもヒアリングを行いまして、その結果を踏まえて立案作業を進めた上、司法制度改革推進本部の顧問会議等における検討を経て提出するということになったものでございます。
石原(健)委員 そうしますと、意向は十分反映されているというふうにお考えになっていると受けとめてよろしいんでしょうか。
森山国務大臣 そのとおりでございます。
石原(健)委員 それから、一般的に、今さら申し上げるまでもないことかと思いますけれども、弁護士の立場が検察の立場に比べて不利であってはならないと思うんです。同じような立場で討議できるようなことが望ましいと思いますけれども、そうした点に、今後、いろいろ法案作成されていったり改正される場合、十分配慮がなされるべきと思いますけれども、その点に関してお考えをお聞かせいただけたらと思います。
森山国務大臣 おっしゃるとおりでございまして、法曹三者は、この特に司法制度改革に関連する法案につきましては、皆さん積極的に御意見をおっしゃっていただきますし、その機会も十分設けているつもりでございます。
石原(健)委員 そのことを要望いたしまして、前回の質疑でもお聞きしましたけれども、審理に非常に長時間かかるものがあるのは何が原因かとお聞きしました。山崎事務局長さんから御答弁いただきましたけれども、これから述べるようなことが原因だと考えている方たちもおられます。
 こうした考えには何か反論があるのかどうか、お聞かせいただければと思いますけれども、現在、一審判決まで二年以上かかっているのは、刑事訴訟では〇・四%、民事訴訟でも七・二%という状況です。長期化の印象を持ってしまうのは、マスコミに取り上げられる社会的関心の高い刑事事件などで、例えば、公訴事実が極めて多数の事件や、証人、証拠が膨大な事件などであり、しかも検察側の証拠開示が十分に行われていないため、供述調書の任意性、信用性が争点となり、その整理に膨大な時間と労力がかかっているためです。こういうことですけれども、感想をお聞かせいただけたらと思います。
山崎政府参考人 一般的な見解としては、何回か御答弁させていただいていると思いますけれども、確かに、事件数として、民事も刑事も、パーセンテージでそれほど多くないということはそのとおりかもしれませんけれども、やはりあることはあるわけでございまして、そういうそのあるものについては、非常にやはり社会が注目しているもの、それからやはり国民が関心を持っているものが多いわけでございまして、そういうものについて努力しなくていいのかということはやはり問われなければならない問題だろうと思います。
 それから、例えば刑事事件につきまして大事な視点は、もちろん被告人の人権の問題、これも当然尊重しなければならないことでございますけれども、例えば、被害者がおられまして、被害者の遺族の方の感情、それから社会がこれを見る目、そういうものが風化してしまわないということです。そういう視点も重要になるわけでございまして、それなりのいろいろな考慮をいたしますと、必要な権利はきちっと行使していただきたいと思いますけれども、その中でもやはり早目に判決をするということがどうしても必要になるということだろうと思います。
 それから、ただいま御指摘がございました証拠開示云々という問題もございました。これは、事件によって、個別の事件を申し上げるわけにまいりませんけれども、一般論として、さまざまな問題があるというふうに私も伺っておりますし、それは、証拠開示の問題としては御不満のある方もおられるかもしれませんし、また、弁護士の訴訟の進行のやり方について問題があるというふうに指摘される方もおられますし、場合によっては、裁判所の最初の、初期の争点の整理、こういうものが十分でなかったと言う方もおられます。いろいろな原因があろうかと思います。
 そういう原因を今回の迅速化のこのシステムの中できちっと把握して、じゃ、将来的にどういうふうにしていったらいいかという政策に結びつける、あるいは迅速化のために人的なものが足りないということであればそれをふやしていく、こういうふうにつなげたいということでございます。
 御意見はいろいろあろうかと思いますが、それだけが真実ではないというふうに私は考えております。
石原(健)委員 迅速化法案では、当事者の責務についても規定しております。民事訴訟の当事者や刑事訴訟の被告人については、正当な手続上の権利の行使を妨げるようなことがあってはならないと考えますけれども、この点についてはどのようにお考えでしょうか。
山崎政府参考人 ただいまも若干触れさせていただきましたけれども、やはり当事者の権利というものは当然あるわけでございますし、やはりきちっと正しい権利は行使していただいて、やることは十分にやった上で、その上で、お互いに努力をして、裁判の期間がなるべく短くなるようにというのが今回の法案の趣旨でございます。
 したがいまして、そういう観点で、法文の中にも当事者の正当な権利利益を害することがあってはならないというふうにうたわれておりますし、それはそのことを考えたからでございますし、今後、今後というか、いずれにしましても、必要な審理が尽くされないまま当事者の権利行使が制限される、こういう事態が生じてはならないということは当然というふうに理解をしております。
石原(健)委員 最高裁による検証が行われます。その検証の内容が人事異動の際の参考資料等になってはいけないと考えますけれども、そのようなことは絶対にないのかどうか、お答えいただきたいと思います。
中山最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
 検証は、裁判の迅速化を推進するために必要な事項を明らかにするため、裁判所における手続に要した期間の状況やその長期化の原因などを事件の類型ごとに調査分析するということになろうかと思います。
 そのように、事件の類型ということを考えてデータを収集し分析をしていくということになりますと、これは個別の事件というものに殊さらに焦点を当ててということにはならないと考えておりまして、検証の結果を裁判官の人事評価に結びつけるということは、そういう意味でもあり得ないというふうに考えております。
石原(健)委員 次に、計画審理が行われる際、審理計画が策定されるのはどのような場合なのか、詳しく御説明いただけたらと思います。
房村政府参考人 審理計画を策定する必要があるのは「審理すべき事項が多数であり又は錯そうしているなど事件が複雑であること」というのを法文でうたっておりますが、具体的には、大規模な公害事件、あるいは専門的な事項が争点となる困難な医療過誤事件、あるいは建築紛争事件、こういったものが典型例でございます。
石原(健)委員 計画審理の場合、当初想定されていなかった争点が問題となることも間々あると思います。柔軟に対応していくことが必要かと思いますけれども、審理計画の変更は、どのような場合、どのような手続で行われるのか、御説明いただきたいと思います。
房村政府参考人 御指摘のように、訴訟というのは進行につれて状況が変わってまいります。
 そういうことから、今回の法案でも、一たん定めた審理計画を変更できるということとしておりまして、具体的には、この百四十七条の三の第四項で、「裁判所は、審理の現状及び当事者の訴訟追行の状況その他の事情を考慮して必要があると認めるときは、当事者双方と協議をし、その結果を踏まえて第一項の審理の計画を変更することができる。」こうなっておりますので、御指摘のような事情の変更がある、あるいは新しい証拠が出てくる、こういうことがあって従来の計画のままではまずいと思えば、両当事者と協議をして、その結果を踏まえて変更をしていくということになろうと思います。
石原(健)委員 今回の改正では、医事関係事件や建築関係事件などの専門的な訴訟への対応強化が図られるとのことでありますけれども、現在、これらの専門訴訟のうち、例えば医事関係訴訟について、その事件件数とか審理期間の現状がどうなっているのか、お聞かせいただけたらと思います。
園尾最高裁判所長官代理者 それでは、専門訴訟と言われる幾つかの類型について、事件数、審理期間などについてお答えをしたいと思います。
 まず、お尋ねの医事関係訴訟につきましてですが、平成十三年には全国で八百五件という数値になっておりまして、平均審理期間は三十二・七カ月ということになってございます。
 もう一つ、建築関係訴訟についてですが、これは東京、大阪の両地方裁判所の統計数値がございますが、平成十四年には両地方裁判所で合計九百三十五件ございまして、平均審理期間は十六カ月から十九カ月かかってございます。
 最も専門性が高いというように言われております特許権その他の知的財産権訴訟につきましては、平成十四年の新受件数は全国で六百七件でございまして、平均審理期間は十六・八カ月ということになってございます。
石原(健)委員 想定することはなかなか困難かと思いますけれども、こうした難しい事件の審理期間が今度の迅速化法によってどのくらい短縮されると推定されておりますでしょうか。
園尾最高裁判所長官代理者 これは大変困難な事件ですので、これまでもあらゆる努力をして事件を進行してまいっておりますが、ただいま申し上げましたような実情にございます。
 今後といたしましても、あらゆる努力をして行うという所存で裁判所としては取り組んでいくということになろうかと思いますが、今回のこのような法律ができることをきっかけとして、多くの関係者の方々にも御協力をいただいて、少しでも改善されるように努力をしたいということでございますが、まだ具体的な数値については、これから努力をして成果を出していきたいというように考えておるところでございます。
石原(健)委員 わかりました。
 次に、専門的な訴訟におきましては、裁判官が争点に対する判断をする際の証拠調べの手段として、鑑定なども利用されていると思いますけれども、今回の改正では、鑑定手続についてどのような改善が図られておりますでしょうか。
房村政府参考人 御指摘のように、専門的事項が問題となる訴訟においては鑑定人の活用が不可欠でございます。
 ただ、鑑定人につきまして、現在の法律では、鑑定人が意見を述べるための手続については証人尋問の規定をそのまま準用しておりますので、鑑定人に対する尋問に当たりまして必要以上に敵対的な発問がされる、あるいは鑑定人が意見をまとめて述べたいというときに、一問一答形式で行われるために十分な説明がしにくい、こういうような問題点が指摘されております。
 そこで、この法律案では、鑑定人の性質にかんがみまして鑑定に対する質問の形式を今回整備いたしまして、鑑定人質問という形にしております。まず、証人尋問の規定の包括的な準用を改めまして、鑑定人が口頭で意見を述べる場合には、まず鑑定人から鑑定事項についての意見を述べていただく、その後に質問をする、そしてその質問の順番も、裁判長、当事者の順、こういうことにしました。こういうことにして、鑑定人が意見を述べやすいというふうな配慮をしております。
 それから、鑑定人の意見の内容を明瞭にしまたはその根拠を確認するために、鑑定人に補充的に意見を述べさせることができるということを明らかにしております。これは、鑑定人は原則として書面で意見を出しますが、書面だけではわかりにくいために通常口頭でそれを補充していただいているわけですが、それをこの鑑定人質問の形で行えるということを明らかにしたものでございます。
 また、鑑定人には非常に多忙な人も多いので、法廷への出頭が困難な場合があることを考えまして、鑑定人がいわゆるテレビ会議システムを利用して意見を述べることができるというその範囲を拡大しております。
 以上のような改正を行っているところでございます。
石原(健)委員 家庭裁判所調査官の調査の活用の仕方といいますか、どのように活用されるようになるのか、御説明いただけたらと思います。
房村政府参考人 今回、人事訴訟法におきまして、人事訴訟を家庭裁判所に移管いたします。そうなりますと、人事訴訟に伴って、例えば離婚に伴う親権者の指定であるとか、あるいは付随処分として子の監護に関する処分等が求められる、こういう場合がございます。
 これらの問題は、まさに家庭に関する専門的知識を有しております家庭裁判所調査官を活用するのにふさわしい場面であるということから、今回の人事訴訟法案におきまして、こういった親権者の指定とか付随処分についてはいわゆる法廷での証拠調べとは違う裁判所の調査というものができるということを定めまして、かつ、その調査については家庭裁判所調査官に調査を命ずることができるとしております。
 そういう場面で家庭裁判所調査官の専門知識を活用していただいて、その調査の結果を書面または口頭で報告していただいて、裁判所がそれに基づいて親権者の指定あるいはその他の付随処分を適切に判断できるようにする、こういうことでございます。
石原(健)委員 そうしますと、調査された相手方がいろいろその調査に対して不服申し立てをしたり、それは間違っているぞとか指摘したり、そういうことは考えられるのでしょうか。
房村政府参考人 これは、調査の結果を裁判に活用する場合に、訴訟当事者がそれに対して十分な防御を尽くすという機会を保障する必要があるのは御指摘のとおりでございます。
 そういうことから、今回、調査の記録についての閲覧ということを制度として設けまして、裁判所の許可によって閲覧ができるようにしておりますが、当事者が閲覧を求める場合には原則として閲覧を許可する、こういう扱いとしております。
 ただ、事実の調査の内容は、個人のプライバシーあるいは秘密にわたる事柄が多く含まれますので、一定の場合には当事者であっても閲覧を許すことができない場合もございますので、そういう場合については特に要件を定めまして、それ以外の場合には当事者には閲覧をさせる、こういうことになっております。
石原(健)委員 これからも司法制度改革は進んでいくと思うんですけれども、現時点におきまして、法務大臣は今後の改革にどのように取り組んでいくお考えか、お聞かせいただけたらと思います。
森山国務大臣 おっしゃるとおり、司法制度改革は非常にまだまだたくさんやるべきことがございますが、この法案は、第一審の訴訟手続を二年以内のできるだけ短い期間内に終局させることを目標にいたしまして、運用面における充実した手続の実施とこれを支える制度、体制の整備という総合的な方策を実施することによりまして、裁判の迅速化を実現しようとするものでございます。
 司法制度を所管する省庁の責任者といたしましては、適切に司法の人的、物的基盤の充実強化が図られる必要があると考えますとともに、最高裁判所の行う裁判の迅速化に係る検証の結果を踏まえながら、必要な法制上の措置を講じるなどいたしまして、国民にとって身近で信頼される司法制度の構築に全力を挙げて取り組んでいきたいというふうに考えております。
石原(健)委員 終わります。ありがとうございました。
山本委員長 次に、木島日出夫君。
木島委員 日本共産党の木島日出夫です。
 迅速化法案の最高裁判所による迅速化推進のための検証についてお聞きをいたします。
 五月七日に当委員会での私の質問に対して、推進本部の山崎事務局長から裁判の独立にかかわる重大な答弁がありまして、そのまま放置できませんので、その問題からお聞きをしたいと思います。
 最高裁判所にお聞きをいたします。
 現在、迅速化法はありませんが、そのもとでも進んでいる最高裁判所による裁判迅速化を進めるための、既済事件及び未済事件についてどのような調査をしているのか、すべて明らかにしていただきたい。
中山最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
 裁判の迅速化を進めるためにのみ行っている調査というものはございませんので、最高裁判所において全体的にどのような統計調査を行っているかという観点から、民事事件、刑事事件を例にお答え申し上げたいと思います。少々長くなります。
 裁判所で取り扱われている事件の数的な実態を把握するため、最高裁では裁判統計を作成しております。民事、刑事の第一審訴訟事件についていえば、既済となった時点で、事件の種類、受理区分、当事者数、訴訟代理人の有無、証拠調べの有無、終局区分、審理期間等を調査しており、そのデータをもとに司法統計年報あるいは裁判所データブックという形で裁判統計を公表しているわけであります。
 一方、未済事件につきましては、数的な把握ということで、各庁ごとに、各年及び各月ごとに、事件類型別、民事で申し上げますと通常訴訟、人事訴訟、手形・小切手訴訟などであります、刑事でいえば通常事件、略式事件などでありますが、それごとに未済件数、未済の人員といった数のみの統計をとっております。
 このような一般的な統計以外に、司法行政上の目的から既済、未済事件について調査することがございます。
 民事事件については、例えば医事関係訴訟事件、建築関係事件、公害関係事件、株主代表訴訟事件につきまして、事件受理時に事件番号、受理年月日等、また、終局時に終局年月日、終局区分等の項目について報告を求めております。
 また、刑事事件につきましては、月間刑事手続調査表ということで、通常第一審事件の請求者別の証人の人数等、これは証人の予算等を把握するためでございます。あるいは、長期係属事件個別調査表ということで、まず、毎年十二月三十一日現在における未終局事件で係属二年を超えるもの、それから、これに該当し、さらにそのうち事案複雑等を長期化の事由とするもの。それから、これは裁判員の負担等を検討する際の資料収集の目的でありますが、平成十四年一月一日から十二月三十一日まで、指定庁の所定の期間内で第一回公判期日が開かれた通常第一審事件というものも調べたこともございます。
 これらの未済事件あるいは審理事件の調査は、各庁における審理事件、未済事件の状況、事件の動向というものを把握することによって、裁判所として、今後どういった増員要求をしていくか、毎年毎年の各庁に対する人的配置をどうするか、未済事件が非常にたまってまいりますれば臨時的に人を配置する必要はないかどうか、そういったものに使うわけでございます。
 以上が、刑事、民事についてのおおむねのところでございます。
木島委員 それでは次に、裁判迅速化とは全く関係ないことで結構ですが、個々の裁判に関して、特別に最高裁判所が報告を求めている事件としてどんなものがありますか。どんな項目について報告を求めているんでしょうか。世上、報告事件としてこれが弁護士会の方からは大問題にされているとは思うんですが、この実態を教えてください。
中山最高裁判所長官代理者 先ほど、裁判の迅速化を進めるためにのみ行っている調査というものはないということで、全般的なところをお答えしたというふうに私どもの方としては理解してお答え申し上げたわけでございます。(木島委員「報告事件について」と呼ぶ)
 報告事件でいいますと、例えば民事事件についていえば、医事関係訴訟事件、建築関係事件、公害関係事件、株主代表訴訟事件等について求めているということでございます。
木島委員 報告事件については何を求めているんでしょうか。
中山最高裁判所長官代理者 先ほどもお話し申し上げましたが、事件受理時に事件番号、受理年月日、あるいは終局時に終局年月日、終局区分、人証調べの有無、鑑定実施の有無等の審理の状況を含んでおりますが、そういった項目について報告を求めております。
木島委員 憲法第七十六条第三項は、「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。」として、裁判の独立、裁判官の独立を保障しております。最高裁判所による個々の裁判に関する調査は、それ自体が、調査自体が、この裁判の独立、裁判官の独立に大きな影響を与えるのではないでしょうか。
 最高裁判所は、先ほどるる答弁ありましたが、そのような調査報告を求めるに当たり、この憲法上の要請にどのように配慮しておりますか。
中山最高裁判所長官代理者 裁判官の独立につきましては、外部からの独立はもとより、内部からの独立というのも非常に重要でございます。そこで、これらの調査に当たりましては、基本的に、外形的な実態を把握するというところをベースにして考えております。
 長期未済事件につきまして、特に人的配置をしなければいけないというような要請もありますので、そういう場合には個々の事件を調査するということになりますけれども、その際にも、証人の人数、証拠調べの回数、公判回数、そういった外形的、客観的な事実を調査するにとどめておりますし、また、特定個々の事件を拾い出して調査するようなことはしておらないということでございます。
木島委員 裁判所法第八十条は、司法行政の監督について規定しております。それを受けまして、裁判所法第八十一条は、この司法行政上の監督権と裁判権との関係についてこう規定しております。前条八十条の監督権は、裁判官の裁判権に影響を及ぼし、またはこれを制限することはない、そういう条文であります。
 これは最高裁でいいんでしょうか、この条項はどのような趣旨で、どのようなことを規定していると承ったらいいんでしょうか。
中山最高裁判所長官代理者 先ほども御引用がありましたけれども、憲法七十六条三項は、「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。」と規定しております。これは、裁判の公正を保障するため、司法の外部的独立ということで、立法機関や行政機関からの干渉を排除することはもとより、司法部内での上級裁判所等の干渉をも排除して、事件担当の裁判官の自主性、独立性を要求するものであります。
 そこで、本条は、上記憲法の規定を受けまして、司法行政上の監督権も裁判官の裁判上の権限行使に干渉することができないということを規定したものであると認識しております。
木島委員 私はここに、最高裁判所事務総局総務局が発行している「裁判所法逐条解説」、これはちょっと古いんですが、昭和四十四年一月の出版物を持ってきております。「裁判所法逐条解説 下」百五十八ページにはこのような文章が書かれているんです。
 「司法行政の監督権にもとづき、たとえば、係属中の具体的事件について、その審理方法を指図し、事実認定または法律適用上の見解を述べて、いかなる裁判をなすべきかを示すことは、たとえその動機が当該裁判官の裁判を正当な結果に導こうとするものであつても、許されない。」こう書かれております。
 ここまでいかないんでしょうけれども、一昨日、当委員会におきまして、私の質問に対して山崎事務局長が、未済事件についても今回の迅速化法案の最高裁判所による調査、検証の対象になる、そして証拠採用の有無、当事者から証拠申請があったが却下された等の状況に至るまで調査の対象だと答弁をされましたが、ずっと今、最高裁から裁判の独立、裁判官の独立と司法行政との関係を聞いてきましたが、一昨日の山崎事務局長の答弁は、やはり司法権の独立、裁判官の独立、裁判の独立からいって大変な行き過ぎではなかろうかと私は疑念がぬぐい去れないわけであります。
 答弁を撤回されるか、答弁を訂正されるお気持ちはありませんか。
山崎政府参考人 おととい、私この点、答弁させていただきました。この点につきまして、当日突然の御質問でございまして、事前には通告がなかった点で、若干不正確な点があったかもしれません。
 確かに、私がお答えしたのは、未済事件でございましても対象になるというふうには申し上げましたけれども、やはり調査分析についてどのような事件を最終的に対象にするかということでございますけれども、やはり分析を行う趣旨とかあるいは個々の裁判の独立等の関係、これを十分に考慮して最高裁判所において判断されるということになろうかと思いますけれども、ただ、個々の裁判官の独立に十分配慮するという観点から、原則的には既済事件、これを中心として行われるのが相当であるというふうに考えているところでございます。
 後ろの点、言葉が足りなかったと思いますけれども、全体的には対象になりますけれども、やはり既済事件が中心になるべきだというふうに考えております。
木島委員 前回の答弁から大分変わりましたが、いいですか、既済事件が調査の中心になるという答弁をしましたね。そうすると、中心というのは外辺部があるわけです。原則と例外があるんですね。そうすると、未済事件、これは専門用語ですからわかりやすく言いますと、現に進行中の事件も場合によっては調査の対象になるという答弁であります。
 もう一つ大問題なのは、最高裁判所においてその辺は決めるんじゃないかという答弁がありました。私は、これはもう大問題だと思うんです。
 丸ごと、丸投げを最高裁にこの法案はしているんですか。確かにこの法案第八条には何にも書かれていない、それで私はここを根掘り葉掘り聞いているんですが。どういう事件を対象にして、そしてどういう調査項目で調査するか、もう全部それは最高裁に丸投げなんだ、それがこの迅速化法第八条の趣旨なんでしょうか。
 いろいろ幾つか複合して質問しましたが、事務局長、答弁してください。
山崎政府参考人 具体的な調査方法等につきましては、これはもちろん裁判所の方が主体になっておやりになることでございますので、それを法律で決めていないということは間違いございません。
 ただ、先ほどからいろいろ御質問が出ておりますけれども、やはりこの調査に当たって個々の裁判の独立に影響を与えてはならないということは、これは裁判所法にきちっとうたわれているわけでございます。もちろん憲法上の要請でもあるということでございまして、この法律に書こうと書くまいと、当然その趣旨、法律の適用を受けているわけでございまして、そういう点については十分に配慮しながら調査をしなければならないということになろうかと思います。
 それでは、未済事件がすべて除かれるのかということになりますけれども、私は、それはすべてとは申し上げておりませんけれども、十分な配慮が必要であるというふうに思っております。
木島委員 立法者の意思というのは大事ですから、これからの法の運用に当たって、ある面じゃ決定的ですから、では、どういう場面なんでしょうか、今抽象的な、未済事件で調査の対象になるような場合というのは。もっと具体的に答弁してください、一般論じゃなくて。そこがないと最高裁は暴走しますから。
山崎政府参考人 未済、既済というのはちょっと不正確かもしれないんですが、私が申し上げたのは、係属中の事件というふうにたしか申し上げたと思いますね。ですから、これは例えば、一審の事件が対象になっているわけでございますので、一審が終わって控訴審に行っているということがありますね。これは係属中の事件ではあるわけでございますけれども、少なくとも一審は終わっているという状況でございますね。こういうものについては可能かなというふうには思います。(木島委員「そのほか」と呼ぶ)
 そのほかについては、その個々の事件の問題にもなりますけれども、なるべくそこのところは、一審で現にやっているという事件については相当な配慮をすべきであるというふうに考えております。
木島委員 ですから、その相当な配慮をすべきであるというのがくせ者なので、わからないんですよ。やっちゃいかぬと言ってくれればすっきりするんですよ。
 最高裁、来ておりますからお聞きします。こういう質問は本当はよくないんです。立法府で法律はつくるんですね。
 今の答弁ですと、大体どういう調査をすべきか、どういう事件を調査対象にするか、ある程度は出てきましたが、まだグレーゾーンがありますね。そんな状況のままこの法案が成立して、最高裁に投げかけられたときに、最高裁は、では迅速化のための検証のための調査としてどんな事件を選ぶのか、どんな事件は調査から外すのか、裁判の独立の観点からですよ、判断できますか。あるいは、まだこの法案は成立しておりません、まさに審議中でありますが、最高裁の腹づもりをここで述べてください。
中山最高裁判所長官代理者 非常に難しい立場に置かれてせつない思いがいたしますが、実際上、検証をどのように進めていくか、どんなデータを収集していくかということは、これはひとり最高裁だけで判断できるものではないと思っています。(木島委員「だけれども、丸投げされる」と呼ぶ)いえ、一つは、要するに、訴訟関係人からどういったところに問題意識を持っているかといったものをやはり聞いてみなければいけない。そういう意味では、弁護士会あるいは検察庁の知恵というものももちろん必要であります。さらには、学識経験者とかあるいは統計の専門家とか、そういったような人たちが、どういうような要素があれば分析が可能かといったところも考えていかなければならない。
 そういう中で、裁判の独立、裁判官の独立というものを当然配慮しながら考えていくわけでありますが、今直ちに、どういった項目についてこれで調べることになるのかということについては、なかなかまだはっきりとはお答えできないと申し上げるしかありません。
木島委員 確かに、まだ法律が成立もしていない段階で、最高裁判所に運用を丸投げされようとしているその条文の運用をどうするかという質問、答弁は難しいと思うんです。
 しかし、まさにそこが大問題になったわけでしょう。この法律をまとめ上げる過程においては、弁護士会から猛反対が出たんでしょう、最高裁判所にこんな検証されたらだめなんだと。それは裁判の独立を考えたからでしょう。むしろ、これは法曹三者とか外部の人たちとか、そういう人事権を持たない人たちによってなされないと大変なことになるという危惧を日弁連は持ったからこそ、この検証の主体について強烈な意見が出てきたんじゃないでしょうか。
 推進本部にお聞きしますが、もともと、司法制度改革審議会意見書、平成十三年六月十二日、ここにありますが、この意見書は、皆さんが提出してきた法案のように、迅速化のために最高裁判所によって事件の検証をすべき、そんな提言はしておったですか。
山崎政府参考人 具体的提言は入っておりません。
木島委員 提言ないんですよ。司法制度改革審議会は、迅速化を進めるべきだという提言はしました。しかし、二年なんて数字も出しておりませんし、ましてや、最高裁判所が個々の裁判に対して検証しろ、調査しろなんということは書かなかった、慎んだんですよ。それはやはり裁判官の独立、裁判の独立に対して侵害になってはいかぬ、迅速化は要請したいけれども、裁判を上から介入するようなことになったら大変だという問題意識があったからではないでしょうかと思うんです、改革審の皆さんを善意に見れば。
 では、聞きましょう。
 審議会意見書で、そんな最高裁判所による検証をやれというようなことが指摘もされていないのに、どんな議論があって、こんな検証が最高裁判所によって行われるべきだという、こういう法案になってしまったんでしょうか。だれがそういうことを要求していったんでしょうか。その審議経過を教えてください。
山崎政府参考人 この問題を検討するきっかけについては、前にも御説明申し上げたかもしれませんが、私どもの顧問会議で、顧問の全員の方の御意見で、まず、二年以内に審理を終局させるという点について法案を考えるべきである、こういうような意見がございました。それから、小泉総理大臣もその二年ということを指示されまして、それから検討が始まったということで……(木島委員「それはいいから、最高裁による検証問題」と呼ぶ)検証問題ですか。検証問題につきましては、我々がその顧問会議の方から委託をされまして、これを有効にやるためにはどうしたらいいかということも検討してほしいということでございました。私どもとして、まず今の八条、こういうものに当たるものについて、私どもの方から考えたということでございます。
木島委員 大変なことが出てきましたね。改革審議会意見書もそんなことは言っていなかった。顧問会議からも提示されたのは、二年以内におさめろということは、期限は言われたが、最高裁による検証なんということは提起されなかった。顧問会議の皆さんもそんなことは提起されなかった。そういう状況にあって、事務当局が、その提起された迅速化といいますか、私は拙速化だと思うんですがね、そのためにはやはり最高裁による検証が必要だというふうに事務当局でなっていったという、これは大変な問題じゃないでしょうか。
 議論の過程の中で、日弁連の意見や国民各界各層の意見は聴取いたしましたか。日弁連はどんな意見を述べていたんでしょうか。
山崎政府参考人 この問題は、先ほどちょっと言葉が足りなかったかもしれませんが、説明をちょっと補充させていただきますけれども、顧問会議からは、そういうシステムが有効になるような方策を考えろということでございまして、事務当局で考えて、それをまた顧問会議にもちろんお諮りをいたしましてきちっと了承を得たということでございますので、その経緯は御理解を賜りたいと思います。
 それから、日弁連との関係でございますが、これにつきましては、事務的にもいろいろ御意見も聞いておりますし、また私どもの顧問会議とその検討会が合同で開いた会議に法曹三者全員、皆それぞれの立場からお呼びをいたしまして、意見をきちっと述べていただきました。
 その中で、それからその後も含めてでございますけれども、日弁連から指摘があったのは、裁判の充実が重要であるということ、それからやはり当事者の権利をきちっと、正当な権利は守るべきである、特に当事者という点についての責務、ここは削除すべきである、それから八条につきまして、その検証については第三者を含めた機関にすべきである、こういう御指摘だろうというふうに私は理解をしております。
木島委員 今の答弁によっても、顧問会議は、二年以内のできるだけ短い時間に一審裁判を終わらせろということで、それに有効な方策を考えろという提起はあったけれども、最初に顧問会議から、そのために最高裁の検証制度をつくれなんということを言われたわけじゃないというのは、今答弁でも出ましたね。
 言ってみれば、私は、推進本部の事務当局がこれは独走したんじゃないかと思うんです。それはなぜかというと、二つの問題があるからじゃないか。一つは、司法制度改革審議会そのものは、非常にガラス張りで審議が透明でしたよ。しかし、どうもこの立法過程の中でガラス張りでなくなった、密室での審議になってしまっているということと、国民の、民間人の意見が入らなくなっている。日弁連の委員もわずか数人だけ。ほとんどが、法案づくりに携わっているのは、非常に優秀なんでしょうけれども、最高裁と法務省の官僚が中心なんですよ。曲がっている。そこでこんなへんちくりんな制度が今生み出されようとしているんじゃないかと思えてなりません。
 先ほど私が挙げた「裁判所法逐条解説 下」の百五十九ページには、このようなことも書かれております。
 「司法行政の監督権が排除される「裁判官の裁判権」は、あくまでも裁判の内容であつて、裁判を行なうにあたつてとるべき態度または守るべき義務については、司法行政の監督権が及ぶことを注意すべきである。」大事なのは次なんです。「たとえば、裁判の処理について、それが憲法および法律の精神に従い、公平、迅速、適正に行なわれるよう一般的な訓示や研修を行なうことは、許される。」と書いてあるんです。非常に詳しい説明がほかにもあります。
 この文章を解説いたしますと、いいですか、「裁判の処理について、それが憲法および法律の精神に従い、公平、迅速、適正に行なわれるよう一般的な訓示や研修を行なうことは、許される。」と書いてあるということは、逆に言うと、最高裁当局がいろいろ個々の裁判官に対してやっていいことは、一般的な訓示や研修まではよいけれども、具体的な個々の裁判に関して根掘り葉掘り調査したり検証したりしてはいかぬ、一般的な研修はいいということじゃないんでしょうか。これは最高裁がつくった本ですから、最高裁、そういう趣旨に読めませんか。
中山最高裁判所長官代理者 基本的にはおっしゃるとおりだろうというふうに思っております。
木島委員 そうすると、私は、この迅速化法第八条というのは、やはり根本的な見直しが求められているんじゃないか。修正のいろいろ努力が与野党間であったようでありますが、やはり、もうちょっとこれは、憲法問題ですから、必要なんじゃないかと思えてなりません。
 時間が来たようですから、最後に法務大臣に一言。最高裁による検証問題については、憲法上、裁判の独立、裁判官の独立、これを脅かしてはならぬと思うわけでありますが、私は、それに重大な危惧を、いまだに、きょうの答弁を聞いてもぬぐい去ることはできないわけでありますが、推進本部副本部長たる法務大臣、裁判官の独立、裁判の独立に関するこの検証との関係についての御所見を承って、私の質問は一応終わります。
森山国務大臣 最高裁判所が検証を行うに当たりまして、個々の裁判官の独立に影響を及ぼすことが許されないのは当然のことと存じます。
木島委員 終わります。
山本委員長 次に、保坂展人君。
保坂(展)委員 社会民主党の保坂展人です。
 きょうは、締めくくりに当たって、大変基本的な問題について最高裁にお聞きしたいんですが、ちょっと歴史的な経過のおさらいなんですけれども、戦前の司法省と大審院の関係と、現在の法務省と最高裁の関係はどういうふうに、何が違うんでしょうか。
中山最高裁判所長官代理者 日本国憲法の規定を受けまして、最高裁判所は、司法省とは全く別の司法の独立機関ということにされているわけでございます。
保坂(展)委員 法務大臣に同じ質問なんですが、戦前の司法省、大審院の関係と法務省、最高裁の関係は全く違うものということであってほしいんですが、どうも、今答弁席に立っている方たちはもともと裁判官ですから、法務省にはたくさんの裁判官が身分を変えて出向というか異動というか、されているわけですね。本当にこれは、きちっと三権分立が行われているのかということは、私、ちょっと疑問なんですけれども、認識を伺いたいと思います。
 戦前から戦後にかけて、司法省が法務省になった、そして最高裁は裁判の独立ということをかち取ったわけですが、それは本当に生きているかどうか。
森山国務大臣 それは、昔のことは、私、存じませんけれども、現在は立派にそれぞれの立場をわきまえてきちんとやっていると思います。
保坂(展)委員 それで、資料を今配っていただいていると思いますけれども、私もこれを見て大変驚いたわけなんですけれども、現在、司法制度改革審議会で、特に冒頭、私にとって大変関心がある、国民にとっても関心がある、これは行政訴訟法案の議論をしている際に、こちらの十一人の委員に対して、とりあえず資料が配られる、その前にメールなどで送信をされるというときに、例えば、文書に添付されていた見出しのところに、「法制局修正」、「最高裁修正で確定」、「最高裁案に修正をしたもの」とか、「最高裁意見+法制局見え消し」とか、「最高裁案で確定」という文言が見られた。これは委員からも、何だこれは、どうなっているんだという声が上がったようですけれども、事務局長、どういうことですか、これは。
山崎政府参考人 この点につきましては、幾つか報道がされまして、この記載等につきまして、それから我々の文書管理に関しまして、いろいろ不手際もございまして、いろいろ誤解を生じたということについては遺憾に思っております。
 まず、事実関係でございますけれども、事実関係は、私どもで検討会がございます、四月二十五日の検討会でございますけれども、そこへ七通の資料を提出させていただいたわけでございますが、その資料について、我々の方で原案的なもの、まだ確定はしておりませんが、これを作成いたしまして、私どもの方には担当者はおりますけれども、現実の裁判例とか、いろいろな行政事件の種類、さまざまございますが、こちらに十分な資料がございません。そういうこともございまして、従来から、担当者同士では、粗っぽいものをつくったときに一応お見せして、何か指摘があればしてくれということをやっていたようでございます。
 そういうことから、お渡しをして、何カ所か今言いましたような指摘がございまして、指摘を踏まえて私どもでもう一度判断をして、必要なものは修正をして最終的な資料として委員各位にお配りをした、こういう経緯でございます。
 その段階で、資料としてお送りするときにメールで送ったわけでございます。そのときに、本来の資料に一緒にくっついておりますプロパティー、これが同時に送付をされた、そこに今委員御指摘のような見出しの記載があったということでございます。
保坂(展)委員 つまり、今の事務局長の答弁だと、本当は丁寧に消しておかなければいけないものをちょっと消し忘れてしまった、こういうミスが誤解を与えた、こういうふうに私受け取れるんですが。
 最高裁に伺いますけれども、この中で私驚いたのは、さっき同僚議員の話の中にも最高裁の検証の話が出ていましたけれども、今度のこの司法制度改革審議会の、法案をつくるときにもそういう議論をしましたけれども、やはり国民に開かれた議論をして、そして総理大臣が本部長になってやっているわけですよね。各界の意見を取り入れて重要な法改正をする、司法全般にわたった改革をするという。特に行政訴訟というのは、これは一番、一般の市民あるいは国民と国である行政機関との力の差があって、大変いろいろな問題を指摘されている分野でございます。そこに「最高裁案で確定」というのがあるんですよ、これは。
 「最高裁修正で確定」というのは、事務局の方が、どういうものかわかりませんよ、まだ今、詳細求めたいと思いますけれども、こういうことを考えていますが事務的に間違いないですかと聞いたというような説明がさっきありました。しかし、「最高裁案で確定」というのは、最高裁は案を出していたということじゃないですか、これが本当だとすると。これは本当にゆゆしきことで、どういうことですか。最高裁、案を出していたんですか。
中山最高裁判所長官代理者 「最高裁案で確定」といいましても、最高裁が案を出したわけではございません。
 資料三の「管轄の拡大についての主な論点」というものが、一から五まで書き込まれてある資料がございますが、これが最高裁案で確定されたというふうに言われているものであります。これについて最高裁がどういう意見を述べましたかといいますと、五項のところに「管轄を拡大すべきでない類型の事件はないか」ということで、事務局の方からは、「管轄を拡大することが相当でない類型の事件はないか。」というようなことがあり、そのことについて、これに見合うようなものを扱った判例はないかということを聞かれ、その結果、そこに「例えば、中央労働委員会の救済命令取消訴訟などについてはどうか。」という部分が付加されただけであります。
 いわば例を提供しただけでありまして、こちらの方、最高裁といたしましても、「最高裁案で確定」と書かれるようなものではないというふうに思っております。
保坂(展)委員 法務大臣に伺いますけれども、司法制度の副本部長でもいらっしゃるわけですね。もう一つお配りした資料には、日弁連の事務総長大川さんからの山崎事務局長あての、これは申し入れ書というか、抗議文もあり、また提案もありというものが出されているようでございます。これは単純なミス、不注意のたぐいのことであったのか。
 しかも、これは大変国民にかかわりのある領域でございますから、事務局長にもその後に聞きますけれども、誤解であれば誤解だということをこの法務委員会でしっかり示していただきたいんですよ。いろいろケアレスミスでというふうに言われても、どういう領域の分野で、どういう意見があり、そしてそれがどうだったのか、経過を、これは全部お答えいただく準備もないでしょうから、しっかり調べてやっていただきたい。大臣の見解を伺います。
森山国務大臣 事務局においていろいろな法案を立案いたしますときに、検討に当たりましては、最高裁とか日弁連等の関係機関と事柄に応じて随時意見を交換するということは必要だと考えておりますが、御指摘のこの問題につきましては、この記載ぶりに大変誤解を招く不適切な点があったかと思います。
 検討会における検討を充実したものとするために、必要な意見交換を関係機関との間で行ったということは大事なことだとは思いますし、そのようなことだと理解しておりますけれども、この申し入れ書にございますような見出しがつけられていたということは、非常に誤解を招く、間違いだったと思います。
 今後とも、引き続きさまざまな方面の意見を幅広く聞いていかなければいけない性格のテーマでございますので、司法制度改革については各方面から意見を伺わなければいけないわけでございますが、そのような過程におきましては、検討会における検討が充実したものとなりますように、しかも誤解を招くようなことがないように、今後十分気をつけてほしいと考えております。
保坂(展)委員 事務局長に伺いますけれども、日弁連はここで、第一トラック、第二トラックと事務局の方で分けられて、そしていろいろ議論が推移してきていることについて、率直に言って、不信感を持っている、もう一回仕切り直しをしてほしいという内容が書かれていますよね、申し入れ書の中に。
 今私は、司法制度改革審議会の設置法案の審議のときのことを少し思い出しているんですけれども、事務局が問題だと。かつての臨時司法調査会ですか、臨司、内閣に置かれた。事務局が、公平中立にして、その委員の皆さんをしっかりフォローしながら、委員主導というか、まさに委員が議論をするということでなければならない。その事務局が、言ってしまえば、司法官僚の意を酌んでどんどんリードをして、事実上その道筋を描いてしまうようなことがあってはいけないんじゃないかと、事務局の問題をここの法務委員会で随分議論したんですね。
 今回のこの消し忘れメール、これが、しかし、語句がやはり「修正」とか「最高裁案」と。少なくても、パソコンを扱った現場の事務局の方の意識の中には、内閣法制局から修正、そして最高裁が了承とか意見、まあ最高裁は不本意だと言っていますが、そういう意識があるんですよ、言ってしまえば。
 だから、ここに資料がありますけれども、どういう内容において、非常に基礎的で技術的なことなんだと言うのであれば、この五つが何だったのか、すべて明かしていただきたい。当委員会に報告してください。
山崎政府参考人 何点か御指摘があろうかと思いますが、まず、若干御説明をさせていただきたいと思うんですが、確かに私どもの方のプロパティーがそのまま参りました。そこの見出しですね、これは確かに非常に不適切な文言が書かれているというふうに思います。
 私どもとしては、従来から、今後も変わりませんけれども、いろいろな方に必要な意見はお伺いします。最終的には、それをどうするかは自分たちの方の判断で決めるという姿勢です。これは変わりません。そういうものを御提示して、今度、検討会がございますので、検討会の方にそれを土台にしていただいて十分な御議論をいただいて、その立案を定めていく、こういうことで、これは従来も今後も変わらない、そこはきっちり意識をして、我々が主導するのではないということは肝に銘じたいと思います。
 それから、御指摘の箇所でございますが、これにつきましては、また当委員会の方で御指示がございますれば、私どもとして提出をさせていただきたいと思います。
保坂(展)委員 私は、これは理事会協議とかという問題じゃないと思いますよ。これは事務局の姿勢が問われているわけですよ。
 私は、余り何回もありませんが、法案作成の過程に議員としてかかわったときに、例えば第一案、第二案とか第三案とか出てきますよね。これは貴重な資料なんですね。定義のところでどうするかとか、さまざま、まず概括的な議論をするところから始まりますでしょうね。それがどういう過程を通ってきたのかと。本当は、この「見え消し」というところを出してほしいんですね、どういうふうに見え消したのか。今事務局に聞いたら、みんな消去して、ないと言うんですね。これはどうなのかなと思いますけれども。
 少なくても、どの範囲の議論について、その事務に当たった方が内閣法制局の修正ととらえてそういった整理をしたのか、最高裁の意見で確定というふうに決めたのか、それはどの範囲でどういう項目なんだというのは、やはり出す義務がありますよ、これは国会に対して。
山崎政府参考人 今回の件について、これは残っておりますので、必要なものは全部お出しをいたします。
保坂(展)委員 では、次に進みます。
 前回、専門委員について随分と議論をさせていただきましたけれども、この専門委員について、関係者からの声を聞いてみると、これは最高裁に答えてもらった方がいいでしょうね、運用の部分にかかわってきますから。やはり非常に強い反対意見がありますね。
 特に、ジャンルを絞って言えば、医療です。これはなかなかやはりギルド的で、患者の側が、カルテの開示も十分じゃないという状態の中で医療過誤事件を提訴した場合に、言ってみれば、訴えられた側の病院なり医者というのはたくさんのデータを持っていて、訴える側はないわけですね。そこに、医療の場合に専門委員が、公平を期すと前回も言われているんですけれども、どうやって公平を期すのか。これは慎重にして慎重を重ねてもいい問題だし、専門委員に入れるのが果たして妥当かどうかということも含めて、これは医療訴訟なんかやってもむだだというようなことにならないように、どういうふうに考えるのか、はっきり答えていただきたいと思います。
園尾最高裁判所長官代理者 御指摘のとおり、法案の案文を作成するという段階から、医療訴訟事件に関しては公平、中立性という点について問題点が指摘されて、大いに議論されたところでございます。
 ただいまの御指摘のように、医療事件に関しましては、他の専門訴訟事件とは全く違った様相を呈しておるといいますか、専門家というものが医療の機関そのものあるいは医師の有資格者であるというような点から、一方当事者にもう既に外形的に近い関係にあるんじゃないかというような点、その他、先ほど御指摘のような議論がされてまいったわけでございます。
 そのような議論の中で、公平、中立性を保つために、当事者の意見を聞くという点について条文を設けるとか、あるいは忌避に関する条文を設けるというような、法案の中ではさまざまな努力がされてきたというように思いますが、裁判所としても、さらにその延長線上で大いに工夫をしていきたいというふうに思っております。
 現時点ではまだ検討中ということでございますが、できるだけ幅広く、専門委員についての選択肢を広くしてはどうか、あるいは他の管内などの専門委員というものを専門委員名簿の中に入れる、あるいは専門委員として登用してはどうかとか、さまざまな知恵を絞っておるところでございます。基本は、法律に書いてあるとおり、当事者の意見をしっかりと聞いて、その手続の中で公平性に関して十分配慮をした姿勢を示していくということであろうというふうに思いますが、運用についてなお一層検討していきたいというように思っております。
保坂(展)委員 もう一問最高裁にお聞きします。ちょっと簡潔に答弁の方をお願いしたいんですが、最高裁自身による検証が問題になっております。
 検察官や弁護士や外部の有識者、裁判所から一定の独立性を持った方がもう少し公平に見るという仕組みをつくってはどうかとか、あるいはもう一つ、幅広く、経済界の代表とかそういう方たちだけではなくて幅広い国民、市民が裁判所に意見を届ける。その中には、前回私が指摘したような、NGO等が問題にしている新しい領域の問題、化学物質過敏症を含めて、そういうことを幅広く聞く姿勢が必要だ。
 ですから、一つは、裁判所における検証の中にもっと多様な意見を酌み取る構造をつくっていくべきだという点と、専門委員を選ぶなりなんなり最高裁がアンテナをしっかりするためにも、近づきにくいですから、あの建物は。御影石でできていますからね。これは、非常に近づきにくい建物。そこに、しっかり、裁判官がむしろ世の中へ出ていってきちっと集めてくる、そういう姿勢を持っていただきたい。
中山最高裁判所長官代理者 最高裁判所が検証の主体ということになっておりますけれども、これは最高裁判所だけでできるものではないというふうに思っております。ひとりよがりになっても、それはぐあいが悪い。当然のことながら、弁護士あるいは検察官といった法曹二者の協力も賜らねばなりませんし、いろいろな分析の手法、視点というものを確保するためにも、さまざまな分野の方の御意見というものもちょうだいしなければならないと思っています。そういった方々の意見が適切に酌み取れるような仕組み、そういったものを構築してまいりたいというふうに思っているところでございます。
 また、裁判官が外に出ていくべきだということにつきましては、判事補の研修等でも外部派遣を今現実に検討しておりますし、また裁判官が、裁判官の出前教室といったようなことで、小学校、中学校にもかなり今は出向いてきている。あるいは新聞にも、いろいろこうやって、裁判官の気持ちというものを出しているというところで、大分さま変わりしてきていると思っておりますし、さらにこの点、充実させていきたいと思っています。
保坂(展)委員 私、一番冒頭のところで、法務省の刑事局長にお尋ねした点があったんですね。これは大変重要なことなので、ちょっと追加的に聞いておきたいと思います。
 というのは、前回私が指摘したのは、携帯電話の位置情報並びに位置登録情報というのがあって、これは二つ違うんですね。あえて言えば、位置情報というのは、電話をかけたときに発信をした通話記録の中に含まれる、どこからかけたかということをいっています。位置登録情報というのは、例えば電話をかけていないときにでも、交換局と定期的に結んで、ここにおりますよと位置確認をしているという、この二種類の情報があるわけなんです。
 実は、前回も示しましたけれども、郵政省が大変いい議論をしていたんですよ、平成十二年十二月に。これは、電気通信分野における個人情報保護法制の在り方に関する研究会というのがあるんですね。この中にいっぱい出てくるんです、この位置情報の話は。これは大変な問題だということを書いているんですね。
 ちょっと紹介をしますと、要するに、通信の秘密もさることながら、個人がどこにいるかなんということは高度なプライバシーだと書いているんですね。そして、この整理では、なかなか境界が不確定であると。さっき言いましたところ、携帯電話やPHSのいわゆる通信をしたときに附属する位置情報は通信の秘密として概念分けできるだろうとここには書いてあります。
 もう一つの位置登録情報については、これは通信ではないと。いわば電話線みたいなものですからね、位置登録情報というのは。携帯電話の所持者が今東京・永田町にいますよという、この登録ですから、これは通信ではない。だからいいのかというと、しかし、これは、通信の秘密ではないけれども、どこに存在するかという情報は最も高度なプライバシーである。少なくとも、これは通信の秘密に当たるかどうかということで当たらないからといって、これとは全く違う扱いをすることは適当じゃないというふうに言っているんですね。しかも、いわゆる自己情報についてのいわば開示だとか訂正だとか、そういうこともやはり考えていかなきゃいかぬというふうに言っているんです、実は。
 そういうことを踏まえると、検証令状で、これからその人がどこに行くのか、どこに行ったのかというのを、捜査状を使って全然問題がない、通信傍受と全く絡んでこないという前回の答弁は、いささかやはり認識不足じゃないか、うんとと言ってもいいかもしれない。認識を問いたい。
樋渡政府参考人 要は、位置情報といいますものが個人の情報にかかわることであることは当然そのとおりでございますので、そういったものを捜査機関といえども勝手にとっているというものではありませんでして、やはり検証令状という令状をとって必要とあらば今までやってきたところでございます。
 したがいまして、捜査にとって必要であるという判断のもとで、司法の判断を経た上でとっている捜査活動でございますので、そのことに関しまして、捜査機関といたしましても慎重に配慮しながら、司法の判断を受けながらやっているものというふうに承知しております。
保坂(展)委員 要するに、盗聴法というのは、いろいろ議論したんですね。与野党で激しい議論をして、相当に衆参ともに長時間やりました。それはやはり、通信の秘密ということに対して、捜査がどういう適正な手続をとるのかということであったと思いますよ。
 ですから、これは、通常の令状捜査の場合には、既にある物とかあるいは身柄とかをとるということでありますから、通信傍受の場合は、これから起きてくる犯罪に結びつくかもしれないという、未来の、かもしれないという捜査でありますよね。したがって、当然外れがある。そういった場合も含めて、本人告知ということが盛り込まれているわけですね、この通信傍受法には。
 今、私、整理して言いたいんですけれども、検証令状で、捜査側で、これから一カ月この人がどこに行くのか、つまりどこに行きだれに電話をしていくのかというのは、かなり高度な情報ですよ。電話の通信内容の一部も含まれるし、どこでかけたかという情報は。そしてまた、どこに行ったかということは、大変重要な情報でしょう。ということについて、この郵政省のガイドラインでもきちっと書いているわけですから、やはり本人に対してきちっと告知をすべきかどうかということを考えなきゃいけない。そこはどうですか。
樋渡政府参考人 先ほど委員が御指摘になられました犯罪捜査のための通信傍受に関する法律、この所定の傍受令状によって認められる通信の傍受といいますのは、委員も御指摘のとおりの、現に行われている他人間の通信について、その内容を知るため、当該通信の当事者のいずれの同意を得ないでこれを受けることと定義されております。
 例えば、通信の内容を知ることなく通信の当事者の電話番号等の探知のみを目的として他人間の通信を受けることは、傍受には該当しないとされているところでありまして、通信履歴や位置情報につきましては、これをリアルタイムに収集する場合でも同法律の対象とならず、同法律制定前と同様に検証令状によるべきことというふうに現在されています。そういうことで、違うということでございます。
保坂(展)委員 これはもう、ちょっと時間がないので。
 では、件数はわかりましたか、過去三年間。どのぐらい行われていましたか。それだけ答えてください。
樋渡政府参考人 その点もこの間お尋ねいただいたところでございますが、当局としましても、全国の検察庁を対象といたしまして所要の調査を開始したところでございますが、調査中でございまして、現時点ではまだ把握しておりません。といいますのは、これは非常に手作業の要ることでございまして、要は件数でございますので、その記録、きれいに把握しているわけではない、統計上ないわけでございます。
 例えば、最高裁の統計では、これはうろ覚えでございますが、十三年とか十四年で十八万件ぐらいの令状請求があったということでございますが、それにつきましても、警察官が請求したか検察官が請求したかの区別もありません。当方の方で若干調べましたけれども、当方の方で何件の令状請求があったかすらの統計もないのでございまして、これを手作業でやっていくところにおきまして、最高検の御協力を得ながらもこれから進めていきたいというふうに思っております。
保坂(展)委員 個人情報保護の議論もこの国会でまだ続いていますので、これは法務大臣にもぜひ関心を持っていただいて、引き続き調べていただけるという御答弁だったので、犯罪捜査も必要ですよね、そういった位置情報なども使う場合もあろうと思います。しかし、それが適正な手続によらなければいけないということは前提になりますので、その点を指摘して終わりたいと思います。終わります。
山本委員長 これにて各案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
山本委員長 この際、裁判の迅速化に関する法律案に対し、佐藤剛男君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党及び自由党の共同提案による修正案が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を求めます。山花郁夫君。
    ―――――――――――――
 裁判の迅速化に関する法律案に対する修正案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
山花委員 ただいま議題となりました修正案について、提出者を代表して、その趣旨及び概要を御説明いたします。
 第一は、裁判の審理の充実は裁判の迅速化の前提であるということを明確にするため、第一条の「目的」について、「公正かつ適正な手続」の表記を「公正かつ適正で充実した手続」の表記に改めようとするものであります。
 第二は、裁判の迅速化の実現により当事者の正当な権利義務が害されることのないようにするため、第七条の「当事者等の責務」について、「当事者等の正当な権利の行使を妨げるものと解してはならない。」との規定を加えようとするものであります。
 第三は、最高裁判所による検証は外部の有識者による客観的な判断が不可欠であることを明確にするため、第八条の「最高裁判所による検証」について、「総合的かつ多角的な検証」の表記を「総合的、客観的かつ多角的な検証」の表記に改めようとするものであります。
 以上が、本修正案の趣旨及び概要であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
山本委員長 これにて修正案の趣旨の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
山本委員長 これより各案及び修正案を一括して討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、これを許します。中林よし子君。
中林委員 私は、日本共産党を代表して、裁判迅速化法案及び同修正案、民事訴訟法等改正案に反対、人事訴訟法案に賛成の討論を行います。
 まず、裁判迅速化法案についてです。
 日本国憲法は、公平かつ公正で迅速な裁判を受ける権利を国民に保障しています。行政事件、労働事件、薬害事件、公害事件、医療過誤事件など証拠の偏在等が問題となっている一部の民事事件や一部の刑事事件の審理長期化が社会的問題とされています。しかし、これらは民事訴訟については挙証責任の転換、証拠収集手続の抜本的改善など、また刑事訴訟については検察官手持ち証拠の全面開示、取り調べ過程の可視化などによって、公平かつ公正で迅速な裁判の実現を図るべきであります。
 しかし、刑事訴訟については、司法制度改革審議会が示した裁判員制度も含め、いまだ迅速化の方策は示されていません。また、民事訴訟についても、今回、民事訴訟法改正案によって方策が示されていますが、極めて不十分です。この状況で迅速化を、専ら審理期間の期限を定め、裁判所や当事者等にそれを義務づけることによって達成しようとすれば、迅速化の名のもとに拙速な裁判を国民に押しつけることになり、裁判の命である真実の発見がないがしろにされ、裁判の公正、公平、適正を犠牲にしかねないのみならず、刑事事件にあっては冤罪のおそれ、民事事件にあっては正当な権利の救済が害されるおそれが生じます。
 第二は、最高裁判所による迅速化の検証が、最高裁事務総局による個々の裁判体、裁判官への介入となり、裁判官の独立を脅かすおそれが強いからであります。
 審議の中で、検証は、現に進行中の事件も対象として含まれることが否定されませんでした。個別裁判について、証人、検証、鑑定などの証拠採否の有無、計画審理をしたか否か、個々の裁判官の手持ち事件数や処理数など、個々の裁判手続のすべてが検証の対象となることが明らかになりました。
 人事権を持つ最高裁判所事務総局がこのような微に入り細に入りの個別裁判の調査を始めれば、裁判の独立に対する侵害となるだけでなく、個々の裁判官は萎縮し、裁判迅速化のために、必要な証拠調べを行わないなど、裁判の拙速化が進むことは明白であります。
 なお、与党及び民主党、自由党による修正案は、本案のこれらの問題を本質的に解決するものではなく、賛成できません。
 次に、民事訴訟法等改正案についてです。
 遅延が深刻な事件の迅速化のために、証拠収集手続の創設や主張立証責任の転換などが必要です。今回の改正では、それについて何一つ行われないまま、裁判所、当事者に審理の期限を義務づける裁判迅速化法のもと、審理計画、攻撃防御方法の提出期間、時機におくれた攻撃防御方法の却下の制度を創設して、迅速化の名による裁判の拙速化を促進することは、裁判の公平、真実発見からも大問題です。とりわけ、経済的、社会的弱者の権利が切り捨てられるおそれを増大させるものです。
 第二に、専門委員制度は、専門委員の中立、公平性の確保に関する基本的な懸念が解消されず、また当事者が専門委員の意見を直接弾劾できるわけでもありません。さらに、専門委員の選任に伴い、裁判所が鑑定の採用に消極的になるおそれも指摘されています。
 第三に、知的財産権訴訟の専属管轄化は、地方の企業、個人に必要以上の負担を強いるだけでなく、知的財産権に関する裁判所、弁護士などの能力を地方から失わせてしまいかねず、日本経済の均衡ある発展の見地からも問題です。
 以上、反対の理由を申し述べ、討論を終わります。
山本委員長 これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
山本委員長 これより採決に入ります。
 内閣提出、裁判の迅速化に関する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。
 まず、佐藤剛男君外三名提出の修正案について採決いたします。
 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
山本委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。
 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除いて原案について採決いたします。
 これに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
山本委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
山本委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、佐藤剛男君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党及び社会民主党・市民連合の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。山花郁夫君。
山花委員 ただいま議題となりました附帯決議案について、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。
    裁判の迅速化に関する法律案に対する附帯決議(案)
  政府並びに最高裁判所は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。
 一 裁判所における手続の迅速化については、当事者の正当な権利利益が害されないよう、当事者の人権に十分配慮し、当事者の防御権を損なうことのないよう、十分な配慮をすること。
 二 最高裁判所による検証については、裁判の独立及び関係者のプライバシーを十分尊重しつつ、総合的、客観的かつ多角的な検証を確保するため、法曹三者の協力に加え、外部有識者の関与を認めるよう、必要な措置をとること。
 三 裁判の迅速化に資するため、裁判官、検察官及び関係職員の増員及び裁判所施設の拡充など、人的物的体制の整備に努めるよう、必要な予算措置をとること。
以上であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
山本委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 佐藤剛男君外四名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
山本委員長 起立多数。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。
 この際、ただいまの附帯決議につきまして、法務大臣及び最高裁判所事務総長から発言を求められておりますので、順次これを許します。森山法務大臣。
森山国務大臣 ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。
山本委員長 次に、竹崎最高裁判所事務総長。
竹崎最高裁判所長官代理者 適正な結論とそのための充実した審理という裁判の最も基本的な要請のもとで法の求める迅速な裁判を実現していくため、最高裁判所としては、附帯決議の御趣旨に沿って、必要な司法行政上の措置を講じてまいりたいと考えております。
 そのため、裁判官の増員を初めとする人的、物的体制の整備に努めるとともに、検証に当たっては、御指摘のような慎重な配慮のもとに、他の法曹の協力を得つつ、外部の有識者にも関与していただけるような仕組みを考えてまいりたいと考えております。
 以上でございます。
    ―――――――――――――
山本委員長 次に、内閣提出、民事訴訟法等の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
山本委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
山本委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、佐藤剛男君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党及び社会民主党・市民連合の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。山花郁夫君。
山花委員 ただいま議題となりました附帯決議案について、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。
    民事訴訟法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。
 一 計画審理については、当事者との協議により、その納得の上で実施されるよう努めるものとし、迅速な審理のために審理の適正、充実が損なわれることのないよう、その趣旨並びに要件及び手続について周知徹底を図ること。
 二 訴えの提起前における証拠収集の処分等については、司法制度改革審議会意見書が「訴えの提起前の時期を含め当事者が早期に証拠を収集するための手段を拡充すべきである」と提言していることを受けて創設された制度であることの周知徹底を図ること。
 三 専門委員制度の導入については、その趣旨及び手続について周知徹底し、実質的に専門委員による裁判が行われるといった事態を招かないよう、専門委員の中立・公平性の確保と専門委員が関与する際の手続の透明化の確保について配慮すること。とりわけ、医療過誤事件への専門委員の関与については、特にこれらの確保に十分留意すること。
 四 本法による改正後の鑑定人に対する質問については、当事者による尋問を制約するものではないことを周知徹底すること。
 五 特許権等に関する訴えの専属管轄化については、専属管轄化に伴い地方在住者の裁判を受ける権利が不当に害されることがないよう、電話会議システム及びテレビ会議システムを利用した訴訟手続の制度並びに移送制度の趣旨の周知徹底を図ること。
以上であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
山本委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 佐藤剛男君外四名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
山本委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。
 この際、ただいまの附帯決議につきまして、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。森山法務大臣。
森山国務大臣 ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと思います。
    ―――――――――――――
山本委員長 次に、内閣提出、人事訴訟法案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
山本委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました各法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
     ――――◇―――――
山本委員長 次に、内閣提出、刑法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 趣旨の説明を聴取いたします。森山法務大臣。
    ―――――――――――――
 刑法の一部を改正する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
森山国務大臣 刑法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
 近時、交通の発達により国際的な人の移動が日常化し、日本国外において日本国民が犯罪の被害に遭う機会がふえ、特に、殺人や誘拐、強盗等の重大な犯罪の被害に遭うことも少なくありません。
 刑法は、明治四十年の制定当時におきましては、日本国外で日本国民に対して一定の罪を犯した外国人についても刑法の適用を認める旨の規定を有しておりましたが、昭和二十二年の刑法改正の際に、当時の諸外国の立法例等を踏まえてこの規定は削除され、現在に至っております。
 もとより、日本国民が被害者となった場合であっても、日本国外において行われた犯罪については、犯罪地国にその犯人の処罰を含めその対応をゆだねることが相当である場合が多いものと思われますが、日本国外において日本国民が犯罪の被害に遭う機会が増加している今日、生命、身体等に重大な侵害をもたらすような犯罪の被害を受けた場合においても、我が国の刑法をおよそ適用できないとすることは、国外にいる日本国民の保護の見地からも妥当であるとは言いがたく、また、現在では、一定の場合に、自国民に対して犯罪を行った自国民以外の者の国外犯を処罰することは、諸外国の立法例においても認められるところとなっております。
 そこで、この法律案は、このような状況を踏まえ、日本国民の保護の観点から、日本国民が殺人等の生命、身体等に対する一定の重大な犯罪の被害を受けた場合における国外犯処罰規定の整備を行おうとするものです。
 この法律案の内容は、日本国外において日本国民に対して強制わいせつ及び強姦の罪、殺人の罪、傷害の罪、逮捕及び監禁の罪、略取及び誘拐の罪並びに強盗の罪を犯した日本国民以外の者に刑法を適用することとするとともに、その他所要の規定の整備を行うものです。
 以上が、この法律案の趣旨でございます。
 何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
山本委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
     ――――◇―――――
山本委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
 法務行政及び検察行政に関する件、特に行刑運営の実情について調査のため、来る十四日水曜日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 次回は、来る十三日火曜日に委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時三十七分散会


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