衆議院

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第14号 平成15年5月16日(金曜日)

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平成十五年五月十六日(金曜日)
    午前九時三分開議
 出席委員
   委員長 山本 有二君
   理事 佐藤 剛男君 理事 塩崎 恭久君
   理事 園田 博之君 理事 吉田 幸弘君
   理事 河村たかし君 理事 山花 郁夫君
   理事 漆原 良夫君 理事 石原健太郎君
      太田 誠一君    北村 誠吾君
      倉田 雅年君    小西  理君
      左藤  章君    笹川  堯君
      下村 博文君    中野  清君
      保利 耕輔君    星野 行男君
      保岡 興治君    吉川 貴盛君
      吉野 正芳君    渡辺 博道君
      大島  敦君    鎌田さゆり君
      中村 哲治君    楢崎 欣弥君
      水島 広子君    山内  功君
      上田  勇君    山田 正彦君
      木島日出夫君    中林よし子君
      保坂 展人君    徳田 虎雄君
      山村  健君
    …………………………………
   法務大臣         森山 眞弓君
   法務副大臣        増田 敏男君
   法務大臣政務官      中野  清君
   最高裁判所事務総局総務局
   長            中山 隆夫君
   最高裁判所事務総局刑事局
   長            大野市太郎君
   政府参考人
   (司法制度改革推進本部事
   務局長)         山崎  潮君
   政府参考人
   (公正取引委員会事務総局
   経済取引局取引部長)   楢崎 憲安君
   政府参考人
   (法務省大臣官房長)   大林  宏君
   政府参考人
   (法務省大臣官房司法法制
   部長)          寺田 逸郎君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    樋渡 利秋君
   政府参考人
   (法務省矯正局長)    横田 尤孝君
   法務委員会専門員     横田 猛雄君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月十六日
 辞任         補欠選任
  後藤田正純君     倉田 雅年君
  左藤  章君     北村 誠吾君
  平沢 勝栄君     渡辺 博道君
  日野 市朗君     楢崎 欣弥君
  不破 哲三君     中林よし子君
同日
 辞任         補欠選任
  北村 誠吾君     左藤  章君
  倉田 雅年君     後藤田正純君
  渡辺 博道君     平沢 勝栄君
  楢崎 欣弥君     大島  敦君
  中林よし子君     不破 哲三君
同日
 辞任         補欠選任
  大島  敦君     日野 市朗君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 司法制度改革のための裁判所法等の一部を改正する法律案(内閣提出第九九号)
 法務行政及び検察行政に関する件


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     ――――◇―――――
山本委員長 これより会議を開きます。
 法務行政及び検察行政に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、政府参考人として法務省大臣官房長大林宏君及び矯正局長横田尤孝君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
山本委員長 この際、死亡帳調査班による調査結果中間報告について、法務大臣から報告を聴取いたします。森山法務大臣。
森山国務大臣 既に御案内のとおり、法務省におきましては、衆議院法務委員会における行刑問題に関する御審議の参考としていただくため、過去十年間に行刑施設内で被収容者が死亡した案件について死亡帳等の記録を理事の方々に提出申し上げております。
 私は、一連の名古屋刑務所事件を契機に生じた矯正行政に対する国民の不信を払拭し、一日も早くその信頼を回復するためには、同事件と同種の事件がほかにはなかったのかを早急に解明する必要があると考えました。そこで、省内に検事、法務事務官から成る死亡帳調査班を設け、刑事局、矯正局においては関係資料を同調査班に提供するなどの全面的な支援を行うという体制を組み、同調査班においては、本年四月七日から、集中的に調査を実施してまいりました。
 同調査班においては、本調査の重要性、緊急性にかんがみ、休日を返上するなどして精力的に調査を行ってまいりましたが、調査対象が過去十年間にさかのぼった全死亡事案でもあり、件数が相当多数である上、慎重に結論を下す必要がある事案もあり、現時点においてもなお調査中でございます。
 しかし、このたび、法務省として、その調査検討結果について、中間的なものではございますが、取りまとめることができましたので、本委員会に御報告申し上げ、今後の御審議の参考にしていただくとともに、委員の皆様から御意見、御批判を賜りたいと考えております。
 まず、調査の概要について申し上げます。
 死亡帳調査班による調査対象は、行刑施設において、平成十四年十二月末までの過去十年内に被収容者が死亡した事案のうち刑死を除く合計千五百六十六件でございます。
 調査の目的は、これらの事案について、主として、刑務官等の違法な暴行により死亡した疑いがないかどうかを解明することにありますが、医療行為の適否ないし行刑施設内における医療体制の当否等の問題については、本調査の直接の目的ではないものの、調査の過程で参考となる事項が判明した場合には、所要の調査を行っております。
 調査資料としては、当該事案の関係書類、すなわち、死亡帳、被収容者身分帳簿、診療録、死亡診断書、死体検案書、被収容者死亡報告、保護房収容書きとめ簿、戒具使用書きとめ簿、行刑関係の資料のほか、検視結果、死体解剖所見等を検察当局から確認し、調査資料といたしております。
 このような関係書類の調査により、被収容者の年齢、診断病名、既往歴の有無、内容、治療経過、死体の外傷の有無、内容、当該外傷の原因、革手錠使用の有無、その他制圧の有無、内容、保護房収容の有無、独居房・雑居房の別、行政解剖の有無、検察官通報の有無、司法検視の有無、司法解剖の有無を確認し、その上で、医学的知見が必要と判断された事案については法医学専門医から教示を受けることとし、また、書面のみでは判断が困難な事案については必要に応じて関係者からのヒアリングを行いました。
 そして、これらを総合して、被収容者の死亡が刑務官等の違法な暴行によるものである疑いがないかを判断したものであります。
 現在までの調査結果を申し上げます。
 被収容者の死亡が刑務官等の違法な暴行によるとの疑いがないと判断された案件は、合計千五百四十八件であり、その内訳は、
1 外因によるとは考えられない疾病により死亡したと判断されるものが、合計五百四十件
2 病名自体からは外因によることがあり得るが、死体に特段の外傷がないことから、犯罪死の疑いがないと判断されたものが、合計九百六件
3 1及び2以外で、外傷が自殺、事故等の刑務官等が関与しない原因に基づくものと認められ、犯罪死の疑いがないと判断されたものが、合計百件
4 1ないし3以外で、その他の事情から犯罪死の疑いがないと判断されたものが、合計二件
でございました。
 そのほか、同房者による傷害致死事件であることが確定している案件一件、名古屋刑務所事件二件を除く、残り十五件につきましては、今後、さらに調査を継続する必要のあるものと判断いたしました。
 なお、この調査継続案件の中には、現在までの調査によっては刑務官等による違法な暴行によって被収容者が死亡したものではないと断定するに至らなかった案件のみならず、その調査に際して行刑施設における医療行為や医療的対応の問題をさらに検討すべきとされた案件も相当数含まれております。
 今回の報告はあくまで中間報告であり、死亡帳調査班においては、六月上旬までを目途に調査を継続することとしております。
 また、矯正医療問題に関し、これまで国会の審議におきましてはさまざまな御指摘もいただいており、私は、この矯正医療問題が、非常に根深く、容易には解決できない問題であると認識しております。
 そこで、この問題を徹底して検討させて適切に対処すべく、先日、矯正局内に、医療担当課のみならず、人事、予算部門、さらには医療刑務所の医師等を構成員とする矯正医療問題対策プロジェクトチームを設けました。
 今後、死亡帳調査班による調査により、行刑施設内における医療体制の当否等の問題が判明した場合はもちろん、今回の中間報告に際しまして、各方面からも御指摘をいただきますれば、同プロジェクトチームにおいて今後の医療体制のあり方を検討するための貴重な参考資料として生かしたいと考えております。
 今後とも、委員の皆様から御指導を賜りながら、行刑のあり方を徹底して見直し、その改革を推し進める所存でございますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
山本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐藤剛男君。
佐藤(剛)委員 自民党の佐藤剛男でございます。
 ただいま法務大臣から、名古屋刑務所問題を契機としまして、この機会にあらゆる問題を解明して、そして、あすへの矯正といいますか日本の刑務所のあり方全般について、そういう問題について真摯に取り組まれるというお言葉を賜って、そういう一環としまして、今般、中間報告を出されたという御説明を受けたわけであります。私は非常に重要なことだと思うんですね。
 この名古屋の問題というのが、報告にもございますが、私も驚いているんですけれども、病気で亡くなられておられる方々等々、十年間で千五百六十六件ある。一年で約百六十人ぐらいが亡くなっておるわけですね。それから、片っ方で絞首刑というものの廃止論があるというようなことで、私はこの機会に、同僚の議員が真摯に既にこの委員会において明らかにしておりますように、一つは、大きく、事実解明は事実解明、きちんとやらなきゃいかぬ、真相解明をしなければいかぬ。これは前回、総理大臣がいらっしゃったときに、同僚の河村議員がこの委員会において、裸になってあれをとったのを私は初めて拝見しましたけれども、そのぐらい熱心にやられておる。
 だから、そういう一つの問題について、僕は、前回も申し上げましたように、当委員会が国民の司法に対する信頼を受けるか受けないか、これは国家として非常に重要なことなんですね。国家として司法に対する信頼感がなくなったら、国家は消滅します。これは、イラクの問題をとってみましても、治安、国防、外交、きちんとした民族の誇りを教える教育、それから司法という面について、この五つの条件のうち、どれでもおかしくなってくると国は滅びると私は思っているわけでありまして、その意味において、法務省の、法務大臣の立場は非常に重要である。
 そして、しかもこの刑務官は、内閣総理大臣を支えておる、警察官と同じである。そういう方々に対して、この名古屋事件の問題で非常に意気が沈滞しているというのも事実であります。それは払拭しなきゃいかぬ。きちんとまじめになって働いている人たちについてはそれなりのことをやるのが私たち政治家の務めであるし、また本件について、同僚議員が提起している冤罪問題等々の問題については、それはそれの問題として個別に今継続されておる案件ですが、やらなきゃいけない。
 このような立場に立って、まず申し上げます。
 一つは、法務大臣のその質問の中で、行刑運営に関する調査検討委員会というのをつくられたわけですね。それから、その調査検討委員会が、報告書というのは、中間報告という同じ名前で幾つも出ているんですね。幾つも出ているといっても、大きく分けると二つです。一つが、三月三十一日の、名古屋刑務所の三事件問題をめぐってかなり広範な周囲の問題についてやっております。それからもう一つが、今法務大臣がこの委員会において御説明されました五月十六日の死亡帳調査班による調査結果、中間報告と言われるもの。それで、混乱しちゃっているんですね。実は、委員会の理事会の中においても議論がたくさんありました。
 ただいま法務大臣が説明されたものは、むしろ理事会あるいは当委員会において要請して、法務省の中できちんとした調査をしてくださいといった話なんですね。ところが、それをこちらの当委員会あるいは理事会にも報告なしに発表しちゃった。報道に出ている。だから、それで一体どういうふうになっちゃっているのかというのが我々理事会の、私も一人ですけれども、思っていた話なんだ。
 それで、ちょっと伺いたいのは、この委員会の中に調査班というのは一体幾つあるんですか。私が見る限り二つあるんじゃないのかと思っておるんですが、一つが、今申された死亡帳調査班ですね。それから、前の、河村委員が出されたものの、三月三十一日、これも行刑運営の実情に関する中間報告となっておる。両方とも中間報告で、こっちは何か一般的に書いてあるんですが、班が二つぐらいあるような形で、何か混同しちゃっている。そうじゃないんでしょうか。私は、まずそこら辺からちょっとお伺いいたしたいと思っております。
増田副大臣 お答えを申し上げます。
 現在、法務省内には、お尋ねの調査班に該当するものといたしまして、発足した順に、まず一として矯正局の特別調査チーム、二として行刑運営に関する調査検討委員会、その下に置かれた特別調査班及び四として死亡帳調査班、さらに五として矯正局の矯正医療問題対策プロジェクトチームがございます。
 以下、順次御説明いたします。
 まず、一としての矯正局の特別調査チームは、昨年十一月、官房審議官をヘッドとして矯正局に設けられたものでして、名古屋刑務所における革手錠による受刑者死傷事件の発生に至った原因や背景事情等の調査を行いました。
 二としての行刑運営に関する調査検討委員会は、本年二月、消防用ホースによる放水事案について強制捜査が着手されたことを契機に、法務省を挙げて行刑運営のあり方全体を徹底して見直し、抜本的な再発防止策を検討、策定するために設立されました。本年三月三十一日、後に述べますけれども、特別調査班の調査結果に基づき、御発言にもございましたように、行刑運営の実情に関する中間報告を行いました。
 三としての特別調査班は調査検討委員会のもとに設けられた機関であり、刑事局の報告や矯正局特別調査チームからの調査報告をもとにして、名古屋刑務所事件発生に係る原因や背景事情の解明のために必要な調査を行いました。
 四として、死亡帳調査班は同じく調査検討委員会のもとに設けられた機関であり、全行刑施設における過去十年分の、刑死を除く千五百六十六件の被収容者死亡案件について、主として刑務官等の違法な暴行により死亡した疑いがないかどうかを解明するため、本年四月七日から、関係記録を精査するなど所要の調査を集中的に行いました。
 最後に、五として、矯正医療問題対策プロジェクトチームは、五月六日、矯正医療の問題を徹底的に洗い出し、中長期的に対処すべき課題と当面早急に解決すべき課題とを明らかにするため矯正局に設置されたもので、同月九日から検討を開始いたしております。
 以上です。
佐藤(剛)委員 当委員会の委員の先生方も、こんなに幾つもあるのかと思っておると思いますよ、副大臣。副大臣、御説明されましたけれども、こんなに幾つもあって、副大臣は国会から役所に行っておられるわけだから、一つの、統合しまして、どういうことの問題についてやっていますとかということを、まずこの委員会、あるいは少なくとも理事会の意向を聞いて、どうするかということをしていただきたい。混乱しますよ、何をやっているのかわかりゃしない。この委員会の中の、皆さんがつくられた中の、矯正局があり、何があり、何がありでしょう。縦割りのような話だ。
 官房長、だから、そういうことをきちんとあなたのところで、大臣官房の中においてこの問題はまとめて、そして、各それぞれの、今言ったので五つあるでしょう、調査プロジェクトが。初めて聞いた、こんな五つあるなんて。だから、そういうふうなことじゃなくて、きちんとまとめて、そして、プレスに発表するにしても、我々委員会がこれだけ真剣になってやっているわけですから、理事会が真剣になってやっているわけだから。
 名古屋の刑務所の中に僕らは二回行っているわけです。そうでしょう。これはなぜなのかというと、名古屋刑務所の問題というのを一つの契機に、監獄法という約百年前の問題を、ずっといろいろな訓令だの何だのが積み重なっている、果たしてこの現在の行刑運営というのはこれでいいのかどうなのか。
 あるいは、刑務所の中において、経済犯をやっていて、脱税しました、それと殺人をした人たちを一緒に中に入れてやっていっている。あるいは、例えば一億円の横領をした人と脱税をした人と、片っ方は金を取っているわけだ、片っ方の方は、一緒に中に入れていても、これは金を払い少なかったというようなシステムなんです。
 そうすると、そういうようなものが果たしていいのかということの問題提起すら僕は持っておるわけで、こういうふうな問題になると、刑法自身の改正問題も出てくるんです。仮出獄の問題もあるんです。それから、あるいは、経済事犯については別のことをやる。あるいは、アヘンだの麻薬のことについては、麻薬の刑務所というものをつくる必要があるんじゃないか。外国人なら外国人の刑務所があるんじゃないか。刑務所の中においては精神障害だの何があるんじゃないか。そういうものについてのきちんとした医療の問題の体制というのができているのか。できていないんじゃないか。
 そうでしょう。これを見たって、大体夕方の五時に帰っちゃって、次の九時ごろまでに出てくる、まるでサラリーマン。サラリーマンのようで、とにかく無医村みたいな状況が出てくるというのは、私は、前回指摘しました。この問題については、来週またこの医療問題という問題について、非常に重要な問題ですから、地方の医師会の問題も含めて、協力も仰いで、きちんとしたシステムをつくらなきゃいかぬ。そしてこれは、来年の予算なら予算の要求時というのは夏場にあるわけです。そういう問題について、必要であるならば、刑務所の予算、人員、あらゆる問題をやらなきゃいかぬ。
 そういうふうな気持ちで臨んでいるわけなんですが、ごちゃごちゃ、皆さんは何とか何とか委員会。私どもから言うと、この委員会かと思っているんです。それが五つもあるというんです。恐らく皆さんに聞いてみても、五つもあるなんというのは初耳だという方々が多いと思いますよ。そういうふうなばらばらでは困るんですよ。
 いいですか、法務省、官房長。だから、そこのところはきちんとめり張りをつけて、そして報告すべきものはきちんと報告し、そしてすることをやってください。これをお願いしまして、時間が短いですけれども、そういう問題の整理でやっていただかないと困りますということをお願い申し上げておきます。
 何か御意見がありましたら、官房長、意見を言ってください。
大林政府参考人 今御指摘ありましたことにつきまして、法務委員会への報告に関し不手際があったことについて、深くおわび申し上げます。
佐藤(剛)委員 では、委員長、終わります。
山本委員長 次に、山花郁夫君。
山花委員 山花郁夫でございます。
 ただいま佐藤委員からも指摘がございましたけれども、今回のこの死亡帳調査班による調査結果中間報告ですけれども、私だけではないと思います、ほかの理事の先生方もそうだと思うんですけれども、何か十五件ほどあって今後も調査するということは、土曜日の新聞で初めて知ったというような状態だったんです。
 本来であれば、こういった報告については、委員会に報告をしてから記者発表すべきだと思うんですけれども、これはどういう認識なのか、官房長に伺いたいと思うんです。
大林政府参考人 本件につきましては、中間報告、資料を事前に理事の方々にお届けし、その御指示を仰ぐべきであったと深く反省しております。私ども事務方の手落ちでございまして、まことに申しわけなく、おわび申し上げます。
 今後このようなことがないよう十分に注意してまいりたいと考えております。
山花委員 しかし、これは落ち度があったということを認められていますけれども、この経緯について、私は、どこか廊下で立ち話とか部屋でお話をしたとか、そういうことならあえて一々申し上げませんけれども、理事会というのはフォーマルな場だと思っています。
 官房長、これについて我々がどういう経過だと求めたときに、あなたは、次官が会見をしました、私はその件について承知しません、そういうことも言いましたね。聞いている人いますよ、ほかにも。確認したいと思います。
大林政府参考人 今のお話につきましては、記者会見はだれが行ったかというお話がありましたので、次官というお話はしました。
 しかし、この件について私は知らないということではございませんで、お話ししましたように、この件につきましては、理事の方々にさらに詳細な資料をつくるということで私どもは準備しておりまして、委員会を軽視するとかいうような、そのような気持ちは全くございませんでした。
山花委員 さらに詳細な資料というのは何ですか。どれのことを指していますか。
大林政府参考人 これは、先般理事の方々にお配りした一覧表の厚いものでございます。
山花委員 あんなもの、コピーして配ればすぐ済むようなものじゃないですか。何でそんなに時間がかかるんですか。
大林政府参考人 これまで理事の方々には、矯正の関係、死亡帳を初め種々の資料をお届けしてまいりました。しかしながら、その後において訂正部分があったりいたしまして、いろいろと御迷惑をおかけしております。
 したがいまして、私どもとしては、出す前のチェックというものを何十人かかけまして、そういう御迷惑をかけないように努力しておりまして、そういう点で時間がかかった、こういうふうに承知しております。
山花委員 確認しますけれども、記者会見の時間とかそういうセットは次官がされたということですね。
大林政府参考人 具体的なセットは、記者クラブとの問題であり、私どもの管轄しておる秘書課において行いましたけれども、これに関する全責任は私にございます。
山花委員 全責任は私にございますということですが、つまり、ほかに資料を整理しなきゃいけなくて、まだ点検中のものについて記者会見をしちゃったということですね、今の説明は。
大林政府参考人 取りまとめた数字等につきましては、一応、資料はございます。
 ただ、全体的な、今度は約千六百に係るものについてのもう一回のチェックということで、それは別途作業として慎重な作業を行いました。
山花委員 慎重な作業をやった結果出てきたのが、火曜日の午後ですよね。火曜日の午後までチェックしなきゃいけないものを、何で金曜日に発表しちゃうんですか。
大林政府参考人 今の私どもの不手際について、先ほど申し上げたとおり、それはおわび申し上げなければならない。ただ、チェックした作業自体は、それは間違いはございませんけれども、それがおくれたということについては、先ほど申し上げたとおり、心からおわび申し上げます。
山花委員 いや、しかし、今の説明もずっと聞いていて、でも変ですよ。つまり、ずっとチェックしていたのは本当だ、間違いございませんと。私、チェックしちゃいけないなんということを言っているわけじゃないんですよ。
 ということは、今までの説明、ずっと聞いてくると、ずうっと点検している、まだ前に報告したのと違っていたところも出てきたので点検していたと。それが終わらない間に発表しちゃったという話じゃないですか。どうなっているんですか、法務省の役所の中のそういう記者会見のセットの仕方とか。普通は、そういうチェックが終わって、こういうものですということが確定できてから発表するものじゃないですか。
大林政府参考人 私の方の説明が不十分であればおわびしなきゃならないと思いますが、基本的に、今回、きょうも大臣の方から御報告しましたこの数字等については、それは確定した数字として御報告申し上げたものでございます。
 今のチェックというのは、これまで死亡帳の関係でいろいろな、今度の分類以外の分の内容も含まれておりまして、それを、いろいろな今度はセクションに分かれていますので、それも使ってチェックしたものでございます。
 しかしながら、そのチェックのために理事会への報告がおくれたということは、それはもう言いわけにすぎないことでございまして、それについてはおわびをしたい、こういうふうに思います。
山花委員 法務大臣、要するに、議会に対する報告がおくれたと言われていますけれども、以前、前任の矯正局長のときにもありました、大臣にも報告しなかったというケースがあって、名古屋の事件だけじゃなかったですよね。今までこんなケースがなかったから、大問題なんだということを認めていながら、八街の少年院のことだって東京新聞の記事で初めてごらんになったというようなこともありまして、今回のだって、それは役所と大臣とに比べれば若干距離はあるかもしれませんけれども、それにしたっておかしいですよね、こういうことは。感想ございませんか。
森山国務大臣 結果が出ましたら、できるだけ早く委員会にまず御報告するべきであったというふうに思いまして、それが何かの理由でおくれたということでございますと、それは本当に申しわけなかったことだと思います。
山花委員 先ほど官房長はああやって弁明はされましたけれども、この間の理事会のときのやりとりの受け取りだと、次官が勝手にやって私は知りませんでしたというふうに私は受けとめたんですよ。
 つまり、記者発表については、次官がセットしているものですと。官房長の責任でやったんじゃないですかと言ったら、そうではない、次官がやったんだと。これはどういうことだと言ったら、後で出しますというようなことなんで、大変私どもも、ほかの役所のときは、ちょっと事情が違って、いろいろこっちも言いたいことも言いますし、立場でいろいろ仕事しますから、けんかというとあれですけれども、比喩的に言えばけんかするときも、最低限の信頼関係というのは大抵あるんですよね。平たく言えば、役所に対して言っても、どうも隠しているかなという印象は受けることはあるけれども、大概、役所の方、うそはつかないですよ。つまり、何かこうでしょうと言うと、何かごにょごにょとなるから、何かこれはあるなと思うことはあるけれども、どうも法務省、今回のケースを見ていると、どうも説明がおかしかったりとか、非常にそういうことを感じますし、今回の件も非常に私は問題だと思うのですけれども。
 改めて、例えば、言いづらいですけれども、今回の件について、だれが責任者で、その責任者に対して何らかのはっきりしたけじめが必要だと私は思いますけれども、いかがでしょう。
森山国務大臣 手落ちがございましたことは大変申しわけなく、おわび申し上げます。
山花委員 法務大臣、人権をつかさどる大臣なので、私、手落ちという表現は余り好きではないのですけれども、落ち度があったとかそういう表現にちょっと改めていただきたいと思います。
森山国務大臣 落ち度がございましたことは申しわけなく、おわび申し上げます。
山花委員 ほかにも同僚の委員が今後、今後というか、この後控えていますので、この点についてはこれぐらいにしたいと思います。
 中間報告の中身について質問したいと思います。
 今回の中間報告で、暴行とか医療過誤の可能性があるということで十五件挙げられているのですけれども、これはどういう基準で選ばれたんでしょうか。
 つまり、今まで提出いただいている資料からすると、視察表とかいろいろ見ると、これはちょっとおかしいんじゃないかと思われるものも何件かありますし、つまり、この十五件以外でも、そういったものも、我々の印象からするとちょっと変じゃないかと思われるものもある。また一方で、今回出てきた十五件についての資料だけ見ると、これは何が問題なのか、自分もよくわからないものも、ちょっと具体的にどれとどれとは申しませんけれども、あるのですけれども、これはどういう基準で十五というのが、先ほど大臣からも説明はありましたけれども、この点について説明いただきたいと思います。
大林政府参考人 本件につきましては、死亡帳調査班において、死亡帳や身分帳、診療録、さらには検視結果や死体解剖所見が確認できた場合には、それらを精査し、被収容者の診断病名、既往歴の有無、内容、治療経過、死体の外傷の有無、内容、当該外傷の原因、革手錠使用の有無、その他制圧行為の有無、保護房収容の有無等を逐一確認し、その上で、必要に応じ医学的知見を求めたり関係者からのヒアリングを行い、被収容者の死亡が刑務官等の違法な暴行による疑いがないかどうかについて総合的に検討したものでございます。
 継続調査とした十五件は、現在までの調査においては、いまだ刑務官等による違法な暴行によって被収容者が死亡したものではないと断定するに至らなかった案件と、その調査の過程で行刑施設における医療行為や医療的対応の問題をさらに検討すべきと判断された案件でございます。
 具体的に申し上げますと、いまだ刑務官等の違法な暴行によって被収容者が死亡したものではないと断定するに至らなかった案件が五件、その調査の過程で行刑施設における医療行為や医療的対応の問題をさらに検討すべきとされた案件が十件でございます。
 ただ、先ほど大臣からも御報告申し上げたとおり、精力的に一応調査をしましたけれども、これは、いろいろと委員の先生方、あるいはこれからまたいろいろな方々から御指摘なり御指導もいただけるということで、一応の中間報告でございますので、十五件取り分けましたけれども、それが絶対であるということではなくて、柔軟に、さらに必要な調査を続けていきたい、こういうふうに考えております。
山花委員 先ほど大臣からの説明のときにも若干出ていたようですけれども、これは、恐らく千六百件あるものについて、すべてについて、例えば刑死とか以外について全部、関係当事者についてヒアリングを行ったりとか、そこまではやっていないと思います。
 まず書面である程度見て、これはということをやってから、どうもこれはおかしいぞという、おかしい疑いがあるぞというものについてやったんだと思うのですけれども、その書面については、さっき申し上げましたように、私、手元にあるものだけだと、何でこれがおかしいのかなというものも中にはないではないのですけれども、どういう書面を見て審査をしたんでしょうか。
大林政府参考人 調査資料といたしましては、死亡帳、被収容者身分帳簿、身分帳と呼ばれているものでございますが、診療録、死亡診断書、死体検案書、被収容者死亡報告、保護房収容書きとめ簿、戒具使用書きとめ簿等、行刑関係資料のほか、検視結果、司法解剖所見等を検察当局から確認し、調査資料といたしております。
山花委員 その十五件、せめて十五件について、今言われたものを資料として委員会に提出していただけないでしょうか。
大林政府参考人 もちろん、それは前向きに検討させていただきます。
山花委員 ぜひ、委員長、この点について資料要求をしたいと思いますので。
山本委員長 理事会でしかるべく検討いたします。
山花委員 それで、調査はまだ継続するということですけれども、この中の一つの事案についてお伺いしたいと思います。
 京都の舞鶴拘置支所が入っています。死亡帳の整理番号でいうと五百九十五番なんですけれども、この件についてなお調査を継続すると言っていますけれども、これは例えばこの件について申しますと、六時三十五分に、革手錠だけじゃないですね、両足首及び大腿部に捕縄を使用しています。つまり、革手錠だけじゃなくて、足まで縄で縛って、そして八時十分、わずか一時間ちょっとで亡くなっているような状態なんですけれども、これは明らかに行き過ぎた制圧だと思うんですけれども、何もこれから調査しなくても明らかにおかしなケースがあるじゃないですか。何で、何を調査継続するんですか。
大林政府参考人 御指摘の事案は、三十九歳の男性被収容者が死亡した事案でございます。今御指摘のとおり、被収容者については、死亡当日の保護房収容や革手錠、両足首への捕縄使用等の制圧行為が認められる事案でございます。しかしながら、行政解剖の結果におきましては、死因は食道静脈瘤破裂疑いによる窒息死とされて、保護房収容や革手錠の使用と被収容者死亡との間には因果関係はないと判断されております。
 このように、やや対立するような形になっていますので、いまだしかし、それながら、先生が御指摘のとおり、刑務官等による違法な暴行によって死亡したものではない、こういうふうに現段階では断定できない、そういうことで調査継続案件といたしたものでございます。
山花委員 終わります。
山本委員長 次に、石原健太郎君。
石原(健)委員 不明を恥じるという言葉がありますけれども、今回のこの事件に関して、私は本当に恥じておるところであります。
 と申しますのも、一番最初にこの委員会で名古屋の問題が取り上げられましたときに、私は、それはもうごく一部、名古屋だけの、特に刑務官としてふさわしくないような人がやったことなんだな、こんなふうに感じておったんですけれども、その後いろいろこの委員会でお聞きしたり、また、刑務所に行ってみたりしまして、ああ、名古屋だけでなくて、これは組織的、意図的な組織的ではなくても、相当刑務所全体に広まっている問題だなということがわかってきたわけであります。
 それで、きのうの菊田参考人のお話でも、七〇年代ぐらいまでは刑務所も平穏にやっておったようだけれども、ここ近年、刑務所でさまざまな人権を無視するようなことが行われておるというようなことも言っておられました。
 私自体びっくりしておるんですけれども、恐らく大臣も、増田副大臣、中野政務官も、私と近い、大臣は私よりずっと若いかもしれませんが、近い年齢の人は本当にびっくりされていると思うんですよね、こういう刑務所の問題については。まずそのことを申し上げたいと思います。
 今までにも御指摘がありましたけれども、今回の中間報告が、大臣の話では、委員会の参考に資するための調査だと言われている、それが委員会より先になぜ報道機関に急いで発表されなければならなかったのか、その辺の理由をお聞きしたいんです。不手際だったとか落ち度があったということは十分に聞いていますけれども、なぜ報道機関に急いで発表する必要があったんですか。
大林政府参考人 先ほどから申し上げておりますように、今回のはまだ暫定的な中間報告でございます。しかしながら、死亡帳等を御提出申し上げているとおり、本件は約千六百人の死亡者がいたということで国民からもやや疑惑を持たれている事案でございますし、私どもとしては、調査班において精力的に調査してまいりましたので、とりあえずの結果ということで公表したものでございます。
 しかしながら、その前において委員会の理事の方々にこの関係の御説明に上がるのが当然でしたのに、私どもの落ち度でこのような結果になりまして、非常に申しわけなく思っております。
石原(健)委員 これは、調査継続中なのが十五件だということで、ほかの案件については余り問題ないようなことで終わっているようですけれども、直接的に死んだときに暴行を加えられて亡くなったということでなくても、しょっちゅう革手錠をやったり保護房に押し込めたりして、だんだんに衰弱して亡くなっていったというケースだって幾らもあるんじゃないかという感じもするわけですよ。ですから、これは十五件だけに絞ってしまうんだということも、ちょっと私は不審に思うんですけれども。
 亡くなった方の平均年齢なんかを見ましても、六十過ぎという方も幾らかはいらっしゃいますが、四十歳、五十歳代の方も非常にたくさん亡くなっている。一般世間の死亡率なんかよりは刑務所内のああいう年代の方が亡くなる死亡率というのは随分高いんじゃないか、こう私は感じておりまして、死刑廃止だという声が一方でありながら、一方で死刑と同じような結果に至る人が大勢いるということは、甚だ遺憾なことだと思うんですよ。
 こういう現状というのは早急に改める必要もあるかと思うんですけれども、刑務官が一万数千人かおられて受刑者が六万何千人というと、法務省の矯正局長というのはその七万何千人かの人を指導する、最終的に面倒を見る立場にある人だと思うんですよね。
 ところが、お聞きしてみると、矯正局長というのは代々検事さんが就任しているということなんですけれども、検察庁の仕事と矯正局の仕事というのは相当な隔たりがあると思うんですよ。昔は、刑務所の目的は懲らしめのためだったかもしれないんですけれども、最近では、矯正という名前のとおり、これは人を立ち直らせるための機関だ。そうなると、やはり矯正局長というのは教育者とか、今の矯正局長さんも立派な方だとは思うんですけれども、検察の仕事と矯正の仕事は別だということを認識しなくちゃいけないんじゃないかなと思うんですけれども、その辺についてはどんなふうにお考えなんでしょうか。
大林政府参考人 矯正局の所掌事務の中には、犯罪人に対する刑及び勾留の執行、非行少年に係る少年院送致の保護処分及び少年鑑別所に送致する観護措置に関する事項や被収容者の処遇に関する事項等がありまして、これらの所掌事務の処理や関係法令等の立案を統括する矯正局長には専門的な法律知識と経験が要求されるものと考えられます。これらの事務はいずれも検察事務と密接不可分の関係にあることから、検察事務に精通した検事をこれらの事務を統括する矯正局長に任用することには相当な理由があるものと承知しております。
 御指摘のとおり、戦後の一時期、昭和二十七年ころに事務官が就任した例がありますが、その他については矯正局長は検事が従来就任しております。
石原(健)委員 今官房長が言われたような事務は、何も局長が最終的にあれしなくたって、局の次長か何かがそんな事務的なことはやればいいのであって、矯正という名前がつく限り、全体的な、総括的な流れのトップは、やはりそうした検察行政に通じているという人よりは、もっと教育とか宗教とか、そういうことにも幅広い知識を持った方がふさわしいんじゃないかと思いますので、大臣、今後はそうした点もお考えに入れていただけたらありがたいな、こう思うわけであります。
 それから、今までの審議とか、私ら名古屋刑務所に視察に行ったときは、一件だけのことで視察に行って、そのとき同僚の委員の方が名古屋の刑務所で、ほかにこういうことはないんですねと言ったら、ありませんなんという答弁で、その後またいろいろ事件がわかってきたというのが実態なんです。どうも法務省というのは、昔、小説とか映画なんかに深窓の令嬢なんという言葉がよく出てきましたけれども、法務省というのは深窓の人たちで、情報公開の時代にちょっといろいろ隠し過ぎるというか、密室性が強過ぎるんじゃないかと思うんですよ。
 裁判所なんかは、被告人が来たり調停の人がいたり、いろいろな人が出入りしますし、今度は弁護士会の審査会なんかには検察とか裁判官の人も入るようですけれども、どうも今回のこの調査チームを見ましても、この間発足したばかりの医療の調査チームを見ましても、みんな法務省の人だけで固めて調査しているんですよね。やはりもっと世間の人に公明性を感じさせるためには、公正さを感じさせるためには、もう少し外部の人をどんどん入れる必要があると思うんです。
 検察庁の仕事とか刑事局の仕事は、これは本当に密室性というか秘密性の強い職場だということはよく理解できるんですけれども、それ以外の矯正、一般的な法務行政なんというのは、何も検事さんだけで密室的に固めるんじゃなくて、もっとオープンにされていったらいいんじゃないか、こんなふうにも感じておるところであります。
 あと、また委員会でいろいろ申し上げさせていただけることもあるかと思いますけれども、きょうは私の感じているところを申し上げさせていただいて、終わります。
山本委員長 次に、木島日出夫君。
木島委員 ちょっと委員長、局長を外してください。呼んでないです。私は、局長を呼んでないです。大臣しか呼んでないです。全部人払いしてください。時間とめてください。
山本委員長 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
山本委員長 それでは、速記を起こしてください。
 では、木島君。
木島委員 日本共産党の木島日出夫です。
 きょうまた中間報告がありましたが、私は、名古屋で起きた三つの事件の真相の徹底解明なしに法務省は変わらないと思っておりますので、平成十五年三月三十一日に法務省が当国会に提出した行刑運営の実情に関する中間報告についてお聞きをいたします。
 この報告内容について、国会に対して、当委員会に対して、内容について最終の責任を負うのは法務大臣ですね。法務大臣。
森山国務大臣 これは、行刑運営に関する調査検討委員会という省内に設けましたところでつくりました中間報告でございまして、これのトップは事務次官ではございますけれども、省内のことでありますので、私の責任とおっしゃっていただいて結構です。
木島委員 そのことを前提にしてお聞きしますが、この報告書の十二ページをごらんください。上から九段目。「すなわち、同月」、これは平成十三年十二月のことです、「同月十五日早朝の名古屋地方検察庁への通報の時点から、受刑者Xの出血の発見状況について、同人が着用していた下着に出血が認められたとの客観的事実に反する事実が通報され、消防用ホースによる放水の事実は隠蔽され、また、肛門部の裂傷は、受刑者Xが自分で直腸を傷つけたものと推定されるとの誤った推定が伝えられている。」こういう報告であります。
 これは、どんな事実調査をしてこうなったんでしょうか。この事実をつかんだ根拠は何か。法務大臣、答弁してください。
森山国務大臣 これは、矯正局あるいは刑事局等の調査に基づいて書かれたものと理解しております。
木島委員 刑事局、矯正局はどんな調査をしたのか、報告を受けていますか。
森山国務大臣 詳細なところはわかりませんが、このような事実が述べられたわけでございます。
木島委員 そんな無責任な話ないじゃないか。質問を続けられないですよ、こんな無責任な大臣の答弁じゃ。どんな調査をした結果こういう記述になったのか、もう一回答弁してください。矯正局、刑事局がどんな調査の結果この報告になったのか。国会に対する、あなたが責任を負っている報告書ですよ。これが事実でなかったら国会をだましたことになるんですよ、あなたが。きちっと報告しなさい。今の答弁じゃ納得できない。質問を続けられません。
 委員長、大臣に答弁させてください。本当に大事なところなんだ、これは。こんな報告が我々にされたんだから。
山本委員長 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
山本委員長 速記を起こしてください。
 それでは、もう一度、森山法務大臣。
森山国務大臣 この件につきましては、捜査が行われたわけでございますので、捜査を通じて得られた、聞き取ったさまざまな情報、その他あらゆる情報を考えてこのような内容になったものと考えます。
 私は、だれがどのように、だれにどのように聞いたかというようなことはわかりませんし、具体的には、細かい点は承知しておりませんけれども、捜査によって得られた情報ではないかというふうに考えます。
木島委員 今の答弁が大変な問題があるんです。大臣は、再三この春から、捜査によって得られた情報を我々に報告している、捜査にはさわれないんだという答弁なんです。予算委員会でもそうです。
 そうじゃない調査はしていないんですか。捜査とは関係ない、現場の名古屋刑務所の刑務官、平成十三年十二月十四日にこのホース水による放水事件に直接関与したか、あるいはその直後に関与したか、そういう刑務官から、捜査に関係なく矯正局が調査をして、その調査結果をここに入れていますか。刑事局の筋じゃない、捜査の筋じゃない、名古屋地検の筋じゃない、矯正局が自分の部下である名古屋刑務所の刑務官から調査をして、その結果はこの報告書の中に入っていますか。
 後ろの二人も人払いしてください。委員長、要らぬ、あの後ろの二人は。大事なところだ、一番大事なところだ。あなたの答弁をとっているんだからね。
森山国務大臣 先ほど申し上げたように、刑事局だけではなくて、矯正局の調べたこと、承知したことも含まれているわけでございます。
木島委員 それじゃ、矯正局が自分の身内の矯正局の部下からどんな調査をして、その結果こういう報告になったのか、答弁してください。
森山国務大臣 細かい具体的な事実はよくわかりませんけれども、矯正局としては矯正局の立場から、自分の関係している職員、刑務官も含め、その人たちから事情を聞いて、収集した情報を出していると思います。
木島委員 では、言いましょう。
 国会の当委員会は、今月十四日、一昨日です、大変異例なことでありますが、現職の刑務官を参考人としてお呼びいたしました。平成十三年十二月十四日、このホース水放水致死事件に直接かかわった人物です。その参考人、三井さんといいます。ここで陳述しましたよ。自分は、平成十三年十二月十四日午後四時過ぎだ、その保護房に入った、保護房の片隅に、受刑者がはいていたと思われる血のついた下着とズボンを発見した、大事なものだというので、部下に保管を命じた。そこまでここで陳述しました。
 そしてさらに、そのような事実の、重大な事実について昨年秋以来、国会では再三にわたってこの名古屋事件の真相について法務大臣に質問をしておる、真相解明しておる、では法務省矯正局から、法務省当局から、三井刑務官は自分が体験した事実を聴取を受けていますかと質問したら、私の質問に対して重大な陳述が出ました。二回受けている、矯正局から受けている、一回目は平成十四年十月ぐらいだったと。ちょうど国会でこの問題の追及が始まって、法務大臣がうそついていたころじゃないですか。
 そして、その平成十四年十月ごろの事情聴取で、自分は、平成十三年十二月十四日のホース水放水の直後でしょう、午後四時過ぎと言っていますから、血のついた二つの、ズボン、下着を発見して保管を命じた、その事実を、矯正局にちゃんと真実を報告したとここで言ったんですよ。あなたが責任を持っているこの報告書と全く違うことじゃないですか。どうなっているんですか。答弁してください。
 後ろの二人、後ろの二人、帰りなさい。だめだよ、そんなの。大臣が責任を持っている報告書について聞いているんだから、だめだ。
山本委員長 組織の人間だからしようがないですよ。
木島委員 組織なんか関係ない。大臣の責任を追及しているんだよ。あなたは去年の参議院で答弁しているんだから、この問題を追及されて。
森山国務大臣 この中間報告をつくりますためには、いろいろな人の調査、情報をいただいてつくったものと思いますし、その中に、矯正局が刑務官その他の人々を調べてわかったことも入っているはずでございます。
 三井さんという方がここへ来られて参考人として証言されたのは、私も、全部ではありませんが、半分ぐらいビデオで拝見いたしました。そこで非常に、今先生が御指摘になったようなことを発言されたのを聞きました。私も気になりましたので、あの人の調査というか聞き取りはしたのかということを聞きましたが、それは二度ほど聞かせてもらった、ただそれは、その内容が、その問題ではなくて、革手錠の問題その他について聞いたのであるというような説明がそのときございまして、特にその血痕のあるシャツその他についての話は聞かなかったというふうに聞いたわけでございます。
 それは大変残念だった、もしそこまで聞けばなおはっきりわかったかもしれないなというふうに思ったのでございますが、これからは、この三井さんという方も含めたくさんの刑務官、かかわった刑務官が、弁護側の証人として恐らく公判に招致されるのではないかというふうに思われます。そうなりますと、その三井さんを、改めて来てもらって法務省から質問するというようなことは、いろいろな誤解を招くのではないかというふうに考えられますので、特にこの問題についての情報収集を改めてするということは考えていないという話でございました。
木島委員 大臣は、三井参考人の陳述は重大だと思った、そして、法務官僚に事実を確かめたと。
 三井参考人の陳述を直接ビデオか何かで見ていたんですか。
森山国務大臣 全部ではありませんが、半分ぐらい見ることができました。
木島委員 それで、事実を確かめたと。いつ、だれからですか。
森山国務大臣 だれに確かめたか、ちょっと、うっかりいたしまして忘れましたけれども……(木島委員「だめだ、これは。おとといの話だ。それは大臣、だめだよ。おとといの話だよ」と呼ぶ)いや、本当にすぐ……(木島委員「そんな無責任な話はないじゃないか、法務行政で。おとといの話だぞ」と呼ぶ)
 ちょっとお待ちくださいませ。考えさせてくださいませ。
木島委員 それじゃ、思い出してください、待っているから。時計をとめてください。おとといの話だ。物すごい大変なことだよ。おとといの話を忘れるような大臣は、やめたらいい。
 ちょっと時計とめてください。大事なところだ。法務行政の、大臣と局長との……(発言する者あり)
山本委員長 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
山本委員長 速記を起こしてください。
 それでは、森山法務大臣。
森山国務大臣 私の記憶では、多分この中間報告をまとめたグループの主たる一人であった秘書課長ではないかというふうに思います。
木島委員 平成十五年三月三十一日、行刑運営の実情に関する中間報告に構成メンバーの一覧表があります。秘書課長と今おっしゃいましたが、倉吉大臣官房秘書課長、彼から聞いたということですか。
森山国務大臣 そのような記憶でございます。
木島委員 何時ごろ、場所はどこでしょうか、おととい。
森山国務大臣 多分、その日の夕方ではなかったでしょうか。はっきり覚えておりませんが。
木島委員 そうすると、秘書課長から聞いた話によれば、刑務官三井は二度ほど事情聴取を受けた、しかし、事情聴取の内容は革手錠の問題であってホース水放水にかかわる問題ではなかったという報告を受けたんですね。違うじゃないですか、ここで三井参考人がしゃべったことと。
 血痕が付着したそのズボンを発見し保管を命じた、そうここで三井さんは陳述した。あなたはそれを見てびっくりして、倉吉大臣官房秘書課長に確認したら、確かに二度聴取をしているが、革手錠の問題だけだったという報告だった。全く違うじゃないですか。あなたはどっちが真実だと今考えているんですか。
 まあいいや。その質問の前に、三井さんがここで述べたことと違うじゃないか、そういう問い返しを倉吉秘書課長にしましたか、そのとき。
森山国務大臣 そういう表現ではなかったかもしれませんが、同様の意味のことを聞きました。
木島委員 それに対して、秘書課長はどう言っていましたか。
森山国務大臣 ですから、先ほど申し上げましたように、二度ほど聴取したんですけれども、そのテーマは革手錠の問題であったというふうに説明されたと思います。
木島委員 秘書課長は、自分が聴取したんじゃないでしょう。聴取したのは矯正局でしょう。又聞きでしょう。そんな又聞きをあなたは信じるんですか。
森山国務大臣 確かに、秘書課長自身が調べたのではないと思います。又聞きとおっしゃいますけれども、その責任者の一人として私に説明してもらいましたので、それを信用したわけでございます。
木島委員 しかし、大臣は、全部とは言わないまでも、一部、おとといの三井参考人の供述を聞いたと。その聞いた中には、彼が血のついたズボンと下着を発見して保管を命じたという事実も含まれているんでしょう。確認します。
森山国務大臣 その部分は拝見しました。
木島委員 三井参考人は、私が質問を重ねてしましたよ、あなたは真実をしゃべっているか、真実を矯正局に対して述べたかと。真実を述べたと言いましたよ、私の質問に対して。その部分は大臣はビデオを見ていない、私が質問していたところは見ていないですか。大事なところだから。
森山国務大臣 大変残念ながら、その部分は見ませんでした。
木島委員 時間ですから終わりますが、大事なところを見ておいてください。私のその質問に対して、三井参考人は真実を述べたと。私はこれを示して、あなたが矯正局に述べた真実と全く百八十度異なる報告が大臣から国会に出される、どう思うかと聞いたんですよ。意見は言いませんでした。口をつぐみました。
 質問を終わります。
山本委員長 次に、保坂展人君。
保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。
 大臣にまず伺いますが、今回、この国会で問題にされている行刑をめぐる問題で、そもそもこの死亡帳の問題というのは、国会に対して必要な情報は速やかにかつ正確に出すということで、これを指示を徹底されてきたかどうか、これだけ伺います。
森山国務大臣 そのとおり指示してまいりまして、努力してきたと思います。
保坂(展)委員 大臣のもとにこれは行っていますか、今、配付資料ですけれども。大臣、よろしいですか。
 実は、これはどういうものかといいますと、「矯正の現状」というのがありますね、そういう雑誌、雑誌というか、これを調べていて、こういう文書があるらしいと。行刑施設における医療体制の充実計画というのがあるというのがわかって、当然、法務省の矯正局医療分類に対して、三月十日ですよ、私が求めたのは。三月十日にこれを求めて、三回催促して初めて、きのう催促してようやく出たんです。きょうは何日でしょうかね。もう二カ月たっています。その間、我々は、何回この医療の問題を議論したでしょうか。
 中身を見てみますと、大変重要なことが書いてありますよ。ごらんいただきながら聞いていただきたいんですが。
 基本構想のところには、医療専門施設、医療重点施設については、総合病院や病院、診療所として、民間の医療機関と比べ遜色がないようなものに、重点的に人的、物的な整備を図ると。これは、十一年前に志したということは評価できますよね。
 しかし、その後を見てくださいよ。府中と名古屋は医療重点施設で、集禁対象となっています。一枚めくっていただくと二枚目、この集禁対象で、府中と名古屋は、精神疾患、覚せい剤の精神病の方が集められる施設として位置づけられています。
 三枚目を見てください。これは一応その計画表ですよね。上のところ、東京を見ると、東京管区で覚せい剤精神病と書かれているのは百三、これはすべからく府中へ、そして名古屋管区五十九人、これもすべからく名古屋刑務所へと、こういう計画ですよね、大臣。ちょっと大臣、認識、よろしいですか。上に書いてありますね、そういうふうに。
 大臣に伺いますが、私がなぜこれを請求したのかというのは、この名古屋の事件、府中の事件は、死亡帳を見ていても違うんですよ、ほかのところと。かねがね指摘しているとおり、覚せい剤やそれによる精神疾患の方が多いんじゃないか、それに対する医療手当てがないんじゃないかということを何回も指摘してきたんですが、こういう文書が、今初めてごらんになりましたか、国会に対しても大臣に対しても全然報告がない。これは一体どう思いますか。
森山国務大臣 初めて拝見いたしました。そして、これは多分、この題によりますと、医療体制充実計画の概要というふうになっておりますし、平成二年の作成のものというふうに記されております。
 ですから、その当時、そのようなことを考えて、一つの理想として描いたものではないかと思いますが、その後、この計画がうまくいかなかったのではないかというふうに想像しているところでございます。
保坂(展)委員 ちょっと委員長に発言を求めたいんですけれども、我々、これは、最初は野党側から求めていく中で資料が出てきた。そして、今の議論というのは、行刑全体を、監獄全体をどうするのかという大きな議論になっている。その中で医療の問題というのは非常に深い関心があるところで、国会での議論をしっかり足がついたものにするためには、こういった資料、これは三月十日から二カ月、三回催促してようやく出る。これはやはりすべからく、これは、出していただくことが受刑者あるいは刑務官それからこの国の制度そのものにも寄与するわけですから、しっかり御指示いただきたいと思います。
山本委員長 委員長といたしましても、さよう努力させていただきたいと思っております。
保坂(展)委員 矯正局長に伺います。
 物すごい量があるものとかだったらなかなか出ないんですよ。しかし、この三枚だけのものが、何回催促しても二カ月も出ない。それで、私、非常に悔しいのは、これまでの国会のこの法務委員会でさんざん議論しているわけですよ。こんな資料の束をいただいて、全部めくりながら、どうなんだろう、ああなんだろうと考える。そういう前に出してほしいですよ、こういうものはちゃんと。
 これだけ出たといったってわからないですよ。これはうまくいかなかったと言われるわけですから。では、どうなったのか、どの会議でどういう議論をして、どういうふうにしぼんでいったのか、それはやはり全部出してくださいよ。そうじゃないと、国会での議論、空転しますよ、これ。
横田政府参考人 ただいまの委員の御指摘のとおりに、これから努力いたします。
保坂(展)委員 局長に確認したいんですが、私が言っているのは、すべからくという、つまり、これは多分出しにくかったんだろうなと推測します、これは内容的に。なぜなら、いいことをうたったんだけれども、そうなっていないから。
 しかし、私は危惧するのは、この数の配分ですね。覚せい剤の疾患のある人たちは名古屋と府中へということの考え方が、やはり現場の、それこそその分類によって受刑者を振り分けていく、そこに反映されたんじゃないか。反映されたとしたら、今回の保護房の、亡くなったさまざまな問題、我々も府中刑務所に行っても、名古屋刑務所に行っても痛感するんです。施設、医療機器は結構立派なものが入っています。しかし、これ、医療と言えるんだろうかと議論してきました。
 ですから、これがどういう場で出て、どういう議論があって、その後、どういう会議があって、文書があったらどういう文書が出て、そしてなぜうまくいかなかったのかというのを、やはり隠さないでこれは出していただきたい。
横田政府参考人 お答えいたします。
 委員のおっしゃる趣旨はよくわかりますので、そのように検討して努力いたします。
保坂(展)委員 官房長に伺いますが、この報告が出ました。大変な労力をかけて、検事が五人、事務官の方が五人、そして医師が四名でやっているわけです。私も全部見ましたけれども、死亡帳を見るということは大変なことですよね、これは。そしてまた、それを専門的に全部裏まで見る。これも物すごい労力です。
 私、ちょっとここの位置づけをより今確かめておきたいんですけれども、千五百人見ると、当然ながら、私もこの調査班の目的と同様、暴行の有無、外形的な有形力行使があったかどうかということを軸に見ていきます、死因とか。しかし、副産物として、よく見れば見るほど、例えば病院に搬送されて四分後に死亡とかあるいは本当に末期の方が、いわゆるここでやっている医療の問題、副産物として見えるんですね。
 私、きのう聞いてびっくりしたのは、この外部医師というのは法医学の専門医だということで、少しこの委員会にいい話をしてもらえるのかな、例えば参考人ならですね。そうしたら、聞いたら二十六人しか見ていないというのですね。つまり、検事の方が事件性があるかどうかというのを全部はねて、これは調べてくださいというのだけ精査したということじゃないですか。
 せっかくこういう班をつくったのであれば、ここの、「なお、」と言ってちょろっと付言するということではなくて、少なくとも、このチーム、また別に矯正医療のPTも立ち上げていますよね。何か、幾つも分かれて核心がなくなるということがないように、千五百、六百見たという人たちが医療の問題で何を把握したのか、副産物としてですよ、それはやはりしっかりまとめていただきたい。そうしないと、やはり時間と労力は、もちろん事件の有無あるいは暴行の有無についても大事です。しかし、そこについてもしっかりした報告を求めたいんです。
大林政府参考人 今御指摘のとおり、暴行というものを中心にして調査したものでございますが、今おっしゃるような副産物といいますか、要するに、参考のものとして今後の矯正に役立つもの、あるいはさらに調査を要すべきものについては、当然その課題としております。
 ですから、今回、これは中間報告でございますが、最終報告にはそういうことも触れられるよう努力したい、こういうふうに考えております。
保坂(展)委員 ちょっと大臣に伺いますけれども、たくさんのプロジェクトができていくことの弊害というのもあるのですね。つまり、死亡帳を千五百人も精査するというのは大変な労力ですから、これは、そういう方は、ほかの、例えば今の、今度は医療の話に移っていくときに、貴重な情報を持っている、調査をしたということになりますよね。
 ですから、今回の死亡帳調査班の中に医師がいるわけですから、全部の記録というのはそれは大変かもしれません。しかし、少なくとも、あの死亡帳、一人一枚ですから、それは見ていただくぐらいのことはあってしかるべきじゃないか。いつ病気になって、いつ倒れて、いつ病院に行って、いつ亡くなったかというのは書かれていますから、一枚にすべて。我々議員に配られたものは黒く塗ってありますけれども。そのぐらいはこのチームにさせてください。医者が見ていないのですから。
森山国務大臣 死亡帳の調査につきましては、大変な作業で時間が限られておりましたので、応援を得まして大急ぎでやったものでございます。
 お医者さんについては、内部の人ではなくて、よそのお医者さんに力をかりたという状況でございますので、今おっしゃるようなことができるかどうか、ちょっとはっきりはわかりませんが、これから医療体制の整備ということは当然大事な課題でございますので、矯正局にできましたプロジェクトチームもございますし、そこで検討する間に、いろいろなそのような知恵をおかりしながらやっていくということは当然だと思っています。
保坂(展)委員 官房長に伺いますけれども、いろいろな形があるんですよね。一覧表というのもつくっていただきましたし、死亡帳の。ただ、その四人の法医学の方がいるんなら、四分割して見てもらうというのも一つの形ですよね。
 だから、何らかの形で、せっかくそういう外部の専門家がいるわけですから、調査のプロセスの中で、これは、深く全部メスを入れるということはできないにしても、トータルにどういう印象を持った、どういう問題点があったぐらいのことは、やはり出していただけないですか。それを、ちょっとしっかり求めたいと思いますね。
大林政府参考人 現状において、お医者さんに、知見を聞いている方は四名でございます。
 ただ、申し上げていますとおり、調査というのはなお続きます。ですから、当然、そのお医者さんの相手方も変わることもありますし、また、知見を求めるやり方もいろいろございまして、文書でという形がなかなか困難かなというふうに思います。
 ただ、委員御指摘なのは、医学的見地からの意見というのを重要視して、そういう報告の中に盛り込むべきだ、こういう御趣旨だと思いますので、その御趣旨に沿うような形になるべく努力したい、こういうふうに考えております。
保坂(展)委員 今回、大臣にさらに要求したいと思いますけれども、結局、いろいろ議論するんですけれども、我々きょう見たものを見れば、ああ、こういうのがあったかと思って議論するわけなんですが、それは実は役所の中のほんの一部でしかないんですよね、これは。
 それは、全部といったら段ボールということになるのかもしれませんけれども、それでは余りにも多くて見られない。しかし、必要なところを国会に対して、しっかりポイントをつかんで、こんな十年間でしたということを、矯正医療の計画は立てたけれどもどうしてうまくいかなかったのかということをきちっと出してもらえば、今のこういった議論も非常に意味あるものになってくるんですよ。何かそこが隔靴掻痒の感があるんですね。だから、しっかりそれは指示していただいて。
 それから、死亡帳もそんなに労力をかけて見ているんですから、その副産物としてかなりこれは医療の問題も嫌疑も感じたでしょうし、そういうところもしっかりトータルにやっていただきたい。
 まず、国会にもう少し、形式ではなくて、議論の流れを聞いて、この法務委員会の議論を聞いて対応していただくように強く指示してほしいと思います。
森山国務大臣 御趣旨を体して努力したいと思います。
保坂(展)委員 では、終わります。
     ――――◇―――――
山本委員長 次に、内閣提出、司法制度改革のための裁判所法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として司法制度改革推進本部事務局長山崎潮君、公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長楢崎憲安君、法務省大臣官房長大林宏君、大臣官房司法法制部長寺田逸郎君及び刑事局長樋渡利秋君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
山本委員長 次に、お諮りいたします。
 本日、最高裁判所事務総局中山総務局長及び大野刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
山本委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上田勇君。
上田(勇)委員 公明党の上田勇でございます。
 それでは、司法制度改革のための裁判所法等の一部を改正する法律案につきまして、何点かにわたりまして御質問させていただきます。法案の性格もございまして、若干細かい事務的なところに及ぶものが多いかというふうに思いますけれども、どうかよろしくお願いをいたします。
 それで、初めに、この法案の中で、簡易裁判所の事物管轄の変更につきましてお伺いをしたいというふうに思います。
 法案では、事物管轄の上限が、現行、昭和五十七年に改定されました九十万円から百四十万円に引き上げられております。この金額につきましては、簡裁の機能をもっと活用すべきではないかというような立場から、もっと大幅に引き上げるべきだというような意見もこの法案の立案段階でございましたし、また他方では、訴訟の目的の価額ではなくて、訴訟の難易度に着目してそういうような線引きをすべきじゃないかというような御意見もあったというふうに承知をしております。
 結論としてこの上限が百四十万円となったわけでございますけれども、その理由またその百四十万円の根拠につきまして、御見解をお伺いしたいというふうに思います。
山崎政府参考人 ただいま委員御指摘のとおり、この問題につきましては、立案過程からさまざまな御意見があったということは我々も承知しているところでございます。
 私どもが考えましたその要点について申し上げたいというふうに思います。
 簡易裁判所の管轄の拡大でございますけれども、軽微な事件を簡易迅速に解決するということをその目的としまして、また、国民により身近であるという簡易裁判所の特質を十分に生かし、裁判所へのアクセスを容易にする、こういう観点から、簡易裁判所の事物管轄の上限が現在九十万円でございますが、これを、九十万円に引き上げられました昭和五十七年以降の各種の経済指標がございますけれども、その動向等を考慮いたしまして百四十万円に引き上げたということでございます。
 具体的には、司法制度全体の中で簡易裁判所の位置づけあるいは簡易裁判所の特質というものをまず考えなければならないだろう。これは、第一審の裁判の中の区分の問題であるという位置づけである。それから、やはり簡易な手続で裁判を行えるという特質を持っている。それから、それを担当する裁判官も、必ずしも司法試験に合格した者ではなくても行うというような特質を持っているわけでございます。また、簡易裁判所と地方裁判所の機能分担のあり方というものもあるわけでございまして、やはり軽微な、簡易な事件を迅速に行う、こういうような機能を持っているということでございます。
 それからまた、管轄拡大による簡易裁判所の事件の質的変化ということも考えなければならないわけでございまして、例えば、簡易裁判所の事件は金銭債権が大部分になるわけでございますけれども、その中でも、立てかえ金とか求償金とか、あるいは貸し金とか、定型的にその判断ができるようなもの、これがかなり多いわけでございまして、そういうものを簡易迅速に、こういうような性格を持っております。
 それから、各種経済指標の動向、こういうものを考えますと、この各種の指標は幾つもございまして、一番下は一一三・八%等から一番上は一八四・七%等というところまでございますけれども、この辺の動向も勘案いたしまして、百四十万円という限度であれば、簡易裁判所の性格を変えずに、それからその範囲で国民のアクセスが容易になるということから、この線を定めたということでございます。
上田(勇)委員 この上限が引き上げられますと、これまで地裁で扱っていた訴訟の中の相当な部分が今度は簡裁に持ち込まれるというようなことも予想されます。
 これは、ちょうど調査室でまとめていただいた資料の中を見てみましても、これは訴額区分が百四十万じゃなくて百五十万のところに区切られてはいるんですが、これでちょっと見てみますと、平成九年の地裁の既済事件でも、訴額が百五十万円以下のもので大体全体の四分の一ぐらいの事件数を占めております。ということは、やはりこれからこの上限が引き上げられたことによりまして、地裁で対応していたものが、相当な部分が簡裁で取り扱われるようになるのではないかというふうに思うんです。
 簡裁における受件数の増大に十分に対応できるような裁判所の人的、物的基盤の拡充、これが必要だろうというふうに思っておりますが、現状で本当に果たして対応できるのかどうか、この拡充が必要だろうというふうに思っておりますけれども、それについての御見解を伺いたいというふうに思います。
中山最高裁判所長官代理者 ただいま委員御指摘がありましたとおり、地裁の事件の相当部分が簡裁に移行する、基本的にはそれは事件の移動でございますので、地裁の方から適切に人的体制をシフトするということによって対応はできるというふうに考えております。
 ただ、このように簡易裁判所の使い勝手がよくなるということになりますと、当然のことながら、事件の掘り起こしということも今後は出てこようかと思っておりますので、そのあたりも動向を見まして、さらに適切な処理ができるような体制を組んでまいりたいと考えているところであります。
上田(勇)委員 今御答弁いただいたように、今あるそういう資源の中でやりくりするというのも重要だというふうに思いますけれども、今最後の答弁にもおっしゃったように、やはりこれだけ使い勝手がよくなってくればトータルの部分の拡充というのが必要になってくるんだろうというふうに思いますので、それは裁判所また法務省にあってもぜひ取り組んでいただきたいというふうに思うわけでございます。
 その中で、不動産訴訟についてちょっとお伺いしたいんですが、不動産訴訟については法律関係が複雑になっている場合が多いことから、たとえ訴額が少額であったとしても地裁で審理する方が適当な場合が多いということも言われております。現在の法律でも、不動産訴訟につきましては、訴訟の目的の価額にかかわらず地裁にも第一審の管轄があるということになっておりますし、また、簡裁においては、相当と認められるときには、申し立てによりまたは職権で訴訟を地裁に移送することができるということにもなっております。
 こうした規定というのは、今回の事物管轄の範囲が変更になったとしても現行どおりであるというふうに理解してよろしいでしょうか。確認のためにお願いしたいというふうに思います。
山崎政府参考人 ただいま御指摘の不動産の競合管轄の点、それから移送制度の点、この点については現行法どおりでございまして、全くこの点は改正はしていないということでございます。
上田(勇)委員 今申し上げましたような不動産訴訟についてのいろいろな制度というのは、必ずしも十分にその趣旨や内容が知られていないんではないかというふうにも感じます。
 それで、やはりこれは、裁判を迅速、そして適正に行うという意味におきましては、この不動産訴訟については、地裁と簡裁の競合管轄のことや移送のことについて十分国民にも知ってもらうということが重要ではないかというふうに考えておりますけれども、その御見解を伺いたいというふうに思います。
山崎政府参考人 確かに、今回、事物管轄、上がりますけれども、やはり不動産訴訟等に関しましては難しいものを含んだものが多いわけでございますので、そういうことになりましても、同様の制度があるということは周知徹底をする必要があるだろうと思います。
 それから、仮に簡易裁判所に提起をしたという場合にも、移送という制度、これを利用することができるということもきちっと周知徹底をして、国民がきちっと判断できるような、そういうような体制をつくり上げていく必要があろうかと思います。
 それぞれの関係する機関に、それをお願いしたいというふうに思っております。
上田(勇)委員 この周知徹底につきまして、これは、実際に今、実務を扱うのは裁判所でございますし、実際に訴訟を起こす人間がまず行くのは裁判所でありますので、裁判所においてこうした、今申し上げましたようなことの周知徹底に努めていただきたいというふうに思うわけでありますけれども、どのような方針でお考えか、お伺いしたいと思います。
中山最高裁判所長官代理者 不動産訴訟につきましては、かなり複雑なものが多いということは委員御指摘のとおりでございます。
 現在、例えば九十万円以下の不動産訴訟、全体として一万六千五百件ぐらいございますが、そのうち一万一千五百件近く、約七割が地裁を利用しているということでありまして、現在でもかなりそのあたりの振り分けが相当程度よくなされているのかなというふうに思っております。
 今回、簡裁の方にこういうことで持ち込まれるということになりますと、すべてが持ち込まれるみたいなことになりますと、簡裁の特質、機能というものを損ないかねないということになりますので、窓口できちんとそのあたりの説明を十分したいというふうに思っています。
 ただ、それが裁判の拒否というふうに受け取られるようなことがあってはならない、これは確かでありますので、裁判所としましては、法務省を初めとして関係機関の方に特にそういう周知方についての御努力をお願いしたいというふうにも思っているところでございます。
上田(勇)委員 今、政府、それから裁判所の方からもお話がありましたけれども、要は、その裁判をどこで取り扱うのが一番迅速に、そして適正に行えるかということだろうというふうに思います。
 これは、では訴えを起こす側からすると、特にこういう少額の場合には本人が行うような場合も多いかというふうに思いますので、なかなかその辺が、十分承知した上で選択をしているというような場合でないこともあるんじゃないかというふうに思いますので、ぜひそういった、どういうふうにやれば利用する側、訴えを起こす側にとって一番早く、そして適切な判断が出るのかというようなことについて、よく相談に乗っていただいて、周知をしていただきたいというふうに思いますので、ぜひよろしくお願いをいたします。
 次に、この法案の中で、弁護士資格を認める範囲というのを、いろいろな資格、現に資格を持っている方々に拡大をいたしております。これについては、この法案の審議、先日の本会議の審議などでもいろいろとこの問題について取り扱われたわけでありますけれども、この法案では、司法試験に合格後、企業法務などに七年以上実務に従事をした者については、司法修習を受けなくても、一定の研修を受ければ弁護士資格を認めるということになっております。多様な方々に弁護士、法曹に入ってもらうという意味において、また、企業法務とかの経験が非常に貴重であるというようなことはもうそのとおりであろうというふうに思いますので、こうしたことについてはよく理解できるところでございます。
 また、この法案ではさらに、司法試験に合格している国会議員あるいは特任検事については、五年以上の経験があれば、司法修習も研修も免除ということになっております。これについていろいろな議論があるところでございますが、確かに試験には合格をしているわけでございます。そういう意味では、そういう法律に対する知識について、能力については十分なものが担保されているんだろうというふうに思いますし、また、それぞれ重要な立場で、責任のある仕事でありますので、こうした規定が設けられた趣旨については十分理解できるところではございますけれども。
 ただ、これに対する批判の中では、特任検事、それは検事としての仕事というのは普通の検事の方と同じ立場で仕事をしているわけでありますので、それは十分能力は認めるところでございますけれども、ただ、今度弁護士という仕事になりますと、民事のこともある、そういったことについて、果たして必ずしも十分な経験や知見があるのかというようなことが提起をされているわけでありますし、また、国会議員の場合でも、非常にこれは幅広い経験をするわけでありますので、それについて問題があるということはないかとは思いますが、ただやはり、訴訟実務という意味からは、経験からはしばらく離れているというようなことなんだろうというふうに思います。
 そういうことを考えますと、もちろん実務経験、実社会での経験が余りない合格者と同じような司法修習が必要だということではないというふうには思いますけれども、そういうような不足している部分を補うような短期間でも一定の研修が必要なんではないかというふうに思いますけれども、そういったことについてどのようにお考えか、お伺いしたいというふうに思います。
山崎政府参考人 ただいまの点で、まず企業法務等の経験者とそれから国会議員及び特任検事の経験者、これで短期の研修でございますけれども、これがあるかないか、それから年数も若干違っているということでございますが、まずその区分けの理由を若干説明させていただきたいと思います。
 まず、企業法務等の担当者あるいは公務員でございますけれども、これについて、短期ではございますけれども、研修の修了を要件としているという理由でございますけれども、この方々の業務内容、これは相当程度多様であるということで、定型性がかなりないところもございます。それから、経験している分野が、特定の分野においては高度の専門性を有しているかもしれませんけれども、一般的に広い分野についての高度の専門性を有しているかどうかという点も、必ずしもそうではない場合があり得る。それから、やはり、その専門性の程度についても、業務内容に相当の多様性がございますので、個人的な差も考えられるということから、その短期の研修を通じまして実務経験に関するバランスとか個人的な差を補完する。こういうことから研修をしていただこうということでございます。
 これに対しまして国会議員でございますけれども、立法府の立法事務、これを中核として幅広い分野について高度の専門的知識、能力を必要とする法律実務に携わっていると言うことができるわけでございます。その上で、その職務は定型性を持っている、立法事務というふうに特化できる定型性を持っているわけでございます。そういう点で、現行法で衆参両議院の法制局の参事あるいは内閣法制局の参事官につきましても五年経験をすると弁護士資格があるということとの並びで、同じに考えたわけでございます。
 それから、特任検事につきましては、法曹資格を有する検事と全く同等の権限を有しておりまして、任命につきましても、副検事としての在職経験に加えて、政令で定める試験に合格するということを要求されておりまして、任命後も司法修習を経ました検事と同等の法廷実務等をやっているわけでございまして、その職務や研修を経て、的確に能力の向上が図られているということでございます。このような特任検事は、司法修習を終えた者と同等の法律専門家、実務家としての実質を有していると考えられることから、短期の修習も不要であると考えたわけでございます。
 このようなことから、その二つの、国会議員と特任検事につきましては、必ずしも事前の研修を要件としないということで法案を提出させていただきました。
 ただ、この法案を提出する際、その後も含めまして、さまざまな御議論があるということは私どもも承知しております。従来の考え方というよりも、やはり専門的な訴訟実務にかかわる弁護士という仕事をする、そのためには、短期でもいいから、弁護士の仕事とはどういうものか、そういうことをやはり経験しておく必要があるのではないか、勉強しておく必要があるのではないかという御議論があることも私ども承知しているところでございます。これは従来の考え方とはまた別の考え方に基づくのであろうというふうに思われますけれども、ただいま委員の御指摘、こういうものを含めまして、今後の御審議を謙虚に承ってまいりたいというふうに考えております。
上田(勇)委員 今答弁の中でも、今の弁護士法でも内閣法制局参事官などでも五年以上の経験があればそうした司法修習が免除になっているというお話もあったんですが、やはりこれも、先ほど申し上げたのと同じ理由を考えれば、一定の研修といったものを、その資格を認める場合の要件といったこともやはり考えていかなければいけないんだろうというふうに思います。
 私は別に、今出てきた企業法務を長年やられていた方だとか特任検事や国会議員、また内閣法制局参事官の方などに能力的に問題があるというような話をしているわけではなくて、一つには、研修というのは足らざる部分を補うという趣旨でしょうから、これはやはり、今までの経験の中で不足しているようなところはしっかりと集中的に補っていただくような研修をしてもらう。
 そしてまた、今回法案の中でも、お手盛りではないかというようないろいろな批判もありました。そういった批判についても、やはりしっかりと制度的にそういうのを担保しているんだというようなこと、無用な批判をなくすという意味からも、そういったことについてはぜひ考えていただきたいというふうに思うわけでございます。
 そういう意味で、もちろんそれぞれの立場で、試験にも合格し、仕事をしてきているわけですので、本当に短期間、集中的なものでいいんだろうというふうに思いますので、そういったこともぜひ御検討いただきたいと思うわけでございます。
 次に、この弁護士資格のことで問題になるのが、一つは、現在の弁護士法でも、法学関係の大学教授、助教授については、五年以上の経験があれば試験なしで弁護士資格が認められるということになっております。これについても、今これだけ司法試験が非常に難しい、難関だと言われている。大学の教授や助教授の皆さんが能力がないとか見識がないということを言うつもりはございませんけれども、果たしてそれだけの条件が、本当に司法試験に合格し、司法修習を受けたという要件に相当するものなんだろうかというふうに考えると、もう少しここら辺も、何かそれを検証するようなことも含めて考える必要があるんではないかというふうに思います。
 見直しについて御検討いただければというふうに思いますが、お考えを伺いたいと思います。
山崎政府参考人 ただいま委員から二つの問題が問われたというふうに思っております。
 まず、先ほど申し上げましたような、現在、修習を経ないで資格を得ている内閣法制局あるいは衆参両議院の参事官、参事、この辺のところについても、短期でも研修を設けるべきではないかという御指摘もございました。
 これにつきましては、まだ私どもの案といたしましてはそこまで踏み切っておらないわけでございますが、先ほどのように、いろいろ御議論がございました。もしその御議論をとるということになれば、現在の制度との整合性という問題は出てくるだろうというふうに思われるわけでございます。そうなれば、我々としても、今後の改正を考えていかざるを得ないということになろうかと思います。
 それからもう一つ、大学の教授の問題でございますけれども、これも、今回、法案を練り上げる途中の段階でもさまざまな御議論がございました。
 今回の国会議員と特任検事で考えますと、国会議員は司法試験に合格しているではないか、実務はやっていないかもしれない、それから、特任検事は司法試験は受かっていない、しかしかなり難しい試験を受かっている、実務はやっているではないか、どっちかはやっているではないかということでございましたけれども、そのアナロジーからいくと、大学教授については、司法試験も受かっていなければ実務もやっていないではないかという御批判も大分ございました。
 私どもとしましては、今回は、国会議員それから特任検事、企業法務と公務員、この辺のところについて御承認をいただくということになりますけれども、今後、いろいろ提起された問題についてはやはりきちっと対応をしていかざるを得ないというふうに思っておりまして、この弁護士法を所管いたします法務省とも連携をいたしまして適切に対処をしていきたいというふうに考えております。
上田(勇)委員 次に、この法案の中で外国法事務弁護士によります日本の弁護士の単独雇用が可能となるような改正が行われておりますが、そのことについてちょっとお伺いしたいんです。
 法案の立案段階でこういう疑問をいろいろなところから私も伺いました。それは、その外国法事務弁護士が、例えば経験の余り長くない日本の弁護士を雇用した場合などで、法律で外弁に認めれられていない法律事務についてもそういう雇用関係を通じた命令関係を通じて事実上は介入、関与することになるのではないか、だから、雇用関係というのを認めることは、そういうような法律で禁止している行為を事実上なし崩しにするから認めるべきではないというような批判が、そういうような疑問が提起されました。
 ただ、私は、幾ら経験が浅いといってもやはり弁護士さんは、先ほどからいろいろと議論にありますけれども、司法試験にも合格をされているわけでございますし司法修習も受けている、そういう意味では立派な見識の持ち主であるというふうに評価できるのだと思いますし、この法案でも第四十九条にですか、そういうようなことについては明記をされているわけでありますので、やはりこれはみずからの責任において法律に違反しないようにやっていかなければいけないということだろうと思っております。
 たとえ雇用主の命令があったとしても、やはり法律に違反をするような行為というのは、そういう意味で、社会的に認知されている資格としての弁護士資格を持っている人であれば、それはみずからの責任において法律を守っていかなければいけないことだろうというふうに思っておりまして、雇用の形態自体を制限するというのは、若干議論としては稚拙なのかなというような感じを受けてはおります。
 ただ、随分この問題については各方面からも懸念が表明されたわけでございますけれども、そういうようなことで、実際は、外弁の方々は日本の法律についての法律事務は行えないというのが法律で制限されているんですけれども、事実上そこに関与する、介入してくるというようなことになるんではないかというような懸念に対して、政府としてどのようにお考えか、御見解を伺いたいというふうに思います。
山崎政府参考人 いわゆる外弁法をつくりました折に雇用を禁止したというのは、確かに、外弁が日本の弁護士を支配して、その権限外のことを行うんではないか、こういうことを事前に禁止するという趣旨からつくられたと思います。ただ、その雇用の形態というのは認めているわけではございませんけれども、今、特定共同事業という対応で、一緒にパートナーを組むことを認めているわけでございますし、またそれ以外にも、外弁が自分で行動した場合に自分の権限外の行為をするということになれば、懲戒の対象になったり罰則の対象になるわけでございますが、この制定以来十五年余り経過しているわけでございますが、一人でいろいろ権限を逸脱したという者もございませんし、それから、では、パートナーを組んでいる関係でもいろいろ逸脱行為があったかということ、これも一件もない。こういうような実績がありまして、当時考えられていたようなおそれというのはなくなってきているんではないかと。
 それならば、事前にいろいろなものを規制するよりも、組むことに関しては世の中のニーズがございますのでオープンにいたしまして、その上で、事後に問題が起こればそれを厳しく罰していく、事後チェックをするという形で十分対応できるんではないかと考えたことからこのような案になったということを御理解賜りたいと思います。
上田(勇)委員 以上で終わらせていただきます。
山本委員長 次に、山内功君。
山内(功)委員 民主党の山内功でございます。
 まず最初に、各論に入る前に、なぜこのように幾つもの法律の一部改正法案を一括したオムニバス方式をとったのか。例えば、一部について反対したいと思って反対しようとしても、ほかの部分について賛成する場合に、結局は反対に回らざるを得ない法案になるわけで、一括の法律の出し方はおかしいのではないんですか。
山崎政府参考人 ただいまオムニバス方式と言われましたけれども、それは必ずしも当たっているのかどうか、私はちょっとそこは異論はございますけれども。
 この法案による改正でございますけれども、司法制度改革推進法に基づきまして、その推進計画、こういうものに従いまして行っているわけでございまして、司法を国民に身近なものにする、こういうことを目指してやっておりまして、いわゆる国民に利用しやすい司法の実現ということでございまして、司法制度に対する国民の多様かつ広範な要請にこたえようとするものでございます。
 全体がそういう趣旨で今回提案をさせていただいているということでございまして、法律案に盛られました政策は、そういう意味では統一的なものである、その趣旨、目的を同じくするものであるというふうに考えたわけでございまして、そこで、このような一括の形式をとりまして、総合的な見地から審議をお願いしたいと考えたわけでございます。今までにも、幾つか一括した法律というのは例もございます。そういうものに倣ったということでございます。
山内(功)委員 もしそういう配慮で出すんだとしたら、では、迅速化法も民事訴訟法改正も人事訴訟法改正も仲裁法も、とにかくそういう裁判の迅速、充実化を図るための法案だったら、全部一括法で出せばいいじゃないですか。
山崎政府参考人 私どもといたしまして、本部から提案するもの、法務省はちょっと別として、私どものところは、大きく分けて四本お願いをしているわけでございます。
 本来は、今御指摘があったように、全部一括して出したかったんです。ただ、新しい新法でございますね、例えば公務員をロースクールに派遣する法律それから裁判の迅速化法、仲裁法、これは、新法は一緒にすることができないというルールがございます。ですから、そこはやむを得ず新法は独立で三本出させていただいたということで、その他は一括した、こういうことでございます。
山内(功)委員 各論が物すごく問題点があるので入らざるを得ないんですけれども、私は、今後もこういうような法案提出のされ方がされるというのは抗議をしておきたいと思っています。
 簡裁の事物管轄の見直しの問題についてなんですけれども、九十万円から百四十万円に引き上げるその根拠をまず伺いたいと思います。
山崎政府参考人 その根拠でございますけれども、まず、事件は時代とともに、経済的な状況によっては、例えば、当時九十万円の価値があったものが、時代とともにその価格が上昇していきますと、それが百五十万だとか百四十万だとか、そういう価格に相当するものになってくる。そうすると、本来簡易裁判所で行われていた事件、これが地方裁判所で行われるということになるわけでございます。
 そういう点を考えまして、本来的に簡易裁判所でやるような事件、こういうものについては簡易裁判所の方で審理をした方がいいのではないかということを考えたときに、いろいろな経済状況の変動等を考えて、そこの一審の仕切りをどういうふうに考えていくかということでございます。
 その点で一つその根拠になりますのが、各種の経済指標の変動でございます。これについてはさまざまなものがございますけれども、少なくともそういうような範囲内で行わないと、物価のスライド等、もともと簡易裁判所でやる事件が地方裁判所でやっているという形になりますので、まず、そこの範囲が画されるだろうというふうに思います。
 そういう中で、それでは、簡易裁判所と地方裁判所でどういうすみ分けをするのかという問題になるわけでございます。
 まず、一つ考えられるのは、国民が身近に裁判所にアクセスできるという問題がございますので、そこはある程度考えなきゃいけないということになりますが、こればかりを考えますと、今度、上がることによって事件の質が変わってしまうという問題もございます。簡易裁判所は、簡易な事件を速やかに迅速に行うという性格のものでございますので、そこの性格が変わるようなところになってはその機能をしないということで、おのずとその線が画されるということでございます。
 そういうようなことを考えまして、経済指標等を総合考え、かつ性格が変わらない、迅速に行えるという点を考えたときに、百四十万円が相当であるというふうに判断したわけでございます。
山内(功)委員 昭和二十二年から、二十六年に事物管轄が三万円となって、次に二十九年に十万円、四十五年に三十万円、昭和五十七年に九十万円、そして昭和でいえば七十八年に百四十万となるとするならば、例えば三年で事物管轄が変わったり、今回もし法案が通るとすれば二十一年という間隔があくわけですけれども、これは余りにも何か統一がとれていない。
 つまり、例えば五年とか十年で見直しをしていくとか、それから先ほど言われたように、どれぐらいの金額の訴額の事件が地方裁判所に行って、簡易裁判所に行くべきなのかということを判断して考えるべきだと言われるんだけれども、それは、例えば、事件の数を五〇%と五〇%にするのかとか、その年限ごとに見直すとか、事件数の割合をどう考えるのかということについては、何か基準を持っているんですか。
山崎政府参考人 ただいま御指摘のように、前回の事物管轄の引き上げから大分年数がたっていることは間違いがございません。
 その間、その前の改正も含めまして、必ずしも一定の法則があるということではないということでございますけれども、これはやはり経済情勢、経済動向がどういうふうに変わっていくか、それから裁判、事件の質等がどういうふうに変わっていくか、その辺のところの動向を見ないとなかなか一律には決めがたいものでございまして、例えば五〇%とかそういうふうに決めたって、それでは、その五〇%の中に相当難しい事件が含まれてしまうというような事件動向にある場合には、やはり相当ではないということになるわけでございまして、そういう関係から、一律に数量をもったり数値をもって決めていくことがなかなか難しいということを御理解賜りたいと思います。
山内(功)委員 例えば不動産訴訟は、訴額が百四十万円以下であっても相当に複雑な事案があると思うのですけれども、そうした事件について地裁と簡裁の重複管轄を認めているわけですけれども、その選択を国民の側に任せるということは酷ではないんでしょうか。
山崎政府参考人 実は、この制度は現在もあるわけでございまして、現在は九十万円のところで選択をするということになるのかもしれませんけれども、これが百四十万になるわけですけれども、その選択をするという意味では変わっていないわけでございます。
 ですから、今それが酷だとおっしゃると、現在も酷だということになってしまうわけでございますけれども、私は、そこはまず法律家等がおられますし、それからいろいろ法律相談もございます。それから裁判所等も、それぞれ関係機関含めて、そこのところの周知徹底ということ、これがまず必要であろうというふうに思います。現在でもいろいろ行われていると思いますけれども、今後もきちっと行わなければならないというふうに思います。
 現在、大ざっぱな数字でございますけれども、九十万円以下の不動産訴訟で、七〇%は地方裁判所の方に提起がされて、三〇%が簡易裁判所の方に提起がされているという実情にあるようでございまして、やはり七割の方はきちっと選択をされているということだろうと思います。仮に三割の方が簡易裁判所を選択されて、これではちょっと難しいということになれば、これは移送の制度がございまして、特に不動産の場合は、被告が主張すればそのまま地方裁判所に行くということにもなりますし、原被告が合意すれば地方裁判所、あるいは裁判所の裁量で行くというものもあるわけでございまして、そういう点で是正をきちっとしていただくということになろうかと思います。
山内(功)委員 今、複雑な事件について簡裁から地裁に移送する制度があるということですけれども、その規定を適切に活用することがやはり必要だと思うんですけれども、この点の運用などを含めて、最高裁、どのように考えたらいいんでしょうか。
中山最高裁判所長官代理者 できますれば最初の提訴の段階で適切な振り分けがなされることが一番望ましいというふうに考えておりますが、簡裁が簡易な手続で迅速に事件を処理するというその特質、機能というものを十分に発揮するためには、簡裁においてこれは手に余る、事件が複雑であるというふうになりましたときに、裁判官においてそういった裁量移送の制度を適切にまた使っていくということを心がけていかなければならないというふうに思っています。
山内(功)委員 簡易裁判所の事物管轄の引き上げや民訴法の改正によって、少額訴訟の対象事件の額の引き上げによって、簡裁の事件数はやはり相当増加すると思うんですけれども、これに見合う簡易裁判所の体制整備は十分に行われるのでしょうか。
中山最高裁判所長官代理者 基本は、現在地裁に提訴されている事件が簡裁に提訴されるということになる、そういった構造になるわけでございますから、第一次的には、裁判所の現在の人的体制、そこから事件に見合うものを適切にシフトしていくというのが中心になろうかと思います。
 ただ、先ほども申し上げましたけれども、使い勝手がよい簡易裁判所ということにますますなってきましょうから、そうなれば事件の掘り起こしというものは進むだろうと思います。そういったところの動向を見ながら、適切な体制を今後とも築くように努力してまいりたいと考えています。
山内(功)委員 私は、先ほど事務局長が言うように、重複管轄の場合に、例えば提訴の段階で専門家にも聞くこともできるんだしというような話もあったけれども、一般の国民が専門家に相談をするというのは義務ではないわけで、つまり、簡易裁判所を簡易に利用するという一般国民というのはこれからもどんどんふえていくと思うんですね。
 だから、専門的知識を持たない、余り持っていない国民が例えば簡易裁判所を選んだというような場合には、私は、確実に簡易裁判所の事件というのはふえると思うし、本当に地裁で厳格な証拠調べが必要だなと思われる事件でも、たとえ貸し金訴訟であっても、高額かつ複雑な事件で証拠調べも必要だと思われる事件であっても、簡易裁判所に持ってこられることもこれからもふえてくるんじゃないかと思うんですよ。
 しかし、昭和六十二年の改正で簡易裁判所を、特に地方の簡易裁判所を百三十五庁も廃止された。だから、簡易裁判所を手軽に利用してもらおうという法務省や推進本部の姿勢と、実際に今まで行われた法務行政というのはちょっと違うんじゃないかと私は思うんですけれども、この簡裁の例えば増設について、何か考えは持っておられるんですか。
中山最高裁判所長官代理者 裁判所の配置につきましては、平成十三年六月に取りまとめられました司法制度改革審議会の意見書でも、裁判所の利便性を確保するという見地から、人口、交通事情、事件数等を考慮しつつ、不断の見直しを加えていくべきである、こういうふうに提言されているところであります。
 今委員からも御指摘ありましたように、昭和六十二年に、当時の独立簡易裁判所につきまして、事件数あるいは隣接庁までの交通所要時間を基本的な指標とし、町田簡裁の新設を含めて簡易裁判所の配置の見直しを行ったところでありますけれども、これは往時、区裁判所として置かれていたところと事情がもう大きく異なっているというところを踏まえてのものでございます。現在も、その改正後に、基本的な状況の変化はないというふうに思っております。
 現在、例えば独立の簡易裁判所、百八十五庁ございますけれども、現実の事件数がどの程度あるかというところを見ますと、民事通常訴訟の一年間の新受件数が十二件以下というところが七庁とか、あるいは二十四件以下といったところも、七庁を含めて全部で十六庁ある、こういうような状況もございまして、アクセスを高めるという観点からは、現在のところ適切に機能しているのではないかというふうに思っているところであります。
山内(功)委員 多分そう言われるとは思うんですけれども、今、簡易裁判所に行かれると多分わかると思いますけれども、サラ金の社員が、今までは九十万以下だったのをもう百四十万まで、百四十万といえば高額ですよ、その取り立て訴訟ばかり、裁判所の入り口の期日表に書き込まれる。そういうことを、そういう事件をますますふやすことにもなるわけでして、この訴額の問題については、何年ごとの、どういう指標を基準に、どういう見直しをするかという基準もきちんと決めるということも大切ですけれども、ぜひ簡易裁判所の実態を踏まえて、本当に時宜にかなった制度改正をしていっていただきたいと思います。
 次に、民事調停官とか家事調停官制度について非常勤裁判官制度を創設するわけですけれども、まず、その概要を大臣に伺いたいと思います。
森山国務大臣 今回創設することを予定しております民事調停官、家事調停官の制度は、弁護士から裁判所の非常勤職員として採用された民事調停官と家事調停官が、民事調停事件と家事調停事件に関しまして裁判官の権限と同等の権限を持って調停手続を主宰することができるという制度でございます。司法制度改革推進計画におきましてはいわゆる弁護士任官の推進が提言されているところでありまして、この制度の創設によりまして、そうした弁護士任官の一層の推進と調停制度の一層の充実が実現することを期待しているところでございます。
山内(功)委員 最高裁判所は、この調停官制度が施行された後は、例えばこの制度を全国で一斉に実施される考えなのか、それとも、一斉に実施しないとされるなら、その理由と、どの辺の地域から実施地域として進めていくのか、そのあたりをお聞きしたいと思います。
中山最高裁判所長官代理者 調停官制度は、今大臣の方からもお答えありましたように、弁護士任官の推進にも資するということを一つの目的にしているものでございます。これは委員御存じのように、例えばこの十年間見ましても、弁護士からの裁判官任官者は四十三名にすぎない、こういうような状況でございました。
 なぜこれが進まないのか。それは種々の要因がございますが、一つの大きな理由は、裁判所に対するイメージと申しますか、弁護士さん方が持たれるのが、何かかた苦しいところであるな、裁判官になれば赤ちょうちんも行けないんじゃないか、カラオケも行けないんじゃないか、そういうような裁判所に対する誤ったイメージを持っておられる。これを、内部に入っていただければ、そうではない、思いのほか自由濶達な場所である、こういうことがおわかりいただけるのが一つであります。
 それからもう一つは、弁護士さんサイドから見ますると、裁判官に任官するに当たって事務所をどのように畳んでいくか、これは事件の処理をだれに引き継ぐか、こういったような問題も含めて、そこが難しい、なかなか計画的にその辺を持っていくことができない、こういうところでありましたけれども、これは非常勤の裁判官ということで調停官ということになられますと、任期が二年、再任もございますので、比較的長いスパンでそのあたりを無理なく計画的に進めることもできるだろう、こういうふうに考えたわけであります。
 また他方で、弁護士任官、これまでの方々に対する、実はどういう方かといったような情報も、裁判所側としては必ずしも十分にその資質、能力、適性といったところをつかんでいなかったというのが実態でございまして、そのために、なかなか溶け込まれないというような方も出てきたことも実態であります。
 しかし、今後、調停官ということになりますと、法律知識がどの程度おありになるかとか、あるいは事件のマネジメントはどういうふうにされていくかとか、あるいは調査官、書記官との人間関係をどのように形成されていくか、こういうところが裁判所側にも非常によく見える。それも裁判官だけではなく、一般職の職員からもよく見えるということになります。書記官等から、あの方はすばらしい人だということになりますれば、これまでは弁護士会の方から弁護士任官を勧めるということでありましたけれども、裁判所の方からむしろ、なってください、こういうふうにもまた使えるものがあるかな。そういうものが相まって、弁護士任官を全体として進めることができればというふうに思っているわけであります。
 さてそこで、これをどの程度まで広げるかということでありますが、そういったような実績、成果というものがどこまで上がるかということをひとつ見なければいけない部分があろうかと考えています。それから、これを小さな庁に、小規模庁に持ってきましたときに、多羅尾伴内ではありませんけれども、あるときは相手方の訴訟代理人としてあらわれ、あるときは中立公正な調停官としてあらわれる、そういったようなことが運用として現実に出てくるわけでありますけれども、そのあたり、どんなふうに裁判所の利用者、国民の方々が受けとめられるか。調停官についての中立公正さというものが疑われるような事態になってもぐあいが悪い。そのあたりを、どんなような問題点が出てくるかというところも見きわめていかなければならないというふうに思っているわけであります。
 そこで、まずはこういった問題が起こらない、相当程度多数の調停事件が係属している大規模庁から実施して、その実情、実績等を検証していく必要があるというふうに考えておりまして、平成十六年の一月から考えておりますけれども、簡裁の民事調停については東京、大阪、名古屋、福岡等で、地裁の民事調停につきましては事件数の関係から東京及び大阪で、また家事調停につきましては東京及び大阪の家裁で実行することを検討しているところでございます。
山内(功)委員 しかし、拡大をしていく考えですよね。もしそうだとしたら、どの程度のテンポになるんですか。
中山最高裁判所長官代理者 こういった制度ができました以上はぜひとも成功させたいと思っておりますし、基本的に拡大したいという意向は非常に強く持っておりますけれども、そのあたり、どの程度のテンポでいけるか、あるいはどこまで広がるかというのは、今言った実績あるいは成果といったところを見きわめて考えていかなければならないというふうに思っておりますので、今直ちにそこまで申し上げることができないことは御容赦いただきたいと思います。
山内(功)委員 先ほど弁護士任官を促進するためにもこの制度がうまく機能してほしいというような話がありましたけれども、だとすると、民事、家事の調停手続に関する権限に限定した意味は何か少し狭いと思うんですけれども、これはどう考えたらいいんですか。
中山最高裁判所長官代理者 委員も御承知のとおり、法律上の争訟につきましては、そういった非常勤裁判官といった問題は憲法上の問題があるというのが支配的な見解かというふうに思っております。
 そうしますと、非訟事件でどのあたりまでそういったことが進められるかということでありますけれども、そのあたり、今後検討していきたい、研究していきたいと思っておりますが、まずはそういった一番取っかかりやすいといいますか、比較的問題点が少ない、しかも弁護士さんの経歴、知識といったものが適切に活用できる分野ということで、まず調停から始めてみようということで、日弁連とも合意ができたという経緯でございます。
山内(功)委員 今検討、研究を始めていると言われましたけれども、どの分野に広げていこうというような研究、検討をしているんですか。
中山最高裁判所長官代理者 今お答えがちょっと中途半端になったのかもしれませんが、非訟事件であればまず基本的にできるかなということでありますが、ただ、非訟事件の定義自体もなかなか難しゅうございまして、どこまでがそこまでのものなのか、訴訟事件的なところの性格はどうしても持っているものがあるではないかとか、いろいろな議論がございますので、そのあたり、どこまでだったらば弁護士さんの知識経験が生かせるものなのか、憲法上の問題が生じないのかといったところを考えて、今研究を始めたというところでございます。
山内(功)委員 今後、すぐれた非常勤裁判官を確保する必要があると思うんですけれども、この点については、その確保する方策というのはどういうことを考えているんですか。
中山最高裁判所長官代理者 昨年の八月に日弁連と、こういった制度をつくるということにしてみたらどうだろうか、その上で、国会で御審議いただこうということで合意したわけでありますが、その際の合意で、日弁連の方からは、適切な方を、候補者を御推薦いただくという仕組みをつくってもらえるということになっております。
 また他方で、調停委員の経験者の方も恐らくは手を挙げてこられるというふうにも思っておりますし、そのあたり、むしろ裁判所の方もかなりの情報を持っているというところもございますので、そのあたりを基礎に、いい方を調停官としてまいりたいというふうに考えているわけであります。
山内(功)委員 先ほどもこの制度を採用することについての悩みを言われましたけれども、例えば、会社の顧問弁護士が非常勤裁判官になった、その会社に勤めている従業員が民事あるいは調停手続で裁判所に行く、そうすると、ぱっと裁判官を見て、ああっ、自分の会社の弁護士だ、そうすると、調停という一番腹を割って話さなければいけないような手続の中で、遠慮というか全く話ができない制度になってしまう。
 だから、先ほど言われたように、あるときは弁護士で、あるときは裁判官でというのは戸惑いもある。それは、本人も戸惑いがあるかもしれないけれども、一般国民も戸惑っちゃうし、実際にそういう手続をとっている当事者自身が非常に理解しにくい、あるいは信頼を裁判所に寄せることができないんじゃないかと思うんですけれどもね。特に、人材の不足する地方で如実に出てくると思うんですけれども、その辺、しっかりとした制度になっていくんでしょうか。
中山最高裁判所長官代理者 今御指摘いただいたところは非常に大事だろうと思っております。したがって、裁判所の利用者がこういった制度についてどこまで本当に理解していただくかというところも今後見きわめ、さらにまた、その辺の理解を得ていくためにはどのような方策をとっていかなければならないかということも考えていかなければならないというふうに思っております。
 ただ、先ほど挙げられましたような事例では、事実上の回避といったようなものを適切に運用していくということになろうかと思っております。
山内(功)委員 弁護士が営利業務を営む場合に、この法律ができると届け出で足りることになるわけですけれども、弁護士がこうした営利業務を営むことを無条件で認めることに問題はないのか。まず、大臣に伺いたいと思います。
森山国務大臣 弁護士が営利業務に従事することに関しまして、許可制から届け出制に移行いたしますのは、弁護士が社会の隅々に進出して、そのニーズに積極的に対応して、法の支配の実現に貢献するためでございます。
 弁護士は、職務の内外を問わず、その品位を保持することが求められておりまして、営利業務に従事した弁護士がその過程で弁護士の品位にもとる行為をした場合には、当然に懲戒処分を受けることになります。
 今回の法改正により、懲戒制度の一層の透明化、迅速化、実効化が図られることも踏まえますと、弁護士会と日弁連において非行のあった弁護士に対する懲戒が適正に行われることによりまして、十分に対応できるものと考えます。
山内(功)委員 私は、大臣が言われるほど信頼していないんですけれどもね。つまり、手形や小切手を支払い能力以上に切る弁護士がやはり出てくると思うし、今でも預かり金を着服する弁護士というのも正直言って後を絶たないわけですよね。だから、大臣が余り今の弁護士をかばうような発言というのは、もう少しぴりっとさせた方がいいと思うんです。だって、大臣、弁護士が自分で支払いが回らなくなって裁判所に民事再生法の申し立てをしに行くなんという姿、やはりぞっとしますよね。
 だから、弁護士という職務に対しての国民一般の見る信頼感とか、あるいは特殊な仕事をやっている、それから品位はやはり最低限保持をしていかなければいけない、そういうような必要性にかんがみてみると、営利業務に従事する弁護士について、懲戒制度があるからいいということじゃなくて、やはり何らかの倫理規程を定めることが私は絶対必要だと思うんですけれども、今までの過程で、推進本部と日弁連とかあるいは個々の弁護士とかの協議も踏まえて、推進本部、何かありますか。
山崎政府参考人 確かに、委員御指摘の点はそのとおりの点もございまして、これに関連しまして、司法制度改革審議会意見書でも、やはり営業等を行う場合の弁護士倫理のあり方、これを検討して、倫理研修の充実、それから綱紀・懲戒制度の適切な運用によって弁護士倫理の遵守を確保すべきであるとしておりまして、これを受けまして、現在、日弁連及び弁護士会において、弁護士が営利業務に従事する場合の行為規範を会則に設けるということ、そしてその内容につき現在検討されているというふうに聞いております。これが、なるべく早い段階でその内容がわかって、きちっとしたものになるということを期待しているところでございます。
山内(功)委員 私もそれをしっかりと期待したいと思っています。
 次に、弁護士資格の付与の問題について話を進めていこうと思っています。
 今、弁護士資格を付与する条件として、司法試験の合格と司法修習プラス修了試験ですか、その二つの条件が必要になっているわけですけれども、これはどっちが大事、こっちよりもこっちが大事というような問題なんでしょうか。
山崎政府参考人 端的に申し上げれば、両方必要だろうと思います。
 ただ、この中でどちらかということ。現在の制度も、司法試験に受かっていない方にも弁護士資格を与えるということも一部ございます。ただ、大部分の場合には、司法試験にまず受かっていることが前提で、別の経験、こういうものをした者に資格を与えるという法制でございますので、やはり基本は司法試験に受かっているということが中心になるかなというふうに思います。
山内(功)委員 それからもう一つ、前提として各論に入る前にお聞きしておきたいのは、司法修習はなぜ統一修習、つまり、裁判官や検事や弁護士希望者含めた統一修習になっているんでしょうか。
山崎政府参考人 これは、卒業した後、法曹三者はそれぞれ違う道に行くわけでございますし、あるいは別の道を歩く方もおられます。しかし、司法で考えれば、いずれの立場に立っても、違う分野で仕事をする人たち、そういう人たちが、どういう仕事をして、どういう考え方に基づいてやっているか、それはきちっと一応理解をしよう、それでお互いに理解した上で法曹三者としてきちっとやるべきものはやろう、こういうことから、同じかまの飯を食う、そういう共有をしようというのがもともとの発想であるというふうに私は理解をしております。
山内(功)委員 つまり、日本に二千近くある法律を、みんなが同じような意識を持って、共有して、しっかりと知識を積んでいこう、それは法曹三者が一緒になって統一修習をすべきだと思う、そしてまた、一年半同じところで修習をして、実際にそれぞれが後で別々な分野に進むとしても、信頼感を持った法曹制度ができていく、そういうことを今言われたと思うんです。
 それを前提にして、まず企業法務の人への資格の付与についてお聞きします。
 司法試験に合格したいわゆる企業法務の経験者について、司法修習を免除して弁護士資格を付与するということにはどのような必要性があるのでしょうか。大臣、お答えをお願いします。
森山国務大臣 近年、情報化、国際化の進展等、企業を取り巻く環境が大きく変化する中で、いわゆる企業法務の果たす役割は、事業活動をめぐって生ずるさまざまな法的紛争の解決を図るというだけではなく、あらかじめ紛争の発生を予測してこれを防止する見地などからさまざまな事業活動の企画や実施に参画するなど、ますます広範かつ高度なものになってきております。
 このような企業法務におきましてさまざまな法律に関する実務経験を経て、高度の専門的能力を備えた者につきまして、その経験や専門性を活用する道を開いておくということは、多様なバックグラウンドを有する層の厚い法曹の確保という今般の司法制度改革の趣旨にかないますし、これによって多様で広範な国民の要請に十分こたえることにつながるものと考えられるところでございます。
 以上のことから、司法制度改革審議会の意見を踏まえまして、司法試験合格後、所定の法律関係事務に従事し、かつ所定の研修を修了した者に対して弁護士資格を付与するということにしたものでございます。
山内(功)委員 しかし、一番最初にその資格付与の要件として書かれていることなんですけれども、例えば、不動産業者に勤めていて、不動産売買の契約書の作成業務しか従事していない人についても弁護士資格を付与するように読めるんですけれども、それはやはりおかしいんじゃないんでしょうか。
山崎政府参考人 今委員が例を出されましたけれども、この法案で、要件としては、みずからの法律に関する専門的知識に基づいて、例えば契約書の作成等の業務を行っている、行った、こういう要件でございます。
 では、不動産の契約がどうなのかと。それがもう本当に定型的な賃貸とか、一定の条件で貸していくような大量処理的なもの、こういうものをずっとやっていたといっても、それはみずからの法律に関する専門的知識に基づいて行ったかどうかといえば、これは疑問があろうかと思います。ただ、不動産取引だからといってそれが除外されるということにはならない。不動産取引だってさまざまな取引がございますし、法的にも大変難しいものもあるわけでございます。
 ですから、そういうことで、みずからの法律に関する専門的知識、こういうものに基づいて業務を行ってきた者は当然対象になるということでございます。
山内(功)委員 しかし、結局は、法務大臣がその資格を付与するかどうかの認定をするということには政治的な配慮が働くのじゃないかと思いますし、やはり、それは契約書をつくるのに法的な知識が要らないと私は言っているわけじゃなくて、だけれども、第一号を読めば、そういうふうにしか読めないわけですよ。これにプラス、例えば裁判所にも時々行きますというような三号とか四号とか、そういうのが多少でも付加されていれば、私はすとんと胸に落ちてくるんですけれども、契約書の作成だけで資格を付与できる書き方になっているから今聞いているんですよ。
 企業法務の担当者については、それじゃ、どのような研修期間によるどのような研修を実施することを想定しているのか、伺います。
山崎政府参考人 研修につきましては、大綱は法務省令で定めるということになります。そして、法務省令で実施の法人を指定するという形になっておりますけれども、現在のところ、実施主体としては日弁連を想定しているところでございます。
 その内容でございますけれども、これから具体的にはもちろん詰めていくわけですけれども、大きく言って集合研修と個別研修というふうに分かれるというふうに考えております。
 集合研修としましては、民事、刑事実務の講義もございますし、あるいは現実に起こり得る題材に基づいた基本を含むような演習、こういうもの、いわゆる具体的な事件、具体的なケースに基づく座学を行っていただくということでございます。それから、その中には、場合によっては、当然と言うかもしれませんけれども、弁護士倫理の問題、こういう問題も含むことになろうかと思います。
 それから、個別研修でございますけれども、これはできるだけ広範な訴訟手続の現場を経験してもらいたいという趣旨から、弁護士事務所における民事、刑事の実務研修ということを考えております。
 集合研修については東京で行うということになりますけれども、個別研修については、事務所は別に東京に限る必要はないということを考えております。
山内(功)委員 次に、特任検事の問題点についてお聞きしますけれども、特任検事経験者について弁護士資格を付与することにはどのような必要性があるのでしょうか。
森山国務大臣 いわゆる特任検事は、三年以上副検事として在職した上、政令の定める極めて難しい試験に合格した者から任命され、司法修習を経た検事と全く同一の権限を有し、民商事法の解釈を要する経済事犯等の事件を含め、捜査、公判実務を十分に経験しております。したがって、五年間の在職経験を有する特任検事は弁護士にふさわしい能力を十分に備えているものと認められます。特任検事経験者に対する弁護士資格の付与は、こうした経験を社会において活用するということを目的とするものでございます。
山内(功)委員 今おっしゃいましたけれども、例えば経済事犯について捜査、公判を立ち会うというのは、例えば特捜部の検事とかやはり一般の検事がやっている場合が多いので、特任検事を資格付与させたいがために経済事犯についても捜査、公判をしていると言うのは、少し言い過ぎだと私は思いますよ。
 法科大学院を創設する上で、司法試験の合格者について今後三千人とすることが予想されている中で、さらに、司法試験にも合格していない方に弁護士資格を付与する必要性がどこにあるのでしょうか。
山崎政府参考人 先ほどちょっと答弁、若干不正確なところがありましたので訂正させていただきますが、研修の大綱を省令で定めるというふうに申し上げましたけれども、それは省令で定まらないということでございますので、訂正をさせていただきます。
 ただいまの御質問でございますけれども、現在、これから三千人体制、これをつくり上げていこうという政策は政策としてきちっと行うということでございますが、もう一つの要請としては、社会が物すごく複雑化をしておりますし、多様化しております。そういう中で、いわゆるいろいろな広範な分野に多様の経験をした者、こういう者を、そういうバックグラウンドを持った者を法曹に登用して、それによって国民が非常に便利になる、多様な国民のニーズにこたえられるということから、そういう方向性も問われているわけでございます。そういう中で、今回、御承認をいただく企業法務、公務員、国会議員それから特任検事というものを御提案させていただいているというところでございます。
山内(功)委員 大臣、法務省が法務省の身内の特任検事を特別扱いするということについて国民がどう思うかをまず考えた方がいいと思いますよ。
 私は、もし仮に事務官から一生懸命勉強して副検事になられた、副検事の中から、本当に一生懸命勉強して、捜査の技術も磨いて、六法も勉強して、六法というのはつまり民訴、刑訴も、民法も、刑法もとかいうことですよ、そういうことを含めて勉強をして、特任検事に全国でも毎年五人ほどなる、それでいいんじゃないんでしょうか。それによって、その人は絶対それで満足していると思いますよ。
 その上に、何で、司法試験にも合格していなくて、司法研修も受けなくて、研修制度もない、そういう人に資格を付与するんですか、大臣。これはもう身内でお手盛りをするという表現以外に何があるんですか。
森山国務大臣 多様なバックグラウンドを持った人々の中から、多様な世の中の要望にこたえるために法曹を多様化していこうという要求がございまして、その一環として考えているわけでございまして、その経験を社会的に大いに活用したいという考えでございます。
山内(功)委員 先ほど聞いた企業法務の人は、司法試験に合格している上に、毎日が民事事件に携わっていると表現してもいいと思うんですよね。
 しかし、事務官から副検事になって特任検事になった人というのは刑事事件だけですよ。だから、そういう人に、民事事件も扱えるような仕組みを、研修制度も抜きに資格を付与するということについて不安とか疑問を感じられませんか。
山崎政府参考人 この点に関しましては、民事でも刑事でも、やはりまず証拠をきちっと収集できるかどうか、それからそれを分析できるかどうか、それに基づいて、中心になる一番大事な事実は何であるか、それにどういう法律を適用するかということだろうと思うんですね。常識的なところで結論を出していく、こういう作業でございまして、これにつきましては、民事、刑事、やはり私は突き詰めていけば同じ能力であるというふうに考えております。事案の解決方法としては同じ考え方でございます。
 そういうことで、基本的には、刑事について実務をきちっとこなしている者については、民事の応用力は十分に備わっているというふうに考えているところでございます。
 ただ、先ほどから、上田議員の方からもいろいろ御指摘ございまして、研修についてどうなのか、短期の研修でございますけれども、こういう御質問ございました。私どもは、今回はそういう発想はとっておりません。
 そういうことで、提案をさせていただいておりますけれども、さまざまなこの点については御議論もございます。国会の御審議を十分にしていただきまして、私どもはその見解を謙虚に承りたいというふうに考えております。
山内(功)委員 特任検事の問題ももう少し議論したいんですけれども、私は一番最初に質問しましたように、八本の法案を一つの法案で出されると、一本の改正案についてどうしても反対したいんだけれども、みんな反対になっちゃうということがあるんですね。
 ちょっと、最後になりますけれども、一番、私はもう今のままで絶対反対なのが、国会議員に対して弁護士資格を付与することなんですよ。これは、自分たちに弁護士資格を付与することを自分たちが決めるということについて、大臣、どう考えておられますか。
森山国務大臣 国会議員につきましては、確かにいろいろな問題が指摘されているということは事実でございまして、中にはまことに遺憾なものもございます。私も国会議員の一人として、非常に胸を痛めていると申しましょうか、困ったことだと思っているものもないわけではございません。
 国会議員は、国権の最高機関でございまして国の唯一の立法機関である国会におきまして、法律に国民のニーズを反映させるという大局的な視点から、法律案の立案、審議という高度な識見、能力を要する職務を行うものでございまして、このたびの法案におきましても、そうした点に着目いたしまして、司法試験合格後に五年間その職にあった者に対して弁護士資格を付与するということにしたものでございます。
 私といたしましては、このような法案の内容自体に問題があるとは考えておりませんけれども、弁護士になろうとするか否かにかかわらず、国会議員が一人一人常に身辺をきれいにして、姿勢を正しく持っていくべきということは当然であると考えております。
山内(功)委員 一人一人が身辺をきれいにするのは、それはもう当然のことなんですけれども、私は、大島農水大臣の問題について、例えば内閣の人間が国会の法制局を勝手に使って想定問答をつくったり、法律の見解を自由気ままに作成したり聞いたりしていた、ああいう問題も全くおかしいと思うし、例えば松浪問題について、暴力団とつき合っていたのはもちろんだけれども、捜査情報を問い合わせをするなんというのは、こういうことはもう理解もできないんですよ。司法試験に合格して、例えば二年とか一年半、司法修習を積んで、裁判官や検事と同じ思いを持って法曹になった、そういう人たちにとっては、こういう問題は理解できないと私は思いますよ。つまり、もっと高潔なものを求めていると思うんですよ。
 ところが、私は、どういう人が資格があるのかというのを個人名を聞きました。七人の方の個人名を聞きました。そういう人たちは、例えば松浪問題一つにしても、自民党の中に五人ですか、おられる。その人たち、松浪問題について、全く政治倫理審査会の審査だけで終わらせようとしているじゃないですか。特任検事を法務省が取り上げるという問題もそうですけれども、やはり国会議員に弁護士資格を与えるのを自分たちが決めるというのはお手盛り以外の何物でもないと思うんですけれども、どう思われます。
森山国務大臣 今該当する条件としては、司法試験に合格された方、そしてその後国会議員の経験を五年間以上持たれた方ということになっておりますので、司法試験、つまり司法たるべき資格の重要な部分を一つクリアしていらっしゃるわけでございます。その方々がその後どのような経験をされたかといいますと、それが、先ほど申し上げたように、国権の最高機関である国会におきまして法案の立案、審議というようなことに携わってこられたわけでございまして、そのような経験が、広い立場、高い見地から法曹界において生かされるということは決して困ることではない、むしろ大いに活用していただくべきことではないかと思います。
 それ以外の問題について、今いろいろ指摘されたことにつきましては、法曹資格と直接関係がないといいましょうか、むしろ政治家としての見識や、あるいは政治家としての姿勢にかかわることでありまして、この問題とは直接関係がないのではないかと私は思います。
山内(功)委員 大臣、司法研修所での前期修習の日程や後期修習の日程を見てみてくださいよ。民事裁判、刑事裁判、民事弁護、刑事弁護、あるいは倫理の問題とか、それはもうしっかりとしたカリキュラムがあって、これを履修して、実務で地方に散らばって研さんを重ねて、修了試験で合格をする、これはやはり法曹として本当にしっかりとした人間になると私は思っているんですよ。
 ところが、先ほど、国会議員は信頼が高くてと言われましたけれども、今、国民にとっては国会議員というのはそれほど信頼のある職業だとは私は思っていませんよ。だから、そういう、確かに、何年か前に司法試験に合格したということだけで特別扱いすべきじゃないと私は思うんです。
 こういう司法修習の制度もある。これが多分、あと何年後ですか、一年になるでしょう。一年間になるわけですよ、たった。たった一年間になった上に、国から給料も支給されるんですよ、司法修習は。企業担当者も国会議員も、そういう過程を踏んだらどうですか。もし、そこまでして弁護士資格をもらいたくないというんだったらそれはそれで立派な考えだし、もっと政治活動でそれこそ名をなせばいい問題だと私は思うんですけれども、どうですか。
森山国務大臣 国会議員という仕事が必ずしも国民から大いに信頼されているということは言えないという御意見には私もうなずけるものがございまして、まことに残念だというふうに考えております。
 しかし、国会議員のあるべき姿といたしましては、国権の最高機関の中にいて法案の立案、審議に携わるということでありますので、そのような経験をきちんとされた方が、以前取られた司法試験の合格という資格を生かして、広く社会のために貢献していただくということはいいのではないかというふうに思います。
山内(功)委員 最後の質問にしますけれども、このままの法案だと、とにかく、ほかの七本の法律は賛成でも、私は反対します。もし、涙をのんでほかの対応をするとしたら、少なくとも、契約書の作成や証拠の収集とか裁判手続に毎日行っているというような、司法試験に合格した企業法務担当者に、七年経過させた上に資格付与のために研修を義務づけているのなら、国会議員にも私はそういうような研修を義務づけていただかないと、断固反対です。大臣の最後の見解を聞きたいと思います。
森山国務大臣 御指摘の点も踏まえまして、いろいろと御審議の結果を見せていただき、適正な結論を得たいというふうに思います。
山内(功)委員 では終わります。ありがとうございました。
山本委員長 この際、休憩いたします。
    午後零時三分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時二十三分開議
山本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。山花郁夫君。
山花委員 山花郁夫でございます。
 午前中、山内委員からも指摘がありましたけれども、今回のこの法案のつくり方なんですが、本来であれば八本別々に出されるべきものと考えます。
 改めて、なぜこういう形で提出されたのかをお答えいただきたいと思います。
山崎政府参考人 先ほどもお答えいたしましたけれども、この改正案でございますけれども、司法制度改革推進法に基づく司法制度改革推進計画に従いまして、司法を国民に身近なものにするということを目指して、司法制度に対する国民の多様かつ広範な要請にこたえようとするもので、この中身がすべてそこを目指しているものだということから、この法律案に盛られました政策は統一的なものであるということで、その趣旨、目的を同じくするということから、一括法としての形式をとって提出させていただいた、こういうことでございます。
山花委員 いや、趣旨、目的が一緒であれば一括でいいかというのは、少し疑問がありまして、つまり、法律案というのができて、国会で審議をして、最終的に賛否については意見が分かれることもありますし、場合によっては、この部分については賛成できるけれども、この部分については問題があるというケースもあって、もちろん、例えば弁護士法の改正というのがあって、その中の一つの条項が気に入らない、だからこの法律に反対だということはあり得ると思いますし、多くの場合、法案の存在そのものが許せないということは少ないのであって、ある部分について賛否が分かれるということだと思います。
 ただ、今回のような、本来別々の法律ができているわけですから、例えば内閣として構造改革に取り組むだとか何だとか、一つ内閣の目標があったときに、いろいろな法案を出されますけれども、そういう目的と趣旨が一緒だから全部同じ一つの法律に束ねていいかというと、そういうことじゃないじゃないですか。つまり、本来、法律というのが、国会で、つまり議会の中でいろいろ議論されて成立していくプロセスをもっと大事にしなければいけないと思うんです。
 迅速化法のときに、医療と裁判は似ているんじゃないかという議論もさせていただきましたけれども、議会もやはり同じで、もしかしたら結論は、一生懸命議論しようが議論すまいが、賛否は同じなのかもしれないですけれども、そのプロセスはちゃんと大事にしたいと思いますし、どういう意見があってそういう形に収れんしていったのかというのは大事なことだと思います。
 ただ、今回のような、こういう立て方をしてしまうと、どの部分について今議論しているのか、もちろん議事録を見て、ここのこの議論はこの法律ということは可能だと思いますけれども、後に例えば弁護士法を見る、あるいは裁判所法がいつ変わったというのを見たときの、後の検証のためにもまたよくないと思います。
 この点について、どういう御認識なんでしょうか。
山崎政府参考人 国会でどういう御審議をいただくかというのは、まさに国会で決めていただく話でございますけれども、私どもといたしましては、やはり法案についてきちっとした議論をいただいて、その上で御可決をいただくというのは当然の話だろうと思っています。
 これが、束ねたから、一括したから、ばらばらだから、別々だからといって、そこには違いはないというふうに私は思っております。
山花委員 いや、それは問題ですよ。別々の法律が幾つもあって、議会の問題だというなら、出されたものが八本別で、当委員会で、理事会で協議をして、八本関連するから一緒にやりましょうと、それはまさに議会の問題だけれども、出すときにもう決まっちゃっているじゃないですか、こういう束ね方をすると。だって、こちらはどうしようもないじゃないですか。
 それでは、分けて採決すればいいとか、そういう御意見なんですか。
山崎政府参考人 分けて採決をするということを申し上げているわけではございません。
山花委員 ですから、分けて採決することもできなければ、個別に、分離して議論するという形にならないんですよ、出すときに工夫していただかないと。つまり、要するに、今回の法律のつくり方は議会の審議に資するためのような形では提出されていない、そういうことじゃないですか。
 法務大臣、改革本部の本部長ですから、お尋ねします。
 今国会で、例えば、既に委員会は通過しましたけれども、刑法の一部改正があります。先ほど、寺田司法法制部長から、迅速化法とか、そういったものは新たにつくる新法だから別々に出しました、今回のは一部改正なので束ねましたと。ところが、今国会、実は、刑法については二本政府から提案がされていて、あれは分けていますね。つまり、同じ刑法の一部改正なのに分けられている。
 私は、それがいけないと言うつもりはありません。むしろ、中身が全然違いますから、ああいう出され方の方が、各党の態度もはっきりわかりますし、どこについて、その政党なり、無所属の方もいらっしゃいます、その方たちがどういう採決態度をとったのか、それこそがまさに、今度、選挙があるとすれば、それが国民の審判に触れることですし、我々もそれに対して説明しなきゃいけない。本来、そうやって出されるべきだと思います。
 今後というか、今回のも十分なやり方だとは思いませんけれども、こういうやり方はやめていただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。
森山国務大臣 おっしゃることもよくわかるのでございますけれども、このたびのこの法律は、司法制度改革というものを実現していこうという意味で、一つの目的に総合的にまとめられるかと思いまして、そういうふうに提案しているわけでございます。
 今後も同様のものがあるかもしれませんが、おっしゃる意を体しまして、できるだけ先生方にもわかりやすいように、審議なさりやすいように努力したいと思います。
山花委員 今回のことをおいて、ぜひ今後のことはそういうふうに努力をしていただきたいと思います。
 ところで、先ほどある議員の方とお話をいたしました。弁護士法の改正に関することです。その方は古川元久さんといいます。我が党の先輩の議員でして、司法試験に受かって五年以上やっている方です。こういう議論をしていますので、せめて自分の党の仲間の方の意見をちゃんと聞いておかなければいけないと思って話をしましたけれども、国会議員について、こういう資格付与、特例のようなことは必要ないのではないかということを言われていました。
 迅速化法のときにも立法事実があるのかという議論をさせていただきましたけれども、今回のこの問題についても立法事実があるのかどうか、私は疑問に思っています。皆さんというか、私はたまたま今回該当する方一人しかお話を聞いていませんけれども、およそ法律をつくろうとするときには、社会的な欲求があって、それに対する対応をしなければいけないということで法律の改正をしたり立法するものだと思います。およそだれも希望していないし、論理的にこうなるはずだからというだけで法律の改正というのは普通行われないんですけれども、これは何か要求があったんですか。
山崎政府参考人 今回の改正の一番の主眼は、将来、法曹、これからふえてきますけれども、その中で、多様なバックグラウンドを持った人たち、こういう人たちにもやはり法曹になっていただきたいということでございまして、将来的には、ロースクール等を卒業して、研修に行かないで、社会のいろいろなところで活躍をされて、そして法曹になっていくという方がかなりふえてくるだろう、こういうことを全体として頭に入れながら、まず着手をしたということでございます。
 では、現在の方はどうかということでございます。これは、例えば特任についても希望はございますし、それから、政治家の先生方でも恐らく希望はあると思います。
山花委員 希望があるということは、仮にあったとして、ただ、午前中の質疑でも私はよくわからないことがあるんですよ。というのは、弁護士資格を持っている先輩の議員なんかにお話を聞くと、五年たったら修習しなくてもいいということよりも、五年も議員をやったらもう一回修習した方がいいんじゃないかぐらいの話をされる方もいらっしゃいますし、例えば、国会議員を五年やった人についてはもう資格は剥奪するという話だったら、今の御説明はまだわかります。
 というのは、いいですか、五年やった方について免除する理由にはなっていないと私は思うんですよ。つまり、ある経験をした人を排除するという法律が今まであって、それはそうしません、これから参入させますということだったら、今言われたように、社会的にいろいろな活動をされた人がこういう司法の世界に入ってくる、大いに結構じゃないですか。それは説明はわかりますけれども、何も特例を設ける必要はないじゃないですか。そこのところについて、どういうことかということを聞きたいんですよ。
 つまり、別に、国会議員を五年やられて、個別の顔を浮かべれば、それは立派な方もいらっしゃいますし、やっていただいて仕事ができるだろうなと思う方もいらっしゃいますけれども、別に普通に修習をやればいいだけのことじゃないですか。昔みたいに二年間研修所へ行ってということじゃなくて、期間も短くなってきていますし。いかがですか。
山崎政府参考人 司法研修は何のためにやるかということでございますけれども、それまで座学で勉強してくるわけでございます。それで、観念的にいろいろなものを覚えてくるわけでございますけれども、今度は、修習になって、生きた事件、生きたいろいろな紛争、こういうものに関してどのように解決をしていくかということを、実際の法律の場面で法律を学んでいくということだろうと思うんですね。その訓練を経てプロになっていくということだろうと思います。
 それで、例えば企業法務、それから国会議員の先生方もそうですけれども、やはり物すごくいろいろな、多様な経験をされて、国会の中でも、社会にいろいろな事実が起こって、では、これをどういうふうに改正していったらその事態がおさまるのか、それから今後の世の中をどういうふうに考えていくかということを全部考えながら、法律の中に投影していくわけです。ですから、社会に起こった事象をどのように把握して、どのように将来に向けたらいいか、あるいは、場合によっては紛争の解決ということも行うわけでございます。そういう意味で、場面は違うかもしれませんけれども、やっている内容は極めて似ているところがあるわけでございます。
 そういう意味において、お互いに、どちらを進んでも、リーガルマインド、これは十分に培えるということから、そういうルートも認めていいではないか。それで、別の、今一年半でございますけれども、また今度一年になりますけれども、そのルートに行かれるのももちろん結構でございますし、こちらで行かれるのも結構、そういう、同等であるというふうに考えたわけでございます。
山花委員 社会に起こる事象についていろいろ解決をしたりということで似ているというお話ですけれども、決定的に違うことがあると思います。
 法律家の人たちは法的判断にのっとった解決をしますけれども、議員とか政治の世界にいる人たちは、必ずしも、いや、違法なことをやっているということを言うつもりはありませんけれども、法的な解決ではなくて、妥当性あるいは適切性というところで話をしたりとかすることがあるのであって、私は、必ずしも、議員を五年以上経験したからといって、司法修習を二年間やるというような、今二年じゃないですか、一年半ですか、ということに並ぶとは思いませんし、大体、司法研修所というのはそういうことをやっているわけじゃないじゃないですか。
 例えば、刑事訴訟のあれであれば訴状の書き方だとか、民事訴訟でもそうですね、起訴状の書き方だとか訴状の書き方だとか。あるいはもっと言えば、たとえ、立法機関にいるから法律をつくっているでしょうという理屈があったとしても、研修所でやっている教育というのはそういうことじゃないですよね。
 例えば、釈迦に説法ですけれども、民事訴訟の事件で訴訟上の陳述の意義がどういう意義があるのかとか、例えば賃貸借で明け渡し請求訴訟のときには要件事実が何であるのかとか、そういうことじゃないですか。お金を貸したけれども、弁済しましたと言ったのか、借りたけれども返したというのか、そもそも借りていないというのか、借りたけれども時効にかかったというのか、要するに制限自白なのか理由つき否認なのかとか、だって、国会で審議するとき、そんなことなんて全然、まあ全然とは言わないですが、今労働基準法の議論の中ではかなり細かい議論がありますけれども、そういうことについて我々はふだん議論しないですよ。
 つまり、いわば国会議員を五年やると司法修習を今でいえば一年半やるのを免除するという理由には非常に乏しいと思いますけれども、改めてその点、なぜ特例を設けていいのかということについてお答えいただきたいと思います。
山崎政府参考人 これは大もとからいえば、今後、法律家が大変ふえてまいります。社会のいろいろな分野で活躍をしていただきたい、そういう時代になってきているだろうと思います。
 ですから、必ずしも、弁護士になったからといって、法廷の実務をやらない、別のところで活躍をされる方、それはリーガルマインドを持って活躍をするという仕事だろうと思いますけれども、そういう分野もあるわけでございます。ですから、では訴訟をやろうということで、先ほど先生が御指摘になられましたいろいろな細かい点、こういうのを本当に学びたかったら、自分でみずから学ぶか研修所へ行っていただくということの道もあろうかと思います。
 しかし、やはりそういう形じゃなくて、別の形で、いわゆるリーガルマインドを持っていろいろな仕事をやっていこうというふうに目指される方もおられるわけですね。そういう方については、まさにその国会のお仕事、こういうことをやられているということであれば、やはり同じような土壌が培われているというふうに私は理解をしております。
山花委員 ということは、今の御答弁ですと、今回の法案で、法廷で弁護活動をやろうとする人は研修所に行く、研修所に行っていない人は、国会議員で特例でやる人はADRだけやる、そういう担保があるわけですね。
山崎政府参考人 いや、もちろんどちらもできるわけでして、担保はございません。
山花委員 だから、やはりそれは問題じゃないですか。国会議員だけじゃないと思いますよ。特任検事のケースも同じく私はちょっと問題があると思っていて、ちゃんと研修をしていただいた方がいいと。
 先ほど来いろいろ御議論があって、中でも難しい試験をやっているし、経済事件なども取り扱っているという話でした。検察官の特別考試というのがありますね。筆記試験で、憲法とか民法とか刑法とか、確かに刑事訴訟は大変実務的な出題をされて、例えば、訴因変更の可否及び要否に関する考え方を整理して説明した上、次の事例についてその点を検討して述べよということで、随分細かな事例問題が過去数年にわたり出されています。恐らく、刑事訴訟についてはもともと詳しいでしょうし。ただ、民事訴訟の問題なんかを見ると、釈明権について説明せよとか、既判力の主観的範囲について説明せよとか、過去数年、一行問題ですね。
 一行問題だから簡単だ、易しいということを申し上げようというつもりはないですし、私は前職のときに、裁判所事務官1種の試験を受ける学生に対して、刑事訴訟は私はよくわからないんですけれども、民事訴訟は教えていましたので、1種の試験ですと、かなり、司法試験より難しいぐらいの問題が出ていますよ。さっき否認と抗弁のお話を少ししましたけれども、それを題材にしたようなことが択一の問題で出ていたりとか、あるいは筆記の問題だって、民事訴訟についてはかなり詳しい事例の問題が出されております。
 何を申し上げたいかというと、試験の問題だけ見てこれが簡単だ、易しいということは言えないということは、前そういう公務員の試験を受ける子たちを教えていましたので、合格した子たちを見ていても、それは、試験問題というのは競争率との兼ね合いがありますから、問題だけ見て簡単だ、易しいということは言えませんけれども、ただ、一つ言えることは、学生であれ仕事を持ちながら勉強する人であれ、およそ試験の勉強をしようとしたときはそれに合わせた勉強の仕方をしますよね。つまり、もっと言えば、民事訴訟について、検察官の特別考試の試験問題、過去を見る限りは、恐らく、要件事実について知らなければ、知識がなければ解けない問題なんというのは全く出されていないわけですよ。
 先ほどもお答えになっていましたけれども、たとえ経済事犯をやっていようが何であろうが、全く、刑事訴訟のときに訴追官の立場で調べようとする事実と、民事になれば、原告になれば被告になることもあります。被告側の弁護になったときに、訴訟上の陳述の意義もわからないような人が弁護人になっていたらまずいわけですよ。わからないかどうかわかりませんよ、ちゃんと勉強してやるという期待を持たれているかもしれませんけれども。
 しかし、研修制度とか修習制度というのは、実際はそれをやったってできない人もいる、できる人もいる。それはある程度の、優秀な方もいれば残念ながらそうではない方もいるかもしれないけれども、およそ資格に対する信頼を担保するには、これだけの修習を積みました、プログラムもこれだけこなしましたというのが、それを皆さんは信頼して先生、先生と言って、医者と弁護士なんというのは本当、その人に任せたらその人に命運を任せるしかないんですから。
 そういう修習をしない人が弁護士になるということについては大変疑問があるんですけれども、この方も修習というか、司法試験を受かって修習を積んでなった人と同程度の能力があるという担保はどこにあるんですか。
山崎政府参考人 先ほど、試験、検察官特別考試のことが御指摘がございました。私も過去に何年か試験委員をやっておりまして、まさにそこで言われております民事訴訟法の問題の作成、採点に当たっていた者でございます。
 確かに、記憶では、事例問題を出した記憶はございません。何々について論ぜよというものかもしれません。しかし、これは司法試験でも同じようなものもあるわけでございまして、その論述の仕方、理論構成の仕方、説得の仕方、こういうことも見るわけですね、もちろん知識もありますけれども。それで十分に優劣というのは判断はできますし、基本的には司法試験の採点と同じようなつもりでやっているわけでございます。
 それから、なぜ特任について、修習を何もしないで、こういう案をつくったのかということでございますけれども、先ほど申し上げました試験を経て、それからいわゆる司法修習を終わった検察官と同等の権限を持って現実の実務をやっているわけですね。これを五年以上やるということを前提にしておりまして、まさに法廷で弁護士と対等にやり合うわけでございます。やり合うと言うのはちょっと語弊があるかもしれませんけれども。そういうところで、訴訟上のやり方、こういうものは十分に熟知しているということになります。
 それから、民事について、では具体的にどういうやり方かというのは、それぞれ少し違いはもちろんあるんですけれども、基本的な考え方というのがわかっていれば法廷の対応は十分できるだろうということでございますので、そういう意味で修習は不要であるというふうに考えております。
山花委員 私、司法試験を受かってすぐの人がこの事務官の試験とかのを見せたら解けなかったというのを体験していますから。
 つまり、私は、司法試験の民事訴訟法というのもちょっとどうかと思っていて、要件事実についての問題というのは余り出されないんですよね。実際に合格した子に解かせると間違いましたよ、裁判所事務官の試験を。正答率低かったですよ。だけれども、研修所に行ってちゃんとやるから卒業した後仕事ができるのかなと思っていたんですけれども。要するに、質が全然違うと思うんですね。例えば特任検事から弁護士になったとして、刑事事件だけやるわけじゃないので、その点は非常に私は、今のお話でも必ずしも十分納得できるものではないというふうに思います。
 きょうは、ごめんなさい、公正取引委員会の方もお呼びしているので、ちょっとそれは時間が迫ってきているのでやりたいと思うんですが、まず法務大臣にお伺いしたいと思います。難しい話ではありません。
 おすし屋さんに行ってカウンターに座って、最近はおすし屋さんでもコハダが幾らとかマグロが幾らと出ていますけれども、全部時価としか書いていなかったら不安になりませんか。
森山国務大臣 そういうお店もあると思います。そういうところでは何となく心配になります。
山花委員 今回の弁護士法の改正で、現行の弁護士法三十三条二項八号の「弁護士の報酬に関する標準を示す規定。」というのが削除されまして、弁護士法の会則でこれぐらいの事件を請け負ってどれぐらい、一時間とか三十分とか法律相談したらこれぐらいだよという値段が削除されちゃうわけです。
 私は、利用する側からするとむしろそういうのがあった方がいいわけで、法務大臣も今、だから、おすし屋さんという例えがいいかどうかは別ですけれども、やはりある程度の目安があった方が、利用する側からすれば、これぐらいだったらこれぐらいの額かなということが目星がつきますから。
 もしかしたら法務大臣も御経験あるかもしれません。こういう仕事をしていますといろいろな陳情とかが来て、中には、これは弁護士さんに頼んだ方がいいですよというようなアドバイスをすると、まず最初に聞かれるのが幾らぐらいかかるんですかと、こういう話ですよね。ところが、今回の法改正では、弁護士会がこういうことを規定してはいけないと。
 聞くところによりますと、公正取引委員会の方から、そういうことではなくて違うやり方をしないといけないんじゃないかというアドバイスがあったやに聞いていますけれども、この点、どうなっているんでしょうか。
楢崎政府参考人 弁護士会に限らず、資格者団体というものがあるわけですけれども、資格者団体の中には法律によって報酬規定を定めるというふうな規定があったところもありますけれども、そういった規定が削除される。今回、弁護士法の改正によりまして報酬に関する規定が削除されるという方向で審議をされているわけでございますけれども、削除された場合には、弁護士会も事業者団体という側面があるわけでございますので、団体として、標準額とか目標額とか会員の収受する報酬についての共通の目安となるような基準を設定するといったことはカルテルにつながるということで、独占禁止法上問題となるという見解をガイドラインをつくりまして明らかにしているところでございます。
 先ほどおすし屋さんの例がございましたけれども、すし屋の団体が標準料金表をつくるということと、各すし店が個々に自社の店の値段を料金表をつくってそれを掲示するといったことは、独禁法上は区別して考えているところでございます。
山花委員 ただ、おすし屋さんは一生のうち何回か行くことがあると思うんです。だから、そうやって、あの店は高い割にはおいしくないからやめようとか、あの店は安いけれども大変いいネタを出すから行こう、それが自由主義の経済なのかなと思います。
 ただ、例えば東京に住んでいて会社を経営されている方だとか、そういう方であればいろいろな弁護士さんとおつき合いすることもあるかもしれません。ただ、民事事件のかなりの多くの、かなり多くと言うと言い過ぎかもしれませんけれども、多くを占める家事事件、遺産分割だとか離婚だとかそういうことについて、そう一生のうちに何回も離婚をする人というのは多くないですし、ましてや、それで弁護士さんにかかろうという人はそう多くないです。おおよそ裁判をするとか、裁判にいかなくても弁護士さんに仕事を依頼するというのは、普通に生活している人にとっては一生に一回あるかないかのことですから。
 これからは世の中が変わってくるかもしれません。司法改革で多くの法曹が出てきてもっと身近になれば、気軽に弁護士さんに相談して、場合によっては本当に気軽に、では、話し合いでうまくいかないから裁判で決めましょうという時代が来るかもしれませんけれども、少なくとも今の時点では、本当に弁護士さんに頼むといっても一回きりぐらいですし。そうすると、何かそこで、あの弁護士は高いとか安いとか、比べてみたらこうだったということは余り起こらないと思うんですよ。
 そうすると、競争原理で適正な額が出ていくだろうというのは、なかなかそうならないんじゃないのかな、そんな気がするんですけれども、例えばどういう形で、依頼する側は相場というのを知ればいいんでしょうか。
楢崎政府参考人 ガイドラインですべて報酬に関する団体の活動をいかぬと言っているわけじゃございませんで、さまざまな活動があるわけでございます。弁護士の個々の会員さんがこういった事件についてどれぐらいの報酬を受け取っているかという実勢を調べて、平均額はこれぐらいだ、あるいはそういったものを概括的にまとめて、それを一般の国民の方にわかりやすく提供する、そういった活動は許されるというふうにガイドラインでも書いているところでございます。
 そしてまた、今回、弁護士会におきましても、会員の報酬額について実態調査、アンケート調査をいたしまして、大体平均値はこれぐらいじゃないかといったことを、一般国民の方になかなかわかりにくい弁護士の報酬について調査結果を明らかにする、それが独禁法上問題がありますかどうかというふうなことも相談に来ておられまして、そういった打ち合わせをしているところでございます。
山花委員 時間ですので終わりますけれども、まだまだたくさん論点がありますので、十分な審議が必要であるということだけ申し上げて、終わりたいと思います。
山本委員長 次に、石原健太郎君。
石原(健)委員 簡易裁判所の管轄を拡大するように提案されておりますが、それを拡大しても、身近に弁護士がいない場合には国民の司法へのアクセスは必ずしも容易ではありません。現在、地方裁判所の本庁支部の管轄地域内で、弁護士が全くいないか、一人しかいないような地域は全国でどのくらいあるのでしょうか。
寺田政府参考人 弁護士会は、かねてからこの問題に非常に関心を持っておられまして、毎年統計をとっておられます。平成十四年の調べによりますと、地方裁判所の本庁支部の合計二百五十三の管轄区域のうち、弁護士さんが全くおられない地域、これはゼロでございますが、これが二十五地域、一名しかおられない地域が三十六地域ございます。
石原(健)委員 今おっしゃられたようなそうした地域には、これからどのように対応していけばよいかとお考えでしょうか。
寺田政府参考人 委員の問題意識と共通の問題意識でございますが、私どもといたしましても、身近に相談する相手がいないということは、司法制度の一番大事なところが欠けているというふうに思っているわけでございます。
 弁護士会も同様にお考えになっておられるわけでございまして、公設事務所等の試みでございますとか、さまざまな試みを弁護士会自身がおやりになっておられます。
 また、全体といたしまして司法制度改革の推進の中で法律家全体の層が厚くなるということは、おのずからそういう地域の解消にもつながっていく面があるわけでございまして、法科大学院の審議の中でもいろいろ御議論がありましたように、地方に法科大学院を置くというのもその一つの重要なポイントでもございます。また、これについては、さらに身近にいろいろな法律家を置くべくアクセスの面での改善を国としてもいろいろ考えていかなきゃならないんではないかということで、総理御自身もいろいろな提唱をなさっておられます。
 そういうことを受けとめて、これから施策を考えてまいりたい、このように考えております。
石原(健)委員 これから考えていくということですけれども、どのくらいの期間のうちに考えられる予定なんですか。
寺田政府参考人 これはなかなか諸条件がございますので、一概に何年ということは申し上げられないわけでございます。私どもといたしましては、この司法制度改革の中で、平成二十二年には法律家を毎年三千人出すという体制ができるわけだということが予定されているわけでございまして、そういうことも考えながら、全体のこういう面での改善を急ぎたい、このように考えております。
石原(健)委員 一方で、そうした司法へのアクセスということが心配されて、弁護士さんの配置なんかもなるべく充実しようというような考えもあるわけですけれども、簡易裁判所の方は整理統合が随分進んでいまして、大分、これは何年間の間なんですけれども百三十五カ所ぐらいが廃止されて、今は四百三十八カ所ですか、こうした片一方で簡易裁判所を縮小して、片一方では弁護士が要るぞというのは、ちょっと考えが矛盾しているようにも思うんですけれども、その辺についてはいかがお考えでしょうか。
山崎政府参考人 確かに、統廃合ということを行っておりますけれども、これは裁判所の方もさまざまな事情を考えながら、統廃合するところと、新しくつくっていくという新設、こういうものと両方あろうかと思います。
 私ども、現在、本部の方では司法ネット構想ということで今検討を進めておりますけれども、どういう地域においても、民事、刑事を問わずに、さまざまな法律情報、あるいはサービスが受けられるようにということでございます。
 簡易裁判所を統合してまいりますと、なくなった地域等について、法律情報を得ようとしてもなかなか得られないという場合があろうかと思いますけれども、そういうところに人を配置するかどうかはちょっと別としても、何らかの形で、今、インターネットとかさまざまなものでアクセスできるようなシステムがございますので、そういうものを通じながら情報を得られるように、そういうことはきちっとやっていきたい。
 具体的にどこにどういうふうにということはまだ決まっておりませんけれども、そういうような頭でやっていきたいということでございます。
石原(健)委員 この法案では、司法試験に合格した後、法務大臣は企業法務等で七年以上従事した者については司法修習を経なくても一定の研修を要件として弁護士資格を認めるとされています。法務大臣はとありますが、実務はどのような部署のどのような立場の人が認定事務を行うのでしょうか。
寺田政府参考人 これは、きちっとした形では、法律ができた後に省内でいろいろ議論して決めるべきことでございますので、現在のところ、まだ決まっているわけではございません。
 ただ、司法制度一般につきましては、私ども司法法制部というものが所管しておりまして、外国法事務弁護士の問題でございますとか、あるいは弁護士法に関連するサービサーの認定の業務等をいたしておりますので、私どもが一つ候補としては考えられるのではないかというふうに想定はいたしております。
石原(健)委員 一定の研修とありますけれども、これはどのような内容を考えておいででしょうか。
山崎政府参考人 これにつきましても、細部についてはこれから検討するということになろうかと思いますが、大きな方針でございますけれども、集合研修と個別研修に分けるというふうに考えております。
 まず、集合研修でございますけれども、民事、刑事実務の講義、先ほど山花委員からも御質問ございましたけれども、要件事実とか、そういうものの基本的なものとか、それ以外のものもございますけれども、そういうものの講義、あるいは、現実に起こり得る事例というんですかね、想定をいたしまして、それについて起案を含む演習等やっていただくとか、いわゆるここは座学の基本的な部分であるということでございます。
 それから、個別研修でございますけれども、これは現実に体験していただこうということでございまして、個別の弁護士事務所、ここへ行っていただいて、実際に目で見て体験をしていただく。この二つから成り立つということでございます。
 現在、その主催団体について省令等で定めることになりますけれども、これは、弁護士資格を最終的に取るという形になりますので、今のところは日弁連にお願いしようということで予定をしているところでございます。
石原(健)委員 期間はどのくらいになるんですか。
山崎政府参考人 期間につきましては、研修日程の組み方、例えば、土曜、日曜、夜間を使うかとか、それによって日数が変わってくることになるわけでございますけれども、ちょっと現時点でそこをどうするかということ、確たるものは決まっておりません。
 時間数として、司法書士に簡易裁判所での訴訟代理権を付与するということから、現在もう研修が始まっているようでございますけれども、ここの研修、百時間を要求しているということでございまして、私どももその辺を今考えているところということでございます。
石原(健)委員 この法案では、弁護士に対する綱紀・懲戒制度についても改正を行うことになっています。最近において、弁護士に対する懲戒の申し立て件数や実際に懲戒を受けた人数はどのくらいか、教えてください。
寺田政府参考人 これも、日本弁護士連合会、日弁連でお調べになった数字を申し上げます。
 平成十四年で申し上げますと、弁護士会の懲戒事件の新受件数、つまり新しく懲戒の申し立てがある事件でございますが、それが八百四十件でございまして、それに対して懲戒処分が行われた例は六十六名でございます。多くは戒告、業務停止等でございます。退会、除名については、いずれも年数件にとどまっております。懲戒は、残念ながら、平成十四年に向かって非常にふえてきているというのが実情でございます。
石原(健)委員 また、法案の中には、必要な場合、部会を置くとありますけれども、この部会の趣旨は何なんでしょうか。
山崎政府参考人 結論的に言えば、審査の迅速化を図るということでございます。
 現在、一つの単位で多くのものを審査しているわけでございますけれども、これを幾つかの部に分けて、その部で平等にやってもよろしいですし、ある特定のものについては特定の部でやっていただく、別のものは別の部でやっていただく、どういうふうに分けてやっていただいても結構でございますが、審査する機関がふえればそれだけ迅速化する、こういうことから部を設けるということでございます。
石原(健)委員 弁護士以外の委員を新たに加えるようになっておりますけれども、その理由をお聞かせください。
山崎政府参考人 現行法でございますけれども、現行法では綱紀委員会がございます。この綱紀委員会は懲戒相当かどうかを判断するものでございますけれども、綱紀委員会は、弁護士会の所属弁護士のみによって構成をされております。やはり、こういう構成でやると、同僚のみによる調査では仲間同士で手心を加えたのではないか、そういうふうに疑いを受けるおそれもございまして、客観性をどれだけ保てるかという問題があるわけでございます。したがいまして、弁護士以外の委員として、裁判官、検察官、学識経験者、こういうものを綱紀委員会に加わっていただいて、より一層公正な調査、判断が行われるということ、これの客観的な担保をするという形をとっているわけでございます。
 なお、現在も、運用上の問題で、参与員という形で弁護士以外の方もお入りになっているようでございますけれども、最終的には表決権がないという形になっておりますが、今度は表決権も持つということでございます。
石原(健)委員 また、新たに綱紀審査会というものが設置されるようですけれども、また新たにつくらなくてはならない何らかの理由というものがあるんでしょうか。
山崎政府参考人 通常の形で申し上げますと、まず、単位の弁護士会、ここに、例えば依頼者の方が懲戒申し立てをいたします。綱紀委員会で審査をいたします。そこで、懲戒不相当であるという結論が出たといたします。依頼者は不満でしょうから、異議申し立てを日弁連にいたすわけでございます。日弁連の方で判断をしてやはり懲戒不相当という結論が出た場合には、現在の制度のもとでは、それ以上不服を申し立てることができない、そこで終わりということでございます。
 先ほども申し上げましたけれども、構成員が全部弁護士でできているわけでございますので、そういう中で不服申し立てもそこで終わりということになると、やはり仲間内で守っているんじゃないかということにもなるわけでございます。こういうようなところをもう少し客観性を持たせた方がやはり国民の納得いく結論になるだろうということから、日弁連がその決定を下して、あなたの申し出は却下いたしますと言っても、もう一つ上に綱紀審査会というものを設けまして、もう一度不服審査の機会を与えるということです。
 この綱紀審査会には弁護士等の法律家は入らないということでございまして、法曹三者を除く学識経験者のみで構成をされる。そこで最終的に懲戒する必要がないという客観的な御判断をいただいたら、それはもうあきらめていただく。しかし、そこで、よく考えてみたら、やはり懲戒が相当であるということになれば、懲戒の手続に入らなければならない、こういう拘束があるということでございます。
石原(健)委員 綱紀委員会だけの審査で不服な場合、これは裁判に訴えるという方法もあるかと思うんですけれども、やはり裁判よりはこうした審査会の方が公正にできるというようなお考えなんでしょうか。
山崎政府参考人 現在は、直接裁判を起こすというルートがございません。
石原(健)委員 直接裁判を起こす何がないんですか。(山崎政府参考人「方法」と呼ぶ)方法。
山崎政府参考人 失礼いたしました。起こせないということでございます。
石原(健)委員 わかりました。
 この法案では、弁護士の報酬規定を弁護士会の会則の必要的記載事項から削除することになっております。その理由は何でしょうか。また、国民が弁護士報酬について予想するのが難しくなるのではないでしょうか。
山崎政府参考人 先ほども公正取引委員会の方から御答弁もございましたけれども、報酬規定が存在いたしますと、弁護士間の公正な競争を阻害する、例えば、こういうものについては手数料幾らであるというふうに決めたときに、それ以下に下げられない、こういう働きをするおそれがあるじゃないか、それから、ある幅をもってこの範囲内でということをやれば、その幅を前後に超えることもできなくなる働きをするではないか、そうなるとやはり公正な競争を阻害するのではないかという御指摘はいろいろございまして、最終的に会則等から報酬規定を削除するという選択をしたわけでございます。最終的には、報酬は弁護士間の適切な競争と国民の自由な選択にゆだねる、こういうふうになるわけでございます。
 ただ、こうなりますと、国民が今度逆に迷ってしまうという問題も生じてしまいます。そこはきちっとした手当てをせざるを得ないということから、現在、日弁連の方で、いろいろ運用の問題、それから会則で義務づけるということもございますけれども、これを今いろいろ考えておりまして、まず一つは、個々の弁護士の報酬基準の作成、それと、これを備え置くということ。個々でつくってそれをちゃんと備え置かなければならないということです、見えるようにしておくということですね。それから、弁護士の依頼者に対する契約の前の報酬説明義務。これは、必ず説明しなければならないということですね。それから、報酬契約書の作成義務。こういうものをきちっと、義務として会則上うたうということで、今検討が進められております。
 これだけではまだ情報が不十分だということも考えられまして、日弁連としては、全国の各弁護士の方に、自分の報酬は、こういうものについてどのぐらいのものをやっているかということを全部アンケートをとりまして、それをまとめまして、どういう形かはちょっとまだ決まっていないようですけれども、一般の方がそれを見て、大体どういうような分布になっているかがわかるようにして情報を提供するということを考えているようでございます。
 こういうものによって、依頼する国民が迷惑をこうむらない、迷わないようにしようということを考えております。
石原(健)委員 弁護士法上の公務就任の制限が撤廃され、また営利業務従事の制限が緩和されるとのことですけれども、従来制限されていた理由と、緩和による弊害のおそれはないのかどうか、御説明ください。
山崎政府参考人 公務就任の制限の撤廃と、それから営利業務の制限の撤廃ということになるわけですが、最初の点につきましては、公務に就任いたしますと、それに専念する必要がある、それを求められるということから、弁護士業務の遂行がおろそかになるのではないか、こういう事態が生じるということを防ぐために、事前に規制をしていたということでございます。
 それから、営利業務の制限でございますけれども、弁護士が営利業務に従事するということを何ら制約なく自由に認めるという場合には、弁護士の品位と信用の保持に十全を期しがたくなるおそれがある、こういうふうに考えたところから、現在規制を課しているということになるわけでございます。
 今後、弁護士が社会のさまざまなところで活躍をいただく、そういう時代が来ているということでございまして、そういうことを考えまして事前の規制というものを撤廃いたしまして、もし、そういう撤廃をしていろいろ行動していただいて、問題があれば、事後に厳しくチェックをするということから、事後チェック型の考え方に変えようということでございます。
 先ほど、懲戒手続の改正の問題、まさにこれにも思想としてはマッチするわけでございますので、今度厳しくやることになりますけれども、こういうもので厳しい対処をしていく、こういうふうに発想を変えたということでございます。
石原(健)委員 外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法四十九条の二の関係で、「不当な関与」という言葉が使われておりますけれども、不当な関与とは何なのか、お聞かせください。
山崎政府参考人 この四十九条の二の「不当な関与」でございますけれども、外国法事務弁護士、外弁と言わせていただきますが、外弁が、外国法共同事業の相手である日本弁護士あるいは弁護士法人でございますけれども、これがみずから行う法律事務に介入することによって外弁による権限逸脱行為と評価されるという形態、これが不当な関与ということでございます。
 ちょっと具体的に申し上げますと、例えば、外国法共同事業のメンバーでございます弁護士が、我が国の刑事事件を処理するに当たりまして、その相手方でございます外弁が、裁判所へ提出する書類の内容に指示を与えて、その指示に従った内容の書類を提出させるというようなことがあれば、これはまさに外弁としては権限逸脱行為と評価されるわけでございまして、これは不当な関与に当たる、こういうことでございます。
 逆に、では、不当に当たらない場合はどういうことかということも問題になりますけれども、例えば、日本の弁護士が日本法の解釈に関しまして鑑定書を作成するという場合に、参考となる外国の判例とか法令、こういうものを検索して提供するということを外弁がやることがございます。それから、弁護士と依頼者との間のコミュニケーション、例えば依頼者が外国人である場合、そういう場合のコミュニケーションを円滑に図るために通訳をするとか、そういうようなお手伝いをするということで、実質的に日本法に関する法律事務を取り扱ったと評価されない形で関与をするということであれば、これは不当な関与ではない、こういうことでございます。
石原(健)委員 最高裁判所にお尋ねいたします。
 どのくらいの人数の弁護士を民事調停官や家事調停官に任命すると考えておられるのか、また、どのくらいの案件がそうした方々にゆだねられると予想しておいでなのか、教えてください。
中山最高裁判所長官代理者 調停官制度についてお尋ねでございますけれども、平成十六年の一月から発足させたいと思っております。最初の規模は三十名程度を考えているところでございます。
 今後それをどこまで拡大するかということでございますが、午前中も答弁申し上げましたけれども、これは弁護士任官の推進、それから調停事件の活性化、さらなる充実、こういったものを目的としたものでございますが、果たしてどのような実績が上がってくるか、成果が上がってくるか、そういうところも定かに見定めなければならないと思っておりまして、拡大したいという気持ちはございますが、はっきりどこまで広げていくかということはまだ言えない状況でございます。
 どんな案件を弁護士さんに担当していただくかということでございますが、これは弁護士としての知識経験というものがフルに活用できるようなものということで、普通の調停事件の中でもかなり骨のあるものということを考えております。したがって、件数で言うのはなかなか難しいかと思いますが、民事調停事件でいいますと、損害賠償事件あるいは不動産事件、家事調停事件では財産分与などが問題となる事件、遺留分減殺請求事件などが考えられるわけでございます。
石原(健)委員 終わります。ありがとうございました。
山本委員長 次に、木島日出夫君。
木島委員 日本共産党の木島日出夫です。
 最初に、法務大臣と検察権の行使、それから法務大臣の法務行政に対する指揮権等の問題について、法務大臣の基本的認識をお伺いしておきます。
 検察庁法には第十四条という規定がありまして、「法務大臣は、第四条から第六条」これは検察事務ですね「に規定する検察官の事務に関し、検察官を一般に指揮監督することができる。但し、個々の事件の取調又は処分については、検事総長のみを指揮することができる。」大変有名な条文であります。昔、疑獄事件に対していろいろな取りざたがされた基本条文です。法務大臣はどのようにこの条文を理解しておりますか。
森山国務大臣 突然のお尋ねでございますので一般的なことしかお答えできませんが、そのような趣旨の条文があるということは承知しておりまして、その辺は十分わきまえなければいけないと考えております。
木島委員 具体的に聞きますが、全国各地の検察当局が検察権の行使に当たって不当な検察権を行使した場合、しようとしている場合、まさにしつつある場合、逆に、当然やるべき正当な検察権の行使を全くやろうとしない場合、そういう場合は法務大臣としてはどうされますか。この検察庁法十四条の趣旨をも踏まえて、あなた、法務大臣としてはどうされますか。
森山国務大臣 先生のおっしゃるような、そのような事実があるかどうか確かめることがまず必要だと思いますが、もし万一そういうことがあれば、それは非常に困ったことだということで、しかるべき指示をしなければいけないと思います。
木島委員 法務大臣の指揮下の一つに矯正行政がありますね、矯正行政、刑務行政。まさに名古屋刑務所で起きた問題は、法務大臣の指揮下にある矯正行政の中で起きた問題であります。違法なことが行われていたかもしれない、正しいことが行われていなかったのではないかと、さまざまな問題が昨年来、今日まで指摘をされて、この法務委員会で論議をしてきました。
 その中の一つとして名古屋刑務所の平成十三年十二月十四日のホース水放水による暴行陵虐、今、刑事事件として致死事件になっています、検察が介入して、刑事事件として名古屋の裁判所に立件されています。これも検察行政の一つの大きな仕事でありまして、大きくは検察官一体の原則として検事総長が指揮できる範囲でありますが、それに対して法務大臣も無関係ではない。検察庁法第十四条が適用になるわけでありますが、こういう具体的な問題が目の前にあるわけです。
 矯正行政というのは法務大臣が直接指揮監督すべき行政の一つ、そういう中で起きた非、間違い、刑事事件にまで発展している間違い、重なり合っているんです。どうしたらいいんでしょうか。
森山国務大臣 まず真相を確かめるということが大事だと思います。現在は公判進行中でございますので、その推移を見守っていきたいと思います。
木島委員 私は、法務行政の一つの中核である一番下のところを支えているのは矯正行政、矯正行政が正しく行われているかというその監督、間違っていたときには真相をただして、真相を明らかにして正す。それは、間違いの中にたまたま刑事事件になったものがあるかどうか関係なく、それは法務大臣、あなたのやる仕事じゃないですかということを聞いているんです。
森山国務大臣 ちょっと意味が十分わからないんでございますが、もう一度おっしゃっていただけないでしょうか。
木島委員 あなたは昨年来、この問題を衆参両院の法務委員会で質問され、特にことしになってから衆議院予算委員会の場で徹底した質問を受けたその答弁の中に、名古屋の刑務所で起きたホース水放水による事件は刑事事件になっている、検察が入っている、さわるわけにはいかない、そういうスタンスで一貫してきたんじゃないでしょうか。
 私は、法務大臣の答弁をずっともう一回精査して読み直してみましたが、法務大臣のスタンスはそういうスタンスとしか受けとめられない。そういう基本的なスタンス、気持ちで法務大臣は、この名古屋のホース水放水による刑事事件、まさに検察が動きました、立件しました、裁判中です、微妙な裁判中です、そういうものはもうさわれないんだという気持ちで昨年から今日までおられることは事実じゃないかと聞いているんですが、どうなんでしょうか。いいか悪いかはまた別に論議したいと思うんです。
森山国務大臣 基本的には今先生がお述べになったような考え方でございます。
木島委員 だから、私はそれは根本的な間違いだと思っているんです。法務大臣の任務放棄だと見ているんです。矯正行政で起きている事故、事実です。たまたまそれが結果的に刑事事件になって起訴された、それはともかくとして、矯正行政の中で起きた、矯正行政そのもので発生した非、間違いなんですから、法務大臣は行政の最高責任者としてすべての真相を明らかにして、事実を国政調査権を持っている国会である我が法務委員会に報告する義務がある。
 一部が刑事事件になって立件されているからさわれないんだ、報告できないんだというのは、根本的なところで間違っているんじゃないかと私は思うんですが、どうでしょうか。
森山国務大臣 矯正の仕事の中で起こった事件でございますということはおっしゃるとおりでございますが、それが刑事事件となって今裁判にかかっているということも事実でございます。
 真相究明のためには、一番わかりやすい方法といいますか一番いい方法は、その裁判における検事の調べ、あるいは証人の証言その他のようなものがございますので、それらの推移を見まして、その結果、真相が明らかになるということになると思いますので、それを見守っているということでございます。
木島委員 ですから、名古屋刑務所で起きたいろいろ矯正行政上の諸問題の中から、一つ事件が浮き出してきた、平成十三年十二月十四日のホース水放水による暴行陵虐という刑事事件が形づくられてきた。
 これに対して、名古屋地方検察庁が、検察権の発動として、徹底的に真相を明らかにする、被疑者を取り調べる、刑事鑑定もする。そして、その被疑者に対して公務員暴行陵虐罪が適用できる、これは非常に重い罪です、と確信をするに足る証拠が、名古屋地検、検察当局が握ったときには、堂々と名古屋の地方裁判所に立件すりゃいい。
 その名古屋の地方検察庁の検察行政に対しては、検察官一体の原則がありますから、名古屋高検も指揮できます、最高検察庁も指揮できます。その名古屋地検、検察の一体の原則のもとに最高検をピラミッドにする、その検察権の行使のために動いた名古屋地検が乙丸その他を起訴した。その事件に関しては、捜査をし、立件をし、公判を維持し、有罪を獲得するために全力を尽くす検察事務ですね、個別的、具体的な検察事務です、それには法務大臣は直接指揮はできない。それが、検察庁法第十四条、法務大臣は、第四条及び第六条に規定する検察官の事務に関し、検察官を一般に指揮監督できるが、ただし、個々の事件の取り調べ、処分については検事総長のみを指揮することができるという意味。
 ですから、法務大臣が、名古屋で何か事件が起きた、公務員暴行陵虐事件になりそうだ、名古屋の地検が捜査を始めた、そういう局面において、去年の十月からことしの二月の局面です、そういう検察がやっている事務に関して、直接検察からどうなっているんだということを聞くことはできない、検察庁法十四条から許されない。そういう場合には、法務大臣たる者は、検事総長にのみ一般指揮ができるということじゃないかと私は思うんですが、あなたが、法務大臣が、ことしの二月ですか、国会で答弁した答弁を精査いたしますと、逆の答弁を、あなた、法務大臣はしているじゃないかと思うんですよね。
 どうでしょうか、私のこの区分け、間違っているでしょうか。
森山国務大臣 基本的には、先生がおっしゃったとおりだと思います。私が二月にどのようなことを申したのか、取り上げていらっしゃるのかわかりませんが、私自身も、その方針とほとんど同じ、変わらない方針をとっているつもりでございます。
木島委員 それで、そういう区分けをやはりきちっと改めてしていただいた上で、重ねて、法務大臣と矯正行政の筋で、今法務大臣が何をやるべきか、国会に対してどういう責務を持っているかということをお聞きしたいんです。
 一部刑事事件になりました。検察庁法十四条のもとでの制約がありますけれども、地検は起訴して頑張っているでしょう、それには法務大臣たるあなたもさわれないでしょう。しかし、本当に、それはそれで、名古屋の地裁で厳密な証拠調べの上に裁判が下されるべき性格ですよ。
 その筋と別筋で矯正行政があるわけですから、あったわけですから、矯正行政が正しかったかどうか、現場の矯正官たちが正しくやったか。
 ホース水をかけた、それが結果として死に至ったか、そういう事態を刑務所長は隠した。それで、名古屋矯正管区長にもうそを報告した。法務省本省にもうそを報告した。ずっとうその答弁を法務大臣も国会にし続けてきた。こういう流れがあるわけなんです。
 それは、一部がどんなに重大な事件として検察庁に起訴されていようとも、法務行政ですから、法務行政の最高責任者たる法務大臣が、刑事事件とは切り離してきちっと全容を明らかにして、裁判所がどうかの話じゃないです、法務行政の責任者として真相を明らかにして、行政の最高責任者として真実を当法務委員会に、国会に報告義務が、行政の最高責任者たる法務大臣はその筋であるんじゃないかと思うんですが、どうですか。
森山国務大臣 それは、おっしゃるとおりだと思います。基本的には仰せのとおりでございまして、私もそう思いましたので、矯正行政全体として、公判になっているものは別といたしまして、矯正全体といたしまして問題がなかったかということを、短時間ではありましたが、できるだけ大勢の手をかりて検討いたしまして、調査検討委員会はまさにその機関でございますけれども、その調査検討委員会を通じましていろいろ調査をし、その結果、わかったこと、そして問題であると思ったこと、今すぐ直せること、長時間かけなければいけないこと、あるいは多くの方の知恵をかりなければいけないこと、いろいろありますが、それらを仕分けして、今できることはすぐにやろうということで、幾つか決めて、もう既にやっておりますものもございます。
 また、大局的な面では、皆さんのお知恵をかりなければいけない、世間の御意見を十分伺った上でひとりよがりにならないようにしなければいけないということで行刑改革会議を始めまして、既にそれぞれの方が研究し、検討し、お知恵を拝借しようとしているところでございます。
木島委員 法務省として、法務大臣として、矯正行政に起こった諸問題を調査して、その上で国政調査権を持つ国会にも報告をした、その一つが確かに平成十五年三月三十一日のこの行刑運営の実情に関する中間報告だったと私は思うんです。
 その中には、名古屋の事件が大変だというので、三つの事件を、きちっと調査をそれなりにされて、これは法務行政として調査をされて、決して裁判にさわるわけじゃないですね、当国会に出したわけですね。そういう位置づけだとして私も受け取っているわけです。
 ただ、その中に、午前中も質疑しましたが、皆さんのこの三月三十一日時点の調査結果によりますと、名古屋のホース水放水事件の一こまとして、「受刑者Xの出血の発見状況について、同人が着用していた下着に出血が認められたとの客観的事実に反する事実が通報され、消防用ホースによる放水の事実は隠蔽され、また、肛門部の裂傷は、受刑者Xが自分で直腸を傷つけたものと推定されるとの誤った推定が伝えられている。」こういうそれなりの、その時点での、法務省としての、矯正行政としての事実をつかんで報告してきたんだと思うんですよ。そういうふうに受けとめるべきだと思うんですね。
 ところが、先ほどもお話ししましたように、当法務委員会で、直接当時のことに一部関与していたであろう刑務官三井さんをお呼びして、ここで参考人として陳述してもらいましたら、自分が血痕のついたズボンと下着を発見したんだ、保管を命じておったんだという陳述をされたんですよ。法務大臣たる森山さんが、法務行政の責任として事実を調査されて国会に報告された一部の中心的な部分が覆されるような事実陳述がここでなされたんですよね、おととい。
 それで、三井刑務官は、どうですか、去年の十月の時点で法務省矯正局から事実を調べられた、自分はその真実を矯正に述べた、ここでそこまで言ったんです。そうすると、法務当局が国会に出した、ことし三月三十一日の報告書と決定的に違うでしょう。そういう局面に今あるわけです。どうされます。
森山国務大臣 先ほど私も申し上げたところでございますけれども、参考人としての話をビデオで見まして、私も、ちょっと違うのではないかと思いまして、どういういきさつがあったのか、どういうふうに調べたのかということを聞いたわけでございます。
 それは、三月三十一日付の報告をまとめた人たちの調べた時点ではそのように把握していたようでございまして、さらにもう一度確認いたしましたところ、その調査を、中間報告をつくった人たちの聴取したところでは、二度ほど調べたわけでございますが、一回は革手錠のことであった、もう一つは、ホースを用いて保護房の清掃状況についての内容であったというようなことがわかりまして、これは、その当時、この問題そのものについて聞いたのではなかったのかなということがわかったんですが、おとといの話によってまた新しい事実がもしもわかるんだったらと思いまして、同じ矯正行政の中にいる三井さんのことだから、こちらから、来てもらうか、あるいは伺うかしてもう一度聞いたらどうですかということを言ったんですが、そうしますと、三井さんに対する法務省からのプレッシャーがかかったのではないかというふうに誤解される心配もあるし、今のところ、すぐに何かをしてもう一度聞き合わせるということはしにくいという話を聞いたところでございまして、残念ながら、私の頭の中でも、食い違ったまま、そのまま残っているわけでございます。
木島委員 この問題、非常に悩ましい問題なんですよね。今まさに、公務員暴行陵虐致死事件という重大な事件が名古屋地検によって名古屋地裁に起訴されて、証拠調べがいよいよ始まろうとしているというのが一つあるんですね。一方、それは矯正行政の問題だと。
 我々法務委員会としては、やはり矯正行政の問題をたださなきゃいかぬ。事実をつかんだ上で、間違っているところがどこか、責任の所在もはっきりさせて、矯正行政を正すべき方向で政策展開しないといかぬ。しかし、その中核は、やはり真実を明らかにしなければいかぬわけですね。
 今、真実を明らかにしようとすると、下手をすると、今言ったように証人にさわらざるを得ない、さわったら裁判に影響してくるという非常に悩ましい状況に我が国会も置かれていると思うんですが、私は、まさにむしろそれを打開する一つの筋としては、法務省としても、刑事事件にどうこうという、結果的になるかどうかは別ですよ、しかし、刑事事件を有罪に持っていこう、無罪に持っていこうということじゃなくて、本当に、真実、矯正行政で何が起きたのかという観点から、法務大臣が矯正当局を指揮して、これは間違いがたくさんあるように私は思いますし、調査不十分のところが幾つも私の質問によってももう浮き出してきていますから、ビデオの状況がどうだったかも一つも全然書いてないわけですから、書いてないというか、真実だと思えない部分がたくさんあって、本当に調査は不十分ですから、刑事事件をどうこうしようなんということにはならぬように、けじめだけはつけた上で、名古屋三事件の真相解明を矯正行政としてきちっとして、報告書を出し直すべきじゃないかと思うんですが、どうでしょうか。
森山国務大臣 おっしゃるとおり、そのようなことができればとてもいいと思っておりますし、その報告書は、ちゃんとタイトルに書いてありますように、中間報告でございます。時間的にも大変短かったこともあり、できるだけ早くまとめなければということで、大勢の人が協力してやったことではございますけれども、その間には食い違いや抜け落ちたところがあるのかもしれません、また、急いだ余りに思い違ったところもあるのかもしれないとも思いますので、もう一度真相をさらに明らかにするということは当然しなければいけないと思いますが、それが公判の証人等に差しさわりがあるようでは非常に困る。
 その間のけじめをつけてと先生おっしゃいますが、なかなかそのけじめをつけることが難しゅうございまして、特にその件についてはですね。ですから、今そういうことにさわらないでできる限りのことをぜひやって、改めて最終的な報告をいずれ出さなければならないと思っております。
木島委員 この委員会では、河村委員から御指摘のように、検察権の行使そのものが間違いだという指摘で、ずっとそういう立場で質問されているんですね。
 ここ、裁判所じゃないですから。裁判所にかわるものじゃ絶対いかぬと思いますし、この法務委員会が、裁判間違っているとか、有罪にすべきだとか無罪にすべきだということで始まっていったら、私は間違うと思うんです、三権分立に反すると思うんですよ。
 そういう立場ではなくて、矯正行政が正しかったかどうかの筋できちっと調査を徹底して、報告を我が法務委員会、国会に出すということと、もう一つの調査の筋として、検察行政が適正に行使されたかどうかが国会から投げかけられているんですから、それは国会としては国政調査権の対象です。そうでしょう。検察行政が正しく行使されたかどうかも、これは法務行政の一つです。それは国会としては国政調査権あります。それはいいですね。その一般論はいいですね、一般論として。
森山国務大臣 一般論としては、おっしゃるとおりだと思います。
木島委員 ですから、検察行政が、実は私はきょうここで、もう時間になっちゃっているんですが、この問題だけじゃなくて、去る一斉地方選挙で、大分で、我が党の市会議員が最高点で当選した直後に逮捕される。事前に戸別訪問と文書配布だと。告示後じゃないですよ、告示よりはるか前。そして、ずっと勾留がいまだに続いておる。
 そして既に、一つだけ指摘しておきますと、その自治体では第一回の議会が招集された。議長選出その他の重要な手続があるということで、せめてその日は勾留を一時とめて、住民から選ばれた権限を行使させてくれという申し立てもしましたが、否定された。今日その状況があるわけです。
 きょうは私は、もう時間ですから論争しません。きょうは時間ですから論争しませんが、一つだけ。大体この二十年、現職の政治家、議員が選挙の告示前に文書配布と戸別訪問で逮捕され、起訴された例が、この二十年間一体幾つあるんだ、調べてきてくれとお願いしておきました。幾つありますか。法務大臣、聞いていないですか。
森山国務大臣 その点については、私聞いておりませんので、わかりません。
木島委員 私は、中身はきょうは触れませんが、時間ですから終わりますが、もう戸別訪問とか文書頒布というのは解禁すべきだということで、国際自由人権規約の委員会からも我が政府に対して、公職選挙法のその二つの条文はなくせという勧告まで突きつけられている、そういう代物です。ここ十年来、その罪が使われて立件された例は、私、寡聞にして知りません。
 今回の、今、現にまだ動いている、捜査中の、身柄をとられている最中のこの大分で起きた事件は、まことに許すことのできない不当な検察権の行使だと、この次論じますが、思いますので、昨日私は、最高検に対して直ちに釈放せよと要求をしてまいりました。そういう不当な検察権が行使されたときには、法務大臣として、検事総長を通じて一般指導をしっかりしてもらいたいという、きょう要求だけはして、質問を終わります。
山本委員長 次に、保坂展人君。
保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。
 私も、先ほど同僚委員からも出ていましたけれども、一括にして出すということで、これは事務局長に簡潔に言っていただきたいのですが、きっちりした審議をすることから考えても、この法務委員会でも例えば外弁法などは前回単独で審査をいたしましたね、そういうことから考えると、こうやってまとめてホッチキスでとめられると、それこそ賛否が分かれたりする場合に非常にやりにくい、審議も尽くしにくいと思いますけれども、いかがですか。
山崎政府参考人 きょうは午前中から、どうして一括法としてまとめたのかという御質問がございまして、お答えを申し上げてまいりましたけれども、それは、司法を国民に身近なものにするということを大きな目的といたしまして、司法制度に対する国民の多様かつ広範な要請にこたえよう、こういう統一の目的があるということから、その趣旨、目的を同じくするものを一括したということでございます。
 ただ、そうだからといって、国会の御審議は、またこれは国会でお決めになることでございますので、その内容については慎重に御審議をいただき、その上で御可決をいただきたいということでございます。
保坂(展)委員 これはちょっとやりにくいですね、本当に。一つでも反対のところがあれば反対しなければいけなくなりますからね。
 裁判所のあり方の問題ですけれども、簡易裁判所の実態を最高裁に伺いたいのです。
 これはかなり消費者金融や商工ローンの取り立て機関と化してしまっているのじゃないか。判決なども当事者もいないところで行われるのがほとんどだと。これはかなり今、やみ金対策の超党派の取り組みも必要だという要請を受けて各党動いていると思うんですが、どうでしょうか。現状、例えば東京に限ってみて、どのぐらいの件数、そういった取り立ての事件が簡裁に集まっているのか。何パーセントぐらい、何件ぐらいなんですか。
中山最高裁判所長官代理者 平成十四年に簡易裁判所に申し立てられた民事通常訴訟事件のうち九八%が金銭請求事件であり、いわゆるクレジット、サラ金事件である貸し金、立てかえ金、求償金を合わせた事件数はそのうちの約七〇%であります。もちろんこの七〇%の中には一般市民間の事件も一部含まれておりますが、大多数は今議員がおっしゃったところです。
 さらに、東京簡裁についていいますと、これはやはり、合意管轄といいますか、東京簡裁をそこの管轄とすると契約書に盛り込まれているということもあり、その比率はさらに高まっているのではないかというふうに思っております。
保坂(展)委員 そうすると、こうやって金額を上げれば、当然、件数が減るということはないわけですね。十分なんですか、人員の体制は。
中山最高裁判所長官代理者 簡裁全体として見ますると、平均審理期間は二カ月ということになっておりまして、地裁の平均審理期間が八・八カ月でありますから、簡裁が簡易迅速な事件についてこれをスピーディーに解決するという要請は、目下のところ十分果たしてきているというふうにまず見ております。
 今回、事件数として約二万件が簡裁の方に動くということでありますけれども、簡裁全体の数に比べれば、それはそれほどの事件ではないというところであります。
 ただ、これまでの総額、事物管轄の制度というものがどういう考え方でなされてきたかといいますれば、それは、金額が高くなればなるほど事件は複雑になってくるものだろう、こういう経験則に基づいてなされてきたはずでございますから、これが九十万から百四十万になれば、場合によっては、それが質的な変換というようなところまで動いてくるかもしれない。
 そういうところは、今後簡裁がどんなふうに、今の審理期間が非常に延びてくるとかあるいは審理に非常に苦労してくるとか、そういったようなところはないかどうかということをきめ細かく見ていく必要があると思いますし、また、それでもし仮にそういった病理現象があらわれるとすれば、それに対して適切な対応策、人的体制等をきちんと組んでいかなければいけないというふうに思っていることだけは申し上げておきたいと思います。
保坂(展)委員 最後のところ一言言っていただければそれでよかったのですけれども、率直なところ、もう少しきちっと人手が欲しいということを余りおっしゃらないんですね。十分な体制でということも言うのですけれども、そこはなかなかわかりにくいと思います。
 事務局の方にお聞きしますけれども、今回、民事調停、家事調停で、いわゆる非常勤裁判官、非常勤の裁判官、これは弁護士の方々から、パートタイム裁判官というのですか、なっていただこうと。この制度の趣旨、考案した趣旨を伺いたいのと、裁判官は憲法上の厳格な身分保障がありますけれども、当然ながら、非常勤ですから、いわゆる裁判官と非常勤裁判官の、裁判官というふうに呼んでいいのかどうか、この辺はどういうふうに区分けして考えられているのか、そこも含めてお願いします。
山崎政府参考人 いわゆる非常勤裁判官の制度でございまして、これは本来は、弁護士任官として、きちっと常勤の裁判官になっていただいて勤務をしていただく、それで民間的な考え方、一般の考え方を裁判に投影させていただきたいということで、運動は最高裁と日弁連の方でやっておられるところでございますけれども、なかなか理解が得られないところもありまして、数が伸びていかないというところがございます。
 そういう中で、どうしてもやはり、一般の考え方、こういうものを裁判に投影した方がいいだろう。それから、今後、常勤の裁判官として多数の方に来ていただきたい。そのためにも、まず、裁判所の内部というのはどういうものなのか、そういうことをきちっと知ってもらって、その上で理解を得て来ていただきたい。そういう推進をする目的が一つございます。それからやはり、調停でございますから、一般の方々が話し合いをされてその中で合意をしていく、そういうところのリードをしていくというところに民意を反映させたい。この調停の活性化という二つの目的がまずあるということでございます。
 それから、いわゆる常勤の裁判官と違いますので、憲法上の裁判官とは違うという形で、非常勤でございますから、憲法上の身分保障というものを当然持っているというわけではございませんけれども、一定の期間やっていただくということになって、例えば、弁護士として懲戒の対象だとかいろいろございますね、そういうようなものにかからない限りは勤めていただくというシステムになっております。
保坂(展)委員 裁判所に伺いますけれども、どのように人材を得ていくイメージなんですか。簡単にお願いします。
中山最高裁判所長官代理者 昨年八月に、日弁連とこういったシステムをつくるということはどうだろうかということで合意いたしましたときに、日弁連の方から適切な候補者を御推薦いただくというようなことにまずなっております。
 それから、いろいろなことを考えますと、これまで、多分、調停委員をされていた方々、先生方、弁護士が入ってこられるということもあろうかと思いますし、そういう意味では、私どもの方でも、その人となりについての情報というものをかなり持ってきている。そういう中で適切な方を選んでいきたい、こういうふうに思っているわけです。
保坂(展)委員 もう一回事務局長に伺いますけれども、そうすると、大きな道のりの中の入り口というような受けとめ方をしましたが、例えば、新設されてくる労働調停とか、今後その範囲を少し拡大するというようなことも一つの考え方かなと思いますが、いかがでしょうか。
山崎政府参考人 現在、私ども事務局で、労働調停の構築に向けて検討作業中でございます。まだでき上がっておりませんので最終的なことは申し上げられませんけれども、今の考え方からいけば、その労働調停にも参加していただくということになるかもしれません。
保坂(展)委員 この法案をめくっていましたら、これは法務省の方ですか、ちょっと伺いたいんです。
 たまたま、これは特定調停というものですね、法案の中に、現状は、即時抗告のところの裁判、これが決定へというふうに変わっているわけなんですね。裁判は、判決があり、命令があり、決定があるというふうに理解をしているんですけれども、ほかにも、民事調停法のところの即時抗告や過料の決定のところにも同じような変更がございます。裁判から決定へという変更があるんですが、これはどういうことなんでしょうか。かつての法律上に不備があったということなんですか。
山崎政府参考人 従来は、調停は、裁判官が最後はやるわけでございますので、裁判という文言を使っても問題はないわけでございますけれども、今度は、新しい制度によりますと、民事調停官として、いわゆる非常勤裁判官でございまして、本来的な裁判官の裁判とは違うわけでございます。
 そこの判断について、裁判というと広いわけですね、判決、決定、命令みんな含むわけでございますので、そこのところを決定という表現にしようということから、民事調停法の方もそうでございますし、それから特別調停法ですね、こちらも同じような考えで、ここにもいわゆる非常勤裁判官が入って調停をされるわけでございますので、その文言を統一したということでございます。
保坂(展)委員 私は、非常勤裁判官が、パートタイム裁判官か、言い方は別にして、確かに調停なんですけれども、ただ、今長い道のりの一歩ということでいえば、率直に見て、あれ、おかしいなというふうに思ったのは、現在、裁判の中に決定も含まれているわけなので、これを決定というふうに絞り込むというのは、逆に言えば審理のあり方というか内容を一つ狭く限定するように思ったんです。
 確かに、全部決定でやっているというお話なんですけれども、いろいろ伺いましたら、内閣法制局からそういうことでやりましょうというような話があってということも聞いているんですが、これは本当ですか。
山崎政府参考人 私、直接やっているわけではございませんけれども、そういう議論はあったというふうに聞いております。
 最終的には、私どもの判断で、決定という文言に変えさせていただいたということでございます。
保坂(展)委員 たくさんの方が触れられましたので、特任検事の部分と国会議員の部分と、今回は何かお手盛りじゃないかという批判がありますし、確かに国会議員が五年務めていればというのは、議員立法でどうかという話を私も何回か聞いたこともあります。
 これはどうですか、事務局長、国会議員については司法制度改革審議会でどなたが言い出したんですか。だれかが言わないとこういうものは出てこないような気がするんですが。
山崎政府参考人 ちょっと突然の御質問で、どなたが話されたかというのは当たっておりません。議事録で精査すればですね。
 中心は、まず、企業法務に勤められた方ということで議論はされていると思いますけれども、当然、国会議員の議論もされておりまして、この中で、同一に含むという前提で、意見書の中にも、「企業法務等」ということで、その「等」の中に国会議員が含まれているという理解で書いているわけでございます。
保坂(展)委員 だれも言わないのに自然に入ったということはないと思いますので、それは調べて後で教えてください。
 それから、新聞に、法学教授の特例も廃止に向かうというようなことが書いてあります。これは二月五日付の読売新聞ですが、法科大学院に実質的な法曹教育が移るために現状の特例の大義がなくなると法務省幹部、と書いてありますが、の方は語っておられる、法科大学院の教授、助教授については特例を認めることを検討しているということですが、自民党の中には、弁護士は司法試験合格者という原則になるべく例外をつくるべきではないという意見も強い、こんなふうに書いてあるんですが、この辺の議論はどうなっているでしょうか。
山崎政府参考人 その前の御質問、今ございました。
 議事録は、水原委員が述べられているということでございます。ここだけかどうかちょっとわかりませんが、とりあえずそういうのがありましたということです。御報告申し上げます。
 それから、大学教授の話でございますけれども、この点につきましては、たしか、今御指摘ございましたけれども、いろいろなところで御議論ございました。けさほども私ちょっと答弁させていただきましたけれども、今度御承認いただく範疇の者は、司法試験に受かっているかあるいは司法試験類似の試験を受けて実務をきちっとやっている者、どちらかを持っている者という形で議論をしてきたのに、大学の先生はどちらもないじゃないか、こういう例外を残しておいていいのかという大変鋭い意見、強い意見がいろいろなところから出されました。
 私どもも、今回御承認いただくのはこの範疇ではございますけれども、やはりこの際、すべてのもの、もう一度いろいろ考え直してみる必要もあるというふうに思っておりまして、私としましては、今回は間に合いませんでしたけれども、なるべく近い時期にはきちっと考えたいというふうに思っているところでございます。
保坂(展)委員 私は、一方に厳しくて一方に甘いなんということは絶対許されないと思いますので、これは同一の基準でやってもらわなきゃ困るというふうに思います。
 弁護士の懲戒の部分で、弁護士懲戒、これは綱紀委員会や懲戒委員会に市民代表も入れるとか、さまざまな制度改正がなされる。言ってみれば、仲間内はだめですよということだと思います。それによって、いろいろな意味で、不祥事を起こされる弁護士の方に対する信頼も取り戻していく努力の一歩だと思いますけれども。
 法務大臣にちょっと伺いたいんですが、検察官の適格審査会というのがありますよね。どんな活動ぶりか、どういうふうに耳に届いていますか、率直に。できれば答弁書を読まずにお願いしたいんですが。余り届いてこないのかどうか、どうですか。見ないとだめですか。
森山国務大臣 済みません、ちょっと突然のお話だったものですから。
 検察官適格審査会というのは、三年ごとにすべての検察官について定時審査を実施しているほか、必要に応じて法務大臣の請求または職権により、各検察官について随時審査を実施しているものでございます。
保坂(展)委員 それでは、ちょっと官房長に詳しく伺いたいんですが、これはどうなんですかね、森山法務大臣になってから、過去三回ですか、昨年は。三月十一日随時審査、六月には元大阪高検検事の不正事犯というのは、ここのところ話題になってきた方のことだと思いますけれども、それから、十二月には審査会における資料収集方法の改善等について、三回開かれているようですけれども、いろいろ資料がありませんで、調べてもほとんど出てこない。
 国民から、検察官に対する、捜査過程に対する不満や罷免を申し出ることもできる仕組みになっていますよね。過去三年間で、そういった国民からの声というのは何件くらいあったんですか。どうでしょうか。
大林政府参考人 ただいまの点につきまして、突然の御質問なものですから、ちょっと手元に資料はございません。
保坂(展)委員 中央省庁再編といって、橋本総理大臣のときに大改革をやるんだといって、いつの間にかこれはあれあれという感じなんですけれども、検察官適格審査会、これは中央省庁再編までは総理府にあったんですね、設置場所は。ところが、改革してみると法務省になっちゃったんですね。だから、やはり総理府に置いたというのは、第三者の目でしっかり客観的に見ようという意思のあらわれだったと思います、事務局は大臣官房でやってきたのかもしれないんですけれども。
 ここのところで、大臣官房で、そういう国民からの不服申し立てができるんだということをどれだけ宣伝しているのかなと。ホームページで見てみたんですが、ないんですよね。何かやっていますか。こういうものがあるなんということをほとんどの方が知らないという実態だと思いますが。
大林政府参考人 まず、今の審査会の問題につきましては、原則的に非公開という形になっておりますので、その内容については、なかなか外からはわからないというのも事実でございます。ただ、今おっしゃられたように、大臣官房において事務局をやっておりますので、問題の事案等について、資料にして提出して御批判を仰いだ方がよろしいという問題につきましては、それは提出させていただくような仕組みになっております。
 それから、今の広報の問題でございますけれども、確かにおっしゃられるように、従来、余りこの適格審査会について広報という形はしてきておりませんで、御指摘のように、今後、どのような形で広報するかは検討をやはりする必要があろうか、こういうふうに考えております。
保坂(展)委員 大事なことをちょっと聞き忘れていましたけれども、はあ、こうなっているのかと思って、こういったチャートをいただきました。要は、不適格の議決をして、法務大臣が罷免することもできるという制度なんですね。
 これは、戦後五十数年、そういうケースはあったんですかね。あったとしたら、いつあったんですか。
大林政府参考人 一件ございます。平成四年の事案でございまして、これは副検事さんでございまして、行方不明となったということで、審査会において不適格である旨の議決がなされ、これに基づいて免職という形になっております。
保坂(展)委員 確かに、いなくなってしまえば、それは争いのないところだと思いますけれども。
 例えば、福岡地検で前次席検事が、ストーカー事件の、これは裁判官に対して捜査情報を漏えいしたという事件がありましたよね。こういう事件は、まさにこの出番なんじゃないですか、こういう適格審査会の。これは参議院の佐藤道夫さんが書いていましたけれども、こんなときこそ乗り出さなければならないんじゃないかと。同会は、裁判官、検察官、弁護士、国会議員衆参合わせているわけで、これはしっかりと機能を発揮しなきゃならなかったんじゃないかと。
 これは、やりませんでしたよね。どうしてやらなかったんですか。
大林政府参考人 この件につきましては、懲戒処分を受けて退職されたということがあって、審議に至らなかった、こういうふうに承知しております。
保坂(展)委員 ちょっと大臣に見解を伺いたいと思いますけれども、やはり弁護士の懲戒を透明化することも必要です。国会には訴追と弾劾と両方の機能がありますよね。これも余り動いていませんけれども、しかし、まあ一応動く場合もありますし、ちゃんとした事務局からの報告書も国会に届きます。こちらの適格審査会というのは、あることすらも、当事者の議員の方はわかっていると思われますけれども、我々にしても、何をやっているのかさっぱりわからないわけです。
 何か最近、森山大臣が表紙を飾る「法務省だより あかれんが」というものが大変、きょうはこちらに見えなかった但木次官も写真も出て、法務省はこんなものをつくるのか、ユニークな広報誌が出せるんだというものを出したいと意気込んでおられるんですけれども、やはりこういうものに、まずは国民の皆さん、幅広くこういうのがありますよと言ってしかるべきなんですね。いかがでしょうか。
森山国務大臣 「あかれんが」というのは、ごく最近試みたわけでございまして、これからでございますから、今おっしゃいましたようなお知恵も拝借しながら、よりよいものにしていきたい、より多くの方にお役に立つものにしていきたいと思います。
保坂(展)委員 これを開くと、人KENまもる君と人KENあゆみちゃんが小泉総理を表敬訪問されたそうで、官邸で、このようにやられているということなんです。こちらは、赤れんが「威風堂々」と書いて、建物の、確かに威風堂々としていますからいいんですけれども、中身もしっかりしてほしいなと思うんですね。
 これは官房の方でつくられているんですけれども、予算とか、だれに向けて、どういう場で、何部ぐらい配って広報しているものなんでしょうか。年間の予算とか。
大林政府参考人 ただいま御指摘の「あかれんが」は、本年一月に創刊しまして、四月に第二号を発行しました。おおむね一年に四回という形で出したいというふうに考えております。
 予算としては、一年間で約五百四十万円を考えております。配付先は、法務局、検察庁、矯正施設など法務省の全国の地方機関、それから各府省庁、全国の弁護士会等にも配付しておりますけれども、一般の国民が多く利用している窓口のある法務局が非常に重要であると私ども考えておりまして、約半分の二万四千部を法務局に配付して、法務局に来られた国民の方に自由に持ち帰れるようにしております。
保坂(展)委員 法務省らしくないものをつくるのはいいんですけれども、国民に幅広く広報という部数なのかなという気もいたします。
 もう一度法務大臣に、先ほどの検察官適格審査会のことなんですけれども、この会が求めれば法務省並びに検察庁が資料を出さなければいけないという規定がありましたり、常に身内をチェックする、事務局まで法務省、所管まで法務省になっているわけですから、行政の組織のあり方としては何かちょっとおかしいんじゃないかなと私は思うんです。だからこそ、きちっとこれを、何をやっているか、会長はどなたなのかとか、御存じですかね、どんな実態ぶりなのか。大臣に就任されてから、検察官適格審査会から何か求めがあったり、報告などありましたでしょうか。
森山国務大臣 先ほど先生もおっしゃいましたように、私の在任中に三回ですか、会議をなさいまして、特に十四年三月十一日には、普通の審査でございましたので、その審査の結果を簡単なものですが御報告いただきました。その後、十四年六月十三日と十二月三日には、六月の方は、元大阪高検検事の不正事犯について、また審査会における資料収集方法の改善策等について、十二月には、審査会における資料収集方法の改善策等についてもう一度というようなことでお話し合いをしていただきまして、その会の開催状況については一応報告を受けているところでございます。
 大変お忙しいところを国会議員の先生にも多数、六人、衆議院が四人に参議院がお二人参加していただき、予備員もそれぞれ引き受けていただいておりますし、学者の先生、弁護士さん、その他一般の方も参加していただいているわけでございまして、なかなか内容のある、また権威のあるものだと思っております。
保坂(展)委員 会長はどなたですか。いや、すぐ答えてください、法務大臣。いやいや、もう率直に。
森山国務大臣 会長はちょっとわからないんでございますが――官房長がわかっているようです。
大林政府参考人 申しわけございません。実は、会長は平野先生という学者の先生だったんですが、ちょっと体調等もございまして、かわりまして、今正式な形はまだ、次回の開催時ということになろうかと思います。
保坂(展)委員 法務大臣、それは会長がいないということですよ。やはりそれはまずいんじゃないんですか。幾ら何だって、これじゃ国民に幅広く広報できないですよね。少なくとも、何かあったときはどうぞと言っている組織であれば、会長はやはり法務大臣がぱっと、今空席なら、次はこの人というふうに……。
 やはりそれは本来は法務省がやるべきじゃないと僕は思っているんですが、むしろ今だったら総務省がやるべきことですよね、行政監察機能を引き継いでいるわけですから。あるいは内閣府だと思いますけれども、いかがですか、今の状態は。
森山国務大臣 この次、六月九日にやる予定になっておりますので、そこで決まると思います。
保坂(展)委員 ちょっと引き続きちゃんと、しっかり活動ぶりを、全部秘密だというんじゃなくて、教えていただきたいということを求めまして、終わります。
    ―――――――――――――
山本委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
 ただいま議題となっております本案審査のため、来る二十日火曜日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 次に、法務行政及び検察行政に関する件、特に行刑施設における医療体制について調査のため、来る二十一日水曜日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 次回は、来る二十日火曜日に委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後三時二十五分散会


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