衆議院

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第19号 平成15年5月28日(水曜日)

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平成十五年五月二十八日(水曜日)
    午前九時十六分開議
 出席委員
   委員長 山本 有二君
   理事 佐藤 剛男君 理事 塩崎 恭久君
   理事 園田 博之君 理事 吉田 幸弘君
   理事 河村たかし君 理事 山花 郁夫君
   理事 漆原 良夫君 理事 石原健太郎君
      太田 誠一君    上川 陽子君
      小西  理君    後藤田正純君
      左藤  章君    笹川  堯君
      下村 博文君    中野  清君
      平沢 勝栄君    福井  照君
      保利 耕輔君    星野 行男君
      保岡 興治君    吉川 貴盛君
      吉野 正芳君    鎌田さゆり君
      中村 哲治君    永田 寿康君
      水島 広子君    山内  功君
      上田  勇君    山田 正彦君
      木島日出夫君    中林よし子君
      保坂 展人君
    …………………………………
   法務大臣         森山 眞弓君
   法務副大臣        増田 敏男君
   法務大臣政務官      中野  清君
   政府参考人
   (人事院事務総局勤務条件
   局長)          山野 岳義君
   政府参考人
   (人事院事務総局公平審査
   局長)          潮  明夫君
   政府参考人
   (法務省大臣官房長)   大林  宏君
   政府参考人
   (法務省大臣官房付)   中井 憲治君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    樋渡 利秋君
   政府参考人
   (法務省矯正局長)    横田 尤孝君
   政府参考人
   (法務省矯正局医療分類課
   長)           大橋 秀夫君
   政府参考人
   (法務省入国管理局長)  増田 暢也君
   政府参考人
   (厚生労働省健康局長)  高原 亮治君
   法務委員会専門員     横田 猛雄君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月二十八日
 辞任         補欠選任
  左藤  章君     福井  照君
  中村 哲治君     永田 寿康君
  不破 哲三君     中林よし子君
同日
 辞任         補欠選任
  福井  照君     上川 陽子君
  永田 寿康君     中村 哲治君
  中林よし子君     不破 哲三君
同日
 辞任         補欠選任
  上川 陽子君     左藤  章君
    ―――――――――――――
五月二十八日
 法務局・更生保護官署・入国管理官署及び少年院施設の増員に関する請願(木島日出夫君紹介)(第二五四五号)
 同(上田勇君紹介)(第二六二九号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 法務行政及び検察行政に関する件


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     ――――◇―――――
山本委員長 これより会議を開きます。
 法務行政及び検察行政に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、政府参考人として人事院事務総局勤務条件局長山野岳義君、公平審査局長潮明夫君、法務省大臣官房長大林宏君、大臣官房付中井憲治君、刑事局長樋渡利秋君、矯正局長横田尤孝君、矯正局医療分類課長大橋秀夫君、入国管理局長増田暢也君及び厚生労働省健康局長高原亮治君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
山本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。後藤田正純君。
後藤田委員 ありがとうございます。自民党の後藤田でございます。
 まず最初に、本件、行刑施設等のこれから改革等を進める、及び名古屋事件等々を今まで拝見し、そしてまた議論をお伺いしている中で、冒頭、疑問に思うことなのでございますけれども、今現在、検察側から起訴されている方々の対応を見ていますと、皆さん無罪を表明されているということでございますが、にもかかわらず、そういう意味では、裁判等々もまだ行われていない中で、あたかも何かクロのような議論を国会でされている。また、それにつられて、法務省さん側も三権分立の基本を何か逸脱しているような、マスコミ等々その他に引っ張られているような感があるわけでございますが、今現在の起訴状況につきまして、そしてそれに対しての対応につきまして、まず最初に概略を御説明いただきたいと思います。
大林政府参考人 今の起訴状況については、今調べておりますので、御報告します。
 今おっしゃられる御趣旨でございます。
 中間報告を私ども出しておりまして、そのことについて、いろいろと御批判、御指摘をいただいております。行刑運営に関する調査検討委員会では、行刑運営の実情などを分析し、行刑運営が抱えている問題点を提起するなどのために、一連の名古屋刑務所事件の原因や背景を踏まえる必要があったことから、これに必要な限度で、これらの事件について、刑事局や矯正局からの報告などに基づき、こういった事実関係であったと考えられるところを中間報告としてまとめたところでございます。
 委員御指摘のとおり、刑事責任の有無を明らかにする上での事実関係につきましては、当該刑事裁判において審理が尽くされ、最終的に確定されるべきものであることは当然であります。これを私どもは前提として、中間報告で、行政として対応が求められている事柄について報告したものでございます。もとより、これが起訴されている刑務官に刑事責任があると断定する、こういうふうに受け取られているとすれば、それは真意ではないということを御理解願いたいと存じます。
後藤田委員 だとしましたら、今回、行刑施設全般の改革を、皆様方、これから行刑改革会議なるものも設立されて議論されていくというわけでありますが、では、起訴されていなかったとしたら、こういう改革は、内から、法務省さんから出てきていたのか。今回の問題がもし起こっていなかったら、その中身を自発的に改革しようという流れは当然あったんですか。それをちょっとお伺いしたい。
 今回のきっかけがあってやられるということは、何か関連性があったのかな。今お話ありましたとおり、裁判の結果を見なきゃわからない、まだ灰色なわけですよね。しかしながら、それをきっかけに改革をしなきゃいけないという方向に進んだ。これは、何かしら、後ろめたいところといいますか、改革しなきゃいけないところというのがあったから、そういう方向に進んだのではないかなという気がします。
 重ねて申し上げますが、この事件が起こらなくても、皆さん方は、刑務所問題について以前より改革をする意識があって、問題点をきちっと把握されていて、そして、この後御質問しますけれども、監獄法につきましても改革の必要性を今まで感じていたのか等々含めて、ちょっと御回答ください。
横田政府参考人 お答え申し上げます。
 確かに、今回、行刑改革ということが大きなテーマになっておりますけれども、それが、いわゆる一連の名古屋刑務所事件が一つのきっかけになったということは、これは事実であると思います。
 しかしながら、委員も御案内のとおり、これまで過去に法務省は三たび監獄法の改正案を内閣から国会に提出しておりまして、しかしながら、それがいずれも実現に至らなかった。しかし、監獄法改正の必要性ということにつきましては、これはいささかも減じていないわけで、これはずっと認識していたところであります。
 それからまた、今般、行刑医療の問題、これまた大きな問題としてクローズアップされておりますけれども、これもまた、法務省あるいは矯正当局の中におきましては、よりよい医療体制の充実ということにつきましては、長い間、いろいろなプランを立てて、そして、できるものを少しずつ実行してきたという客観的事実がございます。
 そのほか、御承知のように、今、矯正は過剰収容という大変な困難な問題に直面しているわけですけれども、やはり、そういった過剰収容に対して、それでは処遇をどうしたらいいのかとか、施設をどうしたらいいのかとか、人員体制をどうしたらいいのかといったことは、これは常に抱えている問題でございまして、私どもといたしましては、行刑の改革といいますか、内容の充実といったことにつきましては常に考えてきたところであります。その点を御理解いただきたいと思います。
 以上です。
大林政府参考人 先ほど、起訴の日のお尋ねがございました。
 いわゆるホース事件と呼ばれる平成十三年十二月の事件につきましては、本年三月四日、副看守長を特別公務員暴行陵虐致死により名古屋地方裁判所に公判請求し、また、三月二十日、副看守長及び看守部長を同幇助により同裁判所に公判請求しております。
後藤田委員 今御説明ありました一連の起訴案件につきまして、これは、もし裁判で無罪ということになった場合に、皆様方がこれまでとられてきた一連の処置については、変える意思は全くないということでしょうか。その点について。
大林政府参考人 お答え申し上げます。
 この事件につきましては、一連の事件につきましては、現在、裁判が始まったところでございます。その事実認定につきましては、今後の裁判の推移を見なければならない状態でございますので、その先のことにつきましてはちょっと今ここで答弁ということは差し控えさせていただきます。
後藤田委員 それでは次に進みますが、先ほども若干申し上げましたけれども、そもそも、監獄法の問題でございますが、今ある監獄法は何年にできましたですか。
横田政府参考人 お答えいたします。
 明治四十一年に制定されております。
後藤田委員 明治四十一年の法律を、いろいろな環境の変化、または人権、人道、その考え方が芽生える中で変えてこなかった。もちろん、租税法定主義、税制につきましても法律を変えずに、各省ほかも同じようなことをやっているわけでございますけれども、皆様方も法律は変えない、しかし通達でやってきたというような御回答があるかと思いますが、四十一年にできた、しかし法律については今まで抜本的な改正をしていないということについて、大臣どうお考えですか。
森山国務大臣 先ほど局長からも申し上げましたように、何回か変えたいと考えまして国会に御提案まで、三回ほどしたと聞いておりますが、そのたびにいろいろな問題がございまして、結果として実らなかったということがございます。
 ですから、明治四十一年の法律というのは、その後いろいろ実際上の工夫はいたしましても、いかに何でも、余りにも古い、現在の日本人の感覚あるいは人権意識などから見ますと、どうしても変えなければならないという気持ちは変わりなくあるかと思います。
 いろいろ状況を見ながら、できればそういう運びにしたいと考えておりますが、それにはどのような中身にするかということが非常に重要でございまして、それについても皆さんの御意見を拝聴し、専門家の方々の検討を待ってということになるわけでございまして、多少の時間がかかるとは思いますけれども、この機会に、そのことも視野に入れて、考えていくタイミングになりつつあるのではないかなというような気持ちがしているわけでございます。
後藤田委員 今お話ありましたとおり、恐らく行刑改革会議等々でもって時間をかけてということでございますが、明治四十一年以来もう時間がかかっていますですよね。ですから、そういう意味で、もう一回、再度、これは大臣じゃなくても結構でございますが、では、どういうところが監獄法の問題点であって、それをどういう形で通達で随時、環境変化、時代変化に対応してきたか、そして同時に、これに対してだれがどういう理由で反対をしてきたか、それについてちょっと教えていただきたいと思います。
横田政府参考人 お答えいたします。
 監獄法の改正といいますか、監獄法の問題点についてはいろいろ言われているわけですけれども、一番大きな問題は、国といいますか、行刑を行う側とそれから被収容者との間の法律関係について規律したものがないということであろうと思います。
 つまり、被収容者の権利義務といったものが法律上明確にされていない。監獄法は、当時制定されたものですから、専ら保安といいますか、自由を奪う、拘束するといいますか、その点を主眼にした法律でございまして、その後、御承知のように、社会情勢も変わりましたし、いわゆる人権感覚、権利意識といったもの、これは百年近くの間に大きく変わっているわけですから、これはやはり時代に合った、きちっとした権利義務といったものを規定することが必要である。それによって、被収容者の権利も守れるし、また一方、処遇に当たる者もまたその行動の範囲というものが法律によってきっちりと明確になるので、これが必要だということが一つあろうと思います。
 それからもう一つは、これも御承知かもしれませんけれども、現在、行刑というのは累進処遇という形をとっているんですけれども、これもまた、法律によって定められているものではなくて、処遇の内容がかなり、法律によるものではなくて、いわゆる応報刑とか教育刑とかという問題はあるんですけれども、いわば教育刑に当たる部分といいますか、そういった部分というのは、これはいわゆる規則、大臣訓令、そういった法律より下の、下位法令といいますか、そういったものによって運用されてきているということでありますので、これもまたきちっと法律で定めるべき事柄ではないかなという感じはいたします。
 それから、問題になっている、最近大きく問題になりましたけれども、医療体制の問題なども、確かに監獄法に条文がありますけれども、やはりそのあたりのことも、それでいいのかといったこともこれから検討しなきゃいけないのかなというふうに感じております。
 大きなところ、私が今感じていることはそんなところでございます。間違っていたり補足する点があればまた後日申し上げますけれども、その辺でお願いいたします。
後藤田委員 今、刑罰の目的としては応報刑と教育刑という考え方があるということでありますが、そのバランスについてはどのようにお考えでございますか。
横田政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほど申し上げましたように、刑罰の目的については、応報刑、教育刑という大きな考え方がございます。何といっても、やはり基本は、犯罪を行った者の自由を奪う、社会から隔離するということにあることは、これは間違いないと思いますし、それは、言ってみれば応報的なものと言うことができると思います。
 しかしながら、もう一方、やはり、犯罪を犯した者については、いずれ社会に戻るわけですから、そういう受刑者の改善更生、それから円滑な社会復帰といったことを図ることも、これまた大事なことであるというふうに思います。それは国家が行うべきことだと思います。そういう意味で、現在、行刑の現場におきましては、刑務作業でありますとか、職業訓練でありますとか、あるいは各種の教化教育などを実施しているところでありまして、これはいわゆる教育刑の問題だと思います。
 どちらを優とし、どちらを劣としといいますか、それはやはり言えないのではないかと。これまで日本の行刑は、長い間かかって現在のこのような形をつくっているわけでありまして、それは今後、いろいろな御意見はあるかもしれませんけれども、やはり両方の目的というのをうまく調和させて、両方の目的が達成できるような一番いい方法をとっていくということが一番大事じゃないかというふうに考えております。
後藤田委員 私も全くそのとおりだと思います。応報刑と教育刑、これは両方考えていかなきゃいけないというふうに思います。
 教育刑にしても、そのやり方によっては、もう我慢に我慢を重ねて、社会復帰したときにまた、そのいら立ちから犯罪を起こしてしまうような、だから、刑務所の中で人権が抑圧されているのであれば、全く反省の思い、かけらもなくなってしまう。
 これは、大臣、読んだことはありますか。「刑務所の中」、花輪さんですね。これはある人にちょっと読めと言われて、いろいろな方に言われましたけれども、皆さん、これを読んだことがある方がいらっしゃったら、これと現実というのはどの程度一緒なのか。だれか、これはお答えになれる方で結構です、なれる方がいたらお答えください。
横田政府参考人 私が代表してになりますけれども、その本の存在は知っていましたが、別の本を私ちょっと、現に刑務所で、受刑者という人が書いた本は、別のものは読みましたけれども、あるいは解説書のようなものは読んでおりますけれども、その花輪さんのは、あるということしか存じ上げませんで、まだ読んでおりませんでしたので、ちょっと感想の方は申し上げられません。申しわけありません。
後藤田委員 また教えてください、これは事実とどうなのかということ。
 これがもし事実としたら、応報刑としての意味はあっても、何か教育刑として本当に意味があるのかなと、刑務所の中で行われていることは。逆にフラストレーションというかストレスがたまってしまうような、そんな気が若干いたしました。
 今おっしゃったように、応報刑、教育刑というのは両方とも考えていかなきゃいけない。そんな中で、質問なんですけれども、戒具、今回も革の手錠の問題がありましたけれども、それとあと情願という言葉、そしてあと刑罰という言葉。これは罰ですよね。罰を与えるというのは、まさに応報の側面ですよね。刑罰の目的に応報と教育刑があるという今までの考え方だと思うんですけれども、しかし、刑罰というのは、どっちかといったら応報的な側面が強くて、教育刑というのも刑罰の中に入るのかな。ちょっとそこら辺の言葉遣いも、法改正の中、また、これからの言葉遣いというんですか、ちょっとそこら辺について聞きたいんですが、いまだに戒具という言葉が使われているのか、それとも情願という言葉が使われているのか。
 そして、今の刑罰の問題ですね。刑罰の中に教育刑もあるんだというのであれば、ちょっと刑罰という言葉はその二つを含めるに値する言葉なのかなという気がするんですが、その点についてちょっと、どういうふうに。
横田政府参考人 お答えいたします。
 戒具という言葉、それから情願という言葉、これは法律にもございますし、規則その他でも現に使われているところでございます。その用語の当否また変更の要否といったことにつきましては、またこれからいろいろな御意見があるかもしれませんというふうに思っています。
 それから、刑罰でございますが、これもまた、罪と罰とか、いろいろ刑罰とか、刑罰法とかいうことで、これは法律用語としてもあるわけですし、現に使われています。ただ、それが教育という言葉とそぐわないのではないか、ふさわしくないのではないかと言われますと、教育刑という言葉それ自体が矛盾しているんじゃないか、先生はそういう御意見かもしれませんが、そこのあたりはまたいろいろな考え方があるのかなというふうには感じておりますが、刑の目的という意味においては、やはり教育刑という言葉はさほど不自然なものではないのかなと、今個人的にちょっと、先生から御質問があったものですから、そう思っただけのことです。
後藤田委員 私は、教育刑イコール刑罰の中の一部だというのがちょっとどうも不思議でしようがない。これは、小学生の子供に質問されて、今の答えだと全く説得力がないわけであって。
 だから、教育刑もあると皆さん方が執拗におっしゃる、ちゃんと人権も守っているんだとおっしゃるんだけれども、しかしその上にあるのは刑罰という言葉。だから、これについてもきちっと。大臣、ちょっと御感想はどうですか。大人として、大臣として、常識人として、今の、刑罰という言葉の目的には応報刑と教育刑がある、しかし教育刑というのが何か刑罰の中に含まれているというのは、ちょっと何か私は違和感があるんですが、その感想だけでいいですから。
森山国務大臣 今伺っていまして、確かにおっしゃるような感じがあるなというふうに思いました。どういうふうに整理すればいいのか、今のところ法律上の言葉が、百年前の法律にもせよ、とにかく法律上の言葉が残っているわけなので、それが使われておりますが、今の感覚からいったら、違う言葉に変えられれば変えた方がいいのかもしれないなと思いつつ伺っていたわけでございます。
後藤田委員 考え方と言葉が本当にちぐはぐしているというのがまさに今の状況だと思いますので、また早期に監獄法の改正、そしてあと、監獄、刑務所に行くまでには、犯罪者が警察でまず留置場に行って、それから拘置所、そして刑務所という流れでございますが、留置場につきましても、これは改めて、行刑改革会議、いろいろな専門家の意見も聞いて、刑務所、拘置所は法務省の担当でありますけれども、留置場につきましては警察庁であります。これもやはり総合的にこれからやっていかなくてはいけないというのが私自身の考え方でありますので、これは事前にいろいろな議論を、根回しというんですかね、日弁連さんなんかにもきちっと説明をしながら、そういった警察庁とも一緒になった、これは刑務所と拘置所だけやったって意味ないわけですよ。留置場につきましては公安委員会通達ですか、法律がないんですね。これにつきましても、大臣、警察庁の関係の長官並びに総理官邸等ともぜひ詰めていただきたいなというふうに思います。これはお願いでございます。
 先ほど情願について若干触れましたが、今、被収容者が不服申し立てを行うときに、情願以外検閲の対象となっている、これは本当ですか。
横田政府参考人 信書については検閲の対象としております。
後藤田委員 これにつきましても、被収容者の権利救済というためには、第三者機関に対する、検閲を経ない不服申し立て制度の確立が必要不可欠だと思いますけれども、それについて、法務省さんとしての今後の対応をお聞かせください。
横田政府参考人 委員の御指摘のようなそういう御意見もあることもまた事実でございます。
 信書の検閲もまた、これはおわかりと思いますけれども、一定の目的があって行っているわけですけれども、また先生の御意見もあるところでございまして、被収容者からの不服申し立てに当たって一切検閲を行わないこととするかどうかということ、これはまた被収容者の不服申し立て制度のあり方にもかかわる大きな問題でございますので、今後、先生のような御意見も踏まえながら、また行刑改革会議等の場での御議論を伺うなど、広く御意見を伺いながら検討して、実効ある不服申し立て制度の構築に向けて検討を進めてまいりたいと考えております。
後藤田委員 情願についてなんですけれども、これは、制度としては検閲を経ないで直接大臣あてに出すものだと聞いておりますが、大臣が、歴代大臣が、私も大臣経験者の方に聞きましたけれども、一言一句、全部目を通すというのはこれはどうなのかなと思いましたが、しかし、ブリーフィングをして、これこれこういうことがあってこうだということは定期的に大臣のお耳に入れる、そして大臣もその認識をきちっとするというものであるべきだと思いますが、今回いろいろな改革をする中で、その間にちょうど端境期がありますね。これから、あしたからでも情願が届くかもしれません。それについての対応をどういうふうに考えられますか。
横田政府参考人 お答えします。
 情願ですけれども、現在、年間三千件あるいは四千件近くといったような数に最近はなっておりますが、ことしの二月から法務大臣が全件その情願に直接目を通していただく、ごらんになっていただくという形になっております。
後藤田委員 次に行きます。
 今回、一連の被収容者の方の人権の問題、あと監獄法の改正の問題等々、また先般来の委員会質疑におきましては、医療対応につきましての改革等々ございますが、私はちょっと違う観点なんですけれども、今回、刑務官の方、看守の方、そういう現場で働いている方々ですよね、この方々はまさに犯罪者の方と毎日顔を合わせて、大変な状況の中で仕事をされているということを考えますと、いわゆる刑務所内の刑務官並びに看守の方の勤務環境について、これに対しては適切に対応されているんでしょうか。
 それにつきまして、いわゆる長時間労働問題につきましては、昔は週五十時間以上だったのを週四十時間にされたというふうに聞き及んでおりますが、いわゆる刑務所内で働く方々の人権、そしてあと健康管理、そして同時にその他の職務環境、勤務環境について、改善すべき点があれば僕はもっと改善すべきだと思いますし、あとそれに含めて、海外比較として、日本と海外では、いわゆる刑務官さん、看守さん一人当たりに何人、どのような状況になっているかも含めてお答えいただきたいと思います。
横田政府参考人 お答えいたします。
 まず、刑務官といいますか、行刑に携わる職員の負担といったことからお話し申し上げます。そのために、今の委員の最後の質問になりますけれども、その国際比較といいますか、それから申し上げさせていただきます。
 諸外国の状況につきまして、網羅的に把握しているわけではございませんが、現在矯正局で入手しております限りで申し上げますと、アメリカにおきましては、行刑に関係する職員一人当たりの被収容者数が約三・一人となっています。それから、イギリスが一・六人、それからフランスが二・〇人、スウェーデンが〇・七人ということです。ドイツが、これは全体のはございませんけれども、ベルリン州という一つのラント、州で一・八人というデータがございます。
 一方、日本でございますけれども、平成十四年の一日平均収容人員に対する職員一人当たりの負担率が四・〇人ということで、今申し上げたアメリカ、イギリス、フランス等の中では、比較しますとこれはもう一番多いわけでございます。アメリカが今のところ多くて三・一人ですが、それをさらに上回る四・〇人となっているわけです。
 それでは、勤務条件その他でございますけれども、御案内のように、今、被収容者数が大変ふえております。いわゆる過剰収容と言われている状況がございます。もう一方では、処遇困難者というもの、職員がその処遇に大変困難をきわめる、あるいは困難の度が高いといったような、俗に言えば手のかかるといいますか、そういう被収容者がふえているという状況がございます。そのようなことで、職員の負担は大変増大しておりまして、年次休暇の取得はもとより、週休の確保もままならない状況となっております。
 これもちょっと時間的なあれはありますけれども、現在、平均の年次有給休暇の取得日数というのが順次減っておりまして、平成十二年度が年間六日だったのが平成十四年度は五日に減っております。また、全施設の九二%に当たる六十八庁では四週八休が確保されておりませんし、そのうちのさらに三庁におきましては四週七休さえ確保できていない、そういう勤務状況にございます。
 そのようなことで、現在、職員の負担は大変厳しくて、これは当然、執務環境の悪化、職員の心身に大きな影響を及ぼしていることは疑いのないところだと考えています。
 そのため、日ごろから、職員の勉強会あるいは個別相談等の機会を活用して、できる限り職員の職務上の悩みや相談を上司が聞くということにして、まず精神的な負担を少しでも軽くするようにということに努めております。
 また、何といっても、やはりその負担を和らげるには人でございますので、平成十五年度予算におきましては、行刑施設の職員について二百四十三人の増員を認めていただきました。もっとも、これに対しては計画削減数がございますので、純増は百人でございますけれども、そのように三けたの純増を果たしたところでございます。
 今後なお被収容者の増加は続くというように予想され、したがって職員の負担増も当然予想されますので、今後とも、行刑改革等の御議論をお願いするなどして、そういう中で人的体制の整備ということについても引き続き努めてまいりたいと考えております。
 以上です。
後藤田委員 先ほど来申し上げているように、被収容者の人権問題、健康管理等々も含めてでありますが、刑務所の中で勤務される刑務官、看守さんの方々の勤務環境の改善に向けて、引き続き全力を挙げて頑張っていただきたいと思います。
 次に、時間もちょっとないんですが、先般来の委員会の中でちょっと気になった参考人の方の意見について、法務省の方の見解をきちっともう一度聞きたいなと思ったところが二点あります。
 一点は、菊田参考人という方から、日本の行刑は、国連の最低基準を守り、そして人権条約の精神なり理念なりに向かって日本もやってもらいたい、居直り論はこの際聞きたくないと勝手な発言をされておりますが、その著作を見ますと、いわゆる人権委員会の勧告、日本においてはこれらの勧告をことごとく無視され続けているとされていますが、具体的にどのような勧告がなされているのか、その点、ちょっとお伺いしたいと思います。
横田政府参考人 お答え申し上げます。
 委員がおっしゃっておりますこの勧告ということでありますけれども、これは、市民的及び政治的権利に関する国際規約の第四十条に基づいて我が国から国連の規約人権委員会に対して提出されました第四回報告に対して、一九九八年十一月にこの規約人権委員会から採択された最終見解を指すという理解でお答え申し上げます。
 この最終見解でございますが、これは、我が国からの報告全体に対してなされたものでございまして、行刑施設の処遇に対してのみなされたものではございませんけれども、この中のパラグラフ二十七におきまして、規約人権委員会は、我が国の行刑施設の制度については、まず、言論、結社及びプライバシーの自由を含む、被収容者の基本的人権を制限する厳しい所内行動規則、これが第一点だと。それから、頻繁な独居拘禁の使用を含む、厳しい懲罰の使用、これを第二点と。それから第三点として、規則違反で摘発された被収容者に対する懲罰を決定するための公平かつ公開手続の欠如。それから四番目として、刑務官による報復に対して不服申し立てを行う被収容者の不十分な保護、保護が十分でないということ。それから次に、被収容者の不服申し立てを調査するための信頼できる制度の欠如。最後に、六点目として、革手錠等、残虐かつ非人道的取り扱いとなり得る保護措置の頻繁な使用について懸念を有する、このように述べています。
 これがいわゆる勧告と言われているものでございます。
 これにつきましては、これは行刑だけではなくて、政府全体がこれに対して取り組む話でございますけれども、現在、これに対して日本の方もまたいろいろ意見を述べているわけでございますけれども、さらに、こういったことに対する具体的な対応については現在も検討しているところでございます。
後藤田委員 あともう一点ですが、今度は清水参考人という方から、行刑施設の過去十年間の死亡事例のうち二百三十八例を分析した結果として、私の病院ならこのうち二百例は医療訴訟になっただろうと指摘されたようでございますが、これについて、法務当局の御見解をお願いします。
横田政府参考人 ただいまの御質問の前に、先ほど答えた勧告に対する対応ですが、ちょっと言い足りなかった点がございますので。
 具体的なものとして、例えば、先ほど申し上げましたように、人権委員会が懸念として示した中に、戒具の使用の問題がございましたけれども、これにつきましては、使用の要件を厳密化し、保護房収容期間を短縮するといったような内容の局長通達を発しまして、適正な運用を図っておりますし、また、革手錠につきましては六カ月以内に廃止することを既に決めております。それから、革手錠使用中はビデオ録画をしておくこととしております。
 そんなことも含めまして、先ほどのいわゆる懸念につきましては、今後、いろいろな意見を聞きながら、さらに見直しを含めつつ検討していくということをつけ加えさせていただきます。
 それから、直接の御質問でございますが、その二百件云々ということでございますが、これにつきましては、この二百例が医療訴訟になっただろうという御指摘が参考人からあったことは事実でありますが、それがどのような根拠によってそういう判断に至ったのかということにつきましては、特段、その参考人の御説明もございませんでしたので、現時点でコメントは差し控えさせていただきたいと思います。
後藤田委員 では、清水さんのは言いっ放しな発言として、ちょっと排除させていただきたいと思います。
 最後に、ちょっと時間が余ったので、申しわけないです、本件とはちょっと関係ないわけなんですが、これもちょっとお伺いしたかった点でございます。SARS問題であります。
 御承知のとおり、SARS問題といったら、厚生労働省が、厚生行政並びに労働行政を扱う中で、今いろいろと対応策を講じていらっしゃるようであります。私も先般、ちょっとある会で質問したところ、今回、SARS問題が発生することによって、海外からの中国人研修生の受け入れ、これを控えている中小企業さんが、各先生方のお地元でもいっぱいいらっしゃると思うんですね。
 そうしたときに、入りを抑える分、でも、研修生だとかそういう方は期限が切れると帰らなくちゃならない。そうしたときに、もしそれを帰してしまった場合に、今、この現下の経済状況であります、四大メガバンクが大赤字の時代、株価もこんな時代、そして中小企業も大変な時代、にもかかわらず、コスト削減も踏まえてやっていたことを、今回の問題はまさにフォースマジュールですね、フォースマジュール、つまり本当に予期せぬ事態ですよ。そういうことの中で、その中国人の研修生、まあ中国人のみならずですが、海外研修生の在留期間の延長をしてくれという声が全県下、各地から多うございます。
 それにつきましては、厚生労働省さんは、法務省さんと、まあ後で担当に確認しますが、確認をします、検討しますとおっしゃったようでございます。しかしながら、私がきのう確認したところ、法務省さんの方ではまだその話はない、検討していないというようなお話を聞きましたけれども、それについて、いわゆる外国人研修生、技能実習生の在留期間延長について、これは経済産業省や外務省も関係していますね。それについての法務当局の御見解をお伺いしたいと思います。
森山国務大臣 まず一般論を申し上げますと、在留期間の更新の申請がありますと、申請の理由や在留を希望する期間、滞在費の支弁能力等の事情を含めて、さまざまな角度から審査の上、結論を出すということになっているわけでございます。
 委員が今お尋ねになりましたようなSARS問題で新規受け入れを控えている事情のみを理由といたしまして一律に研修生、技能実習生の在留期間の更新を認めるということは、研修・技能実習制度が、我が国で習得した技術等を母国で生かして活躍するということが目的でございますし、その国の経済発展や技術の進歩に寄与するためでもありますので、必ずしもその目的に沿うものではないんじゃないかと思われます。
 ただ、SARSをめぐる状況が急激に悪化する等の事情がございまして、その研修生等を出身地に帰すことに人道上問題があると認められるような場合でございましたら、適切かつ柔軟に対処する必要もあるのではないかと考えております。
後藤田委員 厚生労働省さんから直接法務当局さんにはまだそういう話はないですか。それは事務方の方で結構でございますが。
増田政府参考人 お尋ねのような申し入れは、当局では受けておりません。
後藤田委員 改めてこの問題は、今いわゆる行政の不作為ということが言われている中で、過去の前例、これは海外比較等々も当然必要だと思いますけれども、再度これは検討をお願いしたいということを委員会の場で明確に申し上げておきまして、今後の御対応を検討していただきたいということを最後に申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
山本委員長 河村たかし君。
河村(た)委員 河村たかしでございます。
 きょうは、名古屋の三つの事件というふうに勝手に書いておりますけれども、これはいわゆる事案でございまして、犯罪事実の全く存在しない、とんでもない起訴だったと私は思っておりますが、そのことについてお伺いしたい。
 その根拠となるのは中間報告ですね。これは法務省が出されました。ここに「犯行」というふうに書いてありますので、これを検証しなければいけないということでございます。
 それから、この法務委員会のきょうの案内に、きょうの委員会は法務行政及び検察行政に関する件と書いてありますので、検察行政に関して質問させていただく、そういうことでございます。法務行政も無論です。
 それで、まず最初に、これを言っておかなきゃいかぬ。私、これをなぜこれほど熱心にやるのかということについて、ちょっと言っておかなきゃいけませんのは、これをやりかけましてから、実は暴力団関係の方から、複数ですが、刑務所の中ではちゃんとこういうことがあったんだ、そういうふうに言ってこられた方もみえる。それはそれでちゃんと具体的に教えてほしいということで、お話も一つあり、電話も一つありましたけれども。だれに頼まれてやっておるのだということで、脅迫じみたことが私にもありまして、ただいま身体警護の対象になっております。
 私の仲間の愛知六区の前田雄吉さんも、この間、冤罪であるということで質問しましたね。関連性は必ずしも特定されておりませんが、その直後に、あれは車を何かぶつけられておったり、それから、だれか突っかかってきたりということで、これはきちっと調べるとわかりますけれども、そういうことがございまして、私は決してひるむことはありません。ここで断言をしておきます。
 六年間で三十二件処分されておられますので、実際、刑務所の中でもそういうこともあったでしょう。警察でもありますね。暴力を振るわれる、そういうことはあったと思う。
 だけれども、やはり国の本当の基本的な秩序を守る一番ベーシックな、縁の下で体を張ってこの日本の国を支えておってくれる人たちが、こういう格好で、私は、国会もそうですけれども、マスコミも含めて、すべて、こんな名誉を喪失されて、むちゃくちゃな状況にされるというのは、ほかっておけないですよ、本当に。これは悲しい国ですよ。悪いことが事実であればしようがないですよ。
 だけれども、法務省の皆さん、これはテレビを見てみえる方も多くみえるので、これは本当に皆さんに訴えたい。僕は法務省の前でビラを配ろうかと思っていますよ、皆さんの良心に訴えると。皆さんを支えておる皆さんですよ、刑務官の皆さんは。本当にこの事件があったのか、この事案があったのか、真剣にやらないと、国のモラル、これはモラルハザードですよ、本当に。本当に現場で苦労しておる人たちが虫けらのように捨てられていく、上の人たちだけ国会や法務省の本省で優雅な暮らしをする、こんな社会は絶対許されませんよ、大臣。
 そういうことで、冒頭、皆さんにきょう、資料をお配りいただいておりますか。配ってください。――配ってあります。
 渡邉貴志さんと申しまして、この方は、今、名古屋の拘置所に無念の思いで逮捕されまして入ってみえます。本人の了解もとってありますので、彼から来た手紙を今からそのまま読ませていただきます。
 ちなみに、渡邉さんは非常に優秀な方だと聞いておりますけれども、どういう試験を通られた方か、ちょっと答弁いただけますか。本人に了解をとってありますから。
横田政府参考人 お答えいたします。
 渡邉貴志さんですが、刑務官になりましてから幾つかの研修を経ております。
 刑務官の研修、これは昇任のための研修というのがございまして、矯正研修所において研修を行うわけですけれども、これは、競争試験によります公平な選抜を経て、矯正研修所に入所させて、一定の期間勉強しまして、そして所定の成績をおさめた者に対しては修了を認定しているということでございます。
 このお尋ねの方でございますけれども、最初、初等科というところに入ります。それから、その後に中等科という研修を経て、そして最後に、高等科という研修を、これは平成八年の二月が修了でございますけれども、三段階の研修を経ております。
 以上です。
河村(た)委員 平成六年の中等科における成績をおっしゃってください。本人に了解をとってありますから。
横田政府参考人 本人の成績というお尋ねですが、御了解を得てあるというふうに先生はおっしゃいますが、何分にもプライバシーにかかわることでございますので、回答を控えさせていただきたいと思います。
河村(た)委員 それでは僕から言いますと、平成六年、中等科の研修において、三十三名中第一位、矯正協会長賞をもらっておる、そういう方でございます。
 彼から手紙をいただきましたので、読みます。そのまま読みます。コメントは後でしますので、文章が残るように。
 なぜかというと、これは法務省の人間として言いたいことが書いてありますから、ぜひ、全法務省の職員の皆さん、これを読まれて、正義への行動を起こしていただきたい。法務省というのは、英語で言うと、デパートメント・オブ・ジャスティスと言うんですね。ローじゃないんです。デパートメント・オブ・ローじゃない、ジャスティスですから。
 そういうことで、じゃ読みます。皆さんのところに資料で行っております。
  前略
  先日は、元松弁護士あてに、中間報告書の写しを送っていただき誠にありがとうございました。
  四月二十三日付けの法務委員会の速記録から、先生の御活躍の姿が感じられ、その熱意に深く感謝致します。
  また、五月十二日には、家族側の心情などもお聞きいただき、重ねてお礼申し上げます。
  さて、今回お手紙を出させていただいたのは、法務省側の対応の悪さに、一国民として、事案の当事者として、同じ法務省下の職員として、立腹の感を有したからに、ほかなりません。
  矯正においては、司法、立法、行政は三身一体の立場にあります。矯正行政に問題や限界が到来していることは周知のことであり、法制度そのものの改正を要する立法問題でもあるのです。しかるに、法務省の態度は、司法判断を口実に、真の問題点を自ら提起して議論し、改善して行こうとせず、誤った判断を行っている検察当局の擁護のための行動を行っている。
  行刑運営に関する調査検討委員会の調査も、検察の捜査資料を基本として、それに多少色を付けた程度のものであり、真正な視点、立場での調査が行われていない。これは、他方において独自の調査を行うと、検察を無視し、異なる結論となってしまうという事態を回避するために他なりません。
  このようなやり方は、「組織」の王道です。
  行ってもいない調査を行ったように見せかけ、確認もしていない内容から結論を出すなどという行為で、国民の視点を外そうとするやり方に、納得がいきません。ばかにしています。
  大臣や、参考人は、すぐに「裁判係属中ですので、お答えできません。」と言って回避していますが、歪曲された事実や捏造された証拠が裁判によって明らかになって行くのは、時間の問題であることは、彼等も十分わかっているはずです。
  そういったことが、すべて明確にならなければ、改善する気はないとでもいうつもりなのでしょうか。
  検察の歪曲、捏造、誇張の一端は、すでに露見し始めています。
  四月二十三日に行われた私達の公判廷において、検察側は証人によって、私達の革手錠使用と緊度が、程度を超えた違法なものであったということを立証しようとしましたが、証人は、「適正な施用を行うためには、バンドをきつく締めることもある。」「適正と定まった緊度はない。」「施用上、バンドが上下左右に動いたり、手がバンド上を動くことは適正ではない。」などと、私達の施用状況は、適正な運用の範囲内であったことを証言しました。
  更に決定的であったのは、弁護士の一人が、証人の検察官調書を一部読み上げ、「あなたは、こう言っていますが、その意味は何ですか。」と問われると、証人は、「私はそのようなことは言っていません。そのような内容であったかも覚えていません。」と証言し、検察が自ら都合の良い部分だけを寄せ集めて“供述調書を作った”ことが判明したのです。
  重要な位置である第一回目の証人がこのような状況であることから考えただけでも、今後の証人の証言内容も予想できるというものです。
  放水事案に至っては、すでに検察のずさんな、およそ捜査とは言えない対応の実態が次々に明らかになっています。
  これらの事案を、中立、公正な視点によって、ひとつひとつ調査されていたなら、このような状況とはなっていなかったのは、確実なことです。
  無給措置となって、本月で七か月となり、給与審査申立てを行って、人事院から申立受理通知があってから三か月が経過しようとしていますが、何の通知もありません。審査上、処分側の説明を求めていると思いますが、何の調査もせず、起訴されたことのみで処分しているのですから説明のしようもなく、何かと理由を付けて、回答の遅延を行っているものと推測します。法務委員会で矯正局長が答弁したように、矯正局においては、調査も確認も行っていないのです。このような行政処分があって良いのでしょうか。
  私が今の法務省に望むことは、組織の問題を避けるために、個人の問題として終わらせようとせず、何を改善すべきかを十分に議論検討し、法整備が必要なら、それを検討するといった、前向きな態度で取り組んでもらいたいということです。
  もし、今の状況を認めてしまうと、第二、第三の私達と同じように、苦しむ必要のない職員が生まれる状況を残すことになります。それを根絶するためにも、公けにすべきことは行い、議論してもらいたいと思います。
  先生が法務委員会で述べておりましたとおり、この問題は、政党の枠を超えた分野として議論されるべき事柄であると思います。
  正しい認識の下で議論を行うためにも、法務省には、予断を含まない真実を報告し、答弁してもらいたいと思います。
  先生のますますの御活躍を御祈り申し上げます。
    平成十五年五月十四日
                渡邉 貴志
以上でございます。
 ここに封筒がございますけれども、これは私の個人あてと、それから差出人としては、名古屋市東区白壁一―一、これは名古屋拘置所の住所ですが、渡邉貴志、それから郵便番号が四六一―八五八六と書いてある手紙です。
 それから、法務大臣、きょうは出しませんでしたけれども、その前に来たのに、こういうのがあるんですよ。
 これは平成十五年四月五日です。「先生」、これは私のことですけれども、私は先生と呼んでいただかぬでもいいんですけれども、書いてありますから。
  先生としましては、法務大臣の責任について追及するという姿勢がおありのようですが、私の見識としましては、法相の味方をするわけではありませんが、森山法相ほど決意を持って臨んでおられる大臣は、これまでの法相にはなかったと感じております。確かに、職を辞することで責任を内外に示すことは簡単明瞭ではありますが、森山法相は職務を続け、問題を徹底解明して責任を果たすという困難な道を選ばれたということにおいて、私は評価しております。
  仮に、法相辞任となった場合、現在抱えている諸々の問題も、新大臣への切り換わりとともに、闇から闇へと消えてしまうこととなるでしょう。ですから、法務改革が推進されようとする現在の気運を、法務委員会で盛り上げていただきたいというのが、私の率直な意見です。
こういうふうに書いてあります。これは後で大臣に届けますから、本物の手紙を。
 私も余りしょっちゅう謝っておってはいけませんけれども、本当に事実の解明をせずに、当事者の意見も聞かずに、本当に申しわけなかった、再度おわびしたい、刑務官の皆さんに、そう思っております。許していただきたいと思っております。
 それで、質問に行きましょう。
 今手紙を読みましたけれども、大臣、御感想はどうでしょうか。
森山国務大臣 まず、河村先生が、非常に難しい、地味な仕事を苦労してやっております刑務官の立場というものを大変温かく見守ってくださるというお気持ち、そして、いろいろな問題があるにもかかわらず、あえて御自分の信念を吐露されるという勇気には、心から敬意を表したいと存じます。
 今お読みになった手紙の中の一節に、私が今の法務省に望むことは、組織の問題を避けるために、個人の問題として終わらせないで、何を改善すべきかを十分に議論検討し、法整備が必要なら、それを検討するといった、前向きな態度で取り組んでもらいたいという言葉がございまして、私を中心とする法務省の大勢の人々はみんなそのような気持ちで今一生懸命やっているわけでございますので、その部分に関しては、この渡邉さんの希望されることに従って一生懸命やっているというふうなことが申し上げられるかと思います。
 渡邉さんも非常に難しい状況にあって、それなりに大変苦労しておられるということはまことに同情に値すると思いますが、すべてこの事案につきましては、公判が進んでおりますので、それを通じて真相を解明していただくというしかほかに方法はないと思います。
河村(た)委員 公判は公判ですけれども、大臣、当然検察官に対して、検察行政の、あなた、責任者ですよね。
森山国務大臣 個別のケースにつきましては、私の方から、何かに、どうしろとかああしろとか、するなとかいうことを指示しないというのが建前になっております。
河村(た)委員 それは当然、普通は当たり前のことなんで、それはそうですよ。
 しかし、後からまた、十二月の水道の、ホースの問題、それから革手錠というのはどういう問題であったかというお話をしますので、そういう状況においては、検察の起訴そのものに問題があったというふうにとらえられた場合は、やはりきちっと、それはあなた、何もしないというのは責任放棄になるんじゃないですか。
森山国務大臣 すべては真相が解明されなければ何とも申しようがないわけでございまして、公判を通じて真相解明するということをお願いしたいと思います。
河村(た)委員 これは大変な誤解がありまして、真相解明というのは裁判所の専権ではないんですよ、大臣。真相解明というのは、当然国会もそうですし、ジャーナリズムもそうですし、全国民が、それぞれ一人一人が真相解明の権利やら義務やら持っておって、公判というのはその中で、有罪無罪にするとか懲役何年にする、そういう機能を持った作用があるだけで、真相解明というのは、それこそ大臣、やらなきゃならないんじゃないですか。
 それと、この中間報告に「犯行状況」とはっきり書いてありますし、それから、ここの中でありますよ、中間報告の一ページのところ、「はじめに」の真ん中。「これらの指示を受け、当委員会では、矯正局のほか、刑事局や人権擁護局などにも指示し、今回の事件の背景事情を含めた事実関係を調査し、これらの事件が発生した原因を考究するとともに、」云々、こうなるんですよ。あなた、事実関係を調査して、これは当然やらなきゃいけないんじゃないですか。
森山国務大臣 国会でももちろん事実を調査していただいて、いろいろな疑問を解明していただくということはやっていただくものでございますし、法務省自体もそのような仕事を、この報告にありますようにやってまいったわけでございますが、この件が有罪であるかどうか、法律上どのようなものであるかということを調べますのは、公判にまたなくてはならないというふうに思います。
河村(た)委員 有罪か無罪かを言っておるんじゃないんです、何遍も言いますけれども。こういうことを通じて、要するに、ちょっと詰めて言えば、行刑行政のあり方がどうなるのであろうかということを考えるわけでしょう。その一番ベーシックな事実として、はっきり名古屋のこの事案があった。こういうことがあった、なぜあったんだというふうに原因を究明していくわけでしょう。だから、あなた、自分の、法務大臣として、当然、事実をもう一回調べ直す義務があるじゃないですか。
 私は、有罪にしろ、無罪にしろと言っていませんよ、別に。私は無罪だと思うけれども、それは、思うのはいいですよ、皆さん、日本国民の当然の権利じゃないですか、そんなこと。
 どうですか、大臣。
森山国務大臣 おっしゃるとおり、この事案がきっかけになりまして、矯正行政についてのいろいろな問題が大勢の方の目にさらされまして、矯正の部内におきましても、確かに、何とかしなければいけないことであった。そのほかにも、例えば過剰収容その他、非常に深刻な問題がたくさんございまして、何とかしなければいけないという問題意識はございまして、それを何とかしなければいけないという気持ちから調査したものがこの中間報告でございます。
河村(た)委員 では、例えばこの間、三井さんがお見えになりましたよね、刑務官の。あの人も優秀な成績で出られた方ですけれども、あの方が、血のついたズボンを見たと。見たというか、整理をしたことを命じたと言われましたけれども、それ以降、当然調査されましたでしょうね。
 いや、大臣が言ってください。あなた、責任者ですから。委員長、指名してください。
山本委員長 ちょっと待って。まず官房長から聞いて、その後。
 大林官房長。
大林政府参考人 お答え申し上げます。
 三井参考人の件につきましては、私どもが捜査機関、検察庁からの通じての問題、刑事局からの報告内容から見た場合に、ややその結果と内容が異なる部分もございます。しかしながら、刑事裁判に影響を与える可能性もありますので、また、ここ、こういう委員会という公の場で議論されたことでもありますし、私どもとして、調査を全くしないと考えているわけではございませんけれども、裁判中であること、あるいは国会で議論されている最中にその是非について問うということはいかがかということがございまして、公判の推移等をしばらく様子を見させていただいて対応を決めたい、こういうことでございます。
河村(た)委員 連絡を当然されたんでしょう、三井さんには。
大林政府参考人 私の方では、連絡をしたというふうには承知しておりません。
河村(た)委員 これはストップだな。
山本委員長 ちょっと待って。矯正局長。(発言する者あり)
 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
山本委員長 速記を起こしてください。
 矯正局長。
横田政府参考人 四月二十三日の委員会におきまして、木島委員からそのような御要求がございまして、委員長から今申し上げたような指示がございました。その点につきまして、委員長の御指摘を受けまして、当局におきまして取り急ぎ調査を行いました。
 その結果、名古屋刑務所におきましては、保護房で被収容者が死亡した場合に着用していた衣類の保管状況や処分状況につきましては、それら衣類の一点一点について記録する文書がそもそも存在しません。数量管理といいますか、全体として、何月何日に何百点あるいは何十点どうした、そういう数量管理はしてございますけれども、その数ある中のズボンの一つ一つについて、これがいつどこでという具体的な、一種の台帳管理といいますか、個別管理といいますか、そのようなシステムはとっておりません。
 したがいまして、木島委員が二十三日の委員会において御指摘ございました、そのズボンなどが保管されていたかどうか、そしてそれが保管された後に、その後どうなったかというようなことにつきましては、確認することができませんでした。そのように聞いております。これが調査結果でございます。
 以上です。
河村(た)委員 それは、だれに、いつ問い合わせましたか。
横田政府参考人 これは、四月二十三日の委員会におきまして委員長からの御指示がございました後、早急に名古屋刑務所の担当者、これは衣類の管理状況、管理等を担当しているセクションの者でございますけれども、その担当者に問い合わせました。また、そのような衣類の、いわゆる物品管理といいますか、そういった関係書類も当局に取り寄せまして、検討いたしました。
 以上でございます。
河村(た)委員 向こうの方はだれですか。名前を言ってください。いつかということと、名前を言ってください。
横田政府参考人 私、今、担当者としか報告を受けておりませんので、ちょっと具体的な氏名まで把握しておりません。必要であれば、また調査いたします。
河村(た)委員 では、それはまた、すぐ教えてくださいね。ちょっと、委員長からもおっしゃってください。
山本委員長 矯正局長、速やかに氏名等を委員に明らかにするようにお願いいたします。
河村(た)委員 しかし、これは大問題がありまして、衣類がどうなったかという問題もそうでしたけれども、あのときは、それを見た、それから整理をした、整理を命じているという話だったんです。だから、三井さんにヒアリングするということは絶対的に不可欠だと思いますわね。それは、今官房長が言われたけれども、矯正局長、されたんですね、当然。
横田政府参考人 お答えいたします。
 先ほど官房長が理由を述べたとおりでございまして、矯正局といたしましても、前回の、三井さんが参考人として陳述なさった後に、三井さん本人に対して調査するといったようなことはしておりません。また、その周辺についても、特にその関係ではしておりません。
河村(た)委員 これはだめですよ、しかし。こんな、木島さんの言われたことは、どっちかといったらこちらの方なんですよ。後で衣類がどうなったかということも一つ大きいですよ、それは。あれば大変なことですから。これはなくなっていたという意味ですから。
 そのとき、たしか僕、質問の中に入っておると思うけどな。入っていないかもわからぬけれども。衣類はどうなったか、なくなったという話があるけれども。まあ、ないかもわかりませんけれども。
 それより、衣類の存在よりも、そういうものを見たということでしょう。これを確認しようという意味じゃないんですか、委員長。委員長がおっしゃったことは。
山本委員長 委員に申し上げます。
 以前の委員の質問の中身について突然私に聞かれましても、私も記憶がありませんので、また後日、正確に検討させていただきますので。
河村(た)委員 いやいや、そんなことは記憶がないというんですね、委員長。それはだめだよ、本当に。それは、別に僕は委員長を責めているんじゃないんだから。だれがどう考えたって、あのときは三井さんはこう言っているんだけれどもということですよ。
 だから、放水前に既に肛門の出血それから直腸の出血があったのではないか、あったんだろうということが、これは何で言ってくるかというと、裁判のことばかり言っちゃいけませんよ、これはどうしてかというと、この中間報告を読むと、刑務官の資質に基づく、資質だけではないがと書いてありますけれどもね、これには。最後、どこに出てきたかな、資質の話は。まことに許しがたい文章があるんです。二ページだね、これは。「行刑運営の実情」ということで、「今般の名古屋刑務所の三事件は、第三に記述するとおり、受刑者を一人の人間として尊重するという意識が欠落していたことに起因するものというべきであるが、このような人権意識の欠落は、犯行に加わった個々の職員の資質のみに帰せられるものではなく、」と、とんでもない表現がしてあるんですよ、これは。
 彼らの資質に問題があったということを認めているんですよ、のみではないがということにして。大臣、そういうことでしょう。そういうことでしょう、大臣。ちょっと答弁してくださいよ、ここを。資質に問題があると言っているから、そう言えばいいんですよ。何遍も答弁していますよ、これは。官房長も言っているから。大臣。
森山国務大臣 今回の一連の事件で、名古屋刑務所の刑務官が起訴されておりますのは、特別公務員暴行陵虐致死傷罪という重大な犯罪でございまして、私は、検察官は適正に捜査処理をしていると信頼しておりますし、検察の判断を重く受けとめなければならないと考えておりますから、これを前提とすれば、犯行に加わった刑務官の資質には問題があったと言わざるを得ないと考えるわけでございます。
 しかしながら、中間報告の趣旨は、その記載からも明らかでございますように、これらの事件の背景には、行刑施設全般における組織的、構造的な問題があったということに重点があるわけでございまして、それを離れて個々の刑務官の個人的な資質に問題があったと言っているわけではございません。
河村(た)委員 何を言っておるのか、わけわかりませんけれども、いいかげんにしてくれなあかんですよ、法務省も。あなたたちの部下なんだぜ、刑務官は。それも、何遍も言うけれども、本当の一番、社会の現場の末端のところで働いておる人たちですよ。どういう言い方をして逃げるんだよ。こんな、だれが読んだって、個々の職員の資質のみで、彼らの資質が悪かった、個々の職員が、そう見えるじゃないですか、これは。そのシンボルとして捏造したのがこの事件なんだよ。
 検察は、初めは、私が聞いておる限りでは、そんな悪意はなかったと思う、当然ながら。検察に悪意があったら、世の中めちゃくちゃだよ、そんなの。検察は検察で誠意を持ってやったんだけれども、これは、また後で時間があれば言いますけれども、ちょこっとしたところでひっかけられたような話なんです。
 だから、彼らが放水によってしりを、そんな物すごい、殺傷するようなことをやる人間かどうかというのは、あなたたち認定しているじゃないの、ここで。だから、大変重要なんだよ、この事実を考えるということは。どうですか、大臣。
森山国務大臣 ただいまも申し上げましたけれども、検察官は、検察官として、まじめに一生懸命に事態を明らかにするべく努力いたしたと思います。そのような検察の捜査の結果、このような事態になりましたということは、それなりに、かかわった刑務官の資質に問題が全くなかったとは言えないと思うんです。
 しかし、この中間報告の趣旨は、それだけではなくて、むしろ、それよりも、それを取り巻く環境あるいは状況、あるいは刑務所自体のさまざまな問題に深刻な問題があったのではないかということを言っているわけでございます。
河村(た)委員 今言ったじゃないですか、刑務官の資質に問題なかったことはないと。そうでしょう。取り消しなさいよ、それ。検察官が勝手に言っておるんだと言ってくださいよ、それじゃ。大臣、どうですか。
森山国務大臣 検察官は、公正に、厳正に捜査いたしまして、このような結論に現在なっているわけでありまして、それを裁判において正しいかどうかというのはこれから調べられるところでございますので、私からそのようなことを今申し上げることはできません。
河村(た)委員 検察ではなくて、あなたが自分の意見として言ったじゃないの。悪いけれども、大臣、本当に、デパートメント・オブ・ジャスティスですよ、ジャスティス。だれが資質に問題があるとかないなんという話は、本当におぞましいことなので、よほどでないと言っちゃだめですよ、本当にこれは、よほどでないと。これは、全国の刑務官、泣いておると思いますよ、私は。こんなことを言われて。悔しいと思うよ、僕は。本当に私も、これ、しゃべっておる間、涙出てきますけれどもね。こんな悲しいことないですよ、これは本当に。日本の国に生きておる人間としてですよ。
 取り消しませんか、資質に問題があるということを。
森山国務大臣 ここで、私の口からこれ以上申し上げることはできません。
河村(た)委員 もう少したちますと、資質に問題のあった方はどなたかであったと、逆転すると私は思いますよ、本当に。大臣個人じゃないけれども、渡邉さんがこうやって手紙の中で言っているから。勇気ある行動をとられれば、私は立派だったと思いますよ。
 だって、人間というのは間違うことはあるんだから、間違ったときに、自分は間違えましたと勇気を持って言えるかどうかじゃないですか、大事なことは。こんな人生の先輩に、本当にまことに申しわけない。だけれども、私も五十四生きてきましたので、ある程度は言えると思いまして、こう言っておるんですけれども。いつか、なるべく早い時点で大臣から、資質の問題があったということを取り消しますという御発言があることを期待しております。
 次の質問は、そうしたら給与の問題をちょっと言いましょうか。給与の問題は、人事院、せっかく来ていただいておりますけれども、調査しましたか、法務省に。
山野政府参考人 休職給の支給実態のお話でしょうか。(河村(た)委員「はい」と呼ぶ)
 過去五年間、調査いたしましたところ、休職給を受けている者の数は七十八人でございますが、そのうち、百分の六十を支給されている者が六十三人、休職給百分の三十を支給されている者が十二人、ゼロが三人となっております。
河村(た)委員 今回、法務省の八名の方はゼロですね。
横田政府参考人 そのとおりでございます。
河村(た)委員 しかし、何たる残酷なことをするのか。ゼロにするのは処分した方だよ、そんなもの。冗談じゃないよ、それは反対だよ。
 人事院は、こういう申し立てがあると、この場合は法務省ですけれども、話し合いをするということになっておるそうですけれども、話し合いをされましたか。
潮政府参考人 給与決定の審査請求でございますけれども、個別事案につきましては、申し立てをしておられる方のプライバシーの問題でございますので、お答えを差し控えさせていただきたいと思いますが、一般的な制度として申し上げますと、給与法の二十一条の一項に、給与の決定に対して苦情がある職員は、人事院に対して審査を申し立てることができるというふうにされておりまして、申し立てがありますと、私どもは同条の二項によりまして、審査をいたしまして決定をするということになります。
河村(た)委員 このことは余り言っておってもしようがないんですけれども、法務省、大臣、これはジャスティスですからね。ほかの省庁はほとんど払っているんですよ、ほとんど。払っていないのが、郵政省の場合の一人の方、それから大蔵が二人。あとは全部払われていますから。
 大臣、ちゃんと聞かれて、あなた、これは別個の行政処分ですよ、別個の。血のついたパジャマも見つかったんでしょう、見ていたという人がおるんでしょう。見つかったという、見ていたという人がおるんでしょう。そんな状況の中で、まだ無給で続けるんですか。あなたが違法になっちゃうよ、こんなことをやっておったら。大臣、どうですか。
森山国務大臣 検察が十分な捜査をいたしまして公判を請求して、裁判に今なっているわけでございます。起訴されたということは非常に大きな事実でございまして、大変残念ながら、御存じのような措置をするのが適当であるということになったわけでございます。
河村(た)委員 これは本当に、大臣、あなた、違法になりますよ、そのうち。いいですか、給与処分というのは、悪いけれども、別個ですから。検察行政もあなたはあるけれども、法務省の、皆、あなたの部下じゃないですか。無給にするかどうかは別ですよ。
 これは、渡邉さんの、やはり彼はさすがにあれですよ、中等科をトップで出られた、一人しか表彰されないものだそうです、先ほど言いました矯正協会長賞、ただ一人の方、彼が言っているじゃないですか。「法務省の態度は、司法判断を口実に、真の問題点を自ら提起して議論し、改善して行こうとせず、誤った判断を行っている検察当局の擁護のための行動を行っている。」こうじゃないんですか、あなた。
森山国務大臣 私といたしましては、その部分につきましては、渡邉さんの意見には賛成いたしかねます。
河村(た)委員 矯正局長、どうですか。
横田政府参考人 大臣と同じ意見でございます。
河村(た)委員 あなた、自分の矯正局、刑務官、みんなあなたの部下でしょう。そんなことを言っていいの、これ。まず、何か合理的な疑いを超える段階までいっておるのなら別ですよ。後で革手錠のこともやりますけれども。
 司法の段階でいえば無罪ですけれども、こちらでいえば無実なんですかね、その可能性は非常に高いでしょう。あなた、三井さんにも会わずに、言っておるとおりですと言うの。違法になっちゃうよ、これは本当に。どうですか。
横田政府参考人 これまでも何度か申し上げたことでございますけれども、この起訴休職という制度は、起訴されたという事実と、それからそれによる職務に対する影響ということに基づいて行われるというもので、そういう制度でございますので、先ほど申し上げたことに変更はございません。
河村(た)委員 起訴自体も間違っておりますけれども。ということは、いわゆる書面審査ということだね。
横田政府参考人 今申し上げたように、書面審査といいますか、起訴された、起訴があったという事実、そしてそれによる職務に対する影響ということでございますので、それに基づいて判断をしているということに尽きます。
河村(た)委員 初め判断しても、行政庁としては、これは行政庁は大臣だと思うけれども、担当の皆さんとしては、違う事実が出てきたら動かなくてもいいの。
横田政府参考人 お答えいたします。
 起訴があったという事実、それによる職務への影響という事実には変更がないというふうに理解しております。
河村(た)委員 これはだめだよ。本当はだめですよ、こんなの。矯正局といって別個にあるんだから、ちゃんと。その事実がおかしい。では、私は委員会で一体何のためにやっているの。何のために僕はやっておるんですか、ここで質問して。あなたたちに、何を言おうとしておるわけ。
 では、三井さんに僕が質問して、矯正局長は何を感じましたか、私の意見を聞いて。聞いてくださいよ。
横田政府参考人 感想という御質問……(河村(た)委員「感想じゃないですよ。あなた、職務として何を聞いたかということじゃないですか」と呼ぶ)
 お答えします。そのような陳述があったということでございます。
河村(た)委員 陳述があって何ですか、それは。どうするんですか。あなた、そこで何か義務が発生するんじゃないの、義務とか何かそういうものが。どうですか。
横田政府参考人 委員がどのようなことを想定なさっての御質問かちょっとわかりかねますが、三井さんが参考人として陳述されたことによって、直ちに矯正局あるいは矯正局長が何らかの法的な義務を負うかということにつきましては、私はそのようなことはないというふうに考えております。
河村(た)委員 法的な義務も私は危ないと思うけれども、かなりある可能性もあるけれども、その前に、一般的な、社会的な、政治的な、国会議員としての、国会の委員会として質問して、参考人で来た人がですよ、証人喚問ではないけれども、本人はそれと同じ気持ちだと言ったじゃないですか。何にも、ただそういう話がありましたで終わりだったら、こんなばかな話がありますかね、この世の中に。どうですか、局長。
横田政府参考人 お答えします。
 何か議論のようになってしまって大変申しわけないんですが、立法府における調査でございます。それによって、いろいろケース、ケースでございましょうけれども、直ちに、その陳述があったこと自体によって、行政府が何らかの、本件について特定して申し上げますと、この件について直ちにその義務が発生したというふうには私は理解しておりませんでした。
河村(た)委員 これは本当はここでとめてもいいんだけれどもね。木島さんの言った話も、委員長の話もそうなんだけれども。
 そうなってきたら、本当にこれは議院内閣制にも何にもならぬし、何にもならぬということですか、何にも。ああそういう発言がありました、それで終わりですかね。もう一言でもうやめておきますわ、ばからしくなってきた。
横田政府参考人 ちょっと、若干行き違いがあったかもしれませんが、私が申し上げたのは、法的な、そういう問題であって、現実の心の動きといいますか、それにつきましては、確かにその事実の、三井さんがおっしゃったことがそのとおりかどうか、これはズボンのことだけではなくて、例えば事情聴取を受けたというようなこともおっしゃっていましたが、そういったことについて確かめなきゃならぬということもございます。それについて私どもとしてどう対応するか、そういう心理的な動きというものはございます。その結果どうしたかということは、先ほど官房長も述べましたし、私も述べたとおりだということでございます。
 三権分立制あるいは議院内閣制云々ということでは決してございませんので、その点は御理解いただきたいと思います。
河村(た)委員 では、もう一つ、三井さんが言われた決定的な話、ありましたよね。水筒のようなものが、かたい破片が十数センチ、それぞれ出てきますけれども、そういうばりばりに割れたものが、自傷行為に使えるものがあったと。あれは調べに行かれましたね。
横田政府参考人 三井さんが、何らかの破片があったということは陳述しておられました。それについて、私どもとしては、その後、具体的にだれかに聞くとかそういう行動はとっておりません。
河村(た)委員 もう全然だめだよ、これ、悪いけれども。名古屋大学の二村教授にも私言いましたでしょう。肛門の五時と十時のところがちょうど切れているんですよ。それをちょうど、タッパーですとここにカーブがありますから、五時の百八十度のところは十一時ですから、十時といったらちょっと円弧を描いているね。その切片がちょうど合うんです。
 それから、切り傷も私も見ましたけれども、写真を。すごい傷がついています、ばしっと。それをちょうど引くときに、ナイフのようなものではないと。ぎざぎざっと無理に入っていくような、それは全くそれと形状が同じ。その後の直腸のも十一センチです、ちょうどそうなるという。そこまで大学のドクターが、二村さん、立派な権威ある医者ですよ、あの方は。その方が言われて、何もしないんですか。
横田政府参考人 いろいろ御指摘のあるところでございますけれども、私ども、基本としましては、やはり、何と申しましても、現在、この案件が起訴されて、司法権のもとにあるということでございます。したがって、そのような陳述等がございました場合に、行政権としてどこまでコミットする、立ち入ってさらに何かを行動するかということについては、やはりそのあたりを慎重に考えていかなければならないというふうに、これが基本的な考え方でございます。その上での先生との御意見の相違かというふうに思います。
河村(た)委員 あなた間違っておるよ、基本的に。司法権にあるんじゃないんですよ。国会にもあらゆる国民にもあるんですよ、真相解明の権利や義務は。ただ、司法は、司法というその機能を持ったところが司法権ですよ、その独立は大いに保たなあかん、インディペンデンスを持つ。だけれども、国会は国会でこれはきちっとやらなきゃ、こんな中間報告に書いて、延々と去年の秋からやっているじゃないですか、この話を。ホース事案はちょっと後だけれども。全然違うじゃないですか、それは。
横田政府参考人 大変申しわけありません、議論になってしまうのは避けたいんですけれども、あくまで申し上げているのは、立法府の調査権を否定することではもちろんございません。それから、行政府が何らかの行政的な面での調査を行うということだって、これはもう私は否定するわけではありません。
 ただ、あくまでもそれは個別判断で、やはりおのずから制約があるであろうというのが認識でございます。
河村(た)委員 では、ちょっと刑事局長来てみえますから。検察は調べに行かれたでしょう、今のかたい破片、そのときに水筒がどういうものがあったかという。
樋渡政府参考人 捜査におきます検察の具体的な個々の活動でございますから、法務当局としてお答えできる立場にはございません。
河村(た)委員 まあこういうふうなんですけれどもね。
 これで無給にするんですか、大臣、無給のままで、こんなことをやっておって。違法になっちゃうよ、本当に。あなた、検察は検察だけれども、処分権者ですよ、停職処分、無給、実務は矯正局長だと思うけれども。どこかの会社の社長はこんなことを言いませんよ、絶対に、こういうことがあったって。検察に引っ張られたから、そのとおりみんな有罪なんて言いませんよ、絶対に。おまえ本当にやったのかと言いに行きますよ、絶対に、これ。
 もう一言、まあ聞いてもしようがないか。これはまことに残虐な懲らしめだよ、皆さん。何が懲らしめ目的で必要もなく、ありもない供述調書をつくって。八名を懲らしめておるのはあなたたちじゃないのか。考えられないよ、これ。
 人事院、せっかく来ておるから、よく聞いていって、ちゃんと言ってやってよ、これ、こういうのはだめだと。だめでしょう。どう思いますか。一遍、どうですか。
山野政府参考人 休職給につきまして、私どもの運用通達では、休職者の生活を保障する意味において、予算の許す限り、任命権者が所定の割合、百分の六十でございますけれども、その裁量によりその支給額を定めるとされているわけでございます。各府省、それぞれ主管する業務の性格等もあろうかと思われますので、各府省に判断をお任せしているというところでございます。
河村(た)委員 先ほど自民党の後藤田さんも、もし無罪だったらどうすると言われましたよ、これ。
 私も本当に余りそういう意味で対立する気ないんですよ、本当に別に。大臣もわかるだろうと思うけれども、私もそういう性格ですので。だけれども、やはり真相を解明して、苦しんでおる人間は助けてやってほしい。いいですか、デパートメント・オブ・ジャスティスですよ、何遍も言いますけれども。
 それができなきゃ看板書きかえてくださいよ、そんなの。それか、検察庁だけ切り離せよ、本当に別個に、検察庁だけ。法務省と別ですといって切り離しなさいよ、そうなら。それだけ申し上げておきますから。一応ちょっと感想だけ求めて、このテーマを終わります。大臣。
森山国務大臣 先生の御意見は御意見として承っておきます。
河村(た)委員 それでは、もう一つ資料がありまして、革手錠の問題に移りたいと思いますね。もう時間がなくなってきたな、三十分になっちゃったな。
 要するに、革手錠を締め上げたことによりということで、制度的に言いますと、では、革手錠というのはどの程度締めるというふうに指導されておりましたか。
横田政府参考人 お答えいたします。
 「戒具の使用及び保護房への収容について」という通達が平成十一年に出ておりますが、これに、戒具の使用について、戒具は、必要以上に緊度を強くして、使用部位を傷つけ、または著しく血液の循環を妨げる等健康を害するような方法で使用してはならないといったことを含めて、幾つかの留意事項というものが決められております。
河村(た)委員 では研修は、初等科、中等科、高等科とありますけれども、そういうところでどういうふうに指導されていましたか。
 局長が答えぬでも、知っておる人が答えてくれた方が早いで、委員長。時間がもったいないわ。伝言ゲームみたいなことをやっておったって、どうしようもならぬよ。
横田政府参考人 申しわけありません。
 戒具につきまして、法令の点、それから実務の点において、矯正研修所で指導しているというふうに聞いております。
河村(た)委員 これはちょっと詳しゅう聞きたいので、刑務官の方に答弁してほしいんだわ。こんな伝言ゲームで、こんなことをやるのは時間がもったいないですよ。
 では、初等科では指導はありますか。刑務官、刑務官に。答えてくださいよ、刑務官。
横田政府参考人 お答えします。
 今申し上げたことを初等科においても教えているということでございます。
河村(た)委員 本当かね、これ。初等科を出た人、指導なかったと言っているよ。これは本当かね。だから、刑務官が言ってくれなければ、わからぬのだよ。局長はあれでしょう、検事でしょう。言っておくけれども、ここから問題が生じたんだよ。
 では、ちょっと変な話だけれども、矯正局長さん、あなたは、本当に現場の看守さんとか、そういう人たちと、酒を飲まぬでもええけれども、仮に酒を飲んだりして、本当の自分たちの施用はどうやってやるんだとか、そういうことでコミュニケーションをとったことはありますか。
横田政府参考人 コミュニケーションといいますか、委員おっしゃるとおり、私はもともと検事でございます。したがって、長い間……(河村(た)委員「ないと言って答えてくれればいいんだよ」と呼ぶ)
 ですから、そういう意味においては、刑務官と話をしたことはもちろんございます。(河村(た)委員「どういう話ですか」と呼ぶ)
 ですから、いわゆる仕事の内容とか苦労話とか、それは伺っております。
河村(た)委員 それはどういう刑務官ですか。例えば看守部長とか、本当の現場でやっておる人たちと話したことはありますか、本当に話を聞いて。
横田政府参考人 何度か仕事の上では刑務所を視察したこともございますし、また、刑務所外でそういった関係者と会合などを持つこともございましたし、そういう機会において矯正の実情というものはできるだけ知るように努めてまいりました。
河村(た)委員 またこれはちょっと聞きますけれども、時間がないからそれは、余り感じ悪いけれどもな。実際言うと、ほとんど聞いていないんですよ、本当のところは、現場の看守さんたちと。そういうふうに言ってもいいでしょう。本当の現場の話ですよ。どうですか。
横田政府参考人 どの程度のことまで委員が要求なさっているのかわかりませんが、十分であったというふうに私は決して申し上げるつもりはございません。ただ、これから、このポストになりましたので、いろいろな関係で現在はなかなか難しゅうございますけれども、十分それは意を用いてするつもりでおります。
河村(た)委員 それでは、中等科においては、初等科はやっていないと言っていますよ、言っておきますけれども、初等科。
 いいかね。絶対、研修していると確実に言えるね、これ。違っておったらえらいことになるよ。初等科、革手錠。
横田政府参考人 中等科、それからさらに高等科においても、いずれもそれぞれの段階で教育しているというふうに聞いております。
河村(た)委員 これは、初等科で受けていない人がおりますよ、実際、初等科で。だから、ここら辺でも、もうがたがただよね、本省におる人たちと現場と。こんなふうだから、現場で苦しんでおる人をこんな罪に陥れるんですよ、結局。
 では、中等科でどういうことを言っていますか。
横田政府参考人 お答えします。
 実際に矯正研修所におけるカリキュラムの中で、戒具の使用についての、こまといいますか、授業時間の割り当てをしまして、そこで教官が実務的な面も教えているというふうに聞いております。
河村(た)委員 どういうふうに締めるということをどういうふうに言っていますか。
 本人に言ってもらった方がいい、伝言ゲームじゃあるまいし。
横田政府参考人 申しわけございません。
 それぞれの教官によって、その教え方といいますか、あると思いますけれども、いずれにしましても、先ほど申し上げました通達にのっとった戒具の使用方法ということで、実際に指導していると聞いております。
河村(た)委員 わけわからぬじゃないですか、これは。
 では、高等科ですか、上は高等科ですね。高等科と中等科の違いはどういうふうですか。全部、僕が言っておることが当たるかわからぬけれども、どこが違いますか。
横田政府参考人 初等科、中等科、高等科の研修それぞれ目的が違いますので、例えば高等科であれば、それは、今度、幹部職員として、戒具の使用についてどのように考えるかといったことも含めて教育をしているというふうに聞いております。
河村(た)委員 これも私が言います。これは人によって違うかわからぬけれども、それは。
 初等科はなしと。中等科においては、二時間程度、かけ方を言う、実際にかけてみる、緩みがないように体に密着した形でつけろと。それから、高等科においては、もっと実地のようにやって、そこで制圧する役をつくって教官が指導する、こういうことです。中等科においては、緩みがないように体に密着した形でつけよ、こう言います。
 そこで、毎回、つけてみます。どういうことが言いたいかというと、大変な誤解がありますから、これは、皆さん、よう聞いておいてほしいし、革手錠というのは一体どういうものかということを本当にやらなきゃだめですよ、これ。
 私は、ここはワイシャツの上からつけるから。刑務官にきのう頼んでおいたけれども、ちょっと締めてくれる、もう一回。
 本当は伏せてつけますけれども、暴れていますから。伏せてもいいです。伏せましょうか。(発言する者あり)見えないでしょう。では、立って。私のウエストをもう一回はかってくれますか。――一メーター四ですか。ちょっとメモしてくれる。一メーター四。(発言する者あり)あり過ぎかね。
 それで、何が言いたいかというと、穴は、ちょっと本当に皆さん、真剣に、真剣と言うと、いつも真剣で御無礼ですけれども。これでぴったりですね、体型、僕のウエスト、そのままですね、これ。これだと、こうやってやると――抜けちゃうんですよ。抜けちゃいますよ、これだと、ぴったりだと。ちょっと、もう緩めてくれます。
 ぴったりだと、今私がやりましたように抜けます、これは。今のこの――ソケット、ちょっと。――ちょっと外してくれる。
 こういう施用ではいかぬでしょう。これは答弁いただけますか。今の施用ではいけないでしょう、矯正局長、今の抜けるような施用ではだめでしょう。
横田政府参考人 そのとおりでございます。
河村(た)委員 では、その次の穴へ入れましょう、次の穴へ。今のはだめなんですよ。では、次ですよ。最初はこれ。これで抜けました。――こうなるんですよ。こうですよ。これだと動きません。これがいわゆる施用でしょう。局長、どうですか。これがいわゆる正しい施用でしょう、次の穴ですから。どうですか、答弁してください。今の穴の位置です。
横田政府参考人 正しい位置と考えます。
河村(た)委員 これを見ていただけますように、かなり苦しいんですよ、わかりますか、ちょっと。さわってもらってもええけれども。いや、これは息こうなりますよ。こういう状況なんです。これが正しい位置ですよ。(発言する者あり)委員長、これが。
 大臣もちょっと、恥ずかしいけれども。これ、こういうふうです。これが正しい位置なんですよ。ここぐらい締まっているんですよ、こういうふうに。わかりますか。この前だと抜けちゃうんですから。ここまで締めるものだということなんです、これは。
 それで、こうやってやったら傷つきますよ、言っておきますけれども、この周り。ここに、鉄の腕輪のこっちに鉄のアングルみたいなのがついているでしょう。もしこれで転んだらどうなりますか、保護房の中で、ぼんと転んだら。壁にぶつけたらどうなりますか、どんと。実はこれだったんですよ、はっきり言いましょう。
 私が検察を擁護する立場になりますと、検察も、なぜ事故が、死んだ人と、それから傷がついたかわからなかったんですね。どこかで何か殴ったりけったりしたのではないか、こう言っていたけれども、ないんです。だから革手錠で締め上げたことによると、しようがないからそうしたんですよ。これではおかしいから、もう一段締めたということにしたんですよ、わざわざ。供述調書、むちゃくちゃ、ほとんど作文ですけれども。逮捕するぞ、逮捕するぞと、とんでもないことを言ってとった。
 この状況で倒れたとしますよね、仮に。てんかんのある方が一人おみえになりました。立っていたという状況もあるんです。それから、もう一つの事案では、これで壁にぶつけていた、どんと体を。そういう証言もありました。ここに鉄の金がありますから、これでどんといきますと、これはかなり苦しいですよ、言っておきますけれども。
 もう一段、一応ちょっと締めるようにしてみましょうか、この次の。検察が言っているのは、この次ですよ。入るかどうかですよ、この次の穴に。これは当然力を入れていますから、受刑者は。締まらないでしょう。入らないでしょう。二人で引っ張ってください。――やめてください。入りません。これはなぜかというと、ベルトを一たんちょっと先まで引かなければいかぬからですね。わかっていただけましたか。これだけのことだったんですよ、実は。
 彼らは、五名の刑務官は、実は、第一の穴しか入れていないんですよ、第一の穴しか。わかった。二人で引いたでしょう、今これ。引けませんよ。皆さん、自民党にこれお貸ししますから、やってください、ぜひ本当に。
 きのう、樋渡さん、私、ちょっと政府委員室に、うちの部屋へ来てくれと、伝わっていますか。局長に手錠をかけたいので来てくださいと頼みましたけれども、伝わっていますか。
樋渡政府参考人 うちの審議官が別の件で先生のところに御説明に行った際に、一度私にも話をしたいという話があったということを伝えてくれという話は、聞いております。
河村(た)委員 その用件じゃないんですけれども。
 ちょっと済みません、シャツ姿で、時間もないものでお許しをいただいて。
 一遍ちょっと委員長、これは本当に、真剣にどういうことが言えるかというと、個々のいわゆる犯行、そういうような問題では、私は本当に無罪だと思うんだけれども、それより、こういう戒具をずっと、何年も使わせておいた法務省、そこに問題があるんじゃないかということを検証するには、かけるのが一番いいですよ、はっきり言って。
 これから、それを見るとわかりますけれども、要するに次から次への穴は十センチですけれども、実は十三センチぐらい引かないと入らないんです。だから、外すときにちょっと苦しいと言ったでしょう。なぜかというと、すぐわかるから。例えば、ここに入れたとしますね、こういうふうに。ずっと次へ行くと、穴はすぐのところにあるけれども、下にこれがあるから入らないね、ずっとね。下にこのつめがあるから。ずっと入らずに、十センチのところに来ても入らないんです、これにまだぶつかって。大臣、見とってよ、入らないんです。これを入れるには、ここまで行かないかぬ。今のところだと、大体ここで入りますね、次が。ここまで行かないかぬですよ。これをはかると十三センチぐらいになるんですよ。十二センチから十三センチ。
 だから、要するに、抜けちゃう状況ではだめだから、適正な施用をするためには十三センチ引かないかぬということです。十三センチ。ちょっとくぼみに戻って十センチに戻りますけれども。
 十センチ締めるのはどういうことか。資料を渡しましたが、皆さんのところに行っておるでしょう。慶応義塾大学の体育会重量挙げ部の部員の皆さんに、私は慶応ではありませんが、慶応の知人がおりまして、ウエートリフティングベルト、こうやって、やりますね、テレビで御存じでしょう、ぐっと腹を引っ込めて挙げるもの、あれ、僕、どのぐらい締めるのかなと思って行ったら、彼らがやってくれたんです。ちなみに、ちょっとプライバシーがありますので名前は消してありますけれども。本当は出してくれてもいいと言っていました、彼らは。これを見てください。差し引きサイズ九センチ、六センチ、五センチ、十一センチ、五センチですよ、あの状況で。
 大臣、いいですか。大臣、見たことがありますか、ウエートリフティングのこうやってやるところ、ありますか。ちょっと答弁してください。
森山国務大臣 テレビでちょっと見たことはございます。
河村(た)委員 そのとき、腹がぐっと引っ込んでいるでしょう、ベルトして。
森山国務大臣 そうですね。
河村(た)委員 これはただし、自分で引いたものです。自分で腹を目いっぱい引いて、それでベルトをつける、これ以上は締まらないという状況がこれだと言っていました。あれでもこうなんですよ。九、六、五、十一、五ですよ。今のやったものは十三センチ引くんですよ、一たん、ぐっと、あれでも。これは自分でやっておる人ですよ、言っておきますけれども。だから、これにぐっと力を入れますと、もう数センチ引けるということで、要するにほとんどウエートリフティング状況になるわけですよ、みんな、ぐっと引いたら。
 それでもこういう状況ですから、ずっと施用しておると、これはちょっと矯正局に伺いますけれども、ドクターをきょう呼んだけれども、保坂さんと一緒にやって、来てくれないので残念だけれども、ちょっとあれですけれども、やはりすり傷とか、要するに私も遺体を見ましたけれども、やはり内出血の跡とかいろいろあるんですよ。こういう切り傷とか、そういう事故はたくさんあったんじゃないですか、適正な施用状況で。どうですか。
横田政府参考人 先ほどの通達にもありますように、そういうことがないように使用するということでやっております。
河村(た)委員 何を言ったか、わけわからぬよ、全然。
 刑務所の外科とかそういうところで、これは背中にバックルがあるから、バックルで傷がついたりとか、そういう、事故までいかない傷害のようなものはたくさんあったでしょう。
横田政府参考人 先ほどは失礼しました。
 革手錠の使用によって小さな傷ができることはあるそうですが、大きな傷ができたといった報告はないというふうに聞いております。
河村(た)委員 今度、ちょっと命じてください、適正性を。小さな傷があると言われたけれども、本当に各病院、病院というか刑務所の中で済ませるような、いろいろな、できているんですよ、見るとわかりますから。そういうのがどのくらいあったかということですね。
横田政府参考人 その点について特に調査したことはございませんので、また御指示がございましたら調査をさせていただきますが、それはしばらく時間がかかるかもしれません。
河村(た)委員 ちょっと委員長、指示してください。
山本委員長 委員の調査依頼がございましたので、矯正局長、しかるべく調査をお願いいたします。
河村(た)委員 そうしたら、今言いましたように、これは明らかになりましたよね、十センチ先であると。ということは、実は、ウエートリフティングから見てもすごいきつい状況であるということがわかった。
 それで、このベルトを改善しようと、私のこの普通のベルトだって、穴は二センチごとにあいていますね、私のベルトですと。穴は二センチごとです。だから、こういうような形式に変えようという議論はありませんでしたか。
横田政府参考人 革手錠が使用されるようになりましてから七十年ぐらいたっているんですけれども、今委員がおっしゃったような形で変えようとか、そういう議論は特段はなかったというふうに聞いております。
河村(た)委員 こういうことなんですよね、実はこれ。
 何をやっておるんですか、矯正局は。全然、これで十センチ締めていいと思っておったわけですか、やはり。では、今どう思われていますか、局長。
横田政府参考人 既に御報告しておりますとおり、革手錠については廃止することを決めておりますし、現実の問題としては……(河村(た)委員「穴の位置」と呼ぶ)
 現在は、ですから、まだ革手錠はそのまま各施設にはございます。(河村(た)委員「穴の位置はどう思うかということです」と呼ぶ)
 ですから、それにつきましては、革手錠を廃止するということを前提に、代替品の開発というか研究をしているところでございますので、特段穴について現時点ではどうこうということは考えておりません。
河村(た)委員 いや、これは本当にわかっていただいたかな。私、これは何遍でもやりますよ。
 それから、ぜひ委員会というか委員で、これをひとつやらないとわからないんです、実際にこれをつけないと。皆さん、ちょっとこれをつけてもらって。わかりませんよ。なぜかといったら、今までの矯正行政で戒具がどういうものであったかということの実証になりますから、それはお願いしますね。
山本委員長 与野党の理事さんの間での協議に諮りたいと思います。
河村(た)委員 とにかく、やはり現場に密着したことをやりましょうよ。私、全法務省の皆さん、それから検察庁の方にも頼みたいんだけれども、こんな大きな間違いを犯したのは、自分でやらなかったからですよ、早いことを言えば。これ、何か座布団を締めて二十センチ締めたという話があるけれども、どうですか、本当ですか。
横田政府参考人 お答えします。
 そのような話は聞いておりません。
樋渡政府参考人 私自身もそのような報告は受けておりません。
河村(た)委員 危険な戒具であったことはやはりどうも事実なんだよね、これ。やはり十二センチ締めなきゃだめだったんです。
 それから、二十センチ締まると思いますか、それでは、矯正局長。今やりましたよね、あなたの部下が。
横田政府参考人 大変申しわけございませんけれども、二十センチの起点がどこかということからにもよりますし、人それぞれ個人差があるように思いますので、一般論としてどうお答えしたらいいのか、ちょっと私、わかりません。
河村(た)委員 何を言っておるんですか。
 では、ちょっと、刑務官さんが来てしゃべってください。あなた、自分で私を締めたでしょう。しゃべってくださいよ、あなた。
山本委員長 委員に申し上げます。政府参考人以外に答弁できませんので。
河村(た)委員 それでは、そこに聞いてください。自分の実感として。
横田政府参考人 お答えします。
 先ほど申し上げましたように、個別ケースの問題のようでございまして、委員の場合にはあれ以上は無理であったと、先ほど委員の補助をした刑務官というか職員が申しております。
河村(た)委員 では、一般の受刑者については、収容者については、施用するときに、腹をゆるゆるに緩めてどうぞ締めてくださいという態度なのか、それとも、暴れて、腹をきつくしていて、例えば自分で手錠を持って、締めないようにして防御している。それでは、どっちが多いですか。
横田政府参考人 実務の現場の話ですと、実際には拒絶する人が多いということだそうです。
河村(た)委員 そうなんです。大臣、よう聞いていてくださいよ。あなた、また無給にしたら怒るよ、本当に私。大臣、本当に。本当に冷静にならにゃいかぬの、これは。
 僕はまだそんなに暴れませんでしたし、どっちかというと、ある程度締まる方を見せたかったから、初めもぐうっとはしていませんでしたよ、全く。だけれども、ほとんどの、だから保護房に入っているんだから、みんな。だから、みんなすごいんですよ、抵抗が。ほとんど締めれぬと言っていましたよ。一人や二人じゃできぬぐらいだと言っていましたよ、普通の状況。それも下に伏せているんだから。僕みたいにこうでないですよ。下に伏せているんだよ、状況は。そんな抵抗しておる人間を二十センチ引くなんか、できるわけないじゃないか、本当に。どういうことをやったんだよ、本当に。
 だから、理由がないからこれを理由にしたんだよ、みんな、もう一個の穴をどうのこうの言って。みんなうそだよ、そんなもの。どこの穴に入れたってわかるわけないんだから、こんなの、一たん外したものを。
 もう早く家庭に戻してやってくださいよ、みんな。本当に情けないよ、私。こんなわかりやすいことを、法務省の、法務委員会でこんなことを何遍やらせるんですか。もうわかったでしょう、塩崎さんも。自民党も使ってください、これ。一人ずつかけないとわからないんだ。
 僕も初めは、遺体なんかを見ると、こういうところに結構傷があるんですよ、だから本当に刑務官が殴ったりけったりしておるかと思いましたよ、初めは。だけれども、医者に聞いたら、こういうところというのはみんな出ているところなんだ。施用するとき、ばたっと倒れるでしょう、制圧のとき。これで打ったりするわけですよ、全部。もし殴るなら目のくぼんだところとか、こういうところにみんなできる、全然違いますという話だった。これから遺体を見ると、確かにここが、ずっとあざができている。これはむちゃくちゃ締めたのかなと思ったよ。
 私は名古屋刑務所へ行って、二時間余り、これは一時間ぐらいですけれども、本当のベルトを並べてやったんですよ。わかったね、これは冤罪だと。とんでもないことをしてしまった、私もとんでもない質問をしたとわかりましたね、これは。ということですよ。こんな悲しいことがあってはいかぬ、本当に。検察官はやり直してくださいよ、本当にこれは。
 無理なんだよ、二十センチ引くことは。全部二十センチになっているじゃない、やはり。それも、八十センチを六十センチでしょう、両方とも。僕は一メーターあったんですよ。ビールも飲むものだから、ぶよぶよになっておるところもあるけれども。八十センチの人を六十センチに締めたら大変なことですよ、これは。できるわけないよ。それと、二村教授が言っていたけれども、もし二十センチ締めたら、横隔膜が下がらぬようになってすぐ呼吸困難になるだろうとはっきり言っていますよ、もし締めたら。本当に情けないね、これは。
 それから、もう一つ資料が出ているから、これは名刑にあるベルトですね。中間報告によると、極小のベルトにしたとかと出てくるの。五月、例えば極小サイズの革手錠のベルトをつけたとか、それから、中サイズの革手錠を小サイズにかえた、いろいろありますけれども、中とか小とか、実はベルトになされている表示、特大というのが、尾錠から五十八センチ、一番小さいじゃないですか、これは。実はめちゃくちゃなんだよ、これも。わかる。時間がないから、ちょっとはしょるけれども、資料を残していくからね。
 ほかにちょっと頼みたいんだけれども、この一番下にある一というもの、表示なし、百五十五センチ、これがたしか極小のベルトです。私、見てきましたが。ただ、ボールペンで書いてあるから、これは。ボールペンで書いてあるんです、このベルトだけ。今名刑に行っておると思うけれども、うちの秘書が。これを隠さないようにね、絶対に。写真は撮ってきたけれどもよく写らなかった、極小と書いてある。
 極小のベルトというのは、実は、ベルトの長さ百五十五センチで、一番長くて、バックル、尾錠から六十五センチのところなんですよ、これは。悪いけれども、違うよ。この五月事案のもので、極小サイズ、五十九・八まで締めたと書いてあるんだ、これ。全く違うの。おわかりいただいた、これ。違うんです。
 これはなぜ極小とか中と書いてあるかといったら、何と、これの、腕輪の大きさなんです。これも、大きい小さい、これを変えれるんです、こうやって入れると。これが最も小さくなるものをどうも極小と書いてあるようなんだ。ということなんです。それをこのベルトにつけておけという意味で書いてあるだけなんですよ、これは。
 しかし、こんな証拠で、僕は本当に悲しいわ、これ。本当に悲しいよ、これ。こんなことを、マスコミ諸氏もほとんど刑務官に話していないし、革手錠を締めた人もだれもいない。
 それから、これもはっきり言っておきます。僕は民主党もきちっと謝るところは謝るべきだと思うけれども、一つの大きな誤解を与えたのが、民主党がやった放水実験がありました。あれは、標準的な消火栓の水圧ということで六キロの水圧を使った。これは、先日もあるテレビで使ってしまった。ブロックがぶうんと飛んでいきますよ。三月三日、これは。実は、検察の言っておるのでも〇・六キロ。検察が言っておるのでもですよ。そのときは水漏れのないホースを使っているから、あれより低かったと思われる。十倍の実験をしてしまった。そして、日本の皆さんに大変に誤解を与えて、僕は、刑務官に、心の中に本当に深い傷を与えたと思う。これは申しわけなかったと謝っておきます、本当に。彼らはみんなおとなしいから、僕が言っても笑ってくれるからありがたいんだけれどもね。
 こういう残酷なことが行われちゃったということです。あの放水の後に乙丸さんが起訴されて、それから高見さんと岡本さんも起訴されていくということなんです。
 時間が来ましたからやめますけれども、一刻も早く八名の皆さんを家庭に戻してやってください。お願いしておきます。
山本委員長 山花郁夫君。
山花委員 民主党の山花郁夫でございます。
 冒頭、法務大臣、過日、先週ですか、この委員会で議論をした際に、警察庁の方においでいただきまして、警察庁としては第三次の覚せい剤乱用期であるという認識があったという話がありました。また、矯正施設でもそういった中毒の方が結構いらっしゃるという話があったことについて、覚えていらっしゃいますね。
森山国務大臣 そういうことがあったのは覚えております。
山花委員 前回は、そういう中で、例えば、覚せい剤中毒の後遺症の方が精神疾患のような症状を呈して、十分な医療的な措置がとられているのかどうかということについて私は疑いがあって、やはり、今回いろいろな問題が出てきている一つの問題は、そういった人たちが大声を上げたり暴れたり、そういう中で保護房に入れられてということが一つの類型としてあるのではないかという指摘をさせていただきましたけれども、今回は、また医療のテーマで議論をさせていただきたいと思います。
 覚せい剤中毒の方が多いということは、つまりは、自己使用のケースですと、注射針というか、注射器で自己使用をしていますので、必ずしも針が衛生的でないケースもあるわけです。また、暴力団の関係者の方ですと、入れ墨をされている方が大変多うございますので、入れ墨もまた、あれは針を使いますね。そういったことが背景にあるのではないかと思うんですけれども、C型肝炎を発症されている方が結構いるようであります。
 このことに気がついたのは、一つは、今回、矯正局などから死亡帳を大変多く提出していただきまして、それを見ていくと、今まで指摘をさせていただいたように、どうも死因がちょっとおかしいのではないかとか医療的にどうかというケースと並びまして、例えば慢性C型肝炎であるとか、あるいは肝がんであるとか、肝臓に大分ダメージを受けている人がすごく目立つなということがまず気になったわけです。
 そこでなんですけれども、きょうは厚生労働省にも来ていただいておりますので、健康局長に来ていただいておりますので、一般的な形でまずお聞きしたいと思うんですけれども、C型肝炎に対する一般的な治療法として、どういったものがあるんでしょうか。
高原政府参考人 我が国におきます一般的なC型慢性肝炎の治療法といたしましては、大きく分けまして、インターフェロンや抗ウイルス剤を用いた抗ウイルス療法、それから肝庇護療法、これは古典的な方法でございますが、この二つの治療法があると承知しております。
山花委員 よく聞くのがインターフェロン療法というものなんですけれども、私、医学については全く素人ですが、ただ、少し調べてみますと、C型肝炎といってもいろいろな型があるようで、2b型、2a型、1b型で、日本人に一番多いと言われているのが1b型のようですが、残念ながら、これにはインターフェロン、必ずしも有効な方法ではないようであります。
 ただ、ただというか、つまり、インターフェロン療法が万能ではないということはよく承知をした上でなんですけれども、要するに、C型肝炎というのを全体のパイに置いたときに、インターフェロン療法、あるいは、最近ではリバビリンという経口薬ですか、それを併用する方法などが一般的な治療法と承知をいたしておりますけれども、こういった療法はどの程度の効果があると考えてよろしいんでしょうか。
高原政府参考人 C型慢性肝炎に対します抗ウイルス療法の効果でございますが、病気の進行状態、ウイルスの遺伝子型及びウイルス量、これは委員がおっしゃったところでございますが、これによりましてかなり影響がございます。しかしながら、全体を平均いたしますと、ウイルスが排除される率は三割から四割ということであろうというふうに承知しております。
山花委員 そういうことのようなんですね。つまり、型がいろいろあって、効くケース、効かないケースがあって、2a型と呼ばれるものについては比較的よく効くというか、療法が有効なようであります。ただ、刑務所に入っている方がどういう型なのかということは、それはよくわかりませんし、お医者さんじゃないとわからないんでしょうけれども、一般論として言えば、C型肝炎という症状があれば、仮に、全く問診とかも何にもしなくて、全部すべてに投与していたと仮定します、机の上の議論ですけれども。大体、およそ三割ぐらいの人に効くのではないのかなという推測が成り立つのではないかと思います。
 ただ、刑務所に入ってきている方ですから、ほかにも、アルコール中毒も併発していたりとか、あるいは、既にもうずっと長い間肝炎を患っていて、捕まったときには既に肝硬変なり肝がんなりを発症していて、だから、もはやこういう療法じゃなくて違う療法が必要になっているというケースも多々あるわけですから、矯正施設の外の数字を全くそのまま当てはめるというわけにはいかないとは思いますけれども、ただ、一般論として、三割から、リバビリンを併用すると四割ぐらいという数字というのは統計的にはある程度の重みがあるものだと思います。
 健康局長、質問はこれでおしまいなんですけれども、ちょっととどまって議論を聞いていていただきたいと思います。
 ところで、これは矯正局の方にお伺いしますけれども、法務省の矯正施設において、C型肝炎の患者数というのは一体どれぐらいいらっしゃるんでしょうか。
横田政府参考人 お答えいたします。
 行刑施設においてC型肝炎に罹患している被収容者の数でございますが、これは、平成十四年十月一日現在でとらえた調査の結果で申し上げますと、千四百三十三人ございます。これは、その時点における被収容者全体の約二%になっております。
 そして、この千四百三十三のうち、いわゆる未決の被収容者は百七十四人、これはすべて、非休養患者と申しまして、病室とか、あるいはこれにかわる部屋に収容して治療を受けているという状態にない者でございます。それから、残りの既決被収容者、確定している既決収容者は、休養患者が十人、これは病室に入っているとお考えいただきたいんですが、十人。それから非休養患者、この人たちの数が千二百四十九人で、結局、既決の全体の数が千二百五十九ということでございます。
山花委員 矯正施設の中で、もう一回確認しますけれども、今、平成十五年の十月一日と言われましたけれども。
横田政府参考人 失礼しました。言い間違えたと思います。十四年、昨年の十月一日でございます。
山花委員 十四年の十月一日の時点で、矯正施設、既決、未決合わせて全体で千四百三十三で、未決の方が百七十四、既決の方が千二百五十九。未決の方は皆さん非休養で、既決の方は十名が休養で、非休養が千二百四十九という話でありました。
 今厚生労働省の健康局長から、一般的にはC型肝炎に対してはインターフェロンのような療法があるのだというお話がありましたけれども、矯正施設内で過去にインターフェロン療法を実施した実績はどんな形になっていますでしょうか。
横田政府参考人 現在、私どもが把握している数字ですと、平成五年からになりますが、平成五年から現在までの間にいわゆるインターフェロン療法を実施した症例は十二例という報告を受けております。
 その十二例の内訳でございますが、未決の被収容者が十一例で、既決の被収容者は一例でございます。
山花委員 平成五年から現在までですから、約十年にわたってということです。先ほどの千二百五十九というのは、平成十四年の十月一日現在で千二百五十九ですから、平成五年から現在まで、要するに、出ていった人もいるでしょうし、亡くなられた方もいるでしょうから、入れかわりがあって、実際の母数というのはもっとはるかに、千二百五十九じゃなくて、十年間で矯正施設内でC型肝炎だったということがわかっていた人というのは実はもっと多かったのではないかということが、経験則からいってもこれは当然のことだと思いますけれども、推測をされます。
 ところが、矯正施設に入って、十年間で、既決の人は一名しか療法がされていないということで、未決の人でも十一名ということで、これは常識的に見ても余りにも少な過ぎる数字ではないかと思います。
 健康局長がお答えするあれでもないので、こちらで一方的に申し上げますけれども、インターフェロンを使うと大変、値段もそう安いものではないですね、お金も結構かかりますから、また特殊な事柄でありますので、けがをしたとか熱を出したとかいうこととは違って、恐らく、現在把握しているところまでですと、とおっしゃいましたけれども、漏れるような数というのはそんなに多くないのではないかと推測をされるわけです。つまり、予算の執行状況を見たって、その分ぼんと上がりますから、また、こういう療法だということは特殊なケースですので。もちろん、数件程度漏れている可能性は否定はしませんけれども、そんなに大きくは変わらないんじゃないかと思います。
 先ほど厚労省の健康局長からもお話がありました、全体、要するにC型肝炎全体をパイとして見たときに、有効なケースというのは三〇%から四〇%あると。もちろん、さっき申し上げましたように、矯正施設内にいる人ですから、そのままの数字が当てはまるとは言いませんけれども、しかし、これは余りにも低過ぎませんか。
 矯正局長、恐らくこういう指摘は今までなかったんじゃないかと思いますけれども、数字に対してどういう認識でしょうか。これは当たり前だという認識なのか、あるいは、どうですか、やはりちょっと少ないと思いませんか。
横田政府参考人 お答えいたします。
 一般的なことからまず申し上げさせていただきたいんですが、行刑施設におけるC型肝炎に対してインターフェロン療法を行うかどうかということは、もとより医学上の条件を満たすということでありまして、しかも医師が必要性を認めた場合にのみ実施する、これは当然なことですけれども。私どもとしては、行刑施設入所前からこの療法をしていたという者についてはその点を配慮して、その実施の適否についてさらに判断しているというふうに理解しております。
 ただ、今、数の点でございますが、現実に、それぞれの母数に対して、どのような判断でインターフェロン療法をしたかしなかったかという個別の詳細な調査はしておりませんので、感想だけになってしまいますが、おっしゃるとおり、確かに相当の母数に上るであろうということもわかりますので、それから比べると、率直に申し上げて、これは非常に少ない。非常に少ないという御指摘、これは委員おっしゃるとおりだというふうに考えます。
 そこで、私どもといたしましては、もう一度、このC型肝炎の患者に対する治療条件につきましては、現状をしかるべき時期に調査をしまして、準備をして、社会一般の治療の動向もまた視野に入れながら、今後の対応について十分検討してまいりたい、このように考えております。
山花委員 感想ということでしたけれども、やはりちょっとこれは私は結構衝撃的に少ないと思うんですよ、既決で十年間で一名ということですので。もちろんそれは個別いろいろなケースがあるでしょうから、今直ちにこれがいけないことなのかどうなのか、それはわかりませんけれども、ただ、常識的に考えて、少しこれはおかしいんじゃないかというふうな感想を持たざるを得ないような数字だと思います。
 実際にそれはもう一回点検していただいて、非常に危惧しているのは、例えば、現場のお医者さんが、これは非常に高価なものですから、予算がないからということで控えてしまうようなことが、これはあってはいけないことだと思いますし、もう一度何らかの取り組み、取り組みといいますか、もう一回これは何でこんな数字になるのか分析していただいて、もし正すべき点があれば正していただきたいと思うんですけれども、先ほどそういう御趣旨の答弁だったということでよろしいでしょうか。もう一度、改めてお願いします。
横田政府参考人 先ほど申し上げましたように、推測ですけれども、これは恐らくいろいろなケースごとの判断で最終的にこの数字になったんであろうというふうに理解はいたしますけれども、やはり一番あってはならないことは、予算上の理由でなすべきことをしなかったということは困るわけですから、これは委員おっしゃるとおり、したがって、先ほど私が申し上げたこれからの実情調査というのは、医学的なことだけではなくて、そのような、言ってみれば周辺事情といいますか、そういったものを含めてどうなのかということを調査した上で、それに基づいて一番適切な方法を検討してまいりたいという趣旨でございます。
山花委員 法務大臣、今の数字のこととか、御感想があればお聞かせいただきたいんですけれども、私は本当にこれはちょっと余りにも少な過ぎると思いますし、もし、本来であれば治療すべき人を治療していなかったんだとすると、それはまずいことですし、従来、法務大臣とは箱の話は結構していましたけれども、予算をつけてちゃんとつくれということはしていましたけれども、こういったことについては余り申し上げていなかったような気がします。
 ただ、人によって結構、一回打つと、私も知り合いでインターフェロンの療法をやっている方がいますので、副作用があって、例えば、三日ぐらい三十八度ぐらい熱が出て、ぼおっとしていて吐き気がしたりという方もいらっしゃいますし、相手方の体力がなければいけなくて、インターフェロン療法をやるときには、打つ前に一生懸命食べて体力をつけてということをやる方もいらっしゃるようです。
 そんなような事情ですから、一人当たり大体幾らかかるというのはなかなか言えないんですけれども、ただ、保険の適用がないとなると、これは十万単位でお金が出るようなものですので、大変予算上も問題が、問題がというか、皆さんに対してやると結構かかるかもしれませんし、一方で、一般社会の人が受けられないのが刑務所に入ったらできちゃうじゃないかという批判もあるかもしれませんけれども、ただ、最低、刑務所に入っていたばかりに命を落としたなんというようなケースがあってはいけないと思いますので、その辺についての、今調査をしてという話がありましたけれども、感想と、あと、しっかりとこういったものについては予算の制約で医療が受けられないようなことがないようにするという御決意をいただきたいと思います。
森山国務大臣 私も医学については全くの素人でよくわかりませんが、先生がいろいろお調べいただいたこと、そして矯正局も非常に関心を持っていることにつきまして、今聞きまして、そのような方向で解決していけばいいというふうに理解していたところでございます。
 いずれにいたしましても、刑務所の医療全体につきまして、ほかにもいろいろ問題がございますので、刑務所における矯正医療についてしっかり勉強しようということで今取りかかったところでございますので、これも含めてやっていきたいと思っております。
山花委員 厚労省の高原局長は、どうもきょうはありがとうございました。ただ、こういう委員会ですので感想は求めませんけれども、ちょっと思われるところもあったんじゃないかと思いますし、あと、これ、この委員会で随分、刑務所の医療についてもっと厚労省とタイアップして何かやらなきゃいけないんじゃないかというような議論も出てきていますので、ぜひきょうのことも少し頭に入れていただいて、もしお互い協力できることがあればやっていただきたいと思います。御退席されて結構です。ありがとうございました。
 次に、あと十分ぐらいですか、刑務所の中の歯科の医療についてお尋ねをしたいと思います。
 歯科医療なんですけれども、ある刑務所の施設での話であります。これは歯医者さんが見て、器材が必ずしも十分じゃなくて、抜歯はできるけれども、補綴の治療とかが非常にこれではちょっと難しいんじゃないか、補綴というのは金歯とか銀歯とか入れたりとか、そういったような感想を持たれた方もいらっしゃいました。
 また、全然違う筋の話で、刑務所で歯が悪くなると、抜くことはしてくれるんだけれども、銀歯を入れたりとかそういうことは余りやってくれないというような話も、これは全然違うルートで聞いていますので、恐らくそういうところが、すべてかどうかはわかりません、そういうところがあるんじゃないかというふうに思います。
 ところで、これは「研修教材 行刑法」ということで、財団法人矯正協会が出している矯正研修所における教科書の中で、「第十章 衛生及び医療」ということで、大変いいことが書いてあるんですよ。つまり、「行刑施設は、一定の制限された区域内に多数の人を収容するという特殊な環境にあるから、衛生上特に注意が必要である。」ということで、いろいろと書いてあって、「被収容者に健康な生活を維持させることは、行刑の基礎的条件であるから、積極的に拘禁環境を整備改善し、又は予防医学的措置などにより疾病を未然に予防し、被収容者の円滑な社会復帰を図ることが必要である。」と。つまり、もう既に発症したケースだけじゃなくて、予防医学的な措置なども必要だということが書いてあるわけです。
 ところが、歯について、昔は抜歯というやり方が割と一般的だったのかもしれませんけれども、最近、考え方が変わってきていますね。歯を抜くということは余りいいことではない、それどころか、例えば歯を抜くことによって非常に身体的にマイナスな作用があるというような研究も最近はされているわけであります。
 これ、すべての刑務所について抜歯が一般的かどうかということを調べるのはちょっと大変でしょうから、例えば当委員会でも名古屋の刑務所に視察に行ったりとか、名刑での問題が取り上げられておりますので、矯正局長にお願いしたいんですけれども、少なくとも名古屋の刑務所において、歯科診療でどういう治療がなされていたのかということについて調査をしていただきたいと思いますけれども、答弁をお願いいたします。
横田政府参考人 お答えします。
 名古屋刑務所をその一例としてということでありましたらば、調査をすることは可能であると考えます。
 その期間、対象等につきましては、また具体的に検討させていただきますし、それによって期間もまた動いてまいりますが、基本的には、委員会の御指示がございましたらすぐにいたします。
山花委員 この抜歯についてなんですけれども、例えば愛知県の歯科医師会が、健康日本21という厚労省とタイアップしたものについて、研究などについて、ホームページにも出ています。
 例えば、歯を抜くと、動物実験で抜歯することにより、脳機能のスピードが低下したりとか、特に上顎、何と読むんでしょう、臼という字に歯で、要するに上の奥歯ですね、抜歯することによって極端に脳機能が低下することが……(発言する者あり)臼歯(きゅうし)と読むんですか、判明していますとか、あるいは、老齢期にそしゃく機能が低下すると、学習・記憶能力、特に空間認知能力が低下し、海馬の神経活動も減少していることも示されなどなど、歯の健康ということが非常に重要だということが言われているわけです。
 また、きょう委員会にこういった資料をお配りさせていただきましたけれども、例えば、こういった話を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。老人性痴呆の症状を発症しているような人に、義歯、いわゆる入れ歯、義歯の治療をすることによって、例えば寝たきりの人が起き上がれるようになったとか、あるいは、全くしゃべることもできなかった人が自分の名前が言えるようになったとか、そういった義歯スコア、痴呆スコアとの間に有意な相関が認められたという、「老年歯科医学」という雑誌に掲載されている論文ですけれども、こういったものもございます。また、厚労省の方も、こういった症例については研究を重ねてまいりたいというような話もあった。
 つまりは、今刑務所の中で歯科治療をしようとしたときに、粗っぽく言えば、抜くことはするけれども、義歯なんて高価なものはというような認識があってはならないと私は思うんですけれども、義歯についての自己負担とか官費の区分けについて、現状はどうなっているんでしょうか。
横田政府参考人 お答えいたします。
 刑務所における歯科治療でございますけれども、虫歯などがあって歯痛があるというような場合、それから、過去に充てんした歯科治療材料が剥離、はがれてしまったとか、歯茎の疾患などで食物のそしゃくに支障がある場合で、日常生活に支障が生じない程度までの応急処置については国費で行っておりますが、その他の治療でございます入れ歯とか差し歯とか、いわゆる義歯ですね、そういう作製等の治療は被収容者の本人負担で行われているというふうに聞いております。
 ただ、今後とも、国費による治療範囲の検討を含めて、これもまた大きな矯正医療の再検討という枠組みの中で、適切な歯科治療の方向づけとかあるいは実施について検討してまいりたいと思っています。
山花委員 今もお話がありましたように、入れ歯とか差し歯については自己負担の部分もあるということですけれども、要するに、刑務所も結構高齢化が進んでいるというのが一点。
 先ほど読みましたけれども、研修教材の「行刑法」の方でも、予防医学的な見地からちゃんとやりましょうということがしっかりとうたわれているわけでありますし、ましてや、義歯については、これは本来、厚労省と議論するべきことかもしれませんけれども、自由診療の中でも、例えば、一般的な治療法でないとか、高額なものについては保険が適用されていないものがありますが、義歯とか入れ歯についても、例えば前歯の差し歯だって、それは保険の適用のあるもの、ないもの、あります。ですが、保険の適用があるということは、少しざくっとした言い方をすれば、これは一般的な治療、治療ということになっているわけですから。
 その点については、もともと刑務所の中のことですから官費でやるということなんでしょうけれども、治療という観点から、これがもし、なされていない、あるいは、自己負担であるがゆえに、お金が高いので治療ができないということがあったとすると、これは人権上も問題ではないかと思いますので、今、もう一度検討したいということでしたけれども、改めて所管の大臣として、それは検討するということを一言言っていただきたいと思うんです。
森山国務大臣 大変具体的な御提案でございまして、健康の維持のため、特に歯の健康というのは基本的なものでございますから、これを維持していくために、行刑施設においてもしかるべき措置をとるべきであるというふうに私も考えますので、今矯正局長がお答えしたような方向に対して努力していきたいというふうに思っております。
山花委員 厚労省も歯科医師会も一体となって、八〇二〇運動とか、八〇二〇、御存じでしょうか、八十歳まで二十本の歯を残しましょうと。今、できるだけ抜かないように抜かないようにという形に考え方も変わってきていますので、そういった医療的な面についても、私の持論としては、もっと本来は矯正施設の中は厚労省がやるべきだというのがありますが、現行の制度を前提としても、そういった厚労省の研究結果だとか、あるいは医師会だとか歯科医師会のそういったものを反映させるようにお願いを申し上げまして、質問を終わりたいと思います。
山本委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時六分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時開議
山本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。石原健太郎君。
石原(健)委員 この行刑運営の実情に関する中間報告なんですけれども、名古屋の部分については言及するのは避けたいと思いますけれども、短時間によくまとまって、問題点もわかりやすく指摘されていると思います。
 これを見ますと、長年にわたって、矯正行政が刑務所等によく目を配っていなかった、怠慢だったんじゃないかという感じもいたします。また、行政の怠慢と社会情勢の変化、犯罪の凶悪化など、そういったしわ寄せが、今起訴されている八人の刑務官に凝縮しているんじゃないか、そんな感じもいたすところであります。
 午前中、河村議員が、その八人についていろいろ心配しておられましたが、もっともな点もあるなという感じもいたしております。今現在ゼロということは、大変気の毒なんじゃないか。家族もおられるでしょうし、次の仕事をすぐ見つけるというわけにもいかないでしょうし、その点について考え直すべきじゃないかという感じがいたしたわけであります。仮にあの人たちが、仮に有罪となったとしても、今お話ししたように、法務省全体の責任の一端がそこにのさっているという感じがするわけですから、こういう感じを持つわけですけれども、見直しする気持ちがあるかどうか、お聞かせいただけたらと思います。
大林政府参考人 委員の御指摘ではございますけれども、これまで御答弁申し上げておるとおり、いろいろ御意見はありますけれども、本件のことを私ども検察において起訴し、現在公判中でございます。
 その事案自体の性質、悪質性等を考えた場合、あるいは矯正における今後の影響等を考えた場合に、現時点において、この間御説明したとおり、起訴したという前提で処分しておりますし、それを見守るしかないというふうに私どもは考えております。
石原(健)委員 感触で物を申し上げては悪いかとは思うんですけれども、例えば交通違反なんかだって、大勢の人が交通違反して、捕まらない人もいれば捕まる人もいる。選挙違反なんかも同じだと思うんですよね。ですから、やはりこの八人だけにしわ寄せして責任をとらせるというのはいかがなものかなというふうに私は感じておるところであります。
 それから、この中間報告の中に、家父長的処遇ということが何回か出てくるわけでありますけれども、この家父長的というのはどういうことかなと思うんですけれども、まあ絶対者対服従者、そういう感じに受け取って、何か今までの刑務所の受刑者に対する処遇なんかを、入っていた人の本だから一から十までは信用できないかもしれませんが、仮に十分の一ぐらい信用したとしても、絶対者対服従者という関係だったんじゃないかと思いますけれども、そういった処遇のあり方についての見直し、もっと人権とか人格を尊重するというような観点からお考えをお聞かせいただけたらと思います。
横田政府参考人 お答えいたします。
 この中間報告におきまして、いわゆる家父長的なものが見られるということを言っておりますが、これは、委員がおっしゃるような、そういう上下関係といったことも確かにございますけれども、また、担当者が被収容者に対して生活全般について面倒を見るといいますか、親身に世話をするというか、まさに一つの家族というような、そういうような人間関係のもとで適切な処遇を行うということが行われていた。これは、一つは、情緒的という言葉も使われているわけですけれども、そういう家父長的、情緒的で、ある意味では厳しさもあるけれども、またその中に親身な情愛といいますか、情緒的な心と心の触れ合いによって処遇をするという面もあった、そういう趣旨でございます。
 しかし、それが、時代も変わりましたし、人の考え方も変わってまいりましたので、果たしてそれがいいのかどうか、また、受け入れられるものかどうかということもまた起きてきているかもしれませんし、そういった点において、今後こういう処遇、担当制も含めて処遇のあり方についてはこれを機に改めて、これまでのことは一切、聖域ないというふうな言い方をしておりますけれども、これまでのことを排して、全く新たな目で見直していこう、そういう考え方で今検討しているところでございます。
石原(健)委員 大分前に山花議員からも指摘があったわけですけれども、受刑者は、一日二度、朝と晩、夕方ですね、工場への行き帰りなどに着衣を全部脱いで、刑務官の前に立たされて、身体検査のようなことを受けるということなんです。自分がそういう立場になったとすると、やはり大分人格を傷つけられるような気もしますし、人権上もよろしくないんじゃないかと思うんですけれども、こういう点については、どういうふうに考えておられるんでしょうか。
増田副大臣 刑務所におきましては、通常、受刑者が居房から工場へ出役をするとき、また、その日の作業を終えて工場から居房に戻るときに、検身場において舎房衣と工場衣を着がえさせていますが、その際、受刑者にすべての着衣を脱がせた状態で、立ち会い職員がその身体等の検査を実施している施設も少なからずあるものと聞いております。
 これは、逃走や他人に危害を加えるために用いられる危険物品、不正物品の持ち込み等を防止するために行っているものでありまして、実際にも、この検査により、工場と居房間の往復時に不正に物品を持ち出そうとした事犯が摘発されております。
 施設の規律の維持等のためには、着衣を脱がせた上でこのような検査が必要な場合もあるとのことでありますが、先生がおっしゃいましたように、矯正局におきましても、受刑者の人権になお一層配慮するとの観点から、今後、現場施設の意見等も踏まえた上で、その運用等について検討することとしております。
石原(健)委員 工場等から危険物を持ち出すということが心配されるのであれば、朝、舎房から工場に行くときは関係ないと思うんですよ。どんな寒いときでもそれをやるというので、この間いただいた二百三十八件、みんな急死みたいな格好ですけれども、こういう人たちがこういうふうに死ぬというのも、そういう寒いときにやることなんかも、そういう着衣を全部脱がせることなんかにも原因があるのじゃないかという感じがするんですよね。
 それから、仮にそういうことをやるとしても、受刑者は分類されているわけですから、危険度の多い人はそれはやるとして、そういうことをやる危険度の少ない人というのは、当然区別がつくと思うんですよ。そういう人はやる必要がないんじゃないかという感じもするわけです。
 それから、逃亡のおそれというお話がありましたけれども、平成五年から十年間、平成十四年まで、逃亡に成功した人というのはゼロなんですね。これは、十人ぐらいの人が、もう少しいるのかな、二、三十人ぐらい逃亡を試みたのかもしれないですけれども、全員捕まっているわけでして、余り逃亡のおそれということに気を配る必要はないような感じもしております。
 そういう点も配慮されて、今後検討されるときにはこういうことに配慮された処置をとっていただきたい、こう思います。
増田副大臣 事例の中で、外国の人が一回逃亡したのがあるんですが、それは出ていなかったようであります。
 そこで、現在は七十四庁のうち三十庁ぐらいがそういう関係にあります。
 そこで、こう言うと変ですが、いずれにしても、仕事をして帰ってきて居室へ戻るときには、居房へ戻るときには嫌でも全部着がえなきゃなりません。そのときにちゃんと見る。同時に、今、センサー、探知機等を設備して、できるだけなくそうというので、今七十四のうち三十ぐらいやっている。
 ただ、問題なのは入所された方、この場合には、想像以上のところにいろいろなものを隠し持っているというふうに聞き及んでおります。したがって、入所されたときには、やはり一回検査しなくちゃならぬじゃないかという現場の人の意見も私の耳にも届いているところであります。
 いずれにしても、先生おっしゃいましたように、私が立場をかわってみますると、先生と全く同じような思いを持ちますので、引き続いて、事故がないように、そしてそういったことができるだけなくなるように努力をしていきたい、このように思います。
石原(健)委員 医療のことについてもちょっとお聞きしたいんですけれども、刑務所関係の平成十二年の医療従事者、それから平成十四年の医療従事者の数がどうなっているのか、また、平成十二年の受刑者数と平成十四年の受刑者数はどういうふうになっているのかをお聞かせいただきたいと思います。
横田政府参考人 お答えいたします。
 平成十二年というお尋ねでございますが、十二年の四月一日現在の現在員、実際に行刑施設において医療に従事している医師、薬剤師、その他の医療従事者の数は五百五十七名でございます。それから、十四年ということですが、十四年の四月一日現在、同じく医師等の数は五百五十五名でございます。それから、それぞれの年における被収容者でございますが、これは年末でとらえた数字ですのでその点お許しいただきたいんですが、平成十二年末が六万一千二百四十二人が全員です。それから、十四年末が六万九千五百二人ということでございます。
 要するに、医療従事者の数は、動いていないというか、むしろ五百五十七から五百五十五と二名減っているわけですけれども、被収容者の数は六万一千人から六万九千人余りにふえているということでございます。
石原(健)委員 受刑者が八千五百人もふえて医療従事者が二名減っているということは、これは医療が不十分になるということがこの数の上からでも明らかだと思うんですけれども、どうしてこういうことになっているんですか。
横田政府参考人 お答えいたします。
 どうしてかということですが、端的に申し上げて、この間に医師その他の医療従事者の定員増が図れなかったということでございます。
石原(健)委員 やはり、こういうことでは受刑者も大変だと思うんですよね。
 前に、五月十三日に配られた、被収容者の死亡事例二百三十八件の発見時刻等についてというこの一覧表を見ますと、けさほども話に出ましたけれども、清水参考人なんかは、この二百三十八のうち二百件ぐらいは医療の問題で裁判になってもおかしくないような事例だということも言っておられました。また、名古屋大学の先生は、このうちの一件だけ取り上げられて、二十八番目の七十二歳の肺繊維症等なんという病気を持っている方の事例を説明されましたが、ほかについては一切言及がなかったんです。やはり専門のお医者さんが言及できないような、そういう死に方ではないのかなという感じもするわけなんですよ。
 今、医療従事者の数については説明がありましたけれども、医療費がどうなっているかと申しますと、これも平成十二、三年ごろからほとんどふえずに推移しておりまして、平成十五年度、今年度は、これはにわかに三億円、去年二十億だったのが二十三億になったので、これは努力の跡が感じられるなと思うんです。
 それにしても、こういう一覧表にある人たちがこういう亡くなり方をしているというのは、医療従事者が少ないのは当然だと思うんですけれども、医療の材料不足なんかもあるんじゃないか、そういう感じもしまして、薬剤とか検査材料とかそういうことのなお一層の充実にもお努めいただく必要があるんじゃないかと思うんですけれども、その点はどうでしょうか。
横田政府参考人 お答えいたします。
 ただいま委員が御指摘になりましたことも踏まえて、今般、これまで、いわゆる一連の名古屋刑務所事件等を一つのきっかけとして、いろいろ御審議いただいている中で、いろいろな観点から、矯正医療が不十分ではないかという御指摘がございます。人員体制のこともございますし、設備の問題もございますし、あるいは先生がおっしゃったような面でもそういうことになろうかと思います。
 現在、私どもは、そのようなさまざまな御意見を真摯に受けとめて、そして、より充実した医療体制をつくるために、局内には一つのプロジェクトチーム、検討するためのチームをつくりましたし、また、既に動いておりますけれども、行刑改革会議もございますので、そのような場面、場面での検討や御議論を踏まえて、さらに矯正医療の充実に向けて努力してまいりたいと思っております。
石原(健)委員 言葉が悪くなるかもしれないですけれども、こういうおかしき、異状が発見されて一日とか二日で次々亡くなっていっちゃうなんというのを見ますと、一種の不作為の殺人みたいな感じもするんですよね。
 それで、十分そういうことに気をお配りいただきたいと思うことと、先ほど、平成十四年末の刑務所の収容者数六万九千とおっしゃいましたが、この中間報告に書かれている十四年末の人数というのは五万七千人となっていますので、これは訂正する必要があるんじゃないでしょうか。
横田政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほど私が申し上げました六万九千という数、これは総収容人員でございまして、いわゆる既決、未決というふうに申し上げますけれども、未決といって、裁判を受けている、まだ確定していない者を含めた数で、約五万七千という数字は、判決が確定いたしまして、いわゆる受刑者になった者の数でございます。
石原(健)委員 ただ、ここの表記は「被収容者」となっているんですよね。既決だ未決だなんという区別にはなっていないので、誤解する人がいるといけないとは思うんですけれども。
 それと、次に、受刑者のうち精神疾患を持つ方は何%ぐらいになるんでしょうか。
横田政府参考人 お答えいたします。
 平成十四年十二月末でとらえた数字でございますが、受刑者のうちに精神障害を有する者の割合は約一一%でございます。
石原(健)委員 そうすると、六千人近い人が精神に異常を持つと。
 刑務所関係の医師で、精神科医というのは何人おいでなんでしょうか。
横田政府参考人 お答えいたします。
 平成十五年、ことしの四月一日現在で確認した数で申し上げますと、行刑施設に勤務する医師のうち精神科医は、常勤の者が二十八人、それから非常勤の者が二十人で、合わせて四十八人でございます。
石原(健)委員 そうしますと、精神に異常を来している人千人に対して精神科医が一人ぐらいという感じになりますね。それで、厚生省にちょっと聞いたんですけれども、総合病院や大学附属病院の精神病床では入院患者十六人に対し医師一人、その他の精神病床では入院患者四十八人に対して医師一人。
 入院するほどひどくない人がたくさんいるのかもしれませんけれども、それにしても、保護房に収容されるような人は自分の排せつ物をそこらじゅうに塗りたくったり奇声を発したりというので、相当精神がおかしいんじゃないか。そういう人は、私、参考人のお話で聞いたんですけれども、当然、刑務所なんかに置かないでちゃんとした医療施設に移すべきだ、そういう話もあったわけですよ。
 一般病院が四十八人に医師一人というのと比べると余りにもかけ離れているので、やはりそうした部分にも気を配っていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
横田政府参考人 行刑施設における医療のうちの精神医療につきましても、さまざまな御指摘がございますし、またいろいろな御意見もございます。これも含めまして、先ほど申し上げました医療体制の見直しといいますか、充実に向けての再検討ということの中で、精神医療につきましても同様に検討してまいりたいと考えております。
石原(健)委員 これは、千人に一人、片一方は四十八人に一人では、検討するとかなんとかという話じゃないと思うんです。すぐにでも取り組んでいただきたい問題だと思うんですが、来年度予算ではこうした部分にはどういう要求をしていくおつもりなんでしょうか。
横田政府参考人 一点ちょっと、千人に一人という計算にはならないと思いますが、その点ちょっと申し上げますと、百数十人に一名という計算になろうかと思います。
 それで、来年の予算のことでございますけれども、この点につきましても、行刑施設では受刑者の急増等の要因で患者数もふえているという状況がございます。いずれにしましても、このような点につきましては、適宜適切な医療の強化、実施をしなければなりません。
 先ほど申し上げましたように、国会等においてもさまざまな御指摘をいただいているところでありまして、行刑施設の医療には医師の確保を初めとして難しい問題が多々ございます。先般、当局におきましては矯正医療問題対策プロジェクトチームというものを立ち上げて、実務的な面からのさまざまな検討を加えることにしておりますし、さらには、行刑改革会議も既に設けられておりまして、そこでの御議論が始まっておりますので、そのような場での御議論を踏まえて一層充実に努めたい。
 そこで、平成十六年度予算における医療体制整備に係る予算の概算要求についてでございますけれども、これにつきましては現在検討中であります。ただ、今申し上げました矯正医療問題対策プロジェクトチームにおける検討や行刑改革会議における御審議、御議論等を踏まえて、関係各省庁等の御協力も得ながら、医療体制の充実に必要な経費の確保にさらに努めてまいりたいと考えております。
石原(健)委員 大変大きな計算違いをして、御迷惑かけて済みませんでした。
 次に、法務省では、いろいろ法案を作成したり修正していったり、そうした面で御努力いただいているわけですけれども、犯罪はふえる一方だという状況にあるわけです。例えば火災なんかは、消防庁が責任を持って、火災を起こさないというキャンペーンをやって随分減っているんじゃないか。一件一件は多いかもしれませんけれども、私の全体的な感触としては減っている。それから、結核とか赤痢やコレラのような伝染病なんかも、厚生省が真剣に取り組んでどんどん数が減っているわけですけれども、犯罪を未然に防ぐ、予防ということについては法務省はどういうふうな考えを持っておられるんでしょうか。
森山国務大臣 犯罪を予防するための最も基本的な施策は、犯罪を摘発して事案の真相を明らかにした上、刑罰法令を適正かつ迅速に適用して適正な量刑を実現することであるわけでございます。
 しかし、そのほか、犯罪を予防するためには、法務省の所掌に属する行政について申しますと、矯正行政、保護行政及び入国管理行政の充実強化を図るということがまずもって必要でございまして、法務省といたしましても、必要な法整備や人的、物的な面での体制整備等に努めておりますが、これに加えまして、教育、社会福祉、経済政策、その他の各般にわたる総合的な施策と国民全体の幅広い不断の努力が必要でございまして、例えば社会を明るくする運動なども、法務省が中心となって啓発運動を行っているところでございます。
石原(健)委員 刑法犯の検挙率が二〇%を割っているとか、そうした状況を見ますと、今大臣がおっしゃったようなやり方だけでは犯罪は減らないんじゃないか、やっても捕まらない人が五分の四もいるわけですから、減らないんじゃないかという気もするんです。
 それと、結局、刑務所の問題、過剰収容とか刑務官が過剰に働かなくちゃならないとか、そういう問題にしても、犯罪が減ればこうした問題は自然と減っていくと思われるんですから、明るい社会運動はともかくとして、もう少し法務省として犯罪を予防するということも、警察でもやっているのかもしれませんけれども、警察はどっちかというと少年犯罪なんかを対象にしてやったり、覚せい剤や麻薬のことも、あれは厚生省あたりがやっているのかもしれませんが、国民全体が犯罪はやらないぞという意識を強く持っていくことが一番肝要かと思うんです。法務省も、刑法なんかも所管しているわけですから、もう少しそうした点について御努力をいただいた方がいいのではないかということを申し上げまして、大臣、どうぞ。
森山国務大臣 おっしゃるとおり、犯罪を本当に防止していくのには社会全体の御協力が必要でございますし、また、そのもとには、社会全体に対して御理解をいただくという教育あるいは啓発活動が必要だと思いまして、法務省も余り徹底していないというおしかりかもしれませんが、このようなものをやっております。
 これは、明るい社会をつくる運動のほかに、法務省とそれから学校の連携ということをいろいろ書いてありまして、学校と保護司の連携ブックレットというようなのをつくっておりますので、これもまた先生に見ていただきたいと思います。これは、ことしの社会を明るくする運動の実施の手引でございます。
 これでは本当に十分ではないかもしれませんけれども、あらゆる関係の方に御協力をいただいて、できるだけ多くの方に、犯罪をなくそう、犯罪を退治しようということで、皆さんに呼びかけ、協力していただくということを毎年一生懸命やっているところでございます。
石原(健)委員 どうもありがとうございました。さらなる御努力をよろしくお願いします。
 ありがとうございました。
山本委員長 木島日出夫君。
木島委員 日本共産党の木島日出夫です。
 行刑問題に関して、法務大臣以下、法務省に直接質問するのは四月二十三日以来でありますから、四月二十三日の質問に続いて質問いたします。
 午前中に同僚委員の河村さんからも指摘されましたが、四月二十三日の私の質問、平成十三年十二月十四日の名古屋刑務所のホース水放水事件に関して、血痕の付着したズボン、下着の発見、保管、処分状況についてですが、重複するかもしれませんが、改めて調査結果をきちっと報告してください。
横田政府参考人 お答えいたします。
 お尋ねの点につきましては、委員長の御指示を受けまして、私ども矯正当局におきまして取り急ぎ調査を行いました。
 その結果、名古屋刑務所におきましては、保護房で被収容者が使用した場合の、官衣と申しておりますが、着ておりました着衣ですね、官衣の保管状況あるいは処分状況につきましては、午前中も申し上げたんですが、それぞれの一点一点ごとに把握する、そういうシステムになっておりませんで、そのような状況を記録する文書が、そもそもこれはつくられておりません。つくるようにということにもなっておりません。
 そんな関係で、委員が御指摘の、ズボンなどが保管されていたか否か、あるいは保管されていたとしてどのように処分されたのかという点につきましては、確認することができませんでした。
 ただ、少し先の話になりますけれども、先般、五月十四日の衆議院の法務委員会における参考人質疑におきまして、岐阜刑務所の三井健二会計課長が御指摘のような発言をいたしました。血痕の付着したズボンがあったというようなことをおっしゃっておりました。
 そんなこともございまして、さらに、私どもといたしましては、本件犯行当時に保護房内に血痕の付着したズボン等が存在したか否かも含めて、またはそのズボン等が保管されていないか、保管されているとしたらどのように処分されたかということについても再度調べたわけですけれども、結論的には、今申し上げたような管理システムということがございまして、確認するには至りませんでした。
 事件当日に被害者が着用していた下着でございますが、これは保護房専用のものというふうに思われるんですけれども、これにつきましては、いわゆる舎房着に準じ取り扱っておりますので、いわゆる官衣として、その保管、廃棄の状況についてはやはり個別に把握していませんでした。
 なお、平成十四年二月二十六日にズボン六十三点、それから平成十三年十二月二十八日にズボン下七百八十一点が廃棄されていることが帳簿によって確認されました。この中に今先生がおっしゃる下着というものが含まれていたかどうかにつきましては、これは不明でございます。
 いずれにしましても、私どもは、名古屋刑務所の担当者から衣類の管理状況について報告させますとともに、物品管理簿等の関係書類を取り寄せるなど調査いたしましたが、現時点におきまして私どもが把握しているのは以上のとおりでございます。
木島委員 そうしますと、平成十三年十二月十四日に起きたホース水放水による死亡事件の被収容者死亡報告について、では改めてお聞きします。
 これまで再三お聞きしてきたところですが、平成十三年十二月十九日付で、名古屋刑務所長が本省矯正局長と名古屋矯正管区長あてに提出をした被収容者死亡報告です。いろいろありまして、私の質問に対する法務省の答弁で、この文書が現実に法務省本省矯正局に受理されたのが約一カ月後の平成十四年一月十六日だということは、もうここで、この委員会審議を通じて確定されているんですが、そうしますと、そうした新たな調査を踏まえた結果、現在、法務省矯正局はこの血痕の付着したズボンに関してはどういう認識なのか、お尋ねします。
 この被収容者死亡報告の文書は、平成十三年「十二月十四日午後二時二十分ころ、上記状況により保護房の視察が困難となり、加えて衛生上の問題も認められたことから、転房のため保護房を開扉した際、職員が事案者の着用していたズボンに血痕が付着しているのを発見した。」という言葉になっております。本年三月三十一日に法務省が今国会に提出した行刑運営の実情に関する中間報告によりますと、この記述はうその記述であったという報告にはなっているんです。
 では、それらの一連の経過を全部総合して、現在、法務省は、平成十三年十二月十四日当時、死亡した受刑者がはいていたと思われるズボン、下着に血痕が付着していた、そういうズボンや下着の存在については全く架空の事実なんだというふうな認定を法務省矯正局として今していると伺っていいんでしょうか。
横田政府参考人 お答えいたします。
 矯正当局としてということでございますが、私どもとしては、先ほど申し上げたように、ズボンの存否も含めて現時点では把握していない、できていないという状況でございます。
木島委員 今日把握できていないというのはいいんですが、法務省はことし三月三十一日の中間報告において、これはうその報告だった、そういう報告を我が国会にしているんですよ。
 だから、どういうことなんですか。平成十三年十二月十四日当時、あるいは死亡した十二月十五日当時、血痕がついていたズボンとか下着なんというのはもともとなかったんだというふうに調査の結果、確認しているのか、あるいは、当時あったかどうかわからぬ、しかし今は、名古屋刑務所の諸帳簿を見てもそういうものの存在が見つからないということなんですか。どっちなんですか。
横田政府参考人 先ほど申し上げたとおりでございまして、ズボンの存否といいますか、あるいは、あったとしたらどうなったかというその点につきましては把握ができていないということでございまして、中間報告書の記載内容そのものについて考え方が変わっているかどうかということになりますと、私どもとしては、それは従前のままであると思っております。
木島委員 その従前のままというのは、どういう事実ですか。
横田政府参考人 出血発見状況について、これは誤った報告がされた、そういうことでございます。
木島委員 実は、法務省も御存じのとおりですが、去る五月十四日に、当委員会に、今答弁の中にも出てきました三井健二参考人をお呼びいたしまして、三井参考人から、我々、直接ここで陳述を受けたんですよね。
 三井さんの言うには、自分が当時名古屋刑務所の刑務官であり、この血痕のついたズボン、下着の第一発見者だと断言したんですよね。発見した日時は平成十三年十二月十四日、ホースで受刑者が水をかけられ、転房された、それより時刻的には後と私はお聞きしました。会議録を読んでいます。しかし、三井氏はその後、問題のホースで水をかけた行為が行われた保護房に入り、その片隅で死亡した受刑者がはいていたと思われる下着、ズボンを発見した、そして、そこには血痕があったと。我々の目の前で、部位ですね、ズボン、下着のどこの部分が赤くなっていたかということを全部ここで実演してみせました。大変強烈な陳述が当委員会で行われたわけです。
 さらに、私は、そういう陳述を受けて、三井さんに対して、あなたは矯正局から事情聴取を受けていますかとここで質問をしてみました。そうしたら、二回矯正局から調査を受けている、第一回目は昨年の十月ごろだったと。ちょうどこの国会で名古屋刑務所の問題が議員から指摘され始めた時期に符合するんですが、その第一回目の調査を受けた平成十四年の十月ごろ、彼の日時についての認識もおぼろげなんですが、日時についてはです、しかし、十月ごろと言っています。そのときに、私の質問に対して、自分は自分の体験した事実を正直に法務省矯正局に全部しゃべったとここで明言したんです。もう一回、二回目の事情聴取は本年、平成十五年四月上旬だったと。しかし、そのときの事情聴取では血痕のついたズボン、下着等についての質問はなかったというのが私に対する彼の陳述でありました。
 そうすると、そういう事実はあったんでしょうか。中井前矯正局長、お呼びしています。平成十四年十月といいますと、昨年十月、中井さんが矯正局長の当時です。国会で大問題になり始めたやさきの時期ですが、そんな時期に、法務省矯正局は第一発見者と自称している三井さんからこのような事情聴取をしたことあるんでしょうか。それとも、三井さんのここでの供述は真っ赤なうそなんでしょうか。
大林政府参考人 調査の方に絡みますので、私の方からお答えさせていただきます。
 三井参考人の関係につきましては、私どもの把握している限りでは、矯正局関係者による事情聴取は二回行われておりまして、平成十四年十二月六日、これは矯正局の特別調査チームによる事情聴取を行っております。このときは主に、五月事案、九月事案についての原因、背景事情等について聞いている。したがって、革手錠の施用状況等についての聴取が行われております。
 また、平成十五年四月四日ないし六日までの間に名古屋矯正管区職員等による事情聴取が行われておりまして、このときには、十二月事案に関連した消防用ホース使用による清掃等を含めた当時の状況についての聴取を行ったというふうに聞いております。
 したがいまして、三井参考人が陳述しております平成十四年十月ころの事情聴取の事実はないものとうちの方では把握しております。
 さらに加えますと、同じ十五年四月四日のときに、法務省の検事の方も調査に赴いておりまして、そのときに三井さんから、これは主として十二月事案の被害者の情願取り下げの経緯について尋ねているわけですが、その際に、三井さんの方から、保護房へ赴いたところ、汚れた下着があった旨の供述があった、そのような報告を受けております。
木島委員 なるほどね。
 そうすると、三井さんが、五月十四日、この委員会で私の質問に対して答えた、二回聴取を受けたという、最初の去年の十月がホース水放水事件だった、ことしの四月はその聴取はなかったというのは逆、逆立ちであったことに今の法務省の調査ではなるんで、それがどっちが真実か、私が断定する立場ではありませんが、これは法務省の調査の方が、記録があるんでしょうから、正しいかもしれませんね。
 そうすると、ことしの四月四日から六日まで、名古屋矯正管区がホース水放水事件について関係職員に対して事情聴取をした、その中の一人が三井健二刑務官であったということだと思うんですが、三井刑務官はどんな事実を名古屋矯正管区に述べたんでしょうか。特に、血痕のついたズボン、下着の存否について、どういう供述といいますか、事情聴取に対する答えをしていたんでしょうか。
大林政府参考人 把握しているところによりますと、矯正局担当者のときには、汚れた下着の話はしていないと。消防ホース使用による清掃状況等について話を聞いたと。それで、先ほども申しましたとおり、情願に関する関係、このころ同じように並行して検事も聴取しているわけですが、そのときには、その検事に対して、保護房にそういう汚れた下着があったというふうな供述があったと本人が、三井さんが述べたということを言っております。
 ただ、御理解いただきたいのは、これは捜査じゃございませんので、細かい調書なんかはとっておらず、聞き取りをメモしているような状況でありまして、やや判然としないところはございますが、私の方で把握しているものとしては、そのような内容を聞いております。
木島委員 そうすると、何ですか、ことしの四月四日から六日ごろ、名古屋矯正管区がホース水放水事件についての調査を、捜査ではありません、管区矯正局としての調査をした、記録はとっていない、しかし、そこで三井さんからは血痕のついたズボンがあったという供述を受けていると。間違いないですか。
大林政府参考人 繰り返すようでございますが、そのころに調査班が名古屋に入りまして、矯正管区の方とそれから本省の方の検事を中心とする調査班が行って、並行して聞いております。
 それで、今の、三井さんから汚れた下着のことを聞いたのは、検事の方の事情聴取で聞いたということでございます。そのときに、本人が保護房にそういう汚れた下着があったというようなことを述べていた、そういうことを聞いております。
木島委員 その検事というのは、最高検から派遣された検事ですか。それとも、この事件を今やっているのは名古屋地検の特捜部ですか、その検事ですか。
大林政府参考人 今、死亡帳の調査をやっているのは地検の検事でございますが、今私が申し上げたのは、法務省の局付の検事でございます。
木島委員 法務省局付検事。では、捜査として行ったんじゃなくて、あくまでも矯正行政の調査に入った検事と聞いていいですか。しかし、聞いておるんですね。
 それ、全然メモに残っていないんですか。そんな大事なもの。
大林政府参考人 ただいまのは、メモは記載されていません。これは、先ほども言いましたように、情願の取り下げの関係で彼は事情聴取したということで、本人からそういう話があったということを記憶で上げてきているものでございます。
木島委員 そうすると、しかし、平成十三年十二月十九日付、実際、法務省本省に上がったのが平成十四年一月十六日ですが、被収容者死亡報告に記載のある、「職員が事案者の着用していたズボンに血痕が付着しているのを発見した。」これがすべての出発点なんですね、うその報告の。それで、保護房を解除し、医師が入って、肛門部の二カ所の裂創を縫合手術したという流れになっていくわけですね。それを、本年三月三十一日付、法務省の国会に対する中間報告では、うその死亡報告があったと断言して、我々に中間報告をしたんですね。
 しかし、そうすると、三月三十一日のわずか四日か五日か六日後に局付検事が三井さんに会って状況を聞いたところ、汚れた下着の存在を三井さんはしゃべったと。これは重大な事実じゃないんですか。メモもしていないというのは、ちょっと信じられないんですが。
 これまでの三月時点での法務省の流れから全く反するような重大な事実、そして、むしろ逆に、平成十三年十二月十九日付被収容者死亡報告、今法務省がうそだと断言している死亡報告のその記述がよみがえるような事実じゃないですか。その三井さんの言っていることが真実ならね。うそをつき続けているなら別ですよ。そんな重要な事実を放置していたんですか。
 今、法務省矯正局はどう見ているんですか、三井さんのそんな局付検事に対する発言はうそっぱちだ、そう切り捨てているんですか。
大林政府参考人 中間報告に関しての問題で申し上げますと、十二月事案の被害者が死亡した直後に、名古屋刑務所から名古屋矯正管区になされた報告などには、被害者を転房させようとした際、下着臀部に出血のような汚損を発見したので、医師の診察を実施したところ、肛門部に負傷箇所が認められた旨記載されております。
 しかしながら、刑事局からの報告により、被害者の直腸裂開等は消防用ホースによる放水によるものであって、出血の発見状況についても、放水が行われた直後に肛門付近から出血していることに気づいたと認められるので、名古屋刑務所からの報告に記載されている医師の診察を受けさせるに至った客観的事実経過は事実に反するもの、こういうふうに考えております。中間報告で、出血発見状況について客観的事実に反する記載がなされたとしているのもその趣旨でありまして、私どもとしては、この記載が間違っているというふうには考えておりません。
 今委員がおっしゃるとおり、本件の争点、この委員会でもそうですが、問題は、要するに、ホースの放水によって、そのときにけがができたのか、いわゆる出血ができたのか、それから、その前にできたのか、これはまさに、私、裁判の争点だと思います。これは異なる意見があろうかと思いますが、裁判の進展というものを見させていただきたい、こういうふうに考えております。
木島委員 それはそうなんですよ。私も、だから、三井さんがここでしゃべったこと、ホースで水をかけた、そして受刑者が転房をした、その後三井さんがこの房に入って、片隅で血のついた、あるいは汚物のついた下着を発見した、そのことと、仮にそれが真実、血液だとして、血痕だとして、果たして、その血痕がいつついたか、それがホースによる放水の結果、肛門部裂創がありましたね、血が出ますね、その血だったかどうかは、一概に何とも言えないと私は思います。そんなことをこの委員会でやるつもりは私は全然ないんです。そういう微妙なところこそ、まさに、今、現に行われている名古屋地裁での刑事裁判で真相究明すべき最大の争点かもしれない。
 そういう括弧つきで聞くのは――だけれども、果たして、そういう汚物のついた、あるいは血痕のついたと言われる下着が本当にあったのか、ないのかがわからないんですよ。名古屋刑務所長の法務省本省に対する死亡報告書と、その後のいきさつと、ことし三月三十一日の中間報告、二転三転していますからね。
 あったからといって、どうのこうの私は言いませんよ。だけれども、あったかどうかぐらいは、最大のこれは事実調査を法務省矯正局としてはやらなければ、まともな矯正行政なんかできやしないじゃないですか。まさにそれがうその報告だということで断罪されているんですからね、政治的にも、法的にも。
 そこはどうなんですか。ホース水放水による因果関係は関係ないです、そんなことは私は聞いていないですよ。存在そのものを、三井さんはそう言っている、皆さん方は今、調査したけれども、記録からは発見できなかったという、食い違ったままじゃ済まされない問題じゃないかと言っているんです。どうですか。
横田政府参考人 お答えいたします。
 先ほど来繰り返し述べておりますが、現時点で調査した結果は先ほど述べたとおりでございまして、さらにそれから先に進むのかどうかということでございます。
 今官房長からも答弁がございましたように、矯正局といたしましては、三井課長がここで参考人質疑において陳述された内容については、あらかじめ本人から確認しておりません。矯正局としては、それまでその発言内容を承知していなかったのでございます。五月十四日の参考人質疑において初めてそのような陳述がなされたということを把握したものでございます。
 しかしながら、さらにそこで一歩進めるか、お尋ねのような事情聴取を改めて実施するかどうかということでございますけれども、やはりそのようなことを実施することになれば、国会という公の場で陳述したことについて、行政上の調査の観点から、法務省がさらにその信用性をただすということにもなりかねませんし、またこれを直ちに行うことが適切かどうかという問題がございます。十二月事案に関する公判への影響ということも考慮しなければなりませんし、慎重に検討を行う必要があると考えて、これが現在の状況であるということでございます。
木島委員 ただ、我々法務委員の一行は、二つの側面から、血痕のついたズボンの問題を指摘されているんですよ。一つは、当法務委員会での五月十四日の三井さんの意見陳述、もう一つは、我々一行が名古屋刑務所に現地調査に入った際に、委員会の正式な行事ではありませんでしたが、視察を終えた後、名古屋市内で高見という刑務官から話を聞いているんですね、高見刑務官。彼も同趣旨のことを我々に言ったんですよ。だから、これは大変な事実が出てきたなと私感じたのでね。
 それを調査することが、仮に結果がシロであれクロであれ、それが刑事裁判にどう影響するかなんて関係ないんですよ。関係ないんですよ。やるべきことなんですよ。だって、皆さんのうその出発点でしょう。うその出発点のほんのささやかな一部が亡霊として本当によみがえってきたとすれば、このうその死亡報告がうそでなくなってしまうということになりますからね。そういう問題を秘めた問題だから、やはりもう、刑事事件がどうなるかは、それは弁護団と検察官と裁判官がやってくれればいいんですよ、被告人がね。我々はこれは関知しないですよ、そんなこと関係ないですよ。私はね。同僚議員はどうか知りません。
 しかし、こういう、本当に法務行政が正しく、何が起きたのか当委員会に報告してもらわなければ、どこが問題だったのか、行刑を改善するきっかけにならぬじゃないですか。それは、だから今の矯正局長の立場というのは私はいかぬと思いますよ。法務大臣も再三、刑事事件になっている、だから一切さわっちゃいかぬのだという一貫した答弁をし続けていますが、それじゃだめですよ、率直に言って。刑事裁判がどうこうじゃないですよ。この一番、あなた方が、みずからの部下がうその報告を上げた、しかしそれはうそだったと断言をして国会に報告をした、その報告が本当に正しいのか、維持できるのか、それが問われている問題ですからね。
 徹底して、私は余りそれ、この当委員会に次々と人を呼んでやるのはいかがかと思うので、それこそ法務本省として、法務省矯正局として、あるいは法務大臣として、刑事事件には関係ないですよ、刑事事件にはさわらないという当たり前の前提の上で調査を続行すべきじゃないですか。そして真実の、中間報告でもいいし、最終報告を我が委員会に提出すべきじゃないですか。法務大臣、どうでしょう。
森山国務大臣 これはもう前から先生方、いろいろと御指摘をいただいて、調べなさいというお言葉がたびたびございました。しかし、本当のところを知りたいというのは私も同じ気持ちでありまして、そこが非常に悩ましいところなんでございます。
 つまり、三井参考人というのは、国会の場に出てまいりまして、参考人としてはっきりとしたことを申し上げたわけでありますが、それが本当かどうかということを、行政の立場として、これをさらに法務省がその信用性をただすということになっては、これを直ちに行うということが適切かどうか。やはり国会という場でしっかりと参考人の陳述をしたものに対する信用性をもう一度ただすというのは、いささか法務省として、あるいは行政としてはいかがなものかと思います。
 また、いつも申し上げていることでございますけれども、現在公判中でございまして、これが進行中でありますので、それにあらざる偏見あるいは先入観を与えるようなことになってはいけないというふうに考えますので、本当は私も、先生おっしゃるように、どうだったのかということをもう一度私自身も確かめたいという気持ちはあるのでございますが、それは今申し上げたような理由で実際に行うことはできないという大変悩ましい立場にあるということを御理解いただきたいと思います。
木島委員 ちょっと視点を変えますが、被収容者死亡報告がどんなてんまつで作成をされ、平成十四年一月十六日に法務省本省に提出されたのかお聞きしたいと思うんです。
 私がこの問題を取り上げたとき、矯正局長はこういう答弁をしているんですね。名古屋刑務所長が作成した被収容者死亡報告の作成年月日は平成十三年十二月十九日、名刑発第一一六号、名古屋刑務所長の印鑑もしっかりと押印されています。それがなぜ一カ月もたった平成十四年一月十六日に法務省本省や名古屋矯正管区長に上がったのか、おかしいじゃないかという私の指摘に対して、矯正局長はこう答えているんですね。「所内決裁に時間を要し、結果的に同所から発送されたのが平成十四年一月中旬」だったと。私はそのときの質問はそれでとめてしまったんですが、ここに根本的な問題がある。「所内決裁に時間を要し」というのは何なんだろうかと。何なんですか。
 所内決裁に時間がかかったと。死亡報告書を上げるのに、いろいろなうその事実をつくり上げるのに時間がかかったと私は邪推しているんですが、何で一カ月、何の時間がかかったんですか。これは、委員長、当時の矯正局長であった中井さんからでも結構ですし、現の矯正局長でもいいです。
横田政府参考人 お答えいたします。
 前回委員に答弁申し上げたのは私でございますので、それについて申し上げます。
 そのときも申し上げましたけれども、この死亡者の遺骨が遺族に引き渡されました平成十三年十二月十九日ころから、医務課におきましては下案の起案が開始されまして、それで処遇部門との協議を経るなどした後に、翌週に刑務所長の決裁に上げたということですが、年末年始がございまして、結局翌十五年に入って刑務所長が形式的な記載の訂正などを指示したということであります。その上で一月の十一日、松がとれたといいますか、その後で刑務所長の最終的な決裁がなされたということで、おおむねの流れはこの前私が答弁申し上げたとおりでございますが、いずれにいたしましても、私どもが調査した限りにおきましては、こういう事実で、またそれ以上でもそれ以下でもないということでございます。
木島委員 到底納得できないんですが、では、そうすると、この被収容者死亡報告の中の一つの最大の問題点である、その文書の中に、死亡に至る経過の中に書かれている言葉、「職員が事案者の着用していたズボンに血痕が付着しているのを発見した。」この一文ですね、これが書き込まれたと。
 全く根も葉もない架空の事実を名古屋刑務所長はつくり上げたのか、あるいはその時点、平成十三年十二月の十九日、遺体を遺族に引き渡した後、どういう報告書を上に上げようか、名古屋矯正管区や本省に上げようかというようなことを名古屋刑務所内でいろいろ論議したとは思うんですが、そういう時期に既に三井刑務官や高見刑務官あたりの口からは、いや、血痕のついたズボンは見たぞ、保管しているぞ、そういう事実がわずかでもあったんでしょうか。
 当時の状況をもっとリアルに語ってください。
横田政府参考人 今のお尋ねの件について、法務省の特別調査班がこの辺について調査をいたしまして、その調査結果について御説明申し上げます。
 御指摘の報告がなされた経緯でございますけれども、被害者が消防用ホースによる放水を受けて医務課に搬入された後、処遇部門の幹部等には、放水の現場に臨場しておりました職員から、消防用ホースによる被害者の身体への放水の事実が報告されないまま、被害者が肛門から出血し、医務室に搬送されたことが伝えられました。
 その結果、被害者が保護房に収容されていたことや、名古屋刑務所においては、過去に、みずから異物を肛門に挿入し、直腸せん孔汎発性腹膜炎により手術に至った、そういう具体的なケースがありましたことなどから、処遇部門の幹部などにおきましても、刑務所の医師につきましても、被害者がみずから指で肛門を傷つけたという考えが支配することになったというふうに思われるところでございます。
 その後、司法解剖が行われまして、被害者の肛門から約十一センチメートルの直腸に死因となる裂開が生じていることが判明いたしましたが、その原因につきまして、司法解剖医から、保護房内に成傷器となり得る物が存在していなかったとすれば、被害者がみずから指を肛門に挿入したことが原因と考えられるという趣旨の説明がなされたようでございます。
 そこで、被害者が自傷を行ったという考えに支配されておりました名古屋刑務所の幹部らは、司法解剖医から、死因は肛門から指を挿入し直腸を裂傷したことによる汎発性腹膜炎であるとの所見がなされた旨の被収容者死亡報告を作成しまして、名古屋矯正管区及び矯正局に報告することになったというように考えられるところでございます。
 これが、特別調査班の調査結果でございます。
木島委員 その特別調査班の体制と調査実施の期間、それから、どんな調査をされたか、だれから事情聴取をしたか、全部述べていただけませんか。
大林政府参考人 今の特別調査班による調査については、平成十五年四月三日から六日まで、検事六名を含む法務省の職員十二名を名古屋刑務所に派遣し、名古屋矯正管区職員の協力も得て、十二月事件を中心に、名古屋刑務所からの報告状況や被害者が情願を取り下げた経緯などについて、同刑務所及び名古屋矯正管区などにおいて、同刑務所の職員または元職員など六十余名からの事情聴取及び関係記録の収集などを行い、調査を行ったものだと聞いております。
木島委員 そうすると、その六十余名の事情聴取の中の一人が三井刑務官だということでしょうか。それから、今の答弁ですと、少なくとも被収容者死亡報告を上げるその時点では、血痕の付着した下着、ズボンの存在など全くかけらもなかった、煙もなかったというふうに聞こえるんですが、それでいいでしょうか。それから、この六十余名の事情聴取をした中で、血痕の付着したズボン、下着の存在をにおわせるような供述は何人ぐらいからあったんでしょうか。
 束ねて質問で恐縮ですが、大事なところですから、答弁ください。
大林政府参考人 今申し上げた調査した職員の中に、三井さんは含まれております。
 その余の二つについては、ちょっと私の手元に今ないものですから、ちょっと私の方で調べさせていただきたい、こういうふうに思います。
木島委員 検察と法務の関係で念のためお聞きしますが、検察官六人が調査班に加わった。そこで得られた事実その他、証拠、証拠という言葉が適当であるかどうかはわかりませんが、調査結果なるものは、刑事事件として立件を担当している名古屋地検特捜部等に渡っておるんでしょうか。あるいは逆に、その本省特別調査班には名古屋地検が入手している捜査資料はもらい受けたりしておるんでしょうか。その資料の相互関係、どうなっているんでしょうか。
大林政府参考人 お答えします。
 今、検事六名ということで申し上げました。この検事は、資格としては検事を持っておりますが、いずれも法務省の局付あるいは課付でございまして、委員御承知のとおり、あくまでも調査、行政調査としてやっています。もちろん黙秘権告知なんかもしておりませんし、そういう関係でございまして、私の方でこれを検察庁の方に出すということはしておりません。
 それからまた、地検の捜査の関係につきましては、あくまでも刑事局を通じて参考的な資料はいただいておりますが、直にやりとりということはしておりません。
木島委員 直にやりとりしていないというのはいいんですが、検察が捜査の過程で握っているいろいろな書類その他は、直でも何でも結構なんですが、法務省本省はもらっているんですか。
 いや、別に隠さなくていいですよ、渡しちゃいかぬというところまで私はきょうは言いませんから。
大林政府参考人 調査は、あくまでもこれは厳格にやりたいという気持ちから、それは資料として受け取っているものはございます。
木島委員 時間ですから、きょうのところはこれで終わります。お呼びしながら質問できなかった政府参考人の皆さんにはおわびをいたしまして、終わります。
山本委員長 保坂展人君。
保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。
 この「日本の行刑」というパンフレットを開きますと、医療の部分がありまして、「被収容者約百六十人当たり一人という医師の配置数は、日本国民約五百人当たり一人という医師数をはるかに上回っています。」ということなんですけれども、果たして本当にそうなっていればこういう一件は起きなかったんじゃないかという趣旨で、これは、まず、ずばり矯正局長に伺います。よろしいでしょうか。
 前回の委員会で、これは五月十六日です、医療分類課からの「行刑施設における医療体制充実計画案概要」、これが三枚出てきたんですね。委員会の場でもお配りしましたけれども、これを見るにつけて、府中、名古屋を、精神疾患、覚せい剤精神病、こういうことで重点化するということが書いてありますし、これは大変重要な資料だ。実は、要求して、何度も催促して二カ月出てこなかったということを挙げて、国会での答弁、特に矯正局長はこのときにはっきりと、委員の言うように努力しますと。
 このペーパーは、矯正施設の中の医療をどういうふうにするのか、この名古屋、府中については、「各施設とも病院として運営する。」と書いてあるんですよ。かなり画期的な案でもあった。しかし、その後はわからないですね、これだけでは。
 ということで、私、待っていたんですが、きのうに至るまで連絡一つありませんでした。きのう質問予告をする際に、前委員会で取り上げたものについて、これは資料を携えて来てほしいというふうに申し上げましたけれども、何かそういうお話でしたっけ、初めてわかりましたということを言われるに至って、これは一体、法務委員会でこれだけ真剣に我々が議論していることを、局長は、努力します、どういう場で、どういう脈絡で出たものか出すようにしますと、大臣までその後同意を求めていますからね。こういうことについて、本当に指示されているんですか。一体どういうことなのか、説明していただきたい。
横田政府参考人 お答えいたします。
 前回、保坂委員が、いわゆる充実計画案ということをお示しになって御意見を述べられて、私もそのときに、委員のおっしゃる趣旨はよくわかります、したがって努力いたします、そういう答弁をいたしました。これはよく覚えております。
 私も、率直に申し上げて、この医療計画案というものを、はっきり申し上げて、よくよく見ていたわけでありませんので、これにつきましては、やはり過去にこういうものがあったのかということで確認いたしまして、これは平成二年当時らしいんですが、いずれにしても、そのころに、いろいろ被収容者の中に、生活習慣病とか、覚せい剤とかそういうものに起因する精神疾患者がふえている、あるいは疾病構造も変わりつつある、そこで、やはりこういう状況に対応するためには、ひとつ新たな、大きな目で見た医療体制をつくろうということで、これは部内で検討材料としてつくられたということを知りました。その後、これまで時期がたっているわけですが、これは委員も御案内のとおり、実現できたものもあるし、まだ実現できないものもあるという状況でございます。
 その後、でき上がってから、一体どんなふうにこれが取り扱われてきたのか、どんな会議があって、どんなふうになってきたのかということを調べなさいという、これはまことにそのとおりであって、はっきり申し上げて、私としては、それを実行するつもり、もちろん当然実行する意思でありますし、そのように指示したつもりではありましたが、委員が今おっしゃるには、中の者で、必ずしもその趣旨をよく理解していなかったやに受け取れる発言をした者があるというふうに今聞きまして、やはりこれは、専ら私が十分な指示をしなかった、あるいはわかりやすい指示をしなかったということであろうかと反省しております。この点はここでおわび申し上げまして、前回のとおり、先生の御趣旨はわかりますので、先生がおっしゃった事柄については、きちんとした形でまた御報告、御説明申し上げるようにいたします。
保坂(展)委員 局長に伺いますが、もう端的に答えてください。
 これは、役所の中で個人がつくったペーパーというような軽いものじゃないんですよ、「矯正の現状」などにも出ていますけれどもね。どうでしょう、概要だけできるということはあるんですか、本編がなくて。それを答えてもらえますか。概要だけなんですか、これは。本編はないんですか。
横田政府参考人 まず、誤解を招いたかもしれませんが、私は、個人のメモとしてつくったというふうな認識で申し上げたことでは全くございません。少なくとも、矯正局というクレジットといいますか、そこによってつくったので「矯正の現状」において引用されているんだということで御理解いただきたいと思います。
 私が認識しているのはこの概要のみでございます、現時点では。
保坂(展)委員 それは、局長、違うんじゃないですか。要は、役所で、しかもこれは大変なことですよ。病院としてつくるという理想まで打ち上げているんですよ。本編が存在しなくて概要だけだったんですか、それとも本編はあったんですか、それを聞いているんですよ。そのくらいは答えてもらわなきゃ困りますよ。
横田政府参考人 本編というのが、どういうものを先生がイメージしていらっしゃるのかちょっとわかりませんが、この項目がありますけれども、まさにこれが、当時いわば局内の一種の検討の材料といいますか、たたき台という形でまとめ上げたというふうに私は認識しております。これ以上の本編なるものは存在していないと聞いております。
保坂(展)委員 これ、断言していいんですかね。私は先ほどまで説明を聞いていましたら、要は、これはあった、今の医療分類課の職員の方のファイルに。しかし、全部、もうほとんど古いものは捨ててしまっているので、これはだから概要だけだったのかと思いますというような説明なんですよね。
 それで、大臣に聞きますけれども、少なくとも、実は、では、こういうものをごらんになったことはありますか。「提言 二十一世紀における矯正運営及び更生保護の在り方について」、矯正保護審議会、平成十三年一月発刊、法務省矯正局、保護局。ごらんになったことありますか。
森山国務大臣 多分まだ見ていないと思います。
保坂(展)委員 これは委員長にも申し上げているんですけれども、我々は、いたずらに矯正局のここがいかぬとか、それを言うためにやっているんじゃないんですよ。医療問題で重大な背景があるんじゃないかとにらんだから言っているわけじゃないですか。資料を届けてくださいとか、たくさん言っているわけですよ。
 これを見ますと、やはり「医療施設の集約化」と、二十一世紀のこの提言の中に入っているんですね。医療施設を専門施設、重点施設に区分をして、医療スタッフの集中配置ないし充実強化を行っていくということを書いてあるんですね。
 さらに、この後ろに審議会の開催の模様があるんですけれども、例えば、矯正部会、この審議会の矯正部会では、平成二年の六月十九日に、「行刑施設における医療体制の見直しについて」、先ほどのペーパーと対応しているんじゃないですかね、そのタイミングですから。それから、平成七年七月には、「覚せい剤事犯受刑者の処遇の充実強化について」、グループワーク、福祉サイドとの連携、ガイドブックを再犯防止のためにつくろうとか、行動療法などをやってみたらどうかとか、さらに、これは矯正保護科学部会というところでは、ちょうどシンナー乱用の問題などがあった昭和五十六年、これは保護観察についてやっていますし、また、五十八年には覚せい剤事犯に対する保護観察についてやっています。六十年にも、「覚せい剤事犯者に対する施設内処遇の効果的実施」ということで、再犯者調査資料とか、グループ療法を取り入れてみたらどうかとか、中間施設の再検討をしたらどうかとか、これ、求めに求め続けて、けさ出てくるんです。しかも、私、こうやって一生懸命読んでようやくわかる。
 どうして出してくれないんですか。これを出してくれなければ、バックグラウンドの議論なんかできないじゃないですか、それは。ちょっと疑いますよ。どうしてですか。
横田政府参考人 かつて矯正保護審査会というものが設けられておりまして、今はございませんけれども、そのような提言がまとめられたことは私も承知しております。
 委員がいろいろこの医療問題について種々お考えくださっていることもよくわかっておりますし、ただ、恐らくこれは、私が何といっても十分でなかったわけで、先生のお求めになるものがどんなものか、どこまでかというあたりの理解が私は不十分であったがために適切な指示をしなかったという結果、結果的にはこのように、先生がお求めのものが出てこない、今ごろ出てくるという結果になっておりますので、この点はおわび申し上げます。
 今後なお、この問題につきましては、私もさらによく調べまして、また対応したいと思っています。
保坂(展)委員 では、医療分類課長に来ていただいていますので、ちょっと幾つか伺っていきたいと思います。
 今やりとりありましたように、当委員会でこういった背景を説明してほしいという要求、請求といいますか要求ですね、これがあったことは御存じでしたか。そしてまた、何か部下に指示したり、あるいは指示されたりとか、どういうことだったんでしょうか。
大橋政府参考人 十分承知しておりましたし、局長からの指示もありましたから、先週の月曜日から作業を努力してやっております。
 私ども、気がきかなかったせいか、途中経過を先生に御報告申し上げるべきだったと今配慮の足りなさを感じておりますけれども、もうしばらくお時間をいただきたい。本当に、課員も大変疲れておりまして、しかし一生懸命やっておりますので、もうしばらくお時間をいただきたいということでございますので、よろしくお願いします。
保坂(展)委員 疲れている、あるいはいろいろな資料請求が多くてということは十分わかるんですよ。ただ、こうしたものは、それは持ってくるのにちょっと疲れるかもしれませんけれども、一応、棚から抜いて渡していただければ、皆さんがつくっている間に私どもも勉強できるわけです。そういうことはぜひしていただきたい。
 それで、せっかくですから、分類課長は何年間、任に当たられていますか。少し長くこの課長をやられていると聞いているので、この書類の扱いですね、先ほどから問題にしている医療充実計画案概要、これについて着任した当時はどういう扱いだったかを含めて、何年間、今の課長をされているか。
大橋政府参考人 お答えいたします。
 着任したのは約十年前でございまして、当時の状況については、十年前のことですから詳細には記憶していないのですけれども、当時は、医療体制充実化計画の策定からいまだ二年ほどしかたっておりませんので、矯正局におきまして、計画実現に向けて、関連通達の発出や必要な施策を実施していこう、そういう雰囲気で作業をしていたと記憶しております。
保坂(展)委員 続けて、さきの委員会で大臣にお聞きしたところ、この概要案については、一つの理想として描いたけれども、その後この計画はうまくいかなかったのではないかと想像しているというふうに答弁があったわけなんですけれども、どういうところがうまくいかなくて、どういうところが実現したというのを簡潔に言っていただけますか。大臣の方からの答弁でそういうお話があったものですから、そこを補強して説明してください。
大橋政府参考人 医療体制充実計画は、お尋ねのとおり、行刑施設を機能別に再編成して、人的、物的資源を集約しながら、重点的に整備することを基本構造とするものでありますけれども、このうち、医療専門施設及び医療重点施設における病室定員と医療機器の整備について見ますと、計画立案当時と比較しまして、八十名弱の病室定員の増を図っておりますし、医療機器についても、人工透析装置やCTスキャンなどの各施設の機能に応じた整備を毎年計画的に行っております。また、これらの施設には、矯正部内の再配置等によって、医師七名、看護師二十二名などの増員を行っております。
 これらに加えまして、矯正局長通達に基づく共助診療等により施設間の連携の強化の実績も上がっている点も考慮いたしますと、医療体制充実化計画は、種々の制約や情勢変化もあって、その理想とするところまでは達成されているとは言えないものの、矯正医療全体の底上げはある程度されたものと考えております。
保坂(展)委員 確かに、人工透析の機械が入ったりとか、そういった医療機器についてはたくさん入っているようですし、あるところまで看護師なども増員をされていった、最近はちょっとふえていないようですけれども。
 そこで、根本的なことを伺いますけれども、我々、府中刑務所に行ったり、あるいは名古屋刑務所で今の十二月事件のこの議論をしていても、本来保護房に入れられるような、保護房で懲罰や、あるいは一種の効果があって、保護房に入れられたくないからということでその後の処遇がたやすくなるというような一般の受刑者と違って、覚せい剤で相当ひどい後遺症がある方の扱い、これは実は府中刑務所で聞いても、定員があかないので医療刑務所にはなかなか送れないと言うんですよ。したがって、保護房にいらっしゃるのは大体同じ方々ですというふうに刑務所長が言っているんです。
 これは、この計画がいわゆる集中化を名古屋、府中において進めたけれども、やはり大勢においてまだ追いついていない、そういう背景があるのじゃないですか。そういうところをどういうふうに考えていますか。
大橋政府参考人 おっしゃるとおりで、先ほど申し述べましたように、十分まだ計画の達成には至っておりませんで、その途上にある、あるいはもろもろの事情で少しとどまっている、停滞しているという事情でございますので、人的、物的支援についてもなお検討する余地があると考えております。
保坂(展)委員 それでは、なかなか資料もお渡しいただけないので、自分で探していろいろ勉強してみますと、なかなかいろいろなことをやられているじゃないですか。
 例えば、薬物犯受刑者に対して、ビデオを今まで見せてきたんだけれども、これは予告していませんから、分類課長、ちょっと感想だけでいいですよ。ビデオを見せると、何だ、そんなものは見ないと言っていた人が、ビデオ教材をつくるということまで一緒にシェアしましょうというふうにやったら意外と真剣に見てくれるようになったりとか、グループセラピーの方法等を取り入れたりとか、これは御存じと思いますけれども、民間でダルクというのがありますね。ダルクというのは、覚せい剤や他の薬物でなかなか抜けられない人たちが合宿生活をして、一日何回も輪になってミーティングしているんです、朝から晩まで。そして、お互い支え合って、やめていく。そういう車座ミーティングみたいな、これを刑務所の中でもやってみようとか、現場から提案はあるんですよ。しかも、相当前からある。
 そういうことをもっと取り入れてみようという議論はなかったんですか。そのあたり、ちょっと感想を。
大橋政府参考人 覚せい剤に関しまして言いますと、覚せい剤によって精神病状態になっている人と、それから、精神病状態ではないけれども、かつて覚せい剤を乱用していて依存症になっている人がいる。この二つというのは、相互に移行しますから、常にどちらかに決まっているわけじゃありませんが、そういった二種類のあり方に対する治療ないしは処遇、それについては、従来からそれは問題で、精神病状態になった者については、興奮すれば、治療場所は一時的にでも、精神病院でも同じですけれども、保護房に入れて、そして治療しながら、安静になったら外に出す。
 分裂病等なんかと違いまして、そう長く精神病状態が続く者もそう多くありませんので、通常の仕事をしながら、しかし、それだけでは社会に出た後に依存症そのものが解決するわけじゃありませんので、依存症に対する処遇あるいは治療、そういったものを試みる必要があるということで、教育は私の担当じゃありませんが、覚せい剤教育等も各施設でやっておるやに聞いておりますし、やっております。ただ、それが十分有効であるか否かについては、社会においても覚せい剤の依存症者の治療が非常に成果を上げたかどうかについては、私、よく存じませんので。
保坂(展)委員 確かに、教育までは範疇じゃないと言われればそれまでなんですけれども。
 局長に伺います。保護局長でいらしたということで、こういう薬物の方は出てからも大変ですね。再犯率も高いわけですね。そうすると、何が必要かと。
 現在は、監獄法で、医療に関する条項というのはほとんどが伝染病に対する規定で、精神医療について規定がありません。したがって、四十条で「医師ヲシテ治療セシメ必要アルトキハ之ヲ病監ニ収容ス」というだけになっていて、しかも受刑者の治療義務は、国家並びに監獄の長がそれを負うという形になっています。
 私は、非常に強くそう感じてきているんですが、府中や名古屋で起きた保護房事件の背景には、もちろん現場の処遇、保安、両方を兼ねている刑務官の教育の問題とか訓練の問題とか、あるいは意識の問題はあるでしょう。しかし、それにとどめて済まされる問題では全くない。受刑施設の医療体制、それから過去十年間、こういうものも出ていますし、医療分類を中心にどういうふうに振り分けていくかという政策が、どこがよくてどこがだめだったのかというのを、これは大急ぎできちっと検証してもらいたいですね。これは行刑改革会議だけにゆだねるというわけにはいきませんからね。
 少なくともそういうきちっとした議論をするためにも、これまで、何回も言わないと通達一つもなかなかいただけないんですから、そういうのはやめて、こういうところで密行主義をやっていてもしようがないんですから、こういうことについてはすべからく、もう一回出すときちっと約束していただいて、議論を空回りさせないでください。
横田政府参考人 先ほど来申し上げておりますように、意思の疎通が十分でなかった、行き違いがあったということをおわびいたします。
 それで、今後、このようなことがないように十分に気をつけて、また先生の御意向というか、お考えというものをもっとよく把握するようにして、総がかりで、滞りがないようにできる限りのことをします。お約束します。
保坂(展)委員 森山法務大臣、なかなかうまくいかないですね。要は、これは大変な歴史もあって、普通の施設じゃありませんから、簡単にはいかないですよ。ただ、それを我々はこの委員会で検証したい、今後のことも考えたい、今後のことを言わずしてこういう議論ができないというところに踏み込んでいるわけですよね。
 そのためには、やはり大臣にもこういうものは真っ先に当然行くべきですし、私が先に手にするというのも変な話ですし、やはり同時に、この委員会の委員全員が、この十年間そういった矯正施設での医療でどういう歩みがあったのか。そんな物すごい報告書をつくれと言っているんじゃないですよ。今までに出た通達だとか報告書だとか、もう既にあるものですよ。それはすっと出すような、そのくらいはやはりやっていただきたいというのを強く指示してくださいと前回頼んだんですよ。それで今こういう状態だったので、私、これはちょっとどうかなというふうに正直思っているんですね。いかがですか。
森山国務大臣 行刑について基本的に改めていきたいということは、前から申し上げているとおりでございます。その目標は、オープンでわかりやすく、皆さんに支持していただける行刑ということを目標にしているわけでございますので、まずオープンでなければいけないというふうに思います。
 ですから、その中の重要な一環である医療の問題についても同じだと私は思いますので、既にできているものを先生にお目にかけるぐらいのことは当たり前だと考えております。先生のおかげで私もそういうものがあるということがわかりましたが、そういう状況では非常に困ったことだと思っております。
 これから一層、オープンでわかりやすい、共通の基盤に立って議論ができるようなものにしていかなければいけないというふうに思います。
保坂(展)委員 矯正局長に、前回、四月の質問でたまたま情報公開の関係で見ていましたら、二年前、平成十三年に、名古屋刑務所なんですが、医療衛生資材購入事務の不適正事案ということで国家公務員法の処分を受けているというケースがございましたね。
 これは六名の方を確認したんです。万以下ははしょりますけれども、一番目の方は三百二十万。二番目の方は四千三百五万。三番目の方は四千六百十二万。四番目の方は九百六十九万。五番目の方は四千六百二十六万、翌年十三万、三百六万、その次の年に六百四十八万、こう書いてあって、最後の方が三千六百五十七万円、これを業者に払っていなかった、それを最後に払いましたということなんですね。
 これは、金額がどういうふうに重なり合っているのかわからないので、単純に足し算すると二億円近くになっちゃうんですね。これは一体幾らの規模の不正事案だったのか。わかりましたか。四月に直ちに調査しますというふうにお答えになっているんですが。
横田政府参考人 お答えいたします。
 四月二十三日の委員会で、保坂委員から、このケースについての御質問がございました。
 そのときに、それが終わりましてから、私の記憶では、矯正局の担当の者から保坂委員に対しまして、とりあえず電話で御連絡申し上げたというふうに記憶しているんです。
 それはさておき、この事案は、平成十二年五月に、名古屋刑務所におきまして、医療衛生資材の購入に当たりまして、事務担当者の事務手続の遅滞がありまして、過去四カ年度間にわたってその総額四千六百万円の支払いが滞っているということでした。
 このケースは、本来――おわかりですから、よろしゅうございましょうか。トータルで四千六百万円で、これについては、言ってみれば手続上の誤りといいますか、間違ったルートで品物を購入してしまったということでございまして、もちろん、その四千六百万円の代金はすべて支払い済みでございます。
保坂(展)委員 わかりました。
 要するに、二億円ではなくて、金額が重なり合っているということですね。
 しかし、そういうことというのは起きるんでしょうかね。一人がミスをした、伝票の処理ミスとか、経理を通さずに直発注しちゃったという話だと思いますが、六人もの方がチームとして三カ年次にわたって、五千万以下ですけれども、しかし多額の未払い金を発生させてしまった。ちょっと不正常じゃないですか。背景はどこにあったんですか。
横田政府参考人 お答えいたします。
 まさに不正常といいますか、私の感想といたしましては、これはあり得べからざる話で、もともとこういう物品の購入につきましては、いわゆる会計のルートといいますか、そちらがどこの役所でもするわけですから、会計の職員がその事務を放置していたので、医務課の職員がそのルートで会計手続を経ないで発注していたんだという話なんです。
 背景といいましても、ちょっと私、必ずしもわかりませんけれども、いずれにしても、私の考えではおよそ考えられない事態でございますので、これはそれゆえにまた厳正な処分があったというふうに理解しております。
保坂(展)委員 ただ、処分理由の中に、百万円以下の額にとどめてくれとか、幾つかそういう伝票操作を思わせるような理由が書かれているんですね。これは、さらにそこのところはどういうことだったのか。
 私の聞きたいのは、やはり、医療の充実ということが機材、医療機器において図られたけれども、これはひょっとしたら、人員においてだめだというようなことの一つのあらわれなのかなという視点もあるものですから、それは、そこの点に関してなお調べていただきたいと思います。
 それでは、刑事局長、きょうは検察についてもちょっと伺いたいんですが、ここのところ、私は、検察官適格審査会について何回かお聞きしてまいりました。これは、官房長に運営については答えていただいていますけれども、やはり、かつて国会でいろいろなやりとりがあって、検察庁は直接答弁には立たないということで、刑事局長が現場を代表して答弁するという仕組みになっていますから、ここはお聞きしておきたいんですが、この検察官適格審査会のそもそもつくられた趣旨、これは、なぜこのようなものができているかというのは、刑事局長の理解はどうですか、なぜつくられているか。古い話で恐縮ですが。
樋渡政府参考人 要は、検察官はその任務の性格上、その独立性を大事にしていただいております。それを担保するために、検察官の身分というのは随分保障されております。そこで、そのために、検察官については検察官適格審査会の議決を経なければ罷免することはできないというふうに、身分を保障する必要性があると考えていただいているからだろうというふうに思います。
保坂(展)委員 非常に簡略化されているといいますか、これは資料で調べますと、提案理由説明というんですか、昭和二十年代の検察庁法の。その中には、そもそも、やはり理念として、検察官の身分保障が堅固であり過ぎて罷免ができないということになるとこれはいけないので、議決をもって免じることができると。それがさらに改正されて、心身の不調というだけではなくて、職務上の非能率あるいは重大な非行等によって職務をとることができないときにも、これを加えたというふうにありまして、検察の民主化を期するために、検察官の適格に関する定時審査制度を設けて、あわせて、罷免事由を拡張して、構成員の過半数を国会議員にしたということで、これはしっかりと作用しているかどうかというところで、さんざん議論してきているわけですね。年間の予算は十五万八千円だそうでございます。十五万八千円。裁判官訴追委員会や弾劾裁判所とどのような違いがあるのかわかりませんけれども。
 そこで、刑事局長、法曹三者のやりとりとか司法制度改革をめぐる議論の中で、最高検の方は、これは日本経済新聞に出ているんですけれども、現在ある制度を活用して、検察官の適格審査会、ここをしっかり活用して、ほとんど今まで機能してこなかったのを生かすということを語っているという記事があるんですけれども、そういう考えはあるんですか。
樋渡政府参考人 おっしゃるとおり、また、先ほどお示しいただきました新聞報道のとおり、そういうふうに我々も考えております。そのいきさつ、いきさつというほどでもないかもしれませんが、検察官適格審査会の昨年の議論におきまして、これは具体的には、大阪高検の三井検事の問題であったのでありますけれども、そういう彼のような者のそれまでの行動というのをなぜ把握できなかったのかということも一つの問題となりまして、それは、検察審査会が収集する資料、検察官に関する資料、それの収集のあり方にも問題があるのではないかと……(保坂(展)委員「適格審査会」と呼ぶ)失礼しました。適格審査会でございます。失礼いたしました。あり方に問題があるのではないかという御指摘も受けましたことから、その資料収集の改善策をとるということになったものと承知しております。
 このような観点から、法務・検察当局におきましても、必要な情報、これは検察官に関する必要な情報でございますが、それをより適切に提供することによりまして、個々の検察官の適格性について適切に御判断をいただいて、十分な審査が行われるよう積極的に協力していきたい。これまでも協力していたとは思うんでありますけれども、もっと積極的に協力をして、的確な御判断を仰ぎたい。その結果、罷免すべき者があれば罷免をしていただくということになっていこうかということになるわけでございます。
保坂(展)委員 ただいま刑事局長が検察審査会というふうにお間違えになったように、本当に、よろず聞いてみても、検察審査会も余り有名ではありませんけれども、それはさすがにくじ引きで選ばれるわけですから、特に片山隼君の事件などでも話題になったということで、少しは知られているんですね。適格になると、これはほとんど知られていないんですね。
 ただ、学者の中には、この際、やはり検察官の公訴権、国民のあるいは市民の公訴権を、独任官庁として持つ強い権限と身分保障に対抗して、それが濫用される、あるいはそれが誤った形で用いられるときには、そこをしっかりチェックする、そういう趣旨がこの適格審査会の発足当初にはどうもあったようでありますし、司法制度改革の議論の中でも、この議論が非常に分野としてはおくれているんではないかということを指摘しておきたいと思います。
 官房長に、実は身分帳が紛失してしまったという事件が府中でありました。一個なくなったので、これは大変だということだったんですが、幾つもなくなっていたということでしたが、その後はどうなっていますでしょうか。
大林政府参考人 これは、現在も結論的には調査中でございます。府中刑務所あるいは矯正局の職員等を動員して今まで捜してきたわけですが、現状においては、保管中の約二万冊の身分帳簿をすべて点検しましたが、見当たりません。
 現在、なお関係職員から事情聴取を引き続き実施しているところでございまして、この取り扱いについては、本委員会に報告させていただきたい、まだなお継続中だということを御報告したいと思います。
保坂(展)委員 きょうは医療の問題を中心にやりましたけれども、矯正局長に、あるいは分類課長でもいいんですけれども、大方の我々の感想として、やはり法務技官、医者は、毎日御出勤された方がいいんじゃないかという印象を持っているんですよ。週に三日とか二日半ではちょっと少ないんではないか、それしか来られないというんだったら、そのお金で二人雇ったらどうだ。これは、結構すぐできることじゃないかと思いますよ。
 先ほど、このパンフレットには、国民は五百人に一人だけれども、行刑施設の中ではさらに濃密だと書いてありますけれども、決してそうではないということは、この間の死亡時刻などでわかってきているでしょう。医者がいない時間が多いということは、同僚議員からも指摘があることじゃないですか。
 これはどうですか。非常に具体的なことだと思いますね。ふやしたらどうですか、カバーする時間帯を。
横田政府参考人 お答えいたします。
 医療体制の充実ということについては、もちろん人と物の問題があるわけですけれども、人については、一番確実なのはやはり数をふやすことでありますので、おっしゃるように、週に二回とか、そういうので国民の皆様の御理解が得られるとは私どもも思っておりません。したがいまして、そのあたりはやはり改善しなければいけないと思っています。
 その方策としてどのようなものがあるか。つまり、限られたお金を有効に使って、より多くの医師にお願いする方法に一体どんなものがあるかということについて具体的に、これは考えなきゃいけないというテーマはもうはっきりしていますし、これから、既に立ち上げているいろいろなプロジェクトあるいは会議等の中におきましても、御意見を伺いながら、先生がおっしゃったような方策について、含めて検討してまいるつもりでおります。
保坂(展)委員 それでは、法務大臣に最後に。
 現場の医師の方とか刑務所に勤務された方たちがいろいろ雑誌で書いていらっしゃることは、非常に率直で、なおかつシャープで、具体的なんですね。例えば、先ほどの精神疾患、こういうものについて、まだまだ職員が専門的な教育を受けていないがゆえに認識がちょっと欠けていたりとか、また、外の病院に移すのに大変なんですね。本来ならば、ある程度のところまでで、精神疾患でも重度になってきたら移さなきゃいけないんですが、そのハードルが高いことによって、つい、ずっととめ置く結果になってしまうということがあるとか、あるいは、医療刑務所に移すのはいいんですが、あいていない、したがって処遇しなきゃいけないということで、この医療刑務所もなかなか活用されないと。さまざまな問題。また、やはりちょっと秘密主義ということも指摘していますね。なかなか明らかにならないと。
 そこの点で、二点答弁していただきたいんですが、やはり精神疾患の重い方たちがきょうも多分処遇されていて、あしたあるいはきょう、これは同様の悲劇が起こらないとも限らないわけですね、症状として出ていますから。やはり初期にきちっと、各行刑施設にそういった専門的な知見のある医者を置いて、さらに強化してカバーをしていただき、対策を立てていただきたいということと、もう一つ、先ほど矯正局長も明確に答弁してもらいましたけれども、週のうち二・五日とかそういう形ではやはりだめだと、少なくとも国家公務員としているわけですから、しっかりとそのカバーをしていただく、もう少しきちっと守備時間を長くとっていただくということを、二つ措置として求めたいと思いますが、いかがですか。
森山国務大臣 二つの点はどちらも大変よくうなずけることでございまして、私も、矯正の医療については、特に精神科等に関しまして、大変、これから解決しなきゃならない問題がたくさんあるというふうに思っております。現場のお医者さんのお声も何人か聞かせていただいたこともあり、何とか解決していきたいと思います。
 一方において、刑務所その他矯正施設では、お医者さんの、本当に必要な科の必要な人材を得るということがなかなか難しいということもございまして、その気持ちがあってもすぐには処理できないというか、解決できないというものもございますし、また財政的な問題もございますので、厚生労働省あるいは財務省等の協力をいただきまして、できるだけ早く解決の方向へ向かいたいと思っています。
保坂(展)委員 財務省、厚生労働省と交渉するのは、この概要が示したような新たな充実した施設をつくる場合には、ぜひこれからそれはやっていただきたいけれども、すぐ、半年、一年で簡単には実現しませんよね。
 しかし、私が言っているのは、もう予算があって、人もいて、ただその形態としてこれまで慣習的に二・五日とか三日とかいうことは、予算を変えずに人も変えずにできるんじゃないですか、やはりそのぐらいしっかりやるように指示したらいかがですかということなんです。
森山国務大臣 予算をいじらずにできることであれば、早速にも手をつけてやっていきたいと思います。しかし、なかなか難しいものですから、右から左に、ではあしたから解決しますということはなかなか言いにくいんですが、でも、最大の努力をいたします。
保坂(展)委員 時間になったので終わります。ありがとうございました。
山本委員長 次回は、来る三十日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後三時四分散会


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