衆議院

メインへスキップ



第24号 平成15年6月11日(水曜日)

会議録本文へ
平成十五年六月十一日(水曜日)
    午前十時三分開議
 出席委員
   委員長 山本 有二君
   理事 佐藤 剛男君 理事 塩崎 恭久君
   理事 園田 博之君 理事 吉田 幸弘君
   理事 河村たかし君 理事 山花 郁夫君
   理事 漆原 良夫君 理事 石原健太郎君
      石田 真敏君    太田 誠一君
      後藤田正純君    左藤  章君
      笹川  堯君    下村 博文君
      中野  清君    平沢 勝栄君
      星野 行男君    保岡 興治君
      吉川 貴盛君    吉野 正芳君
      鎌田さゆり君    近藤 昭一君
      中村 哲治君    水島 広子君
      山内  功君    上田  勇君
      山田 正彦君    木島日出夫君
      中林よし子君    保坂 展人君
    …………………………………
   法務大臣         森山 眞弓君
   法務副大臣        増田 敏男君
   法務大臣政務官      中野  清君
   政府参考人
   (法務省大臣官房長)   大林  宏君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    樋渡 利秋君
   政府参考人
   (法務省矯正局長)    横田 尤孝君
   政府参考人
   (法務省人権擁護局長)  吉戒 修一君
   政府参考人
   (法務省入国管理局長)  増田 暢也君
   政府参考人
   (厚生労働省大臣官房審議
   官)           青木  豊君
   法務委員会専門員     横田 猛雄君
    ―――――――――――――
委員の異動
六月十一日
 辞任         補欠選任
  小西  理君     石田 真敏君
  日野 市朗君     近藤 昭一君
  不破 哲三君     中林よし子君
同日
 辞任         補欠選任
  石田 真敏君     小西  理君
  近藤 昭一君     日野 市朗君
  中林よし子君     不破 哲三君
    ―――――――――――――
六月十一日
 治安維持法の犠牲者に対する国家賠償法の制定に関する請願(大谷信盛君紹介)(第三四五四号)
 同(鍵田節哉君紹介)(第三四五五号)
 同(鎌田さゆり君紹介)(第三四五六号)
 同(小林憲司君紹介)(第三四五七号)
 同(土井たか子君紹介)(第三四五八号)
 同(山内惠子君紹介)(第三四五九号)
 同(吉田公一君紹介)(第三四六〇号)
 同(赤嶺政賢君紹介)(第三五二三号)
 同(伊藤英成君紹介)(第三五二四号)
 同(石井郁子君紹介)(第三五二五号)
 同(小沢和秋君紹介)(第三五二六号)
 同(大幡基夫君紹介)(第三五二七号)
 同(大森猛君紹介)(第三五二八号)
 同(鍵田節哉君紹介)(第三五二九号)
 同(菅野哲雄君紹介)(第三五三〇号)
 同(木島日出夫君紹介)(第三五三一号)
 同(小泉俊明君紹介)(第三五三二号)
 同(児玉健次君紹介)(第三五三三号)
 同(穀田恵二君紹介)(第三五三四号)
 同(佐々木憲昭君紹介)(第三五三五号)
 同(志位和夫君紹介)(第三五三六号)
 同(塩川鉄也君紹介)(第三五三七号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第三五三八号)
 同(田並胤明君紹介)(第三五三九号)
 同(土井たか子君紹介)(第三五四〇号)
 同(中林よし子君紹介)(第三五四一号)
 同(春名直章君紹介)(第三五四二号)
 同(不破哲三君紹介)(第三五四三号)
 同(藤木洋子君紹介)(第三五四四号)
 同(松本善明君紹介)(第三五四五号)
 同(矢島恒夫君紹介)(第三五四六号)
 同(山口富男君紹介)(第三五四七号)
 同(吉井英勝君紹介)(第三五四八号)
 同(石井一君紹介)(第三六四八号)
 同(大石正光君紹介)(第三六四九号)
 同(大森猛君紹介)(第三六五〇号)
 同(金子哲夫君紹介)(第三六五一号)
 同(菅野哲雄君紹介)(第三六五二号)
 同(末松義規君紹介)(第三六五三号)
 同(長浜博行君紹介)(第三六五四号)
 法務局・更生保護官署・入国管理官署及び少年院施設の増員に関する請願(徳田虎雄君紹介)(第三五二一号)
 裁判所の人的・物的充実に関する請願(徳田虎雄君紹介)(第三五二二号)
 同(上田勇君紹介)(第三六四六号)
 同(後藤田正純君紹介)(第三六四七号)
 重国籍容認に関する請願(細川律夫君紹介)(第三六四四号)
 同(山元勉君紹介)(第三六四五号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 法務行政及び検察行政に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――
山本委員長 これより会議を開きます。
 法務行政及び検察行政に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、政府参考人として法務省大臣官房長大林宏君、刑事局長樋渡利秋君、矯正局長横田尤孝君、人権擁護局長吉戒修一君、入国管理局長増田暢也君及び厚生労働省大臣官房審議官青木豊君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
山本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河村たかし君。
河村(た)委員 河村たかしでございます。
 それでは、時間もございませんので、まず、法務委員会初の、この間はシャツになりましたけれども、きょうはシャツにはなりませんが、ワイシャツ姿でやりたいと思います。
 まず、お手元に資料が行っております。前回も手紙を読みましたけれども、渡邉貴志さん、この方は名古屋の刑務所で看守長をやられておられる方です。今、休職中でございますので。無念の思いを持って僕に手紙を書いてくれて、僕はこれを読むと泣けてくるので、本当に何とも気持ちが苦しいんですけれども、せめて彼の心を、拘置所の中で無念の思いを持っている心を、ここで、こういう格好で皆さんの前で言うということが何かの力になればという気持ちで読ませていただきます。
 ちなみに、きのうこれは大臣にもお渡ししてありますので、その感想というようなことではなくて、あなたの部下なんだから、ぜひ彼を支える意見をいただきたい、こう思います。
 一ページ目についているのは、彼から来た私への、河村たかしへの表書きと、裏は、この東区白壁一―一というのは名古屋拘置所の住所です。
 では、読みます。
 中で、若干私に対して、大変ありがたいという言葉がありますけれども、これは文章がそのまま来ておりますので、私はそんな気持ちはありませんけれども、本人の手紙ですから、そのまま読ませていただきます。
  前略
  度々の面会調査、誠にありがとうございます。
  差し入れていただきました、五月二十八日付け衆議院法務委員会速記録を拝見させていただきました。
  私の素直な想いが、どれだけ届いたのでしょうか。
  文面から感じたことは、“聞くだけ聞きましょう”という姿勢です。
  大臣らの話しは要するに、検察官は正しく、間違いを犯さず、信用されるべき人間であり、刑務官は、人権意識の低い信用ならない人間と公言しているに他なりません。これは、人権問題の何ものでもありません。
  第一、中間報告に関する調査にかかわらず、検察以外の調査は、何ひとつ行われていません。そのようなもので、どうして私達の人権意識だとか、資質などといったものが判定できるのかわかりません。これは、重大な人権侵害です。唯一行われた検察の調査でさえ、適正ではない取調べであり、これも、重大な基本的人権の侵害です。
  法務省、検察の行っていることの方が、人権軽視の対応であることは、議論の余地がありません。
  大臣らは、すべては司法段階で明らかにされるとの一点張りですが、一度起訴したら、何も手出しができないということではありません。
   刑事訴訟法第二百五十七条(公訴の取消し)公訴は、第一審の判決があるまでにこれを取り消すことができる。
  法律には、このような定めがあります。
  法務委員会で、数々の検察の捜査上の違法行為やミスが判明しているにもかかわらず、裁判を継続しようとする法務省、検察の意図が理解できません。
  裁判が終わるころには、自分はもう今の地位にいないだろうから、どうでも良いと考えているなら、とんでもないことです。
  今の法務省や検察の対応を見ていると、どうしてもそう感じずにはいられません。
  この問題も、国会の会期が終了するとともに、“なかったこと”にされてそのままにされることでしょう。
  これが、国のために身を削って働いて来た私達に対する、国の答えなのでしょうか。世も末とは、まさに、このようなことを言うのだと思います。
  私達にとって唯一の救いであるのは、先生に真の声を聴いていただいたということです。先生が来ていただかなかったなら、誰れ一人、私達の真の声を耳にすることはなかったでしょう。詳しく調査を行うべき法務省、矯正局でさえ来ないのですから。
  ですから、何の面識もない先生に、これだけの熱意を持って聴取していただいたことは、何にも代え難く、深く感謝しております。このような言葉を並べ立てても、十分ではないような気さえします。
  速記録を拝見しての想いを書かせていただきました。
  先生の御活躍を心からお祈り申し上げます。ありがとうございました。
    六月四日        渡邉 貴志
 これは、桜のマークというのは、検閲のマークなんですね。これは、判が押してあるという手紙になっています。
 以上、読みまして、大臣、ぜひちゃんと調査をしてあげてください、彼が言っているように。感想じゃなくて。検察は検察でいいけれども、それはだめですよ、やはり。別個にあなたは無給処分もしているんだし。やはり別のことなんだから。
 それと、僕、委員長にも、委員会に頼みたいんだけれども、これは、ずっと振り返ってみたら、要するに、この彼らが、後でありますけれども、革手錠を二十センチ締めた、そういうようなことが全部前提となってマスコミも国会も全部始まっているわけね。だから、やはり、そうでないという、事実が違っていた、事実がなかったという可能性が出てきたじゃないですか。だから、やはりここは大臣、本当に、あなた、政治家として国民から選ばれて、ごめんなさいね、こんなこと言って、選ばれて、有権者から一票いただいて、やはり民主主義の本当の力によって役所の行き過ぎをコントロールする、そのために出てきているんだから。だから、彼のこの気持ちを酌んでやっていただきたいと思いますが、どうですか。
森山国務大臣 先生が刑務官に対して大変温かい気持ちを持って接していただいているということはまことにありがたいことだと、私からも感謝申し上げたいと思いますが、私自身も、法務大臣に着任以来、現場こそが一番大事だという考えでまいりまして、そのつもりで取り組んでまいったのでございます。刑務所についてもかなり多くの出先機関を見てまいりまして、たしか十七カ所ぐらい見たわけでございます。
 また、先日、釧路の刑務所を視察いたしました折には、現場の第一線で一生懸命やっております刑務官の方々数人の方とひざを交えて、ざっくばらんに生の声を聞いてまいったわけでございまして、私なりに、限られた分野ではございますけれども、刑務官の皆さんの毎日の御苦労を理解しているつもりでございます。
 先生から今御紹介がありました六月四日付の渡邉さんのお手紙には、「大臣らは、すべては司法段階で明らかにされるとの一点張りです」と書かれているわけでございますが、私には、真実から目をそらそうというつもりはございません。
 渡邉さんはこの事件で刑事被告人という刑事裁判の当事者の立場にございますが、私といたしましては、裁判になっている以上、被告人と検察官がそれぞれの立場から主張、立証を尽くしまして、そのことを通じて、裁判の場で真相が解明されるということを何よりも望んでいるわけでございます。
 先般、矯正の現場では、「威あって猛々しからず、親しみあって馴れず、彼また人たるを知るべし」という標語を日々の執務の心得としているという話を聞いたわけでございます。とてもいい言葉だと私感心いたしました。「彼また人たるを知るべし」と。つまり、受刑者も一個の人格を持った人間であり、その人権を尊重されなければいけないという意味であろうと思います。
 現場の刑務官一人一人が、この心構えで、生き生きと誇り高く、日々の職務に精励できることこそ最も大事なことでございまして、このことによって国民に支持される行刑運営の改革もできる、これが私の気持ちであるということを、渡邉さんを初めとする刑務官の皆さんに御理解をいただきたいというふうに考えているところでございます。
河村(た)委員 悪いけれども、今は刑務官が受刑者になっているんですよね、刑務官が、未決ですが。それ通じないよ、大臣、悪いけれども。それ、きのうもちゃんと私言っておいたじゃないですか、これをお見せして。
 それと、真実解明は、悪いけれども、裁判所の独占じゃないんですよ。司法というのは、独立は非常に重要です。独占じゃないんですよ、大臣、これ。委員長、要するに、委員会も真実解明をしなきゃだめなんですよ。あなたは無給処分しているでしょう。それから、いろいろな行刑の改革だとか司法制度全体の改革の最もベースになる事実ですよ。それはそれで堂々とやればいいんですよ。だから証人喚問という手続もある。
 何か、公判が始まりました、そっちに全部というのは、それは明らかに職務放棄なんだよ、これ、悪いけれども。役人はそうやって書くだろうけれども、だれが書いたか知らぬけれども。それは憲法違反ですよ、言っておきますけれども。
 一言聞いてもしようがない。時間がないですから、先に行きます。
 それから、これももう一つ、伊藤栄樹さん、この間も話がありましたけれども、検事総長をやられた。この方、私名古屋ですけれども、旭丘高校といいまして旧制愛知一中の出身の方で、私どもの同窓生の中では非常に尊敬をされておられますが、検事総長をやられた方が、「被害者とともに泣く」ということの文章がありまして、これはどういうことかというと、後でちょっと読みますけれども、検察官は被害者とともに泣く、これが原点であると書いてあります。
 しかし、刑務官も、やはり検事は確かに華々しい法廷で被害者とともに泣いたかわからぬ。だけれども、刑務官も、実際、被害者とともに泣くというのは実践してきた、皆さんの手足として、現場で。その人たちではないのか。その人たちに対して、余りにむごくて残酷ではないか、冷たいではないかということを言っておきたいということで、ちょっと文章の最後の辺のところを読みますと、一番しまいの行ですね、五行目ぐらいから。これは日経新聞の昭和五十七年二月三日の夕刊の記事ですが、
 被害者の心情を酌み、これを法廷に反映させることができるのは、検事だけである。日々定型的に多発する事件だからといって、検事がこのことを忘れるとき、思わぬ不幸な出来事が起きる。
  刑事法学者の多くは、学生に、被疑者・被告人の人権を守ることのみを説く。とかく被害者は忘れられる。しかし、被害者側によるあだ討ちを禁じ、これに代わって国だけが犯人をこらしめることにした、それが刑事訴訟の本質である。被害者を忘れては、刑事訴訟はあり得ない。“被害者とともに泣く”、これこそ検事の原点である。
この当時は最高検察庁次長検事、伊藤栄樹さんということです。
 これを読まれて、どうでしょうか、大臣。これは刑事局長がいいかな。矯正局長か、矯正局長だね。
 やはり僕は本当に、何でこんないつもうるさいことを言っておるかというと、本当に検事というのはすばらしい職業だし、立派でおってほしいわけです、立派で。確かに、こういうようなことで、本当に、被害者とともに泣くという、つらい立場にあるんだけれども、先ほど言いましたように、刑務官も一緒に泣いておった。それも現場で泣いておった。つらい仕事をしておったんですよ。それが、本当に罪を犯したらいかぬですよ、これは私はしようがないと思う。
 だけれども、また後でもやりますけれども、革手錠、二十センチ、絶対締まらないんだよ、これ。物理的不可能の起訴だ。だから、放水だってもうだめだと、この間、二村教授が言っているでしょう。だから、供述は作文だということも全部言いますよ。物証なし。それから放水事件に至っては、豚にかけて、全身麻酔をかけたから全くこれは使えない。
 こういう現状で、本当に自分たちと一緒に、被害者とともに泣いてきた刑務官のことを、矯正局長、一遍、検事は検事ですけれども、やはりもう一回、この事実が本当にあったかどうか、調べられたらどうですか。どうですか、局長。
横田政府参考人 まず、この「被害者とともに泣く」という伊藤元総長の御意見というかお考え、これは、私も若いときからこの話は聞いていますし、私もまた検事はそうあるべきだというふうに思って、私もそういうことで検事になりましたし、その後もそういう気持ちでおりました。その点においては、先生と御意見を異にするものではございません。
 また、そのことと、それから今回、先生がおっしゃっている、事件の真相を明らかにすべきだということについて、現在、これは大臣が今おっしゃったとおりでありまして、このことにつきましては既に司法に場が移っているわけでございまして、やはり司法の場で、厳格な証拠によって、訴訟手続的に真相が明らかにされるべき筋だというふうに私は思っております。
河村(た)委員 これは憲法違反だし、職務放棄です。言っておきます。今度、それをやりたいと思います、悪いけれども。
 それは横田さんばかりでなくて、省の全体の姿勢で、大臣がそう言っているんだけれども。真実解明は決して裁判所の専権じゃないですよ。それはそうでしょう。それだけ確認しておこうか。大臣、どうですか。真実解明は裁判所の専権ですか。
森山国務大臣 法的な問題については法廷でされるべきことだと思いますが、いろいろな、ほかの問題についてはほかでもお調べいただいて、例えば先般の参考人の招致とかあるいはそのほかのやり方もあり得ると思いますので、何も裁判所だけが独占というわけではございません。法的なものに限ってそのようなやり方をして、それ以外のことはほかの場でも調べられると思います。
河村(た)委員 厳密に言いますと、法的なことと言っても、行政が関与する法的なこともありますから、有罪無罪とか、司法が判断する法的なことについては裁判所がやるということです。
 だから、大臣、やらないかぬですよ。それと、総理大臣が再調査すると言っていてやらないのはいけないよ、これは本当に。大臣、いけませんよ。また今度やりますけれども。これはそんなむちゃくちゃな話じゃありませんよ、言っておきますけれども。
 ということで、時間がありませんので、それではちょっと手錠の実験をやりますから、うちのスタッフ、中山といいますけれども、彼はちょうどウエストが八十ですので。
 皆さん、もう一つ資料がありますけれども、五月事案と九月事案、これは冒頭陳述もすべて同じですけれども、すべてこの事件の発端は、革手錠を推定八十センチメーターの受刑者さんにつけて、五月事案は五十九・八センチ、それから九月は六十・四センチですから、両方ともほとんど同じなんです。これは、八十センチの方を六十センチに締めたということがすべての発端です。
 だから、委員長、本当はこれは委員会でやらないかぬですよ、本当に。これは有罪無罪じゃないんです、すべての議論がここでスタートしているんです、すべて。何かこういう実証的なことをやらずにという風潮がありますけれども、委員長、余り突然聞くなという顔をしておるけれども、そう思いませんか、これがすべての発端なんです、あらゆることのベースなんです。だから、ちゃんと検証しましょうよ、まず委員長から。
山本委員長 理事会において協議させていただきたいと思います。
河村(た)委員 そういう決まり文句を言いますけれども、本当にやらなければ職務放棄だし、むちゃくちゃですよ、これは。僕は、法務省の人もそう思っていると思いますよ。何を言っているんだ、国会でどんどんこういってやってきたじゃないかという気持ちが僕はあると思いますよ、法務省も。
 だから、委員会としては、やはり本当のベースの事実をやらなきゃだめですよ。そういうことから、裁判は裁判だけれども、これは行刑改革やら司法制度改革につながっていくわけでしょう。だから、今度、本当にひとつ、この議論をお願いします。
 それでは、あなた、ちょっと脱いで。刑務官も二人呼んでありますので、お願いします。委員長からちょっと、締める。
山本委員長 理事会において、秘書さんの補助的な役割は認めました。だから、どうぞ締めてください。
河村(た)委員 刑務官がやった方が。
山本委員長 刑務官の方はいらっしゃるの。
河村(た)委員 ええ、二人。
山本委員長 どこにいるの。横田矯正局長がいるの。
河村(た)委員 経験のある人、経験。補助員ですわ、単なる。
山本委員長 刑務官の経験のある方がいらっしゃる。矯正局の職員がいらっしゃる。では、矯正局の職員、質問の補助をしてください。
 河村君に申し上げます。これは、幾ら実験しても、速記に残らないので、残るように描写をしなければ、うまくとれませんよ。やったことが残りませんよ。
河村(た)委員 では、私がきょうは自分でつけるんじゃなくて、彼はちょうどウエストが八十ですから、まずはかりまして、ウエスト、ちょうど八十よりちょっと狭いぐらいですよ。七十七です。ちょっと見ていただけますか――七十六ですね。ちょっと狭いですね。やせたんですね。
 では、そのウエストで、刑務官の経験のある方、済みません、実際に伏せてもらって、とりあえず、手かせはなしでやります、時間がかりますから、これを締めたということだけですから。
 では、あなた、ちょっと伏せて、やってやってください。伏せて。手かせなしですから。
山本委員長 河村君、今の状況を言葉で描写してください。
河村(た)委員 今、ちょっと伏せて、実際はこういうふうで、暴れていますので、暴れているから手錠をかける。今、彼は非常にどうぞということですけれども、今、ここの段階で、ちょっと立ち上がって、ここにかけた段階というのは、これは八十センチ。これはちょうど、手錠を後で見せるといいんですけれども、穴が十センチずつあるんです。六、七、八十とありますから、これは後ではかりますけれども、八十センチのところへ入った。ウエストと同じベルトですけれども、これは適当な施用ではないですね。
 これはちょっと答弁を求めておきます。ちょうどウエストと同じ、こういう緩いやつですね。矯正局長ですか。
横田政府参考人 ちょっと緩過ぎますので、かえって危険だという話です。まあ逃走、外れたりもしますし。
河村(た)委員 では、もう一回、ちょっと職員の方。立ったままでいいです、とりあえず立ったまま。
 もう一段締めるところが本来の施用ということになりますね。ここで、あなた、実際ちょっと暴れるようにしてください、下で。
 今までは、素直にはめてくれということだったんですよ。では、あなたは、暴れるようにして、力を入れて締められないようにして、締めてください。ここから締まるかどうか、次の穴まで。今、締めておりますけれども。
 こうやって押さえまして、ぐっと引いてください。もっと強く、二人で引いてもらってもいいけれども。
 これは、第一の穴も実は入らないんですよ、十センチのところも、力を入れますと。今、そういう状況です。ちょっと見ていただくと、委員長。
山本委員長 もう少し言葉で、全く見えない人、ラジオ放送と同じように描写してください。
河村(た)委員 今、八十センチ、ウエストと同じ穴ですと、緩過ぎてだめなんですね。今、矯正局長が言われた、正しい施用ではないと。
 だから、次の穴に入れますと、十センチ間隔ですから、前回僕が実験したときは、体を緩めていましてどうぞという状況だから入りましたけれども、革手錠というのは、とにかく暴れている人につけるやつですから、ちょっと力を入れて締められないようにすると、次の十センチも入らないんですよ、実は。今、そういう状況です。次の十センチも入りませんね。言ってください、あなた。ちょっと言ってください、入らないと。言ってください、今の状況を。
 今、これでぎちぎち入りました。ちょっと立って、ちょっと起こしてください。普通では入らなくて、今、二人で、手で特別に入れまして、十センチのところに入れたということです。
 これが、いわゆる通常施用されている革手錠の施用状況ですね。それをちょっと答弁ください。
横田政府参考人 これで通常の施用方法だそうです。
河村(た)委員 では、これは当然、適法ということですね。
横田政府参考人 もちろん適法です。
河村(た)委員 では、十センチ目までは、これは適法なんです。
 では、もう一回伏せて、次の十センチ入るかどうか。では、もう一回伏せて。もう一回、入るかどうか。二人でやってください、そこから。今、もう一つの穴へいけるように引っ張っておりますけれども、事故が起こるからじゃない、ちゃんと力を入れてくれよ。どうですか。やめた方がいいですか。――危ないですか。
 だから、穴が抜けるかぎりぎりぐらいですね、これ。七十センチの穴が抜けるかぎりぎりぐらいで一切もう進みません。進まない。もっと力を入れて、一遍いっぱい引っ張ってください。力を入れてくれる、ぐっと。もう進みません、全然。いいですか。ちょっと力を入れて引いてください。もうここで進まないです。進まない。ベルトの穴から抜けただけです。だから、全然もう前へ進まないよ。
 ちょっと笹川さん、それじゃ見に来てくださいよ。いや、見ればわかるから。(発言する者あり)足で踏んでやってくださいよ、それじゃ。足で踏んでもいいですよ。(発言する者あり)いやいや、二人で引いたということになっているから、起訴状どおりやってください。二人で引いてください、二人で。
山本委員長 できない。
河村(た)委員 怖い。怖いより、引いてください。引けるかどうか、本当に。
山本委員長 ちょっと、補助者の皆さんがこれは身体的な危険を伴うと言っていますので、河村委員、このあたりで実験を終えてみたらどうですか。
河村(た)委員 では、今のところでちょっと答弁を、矯正局長に言って、どういう状況だったか、引けないということを答弁してください。
横田政府参考人 それ以上引くと危険だそうです。
河村(た)委員 物理的に引けないと言ってくださいよ、これは引けませんから。ではもう一回やりましょうよ、引けるのだったら。
山本委員長 物理的には引けるだろう。
河村(た)委員 いや、物理的にと言ったら、機械でやれば引けるけれども、人体の通常の力じゃ引けないということですよ。
横田政府参考人 物理的に引けるか引けないかということはわからないそうです。とにかく、これ以上は危険だと言っています。
河村(た)委員 では、時間もないから、これはまたやります。次にやって、本当に人体の、二人ぐらいの物理力で引けるかどうか、検証しましょう。
 もういつまでもやっておっても、これは本当に、自民党の皆さんたくさんみえるけれども、本当に無理なんですよ、実は。ベルトがありますから、事務所でやっていただくとわかるんです。ちょっとその状況を見ますと、いいですか、このベルト、時間がないけれども、ちょっとやりますか。
 これを、ここからやりますと、これちょっと佐々木さんでもいいわ、ちょっと来てくれる。ここから見て、ここを押さえてくれる。この穴がこういうふうに、これは全長一メーター二十、尾錠のところから一メーター二十ちょっとあって、ここ、委員長、この六十センチ、こっちがええな、ちょっと逆さまですけれども、穴が六十、七十、八十となっていますわね。これはちょうど十センチずつで八十です。
 どういうことかといいますと、この八十センチの人を六十に引いたんだから、これは皆さんにお見せしますが、こういうことですよ。八十センチというのは三つ目の穴ですから、三つ目の穴にこうやって入れる。これが初めの胴体の状態。これを仮に六十センチに入れたとします。どのぐらいになるかというと、これが六十センチの穴で、これは入れた状況。入れるときにちょっと余分に引かないかぬ、まあぎちぎちですけれども。大体このくらいです。こうですよ、これ。委員長、自民党の皆さん、胴体をここまで引いたということですよ、これ。私の頭でやりましょう。私の頭入らないよ。八十センチの胴を。
 これは大臣、ちょっとお見せするわ。ここまで八十センチの人の胴を、これは間違いないですから、ここまで入って、これが六十だから、七、八だから、ここへ入れたというんですよ。ここまで来たわけですね。ここまで人間の胴を引いたということですよ。これですよ、これ。これは可能と思われますか。ちょっと答弁してください。
 いや大臣、答弁してくださいよ。裸の言葉でいいんですよ。あなた、政治家なんだから。事務次官じゃないんですから、言ってくださいよ、これは。これですよ、これ。ここまで引けなかったら、悪いけれども、オール・オア・ナッシングですからね。
 では、これは矯正局長、ちょっと。この前は適法の施用でしたよね、七十センチは。だからオール・オア・ナッシングですね、これ。
横田政府参考人 最初の段階では適法な施用というふうに聞いています。(河村(た)委員「七十センチはね」と呼ぶ)はい。
河村(た)委員 では、次の穴に入れなければ、オール・オア・ナッシングです、間がないんだから。ねえ局長、間がないんだから。
横田政府参考人 オール・オア・ナッシングというのはそういう意味ですね、次の間隔までは。そういう意味ではオール・オア・ナッシングだと思います。
河村(た)委員 では、六十センチの穴にもし入らなければ、これは犯罪事実になりませんわね、これ。
横田政府参考人 入らなければという前提がちょっとわかりません。
河村(た)委員 何かいろいろ言っていますけれども、要は、よく読みますと、いろいろなほかの、殴ったりけったりとか実際もやっていませんし、一切ないんです。この名古屋の刑務官の冒頭陳述、一切ないんです。ただ、この八十センチの胴の人を六十センチに引いた、胴を締めた、これしかないんです。
 ところで、穴というのは、八十、七十、六十と、三つしかないんです。いいですか。七十センチは、今はっきり言われたように、これは八十がゆるゆるで抜けちゃったり上に上がれば危ないので、七十センチが通常の施用なんです、七十センチが。これは今言いましたよ。実験しましたよ。答弁していますよ。だから、次の穴の六十センチに入らなきゃだめなんですよ。笹川さん、そうでしょう。
 そうすると、六十センチというのはこれなんですよ。ここ以外にないんです、ここ以外。入ると思われますか、これ。これ、どうですか。まあ矯正局長に言っても答えぬだろうけれども、だれに言ったらこれは答えてくれるかな。
横田政府参考人 まずちょっと申し上げさせていただきたいんですが、その先生がお持ちのベルト、それ一種類しかないということではないということを、まずそこの点はちょっと誤解のないようにひとつお願いしたいと思います。
 それから、それ以上入るか入らないかというのは、先ほど申し上げましたとおり、刑務官は自分の経験からこれ以上締めたら危険だと言っているだけであって、入るか入らないかということまでについては、これはそれぞれ個別のケースの問題ですし、その人の肉体の問題だと思います。
河村(た)委員 では、またやります、物理的に可能かどうか。なぜかというと、これは裁判所じゃないですよ。すべてがこれから始まっているんだから。中間報告も全部そうです、これから。去年の秋から始まって。だで、やる。
 それから、ベルトは、ほとんど九割以上はこれだと言っています。聞きました。標準的なベルトです。一応、ちょっと答弁をもらっておこうか。
横田政府参考人 おっしゃるとおり、それが標準のタイプだそうです。
河村(た)委員 違うのがあるといっても、それはスタートラインが違うというだけであって、十センチごとのこの穴の構造のベルトは全く同じだ、それを言っておいてください。
横田政府参考人 それは委員のおっしゃるとおりです。
河村(た)委員 ということです。
 だから、時間がないので次に移りますけれども、僕は、非常に残念だけれども、ある時点からもう引き返さにゃいかぬと思います、これは。物理的に不能です、これは。人力、人体で引くのは明らかに不能という起訴をしてしまったということですから、お立場はあると思いますけれども、まあこういうことはやめてください、本当に。やはり刑事訴訟法に基づいて公訴の取り消しをすべきだと僕は思いますよ。
 それで、これは、国会がどうのこうの、権限の問題が出ますけれども、これはよくあるのは、検察がきちっとしておって、国会が政治的にそれをゆがめようとしていろいろなことをやったときに、国政調査権と検察の問題が問題になるのであって、そういうことは厳に慎まなければいかぬです。
 だけれども、やはり残念ながら検察でも、私は、検事が身内にも厳しくしようとしたと思いますよ、思います、それは。だけれども、やはり失敗することというのはありますから。私だって現に何回か質問したじゃないですか。私は謝罪していますよ。だから、検察の場合、組織があるから大変だろうと思うけれども、やはりだめです、これは。きょうを限りに、きょうから、漫然とやったことは違法だと僕は思うね、悪いけれども。後は違法な公訴の継続といいますか、そういうふうになると思います。それから、大臣、無給処分も違法となると思いますよ。
 さあ時間がございませんので、では刑事局長にいきましょうか。
 ちょっと時間がないのでフルスピードでやりますけれども、もう一つ、皆さんのところへ資料があります。とにかく恐ろしい取り調べがありまして、これはもう本当にやめてやってください、彼らにこんなことを言うのは。
 ずっと行きます。「名古屋刑務所事案につき、下記のような取調べはありましたか?」、一番「逮捕するぞ。今日は逮捕されなかったが次は分からないぞ。」、二番「君がここで倒れても私は何もして上げられない。」、これはなぜかというと、ちょっと前に倒れた人があるんです。三番「人を殺しても分からないといっているそんないい加減な仕事をしているのか。」、四番「矯正局長は検事だから我々と一緒だ。」、五番「お前なんか早く官服を脱げ、まだ刑務官をやっているのか、やめろって言っただろ。」、六番「検察官には逮捕したり起訴したりする権限があるのを知っているか、本当のことを言わないのならそうなる。」、七番「(事実と異なる調書の書き換えを頼んだら)書き換えはできない、書き換えると偽証罪になる。」、八番「(事実と異なる調書の訂正を頼んだら)この調書は前日だから関係ない、調書をあわせろ。」、九番「刑務所に送ってやる、」、これは入れてやると言ったというふうに聞いた人もいる、「送られたらどこを希望するか、独居と雑居ではどちらがよいか。」、十番「机を手や帳簿で叩きつけながら怒鳴り散らされた。」、十一番「机を思いっきり蹴飛ばして取調室を出て行った。」
 こういうことがありまして、私も本当に、刑事局長、言いたくないんだよ、こんなこと。だけれども、彼ら、名前を出すのはやめました。担当取り調べ官の名前も、調べられた人もわかっています。彼らはちゃんと文書をくれて言っています。
 こういう調べはあったんでしょうか、刑事局長。
樋渡政府参考人 今委員が挙げられたことは、恐らくその供述の任意性、信用性を争うその項目になるんだろうというものでありまして、それは、法廷で主張をされましたら、法廷でその証拠に基づいて判断されるべき事柄でありますので、私がここで申し上げるのは裁判に不当な影響を与えるおそれもございますので、お答えいたしかねます。
河村(た)委員 そうすると、公平な裁判というのは一つ目指すところだと思いますけれども、一番入り口ですよね、一応、取り調べというのは、刑事における。もう一つ、捜査の端緒というのはあると思うけれども。こういうところというのは、いつこれは確認できるんですか。
 例えば、何か法律をつくろうとしますよね、取り調べをどうするかと。これは大きなテーマだと思いますよ。これは取り調べを、今のようなものを継続するのか。せめて何か足だけ見えるような取り調べ室にするとかいう提案もあるようですけれども、例えばそういうことを確かめる場合、どういう取り調べが行われているかというのは、では一切だれにも聞けないんですか、これ、刑事局長。裁判をやって、では確定判決が出たらいいんですか、これ。
樋渡政府参考人 被疑者、被告人を弁護する立場から弁護人がおつきになる。その弁護人が、取り調べ状況について被告人、被疑者からお聞きになる。それを法廷で、その供述に任意性がない、信用性がないというのであれば法廷で争えるわけでございまして、それが証拠によって明らかになっていくということであります。
河村(た)委員 では、国会ではできないということね、国会では。
樋渡政府参考人 できる、できないというのは私の口からお答えするわけにはまいりませんが、我々は国政調査権に対してはできるだけ協力しなければならないということで、誠心誠意努めておるつもりでございますが、一方で、裁判もあるものでありますから、裁判にとりまして、裁判に不当に影響を与えるようなことを私、刑事局長としてはお答えいたしかねるということでございます。
河村(た)委員 国政調査権は及ぶんですよ、ちゃんと。裁判は裁判で、私は独立も本当に尊重します。
 しかし、それは、そんなことを言ったら、捜査しておれば捜査中でだめ、起訴したら公判中でだめ、終わったらまた確定判決に及ぼしたらだめといったら、何もわからへんじゃないですか、これ。だから、一遍調べてくださいね、これ、あったかどうか、局長。
樋渡政府参考人 検察活動の具体的な事柄でございますので、検察において適切にやっておるものと思います。
河村(た)委員 では、時間ですから、この辺にしますが、とにかく、また今度も引き続きやりまして、とにかく真実を、やはりそうだよね、デパートメント・オブ・ジャスティス、ジャスティスというのは正義とか公平で、ジャストからの派生語でしょう、あれ、たしか。ジャスト。それを解明して、それに基づいて司法改革をやりましょうよ。それだけをちょっと、時間でございますので、言っておきます。
 まことに私も、とにかくしっかりやり続けますので、これは宣言しておきます。どうもありがとうございました。
山本委員長 近藤昭一君。
近藤(昭)委員 民主党の近藤昭一でございます。
 きょうは、法務委員会の皆さんの大変な御配慮をいただきまして、質問の機会をいただきまして、まずお礼を申し上げたいと思います。
 早速、質問に入らせていただきたいと思います。我が国の難民に対する対応について幾つか質問させていただきたいと思います。
 まず、難民認定の申請中、難民認定するかどうかという結果が出るまで、どういう身柄の措置を受けるのか、このことについてお聞きをしたいと思います。
増田政府参考人 難民としての結論が出るまでの取り扱いということでございますと、申請した人物が入管法第二十四条所定の退去強制事由に該当する場合には、今の法律上は退去強制手続を進めることになっております。その過程において、その者が我が国に在留を希望する場合には、個々の事案ごとに、家族状況、生活状況、素行その他諸般の事情を総合的に考慮して、在留特別許可の許否について決定することとなります。
 その結果、在留特別許可が付与されれば本邦での在留が認められることとなりますが、在留特別許可が付与されずに、退去強制令書が発付されるということになりますと、速やかにその者の国籍国等に送還されることとなります。
近藤(昭)委員 それは手続的にはそういうふうに進んでいくのでありましょうが、そうすると、西日本の入国管理センターに私もお邪魔をしたことがあるんですけれども、ああいう場所に入っている方、そういう方はどういう方が入っていらっしゃるんでしょうか。
増田政府参考人 収容センターに収容される人は、退去強制事由が認められて、退去強制令書が発付され、これから送還されるというような人が収容されております。
近藤(昭)委員 そういう状況の中で、収容されている方からお話を伺ったことがあるんですけれども、もちろんそういう退去強制の事由に当たるわけでありますが、これは難民申請中であるわけですね。そうすると、難民に認定されるかどうかはまだわからない状況の中でも収容されていると思うんですが、それは間違いないですよね。
増田政府参考人 おっしゃるとおり、現行法上は、我が国の難民認定手続と退去強制手続は別個独立の手続とされております。したがいまして、退去強制事由に該当する者については、従来から、難民認定手続が行われている場合であっても、退去強制手続をこれと並行して行っております。
 そして、一般論で申し上げれば、退去強制手続は身柄を拘束して進めるということとされておりまして、難民認定申請中の者であっても例外ではございませんので、身柄の拘束については適正な手続にのっとって行われております。
 ただし、逃亡したりあるいは仮放免の条件に違反したりするおそれが乏しい、そういう者につきましては、その被収容者の情状等を考慮しまして仮放免を弾力的に運用する、こういったことで人権に配慮した取り扱いをしております。
近藤(昭)委員 そういう弾力的な運用があるということで、仮放免についてもまたお聞きしたいと思いますが、難民の人、難民の方、もちろんきちっと正しい難民といいましょうか、それを前提ということでありますが、やはりそれがなかなかわからないというところもあって、そういう認定を、認定というか判定をするんだと思います。ただ、正しい難民といいましょうか、本当の難民の方にとってみれば、母国で迫害を受けて、大変に精神的なダメージを受けている、そういった不安の中で日本へやって来る、そして何とか難民としてきちっと認定をしてもらって、ある種の安全と安心を得たいというふうに思って来ると思うんですが、そのきちっとした判定が下るまでも我が国の法律上はそういう収容されるということ、もちろん仮放免があるということでありますが。
 そこで、ちょっとお聞きしたいんです。例えば、ちょっと具体的に挙げてお聞きしますが、モハメッド・アジムさんという方、アフガニスタンの方ですが、この方についてですけれども、例えばこの方は、昨年の十一月十八日、難民不認定に対する異議申し立てを却下されたと同時に退去令が出されて、西日本入管センターに収容された。アジム氏は、アフガニスタンにいるとき、タリバンに逮捕、拘束され、電気拷問を受けていた。それが大きなトラウマとなって残り、入管収容中の絶望感でそのトラウマが誘発され、アジム氏は悪夢、そして恐怖に繰り返し襲われた。収容房の壁に頭をぶつけるなど自傷行為が出た。そして、ストレスの余り目まいを起こし、何度も転倒したり目などにけがをしたこともあった。そして、本人からは、随分と頭がぐるぐる回って吐き気を催す、眠っているときも、だれかに襲われる、そして包丁で襲われる、その包丁がいつの間にか刀に変わって、恐怖感で目が覚めてしまう、こういう症状を御本人が支援者の人に訴えた、こういうふうに聞いておるのであります。こうした拘禁症状が極点に達した四月の十八日に、ようやくアジムさんは、今おっしゃった仮放免ということだと思うんですが、御配慮というかそういう対応をしたと思うんですが、仮放免になった。
 ところが、そのまま精神病院に本人は入院をした。二十五日間の入院をした。もちろん、本人が一〇〇%の入院費用を払った。そのときの主治医の話によりますと、心的外傷を大変に誘発した強い拘禁反応を示していると。例えば、治療を二十五日間した、少し落ちついたかもしれないけれども、このことを再発するような出頭、これは実は仮放免、仮の放免ですから、延長していこうと思うと出頭しなくちゃいけないわけですが、出頭のようなことは医学上否定すべきである、そういう出頭することだけによって大変に精神的な障害を受けるんだ、こういうことをその主治医の人がおっしゃっているんです。
 そこでちょっとお聞きしたいのは、一体、入国管理センターでは、例えばそういうこと、どういう健康管理を行って、医療管理といいましょうか、医療を行っておられるのか、そのことについてお聞きをしたいと思います。
増田政府参考人 被収容者の入国管理センターにおける医療についてでございますが、入国管理センターにおきましては、医師及び看護師等が常駐しております。そして、医師による診療が必要な場合には速やかに受診させることとしておりますが、医師の不在のとき、あるいは医師の専門外の疾病である場合などには、外部の病院において診療を受けさせるなどの対応をしております。
 先ほど委員がお尋ねになりました案件につきましては、もちろん内部の診療もたび重ねて行っておりますし、必要な都度、外部においても診療をさせております。
近藤(昭)委員 常駐しておられると。もちろん、それは常駐が原則ですし、特異というか、やむを得ぬ事情によってそういう方が常駐していらっしゃらないこともあるんでしょうけれども、私が西日本に行ったときも、ちょうど何か都合で医師の方がおやめになったのかどうか、来られなくなって、しばらく不在、そのときはそれでも仮の、臨時の方がお見えになっていたということであります。
 そういうことはあるんでしょうが、ただ、今申し上げたように不在のときもあったり、もう一つ、必要に応じて病院の方に連れていくということでありますが、今その方が大変に精神的な状況がショックだ、でも日本の今の法律ですと不法な滞在ということになって、病院に行くときにもいわゆる腰縄というか、ロープでというかひもで縛って病院に連れていかれると聞いておりますが、そうでしょうか。
増田政府参考人 実際に手錠などを施して外部に連れていくということは事実でございますが、例えばその手錠が見えないように覆いを使うなどして、できるだけ人権に配慮した扱いを心がけているところでございます。
近藤(昭)委員 手錠をしたということだけで、先ほど申し上げたように、アジムさんの場合でも、これはもちろん正しい難民というか本当の難民ということが一つキーワードにはなると思うんですけれども、手錠をされる、そしてまた腰ひもをつけていくということは大変な精神的なショックを受けると思うんですが、いかがお考えでしょうか。
増田政府参考人 収容所から外に連れていく場合でございますから、ある程度はやはり手錠を施すなどの措置はやむを得ないものと考えております。あとは、それで本人の名誉を必要以上に害することのないような、そういう配慮が必要なのだろうと考えております。
近藤(昭)委員 それはきちっと対応していただきたいと思うんですが、でも、この方の場合は非常に精神的な、例えば、さっきおっしゃったように、収容センターの中でもお医者さんが常駐されて、大変にそういう診断もされているということであって、これは精神的な症状でありますから、仮放免になって診療を受けた主治医の人は、再発を誘発するような出頭さえ医学的には否定すべきだと言っているわけでありまして、例えば医学的な配慮でそういうことを中止するとか、そういうことはあるんでしょうか。
 それともう一つ、このアジムさんのような場合、仮放免、この延長があるわけです。その主治医の人は、医学的見地からは出頭を強制するようなことはすべきではないというようにおっしゃっているわけですが、どういうふうに対応されるんでしょうか。
増田政府参考人 これは、収容している被収容者を仮に放免するという制度でございますので、その仮放免にはやはり条件はつけざるを得ない。その条件をつける中で、例えばその出頭期間をいつにするか、どれぐらい先にするか、そういったことを弾力的に運用してまいりたいと考えております。
近藤(昭)委員 ちょっと時間がありませんので、これ以上はあれですが、その弾力的運用、弾力的運用というと大変に言葉としては優しいわけでありますが、大事なことは、実際に本当にきちっとといいましょうか、そういった医学上のことを配慮してきちっとやっていただきたい、きょうはそこまでにしておきます。
 それで、少しお聞きしたいのは、難民法の改正、入国管理法ですか、この改正が予定をされているわけでありますが、現実の場で私は幾つか問題がある、問題というか、今みたいな状況が起こっているんですね。それで、アフガニスタンのこのアジムさんの場合は、拷問体験を実は難民調査官も認めているというわけであります。
 ところが、その調査官ですか、もう既にタリバンはいなくなったんだ、だからもう難民性はないんだ、こういうふうに否定をしておられる。しかし、私はちょっとそれを聞いてびっくりしたわけでありますが、アフガニスタンではタリバンは今なお存在をしている、普通の市民に紛れて息を潜めていると言われております。
 現カルザイ政権はアメリカ軍がその場を立ち去ったらもうすぐに崩壊するのではないか、裸の王様のような政権ではないか、こういうふうに言う方もいらっしゃるわけでありまして、私が申し上げたいのは、調査官の方はそういうことをきちっと把握しておられるのかなと。
 つまり、私が聞くいろいろな難民の申請をしていらっしゃる方の不安の中に、難民に認められるのか認められないのかという状況はもちろん大事ですが、その前提となる審査、それがきちっと行われているのか。御自身たちも出頭していろいろヒアリングを受けるわけでありますから、そういう中から御本人たちは本当に、日本は、もちろんいろいろな日本としての方針もあるでしょう、日本としての規定もあるでしょう。しかしながら、その規定に沿ってきちっと判断をしてほしい、こういう声が大変に出てくるのでありますね。
 そこで、ちょっと例を申し上げたいと思いますが、そういう方から聞くと、アフガニスタンではハザラ人とパシュトゥン人が敵対している、そのことも知らない調査官がいる。また、自分のそういった審査のときの通訳が、敵対する、例えばハザラの人だとパシュトゥン人の人が通訳をしている、こういう状況ではきちっとした審査ができるのか、こういう非常な不安感がある。
 実は、全国難民弁護団連絡会議というところの調査報告があります。ちょっと幾つか紹介させていただきますと、これは、裁判において弁護士が調査官に幾つか聞いているんですが、難民調査官に任命されるに際して何ら特別な研修を受けたこともない、入省三十二年目にして突然難民調査官に任命されて、二年間のみ難民調査官として勤務した。最も基本的な資料とされるUNHCR、国連難民高等弁務官事務所でありますが、そこのハンドブックさえも読んだことがない、そして難民調査を行った。また、調査に当たった調査官、タリバンを民族であると自分は勘違いした、そしてタリバン族と供述書に記載した。アフガニスタン情勢については全くわからない状態で自分は調査を進めてきた。カルザイ大統領の名前も知らなかった。複数回カイザイ、カイザイと記入した上で、読み聞かせの際にはカエサルと書いていた。
 こういう状況が報告をされているわけでありますが、先ほど申し上げましたように、本当に難民の人たちは迫害を受けて日本に来た、救い、保護を求めて来る。もちろん、さっき申し上げたように、いろいろハードルはあるでしょう。しかしながら、きちっと判定をしてほしい。ところが、そういうことがなされていない、こういう報告がたくさん出てきているのでありますが、大臣、そういうことについていかがお考えでしょうか。
森山国務大臣 難民認定申請者の出身国に関する情勢に関しましては、難民調査官だけではなくて、法務省入国管理局難民認定室におきましても外務省や外国政府等の関係機関や一般書籍、報道、インターネット等のいろいろな情報を収集しておりまして、難民認定室において収集したこれらの情報が適宜難民調査官に対して周知させられているというふうに考えておりますし、専門家を講師としてお招きしてお話を聞くということもやっております。
 いろいろな研修を重ねておりますので、その結果、的確な難民認定ができますように、十分配慮しているつもりでございます。
近藤(昭)委員 大臣がおっしゃること、しかしながら、そうではないという状況を今私は報告、そういう調査官がすべてではないのかもしれませんけれども、そういう状況ではないのではないかということを大変に危惧をしておりますので、例えば、昨年、調査官の人に対する研修時間というのはどのくらいだったのか、今お答えいただけますでしょうか。
増田政府参考人 平成十四年の場合ですと、七月十五日から七月二十六日までの十二日間実施しております。この研修の充実というのは私どもも非常に重要なことと考えておりますので、本年度の場合は六月十七日から七月四日までの間、十七日余りですけれども、二十名の者を対象として実施することとしております。
近藤(昭)委員 時間が来ましたのであれですけれども、大臣、ぜひ現状として、去年の状況、その前の状況はちょっとよくわかりませんけれども、なかなかきちっとしたトレーニングがされてこなかったというような側面もあると思います。難民法の改正はもちろんでありますが、そういった研修を、きちっとした調査をお願いして、質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
山本委員長 石原健太郎君。
石原(健)委員 入国管理局長にお尋ねいたします。
 私は、日本の国は、自由主義とか民主主義を基本とし、立脚した近代国家だと思うんですけれども、局長はどういうふうにお考えでしょうか。
増田政府参考人 私もおっしゃるとおりに考えております。
石原(健)委員 近代国家と言われるからには、自由なんということは特に尊重されなくちゃいけないと思うんですよ。
 私、子供のころ、四つの自由なんということを随分学校で強く教えられて、思想、信条の自由とか信教の自由であるとか表現の自由とか、そういうことが自由の中でも特に大事だというふうに教わったんですけれども、局長はそういうことについてはどうお考えでしょうか。
増田政府参考人 私も委員と同じでございまして、憲法上保障されている自由は十分に尊重しなければいけないという考えを持っております。
石原(健)委員 憲法というふうにおっしゃったんですけれども、憲法の二十一条では、何の制限とか条件もなしに、いきなり「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」とあるんですよね。こうは書いてありますけれども、やはり公序良俗に反するものとか著しく反社会的なものは制約は受けるんだと思うんですけれども、表現の自由なんかについては何の制約もつけられていないですよね。
 それと、十二条に「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。」国民がみんな憲法に言われている自由というものを尊重し、守るように、あなたもですね、私もですけれども、努力しなくちゃならないということなんですが、このとおり理解なさっていますでしょうか。
増田政府参考人 おっしゃられるとおり、尊重しなければいけないものと考えております。
石原(健)委員 それぞれの人が尊重しなくちゃいけないのは当然だと思うんですけれども、国とか政府機関なんかは特に法律でいろいろ、憲法にのっとった法律がいろいろできていて、それによって、あなた方の仕事はこうしろ、ああしろと定められていると思うんですけれども、特に政府機関なんかはこの憲法の考えを尊重しなくちゃいけないと思うんです。
 とりわけ法務省は、いろいろな役割をやっていると思うんですけれども、他人の、人の自由を拘束するなんというのは、ほかにも多少そういう行政機関もあると思いますけれども、法務省はそういう強い権限を持っている。法務省はとりわけ、そうした公権力を発動するというか、仕事をする際にこうした点に慎重じゃなくちゃいけないと思うんですけれども、その点についてはどうお考えでしょうか。
増田政府参考人 委員から御指摘を受けるとおりだと思います。
 それで、一言つけ加えさせていただきますと、当委員会で先日来、私が出した抗議申し入れ書について、表現の自由を侵すものではないかというような観点でいろいろ御指摘、御批判を受けているところでございまして、これについては大変重く受けとめているところでございます。
石原(健)委員 この抗議文書を読みますと、判こが押されていますね。これは公印で、この判こを押すということは、入国管理局の意思であり、また、ある種権限の発動だと思うんですよ。違いますでしょうか。
増田政府参考人 入国管理局長の意思の表明であることは、そのとおりでございます。
石原(健)委員 それで、この中身はともかくとして、私は中身もおかしいと思うところもあるんですけれども、そういう新聞社に対してこういう抗議申し入れ書を入国管理局の権限を発動するということで出されたわけですけれども、大臣、これはやはり権力の濫用なんじゃないでしょうか。
森山国務大臣 その件につきましては、新聞社の記事が読者に大変誤解を招くような印象を与えかねないというふうに心配いたしまして、そのことをはっきりさせるために出したというふうに聞いておりまして、そういうことは今までにもなかったわけではございませんで、何らかの権力を発動したとかいうことではなくて、もちろん言論の自由や出版の自由を抑制しようなどということは毛頭考えていないと思います。
石原(健)委員 世間では、こういうのを見るとそうは受け取らないんですよ。やはり「今後このような誤った記事を掲載することのないよう、厳重に抗議を申し入れる。」なんと言うと、そんな軽いものじゃないと思うんですね。
 それと、大臣は前回の委員会でも、そのときの動機というのですか、管理局長がこういう抗議申し入れ書を書いたそのときの心境は理解できるというようなことをおっしゃっていましたけれども、動機のある犯罪というのは、どんな犯罪でも、泥棒にも三分のことわりという言葉があるように、それなりの正しい、さっき配られた伊藤元検事総長の文章にもありますよ、やはりあれだって、亡くなった人のお父さんの動機は、正しいといえば正しいかもしれない。それから、よく酔っぱらいのどら息子が親にお金をせびってもらえないと暴れるなんというのがあって、それを見るに見かねたお姉さんがついつい殺しちゃったなんというのがありますけれども、ああいうのだって動機はそれなりに理解できるし、正しいと思うんですよ。しかし、やはり罪は罪として裁かれるわけですね。動機が幾ら立派であっても、結果がまずければやはりだめだと私は思うんです。
 それで、局長に聞きましたら、だれにも相談しないでこういう抗議文書を出したと言うのですけれども、そうなると、上司である人たちの監督不行き届きということも言えると思うんです。
 昔、伊藤さんがチャタレイ裁判なんというのをやったり、家永さんが教科書裁判なんて何十年かやっていましたね。何であんなことをやったのかとよく考えてみると、やはり表現の自由ということを守ろうとしてやった部分も大きいと思うんですよ。表現の自由を守るためにはそれほど片一方で努力している人たちもいるわけなので、私は、やはりちょっと今回のこの局長の抗議申し入れ書というのは、ちょっとというか、随分まずいことなので、これは取り消されたらいかがかと思うんです。取り消すと同時に、新聞社に対しては謝罪をされる必要があるのじゃないか。そのことを局長に求めて、そういうことは私事前に申し入れていなかったので、一日二日よくお考えになってから御返答いただければ結構です。
 あと、大臣には、二、三日前の新聞に参議院の事務総長が訓告を受けたなんという見出しがありまして、私は、一体何事が起こったのだろう、何、悪いことをやったのだろうと思って見ましたら、何か不祥事があって、その不祥事を起こした課長は自主退職したようです。でも、事務総長とか部長も訓告か何か処罰を受けているんですね。
 その不祥事に比べて、この案件は私は決して軽いことじゃないと思うんですよ。同じように重要なことじゃないかとも思うので、大臣にはそれなりのきちっとした処置をとっていただくように求めまして、これも突然でしたので、ちょっとお考えいただいた上で結構ですけれども、決断をしていただきたい、かように思うところであります。
増田政府参考人 今回の件につきましては、局長である私の守備範囲の中で、この事案の進捗状況などに従いまして、全く白紙のケースについて結論が決まっているようなそういう記事を書かれたのは困ると判断しまして、今後注意して正しい報道をしてほしいという気持ちで行ったものでございまして、決して表現の自由を規制する考えはなかったわけでございますが、しかし、先日来種々御指摘を受けていることは重く受けとめております。
 したがって、報道機関に対する事前抑制的なものと受け取られかねないような疑義を生じた点については、まことに遺憾であって、深く反省をしているところでございます。
森山国務大臣 先ほど申し上げましたように、新聞記事がもしかしたら間違った印象を与える可能性が大きいのではないかというふうに思って、それを少しでも早く是正するべく、正しい報道をしてほしいということをお願いするという趣旨で表明したことであったと思います。
 ただ、御指摘をいただいてもう一度よく見直してみますと、ちょっと表現ぶりがいささか全体的に強過ぎるかなという印象も受けましたので、そのような点について、もしこういうことがまたありましたときには十分気をつけるように、入国管理局長その他職員に対しまして適切な指導をしていきたいというふうに思う次第でございます。
石原(健)委員 局長、さっきお話ししたように、趣旨とか動機が正しいのは、泥棒にだって三分のことわりがあると言ったように、みんなそれぞれ言い分はあると思うんです。しかし、やはりこういう結果なんですよ。それがやはり相手には相当なショックを与えたでしょうし、あの記事を書いた記者の人なんかは相当深刻に受けとめているかもしれないわけですよ。
 それと、役所というか行政機関が公印を押してこういう抗議文書を新聞社に出す。それで、この間私が言ったように、誤った記事を掲載することのないようなんといったら、予想記事なんというのは当たるが半分、当たらないが半分なんですから、当たらなかった場合は一々謝らなくちゃならない。新聞記者なんというのは、こんなことをそれぞれに言われたら記事なんて書けなくなりますよ。
 そういうことを申し上げて、さらによく考えていただいて、私、何も局長に個人的なあれは一切ありませんよ、そういうことを申し上げて、質問を終わりたいと思います。
山本委員長 木島日出夫君。
木島委員 日本共産党の木島日出夫です。
 受刑者死亡と検察官の関与の問題について、整理してちょっとお聞きをいたします。
 矯正局長にまずお伺いいたしますが、その前提として、監獄法施行規則第百七十七条第一項には、「在監者死亡シタルトキハ所長ハ其死体ヲ検ス可シ」とあります。どういう趣旨でしょうか。
横田政府参考人 お答えいたします。
 そこの規定によるものは、いわゆる行政的な意味での検視を行うという趣旨でございます。
木島委員 これは所長みずから検視をしなければいけないんでしょうか。所長はやらなくて補助者にやらせていいんでしょうか。
横田政府参考人 所長みずからだけではなくて、所長の権限を委任された者においてもこれを行うことができるというふうに解釈しております。
木島委員 そうしますと、平成十三年十二月十五日に行政検視が午前三時十分から十二分まで実施された旨の報告書、視察表が法務当局から当委員会に出されているんですが、このときは、名古屋刑務所長はみずからは検視に立ち会っていないと伺っていいですか。
横田政府参考人 お答えいたします。
 所長みずからではございません。
木島委員 提出された視察表によりますと、起案者は処遇部長松尾充敏氏のようでありますが、行政検視はだれとだれがやったか、今つかんでおりますか。
横田政府参考人 所長の代行として松尾処遇部長が行ったというふうに承知しております。
木島委員 続いて、監獄法施行規則第百七十七条第三項「自殺其他変死ノ場合ニ於テハ其旨ヲ検察官及ビ警察署ニ通報シテ検視ヲ受ケ検視者及ヒ立会者ノ官氏名並ニ検視ノ結果ヲ死亡帳ニ記載ス可シ」とありますが、検察官に通報するとはどういう立法の趣旨なんでしょうか。
横田政府参考人 これは、いわゆる司法検視のきっかけといいますか、そのように理解しております。
木島委員 司法検視する場合の要件、「自殺其他変死ノ場合ニ於テハ」というのが監獄法施行規則百七十七条三項ですが、ここで言う変死という定義、概念はどういうものなんでしょうか。
横田政府参考人 これは、刑事訴訟法に定める変死と同様に考えます。
木島委員 中身を答弁してください。
横田政府参考人 いわゆる不自然死、犯罪死の疑いのあるものというように考えます。
木島委員 平成八年三月十二日に、法務大臣から各矯正管区長、矯正施設の長、矯正研修所長あてに出された、法務省矯総訓第五一六号、矯正緊急報告規程というのがありますね。それを見ると、受刑者死亡事案について、刑務所長から矯正管区長への事故速報、事故追報すべきものとして、緊急報告一覧表の第九「事故速報、事故追報」、その第四項のところに「変死及び自傷」とあります。「被収容者の自殺、作業上又は職業補導上の事故死、食中毒死等自然死以外の死亡及び特異な自傷」とあります。ここで言う自然死以外の死亡、この概念は、監獄法施行規則第百七十七条三項の変死という概念と同じですか。
横田政府参考人 お答えいたします。
 委員がおっしゃいましたこの四項の中の「事故死」とございますが、これが施行規則の百七十七条に定める変死に入るかというところはちょっと検討を要すると思っていますが、いずれにしても、ほぼ同様の概念だというふうに理解しております。
木島委員 そうすると、中間報告でもあるんですが、とにもかくにも、平成十三年十二月十四日、十五日の名古屋刑務所での事案、今ではホース水放水による死亡事案ということになっているんですが、この受刑者死亡事案は、少なくとも監獄法施行規則百七十七条三項に言う変死でもあり、また、先ほど私が指摘をいたしました平成八年三月十二日の法務大臣の通達、矯正緊急報告規程、第九「事故速報、事故追報」の第四項「変死及び自傷」の一つであり、当然のことながら、名古屋刑務所長から矯正管区長に緊急報告、事故速報並びに事故追報がなされるべき事案であった、そう伺って間違いないですね。
横田政府参考人 お答えいたします。
 そのように理解しております。
木島委員 ところが、もう立ち入りませんが、中間報告でも明らかなように、この事故速報、事故追報は全くなされなかったというわけですね。その問題が一つ大問題としてあります。中間報告には一定記載がありますから、きょうはそれは触れません。
 問題は、監獄法施行規則百七十七条三項の、自殺その他変死の場合に検察官に通報して司法検視を受くべし、この趣旨、これはどういうものなんでしょうか。趣旨といいますか法的意義といいますか、検察の立場というのはどういうものなんでしょうか。
樋渡政府参考人 監獄法が古いものでありまして、それに基づく監獄法施行規則も古くつくられたもので、現在の刑事訴訟法との関係がややこしいところがありまして、正確にお答えできるかどうかということがございますが、そもそも、規則の百七十七条三項の通報先は、かつては警察官署と規定されておりました。昭和四十一年の改正によって検察官が加えられた。それ以前でも、検察官はこういう場合の検視は司法検視として行っていたという事実がございます。監獄法施行規則百七十七条三項は、「自殺其他変死ノ場合ニ於テハ」ということで、明らかな自殺、これは司法検視の要件には入らないわけでありますけれども、その通報も要する。これは注釈書によりますと、変死には犯罪死の疑いのない不自然死も含まれるというふうに解されておりまして、そういう点で、司法検視が行われる場面よりも広い。しかし、検察官による検視はあくまでも刑事訴訟法二百二十九条によって行われるものでございまして、この監獄法施行規則によって検察官の検視すべき権限が付与されたというものではないというふうに考えております。
木島委員 そうすると、刑務所長から検察に対して、監獄法施行規則百七十七条三項による、変死の疑いありとして通報があって、検察官が出ていって司法検視をやるということは刑事訴訟法上の犯罪の捜査の端緒なんですか。それとも、犯罪の捜査の端緒ではない、検視に出ていって犯罪の疑いありと認知すればそこから犯罪の端緒になるんでしょうか。あるいは、これで一般的には犯罪の端緒だ、しかし、もう明らかにこれは犯罪の嫌疑なしと、概念が広いと今答弁しましたからね、犯罪の端緒で出ていったが、これは犯罪ではないというので、それは終結といいますか、犯罪捜査は終結ということで検察としては手じまいするんでしょうか。どういう状況なんでしょうか。
樋渡政府参考人 先生にこのような話をしますのはまことに、私から説明することもないということであろうと思うのでありますけれども、まず、捜査の端緒といいますのは、捜査機関が犯罪の嫌疑を抱いて捜査を開始するに至った原因となる事由をいうとされております。したがいまして、刑事訴訟法上、検視も犯罪の端緒となり得るものでありますけれども、その検視の結果、犯罪の疑いが明らかにないということになれば、その検視というのがそもそも犯罪の端緒にはならないわけであります。犯罪の端緒になったかどうかというのは、捜査が進んでいって初めて、ああ、あの事象が犯罪の端緒であったと後から考えるべきものでございますから、犯罪の嫌疑を抱いたときに犯罪の端緒が何であったかということになります。
 したがいまして、本件に即して言いましたら、事後的に考えてみますと、やはり検視は犯罪の端緒であった、しかし、その当時、まだ犯罪性の有無が、事件性の有無が明確でなかったことから、まず犯罪が成立するかどうかの検討を続けていたということでございます。
木島委員 法務省から当委員会に出された報告書によりますと、司法検視の日時が、視察表によりますと、平成十三年十二月十五日午前七時三十五分から同時五十四分と、十二月十五日午前七時からです。それから、法務省から当委員会に出された、本年三月三十一日付の行刑運営の実情に関する中間報告によりますと、なぜうその報告がなされたか云々のずっと記述の中で、平成十三年十二月十五日「早朝の名古屋地方検察庁への通報の時点から、受刑者Xの出血の発見状況について、同人が着用していた下着に出血が認められたとの客観的事実に反する事実が通報され、」云々とあります。同月十五日早朝の名古屋地方検察庁への通報の時点から下着に出血が認められたといううその事実が通報されたと中間報告に書いてあります。この早朝というのは何時ごろなんでしょうか。今私が当委員会に出された視察表で、司法検視の日時が平成十三年十二月十五日午前七時三十五分です。時間の前後は非常に大事だと思うんで、早朝という言葉を中間報告は使っていますが、いつなんでしょうか。前後関係、答弁してください。
横田政府参考人 申しわけありません。通報した時刻そのものをちょっと今把握しておりませんが、司法検視が午前七時三十五分からとなっておりますので、それの前ということしか、ちょっと今、現時点でお答えのしようがございません。
木島委員 これは、中間報告を法務省が当委員会に出しているから聞いているんですが、これは非常に大事な通報だったと思うんで、文書ですか、口頭ですか。それと、やはり時刻は非常に大事なんでね。ここまで断定しているんですから、中間報告は。うその通報が名古屋刑務所から地検に行ったと断定しているんですから。そのうその通報を受けて検察官が十二月十五日午前七時三十五分からの司法検視に立ち会ったのか、何にも知らない無垢の検察官が司法検視に立ち会ったのか、非常に大事なところだと思うんで、報告書出しているんですから、答弁してください。
横田政府参考人 文書が行っているようでございますが、ちょっと時間が、ちょっと私まだ確認できておりません。
木島委員 そうすると、刑務所長から名古屋地検に対する、平成十三年十二月十五日早朝の通報、文書で行っている。その文書の中に、もう既に、同人が着用していた下着に出血が認められたといううその事実が書き込まれた。これは重大な事実だと思うんで、文書を提出願います。
横田政府参考人 ちょっと確認をまず、文書の内容をちょっと把握していませんので、確認をした上でまた適切に対処いたします。
木島委員 法務省から当委員会に提出された、平成十三年十二月十五日付、庶務課長補佐山本剛大というんですか、名古屋刑務所長久保勝彦殿あて非行政文書なる、司法検視が実施されたことについての報告、前回、いつだったか、私、この問題で文書を取り上げました。ずっと読み返してみましたが、なかなか、司法検視に立ち会って鋭い質問なんかも検察官はやっています。しかし、この大部の報告書の中に、血痕が付着した下着に関する記述、何もないんですね。これは司法検視だから、司法検視とは別だと言われればそれまででしょうが、何もない。ないんですが、検察、どうだったんですか。そういう通報を受けて、血痕の付着した下着が存在する旨のうその通報が平成十三年十二月十五日早朝に刑務所から上がって、そして司法検視をやる、微妙な前後関係はわかりません、後で文書を提出してもらいますが。
 司法検視には、報告書には、少なくとも血痕のついた下着の存否について質問もないし答弁もない。しかし、早々とそういううその通報がなされたというのは中間報告で書かれている。もう、捜査の端緒になるのか端緒にならないのかわかりませんが、検察としては最大の関心事だと思わざるを得ないんですけれども、どういう記録が残っていますか。平成十三年十二月十五日早朝の司法検視前後の、血痕の付着したズボンの存否についての検察の捜査といいますか、調査といいますか、その状況を報告してください、答弁してください。
樋渡政府参考人 そのズボンのですか。(木島委員「そうです。そういう報告をしているから、うその報告を受けたと言っているから。しかし、報告を受けたときはうそだとは思わないんでしょうから、検察は」と呼ぶ)
 先ほど先生が読み上げられました報告書でありますね。それがすべての問答を書いてあるのかどうかもわかりません。刑務官が作成したという、当時の検視時の問答でありますね。
 ですから、それについて、検察官がその点に触れた発言をしなかったとも断定できませんが、恐らくないからしなかったという方なんでありましょう。やはり、それは検察官の感性によるものでありますから一概に何とも言えないというところでありますが、今、現時点で言えますことは、そのズボンを現在まで押収したという報告は聞いておりません。
木島委員 もう早くも質問時間は終わったというので、きょうはもう終わりますが、刑事局長、答弁を避けちゃだめですよ。
 平成十三年十二月十五日早朝、早朝が司法検視が行われた七時より前だったか後だったか、後で確認してもらいます。しかし、その前後に司法検視に乗り込んでいるんですね。もう、そういう血痕の付着したズボンの存在については、名古屋刑務所長から名古屋地検に通報されている。今はそれはうそだったということなんでしょうが、当時うそだとはとても信じられないわけですから。それで、いろいろ検察官は司法検視で、どうも不自然だというようなことで、いろいろな質問をしているわけですから、最大の関心をその血痕の付着したズボンの存否に寄せて当然。それは公判と関係ないですから、それについて答弁を求めているんですよ。
 調査、捜査したんですか、あるいは、そんな重大な事実をすっぽかしていたんですか。答弁できませんか。答弁できなかったら、そこはしっかり調査して、公判と関係ないですから、一番の出発点のときに検察がどうしたのかという、その質問ですから。
 まだ捜査に入っているのか入っていないのかもさっきの答弁じゃあいまいですから、それはいいです、どっちでもいいです。調べて報告してください。
樋渡政府参考人 その点が公判に何ら影響を及ぼさないということも私には言えないのでありまして、その点を含めまして、先ほど申し上げましたように、現段階で押収したという報告は受けていないところでございます。
木島委員 それはだめです。私も司法権の独立を脅かすつもりはさらさらない、非常に注意しながら質問しているわけでありまして、中間報告に書いてあるんですから。そして、その後、法務省から我々に出された文書を全部私読みながら、それと符合させて、そして、では出発点の平成十三年十二月十五日、検察はどうしたのかということを聞いているので、一番その勘どころの、うその報告の中心である血痕のついた下着の存否について検察はどうしたのかな、それはもう公判と関係ないですから、委員長、ぜひ法務当局においてきちっとそこは調べて、先ほどの十五日の日に名古屋刑務所から検察に上がった文書の提出とあわせ国会に報告をされることを求めて、委員長の発言を求めて、質問を終わります。
山本委員長 理事会でしかるべく協議させていただきます。
木島委員 終わります。
山本委員長 保坂展人君。
保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。
 まず、法務省官房長に伺いたいんですが、何度かこの委員会でお尋ねしてきた府中刑務所の保護房で亡くなった方、四十六歳だったんでしょうかね、九九年、その方の調査をしていたところ、身分帳の一部がなくなっていたということで、これはなぜなくなってしまったのかを徹底的に調べるということでしたけれども、けさ方の報道によれば、公文書毀棄の疑いで刑事告発の方向というようなことも出ておりますけれども、今現実にどうなっているんでしょうか。
大林政府参考人 お答え申し上げます。
 御指摘の身分帳紛失問題に関しまして、法務省として告発するとの最終の結論を出したということはございません。しかしながら、この問題につきましては調査検討中でございまして、早急に結論を出せるよう今努力をしておりますので、もうしばらくお待ち願いたい、こういうふうに存じております。
保坂(展)委員 矯正局長に伺いますけれども、医療充実計画について先般からお尋ねをしてまいりました。例えば、いただいた資料をよく見ますと、医療刑務所のベッド数が四百四ふえる予定が三十四床しかふえていなかったり、また、重点施設化で、この委員会で取り上げてきた府中、名古屋を初めとしたところの医者がふえていなかったりという現状が明らかになりました。
 そこで、実際、どの時点でどのぐらい予算が足らなくてこのようなことになったのか、そのことを少し具体的に、今後、数字も含めて、検証して出していただきたいと思うんですが、いかがですか。
横田政府参考人 お答えいたします。
 今の予算の数字を含めたということで、その経過につきまして、調査の上、また適切に対処いたします。
保坂(展)委員 きょう資料でお配りをしていますけれども、私、大変驚いた入管の関係のことなんですけれども、大臣、ぜひ生の話で聞いていただきたいんですけれども、これは、外国人研修・技能実習制度というのがございますよね。そこで、川崎造船の子会社と下請会社の二社が、フィリピンの人たちに来ていただいて、一年目は研修生、これは無給、二年目以降は実習生ということで、これは有給だということなんですが、いわば雇用契約の半額しか支払っていなかった。二億円未払いだった。
 それから、隣の記事には、皆さんに日本語の書類を見せて、書類を読むな、質問はするな、説明はしない、まさに見ざる聞かざる言わざるですよね、それでサインしろ、こういうことをやっている。
 その裏側に行きますと、無断口座、これは給料を全額支払っていたかに偽装するために、本人に無断で本人の口座をつくって、そこに一たん入った形に偽装して、それを労基署の方に申告していた、こういうこともわかってきたんですね。
 そしてさらに、厚生年金の脱退一時金というのが、この資料外にもたくさんあるのでコピーし切れませんでしたけれども、脱退一時金というのが月収の一・五倍くらいもらえるはずなんですが、これも知らせていなかっただけではなくて、お帰りになるときに、会社との関係は今後一切絶ちますというサインをさせて、支払っていなかった等々、たくさんの不正が明らかになってきたんですね。
 細かく入管局長に聞いていきますけれども、大臣、感想、どうですか、こういう実態を見て。
森山国務大臣 今記事を拝見したところでございますが、もしそのようなことがあったとすれば非常に遺憾でありまして、早く是正しなければいけないというふうに思います。
保坂(展)委員 JITCOという、研修の仲立ちをした国際研修協力機構、これはどういうことを目的として設立をされている団体なのか。これはだれに答えてもらったらいいんですか、局長でいいですか。
増田政府参考人 JITCOは、外国人研修制度、技能実習制度の適正かつ円滑な推進に寄与することを目的といたしまして設立された公益法人でございます。
保坂(展)委員 このJITCOは、法務省や外務省や厚生労働省や、さらには経済産業省や国土交通省など、五省が共管だというふうに聞いています。やはり設立目的のところに、こういう研修生を適正に受け入れて、そして受け入れ事業者との間が円滑に、しっかりこの研修がなされるかどうかも含めてカバーをしていく、こういう設立目的になっているんですよ。
 法務省からは、事務次官、東京高検検事長もやられた濱さんが理事長ですね。各省からも専務理事、常務理事などに入っていらっしゃる。そしてまた、トヨタ自動車とか業界の名立たる一流企業の皆さんも入っている。いわば法務省が一番旗を立てて、そしてオール・ジャパンで、ちゃんとした外国人の研修・実習事業をやります、こういう団体ですよ。そこが介在してこんなひどいことになっちゃったと、四十五人のフィリピン人が。
 そして、実はこの四十五人の行方が今問題になっているんですよ。入管の方で帰国指導が始まっている、早く帰りなさい、帰ってしまえと。フィリピンでも、テレビやあるいは新聞等で騒がれ始めているそうですよ、一体どうなってしまうんだろうと。
 同時に、労働基準署やあるいはJITCOの方でも何とか、本人たちに罪はないので、これだけ、半額しかもらえずに、それだけじゃないんですよ、賃金の七五%は本国に強制的に送金されちゃう、そして五千円は強制貯金なんですね。ほとんど手元に残らない。時給五百円で違法残業をして何とか食いつないできた、こういう状態が発覚したわけです。
 厚労省の方から審議官は来ていただいていますか。こういう外国人の研修生、実習生のこの実態を踏まえて、何とか彼らが本来の研修、実習ができるように入管当局ともかけ合ってこられたとも聞いているんですけれども、その辺、現状を簡単に説明していただけますか。
青木政府参考人 労働基準監督機関としましては、労働基準法違反、法令に違反しているかどうか等々を見て適切な指導を行っていく、是正指導を行っていくということを仕事にしているわけですが、このような事案について、個別の事案についての答弁は差し控えさせていただきたいと思っておりますけれども、技能実習生の労働条件確保につきましては、従来から重点的に取り組んでいるところであります。技能実習生について労働基準法等に違反する、そういう旨の情報がある場合には迅速に監督指導を実施いたしまして、法違反が認められれば、必要な是正指導を行いまして、権利救済を図っているところであります。
 本件についても、基準関係法令の違反が認められれば、その是正を指導して改善を図らせるなど、適切に対応するというふうに考えております。
保坂(展)委員 ここに、略してJITCO、国際研修協力機構の目的と役割というのを持ってきました。三点挙げていますよね。研修生、技能実習生の受け入れを行おうとする、行っている民間団体、企業等や諸外国の送り出し機関、派遣企業に対して総合的な支援、援助や適正実施の助言指導を行う、これが一点目。二点目は、研修生、技能実習生に対して、その悩みや相談にこたえるとともに、入管法令、労働法令等の法的権利を保障すること。三点目に、制度本来の目的である研修・技能実習の成果が上がり、国際的な人材育成が図られるように受け入れ機関、研修生、技能実習生、送り出し機関等を支援する。つまり、この研修・技能実習制度にトータルにかかわっていくと、まさに悩めるときには相談に乗ることも含めて、うたっているわけです。
 そして、先ほど濱さんの名前を出しましたけれども、法務省東京入管の入国管理局長だった水上さん、この方も常務理事なんですね。そういうことのためにこういうところへ入っているわけです。
 さて、入管局長、私、これはやはり新聞を見てまた驚いたのは、この四十五人、もう早く帰りなさい、あなたたち帰りなさいということを始めているんですね。二週間以内に帰れというようなことも言われているというふうに記事には出ています。
 しかし、この四十五人が、ほとんどタコ部屋状態、研修とか実習という夢を持って来たかもしれない。しかし、これはちょっと聞いてください、入管局長、簡単なことですから。生の言葉で答えてくださいよ。一方では法務省の元東京入管の長までがJITCOに入っているわけです。そしてあっせんしたわけでしょうよ。不正が明らかになった。いろいろ、これはもう法令違反どころの話じゃないですね。
 彼らは被害者でしょう。その被害者をつかまえて、すぐに二週間以内に帰れと。これはまことによろしくないんじゃないですか。やはりこの人たちがきちっと本来の目的の研修、実習ができるように、しかもこんなひどい条件じゃなくて、ごく当たり前の、JITCOがしっかり監視をしてさせるという責務があるんじゃないですか。両方の立場から踏まえて答弁してくださいよ。
増田政府参考人 まず、この事案でございますが、JITCOがあっせんしたという事案ではないようでございます。
 それはさておき、現在、この関係で研修・技能実習生として我が国に入っている人では、確かに四十五人、我が国に在留しております。この受け入れ機関の状況からして、その機関でこのまま研修や技能実習を続けさせるなんていう見込みは全くございません。そういったことで、やむなくこの人たちをこのまま日本に造船の研修生、造船の技能実習生として残してもらうという正当性、合理性は認めがたいということで、出国を指導したことでございます。
 ただし、その四十五人の人について、一番近く在留期限の切れる人はことしの八月二十一日です。つまり、どんなに早くても八月二十一日までは、この四十五人の方は日本におられます。そこで、今後、我が国で習得した技術等、活用できるような体制が別途構築される、例えば研修や技能実習の趣旨に沿った実施体制が、八月下旬までまだ二カ月半ぐらいございますが、その間に確保されるような場合には、引き続き我が国で研修・技能実習実施機関を変更するなどして対応すること、それは検討することは可能になると考えております。
 それから、JITCOでございますが、この受け入れ機関の関係ではあっせんした事実はございません。しかし、委員のおっしゃるとおりで、JITCOには研修や技能実習制度を適切、円滑に推進する、そういう責務があるわけでございますので、この事案につきましても、その受け入れ企業等からJITCOに対して何らかのアドバイスを求めるようなことがあれば、それはアドバイスをすることは可能ではないかと考えております。
保坂(展)委員 では、法務大臣に聞きますけれども、実は、JITCOの方が直接あっせんした案件じゃないと入管局長は言いましたけれども、これは新聞の取材に対してJITCOの方がコメントしているんですよ。研修、実習の機会を奪われないようにというタイトルなんですけれども、言われているのは、今回の事態は非常に残念だ、この事実関係を調べたいとした上で、研修、実習生が研修、実習の機会を奪われないように、強制送還されないように、機構に加盟している企業などに当たって新しい受け入れ先を探すようにしたいということも言っているんですね。
 ですから、法務大臣、外国人犯罪だとか不法入国に対する厳しい対処、これは当然です。しかし、これは、日本の国がこういう制度をつくって、はいどうぞといって、こうやってフィリピンから来る。そして来てみたら、払われましたけれども、これは発覚したから払われたわけですよね、発覚しない場合には、これは半額以下の賃金で、もらえるものももらえずに、ほとんど食うや食わずで働かされたというようなことで、これ自体、こんな事態が起こっていたことも問題ですけれども、少なくてもJITCOが責任を持って、こういったことが起こらないように、そして、この四十五人に対しては本来の研修、実習ができるようにやはり万全を期すべきじゃないか。被害者じゃないですか、どう見ても。彼らの過失というものはどこにも認められないんですね。ということをぜひ努力していただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
森山国務大臣 これは、入管局長が申しましたように、JITCOそのものがあっせんしたケースではないそうでございますが、JITCOには、途上国から日本に来て研修をして、それをまた故国へ持ち帰ってその技能を生かすというためのあっせんをするという仕事がございますので、それのために必要なアドバイスを実習生や企業に対してするということは別途あるんだと思います。ですから、おっしゃるように、この人たちがもし適当な場所を見つけられて実習を受けることができるならば大変結構だと思いますが、そのような方向で努力してもらいたいと思います。
保坂(展)委員 ぜひそういうふうにしてください。日本を恨んで四十五人が帰ると、フィリピンのメディアが何てひどいことだなんというようなことにならないように、ぜひお願いします。
 最後に、きのう養育費の問題を、参考人質疑で、法務委員会で今かかっています民法改正に絡んでやりました。法務大臣とのやりとりで、どうもその水準が低いんじゃないかということを申し上げました。
 実は、そのやりとりをして部屋に帰りましたら、地裁、家裁の判事でつくる研究会の方がなかなかいい研究をまとめたと。「「親の責任」一目で 養育費に公的基準」を提案し、また厚生労働省の方も、ガイドラインを踏まえてこれは有効だというふうに言っていると。
 ぜひ大臣にお願いしたいんですけれども、我々、国会質疑を充実するためにも、関係省庁、裁判所も含めて、こういういい動きをしているのであれば、法務省が中心になってこの委員会にも適切に資料として提供していただくように、これはぜひ努力してほしいと思うんですね。この委員会でやりとりして、こういうものはないのかという議論をして、帰ってきて新聞を見て、あれ、これ何だろう、こういうことが多いので、これは個別の事情はわかりませんけれども、ぜひそうしていただきたいと思いますが、いかがですか。
森山国務大臣 私も、先生とやりとりをいたしました直後にこの新聞を見ましてびっくりした一人でございますが、これは研究会の報告のようでございますので、どの程度まで熟成されたものか、そこがよくわかりませんが、御指摘のある資料は何でも積極的にお出ししたいというふうに考えております。
保坂(展)委員 せっかく官房長に来ていただいていますので。別に隠しているとかそういうことじゃないと思いますよ。ただ、今回みたいに、民法の幾つもの領域、専門的な議論が本当は必要な法律が束ねられてきますので、我々はなかなかそういった資料を探すのも大変です。やはり役所や、裁判所も含めて、こういったいい議論が進んでいるのであれば、法務省としてもアンテナを張って、国会の議論をいいものにするためにぜひ努力してください。いかがですか。
大林政府参考人 私もそのように考えております。関係部局に対して御指摘の点を伝えて適正にやっていきたい、こういうふうに考えております。
保坂(展)委員 終わります。どうもありがとうございました。
山本委員長 次回は、来る十三日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時六分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.