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第2号 平成15年10月3日(金曜日)

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平成十五年十月三日(金曜日)

    午前九時二十一分開議

 出席委員

   委員長 増田 敏男君

   理事 塩崎 恭久君 理事 園田 博之君

   理事 水野 賢一君 理事 吉川 貴盛君

   理事 河村たかし君 理事 山花 郁夫君

   理事 漆原 良夫君 理事 木島日出夫君

      赤城 徳彦君    荒巻 隆三君

      太田 誠一君    金子 恭之君

      小西  理君    後藤田正純君

      左藤  章君    笹川  堯君

      下村 博文君    高木  毅君

      中野  清君    永岡 洋治君

      平沼 赳夫君    福井  照君

      保利 耕輔君    保岡 興治君

      吉野 正芳君    石原健太郎君

      田名部匡代君    中村 哲治君

      水島 広子君    山内  功君

      山田 正彦君    上田  勇君

      瀬古由起子君    保坂 展人君

      田中  甲君    山村  健君

    …………………………………

   法務大臣         野沢 太三君

   法務副大臣        星野 行男君

   法務大臣政務官      中野  清君

   最高裁判所事務総局人事局長            山崎 敏充君

   政府参考人

   (警察庁長官官房長)   吉村 博人君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    栗本 英雄君

   政府参考人

   (法務省大臣官房長)   大林  宏君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          寺田 逸郎君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    樋渡 利秋君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    横田 尤孝君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  増田 暢也君

   法務委員会専門員     横田 猛雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月三日

 辞任         補欠選任

  太田 誠一君     荒巻 隆三君

  左藤  章君     福井  照君

  吉野 正芳君     高木  毅君

  不破 哲三君     瀬古由起子君

同日

 辞任         補欠選任

  荒巻 隆三君     太田 誠一君

  高木  毅君     吉野 正芳君

  福井  照君     左藤  章君

  瀬古由起子君     不破 哲三君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四号)

 検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第五号)




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     ――――◇―――――

増田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房長吉村博人君、刑事局長栗本英雄君、法務省大臣官房長大林宏君、大臣官房司法法制部長寺田逸郎君、刑事局長樋渡利秋君、矯正局長横田尤孝君、入国管理局長増田暢也君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

増田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

増田委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局山崎人事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

増田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

増田委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河村たかし君。

河村(た)委員 河村たかしでございます。

 まず一つ、最初に、この間いわゆる組関係の方がお見えになって、街宣車で来たケースもありますが、私も、ここで皆さん、受刑者の皆さんで暴力団関係者もおみえになって、これはインターネットで見るかわかりませんので、誤解されるとどうもならぬからここで私も言っておきますけれども、私も受刑者処遇改善については全力で努力しております。委員会もそうでして、そういう旨の決議をこの間全会一致でした。

 ところが、いわゆる名古屋刑務所三事案ですね、放水と革手錠、このことについては、私も、三回ですが、各種報道等によりまして、それと今までの一つの国会の流れによりまして、本当に刑務官、とんでもないことをしたな、刑務官の暴行があった、それを隠しておった法務省、法務大臣は何をやっておるんだということで質問をしました。

 しかし、よう考えてみたら、刑務官の意見、全然聞いとりゃせぬじゃないかということと、本当に事実を、ただ新聞に出たことをそのまま言っておっただけで、これはいかぬと思って、私、名古屋でございますので、刑務官の友達の友達もおりますからということで、本人に心を尽くして、名古屋拘置所にも何回も足を運んで、接見して、事実を確認したらとんでもないことがわかったということでございまして、事実が全く違うということでございます。

 うちに見えられた組長が言っていましたが、裁判に不当な圧力をかけるのではないかと言いますが、委員会は別でして、裁判は裁判で、有罪無罪については独立に裁判所がやる。もとよりそれに干渉しようという気持ちは全くありません。

 しかし、例えば、起訴休職だとか、それから中間報告にありました彼ら八名の刑務官の資質に問題がある、それから、彼らが暴走したということについては別個の、これは法務省の処分ないし判断ですので、これは委員会が当然審議せないかぬということでございます。

 私も組長さんに言いましたけれども、人間、正義の心があるだろう、目の前でそんなとんでもない、八名の勇気のある刑務官が苦しめられているということがわかれば、それはやはり一肌脱ぐのは当たり前じゃないかということを言いましたので、ぜひ受刑者の皆さん誤解されませんように。

 繰り返しますが、受刑者の処遇改善については全力を私は尽くす。しかし、今回の名古屋刑務所三事案については事実が全く異なっているということで、法務省にもお願いしたいんだけれども、なるべく一刻も早く、これは皆さんまだ誤解していますから。事実が伝わっていない、新聞に出たそのままということでございます。

 それから、民主党のことも言っておきますと、放水実験をやりました。あれは党が命じてやったんですけれども、六キロの水圧というのを使って、ブロックがぶっ飛んでいきました、あの実験。だけれども、検察庁の起訴事実においても〇・六キロということです。実は、その実験よりも、ホースを三本使って、古いのを使っておりますし、栓のところが水漏れしておりましたから、実際はまだ水圧が低かった可能性があるんですが、いずれにしろ十倍の水圧実験をしてしまった。

 ブロックが全部ぶっ飛んでいって、日本じゅうに大変な誤解を与えた。刑務官というのは何てひどいことをするんだろうという大変な誤解を与えたということで、これは私はびっくりしまして、十倍以上ですから、すぐ法務省の記者クラブへ行って訂正はしております。だけれども、僕は党として謝罪すべきだ。これは党に求めております。ということを、法務省に言うばかりではいけませんから、やはり自分自身も三回質問して申しわけなかったと、ここで謝罪もしました。それから、党もやはりきちっと謝罪すべきであろう。

 法務省も、事実をはっきりして、これはすぐわかることですから、革手錠が何センチ締まったなんというのは、ビデオを見て、後で言いますけれども、背中のところに残っておる長さが出ますから、きちっとビデオに見えるんです。これが何センチあるかで、何センチの穴に入ったかすぐわかるんです。五分も十分もかからない。それで、わかったら直ちに謝罪すべきであるというふうに考えております。

 人間間違いがありますから、私もそうですけれども、当然、これは神様でも何でもありません、間違えたときにはやはりいち早く謝罪するから、法務省、デパートメント・オブ・ジャスティスですか、正義をつかさどる省庁と言えるんじゃないですかということでございます。

 一応まとめをまず申し上げまして、まず、後でちょっと革手錠の施用実験についてはやりますが、その前に、これは、うちにお見えになった組長さんが言ってみえたところで、名古屋の刑務所で、やはり秩序、規律維持ですか、いろいろ波があって、昭和六十年ごろでしょうか、厳しい時代があったと。厳しいといっても、暴行とかそういう話じゃないんですけれどもね。それからどういう改善を法務省としてはしてきたかということについて、ちょっとざっくりとお話を伺いたいと思います。

横田政府参考人 お答えいたします。

 昭和六十年ころに名古屋刑務所において厳しかったということで、どうであったかというお尋ねなんですが、今から二十年近く前のことでございますし、その当時、名古屋刑務所におきまして受刑者に対する日常の処遇などがどういうものであったかについて、十分には承知しておりません。

 恐らく、委員のおっしゃることは、処遇の中でのいわゆる動作規制と言われているようなことをおっしゃっているのかもしれませんけれども、これにつきましては、いわゆる動作規制について何か厳しいという御意見、聞かないわけでもございませんけれども、しかし、これは、限られた人的、物的条件のもとで大勢の被収容者を的確に管理し、逃走とか自殺とか被収容者間のけんかとか、そのような事故を未然に防止して、施設内の規律及び秩序を適正に維持するという目的がございますし、受刑者におきましても、規律ある生活態度の涵養が促進されるという点にも目的があるわけで、必要な限りにおいてはそのような動作規制があるということでございます。

 しかし、その具体的な対応とか手順につきましては必要な限度を超えてならないこと、これは当然でございますので、矯正局におきましては、この動作要領に関する実施状況につきましては、十月時の重点事項の一つとして取り上げていますし、また、現場の処遇責任者の協議会等におきましても繰り返し協議課題に取り上げるなどいたしまして、現場施設に対しては行き過ぎのないようにこれまで注意してきているところでございます。

 以上です。

河村(た)委員 今後とも、刑務官の話が事実と違うということばかり言っておりますと結構誤解されますものですから、やはり受刑者のためにも全力を尽くしてほしい、こう思います。もう一回ちょっとそこを答えてください。

横田政府参考人 御指摘の趣旨を踏まえて努力してまいります。

河村(た)委員 それでは、今回の中心の課題ですけれども、うちから一人来ておりますので。

 では、ちょっと手錠を、委員長の方から命じていただいて、今理事会でオーケーになりましたので。

増田委員長 手錠を許可いたします。

河村(た)委員 彼はうちのスタッフですけれども、ウエストが七十七ぐらい彼はあると思います、今ちょっとはかりますけれども。彼にちょっと刑務官、彼に適正な施用をする場合はどういう施用をしたらいいかということを本物の手錠で実験をしてみたいということです。

 まずこれではかる。まずちょっとウエストをはかりますので。ちょっと委員部の方、ちょっとあなた、証人がおらぬと、おれがやっとると。ちょっとはかってくれますか。普通におらぬか、まず普通の状況で。――七十六ですか。七十六ですね。ウエスト七十六ですか、彼。では、彼にちょっとそれ、雰囲気を出すために。

 委員の皆さん、要は、どういう事実がわかったかというと、実は、中間報告等によって、名古屋刑務所の放水と、あと革手錠と二つあるんです。革手錠の方は五月が死亡、それから九月は受傷ということですけれども。いずれも、ほとんど同じですけれども、ウエスト大体八十センチの受刑者さんに手錠を締めて六十センチまで締めたというのが事実として報告されたわけです、当委員会に法務省から。

 ところが、先日、これはビデオがございまして、ビデオも理事会に報告というか、理事会で上映いたしました。委員長初め全員が見ております。そのビデオが、検察側なり法務省が言うには、それで有罪というか、六十センチまで締まったということがわかるというはずであったんですが、実は、そのビデオの中に、受刑者というのは伏せますから、伏せたところで手錠がかかって、後で見ればわかりますけれども、引き代が残るわけです、余りが、手錠の。余りの部分の長さで、何センチ、逆算しますと、簡単にどこの穴に入っておったかわかるわけです。余りのものの長さと、それから余りのところにきちんと穴が見えております、ベルトの穴が。そこからいきますと、はかりますと、何センチの穴に入っておったかわかるということで、何とこれが七十センチの穴に入っていたんです、六十じゃなくて。

 これは十センチに一つずつある。この手錠は穴が五センチで間隔が五センチですけれども、本物の名古屋刑務所で使われたのは、穴が四センチで間隔が五センチです。だから、九センチに一個ずつしかないわけね。そういうことです。中間に、僕たちの持っているベルトみたいに、二センチとか三センチじゃなくて、おおむね十センチに一個ですから。要するに、後ろから見て、穴の位置からぼっていくとわかるわけです。

 縛り目が緩んでいたでないかという話があるかわかりませんが、これはビデオではっきり映っていまして、これは、中で、池田さんという看守さんが、結び目をなるべく小さくつくった方が背中に負担がかからない、当然背中に。ということで結び目を、これは誤解してはいかぬけれども、手錠に穴がはまって、バックルがもう固定された後です。結び目だけをつくる、引っ張るのにですね。ぜひ大臣、後で見たってくださいよ、ビデオ。ここも誤解を生じたんです。池田さんが非常に強くぐっと引っ張っております。これは結び目を小さくしておるんであって、本人の負担にならないんです、かえって負担を軽減する。そういうことで結び目が緩んだということはなしということです。

 自民党の皆さん、これは余り党利党略は関係ないですから、ぜひこれは本当に客観的に事実、真相解明に御協力いただきたいんだけれども、そういうことで、要は、七十センチの穴に入っていたということがはっきりした。

 では、ところで、彼はほとんど同じ、ちょっと一センチばかり小さいですが、一、二センチ、彼は九月のときの収容者さんとウエストが二センチばかり小さいけれども、その状況で、では、刑務官は、その人が暴れとったりなんかしたときにどういう施用をすることが適法なんだろうか、ここを今から実験をするということです。

 やってからでもいいんですけれども、結論を言いますと、七十七とか八とかの人を施用する場合は、これは上に入れますと八十なんです。今やりますけれども、上に入れますとずるずるで、僕がやったときは抜きました、下に。脱げちゃうんです、すぽんと。だから、七十八とか八十とか、八十でも、四センチか五センチ穴がありますから、実は戻るんですね、八十二、三まで。だから、上の方に入れるのは違法な施用であるということで、これは矯正局長もそのときもお認めになった。では、適法な施用といったら七十センチの穴になります、七十センチ。

 だから、何とこれは、どうなっちゃうんだろうと本当僕は思いますけれども。彼らは適法な、それもただ一つの適法な施用をしていたということなんです、刑務官は。犯罪とかそんなものじゃ全然ないんです。それもただ一つですよ。ただ一つの、ほかに選択肢もないですね。適法な行為をした人を起訴して逮捕して、国会でぼろかすに言って、マスコミも、とんでもない人間だといってぼろかすに言ってしまった、こういうことでございますので、私は、もう一刻も早くこれは控訴を取り消して、それからもう謝罪、みんなで謝罪して早く仕事に復帰させてあげたい、官服を着せてあげたい、一刻も早く。そういうふうに思っております。

 これ、大臣、ちょっと感想として、小泉さんが世界一安全な国、日本と言っていますでしょう。そういうような観点から、まだ初めてですけれども、後でちょっと御答弁いただくことになると思いますけれども、こういうような話聞いてどうですか。とりあえず冒頭、御感想をちょっと。

野沢国務大臣 私の就任に際しまして、総理から、日本が世界一安全な、安心な国になるように努めなさい、こういう御指示をいただいたことは、報道のとおりでございます。これは、もちろん国民の皆様全般に及ぶことでございますので、これから私も、委員の皆様方の御意見、拳々服膺しまして、努力してまいるつもりでございます。よろしくお願いします。

河村(た)委員 総理は、ちょっと総理の発言を大臣に言っておこうかな。総理の発言をちょっとフルスピードで読みますと、平成十五年五月十四日、法務委員会で、ここに小泉総理がお見えになって私が質問したときにこう答えております。

 ○小泉内閣総理大臣 実は、今初めて聞きまして、実際驚いているんです。

  今までの報道ぶりから判断しますと、いかに刑務官が受刑者を残酷に扱ったかということについて、多くの人は疑いを持たなかったと思うんですね。それは、今初めて、河村議員の話で実はそうじゃなかったんだと。こういうことはまさにあってはならないことでありまして、いっときの感情論にとらわれないで、冷静に、事実を正確に把握するということが裁判にとって最も重要なことでありますので、今言った御指摘を十分踏まえまして、法務省としても、この事件の対処に誤りなかったか、手落ちはなかったか、しっかり再調査する必要があると思っております。

再調査とはっきり答えられております。

  その上で、もし過ちがあれば、今後それを正していくというような対応を考えていかなきゃならないと思っておりまして、今の御意見というものを、現場主義といいますか、みんな自分の目で確かめるという、その河村議員の対応にも敬意を表したいと思います。

ということですね。総理答えられておりますので、しっかり再調査していただけるように、これはこの答弁を受けてで結構でございますが、それだけ、具体的なやつはまた別ですけれども、言ってください。

野沢国務大臣 総理の御答弁につきましては報告を受けておりますが、今回のいわゆる名古屋刑務所事件につきましては、現在、証拠調べの手続が行われていると伺っておりますので、まずもって公判の推移を見守って対応していきたい、かように考えております。

河村(た)委員 そういうことを言いますと、本当に私もだんだん怒らなあかんようになってくるんだけれども、また後で言いますが、言っておきますけれども、裁判と行政処分は別個なんですよ、これは全く。これは判例でも出ていますよ。あなたが起訴休職にした休職処分、これについては別個にやる、判例にそう書いてあるんですよ。それは、行政処分は、だから別個に調査されますね、これは。

野沢国務大臣 休職処分の件につきましては、就業規則その他に照らしまして行ったものと理解しておりますので、これについては、現行の状況をひとつ継続せざるを得ないだろうと思っております。

河村(た)委員 しかし、これは、裁判所がこんな法律違反をやってええのかね。憲法違反ですよ、これは。三権分立違反ですよ、これは明らかに。逆ですよ、言っておきますけれども。行政権は行政権であるんですよ、これは。裁判所に全部隷属しておるわけじゃないですよ、これは。司法権の独立は最も重要なものですよ。しかし、行政権、立法府それぞれあって、三権分立、こういうんですから、これは。行政処分についてやらぬでもええことになったら、これは大変な問題ですよ。職務怠慢、職務放棄ですよ、これは。まあいいわ、大臣、ちょっとどうですか。

野沢国務大臣 総理のこの答弁につきましては、河村先生からの質問の中で指摘されました事項が仮に真実であるとすればという前提で所感を述べられた、こういうふうに理解しておりますが、この趣旨を踏まえました今後の対応につきましては、まずもって、公判の中で明らかになりました事実に基づき、今後対応していくべき事柄と理解しております。

河村(た)委員 とにかく話にならぬな、これは。やはりそういうのはいかぬですよ、大臣、役人の言うとおりは。議院内閣制というのは何のためにあるかというたら、これは議員がトップになるというのが、やはり役人の言うとおりではいかぬということの、そういう制度じゃないですか、これは。まあいいわ、そんなこと言っておってもしようがないから。

 それでは、実験やりましょう。では、あなた、ちょっと手錠、では刑務官、ちょっと来たってください。この方に手錠を施用すると。

増田委員長 矯正局、横田矯正局長。

横田政府参考人 委員会としてでしょうね。

増田委員長 はい。

 では、元刑務官の二名の方に手伝ってもらいます。

河村(た)委員 全部、一応、手かせもつけてやってください。一応、これは本当は伏せて、受刑者がおる。暴れておる状況だからかけるんであって、こんなふうではありません。それから、かけるときには腹に力を入れておりまして、大変なんです、協力してかけられる人はおりませんから。彼はただ、今、では、協力してやりますか、初めは。では、適法な施用をやってください。適法な施用を、それでは。

 伏せますか。――大丈夫。それは適法ですか。いいですか。これで適法ですか。何センチですか、これは、穴。何センチの穴ですか、そこ。何センチですか。

横田政府参考人 では、私がお答えします。

 七十センチのところですね。

河村(た)委員 七十センチの穴、適法施用ですね、これは。ちょっと答えてください。

横田政府参考人 この人の場合では、そうなります。

河村(た)委員 適法だと言ってください。

横田政府参考人 ですから、この人の場合は適法です。

河村(た)委員 適法ですね。

 これは、ちょっと皆さんに見ていただきますと、ここのところですね、これはあとここに――これは上下逆だけれどもな。ちょっと刑務官、これは上下、尾錠を入れるところは逆だわ。これが上、逆、逆です。ちょっとつけ直してください。

 尾錠がありまして、こういうのがあるんです、こういうのがあって、バックルのつめが入るときにこれで固定して、ぱっと抜けないようにするやつで、これは上に持ってくるんです。下だと抜けちゃうといけないから、上に持ってきます。

 八十センチの施用をやってもらおうか、一遍な。八十センチ、やってください、それでは。上の場合、八十。これはどうですか、これは、では。――緩いですね。では、ちょっと、それも矯正局長答えてください、八十の施用は。

横田政府参考人 お答えします。

 今ここに実施した元刑務官の話によりますと、ちょっと緩いということでした。

河村(た)委員 これではいけない、違法というか、適当でない施用だということですね。

横田政府参考人 ですから、革手錠の目的からすれば緩いということです。

河村(た)委員 適当でないということですね。適正でないと。

横田政府参考人 いや、適正でないということかどうかはちょっとお答えしかねますが。

河村(た)委員 いや、緩いということは適正でないんでしょう。

横田政府参考人 革手錠の効用を十分に発揮できないおそれがあるということです。そのようにお答えさせていただきます。

河村(た)委員 では、ちょっとここで結論だけちゃんと言っておこうか。

 それでは、もう一回ちょっと、局長、結論的に言いますと、ウエスト七十幾つだった――七十六ですか。ウエスト七十六の彼に対して、八十の施用は緩くて、いわゆる本来の革手錠の機能を果たさない、七十についてが適正だと言ってください。

横田政府参考人 お答えします。

 革手錠の効用を果たせないというふうに申し上げておりません。果たせないおそれがあると申し上げたわけで、この革手錠を施用された者のそのときの状況、態度等によりましては、この場合であっても効用を、目的を達し得ることもあるということでございます。

河村(た)委員 七十の方はどうでしたか。

横田政府参考人 七十については先ほど申し上げたとおりで、七十であっても適法だと、この人の場合についてはそうだということです。

河村(た)委員 はい。では、ちょっと立ち上がって。

 では、ここで刑務官に来てもらって、この八十から七十にもう一回ちょっと締めてください。ちょっと力を入れてみるか。まあいいか、まあいいや、力を入れぬでも。

 これは本当は大変なんですよ、力を入れると、適法施用をやるのに。六、七センチ締めるだけでも物すごい大変で、すごい力が要るんですよ、ぐっと力を入れていますと。――ちょっとあなた、伏せや、とりあえず。伏せぬと、きちっとつくれぬから。刑務官、ちょっと伏せて。ぐうっと。手を押さえておかぬと、頭がどかぬ。――ちょっと立ち上がって。

 ここの後ろが、皆さん、この後ろがどれだけ出るかということがわかるわけです。ビデオでこれがはっきり映っていまして、上から。これはちょっとベルトはかたいですけれども、私は本物は裁判所で見てきましたのでさわっておりますけれども、もっと使い込んで、これはいわゆる使い込んだものじゃありませんのでかたいですけれども、もっと本物はてかてかでございまして、しゅっとつくれます、この長さで。

 それから、ここに穴が見えるけれども、こういう状況で、大体こういうふうに見えます、本来は、あのビデオで。これが七十センチの施用になるわけですけれども、当然、一個、二個、三個、四個、五個目の穴ということね、ここ。ということになって、七十センチの施用であったということがわかるわけです。

 さてそこで、まあいいか、これで外せば。わかっていただいたですか、その意味が。ビデオで、このしっぽがこう出る、このしっぽの分析をすればいいということです。これは物すごく簡単にできますから。園田筆頭さんもそうですけれども、理事は全員ビデオを見ましたので。あそこで、施錠して刑務官が出ていく前にぱしっと伏せていますから、これはきれいに見えるところがあります。だから、これを検証すれば、要するにすぐわかるんです。十分でわかる。何センチの穴に入っていたかということが。検察なり中間報告にあった六十というのが、とんでもない、全然違うということです。

 六十だと彼は締まりませんけれども、死んでしまいますけれども、六十へ入れると。六十ですと、これはここまで出ますから、穴がもう一つ出てくる。あと九センチぐらい上に出ます。だから、これは穴が三つ見えます。三つ。ということが本当に簡単にわかるということですので。

 では、ちょっと刑務官、外してもらえますか。はい、どうも刑務官の皆さん、ありがとうございました。

 ということがわかったということでございますが、矯正局の皆さんにきのうちょっと要求しておきましたけれども、ビデオの画像を見て、どういう状況で手錠が施用されておったか調べてくれと言いまして、イラストでも書いてつくってほしいと言いましたけれども、持ってきていただいておるんでしょうね。

横田政府参考人 お答えいたします。

 きのう、河村委員からお話のありましたのは、ビデオテープの八時三十五分二十二秒の十四こま目を中心とした場面について、革の今、先端までの余った部分と、それから穴の位置を計測して、図面に書いて出すようにというお話だったと承っています。

 そこで、法務省にございますビデオデッキを使いまして、これは一秒間に三十こま送られる、そういうビデオテープを使いました。十四こま目というのが、河村委員のおっしゃっているのが一秒間に何十秒こまのビデオで再生されたものかわかりませんけれども、法務省にあるのは一秒三十こまでしたので、一応それに基づいて再生しました。

 大体、午前八時三十五分二十二秒前後の映像を確認いたしましたけれども、これはビデオ再生装置の性能の問題なんでしょうけれども、結局、その映像が鮮明に出ませんでした。(河村(た)委員「いや、そんなばかな」と呼ぶ)いや、本当です。それで、革手錠の結び目の穴の位置を画面上で特定できませんでしたので、御要望におこたえすることはできませんでした。

 以上です。

河村(た)委員 そんなばかな、これ。

 そうしたら、もう一回、国会はこういう状況ですけれども、皆さんで、これ、委員長、前回見たんですよ、理事会で全部。ですから、これは国民のためにも、こういう事実は、要するに、革手錠というものはどういうふうに施用されるものだということですから、これは矯正行政そのものの問題ですからね。何センチ締まるかとかいう。ですから、あんなことを言っておられますけれども、これ、もう一回ちゃんと出すように求めてもらって、それと理事会か、皆さん、有志参加で、理事プラス有志でいいですけれども、やりましょうよ、これ。

増田委員長 何か答弁はありますか、横田矯正局長。

横田政府参考人 お答えします。

 河村委員がおっしゃっている再生装置というのがいかなるものかわかりませんけれども、間違いなく、法務省にある再生装置で再生した限りにおいては、結び目とか穴とかまで、そこまで鮮明に再生できませんでした。これは事実でございますので、それをさらにするようにとおっしゃられましても、現時点では不可能としかお答えしようがございません。

河村(た)委員 これは、委員長、命じてもらわなきゃいかぬ。そんなばかな。

 では、まず理事会で見なきゃいかぬね、委員会でもう一回。見えますから。八時三十五分二十二秒十四こまというのは、二つ目の穴が割ときれいに見えるところです。それから、ちょっと秒数は忘れましたけれども、もう二、三秒前は一個目の穴が物すごくきれいに見えますよ、これ。それが見えないというのは、とんでもない話ですよ。虚偽答弁になってしまいますよ、本当にこれは。

 委員長、そういうことですから、ちゃんと命じてくださいよ、こんなのは。

横田政府参考人 それでは、改めてもう一度再生をして、極力どこまでできるか、やり直してみます。

河村(た)委員 それは、ですから、僕が言ったのは一こまだけ言ったんですけれども、当然、前後、五秒か十秒ぐらいですから、そこを全部見なきゃいかぬですよ、当然ですね。ちょっとそこを答弁してください。

横田政府参考人 この三十五分二十二秒前後という御趣旨でございますね。(河村(た)委員「そうですね、はい」と呼ぶ)

 それと、図示、計測した結果ということですけれども、これはあくまでも再生装置に、いわゆる映像画面といいますか、テレビ画面に映し出された画面でしかわかりませんので、図示といいましても、それの例えば画面を写真に撮るとかという形でしたら、御説明というか、提出できると思います。一応そのように御了解いただきたいと思います。

河村(た)委員 では、委員会の方もひとつ、これは園田さんとまた相談しますけれども、やはりこれは事が大きいことですから、これはまたひとつそこのところを見るということで、委員長、ちょっとお願いします。

増田委員長 発言の趣旨はわかりました。後日、よく相談をしてください。

河村(た)委員 それで、極めて遺憾といいますか、こんなの本当にわかるんだから、簡単に。本当に簡単にわかっちゃうんだから。何で委員会のときにこれを見ていてくれなかったか。何か作戦じゃないですかね、これは。私、正直言って不信感を持っていますよ、こんなの。もう二日、きのう、おとつい、さきおとついに私言ったんだよ、これ、間。絵をかいてくれと言ったのはきのうですけれども、その部分を見て確認してくれというのはもう三日前に言ってあります。そんなこと文句言っていてもしようがないですが、そういうことです。

 ところで、七十センチ台のウエストの人ですね。彼は七十六でしたか。それから、この九月の件は、二十日後でしたけれども七十七・五。ただ、病院におられたので、どうなっているか、そこのところはよくわかりませんが、いずれにしろ、検察なり法務省が八十と言っているんなら、八十ぐらいの人に、七十の手錠の施用をしていたということ。七十が適法だということになると、樋渡さん、こういうのは公訴を維持できるんですかね、これは。

樋渡政府参考人 検察、捜査機関といいますのは、厳正、公平に証拠を収集した上で、法と証拠に基づいて公訴を提起する場合に公訴をするものでありまして、今回の場合も、同じく、同じ方法で有罪であるという確信を持って公訴を提起したんだろうと承知しております。

 お尋ねの有罪無罪、公訴が有罪と維持されるかというようなことは、この裁判の結果を見守るしかないと思っております。

河村(た)委員 有罪無罪は裁判上のことですけれども、これは本当に七十センチだったらどういう評価になるんですか。矯正局長に聞こう。

横田政府参考人 お答えいたします。

 私、前にもこの法務委員会で、河村委員から、同じような実験があったときに七十センチのことについてお尋ねを受けました。きょうもまた同様のお尋ねを受けました。

 いずれも、その七十センチも、これは適正な使用の範囲だと申し上げました。それは、あくまでも、本日もそうですし前回もそうですが、革手錠を実際に施用されたその人の身体条件といいますか、それを前提にしてそうだと申し上げているわけでございまして、それがそのままいわゆる名古屋事案に妥当するという趣旨で申し上げたものではございませんので、そのことをまず御理解いただきたいと思います。

河村(た)委員 名古屋事案に妥当するわけじゃないと言ったって、では、何かほかに材料を、そちら側が立証してくれにゃいかぬわな。どういうふうに妥当せぬのですか。

横田政府参考人 お答えします。

 あくまでも、これは刑事責任の存否とか事実の有無とかということではなくて、革手錠の適正な使用といいますか、それについての一般的なことを申し上げさせていただきます。

 ただいまおわかりのように、革手錠といいますのは、あくまでも被施用者の腕の動きを固定して、そして、逃走とか暴行とかあるいは自殺を防止するのが目的であります。したがって、あくまでもそういった不慮の事故といいますか、そういうことを防ぐことが可能かどうかという点から、その革手錠の施用方法が適正であるか適正でないか、違法であるか違法でないかという問題だと思われるわけですね。

 したがって、それが適法であったか適法でなかったかということは、それは七十センチだから適法であり、そうでなければそうでないということではなくて、七十センチの場合であっても、それから同じ胴回りの人であっても、やはり適法になる場合もあるし、適法でない場合もあるということなんです。それは、その人の身体条件、それから健康状態、それから姿勢、それから相手の動きとか、いろいろな条件が重なって、初めてそこでその革手錠の施用が適正であったか適正でなかったかということになりますので、刑務官はそういった判断で革手錠を施用してきたというふうに私どもは理解しております。

 以上です。

河村(た)委員 それはみんなそうやってきますわな。当たり前の話だがね、そんなことは。

 だから、そのときに、要するに、穴がそんなにたくさんあるわけじゃないですから、それより、八十ぐらいだったらウエストをそのままに入れるか、それとももう一段先に進めるか、それだけのことなんです。それしか選択はありませんよ、これは。だけど、上に入れた場合は、あれだと四センチあるんですけど、つめの分が二センチあるから八十二ぐらいまであるわけですよ、上の方に入れると。そうすると、やはりこれは脱げて、ゆるゆる動いてはいかぬのでしょう、それじゃ。これは革手錠の施用のルールがありますわね。そういうのはだめなんでしょう、ゆるゆる自由に右左動くようなのは。そうでしょう。

横田政府参考人 お答えします。

 その点も、ただゆるゆるだからだめだということではなくて、それは相手の態度とか行動によりますわけで、少々緩くたって、例えばその人が外そうとするようなことでなければ、それはそれで、その範囲では、決してそれが不適正な施用だということにはならないわけです。

河村(た)委員 まあ、そんなことになってきたら、何が適正なのか全然わけがわからぬじゃないですか、それは。そのままかけても、その人が外そうとしなければ適法だという、そんな、外すか外さないかは向こうが決めることで、体に密着してつけなさい、そういうふうに指導しておるんでしょう。

横田政府参考人 お答えします。

 ゆるゆるということがまた範囲の問題になるでしょうけれども、相手がどういう挙に出るかわかりませんので、そのときの状況によりますけれども、通常は、革手錠の胴の部分、これを、ベルトを締めて、そして指を入れてそれが入る程度だというふうに私は聞いております。

河村(た)委員 体に密着してつけろということを指導しておるんですけれどもね。間違いないでしょう、局長。

横田政府参考人 大変申しわけありません。言葉の問題になってしまって失礼なんですけれども、先ほど申し上げましたように、腰のベルトの部分を締めて、二つの指が入る状態、これを指導しているそうです。したがって、それを密着と呼ぶかどうかということは、言葉の問題かもしれませんが。

河村(た)委員 刑務官必携というのがありますわね、刑務官必携。あの中に、これはどう書いてありますか。持ってみえる、そこ。僕が言おうか。

 刑務官必携のところに、バンドを締める際は、被施用者が腹の力を抜いた状態で尾錠を締める、こう書いてあります。これは間違いないですね。確認してください。

横田政府参考人 そのとおり間違いございません。

河村(た)委員 これで、これは今瀬さんという方が供述、これは調書の中にあるんですけれども、ただ、刑務官必携の、バンドを締める際は、被施用者が腹の力を抜いた状態で尾錠を締めるという記載は、革手錠のベルトが、腹の力を抜き腹を突っ張らせていない状態の被施用者の腰回りにちょうど密着するように装着し、ベルトが抜けることがないようにするという趣旨であると思われますので、私は、適正な緊度とは、腹の力を抜いた状態の被施用者の腰回りにベルトがちょうど密着する程度の締めぐあいだと指導しています、こういうふうに言っていますね。

 これは当然正しい指導ですか。彼は、この方は教官ですわね。矯正研修所名古屋支所法務教官をされた方。

横田政府参考人 ちょっとわかりません。

 ただいま委員がおっしゃったのは、これは現に行われている裁判の証拠についての御意見でしょうか。もしそうであれば、私コメントする立場にございません。

河村(た)委員 まあ、何かわからぬですけれども、裁判であればどうのこうのという話にすぐなりますけれども、まあ、いずれにしましても、そういうことですわ。

 要は、上にかけるとゆるゆるで脱げちゃいます。腰の大きさによりますけれども、脱げちゃいます。だから、七十センチが適正であった、七十センチのところに施用すべきであって、七十センチのところに九月の場合は適正施用されていたということがすぐわかりますので、すぐわかります。いつまでに報告書を出すのかちょっと期限を切りましょう、それでは。ビデオの鑑定、鑑定というか、鑑定と言うとあれですが、ビデオの調査ですね。

横田政府参考人 先ほど申し上げましたように、法務省にあるビデオデッキでは委員がお求めのような鮮明な映像が得られませんでしたので、委員がおっしゃっているそもそもの画面のもとというのがどのような機械というか装置を利用されたかわかりませんけれども、とにかくそういうものが鮮明に映る、再生できるデッキといいますか、再生装置があるのなら、まずそれを探さなければいけませんので、現時点でいつまでというふうにちょっとお約束はいたしかねます。

河村(た)委員 それやめましょう、そんなわけのわからぬ。こんな時代にビデオデッキがないとかへったくれ言われても、大変な彼らの人権がかかっていますし、これは人権もかかっておるし、矯正行政そのものの問題ですから。どうしようかな、来週、これは金曜日ですから、皆さんは別に解散も選挙もないでしょう。それなら、来週、月、火、火曜日、二日あればいいんじゃないですか。火曜日。

横田政府参考人 時期についてはちょっとお約束いたしかねますが、委員は、そんなことはないはずだ、今どきそんな映らないデッキなんてないんだとおっしゃるようですけれども、そのあたりもちょっともう少し直接詳細に御説明をして、御納得いただいた上で期日を設定させていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

河村(た)委員 しかし、これもまた延々と延びそうだから、もうちょっと具体的に、国会図書館にいいのがあると聞きましたよ、私。国会図書館に、これ。なら、とにかく来週早々ぐらいをめどにというぐらい言ってくださいよ。

横田政府参考人 ただいまの委員の御示唆も含めまして検討して、とにかくできるだけ早くできるように努力いたします。

河村(た)委員 では、それはそうしまして、問題は要するに起訴休職の方です、問題は。起訴休職処分というのがありますわね、これについて取り消してもらいたいということですよ、これは。これは裁判と関係ないことですから、関係ないと言うと、園田さんが言い方をあれだと言われるけれども、そういう意味ではない、これは司法権とは関係ない、行政処分。これは判例でもそうなっていますよ、起訴休職は別個に行政処分だと。どういう根拠でまず休職処分されたんですか。

横田政府参考人 お答えいたします。

 国家公務員法七十九条二号は、職員が、刑事事件に関し起訴された場合には、これを休職することができるというふうに定めております。

 この規定は、起訴されて身柄拘束中の者は当然職務に従事できませんし、そうでない場合でありましても、起訴された、したがって、それは犯罪の嫌疑を受けたままということなんですが、受けたという状態のままで職務に従事させることは、公務に対する国民の信頼を失わせるなどのおそれがあることから、休職処分とすることができるというふうに定められたものと理解しているところでございます。

 したがって、この規定は、起訴された職員が有罪であることを前提とするものではないということをぜひ御理解賜りたいと思います。

河村(た)委員 そうですよ。だからこれは別個にやればいいんですよ。別に、復職しておって有罪になってもいいですよ、それは。復職しておって無罪になってもいいのよ。それは別個のことだ、そういう趣旨でしょう。

横田政府参考人 起訴とそれから休職、それは別です。

河村(た)委員 そういうことなんですよ。

 ところで、今回は、ではもう一回、端的にどういう理由で休職処分をされたんですか。

横田政府参考人 理由は、この起訴された者が起訴されたという事実があること、それで、いわゆる起訴された事案の内容と申しますのは、刑務官の職務執行中の事案であるということから、訴追されている刑務官をそのまま職務に従事させることは、公務の公正な執行に対する国民の疑惑を招くおそれがあるということから、これを休職としないということは国民の理解を到底得られるものではないというふうに考えて、起訴休職したというふうに承知しております。

河村(た)委員 前半部分の、起訴されたから休職にしたというのはあかんで、それは。これは当然ではないですからね。

横田政府参考人 お答えします。

 説明が悪かったかもしれません。起訴されたから、だから、イコールだということではなくて、起訴されたという事実があるということを申し上げております。

河村(た)委員 要は、国民の理解が得られないということで。それはまあ、いいわ、百万歩譲りましょうか。その時点、だから、起訴休職処分をいつしたのかな。いろいろな方がおみえになるけれども、去年の秋口ぐらい、秋からでしょうね。百万歩譲って、私も正直言って格好いいこと言える立場じゃありませんから。私も三回は刑務官の暴行だと言って、予算委員会でも言いました。

 だけれども、私は気づいたから、やはりいち早く直したんですよ、勇気を持って。だから、それで皆さんがいいかげんにしておるもんで、暴力団関係の人にも誤解されることになっている、こういうことなんですよ、これは。

 だから、そのときはそのときとして、ここまでわかってきたわけでしょう、いろいろな事態が、申しわけないけれども。ほんなら、国民の理解が得られるということだったら、反対じゃないですか、今もう既に。積極的に法務省としてはそういうふうに解明していく、それを、そうすべきであって、今の状況においては早く率先して再調査して、七十センチの施用であるということがわかったら、早く休職処分を取り消すべきじゃないですか、これは。

横田政府参考人 昨年に、ことしも含めてですけれども、起訴、それぞれ三事案の被告人が起訴されたこと、そして、それに対するさまざまな事情を考えて、起訴休職にしたときの状況から現在まで引き続き刑事裁判が継続しているわけでございまして、したがって、それらの者たちを公務に、職場に復帰させることは、やはり国民の理解を得られない状態が続いているというふうに考えておりますので、引き続き起訴休職処分を維持するのが相当であると考えております。

河村(た)委員 いや、全然理由になっておらぬじゃないですか、それは。だから、裁判やっておることが理由だと言うんだけれども、それと関係ないと先ほど局長言われたじゃないですか、自分で、それとは別個なんだと。全然理由になっておらぬですよ、それは。

横田政府参考人 先ほども起訴休職制度について一言申し上げましたけれども、要するに、犯罪の嫌疑を受けたままの状態で職務に従事させることが相当でないということであるわけですから、現在、刑事裁判中であるということは、犯罪の嫌疑があるままの状態であるということになるわけです。

河村(た)委員 それは別個の理由なんですよ、それは。そうしたら、起訴した者は全部休職に当然にしなきゃいかぬですよ。それは判例違反ですよ。

横田政府参考人 お答えします。

 起訴された者をすべてそれだけのゆえをもって起訴休職にする、一律にするということは、それはおっしゃるように判例にも反すると言えると思いますが、本件のこのいわゆる名古屋事案の被告人に対する起訴休職は、決して起訴されたという事実のみをもって一律に起訴休職にしたというものではございません。

河村(た)委員 百万歩譲って、それでは、去年の秋の状況は、本当はそのときでもこれは違法な起訴だったんだけれども、そうするとしても、私らはここまで法務委員会でこれをやっておるわけでしょう、毎回出てきて。私も、何年もこれをやらなあかぬかしらんと思ったら、大変ですよ、これは。だけれども、こういう、一人の生活というか家族の生活というか、やはり正義感というのがありますから、これ。どんな小さいことと言われても、これは物すごい、地球より重いといいますけれども、そういう話ですよ、無実の人たちを拘置所に入れてしまっているということは。

 だから、こういう状況の中で、先ほどはあのビデオの残りの画面のことは調査していただくということを答弁いただいたけれども、とにかくすべからく調査していただいて、それで、やはり休職処分について、それはそれで検討してみる、これは当然のことでしょう。どうですか。

横田政府参考人 適正な矯正行政を運営するといいますか、行刑を運営していくために必要とあれば必要なかつ相当な調査を行うということは、これは当然でございます。

 ただ、先ほどから委員おっしゃっておられますことは、この革手錠の施用が適法であったから、それが明らかになったから、だから起訴休職処分は取り消すべきではないかとおっしゃっているように私は理解いたしました。もしそうであるとすれば、この革手錠の使用方法の適否ということは、現に係属中の刑事裁判における争点の一つになっているというふうに私は理解しておりますから、そして、この適否いかんということは、まさに今後、検察側、弁護側、双方の主張、立証を経て裁判の過程で明らかにされるべきものでございますので、現時点でそれについて、こうであったから、適法であったから、あるいは違法であったからという判断をして、それに基づいて何らかの行動を起こすということは相当でないというふうに考えております。

河村(た)委員 それは間違っておるんだよ、何遍も言っておきますけれども、これ。その論法は。

 裁判、裁判と言いますけれども、では大臣、大臣は国鉄に長いことおみえになったと思いますけれども、何か国鉄マンが、例えばポイントの操作を間違えて事故が起こった。例は余りいいことないけれども、それで業務上過失致死傷か何かで起訴されていると。それで、彼を休職にするかどうか、これは国鉄なり、何ですか、今はJRじゃちょっとわかりにくいですけれども、やはり独自にやるでしょう、当然、これは独自に。それが裁判であろうが何だろうが、そんなことを言ったら、裁判、オールマイティーになっちゃいますよ、世の中で。法務省、余りにもエゴイズムだよ、それ。あなたのところの中にたまたま検察庁というのが一緒におるものだから、横田さんも検事だし、樋渡さんも検事だし、大林さんも検事だし、みんな検事ばっかなものだから。そこに、身内がかわいいものだから、そう言っておるだけじゃないですか、そんなのは。これはJRならJRで、大臣、それは当然やらないかぬでしょう。いわゆる国鉄の業務、有罪か無罪かは裁判ですよ、これ。だけれども、国鉄のポイント操作がどうであったとか、それは、それこそやってくれぬことには、再発防止の問題もあるし、いろいろあるでしょう、行政として。そんな、裁判で争われておることだったらやりませんなんというのは、これは職務放棄ですよ、本当に。大臣、どうですか。

野沢国務大臣 御指摘のように、鉄道関係でも事件あるいは事故、災害、さまざまなトラブルに対して日ごろから大変な努力を払って正常な運行に努めている、こういう中で出てまいりました職員の動作の適否については、それぞれのやはり事態、実態を十分見きわめて処置をしているところでございまして、裁判にかかった場合には、その結果を見守って処置をするということがこれまでも行われておるわけでございまして、一つ一つの案件につきまして、私の立場から今どれがいいかということについては、意見を差し控えさせていただきたいと思います。

河村(た)委員 何か知らぬ本当に、それほどまでに役所の言うことというのは聞かないかぬですか、大臣、これ。悪いけれども、なかなかちょっと私まだ、余りそう先輩にめちゃめちゃ言うのも好きじゃないものだからあれですけれども、何かのことで自分の意見を通して大臣になるのがおくれた、そういうふうに物に書いてありましたけれども。そういうのでやらないかぬですよ、これ、本当に。

 これはもう一回矯正局長に聞きますけれども、こんなの、本当に国会無視ですよ、言っておきますが。いいですか、これ。手錠が何センチ締まっておったとか、だから、要するに、戒具の使用を現場でどうやってやっていたかということは、これは再発防止やいろいろな問題があるから、それこそ別個にきちっと調査するのが当たり前じゃないですか、そんなもの。有罪無罪、関係ないんだから、それ。別の話だから関係ないというふうに言われるけれども、これは本当に別の話ですよ、これ。それなら、何をやるんですか。戒具の実態の話というのはできるの、これ。力を入れて、せっかくビデオを見せたんでしょう、これ。それでは、何のために見せたんですか、ビデオを、理事会で。

横田政府参考人 お答えします。

 何のためにビデオを見せたかという、ちょっとお答えしにくいんですが。申しわけありません。

大林政府参考人 これは委員も御承知のとおり、委員の先生方からの要求で、証拠の一部にはあるけれども、事案の真相という面において役立つものという観点から御要求があった。それに対して、私ども裁判の過程を見つつ、立証の、裁判所の証拠調べが終わった段階でお出しした。当然、先生がおっしゃるようなどういう事実関係にあったか、その部分に限られますけれども、それを見ていただく、こういう趣旨だった、こういうふうに理解しております。

河村(た)委員 どういう事実関係であったかということをやはり委員会においても、そうやって見せようとされるじゃないですか、これは。そうでしょう。

 それで、法務委員としては、あの手錠、戒具の使用というのは現場がどういうふうにされておるか、革手錠を廃止するようだけれども、今度の手錠もえらい評判が悪いようですけれども、あれは。かえって危ないという説が非常に、全部とは言えないけれども、そういうふうに私聞いておりますけれども。

 だから、そういうようなことだって、委員長、そうでしょう。それは、事実をそれぞれ検証していかないと、私たちの仕事でしょう、これ。どういう戒具が適正かとか、革手錠はどこに問題があったのかと。そうでしょう。だから、裁判は裁判だけれども、委員会は委員会でやるように、また法務省もやってくれるじゃないですか、これ。そうしたら、今の話で、どうですか、もう一回ちゃんと調査して、その流れの中で、要するに、法務委員会に説明するのも皆さんの仕事だし、それから起訴休職処分について考えるのも皆さんの仕事ですよ、それ。僕は裁判のことを言っているんじゃないんですから。そういった判例も言っておるし、そう注釈書に書いてあります、休職処分は裁判とは別だということを。やってくださいよ。

横田政府参考人 お答えします。

 調査のことですけれども、これは、先ほど申し上げましたように、矯正行政を適正に運営するために必要かつ相当な調査を行うということには変わりございません。これらについては、また国会、衆議院の委員会の、この委員会の決議もあったところでございますし、その趣旨は十分尊重しなければならないと思っています。

 ただ、起訴休職を取り消すべきだということにつきましては、これまた繰り返しになりますけれども、先ほど述べたとおりでございまして、やはり犯罪の嫌疑があるという状態は変わっておりませんし、その起訴休職を取り消すべきだということが果たして国民の理解を得られるかどうか、それは大いに疑問があると思っておりますので、結論といたしましては、先ほど述べたとおりということになります。御理解いただきたいと思います。

河村(た)委員 そんなの、理解できるわけないじゃないですか。今までどおりということで、何も調査義務を果たそうとしないということでしょう。国民の理解と、あなたたちが国民から負託を受けて、税金で飯を食って、国会議員もそうですけれども、何か事態が変わってきたら、それに対処すべき責任があるじゃないですか。

 それより何より、これだけ言って、本当に漫然と起訴も続けるわ、それから休職処分も何もやらないといったら、これは職権濫用罪にならへんかね。本当に危ないですよ、言っておきますけれども。強烈な不利益処分ですからね、休職処分。起訴なんというのはすごいですからね、これ。ということですよ。

 だから、樋渡さん、いいですか、皆さん、職権濫用罪にならへんかね、これ。これだけ言ってですよ、裁判、裁判と言って、漫然と放置していく。裁判は裁判でしょう、休職処分なんというのは、これ。手錠が適法な施用であったという、今、僕言いました、七十センチなら適法なんだから、これ。いいですか。どうですか。

樋渡政府参考人 まず、委員が先ほど来御指摘なされていることは、恐らく、この名古屋刑務所事件の公判におきまして、弁護側の意見陳述の中で言及されたことを踏まえておっしゃっているんだと思いますが、いまだ弁護側からは、証拠として請求されてはおらず、検察側にその内容が開示されたこともないものと承知しております。

 今後、弁護側がこの意見陳述で述べられたことに基づいて証拠を検察官に開示し、証拠を請求した場合におきましても、その証拠に証拠能力があるかどうかということを吟味した上、その上で裁判所がそれを採用するか否かを決定して、その上でその証拠の証明力、証拠価値というものを判断してやるものでありますから、検察官といたしましては、公判に精を出しているという段階でございます。

 公務員職権濫用と……(河村(た)委員「行政処分の方」と呼ぶ)ええ。公務員職権濫用罪に当たるかどうかというようなところは、公務員がその職権を濫用して、人に義務のないことを行わせ、または権利の行使を妨害したときに成立し、職権濫用とは、職権の行使に仮託して実質的に違法、不当な行為をすることと解されておりますところ、本件における休職処分は、法令の規定に基づき正当になされたものと考えておりますので、同罪に当たるものではないと考えております。

河村(た)委員 最後にしますけれども、いやいや、それを漫然と放置するということですよ、漫然と。

 例えば、免許が不免許になったときに、運転免許は、ちょっと色盲の人だと何となくテーマが悪いけれども、調査が間違っておったと。例えば、眼鏡をかけるという条件をつけられた、しかしその調査が間違っていたじゃないかということを言われたときに、何も調査し直さずに、何かまあええわ、ほかっとけと言ったら、だめでしょう、これは。そういうことですよ、不作為による。

 最後に、ちょっと矯正局長、一言いただいて、終わります。

横田政府参考人 お答えします。

 先ほどの繰り返しで恐縮ですけれども、今後とも、必要かつ相当な調査については継続してまいります。

河村(た)委員 終わります。

増田委員長 山花郁夫君。

山花委員 民主党・無所属クラブの山花郁夫でございます。

 野沢大臣、星野副大臣、まずは御就任おめでとうございます。また、中野政務官におかれましては、留任ということで、引き続きよろしくお願いをいたします。

 おめでとうございますと申し上げましたけれども、法務に関しては課題が大変山積をしているときでございますので、大変なときになられたのだなと思っております。ただ、私どもはできるだけ早い時期に政権交代をと思っておりますので、余り長期間在任されて御苦労されないように私どもとしては頑張ってまいりたいという決意でございます。

 ところで、きょうは、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案、そして検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案、これが議題となっておりますが、過日、新しい法務大臣からもごあいさつをいただきましたので、そのことに関連をいたしました質疑もさせていただきたいと思います。

 まず、法案について質問させていただきたいと思います。

 昨年も同様の引き下げを行う法律案がございまして、その際も議論させていただきました。昨年に関しましては、例えば検察官についての俸給をそのままにして裁判官だけ引き下げるとか、そういう形であるとすると憲法上も疑義がございますし、また、今回のものについても、学説によってはそういう疑いという指摘があるところでございます。

 ただ、昨年のときには、いや、今回のはこういった特例的なものだというふうに説明をいただいていたんですが、ことしまたこういった形で裁判官、検察官の報酬、俸給についての引き下げが提案されているその趣旨について、改めて簡単に御説明いただきたいと思います。

野沢国務大臣 このたびの裁判官及び検察官の報酬及び俸給の引き下げにつきましては、今般の人事院勧告を受けまして、一般の政府職員につき同勧告どおりの給与の改定を行う旨閣議決定をしたことがございます。また、従来、裁判官及び検察官の給与については、国家公務員全体の給与体系の中で、その職務の特殊性を考慮しつつバランスのとれたものとする考え方に基づいて改定を行ってきたことなどを踏まえておるわけでございますが、政府といたしましては、裁判官及び検察官についても、一般の政府職員の給与改定に伴い、報酬月額を、その額においておおむね対応する一般の政府職員の俸給の減額に準じて改正する必要があるものとして措置を講ずることとしたものでございます。

 ところで、裁判官の報酬の減額につき、憲法第七十九条第六項及び第八十条第二項が「在任中、これを減額することができない。」と規定しておりますことを承知しておりますが、法務省は憲法の解釈一般について政府を代表して見解を述べる立場にはございませんが、当省なりの考え方を申し上げますと、これらの憲法の規定は、裁判官の職権行使の独立性を経済的側面から担保するため、相当額の報酬を保障することによって裁判官が安んじて職務に専念することができるようにするとともに、裁判官の報酬の減額については、個々の裁判官または司法全体に何らかの圧力をかける意図でされるおそれがないとは言えないということから、このようなおそれのある報酬の減額を禁止した趣旨の規定であると解釈しております。

 ところで、今回の国家公務員の給与の引き下げは、民間企業の給与水準等に関する客観的な調査結果に基づく人事院勧告を受けて行われるものであります。このような国家公務員全体の給与水準の民間との均衡等の観点から、人事院勧告に基づく行政府の国家公務員の給与引き下げに伴い、法律によって一律に全裁判官の報酬についてこれと同程度の引き下げを行うことは、裁判官の職権行使の独立性や三権の均衡を害して司法府の活動に影響を及ぼすということはありません。

 したがいまして、今回の措置は、憲法第七十九条第六項及び八十条第二項の減額禁止規定の趣旨に反するものではなく、同条に違反するものではないと考えております。

 以上でございます。

山花委員 趣旨についてはよくわかりました。ただ、若干、私個人的に疑問を持っていることがございます。

 と申しますのも、検察官というのは、行政官、独任制の官庁ですから、人事院勧告という制度があって、公務員の労働基本権の制約の代償として人事院勧告によってその俸給が決まっていくというのは、これは制度上あり得るのかなと思うんですが、裁判官というのは、今大臣が御答弁されたように、司法権の独立というのがあって、まさに報酬というのはその独立を経済的に担保するものであるということなわけですから、そうであるとすると、例えば衆参両院の議長と内閣総理大臣と最高裁の長官の、トップの金額はある程度足をそろえましょう、このぐらいのところまではわかるんです。ただ、裁判官の報酬について、人事院勧告と並ぶような形でその他の裁判官についても報酬が決まっていくというのはどういうことなのかなと。

 つまりは、まさに、それこそ司法権の独立の内容をなしている司法行政作用の中で解決することも可能なのではないかというような意見を持っているんですが、この点について大臣の御所見をいただきたいと思います。

野沢国務大臣 確かに、委員御指摘のとおり、人事院勧告は一般の政府職員の給与などに関して行われるものでありまして、当然に同勧告によって裁判官の報酬のあり方が決められないのは御指摘のとおりであります。

 従来、裁判官の給与については、国家公務員全体の給与体系の中で、その職務の特殊性を考慮しつつバランスのとれたものとするという考え方に基づいて改定を行ってきたところであります。そして、一般の政府職員につきましては、人事院勧告どおりの給与の改定を行う旨、閣議決定をしたことなどを踏まえまして、今回の措置を行うものとしたところでございます。

山花委員 形式的な理屈はそうなんですよね。ただ、実態としては横に並んでいるということについて、ちょっとどうなのかなという意見でございますので。ただ、今回のこの点について、きょうは最高裁の山崎人事局長もおいでいただいていますけれども、喜んでということはないんでしょうけれども、今回のこの点について、政府からこういう提案がされているわけですけれども、最高裁としてこの点についてどのような考え方であるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

山崎最高裁判所長官代理者 ただいま法務大臣の御答弁にもございましたが、裁判官の報酬につきましては、従来から、国家公務員の給与体系、全体の給与体系の中で、その職務の特殊性を考慮しつつバランスのとれたものにする、こういう考え方に基づきまして、一般職の政府職員の給与改定に伴い、金額においておおむね対応する一般の政府職員の俸給に準じて改定が行われてきております。私どもも、このような裁判官の報酬の改定方法、これは相当の合理性のあるものであろうというぐあいに考えているところでございます。

 そういう点でいいますと、今回の改正も、こうした方式に基づきまして、昨年と同様でありますが、人事院勧告によりまして一般の政府職員の俸給が引き下げ改定されることに伴いまして、裁判官の報酬について一般の政府職員と同様の引き下げが行われるものでございますので、合理的なものであろうというぐあいに認識しているところでございます。

山花委員 私どもといたしましては、合理的なものと言い切ることにはややちゅうちょをしながらも、法案についてはこういうことでいいのかなという形で採決に臨んでまいりたいと思います。

 ところで、今回のこの改定によりまして、本年度予算ではこういった引き下げがないことを前提に予算を組まれていたと思いますので、財政効果についてはどれぐらい減るのかということについて、数字のところをお答えいただけますでしょうか。

寺田政府参考人 裁判官、検察官合計で、総額で約二十億円でございます。

山花委員 その内訳は大体どれぐらいかわかりますか。

寺田政府参考人 裁判官につきましては十一億円程度、検察官につきましては約九億円でございます。

山花委員 わかりました。

 それでは、引き続きまして、先日、野沢法務大臣からごあいさつをいただきましたことに関連をして、質問をさせていただきたいと思います。

 先日の当委員会におきまして、ひとつ、先ほど河村委員との間の議論にもありましたけれども、安全な社会の実現維持に取り組むという決意が述べられまして、特に、刑法犯認知件数が大変ふえているのに対して、検挙率が過去最低レベルの水準に落ち込んでいるということに問題意識をお持ちだと承知をいたしております。

 そこで、きょうは警察庁の官房長においでいただいているんですが、警察庁の方で、今後警察官の増員計画ということが報じられておりますけれども、この中身について教えていただきたいと思います。

吉村政府参考人 警察官増員についてのお尋ねでございますが、警察におきましては、三カ年で一万人を増員するという計画に基づきまして地方警察官の増員を進めているところでありまして、平成十四年度、四千五百人、本年度、平成十五年度は四千人の増員を行ったところでございます。

 計画では来年度は千五百人ということになるわけでありますが、最近の治安情勢は、御承知のとおり、刑法犯の認知件数が二年間で二割近く増加をしている、あるいは重要犯罪の二件に一件が未解決である、あるいはまた来日外国人犯罪の凶悪化、組織化、全国拡散の傾向が進展している、加えて街頭犯罪が多発をしているということで、非常に悪化をしておるわけでありまして、このような状況下、国民の安全、安心を確保するためには、来年度の当初予定の千五百人に加えまして、なお不足する人員約一万人を今後三年を目途に増員を行う必要があるということで認識をしておるところであります。

 具体的に申し上げますと、来年度、平成十六年度につきましては、現在進行中の増員計画で要求をしております千五百人に加えて、新たに、重要凶悪事件捜査あるいは街頭犯罪対策の強化等々のための要員として三千人を加えまして、都合、全国的規模で四千五百人の増員を要求しているという状況であります。

山花委員 今お話がありましたように、いわゆる重要犯罪、殺人、強盗、放火、強姦、略取・誘拐、強制わいせつなどについていいますと、二件に一件が未解決という、これはゆゆしき状態ではないかと思っておりますし、警察官の増員そのものには私どもも賛成でありますし、むしろ、まだそれでも足りないのではないかと思っているぐらいなんです。

 といいますのも、現場の警官の方の数をやはりふやしていかないと、こういった治安のことももちろんですけれども、それだけではなくて、従来以上に警察官の任務というのがふえてきていますよね。つまりは、DVだとかあるいはストーカー防止法などで女性が相談に行くような、そういった役割も担われているわけですから。

 そうだとすると、空き交番対策などもいろいろされている、これからそういうのをなくしていきましょうという話になっているようですけれども、特にDVなんかのケースですと、日中の割と平穏な状態であれば自治体の婦人相談所であるとかそういうところに行くんですけれども、大体、ドメスティック・バイオレンスなんかのケースですと、夜に帰ってきた夫に暴れられるであるとか、そういうことで駆け込もうとするわけですので。ところが、行ったところ、警察官はいらっしゃるんですけれども婦人警官がいないとか、そういったケースも耳にすることがありました。

 一万人ということで、しかも、これは最終的には採用は都道府県警ということでしょうから、国の方でできることは、ここで決意を述べられたとしてもそうそう約束はしづらいんだと思います。

 ただ、先週金曜日に行われました衆議院の本会議での小泉総理の所信表明演説の中にも、「今の小学生が社会に出るころまでに、あらゆる分野で女性が指導的地位の三割を占めることを目指し、女性が安心して仕事ができ、個性と能力を発揮できる環境を整備します。」こういう所信も述べられているわけですので、特に、男女共同参画の視点もございますので、現在、今すぐ三割にするというのは難しいかもしれませんが、そういった婦人警官、女性警察官の増員についても配慮していただきたい、このように考えるところですけれども、何か御所見がありましたら御答弁をいただきたいと思います。

吉村政府参考人 初めに、数字で恐縮でありますが、ことしの四月一日現在で、都道府県警察に勤務をしております女性警察官の総数は約一万二百人であります。これは、パーセンテージで申しますと四・二%ということになりますが、実は、これでも十年前の約二倍になっておりまして、警察官全体に占める女性警察官の割合が、平成に入るころまでは大体二%未満でありました。その後、平成二年に初めて二%を突破して、その後は着実に増加を続けております。昨年度、平成十四年度の採用者数も、全体の一割になりますが、約千百人を採用したということで、今申し上げましたように四・二%となった。

 まだまだ少ないではないかということも議論としてはあり得ると思うんですが、女性警察官の場合、従来、交通取り締まり、あるいは少年補導の分野等にいささか特化された形で配属をされていたのが、従前、ずっと昔は実態だったと思うんですけれども、最近は、いわゆる一般の犯罪捜査、中には、暴力団対策に当たっている者もおりますし、現場の鑑識あるいは警衛警護でもその領域が拡大を見ているところであります。

 今お話にありましたように、ストーカーでありますとか、配偶者からの暴力事案、いわゆるDV、それから児童虐待、あるいは広く性犯罪等の捜査、取り組みについては、あるいはまた、被害者対策につきましても、男性ではなく女性の警察官が対応することが適切であろうという場合も非常に多くなってきておりますので、これは、今申しましたように、ここ十数年ではありますけれども、意識的に採用者数もふやしているというところでもございますから、これから警察庁としては、各都道府県警察に対しまして、例えば上位の階級への女性警察官の登用でありますとか、あるいは、どうしても働きやすい環境づくりをいたしませんと、インフラも必要だということもあります。それを含めまして、採用あるいは職域の拡大に一層数字が上がっていくように督励をしてまいりたいと思っております。

山花委員 ぜひそれはやっていただきたいと思います。

 釈迦に説法かもしれませんけれども、男女共同参画社会基本法の前文にもこの共同参画の課題というのは二十一世紀の日本を基礎づける最重要課題であるとうたわれておりますので、その点について今後とも努力をしていただきたいということを申し上げておきたいと思います。ありがとうございました。

 ところで、法務大臣、先日のごあいさつの中で、今、刑事システムをしっかり十全に機能することが不可欠の前提であるというようなごあいさつをいただきましたけれども、こうやって現場の警察官がふえてきて、そして、司法制度改革の中で、今、ロースクールはまだできていませんけれども、司法試験の合格者もふえて、検察官、裁判官なども増加の傾向にあるということになりますと、そういったものがどんどん適正に処理すればするほど、行き着く先は、もうこれは前の法務大臣にも何度も議論させていただいたんですけれども、結局、刑務所に入るわけですから、それが今収容率一一六%。さらに言えば、最近は厳罰化という潮流もあって、言い渡される刑期も長くなる傾向にあります。

 そうしますと、長くとどまっているわけですから、なかなか出てこないということになりますと、当然、今後も過剰収容の状態が続くことが予想されるわけであります。極めて深刻であるとおっしゃっておられますけれども、私どもは、従前より、矯正施設を、例えば刑務所もそうですけれども、拘置所なども新設を検討されたらどうかというような話をさせていただいておりましたが、この点についての新しい法務大臣としての認識、どういった御認識か、お聞かせいただきたいと思います。

野沢国務大臣 矯正施設の収容人員は、近年、急激な増加が続いておりまして、刑務所等の行刑施設においては、平成十五年八月末現在の収容人員が約七万三千三百人、収容率が一〇六・一%となっております。特に、既決被収容者だけで見ると収容率は一一五・七%となっておりまして、憂うべき事態と認識をいたしておるところでございます。このために、各行刑施設においては、居室の定員を超えて被収容者を収容したり、集会室や倉庫等を改修して居室、工場等に転用するほかに、財政当局の理解を得て収容棟の増築等を今進めておるところでございます。

 行刑施設は、法秩序の最後のとりでとして、国民が安心して暮らせる安全な社会の実現に寄与することが使命でありますので、今後とも、収容能力の拡充に鋭意努力してまいりたいと考えております。

山花委員 この問題については、警察と法務との間でうまく連携をしてやっていただかなければいけないことだと思いますので、その点、しっかりと連携をしていただいて、また、必要な予算についてはしっかりと努力をしていただくということかなと思いますので、その点はよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 ところで、時間がなくなってまいりましたが、ほかにも幾つか質問をしようと思っていたんですけれども、一点、法務大臣は、報じられているところによると、記者会見の席だったと思います、パスポートに指紋などを押捺するような形を検討したらどうか、そういうような発言をされていたようであります。時間があれば少し議論させていただこうかと思っていたんですが、こちらから意見だけ少し申し上げておきたいと思います。

 治安の維持ということと、例えば私生活の自由といいますか、プライバシーといいましょうか、非常に緊張関係にあるんだと思うんです。例えば、ちょっと例は適切かどうかわかりませんけれども、覚せい剤事犯を何とか挙げようとしたときに、下手な常習者というのは腕に打つらしいんですけれども、腕に打つと見えますので、任意捜査でもすぐにわかってしまう。質の悪いというか、ある程度知恵のある常習者になりますと、服装で隠れるところ、かつて、ある元プロ野球の選手が捕まったときには、でん部に注射をしていたという報道もありましたけれども、そういったやり方をするそうです。

 つまり、何が言いたいかというと、捜査のために必要だとか治安のためにということを言いますと、外から見えるところを見せろという分にはいいんですけれども、怪しいからといってそこでパンツをおろせというのは、これはちょっとやり過ぎではないかという話になるわけでして、やはりその点のバランスをとらなければいけないというのが私の考え方であります。

 そこで、どういう趣旨だったのかということは報じられている限りでしか存じませんが、ビザならともかくというのもちょっと留保させていただきたいと思いますが、パスポートということになりますと、海外渡航の自由に対して、それがなければ発給しない、仮にそういうことであるとすると、ちょっと行き過ぎではないかと思いますのが第一点。

 そして、指紋ということになりますと、かつて在日外国人の方からも、登録証の更新の際に指紋の押捺が義務づけられていて、自分たちを犯罪者と同じような扱いにするのか、そういう声が高まってきまして、九九年にはこれが廃止をされたという経緯があります。

 したがって、私は、先ほど、総理から世界一安全な国にしてほしい、そういう話があったというお話の御紹介がありましたけれども、目的そのものがいけないと言うつもりは全くありません、それはそのとおりだと思うんですけれども、その手段についてはぜひ慎重に考えていただきたい。時間が少なくなってまいりましたので、きょうは一応意見だけ申し上げておきたいと思います。

 さて、法務委員長、委員長も御就任おめでとうございます。

 先ほど来河村委員からの質疑がございましたし、また、委員長はつい先日まで副大臣として法務行政に当たってこられました。先ほど来の河村委員の質疑に対して、御感想なり、御意見なり、御所見なりございましたら御発言いただければと思いますが、いかがでしょうか。

増田委員長 この際、先ほどの河村たかし君の質疑に関連し、委員長として申し上げます。

 本委員会においては、いわゆる名古屋刑務所三事案を契機として、刑務所問題を重要課題として取り上げ、数多くの集中質疑や刑務所視察など精力的に活動を行い、行刑行政におけるさまざまな問題を明らかにしてまいりました。

 特に、河村委員におかれては、三事案の真相を明らかにすべく、大変なる熱意を持って努力され、本日もさまざまな観点から御質問をしていただきましたが、審議に関し委員の周囲でさまざまなことが起きているというお話もありました。

 このような事情も考慮し、委員長といたしましては、国民に正しい情報を提供し行刑改革への関心を一層高めるため、法務省に対し、行刑行政を所管する立場から、国民の期待にこたえる刑務所をつくるため、行政としてできる限りの調査を行い、本委員会に報告するよう求めたいと考えております。

 この際、法務大臣の発言を求めます。

野沢国務大臣 ただいまの委員長の御指示に従い、裁判所の審理を待つべきものもございますが、国民に正しい情報を提供し矯正行政への関心を一層高めることの重要性に配慮し、行刑改革実現のため必要な行政調査をできるだけ速やかに行い、本委員会に対し適切に御報告申し上げたいと考えております。

 今後とも、委員の皆様の御支援と御指導を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

山花委員 時間が参りましたので、終わります。どうもありがとうございました。

増田委員長 木島日出夫君。

木島委員 日本共産党の木島日出夫です。

 新たに法務大臣に就任をされました野沢太三大臣に質問を申し上げます。

 大臣は、法務大臣に就任された九月二十二日、初登庁後の記者会見におきまして、憲法改正にかかわる発言をされております。改憲発言をしたということでマスコミにも幾つか取り上げられておりますが、概要をいただいておるんですが、その発言の中で、憲法の平和主義に関する発言の部分を私、読み上げますので、そのとおりかどうか確認をし、どんな意図でそういう発言をしたのか、答弁をまず求めたいと思うんです。

 大臣、こういう発言をしています。

 それから、平和主義のところでございますけれども、やはり自分の国は自分の力で守るという、いわゆる自衛権については、これはもう今の憲法でも読めるんだという解釈があるわけですけれども、集団的自衛権については保有しているが行使できない、これもまた一つ難しいところであろうかと思います。この辺は非常に国民の皆様がわかりにくい、理解しにくいという分野ではないかと思いますので、この辺はもう少しわかりやすくしっかりと明記した方が、これからの皆様には大変この現代的ではないかなあと思っております。

こういう概要録をいただいているんですが、こんな発言をしたことは間違いないですか。そして、どんな意図でこんな発言をされたんでしょうか。

野沢国務大臣 大臣就任の記者会見でその趣旨の発言をしたことは事実でございますが、これは記者さんの御質問に答えた形でございまして、私が法務大臣としての見解を申し上げたわけではありませんで、これまで私は参議院の憲法調査会の会長をしておりましたような立場もございまして、政治家個人としての発言を申し上げた、こういうことでございます。

 この法務委員会については、法務大臣として責任ある立場で臨んでおりますので、憲法改正に関する個人的な見解を述べることは差し控えたい、かように思っております。

木島委員 私も記者会見の全文を読んでいるんですが、確かに、記者から質問を受けまして、大臣が憲法調査会の会長をされていたということで憲法改正に関する質問を受けて、それに対する答えとしての発言だというのはそのとおりであります。

 しかし、あくまでも大臣は法務大臣になったわけです。法務大臣としての所信を問われた記者会見ですね、そこでこういう発言をされたのは、やはり政治的には重大な問題だと思うわけであります。

 そこで、私は、重ねて、憲法第九十九条には大臣の憲法擁護尊重義務というのがあります。正しく文章を読みます。憲法九十九条、国務大臣は「この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」とあります。どのようなものと受けとめますか。

野沢国務大臣 九十九条で憲法の遵守義務を持っていることは承知をいたしておるわけでございますが、現在の衆参両院におきまして憲法調査会ができまして、この憲法にのっとり、委員御承知のとおり、九十六条に定められているような改正手続の問題もこれあるわけでございますので、この憲法の趣旨に沿いまして議論し調査し検討することは、何らこの遵守義務に違反するものではないと考えておるところでございます。

木島委員 ちょっとその認識はいかがかと私は思うんです。

 確かに、この記者会見の中で、先ほどの発言の直後に記者からこういう質問をされましたね。日本の憲法は、公務にかかわる方々全員に現在の日本国憲法の遵守義務があるわけなんですけれども、昨今非常に憲法改正という言葉が割とよく出てきますけれども、総理とか大臣の職にある方が憲法改正を唱えること自体は憲法違反じゃないんでしょうか。

 そういう質問を記者からされまして、それに対する答えとして、大臣はこういうことを答えたように概要に載っているんですね。

 昔なら首が飛んだところかと思いますが、幸い現在のところでは今申しましたように、衆参両院に憲法調査会ができて、現在の憲法をあくまで守るべきという御意見もあるし、やはり改正して見直すべきという議論もあるし、議論はできるようになったと、これは大事なことだと思います。ただ、公務員の遵守義務を考えますと、憲法に規定されておりますやはり改正手続をきちんと守るとか、そしてもちろんそれに関する議会、そして最終的には国民投票ということになろうかと思いますが、そういった手段、方法については、あくまで憲法の定める手順、手続を守って進まなければならないだろうと思っております。

こういう発言をしていますね。今答弁されたとおりですね。

 しかし、公務員の憲法遵守義務、九十九条というのは、憲法には改正手続があるからそれはそれできちっと手段、方法を尽くしてやるんだ、一方でどんな発言しても自由なんだ、そういうことではないんじゃないでしょうか。

 そこで、今法務省が最大の懸案として取り組んでいるのが司法制度改革であります。既に一昨年、司法制度改革審議会から立派な意見書が出て、その意見書に沿って今全力を挙げて司法制度改革に邁進しているわけですね。その司法制度改革審議会の会長として重責を担われ、今も推進審議会の推進体制の顧問格にある佐藤幸治京都大学名誉教授の「憲法」という本、引用します。よく聞いていてください。憲法九十九条の憲法尊重擁護の責任と義務、かなりずっと論を起こしまして、特に大臣の憲法擁護尊重義務について佐藤名誉教授は論を起こしています。

 憲法が改正手続について定めている以上、閣僚が政治家として改正に関する主張をなしうるのは当然であるが、改正されるまで憲法に誠実に従って行動する義務があり、さらに、憲法およびその下における法令に従って行なわれるべきその職務の公正性に対する信頼性を損なうような言動があるとすれば、本条の義務に反する可能性があろう。その意味で、閣僚の憲法改正に関する発言には、国会議員の場合と違った慎重さが求められるということになろう。

やはり閣僚の憲法に関する発言というのは、国会議員の場合とまた違った慎重さが求められる。これは佐藤名誉教授の論なんですよね。どう思いますか。

野沢国務大臣 記者会見のときに私はっきり申し上げておりますのは、私は閣僚であると同時に議員、自由民主党の議員であるという個人の立場でということを前提として申し上げているはずでございます。

 私の今の立場はあくまで小泉内閣の一閣僚ということでございますので、先日も参議院本会議等で表明されております小泉総理の、国民的な議論の熟成を待って考えましょう、こういうことになっておりますので、以上申し上げたとおりでございます。

木島委員 大臣、大臣になった以上は、やはり使い分けはもうできないということだと思うんですよ、大臣就任中は。おれは法務大臣だ、しかし一議員だから一議員として何をしゃべってもいいというわけには、そういう使い分けはできない。それが、佐藤名誉教授が、職務の公正性に関する信頼性も失うようなこともあったらいかぬということを言っている意味なんですね。そういう制約が、私は、大臣に就任した瞬間に発生しているんじゃないか、それが大臣の憲法擁護尊重義務だと思うんです。

 そして、その憲法擁護尊重義務の中身は何か。大臣はさっき、改正手続があるからそれはそれで手続ちゃんとやればいいんだとおっしゃいましたが、これは、現行憲法の解釈として最も権威があると言われている「注解日本国憲法」、どう言っているか。憲法九十九条の憲法擁護尊重義務の解釈についてちょっと言います。擁護するとは、憲法を侵す行為を防圧するという受動的意味である、尊重するとは、憲法を尊重してこれに違反せず、さらにその目的を実現することに力を尽くすことをいうとあるんですね。だから、擁護義務よりもさらに高い義務なんです、尊重義務というのは。単なる守ればいいというんじゃなくて、その目的実現のために力を尽くす義務が、大臣に就任した途端に発生しているというんです。

 そうすると、問題の憲法九条、解釈のいろいろな立場の違いはありますよ。大変、国政上の最大の焦点になっていることも私、承知しています。私の考えと大臣の考え方は違うことも承知しています。しかし、大臣である以上、この九条についても憲法を尊重して、これに違反しちゃいかぬだけじゃなくて、その目的実現に力を尽くす義務があるというんですね。憲法九条論争をここでしようとは思いませんし、大臣も余り、大臣になった以上、余り言っちゃいかぬと言うつもりないでしょうから。しかし、やはりそういう義務が、大臣になった以上、発生しているんだということは自覚して、これから振る舞っていただかなきゃいかぬし、言動もそういう言動をしてもらわないかぬ。

 私は、だから、小泉さんがかなり乱暴なことを言っていることも根本問題あると思いますよ、この憲法九十九条からいって。だが、私は、ここは総理いませんから総理とは論争しませんが、そういう大変に、憲法尊重義務というのは非常に重いものだということを指摘しましたが、こういうコンメンタールの言葉ですが、どうでしょうか。

野沢国務大臣 委員の御指摘のような学説があることも私、踏まえまして、今後しっかりとこの問題には取り組んでいくつもりでございます。

木島委員 この問題はこのぐらいで、では切り上げましょう。憲法解釈の違いは、政治家によってそれは違うでしょう。しかし、大きな、通説的な憲法をどう見るかについては一致できるところが基本だと思うんです。だからこそ憲法改正のいろいろな論議もあるんでしょう。しかし、閣僚になった以上は、大方の、憲法はこういうことを言っているということが一致できる分は、自分の考えと違ってもその実現に向かって努力する義務があるんだということをひとつ自覚をして、これからの法務行政に当たっていただきたいということを重ねて要望しまして、質問にかえたいと思います。

 大臣が先日のあいさつの中で、殊のほか強調されたのが行刑改革の問題です。もう既に前国会、また前森山法務大臣のもとでも進んでまいりました。行刑改革会議が立ち上がって、今鋭意調査検討が進められてまいります。大臣は、行刑改革会議からの御提言を最大限尊重するとともに、国会からの御支援や御指導も賜りながら行刑の改革に邁進したいと考えておりますと。大変結構だと思うんです。ただ、私は、大臣、率直に言って、今の行刑改革会議の持っている限界といいますか、三つほど感じておりますので、聞いてほしいんです。

 一つは、行刑改革会議の調査検討には、同僚委員からも再三指摘されております、きょうも質問されましたが、いわゆる名古屋刑務所の三事案の真相解明は基本的にはさわらないと。それは裁判もあるでしょう。行刑改革会議の基本目的でもないんでしょう。しかし、それは、基本的にそこはさわらないで、論議を、調査を進めるんだという立場にあるようであります。それはそれで行刑改革会議としては仕方のないことなのかもしれませんが、私は、大臣、名古屋三事案のいい面、悪い面、真相を法務省として徹底的に明らかにしないと、刑務行政の本当の改革ができないということを私自身痛切に感じているんです。

 端的に言いますと、具体的にそれは何、どのことを言っているかというと、各刑務所と本省矯正局との関係なんですよ。率直に言いまして、明治以来百年を超える刑務所の歴史の中で、刑務所内で起こった問題は刑務所長が最高の責任と権限を持っている、そこで何が行われようと、それは刑務所以外の者には関与させない、それは場合によっては法務省本省矯正局長であろうとさわらせない、立ち入らせない、刑務所の中のことは刑務所長が全権を握っているんだ、そういう牢固とした状況がつくられてきているということを感じているんです、私。いいか悪いかは別ですね。しかし、現実、それはある。それだけに命がけの刑務行政をやっているという自負もあるんでしょう。

 だから、今回の名古屋三事案に関する真相解明についての法務省の調査によっても、いいですか、事件が起きたときの刑務所長本人からの事情聴取、できていないんですよ。真っ先に事情聴取するとすれば、関連した時期の刑務所長から事情聴取するというのは当たり前でしょう。もうおやめになりましたがね。できていないんですよ。病気ということもあるでしょう。事故もあったでしょう。しかし、そういう状況なんですよ。その背景にはそういうことがある。

 それから、正しい事実報告が刑務所から名古屋管区矯正局、あるいは本省矯正局に、あるいは法務大臣に上がらなかったという問題が大問題としてずっとあるわけです。うその報告がずっと上がり続けていたということがこの三事案にはあったわけですね。そういう問題がある。

 もう一つは、検察と矯正の関係も非常に不透明です。同僚委員からもそこが指摘されているわけです。

 そういうことをいろいろ考えますと、やはり本当に今ある刑務行政、矯正行政のうみを洗いざらい出していく、そして本当に問題点を浮き彫りにして、それを正していくには、やはり一般論でいろいろ問題を是正するだけじゃなくて、名古屋三事案で何があったのか、なぜそういう状況が生まれたのか、なぜ真実の報告が上に上がらなかったのか、突き詰めていかないと、私は、矯正行政は是正できないと思うんです。

 残念ながら、それは行政改革会議には手が出せない、手を出そうとしない分野ですから、これはひとつ、国会でもやりますが、法務省、法務大臣として、法務省矯正局として、そこまで切り込んで、大変なことだと思うんですが、この事案の改革には当たっていただきたいというのが一つなんです。

 それから、二つ目は、監獄法を改正しなくちゃいかぬと思うんです、これは。何しろ明治時代の法律がいまだに、法律としては生き残っているわけですからね。法務省の報告によりますと、法律が改正できないので、いろいろ通達とか、いろいろな行政で実質上中身を変えているんだと言っているわけですが、これは変えざるを得ないんですね。

 なぜ監獄法の抜本改正ができないのか。警察との関係だと思うんです。刑事施設法案と留置施設法案というのを、二つの法案を抱き合わせにして政府はずっと出し続けてきたからなんです。刑事施設法、監獄法を廃止して新しい刑事施設法をつくる、それだけならできるはずなんです。何で抱き合わせでしか政府は物を処せないかという根本問題が代用監獄にあるんですよ。代用監獄を死守ですよね、警察は。命がけで守り抜く、そういう前提に立っているからこれはだめなんですね。その呪縛を乗り越えないと、私は、本当の意味の監獄法改正、新しい、いろいろな諸問題を打開できる刑事施設法というのはつくれない。その弱点が、弱点といいますか、そういう限界が行政改革会議は持っているだろう。これは政治が乗り越えなきゃいかぬと思うんです。

 もう一つは、これは理屈の問題でありますが、刑務所の中で仕事をしている刑務官あるいは法務省矯正局、刑務所の側と、実際そこで受刑している受刑者との関係ですね。これは、行政改革会議で受刑者の法的地位についての論議が始まっていますが、私、率直に言いまして、牢固たる観点に立っていると思うんです。

 それは、特別権力関係だと思うんですよ。これはドイツ法をもとにして、刑務所の方と受刑者との関係は特別権力関係にあると。ちょうど学校も同じなんです。学校と子供たちとの関係は特別権力関係にある。要するに、何をやっても構わぬという発想ですよ。そういうドイツ法を継受して、そういう行政法の根本原理で戦前戦後の日本の行政法はつくられてきた、その一番悪い面が刑務所の中にあらわれている。そこの根本的観点を、原則を見直さないと、本当の意味の受刑者の人権を尊重した上でのいい行政はできないんじゃないかと思うんです。

 三点指摘しましたが、率直に大臣の所見を聞かせてください。

野沢国務大臣 私も法務大臣に就任してから、いわゆる名古屋三事案につきまして大変な資料を事務方からいただきまして、今一生懸命目を通しておるわけでございますが、この内容は、一つの事件あるいは事案ということよりも、今委員御指摘の、やはり司法行政、あるいは、基本的には現在ございます監獄法のあり方も含めて、しっかりやはりこれは議論しなければならない課題である、こう理解をし、これからも取り組む所存でございます。

 そのためにも、やはりこの真相の解明という点が何よりその前提になるだろうと思いますが、委員御承知のとおり、本件につきましては、現在名古屋の地方裁判所において裁判中でございますので、これに関しての解明は裁判所にお任せしているということで、行政の立場でできることにはおのずから制約がございますが、行刑行政全体を所管する法務省という立場がございますので、さきの国会における当委員会の決議を尊重しまして、矯正行政の責任を明らかにし行刑改革を実現するための行政上の調査を継続しているところでございます。

 今度の行刑改革会議の中身で、三事案を契機に顕在しました行刑行政に内在する諸問題につきましては、民間の方々の御見識、御意見をいただきまして、一切の聖域を設けず、さまざまな角度から御議論をいただいているところでございます。そのために、法務省といたしましては、この三事案に関する事項も含め、必要な資料を委員会あるいはこの研究会に積極的に提供いたしまして、今後とも努力してまいるつもりでございます。

 それから、先ほどの御指摘の中にありましたように、監獄法自身が明治四十一年制定ということの中で、抜本的な改正をほとんどしていないということも問題の一つとして挙げられておるところでございますが、御案内のとおり、昭和五十五年に法制審議会の答申を受けまして、刑事施設法案を策定し、これまで三度国会に提出しておりますが、まだ成立を見ずに来ておるところでございます。

 この代用監獄のあり方等につきましてはいろいろ意見がございまして、やはりこの成り行きにつきましては、私どもはさらに議論を詰め、国会等の御議論をいただきまして、方向を決めていかなきゃいけないな、かように思っております。昨今の犯罪の累増状況を考えますと、この問題につきましては相当抜本的にまた対応せざるを得ない課題と考えますので、今後ともひとつ御指導、御意見を賜りたいところでございます。

 それから、いわゆる受刑者と刑務所の矯正官との関係、これが特別権力関係と位置づけられているとの発想でございますが、確かに、旧来の考え方でありますと、この両者の権利義務関係が、十分、基本的な人権が保障されていたかどうか問われるところではございますが、私どもといたしましては、法治主義の原理に基づきまして、法令に基づき、適正にこれは規律されなければならないというふうに考えておるところでございます。

 現在、有識者による行刑改革会議におきましては、国民の視点に立った幅広い観点から行刑運営のあり方を抜本的に見直すための検討がなされておりますが、現行監獄法は国と被収容者との権利義務関係に関し、内容的には甚だ不十分なものであるということから、今後このあり方につきまして提言をいただきまして、監獄法の改正も視野に入れて検討を進めることになると考えておるところでございます。

木島委員 行刑改革会議が一切の聖域を持たずに改革のあり方を論議している、大変結構なことだと思うんです。

 それで、今、代用監獄のお話がありましたが、実はこれは、国際社会からはたび重ねて日本政府に対して、代用監獄を廃止せよという勧告が突きつけられている問題なんですね。

 私は、法務大臣が新たに就任されるたびに、自由人権規約B規約、いわゆる自由権規約といいますが、それに基づく国際人権委員会の日本政府に対する勧告、それの実施問題について、法務大臣に時間の許す限り問うて、実施方、要請をしてきたところであります。

 きょうはもう時間も限られていますし、今、代用監獄の問題に絞って、では私、さらに言いますと、これは一九九八年十一月十九日に、第四回日本政府の国際人権規約委員会に対する報告に対する勧告なんですね。その中でも、その前の第三回日本政府報告に対する勧告にも代用監獄の問題は指摘されましたが、今私が指摘した第四回政府報告に対する勧告でも厳しく指摘されているわけです。

 勧告の第二十三パラグラフ。「委員会は、」これは国際規約人権委員会です。「代用監獄制度が、捜査を担当しない警察の部局の管理下にあるものの、分離された当局の管理下にないことに懸念を有する。これは、規約第九条及び第十四条に基づく被拘禁者の権利について侵害の機会を増加させる可能性がある。委員会は、代用監獄制度が規約のすべての要請に合致されるべきとした日本の第三回報告の検討後に発せられたその勧告を再度表明する。」

 第三回政府報告に対する勧告を再度表明すると。もう恥ずかしいですよ。二度にわたって、日本政府、何もやっていないじゃないかと。第三回報告に対する勧告を出したのに、何にも日本政府はやっていない、だからもう一度言うんだといって、第四回の政府報告に対するこのような勧告が突きつけられているわけであります。

 国際社会の面ではもう決着済みじゃないか、一日も早く警察の圧力をはね返して、はねのけて、人権擁護の主管官庁である法務省として、法務大臣として、もう代用監獄は廃止に向かって一歩進むという立場に立って、日本政府としての取り組みをされるべきではないかと思うんですが、重ねて大臣の御所見を願います。

野沢国務大臣 委員が御熱心にこの問題に取り組んでおられること、大変敬意を表しておりますが、この代用監獄問題にかかわる課題につきましては、平成十年に出されたB規約人権委員会の最終見解において、代用監獄が捜査部門とは分離されているものの、警察から独立した当局の管理下に置かれていないこと等を指摘した上で、代用監獄制度がB規約のすべての要請に合致されるべきことを勧告されたと承知をいたしております。

 しかし、被疑者の勾留については十分な司法的コントロールがなされている上に、被勾留者の保護のための担保措置が既に十分に講ぜられているということから、代用監獄が警察と分離された当局の管理下にないことについての懸念は当たらないと考えております。

木島委員 どうも、その日本政府の認識、根本的な間違いだと思いますよ、私は。警察署の中に十三日間、あるいは二十三日間、拘禁され続けている、そのことが自白の温床になっているんですよ。もうそれは、大体法曹の世界では常識じゃないでしょうか。

 だから本当に、そういう自白偏重、そして拷問とまでは言いませんけれども、同じ警察署の中に閉じ込められている、そういう状況がどんなに人権侵害をし、また真実発見にも阻害になっているかということが指摘されているんじゃないでしょうか。だから、同じ警察署の中にいて、捜査警察官と留置のための担当警察官、それは別ですよ、だからいいんだという理屈はもう通用しないんですよ、大臣。

 だから、その答弁がもし法務省全体の答弁だとしたら、それは法務省としても根本的認識を変えなきゃだめじゃないでしょうか。どうですか、もう一回。

野沢国務大臣 私どもは、このルールにつきましては今後さらに検討を重ねまして、委員御指摘の適切な結果を得られまするよう、引き続きの努力をしてまいります。

木島委員 それでは、次の質問です。

 実は、国際人権法の問題で日本政府が問われている最大の問題は、国際人権規約B規約の選択議定書というものを批准していないということなんです。

 これはどういう問題かといいますと、人権侵害を受けたという日本の国内にいる人々が、最高裁まで争っても救済ができなかった、救済されなかった、日本の司法では救済されなかったという場合に、最後の手段として、国際人権規約に反しているということで、国際社会、具体的に言うと人権委員会です、に個人として救済の申し立てができる。それを認めるのが、いわゆる国際人権規約B規約の選択議定書なんです。それをいまだに日本政府は批准していないんですよ。

 これは、国際人権規約が日本政府によって批准されたそのときの国会で委員会の決議がありまして、選択議定書、個人救済制度ですね、選択議定書についても検討するということが委員会決議があるんですが、それからもう二十年以上たっても一向に進まない。これが最大の弱点なんですね。

 これは再々私は、この場を通じてでも、何で選択議定書を批准して個人が国際社会に救済を申し出ることを断ち切るんだ、批准すべきではないかということを要求し続けてきたんです。細かい論議は、私と法務省の当時の但木官房長との間で細かい論戦もありますが、これはやはり一歩乗り越えてもらわないといかぬと思うんです。

 法務大臣のまず所見を伺いたいと思います。

野沢国務大臣 御指摘のとおりの事態が続いていることにつきましては承知いたしておりますが、条約案件でもございまして、外務省所管ということにも相なっておりまして、私どもはその協議を受けて対応する立場にございますので、今後とも、この問題については、十分、人権を所管する省庁としての意見をしっかり出しながら対応してまいります。

木島委員 国際条約ですから外務省の所管なんだけれども、なぜ批准しないかの一番の根源は法務省と最高裁にあるんですよ。嫌がっているんだよ。一番嫌がっているのは最高裁なんですよ。最高裁が判決をした、その判決を不服として、人権を侵害されたとする個人が国際社会に申し立てをする。そうすると、そこでは何が審査の対象になるかというと、最高裁の判決が正しかったかどうかも審査されるでしょう。それを嫌がっているんですよ、単純に言うと。かつての、ここでの私と当時の但木官房長との論争を見ますと、何が問題かというと、やはり司法権の独立との問題だと言うんですね。

 もう一つは、仮に最高裁で申立人が敗訴した、しかし、国際社会に申し出たら訴えが救済された、そのときに、国際社会が救済を認めたその実効性はどうなるんだというような理屈を言って、そこがまだ調整ができていないんだというような理屈を言っているんですが、私は、理屈にならないと二つの理由を挙げました。

 一つは、国際社会の勧告は、最高裁に対してどうこうするということを命ずる勧告ではありません。日本政府に対する勧告です。もう一つは、それを受けるかどうかは義務じゃないんです、勧告を受けるかどうかは。政治判断ですよ。

 確かに、日本の最高裁は人権救済はしなかった。それは日本の法体系に基づいて判決を下されたんでしょう。しかし、それとは別の角度から国際人権規約委員会は判断をして救済を命じた。それを救済するかしないかは、日本政府の、国際社会に対する関係でやはりできることなんですよ、勧告どおりにやるかやらないかは。拘束されるわけじゃないんです。ですから、私は、司法権独立を侵害するからだめなんだという法務省が当時とり続けた理屈というのは通らないと言ったんですが、なかなかだめなんですね、いまだに。

 そこで、法務大臣どうでしょうか、司法権独立を侵すものじゃないということだと思うんですが、どうですか。

野沢国務大臣 確かに、委員御指摘のとおり、司法権の独立に対してこの案件がどういうふうに機能するかというやはり大きな根本的な課題を抱えている問題だと思っております。

 国際条約を尊重するか、あるいは国内法規を尊重するかというような課題もございますので、今後ともひとつ、私どもとしては、御指摘の関係機関と十分協議の上、適切な答えを出してまいりたいと考えております。

木島委員 それでは最後に、司法改革について一点だけ要望と質問をしておきたいと思うんです。

 司法改革の一番の勘どころというのは何かといったら、私は、国民の司法判断を受ける権利、要するに、国民の裁判を受ける権利をいかに広げるか、充実するかということだと思うんですね。司法を国民にいかに近づけるかということだと思うんです。

 そういうものとして考えますと、私ども、司法制度改革審議会が出してきた意見書は基本的に賛成の立場なんですが、賛成、反対、いろいろありますが、一点だけは、どうしてもこれは逆行していると思わざるを得ないのが、民事裁判での弁護士費用敗訴者負担の導入の問題なんです。

 もう時間も迫っておりますから、細かい理屈は言いません。しかし、この制度が導入されますと、権利救済を求める裁判を起こせなくなっちゃうんですよ、実際上。それは行政裁判だけじゃありません、労働裁判だけじゃありません。民民関係の損害賠償裁判だって、医療過誤訴訟なんというのは大変です。医療過誤の請求原因で損害賠償裁判を起こそうとすることは物すごい負担ですよ、原告にとって。そういう原告が本当に裁判を受ける権利がもうはなから抑え込まれてしまう最悪のものが、負けたときの弁護士費用の敗訴者負担の問題なんですね。これだけは絶対に導入したら逆行する、裁判を受ける権利の拡大、国民と司法との垣根を取り払う、そういう根本的な司法改革の目的に逆行すると思うので、これだけは何としても導入を食いとめてもらいたいと思うんですが、法務大臣の所見を求めたいと思います。

野沢国務大臣 御指摘のとおり、目下検討中でございますが、この弁護士報酬の敗訴者負担につきましては、司法アクセス検討会で鋭意議論をしていただいております。

 司法制度改革審議会は、「勝訴しても弁護士報酬を相手方から回収できないため訴訟を回避せざるを得なかった当事者にも、その負担の公平化を図って訴訟を利用しやすくする見地から、一定の要件の下に弁護士報酬の一部を訴訟に必要な費用と認めて敗訴者に負担させることができる制度を導入すべきである。」と提言しております。

 また、同審議会は、「この制度の設計に当たっては、上記の見地と反対に不当に訴えの提起を萎縮させないよう、これを一律に導入することなく、このような敗訴者負担を導入しない訴訟の範囲及びその取扱いの在り方、敗訴者に負担させる場合に負担させるべき額の定め方等について検討すべきである。」と提言しております。

 したがいまして、この制度の設計に当たりましては、同審議会意見の趣旨にのっとって、不当に訴えの提起を萎縮させることのないようにする必要があると考えております。

木島委員 時間ですから終わりますが、今の制度では不当に訴えを萎縮してしまうと。それは根本的に間違い。それは、今の民事裁判の制度の中でも、もし被告人の立場が間違いだったということになれば、交通事故の損害賠償請求の判決の中でも、原告に対して、原告が払った弁護士費用は判決の中で認めているんですよ。現行制度でも十分それは大丈夫なんですよ。

 ですから、あえてそんな制度をつくるということは、逆に不当に訴える権利を抑えつけてしまう、そういう効果しか持たないということをぜひひとつ認識していただいて、これだけはやめていただけるように再度要望いたしまして、終わります。

増田委員長 保坂展人君。

保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。

 まず、入管局長にお聞きをしたいのですが、さきの六月十一日に行われました法務委員会で、私は、高松にフィリピンから来られている研修生の皆さんが、企業側がその研修制度を悪用する形で、賃金の七五%が送金されてしまったり、その上、強制的に貯金をさせられたり、残業ということで非常に劣悪な状態に置かれているということが指摘をされて、それは指摘をされて当然なんです。しかし、問題は、その研修生が本国に帰国させられそうだと。本来であれば、その研修生たちは、みずから研修という制度の中で来日をしているのでありますから、これは、しっかり正しくこの制度が生きる職場に何とか探して働くようにするべきではないか、こういう指摘をしました。

 森山前大臣は、この人たちが実習を受けられるような方向で努力をしてもらいたいという答弁をされましたが、その後どうなっているでしょうか。

増田政府参考人 委員お尋ねの二つの会社の研修・技能実習に係る不正行為につきましては、研修生、技能実習生の責任を問うことが適切ではないと認められるケースであったこと、それから、研修・技能実習制度の趣旨に沿った適正な体制が確保されていると認められる新たな受け入れ機関が見つかったこと、さらに、研修生等の帰国後の就職に関しまして、我が国で習得した技術を帰国後に活用できるような体制が構築されたと認められましたことなどから、本邦で引き続き研修生等の在留を認めることといたしました。

 なお、受け入れ機関に対しましては、高松入国管理局から、近く正式な許可通知が行われる予定でございます。

保坂(展)委員 これは指摘をした点が、みずから落ち度のない研修生たちがこういった制度がゆがめて使われたことによって本国に送り返されるというようなことにならずに、そういうふうに改善されたということは評価をしたいと思います。

 なお、もう一問だけお聞きをしたいんですが、この問題、いろいろ調べてみますと、例えば、契約書が日本語もよく読めないのにつくられていたりとか、あるいは、労災などが起きたときに、いろいろ、労災を表面化させたくないということで泣き寝入りをさせられてしまっていたりとか、研修といっても、三年間日本で働いていて日本語も話せない、事実、座学などがないなど、そういった問題もわかってまいりました。

 そこで、入管局長に伺いたいんですが、こういった制度の中で、日本に来て一定の期間研修をする、実習をするという方たちに対する保護に関して、法整備が今後必要じゃないかと思います。こういった点をもう少し厳格にルール化して、このような問題の再発を防ぐという気持ちはございませんか。

増田政府参考人 委員が御指摘になりましたように、この研修・技能実習につきましては、かねてから、時々問題事案が発生しているということが指摘されているわけでございます。

 私どもといたしましては、受け入れ機関に対して、この研修・技能実習制度の趣旨についてその都度指導を強めているところでございます。

 今、法整備についてお尋ねを受けました。当面法整備を具体的に予定しているわけではございませんが、この制度についていろいろ問題が起こっていることは承知しておりますので、今後も法整備が必要であればそれも考えなければいけないという考えで対処してまいりたいと思います。

保坂(展)委員 しっかりやっていただきたいと思います。入管局長、退席されて結構です。

 次に、私たびたび、前国会におきます、刑務所、行刑施設の問題の中で医療問題を取り上げてまいりました。行刑施設の中の医療のあり方をめぐっていろいろ議論させていただいたのと、もう一つは、長らくの間自分は冤罪であるということを叫び続けた波崎事件の冨山さんの問題について、大変高齢でしかも人工透析を受けながら点滴で食事もできないというような状態になっているので、これは民間病院に移送するべきではないかという問いかけをし、そしてまた、春には、この法務委員会にも後に来ていただいた新葛飾病院の清水医師を伴う形で、冨山さん自身と私も面会をし、そして言葉のやりとりをいたしました。

 なお、衆議院法務委員会で東京拘置所、新しくできた拘置所を視察した際にも、集中治療室に、ガラス越しでしたけれども、彼が横たわっていて、頼んで声をかけてもらって、目と目であいさつをするということがありました。

 だんだん衰弱していくのかなという思いでしたけれども、残念ながら、九月三日ですか、法務省の方から亡くなったという通知を受けたんですね。大変残念なことだと思います。人には寿命がありますけれども、もし民間病院でもっと早く治療をしていたらという思いがいたします。

 実は、春に、四月の段階ですが、清水医師は、具体的に問題を指摘しているんですね。中心静脈栄養、点滴、これをやめて、自分で食べられるように移していくべきだ、そして、リハビリ、理学療法士による筋力強化や、やがて自力歩行に向かって後押しをしていくということがないと、行っていかないと、やがて、カテーテルより、これは透析の際のカテーテルより感染、敗血症などの合併症を起こして、死の転帰が訪れてしまうと思いますという予告までされている。

 矯正局長に伺いたいんですが、どうして民間病院に移送できなかったんでしょうか。彼の亡くなった原因は何なんでしょうか。

横田政府参考人 お答えいたします。

 民間病院への移送の件でございますけれども、一般論から申し上げますと、東京拘置所におきましては、被収容者について、拘置所の常勤医によって医療措置を実施するほか、施設内で適切な医療措置が実施できない場合には、外部の医療機関への通院や近隣矯正施設に勤務する専門の医師の共助等により対応しているところでございます。

 委員お尋ねの、死亡いたしました死刑確定者につきましても、本人の病状の推移や年齢等を考慮しながら、この東京拘置所の医師のほか外部病院の専門医も何人かでチームを組んでいただきまして、そして治療に当たっていたところで、これは委員も御案内のところだと思います。必要な医療措置が実施されて、適正な病状管理に努めていたというふうに理解しているところで、その状況は、折々、委員からお尋ねの際にもまた御説明しているところだと承知しております。

 死因のことですけれども、特定の被収容者の死因についてはこれはプライバシー、重要なプライバシーでございますので、この点についてはお答えを差し控えさせていただきたいと存じます。

保坂(展)委員 矯正局長、それはないんじゃないですか。

 法務省の記者クラブにあてて東京拘置所が出しているじゃないですか、発表のペーパーを。発表のペーパーを出しているんですよ、そのときに。それを読みますと、死亡者本人については、高血圧症及び慢性腎不全のため、病舎に収容、人工透析等を行い経過を観察していましたところ、次第に全身衰弱が進み、本日死亡に至りましたが、これまでの経緯から、慢性腎不全による死亡と考えられます。

 プライバシーだといって、発表しているじゃないですか。なぜ国会で言えないんですか。おかしいよ、そんなの。

横田政府参考人 東京拘置所がそのような発表をしたことは事実でございます。しかし、そこにおきましては、どなたが死亡したかということについての特定はしておりません。

保坂(展)委員 行刑改革で、少し、法務委員会におけるいわば矯正施設の中の密行主義というか秘密主義というもののあり方を問われたわけですね。そんな詭弁はないでしょう、これは。慢性腎不全で死亡と考えられますということは、冨山さんの亡くなった日に発表されているわけですよ、死刑確定者一人と。いないじゃないですか、ほかにそういう方は。ですから、冨山さんについて慢性腎不全による死亡というふうに発表したのは事実かと聞いているんですよ。

横田政府参考人 繰り返しになりますけれども、委員がお持ちのペーパーの内容の発表を報道機関に対して東京拘置所がしたということは確かでございますけれども、拘置所としては、これはプライバシーの問題にかかわりますので、特定人についてその氏名等を明らかにすることはしていないということでございます。

保坂(展)委員 おかしいね。冨山さんの民間病院への移送についてはお名前を挙げて答弁していますよ、そのときに、亡くなる前には。局長、議事録を見てくださいよ、答弁しているんですよ。だから、亡くなったときだけプライバシーが出てきてというのはおかしい。

 では、あえて言いますが、では、ここで発表している死刑確定者一名の方が慢性腎不全による死亡というのは、これは本当ですか。それで答えてください。

横田政府参考人 事実でございます。

保坂(展)委員 この発表を見て、当委員会にも来ていただいた清水院長がこんなメモを寄せてくれたんですね。これは明らかに不審死だから解剖しなければならない、なぜかといえば、人工透析を受けていれば慢性腎不全にはならないんだ、透析を受けていない場合にはこれはあり得る、したがって、冨山さんは心不全あるいは感染症などの他の原因があったのではないか、こう指摘しているんですね。

 確かにそうですよ。腎臓機能が低下してもうアウトだということで、人工透析で腎臓のかわりをするわけでしょう。ですから、慢性腎不全、それで死にましたというのはあり得ないんですね、説明として。

 例えば感染症の疑いはあったんですか。

横田政府参考人 感染症の疑いがあったという報告は受けておりません。

保坂(展)委員 名古屋の件もそうですけれども、しっかり報告してほしいんですね。これは私が二回、この件で、しっかりデータを出してくれと言ったら、データを出してくれましたよ、医療の方から。

 これを見ますと、九月十八日に医師団のチームが集まっているんですね。集まっていて、白血球が、八月二十日には五千八百だったのが、九月一日には一万を超えている。そして、CRP、炎症反応ですね、これが一・四から、正常値はたしか一以下ですね。一・四から四・五に八月二十七日にはなり、九月一日には何と十二・四になっている。これを見て、感染症の疑いありということで、カテーテルを交換するという結論を出したんじゃないですか。そうしたら、感染症によってその後、九月一日でこのデータがあって、そして九月三日に亡くなっているんだから、感染症の疑いがあるじゃないですか。どうしてそれを否定するんですか。

横田政府参考人 感染症であったという、そういう断定はされていないと承知しておりますけれども。

保坂(展)委員 では、このCRPが十二・四になったということはどういうことですか。

横田政府参考人 お答えします。

 数値としては、これは悪化しているということになります。しかし、委員お尋ねの死因との関係で申し上げるならば、この発表の方がそれが死因だということについては断定していないということでございます。

保坂(展)委員 これは時間がありませんから指摘しますけれども、局長、いいですか、十二・四というのは異常値なんですよ、これは。まずいと。このまま上がっていけば、これはもうそれこそ清水医師が予言したようなことになってしまうと。それでカテーテルを入れかえたんですね。入れかえた後のチェックをしていないわけです。だからわからないんですよ。矯正の医療の方から私が説明を受けたのは、感染症の疑いがあるとして九月二日にカテーテルの入れかえをしたんです。その後調べていないからわからないわけです。ですから、疑いは残るわけですよ、当然ながら。調べていないんですから。

 こうやって振り返ってみますと、この冨山死刑囚が自白をしていないんですね。私がやったということをしていない。それから決定的な物証も出ていない。四十年にわたって獄につながれて、そして私との会話も、何とか頑張るという話ですよね。再審請求を一回棄却されてもう一回出していた。それから、恩赦請求もしていましたよ、恩赦。こちらの方は、過去、福岡事件などで再審請求中に恩赦が認められたケースもありますよね。過去、死刑囚で民間病院に移送された方ももちろんあります。

 どうして、私はこの段階で、少なくとも九月――済みません、先ほど日付を間違えましたが、八月二十九日の医師団の会合のよって立って見たデータなんだそうですが、八月二十九日の段階で、医師団が何とかしなければいけないということを考えていたならば、その時点で民間病院に移送するべきだったというふうに思います。

 ところで、副大臣にちょっと伺いたいんですが、恩赦請求をこの冨山さんは出していたんですね。高齢で、人工透析で、寝たきりの状態になっている、もう恩赦で出してほしいという請求をしていたんですが、扱いはどうなっていたんでしょうか。

星野副大臣 お答えを申し上げます。

 実は、個別の具体的な案件については従来から回答を差し控えているところでございまして、御質問に対しては具体的な回答はいたしかねるところでございますが、このような、回答を公表しないということにつきましては、理由としては、私考えますに、やはり申立人並びに家族のプライバシーの問題、それから、御案内のように、中央更生保護審査会において恩赦相当か否かの判断がなされるわけでございますが、例えば、恩赦請求が公表されることによりまして何か議論が起きて、それによって中央更生保護審査会の中正、公平が損なわれるおそれがあるのではないか、そのように私は思うわけであります。

 そういうことで、一般論でありますけれども申し上げますと、恩赦の上申がなされた場合には、中央更生保護審査会において恩赦相当か否かの判断がなされますが、その審理中に本人が死亡した場合は審理終結の手続がとられるということで、状況についての回答は公表は差し控えるということでございます。

 以上です。

保坂(展)委員 結局何もわからなかったわけですが。

 初めて野沢法務大臣に伺います。死刑制度について、我々、超党派で議員連盟をつくっていまして、死刑制度調査会設置法という法律の準備を前国会してまいりました。きょう、今お聞きしますのは、この事件、波崎事件という事件の犯人として逮捕され、そして、私はやっていないと言って四十年再審を求め続けた冨山さんという方が、ついに亡くなってしまったわけですね。戦後四件の再審請求による冤罪が明らかになった事態がございました。私たちは極めて残念だと。なるべく、高齢であっても、御本人がしっかりと自分はやっていないということを言う機会を奪われてしまった、非常に無念なんですね。

 大臣の所感を伺いたい。

野沢国務大臣 御指摘のとおり、この冨山被告、死刑囚につきましては、判決後も再度にわたる再審の請求がございまして、今日まで延命され、そしてまた御本人も主張を続けられたことは私どもよくわきまえておるわけでございます。

 個別の内容につきまして具体的な言及は避けたいと思いますが、死刑のあり方につきましては、これからも国会内におきまして十分な御議論をいただいた上で対応すべきものと考えておるわけでございまして、理想としてのこの死刑問題、廃止問題につきましての成り行きにつきましては、私ども大変関心を持っておりますが、現行の日本の治安状況等を考えますと、相当これは慎重に判断せねばならないものと考えておるわけでございます。

保坂(展)委員 そこのところをしっかり国民的な議論を尽くさなければいけないというふうに思っております。

 残りの時間なんですが、民主党の石井紘基議員が亡くなってから、やがて一年になろうとしております。私の議員としては先輩に当たりますけれども、同じ委員会に属して石井議員の質問をお聞きしたり、あるいは超党派で、これは公共事業チェック議員の会というのをやっておりまして、ダムに行ったり、静岡空港あるいは神戸空港、そういう現場にともに行動をしたという間柄でもございました。また、地元でさまざまな会合あるいは行事などで席を同じくするときも大変長かったんですね。

 そういう意味で、私は自分の議員会館の部屋であのニュース速報を見ましたが、全く血の凍る思いで受けとめました。何ということが起きたんだろうということで、心から追悼の気持ちを込めながら、やがて一年ですから、この事件について幾つかお尋ねをしたいと思います。

 警察の方に来ていただいていると思います。では、警察の方からちょっと幾つかお答えをいただきたいと思いますけれども、石井議員がこうした襲撃に遭ったのは、十月二十五日の十時三十五分ごろということで間違いないでしょうか。その後、二点聞きたいんですが、一一〇番通報、そして東京消防庁に転送された時刻ですね、何分ごろだったか、今おわかりなら答えてください。

栗本政府参考人 お尋ねの件につきまして、この事案につきましては、昨年の十月二十五日の午前十時三十五分ごろと考えておりますが、それは、その後の午前十時三十六分に一一〇番通報によって認知いたしているところでございます。(保坂(展)委員「消防庁は」と呼ぶ)ちょっと……

保坂(展)委員 何か当時の発表だと、十時三十六分にまず一一〇番通報を受けて、八分後の十時四十四分に東京消防庁に転送されたというふうに発表されているようなんです。

 これでお尋ねですけれども、今、襲撃を受けたというようなことで一一〇番したときに、自動的に一一九番に同時に転送されるという仕組みにはなっていないんでしょうか。

栗本政府参考人 大変申しわけありませんが、急なお尋ねでございまして、私、不正確な答弁は控えたいと思いますので、後ほど調べてお答えさせていただきたいと思います。

保坂(展)委員 もう一つ伺いますけれども、こういった場合、もちろん事件の真相解明も大事ですけれども、まずは救命措置、これが最優先されなければならないと思います。当然ですよね。

 この経過なんですけれども、警察車両の方が先に現場に着いて、しかも何台もの車が捜査のために集結をした。しかし、救急車は後から来てしまったので、入ってくるのに、その車両を移動したりということで大変手間取ったということを聞いているんですけれども、これは本当ですか。

栗本政府参考人 今の具体的なお伺いにつきまして、ここに参ります前に前もって確認をいたしておりませんので、これにつきましても、また調査した上で御報告したいと思います。

保坂(展)委員 では、後ほど聞きます。

 そして、もう一つは、例えば犯人の逃走する姿を目撃した人とかいうことについて当然捜査されたんだと思いますし、また、報道によれば、その日の朝、一時間前にインターホンが鳴って、枝が垂れているということから始まって、植木屋であるということに、娘さんが応対されたというようなことも証言されているんですね。何かそういった、事件との関連などが疑われるというような指摘もありましたけれども、そういった証言などについても、先ほどの目撃証言とか、調べられてきたんでしょうか。

栗本政府参考人 当然、先ほどの、事件を認知した後につきまして、関係被疑者の取り調べはもちろんでありますが、現場での地取り捜査をやっておりますし、また、いろいろ寄せられました情報につきましては、一つ一つ慎重に裏づけ捜査も行っているところでございます。

 今お尋ねの、委員御指摘の情報についても、警視庁においては、捜査を行った上で最終的には、既に公判中でございますが、当時捜査を行った者について単独犯として検挙、送致したというように聞いております。

保坂(展)委員 公判が進行中ということで、そこは意識して質問を続けますけれども、被疑者の、いわばこの人かどうかという、俗に言う面割りというんですか、これは公用車の運転手さんのみが行って、事件を目撃したはずの御夫人だとかはされなかったとも聞いているんですが、それは本当ですか。

栗本政府参考人 ただいま御指摘の、具体的にどういう方から面割り等をやったということについては確認いたしておりませんのでわかりませんが、当然、私も現場で捜査に携わった者として、先ほど申し上げましたように、捜査を徹底する意味でそのようなものは当然やっていると思われますが、具体的にどなたから確認したかについては承知しておりません。

保坂(展)委員 捜査の常識に照らせばそれはやっているはずだということだと思うんですね。後で教えていただきたいと思います。

 そして、この事件のニュースは、大変衝撃を持って、私ども同僚議員あるいは国民幅広く衝撃を与えたわけですよね。石井議員は、さまざまな特殊法人問題であるとか利権の問題だとか、いろいろ追及をし、また調査をされる、そういうことをやりました。

 背後関係は一体どうなんだろうかということが大変話題になりましたけれども、捜査本部には公安三課も入って解明に当たったという新聞報道などもありましたけれども、背後関係についてはどうだったんでしょうか。

栗本政府参考人 この事件につきましては、先ほど委員御指摘のように、本当に許しがたい重大かつ凶悪な事件と認識をいたしまして、警視庁においては、即日、特別捜査本部を置いて捜査を行ったわけでございます。

 その中におきましては、事案の全容解明という観点から、当然、組織性なり、その背景、動機、これについても徹底した捜査を行ったわけでありますが、その結果、この事案については、個人的な問題に起因いたします逆恨みによる犯行であったという報告を受けているところでございます。

保坂(展)委員 その後の新聞報道などで、かなり長いこと石井議員はねらわれていたという報道がございました。つまり、十月に事件が起こりましたけれども、それ以前からと。例えば、そういった情報は事前に得られて、身辺警護などを検討したというようなことはなかったんでしょうか。

栗本政府参考人 今の、具体的な情報に基づいて身辺警護等を行ったということにつきましては、ちょっと主管をいたしておりませんで、私の立場で現時点で責任を持ったお答えをできないことを御了解いただきたいと思います。

保坂(展)委員 きのうの午後からいろいろ準備をしてみて、ちょっと思い当たったことがあるんですが、私は、この事件は、先ほど言ったように、テレビのニュース速報で知りました。そして、お昼ぐらいだったかと思いますが、大変な騒ぎになりましたもので、新聞記者から電話がありました。そして、被疑者の名前を記者は言って、この名前の人物を知っているかという問い合わせがあったんですね。これは事実です。そのほかの方に聞いてみても、早い場合には十一時過ぎには国会周辺でその被疑者の名前が挙がっていた、実行犯は彼ではないかと。これはどういうことでしょうか。

 つまり、単独の怨恨ということで、みずから単独で、他に知り得る者がいなくて行われたとするならば、どうしてそんなに早くその情報が駆けめぐったのかということについて何が考えられるでしょうか。

栗本政府参考人 ただいま御指摘の委員の周辺においてどのような情報が寄せられたかと。大変、私、確認いたしておりませんのでそれについてはわかりませんが、先ほど申し上げましたように、本件捜査については、先ほど申し上げた、背景、動機等、あるいは組織性がないのか否かという観点からも徹底した捜査を行っているところでございます。その結果、先ほど申し上げたような動機において送致をし、既に起訴され、また、その内容については、現在公判の中でその辺が大変重要なポイントとして大きな重きを持っていると思っておりますので、答弁を差し控えさせていただきたいと思います。

保坂(展)委員 刑事局長、私がお聞きしたいのは、名前を聞いたんです、直後に。びっくりしましたね。こういった事件の場合、なかなか、もう逃走した後ですから、捜査が難航したりとかいうこともあり得るというふうに思っていましたので。その名前がわかったと。しかし、その名前がわかった時間が余りにも早い。

 一般論でも構わないですから答えていただきたいと思うんですが、もし、こういった事件が起きた直後に名前が出るということは、事件そのものかあるいは事件につながる危険性、可能性について事前にだれかが知っていたという可能性はないですか、そういうことは考えられませんか。余りにも早く名前が出たということについて非常に不可思議に思っているんですが、その点は、例えばそういうことも含めてお調べになったということはありますか。

栗本政府参考人 御指摘の委員の情報そのものにつきましては、先ほど来御説明しておりますように、掌握しておりませんが、当然、警察の捜査の中では、被害者の方に関する周辺の捜査を徹底いたしますし、先ほど申し上げたように、動機の観点からの捜査も進めます。その意味において、結果的には、現在の被告人である当時の被疑者については、被害者の方との関係において面識があるという関係でございますから、そのような中で何かそのような情報が駆けめぐったか否かについては、あくまでも推測でありますが、そういうことがあるとすれば、それはそうなんだろうと思っております。

保坂(展)委員 もう一点。これはもう法務大臣に直接、今のやりとりを踏まえて聞きますけれども、公判において真実が明らかになるということを期待するところですけれども、国会議員の議員活動あるいは調査あるいは発言、こういうことに伴って生命が奪われるような暴力が襲いかかってくるとしたら、これはまさに暗黒時代ということになります。

 なお、幾つかの点について、この事件の真相を、本当に公訴事実以外にしっかり徹底した捜査が行われたのか点検をして、さらに全容解明に尽くしていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。

野沢国務大臣 石井紘基議員の遭難につきましては、私も大変ショックを受けた一人でございます。

 日ロ友好議員連盟の行事で一緒にモスクワへ御同道をしたこともございまして、日ごろから石井議員の社会正義、社会の公正公明な進め方につきまして大変御熱意を持って取り組んでおりますことに、かねてから敬意を持っていたものでございますが、このような事件が起こりますと、私ども、同じ道を歩む政治家として、大変これは厳しい状況がある、命をかけても行うべきことがあるんだということで、改めて私どもの覚悟を思い起こした次第でございますが、御指摘のとおり、とにかく、政治の仕事を進めるに当たって、このような危険が、危害が二度とあってはならないと、改めて思いを新たにしているところでございます。また、ともども、ひとつ考え、御相談をしながら、問題の再発防止に努めたい、かように思っております。

保坂(展)委員 先ほど、委員長からの発言を受けた形で大臣が、当委員会で行刑問題でいろいろ議論すると。しかし、そうすると、不可思議なことが起こるというようなことに対して、それは大変問題だと私は思っているんですね。

 ですから、この石井議員の事件の真相究明ももちろん徹底してやっていただきたいし、また、事前に何かおかしな動きなどがあった場合には、しっかり安全を確保するということを法務大臣としてしっかりやっていただきたい。今後の問題も含めて、決意を伺いたいと思います。

野沢国務大臣 御指摘のとおりと考えております。

保坂(展)委員 裁判官、検察官の問題について、第一線の裁判官、検察官は一生懸命、大変過酷な条件の中で頑張られていると思いますが、実は五月に、小泉総理に当委員会に来ていただいたときに、事務次官以上の給料、俸給を得ている方が、裁判官で二百六十二人、検察官で六十七人、計三百二十九人という指摘をいたしました。それに対して小泉総理は、かねてより、給料やあるいは退職金で優遇され過ぎているという批判もあることは承知をしています、今後見直しが必要だと思っていますが、国会や委員会でぜひ御議論いただきたい、こういう答弁をされているんですが、この答弁を受けて、法務省内で、あるいは大臣としてどのようにお考え、また行われているかどうかということをお聞きしたいと思います。

野沢国務大臣 御指摘の総理の答弁は、司法制度改革が行われていることを念頭に置きつつ、裁判官や検察官の給与のあり方についても必要な検討が行われるべきであるとの趣旨でなされたものと承知しております。

 この点については、司法制度改革推進計画に基づきまして、裁判官の報酬の段階の簡素化等について検討がなされており、また、より一般的には、公務員制度改革を初めとするさまざまな場面において、国家公務員の給与のあり方についても議論がなされているところであると承知しております。

 裁判官及び検察官の給与は、その職務と責任の特殊性にかんがみ、基本的にはそれぞれ適正妥当なものであると考えているところでありますが、今後、これらの司法制度改革や公務員制度改革の動向等を踏まえつつ、さらに適切な検討が加えられるべきものと考えております。

保坂(展)委員 私は、幹部というか、高額な給与をもらっている方たちのレベルが変わらないとすれば、大幅な増員ということも難しくなるのではないか、そこはやはり抜本的に見直すべきだということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

増田委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

増田委員長 これより両案を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。瀬古由起子君。

瀬古委員 私は、日本共産党を代表して、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案に対する反対討論を行います。

 反対の第一の理由は、裁判官の報酬を減額することは、憲法で保障された裁判官の身分保障の規定に反するからです。

 裁判官の報酬については、憲法第七十九条、第八十条において、「裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。」と規定されています。

 これは、就任当時に約束された報酬額を在任中は保障するという趣旨です。裁判官は、その職務の特殊性及び責任の重大性から見て、高い教養と清潔、公正、豊かな人間性が強く求められ、期待されており、経済的な面から裁判官の独立を侵されることがないよう配慮しているものです。本法案の報酬の減額は、憲法で保障された裁判官の独立を脅かすものであり、強く反対いたします。

 反対の第二の理由は、本法案が準拠した人事院勧告が国家公務員給与の引き下げを勧告した点であり、到底認めるわけにはいきません。

 人事院勧告制度は、本来、憲法で保障された労働基本権を、公務員ということを理由に剥奪、制限したかわりに導入された代償措置であります。人事院が、公務員の利益を図るどころか、利益を害するような勧告をするのであれば、もはや代償措置とは言えず、無用な機関となってしまいます。

 国家公務員の給与の引き下げは、地方公務員や特殊法人など公的部門の給与引き下げ、さらに民間企業の給与引き下げの圧力につながるものであり、社会全体の所得水準を引き下げ、一層の消費の落ち込みを招き、景気対策に逆行し、この点からも反対です。

 反対の第三の理由は、今回の人事院勧告実施が、給与引き下げを四月にさかのぼって適用し、年末調整で精算するという点です。このような手法は、民間でも行われておらず、不利益遡及の脱法行為と言えるものであり、認めるわけにはまいりません。

 以上、反対の理由を述べ、討論といたします。(拍手)

増田委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

増田委員長 これより採決に入ります。

 まず、内閣提出、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

増田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 次に、内閣提出、検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

増田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

増田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

増田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三十分散会




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