衆議院

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第8号 平成16年3月31日(水曜日)

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平成十六年三月三十一日(水曜日)

    午前十一時七分開議

 出席委員

   委員長 柳本 卓治君

   理事 塩崎 恭久君 理事 下村 博文君

   理事 森岡 正宏君 理事 与謝野 馨君

   理事 佐々木秀典君 理事 永田 寿康君

   理事 山内おさむ君 理事 漆原 良夫君

      小西  理君    左藤  章君

      佐藤  勉君    桜井 郁三君

      中野  清君    早川 忠孝君

      保利 耕輔君    松島みどり君

      水野 賢一君    森山 眞弓君

      保岡 興治君    柳澤 伯夫君

      山際大志郎君    泉  房穂君

      大島  敦君    鎌田さゆり君

      河村たかし君    小林千代美君

      小宮山洋子君    辻   惠君

      中井  洽君    中村 哲治君

      松野 信夫君    村井 宗明君

      上田  勇君    富田 茂之君

      川上 義博君

    …………………………………

   法務大臣         野沢 太三君

   法務副大臣        実川 幸夫君

   法務大臣政務官      中野  清君

   最高裁判所事務総局総務局長            中山 隆夫君

   最高裁判所事務総局人事局長            山崎 敏充君

   最高裁判所事務総局刑事局長            大野市太郎君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  貞岡 義幸君

   政府参考人

   (司法制度改革推進本部事務局長)         山崎  潮君

   政府参考人

   (警察庁長官官房長)   吉村 博人君

   政府参考人

   (警察庁長官官房総括審議官)           安藤 隆春君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 米村 敏朗君

   政府参考人

   (警察庁情報通信局長)  大村  優君

   政府参考人

   (防衛庁防衛局長)    飯原 一樹君

   政府参考人

   (法務省大臣官房長)   大林  宏君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    房村 精一君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    樋渡 利秋君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    横田 尤孝君

   政府参考人

   (法務省人権擁護局長)  吉戒 修一君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  増田 暢也君

   政府参考人

   (公安調査庁長官)    大泉 隆史君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 齋木 昭隆君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           清水  潔君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           渡辺 芳樹君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           谷口 克己君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房技術参事官)         中尾 成邦君

   政府参考人

   (国土交通省海事局次長) 馬場 耕一君

   政府参考人

   (海上保安庁警備救難部長)            坂本 茂宏君

   法務委員会専門員     横田 猛雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月三十一日

 辞任         補欠選任

  枝野 幸男君     村井 宗明君

  加藤 公一君     大島  敦君

  河村たかし君     中村 哲治君

同日

 辞任         補欠選任

  大島  敦君     加藤 公一君

  中村 哲治君     河村たかし君

  村井 宗明君     枝野 幸男君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 判事補及び検事の弁護士職務経験に関する法律案(内閣提出第七〇号)

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

柳本委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、判事補及び検事の弁護士職務経験に関する法律案を議題といたします。

 本案につきましては、昨三十日質疑を終了いたしております。

 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、判事補及び検事の弁護士職務経験に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

柳本委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

柳本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

柳本委員長 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官貞岡義幸君、司法制度改革推進本部事務局長山崎潮君、警察庁長官官房長吉村博人君、警察庁長官官房総括審議官安藤隆春君、警察庁長官官房審議官米村敏朗君、警察庁情報通信局長大村優君、防衛庁防衛局長飯原一樹君、法務省大臣官房長大林宏君、法務省民事局長房村精一君、法務省刑事局長樋渡利秋君、法務省矯正局長横田尤孝君、法務省人権擁護局長吉戒修一君、法務省入国管理局長増田暢也君、公安調査庁長官大泉隆史君、外務省大臣官房審議官齋木昭隆君、文部科学省大臣官房審議官清水潔君、厚生労働省大臣官房審議官渡辺芳樹君、国土交通省大臣官房審議官谷口克己君、国土交通省大臣官房技術参事官中尾成邦君、国土交通省海事局次長馬場耕一君及び海上保安庁警備救難部長坂本茂宏君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

柳本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

柳本委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局中山総務局長、山崎人事局長及び大野刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

柳本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

柳本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。水野賢一君。

水野委員 おはようございます。自由民主党の水野賢一でございます。

 さて、本日まずお伺いをしたいのは、入管の問題について、とりわけ日本の表玄関であります成田空港の入管の問題について、最初にお伺いをいたしたいと思います。

 特に、実川副大臣と私は成田空港の問題について一緒に取り組んでまいりましたし、副大臣は、成田でお生まれになって、三里塚小学校そして成田高校をお出になり、成田の問題については身をもってずっと体験してこられた。そういう意味では非常に思い入れがあると思いますので、この問題については実川副大臣にお伺いをいたしたいと思います。

 新東京国際空港公団が、昨年の十一月に、お客様の満足度調査というのを行ったわけですね。外国人のお客様に対して満足度の調査を行った結果、それが今月になって発表されているんですけれども、それを見ると、二年前に行った同じような調査に比べるとちょっと満足度は下がってはいるんですが、総じて満足度は比較的高いというふうには言えると思うんです。千点満点にして、出発時の満足度が八百三点、到着時が七百八十九点ということで、総じて合格ラインかなというふうには言えると思うんです。

 ただ、この調査の中で際立って満足度の低い分野というのが、特に到着時におけるところの入国手続に対しての満足度が非常に低いんですね。今申し上げたように、到着時の満足度全体としては千点満点で七百八十九点なんですが、入国手続に対してだけ見ると六百五十一点で、この項目が非常に低いんですね。

 よく成田の場合は、都心から遠くて不便だとかいうような、そういうアクセス問題なんかも言われますけれども、このアクセス問題についての点というのは八百五点というふうに結構高いんですけれども、それに比べても、はるかにこの入国手続に対しての満足度が低い。これはやはり入国審査に時間がかかるということがあるのではないかと思います。

 一方において、今、こういう中で、犯罪者とかテロリストとか、そういうような疑惑のある外国人を水際でとめなきゃいけないという点があるのは当然でございますし、手抜きをしていいなどということは全然ないんですけれども、しかしながら、むだに時間がかかるというようなことはやはり改善をしていく必要があるだろう。

 成田空港は日本の表玄関であるということは、外国からのお客様からすれば日本に対する第一印象を受ける場でもあるわけですから、入国審査に時間がかかり過ぎるというような不満の改善策などについて、どういうようなお考えを持っていらっしゃるか、どういう対策をとってこられたか、お伺いをしたいと思います。

実川副大臣 委員も成田空港は地元ですし、また私も今御指摘ありましたように地元なんですけれども、特に水野先生、この成田空港には大変関心を持っているというふうに思っております。

 今御指摘がありました満足度の調査でありますけれども、例年行っておりますけれども、少しずつではありますけれども改善されているというふうには承知しております。

 私もこの調査票を見ておりますけれども、特に外国人の皆さん、満足度が低かったということは以前からあったことは指摘されておりますけれども、このような状況を踏まえまして、法務省では、昨年の十二月の十七日から、審査待ち時間の表示でありますとか、日本人審査担当者とまた外国人審査担当者の弾力的な振り分け、そして高齢者等に対します優先審査の実施等、これらの措置を講じております。

 また、法務省といたしましては、今後とも成田空港におきます出入国手続の円滑化また迅速化に努めてまいりたい、こういうふうに思っております。

水野委員 そういうような対策をとられたということは私も非常に高く評価をするわけですけれども、あと、今後、この対策によってどれだけ待ち時間が緩和されたのかということ、どれだけ実効性が上がったのかということを検証していく必要があると思うんです。これは今後の課題ということだと思うんですが、その辺について、検証していくという意気込みというかお考えを伺いたいと思います。副大臣。

実川副大臣 今御指摘の検証する必要があるではないかということですけれども、当然、対策のフォローアップは重要であるというふうに承知しております。

 入国管理局成田空港支局の調査によりますと、これまで成田空港におきます入国審査待ち時間につきましては、昨年の十二月に実施した調査では最長の待ち時間が四十四分でありましたけれども、この一月には四十分、そして二月には三十四分と短くなっております。

 法務省といたしましても、今後とも継続的にフォローアップを行うとともに、いろいろ工夫を重ねながら、審査待ち時間の短縮に努めてまいりたい、このように考えております。

水野委員 入管の役割というのは、やはり一方で、不当な目的を持って日本に入国をしようとする人間を水際で阻止するという役割があるわけですね。一方で、正当な目的を持って入国されようとする方に対しては迅速な受け入れを可能にするというような目的があると思うわけですけれども、この両方の点から考えても、入国審査官の増員というのはやはり必要だと思うわけですね。

 今の待ち時間の緩和ということにも、やはり入国審査官の増員ということは重要だと思うわけですけれども、とりわけ表玄関でありますところの成田空港についての入国審査官の増員、これも大切な問題だと思うんですけれども、副大臣、どのようにお考えでしょうか。

実川副大臣 御指摘のとおり出入国管理は、円滑な外国人の受け入れ、またテロリスト等の問題のある外国人の厳格な水際阻止の双方を重要な使命としております。この二つの重要な使命を十分に果たしていくためにも、かねてから出入国体制の強化に取り組んでおりますけれども、いわゆる観光立国の推進でありますとか、不法滞在者対策の実施が、ともに我が国の喫緊の課題となっております。引き続き、入国管理局の総合的な体制の強化に努めてまいる所存でございます。

 今御指摘のありました増員の件でありますけれども、十六年度につきましては、定員、百六十八名の増員と見込まれております。まだ足りませんので、これからも働きかけていきたい、このように思っております。

水野委員 さて、やはり入管に関係する質問ではありますけれども、北朝鮮、万景峰号関係についての質問に移りたいと思います。

 万景峰号、毎年約二十回ぐらい日本の港に入っている。昨年は十回でございましたし、ことしも入港しておるわけですけれども、この船が入港したときというのは、これは参考人で結構ですけれども、入管としてどのような対策、どのような対応をしているのかをお聞かせいただきたいと思います。

増田政府参考人 入国管理局におきましては、万景峰92号が入港した際には、関係省庁とも連絡して、法令に基づく出入国審査等を厳正に実施しております。

 具体的には、入国審査官が船に臨船いたしまして、乗客の入国審査を実施いたしますとともに、乗員につきましては原則として上陸禁止措置をとっております。それから、入港してから出港するまでの間、二十四時間体制で船舶の乗降口に、舷門立哨と呼んでおりますけれども、職員、入国審査官を配置しておりまして、船に訪ねてくる人の乗船、下船の確認に万全を期して、不法上陸、不法出国の防止を図っております。

水野委員 それだけの体制を整えるためにはなかなか人数も要るわけですけれども、特に昨年あたり、入管の職員を、ほかからも応援を出して新潟に送ったなどという話も報道されておりましたけれども、昨年もしくはことしの入港のときには、現場で対応した入管の職員の数というのはどのぐらいの人数で対応したのか、中野政務官、お伺いしたいと思います。

中野大臣政務官 水野委員の御質問にお答えいたしますが、昨年八月に万景峰92号が入港した際には、御承知のとおり、外国の船舶が入港するときの船の安全基準、これを、検査を行うところのポートステートコントロール、いわゆるPSCですか、これを実行したときがございます。その際には、東京入国管理局から四十数名を現場に応援派遣いたしまして、また現地の、新潟の出張所等を加えまして、総勢約五十名体制で出入国審査等を実施したわけでございます。

 以後、応援を含めて大体四十名ぐらいでやってまいりまして、また昨年の十一月からことしの一月は、東京入国管理局から十数名を応援派遣いたしまして、総勢約二十名という体制で出入国審査を実施したわけでございます。

 法務省といたしましても、法令に基づくところの出入国審査を適正に実施いたしまして、不法上陸及び不法出国の防止を確実に行うために万全の体制でやっているつもりでございますので、よろしく御理解願いたいと思います。

水野委員 今、応援の体制も整えて万全の体制をとっていらっしゃるということだと思うんですけれども、これは今非常に、特におととしの日朝首脳会談以降、万景峰号の実態というのが明らかになってきた。これは最大の不審船であり、最大の工作船であり、現金輸送船だ、もしくは工作員の指示などもこの船を使って行われた、送り込みも行われた、こういうようなことが次第にさまざまな証言などから明らかになってきて、そういうような体制を整えていらっしゃるとすると、この船というのは、名前にあるように、万景峰92という名前が象徴しているように一九九二年から航海を始めているんでしょうけれども、例えば九〇年代のころ、そのころというのは現在と同じような体制できちんと入管の手続をしていたのか、当時は人数的なことでいうとどういう規模で入国審査をやっていたのか、そのあたりをお伺いしたいと思います。

増田政府参考人 一昨年以前につきましては、その時々の国際情勢等を踏まえて適切に対応してきたところでございますが、通常は入港ごとに新潟出張所の職員五名程度で対応し、必要に応じ、これに加えて適宜応援職員を派遣しているという実情でございました。

水野委員 そういう意味でいうと、当時はこの船に対しての検査体制というのが今に比べればずっと甘かったということ、これは間違いないわけですよね。今、昔のことを言ってもしようがないんですけれども、今後しっかりとした対策というものを望みたいと思うわけです。

 ちょっとお伺いしたいのは、万景峰号というのは貨客船で、日朝間を行き来する船の中の一番シンボリックなものになっておりますけれども、日朝間を行き来している船というのはこの船だけじゃないわけですよね。むしろ、延べにすると年間千隻ぐらいある。ほとんどは貨物船ということになるわけですが、客を、往来をしていない貨物船であっても、入管の審査の対象ではあるわけですよね。これは確認です。

増田政府参考人 おっしゃるとおり、万景峰92号以外の船舶であっても、乗員が乗船してきておりますから、そういった船舶の乗員に対し、入管では原則としてこれまで乗員上陸許可を禁止してきた、許可を行ってこなかったということがございまして、船舶運用上の用務、例えば航海部品を購入するとか、あるいは喫水線の確認立ち会いなど上陸の必要がある場合には、厳格な管理を行った上で例外的に必要最小限度の乗員上陸許可を行ってまいりました。

 以上でございます。

水野委員 これだけ、年間約千隻来ているという中で、これをすべて検査していく、もちろんそれが一番望ましいことには違いないんでしょうけれども、必ずしもその体制というものは、やはり人的な面などからいっても非常に厳しい部分もあるというふうには思うわけであります。

 そういう意味において、私は、必要性があるならば、必要性があるときには北朝鮮船を入港禁止できるような、つまり、いろいろな不正な上陸、不正な貿易、さまざまな工作活動などをもとから断つためには、入港禁止法というようなものが必要だと思っておりますし、今自民党の中でもそれは議論をしておりまして、入港禁止法については、自民党の中でいいますと部会での承認を既に得たということになります。

 これは外務省の参考人にお伺いをしたいんですけれども、こういうような、入港禁止法のようなものを持つということは、外交カード、北朝鮮との交渉においての外交カードということで意義深いのではないかというふうに私は思いますけれども、外務省としてどのようにお考えでしょうか。

齋木政府参考人 お答えいたします。

 委員御案内のように、政府として、北朝鮮との関係は、対話と圧力という基本方針のもとにこれまでもやってきておりますし、またこれからもその方針を堅持していくわけでございますけれども、それによって、北朝鮮をめぐる諸問題、いろいろな問題、日本との関係で抱えているような問題についての解決を目指していく、そういう方針でございます。

 そういう中で、今委員が言及されました特定の船舶入港禁止法案でございますけれども、これは、自由民主党、公明党等々の各党で、またそれぞれの党の間で立法が今検討されておるというふうに私どもも伺っております。そういう検討は、私ども政府に対して、新たな外交政策上の手段としてこれを使え、あるいはカードとして使いなさい、そういう観点から今そういう検討がなされているものだというふうに理解しております。

 ちなみに、北朝鮮側も、この法案につきましては、平壌放送とか労働新聞等々のメディアを通じまして、いろいろと対外的に批判的に言及しておりまして、そういう言及ぶりを我々もフォローしておる限りは、北朝鮮当局もこの法案については非常に気にかけている、大きな関心を払っているのであるというふうに理解しております。

水野委員 北朝鮮がそれだけ気にしているということであれば、それだけ圧力のカードになり得るのではないかというふうに私も思うわけですけれども。

 さて、この法律というか入港禁止に関して言うと、かつてテポドンが発射をされたようなころに、入港禁止できないのかというような議論があったんですね。そのころによく言われたのが、港湾法の第十三条などで不平等な取り扱いをしてはいけないというような規定があるので、だからできないんだ、そういうような議論が実は当時あったわけであります。

 そこで、ちょっと確認をしたいんですけれども、港湾法の十三条というのは確かに不平等取り扱いの禁止というのを定めてはいるんですけれども、これは港湾施設を利用するときの、不平等に取り扱っちゃいけないという、例えば、ある船に対してはとんでもない高い入港料を取ったり、施設の使用料を高く設定したり、ある船に対しては安くする、そういうような不平等をしてはいけませんよという至極常識的なことを定めているだけのことであって、何もこの規定というのは、ありとあらゆる船舶を入港させなきゃいけないとか、すべての船舶を平等に入港させるということを保障した規定ではないというふうに理解をしておりますけれども、これは国土交通省の方にお願いしたいと思います。

中尾政府参考人 港湾法についてお尋ねがありましたので、お答えいたします。

 港湾法は、港湾の適正な管理と運営を図ることを目的とした法律でございまして、公共施設である岸壁などの港湾施設の利用につきましては何人に対しても不平等な取り扱いをしてはならない、そういうふうに規定されております。ただし、例えば、岸壁の水深を上回る大型の船舶の入港とか、混雑している港に長期間船舶を停泊させるなどにより港湾の適正な利用が妨げられる場合など、港湾の適正な管理運営を図る観点から合理的な理由がある場合につきましては、港湾法十三条の不平等な取り扱い禁止には抵触いたしません。港湾施設の利用を拒むことができると考えております。

 したがって、港湾法第十三条は、ありとあらゆる船舶について無限定に入港を保障しているものではございません。

水野委員 まさにそのとおりであって、ほかに例えば合理的な理由があって、入港禁止の例えば法律とかをつくったりするのであれば、この港湾法十三条と決して抵触するものではないということだというふうに思うわけでございます。

 さて、万景峰号の話にちょっと戻りたいと思うんですけれども、去年の六月あたりの各新聞の報道などで、この万景峰号の船底、そこに軍事用のソナーが装着してあったというようなことが報じられてあるわけであります。政府がそういうことを確認したというようなことを報じられているんですけれども、さて、その後も万景峰号は日本に往来したりしているわけですけれども、こういうような軍事用のソナーというようなものが装着されていたのかどうか、いろいろな場面でこれを検査したりしたのか、その点についてお伺いをしたいと思います。

馬場政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年八月二十五日、万景峰92号が新潟港に入港した際に、当該船舶に対しまして二十四名の外国船舶監督官が立ち入り、ポートステートコントロールを実施いたしました。

 このポートステートコントロールと申しますのは、船舶の安全の確保及び海洋環境保護の観点から、SOLAS条約等々の海事関係国際条約で定められております基準が遵守されているかどうかということを検査し、その基準が遵守されているということを担保するために行うものでございまして、寄港国、いわゆるポートステートによります入港外国船舶に対する監督のことでございまして、条約において、条約締約国の権利として認められているものでございます。

 御質問の軍用ソナーにつきましては、これらの条約により要求されているものではないため、ポートステートコントロールにおいてはその有無を確認しておりません。

 以上でございます。

水野委員 この部分、海上保安庁とかはどうでしょうか。

坂本政府参考人 海上保安庁におきましては、昨年八月二十五日の万景峰92号の入港時における立入検査の際に当庁職員が同船の船長に対して質問しましたところ、ソナーは、以前は搭載していたが、現在は装置の一部を撤去し使えない状態となっているとの回答を得ております。このため、船内を確認しましたところ、ソナーの表示部及び操作部があったとされる場所にはこれらが撤去された痕跡を認めております。

水野委員 ということを聞くと、今あるかどうかは別として、かつてそういうような軍用ソナーを装着していたということは彼ら自身が認めているわけですよね。つまり、この船舶というものは、一方で里帰りのような表の顔が、在日の朝鮮人の方々の里帰りとか修学旅行のための表の顔の裏に、まさに、軍用であれ工作活動であれ、そういうようなスパイ活動などに従事をしているというような裏の顔を持っている船舶だということが、もう彼らの証言からも明白であるというふうに思うわけでございます。やはり、そのためにもこうした入港禁止の法律というものを今後考えていかなければいけないと思うんです。

 さて、外務省にちょっとまたお伺いをしたいと思うんですけれども、北朝鮮から日本に入国をしようとした人に対して、例えばビザの発給をしないとかそういうような形で入国拒否をした例というのは過去にございますでしょうか。

齋木政府参考人 一般的にまず手続の話から申し上げますと、外国人の入国を認めるかどうかということにつきましては、法務省と外務省が相談しながら、個別案件ごとに判断しております。

 お尋ねの北朝鮮からの入国希望者の件でございますけれども、これは通常、日本にいる関係者が法務省の方に事前に相談をし、外務省はその法務省の検討結果、つまり入国の是非に関する法務省の検討結果を伺って、その上で在外公館に対して渡航証明書、この発給の是非に関して指示を行っております。実は、我が国は北朝鮮の旅券を有効な渡航文書としては認めておりませんので、ビザにかわる渡航証明書というものを発給しておるわけでございます。

 お尋ねの北朝鮮からの入国希望者を拒否したケース、つまり渡航証明書を発給しなかったケースというのは確かにございます。例えば、平成十五年の場合には二件、発給拒否という事例がございます。

水野委員 かつて、二年ほど前でしょうか、入国拒否をされた人間が万景峰に乗って、入国はしなかったまでも、新潟まで来た、そんなようなことが報じられたことがございましたけれども、そういうような例というのは法務省の方は把握していますでしょうか。

増田政府参考人 平成十四年十二月六日付の新聞報道で、今委員がおっしゃったような報道があったことは承知しております。

 ただ、特定の人物が万景峰92号に乗っていたのかいなかったのかにつきましては、個人の出入国に関することでございますので、答弁は差し控えさせていただきます。

水野委員 いずれにしても、非常に疑惑に多く満ち満ちた船舶であるということはこれは言うまでもないわけなんですけれども、その意味において、対北朝鮮外交というのを考えるときに、一つは、やはり対話と圧力という中での圧力のカード、これが今まで余りにもなさ過ぎたのではないか、これを整備していくということが必要だと思うわけですし、そのために、まず外為法が今国会で改正をされた、そして今、入港禁止法案というものが審議されようとしているわけです。

 そこで、私、ちょっと一点気になるのが、この圧力のカードとして、今申し上げた外為法並びに入港禁止法に続いて、三つ目に、入管法を改正して在日朝鮮人の方々を再入国させない、そういうような入管法の改正をしようという動きが一部にあるやに聞いております。私は、ちょっとそれはいささか違和感というか懸念というか、そういうものを持つものであるわけであります。

 というのは、これは法務大臣にお考えなどについてお伺いをしたいと思うんですけれども、北朝鮮という国が非常に犯罪国家であり、テロ国家であり、無法行為を繰り返してきた、そしてそれに対して毅然として臨まなければいけない、圧力もかけていかなければいけないということは私自身も強く思いますし、そのための活動もしてきたつもりですけれども、さはさりながら、どうも再入国を禁止する法案というのは、北朝鮮がけしからぬから、そこまでは私も意見としては一致いたしますけれども、北朝鮮がけしからぬから在日朝鮮人の人、特別永住者の人を締め上げていこうというような、何かそういうようなものを感じるわけですね。そうすると、やはり大きい人道上、人権上の問題があるのではないか、再入国禁止法というものに対しては。

 北朝鮮が非道なことをするからといって、そのレベルにまで日本が下がっていってしまうということはよくないのではないかというふうに私は思いますけれども、法務省として、こういうような特別永住者の再入国禁止法みたいなものを検討していることがあるか、またこういうような動きに対しての法務大臣の御意見というもの、御感想というものをお伺いしたいと思います。

野沢国務大臣 委員御指摘のとおり、対話と圧力というのが目下北朝鮮に対する我が国の対応の基本であるということはよくわかっておりまして、特別永住者の再入国の取り扱いということにつきましては、可能な限り対話を続けるという可能性はやはり残しておく必要があるということもあり、また歴史的な経緯とか我が国の定住の実績も考えますと慎重に検討する必要があると考えておりまして、今委員御指摘のような法案を我が法務省で準備しているということではございません。

水野委員 時間でございますから最後の質問にしたいと思いますけれども、昨年の一月四日の読売新聞によると、一九九四年に朝鮮半島危機があった。まだ金日成が生きているころでございます。そのころに、朝鮮半島で有事が起きたときには大量の避難民が発生をするかもしれない、そういうようなことで検討を、政府として、法務省も含めて、避難民対策などについての検討を重ねてきていたというような記事が出ているわけです。

 それについて、こういう朝鮮半島の状況というのは今なお流動的なわけですから、今後もそういうような大量の難民が発生するということは、これは絶対ないとは言えないわけですので、これに対してしっかりとした対応というもの、対策というもの、これを研究していく必要があるんではないかと思いますけれども、実川副大臣にお伺いをして、私の質問を終わりたいと思います。

実川副大臣 御指摘のとおり、我が国に大量避難民が流入する事態となった場合でありますけれども、これは関係省庁が連絡をとりまして、政府全体として適切に対処する必要があるというふうに考えております。

 特に、出入国管理の問題につきましては、インドシナ避難民等の先例も参考にしながら、大量避難民対策が円滑に行われるように、法務省といたしましても的確に対応してまいりたい、このように思っております。

水野委員 終わります。

柳本委員長 早川忠孝君。

早川委員 自由民主党の早川忠孝でございます。

 本日の法務委員会で、判事補及び検事の弁護士職務経験に関する法律案が可決されましたけれども、私は、この法律案の審議を通じて、深く感銘を覚えたことがございます。それは、質疑に当たられた各委員、また答弁に当たられた法務大臣並びに各参考人が、裁判官、検察官あるいは弁護士はどうあるべきかということについて、それぞれみずからの言葉で熱い思いを語られたということでございます。

 このたびの司法制度改革は、まさに、法曹とはどうあるべきか、我が国の司法はどうあるべきかという理想を追求するものであろうと考えております。国民に開かれた場で真摯な議論が展開され、一つ一つ結論に到達してまいっております。司法制度改革の提言から法律の成立に至るまでのその過程が実は司法改革そのものであり、司法に係る行政及び立法の改革であると私は考えるものであります。

 このたびの司法改革は、単に国民に身近で信頼される司法をつくるということを超えて、世界に誇れる司法をつくるという理念を持つものであってほしいと私は考えております。法務大臣のこの点についての御所見をお伺いいたします。

野沢国務大臣 私は、社会が適切に機能し、そして国民の皆様が幸せな生活ができる、あるいは経済活動が適切に行われる、また外国とのつき合いも正常に行われるというためには、やはり法律の制度並びにこれを支える司法の仕組みがしっかりと機能しているということが最も大事であると考えております。

 今度の司法制度改革の一連の法案につきましては、その意味で、日本の司法制度がいわば国民の皆様により身近なものになり、かつ国際的にも通用する仕組みとして機能するようにしっかり今御議論をいただいておるところでございまして、何としても、私は今回のこの一連の改革を通して、明治の大改正、そしてまた昭和二十年代の、占領下ではありましたがあの当時の大きな変化、そして今、今日それが、我々のみずからの考えとみずからの力で国際的な水準そして国民の幸せのためにこの法制度並びに司法の一連の仕組みの改革をできることを、私はそのチャンスに恵まれたことを大変光栄に思っておりますが、どうかひとつ、委員におかれましても適切な積極的な御意見をいただく中で、一層の成果が上がりますことをお願い申し上げ、御期待をいたしまして、私の決意といたしたいと思います。

早川委員 世界に誇れる我が国の司法を構築するという観点から、司法の改革の積み残しの課題について幾つかお伺いいたします。

 御承知のとおり、我が国の経済並びに社会はますます国際化を深めております。この国際化に対応して我が国の司法制度を整備しておく必要がございますけれども、現状がどうなっているか。我が国の法律や政令、省令等の各規定を外国語に翻訳するという必要があろうかと存じますけれども、現在はどういう機関がどのような根拠に基づいて翻訳作業を行っているのか、まずお伺いいたしたいと思います。

 あわせて、世界に通用するわかりやすい司法を構築するとともに、現在、アジア諸国に対する法制度、司法支援を行っているわけでありますけれども、これをさらに一層充実するためにも、国際社会の共通言語であり、最も一般的な英訳は少なくとも政府の責任において推進をしなければならないのではないか。そのことによって、我が国の法制度を国際的に通用させ、また国際社会における我が国の司法制度に対する信頼を一層ふやすことに、深化させることになるのではないかと考えております。

 我が国の法令等の英訳について、現在の政府の取り組みの状況についてお伺いいたします。

山崎政府参考人 法律の英訳の問題でございますけれども、現在の状況は、それぞれの省庁で必要性に応じて自己判断で行っている、あるいは民間ベースでそういうものをお出しになっているところもあるという状況でございます。

 いずれにしましても、これは性質上、公定訳というのは、どうしてもそれは難しいだろう。我が国の法律は日本語でできているわけでございますので、それを英語で公定するという、そういう性質は非常に難しいとは思います。ただ、非常にお粗末な状況であるということも間違いないことでございます。

 ただいま御指摘がございましたように、アジア諸国が法整備支援を求めているという点、この点はもう何年も前からそのとおりでございまして、法務省を中心にいろんなお手伝いをさせていただいているというのが現状でございます。

 ただ、この場合に、やはりどうしても共通言語が英語になるわけでございますので、この英訳がきちっとできていないと、我が国の法制度を理解してもらうということが非常に難しくなる。理解された上で、それぞれ各国で自分の国に合う法律はどういうことかということで構築をしていくということになります。ですから、非常に重要なポイントになる。

 それから、このような国際化の時代を迎えて、日本の法律家ももっともっと国際的な活躍をしていただかなければならないわけでございますけれども、残念ながらまだまだ十分に育っているとは言えない状況でございます。そのためにも、やはり日本の法律をきちっと相手にプレゼンテーションできるということが必要でございます。

 さらに言えば、もう一つは、日本の法律を世界にもっと宣伝してほしいんです。何で日本の法律が使われないかというのは、日本語が非常に難しいからでございます。これを英訳してもなかなか難しいんですけれども、まずそこができていないから理解がされていない。日本は冠たる法律を持っているわけでございますが、その宣伝が不十分である。

 ですから、国際契約を結ぶときに日本法が準拠法にならないのは、そこができていないからでございます。ですから、大部分の企業は他国の準拠法で契約を結ぶという状況になっております。日本の経済を考えたときにも、これでいいのかという問題が生じてくるわけでございます。

 こういうような背景を踏まえまして、私どもの国際化検討会というところがございますが、これを中心に議論をしてまいりました。そして、私ども本部にございます顧問会議におきまして取りまとめが行われたわけでございますが、要旨を申し上げますと、グローバル化する世界で、我が国の法令が容易かつ正確に理解されることは極めて重要である、今後は、関係機関、関係団体と協働しつつ、迅速かつ正確な外国訳が行われるような体制整備を検討すべきである、こういうことでございます。

 私どもは、これを受けまして、現在、ではどういう方法でそれをやっていくかということで、今取りかかっている最中でございます。ただ、ただいまの時点で、きちっとこういう方向でいくというところをちょっと申し上げられないわけでございますけれども、私は、これは極めて重要なものだという理解をして、きちっとした対応をしていきたいというふうに考えております。

早川委員 引き続いてのしっかりした検討をお願いしたいと思います。

 さて、一カ月前の二月の二十七日に、地下鉄サリン事件の松本智津夫被告に対する判決が言い渡されました。この事件によって、世界一安全な国と思っていた我が国の安全神話が崩壊いたしました。私は、地下鉄サリン事件を風化させることなく、安心、安全な国づくりを進めていかなければならないと思っております。また、この事件による被害者の方々に対しての救済措置も十全なものに変えていかなければならないと考えております。

 毎日、全国各地でさまざまな犯罪が発生をしており、交通事故による被害者も含めますと、実に数多くの方々が犯罪の被害を受けております。そこで、一般的に、犯罪被害者の方々に対する救済措置の現状がどうなっているか、犯罪被害者や家族の方々に対するケアが十分に行われているのかどうかについて、お伺いいたします。

吉村政府参考人 警察は、被害者にとりましては、最も初期の段階で、かつ最も身近な機関であろうかと思います。その被害の回復、軽減あるいは再発防止につきまして、大きな期待が寄せられている立場にもあろうかと思います。警察としまして、初期段階での危機介入を適切に行っていくことが肝要と考えております。

 具体的に申し上げますと、まず、被害者に対しまして、被害者の手引というものをつくりまして、これをお渡ししております。刑事手続の流れでありますとか、どのような援助が受けられるのかというようなことを簡記したものでございます。

 あるいは、被害者連絡を実施いたしましたり、性犯罪捜査においては女性の警察官による事情聴取を拡大するということですとか、被害証明への支援体制の確立、あるいはまた被害者に対するカウンセリング業務の拡大のほか、被害者援助関係機関あるいは民間の被害者援助団体等との連携を図るなど、被害者の視点に立った施策を組織的、総合的に講じているところでございます。

 また、平成十三年には、犯罪被害者等給付金支給法の改正が行われまして、重傷病給付金の新設あるいは障害給付金の支給対象の拡大など、犯罪被害給付制度の拡充が図られたところでもございます。

 警察におきましては、今後とも、各種施策の着実な推進、適切かつ効果的な制度の運用等を通じまして、被害者支援の一層の充実を図ってまいりたいと考えております。

早川委員 被害者に対する今後ますますの支援措置をぜひとも充実していただきたいと思います。

 そこで、今度は、刑事司法手続の中で犯罪被害者がどういう立場にいるか。現在のところは、単に起訴するか否か、あるいは量刑判断の情状の一つとして扱われているのではないか。私は、犯罪被害者は、刑事司法手続の中で、そのすべての過程の中で当事者として扱われるべきである。犯罪被害者は、その希望があれば、捜査、公判、刑の執行の全過程について、知る権利また意見を述べる権利がある、そして犯罪被害者としてまさに尊重される権利があると考えております。

 そこで、刑事司法手続の中で犯罪被害者の権利はどのように守られているのかについて、お伺いいたします。

樋渡政府参考人 犯罪の被害者やその遺族の方々の苦痛、悲嘆、怒り等を真摯に受けとめまして、その立場に配慮し、保護、支援を図ることは、刑事司法の重要な責務であると考えております。

 そこで、法務省におきましては、平成十二年五月に成立しました、いわゆる犯罪被害者保護二法によりまして、証人の負担を軽減するための制度、公判廷において被害者が意見を陳述する制度、及び被害回復に資する制度を新設するなどの法整備を行いました。

 検察当局におきましても、被害者の立場、心情に配慮しつつ、事件の適正な捜査処理に努めてきたところであると承知しておりまして、また、被害者に対し、検察庁における事件の処理結果や刑事裁判の結果等を通知する被害者等通知制度を実施するほか、被害者支援員を配置し、被害者からの相談に応じております。

 このほか、近時、犯罪被害者のための施策の充実を求める国民の声が高まりを見せていますことから、現在、法務省内に研究会を設けて、現行制度に加えてさらにどのような形で被害者の保護、支援の充実を図ることができるかにつきまして、調査研究を進めているところでございます。法務省といたしましては、この研究会における調査研究も踏まえ、犯罪被害者の方々の保護、支援に資する施策の充実に努めてまいりたいと考えております。

早川委員 次の質問に移ります。

 去る三月の二十九日に、いわゆる東京高裁で、これはアルツハイマー病の遺伝子に関する機密を持ち出したということで、アメリカで経済スパイ法違反などの罪で起訴された理化学研究所の元研究員について、逃亡犯罪人引渡法及び日米犯罪人引渡条約に基づいて、身柄を米国側に引き渡すことができないという旨の決定が出されております。

 東京高裁の決定の要旨は、人権保障の見地から、米国の裁判で有罪とされる見込みがあるかどうかを日本で審査することが本条約の趣旨であるとした上で、元研究員の試薬持ち出しについては、理化学研究所の利益に資することを意図し、またはこれを知っていたと疑うに足りる相当な理由はないと判断したというふうに報道されております。

 私自身は、そもそも元研究員の身柄を拘束した東京高検の判断に疑問を持っておりますけれども、今回の東京高裁の決定について、法務大臣の御所見をお伺いいたします。

野沢国務大臣 ことしの二月二日付で、東京高等検察庁が審査請求をしました、いわゆる経済スパイ事件につきまして、三月二十九日、東京高等裁判所において、引き渡しができない場合に該当するとの決定が出たとの報告を受け、報道では御承知のとおりでございますが、法務大臣といたしましては、司法府の判断でございますので、これを尊重しまして、厳粛に受けとめたいと考えております。

早川委員 元研究員の方は、二月の二日に身柄を拘束されて、三月の二十九日に釈放に至ったということであります。この間、家族から隔離されて、就業することもできなかったということで、その経済的あるいは精神的被害は甚大だというふうに思われます。

 現在の制度において、元研究員に対していかなる補償がなされることになっているのか、お伺いいたします。

樋渡政府参考人 逃亡犯罪人引渡法に基づく拘禁につきましては、刑事補償法の適用はございません。引き渡し請求を受けた場合における補償措置につきましては、日本政府ではなく、請求国政府に対して請求国の法令に基づいて補償を求めることが考えられるところでございます。

早川委員 私は、これは日本の政府が行った身柄拘束行為である、そういう意味では、何らかの補償措置が講じられなければ正義に反するのではないかというふうに思います。そういう意味で、これは何とか必要な措置を検討されるようにお願いをしたいと思います。

 次いで、刑務所の過剰収容問題についてお伺いいたします。

 先般、法務委員会の視察で府中刑務所を視察してまいりました。一般的に、規範意識の低下あるいは経済情勢の変化等で犯罪が増加している、特に外国人による犯罪もふえているという状況でございます。これに伴って受刑者が増加して、刑務官の方々も非常に御苦労されているという様子を目の当たりにいたしました。府中刑務所では、一人収容の独房に二人収容するとか、あるいは、たしか四人収容の房に六人収容する等の現状であるということを確認させていただきました。

 全国的に刑務所の収容定員と現実の収容人員がどうなっているのか、いつからこのような過剰収容の状況になっているのか、そしてまた、これら過剰収容を解消するための方策としてどういう施策を検討されているのか、あわせてお伺いいたします。

    〔委員長退席、下村委員長代理着席〕

横田政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のように、刑務所等の行刑施設の収容定員は、ここ数年急激な増加が続いております。収容人員が収容定員を超えるいわゆる過剰収容の状況にございます。これがいつごろから始まったかといいますと、大体平成十一年ぐらいから徐々にふえ続けてきて、その状況が改まっていない、むしろますます厳しさを加えているという状況でございます。

 現在の定員でございますけれども、いわゆる未決の拘置所、それから既決等を収容する刑務所等を含めました定員は、一番新しい数値で申し上げますと、去る三月十五日現在の速報値で申し上げますと、定員が六万九千六百九十四に対しまして収容現員が七万四千二百七十五人で、一〇六・六%という収容状況でございます。しかし、既決といいまして、刑の確定囚ですね、受刑者等だけを言いますと、収容定員が五万二千七百八十三に対しまして収容現員が六万二千八百八十三人でございまして、その収容率が一一九・一%という高い率になっております。

 委員も御指摘のとおり、刑事司法の最後のとりでである行刑施設の過剰収容の解消、これは極めて重要であると思っています。今後も予想される行刑施設への被収容者の一層の増加に対処するために、PFI手法を活用した刑務所の新設を含む収容能力拡充のための施設整備や必要な要員、経費の確保に努めますとともに、昨年末の行刑改革会議からなされました提言を受けまして、国民に理解され支えられる刑務所を目指しまして、監獄法の改正も含めました行刑改革に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

早川委員 今、監獄法改正の話がありましたけれども、国際的な水準を十分配慮した上でのこういった改正、作業を進めていただきたいというふうに要望しておきます。

 そこで、今度は、尖閣諸島への不法上陸者に対する強制退去手続についてお伺いいたします。

 去る三月の二十四日に沖縄県石垣市の尖閣諸島魚釣島に中国人の活動家七人が不法上陸したということについて、法務省の入国管理局が三月二十六日、この七人を出入国管理法に基づいて強制送還したというふうに新聞報道で知っております。

 外交上やあるいは防衛上の観点から、国際的な紛争は回避しなければならない、そのために最善の対策を講じなきゃならない。特に、外国との間の領土紛争というのは極力最小限にするとともに、万一領土紛争が発生した場合には国際法のルールに基づいて解決するという基本方針を確認すべきであると私は考えております。

 しかし、国際法によって我が国の国土であることが確定している土地については、外国あるいは外国人による侵犯は決して許さないという確固たる意思を示すべきであるというふうに考えております。その意味で、沖縄県警がこれら中国人活動家を逮捕し、そして検察庁に送致した上で事件の背景や余罪について取り調べを継続するという姿勢を当初示されていたということを高く評価するものであります。

 しかしながら、現実には、これが強制送還ということになったわけであります。なぜ検察庁に送致をしないという結論に達したのか、その経過について御説明をお願いいたします。

米村政府参考人 お答えをいたします。

 ただいま御指摘のとおり、二十四日早朝、中国人活動家グループに属する七名の者が尖閣諸島に、魚釣島に不法上陸をしたということでございます。そこで、沖縄県警におきましては、海上保安庁の協力を得まして直ちに所要の人員を現地に派遣いたしまして、これらの者につきまして、出入国管理及び難民認定法違反ということで現行犯逮捕しておるわけであります。その後、これらの者につきましては、二十五日の午前中までに沖縄県下の那覇警察署ほか三署に留置をしているということでございます。

 他方、私ども警察といたしましては、昨今、外国人犯罪というものが増加をしておりまして、国民に大きな不安を与えているという状況にございます。そうした中で、この種の不法滞在者につきしましては速やかに退去強制させるということが望ましい、こういう基本的な考えに立っているということでございます。

 そういう状況でございまして、捜査状況も踏まえまして法務当局と協議をいたしました結果、一般論として、本件のような場合につきまして、引き渡しを妨げるものではない、いわゆる入管法六十五条の引き渡しを妨げるものではない、こういう回答をいただきまして、沖縄県警におきましても、現地の検察及び入管当局とも協議をいたしまして、引き渡し手続をとったというものでございます。

 以上でございます。

早川委員 この中国人活動家の強制送還に当たっては、当然さまざまな費用がかかっているかと思います。この強制送還の費用はどなたが負担したのか、これについてお伺いいたします。

増田政府参考人 お尋ねの送還に要した費用は、中国側が負担しております。これは、三月二十六日の午後、警察から当局に身柄が引き渡されることになりましたが、それを受けまして私どもが退去強制手続を進める段階で、中国側から送還費用を負担するという申し出があったことによるものでございます。

早川委員 具体的には、中国大使館が費用負担に応じたというふうに新聞報道で伺っておりますけれども、これは、ある意味で、我が国の主権国家としての意思を中国側が了解したと解してもよいのではないかというふうに私自身は考えております。

 そこで、隣国であります中国との間において、国際的な紛争を惹起あるいは発展させないというためには、日本及び中国双方において冷静で賢明な対処が求められる。そういう意味では、再発の防止こそが肝要である。また、万一再発した場合にどのように対処するのか、あらかじめ我が国としての方針が確立されていることが必要である。法治国家である我が国としての基本方針を確立することによって、例えば不法上陸をした中国人活動家の再発を抑止することになるのでないかと考えております。

 これは、日本の国にとって大変重要な問題でございますので、内閣府の方でこの再発防止等についてどのように方策を講じられるのか、お伺いしたいと思います。――恐縮です。内閣府はきょうちょっと出ていないということのようですので、それでは、一応、政府において再発防止のために万全の対策を講じていただきたいということを要請して、私の質問の締めくくりにさせていただきます。

 私は、昨年の四月一日に東京弁護士会の副会長に就任をして、たまたま十一月の衆議院選挙で当選をさせていただいたわけでありますけれども、もしそのまま任期を続けていましたら、きょうがその最終日に当たるわけであります。その最終日という記念すべき日に一般質疑の場を与えていただきました理事の皆さん、また真摯な答弁をいただきました法務大臣を初め参考人の皆さんに心から感謝を申し上げて、質問を締めくくりとさせていただきます。

 ありがとうございました。

下村委員長代理 富田茂之君。

富田委員 公明党の富田茂之でございます。

 私の方からは、特に入国管理局の方に対しまして、留学生及び就学生に係る入国、在留審査についてお尋ねをしたいと思います。

 質問に入る前提として、本邦に入国する際、在留資格認定証明書の交付によって日本国に入ってくる、この手続をちょっと確認しておきたいんです。

 例えば、中国で日本語の勉強をされている方が日本の学校に行きたいというときに、留学先あるいは就学先の日本国内にある学校に出願書を出して、その留学先あるいは就学先の学校の方から入学許可証を送ってもらう、この入学許可証の写しを添付して日本にいる代理人が地方の入管局に対して在留資格認定証明の交付申請をする、それを受けて入管の方で在留資格認定証明書を発行する、この認定証明書を留学、就学の志望者の方は受け取って、中国でしたら例えば北京にある大使館等に行ってビザの申請をする、それで、大使館からビザの発給を受けて留学、就学希望者は本邦に上陸が許可されるという手続だと思うんですが、流れとしてはこれでよろしいんでしょうか。

増田政府参考人 おっしゃるとおりの流れで結構でございます。

富田委員 今のを前提にしてちょっとお尋ねします。

 法務省の方からいただいたペーパーで、「在留資格「留学」及び「就学」に係る審査方針について」というペーパーを先日いただきました。これによりますと、「平成十六年四月期生に係る在留資格認定証明書交付申請並びに今後行われる在留資格変更許可申請及び在留期間更新許可申請について、」「留学生及び就学生の審査のより一層の適正化を図るため、」これまでと取り扱いを異にするようになったというように書かれておりますが、こういうふうになった背景というのは一体どういったところにあるんでしょうか。

増田政府参考人 平成十六年一月一日現在で、在留資格、留学及び就学に係る不法残留者数が一万六千百八十三人となっておりまして、しかも、不法残留者の多くはいわゆる不法就労を行っていると思われます。

 法務省では、このような状況を踏まえまして、本年四月に入学を予定している外国人について、入学しようとする教育機関が不法残留者を多数発生させている教育機関である場合や、あるいは不法残留者が多数発生している国の出身者などである場合に、日本で勉学し、生活する上で必要な日本語能力を有しているのか、また滞在中の経費支弁能力を有しているのかなどについて、従来よりもきめ細かい審査を実施することといたしました。

 また、資格外活動容疑で現に摘発された者とか、あるいは犯罪で現に検挙された者などが在籍していた教育機関につきまして、入学の選考とかあるいは在籍の管理などで問題がなかったのかどうか確認を求め、これらに問題が認められる場合には適切な対応を求めることといたしました。

 お尋ねの背景でございますけれども、留学生や就学生が日本で学ぶためには、本人が真に勉学する意思を持つということはもちろん必要ですし、実際に通学して十分に勉学をしながら日常生活を送ることができることが必要であるわけですが、例えば経費について言えば、アルバイトによってそのすべてを賄うというのではなくて、本国から送金を受けることなどが必要であるわけです。ところが、これまでに留学生や就学生に対する審査を行ったり、あるいは退去強制を行っている過程での本人の供述などによりますと、本国から送金を受けるという事実が全くなくて、日本で許可されている範囲を超えて働けるだけ働いて、稼いだお金は逆に本国に送金している、こういう例が数多く確認されてきました。

 この背景には、その本人自身に勉学の意思がなくて、日本でお金を稼ぐことが最初から目的であるという場合もございますし、あるいは、ブローカーが暗躍して多額の借金をさせて日本に送り込んでいるため、本人が勉強したくても、借金を返すためにそれどころではないというような場合も少なくありません。

 このような事例のように、借金をして来日した外国人は、本人に勉強の意思があるかどうかにかかわらず、実際には勉強を行えないという事例が多くございましたし、不況の中で働き口が少ないことから、不法就労をしたり、中には犯罪を犯すという事例も生じている状況にあるわけでございます。

 こういう実情を踏まえまして、経費支弁能力等について従来よりも掘り下げた審査を行うこととしたものでございまして、今回の措置によって、本当に勉強する意思と能力を持っている人、勉強できる条件を備えている留学生、就学生について、留学や就学ができなくなるということではございません。

富田委員 今、局長から、最後、結論を言われてしまったような気がしますけれども、そこの部分が本当に、不法残留者がこれだけ多い。また、先般は福岡でしたか、凶悪事件の容疑者が全部就学生だったというような事件も発生したりして、法務当局としてはここはきちんと厳しくやっていかなきゃならないという、それはもうそのとおりだと思うんですが、今局長が最後に言われたように、本当に日本に来て勉強したいと思っている学生さんたちが、今回の審査が厳しくなることによって何かはじき出されてしまうんじゃないか、そういったことのないように、ぜひきちんとしていただきたいなと思います。

 その点に関してちょっと何点か質問させていただきたいんですが、先ほどの法務省からいただいた「審査方針について」というペーパーの中にこのような記述がありました。「外国にある日本語等の教育機関で日本語を学習したとする留学生・就学生について、以前に日本語能力が日本語能力試験四級相当以上あるとは認められなかった案件と同一の外国にある教育機関において日本語を学習したとする資料の提出がある申請案件については、特に厳格な審査を実施」するというふうな記載があります。

 ちょっと言い回しが難しいんですが、例えば中国にある日本語学校で、日本語の能力、四級以上の力がありますよということでこちらにいろいろ申請書類を出してきたときに、実際は、領事館等に行ってビザ申請等をする際に、いろいろ話は聞くんだと思うんですね。日本語の会話ができるのかとかそういったところで、この学生はちょっとひどいんじゃないかというようなことがあったということなんだと思うんですけれども。そうすると、これは例えば、日本以外の国で日本語を教えている学校、そこに在籍した生徒が、たまたま、日本に入国したいということで審査を受けたときに、全然そんな能力はないとはじかれた、そういう案件が以前にあった。それで、同じ学校に在籍していて、一生懸命勉強していて、今度、私、自分で日本に行きたいという方が同じような申請をしたときに、この「特に厳格な審査」を受けるようになってしまうわけですよね。

 そうすると、留学また就学しようというその学生本人には何の責任もないのに、たまたま在籍したその学校が以前にそういうことがあったというだけで、これだけ一般の場合と区別されるというのはちょっと不公平ではないかというふうに感じますし、そういう学生を送り出した外国にある日本語学校の方で、自分が送り出した学生が、日本の方から見れば日本語能力四級に行っていないよというふうに判断されたんだという情報は、あちらの学校の方には、教育施設の方には行っているんですかね。

 その二点、ちょっとお尋ねしたいんですが。

増田政府参考人 お尋ねは、外国における日本語教育機関のことでございますけれども、まず、四級相当以上というのは、日本語を百五十時間程度学習し、初級の日本語コース前半を修了したレベルということでございますが、要は、日本に来て日本の学校で実際に日本語で勉強しあるいは日本で生活をするというためには必要最低限度の日本語は身につけていなければいけないでしょうということで、それが四級相当以上ということであるわけです。

 外国の日本語学校で問題となるのは、実際にこのように教育をしましたよというような証明書を出しても、実はそれが虚偽である、そういう虚偽の証明書を出す日本語学校が外国にあるから困るということであるわけです。

 それが一つですが、しかし問題は、これから日本に来ようとされる方が最低限度の日本語能力を身につけているかどうかが問題ですから、仮にその人が学んだ外国の日本語学校にそういう問題があるといたしましても、その人が別途、日本語能力四級相当以上の力を持っているということがわかれば、これはその点で語学力の証明はあるということになりますから、不利益な取り扱いを受けることはございません。

 それから、問題の外国の日本語学校は自分たちのいわば不業績がわかっているのかということでございますが、これは私どもは、日本国内で審査して、この外国の日本語学校は問題があるなとわかった場合、それを申請した日本の学校に対して、この人はだめですよ、この人が外国で学んだというこの学校は問題があるから、この人の語学力の証明はあるとはなりませんよということを、申請した日本の学校には通知しております。ですから、あとは、その日本の学校が問題の外国の日本語学校に、こういう理由だからはねられたんだというようなことを伝えていれば伝わると思いますが、法務省が直接、その外国の教育機関に一々、あなたの学校はどうだという評価を通知することはしておりません。

富田委員 わかりました。

 同じくこの審査方針の中に、次のような文言がありました、「日本語教育施設において申請人と面接の上入学許可したとして在留資格認定証明書交付申請があったものの、日本語能力が日本語能力試験四級相当以上あるとは認められなかった案件がある場合には、当該日本語教育施設については、特に厳格な審査を実施」すると。

 今の局長のお話はよくわかるんですが、この審査方針ですと、大学の日本語別科に留学してくる学生さんと日本の日本語学校に就学してくる就学生が同じレベルの日本語能力、四級以上、先ほど局長は、学校に通えるだけの日本語能力は持ってきてもらわなきゃ困るというふうに言われていましたけれども、大学の別科に行く留学生と日本語学校に行きたいという就学生が同じレベルである必要があるのかなと。

 通常、大学の別科というのは大体一年で、当該大学の通常の学部にその後入学していく。ある意味で、大学から見たら、留学生を囲い込んでいるというような制度だと思うんですが、就学生の場合は、最長二年間日本語をしっかり勉強して、その後、大学院や大学や専修学校、専門学校等に、いろいろなコースがあるわけですよね。そうすると、ある程度ここでレベル調整をしても就学生に対してはいいのではないかなというふうに私自身は思うんですが、そのあたり、同じようなレベルがないとだめなんだというところには何か根拠があるんでしょうか。

    〔下村委員長代理退席、委員長着席〕

増田政府参考人 この就学生の問題はかねてから折に触れ問題になったわけですが、今から十年余り前にも、就学を偽装して入国した後に、不法残留し、さらに在留期間満了後も不法に残留している者が増加していたというような状況がございまして、平成五年十一月に、就学生の受け入れのあり方について広く各界の意見を求めるため、有識者をもって構成する就学生受入れ問題懇談会を開きました。その懇談会の報告を受けまして、不法残留の発生の多い国の出身者について、勉学の意思、能力を有することの証明の一つとして、日本語能力の初歩レベル、これは、自国内で学んだ上で、日本語能力試験四級相当以上の日本語能力を求めることとしたものでございます。

 なお、日本語能力試験四級以上というのはあくまでも目安であって、真に日本で勉学し生活する上で必要最低限の能力を有することを求めているものですが、要は、大学の別科であれあるいは日本語学校であれ、その人は日本に来てそこで日本語をとにかく学ぶということでございますので、そのためにはやはり必要最低限度の能力ということで、四級相当以上の能力を求めているものでございます。

富田委員 わかりました。

 この審査方針の中で「立証資料」の欄があるんですが、先ほどちょっと局長も言われていましたが、特に「経費支弁能力」というところでかなり細かく規定をされております。ちょっと御紹介をさせていただきますと、「留学生・就学生のうち、不法残留者を多数発生させている国・地域の出身者からの申請については、出入国管理及び難民認定法施行規則別表第三の「留学」又は「就学」の項の下欄に掲げる資料の提出を求めます。」とされ、特に経費支弁能力について、ア、イ、ウと資料には書いてあるんですが、アとして「予定する本邦の大学又は教育機関での勉学のために必要な学費及び生活費を有していることを証する資料」として、注意書きで「預金残高証明書を提出する場合にあっては、預金残高を明らかにする資料だけでなく、預金通帳写し等当該預金の入出金の経緯が明らかになるものの提出を併せて求めます。」と。イとして「その資金形成に至る過去三年間の収入に関する資料」、これは年ごとに出せと。ウとして「経費支弁者に係る在職証明書(又は法人登記簿)、収入を明らかにする資料及び申請人との関係を証する資料」と。

 このように、ア、イ、ウと三つ資料の提出が求められているんですが、具体的に在留資格認定申請をする際にはどんな資料、ちょっとこれだけですとはっきり、まあ、ちゃんとお金があるんだよというのを証明しろということだと思うんですが、具体的にどんな資料を要求されているんでしょうか。

増田政府参考人 本邦の大学等の教育機関での勉学のために必要な学費及び生活費を有していることを証する資料として、例えば預金残高証明書を提出する場合にありましては、預金残高を明らかにする資料だけでなくて、通帳の写しなどその預金の入出金の経緯が明らかになるもの、その資金形成に至る過去三年間の収入に関する資料、経費支弁者に係る職業の証明書及び申請人との関係を証する資料を求めているわけです。

 これは、従来ですと、預金残高証明書の提出をもって、資産はあるな、経費支弁能力はあるなというような判断をしていたのです。ところが、その預金残高証明書は、余りにも偽造されて出されるものが多いというようなこと、あるいは見せ金によって発行されたものが多いということがわかりましたので、一時点をとらえた預金残高証明書だけで経費支弁能力があるという判断はちょっとできにくくなった。

 こういう事情があるために、それでは、その預金が本当に継続的に形成されていったものだなとわかるような資料を出してもらうということで、今回、その入出金の経緯が明らかになるようなものも出してもらいたいということを求めたわけです。

 ただし、これらの資料の提出は許可要件ではございません。今、私が申し上げたようなものがないとしても、その人が必要な経費を有していることの証明が他にできる資料があるのであれば、それは、それを出していただいて、個別に経費支弁能力の資料として取り扱い、能力があると認めればお受けをするということになります。

富田委員 ぜひ、今の最後のところ、通帳の写しだけでやるんじゃない、許可要件じゃないというふうに局長は答弁していただきましたけれども、ここは本当に大事だと思うんですね。

 実は、私の地元の方のお嬢さんで、中国の内モンゴル・フフホト市というところに嫁いでいらっしゃる方からファクスが送られてきまして、フフホト市の外国語学校で日本語の副教授をしているという方からファクスをいただきました。

 今、局長の方から御説明のあった、通帳の写しが求められたということで、このフフホト市の方では三百万ぐらいの通帳の写しがなきゃだめだというふうにどうも伝わったようで、そんなことの証明が要求されるのは不当だということで、私のところにファクスで抗議をされてきたんです。

 ちょっと中身を紹介させていただこうと思いますが、こういうふうに書いてありました。

 留学希望者の九九%が、日本の言う、三百万円相当の預金を持っていません。ですから、仕方なく、大金持ちに三千元を払って通帳のコピーをさせてもらいます。表紙のみ保証人のものをつくり、再び一枚にコピーします。今、局長が言われたような残高証明書なんかも多分こんなふうにしていたんだと思うんです。

 地方の学生は、自宅の近くに銀行がありません。一番近い銀行は、車やバスを乗り継ぎ、五時間のところにあったりします。たんす預金がほとんどで、日本のように、買い物の行き帰りに銀行へ寄るなんという習慣もなければ余裕もありません。

 牧民の場合、遊牧民の場合というふうに書かれているんですが、私のクラスの生徒さんだということで、父は遊牧民だ、羊を千匹、牛を二百頭、馬を三十頭、遊牧民としては大変な資産家です。しかし、預金はありません。羊、牛、馬がお金のかわりなんだ。羊一頭四百五十元です。お金が必要なときはその羊を売ります。また、自給自足ですから、生活費も余り必要ないのです。でも、預金口座がない。経済的に財産を持っていても、銀行に預けるわけにはいきません。これは文化とその民族の価値観です。日本人の価値観がパーフェクトとは思いません。もし、以上のことをよく理解した上で今回手続を変えたとしたなら、日本人は意地悪を通り越してとても下品なものですとまで書かれております。

 人間は、貧しい国の者でも富める国の者でも、学ぼうという志を踏みにじってはいけないと思う。貧しさはその人のせいじゃない。そして、若者は、その貧しさから抜け出て、いつか自国を豊かな国にしたいと本当に望んでいるのです。中国の九九%の留学生は、皆、そんな気持ちで頑張っています。実際に学生が住んでいるところを見ると、涙が出ます。本当にマントウだけかじって勉強している子もいます。日本が三百万円だなんて言うから、またこれによって裏の金もうけが生まれてくるんです。残高証明だけじゃなくて通帳の写しを全部要求するということで、こんなふうになってしまうんだと。

 彼女は最後に、小学校の教師の給料は四百五十元から六百元です。一カ月一万円にならないんです。どうやって三百万円ができますか。わかってやっているなら、私は日本人として本当に恥ずかしいというふうに書いてきてくれました。

 今、局長がでも最後に、通帳の写し等は許可要件ではないと言っていただいたのは本当に救いだと思うんです。ただ、なかなか、日本で一年、二年勉強する資力がありますよという証明が、この彼女のファクスで言っているような地域の状況では本当に厳しいと思うんですね。余り要件を厳格にしてしまうと、今紹介した内モンゴルのような生活状況では、事実上、日本へ就学が不可能になる、来るなと言っているのと同じことなんじゃないかというふうに思われるんですが、大臣は、この点どのように思われますか。

野沢国務大臣 私も実はモンゴルとは大変おつき合いが濃うございまして、参議院におきます超党派の日本モンゴル友好議員連盟というのがございますが、この会長を仰せつかって、行ったり来たり、おつき合いをしております。

 それで、今御指摘のように、遊牧を主体とするあの国の皆様にしてみれば、現金というものは本当に乏しいということもよくわかっておりまして、そういった中で、なお日本を愛し、日本に学びたいという方があれば、これはみんなで応援をして出していただく、こんな仕組みが適切ではないかな、かように思っております。

 今、モンゴルは、御承知のとおり、朝青龍の優勝で大変な日本ブームになっておりまして、時差が余りないこともありまして、日本のテレビが直接その放映をするということで、環境としては大変よくなっておりますから、そういった国々の実情に応じまして、就学の意思と働く意思、そしてまた貧しくとも将来に思いをかけて頑張る人たちには、しっかり道を開かなければならないと考えております。

 そういった面でのこれからの取り組みにつきましては、それぞれの実情をよく配慮した上で、また審査の中身に反映するような工夫を凝らしてまいりたいと思っておりまして、留学生をふやしていきたいということについては私も同様な思いでございますので、また委員もいろいろと御意見をいただければ幸いと思っております。

富田委員 大臣から積極的な御答弁をいただきまして、ありがとうございます。

 実は、この件を文部科学委員会で河村文部科学大臣に質問いたしました。文部科学省としては、留学生十万人計画を達成できたということで大変喜んでいるんですが、今回、こういうふうに就学生、留学生等に対して厳しい審査要件になると、多分がたんと数字上は落ちてくるんじゃないかなということで、ぜひ、文部科学大臣にも今の法務大臣の御答弁を伝えていただいて、法務省の方で奨学金どうのこうのというのはできないわけですから、国を挙げて取り組んでいただきたいなというふうに思います。

 河村文部大臣が文部科学委員会でこのように言われておりますので、ちょっと御紹介だけしておきたいと思います。

 法務省の方で審査が厳しくなったというのは自分も聞いているというふうに述べた上で、

 真に学びたい、そして日本に留学したい、その前提としてまず日本語力をつけたいということでそこへ入ってくるわけですから、そういう皆さんの願いを排除しては私もならぬと思うんですね。

  だから、審査の段階も、最初から疑ってかかるのと、何とかして入れてやりたいけれどもこれではちょっと、あるいは、これは単なる働きの目的があって留学というか就学を目標にしているんではないか、こういう点をやはり見分ける力を法務省も持っていただきませんと、別に法務省の悪口を言うつもりはありませんが、どうも一人その地域から出るともうそこの希望者は全部だめだというような観点を持っている嫌いがなきにしもあらず、これまでの私の体験からいっても、これはやはり留学生をできるだけ多く受け入れたいと思っている文部科学省の方針と違う、私はそう思っておりまして、これはやはり慎重に審査をしてもらいたいと思います。

というふうに言われておりますので、ぜひこの点も、大臣、何かもしありましたら。

野沢国務大臣 河村大臣とは大変長いおつき合いもございまして、本当に学びたいという方々の願いを排除してはならないという今の御趣旨は、全く私も同感でございます。

 ただ、日本での生活は、御承知のとおりの物価高もございますので、ある程度の経済能力がなければ勉学が続けられない、これもまた一つの事実でございますから、その方々が不法就労だとか犯罪に走らないようにという歯どめも大事でございます。

 そこで、いい方にぜひ来ていただきたいというためには、例えば奨学資金の手当てその他について、一層、ひとつ、文部省のみならず、これは大蔵といいますか、今財務省になりましたが、その辺も含めまして、日本人が戦後、例えばフルブライトの奨学金で本当に有能な方々が大勢勉学に行ったというような実績もございますから、そういう意味での無償あるいは有償含めての奨学制度の充実等も配慮した上で、なお一層、ひとつ、有能な若者たちがこれからも引き続き日本に来られるような仕組みを、政府挙げてこれは取り組まなきゃいかぬ課題と考えておるわけです。

富田委員 ありがとうございます。

 もう私がお願いしたいことを全部大臣の方から言われちゃいましたけれども、今言われた奨学金につきまして、就学生に対しては学習奨励費ということで文部科学省の方で平成十二年度から事業化してくれておりまして、十六年度予算では三百人に対して月五万二千円学習奨励費が出される予定なんですが、四万人近くいるということを考えますと、やはりまだまだ足りないなと。こういったところも充実させていかなきゃいけませんし、平成十三年度の統計ですけれども、日本語教育機関を修了した者が二万三千八百十四名いて、このうち一万六千四百六十一人、六九・一%が大学に行っているんですね。

 就学生のうち七割近くの方々は、やはりまじめに勉強して、きちんと当初の目的を達成されている。最初に局長の方から一万六千も不法残留者がいるんだという、そこもまた一面あるわけですけれども、こういう就学生たちを本当に政府挙げてバックアップしていくことが、アジアの国々との今後の友好関係を築く上で一番大事なことになるんではないかなというふうに思います。

 最後に、先日、中国共産党対外連絡部の訪日団の方たちが見えたときにちょっとこのお話が出まして、駐日の中国大使館の職員の方も同席されていたんですが、やはりこの審査が厳しくなったということで、ある方は、中国に対する差別だというふうに強烈に言われていた方もいますし、また、一番心配されているのが、在留期間更新許可申請への影響があるんじゃないかと。今まじめにこちらで勉強して、本当に何とか生活も維持してやっている就学生、留学生が、今回の方針によって入国時と違う基準になってくる。そういったことで期間更新ができないんじゃないか。そういったことは絶対ないようにしてほしいというふうに中国大使館の方も言われておりました。

 この点については特に配慮が必要だと思うんですが、最後に、これに対する今後の取り扱い等を聞いて、質問を終わりにしたいと思います。

増田政府参考人 現在残留している留学生、就学生から、引き続き勉学することを理由として在留期間更新等の申請があった場合につきましては、経費支弁を含め、過去の在留状況を確認することとなります。前回の申請が虚偽申請であったことが明らかになる場合とか、あるいは許可の範囲を超えて不法就労していた事実が判明した場合など特段の問題があれば別ですが、そうでない限りは許可しております。

富田委員 ありがとうございました。終わります。

柳本委員長 午後一時三十分より委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時四十四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三十二分開議

柳本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。山内おさむ君。

山内委員 民主党の山内おさむでございます。

 本日は、犯罪被害者支援の問題点についていろいろと御議論いただきたいと思っております。

 まずその前に、先日起こりました六本木ヒルズの事件については、小泉総理は六本木ヒルズを見て日本の経済は立ち直っていると表現をされましたし、石原大臣に至っては都市再生の成功例だと言われましたけれども、しかし、あんな残念な事件が起きてしまいました。

 回転扉に一定の身長がある人しか入れない。そして、機械の動きに人間が合わすしかない。そして、機械と建物のすき間ができたところをひょいと建物の中に入る。私は、回転扉がすべて悪いと言うわけじゃないんですけれども、人間が機械に合わせる、そういうような風潮が、今、人を大切にしなければいけないというような社会をつくっていくことが大切なこの世の中で、大変疑問に思う事件と受け取っております。

 しかし、一つだけ明らかなことは、犯罪被害者の家族が一件またできてしまった、私はそう思っています。

 昨日、東京都議会で議決がございました。議決の内容は、犯罪被害者の救済と被害回復制度の拡充に関する意見書ということで、これも衆議院議長の方にいただいておる書面でございます。昨日の都議会の意見書は、犯罪被害者が刑事手続に参加できるよう訴訟参加の制度を創設してください、そして犯罪被害者が刑事手続に附帯して民事上の損害賠償請求を行うことができるよう附帯私訴の制度を確立してくださいというような内容でございました。

 犯罪被害者は、刑事事件の最大の利害関係人でございます。なりたくてなったわけではない。ある日突然、犯罪者から生命、身体、財産に被害を受けたということで被害者になります。国民だれもがいつ被害者になってもおかしくないという意味では、国民全員がかかわる問題として、私は犯罪被害者の権利保障について論じるべきだと考えますが、まず大臣の御所見からお願いします。

野沢国務大臣 犯罪被害者やその遺族の方々は、犯罪によって現実にさまざまな被害を受けている当事者でございます。その苦痛あるいは悲嘆、怒り等を真摯にこれを受けとめまして、その立場に配慮し、保護、支援を図ることは刑事司法の重要な責務であると考えております。これからの私どもの法務行政を運営するに当たっては、しっかり考えていかなければならない課題と受けとめております。

山内委員 憲法では、犯罪の被疑者に関連する権利として憲法三十三条以下で割と条数を割いて規定していますが、犯罪被害者については憲法上に明文がない。あえて探すとすれば憲法十三条の幸福追求権、つまり幸せに生きる権利がその根拠になろうかと思うのですけれども、しかしこれをもってしても犯罪被害者に権利擁護が憲法上認められていないんじゃないか、そういうことを指摘する方もおられますが、例えばこの点を山崎局長はどう思っておられますか。

山崎政府参考人 突然の御質問でございまして、どうお答えしていいか、私の立場でお答えしていいかどうか、なかなかわかりにくいところでございますが、やはり時代の考え方が変わってきているということがまず第一だろうと思います。

 基本的人権を守らなきゃいかぬということは、これはもう憲法にうたわれているわけでございますが、どういう側面に当ててそれをとらえていくかということの時代背景ということ、それが大きく変わってきているということで、その当時は、そういう問題があったとしてもそれほどクローズアップされていなかった、そういうことから憲法上もあえて規定をしていなかったんではないか。やはり時代が大きく変わっているということをあらわしているんだろうというふうに私は理解しております。

山内委員 私もそう思います。

 憲法制定時は、確かに、帝国憲法のもとで、治安維持法という法律で国民の自由というものが随分束縛された世の中だったと思っていますので、刑事規定をしっかりと憲法の中に書き込むということは絶対に必要だったことだとは思うのですけれども、今局長が言われましたように、時代の流れとともに、個人を尊重していこう、個人の尊厳を何よりもどの価値よりも大切にしていこうという思想がやはり芽生えてきた。だから、犯罪被害者についても、精神的あるいは身体的回復が政府によって援助を通じて図られるべきだ、私もそう思っております。

 しかし、イギリスでは、犯罪被害者のプライバシーを守りましょう、あるいは警察情報はしっかりと被害者のもとに渡していきましょうというような、被害者憲章というきちんとした、マグナカルタみたいな書面があるのですが、我が国には今のところこういう法律がないのです。これはどういうふうに考えておられますか。

野沢国務大臣 イギリスにおきます被害者憲章は、犯罪被害者が受けることのできる保護、支援に関する施策の内容をわかりやすく記載したものであると承知をいたしております。

 そのような保護、支援に関する施策の内容を個々の犯罪被害者の方々に十分理解していただくことは重要な課題であると考えておりますが、我が国では、検察当局におきまして、被害者の立場、心情に配慮しつつ事件の適正な捜査処理に努めるとともに、被害者に対して可能な限り誠意ある対応をするよう心がけてきているところでございます。

 また、被害者に対しまして、検察庁における事件の処理結果や、公判期日、刑事裁判の結果等を通知する、いわゆる被害者等通知制度を実施したり、全国の検察庁に被害者支援員を配置しまして、来庁した被害者への対応や被害者に対する相談業務等に従事させるとともに、被害者に配付するため、被害者の保護と支援のための制度を説明したパンフレットを全国の検察庁に備え置くなど、犯罪被害者に保護と支援のための制度を理解していただくよう努めているところでございます。

 また、警察の方では、被害者の手引というようなことで、この辺のところをわかりやすく被害者の方にお知らせする制度も、あわせ今行っているところでございます。

山内委員 その被害者の手引とかあるいはパンフレットを用意されている、それは多分当然のことだろうと私は思うのですね。犯罪の被害者の方に対して、そのプライバシーを尊重していこうという気持ちが法律の中の一部にでも書いてあれば、後でも触れますけれども、京都府警や北海道警できのうとおととい起きたような、警察官の調書が全国のインターネットで広がるというような事件は起きないと思うんですよ。

 だから、私は、プライバシーを尊重します、社会全体で犯罪被害者のことを支援していきます、そういうような法律をつくっていただけないでしょうかというお願いなんですけれども、どうでしょうか。

野沢国務大臣 今委員御提言のように、プライバシーの尊重という具体的な事実、それにまた類する事実、これを幾つも幾つも積み上げていく中で、やはり法律としてそれをではまとめようということに到達できるのではないかと思っております。今、憲法のお話もございましたが、やはり、そういったプライバシーの尊重というようなことも論点の一つとして加えていただく中でしっかりした解決が図れるものと思っております。

山内委員 論点の一つということではなくて、犯罪被害者についてはその被害が回復されるべきだ、支援を求める権利というのは保障されるべきなんだ、そういうような法律をつくっていただけないかという意味ではどうでしょうか。

野沢国務大臣 確かに、もう基本的人権を尊重するということは今の我が国憲法の最大の柱でもございますから、それに沿いまして、今後とも心がけて進めていかなければならないと思っております。

山内委員 いや、心がけは確かに大切なんですけれども、それから一歩進んで、例えば被害者を支援していくということについては、国民の最大の関心事だとして、国があるいは地方公共団体がしっかりと取り組んでいきます、責務を負っていきます、その責務の内容はこうです、こういうことを高らかにうたうような法律をつくっていただけませんか。

野沢国務大臣 国の責務あるいは地方の責務、あるいは国民の皆様一人一人がどういう責任を持つかということについての総合的、一般的な取り決めというものは、もちろんこれは大事かと思いますが、やはり、個別の被害者対策の積み上げを含め、既に十二年に実施しております犯罪被害者保護二法、これらを適切に運用することも含めまして、国民の皆様の気持ちができるだけこういった形で結集できるように私どもも努めていかなきゃいかぬと思っております。

山内委員 その犯罪被害者二法でもし事が足りていたとしたら、犯罪被害者の団体の皆さん、被害者の家族の皆さん、そういう方々が今の犯罪被害者支援策についてその不足を言わないと思うんですよ。ところが、随分大きな声で政府に対して対応を求めておられる。しかも、昨日は東京都議会までこういう意見書を制定される。これは、やはり政府としては、少し国民のニーズにまだこたえ切れていない部分があるのかな、そういうふうに思っていただきたいと私は思うんですね。多分、なかなか法律を制定しますということは言われないのかもしれませんが。

 民主党は、先ほどから言いました、プライバシーを尊重します、支援については被害者に権利があります、そして国や社会でしっかりと皆さんを支援していきます、そういうような犯罪被害者基本法という法律を今まで再三にわたって国会の方に出しております。ぜひともこの法案の制定について御尽力をいただきたいというお願いをさせていただいて、ちょっと個別の具体的な論点に進ませていただきます。

 被害者としては、何で自分が被害に遭わなければならなかったんだろう、そういうことを一番知りたいというのが調査結果に出ています。被害者が知らないうちに刑事裁判が始まって、被害者が知らないうちに事件が終わっている。だから、裁判の経過あるいは出所の情報などについて被害者に十分に伝えられていないという現実もあるんじゃないかと思うんですが、その辺の現状についてお願いします。

樋渡政府参考人 平成十一年四月から、全国の検察庁におきまして、犯罪の被害者に対し事件の処理結果や公判期日、裁判結果などを通知する制度を全国統一の制度として実施いたしまして、また平成十三年三月から被害者やその親族に受刑者の出所情報を通知する制度を、同年の十月からは被害者が同じ犯人から再び被害を受けることを防止しその保護を図るため、受刑者の釈放予定に関する情報の通知制度を実施し、それぞれ被害者の方からの求めに応じて必要な情報を提供しているところでございます。

 今後も、被害者の方に対する的確な情報提供に努めてまいりたいと考えております。

山内委員 それは被害者等通知制度だと聞いておりますけれども、今はそれでは不十分だという声をしばしば耳にします。なぜなら、それが運用によるものである、だから制度としてまず安定性に欠けるという最大の欠点がございます。被害者が希望した場合には通知されるけれども、検察官が、妥当ではない、あるいは関係ない、そういうふうに判断した場合には通知は被害者の思いに関係なく通知されないという運用になっています。

 また、文書でそういうふうに通知されるのではなくて、実際の生の裁判に関与したいという思いを持っている被害者もたくさんおられます。

 恐縮ですけれども、大臣、実際の刑事裁判というものをごらんになったことはございますか。

野沢国務大臣 刑事裁判の実態は、まだ見たことはありません。

山内委員 副大臣、恐縮ですけれども、刑事の法廷を見学されたことはありますか。

実川副大臣 ございます。

山内委員 被害者は、犯罪被害者は傍聴者でしょうか。事件のドラマを見ている単なる傍聴者ではないと私は思うんですね。ところが、被害者については傍聴席しか与えられていません。これでは、自分のまさに生命、身体、財産が傷つけられて悲嘆のどん底におとしめられているそういう被害者の思いを、あなたの思いも含めて裁判をしていますという刑事司法への信頼が、私は、傍聴席に座らせるということによってある意味では損なわれているんじゃないかと思うんです。

 そこで、提案なんですけれども、法廷のさくの中に、つまり、裁判官あるいは検察官、あるいは弁護人、被告人、そういうさくの中にいる人たちのどこかのポジションに、被告、弁護人側から見れば検事というのは被害者の側に立つ人間だと思っていますから、そういう意味では、被害者を検察官の横に座らせておくというようなことを認めるべきではないかと私は思うんですけれども、どうでしょうか。

実川副大臣 今先生御指摘の傍聴の件についてでありますけれども、平成十二年のいわゆる犯罪被害者保護二法によりまして、被害者の方が優先して傍聴できるというように裁判長は配慮しなければならないということにしております。

 それから、横に被害者を座らせるということについてでありますけれども、さらに検察官の横等に被害者を存在させることにつきましては、刑事裁判への被害者の参加の問題にもかかわる問題でございます。

 現在、法務省内におきまして研究会を設けて、現行制度に加えて、さらにどのように被害者の保護また支援の充実を図ることができるかについて幅広い観点から調査研究を進めております。今後、そのような調査研究も踏まえまして検討を進めてまいりたい、このように考えております。

山内委員 検討を進めていただきたいんですが、しかし、例えば優先傍聴の関係にしても、例えば一つの事件で傍聴席が二十あって被害者が四十だと賄えませんよね。もちろん、そこには新聞記者の皆さんも座っていただかなくちゃいけない。それから、もちろん被告人の家族もいると思いますよね。それから、一般の皆さんがおられる。そうすると、優先傍聴の制度を設けていますということだけで、私は、犯罪被害者のことを考えておりますということにはつながらないんじゃないかなと思っています。

 傍聴席で犯罪被害者の皆さんがさくの中のやりとりを見ていて一番腹が立つのは、被告人が被害者を傷つけるようなことを言ったり、あるいはまた事実と違うことを述べたりするときに物すごくいらいらするというんですね。それで、その被害者がさくの中で検察官の横にいるだけでも、その被告人にとっては本当に緊張感を持って、いいかげんなことを言っちゃいけないんだ、そういうような思いにさせるためにも、私は、被害者の在廷権というか、検察官の横に座っているだけでも大変意味があると思うんですが、その点についても法務省の検討会の中で考えていただきたいと思っています。

 それから、意見陳述をしていいということになりました。犯罪被害者が、裁判の多分最後の局面でしょうか、意見陳述をするわけですけれども、その意見陳述の前後ぐらいは検察官の横に座って、証言台に進んで意見陳述をする。つまり、現在の自分の心境はこうです、私たち家族もこうやって立ち直ったから厳罰に処さないでいいですとか、あるいは、まだまだあの事実を引きずっていますから極刑にしてくださいとか、最後にそういうことを言う意見陳述の機会だけぐらいは被害者を検察官の横に座らせるような配慮はできないものでしょうか。では、最高裁、済みません、運用としてどうでしょうか。

大野最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 訴訟事件に関する事項でありますので、最終的には裁判体が判断するということになりますが、一般的に申し上げますと、現在の刑事手続におきましては、訴訟の当事者としての位置づけとしては、検察官、弁護人、被告人というふうに位置づけられておりますし、法の規定上もこれらの者についてのみ公判期日への出席に関する規定が設けられているといった実情にあります。

 こういった現行の法制度のもとで、被害者に検察官の横に座ることを運用で認めるということにつきましては、法の枠を超えるのではないかという考え方もあろうかと思います。議員御指摘のような運用は現在行われていないところでありますけれども、こういった今申し上げたような事情も考慮してのことと考えられるというふうに思われます。この点は御理解いただければというふうに考えております。

山内委員 どうも最高裁、運用の面では随分大変だということなんですが、その法務省の検討会の中では、意見陳述の前後だけでもさくの中にいて、検察官の横に座らせて、緊張感を持った法廷をつくり上げていく、そういうような仕組みは検討していただけるんでしょうか。副大臣、お願いします。

樋渡政府参考人 先ほど副大臣がお答えになりましたように、今法務省内に被害者の保護に関することの研究会を設けておりまして、その中ではさまざまな角度からいろいろな議論をしているところでございまして、委員御指摘のような点も踏まえながら今後議論を進めていくものと思っております。

山内委員 それでは、よろしくお願いします。

 被告人がいいかげんなことを言っているときに、被告人に対して質問をしたいとか、あなた、私の目を見てきちんと当時のことを話せますか、そんないいかげんなことを話せますかというようなことを自分自身も問い詰めてみたいというような犯罪被害者の方もおられまして、なるほどなと思うんですよ。

 ですから、被害者の意見陳述の前後ぐらいは、被告人質問までは刑訴の構造上認められないというふうな御答弁になるんでしょうから、そのあたりはやはり、犯罪被害に遭った人が本当にこれから人生を新しく立て直そう、やり直そうという思いを持つためにも、全く今の刑事訴訟の検察側と弁護人、被告人側の対立構造の中だけで犯罪被害者を位置づけないで、もっと外国の法制なども検討されて、柔軟な対応をお願いしたいと思っています。

 今、民事上の和解条項を刑事事件の公判調書に添付すれば執行力が付与できるというようなことになりましたですよね。この制度について、これはあれですか、附帯私訴、民刑一緒に一つの裁判所でできるという附帯私訴の思想からこういうことを刑訴で考えられたことなんでしょうか。

樋渡政府参考人 附帯私訴に関しましては、いろいろとメリット、デメリットもあることでございまして、そういうものを我が国の制度に導入するかどうかということも慎重に検討しなければならないことで、現在、先ほど申し上げました研究会でも一つの研究課題としてなっているところでございまして、委員御指摘の和解、刑事訴訟の中で和解できたことについて、何といいますか、債務名義を与えるということとはまた別の考え方だと思います。

山内委員 別の考え方であっても、刑事裁判とは別個に今までは民事裁判で損害賠償のことについては判断を求めなければいけなかったわけですから、事件が二重になって犯罪被害者としては苦しいということもありますし、家族に金銭面も含めて時間的にも多大な負担を与えるということもありますので、今刑事局長おっしゃったように、附帯私訴の採用も含めてしっかりと議論を重ねていただきたいと思っています。

 ところで、今の、刑事の公判調書に民事上の和解の文言をひっつけて執行文を付与できるようにするという仕組みですが、これはやはり犯罪被害者に代理人弁護士がついていないとなかなか難しいことじゃないんでしょうか、どうでしょうか。

樋渡政府参考人 難しいか難しくないか、いろいろの考えがあるところでございますけれども、被害者にまた弁護人をつけるということ、そしてその弁護人が法廷に出てくる、出席するということは、これは現在の日本の刑事訴訟制度の根幹をまた変えるようなものでございまして、そういったような方策をとるべきかどうか、またこれも慎重に検討しなきゃならないことだと思います。

山内委員 しかし、突然被害者になりました、病院を手配しなければいけません、事情聴取が待っている、実況見分には立ち会ってください、そういうことが立て続けに犯罪被害者の本人あるいは家族に要求をされます。

 つまり、まず、あなたは証拠です、証拠品ですということで扱いが始まるわけです。そのことに随分また不満を持つ被害者の方もおられまして、被害者支援に熱心な弁護士を一応用意しておく、そこに、相談から告訴、告発から、そういう必要な、ぽんぽん飛び交う法律用語を、この法律用語はこういう趣旨ですよ、そういうことをしっかりと説明してあげて、それだけでも安心させられる、そういうような弁護士の制度が必要だと私は思うんですけれども、どうでしょうか。

樋渡政府参考人 まず、刑事手続における被害者に対する支援につきましては、検察官等において被害者の方々と的確な意思疎通を図り、その苦痛、悲嘆や怒りに十分に耳を傾け、これを適切に刑事手続に反映させることがまずもって重要でございますが、法務・検察におきましては、被害者等の負担や不安をできるだけ和らげるため、全国の検察庁に被害者支援員を配置して、被害者の方々からのさまざまな相談への対応、法廷への案内、付き添い、事件記録の閲覧、謄写などの各種手続の手助けをするなどの支援活動に従事させております。また、今国会に提出されている総合法律支援法案によりまして、被害者が刑事手続に適切に関与することに関する制度を十分に利用することができる体制の充実を図ることとしております。

 このような被害者支援のための現行制度に加えまして、被害者に弁護人を選任して支援させる制度をどう考えるかといいますことは、先ほども申しましたように、刑事手続への被害者の関与を認めるかという問題ともかかわりますが、犯罪被害者に対する支援全体のあり方の中で慎重に検討する必要があると考えております。

山内委員 支援員の制度を十分に整えていただいていることについては感謝しておりますけれども、しかしそれはあくまでも警察の中の要員、つまり、いわば犯罪被害者の皆さんを警察にどう上手に、供述に協力していただき、実況見分に立ち会っていただき、励ましながら、そういう証拠品、証拠として価値を引き出す、そういういわば警察側の人間です。

 だから、私が言っているのは、例えば付き添いなど、しっかりと横に付き添っていろんなところに行ってあげられれば、被害者の抱えている心配は大いにやはり解消すると思うんですね。被害者のみが例えば裁判に行った場合、例えば先ほどのお話ですと、大臣は刑事裁判というのは見られたことがないと。

 そういう人が刑事裁判手続、今公判中ですとぱっと行かれて、しかし大臣だから理解できても、やはり一般の人、特に悲しみに打ちひしがれた犯罪被害者の皆さんが、うろうろと裁判所の中を歩いていって傍聴に行って、手続の意味もわからない、今後の公判がどういうふうに推移するかもわからない、裁判の見通しなんか一切わからない、そういうような、自分が知りたいことを知ることもできない。そういうような手続の中で、あなたは傍聴したからいいんじゃないのということだけでは、やはり支援として弱いと思うんですよ。だから、弁護士が付き添って、そういう細かいことも含めて随時解説をしてあげることによって初めて、法廷で行われたことの意味もわかると思うんです。

 そういう意味でも、犯罪被害者支援弁護士制度というものをつくっておく価値はあると思うんですが、どうでしょうか。

野沢国務大臣 大変貴重な御意見と承っておりますが、今回用意しておりますいわゆる総合法律支援の中でも、被害者の対応については大きなこれは柱になっておりますので、そのような御趣旨を踏まえまして、一層実のあるものにしていかなきゃいかぬなと思っております。

山内委員 総合法律支援の法案についてはまた後日しっかりと皆さんと議論をさせていただこうと思っていますけれども、今言われた総合法律支援の法案の中でも、やはり情報を提供するとか、外部の団体を紹介するという以上に、私は、この法案の中で、犯罪被害者について手厚く支援をしていこうというふうにちょっと読めないものですから、今、総合支援法案に入る前にしっかりと議論をしておきたいという意味も込めて、きょうも質問させていただいております。

 今の弁護士の制度でいいますと、例えば、被害者が最終局面で刑事裁判に出て、意見陳述をしてくださいと。そういう意見陳述の制度においても、被害者が個人で、単独で適切に文章を考えて行うなんていうと、それは無理です。よっぽど自分の気持ちを抑える訓練ができた人でも、例えば私でも、それは例えば私の娘が何か被害に遭ったり殺されたりしたときに、刑事の法廷を見て冷静でいられるかと思ったら、私は多分いられないと思います。だから、被害者の意見陳述の際にも、被害者にしっかりと弁護士の支援をする、そういう犯罪被害者の支援をしっかりと行うというような弁護士のシステムは、私は絶対に必要だと思います。

 しかも、この司法手続に関与する弁護士制度を、私は、国選あるいは公的な費用でそういう仕組みをつくり上げていただけないかと思うんですが、これについての御意見を伺いたいと思います。

樋渡政府参考人 委員が御指摘のように、被害者あるいはその遺族の方々の悲しみ、苦しみ、憤りというものに十分配慮をしなきゃならないということは、刑事訴訟を担当している部として当たり前のことだというふうに思っているところは同じだろうというふうに思うのでありますが、制度といたしまして、検察の中でやっております支援員制度もそのような意味合いで、先生おっしゃいましたような訴追側のためにやっているのでなしに、被害者のためにやっているということも御理解いただきたいと思うのでありますが、このような被害者支援のための現行制度等に加えまして、公費で被害者に弁護人を選任して支援させる制度を導入することにつきましては、被害者に対しどのような形で刑事手続への関与を認めるかという問題ともかかわりますが、現行制度の運用等も踏まえまして、犯罪被害者に対する支援全体のあり方の中で慎重に検討する必要があるというふうに考えているところでございます。

山内委員 また、局長とも後日しっかりと時間をとらせていただきます。

 さて、警察庁、京都府警と北海道警のあの事件は何ですか。犯罪被害者としてしっかりと警察に協力したはいいが、その話したこともみんなインターネットで全国に流布される。どう考えているんですか、今回の事件を。

大村政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の京都及び北海道の事件につきましては、インターネット上に、特に今回の北海道につきましては、北海道警察にかかわる警察情報ではないかというふうに思われる情報が流れているということを認知いたしまして、調査をしたところ、道警察江別警察署の交番勤務員の私物パソコンから、捜査関係書類等にかかわる情報がインターネット上に流出していたということが判明したわけでございます。

 流出した経緯につきましては現在調査中でございますけれども、どうやら、私物パソコンの不適切な取り扱い、これに加えまして、ある種のコンピューターソフトを使用したということが情報流出の原因となったというふうに考えております。

 今御指摘のとおり、個人情報を含みます警察の保有情報がインターネット上にたびたび流出したということに関しましては、極めて遺憾であるというふうに考えております。公務に使用する私物パソコンにつきましては、セキュリティー対策を徹底する、また、そういうことを都道府県警察に再度指示したところでございます。

 警察では、できるだけ公費でのパソコン整備を推進するとともに、個人情報の適正な管理等につきまして、職員に対して改めて指導を一層徹底いたしまして、同種事案の再発防止に万全を期したいと思っている所存でございます。

山内委員 その万全を期すということを本当に心底願っています。犯罪被害者や一般国民が刑事手続あるいは捜査に協力しない、そういう原因もあって検挙率が下がっていると私は思いますよ。その上に今回のような事件。警察に話したら、氏名、職業、年齢、住所、みんな全国の人にわかってしまう。今回の事件について、本当に反省をしていただきたい、そう思っています。

 さて、時間もなくなりましたけれども、昨年の日弁連の人権大会でも、犯罪被害者の支援について決議をしておりますし、先ほどから引用させていただいておりますけれども、大阪、あるいは大都市中の大都市である東京都議会も、昨日、犯罪被害者の救済と被害回復制度の拡充に対しての意見書が出されました。やはり国としての対応が少しおくれているということに、全国から、全国の自治体の関係者も含めて、不満が出ている証拠だと私は思っています。

 地下鉄サリン事件、大規模な犯罪事件が起こりましてたくさんの人々が死傷をするなど、私たちはいつどこで犯罪に遭うかわからない不安な社会に生きていると私は思っています。

 私は、被害に苦しむ犯罪被害者の皆さんに政府が温情をかけてくださいとか恩恵的な制度をつくってくださいということを言っているのではないんです。もっと国民すべてが、本当に元気よく、今までのことをきちんと整理しながら、あしたのことを考えて、しっかりと自分の人生設計をしていく、そういうことを保障できるような社会をつくっていくことが、現代国家日本のあるべき姿だと私は思っています。

 精神的、身体的に被害に遭っても、再び勇気を持って社会の中で活躍できるような、そういう社会へ国の形を変えていくべきだと最後に訴えさせていただきまして、質問とさせていただきます。ありがとうございました。

柳本委員長 泉房穂君。

泉(房)委員 民主党の泉です。よろしくお願いいたします。

 私は、本日は、先ほどの山内議員に引き続きまして、犯罪被害者の支援の問題、そしてもう一点、無年金障害者の救済の問題、この二点につき、質問させていただきます。

 三十分という限られた時間でもございます。また、犯罪被害者につきましては、先ほどの山内議員、またこの後の松野議員も質問を予定しております。また司法ネットの審議の中でも十分な審議がなされると思いますので、きょうはポイントを絞りまして質問させていただきます。

 まず、その前提といたしまして、私自身の問題意識ですが、私は七年前に弁護士になりました。犯罪被害者という方と直接向き合ったのはそのときが初めてであります。弁護士になりまして初めての刑事事件は、いわゆる下着泥棒の事件でした。

 被害者のところにおわびに行きました。そのときに、本当に厳しい言葉を投げかけられました。抽象的に考えてみますと、下着一枚とったにすぎないことかもしれません。でも、その被害者の方は、犯人が捕まるまで、本当に恐ろしい思いをしてきたと。その御自宅にはビデオカメラまでわざわざ設置して、犯人を捕まえようと、随分そういった思いで過ごされたというお話も聞きました。

 その際、それは連続の下着泥棒だったもので、実際に裁判になったのは二件だけでした。でも、実際のところは十四件の事件を起こしたと当の被疑者が言ったものですから、十四件すべて、おわびに回りました。

 そういった中で私が感じたのは、いわゆる刑事事件の場合、どうしても、重大な部分に限られて、そこだけ起訴したりします。しかしながら、そういった刑事事件にならなくても被害者はいるわけでありまして、その被害者がやはり心が傷ついていたり、悩んでいたりする、そういうことをそのとき私は実際に感じたわけであります。

 その後も、刑事事件をする中で、児童虐待で、それは私自身の知り合いが加害者となった事件でありまして、実際上、連れ子の子供が亡くなるというむごい児童虐待の事件の弁護も担当しました。

 お通夜に行きまして、土下座をしました。本人は捕まっておりますので、本人に成りかわりまして、亡くなったお子さんの親御さん、おじいちゃん、おばあちゃんに土下座をしておわびをしましたが、とても許してもらえるような状況ではありません。そのときに、どうして加害者の側に私、弁護士がついていながら、遺族、被害者の側にはどなたもいないのかと、本当に心の痛む思いをしました。

 また、交通事故の事件の際によく弁護をします。執行猶予をとるために、示談金の提示をして、示談交渉をしたりします。私自身は、お金を払う側の立場ですから、できれば安い金額で済ませたいということになりますが、ただ、被害者の側からいえば、できる限り適正な価格の被害弁償を受けられてしかるべきであります。

 現実問題、刑事事件の場合、執行猶予になるか否かの時点では、加害者側はお金を払おうとします。しかしながら、一たん刑事事件が終わってしまった後、改めて民事事件になっても、もう既に刑務所に入っていたりしますと、なかなかお金を払おうとはいたしません。

 そういった意味でも、早い段階で、被害者の側にも、適正な被害弁償を受けるに値するような、ちゃんと支援の体制が要るのではないか、そういったことを常日ごろから感じている次第であります。

 そして、犯罪被害者につきまして思うのは、犯罪被害者と一口に言いましても、さまざまな被害者の特性に応じて、ニーズといいますか、必要としている支援は違うのではないかということであります。

 例えば障害者の場合、知的障害者、精神障害者、身体障害者。身体障害の場合であっても、視力障害、聴力障害などなど、本当にそれぞれごとに必要としている支援は違います。障害者というからといって、全員に車いすが要るわけではありません。

 それと同じように、犯罪被害者にもそれぞれ特性があるわけであります。重大事件の遺族になった場合、やはり刑事裁判の場で被告人に対して一言言いたいという気持ちはごもっともです。しかしながら、例えば性犯罪の被害者の場合、できれば顔も合わせたくない、心の傷に対してやはり支援を必要としているわけであります。先ほど申した交通事故の被害者の場合は、やはり適正な民事的な補償というものが大きな問題であります。また、児童虐待などの場合、実際、大事に至る前に、早い段階での被害者側からの相談システム、相談窓口の整備が必要であります。そういった特性に応じた犯罪被害者に対する支援システムが今急務である、私はそう思っております。

 そういった見地も含めまして、きょうは法務省と警察庁に対しまして質問させていただきます。

 まず、法務大臣につきましては、繰り返しになりますが、ポイントをかいつまみます。犯罪被害者支援の必要性は急務と感じますが、その必要性の認識、そして充実に向けての具体策、そしてまた司法ネットにおけるその位置づけにつきまして、改めて決意のほどをお伺いしたいと思います。

野沢国務大臣 委員が大変御熱心にこの問題に取り組んでおられることに敬意を表するものでございます。

 犯罪の被害者やその遺族の方々の苦痛、悲嘆、怒り等を真摯に受けとめまして、その立場に配慮して、保護、支援を図ることは、刑事司法の重要な責務であり、また正義の実現という司法の目的に沿って、今一番必要なことであるという認識でございます。

 そこで、法務省におきましては、平成十二年五月に成立した、いわゆる犯罪被害者保護二法によりまして、まず証人の負担を軽減するための制度、二番目に公判廷において被害者が意見を陳述する制度、並びに、三つ目に被害回復に資する制度を新設するなどの法整備を行ったところでございます。

 検察当局におきましても、被害者の立場、心情に配慮しつつ、事件の適正な捜査処理に努めてきたところでありますが、被害者に対しまして、検察庁における事件の処理結果や刑事裁判の結果等を通知する被害者等通知制度を実施するほか、被害者支援員を配置し、被害者からの相談に応じてきておるところでございます。

 最近の犯罪被害者のための施策の充実を求める国民の声が高まりを見せているということを受けまして、現在、法務省内には研究会を設けまして、現行制度に加えて、さらにどのような形で被害者の保護、支援の充実を図ることができるかについて調査研究を進めているところでございます。

 この研究会の結果、あるいは検討の状況を踏まえて、被害者の方々の保護、支援に関する施策の充実に一層努めてまいる所存でございます。

泉(房)委員 先ほど山内弁護士からの質問で、刑事事件に法務大臣はそれほど多く接しているわけではないというようなお答えかと思いますが、特に犯罪被害者の場合、幾ら人間に想像力があるといいましても、やはり限りがあります。直接被害者の生の声を聞くことによって感じ取る部分もあると思います。ここは質問通告しておりませんが、法務大臣、被害者の生の声を、この際、犯罪被害者支援に向けて取り組む重要な役割を担う大臣といたしまして、生の声を聞く機会を設けていくという御用意はあるか、お答え願います。

野沢国務大臣 できるだけその機会をつくりまして実態を見聞し、あるいは直接お話を聞く機会をつくりたいと思っております。

泉(房)委員 続きまして、先ほどの山内弁護士とも重複しないように質問しますが、重大犯罪の場合、質問といいますか、刑事手続の中で、やはり被害者の地位といいますか、権利というものをしっかり認めてほしいというニーズがあります。この点につきましては、いろいろ議論があることは私も承知しております。ただ、運用面の改善によりまして、ある意味、そういった被害者の思いをかなえるような運用は可能ではないのかというような思いを持っております。

 また、国選弁護人制度の導入につきましても、これもなかなか議論のあるところではあります。いわゆる刑訴法上の権利を前提にせずして、税金でもって国選という制度を設けていいのかという議論はあろうかと思います。

 しかしながら、この点につきましては、被疑者側に手厚く税金でもって国選弁護人をつけるにもかかわらず、被害者側に税金でもってつけてはならないというふうに国民は思わないと思います。国民の理解は、十分に、被害者側に対する支援システム、税金をもって支援していくということについての理解は得られると思います。また、論理的にも、必ずしも刑訴法上の権利というものを前提としなくても、被害者に対する国選弁護人制度の導入は可能だと私は考えます。

 また、あわせて、扶助の活用につきましても、今のところ扶助につきましては低所得者層二割に張りついております。しかしながら、犯罪の被害者が低所得者層であるかどうかというものは直接関係はありません。いわゆる所得層中級の方であっても、大きな事件に巻き込まれて被害に遭ったときに支援が必要なことは同じであります。

 そういった意味で、広く一本の要件ではなくて、要支援性と申しますか、本当に支援を必要とする方に対して扶助制度の活用を図っていくような工夫もなされてしかるべきだと思いますが、これらの点、あわせてお答えのほど、ポイントで結構ですから、お答えよろしくお願いいたします。

樋渡政府参考人 委員のお考えのように、被害者あるいは犯罪被害者の御遺族の方々に対する支援というものは非常に必要なことだというふうに我々も認識しているところでございまして、先ほどもお答えいたしましたが、そのために法務省内に研究会を設けて、この現行制度以外にどのような方法で対処できるか、対応できるかということを真摯に検討しているところでございます。

 その中には、委員御指摘のような問題も含めながら、あらゆる角度から、学者の先生にも入っていただきながら検討しているところでございまして、その真摯な検討を待ちたいというふうに思っているところでございますが、現行制度の運用におきましても、検察官は、被害者等に必要な情報を提供しますとともに、十分な意思疎通を図り、刑事裁判手続にその心情や意図を適切に反映すべきことは当然でございます。

 平成十二年の法整備や運用上の措置により、検察庁における事件の処理結果等の通知、公判手続の優先傍聴、公判記録の閲覧及び謄写、被害に関する心情その他の意見の陳述などの整備が行われているところでございまして、被害者支援員も、これは本当に被害者の立場に立って、被害者に対していろいろなアドバイスはできるように努めているところでございますので、先生の、委員の御指摘の観点からも、被害者支援は大事に考えていきたいというふうに思っております。

泉(房)委員 論点は多岐にわたりますが、引き続き法案審議の過程でも質問できると思いますので、きょうのところは次に進ませていただきます。

 犯給法の問題はこの後松野議員から質問があると思いますので、犯罪被害者支援につきましては、警察の方も随分早くから取り組んでおられると思います。その点で重要なのが民間支援団体との連携、また支援であります。

 傷ついた方につきまして、幾ら警察、検察が丁寧にといいましても、やはり限界はあろうかと思います。その点、実際上、みずからが被害者となられた方などが中心になってつくられることの多い、そういった民間支援団体が丁寧な心のケア、これは極めて重要だと思います。

 例えばアメリカなどの場合、伝え聞くところでは、民間団体の運営資金の八割程度が公費によって支援されていると聞きます。しかしながら、日本の場合、なかなか資金援助も進まず、それぞれ心ある方が一生懸命に活動しようと思っても、運営資金の難から、なかなかやりたいようなボランティア活動もできないという声もよく聞きます。

 この点、資金援助の点を中心にいたしまして、警察庁に対しまして、どのような形で民間支援団体の支援をしていくのか、お答えをお願いいたします。

安藤政府参考人 警察といたしましては、被害者支援の充実のためには、民間被害者支援団体との連携が大変重要であると考えておりますし、そして、民間被害者支援団体が積極的に活動を推進するためには、やはり寄附金を募るなど財政基盤の確立が不可欠であると認識しておりまして、現在、各都道府県警察におきましても、補助金等が措置されるよう、鋭意努めているところであります。

 また、国レベルにおきましても、こうした民間被害者支援団体に所属するボランティア相談員に対しまして、都道府県警察が業務を委託するための経費につきましても、国として所要の補助措置を講じているところであるわけであります。

 また、資金援助ではございませんが、警察と民間被害者支援団体との連携強化、これが非常に大事だという観点に立ちまして、平成十三年の犯罪被害者等給付金支給法の改正によりまして、被害者やその遺族に対する支援を適切かつ確実に行える団体を都道府県公安委員会が犯罪被害者等早期援助団体として指定いたしまして、その当該団体に対しまして、警察から情報提供などを行う制度がこの機会に新たに設けられたところであります。

 警察におきましては、今後とも、民間被害者支援団体の活動に対し必要な支援を行うとともに、これら団体とも緊密な連携を維持しながら、真に被害者の視点に立ちました支援の充実に努めてまいりたいと考えております。

泉(房)委員 警察の方も、一定の努力といいますか、試みは、その点は評価いたしますが、犯罪被害者支援につきましてはまだまだ不十分です。一般的に、十年、二十年、諸外国から見ておくれているとも言われております。今回、司法ネットも含めまして、犯罪被害者支援につきましてさらなる充実化を図っているわけですので、警察庁におかれましても、さらなる充実に向けて取り組まれるよう、また後日質問させていただきますので、よろしくお願いいたします。

 ちょうど時間が半分ほどになりましたので、もう一つのテーマの方に移らせていただきます。

 皆さんも御存じのとおり、新聞報道でも連日なされておりますが、無年金障害者の救済の問題についてであります。

 お手元の方に資料を配らせていただいております。一枚目が、これはいわゆる超党派の、百名を超す超党派議員によります議員連盟の緊急決議であります。その後、新聞記事を何枚かつづらせていただいておりますが、この法務委員会にて判決を取り上げるのは私が初めてだと思いますので、まずもって、法務大臣に対しまして、今回の判決についての受けとめをお伺いしたいと思います。

 この点、今、手元に、私、判決書の写しを持っております。この判決書を見ますと、被告の欄には国とありまして、その被告、国の下には両代表者、法務大臣、野沢大臣の名前が記されております。この被告はまさに野沢法務大臣なのでありまして、そのお立場から、今回の判決についての受けとめをまずお聞きしたいと思います。

野沢国務大臣 大変重要な判決と考えております。

 我々、年金制度が、国民の皆様すべてがこの恩恵に浴するということが理想でございますので、この問題についての判決につきましては、個別具体的な課題についての評価は差し控えますけれども、いずれにしても、何らかの形でこれが解決することは大事なことと考えておりまして、今回のこの扱いにつきましては、今後の取り扱いの中で十分検討して措置をするつもりでございます。

泉(房)委員 この問題は、法務大臣のみならず、厚生労働省を含めて、総合的な検討を要するということはもちろんわかります。

 ただ、この判決を見ますと、今回の判決の画期的なところは、立法不作為による違憲判決であります。立法不作為による違憲判決は、史上これまで二件しかありません。ハンセン病の件と、あとは慰安婦の問題。そして、今回が三件目であります。非常に珍しい判決であります。なぜ珍しいかといいますと、立法不作為、つまり国会が仕事をしてこなかった、サボっていたということを司法が示したということであります。しかも、その内容につきましては、憲法十四条、法のもとの平等違反という、平等原則違反であります。

 法務大臣といたしましては、まさに法のもとの平等につきまして極めて重大なる役割を果たしておられる立場でもあります。また、国会の不作為、国会の怠慢を指摘されたわけであります。この点、法務大臣としても思うところもあろうかと思いますので、その点、あわせてお答えをお願いいたします。

野沢国務大臣 これは、やはり国会も、それから行政機関も含め、あらゆる関係機関が努力すべき課題と考えておりまして、今後の扱いにつきましては、関係機関と十分協議の上、適切な対応をしたいと考えております。

泉(房)委員 控訴するか否かでありますが、控訴期限は四月七日と聞いております。極めていろいろな要素を含んだ判決の内容でありますので、慎重な検討を要すると思いますので、すぐに控訴するというようなことではなく、控訴期限ぎりぎりまで十分なる検討を要すると思いますが、その点、どのようにお考えなのか、お答えください。

野沢国務大臣 関係機関と十分協議して判断いたします。

泉(房)委員 この後、また厚生労働委員会の方でも私も質問する予定にしておりますけれども、この無年金障害の問題につきましては、今回の判決は学生無年金訴訟ということで学生さんの問題ではありますが、御存じのとおり、学生だけではありません。主婦の方、在日外国人の方、在外邦人の方の問題でもあります。また、極めて大きな問題となっております年金未加入そして年金滞納の方につきましても、同じく無年金障害の問題が生じております。

 この点につきまして、厚生労働省坂口大臣が、かつて坂口試案を提示いたしまして、すべての無年金障害者を救済すべきであるというような案を示されております。今回の新聞報道でも、救済策につきまして検討が加えられているというふうに伝え聞きますが、この点、厚生労働省、どのようなお立場なのか、お答えください。

渡辺政府参考人 お答え申し上げます。

 無年金障害者の所得保障の問題につきましては、御承知のとおり、平成十四年十二月二十四日の閣議決定において「福祉的観点からの措置で対応することを含め、幅広い観点から検討する。」こういうようにされております。

 こうした閣議決定を背景に、私どもの省の中でも検討を進めておるところでございますが、与党の方におきましても、先般の年金改革法案の取りまとめに当たり、改めてと申しますか、与党としては初めてかもしれませんが、二月四日に、合意といたしまして「福祉的措置の在り方についてさらに検討し、必要な財源の在り方とともに速やかに結論を得ることとする。」こういうように方向づけをいただいておるところでございます。

 拠出制の年金制度をどう保っていくか、これは大変大きな課題でございますが、こうした年金制度や他の制度との整合性など、難しい問題が多々ございます。何らかの結論を得ていかなければならない。そのために、関係方面と、関係機関と十分協議していかなければならないというふうに考えて、検討を進めているところでございます。

泉(房)委員 もちろん検討を要することはわかりますが、この問題は今に始まったことではありません。参議院、衆議院でも、附帯決議がもう数年も前からなされております。もう十分な検討期間があったと私は考えます。

 そこで、改めて質問させていただきますが、今回、論点としては幾つかありますが、まず三つの点を指摘します。

 まず一点は、今回の救済措置が、いわゆる福祉的な一般財源をもとにした形でなされるのか、そうではなく、年金という形の中でなされるのかという論点です。

 二点目は、これは年金でいけば障害基礎年金でいくと思いますが、そうでない場合であっても、漏れ伝わってくるような三万数千円ではなくて、やはり実効性のあるような金額が確保されるべきだという声は強く聞きます。この金額の問題。

 そして三点目、これが一番大きいと思いますが、対象者であります。学生のみではなく、厚生労働省も六類型に分けておられます。学生、主婦、在日外国人、在外邦人、そして未加入者、滞納者、この六類型のうち、少なくとも四類型につきましては速やかなる救済が必要であるという声が、原告団、弁護団など当事者団体から連日寄せられておりますが、この点、三点につきまして、どのような現時点での見解なのか、確認いたしたく、答弁をお願いいたします。

渡辺政府参考人 お答えいたします。

 まだ検討の途上でございますので、若干の要素にとどまることをお許しいただければと思っておりますが、福祉でいくのか年金でいくのかということはよく言われるわけでございますが、そうした対象者の実情に照らして、その経緯ということを問わずに措置を講じるのか、それとも、これまでのもろもろの関係制度との兼ね合い、歴史的な経緯というものを踏まえて対応するのかということの考え方の整理の違いであるというふうに考えております。いずれをとりましてもなかなか困難な問題があり、どういう形での整理が可能か、なお検討を続けているところでございます。

 給付水準につきましては、どのようなことであれ、年金の保険料を納めてそして給付を得ておられる方々との関係、それから、これまでのさまざまな諸制度の中でとられてきた対応とのバランス、そういったものを十分考慮しなければいけないというふうにも考えられます。

 また、対象者の話につきましても、冒頭の御指摘の福祉か年金かということにも関連いたしますが、どういう経緯を持った方の現状であるのかということと、そのとるべき対策との兼ね合いということになると思いますので、それらを総合的に勘案して検討しているところでございます。

泉(房)委員 現時点でお話しいただけることには限りがあるということはわかりますが、指摘しておきたいのは、今回の訴訟もそうですが、任意加入で未加入と申しますが、例えば、今回の訴訟の当事者は私とほとんど同じ年代でありまして、私自身は、一九八二年に大学に入りました。二十になったのは八四年であります。私自身も年金には加入しておりませんでした。当時の場合、学生で加入していた方は、厚労省の試算でも一、二%。もうほとんど、九八%、九九%が加入していなかったわけであります。そのときに、何らかの事情で事故にでも遭って後遺症が残った場合、全く障害基礎年金を受け取れない。

 そういった中で、実際上、親御さんがある程度の資力があれば、その中で生活保護も受けられず、親御さんとの中で暮らしておられるという実態があります。その数も決して少なくはありません。厚労省の試算で、六類型合計しますと十二万人以上の方が対象に当たるというふうに厚労省は既に試算しているわけであります。決して珍しい話でもなく、本当に私たち自身がもしかしたらそうであったかもしれないという問題であります。

 また、訴訟は学生のみでありますが、学生と同じように、主婦の問題もほぼ同様の状況であろうかと思います。また、在日外国人につきましては、任意ではなく、そもそも国籍の要件がありまして入れなかったというような事情があります。より救済の必要性は強かろうと私は思いますが、この点、それぞれ、学生、主婦との兼ね合い、在日外国人の救済につきましては、改めて答弁をお願いいたします。

渡辺政府参考人 坂口試案として検討の素材をつくっていただきました、その中でも出てきている各グループについての御指摘でございますが、それぞれに背景、経緯が違うということ、今御指摘いただいたとおりでございます。難民条約との関連ということも抱えているグループもございます。

 さまざまな経緯の違いというものを、実現可能な、そして関連する諸制度とのバランスのとれる対応として、それぞれにどういう評価を与えていくのかということも検討課題の大きな部分であるというふうに考えておりますが、それをどう扱ったらいいのかという具体的な話を今申し上げられるような段階にはないというふうに考えております。

泉(房)委員 民主党といたしましても、この問題は極めて重要な問題と認識しております。民主党としても、もちろんこの問題に積極的に取り組んでまいりますが、ゆっくりできるような状況ではございません。

 また、繰り返し申し上げますが、今回の訴訟、違憲判決があったからといって、学生のみに限り低廉な金額の手当てというような形で、いわばお茶を濁すといいますか、その場をしのぐというようなことで許されるような状況ではなかろうと思います。抜本的な救済が必要なわけでありますので、救済につきましての対象につきましては、六類型すべて、少なくとも、まずもって四類型、学生、主婦、在日外国人、在外邦人の四類型につきましては速やかなる救済、残りの二類型につきましては、さまざまな議論がございましょうが、救済に向けて取り組んでいくということを強く申し入れたいと思います。

 時間も迫っておりますので、最後に一点。

 資料の方で最後から三枚目にもつけさせていただいておりますが、今回のこの違憲判決を書いた裁判官がこのたび人事異動になって、行政部から違う部に異動したという記事であります。記事の中には左遷人事というような単語も見受けられます。私自身はそのようなことであるとは考えておりませんが、しかしながら、司法に対して重要なことは国民の信頼であります。行政訴訟につきましても、その裁判官がやはり適切な信頼の置ける判決を下すんだという国民の信頼があってこそ司法制度は成り立つわけであります。

 しかるに、このようなマスコミ報道がなされて、あたかも違憲判決を書いた裁判官が行政部でないところに異動したというような記事が書かれること自体が国民の信頼を失うようなことになりかねないかと私は危惧いたします。この点、最高裁の見解を問います。

中山最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 御指摘の人事でありますけれども、これは東京地裁内部で、どの部で裁判を行うか、担当するかといういわゆる東京地裁内部の事務分配の問題でございまして、厳密な意味での人事異動の問題ではございません。

 また、裁判所におきましては、判決の内容に基づいて裁判官を異動させたり、あるいは配置がえしたりというようなことは、司法行政権が裁判の内容の当否を論じて人事異動の資料にするということにほかならないわけでございます。裁判官の独立というのは、これは外部からもあるいは内部からも、それは司法の生命線でございますから、そのようなことでは全くないということをまず御理解いただきたいと思います。

 なお、新聞記事がこういった形で書かれていましたことは、今委員が御指摘の観点から私どもの方もこれは残念なことであるというふうに思っておりますけれども、日ごろから裁判所について種々報道機関には理解をしていただけるよう説明をしてきているところでございますが、今後もそういった努力を通じて、そういった、少なくとも誤解を招くことのないようにしていきたいというふうに思っております。

 以上でございます。

泉(房)委員 時間が参りましたので、この点につきましては、無年金問題、厚生労働委員会も含めまして、また引き続き質問させていただきます。

 また、犯罪被害者の支援につきましては、極めて重要な問題でありますので、関係各所におきまして、この通常国会中、一歩二歩進むような質疑、答弁を期待いたしますので、よろしくお願いいたします。

 以上をもちまして私の質問を終わります。ありがとうございました。

柳本委員長 松野信夫君。

松野(信)委員 民主党の松野信夫でございます。

 まず初めに、最高裁の方にお尋ねをしたいと思います。

 ことしの三月二十二日の東京新聞の一面トップに、ロッキード事件の重要な文書、「最高裁、重要文書廃棄か」、こういうような見出しで出ております。内容を拝見いたしますと、ロッキード事件におけるいわゆる宣明書、最高裁長官の宣明書あるいは検事総長の不起訴宣明、あるいはアメリカの判事が示した裁定の全文、こういうような書類を開示請求された人に対して、不存在だ、こういうことで開示がされなかった、こういう記事でございます。

 まず、こういうような、不存在を理由に開示がされなかったということが事実かどうか確認をしたいと思います。

中山最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 御質問のような開示申し出がありまして、対象となった文書の一部について、文書不存在を理由に不開示としたことは事実でございます。

松野(信)委員 こういう重要な文書がもし万が一廃棄というようなことにでもなっているのであれば、これは大変残念なことだというふうに思います。

 そこで、最高裁における文書の保存のルール、これについてお伺いをしたいと思います。

 恐らく、裁判所における文書というのは、一つは、民事や刑事などの裁判関係の記録、判決とかさまざまな裁判記録が一方にはあろうかと思います。他方には、直接裁判には関係がない、裁判所の中の例えば裁判官の会議の文書だとか、いろいろな指示文書だとか、裁判以外の文書があろうかと思います。

 かつては、判決原本というのは大体これは永久保存だ、こういうふうになっていたかと思いますが、どうも最近は必ずしもそうではないんだというようなお話も聞いておりますので、まず、こういう裁判所における文書の保存、これはどういうようなルールで決まっているのか、この点についてお伺いしたいと思います。

中山最高裁判所長官代理者 裁判記録の方から御説明申し上げます。

 まず、刑事事件の記録につきましては、これは刑事確定訴訟記録法に基づきまして、第一審の裁判をした裁判所に対応する検察庁の検察官が保管しております。その他、刑事事件以外の民事事件記録、その他の家事事件、少年事件の事件記録等は、これは最高裁判所が定めました事件記録等保存規程等に基づきまして、原則として当該事件の第一審裁判所において記録保存用の倉庫あるいは保管庫に保存しているというところでございます。

 各事件記録、判決書等の事件書類の保存期間は事件の書類によって異なり、事件記録等保存規程が細かく定めておりますが、概略を申し上げますと、判決原本は五十年間、和解調書は三十年間、その他事件記録は五年間ということになっております。もっとも、これはあくまでも原則でございまして、歴史資料的なもの、あるいは法制的に価値の高いといった事件記録や判決書につきましては、各庁における特別保存に付することができるというふうに定められているところでございます。

 ロッキード事件について申し上げますと、先ほど宣明書の関係等がお尋ねありましたけれども、これは、宣明書自体の方はアメリカの裁判所に直接原本は送るというものでございますから、これは日本にはございませんけれども、ロッキード事件本体においてその証拠能力等が争われるということがございましたので、その宣明書あるいは検事総長の不起訴宣明、さらにはその経過を示す書面につきすべて証拠調べをされておりますので、刑事事件の記録の中にそれが残っているということになろうかと思います。

 また、司法行政文書につきましては、平成十三年の三月に最高裁事務総長の依命通達で司法行政文書取扱要領を定め、これに従った文書の管理、保存がされております。この司法行政文書取扱要領は、行政機関の保有する情報の公開に関する法律、いわゆる情報公開法の制定に伴い行政機関の保有する行政文書について申し合わされました行政文書の管理方策に関するガイドラインをベースに作成したものであります。

 保存の前提となる文書の分類方法、保存期間、管理体制等は、このガイドラインとほぼ同じ内容にしております。例えば、保存期間は当該文書の重要度から三十年、十年、五年、三年、一年とし、保管責任者も当該文書を所管する課等の課長と定めております。

 裁判官会議議事録を、先ほど、これはやはり関係ございますので、ロッキード事件の関係で申し上げますと、これは最高裁判所としての意思決定機関の議事録という重要性から、保存期間は三十年とし、保管責任者は秘書課長ということになっているわけでございます。

 以上です。

松野(信)委員 先ほど私も申し上げたように、たしか、かつては判決原本というのは、これは永久保存だというような取り扱い、これは法的な根拠は必ずしも定かではありませんが、事実上そういう取り扱いになっていたかと思いますが、今の御説明ですと五十年というようなことになりますので、それは、いつ、どういうようなことで変わったのか、この点について御説明をいただきたいと思います。

中山最高裁判所長官代理者 現行の事件記録等保存規程は、昭和三十九年十二月に制定されたものでございます。それまでの間は判決原本の保存期間が永久保存でございましたけれども、その段階で五十年ということにいたしました。

 これはやはり、基本的には、例えば債権執行のための時効期間ということも十年でございますし、五十年ということになりますと、ほとんどそういったものをお使いになる方がいらっしゃらないというようなところも、全国的に調査をして踏まえて、その上で、五十年であれば今後に支障を生ずることはないであろうということで決めたものでございます。

 しかし、あわせて、先ほど言いましたように、歴史的に非常に重要なもの、あるいは、これは弁護士会等あるいは研究者からもそういった要望のあるものについては、これは特別保存という形で残していこう、こういうふうにもしておりまして、各裁判所においてはそういったもので残っているものも相当数ございます。

松野(信)委員 さまざまな文書がありますが、これはきちんとやはり分類を行って、将来、必要性に応じて使っていくということから、ぜひきっちりとした保管制度というのを確立していただきたいなというふうに思いますし、また、だれが保管の責任者になって保管をするのか、そういうような責任者というのもしっかり決めていただきたい。通常、行政庁においては、平成十一年の情報公開法によって情報公開というような制度ができる、それに合わせた形で文書管理制度というものもきっちり制度を設けるというふうになったかと思います。

 例えば、今お話がありました裁判官会議などの議事録、これはきっちり保管責任者というのは決まっているんでしょうか。

    〔委員長退席、漆原委員長代理着席〕

中山最高裁判所長官代理者 裁判官会議議事録の保管責任者は、秘書課長でございます。これは、先ほどお話し申し上げましたように三十年ということになっておりますが、今後の司法行政上、やはり参考資料、どういったことでこの制度ができたかどうかというようなことにも、いろいろ、種々活用が考えられますことから、現在は、戦後、最高裁発足以来の裁判官会議議事録はすべて保存しているという状況にございます。

松野(信)委員 先ほど、判決原本あたりは、永久保存であったものを五十年というふうにするということでございました。ただ、歴史的に重要なものについては別途考えるというようなことでありますが、そうすると、これは重要だ、これはそうではないから五十年で廃棄してしまうというような、その辺の区別、基準、これは一体だれがどういうような基準で選定するのか、その辺を教えていただければと思います。

中山最高裁判所長官代理者 特別保存をということを規定しますときに、どういったものがその対象になるかということを最高裁の方から通達で下級裁の方に連絡しましたところでございますが、資料的、法制的に価値が高いものとしては、例えば、重要な憲法判断が示された事件、重要な判例となった裁判がされた事件等、法令解釈上特に参考となる判断がされた事件、さらに訴訟運営上特に参考となる審理方法により処理された事件、世相を反映した事件で資料的価値の高い事件、全国的に社会の耳目を集めた事件、または当該地方における特殊な意義を有するもので特に重要なものと考えられる事件、民事及び家事の紛争、少年非行等に関する調査研究の重要な参考資料になる事件等を挙げております。

松野(信)委員 ちなみに、ほかの行政機関等はどういうような保存になっているか、私なりに調べてみましたが、例えば国立国会図書館、ここでは、国会の議事録、本会議や委員会の議事録がございますが、これは図書館資料として受け入れて永久保存しているというようなことであります。ですから、明治時代の議事録も存在するという回答でございました。

 また、劣化などの問題で原本の資料の提供が困難なものについてはマイクロフィルムで閲覧等に提供している、こういうようなお話でございました。

 そうした点から見ると、いささか最高裁の方の体制というのがどうなのかという気がしてなりません。冒頭に御説明しましたロッキード関係の文書が不存在だという新聞報道にも載っておりますが、最高裁は情報公開制度というものをちゃんと持っていながら、自分のホームページ、最高裁のホームページにはそういう情報公開の案内が設けられていない。

 また、一般的に、行政官庁で不開示あるいは一部開示というような場合には、その当該省庁とは別に情報公開審査会というようなもので不服の申し立て制度もしっかりできている。こういうふうになっているんですが、どうも最高裁の方は必ずしもそういうような体制にはなっていないようなので、この辺は少し考えを改めていったらどうかと思いますが、この点についてもお伺いしたいと思います。

中山最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 情報公開法は、委員も御承知のとおり、行政機関を対象とするものであり、国会と最高裁判所は別ということにされました。それは、特に三権分立という観点から、国会あるいは最高裁の自律権というものを尊重された結果であろうと考えております。

 ただ、裁判所の方は、もう一つ考えていただかなければなりませんのは、実は、司法行政文書と申しましても、裁判所には事件記録を初めとする裁判関係記録というものがございまして、これらがなかなか線引きがしにくいというところもございます。したがって、そのあたりのところを、どこまでが司法行政文書として情報公開として考えていけばいいのか、裁判の独立という関係から、そのあたりを、運用を見定めていかなければならないということから、私どもとしては、まず最初に事務総長通達ということで運用を始めてみたというわけでございます。

 実際上、その後のホームページのことでございますけれども、これはまことに御指摘のとおりでございますから、今、ホームページに早急に載せるように、これは作業中でございます。

 今後とも、このあたりの裁判所におけるこういった手続、運用というものがこういうふうになされているということについては、幅広く国民の方にわかっていただけるような措置をとってまいりたい、こういうふうに思っているところであります。

松野(信)委員 もう最高裁の方はあと一問で終わりますが、せっかく情報公開制度があるわけで、最高裁も情報公開制度を持っていらっしゃるわけですから、ぜひPR方をお願いしたいと思います。

 それから、先ほど来から出ています、判決原本を中心とした、非常に重要な、歴史的、社会的、文化的にも重要な文書、こういうものが五十年で廃棄されてしまうというのは、本当にいかがなものかなという気がしております。

 ちなみに、立法関係について言うならば、国立国会図書館があって、先ほど申し上げたように、この国会、我々が審議している議事録あたりは永久保存している。こういうことで、立法関係はそういう保存の図書館があるわけです。それから行政関係については、国立公文書館というのがあって、ここで行政関係の文書はしっかり保存がなされる。

 ところが、三権のうちの一つ、司法については、司法公文書館というようなものが現時点ではありません。これは最高裁だけの力ではなかなか難しいというようなところもあろうかと思いますので、最高裁を中心に、法務省も協力するなり、さまざま、場合によっては大学、あるいは文部科学省あたりも協力するなりして、ぜひやはり司法は司法での国立司法公文書館のようなものを設置して、ここで歴史的な価値のあるような文書は永久保存するとか、百年保存するとか、そういうようなことをぜひ最高裁が音頭をとってやっていただきたいというふうに思っているところですが、この点についてはいかがでしょうか。

中山最高裁判所長官代理者 国立公文書館ができましたときに、その保存対象というのは行政機関ということにされておりました。しかし、その後、判決書が五十年であり、昭和十八年以前の判決書について裁判所はもう廃棄しますということを申し上げましたところ、現在の成蹊大学の青山教授を初めとする、国立大学を中心とされた方々が、判決原本を守る会ということでしたでしょうか、それをおつくりになり、それは歴史的な資料ということでも重要かもしれないので国立大学がこれをしばらく保管するということにいたし、その後、国会の方で御審議がありまして、司法関係のものについても公文書館の方におさめることができる、こういうようなことになった経緯がございます。平成十二年から十三年の改正でそういうことになったかと承知しております。

 したがって、現時点におきましては、裁判所の持っております重要な歴史的な資料というものにつきましても国立公文書館の方に移管できるというような枠組みはできてきております。

 しかし、他方で、裁判所の方は、先ほど申し上げましたとおり、各庁で特別保存ということをやっておりました。事件というのはやはりその地方、地方との関係というものが非常に強いものでございますから、例えば、仙台高裁にはきちんとした史料展示室を設けまして、そこで明治以降のいろいろな記録について展示してあるというところもございます。

 その辺のところをどう振り分けて、公文書館と裁判所がまたそれを保管するという役割を分担していくか、今現在それを公文書館との間で協議中でございまして、公文書館の方からはもう少し検討させてもらいたいという返事で、今そういう状況にあるというところでございます。

松野(信)委員 最高裁の方に対する質問は終わりましたので、ありがとうございました。

 引き続いて、法務大臣の方に御質問をしたいと思います。

 先ほど来からお話が出ております、犯罪被害者に対してさまざまな支援あるいは精神的なケアなどもすべきではないかというようなことで議論がなされております。先ほどからも出ておりますように、民間レベルでも犯罪被害者の支援というような形でさまざまなNPO、NGOが設立して、あるいは警察庁とも協力しながら取り組みをしているわけであります。

 それで、少しずつではありますがこの支援が進んではいるものの、何といっても、やはり犯罪被害者の支援をしっかり基礎づける基本法、犯罪被害者基本法ともいうべきそういう基本法がやはり根底には必要ではないか。こういう基本法があってさまざまな枝葉に分かれて支援の施策ができるというふうに思いますので、ぜひこの基本法の制定に向けて取り組みをしていただきたい。それに向けての大臣の御所見をいただきたいと思います。

野沢国務大臣 きょうは犯罪被害者の件につきまして多くの先生から大変貴重な御提言をちょうだいしておりますが、委員御指摘のように、犯罪被害者の保護、支援についてはさまざまな分野における種々の施策が必要でありますけれども、まずもって、具体的、現実的な施策を講ずることが大事ではないかと思っております。

 まず、幹を大事にしということもございますが、やはり個別具体的な基礎になる事柄がついていかないと、これまた抽象的な話になってしまってもいけないということでございますので、法務省といたしましては、いわゆる犯罪被害者保護二法による法整備のほかに、種々の施策を実施してきておるところでございます。

 さらに、近時、犯罪被害者のための施策の充実を求める国民の皆様の声が、先ほどの御紹介のような形で高まりを見せていることもございますので、現在、法務省内に研究会を設けまして、現行制度に加えて、さらにどのような形で被害者の保護、支援の充実を図ることができるかについて調査研究を進めておるところでございます。

 今後とも、犯罪被害者の保護、支援に資する施策の充実に努めてまいるつもりでございます。

 御指摘の、基本法の制定について議論することは大いに意義のあることと思いますが、その必要性につきましては、種々の個別具体的な施策を講じていく中で総合的な見地から検討することが適切ではないかと考えておるところでございます。

松野(信)委員 ぜひ法務省の中に設けられている検討会の中で、被害者の支援に係る基本法の制定に向けた前向きな取り組みをお願いしたいと思います。

 一つ御紹介をしておきたいと思いますが、ことしの二月二十日に、松本サリン事件で一時犯人というふうに目された、本当に被害者の河野義行さん、この方が、例の松本智津夫被告人の判決の直前に投稿をされておられました。その河野さんの投稿の最後のところにも、経済的、医療的、精神的ケアなど課題が多い、犯罪被害者の処遇に関してですね。そして、一日も早く犯罪被害者の救済基本法が整備され、被害者が報復感情のみで心のバランスをとっていくような社会から脱却したい、こういうような手記を投じておられるわけでございます。

 そういう被害者の河野義行さんもおっしゃっておるわけで、ぜひこういうのを踏まえて進めていただきたいし、また、やはりこういう基本法に当たっては、犯罪被害者というものの位置づけ、どういう権利を持っているのか。先ほど我が党の山内おさむ委員の方からも、刑事手続においても何らかの権利を認めるべきではないか、こういうような指摘もありましたけれども、やはり犯罪被害者の権利というのをきっちり踏まえて、権利性をしっかり定めたような基本法にしていただきたいなというふうに思っております。

 この点についても大臣の御所見をいただければと思います。

野沢国務大臣 今、河野さんの投稿を引き合いに出されましたが、私、郷里が同じ方でございまして、あの方が被害を受けられ、かつ一時は加害者とまでみなされたそのお気持ち、無念は、まことに察するに余りあるとよくわきまえておるところでございます。

 そして、やはりこれからも、被害を受けられた方々が本当に試練を乗り越えて、この社会の、法治国家の中でこの問題が解決していく、被害者の皆様の気持ちが解決されていくという仕組みを何としてもこれからも早く整備をいたしたいものと思っておりますので、今後の研究会の中では十分その辺を加味した形で、できるだけ早い機会に成案を得たいものと思っております。

松野(信)委員 残された時間については、犯罪被害者の給付金に関することについて質問をしたいと思います。

 現行の犯給法の実際の運用につきましては、平成十三年の改正でかなりの拡充がなされた、この点については率直に評価をしたいというふうに思っております。

 私も調べてみましたけれども、平成十三年にこの犯給金の申請に係る被害者の数は三百七人であったところが、平成十五年には四百八十二人ということで、拡大をしております。また、各地の弁護士会あたりで犯罪被害者の人に対するさまざまな法律相談、こういう件数も着実にふえていて、やはりそういう救済の必要性は非常に高いものがあるかというふうに思っております。

 ただ、残念なことに、私が被害者の人たちから聞いたところでは、この犯給金の申請から実際の給付まで時間がかかり過ぎる、どうかするともう数年かかるというようなケースもあるようで、もう少し早く給付ができないか。例えば、交通事故の自賠責あたりですと、一カ月や二カ月ぐらいで被害者請求の場合お金がおりてくる。ところが、どうも犯給法の場合は早くても一年かかっているのではなかろうかというようなことでありまして、この時間をもう少し短縮する方向で進められないか、この点について、警察庁にお伺いしたいと思います。

安藤政府参考人 都道府県公安委員会におきましては、御指摘の犯罪被害給付制度というものが犯罪被害の早期の軽減に資するべく設けられたものであることを踏まえまして、給付金の申請があった場合には速やかに当該給付金の支給に関する裁定を行うようにこれまで努めてまいったわけであります。

 申請から裁定までに要する期間につきましては、これは捜査の進展状況、あるいはこの給付金との調整の対象となります損害賠償の交渉状況などにより事案ごとに異なるため、一律には申し上げることは困難でありますが、例えば、平成十五年におきましては、申請の半数以上が六カ月以内に裁定されておりまして、これは三年前の平成十二年では、六カ月以内に裁定されていたものが二〇%未満であったことと比較しましても、現在、裁定までの期間は短くなってきているものと承知しております。

 都道府県公安委員会では、今後とも被害者や御遺族の方々の利益に配慮しつつ、速やかな裁定が実施されるよう、今後もさらに努めてまいる所存でございます。

松野(信)委員 この犯給金の増額はぜひ今後とも考えていかなきゃならない点ですが、この給付金の性質に関連して最後に少しお伺いしたいんですが、これと似たようなのでは、自賠責で政府が保障事業として、いわゆる無保険車による事故の被害者が一定の補償が得られるというふうになっているわけで、これの性質は一体どういうふうに考えておられるか、これは国土交通省の方にお伺いしたいと思います。

谷口政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国におきましては、車社会のセーフティーネットとして自賠責保険制度を設けております。この自賠責保険制度では、原則としてすべての自動車に自賠責保険の締結を義務づけ、自動車事故によって死傷した被害者が自賠責保険により基本的な補償を受けられるということになっております。

 しかしながら、自賠責保険が付保されていない無保険車による事故等の場合につきましては、被害者が適正な損害賠償を受けられないことになり、自動車事故の被害者の救済という自賠責保険の制度の目的が達成されないこととなります。このような場合には、被害者救済を図るために、政府が加害者にかわって自賠責保険に準じて被害者の損害のてん補を行う政府保障事業を実施しております。

 なお、政府保障事業による損害のてん補が行われた場合には、政府は、その支払い額の限度において、被害者が賠償責任者に対して有する権利を取得して、本来の賠償責任者に対して求償するということになっております。

松野(信)委員 時間が来ましたので、この犯給法の問題についてはまたいろいろなところで議論させていただきたいと思いますが、給付金は、どうも説明では、見舞金的なものだと。見舞金的なものだから余り大した金額が出せないというのがどうもベースにあるようでございます。

 しかし、国が一定の被害者等にいろいろな形で給付をするというのは、犯給法以外にもたくさんあるわけですね。私もちょっと調べてみましたけれども、国家公務員災害補償法による補償、それから被災者生活支援法による支援、中国残留邦人についても支援、拉致被害者についても支援、公害健康被害補償法による補償というようなことで、大変多くの支援、補償制度がありまして、何もこれは全部見舞金でやっているというわけではないわけで、国が必ずしも責任はないけれども一定の福祉的な観点に立って措置をしているということで、犯給金についても、単なる見舞金だから安くていいんだというのではなくて、やはり国の重要な福祉的な施策、こういうふうに位置づけて、今後この拡充、特に増額等も含めていただきたいということを最後にお願い申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

漆原委員長代理 続いて、永田寿康君。

永田委員 きのうに引き続きまして質問させていただきたいと思います。

 まずは、野沢大臣、実川副大臣、そして委員長以下与党の理事の方々もかわるがわる委員長席を占めながら、きょうの長時間にわたる質疑に参加されていること、まず敬意を表したいと思います。

 きのうは全然知性と教養を感じさせない質疑になりましたので、きょうは何とか知性と教養を前面に押し出し、振り絞りながら質問したいと思いますので、ぜひ大臣以下おつき合いをいただきたいと思います。

 さて、去る三月十一日、本会議で私が財務金融委員会に提出をされた重要広範議案の質問をした際、歴代三代の内閣の仕事ぶりについて批判をするような質問をしたところ、それが議会の品位を汚すものだということで与党から議事録削除の要求が出て、現在でもその件につきましては与党と野党の間で話し合いが行われています。

 もちろん、院内の発言は院外では責任は問われないわけであって、院内の秩序でもってそれを処理していかなければならないというのはもちろんのことでありますが、しかし、言論の府であり、国権の最高機関としてのこの国会の中で行われた発言、私にとっては、あの程度の発言は大したことではないと正直思っておりますが、しかし、それについて今でも議事録削除の要求が生きているということを考えると、そのわずか一週間後に起こったこの週刊文春という雑誌の差しとめ事件につきましては、やはり私も一つの特別な感情を感じてしまうわけであります。つまり、週刊文春には大変な同情を感ずるということであります。

 この週刊文春発売禁止命令については、現在でも係争中の案件でありますので、具体的中身に入り込んで議論をすることは難しいということは百も承知でありますが、しかし、これほど重要な事件が起こっておきながら、国権の最高機関である国会の場で何ら議論がなされないというのも不自然なことだというふうに考えています。

 ですから、裁判に影響を与える意図はもともとない、そういうつもりはまるっきりないのでありますが、しかし、今後このようなことが多発するような事態が起こったときに、日本の民主主義は果たして上等なものと言えるのかどうか、上質なものと言えるのかどうか。そういう観点から、ぜひ政府の、本件、つまり人権や出版の自由に関する権利をつかさどっている法務大臣と私の間で議論をしてみたいと思いますので、ぜひその観点で議論をしていただきたいと思います。(発言する者あり)時計をとめていただけませんでしょうか。速記をとめていただけないでしょうか。

漆原委員長代理 ちょっととめて。ちょっとストップして。

    〔速記中止〕

漆原委員長代理 速記を起こしてください。

 具体的な事件になっておりますが、全く一般論と委員もおっしゃっていたように、具体的事件に影響を及ぼさない一般論としてお聞きいただくということでお願いします。永田寿康君。

永田委員 与党の、私が大変御尊敬申し上げる理事から一つの注意をされたというふうに受けとめております。

 大臣、ぜひ、私も係争中の事件に影響を与えようというつもりは本当に毛頭ないのであって、毛頭ないわけでありますから、この件は裁判に影響を与える可能性があるというふうに大臣がお考えになる場合には、その理由を付して、本件については答弁をしないというふうなお答えをいただいても構いませんので。

 しかし、言論の自由、報道の自由というものを、その大切さを考え、あるいは本件は定期刊行物が発売日の前日に差しとめになるという極めて異例な、ほかにほとんど例を見ないような事件でありまして、言ってみれば、例えば、今から私が質問をしようとするのに、その質問の具体的な内容を聞く前に、それは係争中の事件に影響を与えるから質問させるべきではないというふうにとめるのとほとんど同値であります。これでは言論は成り立たないのであって、やはり、一たん質問を聞いてから、それから、ああ、それは係争中の事件に影響を与えるからいけないよというような議論をすることが大切なのではないかと思っています。

 ですから、そういう部分を避けて、一般論として、出版の自由とプライバシーの保護というものがいかなる価値を持つものか、それを担当の大臣と真摯にお話し合いをしていきたいというふうに思っているわけであります。

 この裁判が結審するまでの間にも無数の出版物が出されるわけであります。ぜひ、その出版社あるいは執筆者の方々がどういう気持ちで今執筆活動をしているか、出版活動をしているかということにも思いをはせながら、誠実な御答弁をしていただきたいなと思います。

 まず第一に、裁判によってこうした出版の権利あるいはプライバシーの権利というものが保護されるということについて、ダム理論というのを御存じですか。ダムのように権利は保護されていくという、ダム理論というのを大臣は聞いたことがあるでしょうか。

野沢国務大臣 ダム理論というのは、私は存じ上げておりません。

永田委員 大変残念なことですが、ダム理論というのは私がつくったものですから、多分、御存じなくてもやむを得ないんだと思います。

 これは実は、財務金融委員会のときに、生命保険の保険料率を引き下げるという法律が先般通りました。このときに、生命保険の保険料率というのは、本来ならば会社側の事情では下げられなかったものなんです。それはもう契約者の財産権というふうに解されていました。そして、これを、保険会社が破綻をするかもしれないというときになって、この保険契約者の権利、財産権をどのようにして保護していくかというと、それはもう司法の場に持っていって破綻処理をする、司法の場に持っていって破綻処理の中で分配金を受け取る、こういう形で保護するしかなかったわけですね。ところが、今度、裁判の手続の前に、国の判断そして保険会社の事情でもってほとんど一方的に、もちろん異議申し立ての手続は組まれていますが、ほとんど一方的に保険料率を下げることができるという仕組みができました。

 このときに私は思ったんですね。人権というのは、財産権というのは一つの人権ですよね。人権というものは、今までは、例えば司法という非常に厳格な手続を踏まなければ侵害することができなかった。つまり、非常に高い壁で守られているから、高いところまで水がたまり得るんですね。水というのは、それはつまり人権ですよ、高いレベルまで人権が保護されるということです。しかし、ダムの一カ所に穴があいてしまうと、ほかの部分が高い壁で覆われていても、水はそこまでしかたまらないんですね。だから、保険契約者の権利というものを一カ所でも低いレベルの保護しか与えなかったら、もうそこから先ずっと、そこまでの水しかたまらないわけですよ。

 つまり、保険契約というのはその程度の手続で、会社側の事情で、国の同意でもって、司法の手続によらずに契約者の財産権を侵してもいいんだという性質に変わってしまうんですね。今までは司法という非常に高い手続の、非常に高いレベルの保護を与えていたにもかかわらず、一カ所穴をあけたら、そこまで保険というものの性質が変わってしまうわけですね。

 これが要はダム理論と私が称したわけですけれども、ですからそれは、法律が発動されない、つまり保険の料率を下げるという手続が実際に発動されなくても、世の中に存在している保険というものはその程度のものだというふうに世の中は認識するに至るだろうということで、私は問題視しているわけですね。

 今回のケースも、出版の自由というものがこの程度の手続で侵害されるようなことがあれば、出版の自由というものはその程度の権利なんだということになっちゃうわけですよ。実際にその後何度も何度も出版差しとめの命令が出なかったとしても、そうであったとしても、出版の自由というものはその程度の価値に成り下がってしまう、そういうふうな考え方で私はいるわけです。

 そういうことを称して、この週刊文春の中では、憲法上の権利に関する裁判の考え方というのは、それは一罰百戒の効果を持つというふうな言い方をしています。つまり、一回罰したら、それに関する同類のことをやっている人たちはみんな同じように気持ちが萎縮してしまって記事が書けなくなってしまう、そういうような言葉でも表現しているわけですが、果たしてこの出版の自由とプライバシーの保護というものがぶつかり合った場合、これは一般論で構いません、どのぐらいどちらを優先すべきか、あるいはどれぐらいその二つの権利が大きいものなのか小さいものなのか、大臣のお言葉でお答えいただきたいと思います。

野沢国務大臣 あくまで一般論という意味で御返事を申し上げたいと思いますが、委員御指摘のとおり、出版の自由の問題については、憲法二十一条の中で保障されておる権利、大変これは、その意味では重い権利だろうと思います。個人の権利として重要であるだけでなくて、いわゆる民主主義の基盤をなす大変重要な権利、こうも言われておるところでございます。

 一方、他人に知られたくない私的事項をみだりに公表されますと、他人の記憶を消去するということができないことから、本人にとっては耐えがたい精神的な苦痛をもたらす場合がありまして、プライバシー保護も極めて重要でありまして、このプライバシー保護については、直接それを表現する憲法上の規定はないけれども、基本的人権の中で読めるということは、これまでも憲法学者がしばしば指摘をしておる。

 この辺のところがどちらが重いかということになろうかと思いますけれども、一つの考え方として、記事の内容が公共の利益に関するかどうか、あるいは公人であるかどうかということもこの中に含まれようかと思います。それからもう一つは、重大で著しく回復しがたい損害をこうむるおそれがあるかどうか、これも一つの判断基準になるのではないかな。それから、表現内容や方法が正当と言えるかどうか、取材の過程でいわゆる人権にさわるようなことがなかったかどうか、こういったことも判断の基準になろうかと思います。

 いずれにしましても、両方とも、両雄並び立つということになるのかならないのか、この両方を勘案した上で、個別具体的な判断としての結果が出される、こういうふうに私は考えておりまして、今回のいわゆる出版差しとめということにつきましては、裁判所において、最初はお一人の判断だったのを、再度、三人による再審問という中での決定と考えておりまして、この内容の当否につきましては、目下係争中でございますので、私の立場から是非を言うことは差し控えたいと思いますが、適切なる判断を裁判所に期待をいたしております。

永田委員 本当に、具体的事件の中身に立ち入らずに、何とかその外周部分で実りある議論をしたいと思いますので、引き続きちょっと深めたいと思うんですが。

 今、最高裁で、かつての北方ジャーナル事件等々で出された最高裁の出版差しとめに関する考え方を判断基準の一例としてお挙げになりました。それは私も大変重要な判断基準だと考えております。

 一方で、憲法上、今大臣は、プライバシーの権利は、個人として尊重されるという憲法上の規定に基づいているものだというふうにお認めになりました。そして、出版の自由という部分についても、これは保障されるんだというお話です。加えて、検閲はこれを許さない、検閲はこれをしてはならないという規定も、憲法上、二十一条に規定されているところであります。

 ところで、まず文理解釈をちょっとしてみたいと思うんですけれども、個人のプライバシーは、個人として尊重される、尊重されるという文言で規定されています。一方で、出版の自由は、保障するという規定になっています。検閲はしてはならないという二重の規定にもなっています。これから文理解釈をすると、この二つの権利の重さというのはどのように判断されますか。

野沢国務大臣 憲法の有権解釈は私のお仕事とは思いませんが、いずれもこれは大事な性格であり事柄でございますので、これの問題がぶつかるときには、これはもう個別具体的な、先ほど申しましたようなさまざまな条件を勘案して判断するべきことと考えております。

永田委員 いえいえ、別に個別の話についての判断をお願いしているんじゃなくて、文理解釈をすると、どちらの方がどういう性質を帯びている、あるいはどちらの方が優先する、どちらの方が大きい小さい、そういう一般的な考え方というのは成り立つと私は思うんですね。それはどういうふうに解釈されますかと、文理解釈の問題を質問しているわけです。

野沢国務大臣 これは、私がどっちが重いとか軽いとか言うべきことではないと考えております。

永田委員 一方、二つの権利、出版の自由とプライバシーの権利、こういう二つの大変重要な権利がぶつかり合った場合、私は、片方がゼロで片方が百、そういう判断というのはちょっと厳しいんじゃないのかなというふうに思っているんですよ。片方がゼロで片方が百になる判断というのはあり得るんでしょうか。

 それは、そういうふうな判断を許されると考えるんだったら、どういう場合なのか。許されないと考えるんだったら、それは、どっちかがゼロと百の間で、どっちかが残りだという判断になるんでしょうけれども、これは、どっちかが一方的に負けてしまう、そういうようなことというのはあり得るんでしょうか。

    〔漆原委員長代理退席、委員長着席〕

野沢国務大臣 意思決定のあり方については司法の場でもいろいろなスタイルがあって、全員一致のコンセンサス方式もございますし、まさに多数決によって、四十九対五十一というケースもあるわけでございまして、その辺につきましては、先ほど一か百かというお話もございますが、非常にこれはデリケートな問題を含んでおりますので、この辺はそれぞれの問題に応じた各機関のルールに沿って、しかるべき判断がなされるべきものと心得ております。

永田委員 もう少し踏み込んだ発言で議事録に残された方が、多分、きのうから申し上げているとおり、歴史の評価にさらされたときに、ああ野沢大臣は立派だったというふうに言われるんじゃないかなと私は思いますけれども。

 今回の差しとめ命令は、実は、もう既に確定した部分ですね、既に確定した部分でいうと、民事保全法に基づく係争物に関する仮処分命令という形で、民法七百九条だか十条だか、それぐらいのところで仮処分命令が出ています。

 こういう民法の、本当に一般的なふわっとした書きぶりの仮処分命令の法的効力というか、法的な力と、憲法上の出版の自由という規定とは大きさが違うんじゃないか、効力が違うんじゃないか、はっきり言って法のレベルが違うんじゃないかという気がしているんですけれども、いかがでしょうか。

房村政府参考人 人格権に基づく差しとめの考え方でございますが、一般的に、人格権に基づいて違法な侵害がなされている場合には、損害賠償にとどまらずその差しとめを求めることができる、こういうぐあいに解釈されております。その人格権の内容として、憲法十三条に由来するプライバシーの権利が認められているわけでございます。したがいまして、直接的には民法上認められている人格権ということになっておりますが、その権利は憲法に支えられている権利でございます。

 一方、差しとめ請求権を行使する対象となっている出版行為、これは一私人の行為としてなされているわけですが、それを保障するものとして、御指摘のような憲法の出版の自由というものがあるわけでございます。

 したがいまして、人格権、プライバシーの権利に基づいて出版行為を差しとめるかどうかというときには、まさに問題となっているのは、差しとめる側の権利として憲法に基づくプライバシーの権利があり、片や差しとめられる行為として憲法の表現の自由に基づく出版行為がある、こういう関係になっております。そういう場合に、現在は一般的に裁判所において、個別の事件に応じた利害考慮をした上で最終的な結論を出す、こういう形で判断をされているわけでございます。

永田委員 あと、今回の差しとめの一件、具体的な事件の中身に入るつもりは僕は全然ないんですけれども、処分の主文には差しとめの理由がどこにも書かれていないんですね。どの表現がプライバシーを侵害しているとか、どこの部分を見ても公益性が見当たらないとか、そういうような理由は一切書かれずに、いきなりとめろと書いてあるんですよ。こういうやり方でとめられるというのは、僕は、出版の自由という観点から見て、ちょっと問題があるんじゃないのかなというふうに思うんです。

 別に裁判所の行為に対して文句を言うつもりはないんですが、本来、出版の自由というものを保護しなきゃならないという考え方の裏には、やはり理由も付さずに、いきなり強制的な命令紙一枚でとめられるというようなことは、ちょっとバランスが悪いんじゃないかという考え方があると思うんですけれども、いかがですか。

房村政府参考人 これは手続の一般的な説明になりますが、差しとめに限らず、緊急の事態の場合に一定の行為の差しとめを求める保全処分がございます。これは、差しとめ以外の仮地位の仮処分認容その他もろもろございますが、これは非常に緊急を要するということがございますので、制度的に、主文として、いかなる行為が禁止されるか、どういう処分がなされたかということを明示するということで足りると考えられております。

 そのかわり、そういうものに対しては異議が申し立てられまして、保全異議の段階で裁判所の判断が理由をもって示される。これは、緊急を要する事態に適切に対応するためにはそういう構造をとらざるを得ない、こういうことで民事保全法ができているわけでございます。

永田委員 今回の司法による差しとめを公権力の介入というふうに表現している学者とかジャーナリストがいます。これはやはり公権力の介入、出版に対する公権力の介入だというふうに表現をするのが適切なことだと思いますか。

房村政府参考人 もちろん、裁判行為は公権力、まさに国家機関として裁判をするわけですけれども、ただ、その発動を促すのはあくまで私人。私人が、まさに自己の権利を侵害されている、その侵害に対する救済を求めて裁判所に申し立てをしているというところが根本でございます。

 公権力の介入というときにどういうことをイメージするかというのは、それは使う立場によっておのずから違うのだろうと思いますが、一般的に公権力の介入というときには、公権力がみずからの判断で介入行為をされるということがイメージされているのではないかと思います。そういう点でいえば、少なくとも私人間の裁判に基づいて裁判所が出す命令というのは、そういう場合とは異なるということは言えようかと思います。

永田委員 では、これはまた一般論、この事件を離れた一般論になりますが、公権力がメディアに対してまさに介入をする、今おっしゃった意味での公権力、つまり、公権力がみずからの判断に基づいてメディアに介入していくというようなことは許されているとお考えですか。

房村政府参考人 これは、こんなことを申し上げるとあれですが、私どもが、法務省の特に民事局が所管している私法の分野においてはそういう規定はどこにもございませんので、それ以外のことについては、いささか私どもとして、ここで直接お答えする立場にないものですから、こんな答弁で勘弁していただきたいんですが。

永田委員 もちろん、通告から大分外れたところにタッチをしているわけですから、政府参考人の方には答弁できないかもしれませんけれども、大臣、これはやはり憲法上の検閲を禁止する規定も考えると、公権力がメディアに対して、いいとか悪いとかそういうことを言ったり、不当な扱いをしたり、恣意的な扱いをしたりすることは許されないというふうに考えるのが正しい民主主義の考え方だと私は思うんですけれども、いかがでしょうか。

野沢国務大臣 憲法上の判断を私がここで云々することについては差し控えたいと思いますが、いずれにいたしましても、公権力がこういった出版の差しとめ云々の話に立ち入るということについての御見解は、いろいろな立場の御意見があろうかと思っております。これを司法全体の中でどういう判断が下されるか、これからが一つの課題と思っておりますので、この点はひとつ見守っていただきたいと思います。

永田委員 大臣、そういうお話ではなくて、別に法務省が介入をしたりするとか、そういう話をしているのではなくて、出版の自由というものを一応確保するために、法務省というのはさまざまな法律の運用をしたり制度設計をしたりしているわけですよね。そういう中で、果たして公権力が恣意的にメディアに対して力を及ぼしていくということは民主主義の健全な育成から見て望ましくないのではないんですかという指摘をしているんですが、これに対しては、そのとおりだというふうにお考えでしょうか。

野沢国務大臣 もうこれは委員御承知のことでございますけれども、この関係については大変大事な最高裁の判例がございますが、いわゆる五十九年の大法廷の判決の中で、「行政権が主体となって、思想内容等の表現物を対象とし、その全部又は一部の発表の禁止を目的として、対象とされる一定の表現物につき網羅的一般的に、発表前にその内容を審査した上、不適当と認めるものの発表を禁止することを、その特質として備えるものを指すと解すべきである。」と判示しておりまして、司法裁判所の仮処分による事前差しとめは、同条項で禁止される検閲には当たらないとした判例がございまして、これらが一つの基準になって、その後の判断がなされていると考えております。

永田委員 答えにくいことかもしれませんけれども、今、幸いなことに、日本にはマスメディアと呼ばれる媒体がたくさんあるんですね。テレビも新聞もそうですし、それぞれの種類の中で、テレビも何十局も局があるし、ラジオだって雑誌だって新聞だっていっぱいあるわけですね。

 そういうメディアの特定の一部分だけに対して公権力が、例えば優遇をするとか冷遇をするとか、そういうようなことというのは民主主義の健全な育成から考えて適当なことかどうか、ぜひお考えをお聞かせください。

野沢国務大臣 今回は、たくさんある出版物あるいは毎日流れているメディア、これの中で一私人からの訴えに応じてとられた措置ということでございますので、御心配はないかと思います。

永田委員 いや、再三私は、今回の事件とは離れて一般的な議論をするという話をしているんですから、一般的な議論として、この質問は独立したものとして考えてください。

 たくさんあるメディアのうち、幾つかの特定のものだけを優遇したり、幾つかの特定のものだけを冷遇したりすることは正しいことですか、公権力がそういう扱いの差を設けることは正しいことですか、正しいことじゃありませんかと質問しているんです。

野沢国務大臣 これは、差別をするということはよくないと思いますし、あるいは、特定のものをねらい撃ちするということもよくないと思いますが、一般論として申しますと、その中で特に問題が出てきたときには、それに対して適切な対応をしなければならない、これもまた大事なことだと思います。

永田委員 各役所に設置されている記者クラブ、これに入れるメディアが決まっている。入れないメディアも決まっている。そういうものは、公権力がメディアの扱いに差を設けていることには当たらないんですか。

野沢国務大臣 これは、それぞれクラブの皆さん方が自主的に決めておられるところもありますし、ルールをつくって運営していると伺っておりまして、別に公権力が介入して決めているというふうには解しておりません。

永田委員 しかし、メディアが申し入れをしたときに、これは一応、そこで場所を提供してあげるとかあるいは電話を提供してあげるとか、そういうようにさまざまな利便を払っているわけで、それはやはりそういうふうな差が、自主規制だというふうな話じゃなくて、そういうような差ができるだけ生じないように公権力の側が配慮をしてあげることというのは僕は大事なことじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

野沢国務大臣 私どもの行っております政治の仕事あるいは行政の仕事をできるだけ広く国民の皆様に広報をする、そういう意味で図っている便宜の一つであるということでありまして、公権力によって制約をしているとか、そういうものには当たらないと考えております。

永田委員 特定のメディアをねらい撃ちすることはよくないことだと先ほど大臣は答弁されましたが、時々、記者クラブに出入りしているメディアに対して、特定のメディアをねらい撃ちにして出入り禁止処分にすることがあるんですね。これは役所の方からですよ。私は、その事実を幾つかつかんでいます。

 これは、特定のメディアをねらい撃ちしていることにはならないんでしょうか。

野沢国務大臣 私のところでは、そういったことは一切ございません。

永田委員 昨年、坂井隆憲議員が逮捕されたときに、このニュースを間違って流してしまったメディアが出入り禁止になったというニュースが、僕は本当に事実だと思っています。これは法務省のお話ですし、あるいは、東京高検がこの間、某メディアを出入り禁止にしましたよね。起こっているんですよ。大臣、これは知らないとは言わせませんよ。実際にやっているんです。

 それによって、メディアの側が、出入り禁止にならないようにということで、萎縮をして記事の書き方がゆがんでいるというのも、これもまた事実なんですよ。そういう民主主義なんです、この国は。それが上等なものだとお考えですか。

野沢国務大臣 御指摘のようなことが起こらないように今後とも心して取り組んでまいります。

永田委員 調べてください、ぜひ。調べて委員会に報告をしてください。

 少なくとも法務省が知り得る範囲の調査の範囲、高検とか裁判所でもいいですよ、どこまで調べられるのか僕は知りませんが、どれぐらい出入り禁止処分が行われているのか、それをぜひ調べて委員会に報告していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

野沢国務大臣 よく調べてみます。

永田委員 報告はいただけるんですか。

野沢国務大臣 結果を見て考えます。

永田委員 結果を見て、どういうような基準で判断されるんですか。報告しない場合もあるんですか。

野沢国務大臣 結果が出てみないとわかりません。

永田委員 それはおかしいじゃないですか。メディアをねらい撃ちすることがあったらいけないとみずから言っておきながら、結果を見て、これは多過ぎるからやめようとか、あるいは報告するのをためらったりするような、そんなのはおかしいじゃないですか。やはりこれは、客観的に調べた結果を報告するべきですよ。

野沢国務大臣 問題があれば御報告を申し上げます。

永田委員 問題があるというのは、メディアをねらい撃ちすることがあれば問題だというお話でしたから、メディアをねらい撃ちすることがあったら報告するというふうに解していいですね。

野沢国務大臣 一般論として、これが適切でないということがもしあれば、その点については御報告を申し上げたいと思います。

永田委員 一般論をしている中で、メディアをねらい撃ちしてはならないというふうに、メディアをねらい撃ちすることは問題だという答弁をされた中で、一般論として問題があれば報告をするというお話ですから、それがメディアをねらい撃ちしていることがあったら報告をするんだというふうに受けとめさせていただきます。

 さて、せっかくお越しいただいたので、司法制度改革推進本部の方に、一問も与えないというのもおかしな話なんで、ぜひこれを。

 事前にレクをしてあるからわかると思いますけれども、いわゆる出向弁護士が、出向中に弁護士としての懲戒事由に当たることをやっておきながら、出向元に戻った後に懲戒事由が発覚した場合はどのように懲戒手続がなされるのか。

 そして、弁護士として、弁護士だった期間に懲戒事由が発覚したときにはこのぐらいの処分だったけれども、裁判官とか検事に戻ってから発覚した場合にはこのぐらいの処分になってしまうというような処分の差があると、僕は制度上まずいんじゃないかなというふうに思っているんですが、それに対してはどのようにお考えでしょうか。

大林政府参考人 検事について申し上げますが、検事の場合、弁護士の職務経験期間中も法務省の職員としての身分を保有していることになります。ですから、法務大臣の懲戒権が及ぶ。したがいまして、懲戒事由に該当する行為があったことが、弁護士職務経験の期間中に判明した場合はもとより、弁護士職務経験が終了し検察官に復帰した後に判明した場合であっても、法務大臣は当該行為について懲戒処分を行うことができるもの、こういうふうに考えております。

永田委員 時間が終わりましたのでこれで終わりにしますが、大臣以下、大変お聞き苦しいところがあったと思いますが、乏しい知性と教養を振り絞った結果でございますので、御容赦をいただきたいと思います。

 ありがとうございました。

柳本委員長 辻惠君。

辻委員 民主党・無所属クラブの辻惠でございます。

 近代民主制国家というものは、代議制が成立していることによって、それがメルクマールになっているというふうに考えます。そういう意味におきまして、代議制の根本にある選挙制度というものが公正に運営されなければならない。このことがやはり近代民主制国家が真に民主制国家たり得るゆえんであろう、このように考えるわけであります。

 もちろん、民意を正確に反映させる、そのことによって民主政治が行われるということでなければなりませんから、立候補者の側につきましても、当然フェアな選挙運動をしなければいけないということがあります。同時に、時の権力が、選挙のありよう等に陰に陽にプレッシャーをかけたり、また平等な取り扱いをしないということになった場合には、これまた民主政治の根本が危殆に瀕するわけであります。

 このような意味におきまして、この日本におきましても、選挙制度がどのように運用されているのか、そこで生起するいろんな問題点について、今後改善していかなければいけない問題点があるのかないのか。そのような問題意識に立って、本日は、法務省、野沢大臣に対して御質問をさせていただきたい、このように考えております。

 まず最初にお伺いしたいのは、公職選挙法違反の事件というものにつきまして、これは、捜査の端緒から具体的に進んで、例えば事案を摘発する、そして身柄を拘束する、取り調べを行う、さらにはこれを立件する、公判請求したり略式手続をとったり、そしてその後、それが訴訟に進む場合もあるわけであります。

 このような一連の経過について、第一次的な捜査機関としては警察庁ではないかというふうに思いますが、検察庁、法務省としては、どの段階からこのような問題について情報を収集し、警察庁とも連絡をとり合っているのでしょうか。その点について、まず伺いたいと思います。

樋渡政府参考人 選挙が選挙人の自由に表明する意思によって公明かつ適正に行われますことは、民主政治の健全な発展に不可欠であることから、検察当局におきましては、公職選挙法違反事件について、厳正公平、不偏不党の立場から、法と証拠に基づいて厳正に対処し、かりそめにも不公平との批判を受けることのないよう留意しつつ、その適正な処理に努めることとしておりまして、このような姿勢につきましては、各種会同等の機会に全国の検察官に対して繰り返し指示するなど、周知徹底が図られているものと承知しております。

 検察当局におきましては、公職選挙法違反事件について、このような見地から、警察等の第一次捜査機関と緊密に連携しつつ、各地における選挙情勢の把握に努めますとともに、市民からの情報提供、報道、他事件の捜査において把握した事実など、社会の諸事情からその端緒を得た場合には、適正に対処することとしているものと承知しております。

辻委員 今のお話ですと、第一次的な捜査機関としては警察庁ということでありますが、同時並行して、法務省、検察庁においても、各地の選挙情勢の掌握、また情報が寄せられてくる場合がある。直告的にいろいろ情報が寄せられる場合もあるということだと思われますが、そうしますと、直告事件として捜査を受けることもある、こういう理解でよろしいんでしょうか。

樋渡政府参考人 これはあくまでも一般論でございますけれども、検察はあらゆる事件の捜査が可能でございまして、その端緒を直告で得ますれば、それに対して適切に、真摯に対応しなければならないことでございます。しかし、選挙違反という一般的な事件の把握になってきますと、やはり第一次捜査機関である警察が端緒を得ることがはるかに多いだろうというふうには思っております。

辻委員 公明正大な対応をモットーとするということで、これは当然のことだと思いますけれども、その公明正大な対応をするということについて、例えば、具体的には、選挙期間中からどのような活動を検察庁、法務省としてはされているんでしょうか。

樋渡政府参考人 一般的に申し上げますと、選挙というのは突然に起こるものではございませんでして、公示がありまして選挙が実施される、その公示の前から選挙があるということがおおよそわかっているところでございますので、そういうような場合に、今後選挙があるということを前提として、何といいますか、情報が入るのであれば、それを集めてどういう選挙情勢になっているかということは各地検において把握をしているものと思いますけれども、一般的にこれを申し上げますれば、やはり第一次捜査機関の警察の情報把握には及ばないだろうとは思っております。

辻委員 会同を適宜開いたりというふうにおっしゃいましたけれども、これは高裁の長官の会同という趣旨なんですか。最高検の方で適宜開いておられる、こういう趣旨なんでしょうか。

樋渡政府参考人 先ほど種々の会同の機会と申し上げましたのは、要するに、全国の検事正、検事長等が集まります全国長官会同というものがありますが、そういうものが定期的に行われております。その機会もありますし、あるいは全国の検事会同というのがございまして、そこでいろいろな協議をすることもございますけれども、一つの選挙が起これば何かその選挙のための会同を持つ、そういう意味ではございませんでして、一般的な会同の機会に、厳正公平に当たらなきゃならない、特に選挙が近づいておるようなときにたまたま開かれる会同においては、そういうようなことを繰り返して言っておるということでございます。

辻委員 例えば、六月の株主総会のいろいろ重なる季節なんかだと、警察庁でいろいろ取り締まり本部みたいなものを開いて、出陣式とは言いませんけれどもみんなに気合いを入れて、いろいろな、総会屋の暗躍とか、そういうのは防ごうというような儀式をやりますよね。

 例えば、国政選挙が施行されるに当たって、法務省、検察庁としては、今回の選挙に当たっては基本的にどういう方針でやっていこうかということによって何らかの集まりを持ったりされるんですか。

樋渡政府参考人 警察等におきましては選挙取り締まり対策本部というようなものが設置されるやにも伺っておりますけれども、特に、検察において、選挙のたびごとに必ずそういうようなものを設けて何か意思の統一を図るとか、そういったことはほとんどないだろうというふうに思っております。

辻委員 そうすると、選挙運動期間が終了して投票日までは、検察庁としては、いろいろな情報の分析とかは独自に行う、また情報が寄せられればそれを受理して検討もする、しかしながら、具体的に何らかのアクションを起こす、ないしは会同を開いたり対策本部を設けたりそういうことは原則としては行わない、このようなスタンスである、こういう理解をしていいんでしょうか。

樋渡政府参考人 大体そのとおりでございまして、大きな国政選挙等を控えますれば、各庁で、万が一起こり得まする選挙違反等に対するチームづくりはあらかじめつくるなどするような場合もあり得るわけでありますけれども、しかしながら、何といいますか、そういったところで特別な何かの準備をするというようなところまではほとんど、検察官の数も少のうございますし、ないだろうというふうに思っております。

辻委員 今おっしゃった、あらかじめ対策本部か何かそういう組織をつくる場合もあるというふうに今御回答されたと思いますが、それはどういう場合なんでしょう。

樋渡政府参考人 何といいますか、どういう場合といいますか、選挙がある、選挙が行われるというような場合に、地検の内部に、将来起こり得る可能性のある事案に対処するためのチームづくりは、あらかじめつくるということはあるのだろうというふうに思っております。

辻委員 そうすると、今の御回答だったら、何か特別の事情があって、そのために特別にそういう準備をする、そういうことではなくて、やはり一般的に、これは必ず、いいか悪いかは別にして、今回もやはり六百件か七百件の選挙違反の件数が起こっているという報告を少なくとも受けているわけですけれども、選挙違反の事犯というのは必ず起こるわけですよね。ですから、そういう意味では、やはり一般的に、選挙期間中から検察庁としては、投票日以降の行動を予定して、何らかの会合なり準備をするんだということなんでしょう。そういう理解でいいんですね。

樋渡政府参考人 何らかの会合で準備するというのは、全国的に統一した何かの会合を開いてやるというようなことはないわけでありまして、各地検の対応において、選挙、投票が済めば違反で検挙されることがあり得るわけでありますから、そのときの体制づくりはきちんとしておかなきゃならない場合があるということであります。

辻委員 もちろん、公明正大に捜査に当たっておられるだろうし、公訴の提起についても公明正大になされているだろうということを信じて疑わない、その前提でお聞きしているわけですから。

 一般的に、やはり何らかの準備をしなければいけないわけですね。用意ドンで、例えば投票日が終わって翌日に逮捕されれば、そういう人が出てくれば、二泊三日の後には検察庁に送致されてくるわけだから、それに対して準備をしなければいけない。そういう意味で、一般的にそういう必要が生じるというのはよくわかるんですよ。だから、そういう準備というのは、各都道府県の検事正のもとで何らかのそういう準備のチームなりそういうものがつくられるのかどうなのか、その点はいかがですか。

樋渡政府参考人 各地検でお考えになっているということであります。

辻委員 そうすると、総括責任者は各地検の検事正がつかれて、そういうような準備を一応はされるというふうに伺っていいんですか。

樋渡政府参考人 各地検すべてで総括責任者とかそういう名称で何かの体制を組むということをやっているかどうか、それはわかりませんけれども、わからないと言うと何か変でございますけれども、各地検が判断して、例えば、この選挙で何々地区の方の違反が起こった場合の主任検事は君だよ、あるいは、何々地区で起こった場合の主任検事は君だよというような体制は組んで、警察の相談を受けているんだろうというふうに思うわけであります。

辻委員 そうすると、余りこの問題で入り口のところで時間をとるつもりもないんですけれども、今のお話だったら、非常にデッドヒートになっている選挙区があって、これはかなりお互い燃えているなということになれば、そういう選挙情勢を見て、検察庁の中であらかじめ、やはりこれは用意ドンですぐ動ける体制をとっておかなきゃいけないなというふうにケース・バイ・ケースで考える、そういうような準備を各地でやっている、こういうふうに理解していいんでしょうか。

樋渡政府参考人 委員がおっしゃっているデッドヒートというのがどこまでのことを言うのか、それはよくわからないところがあるわけでありますけれども、とにかく検事は非常に少ないものでございまして、すべてが身柄を持って四苦八苦しておりましたら、投票が終わった直後に警察が捜査を開始した場合に担当する検事がなかなかいないということもありますから、それは、事前にいろいろな情報を集めながら、起こりそうだなというような場合には、ある検事の他の配てん数を少なくして、その後の、起こればおまえだよというふうな体制は当然に組んでいるだろうというふうに思うわけであります。

辻委員 各都道府県で、各地検単位でその時々によって、違反件数が多いところも出てくれば余り多くないところもある。要するに、しかしゼロというところはないだろうから、何らかの準備をして、いつでもスタンバイできるような、それは検事正のもとで本部を開くとかいうことではないにせよ、融通無碍に対応できるような準備はいつもされているというふうに伺えるのかなと思うんですけれども。

 やはり、例えば、投票日以降三十日たった、六十日たった、九十日たった。そうすると、ある程度、全国において、今回の選挙についての選挙違反というのはどういう特色があるのかとか、何件ぐらい、どういう問題があるんだろうかとか、今までと比べて特に難しいこういう問題が生じたんだろうとか、そういうような捜査の全容というか概況というか、そういうことについて、検察庁としては全国の情報を収集して適宜報告を受け、次の三十日、その次の三十日まで情報をさらに収集を指示を出して進めようとか、そういうような、やはり組織体ですから、検察庁というのは全国の組織体一体の原則があると思いますから、そういう全国的な視野に立って情報収集というのはやはりそれなりに遺漏なく進めておられるということなんですよね。

樋渡政府参考人 各地検の上級庁は高等検察庁でございまして、その上級庁は最高検察庁でございます。小さいところの地検で事件が起こりますと、なかなか配属されている検察官だけでは間に合わないことがありまして、高検から応援を出す、あるいは、高検単位で間に合わなければ全国単位で応援を出さなきゃならないということでございますが、上級官庁としては、どういう犯罪情勢になっているのか常に関心のあることでございますし、地検の側からしましても、自分たちの仕事が過密になってきますと、とても、何といいますか、適正な処理がおぼつかなくなるというところもあるわけでございますから、そういった意味で、上級庁に報告をしていくことは当然だろうと思っております。

辻委員 やはり上級庁は上級庁の立場でそういう犯罪情勢を掌握される。そして、地検は地検の立場でやはり掌握されていく。つまり、公明正大に対応しなければいけない、処理をしなければいけないという立場にあるわけですから、適宜そういう情報を収集して、ばらつきのある処理がなされるとやはりまずいわけですから、そういう処理にばらつきが生じないような配慮、例えば量刑基準が一般には示されているという、情報で検察庁は検察庁でお持ちだというふうに私は伺っておりますけれども、そういう基準、ガイドラインみたいなものをやはり適宜フィードバックしながら具体的な処理を全国でそれぞれなされている、こういうような捜査の進め方になっているというふうに理解してよろしいんでしょうか。

樋渡政府参考人 一番最初にも説明いたしましたが、かりそめにも不公平な処理と思われることがないように留意しつつ、厳正公平に、適正に処理をしているところだと承知しておりますが、刑事事件といいますのはそれぞれ個々別々の顔を持っておりまして、その具体的な事件に応じての適切な処理というものが必要でございます。その意味で、各地検のところで処理を考えるわけでありますけれども、その処理に何か疑義があるというような場合には当然上級庁に相談をするものでございまして、その上級庁が高検でとまりますこともあれば、最高検にまで相談をするということもあり得ることでありますけれども、しかしながら、あくまでもその事件事件ごとに各地検が適正な処理をなすべく努力していると承知しております。

辻委員 当然、各担当の検察官なりが適正に処理をされるわけですけれども、一般的には、やはり決裁制度というのがあって、担当者がこういう処置をしたい、処分で終えたいというふうに考えたときにはやはり上司に決裁を求めて、その上司が、いろいろな今までの先例とかほかの例とのバランスでどうなのかということが、やはり疑念が生じたときにはさらに上級にお伺いを立てて、それで全国的にばらつきが生じないような形の処理をされているというふうに思いますけれども、一般の刑事事件についてそうだと思うんですけれども、選挙違反の事件でもやはり原則は変わらないんでしょう。いかがですか。

樋渡政府参考人 選挙違反事件であろうと涜職事件であろうと一般刑事事件であろうと、原則は変わらずに、担当する検事あるいは地検が法と証拠に基づいて適切に処理をしているところでございます。

辻委員 そうすると、やはり公判請求をする事案というのはどの程度のものなのか。例えば、略式で落とそう、それで済まそうというのはどの程度のものなのか。ないしは、起訴猶予にとりあえずしようというのはどの程度のものなのかというのは、当然個々のケース、ケースで違いがあるし、何か一律に当てはめて物事が解決するわけではないというのはよくわかりますけれども、一応のそういう基準、ガイドラインにのっとって、それは何か物に書いたガイドラインとかいう意味ではなくて、感覚的なものかもしれませんけれども、検察庁としては全国的に処理にバランスを失しないようにやっているんだ、こういうことなんでしょうか。

樋渡政府参考人 先ほども申し上げましたように、かりそめにも不公平だという批判を招かないように留意して処理をしているところでございまして、おっしゃる意味で、また選挙違反事件に限らず、いろいろな事件で過去の実績と実例というのもあるわけでございますから、そういうもので不公平にならないように、地検単位で、地検でできればそのままですし、地検で迷えば上級庁に相談しながらやっていることを承知しております。

辻委員 今回の質問に当たって資料の提出を求めましたところ、一九七二年以降に執行された国政選挙における公職選挙法違反事件数調べ、そういうペーパーをいただいております。起訴、不起訴、全体の件数、起訴の内容、不起訴者の内容ということが示されたペーパーなんですけれども、一方で、警察庁の方から、例えば今回の衆議院選挙の違反取り締まり状況ということで、期日後六十日とか九十日現在での検挙件数、その内容、罪種というものが統計がとられたペーパーで出ております。

 警察庁のそれを見ますと、例えば買収が何件とか、利害誘導が何件、自由妨害が何件というふうに区分けしてありますけれども、検察庁としては、結局、例えばこの一九七二年以降の各選挙、これは国政選挙に限ってということで御質問するということで結構なんですが、それぞれどういう罪種で、それがどういう判決結果になっているのか、そういう統計についてお持ちであるということなんでしょうか。

樋渡政府参考人 委員のお持ちなのは恐らく検察統計年報からとったものだと思いますが、私どもとしましても、警察のような罪種別の統計はとっておりません。

辻委員 では、その点については、ちょっと後でまた触れて御質問させていただくことになるかと思いますけれども、公職選挙法違反事件の問題に限って今回質問させていただきたいと思いますが、とりわけ重要な問題というのはやはり連座制なんではないかというふうに思うわけであります。

 連座制につきましては、公職選挙法の二百五十一条の二以下で規定が新設されていて、歴史的には昭和二十五年以来、対象とされる、例えば当初は総括主宰者とか出納責任者に限られていたのが、同居の親族、同居していない親族に広げられていく。一つの区切りとなったのは、リクルート事件を受けて第八次選挙制度審議会、これは一九八九年六月二十八日に発足しておりますけれども、その答申が九〇年四月二十六日に出て、これを受けて一九九四年の一月、そして十一月に改正が行われ、連座制が強化されているということだと思うんですね。

 きょう御質問申し上げたいのは、一九九四年の十一月の改正によって、公職選挙法二百五十一条の三で、組織的選挙運動管理者等という新たな概念が連座制の中に取り込まれたという点に関連してお伺いしたいというふうに思います。

 これも衆議院の調査局の出しております選挙制度関係資料集を見ますと、一九九四年の改正以降、連座制で訴訟になった件数というのは、国政選挙関係では十八件、地方選挙関係では六十六件ということになっております。

 国政選挙については、第四十一回衆議院選挙、そしてそれの補欠選挙、第四十二回の衆議院選挙、そして第十九回の参議院通常選挙が載っているわけでありますが、この十八件のうちに、今申し上げた組織的選挙運動管理者等が連座対象者の身分となって挙げられておる件数が八件あるということなんですが、その八件の内容については掌握されているんでしょうか。

樋渡政府参考人 今、その八件というものの具体的な内容を把握していないんでございますが。

辻委員 では、もう少し伺いますが、組織的選挙運動管理者等というのはどのような概念として検察庁、法務省としては理解されているんですか。まず、その点について伺いたいと思います。

樋渡政府参考人 組織的運動管理者等につきましては、平成六年の公職選挙法改正により連座対象者に加えたものでありますが、その各要件の意義に関しましては国会審議の過程で立法担当者から具体的な説明がなされておりまして、検察当局においては、このような立法府における御議論等を踏まえて法令の解釈、適用を心得ますとともに、具体的事件に対する適用についても適宜上級庁と協議しつつ、法と証拠に基づいた厳正な対処に努めているところと承知しておりまして、法に掲げてありますその要件が実際にそれに当てはまるかどうかということを検討するのが捜査の段階でございまして、この法の要件どおりだというふうに考えているというふうにお答えさせていただきます。

辻委員 これは第百三十一回国会の政治改革に関する調査特別委員会の会議録で、保岡興治委員、そして山崎拓委員等が答弁に立たれたりして、組織的選挙運動管理者の説明をされている。少し違いが生じておりますけれども、それが法文になって、公職選挙法の二百五十一条の三で、大きく分ければ三つの類型に分けられるんじゃないかというふうに理解できます。

 まず、「当該選挙運動の計画の立案若しくは調整」を行う者、山崎拓委員の言葉によればヘッドクオーターというふうにおっしゃっております。それから二つ目は、「当該選挙運動に従事する者の指揮若しくは監督」を行う者、これについては前線のリーダーだ、こういうふうにおっしゃっていますね。それから三つ目としては、「その他当該選挙運動の管理を行う者」、これは後方支援活動の管理を行う者なんだ、こういうふうにおっしゃっているわけですが。

 冒頭でお伺いしましたけれども、やはり全国的にばらつきのある処理をしてはいけない。したがって、公職選挙法の理解、概念に当たって、やはり統一的な基準、ある程度バランスのある基準で検察庁としては全国的に事案に対処するということだと思いますから、この二百五十一条の三の組織的選挙運動管理者等の、今申し上げた三つの類型のそれぞれについて、どのようなものがこれに当たるのかということについては、ある程度ガイドラインなりを検察庁としてはお持ちであって、それを全国の検察官に流している、こういうことなんでしょうか。

樋渡政府参考人 要するに、委員の先ほど御説明いただいたものが組織的選挙運動管理者に当たるということでございまして、それの、最高裁判所においても、それで概念は不明確で漠然としているということはできないというふうに示されているところでございまして、その今おっしゃられたものに当たるかどうかを証拠によって確定していくということでございますから、それをまたかみ砕いてこういう場合だということは、なかなか言うのも難しいものでございますし、そうではなしに、捜査機関においてそれに当たるかどうかということを証拠に基づいて判断しているということでございます。

辻委員 先ほど御紹介しましたように、この百三十一回国会の衆議院の政治改革に関する調査特別委員会の議論の中で、山崎拓委員は、三つの類型のそれぞれについて、ヘッドクオーター、前線のリーダー、後方支援活動の管理を行う者というふうに、類型を三つに分けて説明しておられます。

 先ほど、この改正以降、連座制の適用になった対象者が組織的選挙運動管理者であるとされるものは八件だというんですが、この八件について、内容は具体的には掌握されていないというふうにおっしゃったんですが、この二百五十一条の三の、今私が指摘した類型の第一類型に当たる、第二類型に当たる、第三類型に当たる、どの類型に当たるということでこれは連座訴訟が原告勝訴になっているんでしょうか。その点はいかがでしょう。

樋渡政府参考人 なかなか三つの類型に区別するというのは難しいのでありますが、例えばということで、具体的な例で申し上げさせていただきますと、平成九年八月二十六日に高松高等裁判所で言い渡した連座訴訟では、当該選挙区内の村において結成された後援会が、候補者を当選させる目的を持って組織的に行われる選挙運動を行ったと認められているところ、買収を行った違反者二名について、当該後援会の発起人の立場にあり、村内各地区の世話人の人選を行い、同後援会の結成式の日時等の決定、公示後のポスターの貼付方法や、遊説コースの決定、候補者の個人演説会の準備、設営、進行方法の決定などに関与した者であって、選挙運動の計画の立案もしくは調整を行う者に該当すると判断され、また、同村を五つに分けたブロックの代表者として、後援会報の配布やポスター張りを各地区の世話人に頼んだり、村民をミニ集会に参加させるよう、あるいは、個人演説会を知らせるビラを村民に配布するよう世話人に依頼した者であって、選挙運動に従事する者の指揮もしくは監督を行う者に該当すると判断されたものと承知しております。

辻委員 私は、便宜的に第一類型、第二類型、第三類型と分けましたが、この平成九年八月二十六日の高松高裁の判決では、連座制の対象者は、第一類型、第二類型に当たる組織的選挙運動管理者だ、こういう認定になっている、こういう理解でいいですね。

 それで、そうしますと、例えば、平成九年五月十四日付の大阪高裁の判決、平成十二年十二月十四日付の大阪高裁の判決、これでは、どういう意味で組織的選挙運動管理者に該当するんだ、こういう認定になっているんでしょうか。

樋渡政府参考人 平成九年五月十四日の大阪高等裁判所の判決では、後援会組織により選挙運動を行うにつき候補者と意思を通じていた者が、候補者から、後援会の組織づくり、選挙運動資金の捻出、選挙運動事務所の確保などの選挙運動全般の取りまとめを要請され、選挙運動事務所の提供、選挙活動資金一千万円の調達、後援会の組織の立ち上げなどを行い、さらに、その代表に就任して、ポスター張り、街頭演説の際の支援訴えなどの組織的選挙運動を行うとともに、買収に及んだ事案について、選挙運動全般にわたっての統括管理を行っており、組織選挙運動管理者等に該当すると判断されたものと承知しております。

 平成十二年十二月十四日の大阪高等裁判所の判決の例におきましては、候補者の弟で、候補者の後援団体の会長である者が、候補者の立候補の意向を受けてこれに賛同し、みずから中心となって選挙運動を展開することとし、以後、候補者と意思を通じて組織的に選挙運動を行うとともに買収に及んだ事案について、組織的選挙運動管理者等と判断したものと承知しておりまして、委員の御指摘のような、別にその三つの類型を殊さらに分けてそれを説明しているというところはないのかもしれません。

辻委員 今のは樋渡さんの意見かもしれないけれども、素直にその判決文を読めば、第一類型に当たるというふうに基本的に考えられる事案だと思いますよ。当該選挙運動の計画の立案もしくは調整を行う者、ないしは第二類型の当該選挙運動に従事する者の指揮もしくは監督を行う者。そうじゃないんですか。そういう理解が、素直な、今紹介された判決文の読み方ではないんでしょうか。

樋渡政府参考人 先生の御理解の方が私よりも正しいのかもしれませんが、それはそれといたしまして、先ほど答弁しましたことを少し、若干訂正させていただきたいのでありますけれども、今、罪種別の統計がないかということを伺って、後ろにおります者に聞きましたら、ないと言ったんでありますけれども、もう一度調べます。その有無につきましては改めて調査の上で、先生にお知らせ申し上げます。

辻委員 これは結局、この政治改革に関する調査特別委員会のいろいろ議論をして、今民主党にいらっしゃる委員の方も違う党派でいろいろ入り乱れて発言されているんですけれども、結局、この中で、二百五十一条の三の組織的選挙運動管理者を取り込んで連座制をつくるんだということが国会で議決になったわけなんですけれども、結局、例えば伊藤達也委員は、この用語というのは新しい概念でありある意味ではあいまいさがある、こういうふうに述べております。また保岡興治委員も、結局、立法の趣旨を踏まえた、あるいは提案者として国会で答弁で述べた、そして質疑を通じて明らかになった基準というものが一つの規範になっていくんだ。ほかのところでも同種のことをおっしゃっていて、要は、運用の実態の中でこの概念というのは決まっていくんだ、こういう趣旨のことをおっしゃっている。また、保岡委員は、現実に沿わない点は沿わないなりの見直しをして、そしてわかりやすい整理されたものに公選法を抜本的に見直して改正する、まとめるということが大事じゃないのか、こういうふうにおっしゃっているんですね。

 つまり、この組織的選挙運動管理者という概念は、政治改革なり、そういう改革の論議の中で、ほとんどの議員が改革のために連座制の強化をしなければいけないというふうに、ある意味では議論が盛り上がって、概念が非常にあいまいなまま残されてこの規定になっているというふうに思わざるを得ない、私はそう理解しているんですが、その点についてどういう理解にお立ちでしょうか。

樋渡政府参考人 最高裁の平成九年三月十三日の判決におきまして、組織的選挙運動管理者等の概念は不明確で漠然としているということはできず、この点に関する違憲の主張はその前提を欠くという旨の判断が示されているところでございまして、検察としましては、この判例に従って、証拠に基づいて対処しているところでございます。

辻委員 まだ、限りがありますから十分に調査はできておりませんけれども、新聞報道でされた事案とか選挙違反の事案をかなりいろいろ集めてみました。

 この組織的選挙運動管理者の、第一類型、第二類型、第三類型と便宜的に私が分けましたけれども、第三類型に当たるかなと思う例はいっぱいあるんですよね。だけれども、結局のところ、連座制の適用になる事案というのは、私は、見る限りにおいては第一類型、第二類型に限られている、このように考えておりますけれども、検察庁として、やはりそういう何らかのガイドライン、基準をお持ちなんじゃないですか。その点はいかがですか。

樋渡政府参考人 何度も申し上げて恐縮でございますけれども、公職選挙法の規定に基づいて、先ほど言われた三類型も含めまして、そういうような要件に合うかどうかということを証拠に基づいて慎重に検討しているというふうに思うわけであります。

辻委員 ちょっと時間が押し詰まってきましたので、またの機会にさらに継続して御質問させていただきたいというふうに思いますけれども、公職選挙法の二百五十三条の二に百日裁判の規定がありますね。百日裁判を請求するに当たっては、まさに起訴状一本主義なわけですから、裁判官は起訴状を見ただけでは、これは百日裁判をすべき事案かどうかわからないわけですよね。だから、検察庁の側でこれは百日裁判にしてくれということを通知して初めて百日裁判が始まるわけですよ。そうじゃないんですか。

樋渡政府参考人 公職選挙法二百五十三条の二の第一項により、当選人や連座対象者の一定の選挙犯罪について、選挙の結果を速やかに安定させ、また当選無効等の制裁の実効性を確保するため、いわゆる百日裁判の手続で審理することが求められ、このような事件につきましては、裁判長は、同条第二項により公判期日を一括して定めることなどが義務づけられておりますことから、検察官においては、これらの規定に従った速やかな審理を確保するため、捜査の結果、起訴する事件が同条第一項に定められた罪に該当すると思料する場合は、当該事件がいわゆる百日裁判事件である旨を裁判所に連絡しているものと承知しております。

 ただ、連座要件が認められるか否かにつきましては、刑事事件の判決確定後、高等検察庁において、刑事事件の公判審において明らかになった事情も考慮して判断しているものでございまして、いわゆる百日裁判の連絡は、その時点で収集し得た証拠に基づいて、百日裁判該当事案と思料されるか否かを暫定的に判断したものにすぎず、連座制の適用について確定的な判断を示したものではないと承知しております。

辻委員 いや、それは当然のことですよ。だって、まだ無罪の推定で検察官が公判請求しただけの段階だから、それが当たるかどうかというのは、それは裁判所が判断することですからね。

 だから、私が申し上げているのは、要するに、裁判官は、裁判所は起訴状一本主義なんだから、起訴状を見ただけでは、これは連座制にさらに進むような案件なのかどうかわからないわけだから、検察庁の側において、検察官の側において、これは百日裁判の申し立てを裁判所に対してするわけでしょう。するということは、基準があるから、これは当たるんだということを言うわけじゃないですか。

 だから、組織的選挙運動管理者について、これは連座制の適用になる組織的運動管理者に当たる事案なんだとか、これは当たらないんだという、その基準、ガイドラインというのを、検察庁ではやはりお持ちなわけじゃないですか。それに基づいてしかこれはできないわけですよ、百日裁判の請求は。そのことを申し上げているんです。いかがですか。

樋渡政府参考人 基準ということがよくわからないのでありますけれども、要は、検察庁におきまして調べた結果、連座適用にかかわる事件に今の証拠ではなり得るということから裁判所に通知する。裁判所は、おっしゃるようにわからないわけでありますから、裁判所が公判期日を公職選挙法の規定にのっとって一括して定めることができるようにするために、検察官の証拠に基づいて意見を言うにすぎないものでありまして、その時点での連座事件の有無について検察官の確定的な判断を示すものではございませんし、また、具体的な連座事由について裁判所に伝えたり、通知の適否について裁判所の判断を求めたりするものでもないというふうに承知しております。

辻委員 ちょっと時間が足りません。ですから、改めてまた質疑の機会をとっていただきたいと思いますが、平成七年四月十二日、刑一第百二十号、高等裁判所長官、地方裁判所長あて、刑事局長通知というのがあります。これは、公職選挙法の改正に伴う検察庁の通達の発出について。つまり、検察庁の側で、これは百日裁判にやってくれということを裁判所に通知して百日裁判は始まるんだと。ですから、検察庁の側で、百日裁判に当たる、例えば連座制の該当者として組織的選挙運動管理者だとすれば、この被疑者、被告人は組織的選挙運動管理者に当たるんだよという一応の見解を持っているから百日裁判を請求するわけじゃないですか。

 ですから、私は申し上げているのに、今まで、国政選挙で百日裁判を請求し、連座制の適用になったのは八件だけなわけですよ。だから、その八件の中身について、さっき局長が紹介された三件については、二百五十一条の三の第一類型と第二類型に限られているでしょうと私は申し上げている。第三類型は、組織的選挙運動管理者として訴追するのには妥当ではないんだという判断をお持ちなんじゃないですか。その点はいかがですか。

樋渡政府参考人 まず、現在、国政選挙で連座規定が適用されたものは二十件だというふうに思っております。

 それで、委員のようなことではございませんでして、要は、委員のおっしゃる一類型、二類型、三類型というものの区別で裁判所に申し立てていることではなくて、そういうような要件に該当する可能性が大きいということで通知を申し上げているということでございます。

辻委員 ちょっと時間の関係があります。

 それは、先ほどから私が申し上げているのは、二十件ですよ、連座制の規定になっているのは。だけれども、連座制の対象者が組織的選挙運動管理者は八件だ、こう申し上げているわけですね。ですから、その八件について前提にお答えいただかないと困るわけですよ。この点についてはもう少し詰めてお伺いさせていただきたいと思います。

 それで、最後に、二〇〇四年一月十四日付の読売新聞の朝刊で河上和雄さんが「選挙違反捜査」ということでこう言っておられます。「ただ、ここで一つ指摘しておきたいのは、連座制の適用に慎重であるべきだということである。というのは、法的には故意、過失のない限り本来責任が発生すべきでないのが原則だからである。国民の信頼を得て当選した議員を安易に責任の有無にかかわらず追放することは、友人に共産主義者を持っただけで犯罪者扱いされるという、マッカーシー旋風下のアメリカで主張された「交わりの罪」を認めるようなことにもなりかねない。」このようにおっしゃっている。

 この点を指摘し、さらに今後質疑をさせていただくことを前提に、きょうの質問を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。

柳本委員長 河村たかし君。

河村(た)委員 河村たかしでございます。

 まず法務大臣に、前からずっと言っていますけれども、名古屋刑務所の刑務官の、私どもは事故だと、こういうふうに考えておるのですが、この真相究明ですね、これについては、ぜひ法務大臣、裁判は裁判ですけれども、裁判というのは証拠法則がかなりいろいろありまして、広くいろいろな可能性をどんどん探っていくというふうにこれはならぬのですよね。

 だから、これは私も、特に事故の再発防止という非常に大きな、これは法務省はすごい大きな務めがあるわけです、保護房内で事故を起こさないようにというね、これ。そのために、これをとにかくきちっとやってもらわないと、これは委員会でやるのもそうですけれども、委員会はそこまで調査能力がないということもあります。可能性もあるけれども。組織をつくることは、僕は委員会で本当はやった方がいいと思いますけれどもね、これ。

 委員会で言いますと、六十八人が延べ六十時間ですか、延べですけれども、質問して、予算委員会は集中審議までやっている。法務委員会は去年は毎週水曜日をこれに当てていたということで、マスコミもがんがん報道しまして、検察庁や法務省が言っている〇・六キロの水圧が高圧放水というような報道を行って、民主党も、まあ残念ながら十倍以上の放水実験をやってしまった。こういう状況の中で、これは本当に、私もこうやってやっていますけれども、法務省、やはり入れないわけですよ、刑務所なんて、みんな普通の人は、どうだったかなんて。

 だから、組織を挙げて真相解明をちゃんとやると。これは、事故の真相解明というのは重要ですよ、言っておきますけれども、再発防止のために。それをまずお答え願えませんか。

野沢国務大臣 委員初め法務委員会の御指摘を受けまして、法務省といたしましては、名古屋刑務所の具体的な対応策、さらには、行刑改革会議を立ち上げまして、その中で、すぐに解決できること十数件、さらには抜本的な改正を含めての取り組みを続けているところでございます。

 刑務所の処遇のあり方についての調査につきましては、引き続き真摯に取り組みまして御期待にこたえてまいりたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いします。

河村(た)委員 その処遇のあり方というのは、今の話の中にあったのは、それは名古屋刑務所で起こった、こればかりじゃないですけれども、平成十三年十二月、平成十四年五月、九月、この三つの事案も含むということでいいですね。

野沢国務大臣 さようでございます。

河村(た)委員 そうしたら、その前提で、まず、事故が起きたときですね、これは質問通告してありますけれども、それより、時間もありませんから、過去の、この間もちょっと聞きましたけれども、転倒事故ですね、要するに保護房内での。転倒事故の実態というのは、どれぐらいあったのですかね。

横田政府参考人 お答えいたします。

 委員の御質問の御趣旨は保護房内での転倒事故であるかと思いますが、これにつきましては、過去二年間に被収容者が保護房内で転倒した件数と該当施設について調べましたけれども、当局で報告を受けた限りでは一件のみでございます。

河村(た)委員 その一件というのは、岡崎医療刑務所のだと思いますが、それは二年間だと思いますけれども、言われているのは。その前はどうですか。

横田政府参考人 お答えします。

 今、私ども把握しているのは、この過去二年間のみでございましたので、それ以前については未調査でございますので、確たることは申し上げられません。

河村(た)委員 それは、二年間の間に一件というこの例ですけれども、これはお亡くなりになられたですね。

横田政府参考人 そのとおりでございます。死亡しております。

河村(た)委員 だから、一件、報告が現にあるということですけれども、二年以上はわからないということはどういうことなんですかね、これは、わからないということは。

横田政府参考人 そのように、保護房内で転倒したということ、そのもの自体の報告がないという趣旨でございますので、わからないといいますのは、二年間についてはかなり詳細に私どももう一回調べ直したという趣旨でございまして、報告があるかないかという限りにおいては、報告を受けていないというふうに御理解いただきたいと思います。

河村(た)委員 じゃ、もう一回徹底的にちょっと調べてくださいよ、報告がないといったって。こんなのは、悪いですけれども、自分で手錠を施用してみるとわかるのですけれどもね、保護房内で。人間というのは簡単に倒れますからね、手が開けれないと、こういう状況で。

 立って、保護房の中で手錠をかけて中を動き回る人とか、それから壁にぶつかる人、こういう方はたくさんおみえになるんでしょう。

横田政府参考人 転倒といいますけれども、委員も御案内と思いますが、例えば、自分から頭を押しつけたりする人も、結構、自殺願望であったりしますので、なかなかそれが転倒事故なのかそうでないかというあたりも難しいところはあると思いますが。

河村(た)委員 そういうことで、ひとつこれもしっかり調べておいてくださいよ。

 なぜかと言えば、何か立っていたり、今言ったように、ちょっと言われたけれども、ぶつかったりする例もあるのですよ。自分でやるとわかりますけれども。委員長、これは本当に自分でやるとわかりますけれども、何でかというと、これは国会の責任が大きいのですよ、正直なことを言えば。そんな、延べ六十時間以上やっているのですからね、これ。刑務官の暴行をほとんど前提としてですよ、これ。だから、その中で、手錠をかけて手が開けぬ状況で歩いたり、ドアをけったりとか、そんなのは人間というのは簡単に倒れますから、やりますと。

 まあ、調べていただくということでいいですね、ここは。

横田政府参考人 もちろん、委員会の御決定があればそれに従って調査いたしますが、ただ、何分にも、全国の刑務所で、しかもこれは、つまり、保護房内で転倒しましたという報告を受けているもの、我々が受けている報告だけを調べるということであれば、これはある程度の時間をあわせていただければそれは可能でしょうけれども、報告にはないとなってまいりますと、それは、例えば視察表とか、そういうところまでに全部なりますので、なかなか、はっきり申し上げて事実上はかなり難しいので、例えば期間とかあるいは施設とかを限定してよろしいということであれば、それは可能な限りでお調べできると思いますが。

河村(た)委員 では、委員長、ちょっとこれは命じてくださいよ、調べてくれと、転倒事案を。あと、内容についてはちょっと相談しましょうよということで結構ですから。命じてくださいよ、これ。

柳本委員長 ただいまの件につきましては理事会で協議をさせていただきますが、速やかに回答できるような体制は常にとっていただきたいと思います。

河村(た)委員 余り理事会で協議というのは、私もこれを十年やらさせていただいたけれども、別に理事会で言わぬでも、委員長というのは立派なんですよ、本当は。日本は党ばかりでやるから、党のみんな手足みたいになっちゃっていますけれども、委員長というのはすごい権限がありますから、そんな調査なんというのは、調査してくださいとそれだけ命じてくださいよ、それは。

柳本委員長 ただいまの発言のとおりでございます。

横田政府参考人 先ほど申し上げましたとおり、やはり期間とか場所とかを限定、ぜひお願いしたいと思います。その上で、当然のことながら、委員会の御決定に従うことは当然でございます。

河村(た)委員 では、ちょっと場所、限定についてはまた後日、速やかにちょっと打ち合わせをさせていただきたいと思いますので、そういうことでいいですね、委員長、これは。

柳本委員長 結構です。

河村(た)委員 それから、いわゆる平成十三年の十二月事案というのがあります。放水で、放水があって、受刑者がその後亡くなったという事案があるんですけれども、このときに、その中に、いわゆる自傷行為に使えるであろうかたいタイプの飲料用ボトルがあった、けれども、なかったと当時矯正局は認識していたということで間違いないと思いますけれども、なぜそういう認識を持たれたのか。これは質問通告してありますけれども。

横田政府参考人 いわゆる十二月事案の発生当時、当局が名古屋刑務所から受けた報告では、死亡した受刑者が本人の指を肛門に挿し入れ傷つけたものと思われる、そういう報告がございました。また、プラスチック片等の成傷器の存在を示す記載等も報告にございませんでしたので、当該受刑者の指による自傷事故であるというふうに当時認識したということでございます。

河村(た)委員 そういうことで、現在ではどういう認識なのかな、これは。少なくとも、ちょっと、現在どういう認識か聞きましょう、では。

横田政府参考人 お答えいたします。

 これは調査の中間報告等にも私どもの立場を明らかにしておりますけれども、十二月事案については、いわゆる消防用ホースによる放水によって負傷したというふうに認識しております。

河村(た)委員 認識しておりますって、そんなのはいいですけれども、とんでもない、事実誤認も甚だしいんだけれども、それはそれとして、今の、プラスチック片がその当時あったかなかったかという認識についてはどうなんですか。

横田政府参考人 御質問の趣旨は、このいわゆる十二月事案当時に保護房内にプラスチック片があったかなかったか、そういう御指摘だと思いますが、それは、あったという認識はございません。なかったということです。

河村(た)委員 では、当時、当該保護房の言うことと、もう一つ、そういうかたいタイプの飲料用ボトルが使用されていたという認識はどうですか。

横田政府参考人 この十二月事案当時に、この事案の発生した保護房内にどういうものが、つまりそういうものがあったかどうかということではなくて、一般的に言えば、当時、保護房内でプラスチック製の飲料用容器が使われていたということは事実でございました。そのように認識しております。

河村(た)委員 それは、今、正確に言いますけれども、いわゆるかたいタイプのといいますか、ということで結構ですね、今の飲料用ボトルと言ったのは。

横田政府参考人 現在保護房において飲料用容器として使われているものに比べればかたいという趣旨でございますね。それはそのとおりです。

河村(た)委員 それは、ではそういうことにしまして、それから次に、革手錠を施用するときのこれは施用形態ですけれども、これは、また、いいですよ、調査してくれということだけですから。施用形態についての通達がありますけれども、例えば、二人でこれを引っ張ったらこれは即違法になるかどうかとか、全国でずっと革手錠を施用していますので、そのときにどういう形態で施用しておるかということですね、二人で引いているかとか。そういうことを一遍調査して、全部出してもらえぬですか。

横田政府参考人 いつもこういうことを申し上げて申しわけないんですけれども、やはり、調査といいましても、ある程度、期間とか場所とか、ある程度限定していただきませんと、無限大の御調査の要求でありますとなかなか難しいところでございます。

河村(た)委員 そうしたら、全国で千件ぐらいでしたかね、たしか。千件弱でしたか。全国で千件弱ですので、去年やめていますから、平成十年からですか。十年から、平成十年以降にしますか。平成十年以降ですね。どこの刑務所かということはちょっと、これはまた相談させていただくとして、平成十年以降ということで、またあとの、もっと場所を特定するということなら別としまして、これは調査するということですね。

横田政府参考人 委員会の御決定があれば、そのようにいたします。

河村(た)委員 では、ちょっと命じてくださいよ、これ。

柳本委員長 先ほどのとおりと同じでございます。

横田政府参考人 では、また後ほど、委員会の御指示に従います。

河村(た)委員 委員会の御指示っていうのは……。今調べてくれということでしょう、これ。これだけは言ってもらわないと、悪いけれども、これは。

横田政府参考人 先ほど、期間につきましては委員から平成十年以降ということでございましたが、あと、場所とか、そういうことがございますので、いずれにしましても、調査すべきであるとされれば当然いたしますということは先ほどから申し上げているとおりでございますので、よろしくお願いします。

河村(た)委員 では、委員長、悪いけれども、あとちょっと細かいところは打ち合わせさせていただいて、そういう趣旨で、平成十年以降の革手錠の施用の状況ですね、状況。二人で引いているかどうかとか、それを、あとちょっと悪いけれども任せていただいて、そちらの実際上の都合、量もある、物理的なキャパシティーもあると思うので。それだけ一つ、そういうことで調査を命じてください。

横田政府参考人 そのように調査いたします。

河村(た)委員 それから、これはちょっと、刑事局長来てみえるけれども、保釈が、どうも最近の人質裁判というようなことで、身柄をとられていますとみんな家族もあるし大変苦しいという状況の中で、保釈と、そのかわり罪を認めろというのが非常にバーターみたいになっちゃって、冤罪の大温床になっている、現実ですね。そういう話を聞くんですけれども、そこら辺は実態はどうですか。

樋渡政府参考人 保釈につきましては、裁判所の御判断で決まることでございまして、刑事局長、法務当局として何かコメントを申し上げるところはございません。

河村(た)委員 これ以上論議してもしようがないですけれども。このたび、民主党の方からですけれども、これは刑訴法の改正ということで保釈の要件を、こういうふうにならぬように、今相当な理由ということになっていますけれども、充分な理由が要る、保釈を認めないためにはですね、というのを提案しておりますので、ぜひこれは自民党の皆さんも御審議をお願いしたいというふうに思っております。

 それからあと、例の十二月のときに、これは法務委員会でそうなんですけれども、刑務官が出てみえて、ここで参考人の招致をやったことがあるんですね。そこで、放水以前からはいていたいわゆるパジャマというかズボンというかのようなものがあって、そこに血がついていたと、既に。要するに、放水以前から出血していたと。これは非常に重要なところなんです。

 放水によって、肛門二カ所ですか、それからその奥十一センチのところの直腸が五センチ、これが切れたということに一方ではなっておるんですけれども、そうなると、放水以前に出血するというのはおかしいわけですよ。ということで、証言といいますか、参考人の御発言ですけれども、あったんですね、ここで。

 そういうこともありますので、ここは一遍、それで、そのズボンというんですか、それを見た人がいる、刑務官。ここで証言しているんですよ、自分でこういうふうにズボンという絵までかいてですね、これ。ですから、このことについて一遍詳細を、そのズボンは一体どうなったのか、そこをぜひちょっと調査をしてほしいんですよ。

横田政府参考人 私の記憶に間違いなければ、あのとき参考人は、この放水事案のあった後にズボンを見た、こういうふうに言っていまして、この事案の前からそのズボンに血がついていたということを見た、そういう参考人の供述ではなかったように理解しています。

 それはともかくとして、ズボンの件につきましては、これもちょっと、日にちはもちろん記憶ございませんけれども、大分以前に委員から同様の御質問がございまして、当時それぞれ調べましたけれども、結局ズボンは、その点数、個別に個別に全部追いかけていませんので、結局、そのようなズボンが存在したかどうかも含めまして不明であるということをお答えしまして、現在もそのとおりのお答えしかできません。

河村(た)委員 それではやはり困るんですね。これ、僕では調査できないんですよ、実は。今言いましたように、確かに脱がしてから見たんですけれども、要するにはいていますから、前はですね、これ。脱がしてから放水していますから。論理的に言うと、これは非常に重要な要素になるわけです。ですから、これは私らではできませんし、委員会でもできないでしょう。

 悪いけれども、これ、法廷のことは余り言いませんけれども、裁判は裁判で有罪無罪は別個に決める、それは独立していますけれども。これはちょっと、大分違うんですよ、認識が。

 これは参考人招致でやっていますから、ここのところは法務省がきちっと、それは調べればわかるはずなんですよ、刑務官に全部当たれば、これは、どうだったんだということを。だから、それは調査してくださいよ。

横田政府参考人 周辺関係者から事情を聞くことは、これは可能でございますので、またそれについてはいたしたいと思っておりますけれども、しかしながら、ただ、いわゆる言葉とは別に、言うなららば物証といいますか、物になりますと、これは先ほど申し上げましたように、大分以前に申し上げましたけれども、このズボン、衣類といいますのは、全部一括管理で、帳簿上もその一点一点全部記録されておりませんので、そういう点で追跡は不可能であるということをあらかじめ申し上げさせていただきたいと思います。

河村(た)委員 不可能ということは、これ、委員長、命じてもらわにゃいかぬですよ、本当に。そんなことあり得ないじゃないですか、そんなの。刑務官、ついこの間ですよ、まだ平成十三年十二月。でしょう。だから、そんなきちっとやっていけばわかりますよ、必ずこれは。これは真実解明の義務が本当にありますよ、委員長、委員会にも。

 もう極端なことを言いますが、私は法務省に言っていますけれども、実は国会に一番あるんではないか、国会に。国会で始まったことですから、何とこの話は。だから、この際私は、正義感というか日本国民の義務として、本当にあの密室の中で何があったんだ、これを究明しないと、これはただ根拠もなくてぼろかすに言って、それで終わりになるんですか。そんなこと当然できませんよ、私たちは、国会議員ですから。

 ちょっと委員長、ちゃんと命じてくださいよ、ぜひ。

横田政府参考人 もちろん、委員会の御決定があればそれに従うのは当然でございますけれども、ただ、これは委員にも、大分以前その御質問があったときに、何といいますか、管理簿のような写しのものもお見せして御説明したと思うんですが、とにかく何十点というものを一括して全部、ズボンも含めて衣類は全部管理しておりまして、廃棄もそうやってまとめて廃棄しますので、その一点一点がどうであったかということは全く記録にないわけですので、これはもちろん御決定があればそれでもう一回調査いたしますけれども、見込みはないというふうに私今申し上げさせていただきます。

河村(た)委員 いや、そんなばかなことはあり得ないんだって、これは。こういうことこそやってもらわなければ。

 私は、国会議員で法務委員会に出てきて、去年ずっとこれは野党がやらせていただいておりまして、週一回ずつですよ、みんなで調査してやってきたやつですよ。予算委員会は集中審議までやっているというのに、それを検証できないというんです。これでは職務にならぬじゃないですか。ここはきちっと命じてください、そんなものできるんだから。

横田政府参考人 いずれにいたしましても、改めてできる限りの調査をいたします。

河村(た)委員 それから、一つ、これはあれですけれども、一遍国政調査の、ほかの何か起きたときでも小委員会をつくったことがありますので、やはりこれだけやったんですから、この国会で、本当に。だから一遍、委員長、例えば小委員会をつくるとか、こうやってばらばらやるんじゃなくて。質問した人がそれぞれ根拠が違っておったら、議事録全部訂正せんならぬですよ、これ。呼び捨てにした人も多くおみえになりますから、刑務官の。高圧放水だといって、イメージとすれば全然違うイメージでやっていたわけでしょう。全部訂正せないかぬぜ、違っていたら。だから、その委員会でひとつやってくださいよ、小委員会つくるなりして。

柳本委員長 ただいまの件につきましては、理事会で協議をさせていただきまして、御報告をさせていただきます。

河村(た)委員 理事会、理事会と言いますけれども、繰り返しますけれども、理事会のやるようになっていますけれども、そこで変なふうにしてもらわぬようにね、やはりこれ。

 本来なら、理事会も理事会ですけれども、みんなで合意して、そんなことなら真相究明しようでやったりやらないかぬですよ、これ、言っておきますけれども。それと、党のいわゆる、よくある、党で党議拘束したというような格好で、ああいうのはやめてもらいたい、やはりこれは。これはちょっと意味が違いますから。まあ、そういう精神で議論してください。

柳本委員長 今の趣旨にのっとって協議をさせていただきます。

河村(た)委員 それから、もう一つ調査をいただきたいのは、例のビデオですね、ビデオ。平成十四年の九月事案のときのビデオがあるんです。

 これは、なぜかといいますと、理事懇で全員が見ていますから、山本有二委員長のときに、自民党の方も合意しまして、塩崎さん、そのときおみえになりまして、見ておられます。これが二カ所切れているんですけれども、冒頭十一分と途中で四十二分切れていまして、四十二分部分についてはビデオを入れ忘れたという可能性が非常に強い。だけれども、十一分は、明確に科捜研の鑑定で、上書き消去されているとはっきりなっているんです。だから、これがやはりなぜそうなったのかと、ここですね、これ。ここのところを一遍本当に詳細に、だれが一体どうして消去して、それをどう報告して、だれが東京へ持ってきてという話ですね、全部、詳細に調査して、次の委員会といいますか、委員会に文書で報告してほしい、そう思います。

横田政府参考人 先ほどからいろいろ申し上げて大変申しわけないんですけれども、ただいまの件も、前の通常国会のときに委員から御質問ございまして、私ども職員を派遣しまして詳細な調査をいたしまして、その結果を御答弁申し上げているところでございまして、なおさらに調査せよということであれば、もちろんそれは調査いたします。

河村(た)委員 なおというか、もっとしっかりとっておかなならぬ。だから、途中不明になっているんですよ、これは正直言いまして。不明に。これは大きいですよ、委員会としても。

 もう一回、委員長、なぜかというと、これは見ているんですよ、理事懇で全員で。ね、塩崎さん。見たとお答えになっていますけれども、そういうものですから、もうわからないとかいうことは許されませんよ、これ。これは許されませんよ、本当に。もしこれ、こんなことが許されたら、委員会というのは本当にばかにされたことになりますよ。

 ですから、もう一回、再度、これも調べればわかりますから、こんなの。刑務官という特定少数の人ですから、これ。ここをきちっと調べて出すように、もう一回命じてくださいよ。

横田政府参考人 前に調べたことの繰り返しの部分も一部含まれるかもしれませんが、そういう意味で、ちょっと時間、多少かかるかもしれませんが、調査を改めていたします。

河村(た)委員 では、以上で終わりますが、ぜひ真相究明に委員長も大いに本当に乗り出していただいてというように思っております。

 終わります。

柳本委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十三分散会


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