衆議院

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第15号 平成16年4月16日(金曜日)

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平成十六年四月十六日(金曜日)

    午前九時三十七分開議

 出席委員

   委員長 柳本 卓治君

   理事 塩崎 恭久君 理事 下村 博文君

   理事 森岡 正宏君 理事 与謝野 馨君

   理事 漆原 良夫君

      左藤  章君    佐藤  勉君

      桜井 郁三君    杉浦 正健君

      中野  清君    早川 忠孝君

      平沢 勝栄君    松島みどり君

      水野 賢一君    森山 眞弓君

      保岡 興治君    柳澤 伯夫君

      山際大志郎君    上田  勇君

      富田 茂之君    川上 義博君

    …………………………………

   法務大臣         野沢 太三君

   法務副大臣        実川 幸夫君

   法務大臣政務官      中野  清君

   政府参考人

   (司法制度改革推進本部事務局長)         山崎  潮君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          寺田 逸郎君

   法務委員会専門員     横田 猛雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十六日

 辞任         補欠選任

  佐藤  勉君     杉浦 正健君

同日

 辞任         補欠選任

  杉浦 正健君     佐藤  勉君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律案(内閣提出第六七号)

 刑事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提出第六八号)

 総合法律支援法案(内閣提出第六九号)


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     ――――◇―――――

柳本委員長 これより会議を開きます。

 開会に先立ちまして、民主党・無所属クラブ所属委員に御出席を要請いたしましたが、御出席が得られません。やむを得ず議事を進めます。

 内閣提出、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律案、刑事訴訟法等の一部を改正する法律案及び総合法律支援法案の各案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として司法制度改革推進本部事務局長山崎潮君、法務省大臣官房司法法制部長寺田逸郎君、法務省刑事局長樋渡利秋君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

柳本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

柳本委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局大野刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

柳本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

柳本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。杉浦正健君。

杉浦委員 自由民主党の杉浦正健でございます。

 本日は、大臣の出席要求はしていなかったんですが、御出席をいただきまして恐縮をしております。

 私は、今、自民党の憲法改正PTでやっておりますが、その改正項目の中に、憲法の、総理及び国務大臣は求められれば国会に出席しなければならないという部分を削除しようということを提案しまして、大方の議員の賛同をいただいて、野党がいるといいんだけれども、憲法改正の暁には実現してまいりたいと思っております。

 大体、大臣が委員会に拘束される。外務大臣なんというのは、外務大臣じゃなくて内務大臣であります。国会があるときは委員会ばかり、朝から夕方まで。総理も物すごく拘束される。日本の総理が二年しかもたないというのは、もうあれだけの激務は通常の人間にはこなせません。ブレア首相なんというのは、年間三十分とか五十分とか、それぐらいしか国会に出ない、クエスチョンタイムを除いて、と言われておるわけですが、日本が本当に政治主導の政治に変わっていくためには、総理、国務大臣を国会の拘束から解放して内外の仕事に専念してもらうということが大事だと思っている一人でございます。

 余分なことを申しました。しかし、出席いただきましてありがとうございました。五十年来の友人でございますので、法務大臣、本当に御苦労さま、おめでとうございます。

 きょうお聞きしたいのは、ただ一点であります。二十分も要らなかったんですが、例の司法ネットの法律で、役員には判検事はなれない、就任前二年判検事であった者はなれないという規定があります。それから、公務員というのは役員の欠格事由になっております。現職、兼任してはなれない。要するに、天下りをさせないという趣旨で規定を盛り込んだわけであります。

 私は、司法ネットの自民党のPTをずっと長でやってまいりましたので、最後までこだわったのはその点であります。この新しい大事業には役人は天下りさせない、これが大事だと考えまして、最後まで民間の事業としてできないかということで、法務省、司法改革審議会事務局を督励して検討させたんですが、国選弁護の、国の事務を受けることになるのでどうしても独法に準じた組織でないとだめだというので、これはやむを得ないと思って譲りましたが、役員については天下りはさせない、人格、識見ともにすぐれた人でなければならないけれども、民間には人材がたくさんおりますから、本当に、この新しく生まれる組織が、国民の目から見て、サービスの行き届いた、サービス精神に富んだ、親切で丁寧でいわゆるお役所仕事でない仕事をして伸びていってもらわなきゃ困るという趣旨で主張したわけであります。

 大臣おみえなのは十分ということですから、大臣からお答えいただくのは恐縮でございますが、判検事、就任前二年判検事であった者というと、法務省の幹部は大体判検事ですから法務省の幹部から新組織には入れない、二年間、であった者は。そういう趣旨、法務省として、いわゆる天下りさせないという趣旨に間違いはございませんね。

野沢国務大臣 杉浦委員におかれましては、法務行政あるいはこの法務の委員会におきまして、大変見識ある御発言を再々ちょうだいいたしておりまして、本席をおかりしまして御礼を申し上げる次第でございます。

 今回の司法制度改革の趣旨は、基本的には今までの、やや国民の立場から見ますと雲の上にいるのではないかとか、あるいは身近でないとか言われておりますそういった司法制度をより身近なものにすること、ファミリアなものにするということ。それからもう一つは、やはり基本としての公正な判断をするということ、公平な判断をする、フェアであるということ。さらにはファスト、早く結論が出る。これが、やはり忙しい現代の中では大変大事な課題ということでございまして、これらを具体化、実現していくためには、今回御提言申し上げております総合法律支援の法案というのは、実は大変効果的かつ重要な法案である、こう考えておるわけでございます。

 そしてまた、それを運営する支援センターの中核人事である幹部の登用のあり方、採用のあり方については、今委員御指摘のような考え方が基本でなければならない、こう考えておるわけでございまして、具体的にはこれからの課題になりますが、本法案におきましては、理事長、理事の任命に当たりましては、公正かつ中立な業務の運営ができる者ということを条件にいたしまして、独立行政法人の例に倣いまして、政府または地方公共団体の常勤職員は理事長、理事などの役員になることができないということになっております。四十八条ということで決めております。

 それと同時に、支援センター業務の特性にかんがみまして、裁判官もしくは検察官または任命前二年間にこれらであった者は理事長または理事になることができないということとしております。これは二十四条でございます。さらに、独立行政法人の役員人事につきましては、法人の長について、事務次官等のポストからの任用を固定化させないなどの政府方針が既に示されているところでございます。

 支援センターの役員人事に当たりましては、これらの法案の定める要件と政府の方針の趣旨に従いつつ、とりわけ法務事務次官を含め、法務省幹部の天下りであるとの批判を受けることのないよう、適正に行われることになると考えております。

杉浦委員 法務事務次官を初めとあったんですが、何か、聞いたら、法務次官は判事でも検事でもないと。何か、身分を離れるんですか。だから、条文上のあれからいくと、事務次官は判事でも検事でもないんだから、その前二年間、法務事務次官を二年間やればもう判事でも検事でもなかったことになるんだからそのまま天下りできるということに読めるわけですが、法務事務次官は天下りさせないと今おっしゃいましたが、間違いありませんね。

野沢国務大臣 これは、条文というよりも、独立行政法人に関する政府方針という中で読める事柄でございまして、趣旨としては、当初申しましたとおり、やはり民間のマインドで運営されるということが一番大事ということからしましても、ここは非常に重要な部分であると考えております。

杉浦委員 法務省についてはわかったんですが、他省庁の幹部、役人、これについては法律で触れるところはないわけでございまして、これは事務局と議論した中で、法律では措置しないが、大臣訓令とか何らかの形で手当てして、他省庁の役人も法務省に準じて天下りさせない措置を講ずるからということで我々は納得したんですが、その点はどういうふうに相なっておりますか、詳しく御説明いただきたいと思います。

野沢国務大臣 これは、他省庁につきましても、政府の方針の趣旨に従いまして、特に中央省庁からの幹部の天下りというようなことが出てこないような、そんな批判を受けないような、適正な人事をしなければならないと思っております。

杉浦委員 今、総理を先頭にしてやっておりますあれもインチキなところがありまして、独法、全部民間人にするというのが半分しかできなかったり、方針というのはくるくる変わるんですね、変わる。したがって、何らかの担保が要る、法律に書き込む。これは実は、公務員にしようと思ったんですけれども、判検事じゃなくて。法務省の人たちがもう泣かんばかりに頼みに来まして、法務省についてはやりますが、これをやるとほかの独法だとかあれに響くと。人事局、内閣府の。ともかく、何とか法務省限りにしてくれと言っているからということで、これも譲歩したいきさつがあるんですね。

 別に役人を毛嫌いしているわけじゃないんです。立派な役人が多いし。ただ、この組織というのは永続するわけです。将来にわたって日本の国の中で大きな役割を果たしていかなきゃならない組織ですから、法務省の幹部がかわろうと、時が変わろうと、守っていかれるようにしなきゃならない。

 そのためには法律に書き込むのが一番いいんですけれども、一般公務員は書き損なったわけで、私が聞いたのでは、規則とか大臣訓令とか、何らかの形で他省庁の者が入れないように措置しますというふうに事務方から聞いておりますので、野沢大臣の御発言は抽象的でありますが、きちっとやってほしいと希望しておきます。答弁を求めてもあいまいな答弁になるのはわかっているから求めませんが、そういう事務方との約束だったということは議事録にとどめて、将来起こったら、この議事録は永久に残りますから、法務省を叱咤激励してまいりたいと思っている次第でございます。

 野沢さんも国鉄出身なので釈迦に説法なんだけれども、今までの公社、公団、事業団、特殊法人というのは、本来の目的は政府のいいところと民間のいいところをあわせてやっていこうという趣旨でできているんですね、法律はそう書いてある。ところが、おおむね、国鉄もそうだったけれども、野沢さんは革新派で、あなた技術屋さんだからトンネル掘りで日本一でとやっておられたんだからあれだけれども、大体の公社、公団、特殊法人は、世間の人たちがいわく、役所の悪いところと民間の悪いところを集めたようなものだ、こういうふうに言われておったわけですよ。だから、改革が始まって、JRも生まれ変わった、どんどんよくなっているわけですから。

 この法人もでき上がるでしょう。それを運営されて、これから動き出すわけですが、そういうことは言われないように、先ほど申し上げましたが、電話の窓口にいる女性も、電話がかかってきたら親切丁寧に応対する、お客様には礼儀正しく、きちっと応対をして、よく事情を聞いて、それを運営に当たる弁護士、そういう人に取り次ぐとかあるいは他団体に取り次ぐとか、一つのネットの中心機能を果たしてもらうわけですから、例えてみれば百貨店の店員のようにサービスを心がけて、国民から見て本当によくやってくださっている、困った人、法の恩恵を受けなきゃいけない人に対して温かい気持ちでサービスを提供するという組織になってもらわないと困るわけで、そのためにはやはりトップが大事です。

 会社経営も組織も人なりで、社長がいいと会社は伸びるし、社長がだめだと衰退して、下手すると倒産する。トップが大事ですから、トップに民間人で会社経営の経験もある、そういう人を迎えて、その方の気持ちが組織の末端までしみ通って、この法律が目指す国民のすべての人々に法の恩恵をもたらすということを全うしてもらう、そのために私はかなめになる問題だと思っておりますので、お時間をちょうだいしてこの法務委員会の議事録にとどめさせていただきたいということで立たせていただいた次第でございます。

 これで終わるんですけれども、五分ありますからこの機会に申させていただきますが、今度の組織は、今までありました法律扶助協会、民事の事業は吸収いたします。国選弁護も、弁護人選任は裁判所ですが、そのほかの事務は裁判所から引き取ります。国選弁護の仕事も、今まで起訴後だけなんですが、起訴前の弁護まで拡大をいたします。

 のみならず、これは総理の大変なイニシアチブだったんですが、全国津々浦々にネットを張りめぐらせて、司法改革が進んでおりますから、片やこっちに進んでおる、自己責任の社会に向かっていく、そういう厳しい、激しい時代の変化の中でいろいろな問題が起こる、そういう問題について、国民あるいは企業、弁護士さん等専門家に恵まれていない人々がたくさんおるわけですが、そういう方々が頼っていける、そういうようにネットを張ろう。そういう方が来られたら、税務だったら税理士、会計の問題だったら公認会計士あるいは弁護士さんや、自分の組織の中にも相当数弁護士を抱える、自分の中でも消化するという、当初はそんなに広げられないと思うんですが、五年、十年の間には相当大きな組織、特定郵便局並みぐらいに広げてもいいんじゃないか、郵便局と提携してもいいんじゃないか、そういう組織。

 しかも、できるだけ自立して経営できる、原則ただではやらない、幾らかはちょうだいしてやる、そういう会社経営的な一面、大きな組織を立ち上げようということになっております。これは日本の司法の世界でかねてから希望されていたことなんですが、実現しなかったことであります。

 私は、PTで、韓国がよくやっているというので見に行きました、十人近く参加しましたけれども。大韓法律救助公団ですよ、公団です。公団組織になっていまして、私ども本部を見ただけなんですが、相当数の弁護士さん、裁判官出身の人、検事出身の人もいて、法律相談をやる、いろいろいろいろ多角的な活動をやっておりました。

 法律扶助の世界では韓国に負けちゃったなという印象を持って帰ってまいったわけですが、日本の法律、いわゆる扶助の世界が、韓国のみならず先進国に比べて非常に小さかった。これにはいろいろな理由がありますけれども、それを一気に克服して、新しい時代に向かって先進国並みの法律扶助のネットワークを張りめぐらすという大事業でありますので、役所の方でも、自分の支配下にあるんだからおれの言うとおりにならなきゃいかぬだとかそんなことは考えないで、この組織がいわば赤十字社みたいに広い広がりと国民の支持を得た大きな組織としていくように配慮してほしい、法務省に限らず、最高裁と政府当局全体に望みたいと思います。

 そのためにはトップの人事が一番肝心であります。推薦しろと言われれば、私の知っている人で適任者がおります、民間で。人格、識見、もうだれから見てもふさわしい人がいます。先生方の中にもあると思いますが、ぜひそういうすばらしい人材をトップに集めて、新しい組織が私どもが願っている方向で発展していって、所期の成果を上げられますように心から御祈念申し上げまして、ちょうど時間が終了いたしましたので終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

柳本委員長 左藤章君。

左藤委員 おはようございます。自由民主党の左藤章でございます。

 今、杉浦先生が司法ネットのことについて御質問されました。私も一緒にPTをやって韓国も行きましたけれども、その中で、やはりいろいろな法律相談、どこに行っていいのかわからない、そういう国民がたくさんいることが一つ。そして、各県や市町村や、また弁護士会がそれぞれ無料相談というのをやっておりますが、いつどこでやっているのかわからない。

 これらをやはりしっかりと一つにまとめて、いつでも、二十四時間とは言えませんけれども、いつでもそこへ行って御相談ができる場所というのはしっかりつくる必要があるんだろう、こういうことで司法ネットの勉強会をさせていただき、今、杉浦先生がお話あったとおり、しっかりしてやっていきたいなと思いますので、ぜひひとつお願いを申し上げたいと思います。

 きょうは、裁判員の問題についていろいろ論議がありましたので、いろいろ私も聞きながら、確認もしながら質問をさせていただきたい、このように思います。

 今度の裁判員の導入というのは、御存じのとおりに、平成十三年六月に司法制度改革審議会で報告されて閣議決定をした、その段階で、我々がどういうことだろうということでスタートしましたけれども、その中でももちろん、また審議の中でもそうなんですが、国民の常識を反映しているのかなとかいろいろな問題が出てまいりました。もちろん審議会でも国民の司法参加の導入が提言された背景には、裁判所が国民から非常に遠いものじゃないか、また刑事裁判に非常に時間がかかる、オウムの事件もそうですけれども非常に時間がかかり過ぎている、また庶民の感覚からいうとちょっと判決おかしいのと違うか、このような声があるということはよくわかっておりますけれども、よくこの委員会でも、なぜ必要だというそもそも論の話が何度も出てまいります。やはりしっかりと、もう一回改めて、そもそも論ではありませんけれども、確認をさせていただきたい。どうしても必要なんだという、我々、確認をさせていただきたいのが一点でございます。

 その次に、裁判員の導入に当たっては、裁判官を初めとする法曹三者には、一般に言葉ですね、使っている言葉が非常に専門的でわかりづらい、説明しにくいということがたくさんあるわけですね。そうすると、これから、きちんと説明をするという、今までと違った能力といいますか、説明能力といいますか、そういうものが必要になりますから、法曹三者だとか、今、法科大学院がいよいよ四月から開校しました、その辺にどういう取り組みがなされているか。この点を踏まえて、まことに恐縮ですが、実川法務副大臣に御質問をさせていただきたいと思います。

実川副大臣 今委員から、なぜ裁判員制度の導入が必要なのかを含めまして御質問がございました。

 我が国の現在の刑事裁判は、基本的には国民の信頼を得ているものと認識しております。また、国民の意識、価値観が多様化し、社会が急速に変化する中で、裁判に時間がかかり過ぎ、また時として刑が重過ぎたり軽過ぎたりすることがある、裁判の手続や内容がわかりにくいなどの指摘もございました。

 今後、司法の果たすべき役割がより大きくなっていく中で、司法がその機能をよりよく果たしていくためには、その国民的基盤をより強固にすることが必要になると考えております。

 さらに、裁判員制度が導入をされますと、国民の感覚が裁判の内容により反映されることになります。さらに司法に対します国民の理解あるいは支持が一層深まり、司法はより強固な国民的基盤を得ることができるものと考えております。

 また、委員御指摘のとおり、裁判員制度におきましては、期待される法曹と国民との十分かつ適切なコミュニケーションを実現するためには、裁判を一般の国民にわかりやすくすることが必要でございます。

 このような観点から、法案では、法曹三者に対しまして、審理を迅速でわかりやすくすることに努めることが求められております。

 今後、このような法の趣旨を踏まえまして、政府といたしましても、わかりやすい司法の実現に向けて最大限努力するとともに、法曹三者、また、先ほど御指摘のありました、新たな法曹養成制度を担う法科大学院におきましても、相互の適切な連携のもとに所要の取り組みが行われることを期待しております。

左藤委員 今副大臣がおっしゃったように、そういう方向でしっかりと連携をとりながら、法曹三者、また、文科省になるんだと思いますが、法科大学院の方もひとつよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 そういうことで、いよいよ裁判員制度が導入されますと、従来以上に弁護体制というのが、整備が非常に重要になってくると思うんですね。

 裁判員制度のもとでは、一般の国民に何年も裁判所に通ってくれというのはちょっと大変酷ではないかな、こういうふうに思います。そうすると、そのためにはやはり事前に準備をしっかりしていただくことが前提になるんじゃないか。そして、できるだけ連日的に裁判を開いて、集中審理によって、敏速でしかも充実した裁判をしてもらう必要が当然あるわけであります。そのためには、弁護人も集中審理に対応できるようにする必要があると思います。

 ところが、刑事事件というのはほとんどが国選弁護人なんですよね。そうなると、集中審理に対応できるように公的弁護制度を整備する必要が当然あるわけでありますが、この辺はどうなっていますか。推進本部にお伺いしたい。それと、公判の連日的開廷に対応できる弁護士体制の整備の見通しはどうなっているか、ひとつお答えをお願い申し上げます。

山崎政府参考人 確かに、御指摘のとおり、裁判員制度のもとで裁判員の負担が過重なものとならないよう、それから裁判の迅速化を図るためには公判を連日的に開廷するということが必要になってまいりますけれども、弁護士業務の現状を見ますと、弁護士が個々の刑事事件に専従することは容易でないという指摘がございます。

 このため、司法制度改革審議会意見書におきましては、公的弁護制度を確立し、常勤の弁護士等が刑事事件を専門的に取り扱うことができるような体制を整備するなどして、裁判員制度の実効的な実施を支え得る体制を整備することが緊要であるとの提言がされたわけでございます。

 そこで、これを受けまして、私どもといたしましては、この総合法律支援法、これに基づきまして設けられます日本司法支援センター、ここにおきまして、常勤の者を含めまして契約により弁護士を確保いたしまして、全国的に充実した弁護活動を提供し得る体制を整備するということを目指しているわけでございます。

 一日も早い御承認をいただいて、この組織を立ち上げて、やはり弁護士さんを確保し、常勤、それからあるいは契約でやっていただく方、両方でございますけれども、これをまず順調に運営した上で、その後に裁判員制度を施行いたしまして、それで対応できるように、こういう計画で今考えているところでございまして、鋭意これから努力をして、それに間に合うようにやっていきたいというふうに考えております。

左藤委員 済みません、ちょっと質問通告していなかったんですが、今司法センターの話が出てまいりましたけれども、今、そこに公的弁護人を置いてそこで相談をするとおっしゃっていたんですね。裁判員制度を始めるまでにその制度を何とかしたい、こうおっしゃっていたんですが。そうすると、これは裁判員制度が定着するのに五年でしたね、たしか。そうすると、司法支援センターをつくるといったら五年以内に完了していなきゃならないということになるんですけれども、その辺は大丈夫ですか。私、どうも、非常に、いろんなことをやっていたものですから心配になってまいりまして。ちょっとお願いします。

山崎政府参考人 この関係の施行でございますけれども、まだいつということではございませんが、十八年には立ち上げたいというふうに考えておりまして、ここで常勤の者の確保それから契約によって確保する方、こういう点を、十八年以降なるべく順調に、安定的になるようにした上で裁判員制度の開始に備えたい、こういうつもりで考えております。

左藤委員 そういうぐあいになっていただきたいし、我々もそういうぐあいになるように、また我々自身もしっかり努力しなきゃならないんじゃないかと思います。本当にありがたい答弁だったと思います。

 次に、報道との関係をちょっと伺いたいんですが、裁判前にいろんなことが事件に関して報道されると、どうしてもワイドショーを見たり新聞を見たり週刊誌を見と、裁判員になった人が何となく洗脳されてしまうという危険性があるわけなんですが、そうなると、やはり公正な裁判員の判断ができないんじゃないかという危惧をするわけですね。

 事務局の検討段階では、裁判員に偏見を生じるような報道はしないように配慮する義務を報道機関に課するという案も検討されているとは聞いております。最終的な法案ではどのような規定になるんでしょうか。私は、最終的な法案ではそのような規定はないと聞いているんですが、どうなるんでしょうか。そして、報道機関に関して、検討した結果、偏見を生じさせないという結果はどうなっているんだろうか。これは法務副大臣にお伺いをさせていただきたいと思います。

実川副大臣 委員御指摘の報道に関しましては、先般行われました参考人のときにも、いろいろ議論があったというふうに聞いております。

 裁判員制度の導入に当たりましては、公正な裁判を確保するための方策についてのさまざまな検討を行い、その中では、報道機関が事件に関します報道を行うに当たりましては、裁判員に事件に関する偏見を生ぜしめないように配慮すべきであるという規定を設けるべきであるかどうかにつきましても検討してまいりました。

 しかしながら、報道の自由あるいは国民の知る権利にも配慮すべきこと、また報道機関におきましても自主的な取り組みの努力がなされていることにかんがみまして、事件の報道に関する規定は設けないということにいたしました。

左藤委員 そうすると、やはり裁判員になる人というのは、正直言って素人の方ですね。そうすると、事件関係者とかマスコミの関係者が自由に接触する、その以前の問題。それから、裁判になったときに接触をするということはあるわけですね。そうすると、どうしても、ついついしゃべってしまうんじゃないかとか、そういう不安に我々は駆られるわけですが、やはり素人の裁判員を守ったり、公正な裁判を確保するには、法案の第七十三条の裁判員や裁判員であった者に対する接触を規制するのは当然だと私は思うんですね。

 ただ、マスコミの方々に、この前の参考人質疑でありましたのですが、規制が厳し過ぎるという批判の声もありました、マスコミの方から。確認のため事務局の方にお伺いしますけれども、七十三条に違反して裁判員等に接触した場合に、罰則の対象になるのでしょうか。また、現に裁判員である者に対しての接触と、裁判員であった人に対する接触では、規制される範囲が異なっていると聞いておりますが、これはなぜなんでしょうか。

 あわせて、裁判員の家族。本人に接触できないとなっても家族に聞いてみようという、家で何かしゃべっていませんかということになるわけですが、この辺についてはどうお考えになっておられるか、お願いを申し上げたいと思います。

山崎政府参考人 この法案の七十三条に接触禁止の規定がございますけれども、これはいわゆる訓示規定ということでございまして、罰則の適用はないということでございます。ただ、裁判員の職務に関する請託とか裁判員の威迫にわたるような場合、この場合は刑事罰の対象になるということで、七十七条、七十八条に規定を設けているということでございます。

 それで接触規制の範囲でございますけれども、これは事件に関する現職の裁判員への接触は一般的に規制をしております。一切接触してはならないということになっておりますが、裁判終了後につきましては、職務上知り得た秘密を知る目的での接触に限って規制をしております。

 その理由でございますけれども、裁判の終了後であれば当該裁判の内容自体に影響を及ぼすということはないということになりますし、裁判員であった者がその経験に基づいて感想等を述べるということは、裁判員制度、ひいては刑事司法制度に対する国民の関心と信頼を高めるということに役立つという面もあるわけでございますので、これを一般的に規制するのは相当でないというふうに考えたわけでございます。

 他方、裁判員は望んで選任されるものとは限らないわけでございますので、必要以上の負担を負わせないようにということにするために、裁判員が守秘義務を負っている事項を知る目的で働きかける行為、これについては規制をするということでこのような規定を設けたということでございます。

 それからもう一点御指摘がございまして、裁判員の親族への接触です。この問題につきましては、その接触自体についてはこれを規制する規定は設けておりません。この理由ですけれども、裁判員の親族と外部の者が接触をいたしましても、裁判員本人が接触した場合ほどに裁判の公正さやこれに対する信頼が害されるという可能性が比較的薄いということでございます。

 そういうことが第一点と、裁判員の親族に接触するのみならず、事件に関して親族を威迫したり、あるいは親族を通じて裁判員の職務に関して裁判員に請託を行うなどした者については別途刑事罰の対象になるということでございますので、そこの、この二つの両面で事実上のバランスが図られていくだろうということで、あえて置いてはいないということでございます。

左藤委員 時間がありませんので、ちょっとはしょって質問させていただきたいと思います。守秘義務違反についてお伺いします。

 いろいろ論議の中で、評議の秘密とか職務上知り得た秘密についていろいろ話がありましたけれども、その中で、評議経過や個人を特定しない形での評決の賛否の数は守秘義務の対象とする必要はないという意見がありました。

 例えば、この判決が五対五で死刑になったとか、ある裁判の評議では有罪についてはどのように論議され量刑についてはどうだったかということが公表されますと、個々の裁判員に対して信頼というものが変わってくるんじゃないかなと私は心配します。

 あの裁判の裁判員は質が低かったとか、裁判官がちゃんと説明が足りなかったんじゃないかというような誤解を招く可能性だってあるわけでありますので、これは裁判員制度自体がおかしくなってくるんじゃないかなと懸念をするんですね。この辺についてのお考えをお伺いしたいのが一点。

 もう一つ、例の守秘義務に対する罰則規定で、違反した者には五十万円以下の罰金のみならず、懲役刑で一年以下というのがありますね。私は、罰金だけではちょっと問題があるんじゃないかなと思いますのは、経験者が、今よく、変な話ですけれども「家政婦は見た!」とかいうテレビがあるように、裁判員は見たとかいう本を書いて、その経過とか評議の内容とかいろいろなことを書いて、失礼ですけれどもお金もうけになったり名前を上げたりしようというように、またそういうことをすることによって、そこにいろいろ出た、A、B、Cとかいう名前で出てくるかもしれませんけれども、関係者各位に非常に御迷惑をかけることになりかねないわけであります。そういうことを考えると、懲役刑も含めてやはり必要じゃないかなと私は思うんですが、これについて御意見を伺いたいと思います。まず事務局長、お願いします。

山崎政府参考人 御指摘の前段の評議の秘密についてちょっと申し上げたいと思います。

 この守秘義務を課した趣旨でございますけれども、裁判の公正さやこれに対する信頼を確保するということとともに、評議における自由な意見表明を保障するということにございます。

 まず、評議の経過でございます。これを漏らしてはならないということでございますけれども、これは、評議がどのような進行過程を経て結論に至ったのかという、評議の経過はそういうことをいうわけでございますけれども、この評議においてどのような論点について議論をしたかを明らかにしてよいということにいたしますと、後で、なぜそんな論点を議論したのかなどというような批判をされるということを恐れて、評議において各構成員が自由濶達に論点提示ができなくなるという点があるわけでございます。

 それから今度、裁判官、裁判員の意見の多少とか数でございますが、この点につきましてですけれども、全員が一致して無罪あるいは有罪というような場合でありますと、個々の裁判員の意見を明らかにすることと同じ結果になるわけでございます。それから、意見の分布が公表されますと、どうしても、裁判員のうちだれがどちらの意見を述べたのかということをせんさくするということも招きかねないということになりますと、やはり個々の裁判員に対して無用な負担をかける、ひいては評議における自由な意見表明を阻害するおそれが大きい。こういうことから、この点についてはやはり守秘義務を守っていただきたい、こういうふうに考えたわけでございます。

左藤委員 今の、済みません、量刑について、副大臣にお願いします。

実川副大臣 委員御指摘の後段の守秘義務に対します罰則でありますけれども、これは、守秘義務違反の事案の中には、多額の報酬を得た上で重大なプライバシー侵害という結果を生じさせるような非常に悪質なものを想定されるところでありまして、個々の事案の犯情の程度に応じて適切な処罰が可能となるように、罰金刑だけではなく懲役刑も選択できるようにするのが適当であると考えたものでございます。

左藤委員 以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。

柳本委員長 上田勇君。

上田委員 公明党の上田勇でございます。

 きょうは、総合法律支援法案につきまして何点か御質問させていただきます。

 きょうは、いろいろな委員会の今開催状況が不規則なものですから、ちょっとその関係もございまして短時間で終わらせていただきますので、御了解をいただきたいというふうに思います。

 今国会では司法制度改革に関する重要な法案が多数提出をされておりますけれども、その中でも、この法律、総合法律支援法案、これは最も重要な法案の一つであるというふうに考えております。それはなぜかといえば、この法案が、全国どこでもだれにでも利用できる、本当に身近で頼りになる司法を実現するということを目指しているものでありまして、この司法制度改革がそもそも出発をした、目指してきた目標に直接かかわるものだというふうに考えているからでございます。

 国民に身近な司法の実現につきましては、これは我が党でもかねてから地域のいろいろな弁護士の皆さんの御協力をいただきながら市民の法律相談に取り組んできたり、また、政策面でも、これまで民事法律扶助法の制定、予算の増額などにも努力をしてきたところでございます。総合法律支援法案、これは身近な司法を国の施策として実現させようというものでありますので、そこは大きく評価できるところではないかというふうに考えております。

 その上で、きょうは本当に何点かだけ質問させていただきますが、まず、この法案によりまして、国選弁護人、これを支援センターが弁護士の先生を選んで、そしてあらかじめ契約をしておくというようなシステムになります。そうなりますと、国がこのセンターを通じて弁護士をコントロールすることになるのではないか、そして結果として市民の利益が損なわれることになるのではないかというような懸念も一部に示されております。弁護士は、やはり時として国や政府に対して市民の権利を守ることもその重要な職責でございますので、かりそめにもその業務を行うに当たりまして行政のそういう影響があってはならないのではないかというふうに思っております。

 そこで、契約弁護士はどのように選任をされるのか、また契約弁護士の独立性はどういうような形で保障されているのか、御見解をお伺いしたいというふうに思います。

実川副大臣 支援センターがどの弁護士と契約をするのか、判断が恣意的に行われてはならないことは、これは当然でございます。支援センターは、日本弁護士連合会及び各地の弁護士会にも必要な協力を求めるなどしつつ、法律事務を適切に取り扱うことができる弁護士を確保することと考えております。

 さらに、弁護活動の独立性につきましては、弁護士の職務の特性に常に配慮しなければならないこと、また契約弁護士の職務の独立性を法律に明記するなど十分な措置を講じているところでございます。

上田委員 それでは、最後に大臣にお伺いしたいというふうに思うんですが、この総合法律支援構想、これを成功させていくかぎというのは、やはりこれは予算の問題だろうというふうに思います。こうしたすばらしい構想があったとしても、これがきちんと機能していくためにはそれなりの財政的な裏づけが必要でありまして、そうしたことを通じて、人的、物的な基盤、それを充実させていくということが必要だろうというふうに思っております。

 これまでも、民事法律扶助事業などについては近年非常に予算が拡充をされてきているというふうな実績もございますけれども、やはりこの総合法律支援構想、これを成功させていくためには、立ち上げの段階から必要な予算、これをしっかりと確保する必要があろうかというふうに思いますけれども、御決意のほどをお伺いしたいと思います。

野沢国務大臣 委員御指摘のように、総合法律支援構想の運営主体になります日本司法支援センターは、これまで法務省において予算を確保してまいりました、今お尋ねの民事法律扶助事業関係の業務に加えまして、法による紛争解決制度の有効な利用に資する情報提供の充実強化の業務、また国選弁護人の選任に関する業務、いわゆる司法過疎地域における法律事務に関する業務、犯罪被害者の支援に関する業務など、幅広い業務を担当することを予定しております。

 これには相当な予算をやはり組まなければならないのは御指摘のとおりでございますが、法務省といたしましては、支援センターの立ち上げ段階からこれらの業務を効果的かつ効率的に処理するため必要な予算の確保に努めてまいりたいと考えておりまして、今後、運営上の詳細とあわせ、検討を重ねてまいりたいと考えております。

 この法律が通りますとちょうど概算要求の季節ということにも相なりまして、施行を予定しております十八年度を目指しては十七年度に本格的な予算を組めば間に合うということで、今スケジュールを組んでおります。施設の整備、人員の配置を含めまして、万遺漏なきを考えてまいるつもりでございます。

上田委員 ありがとうございます。

 冒頭申し上げましたように、この構想は司法制度改革、その根幹をなすものであるというふうに考えておりますので、ぜひ大臣にはその予算の獲得に向けましても最大限の努力をしていただくことをお願い申し上げまして、以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

柳本委員長 御苦労さん。

 この際、暫時休憩いたします。

    午前十時二十七分休憩

     ――――◇―――――

    〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕


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