衆議院

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第21号 平成16年4月28日(水曜日)

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平成十六年四月二十八日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 柳本 卓治君

   理事 塩崎 恭久君 理事 下村 博文君

   理事 森岡 正宏君 理事 与謝野 馨君

   理事 佐々木秀典君 理事 永田 寿康君

   理事 山内おさむ君 理事 漆原 良夫君

      左藤  章君    桜井 郁三君

      柴山 昌彦君    中野  清君

      早川 忠孝君    平沢 勝栄君

      松島みどり君    水野 賢一君

      森山 眞弓君    保岡 興治君

      柳澤 伯夫君    山際大志郎君

      荒井  聰君    泉  房穂君

      鎌田さゆり君    河村たかし君

      小林千代美君    小宮山洋子君

      高井 美穂君    辻   惠君

      中井  洽君    中村 哲治君

      松野 信夫君    吉田  治君

      富田 茂之君    川上 義博君

    …………………………………

   法務大臣         野沢 太三君

   法務副大臣        実川 幸夫君

   法務大臣政務官      中野  清君

   最高裁判所事務総局民事局長

   兼最高裁判所事務総局行政局長           園尾 隆司君

   政府参考人

   (司法制度改革推進本部事務局長)         山崎  潮君

   政府参考人

   (知的財産戦略本部事務局長)           荒井 寿光君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    栗本 英雄君

   政府参考人

   (総務省自治行政局選挙部長)           高部 正男君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          寺田 逸郎君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    房村 精一君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    樋渡 利秋君

   法務委員会専門員     横田 猛雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十八日

 辞任         補欠選任

  佐藤  勉君     柴山 昌彦君

  枝野 幸男君     吉田  治君

  加藤 公一君     荒井  聰君

  河村たかし君     中村 哲治君

  小宮山洋子君     高井 美穂君

同日

 辞任         補欠選任

  荒井  聰君     加藤 公一君

  高井 美穂君     小宮山洋子君

  中村 哲治君     河村たかし君

  吉田  治君     枝野 幸男君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 行政事件訴訟法の一部を改正する法律案(内閣提出第六六号)

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

下村委員長代理 これより会議を開きます。

 委員長の指名により、私が委員長の職務を行います。

 内閣提出、行政事件訴訟法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として司法制度改革推進本部事務局長山崎潮君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

下村委員長代理 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

下村委員長代理 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局園尾行政局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

下村委員長代理 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

下村委員長代理 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。辻惠君。

辻委員 民主党・無所属クラブの辻惠でございます。

 本日は、行政事件訴訟法の一部を改正する法律案ということで質問に立たせていただいております。

 行政事件訴訟法は一九六二年に制定をされ、それが四十二年ぶりに今般改正になるということであります。やはり、改正に至る必要性、立法事実、立法目的ということが現にあるところであると思われますので、その辺のところを具体的にきちっと、どういう問題意識に基づいてこの改正案を提案されているのかというところをきょうの質問では中心に伺ってまいりたい、このように思います。

 現在の日本は、ある意味で先行きの見えない、非常に不透明感、不安感がある、そして制度、組織、人が、十分活性化ある社会として本来期待されている機能を十全に果たし得ていないというようにあると思います。

 これは、私はやはり、議院内閣制というもとで自民党支配の政治体制が五十年間続いてきて、行政権力と言われるものがどんどんどんどん大きくなっていって、それのチェックが具体的に果たされないまま東京一極集中の官僚制度というのが屹立しているというところに、今の閉塞感、社会から活性化を奪っている大きな原因があるというふうに考えております。

 地方分権というふうに言われておりますけれども、例えば、機関委任事務はなくなったということでありますが、依然、法定委任事務ということで、やはり国の指示に基づいてしかなかなか地方が動けない。課税権においてもまたしかり。都道府県の人事の問題においても、やはり中央官庁を見なければなかなかスムーズに動いていないというのが現状であります。

 こうした中で、国の施策が、結局のところ、議院内閣制のもとで内閣の施策が国の施策となり、立法府も、まあ私も含めて議員立法等々もっと努力しなければいけないと思いますけれども、立法権能が必ずしも十全でない。

 そして何よりも、行政を本来チェックしなければいけない司法機関というものが司法消極主義に陥っている。裁判官の多くはやはり行政優位のそういう体にしみついた感覚で、まあこう言えば、立派な裁判官もいらっしゃることを私は知っておりますから、失礼に当たる面もあるかと思いますが、しかし、多くの裁判官がそういう傾向に流されているというのも、それもまた真実だ、事実だというふうに思わざるを得ない現実があります。

 そういう中で、行政活動というものが裁量権限で自由気ままに振る舞われているということをチェックしなきゃいけない必要性がある。行政活動の適法性をやはり確保し、同時に国民の権利の侵害ということを救済するということが今問われていることではないかというふうに思いますが、そのために何を基本にしなければいけないのか。

 私は、やはり法の支配の理念というものを貫くということだというふうに思い、そういう観点から、行政活動の違法な状況なりは是正する必要がある、このように現在問われている問題について理解しておりますが、この点について大臣はどのように御理解されておられますでしょうか。

野沢国務大臣 日本が、三権分立の制度の中で、立法それから司法、行政、それぞれの立場が十分に機能しながら今日まで発展をしてきた、これはもう大変な事実であり歴史であるわけでございますが、ただいま委員が御指摘になりましたように、その中で、特に行政の占める比率といいますか、国の仕事の中で大変な力を発揮し、また予算その他も増大をいたしまして、それに従事する人もふえてくる、当然これに伴うルールなりそれに基づく結果も大きな影響を日本の社会に果たしてきた、これはもう否めない事実かと思います。

 そして、その一方で、それではその効果が一人一人の国民の皆様の幸福に直接つながる形で機能したかどうかということになると、全体としての目的を貫くために、個別の、個人の権利や利益が二の次にされるとか、あるいは一地域の利害が無視される、地方の意思がなかなか思うように生きない、あるいは、個別、会社とかいった企業体等の形で見ても、なかなかそれぞれの企業活動が十分に行われるような制度になっていたかどうか。そういった事柄をできるだけ是正しよう、この際一気に直せるものなら直そうということから、今回の司法制度改革のそもそもの発想があった、こう思うわけでございます。

 きょう御議論いただきますこの行政訴訟の問題につきましても、その辺をできるだけ是正しながら、委員御指摘のように、法の支配ということが、法治主義ということがやはり日本の一番の根幹であることはもう論をまたないわけでございますが、三権分立という建前の中でそれぞれの力が必ずしも今バランスがとれていない状況にあるのではないか。これをできるだけ正しまして、行政がそもそもその目指しております目的がさらに十全に機能するためにも、司法がそれを補い、かつまた補完し、あるいは是正し、そういった役割をしっかり果たすことが大変大事なことと考えておるわけでございます。

 今回、その意味で、行政をまずチェックすること。それから、行政自身もこれは考えて、内部監査とかそういったことで自律を図っていただくことが大事。それから、立法府におきましても、今言いましたような内部の力、今議員御指摘の、例えば議員立法をもう少しふやして、議会自身の発想に基づく立法機能を強化していかなきゃいかぬこともございますし、そして、司法が司法自身の内部改革を通して立法や行政に対しても積極的に関与できる状況、これをつくり出すことによって、より一層、三権分立の効果が発揮できるのではないか、これはもう私も同感でございます。

 特に、この十年、二十年、あるいはこの制度が発足して以来の四十年間の間を見ますと、行政需要の増大ということはもう否めない大きな力になっておりますし、しかも、やっている仕事が非常に多様化しておりますために、なかなかほかの分野がついていけないということがございます。

 そういった面からいたしましても、行政に対するチェックの仕組みをこの際しっかりと再構築いたしまして、本来の機能が十全に発揮できるようなシステムに戻していかなきゃいかぬかな。そういうことで、この行政訴訟の改正ということについては大きな今回意義があると考えておりますので、御意見を十分いただきたいと思います。

辻委員 私は、今回、行政事件訴訟法の一部を改正する法律案に関して質問主意書を出させていただき、四月二十日付で答弁書を内閣総理大臣からお返しいただいているわけであります。

 今大臣がおっしゃられたように、行政需要が増大し行政作用が多様化している、これに伴って行政による国民の利益調整が一層複雑多様化し、行政の果たすべき役割にも変化が生じているんだ、こういう事実認識に基づいておられると思います。この点はそのとおりだと。

 では、こういう、これは講学上、行政国家化しているとかいうような議論がなされておりますので、行政国家現象ないし行政権の肥大化現象ということでこの語を使わせていただくことがあると思いますが、このような状況にどう対処するのが今日本の社会にとって重要なことなのか、政治に問われている役割は何なのかということだと思います。

 立法、司法ということがありますが、直接国民の側にサービスを提供したり、いろいろな経済活動、諸活動に影響を及ぼしてくるのはやはり行政作用なわけであります。行政とは何かというと、立法と司法を除いた、控除したものが行政であるという控除説が通説とされていて、その意味では、国民の生活、経済活動、いろいろな活動に関与するものはすべて行政が何らかの形でかかわってくる。したがって、行政がどうあるべきなのかということと、行政の裁量がもし逸脱したような場合、違法にわたったような場合にはどうすべきなのか。いろいろな観点で行政行為、行政というものを対象化していかなければいけない、このように思うわけであります。

 行政ということについては、例えば、内閣の行う行政がすべてであるわけではなくて、むしろ地方分権であり、むしろ地域のコミュニティーの側で、下から具体的な合意を形成していくということで行政的な合意を、むしろ住民自治、団体自治と言われる地方自治の本旨に基づいて、下からそういう行政的な合意を形成していくという努力も、今後の社会のありようとしては必要なのではないか。だから、統治の形態を二十一世紀に向けてどのように変えていくのかということは、やはり政治に問われている課題であろうというふうに思うわけであります。

 しかし、この場では、行政の裁量権限が逸脱するような状態に対してどのようにチェックしていくのか、その観点に絞って質問をさせていただきたいというふうに思います。

 大臣も今おっしゃったように、今の三権分立がバランスがとれていない、行政権限が権能が強くなっている、司法がこれに十分に機能を発揮していないという趣旨のことをおっしゃったと思うわけであります。そのときに、では、司法の機能を行政がチェックできるように、どのようにより有効に果たしていくのかという観点に立ったときに、法の支配と法治主義という言葉をおっしゃったと思いますが、私は、理念としては、法の支配と法治主義とは全く別物であって、法治主義はよく言われる法化社会と言われるのと同じ意味で、法律という、法令というものの名がついていれば、それに基づいて執行されるということであればいいというのが法治主義、法化社会と言われているものではなかろうかというふうに思います。

 そういう意味におきまして、法の内容自身を問う、日本国憲法のもとにおける根本規範である基本的人権の尊重主義や議会制民主主義、そういう根本規範的な価値に満たされた法という意味においては、やはり法の支配ということをきちっととらえなければいけないというふうに思うわけであります。

 そういう意味で、行政訴訟というのは、まさに国民の手による、法の支配を貫く違法な行政を是正する手段の中核的な位置を占める制度であるという、そこに期待されるものは、行政権能の非常に幅広い裁量的な行政裁量というものを法の支配の理念に基づいてチェックしていくんだ、これの中核的な位置を占める制度というのが行政訴訟なんだというふうに私は認識しておりますが、大臣の理解はどうでしょうか。

野沢国務大臣 そもそもこの行政訴訟制度は、司法権の行使を通じまして、抑制と均衡の仕組みの中で行政作用の適法性を審査いたしまして、国民の権利利益の救済を確保するという重要な役割があるわけでございます。

 そして、近年におきましては、先ほど申しましたように、行政需要の増大と行政作用の多様化、これは具体的には、もう予算が非常にふえてまいりましたし、扱う分野も大変ふえておりますが、そういった行政による国民の利益調整が一層複雑化しておるなどの変化が生じているわけでございます。

 その中で司法の果たすべき役割は一層重要となると考えられるわけでございまして、当然これは行政の発展と同時に司法の扱うべき分野も拡大し発展していかなければならない。それが必ずしもついていっていないというところに問題があるのではないか。そこで、私どもは、司法と行政の役割分担のあり方をしっかり踏まえながら、行政に対する司法審査の機能をここで強化しなければならない。

 これはやはり何よりも一番主権者である国民の皆様の利益、権利、そういったものが主体になって、上からのいわば行為である行政、そして全体の利益を考える行政に対して、個別の権利、個別の利害、そういったものを住民側、上、下と言ってはぐあいが悪いかもしれませんが、そういった一番大事な国民サイドからの発想として司法制度が機能することが一番大事だ。

 特に、この行政訴訟は、そういう意味で、今まで長いものには巻かれろという形になっていたものを、いや、そうではないんだ、こうすればよくなるんだという意味で正していただくことが非常にこれは有意義になると思います。残念ながら、今までの制度ですと、その点やや使い勝手が悪いということがございましたので、その辺を今回しっかり是正して、使いやすい、わかりやすい、取りつきやすい制度にしたい、こう考えての御提案でございます。

辻委員 今の御発言は、行政訴訟は現状ではやはり十分に機能してこなかったということを、それを理解、認識した上、その上に立っての御発言だというふうに思います。

 長いものには巻かれろということで云々とおっしゃった。つまり長いものというのは今の行政の行政通達とか、行政指導とか、行政計画とか、行政立法とか、行政処分とか、いろいろな種々さまざまな行政活動があって、それが、従来、明治憲法下における行政の理解ということからいうと、やはり国民は行政の客体であるということで位置づけられていて、公益概念、公的なものというものはやはり優先的に考えられていた。

 したがって、それに巻かれる、長いものに巻かれるということで世の中が推移してきた。それではいけないんだ。その長いものには巻かれないという武器として、行政訴訟がもっと実効的に機能するようにしていかなければいけないんだという時代認識にお立ちなんだろうというふうに思いますが。

 私は、質問主意書の答弁で、その関連性は必ずしもはっきりしないということで御回答いただいた。例えば、勝訴率が低いとか、行政事件の提訴の数が非常に少ない。例えば二〇〇二年度の第一審の受任件数は二千三百件余りとドイツに比べて概算でいえば二百分の一、アメリカの十六分の一、台湾の八十五分の一、韓国の二十八分の一という、非常に行政訴訟の提訴件数が少ない。しかも、提訴されたうちの二〇%は、例えば、原告適格なし、処分性なしというようなことで門前払い、実体審理に入れない。実体審理に入ったとしても、勝訴率は一〇%から一五%と言われております。行政訴訟で権利の救済そして違法行政の是正ということを図ることが極めて困難であり、難しいという感覚がやはり日本の中に蔓延しているように思います。

 このような、行政訴訟が十分に機能していない原因が何であり、それについてどのように改善すべきだとお考えなのか、その二点についてお答えいただきたいと思います。

野沢国務大臣 今、委員御指摘になりました、行政訴訟の実効性にかかわる問題でございますが、申し立て件数や勝訴率等の数字のみによって評価することはいささか困難であるかと思いますが、いずれにいたしましても、今後司法の果たすべき役割は一層重要となることを踏まえて、行政訴訟については、司法と行政の役割分担の観点を踏まえながら、国民の権利利益のより実効的な救済手続の整備を図っていくことが大変重要であると考えております。

 今、委員が御指摘になりました、申し立て件数から見ると、確かに欧米に比べると大変おくれている、少ない。ということは不満がないのかというと必ずしもそうではなくて、これが十全にこの手続が活用されていないというふうに解することが大事かなと私どもは考えておりますが、ただ、勝訴率から見るとそこそこの数字に行っておりますので、この辺は、内容はしっかりしているんだというふうにも考えられるわけでございます。

 ただ、今の、原告適格問題については、今回の法案の中でも、これは改善しようということで、拡大の方向に行っていることはもう御承知のとおりかと思います。

 国民の権利利益の救済範囲の拡大と、それから審理の充実、促進ということから、これを利用しやすい、わかりやすい仕組みにしよう、そしてさらには、本案の判決前における仮の救済制度の整備を図るというようなところまで踏み込んだ法律案を出しておるわけでございます。総合的、多角的な行政訴訟制度の改革を今回一歩前進させようというものでございますので、よろしくお願いいたします。

辻委員 質問主意書の答弁書の中でも、「国民の権利利益のより実効的な救済手続の整備を図る」必要があるということが述べられておりますから、そういう趣旨で今の大臣の御答弁もあったというふうに思いますが、今後、救済範囲を拡大し、審理を充実、促進するということをおっしゃっている、それは非常に望ましい方向であると思いますが、しかし、なぜ現状が行政訴訟というのは十分に機能してこなかったのか、その原因が何であり、それをどのような観点でどのように解決していかなければいけないのか、その解決の方策として具体的にどうするのかという議論がやはり必要だと思うんですね。

 ですから、そういう意味で、行政訴訟がなぜ十分に機能してこなかったのか、その原因は何なのか。制度的な原因もあるだろうし、もっと社会的な原因もあるかもしれない、その辺をどのように分析し、それをどのように克服し、改善していくものとして今回の改正案を提案されているのか、そこについてお答えいただきたいと思います。

山崎政府参考人 なぜ行政訴訟が余り使われてこなかったかという点につきましては、私も確たるものは持っておりませんけれども、やはり日本の国民性はかなり影響しているだろうというふうに思われるところでございます。

 ただ、では、これを国民性の責任だけにできるかということでございまして、今までの訴訟の全体を、この四十年、戦後を入れれば五十年ですね、これを考えてみるに、やはり、先ほど指摘ございましたように、入り口のところでお引き取りを願うという訴訟になりますと、起こしても無意味じゃないかということにもなって、そこで手控えるということはあろうかと思います。それから、審理に非常に時間がかかるということになれば、非常に負担も重いということもございます。

 それから、これは法案の中でもいろいろ手当ては加えておりますけれども、やはり行政は非常に複雑でございまして、それがどういう形で、どういう理由でその処分となってきているのか、その辺のところが、受ける国民サイドからよくわからない点が多い、資料も余りない、こういうような点もあるわけでございまして、そうなりますとなかなか訴訟を起こしにくい、こういう問題が出てくるわけでございます。

 さらに、これだけ複雑化しました世の中でございますので、国民が求める態様、訴訟の態様というんですかね、これはさまざまに変化をしているわけでございますけれども、現在の訴訟類型でいきますと、取り消し訴訟を中心にいたしまして行われておりまして、では、取り消し訴訟だけじゃなくて、実際に物を渡してくれとか、そういう要求があったときにそれにこたえられているのかというようなこと、こういうことを考えますと、やはり手段が足りないという問題があるわけでございます。民事訴訟とよく比較されるわけでございますけれども、民事訴訟に比べまして非常に手段が少ないじゃないか、こういうような御意見もあったわけでございます。

 ですから、使い勝手のいいものにすべきじゃないか、こういうようないろいろ議論がございまして、こういうものを改善すれば国民の方に利用しやすくなっていくのではないか、こういう視点を考えまして、今回、大きなポイントを何点か用意して、使いやすいようにしていこう、こういうことで改正の提案をさせていただいた、こういうことでございます。

辻委員 行政訴訟が十分に機能してこなかった原因ということについて、社会的な原因もあるだろうし、現在の行政事件訴訟法の足りないところもあるだろう。

 足りないところという意味においては、例えば、訴訟を起こしても門前払いして、全くかいがないというようなことも言えるだろうし、なかなか複雑であって、だれを相手にしていいのかとか、どういう内容の救済を求めていいのかというのがなかなかわかりにくいということもあるだろうし、それから、裁判を起こして勝ったはいいが、何か救済がはっきりしない、救済の手段が十分に予定されていないというようなことで、行政訴訟が使いにくい、取っつきにくいというようなところが大きくあるのかなというふうに、その辺の認識は多分共通していると思うんですね。

 社会的な原因ということでいうと、やはりこれは、明治憲法下の公権力とか公益概念を中心に行政運営が組み立てられてきている、そして国民が行政客体として扱われている。国民の側もそれを受容して、長いものには巻かれろ式な意識からなかなか脱却できていない。だから、そういう意味において、国家と国民の関係、統治機構と国民の権利との関係について、これは発想をやはり転換していく、そういう視点が必要なのではないだろうか。

 その意味において、やはり国民が主体であって、違法な行政については国民の側が是正をする請求権があるんだ、違法な行政行為についてはチェックする手段を国民は請求権として持っているんだというような考え方、法の支配の理念に基づいたそのような考え方がやはり重要なのではないかというふうに思います。

 したがって、この後、具体的な行政訴訟の改善の必要性について、いろいろな制度等について伺っていきますけれども、それを運用していくに当たっても、また解釈していくに当たっても、どういう視点からそれを運用、解釈していくのかというのが重要であるというふうに思います。やはり提案者として、法の支配の理念というのをきちっと尊重しなければいけない。それに基づいて国民が行政の違法な裁量、行政裁量をチェックする権限を持っているんだということをきちっとその前提にわきまえなきゃいけない。このような考え方、理念に基づいて今回の行政訴訟の改正案も提出されているんだということについてお答えいただけませんでしょうか。

山崎政府参考人 行政事件訴訟法の使命でございますけれども、国民の権利救済、これが中心であるということ、これを守るためにあるということでございます。その前提となります行政行為、これにつきましても、それが適法であるかどうかというのは当然審査の対象になるわけでございます。

 そういう点で、やはり行政と国民との関係で具体的に国民の権利が害される場合にはこれを速やかに救済していく、こういう使命であるということはそのとおりでございます。

辻委員 行政活動の適法性を確保する、そのために、法の支配の理念に支えられて、国民の立場で行政の違法性をチェックする、そのことの重要性が確認され、行政事件訴訟法においてもそのような考え方にのっとって運用解釈をすべきであろうという理解において共通の認識に立っておられる、提案者の側も共通の認識に立っておられるということを確認させていただきました。

 その上に立って、政策的な判断は別として、つまり、今の時点で導入するかどうかというのはある意味で政策的な判断にかかわることがあると思いますが、そのことは別として、行政訴訟をより実効化させるために、行政裁量をより国民の統制下に置くために、チェックできるようにするための諸制度としていろいろなことを考えることができるだろう、それをすぐ導入するかどうかは別として。その点について、まず基本的な理解ということを提案者の側に伺いたいと思います。

 まず、訴えやすい、利用しやすくわかりやすいというためには、行政訴訟については、取り消し訴訟とか義務づけ訴訟とか差しとめ訴訟とか確認の訴訟とかいろいろあると思いますけれども、それを厳格に区別することも重要かもしれないけれども、むしろ行政訴訟として一本化した形での訴えを認めることも、行政訴訟を実効化させるためにはマイナスではないというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

山崎政府参考人 この点につきましては、私どもの検討会でもテーマとして議論がされたわけでございます。たしか日弁連の提言でございますか、その中にも今御指摘のような発想があったかというふうに理解をしております。これにつきましては、一つの見方ではあると思います。

 ただ、私ども考えましたのは、全体を一つとしてくくりますと、求めている側も何を求めているのか、それによって裁判所もどういう審理を行っていくかということが決まってくるわけでございます。したがいまして、主題というんですか、テーマがわかりにくいまま審理を続けるということが本当にいいのかどうかという問題があろうかと思います。

 それともう一点は、私は、そういう方法よりも、今、非常にいろいろな手段が足りないと言われている、メニューが足りないと言われているわけでございますので、メニューは多様化した方がいいのではないか、それをどういうパターンでどういうふうに使うかは選んでいただきたい、それをお任せするということがまず必要ではないかということから、今回メニューを多様化したわけでございます。

 ただ、これは、メニューを多様化しましても、メニューの選び方によって、これは間違っちゃったという問題も出てくるわけでございまして、その場合に救済できないということはまたこれも問題になるだろうということでございまして、今回、被告適格、これを国という形で統一をしているというところもございまして、同じ当事者になるわけでございますので、そこは釈明によって、その訴えの変更等をやりやすくするなり、メニューを選んでいただいても間違った場合には乗りかえがある程度できるように、そういう形で柔軟に対応していけば十分に対処ができるのではないかということで、そちらの方の考え方を選択した、こういうことでございます。

辻委員 今のお話では、行政訴訟を一本化して取り消し訴訟等々に分けなくてもいいというふうにすると、主題がわからないまま訴訟が進んでしまっていて、それで果たしていいのか。むしろ、そこで問題があるのであれば、被告の適格を広げたり、そこに融通性を持たせて、むしろそちらで救済を考える方がよりいいのではないかというお答えであったと思います。

 ただ、国民の側にとって、訴訟を起こすに当たって非常に専門的に複雑なわけですね。取り消し訴訟、義務づけ訴訟、差しとめ訴訟というふうにいっても、いろいろな要件で、どのような場合にその訴訟類型に合うのかということがわかりにくい。弁護士においても、やはり行政訴訟を習熟されている方はなかなか少ないということから、やはりそういう意味でも取っつきにくいところがあるわけだと思うんです。

 したがって、主題がはっきりしないまま推移するとまずいとはおっしゃるんだけれども、それはむしろ、例えば受訴裁判所の側の陣容の問題とか訴訟の進め方の問題とかいうことで、政策的にいろいろ対処をすることも可能なのではないか。だから、今おっしゃっているような訴訟類型を一応多様化してメニューをきちっとそろえて、何らかの過誤なりそごなりについては被告適格の拡大というところで救済する、そういうパッケージの仕方も一つかもしれないけれども、訴訟類型を一本化して、主題が明確でないのをある意味では職権主義的に、裁判所の側がかなり労力、負担を負ってやらざるを得ないかもしれないけれども、そういう陣容を整備できれば、例えばアメリカはそういうようなシステムだというふうに私は一応聞いているんですけれども、そういうのも一つの選択肢であるということだと思うので、要は、確かに一つの御提案だけれども、別の選択肢もあり得る。

 いずれも、行政訴訟を実効化させる方向においては検討されるべきそれぞれの選択肢なんだ、このように私は理解しますが、その点はいかがですか。

山崎政府参考人 行政訴訟に対するシステム、組み方ですね、これは世界でもいろいろあろうかと思います。ですから、御提言の考え方、これもそういう考え方で運用されているところもあるわけでございます。

 私どもの方は、どうしてもやはりヨーロッパを基礎にしてスタートしておりまして、ただいま御指摘の考え方ですと、かなり、百八十度物の考え方をひっくり返すような形でございまして、直ちに現在それが採用できるかという状況にはないということでございます。

 それで、一つ問題になりますのは、ではとにかく是正してくださいということを求めた場合に、是正が、何か確認をすればいいのか、金銭の給付まで求めるのか、あるいは差しとめまで求めるのかとか、その態様によっては審理のあり方が全く違ってくるだろうということにもなるわけでございます。

 仮に何かやったことがまずいとしても、差しとめまで認めるかどうかとか、そういうような論点というのは、きちっと主題を提供していただかないとやたらと審理が長引くという問題になる点、どこに焦点を絞っていいかわからない、こういうこともありまして、従来型の日本の訴訟になかなかなじみにくいのかなと。こういう点で、現在は、別の形でメニューを多様化し、それを柔軟化することによって御利用いただけるようにというふうにしたわけでございます。

辻委員 今伺っているのは、つまり、要は行政訴訟を実効性あるものにするための提言として、メニューを多様化して、被告適格も拡大をして、利用しやすく、実効性を上げられるような、そういう制度として提案しているんだ、こういう御趣旨だと思うんですね。ですから、これは、解釈に当たってどのような観点で法文を解釈するのか、運用をどのような思想なり理念に基づいてやっていくのかというのがやはり今後問われてくる問題でありますから、行政訴訟を実効性あらしめるものにするということが重要なんだというお答えをいただいたということで、一応、次に進みたいというふうに思います。

 行政訴訟を実効化させるという意味におきますと、やはり原告適格を拡大することも必要だし、例えば、さらに言えば、司法審査の対象を拡大することも必要なのではないか。

 従来、原告適格がないということで、例えば典型的には、小田急の高架訴訟においては、一審では原告適格は認められて訴訟は勝訴している。ところが、控訴審では原告適格がないということで門前払いをされる。このように、そもそも実体審理の入り口にまで至らないで門前払いされるという、非常にこれは、原告適格を狭く解することの弊害というのは物すごく現実に大きいものがある。

 また、司法審査の対象にするために、行政活動の、行政行為、行政計画、行政立法、行政指導といろいろなものがある。ここについて、具体的な処分性が認められないからということで、またこれは訴訟の対象にならないという門前払いをされてしまう。

 このような問題点、この二つの点については、やはり行政訴訟を実効化させるためには拡大して考えていかなければいけない、そのような理念に基づいて今回の改正案についても具体的に提言をしているんだ、そういう理解でよろしいんでしょうか。

    〔下村委員長代理退席、塩崎委員長代理着席〕

山崎政府参考人 規定の具体的内容には入りませんけれども、原告適格につきまして、今回、考慮事項ということで御提言をさせていただいておりまして、これはまさに、法律上の利益というだけでは非常に抽象的でわかりにくい、どういう点を考慮しなければならないのかということがはっきりしないということから、これを明確にして、これを十分に考慮してもらって、実質的に原告適格が広くなるように、こういう思いを込めたものでございます。

 それからもう一点の訴訟の対象の拡大ということでございますけれども、多分、行政計画とか行政立法とか通達とか、その辺のことを視野に置かれている話であると思いますけれども、これは、そのこと自体を訴訟の対象にするという考え方は、今回とっておりません。これはやはり、裁判というのは個人の権利との関係の争訟性、そういうものについては裁判所が判断をするということになっているわけでございますが、そのこと自体を問題にするということになりますと、これは一般的なチェックということで、争訟性があるのかという問題にもなるわけでございまして、これはやはり、裁判とそれ以外の機能の大きな問題になります。

 この辺のチェックは、まさに国会の問題でもあろうかと思います。あるいは行政自身の問題でもあろうかと思います。それをどこまでどういうふうにしていくかというのは、まだその境をどうしていく、動かすのかどうかという議論は、まだ十分に成熟はしていないだろうというふうに私ども思っております。

 ただ、この問題につきましても、このことによってみずからの権利に影響するというような場合には、それは提訴ができるということを明確にするために、当事者訴訟の中に確認の訴え、これができるんですよということを明確化して、こういうような態様で利用していただきたい、こういうことで提言をさせていただいているということでございます。

辻委員 原告適格の拡大の点について、九条の一項、二項の規定の仕方については、また別の機会にまた別の同僚議員が質問することもあると思いますが、要するに、今回の改正については、原告適格の拡大を何としても図るんだという強い意志と、そのことが二十一世紀の日本の行政訴訟において根本的な、非常に必要な原理原則なのであるということをお認めになって提言されているというふうに承りました。そのことを確認させていただきます。

 後者の点で、訴訟の対象の拡大について、行政立法、行政計画、行政指導等については含めていないんだというふうにおっしゃいましたけれども、まさにそこが、例えばきのう塩崎委員が何合目なのかというふうにおっしゃったときに、十合目をどう考えているのかということにかかわってくる問題だというふうに思うんですよね。

 やはり、消費者団体がいろいろ行政に物を申したいとか、それから環境保全を図っていかなければいけないとか、いわば個人の私的な争訟性を前提にした訴訟の枠組みだけでは解決できない、しかし行政裁量をチェックしなければいけない多くの事象というのも現にあるわけですよね。

 だから、行政訴訟を実効化させていくというのは、まさにそういう争訟性を離れたところについても行政訴訟を及ぼしていくというのは、行政チェックをより十全なものにしていくためには必要なことであって、そういう意味で、団体訴訟とか司法審査の対象を拡大していくというのも、行政訴訟を実効化させるための一つの提言であるし方向性ではある。今、政策的にそれを即導入するかどうかは別として。そういう理解は共通にお立ちいただいているんでしょうか。

山崎政府参考人 結論的に言えば、ただいま御指摘のような点について課題が残っているということは、私も意識をしております。したがいまして、今回御提言をさせていただいているものについても、いろいろテーマが挙げられている中で、とりあえず今まとめられるものについて第一次的にまとめましょうという位置づけでございまして、引き続き、残った問題についてどのようにやっていくかということも議論をしていく、こういうことでございます。

 ただいま御指摘の争訟性がないものについてどうするかという点についても、例えば行政計画について争えるよということにすると、これは、ではどういう行政計画なら争えるのか。非常に漠然としたものもありますし、かなり具体性のものもある。それを全部仕分けしなきゃいかぬということにもなりますし、それをどこの段階で争えるようにするかというのは、また実体法の政策の問題でもあるわけでございます。したがいまして、これは訴訟法だけで考えられる問題かということになるわけでございます。ですから、もっともっと大きな議論が必要になってくるということでございます。

 それから団体訴訟も認めるかどうかも、これは、それぞれの実体法の中で、どういう形で国民に権利を与えていくかというそれぞれの考え方の問題でございまして、これを訴訟の手続の中で、これは認める、認めない、そういう問題ではないだろう、やはり実体の問題であろうということになるわけでございますので、これは今現在、司法制度改革という非常に手続的な関係でやっているわけでございますが、こういう中では足りない、もっともっと大きな議論が必要になってくるという意味で将来課題である、こういう認識でございます。

辻委員 その将来課題という意味が、今回提案されていないという意味での将来課題という意味においては理解しますが、永遠の先という意味での将来であれば非常に困るわけでありまして、もっと具体的に、切迫してこの問題についてはやはり課題として解決していくということが重要なのではないかというふうに思うわけであります。

 入り口を広くするということ、原告適格の拡大も含めて、これについては、規定の仕方はともかくとして、そういう理念、思想を貫いて提案しているんだというお話でありますが、同時に問題なのは、執行停止にかかわる問題、仮の救済の問題であります。

 やはり後でこれが取り消すべきなんだというふうに勝訴をしても、既成事実がつくられてしまったのでは実効性を失う。その意味では、行政の適法性を確保するということと、国民の権利救済を行うということが行政訴訟の目的だとすれば、事情判決的な、違法であるという宣言はあり得たとしても、現実の権利救済がおろそかになってしまうという意味においては、やはり執行停止ということについては要件を広げて考えるべきであろう。要件を緩和して、緩やかに考えるべきであろうというふうに思います。

 ドイツでは執行停止が原則化されているんだというふうに聞いておりますが、執行停止の原則化、そして仮の救済を整備しなければいけない、この点についてはどのようなお考えをお持ちなんですか。

山崎政府参考人 まず執行停止について、今回御提言させていただいているものは、従来、「回復の困難な損害」という要件を「重大な損害」と。要するに、性質上非常に回復が困難なものということになりますと、かなり限定がされる解釈になるわけでございますけれども、必ずしもそれだけに限るのかという観点から、そういう性質のものではなくても重大な損害が生ずるものについては救済の範囲に取り込んでいこう、こういう思想でございます。

 ただ、重大な損害があるからといって、それだけでオーケーかということになりますと、やはり行政処分の内容あるいはその公共性、いろいろな問題がございます。そういう点と比較をしながら執行停止をするかどうかを定めていきましょう、こういうことで今回御提言をさせていただいております。こういう中で運用をしていくということになります。

 ただ、御提言のように、執行停止原則ということになりますと、これはやはり行政の効力をどういうふうに考えていくかとか、あるいは訴えを起こせば自動的にとまってしまうというようなシステム、こういうことが本当にいいのかどうか、それから、それが公益とか第三者にどういう影響を及ぼすか、これはかなり総合的に考えなければならない問題点が多々あろうかというふうに思っております。

 世界ではそういう制度を採用しているところもありますけれども、これはまた何か運用でいろいろやられているようなところも、余りドラスチックにならないようにしているというふうにも聞いておりますけれども、ちょっとこれはまだ、現段階ではそこまで考え方としては到達していない、こういうことでございます。

 それからもう一つの点は、仮の救済の問題をおっしゃられたと思いますけれども、これはまさにそうでございまして、例えば行政が申請について却下をするとしたときに、その取り消しをするというだけではなくて、その給付を求めるということもあり得ていいのではないかということでございまして、それを求めるなら、その訴えを起こしたときの仮の救済というものは必要になってくるだろう。

 それから、仮の差しとめの方もございまして、行政がある行為をしようとするときに、それを行われてはその人の立場というんですか権利に大いに影響があるというような場合に差しとめを行えるようにしよう。その場合にも、訴えが提起されたときに、それを待っていたのでは処分が行われてしまいますので、仮の差しとめ、こういうふうなことで、国民の権利に配慮をしながらそういう手段を認めていく、こういうことを設けたわけでございます。

辻委員 執行停止については要件を緩和しているという点、二十五条の二項で、「回復の困難な損害」というのが「重大な損害」というふうになっていて、三項でいろいろ考慮するということになっている。果たしてこれが、本当に執行停止の要件が緩和され、具体的な場面において有効に機能できる根拠規定として生かされていくのかということが非常に懸念するところなんですよね。

 だから、もう少し具体的に改めてそれについては触れる機会を持たせていただきたいと思いますが、今の御答弁で、執行停止についても、要するに、絶対的な執行停止原則ということをとるわけではないけれども、具体的ないろいろ事情を考慮して、可能な限り執行停止については広く要件も緩和して認められるように考えているんだ、そういう御発言、御回答であるというふうに理解して、次に進みたいというふうに思います。

 時間の関係もありますから、行政訴訟を実効性あらしめるための制度として、それはやはり選択肢の中の一つなんだ、現在採用するかどうかはともかくとして一つなんだというふうにお考えいただけるのかどうなのかということを幾つかあとお伺いしたいというふうに思います。

 例えば弁護士報酬の片面的敗訴者負担制度の導入というような問題が提言されたりしておりますし、主張立証責任について、むしろ被告側に立証責任を負わせる方向で考えるべきだ。それが行政訴訟をより活用できる、実効性をもたらしめるための有効な手段ではないだろうかという提言もあります。

 これは、今採用するかどうかはともかくとして、やはり検討すべき重大な問題であると考えますが、この点はいかがでしょうか。

山崎政府参考人 今二つ言われたと思いますが、敗訴者負担の問題、これは今一般法として費用法の改正ということで提出させていただいておりまして、ぜひそこで早く審議をしていただいて、その中のテーマとしても御議論いただきたいというふうに考えておりまして、それを除いてここだけを答弁するというのは非常にやりにくいわけでございますが、そもそも今そういう制度がない中にこれを片面的に入れろというのは、またちょっと突出してしまうわけでございますが、この点につきましては、いろいろ提言はされておりますけれども、やはり訴訟における当事者の公平の原則の大きな例外になるわけでございまして、このような場合に特別な扱いをするということについてまだ十分な議論を経ているかどうか、テーマとして残っていることは私ども理解をしておりますけれども、国全体を含めてその点について理解が得られているかどうかというのは、まだ半ばであるというふうに理解をしております。もしそれが得られているのであれば、私どもも今回提言をさせていただくということになりますが、そこまで至らなかったというのが現状でございます。

 それからもう一点、主張立証責任でございますけれども、これにつきましては、もう委員には釈迦に説法でございますけれども、他の民事訴訟法におきましてもこれは実体法で決まってくる話でございます。したがいまして、そこは、それぞれがみずから知り得る事実については主張を立証していく、そういう一般論でやっていかざるを得ないと思いますけれども、ただ、それにしても、やはり国民の方々から主張立証をしていくという大変な点がございますので、今回、私ども釈明処分の特例を設けまして、その資料についての提出を早目に求めるということから、これが出ることによって実質上主張立証責任の負担を軽くする、こういうような機能を果たすだろうということで、この点については私どもも一部手当てをさせていただいた、こういう認識でございます。

辻委員 弁護士報酬の片面的敗訴者負担制度の導入について、テーマとして残っているというふうにおっしゃったけれども、今回、行政訴訟を実効化させるためにこの立法を提言しているというお立場からすると、やはり非常に、そういうおっしゃり方は、本当にやる気があっておっしゃっているのかなということを疑わせる言葉だろうというふうに思うんですね。

 テーマとして残っていると言うんじゃなくて、むしろ、ある意味では、行政の違法性をチェックするために国民が苦労に苦労を重ねて、いろいろな障害を乗り越えて、それで行政行為の違法性を立証した、そしてそういう判決をかち取ったという、これは、その一個人の利益の問題ではなくて、やはりある意味で公益的な意味も持つ、社会的な意味も持つ行動なわけでありますから、そういう場合にまですべて費用、弁護士費用を含めて個人が全部負担をするということについては、行政訴訟をもっと実効性あるものにしていくためには、やはりそれはもっと理解があっていいんじゃないか。

 何か客観的に、テーマとして残っているというような、余計なものとしてまだ残っているんだというようなニュアンスの言い方ではなくて、そういう問題を積極的に取り上げて国民の側に提言していく。それはいろいろな、すぐには制度化することが難しい面もあるかもしれないけれども、やはりそういう熱意がある、国民に対する愛が必要ですよ。そういう立場に立って提言していただかないと、いろいろな個々の問題の運用なり解釈に当たって行政的な冷たさが残るようなことでは非常に困ると思うんです。私、この点は、時間もありますからあえて回答は求めません。

 時間になりました。本日は、行政訴訟の意味、必要性、そしてそれをより実効性あらしめるためにはどのような制度なりいろいろなことが考えられるのか、それを今、即導入するかどうかは、政策的判断もあってそこは論議すべきところであり、次回以降それを具体的にもう少し論議させていただきたいと思いますが、きのう塩崎委員がおっしゃった、十合目のうちの何合目ですかというお話ですが、十合目ということで本当に考えている十合目がお互いに違うんじゃないかということであったら困るんですよね。全然違う山に登ろうとしているのでは困る。

 法の支配をきちっと貫いて、そういう意味では、行政裁量をちゃんとチェックしていく、国民が主人公となって行政サービスを提供させられるように行政行為を統制していく、そのために山を登っていくんだ、その何合目にあるかという問題であって、やはり目指す頂上について一致しなければ議論は不毛になるわけでありますから、その辺について次回以降の討議の中で、山崎局長の方からも具体的な、頂点は何を目指しているのかということを踏まえた御発言、御回答をぜひいただきたいと思います。

 本日はこれで終わります。ありがとうございました。

塩崎委員長代理 松野信夫君。

松野(信)委員 民主党の松野信夫でございます。

 私の方からも、引き続いて、行政事件訴訟法一部改正案について質問をさせていただきます。

 もうこれまでの議論でも大体明らかになってきておりますけれども、行政訴訟というのが提訴される数が非常に少ない、また提訴されても途中で却下されたり、あるいは最終判決に至っても棄却されたりということでなかなか勝訴率も余り上がっていない、時間もかかる、いろいろ手続も面倒だ、こういうようなことも大体明らかになってきたのではないかな。そのため、国民の方もこの行政訴訟については非常に消極的、懐疑的になっているのではないか、そういう状況だろうと思います。

 これは、行政が適切に一定の行政処分その他行政行為がなされているからこういう裁判も少ないんだということであれば、それはまた大変結構なことだと思うんですが、どうも現実は必ずしもそうではなくて、かなり不満を持っている、こういう方が多いかと思うんですが、手続がなかなか面倒だ、こういう実態にあるのではないだろうか、私はそういう認識をしておりますが、この点について大臣はどういう現実の認識を持っておられるのか。こういう認識を持っておられるとすれば、そういう認識を踏まえて今回のこの改正の法案、どういうような改正を目指しているのか、まずこの点について御所見をいただきたいと思います。

野沢国務大臣 行政の果たす役割というのは、私は、日本のこれまでの歴史それから実態から考えまして、大変大きな力を発揮してきた、これはもう否めない事実だと思いますが、それに伴って、では果たして、今委員も御指摘されておりますように、全く国民の側に不満がなかったのか、あるいは、それによって十分行政目的が果たされていたからこそ訴訟の件数その他も少なかったのかどうか、こういった御疑問はあろうかと思います。

 そこで、実態の方から調べていかなきゃいかぬかと思うんですが、現在、行政訴訟の現状や提訴件数、勝訴率、こういったものを評価してよしあしを判断するということは必ずしも適切かどうかわかりませんが、国ごとの制度の違いがあるということを前提に置いた上で、それぞれの差が出るのはやむを得ないかなと思うわけでございますが、件数についてはそれぞれ各国の状況からしましても大きな違いがございますが、認容率という点で見ますと、イギリスでは平成十四年に三・五%、ドイツが平成十三年には八・八%、さらに日本では十四年には一七・九%ということでございますので、認容率という面から見ると、必ずしもこれは低いとは言えないわけでございます。そういう意味では、実態に即した内容のある審査は行われてきているかなと思うわけでございまして、ただ、申告が少ないという点では、お話しのような問題があろうかと思います。

 その意味で、十分これからの社会のあり方を考えますと、行政とバランスのとれた司法によるチェック、そして全体の利益に対する個別具体的な個人あるいは地域あるいはそれぞれの企業等が自分たちの権利を主張する道をより一層開いていくということが今度の行政訴訟の目的でございますので、その点を含んでの御議論をいただければと思います。

松野(信)委員 今大臣の方から、勝訴率は必ずしも日本は低くない、イギリスよりかなり高い、こういう御指摘でしたが、もともと、そもそも数が少ないわけで、二千件を少し超えるぐらいの数しかないわけですので、提訴の段階から言うならば勝てる見込みのものしか提訴していないということで、提訴の段階でかなりセレクトされている、日本の場合は。そういうふうに言えるのではないだろうかというふうに思います。

 それから、日本の場合は、敗訴するという場合に、そもそも最終的な終局判決までいかないで却下されてしまう、こういうことが多いんだろうと思うんです。例えば、処分性がない、あるいは当事者適格がない、訴えの利益がない、出訴期間を徒過している、こういうようなことで本案の審理に至らないで却下、現実にはそういう例が多いのではないかと思うんですが、統計上、こういう却下率というのはあるんでしょうか。

山崎政府参考人 一応却下率というのはとっているようでございますけれども、平成十四年で一二・八%ということで、この十年から十四年を見まして、大体一二%台から一五%台、こんなような数字になっております。

松野(信)委員 それは、いわゆる一般の民事訴訟に比較すると非常に却下率は高いというふうに思います。恐らく一般の民事訴訟の場合は、却下されるというのは一%もない程度だろうというふうに把握していますので、この行政訴訟の場合は、今申し上げた処分性がないとか原告適格がないとかいうので、つまり入り口で切られてしまう、こういう点が指摘できるかと思います。

 それで、却下の数字はお持ちのようですが、これについてどういう理由で却下されたのか、例えば、処分性がないから却下されたのか、原告適格がないから却下されたのか、そういうような却下の中身の内訳というような統計はとっておられますか。

山崎政府参考人 これは、統計は裁判所でございますが、今ちょっと目で打ち合わせしたら、ないということでございますので、ないと思います。

松野(信)委員 それは、ないなら仕方がないと思いますが、ただ、日本の場合は非常に却下率が高くて、つまり、入り口のところで切られてしまうという点は強く指摘をしていかなければならないと思います。

 それから、勝訴率はそんなに低くないですよという指摘がありましたが、最近の例で見ますと、これは私も弁護士として経験してきたんですが、勝訴率を上昇させた一つの原因は、先ほども申し上げたように提訴数が少なくて提訴の段階でセレクトされているという理由が一つと、それからもう一つは、情報公開訴訟があるだろうと思います。

 これは、オンブズマンの人たち、いろいろな市民グループの人たちが、行政庁、地方自治体あたりが持っている情報を公開してほしいということで要求したところが、なかなか行政側が情報を公開しない、特にいろいろな飲食費の関係とか交際費の関係とか、そういうものについては隠したがる、こういうことで次々に情報公開を求める裁判が打たれている。

 私も幾つかしましたけれども、正直言って連戦連勝です。それくらい行政側の方は情報をなかなかオープンにしないということで、国の側も、情報公開法が制定されましたが、その前に既に都道府県あたりでは条例の方が先にどんどんと整備されている、こういうような実態もあって、情報公開の訴訟が連戦連勝で、恐らく今でも約五割ぐらいは勝訴率は超えているだろうと思います。そういうふうなことで多少勝訴率が上がっているんではないかな、こういうふうに思います。

 そういうような特殊の訴訟を除きますと、今御指摘したように、非常に原告側が、入り口で切られるか、最後まで到達してもやはり切られるかということで、なかなか勝てないわけですね。

 大臣も、率直にお伺いしますが、こういうふうに原告側がなかなか勝てない、一般の民事訴訟だと半分以上が大体原告側が勝っているんですが、こういう行政訴訟だとなかなか勝てない、この理由、御感想でも結構ですけれども、その理由をどういうふうにお考えでしょうか。

野沢国務大臣 私も行政の仕事を長いことやっておった経験もございますが、やはり日本の行政の仕組みからしますと、まず準備の段階があり、そして説明の段階があり、そして実行の段階がある。調査から計画、実行に至ります間、相当周到な準備をしてかかるわけですね。その間、できるだけ住民の皆様にも御相談をし、御説明をするわけでございますが、やはりまだ十分でないということで訴訟に一部が移行していく、こういうことでございますので、いわば行政サイドの一つの努力が前提としてあったかなと。

 それから、では、なかなか具体化する、今言ったような勝訴が難しいということについては、何しろ取り組む相手が、だれを相手にやったらいいかわからない、あるいは相手が非常に大きい、それから問題が大変広範にわたるということ、争点を明確にするということが非常に難しいというさまざまな困難があるわけでございますので、この辺、現在の行政訴訟の手続そのものが十分住民サイドの個別利益を代表し、争うに足るに、ややこれは足りないところがあったんじゃないか、そこで今回の御提言を申し上げておるわけでございまして、もっともっと使いやすい、入りやすい、もっと手軽に仕事ができる制度に変えていきたいというのが今度の趣旨でございます。

 ただ、先ほど勝訴率の点でまだ十分でないことはございますが、私の経験では、この問題については話し合いをするということ自身が実は大変効果がありまして、和解でおさまることもありますし、和解まで行く前に話し合いによってほとんどの問題が私は解決してきた経験がございますので、そういう面でも、この制度そのものは、もっと利用し、活用し、大いに使いやすいものにすることによって、一層行政と司法との関係がバランスよく、最終的には国民の利益につながっていくものと確信をいたしておるわけでございます。

 どうぞ、いろいろな面からの御提言を期待しておりますので、よろしくお願いします。

    〔塩崎委員長代理退席、下村委員長代理着席〕

松野(信)委員 訴訟法上の手続としては、今回の改正で一歩前進だというふうに私も理解しておりますが、しかし、それ以外にもやはりさまざまな理由があって、この訴訟は原告の側の勝訴率が低いのではないか、こう思います。

 それで、今大臣の御答弁の中で、和解で終わるケースも多いという御指摘がありましたが、しかし、行政事件訴訟の中で和解で終結するというのは、これはほとんどないだろうというふうに思います。

 もし事務局の方で、行政事件訴訟の中で和解で終結をしたという統計があるならばちょっと教えていただきたいと思いますが、恐らく、一般の民事事件に比べると、和解で終わるというのは非常に少ないんではないかと思いますけれども、どうでしょうか。

山崎政府参考人 全体の数といたしまして、これは平成十四年でございますが、総数が二千二百八件でございまして、和解と銘を打っているのが六十五件ということだろうと思います。

 先生は御存じかと思いますけれども、多分、今大臣がおっしゃられているのは、話し合いという、事前の話し合い、それから行政事件プロパーの問題ではなくて、国家賠償の問題だとかあるいはそれ以外の金銭給付の問題もございます、そういう点、あるいは、それが取り下げになるというものもあろうかと思うんですね。純粋に行政処分を争うものであれば和解が可能ではございませんので、話し合いをして取り下げをする、こういうものもあろうかと思います。そういう実質を言われていることだろうというふうに理解をしております。

松野(信)委員 手続の点についてはまた後ほどお聞きしますが、やはり根本的な問題としては、正直言って、裁判官にかなりの問題点があるんではないかという認識を私は持っております。どうしてもやはり裁判官、行政の判断はそう間違っていない、行政はそんなに悪いことをするはずがない、もともとそういう認識があって、そういう感覚の上に立って判断を下しているのではないかな、率直に今そういう気がしております。

 そういうものの一つとして、やはり判検交流の問題があるんではないだろうか。裁判官をしていた人が今度は訟務検事になって、国の代理人になって、住民側、原告側と対峙をする。しばらく訟務検事をしていたと思ったら、いつの間にかまた今度は裁判官に戻って裁く立場になっている。こういう判検交流で行政側について訟務検事あたりをやっていると、やはりどうしても、裁判官に戻っても行政サイドに立った見方しかなかなかできないのではないかな、こういう批判は従来からなされているところであります。

 それは、裁判官は中立公正でやっているんだ、こういう反論はあろうかと思いますが、しかし司法というのは、実質的に中立公正でなければならないのは当然ですけれども、やはり国民の目から見て形式的にも公正さがちゃんと担保されている、こういうふうになっていないといけないと思うんです。

 国の側に立って、あるいは自治体の側に立って訟務検事をされていた、いつの間にか今度は裁く側になって、一体これは何だと。これはやはり普通の国民の感覚からしても、そういうふうに言わざるを得ないのではないか、このように思います。

 この点について申し上げると、こういうちょっと細かい法律ですが、国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律というのがございます。これで、法務大臣が所部の職員に、こういう行政訴訟その他、国が当事者になるような訴訟を担当させるということが規定されているわけですが、この中に、第三条に、法務大臣が弁護士を訴訟代理人に選任して訴訟を担当することを妨げない、こういう規定があるわけです。しかし、実際にはこの規定は余り使われてなくて、かなりの部分は訟務検事が担当しているというのが実態ではないかなというふうに思います。

 特に、私は、行政事件のようなこういうケース、国民の目から見て、いつの間にか裁判官になったり、いつの間にか訟務検事になったりというのでなくて、しかるべき弁護士を活用するような形で、そういう運用も考えたらどうかというふうに思いますが、この点はいかがでしょうか。

山崎政府参考人 私的なことを申し上げて恐縮でございますが、私、二年半ほど訟務局長をやっておりまして、判検交流の対象者でございます。戻った暁には、今御指摘のような見方をされるおそれがあるということになろうかと思いますが。ただ、ここで言わせていただきたいのは、法律のプロは、それぞれ与えられた立場で、そこできちっと判断をしていくということでございます。ですから、プロでありまして、これは立場が変わって前のことを引きずるということはないことでございます。

 現実に、具体的には申し上げられませんけれども、訟務経験者、裁判官に戻ったときにかえって行政庁にきついというような判断も見られるわけでございますし、私もその二年半、全事件を通じてでございますけれども、全事件を見てまいりましたけれども、その場合に、行政のいいところ悪いところ双方が出てくるわけでございまして、先ほどのどうしてその事件が少ないかという問題にも絡んでくるわけでございますが、では、裁判を起こされているものが、全部国が負けたら国は真っ暗になります、はっきり申し上げまして。それだけやはり大事なことをやっております。ただ、パーフェクトかと言われると、そうじゃない。個々にはいろいろな問題がございます。ですから裁判になるわけでございまして、負けるべきものは負けるということになろうかと思います。勝つものは勝つという結果になろうかと思います。

 これの、むしろ行政の実態をきちっとわかった者が裁判をやるといったときには、冷静な判断が逆にできるということになるわけでございまして、私もかなりそれは冷静に判断をしていたつもりでございますので、そこは、外から見るとそういう問題があるという御指摘はわかりますけれども、御理解を賜りたいと思います。

松野(信)委員 この判検交流の問題をやり出すとちょっと時間がとても足りませんけれども、やはり、山崎局長はなかなか優秀で、それはもうプロで自覚を持ってやっているから大丈夫だ、こういう反論があろうかと思いますが、しかし、国民の目から見て、裁判官になったり検察官になったり、大丈夫だろうかというのは、国民の目から見るとそういう認識はやはり持っていなければいけないだろう、こう思います。本当に行政経験を積む必要があるというのであれば、何も訟務検事にならなくても、裁判官がいろいろな各行政庁に行って、そこで行政の現場を勉強してくるというようなやり方ももちろんあって、現にもうされているかと思います。まあ、この判検交流の問題はこのくらいにしておきます。

 もう一つ、行政訴訟が非常に少ないという理由に手数料の問題があろうと思います。貼用印紙、印紙額の問題ですね。

 これはもう御承知のとおり、会社法については、平成五年に商法が改正されまして、いわゆる株主代表訴訟というものが、これは財産上の請求に当たらずということで、一件八千二百円で提訴することができる、八千二百円の収入印紙で提訴できる、こういうふうに変わりまして、その後、株式代表訴訟というものの数がふえているということがあります。一定の濫訴を防止するという手当ても担保されておりますので、それはそれなりにそういう手当てをしているわけですね。

 ところが、今回の法案では、この点については全く手当てがなされていないわけであります。そうすると、現実的に見て、どうもおかしなことになるなというふうに思うわけであります。

 例えば、一億円の課税処分を争う。この課税処分が間違っているということで、この一億円の課税処分を取り消せというような訴えを、取り消し訴訟を起こすときには、一億円の場合は収入印紙が百四十四万ぐらい納めなきゃいけないということであります。これはやはり普通の人にとっては、収入印紙だけでとんでもないことになっているわけですね。

 ところが、他方、例えばビルを建てる、あるいはいろいろな都市計画法上の開発をする、何十億あるいは何百億のそういう開発をする、ビルを建てる、あるいはダムをつくる、特定多目的ダム法に基づいてダムをつくる、これは何千億というようなダムをつくる、こういうような場合には、別に建物とか土地の評価にかかわりなく、一つの処分ということで八千二百円でいい、こういうふうになっていて、これはいかにもバランスを欠いているのではないか、こういうふうに思います。

 ぜひこの点は、今回の法改正には出ていないので非常に残念なんですが、もしかしたらこれは将来の課題という御認識かもしれませんが、やはりこの点はぜひ、行政訴訟を本当に国民に使いやすいようにしていくということであれば、これは財産上の請求でないという形で八千二百円でいく。一億円の課税処分だろうと、一千万の課税処分だろうと、あるいは巨大なビル、ダムの建設をめぐる問題だろうと、これはやはり八千二百円なら八千二百円ということでやるのが適切なやり方ではないかと思いますが、この点はいかがでしょうか。

山崎政府参考人 確かに提訴手数料の問題については、今回は何も改正をしておりません。

 これは、ちょっと前提がございまして、昨年、民事訴訟費用法の改正をさせていただきまして、この点につきましては、前にも、多分平成四、五年だろうと思いますけれども、一回、相当高額にわたるところの費用がやはり高過ぎるということから、そこを減らしたわけでございます。それから推移をしてまいりましたけれども、やはりその高額部分については相当な負担になる、これは司法アクセスに影響があるということから、昨年、金額の高いところはまた減額をいたしました。そういう形で是正はしてきておるわけでございます。その点は御理解をいただきたいということが一点でございます。

 それから、代表訴訟のようなやり方、要するに算定不能という考え方でございますけれども、これをもし導入するということになると、この費用は、民事裁判も含めましたすべてに共通するルールでございますので、そうなりますと、民事裁判の方でもどういうルールを設けていくかということ、これを全体的に考えていかざるを得ないということが第一点。

 それからもう一点は、やはり何千億、千何百億の税金の訴訟もございますけれども、そういう場合に、それでは算定不能ということで、八千二百円とおっしゃいました、ことしの四月から施行になっている、一月でしたか、ちょっと、施行になった分では一万円になりますけれども、これで本当に国民の方が理解をしていただけるのかという点にも、なかなかまだそこまではいっていないだろうということで、今回議論はいたしましたけれども、なかなかそこまではまだ理解が得られないということでございまして、これもテーマとしては残っておりまして、引き続きまたどういう方向で検討をしていくか、そういう命題であるということでございます。

松野(信)委員 この点は、先ほど私が申し上げたように、八千二百円あるいは一万円で一億円の課税処分が争われたら国民の理解が得られないかもしれないというような御発言がありましたけれども、しかし、逆に言うならば、何百億、何千億というような対象の開発問題あるいはダムというような問題で、今はそういう八千二百円で、ある意味ではやっているわけでして、そういうバランスをやはり考えるということが本当の意味の国民の理解というのにつながるのではないか、この点だけ指摘させていただいておきます。

 次に、原告適格の問題について移りたいと思います。

 恐らく、今度の改正法の一つの大きな目玉は原告適格、第九条の第二項という規定が設けられたというのが一つ大きいところではないかと思います。今までよりは多少原告適格が広く判断されるのではないか、こういうことからこの二項が設けられたのではないか、こういうふうに思います。

 しかし、具体的にこの二項、普通の人が読んでも、なかなか正直わかりにくい。原告適格を決めるには当該法令の規定の文言だけではなくていろいろな点を考慮して判断しなさいよ、こういうふうになっているんですが、そのいろいろな点を考慮して判断すれば本当に原告適格が広がるのか。どうもいま一歩、これまでの当委員会での議論を聞いていましても、具体的にどう広がるかというのがもう一つ目に見えない。

 これまでは原告適格なしとして却下されていた、こういうようなケースも、今回の法案に基づけば原告適格ありとして救済されるだろう。それは、最終的には、個々具体的な裁判で裁判官が判断することにはなりますけれども、ある程度の見通し、せっかく法改正をして原告適格を広げようというねらいがあってつくっているわけですから、具体的にこういうケースでこう広がりますという点を、これはちょっと率直に御説明いただきたいと思います。

山崎政府参考人 この条文を適用して、最終的には裁判所で決められるということになりますので、私の方が現在そこでこうなると言う形は避けたいというふうに思います。

 ただ、そうは申しましても、具体的にどういうイメージになるのかということがわからなくては、やはり法律の趣旨がわかっていただけないということになります。そこで、若干のことを申し上げたいと思いますが、これは、私どもの行政訴訟検討会の中で議論がされた二つ、三つのテーマについて、現状がどうなっていて、今回の法案を適用するとどういう可能性があるかという点について申し上げたいというふうに思います。

 まず一つは、私どもの検討会で問題になりましたのは都市計画法の問題でございますけれども、道路の拡幅工事でございます。これにつきまして、現在、都市計画法の建前では、そこの拡幅の対象になるところの土地の権利者、これについて提訴をする、そういう原告適格があるということでございますけれども、ではそれ以外、その周辺の居住者あるいは通勤の方々、そういう方々について当事者適格があるかどうかという点につきましては、従来はその点はない、こういうような解釈であったということでございます。

 そこで、本当にそれでいいのかどうかという問題もいろいろ議論がされたわけでございます。確かに、道路の拡幅で土地がなくなる方、この方は当然ということになりますけれども、ではその周辺の方々はどういう影響を受けるかというと、騒音の影響を受けたり、あるいは浮遊粒子状物質ですか、こういうものの健康被害の問題とか、さまざまな環境の変化による影響を受けるわけでございます。

 こういう点について配慮をすべきかどうかということになりますけれども、これにつきましては、今回の法案の中でも、その根拠となる当該法令、そこの目的やその法令の文言だけじゃなくて趣旨、目的も考えなさいというふうに書いてありますけれども、それを考えるについて、その目的を共通にする、こういうような法令についても考慮の対象にしなさい、こういうことを言っているわけでございます。

 そうなりますと、環境に関する関連法令ということで、最近一番新しいのは環境アセスメント法、環境影響評価法でございますか、これがございまして、このような都市計画法上の道路の拡幅工事がその対象になるということになっておりますので、そこで影響を受ける環境評価の点は、全部審査をした上でやらなきゃいかぬということになります。そうなりますと、そこでどういうものが対象になってくるかということですね、被害の実態とか。そういうことを考えて当事者適格を考えなさいということでございますので、その状況によっては、所有者じゃなくて居住者についても当事者適格が認められていく可能性がある、こういうような考えになるわけです。

 それが一点でございますが、一つ一つ、区切ってやりますか。それとももう一点。よろしいですか。

松野(信)委員 今の点については、私も、恐らく今回の法令が通れば、道路関係の周辺住民、これはやはり原告適格を認めてしかるべきだ、この法案で認められるだろうという予測も立てております。

 例えば、具体的な例で申し上げると、最高裁判所が平成十一年の十一月二十五日に下している判決がありまして、これは東京の環状六号線の道路訴訟です。都市計画事業認可処分、この取り消しを環状六号線の周辺の住民の人たちが求めたというケースなんですが、最高裁の方は、事業地内の不動産について権利を持っている、所有権あたりを持っている、これは当然原告適格がある。しかし、その周辺の住民は原告適格なしというふうに最高裁の方は判断をしているわけですね。

 だから、今の局長の御答弁からするならば、こういうケースは恐らく原告適格ありという方向で考えられてくるのかなと。今御指摘のように、環境アセス法あたりも十分しんしゃくせよということにでもなればそうなるのかなというふうに思いますが、こういう認識でよろしいでしょうか。

山崎政府参考人 結論は、断定はできませんけれども、思いの方向は多分同じだろうというふうに考えております。

松野(信)委員 もう一つ、具体的な事件を御紹介したいと思いますが、これは東京地裁が平成十年の八月二十七日に下した判決でございまして、これはもう皆さんも御存じかもしれませんが、後楽園の野球場のところに今でかいホテルが、ドームホテルができているということで、これはもともとは都市計画上、公園というふうになっていたものが、都市計画法五十九条の特例許可ということで超高層ホテルの建設が許可されたということだったんですね。

 それで、地域周辺の住民の人たちがこの許可処分の取り消しを求めて裁判を提起した。ところが、東京地裁の方は、この周辺住民は原告適格がなしということで却下されてしまったということであります。

 これは必ずしも道路ではないんですが、都市計画上の公園を、こういう超高層ビルを建てるのに許可がおりたというので、幾らか似ているところもあって、こういうような事件でも、私は、やはり入り口のところで閉ざすべきではない、せめて原告適格を認めた上で実体審理をしていくのが筋ではないかな。今度の法案が認められれば、こういうケースも方向性としては認められる方向になるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

山崎政府参考人 都市計画法による開発は道路だけではございませんので、大きな建物を開発するというような場合についてもいろいろ規定がございます。

 こういう中で、法案でいろいろな点に配慮をしている規定が置かれているわけでございまして、これは例えば、騒音とかそれから振動による環境の悪化の防止上必要な緑地帯その他緩衝地帯が配置されているというふうになっているかとか、そのほか、道路、公園、広場その他の公共の用に供する空き地が、環境の保全上あるいは防災上それから通行の安全上または事業活動の効率上支障がない規模あるいは構造で適当に配置されているかとか、周辺の環境や事業活動への影響を考慮した許可基準、こういうものが定められているわけでございます。そういう点が一つの考慮事項になっております。

 では、現実にその周辺でどういうものが起こるかということでございまして、これにつきましても、それぞれ本当にそれらの処分が違法だった場合にどういう事態が生ずるか、こういう点も比較考量して、この法律上保護する、そうすべきものに当たるかどうかということを判断していこう、こういう構造になるわけでございますので、その中で、今までのような文言のみによる解釈ではなくて、もう少し拡大した、柔軟な解釈をしていかれるような方向になるだろうというふうに期待をしているところでございます。

松野(信)委員 この第九条の二項の、いろいろ考慮をしなさいというところで、今答弁もありましたけれども、少し私の方がひっかかる点をちょっと申し上げたいと思います。

 この第二項で、考慮しなさいというのが全部で四つ挙げられているわけですね。一つが、処分の根拠となる法令の趣旨及び目的。二番目が、処分において考慮されるべき利益の内容及び性質。三番目が、処分の根拠となる法令と目的を共通にする関係法令の趣旨及び目的。四番目が、処分が違法になされた場合に害されるおそれのある利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度。そういうような要素が四つ掲げられて、これを十分考慮して判断せよ、こうなっているわけです。

 私がひっかかるというふうに申し上げたのは三番目の要素でありまして、先ほど来から山崎局長の方からも御答弁いただいております、ほかの関係法令も考慮しなさいということです。条文を正確に読みますと、処分の根拠となる、法令と目的を共通にする関係法令というふうに条文ではうたっているわけですね。

 そうすると、例えば、もともとの処分の根拠となった都市計画法という法令がある、それと目的を共通にしないとだめだというふうに条文上はなっているわけです。目的を共通にする関係法令の趣旨及び目的ということで、例えば地域住民の人たちが持っている権利に関するどんな法律でもいいというわけではないわけですね。あくまでも、今の例で言うならば、都市計画法と目的を共通にするような関係法令でないとだめですよ、こういうふうに規定されているものですから、果たして、都市計画法と環境影響評価法いわゆる環境アセス法と、これが目的を共通にするのかというと、厳密に考えるとこの二つの法律はそれぞれ趣旨、目的はかなり違うというふうに言わざるを得ないので、山崎局長が言われたように、アセス法もこの関係法令だから考慮していいんだというふうには、私は直ちにはならないのではないかというふうに思います。

 そのほかにも、例えばダム。特定多目的ダム法に基づくダムが、例えばダム事業が認可されている場合、この認可の取り消しを求めるということで、ダムによって河川が汚されるというようなことで、その河川の周辺に住んでいる方々あるいはその河川で漁業を営んでいる漁師の方々。そうすると、例えば漁師の人たちは、漁業法、これは内水面漁業になりますけれども、漁業法という法律によって内水面漁業における一定の漁業行使権という権利は持っているわけです。だけれども、これが果たして目的を共通にする関係法令か、こう言われると、一方は特ダム法があり、他方は漁業法があり、これは目的を共通にする関係法令とは直ちには言えないのではないか、こういうふうに言わざるを得ないわけであります。

 私は、端的に申し上げると、この「目的を共通にする」というような縛りをかける文言は、もう取っ払うべきだ。処分の根拠となる法令と関連のあるとか、何らかの関係があればいい、必ずしも目的を共通にしなくても何らかの関係があれば、そういう関係法令の趣旨、目的も考慮してよろしい、そういうふうな改正をしないと、この「目的を共通にする関係法令」に該当するか該当しないかというような細かいところでかなり縛りがかけられて、それこそ環境アセス法も考慮してはならないというふうにもなりかねない、こういうふうに思いますが、いかがでしょうか。

山崎政府参考人 これにつきましては、目的を共通にするということでございますけれども、この趣旨は、法律にはいろいろ目的規定とか、その文言、いろいろ規定ぶりがあるわけでございますが、それのみによって判断するのではなくて、その法令全体がどういうことを広い意味で目的としているかというところをとらえて、その共通性を考えていくということでございます。

 都市計画におきましても、やはりいろいろな許可にかからしめているということは、広い意味では住民の生活環境に影響を与える、こういうことになるわけでございます。したがいまして、その環境影響評価法につきましても、住民の生活にどういう影響を与えるかという観点からとらえるものでございます。したがいまして、その目的をやはり共通にするということだろうと思います。

 環境影響評価法は、必ずしも私どもの所管ではございませんけれども、その対象事業に係る施設が都市施設として都市計画に定められる場合、当該都市施設に係る対象事業について行うべき環境影響評価その他の手続は、都市計画の決定または変更する手続とあわせて行うものとすると定めているわけでございまして、広い意味では、これは目的を共通にしているものでございます。

 こういう点で私ども申し上げているわけでございまして、じゃ、これを取り払ったらどうかということでございますが、取り払いますと、さまざまな法律が関連するということになれば、そうなりますと、一体どれをどういうふうに調べていいのかということにもなりますし、関係のないものまで影響を受けるのかということにもなって、ここはちょっと余りにも広くなり過ぎて、何を言っているかわからなくなるおそれもございます。

 したがいまして、私どもは、広い意味で目的を共通にする、こういうものについて十分に参照をしなさい、こういうふうにしたわけでございます。

松野(信)委員 どうも今の答弁ではとても納得できないですね。「目的を共通にする」という文言があれば、これはかなり現場の裁判官は狭く解釈せざるを得ないというふうに思いますよ。

 都市計画法の関係で、今の局長の答弁であれば、環境アセス法は広い意味で目的を共通にするというふうに言われましたけれども、別に条文上は広い意味かどうかというようなことを特に規定はしていないわけで、ただ、処分の根拠となる法令と目的を共通にするということで、これはかなり狭く解釈されかねないわけで、私は率直に、この「目的を共通にする」というような文言が入っているのであれば、環境アセス法が考慮の対象になるかどうか、これはかなり疑問に思わざるを得ないというふうに思います。

 例えば、これまでの事例で最高裁あたりで原告適格なしとされたのでは、先ほど指摘しましたように都市計画事業の中での環状六号線の道路訴訟、これもありまして、この周辺住民はだめだとなった。それから、昭和六十年十二月十七日の最高裁の判決で伊達火力発電所訴訟というのがありまして、これも埋立地周辺の漁民は原告適格なしと。火力発電を埋め立ててつくるという場合、周辺の人たちが反対というようなことで許可の取り消しを求めたわけですが、最高裁の今までの判例では原告適格なしというふうになっているので、これも環境アセス法の趣旨を踏まえて今後は原告適格ありというふうに判断される方向にあるというふうに局長はお考えでしょうか。

山崎政府参考人 埋め立ての件の伊達火力発電所の訴訟、これはございます。ここでは、そこの埋め立ての対象となる権利者、漁業権を持っている方、その方は適格があるけれども周辺はだめだ、こういう判断に理解をしております。

 これにつきましても、やはり先ほど申し上げました環境影響評価法ですか、こういうものがやはり目的を共通にするということで、こちらの手続もあわせて行わなければならないことになるわけでございますので、要は、周辺にどういう影響を与えるか、これもきちっと手当てをしたそういう計画を立てなさいということになるわけでございます。要するにこの目的が法令の中に溶け込んでいくような形になるわけでございますので、そういう意味では、目的を共通にするということになろうかと思います。したがいまして、同じような方向を目指していくというふうに考えております。

松野(信)委員 その環境アセス法はいいんですが、先ほど私が申し上げたように、例えば川をせきとめてダムでもつくるというようなところでいった場合に、その下流の漁業権を持っている漁民、こういう人たちは漁業法に基づく漁業権ありとなっているのですが、そういうのも目的を共通にする関係法令、つまり漁業法も目的を共通にする関係法令だ、こういうふうに理解してよろしいんでしょうか。

山崎政府参考人 今の関係で、漁業法がダムの根拠となる法律の規定と目的を共通にするということにはならないというふうに考えております。

松野(信)委員 そうすると、目的を共通にする関係法令というのを具体的に、例えば、都市計画法の場合は大体こういう法令が目的を共通にする法令ですよ、それから特ダム法の場合、ダムをつくるというような事業認可の場合にはこういう法令が関係法令ですよ、これが目的を共通にする関係法令ですよという具体的な法令を挙げてください。

山崎政府参考人 済みません。ちょっとその点不正確だったと思いますけれども、やはり目的を共通にする法規だということでございまして、環境影響評価法ですか、これに関しましては、その対象事業を道路、ダム、鉄道、飛行場、発電所等規模が大きく環境に著しい影響を及ぼすおそれがあり、かつ国が実施し、または許認可等を行う事業ということになるわけで、ここでその対象にしているわけでございます。(松野(信)委員「いや、だから、アセス法はいいですから、ほかの法律を挙げてください」と呼ぶ)ほかの法律ですか。

 突然の御質問で、私ども、そこの専門ではございませんで、ちょっと今そのお答えをする立場にはないということでございます。

松野(信)委員 しかし、大体予想して法律をつくっているはずで、これまで、例えば都市計画法に基づくものとか、特ダム法に基づくものとか、あるいは原発の規定に基づくものとか、そういうので大体許認可の処分を取り消せとかいう裁判がずっとやられてきたわけですよ。そういうのについて今度新しく第二項というのを設けようというわけですから、目的を共通にする法律、都市計画法の場合だったらこういう法律が大体目的を共通にする関係法令だ、特ダム法の場合はどうだというのをこれは当然考えておかなければ、今どういう法律が関係法令になるかわかりませんというのであれば、それは国民は使いようがないですよ。この点はちょっと指摘をしておきますので、ぜひきちんと、大体、関係法令はこういうのがありますというぐらいは指摘できるようにしていただきたいと思います。

 時間が余りありませんで、もう一つだけ具体例を申し上げますと、近鉄特急料金が上がったということで、通勤定期を購入して近鉄特急を利用していた人が特急料金の認可処分は違法だということでこの取り消しを求めた訴訟がありました。これは、最高裁が平成元年の四月十三日、通勤定期を購入して当該近鉄特急を利用していた人の原告適格は否定したわけですね。

 これは私、思いますけれども、例えば特急料金を上げたいという認可申請が否定されれば、当然近鉄側は原告適格ありで、特急料金の値上げを認めてくれ、不許可にした処分を取り消せ、こういう訴訟、これは当然原告適格ありと思います。しかし、認可が肯定された、値上げが認められたというと、まさか近鉄の方はそれに文句を言うはずはありません。文句を言うとすれば、乗客以外には恐らく文句を言う人はいないだろうと思うわけです。

 そうすると、乗客が、原告適格は最高裁では否定されているんですが、そうするとだれも文句は言えないということにもなりかねないわけで、今度の原告適格、第九条の第二項が設けられたことで、例えばこういうような特急料金の認可処分について取り消しを求めるということで、私は具体的に通勤している人は当然原告適格を認められてしかるべきだというふうに思いますが、この点についてはこの新しい法律ではどうなるでしょうか。

山崎政府参考人 この点につきましても、私どもの検討会で議論はいたしました。賛否両論でございますけれども、ただ、やはり全体としては否定的な意見の方が強かったという記憶をしております。

 例えば、この料金の問題につきましては、電車を考えるとそのイメージはわくんですが、ただ、これが、では飛行機とかそういうものについても全部利用者が争えるのかというところまで発展をするわけでございまして、果たしてその料金の設定が、やはり国民全体の生活の問題、あるいは営業の全体の利潤あるいは損失等、そういう点を総合考慮して決められていくものでございまして、そういう意味では、国民一般の関係を保護の対象にしているかもしれませんけれども、個々の方々を本当にその対象にしているかという点についてはなかなか難しい問題があろうということでございます。

 ただ、問題は、被害の実態を考えまして、例えば、値上げによって事実上往来が困難になってしまう方がおられる、あるいは特定の人についてその往来が困難になる、そういうような事態を生ずるかどうかということになりますと、それはまた違った配慮があるかもしれませんけれども、そうじゃない状態で一般的に原告適格が認められるかというのはなかなか難しいという議論でございます。

松野(信)委員 この近鉄特急の事件についても、これは、処分の根拠となった法令というのは地方鉄道法という法律でありまして、これに基づいて料金の値上げが認可されたということなんですけれども、そうすると、処分の根拠となったこの地方鉄道法と目的を共通にする関係法令というのは何があるんでしょうか。

山崎政府参考人 現在は法律が変わって、全体の上限の認可ということで個別の認可ではないというふうに変わっているかと思いますけれども、この関係で関連の法令といいましたら、これは私ども、ちょっとまだそこは具体的には調べておりません。

 要するに、行政処分、全部の法律について全部の関連法規を調べなければならないということになるわけでございまして、これはちょっと私ども、典型的な例でやはり狭いと言われているものについてどう対処をしていくかということで分析はいたしましたけれども、ありとあらゆる行政処分あるいはその法律に関連する法規、これを調べ出して目的が関連するかどうかという作業は行っておりませんので、そこは御理解を賜りたいと思います。

松野(信)委員 私も別にありとあらゆる法令を調べろというわけでなくて、せめて割合有名な事件、過去に問題になった有名な事件程度については、目的を共通にする関係法令というのはこういうのがあって、こういうのが考慮の対象になるというのはぜひ御検討いただきたいなというふうに思います。

 結論的に申し上げると、第九条の第二項の規定が設けられたことで、幾らか原告適格は広がるというふうになるのかもしれませんが、正直、まだまだよく見えない、どれくらい広がるのかよく見えない。むしろ私は、この第一項の中で記載があります法律上の利益を有する者が原告適格あり、法律上の利益ということで、これは最高裁の判例あたりでは法律上保護された利益だというふうに、これはほぼ確定した判例だと思いますが、そうなっているんですが、むしろこの第一項の法律上の利益というようなところを、例えば正当な利益とか法的利害関係だとかそういうような形で、この第一項の文言のところを少し広げるような形にならないと、現実の裁判例ではなかなかこれは使いにくいものになるのではないか、まだまだ十分考慮の余地があるということを指摘させていただいて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

下村委員長代理 山際大志郎君。

山際委員 自由民主党の山際大志郎でございます。午前中の最後の質問者でございますので、ぜひもう少しおつき合いいただきたいと思います。

 私は、前にも申し上げたとおりに、この司法の世界からは完全に素人の立場でございますが、むしろ逆に、国民の皆さんに開かれた司法を目指すという司法制度改革の流れの中にあって、私のような一般国民と同じ視点に立った人間の質問というのは、やはりそれなりに意味があるんじゃないかと思います。

 そこで、今回の行政事件訴訟というものに関しまして、私なりに一生懸命勉強しました。あるいは、法務省の方からも説明をいろいろ受けました。これを、きょうは、本当にわかりやすいものになっているのか、国民が理解しやすいものになっているのか、そういった観点から少し御質問をさせていただきたいと思います。

 まず、そもそも論なんですけれども、行政事件訴訟というものがございますけれども、この行政事件訴訟というふうに一般国民がぱっと聞いたときに、そうそうすぐにイメージがわく人というのはいないんじゃないかと。私自身はわきませんでした。これをわかりやすく副大臣に御説明していただければと思うんです。

実川副大臣 御指摘の行政事件訴訟とは何かという御質問ですけれども、大変抽象的になりますけれども、講学上の行政事件訴訟の定義についてはさまざまなお考えがあろうかと思いますけれども、行政事件訴訟法においての行政事件訴訟とは、抗告訴訟、当事者訴訟、また民衆訴訟、さらには機関訴訟をいう、このように定義されております。

 行政事件訴訟もすべての通常の裁判所の裁判権に属するものでありますけれども、その対象が民事訴訟のように私人間の権利関係に関する紛争ではなくして、行政庁の公権力の行使あるいは公益にかかわる公法上の法律関係の争いを対象とする点で、民事訴訟と異なる特色があります。

山際委員 まことに副大臣には申し上げにくいんですが、今の御説明を聞いていると余計にわけがわからなくなってしまうというのが、恐らく国民の皆さんが聞いていればそうだと思うんですね、というぐらいにやはり難しいものだと思うんですよ。ですので、これはやはりもうちょっとわかりやすく、かみ砕いたものにしていく方がいいんじゃないかなと思いながら、先に進めます。(発言する者あり)一つ一つ聞いていきますので、待ってください。

 まず、行政事件訴訟というものについて、今回法改正をする必要があるというふうに再三御答弁いただいておりますけれども、どうもその御答弁を聞いていましても、本当のところ何が問題なのか、私、末席で聞いていてよくわからない部分があるんですね。ですから、もう端的に、ここの部分が問題だから変えますというような、一言二言で答えていただきたいなと思うんですけれども、いかがでしょうか。

山崎政府参考人 簡単に答えるのが一番難しいわけでございますが、この改正の大きな目的は、昭和三十七年に現行法をつくっているわけでございますけれども、やはりその当時と行政のあり方、それから国民のチェックのあり方も大きく変わってきているわけですね。

 それともう一つは、行政もやはりかなり複雑になってきているということ、それから、大きな流れの中で、行政をなるべくスリムにして、それで自由な活動にして、紛争が起これば、それは事後チェック、要するに裁判で決着をしていきましょう、こういう大きな流れが幾つかありまして、そういう中で、やはり行政と国民の関係で非常に使い勝手が悪い、あるいは不便になってきている訴訟法をもう少し使いやすいようなものにして、それで、紛争が起こった場合に国民の権利を早急に実現していく、こういうことを目指そうということでございまして、わかりにくい点は相変わらずわかりにくいという点は残っております。

山際委員 やはりわかりにくいんですが、時代も変わって、住んでいる人間もかわって、制度も変わっていく中で、今、国民のニーズとしてやはり行政に対するクレーム等々が出てきている、それにきちっと対応できるようなものに変えていこうじゃないか、簡単に言えばそういうことでいいんでしょうか。

山崎政府参考人 端的にはそのとおりでございまして、国民の声にどうこたえるか、こういう視点だろうと思います。

山際委員 それでは、具体的に、少しずつわからない点をお聞きしていきたいと思いますが、まず、先ほど副大臣の方からの御答弁にありましたが、行政事件訴訟法というものの仕組みですね、これについて大きな枠組みを御説明いただきたいと思います。

山崎政府参考人 先ほど副大臣の方から御説明ございましたけれども、副大臣の方から四つの大きな訴訟類型について御紹介がございましたけれども、基本的には、それを対象にする訴訟手続はこの行政事件訴訟法で決めますよということを決めているわけでございまして、それ以外のものについては一般の民事訴訟法、こういうものでやっていきますよ、そういう仕分けでございます。そこが特徴だということでございます。

 まず、行政事件訴訟法、公益の実現のために処分その他の公権力の行使などを行う行政の特殊性を踏まえて、行政事件訴訟に関する基本法を定めるということでございます。その中で大きな類型を定めておりまして、それぞれの類型に応じて、その訴訟の当事者になる方はどういう方か、あるいは、どういう要件があればその訴えを提起することができるか、裁判の管轄はどうするかとか、そういうものを全部決めているわけでございます。

 この類型でございますが、これがなかなかわかりにくいんでございますが、一つ大きなものは抗告訴訟という範疇がございます。この抗告訴訟はまさに行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟でございまして、その中で三つほど分かれておりまして、取り消し訴訟、無効等確認の訴え、それから不作為の違法確認の訴え、この三つがございます。

 最初の取り消し訴訟というのは、これが典型的なものでございまして、ある行政処分が行われまして、それに対して不満である、不服であるという方がその取り消しを求める、こういうタイプのものでございます。これがほとんどの事件の類型でございます。

 それから、無効等確認の訴えというのは、これは教科書によく書かれているんですが、定期バスに乗りおくれた取り消し訴訟と言われておりまして、取り消し訴訟は、訴えの提訴期間が現在三カ月でございます、今度六カ月にするわけですけれども、ここでもう訴えることができなかったものについて、将来、その実体が無効となるべきものであるならばそれを救済しよう、こういう訴訟でございます。

 それから、不作為の違法確認の訴えというのは、ある申請をいたしました、ところが役所側は一向に返答をしないということですね。現実に幾つか例がございますけれども、これについて裁判を起こして、やらないことが違法であるという確認をするわけでございまして、これがされて行政に行為を促す、こういう訴訟の類型でございます。

 それから、当事者訴訟というのがこの審議の中でよく出てくるわけでございますけれども、これは当事者の公法上の権利関係を定めるものということでございまして、幾つか類型はございますけれども、わかりやすいのを申し上げますと、日本人と外国人の間に生まれた子供について、日本国籍を有するかどうかという点について争いになることもあるわけでございまして、その場合にやはり国籍確認の訴えを起こすわけですね。これが当事者の公法上の権利関係に影響があるわけでございますが、これが典型的に当事者訴訟と言われるものでございます。それ以外にも幾つかございますけれども。

 それから、民衆訴訟というのがあるわけでございますけれども、これは国または公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟ということで、これは選挙人としての資格その他自己の法律上の利益にかかわらない資格ということで提起できる、例えば住民訴訟のようなものがそうでございまして、例えば自治体の予算の執行について問題があるということならば、その訴訟を起こす、是正を求める、こういうようなタイプのものがございます。これはいわゆる民衆訴訟というわけですね。直接自分の権利ではないんですけれども、住民としてのチェックをするというタイプのものでございます。

 それと、機関訴訟と言われるものが最後にございまして、これは国の機関同士、あるいは地方公共団体と国との関係で権限争いが起こるとか、そういうようなものについて、それを裁定していく訴訟類型。

 これがいろいろ設けられておりまして、こういう四つの大きなタイプですね、これを対象にする手続をこの中で全部決めますよということでございます。それ以外は民事訴訟法等の一般的な訴訟法でやっていただきたい、こういう仕分けをしているものでございます。

山際委員 一つ一つ御説明を伺えば多少はわかってくるのかなという気はするんですけれども、今伺った中で、抗告訴訟とか当事者、民衆、機関訴訟等々、四つの訴訟類型と呼ぶものがあるというお話ですが、今回改正する中に新しく、義務づけ訴訟の法定とか、差しとめ訴訟の法定とか、当事者訴訟の中に確認訴訟を入れるとかということも書いてあるわけですよね。

 これも素人としてやはりわかりづらいものでございまして、今の御説明に加えて、一つ一つ何か具体的な例を挙げて、これが取り消し訴訟だとかというのを御説明いただけるとイメージがわきやすいのかなと思うんですけれども、まず、取り消し訴訟というものがほとんどだというお話でございますので、まずはこの取り消し訴訟の具体的な、こういうのが取り消し訴訟なんですよという例を挙げて御説明いただけますでしょうか。

    〔下村委員長代理退席、森岡委員長代理着席〕

山崎政府参考人 行政処分、物すごい数がありますので、その全部を挙げるわけにいきませんけれども、今回、新しく義務づけ訴訟とそれから差しとめ訴訟というのを設けておりますので、それとの関係で典型例を申し上げたいと思います。

 例えば年金とか、それから、あるいは公的保険、社会保険ですね、こういうものの申請をいたします。それで、申請して、行政庁としては、あなたは資格がありません、それで却下処分をするということですね。その場合に、いや、私はもらえる権利があるんだということならば、その処分を取り消してください、こういう訴訟を起こすわけでございます。あるいは、その金額が全然違うとか不満がありまして、その処分はおかしいということで取り消す、こういうようなタイプのものがその取り消し訴訟であるということでございます。

山際委員 何かお役所が、今処分というお言葉を使われていたようですけれども、何か処分というものをやったときに、それが不服だ、だからその処分を取り消せというのが取り消し訴訟だという理解をしました。

 取り消し訴訟はわかりました。では、次は、新しくできる義務づけ訴訟というのはどういうものか、御説明願えますか。

山崎政府参考人 まさに今取り消し訴訟を申し上げましたけれども、却下処分がありました、これについて取り消してください、これが取り消し訴訟ですが、現在はここまでしかございませんので、そうなりますと、処分は取り消されますけれども、最初に申請があった状態に戻っているだけでございまして、その状態で本当に、では、金幾らを払ってくれという状態になるかというのは、また別の行動がそこで入るわけですね。直接命ずるものではないわけです。

 例えば、あなたに資格がありますかどうかというので、結局、資格はありますということになっても、では、幾らなんですかというところまで決めているわけではないわけですね。金額がまた違ってくる場合もあるわけでございます。

 そういう点で、取り消し訴訟では少し足りないんじゃないかということですね。直接、自分がそういう資格があって、資格があれば、大体、いろいろな表があって、自分は幾ら来るということがはっきりわかるようなものについては、それを取り消すだけじゃなくて、幾ら払ってくださいということ、これを義務づける、そういうタイプのものを認めた方が、二段階にならないわけですね、一段階で済む。これがやはり便宜じゃないか、こういうことから、この新しいタイプのものを認めようということでございます。従来も解釈上こういうものがあるというふうに言われていたんですけれども、ではどういう場合にそういうことができるのかということがはっきりしないものですから、ほとんど使われなかったという点がございました。これが一つ、第一点です。

 それからもう一つは、みずから申請する権限はないタイプなんですけれども、これは、例えば、ある事業が行われていまして、そこからいろいろな有害物質が出てくるということなら、公害の問題が起こる可能性があるわけですね。そういう場合に、その地域の住民でいろいろ影響を受ける方が役所の方に、これをとめる規制権限ですね、規制をする権限の発動を求める、それを義務づける、そういうタイプの義務づけ訴訟というものも今回設けましょうということで、操業を行うときのその対象の処分、許可をするとか、そういう対象者じゃないんですね、また別の方、第三者。第三者の方にも、そういう事態が生ずるならば、それに対して規制権限の発動を求める、こういうことを可能にしようということでございまして、これによりましてかなり手段が広がっていくということでございます。

 例えば、申請をしてだめだった人だけじゃなくて、その周りで影響を受ける方、こういう方にも手段を認めます、こういうタイプを認めたわけでございまして、まさに現在の社会でいろいろ起こり得る、生活環境に影響があるいろいろなことが起こり得るわけでございますので、その周辺の住民の方に、争う方法を可能にする、そういう道を開いた、こういうことでございます。

山際委員 やはり少し説明が難し過ぎて、もう少し具体例を、例えば、その事業者とかというのもごみ処理業とか、何かそういう説明をしていただけるともうちょっとわかるんじゃないかと思うので、そんな説明をしていただきたいと思うのですが。

 次に、差しとめ訴訟というのもあると思うんですけれども、これについて御説明いただけますか。

山崎政府参考人 これも、現在の法律では非常に国民は受け身になっておりまして、行政庁の処分があってからそれを取り消すとか、そういうことの手段しかないわけでございます。しかし、今いろいろな行政処分がございますけれども、その状況においては必ず自分にその処分があり得るという場合もございます。そのときに、国民側としてそれをとめる手段が何もないのかと。

 そこで、処分といっても、なかなかどの処分と言うことができないんですけれども、ある処分が行われるということになったときに、それが行われますと、それが公表されるということになると、例えば制裁処分が一番典型だろうと思いますね、操業停止だとかそういうのがあります。それがもし行われるとすると、公表されます。そうすると、名誉や信用に重大な損害を生ずるおそれがある、こういう場合に、事前に、そういう処分はしてはならないといって差しとめるものでございまして、今まで非常に受け身だった国民の立場を、もう少し積極的に対応ができるように、そういう手段を与えましょう、こういう改正でございます。

山際委員 今操業停止という言葉が出ましたけれども、これはお役所の方が処分として操業を停止しますというような話をするわけですね、まず。そうすると、操業を停止しますというようなことと公表ということとは、どういう絡みなんですかね。

山崎政府参考人 これは処分する前でございますので。あるいは、企業で何かいろいろな不祥事が起こったといたします、そういう状況の中で、いろいろな処分の態様があります。ただ、状況から見て、例えば一カ月間操業停止だとかそういう処分が考えられるという場合に、それで自分にも言い分があるという場合に、自分にそのまま処分が下ってそれがオープンになっちゃえば信用を失墜しちゃうわけでございますので、そうすると重大な損害があり得る、こういうような場合に、それはやはり今操業停止一カ月の処分というのは正しくない、だからそれをするなと差しとめるわけでございます。その状態で認められれば、それはもうやっちゃいけないということになりますね。でも、これは裁判を起こしてそこで是正をしていくということをしなければなりませんけれども、そういうふうに予防的な手段を認めよう、こういうことでございます。

山際委員 取り消し訴訟というのと今の差しとめ訴訟というのとの関係が、私の理解では、取り消し訴訟というのは、もうやられてしまった処分を取り消してくれというのが取り消し訴訟なわけですね。差しとめ訴訟というのは、その処分をするよというふうに役所の方から言われたときに、ちょっと待ってよというので差しとめるというのが差しとめ訴訟、そういう理解でいいですね。――わかりました。

 それでは、もう一つ、当事者訴訟の一類型として、確認の訴えというものを明示すると。先ほど、日本人と外国人の間に生まれた子供が日本人国籍だというふうに国籍を確認するというようなお話でしたけれども、それが確認訴訟、確認の訴えということになるんでしょうか。

    〔森岡委員長代理退席、委員長着席〕

山崎政府参考人 この当事者訴訟の中にはいろいろ類型がございまして、例えば、公法上の関係で、公務員が、自分には本来これだけの給与等が払われるはずなのに払っていないといったときに、公法上の権利に基づいて、払えという、給付というのですけれども、こういうタイプのものももちろんありますし、それから、確認を求めるのもありますし、それから、自分はこういう地位にあることを決めてくれというような、形成というのですね、地位を形成するという訴訟とか、いろいろなタイプのものがありまして、この中に全部混在をしております。

 それで、実は、この当事者訴訟というのは、確かに、先ほど申し上げた日本国籍の確認、こういうところで一部使われていたわけでございますが、それほどこういうタイプの訴訟ができるということが一般に知れ渡っていないという状況でございまして、例えば、こういう類型についても使えるようにということから考えたわけでございますが、現実に裁判の例があるもので申し上げますけれども、たしか薬局の開設の問題でございますけれども、今までは法律で届け出制でよかったというものが、法律が変わりまして、それで許可制にしなければならないということで、現実にやっている方がその影響を受けるわけでございますね。その法律自体が憲法に反するということから、そういう義務はないというような訴訟、確認訴訟をします。これを起こしたわけでございます。

 これは、裁判所において起こすのはできるけれども、最終的に、あなたの言い分は認められません、憲法には違反していませんということで負けましたけれども、そういうような、法律が変わったときに、法律自体がおかしいという、それを一般的に言うのではなくて、自分の権利に影響があるときについてはそれを確認することができる、こういう訴訟類型があるのでございます。

 ところが、なかなかそれは余り一般的に知られていないということから、今後、行政計画だとか、行政立法だとか、通達だとか、そういうものに個別に不満があっても、それ自体に文句を言うんではなくて、それが自分の権利に影響がありますよという場合にはこういう類型を使って争っていただきたい、それをはっきりさせるためにここで明示的に書いて、利用していただきたい、こういうことで設けたわけでございまして、なかったものではないんですね。あるものを明確にした、こういうことでございます。

山際委員 今まであったものかもしれないけれども、もう少しわかりやすく、こういうのがありますよということを指し示すためにも、「明示」と書いてあるぐらいですから、そのためにやるんだという御説明だと思います。

 今までつらつらと、一つ一つ例を挙げてもいただいて聞いてきたんですが、やはり言葉は非常に難しいと思うんですね。例えば、最初のところに書いてある「原告適格」という言葉、これは、一般に国民の皆さんが生活していて、訴訟に普通は国民の皆さんはかかわらないことの方が多いと思うので、そういう方々が見たときに、原告適格と聞いてぴんとくる人はほとんどいないと思うんですよね。これは私も、一生懸命聞いて勉強しましたので、原告適格の意味しているところはわかるんですけれども、先ほどの委員の御指摘等々でもありましたように、例えば道路の話等々で、原告適格、要は、訴えを起こすことができる人たちがもう少し範囲が広くなりますよというような御説明があったと思うんです。

 私は川崎ですけれども、川崎あたりで、例えば高速道路をつくりましょうという話をしたときに、高速道路をつくると、地域の住民の方は当然、これは騒音があるだの振動があるだのと反対をするわけですね。そういったときに、これに対して、原告適格があるから訴えを起こすという道をつくっていくんだというようなお話だと思うんですけれども、ただこれは、今は余りに、原告になれる、訴えを起こせる方々が少な過ぎるから、もうちょっと国民の権利をふやそうということでふやすとして、ふやしました、訴えが起きました、でも、すべてのことに関してこれを認めてしまうと、例えば道路もできないしダムもできないしと、逆の効用というのも当然出てきちゃうと思うんですね。これをどのあたりでバランスをとっていくつもりでこの法律があるのかというのを、ちょっと説明していただけますか。

山崎政府参考人 原告適格、確かに難しい文言でございますけれども、法律全体の文言、非常に難しくて、今、法務を中心に現代語化を進めておりますので、その中でなるべく難しい言葉は使わないというような方向で来ておりますけれども、必要最小限のものはお許しをいただきたいということであります。これを全部書き下しますと相当また難しくなる表現になりますので、そこは御勘弁をいただきたいと思います。

 ここで、この原告適格というのは、例えば、比喩的に申し上げれば、ある方の家に行って、こういうことで、用事で来たんだけれども、中に入れてもらえないかというときに、入れるかどうかなんですね、まず。入れなきゃ門前払いというわけですよね。ですから、却下されてしまうということになるわけでございますけれども、まずそこで入って、それで中に取り次いでくださいということなんですね。

 今度、ではそこの家に上がれるかどうかというのは、これは本体の方の裁判になるわけでございまして、現在私どもが言っているのは、門のところでシャットアウトするんではなくて、もう少し中の言い分をある程度言えるような、少し広げるべきじゃないか、そこはきちっと広げていくべきじゃないかということでございまして、では、最終的な裁判の結論が、中に入れたから全部勝つということではございません、それは実態によるということでございますので、そこのところについて、私ども今回は全くさわっていないということで御理解を賜りたいと思います。

山際委員 今、私伺っておりましたら、一年間に大体、この行政事件訴訟というのは二千件ちょっとというお話でございました。どうなるかわからないんでしょうけれども、この改正を行うことによってどれぐらいこれがふえていくという見込みを持っていらっしゃるのか、もし、例えばこれが十倍にふえる、二万件になりましたといったときに、実際に裁判所の方でこれを裁き切るぐらいのキャパシティーがあるのかどうか、この辺についてもちょっと御答弁願えますか。

山崎政府参考人 事件予測はなかなか難しいだろうというふうに思いますけれども、せっかく国民のためにいろいろな手段を広げ、門戸を広げているわけでございますので、今まで不服があった方につきましてはきちっと裁判で対応していただきたいというふうに思っております。

 ただ、これはちょっと、予測はなかなか難しいだろう。ただ、今後の一般的な国民の考え方、非常にやはり、行政に従うというよりも、行政に対して、おかしいことはきちっと物を申そうという、その考え方の発想が大分変わってきておりますので、今後は少し長いスパンでちょっと見ていただかなければならないだろうと思いますけれども、この改正を行って、この附則で五年後に見直すという規定がございますけれども、まず最低限そのぐらい見て、やはりこの今の状態では一向に改善がされていないということになれば、また考えざるを得ないことにもなります。その辺の、五年ぐらいは推移を見させていただきたいというふうに思います。

 ただ、現在の全体の状況では、どんどんどんどん裁判がウナギ登りに多くなっておりますので、ふえていく傾向にはあろうかと思います。仮に膨大にふえていったといったときには、これは、そうだからといって、裁判所が裁判を放棄するわけにまいりませんので、手を抜いてもいいということになりませんので、当然、その場合には人的手当ても、必要なものについてはきちっとお願いをして、国民の権利に支障がないようにやっていくのが当然であるというふうに考えております。

山際委員 わかりました。

 最後に、最後にというか、この改正の中でわからない言葉の中で、執行停止というのが最後の「判決前における仮の救済制度の整備」というところにあるわけなんです。この執行停止の制度というのが、ここに書かれているようなことが、「回復の困難な損害」を「重大な損害」に改めるというようなことなんですけれども、これは具体的にどういうことなのか、事例を挙げて説明していただきたいのが一つ。

 それから、この執行の停止というのと、差しとめ訴訟というんですか、これとの差というのがいま一つ理解できていないんですけれども、そこについても御説明いただければと思いますが。

山崎政府参考人 回復困難な損害、これを避けるために緊急の必要性がある場合、こう言っておるわけでございますが、回復困難でございますので、ある処分がされたら、その人は壊滅的な打撃を受けて、もう二度と商売ができなくなってしまうとか、こういうようなことになると、もう信用も全部失っちゃうわけでございますので、これはちょっと、後で金で云々といっても足りない、そういうような性格のものをいうのが通常でございます。そうなりますと、相当なもの、性質上、もう取り返しがつかないというものにかなり限定されて解釈をされるおそれもあるわけでございます。

 そこで、そういうものだけでは狭いんではないかという議論が行われまして、そんな、完全に金銭じゃ取り返しがつかないというほどではないんですけれども、やはり処分が行われることによって相当な痛手を受けるということで、それで重大な損害が生ずる場合がある、業務が完全にだめになるところまではいかないけれども、回復するについて結構重大な損害が起こり得る、こういう場合もあるわけでございますね。そういう場合も視野に入れて、執行の停止をするかしないか、これを判断していきましょう、こういうふうに変えているわけでございます。

 それで、その場合にも、処分が行われるわけですから、処分の公共性の問題もございますし、必要性の問題もございます。それから、その処分によって第三者との関係もいろいろ生じてくるわけでございますので、そういうようなこともちゃんと考え、こっちの損害も考え、バランスをよく見ながら停止をすべきかどうかを決めていきなさい、こういうことを言っているわけでございます。

 それから、もう一点の御指摘は差しとめとの関係だろうと思いますが、先ほど差しとめを申し上げましたのは、まだ処分が行われる前にとめちゃうわけでございますね。こちらは、処分が行われているんですけれども、その状態を続けられたら困るということから、とめてくれということですね、処分。そういうことでございます。行われたものについてとめるというような形でございますので、そこは少し違うということで御理解を賜りたいと思います。

山際委員 本当に複雑な体系になっているなというのを、今御説明を伺っていて思うんですけれども。

 もう少しわかりやすく、自分自身で理解するために、一般論としてですけれども、一つ、こんな例の場合はどうするのかというようなことをお伺いした方がいいのかなと思いまして、ちょっとお聞きしたいのです。

 例えば、市境の問題、あるいは県境の問題とか、この行政区が違うところの問題というのはかなりいろいろなところで問題が出ていると思うのですけれども、例えば、A市とB市との間、本当に市境の部分に墓地なんかよくつくられることがあると思うのです。そんな墓地が造成されて、そこは山だった、山の頂で市が分かれていたなんというときに、その山の頂に沿って山を崩して墓地をつくったなんという例があったとするときに、例えば、そのB市の方に墓地をつくった。だけれども、B市の方は墓地からその先はもう断崖絶壁で、B市の方からその墓地にアプローチすることができない。だから、A市を使って、A市の方からアプローチしないと、墓地はB市にできているんだけれども、A市を通っていかないとそのB市にできた墓地にはアプローチできないというような事例がもしあったとします。ですから、住民もA市の方にしかほとんど住んでいないといった場合。

 こういう場合に、まず第一に、これは、墓地をつくるということに対して、それこそいろいろな、住民の住環境が悪くなるとか、いろいろな理由があって、これを行政の方が許可を与えて、許可を出して墓地をつくるということになった場合に、これを、墓地をつくるのをやめてくれというような訴えは何訴訟になるのか、教えていただけますか。

山崎政府参考人 ちょっと一般論で申し上げたいと思いますけれども、この対象は、例えば、その墓地造成の開発の根拠となった許可等があるはずでございますので、そうすると、その取り消し、取り消し訴訟のタイプだろうと思います。

 ただ、これを、取り消し訴訟について、だれが起こせるかという問題は、この審議でもしょっちゅう議題になっておりますけれども、原告適格というものがございまして、これは、この取り消し訴訟を起こすについて法律上の利益を有するかどうか、そういうふうに判断される者については起こせる、こういう形になりますので、一般論で恐縮でございますが、そういうことでございます。

山際委員 それでは、その一般論に加えまして、今の話なんですけれども、例えば、その墓地ができる。その墓地のすぐ隣、もう市は違って、すぐ隣に住んでいる住民は、お線香は臭いし、あるいは、そこは今まで緑だったのに住環境が完全に崩されてしまう。しかも、そこを通っていかないと行けないということですから、目の前の道路は車がぶんぶん通るようになる。さらには、駐車場なんかも大して整備されていないから、自分の家の目の前の道路に車をとめられてしまってお墓参りに行くようになる。こういった事態が起きたときに、そこの住民というのは訴えを起こすに足るのかなと思うのですけれども、一般論として、そういった方々だったらこれは訴えを起こすことができるのかどうかというのは、どんなものでしょうか。

山崎政府参考人 なかなか一般論で答えるのは難しいのですけれども、ただ、どういう影響を受けるかということにも、その評価にもよるかと思いますけれども、やはり住民の方々が健康で文化的な生活をしていくという権利があるわけでございまして、そういう中で、本当にどういうような実態、被害が生ずるかということですね。この今回の法律の中でも、そういう実態についても、きちっと、どういうものが生ずるか、そういうことを考慮の対象にしなさいということも言っております。

 それから、もちろん、その墓地をつくる根拠となる法律がございます。そういうところでも、どういうことを考えてその許可をしているのか、その辺の趣旨、目的ですね、こういうものを総合的に考えて、やはり法律上の利益がある、そういうような事態が生じているというようなことになれば、可能性はあるということになろうかと思います。

山際委員 今のお話でちょっと腑に落ちない部分がありまして、例えば、墓地ができたらどうなるかという話だとすると、できるまではわからないわけですよ、現実には。ですから、騒音がどれだけふえるかといったって、実際にできて人がどれぐらい来るかということは、その墓地ができた後じゃないとわからないわけですね。

 あるいは、お線香のにおいの被害だって、どれぐらいお線香のにおいの被害があるのかなんてこれはわからないし、というように、将来になって、被害がどれだけ本当に起こるかわからないといったときに、それが原告適格を持つ者かどうかというのは、それはどのような基準で判断するものなんでしょうか。

山崎政府参考人 それは、許可をするときに、私もその担当じゃないのでよくわからないんですけれども、許可をする場合に、大体どのぐらいの規模なのか、そこにアクセスする道はどうなっているかとか、そこで、例えば、地理的条件、それから風のぐあいとか、いろいろありますね。そういう関係で、お線香の被害ですか、そういうのがどの辺にどういうふうに流れていくか、そういうようなことをみんな考えて、最終的にはその許可をするかどうかを決めるんだろうということになろうかと思いますので、その辺のところは、幾つかやはり当事者の方からきちっと資料を出させ、かつ、役所の方も調査をし、その上で決めていくということで、ある程度推測的なところももちろんございますね。それは仕方がないとして、そういうことはきちっと調べた上で許可を出すということになろうかと思います。

山際委員 そうですね、将来に対する、未来に対することですから、やはり推察というか推測に基づいて許可等々を出さざるを得ないというのは現実的なものだと思うんです。

 例えば、そういった一般的な話にしても例があったとすると、許可に基づいて開発が進行してしまう、だけれども、これはやはり許可を出すべきじゃないんじゃないかと住民の側が思っても、許可はおりているわけですね。そうすると、その開発の進行をとめるというのは、この法体系の中では、とめてくれというのは何に当たるものなんでしょうか。

山崎政府参考人 失礼しました。

 三つほどございまして、まず、住民とその墓地の経営者側で、民事訴訟で、それをやめろという裁判も一つは可能であろうというふうに思います。

 それから、先ほど申し上げましたけれども、開発の許可がおかしいということになると、取り消し訴訟を行うということでございます。

 工事がこれ以上進行しないようにということから、執行停止というようなものを使うとか、そういうような幾つかの手段は設けられているということでございまして、どれが一番その事件にふさわしいかということで選んでもいただく、こういうことでございます。

山際委員 さらに、では、その開発が進んでしまって山が裸山になってしまったといったときに、それを、では、これをもとに戻してくださいよ、そういえば、その許可を出したのはおかしいじゃないですか、今まで緑がいっぱいだったのに、それが裸山になっていて、土砂崩れが起こるかもしれないし、すごく危険じゃないか、これはやはりもとの緑の森の状況に戻してもらいたいんだよといったときには、これは、住民の方は、どういう手続をもってどこにどういうふうに訴えればいいのか、教えてもらえますか。

山崎政府参考人 この場合は、その墓地の経営者がいるわけでございますので、そこが全部、山を丸裸にしてしまっている、崩してしまって、いろいろな被害をこうむるおそれがあるということでございますので、その業者を相手に、もとに復元をせよという訴訟を求める、それがもしできなければ損害賠償を払えというような、一般的にはそういうものが考えられることになります。

 ただ、具体的な内容がどういうふうになるかということがしかとわかりませんので、細かい態様はわかりませんけれども、基本的には、その生活区の環境を奪った相手、それに対して何らかの訴訟を起こして是正していく、これが現在の姿であるということでございます。

山際委員 おっしゃっていることはよくわかるのですけれども、大もとのもとは、例えばB市のそこのかの地に墓地をつくってもいいというふうに行政が許可を与えたから、そのことに端を発してそういったことが起こっていくわけですね。裸になっちゃったものをもとに戻せというときに、それは当事者同士でやりなさいよということだけでは、これは行政の責任は全くないのかというと、やはりそうでもないんじゃないかなと一般的に思うのです。

 ですから、そういった場合に、特に行政事件訴訟法ということですから、その体系の中ではどういうふうに手だてができるのかということをちょっとお伺いしたいんですけれども。

山崎政府参考人 これは行政事件訴訟法の中で、行政は許可をして山がもう崩れちゃっているわけですから、この状態で行政に何をしろというのはこれはなかなか難しいところがあろうかと思いますが、問題は、役所の方は認可したわけでございますので、その結果としてこういう状態が生じたということになればその認可行為について問題があるということから、国家賠償を起こすという方法はあろうかと思います。国家賠償はこの行政事件訴訟法の適用ではございませんので、通常の民事訴訟の対象ではございますけれども、国が賠償責任を負う、こういう形で責任を追及するという方法はございます。

山際委員 今、墓地のことをわざとというか、一つ例に挙げると今回のこの行政事件訴訟法のことが少し浮き彫りになってわかりやすくなるかなと思っていろいろ伺ったわけなんですけれども、やはりお話を伺うと、いろいろな類型があります、こういう形も考えられるし、こういう形も考えられるというようなお答えが返ってくるわけですね。それはそのとおりだと思うんです。

 ところが、国民が一般的にこういったことがあったときには、それが何訴訟法だとか、民事訴訟法だろうが刑事訴訟法だろうが行政事件訴訟法だろうが、そんなことは関係ないわけですよね。自分の住んでいるところの目の前の山がいきなり切り崩されて、それで緑がなくなっちゃったという話になったときに、さあ、一体どうすればいいかという話になって、何とかどこかに駆け込まなきゃいけないんじゃないかというところで、国民の皆さんは普通だったら、道路だってそうですよね、道路ができたときに、これ、クレームを言いたいけれども一体どこに行けばいいんだろうということなんじゃないかと思うんですよ。そこがわかりやすくなっているかどうかというのが実はこの司法制度改革の私は柱なんじゃないかと。

 要は、国民の皆さんが使いやすい司法制度になっていなくちゃいけないんじゃないか、そういう理念に基づいて改革を行おうとしているのであるならば、今この行政事件訴訟法をいろいろ使いやすいように改革するんだということなんですけれども、やはりまだまだそういう意味ではわかりづらいものの一つではないのかなという気がするんですけれども、これで国民が本当に使いやすいものになっているのかということを、これは副大臣にお伺いした方がいいんでしょうか、よろしくお願いします。

山崎政府参考人 法律がわかりにくいというのはもう宿命みたいなところがございまして、なるべくわかりやすくというふうには思っておりますけれども、やはり限度があるということでございます。

 私どもが考えましたのは、国民の方が何か困ったときにやはり手段がなければ最悪な状態になるわけでございますので、そういう意味で、手段はいっぱい設けましょうというのが今回の一つの目玉でございます。あと、これをどういうふうに利用していくか、これはまた大変難しい問題でございます。

 そこで、昨日御承認をいただきました総合法律支援法でございますけれども、これにつきまして、やはりそこのところの問題点を解消しようということから、例えば法律相談等をして、自分が一体どんな手段があるのかということがわからなきゃいかぬわけですね。その場合に、どこでそんなことが行われているのかがみんなわからないわけでございます。そこで、日本司法支援センターですか、こういうものを設けまして、そこへまず第一次的に行っていただいて、こういうような法律の問題であればどこへ行かれたらいいかということでちゃんときちっと道案内をさせていただく。そこで法律相談をしていただき、あるいはそこで、これに専門の弁護士さんがおられるなら紹介をしていただいて、それで速やかに手が打てるものは打つ。

 こういうようなことで、アクセスするについて困らないような、こういう点もこの司法制度改革全体で手当てをしておりますので、これがスムーズに動いて、しばらくその実態を見て、これが本当に皆様方の使い勝手がいいものになることを期待しておりまして、こういう点でもっともっと問題が起こってくればまた司法制度全体として新たな改革をしていかざるを得ないというふうに思っております。

山際委員 ありがとうございます。

 本当に私は、一国民の視点とすると、今申し上げたようなことがやはり大事なんだろうなと。当然、窓口の問題というのが一番国民にとっては大事だろうと思いますし、その窓口から入った後に、きちっとこういう改正が行われて、この改正に基づいていろいろな手だてがちゃんとつくられていますよというのは司法制度改革の柱でしょうからいいんだと思うんですけれども、だとすると、行政事件訴訟法の見直しで、この行政事件訴訟法はわかりやすいものになったのか、わかりやすい仕組みになるように措置されたのかということを改めて、これは副大臣にお聞きした方がいいんですかね、お答えいただければと思います。

山崎政府参考人 わかりにくい話をするのが役人の務めでございますので、私の方から答弁させていただきます。

 確かにわかりにくいのではございますけれども、例えばだれに訴えを起こしたらいいか、これも非常にわかりにくいところがありますので、今回は、基本的にはもう被告は国にしましょうあるいは地方公共団体にしましょうということでわかりやすさを設けております。それから、例えばある処分が行われたときに、これは不服申し立ての手続はどういうことを踏まなければならないか、あるいは、それでも不満があるときに裁判に行くときに、その出訴期間ですね、裁判を起こす期間がどのぐらいかとか、そういう点についてもきちっと説明をする、これは書面をもって説明をする、こういう手段を今回設けておりまして、教示制度と言っておりますけれども、こういうことで、国民の方には手続がわかりやすいようなものになるようにということで、工夫はさせていただいているということでございます。

山際委員 今、くしくも、次にお聞きしようかと思っていた教示という言葉が出てきたんですけれども、「出訴期間等の情報提供(教示)制度の新設」というようなことが新設制度で出されているんですけれども、この法が施行されて、ちゃんと法に定められたとおりに、行政庁が処分を受けた方々に対して書面をもって教示するというようなお話が今ありました。

 まずもって、例えばこの法律の文面なんかを読んでいたって、一般の人がぱっと読んでぱっと理解できるようなものじゃないわけですよね。となると、やはりそこの、法的には書面をもって教示するというふうに書かれているかもしれないですけれども、現実に運用する場面において、これは書面でこうやって説明しているじゃないですかと出されても、目は通したけれどもさっぱりわからないよというようなものだったら全くこれは意味がないですよね。

 そこの部分がきちっと運用面としてできているのかどうかということを、これをチェックする機能がちゃんとあるのか。あるいは、どういうものを出しますというようなものが本当にわかりやすいものかどうかということをだれにチェックしてもらってから出すのか、その辺のところは今どのようにお考えになっているのか、教えていただけますか。

山崎政府参考人 まだ具体的にそこまでは進んでおりませんけれども、今御指摘のとおり、難しい文字がずらずらっと並んでいるといってもなかなかその意味がわからないということはそのとおりだと思いますので、今後この法案を御承認いただいてその趣旨を周知徹底しなければなりませんし、また、行政庁全体としてもわかりやすいものをつくり上げていく、こういうようなことが絶対に必要になってまいりますので、どういう形かはちょっと別として、行政機関にこの種のことが完全に徹底できるような、そういう工夫を考えていきたいというふうに思っております。

山際委員 私はいつも思うんですけれども、例えば、法律をつくられたものに関して、中央省庁の方で、それを広く国民の皆さんにサービスとして提供できるようにアレンジを加えて税務署に落としたり、いろいろな地方行政に落としたりということをするわけですよね。でも、最終的に国民の皆さんがその法に基づいて利益を享受しようとするときにはかなり違ったものになってしまっているという事例が、今残念ながらこの行政の体系の中では多く見られると思うんです。これは何も司法制度のことだけではなくて、学校の問題だってそうでしょうし、いろいろなところで、文部科学省はすばらしいお題目を並べているかもしれないけれども、学校の教育現場までそれがきちっとおりているかというと、なかなかそうではないというような事例だってあると思うんですね。

 この司法の世界でそれが行われてしまったんだったら、やはり非常にこれはもったいないことで、そこの部分が本当の意味でのかぎになってくるんじゃないかなと実は私は思っておりまして、ですから、それを実効性のきちっとしたものになるようにするかぎは何なのかというと、やはりフィードバックさせるというか、チェックさせる機能というのが今余りに足りないと思うんですよ。

 だから、これから運用面になってくるんでしょうけれども、その運用するところで、特に教示なんということはさっき言ったとおりで本当にわかりづらいものだと思うので、これはわかりやすい文章になっているかということを、例えば、処分を受けた方々にその書面を配って、その受けた方々からモニターをして、実際にわかりましたかというようなことを聞いて回るとか、そういったことぐらいまできめ細かくやらないと、私は、現実問題、非常にこれは実効性の乏しいものになってしまうんじゃないかなと思うので、そこの部分はぜひこれから検討していただきたいというふうに思います。

 時間がもうぼちぼちありませんので、最後の質問になるかと思います。

 行政事件訴訟法の一部を改正する法律案というものをこの一枚ぺらで説明を受けたんですけれども、これを読む中だけでも非常にわかりづらい部分がたくさんありまして、例えば、裁判所が、釈明処分として、行政庁に対し、裁決の記録や処分の理由を明らかにする資料の提出を求めることができる仕組みとか、あるいは出訴期間等の情報提供に関する制度とか。まあ、説明を受ければわかります。

 こういうことが今まで制度として全くなかったということの方が実は私は非常にショックなことでございまして、これはやはり非常によくないんじゃないかなと私は思うんですけれども、この事実というか、今までこういった国民に対してのいろいろな意味でのきめの細かいサービスがなかったということに関して、副大臣、どう思っていらっしゃるか、それでこれから先はどうするようにしようと思っていらっしゃるのか、それを最後にお聞きしたいと思います。

実川副大臣 本法案におきましては、裁判所が、行政庁に対しまして、処分の理由を明らかにする資料、あるいは審査請求に係る事件の記録の提出を求めることができるという新たな釈明処分の制度を新設しております。これによりまして、訴訟の早期の段階での処分の理由あるいは根拠に関する当事者の主張及び争点が明らかとなり、充実した審理が迅速に行われることに役立つ、このように考えております。

 また、本法案におきましては、取り消し訴訟を提起することができる処分をする場合には、処分の相手方に対しまして、取り消し訴訟の出訴期間等を書面で教示することが行政庁に義務づけられております。これによりまして、処分の相手方に取り消し訴訟等の提起に関する適切な情報が提供されまして、権利利益の救済を得る機会が十分に確保されることになるというふうに考えております。

 また、御指摘のように、今までこのような仕組みがなかったことについてどのように考えるのかとのお尋ねでございますけれども、国民の権利利益のより実効的な救済を図るという観点からはぜひ早急に導入される必要がある、このように考えております。

山際委員 本当に一般国民に対して開かれて、わかりやすく、そして使いやすい司法制度にしていただきたい、このように切にお願いいたしまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

柳本委員長 御苦労さん。

 午後二時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時五分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時三十一分開議

柳本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りをいたします。

 ただいま議題となっております本案審査のため、来る五月十一日火曜日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

柳本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

柳本委員長 質疑を続行いたします。左藤章君。

左藤委員 自由民主党の左藤章でございます。

 午前中に続いて質問をさせていただきます。私は、きのう水野議員、塩崎議員、また先ほどは山際議員が質問をされておりましたので、なるべくダブらないようにしたいと思います。

 その中で、今回の改正する基本的な考え方とか具体的な改正点は何かという、先ほど三人の方から質問があったんですが、ちょっと通告はしていなかったんですが、救済範囲の拡大というところで、それぞれ、一定の要件のもとでという言葉が出てまいります。ちょっと山崎事務局長さんには申しわけないんですけれども、一定の要件のもとという、一定の要件というのはどのようなことを考えておられるのか。ちょっと質問通告をしていなかったんですが、よろしいですか。救済の範囲の拡大の件です。

山崎政府参考人 救済の権利の拡大でございますけれども、例えば、三条の六項でございますか、義務づけ訴訟のところで、その中で、一号、二号にございます、行政庁が一定の処分をすべきであるにかかわらずこれがなされないときということでございます。

 これは、行政庁がある処分をするわけでございますけれども、それについて裁量の余地があって、どういうものを選んでいくかということですね、こういう点については行政に第一次判断権がございますので、そういうことじゃなくて、こういう申請があったらこういう処分をするということが法令上明らかになっているようなそういう一定の処分、こういうのを求めるということでございます。これは行政の裁量性がそう入らないわけでございますので、そういうものについては裁判の方でこういうことをすべきだというふうに命じてもいいだろう、こういうことを意味しているわけでございます。

左藤委員 ありがとうございました。

 それでは、ちょっと質問をさせていただきたいんですが、行政の不作為についていろいろ問題になることがあるんですね。今行政に問題だと言ってもなかなか取り上げてもらえない、そういうことがあるわけですが、今度、新しい法律のもとでいろいろ変えるということになりますが、もともとの現行法において、行政の不作為に関して司法救済の仕組みはどうなっていたんでしょうか。

山崎政府参考人 現行法上は、行政の不作為が違法とされる場合には、不作為の違法確認訴訟、これを提起することができる、こういう規定になっております。

 この不作為の違法確認訴訟でございますけれども、これは、処分または裁決についての申請をしたもの、申請はしたんだけれども何も音さたがない、ナシのつぶてである、こういう場合が時々見られるわけでございますが、こういうものに関して、そういう判断をしないことが違法であるという場合にこの訴訟を起こしてそれを確認するということでございまして、それを、確認をもし受けますと、行政としてはそれに従った行動をしていかざるを得ない、こういうような担保になる、こういうことでございます。

左藤委員 今回の改正で、三十七条の件なんですが、義務づけの訴えという類型を定めてこの訴えが提起できるようにしています。

 副大臣、申しわけないんですが、この趣旨は。ちょっとお伺いをさせていただきたいと思います。

実川副大臣 御指摘の訴えが提起できるようにしているその趣旨でありますけれども、抗告訴訟の新たな訴訟類型として定める趣旨、これは、給付行政の分野などで国民の行政に対する権利の拡充が図られまして、国民の権利利益の保護に行政が果たすべき役割が増大してきていることに対応しまして、救済方法を拡充しようとするものでございます。

 例えば、年金や公的保険などの社会保障給付などの申請を拒否された場合、また公害防止などのための行政の規制あるいは監督権限の発動として是正措置等の処分をすべきなのにそれがされない場合などには、現行法の定める訴訟類型では必ずしも十分な救済が得られない場合がございます。そこで、このような場合について、一定の要件のもとで行政庁が一定の処分をすべきことを義務づけるという救済方法を新たな訴訟類型として定めることによりまして、国民の権利利益のより実効的な救済手続の整備を図ることができるというふうに考えております。

左藤委員 という、かなりの前進だということに相なろうかと思います。

 今、行政に対して一定の処分を求めるために申請をしたにもかかわらず、先ほど言ったように行政が違法に放置したような場合、その場合に訴えを提起することができ、またどのような場合に請求が認められるか、お答えをお願い申し上げたいと思います。

山崎政府参考人 先ほど、不作為違法確認の訴訟を申し上げましたけれども、これは違法の確認を宣言するだけでございますが、では、それで本当に給付がされるかという心配もあるわけでございまして、こういう場合、これとともに、では、金幾らを払えというのが、まず義務づけ訴訟の一つの態様でございます。先ほど副大臣の方からございましたけれども、年金の給付だとかあるいは社会保障の給付、こういうものを直接求める、こういうタイプのものが一つでございます。

 それとともに、それだけではなくて、申請権はないタイプのものでございます。例えば、ある工場で有害物質を垂れ流ししているという事態があって、それが付近住民に、健康にもいろいろ影響があるといった場合に、その住民の方はどういう行動がとれるかということで、一つは、そういう事態を規制しなさい、あるいは是正をしなさいということ、これを行政庁にそういう行動をするように義務づける、是正命令をするように義務づける、こういうタイプのものでございまして、これは申請権があるないとは違う第三者がやるタイプ、こういうことでございます。

 こういうものについては、やはりそれを起こすなりの法律上の利益がなければならない、こういうことで、少しタイプが違いますけれども、この二つを用意して実際の需要にこたえられるようにした、これが今回の大きな特徴であるということでございます。

左藤委員 そういうことになると、先ほど山際さんの質問でもあったけれども、具体的な金額云々ということは、今おっしゃったようにできないということになるんですか。それはやはり民事訴訟になるんですか。

山崎政府参考人 金幾らというように、ちょっと給付というよりも、そういう処分をしなさい、払う処分をしなさい、そういうことを命ずるということになるわけでございますので、この行政の関係はもともと、今までもそうでございますけれども、命ぜられた者について間接的に強制をしたり強制執行する、そういうシステムはございませんけれども、払いなさい、これだけは払う処分をしなさいと言ったら具体的に金額が出てまいりますので、それに基づいて払っていただける、こういう効果があるということで、別に民事訴訟を起こす必要はございません。

左藤委員 今、申請をした場合の話ですが、申請をしていない者について義務づけの訴えができる場合が規定されていますけれども、この場合、どのような要件が定められているんですか。質問させていただきます。

山崎政府参考人 これは三十七条の二に規定がされているわけでございますが、これは「一定の処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあり、かつ、その損害を避けるため他に適当な方法がないときに限り、提起することができる。」こういうことでございまして、ただ何か事態があるから起こせるということだけではなくて、やはり、申請権がない方がやるわけでございますので、重大な損害があるということが一つと、それから、ほかにもいろいろな手段がある場合にはそちらを使っていただきたい、そういう手段がない場合にはこちらの義務づけ訴訟で対応できますよ、こういうことをうたっているわけでございます。

左藤委員 今、損害を避けるためには他に適当な方法がない限りに提起をすると今おっしゃいましたね。そういう規定をしているということですが、もうちょっと、何でそういうぐあいに規定しているのか、ちょっと質問させてください。

山崎政府参考人 これは、例えば、他人に対する規制権限の行使などの処分を求めるような、申請によらない場合の義務づけの訴えでございますので、申請権のない者が行政の介入を求めるということになるわけですね。

 そこで、いろいろ考慮要件が定まるわけでございまして、他の方法というのは、例えば具体的に申し上げれば、税務関係で過大な申告をした場合にその税額の減額を更正する請求の制度がある場合のように、損害を避けるための方策が個別法の中で特別に法定されているような場合、こういう場合には、減額更正処分の義務づけを求めるというようなことは、他に適切に損害を避ける方法はあるということになるわけでございますので、そういう場合にはそれによってください、そういうものがない場合にはこの類型でやっていただきたい、こういうことでございます。

左藤委員 これは確認をしたいんですが、裁判所が、行政庁が処分すべき旨を命ずる判決をするときに、行政庁がその処分をすべきであることがその処分の根拠になるような規定から明らかであると認められ、また行政庁がその処分をしないことがその裁量権の範囲を超えもしくは濫用となると認めるときと規定されているんですが、どのような場合がこういうぐあいになるんでしょうか。

山崎政府参考人 この意味でございますけれども、行政庁が処分をすべき旨を命ずる判決をするための、これは一義性の要件と言っているわけでございますが、先ほど申し上げましたように、もともと第一義的には行政の裁量があるわけでございますね、そこで処分を行っていくわけでございますが、その処分について行わない場合に裁判所がそれを命ずるという形になりますので、行政の世界に入っていくことになるわけでございます。

 ここで、いろいろな裁量性があって、よく考えるといろいろな方法があるという場合には、これはやはり第一義的に行政に判断していただいた方がいいということになりまして、そうじゃないタイプのもので、例えば、法律で、Aという類型とBという類型、Cという類型、これのいずれかの方法で処分をしなさい、こういうことが決まっている場合があります。それから、あるいは一つの方法でこうしなさいというふうに裁量の余地がないようなものもあるわけでございますが、これについては、裁判所の方で判断をしてもそれは十分判断し切れるということでございます。

 そういう意味で、裁量性のあるものについては一義的には行政庁にお願いをする、そういうものではないものについてこの裁判の対象にする、あるいは、裁量の余地があってもそれが明らかに逸脱しているとか濫用している、そういうのが明らかであるというタイプのものについては裁判所で直接に命ずる、こういうことができるようにしようというのがこのタイプの事件であるということでございます。

左藤委員 今、裁判所が行政庁に命ずることができるとおっしゃったんですが、そういうときに、本当にそのまますっと行政庁がやっていただけるかどうかの問題もあるわけです。できないからこういう問題が出てくるんですが、この辺の指導というのは、一応そういうことになってはいるけれども、現実にちゃんとやれるのかどうか、その辺はどうなんでしょうか。やってもらわなきゃ困るわけですけれども。

山崎政府参考人 これは現行法でもそうでございますが、間接的に強制する方法も、あるいは直接強制をする方法、これは設けておりません。要は、行政は命ぜられたことについては履行する、これが前提でできているわけでございまして、仮にそういうことに従わないといったときには行政そのもののあり方を問われるわけでございますし、その辺の是正というのはまた別途の形で、行政内部の形、あるいは国会の御審議を経ながらそれをやっていくということになろうかと思いまして、そこは政治責任的な話になっているわけでございます。

左藤委員 確かに、そういうようになったら政治責任になることは間違いないし、そういうことになれば、行政庁また首長を中心にいろいろな人が国民また市民から非難をされる、こういうことになるということだと思いますが、そういうぐあいに、ある面では、そうなるとのらりくらりという手もあるので、その辺はやはりある程度しっかりと裁判所の方からも指示をしていただくべきじゃないかな、私はこのように思いますので、よろしくお願いします。

 今回の改正で、三十七条の五だったと思いますけれども、仮の義務づけという言葉がよく出てまいります。この仮の義務づけを求める申し立てが想定されておりますけれども、これの考え方、趣旨、概要、いろいろあるんですが、この辺はどういうお考えのもとでどう対応をするつもりでございますか。お答えをお願いします。

山崎政府参考人 ただいま義務づけ訴訟について申し上げましたけれども、これは、こういう処分をしなければならないということを義務づけるわけでございますけれども、これで裁判を提訴いたしましても、そのままの状態では、審理があって判決が確定しないとそういう状態が実現できないわけでございます。そうすると、それを待っていてはやはり自分の権利救済ができないというものもあろうかと思います。したがいまして、その訴えを提起した段階で仮にそういう地位を義務づけしてほしい、仮の義務づけですね、それから仮の差しとめというのもありますけれども、こういうことを命ずるような制度を設けました。

 この中で典型的に言えるのは、年金など生活の維持に不可欠な給付の認定を求めるような場合、これは本案判決を待っていたのでは生活ができなくなっちゃうという問題もございまして、そこで、本案判決を待っていたのでは償うことのできない損害を生ずることもあり得る、こういうことを考慮いたしまして、こういうような要件のもとに仮の救済ということができるような制度を設けた、こういうことでございます。

左藤委員 今、具体的に年金のお話をなさいましたけれども、本当にそういうことはぜひしていただかなきゃなりませんが、例えば、今、年金の場合に間違って支払いがなかった、裁判所に訴える、行政に訴える。問題はスピードだと思うんですね、たとえ仮の義務づけであっても。何カ月もして仮の義務づけということになってしまっても意味がないであろう。

 この辺はどのようなスピードでお考えになっておられるんでしょうか。

中野大臣政務官 委員の御指摘のとおりでございますが、特に、行政訴訟の審理を充実、迅速化することは、国民の権利や利益のより実効的な救済手続の整備の観点から、今回の行政事件訴訟法の改正におきまして重要な課題になっている、これはおっしゃるとおりでございます。

 今年金の話がございましたけれども、もっと大きな話としても、例えば原発だとか、または公共事業の適否の問題とか、行政庁の専門的なまたは技術的な判断とか、裁量判断を伴うところの行政処分について争われるところの行政事件訴訟で、裁判所が迅速かつ充実した審理をするためには、行政庁が判断の根拠とした資料を早期に訴訟資料とすることが必要だと思います。また、裁決があった場合の審査請求に係る事件の記録におきましては、争点の整理とそれに対する判断がされておりますのが通常でありますので、これを早急に訴訟資料とすることも審理の充実、促進に役立つものだと考えております。

 そこで、今回の法案におきましては、第二十三条の二で、裁判所が、釈明処分として、行政庁に対して裁決の記録や処分の理由を明らかにする資料の提出を求めることができる、こういう制度を新しくつくりまして、そして、今委員が御心配したとおりの審理の充実とか迅速化を図っているところでございます。よろしくどうぞお願いします。

左藤委員 今、中野政務官から大まかな話がありました。本当にそういうぐあいにやっていただきたいと思います。

 先ほどにちょっと戻るんですが、年金の場合どのスピードで考えておられるか、事務局長、ちょっとお願いします。

山崎政府参考人 年金の例を出すのがいいのかどうかちょっとあれですけれども、それは別として、事案、事案によってそれはいろいろ違いますけれども、これは仮の義務づけを求めているわけでございますので、生活に困るということでございますので、やはりそれに間に合うようなスピードでやらなければならない、それは運用上の工夫をしてもらわなければならないということでございますけれども、事案、事案によって違いますので一律に言うことはできないわけでございますが、仮にこれを通常の民事事件として考えた場合に、仮処分という制度がございます。これについても、仮に払う仮払いの仮処分というのがあります。こういうものと非常に似ているところがございますけれども、こういうものについても、生活のあれが逼迫している場合、これはかなりのスピードで判断がされている。物によっては、その日申請があっていろいろ資料がそろっていれば、その日にも出る可能性があります。あるいは、若干調べが必要でも、翌日にはもう相手方にも意見を聞いて、それで発令をしていく。

 こういうようなかなり迅速なやり方が今まで行われておりますので、今後この点については、新しいタイプのものでございますけれども、いろいろ運用を工夫していただいて、なるべく早く決定が出せるようにしたい、こういうことを考えております。

左藤委員 午前中、松野委員もちょっとお話があったんですが、行政訴訟する、民事もそうですが、すると、その印紙代ですね。訴える提起の手数料、印紙代が非常に高いわけでありまして、実は、先ほどお答えもありましたけれども、昨年、民事訴訟について法改正をしてかなり下げた、こういうことがあります。

 具体的にひとつ、行政訴訟の手数料といいますか、そして今度下げられた民事の場合ですが、手数料はどうなったのか。そして、その結果、これはことしになってからの話なので申しわけないんですが、どのように、言い方は悪いですけれども訴訟ができやすくなったのか、その成果、この辺はどうなっているか、お答えをお願い申し上げたいと思います。

山崎政府参考人 昨年御承認をいただきました法律で、全体の手数料を下げるということをやったわけでございます。これはことしの一月から施行ということでございますので、まだどれだけ効果が出たかというデータはないわけでございますが、算定ができない、難しいという算定不能というものがございまして、これについては一万円の提訴手数料ということになるわけでございます。

 これにつきまして、行政の関係でいろいろ処分があった場合には、かなりのものは、どれだけ一体利益があるかというのはやはり算定が難しいものが多いということになろうかと思いますので、そうなりますと、大部分のものは一万円ということになろうかと思います。

 ただ、金額でわかるものがございます。典型的に言えるのが課税処分の取り消し等でございまして、これはもう幾らと出てくるわけでございますので、こういうものについては算定不能とは言えないわけでございますので、これはもう金額に応じた提訴手数料を払っていただくということで賄っております。

 金額が多い場合、印紙が相当な額になるということも考慮いたしまして、二回にわたって、その辺を減額する、こういうような改正を行いまして、なるべく利用しやすいようにという手当てを行っておりますので、これで御理解を賜りたいというふうに思っております。

左藤委員 先ほど松野先生の話、一億に対して百四十万、これは刑事訴訟の方の話だったんでしょうか。先ほど、行政訴訟の方は一万円ぐらいで云々という、今たしか八千二百円という話もあったんですが、そのことを今おっしゃっているわけですね。確認です。

山崎政府参考人 旧来が八千二百円で、今一月から一万円ということになるわけですけれども、それは算定ができないものについてはそうでございますが、さっき事例で出されたのは、税金訴訟なんかで一億円という単位があるとすれば、これは算定ができますので、通常の支払いの金額ということで先ほど指摘された金額になる、こういうことでございますので。それでよろしゅうございましょうか。

左藤委員 ありがとうございました。

 先ほど山際さんが墓地の話をしましたけれども、実は、今から大変な問題になります例のごみの問題、産業廃棄物の処理の問題、そうすると、どうしても山のところを削ってやる。そうすると、住民の人は、山を持っている方はオーケーしても、下流の方が文句を言う。しかし、大きな考え方からするとやはり処分場が要るわけですから県としては判こを押す、そして訴訟になる。こういうことになると、今言った、一万円のコースと言ったらおかしいんですが、そういうことになるんでしょうか。

山崎政府参考人 ただいまの事例では、多分、算定が難しいというタイプだと思います。

 ちょっと失礼いたしました。本年一月から一万円なんですが、四月から一万三千円ということのようでございまして、ちょっと不正確でございましたので、恐縮でございます。三千円上がりましたので、よろしくお願いします。

左藤委員 ありがとうございます。

 それでは、審査の基準についてちょっとお伺いしたいと思います。

 行政の裁量についての審査基準についてはいろいろな意見があるんですが、この審査の基準というのは、非常に漠然としたもので申しわけないんですけれども、どういう基本的な考え方を持って基準を設けているのか、この辺をひとつお答えを、非常に漠然として申しわけないんですが、よろしくお願いします。

山崎政府参考人 これも専門的で、私もなかなか理解できない難しいところがありますけれども、言われているのは、比例原則という考え方と費用便益分析ということがよく言われておりますけれども、定説があるわけではございません。

 例えば比例原則と言われるものは、手段、態様は除去されるべき障害の大きさに比例しなければならない、そういう原則でございまして、選択可能な措置のうち必要最小限にとどめなければならない、こういう原則でございます。

 これともう一つは、費用便益分析ということでございますけれども、これはよく道路の建設などの場合に言われるわけでございますけれども、ある年次を基準の年といたしまして、道路整備が行われる場合と行われない場合、それぞれについて一定期間、便益の額、それで利益が上がる額、それから費用とを算定いたしまして、道路整備に伴う費用の増額分と便益の増額分、これを比較することによって分析、評価を行う。そういう、やったときに起こる問題、それにどれだけの被害が生ずるか、やらなかったときにどういうものが生ずるか、これを比較してどちらの方を選択するか、こういうルールのようでございます。

左藤委員 時間がありませんので最後にさせていただきたいと思います。大臣に一言お願いを申し上げます。

 今回、救済範囲の拡大とか、審理の充実・促進、それから、行政訴訟をより利用しやすく、わかりやすくするための仕組みとか、本案の判決前における仮の救済制度の整備、こういう大まかに四項目で今回の法案が改正されます。四十年ぶりの改正でございます。水野議員、また塩崎議員、また山際議員にも同じことを申し上げたと思いますけれども、ぜひひとつ、この改正の意義だけを改めて大臣の所見をいただきたいと思います。

野沢国務大臣 委員御指摘のとおり、現行の行政事件訴訟法は昭和三十七年に制定されたものでございまして、今回の行政事件訴訟法の改正は約四十年ぶりに抜本的に改革をするものでございます。

 この間に、例えば行政事務の増加という点をちょっと調べてみますと、昭和三十七年の国の予算は二兆四千億ほどでございますが、ことし十六年度は八十二兆一千億、実に三十三・八倍の規模に上がっておる。行政の方はそれだけやはり質、量ともに膨らんでおるわけでございます。

 今回の改革の中では、国民の権利利益のより実効的な救済手続の整備を図る観点から、多様化し、大きくなっております行政に対しまして、御指摘のような四つの視点からの改革を行いまして、総合的、多面的に効果を上げようというものでございまして、極めて重要な意味を有する改革であると考えております。

左藤委員 質問を終わらさせていただきます。ありがとうございました。

柳本委員長 御苦労さん。

 漆原良夫君。

漆原委員 公明党の漆原でございます。

 我が党は、早くから行政訴訟制度の改革について積極的な取り組みをしてまいりました。二〇〇〇年の十一月の「司法制度改革に向けての提言」、この中では、行政訴訟制度の改革については、訴訟要件の緩和など、国民が利用しやすい行政事件訴訟法に改正すべきであるという基本的な考えを示しております。また、昨年八月には、司法制度改革推進本部に対して、国民の裁判を受ける権利を保障し、利用しやすい行政訴訟制度にするよう申し入れを行ってまいりました。

 一九六二年制定の現行行政事件訴訟法は、改革の具体的なきっかけがないまま、これまで実質的な改正はほとんどなされてこなかった。今回、司法制度改革の一環としてこの改正案がまとまったのは、一九九九年からの司法制度の抜本改革を目指して議論を積み重ねてきた結果であります。今回の改正案は、これまで多くの法律専門家から指摘されてきた論点の多くに答える内容になっております。

 正直に私の感想を申し上げさせていただければ、司法制度改革審議会のあの中では、どちらかといえばこの部分は抽象的な言葉で書かれておったんですが、今回の改正点四点ですね。救済範囲の拡大、審理の充実・促進、行政訴訟をより利用しやすく、わかりやすくするための仕組み、本案判決前における仮の救済制度の整備、こういう四点からの改正がなされているわけなんですが、私は、本当によくやったな、一歩前進したな、こういう実感を持っているものであります。そのような観点から、この法案の意義と趣旨を明らかにするために質問をさせていただきたいと思います。

 まず、大臣にお伺いしたいんですが、この司法制度改革の中で行政訴訟改革は国家のあり方にかかわる大変重要なテーマと考えておりますが、今回の司法制度改革における行政訴訟改革の位置づけ、どのように位置づけておられるのか、お尋ねをしたいと思います。

野沢国務大臣 社会の複雑、多様化あるいは国際化等がより一層進む中で、行政改革を初めとする社会経済の構造改革が進んでおります。この中で、明確なルールと自己責任原則に貫かれた事後チェック救済型社会への転換を図る。それは前提として、自由かつ公正な社会を実現していくために、基礎となる司法制度を新しい時代にふさわしく、より身近な利用しやすい制度に改革をしていくことが大事、こう考えるわけでございますが、このような意味で、今般の司法制度改革は歴史的にも極めて重要な意義を有する改革であると考えておるところでございます。

 行政訴訟制度の改革は、このような司法制度改革の中におきまして、司法の果たすべき役割が一層重要となることを踏まえまして、司法と行政の役割分担のあり方を踏まえつつ、国民の権利利益のより実効的な救済手続の整備を図るものでございまして、三権分立や国のあり方とのかかわり、極めて重要な意義を有するものと考えております。

 先ほど左藤委員の御質問にもお答えしましたとおり、この四十年間の間に、行政の方は三十三倍を超える発展を遂げておる中で、この制度そのものはほとんど変わらずに来た。いわば三本足で立てば世の中は安定しますけれども、司法の足がどうも時代の変化におくれてしまっていたのではないかと思うわけでございまして、行政効果のより効果的な発揮のためにも、チェックする機構が立派に整っているということによってバランスがとれていくと考えておるわけでございます。

漆原委員 私も、司法の行政に対するチェック機能の強化という点では、これは行政によって侵害された国民の権利を回復する、こういう観点と、もう一つは、このチェック機能の強化によって行政そのものが透明化する、この二つの大きな効果があると思っているんですね。そういう意味では、ぜひともやり遂げなければならない課題だと思っております。

 次に、今回、行政事件訴訟法の改正が必要となったのはどのような問題がこれまで生じていたことによるものか。行政事件訴訟法の一部を改正する法律案を提出された御趣旨について改めてお伺いしたいと思っております。

野沢国務大臣 行政訴訟制度は、そもそも司法権の行使を通じまして、抑制、均衡の仕組みの中で行政作用の適法性を審査し、国民の権利利益を救済するという重要な役割を有しておるのはもう委員も御承知のとおりでありますが、このような行政訴訟制度の基本であります現行の行政事件訴訟法は昭和三十七年に制定されたものでありまして、四十年余りを経まして、先ほど私も申しましたような行政需要の増大、それから国際化を含めた質的な変化、それから行政作用の多様化、そういった発展に対しまして国民の利益調整が一層複雑、多様化しているわけでございまして、これに対して、行政の効果をより透明化し、さらに効果的にいたしまして、国民の権利の侵害その他に対する防御機能もあわせて考えるということが大事になっておるわけでございます。

 そういうことで、国民の権利利益の救済手続として重要な役割を有するということでございまして、この実効性を高めるために、まず国民の権利利益の救済範囲の拡大、それから二つ目が審理の充実及び促進を図ること、さらに利用しやすくわかりやすくするための仕組みを整備すること、また本案判決前における仮の救済制度の整備ということで、実効を上げるということが必要になっているわけでございます。

 行政事件訴訟法の一部を改正する法律案を提出しました趣旨は、行政事件訴訟について、国民の権利利益のより実効的な救済手続の整備を図る観点から今回の改正に到達した、こういうことでございます。

漆原委員 大臣、ありがとうございました。

 次に、推進本部にお尋ねしたいと思うんですが、今回の法案の改正の一つの大きなところは、原告適格の拡大ということでございます。現行法では原告適格は「法律上の利益を有する者」というふうになっておりまして、これが硬直化して、原告は門前払いになる可能性が高い、なかなか実質審理に入ってもらえない、こういう批判がたくさんあります。

 そこで、改正案では第九条二項で、取り消し訴訟の原告適格の要件である法律上の利益の有無の判断に当たっての考慮事項、これを決めておりますけれども、これによって原告適格が拡大されることになるのかどうか、お尋ねしたいと思います。

山崎政府参考人 確かに、法律上の利益という文言を見ますと、かなり抽象的な文言でございます。こういう中で訴える原告が訴える資格があるかどうか、いわゆる原告適格があるかどうかということを判断するということになりますと、それぞれ、いろいろ解釈があるわけでございます。

 一番狭い解釈といたしましては、その根拠となる法令の、そこの認可するような条文があるとすれば、そこを決めているそこの文言、これでどういう者を保護しているのかということで狭く解釈する方法もございますし、その法律全体の趣旨あるいは目的、そういうところをしんしゃくして解釈をするということも考えられます。それから、実際に起こる、もし違法な処分が行われたときに実際にどんな事態が起こり得るのか、こういうようなことも考慮したり、あるいは関連する法令、そういうところでどういうことを保護しようとしているのか、そういうようなところまで考慮に入れながら解釈をするという一番広い解釈、その中でいろいろなタイプがあるわけでございます。

 これを解釈にゆだねておりますと、それは解釈ですから、自分はこういう解釈をとるということでそれは構わないわけでございまして、解釈の幅がありますから、その中でいろいろやっていくことについては、別に違法でも何でもないわけでございます。そうなりますと、非常に裁判、事例によってばらつきが出てくるということでございますし、場合によってはかなり狭き門にするということにもなり得るわけでございます。こういうことではやはりアクセスする国民の方が裁判をやりにくくなるという反省から、そこのところをどうやって広げていこうかということでございます。

 では、これは、法律上の利益というところを文言をかえてみてという議論も大分やったわけでございますけれども、これは、かえたからといって、じゃ本当にどこの範囲がどの程度広がっていくのか、また同じ問題が出てくるだろうということで、それではやはり、相変わらずあいまいなままでどうしようもない。

 そこで、じゃ文言はそのままにするけれども、一体どういうことを本当に考慮しなければならないというふうにするのか。これは単なる解釈じゃございませんので、考慮事項を定めますので、これを考慮しなければならないということになるわけでございまして、これは、今までの考え方をさらに非常にグレードアップするという形になるわけでございまして、必ず考慮した上で判断しなきゃいかぬ、こういう形になります。

 したがいまして、この条文を置くことによってその範囲は実質的に拡大をしていく、こういう役目を果たすというふうに考えております。

漆原委員 法文では、「当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとする。」というふうになっているんですが、これでもよくわからないなという感じがしますね。

 今局長がおっしゃった検討会の中でも、むしろ法律上の利益というものを文言をかえてはどうかという御指摘があったり、また意見が交換されたと聞いておるんですが、例えば法律上の利益ではなくて現実の利益とか、何かそういう別な文言にかえた方がより門戸が広くなるのではないのかなという気もしないでもないんですが、結局これが検討会での議論の結果、考慮事項方式に落ちついたことになったわけですね。それは、その決定的な要因は何だったんでしょうか。

山崎政府参考人 検討会では、例えば、利害関係という文言に置きかえたらどうか、それから法的利益という文言ではどうか、幾つか考えがいろいろございました。いろいろ議論を経たわけでございますけれども、じゃ、この文言を置きかえることによってどのような範囲で原告適格が広がっていくのか、認められるのか、文言をかえただけではわからないのではないか、どっちが広いか狭いかということも、そう一目瞭然にわかるわけではない、この文言から。

 例えば利害関係という文言でございますけれども、これはかなり提唱されたわけでございますけれども、利害関係というふうになりますと、AとBが何らかの利害を抱えるわけで、例えば紛争状態になるといった場合に、それが法的に守るようなものかどうかということがまた問題になるわけですね。事実上の利害なんというのは世の中いっぱいあるわけでございまして、じゃ、それと法的利害というのは一体どこで線を引くのかという問題が、また同じ問題として出てくるということですね。

 それから利害関係という文言は、民事訴訟法等、ほかのところでもいっぱい使われておりまして、そこで使われている利害関係はまさに法的利害で、極めて利害とか対立が激しいような場合とか、それから極めて強い法的な関係がある場合、そういう場合に使われておりますので、これを持ってきたとしても、それぞれのシチュエーションによって利害関係の範囲はかなりばらつきがある、場合によっては狭くなってしまうということがあって、それで本当に得策なのかということの議論がかなりあったわけでございます。

 私どもも、置きかえてもファジーならば、今のままで、もっとわかりやすい考慮要素を掲げた方が具体的に進展するだろう、こういう選択をしたわけでございます。

漆原委員 ここは結局、裁判所がこの条文を、九条の二項の趣旨をしっかり把握していただいて、適切に条文を解釈していただく以外にないということになるのであって、検討会における議論、法文をつくる際にも最高裁と十分な打ち合わせをされて、法律上きちっと解釈できるという大前提でこの法文をお出しになったんだというふうに私は理解しておりますが、それでよろしいんでしょうか。

山崎政府参考人 この点に関しましては、裁判所だけではなくていろいろなところから御意見を伺いまして、それで、とにかく、文言はそのままでも実質的にやはり広げていかざるを得ないだろう、そういう思いから置いたものでございます。

 この中の表現で、法令の文言のみによることなくという表現があるわけでございますが、これは、裁判の指針としては極めて大きな指針でございまして、やはりその条文に書かれているかどうか、それだけの手がかりじゃいけませんよということを言っているわけでございますので、これをてこにもっといろいろな考慮をしなさいということでございます。これが本当に大きな合図だということでございます。

 この法案が御承認いただけた暁には、我々の方としても、その解釈論をいろいろなところできちっと、広がるんだよということを明らかにしなきゃいけませんし、裁判所の方でもそれはいろいろ研修等を通じて御努力をいただくということになろうかと思います。しばらくその運用を見まして、この法案にも必要があれば五年後に見直すという規定がございますので、そういうようなところで本当に実際どのぐらい広がっていくか、こういうことをチェックしながら今後進めてまいりたい、こういうふうに考えているところでございます。

漆原委員 この法文の文言もなかなかわかりにくい文言ですので、ここのところは最高裁にしっかりと頑張ってもらうしかないなというふうにお願いをしておきたいと思います。

 具体的に、今まで、従来は原告適格を認められなかったんだけれども、こういうふうな文言を、九条二項をつけ加えることによって適格性が認められるようになるという典型的な具体例があれば、お示しいただきたいと思います。

山崎政府参考人 余り具体的な例をいろいろ申し上げますと、最終的には裁判でお決めになることでございますので、そこは余り決めつけはしたくないというふうに思いますが、検討会でもいろいろ議論になった点で御紹介をいたします。

 午前中もちょっとお話を申し上げましたけれども、例えば道路の拡幅工事の場合に、そこの対象になる土地、拡幅の対象になる土地、そこの権利者、所有者等が訴えを起こす、そういう原告適格を持っている、これはいいわけでございますが、従来の解釈では、その周辺に居住している方、別に土地も所有していませんけれども、どこかを借りて居住している方もおられるわけですね、通勤している方もおられる、こういう方については原告適格はないという解釈でございました。

 しかし、これにつきましては、例えば目的を共通にする環境影響評価法ですか、こういう法律が新しくできまして、ここでは、都市計画等の道路の拡幅とか、こういう場合には、すべて環境を考えたそういう計画をしなければならないということにしているわけでございます。そうなりますと、その周りの環境もきちっと保護の対象にして考えなきゃいかぬということになる。そうすると、そこの周辺に居住している方につきましても、例えば騒音の被害を受ける、それから排ガスの被害を受けるということになれば、それはやはり被害が生ずるわけでございまして、そういうことが起こらないようなやり方をしなさいということにつながってくるわけでございます。そういう関係から、どういう被害が生ずるかということにもよりますけれども、原告適格が認められていく方向に拡大していくだろうというふうに考えております。

 あと、典型的に言われておりますのが、午前中にも出ておりましたけれども、公有水面の埋め立ての関係でございますが、従来の解釈では、そこの埋め立ての対象のところの漁業権を持っている方、これは当事者適格がある、その周辺についてはないという解釈でございましたけれども、この点につきましても、環境影響評価法、こういうような考え方を投影してまいりますと、そこの周辺に起こる被害がどういうものか、こういうことも対象にしていろいろ考えていかざるを得ないということで、その進展が望まれるものでございます。

 あと、風俗営業法の、例えばパチンコ店の騒音とか、そういう被害についてどうするかということでございますけれども、これは一般的には、良好な風俗環境をつくるということで、個々の利益ではないというふうに考えられるところもございますけれども、これにつきましては、いろいろな、騒音とか、そういう被害につきましても守らなければならないという条項もございまして、それの関係で、管理人を置くということでチェックをしていくというようなシステムをとっているわけですね、この全体の条文の中で。

 そうなりますと、そういうことで管理人がきちっと管理をしないということになれば、許可の取り消しということも起こってくる。こういう全体の構成になるわけでございますので、そうなりますと、やはり騒音だとか、そういうような周りの環境、これも保護の対象であるというように考えていくことにつながっていくということでございまして、大体この三つが検討会でも大きく議論がされたものというふうに承知をしております。

漆原委員 時間の関係上、四条についてお尋ねしますが、我が党の「行政に対する司法によるチェック機能強化への提言」の中には、訴訟の対象について、多様な行政活動に対する関係において、国民の権利救済の機会を広く確保する観点から、紛争の成熟性がある場合には、行政立法、行政計画、通達、行政指導なども訴訟の対象とするべきであるということを提言してまいりましたが、本法案による改正においてこのような問題についてはどう対応できているのか、お尋ねをしたいと思います。

山崎政府参考人 行政立法あるいは行政計画、通達、それから行政指導、こういうものについても訴訟の対象にすべきじゃないかという議論がいろいろありました。私どもも検討会で議論は経たわけでございますけれども、最終的な結論としては、そのこと自体について裁判の対象にするということにはしていないということでございます。

 例えば、ある行政立法が、それはけしからぬということで何も影響のない人でも訴えを起こして、それを是正するということも一つの方法としてはあり得るのでございますが、現在、裁判というのは、争訟が起こった場合に、その争訟について基本的には解決をしていく、こういうことでございまして、その争訟性がない段階で訴えを提起していくということになりますと、かなり今の考え方と違ってくるわけでございまして、本当に裁判というのはそこまでやるべきものなのかどうかとか、その辺の議論をきちっと経ないとなかなか結論が出てこないという問題でございます。したがいまして、それ自体で訴訟の対象にするということはしておりません。

 しかし、そのことによって自分の権利義務に影響がある場合も当然あるわけでございます。そういう場合には、自分の権利にかかわる問題でございますので、それは争訟性があるということになります。そういうことになりますと、例えば、それは、自分はその通達によって何か処分がされるそういう義務がないというような確認を求めるということで是正をしていく、個人の権利について。そういうことから確認訴訟を提起して、そこで争っていただくというルートがあるじゃないか、こういう議論になったわけですね。

 そこで、当事者訴訟の中に、今まで必ずしも明確ではなかった確認訴訟、これも当然この中に入っているんだということを明示いたしまして、これを使って必要な訴訟は起こしていただく、こういうことからここに明示をした、こういうことでございます。

漆原委員 時間がなくなってまいりました。最高裁にお尋ね申し上げます。

 今回の改正案は国民の側に立った数々の制度が盛り込まれておりますが、この改正を成功させるかどうかというのは、ひとえに私は裁判官の判断にかかっていると思っております。今申し上げました原告適格の判断にしても、あるいは行政側に資料提出を求める制度にしても、運用は、裁判官が司法の行政に対するチェック機能の強化という今回の改正の目的に沿った意識をまず持っているかどうかということにかかってくると思うんですが、最高裁、この点はいかがでしょうか。

園尾最高裁判所長官代理者 国民の権利利益のより実効的な救済を図るという今回の法改正の趣旨を実現するためには、改正法の解釈、運用に当たる裁判官の役割が大変重要であるということはまさに御指摘のとおりであるというように考えておるところでございます。

 裁判所といたしましては、改正法が成立いたしました場合には、各裁判所に対しまして、改正法の趣旨や内容を説明した資料を配付いたしましたり、あるいは行政事件に関する研修の一層の充実を図るというようなことを通じまして改正法の趣旨を的確に裁判官に伝えまして、適正、迅速な行政事件の処理に資するように努めてまいりたいというように考えておるところでございます。

漆原委員 最後に、大臣にお尋ねしたいと思うのですが、私は、今回の改正案は、これまで多くの法律専門家から指摘されてきた論点の多くに答えている、一歩、二歩踏み込んだ内容になっている法案であって、国民の側に立った数々の制度が盛り込まれている、大変に意義のあるものだと思っています。しかし、行政訴訟制度に関してはさまざまな課題が残っていまして、引き続き検討を続けていくことが必要であると思っております。

 この残されている課題について、どのように今後取り組んでいかれるのか、大臣の御所見をお伺いします。

野沢国務大臣 これまで、改革推進本部事務局の行政訴訟検討会におきまして、さまざまな課題について議論が行われまして、そのうち主なもの四点が今回法案化されて盛り込まれたわけですが、今委員御指摘のとおり、まだまだ、ここはどうしたらいいか、直すべきではないか、議論すべきではないかと、課題が相当残されていると考えておるわけでございますが、この御指摘の中には、司法制度改革の現在の枠組みを超える行政のあり方の問題、あるいは三権分立のあり方まで含めた検討が必要な問題も少なくない。

 そこで、私どもとしましては、このような問題につきましては検討会を、まだ十一月まではこの組織は残っておりますから、これを早速再開しまして、御議論をいただきながら検討を続けまして、必要があればさらにその先の枠組みについても、制度を整えた上で、ずっとこれは続けていくべき課題と考えております。

漆原委員 今大臣がおっしゃったとおり、十一月の末には推進本部もなくなってしまいますし、検討会も任期を迎えるわけでありますけれども、ただ、この残された問題は大変大きな問題、これはほかの省庁にもかかわる問題でありまして、まず三権分立の大きな問題もありますし、場合によっては、法務省単独ではなかなかやりづらい内容の作業であろうかというふうに思っています。

 そういう意味では、やはりこれは政府そのものが一体となって今後しっかりと取り組んでいく必要のある課題ではないのかというふうに私は思っておりますが、この点について、大臣、いかがでございましょうか。

野沢国務大臣 まさに今回の司法制度改革は、各省庁の枠組みを超えて、しかも各政党あるいは弁護士のグループあるいは最高裁の知恵、さまざまな方々のお知恵を、まさに包絡的、横断的にいただいた上で結集したものでございますので、その経験は生かしながら、まさに政府全体がしっかり協力して取り組むべき課題とわきまえております。

漆原委員 どうもありがとうございました。

柳本委員長 御苦労さま。

     ――――◇―――――

柳本委員長 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として司法制度改革推進本部事務局長山崎潮君、知的財産戦略本部事務局長荒井寿光君、警察庁刑事局長栗本英雄君、総務省自治行政局選挙部長高部正男君、法務省大臣官房司法法制部長寺田逸郎君、法務省民事局長房村精一君、法務省刑事局長樋渡利秋君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

柳本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

柳本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。吉田治君。

吉田(治)委員 民主党・無所属クラブの吉田でございます。

 きょうは一般質疑の時間で、司法制度改革、随分この法案等も委員会で審議が進み、またロースクールという形で現実にもこの四月から学生が入学をし、司法改革の量ですとか質の部分というふうなものが、法曹人口を含めて随分変わってきたなという感じを受けております。

 私自身、平成十年の三月三日、予算委員会で当時の橋本総理大臣に、そして翌年、平成十一年の一月二十九日の同じく予算委員会で小渕総理に、それぞれこの司法制度改革のことについて質問をさせていただきました。橋本総理のときは、今も議事録を読み返してみますと、ちょうど私は規制緩和というふうな中で司法制度というものの持つ意義というようなことを質問したんですけれども、どうも議論がかみ合わなかったなというのが議事録を読んでおりまして感じるところでございます。

 翌年の小渕内閣のときの施政方針演説で、総理の方から司法制度改革というふうなものが触れられるようになりまして、私も、委員会においては日弁連の方を、多分予算委員会で総理の前でお呼びするのは初めてだったと思うんですけれども、参考人として来ていただいて、司法制度改革というものが、まさに、私がというよりも、そのときから実質始まってきたと。

 それから約五年がたって、今お話しさせていただきましたように、ロースクールができ、またさまざまな司法制度に関する法案が国会において付託をされ、審議をされているというのは、非常に感慨深いものを感じると同時に、いま一たび、この司法制度改革というのは、基本はやはり憲法に基づいている、憲法が定めていることは何かというと三権分立であるということ。

 私たちは立法府の立場であり、大臣を初めとする皆さん方は、そういう意味でいったら行政の立場である。そしてもう一つ、司法権というもの。これは、分立するということは、まさに司法権の独立の意義というふうなものが非常に重要になってくる。

 これはもう私が言うまでもなく、裁判所というものは裁判の独立がございますし、検察という部分でいきますと検事総長、これは、法務大臣の指揮権発動というのは、戦後唯一、一度だけ発動がなされただけで極めて例外的なものだというふうに置かれておりますし、また、弁護士会におきましては、これは強制加入団体であり、懲戒権を含めての自治権というものが唯一保障をされているということ。

 私は、この三権分立の中、しかも法曹三者協議の尊重とかもございますが、弁護士自治を初めとするこういう意義をもう一度お互い改めて確認し合っていくということが、司法制度改革推進本部ももう秋には解散という中において必要なことではないかなと強く感じる次第であります。

 そういうふうな中で、大臣初め、司法制度にかかわるそれぞれの事務局長においでをいただいております。

 まずは、いわゆる士業というもの、それと行政の関係についての認識というものをお聞かせいただき、そしてその後で、それぞれの士業と弁護士というふうなもの、司法の、法曹三者の一つである弁護士というふうなものの違いの認識というものを、法務大臣、それから司法改革推進本部の事務局長、知財戦略本部の事務局長という方々から、それぞれお考えをいただければと思います。

野沢国務大臣 大変大事な視点からの御質問をちょうだいいたしましたが、弁護士につきましては、弁護士会及び日本弁護士連合会が指導、監督、懲戒を行うということになっておりまして、国家機関が弁護士や弁護士会、日弁連に対して監督を行っておりません。

 司法書士、土地家屋調査士については法務局長等が懲戒を行い、これらの資格者の団体、いわゆる司法書士会、日本司法書士会連合会、土地家屋調査士会、日本土地家屋調査士会連合会なども法務省による一定の監督に服することとされておるわけでございます。

 そのほか、弁理士、税理士、社会保険労務士、行政書士についても、法務省が所管するものではありませんが、同様に行政機関から懲戒を行い、またはこれらの資格者の団体も行政機関による一定の監督に服することとされております。

 以上でございます。

山崎政府参考人 基本的認識は、ただいま大臣の方からお答えがございましたけれども、そのとおりでございます。

 弁護士に関しましては国家機関の監督に置かれていないということになるわけでございますが、その理由といたしましては、やはり弁護士が司法制度の一翼を担っているわけでございまして、国民の基本的人権を擁護いたしまして社会正義の実現をするというような重大な使命を持っているわけでございます。

 このような弁護士の職務のやはり特殊性ですか、これにかんがみまして、弁護士会あるいは日弁連が十分な自治能力を有するということからこのようなシステムがとられているわけでございまして、そういう意味では、ほかの士族の方々とは少し違う位置づけがされている、こういう認識でございます。

荒井政府参考人 知的財産推進の関係で弁理士の先生がいろいろなお仕事をしていただいておりますが、弁理士は、発明者の求めに応じて発明の権利化に関する手続などを担当する専門人材として、知的財産の保護にとって必要不可欠な人材でございますし、政府自身、行政としては、日本の国際競争力を強化して経済社会の活性を図っていく、そのための国家戦略として、現在、知的財産を創造、保護、活用する戦略を進めておりますので、弁理士と行政は協力して進めている、こんな関係でございます。

 もう一点、弁理士と弁護士との関係について申し上げますと、弁護士の先生方は法律全般、訴訟実務に精通しておられまして、一方、弁理士は特許等に関する法制度と専門技術に精通しております。そういうことでございますので、弁理士と弁護士がお互いの専門知識を生かして相互に協力して訴訟の代理を行うというようなことで、知財訴訟全体についても両者が協力して進めていく、こんな関係で進めております。

吉田(治)委員 今お聞かせさせていただいていたら、こういうふうなことが言えると思うんですね。

 弁護士というのは、先ほどお話もしましたし、それぞれ言われましたように、国家機関というものには一切監督をされない、自治権が保障されている、懲戒権もみずから持っている。しかし、それ以外のものはすべて行政の、こんな言い方はよくないかもしれませんが、対立するものではない。今知財の事務局長が言われたように、協力をすると。まさに行政の補完というふうな言い方までしていいのかどうかわかりませんけれども、それに近いものだというふうなことが言えるというふうな中において、やはりこの司法制度を推進する中で、おのずとそれぞれ違ってくるんじゃないかなと思ってくるんです。

 この部分、司法制度改革推進の局長、後ほど司法支援センターの運営等のお話をしていくんですけれども、やはり弁護士というものは、例えば訴訟だとかそういうふうなものの中心であって、各士業というのですか、士業というのは、そういうふうに参加していくという部分についてはどちらかというと例外的なものだというふうな認識に立つということでよろしいんでしょうか。

山崎政府参考人 それぞれの違いは今答弁がございましたけれども、私ども司法支援センターとの関連で申し上げますと、それぞれのところでいろいろな各種団体と必要な提携をしていくということになりますので、私はそこには違いはないのではないかというふうに思っております。

 ただ、弁護士の方が法律の実務に関してはオールマイティーの権限を持っているわけでございますので、そういう意味では、非常に分量的にもそれから質的にもいろいろ提携していくことが多いということになりますけれども、それ以外の士族の方々は、それぞれの専門をいろいろお持ちでございます。

 したがいまして、日本司法支援センターといたしましても、そういう需要がある場合には、そういう士族の方々と提携をしながらやっていく、それぞれもち屋、もち屋を生かしながらやっていく、そういう認識で考えているというところでございます。

吉田(治)委員 局長、質問の理解をもうちょっとしていただきたいんです。私が申し上げたのは、支援センターの関係業種との関係ではなくして、訴訟参加というふうなものを考えたときには、各士業というのは、いわば専門性を持っているということであるけれども例外的なものではないか。そうでないと、司法の独立といったときに、行政に監督をされている方々が司法の独立という訴訟の中で同じようなことをできるというのはどう考えてもおかしいのではないかということなんですけれども、それはどうなんですか。

山崎政府参考人 ちょっと聞き違えまして、恐縮でございます。

 確かに、今私が申し上げましたように、法律の事務に関しましては、これは弁護士が弁護士法七十二条で権限を持っているわけでございまして、これが中心に訴訟が行われていくということは当然でございます。

 それ以外で専門性をお持ちの方で、例えば司法書士の方に簡易裁判所の代理をお願いするとか、弁理士の方にその関係の訴訟をお願いするとか、こういうふうに、そこを専門性で助けていただく、こういうふうな関係にあるというふうには理解をしております。

吉田(治)委員 やはりここには自治権という問題があると私は思うんですよ。やはり、各士業の方が専門性を持って参加をされるということは非常に大事なことだと思うんですけれども、自治権があるのとないのと、監督官庁がだれなのかということは、私は、平成十年の前半のときに、当時の宮澤大蔵大臣に公認会計士のことで御質問をさせていただいたことがございます。

 まさに公認会計士の問題というのは、監督権は当時の大蔵省が持っている、各公認会計士の事務所の社員会の会長は天下りの人間がやっていた、非常に大きな問題があったというふうな中で、私は、推進本部の事務局長として、では、各士業の皆さん方に対する自治権というふうなものを例えば弁護士会のように与えるとか、そのことが議論があったのかなかったのか、その辺はいかがだったんですか。

山崎政府参考人 自治権を与えるかどうか、そういう議論につきましては、これはそれぞれの省庁でお考えいただくことで、私ども推進本部は、今回は改革審議会の意見が書いてございまして、そこに盛られたものについてきちっとした議論をして成案を得るという使命でございますので、そこは直接の対象にはなっておりませんので、そこは検討はしておりません。

吉田(治)委員 では法務大臣、法務大臣が所轄をされる中の、監督をされる士業の皆さんに対する自治権の付与の問題については、議論は今までどうだったんですか。

野沢国務大臣 そこまでの御議論は今度の制度改革の中ではまだ及んでいないと思いますが、今後の課題としては、よく承りました中で検討していくべき問題かと思います。

吉田(治)委員 知財事務局長はどうですか。

荒井政府参考人 知的財産戦略本部は昨年の三月にスタートいたしましたので、こちらの知的財産戦略事務局においては、例えば知財の関係で士業としてあります弁理士について、自治権を与えるとか与えないとかという議論はしておりません。

 御存じのとおり、弁理士は経済産業省の方の関係でございまして、そちらの方でどういうふうにしているかは承知しておりませんが、知財戦略本部としては自治権についての議論はしていないということでございます。

吉田(治)委員 今、局長は経産の関係だと言いましたけれども、局長のところが出した報告書によって知財高裁がこの委員会で出てきましたよね。局長自身は昔、特許庁の長官をやられていましたよね。そういうお方が、経産だから私は知らないという部分というのはちょっとおかしいです。

 今後検討課題に入るのか入らないのか、その辺はどうなんですか。

荒井政府参考人 今、私の発言が必ずしも不十分だったのかもしれませんが、今後自治権の問題について取り上げるかどうかは現在決まっておりません。

吉田(治)委員 きょう、こういう司法制度の大きな流れの中で、やはりそこの部分というのはぜひともかかわる皆さん方に押さえていただきたいなと。そうでないと、司法も行政もごっちゃになって、だれが監督して、それぞれがどういう力を持って、どういう対応方でしているのかということが一緒くたになってきているというこの現状というのは、大変私はある意味で憂える部分があるということ、これを私はこの質問の中で皆様方に、そして議事録として残していただきたいと思っております。

 そういう中で、知財高裁ということが過日衆議院で通過をいたしまして、そのときに私もこの委員会で質問させていただきました。

 しかし、法案が通ってからでも、やはり各地の弁護士会から、知財高裁について、東京一極集中だ、大変不便だ、地方の中小企業は切り捨てではないかという声が強く出ておりますし、また、そのときのさまざまな審議の中、附帯決議があのとき出たのですか、そのときの中に、例えばテレビであるとか地域巡回であるとか、いろいろな議論がなされてまいりました。質問をいたしますと、大体答えは、法案ができてからまた考えますということでございますが、それぞれの問題について今後どういうふうに真摯に受けとめて対応していくのか。

 これは、担当の法務大臣と、それから推進本部の方は、もう法案ができたら私は関係ないと言われるかもしれませんけれども、実際上これから運営していく中で、どう最高裁、三権分立の中で最高裁はここへ来れないものですから、最高裁の方に、来れないか、長官が来てという話はできませんので、事務局としてどう考えるのか。そして、実際、この知財高裁というふうなものを東京だけにした知財戦略本部の事務局長として、国会審議を見て、さまざまな問題が出たことについてどう感じ、今後の知財戦略本部の中でどういうふうに対応していくのか、それぞれ、三者、お願いいたします。

野沢国務大臣 知的財産関係訴訟のような専門性の高い知識や経験を必要とする訴訟におきまして、専門性の高い裁判官それから裁判所調査官、専門委員を活用して充実、迅速な裁判をすることも相当なこれは理由があると考えておるわけでございます。しかしながら、知的財産高等裁判所が設置されましても、地方在住者の訴訟遂行の便宜に配慮することもあわせて重要なことと認識をいたしております。委員御指摘のとおりでございます。

 したがいまして、この平成十五年の民事訴訟法改正におきましては、特許事件等の控訴事件の東京高等裁判所への管轄の集中化を図るとともに、支障が生ずる場合には事件を東京高裁から大阪高裁に移送する制度があわせて導入されたところでございます。

 知的財産高等裁判所におきましては、こうした制度や、今御指摘の電話会議システムやテレビ会議システムのように、当事者などが法廷に出頭する負担を軽減するための制度も活用して、地方在住者の訴訟遂行の便宜に配慮していくものと思われるわけでございます。

山崎政府参考人 基本的にはただいま大臣から答弁がございましたけれども、その認識と同じでございます。

 ただ、一点だけ、私どもの立場で申し上げておきたい点は、今回、知財高等裁判所の設立の法案を御審議いただきました。この点は、これができたからといって、それで東京集中が起こったということではなくて、昨年、民事訴訟法の改正が行われておりまして、そちらの関係で東京高裁に集中をするということになったわけです。その東京高裁に所属するものについて、その中で独立した知的財産高等裁判所をつくって、そちらでやっていくということでございまして、実質はここで変わったわけではないということでございます。

 これに関しましては、昨年来の議論を私どもは承知をしておりまして、ただいま大臣の方からも、いろいろ支障が起こった場合には、事件を東京高裁から大阪高裁に移送をして、そこで遺漏なきようにするというルートもございます。それ以外に、出頭しないでいろいろなオンラインシステムを使ってやる方法もございます。それでもし足りないという場合も、証人が来られないという事情もあろうかと思います。こういうものについては、裁判所がそちらへ出張して期日外の尋問をして支障なきようにするというような形で、運用上の遺漏がないように、裁判所の方にもきちっとお願いをしてこれからやっていきたいというふうに考えております。

荒井政府参考人 知的財産高等裁判所の関係でございますが、日本で知的財産の創造、保護、活用が大事だ、そういう観点から見たときに、先端技術に関する特許訴訟のように専門性の高い事件を、充実した審理体制のもとで迅速な裁判をしてほしいという要望が各方面から寄せられたわけでございまして、知的財産戦略本部といたしましては、こういう要望をどう考えるか、いろいろな議論、検討をした後、昨年の十二月に、知的財産高等裁判所を創設する法案を作成してはどうかという提案がまとめられたわけでございます。

 一方、御存じのとおり、知的財産高等裁判所を含む知財訴訟のあり方について、司法制度改革推進本部においても広範な検討が進められて、こちらの方では、本年の一月に、東京高等裁判所に知的財産高等裁判所を設けるという具体的な案が示されたわけでございます。

 こういういろいろな方面での検討を経て、内閣として閣議決定した法案が国会に出されて、国会でいろいろ御審議していただいている、こういう経緯でございますが、その過程において、先端的なものを集中的にやってほしいという声と、それから一方、先生から御指摘のとおり、地方在住者への関係はどうするんだという御指摘もございまして、この点についても、こういう検討会においてもいろいろな議論がなされまして、そこで、今お話ございましたが、テレビ会議とか電話システムとかいろいろなものを使ったり、いろいろな法的な手当てをしていったらどうかというようなことになされたわけでございますので、そういうことが適切に運用がなされて、地方の方にも御不便をかけないような運用がなされていくということを期待しているわけでございます。

吉田(治)委員 三人とも答えは一緒やったということなんですけれども。

 法務大臣、今、見直しというのですか、見直しとは、知財高裁は来年、再来年度ですか、始まったときに、大体どれぐらいをめどに、実際運用していった後で、これは高裁ですから最高裁がやることなんでしょうけれども、見直しする予定というのですか、考えをお持ちなんですか。

    〔委員長退席、漆原委員長代理着席〕

野沢国務大臣 これは、やはりこの法案を実施していく中で、あるいはそれ以外にも大きな課題がいっぱいあるわけでございますから、各方面の知恵をいただきながら、その中で、問題があればやはり取り上げていくということで、今から予定があっていつまでにということではございませんので、一般的な意味での見直しということでございます。

吉田(治)委員 先ほど知財事務局長が、特許の問題は経産でということだったので、先ほど経産委員会で質疑がございまして、やはり特許法の改正を含めていくと、地方の声、中小企業の声、そして、今回の司法制度改革は、前回の知財高裁の質疑のときにも申し上げましたけれども、あまねく国民が裁判を受けやすくするというのが本来の司法制度改革の目的であったのが、これはどうも裁判を受けやすくしていないような、便利さだ何だという部分でいうと、ちょっとその辺は私はどうも違うんじゃないかという疑問を前回も申し上げました。

 それは今でも消えないということだけ申し上げさせていただきまして、先週の金曜日、この委員会で採決がなされましたいわゆる司法ネットについて質問をさせていただきたいと思います。

 もうるる委員会でも質問があったと思いますけれども、私の方は、数点につきまして確認の意味を込めての質問をさせていただきたいと思います。

 まず最初、法務大臣、この司法ネットを実際に運用していく中で、日本弁護士連合会、法曹三者の中の一員であられる日弁連の持つ意義というのは、やはりもちろん、司法ネット、弁護士さんをという部分においては、大変大きな影響力というのですか、力をおかりする部分もあるかと思うんですけれども、連携についてはどういうふうにまずお考えになられますでしょうか。

野沢国務大臣 総合法律支援の基本理念は、民事、刑事を問わず、あまねく全国において法による紛争解決に必要な情報やサービスの提供が受けられる社会を実現することでございます。この基本理念を実現する上で、日本弁護士連合会の果たすべき役割は極めて大きいと考えられます。総合法律支援の実施及び体制の整備に当たりましても、日本司法支援センターと日本弁護士連合会との間で適切な連携協力を保ちながら進められる必要があると考えております。

 具体的には、例えば、いわゆる司法過疎地域における支援センターの事務所配置等の検討に当たって日本弁護士連合会の取り組みと連携を図ること、また、被害者支援に関する業務を行う上で、日本弁護士連合会と提携して、犯罪被害者問題に精通した弁護士を犯罪被害者に紹介し得る体制を整備することなどが考えられるところでございます。

 この法律の発足前にも、弁護士連合会、日弁連とは、何回も御意見をいただき、これをまた司法制度改革推進本部の議論にも反映させて、今日まで来ているところでございます。

吉田(治)委員 私が質問するまでもなく、連携を強めていかないと立ち行かない部分もあるかと思います、るる質問の中でお聞きしますけれども。

 まず、民事法律扶助の拡充というふうな中で、司法制度改革審議会の意見書の中でもこの扶助業務の充実発展ということが、欧米に比べておくれているということで提言がなされております。しかしながら、この総合支援法では、従前の扶助業務を踏襲しているというだけで、この充実発展という検討部分がちょっと足らないのではないかなと考えられております。

 では、この意見書に記載されている扶助業務の充実のために、さらに総合的、体系的な検討を行うということは考えられているのか。あるとすれば、推進本部もなくなってまいります、今後どのような機関でこの法律扶助の部分、充実発展というものを行っていくのか。機関と、そしていつごろから行うのか、その辺はいかがでしょうか。

山崎政府参考人 まず、今度の総合法律支援法案の中でどういう充実の施策が打たれているかということでございますが、これは、現在、この扶助につきましては、財団法人で行っておりますけれども、これは、現在のシステムでは一般の開業弁護士等にお願いをするというシステムでございます。今回の支援センターの構想では、それのみならず、常勤の弁護士、これを雇用いたしまして専属的に法律事務を行わせる、こういうシステムを取り込むということでございます。

 例えば、自己破産につきまして、かなりの今件数があるわけでございますが、これを個々の弁護士さんにお頼みをするということも十分可能ではございますけれども、なかなか能率が上がらないところもあるわけでございます。そこで、ある特殊の分野に関しましては常勤弁護士に全部やらせまして、それは給与システムでございますので、一件一件で払うわけではございません。そういう関係から能率を上げることも当然可能になるわけでございます。

 それから、日本司法支援センターという専属の組織をつくって、そこできちっとした運営というんですか、効率のいい運営をして、それでこの扶助についてスムーズな運営が行えるように、こういうことで充実を図っております。

 ただいま御指摘の点は、例えば対象の範囲の拡充とか、そういう議論だろうと思います。金額的には、平成十一年から平成十六年度の予算を見ますと、四倍に膨れ上がっているぐらいに急成長をしております。もとが小さいといえば小さいわけでございますけれども、それなりに、着実に着実にふえてきているわけでございます。これは今後も続けてまいりたいということになります。

 この法案は、この本部が終わりますと、所管の省庁のところに戻るわけでございますが、これは法務省になるわけでございます。

 具体的にこの問題について、いつまで、どういうふうにやっていくというまだ具体案はございませんけれども、まず日本司法支援センター、これをきちっと設立して、そこで人をきちっと確保して安定的に運営が行われるように、これが最大のまず目標でございまして、これがきちっといくようになって、その後の発展、業務をどうしていくかということもきちっと視野に入れながらやっていきたい、こういうふうに考えているところでございます。

吉田(治)委員 山崎局長が言いたいことは、こういう弁護士と建物とをつくってやるからと。司法制度改革審議会の意見書にある民事法律扶助の対象事件の範囲、対象者の範囲などは限定的である云々と。これについては、この支援センターがちゃんと運用されてから、その後考えるんですねということが一点。そして二点目は、それを考えるのは、支援センターではなくして、推進本部の後を引き継ぐ法務省が考える。この二点、それでよろしいんですか。

山崎政府参考人 これはもちろん、運営して、そこで考えるということではなくて、今から考えていくことではございますけれども、その状況を見ながら、最終的にどうしていくかということを決めるということでございますし、その担当をするのは法務省でございます。

吉田(治)委員 ということは、対象の範囲だとか対象者の範囲等々については、今後は法務省が検討していく、それは、センターが設立されていく、いかないは別にして、随時していくんだ、そういうことですね。

山崎政府参考人 これは重要な課題でございますので、これから設立に向け、それからその先も含めて、それはきちっとそのフォローをしていくということになりまして、それが可能になる一番早い時期に、拡大の方向でいろいろ検討をして、最終的にやっていきたいということでございますが、これは最終的には法務省の方の決断になるわけでございますけれども。それは、ただほっておくという意味ではないということは申し上げたいと思います。

吉田(治)委員 それで、それと同時に、今局長の方の話から、法律扶助協会の話、今まで法律扶助協会がやってきた部分も大変多うございます。

 支援センターが行う扶助業務というふうなもの、それは、法律扶助協会の場合には自主事業というのが結構ありまして、大阪でしたら例えばホームレスの問題であるとか、福岡でしたら難民支援の問題であるとか、そういうふうなことを法律扶助協会の方が広くやってきた。しかし、支援センターの方が行うものは、どうも扶助協会のやってきたものの、ある意味で一部というか、共通的なものをやっていくんだというふうなとらえ方がなされるんですけれども、そういうふうな場合に、まず一点目は、では、今までの法律扶助協会のしてきた部分について、支援センターで受託をしていくということが可能なのかどうかということ。

 そして、その二点目として、法律扶助協会は今、要するに寄附金という形で賄われていると聞いております。この寄附について、例えば、今でしたら指定法人という形で弁護士会が寄附を受けてという形をしておりますけれども、その辺の寄附の、資格とか地位を受けるようなものが、手当てというものをしていかなければならないと思うんですけれども、その辺は、今後、この法律扶助協会の業務の部分、そして資金の部分、それと支援センターの関係というもの、その辺はどういうふうになっていくんでしょうか。

山崎政府参考人 この法律の中で、司法支援センターの業務というのは基本的に決められております。幾つかきちっと列挙されているわけでございますが、その列挙された業務に支障のない範囲で、業務方法書で定めるところにより、国や公益的な法人等の委託を受けて業務を行うことができる、こういうシステムにしております。

 ただいま御指摘の扶助協会の方で自主事業を行っております。これはいろいろな各種団体からの依頼に基づいてやっているというふうに承知をしておりますけれども、これにつきまして、基本的に、これからその支援センターができて、そこと扶助協会とどういうふうに定めていくかという、その問題にはなりますけれども、私どもとしては、なるべく広く、受けられるものは受けたいということを予測しております。ただ、ある一部で行われているもの、これが本当に受けられるかどうかというのは、これからちょっと詰めなければならないわけでございますけれども、基本的には、支障のない限りはそれは承継をしていくということになろうかと思います。

 それから、寄附金の受け皿でございますが、そこはちょっと、私どもが直接やるかどうかわかりませんけれども、例えば今寄附金の受け皿が、財団法人がやっているものがなくなってしまうという場合であれば、あるいは日弁連の方に御相談を申し上げて、日弁連の方で受けていただいて、日弁連の方からその司法支援センターの方に事業として委託をいただく、こういうような形でやれば可能であろうかというふうに考えておりますので、今後、運用でございますけれども、そこは遺漏なきようにきちっとやってまいりたいというふうに考えております。

吉田(治)委員 局長、要するに、扶助協会が支援センターに委託をしますよね。委託するといったらお金を払わないかぬわけですよ。扶助協会はお金をどこかから調達してこないかぬ。その扶助協会のお金は寄附金で賄われる。それについては、今これは財団とかでやられている部分、それについては、今後それぞれで協議をしていくということでよろしいんですか。

山崎政府参考人 ちょっと私、そこのやり方までは、それはいろいろな工夫がございますので、そこはちょっと私どものところで言うべきことではないと思いますけれども、ただ、現在やられている方法を、私が承知している限りでは、扶助協会はいろいろ受けて自主事業でやっておられますけれども、いろいろな各種公的な団体とかそういうところから、補助金つきというのですか、それで委託を受けてその事業を行っているというふうに聞いておりますので、そういう団体があれば、その団体から今度は日本司法支援センターの方に依頼をしていただいて、そこで業務を行っていく、こういうやり方をすれば当然引き継げるということになるわけでございますので、今後、財団法人がなくなりますので、なくなって司法支援センターに振りかわりますけれども、その間でどういう形でつないでいくかということを大いに詰めていきたいというふうに考えております。

吉田(治)委員 まず、お金の問題というのは大切な問題でして、ちょっと質問通告した順番と変えていきますと、お金の問題と財政という部分について、これは国選弁護人も司法支援センターがしていくというふうな中で、これは国選弁護については、テレビとかでもドラマでもされているように、本当に低額、低額ということが私たちよく言われるのですけれども、財政も厳しい中で、今までの国選弁護報酬よりも下回るということは、ちょっと、やはりされている先生方にとってもつらいんじゃないかな。

 各地方自治体、弁護士会などの関連法律専門職団体などの協力も必要な中なんですけれども、やはりお金の問題というのはちゃんとしていかなければいけない。

 予算の方もざっくり二百億だとかいうお話も出てきております。大変厳しい財政状況ですけれども、この財政の部分というのを、今の委託のお金も含めてどういうふうにこれから考えられるのかなということと、それから、今回の法の中で、修正が出まして、被害者援助であるとか高齢者、障害者援助というふうなものが一文加えられるようになりました。まさに弁護士費用などの負担も含めた経済的支援というふうなものもこれから必要になってくると思います。

 やはりお金がかかわってくる部分がこの支援センターにとっては大きくなってくると思いますけれども、こういうふうな経済的支援も視野に入れて、今申し上げたさまざまな被害者援助であるとか高齢者、障害者援助というふうなものが検討されていくと理解してよいのか、その辺はいかがなんでしょうか。

山崎政府参考人 ただいま、ちょっと前の答弁を若干修正させていただきたいと思いますが、この財団法人が解散をすると申し上げましたが、そうではなくて業務が全部引き継がれる、こういう趣旨でございましたので、御了承いただきたいと思います。

 この国選弁護等の関係でございますけれども、これにつきましては、この今回の法案の中では、国選弁護人の報酬及び費用の算定基準を定めるにつきましては、契約約款、これで決めを定めまして、これに従った報酬等が支払われる、こういうシステムになっているわけでございます。

 先ほど御指摘の点がございます。現在より減らないようにということでございますが、今後これは詰めてまいりたいと思いますけれども、従来の経緯、こういう点も十分に考えた上で定めていくということになろうかというふうに考えております。

 それともう一点、例えば高齢者あるいは障害者の方、こういう方々の支援、それから犯罪被害者の方の支援等、これにつきましても法案のところで御審議をいただきまして、特に高齢者あるいは障害者の点について、その文言上、この法律上、そこが明らかでなかったということから、議員修正をお願いしまして、そこが加わったということでございまして、これも大変重要な業務の一つだということを認識しております。

 今後、そういう方々の支援の方法につきましては、またいろいろなところから自主事業として依頼を受ける可能性がございますけれども、それについてもその法人の方で柔軟にいろいろ対処してもらえるように今後してまいりたいというふうに思っております。

中野大臣政務官 委員から財源措置についての御質問がございましたので、私の方からも申し上げたいと思います。

 今おっしゃったように、支援センターでございますけれども、これまで、仕事としては、法務省で予算を確保してきました民事法律扶助事業の関係の業務、これが一番大事でありますが、これに加えまして、法による紛争解決制度の有効な利用に資する情報提供の充実強化の業務、また国選弁護人の選任に関する業務、いわゆる司法過疎地域における法律事務に関する業務、また犯罪被害者の支援に関する業務等、幅広い業務を担当することが予定されておりますが、その中で、特に、現在の民事法律扶助関係につきましては約四十億三百万ということでございますし、また、国選弁護関係につきましては、これは最高裁の関係でございますけれども、約八十億ぐらいだろうというふうに伺っております。

 また、今後につきましては、その二つを中心といたしまして、いわゆる司法過疎の問題、また犯罪被害者の支援、またいわゆる情報提供というような問題についても、法務省として必要な予算の確保に努めてまいる、これが非常に重要なものと考えておりまして、今委員のおっしゃったような意味で、財政的な支援については全力で頑張りますことをお誓いいたします。

吉田(治)委員 今、政務官の答弁の中に、被害者等の支援について、情報、資料の提供と条文にも書いてあるのですけれども、それ以外に、例えば弁護士費用などの負担を含めた経済的支援というものがちょっと必要じゃないかなと思われるのですけれども、こういう被害者等に対する経済的支援というものも視野に入れて措置がなされていくんですか。

山崎政府参考人 今回の法案の中で、先ほどの民事扶助の利用でございますけれども、被害者の方で、その加害者の方に損害賠償をしたいとか、いろいろなそういう法的措置があるわけでございますけれども、それに関しまして、資力要件というものがございますけれども、資力のない方につきましては、この民事法律扶助の事業として、弁護士さんにお願いしてその権利の実現をする、こういう点はできるようになっております。

 これ以外に、では、刑事裁判に関してどういうふうにしていくかという問題につきましては、現在、法務省の方でもっと広い視野でいろいろな角度から研究を今続けておりまして、そういう成果を待って今後対応してまいりたいということで、今回はそこのところはございません。

吉田(治)委員 経済的支援はないということですな。

 ほんなら、それでしたら、あと、同じお金のかかることばかりなんですけれども、この支援センターができますと、スタッフ弁護士という形で、非常勤を含めて百五十人から二百人と、量的確保という部分と質の担保という部分があります。そのために、司法修習終了者については、現在でも弁護士会が一定期間、一年半から二年程度、失礼、このスタッフ弁護士に関して、公設事務所もしくは開業弁護士事務所で実務の研修を終えてから採用すべきものである、私はそういうふうに考えております、量の確保というのと同時に質の確保のために。しかし、支援センター就職予定者を一年半から二年間、実務研修のために採用する事務所というのはそんなにあるのかな。

 また、採用予定者の実務研修を弁護士会にゆだねるとしても、その費用の全部または一部というふうなものが、今後、国が負担していくべきものではないかなと思われるのですけれども、このスタッフ弁護士の質と量の確保の中において、今申し上げましたように、どれだけの自分たちは費用をかぶるつもりがあるのかというふうなことはいかがでしょうか。

 そうでないと、私、いろいろ資料を取り寄せていましたら、やはり毎年毎年、検事さん、裁判官さんの定年退職を迎える方が数十人ずつおいででございまして、その方々のよもや就職先というふうなことは考えられていないんだと思いますけれども、そこも含めていかがでしょうか。

    〔漆原委員長代理退席、委員長着席〕

寺田政府参考人 現在も過疎地域を中心といたしまして弁護士会が公設事務所をお設けになっておられます。これは俗に、ひまわり基金の事務所、こういうふうに言われておりますが、仕組みとしてはそれほど難しくありませんが、実際問題といたしましては、やはり人をどうやって確保するか、その人をそのひまわり事務所に送り出すときにどのようなトレーニングをするかということが大変に難しい問題だというふうに実務上言われておりまして、これは私どもも十分に承知しておるところでございます。

 今後、この司法支援センターが同じような仕事をする場合に、やはり大量のスタッフを過疎地域なりあるいは地方の事務所に常駐させるということはこれまでよりも一層大きな規模でなされるわけでございますので、当然のことながら、そのスタッフの養成というのは大変重要な仕事、しかも非常に難しい仕事になるだろうというふうに覚悟をしているわけでございます。

 これについては、冒頭、日弁連にどのような御協力をいただくかということを大臣の方からも申し上げたわけでございますけれども、やはり、日弁連を中心といたしまして、弁護士会の皆様方に御協力をいただく最大の問題だろうとは思いますが、しかしながら、この支援センターは支援センターで一つの独立の機関でございますので、その仕組みというのは支援センターの方でも十分に今後検討していきたい、このように考えているわけでございます。

吉田(治)委員 いや、それは、仕組みを考えるのはわかるんですわ。そやから、そのスタッフに入るのに新卒者を雇うんでしょう、これからどんどんロースクールで出てくるんですから、百五十人も二百人も。そうしたら、実務トレーニングをどうしはるんですかと聞いているです。どうするんですか。

寺田政府参考人 これは、ただいま申し上げましたように、基本的には既存の弁護士事務所というものに多くを頼らざるを得ないわけでございますが、しかし、それは徐々に弁護士事務所も拡大して、このようないわば新人のトレーニングをできるような場が広がっていくわけでございますので、そういうものにひとつ期待をするというところがございます。

 しかし、それは実際にやってみなければわからない部分もございますので、それについては十分に弁護士会と御相談をしてやらせていただきたい、こう申し上げているわけでございます。

吉田(治)委員 その場合も、弁護士会と相談したら、費用は少しでも出すという考えはあるのかないのか。

寺田政府参考人 経費をどういうふうに負担するかということはこのセンターと弁護士会との問題でございますので、私どもで現在申し上げることではないことでございますけれども、十分に今後相談されるんだろうというふうに考えております。

吉田(治)委員 今、スタッフ弁護士ということで、全国五十カ所に支部を置かれると聞いています。そこに大体スタッフ弁護士が配置をされると考えていいのかということ。そして、この支部長というお方は弁護士のお方がなられるのかどうかということ。そして、弁護士は地裁があるところが原則と言われておりますけれども、その下に例えば支所という部分は置かれるのかということ。これがまず支部に関して三点。

 それから、法文の中にも書いておりますように、地域性の確保ということ。そして、それぞれ協議会というものを設置すると書かれております。これは諮問機関なのか審議機関なのか、また都道府県ごとに対応されていくのかということ。

 そして最後、支援センターから弁護士会等への委託について、今でしたら本庁以外に例えば大阪弁護士会でしたら四カ所の法律相談事業なんかをしておりますけれども、こういうふうなものも支援センターの無料相談センターという形で、相互乗り入れという形になっていくのか。

 その辺を含めて、最後、まとめて御答弁いただきたいと思います。

中野大臣政務官 私からまず御答弁申し上げます。

 まず、支援センターの業務につきましては、すべて現場の事務所といいますか、そういうところで行われることになっております。地方の事務所というのは、今委員おっしゃいましたけれども、まず五十の地裁本庁の所在地になるところ、これが中心になりますが、これの検討する問題としては、司法過疎対策としての事務所の問題とか、また大きなところ、例えば東京地裁なんかでいきますと八王子等についてはこれから検討するんだろう。これは私どもまだ正式に決まったと思いませんけれども、そういうことで検討がされておるということでございます。

 今、現場の長につきましては、支援センターの組織の具体的なあり方でございますけれども、効果的、効率的な業務遂行という観点から、各地の実情を踏まえて検討されるべきと考えております。

 また、今、支部長を弁護士から任命すべきではないかという御質問がございましたけれども、この支援センターの地方の事務所におきましてその長となるべき方を置く場合におきまして、地域の関係者の皆さん、これはもちろん、裁判所や検察とか弁護士会とか検事長とか、いろいろな方がおりますけれども、そういう方の御意見を伺った上で、地域の司法サービスの需要を的確に把握して適宜に対応することができるだろうその職についてふさわしい者が、その中には、当然弁護士を含めた有識者の中から選定されるべきと思われますが、具体的な内容については今後検討されるべきものと考えておるわけでございます。

 それから、今質問が幾つかございましたから申し上げますけれども、この仕事の中に、協議会の話がちょっと出ましたから申し上げますけれども、法的支援に対するニーズというものは全国各地で一様ではありません。司法センターは、業務の遂行に当たりまして、先ほども申し上げましたけれども、各地域のニーズ、特色等を十分に踏まえまして適切に対応することが求められておるわけでございます。そのためには、それぞれの地域の利用者またはサービス提供者につきまして、例えば弁護士会とか司法書士会とかいろいろな方の御意見を聴取するなりしまして地域の実情を把握する必要があります。

 各地において開催されることの協議会につきましては、例えば構成とか規模とか、それから開催地だとか開催日とか、そういう問題につきましては各地域の実情に応じてそれぞれの地区で、支部でもって、支部といいましょうか、地区でもってそれを実現していくというふうに考えております。

 よろしくどうぞお願いします。

吉田(治)委員 では、審議機関なのか議決機関なのか、それともう一つ、支援センターから弁護士会等の委託について。その質問。ここが抜けているよ。

山崎政府参考人 これは協議機関でございます。

 それから、支援センターから弁護士会への、ちょっと意味がつかめなかったんですが、ちょっと御質問いただけますか。恐縮でございます。

吉田(治)委員 もう時間がないから、これはまた今度にします。あと知財さんも来てもろうているんですから。

 申しわけないけれども、きのう質問取りに来た人はだれやのよ。政務官にちゃんと答えさせるようにと何遍も言うたやないの、ほんまに。この委員会に来るたびに僕が怒っているというのは、いいかげんにさせてほしいよ。

 大臣、どう思っているんですか、それは。責任大臣としてちゃんと言うてください、一言。

野沢国務大臣 御質問の趣旨をより的確にいただきまして、しっかりまた答弁いたします。

吉田(治)委員 そういう中で、知財の事務局長においでいただいております。これは、知財高裁はもともとこの知財戦略本部の報告書の中から出てきたという中で、そういう意味でこの法務委員会においでいただいて、事務局長、事務局長として事務局の運営はどうなっているんですか。私はお聞きをしたい。

 昨日、私は事務局長においでいただきたいと事務局にお電話を差し上げました。そのときに事務局はどう答えたか。事務局長は答弁に出れませんと答えられた。私は、委員部に確認したら、それはできると言われました。担当の方にもう一度電話したら、それはできませんと。そのときに私は申し上げた、私の言っていることが正しければ、あなたは腹を切れと。腹を切ってもらわな困りますよ、その事務局の方に。

 こうして国会に出てこない。出てこれないような方が事務局長をされているんですか。そして、そういうような事務局の運営を今されているんですか。いかがなんですか。

荒井政府参考人 ただいま御指摘の点につきまして、いろいろやりとりにおきまして私ども不十分な点がございまして、心よりおわび申し上げます。

 今後とも、適切に事務局が仕事ができるようによく努力してまいりたいと思います。

吉田(治)委員 これは、事務局長、私が、私があったことで申し上げているだけじゃないんです。

 第六回の知的財産戦略本部の議事録、ここに、この知的財産にとっては日本の最高峰と言われている東京大学の中山先生が本部員として参加をされております。この議事録を読んでおりますと、まさに事務局に対して大いなる疑問を呈せられている。自分が専門調査会で、オブザーバーとして行きたい、一切拒否をされた、事務局はまともに議論をしようという真摯な態度がどうも私には感じられない、したがって、十二月十七日ですか、この報告書には私の意見は反映されておりません、こういうことでは私は本部員を続けている意義はないと考えておりますと。

 総理大臣がおられる前で、全各担当の大臣がいられるところで、この中山先生というお方が、これほどのお方がこれだけの発言をするということは、まさに、私だけではなく、事務局に何か問題があるんじゃないですか。その辺はどうなんですか。

荒井政府参考人 知財事務局といたしましては、あくまで事務局でございますので、いろいろな本部員の方の御意見をよくお伺いし、さらにまたパブリックコメントとか、あるいは全国各地で、ミニタウンミーティングと言っておりますが、いろいろな意見交換をしたりして、いろいろな方面の方の御意見を幅広くお伺いして、そしてまた慎重に検討をしてまいるということで、例えば知的財産本部につきましても、いろいろな専門調査会をつくって、そこでいろいろな方にも入っていただく、そんなこともしておりまして、さらにまた議事録も公開して、独善的に陥ることのないようにいろいろな方の目で見ていただく。

 こんな努力をしておりますが、ただ、今御指摘のとおり、いろいろまだまだ私たちとして不十分な点があるかと思いますので、今の御指摘の点をよくまた胸に入れまして、今後とも的確な事務局の運営がなされるように努力をしてまいりたいと思います。

吉田(治)委員 なぜ私が時間をとってこの場で局長に質問をしているか。まさにこの中山本部員の質問は、知財高裁のことについて言っているんですよ。知財高裁の法案はもう通過をしました。今さらどうこう言うことはありませんけれども、その中核である本部員として意見を述べることは、先ほど言いましたように禁じられております。知財戦略本部というのはそういうところなんですか。本部員ですら意見を言うことが禁じられている。

 法務大臣もその場へ参加されていますよね。ここへ、メンバーリストの中にたしか載っていたはずです。法務大臣もただいま御意見ございましたようにという言葉がございました。この日はお休みかもしれません。

 まさにそういうふうな運営をしたことが、この結果として、法案としてこの委員会におりてきている。どうなんですか、事務局長。何度も質問して申しわけない。同じことかもしれない。やはりそれほど同じことでも聞かないと。

 もう一度、どうだったんですか、これは。自分として、事務局長としてパブリックコメントをとった、やれ何をとったって、一番中核の本部員がこういうことを言うということは異常じゃないですか。どう感じられているんですか。

荒井政府参考人 知的財産戦略本部は、全閣僚の方とそれから民間有識者の方十名で構成されておりまして、非常にいろいろな御意見がございまして、それで、大部分の方、多くの方が知財専門の高等裁判所をつくるべきだというお考えをお持ちでございまして、そういう意見の表明がなされて、いろいろなされて、いろいろな慎重な検討の結果なされたわけでございますので、私どもとしては、従来、いろいろ努力して、いろいろな方の御意見が反映されるように、そしてまた、これは繰り返しになって恐縮でございますが、日本にとって知的財産の創造、保護、活用というのは非常に大事なわけでございますので、その中で裁判所が非常に大きな機能を果たしているという、各方面からの御期待、御希望が強いわけでございますので、そういうものを反映する仕組みをつくるということでやっておりまして、大部分の先生方、本部員の方から、ぜひつくるべきだというような御意見も寄せられたということでございます。

 そういうことで、私どもとしては、微力ですが努力してまいったつもりでございますが、今後とも一層努力してまいりたいと思っております。

吉田(治)委員 今、知財裁判所のことでごまかしたわけですけれども、そんなことは決してありませんから。これからも局長を必ず委員会にお呼びして、今何が行われているかということについては、議事録を逐一見てちゃんと質問させていただきますから。

 最後、申しわけございません、時間ですけれども、法務大臣。

 いよいよ法務大臣も、こんなん言ったら大変申しわけないですけれども、頑張ってこられて、いよいよ今期で何か任期満了をもって退任されると。それほど大きな、これだけ大切な司法制度改革というものをしてこられて、推進されて、いろいろなことがあったと思いますけれども、最後あと本当、残された時間という言い方はよくないかもしれませんけれども、大臣から一言、もう次の質問者もおいででございますので、最後の決意というんですか、お言葉をちょうだいできればと思っております。

野沢国務大臣 私は、この司法制度改革の一番大事な審議をしていただくこの国会を、本部員、いわば総理のもとで副本部長としてこれを担当する、それから現場で実施するに当たる法務大臣として参画できることを大変光栄に思っております。したがいまして、またその責任の重さを痛感いたしておりまして、ここで御議論をいただきましたことができるだけこれから、私が別におりませんでも議事録が今残るわけでございますから、委員御指摘のとおり、今後も引き続きこの法務行政がより一層皆様の御議論をいただく中で適切なものとして発展していただきますことをこいねがうわけでございまして、私も及ばずながらこの仕事について精いっぱいの努力をする所存でございます。

吉田(治)委員 ありがとうございます。しっかり最後まで頑張ってください。終わります。

柳本委員長 松野信夫君。

松野(信)委員 民主党の松野信夫です。

 きょう最後の質問ということで、よろしくお願いしたいと思います。

 私の方からは、持ち時間一時間の中で、一つは公職選挙法に関連した質問、それから後半の方については、いわゆる二重国籍、国籍法の問題について質問をさせていただきたいと存じます。

 まず最初に、公職選挙法の事件ですけれども、公職選挙法は、我々議員にとってみると極めて重要な法律であることはもう言うまでもないわけであります。民主主義の根幹にかかわる選挙ということを記述している法律でありますので、大変重要な法律ではないか、こういうふうに認識をしております。

 しかし、これは私だけではない、恐らく多くの議員が思っていることではないかと思いますが、公職選挙法違反ということで、選挙があったりした後でいろいろ摘発されたり起訴されたり、こういうような事件が残念ながら選挙があるたびに発生をしている。これが現実ですけれども、しかし、この公職選挙法という法律をよくよく検討してみますと、何でこういう行為が違法だということで処罰の対象になるのか、あるいはこういう行為は何で処罰の対象にならないのか、なかなかわかりにくいんですが……

柳本委員長 ちょっと速記をとめてください。

    〔速記中止〕

柳本委員長 速記を起こしてください。

 この際、暫時休憩いたします。

    午後四時四十四分休憩

     ――――◇―――――

    〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕


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