衆議院

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第22号 平成16年5月7日(金曜日)

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平成十六年五月七日(金曜日)

    午前十時六分開議

 出席委員

   委員長 柳本 卓治君

   理事 塩崎 恭久君 理事 下村 博文君

   理事 森岡 正宏君 理事 与謝野 馨君

   理事 佐々木秀典君 理事 永田 寿康君

   理事 山内おさむ君 理事 漆原 良夫君

      左藤  章君    桜井 郁三君

      柴山 昌彦君    中野  清君

      早川 忠孝君    平沢 勝栄君

      保利 耕輔君    松島みどり君

      水野 賢一君    森山 眞弓君

      保岡 興治君    柳澤 伯夫君

      山際大志郎君    阿久津幸彦君

      泉  房穂君    鎌田さゆり君

      河村たかし君    小林千代美君

      辻   惠君    松野 信夫君

      上田  勇君    富田 茂之君

      川上 義博君

    …………………………………

   法務大臣         野沢 太三君

   法務副大臣        実川 幸夫君

   法務大臣政務官      中野  清君

   最高裁判所事務総局民事局長

   兼最高裁判所事務総局行政局長   園尾 隆司君

   政府参考人

   (司法制度改革推進本部事務局長)         山崎  潮君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)   寺田 逸郎君

   法務委員会専門員     横田 猛雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月七日

 辞任         補欠選任

  加藤 公一君     阿久津幸彦君

同日

 辞任         補欠選任

  阿久津幸彦君     加藤 公一君

    ―――――――――――――

五月七日

 民法改正において選択的夫婦別氏制度の導入に関する請願(野田聖子君紹介)(第一七八三号)

 国籍選択制度と国籍留保届の廃止に関する請願(前原誠司君紹介)(第一七九八号)

 同(石毛えい子君紹介)(第一八三〇号)

 同(山内おさむ君紹介)(第一八三一号)

 同(池坊保子君紹介)(第一八六九号)

 同(藤田一枝君紹介)(第一八七七号)

 同(増子輝彦君紹介)(第一九二六号)

 成人重国籍の容認に関する請願(阿部知子君紹介)(第一八〇九号)

 同(和田隆志君紹介)(第一八三二号)

 同(藤田一枝君紹介)(第一八七八号)

 同(増子輝彦君紹介)(第一九二七号)

 国籍法の改正に関する請願(石毛えい子君紹介)(第一八二七号)

 同(山内おさむ君紹介)(第一八二八号)

 同(和田隆志君紹介)(第一八二九号)

 同(池坊保子君紹介)(第一八七〇号)

 同(藤田一枝君紹介)(第一八七九号)

 同(増子輝彦君紹介)(第一九二八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 行政事件訴訟法の一部を改正する法律案(内閣提出第六六号)


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     ――――◇―――――

柳本委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、行政事件訴訟法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として司法制度改革推進本部事務局長山崎潮君及び法務省大臣官房司法法制部長寺田逸郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

柳本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

柳本委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局園尾行政局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

柳本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

柳本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。早川忠孝君。

早川委員 自由民主党の早川忠孝でございます。

 本日は、行政事件訴訟法の一部を改正する法律案について、お伺いいたします。

 私は、昭和四十四年に東京大学を卒業して、当時の自治省、それから富山県庁に入りまして、昭和五十年からは弁護士となりまして現在に至っている。そういう意味では、行政から始まり、司法を経験し、今、立法の場にいる。こういう立場でもって、今回の行政事件あるいは行政訴訟について、質問の機会をいただきまして、改めて勉強させていただきまして、それぞれの立場でやはり物の見方が違うんだなということを痛感しております。

 すなわち、弁護士の場合は、どちらかというと、既にある法律をどうやって解釈しようかということで、制度が既に所与のものとして与えられている、こういうものでございます。それから、行政の立場でもって法律制度を考える場合には、どちらかというと、制度の欠陥についてはよくわかる、そういう意味では、継ぎはぎですけれども、いろいろな改善策を考えていく。それで、立法の場は、そういう意味では根本的に発想が違っておりまして、自分たちの力で全く新しい制度をつくる、その場合のよりどころはどこかというと、やはり国民のニーズがどうなっているか、あるいは世界の情勢がどうなっているか、そういった非常に大局的なところから大づかみな制度改革についての提言ができるだろう、こういうふうに考えております。

 その観点で考えますと、今回の行政事件訴訟法の改正というのは、行政訴訟改革の中の極めて入り口でしかやはりなかったのかなというふうに思われます。

 すなわち、平成十三年の六月十二日の司法制度改革審議会意見書は、「行政事件訴訟法の見直しを含めた行政に対する司法審査の在り方に関して、「法の支配」の基本理念の下に、司法及び行政の役割を見据えた総合的多角的な検討を行う必要がある。政府において、本格的な検討を早急に開始すべきである。」こういうふうに提言をされておりました。こういったことを受けて、本年一月六日の、行政訴訟検討会が「行政訴訟制度の見直しの考え方」を公表されて、本日のこの行政事件訴訟法の一部を改正する法律案という形に形を整えてきた、こういうことだと思います。

 この内容については、極めて評価をするところが多いわけでありますけれども、私としては、行政訴訟制度全体を抜本的に改革しようという司法制度改革審議会意見書が掲げた理念にはまだ到達をしていないんだなというふうに考えております。本来的であれば、行政行為の適正を図る、行政行為そのものに法の支配を及ぼすという観点から、民事訴訟法と対応しての行政訴訟法といった大づかみの基本法を制定するところの作業が前提として必要なのではないのかな、こういうふうに考えております。

 そこで、行政訴訟制度の改革については、これまでの取り消し訴訟中心主義を改めるべきである、こう言われてきたと思います。法務大臣にお伺いいたしますけれども、今回の改革につきましては、このような問題意識に対する対応を含む抜本的な改革をされたというふうにお考えでございましょうか。

野沢国務大臣 早川委員におかれましては、行政の御経験と弁護士活動の御経験を通じまして、今回この委員会におきまして立法業務に携わっていただく、大変、いわゆる司法、立法、行政、すべての視点からこの法案についての御意見を賜りますこと、まことにありがたいことと感謝をいたしております。

 ぜひとも充実した審議をいただきまして、立派な法律になることを願っておるわけでございますが、今お尋ねの、今回の改正が抜本的であるかどうかという点につきましては、できるだけ広範な分野で、しかも内容的にもしっかりした議論を積み重ねての改正ではございますが、やはり、一定の前進、そしてまた着実な前進ということで今回法案をまとめておるわけでございますので、その点についての評価はまたいろいろあろうかと思います。私どもは、この内容につきましては、まさに当面やはり必要と思われることについてはほぼ尽くしたかなと思いますが、なお一層の改革、改善は必要かと思っております。

 冒頭でございますので、この法案の趣旨の一番大事なところだけちょっと申し上げさせていただきますが、まず、行政需要の増大と行政作用の多様化が進展する中で、典型的な行政作用を念頭に置きました行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為を対象としまして、その取り消しを求める取り消し訴訟のみでは国民の権利利益の実効的な救済を図ることが困難な場合が生じておる、これはもう委員御承知のとおりかと思いますが、そこで、今回の改正案におきましては、義務づけの訴え、差しとめの訴えを新たに設けることとしておるわけでございます。

 また、公法上の法律関係に関する確認の訴えを当事者訴訟の一類型として例示することによりまして、取り消し訴訟の対象とならない行政の行為を契機として争いが生じた公法上の法律関係に関し確認の利益が認められる場合についても、当事者訴訟としての確認訴訟が可能であることを明らかにすることとしております。

 これらの訴訟が、取り消し訴訟とともに事案に応じて多様に活用され、国民の権利利益の実効的な救済が図られることになるものと考えておるものでございます。

 このほか、本法案では、審理の充実及び促進のための資料の提出の制度、さらには、出訴期間等の教示の制度、仮の義務づけ、仮の差しとめ等の制度などの新たな制度を導入するなど、総合的、多角的な行政訴訟制度の改革を実現しようとしているものでありまして、極めて大きな改革となるものであることは間違いないと考えております。

 なお、先ほど委員御指摘のとおり、さらなる御検討につきましては、本法案が実行に移された後、また議論をいただきまして検討すべき課題と考えております。

早川委員 ありがとうございます。

 基本的な大臣の御見解を承りましたので、それでは、今回の改正法についての細部の点について、司法制度改革推進本部の方にお伺いいたします。

 今回の改正で、義務づけ訴訟等新たな訴訟類型がふえることになりました。ある意味で、これまでなかった手当てがされたという意味では前進でありますけれども、ただ、行政事件訴訟法を読みますと、なかなか一読してわかりづらいということを考えてまいりますと、一般の国民の立場でいえば、法を読んでも、それでは自分はどのような訴訟を提起すればよいのかということで、かえって迷うような事態も出てくるのではないかと思われます。

 こういった場合、例えば土地区画整理事業計画が取り消し訴訟の対象となるか否かといったような、ある意味で現時点でも紛らわしいようなケースについて、国民の方が誤った訴訟を提起したといった場合に、裁判所としてはどのように対応をされることになるのかについてお伺いいたします。

山崎政府参考人 ただいま例で挙げられました土地区画整理事業計画ですか、これにつきましては、一般的には、処分性がないということから取り消し訴訟の対象にはならないというふうに言われているわけでございまして、今回も、その点については改正の対象にしておりませんので、それは同じ問題が生ずるということでございます。

 これにつきまして、取り消し訴訟の対象にするかどうかというのは、これはもう実体法の考え方によるわけでございますし、また、それを取り消し訴訟の対象にいたしますと、出訴期間の問題もいろいろつきまといますので、かなり徹底した議論が必要になるということから、今回は対象にしておりません。

 これを対象にしていないということで、取り消し訴訟を起こしたということになる、その場合に、従来であれば行政庁を相手にするわけでございますが、今回、この法案では、被告適格を原則として国という形にさせていただいておりますので、そうなりますと、この訴えができない訴えを起こしちゃったといった場合に、ではこれは、その計画があることによって何らか自分の権利に影響があるという場合、これは確認訴訟、いわゆる当事者訴訟の中の確認訴訟ですね、こういう類型で可能な場合もあり得るわけでございます、すべてが可能と言っているわけではございませんけれども。

 そういう場合に、同じ国でございますので、そうなりますと、訴えの変更、こういうことが可能になってくるわけでございまして、そういう意味では、従来よりは、当事者を間違ったから、あるいは種類、類型を間違ったからそれでだめですよということがなるべく少なくなるような手当てをして、なるべく使い勝手がいいような形にさせていただいた、こういうことでございます。

早川委員 今の事務局長のお話は、どちらかというと、被告適格者が同一である場合の訴え変更について適切に対処できる、こういうことなんですが、被告適格についてはきょうはちょっと質問をさせていただかないことにしまして、原告適格の話に移らせていただきます。

 救済範囲を拡大するという観点からすると、原告適格を拡大して、訴えをまず訴訟の土俵に乗せるということが極めて重要だろうと私は考えております。そこで、今回の行政事件訴訟法の改正によって原告適格が広く認められるようになっているのかどうか、お伺いいたします。

山崎政府参考人 この法案におきましては、原告適格について、「法律上の利益を有する者」という点は文言としては変わっておりません。しかし、別の項目、項を立てまして、こういう点を考慮しなければならないという、いわゆる考慮事項、これを定めております。したがいまして、文言は変わりませんけれども、実質的な意味で拡大をしていく、これが結論であるというふうに思っております。

 もう少し踏み込んで御説明いたしますけれども、この法案による改正の趣旨でございますけれども、処分または裁決の相手方以外の第三者についての法律上の利益の有無、この判断に当たりまして、当該処分の根拠法令の文言のみによることなく、根拠法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮する、こういうことにしているわけでございます。

 この根拠法令の趣旨及び目的を考慮するに当たりましても、これと目的を共通にする関係法令の趣旨及び目的をも参照し、それから、当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するに当たりまして、当該処分が根拠法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質等も勘案をして、法律上の利益の有無の判断が適切にされることを確保しようということを考えているものでございます。

 したがいまして、こういう点を考慮しなければならないということを法に明記しておりまして、これを考慮することによって実質的に拡大をしていく、こういうことを考えておるわけでございます。

早川委員 原告適格については、これが認められないとその訴えについてはいわゆる門前払いとなる、こういう意味で非常に、訴訟のというか行政処分の早期確定というための手続として原告適格をある程度狭く解する向きがあったのではないか。あるいは、もう一つの方法としては、出訴期間を短くするというような形、あるいは訴えの利益がないとか処分性がないとかという形で、どちらかというと行政処分を争いづらくしていたというのがこれまでの行政事件訴訟の現実ではなかったかというふうに私は思っております。

 そこで、今回、改正案の第九条の第二項でいわゆる考慮事項というのが明定されたということで、九条一項の解釈についての裁判所の判断を少し広げるための根拠規定になるのかな、こういうふうにも一応考えられるんですけれども、ただ、九条二項を読んでも、なかなか一般の国民にはすぐ理解はしづらいかなというふうに思います。

 そこで、まず九条第二項についてお伺いしますが、この原告適格に関して、処分または裁決の相手方以外の者について法律上の利益の有無を判断するということでの考慮事項を定めている。考慮事項の考慮が必要な場合を「処分又は裁決の相手方以外の者について」と規定されたのは、どのような理由によるものでしょうか。

山崎政府参考人 処分またはその裁決の相手方、これにつきましては、例えば自己に不利益な処分あるいは裁決がされた場合に、これによって直接に自己の権利を侵害される、あるいは義務を課されるということになるものでございますので、これは取り消しを求めるについて法律上の利益は当然有するということが前提でございます。

 そういうような、処分または裁決の相手以外の方について法律上の利益を有するかどうかをきちっと定めないと、ここが狭いとか広いとかいろいろな問題になるわけでございますので、そこで、処分または裁決の相手方以外の者についての法律上の利益を明確に規定するということで、その考慮事項を明確に規定するということでございます。

 ちょっと例を申し上げますけれども、例えば、原告適格の有無が問題になる例としてよく言われるのは、原子力発電所の設置許可処分について、許可処分を受けた電力会社ではなくて、発電所設置予定地の付近住民が設置許可の取り消しを求めるというような場合などのように、主としてその処分または裁決の相手方以外の第三者が取り消し訴訟を提起する場合でございまして、このような場合の原告適格の判断が適切に行われることを担保する必要があるわけでございます。

 したがいまして、ここではそのような限定を付してあえて規定を置いているということになろうかと思います。

早川委員 改正案の第九条の第二項ですけれども、原告適格の判断に関する考慮事項をまとめて定めております。ここで規定されている考慮事項をわかりやすく分けるとしますと、どのように分けることになりましょうか。お伺いいたします。

山崎政府参考人 確かに頭を整理しなければならないところがございまして、大きく分けて二つの点がありまして、その二つを判断する上でのまた考慮事項というものがあるということで、細かくいえば四つに分かれているということになろうかと思います。

 この二項の規定でございます。

 第一に、当該処分または裁決の根拠となる法令の趣旨及び目的を考慮しなさいということがまず一点でございます。

 それから、当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するということでございます。これが第二点ということになります。

 これらの事項を当該処分の処分または裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく考慮するということが、まず大きなくくりになることでございます。

 その上で、これを前提にして今度三番目に、第一の処分の根拠となる法令の趣旨及び目的を考慮するに当たって、その当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参照するということをうたっております。

 それから第四でございますけれども、先ほど申し上げました第二の当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するに当たりまして、当該処分がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様それから程度をも勘案する。

 こういうことを言っているわけでございますので、大きく分けて二つでございますが、細かく分けて四つの考慮要素があるということでございます。

    〔委員長退席、下村委員長代理着席〕

早川委員 後で質疑の内容をチェックしないとなかなかよくわからないだろうというふうに思いますので、今少し突っ込んで聞きますが、九条二項の原告適格の考慮事項のうち、処分または裁決の根拠となる法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌するというふうにされていますけれども、その趣旨はどういうことでしょうか。参酌すべき関係法律について、「目的を共通にする関係法令」とする必要がどこにあるのかについてお伺いいたします。

山崎政府参考人 目的を共通にする関係法令の趣旨及び目的をも参照するということにしている理由でございますけれども、現在、非常に、行政における利益調整において関連性を有する他の法令の趣旨及び目的をも十分に参照することが、今日の複雑多様化した立法やあるいは行政のあり方を原告適格の判断に十分反映するために必要かつ適切であると考えたわけでございます。

 もう一点の御指摘でございますけれども、「目的を共通にする関係法令」というふうになぜしたのかということでございますが、この「目的を共通にする」ということを仮に取って、関係法令を参酌するということにいたしますと、行政における利益調整のあり方の関連性を適切に取り上げるために考慮事項を定めている趣旨が非常に不明確になるおそれがございまして、参酌すべき範囲が極めてあいまいとなってしまうということでございまして、余り広げてしまってはかえって指針にはならないということでございまして、そこを配慮しまして「目的を共通にする」としたわけでございます。特に、裁判官として、ではどこまでの関連法規を見ればいいのかということになってくるわけでございますので、そこで、ある種の絞りで、「目的を共通にする」、こういうことにしたわけでございます。

早川委員 処分の根拠法令と関係法令が目的を共通にするという、その共通するか否かについてどのようにして判断することになるのか、もう一度、ちょっと御説明をいただきたいと思います。

山崎政府参考人 これは、法律の定め方はもうさまざまでございますので、ではこういう場合というふうに完全に特定するような方法はなかなかないわけでございまして、これの判断につきましては、個別の事案ごとに裁判所が結局判断することになりますけれども、一般論として申し上げれば、目的を共通にするか否かは、目的規定の文言や規定ぶりだけではなくて、それのみによって判断するのではなくて、その法令の全趣旨、あるいはさらに当該法令が別の法律の特別法か否かなど、法体系の位置づけなどを踏まえまして、その目的を解釈して判断されるということになろうかと思います。

 ですから、一定の公式があるというわけではないということでございます。

早川委員 まだ少し理解ができないんですが、原告適格の判断が適切にされるようにする、そういう趣旨で設けられた考慮事項だという趣旨を踏まえますと、処分の根拠法令と目的を共通にする関係法令として参酌すべきものの具体例としてどんな法令が考えられるのか、具体的にちょっと御説明いただければありがたいんですが。

山崎政府参考人 この点については、最終的に裁判所が判断することになろうかと思いますが、いろいろ検討会等を経て出てきた議論をちょっと御紹介したいというふうに思います。

 まず航空法の関係でございますけれども、航空法の百九条に基づく事業計画の変更認可につきまして、航空法と目的を共通にする関連法令といたしまして、公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律というものが一つございます。それからもう一つ、特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法、こういう法律がございまして、これはやはり、飛行場の設置あるいは変更に伴う周辺の状況をどういうふうに考慮するかということを別途の法律で決めているものでございまして、これは目的を共通にするというふうに理解できると思います。

 それからもう一つの大きなものといたしまして、環境影響評価法でございます。

 これにつきましては、例えば、公有水面埋立法二条に基づく埋立許可につきまして、公有水面埋立法と目的を共通にする関連法令として環境影響評価法、これがあるわけでございます。これは、環境影響評価法の方で、公有水面埋め立てについては環境アセスメントの対象になるということを書いているわけでございますので、そういう関係で、目的を共通にするということになります。

 それから、都市計画法五十九条に基づきます都市計画事業の認可につきまして、都市計画法と目的を共通にする関連法令として環境影響評価法、これが挙げられるということでございます。

 特に環境影響評価法は、大きな事業を行う場合にその周辺の環境にどのような影響を与えるか、こういう点も全部チェックをして事業計画を定めなさいということを言っているわけですので、ここの環境アセスメント法、影響評価法の守備範囲というのは相当広い範囲にあるわけでございますので、かなりのものがその関係で関連性を持ってくる、目的を共通にするというふうに考えられる可能性のあるものというふうに思われるわけでございます。

早川委員 具体的にはやはり裁判例を集積するしかないんだろうと思いますが、大体の枠組みは理解できました。

 この改正案の第九条第二項に定める考慮事項のうち、「当該処分又は裁決がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案するものとする。」こういう文言があります。これはどういうことを指すんでしょうか、お伺いいたします。

山崎政府参考人 例を若干挙げながら申し上げたいというふうに思いますけれども、例えば、処分の要件が技術上の基準を決めているものがあるわけでございます。この技術上の基準というのは抽象的な要件で定められているような場合であっても、具体的な事案において原告適格を認められる第三者の範囲を判断するに当たっては、その具体的な処分が根拠となる法令に仮に違反してなされたというような場合にどういう被害が生ずるのか、害される利益及びその内容、性質がどういうものであるか、そういう点も適切に考慮して、その上で原告適格を定めるということになるわけでございますので、そういう意味では、現実に生じた被害、その性質、程度、そういうものも考慮しながら、最終的に法としてどういう保護を与えるべきかということの判断をしなさい、こういうことになるわけでございます。

早川委員 今の点ですけれども、例えば、最高裁の平成四年九月二十二日の「もんじゅ」訴訟の判決の場合ですけれども、これは、事故が起きた場合に想定される被害の程度といったものが、まさに今改正案の第九条第二項に定める考慮事項、先ほど引用したような「害される態様及び程度をも勘案する」、これに該当することになりましょうか。

山崎政府参考人 今、具体的な訴訟の例示が挙げられたわけでございますけれども、例えば原子力発電所のような場合、当該許可された原子力発電所が、その許可要件である技術上の基準を満たしていなかった場合に起こり得る事故、これによって生ずる周辺住民の被害、この内容、性質、それから被害の生ずる態様、程度、こういうものを考慮して、原告適格が認められる第三者の範囲を判断するということになろうかと思います。例えば、その影響によって、原発のところから何キロ以内の人とか、そういうような被害の程度によって分けられることももちろんあるわけでございますが、そういうような点を考慮しなさい、こういうことを言っているわけでございます。

早川委員 「もんじゅ」訴訟の場合は、原告適格が結果的に認められているケースですが、それ以外に、これまでの判例では認められなかったけれども、こういった考慮事項が明記されることによって認められるようになるだろうと思われるようなケースというのは、具体的に挙げられますか。

山崎政府参考人 ただいまの「もんじゅ」訴訟でございますけれども、ある施設が何らかの基準違反で何か事故が起こった場合に周辺の住民にどういうような被害があるかということは、原子力施設に限られることではないはずでございます。どれがどうということを今全部列挙するわけにはまいりませんけれども、そういう意味では、大きな施設があって、何らかの基準の違反があって被害が生ずるというような場合には同様な考え方がされる、その可能性があるということを前提に置いてこの法文の文言を考えているわけでございます。

早川委員 ただいまの答弁は、どちらかというと、これから実際に訴訟事件を担当される裁判所が立法者の立法意思を解するときの一つの判断基準になる質疑であろうと私は理解をしております。

 そこで、若干疑念が出てくるかもしれないということで念のためお聞きいたしますけれども、原告適格の考慮事項として、「処分又は裁決がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案する」ということになりますと、訴訟の入り口の問題である原告適格の判断の際に、既に訴訟の本来のテーマである処分の違法性、処分が違法にされたかどうかを判断するようなことになるのではないか、こういう疑念も提起されておりますけれども、その点はいかがでしょうか。

山崎政府参考人 この法文で「処分又は裁決がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益」、こう言っておりまして、これは、そういう違反があった場合を仮定したときにどういう害が生ずるのかということを考えて決めなさいということでございまして、それが違法かどうかというのを、まずその審査をするわけではなくて、あったとしてどういうものが生ずるかということでやるわけでございます。

 したがいまして、その原告適格というのは、あくまでも仮定の上に立った訴訟の入り口の問題、その訴訟要件の一つでございまして、その判断の前提として、訴訟の主題である処分が違法か否かというような実体的な判断そのものが行われるわけではないというふうに御理解を賜りたいと思います。

早川委員 続きまして、確認訴訟の件についてお伺いをいたします。

 確認訴訟というのは現行法でも提起可能であるというふうに言われているところでありますけれども、現行法ではどこで確認訴訟が認められるというふうに読むんでしょうか。

山崎政府参考人 この行政事件訴訟法の四条で当事者訴訟という類型を定めているわけでございますが、この解釈で行うということになろうかと思います。ここの中にはどういう態様の訴訟でなければならないということを書いておるわけではございませんので、その解釈として読むということでございます。

 現在、これを使って認められた例を若干わかりやすく御説明いたしますと、例えば、薬局の開設を登録制から許可制に改めた薬事法の改正が憲法違反であると主張をいたしまして、既にその登録を受けている者が改正後でも許可を受けずに引き続き薬局の営業をすることができることの確認を求めた訴えというものが起こされております。これにつきまして、そういう訴えを起こすことが可能であるという判断がされております。ただ、結論として憲法違反ではないということで、実体の判断では負けた、こういうものでございます。

 それから、これはマスコミでもよく見る例でございますけれども、日本人の子供であるかどうか争いとなっている場合に、日本人の子であることを前提に日本国籍を有することの確認を求める訴え、これは時々出てきていると思いますけれども、こういうもの。

 それから、ごみの収集場所をダストボックスに限定した廃棄物処理計画が無効であるとして、従来の場所で市がごみを収集する義務があることの確認を求める訴え、こういうものが例として挙げられるということでございます。

早川委員 今回の改正案の第四条で、当事者訴訟の例示として確認訴訟というのを出すことによって、今後どのような事例で確認訴訟が活用されることを期待されておりますか。

    〔下村委員長代理退席、委員長着席〕

山崎政府参考人 先ほど申し上げたような事例があるわけでございますが、それ以外に、典型的に言えるものは、冒頭に申し上げました土地区画整理の計画がございますが、これについて訴訟の対象になっていないわけでございます。ただ、それによって自己の権利が害されるというような場合に、当事者適格の可能性があるかどうかという問題があるわけでございます。

 それ以外に、例えば通達とか行政指導、これを直接争う方法は現在ございませんけれども、申請をする場合には、それによって自己の権利が侵される、あるいは拒否をされるとか、そういうような場合に、その行政指導あるいは通達による義務のないことを確認、そういうのを求める訴えとか、いわゆるそのものでは訴訟の対象にならないけれども自己の権利に影響があるようなものについて、この確認訴訟の類型を使って訴えを起こしていくということが可能になるということでございます。

 現実にどこまで認められるかというのは、これは個別の裁判によるわけでございます。

早川委員 国民の権利救済のために行政事件訴訟の中の類型であります確認訴訟を活用するということが極めて重要である、こういうふうに評価されていると思います。

 この確認訴訟を活用するに至るためには、弁護士あるいは裁判官あるいは一般の国民に対して十分な情報提供が当然必要になろうと考えます。また、行政庁内部でも十分のPRを行って、確認訴訟の提起がしやすくなるということが必要と思います。そういった取り組みについてどのようにお考えでしょうか。

山崎政府参考人 確かに、第一に、法律実務家が十分に研さんを積む、それで能力をつけていくということが必要かというふうに思います。そういう関係では、それぞれの分野のところで、いろいろ研修等含めて、きちっとした理解をしてほしい。こういう点について、私ども本部としても、できることがあればやっていきたい。特に、例えばこの法の趣旨を、注釈的なものをきちっと明確にするとか、そういうやり方もあろうかと思います。

 それから、もう一つ御指摘の、国や地方の行政機関、ここにも今回の改正の趣旨を十分に理解してもらって行政運営に当たるということが必要かと思いますので、こういう政府部内の周知徹底、これについても、ちょっと方法はどうするかこれから考えますけれども、これもきちっとした周知徹底を行っていきたいというふうに考えているわけでございます。

 いずれにしましても、法曹三者といたしまして最高裁あるいは日弁連がございますので、そういうところとよく連携をして、きちっとしたPRをする、それから政府部内もきちっとしたその周知徹底を図っていく、こういうことをやっていきたいというふうに思っています。

早川委員 司法改革推進本部だけでなくて、むしろ、現実に事件を取り扱う裁判所の対応というのが一番国民にとっては重要だと思いますけれども、最高裁の方ではどのように取り組まれるおつもりでいらっしゃいましょうか。

園尾最高裁判所長官代理者 裁判所といたしましても、今回の法改正は国民の権利救済の上で重要な意味を持つというように考えておりまして、法改正の趣旨が十分に生かされるために、まず裁判所の内部に法改正の趣旨が周知されるということは当然のことでございますが、それに加えまして、弁護士やあるいは一般国民にまで法改正の趣旨について十分な理解が広がるということが重要であるというように考えております。

 具体的に申しますと、重要な法改正がありました場合には、最近では、各地の弁護士会におきまして弁護士を対象にした研修が活発に行われておりますので、その研修の場に裁判官が講師として参加いたしまして法改正の内容の注意点やあるいは事例の紹介などを内容とする講義を行うというような努力がされるものと考えております。また、最近では、弁護士や学者の座談会に裁判官も加わりまして、その内容をまとめたものを法律雑誌に発表するというようなことも活発に行われておりまして、このような方法を通じまして法律の運用について正しい理解が進むように努力をしていくことになるというように考えておるところでございます。

 裁判所といたしましては、このような方法を通じましてできる限りの努力をしていきたいというように考えております。

早川委員 総合法律支援法で日本司法支援センターが発足するということになっておりますが、現実には、行政事件に関する相談あるいは訴訟代理をし得る法律家というのは極めて限られていて、非常に専門的であるということから、むしろ受任をする方がおられない、特に地方においてはそういった法律家を確保することが困難である、こういう事情があると思います。

 そこで、日本司法支援センターがいわゆる司法ネットの一環としてさまざまな法律支援サービスを提供するということになっておりまして、その中で刑事事件あるいは民事事件、家庭事件等についての対応をされるということで、非常に国民の期待が寄せられていると思うんですが、さて、その行政事件について、日本司法支援センターの業務の中にこれが入るのかどうかについてお伺いをしたいと思います。これは、まず司法改革推進本部からお伺いしたいと思います。

山崎政府参考人 この日本司法支援センターの役割でございますけれども、関係機関等と密接に連携協力をしつつ、相談窓口における相談受け付けあるいは情報提供などの業務を行うこととしているわけでございます。

 行政事件訴訟にかかわる問題につきましても、この支援センターの窓口において相談を受けまして、一般的な、あるいは個別の案件に応じた適切な対応をしていくわけでございまして、これは、例えば、そういう関係で、そういう点に詳しい、そういう相談をしているところがあればそこに御案内をする、あるいは、そういう関係の専門の弁護士さんがどこにおられるかという場合には、弁護士会等と提携をしてそちらへ行っていただいて御紹介をいただくとか、そういうような形を、何らかの形で道案内をするというのが第一点でございます。それからもう一つは、資力のない方につきまして、資力要件がもちろんあるわけでございますけれども、そういう方について、行政事件訴訟を提起したいという場合には、民事法律扶助の対象になるということでお手伝いをさせていただく。

 こういうようなことで、両方ともそれは可能であるという形になろうかと思います。

早川委員 司法制度改革推進本部は本年の十一月末で一応解散されるというふうに法律上なっているわけですけれども、司法支援センターは法務省が管轄する法人になる。そういう意味では、法務省として、この司法支援センターの業務の中に行政事件訴訟に関しての相談あるいは法律扶助による受任、こういったものを引き受けていくということについてのお考えはいかがでしょうか。

寺田政府参考人 ただいま司法制度改革推進本部の方からお答え申し上げましたように、この日本司法支援センターは、総合法律支援という大きな構想の中核としてつくられるものでございます。この総合法律支援の考え方自体が、現在では司法のサービスが手の届かない方を何とか手を届かせるようにしようというところにもともとの発端があるわけでございまして、そういう方は基本的に、これが民事訴訟法の適用の法律なのか、あるいは行政事件訴訟法の適用なのかということをおわかりにならないことがむしろ前提になっているわけでございます。そういうわけで、「民事、刑事を問わず、」ということに条文上はなっておりますけれども、民事の中でも別にどういう手続法の適用があるかということを問わずにこれは業務の対象にしなければ、むしろこの司法支援センターの業務の本来の趣旨が全うされない、こういうように理解をするわけでございます。

 したがいまして、今事務局長の方から御説明申し上げましたように、これは、当然のことながら、情報の提供ということがまずございますし、それに法律扶助でございますとか、あるいは過疎地域での法律相談を含めました具体的なサービス等、いろいろな場面がございますけれども、いずれの場面にいたしましても、要件はそれぞれございますけれども、業務の範囲には当然行政事件というものを念頭に置いて対処していきたい、このように考えているわけでございます。

早川委員 時間が限られておりますので、それでは続きまして、審理の充実、促進に関する規定についてお伺いいたします。

 これは、今回の改正の大きな柱の一つが審理の充実、促進ということになって、そのために、裁判所が行政庁に対して資料の提出などを求める釈明処分の特則を新設するということにされているわけです。これが何に対する特則で、どういった点が新しいのか、また、こういった特則を設けたことによって行政訴訟の審理はどのように変わるのか、お伺いいたします。

山崎政府参考人 まず、何の特則か、それから、どういうふうに変わっていくのかということでございますけれども、最初の何の特則かは、民事訴訟法の一般規定といたしまして釈明処分の規定があるわけでございますが、これの特則であるという位置づけでございます。

 例えば文書について見てまいりますと、民事訴訟法では、釈明処分で提出を求めることができる文書は、当事者の引用した文書で、当事者の所持するものに限られているということになるわけでございますけれども、これに対しまして、この法案では、その文書の範囲を処分の理由を明らかにする文書や裁決の記録までに広げているわけでございまして、別に引用していなくてもいいわけでございます。それから、例えば独立行政法人の処分につきまして、その処分の基準を定めた上級官庁があるような場合に、その当事者である独立行政法人以外の行政庁に対して嘱託を求めることもできるというような特則を設けているということで、文書の範囲と対象の行政庁、こういうものがかなり広がっていくということでございます。

 これによりまして、行政訴訟の審理の充実それから促進の観点から、訴訟の早期の段階で、その処分の理由、根拠に関する当事者の主張及び争点が明らかとなる、こういうことから審理が充実、迅速に行われていく、これに役立つだろうということを考えているわけでございます。

 これに対して、いろいろ、これでは十分ではないという方もおられるわけでございまして、これは必ず出さなきゃいけない義務があるかというとそういうことではないわけでございますけれども、これをやることによって早期に主張立証が、争点がはっきりするということから、やはり審理がスピードアップしていく、こういう役割を果たすというふうに考えております。

早川委員 せっかくこういう釈明処分の特則という規定が設けられるわけでありますけれども、その実効性がないと、せっかく規定を置いても意味がない。

 例えば、裁判所の釈明処分に従わない場合に訴訟当事者にはどんなペナルティーが科せられるのか、あるいは科せられないのか、そういったことについてお伺いしたいと思います。

山崎政府参考人 先ほどもちょっと申し上げたと思いますけれども、釈明処分でございますので、従わない場合の罰則というのは、特に制裁措置は設けていないということになろうかと思います。これは民事訴訟法とも同じ考え方でございます。

 これを設けるという場合には、やはり前提として、提出を求める資料の特定とか、それから提出を拒否できる場合、どんな理由でできるのかとか、それをきっちり決めた上でないとなかなか制裁措置を発動することができないということになることから定めていないということになろうかと思います。

 ただ、行政庁が正当な理由もなく資料の提出を拒否するというような場合には、さらに訴訟手続が進んだ段階で今度は制裁の規定があります。文書提出命令ですね。これによる厳格な手続による提出を求めるということも可能でございます。

 それからまた、当事者が正当な理由もなく提出を拒否すれば、それは事実上の問題でございますけれども、裁判所の心証等の関係でも不利になるということが考えられるわけでございまして、実質的には、このような面から実効的に運用がされていくのではないかということを期待しているわけでございます。

早川委員 行政訴訟をより利用しやすく、わかりやすくするための仕組みということで、被告適格に関する改正も行われることになりました。

 この被告適格に関する改正によって現行法とどのような点が変わることになるのか、あるいは、これまで被告適格がわかりにくいために国民にどんな不便があったと考えられるのか、そういったケースについて御紹介をいただきたいと思います。

山崎政府参考人 今までちょっと問題になった事例を申し上げますと、例えば、市町村が管理する市町村道の供用開始処分の取り消し訴訟を提起する場合に、被告を市町村とすべきところを市町村長としたことが争われた事例が一つございます。

 それから、税務署長が国税局の職員の調査による記載のある通知書で更正を行う場合には、税務署長の上級庁であります国税局長を処分庁として異議を申し立てるということになっているわけでございますけれども、更正処分に対する取り消し訴訟の被告は税務署長でございまして、そういうふうにすべきところを国税局長にして争われた事件、こういうものがあります。

 なかなか当事者の判断として、だれが対象かということが非常に難しいものもあるわけでございます。法律でだれと書いてあるものはそれでいいわけでございますけれども、そういう点が問題になりました。

 本法案においてはその制度を改めまして、原則として、処分または裁決をした行政庁の所属する国または公共団体を被告とすることとされているわけでございます。これを設けることによりまして、例えば、権限の委任がされている場合などで行政庁を特定する原告の負担が軽減されるということにもなります。

 それから、行政訴訟の中でも抗告訴訟と当事者訴訟の被告適格は、両方、国なら国ということになりますので、統一をされることになりますので、あるいは通常の民事訴訟の被告とも同一になるわけでございます。したがいまして、訴訟の係属中に他の訴訟類型に変更する必要が生じた場合にも訴えの変更等、あるいは審理を同時に行う訴えの併合、こういうことも可能になっていく、こういう効果があるというふうに考えております。

早川委員 済みませんが、あと二点ほどちょっとお伺いをしたいと思います。

 これは改正法の第十一条の四項ですか、今の被告適格についての改正に伴って、原告の方で訴状に行政庁を記載しなければならないということになったわけですけれども、この行政庁を明らかにしなければならないとした理由、それから、行政庁がわからないときには原告はどうすればよろしいのか、行政庁を記載しないことによって何か不利益があるのかどうかについてお伺いいたします。

山崎政府参考人 これには国というふうに表示がされるわけでございますので、国の中でどこの省庁のものかということが必ずしも明確でないものもあるわけでございますし、これについて一応記載をしておいていただければ、そういう分類がしやすいことになるわけでございます。そういう便宜から、お願いできるものはお願いをしたい、こういう趣旨でございます。

 ただ、ここの記載について、その記載がない場合とか、あるいは誤って記載がされたという場合でも、原告が不利益を受けるということはございませんので、行政庁がはっきりわからないという場合には、記載しないまま訴状を提出されても結構であるということでございます。

早川委員 最後でありますけれども、司法制度改革の中で行政事件訴訟法が全面的に改正されるということになりますと、行政庁としてのこれまでの取り扱いあるいは考え方を見直す必要が出てくるだろうというふうに思います。また、そういうふうに変わっていただかなければならないと考えるわけですけれども、法務省におかれては、この法改正後の行政事件訴訟法についての周知あるいは必要な指導等についてどのように対処されるお考えでしょうか。法務大臣にお伺いいたします。

野沢国務大臣 今回の改正は、もともと行政のもたらす利益、国民に対する福祉を含めまして、この効果を上げようということで考えているわけでございますので、やはりこの法律が施行されました後には、これを関係省庁に十分周知徹底をし、また法務省としても、その任については十分責任を果たしてまいりたいと考えておる次第でございます。

 これからも、専門家としての委員の積極的な御発言あるいは御教授をいただければ大変ありがたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

早川委員 どうもありがとうございました。終わります。

柳本委員長 漆原良夫君。

漆原委員 公明党の漆原でございます。

 先回に引き続きまして、行政事件訴訟法の改正について質問させていただきたいと思います。

 時間の関係上、質問通告の順序をちょっと変えさせていただきまして、少し細かいことをお尋ねします。

 まず、今、早川委員からの質問もありましたけれども、二十三条の二、裁判所が行政庁に対して資料の提出を求める釈明処分の特則を新設しております。これまで、原告である国民にとって、行政の間違いを示す証拠をそろえるということは大変難しくて至難のわざでありまして、これがそろわないために審理が充実しない、あるいは国民が負けてしまう、こういう結果が非常に多かったんじゃないのかなと私は思っております。

 その意味で、今回この釈明処分の特則を設けた趣旨について、まずお尋ねしたいと思います。

山崎政府参考人 ただいま御指摘がございましたように、なかなか当事者がその資料等を入手することが難しいという状況で、争点がどこにあるか、あるいはどういう点に立証を持っていくかということがなかなかわかりにくい、それが訴訟の遅延にもなるおそれがあるということがございまして、民事訴訟法の一般の釈明のみならず、これの特則を設けまして、審理の早期の段階で、その処分あるいは裁決の原因となるその事実、その他、その処分、裁決の理由を明らかにする資料、こういうものについて、あるいは審査請求に係る事件の記録もございますけれども、こういう釈明処分を設けまして、審理の早い段階でその資料を提出してもらいまして、争点は一体どこにあるのかということを早目に明確にしてそれに伴った立証を行っていく、こういうことに資するということで今回の規定を設けたということでございます。証拠調べもそれによって絞られていくという形になろうかというふうに考えております。

漆原委員 提出を求める対象としては、処分または裁決の内容、処分または裁決の根拠となる法令、処分または裁決の原因となる事実、処分または裁決の理由を明らかにする資料、こういう四つになっておるわけなんですが、資料はこれはどんなものを想定されているんでしょうか。

山崎政府参考人 まず基本となるものは、処分または裁決の直接の根拠として用いられた一件記録のようなもの、これが中心になるわけでございますが、これに限られるわけではないということでございます。この一件記録というのは、なかなかわかりにくいかと思いますけれども、裁判を思い浮かべていただきますと、やはり一件記録があるわけでございますので、そういうもので決裁が上がっていくわけでございますけれども、そういう記録というふうに御理解をいただきたいと思います。

 これのみに限られず、例えば裁量基準を明らかにする資料など、一件記録に含まれないような資料でありましても、処分または裁決に際して行政機関相互の連絡調整の過程で参照されたり、あるいは処分または裁決の判断に際して依拠されたようなものにつきましては、この資料に含まれるというふうに考えているわけでございます。

漆原委員 相当進んだ内容になっているということは私も認めます。

 ただ、この釈明処分は、あくまでも裁判所が職権で行うというふうになっておりますし、弁護士の方からも、裁判所に対する、職権の発動を促す申し立てなんかも積極的にやっていくことになると思うんですね。その場合に、裁判官の能力とかあるいは意識に非常に大きく左右されるのではないのかなという、どの範囲の資料で十分と考えるのか、どういう資料があるのかないのか、もっと資料を出せというふうに言うのかどうか、ここはやはり担当裁判官のその事件に対する見方とか能力とかに非常に大きく左右される結果になりやしないかなという危惧を持っておりますが、いかがでございましょうか。

山崎政府参考人 この辺は裁判所の問題で、私の方からなかなか答えにくいところがありますけれども、ただいま御指摘の点は大変重要なポイントでございまして、まさにそこのところの意識がきちっとしていないと、せっかく方法があっても十分に生かし切れないということにもなろうかと思います。

 この点につきましては、裁判所の方にもお願いをして、この辺の考え方について、いろいろきちっと研修等を含めてみんなの理解を共通にするようにやってもらえるように、私どもの方からもお願いをしたいというふうに考えております。

漆原委員 先ほど早川委員の質問に対して、この釈明処分の実効性という点についてお答えがあったんですが、資料をなかなか出さない、あっても、場合によっては、不利になると思われる資料は隠すかもしれない、こうなると、せっかくこういう趣旨で設けられたこの釈明処分というのが生かされなくなるわけですね。先ほどおっしゃったように、それは裁判官の心証の問題に影響するだろう、こんな話もあったんですが、あるいは、さらには、もっと具体的に事件が煮詰まってくれば文書提出命令という、提出しない場合には立証責任が、立証したものとみなす、こういう条文の適用もあるのではないか、方法もあるのではないかという話があったんですが、そうなってくると、文書があるということを逆にこれまた原告の方で立証しなきゃならぬわけですね。

 行政庁の中でそういう文書があるのかないのかというのは非常にわかりにくい。そういうことを考えますと、むしろ、資料全部、一件資料を全部持っている行政庁の方に、今回の処分が適正な処分であったんだということの立証をさせる、原告、国民の方に処分が違法であるということの立証責任を負わせるというのではなくて、むしろ行政庁の方に今回の処分は適正であったんだという立証責任を負わせる、いわゆる立証責任の転換論というのも検討会で検討されたのではないのかなというふうに思いますが、今回そういう方法をとらない理由についてお尋ねしたいと思います。

山崎政府参考人 立証責任の法定という点については、確かに検討会の方でも議論があったところでございますが、最終的に取り入れられなかったということになるわけでございますが、これは基本は、例えば民事訴訟の場合に立証責任はどうなっているかといった場合には、これは訴訟法で規定をしているわけではございませんで、実体法の解釈で定まってくるということで長年動いているわけでございます。

 それと同じ考え方を、どうしても行政事件訴訟の中でもやはり基本は民事訴訟法がベースになっておりますので、そういう考え方を投影いたします。そうなりますと、やはり実体法の問題ではないかということでございます。

 それから、例えば、すべて国に立証責任といいましても、当事者としてこういうことを欲するその申請、例えば自分はこういう点があるんだからこういうことをしてほしいというような場合に、それを一番よく知っているのはやはりそちらの当事者でございまして、それがないということを証明を、では行政庁の方が本当にできるのかということにもなるわけでございますので、それぞれ、どちらの当事者がその責任を負うのか、それが公平なのか、あるいは合理性があるのか、こういう観点も踏まえないと、ただ一律には出てこないんだろうということから、現段階でこれを定めるのは非常に難しいと。

 それからまた、諸説としてもいろいろな説がありまして、なかなか一定のものがない状況の中で、一義的に定めるのはなかなか難しいということから、今回は取り入れなかった、こういうことでございます。

漆原委員 立証責任の問題は実体法上から決まるんだという点はよく理解できます。

 ただ、出発段階から、証拠という観点からは非常に国民は不利な立場に置かれているということは事実でございますから、一遍に立証責任の転換というわけにいかぬという理由もよくわかりますので、ぜひともこの釈明処分の特則というのをまさに適切に運用していただきたいなと。それによって、圧倒的な資料を持っている国と、何も資料を持たない、証拠を持たない、行政側にある資料を探さなければならない、探さなければ勝てないという国民の、そもそも訴訟上における格差があるわけですから、その格差を是正するためには、ぜひともこの釈明処分の特則というのを十分に活用できるような運用をお願いしたいというふうに思っております。

 次に、本案判決前における仮の救済の制度についてお尋ねしますが、今回、仮の救済制度の整備が図られておりますが、これは現在の制度と比べてどのような点の改善が図られているのか、お尋ねしたいと思います。

山崎政府参考人 今回の改正案では、仮の救済方法としまして、仮の義務づけの訴えと、それから仮の差しとめの訴え、これを新たに設けているという点が新しいものでございます。

漆原委員 もう一つ、本案前における仮の救済の中で執行停止の緩和というのもありますが、二十五条、執行停止の緩和について、従来は「回復の困難な損害」というような条文になっておりました。今回は「重大な損害」ということに法文を改正しまして、さらに二十五条三項で、この「重大な損害」の判断基準を示しております。

 これはなかなか、すぐ読んでもよく理解できないので、具体的にはどのように緩和されたのか、また、この法文の趣旨を御説明いただきたいというふうに思います。

山崎政府参考人 「回復の困難な損害」ということになりますと、回復が難しいという質的な意味を持つという解釈になろうかというふうに思います。それで、「重大な損害」ということでございますと、質的な意味というよりも量的な意味、こういうニュアンスが出てくるということでございます。

 現在の回復困難な損害というのは、もう取り返しがつかないような損害が生ずるおそれがあるというふうになるわけでございますけれども、それでは、取り返しがつかない損害があるというだけで、その損害の程度はそれほど大きくないものでも認めるのかとか、いろいろな意見が出てまいりまして、あるいは、そういうような事態に当たらなくても重大な損害が生ずるような場合、こういう場合にも停止を認めるべきではないかとか、いろいろな意見が出てまいりまして、性質論だけではなくて、「重大な損害」ということでもう少し幅を広げていこうということで、この文言を変更したということでございます。

 これによりまして、損害の回復の困難な程度が著しいとまで認められない場合であっても、具体的な処分の内容あるいは性質をも勘案した上で損害の程度を勘案して、重大な損害が生ずると認められるときは執行停止を認めることができるということになるというふうに考えているわけでございます。

漆原委員 この二十五条の関連で、執行停止に関する内閣総理大臣の異議の制度は廃止すべきではないのかというふうな指摘もなされております。実際、これは仮に内閣総理大臣の異議を廃止しても、即時抗告という制度が今あるわけですから、そういう意味では、不服申し立ての制度はそろっているのではないかなというふうに思っております。

 今回、この内閣総理大臣の異議制度を残したのはどのような理由なのか、御説明願いたいと思います。

山崎政府参考人 これも検討会でいろいろ議論がされたわけでございますけれども、最終的に、この点については改正を加えないということにしているわけでございます。

 この執行停止に関する内閣総理大臣の異議の制度でございますけれども、これは、国民の重大な利益に影響を及ぼすような緊急事態等への対応のあり方という問題をまず考える必要があるだろうということと、それから、やはり三権分立との関係も考えるべきであるということでございまして、現在の制度は、総理大臣に、裁判の方で緊急事態がある場合にはそれを停止する、異議を述べればとまる、こういう権限を与えているわけでございますので、これを廃止するということはその権限をなくすことになるわけでございます。

 要するに、その三権の権限の境をどうしていくかという大きな議論をしなければならないということ、あるいは、国家にとってやはり緊急事態が生ずるおそれも現在のような世の中を考えるとあり得るだろう、そういうことを考えたときに、本当にこれを残しておくべきなのか、やめるべきかということはなおなお議論が必要であるということで、現段階ではそこまで全く到達はできなかった、こういうことでございます。

漆原委員 続いて、仮の義務づけ、仮の差しとめについてお尋ねしたいと思います。

 この要件なんですが、義務づけの訴え、差しとめの訴え、これは「重大な損害を生ずるおそれ」という要件になっておりますが、今度は、仮の義務づけ、仮の差しとめは「償うことのできない損害」というふうな内容になっております。「重大な損害を生ずるおそれ」ということと「償うことのできない損害」、どのような違いがあるのか、御説明いただきたいと思います。

山崎政府参考人 「重大な損害を生ずるおそれ」というのは、先ほど申し上げたと思いますが、量的なものでございます。それから、「償うことのできない損害」というのは、先ほど、回復することが困難な損害、こういうことを申し上げましたけれども、それに割合近いところでございまして、本当に償うことができないような損害が生ずるということになるわけでして、程度としてはそちらの方が重いということになろうかと思います。

 この仮の義務づけまたは仮の差しとめでございますけれども、これは、本案判決の前に、行政に対して、具体的な処分をすべきことあるいはすべきでないことを裁判所が仮に命ずる裁判でございますので、その本案訴訟の結果と同じ目的を仮の裁判で実現するということになりますので、やはりその要件は、司法と行政の役割分担のあり方を踏まえまして、ある程度厳格な要件である必要がある、こういうふうに考えたことによるわけでございます。したがいまして、義務づけあるいは差しとめの要件であります「重大な損害を生ずるおそれ」よりも厳格な要件として、「償うことのできない損害」を生ずるおそれがある場合としているわけでございます。

 ただ、この償うことができない損害が生ずるおそれといった場合につきましても、重大な損害が生ずるおそれといった場合よりも、損害の回復の困難の程度が比較的著しい場合ということになるわけですけれども、償うことができない損害といいましても、およそ金銭賠償が可能なものはすべて除かれるというふうに解釈されるものではないというふうに考えておりまして、むしろ、社会通念に照らして、金銭賠償のみによることが著しくやはり不相当と認められるような場合も含むものでございまして、これは個別の事案によって、裁判所の方でその運用のよろしきを得てやっていくことになろうかというふうに考えております。

漆原委員 この仮の義務づけ、仮の差しとめの手続は、どのような手続で行われるのか。

 今、民事では、仮の地位を定める仮処分というのがありますね。これは、仮の裁判だけれども実際の本案判決に勝ったのと同じような地位を仮に認める、こういう制度がありますけれども、この仮の義務づけ、仮の差しとめの手続は、決定手続で行うと思われますけれども、口頭弁論を開いたり、あるいは証人調べをしたりするものかどうか、その辺はいかがでしょうか。

山崎政府参考人 これは具体的には、二十五条の規定が準用されておりますので、申し立てによって、決定をもって行うということが決まっております。

 それから、これらの決定は「口頭弁論を経ないですることができる。ただし、あらかじめ、当事者の意見をきかなければならない。」こうされております。それで、この決定は疎明によって行うということになります。したがいまして、裁判所が即時に取り調べ得るものに限定をされるということになります。疎明の性質上、そうなるわけでございます。

 したがいまして、法廷に在廷する証人あるいは疎明を行う当事者が現に所持する文書、こういうものによって行われるということになりまして、これは決定でございますので、任意的に口頭弁論を開いても構わないわけでございます。

 あと、疎明の性質で、そこに在廷している証人、これも調べることができる、こういうことになるわけでございます。

漆原委員 この仮の義務づけ、仮の差しとめの性質からいって、早期に、早く結論を出さなきゃならない事案が予想されていると思うんですね。個別事案にもよるのかと思いますけれども、大体どのくらいの期間で結論を出すべきだということをお考えになっておられるのか。およそで構いませんが、お願いしたいと思います。

山崎政府参考人 ちょっと、裁判の現実の場面のことになりますのでなかなか申し上げられないんですけれども、申し立てる側の停止を求める理由の強さにもいろいろよるんだろうと思いますけれども、ただ、これは執行停止でございますので、緊急を要するということが前提になりますので、そう長い期間で判断をするということは避けなければならない。

 ただ、現実には相当難しいもので若干時間がかかっているものもあろうかと思いますけれども、感覚的に言えば、証拠等がきちっと出てくる、あるいは書証が出てくることが前提でございますけれども、一週間ぐらいでは判断をしてほしいというようなイメージを持っているということでございます。

漆原委員 三十七条の五、第三項でこういう条文があるんですね。公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるときは、仮の義務づけ、仮の差しとめはできない、こういうふうな条文があるんですが、これはどんなことを予想してこの条文が置かれたのか、御説明をいただきたいと思います。

山崎政府参考人 この「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき」というのは、同じような文言は執行停止の二十五条のところにもございます。

 したがいまして、それの解釈が大体同じということになろうかと思いますが、例えば、過去にあった例で若干申し上げますと、公共施設の利用の許可を取り消す処分に関して、仮に執行停止をして当該施設の利用を認めると、その利用に反対する他の利用者との間で多大な混乱が生じまして、別の利用者あるいは関係者等にも不測の危害が及ぶおそれがあるというような場合には、この適用があるといって認められた例があるということでございます。

 通常は余り適用されることが少ないものであるというふうに承知をしておりますけれども、やはり最終的な担保として、そういう公共の福祉に重大な影響があって混乱を生ずるというような場合には、仮に償うことができない損害があったとしても、それは認めないという形の制度の担保みたいな、歯どめのようなものでございまして、ある意味で伝家の宝刀でございますので、余りめったやたらに抜いてもらっては困るというものではあるということでございます。

漆原委員 次に、義務づけの訴え、差しとめの訴え、これは現行法上においても解釈上可能と考えられていたものでありますけれども、実際にはほとんど使われていなかった。なぜ今まで使われていなかったのか、それから、今回どんな経緯からこの条文が入るようになったのか、二つ説明をいただきたいと思います。

山崎政府参考人 まず、現行法は何も書いてないわけで、解釈によるということで、無名抗告訴訟の一態様ということでございます。現実には、いろいろなことが論じられておりますけれども、諸説ありまして、では、どういう場合にどういう要件なら認められるのかということがばらばらでございまして、やはりこれはもう非常に使い勝手が悪いあるいは使うのに怖いというふうに、なかなか使ってもらえないというものでございました。したがいまして、解釈上はあっても、ほとんど例がないという状況でございました。

 ところで、何で今回このものを入れたかということでございますけれども、現在、この規定がないということによって、例えば規制権限の発動を求めるとか、そういうようなタイプのものについては、規定がないということから救済方法がないということにもなってくるわけでございます。救済方法がないというよりも、例えば義務づけにつきましては、取り消しの訴訟、これで処分を取り消すということだけでは十分でないというものもあるわけでございまして、やはりこういう処分をしなければならないというふうに義務づける必要があるというものが一つあるということ。

 それから、処分の申請者じゃない人たちがその処分について規制権限の発動を求めるというような場合について、特に環境問題を含めてこのような需要が高くなってきているという状況の中で、では、訴えようとしても訴える方法がないということになるわけでございます。それから、現在も何か処分が行われようとするときに、それを事前にとめていく、事が起こってからやっていくという形をとっておりますけれども、これをとめる方法がないということでございます。

 やはり国民のニーズというのはさまざまでございまして、それに合ったいろいろな種類の訴える方法、これを認める必要があるのではないか、それが現在の行政訴訟に課された課題であるだろうということから、新しいものを認めて使い勝手がいいものにしよう、こういうことでございます。

漆原委員 私も、この義務づけ、差しとめの訴えが明確にされたということは非常に使い勝手がよくなったんじゃないのかなというふうに考えております。

 そこで、最後の質問になると思いますけれども、この義務づけ、差しとめの訴えによって、実効的な権利利益の救済のためにこの二つの義務づけ、差しとめがどんなふうに役立っていくのか、具体的な事例で示していただければありがたいというふうに思います。

山崎政府参考人 例えば、義務づけで申し上げますと、年金あるいは公的保険などの社会保障給付、こういうものにつきまして、法律によって認められるべき申請が拒否された場合、これについては、その拒否について今取り消しをするだけでございますけれども、こういうような給付、金幾らの給付のそういう処分をしなければならないと直接命じてしまうわけですね。これの方が一つの手間が省けるわけでございます。

 それから、もう一つは、公害防止などのための行政の規制監督権限の発動として是正措置等の処分をすべきであるのにそれがされない場合につきまして、現行法の制度では十分に救済が得られないということでこれを利用してもらいたい、こういうことでございます。

 それから、もう一つ、差しとめの方でございますけれども、例えば、行政の規制監督権限に基づく制裁処分が公表されますと、名誉あるいは信用に重大な損害を生ずるおそれがあるという場合に、それを事前に差しとめるということになるわけでございまして、そういうような利益があるということでございます。

漆原委員 以上で終わります。ありがとうございました。

柳本委員長 御苦労さま。

 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時三十九分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三十分開議

柳本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。松野信夫君。

松野(信)委員 民主党の松野信夫でございます。

 引き続いて、行訴法の改正案につきまして質疑をさせていただきたいと思います。

 前回も少し質問させていただきましたが、やはり、この法案の大きな目玉というのは、原告適格が拡大される、国民の方が訴える範囲が広がるというところではないか、このように考えております。

 法案では、いろいろと考慮をしなきゃならないというような条項を九条の第二項に入れて、それで拡大するのではないか、こういうふうになっているわけです。既に大分議論もされてきているわけですが、まだまだ正直言って、本当にこれで原告適格が拡大するのかというような点もございます。

 それで、従来の判例は、法律上保護された利益の有無ということで判断をしているわけでありまして、いわゆる一般的な利益とかあるいは反射的利益、そういうものではこの条文に規定する法律上の利益に当たらない、こういうふうに言っているわけです。この新しい改正案でも、やはりこの判例法理、つまり、反射的利益ではだめですよ、一般的利益ではだめですよというこの考え方自体は変わっていない、こういうふうに理解してよろしいのでしょうか。

山崎政府参考人 ただいま御指摘の点につきましては、九条の一項、「法律上の利益」ですね、この文言は変わっておりません。したがいまして、ここに伴う解釈については従来どおりということを原則にしております。

 ただ、これだけでは、一体何をどういうふうに考えたらいいのかという手がかりが十分ではないということから、二項を設けてこれを明確にした、こういうことでございます。

松野(信)委員 私の方も最近の裁判例を調査して見ておるわけですが、どちらかというと、最近の裁判例は、地裁とか高裁、下級審の方が案外原告適格については厳しい判断をする。ところが、案外、最高裁の方に行きますと、むしろ最高裁の方は割合広く解釈をして、それまでの一審、二審、下級審の判断を覆す、こういう例も見受けられるわけです。

 例えば、有名な例で申し上げると、新潟空港の定期航空運送事業免許取り消し訴訟がございまして、これは最高裁の平成元年二月十七日の判決でございます。要するに、航空法に基づいて、運輸大臣が日本航空あるいは全日空の方に定期航空路の開設を認めた。ところが、飛行場周辺の住民の人たちが航空機の騒音で生活侵害がある、こういうことで訴えられたわけです。

 これについて、一審も二審も却下、要するに原告適格がないということであったのですが、最高裁の方は、こういう一、二審の判断を覆して、新たに付与された定期航空運送事業の免許に係る航空の騒音で社会通念上著しい障害を受けることとなる飛行場周辺住民は、当該免許の取り消しを請求する原告適格を有する、こういう判断を下したわけであります。

 それからもう一つ、御参考までに申し上げておきますと、いわゆる「もんじゅ」の原子力発電所の設置の事案があります。これも、「もんじゅ」という原子力発電所の設置が許可されたということについて、周辺の住民の人たちがその許可を取り消せ、あるいは無効を確認するという訴訟を提起したわけであります。

 これについても、一審の裁判所の方は、原告適格がない、原子炉周辺の住民には設置許可処分の無効確認を求める訴えはできない、こういう判断を下した。ところが、二審、これは名古屋高裁の金沢支部ですが、控訴審では、周辺の住民のうち、半径二十キロメートルの範囲内に住居を有する者は原告適格あり、こういう判断をしたわけです。

 それで今度、最高裁の方はどうなったか。最高裁は、平成四年の九月二十二日に判決を下しまして、さらにこれを拡大して、二審では半径二十キロというふうにうたっていたところを、半径二十九キロから五十八キロメートル範囲内の地域に居住している住民に対しても原告適格あり、こういうふうに判断をしております。

 どうも、最高裁の判例等を分析している学者の判例評論あるいは判例解説あたりを見ますと、特に最近は、最高裁の方は、保護法益というものが生命とか身体、そういうものが侵されるかもしれない、こういうようなことであれば、その処分法益、処分法の解釈を割合広く解釈しているのではないか、こういう指摘もなされているわけであります。

 そうすると、今のこの最高裁の判例理論によれば、今回の九条の二項のような規定を設けなくても、ある程度は救済されているというか、拡大されつつあるようにも思われるわけで、この判例法理を超えるのが今回の法改正だというふうに理解してよろしいのでしょうか。

山崎政府参考人 確かに、今委員が判例の分析をされておりましたけれども、私も、そういう流れにあるのかなというふうには理解をしております。

 この点につきまして判例がどういう状況にあるかということでございますけれども、確かにかなり広く認めたものもあれば、極めて狭い範囲でしか認めなかったというものもございまして、これは解釈の範囲内でやっているわけでございますので、そうなりますと、ばらばらになる可能性がございます。仮に広く認めた判例があって、その後、下級審においてもすべてそれに従っているかというと、やはり事案、事案によって必ずしもそうはなっていない。ですから、幾つか判例がありまして、その要素は出ておりますけれども、必ずしもそのとおりになるという保証はないというのが現状でございます。

 今回は、いろいろな判例とかそのほかのいろいろな考え方を分析いたしまして、やはりこの四つのファクターは絶対に必要だろうということから法文の中に織り込めたわけでございますけれども、この意味は、この要素をすべて考慮しなければならないということを宣言するわけでございますので、今までのように解釈で、事案、事案によって適宜に判断をすればいいということにはならないということでございます。

 そういう意味では、全体の底上げということになるわけでございますので、そういう、総合的に考えれば、これは従来の考え方から相当前に前進をするようになるというふうに我々は考えてこれを設けたということで御理解を賜りたいと思います。

松野(信)委員 今、局長の方から御答弁いただいた四つのファクターを考慮しなさいというのが、九条の二項に規定しているわけであります。

 四つのファクターというのは、一つは、処分の根拠となる法令の趣旨及び目的。二番目が、処分において考慮されるべき利益の内容及び性質。三番目が、処分の根拠となる法令と目的を共通にする関係法令の趣旨及び目的。四番目が、処分が違法になされた場合に害されるおそれのある利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度。これをおっしゃっているんだろうと思うんです。

 ただ、これについてもいろいろ意見もありまして、ある学者の指摘などを見ますと、この四つのファクターのうち、既に判例法理で一から三の点については判例上もう考慮されてきている、せいぜい新しく加わったのがこの四番の、処分が違法になされた場合に害されるおそれのある利益の内容云々、この点ぐらいではないかという批判もあるわけですが、この点についてはいかがですか。

山崎政府参考人 物事を後ろ向きに考えればそういうような批判もあるということは、我々は承知はしております。

 確かに、御指摘のように、一から三の三つのファクターでございますか、これについては個々の判例でそういうものが出ているということもあるということはそのとおりでございますけれども、じゃ、これが一般的に、通常の解釈でこれが通説的な解釈かということになると必ずしもそうではないということでございます。

 したがいまして、これをやはり法のレベルに持ち上げてきちっとそこの判断が行われるようにということ、これだけでも相当なレベルアップということになるわけでございますので、そういう意味で実質的に大いに拡大をしていると我々は評価してこの法案を提出させていただいているということでございます。

松野(信)委員 今御指摘いただいたように、四つのファクターをすべて考慮した上で判断しなきゃならない、こういう点については、私も一定の前進はあるということは理解をしているものであります。

 そこで、この第二項にうたわれております、「利益」という文言がいろいろと出てきているわけであります。

 まず最初に、原告適格の要件である、法律上の利益の有無を判断するに当たってはという「法律上の利益」。これは、いわゆる判例上言われているところの法律上保護される利益、そういう趣旨だろうと思うわけでありまして、法律上の利益ということでありますので、必ずしも何とか権というふうにまで言わなくても、一定、保護されるという内容のものであればよいということだろうと思います。

 それで、その次の「当該処分において考慮されるべき利益」。この利益というものは、基本的には法律上保護される利益と同等のものなのか、それとも別のものを言っているのか。

 それから、四番目のファクターのところに出てきます、違法な処分によって「害されることとなる利益」というふうに挙げられておりますこの最後の利益は、また違う意味において使われるものなのかどうなのか、この点について答弁をお願いしたいと思います。

山崎政府参考人 確かに、ここに「利益」が三回出てくることになります。

 まず、冒頭の「法律上の利益」、これはちょっと置いておいて、その次の「当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとする。」とございます。これは、法でやはり考慮されるべき利益はどういうものであるかと、法の解釈の中から、全体の解釈でございますけれども、導き出されるような、そういうような利益という、いわば抽象的な利益でございます。

 それから、最後に出てきます「害されることとなる利益」ということは、具体的な場面に投影して、どういうような現実、具体的に害される利益がどういうものであるか、その程度、性質を見なさいということですので、抽象的と具体的で、まず違うんだろうと思います。

 この両方を考慮した上で最終的に法律上の利益があるかどうか、これを判断すべきだ、こういうふうに言っているわけでございますので、最初の、冒頭の「法律上の利益」は、後の二つの「利益」、これを総合的に考えた上で出てくる結論、こういうことになるわけでございます。

松野(信)委員 ありがとうございました。

 それから、三番目のファクターのところでどうしても私はひっかかるのは、この「当該法令と目的を共通にする関係法令」という、目的を共通にするという縛りがかかっているものですから、どうもこういう縛りをかけるんであれば、かなりこれは関係法令とは言いながら限定したものになるのではないかなというふうに考えざるを得ないと思っています。

 例えば、環状六号線の道路訴訟というのが、私、前回も質問の中で申し上げました。これは都市計画事業認可処分の取り消しを求めた訴訟でありまして、いわゆる環状六号線ですね。これは、最高裁が平成十一年の十一月二十五日に、これは環状六号線の道路周辺の住民からこの都市計画事業認可の取り消しを求める訴訟がなされたんですが、結論としては原告適格を否定したわけであります。要するに、環状六号線の事業地内に不動産を持っているとか、あるいは一定の賃借権とか権利を持っている者のみが原告適格あり、それ以外、周辺の住民はだめだ、こうなったわけですね。

 そうすると、認可処分の根拠法というのは都市計画法になります。そうすると、都市計画法は、有効な都市計画を立案し利便性を追求する、こういう一定の目的があるわけで、それと目的を共通にする関係法令ということになりますと、一体どういう法律があるのか。

 きょうの午前中の質問でもこの点の御質問があって、例えばアセス法なんかは目的を共通にすると考えられるような御答弁もありましたが、本来、アセス法と都市計画法では、かなり目的の点では違いがあるのではないか。この目的というのをかなり広く解釈して、都市計画法の目的も、環境をしっかり守らなきゃいけない、こういう目的もやはりあるんだということで広く解釈すれば、アセス法も目的を共通にする関係法令だ、こう言えるのかもしれませんが、必ずしも一概にはそう言えない側面もあるのではないか、こういうふうに思います。

 それ以外に、例えば環境という点をさらに一歩進めて、例えば公害健康被害補償法、いわゆる公健法ですね。公健法に基づいて認定を受けた患者さんがいて、道路公害あたりを受けてぜんそく状態になっている、その上にまた環状六号線が認可されればますます道路公害がひどくなって環境が悪化する、自分の公害の健康被害も悪化する、そういうような原告がいたとすれば、例えばこの公健法によって被害者になっているという公健法も、目的を共通にする関係法令というふうに言えることになるのかどうなのか。

 あるいは、例えば都市計画法の場合だとこういう法律が、目的を共通にする関係法令がある、アセス法は聞いておりますので、アセス法以外に何か御指摘ができるのであれば、その点、御指摘していただきたいと思います。

山崎政府参考人 これは、目的を共通にする関係法令とは何かという問題だろうと思いますけれども、今、事例をお出しいただきましたので、若干それに沿いながら御説明をしたいと思います。

 まず、都市計画、環状六号線の拡幅工事の判例がございますけれども、これとそれから環境影響評価法、これがどのような関係にあるかということでございますが、環境影響評価法は、都市計画だけではなくてさまざまな大きな公共事業等を行う場合に、守らなければならない環境、これをどういうふうに評価して、その評価をきちっとした上で事業認可にもそれが影響をしていく、こういうような構造になっているわけでございますので、環境影響評価法で求められるものにつきましては、認可の内容になっていくわけでございます。

 そういう意味では、広い意味では目的を共通にする、その条件に入ってくるわけでございますので、それは完全に目的を共通にするというふうに読むというふうに理解をしているわけでございます。ほかのパターンの問題も幾つかありますけれども、皆同じ考え方だというふうに思っております。

 なお、今公害の被害の関係の法律を言われましたけれども、これにつきましては、ちょっと私ども急な御質問でそこまで考えておるわけでございません。これはちょっとやはり目的を共通にするとは言えないだろう。ただ、そういう実態が、被害が出るわけでございますので、そういう被害のところでいろいろ考慮をしていくというような要素だというふうに理解をしているわけでございます。

松野(信)委員 そうすると、環境影響評価法、いわゆる環境アセス法については、幅広く目的を共通にするということで私も理解をしておりますが、ただ、これも厳密に考えますと、環境影響評価法の適用がある事業、これをアセスをしなきゃならないというのは一定の規模とか一定の年代とかで、すべての事業、認可されるべき事業が全部このアセス法の対象になるわけではないわけですね。

 そうすると、事業が一たん認可された、あるいは免許を許可された、だけれども、厳密に考えるとこれがアセス法の対象となるべき事業ではないという事業も存在するわけです。そういう場合にも、このアセス法というのは法令と目的を共通にする関係法令だ。つまり、直接的にはアセス法の対象事業ではないんだけれども、原告適格の判断に当たっては、関係法令だということで考慮することができるかどうか、この点はいかがでしょうか。

山崎政府参考人 この点についても、ちょっと突然の御質問で明確には申し上げられないところがありますけれども、ただいま御指摘の点は、例えば、都市計画を考えたときに、都市計画でアセスメント法の対象にならないというものがあっても、やはり良好な住環境、こういうものの保護ということ、これが都市計画法の保護利益、目的というようなところも含んでいるわけでございますので、そういう趣旨をまず全体として法の中でどういうふうに理解をするかという点が第一点。

 それから、先ほども申し上げましたけれども、害されることとなる利益の内容、性質及びこれが害される態様、程度、こういうものも勘案をして考えなさいということでございますので、では、ある施設ができて、それが現実に、もし違法であればどういう被害をもたらすか、こういう点についても考えた上で法律上の利益を考えなさい、こういうことになるわけでございますので、その辺の解釈の問題かなというふうに思っております。

松野(信)委員 原告適格についてもう一つだけちょっと御質問させていただきたいと思います。

 目的を共通にする法律というのは余りないのではないかというふうに私自身は考えているものですから、これも具体的な例で申し上げると、伊達火力発電所訴訟というのがありまして、これは最高裁が昭和六十年十二月十七日に、火力発電が予定されている埋立地周辺の漁民、公有水面埋立法による免許を取ったわけですが、埋立地周辺の漁民は原告適格がないというふうに否定しているわけです。そうすると、公有水面埋立法の場合、私は、この埋立地周辺の漁民というのはある意味では甚大な侵害を受ける可能性が高いのではないか、ですから、結論としては、原告適格は認めていいのではないかとは思いますが。

 そうすると、この公有水面埋立法が当該処分の根拠法規だというふうになった場合、目的を共通にする法律というのは一体どんなのがあるんだろうかというふうに思わざるを得ないわけですね。まさに埋め立てられてしまうというならば、周辺の人が持っている漁業法に基づく一定の漁業権あたりは当然考慮されていい法律ではないか。

 例えば、特定多目的ダム法に基づいてダムの事業認可がおりるということで、やはりこれもダムによって川がせきとめられてしまう、そうすると、内水面漁業を営んでいる付近の漁民の人も漁業ができなくなってしまう。そうすると、こういう特ダム法の場合のダム事業認可に当たっても、漁業法に基づく漁業行使権あたりの権利というのを十分やはり考慮する必要があるのではないか、このように考えますが、この点はいかがでしょうか。

山崎政府参考人 ただいま公有水面埋め立ての関係とそれからダムの関係、二つ言われたかと思いますけれども、この点に関しましては、先ほどから出ております環境影響評価法、これにつきまして、公有水面の埋め立ての関係あるいは干拓の関係、こういうものも対象のものになっておりますし、河川関係でダムをつくるという関係も影響評価法の対象になっているということでございますので、そういうような事業につきましては、同様に目的を共通にする関係法令ということから、環境影響評価法、これも考え合わせた上で、それから現実に生ずる害される利益というものが一体どういう程度のどういう性質のものか、こういう点も勘案して、最終的に法律上の利益があるかどうかを考えていかなければならない、こういうような指向になっていくということでございます。

松野(信)委員 どうも最後の点は私もちょっと理解に苦しむんですが、まあその点はおいておいて。

 取り消し訴訟、原告適格がよく問題になりますこの取り消し訴訟について議論を進めたいと思いますが、取り消し訴訟について私の経験などを申し上げますと、現実には行政庁の方がなかなか正式な処分をしない。処分をしないものですから、それの取り消しを求めるというのもまたまだできないという宙ぶらりんの状態にほったらかされるという傾向が、正直言って私自身も経験をしております。

 例えば、不動産、土地について開発許可をする、開発許可の申請をしてもとりあえず預かりというままなかなかそれに対する判断が下されない、それから、建物を建てるということで建築確認の申請をする、それでもなかなかそれも何だかんだ言って何らの処分されないまま放置されるということもあり得る。

 そうすると、なかなか処分がないものですから、いわゆる取り消し訴訟の対象となる処分性、これが満たされないということで、こういう場合、待っておかないといけないのか、何らかの救済というのが考えられるのかどうか、今度の法案によって、そういうふうなケースではこういう救済が可能だというような点が言えるのかどうか、この点はどうでしょうか。

山崎政府参考人 ただいまの例でいいますと、現行法では、不作為違法確認の訴訟、これを起こすことができるわけでございます。それが一つでございますけれども、これだけでは、たとえ仮に違法を確認しても、本当に行政庁がそれに従って行動をするかという問題の点は残るわけでございます。

 そこで、今回の法案の中では義務づけ訴訟の対応を認めておりまして、要件はもちろんあるわけでございますし、ある種の一義性が必要であるわけでございますけれども、それに、要件に当たるということになればこういうような処分をしなければならないということですね、これを義務づけ訴訟として提起することができる、こういうことになろうかと思います。そういう意味では、新しい手段が広がった、こういう評価ができると思います。

松野(信)委員 そうすると、今結論的に申し上げると、やはり取り消し訴訟については従来と同じような処分性というものが、この要件が満たされないと取り消し訴訟はだめだけれども、別途、新法では義務づけ訴訟ができるので、そちらの方で救済が可能ではないか、こういうふうに理解してよろしいでしょうか。

山崎政府参考人 そのとおりでございます。

 また、取り消し訴訟の対象が何であるかという問題は、今回は全く改正をしておりませんので、この点については従来どおりというふうに理解をしております。

松野(信)委員 この取り消し訴訟の関係で、これは私の経験から申し上げますと、採石業者、石をとる、岩石をとる採石業者が、ある県知事に対して、採石法に基づいて、海岸に近い岩山があって、ここから採石をするということで採石の認可を受けようとしたところ、不認可という結論だったわけです。そのときに、最初から、山から石をとって、それを海岸に持ってきて、海岸で桟橋をつくって、桟橋に船を着けて、そこからとった採石を搬出する、こういう計画を指導を受けてやっていたわけですね。ところが、採石法の方が不認可になったものですから、この取り消しを求めて、ようやく採石法の方が認可されたということでやれやれと思っていたところが、この次にまた新しいトラブルになりました。

 それはなぜかというと、今度は、採石が認可されたものですから、海岸法に基づいて海浜地先に桟橋を設置するということで、桟橋の設置許可というのを求めたところ、これについて、当該県の現地の事務所長の手紙が来るわけです。その許可は困難であるという手紙が来て、この手紙を見る限り、正式に不許可という通知を出したのか、それとも、これはなかなか難しいですよという単なるお知らせをしているのかよくわからないということで、そうなると、そもそも処分があったのか、つまり、海岸法に基づく海浜地先に桟橋を設置するという不許可があったのか、まだ出ていないのか、よくわからないというようなことで、結局、取り消し訴訟を出したけれども、幸いにして、これは処分性ありというのが裁判所の判断だったものですから、処分性については何とかクリアしたわけです。

 だけれども、当該県の反論では、これはまだ処分していないんだ、しかも、許可処分というのは行政処分になるけれども、不許可処分というのは、そもそも一般人、一般私人というのは国の持っている海岸にそういう桟橋なんか設置する権利なんというのはないんだから、不許可というのは処分にも当たらない、行政処分にも当たらないということで、一切争いようもないんだ、こういうようなことでえらく苦労したケースがありました。

 そうしますと、そもそも処分があったのか、それとも処分ではない単なるお知らせということなのかで、国民の側から見て、一体、取り消し訴訟を起こすべきなのか、それとも不作為違法確認をすべきなのか、非常に迷うケースがあります、処分があったかなかったかということで。

 この点については、今回の新しい法案では、そういう、つまり処分性、処分があったかなかったか、そもそもこれがよくわかりにくい、単なるお知らせみたいなのが来ただけでよくわからないというような場合には、不作為違法確認とそれから取り消し訴訟、場合によっては両方できるのか、あるいは義務づけ訴訟みたいなものを提起できるのか、この辺の関係はどういうふうに理解をしているんでしょうか。

山崎政府参考人 この点に関しましては従来からある問題でありますし、今回はそこのところについては改正を加えておりませんけれども、一般的に申し上げれば、ちょっと今条文が手元にございませんけれども、これが処分なのか単なるお知らせなのかという点については、行政手続法上でこれを明確にするという手続がございますので、まずこれを御利用いただいて、それで明確にさせた上で、それに伴った訴訟を起こしていく、こういうような手続になっていくのではないかというふうに理解しております。

松野(信)委員 それから、今申し上げたように、処分があったとしても、今の事例で申し上げると、採石法に基づく認可ということと、それから桟橋設置については海岸法に基づく許可ということで、連続して二つの行政処分を得ないと一定の事業ができない、こういうような場合もあって、それぞれに場合によっては取り消し訴訟なりを起こさなきゃいけないという不便が現実にはあります。

 これ以外にも、例えば私立の病院を開設しようと。そうすると、病院を開設の許可を求める、これが一つあります。開設されたと思ってやれやれと思っても、この次に、場合によっては保険医療機関の指定申請が拒否されるということもあるわけですね。そうすると、せっかく建物としての病院はできたけれども保険が使えない。今の日本で保険指定ができないような病院では経営ができるわけがありませんから、結局、病院経営は断念せざるを得なくなってしまう。

 こういうようなこともあって、厳密に言うと、確かに、病院の開設のところとそれから保険医療機関の指定のところと、連続してあるんですけれども、二つの許可をとらなきゃいけないんですが、一つ一つ取り消し訴訟を重ねないといけないのか。こういうものは、もう一遍に取り消し訴訟で一遍にやるか、あるいは何らかの義務づけ訴訟で、要するに、円満に病院が開設できる、そこまで、つまり保険医の指定まで義務づけあたりでとってしまうという方がある意味では便利ではないかなというふうに思いますが、この点はいかがですか。

山崎政府参考人 ただいまの例につきましても、ちょっと突然の御指摘でございますので、ちょっと条文等がこちらに、手元にないわけですけれども、それは、二つの処分があったときにどういう訴訟で対応するかは、個別法がどういう処分に対して出訴を認めるかという置き方によって変わってくるという理解だろうと思います。ですから、これを、訴訟法上でそれをどういうふうにするということを決めるのはなかなか難しいということが第一点でございます。

 それからもう一点は、義務づけ訴訟の点につきまして今御質問がございましたけれども、二つの申請が行われているという状況であるならば、これは、それに対して何も応答しないということになれば、これは義務づけ訴訟の対象になる、両方を起こして対象になるということは考えられるというふうに思います。

松野(信)委員 それから、恐らくこれは新法では特に変わってはいないのかなと思うんですが、念のため確認しておきますが、現実の行政処分の前提として、例えば行政指導がなされる、あるいは一定の行政計画がなされる、中には、税務関係では、もうしばしば通達というようなことで、事実上の処分みたいな形でなされる。そういうような、行政指導だとか行政計画だとか、あるいは通達だとか、そういうようなものも取り消し訴訟の対象というふうに考えてもおかしくはないのではないかというふうに私は理解はしているんですが、どうも今回の法案では、そういうものはやはり取り消し訴訟の対象にはなっていない、こういう理解でよろしいんでしょうか。

山崎政府参考人 ただいま委員御指摘の理解で正しいということになると思います。

 したがいまして、行政立法、行政計画、通達あるいは行政指導、こういうものについて、それだけを目的として、これが違法であるかというような訴訟は起こせないということで、これは現行法と全く変わってはいないということでございます。

 これは、検討会でもいろいろ議論がございました。こういうものについて争わせるようにしたらどうかということもありましたけれども、訴訟の役割は何かということでございますけれども、やはり訴訟の役割は、具体的な権利関係について争いが起こって、その解決のために起こす、こういうことになるわけでございますので、では全く自己の権利に関係なくて、この通達がおかしい、この行政指導がおかしいということを起こすのは、今の現行法の体系の中で本当に司法の役割かどうかという問題も出てくるわけでございまして、場合によっては、行政庁そのものの問題、あるいは国会との関係の問題、そういうところで是正をするものはしていくという問題が起こってくるという点もあるわけでございます。したがいまして、この点についてはいろいろ議論があって、まだそういう大きな議論はとても最終的な結論には至らないということから見送っているわけでございます。

 ただ、これにつきまして、もしこの通達があって、自分がもし申請をすればこういうような処分がされるということの場合には、そういう、自分はその通達に従ってこういう義務、これを、義務を果たす地位にはないというんですか、無効確認的な確認訴訟、これは四条の当事者訴訟の中の確認訴訟、こういうことで、自分はそれに従う義務がない、こういう訴訟を起こしていただいて、その上で是正をしていただく、こういう方法があるということになろうかと思います。

松野(信)委員 今申し上げたように、この行政指導とか通達、これで現実にはかなり行政の実施がなされているというのが現実なものですから、この点についてはやはりメスを入れていかないといけないんではないか、このように思っています。

 それから、これまた今回の法案では残念ながら取り入れられてはいないんじゃないかと思うのが、現行法、行政事件訴訟法の三十条にあります裁量権の問題ですね。行訴法三十条では、要するに、「行政庁の裁量処分については、裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつた場合に限り、」取り消しができるということになっているわけであります。

 現実に訴訟の中で、せっかく原告適格のところがクリアされて本案の審理に入ったというふうになっても、現実には、裁判官の方が、まあどちらかというとやや行政に甘いというか、行政庁寄りというか、そういうようなことで、行政庁の裁量権、裁量の幅というのをかなり広く認めていて、例えば、費用対効果の点から見て、こういうような許可とか認可、そういう行政処分はいかがなものかなというふうに思っていても、それは○○大臣の裁量権の範囲内である、裁量権の逸脱はない、あるいは濫用はないということで敗訴してしまうというケースが非常に多くて、私自身もそれで大分泣かされてきたところもあるんです。

 この裁量の範囲を超えるか、あるいは濫用があったというのを、現実には非常に幅広くされているものですから、やはりここに一定の歯どめ、一定の規制、制限を加えないと、せっかく訴訟要件を満たして本案に入ってもなかなか行政事件の勝訴につながらないというふうに思いますので、この点について、今回の法案では恐らくこれについては何ら手は加えていないんじゃないかと思う。ちょっとその点、確認をしておきたいと思いますが、ぜひこの点については将来的な課題として取り組みをしていただきたいと思っておりますので、ちょっとこの点についてコメントをお願いします。

山崎政府参考人 ただいま御指摘のような意見があるということは、検討会の方でもいろいろ議論がされたわけでございます。

 今回につきましては、確かにこの点については全く改正はしておりません。これは、特に裁量については、それぞれの実体法の考え方が多種多様でございまして、まずそちらの方を原則的にもう少し整理して考えていただくという問題もあろうかと思います。

 それから、裁判のところで、範囲を超えているかどうか、あるいは濫用があったかどうかというところにつきましても、この考えられる基準というのが多種多様でございまして一定のものがないという状況でございまして、この辺については、私どもの検討会でも今回は何も改正の案を出しておりませんけれども、引き続きの課題であるということで、また再度検討をしていくということになっているわけでございます。

松野(信)委員 その点はぜひやはり一定の歯どめをしないと、とかく現場の裁判官は、何でもかんでも裁量の範囲内で、よっぽど逸脱をしていないと取り消しをしないという傾向にあると思いますので、ぜひ今後の検討をお願いしたいと思います。

 それから、続いて、出訴期間の点について御質問をいたします。

 出訴期間が、今回、三カ月から六カ月ということで延長されたということで、これで、今まで例えば出訴期間が徒過されたというものがこれによって幾らか助かることになるのかなというふうに思いますが、この出訴期間を延ばしたということについての何らかの立法事実のようなものはあるんでしょうか。

山崎政府参考人 この点につきましては、まず、出訴期間をなぜ定めるかということになりますと、やはり法的な安定性というものがございますので、一定の期間を設ける、これは必要があるということでございますが、現在、三カ月ということで、これは、この法律をつくった当時と現在、これがもう全く、いわゆる行政の処分の多様化、複雑化が違うわけでございますので、これが、処分があったとしても、一体どういう態様でどういうふうに起こしたらいいか、非常にそこに準備、時間がかかる、こういう御指摘がございまして、非常に使い勝手が悪い。

 それから、あるいは、それを徒過してしまいますと、現在では不変期間ということになっておりますので、本当に特別な理由がない限り許されないということになるわけでございます。これも、やはりこの現在の社会の中で非常に問題があり得るということから、期間をもう少し延ばしたらいいじゃないかということから六カ月にいたしました。

 ただ、これ以上長くしますと、行政処分の安定性という問題もありますので、そこのバランスをとったということ、それから、不変期間というものをやめまして、正当な理由があればその期間を超えても許す、この二つで救済を図っていくというふうに考えたわけでございます。

松野(信)委員 この出訴期間の関係について、やはり他の制度とのバランスはとらなきゃいけない、このように思います。

 その観点から見ますと、住民監査請求、これは、地方自治法に基づく住民監査請求の方は、地方自治法の二百四十二条の二項で規定がありますが、これは「当該行為のあつた日又は終わつた日から一年」という規定になっているわけですね。一年を経過したらできない、ただし、正当な理由があるときにはこの限りにあらず、こういう規定になっているわけで、住民監査請求は要するに一年、こういうことでありまして、今回の法案の六カ月の倍ぐらいになっているんですが、これとのバランス上は問題なしというふうにお考えでしょうか。

山崎政府参考人 この関係は、基本的には現在三カ月のを六カ月と延ばしておりますけれども、個別の法律でそれぞれの理由があって期間を設けているものについては、基本的にはそのままにするということでございまして、特に住民監査請求につきましては、地方自治体のいろいろな業務に対するチェックの問題でございますので、これは、ある一定期間、住民の方にチェックの機会を与えるという特別な理由に基づくものでございますので、これはある程度、例えば一年間の予算の使い方とかそういうことになりますと、ある程度長い期間を与えなければ、なかなかその権利行使ができないという性質のものでございますので、これはそのまま存置をしたということでございます。

 それ以外のものにつきまして、一般的なものは三カ月から六カ月へ延ばした、こういうことでございます。

松野(信)委員 この出訴期間の関係で申し上げますと、例えば情報公開訴訟というのがあります。これはよく行われているわけですが、情報公開訴訟については、ある意味では、余り情報をオープンにしたくないという自治体あるいは国の方と、情報を得たいという住民、国民の方との対立構造がよく言われます。

 しかし、私自身は現場の自治体の職員の人たちともいろいろ話をする機会がありますが、そういう人たちからの話では、やはり、情報公開するかしないかということで、事実関係にそんなに大きな争いがあるわけではなくて、専ら条例の解釈、法律の解釈、そこで、解釈によってある意味では対立しているわけで、裁判所が、これは公開すべきだ、あるいはこれは公開する必要はないというふうに判断してくれれば、行政としてももうそれに粛々と従うということで、むしろ早くすっきりさせてもらいたい、こういうような指摘も、現場の職員からは声が上がっているわけです。

 情報公開訴訟というのは、そういう意味でも、やはり今後ともよく使われる訴訟の体系ではないかなと思うんですが、ただ、現実には、起こしても、出訴期間徒過ということで却下されてしまうケースもあるわけで、いろいろこれを情報公開請求するというふうになっても、この出訴期間の問題で却下されてしまうケースが多いわけですが、この点、今回の法案で一定の救済というようなことが考えられるのかどうか、この点はどうでしょうか。

山崎政府参考人 先ほどもちょっと申し上げましたけれども、今回、三カ月から六カ月の期間に延長することに伴いまして、現在不変期間であるというものを不変期間ではなくしまして、正当な理由があってその期間に訴えを起こすことができなかった場合でも、それは出訴期間を満たしているというふうに評価をいたしまして救済をする、こういうような制度を設けております。

 したがいまして、その事由いかんでございますけれども、例えば、今回、教示制度、期間とかあるいはどういう不服申し立てをしたらいいかという教示制度をつくっておりますけれども、誤った教示に従って出訴期間を徒過してしまったというような場合、こういうような場合には、やはり正当理由があるということで救われていくだろう、こういうことでございます。

松野(信)委員 教示の点についても御指摘いただきまして、今度はきちんと教示がなされるというように法改正がなるわけです。そうすると、もし行政庁側が誤った教示、例えば出訴期間その他の点について誤った教示をした結果、出訴期間を徒過してしまったという場合は、こういう正当な理由に当たるのではないか、こういう御指摘ですが、例えば、もしそういう教示が、そもそも何らかのミスで教示がなされなかった、教示がなされなかったために徒過してしまったというような場合も、やはりこれは誤った教示をしたと同じように考えて、正当な理由という、こっちの方で救済する、こう理解をしてよろしいでしょうか。

山崎政府参考人 ただいまのような理由も、それが正当な理由に当たるかどうかという判断はもちろんあるわけでございますけれども、同じようなものとして考えられるだろうというふうに理解をしております。

松野(信)委員 教示全般について、これまでも教示制度というのがありましたけれども、中には、極めてお役所的というか、やや不親切な形でしか教示がなされていないというケースもありまして、私はやはり、せっかくこの教示制度というのが設けられるというのであれば、どこに対してできる、どの裁判所に対してできる、いつまでにできる、どういう内容のができるというのを、言うならば、余り不親切な形でなく、わかりやすい形で国民の方に教えるというのがぜひ必要なことではないかというふうに思いますが、この点は、ちょっと大臣の方に、ぜひそういう方向で、具体的な運用についてはわかりやすい教示制度というのをとっていただきたいと思っておりますので、コメントをいただきます。

野沢国務大臣 行政訴訟が日本で余り使われてこなかったという一つの理由は、やはりこの利用方法、活用方法、そしてまたその周知徹底において十分でなかったという反省はございます。

 今お話のございましたような点につきまして、これから、この法律が通過いたしましたならば、できる限りこれをわかりやすく、また広範に周知徹底すべく努力をしてまいるつもりでございます。

松野(信)委員 もう時間が参りましたので最後にしたいと思いますが、今回の法案で、やはり、一つの目玉は最初に申し上げた原告適格を拡大するということだろうし、また、別の目玉というのでは、義務づけの訴えとかあるいは確認の訴え、こういうものが新たにできて、使い勝手がいいような形で設けられるということではないかと思います。

 特に、確認の訴えということが設けられているということで、行政庁の何らかの不作為を許さない、違法な処分を許さないという点では、ぜひこの活用が考えられるわけでありまして、この点について、最後に大臣の御所見をいただきたいと思います。

野沢国務大臣 公法上の法律関係に関する確認の訴えにつきましては、これまでも、訴訟法上の確認の訴えの考え方を踏まえながら、具体的な事例における公法上の法律関係に即して解釈、運用がされてきたものと考えているところでございますが、今回の改正案におきましては、当事者訴訟の定義の中に、公法上の法律関係に関する確認の訴えを例示として加えておるわけでございます。これによりまして、取り消し訴訟の対象とはならない行政の行為を契機として争いが生じた公法上の法律関係に関しましても、確認の利益が認められる場合については当事者訴訟としての確認訴訟が可能になるということが明らかになっておるわけでございます。

 今後は、この公法上の法律関係に関しまして確認の利益が認められる場合につきまして、国民と行政との間の多様な法律関係に応じた実効的な権利救済のために、当事者訴訟としての確認の訴えの活用が図られるものと考えているところでございまして、大いにひとつこの法律を国民の皆様が活用した上で、行政のまさに目する国民のための福祉の増強といった点で、あわせて、個人の権利の保護を両立するような形で運用を図っていただきたいと考えておるところでございます。

松野(信)委員 時間が参りましたので、以上で質問を終えたいと思います。ありがとうございました。

柳本委員長 御苦労さま。

 次回は、来る十一日火曜日午前九時四十五分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時三十一分散会


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