衆議院

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第28号 平成16年5月21日(金曜日)

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平成十六年五月二十一日(金曜日)

    午前十時五分開議

 出席委員

   委員長 柳本 卓治君

   理事 塩崎 恭久君 理事 下村 博文君

   理事 森岡 正宏君 理事 与謝野 馨君

   理事 佐々木秀典君 理事 永田 寿康君

   理事 山内おさむ君 理事 漆原 良夫君

      左藤  章君    桜井 郁三君

      柴山 昌彦君    中野  清君

      早川 忠孝君    平沢 勝栄君

      保利 耕輔君    松島みどり君

      水野 賢一君    森山 眞弓君

      保岡 興治君    柳澤 伯夫君

      山際大志郎君    荒井  聰君

      市村浩一郎君    枝野 幸男君

      鎌田さゆり君    河村たかし君

      小林千代美君    小宮山洋子君

      辻   惠君    中井  洽君

      松野 信夫君    上田  勇君

      富田 茂之君    坂本 哲志君

    …………………………………

   議員           中村 哲治君

   議員           今野  東君

   法務大臣         野沢 太三君

   法務副大臣        実川 幸夫君

   法務大臣政務官      中野  清君

   政府参考人

   (警察庁刑事局組織犯罪対策部長)  知念 良博君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    瀬川 勝久君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  増田 暢也君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)  遠藤純一郎君

   政府参考人

   (国土交通省総合政策局観光部長)  金澤  悟君

   法務委員会専門員     横田 猛雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十一日

 辞任         補欠選任

  泉  房穂君     市村浩一郎君

  加藤 公一君     荒井  聰君

  川上 義博君     坂本 哲志君

同日

 辞任         補欠選任

  荒井  聰君     加藤 公一君

  市村浩一郎君     泉  房穂君

  坂本 哲志君     川上 義博君

    ―――――――――――――

五月二十一日

 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律の一部を改正する法律案(参議院提出、参法第一三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 破産法案(内閣提出第四一号)(参議院送付)

 破産法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第四二号)(参議院送付)

 出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案(内閣提出第六一号)(参議院送付)

 難民等の保護に関する法律案(中村哲治君外一名提出、衆法第四一号)


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     ――――◇―――――

柳本委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、参議院送付、破産法案及び破産法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 両案につきましては、去る十九日質疑を終了いたしております。

 これより両案を一括して討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 まず、内閣提出、参議院送付、破産法案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

柳本委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 次に、内閣提出、参議院送付、破産法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

柳本委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

柳本委員長 この際、ただいま議決いたしました破産法案に対し、塩崎恭久君外二名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。佐々木秀典君。

佐々木(秀)委員 ただいま議題となりました附帯決議案について、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。

    破産法案に対する附帯決議(案)

  政府及び最高裁判所は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。

 一 倒産時における賃金債権、退職金債権等の労働債権の優先順位については、労働者の生活保持に労働債権の確保が不可欠であることに鑑み、ILO条約や諸外国の法令を勘案し、引き続き検討に努めること。

 二 労働債権の保護については、破産管財人による破産手続に関する必要な情報提供が行われるとともに、労働組合等の破産手続への積極的な関与が図られるよう周知に努めること。

 三 労働形態が多様化している現状を踏まえ、正規の従業員であるか否かにかかわらないことはもとより、請負、委任といった契約の法形式にもとらわれることなく、労働債権の保護に関しては、労働形態の実質に即して十分な配慮がされるよう周知に努めること。

 四 新たな破産手続において、労働債権が不当に侵されることなどのないように、労働者に法的助言を行う労働相談など法的支援体制の一層の充実を図ること。

 五 倒産が多発する現下の経済情勢の下、包括根保証契約など個人の保証人が過大な責任を負うような保証契約については、契約の内容を適正化し、保証人となる者に適切な保護を与えるという観点から、個人保証のあり方の検討を行い、必要があれば、早急に見直しを行うこと。

 六 免責手続については、本法が債務者について経済生活の再生の機会の確保を図ることを目的としていることに鑑み、債務者保護の観点から適正な運用が行われるよう周知に努めること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

柳本委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 塩崎恭久君外二名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

柳本委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。野沢法務大臣。

野沢国務大臣 ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。また、最高裁判所にも本附帯決議の趣旨を伝えたいと存じます。

    ―――――――――――――

柳本委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

柳本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

柳本委員長 次に、内閣提出、参議院送付、出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案及び中村哲治君外一名提出、難民等の保護に関する法律案の両案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として警察庁刑事局組織犯罪対策部長知念良博君、警察庁警備局長瀬川勝久君、法務省入国管理局長増田暢也君、文部科学省高等教育局長遠藤純一郎君及び国土交通省総合政策局観光部長金澤悟君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

柳本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

柳本委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。下村博文君。

下村委員 おはようございます。自由民主党の下村博文です。

 きょうは、朝の八時から、自民党の党本部で日本魅力向上研究機構という勉強会がございました。これは、自民党の国会議員、数名ですけれども、それから学者、文化人と、もう五、六年ぐらい前から日本の魅力をどうつくっていくかということでの勉強会をしておりまして、日本の伝統、文化とか歴史だけでなく、今の国家戦略の中で、まさに誇り得る国家、あるいは世界に貢献できるような日本、潜在的な能力はある、それをどうこれから引き出しながら戦略的にそれを構築するかという勉強会でございます。

 日本の魅力が増していけば、それだけ世界じゅうから人や物やお金が集まってくる、日本全体も活力が生まれるということになるわけでありまして、日本がある意味では磁石のように、世界各国の人たちが、一度は日本に行ってみたい、日本で勉強したい、あるいは日本の風土に触れてみたいと思ってもらえるようなことをしていくということが大切であるというふうに思います。自民党の方でも観光立国日本ということで、これから五年以内に、今の約倍ですね、一千万人の外国人観光客を招きたいということでもあるわけであります。

 一方で、外国人を招くということの中で、日本が世界で一番の安心、安全の国であるというその神話が今崩れようとしているわけでありまして、やはり日本というのは本当に安心、安全の国なんだということは、外国人の方々に来てもらうという意味でも、これは大きなセールスポイントであるというふうに思うわけであります。

 今、多くの国民の方々が政治に期待をしているのは、一つは景気対策でありますけれども、もう一つは治安対策ということでありまして、この治安対策においても、自民党のマニフェストの中で、これも積極的な対応をしていく。具体的に言えば、きょうのテーマであります出入国管理に関係するわけでありますが、不法入国、不法滞在外国人をこれから五年間の中で半減していくということも大きな自民党の政権公約にも入っているわけでございます。

 事実、私の選挙区は東京の板橋区でありますけれども、この板橋区には警察署が三カ所ございますが、そこの留置場はどこでも大体平均四〇%ぐらいは外国人が留置されている。ですから、外国人、特に都市部においては外国人の犯罪、特に組織的な犯罪が最近ふえているということでもあるわけでございまして、そういう意味では、いい外国人にはどんどん我が国に来てもらう、一方で不良外国人はこれはもう入国させないという、めり張りのついた施策を行うということが求められているのではないかというふうに思います。

 この出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案、最初の質問でございますので、まず基本的なこの改正案について質問していきたいと思いますが、まず最近の外国人の入国、それから在留状況、それから不法滞在者の状況、このことについて数字でお聞きしたいと思います。

増田政府参考人 外国人の入国者数でございますが、平成十三年が約五百二十九万人、平成十四年が約五百七十七万人、平成十五年が約五百七十三万人でございます。

 それから、外国人登録をしている外国人の数でございますが、平成十三年末が約百七十八万人、平成十四年末が約百八十五万人でございます。平成十五年末の外国人登録者数は、現時点では記録が集計されておりません。

 それから、不法滞在者数でございますが、平成十四年一月一日現在から平成十六年一月一日現在までの間、約二十五万人で推移しております。

下村委員 平成十五年の外国人入国者数が約五百七十万人。先ほど申し上げましたように、これから五年以内に一千万人、外国人が我が国に来てもらうような施策をとっていくということで、同時に、外国人犯罪がそれに比例して倍になってしまってはますます治安が悪化するということにもなるわけでございます。

 この外国人犯罪の増加に対する国民の不安が広がっている、この問題をどう解決するかということの一つとして、今回の出入国管理及び、特に出入国管理ですね、この一部改正があるというふうに思うわけでありますが、最初ですので、この出入国管理と、それからあとは難民認定法ですね、この改正の趣旨についてお聞きしたいと思います。

実川副大臣 近年、治安に対します国民の不安が増大しているところで、これは御指摘のとおりでございますけれども、その原因の一つといたしまして不法滞在外国人の問題が認識されまして、その対策が各方面から求められております。

 現在、約二十五万人とも推計されております不法滞在外国人を減少させるためには、厳格な出入国審査を実施し、不法滞在者の摘発を抜本的に強化するほか、不法滞在者みずからが本邦での不法滞在状態を終了し帰国することを促す施策を実施するとともに、不正な手段によります上陸許可等を受けて合法滞在を装う実質的な不法滞在者を排除する必要もございます。

 また、我が国は昭和五十六年に難民認定制度を創設しましたけれども、その後の国際情勢の変化に伴いまして、難民認定を取り巻く状況が大幅に変化していることなども踏まえまして、より公正な手続によりまして難民の適正かつ迅速な庇護を図る観点から、難民認定制度を見直すものでございます。

 さらに、障害者の社会活動への参加を不当に拒む要因とならないように、障害者に係る欠格条項の見直しを行うとの平成十一年八月の障害者施策推進本部決定を受けまして、精神障害者に係る上陸拒否事由の見直しを行う必要がございます。

 以上のような状況に適切に対応するために、今般、出入国管理及び難民認定法の一部改正を行うものでございます。

下村委員 きょうは、特に不法滞在者対策についてを中心に質問させていただきたいというふうに思っております。

 今御説明がありましたように、約二十五万人の不法滞在者がいるのではないかということでございまして、外国人の入国者数、昨年五百七十万人ですから人数的には二十五分の一程度でもあるわけでありますけれども、しかし、ここにおいて犯罪率が非常に高いということでございます。

 この不法滞在者対策、これについて法務省がどのような措置を講じてきたか、具体的にお聞きしたいと思います。

増田政府参考人 入国管理局といたしましては、摘発専従班を置く出張所を開設するなど、地方入国管理局におきます摘発体制を整備し、また、関係機関とも連携しつつ、入管法違反事件の積極的な摘発を実施してまいりました。

 それから、最新鋭の偽変造文書鑑識機器の導入や、不法滞在目的と疑われる人に対する上陸審査の徹底、また、不法滞在と結びつきやすい在留資格である留学、就学、興行などの在留資格認定証明書交付申請に対する審査の厳格化などの方策を講じてまいったところでございます。

下村委員 審査の厳格な施策を講じてきたということでございますが、私は、それはそれで非常に重要なことだというふうに思うんですが、特にことし、この留学、就学に対して非常に審査が厳しくなったということで、以前もこの委員会で同僚議員から質問がございましたが、ちょっとこの施策についてお聞きしたいと思うんですね。

 この留学、就学の在留資格に係る在留資格認定証明書、この審査が厳しくなった、特に中国人に対する認定率が低いということでございまして、平均認定率が二五%、四人に一人しか認定されてないということでありますけれども、これはどうしてことしになって急に厳しくなったのか、お聞きしたいと思います。

増田政府参考人 本年一月一日現在で、留学及び就学の在留資格を持って入国後に不法残留している人が約一万六千人に上っております。さらに、これら在留資格で入国する人の中には、最初から就労を目的としている人や、あるいは、当初は勉学を志していたとしても、経済的な事情などから勉学をしないで働いている人が多く存在しております。おまけに、これら留学、就学の在留資格を持った人による犯罪が社会的な関心を集めているところでもございます。

 そういったことから、入管におきましては、申請内容の真偽について、従来より厳格な審査を行うこととしたものでございます。

 本年四月に入学した留学生、就学生についてですが、特に中国の方の交付率が御指摘のとおり低くなっております。

 これは、個々の申請について審査した結果、入学する学校から提出された経費支弁能力に関する文書であるとかあるいは卒業証明書であるとか、その他経歴に関する各種証明書、こういったものに虚偽の記載があるとかあるいはそれらが偽造、変造されている、そういう例が多く見られたことから、そういった書類を提出した者について交付しなかったということでございます。

 法務省といたしましては、不法就労等を目的とした名目のみの留学や就学の在留資格により入国しようとする人は排除することが必要と考えておりますけれども、ただ、真に勉学する人については積極的に受け入れるというこれまでの方針に変更はございません。今後とも、真に勉学を行う留学生、就学生の受け入れの拡大に努めてまいりたいと考えているところでございます。

下村委員 私のところに、日本語学校の経営者の方々の代表が何回も来られました。四百校を超える日本語学校がございます。

 それで、外国人登録者、就学者ですね、日本語学校等に入っている学生ですが、この推移を見ますと、例えば、平成六年が三万七千六百五十三人で、大体これで推移していって、その後ちょっと減って、平成九年には二万九千九十五人、それから少しずつふえていって、平成十四年には四万七千百九十八人、平成十五年は四万九千人ぐらいではないかということで、ふえているわけですね。

 これは、御承知のように、文部科学省が留学生十万人計画ということで、海外の志を持って勉学をしたいという学生をできるだけ迎え入れようということの施策の一環でもあるのではないかというふうに思うわけでありまして、数字が着実にふえていったわけでございます。

 一方、今お話がございました不法残留者数、この就学における不法残留者数は、平成六年のときは二万三千四百九十三人もいた。先ほど申し上げましたように、外国人の就学登録者数が三万七千六百五十三人で、そのうち不法残留が二万三千四百九十三ですから、これはかなり高かったわけですけれども、しかし、関係機関の努力によって、もちろん法務省、入管局の努力もあって、先ほどの数字で申し上げれば、平成十五年四万九千人近くの外国人登録者の中で不法残留者数九千五百十一人ということで、かなり減っているわけですね。

 ですから、着実に留学生、特に就学における留学生は随分ふえているけれども、不法残留者はかなり減ってきているということで、適切な処理が行われているというふうに思います。

 しかし、その中で、ことしになってから特に中国人の在留資格認定が非常に厳しくなって、今までは七割前後あったというふうに思いますが、それが急に二五%しか認定しなくなった。中には、日本語学校によっては五%ぐらいしか認定されないということで、学校というのはある程度経営の安定がなければ運営していけませんから、極端に学生数が減ってしまったことによってもう経営の危機に陥っている日本語学校もたくさん今出てきているんですね。

 ですから、私は、もちろん、そこに不正があったりあるいは問題があれば、それは厳しく取り締まるのは当然だと思うんですが、ただ、法務行政、特に入管が、そのときのある意味では裁量行政的な部分があって、極端に厳しくしたり極端に甘くなったりということであっては、これは当事者の方々にとっては大変なことだと思うんですね。

 実際、中国の就学生についても、全土ということじゃなくて、あるエリアのところが厳しいとか、それは組織的ないろいろな問題があったのではないかというふうに思いますが、この辺のトータル的なバランスというのは、これは行政施策の中で必要であって、いたずらに不安感、あるいは、実際、それによって経営困難になるというような受け入れ先があってもならないというふうに思うわけでありますが、これについての基本的な考え方について、ちょっとお聞きしたいと思います。

増田政府参考人 留学生、就学生に対します私どもの考えは、先ほど申し上げたとおりでございまして、つまり、真に勉学する人については積極的に受け入れていくというその方針には変わりありません。今後もこれは堅持していかなければいけないと思っているわけです。

 今回の私どもの措置というのは、不法滞在者がこれほどふえていて、それで国民に対して不安を与えている。その中で、その不法滞在者の中には、少なからず、留学生、就学生という在留資格を持って入ってきた人がそのまま学校に行かなくなり、そして不法残留を続け、犯罪組織に結びついていく、それがまた凶悪犯罪に加担する、あるいはその他の犯罪組織の手先として使われている、そういう例がかなり出ているということを踏まえまして、それでは、どうやってそれを審査するかというときに、出されている書類が偽造であるとかあるいは虚偽であるとか、こういう人が来てもらうのはやはりちょっと困るな、そういうことで今、審査に臨んでいることでございまして、おっしゃるとおり、恣意的にあるいは裁量を濫用して殊さら狭めるとかあるいは殊さら広げる、そういった運用をしてはならないことは重々承知しておりますので、その点はこれからも十分に自戒して努めてまいりたいと思います。

下村委員 ぜひその辺は、受け入れ側である日本語学校の方々が、今までは認められていたのにことしになって在留資格認定証明書が不受理になったということの理由がよくわからない、あるいは伝わってこない、あるいは説明してくれないということも聞いておりますので、その辺は、きちっと対応することによって、まじめな学生はぜひ積極的に受け入れるような対応を考えていただきたいと思います。

 それから、同様に、外国人の興行ビザ、これについてちょっとお聞きしたいと思うんです。

 ことしのアメリカの人身取引報告、トラフィッキングレポートというところで、我が国の興行の在留資格が問題であるような、そういう問題提起がこれからされるのではないかというふうに聞いているわけでございますけれども、結構、興行関係で来て認めている人もかなり人数として多いわけですよね。これはどんな観点で問題があると指摘されているのか、また、これに対して入管としてはどのように対応を考えているのか、お聞きしたいと思います。

増田政府参考人 新聞報道などによりますと、ことしの三月ですが、アメリカ国務省の人身売買監視対策室長のジョン・R・ミラー氏が、興行ビザが犯罪社会ネットワークによって性的搾取を行わせる法的な抜け穴になっていることを懸念している、日本の興行ビザは人を奴隷に陥れるということをえんきょく的に言ったものである、政府はそのようなシステムに厳しく対処する努力を全くしようとしないなどと発言したとされております。

 また、人身取引対策に関与されているNGOの出版物等におきましても、日本に向かうフィリピン人労働者のほとんどはエンターテイナーとして風俗産業で働く女性である、日本に入国してからの女性たちには、奴隷同然の、まるで商品のように扱われる過酷な現実が待っているなどと指摘されているものと承知しております。

 さらに、刑事事件化された事例として、例えば歌手やダンサーの興行ですが、興行の査証で入国した女性をホステスとして雇用していた不法就労助長事案におきまして、招聘業者がホステスの仕事を拒否する女性の旅券を取り上げて、誓約書を徴するなどしてホステスの仕事を強要していた事例があると承知しております。

 このようなことから、我が国の興行という在留資格が人身取引に悪用されているという指摘があるものと承知しております。

 この人身取引対策につきましては、本年四月に内閣官房副長官補を議長といたしまして、法務省、警察庁、外務省、厚生労働省の各担当部局の局長級を構成員とする人身取引に関する関係省庁連絡会議が設置されまして、政府としてこの問題に取り組んでいく方針が打ち出されているところでございます。

 入国管理局では、これまでもこの興行の在留資格に関しましては、招聘業者あるいは出演店が人身取引に荷担することがないよう、外国人の入国を認めるかどうかを判断する段階で厳格に調査あるいは審査してまいりましたが、先ほど来申し上げたような指摘が種々なされていることを踏まえまして、興行の在留資格の悪用防止策について今後さらに検討してまいりたいと考えているところでございます。

下村委員 この興行の在留資格というのが今おっしゃったような人身取引に悪用されているとは必ずしも思わないわけでありますが、しかし、そういうふうに報道されていることが事実だとしたら、これは法務当局としてきちっと対応することが当然必要だというふうに思いますけれども、ほかの国でも同様の興行の在留資格が問題提起された例があるのか、それについてちょっとお聞きしたいと思います。

増田政府参考人 私どもで承知しております例としては、例えば韓国がございます。

 韓国におきましては、外国人観光客を誘致するという目的で芸術興行ビザが導入されておりましたが、国内の公演企画会社が芸術興行ビザで外国人女性を入国させた後で、ディスコなどの風俗店で公演させる過程で、売春の強要、暴行、旅券の強制保管といった人権侵害を頻発させたり、あるいは米軍基地周辺において遊興業所等に従事する外国人女性ダンサー等に対する暴力、性売買、人身売買等の人権侵害事例が頻発するなどして深刻な社会問題になったと聞き及んでおります。

 このため韓国におきましては、昨年、平成十五年六月から、歌手兼ダンサーに対する興行資格の査証及び査証発給認定証明書の発給が中止されていると承知しております。

下村委員 これは確認ですけれども、アメリカの人身取引報告というのがあって、それがこの韓国のことを指摘し、そのことによって歌手兼ダンサーに対する興行資格が発給停止になったんですか。因果関係というのはおわかりになりますか。自主的に発給中止にしたのですか。

増田政府参考人 アメリカの国務省レポートがきっかけで昨年韓国が今申し上げたような措置をとったのかどうか、その辺の因果関係は私どもとしては承知しておりません。

下村委員 いずれにしても、我が国でもこの興行ビザというのはあるわけでございますが、ぜひ、その辺については、いわゆる暴力団組織等の介入等を排除する中で、また、指摘されるような問題点がないような対応をぜひする必要があるというふうに思います。

 この不法滞在に、ちょっと本論に戻りますけれども、不法滞在者対策ということで今回いろいろな施策を考えられておりますが、この施策についての概要、基本方針、これをちょっとお聞きしたいと思います。

実川副大臣 近年、我が国の治安悪化の主たる原因の一つといたしましては不法滞在者問題が取り上げられております。その対策が各方面から求められていることから、法務省といたしましては、不法滞在者の積極的な摘発を実施するなどの方策を講じておりますけれども、本年一月一日現在でも、なお約二十二万人という多くの不法残留者と約三万人とも推測されます不法入国者が国内に潜伏しているため、この際、法整備も含めた不法滞在者対策の強化が求められているところでございます。こうした不法滞在者対策は、我が国が歓迎すべき外国人を受け入れやすい環境づくりにもつながるものというふうに考えております。

 そこで、今回の改正では、一方では、悪質な不法滞在者に対します罰金額の引き上げ等罰則の強化、さらには上陸拒否期間の伸長などの厳格な措置を講ずるとともに、他方では、出国命令制度を新設しまして、手続の簡素化及び上陸拒否期間の短縮によりまして、潜在しております不法滞在者の出頭を促す方策を盛り込んでおります。

 これら手続の簡素化等によりまして、入国管理局の限られた人員を有効に活用し、厳格な入国、在留審査、あるいは摘発の強化などの従来から行ってきた方策とあわせまして、不法滞在者対策を強力に実施していくことにしたい、このように考えております。

下村委員 この不法滞在者、ピークのときは三十万人近くおりましたから、大分減りつつあるというふうには思うわけでありますけれども、しかし、五年以内にこれを半減させるということの中での今回の改正案であるというふうに思いますが、この一つとして、不法滞在者に係る罰金を大幅に引き上げる。これまで不法残留罪等について罰金の上限が三十万であったけれども、今度は三百万に引き上げる。これは、三百万というのは、ほかの刑法と比べてもかなりの額に該当するのではないかというふうに思います。それだけ厳しい罰則規定ということであるというふうに思いますが、この三十万を三百万に引き上げた、その趣旨、それから根拠をお聞きしたいと思います。

増田政府参考人 今回、入管法七十条違反の罪の罰金額の上限を引き上げることといたしましたが、これは当初から不法に日本に入国、上陸して不法在留する者や、あるいは、いわゆるリピーターなどの悪質な不法滞在者の多くが我が国で不法就労を行って多額の収益を得ているという実情にかんがみまして、罰金刑を併科することによる経済的制裁をも加えることにより、これらの悪質な不法滞在行為の抑止効果をねらったものでございます。

 三百万円の根拠についてもお尋ねですが、近年の入管法違反者に対する違反調査を行っておりますが、その結果によりますと、我が国滞在中に不法就労を行ったと認めている者のうち、二百万円を超える収益を得た者が六割から七割に上っております。五百万円を超える収益を得た者も約四割に上る実情にございまして、このような実情に照らし、悪質な不法滞在行為を抑止するに十分な経済的制裁という観点から、罰金額の上限を三百万円に引き上げることとしたものでございます。

下村委員 不法滞在を犯しているわけですから、やむを得ないというふうに思いますが、ある意味では、恐らくほとんどの人が単純労働等で、本当に積み重ねるような努力によって二百万とか三百万とか稼いだのではないかと思いますが、それが罰金として全部消えちゃうというのもかわいそうな気もしますが、それは、こういうことを許さないということの、国家としての立場として当然のことだというふうに思うんです。

 リピーターというのは、実際、二十五万人の中でどの程度いるものかどうかというのはちょっと疑問なんですが、漠然としたイメージで結構ですけれども、リピーターというのは大体どれぐらいを占めるものなのか。そして、ついでに、この罰金の引き上げ、これが不法滞在者の減少にどんな効果があるのか。少なくとも、リピーターはもういなくなっちゃうでしょうね、これによって。稼いでも全部取られちゃうわけですから。罰金の引き上げ、これがどのような効果があるか、お聞きしたいと思います。

増田政府参考人 リピーターがどれぐらいいるかということでございますが、入管で退去強制の手続をとった人の中で、前にも退去強制を受けた者ということで把握いたしますと、平成十五年の場合、およそ一三・五八%、退去手続をとった者の中の一三・五八%がいわゆるリピーターということでございます。

 今回の不法滞在者に係る罰金額の上限の引き上げというのは、このようなリピーターなど悪質な不法滞在者が不法就労を行っていて多額の収益を得ているということにかんがみまして、罰金刑を併科して経済的制裁を加えることで、こういったリピーターなどの悪質な不法滞在行為、これを事前に抑止しよう、そういう効果をねらったものでございまして、不法滞在者の発生の抑止と減少に結びつく効果が大いにあるものと期待しております。

下村委員 それから、今回のこの改正案で、現在五年間とされている不法滞在者の再上陸の拒否期間、これを見直すということでございまして、あめとむちといいますか、中には、十年間はもう再入国させない、あるいは一年後にはさせるとかいうような改正案を考えられているようでありますが、これについて御説明をいただきたいと思います。

増田政府参考人 現在の入管法におきましては、不法残留などを理由として退去を強制された人は、その強制された日から五年を経過すれば再度入国が許可され得るところでございます。

 しかし、近時、不法残留等により一たん退去強制された人が、その後再び我が国に入国して不法残留などをする、そして退去強制されるという、いわゆるリピーター事案が、先ほど申しましたとおり、一割以上を占めている、増加傾向にある。このような状況がございますので、これに適切に対処するため、過去に不法残留等を理由として退去を強制された者、それから出国命令を受けて出国した者がその後我が国に来て再度退去強制される、このような場合の上陸拒否期間、これを現在の五年から十年間に延ばすということを一つ考えました。

 それから、他方では、比較的悪質ではない不法残留者、これがみずから入国管理官署に出頭してきた場合には、上陸拒否期間をこれまでの五年間から一年間に短縮することによりまして、そのような人の自主出頭のインセンティブを強化しようとするものでございます。

下村委員 自主出頭があれば、従来の五年間を一年間でまた再び日本に入国できるようにするというところが、今回、不法滞在者に対する、減らすための施策としてはかなりインセンティブはあるのではないかなと思うんですが、これは、諸外国で似たような例があるかどうか、ちょっとお聞きしたいと思います。

 あわせて、これは実際に平成十一年までは一年間だったわけですよね、それが五年間に延ばされたばかりなわけですよね。またこのわずかな期間で、インセンティブを与えるとはいえ、一年間のが五年間になって、それで今度は、自主出頭すれば一年間にまた短くしますよ、一方で、再度退去強制された場合は十年間はもう入国はさせないということで、わずかな期間で見直しが行われたという、この理由というのも説明をしていただければと思いますが。

増田政府参考人 まず、お尋ねの後段の方からお答えいたしますけれども、平成十一年の法改正におきましては、退去強制された人について、その事案の性質のいかんを問わず、一律に上陸拒否期間を、それまで一年間とされていたものを五年に延ばしたものでございました。その結果、本邦の不法残留者数は減少傾向にありまして、この改正はその減少に一定の成果を上げたものと考えております。

 ところで、今回の改正案でございますが、上陸拒否期間をこれまでどおり原則五年としつつ、退去強制された人がその後再び我が国に不法滞在する、いわゆるリピーターの増加、これが最近増加傾向にあるということ、それからもう一つは、帰国希望の出頭申告者が減少する傾向にある、こういった状況がありますので、いわばこういう平成十一年の法改正後の事情の変化を踏まえまして、複数回にわたり不法残留等を行う悪質な者については、新たな不法滞在の発生を防止する観点から上陸拒否期間を延ばす一方で、一定の要件を満たす比較的悪質でない不法残留者については、出頭申告を促す観点から上陸拒否期間を短縮しようとするものでございまして、いずれもその意味では、平成十一年の法改正後の事情を踏まえたものであるということでございます。

 それから、自主的に出頭した者に対してインセンティブを与えるということについてでございますが、詳しく承知しているわけではございませんが、例えば韓国などにおいてもこのような方策がとられていると承知しております。

下村委員 今回の法改正を一番知ってほしいのは不法滞在者ですよね。ですから、不法滞在者が、こういう改正案ができたんだということでどんどん自主出頭してもらって、そしてまた日本に来たいということであれば一年間でまた再入国できるんだということでの、これは法務省がどうやってPRするのかもこれからの課題であるというふうにも思うわけであります。

 あわせて、現行法の退去強制制度、これが現行法であるわけですが、それから、今回の改正で新たに設ける出国命令制度、この違いはどういうところにあるのか。この出国命令制度を設ける趣旨は何か。

 それから、繰り返すようですけれども、この出国命令制度とか、それから先ほどの、出頭することのインセンティブ、これも含めて、ぜひ、不法滞在者にどう知らせるかというのは難しいことだと思いますが、この法案が通った暁のPRも必要であるというふうに思いますが、もしお考えがあれば、それも含めてお答えをいただければと思います。

増田政府参考人 現在の入管法におきましては、二十四条に退去強制事由が定められております。これに該当する外国人につきましては、今の法律では、すべて退去強制手続をとりまして、原則としてその身柄を収容することとしております。そして、退去強制された人の上陸拒否期間は、先ほど来申し上げているとおり、五年と定められているわけです。

 それに対しまして、出国命令は、このように、退去強制事由に該当する方の中で、みずから入管に出てきたこと、それから不法残留以外には退去強制事由に該当しないこと、また窃盗罪等一定の罪により懲役あるいは禁錮に処せられた者ではないこと、それから、これまでに退去強制などをされたことがないこと、こういったことなどの要件を満たす人について、現在の退去強制手続とは別に、外国人の身柄を収容することなく簡易な手続で出国させるものでございます。そしてまた、その上陸拒否期間も五年から一年に短縮するものでございます。

 現在、不法滞在者の大幅な削減が求められているところでございますので、入国管理局の限られた人員を有効に活用する必要がございまして、そのためには、不法滞在者をより迅速かつ効率的に出国させる体制を構築する必要がありますことから、比較的悪質性の認められない違反者について、このように自主的に出国するようにインセンティブを付与して、簡易な手続で出国させることとしたものでございます。

 御指摘のとおり、この制度をどのように知らしめるかということが大きな課題であると思います。私どもとしましては、不法滞在者を多く出している国の言葉での周知を、例えばホームページに載せてみたり、あるいは在京の大使館などにこの法律改正の要点をお知らせして、それをそれぞれの国で周知してもらうとか、さまざまな方策を講じてまいりたいと考えております。

    〔委員長退席、塩崎委員長代理着席〕

下村委員 この出国命令というのは、今のお話がありましたように、外国人の身柄を収容することなく簡単な手続で母国に帰させる、そして再び日本に入国できる期間を一年に短縮するということですから、かなりのインセンティブですし、それだけでなく、これは入管行政そのものが、かなり我々の方も、自民党も、今行政改革が言われている中で、中央省庁の役人を大幅に減らすということの中で、この入管行政は逆に積極的にふやす必要があるんだということで、人員拡大、確保に向けて我々もバックアップをさせていただいているわけでありますが、そういう部分でもこの施策というのは大変に有効であるというふうに思うわけであります。

 一応確認のために、当然ですけれども、この出国命令は、不法入国それから不法上陸、こういう対象者は除外しているわけでありますけれども、一応、この不法入国あるいは不法上陸の者をこの出国命令から外した理由について、確認のためにお尋ねいたします。

増田政府参考人 この出国命令の対象となります不法残留者というのは、最初は適法に我が国に入国し在留して、その後、違法状態となった者です。それに対しまして、お尋ねの不法入国者とかあるいは不法上陸者は、我が国に不正な手段を用いて入国、上陸した者であります上、もう最初から在留資格のない違法な滞在状態にありますから、我が国の出入国管理秩序を著しく侵害しているという点で、この不法入国者、不法上陸者と不法残留者とでは悪質性が大きく異なるものであって、このような悪質性の高い人に対してまで簡易な手続で出国を認めるのは適当でないと考えます。

 それから、正規の手続で我が国に入国して、その後、不法に残留するようになった不法残留者につきましては、入国あるいは在留の記録がある程度整っておりますから、その意味では容疑事実の確認が比較的容易であるということが言えると思います。

 他方、不法入国とか不法上陸をした人については、入国とか上陸に関する記録がない、あるいは、あったとしても不正確とか、あるいは、その意味では容疑事実の確認が困難な場合が多いために、調査を十分に行うためには、不法入国、不法上陸者に対しては身柄を収容して確実な調査、証拠収集を行う必要がある、そういった点からも、身柄収容を前提としないこの出国命令制度にはなじまないというふうに考えたわけでございます。

下村委員 不法滞在者を非常に効率的に我が国から排除するということでの出国命令制度の目的ということであるわけですけれども、具体的に、この制度を導入して、これはPRにもよるんじゃないかなと思うんですね、実際は。しかし、この出国命令、どの程度が一年間でこれの対象者になるというふうに想定できるか、お聞きしたいと思います。

増田政府参考人 これは平成十四年の数値に基づいて試算したところでございますが、早期の出国を希望して入管に出頭し、過去に被退去強制歴がなくて不法残留以外の退去強制事由にも該当しない人、その割合は、入管に出頭した人の約五七%と推計されました。平成十四年の場合ですと、出頭申告した人が約二万七千人でございましたので、それを前提として約五七%と推計しますと、年間約一万五千人が出国命令の対象になるものと予想しております。

下村委員 続きまして、今度は、適法に我が国に在留している外国人におきまして、その在留を打ち切るための在留資格取り消し制度、これを新たに設けるということでありますけれども、この在留資格取り消し制度を新たに設けることにした、その趣旨あるいはその背景についてお聞きしたいと思います。

増田政府参考人 行政機関が、偽造書類を提出されるなどして、それを信じて行政処分したような場合を瑕疵ある行政処分というような言い方をいたしますが、こういった行政処分につきましては、個別具体的な法律の根拠がなくても取り消しができると解されておりまして、当局ではこれまでも、偽造文書、変造文書が提出された事案などについては、そのような行政法の一般法理によって上陸許可などの取り消しを行ってきたところでございます。

 しかしながら、そのような一般法理による取り消しは、取り消しの効果を遡及させて、その外国人を不法上陸状態にした上で直ちに退去強制につながる効果を有するものでございますので、権利侵害の重大性にかんがみまして、これまでは謙抑的に行ってきたところでございます。

 ところで、近年、我が国に入国する外国人は増加傾向にありますが、それらの外国人の中には、偽りその他不正の手段によって上陸許可などを受け、あるいは在留資格を持っていてもそれに該当する活動を行うことなく不法就労活動に従事したり、あるいは犯罪を犯すなど、公正な出入国管理を阻害する者が少なからず存在しておりまして、我が国の在留資格制度をより適切に運用する必要が高まっているところでございます。

 しかしながら、これまでは、この在留期間の途中で外国人の在留活動を調査する権限が入国審査官には与えられておりませんでしたので、偽造文書、変造文書を行使したことが客観的に明白な事案など、一部の事案についてしかこの取り消し権を行使することができない状況にございました。

 そこで、公正かつ的確な出入国管理行政を実現するため、新たに入国審査官に実態調査権限を付与して、在留期間の途中においても外国人の在留活動を的確に把握できるようにいたしますとともに、この取り消しに当たりましては、外国人の意見を聴取する手続、これを明確に定め、偽りその他不正の手段の悪質性の程度の低い場合には、任意の出国の機会を付与するなど、取り消しの要件と効果を明定した在留資格の取り消し制度を創設することとしたものでございます。

下村委員 この在留資格の取り消し制度というのは、先ほどの例で言うと日本語学校とか、最近の事例で言えば酒田短大のように、就学、留学で来ているにもかかわらず途中で学校をやめちゃったとか、その後何をしているかわからないとかいう、しかし期間は一年とか二年残っているということを排除するということでは、当然あるべきことだというふうに思うんですが、一方で、例えば勤めていた会社が倒産しちゃったとか、そういう本人の理由でなく先方の理由によってやむなく仕事ができなくなってしまったということであってはならないわけで、在留資格の取り消し制度によって我が国で就労している外国人の地位が不安定になる、この制度が恣意的に運用されると外国人が我が国で安心して暮らせなくなる、そういうおそれがあるのではないかということも危惧されるわけでありまして、これについてどうお考えか、お聞きしたいと思います。

増田政府参考人 今回の改正によって新設される在留資格の取り消しに当たりましては、取り消しの対象となる外国人からあらかじめ意見の聴取を行いますほか、入国審査官による事実の調査も行い、それらを踏まえて取り消すかどうかを慎重に決定することとしておりまして、入国管理局において恣意的に在留資格の取り消しが行われているかのような批判を受けることがないよう、適正な運用に努めてまいりたいと考えております。

 また、今般の在留資格の取り消し制度においては、所定の在留資格を持って在留する外国人が、現に有する在留資格に係る活動を継続して三カ月以上行わないで在留していることを取り消し事由の一つとしておりますが、その活動を行わないで在留していることに正当な理由がある場合は、取り消しの対象とはしないこととしております。

 そこで、例えば、今委員から例を挙げられました、雇われていた企業が倒産した、そのために本来の在留活動ができなくなっている、こういう場合につきましては、やむを得ない事情により、現に有する在留資格に係る活動を行えなくなったのであれば、例えば、新たな就職先を探しているということであるならば、その再就職によって在留資格に係る活動を再び行うことが可能となる見込みもあるわけですから、このような場合には正当な理由があるということに該当し得ると考えております。

 したがいまして、我が国で就労している外国人の地位が不安定になるということはないものと考えております。

下村委員 法務大臣がお戻りになりましたので、法務大臣にまとめてお聞きしたいと思うんですが、今議論されていた罰則の強化、三十万が三百万、それから新たに出国命令制度、それから在留資格取り消し制度、こういうことが設けられる。今回、この法改正でいろいろな方策が講じられるわけであります。

 この法改正によって、約二十五万人と推定される不法滞在者、これは自民党の公約でもあるわけですけれども、今後五年間で半減できるということでよろしいのかどうか、大臣にお聞きしたいと思います。

野沢国務大臣 今回の改正におきましては、不法滞在者に対する罰金を大幅に強化するとともに、上陸拒否期間の伸長などの厳格な措置を講じて不法滞在者の発生を抑止する一方、出国命令制度等を新設して、不法残留者の自主的な早期帰国を促すこととしておるところでございます。

 また、これらの措置に加えまして、不法滞在者の摘発、入国審査の厳格化による不法入国者の阻止など、種々の方策を総合的に講ずることなどによりまして、不法滞在者の大幅な削減が期待できるものと考えております。

 約二十五万人と推計される不法滞在者を五年間で半減させるという政府の目標の実現に向けまして、今後とも最大限の努力をしてまいりたいと考えております。

下村委員 一方で、不法滞在者をこのような刑罰によって減らすということだけでなく、法務大臣の不法滞在者に対する在留特別許可というのがありますね。これは、不法滞在者の状況によってはちょっとやむを得ないかなと思われるようなこともやはりあるわけであります。そして、既にこの在留特別許可というのも活用されているわけでございまして、今後これを積極的に、個別事情にもよりますが、柔軟に活用することも、これはもう必要になってきているのではないかというふうに思いますが、在留特別許可についてお聞きしたいと思います。

増田政府参考人 おっしゃるとおり、一口に不法滞在者と言いましても、さまざまな立場の方々がおられます。その中には人道的な配慮をすべき方々もおられますことから、このような方々につきましては、今後、在留特別許可をより積極的かつ弾力的に運用してまいりたいと考えております。

 ただ、本邦に不法に滞在している外国人が、安易に、あるいは容易に在留を認められることになりますと、今後、新たな不法入国者の流入とか、あるいは不法残留者の増加を誘発する要因になりかねないと危惧されるところでございますので、在留特別許可につきましては、我が国における不法滞在者への影響などにも十分に配慮して、適切な運用に努めてまいりたいと考えております。

下村委員 次に、難民認定制度の見直しについてお聞きしたいと思いますが、もう時間が数分しかございません。民主党さんの方でも難民等の保護に関する法律案を出されておりますが、残念ながらきょうは時間がございませんので、また改めて質問もさせていただきたいと思います。

 ぜひ、政府側の方に。今回のちょっと大きなポイントとして、難民審査参与員制度、これを設けますよね。これは、諸外国からも、我が国の難民政策は非常に厳し過ぎるのではないかと。実際、毎年数十人といっても、十人、二十人、そっちのレベルですけれども、しか認定されていない。そもそも母数も非常に少ないわけでありますが。しかし、国際社会の中から、我が国の難民政策については厳しい意見があることも事実でございます。こういう中で難民審査参与員制度を設けるようになった、このことについてお聞きしたいと思います。

増田政府参考人 難民審査参与員制度におきましては、法務大臣が異議申し立ての決定を行うに当たりまして、人格が高潔で、公正な判断をすることができ、法律や国際情勢等について学識経験をお持ちの方から選任された難民審査参与員の意見を聞くことを義務づけております。

 そして、難民審査参与員の権限としては、異議申立人等の意見陳述に立ち会い、あるいはみずから異議申立人に審尋を行うこともできることとしておりまして、審査参与員の方から意見の提出を受けた法務大臣は、その意見を尊重しつつ、不服申し立ての当否を判断することとなるものでございます。

下村委員 民主党案は、これについては内閣府の外局に難民認定委員会を設置してやるべきだ、法務省の中だけでは公正公平な対応ができないのではないか、取り締まりをするという一方で難民についての方々の声を聞きながらやるということはバランス的に難しいのではないかというお考えだというふうに思います。

 そういう中で、難民審査参与員制度というのも、第三者的な立場から客観的に異議申し立て等についての話を聞いて対応しようということでございまして、これがぜひ、そういう意味では法務省寄りというよりは、第三者の、まさに客観的に、正しく適切に対応できる人でなければこの制度を設ける意味がないということでもあるというふうに思いますので、これについては十分配慮することをお願い申し上げまして、時間になりましたので、大変申しわけないんですが、終わりにさせていただきたいと思います。

塩崎委員長代理 森岡正宏君。

森岡委員 私は自由民主党の森岡正宏でございます。下村理事の質問に続きまして、私も、入管法及び難民認定法の一部を改正する法律案について質問をさせていただきたいと思います。

 入管法の質問に入る前に一つだけ伺っておきたいと思います。法務当局と警察庁に伺いたいわけでございますが、先日ドイツで逮捕されました国際テロ組織アルカイダのメンバーが、昨年まで二年間で四回日本に入国していたという報道がございました。この男は、同時多発テロの後、厳しくなった日本の入国管理をすり抜けて入ってきたと言われております。

 入管局長に伺いたいわけでございますが、他人名義の旅券を使っていたと言われておりますけれども、防ぐ方法はないのか、対策をどう考えておられるのか。私は、同時多発テロ以降のことだと聞くだけに、大変心配しているわけでございます。そのことについてお答えをいただきたい。

 そして、警察庁に伺いたいわけでございますが、日本滞在中、この男は、新潟市でパキスタン人と連絡をとっておったとか、日本でテロを起こそうとしておったんじゃないか、下見しておったんじゃないかと言われておるわけでございまして、原子力発電所とか新幹線をねらっておったんじゃないかとかいろいろ言われておるわけでございます。航空機だけではなく、船を使って密入国してくる心配もあるわけでございまして、アルカイダなど国際テロ対策が万全と言えるのかどうか心配になってきたものですから、警察庁の御見解を伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。

増田政府参考人 国際テロリストの具体的行動にかかわるお尋ねでございまして、しかも現在捜査機関において捜査中の事件と承知しておりますので、お尋ねの件に即した具体的なお答えは差し控えさせていただきますが、一般論として申し上げますと、入国管理局といたしましては、日ごろから関係機関との連絡を密にしてテロリストの入国あるいは移動に関する事前の情報収集に努めますとともに、テロリストは一般に偽変造旅券を用いて出入国することが考えられますので、空海港に高性能の偽変造文書鑑識機器を配備し、鑑識技術を身につけた職員を配置し偽変造旅券の発見に努める必要がございます。

 特に後者についてですが、旅券偽造グループによる偽造技術は日進月歩であって、常に巧妙あるいは精巧なものとして進歩しつつあるわけなので、当局といたしましても、新たに開発された偽造技術を検証、解明して、これを看破するのに役立つような技術や機器の開発に努めて、日々これらを充実、更新していくことでテロリストの入国阻止に万全を期す必要があると考えております。

瀬川政府参考人 お答えいたします。

 国内におけるテロ対策でございますが、御質問にございました事案につきましては、ただいま法務当局から御答弁ありましたとおり、現在捜査中でございますので詳細なコメントは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、国際テロ対策に関しては、極めて重大な関心を持って今警察としても取り組んでいるところでございまして、何といいましても、情報収集の強化がまず一つ、そしてテロリストを国内に入れないということが非常に重要だろうと思います。また、国内で拠点をつくらせない、それから、関係する重要防護施設、原子力発電所等々を含めた重要警戒対象に対して十分な警戒警備を行っていくという方針で取り組んでいるところでございます。

 特に本件の事案に関して申し上げますと、偽造旅券を使ってどうも出入国をしていたというふうに見られるところでございますけれども、私どもといたしましては、この種偽造旅券事案、これは実は非常に最近増加をしておりまして、昨年一年間で千百二十九人を検挙しております。これはこの五年間で二・七五倍になっているということでございまして、各種の事件捜査、あるいは各国の治安機関との情報交換で偽変造旅券あるいは不法入国に関する情報収集に努めまして、その入手した情報につきましては入管当局等とも情報の共有を図りまして、不法入国事案の予防、摘発に反映させるなどして国際テロ対策にも万全を期してまいりたいと考えておるところでございます。

森岡委員 国際テロのテロリストの問題は、国民が一番心配している問題だと思います。法務当局そして警察庁協力し合って、ひとつ万全を期していただきたいと思います。

 それでは、法案の中身に触れさせていただきたいと思います。

 今回の改正の目的の一つは、不法滞在者を大幅に減少させ、それによって我が国の治安回復に貢献しようとするものだと私たち理解しているわけでございます。ところが、ちょっと参議院の質疑など議事録を拝見いたしますと、全刑法犯に占める不法滞在者の割合は少なくて、不法滞在者が犯罪の温床となっていると決めつけるのは適当ではないというような指摘があったようでございます。

 そこで、警察庁に伺いたいわけでございますが、不法滞在者の犯罪実態、検挙状況がどうなっているのか伺いたいと思います。

 そして、次に法務大臣に伺いたいわけでございますが、不法滞在者の存在が我が国の治安などにどのような悪影響を与えておって、そしてその減少を図ることで本当に治安の回復が図れるのかどうか、御見解を伺いたいと思います。

知念政府参考人 平成十五年中の来日外国人犯罪の検挙人員でございますが、二万七人であります。このうち不法滞在者は一万七百五十二人で全体の五四%を占めています。

 これを刑法犯について見ますと、刑法犯の来日外国人の総検挙人員でございますが、これが八千七百二十五人。このうち不法滞在者は千五百二十人でありまして約一七%でありますが、国民に不安を与える強盗や侵入窃盗について見ますと、侵入強盗事件の検挙人員の五〇%、それから侵入窃盗検挙人員の六五・五%を不法滞在者が占めております。

 警察におきましては、この種事犯に対する捜査を強化徹底するとともに、入管当局との間において不法滞在者の合同摘発を推進するなど関係機関との連携強化に努めているところであります。

野沢国務大臣 委員お尋ねの不法滞在外国人の存在と治安悪化の関係につきましては、平成十五年十二月に犯罪対策閣僚会議で決定されました犯罪に強い社会の実現のための行動計画にもございますとおり、不法滞在外国人は外国人犯罪の温床となっておりまして、我が国の治安悪化の原因の一つである等の指摘があるところでございます。

 ただいま警察庁の方からも数字が出ておりますが、今現在約二十五万人と推定される不法滞在者数に占める平成十四年における凶悪犯検挙人員の割合を正規の滞在者のそれと比べますと、約十二・五倍にも上りまして、不法滞在者が正規滞在者に比べて凶悪犯罪に及ぶ比率が圧倒的に高いという実情がうかがわれるわけでございます。

 したがいまして、不法滞在者を減少させることは我が国の治安の回復にとって必要不可欠でございまして、また、我が国において外国人との共生を図り、健全な国際化の進展を図る前提としても必要なことであるものと考えております。

森岡委員 今お二人の御説明を受けまして、不法滞在者対策がいかに重要であるかということが私もよくわかったわけでございます。

 先ほど下村理事の御質問の中にありました出国命令制度、これについてちょっと教えていただきたいんですけれども、この出国命令制度では、出国命令により出国した不法滞在者が、不法残留期間が長い場合でも短い場合でも、一律に上陸拒否期間を一年に短縮するということになっておりますね。

 私は、十年も二十年も不法滞在を続けておった人と、ごく数年、数カ月とか、そういう人たちと一緒にして、これでいいんだろうかなと。例えば、不法滞在期間が五年とか十年とか以下の者のみにはそういう恩典を与えるとか、五年までは一年、五年から十年の者は二年、そしてそれ以上の者は三年などというふうに段階的に上陸拒否期間を変えるといったことも考えられるんじゃないかというふうに思うんですけれども、増田局長、いかがでしょうか。

増田政府参考人 これは不法滞在者にインセンティブを与える話でございますから、確かに、委員がお考えになるように、不法残留期間が長期間に及ぶ者については、悪質性がより強いとして出国命令の対象とすべきでないとか、あるいは不法滞在期間の短い人に比べてインセンティブを低くするとか、そういった考え方もあり得るとは思います。

 しかし、不法残留の期間が長くないことを要件としたり、あるいは不法滞在期間の長さに応じて上陸拒否期間を長くするなどした場合には、不法残留が既に長期化している人が出頭を見合わせて在留がさらに定着化あるいは固定化するというおそれがございます。しかしながら、そのように不法残留が既に長期化している人こそ自発的に出頭させて出国させる、そういう必要が高いということとも考えられるわけでございます。そのために、私どもといたしましては、不法残留期間の長さについては出国命令の要件とはしなかったということでございます。

森岡委員 今の御説明でございますけれども、例えば十年も二十年も長く日本にいる不法滞在者、こういう人たちはもう日本に生活基盤をつくってしまうわけですね。友達もいる、親戚もいる。こういうふうになった人が出国命令制度を使って出て、そしてわずか一年でまた再入国して、そしてまた不法滞在するというようなこと、そういうおそれがあるんじゃないかなという気がするわけでございますが、いかがですか。

増田政府参考人 我が国に不法滞在している限り、十年いようが二十年いようが、その人の身分はいつまでも法律によって保護されない状態になるわけで、その意味では、いつまでもその状態にいても仕方ないからとにかく自発的に出てきなさいということで、長期化している不法滞在者に対しても同じようにインセンティブを与える政策というのはとっていいだろうという考えであるわけです。

 ところで、我が国で長期間不法残留した後で出国命令により出国した外国人、そういった人が上陸拒否期間経過後に、例えば一年たった後で親族訪問を理由として上陸の申請があったような場合、これは、入国審査官は上陸のための条件に適合しているかどうかを審査して、審査の結果、条件に適合していると認定したときは上陸許可の承認をすることになりますが、その際には、入国目的であるとかあるいは滞在日程などについて十分に審査を行って、その人が我が国で不法残留等の違反を再度行うおそれがあるのかないのか、そこはきちんと審査して、そのおそれがあるならば上陸はお断りするということになることになります。

    〔塩崎委員長代理退席、下村委員長代理着席〕

森岡委員 わかりました。

 次に、退去強制歴が何度もあるいわゆるリピーター、リピーターについては上陸拒否期間を十年に伸長するということでございますけれども、そういう悪質な人は幾らでも旅券を変造することができる、また偽造旅券を手に入れることができる、そういう人は幾ら上陸拒否期間を十年に延ばしたってへっちゃらじゃないかな、本当にそういう効果があるんだろうかという気がするわけでございますが、いかがでしょうか。

増田政府参考人 繰り返し不法残留する者に対しまして、上陸拒否期間を伸長いたしますことによって再度の不法残留を思いとどまらせる予防的効果は期待できると考えております。

 なお、偽変造旅券等の行使についての御懸念がございましたけれども、偽変造文書鑑識機器を全国の空港や港に配備して、入国審査官の鑑識能力の向上のための研修も実施するなどの対策を講じております。それから、現在、国際民間航空機関などの場ではバイオメトリックスを導入した個人識別技術を出入国審査に導入することなどが検討されておりますので、これらの施策によって偽変造旅券を用いた出入国には今後も適切に対応していく所存でございます。

 したがいまして、リピーターなどは偽変造旅券を行使するから上陸拒否期間を延ばしても意味がないというふうには私どもは必ずしも考えておりません。

森岡委員 次に、不法滞在者対策のための予算について伺いたいんですけれども、私たち、先日、当法務委員会から東京入管を見学させていただきました。そのときに、私は、立派な施設で、例えば、宗教等を考慮して豚肉抜きの、宗教を配慮した特別食を用意したり、ベジタリアンには肉抜きの食事をあてがったり、また医者もいる、そして何か運動不足を補うためのマシーンまでありましたけれども、そういう三食昼寝つき、そして時間を限って外部とは連絡も自由ですよ、そういう手厚い待遇がなされておりました。

 こんなことまでしなければいけないのかなという思いもしたわけでございますけれども、我が国に不法に滞在する外国人を摘発、そして収容、送還、それまでの費用にどれぐらい一体かかっているんだろうかなという思いがするわけでございまして、私たちの税金でございますから、金額で、人件費は別にいたしましても、物件費だけでもどれぐらいかかっているのか、教えていただきたいと思います。

増田政府参考人 退去強制手続及び護送、収容などに要する経費といたしましては、平成十五年度は約二十一億四千万円、平成十六年度は約二十二億円が予算措置されております。

 平成十六年度予算につきまして、その内訳を申し上げますと、調査旅費や通訳の謝金など退去強制容疑者の違反調査などに必要な経費として約五億円、それから、退去強制者に支給する食事など退去強制者の収容、護送、送還に必要な経費として約十七億円が予算措置されております。

森岡委員 今お話を伺いまして、大変驚きました。本当に不法滞在者がいなければ要らないお金でございますから、税金がもったいないなという気がいたします。しかし、不法滞在者がいる以上、先進国ということになりますと、こういう不法滞在者対策にこれだけのお金も使わなければならないのかなという思いもするわけでございますが。

 そこで、警察庁に伺いたいと思います。不法入国、不法就労、偽装結婚などをあっせんして利益を得ている、例えば蛇頭とかいうのも聞きますし、暴力団、ブローカー、こういう組織が介在していると聞いております。ここにメスを入れて厳しく取り締まるべきだと思うわけでございますが、このことにつきましてどんなふうに力を入れておられるのか、その辺を聞かせていただけませんでしょうか。

瀬川政府参考人 お答えいたします。

 不法入国をあっせんして利益を得ているブローカーに対する取り締まりということでございます。

 御指摘のとおり、集団密航あるいは偽装結婚の請負組織とか、それから入国管理局への申請書類を偽造するブローカーというようなものがございます。これは、私どもとしましては、不法入国者を我が国に呼び込み、また不法に滞在させる要因であるというふうに認識をいたしまして、これに対する積極的な取り締まりを今推進しているところでございます。

 ただ、こういったブローカーという形での統計を実はとっておりませんので、数字的なことをちょっと申し上げることはできないのでありますが、最近の事例といたしましてちょっと御説明をさせていただきますと、昨年の十一月の埼玉県警察の取り締まり事案でございますけれども、これは、内容が虚偽の証明書等を用いまして、千数百人、千人以上の中国人に不正に在留資格を取得させ、あるいは在留期間を更新させていたという東京の会社役員らを文書偽造の疑いで逮捕した事案がございます。

 この事案は、実際は調理師として働かない者を、日本国内の調理店で調理師として働くという名目で技能の在留資格を取らせるというような方法で多くの中国人を我が国に不正に入国させ、膨大な報酬を受け取った、こういう事案でございます。

 警察といたしましては、こういったブローカーにつきましては、先ほど申し上げましたとおり、不法入国者を我が国に呼び込み、不法に滞在させる、まさにその要因そのものだというふうに認識をしておりまして、入管当局とも連携を図りながら、今後とも積極的に取り締まりを推進していく方針でございます。

森岡委員 次に、法務当局に伺いたいわけでございますが、この不法滞在者を雇っている雇用者に対してどういう対策をとっておられるのか。

 私たち日本人が民間企業に就職をするに当たりましても、身元保証人を必要といたしますよとか、身分を確認した上で雇うのが普通だと思います。

 ところが、不法滞在者であることを承知して、安い給料で雇用しているような雇用主がいるんじゃないかな、不法残留や不法入国を許している側面がここにあるんじゃないかなというふうに思えてならないわけでございまして、雇用主に旅券等の確認義務を課すべきじゃないか、私はそんなふうに思うわけでございますが、入管局長、いかがでございましょうか。

増田政府参考人 御指摘の雇用主に旅券等の確認義務を課すことについてでございますが、現在の入管法でも、我が国に在留する外国人から申請があったときに、その外国人が就労できる外国人であることを証明する文書を発付することができるという制度がございます。これも不法就労を防止するための制度として平成元年の入管法改正で設けられたものでございますが、この制度を設けました際に、この就労資格証明書を外国人が雇い主に提示する、あるいは雇い主の側からするとその就労証明書を確認するということについて、これを義務づけるかどうかということにつきまして、外国人、特に在日韓国人等の方々に不利益を与えるのではないかという御指摘がございまして、議員修正によって、雇用主等は、その証明書を提示しないからといって外国人を不利益に扱ってはならない、そういう規定が設けられたという経緯がございます。

 このような経緯等を踏まえますと、委員が御指摘になるような、雇用主に対して外国人から旅券等の確認義務を課す、そういう制度についても慎重な検討が必要ではないかと考えられます。

 ただ、その制度が設けられました平成元年当時は、恐らく今ほどには不法滞在者問題が深刻化していなかった時期でもありまして、現在の治安回復に対する国民全体のニーズなども踏まえますと、他の不法滞在者対策の効果も見ながらでございますが、委員が御指摘になったような制度を設けることのメリットなどについても、関係省庁と協議しながら改めて検討する必要があるのではないかと考えております。

森岡委員 今、入管局長がおっしゃったように、私は、やはり雇用者に対して旅券等の確認義務を課すべきだ、もうそういう時期に来ているんじゃないかと。日本人だって、我々雇われるときはきちっと身元を確認されるわけでございますから、これは差別にも何も当たらないというふうに思います。

 次に、先ほど下村理事もお触れになりましたけれども、小泉政権になりまして、観光は二十一世紀のリーディング産業だという位置づけをしておりまして、ビジット・ジャパン・キャンペーンなどを実施して、観光に非常に力を入れているわけでございます。

 特に、アジア諸国からの観光客を増大させようとしておるときでございますが、国土交通省の観光部長さん、お見えいただいていると思いますが、治安面から、このように外務省は査証発給に慎重にしている、法務省も外国人の入国に厳しいチェックを入れている、こういうときに、一方で観光に力を入れなきゃいかぬ。

 私も選挙区が奈良市でございまして、観光地でございますので、大変関心を持っているわけでございますが、観光部長さんとしたら、これはちょっと行き過ぎる面があるんじゃないのとか、矛盾を感じておられるところがあるんじゃないかなというふうに思うものですから、その辺を聞かせていただきたいと思います。

金澤政府参考人 お答え申し上げます。

 国土交通省といたしましては、委員御指摘のとおり、国際的な人的交流を促進することは、国際的な相互理解を増進し、ひいては国際平和にも資するものであるということから、昨年からビジット・ジャパン・キャンペーンを展開し、外客誘致の推進を図っているところでございます。

 御指摘のような査証の問題あるいは入国審査の問題など、これは出入国の円滑化にかかわる問題でございまして、本キャンペーンを進めるに当たりまして大切な要素であるというふうに認識いたしております。

 そこで、昨年の七月に関係閣僚会議において決定されました観光立国行動計画におきましては、アジアを中心とした国々について、良好な公安、治安の維持に配慮しつつ、出入国手続にかかる負担をできる限り軽減するとされているところでございます。

 外客誘致の目標、これは二〇一〇年までに訪日客を倍増するというものでございますが、この目標を達成するためにも、今後、外務省、法務省など関係省庁と綿密に協議をいたしながら、治安の維持と外客誘致というものにそごの生じないよう、計画の実現に向けて努力をしてまいりたい、このように考えておるところでございます。

    〔下村委員長代理退席、委員長着席〕

森岡委員 私も、質問時間がもう残り数分になってまいりましたので、難民認定法についてもっと質問したいと思っておったわけでございますが、時間がなくなってまいりましたので、最後に、難民認定について、法務大臣に御見解を伺いたいと思います。

 我が国の難民認定数が非常に少ない、諸外国に比べて少ないという批判が出ております。今回の改正は、難民と認める者の範囲を広げるものじゃないということになっておりますけれども、今、国際社会の状況を見ますと、パレスチナ問題など不安定な状況の中で、戦争や紛争、そして避難民が出てくる、そういう状況があちこちで見られるわけでございますが、こういう庇護の対象を広げることを我が国も考えなきゃ先進国としての役割を果たすことができないんじゃないかなというふうに思うわけでございます。

 それともう一つは、あす総理が北朝鮮へ行かれるわけでございますが、今の北朝鮮が、あの一人の独裁者がいて、ああいう体制が崩れて、もし破綻国家のような状態になって、避難民がどっと日本海沿岸に押し寄せてくる、そういう状況になったら、一体、今の難民認定制度、これで対応できるんですか。もちろん、避難民を難民なんて簡単に扱える問題じゃありませんし、国際法上も問題があると思いますけれども、こういうことを想定しておられるのか、どういうふうに考えておられるのか、あわせてお伺いしたいと思います。

野沢国務大臣 我が国の難民認定者数が諸外国と比べて少ないのは事実でありますが、この点につきましては、我が国は、難民の出身国とのかかわりが歴史的に乏しいことや言語の相違のほか、難民の出身地域とは遠距離にあること、また交通手段が海路か空路に限られていること、さまざまな事情から難民認定の申請者数自身が少ないことも影響しているものと考えられます。

 なお、入管法におきまして対象としております難民は、難民条約に規定する難民でありまして、改正法も、いわゆるこれら条約難民のより適切な庇護を図るため、難民認定制度の見直しを行うことを内容とするものであります。

 したがいまして、条約難民以外に、一般に、難民、避難民と言われております、例えば、議員お尋ねの、戦争紛争避難民などの我が国への受け入れにつきましては、その背景事情などを考慮しながら、人道的観点から対応する必要がある場合には、政府全体として、どの程度の範囲のものをどの程度の規模受け入れるかについて、条約難民とは別に検討する必要があろうかと思います。

 また、先ほどの朝鮮半島での問題につきましては、まず、そういうことが起こらないような外交努力をすることがもう大前提ではございますが、仮定の問題としてお答えを申し上げるといたしましても、そういう事態が発生した場合には、関係方面が、各省庁連絡をとりまして、政府全体として適切に対応する必要があると考えております。

 これまでも法務省といたしましては、出入国管理行政を所管する立場から、インドシナ難民等の先例もございますので、これを参考にしながら、大量避難民対策が円滑に行われますよう、省庁の体制並びに地方自治体等との連携等も考えまして、適切に対処してまいるつもりでございます。

森岡委員 時間が参りましたので、終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

柳本委員長 御苦労さま。

 上田勇君。

上田委員 公明党の上田勇でございます。

 きょうは、出入国管理法、難民認定法改正案につきまして、何点かにわたりまして質問をさせていただきます。

 この出入国管理法、前回、平成十一年に大きな見直しが行われたわけでありますけれども、そのときには、いろいろな事情もありまして、衆議院の法務委員会では余り審議が行われませんでしたけれども、そのときに随分大きな改正も行われたわけでございます。

 その十一年の改正のときに、先ほどからもほかの委員からも取り上げられておりますが、不法滞在者の取り締まりの強化を目指すということで、退去強制された者の上陸拒否期間、従来一年であったものが五年に延びたわけでありますが、そうした措置がとられてからこれで五年を迎えるわけでございますけれども、その間の、どういう影響が出たのか、また、どのような効果が上がったのか、認識をまず伺いたいというふうに思います。

野沢国務大臣 平成十一年の入管法の改正におきましては、退去強制された者の上陸拒否期間を、それまでの一年から五年間に延ばしたわけでございますが、その結果、本邦の不法滞在者はその後減少傾向になりまして、同改正はその減少に一定の成果を上げたものと考えておるところでございます。

 また、同法の改正によりまして上陸拒否期間が一年間から五年間に引き上げられることとなった際に、多数の不法滞在者が入管にみずから出頭して、帰国を希望する旨の申告が行われました。このことからも、上陸拒否期間の伸長は不法滞在者の帰国希望に大きな影響を与えたものと考えておるところでございます。

上田委員 ありがとうございました。

 その措置によりまして、当初考えられていた効果は上がったという、今、御見解でございました。

 ただ、一方で、非常に長い期間再入国ができないというようなことで、さまざまな影響も出ているわけでございます。

 平成十一年にこの法案が採決されたときに、五月の二十日には参議院の法務委員会で、そして八月の十三日には衆議院の法務委員会で、それぞれ採決されたんですが、そのときに附帯決議が付されております。いずれの場合も、その中に、上陸拒否期間の伸長、不法在留罪の新設に伴い、上陸特別許可、在留特別許可等の各制度の運用に当たっては、その外国人の在留中に生じた家族的結合等の実情を十分配慮するという旨の項目が含まれております。

 これは、日本に住んでいる間に婚姻をする、あるいは子供ができる、そうした家族ができた、その家族が一緒に住むというのが自然なことでありますので、そのことに対する配慮という趣旨でございますけれども、この間、法律施行後、この附帯決議に含まれている趣旨を十分生かした運用が行われてきたというふうにお考えでしょうか。

野沢国務大臣 在留特別許可件数について見てみますと、委員御指摘の入管法改正前の平成十一年と同十五年とを比べた場合、ほぼ倍増しております。また、委員御質問の対象となる上陸特別許可の件数につきましても、三倍を超える大幅な増加となっておるところでございます。

 それらの許可を受けた中には、日本人の配偶者を初めとする我が国居住者と家族的なつながりを持っている方が多く含まれているわけでございますが、このように、上陸特別許可や在留特別許可の許否の判断に際しましては、委員御指摘の附帯決議の趣旨を十分に踏まえまして、家族的結合等の実情に十分配慮し、適正な運用に努めてきたところでございます。

上田委員 ありがとうございます。

 今大臣からも御答弁がありましたように、確かに前回の改正以来、在留特別許可また上陸特別許可の件数が非常にふえているということは、もうデータが示しているところでございます。このことについてもう少し詳しいデータを先日お伺いしたんですけれども、なかなかやはりこの許可、不許可の決定というのは一つのことだけで決まるわけではなくて、いろいろな要素が決まっていて整理が難しいということでもございまして、それもわからないわけではございません。

 ただ、ここで一つ確認をさせていただきたいのは、家族的な結合関係といいますと、やはり日本国籍の子供を養育している、あるいは、日本人や、外国人であっても在留資格を持っている者と婚姻関係がある、そういうようなケースが想定されるわけでございます。そうしたケースについては、特にそういう悪質な事例、問題があるとか、そういった場合を除いては、在留特別許可、上陸特別許可などがほとんどの場合は認められているというふうに理解をしておりますが、実際のところはそういうふうに考えてよろしいんでしょうか。

増田政府参考人 在留特別許可あるいは上陸特別許可を求めて法務大臣に異議の申し出をしたケースの中で、委員が取り上げられました日本国籍の子供を養育している人あるいは日本人や在留資格を持っている人と婚姻関係にあるケース、これがどの程度含まれているかについては、統計をとっておりませんので件数をお答えすることはできませんが、上陸特別許可及び在留特別許可に当たりましては、平成十一年五月の参議院法務委員会、八月の衆議院法務委員会の附帯決議の趣旨を踏まえまして、家族的結合等の実情に十分配慮した適切な運用に努めておりますので、お尋ねのような案件につきましては、その大多数を許可しているものと考えております。

上田委員 ありがとうございます。

 そういう趣旨で引き続き運用をしていただきたいというふうに思うんですけれども、ただ、どうしても、特別許可というのは、これは法務大臣の決定ということでございます。そうすると、申し出る側からすると、どういう基準でその決定が行われるかというのは非常に大きな関心なんですね。今おっしゃっていただいたように、大体のケース、そういった場合については、特に悪質なものとかそういうのを除けば認められるということではあるんですけれども、ただ、やはりその判断基準というのは、何か明確に定められているものなんでしょうか。また、そういったものというのは公にできるものなんでしょうか。

増田政府参考人 在留特別許可及び上陸特別許可につきましては、個々の事案ごとに、在留あるいは上陸を希望する理由、在留、上陸の目的、その家族状況、生活状況、素行、内外の諸情勢その他諸般の事情を総合的に考慮した上で決定しておりますので、お尋ねのような判断基準はございません。

上田委員 いろいろな要素がかかわってきているということで、今のお考えというのもわからなくもないんですけれども、ただやはり、なかなかそういった明確な基準とかがないと、果たして認められるのかどうかというようなものが、申し出る方からすると不安でありますので、そういった申し出というのが出にくくなってしまうのではないのかなという気がいたします。そのことについては、ぜひまたお考え、御検討いただければというふうに思うんです。

 それで、今回のこの法案で上陸拒否期間、これが、法案で定めております出国命令制度の場合には、今回、出国命令制度によって出国した場合にはまた一年にということになるわけでありますけれども、今審議している法案が施行される前だと上陸拒否期間は五年なわけですね、現在は五年である。そうすると、法律で定めている出国命令制度とほぼ同様な状況、同様な手続をとって、みずから出頭してきて出国をした場合でも、今では五年なわけですね。ところが、法律が変わると一年になる。これは、今審議している法案が施行される前の案件についても利益が遡及されて、この期間が短縮をされることになるというお考えなんでしょうか。

増田政府参考人 出国命令を受けて出国した人について上陸拒否期間を短縮することとしました趣旨は、不法滞在者の出頭申告を促進するためのメリットを付与することにございまして、既に退去強制されて我が国に滞在していない人につきましては、そのようなメリットを付与する必要はございませんので、この改正法施行前に退去強制された人に対しましては、上陸拒否期間について何らかの特例を設けることはいたしません。したがって、改正法施行前に退去強制された人についての上陸拒否期間は、改正法施行後も五年となります。

 なお、上陸拒否事由に該当する人であっても、本邦への上陸を認めるべき特別な事情がある場合には、法務大臣の裁量によりまして、上陸特別許可を受けることが可能でございます。

上田委員 今、上陸特別許可の可能性があるということでありましたけれども、今回の改正法案が施行される前と後で、わずかな期間の違いで随分と取り扱いが変わってくることでありますので、そういったこともぜひ判断をされる中で考慮していただきたいというふうに思います。今、何かうなずいていただいているようでありますので答弁は求めませんが、ひとつよろしくお願いをいたします。

 それで、この法案では、不法残留罪等の罰則の引き上げ、あるいは退去強制後の上陸拒否期間の伸長などの措置が定められております。しかし、昨年十月、法務省、東京都などで共同宣言を出しまして、首都東京で五年間で不法残留外国人を半減するという宣言をしているんですが、それでもやはり半減なわけですね。そうすると、目標が達成されたとしても半分は残るということであります。

 したがって、不法滞在者の完全な取り締まりというのは事実上困難なわけでありまして、そうすると、摘発された者にだけ、このように非常に重い罰則が科せられますと、不公平が非常に大きくなるのではないかというふうに思います。そうすると、かえって不法滞在者を潜伏させて、また場合によっては、結果的にそういう犯罪組織等とのかかわりを深めるようなことにもなるのではないかということも懸念されますが、そうしたことについて、お考えはいかがでしょうか。

増田政府参考人 入管当局におきましては、上陸審査及び在留審査の厳格化に加えまして、摘発体制の強化、法整備、国際的な協力体制の構築など、限られた予算と人員の中で総力を挙げて不法滞在者対策に取り組んでおります。

 特に昨年、今委員が御指摘になりましたとおり、東京都、警視庁、それから法務省の入管と東京入管、これらが共同宣言を発表いたしまして、首都東京における不法滞在者を、当面、五年間で半減させることを志向して、お互いの連携を強化するということに踏み切ったわけですが、その時期に、首都圏の繁華街や不法滞在者の蝟集する地域におきまして集中摘発を実施したことなどによりまして、昨年は、年間約四万六千人の不法滞在者に対して退去強制手続をとることができました。

 今後とも、関係機関との緊密な連絡を図りますとともに体制の充実強化に努め、長期間の潜伏を許すことのないよう摘発を一層強化するなどの取り組みによって不法滞在者の大幅な縮減に努め、不公平感を助長させることがないよう全力で不法滞在者対策に取り組んでまいる所存でございます。

 そして、罰則の強化でございますけれども、当局といたしましては、今回の改正案において、不法滞在者に対する罰則を大幅に強化するなどの方策によって、不法滞在者の新たな発生を一方では抑止しつつ、他方では、出国命令制度の新設であるとか、あるいは上陸拒否期間の見直し、こういったことを行うことで自主的な帰国も促すことにしておりまして、これらの措置をすべて総合して、不法滞在者の摘発、上陸審査の厳格化などとあわせて、不法滞在者の削減に結びつけようと考えているところでございます。

上田委員 今御答弁にあったように、これは法律で定められている制度でありますので、ぜひそれに沿う方向で行政を進めていただかなければいけないのですが、やはり問題は、事実上、そうした制度と現実との間が非常にかけ離れてきた。それが、残念ながら、手が打たれずにここまで来たということに、さまざまな問題、矛盾が発生をしている原因があるんじゃないかというふうに思います。これからそうしたことを、本当はもっと総合的にいろいろと考えていかなければいけない課題ではないかというふうに思っております。これはまた後ほどお伺いをすることといたします。

 次に、難民認定制度の見直しのことにつきましてお伺いをいたしますが、我々公明党も二〇〇二年の七月に、外交・安保それから法務部会共同で申し入れを法務大臣等にさせていただきまして、おおむね、そこで申し入れさせていただきました趣旨が今回のこの改正案の中で、例えば難民申請期限の延長であるとか申請中の者の身分の安定だとか、そういったものが生かされているというふうに理解をいたしております。

 今回のこの改正、とかく我が国は、難民に対して非常に冷淡である、閉鎖的であるというようなことも、国の内外からいろいろな批判を受けております。我が国としても、国際社会の中の重要な国の一つといたしまして、そういう責任も果たしていかなければいけないということでありまして、より積極的な難民受け入れをすべきであるというような意見も多く聞かれるわけでございます。

 先ほどから、きょうの質疑の中でも、そういった意見、多く示されたわけでありますが、今回の法案では、難民の対象を広げるというものではありませんが、ただ、この申請手続が改善されることによりまして、随分と申請しやすくなる。結果的に、私は、難民の認定というのも多くなるのではないかというふうに想定をされますけれども、こうした見直しを行うというのは、従来、いろいろな国際的な場でもいろいろと非難もありました我が国の難民の受け入れ政策、これを拡大するというような方向での、政策を一部見直していくというお考えなんでしょうか。その基本的なところをお伺いしたいというふうに思います。

野沢国務大臣 我が国は昭和五十六年に難民認定制度を創設したところでございますが、その後の国際情勢の変化等に伴いまして、難民認定を取り巻く状況が大幅に変化していることは委員御指摘のとおりでございます。やはりこれからは、より公正な手続によって難民の適切かつ迅速な庇護を図る観点から、今回、難民認定制度を見直すということに踏み切っておるものでございます。

 したがいまして、難民の認定に当たりましては、従前どおり、申請者が難民条約に規定する難民の定義に該当するか否かを、その提出した資料に基づいて案件ごとに、個別に判断するものであるために、今回の改正は政策的に難民の受け入れを拡大することを目的とするものではございません。

 もっとも、今回の法改正が実現いたしますと、難民認定申請者の法的地位の安定化や、難民として認定された者の法的地位の早期確定が図られますから、結果として認定者数が増加することはあり得るというふうに考えておるところでございます。

上田委員 ありがとうございます。

 今、大臣がおっしゃったように、どの人を難民と認定するか、これは条約上のいろいろな規定もあるし、それを今回変えるものではないけれども手続が随分改善をされるということであります。

 確かに、これまでのいろいろなデータを見ていますと、日本が、難民の認定の割合が諸外国に比べて著しく低いというわけではなくて、いろいろな手続の難しさだとかということもあって難民を申請してくる数自体が少ないということが、結果として認定される難民の数が少ないということになっているような面もあるんじゃないかというふうに思います。

 今回のこの法案では、特に、これまでいろいろなところからも改善の御要望がありました難民申請期限のこと、現行の制度では、難民の認定申請は本邦に上陸した日から六十日以内に行わなければならないという、よく六十日ルールというふうに言われておりますが、が定められておりますが、今回、この法案ではこれを廃止することになっております。従来から、この六十日ルールというのは、申請した時点で六十日を過ぎているから無効であるという、いわば門前払いになるというようなことも指摘されてきたところでありますので、この廃止をするということは大きな効果があるのではないかというふうに思います。

 そこで、その廃止の理由、また、期待される効果につきまして、見解を伺いたいというふうに思います。

増田政府参考人 委員御指摘のいわゆる六十日ルールにつきましては、証拠の散逸などによって適正な難民認定が妨げられることや、あるいは濫用者の誘発を防止するといった観点から設けられていたものでございますが、今回、難民認定手続を大幅に見直しまして、仮滞在許可制度を創設することなどによりまして、早期の申請が促され、証拠の散逸が防止できると期待されますことや、単に退去強制を免れることのみを目的とした難民認定手続の濫用防止が図られることなどを踏まえまして、この六十日という申請期間は廃止することといたしたものでございます。

 難民は、国際情勢やあるいは本人の属する地域、国の情勢等の変化に応じて発生するものでございまして、いわゆる六十日ルールを廃止することで、直ちに難民認定申請者が増加するといった効果があるとは考えられませんが、しかし、我が国の難民受け入れに対する前向きな姿勢を国際社会に示すメッセージとして意義があるものと考えております。

上田委員 もう一点、今回のこの法案で、法務大臣が異議申し立てに対する決定を行うに当たりまして、難民審査参与員の意見を聞かなければならないということが新たに定められております。これは、なぜ難民に認定されないのか、そうした判断基準についていろいろと疑問も示されていた中で、法務省の入国管理の行政部門だけではなくて、そういった第三者的な立場での公平な視点も入れるといったことは評価できるものではないかというふうに思います。

 今回、こうした制度を設けた理由、また、このことによって難民認定の手続にどういうような影響が出てくるのか、御見解を伺いたいと思います。

増田政府参考人 現在の難民認定制度におきましては、一次処分も、異議申し立てに対する判断もいずれも法務大臣が行うことになっておりまして、その点で、手続の公正性、中立性、透明性が必ずしも十分ではないという御指摘がございました。

 今回の改正では、このような御指摘等も踏まえまして、難民不認定処分等に関する不服申し立て手続に、法律や国際情勢等についての学識経験をお持ちの専門家を関与させる難民審査参与員制度を設けまして、難民不認定に対する異議申し立てについて法務大臣が判断をする場合には、参与員の意見を聞き、その参与員の意見の要旨を処分の理由として付記することとしまして、参与員が実質的で内容のある意見を答申できるよう、申請者の意見陳述の機会を求める権限も付与することなどにしております。

 こういったことによりまして、不服申し立て手続の公正性、中立性、透明性がより高まり、審査が充実することが期待できると考えております。

上田委員 ありがとうございます。

 そのほか、今回、この難民認定手続で幾つも改正が行われておりまして、この手続自体、非常に使いやすいというんでしょうか、本当に難民の認定を必要としている人が日本の政府に申請をするための環境というのは随分改善されているんだというふうに私は思います。ただ、これから、問題は運用のところでありますので、そうしたところが本当に透明で、また理解が得られるような運用にぜひ努めていただきたいというふうにお願いをいたします。

 それで、最後になりますが、これは最後に法務大臣にお尋ねをいたします。

 今、我が国の入国管理行政というんでしょうか、我が国の中の外国人労働者の問題でありますけれども、従来から我が国は、法的には外国人労働者の受け入れについては、部分的に、いろいろな職種を限定して認めてはきましたけれども、原則として単純労働については認めていないというのが今の制度でございます。

 一方、これまでの間、そうした外国から日本に働きに来る人たち、単純労働も含めて、事実上は認められてしまっていたというのが現実であります。特に経済が好調なときには、労働力不足を補うという意味から、行政が黙認していたとは言いませんが、事実上はそういう実態となってきました。そうした結果として、社会の実情とそれから今の法制度との間に随分と大きな乖離が生じてしまっているということが、さまざまな問題が発生している原因になってきているんだというふうに思っております。

 そういう意味で、制度上はそういった単純労働等に従事する外国人労働者はいないということにはなっているんですけれども、事実上は、先ほどからいろいろと統計の話が出ているように、たくさんの、非常に多くの人数の人たちがいて、しかも、それは日本の経済社会の一部として組み込まれているという現実がございます。そうした問題、やはり実情と制度との矛盾というのはできるだけ縮小していかなければいけない、しかも早期に解消していかなければならないんだというふうに私は考えているところでございます。

 今、例えば日本経団連とかの経済界などからも、将来的には外国人労働者の受け入れについての問題提起もされております。また、そのほか、各界からも同じような問題提起が行われているわけでございます。これは我が国の少子高齢化に伴う将来の経済の活力を維持していくための労働力不足をどうやって補うかという中から出てきている話でありますけれども、そういう意味では、基本的な方向性、それから外国人労働者に対する考え方のそういう政策について、もう一度冷静に考え直すべき時期に来ているのではないかというふうに私は考えております。

 もちろん、これは法務省の入国管理行政だけの問題ではございません。日本全国、経済政策にもかかわることだし、労働政策にもかかわってくることでありますけれども、ぜひ法務大臣にそのイニシアチブをとっていただいて、こうした外国人労働者の全体にかかわるような制度の再考、そうしたことについても、結論を今から申し上げるわけではありませんけれども、ぜひそうした真剣な議論をしていただきたいというふうにお願いをいたしますが、大臣の御所見をお伺いしたいというふうに思います。

野沢国務大臣 日本の将来の社会構成にもかかわる重要な問題について御指摘をいただきました。

 法務省といたしましては、我が国の社会の安全と秩序を維持しつつ、しかし、外国人労働者の円滑な受け入れを図ることが国の内外から要請されていますことは、またそれが必要であることも認識をしておるところでございます。

 外国人労働者の受け入れにつきましては、我が国の経済社会の活性化、さらには一層の国際化を図る観点から、専門的、技術的分野の外国人労働者の受け入れをより積極的に推進するとともに、いわゆる単純労働者につきましては、我が国経済社会と国民生活に多大な影響を及ぼすことになることから、これは国民的なコンセンサスを踏まえつつ検討していく問題ではないか、そういう状況にあると考えております。

 また、少子高齢化時代を迎えております我が国におきましては、外国人の受け入れのあり方に係る議論は避けられないものと認識しておりまして、外国人と共生できる、また共存できる社会を目指しまして、国民の意識、我が国社会経済の状況等も踏まえながら、関係各省とも連絡を図りながら、法務省としてもしっかり検討してまいりたいと考えております。

上田委員 以上で終わります。ありがとうございました。

柳本委員長 御苦労さん。

 この際、休憩いたします。

    午後零時十二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時十四分開議

柳本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。小宮山洋子さん。

小宮山(洋)委員 民主党の小宮山洋子でございます。

 出入国管理難民認定法について伺います。まず大臣に、難民についての基本的な考え方について伺いたいと思います。

 日本が難民条約に加入して二十二年になりますが、この間認定した難民の数は三百十人余り、これは非常に少ないのではないかと思います。

 国連難民高等弁務官を歴任されました緒方貞子さんが、あるシンポジウムに寄せられたメッセージの中で、日本が難民条約を支えている精神や価値観を真に理解し、実践してきたのだろうかと強い疑問を呈していらっしゃるんですが、その難民についての基本的な考え方をまず大臣にしっかり伺いたいと思います。

野沢国務大臣 我が国が、昭和五十六年の難民条約の加盟に伴いまして難民の認定制度を設けましたことは委員御指摘のとおりでございますが、この難民条約は、難民の人権を保障し、その地位の安定を確保することを目的としておりまして、その根底に、もちろん人道主義があることは言うまでもないと考えております。

 そして、その後二十年以上にわたり、国際的な取り決めである難民条約等にのっとりまして、個別に審査の上、難民と認定すべきは認定してまいりました。今後とも、政治的迫害等から逃れ、庇護を求める者を、迅速かつ確実に難民として認定し、保護するという姿勢で臨んでいく所存でございます。

 特に、近年、国連等の活動により、また、緒方貞子先生と言わせていただきますが、緒方さんの御活躍は、まさに日本国民の誇りと申すべき御立派な業績と考えておりまして、私も、この上もなく尊敬しているお一人でございます。緒方さんのおっしゃっております事柄につきましても、私どもも十二分にそんたくしつつ、今後の難民政策に当たってまいりたいと考えております。

小宮山(洋)委員 もう一点、その尊敬されておられるという緒方さんが、これもおっしゃっているんですけれども、難民認定にかかわる職員や空港の入国審査官が、人道的精神よりも管理思考を優先して庇護を求めている人に対応するようなことは、庇護制度の濫用に当たるのではないか、法手続を改善することも必要だが、それを運用する立場にある人たちが開かれた視野で柔軟に対応することが不可欠だと、その運用に当たる人たちのあり方についても指摘をされているんですが、この後、ちょっとそれに関連した質問も具体的にさせていただこうと思っておりますが、この点については大臣はどうお考えですか。

野沢国務大臣 私も、就任以来、入国管理の重要性にかんがみまして、直ちに実は成田の入管を見学してきたところでございます。大変大勢のお客様がおいでになる中で、的確に、旅券の正否、本人の確認を含め、職員は立派にやっているなと思ったわけでございますが、その中にはやはり、これを事務的にといいますか、形式的にといいましょうか、そういった受け取り方をする人もないわけではないかと思います。

 やはり正確さを期し、また安全性を考え、そしてその中からまた、使命としております入国管理の仕事をやっていくために、この辺で十分な御親切な扱いがあるいは欠けている面も、まああるかとは思いますが、しかしながら、ベストを尽くしての職務に当たっているものと私は理解をしております。

小宮山(洋)委員 また、今回の法律も二つ一緒になっているわけですが、出入国管理と難民認定、これが一つの法律になっていること自体も問題なのではないかと思うんですが、大臣はどのようにお考えでしょうか。

野沢国務大臣 これはこれまでもしばしば御指摘をちょうだいしておるわけでございますが、出入国管理は、不適切な外国人を排除するだけではなくて、逆に適切な受け入れをすることも目的といたしておるわけでございまして、一方の難民認定の方は、母国等で迫害を受けて保護を必要とする外国人を速やかに認定して保護する、そういった目的からいたしましても、難民の認定事務と出入国管理事務とは大変実は密接に結びついておりまして、この両者を同一の法律で規定することは決して合理性を欠くものとは言えないわけでございます。担当する職員につきましても、そういった趣旨で、両方の事務に精通する中で、当初申しましたような人道的配慮、これを加えつつ、難民の皆様の処遇に当たらねばならぬと考えております。

小宮山(洋)委員 では、その出入国管理の改正の部分から伺いたいと思いますが、今回の改正は不法滞在者対策に重点が置かれておりますけれども、罰則の強化と自発的な帰国の促進、この組み合わせが本当に実効性のあるものだとお考えでしょうか。

増田政府参考人 今回の改正におきましては、委員の御指摘のとおり、不法滞在者に対する罰則を大幅に強化いたしますとともに、上陸拒否期間の伸長など、一方では厳格な措置を講じます。それによって不法滞在者の発生を抑止することをねらっているわけですが、他方では、出国命令制度の新設などを行うことによりまして自主的な早期帰国を促すこととしており、これら両様の措置に加えまして、さらに、不法滞在者の摘発であるとか、あるいは入国審査の厳格化による不法入国者の阻止など、種々の方策を総合的に講ずることなどによりまして不法滞在者の大幅な削減に結びつくものと考えております。

小宮山(洋)委員 今回、悪質な不法滞在者については上陸拒否期間をこれまでの五年から十年に延ばし、一方、みずから出頭して一定の要件に該当する場合は一年に短縮するということになっていますけれども、九九年の法改正以来、一たん強制退去になって再入国が認められたケースがどれぐらいあるんでしょうか。そのケースがある程度あってこそ、こういう形のものが有効になるのかと思いますが。

増田政府参考人 法改正が、九九年、平成十一年でございまして、そのときに上陸拒否期間は五年となりましたから、そうすると、正確に言いますと、まだ、法改正が施行されてから、そしてそれ以後、退去強制になった人の上陸拒否期間五年というのは、おおむねまだ経過していないのが大半だろうと思うのです。

 したがいまして、委員の御質問に的確に答えていることになるかどうか、ちょっと自信がないのですが、平成十一年の法改正以後、入管法七条による審査、この中には上陸拒否事由に該当するかどうかの審査が含まれておりますが、そこで上陸特別許可を受けた人、上陸拒否事由に当たる人を含めて上陸特別許可を受けた人、その中に退去強制された人が含まれているはずですが、その数は、平成十一年が五十六件、その後、平成十二年に百二十五件、平成十三年に百五件、平成十四年に百九十九件、平成十五年が百九十三件となっておりまして、退去強制された人に対する上陸特別許可の審査が格別厳しくなっているという事実はないと考えております。

小宮山(洋)委員 今の御説明にあるように、上陸特別許可の中に幾つか種類があって、ですから、今お述べになった数字のうち、退去強制によるものがどれだけかという数字はないわけですね。

 そうなりますと、そこのところを、これからこの運用によって、しっかりとそういうような再入国の許可も出していくということだと解釈してよろしいですか。

増田政府参考人 おっしゃるとおり、今後、退去強制になった人について、この上陸拒否期間内であっても上陸を特別に許可すべき事由のある人については、これまでどおりに、弾力的に上陸特別許可を与えるということを行っていくことを考えております。

小宮山(洋)委員 言葉にひっかかるようですが、これまでどおりという、これまでどおりよりも柔軟に、もう少し短くするということですから、短くなった部分については、これまでよりも認められやすくなるということですね。

増田政府参考人 むしろ、これまでより短くなって、上陸拒否期間一年という人がふえますから、そういう意味では、一年たてば、退去強制された人でも、いわばどんどん来やすくなるということが言えます。

小宮山(洋)委員 在留資格取り消し制度、これは、要件が広範で、恣意的に運用されないかという懸念がありますが、この点はどうでしょう。また、取り消し処分への異議申し立ての仕組みが必要だと考えますけれども、その点はいかがでしょうか。

増田政府参考人 今回の在留資格の取り消し制度におきましては、大きく分けますと、偽りその他不正の手段などにより、当局を欺罔して許可を受けたような場合、それから、現に有する在留資格に関する活動を所定の期間行っておらず、我が国の在留資格制度の趣旨を踏まえますと、その在留資格を持って在留する必要性が失われているような場合、これらにつきまして、在留資格取り消しの対象とすることとしたものでございます。

 これらの規定の意義は明確かつ合理的なものであって、私どもとしては、決して広範過ぎるとは考えておりません。

 また、在留資格の取り消しを行う場合には、その取り消しの対象となっている外国人からあらかじめ意見を聴取するという制度にしておりますし、それに加えて、入国審査官が事実の調査を行う調査権限も与えられることになりましたから、その権限を使って調査を十分に尽くすことも可能になりました。

 また、公平性の観点も検討した上で、最終的に取り消すかどうか、それを慎重に決定することとしておりまして、その点でも、恣意的に在留資格の取り消しが行われているような批判を受けることのないよう、適正な運用に努めてまいりたいと考えております。

 そして、この取り消し制度については、おっしゃるとおり、異議申し立てという仕組みは設けておりません。

 しかし、これは、この取り消しを行おうとする場合に、取り消しの対象とされる外国人からあらかじめ意見を聴取しなければならないとなっておりまして、その意見聴取においては、在留資格取り消しの対象となった外国人から、証拠の提出があれば提出してもらうし、意見を述べてもらう、その機会は保障しておりますし、その主張等を十分にしんしゃくした上で、最終的に在留資格を取り消すかどうかの判断をするものでございますので、その手続を踏まえて行った在留資格の取り消し処分については、異議申し立ての機会をさらに設ける必要はないものと考えております。

小宮山(洋)委員 強制退去手続とか在留特別許可、それから上陸特別許可などの運用に当たりましては、その外国人の家族の状況などを十分に配慮することが必要だと考えますが、この点についてはどのように。

増田政府参考人 在留を特別に許可するかどうかにつきましては、委員から御指摘のありました、家族の結合にも配慮した上、個々の事案ごとに、在留を希望する理由、家族状況、生活状況、素行、内外の諸情勢その他諸般の事情を総合的に考慮して決定してきたところでございますが、それぞれの案件処理の公平性や、今後の不法滞在者数に対する影響に考慮しつつ、弾力的に在留特別許可を運用することを検討してまいりたいと考えております。

小宮山(洋)委員 ちょうど私の事務所におととい相談に見えた、出入国管理に関する実際の例がございますので、そのことについてちょっと伺っていきたいというふうに思います。

 このケースは、五月十七日に成田に到着をいたしましたアフガニスタン人で、入国審査のところで、きょうまでですから、四日間収容されて、ちょうど私が今質問をしている最中になると思いますが、一時五十五分発のパキスタン航空の飛行機でパキスタンに送り返される、この件についてちょっと詳しく伺っていきたいと思うのですが、上陸審査というこの手続はどのように行われるんでしょうか。

増田政府参考人 空港におきます到着した外国人に対する上陸審査の方法については、法令によって定められているところでございまして、ごくあらましを申しますと、上陸審査ブースにいる入国審査官が、その外国人から、法律で定められた事項、それは、有効な旅券、査証を持っているかどうか、それから、我が国において行おうとしている活動が虚偽のものでないかどうか、あるいは、法令で定められている在留活動に当たっているかどうか、それから、申告している在留期間が法令で定めている期間に該当するかどうか、それから、入管法で定められている上陸拒否事由に当たる人でないかどうか、こういったことを上陸審査ブースにいる入国審査官が審査いたします。

 その結果、それについて問題がないとなれば、上陸許可の証印ということで上陸を認めるわけでございます。

 他方、その点について審査したけれども、どうも問題がある。例えば、上陸拒否事由該当者でないかとか、あるいは、在留活動、あることを言っているが、本当であるか疑いがある、このように、入国審査官が疑義を持った場合には口頭審理という手続に回しまして、そこで特別審理官がさらにその本人から話を聞くなどして、上陸を認めていいかどうかについて判断を下すということになります。

 その場合、特別審理官の審査の結果これは問題がないとなればやはりそこで上陸が拒否されますし、そこで、これは上陸を認めがたい、拒否すべきだということになれば退去を命じることになります。退去を命じられた場合、その本人は、不服があれば異議を申し出ることができるというふうな手続になっております。

小宮山(洋)委員 このアフガニスタン人の青年は二十七歳なんですけれども、日本の緊急医療NGOで、アフガニスタンのマザリシャリフで二年ほど現地職員として勤務をしていて、現在はJICAの事務所の現地職員ということです。

 彼の場合は、九十日間の短期滞在査証、ビザを問題なく取得していて、帰路の航空券も携行していた。あちらで働いていたNGOの関係の方が、彼が日本を観光したい、それから日本の車両整備工場を見学したいという希望からこちらへ招いて、招聘をした人、それから保証人、滞在先の人、三人そろって成田の出口で待っていたら、入国できないということだったということなんですが、入国が拒否されたその経緯を御説明いただきたいと思います。

増田政府参考人 これは個別の事案についてのお尋ねでございますから、その内容について具体的にお答えすることは差し控えさせていただきますが、結局、一般論として申し上げるならば、審査の結果、その人物について入国を認めることに疑義があるという判断をしたということになります。

小宮山(洋)委員 御説明くださらないのでしたら、私がその保証人の方から聞いたこと、それから、うちの秘書が担当の審査官から聞いた話をこちらから説明させていただきたいと思います。

 上陸拒否の理由は、この青年が入国審査で口述した入国目的や滞在期間、その間のスケジュールと招聘人の口述に食い違いがあったからだと説明をされております。

 受け入れる側も、途上国から人をお呼びする場合、その辺の日程とかきちんと調整をしなければいけなかったという点はあるかと思いますが、アフガニスタンのファクスや何かが通じにくい状況などもあって、観光目的ということもあって、何日間滞在ということはきちんと打ち合わせをしていなかったというのは、これは受け入れ側にも問題があったかもしれませんけれども、とにかく短期のビザを日本大使館で問題なく取得してきている。

 それで、法務大臣への異議申し出を拒否する旨のサインを既にしているのでもうこれは救いようがないという話だったようなんですけれども、サインの強要はしていない、説明はちゃんとしたというふうに言われたそうでございますが、例えば通訳の問題とか、彼がちゃんとその意味がわかって法務大臣への申し出を拒否するところにサインしたのかどうか、そのあたりが今まで私が聞いた説明だと不明確なのですが、この通訳の問題などについてもう少し伺わせていただきたいと思います。

増田政府参考人 ただいまお尋ねを受けておりますことにつきましても、その事案ということについては個別の案件でございますのでお答えは差し控えさせていただきます。

 ただ、一般的に申しまして、入管では、あらかじめ通訳人リストもございまして、外国人に対して必要な通訳をその中から選んで審査の際通訳をお願いしている。その通訳が適正に行われていないような事情がうかがわれるのであればその通訳を取りかえるというようなことはございますけれども、そうでない限り、それはつまり、そのやりとりなどで意思疎通がきちんと、あるいは言葉のやりとりがきちんと理解されているという事情がある限り、通訳は適正に行われているということで判断して手続を進めております。

小宮山(洋)委員 先ほどからの、個別の事案なのでというふうにお話がございます。確かに個別の事案でしょうけれども、今審査をしているこの出入国管理の法改正に当たって、不法滞在者を減らしたいというのはわかりますが、そのことによってやはり本当に犯罪を犯す可能性のない人まで入国を拒否するのは問題ではないかという視点で私どもは審議をしていますので、その具体例として伺っているので、個別の事案だから答えられないというのは私はちょっと納得できません。

 またおっしゃらないので、私の方で取材したというか聞いた話をいたしますと、この通訳のことについても御説明が二転三転しています。

 最初にその保証人の方にされた説明は、アフガニスタン人がアフガニスタン語で通訳をしたと言ったそうです。それで、うちの今いろいろと調査をいたしました秘書は東南アジアにいたことがございますので、アフガニスタン語というのはありません、パシュトゥー語とダリ語です、そのどちらですかと言ったところ、パシュトゥー語で説明をしたという説明が秘書の方には返ってまいりました。ところが、この来た青年は、パシュトゥー語ではなくてダリ語を話す人だったんです。ですから、パシュトゥー語の通訳が言ってもダリ語の彼にはわからなかったですねと言いますと、その次の御説明は、パシュトゥー語もダリ語もできるイラン人が通訳をしましたと。三転もしているんですよ。こういうことがはっきりしないと、彼が本当にどういう理由で入国を拒否されたのかわかりません。

 このようなことがちゃんと、個別の事態、事案だということでお答えいただけないようだと、私は質問を続けることができません。

増田政府参考人 先ほども申し上げましたとおり、事案の中でこの通訳に問題があるなと思われるようなことがあれば、それは通訳を取りかえて行うということをしておりますので、その点では、通訳の交代がないような案件について、一般的には問題なく行っていると思います。

 それはそれとして、委員の方から、この通訳がどういう言語を使ったのかについて、その説明について二転三転しているという御指摘がございました。

 これは私の方で調べたところ、確かに、問題の通訳がどういう言語を使ったのかについて、委員の側に対する説明が今委員のおっしゃったようにいろいろ変転をしてまことに不信を招いたり、あるいは誤解を受けているということは事実のようであって、これは十分な調査もしないで、どのような言語を使った通訳なのかについて、いわば調査不十分のまま委員の側にお答えしたことがあったようで、この点はやはり不適切であったと考えております。

    〔委員長退席、森岡委員長代理着席〕

小宮山(洋)委員 やはり入国してきた方が、自分のわかる言語で言ってもらえなければ、何にサインしているのかもわからないわけですよね。そこがわからないままそれにサインしたからといって、もう救う道はない、とにかく、もうじき飛行機が出ちゃうわけですけれども、帰しますということになる。

 そこで、先ほどから、個別の案件については申し上げられないというお話がありましたけれども、その審査のやりとりが公開できない。ここで個人情報だということもあるかと思うんですが、それを公開しないことによって一体何を守っているんですか。

増田政府参考人 これは、我が国に来て、入国を望んだ人に対して入国を審査した結果拒否したような場合には、それはやはりプライバシーにかかわる問題でございますから、公表することはいたしかねるところでございます。

小宮山(洋)委員 それでは、本人が望んだら公開されるんですか。

増田政府参考人 一般的に申しまして、個々の関係者が望んだからといって、その入国審査におけるやりとりを公表するということは適当でないと考えております。

小宮山(洋)委員 そうすると、今回の場合、彼は彼自身が何で帰されたのかわからない、善意で招いた皆さんも、なぜ彼が入国できなかったのかわからないままではないですか。

増田政府参考人 この点につきましては、本人に対して、どういう理由で入国を拒否したのかということは説明をしており、それは、こちら側がどういう判断をしたのかは本人には伝わっているものと承知しております。

小宮山(洋)委員 ですから、先ほどから申し上げているように、本当にその通訳がきちんと彼にわかる言葉で説明をしているのかどうかが疑問だということを申し上げているんです。それに対する明確なお答えがありません。

 そして、さらに、結局、彼のケースばかりでなくて、通訳が、入ってくる人、あるいは難民の場合もそうですけれども、申請者その人の意をきちんと伝えているかどうかというのは、チェックのしようがないわけじゃないですか。ですから、そこのところは非常に重要な点だと思います。

 これもきのう伺った中で非常に私はこれは信じられない話だと思ったんですけれども、日本人の審査官は言葉はわからないが適切な説明がなされていると経験からわかると御説明をいただいたそうですが、これはどういう意味でしょう。

増田政府参考人 通訳の選定に当たりましては、先ほどから申し上げておりますように、適切な通訳能力を持っておられる方、これらをリストアップしておりまして、その中から、実際に対象となっている外国人の方と十分に意思の疎通ができるかどうか確認した上で通訳を選定しております。

 そして、実際に入国審査を行っている中で通訳を行ってもらっているわけですから、その通訳の状況で明らかに意思の疎通に問題があるというような判断をした場合には、通訳を取りかえるなどの措置を講じておりますので、その意味で、通訳に問題がないということを確認して行っているということでございます。

 ただ、おっしゃるとおり、通訳の重要性というのは、これは御指摘のとおりであって、したがって、それは、審査に当たる者はいつも、この通訳に問題がないかどうか、問題があったら適切な対応をとらなければいけない、そういう意識を持って対応しているところでございます。

小宮山(洋)委員 そうすると、言葉はわからなくても適切な説明が行われているかどうか経験から審査官の皆さんは皆さんおわかりになる、これでよろしいんですか。

増田政府参考人 今お尋ねのようなことに対する直接の答えにはなっていないかもしれませんが、要するに、入国審査の過程で審査官が質問をする、通訳がそれを相手方に訳す、相手方が答える、通訳がそれを訳して審査官に答えが返ってくる、そういったやりとりを通すことで、この通訳が適正に行われているかどうか、そこに疑義があれば通訳をかえることは考えなければいけない場合があるでしょうし、そうでない場合はそのまま審査を続けるということでございます。

小宮山(洋)委員 そういう答えでは全然納得できませんね。

 それで、この通訳のことにこだわっているのは、ここがやはり、日本へ来る方をどう迎え入れるかというところのかぎになると思うからです。自民党の委員の方もうなずいてくださっておりますけれども。

 先ほど私が言ったように、今回のアフガニスタン人のケースは、彼のことだけじゃないんですよ。やはり日本がどういう入国の審査をしているかの基本的なところだと思うんですけれども、個別だからお答えいただけないということでした。

 とにかく、アフガニスタン人だからアフガニスタン語で通訳していると思ったわけですよ、最初は、さっきの話だと。それで、アフガニスタン語はありません、パシュトゥーですかダリですかと言ったら、パシュトゥーですと言われたんですよ、最初は。ところが、パシュトゥーとダリというのは、敵対しているというか、余り仲はよくないんですね。ですから、パシュトゥー語で説明されても、ダリ語の人は何もわからないんです。それで、そう申し上げたら、今度は両方話せるイラン人が通訳したと。

 それで、その点ぐらいは、そのアフガニスタン人の青年がもう間もなく、あと十分で送り返されてしまいます、私はこういうのはちゃんと、きちんと審査をしてからにしていただきたいと思いますが。少なくとも、彼がきちんとわかる言語で説明を受けたのかどうか、それぐらいの答弁はしてください。

増田政府参考人 委員がおっしゃっている、うちの職員とのやりとりというのは、恐らく法務省の職員とのやりとりのことだと思います。

 それで、少なくとも、成田支局でこの入国審査に当たった職員、通訳を使って実際に本人から話を聞いた職員は、別に、これが何語だったのが何語になり、それが何語になったなんという、そんな三転しているような説明をしているということではないと承知しております。

 それから、本人に対しましては、なぜ入国をお断りすることになったのか、それは本人に伝わっているし、理解していただいていると承知しております。

小宮山(洋)委員 そんな説明ではとても納得できないですよ。(発言する者あり)ほら、自民党の理事からもそういうお答えがありますよ。だって、これでは、この個別の案件ということだけではなくて、こういうことが日本人が外国人を受け入れる大きなポイントになるところだから伺っているんです。それを伺えない限り、もう質問いたしません。委員会はとまります。

森岡委員長代理 もう一度、増田入国管理局長。

増田政府参考人 使った言語についてでございますが、これはダリ語において通訳が行われていると承知しております。したがって、本人の使う言語の通訳がそのまま行われていると承知しております。

小宮山(洋)委員 何で最初からそういうことをそういうふうに言わないんですか。それを個別の案件だからといって答えないというのは非常に、先ほどから申し上げているように、何を守ろうとしているのだかさっぱりわかりません。

 やはり来る方一人一人に対してちゃんと真摯に向き合って、最初に緒方貞子さんの言葉を引いて私が大臣とやりとりをした中でも、そこの窓口に立つ人がどういう対応をするかというところがポイントですねと言っているんですね。

 例えば、今回の場合、ずっと熱心に日本の事務所などで、現在もJICAで働いているわけで、身元もちゃんとしているわけですよ。それで、その人が、一生懸命仕事をしてくれて、日本が見たいと言うから、善意で来てもらった。そうしたら、いきなりそこのところで、今の御説明だと、わかる言葉で言ったということですけれども、いきなり、滞在期間が違うと。それで収容されてしまって、四日間もそこに収容されてしまった。何のことだか彼はわからないわけじゃないですか。それで、次のパキスタン航空で送り返します、とにかくこれにサインしなさいということで、法務大臣への申し出も拒否をするというサインを、強要したわけではないという説明をされるあたりがまたちょっと怪しいかなと思いますけれども、させられてしまって、とにかく、事なかれというか、問題なく帰してしまう。こういうことでいいんですか。

増田政府参考人 私の承知している限り、入国をお断りする理由、したがって、これで退去を命じますということは本人に理解されましたし、本人に対して、法務大臣に対して異議申し出をすることができますと、その異議申し出を行うのかどうか意思を確認し、しないならサインをしてくださいという、そのやりとりも理解していただいていると理解しておりますから、本邦に残りたい人を、理解しないままそのまま送り返すような、そんな手続をしているという事実はないと承知しております。

小宮山(洋)委員 電話で招聘人が本人と話した際、非常に精神的ショックを受けていて不安定な様子だったと。当然ですよね。まあ通訳がわかる言葉を言ったとしても、今までのあれで楽しみに日本に来たら、いきなり何かいろいろ尋問をされて、それで法務大臣への許可なんて言ったって、そんなすぐわかるわけないじゃないですか。私は、そこで丁寧な説明がされたとはとても思えません。

 このようなことが繰り返されますと、やはり日本と、もちろん、犯罪を犯すような人が入ってくるのをとめるのは当然です、だけれども、私たちが今度の法改正でも心配しているように、本当に国際親善とか国際理解とか、そういう人たちを必要以上に入国を拒否するということを懸念しているわけです。

 大臣、今のやりとりをお聞きになって、どのようにお考えになりますか。

野沢国務大臣 十分な意思の疎通があったかどうか、ちょっと私も今の点では疑問に思いますが、いずれにしても、御本人が納得してお帰りになるということであれば、これは一つの答えではないかと思いますが、もう少し調べてみないとわからないと思います。

小宮山(洋)委員 それでは、さらに保証人やお招きになった方が本人に確認をして、もう一度こちらへ来たいといった場合はどういうふうなことになりますか。

増田政府参考人 今のお尋ねは、一たん出国した後にもう一度日本に……(小宮山(洋)委員「出国というか、入国していないんだから出国していないでしょう」と呼ぶ)要するに、日本を離れた後にまた日本に来たいというときにどうするかということであれば、それは改めてその段階で審査をすることになりますし、その場合には、先ほど来出ているような、例えば上陸特別許可というようなことが考えられます。

小宮山(洋)委員 大臣は、今御説明をお聞きになって、本人が納得したかどうかわからないというふうにおっしゃいましたが、大臣はどういう点で今ので対応が不十分だったと思われて、今私が、局長のお答えにあったように彼が本当に納得したのではなくて、本当は日本に来たかったのだと。再度申請をした場合、大臣は責任を持ってそれを認められるように御努力いただけるでしょうか。

野沢国務大臣 どうも言葉がひとつ不自由だったということは事実のようでありますので、御本人の意向と、私どもの係官のお示ししたいろいろなルールが十分伝わったかどうか、これはやはり、もう一度はっきり確認の上、もし御希望があれば、改めてその時点での御申請をいただければ、これはひとつしっかり御審査をさせていただいて受けていくべきことと思いますが。

小宮山(洋)委員 それでは、大臣もそのようにお約束くださいましたので、これはやはり、日本が今アジアの人々とどれだけ仲よくしていくかというか、理解を深めるかということは、日本の外交にとってもこれは大きな問題です。こういうことで、これは一つのケース、個別のケースということではなくて、日本の、外国の人とどういうふうに親善を深めていくかというところのかぎだと思っておりますので、今大臣からもお約束をいただきました、本当に彼が納得して帰ったのかどうか、しっかりと責任を持ってフォローをしていただいて、申請があった場合は、間違いなくその条件が整っていれば受け入れるということを局長からもお約束をいただきたいと思います。

増田政府参考人 もちろん、今御質問になられたとおりの趣旨に沿って適切に対応いたします。

小宮山(洋)委員 私もまだこの委員会にしっかりおりますので、この後もフォローさせていただきますから、しっかり記憶にとどめておいていただきたいと思います。

 それでは、先に進みます。

 今回の法改正、不法滞在者対策を重視され過ぎているのではないかという懸念は今のことでもおわかりいただけていると思いますが、再三質疑しているように、日本に興味を持って、学ぶ意欲を持っている就学生、留学生などを必要以上に排除しないように、この点も非常に懸念をしております。きょう、午前中も一部質疑があったと思いますが。

 文部科学省は、現状をどのように把握していて、どのような対応をとっているのか、お答えください。

遠藤政府参考人 留学生の不法残留者が増加傾向にあるということを踏まえまして、法務省におきまして、経費支弁能力に関する審査を強化するなど、入国、在留資格につきまして、特に不法残留者を多数発生させている国、地域の出身者につきまして慎重に審査をしているというふうに理解をしておるわけでございます。

 留学生が勉学を継続するためには、留学生活動を維持できるだけの一定の経済力が必要でございまして、入国、在留審査において経費支弁能力の審査が行われるということは必要だと考えておりますけれども、真に勉学を目的として留学を希望する学生が排除されることのないよう、個々の学生の状況に応じた適切かつ慎重な審査が行われるよう、私どもとしては期待をしておるわけでございます。

 それから、国内での大学、日本語教育機関等の対応、これも大事な話でございますので、文部科学省といたしましては、適切な入学者の選抜、学生の在籍管理の強化を促すとともに、経済的理由により就学が困難でございます優秀な留学生、就学生に対しては、奨学金の支給などによる支援を行っておりますが、例えば、平成十六年度予算では、私費外国人留学生に、学習奨励費といたしまして、約七十九億円、一万一千四百人に対して支給を行っていくというようなことを行っておりますけれども、今後とも引き続きそういう支援を充実するように取り組んでまいりたい、こう考えております。

小宮山(洋)委員 いや、後半の、そういう援助をしていくというのはいいですけれども、前半の方は、全然私の聞いていることの答えになっていません。それは法務省の方でそういう厳重な審査をしていると承知していると。承知しているだけで、本当に勉学しようと思っている人が必要以上にそこでチェック、排除をされないように、文部科学省としてはどういう働きかけをしているんですかと聞いているんです。

遠藤政府参考人 日本で生活するためには経済力が必要だということはよくわかるわけでございますし、そういう意味もございますし、また、いろいろな問題が生じているということもございますので、なかなか難しいとは思いますけれども、私どもは私どもとして、文部省としては、そういう真に勉学を目的として留学を希望する学生に対する配慮というものにつきまして、事務的にお願いなどをしておる次第でございます。

小宮山(洋)委員 全然何をしているのか、具体的に何しているのかさっぱりわかりませんけれども、このことだけを聞いているわけにいきませんので、また後ほど同僚の議員がこの点については詳しく聞くと思います。

 大臣に伺いたいんですが、出入国管理についてはたび重なる法改正が行われておりますけれども、日本としてやはり総合的なビジョンがないのではないか。今、本当に国境が余りないような状態で、民族大移動の時代とも言われておりますけれども、そしてまた日本では、少子化の中で労働力が足りなくなるということもあります。いろいろな要因を勘案いたしまして、やはり外国人とどう対応していくのかというビジョンをつくる必要があると思います。

 例えば、日本経団連は、外国人について一元的に扱う役所として外国人庁をつくったらどうかというようなことも提言をしたりしています。私も総合ビジョンが欠けていると思いますが、大臣はどのようにお考えで、どのようなビジョンをつくっていくという考えをお持ちかという点を伺いたいと思います。

野沢国務大臣 法務大臣の仕事といたしましては、入管法の六十一条の九におきまして、外国人の入国及び在留の管理に関する施策の基本となるべき計画として出入国管理基本計画を定める、こうなっております。

 大変かたい話をいたしましたが、十二年の三月に策定した第二次出入国管理の基本計画におきましては、やはりこの国際化の時代、社会のニーズが非常に大きくなっております外国人の受け入れの円滑な実現をまず図るということ、そしてあわせて、やはり不法滞在者への現実的かつ効果的な対応をやっていかなきゃいかぬ、こういった方針が示されておるわけでございます。

 委員御指摘のように、日本経団連の提言でも、国と地方が一体となった整合性ある施策の推進、これをやれ、外国人庁の創設等もこの中にも入るわけでございますけれども、確かに、専門的、技術的分野の外国人の受け入れについては、これはもう前向きに大いにやらなきゃいかぬということでありますが、あわせてやはり不法滞在者の対策もやらなきゃいかぬ。大変これは実は二律背反的なところがございますけれども、両立させないと、これは日本の治安にもかかわりますし、いい人をようけ入れようという施策にもブレーキになってしまってはいけない。その意味でも、正しい人は正しく受け入れ、困った人はやはりお引き取りいただく、この両方が実は車の両輪になっているということを御理解いただきたいわけでございます。

 法務省といたしましても、外国人にとっても住みやすい国だ、あるいは日本は外国人との共生社会を目指しているんだということを御理解いただきまして、今後の国際化の時代に備えて、日本がしっかりやっていくためにもこれから力を合わせなければいけない時代が来ているんだ、こう思っております。

 私自身も、その意味では、ますます今後そういった外国の皆様との共生、共存のルールづくり、そういったものが長期的には大いに必要であろうかと思いますが、まずその前に、今私どもに迫られておりますことは、日本の治安回復をなし遂げる中でそういった大きな目標も達成できるよう、これからが大きな課題と思っております。委員の御指摘、十分にわきまえながら、これからも努力をしてまいるつもりでございます。

小宮山(洋)委員 もちろん治安を維持するというのは大事なことですけれども、どちらかというと、そのマイナスを消すためにこれをするというのではなくて、もう少しプラス思考、それももちろん否定はいたしませんが、できることなら、やはり特にアジアとの共生とか、さまざまな面でプラス思考で、外国の方とどういうふうに日本としてつき合うのか、その総合的なビジョンが早急につくられることを希望したいというふうに思います。

 次に、もう時間が少なくなりましたが、難民認定制度について何点か伺いたいと思います。

 難民認定制度、この認定手続の公正さ、それから透明性を確保するためには、外国人の入国を規制する出入国管理と難民を庇護するための難民認定がともに法務省の同じ機関で行われるのは、先ほど法律のところでも伺いましたが、やはりこれは問題ではないかと思いますが、どのようにお考えですか。

野沢国務大臣 出入国管理行政で、いい、こう言っているように、不適切な外国人を排除するだけではなくて、いい方には大いにひとつ来ていただくんだ、こういった受け入れを図る業務もあわせてやっているわけでございまして、その意味でも、難民認定業務と出入国管理行政は密接に結びついているわけでございます。その両方を入国管理局で行うということは合理的ではないかと考えておるわけでございます。

 また、入国管理局には、専門的に事実の調査を行う難民調査官も置かれておりますし、また二十年以上に及ぶ難民認定事業についての豊富な情報と経験も蓄積されておるわけでございますので、入国管理局が難民認定と出入国管理をあわせて行っておりますことは十分合理性があると考えておるわけでございます。

小宮山(洋)委員 そしてまた、一次審査と異議申し立てによる二次審査、これを同じ機関である入国管理局が行って、決定者は同じ法務大臣ということで、判定が覆ることは極めてまれだ、これも問題があるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

野沢国務大臣 一次審査は当然私どものところでやるとして、二次審査を独立した第三者機関でやったらどうかという御指摘はございますが、公正さや中立性、透明性を重視する立場からそういう御意見が出てこようかと思いますが、今回、難民審査参与員制度というものを設けまして、その皆様方から十分な御意見がいただけるということでございまして、複数の外部の専門家や多様な観点からの意見をいただくということでこういった点は十分に担保できるのではないかなということでございまして、異議申し立て手続の公正性、中立性は、これまでと違って格段に高まるものと考えておりまして、一次審査、二次審査を同一機関で行うことに問題はないのではないかと思っております。

小宮山(洋)委員 ちょっと時間の関係と、今大臣が参与員制度のことを言われましたので、そちらの質問を続けてしたいと思います。

 異議申し立ての場合、法務大臣が難民審査参与員の意見を聞いて決定することになっている。ところが、参与員が法務大臣に出す意見が必ず尊重されるというわけではないんですね。個々の参与員が意見を法務大臣に述べるにとどまるという仕組みになっているのだと思いますが、その意見が尊重されるという担保が必要なのではないかと思うんですが、いかがでしょう。

増田政府参考人 難民審査参与員は、一次審査の記録をすべて精査することが可能でございまして、さらに、今回の改正案にあるとおり、申請人の意見陳述の機会を与えるように求めることもできます。その際に、この審査参与員が申請人に対して直接審尋する権限、これも付与されておりますので、これらの権限行使を行うなどした上で、それぞれの方が、それぞれの専門的な学識経験に基づいて、客観的な立場から意見を述べられるものでございますから、法務大臣がその意見を尊重するのは当然のことと考えております。

 加えまして、異議申し立てを却下あるいは棄却した場合、その理由付記の中で難民審査参与員から提出していただいた意見の要旨を明らかにして処分の透明性を高めることとしておりまして、その意味でも、法務大臣が難民審査参与員の意見を尊重すべきであることが担保されていると考えております。

小宮山(洋)委員 参与員についてあと何点かまとめて質問させていただきます。

 参与員が法務大臣によって任命されるのは中立性から問題があるという指摘がありますが、その点。

 それから、法務省から独立した組織、例えば専門のUNHCRとか日弁連とか、そうしたところからの推薦者を含めて適任者を選出するというようなことができないのかどうかということ。

 それから、今、一次審査の記録は全部見られると言われましたけれども、法務省が持つ情報のみで審査を行うというのは不十分なので、申請者の個別の事情などの情報収集に当たる専門の事務局が必要ではないか。

 その三点についてお答えいただきたいと思います。

増田政府参考人 まず、参与員の選任についてでございますけれども、難民審査参与員の人選の方法につきましては、御指摘のとおり、その公正性が疑われることのないように、公正中立な立場の有識者などから御助言をいただき、あるいは御推薦をいただく、そしてその候補者の中から選任することを考えておりますので、その意味でも、法務大臣が選任するからといって公正性が担保されないということはないと考えております。

 それから御推薦、御助言をお願いする相手としては、例えば日弁連などは考えておりますし、それから国際知識の豊富な方にもお願いするという場合、一つの選択肢として、UNHCRから御助言あるいは御推薦をいただくことについても前向きに検討したいと考えております。

 それからもう一つの問いですけれども、法務省内部の資料だけでなくてもっとほかの資料も手に入るような制度である必要があって、事務局のことに触れられたと思うのですが、審査参与員に対する審査資料の提供につきましては、この法律成立後に定める法務省令におきまして、一次審査における難民不認定処分等に係る一件記録、それから異議申し立て手続において異議申立人から提出された資料等を難民審査参与員に示すことになりますほか、審査参与員から難民調査官等に対して追加の資料要求ができる規定を設けることも考えております。

 それから、行政不服審査法の適用がございますから、行政不服審査法二十七条により、参考人の陳述要求等、これが審査参与員の方はできるわけでございます。したがって、これによって法務省以外の参考人の人からの陳述要求等もできる。これらによりまして、異議申し立てを担当する難民調査官以外の参考人からの資料収集も可能になると考えております。

 それから、改正案では、難民審査参与員は異議申立人に口頭で直接意見を述べる機会を与えるよう求める権限であるとか、あるいは直接審尋する権限なども与えております。

 このように、客観性のある十分な資料に基づいて参与員に御判断いただく、こういう制度とすることを考えておりまして、御指摘のような資料提供のための事務局を新たに設ける必要はないものと考えております。

小宮山(洋)委員 私の持ち時間があと五分ほどになりましたので、ちょっと二つほど質問をまとめて、最後の質問にしたいというふうに思います。

 難民認定申請者を摘発しているケースがあります。これは難民条約三十一条の規定に抵触しかねず、難民条約の趣旨に反するのではないかという懸念を持ちます。またUNHCRのガイドラインにも反するのではないか。原則として申請者は収容しないようにすべきではないかと思います。

 収容されている具体的な例といたしまして、例えば、ミャンマー国籍の女性が二〇〇四年一月より東京入国管理局に収容され、夫も同時期に摘発、収容されました。一次申請の結果不認定で、異議申し出をし、日本で生まれ育った二人の子供、八歳と四歳の子供が児童相談所に預けられていた。児童相談所は子供を預かる上限の期間が三カ月となっているので、四月に別の児童相談所に移送されました。移送の結果、上の子供、八歳の子供は転校をして精神が不安定になりました。子供たちの様子が悪化したために、両親は難民申請を取り下げて、五月の連休明けにミャンマーへ帰国をした、この例が一つ。

 もう一つは、病気でイラン国籍の男性が二〇〇二年十二月より東日本入管センターに収容されています。二〇〇二年十月に労災に遭って病院から警察に超過滞在で通報をされ、十二月に東京入管に収容されました。満足な治療、リハビリも受けられないまま一年四カ月収容されまして、左手の硬縮状態が進行し機能全廃の危機に瀕している。弁護士もついて仮放免手続六回目を申請中。それから、労災の障害認定の等級引き上げ交渉も行っているが、政府は強制退去の手続中。

 このような病気中の人、あるいは子供と親を離すということは、家族の問題として、これは先日入管を見学させていただいたときも私も現場でも質問をしたんですが、子供の姿が全くない。それで、子供はどうしたんですかと言いましたら、児童相談所に預けてある、こういうところに子供を収容するのはよくないからと言うんですが、何がよくないかというと、子供にとってはやはり親と一緒にいることが一番大事だと私は思うので、例えば入管のところへ、もちろん申請者は収容しないことが第一だと思いますが、そういう場合にも、親子を分離するということにもっともっと神経を使うべきだと私は考えますが、いかがでしょう。

増田政府参考人 まず、難民認定申請中の人に対する摘発の問題でございますけれども、平成十三年十月にアフガニスタン人等の難民認定申請者を摘発して収容した事例がございますけれども、それ以降については、申請者をこちらから積極的に摘発して収容するという姿勢では臨んでいないと承知しております。

 今委員が取り上げられたのが二〇〇四年の一月か二月の摘発ということをおっしゃいましたので、それは場合によっては後で事実関係を調べてみますけれども、私どもとしましては、原則的には難民認定申請者の摘発を行うということについては差し控える姿勢で臨んでいるということは事実でございます。

 ところで、現行法上、難民認定手続と退去強制手続、これは今は別個独立の手続とされておりますので、従来、退去強制事由に該当する人について、並行して難民認定手続が行われていたわけですが、これについては、私どもは、難民条約三十二条に照らして、必ずしも条約に違反するというような考えは持っておりません。

 しかし、もちろん制度の運用としては、退去強制容疑者について難民認定申請中であることを理由として厳しく対応するとか、あるいは人権侵害を招くとか、そのような対応を行ってならないことは言うまでもないことでございまして、法にのっとって適切な手続をとっているものと承知しております。

 それから、被収容者の情状等を考慮して仮放免を弾力的に運用するということも行っているところでございます。

 それから、子供の収容などについてのお尋ねでございましたが、家族全員が不法滞在者である場合の未成年の子供の身柄についてでございます。

 委員の御指摘のとおり、これについては、親族あるいは児童相談所に預けるなど極力収容を行わないという対応をとっております。これは、これまでに衆議院や参議院の法務委員会等で、退去強制手続であっても未成年者はできるだけ収容しないように、こういう御指摘を受けてまいりました。そういったことを踏まえて、子供の人権に一層配慮するという観点から行っているものでございまして、これは今後ともこれまでと同様の対応をとっていく所存でございます。

 なお、適切な預かり先が見当たらなくて例外的に収容する、そういう場合も起こり得るところでございますが、できるだけ短期間の収容にとどめるよう配慮いたしますとともに、収容施設の管理運営上可能な範囲内で、親以外の成人の被収容者と分離して、その未成年者の監護を行う親と一緒に収容できるように居室上配慮をするなどしております。また、収容している場合においても、人道的配慮を要する事情があるときには仮放免を弾力的に運用しているところでございます。

小宮山(洋)委員 今の家族の問題あるいは治療が必要な場合など、また特段の配慮が一層必要だと思いますので、そのあたりはよろしくお願いします。

 以上で終わります。

森岡委員長代理 御苦労さまでした。

 山内おさむ君。

山内委員 民主党の山内おさむでございます。

 民主主義国家にあっては、国の権力作用は客観性、透明性、そして公平性が原則とされるべきであります。政府案の質疑を聞いておりますと、それが十分には確保されていないんじゃないか、抜本的な改革が必要ではないかと思っています。

 民主党案の提出者に、特に政府案と比べていかなる点に特徴を有するのか答弁を願いたいと思います。

 まず第一点、難民認定に関する業務を法務省から分離して難民認定委員会という独立の第三者機関に行わせる趣旨を伺います。

中村(哲)議員 難民認定を求める者には、正規の旅券やビザを取得する、そういったいとまもなく本国から逃れてくる者も多いと考えられております。しかしながら、現行制度では、難民に該当するかどうかの審査、認定の業務を、不法滞在者摘発及び退去強制に関する業務を任務としている法務省の入国管理局に行わせているところであります。

 つまり、正規の旅券やビザを取得するいとまもなくやってきているそういった人間を排除しようとする法務省の入国管理局に行わせているということですから、根本的な制度矛盾を現行制度ははらんでいるということが言えます。取り締まるところと庇護を決めるところが同居しており、公正、公平な審査の担保という観点から大いに問題があります。

 さらに、難民認定に当たっては、国際難民法に通じ、国際情勢に詳しいことなど高度の専門性及び迅速性が要求されることなどをあわせて考慮する必要があります。

 したがって、難民認定に関する業務を専門的に行う独立の第三者機関が必要であり、難民認定委員会を設置する必要があると考えたところでございます。

山内委員 難民認定の申請期限、いわゆる六十日ルールを撤廃する趣旨はどういう理由でしょうか。

中村(哲)議員 現行の出入国管理及び難民認定法第六十一条の二第二項にはこのように書かれております。「前項の申請は、その者が本邦に上陸した日(本邦にある間に難民となる事由が生じた者にあつては、その事実を知つた日)から六十日以内に行わなければならない。ただし、やむを得ない事情があるときは、この限りでない。」このように規定がされております。

 このいわゆる「六十日ルール」については、そもそもこのように申請者の権利を制限する合理的な根拠が薄弱であります。また、これを厳格に運用すると、申請期限の徒過という形式的な理由のみをもって難民条約上の難民が難民に認定されないこととなります。これは難民の保護、受け入れを義務づけた難民条約の趣旨にもとることとなります。

 以上の理由から、いわゆる六十日ルールを撤廃することとしたものでございます。

山内委員 それでは、難民の認定に関する処分を申請から原則六カ月以内に行うとすることとした趣旨はどういうことでしょうか。

中村(哲)議員 政府案でもこの点について特に触れられていません。しかしながら、いつまでというような期限を区切らなければ、難民認定申請者の地位は不安定になってしまいます。難民認定申請者の地位を早期に安定させるため、申請から原則として六カ月以内に処分を行うことを難民認定委員会に義務づけたというものでございます。

 なお、事務処理上の困難その他正当な理由により申請から六月を経過しても処分が行われない場合には、期間内に処分することができない理由及び処分に要することと見込まれる期間を申請者に書面で通知することとして申請者に配慮しているところでございます。

山内委員 難民認定基準を決めるべきだという主張も法案に盛り込まれていますが、この趣旨はどういうことでしょうか。

中村(哲)議員 難民認定の申請をしようとする者にとって、どのような場合に難民認定を受けられるかは重大な関心事であります。しかし、難民条約の難民の要件は抽象的であり、どのような場合にこの要件に該当するかは判然としないところがあります。

 難民条約によると、難民の定義は以下のようなものです。1自分が国籍を有する国、国籍国の外にあり、2人種、宗教、国籍、特定の社会的集団の構成員であること、3政治的意見を理由とする迫害を受ける十分に理由のある恐れが存在するために、4国籍国の保護を受けることができず、または国籍国の保護を受けることを望まない者。このような定義となっているんですけれども、この要件というのはある意味抽象的でありますから、もっと具体的な基準を設ける必要があるというふうに考えております。

 そこで、行政機関の恣意性を排除し、難民認定を適切かつ迅速的に行うため、難民認定基準をあらかじめ定めて公表していくことを義務づけることとしたものであります。これによって、難民認定の申請をしようとする者は難民認定を受けることができるかどうかの予測が可能となります。そして、難民認定基準の内容に対する批判が広く一般に可能となります。こういったさまざまなチェックが入ることによって、行政機関、難民認定委員会の判断の過程の透明性が向上することになります。

 以上が、難民認定基準を定めることとした趣旨でございます。

山内委員 その難民認定基準に合致するかどうかということを難民認定委員会が審査する。その際に、補佐人を同行して出頭に応じて説明等ができるという規定が設けられていますが、その趣旨はどういうことでしょうか。

中村(哲)議員 難民認定申請者は、日本の法制度に関する知識や日本語の能力の面での制約から、難民認定を受けるための十分な主張立証ができないおそれがあります。このような場合において適正手続を確保するためには弁護士、通訳等による補佐が不可欠であり、難民認定申請者がこれらの者を補佐人としてともに出頭することができるものとしたものであります。

 私自身も、西日本入国管理センター、東日本入国管理センターにも参らせていただきました。そのときにいろいろな苦情を聞くことがあります。やはり、自分の言葉が通じない、そういった問題、また、法制度がきちんと、なかなか問題点が伝わらない、そういったいら立ちを難民認定申請者が感じておられることはたくさんあったというふうに思っております。

 例えば、アフガニスタンの難民申請者の場合では、ハザラ人が難民申請をしてきた、それにパシュトゥン人の通訳がつけられた、そういったことがあります。当然、通訳にしてみたら、自分たちが迫害してきたハザラ人に有利な通訳をするとは考えられない。こういった問題もありますので、申請者の側で通訳をつけること。また、申請者には多くの形で弁護士がサポーターとしてついている場合も多いですから、こういった弁護士を補佐人とする必要があるというのは、現場の話を聞いていて実感するところでございます。

山内委員 政府の方に伺いますけれども、今、政府の方で出している法案では、難民の認定に関する処分に不服があったときには、入管法が独自に規定した異議の申し出、つまり、七日間以内に異議の申し立てをしなければならないというふうに規定がされておりますけれども、これは物すごく期間が短くて厳しい制限だと思うのですが、この趣旨を伺いたいと思います。

実川副大臣 現行法におきましても難民不認定処分に対する異議の申し立て期間を七日間としておりますが、これは、難民認定に関する処分の当否は早期に結論を出す必要があること、また、難民であるか否かは本人がこれを最もよく知り得る立場にあることなどを考慮したものでございます。

 今回の改正に当たりましても、行政不服審査法の規定する六十日間より短くても難民認定申請者の権利保障の面で問題はないと考え、現行法どおり七日間としたものでございます。

山内委員 裁判で控訴、上告を判断するのにも二週間という猶予期間がございます。特に難民の認定、難民としては認定しませんという処分がなされたときに、そもそもその方に弁護士がついていればまだ対応も早くできるかもしれませんが、その不服な処分が出てから例えば弁護士を探したり、あるいは弁護士との打ち合わせに走ったり、支援者や家族と相談をしたり、職場の上司や同僚と仕事の段取りをつけたり、そういうことを考えると、七日間というのは物すごく短く感じます。

 この点、民主党の案ではどういうふうな手当てがなされているんでしょうか。

中村(哲)議員 今、山内議員がおっしゃったような問題が政府案にあると思っております。

 現行の出入国管理法の異議の申し立ては、処分の通知を受けた日から七日以内に行わなければならない。これは、期間が極めて厳しく限定、制限されているというふうに言えると思います。先ほどの政府の御答弁も私は聞いておりましたけれども、なぜ六十日を七日に制限する、そういった合理的な理由についてはきちんと述べられていなかったように私は実感しております。

 つまり、政府案の、また現行法のあり方では、期間の徒過という形式的な理由のみをもって権利救済の道をふさぐことになってしまいます。難民の権利の保護が不十分となってしまいます。

 また、そもそもの話になりますけれども、先ほどの繰り返しになるかもしれませんが、一般法である行政不服審査法の適用を特に排除すべき理由もありません。そういうことを考えると、行政不服審査法が六十日であるわけですから、行政不服審査法を全面的に適用することとしたものであります。これにより、不認定の処分があったことを知った日の翌日から起算して六十日以内であれば、不服申し立てをすることができるようになります。これは行政不服審査法第四十五条の規定であります。

 先ほど山内委員がおっしゃったように、六十日という期間が果たして不当に長いものなのかということになると、私はそうとは思いません。現場の皆さんの意見を聞いておりましても、処分が下って、これに対して合理的な理由をまた探して不服申し立てをする、また、弁護士を探す、支援者を探す、そういった環境を整備するためにはやはりある程度の日数が必要なんだろうなと。

 そもそも、行政不服審査法が六十日という、そういった異議申し立ての期間を設けているというのは、私はそれなりに意味があることだと思っておりまして、その六十日という期間を設定している理由を難民申請者の場合に制限するという実際的な理由はほとんどないんじゃないかと考えております。

山内委員 また、民主党の案では、第二条の二項に、いわゆる条約難民を除いた「在留難民等」という規定を設けておりますけれども、それはどのような方を指すのでしょうか。

中村(哲)議員 在留難民とはどういう者かという御質問でした。

 いわゆる条約難民を除いた「在留難民等」としては、例えば、インドシナ難民など、政府の政策的判断により、人道的見地から受け入れたいわゆる条約外難民が想定されるところでございます。

山内委員 では、そういう在留難民等の皆さんに対して生活支援を行うという規定がございますけれども、その趣旨はどういう趣旨なんでしょうか。

中村(哲)議員 生活支援の対象となる者については、条約外難民も含むこととしているところであります。これらの者が地域社会において言語や文化の違いを乗り越えて安定した生活を営むことができるよう、その生活を積極的に支援していくことが重要である点では条約難民と変わりがないからでございます。

 現行の制度の運用でも、実は、インドシナ難民などのいわゆる在留難民等と言われるカテゴリーに属していらっしゃる難民の方に対する生活支援の方が条約難民の方たちよりも支援が手厚い、そういった現状もあります。

 そういったことを考えれば、現行の運用として、インドシナ難民のような条約外難民の人たちに生活支援をしっかりしていたわけですから、そこはきちんと残していこう、そして条約難民、本来もっと生活支援をしなくちゃいけない人はもちろんここに含まれていく、そういった考え方で民主党案はつくらせていただいているところでございます。

    〔森岡委員長代理退席、委員長着席〕

山内委員 では、続きまして、第八章、出入国管理及び難民認定法改正部分の改正の趣旨を伺いたいと思います。

今野議員 現行の入管法では、難民認定手続と退去強制手続がそれぞれ別個、独立の手続として規定されております。そして、不法入国や不法上陸をした外国人は退去強制の対象となりますが、難民認定を受けようとする者は、その性質上、不法入国や不法上陸をした者である場合が多いわけです。そのために、難民認定申請中の者であっても、不法入国者として退去強制を余儀なくされるケースを生ずるということも多々ありました。

 また、従来、難民認定は法務大臣及び法務省の入国管理機関が実施をしてきたわけですけれども、この入国管理機関は、不法入国者等の摘発及び退去強制等を行う権限も有していることから、適正な難民認定手続が行われていないのではないかという、先ほど小宮山議員の指摘にもありましたけれども、そうした批判がされてまいりました。

 そこで、難民認定手続を、新たに内閣府の外局と位置づけまして設置する難民認定委員会において行わせるとともに、本邦において難民認定申請中の者及び難民認定を受けた者の法的地位の安定を図るために、これらの者が適法に上陸または在留の許可を受けることができる制度を設けることとしたものでございます。

山内委員 それでは、民主党の法案で、難民申請者上陸特別許可制度を創設しておりますけれども、この制度をつくった趣旨を伺いたいと思います。

今野議員 現行の入管法上、外国人は、入国審査官の審査を受けて旅券に上陸許可の証印を受けるか、または上陸の許可を受けなければ本邦に上陸することはできないというふうに入管法の第三章になっております。そして、これらに違反した者は退去強制の対象となることとされております。これは、改正前の第二十四条第二号にあります。

 しかし、我が国に上陸をし、そして難民認定を受けようとする者は、その性質上、一つは、有効な旅券を有しておらず上陸許可の証印を得ることができない場合、そして、上陸の許可等を得ることができない場合というケースも多いと思われます。このために、不法上陸の発覚により退去強制処分を受けることを恐れて難民認定の申請をためらうというケースも少なくないわけです。また、難民認定を申請したとしても、申請中に不法上陸を理由として退去強制処分を受けることもあり得るわけですね。

 こうした問題が指摘されておりまして、そこで、我が国に上陸をし、難民認定を受けようとする者に対して上陸許可を与えることによって申請者の法的な地位を安定させる、また難民認定の申請を行いやすくするということとともに、難民認定の申請をしている者が退去強制処分を受けることのないようにするために、難民申請者上陸特別許可制度を創設した次第であります。

 本制度の創設によりまして、難民申請者上陸特別許可を受けた者は不法上陸者とならないことはもちろんですけれども、難民認定申請者の法的地位を安定させる観点から、不法入国を理由とした退去強制処分を受けることがないこととしているわけであります。

山内委員 もう一つ、民主党案において難民申請者在留特別許可制度を創設しておりますが、その理由も伺いたいと思います。

今野議員 現行の入管法上、我が国に在留する外国人の方々は、在留資格を有することが要求されているわけです。また、外国人は、有効な旅券を持って入国をしてきて、そして入国審査官の上陸審査を受けなければならないということになっているわけですね。これらに違反した者は退去強制の対象と当然なるわけです。

 しかし、難民の認定を申請しようとする者は、在留資格を有しない人、申請をする前に在留資格が切れてしまう人、また不法入国である人という場合が多いと思われるわけです。したがって、難民の認定を受けることを希望する人が、不法滞在等の発覚によって退去強制処分を受けることを恐れて難民認定の申請をためらうということも少なくないわけですね。さらに、難民認定の申請中の外国人が退去強制処分を受けることがあり得ることといった問題がこれまでさまざまなところで指摘されてまいりました。私たちも、この難民に関する法案を提出しますときに、さまざまNGO、NPOの方々から意見を聞きました。ここのところは随分指摘をされてきたところであります。

 そこで、難民認定の申請をした我が国に在留する外国人に対して、必要な条件を付した上で、我が国での在留の許可を与えて法的な地位を安定させることによって、難民認定の申請を行いやすくするということとともに、また難民認定の申請をしている者が退去強制処分を受けることがないようにするために、難民申請者在留特別許可制度を創設したわけであります。

 この制度の創設によりまして、難民申請者在留特別許可を受けた者については、不法入国、不法上陸または不法残留を理由として退去強制しないこととしております。

山内委員 今説明をいただきました、この民主党案で創設をします難民申請者上陸特別許可という制度と難民申請者在留特別許可という制度と、政府案に言う仮滞在の許可制度との違いを説明をお願いします。

今野議員 これも少し長くなりますが、せっかくの機会でございますので説明をさせていただきますが、本法案においては、難民の認定を申請する者に対して、難民申請者上陸特別許可、これは九条の二でありますが、そして難民申請者在留特別許可、これは二十二条の二です、この二つの特別許可制度を創設しまして、難民認定の申請をする者が本邦に適法に上陸あるいは在留するということができることとしているわけです。

 他方、政府案においても、在留資格未取得外国人から難民認定の申請があったときに適法に在留を認めるという仮滞在の許可制度、これを創設しております。しかし、政府案のこの仮滞在の許可制度を見てみますと、全体的に、難民認定の申請に対する処分がされるまでの間の暫定的な性格が強く出ておりまして、難民認定の申請をする者の法的安定性に対する配慮の程度が低いのではないかなというふうに考えます。

 これに対して、我が党のこの法案の難民申請者上陸特別許可等では、難民認定の申請をする者の法的安定性を重視しまして、これらの者を最大限保護する仕組み、つまり大変優しい仕組みとなっているわけであります。

 このような基本的な姿勢の違いは、具体的には、政府案の仮滞在の許可制度においては、本邦に上陸した日から六カ月以内に難民認定の申請をしたことが条件になっておりまして、期間制限を設けているわけですけれども、本法案の難民申請者上陸特別許可等においてはこのような期間の制限は設けておりません。

 また、政府案の仮滞在の許可制度を見てみますと、いわゆる第三国経由で入国した者については仮滞在の許可を与えないということとしているわけですが、本法案のこの難民申請者上陸特別許可等においてはこのような制限はしておりません。難民の方々は、その出国しようとする国においてさまざまな迫害を受けているわけでございまして、そして、必ずしもその国から我が国にストレートで上陸をしてくるという状況にはない場合が多いと考えられます。紆余曲折を経て第三国から我が国に入ってくるというような場合もありまして、そこのところに配慮をいたしました。

 また、当該外国人に対して、住居、行動範囲の制限その他必要と認める条件を付すことができるとする点では両案ともほぼ同様のようなんですけれども、必要があると認める場合には指紋を押捺させることができるとする仮滞在の許可制度、これは人権上も問題になりそうだという心配をいたしますが、こうした規制は私どもの本法案にはございません。

 以上でございます。

山内委員 確かに、仮滞在の許可という名前からして、いかにも何か暫定的な制度であるかなと思って、この名前だけで見ても、法的に安定した地位を与えられる、あるいは生活が続けていかれるということができにくい制度であるなと私も思います。

 それからもう一つ、本法案、民主党案において、難民在留特別許可制度という制度を創設していますが、その理由を伺いたいと思います。

今野議員 現行の入管法を見ますと、難民認定手続と退去強制手続がそれぞれ別個、独立の手続とされているんですね。既に難民の認定を受けて我が国に在留している外国人であっても、その方の在留が適法とされるためには、別途、在留資格を取得する必要があるわけです。このために、在留資格のない難民については、不法滞在者として取り扱われることになりまして、退去強制を余儀なくされるケースを生ずることもあったわけですね。このために、難民の法的地位の安定化を図る必要が求められておりました。

 この必要性を踏まえて、本法案では、難民在留特別許可制度を創設しまして、難民認定を受けて我が国に在留する外国人に対して、難民としての地位に基づき、特別の在留許可を与えることとしたわけであります。この制度の創設によって、難民在留特別許可を受けた者は、在留資格を取得しなくとも、難民在留特別許可が有効である間は、不法入国、不法上陸または不法残留を理由として退去強制処分を受けることはないわけです。

 また、難民在留特別許可を受けた者で在留資格を有しない者は、本邦において就労活動を行う等、別表の第一及び別表第二に掲げる活動ですけれども、行うために、法務大臣に対する在留資格の取得申請を行うことができるといたしました。法務大臣は、この申請があった場合、特段の事情のない限り、これを許可しなければならないこととしております。

 以上でございます。

山内委員 しかし、政府からすれば、難民申請者上陸特別許可制度や難民申請者在留特別許可制度については濫用されるおそれはないのかなという指摘が考えられもするんですが、この点はどうでしょうか。

今野議員 これはもっともでございまして、この法案をつくっている、また各方面にさまざま御意見を伺ったり相談をしたりしている中でも、随分この意見が出ました。

 本法案では、難民認定申請者の法的地位の安定のため、難民申請者上陸特別許可及び難民申請者在留特別許可を与えることとしておりますけれども、その濫用、悪用を避けるために諸制度を規定いたしました。

 そこのところをちょっと説明させていただきますと、これも時間がかかります、申しわけありません。

 まず、一定の事由に該当する場合には特別許可を与えないこととしております。その一つには、難民申請者上陸特別許可は、上陸拒否の事由がある場合には与えられないといたしました。二番目には、難民申請者在留特別許可は、退去強制の手続により収容されている者の申請、それから刑事手続により身柄を拘束されている者の申請、それから何度も繰り返して難民認定の申請をしている者の申請については与えられないこととしております。これらの者からの申請は、退去強制を免れるためにする、濫用の蓋然性の高いものと考えられるからであります。

 次に、申請方法についてですけれども、難民申請者上陸特別許可及び難民申請者在留特別許可の申請はみずから出頭して行うことを予定しておりまして、その際に写真を提出することを予定しております。これによって、だれかにかわって、他人に成り済まして申請するということを防止することができると考えております。

 そして、難民申請者上陸特別許可及び難民申請者在留特別許可を与えるに当たっては、住居それから行動範囲の制限といった条件を付すことができるとしておりまして、この条件に違反して逃亡した場合には一年以下の懲役もしくは二十万円以下の罰金に処せられ、またはこれが併科されるといたしました。これによって、難民申請を口実に我が国に在留し、そして就労しようとすることなどを防止することができると考えております。

 さらに、難民申請者上陸特別許可及び難民申請者在留特別許可によって上陸または在留が認められる期間は、難民認定の申請に対する結果が出るまでに必要な期間、この期間を想定しているわけですが、難民認定の申請から結果が出るまでは、原則として六カ月以内に期間を制限しております。そして、その上陸または在留期間の経過後は、難民として認定されなかった者は退去強制の対象となり得ることとしております。これによって、難民申請を口実に、我が国に長期にわたって在留したり、あるいは就労しようとすることなどを防止することができると考えております。

山内委員 今お聞きしますと、非常にめり張りのついた運用が民主党案では行われるというようにお聞きをしました。

 最後の質問になりますけれども、民主党案は、七十条の二、「その者の生命、身体又は身体の自由が難民条約第一条A(2)に規定する理由によつて害されるおそれのあつた領域から、直接本邦に入つたものであること。」という規定を削除すべきだとしておられますが、この理由はなぜなんでしょうか。

今野議員 現行の入管法においては、難民と認定された者が刑の免除を受けるためには、迫害されるおそれのある地域から直接本邦に入ったことが要件とされております。先ほどもこの点には触れましたけれども、この点についてはかねてから、第三国を経由した場合に刑の免除を受けられないというのでは難民の保護という観点からは問題であるという批判が強くされていたところであります。

 そもそも、本国から迫害されるおそれがあるために庇護を求めてきた難民については、その保護を厚くすべきでありまして、迫害されるおそれのある地域から直接入ってきたかどうかということによって刑が免除されるか否かを決すべきではないと考えております。

 また、本法案では、難民認定を受けようとする者に対して難民申請者上陸特別許可や難民申請者在留特別許可を与えることとし、難民認定を受けようとする者が適法に本邦にいることができる制度を設けることとしています。この難民申請者上陸特別許可や難民申請者在留特別許可は、迫害されるおそれのある地域から直接入ってきた者ではなくとも与えることとしております。刑の免除についても、このこととの均衡を図る必要があるというふうに考えます。

 以上のことから、刑の免除の要件から、「その者の生命、身体又は身体の自由が難民条約第一条A(2)に規定する理由によつて害されるおそれのあつた領域から、直接本邦に入つたものであること。」この部分を削除することといたしました。

山内委員 どうもありがとうございました。

 世界のあちこちで国内あるいは国外紛争が起きていて、その当該国の中で過酷な運命に翻弄される、そういう方々がたくさんおられると思います。国境を越えてやっとたどり着いた方々に、その人に対して愛情を傾けていく、そういう国際社会を構成することが、私たちの、すべての国や国民の自覚とすべきだと思っていますし、それを万人が共通の理念にすべきだと思っています。

 ぜひ政府の方でも、また見直しも当然必要なわけですから、民主党の案もこれからも参考にしていただきまして、ぜひとも立派な難民保護の法律をつくっていただくことを祈念して、終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

     ――――◇―――――

柳本委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 ただいま議題となっております両案審査のため、来る二十五日火曜日、参考人として東京都副知事竹花豊君、立命館アジア太平洋大学アジア太平洋学部教授山神進君及び日本弁護士連合会人権擁護委員会副委員長市川正司君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

柳本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る二十五日火曜日午前九時四十五分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時五十八分散会


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