衆議院

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第30号 平成16年5月26日(水曜日)

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平成十六年五月二十六日(水曜日)

    午前九時五分開議

 出席委員

   委員長 柳本 卓治君

   理事 塩崎 恭久君 理事 下村 博文君

   理事 森岡 正宏君 理事 与謝野 馨君

   理事 佐々木秀典君 理事 永田 寿康君

   理事 山内おさむ君 理事 漆原 良夫君

      金子 恭之君    左藤  章君

      桜井 郁三君    柴山 昌彦君

      中野  清君    早川 忠孝君

      平沢 勝栄君    保利 耕輔君

      松島みどり君    水野 賢一君

      森山 眞弓君    保岡 興治君

      柳澤 伯夫君    山際大志郎君

      荒井  聰君    泉  房穂君

      市村浩一郎君    鎌田さゆり君

      河村たかし君    小林千代美君

      小宮山洋子君    高井 美穂君

      辻   惠君    中井  洽君

      西村智奈美君    本多 平直君

      松野 信夫君    上田  勇君

      富田 茂之君    古屋 範子君

      丸谷 佳織君    川上 義博君

    …………………………………

   参議院共生社会に関する調査会長          狩野  安君

   参議院議員        南野知惠子君

   参議院議員        神本美恵子君

   参議院議員        山本 香苗君

   参議院議員        吉川 春子君

   参議院議員        福島 瑞穂君

   法務大臣         野沢 太三君

   法務副大臣        実川 幸夫君

   法務大臣政務官      中野  清君

   最高裁判所事務総局民事局長

   兼最高裁判所事務総局行政局長           園尾 隆司君

   政府参考人

   (内閣府男女共同参画局長)            名取はにわ君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  伊藤 哲朗君

   政府参考人

   (総務省自治行政局長)  畠中誠二郎君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  増田 暢也君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       伍藤 忠春君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           小神 正志君

   法務委員会専門員     横田 猛雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十六日

 辞任         補欠選任

  保岡 興治君     金子 恭之君

  加藤 公一君     荒井  聰君

  鎌田さゆり君     高井 美穂君

  河村たかし君     市村浩一郎君

  辻   惠君     西村智奈美君

  上田  勇君     丸谷 佳織君

  富田 茂之君     古屋 範子君

同日

 辞任         補欠選任

  金子 恭之君     保岡 興治君

  荒井  聰君     加藤 公一君

  市村浩一郎君     河村たかし君

  高井 美穂君     鎌田さゆり君

  西村智奈美君     辻   惠君

  古屋 範子君     富田 茂之君

  丸谷 佳織君     上田  勇君

    ―――――――――――――

五月二十六日

 国籍選択制度と国籍留保届の廃止に関する請願(細野豪志君紹介)(第二四五二号)

 同(仲野博子君紹介)(第二五八八号)

 同(松野信夫君紹介)(第二五八九号)

 法務局・更生保護官署・入国管理官署及び少年院施設の増員に関する請願(佐々木秀典君紹介)(第二五二四号)

 国籍法の改正に関する請願(仲野博子君紹介)(第二五九〇号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案(内閣提出第六一号)(参議院送付)

 難民等の保護に関する法律案(中村哲治君外一名提出、衆法第四一号)

 電子公告制度の導入のための商法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四三号)(参議院送付)

 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律の一部を改正する法律案(参議院提出、参法第一三号)


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     ――――◇―――――

柳本委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、参議院送付、出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案及び中村哲治君外一名提出、難民等の保護に関する法律案の両案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として法務省入国管理局長増田暢也君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

柳本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

柳本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小林千代美さん。

小林(千)委員 おはようございます。民主党の小林千代美です。

 昨日の小宮山委員の質問に引き続きまして、出入国難民認定法改正についてお伺いをいたします。

 小宮山委員の質問の中で途中で終わっているところがありまして、それを私は後を引き続いて質問したいと思います。就学生、留学生などを不必要に、必要以上に排除していないかどうか、この件についてです。

 先日、小宮山委員の方がこの点について質問をしたところ、これは文科省の方ですけれども、文科省の方の政府参考人の遠藤さんの方からこのような答弁がありました。入国在留資格につきまして、特に不法残留者を多数発生させている国、地域の出身者につきましては慎重に審査をしているというような答えがあったわけなんですけれども、これは、この就学、留学希望者を国籍によって審査の基準を変えていることというのは、これは法の平等に反するのではないでしょうか。

増田政府参考人 不法残留者が多く発生しております国や地域の出身者からの申請など問題の多く見られる申請案件については、慎重に審査しているところでございますが、許可の要件につきましては、それ以外の国、地域の出身者との間に差異を設けているわけではございませんので、国籍による差別というようなことはないと考えております。

小林(千)委員 私も、審査基準というのは、どこの国の出身の方であってもそれは同じハードルを設けるのは当然のことでございまして、このような疑問を抱かされるような答弁というものはあってはならないと思いますし、それを指摘しておきたいと思います。

 それで、さらにこの件について質問をしたいわけなんですけれども、先日、私は財団法人日本語教育振興協会というところの会長さんのお話を聞くことがありました。今の日本の留学生、就学生事情、特に就学生の事情についてお話を伺ったんですけれども、今、就学生の入国条件というのはやはりとても厳しくなっているというふうにお話を伺いました。

 どんな条件があるか。就学ビザをとるために必要な条件、もっともっとあるんでしょうけれども、お話しいただいたところでは、日本語検定四級あるいはそれに相当する百五十時間日本語を学習したという履歴を証明する、添付をする、卒業証明書を添付する、そして、就学期間あるいは留学期間の一年ないし二年に必要な預金の証明、一年の場合は百五十万円だそうです。二年の場合だと三百万円だそうなんですけれども、これはドル建てだということですが、こういった要件を課している。

 この書類がそろっていたとしても、そこのところでかなり厳しい条件が付されているということなんですね。例えば卒業証明書なんですけれども、大学を卒業したかしないか、国会議員の中でも大変大きな問題になっているところなんですけれども、たとえ証明書を持ってきたとしても、それが信頼できる証明書なのかどうなのかというところで、かなり疑いの目で見られることも多いというふうにおっしゃっていました。

 また、この日本語検定または百五十時間の日本語学習履歴、これについても、日本語検定の場合は日本が行っている内容だから大丈夫だと思うんですけれども、百五十時間日本語学習履歴というものを、例えば、どういった日本語教室みたいなところで受けたのかというような、こういった内容も大変厳しいものがチェックされるというふうに言っていました。

 さらには、この預金証明ですね。たとえ貯金通帳で三百万円なり百五十万円というような預金通帳のコピーみたいなものを添付しても、この三百万が実際にあなたのために使われることを立証しろというふうに言われるそうなんです。これは明らかに、もう排除ということを目的とされてこういった厳しい厳しいチェックがされているのではないのか、必要以上に厳しいチェックがここでされているのではないでしょうか。

増田政府参考人 日本語学校に入学するために来日する外国人に対する在留資格認定証明書の交付についてのお尋ねですが、その要件というのは、第一には申請人が日本で行おうとする活動が虚偽のものでないこと、これは、入管法の別表に定めがございますが、留学について申しますと、例えば、専修学校の専門課程であるとか、あるいは外国において十二年の学校教育を修了した者に対して日本の大学に入学するための教育を行う機関に入学して教育を受ける活動である、また、就学についていいますと、例えば、専修学校の高等課程あるいは一般課程あるいは各種学校もしくは設備、編制に関してこれに準ずる教育機関において教育を受ける活動に該当する、そういう活動を行うことが一つでございます。

 もう一つは、問題となっている日本語学校でございまして、これは、法務省令で定める基準に適合するという観点から、これらの教育機関に入学して教育を受けること、その場合、本邦に在留する期間中の生活に要する費用を支弁する十分な資産あるいは奨学金その他の手段を有するか、もし本人でないなら、本人以外の人がその申請人の生活費を支弁することとされていること、それから、その教育機関が法務省の告示をもって定められる日本語教育機関であること、こういったことが要件となっているわけです。

 要するに、本人が日本語を学ぶ意思を持っていて、それを可能とする条件が整っていること、それが要件となっているわけです。

 御指摘の、日本語能力であるとか、あるいは預金証明書による経済力の証明というようなことにつきましては、これは、その申請人が日本語を学ぶための条件が整っているのかどうかという観点から、本人が、実際に日本で日本語を学ぶ上で最低限の日本語能力があるのか、あるいは滞在費用を支弁できる者なのか、そこを審査する上でのおよその目安でございまして、それらは要件ではございません。したがいまして、ほかの方法によって要件に適合することが証明されれば差し支えないわけでございます。

 例えば、御質問の中にあった日本語能力でいうと、検定試験のほかに百五十時間の学習履歴ということがございました。これも、百五十時間学習していなくても、もし、その申請人に、日本に来たときに最低限授業などが理解できるような日本語能力がある、日本語能力試験四級相当の力があるということが別途証明できるのであれば、それはそれで結構なことでございます。

 それから、やはりお尋ねの中で、卒業証明書の審査が厳格になっているのではないかということのお話がございましたが、これは確かにそういう傾向はございます。それはなぜかというと、卒業証明書の偽造の事例というのが実は多いということがあるものですから、出された卒業証明書をそのまま受け取って、はいそうですかというわけにはいかないという事情があることを御理解いただきたいと思います。

 それから、預金証明書のお尋ねがございましたが、これもいわゆる見せ金ということがはやりまして、要するに、銀行にお金を入れて預金証明書をつくってもらって、その写しを日本の方に提出する、しかし、それは見せ金ですから、実際は証明書を出してもらった後引き出す、こういう事例が実は多々あることがわかりました。

 そういったことがあるために、そんな見せ金の預金証明書を出されても、その人が日本に来たときに本当に勉学に集中できるような経済的な基盤があるかどうか、これが証明されたことになりませんので、そういったことで、預金証明書につきましてもお金の形成過程をわかるような書類を出してくれという要求をするようになりました。

 しかし、これも、要はその人が日本にいる間に本当に経済的に学業に、留学、就学に専念できるようなそういった資産があるかどうかが問題ですから、もしも、預金証明書あるいは預金通帳その他がない場合であっても、ほかにその人の財産能力を証明することが、やっていただければそれはそれで結構だということでございます。

小林(千)委員 今おっしゃられたような厳しい認定の条件で、ここ最近、やはり数年、就学ビザの取得率、交付率というのはだんだんだんだん減ってきているということです。以前は七〇%、八〇%近くあったものが、最近ですと、交付されたのが二三・八%だという数字を伺いました。もちろん、これは地域によって差があるそうで、特に、東京あるいは東海地区、関西地区あるいは九州、こういったところはこの平均値よりも低い認定率だというふうな話もお伺いをいたしました。

 特に就学生の場合なんですけれども、日本に入ってくる就学生は、やはり中国出身の方が圧倒的に多いそうです。大体、平成十五年度の入学者の数なんですけれども、平成十五年度だと中国出身が七四%ということで、ほとんど四分の三を中国が占めている。その後、韓国が一六%、あとはもう、台湾が二・五%、その後、タイ、マレーシア、フィリピンと続くんですけれども、そこになるともう〇・何%ということになってしまいまして、圧倒的に中国からの就学希望者が多いという実情があるわけなんですね。

 なぜ中国から今それだけ日本語を勉強しに日本に来たがっているかという事情も伺いました。そういうところですと、中国は大学の進学率というのが大体一二%程度だそうです。ところが、今、中国は一人っ子政策をずっととっていまして、子供に対する教育熱というものは大変大きなものがあるそうなんですね。お金をかけてでもいい学歴を子供にはつけさせてあげたいという親の願いがあるそうです。

 ところが、大学に入れるのは一二%、まだまだ中国の国内での学校の数が十分ではない。こういった状況から、中国で大学に入れないんだったら日本の大学を卒業させてやりたい、日本語が身につけば、将来やはり経済的にも文化的にもその子の将来のためになるだろうと考えている親御さんも大変多いというお話を伺いました。そういった方々が学校を十二年卒業して、いきなり日本の大学の学部に入るというのはやはり難しいことで、その前に一段階、日本語学校で一年間あるいは二年間就学をしてから学部に入学をするというケースが大変多いそうです。

 以前は、これは同じく平成十五年の数字なんですけれども、日本語学校を卒業して、その後、大学なり大学院なり、あるいは専門学校なり、そういったところに、高等の教育機関に進んだ人の割合というものは六八%だったそうです。中国からの出身者でいえば八二・八%なんですね、平成十五年の数字が。ですから、入国した方、就学ビザをとった人に限定すれば、今までもかなり高い割合でずっとまじめに、まあ脱落する人は途中には何人かは当然いたでしょうけれども、多くの方々はちゃんと日本語を一年間、二年間学んで、さらに上の学校に入学をするということをしていたんですね、八〇%の中国の方がです。

 しかしながら、ここに来て認定率がいきなり二三・八%に下がってしまった。それこそ将来ある東南アジアの若い人たちの将来というものをそこでせきとめているということになっている証拠ではないんでしょうか。本当に意欲ある就学生、留学生をそこの水際で不当に排除しているということになっていないのでしょうか、お伺いいたします。

増田政府参考人 委員のおっしゃるとおり、本当にまじめに我が国に来て勉強する意思のある人については、これは積極的に迎え入れていかなければいけないと考えておりますし、そういった人を排除するような運用をしてはならないということは私どもも自戒しているところでございます。

 ただ、在留資格認定証明書の交付率が低くなりましたのは、これは入管に出された申請を個別に審査して、その結果、実際に勉学の意思あるいはそれを可能とする条件が整っているのかどうか、それを審査した結果、この人については我が国に来ても留学あるいは就学をそのままきちんと続けられる見込みがない、あるいは提出された書類が偽造、虚偽文書である、こういったことから交付しなかったということでございまして、本当に勉学を志し、あるいはその条件の備わっている留学生、就学生の入国を認めないということではございません。

 ちなみに、例えば、名古屋市で中国籍の女性を仲間五人と誘拐して、もとの夫に身の代金を要求したけれども失敗して、女性を絞殺して、名古屋港に死体を遺棄して無期懲役を受けた中国人がおりましたが、この人だって当初はまじめに勉強するために留学生として来日したけれども、結局、失業率が五%に上る状況下で、アルバイトで生活費を支弁するというもくろみが外れてしまって、友人からの借金でようやく生活を維持していたけれども、結局は学費を納められずに除籍となって、その後、不法滞在となり、ホームレス生活を続けているうちに誘い込まれてこういう凶悪犯に至ってしまったという例ですが、こういった例が最近見られるようになってきた。

 そういったことから考えまして、また不法滞在者対策という見地から考えまして、留学、就学については一万五千人以上の人が不法滞在をしている、あるいは去年一年間だけでも四千人近く新たに留学、就学から不法滞在に陥っている人が発生している、こういうことがございますので、まじめに勉強をする人、まともに勉強を続けられる人を排除することはないようにこれからも注意してまいりますけれども、今申し上げたような事情でやはり審査の厳格化は行わざるを得ないということを御理解いただきたいと思います。

小林(千)委員 ただいま増田参考人が例として名古屋の女性の話を挙げてくださいましたけれども、その例は今引用するのに適当ではないと思います。といいますのも、最初は意欲を持って日本語を勉強しようと思って日本に入国してきたけれども、そういった犯罪に巻き込まれるようなケースになってしまった。それは水際でとめることとは別の問題ではないでしょうか。

 私が今質問しているのは、そうやって意欲を持っている人たちに対して、それこそ水際でとめるようなことがあってはいけないと言っているわけです。

 例えば、大変厳しい経済の中でも勉強したいというそういった意思のある方に対しては、それは今文部省でも、例えば私費の留学生に対しても、あるいは就学生に対しても助成金を出しているですとか、学校に助成金を出しているですとか、留学生に奨学金を出しているといったような努力もしているんですから、そういった対策をすべきであって、今の例は水際対策として用いられるのはこれは正しくないと思いますが、いかがでしょうか。

増田政府参考人 おっしゃるように、この問題の根本的な解決の中には、奨学金制度の充実とかそういった行政的な施策の充実ということは多分必要であろうと思いますが、それは今法務省の立場でちょっと申し上げることができないので、今委員がお尋ねになった、名古屋の例がなぜ水際と結びつくのかということにお答えしますと、この例の就学生の場合も、まじめに日本に勉強する気で入ってきた、学校に通っていた、しかし、残念ながら、当てにしていたアルバイトなどによる収入が断たれた、そのことによって、結局、最後は転落していって、犯罪組織からの誘いに引き込まれたわけです。

 そういったことがあるために、留学、就学生で日本に来る人の場合、本当に一年間あるいは二年間、その人が日本で安定した留学生活、就学生活を行えるだけの財政的な基盤のある人なのかどうか、単にアルバイトを当てにしてというようなことだけなのか、そういったことはやはり審査して、どうもその辺で、日本で適当にお金が稼げるだろう、それを稼いで勉強できるだろう、そういったところの人は転落して犯罪に結びつくおそれがあるものですから、それは審査して、場合によっては交付しないということにするという意味では水際と結びつくものと考えております。

小林(千)委員 この件につきましては、文部科学省なんかともそういった留学生、就学生をどのようにケアしていくか、サポートしていくかという点もあると思いますし、日本語学校ですとか留学生を引き受けているような短期大学、大学の課題も多いと思います。私、文部科学委員会の委員でもありますから、それはそこで質問をさせていただきたいと思いますが、こんなになって、大変厳しい今環境に、留学、就学希望生にとっては厳しい環境の中にある。

 申請に半年以上かかるというんですね。申請に半年以上かかって、四月に入学するためには秋からもう準備していなきゃいけない。この四級の日本語試験も年に一回、十二月しかないというんですね。ですから、その前の十二月にはもう四級試験を通っていなきゃいけない。そうすると、もう二年がかりぐらいで日本に留学、就学のための準備をしなきゃいけないわけで、そんなに長い時間をかけて一生懸命勉強して、日本語の四級まで取ったのに、四分の一ぐらいしか許可がおりない。そうなってしまえば、次に申請するかといったら、もう日本なんて行くものかというふうになってしまうのが本音のところではないかなというふうに思います。

 私は、これは日本の民間外交としても大変なマイナス要因になってしまうのではないかな、こうやって意欲のある、特に日本とこれから、今つき合いの深いこういった北東アジアの国々の人たちとこれからのやはり友好関係あるいはこれからの外交関係をつくっていく上で、これは大変大きな問題になると思いますが、最後に大臣にお伺いしたいと思います。

 こういった問題も踏まえて、ぜひともこの留学生、就学生を不当に排除することのないような方策をとっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

野沢国務大臣 大変難しい問題ですが、お話のように、何としても意欲のある方は積極的に前向きに受け入れたい、このことについては私ども変わりないものと考えております。

 現在、留学生、就学生の受け入れにつきましては、諸外国の若者の間に日本文化や実情についてのよき理解者をふやすという意味で、大きな意義を持つと考えております。

 近年、留学及び就学の在留資格で入国する者の中には、当初から就労を目的としている者や、当初は勉学を志していたとしても、経済的事情から勉学をしないで不法就労し、あるいは犯罪に走る者等も多く出てきているということが大変残念でございますが、法務省では、申請内容の真偽につきまして従来より厳格な審査を実施しておるところでございます。これは今御指摘のとおりでございます。

 しかし、冒頭申し上げましたように、真に勉強したいという人には、積極的に受け入れるというこれまでの方針に変更はございませんし、これからも、まじめに勉強しようとする留学生、就学生の受け入れの拡大には努めてまいりたいと考えておりまして、この皆様が将来の日本と該当のお国との大変大事なかけ橋となって活躍してくれることを我々は期待しながら、なお、不法就労あるいは不法残留、さらには犯罪に至る道を、何としてもこれを排除していくこともあわせて行うことによって、正しく入ってくる方々にもこれがプラスになるような方策が大事かと考えております。

小林(千)委員 ぜひよろしくお願いをいたします。

 次の質問に参ります。

 入管メール通報についてなんですけれども、入国管理局のホームページの中に「情報受付」というページがありまして、その中で、不法滞在者と思われる、違反者だと思われる方に対しての情報提供をメールで受け付けているページがございます。これはことしの二月十六日から立ち上げたページだというふうに伺いました。

 今、既に三カ月ぐらいたっているかと思いますけれども、現在までの通報件数とその内容について御報告いただきたいと思います。

増田政府参考人 本年二月十六日から四月末日までにこのホームページによって受け付けました電子メールの件数は、約千七百件でございます。

 その内訳について申し上げますと、不法滞在者と思われる者に関する情報提供が全体の約七四%、この情報受付に関する意見が全体の約八%、それから内容の趣旨が不明なものなど、その他が約一八%となっております。

小林(千)委員 この千七百件の通報をそれぞれどのように処理していらっしゃるんでしょうか。そして、この中で実際に不法残留の摘発をされた件数、その内容などを教えてください。

増田政府参考人 インターネットによって受け付けました入管法違反外国人等に関する情報は、直接、その情報に係る場所を管轄します地方入国管理局で受信されるようになっております。情報を受けました地方入国管理局等におきましては、従来の情報提供方法である電話とか手紙とか口頭などで提供された情報に対する取り扱いと同様に、その情報内容を精査いたしまして十分な調査を行った上で、適切かつ効果的な摘発に結びつけていくということにしております。

 これまでの実績についてのお尋ねですが、提報メール、情報提供のメールで寄せられました不法滞在者の情報について、管轄する地方入国管理局では、その内容を精査して、これまでに東京入国管理局それから大阪入国管理局において合計十八人を摘発しております。

 これは、内容がプライバシーにかかわりますので大まかに申し上げますが、東京入管においては、新宿区内の飲食店、それから群馬県内の工場で合計四人、大阪入管におきましては、大阪市内の事業所において合計十四人を摘発しております。

小林(千)委員 このメール通報、二月の十六日に立ち上がりまして、一度、三月の下旬ごろに通報内容の一部が変更になっております。これは通報動機のところが変わっていたんですけれども、なぜこのような変更がされたのでしょうか。

増田政府参考人 このメールにつきましては、国会でもいろいろ御質問を受けましたし、そこで、法務大臣からも当局に対しまして、この受け付けに関して誤解を生じさせることのないように対応するよう御指示をいただきました。

 そこで、よりよいものにするという観点から見直しを行いまして、ただいま委員がおっしゃいましたように、通報動機が特に問題とされておりましたので、通報動機を選択式であったものを改めたというようなこと。それから、そもそもこのメール受け付けが、何を根拠として、どういう趣旨で実施したものであるのか、つまり入管法六十二条によるものであることや、適法な外国人に対する誹謗中傷などはやめてもらいたいということを明記するなどの改善措置を施しました。

小林(千)委員 実際に、その変更となった今のメールのページをコピーしてみても、違反者だと思われる人に関する情報を提供してくださいというふうに書いてあるわけなんですね。違反者だと思われる人、違反者ではないんですよ。

 こういったことは、政府による外国籍の方々に対する差別ではないんでしょうか。こういったメール通報制度をとっている外国は、諸国は、ほかには日本以外にないはずなんですが。

増田政府参考人 当局の情報提供受け付けが外国人のみを対象といたしているのは、当局は入管法に違反する外国人の退去強制手続を所管しているために、外国人を対象とした情報提供を求めていることでございまして、殊さら外国人を差別する扱いをする意図はございません。

 もし違反者だと思われる外国人という、思われるを問題となさっているのだとしたら、これは、この情報メールは入管法の六十二条によるもので、つまりそこには、「何人も、第二十四条各号の一」これは退去強制事由ですが、退去強制事由の一「に該当すると思料する外国人を知つたときは、その旨を通報することができる。」と。もともと、本当に退去強制事由に当たるかどうかなんということはそれは入管でなければわからないことですから、法律自体も、だから、そう思われる人は通報することができるよというこの法律を受けて今回このメールを実施しているものですから、このような表現をしているところでございます。

小林(千)委員 それは、もちろん入管でないとはっきりしたことはだれもわからないでしょうから、怪しい者は何でもかんでも挙げて、しょっぴいてしまえという考え方はとても私は危険な考え方なのではないかなというふうに思います。

 このメール通報制度、提供者の側は、「あなたの情報」というところで、いろいろ名前、性別、年齢、住所を書く欄があるんですけれども、名前のところは「なくても結構です。」というふうになって、匿名も可になっています。これは何で匿名にしているんでしょう。例えば、この情報が重要だなと思ったら、その情報のソース、出どころをはっきりしなければいけないことは重要なことなのではないでしょうか。

増田政府参考人 その点は、入管に情報を下さる方のお立場あるいはお気持ちとして、不法滞在者の入管法違反外国人の情報というものを入管に提供したい、だけれども自分の氏名は明らかにしたくないという方はおられるわけで、それは、従来から入管は、電話であるとかあるいは手紙、はがきであるとか、そういったことで毎年膨大な数の情報提供をいただいておりました。その中には、匿名の情報というのはこれまた多数あったわけでございます。そういったことから、今回このメール受け付けに際しましても、提供者の氏名を明かすことを情報提供の条件とはしなかったものでございます。

 いずれにしましても、提供された情報については、その内容を入管局で十分に精査して調査を行った上で摘発に結びつけますので、その点では、匿名であるからいいかげんなものに踊らされるのではないかというようなことの御懸念は無用だと思います。

 ちなみに、先ほど申しました、全部で東京入管と大阪入管で十数名摘発したと申しましたが、これは現に匿名情報でございました。

小林(千)委員 私は、匿名だから心配をしていたわけではないんですね。というのも、特にインターネットというものがこれだけ普及してまいりまして、本当にコミュニケーションの輪が広がったと申しますか、全国どこにいてもすぐに自分の情報を伝えることができる、しかも、この場合、匿名でいろいろと流せることができるということなんですけれども、これはインターネットのネット上でとても危険なことだと思います。

 インターネットの掲示板の中には、匿名の書き込みで、本当にあらゆる誹謗中傷といったものが行われているところでもあります。私も自分のホームページを持っておりまして、メールで意見を寄せられるようにもしているんですけれども、本当にありとあらゆる意見が寄せられるのは、多分ホームページを持っている方ならだれでも経験があることだと思います。

 同じ法務省の人権擁護局のページに、同じページに、「インターネットを悪用した人権侵害は止めましょう」というページがあるんですよ。見て笑ってしまったんですけれども、皆様にきょう資料としてお配りをしております。

  インターネットによりコミュニケーションの輪が広がり便利になる一方で、インターネットを悪用した行為が増えており、他人への中傷や侮蔑、無責任なうわさ、特定の個人のプライバシーに関する情報の無断掲示、差別的な落書きなど、人権やプライバシーの侵害につながる情報が流れています。

  インターネットを悪用することなく、お互いの人権を尊重した行動をとるようにしましょう。

  人権擁護局

これはどのように考えていらっしゃいますか。

野沢国務大臣 インターネットの利用、活用の問題と人権あるいは入国管理のかかわりについてお尋ねがございました。

 我が国に入国して在留しておられる外国人のほとんどの方がルールを守っているということは、もう言うまでもないわけでありますが、残念ながら、我が国には、今、二十五万人にも及ぶ不法滞在の外国人が存在していることもまた事実でございまして、この皆さんの安全と秩序を、社会の安全と秩序を維持するために不法滞在者に対しまして厳格に対応することもまた法務省に対する国民社会の要請にもなっているわけでございます。

 そのために積極的な摘発活動を行う必要がありまして、これまでも、電話やお手紙で国民の皆様から情報をお寄せいただくことで、摘発の一つの端緒ということで取り組んできたわけでございます。

 このような情報の中で、電子メールで情報提供をしたいという声もありますし、昨今のインターネットを含めた電子社会の普及状況を見ますと、もう八割以上の御家庭で、あるいは、会社でいえばもう九割以上の会社がこれを利用、活用しておられるということであれば、手紙、電話と特別変わりがない形で御利用があると考えられますので、情報提供の手段としてメールを活用させていただいておるということでございます。

 このメールによる不法滞在の情報提供が御指摘のような形で人権違反問題を生じさせることのないよう、十分配慮を徹底して活用をしていかなければならない、これはもう十分わきまえて取り組むつもりでございます。

小林(千)委員 このページをどのように利用するかをわきまえてというよりも、このページ自体が存在することが私は人権侵害ではないかなというふうに感じております。

 きょう、同じく皆様に資料を配らせていただきました、兵庫県知事のお名前と、そして神戸市長のお名前で出されている要望書です。この要望書は、このホームページによる情報提供の受け付けの中止を、二枚とも、二つの自治体とも求めている内容です。

 御存じのように、兵庫県あるいは神戸市というところは、在日外国人の多いところでもございます。また、港湾地区というところでもあり、多くの外国人の方々が実際に居住をしている地域でもあります。そういった歴史的な背景や地理的な背景の中で、この神戸市も兵庫県も、外国人の方々との共生というものを実際に今までやってきた地域でもありますし、また、もう何年前になりますか、阪神・淡路大震災があったときでも、あの大変大きい被害があった中を、それはもう、それこそ日本人でも外国人でも、同じ県民、あるいは市民として手をとり合って、その災害の中から復興を今立ち上げてきているといった自治体でもあります。

 そういった、実際に外国人の方々との共生というものを実践している自治体からこのような要望書が上がっているわけでございますけれども、こういった要望書をどのようにとらえていらっしゃるでしょうか。

増田政府参考人 本年四月、兵庫県からは、メールによる情報受け付けを中止すべき旨の申し入れ、また神戸市からは、外国人の人権保護に十分配慮した適切な運用を行うべきとの要望をいただきました。

 私どもの方では、兵庫県それから神戸市の方がおいでになりましたので、この制度についていろいろ御説明いたしました。兵庫県の方は、やはりこれは外国人を犯罪者扱いするものであるというようなことで、懸念を述べられました。神戸市の方は、この制度そのものについては御理解いただきまして、ただ、運用上問題を起こさないようにしてもらいたいという御発言でございました。

 私ども入国管理局といたしましては、これまでも答弁で申し上げてまいりましたように、外国人と健全に共生する土壌をつくっていかなければいけない、そのためにも不法滞在の外国人の人にやはり出ていってもらわなければいけない、そういったことから、メールによる情報を活用して積極的な摘発を実施していくことが必要であると考えておりまして、その兵庫県等からの要望書の趣旨を踏まえて、今後も、外国人の人権には十分配慮し、このメールによる情報の受け付け、活用を行ってまいりたいと考えております。

    〔委員長退席、森岡委員長代理着席〕

小林(千)委員 ここの、兵庫県知事からの要望書にもありますとおりに、このメール通報システムというものが、どうも、お互いを監視しよう、そして何か不穏なことがあったらそれを通報、すぐにでも密告しようといったような制度でもないかと私は疑問を抱かざるを得ません。

 ここの、兵庫県の要望書にもあるとおりに、外国人を監視することを奨励するかのようなこういったホームページは、私は、一日も早くこのシステムの中止を要望したいと思います。いかがでしょうか。

増田政府参考人 先ほど大臣からも御答弁がございましたように、我が国では、圧倒的に多くの外国人の方がルールを守って滞在なさって生活をしている、しかし残念なことに、今、約二十五万人に及ぶ不法滞在の外国人が存在していて、これが国民の治安に対する不安の要因に、不幸なことになっているという実情がございます。そのために、入管としては積極的な摘発活動を行うことが必要であって、これまでも、電話であるとかあるいは手紙、はがきなどで情報をいただいた場合、それらを精査して摘発に結びつける、つまり、この情報提供が摘発の貴重な端緒となっていたわけです。

 このような情報をお寄せくださる方から、電子メールで情報提供をしたい、そういうお声がございまして、そこで情報提供を受け付けることとしたのが今回の取り組みでございます。

 ただ、委員からの御指摘や御意見は十分心いたしまして、また、当然のことですが、外国人の方の人権にも十二分に配慮し、誤解を招くことのないよう自戒しながら、このメール受け付けを続けさせていただきたいと考えております。

小林(千)委員 時間がないので、次の質問に移らせていただきます。

 難民認定制度について伺います。

 今度新しく、異議申し立てをした場合、難民審査参与員という制度ができるわけでございますけれども、この異議申し立てからお伺いいたします。

 この異議申し立て期間というものは、その処分がおりてから七日間以内という数字になっております。行政不服申し立ての場合は六十日以内に異議申し立てをするわけなんですけれども、これは何で六十日じゃなくて七日という短い期間なんでしょうか。私は、少なくとも、行政不服申し立てと同じ六十日間という期間を設けるべきだと思いますが。

増田政府参考人 難民不認定処分に対します異議の申し立て期間を七日間といたしておりますのは、難民認定に関する処分の当否は早期に結論を出す必要があること、それから難民であるかどうかは本人がこれを最もよく知り得る立場にあることなどを考慮したものでございまして、そういったことから、行政不服審査法の規定する六十日間より短くても難民認定申請者の権利保障の面で問題はないと考えております。

 この七日間というのは、今の法律自体がやはり七日間であるわけです。平成十五年になされました難民不認定処分に対する異議申し出、これが二百二十六件ございましたが、その処分の通知を受けた当日に異議申し出を行ったものが最も多くて百八件、四七・八%ございました。異議申し出期間最終日、七日目に異議申し出を行ったものは五件、二・二%でございまして、こういったことからも、異議申し立て期間を七日間とすることは、実態としても申請者の保護に欠けるものではないと考えております。

小林(千)委員 当日に行った人がすぐで、七日目の最終日に判断を下した人は二・数%だったから七日でいいんだというのは、私は随分言い過ぎではないかなというふうに思います。

 もちろんこれで、命からがら難民として逃げてきて、着のみ着のままで、知らない土地でいろいろな申請をして、そういった中で許可がおりなかった。そういったときに、これからの自分の将来を考えるのに、果たしてこのまま日本にいて異議申し立てをしてどんなふうになるんだろう、あるいはほかの第三国にまた行くべきなのか、あるいは御家族の皆さんと判断をしなければいけないかもしれない、そういったさまざまな判断を下さなければいけないのに、この七日間というものは余りにも短過ぎる期間ではないか。今実際に七日目に申し立てをしているのは二・何%だからいいんですといったような結論にはならないと思いますので、これは強く意見を申し上げておきたいと思います。

 続いて、この難民審査参与員なんですけれども、私、これがいま一つ具体的に出てこないんですけれども、異議申し立てを行った、その案件について、例えば裁判員制度みたいに何人かの人たちが合議体みたいなのを形成して、その中で一定の答えを出すようにするんでしょうか。これはどういった構成でどのような内容でこの難民審査参与員の方々がいろいろな判断を、結論を出すのでしょうか。

増田政府参考人 まず構成から申し上げますと、異議申し立て一件について三人程度の難民審査参与員に担当していただくことを考えております。また、今回の法案では、難民審査参与員は非常勤国家公務員として若干人を任命する、こういう規定になっておりますが、異議申し立て件数等によりますので、今確定的なことは申し上げられませんが、恐らく十数名の参与員を置くことになるのではないかと考えております。

 それから、この意見の取りまとめというか、どういう形で意見が出されるのかでございますけれども、これは不服申し立て手続の諮問機関ということでございます。個々の事案を担当する複数の専門家の間で意見交換を行うことによって、その事案についての情報を共有し、あるいは相互に専門的知識を補うということで、適正な意見形成を行うということができる、それがこの諮問機関として有益であろうと考えておりますので、難民審査参与員につきましても、同じように意見交換を実施していただくということを考えております。

 そして、合議体として一個の意見を答申することを義務づけるものではなくて、意見交換を通じて意見が一致する場合もあるでしょうし、一致しない場合もあると思います。もちろん、一致した場合一個の意見を法務大臣に答申していただくということはできますし、また一致しない場合には難民審査参与員が個別に意見を答申することも可能とする、そういったようなことを考えております。

小林(千)委員 なるほど。そうすると、三人の方々がAなりBなりCなり、それぞればらばらな意見を大臣に申し述べるということもできるわけなんですね。別に合議で一つにまとまるというような、結論を導く場所というものでもないわけですね。

 それで、そうすると、十数名の参与員の中から選ばれる三人というのは大変責任重大な役割を果たすのではないかなというふうに思うわけなんですけれども、この参与員という方々はどういった方法で選ばれるのでしょうか。

 この参与員の方々、もちろん国際的な情勢に精通をしている必要はあると思います。しかし、だからといって、例えば外務省OBですとか入管のOBの皆さんが天下っていくようだと、大臣が任命をして、しかも身内の人たちがそれを決めて、それを意見を聞いて大臣が決定を下すというのも、内輪でまたやっているだけかなというような気もいたすわけでございまして、この人選のあり方で、私は、外部の人を積極的に活用すべき、当然そういった国際情勢についての知識も持っている方でないと困る、あるいは人権に対しての認識を持っている方でないと困ると思いますので、例えばUNHCRですとか日弁連、こういうところから推薦を受けるですとか、どういったやり方でこの十数人を決定されるわけでしょうか。

増田政府参考人 難民審査参与員につきましては、人格高潔で公正な判断ができる方であって、例えば、一つとしては、難民審査というのは事実認定が難しい問題であるということがございますので、事実認定の経験豊富な法曹実務家の中からお願いするということが一つございます。それからもう一つは、この事柄の性質上、地域情勢であるとかあるいは国際問題に明るい方、例えば国連関係機関の勤務経験者あるいは国際政治学者、海外特派員経験者、商社等の海外勤務経験者などが考えられます。それからもう一つは、条約であるとか法律解釈が問題となることもあり得ますから、例えば国際法であるとか外国法、行政法等の分野の法律専門家の方からお願いするということも考えております。

 具体的な人選に当たりましては、おっしゃるとおり、恣意的な人選が行われるというような批判を招かないように、あくまでもこれは外部の方を入れてその意見を参考にして公正な判断をするという制度として新たに設けるものでございますので、その点は十分注意しまして、例えば、公正中立な立場の団体あるいは有識者の方の御意見を伺う、あるいは御推薦をいただいて、その御推薦いただいた方の中から法務大臣が選任することなども検討したいと考えております。

 今委員が具体的にUNHCRをおっしゃいましたけれども、UNHCRからの御助言、御推薦についても前向きに検討したいと考えております。

小林(千)委員 ぜひそういった外部の確かな知識を持っている方々を積極的に活用していただきたいと思いますし、大切なことは、そういった参与員の皆さんが出した意見というものについて、これは大臣は意見を聞くことを義務づけると条文にはあるわけなんですけれども、こういった方々の意見というものを大臣はどのように受けとめて結論を出されるのでしょうか。こういった参与員の方々の貴重な御意見というものがそこで担保される確実性というものは大臣の手一つなんでしょうか。大臣にお伺いいたします。

野沢国務大臣 難民審査の参与員は、今回のこの入管法の改正の中でも実は一番大事な部分だと私は認識しておるところでございます。

 この参与員さんのお仕事は、法務大臣が、先ほどから御議論いただいておりますように、学識経験等を有する方の中から適任者を選任しまして、そのような方々に一次審査の記録を精査していただくとともに、異議申立人の意見の聴取や審尋等を直接行っていただいた上で、専門的な知識経験に基づき多角的な御意見を述べていただくものでございますから、法務大臣としては、当然その意見を十分に尊重して判断することになります。

 そして、この審査参与員の方は、一件につき三名程度とすることを考えておりまして、その場合、難民審査参与員の意見が一致することもあれば分かれることもあると思います。それぞれの難民審査参与員の御意見が、異議申立人固有の事情あるいは出身国の政治的、社会的情勢に関する一般的な情報等にかんがみまして合理的なものであるか否かを十分法務大臣としては検討した上で、虚心坦懐、この決定を下すということになろうかと思います。

 三人という数字は、裁判員制度のときにも人数の問題はいろいろございましたが、昔から言うように三人寄れば文殊の知恵ということもございますので、私は、この数も非常に適切であり、また経験等も十分生かされた上での御答申ということになれば、重ねて申しますが、十分尊重しての判断ということにいたしたいと考えております。

小林(千)委員 日本はまだまだ難民に対して閉ざされた国というふうに世界の中からは判断されているようです。

 国際貢献、国際貢献というふうに総理もおっしゃっておりますけれども、イラクに自衛隊を派遣することだけではなくて、やはりこうやって難民に対して広く門戸を開くですとか、あるいは、将来、日本に対して大変意欲を持っているアジアの外国人の留学生、就学生、日本語を学びたいと思っている人々に対しても、やはり広い心で開いていただいて、ぜひこういった面でも積極的に行うことが私はこれは国際貢献の一つではないかなというふうに思います。

 ぜひ、こういった点からも日本が積極的に国際社会の中で重要な役割を果たしていただくようにお願いを申し上げまして、ちょっと時間を残しましたけれども、私の質問を終わらせていただきます。

森岡委員長代理 御苦労さまでした。

 次に、辻惠君。

辻委員 今回の出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案の提案理由について伺ってまいりたいというふうに思います。

 まず、外国人犯罪の深刻化に伴い、その温床とされる不法滞在者を大幅に減少させることが求められているということが出入国管理の部分の改正の理由の一点であります。もう一点として、我が国に適法に在留している外国人の中にも不法就労活動を行ったり、犯罪を犯す等公正な出入国管理を阻害する者も少なくなく、これらの者に適正かつ厳格に対処する必要性が生じている、これがもう一点であります。

 外国人犯罪の深刻化という場合に、外国人犯罪の犯罪者数のこの五年間の推移、及びその深刻化というのはどういう意味でおっしゃっているのか、この点についてまず伺いたいと思います。

増田政府参考人 外国人犯罪の数字的なことは、警察庁の発表資料ということでお答えさせていただきますが、最近五年間の来日外国人犯罪、これは刑法犯、それから特別刑法犯を含めてでございますが、その検挙件数、人員は、平成十一年の検挙件数、人員が、三万四千三百九十八件、一万三千四百三十六人であったものが、その後一たん減少いたしましたが、平成十三年以降増加し続けまして、平成十五年には四万六百十五件、二万七人でして、前年に比べて、件数で五千八百六十九件、一六・九%増、人員で三千七百九十五人、二三・四%増と増加して過去最高を記録しております。

 このうち、殺人、強盗、放火、強姦の凶悪犯の検挙件数と人員は、平成十五年には三百三十六件、四百七十七人となりまして増加傾向にございますし、さらに、来日外国人犯罪の組織化が進んでいて、平成十五年におきます刑法犯検挙件数のうち、共犯事件の割合が六一・七%に上っており、来日外国人犯罪は凶悪化、組織化も進んでいて、我が国の治安に与える影響は大きいものになっていると考えられます。

 なお、平成十五年中の来日外国人犯罪の検挙人員二万七人と申しましたが、そのうち、不法滞在者が一万七百五十二人で、全体の約五四%を占めております。

辻委員 私のもとにある数字は、今御紹介いただいた数字とはちょっと違う統計資料をもとに積算しているものだと思いますけれども、在日外国人の凶悪犯の検挙人員ということで、一九九三年には二百四十六人、これが二〇〇三年には四百七十七人というふうに確かに増加傾向にある。しかし、一方で、日本全体の凶悪犯の検挙人員についても、一九九三年は五千百九十人であったものが二〇〇三年には八千三百六十人という増加傾向にある。

 つまり、全体の増加傾向の中で、とりわけて在日外国人、来日外国人の凶悪犯罪の増加傾向が大きいわけではないということが言えると思いますが、この点はどのように認識されておりますか。

増田政府参考人 委員のお手持ちの資料と数字が違うのかもしれませんが、お尋ねの点について申し上げますと、不法滞在者の犯罪検挙人員の絶対数、これが日本人やあるいは正規滞在者に比較して少ないということはございます。これは、不法滞在者の母数が日本人や正規滞在者に比較して少ないということがある、要するに、やはり絶対数がもともと少ないということが言えると思います。

 それから、凶悪犯をお取り上げになられたわけですが、不法滞在者による犯罪として、強盗、窃盗等の盗犯の比率が高い、職業的、常習的な犯行が多い、また正規滞在者による盗犯が偶発的、単発的なものが少なくないと言えると思います。

 さらに、凶悪犯について申しますと、来日外国人による刑法犯全体の中で不法滞在者の占める割合は一八%台だったと思いますが、凶悪犯に限りますと、例えば凶悪犯では三六・七%になっている。また、侵入強盗で五〇%、侵入窃盗で六六%ぐらいが不法滞在者によって犯されるというようなことから考えまして、この割合から見てもやはり重いものがあると考えております。

辻委員 ちょっと資料を事前に突き合わせておりませんから、数字にお互いそごがあるということではありますけれども、概略はそれほどずれてはいないというふうに思います。

 その上で、御質問をさらにいたしますけれども、先ほど紹介しました、一九九三年には来日外国人の凶悪犯の検挙人数が二百四十六人である、それが二〇〇三年には四百七十七人にふえている。しかし、日本全体で、一九九三年の凶悪犯の検挙人員は五千百九十人であって、それが二〇〇三年には八千三百六十人にふえている。来日外国人のうちの不法滞在者については、一九九三年は百三十二人であり、二〇〇三年は百七十五人である。

 これを見ますと、大体二%前後で推移しているという意味におきまして、特に日本の今の刑事犯罪の状況の中で、来日外国人、そしてとりわけ不法滞在者の比率が増大している、ほかの、日本人全体とかに比べてとりわけ増加しているということではないという事実が指摘できると思います。

 だとすると、今の時点で、とりわけ凶悪犯罪のある意味で増加、増大ということを大義名分として、出入国管理の強化とも思われるような罰則強化を今の時点でしなければいけない理由、具体的な根拠は何かあるんでしょうか。

    〔森岡委員長代理退席、委員長着席〕

増田政府参考人 来日外国人の検挙件数あるいは検挙人員を見ていきますと、例えば、平成十年当時は二万一千六百八十九件、五千三百八十二人であったものが、平成十四年で二万四千二百五十八件、七千六百九十人、それが昨年は八千七百人に上がっていく、このように順次、順次という言い方はおかしいかもしれませんが、増加傾向にあるということはやはりゆゆしきことであろうと思います。

 それから、もう一つは、先ほど申しましたとおり、やはり国民が治安に対して抱く不安感の一つとして、来日外国人による凶悪犯罪がふえていること、また、不安を特に感じる侵入強盗、侵入窃盗などがとりわけ不法滞在者によって犯されている割合が高いということ、こういったことがございますので、やはりこれについては毅然とした対応をとらなければいけないだろうという考えでございます。

 それはそれとして、もう一つは、やはり来日外国人そのものにつきまして現在約二十五万人いる、これは順次私どもそれなりに努力して減らしてきているところではございますが、それでもなお二十五万人ぐらいおりまして、これに対して、やはり国民の間から、入管はもっとしっかりこの不法滞在外国人をもっと減らさなければいけないという強い要望あるいは御批判もございまして、そういったことから、不法滞在者を減らすための方策の一つとして、立法的な措置も考えなければいけないということで、今回の法改正を計画したものでございます。

辻委員 十年前と比べて犯罪の形態、態様が変わっているものが見受けられる、新聞報道で外国人の犯罪とおぼしき例も報道される件数がふえているということは確かに事実だと思うんですね。

 だけれども、先ほど私が申し上げましたように、犯罪自体が全体にふえているわけであるから、今、社会が犯罪をどう抑制するのか、そういう問題として、外国人だけを取り出して対処するということを考えるのではなくて、全体の問題としてどう対処するのかが今問われているものであって、その中でとりわけ外国人だけを取り上げ、そして罰則を強化することによって何か犯罪の抑制ができるというのは、非常に木を見て森を見ない、極めて部分的な発想にしかすぎないというふうに私は思わざるを得ないのでありますが、この点については、犯罪全体の抑止ということの中で、外国人の問題をどのように対処していくのかというのは、これは法務省内部できちんと検討されていることなんでしょうか。

増田政府参考人 私、入管局の立場でございますので、入管局としては、この治安の関係で不法滞在者を今後五年間で半減させることであるとか、そのために必要な施策を講じていくということを考えております。

 今、法務省全体ということのお尋ねですので、それは私が答えるのはちょっと僣越になりますので、御容赦いただきたいと思います。

野沢国務大臣 犯罪全体の抑制というお話でございますが、これにつきましては、法務省はもちろんですけれども、まさに国を挙げての努力が必要な問題でございます。

 これにつきましては、昨年の暮れに、犯罪対策閣僚会議におきまして行動計画を取りまとめておるところでございます。日本がせっかくこれまで築き上げた政治、経済、あるいは福祉の立派な業績に比しまして、治安関係だけが一方的に悪くなってきたという反省に立ちまして、しっかりした対策を国として取り組もう、総理を初めとして、みんなでこれは力を入れるということになっておるわけでございます。

 その対策の中で、一番大事なテーマの一つがこの外国人犯罪対策、それから、そのほかにも、少年対策、暴力団対策、さまざまございますが、特に大きな柱の一つとして、やはり不法滞在の外国人に対する扱いをしっかりしなきゃいかぬということもあわせ指摘されているところでございまして、幸い、全体の傾向としては、多少ではございますが減りつつあるところでございまして、平成十四年二百八十五万件という数字が、十五年には二百七十九万件と、多少減少の傾向に今入っておるところでございます。

 なお一層全体を減らしながら、なおかつ、この外国人対策に対しても適切に対応すべく取り組んでまいります。

辻委員 私は、犯罪全体が増加傾向にあるということは、日本のこの社会が、今まで通用していた規範がやはり減退している、そのような規範で、共同体の力でいろいろな物事を解決していく、そういう共同体のある意味で求心力がなくなっている、その意味で社会の力が弱まっている、日本の危機であると思うんですね。だから、犯罪現象だけを取り上げるのではなくて、やはりそういう日本の国の仕組み、社会がもっと活力のある社会になっていくためにどうするのか、そういう基盤の問題の中で検討しなければならない。

 もちろん、犯罪対策について、そのプロパーの対策もしなければいけない。しかし、その中で外国人対策だけを取り分けて取り上げるということは、やはり視点としては間違っているのではないかということを指摘しておきたいと思います。

 それはそれとして、対応策は考える必要があると私は思いますが、それだけを強調するということは、やはり従来の入管行政のあり方が、私は、これは国の政策ともかかわってまいりますけれども、非常に受け入れを少なくする、厳格にする、外国人に対してある意味では非常に冷淡な入管行政が一般ではなかったのかというふうな印象を持っております。

 そのような現状の中で、さらに外国人対策だけを罰則の強化等で強めていくというのは、今の入管行政の正さなければならない点が正されないままに、さらに悪い方向に進んでしまうという危険性があるんだということをぜひ認識していただきたいということを申し上げておきます。

 そこで、罰則の強化とか出国命令とかいう制度を新設したりということで犯罪の抑止を図ろうとされている点が、本当に抑止力のある、意味のある施策であるのかという点について伺いたいと思います。

 まず、出国命令ということで、二十四条の二というものが提案されておりますが、これで本人の帰責事由のない場合にという記載がありますが、この不帰責事由の場合というのは、具体的にはどのような事例を指しておられるんでしょうか。

増田政府参考人 出国命令を受けた人については、指定された出国期限までに自発的に日本から出ていっていただく、こういう制度になったわけですが、もしそこの期限を経過して日本にいるとなったら、これは退去強制事由ということで、今度は強制退去ということになります。しかし、やむを得ない事情でどうしてもその期限までに出られなかったんだという場合、これについては退去強制するのは酷である、こういうことから、本人の責めに帰すことができない事由によって出国期限内に出国できなかった場合には、これは出国期限の延長を認めることにしたものでございます。

 本人の責めに帰すことのできない事由としては、例えば、天候不良で数少ない飛行機が飛ばなかった、次に飛ぶまで待っていたらその期限を過ぎてしまうような場合、こういったことが考えられますし、あるいは病気であるとか不慮の事故に遭った、そのためにやむを得ずその期限内に出国できなかったような場合が考えられます。

辻委員 帰国費用がないために出頭もできない、帰国費用がないためにホームレス化してしまう人たちも少なからずいると思いますが、このような場合に、出頭すれば出国命令対象者として取り扱われることになるんですか。

増田政府参考人 お尋ねのような人については、出国命令の対象とはなりません。これはあくまでも、みずから出頭してきて、自分の金でさっさと帰りますという人が対象となるものですから、ホームレスになってお金のないような人については、みずから出頭してきてもそれは出国命令の対象となりませんので退去強制ということになりますが、その場合でも、それは出てきていただいたら、もうそれで国の費用を使ってでもさっさとお帰りいただくということになると思います。

辻委員 この出国命令の制度が犯罪の抑止にプラスになるんだという位置づけをされておりますけれども、これはどういう理由でそのように言えるとお考えなんですか。

増田政府参考人 出国命令制度と申しますのは、一定の要件に該当する不法滞在者について、身柄を収容することなく、合法滞在者として出国させることを可能とする制度でございます。そして、この出国命令で出国した人の上陸拒否期間は、これまでの五年間ではなくて一年間に短縮する、このように、出頭申告者に多大なメリットをもたらす制度でございます。

 他方、当局の摘発強化等で退去強制手続をとられた場合には、身柄は原則として収容されますし、本国に強制送還され、上陸拒否も五年、リピーターであれば十年となるわけで、しかも、警察等に検挙されて刑事手続をとられた場合には、多額の罰金刑を科せられる可能性もございます。

 このようなことから考えまして、出国命令の対象者にこのように有利なインセンティブを与えることによって自発的に出ていってもらう、そういう人をどんどんふやすことによって不法滞在者を減らし、そのことによって治安回復の一助になるのではないかと期待しているところでございます。

辻委員 では、実際、一年後にそれで再入国されるような例が果たしてどれぐらいあるのか。そういう期待感を持てるような現状でなければ、一年後の再入国を期待して自主的に出頭してくる、出国してくるということはなかなかあり得ないのではないかというふうに思います。

 ですから、果たして本当にこの制度が犯罪の抑止にプラスになる制度なのかということは、一概に言えない。運用の実態を待って検討しなければいけない問題なのかなというふうに思う点を指摘しておきます。

 それから、罰金刑の引き上げを、三十万円を上限とするものを三百万円までということが犯罪の抑止の効果があるんだ、こういう説明になっておりますけれども、これはどういう根拠に基づいてそのようにおっしゃっているのか、お答えください。

増田政府参考人 今回の改正では、不法滞在者に対する罰金刑を大幅に強化するということといたしました。この罰金刑の大幅な引き上げなどの措置をとるとともに、他方では、先ほど申し上げましたような出国命令制度を設ける、こういったことなどを加えまして、不法滞在者の大幅な削減が期待できるものと考えておりまして、そのことによって治安の回復の一助になるのではないかと期待しているところでございます。

辻委員 今のは質問にお答えいただいていないんですよね。何で罰金刑の引き上げが犯罪の抑止効果を持つというふうに考えられるのかということを伺っているんですよ。

 二〇〇三年の犯罪白書を見ますと、入管法違反の来日外国人被疑事件、検察庁終局処理人員一万三百二十六人、起訴された者六千九百四十四人、うち、地裁、家裁終局処理人員五千七百三十七人。その中で、有期刑が五千七百二十六人、罰金、科料が十人。つまり、二〇〇三年犯罪白書によれば、一万三百二十六人の検挙人員のうち、罰金、科料に処せられた者は十人なんですよ。

 だから、罰金刑を引き上げるということが犯罪数を減らす抑止効果があるというふうにお考えになっているのかもしれないけれども、二〇〇二年は、一万人のうち罰金刑に処せられたのは十人なんですよ。この十人のために罰金刑を引き上げるということは、これは立法事実を欠いているんではないですか。お答えください。

増田政府参考人 これまでの運用において、罰金刑がさほど活用されていなかったというのは事実だろうと思います。しかし、それはなぜかと考えたときに、やはり、今の実情に照らして、罰金三十万円以下という刑罰が低過ぎて使いにくいのではないかということがあるのではないかと思うわけです。

 我が国で現に不法滞在している方の中には、前にも不法滞在したようなリピーターの人が多い。また、不法就労してお金を稼いで、またそれを地下銀行を通じて母国に送金しているような人も多い。結局、不法滞在者の多くは、我が国で不法に就労してお金を稼ぐことが目的となっていると思われますので、そうすると、やはりその人に対する効果的な抑止策としては、罰金刑を高くして、その抑止効果によって、もう日本にいてもどうせ罰金で取られて元が取れない、だったら帰ろうか、こういう効果を期待したいと思ったわけでございます。

 実際に、この法律改正ができた場合にどのような運用になるか。これはあくまでも捜査機関の問題でございますので、私の方から申し上げるのはいかがかと思いますけれども、私どもとしては、こういう経済的な制裁をも加えることで悪質な不法滞在行為の抑止が期待できると考えておりますので、こういった線に沿って運用されることを期待しているということでございます。

辻委員 しかし、提案理由の冒頭で、外国人犯罪の深刻化に伴い、施策を講ずることは必要だというふうになっているわけですね。外国人犯罪の深刻化ということについては、中心的には凶悪犯罪の増大だということをおっしゃっていて、凶悪犯罪に対する処罰としては、罰金刑は通常予定されないわけですよ。

 ですから、それ以外の犯罪について、今、罰金刑が十件しかないんだけれども、もう少し、三十万円の上限を三百万円にふやせば、罰金刑を選択する裁判官がふえるかもしれないという御回答ですけれども、それは非常に何か論証抜きの、とにかく、とりあえず罰金をふやしておけば、日本に来る目的が、ある程度お金をためようという目的であるんだから、それを奪われるということになって心理的な抑制効果が期待できるんだという、論理的にはわかりますけれども、実際、現実には罰金刑が少ない。そして、深刻化に対する対策としては、凶悪犯罪に対する対策として罰金刑の引き上げが必ずしも機能しない。

 そういう中で、あえてこの入管法の罰金刑だけを特別に引き上げるというのは、非常に特別扱いであるんです。そのことの持つ意味は、外国人に対する威嚇効果ですよ。外国人を威嚇するために罰金刑の引き上げがなされている、これが主要な目的ではないかというふうに私は見ざるを得ない。そのような外国人に対する威嚇をするという入管行政のあり方そのものが本質的に間違っているというふうに私は思います。

 そういう意味で、この罰金刑の引き上げということには、政策的な効果もないし、立法事実も欠如しているということにおいて、極めて問題があるということを指摘しておきたいと思います。

 次に、提案理由の中で、「適法に在留している外国人の中にも不法就労活動を行ったり、犯罪を犯す等公正な出入国管理を阻害する者も少なくなく、これらの者に適正かつ厳格に対処」しなければならないというふうになっております。

 適法な滞在者の違反行為に対しては、従前はどのような対策がとられていたのか、どのような措置がとられていたのか。いかがでしょう。

増田政府参考人 適法な在留資格を持って在留している人で、特に問題のある在留活動としては、資格外活動というのがございます。つまり、本来、正規の在留資格を持っているけれども、許可を受けずにその本来の活動でない活動を専ら行っていた、それで報酬を受ける活動を専ら行っていたような活動、こういったものが特に問題になります。

 これについては、退去強制事由になりますので、入管ではできるだけこれは資格外活動として摘発するということで臨んでおります。

辻委員 そうすると、資格外活動をしている適法滞在者に対して摘発をするというのは、手続としてはどのような手続をとることになるんですか、現状は。

増田政府参考人 資格外活動は退去強制事由に当たっておりますので、退去強制手続をとるということになります。したがって、入国警備官の調査から始まって、容疑が認められれば収容して違反調査などが行われ、最終的には送還していくということになります。

辻委員 その場面において、今回のこの改正案では、在留資格の取り消しをまず先行して行う、こういうことなんでしょうか。そこに違いがあるということですか。

増田政府参考人 退去強制事由に当たる人については、これまでも退去強制の手続をとっておりましたので、資格外活動が認められる限りは、今後もそれは退去強制で賄うということになります。

辻委員 退去強制を行うというのは、入国に際して在留資格を取得している、その在留資格をやはり取り消しするという手続が先行して退去強制が現行法下でもなされているということなんですか。

増田政府参考人 退去強制におきましては、別に、そこでその人の在留資格を取り消して出て行ってもらうということではございません。退去強制ということ自体がもう日本にいられないという効果になりますので、この場合には、本人を調べて事実が認定されて、本人が不服がなければ確定して、そのまま出て行ってもらうということになります。

辻委員 そうすると、こういう理解でいいんですか。従来は、適法滞在者も資格外活動をすれば、それは在留資格の違反であるから退去強制手続を即行う。この改正法によっては、資格外活動の場合には、退去強制に即突き進むのではなくて、在留資格の取り消しの手続をとりあえずまずとるんだ、そういうことでよろしいんでしょうか。

増田政府参考人 どうも答弁がうまくなくて、ちょっと申しわけございませんが、わかりやすい例で申しますと、例えば留学生が許可を受けずに勝手に膨大なアルバイトをしている、これが一見、明らかにそれらをやっているという場合、退去強制事由になります。これは今回の法改正をまつまでもなく、退去強制になります。

 ところが、今回の法改正を考える一つのきっかけになったのは、平成十三年に酒田短期大学の事件がございました。あれは、本来酒田にいるはずの学生たちがいなくて、新宿にいると。

 ところが、あれを退去強制でできるのかというと、実は難しい。というのは、退去強制というのは、本来与えられている在留資格でないことを専ら行っていることが明らか、例えばどこかの店で風俗に従事して働いていること、専らそれに従事していることが明らかである場合が退去強制なものですから、一口にその留学生がほかで働いているといっても、退去強制で賄えるケースもありますが、実はそうでないケースも多々あるということでございます。

 では、それをどうするかということで、従来は今申し上げましたような酒田短期大学のようなケースには対応できなかったわけです。それは、在留資格を途中で取り消すという制度がないものですから、結局、平成十三年春に日本に入ってきた彼らは、二年間の在留期間を与えられている平成十五年春まで、大学なんかもうつぶれていますから留学なんかしていないとわかっているけれども、しかし日本に適法にいることができる、そういう問題があったわけです。

 それを、これはおかしいということで、じゃ、どうやってそういった人を見つけて外に出すかということとして考えたのが今回の在留資格取り消し制度であって、この場合には、専らアルバイトをしているとかいうことがわからなくても、大学にはもう行っていない、そのこと自体が明らかである、除籍されている。しかも、三カ月間、正当な理由なく留学という在留活動に従事していない。そのことがわかれば、それで本人の在留資格を取り消して、日本にいる根拠を失わせて出ていってもらう。これが今回の在留取り消し制度として考えたものでございます。

辻委員 今の御説明では、現行法では退去強制まで進めない事案、ある意味では法の欠缺なのか、そのような場合に対処するためにこの在留資格の取り消し制度を設けたんだ、こういうお話ですよね。

 その場合、在留資格の取り消しの上で、これは後で伺いますけれども、聴聞の機会というか証拠を提出する機会なりを与えて、やむを得ない場合には退去強制には至らないで済むような、そのような判断をすることがあり得るんだ、こういう理解でいいんですか。答えはいかがでしょう。

増田政府参考人 在留資格取り消しの原因には、大きく分けて、この第一号から第五号まであるとおり、五つの類型がございます。

 その中で特に悪質なもの、それは、第一号にある上陸拒否事由の該当者、これはそもそも日本に入ってきてはいけなかった人ですから、その人が身元を偽って入ってきたような、第一号に当たる場合。それから、第二号にある、在留活動をそもそも偽る場合。これは、外国人は、我が国では、在留資格、在留活動をもって在留するというのが根拠ですから、その在留活動そのものを偽るのは、これはやはり日本にいてもらっては困るということで、この第一号と第二号に当たることで在留資格を取り消された人は退去強制ということになります。

 それ以外の、第三号から第五号までの人、先ほど例を挙げました、留学生が大学に行かなくなって取り消し云々というのは第五号で問題となることですが、この第三号ないし第五号の事案については、本人から意見を聴取し、その他いろいろ調べて、退去強制ではなしに、在留資格を取り消す場合であっても、任意に、出国期間を定めてその期間内に任意に出ていってもらう、こういう制度にしたということでございます。

辻委員 二十二条の四の一項五号で、在留資格に応じた活動を継続して三月以上行わないで在留している場合についても在留資格の取り消しということになっておりますけれども、これは、やむを得ない事由で三月以上資格に応ずる活動をしていないで在留せざるを得ないという場合は、どのように取り扱われるんですか。

増田政府参考人 この第五号の括弧書きにございます「当該活動を行わないで在留していることにつき正当な理由がある場合」に当たれば、これは、そもそもその人はこの第五号には当たらないことになりますから、在留資格の取り消しを受けることはございません。

辻委員 今指摘された二十二条の四の一項の一号、二号に関係してですが、不正手段で、上陸自体が不法であったという場合は、現行は上陸許可の取り消しということで対応しているわけでしょう。現状で対応できない場合というのは、この二十二条の四の一号ないし五号のうちのどの号に該当するのが、さっきおっしゃったように法の欠缺に当たるんだという場合なんですか。

増田政府参考人 先ほど申しましたように、第五号の場合には、上陸許可の取り消しの対象にはなりません。これは、現に在留資格を持って在留活動している過程で、途中からその在留活動をしなくなった場合ですから。

 それから、第四号は、本人に認識がない場合がございますので、この第四号も、従来の上陸許可取り消しの対象にならないということが考えられます。

 第一号から第三号までは、上陸許可の取り消しの対象となります。

 ただ、なぜそれでも第一号以下のこういう条文を設けたかと申しますと、上陸許可の取り消しというのは、やはり取り消してしまえば、その人は不法上陸となってそのまま退去強制になりますので、それだけ影響が大きいというか、人権侵害の程度が重いということがございますので、従来、偽り、不正が明白な事案に限って、いわば謙抑的に上陸許可取り消しは行っておりました。そのために、本当は偽り、不正の手段を用いて我が国に入り込んできたと思われるような事案であっても、取り消さないでそのまま入り込まれているような案数がかなりあるんじゃないかというようなことがあるものですから、このたび、こういう上陸許可取り消しを設けた機会に、この一号から三号についても、今後はこの在留資格取り消しでもう一括してやっていこう、こういう考えで取り込んだものでございます。

辻委員 不法上陸の場合は上陸許可の取り消しで現行法上対処しているということですが、そうすると、この改正法になれば、上陸許可の取り消しということは行わないで、在留資格の取り消しの手続の中でそれも含めて対処する、こういう理解でいいんですか。

増田政府参考人 法律論としてはあるかと思いますが、このたびこういう在留資格取り消し制度で一号から五号まで整備いたしましたので、これに当たる限り、もうこの在留資格取り消し制度一本でやっていくということを考えております。

辻委員 法令上の根拠はないけれども、現行でも在留資格の取り消し制度というのを運用しているという事実はあるんではないんですか。ないんですか。

増田政府参考人 運用であれ、在留資格取り消しを現在行っているということはございません。もしも誤解を招いているとしたら、それは上陸許可の取り消しではなかろうかと思います。

辻委員 二十二条の四の一項五号について、「正当な理由がある場合」というのは、例えば、勤め先が倒産をした、それで三カ月以上働き口がないのに在留しているという場合とか、それから、どうなんですか、病気による場合とか、あと、在留目的に即応するような活動を、いわば環境に適応できないからしばらくの間できないような、そういう精神状態にあるとか、そういう場合は、正当な理由がある場合ということで、在留資格の取り消しはされないという理解でいいんでしょうか。具体例を挙げてお答えいただければと思いますが、いかがでしょう。

増田政府参考人 正当な理由があるかどうかにつきましては、在留資格取り消し対象者から意見を聴取することになりますから、それを踏まえて個別具体的に判断することとなると思いますが、要は、その人に今与えている在留資格がもう実態がなくなっていて、もとに復活するような見込みも全く失われている。例えば、大学をもう除籍になっていて、本人は学問の意欲なんかまるでなくて犯罪組織に入っているとか、こういった場合が考えられるわけです。

 そうすると、お尋ねが幾つかございました中で、例えば、勤め先が倒産してしまった、だから今働かずにもう三カ月を過ぎているという場合でも、その人の在留資格に見合う在留活動を復活するために、例えば仕事先を現に探していて、要するに、ひょっとしたらその人はその在留資格に見合う在留活動を行う可能性があるということになれば、この在留資格が形骸化しているとは言えないであろう。となりますと、この人については取り消しの対象にはならないということが考えられます。

 それから、病気につきましても、病気治療のためにやむなく三カ月を超えて本来の在留活動を行っていないとしても、病気が治癒した場合に当然本来の在留活動に復帰できるというようなことがある以上は、これもやはり取り消しの対象にはならないと思います。

辻委員 この二十二条の四の一項五号のただし書きの正当事由、「正当な理由がある場合を除く。」というこの「正当な理由」を限定的に解釈しないように、これは当局に望んでおきます。運用に当たって、非常に柔軟に対処していただきたいということを指摘しておきたいと思います。

 正当理由があるかないかということを判断するに当たって、今回、この二項で、「当該外国人の意見を聴取させなければならない。」とか、四項で、「意見を述べ、及び証拠を提出することができる。」ということが新設されているんですけれども、これは、手続としてはなお不十分ではないか。通常の行政手続では、処分庁が事前に聴聞を行って、該当する事実を明示して、資料等についても閲覧をさせたり、弁護士の代理出席を認めたりしている。

 そういうことと比べて、この二十二条の四の手続については、まだまだ拡充されなければならない、通常の行政手続と比べて非常に対象者の側の防御を図る手段が狭くなっている、このように私は思わざるを得ないのでありますが、この点について、拡充していく御意思はおありなのかどうなのか、前向きな発言をお願いしたいと思います。

増田政府参考人 この取り消しに際しましては、本人に対して、あらかじめ、意見聴取の期日、場所のみならず、何が原因で取り消しの対象と考えられているのか、その取り消しの原因ということをあらかじめ通知しておくことになっておりますし、本人は、代理人とともに、その期日に出頭して意見を述べることができますし、証拠を提出することもできます。それと同時に、従来とは違って、審査官の方で、外国人について必要な調査を行うことができるようになりましたので、その必要な調査に基づいて、その外国人が、例えば正当な理由なく活動していないのかどうかなど、事実関係についても調査ができることになりました。

 そういったことを踏まえた上でのことですし、さらに言うならば、本人から意見を聞いた中で、最終的に、例えば第五号を例にした場合、なぜ活動していなかったというだけでなくて、今の在留状況がどういうものであるのか、今後どういう希望であるのか、どういう見通しであるのか、そういったこともすべて踏まえた上で、取り消すかどうかを判断することになりますので、その意味では、私どもといたしましては、この制度で足りているものと考えております。

辻委員 私は、四項で「当該外国人又はその者の代理人」とあるのをちょっと見落としていましたから、その点の質問は撤回します。

 それで、告知、聴聞の機会は、通常はどれぐらいの期間で行うというふうにされているんでしょうか。

増田政府参考人 これは今回新たにつくった制度なものですから、今後、運用していくに際しては、十分に本人が準備できる期間をあらかじめ通知していくということを考慮したいと思います。

辻委員 在留資格が取り消された場合に、それが異議があるときに訴訟で争うということになることも当然あり得ると思いますが、その場合の身柄がどうなっているのか、身柄が拘束されるのかどうなのか。原則としては拘束されるんだということなのかなというふうに思いますけれども、そうであると、異議があって訴訟継続中に身柄が拘束されるというのは、やはりこれはフェアじゃないと私は思いますから、仮放免の制度なり、そういうものが柔軟に適用されるべきだと考えますが、その点、いかがですか。

増田政府参考人 おっしゃるとおり、在留資格取り消しをされますと日本に在留する根拠がなくなりますので、不法滞在ということになりますから、退去強制の対象になるか、あるいは三号から五号の場合は任意に出国するということになりますが、その場合でも、訴訟を起こしてその期間を過ぎたような場合には、やはり在留できる根拠はなくなりますので、不法滞在の問題が起きると思います。

 不法滞在の場合になりますと、退去強制の対象ということで収容ということになりますが、委員のおっしゃる仮放免については、もちろん事情を勘案した上で、弾力的な運用というものはこれからも考えていきたいと思っております。

辻委員 次に進みます。

 難民認定のかかわりで、六十一条の二の四、仮滞在の許可ということになっております。ただ、これは、六十一条の二の第一項の申請があったときに、以下に述べる場合を除いて仮滞在を許可するというふうになっておって、六十一条の二の一項等を照らし合わせれば、例えば、上陸から六カ月以内に難民認定申請をしていなければいけないとか、迫害を受けた地域から第三国を経由せずに直接に来日したことが必要であるとかいう厳しい要件がかかっております。

 だから、そういう意味において、仮滞在の許可を新設したから難民申請者の法的な地位について配慮をしたんだということを述べておられますが、なお、これが本当に適用になる事例、場面というのはかなり少ないんではないかと思います。その点についてどのようにお考えでしょう。

増田政府参考人 仮滞在の許可につきましては、その許可を受けると、退去強制手続がとまりまして、難民認定が先行的に行われる、おまけに、難民として認定された場合には、これまた一定の要件を満たす限りは一律に定住者という在留資格を与えられるということになっております。その意味で、有利な扱いになるわけです。

 ただ、難民認定申請者については、他方では、申請しただけで有利な扱いを受けるというようなことで、やはり濫用の危険もあるわけで、そういう意味では、ある程度要件を決めなければいけない。その要件を決める中で、先ほど委員がおっしゃった、上陸してから六カ月以内の申請、それから第三国を経由した場合というのを挙げられましたが、これは難民条約の三十一条を参考としたもので、つまり、不法に我が国に入国したり、不法にいる人についても、速やかに名乗り出る、あるいは直接この国に来る、こういった人は刑罰を科してはいけないというのが条約の保障になっております。

 そこで、どういう人を仮滞在許可の対象として優遇するかを考えるときに、この難民条約三十一条なども参考にして、我が国に直接逃げてきて助けを求めている人、あるいは、我が国に来てそれほど時間のたたないうちに助けを求めている人、こういった人は仮滞在許可を与えて優遇しよう、こういう考えでこの法案を考えたものでございます。

辻委員 時間が迫ってきましたので、質問事項はまだ大分残っているんですが、圧縮して伺いたいと思います。

 今の点、第三国を経由した場合はだめだということについて、難民条約三十一条を引き合いに出されましたけれども、これについては、国連難民高等弁務官事務所、UNHCRの見解十三項で、第三国を短期間経由した者や迫害から逃れて最初に行った国において有効な保護が得られなかった者を除外するものではないと解釈されていることを強調しなければならない云々と言っております。このようなことについては、運用上、同等の解釈をして対応するというお考えであるということでよろしいか。

増田政府参考人 委員のおっしゃるとおり、第三国経由については、UNHCRの解釈と同様の考えで臨むことを考えております。

辻委員 結局、難民の認定の申請について、従来は六十日以内に行わなければいけないというふうになっていたのが、実質上は六カ月以内に行わないと難民認定がされないということになると、六十日以内を六カ月以内というふうに期間を延長したにすぎないというふうに理解できますが、この点は、こういう理解でよろしいですか。

増田政府参考人 委員のお尋ねのようなものではございません。

 もともと、六十日につきましても、それが申請期間という定め方になっていたものですから、六十日を過ぎている申請はもうそれだけではねているのではないかというような御批判とか御懸念が指摘されていたのですが、私どもとしては、六十日を経過している事案についても、難民に該当するかどうかは証拠に基づいてこれまでも判断してまいりました。ちなみに、今回の法改正では、いずれにせよ、そういう誤解を招くような申請期間については、もう一切廃止いたしました。

 つまり、六カ月というのは、別に申請期間ではなくて、難民申請者で六カ月以内に申請した人は仮滞在許可の対象になるという仮滞在許可の要件の一つ。それからもう一つは、難民として認定された場合に、その人が六カ月以内に申請した人であれば、法務大臣は一律に定住者の在留資格を与える、その要件の一つとしたものでございまして、六カ月を過ぎているから申請を受理しないとか、あるいは難民として認定しないとかいうようなことはございません。

辻委員 今回の六十一条の二の二の一項一号ただし書きで、「やむを得ない事情がある場合を除く。」というふうにあります。これは、従前の六十一条の二の二項の六十日ルールに関するやむを得ない事情ということと同じ意味で規定されていると思いますが、これについては東京高裁で平成十五年二月十八日付の判決があって、このやむを得ない事情ということについては広く解するべきであると。

 病気、交通の途絶等の客観的事情により物理的に入国管理官署に出向くことができなかった場合に限らず、本法において難民認定の申請をするか否かの意思を決定することが、出国の経緯、我が国の難民認定制度に対する情報面や心理面における内容と程度、証明書類等の所持の有無及び内容、外国人の解する言語、申請までの期間等を総合的に検討し、期間を経過したことに合理的理由があり、入国後速やかに難民としての庇護を求めなかったことが必ずしも難民でないことを事実上推認させるものではない場合もやむを得ない事由に当たるんだということを東京高裁の判決が述べておりますが、この判決は運用に当たって当然前提にされるという御趣旨でよろしいでしょうか。

増田政府参考人 今委員が引用なさった東京高裁の平成十五年二月十八日の判決は国が上告しておりますので、その意味で、今委員が引用なさった判示を今後入管がそのまま従いますということは、ちょっとお答えいたしかねます。

 ちなみに、例えば、ことし、平成十六年一月二十八日にやはり東京高裁が判決を出しておりますが、これなどは、やむを得ない事情としては、病気、交通事情等、客観的に見て六十日以内に申請しなかったことに合理的な理由がある場合を指す、こういうような判断をことしの一月に東京高裁が判断して、これは確定しておりますが、大体、この点については私どもとしてはこういった線での運用を考えております。

辻委員 済みません、最後に一点だけ。

 前回、在留特別許可でどのような場合なのかということを御質問して、五つの類型に分けて概要をお答えいただきました。不法入国後、男性が日本人女性と結婚して子供ができた場合とか、女性が不法入国後日本人男性と結婚して、離婚したけれども子供がいる場合というのは、おおむね在留特別許可に該当する、類型に当たるということをお答えになりましたけれども、つまり、日本人と婚姻して子がある場合は、大体、在留特別許可の対象として運用上認定されている、許可されているという、こういう理解でよろしいんですか。

増田政府参考人 五月十九日のお尋ねのときに、私は類型という言葉は多分使わなかったと思います。どういう事例があるかということで、一般的な形ではこういう事例と申し上げたんです。

 お尋ねの日本人と結婚して子供を持っている場合は、これはかなりの確率で在留特別許可を受けられるのかというと、それは、直ちに結びつけられるとやはり誤解を招くと思います。要は、特別許可を受けている事例の中には日本人との血のつながりが重視されている例が多いということで、御理解いただきたいと思います。

辻委員 子供との結合、家族のきずなということが在留特別許可を検討する場合に極めて重要視されて、尊重されなければいけないと思いますが、この点はどうなのかということを最後にお尋ねします。

増田政府参考人 この在留特別許可に当たりましては、今委員が取り上げられました家族の結合などは、平成十一年の法改正の際に、参議院の法務委員会、それから衆議院の法務委員会の附帯決議にも盛り込まれていることでございまして、私どもも、家族的結合等の実情には十分配慮して、適切な運用に努めてまいったつもりでございます。今後も、御質問のような、家族の結合、特に守らなければいけない案件については、在留特別許可を与えることを考慮してまいりたいと考えております。

辻委員 前回質問したときに事例として挙げたアブドル・バセルさんという方はアフガニスタン人ですが、日本人女性と結婚して子供がいるということについて、やはりこれは善処されるべき事例であろうということを最後に申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

柳本委員長 御苦労さん。

 これにて、ただいま議題となっております両案中、内閣提出、参議院送付、出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

柳本委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、参議院送付、出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

柳本委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

柳本委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、下村博文君外二名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。佐々木秀典君。

佐々木(秀)委員 ただいま議題となりました附帯決議案について、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。

    出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。

 一 退去強制手続、在留特別許可等の運用に当たっては、当該外国人の在留中に生じた家族的結合等の実情を十分考慮し、画一的な運用とならないよう留意すること。

 二 新しい出国命令制度及び在留資格の取消し制度の運用に当たっては、本邦に在留する外国人の生活及び家族関係等に十分配慮すること。

 三 難民認定申請者に対する仮滞在許可制度については、第三国を短期間で経由した者や経由国で有効な保護を受けられない者を許可の対象から排除しないように、上陸後六ヶ月経過後の申請の場合も申請者の事情を十分斟酌し実情に即して但し書きを適用するように、仮滞在が不許可となったときも難民条約の趣旨に沿って仮放免制度の柔軟な運用をするように努めること。

 四 難民認定手続のより一層の充実を図るため、難民調査官に対する国際情勢等に関する定期的な研修の実施、難民調査官の十分な人数の確保等に努めるとともに、手続の客観性及び透明性が確保されるよう適切に措置すること。

 五 難民審査参与員制度については、専門性を十分に確保する観点から、国連難民高等弁務官事務所、日本弁護士連合会及びNGO等の難民支援団体からの推薦者から適切な者を選任するなど留意するとともに、難民審査参与員の調査手段が十分に確保されるよう体制の整備を図ること。

 六 難民への生活支援に関しては、十分な予算の確保及びNGO等民間の諸団体との連携の推進に努めるとともに、必要があれば支援体制の法制化なども含め、支援のあり方について検討を行うこと。

 七 仮滞在許可制度、難民に対する在留資格の付与、難民認定における不服申立制度等、難民認定に関する各種制度のあり方について、その運用状況を勘案しつつ、必要があれば速やかに検討を行うこと。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

柳本委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 下村博文君外二名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

柳本委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。野沢法務大臣。

野沢国務大臣 ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

柳本委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

柳本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

柳本委員長 次に、内閣提出、参議院送付、電子公告制度の導入のための商法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。野沢法務大臣。

    ―――――――――――――

 電子公告制度の導入のための商法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

野沢国務大臣 電子公告制度の導入のための商法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 この法律案は、高度情報化社会の進展に対応して、株式会社等がインターネットを利用することにより公告を行うことを可能とする電子公告制度を導入するとともに、株式会社等の合併、資本減少等の際の債権者保護手続を簡素化すること等により会社等の運営の合理化及び効率化を図るため、商法、有限会社法、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律、公認会計士法その他の法律の一部を改正しようとするものでありまして、その要点は、次のとおりであります。

 第一に、株式会社の公告について、高度情報化社会に適合した簡便かつ周知性の高い公告方法を許容するため、官報、日刊新聞紙に掲載する方法のほか、インターネットを利用する電子公告という方法によることも可能とすることとしております。この電子公告を行うべき期間につきましては、公告事項の種類に応じて定めることとしておりますが、メンテナンス、事故、ハッカーの侵入等により電子公告に中断が生じた場合に、常に電子公告をやり直さなければならないとすることは会社に酷でありますことから、短期間の中断についての救済規定を設けることとしております。

 また、電子公告が適法に行われたかどうかについての客観的証拠を残すために、電子公告を行う場合には、いわゆる決算公告の場合を除き、法務大臣の登録を受けた調査機関による調査を受けることを義務づけることとするとともに、調査機関による適正な調査が実施されるようにするための規定を整備することとしております。

 第二に、株式会社が合併、資本減少、会社分割に際して行う債権者保護手続を合理化するため、会社が債権者に対する公告を、官報に加え、日刊新聞紙または電子公告によっても行った場合には、原則として、知れている債権者に対する各別の催告を要しないこととしております。

 また、合名会社、合資会社、有限会社、監査法人、弁護士法人等が合併等に際して行う債権者保護手続につきましても、その合理化を図るため、株式会社の場合と同様の取り扱いを認めることとしております。

 第三に、会社等に対する各種訴え提起の公告など、公告に法的効果が伴わず、会社等に公告の義務を課す理由に乏しいと考えられる公告につきまして、その公告義務を撤廃することとしております。

 以上が、この法律案の趣旨であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに可決くださいますようお願いいたします。

柳本委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 午後三時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時十五分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時三十分開議

柳本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 参議院提出、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。参議院共生社会に関する調査会長狩野安さん。

    ―――――――――――――

 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

狩野参議院議員 ただいま議題となりました配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案の趣旨及び主な内容を御説明申し上げます。

 本法律案は、去る三月二十五日、参議院共生社会に関する調査会におきまして、各会派の総意をもって起草、提出し、同二十六日、参議院本会議において可決されたものであります。

 平成十三年十月の配偶者暴力防止法の施行以降、各相談機関において配偶者からの暴力に関する相談件数が増加するなど、配偶者からの暴力が重大な人権侵害であるとの認識が高まる一方、悲惨な暴力事件は後を絶ちません。

 本法律案は、これらの状況にかんがみ、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策を推進するため、「配偶者からの暴力」の定義を拡大するとともに、保護命令制度の拡充、国の基本方針及び都道府県の基本計画の策定、市町村による配偶者暴力相談支援センターの業務の実施等の措置を講ずるほか、被害者の自立支援等について定めることとしております。

 以下、本法律案の主な内容について御説明申し上げます。

 第一は、「配偶者からの暴力」の定義の拡大であります。

 「配偶者からの暴力」の定義を、保護命令に関する部分等を除き、身体に対する暴力またはこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいうものとすることとしております。なお、これに伴いまして、法律前文について所要の改正を行うこととしております。

 第二は、保護命令制度の拡充であります。

 元配偶者に対する保護命令及び被害者の子への接近禁止命令を可能とするとともに、退去命令の期間を二週間から二カ月間に拡大し、退去命令の再度の申し立てを認めるほか、保護命令の再度の申し立て手続の改善等を行うこととしております。

 第三は、市町村による配偶者暴力相談支援センターの業務の実施であります。

 市町村は、当該市町村が設置する適切な施設において、当該各施設が配偶者暴力相談支援センターとしての機能を果たすようにすることができることとしております。

 第四は、被害者の自立支援の明確化等であります。

 国及び地方公共団体の責務を規定し、主務大臣は配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策に関する基本方針を、都道府県は基本方針に即して基本計画を定めなければならないこととするとともに、配偶者暴力相談支援センターの業務として被害者の自立支援及び関係機関との調整を明記するほか、配偶者暴力相談支援センターが業務を行うに当たっては、必要に応じ、民間団体との連携に努めるものとしております。

 このほか、警察本部長等の援助、苦情の適切かつ迅速な処理及び外国人、障害者等への対応について規定しております。

 なお、改正後の法律の規定につきましては、本法律の施行後三年を目途にその施行状況等を勘案し、検討する旨の規定を設けております。

 以上が、本法律案の提案の趣旨及び主な内容でございます。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。

柳本委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

柳本委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣府男女共同参画局長名取はにわ君、警察庁生活安全局長伊藤哲朗君、総務省自治行政局長畠中誠二郎君、厚生労働省雇用均等・児童家庭局長伍藤忠春君及び国土交通省大臣官房審議官小神正志君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

柳本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

柳本委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局園尾民事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

柳本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

柳本委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松島みどりさん。

松島委員 自民党の松島みどりでございます。

 質問に先立ちまして、この配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律の一部を改正する法律案、これをもともと法律案をつくられ、そしてまた、今回一歩進めた形で改正を行われました参議院の共生社会に関する調査会の皆様に、本当にいいお仕事をしていただいたなと思いますので、感謝の意を表したいと思います。

 質問は、きょうは、この調査会の座長であります南野知惠子さんにお伺いをさせていただきます。

 まず第一に、今回の改正のポイントを、今も調査会長からお話ございましたが、もう少し詳しくよろしくお願いします。

南野参議院議員 自民党の南野でございます。

 松島先生にいろいろと御質問いただくということで、誠意、努めてまいりたいと思っております。

 先ほど我々の狩野会長の説明の中にもございましたが、改正のポイントというのは八項目に整理できるというふうに思います。

 第一は、法律の暴力の定義を、保護命令関係等の部分を除いて、いわゆる精神的暴力と性的暴力とにまで拡大したというところがポイントでございます。

 第二は、保護命令制度の拡充であります。元配偶者にも拡大したこと、また被害者と同居している子供にも接近禁止命令が出せること、退去命令において、被害者とともに生活の本拠としている住居からの退去に加え、当該住居付近の徘回を禁止することができること、退去命令の期間を二週間から二カ月に拡大したこと、退去命令にも一定の条件のもとで再度の申し立てを認めることなどでございます。

 第三には、市区町村におきましても、適切な施設と、配偶者暴力相談支援センターの機能を果たすことができること。

 さらに第四では、被害者の自立支援の明確化等であり、国、地方公共団体の責務を明確にしたこと、DV施策について地方公共団体に格差が見られるということから、国に基本方針の策定を、都道府県に基本計画の策定をそれぞれ義務づけたというところが大きなポイントであろうかなと思います。配偶者暴力相談支援センターによる自立支援の明確化及び調整機能の発揮を規定したこと、支援センターの民間団体との連携及び被害者の適切な保護が行われるよう関係機関の連携等について規定することなどであります。

 第五は、被害者に対する警察本部長の援助であり、配偶者からの暴力を受けている者から被害をみずから防止するための援助を受けたい旨の申し出があり、その申し出を相当と認めたときは、被害の発生を防止するために必要な援助を行うこととしております。

 第六は、被害者からの苦情の適切かつ迅速な処理であり、関係機関は被害者から苦情の申し出を受けたときには適切かつ迅速にこれを処理するように努めることとしており、第七は、外国人、障害者等への対応であります。職務関係者は、その職務を行うに当たり、被害者の国籍、障害の有無を問わずその人権を尊重しなければならないとしており、第八は、改正法の施行後三年をめどとした検討について規定しているものでございます。

 以上でございます。

松島委員 八つのポイント、ありがとうございました。

 さて、DV防止法が施行された後、これまでに全国の警察やあるいは配偶者暴力相談支援センターにはどれぐらいの方が相談に訪れたのか、わかれば教えてください。

南野参議院議員 ただいまのお尋ねでございます。

 配偶者からの暴力の事案につきましては、平成十五年中に警察が相談等を受けた件数は一万二千五百六十八件ございます。

 また、法が施行された平成十三年十月十三日から平成十五年末までの累計では、三万三百十六件となっております。

 また、全国の配偶者暴力相談支援センターの年度別の相談件数は、平成十四年度が三万五千九百四十三件、平成十五年度が四万三千二百二十五件となっております。

松島委員 今お伺いしても相当な数なんですが、恐らく、DV防止法というものができたことによって、それによって勇気づけられ、泣き寝入りしなくてもいいんだということで、いろいろなところへ申し出た方がたくさんいらっしゃることだと思います。

 このDV防止法が施行された後、各官庁がいろいろな取り組みをするなど、さまざまな社会的な変化があったと思います。

 例えば、私思いますのに、暴力を振るう配偶者から身を守るためには自分がどこかへ移転したい、移転先を知られたら困るというように思う方もたくさんいらっしゃるでしょうし、それはすべきことだと思うんです。

 それから、実際にもう進められていることとして、昨年の四月から国民健康保険証、あるいは各組合ごとに、そしてまた政府管掌の健康保険はことしの四月からですけれども、順次、世帯単位だった、一枚のカードに全部一緒だったものが個人ごとになりましたから、それだけ持ってとにかく逃げることもできるということでは非常にこれも有効だと思います。

 例えば、住民票の異動が暴力夫に知られたら困るとか、そういうようなことについてはどんな取り組みがなされているのか。あるいは、知られちゃいけないということ以外にも、新しく住むところを見つけなきゃいけない、あるいは仕事の確保もしなきゃいけない、そういう意味では、行政の手助けはどんなメニューが用意されているんでしょうか。

南野参議院議員 今先生がおっしゃいましたように、この法律ができましたことによって勇気づけられる女性というのがうんとふえてきたかな、それが件数が多くなった理由でもあろうかと思います。

 今お尋ねのいわゆる施行後のメリット、この問題については、私個人としては九つぐらい挙げたいなというふうに思っております。

 まず最初は、この法律の施行後、DVは犯罪であるという認識が社会的に浸透してきたことが大きな変化の一つではないかな。同時に、行政の対応も変わってきたということは先生おっしゃったとおりでございます。

 まず、子供を連れたDV被害者のために、婦人相談所の一時保護所に保育士などを平成十六年度から順次配置することになりました。

 次に、先生おっしゃった住民基本台帳の閲覧等について、加害者から請求があった場合、不当な目的があるものとして応じないようにする、これは事務処理要領の改正が行われる予定でございます。

 次には、公営住宅の関係では、事業主体の判断により、DV被害者を公営住宅に優先入居させることが可能となるよう、十六年三月に国土交通省住宅局長が通知を出しておられます。さらに、公営住宅の優先入居の実績といいますのは、全都道府県及び政令指定都市で七戸、七件となっていると聞いております。

 次に、健康保険関係では、夫のもとから逃げた妻が新たに国民健康保険に入るために夫の健康保険の扶養を取り消す場合、事情を説明すれば、夫に連絡することなく職権による手続が可能となる取り扱いがなされております。

 さらに、就労支援につきましては、これはDV被害者だけということではありませんが、母子家庭等就業・自立支援センター事業が十五年度から実施され、就業相談から就業情報提供までの一貫した就労支援、養育費の相談など、生活の支援が行われております。

 また、外国人被害者の関係では、在留期間が切れるなどにより不法滞在となってしまった外国人被害者が公的機関に相談、保護を求めてきた場合、当該行政機関が通知するかどうか個別に判断することが可能となる法務省入国管理局長通知が十五年十一月に出されております。

 このほか、配偶者暴力防止法に規定する保護命令制度の対象とならない人たちを加害者から守るためのストーカー規制法、それの適正かつ迅速な運用についても警察庁から通達が出されております。

 また、今回改正がございました児童虐待防止法におきましては、親のDVと子供のPTSDとの関連を取り上げられるなど、法律施行後の適用面で関係各省庁に御努力をいただいているところであり、感謝するところであります。

 以上です。

松島委員 議員立法で一つの法律が制定されると、それに基づいていろいろな役所がそれなりの立場で動き出してくれるということは、本当に重要なことだと感じております。

 個別のことで、最初に述べられました八つのポイントのうち幾つか伺わせていただきたいと思っております。

 一つは、今回の改正で、配偶者からの暴力の定義を、精神的暴力や性的暴力にまで拡大することにしております。この精神的暴力というのはどのようなことを指すのでしょうか。

南野参議院議員 お尋ねの件でございます。

 現行のDV防止法におきましては、配偶者からの暴力は身体に対する暴力として定義され、必要な規定について、いわゆる精神的暴力、性的暴力も対象とするように整理されてきてはおります。しかし、精神的暴力、性的暴力もまた、身体に対する暴力と同様に許されないものであるということはもちろんであります。

 そこで、今回の改正におきましては、配偶者からの暴力は、身体に対する暴力のほか、精神的暴力、性的暴力を含むものとして定義し、保護命令に関する規定など必要な規定については身体に対する暴力のみを対象とするように整理するということにしております。

 このような定義を定めることにより、DV防止法において問題とされるべき配偶者からの暴力は、身体に対する暴力のほか、精神的暴力、性的暴力を含むものであることを宣言し、これらを含む配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護について一層の推進を図ろうとするものであります。

 さらにまた、精神的暴力といえば、例えば、人格を否定するような暴言を吐く、何を言っても無視する、いわゆるネグレクト、交友関係を事細かく監視するなどといったことをいうものと考えております。

松島委員 具体的な御提示ありがとうございました。

 それから、今回の改正で、元配偶者に対しても保護命令を発することができるようになりましたが、これはどういう理由というか趣旨によってでしょうか。

南野参議院議員 現行下では、元配偶者に対して保護命令を発令することは認められておりませんでした。

 現実には、配偶者からの身体に対する暴力を受けた場合には、離婚直後の時期が一連の身体に対する暴力の危機が最も高まっている時期であると言われております。また、配偶者からの身体に対する暴力を受けた後に離婚をした場合にあっては、婚姻中の身体に対する暴力と離婚後において配偶者であった者から引き続き受ける身体に対する暴力とは一体的なものとして評価すべきものであると考えられております。

 そこで、配偶者が離婚などをした場合であっても、配偶者であった者から引き続き受ける身体に対する暴力によりその生命または身体に重大な危害を受けるおそれが多いというときには、被害者の申し立てにより、裁判所が保護命令を発することができる、そのようにいたしております。

松島委員 新聞記事などでも、離婚した後、復縁を迫って暴力ざたに及ぶというようなのは随分散見されます。非常に重要な事柄だと思います。

 もう一つ、退去命令の期間を、現行法では二週間でございますが、これが二カ月に拡大しました。この二カ月の意味合いというのはどういうことか、簡潔にお願いします。

南野参議院議員 現行法のもとでは、退去命令の再度の申し立てが認められていないということもありまして、二週間という現行法の退去命令の期間では、被害者は住居から転居せざるを得ず、かつ、その期間は身辺整理、転居先の確保などを行うための期間としては十分ではないという指摘がございました。

 そこで、今回の改正におきましては、こうした指摘も踏まえ、退去命令の期間を二カ月に拡大したという理由でございます。

松島委員 引っ越し先を探して出かけていくには、二カ月ぐらいは十分必要なことだと私も思います。

 さて、個別のことから少し離れまして、全体を見た場合に、ちょっと質問通告と後先になって申しわけございませんでしたが、今回の改正によって、被害者支援を一層進めるための行政の取り組みがより重要になってまいります。そういうときに、予算とか人員配置とか、新しくいろいろなことが必要になってくると思うんですが、これについてはどのような措置を講じるべきか、目配りと申しますか、教えていただければと思います。

南野参議院議員 予算とか人員などの問題について、これは大変厳しい課題であろうかというふうに思っておりますが、平成十三年度の法制定当時には、予算面におきまして、被害者の一時保護を民間シェルターに委託することにより、民間の団体にもお金が流れるような仕組みをつくりました。十六年度は、二億七千百万円が計上されております。

 また、地方公共団体が民間のシェルターへ財政援助を行っている場合に特別交付税でその二分の一を補助しておりますが、地方公共団体援助額も、十三年度は約三千五百万円、十四年度は約五千二百万円、十五年度は十一月一日現在で約七千三百万円であります。

 これに見合って国の補助額も年々ふえてきてはおりますけれども、先ほど申しました婦人相談所の一時保護所への保育士の配置などにつきましても、十六年度の新規予算として二千九百万円が計上されております。

 このように、徐々にではありますが、予算的にもいろいろな対応がなされてきております。けれども、まだまだ不十分だということは言わざるを得ないと思います。

 また、人員の問題につきましても、法制定後、相談支援センターや警察などへの相談件数も増加しております。現在の人員では十分に被害者の相談等に対応し切れない状況もあると聞いておりますので、この点への配慮というものも今後の大きな課題であろうかと思います。特に警察関係におきましては、この前も女性警察官をふやしていただきましたが、これはまた引き続き求めていきたいものと思っております。

 昨年八月の概算要求時でしたが、本日答弁席に座っている我々のメンバーが財務省に出向いてまいりました。DVに関する予算要望もさせていただきましたが、法律改正案の立法のみならず、予算面でも今日まで頑張ってきたつもりでございます。特に予算面におきましては、厳しい財政状況のもとでは困難がつきまとうというわけでございますので、ぜひ松島議員にも御尽力をいただけたらと思っております。次回、また陳情に出向く場合はお供していただきたいと思っているところでございます。お願いいたします。

松島委員 私もしっかり努めさせていただきたいと思います。

 今話が出ました中で、特に女性の警察官の配置というもの、これまでは警察というのはどうしても男社会で、つまり、十年ぐらい前までに採用した人は女性がほとんどいないわけですから、純増を考えると、どんどん採ってもらわないといけない。

 やはりこういった被害、あるいはストーカー被害、痴漢、レイプの被害というものは、男の警察官に相談しにくい、してもいろいろなタイプの対応をされたら嫌だなという気がいたしますので、そういう女性警察官の人員の配置も非常に大切なことと私は思う次第でございます。

 最初のポイントに戻りますが、配偶者暴力相談支援センターというのを今度の改正で、これまで都道府県が設置していたわけですが、市区町村も業務が行えるようになりました。身近なところにそういう存在があるというのは、駆け込み寺があるというのは非常に心強いことだと思うんですけれども、今お話の中にもありましたように、整備状況や対応が現在の都道府県でもまちまちなところが、市区町村ということになるとどういうふうになっていくのか、全国どこでも同じような便宜を受けるためにはどのようになされていくべきか、お願いします。

南野参議院議員 本当にそれは大変なことであります。

 現行法におきましては、配偶者暴力相談支援センターの機能を果たすことができるのは都道府県の施設に限られておりますが、被害者の利便性を考えると、先生も御指摘のとおり、センターとしての機能を果たす、より身近な施設が存在することが望ましいということでございます。

 そこで、今回の改正におきましては、市区町村の施設も配偶者暴力相談支援センターとしての機能を果たすことができるようにしたものであります。

 市区町村の配偶者暴力相談支援センターは、被害者の各般の問題について相談に応ずることのほか、被害者が自立して生活することの促進、保護命令制度の利用及び被害者を居住させて保護する施設の利用についての援助などを行うとされております。また、センターとしての機能を果たすということであり、被害者にとってより身近な存在として、施設として活用されるようになることを期待いたしております。

 また、現在は都道府県におきまして対応がまちまちであるとの指摘がございます。今回の改正におきましては、都道府県に、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策に関する基本計画を策定していただくというところであり、その一層積極的な取り組みを期待いたしております。

 どこで被害が起こっても、それはどこでも同じような形で受け入れられるということであり、ここではそういう施設がないから私は隣の県に行ったらよかったというようにおっしゃる方がおられるとすれば、気の毒なことであります。どこにいても対応できる受け皿を我々は真剣につくっていきたいと思っておりますので、それもまた御援助をいただければと思っております。

 以上でございます。

松島委員 まさにこれは国の責務である。首長がどんな考え方とか、そういうことに左右されないで、どこでも同じようにメリットがあるようにというのは、本当にそのとおりだと思います。

 私、この審議を通じながら思いましたことは、これを勉強させていただいて思いましたことは、国民の代表である国会議員の中にも、男性の国会議員の中でこういうつらい発言を聞くことがございます。母子家庭に対する児童扶養手当、これの問題を議論しますときに、夫に死別した妻はかわいそうだから、これは当然児童扶養手当を上げてもいい、しかしながら、夫と生き別れ、離婚、けんか別れしたような人間はふらちなやつだから、ふらちなと申しますか、そういう自分勝手なやつには児童扶養手当なんて出すべきではない、そのようなことを国民の代表でありながらおっしゃる国会議員の方が中にはまだいらっしゃいます。

 私は、どの人間でもそういう考え方を持ってはいけないのであって、これは均質的にすべてのところで同じような対応がなされるべきだと思っております。

 もう一つ、先ほど言われました就労支援に関しては、就労支援というのは、DV被害に遭った母子家庭の母親だけということはできないから、一般の母子家庭にというお話でございました。まさにそのとおりだと思うんです。

 就労というのは、企業の側が採用するかどうかというときには、どうしても企業側は負担が多い人を採らない。つまり、どういうことかと申しますと、年金とか保険の制度の中で、例えば週に三十時間以上、つまり労働時間が正規の従業員の四分の三以上イコール週に三十時間以上働いたら、厚生年金そして企業の組合の健康保険に入れなきゃいけない。そうすると、会社側も事業主負担がかかって困っちゃうから、損だから、それぐらいならば主婦パートで、だんなさんの健康保険や年金に入っている人を採っていった方がよっぽど安上がりでいい、そういうふうな企業行動がしばしば見受けられます。

 この年金や健康保険のありようについても、私が専業主婦のそういう優遇はやめるべきだという発言をしますと、一部エリート女性が、働き続けてきた女性だからそんなことを言うんだということを、男女を問わず、御指摘して、私に対して叱責する方がいらっしゃいます。しかし、本当に夫の暴力から飛び出して子供を抱えて再出発しようとする人たちが、あなたを雇ったら健康保険や年金で企業が物入りだから、それよりはどこかの恵まれた奥さんを雇っている方が楽だからといって、その就業が狭められることがないように、これは年金とか保険とか大きな問題でございますけれども、そういう視点からも私は取り組んでいきたいと思っております。

 自分の意見を申して非常に恐縮でございましたが、もう一つつけ加えさせていただきますと、今、議員立法でこういう法律ができた、その結果、いろいろな役所が、例えば公営住宅に優先的に入れるようにとか住民票の異動先がわからないようにとか、いろいろなことで動き出した。これを私、今、できれば自分が議員立法で進めたいというか、党内で仕事をしております犯罪被害者の支援、救済というのがございます。このときも活用できる、こういうやり方があるんだ、一つ基本的な法律をつくったらいろいろな部署で対応してもらってやることができるんだな、参考になるなという力強い思いがした次第でございます。

 最後にもう一点だけ、質問で締めくくらせていただきます。

 国及び地方公共団体の責務の規定を改正するとございます。全体にかかわることでございますので、責務の規定を改正というのはどういう内容が考えていけるか、国の部分と地方公共団体の責務の区別ということを含めて教えていただければと思います。

南野参議院議員 それに答えます前に、先ほど就労のことをお話しになられました。DV法では、子供がいないDVの被害者もありますが、厚生労働省の方では、それを母子家庭と同じような形で就労をお手伝いしようというようなところもございます。

 今御質問のところの答弁に入りたいと思いますが、配偶者からの暴力を受けた者を保護するに当たりましては、必要に応じ、そうした被害者の方々が自立した生活を開始することができるように支援していくことが大変重要であります。我々のフォーカスは自立というところに向かっているところでございます。

 そこで、今回の改正では、現行法におきましても被害者の自立支援は被害者の保護の内容の一つとしてとらえておりますけれども、そのことを明確にするために、「国及び地方公共団体は、」「被害者の自立を支援することを含め、その適切な保護を図る責務を有する。」そういうことを規定することとしたものでありまして、被害者に対し、その自立支援のために、就業の促進、住宅の確保、援護などに関して、各種制度を活用するなどして一層充実した措置が講じられることを期待いたしております。

 どうぞよろしくお願いしたいと思います。

松島委員 どうもありがとうございました。

 いろいろな、予算とか人の手当てとか、まだまだやらなければいけないことはたくさんあると思います。きょうおまとめいただいた参議院の皆さんとともに力を合わせて改善に向かいたい。そして、心も傷つき、次の生活、住宅をどうすればいいかと迷っている女性たちを何とか、生きていける、どこかへ飛び込みたくなるというような気持ちにならないで生きていけるような環境を私たちはつくりたい。

 同時に、先ほど申し上げましたように、この問題というのはまだまだ、つまり人によっていろいろな見方があって、とにかく我慢しなさい、あんたが悪いんだみたいなことを言う風土が日本じゅうどこにも存在しない状況にまで私たちみんなの力で持っていきたいなと思います。

 本当に、大変な作業、お疲れさまでございました。ありがとうございました。

柳本委員長 御苦労さま。

 古屋範子さん。

古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 初めに、本法律の見直しにこれまで精力的に検討を重ね、努力をしてこられました参議院の共生社会調査会の皆様に対し心から敬意を表しまして、質問に入ります。

 平成十三年十月の配偶者暴力防止法、すなわちDV防止法の施行以来、全国の配偶者暴力相談支援センター等に寄せられる相談件数は増加しており、二〇〇二年度は三万五千九百四十三件もの相談が寄せられております。

 また、法務省が実施している電話相談「女性の人権ホットライン」でも、昨年の一年間に寄せられた相談件数は二万九千百十五件に上り、前年の二万二千九百四十五件から二七%も増加、中でも夫婦間の家庭内暴力の相談が目立っているとの報告がなされており、DV防止法の成立によって、これまで夫婦のもめごととして軽く見られがちだった配偶者の暴力が犯罪に当たるとの認識、重大な人権侵害に当たるとの認識が確実に広がっていることがわかります。

 一方、悲惨な暴力事件は後を絶ちません。保護施策が進むにつれ、潜んでいた被害が表面化しております。警察統計によりますと、配偶者間における犯罪のうち女性が被害者である場合の検挙件数の推移を見ますと、暴行、傷害がそれぞれ平成十二年以降大変増加をしております。十五年においては、暴行が二百三十件で、前年よりも十九件、九%の増加、また、傷害が千二百十一件で、十四件、一・二%の増加になるなど、暴力の根絶にはまだまだ遠い現状がございます。

 加害者に対する接近禁止や退去命令などの実施により、被害者保護に一定の効果を上げている現行法ではありますが、その課題も指摘をされております。

 私ども公明党は、昨年七月に、政府に対し、保護命令の対象の拡大、市町村の責務の明確化、自立、就労支援の充実など、十項目にわたる要望をまとめ、現行法の見直しを急ぎ、早期改正するよう申し入れを行いました。そして、今回の改正は、暴力の定義の拡大や保護命令制度の充実、被害者の自立支援の明確化など、我が党の要望が大きく反映された内容であると理解をしております。

 そこで、今回の改正案ですが、配偶者の暴力の定義について、法の対象とする暴力を身体的暴力に限定せず、心身に有害な影響を及ぼす言動など精神的な暴力にまで拡大することとなりました。このため、この定義の拡大によって配偶者からの暴力に犯罪とならない行為も含まれるようになったため前文も改正されることになりますが、犯罪行為でなくてもDVに当たる行為もあるという認識を広く国民に持っていただくなど、多くの人々の意識改革につながることと考えますが、いかがでしょうか。

山本(香)参議院議員 お答えさせていただきます。

 現行のDV防止法におきましては、先ほどお話ございましたとおり、配偶者からの暴力は身体に対する暴力として定義され、必要な規定については、いわゆる精神的暴力、性的暴力も対象となるように整理されております。

 しかし、精神的暴力、性的暴力もまた、身体に対する暴力と同様に許されないものであることは当然のことであります。

 そこで、今回の改正におきましては、配偶者からの暴力は、身体に対する暴力のほか、精神的暴力、性的暴力も含むものと定義して、保護命令に関する規定等必要な規定については身体に対する暴力のみを対象とするように整理し直しました。

 このように定義を改めることによりまして、DV防止法において問題とされるべき配偶者からの暴力は、身体に対する暴力のほか、精神的暴力、性的暴力も含むものであると広く宣言し、これらを含む配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護について、より一層推進を図ろうとするものでございます。

 以上です。

古屋(範)委員 ありがとうございました。

 次に……

柳本委員長 質問者は挙手をして。

古屋(範)委員 失礼いたしました。

 次に、保護命令についてお伺いいたします。

 今回の改正では、先ほど申し上げたように精神的暴力もDVの定義に明記されましたが、保護命令の対象は、従来どおり身体的暴力に限定されたままであります。この点については、定義だけでは物足りない、電話やメール、ファクスなどを使った言葉の暴力は被害者に大きな恐怖を与えるものであり、執拗で悪質な脅迫なども規制の対象とすべきであるとの被害者の声もあるわけです。

 今回の改正では、脅迫など精神的な大きな恐怖を与える暴力を保護命令の対象にすることができなかったわけでありますが、私は、加害者の行為が脅迫にとどまっている場合であっても、被害者の生命、身体を守るために保護命令を発することができるように検討すべきであると考えます。

 そこで、法務大臣におかれては、この脅迫を保護命令に含めるということについてどのような問題があるとお考えでしょうか。御見解をお伺いいたします。

野沢国務大臣 ドメスティック・バイオレンスに関します法律の改正の機会が参りまして、関係の皆々様の御努力に心から敬意を表するものでございます。

 お尋ねの保護命令制度につきましては、被害者の生命または身体の安全を確保するため、裁判所が刑罰で担保された接近禁止命令などの保護命令を簡易迅速に発するという特別な制度でございます。

 このような保護命令の発令の要件となる行為に脅迫を含めることとしますと、例えば、夫婦の一方がぶん殴ってやるというような感情的な発言をしたにすぎない場合なども脅迫に含まれ得ることになりますが、このような場合に、現に殴るけるなどの暴行を加えているという切迫した場合と同様に、刑罰で担保された保護命令を発することには問題があると考えられます。

 なお、加害者の行為が脅迫にとどまっている場合であっても、被害者の生命または身体を守るために保護命令を発することができるようにすべきであるとの御意見があることも承知をしておりますが、これまで身体的な暴力を振るっていない加害者が今後はそのような行為に及ぶのかという予測的な判断を適正かつ簡易迅速に行うことは、制度的に困難であるという問題もございます。

 生命または身体に対して危害を加える旨の脅迫を保護命令の対象となる行為に含めることにつきましては、ただいま申し上げましたような問題点があるものと考えておりまして、今後の課題として受けとめております。

古屋(範)委員 これまで御説明がありましたように、改正案では、子供への接近禁止や、元配偶者についても対象とする、退去命令も期間二カ月に延長するなど、保護命令制度が大きく前進したと評価されております。

 しかし、今回、保護命令の救済対象に親族や救済者、援助者が入らなかった点が残念であるとの声があります。被害者の居場所を探るため、加害者が被害者の親族につきまとい凶悪事件に発展した例や、妻の居場所を知ろうとした夫が妻の知人を殺害するというような事件まで起きております。これら関係者の安全確保に関しては、私は、被害者の両親や親族また友人など、危害が及びそうな関係者も保護対象に含める必要があるのではないかというふうに考えておりますが、先ほどの御答弁にもありましたように、ストーカー規制法を適切に運用することにより対応が可能であるという御説明をいただいております。

 そこで、警察庁におかれましては、ストーカー規制法の適切かつ迅速な対応が必要であると考えます。特に現場におきましては積極的な対応が望まれておりますが、警察庁に御確認したいというふうに思います。

伊藤政府参考人 お答えいたします。

 配偶者の親族または支援者等の配偶者暴力防止法の保護命令の対象とならない者でございましても、加害配偶者が住居への押しかけや連続電話あるいはファクス等のストーカー規制法に規定しますつきまとい等をするような場合には、ストーカー規制法による規制の対象となり得るところでございます。

 警察におきましては、ストーカー規制法による警告や禁止命令等の制度の迅速かつ適切な活用は、親族、支援者等の保護にとりまして非常に重要だと考えております。例えば、これまでに、妻に対する接近禁止命令が発せられている夫が、妻の支援者に対しまして、妻に伝言することを要求する電子メールを繰り返し送信した事案につきまして、ストーカー規制法第二条第一項第三号に係る警告を実施した事例等がございます。

 警察庁におきましても、平成十六年、ことしでございますが、一月六日付で、被害者の親族または支援者の保護も含め、配偶者からの暴力事案におけるストーカー規制法の積極的な活用につきまして、都道府県警察に対して通達を発したところでございます。

 今後とも、親族または支援者の保護につきまして、ストーカー規制法により積極的に対応してまいりたいと考えております。

古屋(範)委員 ぜひとも現場でのしっかりとした対応をよろしくお願いしたいというふうに思います。

 次に、被害者の自立支援についてお伺いをいたします。

 DV被害者への支援は、安全の確保、また被害者の心身のいやし、安定した暮らしの再建、加害者の更生といったさまざまな点から、解決に時間を要するものであり、長期的な支援策が必要であります。

 しかしながら、これまでの取り組みは、緊急避難までは考えられているものの、その後の生活再建過程への視点がほとんどありませんでした。加害者と離別し新しい暮らしを始めようとする場合、住宅の確保、経済基盤の安定、就労先の確保、子育てとの両立、子供の養育、心身のケアなど、広範囲にわたる支援策が必要であることは言うまでもありません。

 DV防止法改正へ向けての取り組みが本格化する中、DV被害者救済に向け、国の取り組みも活発化してまいりました。

 総務省は、現在だれでも請求できる住民基本台帳の閲覧や住民票の交付を、DV被害者保護のために一部制限できるようにするガイドラインを策定したというふうに伺っております。その内容について御説明をいただきたいと思います。

 また、国土交通省も、先ほどございましたように、配偶者からの暴力を逃れ避難した被害者が公営住宅に優先入居できるように、今年三月末にDV被害者の公営住宅への優先入居基準をまとめ、特段の配慮をするよう自治体に通達をしたと伺っております。被害者にとって住む場所があることは、自立に向けた最初の一歩であると思います。被害者の実情に応じた柔軟な支援こそ重要でありますので、その内容と実効性について、国土交通省に御確認したいと思います。

 さらに、厚生労働省は、DV被害者が駆け込んでくる都道府県の婦人相談所に、保育士や子供の心のケアなどに当たる専門職員を十六年度から配置することになっておりますが、その内容と予算措置についてお伺いをいたします。

 以上、被害者支援のための取り組みについて順次御説明をいただきたいと思います。

畠中政府参考人 まず、総務省の方からお答えいたします。

 先生御指摘のとおり、総務省では、昨年度、ドメスティック・バイオレンス、ストーカー被害者保護のための住民基本台帳閲覧・写しの交付に係るガイドライン研究会というものを開催しまして、この三月に報告書を取りまとめました。

 その要旨を申し上げますと、まず、市町村長は、ドメスティック・バイオレンスやストーカーの被害者の申し出を受け付けます。それで、その加害者から住民基本台帳の一部の写しの閲覧とか住民票の写しの交付、それから戸籍の付票の写しの交付の請求があった場合に、これらの請求は不当な目的があるということで応じない、つまり、その閲覧等を拒否するというものでございます。

 総務省におきましては、この研究会の報告書に基づきまして、省令と事務処理要領の改正を近日中に行う予定でございます。これらに基づきまして、七月の早い時期から各市区町村において統一的に支援措置が講じられ、もってドメスティック・バイオレンス、ストーカー被害者の保護が推進されるよう努めてまいりたいというふうに考えております。

小神政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のように、DV被害者の方が安心してお住まいいただけるという意味で、公営住宅の活用ということは私どもも重要なことだと考えております。したがいまして、御指摘にありますように、ことしの三月三十一日付で、公営住宅についての入居について弾力的な対応を図るようにという通知をいたしました。

 内容といたしましては、事業主体の判断によるところでもありますけれども、当選倍率を高めるといったような、優先的な入居をすることができるということを明らかにいたしますとともに、公営住宅でございますので収入の認定というものがありますけれども、まだ離婚の手続等が進んでいない場合に、配偶者の収入が超えているということがあるわけでございますけれども、事実上離婚状態だということでそういった収入はカウントしないとか、あるいは、保証人を求める場合がありますけれども、保証人は要らなくてもいいんじゃないかというようなことで、可能な限り弾力的に運用するように配慮を求めております。

 さらに、本来、公営住宅の場合、単身者の方は入居資格がないわけでございますけれども、DV被害者の場合には、そういった観点から、目的外使用ということで、事実上公営住宅に入居できるようにするとともに、また、その手続についても、包括承認ということで簡素化をいたしております。

 四月以降、事業主体からいろいろ問い合わせもいただいておりまして、四月以降の実績としてはまだ七戸というような状態でございますけれども、今後、福祉部局とも連携をとりながら、DV被害者の自立支援のために、この優先入居あるいは目的外使用という制度が活用されるのではないかというふうに考えております。

伍藤政府参考人 都道府県の婦人相談所におきます対応でございますが、自立支援のために、平成十四年度から、心理的なケアというのが非常に大事だということで、心理療法の担当の職員を配置してきております。

 それから、今年度から、先ほど御指摘のありましたように、DV被害者、半数近くが子供を同伴して駆け込んでくるというケースが大変多いものですから、そういった子供の面倒を見る指導員を配置するということで、今年度は二十六の婦人相談所にそういった指導員を配置できるようにしておるところでございます。

古屋(範)委員 各省庁においてさまざまな取り組みが進んでいるという現状だろうかと思います。

 現行のDV防止法により、国と都道府県は配偶者からの暴力防止と被害者の保護を義務づけられ、全国に配偶者暴力相談支援センターが設置をされました。しかし、自立支援策が明確に盛り込まれなかったために、被害者の中で、公的な保護施設の利用者の三、四割は自立を断念して家に戻っているという指摘があるなど、被害者の救済策の充実が求められておりました。

 改正案には、一時保護した後の被害者自立支援について、自治体の責務が初めて明記されました。国や都道府県の責務となり、市町村との連携も求められるなど、自治体の支援策のより一層の充実が期待されております。

 そこで、今回、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策に関して、国が基本方針を、また都道府県が基本計画を定めることとしておりますが、その具体的内容についてお伺いいたします。

山本(香)参議院議員 基本方針及び基本計画の具体的な内容についてでございますが、まず基本方針、これは国が策定することになっているわけでございますが、これは、基本計画の指針となる三つの事項を定めることになっております。

 まず第一に、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する基本的な事項といたしまして、例えば、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する基本的な考え方、我が国の現状、基本方針及び基本計画の目的について記述することを想定しております。

 第二に、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策の内容に関する事項といたしまして、例えば、配偶者からの暴力の防止に関する取り組み、自立支援を含む被害者の保護に関する取り組みなどについて、国の制度の趣旨や施策に触れつつ、都道府県における望ましい対応を記述することを想定しております。

 第三に、その他配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策の実施に関する重要事項といたしまして、例えば、基本計画の期間、計画の公表等についての指針となる考え方について記述することを想定しております。

 次に、基本計画の方です。

 これは都道府県が策定することになっているわけでございますが、ここにおいても三つの事項を定めることとなっております。

 まず一つ目は、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する基本的な方針といたしまして、当該都道府県の現状、また当該都道府県において配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策を講ずる上での基本的な方針、これについて記述することを想定しております。

 二つ目は、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策の実施内容に関する事項といたしまして、配偶者からの暴力の防止に関する取り組み、自立支援を含む被害者の保護に関する取り組みなどについて、当該都道府県の施策及びその実施体制等を記述することを想定しております。

 最後に三つ目でございますけれども、その他配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策の実施に関する重要事項といたしまして、例えば基本計画の期間等について記述することを想定しております。

古屋(範)委員 ありがとうございました。

 次に、加害者の更生についてお伺いいたします。

 DVは、妻だけの問題ではありません。目撃する子供への影響の深刻さも明らかになってきております。夫は、子供のためにも、妻に暴力を振るったり暴言を吐いてはならないわけであります。

 被害者を守る仕組みについては徐々にできつつありますが、加害者を更生させる取り組みはこれからであります。被害者保護と加害者更生はDV対策の両輪であり、被害者の妻が逃げることだけがDV防止なのではなく、加害者である夫がどう行動を修正できるかが最大の焦点であることは言うまでもございません。

 諸外国においては既に、法的な強制により、加害者にプログラムを受講させるなどの取り組みが進んでおります。我が国の一部の自治体では、加害者更生プログラムが試行的に実施されているとも伺っております。

 DV被害を社会から根絶していくためには、これまで申し上げてまいりました被害者の保護や自立に向けた対応はもちろんのこと、暴力を振るうことがないよう、そのためのプログラムの研究や開発、そして加害者の参画が不可欠であるというふうに考えます。

 内閣府ではまだ調査研究段階であることも承知をいたしておりますが、その調査研究を早急に進め、加害者更生のための具体的な実施を速やかに行えるよう取り組んでいただきたいと考えますが、内閣府のお考えを伺います。

名取政府参考人 議員御指摘のとおり、配偶者からの暴力の防止と被害者の保護のためには、保護命令制度等の活用により被害者の安全を確保するとともに、配偶者暴力防止法第二十五条に基づき、加害者の更生のための指導の方法に関する調査研究を進めることが必要と認識しております。

 内閣府におきましては、いわゆる加害者更生プログラムについて、諸外国における実態を踏まえ、その内容や方法等について調査研究を行っているところであります。今後は、プログラムが本当に有効なのか、また、具体的な実施をどうするのか等も含めて、さらに検討してまいります。

古屋(範)委員 ぜひとも、今後、調査研究の推進をお願いしたいというふうに思います。

 私は、DVの本質は、暴力による男性の女性支配にあるというふうに認識をしております。

 このDVの構造を崩していくためには、暴力が犯罪として許されないことを明確にすることはもちろんのこと、女性が男性に支配されず、一人の女性が人間として尊厳を持って生きることができる社会をつくり出していかなければなりません。

 容易にDVの根絶が実現するとは考えられませんが、根気よく、事案に即応した対応、また未然防止に向けての具体施策など、万全の体制が望まれるところであります。そして、DVを容認し、温存する社会構造を変革することの重要性と、そのための総合的なビジョンに基づく施策こそ、女性に対する暴力を根絶するための最善の方策であるというふうに考えます。

 最後に、DV根絶への決意を法務大臣にお伺いして、私の質問を終わりにいたします。

野沢国務大臣 配偶者からの暴力は重大な人権侵害であって、その根絶のための取り組みは重要であると認識しております。

 家庭が、やはり何としても温かい家庭で、人間の一番憩いの場であり、子供たちがそこから健全に育つという場でなければならない、この認識に立ちまして、法務省といたしましては、従来から、配偶者からの暴力による人権侵害事案の適正な処理に努めまして、また、その防止のための積極的な啓発活動も行ってきたところでございます。

 DV法の施行に伴いまして、これからも取り組みをしっかりと図ってまいるつもりでございますが、今後は、今回のDV法の改正の趣旨を踏まえまして、DVの根絶に向けまして、関係省庁と連携を図り、円滑かつ効果的な運用に最善を尽くしてまいりたいと考えております。

 今後とも、委員初め、皆々様の積極的な御活動、御提言をお待ちしているところでございます。

古屋(範)委員 ありがとうございました。

柳本委員長 小宮山洋子さん。

小宮山(洋)委員 民主党の小宮山洋子でございます。

 私も、三年前つくったときには共生社会調査会のメンバーで、つくり上げた一人といたしまして、本日、三年後の見直し、このような形で質疑をすることができて、本当によかったと思っております。

 この法務委員会は、司法制度改革など法案がたくさんございまして、参議院で上げていただいてからなかなか質疑ができないではらはらしていたんですが、本当にきょうを迎えられてよかったと思っておりますし、調査会の皆さん、特に見直しのPTでいろいろ御検討いただいた、きょうの発議者の皆さんに、心からお礼を申し上げたいと思います。

 二〇〇一年の十月からことしの三月までに保護命令が三千八百二十四件も出されておりまして、このことだけでも、本当につくってよかった、役に立っている法律だと思っています。ただ、子供のことをどうするか、あるいは今も話題になった加害者更生プログラムなど、幾つかやり残した課題がございまして、ぜひ見直しをしなければということで、見直しPTをつくるところまで参議院におりましてこちらに来てしまいましたので、本当に当事者の皆さんや支援する方々の声も聞いていただいて、内閣府の方では中期的、長期的と言っていた課題まで盛り込んで改正の案をつくっていただいて、本当にありがとうございました。

 まず、発議者の皆様に何点か伺っていきたいと思います。

 第十条の保護命令に関してですけれども、元配偶者に保護命令が発せられるのは、元配偶者から引き続き受ける身体に対する暴力により生命または身体に重大な危害を受けるおそれが大きい場合とされていますが、こうなりますと、離婚後、身体に対する暴力を受けない期間があると命令が発せられないということにならないか。発せられないとすると、実際に命令が発せられるケースが限定されてしまうのではないかと思うんですが、その点を確認したいと思います。

神本参議院議員 民主党の神本美恵子でございます。

 ただいま小宮山議員から、参議院で小宮山議員が見直しプロジェクトチームに入っていらっしゃいましたが、その後を受けまして、チームの中で一員として皆さんと御一緒にこの改正、見直しをやってきたところでございます。

 答弁に先立ちまして、一言。

 きょう、たくさん傍聴にお見えになっておりますけれども、この見直しを一年余りやる中で、本当に、被害当事者の方々の声や、支援に携わっていらっしゃる弁護士さんや団体の方々から生々しい声をたくさん聞かせていただきました。その思いをPTメンバーのみんなで精いっぱい受けとめながら、この改正案の中に盛り込んだつもりでございます。不十分なところもあるかもしれませんけれども、そういった観点から、きょうこの衆議院の法務委員会で審議をしていただけるということを大変うれしく思っております。委員長を初め、皆さん方の御努力に心から敬意を表したいと思います。

 そこで、今お尋ねの件ですけれども、元配偶者から引き続き受ける身体に対する暴力のところに対する御懸念でございますが、元配偶者に対して保護命令を発するかどうかは、婚姻中に受けた身体に対する暴力と離婚後に行われる配偶者であった者からの身体に対する暴力とが一連のものとして評価されるかどうかにより決せられるべきものであります。したがって、離婚後、身体に対する暴力を受けない期間がある程度存在する、つまり、暴力が中断しているというようなことをもって命令が発せられなくなるとは考えておりません。

 以上です。

小宮山(洋)委員 同じく第十条の第二項、先ほど申し上げた、やり残した一番大きな課題だと思っておりました子供の問題ですけれども、結局、つくったときには、暴力を受ける被害者の人権を救済する新しい法律ということで、子供に直接暴力が加われば虐待防止法で対応するけれどもということで、子供については手が届かなかったところが、今回、子供の保護命令が入ったことは大変よかったと思います。そのことに関して、二点伺いたいと思います。

 まず、被害者の子への接近禁止命令を発する要件として、「配偶者が幼年の子を連れ戻すと疑うに足りる言動を行っていることその他の事情があることから被害者がその同居している子に関して配偶者と面会することを余儀なくされることを防止するため必要があると認めるとき」ということになっておりますが、例示されている「幼年の子」というのはどの程度の年齢の子を想定しているのか。また、子が幼年でないと発せられないというのでは限定的過ぎると思われますけれども、子への接近禁止命令が発せられる「その他の事情」としてどのような事情が想定されるのか、伺いたいと思います。

神本参議院議員 まず、「幼年の子」については、保育園児、幼稚園児、または小学生に相当する程度の年齢を想定しております。

 また、子への接近禁止命令が発せられる「その他の事情」については、例えば、配偶者が被害者の子を連れ戻すと疑うに足りる言動を行っている場合において、被害者の子が幼年であるとは言えないものの、例えば病弱であったり障害を持っているというような場合とか、また被害者みずからがその子の身上監護をすることを要すると認められるときでありますとか、配偶者が連れ戻した子に虐待を加えることがそれまでの子に対する態度等から予想されるというような場合は、必ずしも幼年でなくても接近禁止命令を発することがあり得ると思っております。

小宮山(洋)委員 やはり子供のことによってせっかくのこの保護命令が機能しないということがないように、なるべく限定的でなく、実効性があるように使っていけるようにしていただきたいというふうに思っています。

 やはり第十条第二項に関してですけれども、配偶者と別居中の場合など、家事審判などによって子への接近禁止命令が発せられるよりも前に配偶者に子供との面接交渉が認められていたり、または、子への接近禁止命令が発せられた後に子との面接交渉が認められるということがあると考えられますが、こうした面接交渉との関係はどのように整理されているんでしょうか。

神本参議院議員 お尋ねの点につきましては、さまざまな声の中で特に強い要望があった問題でございます。特に、学校や保育園の現場からは、例えば、父親なのだから子供に会わせろとか、住所を教えろとか、会わせないと養育費を払う必要がないというような、面接交渉権を振りかざして妻の住所を突きとめたり子供を連れ去ったりというような事例も届けられております。最終的には、配偶者によるこのような行為が正当な理由に基づくものとして、つきまとい、徘回に該当しないこととなるのかという形で問題になるものと思われます。

 その点に関して、まず、家事審判等によって面接交渉が認められた後に子への接近禁止命令が発せられた場合については、一般的には、既に面接交渉が認められていることを前提としまして、その後の事情の変更等を考慮した上で子への接近禁止命令が発せられたものと考えられることから、例えば、配偶者がその認められた内容に従って面接交渉をしようとして子の住居の付近に近づいたとしても、そのことをもって直ちに当該行為が正当な理由に基づくものとされることにはならないと考えます。

 他方、子への接近禁止命令が発せられた後に家事審判等によって面接交渉が認められた場合については、一般的には、既に子への接近禁止命令が発せられているということを前提として、その後の事情の変更等を考慮した上でその面接交渉が認められたものと考えられることから、例えば、配偶者がその認められた内容に従って面接交渉をして子の住居の付近に近づいた場合、それが通常の態様による限り、正当な理由に基づくものとして、子へのつきまとい、徘回には該当せず、保護命令違反に当たらないことになると考えられます。

 なお、子への接近禁止命令は、あくまで被害者の生命または身体に危害が加えられることを防止することを目的としておりますので、子に近づくことを禁止するものであって、面接交渉について定めた家事審判等との間において、その効力や内容自体について互いに影響を及ぼし合うものではないというふうに考えております。

小宮山(洋)委員 同じく第十八条に関してですが、退去命令の再度の申し立てについての規定では、ただし書きで、「当該命令を発することにより当該配偶者の生活に特に著しい支障を生ずると認めるときは、当該命令を発しないことができる。」とされているんですけれども、これによって、退去命令が再度発せられることが不当に限定的になってしまうというおそれはないんでしょうか。

福島(瑞)参議院議員 社民党の福島瑞穂です。御質問、どうもありがとうございます。

 ドメスティック・バイオレンス防止法は、二年かけて、小宮山さんも含め、参議院で超党派で実現をしました。今回、三年後の見直しで、これまた超党派で実現ができることを非常にうれしく思っています。一緒につくった小宮山さんにきょうは回答します。

 また、先ほど神本さんもおっしゃいましたけれども、物すごい数の意見交換会を当事者、NGOの人たちとやってきました。ですから、この法案が議員立法というよりも市民立法としてつくられているということに、また、この法案が、改正法が女性への暴力の根絶によりよくまたつながるようにと心から期待をいたします。

 今、小宮山さんが、制限されてしまうのではないかと質問をしてくださいました。

 このただし書きの、「配偶者の生活に特に著しい支障を生ずると認めるとき」に関しては、配偶者の生活の基盤が破壊されてしまうような、非常に限定的なケースを想定しています。また、再度の退去命令によって配偶者の生活に特に著しい支障が生ずることの主張立証責任は、その命令を受ける配偶者の側にあります。さらに、その主張立証がされた場合においても裁判所は命令を発しないことができるとされているのであって、それでもなお、事案により再度の退去命令を発する必要があると認められるときは、再度の退去命令を発することが可能であります。

 以上のことからすれば、このただし書きの規定が退去命令を出すことを限定的にしてしまうのではなく、きちっと有効に機能するようにと考えております。退去命令が再度発せられることが不当に限定的になってしまうということにはならないというふうに考えています。

小宮山(洋)委員 今福島さんが言われたように、本当にこれは参議院のよさを生かしてと衆議院に来た私が言うのも変ですけれども、参議院の超党派で人権の問題などに調査会の機能を使って生かしていくということで立法をして、ただ、そのときには、なかなか市民の皆さんの声を聞いても意見交換会までしてというふうにはいかなかったわけですけれども、つくった後、本当に綿密にいろいろな御意見を伺って、今回できて、議員立法だったものが市民立法になったという、本当にそのことはいい形のモデルとしてあるのではないかなというふうに思っています。

 次の質問ですけれども、今回の改正では、第二十三条で「被害者の国籍、障害の有無等を問わず」というように、外国人、障害者等への対応に関して規定を設けていますけれども、その趣旨はどういうところにあるんでしょうか。

神本参議院議員 外国人、障害者等いわゆるマイノリティーの女性の人権につきましては、昨年夏にも、国連の女子差別撤廃委員会の日本政府報告書に対する勧告の中にも言及されております。

 DV防止法については、外国人である被害者、障害者である被害者も当然その対象であり、現行法の二十三条第一項の規定により、職務関係者がこうした被害者の人権をも尊重しなければならないということは言うまでもないことであります。

 しかし、現状では、例えば言葉の壁でありますとか文化の違いなどによって必要な保護が受けられなかったり、また、外国人登録証をたどって住所が知られるなどの問題も指摘されております。障害があることによって、例えばファクス対応や手話、点字などの対応の配慮も必要なことでありますけれども、それがなされていないというような、必ずしも十分に徹底されていないというようなことから、このことを踏まえまして、今回の改正においては、同項を改正いたしまして、職務関係者は被害者の国籍、障害の有無等を問わずその人権を尊重しなければならないということを確認的に明記することとしたものであります。

 この改正によって、外国人である被害者や障害者である被害者に対しても、その人権に十分に配慮した対応がなされることが期待されるところであります。

小宮山(洋)委員 保護命令について、もう一点だけ発議者の方に伺いたいと思うんです。

 第十条第二項に新しく設けられた、同居する成人に達しない子へのつきまとい、徘回禁止命令、これは本当に実現してよかったものだと思うんですが、これは六カ月後の改正法施行前に先行して適用すべきだと考えるんですが、その点はいかがでしょうか。

福島(瑞)参議院議員 御質問、ごもっともな点もあります。確かに、子供へ夫あるいは妻が接近するのではないかと思い、心配の余りなかなか本当に安定した生活が送れない、そのことは十分あり得ることです。ですから、おっしゃる意味は、法律施行後六カ月をこの件だけ前倒しをして施行できないかということですが、保護命令は、一年以下の懲役に科するという罰則つきのものであり、やはりある程度の周知徹底をした上で、こういう行為は処罰をされるのだということを明らかにする必要があると考えます。ですから、保護命令のその趣旨から、六カ月間とにかく改正法案について周知徹底をした上で施行したいというふうに考えております。

小宮山(洋)委員 つくるときも、保護命令の実効性を高めるためには罰則をきちんとつけたい、そうするとその範囲が限定されるというところでさんざん悩んだわけですけれども、やはり六カ月後からは実効性を持ってできるということであれば、それはいたし方ないことなのかなというふうに思っております。

 もともと使い勝手が悪いのではないかと大変心配しました保護命令も、先ほど数字を御紹介したように大変多く使われておりますので、子供のことについても必要な場合にはしっかり使えるようにというふうに願っております。

 それでは次に、省庁の方に幾つか確認をさせていただきたいと思います。

 まず、最高裁に伺いたいと思います。

 裁判所が通知しているにもかかわらず、相手方が審尋への出頭拒否を繰り返している場合、相手方の審尋欠席を理由に裁判所が保護命令を発令しないという事例が頻発をしています。このような場合は、申立人の事情を聞いた上で、第十四条第一項ただし書きを適用して迅速に保護命令を発令すべきだと考えますが、いかがでしょうか。

園尾最高裁判所長官代理者 具体的事件を離れまして一般論として申しますと、保護命令事件は、「速やかに裁判をするものとする。」という法律第十三条の規定からいたしましても、相手方が正当な理由がないのに審尋期日に出頭しないというような場合には、審尋期日についての相手方の立ち会い権を保護すべき実益がないものとしまして、他の保護命令発令要件が整っている場合には直ちに保護命令を発すべきものというように考えております。

 なお、正当な理由がないのに審尋期日に出頭しないような場合には、法律第十四条第一項ただし書きの規定によるまでもなく、第十四条第一項本文に定める審尋の機会を与えたものとして、直ちに保護命令を発することができるというように考えております。

 保護命令事件を担当する裁判所におきましては、一般的には、そのような解釈に基づきまして、相手方が正当な理由なく審尋期日に出頭しない場合には、法律第十四条第一項ただし書きの規定によるまでもなく、他の保護命令発令要件が整っているということを認定した上で、速やかに保護命令を発するという運用を行っているのが通例であるというように認識をしております。今後も迅速な事件処理がされるように一層の努力をしていきたいというように考えております。

小宮山(洋)委員 通例でないのでこういうことが出ているのではないかと思うんですが、今力強いお言葉をいただきましたので、そのようにしっかりと運用していっていただきたいと思います。

 もう一点、最高裁に伺います。

 第十五条第二項の保護命令決定書送達の運用についてですが、保護命令申し立てから数カ月経過するのに、相手方がさまざまな手段を講じて受け取りを拒否し続けて、申立人に不利益を与えた事例があります。保護命令決定書の送達受け取りを相手方が拒否した事実を裁判所が把握した場合、速やかに断固とした措置をとって送達を完了すべきだと考えますが、いかがでしょうか。

園尾最高裁判所長官代理者 保護命令の受け取りを拒否する相手方がいる場合に、裁判所が速やかに送達を完了させる手続をとるべきことは当然であるというように考えております。

 実務の一般的な動向といたしましては、送達が難しくなる事態をできる限り避けるために、各裁判所におきましては、まず、審尋の期日において直ちに保護命令を言い渡すということに努力をしておりまして、保護命令を発する事件のうち約半数につきましては、審尋期日において決定の言い渡しをしているという実情にございます。残る約半数の事件につきましては保護命令の送達を行うわけでございますが、その場合には、各裁判体ごとにいろいろ工夫をして、早期の送達の完了に努めておるところでございます。

 送達を回避する方法にはさまざまな方法がございまして、具体的な送達回避の方法に応じて対策を立てるという必要があるわけですが、各裁判所においては、各類型ごとの送達方法の研究を重ねるなどしまして、送達の迅速な完了に努力をしておるところでございます。今後も、なお一層の努力をしていきたいというように考えております。

小宮山(洋)委員 しっかり対応していただきたいと思います。

 次に、内閣府に伺いたいと思います。

 第二条の二、第二条の三に新設されました基本方針、基本計画へ、被害の当事者や民間支援団体の意見を反映するために、策定委員会に参画のための枠を設けることが必要ではないかと考えますが、いかがでしょうか。また、ヒアリングの機会を設けるお考えがあるか、伺いたいと思います。

名取政府参考人 基本方針につきましては、内閣総理大臣、国家公安委員会、法務大臣及び厚生労働大臣が主務大臣として策定することになっておりまして、配偶者暴力防止法の改正法が成立後、関係省庁が連携して策定のための作業を進めてまいりたいと考えております。その作業の過程で、議員御指摘のとおり、被害の当事者や民間支援団体の意見の聴取につきましても考慮してまいりたいと思っております。

 なお、基本計画につきましては、御案内のとおり、こちらは都道府県が策定するものでございます。

小宮山(洋)委員 できれば、検討と言うだけではなくて、具体的にそういう枠を設けるとかヒアリングをするとか、もう少し一歩踏み込んだお答えをいただきたかったところですけれども、こちらの意向としてはそういうことだということを御承知いただきたいと思います。

 また、基本計画、都道府県がするのはわかっていますけれども、都道府県に向けてもできればそういう方向でというように話をしていただくとか、やはりなるべく民間の方、当事者の方が入ることによってより必要なものがつくられていくのだと思いますので、この点はぜひよろしくお願いしたいと思います。

 次に、内閣府と厚生労働省に伺いたいと思います。

 市町村の責務につきまして、第八条の三に、福祉事務所による自立支援、これは新設されましたが、市町村で福祉事務所だけしかこの法文の中では入っていないんですね。岡山、札幌、名古屋などではDVセンターを設置したり新たな動きがあると聞いているんですけれども、ほかの市町村でもぜひそういう窓口というか、できるところをしっかりつくって取り組んでほしいと思います。

 例えば、都道府県の基本計画に市町村の責務を具体的に書き込むとか、具体的な取り組みが必要だと思うのですけれども、その点については、内閣府と厚生労働省、なぜ両方に伺うかというと、お互いにあちらの責任だということで谷間に落ちないようにということですので、両方から積極的に、両方がカバーし合うようにお答えをいただきたいと思います。

名取政府参考人 基本計画は都道府県の施策の実施に関する基本的な計画であるために、一律に市町村の責務を明文化するということはなかなか難しいと考えておりますが、個々の都道府県の判断で、市町村についての記述を盛り込むということは可能であると考えます。

伍藤政府参考人 DV対策に関係いたします私どもの役所の関係の機関といたしましては、都道府県の婦人相談所がございまして、市町村がDVセンターをつくればここと連携をして、例えば一時保護が必要な場合には速やかにそちらで対応するといったようなことで市町村のバックアップ機能が果たせるということになろうかと思います。それから、福祉事務所も今、婦人相談員等を配置して、母子生活支援施設へ入所する手続をするとか、いろいろなことでDV対策に取り組んでおります。

 こういった既存の機能を十分活用して、市町村がDVセンターというものを設置しやすいような環境づくりといいますか、そういったことに取り組んでいただけるように、私どもからも周知をし、啓発をしていきたいというふうに考えております。

小宮山(洋)委員 法律をつくるときも、厚生労働省は、一時保護の委託を相談支援センターを通してするとか、積極的にできるところを御努力いただいたと思っています。そういう意味で、これからも、やはり相談の件数、保護命令の件数が多いところ、例えば北海道とか大阪とか、それはみんな窓口が多いところなんです。私たち、つくるときには、社会的にある資源は全部活用してやりたい、婦人相談所を中心にしながら、あらゆる資源を使いたいと思ったんですけれども、なかなかそうはいっていない。窓口が多いところほど活用されていますので、ぜひその方向でよろしくお願いしたいと思います。

 最後の質問になりますが、これは内閣府も長期的課題と言われていて、先ほど古屋議員の質問でもありましたけれども、加害者の更生プログラムの件です。

 これはぜひまた三年後の見直しには実現をしたいと思うんですけれども、やはり暴力というのは、連鎖を打ち切らないといつまでたっても解決をしないわけです。ところが、つくる段階でも、やはり諸外国の例を内閣府の専門調査会でも調べられていますけれども、効果があるという説、余りないという説、日本の場合どこでどのように行ったらいいかがなかなかつくり上げられないで、つくるときにも先送りになってしまったんですが、今回もまた先送りという感じです。

 先ほど、諸外国の調査研究、さらにそこを進めていくということでしたけれども、これはやはり具体的に、どのようにこの後実現に向けて取り組んでいくのか、名取局長から、なるべく余り表面的でない、中身のある御答弁をいただきたいと思います。

名取政府参考人 内閣府におきましては、先ほど申し上げましたように、いわゆる加害者更生プログラムにつきまして、諸外国における実態を踏まえ、その内容や方法について調査研究を行っているところでございます。

 具体的には、やはり加害者更生プログラムというのは、その内容や実施方法によりましては、議員もう御案内のとおりですが、被害者の安全を損なうものとなる可能性もありますし、そういうことで、その調査研究は細心の注意を払い慎重に進めていく必要があると考えております。現在、加害者更生プログラムの満たすべき基準と実際に際して留意すべき事項について調査研究を行っているところでございます。

 内閣府としては、その成果を踏まえながら、プログラムが本当に有効なのかどうか等、さらに調査研究を進めてまいります。

小宮山(洋)委員 また法務委員会でも、ぜひその辺の進行状況もチェックをし、伺っていきたいというふうに思っています。恐らく三年後の見直しの大きな柱になると思いますので。

 また同僚の小林千代美議員がこの後質問をさせていただきますので、本当にお疲れさまでした。ありがとうございます。

柳本委員長 御苦労さま。

 小林千代美さん。

小林(千)委員 民主党の小林千代美です。ラストバッターを務めさせていただきますので、よろしくお願いをいたします。

 まずは、参議院共生社会に関する調査会の皆様、この間、本当にお疲れさまでした。きょうのこのDV法の改正案がこの法務委員会でかかるということをきっと待っていた方々も大変多くいらっしゃるのではないかなというふうに思います。一日でも早く被害者の方々が救済をされる、そして自分のもとの生活に戻っていけるような法律になっていってほしいというふうに私も思っているところでございます。

 質問もいろいろ出てまいりました。具体的な内容に入っていきたいと思います。

 まずは接近禁止命令の範囲なんですけれども、今回、接近禁止命令が、子供が入ることになりました。これについては私も大変評価をしていることです。ところが、今回、実際に、親族、支援者への接近禁止命令は入らなかったわけなんですね。

 例えば、子供を幼稚園や保育園から連れ出すぞ、拉致するぞみたいにおどしをかけるような場合も今まで事実としてございました。あるいは、被害者の方をかくまっている親族の方ですとか支援者の方々が加害者から被害を受ける、犠牲者になる、死亡事故まで起きてしまうというような事件も実際にありました。

 こういうことを考えると、私は、子供だけではなくて、親族、支援者まで入った方がよかったのではないかなというふうに思うところでございますけれども、今回のこの接近禁止命令の範囲について御説明いただきたいと思います。

神本参議院議員 今、小林委員おっしゃったように、今回の議論の中では、今回拡大されましたのは元配偶者と子供への接近禁止命令ということですけれども、親族、支援者に対しても広げるべきではないかというようなことは確かに議論の俎上に上っております。

 しかし、今回の改正では、元配偶者と子供への接近禁止命令を発令することができるようにしております。

 そうしましたのは、配偶者が被害者の子へ接近することは、一般的には、被害者の生命または身体に危害が加えられるおそれを直接に生じさせる行為ではなくて、被害者への接近禁止命令が発せられていれば、被害者の生命または身体に危害が加えられることは防止されることになります。

 しかし、例えば、配偶者が被害者の子をその通園先や通学先において連れ去り、委員も御指摘のように、そこで人質として子供をとるというような、そういうことがありますと、その子の身上を監護するために、被害者がみずから配偶者に、暴力を振るうことがわかっていながら、配偶者のところに面会を余儀なくされるというようなことが認められることになります。

 そのような場合には、被害者への接近禁止命令が発せられていても、被害者と配偶者が物理的に接近せざるを得ない、そのことによって、被害者が配偶者からさらに身体に対する暴力を加えられる危険が高まり、その効果が減殺されてしまうということになります。実際にそのような事例が多いことも報告されておりますし、内閣府の暴力専門調査会報告でもこのことは指摘されております。

 そこで、今回の法改正におきましては、このような形で被害者に認められている接近禁止命令の効果が減殺されることがないように、その防止のために、被害者への接近禁止命令とあわせて、被害者の子への接近禁止命令を発することができるというふうにしたものであります。

小林(千)委員 それでは、具体的に、子への接近禁止命令を発する要件の内容ですけれども、「配偶者が幼年の子を連れ戻すと疑うに足りる言動を行っていることその他の事情があること」というふうになっているわけですけれども、この「連れ戻すと疑うに足りる言動」というものは、具体的にはどのようなものが挙げられるんでしょうか。例えば、子供を連れて逃げ出している被害者の方に対して、戻ってこないと子供に危害を加えるぞとか、そういったおどし文句を言っている状態なども、子への接近禁止命令は発せられる事態というふうに考えられるのでしょうか。

福島(瑞)参議院議員 御質問、ありがとうございます。

 子供に対して、夫または妻が、子供に会わせろ、あるいは子供を連れ戻すぞ、幼稚園に行くぞというふうなことを言っている場合、あるいはそれだけではなくて、「その他の事情」とありますので、夫または妻の側が子供に対して相手方が接近することがあり得ると思うような状況、直接ではなくても間接的に親類や親に対して言っているような場合もあるでしょうし、あるいは、今までの言動からいって、幼稚園の前で待ち伏せをする、あるいは幼稚園に何らかの連絡がある、そういうことも考慮されるというふうに考えています。

 そのような事情から子供への接近禁止命令が出される必要があると考えられる場合には、保護命令を出してもらうことになります。

小林(千)委員 続いて、退去命令についてお伺いをいたします。

 今回、退去命令の期間が現行の二週間から二カ月に拡大をされました。私はこの点も評価したいと思います。そして、二カ月だけではなく、その後も必要であれば再度申し立てをすることができるというふうになって、今回の法改正で、再度申し立て、再度発することができるようにすることというふうにしているわけなんですけれども、その趣旨はどういったところからでしょうか。

福島(瑞)参議院議員 おっしゃるとおり、退去命令が二週間から二カ月に拡大されることになりました。それは、転居するにも二週間というのは余りに短過ぎるということが立法理由です。

 例えば、今回の改正により退去命令の期間が二カ月に拡大されるということになりますが、具体的なケースによっては、被害者が当該配偶者と生活の本拠をともにしている住居に引き続き居住する必要性が高い場合があります。退去命令を再度発するべき合理的な事情がある場合があるということです。それで、再度の退去命令を受けても、退去命令を受けている者の生活に特に著しい支障を生じないような場合もあり得ます。

 そこで、今回の改正においては、退去命令の再度の申し立てがあった場合に、当初の退去命令とは異なり、当事者双方、出してもらう側と申し立てた側と両方の事情を考慮した上で、なお配偶者の居住の事由や財産権の合理的な制限として許容される場合があり得る、二カ月をもう一回、再度延長して必要な場合がある、引き続き居住させなければだめだという場合もあるということから、退去命令を再度発することができるようにいたしました。

小林(千)委員 その退去命令の再度発動なんですけれども、再度、二回目を出す要件といたしましては、転居しようとする被害者がその責めに帰することのできない事由により二カ月以内に転居を完了できないこと等の退去命令を再度発する必要があると認めるべき事情があるときというふうにあるわけなんですけれども、二点お伺いをしたいと思います。

 その本人の「責めに帰することのできない事由」というのは、具体的にどのような事由なんでしょうか。また、例示されております、二カ月以内に転居を完了できないこと以外の「再度発する必要があると認めるべき事情」というのは、具体的にどういったものが考えられるんでしょうか。

福島(瑞)参議院議員 現実的に、二カ月以上たったとしても、退去命令、それはもう一回、再度認められる必要がある場合は現実にあると思います。

 その「責めに帰することのできない事由」とは、例えば、退去命令の発令期間中に被害者が病気やけがなどによって療養を余儀なくされる、引っ越すことができない、引っ越しが例えば何らかの事情で極めて困難であるというふうなことが、転居を完了することができない場合等があると思います。

 また、例示されている、二カ月以内に転居を完了できないこと以外の「再度発する必要があると認めるべき事情」には、さまざまなケースがあると思いますが、例えば、親を介護している、子供がいて何らかの事情で転校や移動することが困難である、例えば障害のある子供で、一緒に転居をするに当たってさまざまな何か手段を講じなければならないということ、あるいはともに稼業を行っていて簡単に転居することが非常に困難であるという場合、例えばピアノの先生で、グランドピアノを運ぶのに時間がそんなにかかるかどうかわかりませんが、何らかの事情で転居をすることに困難を生ずることは現実の問題としてはあり得るというふうに考えております。

 そのことから、被害者に転居先を探すことを期待することが社会通念上困難であると認めるべき場合等があり得るものと考えられます。

小林(千)委員 事由、事由によっていろいろな具体例が考えられるんだと思いますけれども、実際に退去命令が再度発動ということになりますと、加害者にとってみれば、四カ月間、自分の住んでいた家に入れないということになりまして、加害者にとっても大変なのではないかな、同情するわけじゃないんですけれども、そういった事実も事実としてあると思います。

 その辺のバランスをどうとるかというのは大変難しいことになると思うんですけれども、そういった点から、この退去命令の再度の発動というのが限定的になってしまう可能性というのはないんでしょうか。できれば、いろいろな事由、今おっしゃっていただいたような具体的な事由が認められてほしいと私は思うんですけれども。

吉川参議院議員 共産党の吉川春子です。

 実は、ここは、最後の最後までプロジェクトチームで大変大きな議論になってまとまらなかったところです。

 その理由は、一つは、どういう事情であれ、夫婦で住んでいるところから夫を追い出すわけですから、憲法三十一条とかいろいろな制約があるということがありまして、それを限定的にせずにラフに規定することはできないということは当然だと思うんです。

 それともう一つは、先ほど来、加害者の更生プログラムの問題についていろいろ意見がありますが、実は、加害者について規定しているのはこの一条だけなんですね、ここだけなんです。加害者の事情に多少配慮しているという、多少というか、「生活に特に著しい支障を生ずると認めるときは、」「発しないことができる。」ということで、考慮しているのはここだけなんですね。

 だから、ここは、具体、具体の問題でもって、非常に難しい判断が迫られるとは思うんですけれども、一つは、DV被害者をどうしても保護しなくてはならない、そこはもう前提に置きながらも、現行の法体制の中で、私が言っているのは私有財産権の問題とかそういう問題なんですが、そういうところでぎりぎりの判断が迫られる。今おっしゃったように、四カ月となると大変重要な期間になるじゃないかということも私たち十分議論をした結果、こういう表現でぎりぎりのところで認めたということが実情です。

福島(瑞)参議院議員 補足の補足で申しわけありません。

 確かに、現実的には保護命令を出す際に問題になり得るとは思いますが、私たちも両方の事情を考慮するということでこの改正法案をまとめました。

 確かに、一つの意見として、なぜ暴力を受けた側の人間が常に大急ぎで家を出なくちゃいけないのか、子供を連れて、すべてを捨てて、家を出なくちゃいけないかという議論もあります。また、引っ越しもなかなか大変なので、退去命令を二カ月にし、かつ再度の申し立てをする。この場合、相手方、夫か妻かわかりませんが、著しい生活の支障を生ずる場合、どんな人間も二カ月以上家から離れれば、服はない、着がえはない、靴はない、パンツがないという感じになって、著しい支障を生ずることは事実です。しかし、それを逆に重く認めれば、再度の申し立てを常に認めにくくなってしまいますので、そこは両方の事情を勘案するしかないということで私たちメンバーはまとまりました。

 ですから、これが限定的に使われないように、しかし両方の事情もある程度考慮されるようにということを考えております。

小林(千)委員 ありがとうございます。

 続いて、民間団体との連携についてお伺いをしたいと思います。

 現在でも、民間団体、特に民間シェルターの方々というのはDV被害者の救済のために大変大きな役割を果たしていらっしゃると思います。今回の改正では、都道府県に置かれておりますDV相談支援センターそして民間団体との連携に関して規定を設けることというふうになっておりますけれども、その趣旨についてお伺いしたいと思います。

福島(瑞)参議院議員 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護については、この問題に取り組む民間団体が極めて大きな役割を担っています。被害者の多様な要望にこたえるためには、このような民間団体と配偶者暴力相談支援センターとが適宜連携をとりながら対応することが重要です。

 このような観点から、今回の改正においては、「配偶者暴力相談支援センターは、その業務を行うに当たっては、必要に応じ、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護を図るための活動を行う民間の団体との連携に努める」べきことを規定いたしました。

 これからは、支援関係機関、連絡会議への参画の保障やさまざまな工夫が必要となってくるのではないでしょうか。これまでの民間の業績を正当に評価し、共同のパートナーとするということがこれからなされることが必要だと考えます。

 さまざまな問題があり、例えば、一時保護委託料の適正化、実質的に一時保護をしていても契約していないと委託料が出ない、子供の委託料が安いといった問題点があります。また、自立支援事業、電話相談、就労支援、カウンセリングなど多岐にわたりますが、公的に位置づけ、委託を行うことなども必要かもしれません。また、特別交付税が残念ながら支援団体に回らない状況も都道府県によってはあります。これを是正する必要があります。また、民間支援団体の助成の問題です。鳥取県などが先駆的ですが、県独自事業として、被害者への一時金貸し付け、シェルターの家賃を県が支払う、被害者の医療費を支払うなどの施策を行っています。

 先進的な県に学びながら、全国、都道府県、どこにいても救援が得られる、そんなことがこれからの改正法で望まれると考えます。

小林(千)委員 私は、実は札幌の出身なんですけれども、私の地元の札幌にも民間シェルターがございます。そこも本当に大変厳しい予算の中でシェルター活動を実際に行っているところでもございまして、さまざまなお話を伺ってまいりました。

 そこの民間シェルターも、一応、北海道、道と札幌市から補助金ももらっているそうです。しかしながら、両方合わせても年額で百五十万ぐらいなんだそうです。そうすると、家賃だけでほとんど消えてしまうようなものなんですね。人件費にもならないというような声を聞きました。

 また、一時保護委託料の適正化ということをおっしゃっていただきましたけれども、大人が一人当たり七千幾らということです。これは二週間過ぎるとまた値段が変わってくるそうですし、連れてきた子供一人当たり千幾らということなんだそうですね。これは実績に対して出る委託料なものですから、人が入っていないときには入ってこないわけなんです。

 でも、シェルターというのは、人がいなければ閉めておけるかというとそういうわけではないわけで、それこそ三百六十五日、二十四時間、いつでも受け入れますという体制をつくっていないとシェルターとしての役割は果たさないわけでありますから、実際にそこには人件費というものは当然かかってくるわけでございますし、そうすると、大人の七千円というのもやはり十分な金額ではないのかなと思います。

 また、子供に至っては、子供もDVの被害者として虐待を受けているケースというのも十分に考えられます。こういった子供のケアというのも親とは別個として当然行われなければいけないわけでございまして、そうすると、子供の一日一人当たり千幾らというのもちょっと低過ぎないかなというような感じもあります。

 こういった民間団体、民間シェルターに対する財政的な支援というものをやはり今回義務づけるべきだったのではないかなというふうに私は思いますが、今回そういったことは入らなかったんでしょうか。

吉川参議院議員 今回、補助金を制度に盛り込むかどうかということについて議論をいたしました。そして、結果としては、今行われております特別地方交付税の枠の中でやる方がいいという結論に達しました。

 それはなぜかといいますと、御承知のように、補助金の削減ということが国の方針でずっと行われてまいりまして、たとえ補助金ということが設けられても、一緒の削減の方に向かうのではないか。それよりは、特別地方交付税の枠の中で、都道府県が援助をすればそれに対して国も援助をするという、その予算の枠はまだまだかなりあるという報告も政府の方から受けまして、私たちは、むしろ都道府県が積極的に支援をして地方交付税の中から出すという形をとる方がいいかなということで最終的にはなりましたけれども、ただ、補助をするという義務規定は、既に、今回の改正以前、最初の法律の中から入っているということを申し上げたいと思います。

小林(千)委員 都道府県あるいは市町村というのも、大変厳しい財政状況の折、予算も組めない、カットできるところはカットしなければいけないという自治体のところが大変多いと思います。その中で、やはり全国どこでもできれば同じサービスをしてもらいたいという気持ちもあるわけでして、やはりどうやって各自治体への支援を国としてしていくかというのも大変重要な課題なのではないかなというふうに思います。

 先ほど、福島瑞穂さんから鳥取県の例をお話しいただきました。本当にここは先駆的にやっていただいているところだと思いますし、鳥取県の話というのは、多分、当事者、関係者の間ではもう口コミでばあっと広がっておりまして、逃げるんだったら鳥取県ということになっているのが実情ではないかなと思います。

 実際に鳥取県に逃げることができない状況もあるわけなんですけれども、それはわざわざ鳥取県に逃げなくても、適当なところに同じような支援体制というものがあればベストなわけでございまして、今回、各地方自治体でも、都道府県で基本計画がつくられることになりますけれども、ぜひとも地域によって差の出ない方針というものを基本計画でつくり上げていただくわけにはならないかなというふうに思うわけです。これはもちろん地方自治体の裁量にもよってくるんでしょうけれども、こういったところをどのようにお考えでしょうか。

福島(瑞)参議院議員 この点については、先ほど山本議員が答えられた部分でもありますので、重複しないように申し上げます。

 国自身が基本方針を決めますので、それに基づいて都道府県が基本計画をつくる。地方分権に一見逆行している面もあるかもしれないのですが、私たちとすれば、都道府県のでこぼこをなくして、そこで基本方針を国がつくり、各都道府県が自分たちのお立場で基本計画をつくり、その中で基本計画の期間や計画の公表をしていく、都道府県の現状、どうやってDVをなくしていくかということをやるということを考えております。

 ですから、これは、ある程度一律に、しかし各都道府県がそれぞれの独自性ですばらしい基本計画をつくり、ドメスティック・バイオレンスが各県でなくなるよう努力されることを私たちは期待しております。

小林(千)委員 私も、各都道府県には期待をしております。

 続きまして、DV相談支援センターによる自立支援の明確化及び調整機能の発揮についてお伺いをしたいと思います。

 今回の法改正で、第三条三項四号におきまして、被害者が自立して生活することを促進するために、就業の促進、住宅確保、援護などに関する制度の利用などについて、情報提供ですとか助言、関係機関との連絡調整その他の援助を行うことを相談支援センターの業務として規定しているわけでございますけれども、この趣旨についてお伺いをいたします。

吉川参議院議員 三条三項四号の問題についてお答えしたいと思います。

 配偶者等から暴力を受けた人に対して、自立した生活が開始できるように支援していくことが非常に大切で、そのために、今御指摘がありました配偶者暴力相談支援センターの役割はとても重要です。

 今回の改正で、三条三項四号に掲げる、被害者が自立して生活することを促進するための援助として、就業の促進、住宅の確保、援護に関するいろいろな制度の利用について、助言等具体的な例示を含めて規定することではっきりさせて、その一層の適切な実施を図ることとしました。

 すなわち、配偶者から逃げ出して新しい生活を始めるためには、ハローワークへの就職の相談、公営住宅への入居、同伴している子供の保育所への入所、いろいろなことが必要になってきておりまして、地方公共団体のさまざまなサービスも必要になります。そのためにどんな制度があり、またサービスが受けられるのか、自立の援助が的確に行われるように条文で具体的に示したものです。

 これまでも、地方自治体でこうした具体的なことを行って自立支援をしているところもありますけれども、さっき御指摘のように、自治体によってかなり差がありますので、これを明確に法律に決めまして、具体的にDV被害者の、公共住宅の入居の改善もあったという報告がありましたが、そういう取り組みが全国で同じように進むようにということで法律に明確化いたしました。

小林(千)委員 時間になりましたので、最後にしたいと思います。

 同じ三条三項四号の中には、「制度の利用等について」と規定されているわけなんですけれども、この相談支援センターが行う情報の提供などの対象となる事項といたしまして、制度の利用に関すること以外にはどのようなことを想定されているんでしょうか。また、「関係機関との連絡調整」というふうにありますけれども、どのようなことを具体的に相談支援センターが行うことを想定されて規定されているのでしょうか。

吉川参議院議員 まず、制度の利用に関すること以外の項目で、配偶者暴力相談支援センターが行う情報の提供対象となるものについては、例えば、民間団体が自主的に行っている被害者の自立支援のための措置、公的に制度化されたものではないが、被害者の自立支援にとって有益なものが想定されます。

 そして、先ほどいろいろありましたけれども、例えば、広島ではNPOの電話相談を行っておりますし、きょうお見えの、全国各地域での被害女性の一時保護、自立支援をボランティアを含めて献身的に行っておられます。こうした情報について被害者に提供すること等を想定しております。

 また、配偶者暴力相談支援センターが行う関係機関との調整連絡については、例えば、日ごろから連絡、協力の体制を整備するために、配偶者暴力相談支援センターが中心となって関係機関の協議会を設置することや、配偶者暴力相談支援センターに相談に来た被害者について、個別に関係機関と連絡をとり、自立支援のために必要な措置が適切に行われることが想定されます。

 なお、関係機関としては、児童相談所あるいは福祉事務所、ハローワーク、母子家庭自立センター、自治体窓口、裁判所等を想定しております。

 以上です。

小林(千)委員 ありがとうございました。

 一日も早く、一人でも多くの被害者の方が救済される法律になってほしいと思いまして、質問を終了させていただきます。

柳本委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

 共生社会に関する調査会、狩野会長、メンバーの南野、神本、山本、吉川、福島、各先生方、御苦労さまでございました。委員長として心より敬意を表します。

    ―――――――――――――

柳本委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 参議院提出、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

柳本委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

柳本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

柳本委員長 次回は、来る二十八日金曜日午前九時十五分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三十一分散会


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