衆議院

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第31号 平成16年5月28日(金曜日)

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平成十六年五月二十八日(金曜日)

    午前九時三十四分開議

 出席委員

   委員長 柳本 卓治君

   理事 塩崎 恭久君 理事 下村 博文君

   理事 森岡 正宏君 理事 与謝野 馨君

   理事 佐々木秀典君 理事 永田 寿康君

   理事 山内おさむ君 理事 漆原 良夫君

      上川 陽子君    木村  勉君

      左藤  章君    桜井 郁三君

      柴山 昌彦君    谷  公一君

      中野  清君    早川 忠孝君

      平沢 勝栄君    松島みどり君

      水野 賢一君    森山  裕君

      森山 眞弓君    保岡 興治君

      山際大志郎君    荒井  聰君

      泉  房穂君    市村浩一郎君

      鎌田さゆり君    楠田 大蔵君

      小林千代美君    小宮山洋子君

      園田 康博君    辻   惠君

      中井  洽君    本多 平直君

      松野 信夫君    上田  勇君

      富田 茂之君    川上 義博君

    …………………………………

   法務大臣         野沢 太三君

   法務副大臣        実川 幸夫君

   法務大臣政務官      中野  清君

   最高裁判所事務総局総務局長            中山 隆夫君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 米村 敏朗君

   政府参考人

   (警察庁刑事局組織犯罪対策部長)         知念 良博君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局審議官)            中江 公人君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局参事官)            西原 政雄君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    房村 精一君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    樋渡 利秋君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 長嶺 安政君

   法務委員会専門員     横田 猛雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十八日

 辞任         補欠選任

  保利 耕輔君     森山  裕君

  松島みどり君     谷  公一君

  水野 賢一君     古屋 圭司君

  保岡 興治君     木村  勉君

  柳澤 伯夫君     上川 陽子君

  加藤 公一君     荒井  聰君

  河村たかし君     市村浩一郎君

  小宮山洋子君     楠田 大蔵君

  中井  洽君     園田 康博君

同日

 辞任         補欠選任

  上川 陽子君     柳澤 伯夫君

  木村  勉君     保岡 興治君

  谷  公一君     松島みどり君

  森山  裕君     保利 耕輔君

  荒井  聰君     加藤 公一君

  市村浩一郎君     河村たかし君

  楠田 大蔵君     小宮山洋子君

  園田 康博君     中井  洽君

    ―――――――――――――

五月二十八日

 治安維持法の犠牲者に対する国家賠償法の制定に関する請願(阿久津幸彦君紹介)(第二六〇九号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第二六一〇号)

 同(石井郁子君紹介)(第二六一一号)

 同(石毛えい子君紹介)(第二六一二号)

 同(奥田建君紹介)(第二六一三号)

 同(奥村展三君紹介)(第二六一四号)

 同(菅直人君紹介)(第二六一五号)

 同(北橋健治君紹介)(第二六一六号)

 同(小宮山洋子君紹介)(第二六一七号)

 同(穀田恵二君紹介)(第二六一八号)

 同(今野東君紹介)(第二六一九号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第二六二〇号)

 同(志位和夫君紹介)(第二六二一号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二六二二号)

 同(田島一成君紹介)(第二六二三号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二六二四号)

 同(東門美津子君紹介)(第二六二五号)

 同(中川治君紹介)(第二六二六号)

 同(中川正春君紹介)(第二六二七号)

 同(楢崎欣弥君紹介)(第二六二八号)

 同(羽田孜君紹介)(第二六二九号)

 同(細川律夫君紹介)(第二六三〇号)

 同(牧野聖修君紹介)(第二六三一号)

 同(松野信夫君紹介)(第二六三二号)

 同(松本龍君紹介)(第二六三三号)

 同(山口富男君紹介)(第二六三四号)

 同(吉井英勝君紹介)(第二六三五号)

 同(市村浩一郎君紹介)(第二六八五号)

 同(大出彰君紹介)(第二六八六号)

 同(古賀一成君紹介)(第二六八七号)

 同(穀田恵二君紹介)(第二六八八号)

 同(佐々木秀典君紹介)(第二六八九号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二六九〇号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二六九一号)

 同(土井たか子君紹介)(第二六九二号)

 同(東門美津子君紹介)(第二六九三号)

 同(永田寿康君紹介)(第二六九四号)

 同(藤田一枝君紹介)(第二六九五号)

 同(藤村修君紹介)(第二六九六号)

 同(松木謙公君紹介)(第二六九七号)

 同(松野信夫君紹介)(第二六九八号)

 同(横路孝弘君紹介)(第二六九九号)

 同(横光克彦君紹介)(第二七〇〇号)

 同(吉井英勝君紹介)(第二七〇一号)

 国籍選択制度と国籍留保届の廃止に関する請願(楢崎欣弥君紹介)(第二六三六号)

 同(土井たか子君紹介)(第二六七二号)

 法務局・更生保護官署・入国管理官署及び少年院施設の増員に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二六七三号)

 同(石井郁子君紹介)(第二六七四号)

 同(穀田恵二君紹介)(第二六七五号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第二六七六号)

 同(志位和夫君紹介)(第二六七七号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二六七八号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二六七九号)

 同(富田茂之君紹介)(第二六八〇号)

 同(永田寿康君紹介)(第二六八一号)

 同(松野信夫君紹介)(第二六八二号)

 同(山口富男君紹介)(第二六八三号)

 同(吉井英勝君紹介)(第二六八四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 電子公告制度の導入のための商法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四三号)(参議院送付)

 国際捜査共助法及び組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第五二号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――

柳本委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、参議院送付、電子公告制度の導入のための商法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として金融庁総務企画局審議官中江公人君、金融庁総務企画局参事官西原政雄君、法務省民事局長房村精一君及び法務省刑事局長樋渡利秋君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

柳本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

柳本委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局中山総務局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

柳本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

柳本委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。塩崎恭久君。

塩崎委員 自民党の塩崎恭久でございます。きょうはたった十五分しかないものですから、単刀直入に質問をさせていただきたいと思います。

 今回の電子公告制度の導入ということでありますが、この導入にあわせまして、知れている債権者に対する個別催告を省略するという簡素合理化を行う債権者保護手続があるわけですね。この債権者保護手続の簡素化というのは、かねてから経済界で非常に強い要望があったわけでありまして、平成九年の商法改正で、とりあえず合併については個別催告の省略を、官報と日刊新聞紙にすればいいということにしたわけでありますが、しかし、より一般的に、例えば資本減少などの場合には引き続きやらなきゃいけない、こういうことで来たわけであります。

 この催告は、競争力強化とかを考えてみると、やはり組織再編の際に企業にとっては非常に多額の費用と負担がかかるということで、やはり我が国企業の国際競争力確保の観点から極めて重要な変更ではないかなというふうに考えているわけであります。

 今回の法案において、この簡素化を行う必要性と合理性につきまして、まず法務大臣の御見解を簡潔にお願いしたいと思います。

野沢国務大臣 ITの時代を迎えまして、会社では九割以上の会社がこれを活用し、また家庭でも八割に近い家庭が何らかの形でITの活用をしている、こういう時代を迎えて、司法の世界でもそれに対するやはりアプローチが必要かということでこの法案が立案された経緯は委員御承知のとおりでございますが、現行法では、株式会社が資本減少等を伴う場合には、債権者保護手続として、官報の公告を行うとともに、知れている債権者に対して個別に催告することが要求されております。

 この債権者保護手続における個別催告制度につきましては、かねてから、まず会社にとって知れているすべての債権者に個別催告をしようとすると莫大な費用と手間がかかる、また二つ目として、個別催告を実施しても資本減少等に異議を述べる債権者が皆無に近い等の問題点が指摘されております。

 ところで、債権者の保護手続においては、例外なく官報公告が要求されていますけれども、官報については、現在、紙によるものの発行と同時に、これと全く同内容のものが発行者である独立行政法人国立印刷局のホームページに掲げられておりまして、このいわゆる電子版官報により、官報公告自体も従来より情報周知力を高めていると言うことができます。

 そこで、今回の改正におきまして、資本減少等を行う際の債権者保護手続につきまして、官報公告に加えて、日刊新聞紙公告または電子公告のいずれかを併用する場合には、個別催告の省略を認めるなどの簡素合理化を図ることとしたものでございまして、この改正には十分な必要性と合理性があるものと考えております。

塩崎委員 今回の催告を要しないことにした理由の一つとして、外国でそんなことはやっていないぞという御説明をしているやに聞いておりますが、例えばアメリカ、デラウェアとかニューヨークとかカリフォルニアとか代表的なところ、あるいはアメリカ以外の、イギリス、ドイツ、フランス、こういったところで具体的な債権者保護手続というのはどうなっているのか、あるいは催告を要求している国というのはあるのかどうか、そして、そもそも債権者保護のために催告を行うべしという考え方自体が実はないんじゃないか、そういった国々では。

 その辺についてちょっと、民事局長、簡潔にお願いしたいと思います。

房村政府参考人 合併あるいは資本減少のときの債権者保護手続に関しまして、アメリカにおきましては、我が国のような公告であるとか個別催告、こういう手続が要求される債権者保護手続は存在しておりません。一般的に、不当な詐害的な譲渡がなされたときにこれを取り消すことができるという制度がございますが、そういったものを活用して債権者の保護が図られているというぐあいに聞いております。

 次に、イギリス、ドイツ、フランスでありますが、これらの国においては、合併等の場合に公告が要求されるということはございますが、我が国のように、一律にすべての債権者に対して個別の催告が要求されるという制度はございません。ただ、イギリスにおいて、資本減少の場合に、会社が債権者に弁済するのは十分な資産を有していることあるいは債権者の同意を得ているということ、こういうことを証明できないようなときには個別催告が必要とされるという制度はございますが、極めてそういう限られた場合ということになります。

 したがいまして、一般的に言えば、先進諸国において、我が国のような一般的な形での個別催告を要求するという考え方はとられていないというぐあいに言えようかとは思います。

塩崎委員 そうだとすれば、今回あくまで個別催告も必要だという前提のもとで簡素化措置というのがとられているけれども、では、何で日本でも、諸外国の今お話しいただいたような形で、催告という考え方自体がもう要らないという考え方にのっとって立法ができないのか、もし理由があるならばちょっと説明してもらいたいし、では、なぜ外国にその立法例がないんだというところをちょっと御説明いただきたいと思います。

房村政府参考人 今回、個別催告制度そのものを廃止していないという理由でございますが、一つには、長年にわたってこのような個別催告の制度が我が国で採用されてきたということがございます。また、官報による公示力というものを考えますと、官報公告しか行わないような会社についてまで個別催告の制度を廃止するということは、やはり債権者保護の見地から問題があるのではないか。

 一方、完全に廃止しようとしますと、逆に、二重の公告を常に要求するということになって、会社の負担がふえるというおそれもございます。

 それと、特に、例えば不法行為による被害者、こういう者の債権ということを考えますと、これはやはり保護の必要性が高いのではないか、一般の取引のある債権者と違って、常に公告に注意しろということを要求するのは酷な面もあるのではないか。

 あるいは、例えば、合名・合資会社のように無限責任社員がいるところが組織変更して有限責任しか負わなくなる、こういうような場合に本当に個別催告を一切廃止していいか、そういう点についてはまだいろいろ問題もあるのではないかということから、今回は、周知力の高まるものを併用する場合に、限定的に個別催告を不要とするという考え方をとったわけでございます。

塩崎委員 大体、日本の株式会社制度というのは、数が物すごいというのはもう御案内のとおりで、会社を形式的につくって、会社でやる方が便利だということでやっているところが多いわけでありますけれども、形式的な資本というものを維持すること、今、債権者保護というのがありましたけれども、言ってみれば、形式的な資本を形式的に変更することを形式的に通知するということが、実態上は実は行われてきたんじゃないのかなという感じがしてならないんですね。

 この間、某主要銀行の去年の一兆円の増資のお話をしましたけれども、実に形式的な資本が日本というのはまかり通っているというのが日本の経済の特徴だと私は思っているんですが、そうなると、今も債権者保護の話がありましたけれども、例えば、平成十五年から資本金一円会社というのが認められるようになった。これは五年以内にまた条件を満たせばいいということですけれども、しかし、今の、資本がないと債権者保護ができないということであれば、その五年間は保護できないという話になるわけですけれども、それをしかし認めてきている。

 言ってみれば、債権者に通知するという必要性も実はフィクションだったのかもわからないなという感じがするんですね。そうすると、フィクションに立脚した形式的な催告そのものが要らないんじゃないか、こういうふうに言い切ってもいいんじゃないのかなという感じがしないでもないんですけれども、いかがでしょうか。

房村政府参考人 御指摘のように、最低資本金の制度については特例が設けられ、また、現在法務省で検討しております会社法の見直しにおいても、その最低資本金をどうするかということが大きな論点になっております。

 ただ、これも、最低資本金制度の機能というのはいろいろありまして、設立に際して払い込むべき金銭の価額を定めるという意味もありますし、また、剰余金の分配規制における純資産額として維持すべき額、そういう機能もございます。また、資本として表示することができる額の下限を決めている、それぞれのそういう機能があるわけですが、それぞれの機能に分解して、それをどういうぐあいに位置づけていくかという観点から今回検討が進められているわけでございます。

 そういう意味では、従来の最低資本金を定めることによって今の三つの機能を一つの最低資本金というもので賄うということではなくて、もう少し機能的に考えようということになってきております。ただ、その動きと会社の組織の再編等の場合における債権者保護のための個別催告の要否というのは、直ちに結びつくわけではないだろうと思っております。

 先ほど申し上げましたように、債権者の利益を保護するために個別催告が必要である場合もあるということは否定しがたいのではないかな、こう思っておりますが、ただ、今回の改正によります簡素合理化の効果を見守りながら、将来の課題として、さらに個別催告あるいは債権者保護手続についてさらなる簡素合理化ができるかどうかという点は引き続き検討していきたい、こう考えております。

塩崎委員 企業法制というのは、今までどちらかというと、バブルの崩壊後、何しろ緊急対策をやらなきゃいかぬというようなことがニーズとしてあって、その一方で大きな流れとして自由化をしないといかぬということで、いろいろな改正が行われてきたわけですね、議員立法と内閣提出と両方あわせて。

 しかし、やはり企業法制全体あるいは企業文化そのものを考えてみると、単に自由になればいいというわけでもないし、その一方で必ずやはり規律というものがなければいけない、こう思うんですね。

 ですから、そういう意味で、何でもかんでも自由にすればいいわけではないということは、私は強く考えながらこれからの改正というのはやっていかなきゃいけないと思うんですけれども、しかし、少なくとも、事この個別催告の問題については、どうもやはりグローバルスタンダードからしてみても、どうも形式的に守っていることが多過ぎるんじゃないのかなという感じがいたしまして、形式的な資本概念を維持するという観点から、債権者保護のために催告が必要という昔からのロジックを、やはりそろそろこのフィクションからは離れて現実に合ったものにしていくということを見据えて、今申し上げた自由と規律というバランスの中で考えていくべきではないのかなというふうに思っております。

 特に、来年に向けて会社法の全面的な改正というのをやろうということで今現段階の議論をやっておりますけれども、そういった哲学がとても大事で、もう形骸化したような哲学はやめて、新しい自由と規律にのっとった法改正というものをこれからやらなきゃいけないのではないのかな、こう思っておりまして、最後に大臣に、今のやりとりを含めて、お聞きになった御感想をぜひお聞かせを願い、日本の経済社会のベースであるこの会社法、これのこれから現代化の改正を目指しているわけでありますが、それを含めて感想を承りたいと思います。

野沢国務大臣 委員御指摘のように、債権者保護手続における個別の催告制度は、諸外国の立法例では珍しいものではございますが、全面的に廃止をすることについては、官報公告しか行わない会社につきましてまで個別催告の制度を廃止してよいかどうかということは、債権者保護の観点から、まだ種々の問題があることから、慎重な検討を要するものと考えております。

 電子化の流れはもうとうとうたる勢いになっておりますけれども、やはり、その波にまだ乗り切れない方々も残っているということを考えますと、しばらくの間は、この両制度のやはり共存といいましょうか、その中でこれからの行き方を探って検討していくべき課題と考えております。

塩崎委員 大臣の今おっしゃったIT化の流れというのはもう間違いないことでありますが、恐らくより大事なのは、会社法制全体の哲学、筋の通った哲学だろうと思うので、技術的なことで直さなきゃいけないことは、これはもう遅滞なくやらなきゃいけないのは今大臣の御指摘のとおりでありますから、それはやっていく。しかし、根本哲学をやはり考え直していくということを大事にしてこれからもやっていきたい、こう思います。

 ありがとうございました。

柳本委員長 御苦労さま。

 漆原良夫君。

漆原委員 公明党の漆原でございます。

 早速質問に入らせてもらいます。

 公告義務の一部撤廃関係についてお尋ねしたいと思うんですが、この公告義務の一部撤廃については参議院の質疑ではほとんど行われていなかったので、この改正点について質問をしたいと思います。

 提案理由説明によりますと、公告に法的効果が伴わないで、会社等に公告の義務を課する理由に乏しいと考えられる公告についての公告義務を撤廃した、こういうふうに言われております。法案を見ますと、訴え提起の公告については、株主代表訴訟の場合以外の各種訴え提起の公告の義務が今回撤廃になっているわけですね。

 訴えの提起があった場合の公告について、株主代表訴訟の場合とそれ以外の訴え提起の場合と区別して、後者についてだけ公告義務を撤廃した理由をお尋ねしたいと思います。これは法務副大臣にお願いします。

実川副大臣 会社関係訴訟のうち株主代表訴訟につきましては、会社が和解に応ずる場合には総株主の同意が不要とされております。そのために、原告である株主が被告であります取締役に有利な内容で和解をするというなれ合いが行われるおそれがございます。

 現行法におきましては、株主代表訴訟が提起された場合には会社に当該訴えが提起された旨の公告または通知を行わせることとされているのは、このような事態を防止するためでありますから、今回の公告義務の見直しに当たっても、公告または通知の義務は維持することとしたものでございます。

 これに対しまして、その他の各種会社訴訟の訴え提起の公告につきましては、公告に株主代表訴訟の場合のような特別の意義はなく、また、公告の有無は判決の効力に何ら影響を及ぼさないものでありますので、会社に費用を負担させてまでこのような公告を要求する理由に乏しいと考えられます。そこで、これらの各種会社訴訟の訴え提起につきましては、公告の義務を廃止することとしたものでございます。

漆原委員 そうはおっしゃっても、訴訟の中に、例えば、株主総会決議の取り消しだとか、あるいは合併が無効だとかいうふうな訴えがあるわけですね。これは株主に対してみれば大変な利害関係を有するんじゃないかなと思いますが、今回、こういうものについても公告の必要はない、こういうふうになっていますね。これは株主に不当な不利益を及ぼすことになるんじゃないかというふうに議論があったかもしれませんが、その辺はいかがでしょうか。

房村政府参考人 会社関係の訴えを大きく分けますと、株主総会等の決議の無効あるいは不存在確認と、それ以外の取り消し等の訴えということに分けられようかと思います。

 この大きく分ける理由は、決議の無効あるいは不存在確認の訴えの場合は、提訴権者に特段の制限がございません。一方、取り消し等の訴えについては、提訴権者が法律で決められております。主な提訴権者としては、御指摘の株主、あるいは取締役等の会社役員、管財人であるとか、それから合併や何かの場合の、そういうものを承認しない反対の債権者、こういった者が提訴権者として法律で定められております。

 これらの人について見ますと、会社の機関の、例えば取締役等につきましては、訴え提起の公告がなくても当然決議の内容も知り得るわけでございますし、改めて公告をする必要性は乏しいのではないか。株主につきましても、株主総会の招集通知等がございますので、どういった決議がされるということは当然知り得る地位にあります。また、合併等に反対の債権者の場合は、そもそも反対しているわけですから、それはもう当然内容は承知している。そうしますと、このように提訴権者が限定されている訴えについて見ますと、その提訴権者になり得る者については、当然問題の決議の内容等を知る機会も保障されている、その場合に、さらに改めてわざわざ公告をしなければならない必要性は乏しいのではないか、こういうことが言えようかと思います。

 一方、株主総会の決議の無効とか不存在確認になりますと、そういった提訴権者の制限がございませんので、今言ったような知り得る立場にある会社の機関とか株主以外の者が訴えを提起する可能性もあるわけでございます。

 ただ、そういういわば会社と特別の地位にない一般債権者の方が多かろうと思いますが、そういう方で、そもそもそういう訴え提起に関心を持つような人であれば、そもそもそういう情報を入手しているのではないかとも思われますし、また、このような提訴権者に制限のない訴えについては、提訴期間の制限もありませんし、他の人が訴えを起こして棄却された場合に、その棄却判決に対世効がありませんので、みずからまた訴えを起こすということも可能でございます。そういたしますと、こういう方々に公告をして、訴えが提起されているということをわざわざ知らせるまでもなく、みずから行使をしたければいつでもできる、こういう関係にありますので、今回この公告を廃止したことによって特に不利益をこうむるということはないであろう。

 そう考えますと、全体として、会社にわざわざ費用を負担させてまで公告をさせる必要性は乏しいだろうということで、今回は、こういったものについては公告を廃止するということとしたものでございます。

漆原委員 もう一点、三百九条第二項の社債管理会社。これは、従来、社債の管理会社が弁済を受けた場合は、公告と、特に、知れたる社債権者に対しては各別に通知するということが条文化されておったわけですが、従来、公告、通知する義務があったけれども、今回、全部、公告も通知も撤廃したというふうになっていますね。これはどういう理由によるんでしょうか。

房村政府参考人 社債管理会社が置かれている場合には、当然、社債管理会社から社債権者に対して償還手続や利息の支払い手続がとられるわけでございますが、法律で、この社債管理会社が弁済を受領した旨の公告あるいは通知をするように要求していますが、これがあったからといって、特段支払い手続等に影響があるわけではありません。

 一方、社債権者とすれば、社債管理会社が置かれている場合には、その商号、償還、利息支払いの方法及び期限は、社債の申込証であるとか社債券及び社債原簿の記載事項にされておりますので、当然に承知をしている事柄になります。したがって、社債権者にとって、償還及び利息の支払いを受けるために必要な事項を知る機会は十分に確保されているということで、改めてこの公告及び通知をするまでもなく知り得る、あるいは現に知っているということが多い。実際の運用を伺っても、実務上行われない場合が少なくないというぐあいに聞いているわけでございます。

 そのようなことから、わざわざ公告及び通知をするようにと要求する理由は乏しいと考えられますので、その義務を今回撤廃したということでございます。

漆原委員 次に、短期間の公告の中断が生じた場合の救済措置について質問をします。

 この間、参議院の質問で、答弁では、ウイルスで公告内容が消去されたり改ざんされたりした場合に備えて、百六十六条ノ二第二項の救済規定を設けたというふうな答弁がなされておりますが、このような公告の中断についての救済規定を設けますと、その期間内にたまたま公告のホームページを見た利害関係人に、ないわけですから、あるいは違った内容が公告されているわけですから、不利益になるということは十分予想されますが、そういうことについてはいかがお考えでしょうか。

房村政府参考人 御指摘のように、特に公告が改ざんされているというような場合には、改ざんされているものを見た人がそれをそのまま信用してしまうというおそれはあるわけでございます。欠落している場合には、法務省の方のリンク集サイトにもその期間載っているはずだというようなこともわかりますので、ある程度気がついていただけるのではないかと思っておりますが、確かに改ざんの場合には誤解をしてしまうおそれというのは否定できないだろうと思っています。

 ただ、そう多くはないと思いますが、そういう改ざんがあったら一切公告として無効にしてしまって、もう一度全部やり直さなければならないということになりますと、影響するところが非常に大きいわけでございます。それと、極端な話、官報や日刊新聞紙における公告の場合でも、内容が誤ることはあり得るわけでございまして、そういう場合には訂正公告を発刊するということで対応するということになっておりますので、やはりそういう改ざん等に対しても、迅速に気がついて訂正をしたような場合に、すべて無効にしてしまうというのはやはり酷ではないか、そういう場合には一定の範囲で救済をすべきではないかと。

 また、訂正公告もその後ずっと掲載されるわけでございますので、その最初に見た方が念のために確認をして気がつくということも十分あり得るだろうと思っておりますので、そういった意味では、今回の救済措置のように、期間を限定し、かつ、気がついたときには訂正公告を直ちに出して、そういう場合に救済するんだということにすれば、被害を受ける方というのは非常に少なくなるだろうとは思っております。

 完全にゼロになるかと言われると、それはありますが、やはり制度全体を考えますと、この程度の救済措置を講じないと、公告制度そのものの円滑な運用ということからすると難しくなるのではないか、こういうことを考えたわけでございます。

漆原委員 公告の中断が公告の効力に影響を及ぼさないための要件として、中断が生じた期間が全体の十分の一を超えないということが要求されておりますけれども、公告期間の長さによって、この十分の一というのは相当長期になる場合が予想される場合があるわけですね。参議院でも質問がなされておりますが、改めてこの十分の一という期間設定の合理性についてお尋ねしたいと思います。

房村政府参考人 公告が中断する理由としては、先ほどの指摘がありましたような改ざん、いわゆるハッカー等による改ざんというものもありますが、一番あり得るのは、やはりサーバーのメンテナンス、そういったものを定期的に行うためにその間中断するという場合が多いのではないかと思っておりますが、これは、公告期間が長期になれば、当然そういうメンテナンス等の必要性も合計して長期間になるということが考えられますので、やはり中断期間を定める場合には、画一的に中断期間を何日あるいは何時間とするよりは、公告期間に応じたものとする方が合理的だろうと思っております。

 また、パブリックコメント等でいろいろ聞きましたが、やはりある程度の期間が欲しいという声も出ておりまして、そういうことを総合いたしますと、掲載期間中の九割、それが掲載されていれば、通常アクセスする場合にはほとんど見れるわけでございますので、その程度の数字で、しかも、これを故意あるいは重過失というようなことで、公告をいいかげんにするためにやっているような場合には期間の長短にかかわらずこれは認めないわけでございますので、やはり重過失がないような場合、あるいは正当な理由がある場合であれば、その程度の期間について救済をしても、見る方々にとってもそう大きな不利益を及ぼすことはないのでないか、こう考えております。

漆原委員 時間がなくなりました。

 最後に大臣に、今回の公告の中断の救済規定を設けた、このことについては大臣の見解をお尋ねしたいと思います。

野沢国務大臣 電子公告は、インターネットを利用しまして公告をホームページに掲載して所要の目的を達しよう、こういうことでございますので、サーバーのダウンとか、公告期間中に公告内容の情報がホームページに掲載されなかった期間が生じた場合、あるいはハッカーによる公告内容の改ざんなどによって公告内容とは異なる情報が掲載されてしまった期間が生じた場合には、何らかの救済規定を設けない限り、公告自体が無効となってしまうことが考えられます。

 しかしながら、公告の中断が生じた期間が全体の公告期間に占める割合がわずかであったり、またそのことについて公告をする会社に大きな落ち度がないような場合にまで一律に公告を無効としてやり直しをさせることは、会社にとっては酷でありますし、また株主等の公告の名あて人初め関係者を混乱させることにもなりますので、電子公告制度の利用をちゅうちょさせる要因にもなりかねません。

 そこで、公告の中断について、所定の要件を満たす場合には公告の効力に影響を及ぼさないとする救済規定を設けたものでありまして、この規定には十分な必要性と合理性があるものと考えております。

漆原委員 どうもありがとうございました。以上で終わります。

柳本委員長 御苦労さま。

 山内おさむ君。

山内委員 会社の自由裁量を極力認めて経済活動を活発にしようという考慮があるとすれば、今回採用しました電子公告の規定についても、調査会社を設けることまでの必要もなくて、あと欠陥があれば最後は訴訟で解決するという道もあるわけですから、もう少し自由に、電子公告のみで、自己責任の名のもとに法案を組み立てるということもできたと思うんですが、この点について伺いたいと思います。

実川副大臣 官報や日刊新聞紙によります公告の場合には、印刷物が残るためにいつどのような公告がされたかは客観的に明瞭でございます。

 これに対しまして、電子公告は、公告ホームページへの掲載が終了してしまいますと、いつどのような公告がされたかにつきましての客観的資料が当然には残らないために、公告が適法に行われたかどうかを検証することが困難になります。そのために、電子公告が適法に行われていないにもかかわらず、それを行ったとして手続が進められ、多数の利害関係者に不測の不利益を生じさせるおそれがございます。

 そのような事態の発生を防止するためには、会社の自己責任にゆだねるのではなくして、第三者であります調査機関による調査を介在させる必要があることから、本法律案では調査機関制度を設けることとしたものでございます。

山内委員 だとすると、検証可能な客観的な証拠が残るようにするために調査機関をつくったというふうに理解するんですが、もしそうだとすれば、今度は調査機関が一生懸命きちんとした仕事をしてくれることが保証されないといけないわけで、いろいろな義務を課すことになると思うんです。

 例えば調査会社には、調査委託をした会社に対して、その調査結果について遅滞なく報告をするという義務を課しておりますけれども、まずこの点について伺いたいと思います。

房村政府参考人 御指摘のように、調査機関には調査委託者に対して調査結果を通知する義務を課しております。

 これは、先ほど副大臣から御答弁申し上げましたように、今回の調査機関の設置が、公告が適正になされたということに関する客観的な証拠を後のために残すということを主眼に置いておりますので、調査した結果を調査委託者に対して通知をしていただきまして、調査委託者とすれば、そういう調査結果を、例えば合併とか株式併合などの場合には、公告をしたことを証する書面が登記申請の添付書類とされておりますので、この調査結果の通知を公告をしたことを証する書面として利用することができる。登記所においても、このような法律で定められている調査結果の通知であればその内容等についても信頼ができるということになりますので、そういう意味で、調査機関設置の趣旨をより生かすためにこのような義務を課しているわけでございます。

 そういう登記申請添付書類となる場合以外の場合でありましても、このような法律に基づく調査結果の通知ということであれば、後日紛争が生じたときの証拠資料としての価値も高いということになろうかと思っています。

山内委員 調査機関は、例えば一カ月間の期間調査しなければいけないというときには、どれくらいの割合で委託会社のホームページを見る責任があるんでしょうか。

房村政府参考人 これはまだ確定しているわけではありませんが、やはり、今考えているところでは、六時間ないし八時間程度に一回はアクセスをしていただく。これは、調査会社とすれば、当然そういったプログラムを開発いたしまして、自動的にあらかじめ届けられていますアドレスにアクセスをして、そこのホームページを見て、そこの掲載されているファイルとあらかじめ届けられた公告内容のファイルとをこれまたコンピューターに基づいて自動的に比較をする、そういう作業をすることになろうかと思います。

山内委員 もし八時間だとすると、ホームページを見た時点から以前の七時間五十九分と、以後の七時間五十九分と、それを足した数字が公告をしていなかった期間ということになるんでしょうか。どう考えたらいいんでしょうか。

房村政府参考人 例えば八時間置きにということであれば、ある回に見たときにそのファイルが掲載されていないというときに、最長十六時間掲載されていなかった可能性がある、そういうことはあり得ると思いますが、一般的に言えば、例えば占有で前後あれば真ん中が推定されるのと同じように、調べた期間で、特にアクセスしたときに常に確認できれば、それはその間は推定できるんだろうと思います。

 ただ、申し上げましたように、アクセスしたときに、たまたまそのときに掲載がされていない、こういうことがあれば、そのときの中断期間としては最大限、例えば八時間に一回であれば十六時間掲載が中断していた可能性がある、そういうことになろうかと思います。

山内委員 それから、調査機関に対しての費用はどれぐらいになるんですか。

房村政府参考人 これはまさに調査機関と依頼者との間で決まる事柄ということになります。

山内委員 調査機関が六時間、八時間ぐらいの間隔で調査をする、帳簿等の備えつけも厳格な適用が要求されているということからすると、調査機関に対しての報酬はそう軽くない、金額が少額ではないような気がするんですが、この電子公告を採用した趣旨が、簡便でコストも安いという採用理由から考えると、もう少し調査会社への金額面については、例えば大手の新聞社よりもこうなりますというような具体的な基準を考えていなかったんですか。

房村政府参考人 今回、調査機関を登録制ということにいたしておりますのは、一定の基準を定めることによりまして自由に参入をしていただく、そこで経済原理に基づいた競争がなされることによって、調査費用もいわば競争の結果低くなっていくのではないかということを考えているわけでございます。

 これは、どういうところがどのような体制で調査をするかということによって当然コスト面は違ってこようかと思いますが、基本的に、例えば従来からコンピューター等の設備を持っているところであれば、新たな投資としてはソフトウエアの開発という程度で済むわけでもありますので、そういうところであれば、それほど高額の費用を請求しなくてもコスト的に成り立つということは十分考えられようかと思います。

 我々とすれば、具体的な技術進歩の速さということまで考えますと、こちらで調査費用としてどういう水準というようなことを示すのではなくて、まさにそういった経済合理性に基づく当事者の活動によって費用が低廉になっていくということが望ましいのではないか、こう思っています。

    〔委員長退席、下村委員長代理着席〕

山内委員 例えば一カ月間の公告期間が必要だというときに、最初、ホームページで立ち上げた画面と、それから二週間ほどたって見た画面とが違うときには、調査会社にはどういう義務がありますか。

房村政府参考人 画面が違うというのは公告内容が変化してしまっているということかと思いますが、調査会社の調査というのは、まさに、あらかじめ届けられた公告内容と、それから自分が調査したときに現実にインターネットで閲覧できる公告内容が一致しているかどうかを調査いたしまして、それを調査結果として通知をするということになります。

 ですから、もし一致していなければ、何月何日にアクセスしたときにはあらかじめ届けられた公告内容と違うものであった、こういう調査結果が結果の通知として行くということになります。

 ただ、そういう、仮に何か違ったときに直ちに依頼会社に連絡をするかどうかというのは、まさに調査依頼の契約内容によるのではないか。常識的に考えれば、中断があったり公告内容が例えば改ざんされて違ったりしていることに調査会社が気がついたら連絡してくれということを当然依頼会社としては当初の調査依頼契約の内容として盛り込むのではないかとは思われますが、それはまさに当事者の関係ということになります。

山内委員 そうすると、改ざんについての発見あるいは委託会社への報告通知義務というのは、この法律上は読み込めなくて、委託会社と調査機関との間の個別の契約に頼る。しかも、その内容については契約内容に盛り込むかどうかも契約当事者の自由であるということになるわけですか。

房村政府参考人 基本的に、電子公告をする場合に、その公告を継続して同一のものを掲載し続けるというのは公告をする会社の義務であるわけで、通常は、当然、サーバーのメンテナンス等をきちんとして、それが中断することのないように、あるいは改ざんをされることのないように配慮を払っているはずでありますし、また、改ざん等がされた場合に発見できるような措置も講じているんだろうと思います。

 調査会社の役割は、あくまで、その公告がきちんとされていたかどうかということをチェックして、それを客観的な証拠に残すということが、この法律が予定している調査会社の役割でございます。

 ただ、気がついたときにそれは連絡をしてくれというのは、普通、調査を依頼すればそういうことは多分期待するでしょうし、そういう内容が盛り込まれるのではないかと思っていますが、あくまで、この法律で調査機関に期待している役割は、その公告が客観的にきちんとされたかどうかという証拠を残してもらう、そういうことでございます。

山内委員 ですから、合併なら合併の公告が、その内容が改ざんされようが改ざんされまいが、載って、八時間置きに見て、この委託会社がした公告の内容が載っているということだけについて法律では予定していて、あとは当事者の問題だということになれば、それはやはり、調査会社の能力がきちんとしていないと、私は信頼性に欠けると思うんです。

 例えば、調査会社が一カ月間の間の二週間で倒産したときにはどういうふうになりますか。

房村政府参考人 例えば、倒産をしてしまってその後の確認ができなくなってしまった、こういう場合ですか。

 基本的にはそういうことのないように、調査機関の例えば財務内容等を明らかにさせて、それをチェックして利用していただくという仕組みにしているわけですが、万一そういうことが起きた場合には、それはやはりそういう調査機関を選んだところとして、その調査結果がないということになります。したがって、他の何らかの手段でその公告が要件を満たしているということを立証していただく。例えばみずからのサーバーのログをとっておいて、そういったものを使って法定の期間きちんと公告をしているということを立証するということになろうかと思います。

 その場合に、その調査機関が倒産してしまったために結果通知が得られないということであれば、それ以外のそういう立証を認めるということになろうかと思います。

山内委員 しかし、その結果通知というのは、公告の期間が満了して、一カ月間何事もなかったですよという通知を出すという形を当然の前提としているわけですから、倒産の場合に、一カ月要求されている公告期間中に二週間目で倒産したからといって、その二週間目の結果通知義務というのはないでしょう。

房村政府参考人 いや、ですから、その調査機関が調査途中で倒産してしまった場合には、公告の要求されている期間すべてについての調査結果というのは得られないわけでございます。

 私が申し上げたのは、そういう調査結果が得られないからといって、法定の期間公告をしていた場合に、その公告が別に無効になるわけではありませんので、ただ、その立証手段として、法律が予定している最も確実な調査機関の調査結果というものが利用できなくなるわけでございますが、だからといって、その公告が有効にされたということを他の手段でおよそ立証できないというわけではありませんので、そういうものが利用できなくなった場合には、その会社の方で、そういったログであるとかその他のものを利用して、そういうことを立証していただくことになるであろうということを申し上げたわけであります。

 また、調査機関を利用する会社としては、そういうことを避けたいということで、今回の法律で、調査機関等に財務内容を開示させるというようなことも要求して、適切に選べるように、そういうリスクのないところを選べるようにという配慮はしているわけでございます。

山内委員 どんな決算内容のいい会社であっても、今の経済状況のもとではわからないわけでしょう。それに、新しい会社というか調査機関という仕組みを立ち上げるわけですから、それこそ、どれぐらいの採算があって、どういう収入があって、どういう支出があるかというのもわからないと思いますし、倒産した場合についてのことをもっと議論して法案を出すべきだったんじゃないかと今議論して思います。

 それからもう一点は、委託会社が調査機関を変更する権利はあるんですか。つまり、一カ月間のうちの半分ぐらいのときに、どうしてもその調査機関というのは不十分なのでかえたい、そういう権利はありますか。

房村政府参考人 こちらとしては、公告をする事前に調査機関に調査の依頼をしていただく、その調査機関に対して、公告のアドレスであるとかその期間であるとか、そういったものを申込書に記載していただいて、また、調査機関の方からは、そういった内容をあらかじめ法務省の方に知らせていただいて、法務省のホームページのリンク集に登載をする、そういう形で運用を考えておりますので、基本的に、公告期間中に調査機関がかわるというようなことは、この法律では想定はしておりません。

山内委員 非常に想定していないことが多い。

 ちょっと例を挙げますと、例えば四百六十二条の第三項では、法務省令で定めるところによりという文字が、その三項という一つの項だけで二カ所出てくるんですね。それから、もっとひどいのは、四百七十一条に、「調査機関は、法務省令で定めるところにより、」云々と、この一項だけで三カ所、「法務省令で定める」「法務省令で定める」「法務省令で定める」というような記載が出てくるんですが、これは、法案をつくっていて、ちょっとみっともなくなかったですか。

房村政府参考人 私どもとしても、いささか、法務省令で定めるというのが多過ぎるのではないかとは、そういう指摘を受けますとそういう感も持つわけでございますが、ただ、例えば四百七十一条で言っております、法務省令で定めるところにより帳簿を備えというのは、これの中には、備えつけ期間、保存期間ですね、これをどうするかというようなことを定めるつもりでございますが、これを法律で書きますと、特にこういう電子的なものについての技術進歩を考えると、保存期間等についても状況の変化に応じて変えていかなければならない場合も当然あるだろうと思いますので、これはやはり省令で決める方がふさわしいのではないか。

 また、電子公告調査に関し法務省令で定めるものを記載しという、その記載すべき事項についても、今後の公告の運用状況を見ながら、場合によれば省令で変えるということもあり得ると思っておりますし、また、帳簿に準ずるものとして法務省令で定めるものという、これは現在のところCD―ROMであるとかDVD―Rを考えておりますが、今後、新しいものが当然出てくることもあり得るだろうと思います。

 そういたしますと、やはり特にこの分野については変化が激しいものですから、そういうときに、法律の本文で規定をして、そういう技術変化に対応するたびに法令改正を行わなければならないというのはなかなか大変ではないか、そういう点は省令で迅速に対応したい。そういう考慮をしていきますと、だんだん法務省令がふえてしまって、確かにこの条文だけを見ますとわかりにくいという御指摘を受けるのももっともかなとは思っておりますが、実際の運用に当たりましては、当然この省令等の内容を国民にわかりやすい形でお示しをして、現実に使うときにその不便の生じないような配慮をできるだけしたいと思っております。

山内委員 調査機関が委託会社から電子公告の調査を依頼されたというときに、何かの手違いで法務省の公告リンク集に掲載をしなかった、そのために利害関係人が法務省のリンク集を見ることができなくて、電子公告も結局見ることができなかったという場合に、一般債権者あるいは株主に対してはどこが責任を負うことになるんでしょうか。

房村政府参考人 今回、法務省のホームページに公告のリンク集を設けるということとしたのは、これは行政サービスとして、やはり債権者あるいは株主等が公告をする会社のホームページを各別に探していくというのはなかなか大変ではないか、こういうことから、法務省のホームページに集めて、そこを見ればわかるようにということを考えているわけでございます。

 これは法律上の義務ではありませんが、やはり、そういうリンク集を見ればわかるという国民の信頼というのは当然あると思いますので、法務省のリンク集に掲載されなかったということと、最終的に公告をその方が見れなかった、あるいはそのことによって具体的に損害が生じた、そういうことについての相当因果関係が認められ、かつ、公告リンク集に掲載されないことについての故意あるいは過失があるということになれば、損害賠償責任を負うということもあり得ようかとは思います。

山内委員 もし、調査会社が法務省、法務局に連絡をして、法務局の方でそれをリンクサイトに載せていなければ、それは法務省が国家賠償責任を負うという理解でよろしいんでしょうか。

房村政府参考人 通知を受けるのをオンラインですることとしておりまして、それについては自動的に加工してホームページに掲載するというような仕組みにするつもりでございますので、通知があれば載らないということはほとんどないとは思っておりますが、万一、そういったことについてこちらの過失でリンク集に載らなかった、しかも、リンク集に載らなかったということと債権者等が公告を見れなかった、そしてそのことによって損害が生じた、そういうことに相当因果関係があるということであれば、国家賠償責任を負うということもあり得ると思っております。

山内委員 ホームページについて、例えば電子公告を行うホームページを、ホームページアドレスを複数つくって、一つが認められなくなってもほかのページが見られるようにしておくことも安全策の一つかと思うのですが、この改正案ではそういうことは予定していることなんでしょうか。

房村政府参考人 そういうことは、いわば万全を期して行いたいということであれば可能ではありますが、ただ、電子公告をする場合のURLを登記していただいていますので、登記をしたURLから必ずリンクがされているというその必要性はございますが、具体的な公告を掲載するホームページが複数あっても、登記事項となっておりますURLからいずれもリンクが張られていれば、それは公告として有効に掲載されているということになります。

山内委員 結局、侵入者によって書きかえられるということを非常に心配するものですから聞くんですけれども、もし書きかえられて間違った情報を信じた利害関係人は、ハッカーですか、そういう侵入者に対して損害賠償を求めたり、あるいは刑事上の制裁についてはあるんでしょうか。

房村政府参考人 もちろん、ハッカー等が特定できて、その人間が改ざんしたことと債権者に損害が生じたこととの間に因果関係があれば、それは民事上の損害賠償をするということは可能ではないかと思っています。

 それから、刑事的なものとしては、これももちろん事案によるわけですけれども、いわゆる不正アクセス禁止法に違反するというようなこと、あるいは電磁的記録の不正作出罪であるとか電子計算機損壊等業務妨害罪、こういったものに該当する可能性はあろうかと思います。

山内委員 大臣、最後にお聞きしますけれども、結局、調査機関というのは、今までにない新しい仕組みをつくるわけなんです。その調査機関について、もちろん信頼がないといけません。調査機関が十分に機能するためには、調査機関に、先ほどから出ています、財務内容をしっかりと出させて、帳簿等についての備え置き義務を設けるということはもちろん当然だとは思うんですけれども、そのために法務省が適切に監督を行うこともやはり必要だろうと思っていますが、この点についての大臣の御所見を伺いたいと思います。

野沢国務大臣 委員御指摘のとおり、この調査機関制度は、適法な電子公告が行われることを確保するために極めて重要な制度であります。そのために、この法律には、調査機関が登録基準に適合しなくなった場合のための適合命令、さらに、電子公告調査の方法に問題がある場合の改善命令、また、調査機関が電子公告調査を行う義務等の各種義務に違反した場合等の業務停止命令、登録取り消し、さらには報告徴収、立入検査等の法務大臣によるさまざまな監督権限に関する規定が置かれておるわけでございます。

 この法律が成立し、施行されました場合には、これらの監督権限を必要により適切に行使しまして、適法な電子公告が行われますよう、万全の配慮をしてまいる所存でございます。

山内委員 終わります。ありがとうございました。

下村委員長代理 永田寿康君。

永田委員 民主党・無所属クラブの永田寿康でございます。

 まず、ちょっと出張していただいたので、金融庁の方々にお越しをいただいていますので、そちらの質問を先にしておきたいと思います。

 今回の法案は、電子公告法案と言われまして、要するに、今まで官報や新聞公告などで行ってきた各種の情報提供について、インターネットのホームページでもできるようにするという法案でありますが、広い意味で考えれば、これは、株主や、あるいは利害関係人、債権者等々、あるいは企業の顧客などに対する情報提供という意味で、ガバナンスにも大変影響があり得る法案だというふうに思っています。

 特に決算については既にインターネットでの公開が認められているわけですが、インターネットで完全に、迅速に公開をするというのは意義深いことではありますが、意味のない情報を公開しても意味はないわけであります。ですから、企業の決算が、非常にわかりやすく、そして明白な基準で、意義のある情報が的確に届けられることが、これが大事なことだというふうに思っております。

 しかしながら、そういう観点で最近の企業決算を見ておりますと、特に金融関係で見過ごせない事件が多発をいたしております。昨年は足利銀行や、りそな銀行が事実上の破綻。りそなは破綻じゃないというふうに金融庁はおっしゃっているわけですが、ユーザーからしてみれば、事実上破綻に近いような印象を受ける事件がありました。そして、ことしになりまして、UFJが決算の見通しを発表しておりますけれども、これも、当初、一千数百億円ですか、黒字になるというようなものだったのが、二回にわたって下方修正をされて、四千億円余りの赤字となる、そして、これがいわゆる三割ルールに抵触をして、幹部が事実上更迭に追い込まれるというような事態に立ち至っています。

 果たして、企業の株主あるいは債権者、利害関係人等々から見てみると、このような決算というのは一体何なのかというふうに感じている方々がいらっしゃると思います。

 まずは第一段目として、このUFJ銀行の決算について、なぜこのような事態に至ったのか、経緯を簡単に説明していただきたいと思います。

    〔下村委員長代理退席、委員長着席〕

西原政府参考人 御説明申し上げます。

 今回のUFJの決算、この過程において、一回、四月の二十八日に業績の予想修正、下方修正をした。さらにその後に、五月の二十四日になって決算短信を発表したということで、そのときには、今御説明がありましたように、四月二十八日の段階では黒字で浮いていたはずだ、それが最終的に、五月の二十四日の段階では大幅に、四千億を超えるマイナスになっている。こういうようなことで、それはどういうことなんだ、こういう御指摘でございます。

 四月の二十八日それから五月の二十四日、いずれの開示につきましても、東京証券取引所のいわゆる適時開示規則、これに基づいて発表しております。

 そうした中で、今回このように大幅な修正を行ったのは何だろうということでございますが、UFJの発表を聞いてまいりますと、不良債権の半減目標を達成するために何をすべきかというのを真剣に議論した結果、半減目標を完遂するためにはあえて引当金をふやすことが、銀行にとっても株主にとってもメリットがあると判断して実施に踏み切った結果、大幅な下方修正となった、こういうことを説明しております。

 すなわち、若干補足いたしますと、不良債権の半減目標を達成すると申しますのは、我々は、金融再生プログラムに基づきまして、平成十四年三月期の不良債権比率、これを平成十七年の三月期には半減させようということで、実はその十七年三月期といいますとあと一年しかない、こういう状況に至っております。したがって、この半減目標に到達するためには、今何をすべきかというのを真剣に考えたら、これは引き当てをもっと積み増さなきゃいかぬ、こういうふうな判断に至った、こういうことのようでございます。

永田委員 半減目標は、これは金融再生プログラム、つまり政府サイドの話でありますから、これに従うのが株主と銀行に対するメリットになるんだという判断をした、自主的に判断をしたということですが、金融再生プログラムのスケジュールに合った決算になるかどうかというのは、金融庁の当然の関心事項だというふうに思います。

 これは、大きく分けて多少の黒字の決算と大きな赤字の決算と、二種類とは言いませんが数字は出ているわけで、この二つについて、両方とも当局は関知をしていたんですか。つまり、UFJからの説明というのは、黒字のときにもやはり受けていたんでしょうか。

西原政府参考人 私ども、まず流れといたしましては、四月の二十三日に検査結果が通知されております。それで、その検査結果を通知いたしたタイミングで、我々としましては、その検査結果がちゃんと反映されるようにということで、それについての報告を求めます。報告徴求という形で、一方では銀行法二十四条に基づいた手続をとってございます。

 そうした中で、UFJが発表しましたのは、検査結果通知を受けた後、数日たった四月の二十八日の段階で、それは彼らの判断として、こういうふうなことになりましたということで、検査結果を全部織り込んだ結果、四月の二十八日の段階ではこういうふうになりましたというのを自主的に発表したものでございます。

 一方で、五月の二十四日の段階においてはどうかと申しますと、四月の二十八日の段階では決算取締役会ということで一回やりまして、そこで書類等を作成した上でそれを監査法人に託します。そこで、監査法人がチェックを今度はしていく。それで監査法人のチェックも受けながら、五月の二十四日に向けて決算を取りまとめていく。それで五月の二十四日に、その結果として、決算短信という形で発表になった、こういうことでございます。

永田委員 株主や利害関係人や、あるいは私のように金融業界をそれなりにウオッチしている立場からすると、非常にわかりにくいというか、これがすべて正しい手続にのっとって行われたというのであれば、これは東証の適時開示に従って世に広められた、開示された当初の決算方針というものは、有害無益というか、人心を惑わす以外の効果はほとんど発生しないのではないかというふうに私は思っています。

 これは、制度に問題はないんでしょうか。決算の安定性、予見可能性という観点から見ると、こういうような事件というのは極めて例外的なことだとは思います。しかし、例外的なことであっても、これほど大きな数字の変動があるようでは、例外的な場合には制度上の欠陥が露呈することがあり得るのではないかというふうに見るのが僕は正しいことだというふうに思っているんですけれども、これはやはり、今まで行ってきた手続というのは、株主の権利の保護あるいは予見可能性、こうした観点から見て正しいもの、適切なものだというふうにお考えでしょうか。

西原政府参考人 決算を作成する過程において、ある時点ではこういうような下方修正が必要だということで発表した、それが一カ月をたたないうちにまた別の判断に至った。こういうことにおいては、やはり経営上何らかの判断があってなされたものというふうに理解しておりますが、その結果として、今御指摘のようにこういうような大幅な下方修正になったということについて、頭取の方も発言していることですが、このために投資家に迷惑をかけ反省しているというような発言もしております。ただ、一方で、投資家に対してうそをついたつもりはない、こういうような説明もしているところですが、そういった観点で、それでは制度上何か問題はないのかという御指摘でございました。

 それで、実際のところ適時開示の規則というのはどういう場合に行われなければいけないかというのが書いてあるわけですが、一つは、決算の内容が定まったとき、五月の二十四日に決算短信として発表したのはまさにこのタイミングでございます。もう一つは、売上高、経常利益もしくは純利益において公表された直近の予想値と新たに算出した予想値または決算との間に一定以上の差異が生じた場合、この場合には直ちにその内容を開示しなければならない、こうされているところでございます。

 今回、そういうような形で二段階にわたって適時開示がなされたわけですが、実際上、その間において、実は五月の十七日と五月の十九日に新聞報道でいろいろな報道が出ました。もっと大きく下がるのではないか、あるいは住友信託との関係で何か新しいことが起こるのではないか、そういうような報道がなされたものですから、そのタイミングにおきましても同行に、その業績に関する記事が掲載されたものですから、東京証券取引所の方では、そういったことについての事実関係はどうなんだということで、UFJに対してもそれを確認しております。

 確認したところで、いずれの段階でも、五月二十四日付の決算発表に向けて現在精査中であるが、現時点では詳細な数値は確定していないという旨の回答を行って、その旨も適時開示をされております。そのような形で、情報はその段階、その段階で適時開示するというようなことになっております。

 一方で、投資家保護という観点からは、証券取引法という、そこでの投資家保護に対する規定はあるんですが、その場合には、いわゆる事業年度経過後三カ月以内に有価証券報告書を提出する義務がある、上場企業についてはそういうことになっているわけですが、臨時報告書によって業績予想を開示するということは求められておりません。証券取引法上は、そういうふうな形になっている。一方で、東証の適時開示のルールでは、今御説明したような形で直ちにその内容を開示しなければいけないという規定もある。

 そういったことで、実際上は、業績予想につきましては、いろいろな経済の状況の変化とかあるいは経営判断、いろいろなことがあって、そこにある程度予想として差異が生ずるのはやむを得ないというようなこともございまして、その業績予想修正が、予想が大幅に乖離したということ自体に問題があるというような取り扱いには東証としてもしていないというふうに聞いております。

永田委員 判断の流れといいましょうか、決算を作成する上での判断の流れ、情報開示の流れについてはおっしゃるとおりなのかもしれませんが、やはり、根元的な問題として、債務者区分が余り明瞭でない基準でなされている。一応、事務ガイドラインもあるし、金融検査マニュアルもあるわけですけれども、こうしたものが一般の人に広く知れ渡っているわけでもないし、また、その基準に従って債務者を区分しようとしても、人々の、債務者区分をしようとする人の判断がある程度介入する余地があって、その区分の結果を簡単には予想できないという問題がやはりあるんだと思います。それが決算の不安定性につながっているんだと思うんですね。

 やはり、非常に大きな決算の変更が行われるような、その原因となる債務者区分の変更、それに伴う引き当ての積み増しということを考えますと、その影響の大きさを考えますと、債務者区分がもう少し客観的に、機械的にできる必要があるのではないかと思っているんですが、そこについては、金融庁は、現行制度に問題ありとは考えませんか。

中江政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生御指摘の、金融機関が実施する債務者区分あるいはそれに基づく引き当てにつきましては、御案内のように、会計基準、それからこれを踏まえて作成をされました金融検査マニュアルというものがございます。いずれも、これは対外的には公表されているところでございます。また、この会計基準あるいはマニュアルにおきましては、債務者区分ですとかあるいは償却、引き当てに関する検証の考え方がかなり詳細に記載をされているというところでございます。

 ただ、各債務者の経営実態というのはさまざまでございますので、的確な債務者区分とそれに基づく償却、引き当てというものを実施するためには、こういった客観的で明確なルールに基づきつつも、機械的、画一的な対応ということではなく、各債務者の経営実態あるいは信用リスクというものにつきまして、その実態に即しましてきめ細かく検証していく必要があるというふうに考えておるところでございます。

 したがいまして、個々に実態の異なるすべての債務者に機械的に適用できるような債務者区分等に関する基準というものを策定することはなかなか困難ではないかというふうに考えられるところでございます。

永田委員 もう一つ、去年の足利銀行などのときに問題になりました、繰り延べ税金資産を自己資本に算入できる限度額のお話ですけれども、昨年の十二月の閉会中審査で私が申しましたところ、いわゆる監査法人が監査をした結果としてつくられる決算とは別に、金融機関の健全性を判断する上で指標となるような基準を設けるべきだと私が申しましたところ、五味さんでしたね、政府参考人でいらした五味さんが、半年以内にはその基準づくりについて結論を得たいというような願望で今検討を進めておりますというお話でありました。この作業状況と、それから検討内容について御説明いただきたいと思います。

西原政府参考人 お答えいたします。

 繰り延べ税金資産の関係につきましては、先生御指摘のように、これを監督上どういうふうに取り扱うのかという点につきまして、金融審議会の中に自己資本比率規制に関するワーキンググループ、こういうのを設けまして、これを昨年七月までもずっと議論してきて、途中で経過報告というのをまとめたりしたんですが、その後につきましても、秋以降、また立ち上げまして、現在に至るまで引き続き議論をしているところでございます。

 そこで、これまでの議論でございますが、この繰り延べ税金資産につきましては、その資産性が、将来の課税所得、こういったことに依存しているというようなことでの脆弱性、それからもう一方で、金融機関が破綻した場合にはこれが無価値になってしまう、そういったことにおける脆弱性、これがある。したがいまして、この繰り延べ税金資産の自己資本に対する割合というのは、将来的にそれを低下していくということは非常に望ましいことである。こういった点では、認識はおおむね一致したというところにございます。

 しかしながら、それじゃ、それにどういうふうな形で取り組んでいくのかという取り組み方法、あるいは考慮すべき問題点、事項、そういった点については、意見がかなりさまざまに分かれている、こういう状況にございます。

 しかしながら、そういったことを踏み台にしながら、現在、議論が行われておりまして、今御指摘の繰り延べ税金資産の算入の適正化といった問題については、法律上の問題あるいは会計上の問題、税制上の問題、いろいろ複雑に絡み合っているものですから、そういった中で、やはりきちっと算入制限をすべきなんだという積極的な意見がある一方で、もう一方では、監査法人が非常に厳しいチェックをしておる、そういった中で、監督上の措置は監査法人のそれに任せればいいんではないかという逆の議論もある。そういった中で、今、さらに議論を積み重ねている、こういう状況にございます。

 いずれにしましても、現在、取りまとめに向けて検討を続けている、こういうところでございます。(発言する者あり)

永田委員 実は、私が今指摘をしようとしたのですが、自民党の理事からも、ちょっとこれは、にわかには、そのままでは承服しかねるというような表情が見てとれたので、私もそのことを指摘しようと思ったら、御本人から発言があったのでびっくりしましたけれども、やはり問題意識、それは党派を超えて、金融機関の健全性と国民経済の安定性のことを考えると、「半年以内には結論を得たいというような願望で今検討を進めております。」という答弁が去年の十二月四日にあったんですから、いろいろな意見があって、検討すべきことがいっぱいあってなかなか進みません、これから進めていきますというんじゃ、やはり国民がかわいそうだな、そういう不安定な状況に置かれている国民経済がかわいそうだなというふうな……(発言する者あり)自民党の筆頭理事からも、そのとおりだという御発言がありましたので、ぜひそこは、踏まえた上で、より加速をしていただきたいなというふうに思っております。

 金融庁の方々はこれで結構でございます。法務省の方に質問を移したいと思いますので、ありがとうございました。

 それから、先週の水曜日の一般質疑以来きょうまで、私、発言をする機会がありませんでしたので、先週の水曜日、冒頭、日本テレビが北朝鮮に取材に行くことができなくなるかもしれないという事件を私が取り上げて質問させていただきました。

 結果としては、官邸の方の判断と外務省の判断ももちろんあったんでしょう、日本テレビは幸いなことに今回の訪朝に同行して取材をすることができたという話ではあります。

 しかし、その後の波紋は決して小さくはありませんで、各種のメディアがこれに対する論評を行っておりますけれども、簡単に言えば、飯島秘書官が日本テレビの幹部に対して、二十五万トン米支援を報道するのはけしからぬじゃないかというふうに圧力をかけたというのは事実であるというのは、大体どこのメディアも、そういう立場に立って論評しています。

 それから、そのような圧力をかけることはやはり問題である、二十五万トンの米支援の報道をすることは、それは外交の機微に触れることだから、それは控えなきゃいけないというような意見も一部には見られますが、しかし、だからといって、飯島秘書官がこのような圧力をかけることは許されるんだというような、弁護する論調は皆無であります。

 ですから、この問題はいまだに尾を引いているようでありまして、しかも、一部には、結果的に日本テレビは同行できるようになったんだからいいじゃないかというような方もいらっしゃいますが、しかし、現実を見てみると、こんな報道に対する圧力のかけ方があるんだということに、むしろメディアの方が驚いていまして、自己規制というか自己抑制というか、行き過ぎた報道を控えなければならないという気持ちがより強まって、あるべき報道がなされない、あるいは、論調として、やや官邸におもねるような雰囲気ができ始めているというのも、多分、あながち間違った見方ではないというふうに思っています。

 そうした意味でいえば、撤回されたから、つまり、あの圧力が撤回されたからもういいんだというのではなくて、ああいうことは、言った後に撤回するだけでも、かなり問題が起こり得る話なわけですね。

 ですから、そこのところをぜひ、私もこれから引き続き見ていきたいと思いますし、大臣も、これで終わった問題だというふうにお考えいただきたくはないなというふうに思っております。

 前回の質疑では、大臣は、まだ事実関係がわからないという事情があったことで、明確な答弁をお避けになっておられました。しかし、その後、ほかの委員会では、官房長官が、当該措置が不適切であったというようなふうにもとれる発言をされるなど、官邸の方でも幾つかの動きがあったように見ておりますが、現在の大臣の御所感はいかがでしょうか。

野沢国務大臣 御質問の件につきまして、法務大臣として、その経緯を知り得る立場になく、的確なお答えをしかねるということは前回申し上げたとおりでございますが、委員御指摘の、その後の官房長官の発言などを踏まえまして、私も、改めて報道の自由の重要性を再認識したところでございます。

 今後の法務行政においても、御指摘のような問題が起こらないよう努めてまいりたいと思っております。

永田委員 前向きな答弁、ありがとうございます。

 一つだけ、これは答弁は不要ですが、指摘をしておきますと、仮に、あそこで方針が撤回されずに、日本テレビが北朝鮮に行けなかったということになった場合、取材の自由、報道の自由に含まれる取材の自由という基本的人権が侵害されることになるわけです。

 果たしてこの基本的人権を救済する方法があるのかということを考えますと、裁判所に日本テレビが訴えて、いやいや、おれたちは報道をする自由があるはずじゃないか、取材をする自由もあるはずじゃないかというふうに裁判所に訴えたところで、救済される見込みがあるかというと、それは一部には国家賠償に相当するものだというような話もありましたけれども、やはり同行記者団の人数というのは向こうから、つまり北朝鮮の方から上限が決められていますし、その間で極めてタイトな人数調整をしながらやっていかなきゃいけないわけで、ある程度、記者団を編成する外務省や官邸の方にも裁量がなければならないというのはもう客観的事実でありますから、その裁量が恣意的に運用されたからといって、取材の自由が侵されたというふうに憲法判断までするようなことが起こり得るかというと、私は若干悲観的に見ております。

 そして、加えて、仮にここで裁判が起こって憲法判断がなされて、そういうような圧力をかけるのは国の権力の濫用に当たるんだ、だからそれは救済されるべきだという判断を裁判所がしたところで、では、国家賠償、つまり現金で経済的にその補償はされるかもしれないけれども、いわゆる取材の自由が回復できない、取材の自由が侵されたということもやはり事実なわけですね。つまり、北朝鮮の会談は、あの先週の水曜日から考えるとわずか三日後に行われたわけで、それまでに最高裁判所がこれは違憲だから連れていかなきゃいけないという判断をするとはとても思えない。

 そういうことを考えると、救済が絶対できないような人権侵害が起こる可能性があったという重大性もぜひ指摘をして、法案の中身の部分に入っていきたいというふうに思っております。

 さて、先ほど来、うちの山内委員が調査機関についてのかなり突っ込んだ議論をしていて、幾つか気になる部分があったので、ちょっと教えていただきたいんですけれども、調査機関というのはみなし公務員的なものになっているんでしょうか。つまり、みなし公務員にしていなければ買収とかをされちゃう可能性もあるわけで、その立場についてどのような規制がかけられているのか、教えてください。

房村政府参考人 この調査機関につきましては、登録制を採用しておりまして、会社としてはいわゆる純粋に民間の存在でございます。

 ただいま御指摘のような、例えば調査に関して違法な調査をするというようなことについては、業務改善命令等で対応するということを考えております。

永田委員 つまり、これは、みなし公務員並みの買収に対する歯どめとか、そういうことというのはかけられていないわけですね。

房村政府参考人 みなし公務員としては扱っておりません。

 したがいまして、ただいまも申し上げましたが、その調査結果の通知等で虚偽を通知するというようなことに対しては、法務大臣の業務改善命令、こういう形で対応をすることになっております。

永田委員 しかし、虚偽かどうかを証明するのもこれまた難しい話でありまして、そういう法務大臣からの業務改善命令で対応するといっても、それは空文化した制度ではないかなというふうにちょっと思っていますが、一方で、これは公告が適法になされているということを証明する機関なわけですけれども、内容が正しいことであるかどうかは証明する責務はないわけですね。

房村政府参考人 この機関の役目は、会社がこういう内容を公告した、そういう事実を客観的に裏づけるといいますか、客観的な証拠をつくるということが役目でございます。

永田委員 内容が正しいかどうかを見れないというのはどうも不思議な気がするんですけれども、一方で、これは悪意ある運用がなされたときに、実は大きな混乱というか被害、損害が出る可能性があるので、徹底的に悪意にこの制度を利用したときにどうなるのかということを、ちょっと頭の体操をしてみたいんです。

 ロサンゼルスに住んでいるときに僕がびっくりしたのは、あの町には鉄道がほとんどないんですね。何でかというと、昔は立派な鉄道網があったそうですが、その鉄道会社の株を悪名高きゼネラル・モーターズという会社が買い取って解散しちゃったんですね。それ以来、自動車網は発達するけれども、鉄道はほとんどなくて、今一生懸命つくっている、そういうような町になってしまったんです。

 例えば、MアンドAとか減資とか、こうしたことを公告した。調査機関が、ではこれから何カ月間か公告をするというような義務を会社が果たしているかどうかをチェックしていた。ところが、悪意ある第三者が、公告期間中に、まだその義務が完了していない段階でその調査会社を買い取って解散してしまった。そうすることによって公告の義務が未達になってしまって、MアンドAとか資本の減少とか、そういう重大な手続が滞るような事態が発生する、こういうようなことが起こり得るんじゃないのかな。しかも、これは会社を買い取って解散するだけですから、合法にできるんですね。これはどうやって歯どめをかけるのかというのをちょっと教えてください。

房村政府参考人 基本的には、調査機関の調査というのは継続してやっていただかなければならないということで、この法律では、「調査機関は、電子公告調査の業務の全部又は一部を休止し、又は廃止しようとするときは、法務省令で定めるところにより、あらかじめ、その旨を法務大臣に届け出なければならない。」ということで、事前に余裕を持って届け出てもらう、また、廃止した場合にはそういった持っている資料等を引き継がなければならない、このような規定を置いて、できるだけそういったことには対応できるようにしております。

永田委員 何とかその制度がうまく回ればいいなと思います。

 一方でホームページでさまざまな情報を公開して、一方で官報とか新聞公告の方はしなくてもいいということではありますが、これは両方やってもいいわけですね。両方やった場合、どちらの方が優先するのかということはちょっとお伺いしておきたいと思います。

 というのは、二つの手段で情報公開を行うと、同一であればいいんですが、必ずしも同一でない場合、どっちかの方が優先するということを決めておかないと、見た方は戸惑ってしまうんじゃないのかなと思うんですが、そこはいかがでしょうか。

房村政府参考人 今回の電子公告の制度は、従前、日刊新聞紙に公告をすると定款で定めるとそちらができるということになっていた、この部分について、新たな選択肢として電子公告を加えたわけでございますので、電子公告を採用した場合には日刊新聞紙に対する公告はいたしません。

 官報との関係でいえば、問題になりますのは、まさに今回の債権者保護手続等で官報それから電子公告または日刊新聞紙の公告、双方を併用している場合、これは当然のことながら、同一内容でなければそういう効果は生じないわけでございますので、双方が違うということは制度的にはあり得ないようになっております。

永田委員 いや、制度上は同一であることを予定しているんでしょうけれども、何かの間違い、手違い、何かあるかもしれない。しかもこれは、間違いでした、手違いでした、制度が予定していないことでしたで済む話ではないんですね。だから、どっちかが優先するということを決めておかないと、同一でなかったことによって生じた損害を救済する上で不都合が生ずると思うんですが、それは決めておられないんですか。

房村政府参考人 ただいまも申し上げましたように、複数の公告がされるのは、債権者保護手続の個別催告を省略するために官報と日刊新聞、または官報と電子公告、こういう場合になります。その場合に内容がそごしているということは、少なくとも片一方が公告として有効になされないということになりますので、そういう場合には全体として手続が有効にされないので個別催告ができなくなる、こういうことになります。

永田委員 なるほど。要は、そごがあった場合には、全部だめになる、どっちが優先ということではない、そういう判断ですね。うなずいておられるのでそういうことだというふうに思います。

 一方で、ホームページで公告をする場合、実は今の技術では、必ずしも紙に印刷できるとは限らない、印刷できないような技術を用いて画面に表示させることもできるわけです。法律上は、紙に印刷できる形で提供しなければならないということは明白には読み取れないわけですが、紙で印刷することもできるということは保障されるんでしょうか。

房村政府参考人 通常は、ホームページに掲載されているものについては、ブラウザーを使って印刷することができるのが通常でございますが、御指摘のように、技術的に工夫をすれば、見ることはできるけれども印刷することはできない、こういうことも可能であるのはそのとおりだと思っています。

 ただ、既にホームページへの掲載としては、貸借対照表、これを電磁的公示をするという仕組みにして現にやっていただいておりますが、それにつきまして、御指摘のような、わざわざ紙に印刷できなくして、そのことによって問題が生じるというような例は、今のところ全く聞いておりません。また、ホームページに掲載する会社を考えましても、わざわざ手間暇をかけて紙には印刷できないというところまでするかというと、その可能性は非常に低いのではないか。

 ですから、万一そういうことが本当に生じた場合にどうするかということはあり得ますが、現段階で、法律的にわざわざそこを禁止するまでの必要はないのではないか、運用にゆだねても適切な運用がされるのではないか、こう思っております。

永田委員 でも、それは不断の検証を要する話だと思いますよ。

 というのは、紙に印刷できないぐらい何てことないじゃないかと思われるかもしれませんけれども、紙に印刷できなかったら、事実上、持ち歩くことができないんですね。持ち歩くことができないと、みんなノートパソコンを持っていればいいんですけれども、部屋の外にその情報を持っていけないということになりかねない。そうすると、非常に情報の有用性というのが低下するので、それは見ておかなければならない。

 加えて、今回の法改正は政府の方針であるe―Japan計画にのっとったものだというふうに聞いておりますけれども、e―Japanの一環としてなされた政府による情報公開として我々政治家と非常に関係の深いものは、政治資金収支報告書の公開が総務省のホームページでなされるようになったというふうに聞いています。

 ただ、この総務省のホームページで公開される部分、私も現物を確認したわけじゃないんですが、ニュースとして流れているものでは、当初、少なくとも総務省は紙に印刷できない形での提供を考えていたと。わざわざそういうような技術的なコーディングを施してやるという、何を守ろうとしてそんなにコストをかけているのかよくわからないんですが、e―Japanの旗振り役である政府が、また、総務省といったらその中心に据わっている一つの役所ですよ。

 そこがわざわざ手間暇をかけてそういうことまでやるということを考えますと、一般企業に、今のところうまくいっているから、みんな善意でなされるものだというふうな態度をとるのもいかがなものかと思いますので、それはやはり総務省、この制度の実効性を高めていきたい、あるいは確保していきたいというふうに思うのであれば検証作業を常にしていかなければならないと思うし、もちろん検証作業というのは法律には書かれていないわけですが、検証しなきゃいけないということは、見直し規定とか書いていないわけですが、これは国会の意思として不断の検証が必要だということをぜひ御理解いただきたいなというふうに思っております。

 全体的に、株主に対する情報提供は進んできているわけです。そして、それと、持ち合い解消を中心とする株主構造の変化、それから金融市場の環境の変化などから、最近、企業のガバナンスというものが一部変化し始めているのは事実だと思いますが、しかし、いまだにそれは十分ではないと思っています。

 なぜ私がこのことに言及するかというと、かつて私が財務金融委員会に所属をしていたときに、さまざまな株式市場対策がなされました。それは株を買いやすくすること、あるいは売りにくくするということもありました。つまり、空売り規制なんということもやりました。そして、損失が、つまり売買で損失が出た場合には、何年かに繰り越しながら償却をしていけるというような通算規定まで一部実現をしているところです。こうしたことをして必死に直接金融を活性化させようという努力をしているにもかかわらず、なかなか個人投資家あるいは機関投資家が株式市場にお金を出さない、そして企業も相変わらず、お金を調達するのに間接金融、銀行からの金融に頼っている。

 この問題を解決するにはどうしたらいいんですかと、私、金融庁の先輩に相談をしたところ、これは実は法務省の問題も大きいんだよと。つまり、株を持つことによるメリットが希薄であると。

 よく言われるのは、かつては株主が企業の経営に対してかなり大きく発言権があって、実際、その発言権を行使してきた時代があったわけですが、よく言われるのは、戦前戦後ぐらいの時期に、株主の発言力を弱めようという政策がとられて、実際に株主の発言力が弱められて、それ以来、直接金融は本当にお寒い状況になってしまった、それが今でも続いているんだという論調の学者もたくさんいる、むしろ多数派だと僕は見ています。

 そうしたことを考えると、株を持つことのメリット、うまみ、企業に対する発言権、経営に対する発言権、これをもう少し高めていくことによって、健全な資金の出し手としての株主を育てていく、あるいはふやしていくということが求められるんだと思いますが、現在の株主と企業との力関係と申しましょうか、経営、ガバナンスの構造について、よいものだと思っているのか、あるいは、今後改善の余地があるというふうに思っているのか、法務省の見解をちょっと教えていただきたいと思います。

房村政府参考人 確かに、御指摘のように、会社のガバナンスの中での株主の地位、その扱いというのは非常に大きな問題、特に大規模な会社になった場合に、その仕組みをどう考えていくかということは非常に大きな問題だろうと思っています。

 私どもとしては、もちろん、株主に少数株主権等を与えて、その権利をみずから守れるようなという仕組みももちろん大事でございますし、それから、まさに株主が意見を交換する場である株主総会、これをできるだけ活発に利用していただく、そういうことを考えることも大切だろうと思っています。

 ただ、現代のような非常に動きの速い、経営判断に迅速性を求められるような時代に、株主総会のような仕組みで細かいことまで決めるというのは、これは到底不可能でございますので、やはり、会社のガバナンスのあり方を工夫する、そのことによって、結果的に株主の利益が守られ、また株主の意見が反映できるような仕組みを工夫していくということではないか。

 そのために、例えば、従来の監査役について、社外監査役を要求し、その資格を厳しくするということによって経営陣が独走することを防ぐようにしよう、あるいは、経営判断を迅速に行うために執行役に経営権限を大幅に与える、しかし同時に、取締役会に社外取締役をふやして、委員会をふやして監督機能を重視する、そのようないろいろな仕組みを総合することによって株主の利益を守っていくということが必要だろうと思います。

 現在もそういった観点から会社法の見直し作業を続けておりますので、御指摘の点も踏まえて、今後も検討していきたい、こう考えております。

永田委員 持ち時間が終わりましたが、本当に、かつては、やはり持ち合いによって、物言わぬ大株主と物を言う少数株主という株主構造の中で企業の経営とかガバナンスが空洞化していったというのは、もう客観的事実だと思うんですね。最近は、金融市場の環境の変化によって、幸か不幸か、物言わぬ大株主というのはどんどん持ち合いを解消していって、逆に外国人の株主がふえていったという事実があります。また、外国人の方々は企業の経営に対して非常に強い監視をしていく、あるいは発言もしていくという意味で、少し新しいカルチャーが芽生えつつあるんだろうなというふうに思います。

 最後に、法務省、一個だけ褒めておきます。今回の電子公告の法改正というのは、実は、外国に居住する株主にとっては大変メリットが大きいんです。そういう意味で、外国の方々にも、この制度があるんだよということを、あるいは、もうほかの先進国に先駆けてつくった制度ですから、そういうことをぜひ公告して、それこそ通知をして、制度の普及に努めていただきたいと思います。

 以上、ありがとうございました。

柳本委員長 御苦労さま。

 本多平直君。

本多委員 民主党の本多平直でございます。

 四月に北関東の比例で繰り上げで当選してきまして、今回、法務委員会に所属になって初めて質問させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、今回の電子公告制度なんですけれども、今、実は永田委員の方から先進国に先駆けてという発言もあったんですが、諸外国はどうなっているのか、このことをちょっと教えていただければと思います。

実川副大臣 諸外国がどのようになっているか、そういう問いでございますけれども、電子公告制度の実施につきましては、イギリス、アメリカ、ドイツ、フランスの四カ国について調査をいたしました。ドイツにおきましては、我が国の官報に相当する連邦公報への公告を行う際に、付加的にインターネットによっても公告することが認められておりますけれども、インターネットの公告のみで足りるとする法制を採用している国はございません。

本多委員 今言った主要な先進国ではこの制度はとられていないということなんですね。

 実は、私の一般的な感覚からいうと、いろいろな商取引とかでは外国の方がインターネットの使用というのは進んできた部分が多いと思うんですけれども、その諸外国が採用していない理由というのはどういうふうに法務省としては把握されていますか。

野沢国務大臣 外国でこれを採用していないということでございますが、これはまだ詳しく調査を進めているわけではございませんが、こちらの方でいろいろと総合して推察いたしますと、電子公告の場合には、紙媒体である官報や新聞紙への公告とは異なりまして、公告が適法に行われたかどうかについての客観的証拠が残らないという問題があるためではないかな、かように思っておるところでございます。

本多委員 そうですよね。そのとおりの問題点があるので、諸外国では、インターネットの使用がもっと普及している諸外国においてもされていない。そこをあえてその困難性を乗り越えてするというそこの理由と、どう克服するかをお答えください。

野沢国務大臣 これは、これまでの制度が相当コストがかかるということが一つございます。それから、別の委員にもお答え申しましたように、日本におきますITの普及が大変進みまして、会社ではもう九割以上の会社がこれを活用しておりますし、一般家庭でも随分普及が進んで、八割というレベルまで来ているということからいたしますと、電子公告を採用することによりまして、非常に簡単にアクセスができるということ、そしてまた、ある一日だけの新聞公告と違いまして、一定期間内繰り返し繰り返しこれを拝読できる、こういったメリットはありまして、それらを総合しますと、やはり、今回電子公告を取り入れることが、株主の皆様、それからまた会社に対して関心のある皆様に大変便利であるということが一番の理由でございます。

本多委員 そのことは多分ドイツ、フランス、アメリカでも同じだと思うんですよね。株式会社にとってはインターネットで公告を出せた方が便利なことに対しては一緒なので、今のメリットは多分諸外国でこの制度を実現したときにも当然起こるもので、お答えになっていないと思うんですよね。

 ですから、こういう新しい外国にもない制度をどちらかというとインターネット等の使用とかについて憶病であった日本の政府がやるということに際しては、もうちょっと、相当、外国ではなぜこの制度を、当然外国の企業だってそういう要求をしていると思うんですよね。それをしていない理由というのはもうちょっと勉強、研究されてから、していないということなんでしょうか、そこは。

    〔委員長退席、森岡委員長代理着席〕

野沢国務大臣 確かに外国に先駆けてという点はそういった御指摘も出てくるかとは思いますが、今私どもがe―Japan計画で取り組んでおりますことは、まさに日本がおくれを克服しまして世界一のむしろ電子政府をつくりたい、こういうことがございますので、おくれていたのがトップランナーになるんだ、こうまずお考えいただきたいと思うわけでございます。

 そして、具体的には、今回、各委員からも御指摘が出ておりますように、第三者的立場にあります調査機関という制度を活用して、ここでやはり客観性を担保しながら、問題の公平、公正な運用を図りたい、かように考えておるわけでございます。

本多委員 はい、わかりました。おくれていたからトップになるというその発想は非常にいいと思います。

 ただ、これまで紙媒体でやってきたものをインターネットにかえていくということを裏支えするために調査機関ということを、非常に工夫をされて、これも当然、電子公告は外国にないわけですから、調査機関制度というのも外国にはないわけですよね。だから、新たに、ほぼ世界で初めて、こういうインターネットに載っている情報が本当にあるのかどうか、常にあるのかどうかを調べる調査機関という制度を設けられたというふうに私は理解をしています。

 しかし、今、山内委員との質疑を聞いていましても、本当にそういうことが可能なのかなという実は疑問があるんです。六時間ごと、八時間ごとに本当にその公告がインターネット上に載っているのかどうかということをチェックされるということなんですけれども、逆に、じゃ、それ以外の時間、もうインターネットのホームページというのは、いつでも、意図的にも変えられるし、それから、いろいろな人が悪ふざけで、今、改ざんをしよう、ハッカーとかそういう、つまり、何の悪意もなくても悪ふざけをして困らせることのためにやっている、そういう人たちも存在するわけですよね。

 そういう中で、六時間ごと、八時間ごとにチェックをしていますから大丈夫ですよ、それがもう本当に、株式会社の合併であるとかそういう重要な情報に関してですね。それでいいのかどうか、そこをお答えいただければと思います。

実川副大臣 御指摘の六時間から八時間置き、そういう御指摘がございますけれども、調査機関による調査を一分、一秒に一度というような頻度で行うことができれば理想的ではありますけれども、そのような調査は莫大なコストを要すると考えられますし、また、制度としましても経済合理性を持つものでもございません。

 しかしながら、そもそも調査機関制度は、一分、一秒の中断もなく電子公告が掲載されたことを証明するための制度ではなく、客観的な証拠が残らないことを奇貨としてわずかな期間しか公告を掲載しないようないいかげんな電子公告が行われることを防止することを第一の目標としているものでございます。

 この観点からは、六時間から八時間に一度、任意の時期に調査を行えば、電子公告を実施する会社はいつ何どきとも調査が行われることが予想することができませんから、いいかげんな電子公告をすることができなくなるという効果は十分に期待することができるわけでございます。したがいまして、六時間に一度や八時間に一度というような頻度でありましても、調査機関制度を設ける合理性は十分にあるものというふうに考えております。

本多委員 いいかげんな電子公告をする会社がなくなるのは、今わかりました、御説明で。

 ただ、悪ふざけで、全然関係のない第三者がそのホームページを改ざんするとかそういう動きに対しては、この六時間、八時間ごとのチェックで足るんでしょうか。

実川副大臣 会社に要求されている公告は、例えば、合併といった一連の手続の有効無効にかかわるものでありまして、合併を行おうとする会社が、電子公告について客観的な証拠が残らないことを奇貨として、十分な公告を行っていないのに行ったかのようにして合併の登記を行うという事態が生ずることを防止する必要がございます。そして、そのためには、第三者が公告をチェックすることによって電子公告が行われるかどうかについての客観的な証拠を確保することが不可欠でございます。

 これに対しまして、行政による情報公開については、通常は法律上の手続の一部という性質ではなくして、国民に対する情報提供、それ自体を目的としているものでございますので、第三者によるチェックの必要性は低く、むしろ、セキュリティー施設の確保または人的管理体制の充実等の措置によりまして、情報の誤りあるいは改ざん防止の対策を講ずることが重要であるというふうに考えております。

本多委員 何か私が聞いたことに答えていただいていなくて、聞いていないことに答えていただいたような気がしますが、それはわかりました。

 私が申し上げたいことは、今回、世界に先駆けてやるんですから、実験的な面もあると思うんですね。私が言いたいのは、ここで不完全だとは言えないのかもしれないんですけれども、本当に世界で初めてやるわけですよ、インターネットの画面が本当に載っているかどうかを調査機関という制度までわざわざつくって。これは本当に、しばらく後にアメリカとかドイツやフランスがまねてくれるんだったら、それは日本も成功したということになるんですけれども、やはり世の中には紙媒体が残る部分があって、アメリカやドイツやフランスでも、ここだけは紙媒体でやるというふうに残っていく可能性だってあるわけですよね。

 そういうところもしっかりと今後とも御検討をいただいて、私は、インターネットの画面を本当にあったかどうかを調査機関が調査するという発想自体が、今回この電子公告をやるために苦肉の策として出された意味はよくわかるんですが、本当に今後もいろいろな意味で可能なのかなという疑問があるんです。それはもちろんうまくいけばいいんですけれども、そこのところは不断に今後とも見直しをしていっていただきたい。

 若干、先進性があるということは、不安な部分もあるということは、大臣、ある程度お認めになっていただけますか。

野沢国務大臣 せっかく開発してまいりましたIT技術、これをやはり私どもは実務の上にも大いに利用、活用していくことが大事だと思っております。

 私も、新聞を大いに見てここまで来ておりますが、なかなかまだいわゆるITに関する技術的な習熟が十分でないために、その両方を今見比べながら仕事をしているというのが実態でございますが、これからの課題といたしましては、できるだけ、やはり紙を使わない形での仕事が進むことが大変大事だと思っております。

 先ほど、永田委員からも御指摘がありましたように、例えば、海外で情報が欲しい、外国の株主さんが大変ふえております関係からいたしましても、そういう面では大変な進歩ではないかと思っておりまして、諸外国にも大いにお勧めしたいと思っておるわけでございます。

本多委員 わかりました。

 それで、調査機関というものをつくったわけですけれども、これが、民間の会社がやって、国で、法務省とかがやらない理由はどういうことにあるんでしょうか。

野沢国務大臣 そもそも、このIT技術の発生過程からいたしますと、民間の皆様が、創意工夫と競争の中から立派なサーバーその他、お仕事をしておられるわけでございます。

 もともと小泉内閣の一番の基本方針は、民間でできることは民間へ、地方でできることは地方へという中で進めてきたことでございますので、もちろん、法務省が直接やることについては、能力その他はないわけではありませんが、できる限り民の皆様のお力と可能性、将来の発展性を考えますと、やはり民間の方々にやっていただくことが正解ではないかな、こう思っております。

本多委員 私は、この電子公告の調査機関というものの仕事というのは、単にホームページをチェックするだけですから、プログラムがなくたって、本当に個人が見たっていいぐらいの技術ですから、余り民間の技術力とかなんとかという話とは関係なくて、別に役所でもできる仕事だと思うんですね。

 民間でできることは民間にという発想は、私も当然そのとおりだと思っていますが、私は、政府の仕事をいろいろ削っていったときに、外務省と防衛庁はもちろんなんですけれども、法務省でやっている仕事というのは割と残ってくる部分なんじゃないかな、民間がやっていいものじゃない部分が非常に多いと思っているんですね。

 そういう観点で、今の小泉内閣の政府では、本当に、民間にできるものは民間にとかいって、全然そういうのが進んでいない部分も多い中で、何でこういうところだけ民間にしているのかなというのは、私はいまいち疑問だということを申し述べておきます。

 そして、天下りがこういうところに行かないよということは、参議院でしっかり何か大臣、御答弁されていますけれども、それはそういうことでよろしいんでしょうか。

野沢国務大臣 天下りというようなことは全く考えておりませんで、やはり、先ほどから申し上げていますように、民間の皆様が自由な競争の中でより一層の効率を上げていくということが主眼でございますから、天下り先としてこれがつくられるというようなことではございませんので、繰り返し確認をしておきます。

本多委員 わかりました。この調査機関に天下りのあっせんをすることはないということで確認をさせていただきたいと思います。

 それで、この商法改正が出てきたのは、法制審の答申を尊重されて提出されたということで理解はよろしいでしょうか。

野沢国務大臣 法制審に諮問もしておりますし、パブリックコメントもいただきまして、各方面のお知恵を総合した結果でこのような形をとっているわけでございます。

本多委員 最近で法制審の答申を無視している例が私はあると思うんですけれども、思い当たるものはございませんか。

実川副大臣 最近、法制審議会から答申をいただいたにもかかわらず、法務省がその内容に沿った法案を提出しない例といたしましては、平成八年二月に答申をいただきました民法の一部を改正する法律案要綱がございます。なお、この要綱の中ですけれども、選択的夫婦別姓制度の導入を内容とするものでございます。

本多委員 法制審というのは国の税金をかけて学者の皆さんに集まっていただいて答申をもらっているわけです。審議会制度がいいかどうかという議論は別にありますけれども、今の政府は、法制審というものを大変尊重しているから、こういう会社法がどんどんどんどん毎年法制審の方針に従って皆さん提出してくるわけですよね。なぜ民法は提出されないんですか。

野沢国務大臣 確かに法制審は、最高裁なり日弁連なり、あるいはさらなる学識経験者の皆様、大勢いらっしゃいますが、国民全体の意見を必ずしも代表していない。例えば、国会での御議論にかけましたときには、なかなかまだまとまらないということもございまして、そういったこともございまして、必ずしも法制審どおりいかないということも今までにはあったわけでございます。

 その意味で、この委員会あるいはいわゆる世論というような、広い大きなまだまだ多数の国民の皆様の御意見を徴しての仕事を私どもは進めておるわけでございます。

本多委員 大変今問題発言をされたと思うんですね。国会に提出されていないものを国会の意見がまとまっていないと言うことは、どういうふうに把握をされているんですか。提出してから私たちが議論をして、本会議場で採決をしたいんですが。

野沢国務大臣 私どもは、さまざまな情報をすべて総合し、国会での御議論を踏まえてということでございますので、決して国会を無視してということではございませんので、その点はよろしくお願いします。

本多委員 大臣は、参議院の我が党の円より子議員の質問に、こう答えているんですね。「法務省としましては、平成八年の法制審議会の答申の内容を踏まえながら、少しでも多くの方の御理解を得られるように努力を続けてきた」とおっしゃっているんですが、実は、二月十七日の大臣閣議後記者会見で、法務大臣は、「夫婦別姓という制度そのものについて、特に大臣のお考えはございますか。」「私、個人的には同じ方がいいかなと思っておりますけれども、これもしかし、それなりに賛否両論があり」、こういう発言はされましたか。「私、個人的には同じ方がいいかなと思っておりますけれども、」と。

野沢国務大臣 これは記者の方々から、自民党の先生方がまとめようとされている夫婦別氏法案についての御質問の後に、さらにこの制度そのものについての御質問をいただいたときの問題でございますが、別氏を選択できる制度になっても、私個人の家庭ではどうしますかという趣旨で、個人的には同じ方がいいかなと申し上げたわけでございます。

 しかしながら、他方で、別氏を強く望んでおる方々もいらっしゃることはよく存じておりますし、夫婦別氏制度については国民の間でも意見がまだ分かれておるという状況にございます。

 この問題は、家族制度のあり方等にかかわる重要な問題でありますので、十分な議論を尽くした上で、大方の国民の御理解を得ることができるような状況で制度改正を行うのが望ましいと思っておりまして、会見の際にもそのことを原則的に申し上げて、あとは個人の問題ということで感想を申し上げたわけでございます。

本多委員 この「個人的には同じ方がいいかなと思っておりますけれども、」というのは、普通の解釈では、大臣、多分御結婚されてもう長くいらっしゃるんでしょうから、そういうことだと解釈できないんですね、これは。

 制度そのものとしてもこのままの別姓を認めない制度を続けるべきだというような発言にとれるようなことを、居酒屋の会話じゃなくて、大臣閣議後の記者会見で新聞記者に言っているということは、この御理解をいただくように努力をしている姿勢とは私は思えないので、今後は、こういう国民に御理解をいただく方向で、法制審の方針で、しっかりと法務省として、この法案がどういう形にせよいずれ通っていくような努力をしていただきたいと思います。

野沢国務大臣 法務大臣といたしましては、本当に各国民の御意見、そしてまた国会での御議論、また法制審等の答申その他を尊重しまして、しっかり判断するつもりでございます。

森岡委員長代理 御苦労さまでした。

 松野信夫君。

松野(信)委員 民主党の松野信夫でございます。

 今回の電子公告の導入ということは、コンピューターをできるだけ活用して効率性を高めていく。その運用において十分注意をしていかなければなりませんけれども、基本的な方向としては私も十分理解をしているところでございます。

 ただ、そういう中で、コンピューター社会にどんどんどんどんなっていくわけですが、いろいろと注意しなければならない点もあるし、また、最近ちょっと問題だなというふうに思っている事件も発生しておりますので、まず、この点について御質問したいと思います。

 というのは、東大の助手をしておられる金子さんという方が、ことしの五月十日に著作権法違反幇助ということで京都府警の方に逮捕されて、現在でも勾留されている、こういう事件が発生しました。この金子さんが開発したソフトというのは、ウィニーというふうに名前を呼ばれておりますが、いわゆるファイル交換のソフトということでありまして、もともとの目的は、何もこの著作権法違反、これを奨励するというために開発したわけでありません。非常に便利な匿名性の高い通信手段であります。

 この通信手段の開発というのは、各国とも競ってやっております。もちろん日本でもおくれをとらないように開発をしているわけであります。このウィニーというソフトは、通信の秘密が守られて、かつ大量の情報を保管して伝達できるという非常に便利なツールで、世界的にも注目をされているわけです。このソフト自体は、ピア・ツー・ピアという新しい通信システムでありまして、このピア・ツー・ピアというのは総務省のIT政策大綱でも推進がうたわれている、こういうところであります。

 このソフト、使い方によっては大変重要な日本のIT基盤にもなるのに、たまたま一部の者が悪用したということでソフト開発者を逮捕するということは、極めて異常なやり方ではないかなというふうに思います。

 これまでの例で、こういうソフトを開発した開発者について、著作権法違反の幇助で逮捕したとか有罪になったとか、こういう例はありますか。

樋渡政府参考人 その点につきましては、今突然にお尋ねになられましたので調べておりませんで、今、私の知識の範囲内で、あるともないともちょっと言えないところでございます。

松野(信)委員 私が事前に聞いているところでは、そういう例はまずないというふうに聞いております。

 そもそも、いわゆる学問的に言いますと、こういう例は、片面的幇助犯ということで、主犯、正犯と幇助犯の間に意思の疎通もないというような形になりますので、極めて例外的な形になっている。片面的幇助犯でこういう形で摘発しているというのは極めて例がない、異常なやり方ではないかなというふうに私は思います。

 こういうような形で、せっかく日本のIT社会にとって非常にプラスになるソフトを一生懸命やって開発した、ところが、そういうソフトについて、たまたまだれか悪い人が悪用したということでソフト開発者を捕まえるということであれば、もうみんなびびってしまって、有効なソフトというものもこれはつくられなくなってしまう。そういう意味の萎縮効果というのが大変大きいのではないかなというふうに思うので、この辺は、捜査の点でも非常に慎重の上にもやはり慎重にしなければならない、特に片面的幇助犯ですから、やらなければならないと思いますが、この点はいかがでしょうか。

樋渡政府参考人 お尋ねは捜査機関の活動にかかわる事柄でございますので、法務当局としてはお答えを差し控えさせていただきますが、あくまでも一般論として申し上げますれば、すべての犯罪について慎重に捜査をしているものと承知しております。

松野(信)委員 それは、捜査は慎重の上にもやってもらわなければならないんですが、特にこういうソフト開発というのは、基本的には民対民、民事の方の問題で、余り刑事が介入をしてやるような事案ではないのではないか。

 例えば、これまでにも、CD―Rという便利なコンピューターの道具ができて、これもコピーできるわけです。いろんなデータを自由にコピーできる。そうしますと、例えば、音楽ソフトとかいろいろなソフトを勝手にコピーできるわけですね。そうすると、中には違法にコピーする人も出てくるわけです。だけれども、現に、このCD―Rを開発した、便利なソフトを開発した人を、一部の悪い者が悪用して、例えば音楽あたりを違法にコピーしてやっているからということで捕まえた、有罪になったということもないわけで、それは、中には確かに、一部、悪いことをして、違法コピーなどする人もいるかもしれませんが、だからといって、ソフトを開発した人を捕まえること自体は、これは大変大きな問題ではないか、こういうふうに思います。

 また、例えば、これまでの法改正を見ましても、コピーができないように一定のプロテクトをかける、このプロテクトを回避する、それをかいくぐってさらにコピーするという装置の禁止というのがなされていますが、これも著作権法を改正して、法改正をして対処する。

 ですから、きちんと罪刑法定主義をしっかり守って、法律でしっかり禁止をする、その上で対処するというふうになっていますので、そういう点から見ても、今回のウィニーのやり方というのはどうも大変問題が多いという点だけ指摘をさせていただきます。

 それで、今回の電子公告の方に移りたいと思いますが、商法については、これはもう御案内のように、ほとんど毎年のように法改正がなされている。言うならば、経済界の要請あたりでちょこちょこちょこちょこと改正が進んできたというのが現実であります。

 それで、法文を見ますと、いまだに片仮名の表示で、普通の人には大変わかりにくい記載方法になっています。ところが、今回新たに第五章というのがつくられる。今回の第五章を見ますと、これは平仮名で書いてあるということで、法改正が通りますと商法の中でも第五章は平仮名になるということで、まさに、かつて民法もそうなんですが、片仮名と平仮名とが混在をするということであります。

 また、その片仮名のところには、ふだん余り使わないようないろいろな表現も出てきてわかりにくい。難しい表現、例えば今回のでいうと、「改竄」なんていう、改ざんの意味だと思いますが、そんな言葉も入ってきて、普通の人はなかなかわからない用語も出ているので、私は、やはりこの商法全体の改正というものを進めていく必要がある。その際、やはり現代語化といいますか、わかりやすいような方向で進めていく必要があろうかと思います。

 聞くところによりますと、法務省の方でもそういうような御検討をされて、今そういう作業を進めておられるということでありますので、今、作業の進捗状況などはいかがでありますか。

野沢国務大臣 現在、法制審議会会社法現代化関係の部会でございますが、ここで、会社法制の現代化を実現するための会社法制の全面的な見直しに関する審議を進めておるところでございます。

 会社法制の現代化に当たっては、規定を現代的な表記に改めた上で、わかりやすく再編成しまして、商法第二編、有限会社法、商法特例法等を合体させた新しい法典を創設する方向で検討しております。また、我が国の重要な経済主体である会社に係る法制が合理的でかつ国際的に見ても遜色のない制度となっていることが、我が国の経済の活性化、競争力の強化に資するという観点から、これまで行われてきました改正の集大成として、各種の制度のあり方についてもさらに体系的かつ抜本的に見直しを行うこととしております。

 そして、昨年十月には、会社法の現代化関係の部会が中間的な取りまとめをいたしまして、会社法制の現代化に関する要綱試案を公表し、意見照会を行っているところでございます。今後は、この意見照会の結果を踏まえまして、引き続き検討を行いまして、平成十七年の通常国会に所要の法案を提出することを目途として作業を進めておるところでございます。

    〔森岡委員長代理退席、委員長着席〕

松野(信)委員 恐らく、商法については大改正になるのかなというふうに思います。私ども民主党の方も、これについてはいろいろと御意見を申し上げていきたいというふうに思っております。ぜひ、わかりやすい、国民にとっても使いやすいような法案の成立でお願いをしたいと思っております。

 それから、今回の電子公告制度の導入に当たっては、今まで少し議論もありました、民間の調査機関というのが設置をされるということになっております。この調査機関がやはり適切に調査実務というのがなされるようにしていかなきゃならない、そこが大きなポイントだろうというふうに思っておりますが、もう一つ、この法律案の概要説明書などを見ますと、法務省が行政サービスとして電子公告のリンク集サイトを設置する、こういうふうに規定がされて、調査機関の内容がこういうリンク集でわかるのかな、それを債権者、株主、投資家などがインターネットを通じて法務省のリンク集サイトにアクセスができるのかなというふうに思いますが、法務省のこのサイトというのは具体的にはどういうような内容になるのか、どういうものを掲載することになるのか、これを教えてください。

房村政府参考人 現在法務省で考えておりますこの公告リンク集でございますが、これは、行われている電子公告をそこにすべて掲載をいたしまして、そこを見ればどこがどういう公告をしているかがわかる、そして、そこへ、公告をしている会社のホームページへ飛べるようにするということを考えております。

 したがいまして、この公告リンク集の掲載事項としては、電子公告を行う会社の商号、あるいはその本店の所在地等も含めてですが、それからその肝心の公告ホームページのアドレス、それと公告期間、それから公告の根拠条文等も掲載できればしようかと思っております。

 そういったものを掲載して国民の利用に供したい、こう考えております。

松野(信)委員 そうすると、法務省のリンク集サイトの方にアクセスすると、具体的な調査機関の内容などもわかるようになるんでしょうか。

房村政府参考人 公告のリンク集としては、今申し上げたように、公告をしている会社とそのホームページのアドレスが中心になりまして、特に調査機関は予定はしていなかったんですが、確かに、調査機関はどういうところがあるというのもこの公告のリンク集を見たときにわかれば便利ではないかと思っておりますので、検討はしたいと思っています。

松野(信)委員 この点はぜひ御検討いただきたいと思っております。調査機関というのは、先ほど来からも出ておりますように、適切に運用がなされるか、これが一つの大きなポイントだろうというふうに思っております。

 この際、最高裁の方にもお尋ねをしておきたいと思いますが、法務省のこのリンク集サイトが充実をしていく方向で今御検討だというふうに聞いておりますので、最高裁のサイトの方もぜひ充実した形になってもらいたいな、このように考えております。

 私自身は、ずっと弁護士をしていましたので、時々最高裁のホームページにアクセスするんですけれども、残念ながら、掲載されている過去の判例が、以前は余り多くなかった。それで、大体司法関係者の人は、やむなく民間の企業からCD―ROMを高い金を出して購入して、過去の判例検索をやってきた、こういう経過があります。

 ただ、できれば最高裁の方のホームページが本当に充実して、過去の判例、せめて民集あたりに載っているのが全部載っている、あるいは下級審の判例もかなり載っているということで、しかも、それが年度別とか、あるいは用語でアクセスできるというような形になれば、非常に使いやすいことになるな、こういうふうに思っておりまして、ぜひそういう方向で最高裁の方も御検討をいただきたいと思っております。今の現状と今後の検討について教えてください。

中山最高裁判所長官代理者 最高裁のホームページでは、平成九年以降、判例を掲載するようにしており、その後その充実に努めてまいりました。

 現在、最高裁のホームページで公開しているものは、最近の主な最高裁判決、今お話ありましたけれども、民集、刑集に載っておりますすべての最高裁判所判例集に登載の判例、それから、高裁判例集、行政事件裁判例集、労働関係裁判例集、さらに、知的財産権判決速報、知的財産権裁判例集であり、下級裁の最近の主要判例についても、最高裁のホームページの各下級裁のコーナーでこれを紹介することにしておりまして、その件数は、合わせて二万六千五百件というのが現状でございます。

 ここに来る前に、模範六法という、よく私ども法曹が利用する六法全書がございます。それには判例が登載されておるということで著名なものではありますけれども、そのCD―ROMあるいは六法全書そのものに載っかっているものが一万二千件程度だということでありますから、それをはるかに超えているものになってきているのが実情であり、今後ともさらにその充実に努めてまいりたいと思っております。

松野(信)委員 ぜひ最高裁の過去の判例の掲載、国民にとって簡単にアクセスして閲覧できるし、また検索もできるというような形で充実していく方向で御検討をお願いしたいと思っております。

 次に、定款について質問をいたします。

 定款というのは、言うまでもなく、会社にとっては言うならば憲法のようなもので、会社にとっての基本的な事項を定めているわけであります。今回の電子公告するとか、あるいは官報、日刊新聞でどういうふうに公告するとか、これは定款の中にも記載するということになっているわけですが、ただ、これも実務的に考えますと、普通の人が定款で確認するというのは、なかなかそう容易ではないのが現状です。

 例えば、商業登記簿謄本というのは、これはもう法務局でだれでも閲覧、謄写できる。しかし、定款の方は、なかなかこれは難しいわけでありまして、一番最初の会社設立のときの原始定款については、法務局に添付書類として五年間だけは保存される。しかし、五年たてば廃棄されてしまう。その後、会社が定款を変更するというふうになっても、法務局の方には保存も何にもされない。

 そうすると、会社の本店とか支店には備えつけておかなきゃならない、こういう規定にはなっているんですが、しかし実際には、例えばその会社を訴えようなんというふうに思っている人が会社に行って見せてくれと言っても、現実にはなかなか見せてもらえないというのが実際でありまして、定款を確認する、定款というのはどんなふうになっているかというのは、案外実務的には難しいところであります。

 私は、もちろん商法では本店とか支店に備えつけるようになってはいるんですが、何らかの公的な機関、例えば法務局あたりに、場合によっては電子的にデータを残しておくというようなことも今後御検討できないのかな、こういうふうに思っているんですが、いかがでしょうか。

房村政府参考人 御指摘のように、定款につきましては、備えつけて、閲覧請求権も商法で与えられておりますが、閲覧の請求権者は、株主、会社債権者等の利害関係人に限定されております。

 定款に記載されている事項のうち、会社の目的、商号、本店所在地などの事項は登記事項として商業登記に掲載されているわけでございますが、定款記載事項のすべてが登記事項として公示されているわけではないということは、これは、定款が会社の内部規範であって、事項によっては登記をもって公示しなければならないほどの公共性を持たない、そういうことから現行のような扱いがされているのだろうと思っています。

 したがいまして、定款について、そのすべての事項を法務局において広く開示するというような制度を設けることについては、現在のそのような扱いと対比いたしまして、慎重な検討を要するのではないか、こう思っております。

松野(信)委員 ただ、これも実務的に言いますと、例えば裁判などを起こすときには、裁判所の方から、ではその会社の定款を出してくださいというふうに言われて、相手の会社に言っても、これがまたなかなか出してもらえない。また、大きなところであればちゃんと本店、支店に備えつけもされているようですが、小さい会社ですと定款なんかもうどこに行ったかわからぬというような対応をされるところもあります。

 それは、定款を備えつけていないと、法律上はたしか過料に処せられるというふうに規定はなっているんですが、現実には過料なんというのはほとんど発動されることもないものですから、案外ルーズに定款というものが実際は処理されているところがあるので、やはり私は、法務局あたりの公的なところでも何らかの備えつけといいますか保存、これはぜひ御検討いただきたいなというふうに思っております。

 それから次に、官報について御質問いたします。

 官報は、言うまでもなくこれは国の新聞ということになって、今回の電子公告の規定の中でも、官報公告あるいはその上さらに電子公告とか日刊新聞でいろいろ掲載をしなさい、こういうふうになっておりまして、そのほかのところでもさまざまに官報公告というのが義務づけられているわけであります。

 ただ、現実に言いますと、普通の人で官報をしっかり見ているというような人は余りいないのではないかというふうに思いますが、官報の発行部数、要するに普及の程度、これはどのようになっていますか。

房村政府参考人 官報でございますが、発行部数は約四万部と承知しております。購読者としては、官公庁が約四〇%、それから民間企業、個人が約四〇%、それから協会、あと組合とか学校、そういうようなところで二〇%程度というぐあいに聞いております。また、販売場所は、全国四十八カ所の官報販売所及び全国十二カ所の政府刊行物サービス・センターで販売されているということでございます。

松野(信)委員 発行部数は、本当に率直に言えば微々たるものだ。日刊新聞ですと何百万部というような形で発行されるのに比べると、率直に言って微々たるものです。

 だけれども、今回のこの法改正では、例えば会社の合併とか資本の減少、こういうものについては、債権者保護というような観点から、官報公告に加えて日刊新聞あるいは電子公告、こういう規定になっているんですね。しかし、現実には、私は、官報公告に加えてというところの意味合いというのは余りないのじゃないかな、わざわざ官報公告しないでも、一般的には、だれでも見られるような形で電子公告したり、あるいは何百万部というような日刊新聞に記載すればこれで十分ではないかなというふうにも思っておるんですが、この点はいかがでしょうか。

房村政府参考人 確かに官報は発行部数だけ見ると数は少ないわけでございますが、やはり何といっても唯一の公的なそういう公告をするものでございます。法令の公布も官報で行われておりますし、また、会社関係でいきますと、例えば破産とか民事再生、会社更生、こういったような法令に基づく裁判所による公告も官報になされているわけでございます。周知力の点でも、最近はホームページに一週間分の官報公告が掲載されるというようなことになりまして、国民にとってもアクセスも容易になってきております。

 そういうようなことを考えますと、やはり定款で選択する公告方法にすぎない新聞公告であるとか電子公告のみで足りるということにすることにはやや疑問もありまして、今回は、やはり官報公告の強制を存続させた上で、それとあわせて電子公告あるいは日刊新聞紙の公告を併用する、そういう場合に、例えば個別催告を省略する効果を与えるというような考え方をとっております。

松野(信)委員 官報の使い方はぜひ御検討していただきたいなと思うんですね。

 というのは、今、答弁の中にもありましたけれども、破産の場合は官報に掲載されるというので、最近は大変破産が多くて、毎年二十五万人ぐらいが破産する。そうしますと、官報に破産者の住所と名前が、官報の後半部分はやたら多く出ているわけです。官報というのはまさに破産公告のためにあるんじゃないかと言わざるを得ないぐらい破産者の氏名がたくさん出るわけです。

 これはどこが一番活用しているかというと、率直に言えばやみ金ですよ。やみ金の人たちが、そういう破産者を見て、そこにじゃんじゃんとダイレクトメールあたりを送りつけて、さらに金を貸し付ける。現実にはこういう使い方をされているのがありまして、官報については、ぜひ、使い方あるいは破産者の掲載についても検討する余地があるのではないか、このように思っております。

 時間が余りありませんので、あと残りは、電子公告の中断のところについてちょっと確認をしておきたいと思います。

 仮に中断があったとしても救済規定があるわけですね。三つの要件をすべて満たしていれば救済される、こういうふうになっております。公告の中断が生ずるについて会社が善意無重過失、あるいは会社に正当な事由があるということですが、例えば会社に正当な事由があるという場合、具体的にはどのようなことを考えておられるのか。

 例えば、会社自体は悪くないけれども、簡単にハッカーが侵入できるような簡単な公告になっていて、ガードもろくにつくっていなかった、ちょっとした人であれば簡単に入って改ざんでも何でもできてしまう。この程度のずさんな公告だったというような場合はどうでしょうか。

房村政府参考人 この法律で言っております正当な事由の典型例は、定期的なメンテナンス、そういう場合を考えております。

 それから、御指摘のような、例えばハッカーの侵入が極めて容易にできるようなものであった場合はどうか。これは重過失があるということになるかどうかという点ではないかと思いますが、現在は、一般的に、ホームページで、しかもそれなりにしっかりしたものをつくれば、ファイアウオールを設けてそういった侵入に対する防御措置を講ずるということが一般的でございますので、全くそういう措置がなくてまさに攻撃のし放題というようなことであれば、場合によれば重過失があるということもあり得るかもしれません。

松野(信)委員 ぜひ、中断が余り発生すると、この制度そのものの根幹を揺るがすことにもなりますので、その点についても十分御指導していただきたいということを申し上げて、時間が参りましたので、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

柳本委員長 御苦労さま。

 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

柳本委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、参議院送付、電子公告制度の導入のための商法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

柳本委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

柳本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

柳本委員長 次に、内閣提出、参議院送付、国際捜査共助法及び組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。野沢法務大臣。

    ―――――――――――――

 国際捜査共助法及び組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

野沢国務大臣 国際捜査共助法及び組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 近年、外国人による凶悪犯罪が多発するとともに、国境を越えて敢行される犯罪が増加しておりますが、このような事態に有効に対処するためには、諸外国との捜査協力を一層推進し、捜査共助の迅速化を図ることが重要であります。そこで、昨年八月、我が国は、米国との間における捜査共助の実効性をより一層高めるため、刑事に関する共助に関する日本国とアメリカ合衆国との間の条約に署名しました。

 同条約は、外交当局を経由せずに捜査共助の要請の発受を行う中央当局制度等を設け、捜査共助を迅速化するとともに、その範囲、内容を拡張し、日米間の捜査協力の推進を図ることを主たる内容とするものです。

 本条約につきましては、本年五月十九日、承認いただいたところですが、この法律案は、本条約を締結し、国際捜査共助等の円滑な実施を図るため、国際捜査共助法など関係する法律を改正し、所要の整備を行うものです。

 次に、この法律案の要点を申し上げます。

 第一は、国際捜査共助の手続及び要件について条約に基づく特例を設けるものです。

 現在の国際捜査共助法では、外務大臣が共助の要請の受理を行うものとされておりますが、これを改正して、条約に基づき法務大臣が共助の要請の受理を行うこととされるときは、法務大臣がこれを行うものとするほか、いわゆる双罰性等がない場合であっても、条約に別段の定めがある場合には、共助をすることができるものとしております。また、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律を改正し、没収等の共助の要請についても、条約に基づき法務大臣が要請を受理できるようにしております。

 第二は、受刑者証人移送制度を創設するものです。

 すなわち、条約に基づき、刑の執行として拘禁されている者を証人尋問のために国際的に移送する制度を新設し、外国の要請により我が国の受刑者を移送するための要件及び手続を定めるとともに、我が国の要請により移送された外国の受刑者を拘禁するための規定を整備しております。

 第三は、業務書類等に関する証明書についての規定を整備するものです。

 すなわち、外国からの業務書類等の提供の要請に付随して業務書類等の作成または保管の状況の証明を求められた場合に、裁判所における証人尋問にかえて、簡易な証明書の提出を求めることができるものとするとともに、虚偽の証明書を提出した場合には刑罰を科すものとしております。

 その他、国際捜査共助等の円滑な実施を図るための所要の規定の整備を行うこととしております。

 なお、本法案の成立により、今後我が国が米国以外の国との間でも同様の条約を締結することが可能となり、外国人による犯罪や国際的な犯罪に効果的に対処する上で、その意義は極めて大きいものがあると考えます。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。

柳本委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十五分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

柳本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 内閣提出、参議院送付、国際捜査共助法及び組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の一部を改正する法律案について議事を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房審議官米村敏朗君、警察庁刑事局組織犯罪対策部長知念良博君、法務省刑事局長樋渡利秋君及び外務省大臣官房参事官長嶺安政君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

柳本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

柳本委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。水野賢一君。

水野委員 自由民主党の水野賢一でございます。先ほど提案理由が説明をされました国際捜査共助法などの改正について、お伺いをしたいと思います。

 さて、国際化が進んでいくにつれて、残念ながら犯罪というものも国際化をしていくという事態が起こってくる。そうすると、それに伴って国際的な捜査というものが必要になるでしょうし、そうしたときに、捜査機関同士というのは協力をするということが当然必要になると思うわけであります。

 そのときに大きい問題というのは、やはり主権との関係ということがあると思うわけですね。要するに、外国の捜査機関が日本に無断で、日本国内で捜査をするというわけには、それは認められないでしょうし、はたまた日本の捜査機関が勝手に海外に行って捜査をするということも主権に抵触をする。そういうようなことから、捜査をお互いの国で依頼をし合うということが当然あるわけでしょうし、そうした国際協力というのが必要なわけでしょうが、そのときには一定のルールが必要だと思うわけであります。

 その中での国際捜査共助法だと思うわけですけれども、この国際捜査共助法というのを考えるとき、外国との捜査協力というときに、捜査依頼というときに、二つの方向性があり得るわけであって、一つは、日本側が外国の捜査機関に対して依頼をするということがあると同時に、逆にもう一つの方向性というのは、外国の捜査機関が日本の方に要請をしてくる。

 この二つの方向性があるとすれば、国際捜査共助法が対象としているのは、ここで言うところの、現行法の第一条一号などを見ても、共助というのは「外国の要請により、」というふうに書いてあるわけですね。となると、これは外国が日本に対して要請をしてきたとき、そのことが国際捜査共助法の対象になっているというふうに思うわけでございます。

 そうすると、逆の場合はどうなるのか。つまり、日本が外国に対して捜査を要請することに関する法的な根拠というのはどこにあるのか、その辺をお伺いしたいと思います。

樋渡政府参考人 御指摘のとおり、国際捜査共助法は、外国からの捜査共助の要請があった場合に我が国で受ける根拠になる法律でございます。

 我が国から外国に対し共助の要請を行いますのは、我が国の刑事事件に関する捜査の一環として行われるものでございまして、その法的根拠は刑事訴訟法にございます。すなわち、刑事訴訟法第百九十七条第一項により、我が国の捜査機関は、捜査における証拠の収集について、必要な方法を講ずることができるとされておりまして、捜査上必要な証拠が外国にある場合に、当該外国に対してその提供を求めることも当然に許されるところであると考えております。

水野委員 ここでは、外国から要請を受けた場合の国際捜査共助について議論を進めていければと思うわけですけれども。

 国際捜査共助法は、昭和五十五年に制定をされて、今回二十四年ぶりの改正ということだと思いますが、法律を改正するという以上、当然現行法には問題がある、少なくとも、時代の流れの中で改善すべき余地があるということで、政府として今回法改正案を提出されたと思うわけですけれども、大臣にお伺いをしたいのは、従来の捜査共助において、じゃ、どういう問題があったのか、はたまた今回の改正案によってそれがどういうふうに改善、解決をしていくのか、その点を伺いたいと思います。

野沢国務大臣 お答えをいたします。

 これまでの捜査共助は、外交ルートを通して行うのが原則でありました。多くの機関を経由すると時間がかかりますし、間接的になるということもありまして、迅速性が重要な捜査活動に支障が生じかねないという問題がありました。また、お互いの国で犯罪となる場合でなければ共助できないとの制限があり、我が国から共助要請をする場合に、果たして共助を依頼する犯罪が相手国において処罰されているかについて慎重に検討する必要があり、やはり時間がかかっておりました。

 日米刑事共助条約では、これらの点を改めて、共助は捜査・司法当局同士で行うという中央当局制度を定めまして、外交ルートによらなくてもよいこととして、共助の制限についても双罰性の要件を緩和し、原則として共助を実施することを取り決めました。

 今回の法案は、このような内容の条約の実施を可能とする改正を行うものでありまして、外国からの共助要請に幅広く応じられることとなる上、翻って我が国の捜査活動の充実を図ることも可能とするものでございます。

水野委員 今大臣から御答弁あったように、今までの国際捜査共助法だと、共助の要請というのが原則外交ルートだったということですが、今までの法律でも例外的に、従来の法律第三条の中に、「緊急その他特別の事情がある場合において、」そして外務大臣が同意すれば、まさに中央当局ルートというのが従来の場合もあったわけですよね。

 これは参考人で結構ですけれども、この部分が発動された事例というのはございますでしょうか。

樋渡政府参考人 捜査につきましては、特に迅速性が要求される場合が多く、また、密行性が強く要請される性質のものでございまして、要請国が外交ルートを経由しないことを望むようなことも考えられるということからこの条文があるわけでございますが、調査しました限りにおきましては、この第三条ただし書きに基づいて、外務大臣の同意を得て法務大臣が直接共助の要請を受理したことはございません。

水野委員 今回の法改正によって、条約がある場合には、手続においても、またこの要件、双罰性の話ですね、この部分においても特例が認められるということで、日米間の場合は条約があるわけですからこうした問題というのは解決をされていくわけでしょうけれども、条約のない国、つまり、具体的には米国以外の国との捜査共助はどのようになっていくのか、伺いたいと思います。

樋渡政府参考人 アメリカ以外の国との間では、日米刑事共助条約のような条約を締結するまでは、これまでどおり、外交ルートを通じて捜査共助を行うこととなります。

 しかし、今回の法改正によりまして、米国以外の国との間で米国と同種の刑事共助条約を締結していく土台が整うことになり、日米刑事共助条約のような条約を他の国との間で締結すれば、その国との間では外交ルートを省略した捜査共助を行うことが可能になりまして、より迅速かつ円滑な共助の実施が可能となると思います。

水野委員 この法律が成立すれば、条約を結べば、そういうように非常に、例えば中央当局同士のそういうルートもできるというようなことで、迅速化にも役立つということだと思いますけれども、逆に言うと、これは、次から次へといろいろな国と条約を結んでいけば、初めてそういうことができるわけですよね。

 そういうような考え方も一つあるんでしょうけれども、そうじゃなくて、条約の有無にかかわらず、一般的に、捜査共助のときには外交ルートを排して中央当局方式を採用する、こういう考え方もあると思うんですけれども、この辺はいかがでしょうか。

野沢国務大臣 委員御指摘のとおり、外交ルートによらずに、法務大臣が中央当局として常に直接共助の要請を受理する法制の採用も考えられないわけではありません。しかしながら、外国に捜査を依頼し、あるいは外国から捜査を依頼される場合、国際慣行上、いわゆる相互主義が保障されるべきものと考えられております。すなわち、他方が与える一定の待遇についてはこれと同等の待遇を与え、相互に相手方から受ける待遇を均衡させるものとされておるところでございます。そして、このような外交的側面を有する相互主義の保障につき、法務大臣が独占的に判断するのが適当かという問題がございます。

 他方、条約が締結される場合には、相互に同様の義務を負うことになるので、相互主義の判断は不要となるわけでございますが、このような事情もございまして、中央当局ルートは、相互主義の判断が不要となる条約に基づく場合に限定するのが相当と判断したものでございます。

    〔委員長退席、森岡委員長代理着席〕

水野委員 この捜査共助の話になると、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、やはり主権の問題との関係というのが当然出てくると思うわけでございます。外国の捜査機関が日本国内で無断でいろいろと捜査をして回るということも問題だろうし、逆もまた真なりということだと思うわけです。

 だからこそ、外国の捜査機関に依頼をする、証拠集めなどを頼むという形をとっているわけでしょうけれども、そうすると、どうしても、いわば聞きたいことなんかでも、かゆいところには手が届かないというようなことも一方ではあると思うわけですね。それは、当然、その事件について、その背景とか状況などについて一番知っているのは当該国の捜査当局なわけでしょうから、それを外国の捜査当局が聞くといっても、どうしても細かいところなどには、まさに先ほど申し上げた、かゆいところに手の届かないというようなことがあったりすると思うわけです。

 その部分を改善するために、一つの考え方としては、例えば、外国から依頼があったときなどには、我が国の官憲が立ち会っている範囲内で外国官憲に直接質問するようなことを認めるというようなことを許す。逆に、もちろん同じように外国側にもそれを認めてもらうということでしょうけれども、そういうようなことがあった方が、直接聞いたりするようなことができた方がより効率的だという考え方があると思うんですけれども、この辺はいかがでしょうか。

樋渡政府参考人 外国官憲によります捜査権の行使は、御指摘のとおり、当該外国による公権力の行使でございまして、これを我が国の同意なしに行うことを許すとなれば、我が国の主権を侵害することになるというふうに考えます。

 他方で、外国の官憲が自国内で各種調査を直接行うことに同意を与え、これを認めている国も存在しておりまして、また、捜査の内容と程度等によりましては、我が国の国民の権利保護の観点からさして問題は生じないのではないかと考えられる場合もございますので、今後、どのような協力のあり方が可能かという点も含め、検討してまいりたいというふうに思っております。

水野委員 だから、これは、我が国の関係者の立ち会っている範囲の中でそういうことを認める、お互い認め合っていくというようなことは、今後の課題ではないかというふうに思うわけであります。

 さて、双罰性の部分について話を進めたいと思います。

 今回の改正により、条約を締結している国、具体的に現在のところで言うと米国ということですけれども、米国との間では、双罰性を問わずに共助することができるというふうになるわけでございます。

 では、まずちょっとお伺いをしたいのは、例えばアメリカの場合だと、日本では犯罪とされているけれども米国で犯罪とはなっていないようなもの、もしくは逆に、日本では犯罪でないけれども米国で犯罪とか、そういうような事例というのは、具体的な、典型的な例としてはどういうものがありますでしょうか。

樋渡政府参考人 それぞれの国で構成要件の書き方も違いますし、生の事実で考えていけば、それは、両方の国で処罰可能だというものもございます関係で、なかなか一概にこうだと言えないわけでありますし、また、アメリカには、連邦法のほか各州にも法律がありますので、すべての法律を調査したわけではございませんが、例えば、我が国では犯罪とされていて米国では犯罪とされていないものにつきましては、けん銃の単純所持、覚せい剤、大麻の自己使用行為、信書隠匿・開封行為などがあると思っております。

 また、例えば、我が国では犯罪とされていないがアメリカでは犯罪とされているものといいますと、陪審員に対する影響力の行使、被告人による偽証、児童ポルノの単純所持などがあるというふうに考えております。

水野委員 双罰性があるかないか、これはどういうふうに判断をされているのかも伺いたいと思います。

樋渡政府参考人 双罰性の有無の判断は、罪名が一致するかどうかの判断ではなく、法的評価を離れまして、共助の対象となる社会的事実関係に我が国の法令において犯罪行為と評価されるような行為が含まれているかどうかを検討して判断することとなっております。

水野委員 今まで、双罰性がない場合は共助できないというふうになっていたわけですね。この辺の理由はどういう理由だったんでしょうか。

樋渡政府参考人 我が国で行われたとしましても犯罪にならないような行為について捜査機関が証拠の収集を行って外国に提供することは、国民感情に反するおそれもありますことなどから、一般的に適当ではないことが多いと考えられていたからでございます。

水野委員 まさにそういうような理由を挙げていた中で、今回、条約に特別に定めがあるという、いわば例外的に、そういう条約という場合には例外というふうにして双罰性を要件としなくしたというのは、これはどういう理由だったわけでしょうか。

樋渡政府参考人 条約を締結する場合には、双方の締約国の法制度の相違、国民感情等にかんがみながら、どの範囲で共助を実施するか、どのような場合に共助を拒絶するか等について、外国との間で詳細に取り決められ、我が国の法体系上、共助する場合が相当ではない場合に共助の義務を負うことがないように取り決めることもできますことから、条約に別段の定めがある場合に、双罰性の有無にかかわらず、共助を実施することができるようにすることは問題はないというふうに考えたわけであります。

 また、我が国で犯罪とならない行為についての共助でありましても、共助の実施が任意処分により可能である場合には、そもそも処分の対象者の任意の協力がありますことから、その権利保護の観点から見ましても、条約の要請に従って共助を実施することに問題は生じないと考えます。

 他方、強制処分が必要な場合につきましても、裁判官において令状を発付するか否かの審査を行う上、日米刑事共助条約におきましては、個々の具体的事案に応じて、国民の権利保護に配慮し、双罰性がない場合に強制処分等を行うか否かは我が国に裁量権があるようにしたものでございまして、この点も問題はないというふうに考えた次第であります。

水野委員 そもそも双罰性が捜査共助の要件なのかどうかというのは国によっていろいろ違うと思いますし、不要だというふうにしている国もたくさんあると思うわけですね。日本の場合は今まで必要ということにしていたわけでしょうけれども、今回、条約によって例外を定めることができるというふうになったわけですけれども、これは国際的に見て、日本と同じような形、つまり原則双罰性必要、しかし条約によって例外を定める、そういうような法制度をとっている国というのはございますでしょうか。

樋渡政府参考人 あらゆる国について調査したわけではございませんが、イタリアやタイでは双罰性を原則として必要としているが、条約で別に定めれば不要という法制を採用していると承知しておりまして、我が国と同様の法制を採用しております。

 なお、アメリカのみならず、フランス、カナダ等におきましては、双罰性は共助の要件とはされておらず、オーストラリア、韓国、英国及びドイツも双罰性を原則不要としております。

水野委員 今回の法改正の中で、今、国際捜査共助の手続とか要件の特例などについての部分を伺ってきましたけれども、今度、それとはちょっと話を進めて、受刑者証人移送制度についても新たに盛り込まれておるわけでございます。これについて伺いたいと思うんですけれども、従来は証人として呼ぶことができなかった受刑者が証人となる道が開けるということなわけですね。これは、法律の方で言うと第一条の第四号に規定をされておるわけでございますけれども、これについてちょっと政務官にお伺いをしたいと思うんですが、この受刑者証人移送は、なぜ条約に定める場合に限るのか、その点を伺いたいと思います。

中野大臣政務官 水野議員が、いわゆる日本の治安回復のために、国際的な連携についての御努力をいただいていることについては、本当に、この席をかりましてお礼を申したいと思います。

 今の御質問の件でございますけれども、受刑者証人移送制度につきまして、例えばドイツとかイギリスのように、条約で定めるということを限定しないということも考えられないわけじゃないんです。しかしながら、受刑者の証人移送というものは、一時的とはいいましても、日本国民を含むところの我が国の受刑者を相手国の拘禁のもとに置く、または相手国の受刑者を我が国の拘禁のもとに置くものでございますから、いわゆる送り出し国と受け入れ国の二国間の間で、相互の司法制度に対して高度の信頼が成り立つことが必要であるということは御承知のとおりでございます。

 そのために、あらかじめ移送のための要件及び手続、例えば年齢は二十歳以上とか、例えば移送の期間は三十日以内とか、または本人の同意が必要とか、または、例えば費用の問題にしましても、普通は、一般的には受け入れ国の方が負担するんですけれども、例えば移送、飛行機運賃等がございますと、それらについてはやはり、いわゆるお願いする方というんでしょうか、受け入れる方じゃなくてお願いする方がそれをきちっとするというようなことを明確にしまして、いわゆる手続の適正化を確保するとともに、相互に同様な移送を行うことの保証を確実にする必要があると思っております。

 そういう意味で、今法案におきまして、移送のための要件及び手続を明確にすることができる条約、そのようなことをきちっと定めることが、この受刑者移送を円滑に行う、そういう意味では必要だと思っております。

水野委員 今議論をしているその条約というのが、まさにこの第一条の四号に出てくるわけですけれども、ここで言う条約というのは、マルチの多国間の条約も指すのか、それともバイの二国間の条約だけに限るのか、その辺、ちょっと細かい質問ですけれども、いかがでしょうか。

樋渡政府参考人 法第一条第四号に言います条約とは、刑事共助に係る国家間の国際法上の権利義務関係について規定する条約を意味するところ、そのような条約である限り、多国間条約もここに言う条約から除外されるものではございません。

 しかしながら、本法案における受刑者証人移送は、第一条第四号で、条約において移送すべきものとされている場合、すなわち一定の要件を満たす限りにおいて移送が義務とされている場合に限り実施することと規定しているところでございまして、現時点ではこの条件を充足する多国間条約は存在しないものと承知しております。

水野委員 まさにここで、受刑者証人移送について、「刑事手続における証人尋問」という言葉があるわけですね。これは公判段階のことに限るのか、はたまた捜査段階で実施する証人尋問も含まれるのか、いかがでしょうか。

樋渡政府参考人 我が国が要請する場合、第二十三条第一項において、外国受刑者に係る受刑者証人移送は「刑事手続において証人として尋問する旨の決定があつたもの」において行うことと規定しておりまして、ここで「刑事手続において証人として尋問する旨の決定があつたもの」とは、第一回公判期日後における証人尋問決定があったことを意味いたします。したがいまして、公判前の証拠保全段階の証人尋問を実施する場合は含まれておりません。

 そもそも、外国受刑者の拘禁制度を創設して外国受刑者に係る受刑者移送を可能にする意義は、外国受刑者について公判廷における証人尋問を可能ならしめ、裁判所の面前において証言させることを可能とし、直接主義をより充実させようとする点にございまして、公判前の証人尋問についてこれを可能としても、かかる意義が十分とは言いがたいというふうに考えるからでございます。

 なお、捜査段階における取り調べや事情聴取につきましては、相手国に対して共助を要請し、当該受刑者を拘禁している国の官憲に取り調べ等を実施してもらい、その結果の送付を受けることが現行法においても認められているところでございます。

水野委員 この改正案をぱっと見ると、第二条で、今まであった第三号の部分が、これは相互主義の保証を規定していた部分が、共助の要件のところから削除されていますけれども、これはどういうことなのか。また、条約がない場合には、相互主義は当然のように保証されるべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

樋渡政府参考人 相互主義とは、一般に国家の平等を基礎とする国際関係においては、他方が与える一定の待遇に対して、これと同等の待遇を与え、相互に相手方から受ける待遇が均衡しているべきであるとする原則をいうものと思います。

 相互主義の保証の有無は、共助要請国において、我が国が今後行う同種の共助要請に応じる旨の当該要請国の保証があるかどうかという問題でございまして、その性質上、外交的な側面を有し、外国の事情に通じた外務大臣が行うことが適当と考えられる場合が多いことから、改正前の法律におきましても、外務大臣の判断にかからしめられているところでございます。

 今回の改正法におきましては、共助制限事由のうち、相互主義の保証の要件とそれ以外の要件とでは第一次的な判断権者が異なることに着目いたしまして、これを明確にするため、相互主義の保証につきましては、共助制限事由を定めた第二条では規定せず、外務大臣の措置の制限事由として第四条で規定することにしたものでございまして、実質的にその趣旨を異ならしめるものではございません。

水野委員 国際協力を今後進めていかなきゃいけないという中で、今回の法改正というのはその方向に進んでいると思うわけですけれども、刑事の分野における国際協力に関する世界的な情勢、これはどういうふうになっているのか、大臣にお伺いをしたいと思います。

野沢国務大臣 刑事に関する共助の分野について申し上げますと、例えば米国は、欧州、アジア、アフリカ、南米にわたる地域の四十八カ国、二地域、一国際機関との間で刑事共助に関する条約を締結しております。これらの条約ではいずれも中央当局制度が採用されていると承知しておりますが、また、多数の欧州の国々は、司法・捜査当局を捜査共助の窓口とする刑事の司法共助に関するヨーロッパ条約に加入しております。

 このように、刑事の分野における国際協力については、捜査・司法当局同士で直接やりとりを行うことを定める条約を締結しているというのが国際的な潮流であると理解しております。

水野委員 時間が来ましたので最後にしたいと思うんですけれども、今回の法改正によって、米国のように条約がある国の場合はわかるんですけれども、その他の国々とは、今後、条約を締結していこうというような動きになっているのか、米国以外の国との協力関係についてお伺いをして、私の質問を終わりたいと思います。

野沢国務大臣 今回の法改正によりまして、米国のみならず、米国以外の国との間で、米国と同種の刑事共助条約を締結していく土台が整ったということになります。

 日米刑事共助条約の締結後は、各国との間で二国間の刑事共助条約の締結に積極的に取り組んでいきたいと考えていますが、やはり事件の多い国、あるいはつき合いの大きい国というところが今後の主体になろうかと思っております。

水野委員 終わります。

森岡委員長代理 御苦労さまでした。

    〔森岡委員長代理退席、委員長着席〕

柳本委員長 富田茂之君。

富田委員 公明党の富田茂之です。よろしくお願いいたします。

 今、水野先生の質問を伺っておりまして、私が質問しようと思ったことをほとんど聞かれてしまいまして、あと三十分、何をしようかなと、本当に困っておるんですが、ちょっと違った観点からまた質問できればと思いますので、よろしくお願いいたします。

 今回の法改正の前提となります、刑事に関する共助に関する日本国とアメリカ合衆国との間の条約、いわゆる日米刑事共助条約ですけれども、これは昨年八月、きょうこちらにいらっしゃいます森山先生が大臣として署名されて、この五月十九日に承認されたというふうに伺っております。この条約の締結の背景について、どういった形でこういう条約締結に至ったのか、外務省の方にお伺いしたいと思うんです。

 外務省の方から出ている資料によりますと、成立の経緯ということについては、簡単に書いてあるものがあります。これによりますと、政府は、平成十年十一月の我が国とアメリカ合衆国との間の首脳会談において、当時の小渕総理と当時のクリントン大統領との間で、捜査・司法共助条約の締結交渉を開始することで意見が一致した。これを受けて交渉を行い、その結果、平成十五年六月に条約案文につき基本合意に達して、平成十五年八月五日にワシントンにおいて、先ほど御紹介しましたように、日本側は森山法務大臣、そして谷垣国家公安委員長及び加藤特命全権大使と、アメリカ合衆国側はアシュクロフト司法長官との間でこの条約の署名が行われたという説明の文書はいただいているんです。ほかの資料によりますと、どうもアメリカは、我が国と条約を締結する以前に、既に四十八カ国、二地域、一国際機関との間で同じような条約を締結されている。

 そうすると、これでいくと、日本は五十二番目の相手国というふうになったと思うんですが、これだけ緊密にアメリカとの間でいろいろなことがやられているのに、なぜこんなにおくれたのか。また、小渕総理とクリントン大統領の間で意見が一致したことを受けて、その間、交渉してきて、三年半近くかかってこの条約締結に、署名に至ったということを考えると、中身を見る限り、そんなにもめることがあったのかなというふうな印象も受けるんですが、そのあたりも含めて、この日米刑事共助条約締結に至った背景というのを御説明いただければと思います。

長嶺政府参考人 お答えいたします。

 ただいま委員から、もう既にお話がございましたように、本件条約につきましては、米国がかねてより、この分野における国際的な協力の条約の締結を諸外国との間で進めてきておったという背景がございまして、我が国に対しても同様の申し入れが行われてきておりました。

 ただいま委員から御指摘もございました、平成十年十一月のクリントン大統領訪日時の日米首脳会談の際に、この捜査・司法共助条約の締結交渉を行うということで日米が一致したということがございます。その後、平成十一年二月に第一回の交渉を行いまして以降、累次交渉が進められてまいりまして、昨平成十五年六月に実質的な合意に達した、そして八月に署名に至った、こういう経緯でございます。

 そこで、今お尋ねのありました背景の点でございますが、我が国は、この種の条約を締結していない外国からも共助の要請があった場合に、国内法でございます国際捜査共助法に基づいて共助を行うことが可能であるということがございました。また、米国も、我が国と同様に、必ずしも条約を締結しておらない国からの要請に対しても共助を行うことが可能である、そういう形がございました。したがって、日米間におきましても、条約以前に、これまで、相互に必要な捜査共助が実施できてきたということがございます。

 しかしながら、これは、国際犯罪に対応するということが非常に重要な課題になってきています折に、日米間でも共助を一層確実に実施するということを確保する必要があること、また捜査共助の迅速化を図る必要があるということから、この刑事共助条約の締結交渉に入ることにいたしまして、自来、そういうことで、平成十年以降でございますので、なかなか内容のある条約でございますので、交渉、経緯を経て、そういうことで昨年合意に至ったということでございます。

富田委員 ちょっと一点追加なんですが、今のだと、中身がかなりあったから時間がかかったんだというような御趣旨のようですけれども、何か問題になったような点というのはありますか、アメリカとのこの条約締結交渉の中で。捜査共助、お互いの国の法律、文化とか違いますから、そういった点で交渉が大変だったんだというような点があったら、ぜひ教えていただきたいんですが。

長嶺政府参考人 お答えいたします。

 まさに今委員御指摘のように、我が国と米国との間におきましては、捜査共助の内容ですとかあるいは進め方を含めまして、刑事手続の法制度、これはもちろん違いがございます。

 先ほど申し上げましたように、条約なしで両国が裁量で捜査共助を相互に行っているということであれば、その法制度の違いということについて余り大きな問題にはならないわけでございますけれども、今般の条約の中身は、請求された共助を行うことを義務とする条約でございます。このような条約を締結するということで交渉を行う局面におきましては、やはり双方の法制度につき十分な情報、知識を共有し理解を深めるという必要が生じたわけでございます。このような情報の共有あるいは理解を深めるという過程にかなり時間を要したというのは偽らざるところだと思います。

 また、今回の日米刑事共助条約は、我が国にとりましてこの種の条約としては初めてのものでございました。したがいまして、この条約締結に伴う我が国の国内法制へのあり得べき影響等につきましても慎重な検討をする必要があったということで、慎重な検討の上で条約交渉に臨んだということで、時間を費やしたということでございます。

富田委員 ありがとうございました。よくわかりました。

 そのような経緯を踏まえてこの条約が締結されて、今回この委員会で審査されている法改正に至ったわけですけれども、この法改正により、実際に、まあこれまでも条約がなくてもやれていたんだというふうに今外務省の方から御説明がありました。お互いの捜査共助のあり方とかいう点について情報の共有、理解を深めた、また初めてこういう条約を締結したということでちょっと時間がかかったという御説明でしたけれども、それを踏まえて条約が締結されて、今回、今度、この法改正でこたえていくということで、この法改正によって捜査共助に関して実際的にどんな効果があるのかということを大臣にお伺いしたいんです。

 大臣は、参議院の審議の際に三点ほど挙げられておりました。中央当局同士直接やれるようになったので、そこについては迅速な共助の実施ができるんだという点と、また、双罰性等の要件を緩和するような規定もできたので、共助範囲が拡大して、より密接な捜査協力体制ができるんだというような御説明、また、これがうまくいくことによって、この法改正によって、これがモデルケースとなってほかにもまた条約が締結できるようになればという、この三点を主にこの法改正の効果ではないかということで参議院の方でも述べられていたんですが、現段階においてもそこのお考えは変わらないですか。大臣の方からぜひ。

野沢国務大臣 今、参議院審議におきます議事録なども参考にされましてのお尋ねでございますが、まさにそれはそのとおりでございます。

 今回の法改正によりまして、条約を締結する米国との関係で見ますと、外務当局を介さずに中央当局間で共助の要請及び証拠の提供を直接行うことができるようになったということで、今までより迅速に共助を実施することが可能となるということがまず第一にあろうと思います。

 また、双罰性の要件など共助の要件が緩和され、さらには刑事手続における証人尋問に証人として出頭させる目的で、刑の執行として拘禁されている者を移送することができるようになるなど、共助を実施し得る範囲が拡大し、より緊密な捜査協力体制を構築することによりまして、犯罪の捜査及び公判における立証に大きく貢献するものと考えます。

 今後、米国以外の国とも条約を締結していけば、その国との間でも共助できる範囲が広がり、共助の迅速化を図ることができることは先ほど申したとおりでございます。それで、やはりこのことによりまして、日本の国際化という大きな流れが、まあいろいろな国際化はありますが、犯罪捜査の面での国際化がより実効あらしめるためにも効果があるものと、一つつけ加えさせていただきたいと思います。

富田委員 ありがとうございました。

 一点、ちょっと確認させていただきたいんですが、先ほども委員の質問に出ておりましたけれども、今回の法改正は日米刑事共助条約がきっかけとなっているけれども、この条約だけを対象にするものではなくて、今後アメリカ以外との間で締結する同種の条約も当然対象になると。条文上もそういうことを予定しているような、条約による場合というような形で、「条約に別段の定めがある場合」とか、そういう規定が随分出てきていますけれども、当然これは今後新たに締結される条約を予定しているというふうに解釈してよろしいんでしょうか。

樋渡政府参考人 まず、結論といたしましては、委員御指摘のとおりでございます。

 今回の法改正は日米間の刑事共助条約がきっかけになっておりまして、日米間の刑事共助条約を締結するために必要なものではございますが、日米刑事共助条約だけを対象とするものではございません。今回の法改正では、例えば「条約に別段の定めがある場合」とか「条約に基づき法務大臣が共助の要請の受理を行うこととされているとき、」など、単に「条約」と規定し、日米刑事共助条約に限った規定とはしてございません。

 今後、米国以外の国との間で締結する同種の条約も、今回の法改正で規定する条約に含まれることとなるわけでございます。

富田委員 それを前提にして、先ほども最後に質問が出ておりましたけれども、今後、ほかのどんな国と捜査共助に関する条約を締結していくんだというお尋ねがありました。

 調査室の方からいただいた資料によると、これは法務省の方の担当した案件だけのようですけれども、「我が国から要請した捜査共助(嘱託)の相手国別件数」という資料があります。これを見ますと、平成六年から十五年までの合計数が出ているんですが、アメリカは四十三件、同じように十件以上ある国というのが、タイが十四件、大韓民国が二十五件、フィリピン共和国が十七件、フランス共和国が十一件、香港特別行政区が十一件と、際立って多いところはもうはっきりしているんですね、こちらからお願いする。

 また、「外国から要請のあった捜査共助の要請国別件数」を見ますと、アメリカが七十九件でもう断トツで、そのあとはグレートブリテン及び北アイルランド連合王国、イギリスですね、これが二十一件、大韓民国が十八件、ロシア連邦が十一件と、これも幾つか際立っている。

 こういった、現実にニーズがあったところ、またあるいは今まで捜査共助の実績があったというだけではなくて、これまで捜査関係で一緒にいろいろなことをやっていた、アジ研にいろいろ研修生が来て、法務省の皆さんもいろいろ教えたり、先輩後輩になったり、いろいろな関係があると思うんですが、そういったところも、やはり情報の共有という意味ではしっかり連携できるようなところでないと、条約ができたからといってなかなかうまく動いていかないと思うんです。

 今後、共助のニーズのほか、どんな点を考慮して条約を締結すべきだというふうに考えているか、これはぜひ法務省と警察庁それぞれの御意見を伺えればと思います。

樋渡政府参考人 現時点で、米国に続いてどの国との間で刑事共助条約の交渉を行うのかについて、具体的に決定しているわけではございません。しかし、法務当局としましては、これまでの共助の実績や相手国の法制等を踏まえながら、関係省庁と協議しつつ、具体的には、韓国などのアジア諸国等を含めた各国との間で二国間の刑事共助条約の締結の可能性について検討していきたいというふうに考えております。

知念政府参考人 ただいまの法務省からの答弁と同趣旨でございますが、我が国にとっての共助のニーズや相手国の法制などを勘案して検討が進められるべきものと考えます。

富田委員 もう少し具体的に教えてほしかったんですけれども、まあそれ以上は言えないということなんだと思うんですが。

 調査室の方からいただいた資料によりますと、これは警察庁だけじゃないと思うんですが、特に警察庁の方で、日中治安当局間協議とか日ロ治安当局間会合とか日韓ICPO実務担当者会議等、こういう機関を使って、国際捜査共助の枠組みだけではなくて、これに加えて二国間の協議にも積極的に参加されている。当然、外務省が入ったり、法務省が入る場合とかいろいろあると思うんですが、特に捜査の現場の担当ということで、警察庁がこういうところに入っていくというのが大事だと私は思うんです。

 今ちょっと三つほど挙げさせてもらいましたけれども、これらの二国間協議の中での成果、あるいはそういった協議をしている中で捜査共助に関してこういう課題があるんだということがあったら、ぜひこの機会に教えていただきたいと思うんです。

知念政府参考人 警察では、個別の事件に関し国際捜査共助を推進することはもとよりでありますが、治安に関するさまざまなテーマについての二国間協議などにも積極的に参加しているところであります。このような協議を通じまして、両国間の法制や国情の違いについて相互に理解を深めるとともに、情報交換の緊密化や捜査協力の強化を進めているところであります。

 ただいま日中、日ロ、日韓等を特に取り上げての御質問がございましたが、以下、順に説明を申し上げたいと思います。

 日中治安当局間協議におきましては、これまで三回にわたる実務レベルでの協議を重ねました。不法出入国、薬物、銃器などの各分野について情報交換を行い、実務に即した有意義な議論がなされているところであります。各分野における共通理解の確立、実務担当者間の連絡体制の確立など一定の成果があったところでありますし、今後とも情報交換の緊密化、捜査協力の強化などの一層の充実を図ってまいりたいと考えております。

 日ロ治安当局間会合におきましては、これまでに四回にわたる実務レベルでの協議を重ねてまいりました。薬物、銃器犯罪、自動車密輸などの各分野について情報交換を行いましたし、本会合を通じた両国の治安当局間の交流のさらなる促進について合意に達するなど、一定の成果があったところであります。

 日韓の関係でございますが、日韓ICPO実務担当者会議というのがございますが、これは、ICPOルートの窓口である両国捜査当局の実務担当者が両国における国際犯罪捜査の推進に必要な情報交換をすることなどを目的として、平成七年以降ほぼ毎年一回のペースで開催されているものであります。この会議において、サイバー犯罪対策、暴力団情勢などの各分野について実務レベルの協議を重ねるなどしまして、情報交換の緊密化、捜査協力の強化を進めているところであります。

 警察としましては、今後とも、その時々の犯罪情勢に応じた課題について、ただいま申し上げました会合などを通じた取り組みを続けまして、各治安当局との協力関係をより一層緊密にしてまいりたい、そういう考えでございます。

富田委員 ありがとうございました。

 今の知念さんの説明の中ですばらしいなと思ったのは、特に、日中治安当局間協議の中で、実務担当者の連絡体制の強化という点を言われていたんですが、これは本当に大事だと思うんですね。

 今回の法改正で中央当局間でいろいろできるようになったけれども、実際には、捜査の現場にいる皆さんが本当に欲しい情報とか、やはり、特に身柄事件なんかの場合には時間が限られてしまうわけですから、実務担当者の間でじかにやれるルートがきちんと確立していくというのが本当の捜査共助のあり方だと思いますので、今のようなことを地道にこれまでやられてきたということには大変敬意を表したいと思いますし、加えて、先ほども委員から質問がありましたけれども、一緒に捜査したりできないのかというようなことがあったんですが、実は、いただいた資料の「捜査研究」の中に、私的な意見だというふうに書かれているんですけれども、「おわりに」というところでこういうふうな意見をまとめられている方がいらっしゃいました。

 警察庁では、国際捜査共助に向けた様々な取組みを行ってきているところであるが、その結果が現場の捜査活動に還元されているものもあれば、まだまだ捜査現場のニーズを満たしきれていないものもあるのが実情である。来日外国人犯罪や国外への犯罪者の逃亡事案が増加している今日、国際捜査共助の成否が捜査の行方を左右すると言っても過言ではない事件も多く見られるところ、捜査共助がいかに迅速に行われるかを念頭に置いていなければならない。

本当にこのとおりだと思うんですね。

 それを受けて、「相手機関の担当者と直接情報交換することも重要である」というふうにこの方は結論づけられているんですが、私も、本当にこのとおりだと思うので、せっかく中央当局間でやれるようになった。もう一歩踏み込んで、今二国間協議で進めているような捜査の現場の直接のやりとりというようなものも、現場だけでやるんじゃなくてそういった何か枠組みをきちんとつくっていけないのかなと思うんですが、そのあたりはどうなんでしょうか。だれに聞いたらいいのかな。警察庁ではどういうお考えですか。

知念政府参考人 今回の法改正によりまして、今後、米国以外の各国とも同種の条約が締結されますれば、外交当局を介さずに中央当局ルートを通じて直接行うことが可能となります。共助の迅速化が期待されるところであります。

 議員御指摘のとおり、共助要請の準備段階で、あるいは要請を発した後に、捜査担当者レベルで直接に連絡をとり合い、要請内容の詳細や具体的な配意事項等について情報交換を行うということは、中央当局ルートを通じた共助の迅速化を図る上でも非常に重要であると承知をしておるところでございます。

富田委員 刑事局長も今のような考え方でよろしいですか。

樋渡政府参考人 結論的には、同様に、情報交換は大事なことだというふうに考えておりまして、今回の法改正によって中央当局制度がとられましたのは、これまでの外交ルートによって行われてきた捜査共助のために費やされていた時間を物理的に短縮するとともに、お互いの国で刑事手続について専門的知識、経験を有する中央当局同士が直接緊密な連携をとることによって、迅速かつ充実した捜査共助を行い得るようにするという点にありまして、かかる意味において、中央当局同士の直接の情報交換は非常に重要であるというふうに認識しております。

 また、委員御指摘のとおり、捜査共助の迅速化に当たっては、要請した趣旨や要請の必要性について双方が共通認識として有しておく必要がございまして、その意味において、共助を要請した外国の捜査機関と共助を実施する我が国の捜査機関の担当者が、具体的な捜査経過や証拠関係等について直接情報交換をすることが望ましい場合もあるのでございまして、今後、中央当局制度の枠組みのもとにおいて、そのような直接的な情報交換の促進についても意を用いてまいりたいというふうに考えております。

富田委員 ありがとうございました。

 もう残り五分だということですので、最後に二点。

 一昨日、五月二十六日、警察庁と神奈川、群馬、新潟の三県警が、入管難民法違反容疑などで、アルカイダ関連とされる十数カ所の家宅捜索を行ったというふうに報道されています。逮捕者は当初四人が五人になり、きょうの新聞なんかでは六人目も逮捕されたというようなことが出ているんですが、今捜査に入ったばかりだから質問されても何も答えられないよというのが当局の意見だと思うんですが、きょうの新聞なんかによりますと、公安調査庁長官がきのう衆議院のイラク復興特別委員会で現在も潜伏の可能性はあるというふうに答弁されたり、また、マスコミ各社では、オウム事件のときを思い出すかのように、あらゆる法令を駆使してきちんと捜査をしていくべきだというような指摘も出ております。

 差し支えない範囲で、このアルカイダ関係の捜索また逮捕について、今どんな状況なのか、御答弁いただければと思います。

米村政府参考人 お答えをいたします。

 まず、御指摘の今回の強制捜査に至った経緯についてでありますけれども、焦点となっておる人物は、フランス人男性のリオネル・デュモンという人物でございます。この人物は、殺人あるいは爆弾テロ未遂、こういったもろもろの罪でフランス、イタリア等の国からICPOを通じて国際手配をされておったという人物でございます。また、この人物につきましては、国連制裁委員会で、アルカイダの関係者だということで指定を受けておったということでございます。

 この人物が昨年の十二月にドイツにおきまして逮捕されました。その際に、ジェラルド・ティネという名義の我が国の郵便貯金通帳等を所持しておったということで、我が国の方に通報がなされたということでございます。この通報を受けまして、警察におきまして捜査を行ったところ、このジェラルド・ティネ名義のフランス旅券でもって、平成十四年から十五年にかけて我が国へそれぞれ四回入出国、もちろん不法に繰り返しをしておった、また新潟県内におきましては外国人登録をしておった、こういうことが明らかとなったというわけでございます。

 さらに、私ども警察庁の調整のもと、関係の都道府県警察において捜査を行っておったところ、このリオネル・デュモンに関する入管法違反事実等が明らかとなり、また、同人の足跡、これをいろいろ追っていく過程におきまして、この人物の周辺にいた外国人による不法残留事件等の違法事実が明らかとなったということで、先生先ほど御指摘のとおり、一昨日、関係警察において強制捜査に踏み切ったというものでございます。

 引き続き捜査中ということでございまして、具体的な中身についてコメントは差し控えたいということでございますが、いずれにいたしましても、最も関心を寄せるところは、このアルカイダ関係者がいかなる目的で我が国に入出国を繰り返し、どういうふうな活動を行っていたのかということについて、その全容を解明すべく、現在、最大限に努力をしているということでございます。

 以上でございます。

富田委員 それ以上聞いても同じ答えしか出てこないんでしょうからあれですけれども。

 大臣、今説明があったように、偽造旅券で平気で入ってきている、また外国人登録もされている、こういったことがさっさとやられるようでは、幾ら警備体制を強化しても、やはりどこかにいるんじゃないかという国民の不安というのは解消できないと思うんですね。治安の回復が言われて久しいですけれども、小泉内閣としても、治安回復に全力を挙げていくんだというふうにずっと言ってきております。今回のこのアルカイダ関連の捜索等も含めて、治安回復の最終責任者はやはり大臣だというふうに思うんですが、それに警察庁も含めて、法務大臣として治安回復に向ける大臣の御決意を伺って、質問を終わりたいと思います。よろしくお願いいたします。

野沢国務大臣 日本にとって今一番緊急、重要な事案について御質問をいただきました。

 私が昨年、法務大臣を拝命いたしましたとき、小泉総理から、日本を世界一安全な国と言われた状況に戻してほしいと。もう失われているという御認識ですね。政治では、G8の一員として世界に声をかけられる。経済では、世界第二の経済大国、個人的にも立派な所得の水準にあります。そしてまた、国民共通の関心である福祉についても長寿世界一という立派な実績が続いているにもかかわりませず、治安関係だけは坂道を転げ落ちるように悪くなっている、こういう状況がここ近年続いていたわけでございます。

 私を法務大臣に命じましたときも、小泉総理からの第一の特命が、この治安回復でございます。そして、小泉内閣が発足しましたときの基本方針の一つ、二番目に、日本の治安を回復しようということを内閣全体の方針としても取り上げておるわけでございます。

 これを受けまして、我が国の治安回復をどうするか、特にその中でも外国人による犯罪が目立ってやはりふえているということもございますので、昨年十二月には、総理が主宰して、全閣僚を構成員といたします犯罪対策の閣僚会議におきまして、犯罪に強い社会実現のための行動計画を策定しまして、まず第一に、国民がみずからの安全を確保するために活動しておられるわけで、それを支援していこう、やはり地域の連帯を強化するということを挙げておりますし、二番目に、犯罪の生じにくい社会環境の整備を整えよう、また三つ目は、今御指摘のように、水際対策を初めとした各種犯罪対策という三つの視点を前提に広範な施策を展開していこうじゃないか、こういう状況になっております。

 このうち、国際協力に関しましては、国際捜査共助の充実化と条約締結の検討のほかに、多面的な見地から外国関係機関との連携の強化のための諸施策が策定されておりまして、この法案の御提案もその一環でございます。法務省といたしましては、同計画を具体化し、国境を越える犯罪が増加する事態に有効に対処するためには、諸外国との捜査協力を一層推進することが不可欠であると考えております。この法案によりまして、日米刑事共助条約を批准することになれば、米国との関係で共助の範囲が広がり、迅速に共助の要請や証拠の授受を行うことが可能となるために、まさに、我が国の犯罪捜査の円滑な遂行、ひいては治安の回復に資すること多大なものがあると考えております。

 法務省といたしましては、国際協力を含めて、引き続き、同行動計画の具体化と推進のため、関係部局を挙げて治安の回復に全力を尽くす決意であります。

 なお、先ほど御指摘のありました偽造旅券の問題につきましては、鑑識機器の増強と要員の手当て、さらには、将来予想されておりますバイオメトリックスつきの旅券の導入等につきましても前向きに取り組んでいきたいと考えております。

富田委員 ありがとうございました。終わります。

柳本委員長 御苦労さま。

 次回は、来る六月一日火曜日午前九時四十五分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時八分散会


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